貧困問題(その4)(隠れ暮らす「女性ホームレス」密着して見えた実態 京大准教授が7年かけて問題点を浮き彫りに、小学生で「自殺未遂繰り返す母」介護した彼の悲壮 全貌が見えていない「若者ケアラー」のリアル、コロナ禍で露呈「若者ホームレス」知られざる苦境 「家がないと就職活動も難しい」日本の実態) [社会]
貧困問題については、2000年12月6日に取上げたままだった。今日は、(その4)(隠れ暮らす「女性ホームレス」密着して見えた実態 京大准教授が7年かけて問題点を浮き彫りに、小学生で「自殺未遂繰り返す母」介護した彼の悲壮 全貌が見えていない「若者ケアラー」のリアル、コロナ禍で露呈「若者ホームレス」知られざる苦境 「家がないと就職活動も難しい」日本の実態)である。
先ずは、昨年5月16日付け東洋経済オンラインが掲載した取材記者グループのFrontline Press による「隠れ暮らす「女性ホームレス」密着して見えた実態 京大准教授が7年かけて問題点を浮き彫りに」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/428121
・『「女性の貧困」――。近年、注目されているテーマだが、2000年代初めから「女性ホームレス」に着目し、研究を続けてきた人がいる。京都大学大学院文学研究科准教授の丸山里美氏は7年間にわたって、東京と大阪で女性ホームレス33人へのフィールドワークを行い、問題点をあぶり出した。
「女性の貧困」の深淵とは何か、その実態を測る難しさはどこにあるのか。「ニッポンのすごい研究者」は今回、女性ホームレスの研究者にスポットを当てた(Qは聞き手の質問、Aは丸山氏の回答)』、興味深そうだ。
・『男性ホームレスとの大きな違いは「結婚歴」 Q:丸山さんが調査された女性ホームレスには、どんな特徴があるのでしょうか。 A:私の調査はサンプル数が33と少なく、聞き取りの方法や時期が統一されていないため、統計的な価値は高くありません。ただ、女性に特化した調査はこれまでほとんど実施されていません。 そこで女性ホームレスの特徴をつかむために、対象を男性に特化した厚生労働省の「ホームレスの実態に関する全国調査」(おおむね5年ごとに実施)の2007年版と、私が2003年から2009年にかけて実施した調査で比較しましょう。 厚労省の調査は野宿者のみを対象にし、私の調査は野宿者と施設居住者を対象にしています。 私は東京と大阪の路上で会った19人、東京の福祉施設で会った14人、計33人から生育家族や学歴、職歴、居住場所、同居人といった生活史を詳細に聞き取っています。このうち、夫が失業して2人ともホームレスになった人は11人。本人の失業でホームレスになった単身女性が15人。夫や家族との関係性を失ってホームレスになった人が7人。これらのうち、野宿経験者は26人でした。平均年齢は59歳です。 男性ホームレスとの大きな違いは、まず、結婚歴です。厚労省の調査によると、男性のホームレスには結婚経験がない人が半数以上もいるのですが、女性の場合、9割近くに結婚歴(内縁関係含む)があり、そのうち半数以上が複数回しています。 貧困女性にとって男性のパートナーを持つことは、生活を維持するための手段になっている実態が改めて浮かび上がります。ホームレスの人は総じて学歴が低いのですが、女性では「最終学歴が中学校以下」という人が半数以上で、男性よりもさらに低い。職歴も大半はパート。多くの人が清掃、水商売、旅館の住み込み、飯場の賄いなどに従事しています。 Q:その女性たちは、どのようにしてホームレスになったのでしょうか。 A:いくつかパターンがあります。夫との死別や離別によって単身となった女性が失業する場合、もともと単身の人が病気や高齢などで働けなくなる場合、夫をはじめ家族との関係がうまくいかなくなる場合などです。 (丸山里美氏の略歴はリンク先参照) 中高年の女性ができる仕事は、低賃金の不安定労働に限られていますから、失業保険や厚生年金の対象にならない人も多い。働けなくなると、すぐに生活に困窮することになりがちです。 例えば、本人が失業したケース。60代の女性は、中学校卒業後に正社員としてガラス工場で働き始め、22歳で転職します。