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情報セキュリティー・サイバー犯罪(その6)(楽天「転職元の機密流出で社員逮捕」仰天の弁明 真っ向からぶつかるソフトバンクと楽天の主張、LINE個人情報問題でユーザーにとっての「本当の不利益」とは何か、「何を今さら」前からわかっていたLINEの危うさ) [社会]

情報セキュリティー・サイバー犯罪については、2月16日に取上げた。今日は、(その6)(楽天「転職元の機密流出で社員逮捕」仰天の弁明 真っ向からぶつかるソフトバンクと楽天の主張、LINE個人情報問題でユーザーにとっての「本当の不利益」とは何か、「何を今さら」前からわかっていたLINEの危うさ)である。

先ずは、1月13日付け東洋経済オンラインが掲載した ITジャーナリストの本田 雅一氏による「楽天「転職元の機密流出で社員逮捕」仰天の弁明 真っ向からぶつかるソフトバンクと楽天の主張」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/403493
・『なんともお粗末な、産業スパイが疑われる事件が発覚した。 2019年12月31日までソフトバンクに在籍していたエンジニアが、最新の5Gネットワークに関する営業秘密を不正に持ち出し、翌日の2020年1月1日には競合の楽天モバイルに転職していたという事件だ。 ソフトバンクは情報の不正持ち出しを2020年2月に察知し、警視庁に相談。警視庁は1年近い捜査を経て、2021年1月12日に合場邦章容疑者を不正競争防止法違反の容疑で逮捕した。 執筆時点では、合場容疑者がどのような意図で流出した情報を使おうとしていた(使った)のか、詳しい動機や使途についてはわかっていない。 なお、この逮捕に際し、ソフトバンク、楽天モバイルの両社は、現時点で両社が把握している情報や見解をニュースリリースで発表しているが、その主張は正反対のものだ。 ソフトバンクは5Gを含む回線インフラ構築に関する技術情報が持ち出されたと主張しているが、楽天モバイルは技術情報は含まれていないと(執筆時点の発表では)主張している。 この事件を「お粗末」と表現したのは、その手法が‟産業スパイ”というにはあまりにも稚拙であることに加え、ソフトバンクの情報管理体制、楽天モバイルの広報対応ともに疑問符をつけざるをえないものだったからだ。【2020年1月12日19時45分追記】初出時、ソフトバンクの社名表記に誤りがありましたので修正しました』、両社の体制には「疑問符をつけざるをえない」、というのは確かだ。
・『遠隔接続で添付ファイルを自分自身にメール  合場容疑者はソフトバンクに在籍する最終日に社内サーバーに接続し、メールの添付ファイルとして自分自身が設定していたメールアドレスに送信していた。 あくまでも一般論だが、企業で使われているメールサーバーは情報流出や不正使用を防止するため、何らかの監視機能が設定されていることが多い。携帯電話事業者など情報機密が多い企業ならばなおさらのことだ。 機密情報へのアクセス記録やファイルを添付しての社外への送信などが行われれば、それらを察知することは可能であり、たとえすぐさま察知できなかったとしても、後日、記録を検証することで不正持ち出しがどのように行われたのか、簡単に把握できてしまう。 エンジニアである合場容疑者が、これほど安易で発覚しやすい手法で情報を盗み出したことは驚きだが、一方でこれほど安易な方法で情報を流出させたソフトバンクの情報システムにも驚かされる。) ソフトバンクによると持ち出された情報は「4Gおよび5Gネットワーク用の基地局設備や、基地局同士や基地局と交換機を結ぶ固定通信網に関する技術情報」で、こうした技術情報を楽天モバイルが利用しないよう情報の利用停止や廃棄を求める民事訴訟を起こすことを発表している。 しかし、そのような重要情報をメール添付で簡単に送信できていたこと自体が、衝撃的と言わざるをえない。添付ファイルのスキャン、重要書類の添付を上長の許可制にするなどの対策を施していなかったということだろう。 また、最終営業日を過ぎている大晦日という間際のタイミングに、退職予定者が機密情報にアクセスできる状態だったことにも疑問を持つ。エンジニアの転職の場合、転職先に制約が設けられていないならば、退職が決まってからの一定期間、情報を遮断するといった措置を取るものだ。ところが、ソフトバンクは、そうした基本的な情報管理ルールもできていたかったことを示している。 無論、ソフトバンク自身も、自社のシステム、セキュリティーポリシーについては深く反省しているようだ。ニュースリリースの中で2020年3月以降、以下のような対策を行ったとしている。 +情報資産管理の再強化(管理ポリシーの厳格化、棚卸しとアクセス権限の再度見直し) +退職予定者の業務用情報端末によるアクセス権限の停止や利用の制限の強化 +全役員と全社員向けのセキュリティー研修(未受講者は重要情報資産へのアクセス不可) +業務用OA端末の利用ログ全般を監視するシステムの導入 もし自社システムに照らし合わせて不安を感じるならば、今回のケースを他山の石として、システム運用やセキュリティーポリシーについて見直すのもいいだろう』、「ソフトバンクは、そうした基本的な情報管理ルールもできていたかったことを示している」、本当にお粗末の極みだ。
・『真っ向からぶつかるソフトバンクと楽天の主張  一方、楽天モバイルはモバイル通信インフラ整備を急いでいる時期であり、合場容疑者が持っていただろうネットワーク構築ノウハウの詰まった情報を欲していた可能性があり、翌日から在籍していることからも、何らかの形でソフトバンクの情報が使われた可能性はある。 そうした疑いを受けないためにも、雇用する側(つまり楽天モバイル側)が自社の評判を傷つけないためにも、競合で働いていたエンジニアを雇用する際には、一定の冷却期間を置いたり情報管理の面でクリーンであるための対策を行うべきだが、楽天モバイルにはそのような節度が欠けていた。 明らかになっている事実関係だけをみれば、自社のインフラ整備を加速させるためにライバル社からエンジニアを情報とともに引き抜いたと思われても仕方がない。この件は氷山の一角で、さまざまな場面でライバルに追いつくために同様の手法を使っていたと受けとめられることは避けられない。 「楽天モバイル」というブランドにダーティーなイメージがつけば、同社が信頼を回復するまでには大きな努力が必要となる。 ブランドへの大きなダメージを緩和するには、真摯な姿勢で今回の事件に向き合うことが重要なことは言うまでもない。ところが、楽天モバイルが出したニュースリリースは驚くべきものだった。 「事態の解明に向け、警察の捜査に全面的に協力していくとともに、厳粛に対処してまいります」と結んでいるものの「弊社では、社内調査を徹底しており、現時点までに、当該従業員が前職により得た営業情報を弊社業務に利用していたという事実は確認されておりません。また5Gに関する技術情報も含まれておりません」と、楽天モバイル側に瑕疵はなく、情報も一切活用していないばかりか、そもそも技術情報があるという事実はないと主張していたのだ。 しかし、この主張が文面どおりならば矛盾が生じる。 情報を持ち出された側は(アクセス履歴やサーバーのログなどから)技術情報が持ち出されたと主張し、警視庁もそれを確信したうえで逮捕したにもかかわらず、持ち出したエンジニアを雇用した側は技術情報がないと主張しているからだ』、「楽天モバイル」が「5G」構築で遅れていたとしても、こんなにストレートに「ライバル社からエンジニアを情報とともに引き抜いた」とすれば、余りにお粗末すぎるやり方だ。。
・『楽天モバイル声明に内在する矛盾  最も大きな疑問は、合場容疑者が持ち込んだ情報について、楽天モバイルは内容を把握しているのではないか、と思わせる文章になっていることだ。 楽天モバイルは「当該従業員が前職により得た営業情報を弊社業務に利用していたという事実は確認されておりません」と主張しているが、営業情報を保有していない、あるいは把握していないという表現はしていない。 そのうえで「5Gに関する技術情報も含まれておりません」とある。このように言い切るためには、持ち出された営業情報の内容を把握できていなければならない。さらに深読みするならば、4G(LTE)に関する技術情報は含まれていた、とも受け取れる表現だ。 ソフトバンクが民事訴訟を起こせば、さまざまな事実が明らかになっていくだろうが、楽天モバイルの声明はダメージコントロールをするどころか、ダメージをさらに深くしてしまう要素が散りばめられている。 機密情報を持つエンジニアの転職には、どんな業種であっても(事の大きさの違いこそあれ)問題が存在するものだ。このため転職時のルールをあらかじめ設けている企業も少なくない。 今回は電子的な文書での持ち出しというわかりやすい形だったが、ノウハウや人脈といった「その人自身に紐づいている価値」までは持ち出し不可にはできない。昨今、注目が急速に高まっているという話題、問題では決してないものの、今回の事件は企業内の情報をどのように運用するべきか、改めての議論を巻き起こすだろう。 今後の成り行き、より詳細な経緯についても注目していきたい』、「合場邦章容疑者を不正競争防止法違反の容疑で逮捕」、この刑事裁判の場で真実が明らかになれば、「ソフトバンク」があえて「民事訴訟」を起こすまでもないだろう。「楽天」は大丈夫だろうか。

次に、3月26日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「LINE個人情報問題でユーザーにとっての「本当の不利益」とは何か」を紹介しよう』。
https://diamond.jp/articles/-/266589
・『何がいけなかったのか? LINE個人情報問題の真の論点  世の中には時間がたつにつれ、「いったい何が問題だったのか?」ということがわかりにくくなることがあります。LINEの個人情報管理に関する問題もその1つで、公表されてから1週間がたちました。大きく2つの点が問題とされました。 1つは、2018年8月から2021年2月まで、業務委託先の中国企業の4人の技術者に、国内サーバにある個人情報へのアクセス権限が与えられていたことです。LINEによれば、業務に必要な範囲でアクセス権限をつけて管理していたもので、当該期間で計32回のアクセスがあったそうです。現時点で、すでにこの権限は停止されています。 もう1つは、韓国のサーバに会員が投稿した画像・動画などのデータを保管していたことです。この件についてもLINEは、国内サーバにデータを完全移管すると表明しました。 ちなみにこれらの問題の発覚後、政府や自治体などはLINEの利用を停止しています。一方で、企業の公式アカウントや個人ユーザーがLINE離れをしているようには見えません。LINEの情報管理は、具体的に何がいけなかったのでしょうか。 1つめの問題の論点は明確です。中国の国家情報法により、民間企業を通じて利用者のデータが当局に渡るリスクがある。だから安全保障上、中国企業のエンジニアに日本人の個人情報を扱う権限を与えてはいけないのだ、というのが問題の本質です。 LINEはプライバシーポリシーで、データを国外で処理することがあることは明示していましたが、国名の明記はしてきませんでした。法律上問題はなくても、政治上大問題だということで、国会で論議になっているわけです。 2つ目の問題は、あまり論理的ではなくデリケートな心理問題のようです。私たちは画像や動画などの個人データを、クラウドを通じて保存することに慣れています。クラウドの先にあるサーバがどこの国にあるのか、日頃それほど心配して生活しているわけではありません。 クラウドの名前がiCloudやGoogleドライブだったら、なんとなくではありますが、自分のデータはアメリカに行っているような気がします。LINEはもともと韓国の会社(今は日本企業が買収)だったので、サーバが韓国にあるというのは、消費者心理としてはべつに不思議でも何でもないと私は思いました。 アメリカも韓国も同盟国なので、公式には問題がないはずですが、現実には大問題とされ、LINEはサーバを国内に完全移管する方針を表明しました。なぜ韓国はダメで、アメリカはいいのか。誰も説明してくれない、よくわからない問題となっています。 LINEの出澤剛社長は「信頼を裏切ることになり非常に重く受け止める」と述べ、「法的にどうこうではなく、ユーザーが感じる気持ち悪さに対応するセンスや配慮がなかった」とこの問題を説明しました。ビジネスパーソンらしい機微が感じられる謝罪です』、「サーバが韓国にあるというのは、消費者心理としてはべつに不思議でも何でもない」、にも拘わらず、「サーバを国内に完全移管する方針を表明」、とはやはり「ユーザーが感じる気持ち悪さに対応」したのだろう。
・『日本の企業やユーザーが不利益を被る3つのポイント  では実際のところ、今回の騒動は日本の企業やLINEユーザーに、どのような不利益をもたらしかねないのでしょうか。大きくくくれば3つ、リスクの問題、コストの問題、そして技術力不足の問題があります。 リスクの問題としては、中国企業に個人情報を扱わせていたら国家情報法の餌食になるというものですが、これが現実には防ぎ切れない話だというのが、厄介なポイントです。 今回はLINEの判断により、今後LINE経由で私たちの個人情報が中国政府には渡らないことになるわけです。ところがグローバル経済では、他にいくらでも中国企業に依存しているITサービスは存在しています。 たとえば、大連でコンタクトセンターを運営している企業や、中国製のスマホを販売している携帯電話会社などは、私たちのリスクをどう守るつもりなのか。考えれば考えるほど、問題は果てしなくなります。 1つわかりやすい例を挙げれば、今や女子中高生の多くがTikTokを使っているので、家族に女子中高生がいる官僚や大企業幹部の個人情報は、厳密に言えば一般人よりも危ないわけです。米国のトランプ前大統領が中国企業をバッシングするときに指摘していたのもそういうことで、言い出したらきりがないことから、バイデン政権下ではTikTokを問題にしないことにしました。これはそういうレベルの問題なので、あまり政治家の皆さんもLINE問題をつつかないほうがいいと私には思えます。 それよりも切実な問題は、2番目のコストです。日本は電力が高いです。昔から電気をたくさん使う業界は、積極的に海外移転するのがセオリーでした。アルミの製造はその最たる例だし、最近だとビットコインのマイニングも日本では行いません。それと同じで、電気をたくさん食うサーバは電気の安い国に移転するほうが安上がりです。 それが今回の問題で、LINEは国内に移管することを約束してしまった。LINEを保有するZホールディングスの株価が3月24日に続落したのは、23日にそう表明したことで巨額なコスト増への懸念が広まったことが原因とされました。移管するなら電力の安いアメリカだったのではないか、と個人的には思います』、「TikTok」がどうなったのかと思ったら、「言い出したらきりがないことから、「バイデン政権下ではTikTokを問題にしないことにしました」、そんな経緯があったとは初めて知った。「サーバ」を「電気」が高い「国内に移管することを約束」、「株価」も下落する訳だ。
・『高度なIT開発を日本企業に任せたら、どうなるか  そして3番目に、最も厄介なのが、国内におけるIT技術力不足の問題です。そもそも日本企業のIT開発において、中国にその一部を委託するのは、かつてのように国内のコストが課題だからではなく、国内の技術力では開発できないからという課題の方が、近年では大きくなってきています。 これは開発ジャンルにもよりますが、機械学習による画像解析や自動化のような仕組みづくりは、本当は中国のエンジニアに任せたほうが品質の高いものができます。いまだにローテクのATMが突然使えなくなるのが、日本の実力です。LINEが中国の関連会社に委託していたのは、コンテンツ監視業務やその自動化だったそうです。 「試しに」と思って、私はつい数日前、それほど有名ではない公人の顔写真にセリフを重ねたLINEスタンプをつくって、LINEに申請してみました。最初から公開するつもりはなかった単なる実験でしたが、深夜に申請を上げ、朝起きてみたらすでに申請は却下されていました。 人間が目視でチェックしていたら、あの写真が私ではないことを、この短時間で判別することはできないはずです。LINEの運営がしっかりしていることを再認識する一方で、今後こういった高度なIT開発を日本企業に担当させたらどうなるのか、という問題意識を持ちました。 これら3つの不利益が問題だとすると、「LINEにデータの管理不備があった」というのは簡単ですが、国として「信頼回復に努めてほしい」という際に、本当にどこまで何をすべきなのかを指示することがとても難しいと思います。これはデリケートで、かつ多方面に影響を及ぼす問題なのです』、確かに「国内におけるIT技術力不足」問題を考慮すると、「デリケートで、かつ多方面に影響を及ぼす問題」のようだ。

第三に、4月5日付けJBPressが掲載した経済評論家の加谷 珪一氏による「「何を今さら」前からわかっていたLINEの危うさ」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/64760
・『メッセージアプリ「LINE」の利用者情報が、システムの開発を受託している中国の関連会社で閲覧できる状態だったことが朝日新聞の報道で明らかとなった。同社は中国からのアクセスを遮断するとともに、データをすべて国内に移管する方針を発表したが、IT業界の事情に多少詳しい人からすれば、世論の反応も含めて「何を今さら」という感想を持ったことだろう。しかしながら、周回遅れとはいえこうした問題が議論されることになったこと自体は評価してよいかもしれない』、事情通の人には「何を今さら」だったのかも知れないが、私は世論と同じく怒りを覚えた。
・『LINEはれっきとした外資系企業だった  LINEでは、開発や運用を迅速に進めるため中国を含む海外拠点を活用している。中国の関連会社にシステム開発の一部を任せているほか、業務委託先の中にも中国の現地法人がある。業務委託先の現地法人では、タイムラインやオープンチャットなどの公開投稿にスパム行為などがないかをチェックしていたとされる。 LINE側の説明によると、中国の関連会社に在籍する中国人スタッフが、ライン利用者の名前や電話番号、メールアドレス、利用者が保存した画像といった個人情報にアクセス可能な状況が2年6カ月ほど続いていたという。 同社のプライバシーポリシーでは、個人情報のデータを第三国に移転する可能性があることについては記載されていたが、国内に保管されている個人情報に海外からアクセスできることについては記述がなかった。 一連の事態を受けてLINEでは、中国からの個人情報へのアクセスを遮断すると同時に、開発や保守に関する中国での業務を取りやめる方針を明らかにした。加えて、日本と韓国に分散して保有していたデータを順次、日本国内のサーバーに移管する方針を表明している。 いずれについても違法行為ではないが、利用者からすれば、どこでどのようにデータが扱われているのか分からないというのは不安要素が大きい。今後のデータの扱いに関して明確な方向性が示されたことは評価してよいだろう。だが、LINEに関する一連の出来事は、IT業界の事情を多少でも知っている人からすれば、以前から分かっていたことであり、周回遅れという印象は否めない。 LINEは今年(2021年)3月にヤフーとの経営統合が実現し、両社はZホールディングス(ソフトバンクグループ)の100%子会社となった。ソフトバンクグループの傘下に入ったことで、LINEはようやく日本企業になったわけだが、従来のLINEはれっきとした韓国資本の会社であった。 LINEはもともと韓国のIT企業ネイバー(NAVER)の子会社として日本で業務をスタートし、2016年に東証一部に上昇を果たした。登記は日本で行われ、経営トップこそ日本人が就任していたが、所有者が韓国企業である以上、LINEは韓国系企業であり、経営陣も多くが韓国人で占められていた。 韓国系の企業である以上、データが韓国で管理される可能性があるのは当然のことであり、アジアを中心にグローバル展開している現実を考えれば、日本と韓国以外の第三国の企業が運営に関与する確率も高くなる』、確かに言われてみれば、その通りだ。
・『今回の一件はソフトバンクグループの功績  筆者は、市場は可能な限りオープンな方がよいと考えており、外資系企業が積極的に日本市場に進出したり、日本の証券市場で上場することは、日本の国力を高める源泉になると評価している。ネイバーという韓国企業が、日本市場を選択し、LINEが日本で上場を果たしたことには大きな意義がある。 だが、国益のために積極的に外資系企業を呼び込むことと、外資系企業と国内企業を同一視することは根本的に意味が違う。LINEが日本国内で急成長した時期、データが韓国で管理されることについて危惧する声が一部から出たことがあったが、こうした指摘に対しては、どういうワケかバッシングまで行われる始末だった。LINEは日本のサービスであり、韓国のものではないという意見である。 こうした意見を声高に主張していた人たちの属性を見ると、結構な割合で、いわゆる嫌韓・嫌中系の人たちがいたことは非常に興味深い。彼等にとっては、自分たちが好んで使っているサービスが、韓国や中国の技術で作られているという現実が我慢ならないようなのである。LINEはメッセージングサービスのほかに、コンテンツ配信サービスなども提供しているが、LINEが提供しているコンテンツ配信サービスは、同じ系統の人たちに大人気の内容である。一般メディアによる報道も、LINEは日本が生み出した宝であるといったトーンの記事が異様なまでに多かった。 しかし、どれだけ「ジャパン」を強調し、日本の技術であると声高に叫んだところで、同社が外資系企業である以上、日本側が同社の経営をコントロールすることはできない。今回、LINEはデータの国内移管を表明したが、こうした対策が迅速に発表されたのも、同社がソフトバンクグループ入りしたことと決して無関係ではない(そもそも問題が発覚したのも、経営統合に関する協議がきっかけだと報道されている)。その意味で、LINEを本当の意味で日本企業にしたのはソフトバンクグループであり、同社を率いる孫正義氏は極めて大きな国益をもたらしたと考えてよいだろう』、「問題が発覚したのも、経営統合に関する協議がきっかけ」、だったとすれば、「経営統合」発表時にこの問題も発表した方がよかった。
・『LINEの個人情報問題は氷山の一角  LINEが今後の対策を迅速に表明したことで、同社固有の問題は一段落すると思われるが、これは日本全体からすれば氷山の一角に過ぎない。個人情報がずさんな形で管理され、外国から容易にアクセスされているケースは無数にあると考えるのが自然だ。 それほど大きな話題にはなっていないが、LINEの問題が報道される1カ月ほど前、日本国民全員に付与されているマイナンバーが中国に流出した可能性が国会で指摘されている。 問題を明らかにしたのは立憲民主党の長妻昭副代表で、長妻氏は2月17日の衆院予算委員会において「マイナンバーを含む日本人の個人情報が中国のネット上に流出している」と発言。これに対して日本年金機構の水島藤一郎理事長は奇妙な答弁を行っている。 長妻氏によると、個人情報が漏れていることを通報するメールが年金機構に送られたとのことであり、同氏がメールの真偽について正したところ、水島氏は、名前や年収、配偶者の年収、生年月日など、記載されている個人情報は「正しい」としながらも、マイナンバー部分については「それが正しいということを確定的に申し上げるわけにまいりません」と述べた。 日本年金機構は、個人データの入力を民間事業者に委託しており、委託を受けた国内の事業者が中国に再委託していたことが明らかとなっている。個人情報の流出はないと年金機構では説明してきたが、今回の一件との関係は不明である。もし流出が事実であれば、極めて重大な事案であるはずだが、国内の反応は驚くほど静かである。 菅政権はデジタル化が遅れているとの指摘を受けて、デジタル庁を創設。デジタル政府の構築を急ぐ方針を掲げている。だが、仮に年金機構のデータ漏洩が事実であれば、それ以前の問題であり、マイナンバーの制度そのものを再構築する必要性すら議論される可能性がある。 加えて言うと、行政のデジタル化に際しては各種クラウドサービスの積極的な利用も視野に入っている。物理的にサーバーを設置するよりもクラウドを活用した方がセキュリティを含め、あらゆる面で有利であることは自明の理だが、日本の場合、致命的な問題がある。それは、十分な技術力を持ったクラウド事業者が国内に存在しないという現実である。 行政組織のシステムをクラウドに移管する場合には、どうしても外国企業を選択せざるを得ず、そうなってしまえばデータを100%日本側が管理することは原理的に不可能になる。外国に行政の中枢データを握られるというリスクを承知した上で、技術力の高い海外クラウドを利用するのか、セキュリティレベルが低いというリスクを理解した上で、国内事業者を選択するのかという大きな決断を迫られることになる。 現時点ですべてを満たす解は存在しておらず、日本は厳しい選択をする必要があるのだが、最大の問題はこうした状態であることが、日本国内では十分に認知されていないことである。このまま、場当たり的にデジタル化を進めれば、いずれ大きな問題として顕在化するだろう』、「十分な技術力を持ったクラウド事業者が国内に存在しない」、のであれば、「外国に行政の中枢データを握られるというリスクを承知した上で、技術力の高い海外クラウドを利用する」、ただし、「外国」としては、中国は不可、欧米が望ましい。
タグ:情報セキュリティー・サイバー犯罪 (その6)(楽天「転職元の機密流出で社員逮捕」仰天の弁明 真っ向からぶつかるソフトバンクと楽天の主張、LINE個人情報問題でユーザーにとっての「本当の不利益」とは何か、「何を今さら」前からわかっていたLINEの危うさ) 東洋経済オンライン 本田 雅一 「楽天「転職元の機密流出で社員逮捕」仰天の弁明 真っ向からぶつかるソフトバンクと楽天の主張」 両社の体制には「疑問符をつけざるをえない」、というのは確かだ。 「ソフトバンクは、そうした基本的な情報管理ルールもできていたかったことを示している」、本当にお粗末の極みだ 「楽天モバイル」が「5G」構築で遅れていたとしても、こんなにストレートに「ライバル社からエンジニアを情報とともに引き抜いた」とすれば、余りにお粗末すぎるやり方だ。 「合場邦章容疑者を不正競争防止法違反の容疑で逮捕」、この刑事裁判の場で真実が明らかになれば、「ソフトバンク」があえて「民事訴訟」を起こすまでもないだろう。「楽天」は大丈夫だろうか。 ダイヤモンド・オンライン 鈴木貴博 「LINE個人情報問題でユーザーにとっての「本当の不利益」とは何か」 「サーバが韓国にあるというのは、消費者心理としてはべつに不思議でも何でもない」、にも拘わらず、「サーバを国内に完全移管する方針を表明」、とはやはり「ユーザーが感じる気持ち悪さに対応」したのだろう。 「TikTok」がどうなったのかと思ったら、「言い出したらきりがないことから、「バイデン政権下ではTikTokを問題にしないことにしました」、そんな経緯があったとは初めて知った 「サーバ」を「電気」が高い「国内に移管することを約束」、「株価」も下落する訳だ。 確かに「国内におけるIT技術力不足」問題を考慮すると、「デリケートで、かつ多方面に影響を及ぼす問題」のようだ。 JBPRESS 加谷 珪一 「「何を今さら」前からわかっていたLINEの危うさ」 事情通の人には「何を今さら」だったのかも知れないが、私は世論と同じく怒りを覚えた 確かに言われてみれば、その通りだ 「問題が発覚したのも、経営統合に関する協議がきっかけ」、だったとすれば、「経営統合」発表時にこの問題も発表した方がよかった 「十分な技術力を持ったクラウド事業者が国内に存在しない」、のであれば、「外国に行政の中枢データを握られるというリスクを承知した上で、技術力の高い海外クラウドを利用する」、ただし、「外国」としては、中国は不可、欧米が望ましい
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EC(電子商取引)(その7)(アマゾンを破壊する「ショッピファイ」の超威力 5年後の世界を変える10兆円ベンチャー、楽天への日本郵政・テンセントの出資に浮かび上がる深刻な懸念、中国テンセントに見られてしまう楽天の「帳簿」 業務資本提携に生じるこれだけの懸念) [産業動向]

EC(電子商取引)については、昨年7月24日に取上げた。今日は、(その7)(アマゾンを破壊する「ショッピファイ」の超威力 5年後の世界を変える10兆円ベンチャー、楽天への日本郵政・テンセントの出資に浮かび上がる深刻な懸念、中国テンセントに見られてしまう楽天の「帳簿」 業務資本提携に生じるこれだけの懸念)である。

先ずは、昨年11月30日付け東洋経済オンラインが掲載したDNX Ventures インダストリー パートナーの山本 康正氏による「アマゾンを破壊する「ショッピファイ」の超威力 5年後の世界を変える10兆円ベンチャー」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/391647
・『日本ではあまり知られていないけれど、世界で注目されている企業、それがShopify(ショッピファイ)です。企業のECサイト開発・運営を手がけている同企業によって、ルイ・ヴィトン、ディズニーやナイキ、ワークマンなど、いま多くの企業が「アマゾンにはもう出店しない」と宣言し始めています。 『2025年を制覇する破壊的企業』の著者であり、ビジネスとテクノロジーをつなぐベンチャーキャピタリストである山本康正氏は「アマゾンや楽天がなくなる日が本当にやってくるかもしれません」と言います。一体どういうことか、語っていただきました』、「アマゾンや楽天がなくなる日が本当にやってくるかもしれません」、本当だろうか。
・『ルイ・ヴィトン、ナイキがアマゾン出店をやめる理由  われわれベンチャーキャピタリストの間では有名なベンチャーですが、日本ではあまり知られていない注目企業の1つが、Shopify(ショッピファイ)です。 ショッピファイは、企業のECサイト開発・運営を手がけています。ウェブサイトの制作、カード決済の仕組み、売上分析、その他もろもろ。企業がインターネットで商売をするために必要な、専門知識がなければ難しいことを、すべてまとめて代行してくれます。事業者が用意するのは、パソコンと画像くらいのものです。 ライバルが多いビジネスモデルでもありますが、モバイル対応など使い勝手のよさが突出しており、急激に成長。創業はカナダですが、現在はヨーロッパ、アメリカなどにも進出。今回の新型コロナウイルスによる外出自粛で、さらに需要が伸びています。 ショッピファイの台頭と呼応するように、企業がアマゾンや楽天といった大手ECプラットフォームから離脱する動きが出てきています。ルイ・ヴィトン、ディズニーやナイキ、ワークマンなどの企業が次々に「アマゾンには出店しない」と宣言し、代わりにショッピファイと組みながら自社のECサイトを充実させているのです。 ショッピファイの時価総額は現在約10兆円。日本の企業と比べると、ホンダが約5兆円ですからおよそ倍。三菱商事やソフトバンクグループの時価総額も抜き始めている。創業2004年のベンチャーが、ここまでの規模になっているのです。 最近の動向では、世界最大のスーパーマーケットチェーンであり、売上高も同じく世界一の企業、ウォルマートと連携しました。ちなみにウォルマートの売上高は約56兆円でほとんどがまだリアル店舗の売り上げです。今回の提携は、ウォルマート側が主導したと私は見ています。アマゾンへの対抗策です。 そして今後も、ウォルマートとの連携と同じような動きが起こるでしょう。そしてさらに成長は加速していくはずです。現在10兆円の時価総額がどこまで増えるのか、注目しています。 ショッピファイのような中小企業のインターネットサービスを支援するビジネスは、日本でも広まっています。ショッピファイと同じように、サービスの質で人気を博しているのが、BASE(ベイス)です。 ベイスもショッピファイと同じように、日本のデパートと連携。ショッピファイと同じく新型コロナウイルスの影響が追い風となり、時価総額は3000億円を突破しました。2025年にどこまで成長しているか、ショッピファイとあわせて楽しみです。 ショッピファイの日本への進出も注目しています。ウォルマートは西友の親会社ですから、そのコネクションを使って日本に進出してくる可能性は十分に考えられるからです。そして注目すべきは、西友の現在のeコマースシステムは、楽天が担っている点です。 2025年には西友のeコマースだけでなく、日本国内におけるeコマース事業をショッピファイがリードしている。その可能性は、今の勢いからすれば十分ありえます』、「すべてまとめて代行してくれます。事業者が用意するのは、パソコンと画像くらいのものです」、とあるが商品を購入者宅に届ける物流まで提供しているのだろうか。それとも提供せず、これは顧客企業が独自に展開するのだろうか。「「アマゾンには出店しない」と宣言した」、例示された企業はブランド力もあるので、独自のネット集客が可能なのだろう。
・『b8ta(ベータ)にも注目  ほかにも、ビジネスの大転換を行っているベンチャーを紹介します。b8ta(ベータ)です。従来の小売事業は店舗を借りて在庫を仕入れて、マージンをいくらか上乗せして販売する。このようなビジネスモデルでした。 ところがeコマースが広まったことで、実店舗で商品を購入する人は激減しました。その結果、実店舗では商品の手触りや動作を確認。そのうえで、ネットで商品を買う人が増えました。つまりこのままでは、実店舗はこれまでほどは必要とされなくなっていきます。 そこでベータは、あるユニークな発想をします。eコマースでは、最終的にネットショップで商品を購入しますが、そこにたどり着くまでに検索をしたり、ほかのサイトやユーチューブ、フェイスブックといったコンテンツに貼られた広告からの誘導で行くことが少なくありません。そして誘導した広告主は、その分のフィーを得ています。 オンラインでは当たり前となったこのような小売りビジネスの流れを、ベータはオフラインに持ち込みました』、興味深いビジネスモデルのようだ。
・『店頭でお客からはお金をとらない?  一見するとベータは、おしゃれなデバイスを置いている、アップルストアのような外観です。ユニークなのは、置かれているデバイスをその場で販売することがメインではないことです。自動車ディーラーがショールームに変わっていったのと似ています。ベータのお店も、まさにショールームだからです。 置かれているのは、社名からもわかるように大規模店舗に置かれているような完成されたデバイスばかりではありません。エッジが立っていたり、大化けして売れそうな、話題となるような商品を意図的にセレクトし置いています。そしてその手のデバイスを好むユーザーに見てもらい、触ってもらい、感想を述べてもらい、反応を開発企業にフィードバックします。もちろん新製品が完成した際の予約も受け付けます。 企業としては、将来的な顧客になるとの広告効果もありますし、よりよい製品にブラッシュアップされる場でもありますから、ベータにお金を払い、製品を置いてもらう。そのようなビジネスモデルです。 店内にはカメラやセンサーも備わっていて、何名の客が実際に関心を持ったのか。そのうち手に取ったのは何名か。このような統計から、グーグル広告のような広告課金ビジネスも行っています。サンフランシスコ発で、アメリカではすでに多くの店舗を出店していましたが、いよいよ2020年の8月に日本にも上陸。有楽町駅前やマルイビルに出店しています。 ショッピファイやベータの動きを知り、ぜひ今後のビジネスのヒントにしていただけたらと思います』、ECもずいぶん広がりが出てきたものだ。

次に、3月16日付け日経ビジネスオンラインが掲載した明星大学経営学部教授(元経経済産業省中部経済産業局長)の細川 昌彦氏による「楽天への日本郵政・テンセントの出資に浮かび上がる深刻な懸念」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00133/00054/
・『楽天は12日、日本郵政や中国のネット大手・騰訊控股(テンセント)などを引き受け手とする第三者割当増資を実施し、2423億円を調達すると発表した。その中で、最大の資金の出し手が日本郵政である。日本郵政は楽天との資本・業務提携に約1500億円を投じ、出資比率は8.32%となる。物流やモバイル、デジタルトランスフォーメーション、金融など幅広い分野で提携を強化するとしている。 ビジネス戦略としてみれば、楽天と日本郵政の資本・業務提携はシナジー効果(相乗効果)を期待して評価することもできよう。「歴史的な提携だ」との自画自賛はともかくとして、大方のメディアはポジティブな反応だ。私もそれを否定するつもりは毛頭ない。 しかしそこには、国民の財産と安全保障に関わる見逃せない深刻な懸念が潜んでいる』、「深刻な懸念」とはどういうことだろうか。
・『政府過半出資の会社による“資本注入”の異様さ  まず、楽天から見れば、今回の提携は歴史的快挙であっても、日本郵政から見れば、違った風景が見えてくる。その際忘れてはならないのが、日本郵政は政府が過半を出資する会社(56.87%を政府・自治体が保有)であることだ。 その親会社の下に、日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命保険という個別の事業会社が置かれている。個々の事業会社が業務提携するのならば、ともかくも、問題は政府が過半出資している親会社が特定企業に約1500億円という巨額の出資をすることが、果たして妥当かどうかだ。 多くのメディアは今回の発表だけを見て論じているが、時間を遡って経緯をたどれば、その異様さが見えてくる。 昨年12月24日、事業会社の日本郵便が楽天と物流分野での包括的な業務提携を基本合意したと発表したばかりだ。その際には、物流での戦略提携を打ち出し、金融やモバイルなど物流以外の事業分野でも幅広く提携について協議、検討していき、3月に包括的な業務提携の最終合意を目指すとしていた。あくまで業務提携が前提だ。 楽天は、物流について日本のEC(電子商取引)市場で攻勢をかける米アマゾン・ドット・コムに対抗していく必要がある。全国2万4000カ所の郵便局のネットワークを抱える日本郵便との戦略的提携は楽天にとってはアマゾンと戦う切り札となり得る。 一方、楽天とゆうちょ銀行、かんぽ生命との接点はこれまでわずかだ。今後の業務提携の検討項目に金融も入っているが、具体的な中身は明らかになっていない。 日本郵政の主な狙いは、流通総額が年間3兆円規模というECモール「楽天市場」の宅配物を優先的に引き受けることにある。もちろん、郵便事業にとっては重要なことではあるが、事業会社である日本郵便による業務提携で十分対応できるもので、昨年末の業務提携の基本合意がそれだ。資本提携、しかも日本郵政から一方的に1500億円を持ち出す必然性はどこにあるのか。 楽天は、日本郵政などから調達した資金の大部分を、基地局の整備など携帯電話事業の投資に充てるという。これが日本郵政の事業に直結するとは思えない。 昨年末時点ではあくまでも広範な業務提携であったのが、たった2カ月半後に急転直下、親会社による1500億円の資本提携が付け加わった。その間、一体何があったのか』、「日本郵政から一方的に1500億円を持ち出す必然性はどこにあるのか」、確かに合理的な説明は困難だ。
・『携帯料金の引き下げで苦しむ楽天を“救済”?  菅義偉首相肝煎りの政府主導による携帯料金の引き下げで、昨年4月から携帯電話事業に新規参入した楽天のダメージは大きい。 「大手3社を凌駕(りょうが)する携帯キャリアをつくる」 楽天の三木谷浩史会長兼社長はそう豪語していたが、携帯基地局への先行投資が響き、2020年12月期の最終損益は1141億円の赤字で、これが発表されたのが2月12日だ。連結の自己資本比率も2020年12月末時点で4.9%に下がっている。今後も電波エリアの拡大のために基地局の設置の投資に兆円単位の膨大な資金が必要となるため、厳しい財務状況であった。 そこにこの資本提携だ。話は今年1月に三木谷社長から持ち掛けたことを、三木谷社長本人が記者会見で認めている。資本提携では多くの場合、相互に第三者割当増資を行う「株式の持ち合い」をするが、今回はそうではない。一方的に日本郵政が楽天に出資した形で、これは事実上、巨額の“資金注入”とも言えるのではないか。これでは楽天に対する“救済”と思われても仕方がない。 資本提携は単なる業務提携とは訳が違う。携帯電話事業のように4社が激しい競争をしている中で、政府が過半の出資をしている会社がその1社に対して巨額の資金を注入するのは、果たして公正と言えるのだろうか。厳格な議論が必要だろう。 政府が過半を出資する会社が国民の財産を特定企業に注ぎ込んだのも同然、とも言われかねない行為は妥当なのだろうか。仮にこうした行為をするのならば、最低限、政府保有株を売却して、政府保有比率を3分の1以下にしてからするのが筋ではないだろうか。 第2に、世間の目が日本郵政との資本提携ばかりに奪われているが、日本の経済安全保障にも関わる懸念もある。テンセントの子会社から約660億円の出資を楽天が受け入れることだ』、「事実上、巨額の“資金注入”とも言えるのではないか。これでは楽天に対する“救済”と思われても仕方がない」、「携帯電話事業のように4社が激しい競争をしている中で、政府が過半の出資をしている会社がその1社に対して巨額の資金を注入するのは、果たして公正と言えるのだろうか。厳格な議論が必要だろう」、その通りだ。
・『テンセントの楽天への出資は経済安保の観点で大丈夫か?  テンセントについては、米国のトランプ政権末期、人気アプリ「WeChat(ウィーチャット)」のダウンロード禁止の大統領令が出され、連邦地裁によって執行差し止めになった。また最終的には見送りになったが、人民解放軍と関係が深い企業のリストに加えて、米国人の投資禁止の対象にすることも一時検討されていた。これらはいずれも米国顧客の個人情報が中国政府に流出するとの疑念が背景にあったからだ。 中国国内では事実上独占的に使用されているWeChatによって、約10億人の国民の会話・行動・購買履歴まで監視できるようになっている。また最近、中国共産党政権はアリババと共にテンセントに対しても急速に統制を強めつつあることは周知の事実だ。テンセントも中国政府への協力を表明している。まさに中国政府によるコントロールが強まって、顧客データの流出の懸念はますます高まっている。 そうしたテンセントが楽天に出資して、今後ネット通販などでの協業も検討しているという。楽天はECのみならず物流も含めた日本のプラットフォーマーだ。楽天は、膨大な個人情報を持ち、ECなどのオンラインサービスのみならず通信インフラでも重要な役割を担っている。楽天へのテンセントの出資は、経済安全保障の観点から大丈夫なのだろうか。 さらに楽天と日本郵政との間で広範な提携がなされると、懸念はいっそう大きくなる。テンセントによる出資以外、楽天との具体的な協業の内容が明らかにされていない。それだけに、テンセントが楽天を介して結果的に、日本郵政に接近する可能性も懸念されるからだ。 日本郵政には日本郵便の豊富な物流データがある。日本郵政は、楽天とデータを共有する新しい物流プラットフォームも構築するとしている。ゆうちょ銀、かんぽ生命には豊富な金融データもある。いわば、個人データの宝の山を日本郵政は抱えている。 これは日本の経済安全保障にも関わる深刻な問題ではないだろうか。日本も安全保障上重要な業種については、外為法で事前届け出を義務付けるなど外資規制をしている。その際には楽天の事業全般を見て、外資による影響力を行使されて安全保障上大丈夫かを判断していくことになる。日本政府も事の重大さを認識して、責任ある判断をすべきだ。 日本郵政と楽天の提携は単にビジネスの目でだけ追っていてはいけない。日本国民の財産や安全保障に深刻な懸念を投げかけていることに気づくべきだ。 この記事はシリーズ「細川昌彦の「深層・世界のパワーゲーム」」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます』、「日本郵政と楽天の提携は単にビジネスの目でだけ追っていてはいけない。日本国民の財産や安全保障に深刻な懸念を投げかけていることに気づくべきだ」、同感である。

