不動産(その8)(JTB エイベックスの本社ビルを相次いで取得 海外ファンドが日本の不動産に「強気」になる理由、築40年超「老朽マンション」丸ごと建て替えの顛末 イトーピアがブリリアタワーに生まれ変わる日、実は続出「マンション管理会社が突然撤退」の怖さ 管理組合と「立場逆転」 大きな転換期に) [産業動向]
不動産については、8月2日に取上げた。今日は、(その8)(JTB エイベックスの本社ビルを相次いで取得 海外ファンドが日本の不動産に「強気」になる理由、築40年超「老朽マンション」丸ごと建て替えの顛末 イトーピアがブリリアタワーに生まれ変わる日、実は続出「マンション管理会社が突然撤退」の怖さ 管理組合と「立場逆転」 大きな転換期に)である。
先ずは、10月1日付け東洋経済Plus「JTB、エイベックスの本社ビルを相次いで取得 海外ファンドが日本の不動産に「強気」になる理由」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/28337?mtest=b&utm_campaign=EDtkprem_2110&utm_content=459435&utm_medium=article&utm_source=edTKO#contd
・『海外マネーが日本の不動産市場に流れ込んでいる。国内投資家と違い、リスクをはらむ物件に対しても投資をいとわない投資家たちの実像とは。 JR浜松町駅から東京モノレールで1駅。東京湾を望む天王洲アイル駅に直結する20階建ての高層ビルに、旅行代理店大手JTBは本社を構える。 8月末、JTBはこのビルを売却した。買い手企業は公表されていないが、イギリスの不動産ファンド「サヴィルズ」系列のファンドが約200億円で取得したことが東洋経済の取材でわかった。JTBの広報担当者は「守秘義務があるため回答できない」としている。 2021年にはビル1棟で数百億円や数千億円の不動産売買が成立しており、決して高額な取引ではない。それでも不動産業界でこの取引が話題になったのは「天王洲」という立地だ』、どういうことなのだろう。
・『割安でも天王洲には手を出さない 「どれだけ物件価格が割安でも、天王洲には手を出さない」 別の不動産ファンドの幹部はこぼす。 天王洲は住所こそ東京都品川区だが、都心部へのアクセスは東京モノレールとりんかい線に頼る。JR山手線や地下鉄駅が最寄りのオフィス街と比べて交通利便性に劣るため、オフィス需要が弱く、景気後退期には空室増や賃料下落の影響を受けやすいとされている。 JTBはビル売却後もリースバック方式で入居を続ける。リースバック後の推定賃料から割り戻した期待利回りは3%前半から中盤。2%台で流通する都心部のビルと比較すれば収益面では一見上回っているが、都心のビルに比べて賃料下落や空室が埋まらないリスクが相対的に高い臨海部に立つことを考慮すると、高利回りだからといって容易に手が出せる案件ではない。 JTBビルをめぐる取引は、リスクをはらむ物件に対しても投資をいとわない海外不動産ファンドの強気な投資姿勢を象徴する。コロナ禍の混乱とは一線を画し、彼らは投資の手を緩めない。 2021年3月、近鉄グループホールディングスが国内のホテル8棟をアメリカの不動産ファンド大手「ブラックストーン・グループ」に売却すると発表した。売却価格は非公表だが、帳簿価格は8棟で計423億円だ。 ブラックストーンが近鉄グループと接触したのは2020年春ごろにさかのぼる。初の緊急事態宣言にも動じず、同社はすでにコロナ禍の収束を見越したホテル投資を検討していた。リーマンショックのような金融危機と異なり、経済の落ち込みは一時的にすぎないという判断から、稼働が落ち込んだホテルを積極的に物色していた。 2021年7月には、ドイツの不動産ファンド「パトリツィア」が日本で本格的に不動産投資を行うと表明した。同ファンドはヨーロッパを中心に470億ユーロ(約6兆円、2021年3月末時点)の不動産を運用する「クジラ」だ。賃貸マンションやオフィス、インダストリアル(物流施設、工場、データセンター、研究開発施設など)分野を対象に、今後3~4年以内に日本で3000億円規模の投資を行う予定だ。 アメリカの不動産サービス大手JLLによれば、海外機関投資家による日本への不動産投資額は2020年に1兆5548億円を記録し、前年から1.5倍以上増加した。国内の不動産投資額の34%を海外勢が占めた計算になり、2007年以来の水準となる。2021年上半期の投資額は減少したが、これは市場で流通する不動産が少ないためで、投資需要そのものは引き続き旺盛だ』、「海外機関投資家による日本への不動産投資額は2020年に1兆5548億円を記録し、前年から1.5倍以上増加した。国内の不動産投資額の34%を海外勢が占めた計算に」、かなり重要なプレイヤーになったようだ。
・『存在感が高まる日本の不動産 日本に資金が集まる背景には、コロナ禍で経済や社会が混乱した欧米の代替市場として、相対的に影響が軽微なアジア地域に注目が集まっていることがある。中でも「シンガポールは不動産市場が小さく、オーストラリアもオフィスビルや賃貸マンションのストックが少ない」(JLLの内藤康二リサーチディレクター)。そこで人口が多く、投資対象となりうる不動産も豊富な日本の存在感が高まった。 日本の金融機関からの調達金利の低さも魅力だ。不動産ファンドは投資家から集めた出資金で不動産を取得するが、実際は購入資金の過半を金融機関からの融資で賄う。三井住友トラスト基礎研究所の調査では、日本の不動産を投資対象とする私募ファンドの平均LTV(ローントゥバリュー、不動産価格に対する借入金の割合)は7月時点で平均52%。