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非正規雇用問題(その2)(ハローワーク職員がワーキングプア? 年収200万円公務員の実態、待遇格差訴訟 最高裁判決が真逆に割れたワケ 各種手当は認めた一方、賞与・退職金は認めず、大学生バイト「違法状態で使われる」驚愕の実態 201人調査でわかった具体的な「賃金支払い」) [社会]

非正規雇用問題については、2018年6月13日に取上げた。今日は、(その2)(ハローワーク職員がワーキングプア? 年収200万円公務員の実態、待遇格差訴訟 最高裁判決が真逆に割れたワケ 各種手当は認めた一方、賞与・退職金は認めず、大学生バイト「違法状態で使われる」驚愕の実態 201人調査でわかった具体的な「賃金支払い」)である。

先ずは、本年9月23日付け日経ビジネスオンラインが掲載した健康社会学者(Ph.D.)の河合 薫氏による「ハローワーク職員がワーキングプア? 年収200万円公務員の実態」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00092/?P=1
・『私は講演会に呼ばれたときに、担当者の方に必ず聞くことがある。 企業の場合は「女性の役員は何人くらい、いらっしゃるんですか?」、地方自治体の場合は「これからは地方地自体が色々と頑張らなきゃいけない時代ですね」といった具合だ。 ん? 質問のトーンが違うじゃないかって? はい。そうです。後者は質問とは言い難い、が、これでいいのです』、「これでいいのです」、とはどいうことなのだろう。
・『常勤公務員の「枠の外」にある存在  「女性活用」というワードはほぼ完全に企業にも浸透しているので、大抵の場合、この質問から“その企業が直面している問題”に話は転がっていく。 一方、地方自治体では、高齢者や児童に関する相談への対応など住民に寄り添う仕事が増えているので、「いや~、実は……」という具合にさまざまな話題に広がるのだ。 そこで決まって登場するのが、「非正規公務員」問題だ。 非正規公務員とは、「常勤公務員」の枠外で任用されている「非常勤の公務員」のこと。行政のスリム化により急増し、現在は地方自治体で働く公務員の3人に1人が非正規公務員だ。 で、その非正規公務員を巡り、 「非正規公務員は、賃金がものすごく安い。現場から声をあげてもどうにもならなくて……」「非正規公務員が住民のことをいちばん分かっているのに、彼らの経験知は全く評価されない」「非正規公務員は、優秀な職員が多いのに、若い正規の公務員にあごで使われるようなこともあるので……」「非正規というだけで、パワハラの対象になる」……などなど問題山積で、「これでもか!」というくらい現場の担当者たちから“嘆き”を聞かされてきた。 そして、今。コロナ禍で、非正規公務員が厳しい状況にますます追いやられ、「冗談のような過酷な現実」に直面している。 そもそも「公務員=安定」のはずなのに、「非正規=不安定」という雇用形態で雇われているのだから訳が分からない。というか、「公務員=安定」というパワーワードのせいで、厳しい実態が陰に隠れ、スポットが当てられてこなかった側面もある。 正規と非正規公務員の間には、民間の非正規雇用以上の“理不尽な格差問題”が生じているにもかかわらず、だ。 政権が変わり「地方創生」に期待する声が高まっているけれど、地方創生という言語明瞭意味不明確な理念の中に、「非正規公務員」問題は含まれているのだろうか。 そこで、今回は「谷間に落ちる非正規公務員」について、あれこれ考えてみる。 先日、新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化した4月前後に、少なくとも1都13県で自治体の職員が「過労死ライン超」の、月100時間を超える残業を余儀なくされていたことが分かった。 月200時間を超えたケースも相次いでいて、山口県では最も長い職員で266時間、福井県では232時間、千葉県では217時間に達していたという(NHK調べ)』、「非正規公務員」といっても、「少なくとも1都13県で自治体の職員が「過労死ライン超」の、月100時間を超える残業を余儀なくされていた」、とは驚かされた。
・『「時間外手当は一切なかった」  新型コロナウイルスに対応するための業務を担当していた保健所などの職員の多忙ぶりは連日報道されていたけど、「特別定額給付金」の給付なども加わり、その他の多くの職員たちが身を粉にして昼夜問わず働き続けていたのである。 で、その中には多くの非正規公務員が含まれていて、「残業代=時間外手当」が払われていない可能性が高まっているのだ。 実際、NHKが5月に放送した特集では、「給付金の申請が殺到し残業は増えたが、時間外手当は一切なかった」というコメントが非正規公務員から寄せられていた。 特別給付金の給付では、夫から暴力を受けシェルターなどで暮らす女性に、給付金がきちんと届くように手続きを行う必要があった。そこで非正規の同僚2人と、給付金を届けるために今の生活状況などについて一人一人、聞き取りなどを行い書類を作成。対象となったのはおよそ50人で、残業に加え、休日出勤も余儀なくされたが、その分の時間外手当は一切なかったそうだ。 本来、地方公務員には労働基準法が適用されるので、自治体は非常勤公務員にも残業代を支払わなくてはならない。ところが、これまでも多くの自治体で払われていなかった。 その理由とされているのが、自治法の規定である。 自治法204条2項の規定が「常勤職員には手当を支給する」と規定しているため、その反対解釈として「非常勤職員には手当を支給できない」とされてきたという(上林陽治著『非正規公務員の現在~深化する格差』、日本評論社)。) なんとも“行政っぽい”解釈ではあるが、2017年3月3日に西日本新聞に、「非正規職員に残業代支給へ 新年度から福岡市方針 対象2700人 同一労働同一賃金 各自治体でも急務に」という見出しで大きく報じられたことからも、いかに反対解釈が一般的だったかが分かるであろう。 記事によれば、2017年度の当初予算案に、各部局の人件費を計約1030万円上積みする形で残業代相当分を計上したという。 要するに、制度が実態に追いついていない。自治法が制定されたときには、今のように非正規公務員が基幹職化していなかったので、悲しいかな非正規公務員は「法律の谷間に落ちた存在」になってしまったのだ。 冒頭で、「3人に1人が非正規公務員」と書いたが、以下のグラフを見ればその急増ぶりが分かるだろう(「非正規公務員酷書」全国労働組合総連合(全労連)公務部会)。 地方公務員における非正規職員数の推移(出所/「非正規公務員酷書 」全労連公務部会)(グラフはリンク先参照)』、「自治法204条2項の規定が「常勤職員には手当を支給する」と規定しているため、その反対解釈として「非常勤職員には手当を支給できない」とされてきた」、こんな乱暴な解釈がまかり通ってきたのにも驚かされた。
・『求職者をサポートする「不安定な身分の職員」  05年には全国で45.5万人だったが、16年には64.3万人と11年間で18.7万人、41.1%も増加している。非正規公務員が全職員に占める平均比率も33.1%で、08年の27.4%から拡大し、3人に1人が非正規公務員だ。 職種別に見ると、最も人数が多いのは一般事務職員で16万人、次が消費生活相談員や女性相談員などの各種の相談員で12万人、保育士も10万人。2005年からの11年間で最も人数が増えたのは教員・講師で、倍増している。 また、国家公務員でも非正規化が進んでいて、正規職員26.5万人余に対して非常勤職員は7.8万人余(2017年)。非正規率は22.7%で、省庁別に見ると厚生労働省が圧倒的に多くて3.4万人、52.6%と半数以上が非正規公務員だ。 これはハローワークの相談員が非常勤化されているためで、2014年の時点でも、相談員5人のうち3人が非正規公務員で占められていた。 つまり、「仕事を失った人」を、不安定な身分の職員=非正規公務員がサポートするという、やりきれない現実が存在しているのだ。 実際、これまでもハローワークの職員が「雇い止め」にあうという、嘘のようなホントが度々報じられてきた。2014年には東京新聞が、ハローワークに6年もの間、就労支援員として働いていた男性が雇い止めにあった問題を、「職安なのに『職不安定』?」という見出しで報じ、今年の初めには、ハローワークの非正規公務員2人が、「雇い止め」が横行しているとして雇用環境の改善をSNS上で呼びかけ、2万人超の署名が集まり話題となった。 前述したとおり、地方公務員法や地方自治法が制定された時点では、非正規公務員はいなかった。さらに、非正規公務員には、パートタイム労働法(均衡待遇等)や労働契約法(雇止め法理等)は適用されない。 つまり、これだけ非正規公務員が増えているのに、彼らを守るものがない。民間の企業なら、わずかながら「正社員」への道があるけど非正規公務員には、その道もない』、「求職者をサポートする「不安定な身分の職員」」、「国家公務員」では「非正規率は22.7%」、特に厚労省では「52.6%と半数以上が非正規公務員だ。 これはハローワークの相談員が非常勤化されているため」、「これまでもハローワークの職員が「雇い止め」にあうという、嘘のようなホントが度々報じられてきた」、「非正規公務員」がここまで広がっているとは初めて知った。
・『同一業務なのに低賃金の非正規公務員  おまけに、非正規公務員と常勤公務員とで仕事の差はなく、基幹化している非正規公務員の仕事の責任は極めて高い上に、専門的な知識が求められる。にもかかわらず、常勤の公務員との賃金格差はかなり大きい。 何度も書くが、非正規公務員の多くは正規の公務員と仕事内容はほとんど同じなのに、賃金は2分の1から3分の1程度と「なんでやねん!」というほど低くなっているのだ。 常勤の地方公務員の場合、平均給与(給料と手当)は月額41万1270円で、年2回支給される一時金は合計で平均162万4517円。これらを合算すると年収は665万9757円となる。 一方、非正規公務員の年収は200万円程度。最も高額に算出される市町村の特別職非常勤職員の事務補助職員でも約212万円だ(前出「非正規公務員の現在 深化する格差」)。 また、2016年に総務省が実施した調査では、非正規公務員の報酬水準は時給換算で平均845円だったことが分かっている。1日8時間、月20日、12カ月を休みなく働いても、年収で約162万円にしかならないという計算になる。 これほと?の低賃金て?雇われた「官製ワーキンク?フ?ア」=非正規公務員たちか?、私たちの生活に極めて必要な福祉サーヒ?スを支えている。 自分も不安定なのに、「相談員」として、私たちに「傘」を貸してくれているのた?。 「非正規公務員の人たちなくして、役場はなりたちません。彼らは支えが必要な住民の声を聞き、寄り添い、専門的な知識と経験で、住民のために働く人たちです。 プロ意識も高いし、誇りを持って働いている職員が本当に多いんです。みんなね、自費で心理カウンセラーの資格をとったりしてるんですよ。 いろんな制度の内容も熟知しておかないとダメでしょ。だから本当によく勉強している。頭がさがる思いです。 でも、彼らの頑張りを評価する制度がないんです。昇給もなければ、昇進もない。どんなに優秀でも常勤になれるわけでもない。 本来、彼らのスキルはお金に換算できない財産です。でも、そのスキルが非正規というだけで全く評価されないんだから、悔しいですよね。 住民の中には、安定した公務員だから何を言ってもいいだろう、とひどいことを言う人もいる。まさか安い賃金で不安定な身分で雇われているなんて思いもしないのでしょう」』、「「官製ワーキンク?フ?ア」・・・たちか?、私たちの生活に極めて必要な福祉サーヒ?スを支えている。 自分も不安定なのに、「相談員」として、私たちに「傘」を貸してくれているのた?」、「非正規公務員の人たちなくして、役場はなりたちません」、「非正規公務員」のあり方を本格的に見直すべきだろう。
・『ヒューマンサービスの現場が疲弊  講演会に行ったときにこんなふうに話してくれた課長さんがいた。 商品の苦情処理などを行う消費生活相談員、DVなどの相談にのる女性相談員、子供たちのケアをする学童指導員や保育士……、どれもこれも公共サービスに欠かせない「人」たちである。 その「人」のコストを削減し続けていることで、非正規公務員が厳しい労働環境に追い込まれているのだ。 日本を見渡すと、ありとあらゆるヒューマンサービスの現場が疲弊している。 低賃金、不安定。彼ら彼女らの“上”には、安定した高賃金の人たちがいる。 以前、何かの会合があったときに、「なんでヒューマンサービスの賃金って安いんだろう」と、ふと私がつぶやいたらこんなことを言った人がいた。 「例えばね、自動改札とかを考えた人たちっていうのは、生活を変えてくれたわけですよ。それってすごいことだから、そういう知的労働者の賃金は高くて当たり前なんだよ」と。 なるほど。いわゆる「イノベーション」ということだろうか。 だが、「私」が困ったときに支えてくれるハローワークや役場で働くのは、「私」の人生に「光」のありかを教えてくれる人たちだ。自分の傘ではどうにもならないときに、傘を貸してくれる人。人生を豊かにしてくれる存在でもある。 そんな彼らをきちんと評価し、守る制度をもっと考える時期にきているのではないか。 最後に、こちらのグラフも興味深いので紹介しておく。 OECD加盟国における総雇用者数に占める公務員の割合とGDPに占める公務員人件費の比較(出所/「非正規公務員酷書 」全労連公務部会)(グラフはリンク先参照)』、グラフによれば、「総雇用者数に占める公務員の割合」「GDPに占める公務員人件費」とも日本はOECDで最低である。「「私」が困ったときに支えてくれるハローワークや役場で働くのは、「私」の人生に「光」のありかを教えてくれる人たちだ。自分の傘ではどうにもならないときに、傘を貸してくれる人。人生を豊かにしてくれる存在でもある。 そんな彼らをきちんと評価し、守る制度をもっと考える時期にきているのではないか」、同感である。

次に、10月20日付け東洋経済オンライン「待遇格差訴訟、最高裁判決が真逆に割れたワケ 各種手当は認めた一方、賞与・退職金は認めず」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/382838
・『「時代の扉が動く音が聞こえた。とてもうれしい判決です」―― 10月15日、日本郵便の契約社員が年末年始の待遇や病気休暇、扶養手当などについて、正社員との格差是正を求めた3つの訴訟の上告審で、最高裁第1小法廷は不合理な格差であり違法とし、争点となった5項目の支給をすべて認めた。 「画期的な勝利判決だ」「全国で苦しむ非正規の仲間たちも、この判決を胸に前進できる」。判決後の会見で、原告の契約社員たちは口々に喜びの声を上げた』、「最高裁判決が真逆に割れた」理由とは興味深そうだ。
・『手当不支給はすべて「不合理」  格差が不合理とされたのは、扶養手当、年末年始勤務手当、年始の祝日の割増賃金、夏期冬期休暇、有給の病気休暇の5項目。正社員には与えられるのに、契約社員にはいずれも与えられていなかった。 裁判は郵便配達業務などを担当する契約社員らが東京、大阪、佐賀の3地裁に起こした。これらの格差は労働契約法20条(現在のパートタイム・有期雇用労働法8条)が禁じる正社員と非正社員との「不合理な格差」に当たるかが争われ、下級審では判断が割れていた。 最高裁は2018年に同様の待遇格差を巡る訴訟で示した、賃金総額ではなく、賃金項目ごとに目的や趣旨を考え不合理か否かを個別に判断するとの基準を用いて、日本郵便の手当の中身を具体的に検討した。 その結果判決は、年末年始勤務手当は年賀状シーズンの最繁忙期に働いたことが支給要件で、その趣旨は契約社員にも当てはまると指摘。継続的な雇用を確保する目的があるとされた扶養手当も、継続的な勤務が見込まれる契約社員も対象になると判断した。 判決後の会見で、複数の原告から指摘されたのが、判決で支給が認められた有給の病気休暇の必要性だ。同社では正社員は1年目から90日の有給の病気休暇が与えられる一方、契約社員は何年働いても10日、しかも無給の休暇制度しかなかった。 「私が今回の裁判の中で、最もこだわったのが有給の病気休暇だ」。東京訴訟の原告、宇田川朝史さん(55)は語る。2008年に契約社員となり千葉県内の郵便局でゆうパックの集配に従事してきた。 ある時、同僚の契約社員が脳梗塞で倒れ、リハビリも実らず職場を去ることを余儀なくされた。「まじめに一生懸命働く人で仕事ぶりは正社員にも見劣りしなかったが、手当もなく治療費も苦しかっただろう。小さな子どももいる中、さぞかし無念だったはずだ」と宇田川さんは振り返る。「この時、有給の病気休暇は労働者にとって絶対に必要だと痛感した。だから今回、原告として立ち上がった」。 「同じ日本郵便の非正規として働く妻が乳がんになったとき、病気休暇の重要性をひしひしと感じた」。大阪訴訟の原告の一人で勤続13年の竹内義博さん(58)は振り返る。「抗がん剤治療の副作用に苦しめられ、相当無理して出勤しては早退、欠勤の繰り返しだった。もともとあった年次有給休暇はあっという間に使い果たしてしまった。もし有給の病気休暇があったら、安心して治療に専念することができたのに」』、「正社員は1年目から90日の有給の病気休暇が与えられる一方、契約社員は何年働いても10日、しかも無給」、日本郵政の「正社員」は「90日の有給の病気休暇」とは恵まれた待遇で、「契約社員」との格差も目立つ。
・『同一労働同一賃金が追い風  従来は労働契約法20条を根拠に非正社員が待遇改善を求めても、裁判所ではなかなか認められなかった。風向きが変わってきたのは、安倍晋三政権が掲げた「働き方改革」の柱の1つ、「同一労働同一賃金」制度の導入にある。今年4月から制度は開始されている。 これは同じ会社・団体における正社員と契約社員やパート、派遣などの非正社員の間で、基本給や賞与(ボーナス)、各種手当などの待遇について不合理な格差を禁ずるものだ。どのような格差が不合理となるのかについて、政府はガイドラインを策定しており、手当については時間外や深夜・休日労働は同じ割増率での支給を求め、通勤手当や精皆勤手当などについては格差を認めないとするなど、かなり具体的に基準を明示している。今回の最高裁の判断もその流れに沿っている。 最高裁判決を受け、日本郵便は制度変更を迫られることになる。従業員約38万人のほぼ半数の18万4000人が非正社員という、日本有数の大企業はどう動くのか。実は同社はすでに訴訟中から手当の見直しを進めている。 東京、大阪両地裁の段階から不合理な格差にあたり違法とされた住宅手当は、転勤のない正社員については、すでに廃止している。ただ、コロナ禍で経営環境が厳しい中、正社員の待遇を維持するために、手当を廃止しその原資をボーナスに組み替える動きが出ることを懸念する声が挙がる。原告側代理人の棗(なつめ)一郎弁護士は、「今回の判決を受け、各種手当を廃止しボーナスに回す事は十分にありうる。ボーナス等での格差是正も再度、旗を揚げて挑む必要がある」と語る。 だが、金額が大きく待遇格差是正の「本丸」であるボーナスや退職金について、最高裁はこの判決の2日前、非正社員側の訴えをほぼ全面的に退ける判決を出している。 大阪医科薬科大学の元アルバイトの秘書と、東京メトロ子会社のメトロコマースの元契約社員が、それぞれボーナスと退職金が支払われないのは不合理な格差で違法だと争った訴訟で、最高裁第3小法廷は10月13日、いずれも不支給は不合理とまではいえないとの、非正社員側が逆転敗訴となる判決を出した』、「各種手当」については、「同一労働同一賃金が追い風」になって、格差撤廃、他方で、「ボーナスや退職金」の「不支給は不合理とまではいえない」としたようだ。
・『正社員との職務内容の違いを認定  「この日の判決を2100万人の非正規労働者が待ち望んでくれていたのに、本当に奈落の底に突き落とされた感じです」 メトロコマースの売店で10年以上契約社員として働いてきた疋田節子さん(70)は、判決後の記者会見で声を震わせながら話した。疋田さんたち契約社員だった女性4人は、約10年にわたり正社員と同様に駅の売店で働いてきたのに退職金がでないことは不合理な差別だと訴えた。 最高裁は原告らと正社員の職務の内容は「おおむね共通する」としつつも、正社員は複数店舗を統括するエリアマネジャー業務への従事や配置転換を命じられる可能性があるなど、「一定の相違があったことが否定できない」とした。また、退職金の支給目的が、「正社員としての職務を遂行しうる人材の確保や定着を図る」ことにあるとして、「不合理とまでは判断できない」と結論付けた。 ボーナスが争点となった大阪医科薬科大も同様だ。アルバイトの秘書として働いた50代女性が正職員や契約職員には支払われるボーナスがゼロなのは違法だと争ったが、やはり職務内容の違いや配置転換の可能性の有無、登用制度の存在、そしてボーナスの支給目的(退職金と同様に「正社員としての職務を遂行しうる人材の確保やその定着を図る」目的とされた)から、違法とはいえないと判断された。 「退職金制度の構築に関し、使用者の裁量判断を尊重する余地は比較的大きいものと解される」。メトロコマース事件の判決で裁判長がこうした補足意見を付した通り、両判決とも経営者の裁量に理解を示した格好だ。 ただ両判決とも、単純に「企業側によった判決」と解することはできない。賃金項目ごとに目的や趣旨を個別に判断するという規範は同じであり、判決ではボーナスや退職金でも、格差が「不合理と認められるものにあたる場合はありうる」と指摘している。今後はボーナスや退職金であっても、その制度設計や運用の実態次第で、裁判所の判断が変わる可能性は十分にある。 そもそも今回の両事件は、東京高裁、大阪高裁が一定の支払いを命じる判決を出したことからもわかるとおり、不合理か否かはかなり微妙なケースだった。メトロコマース事件の判決では1人の裁判官が、「業務内容に大きな差はなく、格差は不合理だ」と反対意見を述べ、高裁判決を支持している』、「ボーナスや退職金」「判決とも、単純に「企業側によった判決」と解することはできない。賃金項目ごとに目的や趣旨を個別に判断するという規範は同じであり、判決ではボーナスや退職金でも、格差が「不合理と認められるものにあたる場合はありうる」と指摘・・・今後はボーナスや退職金であっても、その制度設計や運用の実態次第で、裁判所の判断が変わる可能性は十分にある」、なるほど。
・『欠かせない透明性の確保  「アスベスト被害の訴訟では、原告側は当初企業にも国にも負け続けたが、何度も戦い続けることで勝利することができた。今回は前に進めず申し訳なかったが、同一労働同一賃金をめぐる訴訟は始まったばかり。どんどん裁判を起こしてほしいし、労働運動でも声を上げてほしい」。大阪医科薬科大の元秘書は強く訴える。 実際、退職金については政府のガイドラインに記載がないなど、同一労働同一賃金の制度には曖昧な部分が多く、今後の司法判断の積み重ねが欠かせない。 いずれにせよ、いまや非正規の働き手は雇用者の4割弱を占めるに至っている。労働力不足が深刻化する中、正規非正規を問わず納得性の高い賃金体系への再構築など処遇制度の透明化は、生産性の向上のためにも欠かせないはずだ』、同感である。

第三に、10月22日付け東洋経済オンラインが掲載した立教大学法学部消費者法ゼミと日本女子大学教授の細川 幸一氏による「大学生バイト「違法状態で使われる」驚愕の実態 201人調査でわかった具体的な「賃金支払い」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/381568
・『全国の大学生の86.1%がアルバイトという労働者の立場で働いている(独立行政法人日本学生支援機構平成30年度学生生活調査結果)。コンビニ、レストラン、居酒屋、学習塾など多くの産業でアルバイト学生はなくてはならない存在だろう。 一方、社会経験がなく「おとなしい」といわれる若者が、労働者として正当に扱われているか、疑問な点も多い。「15分未満の残業は賃金が支払われない」「有給休暇など一度も取ったことがない」といった声をよく聞く。 そうした中で、アルバイトをする多くの学生が必ずしも法律について十分な知識を持っているわけではないという弱点を突かれて、実は違法な労働環境で働いているケースが多いのではないか。 立教大学法学部消費者法ゼミ(細川幸一兼任講師)のゼミ生有志が、学生アルバイトの労働条件通知書、残業時間の賃金支払い、有給休暇取得の3点について実態を調査した』、興味深そうだ。
・『労働条件通知書の交付がない  労働基準法15条には「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない」とあり、書面での交付が定められている(2019年4月からはファクス、電子メールを含む)。 しかし、厚生労働省が2015年に行った「大学生等に対するアルバイトに関する意識等調査」では、学生1000人が経験したアルバイト延べ1961件で、58.7%が「労働条件通知書等を交付されていない」と回答した。そのうち労働条件について口頭でも具体的な説明を受けた記憶がないアルバイトは全体の19.1%だった。 この調査を受け、細川ゼミでも学生74人にアンケートをとった。その結果、約18%に当たる13人が労働条件通知書等を受け取っていないことがわかった。 さらにこのアンケート調査において、アルバイトをしている学生から労働条件通知書計10枚を手に入れ、内容を検証した。「法定通り・就業規則通り」などのみで詳しい内容が書かれていないものが多くを占めた。また、有給休暇について言及されていない、あってもその規定が理解しづらい文面もあった』、不親切なのは、「アルバイト」する「学生」たちがじっくり読むこともない、ことも影響しているのかも知れない。
・『1分単位での賃金支払いが基本だが  労働基準法第24条(賃金全額支払い)で「賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない(以下省略)」と定められており、この解釈から1分単位で支払うものとされている。 ただし、行政通達により、1カ月の時間外労働時間を計算するときに1時間未満の端数が生じた場合、30分未満の端数を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げることは事務簡便を目的として認められている。 アルバイトをしている大学生201人に対して、賃金の支払いについての実態を調査すると、アルバイトの賃金計算のさまざまな実態について聞くことができた(カッコ内はアルバイトの業種)。 ● 制服に着替える時間が含まれていない(飲食) ● 15分以下で残業をしても残業代がでない(飲食) ● 塾で120分授業だが、集団ではなく個別授業のケースだと90分授業+30分事務給(最低賃金換算)として扱われてしまう(塾講師) ● 残業代が出ているかどうかなどが労働者にわかるようになっていない(販売) ● 準備と片付けの時間に賃金が支払われない(サービス) 賃金の支払い単位時間についても調査すると、1分にほぼ並んで15分単位が多くを占めた。中には30分単位という回答もあった。こうしたことが実働時間に対して、適正に賃金が支払われない原因であるように思われる。 ただし、15分単位等に区切って仕事をさせること自体は、適正に賃金が労働時間を反映しているのであれば問題ない。問題は労働時間の切り捨てである(例えば、14分残業しても15分未満であるとして賃金未払いなど)。 この写真は、1日の就業時間を15分単位で区切っているあるコーヒーショップのタイムカード記録だ。カッコの中の時間で実際に給料として支払われる。13時53分に出勤したはずが、14時00分に。22時49分に退勤したはずが、45分となり合計11分がなくなっている。 事業者サイドからすれば、「タイムカードの記録が実労働の開始・終了を適正に反映しているわけではない」ということのようだが、そうなると労働時間を把握する手段がなくなってしまう。上記の11分は店長の管理の下の実働時間だ』、「タイムカードの記録」と「実労働の開始・終了」時刻の関係については、もっと一般的な事例があるのではなかろうか。
・『アルバイトに有給休暇はない?  アルバイトにも、有給休暇は正社員等と同様に労働基準法39条によって付与される。「雇入れの日から起算して6カ月間継続勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない」と定められている。 これは、正社員と同様に、基本的に週所定労働時間が30時間以上または週所定労働日数が5日以上のアルバイトにも適用される。学生の中にはそれに満たない人もいるだろう。そこで「比例付与」というものがある。 週所定労働時間が30時間未満で、なおかつ週所定労働日数が4日以下のアルバイトやパートに適用される。例えば、週所定労働日数が3日の場合、全所定労働日数の8割働けば半年後には5日の有給休暇が与えられる。 では実際に有給休暇を適切に使っているのだろうか。6カ月以上勤務する学生124人に取得経験の有無を聞くと、「ない」が74%、「ある」が26%という結果になった。 有給休暇はあっても取得経験のない人に理由を聞くと、次のような回答が得られた(2019年4月からは、10日以上の有給休暇がある労働者には5日間の有給休暇を取らせることを使用者に義務化)。 ●有給は辞める人が優先してとることになっている(暗黙の了解) ●4年生以外は、あまり取るなといった雰囲気がある ●有給を取れることは知っているけど、申請方法を知らない ●みんなが取っていないから、自分だけ有給を取る勇気がない ●有給が取れるのが知らなかった。取り方も不明』、権利意識が薄い「学生」の捉え方はこんなものだろう。 
・『賃金の支払いについて、学生の意識も聞いた。1分単位でないにもかかわらず「特に何も思わない」という回答が過半数を超えていた。規定の単位時間以内の残業はタダ働きになってしまうことも当然のように受け止めているように見受けられる。こうした意識も問題だ。 東京労働局にこうした実態についての見解を聞いたものの、「全事業主に対して一律の指導や立ち入り調査は難しい」という見解で、「もし違法な状況があるなら報告してほしい」ということだった。 違法な状態を改善したいのならば、自分たちで声を上げるべきということだ。つまり、アルバイト学生が「行動する労働者」にならなければならない』、「違法な状態を改善したいのならば、自分たちで声を上げるべき」、当然だ。
・『事業者側の問題点  労働条件通知書等の交付の実態について、厚労省の調査では受け取っていないケースが58.7%、ゼミの調査は18%である。法律で義務付けられている以上、全員が交付されている状況でなければならないはずだが、それが実行されていない。これが一番問題であろう。 記載内容にも改善の余地がある。例えば、有給休暇に関しては、多くの契約書には「労働基準法の39条に定めるところにより付与する」等とだけ書かれている。これはあまりにも不親切ではないだろうか。法律は労働者すべてが一律に把握しているものではない。 実際、私たちも法学部に所属していなければ目にも留めなかっただろう。法律何条に従うというような無機質な言葉ばかり並べて契約書にサインさせて、言われなければ何も伝えない。 例えば、雇用契約時に当人の労働条件で働き続けたら半年後何日間付与される予定など、誰でも理解できる文面としての記載や、厚労省が出している「有給休暇ハンドブック」の提示を義務化して、主張しやすい環境の構築や、労働者、事業主への周知を確実にすべきである。 賃金支払い単位時間については、前述のように1分単位でないことが即座に問題になるわけではないが、その単位時間に満たない労働時間を切り捨てることにつながりやすい。 実際に学生から、切り捨てられているという声が多くある以上、そのような企業が多数存在しているのは事実である。働いた分が支払われるような制度に変えなければならない。 このような問題をひとつずつ改善することが健全な労働環境整備の一歩になり、働きやすい社会の実現につながる。労働者の権利の自覚が重要だが、それには行政による啓発や事業者の情報提供義務の強化も必要だ』、その通りだ。
タグ:東洋経済オンライン 日経ビジネスオンライン 非正規雇用問題 河合 薫 細川 幸一 (その2)(ハローワーク職員がワーキングプア? 年収200万円公務員の実態、待遇格差訴訟 最高裁判決が真逆に割れたワケ 各種手当は認めた一方、賞与・退職金は認めず、大学生バイト「違法状態で使われる」驚愕の実態 201人調査でわかった具体的な「賃金支払い」) 「ハローワーク職員がワーキングプア? 年収200万円公務員の実態」 常勤公務員の「枠の外」にある存在 「非正規公務員」といっても、「少なくとも1都13県で自治体の職員が「過労死ライン超」の、月100時間を超える残業を余儀なくされていた」 「時間外手当は一切なかった」 自治法204条2項の規定が「常勤職員には手当を支給する」と規定しているため、その反対解釈として「非常勤職員には手当を支給できない」とされてきた」、こんな乱暴な解釈がまかり通ってきたのにも驚かされた 求職者をサポートする「不安定な身分の職員」 「国家公務員」では「非正規率は22.7%」 、特に厚労省では「52.6%と半数以上が非正規公務員だ。 これはハローワークの相談員が非常勤化されているため」 これまでもハローワークの職員が「雇い止め」にあうという、嘘のようなホントが度々報じられてきた 同一業務なのに低賃金の非正規公務員 「官製ワーキンク?フ?ア」・・・たちか?、私たちの生活に極めて必要な福祉サーヒ?スを支えている。 自分も不安定なのに、「相談員」として、私たちに「傘」を貸してくれているのた? 非正規公務員の人たちなくして、役場はなりたちません ヒューマンサービスの現場が疲弊 「私」が困ったときに支えてくれるハローワークや役場で働くのは、「私」の人生に「光」のありかを教えてくれる人たちだ。自分の傘ではどうにもならないときに、傘を貸してくれる人。人生を豊かにしてくれる存在でもある。 そんな彼らをきちんと評価し、守る制度をもっと考える時期にきているのではないか 「待遇格差訴訟、最高裁判決が真逆に割れたワケ 各種手当は認めた一方、賞与・退職金は認めず」 手当不支給はすべて「不合理」 正社員は1年目から90日の有給の病気休暇が与えられる一方、契約社員は何年働いても10日、しかも無給」、日本郵政の「正社員」は「90日の有給の病気休暇」とは恵まれた待遇で、「契約社員」との格差も目立つ 同一労働同一賃金が追い風 正社員との職務内容の違いを認定 「ボーナスや退職金」「判決とも、単純に「企業側によった判決」と解することはできない。賃金項目ごとに目的や趣旨を個別に判断するという規範は同じであり、判決ではボーナスや退職金でも、格差が「不合理と認められるものにあたる場合はありうる」と指摘 今後はボーナスや退職金であっても、その制度設計や運用の実態次第で、裁判所の判断が変わる可能性は十分にある 欠かせない透明性の確保 立教大学法学部消費者法ゼミ 「大学生バイト「違法状態で使われる」驚愕の実態 201人調査でわかった具体的な「賃金支払い」」 日本学生支援機構平成30年度学生生活調査結果 労働条件通知書の交付がない 1分単位での賃金支払いが基本だが 「タイムカードの記録」と「実労働の開始・終了」時刻の関係については、もっと一般的な事例があるのではなかろうか アルバイトに有給休暇はない? 違法な状態を改善したいのならば、自分たちで声を上げるべき 事業者側の問題点
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悪徳商法(その5)(「200万円は返せない」世界一周クルーズ"ピースボート"の開き直り 観光庁が行政指導も 販売は継続中、消費者庁課長“謎の異動”で立ち入り検査が立ち消えていた~ジャパンライフ詐欺事件 須田慎一郎レポート、コロナで変わる詐欺集団 「悪徳マルチ」最新手口とは、カルト宗教がコロナ禍に乗じて拡大 霊感商法対策の著名弁護士が警鐘) [社会]

悪徳商法については、4月12日に取上げた。今日は、(その5)(「200万円は返せない」世界一周クルーズ"ピースボート"の開き直り 観光庁が行政指導も 販売は継続中、消費者庁課長“謎の異動”で立ち入り検査が立ち消えていた~ジャパンライフ詐欺事件 須田慎一郎レポート、コロナで変わる詐欺集団 「悪徳マルチ」最新手口とは、カルト宗教がコロナ禍に乗じて拡大 霊感商法対策の著名弁護士が警鐘)である。