第三に、4月7日付けJBPressが掲載した日本戦略研究フォーラム政策提言委員の平井宏治氏による「中国テンセントに見られてしまう楽天の「帳簿」 業務資本提携に生じるこれだけの懸念」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/64774
・『2021年3月31日、中国企業のテンセントは、その子会社を通じて、楽天が新たに発行した株を購入し(「第三者割当増資」という)、楽天の第6位の大株主になった。本件は3月12日に公表されて以降、識者から懸念が示されていた。にもかかわらず、楽天はテンセントとの業務資本提携を強行した。 本稿では、ポートフォリオ投資、楽天の帳簿閲覧権、中国の国家情報法との関係などから懸念される問題を取り上げたい』、第二の記事を「テンセント」中心に深く掘り下げたもののようだ。
・『テンセントとは何者か  楽天の大株主になったテンセント(騰訊)グループとは何者だろうか。チャットアプリ「WeChat」を知る人は多いが、その実態を知る人は少ない。 同社は、香港証券取引所に上場する持株会社で、中国の広東省深セン市に本拠を置く。傘下にインターネット関連の子会社を持ち、ソーシャル・ネットワーキング・サービス、インスタントメッセンジャー、Webホスティングサービスなどを提供する。 2020年8月、アメリカ政府はテンセントとの取引を禁止すると公表した(注:実際には禁止に至らなかった)。トランプ大統領は、「このデータ収集によって中国共産党がアメリカ国民の個人情報や機密情報の入手が可能になる恐れがある」と指摘した。取引禁止になれば、WeChatの利用が禁止されるため在米中国人の間に衝撃が走った。 一例だが、アメリカのメディアは、中国人産業スパイがWeChatを使い中国国内の同僚と連絡を取り、「中国軍によるアメリカ軍軍事戦略データの解読とリスク評価」に関する研究論文について議論していたと報道し、WeChatが連絡ツールとして使用されていたことが明るみに出た。) 2021年1月には、アメリカの国防総省がアリババとテンセントが人民解放軍を支援しているとして、中国軍関連企業リスト(Communist Chinese military companies list)への追加を計画した。しかし、財務省がこれに「待った」をかけてしまった。 このリストに掲載された企業は、アメリカの法人、個人を問わず資本取引が禁止される。ブルームバーグは「待った」の理由について「米政府は中国人民解放軍とのつながりが疑われる同国の巨大IT企業について、証券投資を禁止した場合の経済的影響を検討した結果、アリババグループとテンセント・ホールディングス(騰訊)、百度(バイドゥ)への投資は今後も容認する見通しだ」と報道した。人民解放軍との関係がシロだからストップがかかったのではないようだ』、「アメリカの国防総省がアリババとテンセントが人民解放軍を支援しているとして、中国軍関連企業リスト(Communist Chinese military companies list)への追加を計画」、「財務省がこれに「待った」をかけ」たが、その理由は、「人民解放軍との関係がシロだからストップがかかったのではない」、中国マネーに依存せざるを得ないためなのかも知れない。
・『外為法の「ポートフォリオ投資」とは  テンセントと楽天の業務資本提携の問題は、外為法との関係がポイントの1つだ。わが国では、外為法で、外国企業や外国の投資家による対内直接投資等(M&Aが含まれる)に事前届出を義務付けている。 2019年11月、外為法が大幅に改正され、2020年5月から施行された。改正内容の1つにポートフォリオ投資制度の導入がある。ポートフォリオ投資とは、経営に重要な影響を与えることを企図しない投資に限り、事前届出を免除する制度のことだ。楽天は、本件を「純投資」(=ポートフォリオ投資)と主張している。 財務省は「外為法改正案についてのよくある質問」の中で、事前届出免除を受けるために遵守することが求められる基準は、具体的には以下の3基準であるとした。 (1)外国投資家自ら又はその密接関係者が役員に就任しないこと (2)重要事業の譲渡・廃止を株主総会に自ら提案しないこと (3)国の安全等に係る非公開の技術情報にアクセスしないこと さて、2021年3月12日に楽天が公表したプレスリリースには、以下の記載がある。 Tencent Holdings Limited Executive Director and President, Martin Lau氏からのコメント。 「楽天は、これまでメンバーシップとロイヤリティプログラムを通じて活気に満ちたエコシステムを構築し、Eコマース、FinTech及びデジタルコンテンツと比類のない強みを発揮しています。我々は楽天のユーザーに向けたイノベーションとエンパワーメントを通じた価値創造への想いを共有しています。そして、グローバルイノベーションリーダーへの進化に向けて投資を通じてサポートできることを嬉しく思います。我々は、デジタルエンターテインメント、Eコマースなどの事業を通じて戦略的提携を追求し、ユーザーへの価値創造とインターネットのエコシステムを共に創るためのパートナーシップを築くことを楽しみにしています。」(太字は筆者)) 楽天は、子会社で携帯端末事業も手掛ける。「通信」は、国の安全等を損なう恐れが大きい業種とされ、携帯電話事業を営む企業も対象になる。 さらに、楽天は、2020年5月8日財務省が発表した外国人投資家が投資する際に届出対象となる上場企業518社(いわゆるコア企業)の1社でもある。そして、テンセントの社長は「(楽天と)戦略的提携を追求する」と明言している。 M&Aには、いくつかの段階がある。最も関係が緩いのは、「業務提携」といい、資本関係は持たず、経営の独立性を保つ企業同士が共同して業務を行うことだ。次の段階が「資本業務提携」である。資本業務提携とは、業務提携とセットで、業務提携先へ経営権まで影響を及ぼさない範囲で議決権を与えるものだ。資本業務提携では、両社の提携内容を明確にする業務提携契約も締結する。 これらのことを考えると、本件は「純投資」ではなく「資本業務提携」と映る。資本業務提携ならば、外為法に従い、1%の閾値を超える株式取得は事前審査を受けなければならない。このことは、外資規制の法的趣旨に関わる重大な論点だ』、「資本業務提携」を「純投資」と強弁するとは、「楽天」もいいかげんだ。
・『テンセント子会社が持つ帳簿閲覧権  次の論点は、帳簿閲覧権だ。 テンセント子会社は、楽天の株式を3.65%保有する第6位の株主になった。実は、この3.65%という持ち分が重要になる。何故なら、発行済株式の3%以上を保有する株主には、会社法で帳簿閲覧権が認められているからだ。 帳簿閲覧権とは、株主が「会計帳簿(仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳など)又はこれに関する資料(伝票、契約書、領収証など)」を閲覧することができることだ。会社側は一定の場合には閲覧を拒否することができるが、会社側には拒絶理由の立証責任がある。 仮に、テンセント子会社がもっともな理由をつけて楽天に帳簿閲覧を求めた場合、楽天は謝絶理由を立証しなければ拒絶できなくなる。この立証は容易ではないだろう。 さらに、会社法では、3%以上の持ち分がある株主は、裁判所に申し立てて認められれば、親会社(楽天)の意向を無視して子会社(楽天トラベル、楽天証券、楽天銀行など消費者相手の事業を行う会社)の会計帳簿等を閲覧できる規定がある。 裁判所がテンセントの申し立てを認めなければ、子会社のもつ情報は開示されないが、裁判所がテンセントの主張を正当なものと認めれば、テンセントに子会社の情報が開示される。 楽天は、この点に懸念を示す関係者に説得力のある説明をできるのか』、「会社法では、3%以上の持ち分がある株主は、裁判所に申し立てて認められれば、親会社(楽天)の意向を無視して子会社・・・の会計帳簿等を閲覧できる規定がある」、「楽天は、この点に懸念を示す関係者に説得力のある説明」、はできないだろう。
・『国家情報法とテンセント  明星大学経営学部教授の細川昌彦氏は、日経ビジネスのサイトで、以下の点を指摘している。 (1)そもそも米国はテンセントに対して、中国政府との結びつきから米国顧客の個人データが利用される強い疑念を持っている。 (2)楽天は安全保障上重要な通信事業であるだけでなく、膨大な個人情報などを有している。 従って、これは日本の経済安全保障にもかかわる重大な問題である。(以上、転載) 細川教授が指摘する通りだ。識者たちが本件を問題視する理由に中国の国家情報法がある。その7条には、以下のように記載されている。よく読んで頂きたい。 第7条 いかなる組織及び国民も、法に基づき国家情報活動に対する支持、援助及び協力を行い、知り得た国家情報活動についての秘密を守らなければならない。国は、国家情報活動に対し支持、援助及び協力を行う個人及び組織を保護する。》 中国企業であるテンセントは、中国の法律に従う。つまり、中国政府が楽天からテンセントに流れた非公開情報の中身を知りたいと思えば、国家情報法に基づいてテンセントへ情報提出を命じれば済む。 細川教授が指摘するように、「楽天は安全保障上重要な通信事業であるだけでなく、膨大な個人情報などを有している」。楽天は、国家情報法に基づいてテンセントに開示した情報が中国政府と共有される点について、楽天利用者が納得できる説明をしているだろうか』、「中国政府が楽天からテンセントに流れた非公開情報の中身を知りたいと思えば、国家情報法に基づいてテンセントへ情報提出を命じれば済む」、「楽天利用者が納得できる説明」すべきだ。
・『政府は厳格な審査をするべきだ  2020年4月1日、我が国の政府の国家安全保障局(NSS)に経済安全保障を扱う経済班が設置された。NSS経済班の存在意義の1つが、外為法をはじめとする法律に基づき、わが国の安全保障に深刻な影響を及ぼすM&Aを阻止することだ。 今回の外為法改正は、2018年にアメリカで成立した2019年度国防権限法と一緒に成立した「外国投資リスク審査現代化法(FIRRMA)」と密接に関連している。 アメリカの外資規制法であるFIRRMAの審査対象となるのは、TID(Technology, Infrastructure, sensitive personal Data)に関連する米国事業だ。アメリカ政府は、わが国の政府が、テンセント出資問題にどう対処するかに注目するだろう。 楽天が主張するように、この株式取得が「純投資」であれば、10%までの株式取得に事前申請は不要だ。この場合、前述の3つの基準を厳守することが条件となる。テンセント子会社に一切の個人情報を開示せず、中国政府に楽天利用者の個人情報が渡らないことも説明しなければならない。「テンセントはいかなる第三者へも情報を提供しないと言いました」ではお話にならない。 アメリカ政府により中国軍関連企業リストに入れられそうになった会社が、資本業務提携なのに「純投資」と主張して楽天の大株主になった。楽天は、コア業種に含まれる上場企業518社の1社だ。 わが国の政府が本件を黙認すれば、これに味を占めた懸念国が、「これは純投資」と主張して外為法の外資規制を骨抜きにし、コア業種の日本企業の大株主になり、機微技術や軍民両用技術を日本から移転し、軍事転用を行うことは、容易に想像できる。 純投資でも事後報告が義務付けられている。政府には本件を厳格に審査することを期待する。外為法は、虚偽届出などに対し、最終的に売却を含む措置命令を発することができる(下の図を参照)。国民の個人情報が国家情報法により守ることができないリスクがあるなら、政府はためらうことなく措置命令を出し、機微技術と共に国民の個人情報を守るべきだ。 出典:「対内直接投資制度について」財務省国際局作成 令和元年8月22日 』、「アメリカ政府により中国軍関連企業リストに入れられそうになった会社が、資本業務提携なのに「純投資」と主張して楽天の大株主になった。楽天は、コア業種に含まれる上場企業518社の1社だ」、「楽天」は資本が欲しいの余り、「「純投資」と主張」、いくら何でも信じ難い動きだ。ここはやはり「日本政府」が乗り出し、「厳格な審査をするべき」だろう。
タグ:「日本郵政と楽天の提携は単にビジネスの目でだけ追っていてはいけない。日本国民の財産や安全保障に深刻な懸念を投げかけていることに気づくべきだ」、同感である。 「事実上、巨額の“資金注入”とも言えるのではないか。これでは楽天に対する“救済”と思われても仕方がない」、「携帯電話事業のように4社が激しい競争をしている中で、政府が過半の出資をしている会社がその1社に対して巨額の資金を注入するのは、果たして公正と言えるのだろうか。厳格な議論が必要だろう」、その通りだ 「日本郵政から一方的に1500億円を持ち出す必然性はどこにあるのか」、確かに合理的な説明は困難だ 政府過半出資の会社による“資本注入”の異様さ 「深刻な懸念」とはどういうことだろうか 「楽天への日本郵政・テンセントの出資に浮かび上がる深刻な懸念」 細川 昌彦 日経ビジネスオンライン ECもずいぶん広がりが出てきたものだ 興味深いビジネスモデルのようだ b8ta(ベータ)にも注目 「すべてまとめて代行してくれます。事業者が用意するのは、パソコンと画像くらいのものです」、とあるが商品を購入者宅に届ける物流まで提供しているのだろうか。それとも提供せず、これは顧客企業が独自に展開するのだろうか。「「アマゾンには出店しない」と宣言した」、例示された企業はブランド力もあるので、独自のネット集客が可能なのだろう 「アマゾンや楽天がなくなる日が本当にやってくるかもしれません」、本当だろうか。 Shopify(ショッピファイ) 「アマゾンを破壊する「ショッピファイ」の超威力 5年後の世界を変える10兆円ベンチャー」 山本 康正 東洋経済オンライン (その7)(アマゾンを破壊する「ショッピファイ」の超威力 5年後の世界を変える10兆円ベンチャー、楽天への日本郵政・テンセントの出資に浮かび上がる深刻な懸念、中国テンセントに見られてしまう楽天の「帳簿」 業務資本提携に生じるこれだけの懸念) (電子商取引) EC JBPRESS 平井宏治 「中国テンセントに見られてしまう楽天の「帳簿」 業務資本提携に生じるこれだけの懸念」 第二の記事を「テンセント」中心に深く掘り下げたもののようだ 「アメリカの国防総省がアリババとテンセントが人民解放軍を支援しているとして、中国軍関連企業リスト(Communist Chinese military companies list)への追加を計画」、「財務省がこれに「待った」をかけ」たが、その理由は、「人民解放軍との関係がシロだからストップがかかったのではない」、中国マネーに依存せざるを得ないためなのかも知れない。 「資本業務提携」を「純投資」と強弁するとは、「楽天」もいいかげんだ。 「会社法では、3%以上の持ち分がある株主は、裁判所に申し立てて認められれば、親会社(楽天)の意向を無視して子会社・・・の会計帳簿等を閲覧できる規定がある」、「楽天は、この点に懸念を示す関係者に説得力のある説明」、はできないだろう 「中国政府が楽天からテンセントに流れた非公開情報の中身を知りたいと思えば、国家情報法に基づいてテンセントへ情報提出を命じれば済む」、「楽天利用者が納得できる説明」すべきだ 「アメリカ政府により中国軍関連企業リストに入れられそうになった会社が、資本業務提携なのに「純投資」と主張して楽天の大株主になった。楽天は、コア業種に含まれる上場企業518社の1社だ」、「楽天」は資本が欲しいの余り、「「純投資」と主張」、いくら何でも信じ難い動きだ。ここはやはり「日本政府」が乗り出し、「厳格な審査をするべき」だろう。
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資本市場(その5)アルケゴス問題2題(2200億円が蒸発…野村が被った「アルケゴス・ショック」の本当の怖さ "損失の連鎖"が起きる可能性がある、野村が2200億円の損失も 「アルケゴスショック」が投資家に迫る3つの論点) [金融]

資本市場については、2月12日に取上げた。今日は、(その5)アルケゴス問題2題(2200億円が蒸発…野村が被った「アルケゴス・ショック」の本当の怖さ "損失の連鎖"が起きる可能性がある、野村が2200億円の損失も 「アルケゴスショック」が投資家に迫る3つの論点)である。

先ずは、4月5日付けPRESIDENT Onlineが掲載した法政大学大学院 教授の真壁 昭夫氏による「2200億円が蒸発…野村が被った「アルケゴス・ショック」の本当の怖さ "損失の連鎖"が起きる可能性がある」を紹介しよう。
・『日本では野村、みずほFGで損失発生か  3月29日、わが国の野村ホールディングス(野村)と、スイスの金融大手クレディ・スイスは米国の顧客との取引に起因する巨額の損失計上の可能性があると発表した。その顧客とは、投資会社のアルケゴス・キャピタル・マネジメント(アルケゴス)であることが判明した。 報道によると、損失額は野村が約20億ドル(約2200億円)、クレディ・スイスが30億~40億ドル(約3300億~4400億円)とみられるものの、現在のところ損失額は確定していない。この2社以外にも、みずほフィナンシャルグループの米子会社が1億ドル(100億円)程度の損失を計上する可能性があると報じられており、ゴールドマンサックスやモルガンスタンレーなどの金融機関でも損失が発生している模様だ。 “アルケゴス問題=アルケゴスに起因する大手金融機関の巨額損失発生”に関して、どのような取引が行われていたか、なぜそれが損失を発生させたかを確認することが重要だ』、「真壁」氏の見方はどんなものなのだろう。
・『行きすぎたリスクテイクが放置されている  重要なポイントは、同社が過剰なリスクテイクをしていたとみられることだ。アルケゴスは、ある意味では規制の甘さを突いて、積極的にレバレッジをかけてリスクテイクを重ねた。同社と取引を行った金融機関は、そのリスクを十分に評価できていなかったといえるかもしれない。同社が保有していた株価が想定外の方向に動いた結果、アルケゴスは巨額の損失を抱え、資金繰りに行き詰まったとみられる。 アルケゴス問題の影響は軽視できない。規制の問題やカネ余りの影響などによって過度なリスクテイクが放置されていたことは、金融市場の脆弱性が高まっていることを示唆する。過去、資産価格が過熱した結果として、投資ファンドが損失を抱えて事業の運営に行き詰まり、結果として世界的な金融システムの不安定性が高まったことは多い。アルケゴス問題には、そうしたケースと重なる部分があるように見える』、「規制の問題やカネ余りの影響などによって過度なリスクテイクが放置されていたことは、金融市場の脆弱性が高まっていることを示唆する」、確かに問題だ。
・『甘い規制と借り入れ…利得を重ねるフアン氏の手法  アルケゴスは、大手ヘッジファンド“タイガー・マネジメント”出身(運用業界で“虎の子=タイガー・カブ”と呼ばれる)のビル・フアン氏が設立した“ファミリーオフィス”だ。ファミリーオフィスとは、個人の金融資産を管理・運用する投資会社を指す。資金運用において、フアン氏は“レバレッジ”をかけた。つまり、金融機関から与信を受けることによって、自己資金以上の投資ポジション(持ち高)を構築して、大きな利得を目指した。 それが可能だったのは、ファミリーオフィスへの金融規制が甘かったからだ。リーマンショック後、米国では金融規制改革法(ドッド・フランク法)をはじめ金融規制が実施された。その結果、外部顧客の資金を運用するヘッジファンドは証券取引委員会(SEC)に登録を行い、株式などの持ち高(ポジション)や株主の構成、金融機関との取引、財務内容などを開示する義務を負った。 しかし、基本的に、個人の資金を管理・運用するファミリーオフィスは、規制の対象外に置かれた。そのため、リーマンショック後、多くのヘッジファンドが外部顧客に資金を返し、ファミリーオフィスへの業態転換を行い、規制から逃れようとした。それがファミリーオフィスを“影のヘッジファンド”と呼ぶゆえんだ。規制が甘いため、アルケゴスはリスクを取りやすかった』、「リーマンショック後、多くのヘッジファンドが外部顧客に資金を返し、ファミリーオフィスへの業態転換を行い、規制から逃れようとした。それがファミリーオフィスを“影のヘッジファンド”と呼ぶゆえんだ」、「ファミリーオフィス」が今後、「規制の対象」に含まれる可能性はあるのだろうか。
・『規制に苦しむ金融機関にとって重要な存在に  規制強化に直面した大手金融機関にとって、相対的に手数料の厚いデリバティブ取引や、資金繰り管理などのサービスを提供して収益を獲得するために、ファミリーオフィスの重要性は高まった。特に、フアン氏のようにリスクテイクに積極的なファンドマネージャーとの関係強化を目指す金融機関は増える傾向にあった。 フアン氏が金融機関と行った相対取引の一つが“差金決済(Contract For Difference、CFD)取引”だ。株式を対象とするCFD取引では、現物株を売買せず、取引の開始時と終了時の原資産の価格差によって決済を行う。 例えば、30ドルで推移していた米バイアコムCBSの株価が上がると思う投資家が、同社株を買い建てるCFD取引を注文するとする。株価が50ドルになった時点でCFD取引を決済(ポジションをクローズ)すると、差額の20ドルから手数料を支払った金額が投資家の利得になる』、「規制強化に直面した大手金融機関にとって」「ファミリーオフィスの重要性は高まった」。
・『株価が上がれば利得もかさ上げされるが…  フアン氏は金融機関に証拠金を差し入れて株式を原資産とするCFD取引を大規模かつ積極的に行った。想定通りに買い建てた(売り建てた)銘柄の株価が上昇(下落)すれば、レバレッジの効果によって利得はかさ上げされる。 逆に、参照する資産の価格が逆に動くと損失は増大する。損失が許容されたレベルを超えると、金融機関はリスクに見合った追加の証拠金差し入れ(追い証)を取引相手に求める(マージン・コール)。 相手が追い証に応じない場合、金融機関は取引相手とのポジションを解消してリスクを削減する。損失が自己資本を上回ると取引相手の資金繰りは行き詰まり、債務不履行=デフォルトが発生する。なお、どの程度の損失発生が追い証のトリガーになるかは、金融機関の体力や顧客のリスク属性によって異なる。 フアン氏は他のデリバティブ取引も活発に行い、特定銘柄のポジションを積み増していたようだ。その点に関して、法令が遵守されていたか、事態の解明が待たれる』、「CFD取引」は確かに「レバレッジの効果」が利きそうだ。
・『荒い値動きで損失に直面したか  以上の内容と米国の株価データなどをもとに、アルケゴス問題発生の経緯を考察しよう。2月半ば以降、金利上昇によって米国株の変動性は高まった。取引時間中の値動きはかなり荒く、乱高下する場面が増えた。その状況下、フアン氏は予想と異なる株価の動きによって買い建て(ロング)と売り建て(ショート)の両サイドで損失に直面し始めたのだろう。 決定打になったのが、3月22日にバイアコムCBSが増資を発表したことだ。同社株は売られ、“売るから下がる、下がるから売る”という動きが鮮明化した。それが損失を急拡大させ、アルケゴスは追い証を差し入れることができなかった。 3月26日、一部の金融機関はフアン氏にデフォルトを宣告し、200億ドル(約2.2兆円)の株式ポジションの解消を迫った。それほど、同氏のリスクテイクは膨大だった。フアン氏は金融機関に担保として差し入れていた資産の売却も余儀なくされた。それが、同氏が選好していたディスカバリーなどメディア関連銘柄の急落の原因とみられる。 想定外の損失拡大に直面した金融機関は、我先に資産の売却(投げ売り)を行ってアルケゴスに絡むリスクから逃れようとした。その遅れやアルケゴスとの取引規模などによって、日欧の大手金融機関に巨額の損失が発生したと考えられる』、「金融機関は、我先に資産の売却(投げ売り)を行ってアルケゴスに絡むリスクから逃れようとした」、もともとは「アルケゴス」が蒔いた種だ。
・『思い起こされるのはリーマンショックの“端緒”  アルケゴス問題が発生した後の日米の株価の推移をみると、多くの投資家が影響は一部の金融機関に限られると楽観しているようだ。4月上旬の時点で、カネ余り環境の継続期待、コロナ禍への慣れや経済の正常化期待を理由に、先行きに強気な投資家は多い。 しかし、アルケゴス問題は、特定の金融機関への影響だけでなく、世界の金融システムの不安定性を高める一因になりかねない。アルケゴス同様に、デリバティブ取引によってレバレッジをかけ、より大きな利得を目指す投資ファンドは多い。見方を変えれば、アルケゴス問題は、世界の大手金融機関が許容レベルを上回るリスクを蓄積していることを確認する機会だ。 資産価格の過熱感が高まると、一部金融機関などのリスクテイクの過大さが顕在化し、結果として世界の金融システムにストレスがかかることがある。思い起こされるのが、2007年8月上旬、仏大手金融機関BNPパリバ傘下の投資ファンドが証券化商品の価値下落によって運用に行き詰まったこと(パリバショック)だ。その後、証券化商品の価値は急落し、世界各国の金融機関が巨額の損失を計上した。それがリーマンショックにつながった』、確かに「パリバショック」に似ているが、規制強化で「金融機関」が取れるリスクに枠がはまったのも事実だ。
・『「金融機関同士の疑心暗鬼」が生まれている  今すぐ、そうした展開が起きるとは考えづらい。ただし、アルケゴス問題の影響は過小評価できない。特に、金融システムにおけるカウンターパーティー・リスク(取引相手が契約通りに義務を履行するかに関する不確実性)は高まりつつある。 野村は米ドル建普通社債の発行を中止した。低金利環境下、国債よりも利回りの高い社債の需要は強い。それでも発行が見送られたということは、アルケゴス問題の影響を警戒する投資家が少なくないことだ。在米のベテラントレーダーはその状況を「金融機関同士の疑心暗鬼」と評していた。 また、アルケゴス問題が他の金融機関の損失発生の直接的あるいは間接的な原因となる可能性もある。米国ではSECが情報収集に注力しており、投資ファンドへの規制強化に関する議論も進む。 それらは投資家にリスク削減を志向させる要因だ。アルケゴス問題の全貌は明らかになっておらず、先行きの展開を注視する必要がある』、「「金融機関同士の疑心暗鬼」が生まれている」、嫌な兆候だ。「アルケゴス問題の全貌は明らかになっておらず、先行きの展開を注視する必要がある」、同感である。

次に、4月6日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏による「野村が2200億円の損失も、「アルケゴスショック」が投資家に迫る3つの論点」を紹介しよう』。
https://diamond.jp/articles/-/267675
・『米投資会社の運用破綻に端を発した「アルケゴスショック」――。これに関連して、野村ホールディングス(HD)が約2200億円の損失を被る可能性を発表するなど、金融市場に衝撃を与えた。この一件を受けて投資家が考えるべき論点は大きく三つある。(1)危機は連鎖するか、(2)いかにも『バブル的』な資金の流れに対する視点、(3)野村HDの株価評価に対する「考え方」だ。それぞれ解説していこう』、興味深そうだ。
・『アルケゴスショックの論点(1)危機は連鎖するか?  先週初めの3月29日(月)、野村ホールディングス(野村HD)は米国子会社の取引に伴って20億ドル(約2200億円)程度の損失が発生する可能性を公表した。同日、野村HDの株価終値は前週末比117円70銭安の603円に下落した。 この損失は、元ヘッジファンドマネージャーが運営するアルゲゴス・キャピタル・マネジメントというファミリーオフィス(個人資産運用会社)の運用破綻によるもので、同社の取引に関連しては、スイス金融大手のクレディ・スイスも巨額の損失の可能性を発表した。 また、わが国では三菱UFJ証券HDが約3億ドル、みずほフィナンシャルグループが1億ドル規模の損失の可能性を公表した。不名誉な事態だが、野村HDは損失額が示唆する取引規模の大きさにおいて、わが国証券業界最大手の面目を保ったといえようか。 ファミリーオフィスはヘッジファンドよりもさらに情報の秘匿性が高いこともあり、損失経緯の詳細は分からない。ただ、アルケゴスは高いレバレッジを掛けた株式取引を行っていて、手法としてトータル・リターン・スワップ(TRS)を用いていたとみられる。TRSとは、手数料と引き換えに、株式などの原資産を直接持たずとも、そのリターンに基づく収入を得られる手法のことだ。 そして、取引で含み損が発生して追加担保を差し入れる必要が生じたときにこれができなかった。その結果、担保の処分とポジションの解消が行われて、保有資産が投げ売りされる形となって破綻したようだ。) レバレッジを掛けた株式投資を行うには、買い建ての場合なら、信用取引のように資金を借り入れて株式を買う形になるが、TRSでは金融機関が株式投資のリターン(損益両方)を受け渡してくれるのと引き換えに、投資家側は資金コストと手数料を支払う。投資家はこの形だと、自分が実質的に大量の株式を買っていることを市場に知られずに取引を行うことができる。 いささか不透明なポジションの作り方だが、金融機関側にとってもリスクにカウントされる融資を持たずに済むし、相手が破綻しなければ安定的に金利・手数料収入が入るので、好都合な面のある取引だ。 しかし今回のアルケゴスの場合は、肝心の投資が失敗したことと、複数の金融機関と広く取引をしていたことで、与信管理に失敗して損失を被る金融機関が多数発生することになった。 投資家として本件を知ったときに真っ先に考えるべきことは、これが2007年に本格化したサブプライムローン問題のときのように、他社に広く波及するようなものであるかどうかだ。 この問いに対する答えは半ば出ているように思われる。事件発生後の米国の株価全般は上昇しており、市場参加者が同様の件の連鎖を心配しているようには見えない。 ファミリーオフィスは他にもあるが、アルケゴスほどのレバレッジを掛けた運用はまれだろう。また、TRSは広く使われているが、市場で起きていることの実態はよくある「借り入れ+株式投資」であり、投資の成否は今のところ個別的に起こっている。そのため、他のケースに直ちに連鎖するようなものではなさそうだ。 本件をきっかけに、金融機関がTRSのクレジットライン(与信限度額)や担保管理を強化する可能性はある。しかし、金融マン個人はできれば自分のビジネスを縮小したくないし、金融機関の経営者としても、無事にやり過ごして当面の収益を稼いで自らのボーナスやストックオプションからの収入を高く保ちたいだろう。金融業は「リスクに目覚めた自浄作用」が働きにくいビジネスなのだ』、「TRS」は「いささか不透明なポジションの作り方だが、金融機関側にとってもリスクにカウントされる融資を持たずに済むし、相手が破綻しなければ安定的に金利・手数料収入が入るので、好都合な面のある取引だ」、その通りだ。「金融業は「リスクに目覚めた自浄作用」が働きにくいビジネスなのだ」、言い得て妙だ。
・『アルケゴスショックの論点(2)いかにも「バブル的」な資金の流れ  TRSの取引全体が危機に陥って問題が広く連鎖することがなさそうだから、投資家は安心していいのかというと、そうでもない。) バブルは「借り入れによって、投資が過剰に膨らむ」ことによって起こる資産価格の高騰現象だ。1980年代後半に発生した日本のバブルを振り返ると、例えば金融・運用業ではない事業会社の「財テク」運用では、信託銀行による「バックファイナンス付き」の「ファントラ」(「ファンドトラスト」の略称。信託勘定で資金を預かって信託銀行自身が運用する仕組み。多くの案件に「握り」と称する違法な利回り保証が付いていた)のような仕組みで、投資が過剰に膨らんでいた。不動産では、銀行同士が競いながら担保の条件を緩くして不動産開発融資を増やしていた。 「借り入れによる投資」は自己資金よりも大きな投資ができるのだが、投資が裏目に出たときに含み損をこらえることが難しい、「弱いポジション」だ。アルケゴスの場合も、追加担保を差し入れることができなくなると、ポジションを強制処分されてしまった。 バブルの時期にあっては多くの場合、「借り入れを伴う投資」を促す何らかの仕組みが開発されたり、脚光を浴びたりする。 現在の米国の株式市場を見ると、「SPAC(特別目的買収会社)」と称する企業買収を目的とする「空箱」を上場して資金調達する仕組みや、今回問題になったTRSが広く利用されるなど、定性的に見ていかにも「バブル的」な特徴を備えつつある。 TRSは金融機関にとっても投資家にとっても大きなリスクを扱う上で都合のいい面のある仕組みだし、「SPAC」も運営者にとって有利な条件で資金調達ができるので歯止めが掛かりにくい。 もっとも、日本のバブル期のファントラにしても、後にサブプライム問題を引き起こす証券化商品にしても、多くの場合は借り入れを伴う資金を動員して過剰な投資に向かわせる仕組みであることは間違いないのだが、広く使われるようになって「直ちに」バブル崩壊を引き起こしたわけではない。 投資家は、「直ちにバブル崩壊を警戒しなければならない」というわけではない。しかし、株式投資に向かっている資金の全てが健全なものではないことを、頭の片隅に置いて決して忘れないことが賢明だろう』、「現在の米国の株式市場を見ると、「SPAC(特別目的買収会社)」と称する企業買収を目的とする「空箱」を上場して資金調達する仕組みや、今回問題になったTRSが広く利用されるなど、定性的に見ていかにも「バブル的」な特徴を備えつつある」、「投資家は、「直ちにバブル崩壊を警戒しなければならない」というわけではない。しかし、株式投資に向かっている資金の全てが健全なものではないことを、頭の片隅に置いて決して忘れないことが賢明だろう」、その通りだ。
・『アルケゴスショックの論点(3)野村HDの株式評価に対する「考え方」  さて、本件では投資家にもう一つお伝えしておきたいことがある。それは、本件の野村HDのような場合に、株価について評価する際の「考え方」だ。 実は、筆者は証券会社の社員でもあるので、仰ぎ見る最大手とはいえ「同業」である野村HDの株式について、「買い」も「売り」も推奨することはできない(業界の不文律だ。もっとも、もともと個別株の推奨は筆者のスタイルから外れている)。 だが本件は、投資家にとって株式投資の材料判断の方法を説明する上で格好の題材なのであえて取り上げる。読者においては、筆者が、野村HDの株式を「買え」とも「売れ」とも言っていないのだ、という前提で以下の説明を理解してほしい。 さて、20億ドル、円貨にして2200億円の損失とは、野村HDの株価にとってどの程度のダメージだと評価されるべきなのだろうか。 野村HDにとって、(1)この金額が損失の上限であり、(2)この損失によって同社のビジネスが追加的な悪影響を一切受けないとする。また、野村HDの新しい株式時価総額は、(3)損失情報の発生以前の時価総額が適正なのだとすると、(4)その額から、2200億円が消えたとして引き算で見当を付けることができるはずだ。 野村HDの発行済み株式数は『会社四季報』(東洋経済新報社)によると、おおよそ32億3000万株だ。この株数で2200億円を割ってみると、この損失の1株当たりのインパクトは約68.1円だと計算できる。 問題は上記のいくつかの留保条件の吟味だ。 (1)2200億円が損失額の上限なのだろうか?正確なことは分からない。追加の損失が隠れている可能性は否定できない。他方、問題の性質として本件はアルケゴスに特有の問題で、他に波及しない性質のものでありそうだ。仮に最大損失額を3000億円と見積もると、1株当たりのインパクトは92.9円だ。 (2)野村HDが資金力・信用力の小さい会社であれば、2200億円の損失で資金繰りが苦しくなったり、資金調達のコストが上昇したりする可能性があり、損失は本業の利益を損なう可能性がある。また、損失の発生理由が企業のビジネス上の評判を損なうようなものであれば(例えば消費者の不買に発展しかねない食品メーカーの品質管理上の不正など)、追加的な悪影響を見積もる必要がある。野村HDにこれらの要素がなければ、損失問題の株価への影響評価は(1)の計算からそう遠くないはずだ。 (3)いつにあっても、どの銘柄でも「適正株価」の判断は難しい。それでもこの方法のいいところは、「前の株価が適正だとすれば」という前提で、「新しい情報とその情報のインパクトを勘案することによって」、情報発生後の株価の評価ができることだ。前の株価(3月26日の終値は720.7円)は特殊な状況によるものだったのだろうか?) (4)2200億円の純資産の減少による時価総額のマイナスが、これ以上のものになるべき理由があるか?例えば、資本が効率よく利用されていて将来高い利益が期待されているような会社の場合、2200億円の純損失は時価総額にもっと大きな影響をもたらしてもおかしくない。一つの参考として、株価純資産倍率(PBR)を見ると、野村HDの下落前の株価(720.7円)に対するPBRは、0.79倍と1倍を割っていた。この心配は小さいかもしれない。 野村HDの株価は、悪材料の発表から1週間たった先週末終値で572円20銭だった。前週末比148円50銭安だ。 上記の留保条件をいずれもクリアできると考える投資家にとっては、いくらか「下げ過ぎ」と見えるかもしれない。ただし、諸々の不確実性が大きいことを考慮すると、チャンスと考えるにはこの幅では不足だと考える投資家もいるだろう。 読者の判断はいかがだろうか? 同業他社の悪材料であり、「買い」とも「売り」とも言えないのにあえて株価の評価について書いた理由は二つ。投資家にとって、(1)悪材料のインパクトはしばしば数量的に評価しやすく、(2)再びしばしば悪材料に対しては市場の過剰反応が起こる場合があるからだ。 特に前者については、好評な新製品などの「好材料」が一体どれくらいのインパクトをもたらすのかが茫漠として評価しづらいのに対して、突発的損失や会計上の不正、工場などの被災などの「悪材料」は、金額的なスケールが評価しやすい場合があることについて注目したい。 株式投資家はニュースで上場企業の悪材料を見つけたら、発行株数をチェックして株価へのインパクトを考えてみる習慣を持つといい。ぜひ、持ち技の一つに加えてほしい』、「筆者は証券会社の社員でもあるので、仰ぎ見る最大手とはいえ「同業」である野村HDの株式について、「買い」も「売り」も推奨することはできない:、と予め立場を明確にするのは、公正さを重視する山崎氏らしい。「株式投資家はニュースで上場企業の悪材料を見つけたら、発行株数をチェックして株価へのインパクトを考えてみる習慣を持つといい。ぜひ、持ち技の一つに加えてほしい」、今後大いに活用してみたい。 
タグ:資本市場 (その5)アルケゴス問題2題(2200億円が蒸発…野村が被った「アルケゴス・ショック」の本当の怖さ "損失の連鎖"が起きる可能性がある、野村が2200億円の損失も 「アルケゴスショック」が投資家に迫る3つの論点) PRESIDENT ONLINE 真壁 昭夫 「2200億円が蒸発…野村が被った「アルケゴス・ショック」の本当の怖さ "損失の連鎖"が起きる可能性がある」 日本では野村、みずほFGで損失発生か 行きすぎたリスクテイクが放置されている 「規制の問題やカネ余りの影響などによって過度なリスクテイクが放置されていたことは、金融市場の脆弱性が高まっていることを示唆する」、確かに問題だ 甘い規制と借り入れ…利得を重ねるフアン氏の手法 「リーマンショック後、多くのヘッジファンドが外部顧客に資金を返し、ファミリーオフィスへの業態転換を行い、規制から逃れようとした。それがファミリーオフィスを“影のヘッジファンド”と呼ぶゆえんだ」、「ファミリーオフィス」が今後、「規制の対象」に含まれる可能性はあるのだろうか。 「規制強化に直面した大手金融機関にとって」「ファミリーオフィスの重要性は高まった」。 「CFD取引」は確かに「レバレッジの効果」が利きそうだ。 「金融機関は、我先に資産の売却(投げ売り)を行ってアルケゴスに絡むリスクから逃れようとした」、もともとは「アルケゴス」が蒔いた種だ 確かに「パリバショック」に似ているが、規制強化で「金融機関」が取れるリスクに枠がはまったのも事実だ 「「金融機関同士の疑心暗鬼」が生まれている」、嫌な兆候だ 「アルケゴス問題の全貌は明らかになっておらず、先行きの展開を注視する必要がある」、同感である ダイヤモンド・オンライン 山崎 元 「野村が2200億円の損失も、「アルケゴスショック」が投資家に迫る3つの論点」 アルケゴスショックの論点(1)危機は連鎖するか? 「TRS」は「いささか不透明なポジションの作り方だが、金融機関側にとってもリスクにカウントされる融資を持たずに済むし、相手が破綻しなければ安定的に金利・手数料収入が入るので、好都合な面のある取引だ」、その通りだ。 「金融業は「リスクに目覚めた自浄作用」が働きにくいビジネスなのだ」、言い得て妙だ。 アルケゴスショックの論点(2)いかにも「バブル的」な資金の流れ 「現在の米国の株式市場を見ると、「SPAC(特別目的買収会社)」と称する企業買収を目的とする「空箱」を上場して資金調達する仕組みや、今回問題になったTRSが広く利用されるなど、定性的に見ていかにも「バブル的」な特徴を備えつつある」 「投資家は、「直ちにバブル崩壊を警戒しなければならない」というわけではない。しかし、株式投資に向かっている資金の全てが健全なものではないことを、頭の片隅に置いて決して忘れないことが賢明だろう」、その通りだ アルケゴスショックの論点(3)野村HDの株式評価に対する「考え方」 「筆者は証券会社の社員でもあるので、仰ぎ見る最大手とはいえ「同業」である野村HDの株式について、「買い」も「売り」も推奨することはできない:、と予め立場を明確にするのは、公正さを重視する山崎氏らしい 「株式投資家はニュースで上場企業の悪材料を見つけたら、発行株数をチェックして株価へのインパクトを考えてみる習慣を持つといい。ぜひ、持ち技の一つに加えてほしい」、今後大いに活用してみたい。
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働き方改革(その31)(官僚志望者が激減…霞が関の「不払い残業」がもたらしている「本当の問題」、官僚志望者が激減…霞が関の「不払い残業」がもたらしている「本当の問題」、ソニー社員が働きがいを感じる「実力主義」の中身 報酬差は最大240万円も!) [経済政策]

働き方改革については、本年1月12日に取上げた。今日は、(その31)(官僚志望者が激減…霞が関の「不払い残業」がもたらしている「本当の問題」、官僚志望者が激減…霞が関の「不払い残業」がもたらしている「本当の問題」、ソニー社員が働きがいを感じる「実力主義」の中身 報酬差は最大240万円も!)である。