取得する不動産の利回りが低くても、それ以上に金融機関からの調達金利が低ければ利ざやが取れる。 調達条件はファンドや金融機関によりさまざまだが、日本の不動産に対してはおおむね0.5~1%弱の水準でシニアローン(ほかの債券に比べて返済順位が優先されるが、比較的金利が低い)を調達できている。「シンガポールの金融機関から調達した場合、金利は1.5%前後。香港は1.7%、ソウルなら3%だ」(JLLの内藤氏)とされ、日本の金利の低さが際立つ。 果敢な投資の背景には、低金利のみならず、ファンド運用担当者が描く投資戦略も関係しているという指摘がある。 冒頭のJTBビルはその好例だ。ある不動産仲介会社の幹部は、「リースバック期間満了後にJTBが退去した場合、より高い賃料で後継テナントを誘致できれば(海外ファンドのサヴィルズにとって)高値づかみとは言い切れない」と指摘する。 リースバック期間は5年や10年といった長期が通例だが、この幹部によれば、JTBのリースバック期間はそれより短いという。交通アクセスが悪く、後継テナントの埋め戻しに苦労するのではという見方に対しては、「天王洲から羽田空港まではモノレールで1本。モノは言いよう」と返す。 ▽エイベックスビル取得は高値づかみか(「720億円は高すぎる」 3月にカナダの不動産ファンド「ベントール・グリーンオーク」が約720億円で取得したエイベックスの本社ビル(東京・南青山)について、同ビルの取得を検討したある不動産会社幹部はこう漏らす。 エイベックスビルは複数の企業が取得を検討したが、撮影スタジオなど賃料が見込みづらい用途が点在し、大型ビルの場合、延べ床面積に占める賃貸可能面積は70%前後が通常だが、エイベックスビルでは50%強しかなかった。大型ビルの割に賃料が見込めないため、提示できる金額が伸び悩んだ。 グリーンオークはなぜ高値を提示できたのか。グリーンオークの広報担当者からのコメントは得られなかったが、前出の仲介会社幹部は「1棟借りをするテナントの確保に自信があったのでは」と指摘する。本社ビルを探す企業に照準を定め、ビルを1棟借りできる希少な機会と考えたのではないかという見方だ。 複数の不動産関係者によれば、2022年3月に予定されているエイベックスの退去後、すでに後継テナントがビルを1棟借りする方向で交渉が進んでいるという。成約した場合の賃料は坪単価で4万円超と、南青山のオフィスビルとしては高水準となる可能性がある。1棟借りの場合は実質的に延べ床面積すべてを賃貸することになるため、賃貸可能面積の少なさというデメリットは薄れる。 グリーンオークは後継テナントが見つからなかった場合に備えて別の手も打っていた。別の海外不動産ファンドの首脳は「入札時からゼネコンと組み、ビルを建て替える計画を描いていた」と打ち明ける。建て替えによって容積率や賃貸可能面積が増えれば、工事費や工事期間中の機会損失を考慮しても、収益が伸びる余地がある。 海外不動産ファンドの元運用担当者は「日本企業は高値づかみを嫌うが、外資系企業(外資系投資ファンド)は投資家から預かった資金を使わないまま返還することを嫌う。慎重になるあまり投資機会を逃す『見逃し三振』より、結果的に高値づかみだったとしてもバットを振るほうが評価される」と分析する。コロナショックをもろともしない海外投資家たちによる不動産の奪い合いは、終わりそうにない』、「日本の」「金融機関」からは「おおむね0.5~1%弱の水準で」「調達できている」。「シンガポールの金融機関から調達した場合、金利は1.5%前後。香港は1.7%、ソウルなら3%」、確かに日本の金融機関の貸出金利は目立って低いようだ。「グリーンオークは」、「エイベックスの退去後、すでに後継テナントがビルを1棟借りする方向で交渉が進んでいるという。成約した場合の賃料は坪単価で4万円超と、南青山のオフィスビルとしては高水準となる可能性がある。1棟借りの場合は実質的に延べ床面積すべてを賃貸することになるため、賃貸可能面積の少なさというデメリットは薄れる」、「後継テナントが見つからなかった場合に備えて別の手も打っていた・・・「入札時からゼネコンと組み、ビルを建て替える計画を描いていた」、代替策を周到に用意する外資系の積極的な姿勢は、日系も学ぶべきだ。
次に、10月14日付け東洋経済オンライン「築40年超「老朽マンション」丸ごと建て替えの顛末 イトーピアがブリリアタワーに生まれ変わる日」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/461741
・『築40年超の都会の老朽マンションが本当に建て替わるのか――。 JR山手線「浜松町」駅の東側、旧芝離宮恩賜庭園を越えた場所に立つ「イトーピア浜離宮」(東京・港区)。1979年に竣工した総戸数328戸のマンションは目下、全420戸のタワーマンションへの建て替え工事が進む。 老朽マンションの建て替えが社会問題化して久しい。だが、国内にあるすべてのマンション約675万戸のうち、実際の建て替え事例は、準備中を含めても今年4月時点でわずか303件だ。オーナー間の合意形成に手間取ったり、立地が悪く建て替えの事業化が困難だったりすることが、建て替えが進まない理由に挙げられる。 翻って、イトーピアは好立地かつ容積率に余裕があり、オーナーの多くは建て替えに賛成。好条件が揃っており、すぐにでも建て替えへと移行できたように思える。が、建て替えが正式に決議されるまでの道のりは決して平坦ではなかった。何が壁として立ちはだかったのか。 週刊東洋経済10月16日号(10月11日発売)では「実家のしまい方」を特集。老朽化した戸建てやマンション、空き家・空き地問題について、広く取り上げている』、「好条件が揃っており、すぐにでも建て替えへと移行できたように思える。が、建て替えが正式に決議されるまでの道のりは決して平坦ではなかった」、どういうことだろう。