先ずは、4月28日付けPRESIDENT Onlineが掲載したジャーナリストの田中 圭太郎氏による「「200万円は返せない」世界一周クルーズ"ピースボート"の開き直り 観光庁が行政指導も、販売は継続中」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/34991
・『「世界一周の船旅」で知られるピースボートが危機にひんしている。クルーズを主催する旅行会社は4月出発のツアーを中止したのに返金しておらず、観光庁から行政指導を受けた。しかし、その後もツアーの販売を続けている。ジャーナリストの田中圭太郎氏がトラブルの一部始終をリポートする――』、極めて悪質な事件だ。
・『『分割でないと対応できない』の一点張り  「キャンセルを申し込んで一括で返してほしいと言っても、『今年7月から3年間の分割でないと対応できない』の一点張りです。その間に倒産したらお金は返ってこないのかと聞くと、『そうですね』とまるでひとごとのような返事でした。もうお金は戻ってこないだろうと、あきらめている状態です」 こう話すのは石川県に住む50代の女性だ。この女性は2022年12月から約3カ月間実施する世界一周クルーズへの参加を、去年夏に申し込んだ。料金は4人部屋で1人198万4000円。定価は257万円で、早割で30%引きだった。 クルーズは非政府組織(NGO)のピースボートが企画し、東京都新宿区の旅行会社ジャパングレイスが主催している。ジャパングレイスは1969年に創業し、ホームページによると2018年1月現在の従業員は120人。1995年から25年にわたってピースボートのクルーズを実施している』、「1995年から25年にわたってピースボートのクルーズを実施」、一応、歴史はありそうだが、コロナ禍による大量キャンセル発生でおかしくなったのだろうか。
・『「新造船による世界一周ツアー」という魅力的プラン  女性が申し込んだエコシップクルーズとは、2022年春にデビューする予定の新造船「エコシップ」による世界一周クルーズだった。最も高い客室は1000万円近く、従来のピースボートよりも全体的に料金は高めだ。それでも十分魅力的に映ったと女性は話す。 「去年4月にピースボートの見学会に参加して、新造船のことを知りました。世界一周の旅は昔からの夢で、行ったことがない南半球の旅で南極にも行けると聞き、魅力的に感じました。2022年12月からなら、3カ月休めるめどが立ったので申し込んだのです」 しかし新型コロナウイルスの感染拡大で、状況は一変した。2月3日に横浜港に寄港したダイヤモンド・プリンセス号は船内で感染が拡大。その後、欧州やアメリカで感染爆発が起きた。2022年12月といえども、南半球は観光どころではないだろうと思い、女性はキャンセルを決めた』、「ダイヤモンド・プリンセス号」の悲劇を観たらこの「女性」ならずとも誰でも「キャンセル」する筈だ。
・『「3年間36回払いで返金」という驚きの提案  女性は4月初旬に、ジャパングレイスに電話でキャンセルを申し込んだ。対応した女性は「キャンセルの申し込みが殺到しているので、4月に入ってからキャンセルしたお客さまには、7月からの返金をお願いしています」と説明した。「もしも7月までに会社が倒産したら、お金は返ってこないんですか」と聞くと、一瞬詰まりながらも「いえ、そんなことはございません」と言われたので、不安はあるものの大丈夫かもしれないと思っていた。 送られてきた書類に口座番号など必要事項を書いてFAXすると、4月中旬になってジャパングレイスから封書が届いた。中には社長名の文書が入っている。女性は目を疑った。7月から「3年間分割での払い戻しをお願いする」と書かれていたからだ。 2022年のツアーをキャンセルした顧客に、主催会社から送られてきた封書の中身。36回分割での返金か、「みらい乗船券」というポイントへの振替を求める社長名の手紙と、分割払いの際の月々の返済額を示す書類が入っていた。 「3年間で36回払いになっていることに驚きました。7月になったら全額返金されるものと思っていましたから。経営状態に問題がなかったら、こんなことにはならないですよね。会社が倒産して返金がストップするのではと思いました」 女性は一括返金を求めようと、ジャパングレイスに電話をかけた。折り返すと言われたが、4日たっても連絡がなかったので、再度電話して、4月21日にようやく担当者という男性と話すことができた。一括で返してほしいと伝えると、担当者は「それはできません。キャンセルが殺到しているので分割でないと対応できません」と答えるだけ。女性は、責め立ててもしようがないのだろうかとあきらめつつあった』、「ジャパングレイス」が「一括返金」に応じられないのは、顧客から払い込まれた「預かり金」を、何らかの形で運用しているためなのだろう。
・『「申し訳ございません」としか言わない担当者  一方でジャパングレイスから届いた文書には、預かり金を1.3倍のポイントに換算する「みらい乗船券」への振り替えの提案が記載されていた。このポイントについて聞くと、いったんポイントにすると現金化はできず、ポイントで申し込んだクルーズを自分がキャンセルした場合には無効になるという。それでは確実にクルーズを振り替えられるわけではない。女性は「どうしても一括返金でないと納得がいきません」と再度伝えたが、担当者は「申し訳ございません」としか言わない。 女性があぜんとしたのは、次のやりとりだ。「3年かけて返金するといっても、途中で倒産したら、お金は帰ってこないんですよね」と聞くと、担当者は次のように言った。 「そうですね。そうなった場合、債権者は残った債権をみんなで分け合う対応になると思います」 担当者の口ぶりは淡々としていて、まるでひとごとのようだったと女性は受け取った。 「その場を繕って安心させようとすることもなければ、ぜひみらい乗船券に振り替えてくださいという態度でもない。本当に開き直っている態度でした」』、「開き直っている態度」、というより、正直に答えたとみるべきだろう。
・『業界団体や観光庁の指導も入ったが  不審に思った女性は、インターネットを検索してみた。すると、4月出発のクルーズも中止され、参加予定だった人たちが、自分と同じ対応を受けていることを知った。「この人たちに一括返金しないのに、自分の旅行代金が戻ってくることはない」と思わざるを得なかった。 4月下旬になって、ジャパングレイスから2通目の封書が届いた。「みらい乗船券」による精算の新しいプラン(「積立プラン」と称する形で、返金の一部を現金での分割払いとし、残りをポイントで支払うスキーム)を提案する内容だった。会社側には現金支出を押さえられ、返済期間も短くなるメリットがあるだろうが、顧客側のメリットはよくわからない。 「どこに相談していいかもわかりません。もうあきらめています」。夢を実現しようと思って支払った約200万円が戻る見込みは、現時点では立っていない。 ジャパングレイスは4月に2隻のクルーズを出発予定だった。乗客は合わせて2000人で、こちらはすべて会社都合でのキャンセルが発生している。この2000人も、一括返金ではなく3年間の分割払いの対応を求められている。 ジャパングレイスのこの対応には問題がある。旅行業約款第19条には、旅行開始前のキャンセルについては、契約解除の翌日から7日以内に払い戻しをすることが定められている。ジャパングレイスの対応は、約款に違反している可能性があるのだ。 旅行代理店の業界団体である日本旅行業協会は、ジャパングレイスから報告を受け、客に対してきちんと対応するように指導したという。このトラブルの苦情は、協会の消費者相談室で受け付けている。 さらに監督官庁の観光庁も、事態を問題視し、4月21日にジャパングレイスに対して行政指導を行った。約款通りに対応することと、どうしてもできない場合は、「営業保証金制度」を活用して、供託している営業保証金から客に弁済をするように指導している。ジャパングレイスは観光庁に「努力します」と答えたという』、「観光庁」の「行政指導」は、指導通りに対応したのか否かの報告も義務付けてないのであれば、空念仏でしかない。こんな無責任な対応しかできないとは情けない。
・『主催会社に話を聞いてみると  しかし、ジャパングレイスは指導通りの対応はしていない。行政指導を受けた日は、石川県の女性が最後にやりとりをした日と同じだ。対応を変えないのか、ジャパングレイスに問い合わせると、広報担当者は観光庁から行政指導を受けたことを認めた。 そのうえで、新型コロナウイルスの影響により予想していなかった大量キャンセルという事態に陥ったため、一括返金はできないと説明する。 「非常にたくさんの方がキャンセルする中で、事業の継続と安定化も含めて、一括返金ではなく分割での返金をお願いしています。保証金の活用といっても供託している金額は数千万円です。金融機関からの借り入れも相談しているところです。いままでの実績も評価していただいて、ご理解いただけるようにお願いしています」(ジャパングレイス広報担当者)』、「観光庁から行政指導」を事実上無視するとは、行政もなめられたものだ。
・『「苦渋の決断」の一方でツアー宣伝を継続  「みらい乗船券」へのポイント振り替えも、あくまでジャパングレイスのお願いに過ぎず、約款には違反している疑いがある。さらに、ピースボートステーション(クルーズ公式サイト)を見ると、2022年に実施するクルーズを「いまだけウルトラ早得割引」と銘打って20%割引で大々的に売り出している。 しかし、新型コロナウイルス禍がいつ終息するのかわからない状態では、クルーズ再開のめども立たないはずだ。さらに新造船エコシップが、就航予定の2022年までに完成するのかどうかも、現時点では「何とも言えない」という。 ジャパングレイスは3年間分割での払い戻しは「苦渋の決断」と説明するが、クルーズを申し込んだ人たちが払い込んだ金額は、1人あたり数百万円と高額だ。ジャパングレイスはキャンセル客の希望に沿うよう、手を尽くすべきではないだろうか』、いまだに「ツアー宣伝を継続」、とは図々しい。「観光庁」は被害をこれ以上拡大させないように積極的な対応策を取るべきだろう。

次に、9月21日付けYahooニュースがニッポン放送を転載した「消費者庁課長“謎の異動”で立ち入り検査が立ち消えていた~ジャパンライフ詐欺事件 須田慎一郎レポート」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/0208952456e5666bd84cab702539d64a23331450?page=1
・『ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月21日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。山口隆祥元会長らが詐欺の疑いで逮捕されたジャパンライフを巡る消費者庁の2010年代の動きを振り返り解説した』、「須田」氏の解説とは興味深そうだ。
・『マルチの帝王 山口隆祥容疑者  山口隆祥元会長ら14人が詐欺の疑いで逮捕されたジャパンライフは2006年から粉飾決算を始め、2010年には債務超過に陥っていたことがわかった。配当の見込みがないのに顧客を勧誘し、出資金をだまし取るなどして、被害総額はおよそ2000億円にのぼるということで、警視庁は実態の解明を進めている。 飯田)けっこう前からジャパンライフの件というのは報道されていたようにも思いますがね。 須田)はっきり言って、実質的なマルチ商法ですから。もともとマルチ商法をやっていて、保護規制がどんどん入ってきたために、その法の抜け穴を突くために形を変えてきたのがジャパンライフ。マルチ商法をやっていた1980年代やその以前から問題視されていたのです。マルチの帝王と言われている人ですから。 飯田)そういえばそうですよね。これ報道されているときにマルチの帝王って名前ありましたね。山口隆祥容疑者。 須田)ただですね、今回詐欺容疑という形なのですが、この詐欺というのはけっこう立件するのが難しくて、犯人の心象風景、騙すつもりだった、騙してやろうと思ったということが立証できなければ有罪にもっていくのはなかなか難しいのです。そこをどう突いたのかというと、最終的には2400億円、これは破産したときの負債なのですが、つまり2400億円が被害総額といってもいいのだけれども、今回立件されたのは2017年8月から11月にかけて12人に対して8000万円。随分しょぼいじゃないかと』、。
・『立件が難しい「詐欺」  須田)それはなぜかといいますと、実は最終的に大きく債務超過に陥ったのは2017年3月時点なのです。このとき338億円の債務超過。どうひっくり返ったってお金返せないよねと。あなた返すつもりだったというけれど、返すことはできないじゃないか、これは普通の経営者だったら分かるよねと。この状況以降の立件になってきているのです。 飯田)それ以降も勧誘しただろうと。 須田)お金集めただろうということ。ただですね、そのことを抑えた上で今回不思議というか、疑惑の核心的なところを申し上げると、飯田さんが冒頭言われたようにずっとマルチ商法で問題視されてきていた、かなりそのことについては世の中的に知られていた、もちろん行政サイドも強く問題意識を持っていた。そこで内閣府の所管とする消費者庁というところがありますよね。消費者の問題について対応するというのが消費者庁という役所なのだけれども、ここは立ち入り調査権とか検査権を持っているのですよ。取引対策課というところがあって、ここがずっとジャパンライフについては調査を進めていたのです』、「消費者庁」が「立ち入り調査権とか検査権を持っている」とは初めて知った。
・『立ち入り検査目前、突如、消費者庁の課長が人事異動  須田)とはいっても予備調査という頃で、強制力を持った調査ではなかった。ヒアリングですといって聞き取り調査をやってきて、このままいったら大変な被害が出るということで、当時の課長は本調査つまり法的強制力を持った立ち入り検査を実施して、なんらかの処分をすることを前提として立ち入り検査をやるべきだということで、法律を詰めていたのです。この課のなかに法令班というのがあって、そこに指示を出して、法令班の方もこのままいったら大変なことになるから検査をするという方向で消費者庁は進んでいたのです。2013年秋くらいの話です。 飯田)2013年秋、債務超過に陥っていたけれども破綻する前ですね。 須田)ところが大変なことが起こるのです。明けて2014年、突如課長が人事異動で交代するのです。 飯田)明けですか、つまり夏の定期人事異動ではないのですか。 須田)いや、それに絡む形で。後任の課長が、立ち入り検査をやると、それが世の中的に広がると相手の経営に対して甚大な影響を与えることになるのではないか。消費者庁が検査したとなるとマスコミは一斉に報道しますからね。そしてジャパンライフの問題性というのはマスコミも共有していましたから、そういう報道が出ると、場合によっては消費者庁が潰したということになるかもしれないということもあって、結果的に立ち入り検査は立ち消えになるのです。2014年段階で。そして、呼んでヒアリングをするという柔らかい方向に切り替わる。それは公表するベースではないので世の中の知るところではないというところになるのですが。 そしてようやく2016年12月になって、最初の行政処分。合計4回出るのですがね。3ヵ月の一部業務停止命令。このあたりからぐっとジャパンライフの経営は苦しくなってくるのですが、本来であれば2014年段階でやっておくべきことなのです』、「立ち入り検査目前、突如、消費者庁の課長が人事異動」、この裏に何があったのだろう。
・『後任の課長は、なぜやるべきことをやらなかったのか  須田)この2年以上にわたるタイムラグは一体何だったのか。やるべきことをなぜ消費者庁はやらなかったのか。そのときの課長はなぜそれまでの方針を覆したのか。誰からか何か言われたのか、圧力でもかかったのか。こういう点が出てきています。これやばいということで2014年段階でジャパンライフは慌てて更に営業を強化して、結果的に2015年の被害額がいちばん多いのです。このままいったら大変なことになるぞと。こういうところで被害額が増額されているというね。 飯田)それがなければ、という。早めに手を打っておけばと、いま考えるとかもしれませんが。 須田)ですからこの課長というのは代々経産省のキャリア官僚が就くのです。 飯田)内閣府ということはいろいろなところから人が来る。そのなかでも消費者庁のここの部署というのは経産省のポスト。 須田)経産省でずっと取材していくと、後任の課長はけっこう自分というものがなくて、人から何か言われるとその通りやるタイプなのかと。前任は、思い立ったら、という人で。 飯田)俺の気持ちで、と前に前にいくタイプだったけれども。消費者庁って、内閣所管ですよね。そうすると、政治サイドから何か、というのがどうかかるのですかね。それとも経産省マターになるのかな。 須田)経産省マターになってくるのかな。 飯田)なるほど。 須田)経産省人脈なのかなと。或いは経産省に対して政治力を行使できる人なのかなというような感じもしますよね。 飯田)前政権は確かに経産省内閣なんて言い方をしたこともありましたけれども、まだその辺というのはこれから先にかかってくるのかもしれませんが』、「経産省マター」というのはありそうなシナリオだ
・『有力なマスコミのOBが動いた形跡も  須田)そのあたりを含めて、先ほど飯田さんも言われたように、前政権のことを言われましたが、桜を見る会の招待状がどういう経緯でできたのかというところもかかわってくるのかなと思います。あれが2015年の4月ですから。 飯田)この山口隆祥元会長という人はマスコミや政界も含めていろいろなしがらみや人脈があったとされていますよね。 須田)どうも有力なマスコミのOBがこのあたりで動いた形跡もあるのです。はっきり言ってしまうと。官邸というよりもね。 飯田)けっこう新聞広告出ていましたね……。CMもばんばん出ていましたね……。いろいろなことが見えてきてしまって、怖くなりますね。 須田)ここまで踏み込んで話していいのかなと……実は恐る恐る話しています。 飯田)僕は局アナですよ……』、「有力なマスコミのOBが動いた形跡も」と気をもたせたのに、具体的な事実の提供がなく、裏切られた印象だ。

第三に、10月12日付けダイヤモンド・オンライン「コロナで変わる詐欺集団、「悪徳マルチ」最新手口とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/250207
・『「とてもタメになるセミナーがあるから一緒に行かない?」「絶対に儲かる事業の話がある」など、「悪徳マルチ」の勧誘といえば、直接会って、セミナーへ誘導したり、第三者の勧誘役が登場したりすることがお決まりだった。ところがこのコロナ禍で、マルチ勧誘の手法にも変化が訪れているという』、「コロナ禍」が「マルチ勧誘の手法にも変化」を与えたとは驚きだ。
・『リモート飲み会がマルチ勧誘の入り口に  新型コロナウイルスの流行により、人々の生活は大きく変化した。ビジネスマンのなかには、“3密”を避けるために在宅勤務となった人も多いことだろう。 会議やミーティングなどの業務はもちろん、飲み会や帰省といったプライベートのイベントもすべてが「リモート」で行われる今、なんと、「悪徳マルチ」の勧誘にも「リモート」がうまく取り入れられているという。 実際に、このコロナ禍で、リモートでの勧誘を体験した木島夏美さん(仮名・27歳)は、こう語る) 「私を勧誘してきたのは、大学時代に所属していたダンスサークルのYという先輩でした。同じサークルといっても、私はほぼ幽霊部員だったので、Y先輩との交流はほぼなかったんですけど…」 先輩から木島さんに連絡が来たのは、ちょうどゴールデンウィークも終わりかけのタイミングだった。 「アパレルブランドで販売員をしているのですが、当時、仕事はコロナの影響で休業していたし、外出自粛でどこにも行けない、誰にも会えないという状況で、とにかく気持ちが落ち込んでいました。そんなとき、先輩から急にSNSでメッセージがきて、『リモート飲み会をしようよ!』と誘われたんです」 さほど親しくない相手ではあったが、「まあリモート飲み会なら…」と、快諾してしまった木島さん。言われるがまま、数日後にその先輩とリモート飲み会を行ったという。そのときは、まだ悪徳マルチに関する話はされなかったそうだ。 「直接的な勧誘はされませんでしたが、今の給料や家賃、今後のライフプランなど、とにかく根掘り葉掘り聞かれましたね。正直に答えてしまった自分もバカだとは思いますが、コロナ禍で弱っていたときに、親身になって相談に乗ってもらえて、心を許してしまったんです」 こうして、木島さんのあらゆる情報を得た先輩は、次なる一手に出る。 「『直接会おうよ』と誘われました。そのときにはちゃんと『今やっているビジネスの話を聞いてほしい』と言われましたが、その言葉を聞いて確信しましたね。『やばい、これは絶対、マルチの勧誘だ。今までの会話は全部、マルチに勧誘するための情報収集だったんだ』と」』、「「まあリモート飲み会なら…」と、快諾」、大いにありそうな話だ。しかし、「今の給料や家賃、今後のライフプランなど、とにかく根掘り葉掘り聞かれました」、「『直接会おうよ』と誘われ・・・『今やっているビジネスの話を聞いてほしい』と言われました」、「『やばい、これは絶対、マルチの勧誘だ。今までの会話は全部、マルチに勧誘するための情報収集だったんだ』と」、「マルチ」への警戒心を持っている人は例外的だろう。
・『対面を避けてビデオ通話で勧誘  しかし、木島さんの仕事がコロナで休業中だということは、リモート飲み会の時点で知られていた。そのため、多忙を理由に断ることもできず、渋々、先輩と2人で会うことになったのだ。 マルチ勧誘の常套手段に「ABC」と呼ばれるものがある。 「ABC」とは、勧誘される「C」(この場合は木島さん)と、Cに声をかける橋渡し役の「B」(この場合はY先輩)、そして、Bの上司にあたる「A」が同席し、Cを勧誘するという、悪徳マルチ勧誘のお決まりの手法だ。 木島さんは不審に思ったものの「ネットで調べたら、『ABCを行う場合、BはCに、あらかじめAが来ることを伝えないといけない』と書いてありました。ところが、そのとき先輩から、他の人が来るということは聞かされていなかったんです。だから、『これはABCじゃないし、マルチの勧誘じゃないかもしれない』と、ちょっと油断していたんですね」 だが、木島さんの期待を裏切るように、喫茶店に入店した直後、Y先輩による勧誘が始まった。数日前のリモート飲み会で木島さんの悩みや興味を聞き出していた先輩のプレゼンは非常に巧みで、木島さんは「もしかしたら本当に稼げるのかも…」と、心が揺らいでしまったという。 「私が興味を傾けていることを見抜かれたのでしょうね、『夏美に会ってほしい人がいるの。私もその人に感化されてこのビジネスを始めたんだけど、本当にすごい人。会えば分かるから!』と、畳み掛けてきました」 だが、こうした勧誘で、事前告知なしに第三者がやってきて勧誘を行うことは違法だ。そこで先輩が用いた手段が、「ビデオ通話」だったという。 「対面の勧誘はアウトでも、ビデオ通話ならセーフになるんですかね?本来は限りなく黒に近いグレーのような行為だとは思いますが、なにせ前例があるのかもよく分からないですからね。気付いたら、リモートによるABCが始まっていました」 こうして画面越しにAとなる勧誘役の女性が登場し、いよいよ逃げ切れなくなった木島さん。そのまま、先輩が持っていた書類にサインをし、入会してしまった。 「入会したのは6月の頭でした。入会後は、セミナーや勉強会、成績優秀者を表彰する会などに参加しました。オフラインで開催されていたイベントもあったけど、基本はオンラインの催しだけ参加していましたね。密になるのが怖いという気持ちもありましたし、なにより、流されるままに入会した自分には、先輩たちのようなマルチに注げる情熱がなかったので」』、「入会して」も、「先輩たちのようなマルチに注げる情熱がなかった」、とは幸運だ。
・『コロナ禍の長期化が悪徳マルチの追い風に  悪徳マルチをやっていることがバレれば、友人や、周囲の人間からの信頼を失ってしまう。それを理解していながら、木島さんはなぜ勧誘を断り切れなかったのか。 「入会してしまったときの自分を振り返ってみると、コロナのせいで給与が減り、将来への不安を感じていて、先輩の甘い誘いを信じてしまったんです。オンラインのセミナーや勉強会で話した範囲ですが、私と同時期に入会した人は、同じような境遇の人が多かったように思います」) 木島さんのようにコロナ不況のあおりを受け、苦しんでいた人たちが、格好の獲物になってしまったというわけだ。 「仕事が減ったり、なくなったりした人のほとんどは、やることがなくて家にいます。こうした人を見つけた瞬間、『リモート飲み会をしよう!』とコンタクトをとり、逃さないように囲い込んでくるのです。このコロナ禍で、多くの人がZoomなどの使い方を心得ましたよね。悪徳マルチの側からすると、直接会わなくても勧誘ができるという、条件が整った状況になっているんだと思います」 木島さんの同級生や後輩にも、Y先輩からの勧誘を受けた人が数人いたという。そのほぼ全員が、ゴールデンウィークに、「暇ならリモート飲み会をしようよ!」と誘われたそうだ。 「今はSNSで相手の近況もすぐ知ることができるうえ、コンタクトだって簡単に取れる時代です。SNSの投稿からも、『この人は仕事がうまくいっていないみたいだから、勧誘できそう』と、獲物を見極めているんでしょうね」 ちなみに木島さんは、入会の2週間後には退会の意志を固め、Y先輩に連絡をしたという。 「自分から連絡してくるときはガツガツしているのに、こっちが『やっぱり辞めたいです』と連絡したLINEには、しばらく既読がつきませんでした。それでも今はキレイサッパリ、足を洗うことができました」 リモートのシステムを駆使したマルチの勧誘は、一度話を聞いたが最後、対面での勧誘以上にうまく包囲されてしまい、断りづらいものだ。次々に便利なツールが登場する一方で、そうしたツールを利用して悪事を働く輩がいることを、頭の片隅に留めておいてほしい』、「コロナ禍の長期化が悪徳マルチの追い風に」、「リモートのシステムを駆使したマルチの勧誘は、一度話を聞いたが最後、対面での勧誘以上にうまく包囲されてしまい、断りづらいものだ」、「マルチの勧誘」方法も日進月歩のようだ。 

第四に、10月14日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した弁護士・全国霊感商法対策弁護士連絡会事務局長の山口 広氏へのインタビュー「カルト宗教がコロナ禍に乗じて拡大、霊感商法対策の著名弁護士が警鐘」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/249019
・『新型コロナウイルスの感染拡大は、新宗教やカルト教団の活動にどのような影響を与えたのか。特集『賢人100人に聞く!日本の未来』(全55回)の#47では、全国霊感商法対策弁護士連絡会事務局長として、30年以上にわたり被害者救済のためカルト教団と戦ってきた山口広弁護士に話を聞いた(Qは聞き手の質問、Aは山口氏の回答)』、興味深そうだ。
・『不安に乗じるのがカルト教団の常道  Q:新型コロナウイルスの感染拡大により、一部の大学が注意喚起を促すなど、カルト教団の活性化が懸念されています。 A:カルト教団は、かつてのオウム真理教がそうだったように、社会不安に乗じて“教勢拡大”を図るのが常です。実際、このコロナ禍でも、例えば全国の大学が、学生たちをどうやってカルトから守ればよいのか非常に頭を悩ませる事態になっています。 今の学生は、コロナ前は当たり前だった他者との接触ができません。入学したはいいが友達もできない、講義はオンライン……。「一体、何をしに大学に入ったのだろう」という不安な状態に置かれているわけです。あるいは、テレワークにより自宅で鬱々としているビジネスマンもおそらく多いでしょう。 そういう“閉じこもる”人々をターゲットに、一部のカルト教団は、楽しげなサークル活動を装うなどしてSNSをはじめ、インターネットを駆使した布教を活発化させています。 しかしながら、大学側は、それまでオリエンテーションなど講義室で行ってきた注意喚起が「3密」回避のためにできず、布教の実態もつかめない状態に陥っているのです』、「“閉じこもる”人々をターゲットに、一部のカルト教団は、楽しげなサークル活動を装うなどしてSNSをはじめ、インターネットを駆使した布教を活発化させています」、恐ろしいことだ。大学も何とか対抗してほしいものだ。
・『Q:具体的にどの教団が、勢力を伸ばすことに成功しているのでしょうか。 A:まずは、韓国系の摂理(キリスト教福音宣教会)でしょう。現在、全国の大学で摂理が最も信者数を伸ばしており、5000人近い信者が活動しているとみられています。 その活動は都心にとどまらず、およそ20もの地方本部をつくるなどして日本全国に及んでいます。例えば、福岡県で私の知人による調査が行われているのですが、九州大学や西南学院大学でおよそ20人、福岡大学では十数人の学生信者が活動しています。 摂理は、強姦罪などで懲役刑に服した鄭明析・元教祖が満期で釈放されたことを機に日本での活動を活性化し、コロナ禍に乗じて正体を隠した勧誘をシステム化してネットで活発に展開しています。それも、“入り口”として就職セミナーを開催するなど勧誘の手口は非常に巧妙化しているのです。このほかでは、やはりネットを利用した自己啓発や占いなどを隠れみのにしたミニカルトの被害相談も急増しています。 (やまぐち・ひろし氏の略歴はリンク先参照) Q:歴史の長い巨大新宗教も同様に布教活動が活発化しているのですか? A:いいえ。例えば、摂理と同じ韓国系でも、統一教会は、新天地イエス教会のコロナ集団感染の騒動を受けて、いわゆる「3密」の回避を至上命令にした結果、布教活動が沈滞しているといわれています。 これは、日本の創価学会を始めとする老舗の巨大新宗教も同じで、その共通項は信者の高齢化にあります。統一教会は50~60代の信者が中心なのに対して、摂理は20~30代の若年層が主軸です。つまり、コロナによって、対面での布教を基本とする宗教団体が停滞し、摂理やミニカルトといったネット社会に適合した布教活動に抵抗がなく、技術を持つ“若い団体”が伸びているといえるでしょう』、「歴史の長い巨大新宗教」は、「「3密」の回避を至上命令にした結果、布教活動が沈滞」、「信者の高齢化」で伸び悩んでいるが、「ネットを利用した自己啓発や占いなどを隠れみのにしたミニカルト」が活発化しているようだ。
・『サークル的な軽いノリで現代カルトは近づいてくる  彼らは統一教会やオウムなどと異なり、信者を出家させて学業や仕事をやめさせたり、必ずしも全財産を寄付させたりはしないのです。例えば、摂理が求める献金額は、収入の10%。「10分の1献金」と呼ばれています。サークル的な軽いノリと、お小遣い程度の出費で活動させることで被害が表面化しにくくなっています。 Q:いまだコロナの終息が見えない中、カルト教団に付け込まれないためにはどうすればよいでしょうか。 A:カルトがはびこる理由の根っこには、人々が感じている寂しさ、孤独感があります。そして、カルトは、精神医学や心理療法などの都合の良い部分を切り取った疑似科学的な要素を組み入れて、人々の悩みを解決すると言って最初は接触してきます。そこに宗教的な要素を徐々に織り交ぜ、やがてそちらがメインになっていく。宗教に勧誘されているという意識がないまま、気付いたらはまっているという流れです。これは今も昔もあまり変わりません。 問題は、人々が巣ごもり状態になり不安感が高まる一方、リアルのつながりが以前よりも薄くなっていることです。逆説的ですが、自宅に閉じこもりがちになる今だからこそ、家族や友人をはじめとしたリアルの人間関係の重要性が見直されることになると思います。 「こういうサークルに誘われているんだけれど、どう思う?」と、現実に相談できる人が一人でも身近にいることが、カルトに付け込まれないための防波堤になるのですから』、「サークル的な軽いノリで現代カルトは近づいてくる」、「宗教に勧誘されているという意識がないまま、気付いたらはまっているという流れです」、恐ろしいことだ。「家族や友人をはじめとしたリアルの人間関係の重要性が見直される」、「現実に相談できる人が一人でも身近にいることが、カルトに付け込まれないための防波堤になる」、その通りなのだろう。
タグ:ニッポン放送 yahooニュース 悪徳商法 ダイヤモンド・オンライン PRESIDENT ONLINE 田中 圭太郎 (その5)(「200万円は返せない」世界一周クルーズ"ピースボート"の開き直り 観光庁が行政指導も 販売は継続中、消費者庁課長“謎の異動”で立ち入り検査が立ち消えていた~ジャパンライフ詐欺事件 須田慎一郎レポート、コロナで変わる詐欺集団 「悪徳マルチ」最新手口とは、カルト宗教がコロナ禍に乗じて拡大 霊感商法対策の著名弁護士が警鐘) 「「200万円は返せない」世界一周クルーズ"ピースボート"の開き直り 観光庁が行政指導も、販売は継続中」 『分割でないと対応できない』の一点張り 1995年から25年にわたってピースボートのクルーズを実施 「新造船による世界一周ツアー」という魅力的プラン 「3年間36回払いで返金」という驚きの提案 「申し訳ございません」としか言わない担当者 業界団体や観光庁の指導も入ったが 主催会社に話を聞いてみると 「苦渋の決断」の一方でツアー宣伝を継続 「消費者庁課長“謎の異動”で立ち入り検査が立ち消えていた~ジャパンライフ詐欺事件 須田慎一郎レポート」 マルチの帝王 山口隆祥容疑者 立件が難しい「詐欺」 立ち入り検査目前、突如、消費者庁の課長が人事異動 後任の課長は、なぜやるべきことをやらなかったのか 有力なマスコミのOBが動いた形跡も 「コロナで変わる詐欺集団、「悪徳マルチ」最新手口とは」 リモート飲み会がマルチ勧誘の入り口に 対面を避けてビデオ通話で勧誘 コロナ禍の長期化が悪徳マルチの追い風に 山口 広 インタビュー「カルト宗教がコロナ禍に乗じて拡大、霊感商法対策の著名弁護士が警鐘」 不安に乗じるのがカルト教団の常道 “閉じこもる”人々をターゲットに、一部のカルト教団は、楽しげなサークル活動を装うなどしてSNSをはじめ、インターネットを駆使した布教を活発化させています 歴史の長い巨大新宗教 「3密」の回避を至上命令にした結果、布教活動が沈滞 信者の高齢化 ネットを利用した自己啓発や占いなどを隠れみのにしたミニカルト」が活発化 サークル的な軽いノリで現代カルトは近づいてくる 宗教に勧誘されているという意識がないまま、気付いたらはまっているという流れです 家族や友人をはじめとしたリアルの人間関係の重要性が見直される 現実に相談できる人が一人でも身近にいることが、カルトに付け込まれないための防波堤になる
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「大阪都構想」問題(その1)(維新の執念 11月再び住民投票 住民分断する「大阪都構想」、大阪都構想で自民と公明決裂 結果次第で「落選運動をやる」〈週刊朝日〉、大阪都構想はどう考えても「論外&大損」…132名の学者からの「警告」 イメージで賛成 中身を知ると反対) [国内政治]

今日は、11月1日にやり直しの住民投票を控えた「大阪都構想」問題(その1)(維新の執念 11月再び住民投票 住民分断する「大阪都構想」、大阪都構想で自民と公明決裂 結果次第で「落選運動をやる」〈週刊朝日〉、大阪都構想はどう考えても「論外&大損」…132名の学者からの「警告」 イメージで賛成 中身を知ると反対)を取上げよう。

