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コンビニ(その8)(セブン 米コンビニ「2兆円買収」再挑戦の賭け アメリカで「日本流コンビニ」は浸透するのか、伊藤忠がファミマをTOB 止まらぬ「店舗崩壊」に不安の声、コンビニ「24時間営業の見直し」議論がコロナで後退の舞台裏) [産業動向]

コンビニについては、3月16日に取上げた。今日は、(その8)(セブン 米コンビニ「2兆円買収」再挑戦の賭け アメリカで「日本流コンビニ」は浸透するのか、伊藤忠がファミマをTOB 止まらぬ「店舗崩壊」に不安の声、コンビニ「24時間営業の見直し」議論がコロナで後退の舞台裏)である。なお、タイトルから「小売業(」はカットした。

先ずは、8月7日付け東洋経済オンライン「セブン、米コンビニ「2兆円買収」再挑戦の賭け アメリカで「日本流コンビニ」は浸透するのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/367654
・『一世一代の大勝負は吉と出るか――。 8月3日朝、小売り大手のセブン&アイ・ホールディングス(HD)から突然のリリースが発表された。 内容は、セブン&アイHDの完全子会社でありアメリカのセブン-イレブン事業などを運営する米セブン-イレブンが、現地の石油精製会社マラソン・ペトロリアムのコンビニエンスストア併設型ガソリンスタンド「スピードウェイ」部門を買収する契約を結んだというもの。買収額は210億ドル(約2兆2200億円)に上り、買収完了は2021年度第1四半期の期間中(2021年1~3月)を見込む。 この買収は、セブン&アイHDにとって過去最大規模となる。これまでのセブン&アイHDによる最高買収額は、2018年1月に米セブンがコンビニを併設するガソリンスタンドの店舗網1030店を米スノコLPから取得した際の31億ドル(当時の為替レートで約3400億円)だったが、今回はそれを軽く上回った』、「コンビニを併設するガソリンスタンド」買収は2回目だったようだ。
・『米セブンの営業利益は倍増  米セブンの2019年12月期の業績は、総売上高361億ドル(約3兆8100億円)、営業利益11億ドル(約1160億円)。スピードウェイの2019年12月期の総売上高268億ドル(約2兆8300億円)、営業利益11億ドルと単純合算すると、買収によって米セブンの営業利益は2倍へと増加する。 日本のコンビニの成長が頭打ちとなり、不振が続くGMS(総合スーパー)のイトーヨーカドーや百貨店のそごう・西武を抱えるセブン&アイHDの中で、アメリカのセブンは成長ドライバーとして期待されてきた。セブン&アイHDの井阪隆一社長は8月3日に行われた会見で、「コンビニを軸とした、真のグローバルリテーラーとなる歴史的な一歩になる」と強調した。 今回の買収でセブンが手に入れるのは、スピードウェイの店舗約3900店。アメリカは日本とは異なり、コンビニ業界での寡占化が進んでいない。セブンは北米で9802店(2020年5月末時点)を展開し、店舗数はトップを走るが、そのシェアは約6%にとどまる。買収が成立すれば、スピードウェイを加えて約1万4000店体制となり、2位に7000店以上の差をつけることになる。 世界中で新型コロナウイルスの感染が拡大する中だが、「コロナが永遠に存在するわけではないと思う。5年先、10年先を考えたときに、約4000店のチャンスはわれわれの成長にとって大きなメリットになると判断した」(井阪社長)。 トップシェアを強固なものにしてセブンが狙うのが、ハンバーガーやサンドイッチなど注力中のオリジナル商品の導入や、会員基盤の拡大や宅配サービスの展開拡大などサービス強化、店舗数拡大による購買力向上や配送効率化だ。 とくに、アメリカでは現在、コンビニは給油のついでに買い物をする場所という存在だが、オリジナル商品の強化によって、コンビニに行くことを目的とする消費者を増やしていく。同時にセブンはスピードウェイからガソリン販売のノウハウを手に入れる。「お互いのベストプラクティスを共有できる。(買収は)すばらしい2社の結婚といえる」(米セブンのジョセフ・マイケル・デピント社長)』、「アメリカ」で「オリジナル商品の強化によって、コンビニに行くことを目的とする消費者を増やしていく」、という夢が、「米スノコLPから取得した」「コンビニ」では上手くいっているのだろうか、気になるところだ。
・『ガソリンスタンドでも安定収益  ただ世界的にEV(電気自動車)が浸透し始め、環境規制も強化されつつあり、脱ガソリンの動きが強まっている。こうした現状についてセブン側は、ガソリンスタンドを中核とする店舗でも、中期的に安定的な収益を得られるとにらむ。 アメリカのエネルギー情報局によると、現地の2020年から2050年までのガソリン消費量の年平均成長率はマイナス0.4%とほぼ横ばい。しかもコロナ禍におけるGPSデータによると、アメリカでは公共交通機関の利用者が減る一方、車による移動距離がコロナ前よりも増えているという。 米セブンのデピント社長は、「EVの普及率は2019年の1.8%から2050年までに11.2%まで上がる見込みだが、それを上回るスピードで人口そのものが増える。EVの充電施設に力を入れることがゆくゆくは必要になるかもしれないが、長い目線での話になる」と説明する。 セブンオリジナル商品を導入することによるスピードウェイでの商品売り上げの増加や購買力強化によって、2025年2月期には米セブンの営業利益が4億7500万~5億7500万ドル(約500億~600億円)押し上げられるとセブン&アイHDは見込む。 この買収は、2度目の挑戦だった。今春、セブンによるスピードウェイ買収は約220億ドルで検討していたとされるが、折り合いがつかなかった。当時は巨額の買収費用に加え、ガソリンスタンドを中核とする店舗を買収することに、ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点において、セブン&アイの社内からも懸念の声が上がっていた。 だが新型コロナの影響で石油需要が減少する中で、中核の石油精製事業が大幅な赤字となったマラソン側が再度売却を検討したと見られ、」のが、「「千載一遇の案件が出てきた」(井阪社長)。 巨額買収が決定したセブン&アイHDは3日の説明会で、割高な買収ではないことを繰り返し強調した。EV/EBITDA倍率(企業価値をEBITDAで割った値)は13.7倍に上るが、アメリカでの節税効果30億ドル、重複する店舗約200店の売却効果10億ドル、不動産など資産を売却しリース契約で借りるセール&リースバックで50億ドルの効果が見込めるという。それらを踏まえると、実質的な取得価額は210億ドルから120億ドル(約1兆2670億円)となり、EV/EBITDA倍率は7.1倍まで下がると、会社側は主張する。 UBS証券の守屋のぞみアナリストは、「210億ドルの買収額は額として大きいし収益性の面からも割高だが、セール&リースバックなどを踏まえて4000店弱を120億ドルで手に入れられるなら必ずしも割高ではないだろう」と評価する』、当初「約220億ドルで検討していたのが、「210億ドル」では必ずしも「千載一遇の案件」とはいえない気もする。「セール&リースバック」で実質的に「120億ドルで手に入れられる」とはいっても、リース料の分EBITDAが縮小する筈だ。
・『日本流は浸透するのか  巨額買収の資金の内訳は、ブリッジローン130億ドル、セブン&アイHDから米セブンへの増資80億ドルで賄う予定だ。新株発行による資金調達はせず、株式が希薄化しない点も説明会で強調された。 買収が発表された3日のセブン&アイHDの株価は、一時は前営業日の終値より268.5円下がる2937.5円にまで急落。だがその後の株価は買収発表前の水準まで戻している。UBS証券の守屋アナリストは、「株式市場では買収規模への懸念がまず広がったが、実質取得価額を120億ドルまで抑えるスキームや株式の希薄化がないという説明が出て、懸念が少し和らいでいる。ただ、米セブンの強みを生かして物販の売り上げ増加を会社が説明する時間軸で実現できるのかは、規模が大きいので丁寧に見る必要がある」と話す。 現在米セブンはセブン&アイHDの傘下にあるが、もともとはアメリカ発祥のチェーンで、セブン-イレブン・ジャパンの前身がライセンス契約を結び日本での展開が始まった歴史がある。ある小売業界関係者は、「『日本流を広める』というのは幻想。日本のセブンはアメリカ流を排したことで成功したが、(商品を強化するという)日本流をアメリカに植え付けるのはその裏返しで、有効なのか疑問だ」と懸念する。 また、買収で見込むシナジーを生むための施策を実行できるのかも注視する必要がある。米セブンのデピント社長は、セブン&アイHDの井阪社長が掲げる米セブンの商品強化に以前から賛同しているようだが、担当者レベルまで方向性が十分に浸透しているかは未知数だ。 懸念点として残るESG(環境、社会、ガバナンス)について米セブンは、以前は2027年の二酸化炭素の排出量を2015年比で20%削減する目標を掲げていたが、今回の買収を受けて40%へと引き上げるなど、目標をより厳しく設定した。 コンビニ事業として見ると、合理的にも見える大型買収。ただ計算どおりに統合が進むとは限らない。2兆円を超す巨額買収は、セブン&アイにとって決して失敗が許されない大勝負となる』、「『日本流を広める』というのは幻想・・・日本流をアメリカに植え付けるのはその裏返しで、有効なのか疑問だ」との見方に同感である。今後、「セブン&アイHD」のお荷物になる懸念もありそうだ。

次に、8月26日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したフリージャーナリストの赤石晋一郎氏による「伊藤忠がファミマをTOB、止まらぬ「店舗崩壊」に不安の声」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/246953
・『8月24日に応募が締め切られた、伊藤忠商事によるファミリーマートへのTOBが成立した。伊藤忠は総額5809億円を投じて1株2300円でファミマ株を買い付け、完全子会社化を実現することになる。ファミマは上場廃止となり、これまでも囁かれ続けてきた伊藤忠支配がより一層強化される見込みとなった。社内ではため息とともに将来を不安視する声が囁かれた』、「社内ではため息とともに将来を不安視する声が囁かれた」、とは穏やかではない。どういうことなのだろう。
・『ファミマ社内で広がる失望感  「今後、ファミマはますます競争力を落としてしまうかもしれない。伊藤忠支配のもと、お客様ファーストは実現できるのだろうか――」 コンビニ3強の一角として長らく君臨してきたファミマ。本稿ではTOBの裏側で揺れ続けてきた社内の様子をレポートしていきたい。 約1カ月前の7月8日、伊藤忠はファミマ子会社化の方針を発表した。報道を受け、澤田貴司社長は、夜に緊急で管理職以上の社員を集め、壇上からこう説明したという。 「これまで、お客様、加盟店、そして株主を見て我々は活動してきた。TOBによって上場を廃止することで、株主ではなく、加盟店、お客様に集中する環境を作ることができる」 ファーストリテイリング副社長などを歴任し、プロ経営者としてファミマに招聘された澤田。その力強い声とは裏腹に、語られるメッセージはただ空しく響くだけだった。 「社員の中には一部上場企業という看板を失うことへの失望感を口にする人もいます。澤田社長は記者会見で『伊藤忠を使い倒す』とコメントをしていましたが、実態は真逆です。もはやファミマは伊藤忠の利益搾取の場所なのです。今後、さらに容赦なくファミマが伊藤忠の“草刈り場”になるのは目に見えています。お客様に集中するために完全子会社化するという理屈も意味不明です。だったら、出資比率を以前の30%(注33.4%)に戻し、親会社への忖度なく目の前の商売に集中させてほしい、というのが社員の本音なのです」(ファミマ社員)』、「もはやファミマは伊藤忠の利益搾取の場所・・・出資比率を以前の30%(注33.4%)に戻し、親会社への忖度なく目の前の商売に集中させてほしい」、との「社員の本音」はその通りなのだろう。
・『コンビニ3強で一人負け状態  かねて伊藤忠支配による弊害が指摘されていたファミマ。それが完全子会社になることによって何が起こるのか。別のファミマ社員は、内情をこう語る。 「以前からも発注先について、伊藤忠出向社員から『なぜ伊藤忠グループを使わないんだ?グループで金を回したほうがいいだろう』と文句を言われてきたのが、今後は全ての事柄が伊藤忠ありきで進むことは確実です。例えばセブンイレブンは商社と一線を引いているから、変な力学なく取引先を競争させて、最も良い商品を常に提供できる。ファミマの社員ですら、『自分が消費者なら、セブン一択』と言っている。それぐらい、もう使っている原材料から工場の機材、こだわり抜いた製法まで、商品のクオリティが別次元なのです」 伊藤忠支配の弊害は、消費者向けの商品だけにとどまらないようだ。 「例えばファミマが使用している店舗システムは、CTC(伊藤忠テクノソリューションズ)という伊藤忠グループ会社が開発に大きく関与したものを使っています。だが、高い開発費や運用費に対して、発注や個店分析などの機能がとにかく使い勝手が悪く、加盟店からは『おんぼろマシン』と呼ばれている。サークルKからファミマに転じた加盟店からも『サークルKのNEC社製システムよりもはるか使い勝手が悪い』と不平だらけ。でも、CTC以外の選択肢なんて口が裂けても言ってはならないのです。人手不足の中、こんなシステムを使わなくてはならない加盟店が可哀想です」(別のファミマ社員) 新型コロナウィルスの影響でコンビニ各社は売り上げ減が続くなど、苦戦している。7月の既存店売上はセブンイレブンが5.1%減、ローソンは8.9%減、そしてファミマだけ10.8%減と2桁のマイナスを記録している。 ある流通アナリストは語る。 「小売流通業界からすると、不祥事もないのに、このファミマ一ト1人負け状態は異常事態。この数年間、本当にパフォーマンスだけで、何もしてこなかったことが、コロナ禍で露呈した」 しかも、この減速の主要因は、ファミチキ以来14年間、ヒット商品がないというレベルの一過性のものではなく、はるかに根深い』、「伊藤忠支配の弊害は、消費者向けの商品だけにとどまらない・・・店舗システムは・・・伊藤忠グループ会社が開発に大きく関与したものを使っています。だが、高い開発費や運用費に対して、発注や個店分析などの機能がとにかく使い勝手が悪く、加盟店からは『おんぼろマシン』と呼ばれている」、「伊藤忠」はこうした「ファミマ」社員の不満を認識しているのだろうか。認識しても、目先の利益のため見て見ぬふりをしているのかも知れない。
・『減速の最大要因はフードロス対策  減速の最大要因の一つとされているのがファミマの「フードロス」対策だ。恵方巻の大量発注、大量廃棄などが消費者から問題視され注目されたフードロス問題。ファミマはいち早く対策に取り組み、「恵方巻やウナギ、クリスマスケーキなどの季節商品は完全予約にする」「鮮度向上による販売期限の延長」などの方針を打ち出した。同時に社内や加盟店に対して、本社・経営企画部が旗振り役となり澤田社長と一緒になって「廃棄ロス(フードロス)をなくせ!!」の大号令を現場に出したのだ。 「この言葉を聞いて店舗側が、日々の通常商品まで商品発注においてリスクを取らないようになってしまったのです。結果、棚に商品がないという欠品状態が続出している。セブン、ローソンと比べても、ファミマだけ棚がスカスカなので恥ずかしい。一度、お店をスイッチしたお客様は、もう戻ってこない。近隣の競合コンビニにドンドン人が流れていっています。季節商品の過剰な無駄は確かに問題です。しかし本社が廃棄ロスを出すなという安易なメッセージを出してしまったことで、店舗が“販売機会のロス”が出ても良しとする空気を作ってしまった。こうした状況が一人負けを生み出している」(ファミマ社員) このファミマの状況には、競合チェーンの店舗カウンセラーも驚く。 「フランチャイズビジネスにおいて、加盟店の発注をいかに促進するかというのは、根幹中の根幹。本部は加盟店との信頼関係を何年もかけて、あの手この手で積み重ねて、しっかりと商品を発注してもらう。そのために、千人規模の店舗指導スタッフがいる。もしファミマが発注しなくていいという方向に舵を切ったなら、加盟店は二度と勝負をかけた発注はしないでしょう。しかし、発注しなくていいなんて、コンビニビジネスの根幹を揺るがす大問題。チェーン崩壊の引き金となりかねない。ウチのチェーンでは、とても信じられない……」 本社側は売り上げ減を「オフィス立地の店舗が多い」と釈明しているが、ファミマ現場社員はみな「発注がかからず、お店に商品がないことが理由」と認識しているのだという。ただ、加盟店の士気の低下はこれに留まらず、さらに深刻だ』、「廃棄ロス・・・をなくせ!!」、自体は必ずしも悪くはないが、「店舗側が、日々の通常商品まで商品発注においてリスクを取らないようになってしまったのです。結果、棚に商品がないという欠品状態が続出している」、という悪影響をもたらしたのは問題だ。。
・『経営を揺るがす最低保証問題とは  「コロナの影響で売り上げが大幅ダウンしているが、本部からは何らまともな方針が出てこない。最近の加盟店は、もう店づくりを止めて、最低保証を狙いに行こうという機運が高まっている」(前出のファミマ社員) どういうことか? ファミマ本部と加盟店の契約では、加盟店の総収入を年間で2000万円(24時間営業の場合)、本部が補填などの手立てを行い保証してくれるという制度がある。 最低保証になると、この2000万円から、商品の廃棄費用やアルバイト人権費、経費などを差し引き、だいたい加盟店オーナーの夫婦で300万~400万円の年収になる計算だ。10年間365日24時間、人不足で深夜まで夫婦交代で店舗に立ち続けて夫婦二人で年収300万円とは、決して高収入とはいえない。しかし、コロナの影響下で最低保証狙いに走る加盟店が急増しているというのだ。 「平時なら、日商40万円の店舗にスーパーバイザー(SV)が『50万円を目指しましょう』と言って二人三脚で頑張って店づくりをしていきます。でもコロナ時代に、売り上げは下がる一方で、本部も何ら加盟店の心をつなぎとめる指針を出せていない。だったら、『もう頑張らずに、発注を止めて、(最低保証の目安ラインである)日商30万円に落としに行こう』という店舗が出てきているのです。SVも本社からフードロス削減の指示が出ているから、強く言うことはできません」(ファミマ社員) 最低保証問題はファミマの経営を揺るがしかねないテーマだ。そもそも日商を上げるどころか、下げに行く加盟店が増えることは、商売の常識では考えにくいことである。 本部収益の激減に加えて、加盟店への最低保証の補填額は本部負担となる。ファミリーマートでは全店舗1万6600店のうち、なんと約4分の1が日商40万円に満たない店舗だといわれている。約4000もの店舗が、一斉に売り上げを下げ、最低保証を取りに行った時――、ファミマは新たなリスク要因を抱えることになる』、「本部も何ら加盟店の心をつなぎとめる指針を出せていない。だったら、『もう頑張らずに、発注を止めて、(最低保証の目安ラインである)日商30万円に落としに行こう』という店舗が出てきている」、「約4分の1が日商40万円に満たない店舗・・・約4000もの店舗が、一斉に売り上げを下げ、最低保証を取りに行った時――、ファミマは新たなリスク要因を抱えることになる」、まさに末期的だ。
・『トップダウンの施策も不発  澤田のトップダウン施策も不発が続いている。 「ユニクロではこうだったぞ――」が口癖の澤田氏はファミマでもパンツやシャツなどアパレルを充実させようと張り切ってきた。 「澤田社長はファミマと提携していた無印良品の品を見て、当然、俺ならもっとできると考えたのでしょう。使い捨てパンツや機能性シャツを開発したり、今も、新しいアパレル販売の実験を繰り返しています。しかしファミマブランドの衣服ニーズなどあるわけもなく、今ではローソンに無印良品を取られたことを、加盟店すら悔やんでいます」(別のファミマ社員) 澤田氏はファミマ製アパレル発売時に、それらを着用しては悦に入り周囲に自慢しているという。パンツに拘泥する社長を見て、「裸の王様だ」と社員は声を潜めささやき合う。 だが、澤田氏の迷走はこれに止まらないという。 「思いたったらすぐに発信、それが基本です」澤田氏は『ファミリーマート 澤田社長「情報は自分で取りに行く」SNS活用経営の現場報告』(流通ニュース2020年1月10日)という記事でこう自らの経営手法を開陳している。 〈加盟店からの情報です!至急、調査をお願いします!!〉 〈友人からのアイデアです!ブレスト準備してください!〉 早朝に自宅でワークアウトすることを好む澤田氏は、そのときに思いついたことを幹部にプライベートのLINEで指示を飛ばす。情報源は友人女性や朝の情報番組、懇意にしている加盟店など。LINEは早朝の5時~6時に矢継ぎ早に送られてくる。 「もちろん幹部と社員スタッフは即レスしないといけないので、早朝から携帯電話の前で待っています。不幸なことにLINEが来てしまったら、急いで出社して、資料作りです。他にも経営企画から、いろいろな報告資料や会議資料を要求されるし、本業の仕事をする時間がまったくありません……」(ファミマ社員)』、「澤田氏はファミマ製アパレル発売時に、それらを着用しては悦に入り周囲に自慢している」、「澤田氏」はプロ経営者の1人といわれてきたが、その実態がここまで酷いとは心底驚かされた。
・『パフォーマンスが目立つ澤田氏の求心力も低下  既に澤田氏の求心力は、社員はおろか、加盟店からも完全に失われている。 ファミマに招聘されて4年、澤田氏は未だにファミマビジネスの軸を固められていないように見える。就任当初は大きな期待感をもって迎えられたものの、社員や加盟店からは「パフォーマンスだけの、小売りのド素人だった」と失望されている。会社の経営は一向に上向かず、上場企業という看板も失った。そのカリスマ性は色あせるばかりだ。 そんな状況下で、澤田氏が繰り出そうとしている新たなパフォーマンスが外部からの大物登用だ。マクドナルドを再建したことで著名な足立光氏が、10月1日からCMOとして着任することが発表されたのだ。足立氏はマーケティングの責任者としてファミマ再生のために手腕を発揮することが期待されている。 しかし、ある有力加盟店オーナーはため息交じりに言う。 「みなフリース(ユニクロ)の次はハンバーガー経営かと苦笑いをしています……。澤田社長には、どうかお願いだから、店舗の末期的状況を直視していただきたい」 今年の2月、ファミマは早期退職者の募集を始め、店員800名に対して多くの応募者が殺到し、結果的に1025名が早期退職制度を利用して会社を去った。その後も、若手社員を中心に人材の流出が続いているという。 こうした苦境の中、唯一の希望となっているのが再生本部の存在だ。 再生本部はファミマ直営店を管轄する部署だ。早期退職者募集時には、肩たたき組に対して「再生本部送りにするぞ!」という殺し文句が使われたように、リストラ部署と見る向きもあった。 「再生本部に送られたのはプロパーの社員ばかり。しかし、彼らは直営店で新しいチャレンジをどんどん始めている。これまでのファミマではあり得なかったような、大胆な野菜売り場を拡充するという仕掛けを始めたのも彼らで、今では一部店舗で定番化している。コロナ減速で厳しい中、プロパー組の意地を感じさせる奮闘ぶりを見せているのです」(冒頭のファミマ社員)』、「「みなフリース(ユニクロ)の次はハンバーガー経営かと苦笑いをしています」、「早期退職者の募集を始め、店員800名に対して多くの応募者が殺到し、結果的に1025名が早期退職制度を利用して会社を去った。その後も、若手社員を中心に人材の流出が続いている」、末期的というよりもはや破綻寸前の状況のようだ。
・『ファミマはどう答えたか  内情について取材を申し込むと、ファミマ広報はこう回答した。 Q 伊藤忠グループへの発注が優先されているのか? A「これまでも伊藤忠グループであることを理由に、発注が推奨されてきた事実はありません」 Q ファミマのシステムにCTCが関わっている。 A「CTCは数あるシステム会社様の一つとして弊社のシステム開発に携わっております。一方、CTCの開発したシステムが、他のコンビニと比較して機能が劣っているとの認識はございません」 Q 廃棄ロスの誤った指示が、売上減に響いていると指摘されている。 A「本部は加盟店に対し、ご指摘のような指示を出す立場になく、商品の発注は加盟店の判断で行われます。食品ロス(廃棄ロス)の削減は社会問題の1つと認識し、加盟店とともに取組んでいますが、本取組が機会ロスに大きく影響しているとの認識はございません」 Q 加盟店が売り上げ増より、最低保証を目指すようになっているのか。 A「コロナウィルスの影響の中、最低保証狙いに走る店舗が増えている事実はございません」 Q ファミマ店舗1万6600店のうち、4分の1近くが日商40万円に満たないという指摘がある。 A「その内容については公表しておりません」 現場の声と本部の認識にはいまだ大きな乖離(かいり)がある。大手商社と外様社長の迷走は、改めてファミマ社員に「コンビニ業とは何か?」という問いを突き付けた。 TOB成立によって、伊藤忠の“草刈り場”となるのか、それとも一念発起して新しいコンビニ像を作り上げるのか。完全子会社化後の彼らには、どのような運命が待ち構えているのだろうか――』、「伊藤忠の“草刈り場”」とはいっても草が枯れかけているようだ。「伊藤忠」は一体、どう考えているのだろう。

第三に、9月26日付けダイヤモンド・オンライン「コンビニ「24時間営業の見直し」議論がコロナで後退の舞台裏」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/249688
・『コロナ禍によって今春以降、コンビニエンスストアの求人に応募が殺到している。業界にとって積年の課題だった人手不足がやや薄らぐ一方で、これまで熱を帯びてきた24時間営業の見直し議論に水を差し始めた』、「コロナ禍」も意外な影響を及ぼしているようだ。
・『外食からコンビニへコロナ禍で求人に応募が殺到  340人――。コンビニエンスストア大手のローソンが今年5月、東京都墨田区の新店開業に伴い求人をかけたときの応募数だ。 新店の求人数は20人程度だったため、倍率は実に17倍にも及ぶ。既存店を含めた自社の求人サイトを通じた応募総数は、4月は前年同月比で約3倍、5月以降も4~7割増という高い水準で推移しているという。 セブン-イレブン・ジャパンやファミリーマートも状況は同じだ。地域や店舗によってかなりばらつきがあるものの、8月は両社とも求人応募数が前年同月比で約2倍に膨らんでいる。 応募急増の背景にあるのが、コロナ禍による飲食店の営業自粛だ。4月以降、アルバイト先の飲食店が営業自粛になり、生活費を稼ぐことがままならなくなった学生などが、コンビニの求人に飛びつくようにして応募しているわけだ』、「アルバイト先の飲食店が営業自粛になり、生活費を稼ぐことがままならなくなった学生などが、コンビニの求人に飛びつくようにして応募」、「コンビニ」にとっては、思わぬ追い風のようだ。
・『コンビニの人手不足は解消するのか  飲食店をめぐっては、閉店ラッシュが10月以降本格化するという見方がある。テナントに出店している場合、貸主への解約通告を半年前に設定しているケースが多いことがその理由だ。 政府の緊急事態宣言発令を受けて、都心部を中心に飲食店の営業自粛が広がったのが、今年4月。もしその時期に閉店を決めていたとしても、半年前予告であれば10月までは家賃が発生するため、泣く泣く営業を続けているという飲食店は少なくない。 今後、飲食店の閉店ラッシュが本格化することになれば、食いぶちを求めてコンビニに人が集まるという状況が、さらに強まりそうだ。 コンビニ業界にとって、人手不足はまさに積年の課題だった。それがやや緩和される見通しになり、胸をなでおろす本部社員は少なくないだろう 一方で、そうした状況に懸念を強めているのが、公正取引委員会や一部の加盟店オーナーたちだ。 特に公取委は、昨秋から大規模な実態調査に踏み切り、コンビニの24時間営業の強制にかかわる独占禁止法の問題点や、人手不足による人件費の上昇が加盟店を苦しめている実情などを指摘し、9月初旬に各社に改善要請をしたばかりだ。 さらに言えば、昨年以降業界を所管する経済産業省と連携して、24時間営業の柔軟な見直しについて、本部側の動きににらみを利かせつつ、実態調査を通じて改善に向けた圧力をこれから強めようとしている矢先だった。 それが、コロナ禍によって状況が一変してしまった。24時間営業の見直しの背景にある「慢性的な人手不足や、それに伴う人件費の上昇については、すでに改善している」という主張を、本部側が展開しやすくなり、公取委として改革を迫る圧力が一部削がれてしまう懸念があるわけだ。 全く別の懸念もある。 「もっとひどい状況かと思っていましたが、たいしたことはなかったですね」。大手コンビニの幹部によると、公取委から改善要請を受けるまでのやり取りの中で、業界におもねるような声掛けをしてきた公取委の職員がいるという。 実態調査の結果に対する受け止め方には、公取委の中でも温度差があるようだが、かつて「ほえない番犬」などとやゆされた及び腰の姿勢が、またぞろ公取委の一部で顔をのぞかせているのだとしたら、何とも心もとない。 「しょせんコロナ以前の実態調査ですから」。コンビニ本部から、そうした挑発的な声も漏れる中で、公取委は業界とどう対峙していくか。見せかけの攻防戦は誰も期待していない』、「今後、飲食店の閉店ラッシュが本格化することになれば、食いぶちを求めてコンビニに人が集まるという状況が、さらに強まりそうだ」、なるほど。「人手不足」問題が解消するとしても、「24時間営業の強制にかかわる独占禁止法の問題点」は残る筈だ。「公取委」には毅然とした姿勢で「業界と対峙」し、「ほえない番犬」の汚名をそそいでもらいたい。
タグ:コンビニ 東洋経済オンライン ダイヤモンド・オンライン (その8)(セブン 米コンビニ「2兆円買収」再挑戦の賭け アメリカで「日本流コンビニ」は浸透するのか、伊藤忠がファミマをTOB 止まらぬ「店舗崩壊」に不安の声、コンビニ「24時間営業の見直し」議論がコロナで後退の舞台裏) 「セブン、米コンビニ「2兆円買収」再挑戦の賭け アメリカで「日本流コンビニ」は浸透するのか」 コンビニエンスストア併設型ガソリンスタンド「スピードウェイ」部門を買収 買収額は210億ドル 米スノコLPから取得した際の31億ドル 米セブンの営業利益は倍増 アメリカは日本とは異なり、コンビニ業界での寡占化が進んでいない セブンが狙うのが、ハンバーガーやサンドイッチなど注力中のオリジナル商品の導入や、会員基盤の拡大や宅配サービスの展開拡大などサービス強化、店舗数拡大による購買力向上や配送効率化 オリジナル商品の強化によって、コンビニに行くことを目的とする消費者を増やしていく ガソリンスタンドでも安定収益 当初「約220億ドルで検討していたのが、「210億ドル」では必ずしも「千載一遇の案件」とはいえない気もする 「セール&リースバック」で実質的に「120億ドルで手に入れられる」とはいっても、リース料の分EBITDAが縮小する筈 日本流は浸透するのか 『日本流を広める』というのは幻想。日本のセブンはアメリカ流を排したことで成功したが、(商品を強化するという)日本流をアメリカに植え付けるのはその裏返しで、有効なのか疑問だ 赤石晋一郎 「伊藤忠がファミマをTOB、止まらぬ「店舗崩壊」に不安の声」 社内ではため息とともに将来を不安視する声が囁かれた ファミマ社内で広がる失望感 もはやファミマは伊藤忠の利益搾取の場所 出資比率を以前の30%(注33.4%)に戻し、親会社への忖度なく目の前の商売に集中させてほしい コンビニ3強で一人負け状態 伊藤忠支配の弊害は、消費者向けの商品だけにとどまらない 店舗システムは 伊藤忠グループ会社が開発に大きく関与したものを使っています。だが、高い開発費や運用費に対して、発注や個店分析などの機能がとにかく使い勝手が悪く、加盟店からは『おんぼろマシン』と呼ばれている 減速の最大要因はフードロス対策 店舗側が、日々の通常商品まで商品発注においてリスクを取らないようになってしまったのです。結果、棚に商品がないという欠品状態が続出している 経営を揺るがす最低保証問題とは 本部も何ら加盟店の心をつなぎとめる指針を出せていない。だったら、『もう頑張らずに、発注を止めて、(最低保証の目安ラインである)日商30万円に落としに行こう』という店舗が出てきている 約4分の1が日商40万円に満たない店舗・・・約4000もの店舗が、一斉に売り上げを下げ、最低保証を取りに行った時――、ファミマは新たなリスク要因を抱えることになる トップダウンの施策も不発 澤田氏はファミマ製アパレル発売時に、それらを着用しては悦に入り周囲に自慢している 「澤田氏」はプロ経営者の1人といわれてきたが、その実態がここまで酷いとは心底驚かされた パフォーマンスが目立つ澤田氏の求心力も低下 「みなフリース(ユニクロ)の次はハンバーガー経営かと苦笑いをしています 早期退職者の募集を始め、店員800名に対して多くの応募者が殺到し、結果的に1025名が早期退職制度を利用して会社を去った。その後も、若手社員を中心に人材の流出が続いている ファミマはどう答えたか 「伊藤忠の“草刈り場”」とはいっても草が枯れかけているようだ 「コンビニ「24時間営業の見直し」議論がコロナで後退の舞台裏」 外食からコンビニへコロナ禍で求人に応募が殺到 アルバイト先の飲食店が営業自粛になり、生活費を稼ぐことがままならなくなった学生などが、コンビニの求人に飛びつくようにして応募 コンビニの人手不足は解消するのか 今後、飲食店の閉店ラッシュが本格化することになれば、食いぶちを求めてコンビニに人が集まるという状況が、さらに強まりそうだ 人手不足」問題が解消するとしても、「24時間営業の強制にかかわる独占禁止法の問題点」は残る筈だ 「公取委」には毅然とした姿勢で「業界と対峙」し、「ほえない番犬」の汚名をそそいでもらいたい
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歴史問題(13)(「インパール作戦」を強行した牟田口廉也中将 毎夜料亭で酒を飲み、芸者を自分の部屋に、「日本の近現代史」が歪められるのはなぜか 歴史修正主義に対抗する「国民の物語」が必要、大衆に消費される「戦争の歴史」が生む問題点 被害者視線ばかりを強調するメディアの危うさ) [国内政治]

歴史問題については、8月9日に取上げた。今日は、(13)(「インパール作戦」を強行した牟田口廉也中将 毎夜料亭で酒を飲み、芸者を自分の部屋に、「日本の近現代史」が歪められるのはなぜか 歴史修正主義に対抗する「国民の物語」が必要、大衆に消費される「戦争の歴史」が生む問題点 被害者視線ばかりを強調するメディアの危うさ)である。