先ずは、3月19日付け現代ビジネスが掲載した文筆家・労働団体職員の西口 想氏による「官僚志望者が激減…霞が関の「不払い残業」がもたらしている「本当の問題」」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/81201?imp=0
・『:1月18日から始まっている第204回国会(通常国会)。会期は延長がなければ6月16日までの150日間だ。すでに東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の問題や総務省幹部などの接待問題で紛糾しているが、本来は新型コロナウイルス感染症の拡大防止と国民の生活再建が最優先課題である。 そんな重要な国会の場で、昨年から一冊の本が話題だ。2019年まで厚生労働省に勤めていた元キャリア官僚・千正康裕氏が書いた『ブラック霞が関』(新潮新書)である。周知のとおり、「霞が関」とは国の行政機関(中央省庁)があつまる東京都千代田区の地名。本省の政策立案部門で働く国家公務員の過酷な労働環境について、現場から具体的に解説し、改善にむけた提言をしている書籍である』、『ブラック霞が関』とは言い得て妙だ。
・『朝7時〜午前3時過ぎまでの過酷な労働  『ブラック霞が関』では国会会期中の若手官僚のタイムスケジュールの一例を示している。これが衝撃的だ。一部省略して以下に引用する。 [今の若手官僚の1日の例] 7:00 検討中の政策について報道が出たため、大臣が記者に聞かれた時の応答メモを急遽自宅で作成  上司の決裁を得て大臣秘書官に至急送付 9:00 出勤。政党の会議から帰ってきた局長から議員への説明資料作成指示 9:30 局長指示の議員への説明資料作成開始 10:30 資料作成完了 11:00 審議会の資料作成(政府案の検討) 11:15 国会議員から地元イベントでの挨拶文の作成依頼があり作成 11:35 自治体からの問合せへの対応 12:20 課長の指示を受けた審議会資料の修正 13:00 国会議員依頼の挨拶文を上司に説明、修正指示を受ける 14:05 議員レクのために議員の事務所に向かう 14:30 議員レク開始 15:30 議員レク終了 15:45 職場に戻る 16:00 朝の局長指示で作成した議員説明資料について課内打合せ 16:30 課内打合せを踏まえて修正 16:50 審議会資料について課長に説明・了解 17:00 国会議員から質問主意書が届き答弁書の作成開始 18:35 翌日の大臣の記者会見での質問内容が記者クラブから届き、大臣の回答メモを至急作成 19:30 大臣の記者会見回答メモについて上司の了解を得て秘書官に送付 20:00 質問主意書の答弁について上司の了解 20:30 国会議員の依頼の挨拶文が完成、メールで議員事務所に送付 21:00 秘書官から、大臣記者会見用の回答メモについて確認の電話、修正指示 21:30 大臣記者会見用の回答メモの修正完了、コピーして広報室に持ち込み 22:30 庁舎内のコンビニが閉まる前に夕飯の買い出し、夕食 24:00 局長から資料修正指示のメールが届き、修正作業  修正したものを課長にメールで送付 24:30 質問主意書の答弁書について官房総務課の審査を受ける 26:00 質問主意書の官房総務課審査を受けて修正作業 27:00 質問主意書の官房総務課審査終了 27:15 質問主意書の答弁書と参考資料を内閣法制局にメールで送付(翌日審査) 27:20 退庁 朝7時に自宅で業務が始まり、27時20分、午前3時を過ぎてようやく拘束を解かれる。その間、ろくに休息もとれないまま、20時間働き続けている。明け方にタクシーで家に帰り、翌日も国会があるため仮眠程度に寝て、また朝7~8時頃には仕事が始まるのだろう。千正氏はこのスケジュールを「忙しい部署の若手のよくある1日の例」と書いている。半年続く通常国会の会期中、連日このような働き方を続けていれば、どれほど健康な人でも心身ともに壊れてしまうはずだ』、時間表示が「27:20」と24:00が上限でなく、そのまま増えていくとは、「霞が関」らしい。
・『国家公務員試験の申込者数が20年で約6割減  霞が関での異常な長時間労働はいまに始まった話ではない。公務員、政治家、メディア関係者にとっては長年の常識であり、「不夜城」「タクシー行列」といった報道をつうじて一般市民にもそれなりに知られてきた。その実態がこの20年ほどでさらに深刻化しているのである。政府の定員削減の影響を強く受けた地方出先機関でも残業が増えているが、霞が関(本府省)では先の例のように国会対応業務が重く、いっそう非人間的な働き方になっている。大臣や副大臣ではない与党の一国会議員の地元挨拶まで官僚が書いているらしい。1人で3人分の仕事を同時にこなしているような労働密度だ。 2019年末に内閣人事局が実施した調査では、30歳未満の男性職員の約15%、30歳未満の女性職員の約10%が、3年以内に辞めたいと回答した(本府省・地方出先機関対象)。また、厚生労働省本省に対象を絞ったアンケートでは、「2年後も厚生労働省で働き続けているか」という質問に対して2割の職員が「当てはまらない」と答えたという。実際に若手の退職が急増しており、国家公務員試験の申込者数も20年で約6割減った。若い世代ほど国家公務員として働くことに魅力を感じなくなっている。 近年こうした危機感が広く共有され、若手公務員の有志が政府に対する提言をまとめたり、Twitterの匿名アカウントで官僚自身が労働環境のひどさを訴えたりするようになった。深夜3時過ぎのタクシーの中で、日々をやり過ごすことに手一杯で政策のことを考える余裕がないとつぶやくその内容は、『ブラック霞が関』で紹介されたような1日の最後に振り絞られた言葉だと思う。私はそうしたツイートを読んで、電通の新入社員だった高橋まつりさんが亡くなる前に投稿したツイートを思い出した。 「働き方改革」を掲げ、民間企業には残業規制やワークライフバランス推進などを求める政府の職員が、なぜこのような働き方のままなのか。実は、その問題を解くための一つのカギが、昨年末に政府自身によって示されている。2020年12月25日に公表された内閣人事局の「在庁時間調査」である』、「30歳未満の男性職員の約15%、30歳未満の女性職員の約10%が、3年以内に辞めたいと回答した」、「国家公務員試験の申込者数も20年で約6割減」、さすが『ブラック霞が関』らしい。
・『「自己研鑽」扱いになっている超過勤務  まず、「在庁時間」という聞きなれない言葉を説明したい。 国家公務員にも「残業」の概念はある。国家公務員の場合、勤務時間法と呼ばれる法律で正規の勤務時間を1日7時間45分/週38時間45分と定め、その時間を超えて勤務したときに「超過勤務」(残業)となる。 ただし、民間企業などでは「36協定」を労使で結ぶことによって労働基準法で定められた1日8時間/週40時間の上限を超える時間外労働(残業)や休日労働が認められるのに対し、原則として労働基準法が適用されない国の職場では、「公務のため臨時又は緊急の必要がある場合」という建前で、各省各庁の長の「命令」によって超過勤務が発生する決まりになっている。 さらに、国家公務員の超過勤務手当を含む人件費はすべて国家予算から支出されるため、国民の代表機関である国会の承認が必要だ。税金を使う以上、人件費は計画的に要求され確保される必要があるが、国家公務員は一般職だけで30万人いて、それぞれが好き勝手に残業をしていると予算の見通しがつかない。そのため、国家公務員の残業予算はかなり機械的に一律で枠が決められてきた。 こうした仕組みを逆手にとって、予算枠を超える分の残業は「命令」を出さず、「職員が自己研鑽のために勝手に庁舎に残っている」ということにすれば、実際は働いていても「超過勤務」は発生せず、手当(残業代)も支払わずに済む。その時間を含めた実際の拘束時間を「在庁時間」と呼んでいるのだ。……そう、これは数年前の電通事件と酷似している。高橋まつりさんの悲劇のあと、2017年に電通の違法残業が公訴され、裁判所は「自己研鑽」などとされてきた時間を労働時間として認定、電通が過去2年分の残業代約24億円を支払った。それから3年以上経つのに、国家公務員で同じ問題が繰り返されている』、「予算枠を超える分の残業は「命令」を出さず、「職員が自己研鑽のために勝手に庁舎に残っている」ということにすれば、実際は働いていても「超過勤務」は発生せず、手当(残業代)も支払わずに済む。その時間を含めた実際の拘束時間を「在庁時間」と呼んでいるのだ。……そう、これは数年前の電通事件と酷似」、「国家公務員で同じ問題が繰り返されている」、「予算枠」がある以上、やむを得ないとはいえ、ブラックが常態化しているのはやはり異常だ。
・『年140億円ほどの「不払い残業代」の可能性  残業予算は表に出てこない数字だが、人事院の年次報告書に超過勤務手当(残業代)支給の平均時間が示されている。そこから本府省の数字を拾うと、2018年は月30時間程度、17年は月29時間程度、16年と15年は月32時間程度となる。霞が関では総じてサービス残業が常態化していることを踏まえれば、一人月30時間程度を残業代の予算額として各府省に与えていると推測できる。この予算を、各府省の人事課などが特に忙しい部署に重点的に配分するなどの工夫をしている。 問題は、この月30時間程度の予算で、霞が関の長時間労働に対する支払いが全てカバーされているかどうかだが、実は、政府は今回の「在庁時間調査」である程度の検証が可能になった。 「在庁時間」は、2008年から人事院などによりサンプル調査がなされていたが、わずかな標本数の調査のため実態がつかめていなかった(というより、あえて把握しなかったのだと思われる)。しかし、2020年に政府・内閣人事局が霞が関勤務の国家公務員約51,000人の10~11月の「在庁時間」を全数調査したため、残業予算とどれくらいの差があるのか概算できるようになったのだ。 調査結果では、職員一人当たりの平均在庁時間は10月に40時間20分、11月に38時間38分だった。したがって、月10時間程度は残業予算を超える「在庁」をしていることが分かった。 ここから先は、規模感をつかむための筆者による粗い試算だ。 指定職約900人、管理職約4,700人、専門スタッフ職約150人など、超過勤務手当の支給対象外の約6,000人を除くと、不払いなのは約45,000人。本府省勤務職員の平均給与から平均残業代単価を出すと、1.25倍の割増のみの低めの概算で、約3,000円/時間くらいだ。10時間では約3万円なので、3万円×45,000(人)=13億5千万円。 ただ、月80時間超(およそ一日4時間超)在庁している6,000人前後の職員は夕食休憩30分を挟むと仮定して、1,500円×20(日)×6,000(人)=1億8千万円を差し引いたほうがいいだろう。それでも、霞が関だけで月11億7千万円程度の実質的な「不払い残業」があると私は試算した。年額にして約140億円というスケールになる。) 先の調査を経て、菅内閣で公務員制度を所管する河野太郎大臣は、1月22日の記者会見で「残業時間はテレワークを含めて厳密に全部付け、残業手当を全額支払う」と述べた(日本経済新聞の記事より)。内閣人事局は全府省の平均在庁時間しか公表していないが、全数調査をしている以上、省庁別・部署別の在庁時間もすべて把握している。それを超過勤務手当の支給実態と照らし合わせれば、どの省庁のどの部署にどれくらい超過勤務手当予算が足りないのか一目瞭然であるはずだ。 本来、その内訳まで主権者たる国民に開示するべきだが、何より一刻も早く予算をつけ、過去の不払い分まで遡及して支払ってもらいたい。職場に蔓延した長時間労働を是正するための第一歩は「サービス残業」によって隠されたコストの可視化だからだ。本当のコストが分かってはじめて、霞が関に必要な人員数と予算を導き出せる。 そして長時間労働には、残業代だけで計れないコストも多くある』、「本来、その内訳まで主権者たる国民に開示するべきだが、何より一刻も早く予算をつけ、過去の不払い分まで遡及して支払ってもらいたい」、「予算」がついておらず、払えないのであれば、「長時間労働」の「内訳」を「開示」する訳にはいかないだろう。
・『心身の健康被害とジェンダー不平等を助長  一つはもちろん労働者の健康被害だ。人事院の年次報告書によると、2017年度にいわゆるメンタル疾患で1か月以上の長期病休をとった職員の比率は、一般職の国家公務員で1.39%(男性1.30%、女性1.76%)だった。厚生労働省「労働安全衛生調査」によれば、2017年のメンタルヘルス不調による民間労働者の長期病休者率は0.4%であり、国家公務員のほうが約3.5倍も多い。膨大な数の公務員が過酷な職場で心を病み、療養を余儀なくされ、苦しんでいる。行政を支える人手が失われるだけではない。このような労働環境を放置した国(使用者)による人権侵害だと言えよう。 また、『ブラック霞が関』にはこう書かれている。「霞が関では24時間365日対応できることが『フルスペック人材』になっているので、フルタイム勤務・残業なしは実質的には短時間勤務のような立場になってしまう」。こうした職場では、家庭でケアを抱えることが多い女性労働者は実質的に排除される。長期病休者で女性の割合が高いのも、本府省の管理職の女性比率が1割に遠く及ばないのも、過労死レベルの労働時間を前提とした職場環境がジェンダー平等を阻害しているからだろう』、「メンタルヘルス不調による長期病休者率」が「国家公務員のほうが約3.5倍も多い」、というのはやはり問題だ。
・『「ケアレス・マン」の量産による代償  このような「フルスペック人材」像は、フェミニズム社会学・経済学では「ケアレス・マン」と呼ばれ、「産む性としての身体的負荷がない」「家庭責任不在の男性的働き方」として有徴化されてきた(杉浦浩美『働く女性とマタニティ・ハラスメント』2009年)。さらに労働法学者の浅倉むつ子は、「ケアレス・マン」は誰かのケアをしていないだけでなく、自分のケアを誰かにさせていると指摘した。 生活を維持するケア労働を誰かに委託する手段は、パートナーが専業主婦/主夫になるか、老親を呼び寄せるか、代行サービスなどで部分的に外注するかくらいだ。つまり、長時間労働の本当のコストには、不払いの残業代だけでなく、「ケアレス・マン」が外部化したケア労働、再生産労働のコストも算入されなければいけない。そのため、生活時間を重視する浅倉は、残業は金銭ではなく時間で清算すべきとの立場をとる。 優秀な官僚のパートナーが、同じく高学歴で勤労意欲のある人である可能性は高い。しかしケアレス・マンと結婚したために自らのキャリアを諦めざるを得なかったというケースは数多あるだろう。その場合の生涯賃金や社会にとっての逸失利益も、長時間労働の本当の「コスト」だ。 私たちは東京オリンピック・パラリンピック組織委員会におけるマチズモに怒ったばかりだ。その問題が追及されている国会と行政の場で、このような性差別と一体の働き方が放置されていいわけがない。どのような職場、家族、地域のなかで私たちは生きていきたいのか。長時間労働の大きすぎる代償を計算することは、今よりマシな未来を想像するための第一歩になると私は考えている』、「優秀な官僚のパートナーが、同じく高学歴で勤労意欲のある人である可能性は高い。しかしケアレス・マンと結婚したために自らのキャリアを諦めざるを得なかったというケースは数多あるだろう。その場合の生涯賃金や社会にとっての逸失利益も、長時間労働の本当の「コスト」だ」、確かにこうした広義の概念で捉えるべきというのには同意できる。

次に、3月20日付け日経ビジネスオンライン「官僚志望者が激減…霞が関の「不払い残業」がもたらしている「本当の問題」」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00271/031900002/
・『日立製作所や富士通など、日本の大手企業が相次いで「ジョブ型」といわれる雇用制度に移行しています。ジョブ型とは、職務内容を明確に定義して人を採用し、仕事の成果で評価し、勤務地やポスト、報酬があらかじめ決まっている雇用形態のこととされます。一方、日本企業はこのジョブ型に対し、新卒一括採用、年功序列、終身雇用で、勤務地やポストは会社が人事権の裁量で決められる雇用形態を取っており、人事の専門家はこれを「メンバーシップ型」と称してきました。 今、日本企業が進めるメンバーシップ型からジョブ型への移行は何をもたらすのでしょうか。そのジョブ型に対する安易な期待に警鐘を鳴らすのが雇用ジャーナリストの海老原嗣生氏です。本連載の1回目として、4月1日に新著『人事の組み立て~脱日本型雇用のトリセツ~』(日経BP)を上梓する同氏へのインタビュー記事をお届けします(Qは聞き手の質問)・・・本インタビュー記事最後に開催概要を記載しております。 Q:「日本型雇用が行き詰まっている」ということで雇用を巡る改革の動きは長年続いてきました。今いわゆる「ジョブ型」を中心とした議論が盛んになっています。海老原さんはどんなふうにご覧になっているんでしょうか。 海老原嗣生・雇用ジャーナリスト、ニッチモ代表取締役(以下、海老原氏):僕が人材系の仕事に携わるようになったときの初っぱなの議論が「新時代の日本型雇用」でした。今から30年前くらい、日経連(現在の経団連)が主導したプロジェクトだったんですね。あのとき問題になっていたのは、1990年代のバブル崩壊で業績が落ち込んで、会社の中のポストがなくなったこと。定期昇給で給与が上がり続けるという仕組みも終身雇用も難しくなっている中で「日本型でいいのか」という話でした』、確かに歴史的にみれば、繰り返し問題になってきたようだ。
・『問題は同じなのに、次々と変わるソリューション  Q:それほど今とは変わらない議論だ、と。 海老原氏:昔の資料を探すと、これとまったく同じ言葉がその30年前にもありました。2000年代になってからも、僕が知っているだけでも小泉改革のときの多様な働き方勉強会、あれのときもまったく同じ議論をしているんですよ。 要するに「ゼネラリストで、終身雇用で、定期昇給で、年功序列という仕組みは大丈夫なの?」と。今から6~7年前に僕も多少携わったプロジェクトで言えば、政府の規制改革会議と産業競争力会議、日本再興戦略会議、この3つがありました。3つが並走していて、ここでもゼネラリスト、終身雇用、定期昇給、年功序列で大丈夫なのかという話をしているんですよ。 出発点はいつも一緒で、そのたびに言っていることがちょっと変わっただけ。僕が最初に議論を傍観したときはどうだったかというと、「新しい時代の雇用は3層に分ける。まず長く在籍してもらい経営層を目指す人、それから特定のスキルを持ったテクノスペシャリストみたいな人、こういう人は、(労働市場の)市場価値があってどこでも行ける人だと。そして、短期雇用型のアルバイターみたいな人」という話でした。具体策はその後のものとは違うけど、議論の入り口は一緒だったんですよ。 小泉(純一郎)首相と安倍(晋三)首相のあたりの10年ぐらいにどんな話をしていたかというと、ホワイトカラーエグゼンプションとか高度プロフェッショナル制の話。そして最近になって出てきたのがジョブ型なんですよ。結局、出発点は同じなのにソリューションが全部違うということなんですね。 Q:そもそも日本型雇用の是非がなぜ議論になるのか。あらためてお聞かせください。 海老原氏:まず僕が見る限り、日本型の特徴である「無限定」の雇用の仕組みは人を育てる上で、非常にうまくまわってきました』、どういうことだろう。
・『日本型雇用、人を育てるには適した仕組み  ポストを決めて雇用契約を結び、本人の同意がない限り配置転換ができない欧米の「限定」型の雇用に対して、会社が人事権(配置権)を持ち、他の職種、他の地域への異動(転勤)を命じることができる日本は「無限定」型の雇用システムということですね。 海老原氏:新聞記者さんを例に取りましょう。日経ビジネスは雑誌なのでちょっと違うと思いますけど。新聞記者さんだと、入社してまず「サツ回り」をやらせるじゃないですか。県警とか警察を担当するわけですね。 サツ回りで地方に配属すると何がいいかというと、警察を担当していたら記事になるネタが集まります。つまり自分でまだ記事を取りに行く、探すことができない新人記者にとって警察発表を記事にするというのは最初にやりやすい仕事の仕組みなんです。 (警察幹部への)夜回り取材というのもあります。記者としての足腰を鍛えるためでもあるし、うまい聞き方を身につける訓練になる。人にかわいがられるという意味でも夜回りも大切でしょう。それから地方の何がすごいかというと、その土地の政治、経済、スポーツ、産業……、全部を覚えられる。そういう基礎を身につけて、今度は東京とか大都市に異動させて難しい仕事をやれるようになっていく仕組みなんです。 そうやって仕事をちょっとずつ難しくするというのは、無限定雇用だからできるわけです。例えば経済紙に記者として入ったので「僕は経済しかやりません」とかじゃなくて、何でもやらせられるから簡単な仕事から難易度を上げられる。腕が立ってきたら、ひとつ上の仕事をやらせて、だんだん難しいものに対応できるよう成長するわけです。 つまり何も知らない若者が入ってきて、10年で育てるみたいな意味では非常にうまくできた仕組みだと思うんです。最初の給与は安くて、能力アップに応じてちょっとずつ上がっていくけど、まだ修業期間だからあんまり差はつけない。こういうボトムアップ期には日本型雇用は非常に向いているんですよ。ボトムアップ期については、「新卒一括採用しか入り口がない」ととかくいわれる問題がありますが、ただ、若者は昔から3年で3割転職しているので、これもそんなに大きな問題とは思っていません。就職氷河期のようなことが起きない限りは』、「何も知らない若者が入ってきて、10年で育てるみたいな意味では非常にうまくできた仕組みだと思うんです。最初の給与は安くて、能力アップに応じてちょっとずつ上がっていくけど、まだ修業期間だからあんまり差はつけない。こういうボトムアップ期には日本型雇用は非常に向いているんです」、その通りだ。
・『本当のジョブ型なら、本人の同意なく残業や転勤はさせられない  Q:若手を育てるにはいい仕組みだと。 海老原氏:問題は、例えば35歳以降くらいで能力が上がって、課長とか部長になる人と、それ以外の人に分かれてからなんですね。能力がアップして課長、部長になった人は給与が上がる。それは当然です。でも日本型雇用だと、職能主義といって、ポストの数に関係なく昇級・昇給できる仕組みをとっているから、平社員のまま止まっている人も給与が上がるんですよ。これがおかしい。 会社員生活の前半戦のことはあんまり問題じゃなくて、後半戦に右肩上がりの賃金カーブが続いていくので、経済成長が止まると厳しくなる。それで「どうしたらいいの? いろいろな仕組みを入れなきゃね」というのが、ずっと議論のテーマなわけです。 Q:欧米を見習ってジョブ型を導入すれば解決するんでしょうか。 海老原氏:まず言っておきたいのは、ジョブ型にするなら無限定雇用をやめないといけない。 Q:ジョブ型にしたのに会社の都合で仕事の内容が違うポストに異動させたり転勤させたりするのは理屈に合わないというわけですね。では欧米のジョブ型のように限定型の雇用にすると何が起こるんでしょうか。 海老原氏:まず平社員のままだと給与が上がるということはなくなります。ジョブ型ですから。その代わり限定型になるので、本人が同意しない滅私奉公的な残業はなくなります。それから会社が勝手に異動を命じることもできません。つまり人事権を企業から取り上げることになるわけです。給与は上がらないけれども、残業は発生しませんし、異動もない。欧米型、いや、正確には「欧米のノンエリート型」にするというのはそういうことです。 Q:欧米でも将来経営層を目指すようなエリート社員は残業も転勤もいとわず猛烈に働きますが、ノンエリートはジョブ型で限定型の雇用だから、原則として、定時に仕事が終わって、転勤もない。そのやり方を日本の企業に入れて果たしてフィットするのか、ということなんですね。 海老原氏:そうです。でも残業も人事異動もさせられないなんて、日本の企業は嫌なわけじゃないですか。 働く側からするとどうなのかというと、雇用保障が弱くなるんですよ。ジョブ型で1つのポストでしか働かないわけだから、不況とか会社の方針転換などで、そのポストがなくなったら雇用継続する道理はない。そんな先行きまで労働者に提示したら、「クビになるのは嫌だから異動があってもいい」という話になるんですよ』、「日本型雇用だと、職能主義といって、ポストの数に関係なく昇級・昇給できる仕組みをとっているから、平社員のまま止まっている人も給与が上がるんですよ。これがおかしい」、既に職能給的色彩を強め、「平社員のまま止まっている人」は「給与が上が」らないように賃金体系を変えている企業も出てきた。
・『実は労使とも今の方が居心地がいい  結局、企業も働く方も捨てるものを捨てられないからこうなっている. Q:労使とも既得権があるから話が進まない、そういうことなんですか。 海老原氏:まず経営側が分かってない。分かっているのは労務の相当詳しい人間だけ。それ以外の経営側の人は、ジョブ型で必要になるジョブディスクリプション(職務定義書、JD)を書くと欧米型になるみたいに思っているし、職種別採用をすると欧米型になると思い込んでいるだけで、なぜ欧米型のノンエリートなら給与が上がらなくて、なぜ社員が早く帰れるか突き詰めて考えてない。出世も昇進もなくなって、給与が安くなる。一方で、負荷のある仕事がなくなるし、早く帰れることができる。こういう話がセットになっていることを知らないんですよ。 それから、職種別採用をすると、その職種に詳しい人がその仕事しかやらないから早く帰れるんじゃないかとか思っている。でもエンジニアなんて今でもエンジニア採用で入っているわけなんですよ。でも早く帰れてますか? 経理とかITも職種別採用で入社したときからずっと経理をやっている人が多い。でも早く帰れないんですよ。そんなもの、いわゆる職種別採用をやっても解決しない。ここでJDの話になるわけです。欧米だとJDに仕事が明確に書かれているから、あれこれ余計なことは頼まれない、と。 でもね、欧米のジョブディスクリプションを見れば、実際にはもう細かいタスクなんて書いてない。昔はタスクが書いてあって、このタスクをやれば帰れるという仕組みだったけど、今はそうじゃない。周囲の仕事も手伝うとか、規定にない場合は上司の判断に委ねるとか、書いてあるんですよ。で、もう明確に規定などできなくなっている。その結果、何が起きているか。 今度は人事コンサルタントがそれを見て、タスクではなく、責任とか理念とか職責とかが書いてある、いわゆる「グーグル型」に変えようみたいなことを言っているわけです。それって日本の職責グレードとか役割給とあんまり変わらないじゃないと僕は思うんですね』、「実は労使とも今の方が居心地がいい」、同感である。
・『キャリアの後半では昇給しにくくなる  Q:タスクだと具体的な感じがしますけど、職責とか言われると、あいまいな印象がありますね。 海老原氏:「ミッション」とかになるわけなんですよ。ミッションとかコンピテンシーってそんなに変わるものではないし、何より、それを決めても職場に審判員がいて、「あなた職責違反です!」って四六時中ジャッジしない限り霧消します。だから日本じゃ職責も役割も大してうまくいってません。こんなような話をずっとやっているんですよ。 「ジョブ型って本当に何なの?」って考えていけば、これは企業の人事権が弱くなるということ。それが1つ目の結論なんですよ。 2つ目はポストで人を雇うということ。欧米の企業は上から下までポストの数がまず決まっている。それは経営計画で全部決まっているんですよ。「あれ、人が余っちゃった」となったら、「さよなら」になる。ポスト数が先に決まっていて、人が足りなければ採りなさい、余っていたらさよならって、ポストで決まるわけです。つまり上へ行くのも横に行くのも、ポストがなかったら行けない仕組みなんです。ジョブ型というのは、ポストで人を雇う仕組みなので、さっきも言ったように会社が一方的に異動を命じる人事権はなくなります。 労働者側から考えたら、いくら頑張ってもポストが空いていなければ、上に行けなくなるんですよ。例えば入社3年目くらいの若手で、アソシエイトからシニアに上がれる力があっても、シニアの席が空いていなかったら、1個も上がらないわけなんです。 これまで日本企業ではポストが空いていなくても職能等級では上がることができた。いや、下位等級には「ポスト数」なんて定員概念はほぼなかった。3級だったのが4級までは、2年くらいまあまあ頑張ればみんないけて、給与も上がった。そんな制度だったのが、ジョブ型だとポストが空いていなければ上がらなくなっちゃう。 一般企業だと課長になれない人って、今、54%ぐらいいる。その54%のうちほとんどが係長職能等級まではいっているんですよ。係長の職能等級なんていくらでも奮発していいわけ。でもジョブ型だと物理的な「係」の数しか係長のポストはないわけですから、係長にもなれない人がたくさん出る。 だからジョブ型にしたら、キャリアの後半では給与ってなかなか上がらなくなるんですよ。でもそんな人事管理は企業側も面倒くさいし、上がらなくて不平不満を言う人も出る。さらにクビを切らなきゃいけない人も出る。企業側も怖いし、労働者側も嫌だから、立ち入らないんですよ、この議論に。それが一番よく分かっているのはハイレベルの労務の専門家だけなんです。(続く)』、「ジョブ型って本当に何なの?」って考えていけば、これは企業の人事権が弱くなるということ。それが1つ目の結論なんですよ)、結局、日本企業では企業側にも本格導入のインセンティブはなさそうだ。

第三に、3月22日付けダイヤモンド・オンライン「ソニー社員が働きがいを感じる「実力主義」の中身、報酬差は最大240万円も!」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/265502
・『近年、ようやく日本企業でも進みはじめた働き方改革。しかしソニーでは、30年前からフレックスタイム制を始め、2015年からは年次によらず現在の役割に応じて等級や報酬が決まるジョブグレード制を導入するなど、働き方改革の面でも先端企業だった! 今回は、OpenWorkが行った『社員が選ぶ「働きがいのある企業ランキング2021」』でも5位にランクインしたソニーに話を聞いた』、興味深そうだ。
・『創業時からの理念は「実力本位」「自由闊達」  「形式的職階制を避け、一切の秩序を実力本位、人格主義の上に置き、個人の技能を最大限に発揮せしむ」「自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」 これらはいずれも、ソニーの前身である東京通信工業の『設立趣意書』に書かれた創業者の言葉だ。同社のエレクトロニクス人事部門・人事企画部・報酬Gpの陰山雄平統括課長は、「ソニーの企業理念や文化、人事制度の原点は、創業者の言葉にある」と語る。 とはいっても、ソニー社員がイメージする同社の企業理念や文化は一つではなく、十人十色なのだという。なぜなら「多様性」こそが、ソニーらしさだからだ。 ソニーでは人材戦略を考える上で、人材を「群」ではなく「個」と捉えて、個を生かす機会の提供と支援を行ってきた。つまり、意欲あふれる社員の成長が会社の成長につながると考える「選び合い、応え合う関係性」が基本的な人事理念だという。 実際にOpenWorkに寄せられている同社の社員クチコミにも、「若いうちからわりと任せてもらえたので、たくさん勉強と経験を積むことができ、働きがいは常に感じて楽しく働くことができました」(マーケティング、女性)という声があり、若手社員の成長を積極的に支援していることが分かる。 では、多様な社員が成長を実感しながら働けるという同社では、具体的にどんな制度で社員の働きがいを支えているのか。今回は、3つのポイントを厳選して、ソニー社員が働きがいを感じる秘密を紹介していきたい。 <働きがいのある企業のポイント(ソニー編)> (1)現在の役割で等級、報酬が決まる「ジョブグレード制度」 (2)1992年から開始!柔軟な働き方ができる勤務制度 (3)50年以上前から当たり前「社内募集制度」』、「創業時からの理念は「実力本位」「自由闊達」」、伝統的な日本的経営とは元々違うようだ。
・『年功序列は一切なし! 現在の役割と成果で等級・報酬が決定  近年は徐々に崩れつつあるものの、日本企業に根深く残る年功序列制度。「なぜあの全く働かない上司が、自分より高い給料をもらっているのか」といった不満を、いまだ多くの日本企業で働く社員が持っていることだろう。 それに対してソニーでは、2015年度から年次によらず、「現在の役割(ジョブ)」に応じて等級が定義される「ジョブグレード制度」を開始した。 等級は、基本の等級群にあたる「インディビジュアルコントリビューター等級群(I)」と「マネジメント等級群(M)」に分かれている。I等級群は1から9まで設定されており、グレードは数字が大きいほど上位になる。 I6からは高度専門家やプロジェクトマネジャー、I9は業界レベルの専門家や社内技術リーダーというグレードに相当する。同社はエンジニア中心の会社でもあるため、マネジメントの道だけでなく、高度な専門性を生かしたキャリアを構築することも可能だ。 また、その時の役割が変動すればグレードも変わり、I等級群とM等級群を行き来することもできるという。 「実際に、20代でM等級群の『統括課長』という立場になっている社員もおり、年上の部下がいるのもよくあること。新入社員については一般的には入社2年目の7月にI等級群3の『担当者』というグレードが付くが、優秀な人材は配属先での研修が一段落する入社3カ月でそのグレードが付くケースもある」(陰山統括課長) では、報酬についてはどのように決められるのか。これも、個人の成果に応じて支給額がダイナミックに変動する仕組みになっている。まずベース給については、等級によって異なり、その水準は、大企業50社を調査することで適正な水準を決めている。 年2回支払われるボーナスのうち、12月支給分はジョブグレードごとに金額が決まっている固定給的なもの。その一方で、大きな差が生まれるのが6月支給分ボーナスの算定だ。これは、個人の実績とソニーの業績、事業会社の業績によって変動するものだという。 この個人の実績を反映すると、賞与額は2020年度のジョブグレードがI4(上級担当者)のケースで、最高が330万円、最低は93万円となり、約240万円の差が生まれる形になったという。 働きがいを感じる上でも「報酬の適正感」は重要だが、同社では役割や実績に応じた給与が支払われるため、常に成果を出さなければならないプレッシャーはあるものの、納得感のある報酬体系といえるだろう』、「年功序列は一切なし! 現在の役割と成果で等級・報酬が決定」、これならまさに「納得感のある報酬体系」だ。
・『30年前からフレックスタイム制! 先駆者ぶりが分かる勤務制度の歴史  働き方改革やコロナ禍によって、いよいよ多くの日本企業が受け入れ始めた多様な働き方だが、実はソニーは30年ほど前からすでにさまざまな勤務制度を導入して、社員が柔軟な働き方ができる環境を整えてきた。 まず1992年に導入されたのが、「月間フレックスタイム制度」だ。月間所定労働時間とコアタイムが設定されている勤務スタイルで、始業・終業時刻を選択可能。そのため、その日の業務内容に応じて労働時間を調整できる。今ではこうした制度を導入する企業も増えているが、30年前から導入されていたというから驚きだ。 94年には「育児・介護短時間勤務制度」、95年には時間より成果を重視する「裁量労働制」を導入。2008年には「在宅勤務制度(場所は自宅、回数は週1回、時間単位は週2回)」、16年には「テレワーク制度(場所にサテライトオフィスを追加)」、18年には全社員が場所を選ばずにテレワークを利用可能とする「フレキシブルワーク制度(回数は月10回)」が始まった。コロナ禍の現在では、回数制限なく、個々人が業務内容に応じて出社するかどうかを選択できており、約8割が在宅などテレワークでの業務を行っているという。 「こうした柔軟な働き方のできる勤務制度は、企業理念や文化にも紐づいており、自律して働くソニーの社員には合っていた。そのため、コロナ下でのテレワークについても受け入れやすい素地があったと考えている」(陰山統括課長)』、「30年前からフレックスタイム制」とは驚いた。さすが先進的だ。
・『1966年に導入された社内募集制度 「キャリアは自分で築く」のが当たり前  もう一つ、同社で先端的に導入されていたのが、上司の許可なく、社員自らが手を挙げて希望する部署やポストに応募できる「社内募集制度」だ。今でこそ多くの企業が導入しているが、同社では1966年と50年以上前から始まっている。 年間700人以上が応募しており、200人弱が異動。そのため決して特異な例ではなく、人事異動の一つの手段として機能している制度なのだという。人事異動をただ待つのではなく、自分でキャリアを切り開けるチャンスになっている。) 「当社で働いていれば、部署に1人や2人は社内募集制度で異動してきた人がいる。それくらい当たり前の制度だ。社員個人が成長するにあたってのキャリアの選択肢を広げるもので、『選び合い、応え合う関係性』という人事理念にも沿っている制度だと考えている」(陰山統括課長) また同社は、社員の成長ややりたいことを促進する場も設けている。いくつも場はあるが、一つの例がソニーミュージックグループの新規事業創出プログラム「Enter Lab.」だ。社員が将来の目標としている夢やひそかに練っているビジネスアイデアを会社がサポートしてビジネス化するもので、なんとあの大ヒットしている2人組の音楽ユニット「YOASOBI」はここから誕生したという。 社員同士が交流し、学び合える場も設けられている。「PORT(ポート)」と呼ばれる場で、多様な社員が主体的に参加型セミナーを企画し、主催するというものだ。これまでは品川本社にあるPORTで行われてきたが、コロナ禍で集まることが難しいため、今ではオンラインで開催されている。例えば、「2050年のキャリア」についてや、話題の書籍「シン・ニホン」を取り上げた講座など、多岐にわたるそうだ。 仕事もある中でどんな社員がセミナーを企画するのかを陰山統括課長に尋ねると、「人事が募集を始めると、やりたいという人が殺到する」ほど、さまざまな社員が応募してくるという。積極的な人が多いのも同社の魅力なのだろう』、「社内募集制度 「キャリアは自分で築く」のが当たり前」、素晴らしいことだ。
・『オープンなコミュニケーションと手触り感のある成果がカギ?  ここまで制度面を中心に紹介してきたが、ソニー社員が働きがいを感じる理由について陰山統括課長は「『オープンなコミュニケーション』と『手触り感のある成果』があるからではないか」と表現する。 多様な社員が多様性を認め合いながら働けるオープンな環境で、実力によって適正に評価され、報酬に跳ね返る。ソニーという大企業で働く中で、自らが関わる製品が世に出ることで感じられる働きがいもあるだろうが、やはり企業理念や文化、それに基づく人事制度や働く環境は、社員の働きがいに欠かせない要素といえそうだ』、「創業時からの理念は「実力本位」「自由闊達」」、やはり「ソニー」は普通の日本企業とは全く違うエクセレントさを生まれながらに備えているようだ。
タグ:現代ビジネス 働き方改革 西口 想 (その31)(官僚志望者が激減…霞が関の「不払い残業」がもたらしている「本当の問題」、官僚志望者が激減…霞が関の「不払い残業」がもたらしている「本当の問題」、ソニー社員が働きがいを感じる「実力主義」の中身 報酬差は最大240万円も!) 「官僚志望者が激減…霞が関の「不払い残業」がもたらしている「本当の問題」」 『ブラック霞が関』 時間表示が「27:20」と24:00が上限でなく、そのまま増えていくとは、「霞が関」らしい。 「30歳未満の男性職員の約15%、30歳未満の女性職員の約10%が、3年以内に辞めたいと回答した」、「国家公務員試験の申込者数も20年で約6割減」、さすが『ブラック霞が関』らしい。 「予算枠を超える分の残業は「命令」を出さず、「職員が自己研鑽のために勝手に庁舎に残っている」ということにすれば、実際は働いていても「超過勤務」は発生せず、手当(残業代)も支払わずに済む。その時間を含めた実際の拘束時間を「在庁時間」と呼んでいるのだ。……そう、これは数年前の電通事件と酷似」、「国家公務員で同じ問題が繰り返されている」、「予算枠」がある以上、やむを得ないとはいえ、ブラックが常態化しているのはやはり異常だ 「本来、その内訳まで主権者たる国民に開示するべきだが、何より一刻も早く予算をつけ、過去の不払い分まで遡及して支払ってもらいたい」、「予算」がついておらず、払えないのであれば、「長時間労働」の「内訳」を「開示」する訳にはいかないだろう 「メンタルヘルス不調による長期病休者率」が「国家公務員のほうが約3.5倍も多い」、というのはやはり問題だ 「優秀な官僚のパートナーが、同じく高学歴で勤労意欲のある人である可能性は高い。しかしケアレス・マンと結婚したために自らのキャリアを諦めざるを得なかったというケースは数多あるだろう。その場合の生涯賃金や社会にとっての逸失利益も、長時間労働の本当の「コスト」だ」、確かにこうした広義の概念で捉えるべきというのには同意できる 日経ビジネスオンライン 確かに歴史的にみれば、繰り返し問題になってきたようだ 「何も知らない若者が入ってきて、10年で育てるみたいな意味では非常にうまくできた仕組みだと思うんです。最初の給与は安くて、能力アップに応じてちょっとずつ上がっていくけど、まだ修業期間だからあんまり差はつけない。こういうボトムアップ期には日本型雇用は非常に向いているんです」、その通りだ 「日本型雇用だと、職能主義といって、ポストの数に関係なく昇級・昇給できる仕組みをとっているから、平社員のまま止まっている人も給与が上がるんですよ。これがおかしい」、既に職能給的色彩を強め、「平社員のまま止まっている人」は「給与が上が」らないように賃金体系を変えている企業も出てきた 「ジョブ型って本当に何なの?」って考えていけば、これは企業の人事権が弱くなるということ。それが1つ目の結論なんですよ)、結局、日本企業では企業側にも本格導入のインセンティブはなさそうだ。 ダイヤモンド・オンライン 「ソニー社員が働きがいを感じる「実力主義」の中身、報酬差は最大240万円も!」 「創業時からの理念は「実力本位」「自由闊達」」、伝統的な日本的経営とは元々違うようだ。 「年功序列は一切なし! 現在の役割と成果で等級・報酬が決定」、これならまさに「納得感のある報酬体系」だ 「30年前からフレックスタイム制」とは驚いた。さすが先進的だ 「社内募集制度 「キャリアは自分で築く」のが当たり前」、素晴らしいことだ 「創業時からの理念は「実力本位」「自由闊達」」、やはり「ソニー」は普通の日本企業とは全く違うエクセレントさを生まれながらに備えているようだ
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半導体産業(その2)(世界の半導体供給に地殻変動の兆し 日・米・台の連携に取り残される韓国、加速する半導体ウォーズ 供給不安が「ウィンテル」の復活呼ぶ、韓国にも敗れた「日の丸半導体」が これから世界一に返り咲く意外なシナリオ 米中の覇権争いが日本の好機になる) [産業動向]

半導体産業については、2016年7月14日に取上げた。久しぶりの今日は、(その2)(世界の半導体供給に地殻変動の兆し 日・米・台の連携に取り残される韓国、加速する半導体ウォーズ 供給不安が「ウィンテル」の復活呼ぶ、韓国にも敗れた「日の丸半導体」が これから世界一に返り咲く意外なシナリオ 米中の覇権争いが日本の好機になる)である。

先ずは、本年2月23日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した法政大学大学院教授の真壁昭夫氏による「世界の半導体供給に地殻変動の兆し、日・米・台の連携に取り残される韓国」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/263576
・『昨年秋頃から、世界経済全体で半導体の需給がひっ迫している。コロナ禍によって世界経済のデジタル・トランスフォーメーションが加速し、スマートフォンや高性能コンピューター向けの最先端の半導体需要が高まった。そこに車載半導体の需要回復も加わったのである。TSMCの生産ラインを各国企業が取り合うというべき状況となっている。今後、日・米・台を軸に、世界の半導体サプライチェーンは変化する可能性がある』、興味深そうだ。
・『台湾のTSMCとの関係強化に動き始めたバイデン政権  米国のバイデン政権は、自国の企業が必要とする半導体の確保に現在、注力している。 そのためバイデン政権は、台湾当局や半導体ファウンドリー(受託製造企業)最大手であるTSMC(台湾積体電路製造)との関係強化に動き始めた。また、同政権はわが国の半導体産業へも秋波を送っているという。 米国にとって、日本と台湾との連携強化は半導体の調達や安全保障体制の強化に欠かせないとの図式なのだろう。 世界のファウンドリー業界では、TSMCが54%、韓国のサムスン電子が17%程度のシェアを持つ。本来であれば米国は同盟国である韓国にも連携を求めたいだろう。しかし、現時点でバイデン政権は、日台との関係を優先しているようだ。 その要因の一つに、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の政策への不安がある』、「経済面では中国を優先し、外交面では北朝鮮との宥和」政策を推進しているので、「米国」が不信感を抱くのは当然だ。
・『半導体確保に必死のバイデン政権 TSMCの生産ラインを取り合う各国企業  文氏は安全保障面で米国を重視する一方で、経済面では中国を優先し、外交面では北朝鮮との宥和(ゆうわ)と反日の考えを重視してきた。ここへ来て文大統領は、中国の習近平氏と電話会談を行うなど、中国との関係強化を一段と強めているようだ。 バイデン政権は、韓国に対して対北朝鮮政策について日米と歩調を合わせるよう求めているが、今までのところ文政権は立場を明確にしていない。むしろ、北朝鮮の金正恩氏の発言に合わせて、政府内の人事を修正するなどしている。文氏の「北朝鮮優先主義」に大きな変化はないようだ。専門家の中には「文大統領がバイデン政権の信頼を確保できるか否か難しい」との見方もある。 昨年(2020年)の秋頃から、世界経済全体で半導体の需給ひっ迫が鮮明となっている。 その一因として、世界経済のデジタル・トランスフォーメーションが加速し、スマートフォンや高性能コンピューター向けの最先端の半導体需要が高まった。そこに車載半導体の需要回復も加わったのである。TSMCの生産ラインを各国企業が取り合うというべき状況となっている。 米中の対立が半導体不足に与えた影響も軽視できない。 米国のトランプ前政権は、中国のファウンドリーであるSMIC(中芯国際集成電路製造)へ制裁を科した。車載半導体メーカーは委託先をSMICからTSMCへ切り替え、TSMCは供給能力を上回る需要に直面している。車載半導体が不足し、米国ではフォードとGMが減産を決定した。労働組合を主な支持基盤としてきた民主党のバイデン政権にとって、半導体確保は経済運営上の重要課題なのである。 事態の打開に向けて、バイデン政権は台湾当局との連携を強めている。その背景には、目先の半導体確保だけでなく、中長期的な視点で最先端分野を中心とする半導体関連技術を自国に集積させ、中国との覇権争いを有利に進める狙いがあるはずだ。 米国の制裁によってSMICは、思うように半導体製造装置を調達することができていない。製造技術に関しても中国の実力は十分ではなく、「中国製造2025」の進捗は遅れるだろう。その状況は、米国がIT先端分野での優位性を維持し、基軸国家としての地位を守るために重要だ。 そのためにバイデン政権は、TSMCに米国内でのいち早い生産開始や生産能力の増強を求める可能性がある。それに加えて、バイデン政権が垂直統合を重視する、インテルなど自国の半導体企業に補助金を支給し、事業運営をサポートすることも考えられる』、「米国のトランプ前政権は、中国のSMIC・・・へ制裁・・・車載半導体メーカーは委託先をSMICからTSMCへ切り替え、TSMCは供給能力を上回る需要に直面」、こんな特需まで乗っかったのであれば、「車載半導体が不足」も当然だ。
・『米国が不安視する文大統領の政策運営  半導体の確保に向けてバイデン政権が、ファウンドリー事業の強化に取り組む韓国のサムスン電子よりも台湾のTSMCを重視する背景には、北朝鮮などに関する文氏の政策への不安がある。 米国務省は、同盟国が連携して北朝鮮に毅然とした立場で臨むことが重要との立場だ。わが国もその考えに賛同し、米国はわが国との連携を重視している。 その一方で、文大統領は「米韓の合同軍事演習を北朝鮮と協議できる」と発言するなど、北朝鮮との宥和を重視している。2018年に文政権が北朝鮮での原子力発電所建設を検討していたことも見逃せない。 日韓関係も不透明だ。一時、文氏はわが国に対して秋波を送る発言を行った。しかし、今年2月に入って韓国の大田地裁は、元挺身(ていしん)隊員らへの賠償問題を巡って、わが国の三菱重工が行った即時抗告の一部を棄却した。文氏の対日政策が変わったとはいえない。 ある意味、バイデン政権にとって文政権は困ったパートナーに映っているだろう。米国が安全保障にかかわる半導体分野で韓国との関係強化に取り組むことは難しい。 しかし韓国にとっては、米国との安全保障面での関係強化は、海外からの技術移転を進め、その上で外需を取り込むために不可欠な要素だ。日米の半導体関連の技術や部材を必要とするサムスン電子などが世界的な半導体の需給ひっ迫に対応し、収益拡大を目指すためには、文政権が日米との連携を重視するという立場を明確に示すことが重要だ。だが、現実にはそうなっていない。 文政権は北朝鮮との宥和政策などを重視することによって、目先の政権基盤の安定につなげたいようだ。それは中長期的な社会と経済の安定を目指す政策とは異なる』、「文大統領の政策運営」は「米国が不安視する」のも当然だ。
・『日米台を軸とする半導体サプライチェーン構築の可能性  今後、世界の半導体サプライチェーンは変化する可能性がある。一つのシナリオは、日・米・台を軸に、世界の半導体供給網が再整備される展開だ。 半導体の設計・開発と生産の分離が進む中、米国は、最先端の製造技術や設計・開発に関するソフトウエア(知的財産)の強化に取り組む。米国が中国の人権弾圧にIT先端技術が使われていることを問題視し、半導体製造技術などの流出を食い止めるために制裁を強化する可能性もある。 台湾では、TSMCが微細化や後工程への取り組みを強化している。 また、わが国は旧世代の生産ラインを用いた半導体の供給や、高付加価値の関連部材、製造装置などの供給者としての役割を発揮しつつある。 それは半導体産業を強化したいEUにとっても重要だ。車載半導体を手掛ける欧州の半導体企業は、生産をTSMCなどに委託している。最先端の半導体生産に用いられる極紫外線(EUV)露光装置に関して、唯一の供給者であるオランダのASMLは米国の知的財産などに頼っている。 半導体業界における日米台の連携は、EU各国企業にも大きく影響するのである。国際社会と世界経済の安定に、半導体サプライチェーンが与える影響は増すだろう。 このように考えたとき、韓国政府とサムスン電子などの企業が、半導体業界の変化にどう対応するかが不透明だ。 TSMCは2021年内に回路線幅3ナノメートルの半導体の生産を開始すると、見込まれている。ファウンドリー分野でTSMCとサムスン電子とのシェアや技術面での格差は、今後拡大していく可能性が高い。 他方で、メモリ半導体や家電などの分野において、韓国の企業は、中国企業に追い上げられている。文政権の政策は、国際社会における韓国の立場と、韓国企業の変化への対応力にマイナスの影響を与える恐れがある』、「日・米・台を軸に、世界の半導体供給網が再整備」されるなかで、「サムスン電子」などの「韓国企業」がどのような地位を占めるのか注目される。