先ずは、9月25日付けYahooニュースが週刊金曜日記事を転載した「維新の執念、11月再び住民投票 住民分断する「大阪都構想」」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/4f5b54a140def17f65860a7d4a262279bde24f61
・『傍聴席の男から飛び続けるヤジに本田リエ議長(大阪維新の会)は「地方自治法により退場を命じます」。だが直後に閉会した。 9月3日の15時半前、大阪市議会は懸案の「大阪都構想」の賛否を問う住民投票を賛成57票、反対25票で可決した。大阪府議会では8月に可決しており、11月1日に5年半ぶり、二度目の住民投票が行なわれることが決まった。 松井一郎大阪市長(日本維新の会・大阪維新の会代表)は「住民のみなさんに判断していただきたい。身が引き締まる思い」と記者団に語ったが「新型コロナウイルス対策が第一の今なぜ?」の質問には「コロナがいつ収束するかわからない。反対する人はいつでも反対でしょ」などとかわした。 議決前の討議では構想を進める守島正市議(大阪維新の会)が「四つの特別区の設置で住民サービスが拡充される大阪市を作っていきたい」。反対する自民党の川嶋広稔市議は「協定書はリスクや課題しか見つからない。政令指定都市、大阪市の強みを生かさなくては」、共産党の井上浩市議は「コロナ対策が最優先課題」と訴えた。 住民投票で賛成多数になれば大阪市は解体され、2025年1月1日から四つの特別区に分割。東京23区のように区長は選挙で選ばれる。大阪市の名は消えることになるが、大阪府を「大阪都」に変えるなら地方自治法を変えなくてはならない可能性もあるという』、維新にとって「大阪都構想」は党結成時からの政策だったので、こだわらざるを得ないのだろう。
・『【「押しつけ住民投票」か】大阪都構想は10年に、当時の橋下徹大阪府知事が「大阪維新の会」(以下「維新」)を結成した際「大阪は府と市の二重行政による不幸せで衰退していた」と訴え、「日本の副首都としての役割を担う」構想は党のスローガンとなった。維新以外はすべて反対だったが、公明党は現職衆議院議員のいる4小選挙区で「維新の候補を立てる」と橋下氏に脅され「構想には反対だが投票自体は賛成」に転じた。 15年5月の住民投票では賛成69万4844票、反対70万5585票の僅差で否決されて廃案になり橋下市長は辞任した。ところが維新は同年11月のダブル選挙で松井氏が大阪府知事、吉村洋文氏が大阪市長に当選。ここで勢いを得ると「勝つまでじゃんけんか」との批判をよそに特別区数を5から4に減らすなどの修正案を出してきた。知事と市長の候補を入れ替えた昨年の統一地方選で維新が圧勝すると、公明党は賛成に転じた。 自民党は一貫して反対を訴えているが、コロナ対策で維新が勢いづくと、不安になった府議から賛成派が出てきた。市議会では北野妙子市会議員団幹事長のもと団結して都構想に反対。同党大阪府連(会長・大塚高司衆院議員)も9月5日に都構想反対を決議した。 一方、立憲民主党は4日に「大阪市廃止分割対策本部」を発足させた。辻元清美衆議院議員は会見で「たまたま大阪は府と市の名前が一緒だけど、もし神戸市をなくしますとか、横浜市をなくしますとかになったら大変なことになるでしょう」。都構想では大阪市の豊富な財源が府に吸い上げられることも懸念されており、辻元氏も「(東京では)世田谷区に楽天が進出しましたが、法人税は区に1円も入らず全部都に吸い上げられるそうです。都構想が良いことばかりなら横浜や名古屋など他の政令指定都市でもやっているはず。全国から反対運動を盛り上げて大阪市民に反対に投じるように訴えたい」などと語った』、「公明党は現職衆議院議員のいる4小選挙区で「維新の候補を立てる」と橋下氏に脅され「構想には反対だが投票自体は賛成」に転じた」、節操などかなぐり捨てて、「維新」の軍門に下ったとはみっともないこと、この上ない。
・『「うがい薬」の失敗はあったが、迅速なコロナ対策や小学校の給食無償化の前倒し実施などが評価されてきた吉村知事は、二言目には「民主主義の基本の住民投票を行なう重要性」を語る。だが、この住民投票は原発反対や辺野古基地反対のように市民から湧き上がった結果ではなく、橋下氏や松井氏、吉村氏ら行政トップ主導による。辻元氏は「一部の人による押しつけ住民投票」と強調。同席していた尾辻かな子衆議院議員も3日の会見で「私の選挙区でも天王寺区民になりたいなんて誰も言ってません。コロナで心を一つにして頑張る市民を分断させる投票の強行に怒りを感じます」と話していた』、「吉村知事」がコロナに効くと「うがい薬」を真顔で勧めたのには、心底驚いたが、それでもまだ影響力を維持しているようだ。自民党、立憲民主党、共産党の反対運動に期待したい。

次に、10月8日付けAERAdot「大阪都構想で自民と公明決裂 結果次第で「落選運動をやる」〈週刊朝日〉」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/wa/2020100700009.html?page=1
・『1999年10月に自民と公明の連立政権ができてから21年。苦楽をともにした両党の関係に深刻な危機が訪れている。 対立のきっかけは、大阪維新の会が推進する大阪都構想だ。都構想は大阪市を廃止し、四つの特別区に再編するもので、11月1日に2度目の住民投票が実施される。 自民と公明は、2015年の住民投票では反対派として活動し、勝利した。それが、昨年4月に前大阪市長の吉村洋文氏が大阪府知事選で「公明党をたたきつぶす」と宣言して勝利。維新代表で前大阪府知事の松井一郎氏も大阪市長選で当選した。その後、公明は都構想賛成に転じた。 これに納得いかないのが自民の議員だ。「バッジのために魂を売った」(自民大阪府連関係者)との批判が噴出。自民関係者の間で、次の衆院選で公明現職のいる大阪4選挙区のうち三つで“刺客”の擁立を検討していることが明らかになった。 元堺市議の野村友昭氏もその一人だ。公明の重鎮である北側一雄元国土交通相の選挙区で出馬を検討している。 「大阪都構想では、数千億円の費用がかかると試算されています。その財源は、大阪市民の公共サービスを削ることで捻出しなければならない。大阪市には何のメリットもありません」 一方の維新は、大阪市が廃止されることで無駄な行政コストが減ると主張。歩み寄る気配はない。 大阪での自公対立は、菅義偉首相の衆院解散戦略にも影を落とす。 「菅さんは慎重な人。都構想の問題が片付くまで解散できないのでは」(前出の自民関係者) 菅内閣の人事でも、火花が散った。 「大阪万博担当相に東京選出の井上信治衆院議員が就任したことで、大阪の議員が『菅首相は都構想に賛成なのか』と反発。最後は副大臣・政務官人事で大阪選出議員を衆参計8人も任用してバランスを取った」(同) すでに永田町では年内の解散はなくなったとの見方が広がり、刺客作戦は棚上げに。しかし、住民投票で都構想が可決されれば話は変わるという。野村氏はこう語る。 「有権者は、選択肢を求めています。もし可決されたなら、公明候補への落選運動など何でもやるつもりです」 火の手はどこまで広がるのか。11月1日の結果が行方を決める』、自民党と公明党の対立も面白くなってきたようだ。

第三に、10月29日付け現代ビジネスが掲載した京都大学大学院教授の藤井 聡氏による「大阪都構想はどう考えても「論外&大損」…132名の学者からの「警告」 イメージで賛成、中身を知ると反対」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/76792?imp=0
・『「大阪都構想=大阪市廃止」の大分断  いわゆる「都構想」、すなわち「大阪市廃止」と四つの特別区への「分割」についての住民投票まで残すところあと数日となった。 世論調査によれば、今から1ヵ月半前の9月上旬では、「賛成49%反対40%」とおおよそ1割近くも賛成が反対を上回っていたのだが、10月25日の時点では、反対が43.6%で賛成の43.3%と、反対派が賛成を逆転する状況となっている。 つまり、この1ヵ月半で、かつて賛成していた人々の多くが、反対に意見を転換させていったのである。 なぜそうなるのか。この大阪都構想なるものは、「イメージだけで判断すると賛成しがちだが、中身を知ると反対になる」というものだからだ。 実際、筆者の大学で行った調査研究から、都構想の内容を的確に把握する人はその9割が反対するが、知らなければ過半数が賛成する、という結果が示されている。 では、一体いかなる「事実」があるのかだが、これについて今、様々な分野の132名の学者が、その都構想の「危険性」について警告を発している。 その所見は、「大阪都構想」にいかなる「危険」があるのか、つまり、都構想によって人々はどのような「損」を被るのかについての所見を、広く学術界に呼びかけた呼びかけ、提出されたものだ。 その全容は今、こちらのURL(https://satoshi-fujii.com/scholarviews2020/)にまとめられている。 お時間おありの方はぜひ、全てに目を通していただきたいところだが、ここではその内容を簡潔に解説しようと思う』、「「大阪都構想=大阪市廃止」の大分断・・・10月25日の時点では、反対が43.6%で賛成の43.3%と、反対派が賛成を逆転」、と反対の方が僅かながらも上回ったようだ。
・『(1)「都構想」は行政の専門研究者の間では「論外」  この所見は、行政学、政治学、法律学、社会学、防災学、地方財政学、都市経済学、都市計画学等、「都構想」に関わる様々な学術領域の学者たちから供出されたものだ。 なお、こうした所見は都構想の危険性、つまりデメリットについてであるが、「メリット」についての所見を表明する学者は極めて限られている。 筆者が目にした学者は、佐々木信夫教授、高橋洋一教授、上山信一教授の三人なのだが、彼等はいずれも全員が、都構想推進の市長を冠する大阪市特別顧問の経験者たちだ。 逆に言うと、都構想推進派と直接的な利害関係を持たないにもかかわらず、都構想に賛成する学者は、少なくとも筆者の知る限り本当に皆無なのである。 実際、所見を供出された鶴田廣巳・関西大教授(財政学)は次のように発言している。「大阪都って言うのは本来これだけ注目されますと学会等でも取り上げられるかと思いますけれども、学会では全くですね、荒唐無稽過ぎて取り上げるに値しない。そういう代物だと言うことを是非、ご理解いただきたいと思います」(出典「大阪都構想は、マジで洒落にならん話(1)~賛成する学者なんて誰もいない編」) つまり、都構想推進派と政治的関係と関わりを持たない学者で構成される学術界においては、都構想などむしろ鼻で笑われるような「粗悪品」(堀雅晴教授・立命館大学・行政学)といって差し支えないものなのである。 ついては具体的に、いかなる意味で都構想が「論外」の代物であるのかを、寄せられた132名の学者たちの言葉を借りながら解説していこう』、「都構想推進派と政治的関係と関わりを持たない学者で構成される学術界においては、都構想などむしろ鼻で笑われるような「粗悪品」」、言い得て妙だ。
・『(2)特別区になると、「権限と使えるオカネ」が著しく低下  そもそも、「都構想」で実現する「特別区」なるものは、「特別区は政令市並みの人口だが、権限と税財源はきわめて脆弱で、住民サービス低下は避けられない」(山田明・名古屋市立大学名誉教授・地方財政学)という存在だ。 しかも「将来たえず財政削減の圧力を受ける」ものであると同時に「特別区間の財政配分をめぐる区民同士の争いも延々と続く」(森裕之・立命館大学教授・地方財政学)とも指摘されている。 なぜそうなるのかと言えば、都構想は「都市計画や産業再生に向けた事業を計画し実施する権限を、大阪市を廃止することによって府知事に差し出す」(槌田洋・元日本福祉大学教授)地域経済学/地方財政学)ものだからである。 したがって、憲法学者の今井良幸氏(中京大学・准教授)は、特別区なるものは「憲法上の地方公共団体とは解されていない」と指摘し、かつ、地方自治論の池上洋通氏(千葉大学・元非常勤講師)は、その存在は「憲法の『法の下の平等』原則に反する疑い」があるとも指摘している。つまりそれは、「なぜ『都』になりたいのか、全く理解できない」(同・池上氏)というような代物なのである』、「都構想は「都市計画や産業再生に向けた事業を計画し実施する権限を、大阪市を廃止することによって府知事に差し出す」」、「権限」が「大阪市」から「大阪府」に移るのでは全く意味がないことになってしまう。
・『(3)行政サービス劣化:介護、医療、福祉、教育が軒並み劣化  このように、「特別区」は貧弱な自治体なのだから、その中で暮らす人々の生活水準もまたあらゆる側面で劣化していくことは確実だ。 つまり「都構想」は「市民社会の基盤を弱体化させ…自治は制限され…民の暮らしを損なうことになる」(早川和男・神戸大学名誉教授・環境都市計画)ものなのである。 例えば、「地域福祉が住民ニーズから乖離していく」(藤井えりの・岐阜経済大学専任講師・地方財政学)ばかりでなく、高齢者たちは「高齢化社会で求められる介護、医療、福祉を統合した『地域包括ケア』からは遠ざか」(澤井勝・奈良女子大学名誉教授・財政学)ることになるわけだ。しかも、「学校の条件整備も…より劣化し貧弱になっていくことは明確」(小野田正利・大阪大学名誉教授・教育学)でもある。 つまり、都構想は「安全、医療、福祉、生活環境の水準」(早川和男・神戸大学名誉教授・環境都市計画)さらには「教育」の質を低下させ、それらを通して「市民へのサービスを低下させる」(碇山洋・金沢大学教授・財政学)のである。 その結果、大阪は「『住みづらさ』が蔓延する失望の都市に変わってしまう」(保母武彦・島根大学名誉教授・財政学/地方財政学)ほかないのである』、「「特別区」は貧弱な自治体なのだから・・・」、とあるが、「大阪市」で支出していた分が、「特別区」で支出するので、「市民へのサービスを低下させる」、ことにはならない筈なのではなかろうか。
・『(4)「二重行政」という問題は存在しない  これだけ明確にデメリットがあるのが都構想なのだから、ほとんど全員が反対しても良さそうなものでもあるのだが、今、大阪の賛成派は反対派に拮抗する程に存在しているのが実態だ。 それは、大阪府と大阪市の間に「二重行政」があり、これを都構想で解消できるからだと言われているからだ。事実、賛成派最大の根拠がこの二重行政なのであり、賛成派の実に約半数が、その第一の理由として「二重行政の解消」を挙げている。 しかし、この二重行政の解消については、学術界では一切問題になってはいない。少なくとも、推進派と政治的なつながりがある元・大阪市特別顧問の学者以外で、これが問題だと口にする財政学や行政学の学者は少なくとも筆者は一人も見たことがない(なお、筆者は元特別顧問の二重行政についての原稿にも目を通したが、推進派の運動家が書いたような抽象的な文言で埋め尽くされており、客観的なデータは一切示されていない代物であった)。 例えば、地方財政学の平岡和久立命館大学教授は「『二重行政』については、多くの場合ほとんど問題になっていないことから、そもそも政令市を解体する理由にはならない」と断定している。 実際、二重行政による財政の無駄の削減は、「仮にあったとしても小規模」(川端祐一郎・京都大学助教・都市社会工学)、さらに言うなら「ゼロに等しい」(森裕之・立命館大学教授・地方財政学)とすら言われており、したがって「大阪経済の衰退や財政危機は『二重行政』によるものではありません」(岡田知弘・京都大学名誉教授・地域経済学)という断定的に指摘される状況にあるのだ。 むしろそれどころか、「『二重行政』と言われるものには…二者が互いに協働・補完し合う…『良い二重行政』」(水谷利亮・下関市立大学教授・行政学)もあり、かつ、「二重行政は二重保護として機能している」(松永和浩・大阪大学准教授・歴史学)側面も濃厚にある。 したがって二重行政を「解消」させると、「住民福祉に直結するサービスばかり」(鶴田廣巳・関西大学名誉教授・財政学)が必然的に切り捨てられることともなるのだ。つまり、削れる不要な二重行政などそもそもほとんどないのが実態であり、それにもかかわらず無理をして削れば住民サービスが劣化するわけだ。 さらに言うなら、仮に二重行政を排除するにしても、「現行法制度上でも二重行政を排除」(今井良幸・中京大学准教授・憲法/地方自治法)することも可能なのであり、何も都構想など行う必要すらないのである』、「二重行政による財政の無駄の削減は、「仮にあったとしても小規模」・・・さらに言うなら「ゼロに等しい」」、「仮に二重行政を排除するにしても、「現行法制度上でも二重行政を排除」・・・仮に二重行政を排除するにしても、「現行法制度上でも二重行政を排除」「することも可能」、なのであれば、「都構想」など全く無意味だ。
・『(5)ほぼゼロのメリット、大量のデメリット  そのほか、防災レベルが劣化する危険性を論じた所見(河田恵昭・京都大学名誉教授・防災学)、都構想を進める政治プロセスそのものの危険性を論じた所見(冨田宏治・関西学院大学教授・政治学)、さらには、一度大阪市を解体すれば二度と元に戻れないという危険性を論じた所見(宮本憲一・元滋賀大学学長財政学・都市経済学)、とにかく、効率化や無駄の削除ばかりを主張する都構想の思想的危険性を論じた所見(和田幸子・神戸市外国語大学元教授・国際経済論)等、ここでは紹介しきれない実に多様な「デメリット」が数多くの学者によって指摘されているのだ。 しかし、誠に恐ろしいことにこうしたデメリットがほとんどメディアを通して一般の庶民に周知されていないのが実態だ。 一方で、以上に述べたように現実にはほとんどアリもしない二重行政問題ばかりがメディア上で喧伝され、さも都構想による二重行政の解消が大きなメリットを大阪にもたらすかのようなイメージが世論で共有されてしまっている。 そんなイメージのみで都構想を是認してしまえば、大阪市民は間違いなく「大損」を被ることになるだろう。そうした最悪の悪夢を回避するためにも、一人でも多くの皆様方に、132名の学者たちの警告にぜひ耳を傾けていただきたいと思う。*「大阪都構想」に関する132名の学者はこちらで公開されています。ぜひご一読ください。 https://satoshi-fujii.com/scholarviews2020』、「誠に恐ろしいことにこうしたデメリットがほとんどメディアを通して一般の庶民に周知されていないのが実態」、大阪の「メディア」が維新を忖度して報道を自粛しているとすれば、罪は深そうだ。いずれにしても、大阪市民の審判はどうなるのか、注目したい。
タグ:問題 yahooニュース 週刊金曜日 大阪都構想 藤井 聡 現代ビジネス AERAdot (その1)(維新の執念 11月再び住民投票 住民分断する「大阪都構想」、大阪都構想で自民と公明決裂 結果次第で「落選運動をやる」〈週刊朝日〉、大阪都構想はどう考えても「論外&大損」…132名の学者からの「警告」 イメージで賛成 中身を知ると反対) 「維新の執念、11月再び住民投票 住民分断する「大阪都構想」」 【「押しつけ住民投票」か】 大阪は府と市の二重行政による不幸せで衰退していた」と訴え、「日本の副首都としての役割を担う」構想は党のスローガンとなった 公明党は現職衆議院議員のいる4小選挙区で「維新の候補を立てる」と橋下氏に脅され「構想には反対だが投票自体は賛成」に転じた 「大阪都構想で自民と公明決裂 結果次第で「落選運動をやる」〈週刊朝日〉」 「有権者は、選択肢を求めています。もし可決されたなら、公明候補への落選運動など何でもやるつもりです 「大阪都構想はどう考えても「論外&大損」…132名の学者からの「警告」 イメージで賛成、中身を知ると反対」 「大阪都構想=大阪市廃止」の大分断 0月25日の時点では、反対が43.6%で賛成の43.3%と、反対派が賛成を逆転 (1)「都構想」は行政の専門研究者の間では「論外」 (2)特別区になると、「権限と使えるオカネ」が著しく低下 (3)行政サービス劣化:介護、医療、福祉、教育が軒並み劣化 「「特別区」は貧弱な自治体なのだから・・・」、とあるが、「大阪市」で支出していた分が、「特別区」で支出するので、「市民へのサービスを低下させる」、ことにはならない筈なのではなかろうか (4)「二重行政」という問題は存在しない 二重行政による財政の無駄の削減は、「仮にあったとしても小規模 さらに言うなら「ゼロに等しい」 仮に二重行政を排除するにしても、「現行法制度上でも二重行政を排除 (5)ほぼゼロのメリット、大量のデメリット 誠に恐ろしいことにこうしたデメリットがほとんどメディアを通して一般の庶民に周知されていないのが実態 大阪の「メディア」が維新を忖度して報道を自粛しているとすれば、罪は深そうだ
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中国情勢(軍事・外交)(その9)(このままではいずれ中国が新興国経済を掌握する……コロナ禍でデフォルト危機の新興国に中国が急接近している理由、パプア政府「中国企業の金鉱採掘権」を強制剥奪 現地裁判所が権益延長を求める訴えを棄却、「中国の夢」実現の折り返し点…中国は変わるのか 変えられるのか) [世界情勢]

中国情勢(軍事・外交)については、8月20日に取上げた。今日は、(その9)(このままではいずれ中国が新興国経済を掌握する……コロナ禍でデフォルト危機の新興国に中国が急接近している理由、パプア最高裁「中国系金鉱採掘会社」の申立却下 上告審は継続。対立の裏で交渉継続探る動きも、「中国の夢」実現の折り返し点…中国は変わるのか 変えられるのか)である。

先ずは、9月13日付けエコノミストOnlineが掲載した在米ジャーナリストの岩田太郎氏による「このままではいずれ中国が新興国経済を掌握する……コロナ禍でデフォルト危機の新興国に中国が急接近している理由」を紹介しよう。
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20200908/se1/00m/020/033000c
・『過去10年ほどの低金利環境で大量に発行されてきた新興国の国債(ソブリン債)が、新型コロナウイルスの世界的な流行により債務不履行(デフォルト)のリスクに瀕(ひん)している。米論壇では、その影響や解決策をめぐる議論が熱を帯びている。 コロンビア大学のジョセフ・スティグリッツ教授らは7月31日付の評論サイト「プロジェクト・シンジケート」で、「100以上の低所得および中所得の国が合わせて1300億ドル(約13兆7800億円)のソブリン債返済を迫られている。だが、(感染拡大防止のため)経済活動が大幅に制限され、国庫収入が急減するため、これらの多くの国が債務不履行に陥るだろう。パンデミックの今こそ必要とされている医療や社会プログラムを削って、債権者に対する返済に充てる国が増える。結果として、数千万の人が失業して移民が増加し、世界中の社会に不安定化や暴力をもたらす」との見立てを提示した。 こうした長期的な悪影響を抑える方策としてスティグリッツ教授らは、「1990年代の中南米や、より最近のギリシャ債務危機において効果が確認された、債務国による自主的なソブリン債買い戻しにより、大きな債務放棄を確保し、(民間債権者による、債権を元手にした債務国に対する債務交換の)苛烈な条件を回避することもできる。さらに、恩恵を受ける国々が債務返済に充当するはずであった資金を医療や気候変動対策に回すよう義務付けることもできる」と利点を説明した。加えて、「国際通貨基金(IMF)の保証を付けた上で、出資ができる国や機関から資金を募ればよい」と主張した。 こうした中、コロナ禍で9度目の債務不履行に陥った南米アルゼンチンは8月4日、債権団と650億ドル(約6兆8900億円)の債務再編について、債券保有者が額面1ドル当たり約54・8セントを受け取ることで決着合意した。 しかし、一定割合の債券保有者が承諾すれば債務条件を変更できる集団行動条項(CAC)については見直す方向となり、一部の債権者に有利な結果となった。これについて、カリフォルニア大学のバリー・アイケングリーン教授、スタンフォード大学のジョン・テイラー教授などが7月9日に連名で「プロジェクト・シンジケート」に寄稿し、「CACの見直しは、条件変更を拒む最も無責任な債権者が、他の債権者の犠牲の下に利益を得ることにつながり、見直しは認められるべきではない」と訴えていた』、「CACの見直し」への「プロジェクト・シンジケート」の反対論は、この説明だけでは理解できない。
・『中国を利する危うさ  一方、カーメン・ラインハート世界銀行副総裁は6月23日に出演したブルームバーグの番組で、「特に低所得の新興国において中国は最大の貸手であり、中国の協力なしには債務国救済が限定的に終わる」と語った。 また、非政府組織である「透明性基金パートナーシップ」のフランク・ボーグル理事長は7月1日付の保守系サイト「アメリカン・インタレスト」で、「民主党政権であれ共和党政権であれ、ソブリン債危機が米ウォール街に波及してほしくない。だが、債務国救済は国民から収奪する新興国政権を利するばかりか、相当の債務カットに応じるであろう中国が、IMFの保証を使った債務国からの残債返済を確保し、最終的な勝者となる可能性がある」と警鐘を鳴らした』、これも残念ながら説明不足で理解困難だ。ただ、「低所得の新興国において中国は最大の貸手であり、中国の協力なしには債務国救済が限定的に終わる」、のは確かなようだ。

次に、10月17日付け東洋経済オンラインが財新 Biz&Tech記事を転載した「パプア最高裁「中国系金鉱採掘会社」の申立却下 上告審は継続。対立の裏で交渉継続探る動きも」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/380179
・『世界有数の金山として知られるパプアニューギニアのポルゲラ鉱山。その採掘権をめぐるパプア政府と採掘会社の争議が混迷を深めている。9月29日、採掘会社のバリック・ニューギニア(BNL)は声明を出し、ポルゲラ鉱山の採掘権延長に関する同社の申し立てがパプアの最高裁判所に却下されたことを認めた。 ここまでの経緯は複雑だ。BNLは中国の金採掘大手の紫金鉱業集団とカナダのバリック・ゴールドの合弁企業で、紫金鉱業が50%を出資している。ポルゲラ鉱山の採掘権はBNLが95%、パプア政府および地権者が5%を所有し、2019年8月にいったん契約期限が切れた後も、パプア政府はBNLの採掘継続を認めていた。 ところが今年4月24日、パプア政府はBNLによる採掘権の延長申請を認めないと突如発表。さらに8月25日、ポルゲラ鉱山の採掘権を国営企業のクムル・ミネラルズ(KMHL)に与えた。これに対してBNLは、パプア政府の決定は違法かつ無効だとしてパプアの国家裁判所に提訴した』、ここでの短い説明だけでは、真相は理解できないが、「パプア政府」は何故、こうした強硬策に出たのだろう。
・『「賠償責任はない」とパプア首相  しかし9月1日、国家裁判所はBNLの訴えを棄却。同社はそれを不服として最高裁に上告するとともに、国家裁判所の判決の執行停止を申し立てたが、最高裁は9月25日にこの申し立てを却下した。BNLは9月29日の声明の中で、今回の最高裁の決定は訴訟の終了を意味するものではなく、上告審はまだ継続中だと説明している。 一方、パプア政府のジェームズ・マラペ首相は9月28日、「BNLは国家裁判所の判決に従わなければならない」と発言した。ポルゲラ鉱山の採掘権の契約期限が切れてから1年間が経過した後は、パプア政府はいかなる費用負担も賠償責任も負わずに鉱山の資産を取り戻す権利があると、マラペ首相は主張している。 双方の対立は修復不能に見えるが、BNLは交渉継続の可能性を捨てていない。 また、ロイター通信の報道によれば、パプア政府から採掘権を与えられたKMHLも鉱山の操業を再開するため、紫金鉱業とバリック・ゴールドを出資者兼鉱山運営者とする長期契約を模索しているという』、「BNL」や「紫金鉱業集団」は、国際司法裁判所に訴えてうないのだろうか。今後の動きを注目したい。

第三に、10月21日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元外務審議官で日本総合研究所国際戦略研究所理事長の田中 均氏による「「中国の夢」実現の折り返し点…中国は変わるのか、変えられるのか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/251780
・『共産党一党独裁体制で大きく台頭してきた中国は日本にとって脅威に映る。 中国がこの地域で覇権を求めるようなことにはあらがわざるを得ない。中国は軍事力も飛躍的に拡大し、日本一国で抗することはできず、米国との同盟関係が今後とも不可欠となる。 しかし日本の経済の今後を展望すれば、中国は貿易・投資・観光などで最大のパートナーであることは変わらないだろう。中国との相互依存関係の維持は不可欠だ。 他方で中国自身も今、大きな岐路にある。中国がコロナ後の国際関係の中でどこへ向かうかは、国際社会にとっても日本にとっても最大の問題であり、今、何をするかが、30年後の世界を決めるということを認識するべきだ』、同感である。
・『「超大国」としての復活が中国ナショナリズムの原点  習近平総書記は「中国の夢」を掲げ、中華人民共和国建国100周年に当たる2049年には「社会主義現代化強国」として豊かな国になる路線(恐らく超大国米国と肩を並べることを意味しているのだろう)を鮮明にしている。 それは中国のナショナリズムを充足させる夢でもある。 中国にとって歴史の屈辱(アヘン戦争で英国に敗れ日清戦争で日本に敗れて、香港や台湾などを失い、大国の座から滑り落ちていったこと)を晴らすことは、ナショナリズムの原点だ。 「中国の夢」を実現させるために必要なのは、第一に国力を充実させることであり、第二に中国が中心に位置する世界を作ることだ』、なるほど。
・『2049年の建国百周年に向け「中国の夢」は実現されてきた  現代中国の礎を築いた故鄧小平氏は経済成長を促進することが先決と考え、改革開放路線の下、資本主義を導入し、国際社会との無用な摩擦を避けるため「大きくなるまで角を矯(た)める」という姿勢(韜光養晦)をとった。 中国は2010年にGDPで日本を追い越し世界第二の経済大国に躍り出た。 コロナ後を想定した推計では、中国のGDPは2021年には米国の75%に達し、2030年までに米国を追い越し世界最大の経済大国となるのではないかといわれる。 すでに2016年の時点で、フォーチュングローバル500のトップ10企業に米国企業が4社入っているのに対し、中国企業は3社が入り企業の規模レベルでも米企業に肉薄する。 軍事能力でも2035年ぐらいまでには米国と並ぶ能力を持つと予想する向きがある』、「韜光養晦」をとってきた頃は警戒心を持たれることもなかった。
・『中国中心の国際秩序の構築 中間地点で大きな岐路に  そして第二の条件である中国が中心に位置する国際秩序の構築も進んできた。 中国は第二の経済大国となったことで、自信は深まり、低姿勢でいる必要はなくなった。そこから積極的に対外関係に打って出た。 「一帯一路」構想の推進や「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」の創設、環境やエネルギー面での国際協力への積極的参画などで、国際的影響力は飛躍的に高まった。 同時に中国周辺での海洋活動は活発化し、時に攻撃的となった。東シナ海では尖閣諸島周辺での公船の活動を活発化させ、また南シナ海での埋め立て・軍事拠点化の動きは近隣諸国との大きな摩擦要因となった。 さらに香港問題では中国は自らで秩序を作る姿勢を鮮明にした。 本来であれば2047年まで「一国二制度」の基本が維持されるはずだった。 しかし香港の民主化を求めるデモが一向に収まらない事態に、限度を超えたと判断したようだ。 全人代常務委員会が香港の国家安全維持法を立法化し、2020年6月30日より香港に押し付けた。法の適用が恣意(しい)的に行われることが危惧され、香港市民の自由が大きく制約される結果となるのだろう。 改革開放から民主化の動きが生まれながら鎮圧された天安門事件から約30年、そして中国の夢をかなえたいとする2049年まで30年を切った今日、ちょうど中間地点の中国は岐路にある』、「天安門事件から」、「中国の夢をかなえたいとする2049年まで」の「中間地点」、確かにその通りだ。
・『「夢」実現を阻む深刻な悪循環 成長減速が共産党統治への不満強める  共産党一党独裁のまま「夢」をかなえようとする中国は国内、国外双方で深刻な悪循環に逢着している。 共産党政権は強権的な統治をする一方で、高成長を実現しそのパイを国民に享受させることで政治的な不満を抑えてきた。だが経済大国化するほど強権政治との齟齬(そご)が生まれ、それを強権的に抑えようとするほど経済や社会が不安定化することになりかねない。 豊かになるにつれ、成長速度が落ちていくのは必然だが、失業問題が深刻化すれば若年層を中心に不満が蓄積され政府批判につながり得る。 習近平政権は国民の批判を強権で抑え込み、強固な監視社会を構築している。また反腐敗闘争によって共産党内の権力闘争の芽も摘んでいるようにみえる。 また2018年に国家主席の任期を撤廃して以降、習近平総書記に対する権力の集中が図られるとともに、2016年の共産党中央委員会第6回総会(6中全会)で「党の核心」と位置付けられた権威をさらに高める動きも最近、急である。経済の分野においても共産党による企業運営への介入が強化されるのだろう。 だが他方で共産党への権威・権力の集中に対する国民の不満が一層蓄積され、また企業活動が制約を受けることで成長速度が一層鈍るという悪循環が始まるのではないだろうか』、「共産党への権威・権力の集中に対する国民の不満が一層蓄積され、また企業活動が制約を受けることで成長速度が一層鈍るという悪循環が始まる」、その通りなのだろう。
・『国際社会への影響力拡大とともに「戦狼外交」への懸念と反発  国際社会における悪循環も深刻となっている。中国外交は四面楚歌にあるといわれる。 コロナを巡る初動の誤りがもたらした国際社会の反発や「債務の罠」といわれる中国の途上国支援政策への懸念だけでなく、中印国境紛争や南シナ海でASEANとの紛争が起き、香港・台湾問題などを巡って欧州も対中政策の戦略的見直しを始めている。 中国が習近平政権下で対外的に攻勢をかけた結果、確かに中国の資金や中国市場に対する諸国の依存度が高まり、中国の国際的影響力は拡大された。だがそれが故に中国に対する懸念も強くなった。 中国の好戦的な「戦狼外交」は国際社会での中国の立場を大きく損ね始めている。 香港における強権的行動は国際金融センターとしての香港の地位を揺るがす。台湾についてもこれまで中国が示してきた「一国二制度」の台湾への適用は考えられないとして、蔡英文政権は、独立の方向性を強めるだろう。こうした不安定化は中国の「戦狼外交」に起因するところが大きい。 米国のピュー・リサーチ・センターの最近の世論調査によれば、先進国ではおしなべて中国に対し消極的評価が急伸しており中国への見方は厳しい(米、英、独、加においておよそ75%前後が中国に好感を持たないとする。日本ではその数字は86%に上り、先進国中最も中国への評価が低い)』、「米、英、独、加においておよそ75%前後が中国に好感を持たないとする。日本ではその数字は86%に上り」、好感度は日本が最も低いとは、尖閣問題も影響しているためなのだろうか。
・『米中対立はエスカレート 軍事的衝突の可能性否定できず  そして「中国の夢」実現にとって、決定的な要因となるのは米中対立の今後だ。 中国の輸出攻勢に対抗すべくトランプ大統領が中国からの輸入に25%の関税を付加したことに始まった米中貿易摩擦は、貿易摩擦の域を超えハイテク摩擦へと拡大した。 米国によるファーウェイ関連の排除措置や知的所有権の盗窃を理由にした中国の在ヒューストン総領事館の閉鎖、人的交流の制限に加え、ポンペオ国務長官は、7月23日には共産党体制自体を批判の俎上(そじょう)に載せて厳しい中国批判演説を行った。 大統領選挙キャンペーンとしての対中強硬論の色彩が強いとはいえ、根底には構造的対立がある。 米国は一党独裁体制にある中国が米国に代わる覇権国となることを許さないだろうし、中国が路線修正をしない限り、対立は厳しさを増し、究極的には軍事的対立に至る可能性も否定できない。 中国は現段階で米国と正面から対峙(たいじ)して米国を凌駕できるとは考えておらず、全面的な対立は避けようとするのだろう。そこに中国が態度を変える余地が出てくるのかどうかだ』、「中国」は先ずは「米国大統領選挙」の結果を待つだろう。
・『米国の政権交代は変化もたらすか G7協調で国際的包囲網作りに  米国大統領選挙では、このまま進めばバイデン民主党政権が誕生するのだろう。 トランプ大統領は選挙結果を受け入れないだろうといわれており、相当期間、混乱が続くことになるかもしれないが、選挙結果が覆されることはないだろう。 バイデン政権のもとで対中関係は大きく変化するのだろうか。 バイデン大統領はまず多国間協力への復帰を明確にするだろう。パリ協定やイラン核合意、ひいてはWHOへの復帰だけでなく、対中政策についても一方的な関税や制裁措置の導入よりも多国間協調体制に立ち戻ろうとすると考えられる。 しかし米中対立の構造的側面が消えてなくなるわけではない。むしろもともと民主党は香港や新疆ウイグル、チベットでの人権問題には厳しい姿勢を持ち、貿易不均衡問題でも、中国からの輸入超過は失業を生むとしてバランス是正のため管理貿易的な手法を導入しがちだ。 中国が国力で米国を凌駕するという事態は、民主・共和党を問わず米国のDNAからすれば受け入れられるとも思われない。 問題は方法論である。 トランプ政権の姿勢は「アメリカ・ファースト」をかざし独自に行動した。バイデン政権はG7の協調体制を作ろうとするだろう。 香港問題の改善や台湾への中国の圧力の軽減、そしてハイテクについての国家資本主義的行動や知的所有権の盗窃について国際的な包囲網を作ろうとすると考えられる。 主要先進国の間で中国に対する好感度が著しく低下し、中国に対して戦略的に対応する重要性が認識されている中で、必要な範囲内で中国をエンゲージ(注)しつつ、同時並行的に戦略的課題についてしっかりとした国際的包囲網を作ることが恐らく中国を変える唯一の解なのだろう』、ずいぶん難しそうだ。(注)エンゲージ:引き込む(weblio)。
・『中国を変えるには関与政策と圧力のメリハリ必要  ポンペオ国務長官は7月23日の演説で、オバマ政権時代の対中エンゲージメント政策はみじめに失敗し、中国を変えることができなかったと述べた。 確かに、今後も中国を国際社会として受け入れながら変化を促すというエンゲージメント政策だけで中国を変えることができるとは思われない。 肝心の米国自身が近年、国際協調体制から一方的に撤退し、国際的リーダーシップを自ら放棄しているようにもみられている。 国際社会で気候変動や新型コロナ対策に旗を振る中国の方が米国との対比ではより建設的だとみられている節もある。中国自身も米国のリーダーシップからの撤退を機に、自らの影響力を強める機会と考えているような行動に出ており、現実に途上国を中心に中国寄りの国も増えている。 さらにファーウェイの排除をはじめ中国の経済圏を分離しようとする米国の「デカップリング」政策に対応するため、外需によらず内需主導の成長、特にハイテクについても必要な部品を海外に頼らず自国で生産するという方針を打ち出している。 こうした状況では、主要先進諸国は結束して中国の戦略的脅威についての認識を共有し、そのうえで中国に対してエンゲージメントと圧力というメリハリのある政策をとっていかねばならない。 環境やエネルギー、貿易投資などについてのルール順守を中国に求めて中国により大きな責任を負わせることは重要だ。同時に香港や南シナ海問題、さらに知的所有権盗窃やハイテク分野における国家資本主義的なやり方を改善させていくためには先進諸国で一致した国際的圧力がどうしても必要だ。 そうしたメリハリのある政策をとることによって、中国は変わらざるを得なくなるのではないか。 グローバリゼーションの恩恵を享受できるのは、国際的な相互依存体制があるからで、そのことは中国も十分にわかっているはずだ。 実際に、2060年までにCO2排出を実質ゼロにするという習近平主席の国連演説での約束をはじめ、新型コロナのワクチン配布についてのWHOへの協力姿勢や途上国の債務救済への前向きな態度は中国の変化だと論じる人もいる』、「環境やエネルギー、貿易投資などについてのルール順守を中国に求めて中国により大きな責任を負わせることは重要だ。同時に香港や南シナ海問題、さらに知的所有権盗窃やハイテク分野における国家資本主義的なやり方を改善させていくためには先進諸国で一致した国際的圧力がどうしても必要だ」、その通りだが、現実には高度なバランス感覚が求められそうだ。
・『最悪は「第二の冷戦」 どの国の利益にもならない  もちろん中国には国内の強いナショナリズムがあり、国際社会の圧力に屈することをよしとせず、先進民主主義国との相互依存関係から離れて新興国や途上国との連携を目指すことも、今後の中国の選択肢としてはあるのだろう。 しかし、それこそは米国ブロックと中国ブロックが対峙する「第二の冷戦」だ。 しかもこの冷戦はイデオロギーというより利益相反に根付くものであるとともに、台湾などの「ホット・スポット」での軍事的衝突があり得るという意味で米ソ冷戦とは異なる性格を持つ。 この選択肢は世界を縮小均衡に導くという意味で、どの国の利益にもならない。 米中対立の影響を最も大きく受ける日本は、同時に米国と中国双方に強力な働きかけができる立場にある国だ。日本の外交が今後、30年の国際社会を決めるといっても過言ではない。 外交当局者にはその認識を十分に持ってもらいたい』、「外交当局者」はきっとくしゃみをしていることだろう。
タグ:東洋経済オンライン 国際司法裁判所 ダイヤモンド・オンライン 中国情勢 BNL 田中 均 軍事・外交 エコノミストOnline 財新 Biz&Tech (その9)(このままではいずれ中国が新興国経済を掌握する……コロナ禍でデフォルト危機の新興国に中国が急接近している理由、パプア政府「中国企業の金鉱採掘権」を強制剥奪 現地裁判所が権益延長を求める訴えを棄却、「中国の夢」実現の折り返し点…中国は変わるのか 変えられるのか) 岩田太郎 「このままではいずれ中国が新興国経済を掌握する……コロナ禍でデフォルト危機の新興国に中国が急接近している理由」 新興国の国債(ソブリン債) 新型コロナウイルスの世界的な流行により債務不履行(デフォルト)のリスクに瀕(ひん)している プロジェクト・シンジケート 定割合の債券保有者が承諾すれば債務条件を変更できる集団行動条項(CAC)については見直す方向となり、一部の債権者に有利な結果となった CACの見直し 中国を利する危うさ 低所得の新興国において中国は最大の貸手であり、中国の協力なしには債務国救済が限定的に終わる 「パプア最高裁「中国系金鉱採掘会社」の申立却下 上告審は継続。対立の裏で交渉継続探る動きも」 ポルゲラ鉱山 バリック・ニューギニア(BNL) 採掘権延長に関する同社の申し立てがパプアの最高裁判所に却下された 2019年8月にいったん契約期限が切れた後も、パプア政府はBNLの採掘継続を認めていた。 ところが今年4月24日、パプア政府はBNLによる採掘権の延長申請を認めないと突如発表 「賠償責任はない」とパプア首相 紫金鉱業集団 「「中国の夢」実現の折り返し点…中国は変わるのか、変えられるのか」 「超大国」としての復活が中国ナショナリズムの原点 2049年の建国百周年に向け「中国の夢」は実現されてきた 中国中心の国際秩序の構築 中間地点で大きな岐路に 「夢」実現を阻む深刻な悪循環 成長減速が共産党統治への不満強める 国際社会への影響力拡大とともに「戦狼外交」への懸念と反発 米、英、独、加においておよそ75%前後が中国に好感を持たないとする。日本ではその数字は86%に上り 米中対立はエスカレート 軍事的衝突の可能性否定できず 米国の政権交代は変化もたらすか G7協調で国際的包囲網作りに 中国を変えるには関与政策と圧力のメリハリ必要
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今日25日から27日まで更新を休むので、28日にご期待を!