26年間勤めますが、そこでは失業保険や年金に入っていませんでした。 給料が上がらず生活が苦しくなったため、その会社を辞めて清掃のパートを2つ掛け持ちします。でも、アパートの家賃には足りない。友人からの援助で賄っていましたが、次第に友人宅に居候するようになった。その生活が10年ほど続きましたが、高齢になって仕事を解雇されると、友人への借金が気になって居候しづらくなり、野宿に至りました』、「男性のホームレスには結婚経験がない人が半数以上もいるのですが、女性の場合、9割近くに結婚歴・・・があり、そのうち半数以上が複数回しています」、「ホームレスになった」「パターン」には、「夫との死別や離別によって単身となった女性が失業する場合」、「もともと単身の人が病気や高齢などで働けなくなる場合」、「夫をはじめ家族との関係がうまくいかなくなる場合」などです。なるほど。
・『離婚によって貧困に陥るケースも 別の50代女性のケースは、こうでした。高校中退後、縫製工場に正社員として勤め始めます。18歳で専業主婦になり、4人の子供をもうけた。その後、35歳で離婚し、水商売を始めて3年後に独立。42歳で再婚しました。夫婦2人の収入があったため、その後は自らの子供と共にマンションで豊かに暮らしています。 ところが、女性は54歳のときに体を壊して店をたたみました。実は結婚直後から夫の精神的暴力に耐えていたのですが、末っ子が結婚したのを機に離婚し、家を出ます。しばらくはホテルやサウナに泊まっていましたが、所持金が尽きて野宿になりました。 もともと精神疾患や軽度の知的障害がある女性も一定数いて、人間関係のトラブルになりやすく、仕事が続かないという背景もあります。 Q:丸山さんが調査に着手する2003年まで、ホームレスと言えば男性の問題として認知され、女性のホームレスはほとんど注目されていませんでした。そんな中、7年もかけて綿密な調査を続けた。京都から東京へは夜行バスで通っていたと聞いています。 A:京都大学の大学院に通っていたときですね。約250人がテントで暮らしている東京都内の公園に何度も通いました。そこでは女性が10人ほど暮らしていて、顔見知りになった4人の女性たちと数年間にわたって人間関係をつくり、調査を行いました。 テントは平均で3畳くらいの広さです。中には洋服や布団といった日用品があり、発電機や電池式のテレビを置いてあるテントもありました。日雇いやアルバイト、保険の外交員、ビルの清掃、廃品回収などで現金収入を得ている人もいました。 食事はコンビニなどで廃棄物として出されるもの、福祉事務所で配布されるもの、炊き出しなどで確保。カセットコンロを使って自炊する場合も多いです。日用品は自分たちで購入するか、定期的に訪れるボランティアや教会に頼んで手に入れ、生理用品など男性に頼みにくいものは女性ボランティアに頼んでいたようです』、「京都から東京へは夜行バスで通っていた」、確かに「女性のホームレス」は「東京」に多いという事情があるにせよ、大変だ。
・『何度も足を運び、一緒に時間を過ごす Q:公園以外では、どんなところで調査されたのですか。 A:野宿者だけでなく、住居のない状態(=ホームレス)の女性たちが滞在する都内の福祉施設に泊まり込み、そこで最初はボランティア、後にアルバイト職員として働きながら、並行して聞き取り調査をしました。大阪では、女性野宿者の支援グループをつくって、その活動と並行して調査もしていました。 (こうした手法を取ったのは)まず、一緒に時間を過ごしたいと思ったからです。それに、1回だけのインタビューでわかることは限られています。何度も足を運んで人間関係をつくって話を聞けば、その分、調査は深みのあるものになると考えました。 東京で調査したのは、京都や大阪ではホームレスの女性になかなか出会えず、東京に行き着いてしまったということですね。) Q:日本では「ホームレス=中高年の男性」というイメージがあります。一般的には男性よりも女性のほうが貧困とされているのに、なぜ、女性ホームレスは少ないのでしょうか。 A:彼女たちは危険を避けるために物陰に隠れるように暮らしているので、なかなか目にとまりません。