次に、3月31日付け日経ビジネスオンライン「加速する半導体ウォーズ 供給不安が「ウィンテル」の復活呼ぶ」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/NBD/19/depth/00991/
・『半導体の受託製造事業への再参入を宣言した米インテルに米IT(情報技術)大手がそろって賛同の声を寄せた。米中の主導権争いに、米テキサス州の停電による工場停止、ルネサスエレクトロニクスの主力工場の火災……。供給不安の半導体をめぐり各国政府が異例の対応を進める中、ようやく日本政府も動き出した』、「ルネサス」の那珂工場は2011年の東日本大震災で被災し、トヨタ自動車などからの応援を受けて当初半年かかると言われた復旧を3カ月で成し遂げた経緯がある工場で、よりによってこんな時に「火災」とはと、自動車各社も頭にきていることだろう。
・『オレゴン州にあるインテルの半導体工場  インテルが3月23日(米国時間)に開いた説明会。半導体の受託製造(ファウンドリー)事業への再参入を発表したパット・ゲルシンガーCEO(最高経営責任者)が「特別な顧客であり、友人で、長期にわたるパートナー」と真っ先に紹介したのは米マイクロソフトのサティア・ナデラCEOだった。 ナデラCEOは「米国での半導体の製造という新しい選択肢を加える投資に賛同する」と、最大200億ドル(約2.2兆円)を投じてアリゾナ州に2工場を設置する計画を示したインテルを持ち上げた。「ウィンテル」連合でパソコン市場を支配した2社が、半導体の設計者と製造者として手を組む。 2014年にファウンドリー事業に進出したが事実上撤退していたインテルがあらためてファウンドリー事業に乗り出す背景には、米国政府の強力な後押しがある。バイデン米大統領は2月、半導体などの供給網を見直す大統領令に署名。自ら半導体を片手に持って熱弁をふるい、国内製造の支援に370億ドル(約4兆円)を投じる方針を示した。 半導体の供給網をめぐる米国と中国の争いは激しくなるばかりだ。米国は中国の半導体メーカーに対する輸出規制で圧力をかける。一方の中国は、半導体製造装置世界首位の米アプライドマテリアルズによるKOKUSAI ELECTRIC(東京・千代田)の買収を独禁法当局が認めず、買収断念に追い込んだ。米国は先端半導体の製造を台湾や韓国に依存してきた。「米国は半導体市場でのシェアは高いがファブレス企業が多く製造シェアが低い。中国との争いで半導体の調達が難しくなるリスクが大きくなっていた」と英調査会社オムディアの南川明氏は指摘する』、「米国企業」が一旦は「ファウンドリー」に委ねた「生産」に、再び乗り出すとはいっても、果たして上手くいくのだろうか。
・『数世代前の技術のままの日本  欧州連合(EU)も域内で製造する半導体の世界シェアを2割にする目標を打ち出すなど各国・地域が異例の対応を打ち出す。そんな中でようやく日本政府も動き出した。経済産業省は半導体やデジタル産業の戦略を議論する会議を3月24日に開き、梶山弘志経産相は「大きな戦略を描いて大胆な政策に打って出たい」と語った。 経産省の危機感は強い。日本の半導体産業は数十年にわたり足踏みを続け、国内にある半導体工場はいずれも数世代前の技術のままだ。西川和見情報産業課長は「これまでの支援策のままでは状況は変わらない。半導体産業により大きな政治的・資金的リソースを投入するために公の場で議論してコンセンサスを得ていく」と話す。会議では出席者から「海外のファウンドリーを誘致する米欧のような政策を進めるべき」といった意見も出た。 ただし、米国や欧州、中国に比べて小粒の戦略にとどまる可能性は否めない。経産省が水面下で誘致した台湾積体電路製造(TSMC)も、パッケージング(シリコンチップを端子付きのパッケージに収める工程)の開発拠点の設置を決めるにとどまった。問題は今の供給不足ではなく、あらゆる産業の基盤となった半導体を将来にわたって安定的に調達できるかどうかだ。国の未来の競争力を左右しかねない岐路に立っている』、「日本の半導体産業は数十年にわたり足踏みを続け、国内にある半導体工場はいずれも数世代前の技術のまま」、日米半導体協議は予想以上に深刻な影響を及ぼしたようだ。「梶山経産相」が勇ましいことを言っても、むなしい感じを受ける。

第三に、4月6日付けPRESIDENT Onlineが掲載した作家・ジャーナリスト、KDDI総合研究所リサーチフェロー、情報セキュリティ大学院大学客員准教授の小林 雅一氏による「韓国にも敗れた「日の丸半導体」が、これから世界一に返り咲く意外なシナリオ 米中の覇権争いが日本の好機になる」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/44686
・『30年前、日本の半導体は世界シェア51%で世界一だった。しかし現在の市場シェアは6%にまで低下している。KDDI総合研究所リサーチフェローの小林雅一さんは「86年の日米半導体協定で、韓国企業が伸長し、日本企業は存在感を失った。しかしスパコン富岳が世界一になったように、ハイテク・ジャパンには復活の兆しがある」という――。 ※本稿は、小林雅一『「スパコン富岳」後の日本 科学技術立国は復活できるのか』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです』、歴史的な経緯も踏まえた分析は、興味深そうだ。
・『ハイテク分野でも始まった米中の覇権争い  近年のトランプ政権下で始まった米中貿易戦争は、やがて中国のIT企業「ファーウェイ」や動画サービス「ティックトック」などをめぐるハイテク覇権争いへと発展し、2021年に発足したバイデン政権へと引き継がれた。 それは両国の狭間で身を屈めてチャンスを窺う巨大経済圏EUや日本を巻き込み、国際政治と先端技術が複雑に絡み合う「テクノ・ポリティクス」時代の幕開けを告げている。 これを象徴するのがスーパーコンピュータの開発競争だ。スパコンが次なる「エクサ・スケール(1000ペタ級)」に向けて世代交代の時期を迎える中、「富岳の世界ナンバーワンは短期間に終わる」との見通しも当初囁かれたが、間もなく相反する見方も出てきた。 米中のハイテク覇権争いの影響などから、両国による次世代スパコンの開発プロジェクトが滞る気配があるのだ。これらエクサ級のスパコンが実現されない限り、優に440ペタ以上の性能を誇る富岳の世界王座は当面揺るがない』、「富岳の世界王座は当面揺るがない」のは確かなのだろうが、競争の場は「スパコン」から量子コンピュータに移った可能性もあるのではなかろうか。
・『日米ハイテク覇権争いとの類似点と相違点  スパコンや半導体技術をめぐる米中間の激しい争いは、1980~90年代における日米間のハイテク覇権争いをある意味で彷彿させる。 当時、世界市場を席巻した便利で廉価な家電商品など日本のエレクトロニクス産業に対抗するため、米国政府はそのベースとなる日本の半導体産業を弱体化する戦略をとった。それが端的に現れたのが86年の日米半導体協定であり、(もちろんこれだけが原因ではないが)これらを契機に日本の半導体、ひいてはエレクトロニクス産業は衰退の道を辿った。 ちょっと言葉は悪いが、当時、そこから「漁夫の利」を得たのはサムスン電子など韓国を代表する巨大メーカーであった。 それから30年以上の歳月が流れた今日、米国政府は今度はファーウェイやティックトックなど進境著しい中国のIT企業をハイテク覇権争いのターゲットに選んだ。今回もそのカギを握るのは、スパコンやAI、5GなどIT産業のベースとなる先進の半導体技術である。 かつての日米半導体協定では、「日本の半導体市場を外国の半導体メーカーに開放すること」を日本側に義務付け、ついには日本メーカーが顧客企業に韓国製品を推奨するなど常識ではあり得ないような事態へとつながった。 筆者は国際政治が専門ではないが、それでも素人なりにあえて言わせてもらえば、要するに米国による「核の傘」など安全保障上の同盟関係にある日本は結局、理不尽な協定でも受け入れざるを得ない、という読みが米国政府側にあったのではないか。 これに対し、21世紀の今日、米国がハイテク覇権争いの相手とする中国は同盟国ではなく、ロシアなども含めた対立陣営に位置付けられる。これには80年代の日本に対してとったようなやり方は通用しない。 しかも中国はAIや5G、さらにはスパコンや宇宙開発などさまざまな分野で米国に接近、ないしは追い着くほどの技術力を蓄えてきている。が、それらのベースとなる半導体、特にその製造技術では少なくとも4~5年、米国や台湾、日本などに遅れていると見られる』、「米国」にとって「中国」は、確かに「日本」とは比べものにならないほど、扱い難い相手もようだ。
・『米中の覇権争いで「漁夫の利」を得る国  となると米国にとって中国への対抗策はある意味単純だ。米国製の半導体技術に禁輸措置をかけ「て、中国企業が使えないようにすればいいだけだ。実際、米国政府はそれを実行に移して、既にかなりの効果が現れ始めている。 では今回、ここから漁夫の利を得るのは、どの国になるだろうか? それはおそらく日本である。 2期連続で世界ランキング4冠を達成したスパコン富岳が、まさにそれを示している。富岳の開発プロジェクトが正式に始まって以来、理研をはじめ富岳の関係者は「ベンチマーク・テストで1位になることが目標ではない。社会の役に立つスパコンを作ることが本来の目標だ」と言い続けてきた。 とはいえ、世界1位が獲れるなら、それに越したことはない。 この業界では日米中など競合する国の間で「腹の探り合い」というか、要するに相手の技術力が今、どのレベルにあって、いつごろ次世代機が完成しそうかなどのインサイダー情報を互いによく調べている。 おそらく理研・富士通など富岳関係者は、2017年にトランプ政権が誕生し、やがて米中間の貿易摩擦がハイテク覇権争いへと発展する19年頃には、その影響で両国の次世代スパコン開発が予定よりも遅れそうだ、という情報を掴んでいたはずだ。 当初の計画では富岳は21年に稼働を開始する予定だった。しかし米中のエクサ級スパコンの完成が遅れるという情報を握ったことで、富岳関係者は「今がチャンスだ!」とばかりにあえて前倒しで20年に稼働させて、ずっと「目標ではない」と言い続けてきた1位を獲りにいったのではないか』、「今回、ここから漁夫の利を得るのは、どの国になるだろうか? それはおそらく日本である。 2期連続で世界ランキング4冠を達成したスパコン富岳が、まさにそれを示している」、いささか大げさな印象だ。
・『「世界一」の大きな意味  仮にそうだとすれば、その策は見事に功を奏し、富岳は2期連続でスパコン世界一となったわけだが、この王座はもうしばらく続きそうだ。米中どちらが先にエクサ級マシンを完成させるにせよ、それは早くて22年、下手をすれば23年にずれこむとの見方もある。となると、富岳は最長3年間も世界王座に君臨し続ける可能性があるのだ。 もちろん「スパコンのベンチマーク・テストで1位になることに実質的な意味がどれほどあるのか?」という冷めた意見も聞かれるだろう。しかし、それでも富岳の世界ナンバーワンは高く評価されるべきだと筆者は思う。ここ数年、米国のGAFAや勃興する中国の巨大IT企業などに押され、日本のハイテク産業は一種の自信喪失に近い状態にあった。特にAIや5Gなど先端的な技術分野では、日本企業はすっかり存在感を失ってしまった。 こうした状況下で「国力を反映する」スパコンの性能で世界一に返り咲いたことは、日本の科学技術力の底力を証明し、失いかけていた自信を取り戻す上で大きな意味があったと言えるのではないか。 しかも、この流れはスパコン開発だけに止まらない。『「スパコン富岳」後の日本 科学技術立国は復活できるのか』の第2章でも紹介しているように、富岳のCPUに採用されたSIMDなど日本の伝統的な半導体テクノロジーが蘇りつつある。 今後はこうした基礎的な高度技術を、爆発的な需要増加が期待されるクラウド・サーバー、さらにはIoT端末や自動運転車など次世代製品に広げていくことで、ハイテク・ジャパンの復活は単なる希望的観測ではなくなってきた』、この流れはスパコン開発だけに止まらない」、事実であれば喜ばしいことだ。
・『日本の存在感を高めるチャンスだ  こうした中で海外に目を転じると、米国では司法省やFTC(連邦取引委員会)、各州政府などが20年10月以降、反トラスト法(米国の独占禁止法)に抵触した疑いでグーグルやフェイスブックを提訴。今後はアップルやアマゾンなども含め、これら巨大IT企業の事業を分割するなどして絶大な市場独占力を奪い、代わって未来を担う新しい企業が勃興する環境を整えることが狙いと見られている。 かつて1998年に始まるマイクロソフトの反トラスト法訴訟を経て同社が力を落とし、これに代わってアマゾンやグーグルなど当時の新興企業が台頭してきたのと同様、現在もまたきわめて大きなスケールで主力企業の世代交代が迫っているのかもしれない。 一方、中国では20年11月、アリババ集団創業者ジャック・マー氏の政府批判が共産党指導者の逆鱗に触れ、傘下の金融会社アントグループが上海・香港市場で上場停止となった。 同社に対しては、取引先の企業にライバル企業と取り引きしないよう求める行為が独占禁止法違反の疑いがあるとして、中国当局による捜査も進んでいる。 今後、テンセントや百度など他のインターネット企業にも、規制当局による統制が及ぶとの見方もある。米国同様、中国でも巨大IT企業に激しい逆風が吹き始めているようだ。 もちろんGAFAやファーウェイ、アリババなど、外国企業のトラブルを歓迎するのは決して褒められた姿勢ではないし、ここで強調したいのはそういうことではない。あくまで一般論として、どこかの国の企業が国際競争力を落とせば、他の国の企業は相対的な優位性を確保できるということだ。バブル崩壊後の90年代とは逆に、今度は日本企業が世界のハイテク市場で存在感を高めるチャンスがめぐってきたと言えそうだ』、これまで力があった米中の「巨大IT企業」に「逆風が吹き始めている」のは事実だが、筆者の見方はやはり希望的観測といった印象が拭えない。
タグ:半導体産業 (その2)(世界の半導体供給に地殻変動の兆し 日・米・台の連携に取り残される韓国、加速する半導体ウォーズ 供給不安が「ウィンテル」の復活呼ぶ、韓国にも敗れた「日の丸半導体」が これから世界一に返り咲く意外なシナリオ 米中の覇権争いが日本の好機になる) ダイヤモンド・オンライン 真壁昭夫 「世界の半導体供給に地殻変動の兆し、日・米・台の連携に取り残される韓国」 台湾のTSMCとの関係強化に動き始めたバイデン政権 「経済面では中国を優先し、外交面では北朝鮮との宥和」政策を推進しているので、「米国」が不信感を抱くのは当然だ。 米国のトランプ前政権は、中国のSMIC・・・へ制裁・・・車載半導体メーカーは委託先をSMICからTSMCへ切り替え、TSMCは供給能力を上回る需要に直面」、こんな特需まで乗っかったのであれば、「車載半導体が不足」も当然だ 「文大統領の政策運営」は「米国が不安視する」のも当然だ 「日・米・台を軸に、世界の半導体供給網が再整備」されるなかで、「サムスン電子」などの「韓国企業」がどのような地位を占めるのか注目される。 日経ビジネスオンライン 「加速する半導体ウォーズ 供給不安が「ウィンテル」の復活呼ぶ」 「ルネサス」の那珂工場は2011年の東日本大震災で被災し、トヨタ自動車などからの応援を受けて当初半年かかると言われた復旧を3カ月で成し遂げた経緯がある工場で、よりによってこんな時に「火災」とはと、自動車各社も頭にきていることだろう。 「米国企業」が一旦は「ファウンドリー」に委ねた「生産」に、再び乗り出すとはいっても、果たして上手くいくのだろうか 「日本の半導体産業は数十年にわたり足踏みを続け、国内にある半導体工場はいずれも数世代前の技術のまま」、日米半導体協議は予想以上に深刻な影響を及ぼしたようだ 「梶山経産相」が勇ましいことを言っても、むなしい感じを受ける。 PRESIDENT ONLINE 小林 雅一 「韓国にも敗れた「日の丸半導体」が、これから世界一に返り咲く意外なシナリオ 米中の覇権争いが日本の好機になる」 小林雅一『「スパコン富岳」後の日本 科学技術立国は復活できるのか』 「富岳の世界王座は当面揺るがない」のは確かなのだろうが、競争の場は「スパコン」から量子コンピュータに移った可能性もあるのではなかろうか 「米国」にとって「中国」は、確かに「日本」とは比べものにならないほど、扱い難い相手もようだ。 「今回、ここから漁夫の利を得るのは、どの国になるだろうか? それはおそらく日本である。 2期連続で世界ランキング4冠を達成したスパコン富岳が、まさにそれを示している」、いささか大げさな印象だ この流れはスパコン開発だけに止まらない」、事実であれば喜ばしいことだ。 これまで力があった米中の「巨大IT企業」に「逆風が吹き始めている」のは事実だが、筆者の見方はやはり希望的観測といった印象が拭えない
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人工知能(AI)(その11)(IBMが「顔認識AI」撤退 アマゾン・マイクロソフトも悩むその危険性、【スタンフォードからの緊急報告】 AI時代にEIと心の健康を保つ方法、価値創造の経営~デジタル&イノベーション 日本の「AI自動翻訳」劇的進化の実態 特許や製薬・金融など専門分野に変革も) [イノベーション]

人工知能(AI)については、昨年11月24日に取上げた。今日は、(その11)(IBMが「顔認識AI」撤退 アマゾン・マイクロソフトも悩むその危険性、【スタンフォードからの緊急報告】 AI時代にEIと心の健康を保つ方法、価値創造の経営~デジタル&イノベーション 日本の「AI自動翻訳」劇的進化の実態 特許や製薬・金融など専門分野に変革も)である。

先ずは、昨年12月11日付けダイヤモンドが掲載したオウルズコンサルティンググループ代表取締役CEOの羽生田慶介氏による「IBMが「顔認識AI」撤退、アマゾン・マイクロソフトも悩むその危険性」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/256747
・『コロナショックを経て、人々が企業を見る目や意識、姿勢が大きく変化し、これまでよりもさらに誠実であることを求めている。また企業が、悪意はなくても勉強不足や想像力の欠如によって人権を侵害し、大炎上するケースも増えている。何に気をつけるべきなのか。本連載では、注目を集める企業の人権違反とその対応策について紹介する。連載4回目で取り上げるのは、テクノロジー企業で開発が進むAIについて。AIの学習に偏ったデータを与えていれば、AIもその思考法を学んで差別的な判断を下しやすくなる。またUNESCO(国際連合教育科学文化機関)は多くのAIアシスタントで女性の声が初期設定とされていることに警鐘を鳴らした。AI開発に必要な企業倫理について探った』、興味深そうだ。
・『アマゾンの人事AIは“女性嫌い”? 「君は不採用だ」と人事AIが下すワケ  米アマゾン・ドット・コムのAI(人工知能)は“女性嫌い”――。そんな報道が、ロイターから発信されたのは2018年10月のことだった。 記事によると、アマゾンはAIを用いた人材採用ツールの開発を進めていたが、当該AIが“女性嫌い”であることが判明し、開発は中止されたという。AIによる履歴書の自動審査システムを構築すべく、アマゾンは過去10年間に同社が受け取った履歴書をAIにインプットして学習させたが、これが誤りだった。 ソフトウエア開発などの技術職では、過去の応募者および採用者の大部分が男性だったため、AIは「女性よりも男性の方が適している」と判断するようになったのだ。その結果、「女性」「女子大」などの言葉が履歴書に含まれていると、自動的に評価を下げるようになってしまったという。 このような「AIによる差別」は今後も容易に起こるだろう。 AIが知能を発揮するには、まず事前に学習用のデータを大量にインプットする必要がある。そのデータに偏りがあれば、当然ながらアウトプットにもバイアスがかかる。統計的に正しいデータさえ用いればいい、というわけではないのだ。 統計データには性差別・人種差別など、社会に現存する差別構造がそのまま反映されていることがほとんど。そのデータをベースに学習したAIも、差別的な判断を下すようになってしまう。 この観点でまさに今、国際的に問題視されているのが「顔認識AI」の技術だ』、「AIが知能を発揮するには、まず事前に学習用のデータを大量にインプットする必要がある。そのデータに偏りがあれば、当然ながらアウトプットにもバイアスがかかる」、その通りだ。
・『IBM、マイクロソフトも顔認識AIを危険視  18年、米マサチューセッツ工科大学(MIT)が米IBMや米マイクロソフトなどの顔認識ソフトウエアの精度を調査した。その結果、「明るい肌の男性」よりも、「暗い肌の女性」の方がはるかに誤認識されやすいことが発覚し、物議を醸した。 米国の警察は顔認識AIを捜査に活用してきたが、黒人女性のようなマイノリティーほど誤認逮捕などによって、不当な扱いを受けるリスクが高まることになる。 これまでも米国の公民権団体や活動家は、顔認識AIの危険性を訴えてきた。そして20年に入って白人警察官による黒人死亡事件に端を発した「Black Lives Matter(黒人の命は大切)運動」が加速すると、顔認識AIの差別的側面にも改めて注目が集まった。 米国内外での批判の高まりを受け、20年6月にはIBMが顔認識AI事業からの撤退を表明。同社のアービンド・クリシュナCEO(最高経営責任者)は、「IBMは他社の顔認識技術も含めたあらゆるテクノロジーが、大衆監視や人種によるプロファイリング、基本的人権や自由の侵害に使われることに強く反対し、容認しない」との声明を発表した。 これに追随するかのように、アマゾンも警察への顔認識AIの提供を1年間停止することを発表。マイクロソフトも「法整備が完了するまで、自社AIを警察には提供しない」と宣言した。AI市場をけん引してきた大手各社も、「差別するAI」への解決策は、いまだに見いだせていないのが現状だ。 多くの企業はAI活用に際して、人間では導き出せない合理的で効率的な「解」の導出を期待する。 しかし、AIが導き出す「現状における合理的な解」は、往々にして現状の格差やバイアスを丸のみにした差別的なものになりがちだ。倫理なき合理化は、残念ながら差別と極めて相性が良い。これからAIに取り組もうとする企業は、自社の用いるデータやアルゴリズムの公正性に、いくら注意を払っても払いすぎることはないだろう』、「IBMが顔認識AI事業からの撤退」、「アマゾン」、「マイクロソフト」も「警察への顔認識AIの提供」を「停止」、「差別するAI」への警戒姿勢を強めているようだ。「AIが導き出す「現状における合理的な解」は、往々にして現状の格差やバイアスを丸のみにした差別的なものになりがちだ。倫理なき合理化は、残念ながら差別と極めて相性が良い」、企業としては大いに注意が必要なようだ。
・『プライバシー侵害で大炎上した「リクナビ問題」  顔認識AIが危険視されているのは、差別の観点からだけではない。個人を特定して行動を追跡・監視できる点で、プライバシーの侵害につながることも、かねて懸念されている。 そもそもAI活用のためには、多くのケースで細かな個人データを大量に収集・分析する必要があり、プライバシーの侵害に容易につながりやすい構造がある。「AIとプライバシー」は、現代の人権を語る上で最重要トピックの一つだ。 そしてプライバシーに関して、近年、国内で最も話題を呼んだのは19年の「リクナビ問題」だろう。 リクルートキャリアが運営する就職情報サイト「リクナビ」が、AIを用いて就活生の「内定辞退率」を予測・算出し、企業向けに販売していたことが問題視された。学生の就職活動の成否を左右しかねないセンシティブなデータを勝手に販売していたことに対して、「学生は商売道具じゃない」と、SNSなどで激しく非難された。 政府の個人情報保護委員会は、学生の個人データを本人の十分な同意を得ることなく勝手に外部に提供していたとして、同社に是正勧告を出すとともに、データを購入していた企業各社に対しても指導を行った。厚生労働省も、同社の行為を職業安定法違反とみなして行政指導に踏み切った。 リクルートキャリアの社長は、謝罪会見において「研究開発的な位置付けのサービスとして、通常とは異なるプロセスで開発した」「複眼的なチェック体制が機能していなかった」と述べている。 AIサービスで人を扱うときには、ユーザーに十分な事前説明と情報公開がなければ、リクナビのような“大炎上”も免れない。革新的なAIサービスに取り組む野心あふれる企業ほど、その倫理観が問われる』、「IBM」、「アマゾン」などの慎重な姿勢に比べ、商売のことしか考えない「リクルートキャリア」の姿勢の違いが鮮明になった。
・『果たしてSiriに性別はいるのか  「ヘイ、Siri!」「OK、グーグル!」――。今では各世帯に少しずつ普及している音声AIアシスタント。この声のかけ方にも、一考の余地があるのかもしれない。 近年、AIアシスタントによるジェンダーバイアス(男女の役割や男らしさ・女らしさに関する固定的な観念)の強化を問題視する声も上がっている。 UNESCOが19年に発表した報告書では、多くのAIアシスタントで女性の声が初期設定とされていることが指摘された。 「女性は世話好きで従順で(中略)『ヘイ』や『OK』とぶっきらぼうに命令するだけで利用できる存在だ、というシグナルを送っている」との問題提起だ。 同報告書は加えて、Siriの例のように、女性の声を持つAIアシスタントがセクハラ発言に従順な反応を示すようにプログラムされがちなことにも言及。「『女性は従属的であり、粗末な扱いを受けることにも寛容である』という一般的なジェンダーバイアスを補強している」と、現状のAIアシスタントのあり方を強く批判している。 日本国内でも、20年3月に開業した高輪ゲートウェイ駅に設置された「AI駅員」について、同様の議論が巻き起こった。女性のAI駅員キャラクター「さくらさん」が、恋人の有無やスリーサイズといったセクハラ要素の強い質問にも拒否反応を示さず、優しく受け流すことが判明し、非難の声が集まった。 本来、性別を持たないはずのAIに性別を付与する行為には、どうしても開発側の無意識下のバイアスが反映されやすい。そのため、ユーザー側の受け止め方にも必然的にバイアスがかかってしまう。結果として、現実世界におけるジェンダーバイアスを温存、もしくは助長してしまう恐れがあるのだ。 今後、AIアシスタントやチャットボットの自社開発を検討している企業は、「性別の特定できないAI」を志向することも一案だろう。 UNESCOの報告書内では、中国アリババグループの音声アシスタントAliGenieが「男女どちらとも判断できない、漫画のような声で話す」好例として取り上げられている。また、米国に本部を置くクリエイティブエージェンシーのVirtueは、北欧最大規模のLGBTQ(性的少数者)の祭典であるデンマーク・コペンハーゲンのプライドと共同で、男声にも女声にもとれない中性的なデジタル音声「Q」を20年に開発したという』、「女性の声が初期設定」された「AIアシスタント」が「ジェンダーバイアスを補強」、というのは事実だが、「性別の特定できないAI」というのも味気ない。
・『テクノロジー企業に必要な「AI倫理」担当部署の新設  AIサービスの開発最前線のエンジニアに、人権の配慮を学んでもらうことも必要だ。だがテクノロジー競争の最前線でしのぎを削るイノベーターたちに、万全の社会的配慮の責任を押し付けるのは酷な話だろう。 そこで先進企業は相次いで、社内に「AI倫理」を担う部署を設置し始めた。ESG投資の「S(社会)」「G(ガバナンス)」双方の視点で極めて重要な取り組みだ。 米セールスフォース・ドットコムは19年から、「最高倫理・人道責任者(Chief Ethical and Humane Use Officer)」のポストを設けている。同社の技術やサービスが倫理的に許されるか、検討・確認する役割を担う。 富士通も社外専門家で構成された「AI倫理外部委員会」を19年に設置した。富士通は、AIによる保育園と待機児童のマッチングシステムを自治体向けに開発・提供しているが、倫理委員会ではその公正性が検証対象となった。「保護者からの提供データに誤りがあっても対応できるように」と倫理委員会から助言を受け、システムに改良を加えたとされる。 これからさらに加速するAIサービス競争。その勝敗を決めるのは旧来のモノづくりのようなQ(品質)、C(コスト)、D(納期)といった単純な基準ではない。たとえ少しくらい知能が劣ったとしても、人権リスクの低いAIの方が社会に実装される可能性が高い。 「性能」一辺倒のAI開発を進めるテクノロジー企業は、早晩、淘汰されてしまうかもしれない。 手塚治虫が自作で未来世界を描くときに何度も警鐘を鳴らしていたこのテーマ。いよいよ企業が自分事として考えるときがきた』、日本企業はコンプライアンスが苦手な企業が多いだけに、上手くいくか心配だ。

次に、本年1月2日付けダイヤモンドが掲載したスタンフォード大学・オンラインハイスクール校長の星 友啓氏による「【スタンフォードからの緊急報告】 AI時代にEIと心の健康を保つ方法」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/256815
・『スタンフォード大学・オンラインハイスクールはオンラインにもかかわらず、全米トップ10の常連で、2020年は全米の大学進学校1位となった。世界最高峰の中1から高3の天才児、計900人(30ヵ国)がリアルタイムのオンラインセミナーで学んでいる。 そのトップが日本人だということをご存じだろうか。オンライン教育の世界的リーダーでもある星友啓校長だ。全米トップ校の白熱授業を再現。予測不可能な時代に、シリコンバレーの中心でエリートたちが密かに学ぶ最高の生存戦略を初公開した、星校長の処女作『スタンフォード式生き抜く力』が発売たちまち2万部重版と話題になっている。 ベストセラー作家で“日本一のマーケッター”と評された神田昌典氏も「現代版『武士道』というべき本。新しい時代に必要な教育が日本人によって示されたと記憶される本になる」と書評した。 このたび、同じスタンフォード大学で教鞭を執るスティーヴン・マーフィ重松教授と星校長が対談。星校長の視点から対談の学びを共有する』、興味深そうだ。
・『つらい、不安な時ほど「自分のこと」を考えてはいけない?  日本で生まれ、アメリカで育つ。ハーバード大学で臨床心理学の博士号取得。東京大学留学生センター・大学院教育学研究科助教授。現在、スタンフォード大学医学部ウエルネスとリーダーシップ教育の心理学者。マインドフルネスの概念をベースに、生きる力やグローバルスキルを高める専門家として、教育・医療などの分野で国際的に活動中。主著に『スタンフォード大学 マインドフルネス教室』(講談社、2016年)、『From Mindfulness to Heartfulness 』(Berrett-Koehler Publishers、2018年)、『スタンフォード式 最高のリーダーシップ』(サンマーク出版、2019年)、『スタンフォードの心理学授業 ハートフルネス』(大和書房、2020年)など。 新しいことを始めようとして怖くなる時、 嫌なことから逃げ出したい時、 困難に打ち当たり、進めなくなった時、 そんな時は、つい「自分のこと」で頭がいっぱいになってしまいませんか? 実は、つらい時、不安になった時、逃げ出したくなるような時ほど、考えるべきは「自分以外のこと」なのです。 こう話すのは、スタンフォードでハートフルネス・ラボを創始した心理学者、スティーヴン・マーフィ重松先生。 「ハートフルネス」という言葉は初めて聞いた方がほとんどかと思いますが、先の見えない不安社会を生き抜くための大きなヒント「ハートフルネス」について、スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長として、重松先生と対談しました。 今回は +伝統と、科学、アートを統合した最先端の考え方「ハートフルネス」とは? +マインドフルネスとハートフルネスの違い +逆境に屈せず行動できるようになる方法 +天才児の教育現場で行われる「ソーシャル・エモーショナル・ラーニング(SEL)」で求められる5つの力 +滅私奉公ではなく、お互いを個性、力を伸ばして活かす社会のつくり方 についてお話ししましょう』、なるほど。
・『変化の激しいAI時代に、しなやかな強さを生むEIと心の健康  科学、テクノロジーが発達し、便利なサービスが次々現れ、かつてより飛躍的に暮らしやすくなった現代。 しかし、それに伴って私たちは幸せになったのかと考えると、そうとは限りません。 たとえば、SNSの発達で人と比べて劣等感を感じたり、コミュニケーション齟齬が起きたり、いつでも誰とでもつながれるからこそ逆に孤独を感じるなど、ストレスが増えた方もいるのではないでしょうか? 今年の春、年に一度の中等教育カンファレンス「全米独立型私立校のカンファレンス」にて、ニューヨーク大学ビジネススクールの心理学者ジョナサン・ハイド教授は、「GenZ」と呼ばれるティーネイジャー層が危険にさらされていると話しました。 精神疾患、身体障害、学習障害やADHDの数、うつ病、自傷、自殺の件数などは、明らかに増加しています。 AIやロボットが今後さらに生活を変えることが予想されますが、テクノロジーの発達の速さや生活変容は、先行きの見えない混乱を人々の心に生みます。 そんな時代だからこそ、重要なのは、いかに「感情的知性(EI)」を高め、「心」の健康をいかに保つかです』、「ティーネイジャー層が危険にさらされている」、日本でも同じだろう。
・『ハートフルネスは、思いやりと感謝で心を育てる、マインドフルネスの進化形  重松先生は、アメリカの心理学専門誌『サイコロジー・トゥデイ』で、「Finding Meaning in Life’s Struggles(人生の困難に、意味を見出す方法)」という人気ブログを連載しています。 「臨床心理学で、私はたくさんの苦しんでいる人と対話してきました。 人が幸せになるのは、決して簡単ではありません。 誰もがヴァルナビリティ(開かれた弱さ)を持ち、悩みながら生きているのです」 人生を充実させ、生きづらさから解放されるためのヒントとして、思考、脳の研究から生み出されたのが、今、起こっていることに集中する「マインドフルネス」です。 その手法の一つ「瞑想」は、Googleなどの世界的大企業で取り入れられていることで有名になりました。 重松先生は、著書で「マインドフルネスをもっともよく表す漢字は「念」であり、これは「今」と「心」のふたつの部分からできている。 しかし、日本語で「心」が気持ち、強い感情、意識や思考、魂など、その人全体を指すのに対し、西洋でマインドフルネスといえば、ハートから切り離された知性や思考といったイメージを持つ人がいる。 それを考えると、ハートフルネスという表現のほうが、「念」の意味に近いだろう」と述べます。 「ハートフルネスの考え方は、自分だけで完結するものではありません。 能力があるということは責任があるということ。社会に対してできることをやる、行動を起こし社会に貢献、奉仕する。この過程すべてがハートフルネスです。ハートフルネスは、不安な時に一歩を踏み出す原動力、そして、生きる目的になります」 重松先生はこう語ります』、「能力があるということは責任があるということ。社会に対してできることをやる、行動を起こし社会に貢献、奉仕する。この過程すべてがハートフルネスです。ハートフルネスは、不安な時に一歩を踏み出す原動力、そして、生きる目的になります」、なるほど。
・『不安、逃げ出したい時の勇気ある行動が、あなたに幸福感をもたらす  私は拙著『スタンフォード式生き抜く力』で、ダライ・ラマの「人間は根本的に社会的な生き物で、それがゆえに、私たち人を思いやる力の『種』を持って生まれてくる。その力を発揮することが私たちの幸福や社会の繁栄に必要不可欠だ」という言葉を引用しましたが、ダライ・ラマは次のような言葉も残しています。 「人間として、私は自分の幸福が人次第だということを知っています。そして人の幸福に関心を持つことは、道徳的な責任だと真剣に思っています。人類の未来が祈りや良心だけで実現するというのは、現実的な考えではありません。行動が必要です。ですから私の一番の責務は、力の限り人類の幸福に貢献することなのです」 「責任」という言葉に抵抗を持つ方もいるかもしれませんが、重松先生は次のように語ります。 「日本では、義理という言葉を、心がこもっていない、仕方なくやるものとネガティブに捉える方もいるかもしれません。 しかし、義理は「美徳」です。私の母は、ゼネラル・エレクトリック(略称GE。トーマス・エジソンが創業した世界的企業)で、初のアジア人女性として成功した、自由でキャリアもある女性でした。 そんな彼女の言葉が『義理と人情を忘れてはいけない』です。Responsibility(責任)とは、Response(応答)、Ability(能力)。つまり、社会から求められているものに、自分の能力を持って応えることといつも話してくれました」 「自分にできることはやる」という行動は、拙著『スタンフォード式生き抜く力』で取り上げた、「五常」の「仁」「義」と同じ。 やるべきことをやる正義感「義」と、思いやりの心がまえ「仁」を持って行動することが重要なのです。 心理学の研究で、健康向上の最良の方法の一つは、積極的に周囲に貢献することとされます。感謝の念を持とうなど心の意識も大事ですが、日常のささやかな親切などの行動こそが、幸福感につながるのです。 また、作家のオードリー・ロードは、恐れを乗り越えるために、ヴィジョン、ミッションが必要と説きますが、重松先生も、真の思いやりは、責任と共にあるとします。教育、指導、子育てなど責任を負うと感じる場面で、相手に全力を傾け、自分の能力を尽くす。この「ハートフルネス」こそが、あなたに大きな勇気と幸福感をもたらすのです』、「真の思いやりは、責任と共にあるとします。教育、指導、子育てなど責任を負うと感じる場面で、相手に全力を傾け、自分の能力を尽くす。この「ハートフルネス」こそが、あなたに大きな勇気と幸福感をもたらすのです」、なるほど。
・『天才児教育のトレンド「ソーシャル・エモーショナル・ラーニング(SEL)」5つの力とハートフルネス  「他人への共感、自らの恐れをコントロールし行動する力を持つ」ことは、健全な精神、体の健康のサポートで効果的な学びを実現する、スタンフォードの教育現場で行われているソーシャル・エモーショナル・ラーニング(SEL)で目指す姿でもあります。 以下は、アメリカのSELを90年代から牽引してきたCollaborative for Academic, Social and Emotional Learning(CASEL)が挙げる社会性・感情の5つの能力です。 1.自分を理解する力(self-awareness):自信をもって成長マインドセットで、自分の強みや弱みを理解することができる。 2.自分で自分を統制する力(self-management):ストレスとうまくつき合って、自分の衝動を適切にコントロールし、自分で目標を設定して到達していくために自分を動機づけることができる。 3.他者を理解する力(social awareness):多様な背景や文化を有する人たちの視点を理解して、共感したり思いやったりすることができる。 4.他者とうまくやっていく力(relationship skills):他の人とうまくコミュニケーションができ、協力できる。不健全な場の空気に流されない。対立を建設的に解決する。他人に助けを求めたり、自分から他人を助けることができる。 5.適切な意思決定をする力(responsible decision-making):自分の行動や、他人とのやり取りの中で、倫理的基準や安全性、社会的規範に基づいて、建設的な選択をすることができる。 このように、SELで学習する内容は、ハートフルネスの学びを通して目指す姿でもあるのです』、「SEL」はなかなかよく出来た仕組みのようだ。
・『あなたのハートフルネスが、世界をやさしく変えていく  「アメリカ人は個人主義で、自己中心的、恐れが強く、憎しみを感じる人が多いです。日本は世界から、エンパシー(注)社会だと思われています。小さい頃から、他者とのつながりの大切さを教える教育がなされ、共感、思いやりを自然と身につけている人が多い。しかし、弊害として、他人に共感する=自分をなくすと思っているなど、思いやりが我慢と同義になっている人もいます。 思いやり、人とつながることは、人が生きるにあたり実は一番大事。でも、その方法を正しく教えられる人が、教育現場含めほとんどいないのが現状です」 人に思いやりを持って接すれば、その人は応えてくれる。もし目の前の人が直接応えてくれなかったとしても、めぐりめぐって、またいつかあなたのもとに返ってくる。この考えを示すのが、日本古来のことわざ「情けは人のためならず」です。 ハートフルネスで恐れを乗り越える。思いやりを持って、相手の人生を自分事として共感し、自分だけのためでなく、もっと大きな社会のために行動することで、私たちは幸福を感じられます。 一人一人の意識が変われば、世界は温かく、あなたにとっても心地よいものになるに少しずつ変わっていくでしょう。 もしこの記事が少しでも役に立ったら、ぜひ、あと一歩を乗り越えよう努力している友人、より良い人生を歩もうと頑張る大切な方、お仕事の仲間などにも教えてあげてください。 一人の小さな勇気が、みんなのためになっていると伝えるのもハートフルネス、思いやりに満ちた行動になります。 ここでの気づきが、互いの心を大切にし、無理せず自分のできる範囲で相手に応える、やさしい社会づくりのきっかけに少しでもなれば幸いです。(スティーヴン・マーフィ重松氏、星 友啓氏の略歴はリンク先参照)』、「互いの心を大切にし、無理せず自分のできる範囲で相手に応える、やさしい社会」、は理想形で、それに少しでも近づいてほしいものだ。
(注)エンパシー:共感力)