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民間デジタル化促進策(その1)(日本のITが時代遅れになる根本原因はSIベンダーの言いなり体制 メインフレーム時代以来の強固な縦割り、印鑑さよならで思い出す金融業界の逸話 「押す角度・直径」に文化あり、日本の医療をGAFAに牛耳られない為に必要な策 個別商品・サービスでなくエコシステムがカギ) [経済政策]

一昨日から「デジタル化」関連を取上げているが、今日は、民間デジタル化促進策(その1)(日本のITが時代遅れになる根本原因はSIベンダーの言いなり体制 メインフレーム時代以来の強固な縦割り、印鑑さよならで思い出す金融業界の逸話 「押す角度・直径」に文化あり、日本の医療をGAFAに牛耳られない為に必要な策 個別商品・サービスでなくエコシステムがカギ)である。

先ずは、9月13日付け現代ビジネスが掲載した大蔵省出身で早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問一橋大学名誉教授の野口 悠紀雄氏による「日本のITが時代遅れになる根本原因はSIベンダーの言いなり体制 メインフレーム時代以来の強固な縦割り」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/75498?imp=0
・『日本のIT化が信じられないほど遅れていることを、コロナが暴露した。 なぜこうしたことになってしまうのか? その大きな理由として、政府や企業の情報システムが抱えた日本特有の問題がある。 発注側が評価能力をもたないため、SIベンダーのいいなりになり、古いシステムが温存されてしまうのだ』、野口氏の手厳しい指摘をみてみよう。
・『日本ではSIerの役割が重要  日本のITシステムで重要な意味を持つのが、SIer(Systems Integrator)とよばれる業者だ。 この役割を知るには、コンピュータシステムの歴史を知っている必要がある。ごく簡単に要約しておこう。 1980年代までの日本では、メインフレームやオフィスコンピュータが主流だった。メインフレームとは、大組織の基幹業務用などに使用される大型コンピュータ。オフィスコンピュータとは、中小企業の財務会計や給与計算を行うための小型のコンピュータだ。 1990年代にIT革命が起り、PC(パソコン)やワークステーション、サーバなどが使われるようになった。 ここで、ワークステーションは、PCよりも高性能のコンピュータ。サーバとは、ネットワーク上で、他のコンピュータ(クライアント)から要求や指示を受け、情報処理を行なうコンピュータだ。 データベースサーバ、Webサーバ、メールサーバなどがある。このシステムを「オープンシステム」と呼ぶ。 メインフレームの場合には、1社のみのハードウェアおよびソフトウェアで構成されることが多かった。それに対してオープンシステムでは、マルチベンダーとなる場合が多い。「ITベンダー」とは、企業が必要とする情報機器やソフトウェア、システム、サービスなどを販売する企業のことだ。 様々なベンダーのソフトウェアやハードウェアを統合する事業者のことを、システムインテグレーター(SIer)と呼ぶ。有力なSIerとして、富士通、日立製作所、NTTデータ、NTTコミュニケーションズ、NEC、IBM、日鉄ソリューションズなどがある。 ITベンダーとSIベンダーとSIerの違いについて、明確な定義はない。経済産業省の『DXレポート』は、「ベンダー企業」という名称を用いている』、なるほど。
・『日本企業や官庁はSIerに丸投げ  経済産業省『DXレポート』によると、諸外国の場合には、ユーザ組織が社内に IT エンジニアを抱えて、開発を主導している。このため、他のエンジニアへのノウハウの伝播が容易で、ノウハウが組織内に蓄積する。 それに対して日本では、ITエンジニアが、ユーザー組織ではなくSIerやベンダー企業に所属している。 このため、多くの場合、組織と結びついたSIerに丸投げしている。「昔から付き合いがあるから」というだけでずっと同じところに頼み続ける。したがって、関係が固定的になり、いったんシステムを作ると、もう動かせなくなる。 SIerとしては、技術の新しい動向をフォローすることよりも、固定的な顧客を逃がさないことのほうが重要だ。 また、ユーザー組織には、ITシステムに関するノウハウが蓄積しにくい。 SIerは安定した収入が見込めるので、組織とのもたれ合いの関係となる。SIer業界は多重下請け構造(5次下請けのさらに下まであるという)になっている。業者は中間マージンで稼いでおり、末端のエンジニアたちは搾取される構造になっているという。 これが、諸外国とは異なる「日本の特殊なITシステムの構造」だ。 8月30日公開の「日本政府がテレビ会議をできない『理不尽すぎる理由』」において、政府LANの統合問題は、2000年代半ばと10年代半ばの2度浮上したが、「自前の通信ネットワークに手を突っ込まれたくない各省庁の拒否反応と、甘い汁を吸ってきた納入業者の抵抗のために頓挫した」と書いた。 また、9月6日の「厚?労働省のITシステムは、なぜこうも不具合が多いのか?」において、「厚労省はシステムの運営をSlerに任せきり。SIerは維持管理で稼ぐことに執着する」と書いた。 発注側で評価する能力がないから、古いシステム が温存され、コストが嵩み、効率が下がる。そして、SIer は、独自システムの維持に執着するのだ』、「発注側で評価する能力がないから、古いシステム が温存され、コストが嵩み、効率が下がる。そして、SIer は、独自システムの維持に執着するのだ」、日本の非効率の典型だ。
・『縦割り社会の弊害が現れている  日本は縦割り社会と言われる。日本の組織(とくに大企業や官庁)は、あらゆる面で閉鎖的だ。日本の組織はタコ壺なのだ。 そのことが、従来は、人事について言われてきた。終身雇用制で、組織間の人材の移動が少ないという問題だ これまで述べてきたように、同様のことが情報システムについても言える。 企業は独自の閉鎖的な情報システムを持つ。だからシステムも企業ごとにバラバラになる。もともと、中央省庁は縦割り、自治体はバラバラなので、省庁や自治体がバラバラに情報システムを構築する。 大型コンピュータの時代にはこうなっても仕方なかった。しかし、インターネットでは、組織間の繋がりが重要なのだ。 日本政府がテレビ会議を満足にできないのは、省庁ごとのシステムがバラバラだからだ。給付金オンライン申請ができないのは、自治体システムと繋がっていないからだ』、「省庁や自治体がバラバラに情報システムを構築する」、少なくとも「自治体」が統一的な情報システムを構築するだけで、膨大な経費削減につながる筈だ。
・『組織のトップが方向づけの能力を持たない  本来なら、こうした状態を矯正する力が働かなければならない。その役割を果たすべきは、組織のトップだ。 すでに見たように、日本におけるデジタル化の問題とは、単に紙をデジタルにするということだけでない。日本組織のタコ壺構造 をどうするかという問題なのだ。このためには、組織のリーダーが問題を理解している必要がある。 経済産業省『DXレポート』によると、アメリカのCIOは、ベンダー企業を客観的に評価できることが重要な責務であると思っており、役に立つベンダー企業はどこかと常に見ている。世の中の有名なベンダー企業を使うよりも、世に知られていないが、新たな価値を提供できるベンダー企業を使って結果を出すことが自らの評価につながる環境に置かれている。 ところが、日本の組織のトップは、有名なベンダー企業に頼んだから大丈夫という考えに陥りがちだ。 目を覆いたくなる状況は、「日本政府がテレビ会議をできない『理不尽すぎる理由』」で述べたとおりだ。 歴代の経団連会長はパソコンを使っていなかった、サイバーセキュリティ担当大臣もそうだった。これではITシステムの方向づけなど、できるはずがない。 そして、「組織のトップはITの細かいことなど知らなくてよい」と、多くの人が考えている。これでは、日本の現状が変わるはずはない。 日本政府も、自治体システムの標準仕様統一を義務付ける新法を制定する検討に入った。 「自治体にシステムをわかる職員が少なく、ベンダー主導となってきた。そのため、各自治体が独自仕様のシステムを構築し、国や自治体のデータ連携が進まず、新型コロナウイルス対応では給付金の支給遅れなどを招いた。これを改革するのだ」と説明されている(「自治体システム仕様統一 デジタル化へ新法で義務付け」日本経済新聞、8月3日)。 まっくその通りだ。しかし、トップがこのような状態で、果たしてうまく進むのだろうか?』、「日本の組織のトップは、有名なベンダー企業に頼んだから大丈夫という考えに陥りがちだ」、典型的な責任回避スタイルだ。「「組織のトップはITの細かいことなど知らなくてよい」と、多くの人が考えている」、こうしたトップのIT軽視が、部下たちにも伝わる筈だ。
・『台湾は日本の遥か先を行く  日本と対照的なのが台湾だ。 オードリー・タン(唐鳳)デジタル担当相が指揮して作ったマスク供給システムで、マスク不足のパニックを防いだ。 このシステムでは、個人情報保護が要求され、しかも、行政機関や流通の情報も連携させなければならず、難度が高いものだった。タンは市民エンジニアの協力で、わずか3日でこれを作った。 タンは2016年に台湾史上最年少となる35歳で入閣した。この人は天才プログラマーと言われるが、その経歴は、日本の常識から言えば、型破りそのものだ。14歳で中学を退学して15歳で起業。そして、33歳で現場から引退した。 こうした人材を登用し、思うままの活動をさせる蔡英文総統の洞察力と指導力にも敬服せざるを得ない。 そして台湾は、新型コロナウィルスの感染拡大を抑え、被害を最小限に抑え込むことに成功している。 中国は強権によって感染を抑え込んだのだが、台湾は、知恵によって抑え込んでいる。 台湾は日本の遥か先を行っている』、「オードリー・タン」氏を「登用し、思うままの活動をさせる蔡英文総統の洞察力と指導力にも敬服せざるを得ない」、同感である。

次に、10月14日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏による「印鑑さよならで思い出す金融業界の逸話、「押す角度・直径」に文化あり」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/251190
・『筆者は約40年間サラリーマンを務め、金融業界に長く身を置いてきた。そのため、直接ないしは間接的に印鑑(ハンコ)に関するさまざまなエピソードを見聞きしてきた。今や、行政やビジネスの手続きから除外されていく運命にあると思われる印鑑だが、その押す角度や判の直径が9ミリか11ミリかといったささいなことに、会社の文化や思いが込められていた。今回はそうした金融業界の印鑑にまつわる逸話をご覧に入れたい』、タイムリーな寄稿、さすがだ。
・『印鑑と共にあったサラリーマン生活前半 金融業界ならではの思い出は数多い  筆者は、ざっと40年間サラリーマンであるが、サラリーマン生活の前半は印鑑と共にあった。ハンコを巡る思い出は数多い。 最初の就職先に入社した日の社内事務の多くに、シャチハタの印鑑を使用した。朝は出勤すると出勤簿にシャチハタを押印するところから一日が始まる。新入社員である筆者の世話役の女性社員(筆者の数歳年上)の押したシャチハタの印影を見て、「シャチハタも使い込むと貫禄が出ますね」と言ったところ、「今年の新人は可愛くない」という評判がチーム内に一斉に広まった。 素朴な感想を述べたのだったが、彼女の年齢を揶揄(やゆ)したように聞こえたのだろう。そういう気持ちが一切なかったわけでもないから、仕方がない。 社内の決裁文書には印鑑が使われた。投資案件を決済する投融資委員会の文書には12?13個の印影が並んだ。決済に意見としては反対だが、形式的に賛成する場合には、逆さまにハンコを押す場合がある、と先輩社員から聞いていたが、実際に逆さまの印影は見たことがなかった気がする。) その代わり、この会社には同じ賛成でも「異議なし」と「やむなし」の2種類の書き方があって、「ホンネ」の表現手段があった。どちらも賛成なのだから、意味のないことなのだが、「やむなし」と書くと社内で感情的な対立が生まれることがあり、覚悟が必要だった。 筆者は財務部員だったので、取引先の銀行員に「うちの会社は決裁文書にこんなにたくさんハンコが並ぶのです」と愚痴を言ったら、「うちの銀行は大抵の書類に30個に近い二十数個はハンコが並びますよ」と言われて、驚いた。 十数年後に、その銀行の子会社である運用会社に転職したところ、本当に20個以上のハンコがきれいに並んでいた。「客先を訪問した報告書」のような決済文書でない書類にも「見た」という印としてハンコを押す。 銀行から出向してきた部下が、「ハンコは、少し左斜めに傾けて押すといいと支店長に教わりました」と言う。左側に上席者のハンコが並ぶので、左に傾けて押すと「礼をしているように見えるから」という理由だった。 ドラマ「半沢直樹」(TBS系)でも、過去の決裁文書にあるハンコが問題になって「法律には時効があるが、銀行員に時効はない」という半沢の台詞が印象的だった。ハンコを押した文書には、「それを見て、同意した」という責任が伴うとされる文化だったので、どこの銀行でも印鑑は厳格に管理するように要求されていたはずだ。銀行員の印鑑に対する思いは特別だ。 合併した銀行では、出身行のハンコ文化の違いが問題になることがあったという。旧A銀行では、一般行員は直径9ミリの印鑑を使うが、課長になると11ミリの少し大きな印鑑を使う風習があった。A行出身の課長Xさんは、11ミリの印鑑を押印していたのだが、旧B行(筆者の勤めた会社の親銀行だ)ではハンコをきっちり並べて整然と押す風習があった。そのため、ある時B行の出身者に「あなたのハンコは大きくてスペースを取るし、しかも押し方が乱暴なので、それでどれだけの人が迷惑していると思っているのですか」と注意されたという。 外資系の銀行に転職したXさんは、「この一件でばかばかしくなって、私はあの銀行を辞めた」と言っていた。それが本当の転職理由ではないにしても、ハンコの使い方は銀行の文化に関わる問題だったのだろう。A行の出身者が「付き合いきれない」と思う気持ちも分かるし、B行の出身者が本気で腹を立てる気持ちも分かる。 ハンコには、あたかも自分の分身であるかのような、何らかの「思い」が込められるケースがあることは確かだ』、「ハンコには、あたかも自分の分身であるかのような、何らかの「思い」が込められるケースがある」、その通りだ。
・『ハンコで「助かった」ある女性の話  投資に興味がある人の集まりで、ある女性の話が記憶に残った。銀行の支店に出向いた際に応接室へ通されて、投資商品のセールスを受けたのだという。最初は担当者と差し向かいであったが、後から支店長も加わって、2人からステレオの音響のように説得を受けたという。その女性は、「今日はハンコを持っていないので、明日また来る」と言ってその場を逃れたという。 実際には印鑑を持っていたとのことなので、その女性の方が銀行員たちよりも一枚上手だったということだ。 他にもハンコのエピソードはあるのだが、意思表示の確認方法が印鑑のシステムであることが役に立ったという事例は、上記の女性のケース以外に思い浮かばない。ただし、このケースはハンコを押すことが役に立ったのではなく、「ハンコがない」という芝居が役に立ったのだから、ハンコ本来の使い方が優れていることの例証にはならない。 意思表示の確認方法がハンコでなくては困るという話は出てきそうにない。 電子的な署名技術もあるし、それ以前にサインで困らない。筆者は、外資系の会社に4社勤めたことがある。いずれの会社もハンコではなくサインを使っていたが、それで困ることは何もなかった。 ただし、ハンコをサインに変えても、本人が紙に対して直接作業を行わなければならない事態は改善しない。「決済のハンコを押すためにだけ出社する管理職」のような不便を解消することにはならない』、「「今日はハンコを持っていないので、明日また来る」と言ってその場を逃れた」ケースでは、「担当者」や「支店長」の営業姿勢の甘さが印象深い。
・『ハンコをなくしただけでは不十分 紙のやりとりを減らせるか  ある種の後進性の象徴である印鑑を、行政やビジネスの手続きから除外していくことについては、合理的な反論はできそうにない。筆者も賛成である。 ただ、ハンコをなくしただけでは「生産性」は十分向上しない。 行政的な手続きや契約書、請求書、領収書といったビジネス上の手続きが全て紙なしで電子的に行うことができて、紙の文書を保存する必要もない、という状況をなるべく早く達成したい。 ことビジネスだけを考えるとしても、紙の文書を作成する手間や郵送等で届けるコスト、さらに保管のスペースなど、仕事に紙が関わることによって発生する時間と金銭の無駄は膨大だ。もちろん、紙の文書に押印やサインするための通勤のコストも含まれる。 一気に行うことができて効果が大きいのは、やはり行政のデジタル化だろう。技術的にできない理由は思い浮かばない。政府の意思決定だけで行うことができるし、行政に関わる手続きがオンラインで行えるようになると、民間への波及効果も大きい。 記録の安全性は全て相対的なものだが、本人の確認や記録の保存などは複数のデジタル技術を組み合わせると、紙と印鑑よりもずっと堅牢なシステムを作ることが可能なはずだ。紙は散逸したり燃えたりすることがあるし、印鑑も(サインも)偽造が可能だ。 各種の役所の窓口に、番号札を持って人が並ぶ事態を数年でなくしたいものだ。 紙による手続きや記録の保存などは、中小規模の事情者などを対象に例外としてしばらく認めておくといい。デジタルな方法の方が便利になってコストが下がると、中小事業者も仕事のやり方を変えない理由はない』、大賛成である。