先ずは、8月15日付け文春オンラインが掲載したノンフィクション作家の高木 俊朗氏による「「インパール作戦」を強行した牟田口廉也中将 毎夜料亭で酒を飲み、芸者を自分の部屋に 『全滅・憤死 インパール3』より #1」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/39659
・『第二次世界大戦における旧日本軍のもっとも無謀な作戦であった「インパール作戦」惨敗の主因は、軍司令官の構想の愚劣と用兵の拙劣にあった。かつて陸軍航空本部映画報道班員として従軍したノンフィクション作家・高木俊朗氏は、戦争の実相を追求し、現代に多くのくみ取るべき教訓を与える執念のインパールシリーズを著した。 インパールを知らぬ世代、必読! シリーズ第3弾『全滅・憤死 インパール3』より、インパール盆地の湿地帯に投入された戦車支隊の悲劇を描く「全滅」の冒頭を一部紹介する』、「従軍」経験のある「作家」の手によるだけに、興味深そうだ。
・『早々に過半の兵力を失う状況下で流れた噂  それまで勇将として畏敬されていた将軍が、暴将とか狂将といった評価に急変した。  ビルマ方面の日本軍を指揮した、第15軍司令官・牟田口廉也中将である。 昭和19年3月、多くの反対を押し切って、牟田口軍司令官がインパール作戦を強行した時は、一部では、まだ期待をもたれていた。何にしても、大東亜戦争(当時の日本側の呼称)の開戦の当初、マレー半島を急進し、シンガポール島を攻略した勇将である。 しかし、今度は、ビルマからインドへ、国境山脈を越えて急進し、3週間で英軍の基地インパールを攻略するという作戦なので、多くの困難が予想されていた。 果して4月の下旬までに、第15軍の3個師団は、それぞれに損害が多く、攻撃が挫折した。3週間の予定で、食糧を3週間分しか持って行かないから、まず食糧が不足してきた。また、急進撃をするため軽装備にしたので、武器、弾薬がたりなくなった。 インパールを目ざして、3方面から進んだ第31師団、第10五師団、第33師団はいずれも悪戦苦闘となり、早くも過半の兵力を失う惨状となった。 このころ、第一線には、牟田口軍司令官についての噂がひろがった。それは、作戦開始後、3週間を過ぎても、牟田口中将は軍司令部の所在地メイミョウから動かないでいるというのである。今度のような重大な作戦の場合、軍司令官は前線指揮に適した場所に、戦闘司令所を進めるべきである。 だが、軍司令部が動かないのは、メイミョウがシャン州の高原地帯にある、ビルマ第一の避暑地であるからだ。そこには日本風の料理屋があり、内地からきた芸者、仲居が いる。その一つは軍司令部の将校専用であり、軍司令官、各参謀、幹部将校は、それぞれに専属の芸者をもっている。彼らは毎夜、料亭で酒を飲み、芸者を自分の部屋につれて行く』、「3週間の予定で、食糧を3週間分しか持って行かない」、「急進撃をするため軽装備にしたので、武器、弾薬がたりなくなった」、よくぞ大本営はこんなずさんな作戦を認めたものだ。「作戦開始後、3週間を過ぎても、牟田口中将は軍司令部の所在地メイミョウから動かないでいる」、「メイミョウが・・・ビルマ第一の避暑地であるからだ。そこには日本風の料理屋があり、内地からきた芸者、仲居が いる・・・彼らは毎夜、料亭で酒を飲み、芸者を自分の部屋につれて行く」、第一線の辛苦をよそに「芸者」遊びとは、呆れ果てた。
・『催促に催促を重ねて  前線では、連合軍の激しい攻撃にさらされ、将兵が傷つき、倒れ、あるいは飢えと病いに苦しんでいる時である。牟田口軍司令官に対して憤激したのは、第一線部隊だけではなかった。第15軍の上級司令部である、ビルマ方面軍司令部でも、牟田口軍司令官に前線に出るように督促した。 シンガポール攻略の勇将には、たえがたい不名誉である。だが、牟田口軍司令官は動かず、督促は再三に及んだ。そして、ついにメイミョウを出ることになったが、急進急追しなかった。そればかりでない、シャン高原をおりて、イラワジ河を渡ると、中間基地のシュウェボでとまってしまった。そこには、料理屋が新しくできていて、軍司令部と前後して芸者、仲居がメイミョウから出てきた。 方面軍司令部は、さらに督促を重ねた。その結果、牟田口軍司令官は幕僚と共に、チンドウィン河を西に越えて、インダンジーに戦闘司令所を置いた。昭和19年4月20 日である。通称名を弓と呼ぶ、第33師団がインパール作戦を開始した3月8日から数えて44日目であった。牟田口軍司令官の計画による予定の3週間は、遥かに過ぎていた。 すでに戦力を半減した三個師団のうち、通称名を烈と呼ぶ第31師団は、インパールの北コヒマで膠着して動けず、通称名祭の第15師団は、師団司令部が襲撃されて、再三、逃げて移動していた。 弓第33師団はインパール盆地の西側の山地に進出したが、ビシェンプール一帯の強大な防御陣地に阻まれていた』、「ビルマ方面軍司令部でも、牟田口軍司令官に前線に出るように督促」、「中間基地のシュウェボでとまってしまった・・・料理屋が新しくできていて・・・芸者、仲居がメイミョウから出てきた」、「方面軍司令部は、さらに督促を重ねた。その結果、牟田口軍司令官は・・・インダンジーに戦闘司令所を置いた・・・インパール作戦を開始した3月8日から数えて44日目・・・牟田口軍司令官の計画による予定の3週間は、遥かに過ぎていた」、無茶な計画を部下に押し付けて、「芸者」にうつつを抜かしていたとは・・・。
・対立していた師団長を更迭  こうした状況に対し、牟田口軍司令官は憤激し、4月29日の天長節(天皇誕生日)を期して、インパール攻略を命令した。 その天長節も過ぎて、各戦線はますます困難を加えた。その上、5月になると、インド、ビルマは雨季に入り、連日の降雨となる。ことにインパールのあるマニプール州、 その西のアッサム州は豪雨地帯で、年間雨量は世界一である。 牟田口軍司令官はあせり立って、あくまでもインパール攻略の決意を変えず、第33師団のビシェンプール方面に攻撃の重点を形成しようとした。そのため、方面軍から増強された各種の部隊のことごとくを、第33師団に配属することにした。 さらに、軍戦闘司令所を弓の第一線に進め、牟田口軍司令官もそこにいて督戦に当ることにした。 そればかりでなく、弓の師団長、柳田元三中将を更迭することにし、その処置をとった。柳田師団長は、この作戦の当初から失敗を予測し、中止することを進言して、牟田口軍司令官と対立していた。 5月11日、牟田口軍司令官は参謀長・久野村桃代中将を伴い、護衛兵をつれて、20名あまりが自動車に分乗して、インダンジーを出発、弓師団方面に向った』、作戦中に「師団長」を「更迭」するとは、驚かされた。
・『《いっそ牟田口を殺して、自分も自決する》  5月12日、一行はインパール南道上の部落チュラチャンプールに到着した。そこに は弓の輜重兵第33連隊の本部があった。連隊長・松木熊吉中佐は牟田口軍司令官に状況を報告したあと、軍需品について増強を要請したところ、激しくどなりつけられた。 「第33師団は、軍の補給が遅れているから前進出来んというのか。インパールに突入すれば、食糧なんかどうにでもなる。前進の遅れた責任を軍に転嫁するのはもっての外だ。弓がぐずぐずしておるので、じっとしておられんから出て来たんだ」 牟田口中将は顔を赤くして怒った。 「補給を急ぐなら、夜ばかりやらんで日中にやれ。俺だって日中堂々走って来たが、攻撃されなかった。師団輜重は意気地がない。今日から日中もやらせろ」 松木連隊長は、連合軍の飛行機の襲来の激しいなかで、自動車輸送ができないことを説明しても、どなりつけられるだけだった。 何をいっても受付けようとしない牟田口中将の態度は、狂人のようにも見えた。連隊副官の逸見文彦中尉は、このような男が軍司令官かと怒りながら、松木連隊長を気の毒に思って、近づいて、用件らしいことをいって連れだしてきた。 牟田口中将の言動に許しがたいものを感じた将校がほかにもいた。それについて、逸見副官は後年の手記に、次のように記した。 《軍司令官がチュラチャンプールに突然姿を現わされた時のことである。一将校が痛憤した。こんな軍司令官に指揮されていては、いくさに勝てない。いっそ牟田口を殺して、自分も自決する。 将校は、手榴弾を持って、軍司令官の幕舎に飛び込もうとした》 牟田口暗殺未遂の話は、これだけではない。インパール作戦が無残な敗北に終り、悲惨な状況となったなかで、牟田口の暴愚を怒って暗殺を計画した話は幾つかある。それらは確証を欠くので、真実を見きわめがたい。しかし、逸見副官の手記にあることは事実といえよう。手記は、次のように結んでいる。 《このような将校さえあったのであるが、本人も帰還しておられるし、十分後悔もしておられると思うので、本文には記さなかった》 第二次世界大戦中の屈指の惨戦、インパール作戦は、このような軍司令官によって強行された』、部下による「暗殺計画」が相次いだのも、頷ける。
・『「いよいよインドの土を踏むのですな」  大隊長の瀬古三郎大尉はうなずいて、 トラックは暗夜の山道を走りつづけた。かどをまがると、斜め下のやみのなかを、明るい光の輪が点々とつづいてくるのが見えた。後続車の前照灯の光である。運転台の小山幸一中尉は、その数をかぞえた。 「みんな、ついてきています」「この調子なら、朝までに印緬(インド=ビルマ)国境を越えられるな」「いよいよインドの土を踏むのですな」大隊副官の小山中尉が答えた。 前照灯の光のなかを白い霧が流れた。それが次第に濃くなって行った。かなり高い山脈であるらしく、寒冷の気が肌にしみた。小山副官は運転兵に注意した』、「インパール作戦」については、これまでも多くの本や雑誌を読んできたが、「牟田口軍司令官」の無能さ、それを放置した大本営のお粗末さを再認識した。なお、この続き2回の紹介は省略するが、リンク先の上の#2、#3をクリックすれば読める。

次に、8月24日付け東洋経済オンラインが掲載した 立命館大学グローバル教養学部教授の前川 一郎氏など4名の座談会「「日本の近現代史」が歪められるのはなぜか 歴史修正主義に対抗する「国民の物語」が必要」を紹介しよう。なお、各氏の略歴は文中にあるが、著書の紹介は省略した。
https://toyokeizai.net/articles/-/369359
・『慰安婦問題や徴用工問題など、日韓間で幾度も繰り返される歴史認識問題。さらには自国に都合よく歴史を捉える歴史修正主義も蔓延している。 これらの歴史問題が炎上する背景には何があるのか。また、アカデミズム、メディア、そして社会は、歴史問題にどう向き合えばよいのか。このたび『教養としての歴史問題』を上梓した、前川一郎、倉橋耕平、呉座勇一、辻田真佐憲の4人の気鋭の研究者による同書の座談会部分を抜粋してお届けする。 第2回は、近現代の歴史を学校で、また学校外でどう教え、伝えるべきかについて議論する』、興味深そうだ。
・『植民地主義を学校でどう教えるのか  前川:ここからは、もう少し未来の話をしてみたいと思います。歴史学の未来や、歴史教育とどう向き合うかといったことや、学知と社会はどういう関係を構築していけるのかといった問題です。 倉橋:いま台湾人研究者のレオ・チンさんが書いた『Anti-Japan』という、東アジア諸国の「反日」についての著作を翻訳しているのですが、そのなかで、チンさんは日本の「SEALDs」と台湾の「ひまわり運動」、香港の「雨傘運動」に参加し活動する学生や若者たちの意識を比較し、台湾や香港の学生に比べ、日本の若者は戦後民主主義のあり方や、植民地問題に関する歴史について非常に無頓着であると指摘しています。 ぼくも大学で学生と接していて、学生たちに植民地主義についての認識がないことや、そもそも日本の近代史について十分に教育を受けていないことを感じています。例えば、「慰安婦」問題について、多くの学生は日韓のナショナリズム問題としか捉えていません。 そこで、前川さんに伺いたいのですが、植民地主義に関して、旧宗主国や旧植民地の国々では、どのような歴史教育を行っているのでしょうか。 前川:一般論として簡潔にお答えします。イギリスに関しては『教養としての歴史問題』で触れたとおりで、歴史教科書は植民地主義の功罪を“客観的”“中立的”に書くというスタンスです。フランスも大差ないというのが私の印象です。 一方、敗戦国のドイツは日本と似ていて、そもそも戦争や植民地主義の歴史について、とくに前者について自由に語ることが許されなかったためなのか、非常にフラットな印象の教科書になっています。帝国主義の歴史についての記述は簡略で、日本で教えているような事実関係を淡々と記しています。 スペインは、ちょっとユニークです。ご存じのとおり、スペインは近代植民地主義のトップランナーだったわけですが、南米大陸の文化の変容に関する記述が中心で、19世紀的な植民地主義はメインテーマではありません。 前川:一方、アフリカ諸国やインドなどの旧植民地側ですが、興味深いのは記述に二面性があることです。植民地主義を「文明化の使命」だと言い張る旧宗主国の主張に対し、搾取の歴史だと明確に批判する一方で、独立の過程で、民主主義や人権などの欧米の「近代的」で「普遍的」な価値観を積極的に取り入れ、支配者側の論理を逆手にとって独立を果たしたのだと、そのような教育をしています。 ヨーロッパ出自の文明概念の強靭な生命力をここに見出すことができます。だからこそ、「文明化の使命」といったテーマを単なる言説の問題として切り捨ててしまうわけにはいかないのですが』、「学生たちに植民地主義についての認識がないことや、そもそも日本の近代史について十分に教育を受けていないことを感じています」、同感だ。「敗戦国のドイツは日本と似ていて、そもそも戦争や植民地主義の歴史について、とくに前者について自由に語ることが許されなかったためなのか、非常にフラットな印象の教科書になっています。帝国主義の歴史についての記述は簡略で、日本で教えているような事実関係を淡々と記しています」、「敗戦国」の宿命なのだろうか。
・『中学や高校における歴史教育のあり方  呉座:植民地主義の歴史を、教育の場でどのように教えるのかは非常に難しい課題だと思います。 (呉座勇一(ござ ゆういち)/国際日本文化研究センター助教。専門は日本中世史・・・)) 前川さんのご指摘どおり、学知として植民地主義を忘却するような世界史を批判することは当然で、国際政治や歴史研究の分野で植民地主義の清算を主張することは非常に重要だと思います。ですが、大学ならともかく、中学校や高校で植民地主義を否定する歴史教育が具体的にどうすれば実現できるのか、理想としてはすばらしくても、現実的に可能なのかという素朴な疑問があります。 日本の歴史教育では、日本は満州事変を契機に国際社会から孤立し、間違った道を進み始めたと教えていますが、反対に言うと、それ以前の日本の近代化の歩みはおおむね肯定的に語られています。けれど、植民地主義を批判する、植民地主義を清算するという立場から見れば、例えば、ワシントン体制に代表される1920年代の国際協調も、帝国主義国家同士の談合にすぎないという話になってしまいます。 それは歴史の一面の真理ではありますが、中学、高校でどのように教えるのか。満洲事変以降の侵略路線は論外ですが、それ以前の欧米との協調路線も間違っていたと教えるなら、では日本はどうすべきだったのかという子どもたちの疑問にどう答えるのかという問題があります。 網野さんは「明治の選択は『最悪』」と評し、明治維新以降の日本の近代化を全否定しています。 (倉橋耕平(くらはし こうへい)/立命館大学ほか非常勤講師。専門は社会学・・・) 近代化、富国強兵の結果、アジアを侵略してしまったのだから、間違っていたと考えるわけです。当然ながら、近代化しなければ欧米列強の植民地にされていたはずだという反論が寄せられましたが、網野さんは、「同じ運命をたどっているアジアの人々を抑圧して、自分だけ成り上がる」ぐらいなら植民地になったほうがよかった、と発言しています。 いったんは植民地になったとしても、アジアの諸民族と連帯して植民地独立戦争を戦う、「負けて勝つほうの道」こそが日本の進むべき道だったと力説されています。いわば、本当の意味での「大東亜共栄圏」を作るという選択肢があったのではないか、という議論ですね。極論のようにも思いますが、植民地主義を清算する歴史を教えようとしたら、究極的には網野さんぐらいの覚悟が必要になるのではないでしょうか。その辺りをどうお考えですか。 前川:私は網野さんほど根源的にものを考えているわけではないと思うので、「植民地になればよかった」とまでにわかに言い切ることができるかどうか……。ですが、明治以降の近代化の方向性は間違っていたということは、おそらくそのとおりだろうと思います。近代化それ自体というよりは、その方向性です。 つまり、明治以降、日本は近代化なり国際化なりの道をひたすらに歩み続けたわけですが、その果実はどう回収されたのかという問題だと思っています。それは明らかに軍国化に費やされたのではなかったでしょうか。しかも、それは帝国主義世界体制に参画するためだった。世界史の観点から言えば、それは否定しえないのではないですか。そしてその延長に戦争があったわけです。 そうした日本の姿への批判として捉えるなら、なるほど「植民地になればよかった」という表現になるのかもしれません。要するに、戦争を反省するなら、それに先立つ植民地主義の世界史と関連づけて、総体的な観点から日本の近代化に向き合わなければならないということです。そこで、欧米の近代化だって軍国化とセットじゃないかと言って済ましてはいけない。そこは批判しないといけない、というのが私の基本的な考えです。 一方、呉座さんご指摘のとおり、それを教育の場でどのように教えるのかは、非常に難しい問題だと思います。ただし、くどいようですが、明治維新であれ、第1次世界大戦後の国際協調の時代であれ、その当時の国際社会の姿というのは、きっちりと理解しておかなければならない。そこには、植民地主義を前提とした世界があったこと、それを当時の国際社会は当然のことと受け止め、欧米諸国や日本がアジアやアフリカの(公式であれ非公式であれ)植民地を当たり前のように搾取していたことは、きちんと捉え直さなくてはならないと思います。 ですから、教育の現場でも、「植民地になればよかった」と言うかどうかは別にしても、「植民地主義は間違っていた」、「そこに善などあろうはずがない」といったことは、はっきりと言わなければなりません。そういうことを率直に言えばいい。 こうすると、「現代の価値観で過去を論じるな」と、例の“歴史の不遡及”論が必ず出てくるのですが、私から言わせれば、そんなことばかりしていたら、歴史は好事家のたしなみに成り下がりますよ。もちろん、トリビア(注)それ自体は悪くはないのですが、その一方で、現代と過去のあいだには、評し評される、一種の緊張関係があるのだし、それを棚上げにしてはいけないと考えています。 もちろん、具体論となるとハードルはかなり高いことは理解しています。そもそも、文科省がそんなやり方を手放しで認めるはずはないでしょう。が、学知が歴史の事実を実証し、それを教育に反映する工夫はやはり必要なのだと思います。そこは揺らぎません。答えになっているかわかりませんが……』、「日本の歴史教育では、日本は満州事変を契機に国際社会から孤立し、間違った道を進み始めたと教えていますが、反対に言うと、それ以前の日本の近代化の歩みはおおむね肯定的に語られています」、「戦争を反省するなら、それに先立つ植民地主義の世界史と関連づけて、総体的な観点から日本の近代化に向き合わなければならない」、「それを教育の場でどのように教えるのかは、非常に難しい問題」、その通りだ。(注)トリビア:くだらないこと、瑣末なこと、雑学的な事柄や知識、豆知識(Wikipedia)。
・『歴史教育は「国民史の物語」  呉座:いや、参考になりました。やはり、学知と教育、歴史学と歴史教育の違いという問題に突き当たらざるをえないのだと思いました。前川さんは、歴史教育についてどのようなお考えですか。つまり、歴史教育とは何か、という質問です。 (前川一郎(まえかわ いちろう)/立命館大学グローバル教養学部教授。専門はイギリス帝国史・植民地主義史・・・) 前川:大きな質問ですね。でも、あえてひとことで言うならば、歴史学と歴史教育の大きな違いは、歴史学がファクトの追求であるのに対し、歴史教育は「国民の物語」ということなのだろうと思います。 歴史を学校教育の場で語るときには、どうしても国の問題と分けて考えることはできません。日本はどのような国であったのかということを教えるのが国民史です。もちろん、その歴史の事実の部分を教育の場に提供する役割を背負っているのは歴史学です。 だからこそ、ここに呉座さんが質問された問題の所在があるわけですよね。植民地主義のファクトをどう「国民の物語」に接続するかという。 実際、そのように葛藤している現場の先生たちはたくさんおられると思うんです。ですが、現実的にはなかなか難しい。そうこうしているあいだに、歴史修正主義に付け入れられてしまったわけで、いつの間にか歴史修正主義版国民史が社会に伝播してしまった……。 呉座:そこが問題の核心で、歴史学と歴史教育は密接に関わるけれども、立脚点が違うわけですよね。歴史学なら過去の誤りを遠慮なく指摘できますが、歴史教育の場合は悪いところもいいところもあったという両論併記になりがちです。全否定で「国民の物語」を紡ぐことは非常に困難だからです。これは日本だけの問題ではなく、前川さんがご紹介されたイギリスなど、旧宗主国に共通する問題だと思います』、「歴史学と歴史教育の大きな違いは、歴史学がファクトの追求であるのに対し、歴史教育は「国民の物語」ということ」、「いつの間にか歴史修正主義版国民史が社会に伝播してしまった…」、「歴史修正主義版国民史が社会に伝播」、困ったことだ。
・『学校外で歴史をどう教えていくか  辻田:日本の近代史を学校でどのように教えるかは重要な問題ですが、一方で、身もふたもない話になりますけども、中学高校では時間が足りなくて、多くの場合、歴史の授業は近現代にまでたどり着いていないという現実があります。ですから、歴史教育を考えるときには、学校、アカデミズム、マーケットなどをばらばらに考えるのではなく、社会全体のなかで考えなければいけないなと思います。学校だけが、歴史教育の場ではありません。 (辻田真佐憲(つじた まさのり)/作家、近現代研究者。慶應義塾大学文学部卒業。政治と文化芸術の関係を主なテーマに、著述、調査、評論多数・・・) 一例として、NHKの朝ドラを考えてみましょう。近年の平均視聴率は20%前後だそうですから、単純に換算すると2000万人が見ていることになります。2000万人は眉唾だとしても、非常に大きな影響力があることは間違いありません。 その朝ドラには、よく戦時下の話が出てくるのですが、これが決まって空襲の場面なんですね。主人公が逃げ惑って、苦しい思いをしたりする。そして戦争が終わり、「ああ、よかった」と。それはいいのですが、こういうものを何度も見るうちに、われわれは知らず知らずに「歴史教育」を受けて、戦争への理解を形成してしまっているのではないかと思うのです。本当は日本が始めた戦争なのに、まるで天災のように捉えてしまう、というように。 歴史教育を考えるときには、どうしても、大学や学校のイメージが先行しがちです。最近、歴史系の入門書がやたら「講義」と名乗っているのも、その延長線な気がします。とはいえ、現実には、映画やテレビがもっと大きな影響力を持っていたりする。これはもちろん、大衆メディアのほうが偉いということではありません。ドラマ制作にはタネ本があって、それはもとをたどれば、アカデミズムの研究成果だったりするわけです。それが、作家によって物語にされ、最終的にテレビドラマとなる。ですから、アカデミズムも重要ですし、作家も重要です。 反対に、大学予算が削減されたり、作家が右翼だらけになれば、てきめんに悪い影響が出てくる。歴史教育も、そういう全体像のなかで捉えることが重要だと思います。 呉座:おっしゃるとおりだと思います。「つくる会」の歴史教科書を採択する学校はほとんどありませんから、学校教育の観点では実は取るに足らない問題です。しかし学校教育とは別のところで、歴史修正主義の影響力が高まってしまった。 ですから、歴史修正主義の潮流に学校教育の改革で対処するという案はピント外れではないかという懸念を持っています。学校教育で「国民史」を相対化するという理想はすばらしいですが、その反動として、学校外で愛国心をあおる「国民の物語」が広がる可能性も想定すべきではないでしょうか』、「朝ドラには、よく戦時下の話が出てくるのですが、これが決まって空襲の場面・・・われわれは知らず知らずに「歴史教育」を受けて、戦争への理解を形成・・・本当は日本が始めた戦争なのに、まるで天災のように捉えてしまう」、確かにその通りだ。ただ、「歴史修正主義」とのつながりがよく分からない。後編をみてみよう。

第三に、上記の続き、8月31日付け東洋経済オンライン「座談会:大衆に消費される「戦争の歴史」が生む問題点 被害者視線ばかりを強調するメディアの危うさ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/369361
・『強調されるのは「被害者視線の歴史観」  前川:前回の終わりに、学校外で歴史をどう伝えていくかという問題が提起されました。そうすると、また商業主義や大衆文化の話に戻っていくということになりそうですね。つまり、商業主義、大衆社会に浸透する歴史という素材の問題ですね。 私が最近なんだか危ういなという感覚を持ったのは、『この世界の片隅に』(注)の大ヒットなんです。コミックス、映画、ドラマ、アニメと、まさに歴史総合エンタメなわけですが、作品としてはいいし、普段リベラルと目されている人たちも賞賛していました。ですので、こんなことを言うのは気が引けるのですが、それでも歴史の物語としてはやはり危ういのです。 と言うのも、あの話は徹底的に被害者の視点で描かれていて、加害のストーリーは丸ごとごっそり削除されているからです。しかも、国の関与をうかがわせるところもある。一昨年には、東京千代田区にある「昭和館」で、これは国立博物館なわけですが、特別企画展が大々的に開かれましたし、TBSでドラマが作られたとき、後援の1つは厚労省でした。 要するに、国の後押しを受けて、辻田さんが示唆されているような「つらい状況を乗り超えた私たち」と同じで、戦争になっても「一生懸命頑張っていればいいことがあるよね」っていう話をしているようなものなのです。それで、戦時下の庶民のけなげな姿勢が淡々と描かれています。 いや、私も映画からアニメから何から全部見ましたが、それはもう感動しますよ。朗らかな顔つきで、じっと耐え忍んでいる姿は涙を誘うんです。感動することで被害者視線の歴史観が刷り込まれていくというパターンで、それは歴史修正主義者の大好きな手法です。 ちなみに、ご存じの方も多いと思いますが、1965年に岩波書店から『この世界の片隅で』という新書が出されています。「に」と「で」の違いだけで、内容も同じ広島の原爆をテーマにしているのですが、作品のメッセージはまったく違います。 岩波版のほうは被爆者の体験集です。しかも、在日朝鮮人が被爆者として二重の差別を受けた実態などが収録されている。これは、被害者視線を借りた、戦争と植民地支配の加害に対する告発文として読むこともできます。 前川:さらに、これまた有名な話ですけれども、高畑勲監督は亡くなる前に、『火垂るの墓』には加害者性がないから、完全な反戦映画ではないといった話をしておられました。 高畑監督は、『火垂るの墓』のあと、日本の中国侵略をテーマにした作品を作ろうとしていたのだけれども、ちょうど中国政府が民主化運動を弾圧するニュースが流れて、会社が企画をボツにしてしまったそうです。 そして結局のところ、それ以前もそれ以降も、日本で作られる戦争映画やアニメは、やはり圧倒的に被害者視線の物語ばかりになっている気がします。繰り返しますが、これでは歴史修正主義者に簡単に持っていかれてしまいます。 すみません、ちょっと話が脱線気味ですが、要するにそう考えると、辻田さんが指摘されている「良質な物語」を作っていくということは、本当に大事だと思うわけです。 ただし、これはこれで課題が山積みです。まず、そもそも「良質な物語」とはどんなものか。そして、これが最大の課題なのですが、それはどうやって作るのか』、「日本で作られる戦争映画やアニメは、やはり圧倒的に被害者視線の物語ばかりになっている気がします。繰り返しますが、これでは歴史修正主義者に簡単に持っていかれてしまいます」、『この世界の片隅に』を観てなかったので、下記のWikipediaの「あらすじ」を読むと、やはり、「被害者視線の物語」のようだ。ただ、もともと商業映画やアニメに「加害者性」を求めるのは無理なのではなかろうか。
(注)この世界の片隅に:Wikipediaの「あらすじ」を参照
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%93%E3%81%AE%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%AE%E7%89%87%E9%9A%85%E3%81%AB
・『学知にできるのはファクトの提供  倉橋:非常に難しい問題です。朝ドラや『この世界の片隅に』の話が出ましたが、その反対の勇ましいパターンが百田さんの『永遠のゼロ』ですね。これに対抗して、どのように「良質な物語」を提供していけるかについて、ぼくには今のところ回答はありません。辻田さんがおっしゃるように、学知はファクトを提供することはできますが、言い換えると、できることはそこまでだ、ということになるからです。 これに対して、私自身の考えは、ある種メディア論的な見方になりますが、そうなると、重要なのは作り手の意識で、そこが変わらないと、辻田さんが提起されている「健全な中間」という場所にも至らないのではないかと思っています。というのも、歴史修正主義は消費者評価が重要だったと考えているので、同じ土俵で勝負しても仕方がないと思うからです。 なので、別の仕方で消費者評価の視点を上げたり、育てたりする必要があると思います。歴史修正主義者は、差別的で排外的です。人権意識が非常に低い。まずは、ここを理解したほうがいいと思います。新型コロナウイルスの自粛生活でNetflixなどをよく見ているのですが、海外作品はいわゆる「ポリティカル・コレクトネス」がしっかりかかっていても、エンターテインメントとしてしっかりウケています。 つまり、人権意識が非常に高いのに良質なエンターテインメントです。ディズニーもそうだし、アカデミー賞受賞作も脚本がすばらしい。『パラサイト』だってコメディなのに人権意識が高い。こういった歴史修正主義者に欠落している部分を見極めて、あるいは歴史修正主義を生んだ土壌が何なのかを考えないと、うまく「良質な物語」は提供できないのではないかと思います。 辻田:私の場合、実践で示していくしかないのかなと思います。ですので、自分の話になってしまうのですが、以前、アガリスクエンターテイメントという劇団が、「発表せよ!大本営!」を上演しました。 コメディータッチながら、メディアが権力によって統制される恐ろしさをたくみに描いた演劇でしたが、制作にあたっては拙著の『大本営発表』を参照されたそうです。こういう試みがテレビや映画にも広がっていく。それが1つの理想です。 あるいは、先ほど、朝ドラの話をしましたが、現在、放送されている『エール』の主人公のモデルは、「六甲おろし」や「長崎の鐘」などで知られる作曲家の古関裕而です。 彼は、戦時中に多くの軍歌を手掛けていますから、単なる被害者史観では描けないはずです。今後、どういう展開になるのかわかりませんが、音楽史研究もやっている私としては、その関係の資料を発掘して発表することで、側面支援することもできるかもしれません。 それは、加害者史観で放送せよということではありません。従前の単純な「被害/加害」の二項対立ではなく、古関が生活のために軍歌を作った姿は、出版不況で愛国ビジネスに加担していく現代の出版界の姿とも重なり、リアリティーもあるのではないかという第三の道を提案するということです。 もちろん、力不足は重々承知していますが、私だけではなく、いろいろな人がこういう試みをやればよいと思います。そうするなかで、倉橋さんがあげられたような、「人権意識が非常に高いのに良質なエンターテインメント」も徐々に出てくるのではないでしょうか』、そうした努力は必要であるとしても、大勢を変えるには力不足なのではなかろうか。
・『作家や評論家が描く通史の評価  呉座:辻田さんがおっしゃっている「物語」は、小説やドラマや映画といった狭義の物語だけではなく、作家や評論家が執筆した通史や史論も含みます。そうした「物語」にはさまざまな不備がありますが、歴史学はそれを許容するのか否かが問われていると思います。私は、歴史学の成果を踏まえたものであれば、ある程度は許容すべきで、そうしないと社会に刺さらないと考えています。やはり作家と学者では発信力が違いますから。 もちろん、この戦略には危うさも伴います。歴史学者の学術的な問題意識と、作家や評論家、さらには一般の歴史ファンの興味関心は往々にしてズレるからです。政治家やビジネスマン向けに話す機会が増えてわかったのですが、彼らの多くは歴史を学ぶことで人生の指針を得ようとしています。 この傾向は山岡荘八の歴史小説『徳川家康』が経営者のバイブルになってから顕著になったと思いますが、その淵源は江戸時代までさかのぼります。勇将・智将の逸話集や言行録が多数編まれて、人生訓が語られました。この種の逸話・名言は実のところ真偽不明なものが多いのですが、極端に言えばうそでもいいのです。 実際、明治時代になって実証史学がドイツから導入されて、美談・名言の史実性を疑問視する研究が登場すると、「そんなことを指摘して何になるのだ」という反発が出ました。たとえ作り話だったとしても、道徳教育に役立つとか、国民に勇気と誇りを与えることができるとか、そういう“実用的な”効果があるなら目くじらを立てる必要ないじゃないか、というわけです。 呉座:平泉澄らの「皇国史観」や、記紀神話にこだわる「つくる会」、『日本国紀』などは明白にこの立場ですが、歴史修正主義とは直接関わりのない作家や評論家であっても、史実性よりも実用性を優先する人は散見されます。だから、歴史学者が当事者となって歴史観を示すことがより望ましい。ただし、学界関係者しか読まない学術誌で発言しても、それは仲間内で盛り上がっているだけです。 歴史の諸学会がしばしば発表する「建国記念の日に反対する」といった政治的声明も「私たちは戦っている」というアリバイ作りに堕してはいないでしょうか。少なくとも論壇誌くらいには進出して発言しないと、一般の人には届かないと思いますが、それをやる歴史学者はほとんどいません。その状況に私は根本的な疑問を抱いています』、「少なくとも論壇誌くらいには進出して発言しないと、一般の人には届かないと思いますが、それをやる歴史学者はほとんどいません」、「歴史学者」の怠慢だ。
・『学知と社会──外に出ることの意味  辻田:今、呉座さんから、学者も少なくとも論壇誌ぐらいには出ていくべきだという話がありました。その点、みなさんは、論壇というか社会とどのように関わるべきだとお考えでしょうか。歴史学の分野では、学会に籠もる人がいる一方で、逆に、積極的に非アカデミシャンを批判する人もいます。そういう状況をどのように評価されているのでしょう。 あるいは、倉橋さんの社会学の分野は論壇に近く、なかにはほとんど評論家になっている人も見受けられますが、倉橋さんは、学知と社会の中間のようなところで仕事をするとき、ご自身をどう位置づけられているのでしょうか。 倉橋:社会学にはほぼ社会とくっついているような一面があるので、ぼくの場合も基本的にはアカデミアの外に現れる「知」には関心があります。そもそも自分の研究関心が、歴史修正主義というものだけではなく、メディアによってどのように「知」や「規範」が構築されるか、なので。ですから、むしろ自分の発言がどのように流通するのかなどを経験的実験的に観察できるところがありますかね。 前川:私は、まだ院生やポスドクだった駆け出しのころ、歴史学研究会(歴研)に育てられたようなもので、歴研の先生や仲間には、ずっと感謝と尊敬の念を持ち続けています。“社会に関わる歴史学”というのも、「歴研大学」で教わりました。 ですが、そのなんて言うか、歴研で活動していたころ、例えば「科学運動」というような内輪にしか通じないような用語や議論に出くわすたびに、戸惑うことがありました。歴研にとって「科学運動」は、戦時中の体制迎合的な歴史学を総括する重要な概念であり活動・運動方針です。 これを内輪でやる分にはいいですが、いざ“社会に関わる”というときに、もしかしたら自分たちしか共感していない考えの“正しさ”を「わからんお前が悪い」と言わんばかりに“蒙を啓く”やり方に、「上から目線」で畳みかける姿勢にですね、ちょっとついていけないというか、どこかモノローグな感じを否めず、違和感を抱いたものです。 それではダイアローグにならんだろうと。若気の至りかもしれませんが、ずいぶん前に、そういうことを会員向けの会誌に書いたこともあるんですよ。何の反響も得られませんでしたが……。 何度も言っていますが、立場が違ったり、実証史学から見てデタラメであったりしても、歴史修正主義者らが提起してきた問題それ自体は意味があって、それには真面目に向き合うべきだったと思うのです。 ですからこのような本を作っているわけですが、歴史学界全体を考えると、ここらへんをどう受け止めてきたのか。ファクトチェックに口角泡を飛ばすことはあっても、もちろんそれ自体は大事なんですけれども、それで歴史修正主義が問いかけた大きな(国民の)「物語」に耳を傾け、現実社会に真正面から向き合ってきたと言えるのか。 控えめに言っても、歴史学にとって事実と物語というのは、昔からある大きなテーマだったはずなんです。けれども、歴研に連なる一部の人たちは別にして、歴史学界全体に漂い続ける、歴史修正主義に対するこの超然とした態度はいったいどこから来るのでしょうか。 いずれにしても、その意味で、学知の外に出てなんぼのものだというのは、そのとおりだと思っています。私自身がそんな力もなく、これはもう反省も込めての発言なのですが。 呉座:私は、辻田さんと同意見で、学界は民間の研究者や論壇の人などと連携していく必要があると考えています。そうしないと、アカデミズムの閉鎖性や権威主義などへの批判に対して、反論のしようもありません。 歴史をテーマに数多くの著書を書かれている出口治明さんのお仕事は、確かに専門家や歴史オタクのような人から見れば、多少おかしなところもありますが、歴史学の最新成果に学ぶという姿勢を示しています。 歴史学者がやるべきことをやらないから、出口さんが代わりにやってくれているわけで、それを学知の側が重箱の隅をつついて潰しても、最初から聞く耳を持たないトンデモ論者が余計跋扈するだけです。ミスがあるなら教えてあげて、一緒に「良質な物語」を作っていけばいいのです』、「学界は民間の研究者や論壇の人などと連携していく必要がある」、その通りだ。
・『学者は積極的に社会に関わるべき  倉橋:先に述べたように僕自身は、大衆文化や言論の中で生産されていく「知」には関心があります。その中で僕が重視していることの1つは、学知の社会と一般社会の乖離をチェックすることです。 例えば、学知の世界で厳密に定義されている用語が、一般社会では違った意味で使われていることはよくありますが、学知の側の人間はそれに無頓着で、伝わらないばかりか、誤解されてしまう言葉を使って話したり書いたりしています。 第1回で議論したイデオロギーに関しても、左や右といった言葉に込められた意味は、学知と一般社会ではもはやかなり乖離しています。ですから、それらをチェックするためには、アカデミズムと一般社会の間の中間的な場所に立つことが非常に大切だと認識しています。 メディアに現れてくる知のあり方みたいなことに興味を持つと、そこに学知と一般の持っている考えのズレみたいなものが見えてきます。それは、是非の問題ではなく、「ズレ」があることは、社会が動いたことの証明だと思っています。 辻田さんの問いかけに戻ると、だから、学知と社会の中間のところで積極的に関わっていくことは非常に大切だと考えています。 前川:さて、話は尽きませんが、そろそろ時間もなくなってきました。ここまで、歴史学や歴史教育の問題を中心に話してきましたが、先ほどの倉橋さんのご発言を始め、みなさんがご指摘のように、歴史修正主義の「主戦場」となった社会のほうの問題は極めて重要で、もっといろいろと考えなくてはいけないことがたくさんあるような気がしています。 また、本日は突っ込んで論じはしませんでしたが、心理的な側面も重要な論点です。ご存じのとおり、ホロコースト否認裁判の実話に基づく映画『否定と肯定』(2016年)の原題は“Denial”ですが、これは、受け入れがたい現実に直面したとき、事実とわかっていながら認められない心理を意味します。 いずれにしても、このように専門も立場も違う者たちが一堂に会して、「座談会文化」というのでしょうか、ともかく向き合って話し合ってみるというのは、これは大事だなと改めて思いました。 今日の座談会自体も、実はリモート座談会という、私自身も初めての経験であったわけですが、この新しい社会状況、もしかしたら、「歴史コミュニケーション」の未来を考える絶好のチャンスなのかもしれません。今日は長時間、本当にありがとうございました』、「学者は積極的に社会に関わるべき」、との考え方が出てきたのは、一歩前進ではあるが、「歴史修正主義」は根深いだけに、道は遠そうだ。
タグ:この世界の片隅に 東洋経済オンライン 歴史問題 文春オンライン (13)(「インパール作戦」を強行した牟田口廉也中将 毎夜料亭で酒を飲み、芸者を自分の部屋に、「日本の近現代史」が歪められるのはなぜか 歴史修正主義に対抗する「国民の物語」が必要、大衆に消費される「戦争の歴史」が生む問題点 被害者視線ばかりを強調するメディアの危うさ) 高木 俊朗 「「インパール作戦」を強行した牟田口廉也中将 毎夜料亭で酒を飲み、芸者を自分の部屋に 『全滅・憤死 インパール3』より #1」 早々に過半の兵力を失う状況下で流れた噂 第15軍司令官・牟田口廉也中将 シンガポール島を攻略した勇将 今度は、ビルマからインドへ、国境山脈を越えて急進し、3週間で英軍の基地インパールを攻略するという作戦 3週間の予定で、食糧を3週間分しか持って行かないから、まず食糧が不足してきた。また、急進撃をするため軽装備にしたので、武器、弾薬がたりなくなった 作戦開始後、3週間を過ぎても、牟田口中将は軍司令部の所在地メイミョウから動かない ビルマ第一の避暑地であるからだ。そこには日本風の料理屋があり、内地からきた芸者、仲居が いる 軍司令官、各参謀、幹部将校は、それぞれに専属の芸者をもっている。彼らは毎夜、料亭で酒を飲み、芸者を自分の部屋につれて行く 催促に催促を重ねて ビルマ方面軍司令部でも、牟田口軍司令官に前線に出るように督促 督促は再三に及んだ。そして、ついにメイミョウを出ることになったが、急進急追しなかった。そればかりでない、シャン高原をおりて、イラワジ河を渡ると、中間基地のシュウェボでとまってしまった 軍司令部と前後して芸者、仲居がメイミョウから出てきた インダンジーに戦闘司令所を置いた インパール作戦を開始した3月8日から数えて44日目 対立していた師団長を更迭 作戦中に「師団長」を「更迭」 いっそ牟田口を殺して、自分も自決する 部下による「暗殺計画」が相次いだ いよいよインドの土を踏むのですな 前川 一郎 座談会「「日本の近現代史」が歪められるのはなぜか 歴史修正主義に対抗する「国民の物語」が必要」 前川一郎、倉橋耕平、呉座勇一、辻田真佐憲の4人の気鋭の研究者による同書の座談会 『教養としての歴史問題』 植民地主義を学校でどう教えるのか 学生たちに植民地主義についての認識がないことや、そもそも日本の近代史について十分に教育を受けていないことを感じています 「敗戦国のドイツは日本と似ていて、そもそも戦争や植民地主義の歴史について、とくに前者について自由に語ることが許されなかったためなのか、非常にフラットな印象の教科書になっています。帝国主義の歴史についての記述は簡略で、日本で教えているような事実関係を淡々と記しています」 中学や高校における歴史教育のあり方 それを教育の場でどのように教えるのかは、非常に難しい問題 歴史教育は「国民史の物語」 歴史学と歴史教育の大きな違いは、歴史学がファクトの追求であるのに対し、歴史教育は「国民の物語」ということ いつの間にか歴史修正主義版国民史が社会に伝播してしまった… 学校外で歴史をどう教えていくか ドラには、よく戦時下の話が出てくるのですが、これが決まって空襲の場面 われわれは知らず知らずに「歴史教育」を受けて、戦争への理解を形成 本当は日本が始めた戦争なのに、まるで天災のように捉えてしまう 「座談会:大衆に消費される「戦争の歴史」が生む問題点 被害者視線ばかりを強調するメディアの危うさ」 強調されるのは「被害者視線の歴史観」 日本で作られる戦争映画やアニメは、やはり圧倒的に被害者視線の物語ばかりになっている気がします。繰り返しますが、これでは歴史修正主義者に簡単に持っていかれてしまいます もともと商業映画やアニメに「加害者性」を求めるのは無理なのではなかろうか 学知にできるのはファクトの提供 作家や評論家が描く通史の評価 少なくとも論壇誌くらいには進出して発言しないと、一般の人には届かないと思いますが、それをやる歴史学者はほとんどいません 学知と社会──外に出ることの意味 学界は民間の研究者や論壇の人などと連携していく必要がある 学者は積極的に社会に関わるべき
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今日は更新を休むので、明日にご期待を!