第三に、4月2日付けダイヤモンドが掲載したライターの奥田由意氏による「価値創造の経営~デジタル&イノベーション 日本の「AI自動翻訳」劇的進化の実態、特許や製薬・金融など専門分野に変革も」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/266872
・『自動翻訳というと、グーグル翻訳やDeepLを思い浮かべる人が多いかもしれないが、実は国産のAI翻訳が、特許、製薬、金融などの専門分野での高精度化をはじめ、すさまじい進歩を遂げている。なぜ精度が急速に上がったのか。どのような産業でどのように役立てられているのか。そして、今後ビジネスではどのように応用される可能性があるのか。一般社団法人アジア太平洋機械翻訳協会(AAMT) 会長で国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)フェロー隅田英一郎氏に聞いた』、興味深そうだ。
・『特許、製薬、金融など専門分野や音声翻訳でも高精度を実現  AIを活用した国産の自動翻訳(機械翻訳)が世界的にも高いレベルにあることは、あまり知られていないかもしれない。 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の研究成果による自動翻訳は、英、中、韓など10言語に関して、旅行、医療、防災等の分野に対応し、日本語と外国語、双方向の翻訳精度は80%以上で、実用レベルである。2019年にはTOEICスコアでも960点以上の実績を上げている。また、音声認識の精度も今や人間を超えている(時間をかけて何回か録音を聞き直すことを許容すれば、文脈を理解する能力がある分だけ人間のほうが正確ではある)。 これらの最先端技術は、現在累計80万台を売り上げている82言語対応の双方向翻訳機ポケトーク、自治体での業務やインバウンド対応のための翻訳機eTalk5みらいPFモデルなどをはじめ、約30の製品がビジネスの現場で使われている(製品・サービス事例)。 こうした製品以外にも、企業他との共同研究で、専門分野の自動翻訳の精度が飛躍的に上がっている。NICTでは、特許庁、製薬会社などとしっかりタッグを組んで、研究開発を進め、それぞれの専門分野に適応した高精度翻訳を実現し、外国出願を効率化したり、新薬の販売承認にかかわる翻訳日数を短縮したりしている。 NICTフェロー隅田英一郎氏は「グーグル翻訳においては精度を上げることが必ずしも最優先事項ではない。グーグル翻訳は広告ビジネスへの貢献がその存在理由であって、汎用の単品として設計されている。汎用品とは包丁で例えれば万能包丁のようなもの。何でも切れるといっても、生魚の身やパンはうまく切れず、結局、刺身包丁やパン切りナイフが必要になる。包丁と同じで、翻訳も専門に特化した自動翻訳でなければ用をなさない」と語る。 NICTでは、研究室に研究を閉じ込めず、専門分野の官・民と協力して、重点分野について、実際にその分野で使われている高品質で大量のデータを機械学習(深層学習)させ、それを協力相手の現場に戻して厳しくチェックしてもらい、調整を重ねることによって高精度を実現している。 「専門の組織や企業と一緒に作ることで、リアルな必要性に基づいたフィードバックが確実に得られ、短期間にシステムに反映して実用に供することができている」(隅田氏) 例えば、外国での特許訴訟における費用の多くを翻訳が占めるので翻訳の低コスト化が必要であり、一定期間に大量に翻訳するので高速化も必要だった。また、特許査定までにやり取りされる「拒絶理由書」は、特許明細書の独特の文章と、普通のスタイルの文章が混在した、とりわけ翻訳困難な文書だ。NICTは2014年から特許庁と協力して自動翻訳の開発を続け、異なる2つの評価尺度であるRIBESとBLEUの組み合わせで世界一の翻訳精度を達成した。) さらに、特許は常に新しい用語やコンセプトが出てくるので、特許庁から提供される対訳データに基づいて翻訳システムを更新し、加えて特許庁からフィードバックを得て改良しており、性能改善は停滞することがない。翻訳システムはいつもup-to-dateだ。 製薬分野でも、英国のアストラゼネカと協力し、「治験実施計画書」の自動翻訳に取り組み、国内で新薬を申請するためにかかる翻訳の期間を4週間から2週間に半減させた。日本国内で発売する新薬の申請は日本語の文書でなければ承認されないため、やはり翻訳の精度と速度が決定的に重要だ。これにより、新薬はより早く患者に届き、新薬の収益化も前倒しできる。 ほかにも、トヨタと中国語の自動車法規の翻訳を手がけたり、SMBC日興証券とアナリストレポートの翻訳を高精度化したり、半導体や契約書などの分野もカバーする。 VoiceBiz等多数あるスマホ・アプリの形態の製品も、観光関係者(例えば、舞妓、芸妓)、美容院、飲食店、小売店、さらには、病院関係者(医師、看護師、窓口)、救急車の救急救命士、自治体窓口などで広く使われている。2020年6月には警察庁が全国47都道府県に配備したスマホに音声翻訳のアプリを搭載した。 「交番、自治体窓口、救急車、診療所などは、日本にいる外国人が困りごとがあったり病気になったりしたときにまず頼る先である。そこで言葉が通じることが日本という国の安心感、信頼感にもつながる」(隅田氏) ちなみに、有名なグーグル翻訳では「トイレが流れません」を“The toilet doesn't flow.”(トイレが(そのものが)流れない)と誤訳するが、NICTの翻訳は、“The toilet doesn't flush.”(トイレの水が流れない)と「正しい」翻訳となる』、この「翻訳」例の比較では、「グーグル翻訳」はやはり「万能包丁」的で、「NICTの翻訳」の方が自然だ。
・『自動翻訳はなぜ飛躍的に向上したか 「AIによる機械学習」で世界は一変  自動翻訳の性能は、数年前から飛躍的な向上を続けている。ここで、簡単に自動翻訳発展の歴史を振り返ってみよう。 1980年代までは、規則翻訳(RBMT、Rule-Based Machine Translation)だった。原文を解析して、単語や語順を変換し、訳文を生成する。解析のための文法規則と、単語や語順の変換規則と、語形変化等の文生成のための規則をつくり、それを利用して翻訳するのだ。しかし、各言語に内在する複雑な特性の変換を説明しきる単純な規則は存在せず、改良のために次々と例外処理を積み重ねていって、制御が困難な水準まで規則(Rule)の数が膨れ上がりRBMTは行き詰まった。 そこで、RBMTで中心に据えられた抽象的な規則を追求するという考えは捨て去る必要があった。1984年に、抽象規則の対極にある具体的なデータを中心に据える用例翻訳(EBMT、Example-based Machine Translation)という手法が提案された。 EBMTは、長年の翻訳活動で蓄えられた質の高い対訳データ(同じ意味の原文と訳文を文レベルで集めたもの)を大規模に集めたものから、入力側が類似した対訳データを検索し、この対訳データの訳文側を自動的に修正して翻訳するという方法である。EBMTは人間が英作文する過程をヒントにしたもので、現在の対訳データから機械学習するAI翻訳につながる基盤を作った。) EBMTは類似対訳がある場合に高精度を達成できる一方、対訳データの質に過敏であるという欠点があった。EBMT と並行して研究されていた統計的機械翻訳(SMT、Statistical Machine Translation)のアルゴリズムを変えたフレーズベースのSMTが2003年に提案され、対訳データの質に対して頑健で精度も向上したことから、一定の普及を実現した。フレーズすなわち単語列に基づいて翻訳するというものだ。日本語から英語の場合、日本語文をフレーズで区切ったあとフレーズ毎に英語に翻訳し、SOV(主語、目的語、動詞)からSVO(主語、動詞、目的語)に語順を並べ変える。SMTの名の通り「確率」が主役である。 次の5つの日本語文と英訳文を見てほしい。
1. 京都駅はどこですか    → Could you direct me to Kyoto station?
2. 駅はどこですか      → Where is the station?
3. トイレはどこですか    → Where is the restroom?
4. タクシー乗場はどこですか → Where is the taxi stand?
5. ここはどこですか     → Where am I?
フレーズ「どこですか」に注目すると、5例のうち3例、つまり60%が「Where is」と翻訳できることがわかる(※)。このように、対訳データから、(1)各フレーズの訳語としてありうる訳とその確率が自動的に得られる。 (※)「どこですか」の場合は「Where is」 60%、「Could you direct me to」 20%、「Where am」 20%といった具合に  同様に、(2)語順変更の確率、(3)英文のフレーズの並びの確率も獲得できる。沢山の訳文の候補を生成して、(1)(2)(3)から得られる全体の確率が最大になる訳文を選択するのだ。SMTは大きく性能を伸ばし、特に、SOVやSVO等の同グループ内の言語間でかなりの高精度となったが、フレーズという単位で部分を組み合わせるという手法の限界から、特に、グループを跨ぐ言語の間(例、SOVである日本語とSVOである英語の間)の翻訳では実用化しうる精度が出せなかった。 しかし、その後、2014年、AIのコア技術である深層学習(ディープラーニング)を使った入力文全体を読み込んでから翻訳する技術(NMT、Neural Machine Translation)に関する技術が登場し、自動翻訳の精度は劇変した。NMTは「対訳データに基盤を置く点はEBMT・SMTと同じだが、そこからの翻訳知識の取り込み方式、翻訳の計算方式が違う」と隅田氏は語る。カギになるのは、ある単語と一緒に使う「共起する単語」である。 「電車」という単語は、たとえば、「電車に乗る」「電車を運転する」というように、「乗る」「運転する」という単語と一緒に使われている。しかし、特殊な比喩でもない限り、「電車が鳴く」とは言わないし「電車」が「食べる」とは一緒に使われることはない。 「自動車」は「乗る」「運転する」など、一緒に使われる単語が「電車」と似ている。一方、「犬」は「鳴く」と一緒に使われるが、「乗る」「運転する」と一緒に使われることはほぼない。 このように、文章中の単語の出現を分析することで、「電車」と「自動車」とは互いに似ており、「電車」と「自動車」は「犬」とは似ていないことを、機械に区別させることができる。) 「ある単語が、他のどの単語と何回一緒に使われているかに注目して、単語を膨大な数値の塊として表現することによって、コンピューターに実装されるニューラルネットで翻訳ができるようになった」(隅田氏) しかし、派生語や固有名詞を含めると単語の数は相当である。ある言語の単語数が仮に100万語あるとしよう。見出し数100万語の辞書に、他のどの単語と何回一緒に使われているかという数値を記載しなければならない(これをコンピューターでは100万次元のデータを持つという)。言い換えると、メガ*メガでテラ(106*106 = 1012 =1,000,000,000,000〈一兆〉)バイトのメモリに数値を入れることになり、あまりに膨大なので、実際には、数学的なテクニックで処理可能な次元を圧縮して計算する。 NMTの翻訳精度が圧倒的に高かったことから、自動翻訳はNMTが主流になった。機械学習が分野横断できる技術であることから、自動翻訳分野以外の研究者の参入もあり、自動翻訳の進化のスピードは桁違いに上がった。革新のスピードは、RBMTからEBMT/SMTまでに約40年、SMTの第2世代までに約20年、NMTまでに約10年、その後現在の第3世代NMTまでが約5年と、どんどん短縮されている。 そして2020年、前述したEBMTの手法が復活してNMTの上に追加された。言い換えると、入力した文と類似した文が対訳データにあるかどうかを検索し、類似対訳があれば、それを参考にして自動翻訳し、類似対訳がなければNMTで翻訳する。多くの専門的な分野で、さらに高精度の翻訳ができる技術が確立できた。 世界にはおよそ7000の言語があると言われ、グーグル翻訳はおよそ100の言語に対応しているが、NICTでは、英、中、韓、仏、西、タイ語、インドネシア語など10言語を重点的に研究している。日本語と英語は構造面で非常に遠く、日英双方向の翻訳に取り組んだ知見は、他の言語ペアの研究にも役立つのだ。敷衍すると、世界の言語の5割を占める、日本語と同じSOV(主語、目的語、動詞の語順の)言語と、4割を占める英語のようなSVO(主語、動詞、目的語の語順の)言語の対応はもちろん、SOV同士の日韓双方向翻訳や、SVO同士の英仏双方向翻訳では、より誤りの少ない翻訳を実現できる。 「日本での需要がある言語に絞り、より高性能、高精度の品質を確保し、他を圧倒することができ、また運用のコストパフォーマンスもよくなる。研究基盤があるので、カバーしていない言語は、必要に応じていつでも追加して開発できる」(隅田氏)』、「自動翻訳はNMTが主流になった。機械学習が分野横断できる技術であることから、自動翻訳分野以外の研究者の参入もあり、自動翻訳の進化のスピードは桁違いに上がった」、便利な時代になったものだ。
・『自動翻訳が小規模企業や英語嫌いの人々を救う!  日本人は英語の修得が苦手だと言われるが、隅田氏は「米国の報告によれば、米国人が日本語を習得するのに必要な学習時間は2200時間以上と全言語の中で一番長時間のトレーニングが必要だ。逆もしかり。つまり、日本人が英語を修得するのには2200時間以上かかる。日本人の英語の中高での学習時間は900時間ほどしかない。圧倒的に学習時間が足りない。だから、できないのは当たり前。英語力がないと劣等感を抱く必要はない」と断言する。 自動翻訳が高精度になったので、サッカー好きはサッカーに、プログラム好きはプログラムに打ち込めばよいのだ。特に語学に向いているわけでもない場合に、無理に英語の修得に時間を使うのは限られた人生を非効率に浪費することだ。 語学が好きな人はどんどん学べばいい。自動翻訳は、文脈や背景まで含んだ翻訳には対応できず、文学やジョークの翻訳や高度な同時通訳などは苦手。なので、翻訳や同時通訳の専門家はもちろん必要だ。また、翻訳や同時通訳の専門家も機械翻訳をうまく活用することによって、効率を上げることが可能であり、大いに「働き方改革」ができるはずだ。 より根本的な話として、英語に限らず語学を学ぶことには、自国の言語や文化を相対化し、俯瞰的な視座に立脚できることも含め重要な意義があることは言うまでもない。  機械翻訳を使えば、一定量生じる誤訳の対策に利用者が適切な努力をすれば、丸投げで翻訳するより費用を抑えられるため、中小企業などがニッチな技術の販路を世界に広げるのに役立つだろう。国内市場が縮小するなか、語学の壁のせいで世界に発信できていないコンテンツや技術やサービスを海外に広げるチャンスが生まれる。会議や商談やメールのやりとりにも有効だ。海外とのビジネスのスピードも向上する。ビジネス、アカデミック両方の分野で、語学が苦手なために埋もれていた優秀な人材も日の目を見る。個人でも組織でも、海外との交流が活発になる。 現在、隅田氏のチームは、総務省のプロジェクト「グローバルコミュニケーション計画2025」で同時通訳の開発も手がけている。 「一定時間話した内容をまとめて通訳する逐次通訳と違い、ほとんど遅延なく行う同時通訳は、話されている文章を適切な箇所で分割し、適宜情報を取捨選択し、翻訳するという、専門分野の機械翻訳と違った技術も求められる。2025年の大阪万博での実用化を目指しているところだ」(隅田氏) 誰もが高精度の翻訳、遅延の少ない同時通訳を安価に使える「翻訳の民主化」で、自らの意思とは関係なく英語力向上を強制される「英語奴隷」たちが解放され、救われる日は近い。そして、北風と太陽ではないが、強制されなければ、逆に、ポップ・ミュージックや韓流ドラマのファンの行動で証明されているように語学を学びたくなったり他国の言語や文化に自然に興味を抱いたり、外国文学を読みたくなったりする人も増えるかもしれない』、「自らの意思とは関係なく英語力向上を強制される「英語奴隷」たちが解放され、救われる日は近い」、早く「解放され、救われる日」が来てほしいものだ。
タグ:人工知能 (AI) (その11)(IBMが「顔認識AI」撤退 アマゾン・マイクロソフトも悩むその危険性、【スタンフォードからの緊急報告】 AI時代にEIと心の健康を保つ方法、価値創造の経営~デジタル&イノベーション 日本の「AI自動翻訳」劇的進化の実態 特許や製薬・金融など専門分野に変革も) ダイヤモンド 羽生田慶介 「IBMが「顔認識AI」撤退、アマゾン・マイクロソフトも悩むその危険性」 アマゾンの人事AIは“女性嫌い”? 「君は不採用だ」と人事AIが下すワケ 「AIが知能を発揮するには、まず事前に学習用のデータを大量にインプットする必要がある。そのデータに偏りがあれば、当然ながらアウトプットにもバイアスがかかる」、その通りだ 「IBMが顔認識AI事業からの撤退」、「アマゾン」、「マイクロソフト」も「警察への顔認識AIの提供」を「停止」、「差別するAI」への警戒姿勢を強めているようだ。 「AIが導き出す「現状における合理的な解」は、往々にして現状の格差やバイアスを丸のみにした差別的なものになりがちだ。倫理なき合理化は、残念ながら差別と極めて相性が良い」、企業としては大いに注意が必要なようだ 「IBM」、「アマゾン」などの慎重な姿勢に比べ、商売のことしか考えない「リクルートキャリア」の姿勢の違いが鮮明になった。 「女性の声が初期設定」された「AIアシスタント」が「ジェンダーバイアスを補強」、というのは事実だが、「性別の特定できないAI」というのも味気ない 日本企業はコンプライアンスが苦手な企業が多いだけに、上手くいくか心配だ。 星 友啓 「【スタンフォードからの緊急報告】 AI時代にEIと心の健康を保つ方法」 つらい、不安な時ほど「自分のこと」を考えてはいけない? 変化の激しいAI時代に、しなやかな強さを生むEIと心の健康 「ティーネイジャー層が危険にさらされている」、日本でも同じだろう。 「能力があるということは責任があるということ。社会に対してできることをやる、行動を起こし社会に貢献、奉仕する。この過程すべてがハートフルネスです。ハートフルネスは、不安な時に一歩を踏み出す原動力、そして、生きる目的になります」、なるほど 「真の思いやりは、責任と共にあるとします。教育、指導、子育てなど責任を負うと感じる場面で、相手に全力を傾け、自分の能力を尽くす。この「ハートフルネス」こそが、あなたに大きな勇気と幸福感をもたらすのです」、なるほど 「SEL」はなかなかよく出来た仕組みのようだ 「互いの心を大切にし、無理せず自分のできる範囲で相手に応える、やさしい社会」、は理想形で、それに少しでも近づいてほしいものだ。 奥田由意 「価値創造の経営~デジタル&イノベーション 日本の「AI自動翻訳」劇的進化の実態、特許や製薬・金融など専門分野に変革も」 この「翻訳」例の比較では、「グーグル翻訳」はやはり「万能包丁」的で、「NICTの翻訳」の方が自然だ 「自動翻訳はNMTが主流になった。機械学習が分野横断できる技術であることから、自動翻訳分野以外の研究者の参入もあり、自動翻訳の進化のスピードは桁違いに上がった」、便利な時代になったものだ 「自らの意思とは関係なく英語力向上を強制される「英語奴隷」たちが解放され、救われる日は近い」、早く「解放され、救われる日」が来てほしいものだ。
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ブラック企業(その13)(「電通」はなぜ迷走し続けるのか? 畏友・山本敏博CEOへの“最後の諫言” 田中康夫緊急寄稿、電通を「過去最大赤字」に追い込んだ元凶の正体 なぜ海外の買収先が巨額減損に迫られたのか、ワタミはなぜ提訴されたのか 労基署さえ「手玉」にとる魔手の数々か?」) [企業経営]

ブラック企業については、2月9日に取上げた。今日は、(その13)(「電通」はなぜ迷走し続けるのか? 畏友・山本敏博CEOへの“最後の諫言” 田中康夫緊急寄稿、電通を「過去最大赤字」に追い込んだ元凶の正体 なぜ海外の買収先が巨額減損に迫られたのか、ワタミはなぜ提訴されたのか 労基署さえ「手玉」にとる魔手の数々か?」)である。

先ずは、2月19日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した作家・元長野県知事の田中康夫氏による「「電通」はなぜ迷走し続けるのか? 畏友・山本敏博CEOへの“最後の諫言” 田中康夫緊急寄稿」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/263134
・『2020年12月期は1595億円と過去最大の最終赤字に沈んだ日本の広告業界の巨人・電通グループ。世界「BIG5」に肩を並べようともくろんだ海外企業の買収が主要因だが、電通を蝕むのはそれだけではない。収益拡大の絶好の機会である東京オリンピック・パラリンピックの開催も危うく、一発逆転の可能性は風前の灯火だ。山本敏博CEOを知る作家で元長野県知事の田中康夫氏が、“最後の諫言”を緊急寄稿した』、山本氏はかつて、田中氏が出演していたラジオ番組の愛聴者だったので接点が出来たのかも知れない。
・『最終損失の主要因は海外子会社の減損 CFOの決意に相槌を打っている場合ではない  純粋持株会社「電通グループ」は2020年12月期の連結決算(国際会計基準)を2021年2月15日に発表。以下の“言い訳”は、「経営成績及び財政状態」と大書きされた「決算短信」の1行目に記されています。 「2020年は新型コロナウイルス感染症の拡大により、世界的に景気が急速に悪化しました。特に2020年3月以降は、当社グループの国内外の事業にも影響を及ぼし始めました」(https://ssl4.eir-parts.net/doc/4324/tdnet/1935567/00.pdf) 同日22:00配信「日本経済新聞」記事の冒頭も再録しておきます。(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGD156FE0V10C21A2000000/) 「電通グループが15日発表した2020年12月期の連結決算(国際会計基準)は、最終損益が1595億円の赤字(前の期は808億円の赤字)と過去最大だった。新型コロナウイルス禍によって世界の広告市況が悪化、海外事業を中心にのれんなどの減損損失1400億円強を計上した。 M&A(合併・買収)を軸に海外事業を広げてきたが、買収後の成長が遅れコロナ禍が追い打ちをかけた。売上高にあたる収益は前の期比10%減の9392億円、営業損益は1406億円の赤字(前の期は33億円の赤字)だった。最終赤字、営業赤字とも2期連続となる。 減損損失は子会社や地域ごとの判断ではなく海外全ての地域をまとめて収益性を見直して1403億円を計上、国内でも数十億円が発生した。20年9月末時点で約7300億円あった貸借対照表上の、のれんは今回の減損で約5900億円に減った」 翌16日付け朝刊13版にも、一字一句違わぬ同じ文面の記事が掲載されています。1面右肩で報じた「日経平均3万円回復 金融政策で押し上げ 企業収益 改善道半ば」よりも“ニュース性”が稀薄だったのか、掲載面は21面「投資情報2」の右肩でした。 再録した記事の末尾を飾るのは、曽我有信(そが・ありのぶ)取締役執行役員(財務担当)のコメント。「曽我氏は日本経済新聞の取材に『今後のM&Aは数や規模ではなく質を重視したい』と強調。スタートアップ企業との連携も深めていく方針も示した」(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGD156FE0V10C21A2000000/) 脊髄反射で「その言や良し」と大きく相槌を打った「ニッポン凄いゾ論」の「意識高い系」諸兄姉(しょけいし)にとって今回の拙稿は、些か読み進むのが辛いかも知れません。が、太古の昔から“良薬は口に苦し”。それも又、「公理」なのです。 「#Tokyoインパール2021」のハッシュタグがSNS上で人口(じんこう)に膾炙(かいしゃ)する程に迷走・混迷の度合いを深める、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会TOCOGからマーケティング専任代理店として2014年4月17日に指名を受けた「(株)電通」。 「当社は、これまで長年にわたり培ってきたスポーツ事業における知見やノウハウを生かし、2020年に開催される第32回オリンピック競技大会および第16回パラリンピック競技大会の成功に向けて、組織委員会のマーケティングパートナーとして、マーケティングプランの策定やスポンサーセールスなどを支援し、グループの総力を挙げて貢献してまいります」のプレスリリースは現在もHPで閲覧可能です。(https://www.dentsu.co.jp/news/sp/release/2014/0417-003720.html) その後、幾度かの組織改編を経て「電通」は現在、国内事業会社「(株)電通」。その社内カンパニーとして電通を中核に日本国内の約130社で構成される「電通ジャパンネットワーク」。昨年9月25日に電通イージス・ネットワーク(株)から社名変更したロンドンが本拠地の海外事業会社「電通インターナショナル(株)」。それらを束ねる純粋持株会社「(株)電通グループ」。以上4組織に大別されています。 以下は、電通グループ代表取締役社長執行役員兼CEOにして、電通インターナショナル非常勤取締役(Non-Executive Director)も務める畏友・山本敏博氏への“最後の諫言”。最後までお読み頂ければ幸いです』、「海外事業を中心にのれんなどの減損損失1400億円強を計上」、海外の買収には無理があったのだろうか。
・『世界広告「BIG5」に躍り出るも赤字を救う“公助”の可能性も  敢(あ)えて非デジタル的表現を用いて時計の針を戻すと、昨年12月7日に電通グループは、2020年12月期の連結業績予想(国際会計基準)が237億円の赤字になるとの見込みを発表。(https://www.nikkei.com/article/DGXZASFL07H9S_07122020000000/) グループ従業員の1割近くに当たる6000人を2021年末までに、限りなく解雇に近い削減へと踏み切ると表明。それに伴う構造改革費用876億円を計上しています。が、その2カ月後の今年2月15日の発表では1595億円へと赤字額が大幅に「増大」していたのです。 更にお復習(さら)いとして再録すれば、「広告業界ビッグ4」英WPP、米オムニコム、仏ピュブリシス、米インターパブリックに次ぐ世界第5位の“地歩”を、東洋の島国に本社を置く「電通」が築く切っ掛けとなったのは2013年3月26日のM&Aです。当時世界8位だった英国のイージス・グループを約4000億円で買収。(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO91489550Y5A900C1000000/) 「電通イージス・ネットワーク社」へ名称変更したロンドンの拠点を海外本社に位置付け、「110カ国・地域で事業展開するグローバル・コミュニケーション・グループ」を標榜します。(https://www.nikkei.com/article/DGXLZO80419570S4A201C1DTA000/) その後もM&Aを加速。僅か5年で164社を傘下に収め、2019年12月には145カ国・地域に6万6000名の従業員を擁する900社もの多国籍企業改め“無国籍企業”へと急激に拡張しました。 それらに伴い、昨年1月1日に発足した電通グループ全体の売上総利益に占める国内比率は85%から43%へと半減。57%の収益を海外に依拠する構造へと変容を遂げます。が、豪州や中国を含むアジア太平洋地域を始めとする海外部門がよもやの苦戦に直面。2019年9月時点で7886億円まで膨張した「のれん」の減損損失701億円分の計上を昨年2月12日に発表。赤字転落しました。(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55544130S0A210C2DTD000/) 言わずもがな「のれん代」とは、「買収された企業の純資産」と「買収価額」の差額を意味します。冒頭で紹介した「日経」の“心優しき認識”も今一度、復習しておくと「20年9月末時点で約7300億円あった貸借対照表上の、のれん」を「今回(2020年12月期)の減損で約5900億円に減」らすべく「減損損失は子会社や地域ごとの判断ではなく海外全ての地域をまとめて収益性を見直して1403億円を計上、国内でも数十億円が発生し」ています。 瀕死の重症状態から脱するべく、幼気(いたいけ)にも「自助」努力を続ける「電通」には、日本政府からの「公助」も受けられる可能性があります。 会計上の赤字と同様に税務上の損失を計上することができれば、「繰越欠損金制度」が持株会社の電通グループ及び事業会社の電通に適用されます。仮に赤字転落した昨年から既に適用されていたとしたら、本社登記地の東京都に納付する法人都道府県民税80万円以外は、国税の法人税も地方税の法人事業税も最大10年間に亘って毎年の納付額がゼロ円で済む「合法的」恩恵に浴していることになるのです。 「繰越欠損金制度」(https://tanakayasuo.me/archives/23720)と申し述べるや、「お前は三百代言の輩か」と烈火の如く反駁される向きも居られましょうから、暫し入念に説明を加えておきましょう』、「僅か5年で164社を傘下に収め、2019年12月には145カ国・地域に6万6000名の従業員を擁する900社もの多国籍企業改め“無国籍企業”へと急激に拡張・・・電通グループ全体の売上総利益に占める国内比率は85%から43%へと半減。57%の収益を海外に依拠する構造」、とはかなり急速に海外M%Aを進めたようだ。「減損損失」で税務上でも赤字となれば、「繰越欠損金制度」が適用されるようだ。
・『借入金にコベナンツが付いた 社員に副業“解禁”でも炎上  財務省のデータに拠れば、株式会社の7割は、国税の法人税と地方税の法人事業税を1円も納めていません。連結決算を導入する超大企業ですら、66%が同様です。それは利益に対して課税する仕組だからです。 国会議員時代に僕は、予(あらかじ)め財務省の担当者から説明を受けた上で、「法人税を1円も支払っていない企業はどのくらいの割合に上るか、御存知でしょうか」と、2011年2月8日の衆議院予算委員会で、時の菅直人内閣総理大臣に尋ねています。彼に代わって野田佳彦財務大臣が「全体の7割でございます」と答弁し、それに対して僕が、「法人の7割が法人税を払っていないということですね。即ち71・5%、7割を超える企業が法人税を支払っておりません。これは中小の零細企業に限った話なのでは無い訳です。資本金が1億円を超える企業でも、過半数の51・5%が1円も法人税を支払っておりません。これは連結決算対象の総法人数を除いての数値ですから、現実には、日本経済団体連合会=経団連や経済同友会に加盟する上場企業の約6割もが法人税を払っていないということです。この国会中継をテレビやラジオ、あるいはインターネットでお聞きの皆さんは、本当かとキツネにつままれているかと思います」と発言した言葉も含めて、議事録から削除されることなく10年後の今日も確認する事が出来ます( http://www.nippon-dream.com/wp-content/uploads/1aa4eff00be9af6f591d33ef9d2b6a41.pdf )。 その後、2回に亘って2011年11月1日と2012年1月27日の衆議院本会議の代表質問でも同様に確認し、同様の答弁がNHKの国会中継で放送されています。 故に余談ながら僕は、この理不尽な状況を改善する上でも、事業規模や活動量を基準に課税する「新しい発想の外形標準課税」へと抜本的に刷新すべきと提唱し続けているのです。 赤字企業でも事業収入自体は存在します。而(しか)して、何処で何人働き、何を幾つ作って、何処で幾つ売れたか、瞬時に把握可能な時代です。 ならば、老若男女を問わず全ての国民が支払う消費税と同じく、更には誰もが二酸化炭素CO2を排出するのと同じく、全ての企業が広く薄く外形標準課税で納入すれば、法人税率を現行の3分の1に引き下げても全体では逆に1割の税収増となります。事業展開しているそれぞれの地点で、事業量に応じて納税する「新税制」を確立すれば、これぞ21世紀のノーベル経済学賞! 全国各地の自治体が支度金(バンス)も用意して工場誘致を実現しても、法人税は東京や大阪、愛知の本社登記地に支払われるから、多少の雇用と固定資産税が見込めるだけで、「地方の自律」は夢のまた夢。 それは、GAFAに象徴される「無国籍企業」が、実際に事業を展開している国で税金を納めていない深刻な問題を合法的に解決する道でもあります。 閑話休題。が、仮に「電通」が法人都道府県民税80万円ポッキリで済む「恩恵」に浴していたとしても猶、身の丈を超えたM&Aで「ビッグ5」の仲間入りを果たした巨大広告代理店の財務状況は極めて深刻です。また、借入金の一部に「コベナンツCovenants」と呼ばれる「財務制限条項」が課せられているのも気掛かりです。 コベナンツとは、年度資金や事業資金を複数の金融機関が分担して貸し付ける「協調融資」に際し、財務健全性維持を求める契約条項。有り体に述べれば、債務者の財務状況に応じて債権者が契約解除を可能とする条項なのです。 コベナンツ(https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGD154JF0V11C20A2000000/?n_cid=BRFR3010) 電通インターナショナルへと看板を付け替えた旧電通イージス・ネットワークの呼称に関しても説明を加えておきましょう。 イージスAegisとはギリシア神話に登場する「守護神」ゼウスが娘の女神アテーナーに与えた、全ての邪悪・災厄を払う魔除けとしての山羊革=ゴートスキンを使用した防具アイギス Aigisの英語読みです。 奇しくも「官邸の守護神」と呼ばれし東京高等検察庁の黒川弘務(くろかわ・ひろむ)検事長が2020年5月に辞職。翌6月には弾道ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」配備計画も中止。名にし負う国際企業の電通グループたればこそ逆に、日本的な験(げん)を担いだのかも知れません。 連結子会社の電通イージス・ネットワークを2020年9月25日に電通インターナショナルへと商号変更。広大な敷地内に駐箚(ちゅうさつ)アメリカ合衆国特命全権大使公邸も位置するロンドンのリージェンツ・パークから程近い複合施設リージェンツ・プレイスに、商号変更後も本拠地を構え続けています。が、こうした「ブランド・イメージ」堅持の努力も虚しく、純粋持株会社「電通グループ」は2019年12月期に続いて2期連続で2020年12月期の営業利益も純利益も赤字となりました。 再び時計の針を戻して昨年11月1日、「電通、社員230人を個人事業主に 新規事業創出ねらう」の大見出しで「日本経済新聞」が記事を掲載しています。(https://www.nikkei.com/article/DGXMZO6610376011112020916M00/) それは、国内事業会社・電通の正社員全体の3%に当たる230人が「個人事業主」として「勤務」する「新しい働き方改革」。営業・制作・間接部門等、全職種の40代以上の社員約2800人を対象に募集。適用者は早期退職した上で、電通設立の新会社と10年間の業務委託契約を締結。電通時代の給与を基にした固定報酬に加え、実際の業務で発生した利益に応じてインセンティヴ報奨金も支給。兼業や起業も、他社との業務委託契約も可能。 至れり尽くせりの好条件と思いきや、「競合他社との業務は禁止」の一文に、「“蟹工船”的働き方改革」だと「業界関係者」がSNSで一刀両断。TV各局と仕事可能なフリーランスの放送作家や映像ディレクターと異なり“廓(くるわ)の論理”を押し付ける“脱法リストラ”じゃね、とプチ炎上する展開となりました。 無理からぬ批判です。年金・健保等の事業主負担、労基法の遵守と労災の刑事的・民事的責任から逃れた電通が、今度は胴元として「名ばかり個人事業主」を指揮監督する寸法なのですから。フリーランスとは自らの技能を提供する社会的に独立した自由業としての個人事業主。この形態で請け負った業務を遂行する人間がフリーランサー。その原義は、常備軍を擁する王族や貴族が有事の際に結成する傭兵団(フリー・カンパニー)の一員を意味します。無論、この場合のフリーは、ただ働きを意味する「無料」とは異なります。 「電通、本社ビル売却検討 国内最大規模の3000億円規模 コロナ禍でオフィス改革広がる」――。時流を先取りしたかの如き印象を与える見出しで「日本経済新聞」が速報したのは、コマーシャルの教科書として名高き「3時のおやつは文明堂」を彷彿とさせる今年1月20日午後3時5分でした。ttps://www.nikkei.com/article/DGXZQOGD184X60Y1A110C2000000/) が、その「決断」は、西新宿に聳える東京都庁の“魔天楼”で「後手後手やってる感」を巧みに演じ続ける“緑の旗振りオバサマ”小池百合子都知事が好んで用いる羊頭狗肉な惹句「ワイズスペンディング」の本来の定義とも異なる、背に腹は代えられぬ“帳尻合わせ”に他ならぬ、と僕の目には映るのです』、「借入金にコベナンツが付いた」、ということは財務の柔軟性が失われて、ショックに弱い体質になったことを意味する。「正社員全体の3%に当たる230人が「個人事業主」として「勤務」する「新しい働き方改革」」は、確かに「“廓(くるわ)の論理”を押し付ける“脱法リストラ”じゃね」、との「批判」も当たっているようだ。
・『山本CEOに昨夏に提案済み 電通改革に必要な4項目とは  僕は『サンデー毎日』2020年7月26日号に「『電通』化する日本 巨大広告代理店は なぜ迷走したか」と題して寄稿しています。 拙稿及び関連資料を含む『「電通」化する日本 巨大広告代理店は なぜ迷走したか』まとめサイト(https://tanakayasuo.me/dentsu/) 「日本最大の広告代理店、電通に厳しい批判の目が向けられている。2015年には社員の過労自殺があり、いま給付金委託『中抜き』問題で国策企業と指弾されているのだ。電通の迷走ぶりは、空洞化する日本の産業構造、劣悪化する日本の労働環境の縮図だと看破(かんぱ)する異能作家が、友人でもある山本敏博電通グループ社長に峻烈(しゅんれつ)な直言(ちょくげん)を呈(てい)しつつ、問題の核心を明らかにする――」 担当編集者M氏が記した「簡にして要を得た」リード文に続いて僕は冒頭で、2017年1月19日に当時の(株)電通取締役会で抜擢された時点では、その取締役会の構成員ですらなかった“次代のホープ”が社内外に発したコメント「最優先の課題は、労働環境の改革であると認識しています」を引用しました。 その4日後の2017年1月23日に社長執行役員に就任した畏友・山本敏博氏の決意表明は以下の如く続きます。「強い決意のもと、社員と共に改善施策を着実に遂行してまいります。経営の健全性や透明性の確保を図るガバナンス体制を強化すると同時に、当社の企業価値の源泉を見つめ直して、新しい電通の創造に向けて、全社を挙げて取り組んでまいります」 『サンデー毎日』発売直後の昨年7月21日、山本敏博(株)電通グループ代表取締役兼CEOから求められて2人で面談した際、僕は4項目のメモ書き『(1)「殖民地化」の阻止(2)「電通」労働環境のプロトタイプ化(3)電通イージス・ネットワークの可視化(4)HP JP上でガバナンスを明確化』を手渡しました。 (1)「殖民地化」の阻止(「広告業界」に疎い読者諸氏でも、1970年代半ばに耳目を集めた博報堂の醜聞をご記憶かも知れません。「教育雑誌」の広告取次店として1895年=明治28年に事業を興した博報堂創業家のお家騒動に端を発し、社長経験者を含む4名が特別背任罪で逮捕された事件です。相前後して、何れも旧大蔵省出身の2人の人物が社長、会長として君臨する進駐軍統治が、1975年から2000年まで四半世紀にも亘って続きました。「監督官庁」総務省や厚生労働省からの常勤取締役、社外取締役等の受け入れに伴う社内外の士気への影響に、「トップ・リーダー」はセンシティブであるべきなのです。 (2)「電通」労働環境のプロトタイプ化(日本の産業界は、実態と乖離した政治や行政が掲げる「働き方改革」に翻弄され続けています。9時-5時勤務が夢物語な「業界」の雄たればこそ電通は、職務給・職能給の枠組みを超えて「超過労働時間を最大5年有効のポイントに換算」するヴァカンス発想を始め、人間の相貌(かお)と体温が感じられる現場の実態に即した「労働環境」の範を垂れ、延(ひ)いては他業種にも伝播するプロトタイプとしての存在を目指すべき。それは、彼が取締役会の構成員ではなかった2016年11月にも口頭と書面で伝えていた具体的提言です。 「田中康夫の新ニッポン論」Vol.42「職務給・職能給」(https://tanakayasuo.me/wp-content/uploads/2016/11/verdad42.pdf) (3)電通イージス・ネットワークの可視化、そして(4)日本語版HP上でのガバナンスを明確化。(この2項目に関して僕は、持参したノート・パソコンを開いて具体的に、(株)電通グループ代表取締役社長兼CEOに指摘しました。 純粋持株会社の電通グループ、国内事業会社の電通、海外事業会社の電通イージス・ネットワーク、更に電通グループの社内カンパニーとして電通を中核に日本国内の約130社で構成される電通ジャパンネットワーク。4つの異なるURLのホームページは、ユーザー・オリエンテッドな「ワンストップサーヴィス」とは凡そ真逆な「縦割り行政」に陥ったグローバル・カンパニーDENTSUの病巣を体現していませんかと。 広告、そして経営、その何れの領域に於いても「プロフェッショナル」の足元にも及ばぬ僕の4項目の提言は、都合8カ月の歳月を経た2月17日現在も、「反映」されているとは言い難い状況です。 僕の「懸念」は筋違いだったのか否か、「ダイヤモンド・オンライン」読者の皆さんの忌憚なき判断を仰ぎたいと思います』、「提言(1」)~「(4)」は、。いずれも妥当なものだ。
・『社名変更後も今なお旧社名「デジタル重視」が泣く英文HP  「国内外で約1000社に広がる企業集団のネットワーク(株)電通グループは、国内・海外の事業を支えています」と2021年2月15日の決算発表日には誇示していた純粋持株会社のHPは、本稿を脱稿した2月17日に改めて確認すると件の惹句(じゃっく)は見当たらず、その形式もLP=ランディングページへと衣替えしていました。PCでの閲覧を想定した旧来型から、スマホにも対応の上から下へとスクロールするデザインへとヴァージョン・アップしたのです。(https://www.group.dentsu.com/) けれども僕は、文字と映像、更には印象(イメージ)を扱う専門集団にも拘らず、「言霊の幸ふ国(ことだまのさきわうくに)」に本社登記地を置く企業とは俄(にわか)に信じ難き、以下の現実に直面してしまったのです。 「About us 企業情報」と大書きされた電通グループのサイトをスクロールすると、(https://www.group.dentsu.com/jp/about-us/) 『「多様性」を創発していく企業グループへ』『純粋持株会社「株式会社電通グループ」の役割』の見出しに続いて『当社は一般的な持株会社ではなく、dentsu全体をチームにする会社、すなわち「チーミング・カンパニー」になることを目指します。』の決意表明が記され、その下の「dentsuの体制図」をクリックすると、「Group グループ」へとジャンプします。(https://www.group.dentsu.com/jp/group/) そこには「電通ジャパンネットワーク(https://www.japan.dentsu.com/jp/) 」と「電通インターナショナル(https://www.dentsu.com/) 」へのリンクが並列して張られており、「dentsu international」バナーをクリックすると、何故か「dentsu Global」でなく「dentsu Asia Pacific」と左上に表示されたHPへと飛びます。よもやの苦戦に直面する豪州や中国を含むアジア太平洋地域を重視する意思表示でしょうか? とまれ、「dentsu Global (https://www.dentsu.com/?global=true)」を探し当て、右上に表示された「Menu (https://www.dentsu.com/?global=true#top)」にはサイトマップが見当たらず、ページをスクロールして「Sitemap(https://www.dentsu.com/sitemap)」に辿り着くと、そこには数々の“笑撃”が待ち構えていました。 「Who We Are」の下段レイヤー=layer「Our leadership」一覧に「Tadashi Ishii」なる表記を見付けてクリックすると、2016年12月28日に電通代表取締役社長からの引責辞任を会見で表明した石井直氏の顔写真と英文プロフィール「Chairman,DentsuInc.」が現れます。(https://www.dentsu.com/who-we-are/our-leadership/tadashi-ishii) 僕の拙い英語力では「chairman」を「顧問」若しくは「相談役」とは邦訳出来ず、訝りながら計31名の列記された面々を順次クリックしていくと、 Dentsu Aegis Network Americas&US CEOと記されたNick Brien氏(https://www.dentsu.com/who-we-are/our-leadership/nick-brien) Chief Network Development Officer, Dentsu Aegis Networkと記されたNicholas Rey氏(https://www.dentsu.com/who-we-are/our-leadership/nicholas-rey) Global President Business Operations, Dentsu Aegis Networkと記されたVolker Doberanzke氏(https://www.dentsu.com/who-we-are/our-leadership/volker-doberanzke) 日系DNAと思しきSo Aoki氏の肩書もChief Corporate Planning Officer, Dentsu Aegis Network(https://www.dentsu.com/who-we-are/our-leadership/so-aoki) Executive Senior Advisor, Dentsu Group Inc.と記されたValerie Scoular女史も、そのプロフィールは「Currently she is Executive Director Human Resources and a member of the Dentsu Aegis Network Board and Compensation Committee」と現在形で記されています。(https://www.dentsu.com/who-we-are/our-leadership/valerie-scoular) Ashish Bhasin氏も「Under his leadership, Dentsu Aegis Network India is now the second largest Advertising & Media Group in India by revenue.」 と現在進行形です。(https://www.dentsu.com/who-we-are/our-leadership/ashish-bhasin) 更にはGlobal CEO, CreativeのJean Lin女史が担当している中国も(https://www.dentsu.com/who-we-are/our-leadership/jean-lin) 「dentsu Asia Pacific」サイトから降りていくと直ぐに「for KFC China」のロゴタイプを前面に押し出した「Dentsu Aegis Network:KFC Digital Transformation」に辿り着きます。(https://www.dentsu.com/sg/en/dentsu-aegis-network-kentucky-fried-chicken-digital-transformation) 2月15日の電通グループ決算発表会見を担当した曽我有信取締役執行役員は、「電通グループが直近の10年の重点課題として捉え、これからも経営の鍵となる分野は、『デジタル』です」と「マネジメントメッセージ」の冒頭で語っています。(https://www.group.dentsu.com/jp/ir/top-message/top2.html) 国内事業会社(株)電通の「持続可能なリモートワーク」推進は、その現れなのでしょう。(https://www.dentsu.co.jp/news/sp/release/2020/0319-010035.html) が、海外事業会社の電通インターナショナル(株)は、その「重点課題」を遥かに上回る「成果」を収めています。なにしろ、役員自ら先頭に立って“瞬間移動スキル”を体得し、過去と現在を自由自在に行き来する「ワープワーク」を実現しているのですから。 2月16日付け「日本経済新聞」が全10段を費やして19面に掲載した「会社・人事」の「情報・通信」に「電通グループ(3月下旬)代表取締役(取締役)ティム・アンドレー▽取締役、電通インターナショナル社グローバルCEOウェンディ・クラーク」と記載されていた件にも触れておくべきかも知れません。(https://www.nikkei.com/article/DGXZTSJD60701_V10C21A2000000/) 電通グループが昨年1月27日に『当社の連結子会社「電通イージス・ネットワーク(DAN)」における取締役会議長兼CEOの職務の代行に関するお知らせ』の中で「この度、当社の取締役副社長執行役員であり、DANの取締役会議長兼CEOを務めているティム・アンドレーが、健康上の理由により療養に入りました。このことを受け、一時的な措置として、当社の代表取締役社長執行役員であり、DANの取締役を務めている山本敏博が、ティム・アンドレーの担っているDANの取締役会議長兼CEOとしての職務を代行することといたしました」(https://www.group.dentsu.com/jp/news/release/000198.html)と広報していたミシガン州デトロイト出身の本名ティモシー・アンドレーTimothy Andree氏は、米国のNBA=ナショナル・バスケットボール・アソシエーションの選手として活躍した御仁。(https://en.wikipedia.org/wiki/Tim_Andree)(https://www.dentsu.co.jp/news/release/pdf-cms/2008035-0512.pdf)  “生き馬の目を抜く”広告業界に於ける「余人を以て代えがたき」屈強な体躯の人物たればこそ、奇蹟の復活を遂げたのでしょう。 その彼の“恢復”と“昇格”を祝うと共に(https://www.dentsu.com/who-we-are/our-leadership/tim-andree)、昨年7月21日の”畏友”との面談の際、「私が白羽の矢を立てた女性です」と語っていたウェンディ・クラーク女史(https://www.dentsu.com/who-we-are/our-leadership/wendy-clark)の両名が、「多様なリソースを統合し、多様なステークホルダーをつないでいく」と決意表明する畏友・山本敏博CEOと“三本の矢”となって名実ともに、『dentsu全体をチームにする会社、すなわち「チーミング・カンパニー」』を、今この瞬間も日本国内外で粉骨砕身する一人ひとりのチームメンバー、更には取引先の人々の為にも築き上げることを願ってやみません。(https://www.group.dentsu.com/jp/ir/top-message/top1.html)』、なるほど。
・『戦争にも協力した過去の電通 求められる「自分の意思と言葉」  「国鉄民営化」で日本国有鉄道清算事業団に移管された港区東新橋1丁目の、貨物列車・荷物列車ターミナル駅だった汐留駅跡地に位置する地上48階建て電通本社ビル。併設の電通四季劇場「海」、地階と最上階の飲食店舗等を含む施設全体の呼称は「カレッタ汐留」。 「長い時間を悠々と生きる亀のイメージに、ゆったりとした時間、余裕のあるライフスタイルを持つ都市生活者のイメージを重ね合わせ」、アオウミガメの学名“Caretta Caretta”からネーミング、と能書きに記されています。 その地階で、江戸時代からの広告資料28万点を蒐集するアドミュージアム東京。(https://www.admt.jp/) 公益財団法人吉田秀雄記念事業財団が運営する「日本で唯一の広告ミュージアム」です。大政翼賛会が広告主のポスター「進め一億火の玉だ 大政翼贊會」も所蔵されています。 「大東亜戦争」と東條英機内閣が閣議決定した当時の「日本」の人口は7300万人。台湾と朝鮮の人口も含めて「一億」なのです。そのポスターの作成は自暴自棄な敗戦間際かと思いきや、真珠湾攻撃の翌年1942年。 「このポスターを製作したのは『報道技術研究会』。民間の広告技術者によるボランティアのような組織から、戦争が進むにつれて、国家宣伝を担う専門集団に発展していった」と解説が付されています。 ハンナ・アーレントが描いたアドルフ・アイヒマンと比べたら失礼なくらいに「ナイーヴ」だったであろうクリエーター達が、戦略も戦術も欠落した無謀な戦時体制の「同調圧力」に組み込まれていった歴史を伝える一枚の広告物です。 現在は閉館中のアドミュージアム東京のHPでも閲覧可能な、その「一枚の広告物」に付された解説を読み返す度、僕は痛感します。(https://www.admt.jp/collection/item/?item_id=85) 「良心」の持ち主をも、いとも無慈悲に併呑(へいどん)し、消費していく社会は、昔も今も変わらないのだと。であればこそ、何時の時代に於いても「自分の五感で捉え、自分の言葉で語り、自分の意思で動く」しなやかな心意気を私たち一人ひとりが持ち合わせることが、如何なる業種、職種に於いても肝要なのではなかろうかと』、それは作家という自由業の田中氏なら可能だろうが、サラリーマンにとっては、無理なように思われる。