第三に、10月18日付け東洋経済オンラインが掲載した立教大学ビジネススクール教授の田中 道昭氏による「日本の医療をGAFAに牛耳られない為に必要な策 個別商品・サービスでなくエコシステムがカギ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/381666
・『デジタル庁の創設により加速すると期待される日本のデジタルトランスフォーメーション(DX)。「日本がデジタル化で遅れる決定的な構造要因国家・産業・企業における競争戦略を考える」(2020年10月3日配信)に続いて、特に「ヘルスケア分野」におけるデジタルトランスフォーメーションに着目して解説します。 なぜヘルスケア分野に注目するのか。医療・介護産業はマクロとミクロが表裏一体であり、規制業種としてマクロの影響を強く受ける点が特徴です。そしてヘルスケア分野に注目する最大の理由は、菅政権の目玉として語られる規制改革(行革)、コロナ対策を含む医療政策(厚生労働)、デジタル庁(IT)の3つを三位一体に結びつけるものこそ、ヘルスケア分野でのDXだからです』、興味深そうだ。
・『テクノロジーの活用で日本を「健康先進国」へ  まず現行の医療政策の方向性を確認しておきます。具体的には地域医療構想、保健医療2035、未来投資会議の3つが示唆を与えてくれます。 地域医療構想は、厚生労働省によると「2025年に向け、病床の機能分化・連携を進めるために、医療機能ごとに2025年の医療需要と病床の必要性を推計し、定めるもの」としています。少子高齢化を受け、高齢者医療ニーズも医療費も高まるなか、全国341の「構想区域」ごとに2025年における必要な病床数を高度急性期・急性期・回復期・慢性期の4つにわけて推計、効率的な医療体制の実現につなげます。 一方、保健医療2035は「2035年、日本は健康先進国へ」という前向きなメッセージを掲げるものです。急激な少子高齢化などさまざまな課題に直面しながらも、国民の健康増進、保健医療システムの持続可能性の確保、保健医療分野における国際的な貢献、地域づくりなどの分野における戦略的な取り組みを検討します。 そして未来投資会議は、国の成長戦略につながる投資活動を政府と民間の有識者が議論する機関として誕生しました。議長は安倍晋三・前首相本人でした。菅新政権発足後、10月9日に「未来投資会議を廃止し、成長戦略会議に衣替えする」との発表がありましたが、今後、会議体自体は進化していくものの、大きな政策には変更はないと考えられます。ここでも「健康・医療・介護」は大きなテーマ。技術革新やデータの利活用による国民の健康維持・増進、医療・介護の質向上、医療従事者の働き方改革などが議論されました。 以上から読み取れるのは、国は医療の「成長産業化」に舵を切った、ということです。従来は、高齢化の進行、生産年齢人口の減少などを背景に、医療費削減をはじめとする「下りのエスカレーター」に乗るかのような医療政策に焦点が置かれました。それをテクノロジーによって「上りのエスカレーター」に乗り換えようとしている。ヘルスケア分野のDXを成功させることで、日本を健康先進国とする。これはすでに重要な国策です。 次に、マクロからミクロへと目を転じましょう。コロナ以前からヘルスケア産業にはさまざまな変化が生じていました。キーワードとしては、個別化医療、デジタル化、サービス化、未病・予防、異業種からの参入、などが挙げられます。 個別化医療とは、遺伝子情報や生活習慣、バイタルデータ等のデータを利活用することで患者個人に最適化された医療サービスを提供するものです。オンライン診療やAI創薬を始め、デジタル化はあらゆる領域に及んでいます。従来どおりの医療ではなく、より広範な「医療サービス」を異業種からの参入組が提供する事例も目立ちます。未病・予防とは、「病気を治す」より「病気を防ぐ」「健康を維持する」ことに重きを置く医療のこと。医療費削減はもちろん国民の健康増進のためにも重要な取り組みです。 なかでも見逃せないのは異業種からの参入です。医療単独で見るなら「下りのエスカレーター」にある産業かもしれませんが、美容産業や健康産業までを含んだ広義のヘルスケア産業として見るならまだまだ成長トレンドにある。そう期待する異業種のプレーヤーが増えているのです。特に目立つのはGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)に代表されるテクノロジー企業。アメリカではすでにGAFAの動きが活発であり、こぞってヘルスケアに参入しています。 そしてwithコロナの世界において、こうした変化はさらに加速しました。なかでもDXの加速は特筆すべきものがあります。マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは2020年4月の決算発表において「この2カ月で2年分のデジタルトランスフォーメーションが起きた」と語りました。感染拡大防止策として非接触・非対面が推奨されたことで、リモート化、オンライン化、モビリティ化、分散化が一気に進んだのです。 仮にコロナが収束してもこれらの多くは「ニューノーマル」として維持されるはずです。そしてDX化の波にのるかたちで、テクノロジー企業も躍進を遂げました』、「医療費削減をはじめとする「下りのエスカレーター」に乗るかのような医療政策に焦点が置かれました。それをテクノロジーによって「上りのエスカレーター」に乗り換えようとしている」、本当かと思ったら、「医療単独で見るなら「下りのエスカレーター」にある産業かもしれませんが、美容産業や健康産業までを含んだ広義のヘルスケア産業として見るならまだまだ成長トレンドにある。そう期待する異業種のプレーヤーが増えているのです」、と言い訳をしているようだ。
・『デジタルでのエコシステムの構築が戦いの主戦場  テクノロジー企業はあくまで異業種であり、既存のヘルスケア産業に巨大なインパクトを与えることなどできない。そう考える人もいるかもしれません。確かに1つひとつのサービスを見れば、既存のヘルスケア産業に一日の長があるとも言えます。ですが、彼らはそもそも、1つひとつのサービスのシェアを奪おうとはしていません。彼らがターゲットにしているのは、ヘルスケア産業の「エコシステム」そのものです。 ここで紹介したいのはノキアの事例です。かつて「携帯電話といえばノキア」「フィンランドの奇跡」「技術の神童」と称賛されていた同社ですが、アップルのiPhoneの登場により倒産危機に追い込まれました。そこからの劇的な復活劇も興味深いのですが、ここで強調したいのは「グローバルトップ企業が異業種からの参入組により倒産寸前まで追い込まれた」という事実です。 つまりノキアには、日本のヘルスケア産業の「反面教師」としてベンチマークする価値があるのです。iPhoneが登場した当初、ノキア役員会は「iPhoneは競合ではない」とし、警戒しませんでした。ノキアのみならず、NECや東芝、富士通、ソニーなど、日本の携帯電話メーカーも同意見だったと思います。そこに落とし穴がありました。彼らは「新たな競争の脅威を予測しそこなう/甘くみる」という失敗を犯したのです。アップルはスマホというデバイスで勝負をしかけたのではありませんでした。 そのことにノキアが気づいたのは、iPhoneの勝利が決定的になったあとのことでした。そのとき、ノキアのCEOは全社員に向けてこんなメールを送りました。「競合他社のデバイスが私たちの市場シェアを奪っているのではありません。エコシステム全体で市場シェアを奪っているのです」。ここでの競合他社とはアップルであり、グーグルのことです。 ノキアも日本の電機メーカーものちにスマホを発売しましたが、そのときすでにアップルやグーグルはスマホのエコシステム全体を握っていました。つまり、スマホのハードのみならず、スマホのOS、アプリ、サービス等を含めたエコシステム全体を支配していたのです。単なるデバイスメーカーでは、勝ち目はありません』、「日本の電機メーカーものちにスマホを発売しましたが、そのときすでにアップルやグーグルはスマホのエコシステム全体を握っていました。つまり、スマホのハードのみならず、スマホのOS、アプリ、サービス等を含めたエコシステム全体を支配していたのです。単なるデバイスメーカーでは、勝ち目はありません」、「エコシステム全体を支配」が勝敗の鍵を握るようだ。
・『アップルがヘルスケア産業を破壊する  ノキアの事例から得られる示唆は次のようなものです。テクノロジー企業はエコシステム全体で異業種に勝負をしかけてくる。そしてエコシステムを構築したプレーヤーは産業に破壊的なイノベーションをもたらすことになる。現に、ヘルスケア市場においても同じことが起きています。ノキアの例におけるデバイスにあたるものは、医療機関、医療機器、医薬品、診療所、ドクター、看護師、メディカルのスタッフなど。そしてエコシステムとは、それらを包含するハード、OS、アプリ、ソフト、サービス等の全体、あるいはヘルスケア産業のバリューチェーンにおける多階層のレイヤー構造としましょう。 具体例としてアップルを取り上げます。私は自著『GAFA×BATH』(日本経済新聞出版社)において、アップルはかつてiPodで音楽市場を破壊したように、今度は「アップルウォッチでヘルスケア市場を破壊する」「メディカルビジネスのプラットフォーマーになる」と論じました。どういうことでしょうか。アップルウォッチはシリーズ4から心電図機能を搭載しており、もはや「医療機器」といっても差し支えありません。 またiPhoneに標準搭載されているアプリ「ヘルスケア」は通常「歩数」「エクササイズ時間」等が表示されるものですが、アップルウォッチと併用すると「心拍数」「心拍変動」まで表示され、異常が検知されるとリアルタイムでメッセージが届く仕組みになっています。もっとも、ここで論じたいのはこうした高機能なデバイス単独ではありません。より重要なのは、こうしたデバイスを組み込んだアップルのヘルスケア戦略であり、エコシステムのほうです。 上の図は、将来展開されるアップルのヘルスケア戦略を公開情報から筆者が予想したものです(図はリンク先参照)・・・』、確かに「アップルのヘルスケア戦略」は壮大だ。
・『アップルウォッチなどがヘルスキットに?  アップルのヘルスケア戦略を支えるのは、スマートヘルスケアのエコシステムとしての「ヘルスキット」です。ヘルスキットにはアップルウォッチやiPhoneなどのアップル製品から取得された個人の医療・健康データのほか、将来的には病院のカルテ情報などが蓄えられていきます。利用者はiPhoneに標準搭載されている健康管理アプリ「ヘルスケア」で自分のデータをチェックできるほか、将来的には医療機関との間でやりとりできるようになります。 アップルは、このエコシステムを自社商品のみならず、多くの企業が展開するヘルスケア関連のIoT機器製品群にも公開していくと考えられます。今後、アップルウォッチやiPhoneは、スマートヘルスケアのプラットフォームとしても成長し、そこではさまざまなヘルスケア関連の商品・サービス・コンテンツが展開されることになるでしょう。 それだけではありません。私は、アップルは今後、ヘルスキット、アップルウォッチ、iPhoneを基軸とし、「アップルクリニック」を事業展開すると予想しています。つまりリアルな病院やクリニックです。これが突飛な予想だとは思いません。アップルは自社製品を生かした社員用クリニックを展開してもいるのです。社員用クリニックから得られた知見をもとに高速PDCAを回し、一般向けの事業展開へとつなげる可能性は否定できません。 さらに付け加えるなら、ヘルスケアにおいて何よりも問われる信頼性や安心感においても、アップルは定評があります。健康情報はユーザーの個人情報にあたりますが、アップルはかねてから個人のプライバシーを重視し、個人データの利活用をしないことを宣言しており、そもそもできるだけ個人のプライバシー情報は個人のスマホのなかだけにとどめる「データミニマイゼーション」という概念をプライバシーポリシーの中核に据えている企業でもあるのです。かつて音楽産業をiPodで破壊したように、今度のアップルはiPhoneとアップルを起点に、ヘルスケア産業を破壊しようとしているのです。 DXの世界においてはエコシステムを構築したプレーヤーが勝利するのがゲームのルールです。かつてスマホ産業において、日本の電機メーカーはデバイスメーカーとして戦い、敗れました。そしてヘルスケア産業においても、やはりテクノロジー企業はエコシステムでの勝負をしかけてきています。 スマホ産業の二の舞にならないために、日本はどうすればいいのでしょう。ヘルスケア産業を成長産業に転換するためにも、テクノロジー企業にエコシステムの構築を主導されるわけにはいきません。世界をリードするヘルスケアエコシステムを、日本が自前で構築する必要があります。 ここからは私の意見を交えて展開しますが、私が提言したいのが、規制改革(行革)、コロナ対策(厚生労働)、デジタル庁(IT)を三位一体とするDXです。すなわちヘルスケアDXであり、ヘルスケアエコシステムの構築です(図はリンク先参照)。 ここでいう三位一体とは何でしょうか。医療政策においては、コロナ危機や同様の感染症リスク等への対応、医療費抑制、何よりも国民の保健・医療・生活の向上を推進していきます。規制改革は、オンライン診療、遠隔診療、AR/VR診療・医療、遠隔医療、医療分野でのアンビエントコンピューティング等実現のための規制緩和などを指します。デジタル政策においては、後述するシステム(利便性)×セキュリティー(安全性)×プライバシー(個人の尊厳)のバランスを図ることが肝要になります』、「ヘルスケア産業を成長産業に転換するためにも、テクノロジー企業にエコシステムの構築を主導されるわけにはいきません。世界をリードするヘルスケアエコシステムを、日本が自前で構築する必要があります」、急に愛国的なトーンになったことには違和感がある。
・『個人のIDが肝になる  この三位一体と実現するヘルスケアエコシステムとして私が提言するのが下の図です(図はリンク先参照)。 そもそもエコシステムは、複数の階層(レイヤー)が積み重なり、各階層にさまざまなプレーヤーが参画するところに特徴があります。私が提案するヘルスケアエコシステムは、底辺にマイナンバー/PHR(IDレイヤー)を置きます。これがすべての階層を支えるインフラです。PHRとはパーソナル・ヘルス・レコードの略称で、これまで複数の病院や薬局などに散らばっていた個人の健康関連の情報を一箇所に集約する仕組みをいいます。個人が自分のデータにアクセスし、健康管理や治療、予防・未病対策に活用することが狙いです。またPHRはマイナンバーと同じく個人のIDとしての役割を果たすものでもあります。 このIDを起点にすべてのサービスを構築していきます。例えば、医療ポイントによる決済・支払い・入金です(医療ポイントレイヤー)。決済・支払い・入金サービスもエコシステムのなかにビルトインされているのです「医療ポイント」としたのは、今回のドコモ口座など電子決済の不正取引問題を背景に、銀行口座と決済・支払い・入金用アプリを紐付けることに抵抗感を覚える人が一定数存在するためです。そこで決済・支払い・入金などは医療ポイントでまかなえる選択肢を用意し、銀行口座と決済・支払い・入金用アプリを紐付けるかどうかは個人の判断に任せることにします。 医療・健康データ(モバイルデバイスレイヤー)は、前述のアップルのエコシステムの事例でいうと、標準搭載のヘルスケアアプリに歩数などが集積するiPhone、心電図機能に血中酸素濃度センサーまで搭載するに至ったiPhoneなどがあたります。健康データを超えて医療データまでを集積するデバイスを、GAFAに委ねるのではなく、日本独自に、国と企業が一体になって推進していくのが望ましいと私は考えます。 その上に、電子カルテデータ(医療機関レイヤー)があります。現状、多くの医療機関に電子カルテが導入されていますが、問題はそのデータが医療機関ごとに分断されていること。そのバラバラの電子カルテデータを、このレイヤーで統一、連携できるようにします。) 健康サービスデータ(サービスレイヤー)は、さらにその上に乗る医療機関サービス、行政サービス、健康・保健サービス、医薬品・医療機器などのデータが直接的に蓄積されるインフラの役割を果たします。医療機関サービスはその名の通り、病院やクリニックなどで提供されるサービスのこと。行政サービスは保健所を含む、医療や介護に関わる行政サービス全般を指します。健康・保健サービスは、フィットネスジムなど民間のヘルスケアサービス全般。医薬品・医療機器は、医薬品メーカーや医療機器メーカーが提供するサービスであり、それらが集積しているデータのことです。 これら各レイヤーがマイナンバー/PHR(IDレイヤー)の上に構築されると、誰がどのようなヘルスケアサービスを受けているのか把握できるようになるとともに、そこで蓄積されたさまざまなデータが、各サービスの改善、そしてユーザーにとっての利便性向上のために活用できるようになります。 こうしたエコシステムの構築にあたって、最も重要であり、しかし見落とされがちなのは「ユーザー起点」であることです。行政や医療機関の業務効率化にも貢献できるエコシステムであるのは事実ですが、なによりも個人の利便性を向上させるものであることを、忘れてはいけません。アマゾンは「地球上で最も顧客第一主義の会社」になることをミッションとしていますが、これについてジェフ・ベゾスCEOは「顧客をその人の宇宙の中心に置いてあげる」と表現しています』、「エコシステムの構築にあたって、最も重要であり、しかし見落とされがちなのは「ユーザー起点」であること」、なるほど。
・『便利さ、使いやすさを何よりも意識する  つまり個人にとっての便利さ、使いやすさを何よりも意識するということ。PCにしろスマホにしろ、すべてのITサービスにユーザーフレンドリーが厳しく問われる昨今です。私たちがすっかり慣れ親しんでいる「ワンクリックで買い物ができるECサイト」「サクサク動くスマホ」と同等のユーザビリティがなければ、どれだけ高機能でも、そのエコシステムは利用者を集められないのです。 と同時に、前稿でも指摘したシステム(利便性)×プライバシー(個人の尊厳)×セキュリティー(安全性)の三位一体のバランスには、最新の注意が払われなければなりません。システムに蓄積されるデータを利活用されるにしても、それは企業の利益追求より、「個人が自分の健康情報を把握できる」というユーザーの利便性が優先されるべきです。それらデータは個人情報にあたるため、扱いには万全のセキュリティーが求められます。さらに、他人の目にさらされてはいけないという意味で、プライバシー(個人の尊厳)が絶対的に守られなければなりません。良い例に韓国のマイマンバー制度があります。個人情報へのアクセスは、政府機関からのアクセスであってもすべてアクセスログがとられ、アクセス違反があれば違反度合いに応じて厳しく処罰されます。 また個人情報へのアクセスは個人のポータルサイトから確認でき、住民票が発行されるとプッシュ通知が来る仕組みに。こうしてシステム(利便性)×プライバシー(個人の尊厳)×セキュリティー(安全性)の三位一体を構築してこそ、利便性の追求も加速できるのです。大切なのは部分最適ではなく、三位一体の全体最適だと言えます』、「便利さ、使いやすさを何よりも意識する」といっても、「セキュリティー」や「プライバシー」の確保と相反することもある筈だ。
・『医療機関のマインドセットを刷新する  最後に、DXに直面するヘルスケアの現場には「マインドセット」の刷新を求めたいと思います。大きな示唆を与えてくれる本を紹介します。『心をつなぐ医療機関UCLAヘルスケアシステム患者満足度95%へと導いた最強のリーダーシップ』(ジョゼフ・ミケーリ著、月沢李歌子訳、日本経済新聞出版)です。アメリカの医療機関UCLAヘルスシステムは、独自の行動原則やマネジメントにより極めて高い患者満足度を実現したことで知られています。なかでも有名なのは「CICARE」と呼ばれるバリュー(価値観)です。CICAREとは、各バリューの頭文字をとったものです。 ここから読み取れるのは、テクノロジー企業と同様の、徹底的な顧客(=患者)至上主義です。私は、それこそ日本のヘルスケア、特に医療の現場に欠けているものだと痛感した経験があります。アメリカに留学したときのことです。ある日病院を訪れた私は、診察室で「きょうはドクターの〇〇、看護師の〇〇、〇〇のチームで医療サービスを提供します」といった自己紹介を受けました。その挨拶1つで、どれだけの信頼感、安心感が生まれたかわかりません。 いわば、アメリカの医療機関は「サービス従事者」としての意識が高い。もちろん高い専門性を持ったプロフェッショナルとして非常にリスペクトされているのですが、同時に医療をサービス業と考え、患者を第一に考える価値観がありました。残念ながら、こうしたサービス従事者としての意識が、日本の医療現場には希薄です。 医療はサービス業である。DXが進み、異業種からの参入組も増えてくると、そのことに日本の医療機関も直面せざるをえなくなるでしょう。これからコンペティターとなるのは、医療機関ではなく、アップルを始めとするテクノロジー企業であり、彼らほど顧客第一主義を追求しているプレーヤーはいないからです。前回も触れたように、DXの本質は「企業DNAをスタートアップ企業のようなDNAに刷新すること」にあります。テクノロジー企業の侵攻に対抗するためにも、まずはマインドセットを刷新し、「医療もまた顧客を第一に考えるサービス産業である」という原点に立ち返るのが望ましいのです』、総論的には同意するが、一部の医療機関が顧客サービス向上のコンサルティングを受けて、職員が患者をXX様といったように馬鹿丁寧に接しているのには驚かされた。サービスの本質とは関係ない行き過ぎは、微笑ましいが、無駄の骨頂である。はき違えずに本質的改善を期待したい。
タグ:東洋経済オンライン 野口 悠紀雄 ダイヤモンド・オンライン 現代ビジネス 山崎 元 民間デジタル化促進策 (その1)(日本のITが時代遅れになる根本原因はSIベンダーの言いなり体制 メインフレーム時代以来の強固な縦割り、印鑑さよならで思い出す金融業界の逸話 「押す角度・直径」に文化あり、日本の医療をGAFAに牛耳られない為に必要な策 個別商品・サービスでなくエコシステムがカギ) 「日本のITが時代遅れになる根本原因はSIベンダーの言いなり体制 メインフレーム時代以来の強固な縦割り」 日本ではSIerの役割が重要 日本企業や官庁はSIerに丸投げ 発注側で評価する能力がないから、古いシステム が温存され、コストが嵩み、効率が下がる。そして、SIer は、独自システムの維持に執着するのだ 縦割り社会の弊害が現れている 省庁や自治体がバラバラに情報システムを構築する 組織のトップが方向づけの能力を持たない 日本の組織のトップは、有名なベンダー企業に頼んだから大丈夫という考えに陥りがちだ 「組織のトップはITの細かいことなど知らなくてよい」と、多くの人が考えている」、こうしたトップのIT軽視が、部下たちにも伝わる筈だ 台湾は日本の遥か先を行く 「オードリー・タン」氏を「登用し、思うままの活動をさせる蔡英文総統の洞察力と指導力にも敬服せざるを得ない」 「印鑑さよならで思い出す金融業界の逸話、「押す角度・直径」に文化あり」 印鑑と共にあったサラリーマン生活前半 金融業界ならではの思い出は数多い ハンコには、あたかも自分の分身であるかのような、何らかの「思い」が込められるケースがある ハンコで「助かった」ある女性の話 ハンコをなくしただけでは不十分 紙のやりとりを減らせるか 田中 道昭 「日本の医療をGAFAに牛耳られない為に必要な策 個別商品・サービスでなくエコシステムがカギ」 テクノロジーの活用で日本を「健康先進国」へ 医療費削減をはじめとする「下りのエスカレーター」に乗るかのような医療政策に焦点が置かれました。それをテクノロジーによって「上りのエスカレーター」に乗り換えようとしている 「医療単独で見るなら「下りのエスカレーター」にある産業かもしれませんが、美容産業や健康産業までを含んだ広義のヘルスケア産業として見るならまだまだ成長トレンドにある。そう期待する異業種のプレーヤーが増えているのです」 デジタルでのエコシステムの構築が戦いの主戦場 日本の電機メーカーものちにスマホを発売しましたが、そのときすでにアップルやグーグルはスマホのエコシステム全体を握っていました。つまり、スマホのハードのみならず、スマホのOS、アプリ、サービス等を含めたエコシステム全体を支配していたのです。単なるデバイスメーカーでは、勝ち目はありません アップルがヘルスケア産業を破壊する アップルのヘルスケア戦略 アップルウォッチなどがヘルスキットに? ヘルスケア産業を成長産業に転換するためにも、テクノロジー企業にエコシステムの構築を主導されるわけにはいきません。世界をリードするヘルスケアエコシステムを、日本が自前で構築する必要があります 個人のIDが肝になる エコシステムの構築にあたって、最も重要であり、しかし見落とされがちなのは「ユーザー起点」であること 利さ、使いやすさを何よりも意識する 医療機関のマインドセットを刷新する
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電子政府(その2)(政府CIO補佐官に聞く 行政のデジタル化が進まない理由と脱却のシナリオ、:菅政権新設の「デジタル庁」は20年来の公約違反を解消せよ…! 全行政手続きオンライン化はどうなった) [経済政策]

電子政府については、7月4日に取上げた。今日は、(その2)(政府CIO補佐官に聞く 行政のデジタル化が進まない理由と脱却のシナリオ、:菅政権新設の「デジタル庁」は20年来の公約違反を解消せよ…! 全行政手続きオンライン化はどうなった)を紹介しよう。

先ずは、8月6日付けITmediaビジネスオンライン「政府CIO補佐官に聞く、行政のデジタル化が進まない理由と脱却のシナリオ 」を紹介しよう。
https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2008/06/news041.html
・『全国民に一律10万円を給付する特別定額給付金を巡り、いくつかの自治体でトラブルが報告されている。給付に時間がかかるといったものから、二重払いするミスまで、人海戦術で解決しようという動きを垣間見るに、現場の疲弊ぶりは相当なものと推測される。 いち国民としては、「戸籍もあるし、銀行口座引き落としで納税もしている。国や自治体は当然そういったデータを使って、スムーズに給付できるはずだ」と思ってしまうが、実はここに落とし穴がある。 例えば、行政機関が保有する住民の氏名データは、制度上、漢字のみでフリガナは便宜上登録されているにすぎない。一方、全銀ファイルの氏名はカナしか存在しない。そのため、突合でエラーになることがある。制度がもはや社会の実態に即していないのだ。何らかのユニークキーによってデータが一元的に整理されていれば、ここまでの混乱はなかったかもしれない』、「行政機関が保有する住民の氏名データは、制度上、漢字のみでフリガナは便宜上登録されているにすぎない」、初めて知った。「全銀ファイルの氏名はカナしか存在しない」、各銀行プロパーのシステムで漢字も入っているが、共通の「全銀ファイル」では「氏名はカナしか存在しない」ということのようだ。
・『この国の制度は、100年前からほとんど変わっていない  コロナ禍で、広く国民が実感することとなったデジタル化の遅れ。それもそのはず、今の行政の基礎が出来上がったのは100年前の明治時代。私たちは100年前からずっと、窓口へ行き、手書きで書類を埋め、ハンコを押してきた。もちろん、自動処理などは想定されていない。 デジタル化が進まないのは、日本の閣僚にオードリー・タン氏のような天才エンジニアがいないからではない。最も足かせとなっているのは、100年にわたって蓄積されてきた戸籍、商業登記といった紙の処理を前提とした業務と膨大なデータ。それを社会の変化に応じて改善してこなかった歴史だ。 このことは、グローバル社会における日本の競争力にも暗い影を落としている。例えば、海外の投資家が日本企業に投資しようとする場合、資本金や業績、社長、株主といったデータをもとに投資先を選定する。それらが整理されていなければ、有望な投資先は世界中にあるのだから、日本企業には投資しない。逆に日本から海外に投資する場合も、米国企業に投資すべきか、アフリカ企業に投資すべきか判断しやすくしたい。日本が競争力を取り戻すためには、国際社会の要請に応え、流通するデータを整備することが不可欠なのだ』、「最も足かせとなっているのは、100年にわたって蓄積されてきた戸籍、商業登記といった紙の処理を前提とした業務と膨大なデータ。それを社会の変化に応じて改善してこなかった歴史だ」、その通りなのだろう。
・『日本はまだ、デジタル社会の基盤ができていない  「行政がデータの整備を先延ばしにしてきたことが、民間のデータ活用にも影響を及ぼしている」と語るのは、データマネジメントの専門家で、政府CIO補佐官を務める下山紗代子氏だ。 「企業が、行政のデータソースを組み合わせて1つのデータにするとき、統一のコードが入っていないので、どれとどれが同一の情報なのかすぐに判断できません。そのため、多くの企業が多大なコストをかけてデータを整備するところから始めます。それが終わってようやくデータ活用のスタートラインに立てる。それが実情なのです」(下山氏) 行政はこれまで、「データを活用する」という発想が希薄だった。そのため、サービスを立ち上げるごとにデータを整備し、終了とともにデータを消去したり、再利用不可能な状態で保管するといった非効率的な運用をしてきたという。行政が一元管理するデータソースや標準化されたデータを提供できれば、企業のデータ活用のハードルは格段に下がるはずだ。 下山氏は、政府CIO補佐官の活動以外に、シビックテック「Code for Japan」(オープンデータやオープンソースを活用して東京都の「新型コロナ感染症対策サイト」を開発し、話題となった)にもコミットし、東京都以外の自治体も同様のサイトが運用できるよう、総務省や内閣官房などと連携し、自治体とシビックテックをつなぐ標準のデータテンプレートを整備した。下山氏は、このようなデータを巡る地道な活動が、デジタル社会の礎になると考えている。 2020年3月に発表された「デジタル・ガバメント実現のためのグランドデザイン」では、行政のデジタル化を実現するための方向性が示されている。52ページにわたるその文書では、「データファースト」をはじめ、「ユーザー体験の向上」「政府情報システムのクラウド化・共通部品化」といった、これまでのお役所らしからぬフレーズが並ぶ。 歴史をひもとくと、日本の高度経済成長の裏には、国土交通省の「全国総合開発計画」があった。工業団地や住宅地といった社会基盤を整備することで、人が集まり、ビジネスが生まれ、日本の競争力は高まっていった。今の日本は、デジタル社会の競争力獲得に向けた基盤づくりに、ようやく本腰を入れた段階だと言えよう』、「行政はこれまで、「データを活用する」という発想が希薄だった。そのため、サービスを立ち上げるごとにデータを整備し、終了とともにデータを消去したり、再利用不可能な状態で保管するといった非効率的な運用をしてきた」、驚くべき非効率だ。「デジタル・ガバメント実現のためのグランドデザイン」で少しでも前進することを期待したい。
・『デジタル技術を使いこなせないと揶揄(やゆ)される日本の現在地  「政府のIT予算は、年間5000億円にも上りますが、デジタルによる本格的な業務改革に政府CIO補佐官がかかわるようになったのは、ごく最近のことです」――そう明かすのは、内閣官房 政府CIO上席補佐官の平本健二氏だ。 政府CIO補佐官とは、各省庁のIT部門と連携して行政サービスの開発などに当たる民間出身のIT専門家だ。以前は、大規模システムのプロジェクトマネジメントを経験した年齢の高い人が中心で、仕様書のレビューや相談役のような役割を担っていた。しかし、クラウド、AI、IoTといった新たな技術の実用化が進むと、個々の技術への深い造詣が求められるようになっていった。ある種の権威や経験がほとんど意味を成さなくなってからは、平均年齢も若くなり、現在の最年少政府CIO補佐官は20代後半だ。 前述の、「デジタル・ガバメント実現のためのグランドデザイン」(以下、「グランドデザイン」)は、初めて政府CIO補佐官が中心となって策定された。 「戦略はホチキス」といわれる。いろいろな人が文書を持ち寄ってホチキスで留めれば戦略になるという皮肉だが、行政職員が持ち寄る戦略は実現可能性を重視するため、どうしても現在のケーパビリティから思考してしまい、予測不能なデジタル社会の未来を描くには適さない。その点、今回の「グランドデザイン」は、IT専門家が考える「日本のあるべき未来」とその「道筋」が具体的に示されており、100年続いてきた制度の壁を超える意欲が込められている。ここからは、政府CIO補佐官たちと「グランドデザイン」を読み解いていく』、「現在の最年少政府CIO補佐官は20代後半だ」、こんなに若いのであれば、現場の言いなりになってしまうのではなかろうか。
・『サービスデザイン思考で、使いにくい行政サービスを変える  行政のデジタルサービスを、「使いにくい」と感じる人は少なくないだろう。現にある自治体では、オンラインでの特別定額給付金申請において約6割に不備があり、郵送での申請に一本化する事態となった。 LINE AIカンパニーCEOで、サービスデザインの専門家として政府CIO補佐官に加わった砂金信一郎氏は、行政のデジタルサービスが使いにくい理由をこう指摘する。 「ネット企業が提供するオンライン申請フォームは、ランディングページから何人が遷移し、どの項目で何回エラーが発生し、最終的にどれくらいが申し込み完了に至ったかというデータを計測しながら、UI/UX(注)の改善を図っています。一方、行政のオンライン申請フォームは、使いにくさを定量的に測る習慣がありませんでした」(砂金氏) 行政のデジタルサービスは、平均的なユーザーを想定し、単一的なUIを提供してきた。UXという考え方は、そもそも存在すらしていなかっただろう。行政側は、「使いにくくても使わせる」ではなく、「誰もが簡単に使えるサービスの提供」へと早急に発想を転換する必要がある』、(注)UI/UX:ユーザーインターフェイス(UI)とユーザーエクスペリエンス(UX)。後者は経験や体験とされるが、確定した定義はない(Wikipedia)。
・『行政のサービスも「出して終わり」ではない  使いにくい行政サービスと、洗練された民間サービスの違いは、運用開始後の対応にも現れる。行政サービスも「出して終わり」ではなく、プライバシーへの配慮を大前提としつつ、ユーザーの使い勝手を把握し、継続的に改善していく必要がある。 砂金氏は現在、経済産業省が運営するオンライン補助金申請サービス「jGrants」のUI/UX改善に取り組んでいる。目的は、補助金を必要とする事業者がつまずくことなくスムーズに申請できるようにすることだ。調達仕様書では、「申請完了率の向上」と「申請完了までの時間短縮」を成功指標として掲げている。これは、行政職員が「使いやすくなった」と感じれば良しとされてきたこれまでのサービス開発に、NOを突きつけるものだ。 「こういった取り組みはまだ始まったばかりですが、うまくいけば、他の省庁や自治体のオンライン申請フォームにも横展開していきたい」(砂金氏)』、「ユーザーの使い勝手を把握し、継続的に改善していく」、結構なことだ。
・『外部委託先への丸投げを是正する  さらに砂金氏は、「行政のサービス開発をベンダーや外部委託先に丸投げしている現状も問題だ」と指摘する。 「他国を見ていると、自分たちのシステムは自分たちで作るというのが基本姿勢です。ところが日本の場合、行政機関側にエンジニアが一人もいないというプロジェクトも少なくありません。仕様書通りに納品されたらお金を払って終わり――まずはその状態を是正しないと、良いサービスは作れません」(砂金氏) 新たな問題は、ベンダーや外部委託先との既存の契約が、アジャイル開発に適したものになっていないということだ。 アジャイル開発とは、多くの先進企業が採用するソフトウェア開発手法の1つで、ニーズの変化に柔軟に対応できることが特徴だ。計画段階では厳密な仕様を決めず、だいたいの仕様と要求だけを決めておく。その上で、動作するソフトウェアを短期間で作り上げ、検証し、改善するといったサイクルを繰り返していく。「グランドデザイン」でも、アジャイル開発の推進が掲げられている。 しかし、「仕様書通りに納品されたらお金が支払われる――という既存の契約条件では、アジャイル開発の推進は難しいのです。なぜなら、アジャイル開発の特性として、最初に作ろうとしていたものと、最後に出来上がったものが違う可能性があるからです」(砂金氏) 違う=より良いサービスになったからいいじゃないか、では通らない。行政の財務会計担当者からは、「違うものが納品されたのに、なぜお金を払わなきゃいけないんだ」といわれることがあるという。 「周囲の理解がないままテクノロジーの論理だけで進めても、誰もついてきてくれないという例ですね。現場の理解を得ながら、これからの時代に合った契約内容や調達仕様書を作っていくのも政府CIO補佐官の役割です」(砂金氏)』、「仕様書通りに納品されたらお金が支払われる――という既存の契約条件では、アジャイル開発の推進は難しいのです。なぜなら、アジャイル開発の特性として、最初に作ろうとしていたものと、最後に出来上がったものが違う可能性があるからです」、「アジャイル開発」の料金はどう決めるのだろう。
・『民間サービスとの融合で、さらに便利に  「グランドデザイン」では、今後、行政と民間のサービスを融合することで、使いやすいサービスを提供していくと示されている。ここで鍵となるのは、行政サービスのAPI(注)化と、そのAPIの質向上だ。 APIを活用すれば、これまでの行政の調達スタイルと違い、行政と民間はそれぞれ独自にサービス開発を進められる。必要に応じ、APIを介してそれらを連携すれば、さらに高度なサービスを生み出せる可能性がある。また、連携の自由度は、さまざまな企業の参入、競争にもつながる。これが結果として、ユーザーの利便性向上につながると期待されているのだ。 みずほフィナンシャルグループで金融APIを公開し、スタートアップや異業種との連携を進めている大久保光伸氏は、政府CIO補佐官としてもこの領域に力を入れている。 「政府にはAPIの簡単なガイドブックはあるのですが、標準化できるようなAPIの基準がないので、民間のAPI事例を政府側に反映することにしたのです」(大久保氏) 民間の第一線で起こるムーブメントや成功事例を積極的に取り入れるなど、デジタル社会に向けて、行政も大きく変わろうとしている』、(注)API:アプリケーションプログラミングインタフェース、広義ではソフトウェアコンポーネント同士が互いに情報をやりとりするのに使用するインタフェースの仕様(Wikipedia)。
・『政府CIO補佐官が、霞が関に染まらないために  組織が変わるとき、そこには大なり小なり痛みが伴う。ましてや、100年続いたやり方や価値観を大きく変えようとなれば、反発ややりづらさもあるだろう。そこで、民間からやってきた政府CIO補佐官が霞が関でも力を発揮できるよう、土壌づくりに奔走する人がいる。経済産業省 デジタル化推進マネジャーの酒井一樹氏は、政府CIO補佐官と行政職員との橋渡し役だ。 「政府CIO補佐官たちが魂を込めて仕様を策定したのに、サービスが出来上がるころには魂が抜けてしまう、といったことは往々にしてあります。現場にマインドまできちんと伝えていく必要があります」(酒井氏) 政府CIO補佐官は、行政にどっぷりつかりながらも、IT専門家としての視点や独立性を保つ必要がある。しかし、鳴り物入りで入った政府CIO補佐官の中にも、独特の雰囲気に飲まれ、霞が関に染まっていく者が出てくるという。 「『自分も霞が関曼荼羅(パワーポイント1枚に全て入っているようなビジーなポンチ絵)が描けるようになりたい』とか言うようになったらマズいです。そんなのは描けなくていいんだよと伝えます。過渡期だからこそ、ビジョンやミッションにもとづいたチームビルディングやコミュニティー作りが重要なのです」(酒井氏)』、「鳴り物入りで入った政府CIO補佐官の中にも、独特の雰囲気に飲まれ、霞が関に染まっていく者が出てくるという」、人間である以上、ある程度やむを得ないのかも知れない。
・『外から批判するだけじゃカッコ悪い  一連の試みに対し、訳知り顔で「エストニアのX-roadを買ってくればいいじゃないか」と言う人もいるという。しかし、電子国家エストニアも一朝一夕にできたわけではない。長い間、地道にデータを整備し、土台があるからこそ使いやすい行政サービスが構築できたのだ。 「いつの時代でも、ツールだけなら最先端のものを買ってこれます。しかし、燃料がないところにポルシェを買ってきても意味がないのと同じように、それを生かすためのデータがなければ意味がない。データの整備は10年かかる。欧米はこれから2年でツールの整備し、2030年をターゲットにデジタル国家を目指している。日本もこの2年が勝負です」(平本氏) データの整備は、地味で目立たず手間のかかる仕事だ。しかし、予算がない、面倒くさいと言い訳をしてまた先延ばしにするのなら、日本はこれからもIT後進国への道を歩み続けることになる。 「行政サービスを使いにくいと批判するだけなら誰にでもできます。でも、それだけじゃ何も変わらないし、エンジニアとしてカッコ悪いなと感じている方は、ぜひ政府CIO補佐官に名乗りを上げてほしいです」(砂金氏) デジタル社会は、行政がエンジニアを大量採用したり、外部委託先が考えを改めてくれたらすぐにやってくるものではない。日本のIT業界に横たわる「分厚い壁」を取り払うことが、デジタル社会の実現を推し進めることにつながる。 「日本のIT業界は、SIをはじめエンタープライズ系の方々と、アプリなどを提供するWebサービス系の方々との間に文化的な隔たりがあります。お互いがお互いを小馬鹿にする場面も見られ、非常に良くありません。エンタープライズ系の方には、こんなのお遊びだと思わずに、アプリの裏側でどれだけ高度な処理がなされているのか興味を持ってほしい。Webサービス系の方には、社会を支えるミッションクリティカルなシステムに関心を持って近寄ってみてほしい。デジタル社会の実現に向けて、日本のIT業界はどうしていくべきか、皆で考える時期に来ています」(砂金氏) 行政やエンタープライズがデータを整備し、Webサービス系やシビックテックがインタフェースを作る、そのうち人材も交わっていき……といったように、尊敬と信頼にもとづく協業関係をIT業界全体で醸成できるかどうかが試されている』、「欧米はこれから2年でツールの整備し、2030年をターゲットにデジタル国家を目指している。日本もこの2年が勝負です」、「欧米」も「2030年をターゲットにデジタル国家を目指している」、とは初めて知った。「日本のIT業界は、SIをはじめエンタープライズ系の方々と、アプリなどを提供するWebサービス系の方々との間に文化的な隔たりがあります。お互いがお互いを小馬鹿にする場面も見られ、非常に良くありません」、狭い世界で、お互いに足の引っ張り合いをするのは、止めにしたいものだ。