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女性活躍(その18)(「ショーケースの女性政治家」量産した安倍政権の不作為、安倍政権下で「女性活躍」は進んだ?女性記者らが酷評する実情とは、女性に右も左もない! 安倍前首相の「秘蔵っ子」稲田朋美の大変身「女性のいない民主主義」と自民党批判) [社会]

女性活躍については、7月14日に取上げた。今日は、(その18)(「ショーケースの女性政治家」量産した安倍政権の不作為、安倍政権下で「女性活躍」は進んだ?女性記者らが酷評する実情とは、女性に右も左もない! 安倍前首相の「秘蔵っ子」稲田朋美の大変身「女性のいない民主主義」と自民党批判)である。

先ずは、9月8日付け日経ビジネスオンラインが掲載した健康社会学者(Ph.D.)の河合 薫氏による「「ショーケースの女性政治家」量産した安倍政権の不作為」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00090/?P=1
・『エプロン姿の妻。2人ともマスクをして、とても仲が良さそうな空気が漂っている。 「夜のテレビ出演の合間に、地元から上京してきてくれた妻が食事を作ってくれました。ありがたいです。」――。このコメントとともに写真を投稿したのは、自民党総裁選に立候補を表明した岸田文雄政調会長だ。 「政治家=料亭」というイメージだが、あえて「家庭の一こま」を投稿したのは「庶民派」をアピールしたかったのだろう、……と個人的には推測している』、いまどき「エプロン姿」とは作為的な感じもする。
・『政権構想発表会で「事情説明」  が、岸田氏の意に反して、投稿はプチ炎上した。 投稿直後からコメント欄には、「まるで召使」「お手伝いさんかと思った」「対等な関係とは思えない」「女性観古過ぎ」「これで好感度上がると思っているのか?」「なぜ、座らせない?」「立ってるってどういうこと?」などなど否定的な意見が殺到。 「夫婦円満いいですね」「何でもケチつけ過ぎ」といった意見も交じっていたけれど、一部メディアがこの“プチ炎上”を取り上げ、「日本のリーダーを目指す政治家としてあまりに無自覚過ぎる」と一刀両断した。 と、今度はその記事に対し、「その通り!」「どこが悪いんじゃ!」と賛否両論入り乱れ、9月3日に行われた岸田氏の「岸田ビジョン(政権構想)」の発表会で、岸田氏が記者の質問に「事情説明」する事態に発展したのである。 ……ふむ。な、なんだろう。コレ。 もっとも、どちらの言い分もわかる。 日本のジェンダー格差が世界最低レベルであることを鑑みれば、「どこぞのおじさんの投稿じゃないんだからさ~」と突っ込みたくなるかもしれないし、何でもかんでも批判することが仕事になっている人があふれるご時世なので「批判されてナンボ」と捉えることもできるだろう。 ただ、私はこの写真を見て、別に不愉快にはならなかった。 確かに「政治家としてどうよ?」と問われれば、「脇が甘いなぁ」と答えるかもしれないけど、そもそも問題は“ソコ”なのだろうか?』、何を「問題」にするのだろうか。
・『「女性活躍」の顛末(てんまつ)語らぬ政治家  多忙な夫のために妻が料理を作り、その横で妻が立って見守るときがあっても別にいいだろう。 多忙な妻のために夫が料理を作り、その横で夫が立って見守るときがあってもいい。 一緒にデパートで買った中食を囲んで食べたり、時には外食をしたり、はたまた妻(夫)の手料理を食べて2人でのんびりと過ごしたって一向に構わない。 だいたい「妻がエプロン着けて立つ=対等じゃない」というなら、『わたナギ(私の家政夫ナギサさん)』はどうなってしまうのか。 いずれにせよ、「妻が立っているとかいないとか」はどうでもいいことで、問題は、なぜ、あれだけ「それ、女性活躍だ!」「ほれ、30%だ!」と、安倍政権は2012年12月の発足以来、女性、女性、女性、と言い続けてきたのに、その顛末について政治家たちが一切語ろうとしないことだ。岸田氏にはそれに答える絶好のチャンスがあったのに、実にもったいない。記者に突っ込まれた時に、ポスト安倍を狙う“政治家さんらしく”「女性活躍」問題に言及して欲しかった。 私の記憶に間違いがなければ、女性活躍はアベノミクスの第3の矢「成長戦略」で最も重視されていたはずだ。 にもかかわらず、「アベノミクスは経済を復活させた!」と称賛する声ばかりで、「女性」という言葉が聞かれないのは、いったいなぜ? 「社会のあらゆる分野で2020年までに、女性が指導的地位を占める割合を30%以上にする目標を確実に達成する」とした目標は、ついに達成されなかった。しかも、7月には達成を目指す時期を「2020年代の可能な限り早期に」という、全く意味のないフレーズに変更した。それは「女性活躍はね、ただのキャンペーンだもん!」と認めたのに等しい。 その一方で、「2030年代には、誰もが性別を意識することなく活躍でき、指導的地位にある人々の性別に偏りがないような社会となることを目指す」として、2030年代に指導的地位にある男女の比率が同水準にするという新たな目標を掲げる方針だというのだから、全くもってわけがわからない。 問題はそれだけではない』、「2020年まで」の「目標」を総括もなしに「2020年代の可能な限り早期に」に延期し、「2030年代」の「新たな目標を掲げる」とは、無責任もいいところだ。
・『増えたのは非正規雇用、正規は増えず  「この7年間で、新たに330万人を超える女性が就業しました!」と成果を豪語するけど、増えたのは非正規雇用ばかりで、正社員は増えていないのだ(資料)。 男女別に見た就業者数・就業率の推移(図はリンク先参照) 男女別の正規、非正規雇用者数及び正規雇用割合の推移(図はリンク先参照) 正規雇用、非正規雇用別に見た第1子(2010~2014年生まれ)出産後の女性(妻)の就業変化(図はリンク先参照) ご覧のとおり、非正規雇用が一貫して増えているのに対して、正規雇用の比率は20年前と比べて1割以上減少している。 「すべての女性を輝かせる!」と豪語してきたのに、非正規の女性は政府が散々進めてきた「育児と仕事の両立」の恩恵を受けることもできていない。 正規雇用の女性における「地位継続」の割合が62.2%であるのに対し、非正規雇用ではわずか22.5%。 育児休暇の制度があっても「わかるよね?」と退職を迫られる。権利があっても使うことができないのが「非正規」という雇用形態であることを、「アベノミクス成功!」とはしゃぐ政治家さんたちは、分かっているのだろうか。 「新型コロナウイルスがパンドラの箱を開けた」と私は繰り返してきた。実際、非正規問題はコロナ禍で深刻化している。不安定な雇用形態で働く女性たち(もちろん男性も含めて)の多くが仕事を失い、労働政策研究・研修機構の「新型コロナウイルス感染拡大の仕事や生活への影響に関する調査」(2020年8月)では、未成年の子供がいる女性会社員の3~4月の賃金は8.8%減り、男性会社員の3.9%減を大きく上回った。 さらに、NPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」の調査では、「子どもや介護が必要な親族への感染を避けるため、自発的に休職した」と3割が回答。「自分や家族に持病があり、重症化の懸念がある」「子どもが乳幼児で、感染したら世話を頼める人がいない」などの声が目立ったという(2月以降に仕事をしていた1603人が対象)。 「すべての女性」とはどの女性たちを指しているのか? こういった現実を「リーダー」に手を挙げた人たちはどう考えているのか、ビジョンを語るのもいいけど、なぜ、レビューしない?』、「なぜ、レビューしない?」、日本の政治では総括をしないことが何故か習わしになっているようだ。
・『いまだ紅一点主義の日本  「女性活躍」が失敗だったことは、政治家さんたちの半径3メートルを見ても分かる。日本の女性議員は衆議院9.9%、参議院22.9%で(19年時点)、「世界では~」「グローバルでは~」の3~4割に比べると圧倒的に少ない。 確か、2013年の国連総会で、安倍首相自身が「Society in Which All Women Shine」という言葉を連発した記憶があるけど、はて、あれは夢だったのだろうか。 2020年3月、自民党の女性議員グループが、衆議院選挙の比例代表で女性の候補者を優遇することなどを、二階俊博幹事長らに求めた。その際、二階氏は「女性議員を増やすのは重要なこと。検討する」と述べたそうだが、いったい何年「検討」を続けているのだろう。 安倍政権の7年8カ月の間、政治家たちは、「議論は進めてなくてはならない」「皆さんの声に耳を傾けなければならない」「検討しなければならない」と繰り返してきたけど、この先も「議論、傾聴、検討」だけを続けるのか? とにもかくにも日本以外の国や地域ではもはや「女性」という利用価値の高い記号を使うのをやめて、「ジェンダー視点」を主流化させているのに、日本はいまだに記号としての「女性」を多用して、紅一点主義を貫いている。 トークン(=目立つ存在。この場合は女性)が属する集団における「トークンの数」の論理を提唱したのは米国の社会学者ロザベス・モス・カンターだが、トークンの数(人数)が組織全体の30%ほどに増えて初めて(少数派の)女性たちが「サブグループ」として、(多数派の)男性から認められるようになることは、世界中の組織研究で確認されている』、「日本以外の国や地域ではもはや「女性」という利用価値の高い記号を使うのをやめて、「ジェンダー視点」を主流化させているのに、日本はいまだに記号としての「女性」を多用して、紅一点主義を貫いている」、世界の潮流から大きく遅れていることを再認識させられた。
・『男女比が6対4で分け隔てが消える  サブグループになって初めて、男性たちは「女性の視点は興味深い」などとプラスに評価する傾向が強まり、女性たちも息苦しさから解放され、勇気を出して意見が言えるようになる。35%になると多数派はただ単に「数が多い」だけのグループになり、40%になると、バランスが均衡する。 つまり、男女比が6:4の比率になって、やっと男だの女だのという分け隔てが消えて、個人の資質や能力が正当に評価されるのだ。別の言い方をすれば、女性が4割を占めれば、女性をむやみに攻撃する男性が激減する一方で、女性は「自分の本当の力」が試されることになる。 そのための「クオーター制」(女性の割合をあらかじめ定めて登用する制度)なのに、7年8カ月もの間に政治家さんたちは、クオーター制の議論さえまともにやらなかった。 その結果、テレビに映るのは「ショーケースに飾られた女性政治家」だらけになってしまったのだ。 私がこういったことを書くと、「フェミニスト」だの「女のヒステリー」だの「女で得したことの方が多いだろ」と言う人たちがいるけど、クオーター制を取らない限り、女性議員は増えない。 「組織を変えたきゃ、若者、バカ者、よそ者の視点を生かせ!」と古くから言われるのに、目立つのは「派閥の長老」ばかり。若者もいなけりゃ、よそ者=女性もいないし、「おかしいことをおかしい」と言えるバカ者もいない。 その歴然たる事実を、7年8カ月という月日が証明したのである。 ……と、1枚の写真のお話から、なんだかんだと書いてしまったけど、私の個人的見解の結論は、「男女半々内閣」にすべし。 え? そんなの無理だって? いや、それくらいの荒療治を施さない限り、変わらないと思う。 2014年の内閣改造時に、「《女性閣僚》改造の目玉 男性待機組50人『逆差別』の声も」なんていうような見出しが新聞各紙に躍ったことを思い出してほしい。 待機組の枠があるなら、そこをやめてすべて女性枠にすればいい。女性政治家の中には地道に政治活動をやってきた有能な方もいる。 権力のあるポジションを6:4にすることから始めると、本当の意味で“新しい風”が期待できると思うのだ。 もちろんそのためには、女性政治家たちにも自己鍛錬と勇気が必要不可欠だし、一般の私たちももっともっと問題意識を持つことから始める必要がある』、「男女比が6対4で分け隔てが消える」、初めて知った。「クオーター制を取らない限り、女性議員は増えない」、その通りだろう。
・『今こそナショナル・マシーナリーを  とにもかくにも「女性」連呼→女性vs男性にうんざり→拒絶→女性の権利主張→問題の本質が置き去りにされる という悪循環は止めなくてはならない。 そして、ぜひとも「ナショナル・マシーナリー」の創設も検討してほしい。 ナショナル・マシーナリーは、ジェンダー平等に関する直接の政策立案・調整機関で、形態は国によって異なるが、取り組むのはむしろ「男性問題」がメインだ。 世界中の国や地域が1970年代後半から、ナショナル・マシーナリーを設置し、男・女の二分法から脱却しジェンダー平等という立場に徹している。 例えば、カナダには内閣の中に女性の地位担当大臣と、閣議に出席して発言する権限を有する専任の女性の地位副大臣、その下に女性の地位庁(Status of Women Canada)が設置されている(1976年~)。フィリピンでは、「フィリピン女性の役割国内委員会」が設置され(1975年~)、徹底的にジェンダー問題に関するモニタリングと、政策分析、調査研究を行っている。また、韓国には、政務長官室というのがあり、これは官房長官が2人いて、その2人目が女性問題担当の専任大臣という位置づけである(1988年~)。 もちろん、「今のままでいい。あくまでも自然増で」というのなら、形だけの数値目標を掲げるのをやめ、それを明言していただきたいです。その理由もきちんと添えて。納得できる形で、ぜひ』、「ナショナル・マシーナリー」の存在も初耳だ。日本も「創設」すべきだが、菅内閣には残念ながら無理だろう。

次に、9月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した編集・ライターの小川たまか氏による「安倍政権下で「女性活躍」は進んだ?女性記者らが酷評する実情とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/248306
・『長期政権がついに終わる。安倍政権が「女性活躍」を打ち出す一方で、ジェンダーギャップ指数は下がり続け、昨年は121位。当然ながら、G7の最下位で、世界との差を見せつけられた。安倍政権がうたった「女性活躍」について、女性記者たちはどう思っているのかアンケートをした。すると、ここ数年で「世論のボトムアップ」により報道が変化してきていることが見えてきた』、「報道が変化してきている」とは好ましいことだ。
・『安倍政権の『女性活躍』 限定的な意味では評価できるかと思ったが…  7年8カ月続いた第2次安倍政権が、ついに終わる。さまざまな声が聞こえてくるが、本稿では安倍首相が号令をかけた「女性活躍」について、女性記者たちがどう評価しているのかを伝えたい。 個人的な話だが、女性差別やジェンダーについて取材をすることが多かった私は、いわゆる「女性問題」についての報道とその受け止められ方が、安倍政権時代を通じて、ここ数年で変わりつつあると感じている。 たとえば2014年頃、私は共働き夫婦の子育てについての記事を書いたことがある。小さな子どもを持つ母親が働くことについて、いまだに母親に罪悪感を与える空気があることについての問題提起だった。この記事を書いたとき、中年男性からの反発がすさまじかった。「共働き夫婦の子どもはかわいそうだ」「子どもが幼いときは母親が育てるべきだ」、あるいは「女性差別など現代にはない」といった“熱い”メッセージの数々を受け取った。 また、同時期に、取材中に経営者の男性から「今の若い女性はずっとチヤホヤされたいから働き続けたいなんて言うんだ」と言われ、開いた口がふさがらなかったこともある。待機児童に関する記事の受け止められ方もどこか冷ややかで、「一部のワガママな母親の問題」であるかのようだった。 女性活躍推進法が施行されたのは2015年9月。当時から批判は多く、労働力不足の解消、経済復興のために女性を体よく使うための方針である感は否めなかった。何よりそれを聞かされた女性たちがしらけていた。 ただ、安倍首相が「女性活躍」と口にすることで、これまで「女性が働きたいなんてワガママ」「子どものためにも女性は家へ」と言ってはばからなかった保守層の男女が渋々口を閉じる程度の効果はあったのかもしれない。嫌みを言う人が黙っていてくれると、それだけ意見を言いやすくはなる。 「女性が働き続けたいのはチヤホヤされたいから」などと女性に向かって言う人が、女性の話を聞いて意見を変えるとは思えない。偉い立場にいるおじさんが「女性活躍」と言って初めて「チッ、しょうがねえか」と時代を悟った…のではないか。 そのような意味に限って、極めて限定的ではあるが「評価」できるのではないかと考え、女性記者たちにアンケートをしてみた』、興味深そうだ。「嫌みを言う人が黙っていてくれると、それだけ意見を言いやすくはなる」、一歩前進ではある。
・『女性記者たちの評価は10点満点中、平均2.8点  前置きが長かったので、結果をさくっと発表したい。結果は散々であり、私のように甘い評価をしている人はほぼいませんでした!すみませんでした! アンケートに答えてくれたのは13人。内訳は、新聞記者が5人、ネットニュース記者が3人、フリーのジャーナリストが3人、テレビ局記者が1人、ウェブメディア編集者が1人。 まず、安倍政権の「女性活躍」の方針・施策について10点満点で何点かを聞いたところ、最低点は0点、最高点は7.5点。平均は2.8点だった。評価された点、評価されていない点を順に見ていこう』、「女性記者たちの評価は10点満点中、平均2.8点」、とはやはり評価はかなり低い。
・『<評価された点>*( )内は、安倍政権の「女性活躍」に対する点数。 「未婚のひとり親家庭にも寡婦控除を認める税制改正。女性政策をマクロ経済と直結させることで、経済界・保守系政治家でも、女性が働くことに表立って反対できない機運を作ったこと、保育園定員を増やしたこと、ジェンダー関連の海外発信に力を入れたこと(7.5点)」(フリージャーナリスト) 「保育料無償化など、政権浮揚の一手に利用された感はあるが、女性が働きやすい環境を作る一つの小さい策にはなった。実際に無償化は助かる。ただ、すでに保育料だけで100万円以上払った身としては、なぜもっと早くできなかったのかと疑問(3点)」(テレビ局記者) 「政権が女性活躍を掲げたことで、企業やさまざまな組織で指導的立場に女性が就くことにまだまだ反発が強い日本の『空気』を上回る『建前』ができて、女性の登用がされやすくなった。女性が実際登用されて成果を出した現場では、『女性には無理』という偏見がある程度払拭された。社会的にも、自分の職場でも、それを感じる。マッチョな政権がそれをやったことで、左翼男性の中にも保守的なジェンダー観の人はいるので、そのような男性の尻を叩く意味もあったと思う(3.5点)」(新聞記者) 3つ目のコメントは、私が冒頭で説明した感覚に近い。このほかにも「保守政権として女性活躍を打ち出したことは評価したいところですが(3点)」(ネットニュース記者)という声は聞かれた。しかし目立ったのは「ないよりもマシ」という意見だった。 「方針を掲げたことは評価する。ないよりはマシ(3点)」(新聞記者)「『何もやらないよりはマシ』なので2点(2点)」(ネットニュース記者) 「女性活躍という言葉さえ今までは政府の主要政策として打ち出されてこなかったので、それだけでもマシではあった。本音は、労働力不足の中で、女性をいかに都合よく使うかということではあったとしても(3点)」(新聞記者) このほか、「唯一評価してもいいかと思い、1点をつけたのは刑法改正。安倍政権だったから実現したわけでもなく、女性活躍政策の一環として位置づけられたわけでもないが、性暴力の被害に苦しみ続けた女性たちの声をある程度刑法に反映させた。もちろん暴行脅迫要件など課題は山積みだが(1点)」(フリージャーナリスト)という意見もあった。 性犯罪に関する刑法については、松島みどり議員が法務大臣に就任した際に改正を促し、2017年に110年ぶりに大幅な改正が行われた。現在は森まさこ法務大臣の下でさらなる見直しに向けての検討会が開かれている』、「マッチョな政権がそれをやったことで、左翼男性の中にも保守的なジェンダー観の人はいるので、そのような男性の尻を叩く意味もあったと思う」、面白い見方だ。 
・『評価できない点は? 「202030」は結局断念  <評価できない点> 「政策決定過程に女性の声をもっと取り入れるべきだった。幼保無償化などよりも、もっと保育園の拡充、質の向上なのになあと思えるところが多かった(3点)」(新聞記者) 「閣僚の男女比率を見てもそうですが、重要施策として位置付けられていなかったのではないかと思います(3点)」(ネットニュース記者)
「経済文脈であって人権とはほど遠かったことや、組織や議員のジェンダーバランスの内実、キラキラした面だけ見せようとした残念さ、結局『一億総活躍』など微妙にメッセージを変え『202030(社会のあらゆる分野において、2020年までに指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%程度とる目標)』を本気で実現させようとしなかった(2点)」(ネットニュース記者) 「ジェンダーギャップ指数の順位は低下し続け、世界121位と過去最低。M字カーブが緩くなったのは非正規雇用で働く女性が増えたためで、女性活躍どころか、女性を安い労働力として『活用』するという女性の『モノ化』の表れ(1点)」(フリージャーナリスト) 「女性蔑視の発言をした議員や閣僚などへの対応(0点)」(ウェブメディア編集者) 失言については、「2018年の財務省事務次官によるセクハラ問題の際の麻生財務大臣の『セクハラ罪という罪はない』発言や、萩生田文科大臣の『赤ちゃんはママがいいに決まっている』」を挙げ、「安倍内閣が『ネタ』を投下した結果、記事が読まれたという悪い面の方が多かったのではないでしょうか」(ネットニュース記者)という痛烈な指摘もあった。 「女性活躍の重点方針を読む限りでは、ぜひ実現してほしいことがたくさん書いてありますが、実際には女性の非正規が増えているし、政治分野への女性の進出は進んでいないし(主に与党)、児童扶養手当も低い水準のままだし、ジェンダーギャップ指数は下がり続けているし…という実態を見ると、高い点数はつけられません(2点)」(新聞記者) 「差別是正ではなく、平等でもなく、『活躍』。女性ががんばったら応援してあげるよ、みたいなスローガンでした。現状をまず正確に認識できないと、変革はできないと思います。そして結果はその通りでした。『202030』という小泉内閣以来の長期目標も達成できませんでした。足元の自民党の候補者の女性比率は相変わらず低い。スローガンは、掲げないよりは掲げた方が考える人が増えると思うので5点入れましたが、『活躍』ではなく、普通に生きられるようにしてほしい。『役員に1人女性』を入れても、現実はなかなか変わらない。企業の役員や管理職の女性比率が公表されたことは半歩前進でしたが、低いことがわかっただけで、改善が進まない。日本社会、いまだに息苦しい。『平等省』を設けるくらい力を入れないと、微々たる変化しか起こせないと思います(5点)」(フリージャーナリスト) 確かに「女性活躍」のスローガンは、今ここにある性別格差・これまで温存してきた女性差別から目をそらしているようにも感じる。「202030」は2020年までに女性管理職を30%に引き上げようと掲げられた目標だったが、こうして今も説明が必要なほど浸透しておらず、あっさりと断念することが発表されている』、「M字カーブが緩くなったのは非正規雇用で働く女性が増えたためで、女性活躍どころか、女性を安い労働力として『活用』するという女性の『モノ化』の表れ」、「差別是正ではなく、平等でもなく、『活躍』。女性ががんばったら応援してあげるよ、みたいなスローガンでした。現状をまず正確に認識できないと、変革はできないと思います。そして結果はその通りでした」、同感である。
・『報道を変化させたのは世論からのボトムアップ  さらに、安倍首相が「女性活躍」を打ち出した前後で、待機児童や女性の働き方についての企画が通りやすくなったなど、報道の変化があったかどうかを聞いた。 「結果的に女性やジェンダー問題への認知度や関心が底上げされて、安倍政権の女性政策を批判するという切り口も含めて、ジェンダー関係の記事が社内で通りやすくなっている気がする」(新聞記者) 「施策として打ち出されているからこそ、その検証として企画が通りやすい側面はあったとは思う」(新聞記者) はっきりと「あった」と答えた人の中でも、政府の方針というよりも、他の要因を挙げた人が目立った。 「明らかにジェンダー関連の話題を書く機会は増えています。大きな要因として、ウェブメディアが増えたことがあると思います。デジタルではPVなどが可視化されるため、女性関連の記事は読まれる、と編集部が認知して書きやすくなったことはあると思います」(フリージャーナリスト) 「確かにそうした企画は増えていると思いますが、安倍政権の方針の影響というより、『保育園落ちた日本死ね!!!』(2016年)のブログに代表されるように、ネットを中心に女性活躍の実現や女性差別の解消を求めるボトムアップがあったためと考えます」(ネットニュース記者) ボトムアップを強調する声はほかにもある。 「『女性活躍』の打ち出しというより、#MeTooなどジェンダー平等への世論の盛り上がりを受けて、女性の貧困、性暴力などの記事が掲載されやすくなりました。待機児童については以前から載せています」(新聞記者) 「待機児童問題が国会で論議されるきっかけになったのは、『保育園落ちた日本死ね!!!』のSNS発信。女性の働き方が注目されたのはMeTooや財務事務次官のセクハラ問題が起きたから。いずれも政府の女性活躍とはまったく無関係」(新聞記者)』、「デジタルではPVなどが可視化されるため、女性関連の記事は読まれる、と編集部が認知して書きやすくなったことはあると思います」、「安倍政権の方針の影響というより、『保育園落ちた日本死ね!!!』(2016年)のブログに代表されるように、ネットを中心に女性活躍の実現や女性差別の解消を求めるボトムアップがあったためと考えます」、その通りなのだろう。
・『メディアも男性社会 企画を通す「男性」は変わった?  何かにつけて鶴の一声、トップダウンが目立つ日本社会。今回も、「女性活躍」のスローガンを、上が掲げないことには動かなかったものがあるのではないか…という予想の元にアンケートを取ったが、結果的に女性記者たちから聞かれたのは「むしろボトムアップ」の声だった。 まだまだ「声を上げても無駄」のように言われることも多い上に、声を上げた人へのトーンポリシング(主張の内容ではなく話し方や態度を批判すること)など風当たりも強い。それでも現場の記者たちは、その声を聞き逃すまいとしている。 最後に、メディア自体もまだ男性社会であるという指摘について紹介したい。 「メディアで歯を食いしばって頑張る一人一人の女性の記事やその反響、SNSなどで可視化された女性の声により、少しずつ男性の上司が問題の重要性に気付かされたのだと思う。政権によって変わったのは、主に人事面。あからさまに局長や部長級に女性が登用されるようにはなったが、まだ報道部門の主要な部(政治部など)では、女性部長はいない。まだまだ“お飾り”的」(テレビ局記者) 「(以前は)女性の問題意識は、メディアで働く男性にとってどうでもいいことだった。企画を通す上司のほとんどが中高年男性なので、ニュースとしてまともに取り合ってもらえなかった。要は、MeToo世論の盛り上がりがある以前は、たとえ記事にしたくても、女子どもの話なんて生活面でやればいいと無視された。今は少し考慮されるようになったが、相変わらず女性管理職は一般企業に比べて恐ろしく少ないので、まだまだひどい扱いはある」(新聞記者) 私は性暴力や性差別の取材をすることが多いが、現場で会うのはほとんどが女性記者だ。当事者としての実感を持ちづらい男性記者よりも、女性記者が多いのは必然なのだろうが、女性記者がいわゆる「女性問題」を取材しているうちは、まだ格差は残り続けているのだと思う』、「MeToo世論の盛り上がりがある以前は、たとえ記事にしたくても、女子どもの話なんて生活面でやればいいと無視された。今は少し考慮されるようになったが、相変わらず女性管理職は一般企業に比べて恐ろしく少ないので、まだまだひどい扱いはある」、「男性社会」の「メディア」での変化は遅々としているようだ。