次に、2月25日付け東洋経済オンライン「電通を「過去最大赤字」に追い込んだ元凶の正体 なぜ海外の買収先が巨額減損に迫られたのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/413333
・『巨額減損に人員削減。デジタル転換で出遅れたツケは大きかった。 国内広告最大手の電通グループが2月15日に発表した2020年12月期の最終損益は1595億円という過去最大、そして2期連続の赤字(前期は808億円の赤字)に沈んだ。 売上高に当たる収益は9392億円(前期比10%減)、営業損益は1406億円の赤字(前期は33億円の赤字)で、すべての段階利益で2期連続の赤字となった。「再び赤字となったことは経営者として重く受け止めている」。山本敏博社長は投資家向け決算説明会でそう口にした。 赤字の最大の要因は、コロナ禍で世界の広告市況が悪化したことを受け、過去の海外買収で膨らんだのれんの減損で1400億円超の損失を計上したことだ。さらに783億円の事業構造改革費用も打撃となった。内訳は、海外での事業統合や人員削減で500億円超、国内での早期退職で200億円超。2021年12月期にも引き続き、残りの構造改革費用として国内外で500億円超を計上する見込みだ』、第一の記事と同じ電通問題である。
・『旧来型の代理店ビジネスは限界  電通グループは2013年に英広告大手イージスを約4000億円で買収した後、海外で毎年10社以上を矢継ぎ早に取り込み、国内事業を超える規模となった。売上総利益ベースの海外比率は直近で約58%だ。世界シェアでは今や英WPPグループ、米オムニコムグループ、仏ピュブリシスグループという世界3大広告会社に次ぐレベルになっている。 だが結果的にM&Aが足を引っ張った。電通グループの曽我有信CFO(最高財務責任者)は、「事業環境の変化が激しい」としたうえで、「今回減損の対象になったのは、イージスと一緒になった直後の2010年代前半に買収した広告領域の事業会社だ」と話す。 ここでいう広告領域とは、日本のマス広告のように広告会社がメディアの枠を買って広告主に売るという旧来型の“代理店”ビジネスを指す。2019年に海外のうちアジア太平洋(APAC)地域で700億円強の減損損失を計上した際も、同じ領域が中心だった。 ここ数年、電通グループは消費者に関するさまざまなデータを活用したデジタルマーケティングを中心とする業態への転換を急ぐ。 2020年の海外業績を見ると、旧来型の代理店ビジネスである「メディア」「クリエイティブ」の両部門の売上総利益が前期比15%以上減少した。一方、デジタルマーケティングを中心とした「カスタマーエクスペリエンスマネジメント」部門は同3.2%減にとどまった。国内でも売上高の3分の1を占めるテレビ広告が前期比12%減だったが、ネット広告は同1.4%減だった。) そもそも2013年に買収したイージスは旧来型の代理店だった。実際、イージスを含むヨーロッパ・中東・アフリカ(EMEA)地域はメディアとクリエイティブの収益の割合が大きい。 会社側は減損の対象を海外事業全体としているが、今回減損の判定を行った際にはAPAC、EMEAそして米州という海外のすべての地域ごとに稼ぐ力を測っている。地域ごとの減損損失額は3月に公表される有価証券報告書で明らかになるが、EMEAでの損失が膨らんでいる公算が大きい。 巨額減損を経てもなお、2020年12月末時点では6000億円弱ののれんが残っており、次なる火種となる可能性もある。 「この5年で市場環境が驚くほど変わった」と電通グループ関係者はつぶやく。2010年代前半はネットも含めてメディアの枠を売り買いするビジネスが大きかった。そこから米グーグルの検索広告やソーシャルメディア広告が台頭し、ネット通販の発達で企業と消費者がネット上でつながる場面が激増。そこにコロナ禍が直撃し、デジタルマーケティングの重要性が急速に高まった。結果的にイージスは時代に乗り遅れたと言わざるをえない』、「2013年に買収したイージスは旧来型の代理店だった」、「結果的にイージスは時代に乗り遅れたと言わざるをえない」、なるほど。
・『10%超の大規模人員削減を敢行  海外では現在これまで買収してきた160の事業ブランドを6つのブランドに集約する構造改革中だ。この過程で12.5%の人員削減を行う。重複するバックオフィス人員のほか、旧来型の代理店営業の人材が対象になる。その一方でデジタルマーケティング人材の育成を進める。 デジタル転換の中で電通グループが強くアピールするのが、2016年に約1000億円で買収した米データマーケティング会社のマークルだ。買収額はイージスに次ぐ規模だ。同社は広告主が持つ消費者の氏名やメールアドレスを含むIDデータを活用し、そのブランドのファンになってもらうよう広告や販促のターゲティングを行うためのツールを提供する。 コロナ禍で大きく減ったM&Aも再始動させる。「とくにデジタルソリューション領域を中心に、事業の変革にはM&Aは不可欠。件数や事業規模ではなく質を追う。電通グループに参画するメリットを強調して金銭面だけではない条件交渉をしたい」(曽我CFO)。 国内でもデジタル転換を進める。システム開発子会社の電通国際情報サービス(ISID)やデジタルマーケティング専業の電通デジタルの成長ぶりを強調。山本社長は決算説明会で、「マークル、ISID、電通デジタルの3社は過去3年で(売上総利益が)年平均で20%超伸びた」と話した。 中核子会社である電通の五十嵐博社長は「電通本体とISID、電通デジタルの3社の協業でデジタルのソリューション力を上げていく」と意気込む。「国内の大手企業にもマークルのサービスを提供するなど、海外との連携強化も進めている」(五十嵐氏)』、なるほど。
・『国内の営業利益率は大きく低下  その国内も今回、先述の通り構造改革を断行する。最大の課題は「高コスト体質」だった。2015年末に社員が過労などを原因として自殺したことを受け、国内では働き方改革を急速に進めてきた。その過程で人事システムへの投資や業務の外注などでコストが増加。一方で海外のように容易に人員削減ができない。国内事業の営業利益率は2016年12月期の23.1%から、直近は14.8%まで低下した。 構造改革の中身は大きく分けて2つだ。1つは国内事業を従来型の広告やデジタルマーケティング、顧客のビジネス変革支援などの4分野に分け、組織を再構成するものになる。その過程で人員規模の適正化を図るため、希望退職を募る計画だ。もう1つはコロナ禍で出社率が大きく減った東京・汐留の本社ビルを国内グループ会社間で共有すること。これによりグループ各社の家賃を節減する。 一連の人員削減や構造改革で2022年以降、国内外で年間平均約760億円の費用削減が可能だという。さらに現在は汐留の本社ビル売却も進める。「金額など詳細についてはコメントできない」(曽我CFO)とするが、今後の施策の柱としてバランスシートの効率化も挙げており、本社ビルも含めた資産を整理し、M&Aなどの投資資金を捻出するとみられる。 デジタルへの業態転換は、これまでマスメディアで謳歌してきた既得権益に頼らないことを意味する。デジタルマーケティングは広告会社だけでなく、米アクセンチュアをはじめとしたコンサルティング会社なども注力し、競争は苛烈だ。稼ぎどころである東京五輪の開催も危ぶまれる中、電通グループの底力が試されている』、「デジタル」分野の「競争は苛烈」で、「東京五輪」も海外見物客を入れないなど厳しさが増している。今後の「電通グループの底力が試されている」のは確かなようだ。

第三に、4月1日付けYahooニュースが掲載したNPO法人POSSE代表。雇用・労働政策研究者の今野晴貴氏による「ワタミはなぜ提訴されたのか 労基署さえ「手玉」にとる魔手の数々か?」」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/byline/konnoharuki/20210401-00230322/
・『昨日、ワタミの宅食で営業所長を務める40代の女性Aさんが、ワタミ株式会社を提訴した。 訴訟の主要な争点は、以前から問題となっている残業代の不払いに関するものだが、問題はさらに複雑化しているようだ。Aさんの提訴の重要な理由の一つは、ワタミがAさんの上司らに指示をして、配達スタッフらにAさんを訴えるように「扇動」させたというものである。 ワタミ側が背後で「扇動」か? 筆者は昨晩までにワタミに訴訟についての見解を質問したが、残念ながら期限までに返答をもらうことはできなかった。 そこで本記事では、Aさんの訴訟のもう一つの重要な要求である未払い残業代について、なぜ労基署の是正勧告まで出ていたのに、訴訟になってしまったのか、Aさんの証言をもとにその背景に迫っていきたい』、興味深そうだ。
・『労基署の発言を都合よく切り取って、ホームページで公表  残業代未払いについては、すでに昨年9月に、高崎労働基準監督署から是正勧告が出ている。ところが、それ以降、ワタミはさまざまなやり方で、Aさんに具体的な未払い残業時間について回答することを避けてきた。 まず最初は、「特別調査委員会」を一方的に立ち上げて、その調査を理由として、団体交渉での労働時間の交渉を拒否したことだ。なお、この特別調査委員会は、Aさんが条件付きで調査に応じると主張していたにもかかわらず、Aさんに対する聞き取りを一切行わないまま、今年1月末で調査を終了している。 さらに、つい2週間前には、ワタミが労働時間をできるだけ短く、あたかも「値切り」をしようとしている様子が明らかになった。 3月15日、高崎労働基準監督署はワタミに対して、今度は36協定で認められた残業時間の上限を超えた残業をさせていたとして、労働基準法32条違反で是正勧告を出した。 すると、ワタミは是正勧告を受けた即日、ホームページ上で「労働基準監督署からの労働時間に関する是正勧告について」という文章を掲載し、「この度、本件に関連して2020年3月の当該社員の残業時間75時間29分が、36協定の75 時間を29分超過していることから改善するよう是正勧告書を受領いたしました」と報告している。 これを読んだら人は誰でも、あたかも労働基準監督署がワタミの残業時間の超過を認めたのは29分のみで、それ以外は問題にされず、指導は終わったものであるかのように受け取るだろう。しかし、それは事実と全く異なっているのだ。 監督官「いまだ労基署とワタミで確定した労働時間は出ていない」? 担当の監督官に確認したところ、驚くべき答えが返ってきた。担当の監督官の説明によると、監督官とワタミで「労働時間が合致した月はない」「いまだ監督署とワタミ側で確定した労働時間は出ていない状況」であるというのだ。 一体どういうことだろうか? 要はこういうことだ。担当の監督官としては、より多くの長時間残業があるのではないかとワタミに指摘しているのに、ワタミが一向に認めようとせず、29分だけを認めたので、やむをえず「「少なくとも」という部分で是正勧告をした」だけだというのだ。 これでは、ワタミがインターネット上で是正勧告について公表されることを想定して、できるだけ少ない残業時間しか認めさせないよう、労基署に食い下がったのではないかとすら考えられる。 しかも監督官は、「これで確定ではない」と述べ、これからさらに長い残業時間が認められる可能性があるとまで、Aさんに伝えている。特にAさんはかなりの数の業務メールを自宅でも送っており、これについても労基署は労働時間に含まれると考えている。しかし、ワタミはメールの業務性を一切認めなかったという。 このようにワタミは労基署の指摘をねじ伏せて、「最小限」の時間だけを一旦認めて、それをホームページで公表したのである』、「ワタミ」のやり方は全く悪質で、かってのブラック企業批判も頷ける。
・『半年間一度も具体的な労働時間を認めていないのに、「労働時間については、団体交渉を継続しています」?  労基署の監督官の発言を都合よく切り取り、読者の誤読を誘うような書きぶりでホームページで公表するワタミのやり口は、実に狡猾だ。 現にワタミの発言を鵜呑みにしたネットのコメントでは、「29分なんてすぐに遅らせられる。この「A」はヤクザやゴロツキと同じだ」とAさんを非難する者も現れている。 しかも上記のホームページの書面において、ワタミは「労働時間については、現在も団体交渉を継続しております」と公表している。ところが、ワタミはAさんの加盟するブラック企業ユニオン に対して、一度も具体的な労働時間の認め方について、提案してきたことはないという。 Aさんは、自分には真摯に向き合おうとしないのに、ホームページでは「いい顔」をするワタミの「外面の良さ」に、怒りを募らせている』、「ワタミ」がいまだにこのような組織的な不正工作をしているとは驚かされた。
・『ワタミが狙っていたのは「時間切れ」なのか  実はAさんがこのタイミングで提訴に踏み切った理由の一つは、未払い残業代の「時間切れ」の問題があった。 どういうことかといえば、Aさんはブラック企業ユニオンを通じて、昨年10月上旬に残業代を請求していた。一度請求すると、「催告」という行為を行なったことになり、その日から遡って2年間分の未払い残業代の時効が中断される。 ただし、これは催告から6ヶ月だけの間である。その間に、提訴をするか、残業時間の承認をさせる必要があるのだ。しかし、期限の4月上旬が迫っていたにもかかわらず、一向にワタミは具体的な残業時間を認めようという反応は、なかったという。ましてや上述したように、労基署に対して残業時間を値切らせようとして、ホームページで誤解を招く発表をしている。 ワタミは半年間残業代についての具体的な回答を引き伸ばすことによって、時効が切れるタイミングを待っていたのではないかと勘繰る意見が出てきても仕方ないだろう。 いずれにせよ、Aさんは4月上旬に催告の効力がなくなることを恐れて、提訴しなければならなかったという事情もあるようだ。 以上、Aさんが今回訴訟に踏み切ったの背景を説明してきた。筆者は引き続き、本件について調査していくつもりだ。 Aさんを応援したい方や、「ブラック企業」と闘いたいという方は、ぜひ連絡・相談をしてほしい。 追記 2021年4月1日17時40分 ワタミ側は下記の通りHPに発表していることが確認できたので、追記します。(「当社従業員の記者会見に関して」は中身がないので省略)』、「ワタミが狙っていたのは「時間切れ」」、というのはその通りだろう。Aさんに組織的支援があったのが幸いしたようだ。いまだにこのようなことを平然とやる「ワタミ」の「ブラック企業」体質には呆れ果てた。
タグ:ブラック企業 (その13)(「電通」はなぜ迷走し続けるのか? 畏友・山本敏博CEOへの“最後の諫言” 田中康夫緊急寄稿、電通を「過去最大赤字」に追い込んだ元凶の正体 なぜ海外の買収先が巨額減損に迫られたのか、ワタミはなぜ提訴されたのか 労基署さえ「手玉」にとる魔手の数々か?」) ダイヤモンド・オンライン 田中康夫 「「電通」はなぜ迷走し続けるのか? 畏友・山本敏博CEOへの“最後の諫言” 田中康夫緊急寄稿」 最終損失の主要因は海外子会社の減損 CFOの決意に相槌を打っている場合ではない 「海外事業を中心にのれんなどの減損損失1400億円強を計上」、海外の買収には無理があったのだろうか 僅か5年で164社を傘下に収め、2019年12月には145カ国・地域に6万6000名の従業員を擁する900社もの多国籍企業改め“無国籍企業”へと急激に拡張 電通グループ全体の売上総利益に占める国内比率は85%から43%へと半減。57%の収益を海外に依拠する構造」、とはかなり急速に海外M%Aを進めたようだ。 「減損損失」で税務上でも赤字となれば、「繰越欠損金制度」が適用されるようだ 「借入金にコベナンツが付いた」、ということは財務の柔軟性が失われて、ショックに弱い体質になったことを意味する 「正社員全体の3%に当たる230人が「個人事業主」として「勤務」する「新しい働き方改革」」は、確かに「“廓(くるわ)の論理”を押し付ける“脱法リストラ”じゃね」、との「批判」も当たっているようだ 「提言(1」)~「(4)」は、。いずれも妥当なものだ 戦争にも協力した過去の電通 求められる「自分の意思と言葉」 それは作家という自由業の田中氏なら可能だろうが、サラリーマンにとっては、無理なように思われる 東洋経済オンライン 「電通を「過去最大赤字」に追い込んだ元凶の正体 なぜ海外の買収先が巨額減損に迫られたのか」 「2013年に買収したイージスは旧来型の代理店だった」、「結果的にイージスは時代に乗り遅れたと言わざるをえない」、なるほど 10%超の大規模人員削減を敢行 「デジタル」分野の「競争は苛烈」で、「東京五輪」も海外見物客を入れないなど厳しさが増している。今後の「電通グループの底力が試されている」のは確かなようだ。 yahooニュース 今野晴貴 「ワタミはなぜ提訴されたのか 労基署さえ「手玉」にとる魔手の数々か?」」 労基署の発言を都合よく切り取って、ホームページで公表 「ワタミ」のやり方は全く悪質で、かってのブラック企業批判も頷ける。 「ワタミ」がいまだにこのような組織的な不正工作をしているとは驚かされた 「ワタミが狙っていたのは「時間切れ」」、というのはその通りだろう。 Aさんに組織的支援があったのが幸いしたようだ。いまだにこのようなことを平然とやる「ワタミ」の「ブラック企業」体質には呆れ果てた
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メディア(その26)(数百人の新聞記者が束になっても、少数精鋭の"文春砲"に完敗する根本原因 一緒に「賭け麻雀」をする浮世離れ、グーグルやFBを揺るがすニュース表示の対価支払い 世界初義務化の波紋。フジと日テレ」の外資比率が 東北新社を超えても許される理由) [メディア]

メディアについては、1月21日に取上げた。今日は、(その26)(数百人の新聞記者が束になっても、少数精鋭の"文春砲"に完敗する根本原因 一緒に「賭け麻雀」をする浮世離れ、グーグルやFBを揺るがすニュース表示の対価支払い 世界初義務化の波紋。フジと日テレ」の外資比率が 東北新社を超えても許される理由)である。

先ずは、3月25日付けPRESIDENT Onlineが掲載した立命館大学 国際関係学部 教授の白戸 圭一氏による「数百人の新聞記者が束になっても、少数精鋭の"文春砲"に完敗する根本原因 一緒に「賭け麻雀」をする浮世離れ」を紹介しよう。
・『なぜ週刊文春はスクープを連発できるのか。立命館大学国際関係学部教授の白戸圭一氏は「文春は『なにがニュースになるのか』という感覚が鋭い。大手新聞社と違い、国民の関心を的確に捉えたスクープを出している。両社の違いが明確になったのが、黒川元検事長の賭け麻雀問題だ」という――。 ※本稿は、白戸圭一『はじめてのニュース・リテラシー』(ちくまプリマ―新書)の一部を再編集したものです』、興味深そうだ。
・『新聞と雑誌のニュース感覚の違いを明確にした「賭け麻雀問題」  新型コロナの感染拡大によって初の緊急事態宣言が発令されていた2020年5月、ともに活字メディアでありながら、新聞の「ニュース感覚」と雑誌の「ニュース感覚」の違いを痛感させる出来事があった。検察官の定年延長問題の渦中にいた黒川弘務・東京高等検察庁検事長(2020年5月22日付で辞職)の「賭け麻雀」に関する報道である。 経緯を簡単におさらいしよう。検事長の定年は63歳であるため、東京高検検事長だった黒川氏は63歳の誕生日前日の2020年2月7日に退官する予定であった。ところが、その直前の1月31日、当時の安倍内閣は「検察庁の業務遂行上の必要性」を理由に黒川氏の定年を半年延長する閣議決定をした。 検察トップの検事総長の定年は、検事長よりも2歳上の65歳。当時の稲田伸夫・検総長は定年を待たずに2020年7月に退官するとみられていたが、黒川氏は2月に63歳で定年を迎えるので、検事総長就任は不可能であった。 ところが、閣議決定で定年が半年間延長されたことにより、黒川氏は8月まで検察官の仕事を続けることが可能になり、7月に稲田検事総長が退官すれば、検事総長に昇格できる可能性が開けたのである。 黒川氏は霞が関・永田町界隈で「安倍政権に近い人物」などと噂されていたため、定年を延長する閣議決定に対して、野党やマスメディアから「政権に近い黒川氏を検事総長に据えることで、安倍政権下で起きた様々な不祥事に関する捜査をやめさせようとしているのではないか」などと批判が出ることになった』、「黒川氏」は「安倍政権」の守護神と言われていた。
・『「三密の賭け麻雀」を報道した週刊文春  以上が黒川氏の「賭け麻雀」に関する報道が出るまでの顚末てんまつであるが、黒川氏の定年を延長した安倍政権の狙いがどこにあったのかについては、本書の内容に関係ないので、これ以上言及しない。 黒川氏の定年延長を巡って与野党が国会で激しくぶつかり合っていた5月20日、文藝春秋社運営のニュースサイト「文春オンライン」は『週刊文春』の発売にあわせて、黒川氏が新型コロナウイルスによる緊急事態宣言発令下の5月1日から2日に東京都内の産経新聞記者の自宅を訪れ、産経新聞記者二人と朝日新聞の元検察担当記者(当時は記者職を離れ管理部門勤務)と賭け麻雀に興じていた疑いがあると報道した。 黒川氏は法務省の聴き取りに対し、賭け麻雀に興じたことを認めて辞意を示し、5月22日の閣議で辞職が承認された。一方のメディア側では、朝日新聞社が元検察担当記者を停職1カ月、産経新聞社は記者2人を停職4カ月とした。 黒川氏と新聞社の3人が雀卓を囲んでいたのは、緊急事態宣言の発令期間中であった。飲食店は休業や時短営業による減収を強いられ、閉店を余儀なくされる店も出るなど経済への影響が深刻になり始めていた。学校が休校し、映画館や美術館といった文化施設は休館を余儀なくされ、外出自粛を強いられた国民の多くがストレスを抱え、不安の渦中にいた。 そうしたタイミングで、国会で「渦中の人」である検察の最高幹部が、よりによって「権力の監視役」であるはずの新聞記者と「三密」状態で賭け麻雀に興じていた――』、まるで絵に描いたような不祥事の典型だ。
・『賭け麻雀を取材の一環としてとらえた新聞社  『週刊文春』の報道で明らかになったその事実は、新型コロナウイルスで自粛生活を強られている国民の間に猛烈な反発を巻き起こした。多くの人が、麻雀のメンツが『産経新聞』と『朝日新聞』の検察担当のベテラン記者だった事実を知り、大手新聞社と捜査機関の癒着を見せつけられた気分になった。 この一連の顚末の興味深い点は、賭け麻雀の事実を報道したのが雑誌メディアの『週刊文春』であり、新聞ではなかったことである。 『週刊文春』の編集部は、多くの国民が営業自粛や失業で苦しんでいる最中に、国会で渦中の人である検察ナンバー2が「三密」状態で違法性のある賭け事に興じている事実を何らかの方法で知り、「これはニュースだ」と判断したから記事化したのだろう。 一方の新聞記者たちは、「黒川氏が賭け麻雀に興じている」という事実を知っていたどころか、一緒に雀卓を囲み、黒川氏が帰宅するためのハイヤーも用意していた。 新聞社の人間たちは、この状況で黒川氏と雀卓を囲む行為が「ニュース」になってしまうかもしれないとは、想像すらしなかったのだろう。『週刊文春』の報道が出た直後に産経新聞社の東京本社編集局長が紙面に掲載した次の見解が、自社の記者二人が黒川氏と麻雀に興じていた理由について正直に説明している』、「新聞社の人間たちは、この状況で黒川氏と雀卓を囲む行為が「ニュース」になってしまうかもしれないとは、想像すらしなかったのだろう」、ジャーナリスト失格である。
・『国民の「ニュース感覚」を捉えた文春  「産経新聞は、報道に必要な情報を入手するにあたって、個別の記者の取材源や取材経緯などについて、記事化された内容以外のものは取材源秘匿の原則にもとづき、一切公表しておりません。取材源の秘匿は報道機関にとって重い責務だと考えており、文春側に「取材に関することにはお答えしておりません」と回答しました」 つまり、雑誌にとって、緊急事態宣言下の検察トップの賭け麻雀は「ニュース」であったが、新聞にとってそれは「ニュース」ではなく「取材」の一環であった。 だから「○○新聞の記者である私は本日、国会で問題になっている検察ナンバー2の東京高検検事長と緊急事態宣言下で三密状態で雀卓を囲み、検事長の帰宅のためにハイヤーも提供した」などという新聞記事が彼ら自身の手で書かれることはなく、代わりに週刊誌が書いた。 そこで明らかになったのは、「文春砲」と言われるスクープ連発の週刊誌のニュース感覚と、大手新聞社のニュース感覚の決定的な違いである。そして、国民の多くは『週刊文春』とニュース感覚を共有していたから賭け麻雀に怒った。その反対に、大新聞の社会部の検察担当記者のニュース感覚は、国民のニュース感覚とは違っていた、ということだろう』、「新聞にとってそれは「ニュース」ではなく「取材」の一環であった」、「大新聞の社会部の検察担当記者のニュース感覚は、国民のニュース感覚とは違っていた」、「社会部」の「記者」にあるまじきことだ。

次に、4月2日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した朝日新聞シドニー支局長の小暮哲夫氏による「グーグルやFBを揺るがすニュース表示の対価支払い、世界初義務化の波紋」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/267028
・『オーストラリア政府が、インターネット上でのニュース表示の対価を支払うように義務づけた。 念頭にあるのは、巨大IT企業のグーグルとフェイスブック(FB)だ。 各国にも影響を与えそうな「世界初」の義務化の背景には、何があったのか』、「「世界初」の義務化」とは思い切ったことをしたものだ。
・『グーグルやFBを念頭に豪で法案成立、従わないと「罰金」  「これで報道機関の記事への公正な対価の支払いが保証される。公共の利益となるジャーナリズムが豪州で存続する助けになる」 豪州のフライデンバーグ財務相は2月25日、議会が法案を可決した直後、声明でこう誇った。 法案が定めたのは、巨大IT企業と報道機関が対価の支払い契約を結ぶ際の「交渉規則」とその手続きだ。 政府がまず、対象となるIT企業とその企業のサービスを指定する。報道各社が、そのサービスで表示される自社のニュースについて対価の支払いを求めれば、IT企業は交渉に応じなければならない。 交渉がまとまらない場合、仲裁機関が支払いの条件を決める。 仲裁決定にIT企業が従わないと、罰金が科せられる。 罰金額は、1000万豪ドル(約8億円)を基準に、「対象サービスの利益の3倍」を比較。この額が確定できない場合、「豪州での売り上げの10%」を比べ、より大きい額が採用される。 豪競争消費者委員会(ACCC)の報告書によると、2018年のオーストラリアでの売り上げは、グーグルが37億豪ドル(約3100億円)、フェイスブックが17億豪ドル(約1400億円)。罰金が数百億円の巨額になる可能性がある。 さらに、IT企業が自社が設定するニュースの表示順などの決定法(アルゴリズム)を変更する場合、事前に報道機関に通知しなければならない規定も盛り込んだ』、「罰金額」など「契約を結ぶ際の「交渉規則」とその手続き」などの「仲裁」の仕組み、はよく出来ているようだ。
・『ネット広告で2社が半分のシェア 激減の既存メディアに優位に  一連の動きは、2017年12月にさかのぼる。 モリソン財務相(当時、現首相)がACCCに、巨大IT企業が、報道機関や広告市場に与える影響を調べるように指示したのが始まりだ。 巨大IT企業がネットサービス市場を独占する状況を米国や欧州連合(EU)が規制しようとしていた動きに触発されたといわれる。 ACCCが18年12月と19年6月にまとめた報告書が示したのは、グーグルとフェイスブックの豪州市場の占有ぶりと報道機関の苦境だった。 人口が約2500万人のオーストラリアで毎月、グーグル検索を1900万人が利用。検索サイトのシェアの95%を占めた。フェイスブックも1700万人が利用していた。 豪州全体の広告市場に占めるインターネット広告の割合は、12年の25%から17年には2倍の51%に増え、一方で活字メディアは33%から12%、テレビは29%から24%に減少した。 インターネットの広告収入の55%をグーグルとフェイスブック2社が稼いでいた。 報告書を受けて、モリソン氏の後任のフライデンバーグ財務相は19年12月、両社と報道機関に対価支払いのルールづくりを促した。 それが、昨年4月に一転、政府が義務づける方針を発表した。 ルールづくりにグーグルやフェイスブックが応じる気配を見せなかった上、新型コロナウイルスの影響で報道機関の広告料収入が大きく落ち込む厳しい状況が表面化し、自ら乗り出したのだ。 規模で大きな差がある巨大IT企業と報道機関との間で「公平なビジネス環境をつくる」と強調した』、「ルールづくりにグーグルやフェイスブックが応じる気配を見せなかった上、新型コロナウイルスの影響で報道機関の広告料収入が大きく落ち込む厳しい状況が表面化」、「政府が義務づける方針」に転換したようだ。
・『「力を持ち過ぎ」と世論は支持 対応分かれたグーグルとFB  法案が発表されたのは昨年12月。フライデンバーグ財務相は、義務化の対象として、グーグルのニュース検索、フェイスブックのニュースフィードを想定していると明らかにした。 世論は好意的だった。 同月の民間の世論調査では、59%が「グーグルやフェイスブックは力を持ち過ぎで、規制すべきだ」、57%が「対価を支払うべきだ」と答えた。 健全なジャーナリズムを維持することは民主主義社会にとって大切だ、という意識が国民に根着いていることが背景にある。 両社は反発した。 今年1月、議会の委員会に呼ばれたグーグル現地法人幹部は、義務化は「対処できないリスク」だとして、オーストラリアからの検索サービスの撤退も示唆した。 フェイスブック現地法人幹部も「報道機関はフェイスブックに投稿して利益を得ている」と主張し、フェイスブック上でニュースの表示をやめる可能性を示した。 だが、2月に入ると、両社の姿勢に温度差が見え始める。 2月3日、検索サービス「Bing」を運営するマイクロソフトのブラッド・スミス会長が義務化に従うと語った、とシドニー・モーニング・ヘラルド紙が報じた。 スミス氏はグーグルが撤退した場合、その穴を埋める意欲を見せ、モリソン首相とも話をしていることも明言した。 翌4日は、グーグルのスンダー・ピチャイ最高経営責任者が、モリソン氏やフライデンバーグ財務相らと電話で協議。モリソン氏は「建設的な話し合いだった」と語った。 その後、2月中旬になると、グーグルが、新聞や民放を傘下に収めるセブン・ウエスト・メディアやナイン・エンターテインメント、新聞最大手のニューズコープ、オーストラリアで電子版を発行する英ガーディアン、と相次いで対価の支払いで基本合意したことが明らかになった。 一方で、フェイスブックの対応は逆のものだった。18日にはフェイスブック上で「ニュース制限」に突如、踏み切った。 豪州の報道機関のほか、CNNやBBCなどの海外メディアのフェイスブックの公式ページを閲覧できなくし、これらの報道機関の自社のホームページで報じられたニュースをシェアすることもできなくした』、すぐ妥協した「グーグル」に対して、「フェイスブック」は抵抗したようだ。
・『存続に「かなりの貢献」をすれば義務化の対象外に  フライデンバーグ財務相はフェイスブックの措置を受けて18日、「フェイスブックの行為は不必要で強引だ。法案を成立させる方針は変わらない」と批判した。 ツイッター上では、「DeleteFacebook(フェイスブックを削除しよう)」とボイコットを呼びかけるハッシュタグがトレンド入りした。 その後、法案の審議が大詰めを迎えていた23日、事態は急展開する。 フライデンバーグ財務相は法案の修正を発表。IT企業が個別契約を通じてメディア産業の存続に「かなりの貢献」をすれば、義務化の指定をしないことも検討する、という内容を加えた。 フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者と電話で協議を重ね、解決の道を探っていたのだ。 フェイスブックは同日、ニュース制限の措置を数日内に解除すると発表。直後にセブン・ウエスト・メディアが、フェイスブックとニュース提供に関して基本合意したと発表した。 豪議会は25日、修正案を可決。フェイスブックは26日に制限を解除した』、「フライデンバーグ財務相」が自ら「ザッカーバーグ最高経営責任者と電話で協議を重ね」、「法案の修正」したとはさすがだ。
・『報道機関側も現実的判断 少なくない経営への寄与  グーグルやフェイスブックが、義務化の対象企業に科せられる恐れのある巨額の罰金や、企業秘密のアルゴリズムについての情報開示を避けるために動いたことは明らかだ。 一方で報道機関側も現実的に判断をしたようだ。 オーストラリアン・フィナンシャル・レビュー紙によると、オーストラリアの報道機関がグーグルと合意したのは、もともと要求していた検索表示への対価ではなく、グーグルの新しいサービス「ニュース・ショーケース」の記事表示に対してだ。 ナイン・エンターテインメントやセブン・ウエスト・メディアがグーグルと合意した支払額は、それぞれ年間3000万~5000万豪ドル(約25億~42億円)程度とされる。 これはグーグルが新サービスについて他国の報道機関と合意した内容より、かなりの好条件だという。 仏紙のフィガロやルモンドが1月に合意したとされる条件はそれぞれ年350万ユーロ(約540万豪ドル=約4億5000万円)だ。 20年6月期の税引き後の利益は、ナイン社が年1億6000万豪ドル、セブン社が年4000万豪ドルであることを考えると、対価支払いの経営の押し上げ効果は大きい。 相応の支払いが得られれば、その対象にはこだわらない姿勢に転換したようだ』、「ナイン・エンターテインメントやセブン・ウエスト・メディアがグーグルと合意した支払額は」確かに「他国の報道機関と合意した内容より、かなりの好条件」のようだ。
・『メディア支援に「10億ドル」を拠出 英国やカナダでも法整備の動き  フェイスブックは3月、ニューズコープ、ナイン・エンターテインメントとも基本合意した。やはり、新サービス「ニュース」に提供する記事への対価の支払いだ。 フライデンバーグ財務相は、「交渉規則が報道機関とIT企業との交渉力の差を埋め、商業上の交渉を促した」と義務化が、両社の自発的な対価の支払いを促す「実利」を強調している。 法案の作成に関わってきたACCCのロッド・シムズ委員長も「義務化の規則は、(個別契約が報道機関にとって不十分など)必要であれば、いつでも使える」と解説する。 グーグルやフェイスブックはともに、今後3年でニュースメディアの支援のためにそれぞれ少なくとも10億ドル(約1100億円)を投じる方針を表明している。「対価を支払っていない」という批判をかわすためとみられる。 英国やカナダもオーストラリアをモデルにした法整備を検討していると伝えられ、今後、各国で義務化が進めば、巨大IT企業に対する報道機関側の交渉力が増す可能性はある』、日本も追随すべきだが、まだ具体的な動きはないようだ。