・『契機は2011年の東日本大震災だった 「デベロッパーやコンサルタントへの丸投げではいけない。われわれの手で建て替えを実現させるという意志が大切だ」。 旧イトーピアの管理組合理事長として尽力した林俊幸さん(71)は、建て替え実現の秘訣について、オーナーの主体性が重要だと説く。 イトーピアで建て替えの議論が始まったのは、2000年代中頃。築25年を超えていたが、管理状態は良好で居住環境にも不満はなく、建て替え機運は高まらないまま時は流れた。 転機は2011年3月に発生した東日本大震災だ。建物の損傷は軽微だったが、老朽化や耐震性不足への懸念が頭をもたげた。 耐震補強、免震改修、建て替えなどの方策を議論し、建て替えが最も合理的と結論。アンケートでは約7割のオーナーが建て替えに賛成したため、2014年11月、本丸である建て替え決議の前段階にあたる推進決議を管理組合総会に諮った。 だが、賛成率が規定に届かず、否決に。反対票は多くなかったが、建て替えに関心を持たず、賛否を表明しなかったオーナーがいたためだ。「理事会とオーナーとの間でコミュニケーションが不足していた」(林さん)。建て替え説明会は総会直前に開催したきりで、無関心層への接触が不足していた。 まとまりかけた意見を無駄にしたくない、と当時理事だった林さんは理事長に名乗りを上げた。就任後に意識したのは人任せにしないこと。イトーピアは賃貸住戸が大半で、オーナーの8割以上は外部に居住していた。これまでの理事会では、遠方のオーナーとの連絡はコンサルタントに任せがちで、主体的に動く雰囲気ではなかったという。 そこで説明会のほかに、遠隔地のオーナーとはチャットで連絡を取り、時には海外の所有者に英語や中国語で建て替えの意義を説いた。行政との意見交換やセミナーにも頻繁に出向いた結果、建て替えに協力するデベロッパーのコンペを自ら開催できるほど、知識をつけた。 2015年秋からのコンペにはデベロッパー6社が名乗りを上げ、各社の提案を比較検討した結果、オーナーにとって最も条件のよい、東京建物を主体とするグループを選定した』、当初は、「賛成率が規定に届かず、否決に。反対票は多くなかったが、建て替えに関心を持たず、賛否を表明しなかったオーナーがいたためだ・・・建て替え説明会は総会直前に開催したきりで、無関心層への接触が不足していた」、「イトーピアは賃貸住戸が大半で、オーナーの8割以上は外部に居住」、「これまでの理事会では、遠方のオーナーとの連絡はコンサルタントに任せがちで、主体的に動く雰囲気ではなかったという」、やはり「オーナー」への丁寧な説明が必要だ。
・『好況で一転、転出しないオーナー 建て替えが既定路線になりかけた直後、ある問題が浮上した。当初計画では、オーナーの20%は建て替え後のタワーマンションを保有せず転出する、というのが前提だった。ところが、マンション市況の好転などを受けて、保有を希望するオーナーが増加。2016年秋に行った意向調査では、転出を希望するオーナーは5%にも満たなかった。 困惑したのは東京建物だ。建て替えで増えた住戸を分譲することで収益を得る同社にとって、転出するオーナーの減少は販売住戸の減少を意味し、事業採算性が狂う。そのため、オーナー側に負担を求めた。 むろん、オーナーも易々とは譲れない。イトーピアは建て替えに際して容積率の割り増しを受けるが、その条件として各住戸の面積を25平方メートル以上にする必要があった。イトーピアには20平方メートルのワンルーム住戸が複数存在し、そのオーナーは当初から5平方メートル分の増床費用が持ち出しとなる。さらなる負担増はハードルが高い。 落としどころを探る中で合い言葉となったのは、「満足の最大化より不満の最小化」(林さん)だ。 ワンルーム住戸のオーナーには、年金暮らしの高齢者もいるため、これ以上の負担増は避けたかった。結局、当初は一般分譲価格より有利な価格で増床できる権利を全オーナーに与える予定だったが、ワンルームのオーナーのみに限定。増床できないオーナーからは不満も漏れたが、5平方メートルの増床費用に耐えられず、転出を余儀なくされるオーナーを出さないことを優先した。 想定外の事態はその後も続いた。建て替えが正式に事業化する直前の2017年10月、大規模マンションへ保育所の設置を求める通達が国から発せられた。待機児童解消を掲げる港区からも保育所の設置を要請され、当初の計画になかった保育所の設置スペース確保が急務となった。保育所を設置すれば、やはり東京建物の販売住戸が減る。 さらには法改正によって、外壁材に含まれるアスベストの除去が義務化された。イトーピアの場合、解体工事とは別途、アスベスト除去工事を行うと、工事費は見積もり時点より1億円以上も膨らんでしまう』、好条件のように見えても、様々な問題が出てくるものだ。
・『配置を効率化、何とか販売住戸増やす 膝詰めの協議を重ねた結果、ワンルーム住戸を複数保有するオーナーは、建て替え後のタワーマンションでは面積の大きいファミリー住戸1つだけを保有することで手を打った。住戸配置の効率性が高まり、東京建物の販売住戸が増えたことで、コスト増を吸収できた。こうして2018年10月、満を持して建て替え決議を上程。賛成率約85%で可決された。 都心かつ容積率の割り増しを受けられるなど、条件に恵まれていたイトーピアでさえ、オーナーの負担をめぐって幾度もアクシデントに見舞われた。それでも、オーナー間の合意形成やデベロッパーとの交渉も理事会が主体的に行ったことが奏功したと、林さんは振り返る。 建て替え後、名称は「ブリリアタワー浜離宮」へと変わり、2023年9月に竣工となる予定だ』、「オーナー間の合意形成やデベロッパーとの交渉も理事会が主体的に行ったことが奏功」、やはり他人任せにせず、主体的に取り組む必要がありそうだ。