次に、9月27日付け現代ビジネスが掲載した大蔵省出身で早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問一橋大学名誉教授の野口 悠紀雄氏による「菅政権新設の「デジタル庁」は20年来の公約違反を解消せよ…! 全行政手続きオンライン化はどうなった」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/75891?imp=0
・『「行政手続きのすべてをオンライン化する」という2001年の公約が、いまだに実現されていない。デジタル庁の最初の仕事は、この公約違反状態を解消することだ。 その試金石は、外国では広く行われている運転免許証書き換えのオンライン化だ。それがすぐには難しいとしても、せめて自主返納 はオンライン化すべきだ。それさえできないのでは、事態は絶望的だ』、「「行政手続きのすべてをオンライン化する」という2001年の公約が、いまだに実現されていない」、初めて知った。
・『20年間放置されている公約  デジタル庁設置は、菅義偉内閣の目玉政策だ。 政府内部の仕事のオンライン化がもちろん必要だ。定額給付金でオンライン申請が混乱したこと、テレビ会議が満足にできなかったこと、そして感染者情報把握にいまだにファクスを使っていることなどが問題視された。そうした状況を改善することは、1日も早く必要なことだ。 国民の側からいえば、行政手続きのオンライン化を是非進めて欲しい。 「2003年までに、国が提供する実質的にすべての行政手続きをインターネット経由で可能とする」。これは、政府の「eJapan 戦略」が2001年に決めたことだ。そのための法律まで作った。 では、この公約はどの程度実現できたか? 現在、政府手続きでオンライン化されているのは、わずか5%だ。ほぼ20年間の公約違反状態! かくも長きにわたって、オンライン化は絵に描いた餅にすぎなかったのだ。行政手続きには、いまだに紙の書類とハンコが要求される。このため、在宅勤務が完結しない。 スイスのビジネススクールIMDが今年の6月に発表した「IMD世界競争力ランキング2020」で、日本は34位だった。これは、過去最低だ。日本は、1992年までは首位にいた。 デジタル技術では、日本は62位だった。対象は63の国・地域だから、最後から2番目ということになる。 デジタル庁 の最初の仕事は、上記の公約違反を早急に解消することだ。そのためにまず必要なのは反省だ。2001年 eJapan戦略の公約がなぜ実現できなかったのか? どこが問題だったのか? 政府は、この検証報告を2ヶ月以内にまとめるべきだ。反省なくして失敗を克服することはできない』、全く同感である。
・『運転免許証書き換えのオンライン化を  行政手続きのオンライン化ができるかどうかの試金石は、運転免許証更新のオンライン化 だ。これができなければ、他のすべてをオンライン化できても、デジタル化は失敗といわざるをえない。 もともと、日本の運転免許証は、欧米に比べて厳格過ぎる。国によって交通事情は異なるから単純な比較はできないが、アメリカのカリフォルニア州では極めて簡単だ。私は、自分の車を試験場まで自分で運転して行って試験を受けた。 最初に免許を取得する場合はやむを得ないとしても、更新の手続きは、簡略化し、オンライン化すべきだ。視力検査は眼科医でできる。高齢者の認知テストもオンラインでできるはずだ。 私は、20年ほど前に、カリフォルニアの免許証を日本から更新したことがある。2013年1月にEU基準での改正となるまでは、ドイツやフランスの免許証は更新なしで、無期限に使えるものだった。改正後も、15年の期限だ。そして、更新もオンラインでできる国が多い。 世界的標準である更新のオンライン化が日本では簡単にはできないというのなら、せめて、運転免許証の自主返納 はオンライン でできるようにしてほしい。なぜ試験所や警察に出頭する必要があるのか、まったく理解できない。 運転免許証の自主返納 では、何の試験も必要ない。本人確認と免許証の真正性が確保できればよい。これができなければ、他の手続きの オンライン化 ができるはずはない。 テストケースとして、まずこれをやってはどうか? これができれば、多くの人が歓迎するだろう。これさえできないというのであれば、事態は絶望的だ。デジタル庁など作っても、予算の無駄使いでしかない』、「運転免許証の自主返納 では・・・本人確認と免許証の真正性が確保できればよい。これができなければ、他の手続きの オンライン化 ができるはずはない」、その通りだ。
・『スマートフォンアプリ化では情報漏出の危険  運転免許証について、デジタル化との関連で政府は何をしようとしているか? 報道によると、運転免許証とマイナンバーの紐付けを行うことを検討しているそうだ。スマートフォンのアプリに保存することで、偽造防止や利用者の利便性向上につなげるのだという。 しかし、スマートフォンのアプリに保存することで利便性が向上するだろうか? その逆に、リスクが高まるのではないだろうか? 万一、スマートフォンを紛失した場合に、情報が漏出する危険がある。また、最近起こっているデジタル決済での預金不正引出し事件を考えると、スマートフォンを紛失しなくとも情報が漏出する危険がある  雇用調整助成金の申請システムなど、政府が作ったオンラインシステムには、情報漏洩事故を起こしたものがある。これを考えても、あまり信頼できない。私なら、こうした問題の深刻さを考えて、とてもこのアプリはダウンロードできない。 国民が望んでいるのは、こうしたことではなく、デジタル化による手続きの簡略化なのだ』、その通りだ。
・『デジタル化とは既得権の切崩し  運転免許証のデジタル化が難しいのは、日本では免許証交付と更新が産業化してしまっているからだ。教習所を含めて、巨額の収入をあげ、膨大な職員を養っている。 高齢者の更新の場合には、安全確保の名目の下に、必要性の極めて疑わしい研修が義務付けられている。多くの人は、金を払ってもよいから教習所まで出向く時間はなしにしてほしいと思っているだろう。そして、コロナ下では、3密を回避したいと、切に願っているだろう。 しかし、これらをデジタル化すれば、現在の利権の多くは失われてしまう。だから決して簡単なことではないのだ。 この問題に限らず、日本におけるデジタル化とは、技術の問題というよりは、利権と既得権を切崩せるかという問題なのだ。これは、決して容易でない。一朝一夕に実現することではない』、「日本におけるデジタル化とは、技術の問題というよりは、利権と既得権を切崩せるかという問題なのだ。これは、決して容易でない。一朝一夕に実現することではない」、本質をズバリと突いた的確な指摘だ。私も「高齢者」「講習」を受けさせられたが、単なる「教習所」救済策との印象を強く抱いた。
・『まだファクスを使っている!  もう1つの問題は、仮にデジタル化しても、述べた適切なシステム作れるかどうかだ。これについて以下に述べよう。 9月6日公開の「厚生労働省のITシステムは、なぜこうも不具合が多いのか?」で述べたように、コロナ感染の状況を調査するためのシステムは、混迷を極めている。 最初は、NESIDという仕組みで情報を収集していた。これは、医療機関から保健所にファクスで感染届けを送り、それを保健所が集計して都道府県などに送るというシステムだった。ところが、感染が拡大してくると、ファクスではとても処理できなくなる。 そこで、HER-SYSというオンラインシステムが導入された。これは、発生、感染者の経過、濃厚接触者など、必要なデータをすべて処理するものだ。これによって、保健所の負担軽減を目指した。また、国や都道府県、保健所が情報を共有し、対策に生かすことが期待された。5月下旬から導入が始まり、保健所を設置する全国155自治体すべてに入力・閲覧権限が与えられた。 ところが、感染者が多い都市部で、この利用が広がっていないというのだ。9月21日の朝日新聞の記事「HER-SYS 道半ば」が伝えるところによると、東京都では、依然、保健所が医療機関から発生届をファクスで受け取り、HER-SYSに入力している。 横浜市も医療機関による入力は2割に満たず、残りは保健所の職員が打ち込む。大阪府でも保健所が発生届を入力している。保健所の業務量は、増えるだけだという』、「横浜市も医療機関による入力は2割に満たず、残りは保健所の職員が打ち込む」、「医療機関」の多くは既に独自のシステムをもっており、「HER-SYS」へ入力すると二度手間になるからだろう。
・『デジタル化すればよいわけではない  なぜこんなことになってしまうのだろう? 細かい理由はいろいろあるが、要するに、「HER-SYS使いにくいから、保健所や公共団体にそっぽを向かれている」という単純なことのようだ。「HER-SYSは予算の無駄使い」と言わざるをえない。 いまもっとも緊急に必要な情報がこの有様だ。 「データに基づく判断が重要だ」とはしばしば言われる。まったくそのとおりだ。しかし、現在の日本では、データが迅速に得られず、信頼もできない、という状態なのだ。 接触感染アプリは、HER-SYSの情報をもとにして通知を行っている。HER-SYSが以上のような状況なので、接触感染アプリもほとんど役に立たないシステムになってしまっている。 これからも分かるように、「デジタル化すれば、それでよい」というものではない。使いやすく、効率的な仕組みでなければならない。 ついでに言えば、政府の統計サイトの使いにくさに、私は毎日のように悩まされている。利用者の観点など、まったく考慮されていない。使い方の説明をいくらよんでも分からない。 こうした状況を改善するには、9月13日公開の「日本のITが時代遅れになる根本原因はSIベンダーの言いなり体制」で指摘したように、ベンダーとの癒着を排し、丸投げを是正する必要があ(注:「る」が抜けている)。 しかし、そのためには、発注者が問題を理解する必要がある。これも容易なことではない。 デジタル庁の発足は「来年中」だという。コロナ関連の事案については、残念ながら、間に合わないだろう』、「ベンダーとの癒着を排し、丸投げを是正する」には「発注者が問題を理解する必要がある」のは確かだ。
タグ:電子政府 野口 悠紀雄 現代ビジネス (その2)(政府CIO補佐官に聞く 行政のデジタル化が進まない理由と脱却のシナリオ、:菅政権新設の「デジタル庁」は20年来の公約違反を解消せよ…! 全行政手続きオンライン化はどうなった) ITmediaビジネスオンライン 「政府CIO補佐官に聞く、行政のデジタル化が進まない理由と脱却のシナリオ 」 行政機関が保有する住民の氏名データは、制度上、漢字のみでフリガナは便宜上登録されているにすぎない 全銀ファイルの氏名はカナしか存在しない 最も足かせとなっているのは、100年にわたって蓄積されてきた戸籍、商業登記といった紙の処理を前提とした業務と膨大なデータ。それを社会の変化に応じて改善してこなかった歴史だ 日本はまだ、デジタル社会の基盤ができていない 行政はこれまで、「データを活用する」という発想が希薄だった。そのため、サービスを立ち上げるごとにデータを整備し、終了とともにデータを消去したり、再利用不可能な状態で保管するといった非効率的な運用をしてきた デジタル技術を使いこなせないと揶揄(やゆ)される日本の現在地 現在の最年少政府CIO補佐官は20代後半だ サービスデザイン思考で、使いにくい行政サービスを変える 行政のサービスも「出して終わり」ではない ユーザーの使い勝手を把握し、継続的に改善していく 外部委託先への丸投げを是正する 民間サービスとの融合で、さらに便利に API:アプリケーションプログラミングインタフェース 政府CIO補佐官が、霞が関に染まらないために 外から批判するだけじゃカッコ悪い 欧米」も「2030年をターゲットにデジタル国家を目指している 「菅政権新設の「デジタル庁」は20年来の公約違反を解消せよ…! 全行政手続きオンライン化はどうなった」 「行政手続きのすべてをオンライン化する」という2001年の公約が、いまだに実現されていない 20年間放置されている公約 2001年 eJapan戦略の公約がなぜ実現できなかったのか? どこが問題だったのか? 政府は、この検証報告を2ヶ月以内にまとめるべきだ 運転免許証書き換えのオンライン化を 運転免許証の自主返納 では 本人確認と免許証の真正性が確保できればよい。これができなければ、他の手続きの オンライン化 ができるはずはない スマートフォンアプリ化では情報漏出の危険 デジタル化とは既得権の切崩し 日本におけるデジタル化とは、技術の問題というよりは、利権と既得権を切崩せるかという問題なのだ。これは、決して容易でない。一朝一夕に実現することではない まだファクスを使っている! HER-SYS デジタル化すればよいわけではない ベンダーとの癒着を排し、丸投げを是正する 発注者が問題を理解する必要がある
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電子契約・電子署名(その1)(在宅勤務を阻む「ハンコ問題」、激論の舞台裏 デジタル化を突き付けられた日本の課題、「脱ハンコ」は「脱中央集権」で国民の信頼を得なければ成功しない いまだに響く住基ネットの失敗、「ハンコ警察」の大誤解、ムダな印鑑を一掃しても社会の効率は良くならない) [経済政策]

今日は、菅内閣発足以来、注目されている電子契約・電子署名(その1)(在宅勤務を阻む「ハンコ問題」、激論の舞台裏 デジタル化を突き付けられた日本の課題、「脱ハンコ」は「脱中央集権」で国民の信頼を得なければ成功しない いまだに響く住基ネットの失敗、「ハンコ警察」の大誤解、ムダな印鑑を一掃しても社会の効率は良くならない)を取上げよう。

先ずは、4月25日付け東洋経済オンライン「在宅勤務を阻む「ハンコ問題」、激論の舞台裏 デジタル化を突き付けられた日本の課題」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/346741
・『緊急事態宣言が出ている中で、捺印のために社員に長時間の通勤を求めるのはいかがなものか――。 フリマアプリを手がけるメルカリは4月8日、取引先との契約締結時に必要な捺印や署名の手続きを電子契約サービスに切り替える方針を発表した。同社の櫻井由章・執行役員CLO(最高法務責任者)はその背景について、冒頭のように話す。 メルカリは新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2月中旬から全社員が在宅勤務に移行している。現状は特定の社員が週に1回、捺印のために出社している。メルカリ社内で行われる契約書の捺印は1カ月に約400件に上る。このうち約9割で物理的な捺印が必要な状況だったという』、「メルカリ」では「現状は特定の社員が週に1回、捺印のために出社」、「契約書の捺印は1カ月に約400件」、やはり負担になるようだ。
・『大臣発言の2日後に印鑑廃止を決断  契約先はフリマアプリ事業の取引先のほか、スマホ決済サービス「メルペイ」で取引のある銀行や加盟店などさまざまだ。出社時には1日で100件近い捺印をこなすことになる。「ハンコを個人の自宅に持ち帰るのは現実的ではない。契約書をその人の自宅に郵送するとなると紛失したり、同居する家族が見てしまったりするリスクがある」(櫻井氏)。 メルカリ社内の一部の部署ではすでに電子契約を導入していたが、今回の在宅勤務移行を受け、全社への導入を急いでいる。ただ、電子契約は契約の相手先の了承を得られなければ実現しない。「取引先によっては契約書の原本への捺印を義務づける規則がある」(同)。そのため、同社では社印の捺印ではなく、権限者の署名や電子署名へ変更すべく取引先の理解を求めている。 電子契約の導入を進めるのはメルカリだけではない。IT大手やベンチャー企業を中心に、導入の動きが急速に広がっている。4月17日にはGMOインターネットが、レンタルサーバーなど自社サービスの顧客の手続きで印鑑を完全に廃止し、取引先との契約も電子契約のみにすると発表した。 政府の竹本直一IT担当大臣が4月14日の記者会見で、在宅勤務の中での押印問題について問われ、対応策としては「民間で話し合ってもらうしかない」と発言。これを受けた形でGMOの熊谷正寿社長が翌日、「決めました。GMOは印鑑を廃止します」と自身のツイッターに投稿。その2日後に正式発表に至った。 そもそも電子契約とは何なのか。ハンコを用いた契約では、締結する当事者同士が契約書に捺印していた。一方で電子契約は、改ざん不可能な「電子署名」と、誰がいつ契約に同意して署名したかを電子的に刻印する「タイムスタンプ」の2つからなる。それぞれに専門業者がおり、電子契約サービス各社はこうした業者からシステムを仕入れ、使いやすくなるよう設計・開発している。 国内で電子契約を導入しているのはまだ8万社程度にすぎない。このうち約8割となる6万5000社に導入し、シェアトップを走るのが、弁護士ドットコムの電子契約サービス「クラウドサイン」だ。コロナの影響で在宅勤務に移行する企業が増えた3月は、前年同月比で導入社数が1.7倍以上、契約送信件数は2倍以上に増えたという。先述のメルカリが全社導入を進めているのもクラウドサインだ』、「電子契約は契約の相手先の了承を得られなければ実現しない」、「電子契約は、改ざん不可能な「電子署名」と、誰がいつ契約に同意して署名したかを電子的に刻印する「タイムスタンプ」の2つからなる。それぞれに専門業者がおり、電子契約サービス各社はこうした業者からシステムを仕入れ、使いやすくなるよう設計・開発している」、「シェアトップを走るのが、弁護士ドットコムの電子契約サービス「クラウドサイン」、なるほど。
・『野村HDやサントリーが相次いで導入  クラウドサインはその名の通り、クラウド型のサービスで、契約書をクラウドサイン上にアップロードすると、契約相手にメールが届く。相手方が承認すれば契約完了だ。他社サービスも同様だが、契約書を送信する側がサービスを利用していれば、受信する側が導入する必要はない。クラウドサインの場合、月額の固定料金と契約の送信1件当たりの従量課金がかかる。 弁護士ドットコムの橘大地・取締役クラウドサイン事業部長は、「以前は業務効率化やコスト削減のために導入したいという声が最も多かったが、足元は急な在宅勤務への移行で、明日から導入したいという問い合わせが急増している」と話す。また、導入企業の大半を占めるのは中小企業だったが、「最近は大企業での全社導入がトレンドだ」(橘氏)という。具体的には、野村ホールディングスやサントリーホールディングス、KDDIなどが名を連ねる。 電子契約を取り巻く法制度は、ハンコでの契約と異なる。契約当事者同士が裁判になった際の証拠の有効性を規定する電子署名法や、税務上必要な書類の電子管理を定めた電子帳簿保存法などがある。前者ではきちんと電子署名が記録されているか、後者では国内で認定されたタイムスタンプが正確に記録されているかが求められている。 「安心安全な電子署名を普及させたい」と話すのは、2019年末に電子契約サービス「Great Sign(グレート・サイン)」を開始したベンチャー企業「TREASURY(トレジャリー)」の山下誠路社長だ。グレート・サインでは、何らかの障害で電子署名がきちんと記録されなかった場合にアラートを出すなど、正確性にこだわる。 「他社のサービスでは電子署名がついていないのに課金されたり、その契約書が何カ月も放置されていたりする。タイムスタンプがつくまでに時間がかかる業者もある。署名の見方を知らない人も多い。いざ裁判になって電子署名の証明書が無効だったときのリスクは大きい」(山下氏)。 民間企業の動きを受け、政府与党も動き出した。自民党の行政改革推進本部規制改革チームは4月6日、新型コロナウイルスに対応するデジタル規制改革についての緊急提言を安倍首相に申し入れた。この中に「押印原則の徹底的見直し」も盛り込まれた。 規制改革チームの座長を務める同党の小林史明衆院議員は、「今回の改革には、押印が必要な手続きがあったとして、そもそもそれは必要なものなのか、本当に印鑑が必要なのか、印鑑証明のある実印を必要としない手続きにおける認証の有効性はどうなのか、という3つの観点がある。政治・行政が規制を見直すのと同時に、民間に対してもメッセージを出すことで、商慣習を変えるきっかけにしたい」と話す』、「押印原則の徹底的見直し」は是非とも実現すべきだろう。
・『電子契約とハンコは共存できるか  2019年末に施行したデジタル手続法を受け、国は行政手続きのオンライン化を進めている。小林議員によると、2019年来精査してきた2万近い手続きのうち、印鑑証明のある実印が必要な手続きはわずか200弱。残りは一般的な印鑑や署名、本人確認書類を求めるものだったという。 小林議員は「3月末に行う手続きを今デジタル化しても恩恵を受けるのは来年だ。4~6月に迫っている手続きの見直しを優先的にやっている。民間企業からも聞き取りを行い、ニーズの高いところの優先順位を上げていく」と語る。 では、こうした動きをハンコ業界はどう受け止めているのか。「今の流れは必然的なことだとは思うが、ハンコだけを悪としてとらえないでほしい。非常時だからこそ民間同士で信頼関係があれば、今回はハンコではなく、メールで同意したことにすることもできるはず」。そう話すのは、ハンコの製造業者などで構成する業界団体・全日本印章業協会の徳井孝生会長だ。 自身もハンコの製造・販売業を札幌市内で営む徳井氏は、「職人が手で仕上げたものほど偽造しづらく、法人の実印には強くおすすめしている。(電子契約はパソコンやスマートフォンなど)機器を使いこなせない人、経済的に購入できない人を置き去りにしてしまう。ハンコを希望する人が1人でもいるのであれば(電子とハンコは)共存していくべき」と訴える。 コロナをきっかけに、あらゆる手続きや業務のデジタル化が注目されることになった。日本特有の商慣習で、伝統のあるハンコが悪者になった感があるが、コロナを起点に、日々の業務の効率化を考えさせられたことは間違いない』、「(電子とハンコは)共存していくべき」、立場上やむを得ないのかも知れないが、どう考えても無理がありそうだ。

次に、10月18日付け現代ビジネスが掲載した大蔵省出身で早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問一橋大学名誉教授の野口 悠紀雄氏による「「脱ハンコ」は「脱中央集権」で国民の信頼を得なければ成功しない いまだに響く住基ネットの失敗」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/76445?imp=0
・『「脱ハンコ」の手段はマイナンバーカードだが  菅義偉政権は、脱ハンコを進める方針だ。「脱ハンコフィーバーはいいことだ」と私は思う。 しかし、脱ハンコのためには、文書が正しいことを、別の手段で証明する必要がある。「ハンコは無駄だからやめにしよう」というだけでは、不十分なのだ。  住基ネットの概要 総務省HPより(リンク先参照) 脱ハンコは、「電子署名」によってなされる。これについて、日本はすでに住基ネットで失敗している。その後継者がマイナンバーカードだ。 したがって、「脱ハンコ」を進めるというのは、「マイナンバーカードの活用をはかる。その利用範囲を広げる」ということだ。これを進めるには、なぜ住基ネットが失敗したかの反省から始める必要がある』、日本の行政機構は無謬性の建前に縛られて、過去の政策を殆ど反省しないのは大いに問題だ。
・『住基ネットは無残な失敗に終わった  住民基本台帳ネットワーク(「住基ネット」)は、2002年8月5日に 第1次稼動し、2003年8月25日から本格稼働が始まった。これは、日本における初めての総背番号制だ。 住民基本台帳の情報をデータベース化し、各市町村のデータをネットワークでつないだ。住民基本台帳は、氏名、生年月日、性別、住所などが記載された住民票を編成したもので、住民に関する事務処理の基礎となる。電子証明書が格納された「住基カード」が発行された。 住基ネットには、2002年から毎年130億円が使われ、13年間で2100億円。自治体の初期費用・維持費用も合わせると1兆円近い税金が使われた。 それにもかかわらず住基カードは普及せず、カードの交付枚数は710万枚(2015年3月)にとどまった。普及率は5.5%にすぎなかった。 そして、2015年末に更新手続きが終わった。つまり、住基ネットは、無残な失敗に終わったのだ』、「1兆円近い税金が使われた」にも拘らず、「無残な失敗に終わった」とはやれやれだ。
・『ほとんど使い途がなかったから使われなかった  国民の側からみて、住基カードで何が便利になったのだろうか? 総務省の説明を読むと、まず、「パスポート申請に住民票の写しの提出が不要となる」としてある。 しかし、それでは窓口にいかないで済むのかといえば、依然として「戸籍謄本・抄本」などの書類が必要とされた。つまり、市町村役場やパスポートセンターの窓口に足を運ぶ必要があったのだ。 あるいは、「従来は、住んでいる市町村でしか交付を受けられなかった住民票の写しを、住基カードの提示で、全国どこの市町村でも交付を受けることができるようになった」とされた。 また、「引っ越しの場合、従来は、それまで住んでいた市町村で転出届の手続をし、転出証明書の交付を受けた上で、引っ越し先の市町村で転入届を行う必要があった。それが、住基カードの交付を受けていると、郵送またはインターネットにより住んでいる市町村に提出すれば、転出証明書がなくても引っ越し先の市町村において転入届を行うことができるようになった」とされていた。 確かに、従来より手続きは少なくなるだろう。しかし、パスポート申請や住民票の写し取得は、頻繁に利用するサービスではない。引っ越しも、一生に数回というのが普通だ。 こうしたことのために住基カードを持つ必要があるのかどうか、疑問だ。少なくとも、生活に重大な支障が出るようなことはない。また、膨大なコストをかけてシステムを構築するメリットがあるかどうか、疑問だ。 「自宅でいつでもPCとインターネットを通じて申請や届出をすることが可能となった」との説明もあったのだが、こうした感激的な効果はなかったのだ』、確かに「住基カード」は存在意義が問われる存在だった。
・『国民は何を心配したか?  どんなメリットがあるのかが、はっきりしない。それなのに、なぜ政府は熱心に導入しようとするのか? この裏には何かあるのではないか? 多くの国民が、このように考えた。 とくに問題とされたのは、国民監視やプライバシー侵害、情報流出の危険性だ。そして、「監視・徴税強化社会はNO」とのスローガンの下で、各地で違憲訴訟などの住基ネット訴訟が相次いだ。 これに対しては、2008年に最高裁が住基ネット合憲の判決を下した。その理由の要旨は、住基ネットが扱う情報は「秘匿性の高い情報とはいえない」、住基ネットの仕組みは「外部からの不正アクセスで情報が容易に漏えいする具体的危険はない」とのことだ。 ところで、「メリットがはっきりしないのに導入に熱心」というのは、マイナンバーカードでも同じだ。これについては、10月11日の「『脱ハンコ』、面倒になっては本末転倒〜使えるサービスほとんどなし」述べた。 なぜ導入したいのか? 真の目的は何なのか? 課税強化か? 国民監視か? それほどでなくても、「ITベンダーと利権確保か? 天下り先確保が本当の目的か?」等々の疑念が出てくる。 政府は、これらの1つ1つに、誠実に答える必要がある。マイナンバーカードのような仕組みは、国民の国に対する信頼がなければ、成功しない。 住基ネットの場合、世論の反対が強く、政府が望んだ民間情報とのひも付けができなかった。そのため、使い途がなく、それが上記のような疑念を増幅させるという悪循環に陥ったのだ』、「マイナンバーカード」も運転免許証や健康保険証を組み込むようだが、私は紛失や情報漏洩の場合のリスクが飛躍的に大きくなるので、反対である。
・『認証局という中央集権的組織が裏に控える  住基ネットやマイナンバーカードが疑いの目で見られる大きな理由は、それが中央集権型の仕組みだからだ。 現在の電子署名は、背後に「認証局」と呼ばれる中央集権的な組織が控えている。ここが、電子署名の正当性を証明する。 電子署名が普及しない大きな原因は、認証局から電子証明を貰うのが簡単ではないことだ。このため「クラウド署名」のような便宜的方法が使われる。 「住民基本台帳カード」の場合には、「地方自治情報センター」と呼ばれる組織が認証局となっていた。マイナンバーカード の場合にも認証局がある。それは、「地方公共団体情報システム機構(JIS)」と呼ばれる組織だ。これは、実は、『地方自治情報センター』が名称を変えたものだ。 なお、2016年1月18日から19日にかけて、地方公共団体情報システム機構で障害が起こり、一部の自治体でカード交付ができなくなったことがある』、なるほど。
・『中央集権的でない「脱ハンコ」はありうる  以上で述べたことをまとめよう。 「脱ハンコ」のためには、電子署名のシステムを導入しなければならない。住基ネットはそのための仕組みであったし、その失敗を受けて作られたマイナンバーカードも、電子署名のためのものだ。 それを支えているのは、認証局を中心とする中央集権組織だ。中央集権的組織が支える仕組みだから、国民監視やプライバシー侵害、情報流出の危険性などを、原理的に否定することはできない。 では、脱ハンコの実現のためには、そうした危険のあるものを受入れざるをえないのか? そうではない。マイナンバーカードなどに対してなされている批判に応え、かつ電子署名を簡単に行なうための仕組みは、原理的には存在する。まだ実用段階になっていなが、そのための仕組みが開発されつつある。 それは、中央集権的機構のかわりにブロックチェーンを用いるものだ。ブロックチェーンを用いて分散IDと呼ばれる仕組みを作れば、認証局なしの電子署名システムができる。これは、「Trusted Web」と呼ばれる仕組みだ。 内閣が主催する「デジタル市場競争会議」が2020 年 6 月 16 日に公表した『デジタル市場競争に係る中期展望レポート(案)~ Society 5.0 におけるデジタル市場のあり方~』も、分散IDの重要性に言及している。 住基ネットが出発した2002年には、こうした技術はなかった。しかし、その後ブロックチェーン技術が発達し、こうした仕組みの構築が可能となりつつある。 新しい技術を積極的に導入し、プライバシー侵害や国民管理を防ぐ努力がなされるべきだ』、確かに「ブロックチェーンを用いて分散IDと呼ばれる仕組み」を作る方法は分散型で合理的だ。

第三に、10月22日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「「ハンコ警察」の大誤解、ムダな印鑑を一掃しても社会の効率は良くならない」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/251968
・『ハンコ撲滅の「正義のお仕置き」で大炎上する企業が続出か?  先日、ある有名な企業が炎上した。 きっかけは、この会社を辞めた人間によるSNSへの投稿だった。この企業、対外的には電子契約や電子署名などを積極的に採用していくと触れ回っていたが、実際の社内では、デジタルに弱い経営陣や取引先に確認をしてもらうための決済書類で、ハンコ文化がバリバリに残っていた。その結果、デジタル対応とアナログ対応の両方を相手によって使い分けなくてはならず、社員の負担が増えているという。 辞めた社員は、こうした内部事情を暴露してしまったのだ。それを受けてSNS上には「ハンコ警察」が登場、この企業を厳しく断罪した。 《こんな時代にムダなハンコを社員に強いるなんてブラックだ!》《若い社員がジジイ連中に合わせるのではなく、ジジイ側がもっと勉強して時代に合わせろ!》という感じで、世代間論争まで勃発。さらに、これをマスコミやワイドショーが取り上げたことで、株価にまで影響が出始めた。ついにはこの企業は、社長の謝罪会見にまで追い込まれてしまったのである――。 「えっ!?そんなこと、あったっけ?」と戸惑う方も多いだろう。誤解をさせて申し訳ない。この炎上話は実はまったくのフィクションである。 ただ、2020年10月時点で与太話であっても、近い将来こうした「ハンコ警察」による正義のお仕置きで、大炎上する企業が出てこないとは言い切れない。ご存じのように、菅政権が行政手続きのハンコを99%廃止するなど、「ムダなハンコ」を一掃する動きが加速する中で、ハンコは「ムダの象徴」として風当たりがかなり強くなっているからだ。 「いやいや、今、河野太郎さんたちが進めているのは、あくまでムダなハンコ業務であって、印鑑そのものを失くせなどと言っているわけじゃない。さすがにみんな、それくらいの違いはわかってるって」という冷めた声が聞こえてきそうだ。しかし、ここ最近起きているギスギスした人間トラブルを見ていただきたい。) 悪質なあおり運転、芸能人への度を越した誹謗中傷、他県ナンバー狩り、自粛警察、マスク警察……我々の社会には、自分の「正義」から少しでも外れたことをする他人を激しく攻撃して、この世から消えろと言わんばばかりに徹底的に追い込む人が、かなりいらっしゃるのだ。 ならば、「脱ハンコ」という社会正義実現のために、それを邪魔する人を監視・排除しようとする「はんこ警察」が登場したって、何も不思議ではないではないか。 実際、すでにSNSやネットには「脱ハンコに反対する人=既得権益にしがみつく人」といった構図で批判をする人はチラホラと現れてきており、印章産業が盛んな山梨の長崎幸太郎県知事や印章業界で働く人々は、過度な「脱ハンコ」ムーブメントが盛り上がることで、日本社会の非効率的な面などのさまざまな弊害が全てハンコのせいにされ、スケープゴートにされるのではないかという危機感を抱いている』、「「脱ハンコ」という社会正義実現のために、それを邪魔する人を監視・排除しようとする「はんこ警察」が登場したって、何も不思議ではないではないか」、マスクと違って、迷惑になる訳ではないので、出現しないことを願う。
・『「脱ハンコ」に過度な期待が持てない理由  では、「ハンコ警察」がはんこを使う人たちを叩くような殺伐とした社会にならないためには、どうすればいいのだろうか。 個人的には、「脱ハンコ」「ハンコ廃止」というものに過度な期待を持たせないということが、極めて重要になってくるのではないかと考えている。確かに、「スタンプラリー」などと揶揄される、役所などの非効率極まりないハンコ業務をなくしてデジタル化すれば、作業効率が上がるのは間違いない。役所とやりとりをする企業のデジタル化も促進されるだろう。 が、それがそのまま日本社会の効率を良くするのかというと、その効果は限定的だ。実は日本のハンコというものは、諸外国の「サイン」にあたる承認機能だけではなく、我々の社会の中で非常に大きな社会的機能を担っているからだ。 それは「身分証明」である。 たとえば、銀行で口座を開設するためには、免許や保険証などの本人確認書類だけではなく、印鑑が必要だ。ネットバンキングだけの場合は印鑑不要ということもあるが、それでも窓口での手続きや収納サービスを利用すれば、印鑑を求められるケースが圧倒的に多い。 このときのいわゆる「銀行印」は、シャチハタなどがダメなことからもわかるように、単なる「サイン」のような意味合いではない。大きな額の取引をする際に、本人であることを確認することも目的としている。だから、届出をしたときの「銀行印」と捺印したものに少しでも誤差があれば認められない。承認ではなく、完全に「身分証明」としての用途を期待されているわけだ。 財産を管理するための「身分証明」ということなので、当然、財産に影響を及ぼすような高い買い物をする場合も、このようなハンコが必要となる。だから、住宅ローンを組むのにも、賃貸を借りるのにも、そして自動車を購入するのにも、「実印」の捺印と印鑑証明の提出が求められるのだ。 公共料金のようなものを引き落とす手続きをするには、印鑑が必要になる場合も多い。アルバイトで採用される際にも、いまだに印鑑の持参を求めるところはたくさんある』、「承認ではなく、完全に「身分証明」としての用途を期待されている」、確かにその通りなのだろう。
・『組織からハンコを追い出しても社会ではハンコがないと生きられない  つまり、どんなに役所や企業の中からハンコを追い出したところで、組織から一歩外に飛び出して個人に戻れば、「ハンコID」がないことには経済活動もままならないというのが、日本社会の現実なのだ。 この大きな矛盾を解消しない限り、日本社会の効率など良くなるわけがない。つまり、我々が本当に問題視しなくてはいけないのはハンコ文化ではなく、「実印」「銀行印」に象徴される「ハンコによる身分証明」という慣習なのだ。 これは、ハンコ文化のある他国を見ても明らかだろう。ご存知のように、ハンコ文化というのは東アジア地域に限定されたもので、日本以外は中国、韓国、台湾に定着している。が、これらの国のハンコは、「社会の効率が悪いのはハンコ文化のせいだ」など目の敵にされていない。 ハンコ文化の源流である中国では、政府や企業が発行する書類に社印のようなものを押す慣習があるが、個人で印鑑を使うようなシーンはない。銀行口座を開設するときなども、身分証明書の提示とサインだけなので、印鑑は日本でいうところの「木彫りの熊」のような鑑賞用とされている』、「我々が本当に問題視しなくてはいけないのはハンコ文化ではなく、「実印」「銀行印」に象徴される「ハンコによる身分証明」という慣習なのだ」、その通りなのかも知れない。
・『中国、台湾、韓国では脱ハンコと効率アップは無関係  戦前、日本が統治していた影響で印鑑登録制度が残る台湾では、すでに電子署名法により、印鑑と手書きの電子サインの両立が可能になっているので、「脱ハンコで効率アップだ!」などという議論はされてない。同じく日本の印鑑登録制度を引きずる韓国でも、脱ハンコの動きが進められているが、それは印鑑の偽造が横行したという不正行為対策という意味合いが強く、「効率アップ」は目的としていない。 なぜこれらの国では、日本のように「ハンコ=ムダの象徴」という位置づけにならないのかというと、「ハンコによる身分証明」という慣習がないからだ。 韓国と台湾には、確かに日本統治のなごりで印鑑登録制度はあるが、それとは別に身分証明の制度がある。台湾は顔写真付きの国民身分証が発行され、今後はこれに運転免許やスマホのデータを連動したデジタルIDになっていくという。韓国でも出生した段階で住民登録番号が付与されるので、これが本人確認に用いられる。 中国も同様で、国民1人1人に固有の番号が記載された身分証明書が存在して、公的サービスを受けたり、鉄道のチケットを購入したりする際に、切符の偽造・転売対策でこれを提示する。 さて、ここまでお話をすれば、もうおわかりいただけたことだろう。中国、台湾、韓国にはハンコ文化があっても、日本のように「効率」の問題が取り沙汰されないのは、日本以外の国ではほぼ当たり前に普及している国民識別番号制度によって、「本人確認」という作業がシステム化されているからなのだ。 それは言い換えれば、政府がハンコを目の敵にして「脱ハンコ」「ハンコ廃止」などと声高に叫ばなくとも、他国で当たり前になっている「国民識別番号制度」が普及するだけで、日本社会でいろいろと言われている問題は、かなり改善される可能性が高いということだ。 少なくとも、コロナの給付金を払うのに3ヵ月かかりましたとか、年金の記録が消えてしまいましたというような、台湾などのデジタル行政の進む国から憐れみの目で見られるような今の状況は、大きく変わるはずだ。 が、ご承知のように、ハンコ文化の迫害は進んでも、日本で「国民識別番号制度」が普及する気配はない。社会保障や税金の分野で個人を特定するマイナンバーカードでさえ、9月時点で普及率は全国で2割弱にとどまっている』、「他国で当たり前になっている「国民識別番号制度」が普及するだけで、日本社会でいろいろと言われている問題は、かなり改善される可能性が高い」、「ハンコ文化の迫害は進んでも、日本で「国民識別番号制度」が普及する気配はない」、菅政権も「ハンコ」よりも「マイナンバー」の普及をもっと明確に打ち出すべきだろう。
・『日本ではなぜハンコしか「本人確認」の方法がないのか  世界では番号1つで公的・私的サービスの本人確認ができるのが当たり前の状況の中で、なぜ日本だけがこんな状況なのかというと、左派勢力やマスコミが中心となって「国民総背番号制」という言葉をつくり、激しく反対をしてきたからだ。 実は日本でも、北欧の福祉国家が導入したのと同時期の1970年、佐藤栄作内閣で「国民識別番号制度」を導入すべきだという議論がなされたことがある。さまざまな保障や福祉サービスをワンストップで受けるには、このシステムははるかに効率がいいからだ。 しかし、これに「プライバシーが丸裸だ」「軍国主義に逆戻り」「囚人みたいで嫌だ」と猛烈に反対したのが、労組、マスコミ、そしてえらい学者センセイたちだった。 「総背番号制 反対へ国民運動 学者・文化人ら旗揚げ」(1972年11月16日 朝日新聞) こうして立ち上げられたのが、「国民総背番号制に反対しプライバシーを守る中央会議」だ。労組と学者、文化人を中心に、この団体は「プライバーを守れ」というかけ声のもとで勢力を拡大。1985年4月になるとさらに活動の幅を広げて、外国人登録法による指名捺印制度の廃止も訴えた。 このときに代表委員として法務大臣や警察庁長官、政令指定都市の市長などに声明を送ったのは、名古屋大学教授の北川隆吉氏である。多くの業績を残した社会学者だ。 そんな立派な学者だからだろう、「学者の国会」と呼ばれた日本学術会議の会員も務めた過去があり、指紋捺印の反対運動の3年後、1988年6月には再び日本学術会議第14期会員に選ばれた。 政府、特に法務官僚や警察官僚からすれば、国が進めたい政策をことごとく邪魔する北川氏が日本学術会議会員に戻ってくるということを、苦々しく思っていたはずだ。が、どうすることもできない。その5年前の中曽根内閣時代に、「形だけの任命をしていく」と国会答弁をしてしまっているからだ。 今回の学術会議への人事介入の黒幕であると報じられた杉田和博官房副長官も、おそらくその1人だったはずだ。この時期の杉田氏は、警備・公安畑でキャリアを積み、外国人犯罪や不法滞在を扱う外事課長も務めていた。まさしく指紋捺印制度の成立へ向けて動いていた側の人間だ。 こういう過去から続く因縁が、菅政権で一気に爆発してしまったのかもしれない』、これは少々うがち過ぎの感がある。「総背番号制」に反対してきたのは左派としているが、左派に政策を左右するほどの力はなく、中小企業経営者の強烈な反対の方が影響力が大きかった筈だ。
・『うまくいかない社会の問題を全てハンコ文化のせいにする愚  話が脇に逸れてしまったが、このような経緯からもわかるように、日本が他国と比べて様々な分野で効率が悪いのは「ハンコ文化」のせいではない。諸外国が公的サービスを効率化するためなどの名目で続々と導入していた「国民識別番号制度」に反対する一部の人々によって、「国民総番号制」という恐怖訴求ワードが広められたことで、行政サービスの効率化に頑なに背を向けていたからなのだ。 そういう本質的なところをうやむやにして、社会の中でうまく回っていない問題をすべて「ハンコ」に押し付けるというのは、あまりにも理不尽であるし、なんの問題解決にもつながらない。ハンコを使っている人間を目にするとイライラするという「ハンコ警察」予備軍の方には、ぜひともそれを知っていただきたい。 「国民総番号制度」の長きにわたる反対運動を振り返ってみてもわかるように、立派な学者センセイたちが反対の声をあげたからといって、それが必ずしも国民の幸せにつながるわけではないのだ。学者と政府が対立すると、我々は条件反射で「政府が悪い」という印象を受けがちだが、歴史を振り返れば「学者が暴走をする」ということもたくさんあった。特に自粛警察などと同じく、声高に「我こそは正義だ」と胸を張るような学者はちょっと危険だ。 そのような意味では、今回も立派な学者センセイたちが「学術会議に人事介入をしたら学問の自由を奪われる!」「この国家の暴走を放っておいたら、全体主義へまっしぐらだ」などと喉を枯らしていることも、一歩引いて見る必要があるのではないか。 「立派な学者センセイがそう言っているのだから」と鵜呑みにするのではなく、本当にそれが国民のためになる話なのかを、歴史に学んで冷静に考えてみたい』、「社会の中でうまく回っていない問題をすべて「ハンコ」に押し付けるというのは、あまりにも理不尽であるし、なんの問題解決にもつながらない」、同感である。「マイナンバーカード」に運転免許証などを組み込むのは前述の通り反対だが、「マイナンバー」を核に所得や資産の把握を進め、公正な課税体系を目指してもらいたい。
タグ:住基カード 東洋経済オンライン GMOインターネット 野口 悠紀雄 ダイヤモンド・オンライン 窪田順生 現代ビジネス 電子署名 メルカリ 電子契約 (その1)(在宅勤務を阻む「ハンコ問題」、激論の舞台裏 デジタル化を突き付けられた日本の課題、「脱ハンコ」は「脱中央集権」で国民の信頼を得なければ成功しない いまだに響く住基ネットの失敗、「ハンコ警察」の大誤解、ムダな印鑑を一掃しても社会の効率は良くならない) 「在宅勤務を阻む「ハンコ問題」、激論の舞台裏 デジタル化を突き付けられた日本の課題」 現状は特定の社員が週に1回、捺印のために出社 契約書の捺印は1カ月に約400件 大臣発言の2日後に印鑑廃止を決断 電子契約は契約の相手先の了承を得られなければ実現しない 自社サービスの顧客の手続きで印鑑を完全に廃止し、取引先との契約も電子契約のみにする 電子契約は、改ざん不可能な「電子署名」と、誰がいつ契約に同意して署名したかを電子的に刻印する「タイムスタンプ」の2つからなる それぞれに専門業者がおり 弁護士ドットコムの電子契約サービス「クラウドサイン」 野村HDやサントリーが相次いで導入 押印原則の徹底的見直し 電子契約とハンコは共存できるか (電子とハンコは)共存していくべき」、立場上やむを得ないのかも知れないが、どう考えても無理がありそうだ 「「脱ハンコ」は「脱中央集権」で国民の信頼を得なければ成功しない いまだに響く住基ネットの失敗」 「脱ハンコ」の手段はマイナンバーカードだが なぜ住基ネットが失敗したかの反省から始める必要がある 住基ネットは無残な失敗に終わった 1兆円近い税金が使われた 無残な失敗に終わった ほとんど使い途がなかったから使われなかった 国民は何を心配したか? 「マイナンバーカード」も運転免許証や健康保険証を組み込むようだが、私は紛失や情報漏洩の場合のリスクが飛躍的に大きくなるので、反対である 認証局という中央集権的組織が裏に控える 中央集権的でない「脱ハンコ」はありうる ブロックチェーンを用いて分散IDと呼ばれる仕組み Trusted Web 「「ハンコ警察」の大誤解、ムダな印鑑を一掃しても社会の効率は良くならない」 ハンコ撲滅の「正義のお仕置き」で大炎上する企業が続出か? 「脱ハンコ」という社会正義実現のために、それを邪魔する人を監視・排除しようとする「はんこ警察」が登場したって、何も不思議ではないではないか 「脱ハンコ」に過度な期待が持てない理由 承認ではなく、完全に「身分証明」としての用途を期待されている 組織からハンコを追い出しても社会ではハンコがないと生きられない 我々が本当に問題視しなくてはいけないのはハンコ文化ではなく、「実印」「銀行印」に象徴される「ハンコによる身分証明」という慣習なのだ 中国、台湾、韓国では脱ハンコと効率アップは無関係 他国で当たり前になっている「国民識別番号制度」が普及するだけで、日本社会でいろいろと言われている問題は、かなり改善される可能性が高い ハンコ文化の迫害は進んでも、日本で「国民識別番号制度」が普及する気配はない 日本ではなぜハンコしか「本人確認」の方法がないのか うまくいかない社会の問題を全てハンコ文化のせいにする愚 社会の中でうまく回っていない問題をすべて「ハンコ」に押し付けるというのは、あまりにも理不尽であるし、なんの問題解決にもつながらない マイナンバーカード」に運転免許証などを組み込むのは前述の通り反対だが、「マイナンバー」を核に所得や資産の把握を進め、公正な課税体系を目指してもらいたい
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トランプ大統領(その49)(米大統領選を前に「州知事の拉致未遂事件」が起きた理由、大統領選後に起きうる5つの危機、トランプ「自爆」の中で浮上した「バイデン勝利=株高」説をどうみるか?) [世界情勢]