第三に、4月2日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した株式会社アシスト社長の平井宏治氏による「「フジと日テレ」の外資比率が、東北新社を超えても許される理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/267285
・『武田良太総務相は3月26日の閣議後の記者会見で、放送事業会社「東北新社」の衛星放送事業の一部の認定を5月1日付で取り消すことを明らかにした。放送法で定める外資規制により、外国人等議決権割合が20%を超えていたにもかかわらず、事実と異なる申請を行っていたことが理由だ。だが、外国人による株の保有比率を見ると、東北新社よりも高いのがフジ・メディア・ホールディングスと日本テレビホールディングスの2社である。東北新社の問題をきっかけに、今後、放送業界の外資規制に注目が集まりそうだ』、どういうことなのだろうか。
・『各国で放送事業者に外資規制が設けられている理由  2021年3月23日に行われた武田良太総務相の定例会見で、記者からは次のような質問が上がった。 「東北新社は免許を取り消され、他方、(外国人等議決権比率が外資規制を超えている)フジテレビと日本テレビが見逃されているのはどういうわけでしょうか。法の下の平等や公平性、公正性に反するように思われます。理由をお聞かせください」 だが、これに対し、武田大臣は「事実関係をよく確認した上で、適切に対処してまいりたい」とだけ述べ、具体的な対応については言及しなかった。 わが国では、電波法や放送法により放送会社の外国人等議決権割合は5分の1(20%)を超えてはならないと定められている。放送業者に対する外資規制が行われている理由は、放送が世論に及ぼす影響を考慮した安全保障上の理由による。放送業者に対する外資規制は、わが国だけでなく、アメリカ合衆国でも欧州でも類似の制限が設けられている。 電波法第5条3項は、認定放送持株会社の欠格事由として、放送法5条1項に定める外国人等の議決権割合が全ての議決権の5分の1を超えないこととしている。 だが、外国人直接保有比率が、5分の1を超えている企業は、東北新社だけではない。2021年3月26日において、フジ・メディア・ホールディングス、日本テレビホールディングスの外国人直接保有比率はそれぞれ、32.12%、23.77%と、発行済株式総数の5分の1を超えている。 とはいえ、発行済株式総数は議決権の数とは一致しない。定款で単元株式数を定めている場合は、1単元の株式につき1個の議決権となるが、単元株式数未満の株式(端株)には議決権はない。そして、放送免許の欠格事由では議決権の個数が問題になる』、「武田大臣」が「3月23日」の「定例会見で、記者から」の質問に直ぐに答えられなかったのは、お粗末だ。
・『総務省の通達で変更された外国人等議決権の計算方法  だれでも証券会社を通じて上場会社の株式を購入することができる。多くの外国人が上場放送会社の株式を買えば、単元株に付いている議決権も総議決権個数の5分の1を超えてしまい、上場放送会社は何もできない。 そこで、放送法116条では、外国人等の議決権割合が、全ての議決権の5分の1を超え、欠格事由に該当した場合は、その氏名および住所を株主名簿に記載し、または記録することを拒むことができるとしている。 なお、外国人等の議決権割合の計算方法は、総務省が2017年9月25日に上場する放送事業会社に出した通達文書により、計算方法が変更されている。 筆者が総務省と上場放送会社に確認したところ、通達前は、総議決権個数に19.99%を掛けた個数が、外国人等の議決権割合とされていた。例えば、総議決権個数が1万個の場合、1999個(1万×19.99%)が外国人等の議決権割合とされていた。 しかし、この計算方法では、実際に株主総会で外国人等が行使できる議決権個数が5分の1を超えてしまう。どういうことか、順を追って説明したい。 放送事業者A社について、総議決権個数が1万個、外国人等が保有する議決権の個数が3000個だったと仮定する。 日本人の保有する議決権個数は、7000個(1万-3000)になる。一方、外国人等が保有する議決権3000個のうち、1999個は議決権行使ができるが、残る1001個は上場する放送会社が名義書き換え拒否をする。 この1001個の議決権を持つ外国人等の株主は株主名簿に記載されないので、株主総会の招集通知は送付されない。 その結果、株主総会は、1999個の議決権を持つ外国人等株主と7000個の議決権を持つ日本人株主で行われる。外国人等が行使できる議決権割合は、1999÷8999=22.21%になり、全議決権個数の5分の1を超えてしまうのだ。 筆者は、2011年頃からこの問題に気づき、総務省に外国人等が行使できる議決権個数の計算方法を変えるように陳情を行った。筆者以外にこの問題に気づいた人たちからも指摘があり、2017年9月25日、総務省は外国人等が行使できる議決権の計算方法を変更する通達を対象となる放送事業者へ出した。 では、一体どのような通達なのか。通達内容は非公開だが、筆者が総務省と上場する放送会社に確認した内容を基に、先述のA社の例を使い説明する。少し難しいことはご容赦いただきたい。 日本人の持つ議決権は7000個だ。この日本人の議決権を総議決権個数の80%とするため、まずは7000÷0.8を計算(8750個)。さらに外資規制では外国人等議決権割合が20%を下回る必要があるため、8750個から議決権1個を引いた8749個を総議決権個数とする。 総議決権個数が8749個なので、外国人等が行使できる議決権個数は、8749-7000=1749個になる。 その結果、外国人等が保有する議決権総数のうち、1251個(3000-1749)が名義書き換え拒否の対象になるのだ。 なお、実際の計算は、自己株式の議決権を除いたりするので、これらを加味した計算結果が公表される。 実際に日本テレビホールディングスの状況はどうなっているのか。 同社のプレスリリース(2020年4月17日)によれば、2020年3月31日の算定となる総議決権個数は、242万9423個。そのうち、外国人等が行使できる議決権個数は48万5884個と、外国人等議決権割合は19.99%(正確には、19.99998%)となり、欠格事由を回避している。また、同社の有価証券報告書には、名義書き換え拒否をした議決権個数は10万8693個だったことなどが記載されている。 ところが、東北新社は外国人等が行使できる議決権個数の割合が全議決権個数の5分の1を超えていたにもかかわらず名義書き換え拒否の処理を行わなかったため、欠格事由に該当することになった。初歩的なミスだが、法律は法律だ。衛星放送の認可が取り消しになるのは当然であり、東北新社の衛星放送認可取り消しの理由は、これ以上でもこれ以下でもない』、「筆者は・・・総務省に外国人等が行使できる議決権個数の計算方法を変えるように陳情を行った・・・総務省は外国人等が行使できる議決権の計算方法を変更する通達を対象となる放送事業者へ出した」、なるほど。ただ、「通達内容は非公開」というのは解せない。公開しても問題ない筈だ。
・『保守系メディアの外国人直接保有比率は高い傾向  有価証券報告書を使い、在京5局の外国人等が行使できる議決権個数比率をグラフにまとめた。このグラフは、分子は「外国法人等+外国人持株調整株式の単元数」、分母は「全単元株数-自己株式の単元数」とし、それ以外の調整は行っていない。 図表:外国人が保有する議決権割合 テレビ番組が国民世論に及ぼす影響が大きいことを考慮すると、電波法や放送法により放送会社の株主総会で行使できる議決権を制限すれば事足りることだろうか。確かに議決権行使は19.99%に調整される。しかし、実際に外国人等が放送会社の株式を大量に保有することが、放送会社の運営に影響を与えないと断言はできない。外国人直接保有比率が高ければ、外国による影響が高くなるし、外国人直接保有比率が低ければ、外国による影響が低くなるだろう。 グラフからも明らかだが、放送業界全体の外国人直接保有比率が高いのではない。日本テレビ(読売系)、フジテレビ(産経系)のいわゆる「保守系」メディアの外国人直接保有比率が高い一方で、TBSやテレビ朝日(朝日系)といったいわゆる「リベラル系」メディアの外国人直接保有比率は低い。 外国人直接保有比率の高低には配当性向や配当利回りの違いがあるとする意見もあるが、こうしたメディアとしてのスタンスが影響している可能性はないのだろうか。 保守系メディアの株式を買い、大株主となった外国の思惑が放送会社へ及び、外国の意向を忖度(そんたく)した放送を流しているという意見がある一方で、放送局は外国人直接保有比率に関係なく、日本の国益に資する放送を流しているという意見もある。いずれにせよ、外資規制導入の趣旨を考えると、外国人直接保有比率が高いことは、好ましい状況ではない』、「「保守系」メディアの外国人直接保有比率が高い一方で・・・「リベラル系」メディアの外国人直接保有比率は低い」、真の理由はどう考えても不明だ。
・『国際情勢や安全保障問題などを取り上げる番組の多くが地上波放送から姿を消し、グルメ番組、お笑い番組、スポーツ中継、ワイドショーばかりが放送されている。核兵器保有国の谷間にあるわが国の状況や尖閣諸島への領土・領海侵入危機など、国民が知るべき報道が不十分であることを憂慮すべきだ。 インターネットなどさまざまな方法で情報を集め分析し判断する人たちがいる一方で、情報端末操作ができず地上波だけが唯一の情報収集手段の人たちもいる。地上波だけが情報収集手段の有権者に対し、外国の意向を反映した報道が流れ、外国の思惑通りに世論形成され誘導されるリスクを踏まえて、外国人直接保有比率の是非を改めて議論すべきだろう。 また、外国人直接保有比率については、国別の情報が開示されないことは問題だ。放送会社の株主名簿を見ると、主要株主にカストディアン(投資家に代わって有価証券の保管・管理を行う金融機関)の名前が並んでいる。また、日本に帰化した外国人が保有する株式は、日本人保有株式にカウントされることも留意する必要がある。 放送事業が国民世論に及ぼす影響を考えれば、最低限でも国別の開示は必要であるし、タックスヘイブンやファンドなど真の持ち主の正体を隠す投資家による放送業界の株式取得は規制されてもよいのではないか。 放送業界と安全保障との関係を考えると、非上場化を行い、非上場化の際に外国人株主をスクイーズアウト(少数株主の排除)する選択肢もある。外国の影響を排除するならば、官民ファンドを設け、MBO(経営陣が参加する買収)を行い、外国人投資家を株主から一掃することは可能だ。 とはいえ、非上場化しても、放送番組の政治的公平性などを定めた放送法4条が守られるとは限らないとの指摘もある。放送番組の制作に外国の影響を受けないための制度設計が必要なことは言うまでもない。 東北新社の認可取り消しで放送業界の外資規制に注目が集まった。このことをきっかけに放送と安全保障の議論が盛り上がることを期待したい』、「国際情勢や安全保障問題などを取り上げる番組の多くが地上波放送から姿を消し」、確かに由々しい問題だ。ただ、これは「外国人投資家」と関連づけるよりもまず、ニュースなどの番組の時間を一定の枠以上にするなどの規制で対応するほうが実効的だと思う。 
タグ:メディア (その26)(数百人の新聞記者が束になっても、少数精鋭の"文春砲"に完敗する根本原因 一緒に「賭け麻雀」をする浮世離れ、グーグルやFBを揺るがすニュース表示の対価支払い 世界初義務化の波紋。フジと日テレ」の外資比率が 東北新社を超えても許される理由) PRESIDENT ONLINE 白戸 圭一 「数百人の新聞記者が束になっても、少数精鋭の"文春砲"に完敗する根本原因 一緒に「賭け麻雀」をする浮世離れ」 『はじめてのニュース・リテラシー』 新聞と雑誌のニュース感覚の違いを明確にした「賭け麻雀問題」 「黒川氏」は「安倍政権」の守護神と言われていた 「三密の賭け麻雀」を報道した週刊文春 まるで絵に描いたような不祥事の典型だ 賭け麻雀を取材の一環としてとらえた新聞社 「新聞社の人間たちは、この状況で黒川氏と雀卓を囲む行為が「ニュース」になってしまうかもしれないとは、想像すらしなかったのだろう」、ジャーナリスト失格である 国民の「ニュース感覚」を捉えた文春 「新聞にとってそれは「ニュース」ではなく「取材」の一環であった」、「大新聞の社会部の検察担当記者のニュース感覚は、国民のニュース感覚とは違っていた」、「社会部」の「記者」にあるまじきことだ ダイヤモンド・オンライン 小暮哲夫 「グーグルやFBを揺るがすニュース表示の対価支払い、世界初義務化の波紋」 「「世界初」の義務化」とは思い切ったことをしたものだ グーグルやFBを念頭に豪で法案成立、従わないと「罰金」 「罰金額」など「契約を結ぶ際の「交渉規則」とその手続き」などの「仲裁」の仕組み、はよく出来ているようだ ネット広告で2社が半分のシェア 激減の既存メディアに優位に 「ルールづくりにグーグルやフェイスブックが応じる気配を見せなかった上、新型コロナウイルスの影響で報道機関の広告料収入が大きく落ち込む厳しい状況が表面化」、「政府が義務づける方針」に転換したようだ 「力を持ち過ぎ」と世論は支持 対応分かれたグーグルとFB すぐ妥協した「グーグル」に対して、「フェイスブック」は抵抗したようだ。 存続に「かなりの貢献」をすれば義務化の対象外に 「フライデンバーグ財務相」が自ら「ザッカーバーグ最高経営責任者と電話で協議を重ね」、「法案の修正」したとはさすがだ。 「ナイン・エンターテインメントやセブン・ウエスト・メディアがグーグルと合意した支払額は」確かに「他国の報道機関と合意した内容より、かなりの好条件」のようだ 日本も追随すべきだが、まだ具体的な動きはないようだ。 平井宏治 「「フジと日テレ」の外資比率が、東北新社を超えても許される理由」 「武田大臣」が「3月23日」の「定例会見で、記者から」の質問に直ぐに答えられなかったのは、お粗末だ 「筆者は・・・総務省に外国人等が行使できる議決権個数の計算方法を変えるように陳情を行った・・・総務省は外国人等が行使できる議決権の計算方法を変更する通達を対象となる放送事業者へ出した」、なるほど。ただ、「通達内容は非公開」というのは解せない。公開しても問題ない筈だ 「「保守系」メディアの外国人直接保有比率が高い一方で・・・「リベラル系」メディアの外国人直接保有比率は低い」、真の理由はどう考えても不明だ 「国際情勢や安全保障問題などを取り上げる番組の多くが地上波放送から姿を消し」、確かに由々しい問題だ ただ、これは「外国人投資家」と関連づけるよりもまず、ニュースなどの番組の時間を一定の枠以上にするなどの規制で対応するほうが実効的だと思う。
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日本の政治情勢(その54)(リコール不正刑事告発でも陰謀論主張の高須院長を批判できないマスコミ 『スッキリ』では高須に擁護的コメント 番組中にクリニックのCM、河井元法相が「無罪主張から一転」 買収を認めた理由、政治資金規正法 「ザル法」の真ん中に“大穴”が空いたままで良いのか) [国内政治]

日本の政治情勢については、2月2日に取上げた。今日は、(その54)(リコール不正刑事告発でも陰謀論主張の高須院長を批判できないマスコミ 『スッキリ』では高須に擁護的コメント 番組中にクリニックのCM、河井元法相が「無罪主張から一転」 買収を認めた理由、政治資金規正法 「ザル法」の真ん中に“大穴”が空いたままで良いのか)である。

先ずは、2月15日付けLITERA「リコール不正刑事告発でも陰謀論主張の高須院長を批判できないマスコミ 『スッキリ』では高須に擁護的コメント 番組中にクリニックのCM」を紹介しよう。
https://lite-ra.com/2021/02/post-5796.html
・『愛知県の大村秀章知事のリコール署名をめぐって、本日、愛知県選挙管理委員会は被疑者不詳というかたちで地方自治法違反容疑で刑事告発する方針を決めた。 当然だろう。昨年末から運動の内部関係者より大村知事のリコール署名に不正があるという告発が相次ぎ、県選挙管理委員会が調査していたが、2月1日、その選管が提出された約43万人分の署名約83%に不正の疑いがあることを発表している。 選管によると、約36万人分の署名が無効で、そのうち筆跡などから同一人物が書いたと疑われる署名が90%、選挙人名簿に登録のない署名が48%、活動の受任者が選挙人名簿に登録されていないものが24%もあったという。 これだけ不正が多いとなると、ケアレスミスや個人の問題ではなく、組織的不正の可能性も疑われても仕方ない。民主主義を冒涜する事態であり、徹底解明が必要だ。県選管が刑事告発を決めたことは前述したが、それ以前にリコール署名運動を主導してきた高須クリニックの高須克弥院長や河村たかし・名古屋市長の説明責任が厳しく問われるべきだろう。 このリコール署名は、2019年の「あいちトリエンナーレ」の「表現の不自由展・その後」をめぐる、ネット右翼や極右安倍応援団による“大村知事バッシング”の延長線上で始まったもの。なかでも、「お辞め下さい大村秀章愛知県知事 愛知100万人リコールの会」なる団体を設立するなどして中心的役割を担ってきたのが、高須クリニックの高須院長だ。そして、河村市長は、名古屋市長という公職にありながらコロナ対策もおざなりにし、街頭演説などでリコール運動を支援してきた。その署名が不正だらけだったのだから、少なくとも2人には調査解明と説明の責任があるはずだ。 ところが、である。不正8割超という選管の発表にも、河村市長は「僕は被害者、怒りに震える」などと被害者ヅラ。高須院長にいたっては、今月1日、取材に対し「無効な署名には気付かなかった。票を増やそうとした人もいるかもしれないが、活動を妨害するため、わざと問題になる署名を書いた人がいるかもしれない」などと主張。その後も、ツイッターで選管や不正を報じるメディアを批判しまくっている。 〈一人の受任者は複数の署名を集めますから7万人しか有効な署名がなく、残りは全部不正署名だと言う選管の発表はおかしな話しだと思います〉 〈「不正署名の90%は同一人の筆跡」という発表をうけての答えです。そんな神業ができるのはこの世の人ではありません。〉 〈些細な記入記載の誤りも厳密に見つけて無効にしたに間違いありません〉(2月2日)〈選管は無効署名と発表していますが、不正署名と変換されて報道しています〉 〈悔しいです。「ほとんどが不正署名」と辱しめを受けて怒りに震えております〉(2月3日) さらに、高須院長は12日、何者かが運動を妨害するために偽の署名を紛れ込ませたなどとして、地方自治法違反容疑での告発状を名古屋地検に郵送した』、「河村市長」や「高須院長」の居直りは驚くべき破廉恥さだ。
・『高須院長が「印象操作のトリックがわかった」と言ったエクセルファイルは何の証拠にもならないもの  高須院長はもともと、昨年末に不正告発が相次いだときから、リコール潰しの策謀であるかのような主張を繰り返し、今年に入ってからも〈たぶん敵は「印象操作の刑事告発」をやってきます〉(1月29日)〈僕は大村愛知県知事リコールを統括する最高責任者です。正面から敵の攻撃と謀略を受け止め戦います。僕が全てを引き受けます〉(1月30日)と、悲劇のヒーロー気取りの闘争宣言を繰り返していた。 そして、選管が不正を発表したことで、こうした“陰謀論を駆使した闘争”をさらにエスカレートさせているということらしい。 しかし、高須院長の主張は議会襲撃を「ANTIFAの仕業だ!」と叫ぶトランプ支持者たちと同じで(そういえば、高須院長は〈愛知県は利権で繋がっている田舎のディープステートに完璧に支配されてる号泣〉ともツイートしていた)、ほとんど中身や根拠のない陰謀論だ。そのことを雄弁に物語っていたのが、4日に高須院長が開いた会見だった。 高須院長はこのところ、リコール潰し・陰謀の証拠を見つけたと言い出し、それを明らかにすると息巻いていた。 〈いま足跡を追って証拠を押さえつつあります。捕まえて刑事告訴します。〉(1月30日) 〈独自調査で大量不正署名のトリックの全貌が見えてきました。数日中に発表します。〉(2月2日) 〈調査報告のエクセルファイルを入手しました。印象操作のトリックがわかってきました。まもなく記者発表します。〉(2月3日) しかし、4日の会見では、「選管があら探しをした結果だ」「選管は無効を増やすのが仕事だと思ってやった」などと選管の調査に難癖をつけ、「誰かが、活動を傷物にしようと妨害したのだろう」「大村知事と津田大介は早くから不正が8割を超えることを知っていた」などと荒唐無稽な陰謀論を強調するだけで、「証拠」「トリックの全貌」は説得力のあるものを何ひとつ示すことができなかった。 ツイッターであれほど息巻いていた、トリックがわかったという「エクセルファイル」とやらについても、同席した自分たちの弁護士に否定される始末だった。 弁護士は「エクセルの表はですね、高須先生のツイッターを見ると、なんか秘密兵器みたいなことが書いてありますけど(笑)、そうじゃなくて」と半笑いでその重要性を否定。「受領書にある署名総数やナンバリングした番号とかを整理したもの」にすぎないと説明した。弁護士は「エクセルだから並べ替えができ」、どこの選管で多かったか傾向がわかるなどとも話していたが、高須院長はよくそんなもので「印象操作のトリックがわかってきました」などと言ったものだ』、「高須院長」は「トリックがわかったという「エクセルファイル」」、については、やがて真相がバレることは承知の上で、とりあえずその場しのぎのウソをついたようだ。
・『無効票の約4分の1は名簿に登録のない受任者が集めた署名だった  しかも、会見では逆に運動事務局のずさんな実態が露わになる一幕もあった。 署名集めを担う「受任者」は自治体の選挙人名簿に登録されている必要があるが、無効票の約4分の1は名簿に登録のない受任者が集めた署名だった。同席した田中孝博事務局長によると、受任者はインターネットやはがきを通じて募集し資格の確認はしていなかったと明かしたのだ。これについても、高須院長は「リコールを成功させようと応募した人は、お互いを信じ合おうとの考えだった」と精神論でごまかすことしかできなかった。 しかも、会見の最後には、高須院長が病気を理由に撤退を宣言した後も率先して署名集めを続けていたという事務局関係者の実名をあげ、「大村知事から金をもらってる」「明確に敵」などと一方的に糾弾したのだ。 どうみても、説明責任を果たしているとはいいがたいが、しかし、今回のリコール不正をめぐっては、高須院長らの無責任な姿勢以外に問題はもうひとつある。 それは、こうしたリコール不正問題や高須院長の言動をメディアがまったく批判しないことだ。 地方都市のことだからと言い訳するかもしれないが、もっと小さい市町村の議員の細かい不祥事でもワイドショーはよく取り上げているし、それこそ高須院長の話題は「高須院長が全身がん告白」「高須院長がツイッターで○○にコメント」「高須院長が××を太っ腹支援」「高須院長が野党議員に抗議」などとしょっちゅう取り上げている。『バイキングMORE』(フジテレビ)や『情報ライブ ミヤネ屋』(読売テレビ)などは単なる近況報告のような特集をやることだってある。 しかし、この問題についてはほとんどのワイドショーやニュース番組がまったくと言っていいほど取り上げていない。そして、取り上げた数少ない報道も明らかに及び腰なのだ。 一体なぜか。ひとつはこのリコールが「あいちトリエンナーレ」の展示をめぐる歴史修正主義の動きと連動したものであることだろう。高須院長らを批判してネトウヨの攻撃を受けることを恐れている可能性もある。そして、もうひとつはやはり高須クリニックがテレビ局にとって大スポンサーだからだろう』、いくら「高須クリニックがテレビ局にとって大スポンサー」とはいえ、「リコール不正問題や高須院長の言動をメディアがまったく批判しない」という姿勢は社会の公器にあるまじきことだ。
・『『スッキリ』では高須院長に擁護的なコメントも 番組中に高須クリニックのCMが  その構図が垣間見えたのが、1日放送の『スッキリ』(日本テレビ)だった。同番組はめずらしくこの問題を取り上げ、元受任者や勝手に名前を使われた地元議員の証言を紹介したのだが、同時に高須院長の「僕は不正が大嫌いですから。正々堂々と法律通りにやってる。不正とはまったく無関係」などという主張を放送。MCの加藤浩次や橋本五郎・読売新聞特別編集委員がこれを受けて「高須さんの名誉を考えたら、調べた上でちゃんとやるのが大事」「選挙管理委員会は説明が必要」などと、選管に苦言を呈したのだ。 いやいや、説明しなくてはいけないのは、高須氏のほうだろう。選管はすでに不正の告発を受け、異例の全数調査をし、その結果を発表している。いかにして不正が起きたかは刑事告発し捜査に委ねるか、署名を集めた人間のほうが説明する責任があるのは明白だ。 にもかかわらず「高須院長の名誉を守るために選管が説明しろ」という加藤や橋本。まさかこの人たちは、選管の管理のもと署名がなされたとでも勘違いしているのだろうか。あるいは選管へ提出後に不正が発覚したなどという陰謀論まがいのことが起きたとでも考えているのだろうか。 と首をひねっていたら、この日の『スッキリ』の合間にはなんと、おなじみの高須クリニックのCMが流れたのである。 この日の『スッキリ』で加藤らが高須院長に擁護的な発言をしたことが、番組中に高須クリニックのCMが流れたことと関係があるかどうかはわからないが、しかし、テレビ局がこの問題をまともに取り上げなかったり、両論併記的に高須院長の支離滅裂な言い分を垂れ流したりする背景に、高須院長がテレビ局にとって大スポンサーであるということが関係しているのは間違いないだろう。 実際、これまでも、ワイドショーは高須院長に対して、明らかに配慮しているとしか思えない報道を繰り返してきた。民進党(当時)の大西健介衆院議員が国会で美容整形CMを問題にした発言を名誉毀損で訴えた際、『ミヤネ屋』でコメンテーターが「名誉毀損に当たらない」旨の発言をしたことについて、高須院長は「明確な名誉毀損」などと猛抗議。問題のコメントはごく真っ当な指摘であり、そもそも論評にしかすぎず名誉毀損などあり得なかったにもかかわらず、『ミヤネ屋』は翌日の放送でひれ伏すように謝罪したこともある。高須院長のナチス礼賛発言が国際的な大問題になった際もまともに取り上げず、同時期に爆破予告されたことだけを取り上げたこともあった』、「『スッキリ』・・・MCの加藤浩次や橋本五郎・読売新聞特別編集委員がこれを受けて「高須さんの名誉を考えたら、調べた上でちゃんとやるのが大事」「選挙管理委員会は説明が必要」などと、選管に苦言を呈した」、みえみえの援護姿勢には驚かされる。
・『リコールを後押ししながら不正発覚にだんまりの百田尚樹、有本香、吉村知事  金を持っているためいくらでも裁判でも起こすことができるうえ、大スポンサーで、ネトウヨのファンもついている高須院長は、テレビにとっては一種のタブーになってしまっているのだ。 そのため、高須院長は、これまでも金の力を盾に、差別発言や歴史修正発言でも撤回も謝罪もなく開き直ってきた。 しかし高須院長は、ただの美容クリニック経営者ではなく、歴史修正主義、政権支持を盛んに発信しているきわめて政治的な存在だ。ましてや、今回のリコール運動では市民運動を率いて現実政治にコミットし、そこで前代未聞の不正が起きたのだ。言っておくが、リコールは単なるアンケートなどではなく、民主主義において選挙と同等の価値が置かれ、署名偽造には懲役刑も課される重大な違反だ。いくらスポンサーだからといって、このまま放置することは許されない。 いや、高須院長だけではない。いまは他人事を決め込んでいる百田尚樹氏、竹田恒泰氏、有本香氏らネトウヨ文化人や、吉村洋文・大阪府知事ら維新の会(ちなみに田中事務局長は維新の次期衆院選公認候補予定者でもある)など、この運動をバックアップしてきた連中の責任もきちんと追及すべきだろう』、「リコールは単なるアンケートなどではなく、民主主義において選挙と同等の価値が置かれ、署名偽造には懲役刑も課される重大な違反だ。いくらスポンサーだからといって、このまま放置することは許されない」。幸い捜査当局も捜査を開始したようだ。捜査の進展と、マスコミによる真相解明に期待したい。

次に、3月27日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した事件ジャーナリストの戸田一法氏による「河井元法相が「無罪主張から一転」、買収を認めた理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/266751
・『2019年7月施行の参院選広島選挙区を巡る選挙違反事件で、公職選挙法違反(買収)の罪に問われた元法相の衆院議員、河井克行被告(58)は、東京地裁の公判で23日から始まった被告人質問で、これまでの無罪主張を撤回し、買収を認める姿勢に転じた。さらに「衆院議員を辞する」と表明、25日には大島理森衆院議長に辞職願を提出した。検察側の主張に対して一部に争いは残したものの、完全に白旗を上げた格好だが、狙いは何か、背景を探ってみた』、興味深そうだ。
・『選挙違反で「実刑」の前例はなし  「全般的に買収罪の事実は争わない」――。 参院選後の10月に妻の案里前参院議員(47)=辞職、有罪が確定=の秘書による疑惑が報じられ、法相を辞任。その後、自身に対する疑惑が浮上、逮捕、起訴され、公判でも一貫して買収の事実を否認していた河井被告。新聞やテレビの報道によると、被告人質問でこう述べたとされる。 20年8月25日に迎えた初公判で、案里氏とともに罪状認否で全面的に起訴内容を否認して以来、初めて自らの意思表示が可能となる被告人質問。どういうロジックで今後の公判を進めていくか、弁護人と綿密に調整してきたはずだ。その結果が、買収追認と議員辞職の表明だった。 これまでの検察側の主張を全面的に受け入れ、屈服した格好だが、これは誰の目にも、反省の意を示すことで情状酌量を取りに行ったというのは明らかだ。では、なぜここで方針転換したのだろうか。 いわゆる「識者」「評論家」と言われる方々がメディアで「実刑もあり得る」とコメントしたり、SNSなどで投稿したりしているが、実は国会議員が選挙違反事件で実刑判決を受けた例はこれまでない。 かつて当選した議員本人が選挙違反で立件されたのは、03年11月の衆院選を巡り公選法違反(買収)容疑で、愛知県警が自民党の近藤浩衆院議員(当時)、埼玉県警が新井正則衆院議員(同)をそれぞれ逮捕したぐらいだ。いずれも起訴されたが、執行猶予判決だった。筆者が調べた限り、55年にも公選法違反で有罪が確定し失職したケースはあるが、こちらも執行猶予だった(選挙違反は執行猶予でも判決確定で失職)。 日本の司法は「判例主義」と言われる。であれば前例踏襲で執行猶予となる可能性が高いのだから、判決が確定するまで国会議員としての歳費や手当を受け取り続ければいいのではないかという見方もできるが、今回は少し事情が違う』、「前例踏襲」とはいっても、買収金額がケタ違いに大きく、政治的影響力も大きいことを考慮すれば、「実刑」の可能性も否定できないだろう。
・『驚きの「仲間が欲しかった」  起訴状によると、河井被告は地元の議員や有力者100人に対し、計約2900万円を配ったとされる。筆者は全国紙社会部記者時代、国会議員に限らず政治家の選挙違反事件の解説記事などを執筆するため、過去のデータを調べたことが何度かあった。 記憶にある限り、被買収の人数と金額が「100人」「2900万円」までの数字は出てこない。そう、「判例」では判断できない「悪質さ」が審理され、判決に反映される可能性が高いのだ。識者や評論家が「実刑」の可能性に言及してもおかしくはない。 当初は河井被告が、自身の「名誉」「面子」のため、徹底抗戦の構えだったというのは理解できる。しかし、既に外堀が埋まっているのは認識しているはずであり、このまま突っ張ったら「囚人服」を着用する可能性があることを弁護人がサジェストしたかもしれない。 象徴的だったのは被告人質問2日目として報道された発言だ。 「長年、独りぼっちだった。地元政界に仲間が欲しかった」「当選7回目でも自民党広島県連会長になれず疎外感があった」「会長就任の布石として金を差し上げた」「主目的は私自身の孤立感の解消だった」 うーん、と唸った。案里氏を当選させるための「買収工作」の色を薄めるためなのか、動機を自身の広島県連における低評価や孤独に持って行った。「妻をだしに使い、申し訳なかった」とも言った。ある意味で本音の印象も受けるし、これならば「100%買収の意図」ではなく、裁判官に「自身の地位を上げるためで、選挙の意図がすべてではなかった」と訴える効果はある。 芝居がかってはいるが、親交のあるカトリックの神父から「神の前で誠実であることが大事。自分に向き合いなさい」と助言されたと語ったことも、心証としては悪くない。なかなかのテクニックと思う』、「なかなかのテクニック」とはさすが前法務大臣だ。
・『重罪も執行猶予の可能性  では、まだ続くとみられる公判だが、結論はどうなるのだろうか。 実は、河井被告が実刑になるかどうかは別として、有罪は揺るぎないとみられる。案里氏は単独行為ではなく、河井被告と共謀(共同正犯)したとして5件の罪に問われ、うち被買収とされた1人が公判で被買収の意図を否認し無罪となったが、4件については有罪とされたからだ。そして、この確定判決は河井被告の公判に反映されないはずがない。 つまり、既に詰んだのだ。 証人尋問で、金を受け取った関係者が「集票依頼と思った」「違法な金」などと述べた。被買収とされた人物が追認すれば、今回の事件は事実認定されるのだ。公判では被買収とされた100人のうち、94人が買収であったと認めた。 であれば、6件が無罪になる可能性はあるが、94件は有罪になる可能性が濃厚ということだ。 「判例」については前述した通りだが、被告人質問で買収を全面的に認める陳述をした23日、衆院議員バッジを着用していたのに、翌日24日、着けていなかったのは、情状酌量をアピールする意図があったのだろう。 では、結論として河井被告の司法的な処分は、どうなのるか。この記事を読んでいただいている方々の最大の関心だろうが、結論から言うと、筆者の予想では執行猶予が付く。 意外かもしれないが、刑事裁判というのはシンプルだ。検察側は「犯行は計画的で悪質、かつ重大で、民主主義の根幹を揺るがす行為」として懲役4年を求刑するだろう。 そして判決で裁判官は「犯行は悪質だが、反省している。議員を辞職し、既に社会的制裁を受けている」として、検察側の主張を追認し求刑通り懲役4年、執行猶予が最大の5年という流れになるはずだ。 しかし、夫妻は逮捕された20年6月以降、国会に出席していないが、毎月103万5200円と約628万円の期末手当、月額100万円の文書通信交通滞在費が支給されていた。国会議員としての職務を全うしていないのに、総額約2600万円を2人で5200万円を受領していたことになる。 日本国民には誰もが裁判を受ける権利がある。だから、この夫妻が推定無罪の上で裁判を受ける権利を有することは当然のことだ。司法の判断は「前例」を踏襲した然るべき結果になるだろう。 しかし、この1年数カ月、新型コロナウイルス感染拡大で日本国民の生活が困窮した。巨額の歳費と手当てを受け取っていたこの夫婦に、同情する日本国民がいるとは思えない』、「判決で裁判官は「犯行は悪質だが、反省している。議員を辞職し、既に社会的制裁を受けている」として、検察側の主張を追認し求刑通り懲役4年、執行猶予が最大の5年という流れになるはずだ」、「執行猶予」を得るために「議員を辞職」、とは頷ける。