第三に、11月8日付け東洋経済オンライン「実は続出「マンション管理会社が突然撤退」の怖さ 管理組合と「立場逆転」、大きな転換期に」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/466647
・『「明日から清掃やゴミ出しの管理はどうすればいいのか」 東京都渋谷区のマンションで理事長を務める男性は途方に暮れた。独立系の管理会社が、9月末をもって突然撤退したためだ。 管理会社は契約上、撤退の3カ月前までに管理組合に通告する必要がある。理事長の元に管理会社の担当者からメールが送られてきたのは、きっかり3カ月前にあたる6月末だった。 この管理会社には20年前から管理を委託していたが、委託費は当時の安い料金で据え置かれたまま。「早く手を引きたかったのだろう」と男性。急いで後継の管理会社を探し、10月下旬に地場企業への委託が決まった』、「管理会社」は儲かるビジネスと思っていたが、必ずしもそうでもないようだ。
・『管理会社からの「三行半」が続出 今やマンション管理組合と管理会社の立場は逆転した。 これまでは管理組合が管理会社を選ぶ側にあった。「お前たちの代わりなんて、いくらでもいる」。管理会社に捨てぜりふを吐いて、リプレース(管理会社の変更)を実施した管理組合もかつてはあった。 だが現在は、管理会社が管理組合に「三行半(みくだりはん)」をつきつけるケースが続出している。 三行半の背景には、管理会社側の厳しい経営状況がある。これまでは委託費を安く提案し、管理戸数の獲得に邁進してきた。管理を担えば修繕工事など派生する仕事の受注も見込めるためだ。 ただ、ここ数年、人件費や資材費の上昇で管理会社の安値攻勢は限界を迎えた。大手管理会社の幹部は「社員の人手が不足しているため、管理戸数を伸ばすよりも、採算の取れる物件を厳選して受託している」と話す。 変調はほかにもある。マンションに襲いかかる「2つの老い」だ。 まず、マンションの老朽化が進行し、1回目の大規模修繕工事のメドとされてきた築12年を経過したマンションが全体の8割に達している。同時に、管理組合の理事の引き受け手も高齢化しており、「理事長の後継者がいない」と悩む管理組合が増えた。 さらに、新型コロナウイルスの影響で、新たなトラブルが多発している。 「風鈴がうるさくて仕事に集中できない」「掃除機の音がうるさい」「ドライヤーの音が気になる」 騒音は昔からの典型的なトラブルだが、住民の自宅滞在時間が増えたことで神経質な反応がみられるようになった。 タバコの煙を巡るトラブルや、共用部分の置き配問題などが深刻化しているマンションも少なくない』、「人件費や資材費の上昇で管理会社の安値攻勢は限界を迎えた。大手管理会社の幹部は「社員の人手が不足しているため、管理戸数を伸ばすよりも、採算の取れる物件を厳選して受託」、「マンションの老朽化が進行し、1回目の大規模修繕工事のメドとされてきた築12年を経過したマンションが全体の8割に」、「老朽化が」ここまで「進行」しているとは驚きだ。
・『上がり続ける管理費や修繕積立金 管理費や修繕積立金も上がり続けている。賃金の上昇や資材価格の高騰が背景にある。東京カンテイの調査によると、2020年の首都圏マンションの管理費、修繕積立金はともに、6年前に比べて約20%も上昇している。 急激な環境の変化に、国や業界団体も対策を打ち出す。国土交通省は今年6月に「マンション標準規約」を改正し、WEB総会や置き配の留意事項を明確にした。 国交省は来年4月にも「管理計画認定制度」を実施し、長期修繕計画の作成など管理組合の運営状況について適否を判断する。マンション管理業協会も来年4月に、管理組合の運営状況を点数化する新制度を実施する。 こういった新制度への準備を急ぐ管理組合は多いが、新制度の乱立に戸惑いを見せる関係者もいる。 マンション管理のあり方が大きく変わろうとしている。この「転換期」にどう対応するべきか。マンション住民や管理組合、そして管理会社など関係者は柔軟な姿勢で対応することが求められる』、「マンション管理のあり方」では、これまでは不適切なケースが問題化したが、今後は適正・健全な方向に変わるとすれば望ましい。
先ずは、10月1日付け東洋経済Plus「JTB、エイベックスの本社ビルを相次いで取得 海外ファンドが日本の不動産に「強気」になる理由」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/28337?mtest=b&utm_campaign=EDtkprem_2110&utm_content=459435&utm_medium=article&utm_source=edTKO#contd
・『海外マネーが日本の不動産市場に流れ込んでいる。国内投資家と違い、リスクをはらむ物件に対しても投資をいとわない投資家たちの実像とは。 JR浜松町駅から東京モノレールで1駅。東京湾を望む天王洲アイル駅に直結する20階建ての高層ビルに、旅行代理店大手JTBは本社を構える。 8月末、JTBはこのビルを売却した。買い手企業は公表されていないが、イギリスの不動産ファンド「サヴィルズ」系列のファンドが約200億円で取得したことが東洋経済の取材でわかった。JTBの広報担当者は「守秘義務があるため回答できない」としている。 2021年にはビル1棟で数百億円や数千億円の不動産売買が成立しており、決して高額な取引ではない。それでも不動産業界でこの取引が話題になったのは「天王洲」という立地だ』、どういうことなのだろう。