第三に、9月24日付けYahooニュースが掲載した在英国際ジャーナリストの木村正人氏による「女性に右も左もない! 安倍前首相の「秘蔵っ子」稲田朋美の大変身「女性のいない民主主義」と自民党批判」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/byline/kimuramasato/20200924-00199836/
・『自民党総裁選に出馬した女性は小池百合子都知事だけ  [ロンドン発]安倍晋三前首相の「秘蔵っ子」として要職に起用され、「保守の花道」を歩んできた稲田朋美元防衛相の「日本は“女性のいない民主主義”」という発言が英リベラル紙ガーディアンに取り上げられました。 「戦後レジームからの脱却」を掲げた安倍前首相の親衛隊だった稲田氏がガーディアン紙にこんな形で取り上げられるのは極めて異例のことです。 稲田氏は9月16日に「【森法務大臣が退任の挨拶に来られました!】森大臣とは同じ女性議員として、かつて閣僚としてご一緒しました。女性議員は新内閣には2人、党4役にはいません。女性の活躍、多様性が求められる時代に『女性のいない民主主義』からの脱却を目指して、女性議員飛躍の会でこれからも頑張ります!」とツイートしています。 ガーディアン紙は、稲田氏は日本の男女格差を批判し、怒りの矛先を自民党に向けたと報じています。11月に結党65年を迎える自民党の歴史で、総裁選に出馬した女性は2008年に麻生太郎財務相ら男性4人と争った小池百合子氏東京都知事だけ。 今回の総裁選でも稲田氏と野田聖子元総務相が出馬を模索したものの、立候補を断念。菅義偉首相、岸田文雄元外相、石破茂・元地方創生担当相の男性3人で争われました。野田氏は2015年と18年にも出馬に意欲を示しましたが、20人の推薦人を集めることができませんでした』、「ガーディアン紙」が「稲田氏」を取上げたとは、私も驚いた。「怒りの矛先を自民党に向けたと報じています」、「ガーディアン」の筆がすべったのかも知れない。
・『「日本でも女性が首相を、女の子が政治家を目指せるように」  ガーディアン紙は稲田氏の「女性は日本の全人口の半分、自民党の草の根党員の40%を占めます」「女性の求める政策について女性が話し合う場を持たないなら、日本の民主主義は偏らざるを得ません」という発言を取り上げています。 「私は女性のためだけに言っているのではありません。日本の民主主義を強化し、明るい未来を確実なものとするために、私は女性の声が政治にもっと届く社会を作りたい。日本でも女性が首相を、女の子が政治家を目指せるように、より自由で民主的で多様な政治風土を実現したい」 「地元の新年集会で私の話に耳を傾ける人のほとんどが男性。台所をのぞくと女性支持者全員が食事の用意をしていました。これが、私が変えたい自民党の政治風土」「男性に言いました。来年はあなた方がエプロンを付けて台所に立ち、多くの女性が最前列で私の話を聞けるようにしようね、と」 自ら原告代理人として関わった百人斬り名誉毀損裁判について自民党で講演した際、安倍幹事長(当時)の目に留まり、政界入りした稲田氏の選挙区は福井市を含む福井1区。安倍氏が首相に返り咲いた12年の総選挙以降、得票率は52.6%、64.8%、57.3%と圧倒的な強さを誇っています。 稲田氏の政治理念は「伝統を守りながら創造すること」。「伝統なき想像は空虚、想像なき伝統は枯渇」であり、「道義大国」の実現を目指しています。「道義大国」とは「国民が日本人であることを誇りに感じ、日本の伝統と文化を世界に誇れる国」のことだそうです』、やはり根にあるのは超保守派的考え方のようだ。
・『伝統とジェンダーは両立するか  稲田氏は安倍氏が日本政治に持ち込んだ「伝統と文化の戦争」の先頭に立ってきた保守派の1人です。「伝統と文化」と「歴史」は切っても切り離せません。稲田氏は終戦記念日の8月15日に靖国神社を参拝し、ツイッターで「英霊に恥じない政治」を改めて誓いました。 「75年目の終戦記念日。伝統と創造の会で靖国参拝しました。コロナで先が不透明な中、英霊に恥じない政治を行わなければなりません。先人の命の積み重ねで築いた平和な日本を次世代へ繋ぎ、自由で公平で豊かな日本を創るため、頑張ります」 稲田氏は選択的夫婦別姓に理解を示したことが「変節」と批判され、今年7月、自民党保守派有志でつくる「伝統と創造の会」(稲田朋美会長)で釈明させられました。 昨年末の税制改正で死別や離別に限られていた寡婦控除の対象が未婚のシングルマザーやシングルファザーにも広げられました。改正のため奔走した1人が伝統的家族観を主張してきた稲田氏だったため、保守派から「裏切り者」呼ばわりされることもあったそうです。 朝日新聞の秋山訓子編集委員も「『変節』した稲田朋美氏 右も左もない政治、始まっている」というポッドキャストで「保守的というか右翼みたいなイメージもあったし、安倍さんにかわいがられて」と力のある男性に引っ張り上げられている女性、「名誉男性」のように見えていたと打ち明けた上で、稲田氏は「大変身」中と好意的に紹介しています』、「選択的夫婦別姓に理解を示した」ので、自らが会長を務める「伝統と創造の会・・・で釈明させられました」、覚悟の上だったのだろう。
・『日本の衆院、女性議員の割合は世界167位  列国議会同盟(IPU)によると今年8月時点で、世界各国議会で女性議員の割合は世界全体で25.2%。日本の衆院は9.9%で167位。参院は22.9%。女性の議会進出はあまり進んでいません。 世界経済フォーラム(WEF)の「男女格差報告書2020」では日本の男女平等ランキングは前年より11下がって121位(153カ国中)。世界最年少の現職政治指導者サンナ・マリーン首相(34)誕生で注目を集めたフィンランドは3位でした。 2006年以降、毎年発表されている「男女格差報告書」は(1)経済(2)教育(3)健康(4)政治の4分野を総合的に判断して世界ランキングを付けています。日本のランキングは下のグラフのように急落しています。 【政治】144位(フィンランド5位) +女性国会議員135位(同7位) +女性閣僚139位(同20位) +国家元首の在任年数73位(同12位) 政治分野で日本より下の国はイラン、ナイジェリア、ベリーズ、ブルネイ、レバノン、オマーン、イエメン、パプアニューギニア、バヌアツの9カ国しかありません。 【経済】115位(フィンランド18位)(+労働力参加79位(同13位) +同一労働賃金67位(同9位) +所得108位(同33位) +管理職131位(同77位) +専門・技術職110位(同1位) フィンランドと日本の大きな違いはフィンランドの大学進学率はすでに女性の方が2割ほど高くなっている点です。専門職・技術職に就く女性の割合も男性より1割ほど多く、閣僚の数でもしばしば女性が男性を上回っています。 女子の方が男子より真面目に勉強するので同じ条件で学ばせるとフィンランドのような男女の逆転現象が起きても何の不思議もありません。それが日本で逆転現象が起きないのは女性を特定の役割にはめ込む文化的な阻害要因があるからです』、「日本で逆転現象が起きないのは女性を特定の役割にはめ込む文化的な阻害要因があるからです」、同感である。
・『女性指導者の誕生は「新しい常識」になるのか  マリーン首相は今年1月、ダボスで開かれたWEFの男女平等会議で講演した際、連立政権に参加する与党5党のリーダーはいずれも女性でこのうち4人は35歳になっていないことを強調し、こう語りました。 「女性指導者の誕生が今後それほど注目されず、“新しい常識”としてみなされることを願っています」「子供が幼いころ父親が子供と過ごす時間が少なすぎる」。マリーン首相は夫と育児休業を半分ずつとり、それぞれ6カ月間、娘と過ごしたそうです。 過去14年分の「男女格差報告書」からそれぞれの分野ごとの指数を拾って、このままのペースで行くといつごろに男女格差が解消されるのか分析してみました。 あくまで目安に過ぎませんが、このまま何もしないで放っておくと日本で男女の国会議員数が同じになるのは11942年のことです』、「マリーン首相は夫と育児休業を半分ずつとり、それぞれ6カ月間、娘と過ごした」、首相で「6カ月間」も「育児休業」を取れるとは驚かされた。
・『稲田氏に女性天皇を受け入れる覚悟はあるか  自民党の下村博文選挙対策委員長は9月7日、2030年に自民党内の女性議員が3割になるよう国政や地方の選挙で「候補者クオータ(割り当て)制」を導入する提言をまとめました。 これに対して二階俊博党幹事長はこれまで「枠を改めて設けることはかえって女性に対して失礼」「選挙結果に基づき対応していくのが、正しいやり方」とクオータ制には否定的な見方を示してきました。 筆者は一番大きな問題は皇位継承を男系男子にしか認めていないことだと思います。天皇は日本の「伝統と文化」や「国のかたち」を体現しています。男系男子という思想が女性に特定の役割を押し付ける文化の根っこにあります。 男系男子の維持は側室制度なしには成り立ちません。側室制度が今の時代にそぐわないことは言うまでもありません。 伝統的家族観を唱える日本の保守は敗戦とともに皇籍離脱した旧宮家を復活させてでも男系男子の維持をと主張していますが、そんなことをしたら日本の未来は完全に閉ざされてしまいます。 旧宮家を復活させるのではなく、女性天皇を認めることが日本の可能性に再び火を灯すのだと筆者は固く信じます。 制度を変えるためにはまず血縁、地縁に縛られた日本の政治風土を一新する必要があります。稲田氏にその覚悟があるとは筆者にはとても思えないのですが…。(おわり)』、「下村博文選挙対策委員長」が「「候補者クオータ(割り当て)制」を導入する提言」をまとめたが、「二階俊博党幹事長」が「否定的な見方を示してきました」、どうなるのだろう。「女性天皇」は安部前首相も当初は前向きだったらしいので、「稲田氏」が前向きになる可能性もあるのではなかろうか。
タグ:yahooニュース 日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン 小川たまか 木村正人 女性活躍 河合 薫 岸田文雄政調会長 (その18)(「ショーケースの女性政治家」量産した安倍政権の不作為、安倍政権下で「女性活躍」は進んだ?女性記者らが酷評する実情とは、女性に右も左もない! 安倍前首相の「秘蔵っ子」稲田朋美の大変身「女性のいない民主主義」と自民党批判) 「「ショーケースの女性政治家」量産した安倍政権の不作為」 エプロン姿の妻。2人ともマスクをして、とても仲が良さそうな空気 政権構想発表会で「事情説明」 「女性活躍」の顛末(てんまつ)語らぬ政治家 「2020年まで」の「目標」を総括もなしに「2020年代の可能な限り早期に」に延期し、「2030年代」の「新たな目標を掲げる」とは、無責任もいいところだ 増えたのは非正規雇用、正規は増えず なぜ、レビューしない? いまだ紅一点主義の日本 日本以外の国や地域ではもはや「女性」という利用価値の高い記号を使うのをやめて、「ジェンダー視点」を主流化させているのに、日本はいまだに記号としての「女性」を多用して、紅一点主義を貫いている 男女比が6対4で分け隔てが消える クオーター制を取らない限り、女性議員は増えない 今こそナショナル・マシーナリーを 「安倍政権下で「女性活躍」は進んだ?女性記者らが酷評する実情とは」 「女性活躍」について、女性記者たちはどう思っているのかアンケート 安倍政権の『女性活躍』 限定的な意味では評価できるかと思ったが… 女性記者たちの評価は10点満点中、平均2.8点 評価された点 マッチョな政権がそれをやったことで、左翼男性の中にも保守的なジェンダー観の人はいるので、そのような男性の尻を叩く意味もあったと思う 評価できない点は? 「202030」は結局断念 M字カーブが緩くなったのは非正規雇用で働く女性が増えたためで、女性活躍どころか、女性を安い労働力として『活用』するという女性の『モノ化』の表れ 差別是正ではなく、平等でもなく、『活躍』。女性ががんばったら応援してあげるよ、みたいなスローガンでした。現状をまず正確に認識できないと、変革はできないと思います。そして結果はその通りでした 報道を変化させたのは世論からのボトムアップ デジタルではPVなどが可視化されるため、女性関連の記事は読まれる、と編集部が認知して書きやすくなったことはあると思います 安倍政権の方針の影響というより、『保育園落ちた日本死ね!!!』(2016年)のブログに代表されるように、ネットを中心に女性活躍の実現や女性差別の解消を求めるボトムアップがあったためと考えます メディアも男性社会 企画を通す「男性」は変わった? 「女性に右も左もない! 安倍前首相の「秘蔵っ子」稲田朋美の大変身「女性のいない民主主義」と自民党批判」 自民党総裁選に出馬した女性は小池百合子都知事だけ 稲田朋美元防衛相の「日本は“女性のいない民主主義”」という発言が英リベラル紙ガーディアンに取り上げられました 怒りの矛先を自民党に向けたと報じています 日本でも女性が首相を、女の子が政治家を目指せるように 伝統とジェンダーは両立するか 選択的夫婦別姓に理解を示した 伝統と創造の会 で釈明させられました 日本の衆院、女性議員の割合は世界167位 日本で逆転現象が起きないのは女性を特定の役割にはめ込む文化的な阻害要因があるからです 女性指導者の誕生は「新しい常識」になるのか マリーン首相は夫と育児休業を半分ずつとり、それぞれ6カ月間、娘と過ごした 稲田氏に女性天皇を受け入れる覚悟はあるか 「下村博文選挙対策委員長」が「「候補者クオータ(割り当て)制」を導入する提言」をまとめた
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金融業界(その6)(銀行の融資激増で「3~5年後」が今から心配な訳 コロナ禍で企業支えるが不良債権化リスクも、三菱UFJ社長「店舗がゼロになることはない」 デジタル化を担ってきた新社長が考える実店舗の意義、中堅職員反発も「本部の仕事を3割減らせ」…三井住友FG・太田社長が取り組む行内改革) [金融]

金融業界については、昨年8月27日に取上げた。久しぶりの今日は、(その6)(銀行の融資激増で「3~5年後」が今から心配な訳 コロナ禍で企業支えるが不良債権化リスクも、三菱UFJ社長「店舗がゼロになることはない」 デジタル化を担ってきた新社長が考える実店舗の意義、中堅職員反発も「本部の仕事を3割減らせ」…三井住友FG・太田社長が取り組む行内改革)である。

先ずは、本年7月6日付け東洋経済オンライン「銀行の融資激増で「3~5年後」が今から心配な訳 コロナ禍で企業支えるが不良債権化リスクも」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/360976
・『「銀行が初めて雨の日に傘を貸した」。金融関係者の中でそんな声が広がっている。新型コロナウイルスの感染が拡大する中、資金繰り支援に奔走する銀行の姿を目の当たりにしたからだ。 銀行はこれまで、「晴れになったら傘を貸し、雨が降ったら取り上げる」と揶揄されてきた。つまり、経済が好景気で、企業の経営が好調な時にはどんどん融資を実行し、景気が後退し、企業の経営が苦しくなると、一転して資金を引き揚げていく――。そんな姿勢が当たり前とされていた』、「晴れになったら傘を貸し、雨が降ったら取り上げる」というのは、貸出のリスクの変化に応じた行動なので、やむを得ない面もある。ただ、貸し倒れのリスクを短期的にではなく、中期的にみる理想的な姿勢が取り得る場合には、顧客に寄り添うことが可能になる。
・『倒産回避に積極融資に銀行が動く  ただ、今回は違った。緊急事態宣言が発出された後も、銀行は運営を続けて企業の相談に乗り、積極的に融資して企業の資金繰りを支えていった。『週刊東洋経済』では7月6日発売号で、「銀行 地殻変動」を特集。銀行の変化やその裏に潜むリスクを描いている。 その積極性は数字のうえでも明らかだ。全国の銀行と信用金庫の貸出残高は4月の平均残高で553兆4863億円と、20年ぶりに過去最高を更新。5月はさらにそれを上回る、562兆5464億円を記録している。 大企業に対しては、手元資金の不足に備えた融資枠の設定(コミットメントライン)を活発に行っている。コミットメントラインの契約は3月に354件、4月に128件増加した。中小企業に対しても、返済猶予など融資条件の変更に99.8%(5月末時点)と、ほとんど応じている状況だ。 政府もそんな銀行の支援態勢を後押ししている。6月に成立した第2次補正予算では、企業の資金繰り支援に約12兆円を計上した。国を挙げての「異次元融資」のおかげで、倒産の連鎖は防ぐことができている。 しかし、その積極融資の裏では、銀行を襲う「時限爆弾」が着実に膨らみつつある。 最大の時限爆弾は不良債権化のリスクだ。足元の融資は「激変緩和措置」(地方銀行の営業マン)で、倒産の連鎖が発生しないよう、スピード重視で融資をしている。しかし、その融資先の中にはコロナ以前から構造的な問題を抱えてきた企業も含まれており、業況が改善しなければ、いずれ支えることができなくなる。 大手地銀の営業マンは「3年後、5年後に不良債権化するリスクを感じながら融資をしている」と語る。「3年」と「5年」を意識する理由は、足元で実行されている日本政策金融公庫や民間金融機関による実質無利子融資の仕組みにある。実質無利子融資の制度の中身を見ると、実質無利子となる期間は3年、元金返済の猶予据え置き期間は最大5年に設定されているのだ。 この期間に事業を立て直し、返済ができる体制を構築しなければ、企業は倒産に追い込まれる。利子や元金の返済が始まる3年、5年のタイミングで、そうした企業が相次ぐのではないかという見立てだ』、借り入れ需要が「20年ぶり」に盛り上がったとはいえ、これは売上大幅不振による後ろ向きの資金で、「3年後、5年後に不良債権化するリスク」も高い。「利子や元金の返済が始まる3年、5年のタイミングで、そうした(倒産する)企業が相次ぐのではないか」、その通りだろう。
・『大企業への融資も膨れ上がる  こうした問題は中小企業が中心だが、大企業にも不良債権のリスクは眠っている。日産自動車やANA(全日本空輸)のように、銀行に多額の融資を求める企業が増え始めた。新型コロナウイルスの感染者数も再び増加基調に戻りつつあり、第2波、第3波の懸念もある。大口融資先の問題も今後増加してくる可能性が高い。 銀行側も将来のリスクを意識している。3メガバンクの2020年度(2021年3月期)の計画では、融資先が破綻し、貸出金が回収できなくなる場合に備えて、損失として計上する貸倒引当金繰入額や、回収が不可能になり、確定した損失を計上する償却額などの与信費用を大幅に積み増している。 三菱UFJフィナンシャル・グループは、計4500億円(前年比2229億円増)、三井住友フィナンシャルグループも4500億円(同2794億円増)、みずほフィナンシャルグループは2000億円(同282億円増)の与信費用を見込んでいる。 地方銀行でも特徴的な動きが見られた。ふくおかフィナンシャルグループは2019年度決算で、福岡銀行、熊本銀行、親和銀行、十八銀行の傘下4行合わせて614億円の与信費用を計上した。これは、2018年度の与信費用51億円の10倍以上にものぼる金額だ。 そのうち、418億円は「フォワードルッキング引当」と呼ばれる新しい手法によるもの。景気のよかった直近の低い倒産実績を元に引き当てるのではなく、将来、景気後退が起きた際にどの程度倒産が発生するかを折り込んだ「予防的」な引き当てだ。つまり、ふくおかフィナンシャルグループは、将来的に倒産が増えるとみているということだ。 ただ地方銀行の多くが、ふくおかフィナンシャルグループのような引き当てができるわけではない。「引き当てを積み過ぎると赤字に陥ってしまうため、できない。本音ベースではもっと積んでおきたい」と大手地銀幹部は語る。 中には、将来リスクに備えるどころか、足元の影響に対する引き当てすら十分に積めていない地銀もある。ある地銀の財務担当者は、「将来に備えた与信費用の計上を検討していたが、営業担当者から『自分たちは倒産させないように支えているのに、なぜそんなことをするのか』と反対されてできなかった」と明かす。 こうした現状を鑑みると、各地銀が積んでいる与信費用では十分ではなく、不良債権の増大次第では自己資本を毀損してしまう銀行が相次ぐ可能性も否定できない。 不良債権の問題は実体経済から来る時限爆弾だが、銀行は金融市場の側でも爆弾を抱えている。実際、新型コロナウイルスが蔓延し始めた3月には、株価が大幅に下落し、多くの銀行で減損損失が発生した』、「不良債権の増大次第では自己資本を毀損してしまう銀行が相次ぐ可能性も否定できない」、慎重な表現だが、「可能性がある」とみておくべきだろう。
・『CLO多く抱え、「サブプライム再来」懸念  銀行が投資している金融商品の中でも、特に注意が必要なのが、CLO(Collateralized Loan Obligation=ローン担保証券)だ。金融庁や日本銀行がこの6月に調査結果を発表し、日本の金融機関に警鐘を鳴らしている。 CLOとは、信用力が相対的に低い企業への融資を束ねて証券化した商品だ。リスクの高いものを束ねて商品化する手法は、リーマンショックを引き起こしたサブプライムローンに通じるものがある。 世界のCLOの残高は、2018年末で82兆円にものぼるが、その市場における日本の金融機関のシェアはなんと18%にものぼる。3メガバンクや農林中央金庫、ゆうちょ銀行の保有が多いとされる。最も多い農林中央金庫は7兆7000億円ものCLOを保有している。 日本の銀行の言い分はこうだ。「保有するCLOのほとんどはAAA格でリスクは低い。さらに満期保有目的のため、満期まで保有すれば売却損は出ない」。だが、価格が大幅に下落すれば、話は別だ。減損損失から逃れられなくなる。 実際、CLOの価格は3月に大きく下落した。足元では金融市場全体が安定しているため大きな問題とはなっていないが、第2波、第3波が訪れれば再びマーケットが混乱する可能性はある。その際、ヘッジファンドなどが顧客からの換金要求に応じるために、CLOが投げ売りされ、価格が大幅に下落することもありえる。 新型コロナウイルスの感染者は再び増加しており、実体経済への影響はしばらく続きそうだ。現時点では倒産の連鎖も、金融市場の混乱も回避できているが、将来のリスクは決して小さくない。銀行が抱える爆弾の導火線には、火が灯っている』、「サブプライム」時の経験では、CLOの格付は、「AAA格」でも急速に悪化する可能性が高い。「銀行が抱える爆弾の導火線には、火が灯っている」、その通りで、予断を許さない状況だ。

次に、7月15日付け東洋経済オンライン「三菱UFJ社長「店舗がゼロになることはない」 デジタル化を担ってきた新社長が考える実店舗の意義」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/362775
・『新型コロナウイルスの感染が拡大する中、企業の資金繰り支援に奔走した銀行業界。緊急事態宣言後も営業を続けたものの、店舗には人が集まり、3密が指摘されるなどデジタル化の遅れも指摘された。一方、メガバンクなどでは、新型コロナを機に顧客のデジタル取引移行が急激に進んだ。銀行にとってはデジタル化を一気に推し進めるチャンスだ。 そんなコロナ禍の真っ只中の2020年4月、三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の亀澤宏規新社長が就任した。亀澤氏はメガバンク初の理系トップであり、これまでMUFGのデジタル化を担ってきた人物だ。今後どうデジタル化を進め、ポストコロナの戦略を描くのかを聞いた(Qは聞き手の質問、Aは亀澤氏の回答)』、興味深そうだ。
・『オンライン化の流れが加速する  Q:コロナ禍の最中に社長に就きました。 A:正直、こういう船出になるとは思っていなかった。 いろいろ考えさせられた。銀行が資金支援をし、給付金は口座に入れる。(コロナ禍においても)銀行、信託、証券という金融のオペレーションを止めてはいけない。社会的責任の重さを痛感した。 本業では、コロナ関連の融資残高は直近で12.5兆円になった(7月9日時点)。資金需要は少し落ち着いてきた印象だ。 より大きいのはデジタルシフト。個人向けインターネットバンキングの利用者は約3倍、法人向けのオンラインレンディングの融資申し込み件数も約3倍に増えた。 今までの潮流が新型コロナでどうなるかと言われれば、加速すると考えている。3年前に立てた計画(「MUFG再創造イニシアティブ」)と大きな方向性は変わらない。ここにデジタルシフトと社会課題の解決という2つを加味して次の中期計画を作っていく。 Q:デジタル化では、リテール(個人や中小企業向けの取引)分野にスポットが当たっています。どのように進めていくのでしょうか。 A:デジタライゼーションは既存ビジネスの改革と新規で取り組んでいるものがある。 新規のものは、(クラウドセキュリティを提供する)アカマイ社と組んだ決済ネットワーク「GO-NET」のようなものがある。2020年度の下期からビジネスを開始していく。 既存業務のデジタル化で、もっとも数字が大きいのがリテールだ。銀行・信託・証券すべてに関わり、広がりも大きい。ここは会社全体でやろうということで重点戦略に置いている。そこしかやらないというわではなく、リテール以外の分野は事業本部長に任せる』、「個人向けインターネットバンキングの利用者は約3倍、法人向けのオンラインレンディングの融資申し込み件数も約3倍に増えた」、「コロナ禍」は「デジタルシフト」を一気に加速したようだ。
・『リアル店舗の様子が変わる  Q:従来の店舗対応とは違い、デジタル化で顧客との接点は大きく変わります。今後はどうなると考えていますか。 A:今のように、一等地の駅前に店舗あって、全部のサービスがそろっていて、窓口がずらりと並ぶような店舗は極めて少なくなる。 顧客から見た場合には、「コンサルティングオフィス」や(アプリやスマホでの操作が中心の)「MUFG NEXT」のような店舗が増えるイメージだ。 店舗がなくてもいいという議論も出てくると思う。ただ、私は今回のコロナでリアルの店舗の意味合いが(逆に)見直されていると思う。何かあれば人がいて、話ができる安心感がある。(今後の店舗は)ブースからタブレットで専門部隊につなげたり、アプリの使い方を教えたりすることかもしれないが、店舗がゼロになることはない。 「週刊東洋経済プラス」のインタビュー拡大版では、「海外事業の考え方」「資本業務提携したGrabとの具体的な展開」「MUFGの将来像」を詳しく語っている』、「リアル店舗の様子」は将来どのようになるのだろうか。

第三に、8月21日付け文春オンライン「中堅職員反発も「本部の仕事を3割減らせ」…三井住友FG・太田社長が取り組む行内改革――文藝春秋特選記事 3月期決算の最終利益では初の“メガ首位”に」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/39787
・『「グループのデジタル化を進めていけば、一人当たりの業務量をもっと減らしていくこともできるはずです。我々の強みの一つは経費率の低さ(三菱UFJフィナンシャル・グループの70%に対し、三井住友フィナンシャルグループは62%)ですが、まだまだ“締めよう”と思っています。当面は60%まで下げたい」 「文藝春秋」8月号のインタビューでそう語るのは、三井住友FGの太田純社長(62)。三井住友FGと言えば、今年3月期決算の最終利益で三菱UFJFGを抜き、現行の3メガバンク体制になってから初めて首位に立った。 中でも、太田氏が「強みの一つ」と語るのが、人件費などを含めた経費率の低さだ。しかし、今回のコロナショックを通じてまだまだ経費率を下げる余地があることを痛感したという。一体どういうことか――』、「三井住友フィナンシャルグループ」の「経費率の低さ」は昔から有名だが、「最終利益で」「初めて首位」とは大したものだ。
・「できない仕事」は「要らない仕事」だった  「今回のコロナショックでよく分かったのは、テレワークをしていると、どうしても『できない仕事』が出てくる。ところが、その仕事はやらなくても、誰一人困らないというケースが結構あった。結局、『できない仕事』は『要らない仕事』だったわけです。例えば、本部から現場への『通達』の中には、現場の人間は誰も読んでいないものもある。『なぜ作っているの?』と聞くと、『前から作っていますから』という。そうした『要らない仕事』をなくしたり、ロボットに任せれば、業務量は減らせるし、結果として人も減らせます」 そこで太田氏は今、こんな号令を掛けているという。「本部の仕事を3割減らせ」。当然ながら、行内からは抵抗する声も出てくる。 「特に本部の中堅職員は、そうしたフレームワークの中で出世してきたわけです。いきなり『あなたの仕事は要りません』と言われたら、困るのも無理はない。当然、彼らとも話し合いますが、話し合って変わらなければ、もう思い切って変えていくしかありません」』、本部の仕事は惰性でやっているものも多く、「コロナショック」は無駄をそぎ落とす好機のようだ。
・『常務時代の「居眠り伝説」を直撃したところ……  太田氏が「要らない仕事」として、もう一つ例に挙げるのは「会議」だ。実際、太田氏自身、社長への就任が決まった際、常務時代に幹部が集まる会議で堂々と居眠りをしていた過去が報じられている。 〈三井住友のある中堅幹部は、太田氏に対して「胆を冷やしたことがある」と明かす。太田氏が常務時代に開かれた一部役員と本店部長達との昼食会。上役の役員が熱弁をふるっている隣で、太田氏は腕組みをしながら堂々と居眠りしていたという。〉(ロイター通信 2018年12月14日付) この「居眠り伝説」について尋ねてみたところ、豪快に笑って頷いてみせた。 「実話です(笑)。つまらないし、眠かったから寝てしまった。でも若い人と話す時は寝ませんよ。面白いし、ためになるから。10年ほど前から、僕は『会議資料の右肩に枠を作って、そこに資料を作るのにいくらかかったか書け』と言っているんです。3人が3日かけて作ったとする。年間所得から時給を割り出して計算してみろ、と。『この資料の作成に58000円かかりました』と分かれば、形ばかりの資料を作ることがいかに無意味か分かるでしょう。こう言っても実際に計算してくる人間はいませんが(笑)」 経費率の削減をはじめ、ドラスティックな行内改革に挑み続ける太田氏。その背景にあるのは、国内市場が頭打ちになり、他業種から銀行業務への進出も相次ぐ中、「このままでは銀行は淘汰されてしまう」という強い危機感だ。 「文藝春秋」8月号ならびに「文藝春秋digital」に掲載した太田氏のインタビュー「『貸し渋り』など絶対にしない」では、コロナ禍でメガバンクが果たすべき役割や、投資で大きな損害を出した若い頃の大失敗、グループ会社の新社長に37歳の行員を抜擢した経緯、デジタル化で変貌を遂げる銀行業の在り方などについても語っている』、「上役の役員が熱弁をふるっている隣で、太田氏は腕組みをしながら堂々と居眠りしていた」、確かに豪傑のようだ。「淘汰され」ない知恵をどう捻り出していくのか注目したい。
タグ:東洋経済オンライン 金融業界 文春オンライン (その6)(銀行の融資激増で「3~5年後」が今から心配な訳 コロナ禍で企業支えるが不良債権化リスクも、三菱UFJ社長「店舗がゼロになることはない」 デジタル化を担ってきた新社長が考える実店舗の意義、中堅職員反発も「本部の仕事を3割減らせ」…三井住友FG・太田社長が取り組む行内改革) 「銀行の融資激増で「3~5年後」が今から心配な訳 コロナ禍で企業支えるが不良債権化リスクも」 「晴れになったら傘を貸し、雨が降ったら取り上げる」と揶揄 銀行が初めて雨の日に傘を貸した 倒産回避に積極融資に銀行が動く 利子や元金の返済が始まる3年、5年のタイミングで、そうした企業が相次ぐのではないか 大企業への融資も膨れ上がる 日産自動車やANA 与信費用を大幅に積み増し 不良債権の増大次第では自己資本を毀損してしまう銀行が相次ぐ可能性も否定できない CLO多く抱え、「サブプライム再来」懸念 CLOの格付は、「AAA格」でも急速に悪化する可能性が高い 銀行が抱える爆弾の導火線には、火が灯っている 「三菱UFJ社長「店舗がゼロになることはない」 デジタル化を担ってきた新社長が考える実店舗の意義」 MUFG)の亀澤宏規新社長 メガバンク初の理系トップ オンライン化の流れが加速する 個人向けインターネットバンキングの利用者は約3倍、法人向けのオンラインレンディングの融資申し込み件数も約3倍に増えた 「コロナ禍」は「デジタルシフト」を一気に加速したようだ リアル店舗の様子が変わる 「中堅職員反発も「本部の仕事を3割減らせ」…三井住友FG・太田社長が取り組む行内改革――文藝春秋特選記事 3月期決算の最終利益では初の“メガ首位”に」 できない仕事」は「要らない仕事」だった 「コロナショック」は無駄をそぎ落とす好機 常務時代の「居眠り伝説」を直撃したところ…… 「淘汰され」ない知恵
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日産・三菱自・ルノー問題(その3)((日産が巨額赤字 「大リストラ計画」にみる猛省 生産能力2割減 日米中に経営資源を集中、日産がシャープよりも「悲惨な末路」をたどりかねない根拠、「日産に巨額税金投じる」政府の怪しすぎる挙動 なぜ一企業に1300億円もの政府保証するのか?) [企業経営]

日産・三菱自・ルノー問題については、2018年4月17日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その3)((日産が巨額赤字 「大リストラ計画」にみる猛省 生産能力2割減 日米中に経営資源を集中、日産がシャープよりも「悲惨な末路」をたどりかねない根拠、「日産に巨額税金投じる」政府の怪しすぎる挙動 なぜ一企業に1300億円もの政府保証するのか?)である。なお、タイトルに、三菱自を加え、「VS仏政府」はカットした。