厚労省の「ホームレスの実態に関する全国調査」の2021年版によれば、全国の野宿者3824人のうち女性は197人。わずか5.2%です。 「ホームレス」の定義によるところも大きいと思います。日本でホームレスというと、一般的に路上生活をする人を指します。しかし、もっと解釈を広げ、「家のない状態の人」と定義し、インターネット・カフェやファストフード店、知人宅で夜を過ごすといった人もカウントすれば、5.2%よりずっと多いです。 女性ホームレスが少ない背景には、男性が稼ぎ主で女性は家事を主に行うことを前提にした、日本の労働や社会保障のあり方も問題として横たわっています。こうした結果、多くの女性は不安定な低賃金労働に従事している。低賃金だと1人で生きていくことが難しいので、貧困を恐れて、夫や親のいる家から出られないわけです。 また、雇用保険や年金といった保険から排除されていることも多く、単身者の場合、失業すると途端にホームレス状態になるリスクがある。 他方、男性より利用できる福祉的な選択肢は多い。そうしたことから、路上に出る一歩手前で踏みとどまっているケースが多く、数字上では女性ホームレスの比率が極端に低いのだと考えられます』、「もっと解釈を広げ、「家のない状態の人」と定義し、インターネット・カフェやファストフード店、知人宅で夜を過ごすといった人もカウントすれば、5.2%よりずっと多いです」、「多くの女性は不安定な低賃金労働に従事している。低賃金だと1人で生きていくことが難しいので、貧困を恐れて、夫や親のいる家から出られないわけです」、なるほど。
・『一貫性がなく、矛盾した言動をとることがある Q:調査を通して、どんなことが明らかになったのでしょう。 A:女性野宿者たちは、さまざまな場面で一貫性がなく、矛盾した言動をとることがあります。例えば、DVを受けたある女性は、いったんは施設に逃げ込むけれど、その後、夫の元に戻る。また施設で暮らす、そして夫の元へ。そういうことを繰り返します。 私の家に居候したいと言った女性はある時、衝動的に公園を飛び出し、夫と違う男性とホテルで暮らし始めます。そして毎日のように電話をしてきては、「実家に帰ろうか」「公園で夫の帰りを待とうか」「生活保護を受けようか」などと言うのです。 彼女たちの多くは自らの重要な決断をする際、他者の意見や存在を考慮し、それに大きく影響されていた。女性に求められてきた社会的な期待に沿うことは、「自分で選択できる自立した生」とは矛盾するのです。 研究者として感じたことは、この合理的には理解しがたい存在のあり方が、それまでのホームレス研究から女性が排除されてきた一因ではないかということでした。 もしかすると皆さんは、「ホームレス=なくすべきもの」と思われているかもしれません。でも、すべてのホームレスが「ホームレス生活をやめたい」と願っているわけではないのです。この研究を通して、私は「その人がその人なりに望むことを実現できるような社会になればいい」と考えるようになりました。 Q:丸山さんがフィールドワークをされてから10年以上が経ちました。女性ホームレスの姿に変化はありましたか。 A:2010年代半ばには、女性の貧困が社会的に話題になりました。私の主な調査対象は中高年の女性でしたが、生活に困窮して性産業で働いている女性たちが「女性の貧困」や「女性ホームレス」としてイメージされるようになったことが、最も大きな変化だと思います。 おそらくこれからも、時が経つにつれ、女性の貧困の実態や、それに対する人々のイメージも変化していくことでしょう。 Q:そもそも、なぜ女性ホームレスの研究をしようと思ったのですか。 A:大学の卒業論文のフィールドに、釜ヶ崎(大阪市西成区の「あいりん地区」)というホームレスの人たちが多い所での炊き出しを選んで、3年間通いました。それが非常に楽しかった。 インドに1人、バックパックを背負って旅行に行ったことがあったんですが、釜ヶ崎にはそういうアジアの国に旅行しているかのような雑然とした雰囲気があって……。人間らしい行為や感情があふれていて、人々が生き生きしていると感じました。 でも、釜ヶ崎でトラブルに遭ってしまうんです。炊き出しのボランティアをしているときに知り合った男性にストーカーされて。