トランプ大統領については、10月10日に取上げた。今日は、(その49)(米大統領選を前に「州知事の拉致未遂事件」が起きた理由、大統領選後に起きうる5つの危機、トランプ「自爆」の中で浮上した「バイデン勝利=株高」説をどうみるか?)である。

先ずは、10月17日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した国際ジャーナリスト・外交政策センター理事の蟹瀬誠一氏による「米大統領選を前に「州知事の拉致未遂事件」が起きた理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/251578
・『武装化した市民集団が州知事拉致を計画  タタタタタ!ドーン! アメリカ中西部ミシガン州の田舎町ミュニスの森の一角で、数カ月前から毎週日曜夕刻になると何百発もの銃声と爆発音が響いていた。不審に思った住民もいたが、ミシガン州では「オープンキャリー」(銃を公然と持ち歩く権利)が認められている。射撃の練習かと思って誰も警察には通報はしなかったという。 ところが今月初め、銃声が突然やんだ。 やれやれと安堵していたら程なく衝撃の事実が明らかになり、今度は全米に戦慄が走った。大統領選挙直前にミシガン州庁舎を襲撃して、グレッチェン・ウィトマー州知事(民主党)らを拉致する計画をしていた「ミリシア(民兵)」と呼ばれる極右武装勢力が射撃訓練をしていたのだ。 事前に察知した捜査当局によって13人が内戦を扇動した容疑で逮捕された。知事の厳しいコロナ対策に不満を募らせていたという。逮捕直前、拉致から湖畔にある別荘で知事を殺害することに計画が変更されていたが、グループに潜入していた情報提供者から連邦捜査局(FBI)に通報があったお蔭で未遂に終わったという。 じつは、昔からアメリカでは政府から独立した市民による市民のためのミリシアの存在が合衆国憲法で認められている。ろくでもない政府が出来たときに圧政から共同体を守るためだ。だから「武器を保持または携帯する権利」が与えられている。 だが、現在のミリシアは違う。そんな崇高な思想とはまったくかけ離れた、白人至上主義者たちや政府や警察の権威主義を敵視する危険極まりない過激派集団だ。 全米各地に点在するミリシアの正確な数は把握されていないが、ソーシャルメディアで暗号化されたメッセージでつながっている支持者は、数千人以上に上ると専門家は見ている。だからこそFBIは、こうした武装した市民集団を「アメリカにとって国内最大級のテロの脅威」とみなしているのだ』、「情報提供者から」「通報があったお蔭で未遂に終わった」、とはいえ、実行されていれば、殺人事件になるところだった。「ミリシアの存在が合衆国憲法で認められている」が、「崇高な思想とはまったくかけ離れた、白人至上主義者たちや政府や警察の権威主義を敵視する危険極まりない過激派集団」、恐ろしい集団が存在するものだ。
・『ミリシアやネオナチが活動を活発化  ところが、選挙戦の土壇場でコロナに感染して入院したうえ、世論調査で民主党のバイデン候補に大差でリードされて焦っているトランプはそんなことはお構いなし。「ミシガンを解放せよ!」「バージニアを解放せよ!」などと得意のツイッターで彼らをあおっている。両州とも知事が民主党だからだ。勢いづいたミリシアやネオナチが全米各地で活動を活発化させており、暴徒化する可能性も出てきた。 先月末の第1回大統領候補テレビ討論会の中でも、トランプはミリシアの一つ「プラウド・ボーイズ」に対して「引き下がって待機せよ!」と語りかけて物議をかもした。「お前たちの出番はこれからだ」と言ったに等しいからだ。 以前にも「バージニア州の民主党は憲法で守られたお前たちの(銃を所持する)権利を奪おうとしているぞ」と大統領がツイートしたため、全米の武装したミリシアが大挙して州都リッチモンドに集結したことがある。 それを見た州知事が慌てて非常事態宣言を発令して大事には至らなかったが、なにしろ30連発の高性能ライフルなどで武装している連中である。ひとつ間違えれば流血の大惨事になるところだった。 その一方で、トランプは極右と各地で激突しているアンチ・ファシズム運動、略してアンティファに対しては「テロ組織に認定してやる!」と正反対の対応。 しかしアンティファは、緩やかなネットワークでつながったリーダーのいない運動で、組織もない。そもそもアメリカの法律では、国外から支援を受けた団体でなければテロ組織として非合法化できない。だから武装したミリシアや過激な白人至上主義団体クー・クラックス・クラン(KKK)などが大っぴらに活動できるのである。トランプはそんなことも知らない』、「トランプはミリシア・・・に対して「引き下がって待機せよ!」と語りかけて」、他方で「極右と各地で激突しているアンチ・ファシズム運動、略してアンティファに対しては「テロ組織に認定してやる!」と正反対の対応」、大統領がすることとは思えないような驚くべき言動だ。
・『トランプの敗北が濃厚だが法廷闘争を仕掛ける可能性も  そんな中、ちょっと驚きのオクトーバーサプライズまで飛び出した。政府批判で知られる映画監督マイケル・ムーアが、トランプのコロナ感染そのものがフェイク(でっち上げ)だと主張したのだ。感染を装って国民の同情を得るとともにコロナに勝った英雄のイメージで土壇場での一発逆転を狙う作戦に出たのだという。 まあ、にわかに信じがたい根拠なき陰謀論のレベルだが、そんなことまでしかねないと思ってしまうほどトランプの手口は悪辣なのだ。 現実にはホワイトハウス内で集団感染が発生したことが確認されている。 CNNのインタビューに答えたジョージ・ワシントン大学医学部ジョナサン・ライナー教授によれば、トランプこそが大量にウイルスをばらまくスーパースプレッダーの可能性が高いという。 その証拠に、マスクをつけず社会的距離も取らないトランプとの会合に出席した大統領顧問や選挙スタッフが、その後何人も陽性になっている。さらには、トランプの感染が明らかになるまでの1週間、選挙運動で各地を飛び回る大統領専用機エアフォースワンに何時間も大統領と同乗したスタッフのうち、少なくとも8人が検査で陽性と判定された。 にもかかわらず、ホワイトハウスが米疾病対策センター(CDC)に全ての感染例に関する追跡調査を依頼しないのは、大統領が感染源だとばれるのを恐れたからだろうとライナー教授は主張している。 今月15日に予定されていた第2回大統領候補討論会をボイコットしたトランプは12日、フロリダの空港に降り立ち、退院後初の大規模野外集会に姿を見せた。そして壇上で未使用のマスクをポケットから取り出して参加者たちに向かって投げ、こう言い放った。 「私はみなさんの祈りでとても元気になった。そちらに行って男性にも美しい女性にもキスするよ」 オエー! 自分がコロナウイルスをまき散らしているかもしれないことも忘れてセクハラおやじ丸出し。気持ち悪いを通り越して、危険極まりない。 選挙戦終盤でのコロナ感染者・死者の急増と支持率の低下をみると、トランプの敗北は濃厚だ。「トリプルブルー」(大統領、上下両院を民主党が制する)が実現する可能性も出てきた。そうなれば、バイデン政権下での大規模な追加経済対策への期待も高まるだろう。 だが、土壇場でトランプが「郵便投票で不正が行われた!」とわめき散らして泥沼の法廷闘争を仕掛ける可能性もまだ十分ある。 今回の大統領選では、コロナ感染を避けるため郵便投票が50%を超えるとみられている。投票日の11月3日まで集計を始められない州もあれば、11月2日までの消印があれば選挙日から10日後までに到着した票もカウントする州もある。多くの州では、封筒のサインと事前登録されたサインが一致するか照合しなければならない。集計遅れは必至の状況だ。 それだけではない。すでに激戦区の中西部オハイオ州では5万人の投票用紙が誤って郵送されるという不手際も起きている。カリフォルニア州では、共和党が設置した非公認の「ドロップボックス(投票回収箱)」が相次いで発見され大騒ぎだ。共和党側は第三者が投票用紙を回収できると主張しているが、明らかな違法行為だ。 どちらに軍配が上がるとしても、今年の大統領選挙はアメリカ史上まれに見る大混乱になることだけは間違いない』、「トランプこそが大量にウイルスをばらまくスーパースプレッダーの可能性が高い」、大いにあり得る話だ。「今年の大統領選挙はアメリカ史上まれに見る大混乱になることだけは間違いない」、さてどうなるのか注目したい。

次に、10月17日付けメールマガジンJMMが掲載した在米作家 冷泉 彰彦氏による「大統領選後に起きうる5つの危機」from911/USAレポート」を紹介しよう。
・『10月に入って突如発生したホワイトハウスにおけるCOVID19集団感染は、その後、大統領の入退院、大統領3男の感染などを経て、「既成事実化」することで一種の鎮静に至っています。ホワイトハウス高官の感染者については、ほとんど情報が出ないので分かりません。 ですが、感染者の中で少なくとも体質的に最も脆弱(肥満症と喘息)と思われているクリス・クリスティ氏(元ニュージャージー知事、大統領のTV討論コーチ)が1週間の入院を経て治癒したのは少なくとも良かったと思います。今回の集団感染の結果、生命の危機に至る人が続出するようですと、選挙以前の問題として世相を暗くするからです。 そのクリスティ氏は「さすがに懲りた」のか、退院後に取材に応ずる中でホワイトハウスのパーティーに参加した際には「自分はマスクをするべきだった」と言い始めています。同時に「自分は陽性となり発症したので、地元の保健当局はトレーシング(感染の追跡調査)をやってくれたが、ホワイトハウスからはトレーシングに関する照会はなかった」とも述べています。 クリスティ氏は一旦は生命の危険を感じた可能性がありますし、だとすれば「前非を悔いる」心境になったのも当然とも思えます。ですが、機を見るに敏なこの政治家が、このタイミングでこのようなことを言い出す、しかもトランプ陣営としては宿敵とも言える「ニューヨーク・タイムス」のインタビューに応じてそうした発言をしたということには、意味がありそうです。 それは、このクリス・クリスティという保守政治家は、もうドナルド・トランプを見限ったということです。同時に、そのことは彼だけでなく、多くの共和党政治家が「トランプ後」への備えを始めているということだと思います』、「多くの共和党政治家が「トランプ後」への備えを始めている」、沈みゆく船からは逃げるが勝ちなのだろう。
・『ちなみに、本稿の時点ではまだ投票日まで15日を残しています。また、次週の10月22日には、最終の大統領候補TV討論が実施される「かも」しれません。 ですが、現時点での選挙人獲得予想(総数538、当選ライン270)では、例えば、 著名な政治サイトを見てみると 「エレクトラル・ヴォート・コム」では、バイデン356対トランプ182 「リアル・クリアー・ポリティクス」では、バイデン375対トランプ163 となっており、いずれもバイデンが圧勝という予想となっています。ちなみに、この両者は「ノー・トスアップ」つまり世論調査が僅差であっても少しでも上回った方が「選挙人数は総取り」として計算した結果です。 このうち、「リアル・クリアー・ポリティクス」の方は「トスアップ」、つまり僅差の州を除外した数値を公表しており、こちらでは、「バイデン216対トランプ125」という数字となっています。 ただ、このトスアップというのは、直近の世論調査の平均値を取って、両者の差が「10%以内」というかなり厳格な基準を適用しています。ですから、バイデンの216というのはいわば基礎票と言ってよく、仮にここにバイデンが7%前後の差でリードしており、今はその差が広がりつつあるという、「ミネソタ(10)」、「ミシガン(16)」、「ペンシルベニア(20)」、を乗せると216+46=262 となります。 そこに「ウィスコンシン(10)」「アリゾナ(11)」「ネバダ+アイオワ(計16)」のどれかが加わればもう270を越えてしまいます。「フロリダ(29)」 「オハイオ(18)」「ノースカロライナ(15)」などは仮に取れなくても、バイデン候補の「当選ラインの270超え」はかなり見えて来たと言っていいと思います。 むしろ、バイデンの選挙戦は、ここまで申し上げてきた接戦州に加えて、現在は数ポイント差で競っている「ジョージア(16)」「テキサス(38)」を取って、選挙人数で400を超える「ランド・スライド(地滑り的勝利)」を狙っていると考えられます。ちなみに400を超える勝利ということになりますと、1988年のジョージ・H・W・ブッシュ以降はありません。 バイデン陣営としては僅差と圧勝では大違いという考え方をしていると思われます。 そこには切羽詰まった理由があるからです。まず選挙人数で僅差の場合は、州レベルで僅差という結果になったケースについて異議申し立てをすれば当落がひっくり返る危険性があります。もっと言えば、トランプ派の一部が暴徒化するとか、法廷闘争になって泥仕合になるという可能性も出てきます。 一方で、トータルで大差となれば、いくらトランプが吠えても、共和党や地方政府は無視するでしょうから結果の確定が早くなるということがあります。また、圧勝すれば民意の示すところはトランプの4年間についての全面的な不信任ということになります。ですから、民主党として、そしてバイデン新政権としては政策の変更、もしくはオバマ時代への回帰が容易になります』、「バイデン陣営としては僅差と圧勝では大違い・・・まず選挙人数で僅差の場合は、州レベルで僅差という結果になったケースについて異議申し立てをすれば当落がひっくり返る危険性があります。もっと言えば、トランプ派の一部が暴徒化するとか、法廷闘争になって泥仕合になるという可能性も出てきます。 一方で、トータルで大差となれば、いくらトランプが吠えても、共和党や地方政府は無視するでしょうから結果の確定が早くなる・・・また、圧勝すれば民意の示すところはトランプの4年間についての全面的な不信任ということになります。ですから、民主党として、そしてバイデン新政権としては政策の変更、もしくはオバマ時代への回帰が容易に」、「僅差と圧勝では大違い」なのは確かだ。
・『それ以上に大きな意味を持つのは、上院議員の選挙です。既に選挙情勢として、下院に関しては民主党が過半数を維持する見通しで、問題は上院ですが、現時点で公表されている様々な調査結果からすると、51対49で民主党が過半数を奪い返す見通しです。この上院に関しては差は大きければ大きいほど良いので、民主党としてはバイデンが好調な集票を続けることで、上院も議席数の上乗せを狙いたいところです。 もっとも、共和党の側も考えていることは似通っているようです。議会共和党からは、この初夏の頃から「選挙区事情によってはトランプを応援せずに、自分の議席を優先するように」という指示が飛んでいるという話が頻繁に出ています。例えばですが、10月6日に行われたアリゾナ州の「上院議員候補TV討論」では、共和党現職のマーサ・マクサリー候補は司会から「あなたは自身のトランプを支持したことを誇りに思っているか?」と再三にわたって問われたのですが、最後まで「イエス」とは言わず、その異様な光景は動画として拡散するに至りました。 マクサリー議員といえば、前回の2018年の選挙では民主党候補に負けたのですが、ジョン・マケイン議員の死去に伴い暫定議席を得て今回は改めて補選で民意を問う立場です。この間ずっとトランプ派的な言動をしていたのですが、そのマクサリー議員にしても、ここへ来て「トランプ支持を口にできない」というのです。ちなみに、選挙情勢としては、民主党のマーク・ケリーが優勢であり、仮に勝利すれば補選のため11月30日就任で2023年1月までの任期となります。 このように、共和党内では「トランプを見限る」動きが出てきているわけです。著名なものでは、政治団体「リンカーン・プロジェクト」という「共和党内のトランプ落選運動」がありますし、マクサリー議員のように上院という「全州選挙区」の場合は、中道層に食い込まないと勝てないので、「脱トランプ選挙」を強いられているという問題があるわけです。また、同時にこれは「共和党におけるトランプ後」への備えという意味も持っています』、「共和党内のトランプ落選運動」があるとは驚いた。やはり議員にとっては、自分の政治生命の維持が最重要事項なのだろう。
・『そんな中で、10月15日(木)には第二回のTV討論が予定されていたのですが、 これはキャンセルとなりました。TV討論の実施については、72時間前と当日の2回、候補本人はPCR検査を義務付けることになっているそうですが、トランプは検査に協力しなかっただけでなく、ヴァーチャル開催にも反対したので、自動的にキャンセルとなったということのようです。 そのために、中止が決定されたのとほぼ同時にバイデン陣営は、その日の20時から22時の2時間にわたってペンシルベニア州フィラデルフィアにて「タウンホール形式」つまり、有権者とバイデン候補の対話集会形式の演説会を行うと決め、ABCテレビが中継することになっていました。 その後、ここに割り込む形でNBCテレビがトランプ大統領の「タウンホール形式」集会をフロリダ州で行うと表明。結果的にこれは、「バイデン候補のイベント視聴を妨害するもの」という批判を浴びたために、20時から21時の1時間のみの開催となっています。 この2つのイベントは、開催の経緯だけでなく、トーンも随分と異なった感じとなりました。大統領の方は、中継局が中道左派のNBC、司会も中道左派で政治記者としても情報番組のMCとしても辣腕のサベナ・ガスリーで、大統領はしばしば有権者代表だけでなく、ガスリーも敵に回して汗だくの反論大会という感じになっていました。 一方で、バイデン候補の方はMCがビル・クリントン側近だったジョージ・ステファノポロスで、ある意味では民主党内のイベントという雰囲気もありました。ゆったりと時間を取って丁寧に有権者の質問を聞き、それに丁寧に答えるという感じで、むしろバイデン候補の人柄だけでなく、実務能力のアピールにもなっていた印象です。 そんな中で、現時点でも大逆転につながるような「オクトーバー・サプライズ」の可能性はゼロではありません。具体的には2点、「投開票における混乱の可能性」 そして、「両候補の健康問題」の2つです。投開票の混乱は、先に申し上げたように大差となればほぼ意味がなくなります。 そうではあるのですが、健康問題については、高齢のバイデン、病み上がりのトランプの双方ともに、見えないところで細心の注意を払っているに違いありません。ですから、「サプライズ」の可能性については、日に日に小さくなってきていると考えられます』、「第二回のTV討論」を「トランプ」が「キャンセル」して、「タウンホール形式」にしたことは、結果的にはマイナスだったようだ。 
・『というわけで、政局の焦点はむしろ「トランプ後」に移ってきていると考えていいでしょう。この後、11月以降の政局には5つの大きな難問が待ち構えているからです。 1点目は、COVID19の感染拡大についてです。アメリカ全土では、ここへ来て経済社会の活動が活発化する中で「第二波」の徴候が出てきています。仮にバイデン当選ということになれば、WHOとの連携を回復して、欧州やアジアで行われているような、常識的な対策がやや強めの強制力を伴って全国レベルで発動されるでしょう。 その場合に、強制を嫌う右派が南部や中西部でこれに従うかは分かりません。その一方で、WHOと連携し、米国内の保健関連の官公庁が政府と協調すれば、ワクチンなどへの信頼は向上すると思われます。仮にそうなっても、バイデン政権の最初の関門は、このコロナ対策になると思います。 一方で、トランプ再選という場合は、第二波への対策もせず、なし崩し的に集団免疫戦略に向かう危険もあり、そうなるとワクチンへの信頼も低くなり、負のスパイラルに陥る中で経済が更に停滞する危険性もあると思います。 2点目はその経済です。バイデン政権となり、上下両院を民主党が制するようにな
れば、とりあえず財政規律ではなく、直近の経済刺激などに「緊急避難的な資金投入」をするに違いありません。一方で、格差是正の税制なども進むでしょう。一見すると経済一般や株価には悪影響がありそうですが、市場はこれを急速に織り込みつつあります。 ただ、第二波が深刻となった場合などは、株価の暴落を回避しつつ、公的資金を入れていってコロナ危機の出口を探るのは政策的には難しくなります。民主党の場合は、特に党内左派が厳しく注文を出すでしょうから、党内を調整しながら最善手の手を打ち続けるのは至難の技です。 ですが、それでも連銀や官僚組織を動員して、改めてアメリカの「ベスト&ブライテスト」の知恵を活用しながら、経済政策を打ち続けるのではないかと思われます。 ですから、当面は、バイデンショックということはないでしょう。一方で、経済の国際協調に関しては相当にしっかりやってくるでしょうから、日本も為替政策や通商問題への対応には注意して進む必要が出ると思います』、「当面は、バイデンショックということはないでしょう」、一安心だ。
・『3点目は対中交渉です。バイデンが大勝すれば自由に政策を遂行できるかというと、 必ずしもそうではなく、ここでも党内左派の影響力は穏健派のバイデンには保護主義の圧力としてかかってきます。もしかしたら、バイデンという人はグローバリストとして、対中政策をオバマ時代のそれと同じようなレベルまで改善しようと思っているかもしれませんが、党内左派はそれを許さないでしょう。 一方で、中国の側でも政治的事情からそう簡単には妥協できないと思います。米中関係については、バイデン政権となれば改善の方向とはなると考えられますが、一筋縄では行かないと見たほうが良さそうです』、なるほど、過度な期待は捨てた方がよさそうだ。
・『4点目は、トランプ訴追という問題です。2016年の選挙に関するロシア疑惑については、不起訴となったトランプですが、大統領の職を退いた場合には起訴のハードルが一気に下がります。また、この間持ち上がった、脱税疑惑、外国勢力との金融取引問題、更には公私混同の数々など、トランプは多くの問題を抱えていると思います。 バイデンも口にしていますが、アメリカの「政治の良識」としては、前大統領の訴追はしたくないというのは民主党の長老たちの本音だと思います。国家の品格に関わるからです。ですが、民主党の中でも左派は違います。仮に前大統領の訴追というのは、国家の根幹を傷つけるものであっても、トランプの犯罪の悪質性はそれを上回るという考え方、そして、トランプ派の持っている右派ポピュリズムの危険性については徹底的に根絶したいという思いは強いものがあるからです。 ですから、余程のことがない限り、トランプを訴追したいという動きを止めるのは難しいでしょう。その動きは、仮にトランプが勝利したとしても、改めて弾劾裁判を提起するという形になっていくでしょう。 これに加えて、仮にNYタイムスの報道が真実を含むものであれば、大統領退任後
のトランプは、家業のホテル・リゾート事業にしても、個人あるいは一家ということにしても巨額の債務を抱えて破産する可能性があると思います。そんな中、落選後には第三国に亡命などという可能性を本人は匂わせているようですが、合衆国の威信にかけて、軍やFBIはこれは阻止に動くのではないでしょうか』、「アメリカの「政治の良識」としては、前大統領の訴追はしたくないというのは民主党の長老たちの本音だと思います。国家の品格に関わるからです。ですが、民主党の中でも左派は違います」、「落選後には第三国に亡命などという可能性を本人は匂わせているようですが、合衆国の威信にかけて、軍やFBIはこれは阻止に動くのではないでしょうか」、前大統領の「亡命」となれば、まるで発展途上国のようだ。
・『5点目は、最高裁判事の構成です。9月にリベラル派のギンズバーグ判事が亡くなってからの動きは急でした。トランプ大統領は、バレット判事という保守派の候補を電撃的に指名して、上院の共和党もこれをスピード承認するという意志を明らかにしていました。9月末には政権周辺のコロナ集団感染があり、3名の共和党上院議員が陽性となったことから、承認手続きの遅延が危ぶまれましたが、結局のところ22日(木)には承認となる見通しです。 こうなると、連邦最高裁の判事構成は定員9名のうち、保守5,リベラル3,中立(ロバーツ長官)1というバランスとなり、「医療に関する国民皆保険」「妊娠中絶」「同性婚」などが違憲化される可能性が出てきます。これに対しては、民主党側では「大統領+上院+下院」を制した場合には一気に最高裁判事の定数を増やして、そこにリベラル派の判事を指名してバランスを回復するという案が検討されています。 バイデン氏は、そうした作戦を明らかにするとイメージ悪化になるということで、 現時点ではこの「判事増員案(パック・ザ・コート=法廷を判事で一杯にする)」に関する賛否を曖昧にしています。半世紀近く政界の中枢を歩いてきたバイデン氏としては、連邦最高裁という司法の最高権威に簡単に手を付けるのには抵抗があることは承知しているはずです。 この問題ですが、仮にバレット判事が承認されてバランスが崩れ、なおかつ11月の選挙で勝利した場合には民主党の中では「増員」案が勢いを増すことになると思います。ですが、強行すれば国論を二分して、改めて文化戦争のようなことになるわけで、これはテーマとして非常に処理が難しいと思います。 可能性として考えられるのは、最高裁における保守派の長老格であるクラレンス・トーマス判事について、1991年の承認審議の際に議論されたセクハラ疑惑を蒸し返して辞任に追い込み、そこへリベラル派の判事を指名してバランスを取るという「策」です。 問題となったセクハラを告発したアニタ・ヒル氏は近年、この問題を改めて語るようになっていますが、民主党としてはトーマス判事を性急に追い詰めると、共和党政権のうちに辞任して保守派判事に交代してしまうので報道などを含めて妙に静かな状況があります。ということは、トーマス判事を交代させることで、判事増員をしないで最高裁判事のバランスを取るという可能性は、やはりゼロではないのかもしれません。 いずれにしても、大統領選というのは通過点に過ぎず、コロナ問題にしても経済にしても、あるいはトランプへの訴追問題にしても、11月以降のアメリカの政局は波乱含みであると思われます』、「大統領選というのは通過点に過ぎず・・・11月以降のアメリカの政局は波乱含み」、大いに注目したい。