先ずは、5月30日付け東洋経済オンライン「日産が巨額赤字、「大リストラ計画」にみる猛省 生産能力2割減、日米中に経営資源を集中」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/353597
・『「2年ほど前から拡大路線を修正してきたが、足元の700万台の門構え(生産能力)に対して販売は500万台。この状態で利益を出していくことは困難と言わざるをえない」 5月28日、オンラインでの2019年度決算会見に臨んだ日産自動車の内田誠社長兼最高経営責任者(CEO)は苦渋の表情でそう語った』、「日産」は大丈夫なのだろうか。
・『部品メーカーからの「上納」はもう限界  同日発表した2020年3月期(2019年度)の最終損益は、6712億円の赤字(前期は3191億円の黒字)に転落した。固定資産の減損などの構造改革関連費用計6000億円を計上したほか、新型コロナウイルスの感染拡大による販売減少が響いた。赤字額はくしくも、1990年代後半に経営危機に陥った際にカルロス・ゴーン最高執行責任者(COO、当時)の下で経営再建を進めていた2000年3月期(6843億円)とほぼ同水準だ。 ゴーン氏主導の再建計画「日産リバイバルプラン(NRP)」では、国内の完成車工場3拠点を閉鎖するなどの大ナタを振るった。傘下部品メーカーの保有株を売却して「系列解体」を断行。部品の購買コストを3年間で20%削減するため、取引停止も辞さない構えで各部品メーカーに厳しい値引きを強いた。それを原資に、日産はV字回復を実現した。 しかし、今回の危機は当時とは事情が異なる。日産からの値引き要請はほかの自動車メーカーと比べて苛烈であることは業界内では有名だ。それに加えて近年の日産の業績不振によって、取引が多い部品メーカーは疲弊しきっている。 ある部品メーカー幹部は「生産台数が右肩上がりの時代だったら値引きに応じることで、日産も部品メーカーも成長してお互いにメリットがあった。でも、今ではこちらから日産に利益を還元できるだけの力がもう残っていない」と話す。 そのため、かつてのように部品会社への苛烈なコスト削減要求は難しく、日産が再建に向けて取り得る選択肢は限られる。最大の手段は自らの身を切ること。具体的には生産能力と人員削減による固定費カットだ。 今回の構造改革計画「NISSAN NEXT」では、ゴーン時代の拡大路線によって負の遺産となった過剰設備の整理に本格的に取り組む。世界の生産能力は現状から2割削減し、2023年度には年間540万台(600万台まで変動可能)とする。 インドネシア工場(生産能力25万台、調査会社マークラインズ調べ)の閉鎖を決めたほか、スペインのバルセロナ工場(生産能力21万台、同)も閉鎖の方向で現地政府や労働組合などとの協議を始めた。 「人員削減の規模は個別協議が必要なので、今日は公表を控える」(内田社長)としたが、2019年7月に発表した1万2500人削減に大幅に上積みされることは確実だ。車種数を現在の69から55以下に減らすことなどと合わせ、固定費を2023年度に3000億円削減(2018年度比)する』、「ゴーン氏主導の再建計画「日産リバイバルプラン(NRP)」時の赤字と同規模とはいっても、ゴーンの時には、目一杯、リストラ費用を積んだが、今回はどこまで積んだのだろう。
・『「全方位戦略」から決別  「日産のいまの実力値に合わせて、展開地域も開発も切るところは切っていくしか道はない」。ある日産幹部は無理な拡大路線を突き進んだ過去を反省したうえで、そう強調する。 日産は今後、ホームマーケットである日本と、販売シェアが高い北米と中国に経営資源を集中投入する。一方で、欧州や東南アジア、南米など販売が弱い地域では、撤退こそしないものの、事業を大幅に縮小する。小型車や一部の次世代技術の開発は提携パートナーであるフランスのルノーに任せるなど、今後の成長投資も思い切って選別する。 日産はこれまで世界中に広く事業展開し、デパートのように軽自動車から小型商用車まで幅広い車種を自社開発して販売する「フルラインナップメーカー」だった。だが、実力以上のモデル数を抱えるあまり、経営資源が拡散して開発に遅れをとった結果、魅力的な新車を投入できずに販売で苦戦するようになった。 今回、そうした全方位戦略から事実上決別し、身の丈にあった中規模メーカーとして生き残りを目指す道を選んだわけだ。カギを握るのが、ルノーと三菱自動車との3社連合(アライアンス)の徹底活用だ。 決算発表の前日にあたる5月27日に発表されたアライアンス中期計画の肝は、3社間でのかなり踏み込んだ役割分担にある。地域や技術、車種ごとに強みがある1社を「リーダー」、サポート役に回る2社を「フォロワー」と位置づけ、研究開発での重複をなくしたり、生産を集約したりしてコストを削減する枠組みだ。 例えば、中型車と電気自動車(EV)の開発は日産がリーダーとなって担い、開発した新車をほかの2社に「姉妹車」として提供する。一方で、小型車開発はルノー、プラグインハイブリッド(PHV)車開発は三菱自に任せ、日産は得意とする分野に人材と資金を集中させる。 CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)と呼ばれる次世代技術の開発でも同様だ。自動運転技術は日産、コネクテッドの主要部分はルノーが担うことになる』、「3社間でのかなり踏み込んだ役割分担」はかなり明確になったようだ。
・『ライバルと同水準の研究開発費を確保  日産の研究開発費は潤沢とはいえない。2020年3月期の開発費は5400億円程度で、トヨタ自動車の1.1兆円、ドイツのフォルクスワーゲンの1.8兆円に比べて大きく見劣りする。 ルノーのジャンドミニク・スナール会長は「アライアンスは数年後には、はるかに効率性を高めて、業界のモデルになれる」と自信を示した(アライアンス記者会見のインターネット動画より引用) 一方、ルノーの研究開発費は4400億円、三菱自は1300億円で、3社合わせれば1.1兆円を超える。単純合算すると、数字上はライバルと同じ水準になる。 加えて、3社は開発のすみ分けや、車体を構成するプラットフォーム(車台)やアッパーボディ(上屋)の共通化の加速などによって、1車種あたりの開発費と設備投資額を最大で40%削減できると試算する。 ブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達生シニアアナリストは「今回、3社が明確に担当を決めたことで主導権争いに時間を取られるリスクを減らせられる。現場の社員もかなり動きやすくなるはずだ」と評価する。 振り返れば、日産側にはルノーとの協業を巡って苦い記憶がある。 それはゴーン体制で2014年から始まった、開発や生産、人事、購買などの主要な機能を両社で一体化する取り組みだ。日産社内では「機能統合」と呼ばれた施策で、意思決定を統一してアライアンスの効率性を高めることが表向きの狙いだったが、責任の所在が曖昧だった結果、新型車の投入や技術の採用などを巡って両社間で主導権争いが頻発。日産の開発現場にもルノーからの横やりが入るようになった。 さらに、当時はルノーの筆頭株主であるフランス政府が両社の経営統合を要求し始め、それが両社間の火種として燻り始めていた時期だった。「機能統合は将来的な経営統合への布石だった」(当時の日産幹部)ため、経営の独立を守りたい日産の日本人幹部を中心にルノーとゴーン氏に対する不信感が募っていった。 2018年11月にゴーン氏が逮捕されて以降、ルノーが日産に経営統合を公然と要求し、それを拒否する日産との間で応酬が続いた。一時は提携解消が取りざたされる程にまで関係が悪化した』、「「今回、3社が明確に担当を決めたことで主導権争いに時間を取られるリスクを減らせられる。現場の社員もかなり動きやすくなるはずだ」との評価が、その通りにいくことを期待したい。
・『呉越同舟の中で、エゴをどう抑えるか  そうした経緯がある両社が「経営統合の議論は当面棚上げ」(日産幹部)して、再び手を取り合った。その日産幹部は「両社とも切羽詰まっていて、統合の議論にエネルギーを割くわけにはいかない。立て直しにはアライアンスを活用するのが早道で、少なくとも現時点では思惑が一致している」と言う。 ルノーのジャンドミニク・スナール会長も5月27日のアライアンス記者会見で、「経営統合の計画はない。統合しなくても効率化を追求できる」と言い切った。 それほど各社の経営状況は危機的だ。コロナ危機以前から3社の業績は悪化しており、ルノーは2019年12月期に10年ぶりの最終赤字に転落。三菱自動車も2020年3月期に258億円の最終赤字を計上した。一時は世界トップだった3社合計の販売台数も下降線をたどる。2019年は前年比60万台減の1015万台となり、世界3位に転落した。 アライアンスの中で争いがあっても、絶対的な君主として有無を言わせずに差配してきたゴーン氏はもういない。3社の経営の一体化がさらに進むことになる今回の協業策を機に、ルノー側がいずれ経営統合の話を持ち出し、対立が再燃する可能性もある。日産も含めて瀬戸際に立たされている3社が、「呉越同舟」の中でどうエゴを抑えてアライアンスを機能させるのかが問われている』、「瀬戸際に立たされている3社」の状況がお互いの争いを抑えているとはいえ、やはり薄氷の上にあるようだ。

次に、9月7日付け日刊ゲンダイが掲載した経済ジャーナリストの井上学氏による「日産がシャープよりも「悲惨な末路」をたどりかねない根拠」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/278338
・『経済産業省がホンダと経営危機に陥っている日産自動車の経営統合を両社に働きかけたことが話題になった。結局は両社が取締役会にかける前の段階で断り、御破算になったという。経産省が仕掛けた両社の経営統合案に、関係者からは「あまりに不見識。よくもこんな提案を出したものだ」と驚きの声があがっている。 そもそも日産に提案したところで、親会社の仏ルノーが「うん」と言わなければ話は1ミリも進まない。日産があっさり断ったことから、経産省によるルノーへの根回しはなかった可能性が極めて高い。それだけに「まるで子供のおつかいレベルの交渉」とも揶揄されている』、経産省も焼きが回ったようだ。
・『ホンダと経営統合すれば共倒れの恐れも  ホンダ関係者も「巨額の赤字を抱える日産を受け入れる体力など、ホンダにはない。共倒れになれというようなものだ」と突き放す。救済する側のホンダはともかく、される側の日産にすら「門前払い」で断られた経産省。なぜ、そこまで無理筋の経営統合を働きかけたのか。そこにはルノーの深刻な業績悪化があった。 ルノーが2020年7月30日に発表した1-6月期の純損益は72億9000万ユーロ(約9000億円)と過去最高の巨額赤字に。元凶は連結子会社である日産の業績不振だ。ルノーが計上した巨額赤字のおよそ3分の2に当たる48億ユーロ(約5950億円)が日産の赤字によるものだ。 新型コロナの感染拡大は収まるどころか勢いを増し、少なくとも年内は現在の苦境が続くだろう。そうなればルノーの2020年12月期決算は推定で150億ユーロ(約1兆8000億円)もの純損失に陥る。日産よりも規模が小さいルノーにとっては、経営破綻レベルの巨額赤字だ。 同社の筆頭株主であるフランス政府は、6月に50億ユーロ(約6200億円)の融資枠を保証した。ルノーの経営危機を回避するための措置だが、日産の赤字で融資枠分の支援が吹っ飛んだ格好だ。カルロス・ゴーン前会長時代に日産との経営統合を執拗に求めてきたフランス政府だが、今はルノー最大の経営懸念となっている日産の切り捨てを真剣に検討しているはずだ。 日産との経営統合推進の急先鋒だったジャン・ドミニク・スナール会長も、今年に入ってその言葉を「封印」している。5月に発表した仏ルノー、日産、三菱自動車の新たなアライアンス戦略では、従来の商品計画や開発の一体化が見直され、各社が開発した技術を相互供与する「業務提携」レベルにまで後退した。 グループで一本化して開発に取り組むべき次世代エネルギー車の本命である電気自動車(EV)も、ルノーと日産がそれぞれ担当することになった。すでにルノー・日産グループの「解体」に向けた動きは始まっている。ルノーが日産との共倒れを回避するには、早急に日産を切り離す必要がある。早い話が43.4%を保有する日産株の売却だ』、「日産の切り捨てを真剣に検討しているはずだ」とあるが、3社間の役割分担はどうなるのだろう。「ルノー」も単独での生き残りは可能なのだろうか。
・『日産を買いたがる会社はあるのか  問題は売却先。今、どん底の日産を買いたがる会社があるとすれば、その筆頭は中国の自動車メーカーだろう。日産が持つ中国と米国の自動車工場と生産技術は、中国車メーカーにとっては台数ベースで世界最大の自国市場を押さえる上でも、金額ベースで世界最大の米国市場で展開する上でも有用なリソース(経営資源)だからだ。) 当然、米中市場が「生命線」となっている日本車メーカーにとっては、日産が中国車メーカーに買収されれば強力なライバルが登場することになる。経産省が日産とホンダに経営統合を働きかけたのも、ルノーが日産を中国企業へ売却するのを警戒しているからだ。 いずれ日産も、シャープが台湾の鴻海精密工業(フォックスコングループ)に買収されたのと同じ道をたどるだろう。シャープはまだ自社で身売り先を選ぶことができた。一方、日産の売却先を決めるのはルノーだ。ルノーと同社筆頭株主のフランス政府は、最高額を提示した企業に売却するだろう。たとえ望まない会社であったとしても、日産には拒否する権利はないのだ。「その日」は、着実に近づいている』、「ルノーと・・・フランス政府」はそこまで考えているのかはともかく、予断を許さない状況のようだ。

第三に、9月16日付け東洋経済オンラインが掲載した経営コンサルタントの日沖 健氏による「 「日産に巨額税金投じる」政府の怪しすぎる挙動 なぜ一企業に1300億円もの政府保証するのか?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/374852
・『今月、日本政策投資銀行が5月に決めた日産自動車への融資1800億円のうち、1300億円に政府保証をつけていたことが明らかになりました。これは将来、もし日産からの返済が滞れば8割を国が補塡し、実質的に国民が負担することを意味します。 大企業への融資に対する政府保証は、今回が初めてではありません。リーマン・ショック後の2009年、経営再建中の日本航空にも行われました。そのときは、同じく日本政策投資銀行が約670億円を政府保証つきで融資しましたが、翌年日本航空が経営破綻し、約470億円の国民負担が生じています。 今回の日産への政府保証の額は、日航を大きく上回り、史上最大の規模。もし返済が滞れば、国民負担が生じるとともに、16日に発足される菅政権を揺るがす事態に発展することも考えられます。 日産への政府保証の影響について考えてみましょう』、「1300億円に政府保証をつけていた」、初耳で驚いた。
・『日産と日航の「最大の違い」  今回の日産への政府保証は、2009年の日航と対比されます。政府が大企業を救済するという点では共通していますが、大きな違いがあります。最大の違いは、国民目線で見た「納得感」です。 まず、政府が公的資金を投入して民間企業を支援するというとき、事業の公益性が問題になります。破綻前の日航は、戦後長くナショナルフラッグとして運輸省(現・国土交通省)と一体となって、日本の航空行政を担ってきました。良い悪いは別にして、半官半民というより準国営の企業でした。 一方、日産は、トヨタ・ホンダなど多数のメーカーがひしめく自動車業界の1プレイヤーにすぎません。車離れで自動車は供給過剰ですし、日産にしか作れないという特別な車も存在しません。日産は、14万人近い従業員が働いているものの、日航のような「なくなっては困る」という企業ではないのです。 次に、国民感情として、純然たる日本企業なのかどうかも問題になります。日航は、政府が出資する日本企業でした。 一方、日産の筆頭株主はフランスのルノーで、出資比率は43.4%。その親会社のルノーの筆頭株主はフランス政府です。日産はフランス資本の外資系企業で、日本政府よりもフランス政府の影響を強く受けています。日本国民が納めた税金を使って外資系企業を支援することに、国民は強い抵抗感を覚えます。 また、経営姿勢も問われます。以前の日航は、組合が強かったこともあって、破綻前に大規模なリストラは行われませんでした。 対する日産は、1999年にカルロス・ゴーンがトップに就任した後、リバイバルプランで国内工場の閉鎖や系列破壊などリストラを断行しました。企業としては復活しましたが、多くの国内雇用が失われました。これまで雇用維持にも税収増にも貢献してこなかった日産に、「もっと雇用が減ったら困るから」という理由で税金を投入するのは、合理的ではありません。 経営姿勢ではもう一点、カルロス・ゴーン元CEOの逮捕・国外逃亡や日本側の経営陣の姿勢に厳しい視線が注がれています。周知の通りカルロス・ゴーンは、日産を食い物にして蓄財に励み、揚げ句の果てには日本の司法の手を逃れてレバノンに逃亡しました。 こうしてみると、同じように政府保証を受けたといっても、国民の「まあ致し方ないかな」という納得感は、日航と日産では雲泥の差があるのです』、「納得感は、日航と日産では雲泥の差がある」、同感である。
・『「日産の債務保証」を政府が引き受ける理由  今回、政府が日産の債務保証を引き受けたのは、コロナショックに直面し、日産の倒産、部品メーカーなどの連鎖倒産、それらによる大量の失業発生、という危機的な事態を懸念してのことでしょう。日本政策投資銀行が融資に応じないと日産の資金繰りが厳しくなる恐れがあり、日本政策投資銀行の判断で融資を決めたようです。 菅政権とすれば、資金援助で日産が立ち直り、融資が無事に返済され、数年後に「何事もありませんでした」という結末を迎えたいところ。 しかし、日産は本当に立ち直るのでしょうか。日産は、コロナの影響が2月、3月の実質2カ月しかなかった2020年3月期決算で大赤字を計上している通り、近年、そもそも危機的な経営状態に陥っています。 自動車業界はいまCASE(Connected(コネクテッド)・Autonomous(自動運転)・Shared & Services(シェアリングとサービス)・Electric(電動化))という100年に一度の大変革期を迎えています。 CASEの流れに乗った米テスラが大躍進し、この8月に株式時価総額でトヨタを上回りました。一方、流れに乗り遅れた自動車メーカーは、淘汰されつつあります。現在販売台数世界一のトヨタですら、安泰ではないと言われます。 かつて「技術の日産」と自他共に認めた日産ですが、ゴーン政権以降では短期の収益改善のためにコストダウンを優先し、研究開発など先行投資を怠りました。その結果、CASEへの対応で後手に回り、一部報道では親会社ルノーとともに、自動車業界で完全に「負け組」、淘汰される側とみなされています。 今回の資金援助で、日産はしばらく延命することができるでしょう。コロナが終息すれば、販売が上向くかもしれません。ただ、CASEに対応して抜本的な経営改革を進めないと、グローバル競争に敗れ、数年後に1998年のような経営危機を再び迎える可能性があります』、「抜本的な経営改革」は生き残りの必須の条件だ。
・『もし日産が破綻したらどうなる?  もしも日産が破綻したらどういう影響があるでしょうか。雇用・地域社会・金融市場に悪影響が及ぶことが想定されますが、それだけではありません。菅新首相の政権運営、ひいては政治生命を脅かすことも考えられます。 菅義偉氏は、安倍内閣の官房長官として今回の政府保証に一定の関与をしたと思われます(2018年にゴーンが逮捕されたときは、なぜか日産の川口均専務執行役員が菅氏に陳謝に訪れました)。 国民負担が発生したら、結果責任を問われます。もちろん、そうならないように菅氏は、あらゆる手を打つはずです。日産の本社は横浜市西区で、菅首相の神奈川2区のお膝元。菅氏は何としても破綻を回避しようと、追加で資金援助をするでしょう。すると、ますますこの問題が巨大化し、泥沼化していきます。 仮に追加の資金援助によって日産が破綻を免れても、国民から総スカンの日産を救済すると、国民の猛反発を招き、選挙を戦えなくなります。つまり、日産問題で、菅氏の政治生命が脅かされる可能性があるのです。 また、日産が経営改革に成功して立ち直っても、問題は終わりません。他の大企業が経営危機に陥ったらどう対応するか、という大きな問題があります。 コロナの影響が長引いていることから、今後、中小・零細企業だけでなく、大企業でも経営難に陥ることが考えられます。日産を助けた手前、他の大企業から支援を要請されたら、政府は拒否しにくいことでしょう。経営が厳しくなると国に助けを求めるというのが当たり前になり、収拾がつかなくなります。「なぜ大企業だけ助けるんだ」という国民の反発も増します。 1998年の経営危機、ゴーン改革による復活、ゴーン逮捕と逃亡とこの20年以上、経済界にとどまらず社会の注目を集めた日産。2度目の復活劇を果たすのか、民主党政権を揺るがした日航のように、菅新政権を揺るがす「第2のJAL」になるのか、ますます目が離せません』、「日産の本社は横浜市西区で、菅首相の神奈川2区のお膝元」、「日産問題で、菅氏の政治生命が脅かされる可能性がある」、今後の展開が大いに注目される。
なお、三菱自動車では、益子修前会長が8月7日に突然退任、8月27日直後に心不全で死亡した。三菱グループが後任を送るのかも注目点だ、
タグ:死亡 東洋経済オンライン 三菱自動車 日刊ゲンダイ 益子修会長 日沖 健 日産・三菱自・ルノー問題 (その3)((日産が巨額赤字 「大リストラ計画」にみる猛省 生産能力2割減 日米中に経営資源を集中、日産がシャープよりも「悲惨な末路」をたどりかねない根拠、「日産に巨額税金投じる」政府の怪しすぎる挙動 なぜ一企業に1300億円もの政府保証するのか?) 「日産が巨額赤字、「大リストラ計画」にみる猛省 生産能力2割減、日米中に経営資源を集中」 部品メーカーからの「上納」はもう限界 「全方位戦略」から決別 3社間でのかなり踏み込んだ役割分担 ライバルと同水準の研究開発費を確保 今回、3社が明確に担当を決めたことで主導権争いに時間を取られるリスクを減らせられる。現場の社員もかなり動きやすくなるはずだ 呉越同舟の中で、エゴをどう抑えるか 井上学 「日産がシャープよりも「悲惨な末路」をたどりかねない根拠」 経済産業省がホンダと経営危機に陥っている日産自動車の経営統合を両社に働きかけた まるで子供のおつかいレベルの交渉 ホンダと経営統合すれば共倒れの恐れも 日産の切り捨てを真剣に検討しているはずだ 日産を買いたがる会社はあるのか 筆頭は中国の自動車メーカー 「 「日産に巨額税金投じる」政府の怪しすぎる挙動 なぜ一企業に1300億円もの政府保証するのか?」 日本政策投資銀行が5月に決めた日産自動車への融資1800億円のうち、1300億円に政府保証をつけていた 日産と日航の「最大の違い」 納得感は、日航と日産では雲泥の差がある 「日産の債務保証」を政府が引き受ける理由 CASEに対応して抜本的な経営改革を進めないと、グローバル競争に敗れ、数年後に1998年のような経営危機を再び迎える可能性があります もし日産が破綻したらどうなる? 日産の本社は横浜市西区で、菅首相の神奈川2区のお膝元 日産問題で、菅氏の政治生命が脅かされる可能性がある 三菱グループが後任を送るのかも注目点
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医療問題(その25)(大前研一「アフターコロナは遠隔診療を新常識にせよ」 オンライン診療が日本で遅れるワケ、安倍政権は厳しい医療費抑制策を復活させた 日本福祉大の二木立名誉教授に聞く医療政策、東京女子医大病院「400人退職」の裏にある混沌 医療スタッフのボーナスをカットした本当の訳) [生活]

医療問題については、5月11日に取上げた。今日は、(その25)(大前研一「アフターコロナは遠隔診療を新常識にせよ」 オンライン診療が日本で遅れるワケ、安倍政権は厳しい医療費抑制策を復活させた 日本福祉大の二木立名誉教授に聞く医療政策、東京女子医大病院「400人退職」の裏にある混沌 医療スタッフのボーナスをカットした本当の訳)である。

先ずは、プレジデント 2020年6月12日号が掲載したビジネス・ブレークスルー大学学長の大前 研一氏による「大前研一「アフターコロナは遠隔診療を新常識にせよ」 オンライン診療が日本で遅れるワケ」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/35617
・『オンライン診療はなぜ日本で遅れているのか  2020年4月13日から初診患者のオンライン(遠隔)診療が解禁された。新型コロナウイルス感染症が拡大する中、感染拡大を予防し、医療崩壊を防ぐための特別措置として、感染が収束するまでに限定して、初診患者へのオンライン診療が公的医療保険の対象になったのだ。 オンライン診療とは、パソコンやスマートフォン、タブレット端末などの画像通話機能を活用して診療するシステムのことだ。診療予約から実際の診断、決済までネット上で完結するので、患者は病院に出向く必要は一切ない。当然、院内感染のリスクもない。 オンライン診療はアメリカやカナダなど国土が広く、医師や医療機関へのアクセスが困難な患者が発生しやすい国で早くから発達してきた。電子政府化を進めて今や電子カルテの普及率が100%に達しているフィンランドなども、オンライン診療の先進国といえる。 日本では離島や僻地でのオンライン診療から始まって、段階的に条件が緩められてきたものの、なかなか広がってこなかった。既得権を脅かされることを嫌う医師会の圧力もあるのだが、最大の理由は医師法の壁である。 「医師は、自ら診療しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し……または自ら検案をしないで検案書を交付してはならない」 医師法第20条にこうある。いわゆる「無診察治療」の禁止を定めた条文で、つまり触診なり、聴診なり、問診なり、医師は自分で「診察」したうえで、治療や処方をしなければならないのである。 そもそも無診察治療が禁じられている理由は、患者に適切な医療サービスを提供するためだ。たとえば、問診は電話でも可能だとしても、患者の顔色や容態を視診したり、あるいは同じ部屋で対面して触診や聴診してみなければ、正しい診断を下して処方することができない場合もある。 その後、2018年度の診療報酬改定で「オンライン診療料」が創設されて、オンライン診療の保険適用が始まった。ただし、健康保険が適用される「保険診療」の場合、初診は対面診療に限られてきた。 ということで、情報通信技術(ICT)が日進月歩の進化を遂げているにもかかわらず、日本ではオンライン診療がなかなか広がってこなかったのだ。 今回のコロナ禍で医療現場が逼迫し、医療従事者と患者がリスクにさらされる状況になったために、オンライン診療の有用性が広く認知され、ようやく門戸が少し開いたといえる』、「コロナ禍」の思わぬ副産物だ。
・『門前薬局で待たなくてよくなる  20年4月7日に閣議決定された「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」で、パンデミックが収束するまでの間、初診でのオンライン診療を認める方針が示された。 解禁された20年4月13日以降、患者からオンライン診療を求められた医師は、診断や処方が可能と医学的に判断すれば、初診の患者でもオンライン診療が行える(初診料の自己負担額は3割負担で642円)。処方には制限があって、麻薬性の鎮痛薬や向精神薬などは認められていない。 また患者のなりすましや、虚偽の申告による処方を防止するために、受診する患者、診察する医師双方ともに顔写真付きの身分証明書や保険証などによる本人確認を行うことが実施要件になっている。 今後、厚労省はウイルス感染の状況、医療現場での実用性や実効性、安全性などの観点から3カ月ごとに検証を行うという。初診患者へのオンライン診療は時限的な措置にとどまって、対面医療を補完するツールに戻るのだろうか。私はそうは思わない。アフターコロナの新常識として定着する可能性は少なくないと見ている。 オンライン診療で薬の処方や受け取りはどうなるのか。薬は医師が書いた処方せんに則って調剤される。処方には病院の中で薬が処方される「院内処方」と、病院が発行する処方せんを調剤薬局に持ち込んで薬を受け取る「院外処方」がある。 最近は院外処方が圧倒的に多い。院外処方にすれば、病院としては薬剤師を雇わずに済むし、院内に薬局用のスペースを設けたり、薬の在庫を持つ必要もなくなるからだ。 病院と院外薬局の蜜月関係もある。病院前にある院外薬局は「門前薬局」とも呼ばれるが、病院と裏でつながっていることが多い。病院はキックバックをもらったり、接待を受けている、という指摘もある。 さて、今回の「コロナ特例」では、初診患者へのオンライン診療解禁とともに、薬剤師による電話などでの服薬指導も解禁された。処方された薬を自宅に送ってもらうことも初診から可能になった。 院外処方の場合でいえば、オンライン診療を受けた後に処方せんの原本が自宅などに送られてきて、それを持って調剤薬局に行って薬を処方してもらう、というのがこれまでの手順だった。「医師は患者に処方せんの原本を提供しなければならない」という決まりがあるからだ。 しかし今回の特例では、オンライン診療を受けた患者の希望する薬局に病院がファクシミリなどで処方せんの情報を送って、それに基づいて薬局が薬を調剤できるようになった。薬ができたら薬局は患者に電話などで連絡を入れて、服薬指導が必要な場合はそれを行ってから、郵送などで薬を送付する。患者はわざわざ薬局に出向かなくていいのだ。 処方せんの原本は、病院と薬局の間でやりとりしてまとめて保管しておく。会計は後日に来局して支払ったり、代金引き換えやクレジットカードなども利用できる。 これもあくまで新型コロナウイルス感染症の流行が収まるまでの特例措置だが、気が気でないのは門前薬局だろう。こうした院外処方が定着して身近な薬局に処方せん情報を送ってもらいたいという患者が増えたら、高い地代や高いコミッションを支払って病院のそばで薬局を経営する“うまみ”がなくなるからだ』、恒常的措置にする場合でも、「門前薬局」の既得権は考慮する必要はないだろう。
・『アメリカではAmazonが薬を届けてくれる  米国サンフランシスコに「プラクティスフュージョン」という電子カルテを管理するクラウドサービスを無料で提供している新興企業がある。この会社は全米の開業医に声を掛けて、約15万の開業医と提携した。開業医が高額な電子カルテのシステムを導入するのは厳しい。それがタダで使えるのだから、開業医がこぞって導入するのも当然だ。 プラクティスフュージョンがどこから収益を得ているかといえば、薬を売る側である。同社の電子カルテシステムを使えば、患者のスマホに診療データや処方せんが送られてくる。必要な薬が近場のどのドラッグストアで売っているかまで表示されるのだ。 今やプラクティスフュージョンのシステムは総合医療の巨大プラットフォームとなり、アメリカの医療システムは激変した。 これに目を付けたのがアマゾンである。アマゾンは18年に「ピルパック」という新興のオンライン薬局を買収した。アメリカは今やプラクティスフュージョンから引き出した処方せんをアマゾンに転送するだけで薬が届く時代になっているのだ。しかも月10ドル払ってアマゾンプライム会員になれば配送無料。月に何度でもOK。さらに「当日お急ぎ便」や「日時指定便」といったサービスまで無料とくれば、ユーザーが殺到しないわけがない』、日本では「アマゾン」経由で薬を受け取るのは、規制上無理だろう。
・『コロナ危機が日本医療システムに与えた、数少ないプラスの貢献  日本薬剤師会が一番恐れているのは、アマゾンが日本でも薬の流通に入り込んでくることだろう。もちろん既得権益と規制の壁は相当に高く、容易には入り込めない。それでも今回のコロナ禍によって、世界から遅れに遅れた日本の医療システムに小さな風穴が開いたのは確かだ。 私はコロナ危機を奇貨としてオンライン医療を患者中心の考え方に根本から見直すべきと考える。カルテが患者のものだ、という認識からクラウド上にすべての個人医療情報を集める。病院が替われば診断や検査をやり直すということも禁じる。遠隔診療のためには医者側が使うAIの充実も欠かせない。検査結果が出たらどのような治療をするべきか、医者の判断を側面支援するデータベースを構築する。 アメリカでは野戦病院で診断結果が出ると、治療に関しては専門家がいない場合が多いので20年も前からこのようなシステムを使っている。医者の処方もすべて個人医療情報システムに入力させ、これを時系列的に追跡できるようにする。このようなデータベースをお互いに共有すればオンラインでも“初診”ということはなくなる。すべての患者は日本の医療システムデータベースでは既存の患者、となるからだ。 今までの医者・病院という提供者の論理から患者中心のシステムに転換する。これができれば、長い間を経た後に、コロナ危機が日本医療システムに与えた数少ないプラスの貢献、と見返す日が来ることを期待しよう』、「医療システムデータベース」は確かに効率的だが、ハッカー攻撃などに抵抗力がなければ、重要なプライバシー情報が流出するリスクがある。

次に、9月18日付け東洋経済オンライン「安倍政権は厳しい医療費抑制策を復活させた 日本福祉大の二木立名誉教授に聞く医療政策」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/376217
・『新型コロナウイルス対策への課題が山積されたまま、安倍晋三・前首相は退陣を表面した。コロナ禍によって医療への関心は高まっているが、安倍政権下で日本の医療界はどのように変わったのか。  安倍政権の7年8カ月を振り返る連続インタビューの4回目は、医療経済や医療政策が専門の二木立・日本福祉大学名誉教授。安倍政権の医療政策を振り返ってもらうとともに、9月16日に発足した菅政権の課題を聞いた(Qは質問、Aは二木氏の回答』、興味深そうだ。
・『ステルス作戦で医療費を抑制  Q:二木さんは、安倍政権が厳しい医療費抑制政策を復活させたと指摘していますが、あまり一般には知られていませんね。 A:今回、私自身も調べてみて驚いた。アベノミクスの成果かどうかは別にして、第2次安倍政権で国内総生産(GDP)の成長率は上昇した。だが、国民医療費の伸び率は、直前の民主党政権の時はもちろん、その前の3代の自民党政権のときよりも低い。医療費を抑制したといわれる小泉純一郎政権の時代でさえ、医療費の対GDP比は微増していた。 経済の伸びに合わせて医療費も大きくなるというのが医療経済学の常識だが、第2次安倍政権でその関係が完全に失われているのは、歴史的にも極めて異例なことだ。 安倍政権が診療報酬全体のマイナス改定を断行した2014年度、2016年度、2018年度の医療費伸び率は改定前より明らかに低下している。このことは、診療報酬の引き下げがストレートに医療費に影響していることを示している。 Q:小泉政権と安倍政権の違いは何だったのでしょうか。 A:小泉政権はいわば劇場的な手法で、日本医師会や自民党の厚労族などを「抵抗勢力」に見立てて敵をつくり、医療分野への市場原理の導入や患者負担の大幅増加を推し進めようとした。 それに対して、安倍政権の医療費抑制政策には小泉政権のような派手さはまったくない。ステルス(秘密)作戦のように、4回あった診療報酬改定ですべて下げて医療費抑制の実を取った』、「経済の伸びに合わせて医療費も大きくなるというのが医療経済学の常識」、医療業界の肩を持った主張だ。下記にみるように医療費と介護費のGDP比は一貫して上昇し、2018年で59.9%とOECDで6番目に多い(日医総研リサーチエッセイ77)。今後の高齢化を踏まえれば、抑制が必要なのは明らかだ。
https://www.jmari.med.or.jp/download/RE077.pdf
・『Q:新型コロナウイルス禍で、医療機関の経営難が広く報道されています。厳しい医療費抑制政策が影響したのでしょうか。 A:厳しい医療費抑制政策が2013年度以降、7年間も続き、医療機関、特に民間の急性期病院の利益率は急減した。福祉医療機構のデータによると、急性期の民間病院の経常利益率は小泉政権のときに0%までに低下した。民主党政権で3%台まで持ち直したと思ったら、安倍政権の医療政策で再び下がり、2016年には0.6%まで低下した。 これではとてもではないが内部留保を蓄積できない。そこに新型コロナが襲い、収入減と費用増によって多くの病院が経営危機に直面している』、「民間の急性期病院の利益率は急減」は確かに問題だが、要因をもっと詳しく分析する必要がある。