第三に、2月15日付けYahooニュースが掲載した元東京地検特捜部検事で郷原総合コンプライアンス法律事務所代表弁護士の郷原信郎 氏による「政治資金規正法、「ザル法」の真ん中に“大穴”が空いたままで良いのか」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/byline/goharanobuo/20210215-00222620/
・『平成から令和に時代が変わっても、政治家、とりわけ国会議員の「政治とカネ」の問題は後を絶たない。「桜を見る会問題」では、安倍前首相側の地元有権者を集めた前夜祭の費用補填問題で、安倍氏の公設第一秘書が政治資金規正法違反で略式命令を受けた。河井克行元法務大臣とその妻の河井案里元参議院議員が、同議員の参議院議員選挙での、多額の現金買収で逮捕・起訴されたが、その多くは、広島県内の首長・地方議員等の政治家に渡されたものだった。 そして、その事件に関連して、鶏卵業界のドンと言われるアキタフーズ会長から、いわゆる農水族の国会議員が多額の現金を受領した事件が表面化、吉川貴盛元農水大臣は、大臣在職中に、大臣室等で500万円の現金を受領していた事件で在宅起訴された。 これらの「政治とカネ」をめぐる問題の多くで、「政治資金規正法違反」が、マスコミで取り上げられるが、実際に、法違反が処罰につながる例は少なく、そのことへの違和感が、国民の政治に対する不信を高めることにつながってきた。 私自身も、現職検事だった時代に、「政治とカネ」の問題に関する捜査に積極的に取り組んできた。1990年代末には、広島地検特別刑事部長として、県政界の政治家をめぐる事件の捜査に取り組んだ。2001年から2003年にかけての長崎地検次席検事時代も、公共工事をめぐる政治資金の流れに関する事件の捜査に取り組んだ。 その際、捜査の武器として政治資金規正法を積極的に活用してきた。しかし、この法律は、法律上の概念が曖昧である上に、法の性格や違反行為の要件が世の中に正しく理解されておらず、また、法による義務付けの内容と政治家の政治資金処理の実情とに大きな乖離があることなど、罰則適用に関して、様々な問題があった。そのような構造的な問題は、世の中に正しく理解されているとは到底言えない。 私自身の検察の現場での経験に基づき、「政治とカネ」問題の背景となっている政治資金規正法の構造的な問題を指摘し、抜本的な改革案を提示することとしたい』、「「政治とカネ」をめぐる問題の多くで・・・法違反が処罰につながる例は少なく、そのことへの違和感が、国民の政治に対する不信を高めることにつながってきた」、いつも腹立たしい思いをしてきた。
・『「ザル法」の真ん中に空いた“大穴”  「政治とカネ」の重大問題が発生する度に、政治家が世の中の批判を受け、政治家や政党自身が「その場凌ぎ」的に、議員立法で改正を繰り返してきたのが政治資金規正法だ。そのため、罰則は相当重い(最大で「禁錮5年以下」)が、実際に政治家に同法の罰則を適用して処罰することは容易ではない。それが「ザル法」と言われてきた所以である。 しかし、実は、政治資金規正法は、単に「ザル法」だというだけでなく、ザルの真ん中に「大穴」が空いているというのが現実だ。 「政治とカネ」の典型例が、政治家が、業者等から直接「ヤミ献金」を受け取る事例である。それは「水戸黄門」のドラマで、悪代官が悪徳商人から、「越後屋、おぬしも悪よのう」などと言いながら「小判」の入った菓子折りを受け取るシーンを連想させるものであり、まさに政治家の腐敗の象徴である。 しかし、国会議員の政治家の場合、「ヤミ献金」を贈収賄罪に問うのは容易ではない。そこでは、国会議員の職務権限との関係が問題となる。国会議員の法律上の権限は、国会での質問・評決、国政調査権の行使等に限られている。与党議員の場合、いわゆる族議員としての「政治的権力」を背景に、各省庁や自治体等に何らかの「口利き」をすることが多いが、その場合、「ヤミ献金」のやり取りがあっても、職務権限に関連しているとは言えず、贈収賄罪の適用は困難だ。 だからこそ政治資金規正法という法律があり、政治家が業者から直接現金で受領する「ヤミ献金」こそ、政治資金規正法の罰則で重く処罰されるのが当然と思われるであろう。しかし、実際には、そういう「ヤミ献金」の殆どは、政治資金規正法の罰則の適用対象とはならない。「ザル法」と言われる政治資金規正法の真ん中に「大穴」が空いているのである。 政治資金規正法は、政治団体や政党の会計責任者等に、政治資金収支報告書への記載等の政治資金の処理・公開に関する義務を課すことを中心としている。ヤミ献金の授受が行われた場合も、その「授受」そのものが犯罪なのではない。献金を受領しながら政治資金収支報告書に記載しないこと、つまり、そのヤミ献金受領の事実を記載しない収支報告書を作成・提出する行為が不記載罪・虚偽記入罪等の犯罪とされ、処罰の対象とされているのである。 国会議員の場合、個人の資金管理団体のほかに、代表を務める政党支部があり、そのほかにも後援会など複数の政治団体があるのが一般的だ。このような政治家が、企業側から直接、現金で政治献金を受け取ったのに、領収書も渡さず、政治資金収支報告書にもまったく記載しなかったという場合に、政治資金規正法の罰則を適用するためには、どの政治団体・政党支部宛ての献金かが特定されないと、どの「政治資金収支報告書」に記載すべきなのかがわからない。 もし、その献金が政治家「個人」に宛てた「寄附」だとすれば、「公職の候補者」本人に対する寄附は政治資金規正法で禁止されているので(21条の2)、その規定に違反して寄附をした側も、寄附を受け取った政治家本人も処罰の対象となる。しかし、国会議員たる政治家の場合、資金管理団体・政党支部等の複数の「政治資金の財布」がある。その献金がそれらに宛てた寄附だとすれば、その団体や政党支部の政治資金収支報告書に記載しないことが犯罪となる。いずれにせよ、ヤミ献金を政治資金規正法違反に問うためには、その「宛先」を特定することが不可欠なのである。 しかし、政治家が直接現金で受け取る「ヤミ献金」というのは、「裏金」でやり取りされ、領収書も交わさないものだからこそ「ヤミ献金」なのであり、受け取った側が、「・・・宛ての政治資金として受け取りました」と自白しない限り、「宛先」が特定できない。「ヤミ献金」というのは、それを「表」に出すことなく、裏金として使うために受け取るのであるから、政治家個人宛てのお金か、どの団体宛てかなどということは、通常、考えていない。結局、どれだけ多額の現金を受け取っていても、それが「ヤミ献金」である限り、政治資金規正法違反の犯罪事実が特定できず、刑事責任が問えないことになるのだ』、「どれだけ多額の現金を受け取っていても、それが「ヤミ献金」である限り、政治資金規正法違反の犯罪事実が特定できず、刑事責任が問えないことになるのだ」というのでは、確かに「「ザル法」の真ん中に空いた“大穴”」というのは言い得て妙だ。
・『「金丸5億円ヤミ献金問題」での「上申書決着」  平成に入って間もない90年代初頭、検察に対する世の中の不満が爆発したのが、1992年の東京佐川急便事件だった。この事件では、東京佐川急便から多数の政治家に巨額の金が流れたことが報道され、同社の社長が特別背任罪で逮捕されたことで大規模な疑獄事件に発展するものとの期待が高まった。しかし、いくら巨額の資金が政治家に流れていても、国会議員の職務権限に関連する金銭の授受は明らかにならず、結局、政治家の贈収賄事件の摘発は全くなかった。 そして、佐川側から5億円のヤミ献金を受領したことが報道され、衆議院議員辞職に追い込まれた自民党経世会会長の金丸信氏が政治資金規正法違反に問われたが、東京地検特捜部は、その容疑に関して金丸氏に上申書を提出させ、事情聴取すらせずに罰金20万円の略式命令で決着させた。 検察庁合同庁舎前で背広姿の中年の男が、突然、「検察庁に正義はあるのか」などと叫んで、ペンキの入った小瓶を建物に投げ、検察庁の表札が黄色く染まるという事件があったが、それは多くの国民の声を代表するものだった。東京佐川急便事件における金丸氏の事件の決着は、国民から多くの批判を浴び、「検察の危機」と言われる事態にまで発展した。 しかし、政治家本人が巨額の「ヤミ献金」を受領したという金丸氏の事件も、政治資金規正法の罰則を適用して重く処罰すること自体が、もともと困難だった。 当時は、政治家本人に対する政治資金の寄附自体が禁止されているのではなく、政治家個人への寄附の量的制限が設けられているだけだった。しかも、その法定刑は「罰金20万円以下」という極めて低いものであった。しかも、そのヤミ献金が「政治家本人に対する寄附」であることを、本人が認めないと、その罰金20万円以下の罰則すら適用できない。そのような微罪で政治家を逮捕することは到底無理であり、任意で呼び出しても出頭を拒否されたら打つ手がない。そこで、弁護人と話をつけて、金丸氏本人に、自分個人への寄附であることを認める上申書を提出させて、略式命令で法定刑の上限の罰金20万円という処分に持ち込んだのであった。 検察の行ったことは何も間違ってはいなかった。政治資金収支報告書の作成の義務がない政治家本人への献金の問題について極めて軽い罰則しか定められていなかった以上、検察が当時、法律上行えることは、その程度のものでしかなかった。しかも、それを行うことについて、本人の上申書が不可欠だったのである。 金丸ヤミ献金事件の後、政治資金規正法が改正されて、「政治家本人への寄附」が禁止され、「一年以下の禁錮」の罰則の対象となった。しかし、政治家本人が直接受領したヤミ献金については、違法な個人あての献金か、あるいは団体・政党支部宛ての献金かが特定できないと、政治資金規正法違反としての犯罪事実も特定できず、適用する罰則も特定できないという、「政治資金規正法の大穴」は解消されておらず、その後も、政治家個人が「ヤミ献金」で処罰された例はない。 2009年3月、民主党小沢一郎代表の公設第一秘書が、収支報告書に記載された「表」の献金に関する政治資金規正法違反(他人名義の寄附)の容疑で東京地検特捜部に逮捕された際に、西松建設の社長が、自民党の二階俊博議員側に「ヤミ献金」をしていたこと、そのうちの一部は二階氏に直接手渡されていたという「年間500万円の裏金供与疑惑」が報じられた。しかし、刑事事件としての立件には至らなかった。 また、吉川元農水大臣の事件でも、アキタフーズ会長から、農水大臣在任中に500万円を受領したほかに、大臣在任中以外の期間にも合計1300万円の現金を受領していた事実が報じられている。これも、政治家本人が直接受領した「ヤミ献金」のはずだが、刑事事件として立件され、起訴されたのは、大臣在任中の500万円だけであり、それ以外は刑事立件すらされていない。 それは、政治家側に直接裏金による政治献金が渡った場合に、政治資金規正法違反で立件・処罰することができないという、「政治資金規正法の大穴」によるものなのである』、「政治資金規正法」は議員立法で、議員たちがアリバイ作りのためにお茶を濁したものらしい。
・『「ヤミ献金」が刑事事件化された事例  一方、ヤミ献金が刑事事件として立件され処罰された事例がある。 その初の事例となったのが、私が長崎地検次席検事として捜査を指揮した2003年の「自民党長崎県連事件」(拙著【検察の正義】(ちくま新書)「最終章 長崎の奇跡」)である。 この事件では、自民党長崎県連の幹事長と事務局長が、ゼネコン各社から、県の公共工事の受注額に応じた金額の寄附を受け取っていた。そして、幹事長の判断で、一部の寄附については、領収書を交付して「表の献金」として収支報告書に記載して処理し、一部は「裏の献金」として、領収書を交付せず、政治資金収支報告書にも記載しなかった(この「裏の献金」が、幹事長が自由に使える「裏金」に回されていた)。 この事件では、正規に処理される「表の献金」と同じような形態で「裏の献金」が授受されていたので、「自民党長崎県連宛ての寄附」として収支報告書に記載すべき寄附であるのに、その記載をしなかったことの立証が容易だった。「ヤミ献金」事件を、初めて政治資金収支報告書の虚偽記入罪(裏献金分、収入が過少記載されていた事実)で正式起訴することが可能だったのである。 2004年7月には、日本歯科医師会から平成研究会(橋本派)に対する1億円の政治献金に対して、橋本派側が幹部会で領収書を出さず収支報告書に記載しないことを決めた事実について、政治資金規正法違反(収支報告書の虚偽記入)の罰則を適用され、村岡兼造元官房長官と平成研の事務局長が起訴された。この事件も、平成研という政治団体に対する寄附であることが外形上明白で、それについて領収書を交付するかどうかが検討された末に、領収書を交付しないで「裏の献金」で処理することが決定されたからこそ、政治資金規正法違反の罰則適用が可能だったのである。 これらのように、「ヤミ献金」を政治資金規正法違反に問い得る事例というのは稀であり、政治家本人が直接現金を受け取るような事例には、政治資金規正法の罰則は全く歯が立たないという深刻な現実を理解する必要がある』、「「ヤミ献金」を政治資金規正法違反に問い得る事例というのは稀であり、政治家本人が直接現金を受け取るような事例には、政治資金規正法の罰則は全く歯が立たないという深刻な現実を理解する必要がある」、なるほど。
・『政治資金の逐次処理の実効性に関する問題  もう一つの問題は、政治資金についての収入・支出の透明化に関して、政治資金規正法上は、「会計帳簿の作成・備付け」と「7日以内の明細書の作成・提出」が義務付けられ、政治資金処理の迅速性が求められているが、ルールが形骸化しているということである。 政治資金規正法は、政治団体・政党等の会計責任者等に、各年分の政治資金収支報告書の作成・提出を義務付けているが、それに関して、収支報告書とほぼ同一の記載事項について、会計帳簿の作成・備付けを会計責任者等に義務付けるとともに、「政治団体の代表者若しくは会計責任者と意思を通じて当該政治団体のために寄附を受け、又は支出をした者」に対して、会計責任者への明細書の提出を義務付けている。 つまり、会計責任者は年に1回、政治資金収支報告書を作成・提出するだけでなく、その記載の根拠となる会計帳簿を、政治団体・政党等の事務所に常時備え付けている。これは、記載事項となる政治資金の収支が発生する都度、会計帳簿に記載することを前提としている。そして、会計責任者が知らないところで収支が発生することがないよう、政治団体の代表者等が、寄附を受けたり、支出をしたりした場合に、7日以内に明細書を作成して会計責任者に提出することを義務付けていて、会計責任者等が、その明細書に基づいて会計帳簿への記載をすることができるようにしている。 これは、政治資金の収支を発生の都度、逐次処理することを求める規定なのであるが、実際には、このような明細書の作成・提出の期限に関するルールは形骸化し、会計帳簿の記載、明細書の作成は、収支報告書の作成の時期にまとめて行われているようである。 逐次・迅速に収支を把握して処理する政治資金規正法のルールは、その記録化についてのルールがないために、収支報告書の作成・提出と併せてまとめて会計帳簿、明細書の処理をしても、提出する収支報告書上は証拠が残らず、明細書の提出義務違反等で処罰されることもない。それが、逐次・迅速処理のルールの形骸化につながっているのである』、由々しい問題だ。
・『安倍事務所における政治資金と個人資金の混同  安倍晋三前首相は、「桜を見る会」前夜祭での費用補填問題に関して、 私の預金からおろしたものを、例えば食費、会合費、交通費、宿泊費、私的なものですね。私だけじゃなくて妻のものもそうなんですが、公租公課等も含めてそうした支出一般について事務所に請求書がまいります。そして事務所で支払いを行いますので、そうした手持ち資金としてですね、事務所に私が合わせているものの中から、支出をしたということであります。 つまり、安倍事務所では、安倍氏の個人預金から一定金額を預かって、安倍夫妻の個人的な支出についても支払をしており、そのような個人預金から、後援会が主催する前夜祭の費用補填の資金を捻出したと説明したのである。 しかし、安倍氏の個人預金が補填の原資だと説明すると、安倍氏個人による公職選挙法の寄附の禁止に違反することになりかねない。そこで、補填は、秘書が無断で行ったと弁解するとともに、もう一つの補填の正当化事由として「専ら政治上の主義又は施策を普及するために行う講習会その他の政治教育のための集会に関し必要やむを得ない実費の補償」は、公選法が禁止する寄附に当たらないという理屈を持ち出してきたのである。 会場費の支出が寄附に当たらないとすると、「政治上の主義」や「政治教育」のためということになるので、当然、「政治資金としての支出」のはずだ。それを、安倍氏個人の資金から支出していたということは、安倍事務所においては、政治資金と安倍氏個人の資金が混同して処理されていたということなのである。 政治資金規正法の会計帳簿と明細書に関するルールから言えば、本来、政治献金や党からの交付金等の政治に関する収入と、安倍氏の個人資金とは明確に区別すべきであり、政治資金としての支出をした場合には、7日以内に会計責任者に明細書を提出し、それについて会計帳簿の記載が行われることになるはずだ。 ところが、前首相の安倍氏の事務所においてすら、政治資金の逐次・迅速処理のルールは守られず、政治資金と個人資金が混同されて処理されていた。おそらく、多くの国会議員の政治家が同様の政治資金処理を行っているのであろう。 このようなことがまかり通るのは、政治資金規正法で、会計帳簿の備付・記載と明細書の作成・提出が義務付けられているのに、開示されるのが年に1回提出される政治資金収支報告書だけなので、法の趣旨どおりに逐次記載されているのか、収支報告書提出時にまとめて記載しているのかを、証拠上確認する手立てがないからである』、「前首相の安倍氏の事務所においてすら、政治資金の逐次・迅速処理のルールは守られず、政治資金と個人資金が混同されて処理されていた」、恐るべきズサンさだ。
・『河井夫妻多額現金買収事件における政治資金と選挙資金の混同  河井夫妻が買収(公選法違反)とされて逮捕・起訴された事実の多くは、2019年4月頃、つまり、選挙の3か月前頃から、広島県内の議員や首長などの有力者に、参議院選挙での案里氏への支持を呼び掛けて多額の現金を渡していたというものだ。 従来は、公選法違反としての買収罪の適用は、選挙運動期間中やその直近に、直接的に投票や選挙運動の対価として金銭等を供与する行為が中心であり、選挙の公示・告示から離れた時期の金銭の供与が買収罪として摘発されることはあまりなかった。 このような「選挙期間から離れた時期の支持拡大に向けての活動」というのは、選挙運動というより、政治活動の性格が強く、それに関して金銭が授受されても、政治資金収支報告書に記載されていれば、それによって「政治資金の寄附」として法律上扱われ、公選法の罰則は適用しないというのが一般的な考え方であった。 しかし、公選法上は、「当選を得る(得しめる)目的をもつて選挙人又は選挙運動者に対し金銭、物品その他の財産上の利益を供与する」ことで違反が成立する。県政界有力者も「選挙人」であり、「案里氏を当選させる目的」で「供与」した以上、形式的には違反が成立することは否定できないように思える。問題は、形式的には違反に該当しても、「政治資金の寄附」として合法化される余地があるかどうかだ。ここで重要なのは、河井夫妻の場合、現金で供与したから買収になるように言われているが、そうではないということだ。仮に、銀行振込であったとしても、使途を限定せずに提供するのであれば「供与」であることに違いはない。 結局、問題は、その「供与」が「政治活動」のためか、「選挙運動」のためか、ということである。事後的に、政治資金か選挙資金かが問題にならないようにするためには、政治活動とそのための政治資金の支出が、政治資金の処理を通じて明確に区別され、収支が発生した時点で、明細書や会計帳簿に政治資金として記載されることが必要だ。しかし、既に述べているように、会計帳簿の備付・記載、明細書の提出という、政治資金の逐次処理のルールは形骸化しており、年に1回の政治資金収支報告書の提出の時点までは、選挙資金と政治資金とが明確に区別されないまま処理されることがあり得る。 実際に、河井夫妻の公選法違反事件では、家宅捜索等の強制捜査が行われたのは、2020年1月であり、この時点では、2019年分の政治資金の収支については、政治資金収支報告書の提出期限の前だった。河井夫妻から現金を受領した広島県内の首長・議員の中には、家宅捜索を受けた後に提出した政治資金収支報告書に、河井夫妻からの寄附の受領を記載した者もいるようだ。 政治資金の1年分一括処理が事実上許されていることが、政治資金と選挙資金の区別を曖昧にし、それが、政治活動と選挙運動の境目が不明確になることの背景にもなっている』、なるほど。
・『「政治とカネ」問題根絶のための“2つの提言”  以上述べてきたように、現行の政治資金規正法には、政治資金透明化という法目的に著しく反する政治家個人が直接受領する「ヤミ献金」に対して罰則適用できないこと、政治資金の逐次処理のルールが形骸化していること、という二つの大きな問題があり、それが「政治とカネ」の問題が後を絶たないことの背景となっている。 そこで、このような状況を抜本的に是正する方法として、国会議員についての政治資金収支報告書の「総括化」と、会計帳簿・明細書のデジタルデータの「法的保存義務化」を導入してはどうか。 まず、政治資金規正法は、国会議員について、「国会議員関係政治団体」、すなわち、従来の資金管理団体・政党支部等の国会議員と密接な関係を有する政治団体について、1万円以上の支出の使途の公開、登録政治資金監査人による監査の義務付け、1円以上の領収書の開示が義務付けられているが(19条の7)、「国会議員関係政治団体」を含めて、当該国会議員の政治活動に関連する政治資金の収支を総括する「国会議員政治資金収支総括報告書」の作成提出を、義務付けるのである。それによって、当該国会議員たる政治家が、業者から、特定の団体・政党支部への紐づけが明確になっていない献金を受領した場合も、その総括報告書には記載しなければならないことになる。 政治資金収支総括報告書の作成・提出については、当該国会議員が、「総括会計責任者」を選任し、総括報告書を作成・提出させる。国会議員が、政治資金の寄附を受けた際には、7日以内に、その旨を記載した明細書を総括会計責任者に対して提出しなければならないと規定するのである。 これにより、政治家本人が「政治資金」と認識して受領したのに、会計責任者に明細書を提出せず、総括報告書に記載しない場合であれば、政治資金収支総括報告書不記載罪の罰則が適用できることになる。それによって、国家議員たる政治家個人が直接「ヤミ献金」を受領した場合に、政治家個人宛てか団体、政党支部宛てかが特定できないために処罰することができないという「政治資金規正法の大穴」は塞がれることになる。 もう一つは、政治資金規正法上の備付けを義務付けられた会計帳簿と、7日以内の作成・提出を義務付けられている明細書について、データの作成日が記録されたデジタルデータの保存と政治資金収支報告書に添付して提出することを義務付けることである。それによって、政治資金の収入、支出について、7日以内には必ず明細書を提出し、会計帳簿に記載しなければならないことになり、処理を未定にしておいて、政治資金収支報告書を作成・提出する時期に、政治資金と個人資金の振り分けや、政治資金と選挙資金等の振り分けを決める一括処理は違法となる。 もっとも、実際の政治資金の収支の中には、発生した時点では、どの団体・政党支部に帰属させるかが判然としないものも少なくないものと思われる。そこで、従来の各団体・政党支部ごとの会計帳簿とは別に、当該国会議員に関連する政治資金の収支であることは間違いないが、帰属先が定まっていない収支を含めて記載する「総括会計帳簿」の備付け・記載を会計責任者に義務付けることにする。「総括会計帳簿」に記載しておけば、収支の具体的な帰属先は、個別の政治資金収支報告書の作成・提出時までに確定させればよいことにする。それでも、政治資金としての収支であることは、収支が発生した時点で、個人の収支や、選挙に関する収支とは区別して、総括会計帳簿に明確に記載されることになる。 それによって、政治資金の処理が、迅速に収支の都度逐次行われることになり、政治資金・選挙資金・個人資金の相互の関係を明確にすることも可能となる』、「総括会計責任者」、「総括会計帳簿」はいいアイデアだ。
・『真の「政治資金の透明化」を  政治資金規正法が基本理念とする「政治資金の収支の公開」は、健全な政治活動と民主主義の基盤を確保していくために不可欠なものである。しかし、法律のルールと現実の政治資金処理の実態との間に大きな乖離があって「違法行為」が恒常化している場合、その中の特定の違法行為だけが取り上げられると、「魔女狩り」的な不毛な中傷・告発合戦の常態化を招くことになる。 現実的に可能な政治資金処理のルールを構築することで、通常の政治資金の処理を行っていれば「政治とカネ」の問題で騒がれることがなく、意図的に政治資金処理のルールに反して政治資金を不透明化したり、私物化したりした事例だけが厳正な処罰の対象になるということにしていく必要がある。 まず、国会議員について、政治資金規正法における政治資金処理のルールを、現実的かつ実効性のあるものに改善する必要がある。それが「政治とカネ」の問題を根絶し、真の「政治資金の透明化」を実現することにつながるのではないだろうか』、議員立法である限り、自分たちの自由を束縛するものは避けようとするだろう。法務省の所管にして、法制審議会などに委ねるのが最も有効なのではあるまいか。
タグ:日本の政治情勢 (その54)(リコール不正刑事告発でも陰謀論主張の高須院長を批判できないマスコミ 『スッキリ』では高須に擁護的コメント 番組中にクリニックのCM、河井元法相が「無罪主張から一転」 買収を認めた理由、政治資金規正法 「ザル法」の真ん中に“大穴”が空いたままで良いのか) litera 「リコール不正刑事告発でも陰謀論主張の高須院長を批判できないマスコミ 『スッキリ』では高須に擁護的コメント 番組中にクリニックのCM」 愛知県の大村秀章知事のリコール署名 約43万人分の署名約83%に不正の疑い 「河村市長」や「高須院長」の居直りは驚くべき破廉恥さだ。 「高須院長」は「トリックがわかったという「エクセルファイル」」、については、やがて真相がバレることは承知の上で、とりあえずその場しのぎのウソをついたようだ。 いくら「高須クリニックがテレビ局にとって大スポンサー」とはいえ、「リコール不正問題や高須院長の言動をメディアがまったく批判しない」という姿勢は社会の公器にあるまじきことだ 「『スッキリ』 MCの加藤浩次や橋本五郎・読売新聞特別編集委員がこれを受けて「高須さんの名誉を考えたら、調べた上でちゃんとやるのが大事」「選挙管理委員会は説明が必要」などと、選管に苦言を呈した」、みえみえの援護姿勢には驚かされる 「リコールは単なるアンケートなどではなく、民主主義において選挙と同等の価値が置かれ、署名偽造には懲役刑も課される重大な違反だ。いくらスポンサーだからといって、このまま放置することは許されない」。幸い捜査当局も捜査を開始したようだ。捜査の進展と、マスコミによる真相解明に期待したい ダイヤモンド・オンライン 戸田一法 「河井元法相が「無罪主張から一転」、買収を認めた理由」 「前例踏襲」とはいっても、買収金額がケタ違いに大きく、政治的影響力も大きいことを考慮すれば、「実刑」の可能性も否定できないだろう 「なかなかのテクニック」とはさすが前法務大臣だ 「判決で裁判官は「犯行は悪質だが、反省している。議員を辞職し、既に社会的制裁を受けている」として、検察側の主張を追認し求刑通り懲役4年、執行猶予が最大の5年という流れになるはずだ」、「執行猶予」を得るために「議員を辞職」、とは頷ける yahooニュース 郷原信郎 「政治資金規正法、「ザル法」の真ん中に“大穴”が空いたままで良いのか」 「政治とカネ」をめぐる問題の多くで 法違反が処罰につながる例は少なく、そのことへの違和感が、国民の政治に対する不信を高めることにつながってきた」、いつも腹立たしい思いをしてきた。 「どれだけ多額の現金を受け取っていても、それが「ヤミ献金」である限り、政治資金規正法違反の犯罪事実が特定できず、刑事責任が問えないことになるのだ」というのでは、確かに「「ザル法」の真ん中に空いた“大穴”」というのは言い得て妙だ 「政治資金規正法」は議員立法で、議員たちがアリバイ作りのためにお茶を濁したものらしい。 「「ヤミ献金」を政治資金規正法違反に問い得る事例というのは稀であり、政治家本人が直接現金を受け取るような事例には、政治資金規正法の罰則は全く歯が立たないという深刻な現実を理解する必要がある 政治資金の逐次処理の実効性に関する問題 「前首相の安倍氏の事務所においてすら、政治資金の逐次・迅速処理のルールは守られず、政治資金と個人資金が混同されて処理されていた」、恐るべきズサンさだ 「政治とカネ」問題根絶のための“2つの提言” 「総括会計責任者」、「総括会計帳簿」はいいアイデアだ 真の「政治資金の透明化」を 議員立法である限り、自分たちの自由を束縛するものは避けようとするだろう。法務省の所管にして、法制審議会などに委ねるのが最も有効なのではあるまいか。
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買収ファンド(その1)(日本企業を「汚物扱い」した米国ファンドの正体 挑発したり貶めたりして獲物に食らいつく、ジャンク債に格下げの「ユニゾ」 負債3000億円で高まるデフォルトリスク、ユニゾHDに経営不安説 地域金融機関は固唾のみ行方見守る) [金融]

今日は、買収ファンド(その1)(日本企業を「汚物扱い」した米国ファンドの正体 挑発したり貶めたりして獲物に食らいつく、ジャンク債に格下げの「ユニゾ」 負債3000億円で高まるデフォルトリスク、ユニゾHDに経営不安説 地域金融機関は固唾のみ行方見守る)を取上げよう。

先ずは、昨年11月20日付け東洋経済オンラインが記載した 作家の黒木 亮氏による「日本企業を「汚物扱い」した米国ファンドの正体 挑発したり貶めたりして獲物に食らいつく」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/389675
・『日本市場に姿を現し始めたアメリカのカラ売りファンド。その実力はいったいどの程度なのか?実際の事件に基づいて、アメリカ系カラ売りファンドと病院買収グループ、シロアリ駆除会社、商社絵画部の攻防を描いた経済小説『カラ売り屋、日本上陸』を上梓した作家の黒木亮氏がレポートする』、興味深そうだ。
・『センセーショにあおるのが手法  アメリカのカラ売りファンド、シトロン・リサーチが、装着型ロボットを開発するサイバーダインの株(東証1部)を“うんこ”と呼び、強烈な売り推奨レポートを発表したのは2016年8月のことだった。 当時、2000円程度だったサイバーダインの株価は、創業以来続く赤字の影響などから、ほぼ一貫して下がり続け、現在は858円になった。カラ売りは明らかに成功である。 同じ2016年には、アメリカ系のカラ売りファンド、グラウカス・リサーチ(カリフォルニア州)が伊藤忠商事を、マディ・ウォーターズ(同)が日本電産をカラ売りし、話題を呼んだ。 シトロン・リサーチは、デトロイト市郊外で生まれたユダヤ人で、ボストンにあるノースイースタン大学を卒業後、強引かつ詐欺的な商品取引会社のセールスマンとして働き、業界団体から制裁を受けたことがあるアンドリュー・レフトが2001年に設立した。 レポートの中で企業を挑発したり、下品な表現で貶めたりすることで知られ、レフト自身は「他社の分析レポートは退屈極まりないので、自分は読者に読みたいと思わせるように書いている」とうそぶいている。 サイバーダインに関しては「うんこ」「核となる技術と製品の成長率は壊滅的」「同社の馬鹿げた株価は、山海嘉之CEOが日本文化におけるロボットの長年の魅力を利用し、宣伝してきた結果」「投資家の無知や日本市場の株式に関する公開情報不足を逆手に取っている企業の実例」などとこき下ろした。 確かにロボット・ブームの中で、サイバーダインが持ち上げられるのが定番化していたので、皆が便乗しつつも抱いていた違和感を上手く捉えた感じはある。期待先行で上昇していた株価にカラ売りファンドが一石を投じた格好だ。 ここ2年間ほどの、シトロンの主なカラ売り案件と結果は次の通りである。 昨年1月、動画配信・DVDレンタル会社、ネットフリックス(カリフォルニア州)について「ネットフリックスの投資家はバード・ボックス(鳥の巣箱)のように盲目だ」として、売り推奨した(『バード・ボックス』は同社が配信したサンドラ・ブルック主演映画)。 当時のネットフリックスの株価は約337ドルだったが、いったん260ドル近くまで下がった。その後、シトロンは株価が290ドル前後まで戻った11月に、ネットフリックスの海外ビジネスに期待が持てるとして、買い推奨に転換。現在の株価は482ドルまで上昇した。カラ売り、買い推奨ともに成功していると思われる。 同じく昨年1月には、バイオ医薬品会社、リガンド・ファーマシューティカルズ(サンディエゴ)の「最も汚い秘密のいくつかを暴露する」と宣言。同社が薬品を共同開発しているとする複数の会社は実質的に存在していないなどと指摘し、売り推奨した。当時のリガンド社の株価は130ドル台だったが、現在は約82ドルとなり、カラ売りは成功した』、株式市場はややもすると、一時的な熱気で暴騰する銘柄も少なくないだけに、「カラ売りファンド」は市場に冷静さを取り戻させる機能もある。
・『失敗している案件も少なくない  昨年12月、エアロバイクやトレッドミルなどを製造している新興企業ペロトン社(ニューヨーク市)を「業界の競争は厳しく、株価は86%下がる。商品が売れた過去の栄光の日々はバックミラーの風景だ」と売り推奨。しかし、同社の株価は当時の約35ドルから現在は101ドルにまで上昇した。カラ売りは今のところ失敗である。 今年1月、大学経営や教育サービスを提供するグランド・キャニオン・エデュケーション(アリゾナ州フェニックス)を「同社のグループであるグランド・キャニオン大学に経費や債務を押し付け、利益を引き出す粉飾を行っている“教育業界のエンロン”」であるとして売り推奨。同社の株価は当時の約84ドルから2か月弱で約59ドルまで下がった。 その後、約102ドルまで上昇し、現在は85ドル。下がった時点で買い戻していればカラ売りは成功だが、そうでなければ成功とも失敗ともつかない。 今年2月、シトロンは4年前からカラ売りしていた、家具・家庭用品のオンライン販売業、ウェイフェアー社(ボストン市)のポジションを手仕舞った。手仕舞った時点での株価は約63ドル。カラ売りを始めた4年前の株価は45ドル程度だったので、この部分では損を出しているはずだ。 しかし、その2年後に同社の株価は100ドル程度まで上昇し、それが今年1月末頃まで続いていたので、継続的にカラ売りをしていれば、利益は出ている可能性がある。 今年4月、シトロンは、中国のオンライン教育プラットフォームでニューヨーク証券取引所に上場している跟誰学(GSX Techedu、北京)を「売上げを7割水増ししており、2011年以降で最も明らかな中国株詐欺」であるとして売り推奨した。 これには別の著名カラ売りファンド、マディ・ウォーターズ(カリフォルニア州)も賛同したが、当時約31ドルだった株価は、現在は71ドルまで上昇した。カラ売りは今のところ失敗である。 以上のとおり、当たったり外れたりといった実績だ。 金融アナリストのパフォーマンスを評価している「TipRanks」は、シトロンのレポートの的中率は54%と算出している。ただし、過去2年間でダウ平均は約12%、日経平均は約17%上昇しているので、カラ売りファンドにとっては向かい風の環境である。 なおカラ売りの利益は、カラ売りした価格と買い戻した価格の差額から、借株料、経費、売買手数料を差し引いた残額である。借株料は流通量の多い一流銘柄なら年率0.4~1%だが、株価に影響を与えるコーポレートアクション(株式分割、合併等)や悪材料で需給が逼迫した時は5~10%、あるいはそれ以上になる。 ファンドが払う売買手数料はセールストレーダーを介した時は0.4%程度、自分でやる電子取引だと0.05~0.1%程度である』、「シトロン」の成果は「当たったり外れたりといった実績」、「レポートの的中率は54%」、上昇相場のなかではまずまずのようだ。
・『得意の中国案件で、地元ヘッジファンドに敗北  シトロンは中国案件に強く、ウォール・ストリート・ジャーナルによると、売り推奨した18社の中国企業のうち、15社の株価が70パーセント以上下がったという。しかし、今年、得意の中国市場で、中国系ヘッジファンドに手痛い敗北を喫した。 問題となったのは、中国でスターバックスの向こうを張って急成長してきたコーヒーチェーン、ラッキンコーヒー(瑞幸珈琲、福建省市廈門市)である。2018年1月に北京に1号店を出店して以来、2020年5月に6912店舗を有するまでに急成長を遂げ、米ナスダック(新興企業向け)市場に上場していた。 ウォール・ストリート・ジャーナルによると、ラッキンコーヒーの急成長に疑いの目を向けたのは、香港と北京に拠点を持つスノー・レイク・キャピタルだった。カリフォルニア大学バークレー校で数学と経済学の学位を取り、投資銀行クレディ・スイス・ファースト・ボストンやニューヨークのアジア向け投資ファンドで経験を積んだショーン・マが、2009年に創業した中国系ヘッジファンドだ。 スノー・レイク・キャピタルは、昨年10~12月にかけて1500人以上を動員し、ラッキンの全店舗の15%を訪問し、店内の顧客数を数え、大量のレシートを集め、1万1000時間以上のビデオを撮り、売上が捏造されていると指摘した。 今年1月31日、スノー・レイク・キャピタルから情報提供を受けた米系カラ売りファンド、マディ・ウォーターズは、89ページにわたるラッキンの売り推奨レポートを公表した。レポートの発表でラッキンの株価は17%下がり、32ドル49セントになった。また複数の法律事務所がラッキンの株主に対し、集団訴訟を提起するよう提案した。 一方、シトロン・リサーチは「マディ・ウォーターズには敬意を払うが、各種データやライバル社との話し合いによると、ラッキンの財務データは正しい。ラッキンの経営陣からの反応を待つ」として、同社の株への投資(買い持ち)を維持するという正反対の対応を取った。 ラッキンコーヒーは直ちに「疑惑をすべて否定する。顧客の注文はすべてオンラインであり、誤魔化しようがない」と反論した。 しかし4月2日、ラッキンコーヒーは2019年第2四半期から第4四半期にかけて、22億元(約339億円)の売り上げを水増ししていたことを発表し、5月12日までに銭治亜CEOと劉剣COOを解任した。 5月19日にはナスダックから上場廃止の通告を受けたことを公表した。上場が廃止されれば、株式は無価値になる』、「スノー・レイク・キャピタル」の調査が本格的なのには驚かされた。ただ、「シトロン」は従わずに失敗したようだ。
・『カラ売りファンドの新たな視点は参考になる  以上のとおり、アメリカ系カラ売りファンドの分析は当たることもあれば、外れることもある。アカデミックと言っていいほどの綿密な分析でエンロンの粉飾を見抜いた著名カラ売り投資家、ジム・チェイノスですら、時々予想を外し、反省の弁を述べたりしている。 チェイノスに比べると、シトロンは若干大雑把で、乱暴な印象を受ける。サイバーダインの売り推奨レポートの日本語版も、機械翻訳のようなおかしな日本語である。 なお「うんこ」はbullshit(たわごと、直訳は牛の糞)を日本語にしたものかと思って英語版を見てみたが、「UNKO」と書かれていた。チェイノスとシトロンの中間の立ち位置にいるのが、マディ・ウォーターズあたりだろう。 結局のところ、カラ売りファンドであろうとなかろうと、アナリストの分析を信じるかどうかは、もっぱら過去の実績次第である。ただカラ売りファンドは、常識にとらわれず、根本的なところから物事を調べていくので、新たな視点を与えてくれるのは間違いない。したがって、少なくとも耳を傾けてみる程度の価値はあるはずだ。(敬称略)』、「カラ売りファンドは、常識にとらわれず、根本的なところから物事を調べていくので、新たな視点を与えてくれるのは間違いない。したがって、少なくとも耳を傾けてみる程度の価値はあるはずだ」、その通りだ。

次に、本年1月29日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した東京経済東京支社情報部の井出豪彦氏による「ジャンク債に格下げの「ユニゾ」、負債3000億円で高まるデフォルトリスク」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/261183
・『中堅不動産会社のユニゾホールディングス(ユニゾHD)の債務不履行(デフォルト)リスクが注目されつつある。昨年6月に米投資ファンドのローン・スターと組んで上場企業初となる従業員による買収で非公開化したが、早くも危機に立たされている。ユニゾHDには複数の地銀が多額の融資を行っており、行方次第では地銀経営にも大きな打撃となる』、「非公開化」して1年足らずで「危機」とは、どういうことなのだろう。
・『1週間に2度の格下げでジャンク債に転落  昨年6月、東証1部をEBO(従業員による買収)で上場廃止となった中堅不動産会社の「ユニゾホールディングス(ユニゾHD)」(横浜市中区)の債務不履行(デフォルト)の可能性に金融機関や債券投資家が注目している。上場廃止から1年ともたず、破綻する可能性があるとの悲観論が一部で出ている。 JCR(日本格付研究所)は同社の長期発行体格付けを昨年12月21日に「BBB-」と1ノッチ下げたが、わずか1週間後の12月28日に「BB+」とさらに1ノッチ下げる異例の判断を行った。一般的に「BB+」以下の社債は投資不適格(いわゆる「ジャンク債」)に該当する。 JCRは格下げの理由について「12月21日以降も足元の業績及び財務状況に加え、これらの見通しなどについてさらに精査を行った。その結果、チトセア投資(筆者注:ユニゾHDを完全子会社化したペーパーカンパニー)を含めた実質的な財務構成の悪化状況、安定収益源であったオフィスビル売却やコロナ禍の影響などによるCF(同キャッシュフロー)創出力の低下、金融機関との関係強化の重要性が増していることなどを従来以上に格付けに反映させる必要があると判断し」たと説明している。 ユニゾHDの半期報告書(2020年4-9月期)が関東財務局に提出されたのは昨年12月18日の金曜日。上場廃止以降、極端に情報開示が減ったため、この報告書は銀行や投資家が渇望していたものだ。JCRは週末返上で内容を精査し、週明けの21日に格下げを決めた』、「1週間に2度の格下げでジャンク債に転落」、よほど実態が厳しいのだろう。
・『地銀への打撃から金融庁や日銀も関心  ところが、事情通によれば、その直後のタイミングで「ユニゾHDが取引行向けに説明会を実施し、2021年5月までに200億円程度の融資をお願いしたい」という要請を行ったというのだ。 今年5月といえば、26日に100億円の社債償還期日が到来する。さらに11月29日にも100億円の償還が控える。その合計は200億円で今回の要請額と一致する。資金繰りは常に「万が一の事態」に備えた余裕が必要だ。ユニゾHDが5月までに11月分も含めた社債償還資金を手当てしたいと考えたとしても不自然ではない。 この要請の内容をJCRがつかんだことが「金融機関との関係強化の重要性が増している」という文言と異例の再格下げにつながったと筆者はみる。つまり今年の社債償還すら危ないのではないかというわけだ。 ユニゾHDは上場廃止後、資産売却を進めているとはいえ、昨年9月末時点の連結バランスシート上の負債は3171億円に達する。このうち社債が1040億円、銀行借入金は1962億円と金融債務が大部分を占める。 社債は昨年11月27日に50億円償還されたので、残りは990億円。上場していた当時に公募で発行されたもので全額無担保。期限が最も先のもので27年11月(10年債、50億円)まである。 もともと国内の金融機関や機関投資家が保有していたとされるが、「投資不適格」が近づくにつれ、売り圧力が高まり、債券市場では額面を大きく下回る価格で取引されている。保有者の顔ぶれはすでに海外ファンド勢中心に変わっているという。 借入金についてはに達するとされ、一部の地銀や都道府県信連(JAバンク)のなかには50億円を超える融資残高を抱えているところもある。一方、かつてメインバンクだったみずほ銀行をはじめとする3メガの融資残高はすでにほぼゼロとされる。 このため万が一の場合には地域金融機関の経営に大きな打撃を与えかねず、「金融庁や日銀もユニゾ問題には重大な関心を持っている」(金融業界関係者)という。ただでさえ地銀は収益力の低下が指摘されており、コロナ禍で潜在的な不良債権が積み上がっている。そこに大口融資先の倒産が重なればタダゴトではなくなる可能性があるためだ』、「かつてメインバンクだったみずほ銀行をはじめとする3メガの融資残高はすでにほぼゼロ」、メガバンクが既に逃げているのに、「融資取引のある金融機関数は80以上」、とは「融資」を続けている金融機関は何を考えているのだろう。
・『ユニゾHDが掲げた金融債権者の保護  そもそも昨年ユニゾHDの上場企業初となるEBOが決まったとき、現在の混乱は想定されていなかった。 というのもチトセア投資によるTOB(株式公開買い付け)に際し、ユニゾHDが昨年2月10日に関東財務局に提出した「訂正意見表明報告書」では「本公開買付けに係る重要な合意に関する事項」に「(ウ)当社金融債権者保護に係る合意書」という項目が加わり、金融債権者の保護がうたわれたからだ。極めて重要な部分なので、以下に転記する。     ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 
(ウ)当社金融債権者保護に係る合意書  本買付条件等変更後の本公開買付けに関連して、公開買付者(筆者注:チトセア投資)及び当社(同ユニゾHD)は、当社の金融債権者(担保を有する債権者であるか、無担保の債権者であるか問いません。)の保護を担保する観点より、令和2年(2020年)2月9日付で、以下の合意書を締結しております。  合意書 株式会社チトセア投資(以下「甲」という。)とユニゾホールディングス株式会社(以下「乙」という。)は、以下のとおり、甲による乙株式に対する公開買付け(以下「本公開買付け」という。)に関連して、合意書(以下「本合意書」という。)を締結する。  第1条(既存金融債務の保全) 1. 甲及び乙は、剰余金の配当、貸付けその他方法の如何にかかわらず、乙から甲に対して金銭その他の資産の移動を行う場合には、当該移動に先立ち、乙の金融機関に対する既存の借入金に係る債務及び乙の社債権者に対する債務(総称して、以下「既存金融債務」という。)について、担保差入れその他の方法により債権保全を図るか、又は、期限前弁済を行うことに合意する。(以下略)
 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
契約上では、「金融債権者の保護」が図られている。
・『巨額のカネが流出し実質的に債務超過か  ところが、この合意書が破られたことから問題が起きたわけだ。 チトセア投資がEBOに際し、20年4月9日に米ローン・スターグループから調達した資金は借り入れ1510億円とA種優先株式550億円の合計2060億円。 そのうち、借り入れの返済期限は180日後のため10月6日に返済された。 一方、A種優先株も180日間の「無配期間」を超えると年20%以上という、とんでもない額の配当を払わなければいけない契約のため、同日987億円で買い入れ消却した。買い入れに際し80.6%ものプレミアムを払うというのもチトセア投資とローン・スターとの間であらかじめ決められていた。 借入金の金利をいくら払ったかは不明だが、借り入れ元本返済とA種優先株買い入れだけでも2497億円のキャッシュがチトセア投資からローン・スター側に渡ったことになる。 この原資はどこからきているのか。チトセア投資は19年12月にユニゾHDを買収するために設立されたペーパーカンパニーで事業収益はゼロ。というわけで、ユニゾHDからチトセア投資に資金移動が行われたと考えるほかないわけだ。 実際、ユニゾHDの半期報告書からは、短期貸付金2160億円と配当金支払531億円の合計2692億円の資金流出が確認できる。 一方、既存金融債務の繰り上げ弁済や担保提供などの保全が行われた形跡はなく、これは前述の「金融債権者保護に係る合意書」に違反している。 これまで社債を額面割れで買い集めてきた外資ファンドのなかには、はなからデフォルトを織り込み、この合意書違反をタテに訴訟を起こしてローン・スターからカネを取り戻し満額償還させるプランを描く向きもあるようだ。 いずれにしても2000億円を超える親会社(チトセア投資)向け貸付金に資産価値はないも同然で、保有する賃貸不動産の含み益262億円(昨年9月末時点)を考慮してもユニゾHDは実質的に債務超過に陥ったとの見方が広がっている。 仮に5月までの融資要請に銀行が応じる場合も担保などでのフル保全が前提となろうが、それでも合意書違反のユニゾHDに対してはアレルギー反応が強いだろう。 なお、ダイヤモンド・オンライン編集部はユニゾHDに対し、合意書違反や融資要請に関する質問状を送ったものの、期限までに回答はなかった』、「チトセア投資」は「米ローン・スターグループから調達した資金」に対し、初めから条件通り高い負担で返済するのではなく、「買い入れ消却」するつもりであったとすれば、初めから仕組まれたスキームだった可能性もある。「これまで社債を額面割れで買い集めてきた外資ファンド」などがどう動くのか、大いに注目される。

第三に、2月20日付け日刊ゲンダイが掲載した金融ジャーナリストの小林佳樹氏による「ユニゾHDに経営不安説 地域金融機関は固唾のみ行方見守る」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/285460
・『いま地域金融機関経営者が背筋が寒くなる思いで見守る企業がある。オフィスやビジネスホテルを運営する中堅不動産会社「ユニゾホールディングス(HD)」(横浜市中区)だ。地銀幹部によると「ユニゾの大口社債権者である香港のファンドが質問状を送っており、場合によっては会社更生法の申し立てを行う可能性があるのです。期限は今月末、臨戦態勢です」というのだ。 もしこのファンドが実際に申し立てを行い、裁判所が受理した場合、地域金融機関のユニゾ向け融資や同社の社債は、管財人の管理下に置かれることになる。ユニゾの資産状況によるが更生手続きの結果、地域金融機関の債権が減価することは避けられそうにない。 ユニゾはもともと、みずほフィナンシャルグループ(FG)の親密企業で、収益性の高い物件を多数保有する優良企業だった。そこにまず目を付けたのがHISの澤田秀雄氏で、2019年7月にユニゾに買収を仕掛けた。これに対してユニゾはホワイトナイトとして投資ファンドを呼び込み切り返した』、「ユニゾ」の「EBO」が「HISの澤田秀雄氏」のTOBへの対抗から始まったようだ。
・『逆転劇を仕掛けたのは、かつてみずほFGで佐藤博康氏(現会長)とトップの座を争った異才のバンカー小崎哲資・ユニゾHD前社長だ。「小崎氏は飄々とした風貌もあるが、佐藤会長と旧興銀同期でFG副社長まで上り詰めた切れ者として知られている」(みずほ関係者)。 しかし、ここからユニゾに対する外部資本の買収攻勢はさらにヒートアップしてくる。対抗する小崎氏は資産売却を進める一方、従業員による買収(EBO)を行い、昨年6月に株式を非公開化。経営刷新で小崎氏は退任した。 だが一連の買収対抗策でユニゾの財務内容は悪化し、資金繰りもタイトになっている。「ユニゾは5月までに200億円の融資借り換え、11月に100億円の社債償還を控えている」(地銀幹部)という。ユニゾの取引金融機関は88社(昨年12月時点)で、大半が地銀で占められている。また、「社債は信用金庫などが多数保有している」(同)とされる。ユニゾにもしものことがあれば地域金融機関に甚大な影響が及びかねない』、EBOが成功、「小崎哲資」氏は通常では社長を続ける筈なのに、「経営刷新で」「退任した」というのは、解せない。かつては超優良企業だった「ユニゾ」が、「EBO]で「財務内容は悪化」、「メガンク」は皆手を引いたのに、「取引金融機関は88社」は依然として、取引を継続していたというのは、お粗末な話だ。
タグ:小林佳樹 「これまで社債を額面割れで買い集めてきた外資ファンド」などがどう動くのか、大いに注目される。 かつては超優良企業だった「ユニゾ」が、「EBO]で「財務内容は悪化」、「メガンク」は皆手を引いたのに、「取引金融機関は88社」は依然として、取引を継続していたというのは、お粗末な話だ。 当社金融債権者保護に係る合意書 EBOが成功、「小崎哲資」氏は通常では社長を続ける筈なのに、「経営刷新で」「退任した」というのは、解せない 「ユニゾ」の「EBO」が「HISの澤田秀雄氏」のTOBへの対抗から始まったようだ 日刊ゲンダイ 「チトセア投資」は「米ローン・スターグループから調達した資金」に対し、初めから条件通り高い負担で返済するのではなく、「買い入れ消却」するつもりであったとすれば、初めから仕組まれたスキームだった可能性もある 金融債権者の保護 「かつてメインバンクだったみずほ銀行をはじめとする3メガの融資残高はすでにほぼゼロ」、メガバンクが既に逃げているのに、「融資取引のある金融機関数は80以上」、とは「融資」を続けている金融機関は何を考えているのだろう。 「1週間に2度の格下げでジャンク債に転落」、よほど実態が厳しいのだろう。 「非公開化」して1年足らずで「危機」とは、どういうことなのだろう。 ダイヤモンド・オンライン 「ジャンク債に格下げの「ユニゾ」、負債3000億円で高まるデフォルトリスク」 井出豪彦 た経済小説『カラ売り屋、日本上陸』 「カラ売りファンドは、常識にとらわれず、根本的なところから物事を調べていくので、新たな視点を与えてくれるのは間違いない。したがって、少なくとも耳を傾けてみる程度の価値はあるはずだ」、その通りだ 「シトロン」の成果は「当たったり外れたりといった実績」、「レポートの的中率は54%」、上昇相場のなかではまずまずのようだ。 黒木 亮 「スノー・レイク・キャピタル」の調査が本格的なのには驚かされた。ただ、「シトロン」は従わずに失敗したようだ 株式市場はややもすると、一時的な熱気で暴騰する銘柄も少なくないだけに、「カラ売りファンド」は市場に冷静さを取り戻させる機能もある 「日本企業を「汚物扱い」した米国ファンドの正体 挑発したり貶めたりして獲物に食らいつく」 東洋経済オンライン 「ユニゾHDに経営不安説 地域金融機関は固唾のみ行方見守る」 (その1)(日本企業を「汚物扱い」した米国ファンドの正体 挑発したり貶めたりして獲物に食らいつく、ジャンク債に格下げの「ユニゾ」 負債3000億円で高まるデフォルトリスク、ユニゾHDに経営不安説 地域金融機関は固唾のみ行方見守る) 買収ファンド
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