「殺してやる」とも言われました。それまでは自分が女性であることや、ジェンダーの問題にあまり関心がなかった。だからこそ、男性ばかりの釜ヶ崎の街に楽しく通えていたんですね。 私はよそから通っていたので、そんなことがあったら釜ヶ崎に行かなければいい。でも、ときどき、街で見かけていたホームレスの女性たちは、住人のほとんどが男性という街で、きっと、私と同じような目に遭って困難を抱えているんじゃないか。人生の先輩である彼女たちがどういうふうに暮らしているのかを知りたいと思ったんです』、「すべてのホームレスが「ホームレス生活をやめたい」と願っているわけではないのです。この研究を通して、私は「その人がその人なりに望むことを実現できるような社会になればいい」と考えるようになりました」、より実態に即した考え方になったようだ。
・『世帯の中にいる女性の貧困は捉えきれていない Q:今の新しい研究テーマを教えてください。 A:「世帯に隠れた貧困」に関心があります。貧困者支援をしている、あるNPO法人に相談に訪れた人の記録を分析したときに「統計に表れない女性の困窮」に気づきました。 例えば、夫からのDV被害に遭っている妻は、統計上「家に住んでいる」「世帯収入がある」となり、貧困とは見なされません。でもDVに耐えかねて、いざ家を出ると、その妻は「住むところがない」「お金もない」となり、途端に貧困に陥る。 従来、(研究や政策は)貧困を世帯ごとに見ていたのですが、それでは、世帯の中にいる女性の貧困の実態を捉えきれないのです。 Q:その研究で、どんなことが明らかになるのでしょうか。 A:夫婦で生活していると、多くの場合、女性が家事や育児といった無償労働を担い、それに時間を投入するせいで満足な現金収入を得られません。一方、夫が現金を得られるのは、妻の無償労働に支えられているからです。 つまり、貧困という概念を考えるときには、経済的資源についてだけではなく、「時間資源」やそれに派生する「自由度」についても考慮すべきだと考えています。 今は研究の途上ですが、研究を進めていけば、貧困の捉え方や計測の方法、さらには貧困の概念を根本から問い直すことになるのではないか、と思っています。それは、困難を抱える女性たちの生きづらさを可視化させることになる。そう期待しています』、「経済的資源についてだけではなく、「時間資源」やそれに派生する「自由度」についても考慮」した新たな「貧困」の「概念」が出てくるのが、楽しみだ。
次に、12月1日付け東洋経済オンラインが掲載したライターの大河内 光明氏による「小学生で「自殺未遂繰り返す母」介護した彼の悲壮 全貌が見えていない「若者ケアラー」のリアル」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/470794
・『近年、障害や病気のある家族などの介護を主に担う18歳未満の人々、いわゆる「ヤングケアラー」の存在が、徐々に社会的な注目を浴びるようになってきた。今年3月に公表された国の調査によると、中学生の約17人に1人、高校生では約24人に1人がヤングケアラーだという。 また2019年公表の国の調査では、ヤングケアラーにおける生活保護受給世帯が29.6%、ひとり親世帯が48.6%とも報告され、貧困とも密接に関係すると考えられる。国も支援策を検討しており、少しずつ支援の輪が広がってきている。 一方で、ヤングケアラー以上に認知度が低いのが、18歳からおおむね30代までの介護者である「若者ケアラー」だ。進学や就職に際し、収入に直結する選択を迫られる時期でもあり、その中で介護を担わなければならない負担は大きい。しかし若者ケアラーを対象とした公共的な支援は少なく、ケアラー全体を支援する埼玉県や北海道栗山町、20代も含めた「こども・若者ケアラー」を支援する兵庫県神戸市などのわずかな例があるのみだ。若者ケアラーに絞った調査や統計資料も乏しく、全体像がつかみにくい状況だ。 貧困に陥った若者たちの実態に4日連続で迫る特集「見過ごされる若者の貧困」3日目の第3回は、ライターの大河内光明氏が若者ケアラーの実像に迫った(1日目、2日目の記事はこちらからご覧ください)。 【3日目のそのほかの記事】第1回:30代女性が"夜逃げ"した「ヤバい格安賃貸」の正体 第2回:コロナ禍で露呈「若者ホームレス」知られざる苦境』、「ヤングケアラー」より少し年上の「若者ケアラー」とは、興味深そうだ。