・『割安でも天王洲には手を出さない 「どれだけ物件価格が割安でも、天王洲には手を出さない」 別の不動産ファンドの幹部はこぼす。 天王洲は住所こそ東京都品川区だが、都心部へのアクセスは東京モノレールとりんかい線に頼る。JR山手線や地下鉄駅が最寄りのオフィス街と比べて交通利便性に劣るため、オフィス需要が弱く、景気後退期には空室増や賃料下落の影響を受けやすいとされている。 JTBはビル売却後もリースバック方式で入居を続ける。リースバック後の推定賃料から割り戻した期待利回りは3%前半から中盤。2%台で流通する都心部のビルと比較すれば収益面では一見上回っているが、都心のビルに比べて賃料下落や空室が埋まらないリスクが相対的に高い臨海部に立つことを考慮すると、高利回りだからといって容易に手が出せる案件ではない。 JTBビルをめぐる取引は、リスクをはらむ物件に対しても投資をいとわない海外不動産ファンドの強気な投資姿勢を象徴する。コロナ禍の混乱とは一線を画し、彼らは投資の手を緩めない。 2021年3月、近鉄グループホールディングスが国内のホテル8棟をアメリカの不動産ファンド大手「ブラックストーン・グループ」に売却すると発表した。売却価格は非公表だが、帳簿価格は8棟で計423億円だ。 ブラックストーンが近鉄グループと接触したのは2020年春ごろにさかのぼる。初の緊急事態宣言にも動じず、同社はすでにコロナ禍の収束を見越したホテル投資を検討していた。リーマンショックのような金融危機と異なり、経済の落ち込みは一時的にすぎないという判断から、稼働が落ち込んだホテルを積極的に物色していた。 2021年7月には、ドイツの不動産ファンド「パトリツィア」が日本で本格的に不動産投資を行うと表明した。同ファンドはヨーロッパを中心に470億ユーロ(約6兆円、2021年3月末時点)の不動産を運用する「クジラ」だ。賃貸マンションやオフィス、インダストリアル(物流施設、工場、データセンター、研究開発施設など)分野を対象に、今後3~4年以内に日本で3000億円規模の投資を行う予定だ。 アメリカの不動産サービス大手JLLによれば、海外機関投資家による日本への不動産投資額は2020年に1兆5548億円を記録し、前年から1.5倍以上増加した。国内の不動産投資額の34%を海外勢が占めた計算になり、2007年以来の水準となる。2021年上半期の投資額は減少したが、これは市場で流通する不動産が少ないためで、投資需要そのものは引き続き旺盛だ』、「海外機関投資家による日本への不動産投資額は2020年に1兆5548億円を記録し、前年から1.5倍以上増加した。国内の不動産投資額の34%を海外勢が占めた計算に」、かなり重要なプレイヤーになったようだ。
・『存在感が高まる日本の不動産 日本に資金が集まる背景には、コロナ禍で経済や社会が混乱した欧米の代替市場として、相対的に影響が軽微なアジア地域に注目が集まっていることがある。中でも「シンガポールは不動産市場が小さく、オーストラリアもオフィスビルや賃貸マンションのストックが少ない」(JLLの内藤康二リサーチディレクター)。そこで人口が多く、投資対象となりうる不動産も豊富な日本の存在感が高まった。 日本の金融機関からの調達金利の低さも魅力だ。不動産ファンドは投資家から集めた出資金で不動産を取得するが、実際は購入資金の過半を金融機関からの融資で賄う。三井住友トラスト基礎研究所の調査では、日本の不動産を投資対象とする私募ファンドの平均LTV(ローントゥバリュー、不動産価格に対する借入金の割合)は7月時点で平均52%。取得する不動産の利回りが低くても、それ以上に金融機関からの調達金利が低ければ利ざやが取れる。 調達条件はファンドや金融機関によりさまざまだが、日本の不動産に対してはおおむね0.5~1%弱の水準でシニアローン(ほかの債券に比べて返済順位が優先されるが、比較的金利が低い)を調達できている。「シンガポールの金融機関から調達した場合、金利は1.5%前後。香港は1.7%、ソウルなら3%だ」(JLLの内藤氏)とされ、日本の金利の低さが際立つ。 果敢な投資の背景には、低金利のみならず、ファンド運用担当者が描く投資戦略も関係しているという指摘がある。 冒頭のJTBビルはその好例だ。ある不動産仲介会社の幹部は、「リースバック期間満了後にJTBが退去した場合、より高い賃料で後継テナントを誘致できれば(海外ファンドのサヴィルズにとって)高値づかみとは言い切れない」と指摘する。 リースバック期間は5年や10年といった長期が通例だが、この幹部によれば、JTBのリースバック期間はそれより短いという。交通アクセスが悪く、後継テナントの埋め戻しに苦労するのではという見方に対しては、「天王洲から羽田空港まではモノレールで1本。モノは言いよう」と返す。 ▽エイベックスビル取得は高値づかみか(「720億円は高すぎる」 3月にカナダの不動産ファンド「ベントール・グリーンオーク」が約720億円で取得したエイベックスの本社ビル(東京・南青山)について、同ビルの取得を検討したある不動産会社幹部はこう漏らす。 エイベックスビルは複数の企業が取得を検討したが、撮影スタジオなど賃料が見込みづらい用途が点在し、大型ビルの場合、延べ床面積に占める賃貸可能面積は70%前後が通常だが、エイベックスビルでは50%強しかなかった。大型ビルの割に賃料が見込めないため、提示できる金額が伸び悩んだ。 グリーンオークはなぜ高値を提示できたのか。グリーンオークの広報担当者からのコメントは得られなかったが、前出の仲介会社幹部は「1棟借りをするテナントの確保に自信があったのでは」と指摘する。