第三に、10月20日付け日経ビジネスオンラインが掲載したみずほ証券チーフMエコノミストの上野 泰也氏による「トランプ「自爆」の中で浮上した「バイデン勝利=株高」説をどうみるか?」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00122/00093/?P=1
・『トランプ米大統領は10月5日夕(日本時間6日朝)、ワシントン近郊の軍医療センターを退院し、ホワイトハウスに戻った。「大統領の容体はこの24時間、継続的に改善」しており、「まだ完全に危機を脱したわけではない」ものの、ホワイトハウスに十分な医療設備があるので退院しても問題ないと、大統領専属のコンリー医師は説明した。 とはいえ、もともとエボラ出血熱の治療薬として開発されていた抗ウイルス薬である「レムデシビル」に加えて、重症患者に対して通常用いられるステロイド系の抗炎症薬「デキサメタゾン」を投与され続けるなど、早期に退院して選挙戦に戻るためにトランプ大統領はかなり無理をしたのではないかという疑念がくすぶる。 この「デキサメタゾン」については、気分変動、攻撃性、錯乱などの副作用のリスクが専門家の間で指摘されていると、ロイター通信は報じた。国際骨髄腫財団によると、視界不良や不整脈などの身体症状のほか、人格変化や思考困難などの精神症状が副作用として出る恐れがあるという。 実際、このステロイド系薬剤の副作用が出たのではないかと推測する人もいた不安定な言動が、退院直後のトランプ大統領にはいくつかあった。 大統領は退院から一夜明けた6日、「大統領選が終わるまでコロナ対策を巡る協議を停止するよう指示した」「私は大統領選での勝利後すぐに、勤勉な米労働者と中小企業に焦点を当てた大型の刺激策法案を通過させる」とツイートした。驚きのUターンである』、「トランプ大統領はかなり無理をしたのではないかという疑念」、「このステロイド系薬剤の副作用が出たのではないかと推測する人もいた不安定な言動が、退院直後のトランプ大統領にはいくつかあった」、こんな「副作用があるような「薬剤」を投与させたというのは酷い話だ。この程度の「副作用」で済んだからよかったようだが、核のボタンを押すようなことにでもなれば大変だった。
・『「ホワイトハウスは完全に混乱している」  議会民主党との間で続けられてきた追加経済対策を巡る協議については、ペロシ下院議長とムニューシン財務長官の間で打開の糸口が見いだされつつあると市場はみていたので、株価は急落した。 ペロシ下院議長は声明で、「ホワイトハウスが完全に混乱していることは明らかだ」と批判。民主党下院議員らとの電話会議の場で同議長は、トランプ氏の思考は治療で投与されたステロイド薬の影響を受けている可能性があるとも述べた。 ところが、7日になるとトランプ大統領は、航空業界の支援や家計への現金給付といった個別の案件での与野党協議継続には前向きだという姿勢を示した。そして、9日には、民主党案を上回る規模の追加経済対策を要望すると、ラジオ番組で突然言い出した。議会共和党の同意をとりつけるでもなく、独断でまた姿勢を変えた。ちなみに、上院共和党のトップであるマコネル院内総務は、両党の主張はなお隔たりが大きいとして、早期の追加経済対策協議の妥結はないだろうという見方である。 もう1つ、トランプ大統領が「忠臣」である2人を、退院の数日後に突然強く非難したことにも違和感が漂った。大統領は8日のFOXニュースの電話インタビューで、政敵に対する調査が不十分だとして、ポンペオ国務長官とバー司法長官を批判した。 「両氏は政権内でトランプ氏に最も近いとされ、トランプ氏がやり玉にあげるのは珍しい」「ポンペオ氏はトランプ政権で米中央情報局(CIA)長官を経て、国務長官に就任。トランプ氏の意向を外交政策に忠実に反映し、米メディアや議会から批判が出ればトランプ氏の擁護に回ってきた。バー氏もロシア疑惑についてトランプ氏を『推定無罪』と結論づけていた」と、日本経済新聞の記事は解説を加えていた。 バイデン民主党大統領候補につきまとう認知症疑惑もそうだが、こういう類いの微妙なマターを、日本の主要マスコミはなかなか正面から取り上げてくれない。 さて、自らが新型コロナウイルスに感染して入院までしたことについて、トランプ大統領がいったいどのような態度を取るのか。退院後の大きな関心事の1つだった。 経団連の中西宏明会長はオンライン形式による10月5日の記者会見で、トランプ大統領が感染したことについて、「正直にいって、ちょっと不注意ではないか。ある意味、典型的な自業自得だ」「もともとマスクをしないほか、多くの聴衆がいる集会に参加し、そこでもマスクをしていなかった」と明言し、恐らく多くの日本人が抱いている批判的な考えを代弁した。 米国でも、民主党支持者はそうした感想を抱いただろう。バイデン候補に対して支持率が急速に追い上げていたさなかに「自爆」した感も漂う。むろん、選挙結果が出るのはまだ先であり、さらなるサプライズも起こり得るのだが。 トランプ大統領には大きく分けて、2つの選択肢があった。1つは、感染防止に向けた姿勢や危機管理態勢が甘かったことを素直に反省して、米国民にわびる選択肢。もう1つは、このウイルスは乗り越えられることを自らが身をもって証明したのだとアピールしつつ、感染していないバイデン候補はそれが分からないままだと主張するなどして、開き直る選択肢である。 そして、実際にトランプ大統領が選んだのは(当然と言うべきか)後者、開き直るという選択肢だった。専属医が10日に症状が改善しており他人にウイルスを感染させる恐れはなくなったと言明した翌11日、「私はこの恐ろしい中国ウイルスをやっつけた」と発言し、回復をアピール。同日のインタビューでは、「一度回復すれば免疫が備わる。あなたたちの大統領は、ライバル候補者のように地下室で身を潜めている必要はない」「私には免疫があるようだ。長期か短期か、それとも一生続くのか誰にも実際には分からないが、私には免疫がある」「(自分はウイルスから)守ってくれる光をまとっている」とまで述べた。 こうした態度は、共和党内のコアなトランプ支持者には確かに好感されるだろう。だが、世論調査を見る限りは劣勢で、いわゆる「隠れトランプ支持者」の存在を考慮に入れてもかなり厳しい戦いを強いられている。トランプ陣営が欲しい支持層の広がりは、そうした開き直りからは生じてきそうにない。 僅差でトランプ優位と筆者は予想し続けてきたが、自分が感染してしまうという「オクトーバー・サプライズ」で、トランプ再選は黄色からオレンジ色へと移行しつつある。しかも、10月15日に予定されていたバイデン候補との2回目の討論会は、中止された。この結果、「直接対決」で支持率浮揚を大統領が狙える機会は、22日に予定されている最後の討論会のみとなった。 このようにトランプ陣営に不利な状況が続く中、金融市場では、「バイデン候補が勝利した方が米国の経済成長は高まるのではないか」「ホワイトハウスに加えて上下両院の過半数を民主党が支配する『トリプルブルー』シナリオがベストではないか」といった声が広がりつつある』、「金融市場」で「『トリプルブルー』シナリオがベストではないか」といった声が広がりつつある」、どうしてだろう。
・『バイデン勝利なら株高?  だが、そうした「バイデン勝利なら株高」的な見方のにわかな浮上は、根強い株高期待という「結論ありき」の中から出てきた、ご都合主義的な色彩が濃いものであるように思う。 冷静に考えればすぐ分かることだが、トランプ再選でもバイデン勝利でも、新型コロナウイルス感染拡大という新たなタイプの危機への対応に注力している連邦準備理事会(FRB)のスタンスは、不変である。仮にコロナ危機が今後終息するとしても、次は「平均インフレ目標」の達成に向けてプラス2%超への物価上昇率の加速を促すステージが待っている(当コラム10月6日配信「手詰まりから机上の空論に頼って『日銀化』したFRB」)。) そして、そうしたFRBの方針が次に見直されるのは、かなり先のことになる。ウィリアムズ・ニューヨーク地区連邦準備銀行総裁は10月7日の講演の中で、金融政策の枠組みは「おおむね5年ごとに見直す」と述べた。次は25年ごろという話になる。 それより前、22年2月上旬に任期が満了するパウエルFRB議長が次の大統領の意向により交代させられる場合には、金融政策の路線転換が模索されることも想定できる。だがそれは、金利が上がるタカ派的な方向への転換ではないだろう。結局、米国の超低金利と「カネ余り」状況は、今回の大統領選の結果とは関係なく、続いていく可能性が高い。 では、財政政策はどうだろうか。最近、「バイデン勝利なら米国債イールドカーブはベアスティープ化する(長期・超長期の金利が上昇して米国債の利回り曲線の右肩上がりの傾斜がきつくなる)」という説が市場の一部で出ているが、うのみにするわけにはいかない。 バイデン勝利でもトランプ再選でも、程度の差はややあるにせよ、米国の財政事情がこの先一段と悪化していくという大枠に変わりはないことを押さえておきたい。 超党派で政策提言を行っている米国の民間シンクタンク「責任ある連邦予算委員会(Committee for a Responsible Federal Budget)」は、10月7日に発表した報告書で、トランプ、バイデン両候補の選挙公約を基にした、向こう10年間の米国の財政への影響についての試算を明らかにした。 それによると、バイデン候補の公約に沿えば5兆6000億ドル、トランプ大統領の公約に沿えば4兆9500億ドル(いずれも中央値)、それぞれ政府債務が10年間で膨らむ。これを10年後の政府債務残高対GDP比で見ると、バイデン候補の場合は128%、トランプ大統領の場合は125%に上昇する。どちらが勝っても大きな差があるわけではない。 さらに、米財務省はプライマリーディーラーなどの市場参加者と対話しながら国債管理政策を慎重に行っていくはずであり、米国債イールドカーブの一方的なベアスティープ化を促すとは考え難い(利払い負担が重くなってしまうので連邦政府が損をする)。 また、金利の水準が上がれば、投資対象としての魅力が増すので、米国内外の投資マネーによる買い需要は自然と増える。 加えて言えば、FRBは時期尚早の長期金利上昇を抑制するはずだという見方が十分成り立つ。パウエル議長率いるFRBがコロナ危機の中で、長期金利を抑え込むために無制限の買い入れをすると宣言する一幕もあった。長期金利は、「供給(発行)」増には必ずしも連動せず、ダイナミックに動く「需要」との交点で決まってくる。長期金利は米大統領選が終わった後も、その結果いかんにかかわらず上がりにくいと、筆者はみている』、「米国の財政への影響・・・どちらが勝っても大きな差があるわけではない」、なるほど。
・『やはり金利は上昇しにくい  ただし、一つ注意しておきたいのが、以前にこのコラムでも触れた、選挙結果がなかなか確定しない、さらにはトランプ大統領がホワイトハウスに「居座る」シナリオである(当コラム9月15日配信「大統領選挙で負けても『トランプ氏が堂々と居座る』リスクあり」)。トランプ支持者が街頭でバイデン支持者と衝突し、内乱のような様相を呈するリスクシナリオも排除できない。 共和党は支持者数千人を動員して、11月3日の大統領選に関連して期日前投票所や郵便投票の回収箱に不正がないかを見張らせようとしている。州によって規制は異なるが、投票所の外に銃を持って威圧する集団が現れるのではないかと危惧する人もいる。そんな中で明るみに出た、極右武装グループによるウイットマー・ミシガン州知事(民主)を拉致して州政府を転覆させようとした企ても、不気味である。 米国の「分断」が深まり、政治的・社会的な混乱が長引く場合は、経済活動にネガティブであり、株価は一時的に急落、米国債は「質への逃避」で買い進まれるだろう。 いずれにせよ、米国で(そして日欧でも)金利は上昇しにくい』、「内乱のような様相を呈するリスクシナリオも排除できない」、やはり要注目のようだ。
タグ:ミシガン州 日経ビジネスオンライン 蟹瀬誠一 ダイヤモンド・オンライン 上野 泰也 トランプ大統領 JMM 冷泉 彰彦 (その49)(米大統領選を前に「州知事の拉致未遂事件」が起きた理由、大統領選後に起きうる5つの危機、トランプ「自爆」の中で浮上した「バイデン勝利=株高」説をどうみるか?) 「米大統領選を前に「州知事の拉致未遂事件」が起きた理由」 「オープンキャリー」 大統領選挙直前にミシガン州庁舎を襲撃して、グレッチェン・ウィトマー州知事(民主党)らを拉致する計画をしていた「ミリシア(民兵)」と呼ばれる極右武装勢力 事前に察知した捜査当局によって13人が内戦を扇動した容疑で逮捕 ミリシアの存在が合衆国憲法で認められている 「崇高な思想とはまったくかけ離れた、白人至上主義者たちや政府や警察の権威主義を敵視する危険極まりない過激派集団」 ミリシアやネオナチが活動を活発化 トランプはミリシア に対して「引き下がって待機せよ!」と語りかけて アンチ・ファシズム運動、略してアンティファに対しては「テロ組織に認定してやる!」と正反対の対応 トランプの敗北が濃厚だが法廷闘争を仕掛ける可能性も トランプこそが大量にウイルスをばらまくスーパースプレッダーの可能性が高い 今年の大統領選挙はアメリカ史上まれに見る大混乱になることだけは間違いない 大統領選後に起きうる5つの危機」from911/USAレポート 「多くの共和党政治家が「トランプ後」への備えを始めている」、沈みゆく船からは逃げるが勝ちなのだろう バイデン陣営としては僅差と圧勝では大違い まず選挙人数で僅差の場合は、州レベルで僅差という結果になったケースについて異議申し立てをすれば当落がひっくり返る危険性があります。もっと言えば、トランプ派の一部が暴徒化するとか、法廷闘争になって泥仕合になるという可能性も出てきます。 一方で、トータルで大差となれば、いくらトランプが吠えても、共和党や地方政府は無視するでしょうから結果の確定が早くなる また、圧勝すれば民意の示すところはトランプの4年間についての全面的な不信任ということになります。ですから、民主党として、そしてバイデン新政権としては政策の変更、もしくはオバマ時代への回帰が容易に 共和党内のトランプ落選運動 政局の焦点はむしろ「トランプ後」に移ってきている 1点目は、COVID19の感染拡大 2点目はその経済 当面は、バイデンショックということはないでしょう 3点目は対中交渉 米中関係については、バイデン政権となれば改善の方向とはなると考えられますが、一筋縄では行かないと見たほうが良さそうです 4点目は、トランプ訴追という問題 アメリカの「政治の良識」としては、前大統領の訴追はしたくないというのは民主党の長老たちの本音だと思います。国家の品格に関わるからです。ですが、民主党の中でも左派は違います 落選後には第三国に亡命などという可能性を本人は匂わせているようですが、合衆国の威信にかけて、軍やFBIはこれは阻止に動くのではないでしょうか 5点目は、最高裁判事の構成 大統領選というのは通過点に過ぎず 11月以降のアメリカの政局は波乱含み 「トランプ「自爆」の中で浮上した「バイデン勝利=株高」説をどうみるか?」 トランプ大統領はかなり無理をしたのではないかという疑念 このステロイド系薬剤の副作用が出たのではないかと推測する人もいた不安定な言動が、退院直後のトランプ大統領にはいくつかあった ホワイトハウスは完全に混乱している 「金融市場」で「『トリプルブルー』シナリオがベストではないか」といった声が広がりつつある」 バイデン勝利なら株高? 米国の財政への影響 どちらが勝っても大きな差があるわけではない やはり金利は上昇しにくい 内乱のような様相を呈するリスクシナリオも排除できない
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環境問題(その7)(経産省「石炭火力発電9割休廃止方針」の欺瞞 専門家が指摘、日本人は南極の国家的な重要性をわかってない 科学観測だけで処理不能な問題が起こってくる、モーリシャス座礁事故1か月 影響は?原因は?、モーリシャス沖で座礁 海図見間違えたか) [世界情勢]

環境問題については、5月25日に取上げた。今日は、(その7)(経産省「石炭火力発電9割休廃止方針」の欺瞞 専門家が指摘、日本人は南極の国家的な重要性をわかってない 科学観測だけで処理不能な問題が起こってくる、モーリシャス座礁事故1か月 影響は?原因は?、モーリシャス沖で座礁 海図見間違えたか)である。

先ずは、7月4日付け日刊ゲンダイ「経産省「石炭火力発電9割休廃止方針」の欺瞞 専門家が指摘」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/275540
・『梶山弘志経済産業相は3日の記者会見で、二酸化炭素(CO2)を多く排出する非効率な石炭火力発電所の9割を休廃止し、脱炭素社会を目指すことを正式に発表した。2030年度までに非効率な石炭火力を9割程度、およそ100基分を休廃止させ、再生可能エネルギーの主力電源化を目指すという。 小泉進次郎環境相が化石賞を受賞するなど、国際社会で強い批判を受けてきた日本の石炭火力発電の前のめりぶりが大幅に改善されたかのように報じられたが、専門家はどう見たのか。気候ネットワークの桃井貴子・東京事務所長は「100基休廃止するというのはインパクトのある数字だが、日本政府にとって石炭火力維持の既定路線の確認に過ぎなかった」と指摘する。 「今回、経産省が言っているのは非効率の石炭火力発電所の9割を2030年までに休廃止するが、新規建設を止めるわけではないし、効率のいいものは維持するということなので問題だと思っています。実体的には高効率の26基の石炭火力発電を維持し、現在建設中の新規石炭火力16基も認めるということなので、2030年以降も3000万キロワット以上の運転を容認することになります 。本来であれば、パリ協定の目標である気温上昇を1.5度に抑えるためには先進国は遅くとも2030年までに石炭火力をゼロにしなければならないのですが、不十分です。また、2030年までどのように休廃止していくのか、その経路や手段について不明です』、「非効率の石炭火力発電所の9割を2030年までに休廃止するが、新規建設を止めるわけではないし、効率のいいものは維持するということなので問題」、「本来であれば、パリ協定の目標である気温上昇を1.5度に抑えるためには先進国は遅くとも2030年までに石炭火力をゼロにしなければならないのですが、不十分です」、一般紙の報道も、単なる大本営発表ではなく、ここまで解説をしてほしいものだ。
・『そもそも、日本は温室効果ガス削減目標は甘いですし、いまのエネルギー基本計画でつくられている長期需給見通しや電源構成もパリ協定に整合していません。この100基休廃止という数字はインパクトがあり、いままで石炭火力をまったく放置しすぎていたので、既存の石炭火力発電をやめるというのは一定の評価はできます。しかし発電規模などを見れば、2030年の時点でだいたい石炭火力の電源構成は20~26%になると見込まれます。 第五次エネルギー基本計画に示された、石炭の<高効率化・次世代化を推進するとともにクリーンなガス利用へのシフトと非効率石炭のフェードアウトに取り組む>という既定路線を具現化し、エネルギーミックス(電源構成)に示された石炭26%の達成に実態を近づけたものにすぎません。イギリスやカナダなど多くの先進国が掲げるように2030年までに石炭火力発電をゼロにするということが先進国としての責務ではないでしょうか」 世界のトレンドになっているSDGs(持続可能な発展)に逆行する石炭火力発電の温存が、逆に日本経済にダメージを与える懸念がますます強まっている』、確かに「SDGs」による圧力も直視すべきだろう。

次に、10月17日付け東洋経済オンラインが掲載した国立極地研究所・総合研究大学院大学名誉教授の神沼 克伊氏による「日本人は南極の国家的な重要性をわかってない 科学観測だけで処理不能な問題が起こってくる」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/379577
・『はじめて人類が足を踏み入れてから100年以上、いまなお南極では観測と発見が続いている。極地だからこそ学ぶことのできる教訓は、実はわたしたちの未来にとって重要なことばかり。南極で2度越冬した神沼克伊氏の新著『あしたの南極学』から、一部を抜粋・再編集してお届けします』、「南極で2度越冬した」、とはご苦労なことだ。
・『日本は南極大陸への国策必要  南半球の南極大陸およびその周辺は、北半球に住む私たち日本人を含む地球人にとって常に注意が必要な地域です。日本は文化度、経済力などを考えると、それができる力と義務があります。 日本人の南極への関心は、1957年の南極観測から始まりました。以来今日まで、南極は科学観測の場として考えられています。「科学者が望んだから始めたんだ。だから南極は科学者に任せておけばよい」という考えが、日本政府にはあるのではないかと思います。しかし、これまでも科学者だけでは対応できない問題が起きていました。 「南極条約」の締結がその始まりです。アメリカの科学者たちの熱望によってアメリカ政府が動き、外交官の活躍で、1961年に発効しました。この条約により、外交的には日本人の南極での活動も保証されるようになりました。日本ではこの条約は外務省が当時の南極観測を主導していた科学者たちの協力で縮約に力を注ぎました。 その後の南極は南極条約のもと、提起された諸問題を解決してきました。その中には南極域でのオキアミのような海洋資源や鉱物資源の保存や取り扱いの問題などがありました。 「南極アザラシ保存条約」「南極の海洋生物資源の保存に関する条約」などが採択され、発効しています。1991年には「環境保護に関する南極条約議定書」が採択され、南極の自然環境を包括的に保護する枠組みが構築されました。) 日本は国内法を整備して、この議定書を1998年に批准し、発効させました。この議定書により、南緯60度以南の地域における人間の活動に対する環境影響評価の実施、鉱物資源探査活動の禁止、動植物相の保護、廃棄物の処理・管理、海洋汚染の防止、南極特別保護地区の設定などの取り決めが合意されました。また国内では「南極地域の環境保護に関する法律」が施行され、環境省が南極の環境保護に責任を持つことになりました。 国際問題ですから、これらの問題に関しては外務省が主導し、文部科学省(実際には国立極地研究所)や環境庁が協力してきました。海洋資源問題では農林水産省、鉱物資源では経済産業省も関係があります。南極は、IGY(国際地球観測年)の頃とは大きく事情が異なってきました。 当時は科学観測の名のもとにすべてが処理されていましたが、現在は資源問題が絡み、多くの政府機関が関係する、あるいはしなければならない時代になっています。南極に関係する省庁が横並びで増えていっても、各省庁が同じように南極を理解しているわけではありません。南極をいちばん知っているはずの極地研究所の教官にしても同じで、自分の専門分野はともかく、その他の事象について、広い視野と見識がある人は極めて少ないです』、確かに「南極」の位置づけが国際的に変化してきているようだ。
・『行動許可証取得にあたって環境省からヒアリング  21世紀になって間もないころの話です。私は取材のため、公務以外で初めて南極に行くことになり、旅行業者を通じて環境省に南極での行動許可証を申請しました。すると環境省の担当者から私に電話があり、私の南極での行動をいろいろ聞いてきました。 私は現地の具体的な様子、例えばペンギンルッカリーの規模や状況、ミナミゾウアザラシのハーレムの位置、その周辺での私の活動などを丁寧に説明しました。そのときの担当者が南極の知識をどの程度持っていたかは知りませんが、とにかく相手は素人という意識で、私は丁寧に説明しました。 もちろん行動許可証は問題なくもらえましたが、私自身は何となく自作自演で許可を取ったような、すっきりしない気分でした。条約発効後間もないころで、環境省も勉強期間であったでしょう。現在昭和基地以外の場所に行く人たち、とくに観光客に環境省がどのような対応をしているのかは、私は知りません。 各省庁間での南極への認識は、ずれがあるのです。ほとんど知識がないので、文科省に従うというような姿勢だとよいのですが、半端な知識で自己主張されるのがいちばん困りました。 ある省庁の観測したデータを南極観測の国際会議で使わせてほしいと頼んだところ、ついに許可が出なかったことがあります。「税金で採ったデータである。外国人に使わせる理由がない」などと主張されました。私としては秘密にするほどのデータではなく、外国の研究者から、「日本が調査している海域だからそのデータを見せてほしい」という注文でした。 秘密にしたほうがいいデータもあるでしょうが、それほど秘密性のあるデータでなければ、自由に公開したほうが、日本にとっても有利なはずですが、その省庁の担当者は、狭義の国益一辺倒でした』、「狭義の国益一辺倒」の官僚が、「税金で採ったデータである。外国人に使わせる理由がない」と主張したとは驚いた。
・『「科学観測」だけで処理できない問題が起こってくる  これから南極で起こる諸問題に対処するためには、どうしても日本国として南極をどうするか、基本政策がぜひ必要です。「ナショナルポリシー」という感覚でいいと思いますが、国として南極をどのように使うかの基本政策です。これからは「科学観測」という一見心地よい響きの言葉だけで処理できない問題が起こってくることは明らかです。 現実に捕鯨問題は続いています。現在の南極での調査捕鯨はほとんど南極条約の地域の外で行われているかもしれませんが、南極海の生物資源利用であることは間違いありません。北半球の島国ではできないことを、許される範囲で南極でもできれば、また国民の視野も広がるのです。そのためには国策として南極へのビジョンが必要です。 2010年代になって、「海上自衛隊は南極観測の輸送支援から手を引く」という噂が流れ始めました。1965年ふじが就航したとき、その運用が海上自衛隊に託されました。当時、一部の識者からは海外派兵であるとの批判も出ました。 しかし海上自衛隊の中では好意的に受け取られ、一般には経験できない地域に行けると歓迎されているとの話も聞きました。事実、私が観測隊に参加したときも、南極に行きたくて海上自衛隊に入ったという乗組員が何人もいました。 しかし、防衛庁から防衛省になり、自衛隊の事情も大きく変わったようです。最近目立つのは潤沢な予算です。予算規模を考えても、限られた隊員の中から毎年200名近い人を南極に派遣するのは確かに大変だろうとは想像できます。海上自衛隊の海外への派兵は南極ばかりではなくなりもしました。南極観測に対して、自衛隊内ではかつての魅力が薄れてきていたとしても、仕方のないことです』、「海上自衛隊」にとっては、「南極」の「魅力が薄れてきて」いるのは確かなようだ。
・『きちんとした国家的方針がないと大損する  しかし文科省としては南極観測のためには、観測船の運用は不可欠です。ではどうすべきか。このレベルになると、やはりしっかりした国策があって、そのうえで、担当する部署を決め、南極に興味関心を持ち続け、地球人としての役割を果たすのが、本当の文明国だと私は考えます。 外国の場合、チリの南極研究所は外務省に所属し、南極に関してはすべて外務省が所管しているようです。領土問題も絡み、陸軍、海軍、空軍も協力し、それぞれが南極に観測基地を有しています。もちろん研究者が運営する基地もあります。2000年前後の南極研究所の所長はチリの在日日本大使を務めた方でした。私が訪問するといつも懐かしそうに、皇室との会談を話題にしていました。 イギリスは植民地省が南極を担当していました。21世紀の今日の状況は知りませんが、少なくとも20世紀まではそうでした。南極条約の範囲外ではありますが、フォークランド諸島も植民地として維持されているのです。南極半島の領有権主張も同じです。 日本で南極に関する基本政策を考える場として、南極庁などという機関を求めるつもりはありませんが、せめて南極に関する共通認識が得られる常設の会義は「あってもよい」、あるいは「あるべき」と私は考えます。日本としてきちんとした国家的方針がないと、国際的には問題が起きたとき適切な処理や対応ができず大損をする可能性があります』、「きちんとした国家的方針」の構築は必要なようだ。

第三に、8月24日付けNHK NEWS WEB「モーリシャス座礁事故1か月 影響は?原因は?」を紹介しよう。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200824/k10012580611000.html
・『「神はまずモーリシャスを作り、それをまねて天国を作った」と言われるほどの美しさ。インド洋の島国モーリシャスは、真っ白な砂浜と豊かな自然に恵まれ、世界中の観光客を魅了してきました。 ところがことし7月、その沖合で日本の海運大手がチャーターした貨物船が座礁し、燃料の重油などが大量に流出。深刻な環境汚染を引き起こしています。 事故から1か月、被害の実態はー。そして焦点となっている、事故原因や補償の問題はどうなっているのか。取材しました。 (ヨハネスブルク支局 別府正一郎/国際部 高塚奈緒 松崎浩子 田村銀河/ネットワーク報道部 田中元貴)』、興味深そうだ。
・『「インド洋の貴婦人」モーリシャス   モーリシャスはアフリカ大陸の東、インド洋にある人口約127万の島国で、広さは約1980平方キロメートルと、東京都とほぼ同じです。かつてオランダ、フランス、イギリスの植民地支配を受け、人口の約70%は植民地時代に移り住んだインド系の人たちです。 美しい白い砂浜やさんご礁、希少な生物が生息する豊かな自然があることから「インド洋の貴婦人」とも呼ばれ、ヨーロッパなどから年間130万人以上が訪れるリゾート地で、観光収入がGDP=国内総生産の約10%を占めています。 島内には、国際的に重要な湿地の保全を定めた「ラムサール条約」に登録された場所が3か所あり、海岸の環境保全や、固有種を含む多様な生物の保護も進められていました』、「モーリシャス」は有名な観光地だが、そこでの海難事故というのには違和感があった。
・『日本の貨物船が…  事故が起きたのは、現地時間の7月25日午後7時すぎ(日本時間26日未明)。岡山県の長鋪汽船が所有し、商船三井がチャーターしていた貨物船「WAKASHIO」が島の沖合で座礁しました。 それから10日以上たった8月6日、燃料の重油の流出が始まりました。商船三井によりますと、貨物船に積まれていた燃料は、重油約3800トンと軽油約200トン。このうち重油約1000トンが海に流出したとみられています。 商船三井は、日本時間11日朝までに約460トンを回収したとしたうえで、13日には船内に残っていた油についてもほぼ回収したと発表しました。 記者会見で、商船三井は「モーリシャスをはじめ、関係の皆様に多大なるご迷惑をおかけし、深くおわび申し上げます。影響を最小限に食い止めるよう、解決まで誠意を持って対応したい」と述べました。 また、長鋪汽船は「当事者としての責任を痛感しており、賠償については、適用される法に基づき、誠意を持って対応させていただくつもりです」というコメントを発表しました』、「座礁」してから「重油の流出が始ま」った11日間に一体、何をしていたのだろうか。無駄に時間を浪費したような印象を受ける。
・『重油流出 環境汚染の実態は  モーリシャス政府によりますと、今回の事故で、島の南東部10キロ余りの海岸線と周辺の海を中心に、深刻な汚染が広がりました。 地元の人たちは美しい海を守ろうと、手作りのオイルフェンスを海に浮かべて重油を岸から遠ざけたり、漂着した重油を手ですくってバケツに入れたりしました。 しかし、さまざまな魚やカニが死んでいるのが確認されるなど、生態系への影響が懸念されています。 漁業者の間からは、漁で生計を立てられなくなるのではないかと、先行きを心配する声が聞かれます』、船主や「商船三井」は何をしていたのだろう。
・『マングローブ「油付着した状態続くと半年で枯れる」  モーリシャスの自然環境で重要な役割を果たしているのが、沿岸に広がるマングローブ林です。 多種多様な生物が生息し、貝や魚、鳥などの生態系を支えていますが、重油の一部は「ラムサール条約」に登録された湿地のマングローブ林周辺にも漂着。 マングローブ林は根が複雑に入り組んでいたり、周辺が湿地帯で近づくのが難しかったりすることから、除去作業は難航しています。 国際マングローブ生態系協会の理事長で、琉球大学名誉教授の馬場繁幸さんは、「マングローブの根は栄養分を吸収し、呼吸をする役割があるが、油が付着すると、毒性の成分がしみ込み、細胞膜が壊れ、枯れてしまう」と指摘します。 さらに馬場さんは、過去の流出事故の被害状況を鑑みると、「マングローブに油が付着した状態が続くと、半年くらいたってから枯れてしまうだろう」として、一刻も早い除去作業の必要性を訴えています』、時間との勝負のようだ。
・『広がる国際支援  今回、モーリシャス政府は「環境上の緊急事態」を宣言し、国際社会に緊急の支援を求めました。海外メディアも大きく報じ、国際的な支援が広がっています。 旧宗主国フランスのマクロン大統領は8月8日、ツイッターに「生物の多様性が危機にひんしているときには緊急に行動する必要がある」と投稿し、オイルフェンスなど物資の提供や、専門家の派遣といった支援を打ち出しました。 日本からは8月10日と19日、国際緊急援助隊として海上保安庁や環境省などから合わせて13人の専門家が派遣され、油の流出状況や環境への影響について調査を行っています。また日本の企業も、油だけを吸い取る特殊な繊維を使った吸着剤を現地に送りました。 このほかインドや中国なども、油の回収作業に人を出したり物資を提供したりするなど、支援を行っています』、「旧宗主国フランス」の本腰が入った支援に比べ、当事国の「日本」の支援は遅く、中途半端な印象だ。
・『明らかになった貨物船の航跡  今後の大きな焦点は、事故の原因究明です。 【動画】貨物船の航跡 AISと呼ばれる、船の位置などを電波で発信する装置のデータ分析を行っている「IHIジェットサービス」が解析したところ、貨物船は7月4日、中国を出発し、シンガポールを経由したあと、インド洋を西に進んでいました。 モーリシャスの南東約2キロの沖を航行していた7月25日、1分余りの間に針路をほぼ90度右に変え、10ノット前後で進んでいた速度も1ノット以下に低下していたことがわかりました。 船舶事故に詳しい神戸大学大学院の若林伸和教授は「通常、このように人為的に船の向きを変えることはなく、船底が何かに当たって、急に向きが変わったのではないか」と述べ、この衝突が座礁の原因となった可能性が高いと指摘しています。 分析データによりますと、貨物船はその後、北に約1キロ漂流し、10日余りたった8月5日に電波の発信が止まりました。 また、この海域を航行するほかの船舶のデータと比べると、貨物船は北西に約16キロ離れ、モーリシャスの沿岸近くを進んでいたこともわかりました。 若林教授は「周辺はさんご礁も多く、注意が必要な場所だ。危険なところにわざわざ寄っていくことは考えられない」と述べ、貨物船が通常とは異なる航路をとったことが事故につながったのではないかという見方を示しています。 貨物船がこうした危険とも言える航路をとっていたことを、会社側は把握していたのでしょうか。 貨物船をチャーターした商船三井は「船が通常の航路からかい離していたことは把握しているが、当社は船をチャーターした立場であり、かい離した原因などについては、船の所有者である長鋪汽船に確認してほしい」とコメントしています。 また、長鋪汽船は「航路は把握しているが、現在、当局が捜査しているところであり、コメントは控えたい。座礁の原因は、当局の聴取が終わったあと、改めて乗組員に事情聴取する予定だ」とコメントしています』、「さんご礁も多く、注意が必要な場所」、なのに「10ノット前後で進んでいた」とは不可解だ。
・『事故の原因究明は  事故の原因究明に向けては、8月18日、現地の警察がインド人の船長とスリランカ人の副船長の2人を、航行の安全を脅かした疑いで逮捕。裁判所が保釈を認めるかどうか判断するため、2人は25日に出廷する予定です。 また、警察はNHKの取材に対し、逮捕された2人のほか、スリランカ人やフィリピン人の乗組員18人からも当時の状況について話を聞いていることを明らかにしました。 事故をめぐって地元の一部メディアは、乗組員たちがインターネットへの接続を求めて島に近づいた可能性もあると報じましたが、モーリシャス政府の当局者はロイター通信に対し、この見方を否定しています。 警察関係者は「さまざまな臆測が出ているが、1つ1つを慎重に捜査している」と話しています』、なるほど。
・『事故の賠償は   今回の事故による作業費用や賠償額が最終的にどれぐらいに上るのか、確定するのはこれからです。 貨物船などの油流出事故の場合、賠償責任は船の所有者が負うと、国際的な条約「バンカー条約」で定められています。 今回の事故では、所有者は岡山県の長鋪汽船となります。長鋪汽船が加入する相互保険組合の「JAPAN P&I CLUB」広報室によりますと、事故の賠償額は「船主責任制限条約」という国際条約で船の容積に基づいて定められています。この条約に基づくと、今回のケースでは、モーリシャス政府への賠償額の上限は日本円で約19億円になるということです。 また、これとは別に長鋪汽船が行っている油の回収費用などについては保険が適用され、その上限は約1060億円だということです』、「賠償額の上限は日本円で約19億円」、「油の回収費用など・・・保険が適用され、その上限は約1060億円」、「回収費用」の「上限」の方が大きいとは何か然るべき理由があるのだろう。
・『貨物船はどうなる  船体の処分も始まっています。座礁後に亀裂が入っていた貨物船は、8月15日、大きく2つに割れました。 モーリシャス当局は、船体の前の部分を沖合10キロ余りの地点までえい航し、沈めて処分する計画を決め、20日に作業が始まりました。 これに対し、環境NGOのグリーンピース・アフリカなどは「貨物船を沈める処分方法では、生物多様性を危機にさらし、海を汚染させる」として、批判する声明を出しています。 また、ブリッジなどがある船体の後ろの部分については、当局は中に残っている油を取り除いたうえで、座礁した場所で解体する計画です』、「貨物船」の処分については、船主の「長鋪汽船」はつんぼ桟敷なのだろうか。
・『“二重苦”のモーリシャス 問われる日本の役割  モーリシャスはかつてサトウキビ以外に目立った産業はありませんでしたが、政情の安定とともに外国からの投資を積極的に受け入れ、外国企業が進出する新しいオフィス街もできるなど、経済発展を続けてきました。 しかし今回の事故は、経済の柱の1つである観光業への打撃になると懸念されています。 モーリシャスは新型コロナウイルスの感染対策として、3月以降、国境を事実上閉鎖し、観光業界はすでに大きなダメージを受け、現地の人たちが将来への不安を募らせていたさなかの座礁事故でした。 モーリシャス政府によりますと、重油流出の影響を受けたのは島の海岸線の5%以下だということですが、被害を受けた生態系とともに、観光イメージの回復には長い時間がかかるかもしれません。 今回、日本はモーリシャスの環境汚染の当事者です。なぜ事故が起きたのか、現地当局とともに原因の究明を進め、再発防止策とともにつまびらかにする必要があります。 未曽有の事故に見舞われたこの美しい島国の復興をいかに支えていくのか、国際社会から問われています』、同感である。「重油流出の影響を受けたのは島の海岸線の5%以下」、予想外に少ないようだ。

第四に、9月11日付け日テレNEWS24「モーリシャス沖で座礁 海図見間違えたか」を紹介しよう。
https://www.news24.jp/articles/2020/09/11/10719726.html#:~:text=%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%89%E6%B4%8B%E3%81%AE%E3%83%A2%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%82%B9%E6%B2%96,%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%8C%E5%88%86%E3%81%8B%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82&text=%E3%81%9D%E3%82%8C%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%81%A8%E3%80%81%E3%80%8C%EF%BC%B7%EF%BC%A1%EF%BC%AB%EF%BC%A1%EF%BC%B3%EF%BC%A8%EF%BC%A9%EF%BC%AF%E3%80%8D,%E3%81%8C%E3%81%82%E3%82%8B%E3%81%A8%E3%81%84%E3%81%86%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%A7%E3%81%99%E3%80%82
・『インド洋のモーリシャス沖で日本の貨物船が座礁した事故で、貨物船の船長や乗組員が海図の見方を間違えていた疑いがあることが分かりました。 これは、貨物船「WAKASHIO」が登録されているパナマの海運当局が事故原因の調査報告の明らかにしたものです。 それによりますと、「WAKASHIO」には電子海図が搭載されていましたが、船長や乗組員が縮尺の見方を謝り、浅瀬への接近に気付かなかった疑いがあるということです。 また、通常の航路を外れてモーリシャス島に近づいたのは船長の指示によるもので、乗組員がインターネットや電話で家族と連絡をとるためだったとしています。 商船三井が運航する「WAKASHIO」の座礁事故をめぐっては、およそ1000トンの重油が流出し、生態系への長期的な影響が懸念されています』、「電子海図が搭載されていましたが、船長や乗組員が縮尺の見方を謝り、浅瀬への接近に気付かなかった疑いがある」、「モーリシャス島に近づいたのは船長の指示によるもので、乗組員がインターネットや電話で家族と連絡をとるためだった」、いずれもお粗末極まる。商船三井も法的責任はないとはいっても、事故直後の対応の不手際、これだけ国際的な問題に発展したこと、などを考慮すると、もっと積極的に対応すべきなのではなかろうか。
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