・『半年から1年周期で状態が変わる母 20代後半の男性Aさんは、物心ついたときから実の父がおらず、母の元で育てられた。平穏だった生活が一変したのは10歳のとき。母にうつ病(のちに双極性障害と判明)の診断がおりたのである。 元々「責任感のある完璧な人だった」という母だが、家族間での言い争いが増え、再婚した義父とは離婚し、一緒に暮らしていた祖母とも別居。さらに親戚からも離縁され、結果的に母との2人暮らしになった。 リストカットや飛び降り、過剰服薬など、たびたび自殺未遂を起こす母を子どもながらにケアする日々。経済的にも苦しかった。母は半年から1年周期で躁状態とうつ状態を繰り返した。 躁状態のときは働きに出られるが、うつ状態のときは寝込んでしまって仕事ができなくなる。このように就業状態が不安定だったため、中学、高校生活では生活保護を受給した。 「学校生活では自分だけ学食で定食を頼めなかったり、病院に行くにも医療券だったり、肩身が狭かったです。役所などでの手続きも、母が動けないときは私が代わりに行く必要があり、思い返すと不自由でした。自分がしっかりしないと終わりだと思っていました。子どもながら、緊張感のある生活でしたね」 Aさんは高校卒業後、作業療法士になるために専門学校に進学、その後、大学に編入した。作業療法士を志したのは「経済的に安定するし、母のことをもっと理解できるのでは」と考えたからだ。学費や生活費は奨学金などで賄った。奨学金の総額は800万円ほどになるという。 それでも前向きに生きていたAさん。ところが作業療法士として働き始めてから、精神的に非常にきつくなった。母の病状が悪化したからだ。 隣町に就職したAさんは、社会人1年目のある日、仕事終わりに「自殺する」という旨の連絡が母から入った。幸い大事にはならなかったが、過剰服薬していた。「自分に注目してほしいという気持ちが透けて見えました」とAさん。過激化する母からの連絡が煩わしくなり、着信拒否やブロックをすると、職場の夜間電話にも連絡するようになり、当然業務にも支障をきたした。 それ以外にもアパートで禁止されている犬を飼う、無職で借金をする、無計画に引っ越しや散財する、などを繰り返す母。その後始末をするのがAさんだった。 「訪問看護やヘルパーさんも母が自ら追い出してしまうので、手に負えませんでした」』、「アパートで禁止されている犬を飼う、無職で借金をする、無計画に引っ越しや散財する、などを繰り返す」、恐らく「躁」状態の時期の行動なのだろうが、困ったことだ。
・『母の再婚でケア生活を卒業 実はAさんは1年ほど前に、ケア生活を卒業した。きっかけは母の二度目の再婚だ。それを機に連絡が来なくなったという。「再婚しなければ、今ごろどうなっていたか」とAさん。ケアが終わった今だから言えるのかも、と前置きしながらもこう語る。 「発症前の母は掃除好きで真面目で働き者でした。クリスマスには決まって手作りケーキを作ってくれたのを覚えています。適切な処置を受けられない時期が長かったからか、躁状態とうつ状態の波の落差が激しくなり、少しずつ人格が変わってしまったんです。 今ではまるで別人で……。ただ、母は働けるときは必死に働いてくれていました。そこは感謝しています」 ケアが終わったとはいえ、Aさんの生活は楽とはいえない。奨学金は現在も月4万円近くを返済している。専門職とはいえ、作業療法士の月収も18~19万円ほどで、十分とはいえなかった。今は別の仕事を探している。 同時に、同じ悩みを持つケアラーの支援団体の運営をサポートしている。 「昔の私は孤立していました。どこにどう相談していいかわからない状態です。ケアラーと社会がつながる場所が必要です」 誰のせいでもないが、個々の家庭ですべては解決しきれない。せめて社会的な支援と人とのつながりがあればという切実な願いを聞かせてくれた。) Bさんは現在30代後半。20代から現在に至るまで、祖母、母と継続して介護してきた。 