本社ビルを探す企業に照準を定め、ビルを1棟借りできる希少な機会と考えたのではないかという見方だ。 複数の不動産関係者によれば、2022年3月に予定されているエイベックスの退去後、すでに後継テナントがビルを1棟借りする方向で交渉が進んでいるという。成約した場合の賃料は坪単価で4万円超と、南青山のオフィスビルとしては高水準となる可能性がある。1棟借りの場合は実質的に延べ床面積すべてを賃貸することになるため、賃貸可能面積の少なさというデメリットは薄れる。 グリーンオークは後継テナントが見つからなかった場合に備えて別の手も打っていた。別の海外不動産ファンドの首脳は「入札時からゼネコンと組み、ビルを建て替える計画を描いていた」と打ち明ける。建て替えによって容積率や賃貸可能面積が増えれば、工事費や工事期間中の機会損失を考慮しても、収益が伸びる余地がある。 海外不動産ファンドの元運用担当者は「日本企業は高値づかみを嫌うが、外資系企業(外資系投資ファンド)は投資家から預かった資金を使わないまま返還することを嫌う。慎重になるあまり投資機会を逃す『見逃し三振』より、結果的に高値づかみだったとしてもバットを振るほうが評価される」と分析する。コロナショックをもろともしない海外投資家たちによる不動産の奪い合いは、終わりそうにない』、「日本の」「金融機関」からは「おおむね0.5~1%弱の水準で」「調達できている」。「シンガポールの金融機関から調達した場合、金利は1.5%前後。香港は1.7%、ソウルなら3%」、確かに日本の金融機関の貸出金利は目立って低いようだ。「グリーンオークは」、「エイベックスの退去後、すでに後継テナントがビルを1棟借りする方向で交渉が進んでいるという。成約した場合の賃料は坪単価で4万円超と、南青山のオフィスビルとしては高水準となる可能性がある。1棟借りの場合は実質的に延べ床面積すべてを賃貸することになるため、賃貸可能面積の少なさというデメリットは薄れる」、「後継テナントが見つからなかった場合に備えて別の手も打っていた・・・「入札時からゼネコンと組み、ビルを建て替える計画を描いていた」、代替策を周到に用意する外資系の積極的な姿勢は、日系も学ぶべきだ。
次に、10月14日付け東洋経済オンライン「築40年超「老朽マンション」丸ごと建て替えの顛末 イトーピアがブリリアタワーに生まれ変わる日」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/461741
・『築40年超の都会の老朽マンションが本当に建て替わるのか――。 JR山手線「浜松町」駅の東側、旧芝離宮恩賜庭園を越えた場所に立つ「イトーピア浜離宮」(東京・港区)。1979年に竣工した総戸数328戸のマンションは目下、全420戸のタワーマンションへの建て替え工事が進む。 老朽マンションの建て替えが社会問題化して久しい。だが、国内にあるすべてのマンション約675万戸のうち、実際の建て替え事例は、準備中を含めても今年4月時点でわずか303件だ。オーナー間の合意形成に手間取ったり、立地が悪く建て替えの事業化が困難だったりすることが、建て替えが進まない理由に挙げられる。 翻って、イトーピアは好立地かつ容積率に余裕があり、オーナーの多くは建て替えに賛成。好条件が揃っており、すぐにでも建て替えへと移行できたように思える。が、建て替えが正式に決議されるまでの道のりは決して平坦ではなかった。何が壁として立ちはだかったのか。 週刊東洋経済10月16日号(10月11日発売)では「実家のしまい方」を特集。老朽化した戸建てやマンション、空き家・空き地問題について、広く取り上げている』、「好条件が揃っており、すぐにでも建て替えへと移行できたように思える。が、建て替えが正式に決議されるまでの道のりは決して平坦ではなかった」、どういうことだろう。
・『契機は2011年の東日本大震災だった 「デベロッパーやコンサルタントへの丸投げではいけない。われわれの手で建て替えを実現させるという意志が大切だ」。 旧イトーピアの管理組合理事長として尽力した林俊幸さん(71)は、建て替え実現の秘訣について、オーナーの主体性が重要だと説く。 イトーピアで建て替えの議論が始まったのは、2000年代中頃。築25年を超えていたが、管理状態は良好で居住環境にも不満はなく、建て替え機運は高まらないまま時は流れた。 転機は2011年3月に発生した東日本大震災だ。建物の損傷は軽微だったが、老朽化や耐震性不足への懸念が頭をもたげた。 耐震補強、免震改修、建て替えなどの方策を議論し、建て替えが最も合理的と結論。アンケートでは約7割のオーナーが建て替えに賛成したため、2014年11月、本丸である建て替え決議の前段階にあたる推進決議を管理組合総会に諮った。 だが、賛成率が規定に届かず、否決に。反対票は多くなかったが、建て替えに関心を持たず、賛否を表明しなかったオーナーがいたためだ。「理事会とオーナーとの間でコミュニケーションが不足していた」(林さん)。建て替え説明会は総会直前に開催したきりで、無関心層への接触が不足していた。 まとまりかけた意見を無駄にしたくない、と当時理事だった林さんは理事長に名乗りを上げた。就任後に意識したのは人任せにしないこと。イトーピアは賃貸住戸が大半で、オーナーの8割以上は外部に居住していた。これまでの理事会では、遠方のオーナーとの連絡はコンサルタントに任せがちで、主体的に動く雰囲気ではなかったという。 そこで説明会のほかに、遠隔地のオーナーとはチャットで連絡を取り、時には海外の所有者に英語や中国語で建て替えの意義を説いた。行政との意見交換やセミナーにも頻繁に出向いた結果、建て替えに協力するデベロッパーのコンペを自ら開催できるほど、知識をつけた。 2015年秋からのコンペにはデベロッパー6社が名乗りを上げ、各社の提案を比較検討した結果、オーナーにとって最も条件のよい、東京建物を主体とするグループを選定した』、当初は、「賛成率が規定に届かず、否決に。反対票は多くなかったが、建て替えに関心を持たず、賛否を表明しなかったオーナーがいたためだ・・・建て替え説明会は総会直前に開催したきりで、無関心層への接触が不足していた」、「イトーピアは賃貸住戸が大半で、オーナーの8割以上は外部に居住」、「これまでの理事会では、遠方のオーナーとの連絡はコンサルタントに任せがちで、主体的に動く雰囲気ではなかったという」、やはり「オーナー」への丁寧な説明が必要だ。