第三に、7月16日付け東洋経済オンラインが掲載した ジャーナリストの岩澤 倫彦氏による「東京女子医大病院「400人退職」の裏にある混沌 医療スタッフのボーナスをカットした本当の訳」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/363372
・『東京は、7月になって新型コロナウイルスの新規感染者が連日200人を超え、16日には過去最高となる280人以上の感染を確認。すでに「第2波」に突入した状態だ。 中でも新宿・歌舞伎町は、ホストクラブやキャバクラ、ライブハウスでの集団感染が相次ぎ、新型コロナの「震源地」として警戒されている。 この歌舞伎町から、東へ約1キロメートルに位置する東京女子医科大学病院が、いま大きく揺れている。 新型コロナの診療にあたる、医師、看護師などの医療スタッフに対して、大学は夏のボーナスをゼロに。これに対して、約400人の看護師が一斉に退職の意向を表明したという。 新型コロナの感染拡大を、最後の砦で食い止める医療スタッフが、大幅に収入を減らされてしまう不条理。この背景に存在する、名門大学病院の知られざる実態を追った──』、新聞では簡単に報じられただけだったので、「実態」を是非知りたいところだ。
・『新型コロナと向き合う大学病院  女子医大病院の「総合外来センター」エントランス前には、武骨な白いテントが2つ並ぶ。 通院患者は、発熱やせきなと?の症状がある場合、ここで新型コロナの初期診断を受けなければならない。医師が必要と判断した場合には、PCR検査も行う。 しばらく見ていると、うつむき加減の中年男性を、看護師が別棟の関連施設に誘導していった。看護師が装着しているのは、立体的な形状の特殊なマスク。「N95」と呼ばれる飛沫感染を防止するタイプだ。 「うちの病院は、感染症指定医療機関ではないので、当初は新型コロナ患者を受け入れていませんでした。しかし、東京都から再三の要請を受けて、新型コロナ専用病棟を設置して、約30床のベッドを確保したのです。非常事態ですから当然の対応ですが、病院の経営的には打撃でしたし、マンパワー的にも大変です」 内情を証言してくれたのは、女子医大に勤務する関係者だ。新型コロナの患者は、1つの病室に1人が原則。そのため、病室の稼働率が悪くなり、収益が大きく圧迫されている。 国は新型コロナ患者の重症・中等症患者の病床に1日当たり4万1000円を補助するとしているが、収支が改善する効果はないという。 新型コロナ専用病棟の看護師として、各診療科から有志を集めたが、感染症の専門的なトレーニングを積んだ看護師は限られていた。 海外では診療中に、新型コロナに感染した医療関係者のケースが報じられ、看護師には精神的にも体力的にも強いプレッシャーがかかった。幼い子どもを持つ看護師も多く、互いに励まし合いながら立ち向かう日々。 ようやく感染拡大の第1波を乗り切ったところへ、大学側から職員に非情な通告が突きつけられた──。 「今期の上半期賞与は支給しない」 6月11日、団体交渉に臨んだ女子医大の労働組合に対して、大学当局はボーナスゼロの回答を行った。対象は、医師、看護師、検査技師から事務職まで全職員だ。 労働組合には、生活に対する不安と、大学当局に対する怒りや不信の声が寄せられた。 「奨学金の返金もできません。食費の確保もできません。生きていけません。毎日、不安で不安で、正直眠れないです」(20代・女性) 「説明もなしに、いきなりボーナス全額カットなんて詐欺もいいところ。職員はボランティアですか?」(20代・看護師) 「私たちが必死でやってきたことに、感謝すら感じていないのだと思い、本当に涙が出ます」(30代・看護師) 「どこまで頑張る職員を侮辱し、痛めつければ気が済むのですか?職員が病気になりますよ」(30代・医療技術者) 実は、ボーナスゼロには伏線があった。 新型コロナの第1波を受けて、外来患者が大きく減少したため、女子医大は職員の一部を「一時帰休」させた。 いわゆる自宅待機だが、その期間の給与は4割減。当然、職員からは反発の声が上がったが、方針は変わらなかった。 女子医大には、新宿の本院のほかに2つの病院があり、看護師だけで2206人が働く(女子医大HPより)。今回のボーナスゼロ回答を受けて、全看護師の5分の1にあたる約400人が退職の意向を示したという。 6月25日、再交渉に臨んだ労働組合に対し、大学当局の代理人である弁護士からは、神経を逆なでする発言が繰り返された』、「国は新型コロナ患者の重症・中等症患者の病床に1日当たり4万1000円を補助するとしているが、収支が改善する効果はない」、引き受けて損がないよう十分に補助すべきだろう。しかし、「大学当局」の姿勢は極めて高圧的だ。
・『「足りなければ補充するしかない」  組合:「女子医大よりも減収額が大きい大学でもボーナスは出ている」 大学:「減収と赤字は違う。うちは30億円の赤字だ」 組合:「中小の病院も赤字に苦しんでいる。それでも職員のことを考えて、借りてでもボーナスを支給しているところもある」 大学:「女子医大も借りて支給せよということですか。そんな不健全な経営は間違っているし、やるつもりもない」 組合:「看護師の希望退職者が400人を超えることについてどう考える?」 大学:「深刻だと思うが、足りなければ補充するしかない。現在はベッドの稼働率が落ちているので、仮に400人が辞めてもなんとか回るのでは。これは完全に経営の問題であり、組合に心配してもらうことではない」 今期、30億円の赤字になる、という弁護士の主張について、女子医大関係者に聞くと、意外なカラクリがあるという。 「30億円の赤字は、ボーナスを前年並みに支給した場合の推計値です。結局、ボーナスはゼロだったわけですから、30億円の赤字は理屈に合いませんね」 女子医大関係者は、看護師の離職について、大学側の認識を明かした。 「毎年、ウチでは300人前後の看護師が入れ替わっています。若い看護師にブランド病院として人気が高く、キャリアを積んで比較的短期間で辞めていく人が多いからです」 また、若い看護師を次々に入れ替えるほうが、人件費は安く済むという現実もある。 実際、女子医大では来年度に向けて、すでに330人の看護師を募集していた。 ただし、今回は例年を超える大量の離職者が出ることが必至。現場にも悪影響が出ているという声が、労働組合に寄せられている。 「ただでさえ看護師が足りていないのに、ここから辞めてしまったら経験者もいなくなり、患者の安全も守れないでしょう」(30代・看護師) 「私たち看護職がいなくなったら、誰が看護をするんですか?看護の質も下がり、インシデント(※)の数は増えていませんか?このままでよいのですか?」(20代・看護師) (※)重大な事件・事故に発展する可能性がある事象やミス  同じ新宿区内にある東京医科大学病院では、ボーナスは例年と変わらず、さらにコロナ特別手当として医師、看護師などに月額2万円が支給されている。都内の別の大学病院でもコロナ手当があり、今夏のボーナスがゼロというところはない。 東京女子医大だけがなぜ違うのか。探っていくと、名門大学病院の知られざる「裏の顔」が浮かび上がってきた』、「「毎年、ウチでは300人前後の看護師が入れ替わっています。若い看護師にブランド病院として人気が高く、キャリアを積んで比較的短期間で辞めていく人が多いからです」、「東京女子医大」の強行な姿勢の背後には、思い上がりの強さがあるようだ。
・『名門大学病院の凋落を招いた、医療事故と同族経営  外科医の本田宏氏は弘前大学医学部を卒業後、1981年に女子医大の医局に入った。 「心臓、肝臓、腎臓などの外科手術で、日本トップレベルの医者たちが女子医大に集まっていました。当時、自他共に認める名門大学病院だったのです。ここで私は肝臓の移植医になるつもりでした。でも、実際に入ってみると、まるで西部劇のような大学で、給料も安く、若手の医者や看護師はディスポーザブル(使い捨て)のように扱われていたのです」 当時、ガチガチの“男社会”だった日本の医療界。東京女子医大でさえ、生え抜きの女医が教授になるケースは多くなかった。 そこで、腕に自信のある医者たちが、全国各地から一旗あげようと東京女子医大に集まっていたのである。これが本田医師の目には「西部劇」のように映ったという。 腎臓移植や人工心肺装置の開発などで、女子医大は日本を代表する大学病院の地位を確立。1日の外来患者数は、約4000人と人気が高かった。 しかし、名門病院のブランドは、2001年に起きた心臓手術の死亡事故を契機に一変する。 2人の医師が逮捕され、執刀医(講師)は患者のカルテを改ざんした証拠隠滅罪で有罪判決が確定。もう1人の医師(助手)は、女子医大による内部報告書で、事故原因の責任を押しつけられたが、刑事裁判では無罪判決となった。裁判の過程で、組織ぐるみの隠蔽工作が明らかになり、後に女子医大は助手だった医師に謝罪と損害賠償を支払っている。 ガバナンスの欠如を重視した厚生労働省は、女子医大の特定機能病院の指定を取り消した。外来患者数が急減した女子医大は、一気に赤字経営へと転落したのである。 特定機能病院の指定は2007年に再承認されたが、2014年に再び重大な死亡事故が発覚する。 2014年、女子医大のICU(集中治療室)で治療中の2歳児が、プロポフォールという鎮静薬を大量投与され、3日後に死亡した。プロポフォールは、ICUで人工呼吸中の子どもに使用を禁止されていたことから、女子医大の管理責任が問われた。 さらに女子医大では、ほかに63人の子どもにもプロポフォールを投与、そのうち12人が投与後3年以内に死亡していたことが明らかになる(女子医大側は、投与と死亡の因果関係を否定)。 この問題をめぐって、女子医大の理事長と学長の内部対立をさらけ出し、遺族への対応のまずさも目立った。 「女子医大は2度死んだ」と、勤務する医師が嘆くほど、2つの事故によって、かつての栄光は地に堕ちたのである。 厚生労働省は、改めて女子医大の特定機能病院の承認を取り消した。外来患者の減少と評価の高い看板医師の流出が起こり、女子医大は3期連続の赤字に逆戻りする。経営立て直しのために、人件費の抑制が行われ、職員のボーナスは、2013年から2016年までの3年間で、最大123万円も減額された(労働組合調べ)。このとき、労務担当理事として大なたを振るったのが、去年から理事長に就任している岩本絹子氏である。 「岩本氏は、東京・江戸川区の産婦人科クリニックで院長をしていましたが、創業者一族として女子医大の運営に乗り出してきました。厳しい人で、書類を投げつけるときもあるそうです。誰も意見できない雰囲気で、まるで独裁者だと揶揄する職員もいます」(女子医大関係者)』、「外科手術で、日本トップレベルの医者たちが女子医大に集まっていました。当時、自他共に認める名門大学病院だった」、のに、「2つの事故によって、かつての栄光は地に堕ちた」、「経営立て直しのために、人件費の抑制が行われ、職員のボーナスは、2013年から2016年までの3年間で、最大123万円も減額」、「労務担当理事として大なたを振るったのが、去年から理事長に就任している岩本絹子氏」、「創業者一族として女子医大の運営に乗り出してきました」、「まるで独裁者だと揶揄する職員も」、病院のガバナンスがまるで機能してないようだ、これを放置している当局の姿勢も問題だ。
・『人件費切り詰めの一方で施設整備に巨額費用投下  岩本理事長に対する女子医大職員の反発は大きい。それは、ボーナスカットなど強引に人件費を切り詰める一方で、総額1000億円と言われる、莫大な資金を投入して、大学施設の建て替えや移転などの再整備を進めているからだ。 極めつきは、今年2月に完成した新校舎の改修工事である。職員によると、6億2000万円をかけて、新たに理事長室などを設置しているという。 「赤字だったら理事長室にかけるお金もないはず。コロナに便乗して、本当はもらえるはずのお金を経営に回しているだけ。職員を駒扱いにして働かせるだけ働かせて、報酬なしなんてありえません」(30代・看護師)」 「理事諸室の工事さえ始めさえしなければ、億単位の無駄遣いは減らせたと思います」(20代女性)※労働組合に寄せられた投稿より 学内では、岩本理事長の強気な大学運営を可能にしているのは、自民党との強いパイプだと言われている。 批判を浴びている新校舎の竣工式には、二階俊博幹事長が駆けつけた。ちなみに、二階氏の母親は女子医大出身の医師だったという。 日本医療労働組合連合会の調査によると、夏のボーナスについて回答した全国の医療機関338のうち、約3割が去年より支給額が下がった。 ただし、「ボーナスゼロ」は、女子医大のみ。 新型コロナによって通院を控える患者が多く、大半の医療機関が前年より収益が激減している現実もある。 民間の船橋二和病院(千葉県)は、新型コロナの対応で発熱外来や専用病床を用意するなど、職員たちは対応に追われてきた。しかし、夏のボーナスは、前年の1.5カ月分から、0.9カ月に減額されたという。 一方、約100億円の費用をかけて、病院の建て替え計画は予定どおり進む。 このまま黙っていると、いずれボーナスがなくなるかもしれない。強い危機感から、たった9人の小さな労働組合が、今月10日にストライキを決行した。 「自治体から要請されて、頑張って新型コロナの対応をした。病院の減収分を自治体は補填してくれないので(病院が)自前でやるしかない。だからボーナス削減、というのが病院経営者の言い分。 でも、『なぜ私たちのボーナスを削るの?』という疑問があって、今回のストライキ行動では、千葉県や船橋市にも要請を行いました」(書記長の内科医・柳澤裕子氏) ▽人件費を削られる医療スタッフにも生活がある(「いま医療機関は、どこも人件費を削らないと経営できない状況になっています。でも、職員たちにも生活があるわけです。高校生や大学生の子どもには学費、親の介護。住宅ローンがあれば、ボーナス期にたくさん支払いがあるわけで、本当に切実な問題なのです」(組合員の医師・関口麻理子氏) 茨城県つくば市の地域医療を支える「坂根Mクリニック」。 坂根みち子院長によると、外来患者の受診控えなどの影響で、去年同期と比較して利益は3割減。それでも、ボーナスは内部留保を取り崩して、例年どおり支給した。 「新型コロナで、職員は大変な思いをしてきたから、ボーナスを出すのは当然のことだと思っています。国は診療所に対して1人当たり5万円の慰労金を出すそうですが、私たちに必要なのは、1回きりの慰労金ではなく、持続可能なシステムにするための抜本的な診療報酬の見直しです」(坂根院長) 厚生労働省は医療費の削減に躍起だが、相次ぐ診療報酬の切り下げで、医療機関はどこもギリギリの経営を続けてきた。 新型コロナの「第2波」で、とどめを刺されて経営破綻する医療機関が続出する可能性も出てきた。欧米で起きた医療崩壊は、すぐそこに迫っている。 ところで、女子医大関係者によると、大学当局は銀行から借り入れして夏のボーナスを支給する方向で準備を進めているという。 医療スタッフたちの苦労が、少しでも報われることを願うばかりだ』、「人件費切り詰めの一方で施設整備に巨額費用投下」、経営のガバナンスはデタラメのようだ。「自民党との強いパイプ・・・新校舎の竣工式には、二階俊博幹事長が駆けつけた。ちなみに、二階氏の母親は女子医大出身の医師」、これでは厚労省など手も足も出ないのも納得である。「大学当局は銀行から借り入れして夏のボーナスを支給する方向で準備を進めている」、目先は混乱を収拾できても、「二階氏」がバックにいるのであれば、ガバナンスの問題解決は期待できなそうだ。
タグ:医療問題 大前 研一 東洋経済オンライン プレジデント 東京女子医科大学病院 (その25)(大前研一「アフターコロナは遠隔診療を新常識にせよ」 オンライン診療が日本で遅れるワケ、安倍政権は厳しい医療費抑制策を復活させた 日本福祉大の二木立名誉教授に聞く医療政策、東京女子医大病院「400人退職」の裏にある混沌 医療スタッフのボーナスをカットした本当の訳) 「大前研一「アフターコロナは遠隔診療を新常識にせよ」 オンライン診療が日本で遅れるワケ」 オンライン診療はなぜ日本で遅れているのか 門前薬局で待たなくてよくなる アメリカではAmazonが薬を届けてくれる コロナ危機が日本医療システムに与えた、数少ないプラスの貢献 医療システムデータベース」は確かに効率的だが、ハッカー攻撃などに抵抗力がなければ、重要なプライバシー情報が流出するリスクがある 「安倍政権は厳しい医療費抑制策を復活させた 日本福祉大の二木立名誉教授に聞く医療政策」 ステルス作戦で医療費を抑制 経済の伸びに合わせて医療費も大きくなるというのが医療経済学の常識」、医療業界の肩を持った主張 「民間の急性期病院の利益率は急減」は確かに問題だが、要因をもっと詳しく分析する必要 岩澤 倫彦 「東京女子医大病院「400人退職」の裏にある混沌 医療スタッフのボーナスをカットした本当の訳」 夏のボーナスをゼロに。これに対して、約400人の看護師が一斉に退職の意向を表明 新型コロナと向き合う大学病院 国は新型コロナ患者の重症・中等症患者の病床に1日当たり4万1000円を補助するとしているが、収支が改善する効果はないという 引き受けて損がないよう十分に補助すべきだろう 「大学当局」の姿勢は極めて高圧的 足りなければ補充するしかない 「毎年、ウチでは300人前後の看護師が入れ替わっています。若い看護師にブランド病院として人気が高く、キャリアを積んで比較的短期間で辞めていく人が多いからです 名門大学病院の凋落を招いた、医療事故と同族経営 外科手術で、日本トップレベルの医者たちが女子医大に集まっていました。当時、自他共に認める名門大学病院だった 2つの事故によって、かつての栄光は地に堕ちた 経営立て直しのために、人件費の抑制が行われ、職員のボーナスは、2013年から2016年までの3年間で、最大123万円も減額 労務担当理事として大なたを振るったのが、去年から理事長に就任している岩本絹子氏 創業者一族として女子医大の運営に乗り出してきました まるで独裁者だと揶揄する職員も 病院のガバナンスがまるで機能してないようだ 人件費切り詰めの一方で施設整備に巨額費用投下 自民党との強いパイプ 新校舎の竣工式には、二階俊博幹事長が駆けつけた。ちなみに、二階氏の母親は女子医大出身の医師 厚労省など手も足も出ないのも納得である 大学当局は銀行から借り入れして夏のボーナスを支給する方向で準備を進めている 目先は混乱を収拾できても、「二階氏」がバックにいるのであれば、ガバナンスの問題解決は期待できなそうだ
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アベノミクス(スガノミクス)(その36)(安倍首相辞任 アベノミクスの2つの大罪、アベノミクスは成功したのか? 海外メディアの安倍政権への辛口評価、弱者を救済せず、財政ファイナンスの恩恵は大企業へ……「下心」に支えられたアベノミクス その全てが罪だった、ポストコロナの経済と菅内閣が直面する課題 BNPパリバ・エコノミスト河野龍太郎氏に聞く) [国内政治]

アベノミクスについては、8月28日に取上げた。今日は(スガノミクス)も加えて、(その36)(安倍首相辞任 アベノミクスの2つの大罪、アベノミクスは成功したのか? 海外メディアの安倍政権への辛口評価、弱者を救済せず、財政ファイナンスの恩恵は大企業へ……「下心」に支えられたアベノミクス その全てが罪だった、ポストコロナの経済と菅内閣が直面する課題 BNPパリバ・エコノミスト河野龍太郎氏に聞く)である。

先ずは、8月26日付けNewsweek日本版が掲載した財務省出身で慶応義塾大学準教授の小幡 績氏による「安倍首相辞任、アベノミクスの2つの大罪」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/obata/2020/08/2_1.php
・『<アベノミクスはイメージ的には大成功を収めたが、経済的には突出して異常な金融緩和と新型コロナ対策のバラマキで日本の将来に大きな禍根を残した> 安倍首相が辞任を発表した。7年8カ月にわたる政権が変わることから、経済政策も大きく変わる可能性があり、ここで、これまでの安倍政権の経済政策の総括と今後の見通しを議論してみたい。 安倍政権の経済政策は、アベノミクスと呼ばれ、政権の最大のセールスポイントとなった。セールスポイントとなったからには、何らかの成功を収めたと言えるだろう。では何に成功したのか? それは、人々が、それなりに成功した、と思っていることだ。つまり、成功した、と思わせることに成功した、ということだ。 実は、政策の成功については、評価基準がない。ベンチマークもない。唯一ある数字は、支持率だが、支持率は、スキャンダルの影響など、政策評価から見れば、雑音の影響が大きすぎて、支持率では評価できない。結局、印象論、評判に過ぎないのである。アベノミクスに関しては、少なくとも短期的には経済は良くなったよね、という評価が定着している。これがすべてだ』、「成功した、と思わせることに成功した」、いかにも「小幡」氏らしい。
・『ネーミングが全て  では、なぜ、人々は、成功したと思っているのであろうか。 第一に、アベノミクス、というネーミング、マーケティングの勝利である。アベノミクスという言葉は、日本国内で流行語大賞に選ばれただけでなく、世界中で広まった。中身はどうであれ、有名になったもの勝ちである。 第二に、株価を上げた。有名になったアベノミクス。株価が上がった。これで成功確定である。とりわけ、世界の評判では、国内の経済の状況はよくわからない。日本はもともと失業率は低いし、平和である。目に見える一番の数字は株価である。世界中が、アベノミクスは成功したのだと認識した。 これがアベノミクスのすべてだ。 成功だ、と人々に思わせることに成功した。だから成功なのだ。 その手段は株価上昇に的を絞り、とにかく株価を上げることを優先した。そして、それにも成功した。 いみじくも、安倍氏は、辞任の記者会見で、政治は結果を出すことがすべて、と言った。少なくとも、株価という意味では結果を出し、そして、人々に、少なくとも短期的には成功だと思わせる、という結果を出した。 別の言い方をすれば、民主党政権も、自民党の他の政権も、そして、日本だけでなく、今や世界中のほぼすべての政権はポピュリズムだ。どうせポピュリズムなら、ポピュラーになる、人気が出る、支持率を得る、選挙で勝つ、その結果が出たほうが望ましい。その前の民主党政権は、その意味で最悪の結末に終わった。ポピュリズムでありながら人気が最低になって政権を失った。その意味で、小泉政権、第二次安倍政権は優れていた、と言えるだろう。逆に言えば、アベノミクスの成功はそれにつきる。 中身にも少し触れよう。 アベノミクスの三本の矢だが、成長戦略は成功しなかった、というよりも実質的には何もなかった。しかし、ほかのすべての政権も成長戦略はなかったし、成功したことももちろんなかったので、特に非難すべきことでもない。 財政政策は、基本的にバラマキ政策であるが、その割には、安倍政権の望みではなかったかもしれないが、結局消費税を5%から10%に引き上げた。他の政権だったとしても、増税は嫌がっていたはずなので、それに比べればましだったと言えるかもしれない。軽減税率は導入しなかった方がよかったが(これは経済学者、エコノミストのコンセンサス。今後12%に上げるよりは軽減税率を廃止した方がましだ、とすべての経済学者が思っている)、これは公明党の強い主張であり、また国民も強く望んだことなので、ほかの政権であっても同じであっただろうから、プラスの評価はできないが、特に非難すべきことでもない』、「軽減税率は導入しなかった方がよかったが・・・特に非難すべきことでもない」、確かにその通りだ。
・『実態は「クロダノミクス」  問題は、三本の矢の、一本目、金融政策である。これがアベノミクスのすべてであり、アベノミクスとは、中身は、異常な金融緩和による、円安、株高政策だったと要約してしまってもよい。だから、私は、アベノミクスではなく、日銀黒田総裁によるクロダノミクスだ、と呼んでいる。そして、これが株価の上昇をもたらし、成功という評価をもたらしたが、同時に、長期的には、日本経済にもっともダメージを与える政策であり、これがアベノミクスの最大の罪である。 今後、必ず、金融市場は破綻し、金融市場が破綻すれば、日本経済も大きく落ち込む。このリスクとコストを先送りして、短期的に株価を上げて、目先の支持率を上げたのがアベノミクスであった。 確かに、日銀の異次元緩和と同様に、米国も欧州も量的緩和を行った。しかし、日銀と彼らが決定的に異なったのは、米国も欧州も量的緩和の出口を準備したうえで、緩和を行ったことであり、実際に、米国は出口を一回出たし、欧州も出口への道筋を明確に示した。日銀だけが、出口の議論は時期尚早と言って、一切、公式に議論しないばかりか、理論的にも出口のないほどの異常な緩和を行ってきた。そして、それは今も続いている。これがアベノミクスの最大の罪だ』、「今後、必ず、金融市場は破綻し、金融市場が破綻すれば、日本経済も大きく落ち込む。このリスクとコストを先送りして、短期的に株価を上げて、目先の支持率を上げたのがアベノミクスであった」、「日銀だけが、出口の議論は時期尚早と言って、一切、公式に議論しないばかりか、理論的にも出口のないほどの異常な緩和を行ってきた」、全く同感である。
・『そして、今年に入って、もう一つ、罪を犯した。それは、新型コロナ対策と称して、財政のバラマキを行ったことである。これが日本政府財政の破綻を決定づけたし、それによる日本経済の停滞のリスクを高めた。 日本の新型コロナの流行は、欧米諸国と比べ物にならないくらい小規模だった。なおかつ、経済的な行動制限も、ニューヨークやロンドン、北イタリアでは、完全な外出禁止であり、そうであれば、カネを市民に配ることは正当化されたが、日本では、自粛といいつつも、外出しようと思えば、いつでもどこにでも出かけられた。それでも感染が広がらなかったのは、そもそも感染の広がりが、欧米に比べれば、存在しなかったと言っていいくらいの小規模なものだったことにより、いずれにせよ、感染は広がらなかったのだ。死者が少なかったのは、外出の自粛ではなく、介護施設などでの自衛が欧米に比べて非常に上手くいった、個々の施設が努力し、優秀だったことに尽きる。 いずれにせよ、コロナ感染の被害は欧米に比べれば、はるかに小さかったのに、ばらまきは欧米並みだった。したがって、今後、感染が今まで広がらなかった分、第二波、第三波、そして、他の感染症の流行を含め、危機がやってくる可能性は欧米以上に高い。しかし、今回のコロナ対応で、バラマキを大盤振る舞いしてしまったために、次の危機ではばらまきたくでもカネがなく、感染を抑えられないか、または行動を制限できずに、危機が深まるリスクが高まってしまう。 これがアベノミクスの第二の罪だ。つまり、過度なバラマキを今回行ってしまったために、国民が甘えてしまい、自粛にはカネを政府に要求するという悪い政府へのたかり構造を作ってしまってことが、アベノミクスの第二の罪なのだ。 第一と第二の罪、金融緩和、財政バラマキによって、次の政権では財政破綻リスクが実現してしまう可能性を極めて高くしてしまったこと。それがアベノミクスの最大の罪である』、説得力溢れた鋭い主張である。

次に、9月5日付け米雑誌Forbes「アベノミクスは成功したのか? 海外メディアの安倍政権への辛口評価」を紹介しよう。
https://forbesjapan.com/articles/detail/36843/1/1/1
・『約8年におよぶ長期政権を率いてきた安倍晋三首相が8月28日、体調などを理由に辞意を表明し、誰が「ポスト安倍」の座に着くのか注目が集まっている。 石破茂元幹事長、岸田文雄政調会長に続いて、有力候補の一人である菅義偉官房長官は9月2日、自民党総裁選への出馬を表明した。新型コロナウイルス対策を最優先課題と位置付けた上で、経済政策に関しては「アベノミクスをしっかりと責任持って引き継いで、さらに前に進めていきたい」と明言した。 消費税増税の影響が残るなかで、新型コロナ危機による経済収縮が直撃し、日本経済は深い景気後退局面に入った。そんな中で、これから日本は経済の舵をどのように切っていくべきなのか、もう一度見直すべき時期に来ているのではないだろうか。 「大胆な金融緩和」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」の「3本の矢」を標榜し、安倍政権の代名詞であった「アベノミクス」について、海外の主要メディアはどう報じたのか。安倍首相の辞任表明以降の報道をまとめた』、興味深そうだ。
・『ブルームバーグ アベノミクスは「途中まで成功」  米の金融メディアであるブルームバーグは「Abenomics Era Ends With Japan’s Economy Back at Square One」のなかで、アベノミクスは「途中までは成功」と評価した。 黒田日銀総裁のもとで行われた超低金利政策と国債買い入れにより、長年のデフレからの脱却を果たすなど、アベノミクスは当初は成功していたと評価。また、消費意欲を高めるために、労働者の賃金上昇に積極的に取り組んだ点なども功績だとした。労働力の高齢化が進む中で、景気は緩やかながらも拡大を続け、観光業も円安や規制緩和に助けられ好況であったと振り返った。 しかしながら、インフレ率を目標の2%まで押し上げるには至らず、2016年の日銀によるマイナス金利政策の採用を転機に、金融緩和の影響も弱まっていったと分析。また、2019年10月に行われた2度目の消費増税については「非常にタイミングが悪かった」と指摘した。増税後にすぐさま大規模な台風が発生し、さらにその後、新型コロナ危機にも見舞われ一転して不景気に。約8年間のアベノミクスの時代が終わり「日本経済は振り出しに戻った」と総括した。 「今後の課題は、次期首相がアベノミクスの残りの改革課題に取り組めるかどうか。また、日本をデフレから一挙に脱却させることができるかどうかである」と述べたゴールドマン・サックス証券のキャシー松井副会長の言葉を紹介し、次の展開を注意深く見守る必要があることを示した』、「日本経済は振り出しに戻った」とは言い得て妙だ。
・『フィナンシャル・タイムズ アベノミクスは「成功しなかった」  英の経済紙フィナンシャル・タイムズは「Six Abenomics lessons for a world struggling with ‘Japanification’」のなかで、「アベノミクスは成功したのか」という問いに対してはっきりと「ノー」と答えている。理由としては、アベノミクスの中心的な目標はインフレ率を2%にまで引き上げることだったが、実際には1%程度にしか到達しなかったことが挙げられている。 とはいえ、アベノミクスが行ってきた金融緩和に関しては一定の評価を与えた。特に日銀が大量の資産買い入れに乗り出した2013年当初の「黒田バズーカ」は極めて効果的だったと指摘している。円安が日本の産業界に恩恵を与え、融資は増加し、日本は安倍首相時代に記録的な就業率を達成したと分析した。 問題点としては、まず消費増税が挙げられている。「アベノミクスが失敗したのは、2014年春に日本の消費税が5%から8%に引き上げられた日だった」と振り返り、2019年の10%への増税も含めて、安倍首相は日本を不況に陥れた責任があると批判。刺激を約束しておきながら、抑制をもたらしてしまったことが、アベノミクスが失敗した理由だと振り返った。 また抜本的な構造改革が果たされなかったことも失敗の原因として挙げられている。電力市場の自由化や、農協改革などを通じて一定の成果は見せたが、人口減少傾向にある日本社会の経済を拡大させるような改革には至らなかった。仮に「大規模な移民流入」に踏み切っていれば経済拡大の可能性もあったが、そのような選択肢も現実的ではなかった。安倍首相はアベノミクスの第三の矢として「成長戦略」を掲げていたが、実際には有効な戦略などなかったのではないかと疑問を呈している』、「フィナンシャル・タイムズ」は日経新聞の傘下に入ったが、編集権は独立しており、辛口の評価をしたようだ。
・『ニューヨーク・タイムズ アベノミクスの「現状維持」は危険?  ニューヨーク・タイムズは、「As Japan’s Abe Leaves, ‘Abenomics’ Will Remain, for Good or Ill」のなかで、アベノミクスは「数十年に及ぶ経済の停滞から日本を揺り動かすのに役立った」と評価しつつも、パンデミック以後もアベノミクス路線に何の変化も起きていないことに、多くの人が疑問を抱くのではないかと指摘。長期的な構造改革への努力が必要であるとした。 具体的には、長きにわたる経済停滞から脱却し、失業率の低下にも部分的に貢献した点などがプラスの面として評価できる一方、二度の消費税増税が再び景気を悪化させた点や、規制改革が女性の地位向上に実質的にはほとんど貢献しなかった点で課題が残ったという。 新型コロナウイルスの感染拡大が懸念され始めた時点で、日本は既に2四半期連続のマイナス成長を記録しており、景気は極めて厳しい状況にあったが、アベノミクスへの代案は未だでてきていないと指摘。おそらくは今後も「現状維持」の政策が続くことが予想されるが、パンデミックの影響を大きく受けた人々にとってそれは死活問題だと懸念を示す。 「このような状況になった今、安倍政権はいつも市民を置き去りにしてきたように感じます」という、東京で飲食店を経営する日本人の言葉を紹介し、コロナ禍以後の経済対策の不十分さを指摘した』、「二度の消費税増税が再び景気を悪化させた点や、規制改革が女性の地位向上に実質的にはほとんど貢献しなかった点で課題が残った」、その通りだ。
・『フランス24 アベノミクスは「企業優先の政策だった」  仏メディアのフランス24は「Le Premier ministre japonais Shinzo Abe démissionne, mais que reste-t-il des "Abenomics"?」のなかで、アベノミクスは「実を結ばなかった」と評価し、そのうちの半分は「失敗だった」と振り返った。 日本がデフレから脱却することに苦労した理由としては、大規模な金融緩和にもかかわらず、多くの企業が投資よりも貯蓄することを好んだという点、そして第3の矢の「成長戦略」の部分で、人口減少傾向による経済停滞を食い止めるほどの構造改革が進まなかったことなどを指摘している。 また重要な論点として、アベノミクスは全体として「第1に企業を対象とし、第2に購買力の高い消費者を対象とした施策」であったと分析。1980年代のバブル以降に生まれた格差は、アベノミクスでも拡大する傾向にあったと主張した。次の首相はアベノミクスからの変化を打ち出していくことも必要になるが、「日本にそのような機運は見られない」と懸念を示した・・・』、「アベノミクスは全体として「第1に企業を対象とし、第2に購買力の高い消費者を対象とした施策」であった」、的確な分析だ。

第三に、9月15日付けエコノミストOnlineが掲載した同志社大学大学院ビジネス研究科教授・エコノミストの浜矩子氏による「弱者を救済せず、財政ファイナンスの恩恵は大企業へ……「下心」に支えられたアベノミクス その全てが罪だった(浜矩子)」を紹介しよう。
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20200915/se1/00m/020/045000c
・『筆者は、安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」に功はなく、その全てが罪だと考える。それゆえと評してきた。なぜなら、安倍政権の経済運営は下心政治に基づくものだったからだ。安倍氏が追求してきたのは「戦後レジーム(政治体制)からの脱却」だった。安倍氏本人がそう言い続けてきた。戦後が嫌なら、戦前に戻るほかはない。戦前は大日本帝国の世界だった。つまり、安倍氏の目指すところは「21世紀版大日本帝国」の構築であり、それが彼の政治的下心であった。 経済運営も政治的下心にひもづいていた。21世紀版大日本帝国を支える強くて大きな経済基盤づくり。それが、安倍政権が目指すところだった。このような政治的野望を持ったリーダーが指揮する経済運営に功はない。そもそも政治的動機のために経済政策を手段化すること自体が大罪だ。 経済政策には本来、二つの使命がある。一に「均衡の保持と回復」。二に「弱者救済」である。経済活動のバランスが崩れると、弱者が窮地に陥る。だからこそ、経済政策はその第一の使命として、バランスの取れた経済活動の姿を保つことに常に最大の注意を払っていなければならない。 ところが、安倍政権の経済運営は、これらの使命からは遠くかけ離れたところで展開されてきた。 金融政策は安倍政権の放恣(ほうし)な政策運営を支えるための「財政ファイナンス(中央銀行による財政赤字の穴埋め)」に徹した。働き方改革は、これまで労働法制によって守られていた労働者を、「柔軟で多様な働き方」の名の下に、身分と収入が不安定なフリーランサーへと追いやる企みだ。 安倍氏は首相になってすぐ、「日本を世界で一番企業が活動しやすい国にする」と宣言した。労働コストを抑え込み、賃金上昇を伴わない生産性上昇効果を手に入れる。企業にとってそれが可能になるような環境整備。そのために働き方改革が構想された。「世界で一番企業が活動しやすい国」は21世紀版大日本帝国の「強い経済基盤」構築に直結するとの考えからだ』、「安倍氏の目指すところは「21世紀版大日本帝国」の構築であり、それが彼の政治的下心であった」、「経済政策には本来、二つの使命がある。一に「均衡の保持と回復」。二に「弱者救済」である・・・安倍政権の経済運営は、これらの使命からは遠くかけ離れたところで展開されてきた」、「アホノミクス」と揶揄される所以だ。
・『経済的国家主義  「政府と日銀は親会社と子会社みたいなもの。連結決算で考えてもいいんじゃないか」という安倍氏の発言は恐ろしい。中央銀行が政府の“下部機構”と化して独立性を失う。これは国民よりも国家を第一に考える「経済的国家主義」にほかならない。 経済政策を担う者は、国民の痛みが分かる者たちでなければいけない。だが、安倍政権の面々は他者のために流す涙を持ち合わせていない。「GoToキャンペーン」をめぐる迷走をはじめ問題が続出した政府の新型コロナ対応を見て、それを確認した。つまり、自分たちの得失点ばかり考えているから、場当たり的で真摯(しんし)さに欠く対策しか出てこない。アベノミクスの正体は「功なき大罪」の塊である』、「アベノミクスの正体は「功なき大罪」の塊である」とは言い得て妙だ。