「うちは祖父母と母と私の3世代世帯でした。大学在学中に祖母が認知症になり3年ほどして他界、後を追うように祖父も亡くなりました。そこから経済的に立ち行かなくなり、生活保護を経験しました。生活保護を抜け出した後も、何とか立て直そうと20代後半で営業の仕事をしている最中に、今度は母が指定難病である前頭側頭型認知症になったんです」 前頭側頭型認知症は、同じ行動や言葉を繰り返すほか、万引きなど反社会的な行動が表れることもある。 Bさんの母親にしても、大声を出す、徘徊する、暴れるなどの行動を繰り返し、警察のお世話になったことが100回以上あるという。コロナ禍においては、マスクをつけようとすると逆上するため、出入り禁止になる施設もあった』、「警察のお世話になったことが100回以上ある」、「前頭側頭型認知症」とはいえ、本当にやっかいだ。
・『入れる介護施設がない 「母を介護施設に入れようと試行錯誤したのですが、この症状のせいで入れる施設がまったくない。親戚にも見放され、頼りにできません。母は非正規の教員だったため、年金は少額で5万円ほど。財産は一切なく、私は母のために介護離職せざるをえませんでした。 途中からネットで物を売る仕事をして月10万円前後の収入を得ているのと、会社員時代の貯金を切り崩して何とかしています。この間、国や自治体から経済的な支援は1円もありませんでした」 要介護4~5に認定された要介護者を介護する家族などに支給される家族介護慰労金は、Bさんの住む自治体では制度として組み込まれておらず、もし存在したとしても要介護度2にとどまることから利用できない。 また、重度障害者向けに支給される特別障害者手当も、日常生活動作評価で「一部体が動かせるため」という理由で対象にならないそうだ。 市の担当者からは「お気の毒ですが、あなたのような介護者には制度が何もなく支援できない」と言われたという。 生活保護を受給する方法もあるかもしれないが、それには抵抗感がある。 「生活保護を受給すると、母がこの状況の中、定期的に窓口に申請しに行かなければいけない。受給するためには家財を手放さないといけない可能性もあります。それに仕事で稼げないのもつらいんです。仕事は精神的なよりどころになっていますし、かつて生活保護から抜け出したのに逆戻りするのも抵抗感があります。 最後の手段として精神科病院に入院させる方法もありますが、患者を閉じ込めて放置しているような病院もあると聞きます。それは私がこれまでやってきた介護を否定するようなものです」 Bさんは「早急に何とか支援してほしい」と悲痛な思いを打ち明ける。 「母は眠ることなく徘徊して騒ぎます。私も夜は1時間ほどしか眠れません。もう何年ももたないかもしれない」) 「ヤングケアラーへの支援は進む一方、18歳以上の若者ケアラーの認知と支援は不十分です」 こう語るのは、自身も30代から認知症の祖母を介護し、ケアラーのコミュニティーを運営する作家・メディア評論家の奥村シンゴ氏だ。 「夜間のトイレ付き添いなどで睡眠時間も確保できない中、若者ケアラーが自分の進学や就職の準備するのは大変厳しいです。非正規雇用で働いたり、介護離職したりする人も多く、周囲と経済的な面でも差が出て結婚しにくいなどの問題も生じます。 長期化する介護でケアラー自身も心身の不調に陥るケースが少なくありません。また、コロナ禍では通う病院も限られ、デイサービスやショートステイも利用できない状況になりました。その間、国や自治体の支援はほとんどありませんでした」』、「「ヤングケアラーへの支援は進む一方、18歳以上の若者ケアラーの認知と支援は不十分です」、「ヤングケアラー」問題が大きく取上げられた結果なのだろうが、「若者ケアラーの認知と支援は不十分」は困ったことだ。