・『好況で一転、転出しないオーナー 建て替えが既定路線になりかけた直後、ある問題が浮上した。当初計画では、オーナーの20%は建て替え後のタワーマンションを保有せず転出する、というのが前提だった。ところが、マンション市況の好転などを受けて、保有を希望するオーナーが増加。2016年秋に行った意向調査では、転出を希望するオーナーは5%にも満たなかった。 困惑したのは東京建物だ。建て替えで増えた住戸を分譲することで収益を得る同社にとって、転出するオーナーの減少は販売住戸の減少を意味し、事業採算性が狂う。そのため、オーナー側に負担を求めた。 むろん、オーナーも易々とは譲れない。イトーピアは建て替えに際して容積率の割り増しを受けるが、その条件として各住戸の面積を25平方メートル以上にする必要があった。イトーピアには20平方メートルのワンルーム住戸が複数存在し、そのオーナーは当初から5平方メートル分の増床費用が持ち出しとなる。さらなる負担増はハードルが高い。 落としどころを探る中で合い言葉となったのは、「満足の最大化より不満の最小化」(林さん)だ。 ワンルーム住戸のオーナーには、年金暮らしの高齢者もいるため、これ以上の負担増は避けたかった。結局、当初は一般分譲価格より有利な価格で増床できる権利を全オーナーに与える予定だったが、ワンルームのオーナーのみに限定。増床できないオーナーからは不満も漏れたが、5平方メートルの増床費用に耐えられず、転出を余儀なくされるオーナーを出さないことを優先した。 想定外の事態はその後も続いた。建て替えが正式に事業化する直前の2017年10月、大規模マンションへ保育所の設置を求める通達が国から発せられた。待機児童解消を掲げる港区からも保育所の設置を要請され、当初の計画になかった保育所の設置スペース確保が急務となった。保育所を設置すれば、やはり東京建物の販売住戸が減る。 さらには法改正によって、外壁材に含まれるアスベストの除去が義務化された。イトーピアの場合、解体工事とは別途、アスベスト除去工事を行うと、工事費は見積もり時点より1億円以上も膨らんでしまう』、好条件のように見えても、様々な問題が出てくるものだ。
・『配置を効率化、何とか販売住戸増やす 膝詰めの協議を重ねた結果、ワンルーム住戸を複数保有するオーナーは、建て替え後のタワーマンションでは面積の大きいファミリー住戸1つだけを保有することで手を打った。住戸配置の効率性が高まり、東京建物の販売住戸が増えたことで、コスト増を吸収できた。こうして2018年10月、満を持して建て替え決議を上程。賛成率約85%で可決された。 都心かつ容積率の割り増しを受けられるなど、条件に恵まれていたイトーピアでさえ、オーナーの負担をめぐって幾度もアクシデントに見舞われた。それでも、オーナー間の合意形成やデベロッパーとの交渉も理事会が主体的に行ったことが奏功したと、林さんは振り返る。 建て替え後、名称は「ブリリアタワー浜離宮」へと変わり、2023年9月に竣工となる予定だ』、「オーナー間の合意形成やデベロッパーとの交渉も理事会が主体的に行ったことが奏功」、やはり他人任せにせず、主体的に取り組む必要がありそうだ。
第三に、11月8日付け東洋経済オンライン「実は続出「マンション管理会社が突然撤退」の怖さ 管理組合と「立場逆転」、大きな転換期に」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/466647
・『「明日から清掃やゴミ出しの管理はどうすればいいのか」 東京都渋谷区のマンションで理事長を務める男性は途方に暮れた。独立系の管理会社が、9月末をもって突然撤退したためだ。 管理会社は契約上、撤退の3カ月前までに管理組合に通告する必要がある。理事長の元に管理会社の担当者からメールが送られてきたのは、きっかり3カ月前にあたる6月末だった。 この管理会社には20年前から管理を委託していたが、委託費は当時の安い料金で据え置かれたまま。「早く手を引きたかったのだろう」と男性。急いで後継の管理会社を探し、10月下旬に地場企業への委託が決まった』、「管理会社」は儲かるビジネスと思っていたが、必ずしもそうでもないようだ。