第四に、9月18日付け東洋経済オンライン「ポストコロナの経済と菅内閣が直面する課題 BNPパリバ・エコノミスト河野龍太郎氏に聞く」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/376063
・『新型コロナウイルスの流行でアメリカの128カ月続いた景気拡張が終わりを告げた。日本は2012年11月からの景気拡張がすでに2018年10月に終了していたが、2020年は5%台のマイナス成長と予想されている。折しも、日本では戦後最長となった安倍晋三政権が幕を閉じ、菅義偉政権が16日に発足した。新政権の直面する経済面での課題は何か、また、新型コロナをきっかけに中長期で経済はどう変わるのか。BNPパリバ証券チーフエコノミストの河野龍太郎氏は、「パンデミック危機は何かを変えるというよりも、今ある問題を加速させる」と話す(Qは聞き手の質問、Aは河野氏の回答)』、興味深そうだ。
・『生産性上昇率の低下、潜在成長率の低迷が問題  Q:菅義偉政権が16日に発足しました。コロナ前の完全雇用の下でも日本経済は停滞していると感じていた人が多いと思います。問題はどこにあるのでしょうか。 A:生産性上昇率が低下傾向を続けてきたことだ。労働投入は増えたが、資本投入と、技術進歩などがかかわるTFP(全要素生産性)は下がってしまった。普通は景気回復が長期化すると生産性が高まるとか、潜在成長率が上昇することを期待するだろう。しかし、そうはならなかった。 アベノミクスは景気拡大を長期化させた一方で、完全雇用に到達した後も、金融緩和と財政拡大のマクロ安定化政策を続け、その結果、資源配分が歪み、採算の低い企業や事業が生き延びられたので、生産性上昇率が下がってしまった。そのため、賃金も上がらず、インフレ率も上がらなかった。 不況期に失業が増えないように、マクロ安定化政策を行うわけだが、完全雇用に到達すれば、これをやめて、生産性の上昇を促すような政策をとらなくてはならない。安倍政権下では超人手不足になったにもかかわらず、マクロ安定化政策を続けたため、企業は生産性を高めるようなIT投資や人的投資も行わず、潜在成長率が下がってしまった。生産性も上がらなかったから、賃上げもできなかった。 Q:最近は、欧州やアメリカも低金利政策が長引くことになり、「日本化(ジャパニフィケーション)」が言われています。河野さんは早くからこの問題を指摘しています。あらためて、「日本化」を定義してください。 A:将来の成長に期待が持てないので、企業が儲かってもお金を使わない。すなわち、設備投資や賃上げを行わない。一国全体で貯蓄が増えてしまい、貯蓄が増えるから貯蓄と投資をバランスさせる自然利子率が下がってしまう。そうすると金融政策も効かないから、景気刺激もできず、インフレ率も高まらない。 本来は、潜在成長率を引き上げる政策が必要だが、成長率も低いしインフレ率も低いから金融緩和が止められない。自然利子率がマイナスの領域に入って金融緩和は効かないままだから、財政出動を繰り返す。それによって、さらに資源配分の歪みを助長し、いっそう生産性が下がり、潜在成長率も下がる。低成長、低インフレ、低金利が続き、膨張した公的債務だけが残る、というものだ。 Q:そうした中で、新型コロナウイルスの流行が起きました。 A:今回のパンデミック危機で、結果的にお金を貯め込んでいた企業が生き延びた。アメリカではまだ、果敢に投資を行ってきた企業があるが、債務の大きいところは、破綻リスクが高いと見なされて2~3月に株価の大幅な下落に見舞われた。したがって、日本企業は内部留保を貯め込んでいてよかったという成功体験ができてしまい、ますます、投資をしなくなるのではないかと危惧している。アメリカ企業も今、債務返済を優先し、今後は投資に慎重になっていくのではないか。 Q:金融政策を見ているとECB(欧州中央銀行)もFRB(連邦準備制度理事会)も本当に日本銀行の後を追っているという感じです。財政はどうでしょうか。 A:日本と欧米は少し違うけれども、近づいてきているとも言える。 金融政策が効かなくなってきているので、財政出動に頼らざるをえない。国債発行の増加を放置して金利が上がるとマクロ経済の不安定化、金融システムの不安定化が起きるので、金利の上昇を抑え込まざるをえない。中央銀行が金利を抑え込むと、財政拡張のコストはゼロであるかのように見えてしまうので、ますます財政の中央銀行への依存度が高まる。とくに、パンデミック危機の下では、どこの国の国民も追加財政に反対しないので、こうしたことが続きやすくなる』、「本来は、潜在成長率を引き上げる政策が必要だが、成長率も低いしインフレ率も低いから金融緩和が止められない。自然利子率がマイナスの領域に入って金融緩和は効かないままだから、財政出動を繰り返す。それによって、さらに資源配分の歪みを助長し、いっそう生産性が下がり、潜在成長率も下がる。低成長、低インフレ、低金利が続き、膨張した公的債務だけが残る」、悪循環だ。「中央銀行が金利を抑え込むと、財政拡張のコストはゼロであるかのように見えてしまうので、ますます財政の中央銀行への依存度が高まる。とくに、パンデミック危機の下では、どこの国の国民も追加財政に反対しないので、こうしたことが続きやすくなる」、大いに懸念される点だ。
・『欧米はまだ財政の際限なき膨張には至らない  欧州では、従来は北の国々は厳しくて財政拡張をやらない方針だったが、南欧の国々のサポートをしなければならないということで、今回、欧州復興基金を設定して欧州共同債を発行することになった。だが、気候変動対策や5G投資など賢い使い方をしましょうというコンセンサスがある。また、後の世代にツケを残さないという考え方で、炭素税やオンライン課税、各国からの出資で回収しようという議論になっている。独仏もパンデミックに要した費用は20年程度で返済する方針を示している。 アメリカでも民主党は気候変動対策への投資(グリーンニューディール)を主張しているが、大統領候補のバイデンも副大統領候補のハリスも中道派で、MMT(現代貨幣理論)に与(くみ)しているわけではなく、法人税増税を行うと言っている。また、トランプ大統領に乗っ取られた感のある共和党も、トランプ後は元の「小さな政府」を主張する党に戻る可能性もある。 短期的には各国とも中銀ファイナンスで追加財政を賄っているのは事実ではあるが、今回のパンデミック危機下の公的債務膨張の先に、日本と同様に財政規律が弛緩し、制御不能な水準まで膨張していくリスクがあるかと言えば、そこまではいかないと思っている。 Q:菅政権はどのような経済政策を採ると思われますか。 A:当面はパンデミック対応で財政を膨張させ、金融政策による低金利でこれを支えることに変わりはない。しかし、菅さんはリフレ派とは距離を置いているし、「自助、共助、公助」とスローガンに掲げている。この言葉は、オールドケインジアンとは違う。時間が経つと政権のカラーが変わる可能性はあるのではないか。 Q:もっと構造改革的な政策になるのでしょうか。 A:差別化が図られるのはミクロの政策だと思う。総務相をやっていたので、携帯料金の引き下げはよく言われるが、官房長官という仕事柄、各省庁をまたぐ案件を解決するのは他の人よりも得意。安倍政権でのインバウンド、農産物輸出、外国人労働の活用なども菅さんの政策だ。安倍政権は成長戦略と言いつつ、痛みを伴う競争政策などから距離を置いていた。菅氏は小泉純一郎政権の時代、総務副大臣として竹中平蔵総務相の薫陶を受けていた。小泉流の新自由主義的な構造改革路線と親和性が高いように思われる。 今回、3つをすでに上げている。デジタル庁、厚生労働省の再編、地域金融機関の再編と。デジタル庁は当然やるべき案件だ。日本ではあらゆる申請がデジタルでできないことが問題になっていたが、とくに、今回のコロナ危機で明らかになった。オンライン教育、オンライン診療などすべて遅れている。 パンデミック危機で困窮する人に手厚いサポートを行うという政策が本来は必要だが、政府が所得のデジタルデータを持っていないため、結局、11年前と同様に、ゆとりのある人を含め、国民すべてに一律に現金給付することになった。10年に1度は経済危機が訪れるのだから、適切で迅速な政策を遂行するには、デジタルデータで国民の所得や資産を捕捉する必要がある』、「欧米はまだ財政の際限なき膨張には至らない」、やはり日本のリスクは突出しているようだ。「菅氏は小泉純一郎政権の時代、総務副大臣として竹中平蔵総務相の薫陶を受けていた。小泉流の新自由主義的な構造改革路線と親和性が高いように思われる」、ますます「新自由主義的な」路線を強めるとはやれやれだ。
・『菅さんは行政改革が国民の利益になるという発想  厚生労働省はパンデミック危機への備えが不十分で初期対応で検査態勢など立ち上がりが悪かったと言われる。省庁再編のときに担当分野が広くなりすぎ、政治がうまくコントロールできていないと解釈されているのかもしれない。医療・介護と労働・年金を分けるという議論が以前からあった。 政治的な文脈で言うならアメリカのレーガン政権のころから、行政運営がうまくいかないのは非効率な役所のせいであり、行政改革を行うことで国民の利益につながる、という発想がある。小泉政権下の道路公団や郵政の改革と同じで、行政改革を進めることで、求心力を高めることもできる。 金融機関の再編も人口が減少し、フィンテックが広がる中で、取り組まなければならない問題だ。マイナス金利政策もあって金融機関の体力はすでに落ちている。パンデミックが長引けば、不良債権問題を抱えるところも出てくる。ただ、弱い金融機関同士がくっついても効果はないし、新たな収益モデルを見出すことも容易ではない。当面は、強い金融機関を作るといったプロアクティブな話ではなく、弱った金融機関を合併などで混乱なく退出させるといったリアクティブな政策になるのかもしれない。 安倍首相は毎年、スローガンのように政策を打ち出したが、菅政権では限られた案件をじっくりと解決するといったスタイルになる可能性がある。 Q:日本銀行の金融政策の見直しはあるでしょうか。 A:2013年1月に政府と日銀がアコードを結んでから、2%の物価目標を掲げて金融緩和を続けてきたけれど、無理だった。パンデミックがなくても、2%到達は見通せなかったはずなので、このことについての総括は必要だ。現状では利上げなどはとうていできないけれども、2%インフレ目標の位置付けの見直しや、ウィズコロナ、アフターコロナにおける財政金融政策の整理など、いずれアコードの見直しを行わなければならない。 Q:財政の健全化はかなりハードルが高いです。 A:今後も財政健全化どころか、パンデミック危機が収束するまでは、追加財政を繰り返さざるをえないだろう。まず、パンデミック危機にかかった費用についてどうするかが問題だ。東日本大震災のときと同じように、区分会計を行って、負担を比較的ゆとりのある企業や家計にお願いする必要がある。 パンデミック危機以前からのプライマリーバランス(基礎的財政収支)の赤字は高齢化に伴って膨張し、財源を手当てできていない。これは消費増税で対応するしかない。しかし、安倍政権下の2回の増税のあと、個人消費が大きく落ち込んだ。政治家はもうこりごりだと思っているだろう。潜在成長率が2010年代には0.6%まで低迷しているのだから、3ポイントや2ポイントも一度に上げると消費がダメージを受けるのは当然だ。1ポイントの増税でも1年間の実質所得の増加はすべて吹っ飛んでしまう』、「消費増税で対応するしかない」には違和感がある。自民党政権の制約を抜きに考えれば、設備投資に結びつかなかった法人税減税を元に戻す、資産課税を検討する余地もある筈だ。
・『「2年に1度0.5%の消費税率引き上げ」を提案  したがって、実質所得の増加を可能にするには2年に1度の0.5%の増税を行ってはどうか。1回でまとまった増税をすると、そのたびに景気の落ち込みをカバーするべく大規模な財政支出を行ったり、税収増の一部を新たな歳出に振り向けるので、いっこうに帳尻が合わない。0.5%の増税なら、そうしたことをしなくてもよい。キャッシュレス化が進んでいるので、企業の対応も可能だと思う。 10%ポイントを引き上げるに40年かかるのでは金融市場が納得しないと思われるかもしれないが、景気への悪影響が小さく途中で挫折しないということで、好意的に受け止める可能性が高いのではないか。不況でも挫折しない財政健全化プランが整っていれば、不況期に追加財政を行うことも容易になる。 また、社会保障給付の増加ペースは速いので、年金の支給開始年齢が65歳のままだと危うい。男性の平均寿命が81歳、女性が87歳になっており、年金は長生きリスクへの対応であることを考えると、支給開始年齢の引き上げを考えるべきだ。保険だけでなく、国費の半分がつぎ込まれているので、所得の多い人の給付を下げることも考えるべき。世代にかかわらず困窮者を救済するのが狙いなのであれば、ゆとりのある高齢者には負担をお願いしないといけない。 医療保険においては、後期高齢者の負担を1割から2割に引き上げることは評価できるが、疾病の内容で変えるべきだと思う。重篤な病であれば保険料を引き下げ、生活の質を上げるためのものであれば自己負担を引き上げるべきではないか。 Q:ポストコロナの経済面での変化についてお尋ねします。まず、ますますデジタル化が加速しそうですが、中国が先行して中央銀行デジタル通貨の研究が進みそうです。そうなった場合、ドルの位置づけはどうなるでしょうか。 A:むしろ、新型コロナの流行の当初に世界中でドルの需要が拡大した。そこで、各国の中央銀行が、主要国のみならず新興国もドルの手当てができるように協力した。先進国の金融緩和や、IMF・世界銀行の協力、日本が主導するチェンマイイニシアティブなどで、新興国の資金繰りをサポートし、新興国からの資金流出の危機を回避した。ドルの重要性は基本的には変わっていない。一般論で言うと中銀デジタル通貨の導入を進めることになったら、ドルの利用がもっと広がる可能性もある。 米中新冷戦で、情報通信や医療関係、食料などの安全保障分野を中心に部分デカップリングが進む中、国際金融は基本的にドルで動いているので、中国はアメリカの優位性を覆そうと、人民元の国際金融面での利用を広げていこうとするだろう。中国国内のみならず、権威主義的な国家には浸透しやすい。アメリカと政治的に対立するところは従来、ドルで決済していることによりアメリカから金融的な制裁をかけられやすいという問題を抱えているため、ドルに代わる国際的な通貨を作ればメリットがある。 ただし、中国も資本逃避の問題を抱えている。現在の社会システムが持続可能ではないと考えて、富裕層が資金を国外に流出させており、人民元の自由化を進めて、広く国際的に使ってもらおうとすると、その動きが止められなくなる。米中とも微妙で、難しいところがある』、「中国も資本逃避の問題を抱えている」ので、「人民元の自由化」のハードルは高そうだ。
・『アメリカ社会の不安定化も深刻だ  Q:米中対立はどちらにも弱みがあり、綱引きが続くということでしょうか。 A:アメリカは今のところ民主党政権になる可能性が高いが、中道派のバイデンやハリスで、現在の社会の分断を止められるのか疑問だ。ここ30年、アメリカではIT分野を中心にイノベーションは起きてきたけれども、アイデアの出し手ばかりに所得増加が集中する構造だった。公的医療保険すら整わない状態なのに、選挙資金法による規制は改正されて政治を金で買える状況になっている。 パンデミックのリスクも平等ではなく、ホワイトカラーはテレワークなどで感染リスクを避けられるが、所得の低い人は感染リスクの高い仕事につかざるをえず、有色人種の被害が大きい。アメリカは自由の国をうたって、中国の新疆・ウイグル自治区などの問題を指摘するが、自国が誇れる状況なのか。 現状程度の支持率の差だと大統領選挙は接戦になり、トランプ大統領が郵便投票は不正だと主張しホワイトハウスに居座り続けたら、治安維持部隊と民主党支持者の間で暴力沙汰が広がり、内乱のようなことも起きかねない。アメリカも大きな問題を抱えている。 パンデミック危機は何かを変えるというよりも、今ある問題を加速させると見ている。「日本化」問題も、米中対立も、デジタル化の問題も、社会の分断も。 Q:先ほどもお話に出た、IT化、デジタル革命で、所得格差がますます進むという問題。これはどうなりますか。所得再分配の機運が高まるのか……。 A:単に高所得者から低所得者に社会保障制度の拡充を通じて所得移転を行うという話ではないだろう。本質は、知識経済化が進む中、アイデアが生み出す付加価値の帰属について、われわれが考え方を変えることができるかどうか、というところにかかっている。 GAFAの儲けの源泉はわれわれが喜んでせっせと入力している個人情報。これに対価を払え、といって実現できるかどうか。過去の例で言えば、スタンダードオイルとかUSスティールの解体に匹敵する。物的資本の生み出す利益は所有者に帰属するのが明らかだが、無形資産の生み出す付加価値の帰属は社会規範が決めるので、変わる可能性がある。 個人情報は誰のものか。欧州では議論になっているが、ITの巨人はアメリカ企業なので、議論が進んでいない。したがって、アメリカにおける社会の不安定化が最終的に変革につながる可能性がある』、「アメリカにおける社会の不安定化が最終的に変革につながる可能性がある」、他力本願的だが、いたしかたなさそうだ。
・『反グローバリゼーションの流れは明確に  Q:今回の危機ではグーグルの移動データをさまざまな分析で活用している人が多いですが、1私企業がこうしたデータをすべて握っているのも不気味です。 A:重要な点だ。日本人は国に情報を握られるのが嫌だと言う人が多く、マイナンバーの登録がなかなか普及しないが、私企業に持たれているほうが大きな問題だろう。例えば、今後、スマートシティが実現して、あらゆる建物で発電が再生エネルギーで行われ、町自体が、IoTによって動くといったことが実現したら、そのシステムを誰が管理するのか。グーグルのトロントで計画したスマートシティにも異論が出た。 Q:民主的な管理の仕組みを議論することになるんでしょうね。 A:マンションの管理組合みたいな、第三者機関による管理ということになるのだろう。協同組合といった発想が重要になるのかもしれない。 Q:パンデミック危機をきっかけにグローバリゼーションからナショナリズムへ、という動きが加速するのでしょうか。 A:1980年代から続いてきたグローバリゼーションは、反グローバリゼーションに流れがはっきりと変わったといえる。金融グローバリゼーションの行きすぎで、ウォール街関係者が途方もない所得を手に入れたという問題だけではない。自由貿易は必要なはずだが、われわれは一国の社会規範や社会慣行の領域に手を入れるほどのグローバリゼーションを推し進めたため、各国で政治的分断や権威主義勢力の台頭が生じた。 パンデミック危機解決のためには世界が協力しないといけないはずだが、グローバリゼーションの恩恵を最も受けた中国の台頭の結果、米中の新冷戦など対立も強まっている。経済を語る際も、つねに安全保障上の話をしなければならなくなるのだろう。ダニ・ロドリック教授が主張しているような、「グローバリゼーションより国家主権や民主主義が重要」という流れになるのではないか』、「国家主権」重視になると対立が深まる懸念もある。民主党の大統領に変われば、国際協調への動きが復活するだろうが、大統領選挙の行方はまだ予断を許さないようだ。
タグ:東洋経済オンライン 小幡 績 Forbes 浜矩子 アベノミクス Newsweek日本版 エコノミストOnline (スガノミクス) (その36)(安倍首相辞任 アベノミクスの2つの大罪、アベノミクスは成功したのか? 海外メディアの安倍政権への辛口評価、弱者を救済せず、財政ファイナンスの恩恵は大企業へ……「下心」に支えられたアベノミクス その全てが罪だった、ポストコロナの経済と菅内閣が直面する課題 BNPパリバ・エコノミスト河野龍太郎氏に聞く) 「安倍首相辞任、アベノミクスの2つの大罪」 アベノミクスはイメージ的には大成功を収めたが、経済的には突出して異常な金融緩和と新型コロナ対策のバラマキで日本の将来に大きな禍根を残した 成功した、と思わせることに成功した ネーミングが全て 軽減税率は導入しなかった方がよかったが 特に非難すべきことでもない 実態は「クロダノミクス」 今後、必ず、金融市場は破綻し、金融市場が破綻すれば、日本経済も大きく落ち込む。このリスクとコストを先送りして、短期的に株価を上げて、目先の支持率を上げたのがアベノミクスであった 日銀だけが、出口の議論は時期尚早と言って、一切、公式に議論しないばかりか、理論的にも出口のないほどの異常な緩和を行ってきた 第一と第二の罪、金融緩和、財政バラマキによって、次の政権では財政破綻リスクが実現してしまう可能性を極めて高くしてしまったこと。それがアベノミクスの最大の罪である 「アベノミクスは成功したのか? 海外メディアの安倍政権への辛口評価」 ブルームバーグ アベノミクスは「途中まで成功」 日本経済は振り出しに戻った フィナンシャル・タイムズ アベノミクスは「成功しなかった」 ニューヨーク・タイムズ アベノミクスの「現状維持」は危険? フランス24 アベノミクスは「企業優先の政策だった」 「弱者を救済せず、財政ファイナンスの恩恵は大企業へ……「下心」に支えられたアベノミクス その全てが罪だった(浜矩子)」 安倍氏の目指すところは「21世紀版大日本帝国」の構築であり、それが彼の政治的下心であった 経済政策には本来、二つの使命がある。一に「均衡の保持と回復」。二に「弱者救済」である 安倍政権の経済運営は、これらの使命からは遠くかけ離れたところで展開されてきた 経済的国家主義 アベノミクスの正体は「功なき大罪」の塊である 「ポストコロナの経済と菅内閣が直面する課題 BNPパリバ・エコノミスト河野龍太郎氏に聞く」 生産性上昇率の低下、潜在成長率の低迷が問題 本来は、潜在成長率を引き上げる政策が必要だが、成長率も低いしインフレ率も低いから金融緩和が止められない。自然利子率がマイナスの領域に入って金融緩和は効かないままだから、財政出動を繰り返す。それによって、さらに資源配分の歪みを助長し、いっそう生産性が下がり、潜在成長率も下がる。低成長、低インフレ、低金利が続き、膨張した公的債務だけが残る 中央銀行が金利を抑え込むと、財政拡張のコストはゼロであるかのように見えてしまうので、ますます財政の中央銀行への依存度が高まる。とくに、パンデミック危機の下では、どこの国の国民も追加財政に反対しないので、こうしたことが続きやすくなる 欧米はまだ財政の際限なき膨張には至らない 菅氏は小泉純一郎政権の時代、総務副大臣として竹中平蔵総務相の薫陶を受けていた。小泉流の新自由主義的な構造改革路線と親和性が高いように思われる 菅さんは行政改革が国民の利益になるという発想 「消費増税で対応するしかない」には違和感 「2年に1度0.5%の消費税率引き上げ」を提案 中国も資本逃避の問題を抱えている 「人民元の自由化」のハードルは高そうだ アメリカ社会の不安定化も深刻だ アメリカにおける社会の不安定化が最終的に変革につながる可能性がある 反グローバリゼーションの流れは明確に 「国家主権」重視になると対立が深まる懸念もある
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政府のマスコミへのコントロール(その16)(菅氏会見「品位がない記者」は何故叫んだかー公文書の適切管理を約束できない「次期首相」最有力候補、菅新政権「マスコミ支配」継承 総裁選から“圧力文書”配布、菅首相誕生で政権とメディアの関係はどうなる 日本のジャーナリズムに及ぶ影響とは、菅新首相が猛攻するテレビ業界への「本気の脅し」その内容 NHK受信料問題、電波利用料見直し…) [メディア]

政府のマスコミへのコントロールについては、これまでは「安倍政権の」として、8月30日にも取上げた。今日は、タイトルを「政府の」に変更し、(その16)(菅氏会見「品位がない記者」は何故叫んだかー公文書の適切管理を約束できない「次期首相」最有力候補、菅新政権「マスコミ支配」継承 総裁選から“圧力文書”配布、菅首相誕生で政権とメディアの関係はどうなる 日本のジャーナリズムに及ぶ影響とは、菅新首相が猛攻するテレビ業界への「本気の脅し」その内容 NHK受信料問題、電波利用料見直し…)である。

先ずは、9月7日付けYahooニュースが掲載したフリージャーナリスト(環境、人権、戦争と平和)の志葉玲氏による「菅氏会見「品位がない記者」は何故叫んだかー公文書の適切管理を約束できない「次期首相」最有力候補」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/byline/shivarei/20200907-00197082/
・『7年8ヶ月に及んだ安倍政権の下、様々なかたちで報道への圧力や自主規制が顕著となる中、筆者は常にジャーナリズムと権力はどう対峙すべきなのかを考え続けてきた。今月2日に行われた菅義偉官房長官の自民党総裁選への出馬会見で、筆者はちょっとした波乱を起こしてしまったが、それもこの間のメディアのあり方への危機感からだった。菅氏の会見の終盤、筆者は「フリーランスにも質問させてください」「こんな会見、出来レースじゃないですか?」「公文書を棄てないで下さい。公文書を改ざんしないで下さい。今ここで約束して下さい」と、いわゆる「不規則発言」をしたのである。その様子の動画は、ツイッター上で「品位がない記者」として紹介され、その動画の再生回数は現在120万回を突破している。確かに、先日の筆者の振る舞いは「お上品」なものではなかっただろう。ただ、「お上品」な記者クラブメディアの煮え切らない「お行儀の良さ」こそ、安倍政権を増長させてきた。同じことを次期政権においても繰り返すのだろうか』、首相官邸での記者会見では、東京新聞の望月記者が1人で奮闘しているが、これは自民党本部でのものなので、「フリーランス」も参加だけは許されたようだ。「「お上品」な記者クラブメディアの煮え切らない「お行儀の良さ」こそ、安倍政権を増長させてきた」、同感である。
・『「出来レース」の会見  永田町・議員会館で行われた菅氏の会見には100人は下らないだろう記者達が参加。会場となった会議室は超満員の「密」な状況だった。私が最前列に陣取ると、フリージャーナリストの田中龍作さん、横田一さんと隣り合った。それぞれ、事前に最も菅氏にぶつけたい質問を考えていたが、田中さんは「どうせ僕ら(フリーランスの記者)はあてられないだろう」と言う。田中さんの読み通り、会見はつつがなくすすんでいく。内閣官房の番記者や、お気に入りの記者などが優先的にあてられ*、案の定、司会からあてられる記者達の質問のほとんどが、菅氏を鋭く追及することのない、生ぬるいものだった。例えば、 「菅官房長官に欠けているのは安倍総理にとっての菅長官のような存在だという指摘があります。長官が総理総裁になられた場合に、官房長官にはどのような資質の方を求めるのか」(テレビ朝日) 「地盤も看板も、かばんもない、そういう状況下であの選挙を勝ち抜いたことが今につながっていると思うのですが、そうしたことを支えた(菅氏の選挙区である)神奈川の人たち、とりわけ横浜の人たちに対して今、思うところがあれば教えていただきたいです」(神奈川新聞) だとか、まるでヨイショのような、もう菅氏が首相にでもなったかのような質問に、筆者は呆れ果てた。北方領土や拉致問題、沖縄の基地問題についての質問もあったが、どれに対しても、要するに安倍政権の政策をそのまま受け継ぐというだけであり、菅氏の回答は、全く中身のないものであった。質問する記者の側も、徹底的に追及してやろうという気概が感じられず、これでは菅氏にかわされるのは当たり前である。唯一、TBS「報道特集」の膳場貴子キャスターの質問は、森友・加計学園問題や「桜を見る会」について再調査するか否かと踏み込むものであったが、菅氏は「すでに結論が出ている」と再調査はしないとひらきなおったのだ。 *例えば、ニコニコ動画のN記者について「彼は毎度あてられるんだよね」と某メディアの記者は言っていたが、2日の会見でも、100人以上はいただろう記者達の中から、やはりN記者はあてられた』、質問できる記者は予め決まっているのであれば、「記者会見」とは名ばかりだ。
・『安倍政権での弱腰を繰り返すのか?  菅氏は安倍政権の官房長官として、数々の批判や疑惑に答える立場にあったが、「問題ない」「その指摘はあたらない」と常に不誠実な対応をしてきた。菅氏がこれまでのようなスタンスで首相になった際には、安倍政権のそれと同じ、或いはさらに強権的かつ傲慢な政権運営を行い、主権者である人々への説明責任を著しく軽視することになるだろう。数々の疑惑、不祥事にもかかわらず、安倍政権が「憲政史上最長」の長期政権となった大きな要因として、記者クラブ報道の弱腰、特に会見の場での追及の甘さがある。同じことを次期政権に対しても繰り返すのか。だからこそ、「まだ手があがっておりますがお時間の関係があるので…」と司会が会見を終えようとしていた時、私は冒頭の「不規則発言」に至ったのである』、勇気ある行動だ。「安倍政権が「憲政史上最長」の長期政権となった大きな要因として、記者クラブ報道の弱腰、特に会見の場での追及の甘さがある」、同感である。
・『「公文書を棄てない、改ざんしない」と言えない菅氏  勝負は数秒間にかかっていた。「不規則発言」である以上、長々と質問はできず、ワンフレーズで核心を問わなくてはならない。筆者は「公文書を棄てないで下さい。公文書を改ざんしないで下さい。今ここで約束して下さい!」と叫んだ。森友、加計、桜を見る会、そして自衛隊日報。安倍政権の疑惑・不祥事の中で、毎回のように問題となったのが公文書の取り扱いだ。とりわけ、森友文書の改ざんでは財務省の職員が自殺にまで追い込まれている。新たな政権において、公文書が安倍政権時と同様に不当に廃棄、改ざんされるのか否かは、今、日本のジャーナリスト達が最も追及すべきことの一つであることは間違いない。その場にいた記者達が誰一人聞かなかったから、筆者が聞いたのだ。 公文書を不当に廃棄しない。改ざんしない。法の支配の下にある民主主義国家として、当たり前のことだ。だが、菅氏は、公文書の適切な管理を約束することはなかった。筆者は「逃げないで下さい!公文書を棄てない、改ざんしないと約束して下さい!」と追い打ちをかける。菅氏は、当たり前のことを約束せず、目を泳がせるだけだった。その姿に、内閣官房会見での不遜さからの仇名「鉄壁のガースー」らしさはなかった』、「ガースー」はもともとSNS上で付けられたあだ名のようだ。
・『「お上品」な太鼓持ちより「品位がない」ジャーナリストであれ  2日の会見での筆者の振る舞いは、確かに「お上品」なものではなかっただろう。実際、ツイッター上では筆者の言動への批判も多くあった。 一方、筆者の「不規則発言」を評価する意見もまた多くあった。 記者クラブの記者達の「お上品」さは権力に飼い慣らされたものだ。例えば、記者クラブの会見での質疑が一問一答であり、「更問い」をしない、つまり、不誠実な答えに対し、追及すべく質問を重ねることをしないこと。どんなに不誠実な答えであっても菅氏の言いっぱなしとなる。少々問い詰められただけで目が泳ぐ菅氏を、「鉄壁のガースー」にしてしまったのは、記者クラブの「お上品」さが故だ。だから、あえて言わせてもらう。ジャーナリストの仕事において最も重要な使命の一つが権力を監視すること。「お上品」な権力者の太鼓持ちよりは、「品位がない」ジャーナリストである方が、はるかにマシだ』、「少々問い詰められただけで目が泳ぐ菅氏を、「鉄壁のガースー」にしてしまったのは、記者クラブの「お上品」さが故だ」、「ジャーナリストの仕事において最も重要な使命の一つが権力を監視すること。「お上品」な権力者の太鼓持ちよりは、「品位がない」ジャーナリストである方が、はるかにマシだ」、その通りだ。

次に、9月11日付け日刊ゲンダイ「菅新政権「マスコミ支配」継承 総裁選から“圧力文書”配布」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/278532
・『新政権はメディアへの圧力も継承するようだ。「公平報道」を盾にした“要請”が早速、始まった。 自民党が新聞・通信各社に対し、野田毅総裁選挙管理委員長名で文書を出した。総裁選の候補者の公平な扱いを求めるもので、文書は7日付。「各社の取材等は規制しません」としながらも、「インタビュー、取材記事、写真の掲載に当たっては、内容や掲載面積で平等、公平な扱いをお願いする」と求めている。何でそこまで細かく指示されなければいけないのか、という内容なのだ。 選挙での「公平報道」要請で思い出すのは、2014年の衆院選。自民党が在京テレビ局に「選挙期間における放送の公平中立」を求める文書を送り付け、前代未聞と批判された。だがそれ以降、安倍政権下の選挙では、当然のように同じような圧力文書が出され、18年からは公職選挙法とは無関係な総裁選でも出されるようになった』、「公職選挙法とは無関係な総裁選でも出されるようになった」、厚かましい限りだが、その真の狙いは「総裁選」を詳しく報道させ、国民の関心を盛り上げることにあるのかも知れない。
・『メディアは唯々諾々  メディアの記事の書き方に政権与党が一つ一とつイチャモンをつけるのは大問題。ところが、当のメディア側の反応は鈍い。この要請を記事にしたのは、共同通信と東京新聞だけだった。 安倍政権のメディア圧力を実体験した元経産官僚の古賀茂明氏はこう話す。 「菅官房長官の陣営は、できるだけ総裁選を報道してもらいたくないんでしょうね。もう勝利は決まっているから、メディアには静かにしていて欲しい。要請にはそんな意図が含まれているように思います。安倍政権の負のレガシーは2つある。『官僚支配』と『マスコミ支配』です。それを菅氏は安倍首相と二人三脚でつくってきた。菅氏は今、政策を受け継ぐより先に、その2つのレガシーを動かしている状態。メディア側も、7年8カ月続いたマスコミ支配に麻痺してしまい、問題だという意識すらなくなっています」 メディアへの圧力が当たり前になり、メディア側も唯々諾々。菅政権ではそれがさらに強化されることになる』、「「菅官房長官の陣営は、できるだけ総裁選を報道してもらいたくないんでしょうね。もう勝利は決まっているから、メディアには静かにしていて欲しい。要請にはそんな意図が含まれているように思います」、と私とは真逆の見方で、確かにそうみることも可能ではある。「メディアへの圧力が当たり前になり、メディア側も唯々諾々。菅政権ではそれがさらに強化されることになる」、恐ろしいことだ。

第三に、9月13日付け東洋経済オンラインが掲載した東京新聞の記者の望月 衣塑子氏による「菅首相誕生で政権とメディアの関係はどうなる 日本のジャーナリズムに及ぶ影響とは」を紹介しよう。
・『自民党総裁選に立候補した菅義偉官房長官の消費増税をめぐる発言が話題になっている。9月10日に出演した民放のテレビ番組では「将来的なことを考えたら行政改革を徹底して行ったうえで、(消費税率を)引き上げざるをえない」と発言。その翌日の会見では「あくまでも将来的な話であり、今後10年くらいは引き上げる必要がない」とあたかも発言を撤回したかのような印象を与えた。 今月、田原総一朗氏との共著『嫌われるジャーナリスト』を上梓した、官邸長官会見でのやりとりで「菅官房長官の天敵」といわれた東京新聞記者の望月衣塑子氏が語るジャーナリズムの危機とは?』、面白そうだ。
・『メディアへの対応を尋ねた質問に対して…  「安倍政権では説明責任のあり方が常に問われてきた。総理になった場合の記者会見はどう行うか。総理会見を週1回に定例化したり、ぶら下がり(取材)を行ったりするなど、総理としての説明責任どう果たすのか。安倍政権の国会対応では、野党の求める出席に必ずしも対応していなかった。国会出席への要求にどう対応するのか」 9月8日の総裁選共同記者会見で朝日新聞記者が質問した。菅氏はこう答えた。 「世界と比べて圧倒的に日本の総理は、国会に出席する時間が多いが、大事な所で限定して行われるべきだ。行政の責任者としての責任を果たせない」「G7の中で閣僚が記者会見しているのは1カ国、週1回30分くらい。日本は官房長官が朝夕、2回会見、責任をもって説明している」 メディアへの対応を尋ねた質問だったが、菅氏はほぼゼロ回答だった。コロナ禍を理由に1日10分前後で終えている現在の官房長官会見すら「十分すぎる」という。総理の日々のぶら下がり含めて必要ないだろう、と言いたいかのような回答に、失望した記者も多かったことだろう。石破氏の「大臣の時、手が下がるまで質問を受けていた。できるだけ多くのメディアの質問に答えたい」、岸田氏の「できるだけ多くの質問に答える姿勢を示す必要ある」と前向きな回答をしたのとは対照的だった。 私は9日6日の討論会で3候補者の論戦を見るつもりだったが、台風対応のため菅氏の参加は中止になった。ここで思い出したのが、15府県で224人もの死者を出した2018年7月の西日本豪雨のさなか、東京・赤坂の議員宿舎で開かれた自民党議員の宴会「赤坂自民亭」だ。岸田氏や安倍首相が宴会に出席。また、日本テレビの「news every.」は、豪雨災害が続く6日夜、菅氏が手配した車に乗った無派閥議員らが次々と官邸入りし、安倍首相と総裁選に向けて会合をしていたことをスクープした。菅氏の行動は危機管理担当大臣として適切だったのか。私は、官房長官会見で菅氏に質問した。 「長官は先手先手で(豪雨災害に)臨むと言っていますが、災害対策本部ができていない状況で、なぜこのような会合したのか、どういう議員を何分くらい呼んで、どんな会合だったのか」「危機管理担当大臣の官房長官として6日夜の行動は問題だったのでは」 菅氏は嫌そうな表情で突き放すように答えた。「そうしたことにお答えする必要はない。ただ、防災対策はしっかりやっていました。このことは明言をいたしております」「(問題かどうか)お答えする必要はない」 菅氏を担当する各者の政治部記者(番記者)は、国政をとりまく外交や政治、経済状況を追うため、何度も同じテーマを聞き続けることはあまりない。一方、私は政権の絡む疑惑を取材する社会部記者として3年近く、菅氏に質問を続けていた。菅氏の曖昧答弁を聞き流すことはできなかった。納得いかず後日、再び、会見で質問した。 「この日(6日)は広島で土砂が崩れ、多数が生き埋めになっていると救助要請も相次いでいた。京都、兵庫、広島では死者が出たほか、報道でも最大級の警戒を呼びかけている。なぜ、このような時に災害を指揮すべき首相や長官がこのような会合をもったのか」 経緯を説明しつつ尋ねたが、質問が長いという印象を与えたかったのだろう。菅氏は、司会役の上村秀紀報道室長(当時)に目配せし、「結論をお願いします」と“質問妨害”させたあと、こう答えた。「まず、この場は政府の見解を説明する場でありますので、あなたの要望にお答えする場面ではありません。しっかり対応しております」』、「危機管理担当大臣の官房長官として6日夜の行動は問題だったのでは」との質問に対し、「菅氏は・・・「そうしたことにお答えする必要はない。ただ、防災対策はしっかりやっていました。このことは明言をいたしております」「(問題かどうか)お答えする必要はない」、木に鼻をくくる答弁の最たるものだ。
・『メディアの「選別」からメディアの「管理」へ  「問題ない」というのが、いまの長官の認識か、と重ねて問うと、菅氏は「その通りです」と言って会見を終わらせた。問題ない?大ありだろう。真摯に対応せず、論点をずらし、はぐらかす――。菅氏は首相になっても国会や記者会見でこんな答弁を続けるのだろうか。長官時代と同様、好まざる記者には秘書官や補佐官や一部の番記者を使って圧力をかけ、オフレコ取材をボイコットして、記者たちをコントロールするのだろうか。 今回の総裁選では、番記者たちの質問は型通りのものが目立つ。すべての質問がそうではないが、どこか記者クラブの「横並び」と政治家への配慮がないだろうか。自民党総裁選は今後、総理になる人物を吟味し、評価する期間だ。本人にとって耳障りの悪い質問もあてて、その応対ぶりを観察する必要があるのではないか。 第2次安倍政権はメディアを選別し、分断が進んだ。朝日新聞の南彰記者によると、第2次安倍政権発足から今年5月17日までに行われた首相の単独インタビューの回数は、夕刊フジ含む産経新聞が32回、NHKが22回、日本テレビが11回の順だという。一方、首相が国会の場で5回も名指しで批判を重ねた朝日新聞はわずか3回だ。 分断された記者クラブの中では、開かれた会見や質疑を求める機運は高まらなかった。新聞労連が昨年5月に実施したアンケートでは、内閣記者会の記者から「(会見のありようを変えるために)声を上げたくても、官邸と通じている社があり、身動きできない」といった悲壮感に満ちた声も寄せられていた。政権の計算通りだろう。だが、それを「問題」と認識していない報道機関もある。 メディアの多様性が失われることは、社会や政治の多様性の喪失にもつながる。弱者はすておかれ、人々は政治や社会に息苦しさを感じる。菅氏が首相になれば、これまで安倍首相が行ってきたメディアの「選別」から、さらに「管理」へとシフトするだろう。また、菅氏と近い報道機関の幹部は少なくない。これまで組織の中でもがいてきた記者やディレクターたちは、さらに苦しい立場に追い込まれるかもしれない。 記者1人、新聞社1社では力が弱い。権力による分断と管理に抵抗するため、「権力を監視するジャーナリストたれ」と志す記者たちは連帯しなければならないし、そもそも記者クラブを置いた当初の理由もそこにこそ、あったはずだ。しかし、今はそのチェック機能が低下し、権力に都合よく使われようとしている。今後、日本のジャーナリズムはさらなる危機を迎えるだろう』、「菅氏が首相になれば、これまで安倍首相が行ってきたメディアの「選別」から、さらに「管理」へとシフトするだろう。また、菅氏と近い報道機関の幹部は少なくない。これまで組織の中でもがいてきた記者やディレクターたちは、さらに苦しい立場に追い込まれるかもしれない」、「記者クラブ・・・のチェック機能が低下し、権力に都合よく使われようとしている。今後、日本のジャーナリズムはさらなる危機を迎えるだろう」、確かに、マスコミコントロールの司令塔だった「菅氏」が「首相」になった以上、これまでよりコントロールが強化されることは確かだ。望月氏をはじめ心ある記者諸氏の健闘を期待したい。

第四に、9月18日付け現代ビジネスが掲載したライター・エディターの高堀 冬彦氏による「菅新首相が猛攻するテレビ業界への「本気の脅し」その内容 NHK受信料問題、電波利用料見直し…」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/75730?imp=0
・『テレビ局の特別扱いはもはや難しい  菅義偉首相(71)が誕生した。7年8ヶ月ぶりの首相交代を歓迎する声もある一方で、テレビ界は警戒心を強めている。いくつかの試練が予想されるからだ。 菅氏は総務相の経験(2006年9月~2007年8月)があるため、通信・放送政策に人一倍明るい。自民党総裁選以降、デジタル庁創設を提言し始めた背景にもそれがある。デジタル庁はテレビ界には直接関係しないものの、総裁選中にはテレビ界に関わる問題にも触れた。 「携帯電話の電波利用料引き上げについて言及しました」(元テレビ朝日報道局記者で隔月刊誌『放送レポート』編集長の岩崎貞明氏) 電波利用料はテレビ界にも深く関係する。菅首相は「(携帯電話の)電波利用料の見直しはやらざるを得ない」(同)と総裁選中に訴えたが、それが携帯電話に留まるとは考えにくい。年間計約750億円(2019年度)におよぶ電波利用料は、不法電波の監視や電波の研究費などに充てられており、テレビ局のためにも役立てられているからである。 その上、これまでの電波利用料は携帯電話業者の負担が突出していた。このため、携帯電話業者側からは「不公平」との声が上がり続けていた。 例えば携帯大手3社の電波利用料はこうだ。 +ドコモ 約184億1000万円 +KDDI 約114億7000万円 +ソフトバンク 約150億1000万円 一方、テレビ局は次の通り。 +NHK 約25億円 +日本テレビ 約6.6億円 +TBS 約6.4億円 +フジテレビ 約6.3億円 +テレビ朝日 約6.4億円 +テレビ東京 約6.3億円 テレビの負担額が抑えられてきたのは公共性が高いとされてきたから。もっとも、今は携帯電話やスマホによって災害情報などを知る人も多く、公共性は甲乙付けがたい。テレビ局だけを特別扱いするのが難しくなっている。それを菅首相が知らぬはずがない。 なにより、電波利用料は次世代通信規格の「5G」の整備にも使われている。これにはテレビ局も関係する。今やテレビ局には動画配信事業が欠かせないからだ。 菅政権は携帯電話料金を4割下げるとしている。実現したら、携帯電話会社の電波利用料の引き上げは見送られるか、逆に下げられるだろう。携帯電話会社の負担があまりにも大きくなるからだ。となると、代わりに電波利用料を背負わなくてはならなくなるのはテレビ界になるはず。 かといって電波利用料が上がったら、テレビ局には痛い。新型コロナ禍により、民放各局の営業利益は約2割も落ちているとされている。 「菅首相は電波利用料の引き上げ問題を使い、通信・放送業界に大きな揺さぶりをかけてくることも予想されます」(前出・岩崎編集長) テレビ局が菅首相の顔色をうかがわなくてはならない要因の一つとなりそうだ』、「携帯電話料金」引き下げが、「テレビ局」の「電波利用料の引き上げ問題」につながるので、「テレビ局が菅首相の顔色をうかがわなくてはならない要因の一つ」、政府によるコントロールがますます強まりそうだ。
・『NHK受信料の支払い義務化  ほかに菅首相のテレビ界に関する政策として考えられるのは、まずNHK受信料の支払い義務化。 菅首相は総務相時代の2007年、当時のNHK会長・橋本元一氏(77)に対し、「受信料を約2割値下げし、義務化を」と提案した。だが、橋元氏はこれを拒んだ。その理由を橋元氏は「2割値下げという考え方は受け入れられない」と説明したが、局内には「自民党の支配度が高まる」という危惧もあった。 そもそも古くからNHK内には義務化に慎重な声が根強い。NHKマンたちに本音を聞くと分かるが、任意で支払ってもらうからこそ公共放送として視聴者との信頼関係を築けると考えている人が少なくない。 半面、近年のNHKは受信料不払い世帯に対し、支払督促申立てなどの法的手続きを取るケースも多い。矛盾である。だが、これはNHK全体が積極的に望んでいることとは言い難く、背景は複雑だ』、NHKの立場は、「公共放送として」「受信料」を獲得したいという一方で、「支払い義務化」で「自民党の支配度が高まる」のは避けたいというヌエのようなご都合主義だ。
・『NHKが徴収率アップに向けて躍起になる理由  実はNHKが受信料不払いに対して法的手続きを講じ始めたのも菅総務相の時代なのだ。2006年11月、都内の33件について東京簡易裁判所に支払い督促を申し立てた。 徴収率が落ちると、「公共放送としての権威がなくなる」などの声が永田町や霞ヶ関から上がり、プレッシャーをかけられる。政官界からの重圧から逃れたいというのもNHKが徴収率アップに向けて躍起になる理由なのだ。 それでも菅首相が義務化を実現させた場合、約2割の世帯にとっては事実上の増税となる。2019年度末の受信料の推計世帯支払率は全国で81.8%だからである。 なにやら因縁めいているが、都道府県別で受信料の支払率が一番高いのは秋田県の98.3%。菅首相の故郷だ。受信料義務化が菅首相の選挙に悪影響をもたらすことはないだろう。東京は69.8%、最も低いのは沖縄県の51.8%だ。沖縄県が低い理由は1972年の本土復帰までNHKが撤退していた上、政府寄りの報道があることで不満を抱かれているからだと思われている。 「義務化すると、NHKは今以上に各所から反感を買いかねません。番組づくりの自由度も落ちるでしょう。また、放送内容についてより丁寧な説明をする責任が生じてきます」(岩崎編集長) 義務化されれば、事実上の国営放送の誕生と言っていい。受信料を強制的に徴収した上、NHKの最高意思決定機関である経営委員会の12人の委員は政府が決めてしまうのだから。経営委員会は会長の任免を行い、予算や事業計画なども決定する。 経営委員は衆・参両院の同意を得て、首相が任命するが、その仕組みを考えれば、政権が牛耳れるのは説明するまでもない。同じ公共放送のイギリス・BBCとは全く違う。公共放送とは、国による管理や統制から自立した放送にほかならない』、同じ「公共放送」の「BBC」が「国による管理や統制から自立し」ているのは、どういった仕組みなのだろう。
・『政府による受信料値下げ要請  NHKの前にある暗雲はこれだけではない。政府による受信料値下げ要請である。局内からは「圧力」という声も上がる。今年10月から衛星波・地上波の月払いだと60円下がる(継続振込等で2220円)のだが、前政権時から「さらなる値下げを」と求められ続けている。 2019年10月、消費税が8%から10%に増税された時も受信料は据え置かれており、今年10月分を合わせると、実質計約4.5%の値下げ。その分、制作費などを削って、3年間で計630億円程度の支出を減らし、帳尻を合わせようとしていた。 また、衛星放送とAMラジオ放送をそれぞれ1波ずつ削減することも決めている。それでも追加値下げは簡単ではないはず。建て替える予定の新放送センターには約1700億円かかるし、なにしろ職員数約1万人の巨大組織なのだから。減税並みの一大事になる。 とはいえ、結局は値下げとなるだろう。値下げを歓迎しない視聴者はまずいないし、日本新聞協会までが「受信料水準の見直し」を声明しているからだ。なぜ、新聞協会までNHKの受信料に関心を抱くのか。背景には新聞の部数急落があると見ていい。NHKの受信料に割高感が強いと、新聞購読をやめる人が増えてしまいかねないからだ』、「NHKの受信料に割高感が強いと、新聞購読をやめる人が増えてしまいかねない」、こんな競合関係があるとは初めて知った。「新放送センター」への「建て替え」は本当に必要なのだろうか。
・『NHKそのものの弱体化  このままだとNHKという組織は弱まるだろう。組織人なら誰もが知る通り、収入減は組織の弱体化に直結する。 政府は既に経営委員会を抑え、会長人事も意のままにしているが、現場は思い通りに出来ていない。「それが不満で力を弱めたいのではないか」(NHK職員)。もともとNHKは現場が強い組織なのだ。 NHKの辛苦はまだ考えられる。 「菅首相は新自由主義とされますから、公共放送は出来るだけ小さくしたい思いがあるはず。衛星放送とAMラジオを1波ずつ削るどころか、組織のさらなる縮小を推し進める可能性もあります」(岩崎編集長) 民放はクロスオーナーシップ(同一資本がテレビと新聞に出資すること)なので、新聞社と行動を供にする。NHKは孤立無援になる恐れがある。頼みの綱は世論しかない。 ただし、いかなる政治勢力とも距離をおかなくてはならないのが公共放送なのにもかかわらず、安倍前首相とべったりと言われた記者、幹部もいることを視聴者は知っている。受信料を支払い続けてきた視聴者に寄り添っていたかどうかがカギになる』、確かに「安倍前首相とべったりと言われた記者、幹部もいることを視聴者は知っている」、少なくとも「現場」は「いかなる政治勢力とも距離」を置くことが、世論の支持の前提だろう。
タグ:記者クラブ 東洋経済オンライン yahooニュース 日刊ゲンダイ 古賀茂明 志葉玲 現代ビジネス 高堀 冬彦 望月 衣塑子 政府のマスコミへのコントロール (その16)(菅氏会見「品位がない記者」は何故叫んだかー公文書の適切管理を約束できない「次期首相」最有力候補、菅新政権「マスコミ支配」継承 総裁選から“圧力文書”配布、菅首相誕生で政権とメディアの関係はどうなる 日本のジャーナリズムに及ぶ影響とは、菅新首相が猛攻するテレビ業界への「本気の脅し」その内容 NHK受信料問題、電波利用料見直し…) 「菅氏会見「品位がない記者」は何故叫んだかー公文書の適切管理を約束できない「次期首相」最有力候補」 菅義偉官房長官の自民党総裁選への出馬会見 菅氏の会見の終盤 「不規則発言」をした ツイッター上で「品位がない記者」として紹介 お上品」な記者クラブメディアの煮え切らない「お行儀の良さ」こそ、安倍政権を増長させてきた 「出来レース」の会見 質問できる記者は予め決まっているのであれば、「記者会見」とは名ばかりだ 安倍政権での弱腰を繰り返すのか? 安倍政権が「憲政史上最長」の長期政権となった大きな要因として、記者クラブ報道の弱腰、特に会見の場での追及の甘さがある 「公文書を棄てない、改ざんしない」と言えない菅氏 「鉄壁のガースー」 「お上品」な太鼓持ちより「品位がない」ジャーナリストであれ 少々問い詰められただけで目が泳ぐ菅氏を、「鉄壁のガースー」にしてしまったのは、記者クラブの「お上品」さが故だ ジャーナリストの仕事において最も重要な使命の一つが権力を監視すること。「お上品」な権力者の太鼓持ちよりは、「品位がない」ジャーナリストである方が、はるかにマシだ 「菅新政権「マスコミ支配」継承 総裁選から“圧力文書”配布」 自民党が新聞・通信各社に対し、野田毅総裁選挙管理委員長名で文書を出した。総裁選の候補者の公平な扱いを求めるもので 内容や掲載面積で平等、公平な扱いをお願いする 公職選挙法とは無関係な総裁選でも出されるようになった メディアは唯々諾々 菅官房長官の陣営は、できるだけ総裁選を報道してもらいたくないんでしょうね。もう勝利は決まっているから、メディアには静かにしていて欲しい。要請にはそんな意図が含まれているように思います メディアへの圧力が当たり前になり、メディア側も唯々諾々。菅政権ではそれがさらに強化されることになる 「菅首相誕生で政権とメディアの関係はどうなる 日本のジャーナリズムに及ぶ影響とは」 メディアへの対応を尋ねた質問に対して… 危機管理担当大臣の官房長官として6日夜の行動は問題だったのでは」との質問に対し そうしたことにお答えする必要はない。ただ、防災対策はしっかりやっていました。このことは明言をいたしております (問題かどうか)お答えする必要はない メディアの「選別」からメディアの「管理」へ 菅氏が首相になれば、これまで安倍首相が行ってきたメディアの「選別」から、さらに「管理」へとシフトするだろう。また、菅氏と近い報道機関の幹部は少なくない。これまで組織の中でもがいてきた記者やディレクターたちは、さらに苦しい立場に追い込まれるかもしれない のチェック機能が低下し、権力に都合よく使われようとしている。今後、日本のジャーナリズムはさらなる危機を迎えるだろう 「菅新首相が猛攻するテレビ業界への「本気の脅し」その内容 NHK受信料問題、電波利用料見直し…」 テレビ局の特別扱いはもはや難しい 携帯電話料金」引き下げが、「テレビ局」の「電波利用料の引き上げ問題」につながるので、「テレビ局が菅首相の顔色をうかがわなくてはならない要因の一つ NHK受信料の支払い義務化 同じ「公共放送」の「BBC」が「国による管理や統制から自立し」ているのは、どういった仕組みなのだろう 政府による受信料値下げ要請 NHKの受信料に割高感が強いと、新聞購読をやめる人が増えてしまいかねない 「新放送センター」への「建て替え」は本当に必要なのだろうか NHKそのものの弱体化 安倍前首相とべったりと言われた記者、幹部もいることを視聴者は知っている 少なくとも「現場」は「いかなる政治勢力とも距離」を置くことが、世論の支持の前提
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ソフトバンクの経営(その15)(過去最大の大赤字…ソフトバンクショックの「ヤバさ」を分析する 営業損失1兆円超えの衝撃、ソフトバンクG 巨額の上場株投資に見えぬ戦略 孫正義氏は膨らむ「軍資金」を何に使うのか、ソフトバンクGに株式非公開化が浮上 孫氏投資戦略の布石か) [企業経営]

ソフトバンクの経営については、4月3日に取上げた。今日は、(その15)(過去最大の大赤字…ソフトバンクショックの「ヤバさ」を分析する 営業損失1兆円超えの衝撃、ソフトバンクG 巨額の上場株投資に見えぬ戦略 孫正義氏は膨らむ「軍資金」を何に使うのか、ソフトバンクGに株式非公開化が浮上 孫氏投資戦略の布石か)である。

先ずは、6月10日付け現代ビジネスが掲載した経済評論家の加谷 珪一氏による「過去最大の大赤字…ソフトバンクショックの「ヤバさ」を分析する 営業損失1兆円超えの衝撃」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/73204?imp=0
・『ソフトバンクグループが過去最大となる1兆3646億円の巨額赤字を計上した。同社は資産売却などを進め、財務体質の改善を進めるとしている。一部からは今後を不安視する声も聞こえてくるが、経営が破綻する可能性は極めて低い。 その理由は、同社はすでに事業会社ではなく投資会社に近い事業形態になっているからである。投資会社は良くも悪くもコアとなる事業がないため、投資に失敗すれば、ポートフォリオが歯抜けになっていくだけである。 幸い、同社には通信というコア事業が残っており、一定のキャッシュフローを確保できている。資産売却などによって得た資金と、通信子会社が稼ぐ資金を使って、どこまでポートフォリオの解体を止められるのかが今後の焦点となるだろう』、興味深そうだ。
・『ソフトバンクはもはや投資会社  ソフトバンクグループは2020年5月18日、2020年3月期の決算を発表した。売上高は前期比1.5%増の6兆1850億円だったが、営業損益は1兆3646億円の赤字、最終損益も9615億円の赤字に転落した。2兆円の営業利益だった前期から一転し、過去最大の赤字決算である。 冒頭で説明したように、同社には通信事業というコア事業が存在しているものの、限りなく投資ファンドに近い事業形態となっている。今回、計上した損失についてもほとんどが投資事業の評価損といってよい。具体的にはソフトバンク・ビジョン・ファンド(いわゆる10兆円ファンド)が保有する、ウーバー(ライドシェア)、ウィーワーク(シェアオフィス)といった企業である。 一方で、同社は年間約1.1兆円の営業キャッシュフローを確保しているが、この大半は通信子会社であるソフトバンクが稼ぎ出したものである。投資先の評価損というのはキャッシュが流出したものではないので、同社がすぐに資金繰りに窮することはない。 一般的な事業会社の業績が悪化する時には、本業の事業がダメになり、赤字が発生してキャッシュが流出。資金を手当てできない場合には、資金繰りに詰まって倒産に至る。赤字そのもので倒産することはなく、企業が倒産する理由のほとんどが資金繰りである。 ところが投資事業が主体の場合、事業の構造がまるで異なっている。 コロナ危機のような事態が発生し、投資した企業の業績が悪化すると、投資先企業の資金繰りは厳しくなるが、投資した側は株価が下落して評価損が発生するだけで、資金面における直接的な影響はない。投資した企業の株式を担保に借入れを行い、さらに追加投資を行っている場合にのみ、一定水準以下に株価が下落すると破綻に至る。 ソフトバンクグループも多額の借入れを行っているが、利益を出している通信事業やアリババ集団といった優良な資産を保有しているので、これらの事業には十分な担保価値がある。2019年12月末時点において、同社が保有している株式の価値は29兆円となっており、純有利子負債は6兆円なので、すべての企業が一斉にダメにならない限り、同社が破綻するといった事態は考えにくい』、確かに「投資会社」で、本業でキャッシュフローを稼ぎ出しているので、抵抗力はありそうだ。
・『株を売って資金を捻出  だが、破綻する可能性が極めて低いからといって、今回の事態が、同社にとって軽微なのかというとそうではない。投資先企業の時価総額が減った分、他の投資先など価値が残っている資産を売却し、財務上、その穴埋めをしなければならない。 実際、同社は今回の巨額赤字を受けて、虎の子であるアリババ集団の一部株式を売却し(実際には先渡し契約)、1兆2500億円の現金を確保したほか、通信子会社であるソフトバンクの株式5%を売却し3300億円を調達している。 孫正義社長は、投資先企業について「15社が倒産し、15社がコロナの谷を飛んでいって成功する。残りの60社弱はまあまあの状況になるのではないか」と説明している。筆者はかつてベンチャーキャピタル・ファンドの運用に従事したことがあるが、孫氏の見通しはベンチャー投資としてはごく平均的な水準であり、取り立てて大きな問題があるわけではない。 だが、孫氏の見立てを現実が大きく下回り、投資先企業の破綻が増加すれば、そのたびに財務上の穴埋めが求められる。最悪のシナリオとしては、投資ポートフォリオが解体されてしまう可能性はゼロではない。すでに投資してしまった企業については、今からは対策の打ちようがないので、市場の推移を見守るしかないだろう。 冒頭でソフトバンクグループは限りなく投資会社に近づいていると述べたが、それでも同社には国内通信会社であるソフトバンクというキャッシュを稼げるコア事業が残っている。また、2020年4月には長年の懸案事項だった米通信会社スプリントとTモバイルUSの合併が完了し、いよいよ上位2社であるベライゾン、AT&Tと互角に戦える環境が整った。 スプリントとTモバイルUSは通信会社なので、日米という市場の違いはあるものの、国内通信会社であるソフトバンクと同業ということになる。両者を単なる投資先と見るか、ソフトバンクのコア事業のひとつとして見るのかについては見解が分かれるだろうが、少なくともソフトバンク・ビジョンファンドが投資しているシェアリング・エコノミー企業とは性格が異なるのは間違いないだろう。 最悪、投資ファンドの事業がうまくいかなくなっても、コア事業である通信事業を守ることができれば、事業会社としての存続が可能である』、「スプリントとTモバイルUS」の合併後の会社への保有比率は24%に低下、連結対象から外れた。
・『ジャック・マー氏退任の意味  孫氏は当初、通信事業を核に資金調達を進め、ビジョンファンドなどを通じて、シェアリング・エコノミー企業への投資を加速させ、次世代のネット・ビジネスにおける覇権を握るというシナリオを描いていた。 こうした次世代ネット・ビジネスの中核となる企業は、ウーバーとアリババだったが、アリババについては今後、どれほどのシナジー効果を得られるのか微妙な状況となってきた。その理由はアリババの創業者であるジャック・マー氏がソフトバンクグループの社外取締役から退くからである。 マー氏はアリババの創業者であり、同社が創業間もない時から孫氏が目をかけ、資金を投じて育成してきた。アリババが中国を代表するネット企業に成長したことで、ソフトバンクグループには巨額の含み益が転がり込み、これが同社の投資事業を支えてきた。つまりマーと孫氏は戦友ということになる。 だがマー氏は昨年、55歳の誕生日を期に第一線から退くことを表明した。教師出身のマー氏は「教育事業を手がけたい」と引退の理由を語っているが、額面通りに受け取る人はいない。中国共産党の権力闘争に巻き込まれたとの見方が有力であり、アリババが今後、どのような事業展開を見せるのか不透明な状況になっている。 またアリババも広範囲な投資を行っており、一部の事業ではソフトバンクグループと競合していることから、両社がタッグを組んで、共同でネット・ビジネスを展開するという状況にはなっていない。マー氏が引退宣言を行い、事業における利益相反も発生しているという現状を考えると、マー氏が社外役員を退くのは自然な流れといってよいだろう。 結果としてアリババは、ソフトバンクグループにとって単なる投資先であり、事業のパートナーではなくなることを意味している。今後はウーバーを核に、次世代のネット戦略をどう描くのかが注目される』、「アリババは、ソフトバンクグループにとって単なる投資先」になったのであれば、「次世代のネット戦略をどう描くのかが注目される」、その通りなのだろう。

次に、9月13日付け東洋経済オンライン「ソフトバンクG、巨額の上場株投資に見えぬ戦略 孫正義氏は膨らむ「軍資金」を何に使うのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/374927
・『たった3日で1兆円近い時価総額が吹き飛んだ。ソフトバンクグループ(SBG)の株価は9月9日までに前週末から10%あまり下落し、終値は5677円をつけ、2カ月ぶりの安値に落ち込んだ。 きっかけは9月4日、海外メディアが相次いでSBGによるアメリカIT企業株の巨額取引を報じたことだった。イギリスの大手紙フィナンシャル・タイムズ(FT)によれば、SBGは株価上昇を見込み、過去数カ月でIT企業株の「コールオプション」(あらかじめ決められた価格で購入する権利)を40億ドル買い入れた。その目算は当たり、すでに約40億ドルの含み益が出ているという。これについてSBGの広報担当者は「個別の取引についてはコメントしない」としている』、「すでに約40億ドルの含み益が出ている」とはいえ、「上場株」に「投資」するとは奇策で、株価下落も頷ける。
・『8月に巨額の米国株投資が判明  コールオプションの買い手は、売り手に対し「プレミアム」と呼ばれる権利料を支払う。株価が値上がりすれば少ない投資額で多くの利益を生むことができる分、値下がりを受けて権利を放棄すれば、支払った権利料はすべて損失となる。ハイリスク・ハイリターンの取引手法だ。 IT企業が多くを占めるアメリカのナスダック総合指数は3月以降一貫して上昇を続けたが、9月3日からの3日間で約10%下落するなど調整局面に入った。先述の報道の通りに9月初旬までに40億ドルの含み益があったとすれば、大きく縮小している可能性がある。SBGの株が売られたのは、巨額の株取引に対し、アメリカ株市場の下落が影響するとみたからだろう。市場はSBGの投資スタンスに対して「NO」を突きつけた形だ。 SBGは2020年3月、過去最大規模となる最大2兆円の自社株買いや負債削減のため、最大4.5兆円に上る保有資産の売却・資金化(資産売却プログラム)を発表。その後、株主還元や財務改善が好感されて上昇を続けた。資産売却プログラムは当初、1年をかけて実行する予定だったが、中国アリババ集団株の先渡売買契約やアメリカのTモバイルUS株の売却などにより、8月までに4.3兆円分のメドを付けた。 こうして得た余剰資金の運用や資産の多様化を目的として、SBGは現在、アメリカの上場株への投資を強めている。すでに2020年4~6月にはSBG本体が1兆円超を上場株に投資し、約650億円の売却益を得ている。8月17日に規制当局へ提出された文書では、6月末時点でアマゾンやアルファベット(グーグルの親会社)、マイクロソフトなどアメリカ市場に上場するIT企業の25銘柄を保有(総保有額約36億ドル)していることが明らかになった。 アメリカ株に詳しいマネックス証券の岡元兵八郎チーフ・外国株コンサルタントは、「保有銘柄は王道な”ライトストック(正しい株)”が多い。さすが孫さんといったところ。単なるはやりではなく、今後5年、10年と上がっていく銘柄ばかりだ」と分析する。 現物株の投資に加えて、今回報じられたデリバティブ(オプション取引も含む金融派生商品)を駆使してさらなる利益を狙う様については「まるでヘッジファンドのようだ」と複数の市場関係者が口にする。 そこで関係してくるのが新たな投資子会社設立の動きだ。上場株の運用をSBGの主要事業とすべく、孫正義会長兼社長は8月の決算会見で投資運用子会社を設立することを発表した。会社側によれば、登記上の本社はアメリカで、運用業務はアブダビの拠点が担う。だが、誰がこの新会社のトップを務め、どれくらいの陣容で運用を行うかなど詳細は非開示だ。この新会社に対し、SBGは現金や保有資産を委託する』、「資産売却プログラム」により生じた「余剰資金の運用」や資産の多様化を目的として直ぐに「上場株」に投資するとは、「孫」氏らしいやり方だ。「投資運用子会社を設立」とは本腰が入っているようだ。
・『過去にもデリバティブ取引で多額の利益  孫氏はこの新会社の設立にあたり、「運用手法としては直接投資のほか、リスクを抑えるためにデリバティブも積極的に活用していきたい」と語っている。 実は、SBGによるオプション取引は今に始まったことではない。孫氏は8月の決算会見で、ソフトバンク・ビジョン・ファンドが2019年1月に全株を売却したアメリカの半導体大手エヌビディア株の取引を例に、「プット(オプション)の買い」「コール(オプション)の売り」といったデリバティブ用語を交えて「結果的に数千億円の実現益を出せた」と胸を張った。 エヌビディアの株価は2018年9月末に281ドルだったが、仮想通貨のマイニング向けの半導体需要が急減したことなどにより、3カ月後の12月末には134ドルと半分以下に急落した。だが、SBGは「カラー取引」と呼ばれるデリバティブ取引で下落リスクを保全していた。これは株価の値下がりを見越して「プットオプション」(あらかじめ決められた価格で株を売却できる権利)を買い、値上がり益を放棄してコールオプションを売ることでプレミアム(権利料)収入を確保するというものだ。 今回の報道で明らかになったコールオプションの買いは、株価の値上がりを見込んで含み益を一段と増やそうとする投資行動だ。ただ、別の海外メディアの続報によると、SBGはコールオプションの売りも組み合わせ、株価下落時のリスクについても一定の保全しているもようだ。いずれにしても、デリバティブを組み合わせて推し進める巨額の上場株投資の先に孫氏が何を描いているかは見えてこない。 投資運用の新会社が設けた12年というファンド期間は、未上場株投資の「10兆円ファンド」であるビジョンファンドと同じ。SBGは「ビジョンファンドに並ぶ主要なエンティティ(事業主体)として位置づけている」としている。 SMBC日興證券の菊池悟アナリストは、「上場株投資の規模が大きくなれば、ナスダック指数と連動するファンドを買うのと変わらなくなり、投資家にとってSBG株を買う意義がわかりづらくなる」と指摘する。孫氏の目利きによる世界中のベンチャーへの投資を担うビジョンファンドと異なり、上場株投資は「なぜSBGがやるのか」という疑問が浮かぶ』、「疑問」には同感だ。
・『膨らむ投資の原資  そうした中、投資の原資となる現金は膨らむばかりだ。4.5兆円の資産売却プログラムにほぼメドをつけたうえ、8月28日には通信子会社ソフトバンク株約1.4兆円分の売却を発表した。さらに孫氏は傘下のイギリスの半導体企業、アームの株式(保有価値は約2.7兆円)の売却を検討し始めたことも認めている。 ビジョンファンドの投資損益は1年前に200億ドルあったが、直近では20億ドルと10分の1の水準まで減少した。2号ファンドも外部投資家を集められず、SBGの自己資金で運用している。ファンドを通じた海外ベンチャーの投資にかつての勢いは見られない。「もはや投資会社だ」(孫氏)というSBGは、上場株投資をさらに増やすのか、それとも別のターゲットに照準を合わせているのか。少なくとも巨額の軍資金を金庫に寝かすようなことはないだろう』、「アーム」は米国の画像処理用半導体メーカーのエヌビディアが最大400億ドルで買収、対価は現金と株式で、「SBG」が大株主になる予定だ。膨らむ「現金」をどのように使うのだろうか。

第三に、9月17日付け日刊ゲンダイ「ソフトバンクGに株式非公開化が浮上 孫氏投資戦略の布石か」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/278846
・『ソフトバンクグループ(SBG)は、傘下の英半導体設計大手アームについて、米半導体大手エヌビディアへの売却で合意した。売却額は最大400億ドル(約4・2兆円)。IT事業戦略の中核企業を手放し、膨らむ手元資金で次の一手を模索。ただ、新型コロナウイルスの影響で事業環境は激変しており、金融市場ではSBGが潤沢な資金で株式非公開化を検討するとの観測が出てきた。 SBGは10兆円規模を運用する「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」が低迷しており、今年に入り負債圧縮と自社株買いに向けた資産売却を加速させた。8月末時点で6兆円規模の調達にめどを付けており、今回アーム売却の対価として取得するエヌビディア株式を除いても、最大2兆円規模の現金が上積みされる見通しだ。 しかし、新型コロナの終息は見通せず、米国と中国の経済分離も加速する中、中国・字節跳動(バイトダンス)などSVF既存投資企業の先行きにも不透明感が漂う。 SBGは今年半ばごろから、米ハイテク上場株の取得などに向かったが、株式市場から十分な評価を得られていない。株式評価額が保有資産(時価)の半値程度にとどまっており、英メディアなどは「SBGが経営陣による自社買収(MBO)を検討している」と報じた。 孫正義会長兼社長(写真)にとって株式を非公開化すれば、市場の短期評価に影響されない思い切った投資戦略が可能となるだけに、「一連の資産売却はその布石」(投資銀行幹部)との見方も根強い』、「株式評価額が保有資産(時価)の半値程度」と安値になっているのであれば、MBOによる「株式非公開化」も確かに考え得るが、銀行団は抵抗するだろうし、社債の扱いも問題になるだろう。
タグ:ソフトバンク 東洋経済オンライン 日刊ゲンダイ 現代ビジネス の経営 加谷 珪一 (その15)(過去最大の大赤字…ソフトバンクショックの「ヤバさ」を分析する 営業損失1兆円超えの衝撃、ソフトバンクG 巨額の上場株投資に見えぬ戦略 孫正義氏は膨らむ「軍資金」を何に使うのか、ソフトバンクGに株式非公開化が浮上 孫氏投資戦略の布石か) 「過去最大の大赤字…ソフトバンクショックの「ヤバさ」を分析する 営業損失1兆円超えの衝撃」 投資会社は良くも悪くもコアとなる事業がないため、投資に失敗すれば、ポートフォリオが歯抜けになっていくだけ 同社には通信というコア事業が残っており、一定のキャッシュフローを確保できている ソフトバンクはもはや投資会社 株を売って資金を捻出 ジャック・マー氏退任の意味 「アリババは、ソフトバンクグループにとって単なる投資先」になったのであれば、「次世代のネット戦略をどう描くのかが注目される」 「ソフトバンクG、巨額の上場株投資に見えぬ戦略 孫正義氏は膨らむ「軍資金」を何に使うのか」 海外メディアが相次いでSBGによるアメリカIT企業株の巨額取引を報じたこと 「上場株」に「投資」するとは奇策で、株価下落も頷ける 8月に巨額の米国株投資が判明 SBGの株が売られたのは、巨額の株取引に対し、アメリカ株市場の下落が影響するとみたからだろう。市場はSBGの投資スタンスに対して「NO」を突きつけた形だ 最大2兆円の自社株買いや負債削減のため、最大4.5兆円に上る保有資産の売却・資金化(資産売却プログラム) 4.3兆円分のメドを付けた。 こうして得た余剰資金の運用や資産の多様化を目的として、SBGは現在、アメリカの上場株への投資を強めている デリバティブ(オプション取引も含む金融派生商品)を駆使してさらなる利益を狙う まるでヘッジファンドのようだ」 まるでヘッジファンドのようだ 投資運用子会社を設立 過去にもデリバティブ取引で多額の利益 上場株投資は「なぜSBGがやるのか」という疑問が浮かぶ 膨らむ投資の原資 「アーム」は米国の画像処理用半導体メーカーのエヌビディアが最大400億ドルで買収、対価は現金と株式で、「SBG」が大株主になる予定 「ソフトバンクGに株式非公開化が浮上 孫氏投資戦略の布石か」 株式評価額が保有資産(時価)の半値程度 英メディアなどは「SBGが経営陣による自社買収(MBO)を検討している」と報じた MBOによる「株式非公開化」も確かに考え得るが、銀行団は抵抗するだろうし、社債の扱いも問題になるだろう
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