・『管理会社からの「三行半」が続出 今やマンション管理組合と管理会社の立場は逆転した。 これまでは管理組合が管理会社を選ぶ側にあった。「お前たちの代わりなんて、いくらでもいる」。管理会社に捨てぜりふを吐いて、リプレース(管理会社の変更)を実施した管理組合もかつてはあった。 だが現在は、管理会社が管理組合に「三行半(みくだりはん)」をつきつけるケースが続出している。 三行半の背景には、管理会社側の厳しい経営状況がある。これまでは委託費を安く提案し、管理戸数の獲得に邁進してきた。管理を担えば修繕工事など派生する仕事の受注も見込めるためだ。 ただ、ここ数年、人件費や資材費の上昇で管理会社の安値攻勢は限界を迎えた。大手管理会社の幹部は「社員の人手が不足しているため、管理戸数を伸ばすよりも、採算の取れる物件を厳選して受託している」と話す。 変調はほかにもある。マンションに襲いかかる「2つの老い」だ。 まず、マンションの老朽化が進行し、1回目の大規模修繕工事のメドとされてきた築12年を経過したマンションが全体の8割に達している。同時に、管理組合の理事の引き受け手も高齢化しており、「理事長の後継者がいない」と悩む管理組合が増えた。 さらに、新型コロナウイルスの影響で、新たなトラブルが多発している。 「風鈴がうるさくて仕事に集中できない」「掃除機の音がうるさい」「ドライヤーの音が気になる」 騒音は昔からの典型的なトラブルだが、住民の自宅滞在時間が増えたことで神経質な反応がみられるようになった。 タバコの煙を巡るトラブルや、共用部分の置き配問題などが深刻化しているマンションも少なくない』、「人件費や資材費の上昇で管理会社の安値攻勢は限界を迎えた。大手管理会社の幹部は「社員の人手が不足しているため、管理戸数を伸ばすよりも、採算の取れる物件を厳選して受託」、「マンションの老朽化が進行し、1回目の大規模修繕工事のメドとされてきた築12年を経過したマンションが全体の8割に」、「老朽化が」ここまで「進行」しているとは驚きだ。
・『上がり続ける管理費や修繕積立金 管理費や修繕積立金も上がり続けている。賃金の上昇や資材価格の高騰が背景にある。東京カンテイの調査によると、2020年の首都圏マンションの管理費、修繕積立金はともに、6年前に比べて約20%も上昇している。 急激な環境の変化に、国や業界団体も対策を打ち出す。国土交通省は今年6月に「マンション標準規約」を改正し、WEB総会や置き配の留意事項を明確にした。 国交省は来年4月にも「管理計画認定制度」を実施し、長期修繕計画の作成など管理組合の運営状況について適否を判断する。マンション管理業協会も来年4月に、管理組合の運営状況を点数化する新制度を実施する。 こういった新制度への準備を急ぐ管理組合は多いが、新制度の乱立に戸惑いを見せる関係者もいる。 マンション管理のあり方が大きく変わろうとしている。この「転換期」にどう対応するべきか。マンション住民や管理組合、そして管理会社など関係者は柔軟な姿勢で対応することが求められる』、「マンション管理のあり方」では、これまでは不適切なケースが問題化したが、今後は適正・健全な方向に変わるとすれば望ましい。
タグ:不動産 (その8)(JTB エイベックスの本社ビルを相次いで取得 海外ファンドが日本の不動産に「強気」になる理由、築40年超「老朽マンション」丸ごと建て替えの顛末 イトーピアがブリリアタワーに生まれ変わる日、実は続出「マンション管理会社が突然撤退」の怖さ 管理組合と「立場逆転」 大きな転換期に) 東洋経済Plus 「JTB、エイベックスの本社ビルを相次いで取得 海外ファンドが日本の不動産に「強気」になる理由」 どういうことなのだろう。 「海外機関投資家による日本への不動産投資額は2020年に1兆5548億円を記録し、前年から1.5倍以上増加した。国内の不動産投資額の34%を海外勢が占めた計算に」、かなり重要なプレイヤーになったようだ。 「日本の」「金融機関」からは「おおむね0.5~1%弱の水準で」「調達できている」。「シンガポールの金融機関から調達した場合、金利は1.5%前後。香港は1.7%、ソウルなら3%」、確かに日本の金融機関の貸出金利は目立って低いようだ。「グリーンオークは」、「エイベックスの退去後、すでに後継テナントがビルを1棟借りする方向で交渉が進んでいるという。成約した場合の賃料は坪単価で4万円超と、南青山のオフィスビルとしては高水準となる可能性がある。1棟借りの場合は実質的に延べ床面積すべてを賃貸することになるため、賃貸可 「後継テナントが見つからなかった場合に備えて別の手も打っていた・・・「入札時からゼネコンと組み、ビルを建て替える計画を描いていた」、代替策を周到に用意する外資系の積極的な姿勢は、日系も学ぶべきだ。 東洋経済オンライン 「築40年超「老朽マンション」丸ごと建て替えの顛末 イトーピアがブリリアタワーに生まれ変わる日」 「好条件が揃っており、すぐにでも建て替えへと移行できたように思える。が、建て替えが正式に決議されるまでの道のりは決して平坦ではなかった」、どういうことだろう。 当初は、「賛成率が規定に届かず、否決に。反対票は多くなかったが、建て替えに関心を持たず、賛否を表明しなかったオーナーがいたためだ・・・建て替え説明会は総会直前に開催したきりで、無関心層への接触が不足していた」、「イトーピアは賃貸住戸が大半で、オーナーの8割以上は外部に居住」、「これまでの理事会では、遠方のオーナーとの連絡はコンサルタントに任せがちで、主体的に動く雰囲気ではなかったという」、やはり「オーナー」への丁寧な説明が必要だ。 好条件のように見えても、様々な問題が出てくるものだ。 「オーナー間の合意形成やデベロッパーとの交渉も理事会が主体的に行ったことが奏功」、やはり他人任せにせず、主体的に取り組む必要がありそうだ。 「実は続出「マンション管理会社が突然撤退」の怖さ 管理組合と「立場逆転」、大きな転換期に」 「管理会社」は儲かるビジネスと思っていたが、必ずしもそうでもないようだ。 「人件費や資材費の上昇で管理会社の安値攻勢は限界を迎えた。大手管理会社の幹部は「社員の人手が不足しているため、管理戸数を伸ばすよりも、採算の取れる物件を厳選して受託」、「マンションの老朽化が進行し、1回目の大規模修繕工事のメドとされてきた築12年を経過したマンションが全体の8割に」、「老朽化が」ここまで「進行」しているとは驚きだ。 「マンション管理のあり方」では、これまでは不適切なケースが問題化したが、今後は適正・健全な方向に変わるとすれば望ましい。