・『「家族として大切に看たい」が… では、若者を含めたケアラーに対する支援はどういうものが考えられるのか。奥村氏はこう提案する。 「イギリスやオーストラリアなどではケアラーに給付する『介護者手当』もあります。また、税金の控除や、介護者の休息を支援するレスパイトケアという形も考えられるでしょう。民間でも企業側がリフレッシュ休暇や介護休業の制度を充実させるなどの視点も重要といえます」 今回取材した当事者に共通していたのは、「家族として大切に看たい。しかし現状の手薄な支援では苦しすぎる」という葛藤に加えて、「身近に相談できるところがない」という苦しさだ。SNSが現実の人間関係以上に重要な居場所になっているという声も多かった。 経済的な支援だけでなく、当事者が気軽に相談できる社会的な環境づくりも必要といえそうだ』、関係省庁が緊密に連絡し合った上で、「当事者が気軽に相談できる社会的な環境づくり」を進めていくべきだ。
第三に、12月1日付け東洋経済オンライン「コロナ禍で露呈「若者ホームレス」知られざる苦境 「家がないと就職活動も難しい」日本の実態」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/471185
・『貧困問題を解決する方法の1つとして、「ハウジングファースト」を掲げるのが、生活困窮者の支援の最前線に立ち続ける稲葉剛氏だ。2014年に「一般社団法人つくろい東京ファンド」を設立し、アパートの空き室などを団体で借り上げ、住まいに困っている人に一時的な宿泊場所として提供する個室シェルターの事業を行っている。 貧困に陥った若者たちの実態に4日連続で迫る特集「見過ごされる若者の貧困」3日目の第2回は、日本が抱える「住まいの貧困」について、稲葉氏に聞いた(Qは聞き手の質問、Aは稲葉氏の回答)(1日目、2日目の記事はこちらからご覧ください)。【3日目のそのほかの記事】 第1回:30代女性が"夜逃げ"した「ヤバい格安賃貸」の正体 第3回:「小学生で「自殺未遂繰り返す母」介護した彼の悲壮』、「住まいの貧困」とは興味深そうだ。
・『住まいの貧困はコロナ以前から広がっていた Q:コロナ禍で「住まいの貧困」の実態はどうなっていますか。 A:新型コロナ以前は25室だった個室シェルターを56室まで増やしましたが、つねに満室状態です。コロナ禍で大きく変わったのは、10~20代の相談が珍しくなくなったこと。コロナ前はほとんどが中高年の単身男性でしたが、いまは17~18歳から上は70代まで、老若男女の方に個室シェルターをご利用いただいています。 われわれと連携しているNPO法人の「TENOHASHI(てのはし)」は池袋で炊き出しをしていますが、11月上旬には集まる人が430人を超えました。 これは、リーマンショック以来のことで、その中には多くの若者も含まれます。コロナで打撃を受けた飲食店をはじめとする対人サービス業に従事していた方が多く、性風俗やキャバクラなど「夜の街」関連で働いていた方も目立ちます。 ただし、間違えてはいけないのは、コロナ以前から住まいの貧困は広がっていたことです。2014年にビッグイシュー基金で若者の住宅問題に関するインターネット調査(対象は首都圏と関西圏に住む20~39歳、未婚、年収200万円未満の個人)を実施したところ、6.6%が定まった住居をもたず、ネットカフェ、マンガ喫茶、友人の家などで寝泊まりしていた経験をもつと回答しています。 中でも親と別居している若者の13.5%が定まった住居がない、つまり広い意味でホームレス状態を経験したことがあると答えました。 東京都が2017年に実施した調査でも、住居がなくネットカフェなどを寝泊まりするために利用している人が4000人いて、その半数が20~30代の若年層だとわかっています。もともと若年層の間で住まいの貧困は広がっていたんです。それが最初の緊急事態宣言のときに、ネットカフェに休業要請が行われて、可視化されたと考えています』、「6.6%が定まった住居をもたず、ネットカフェ、マンガ喫茶、友人の家などで寝泊まりしていた経験をもつ」、「中でも親と別居している若者の13.5%が定まった住居がない、つまり広い意味でホームレス状態を経験したことがあると答えました」、広義の「ホームレス状態」にある「若者」はかなり多いようだ。
・『さらに、シェアハウスの問題も浮き彫りになっています。(稲葉 剛氏の略歴はリンク先参照) 首都圏では敷金・礼金といった初期費用が高く、家賃保証の審査に通らず家を借りたくても借りられない若者がけっこういます。そこで初期費用がかからず、連帯保証人も不要なシェアハウスに暮らさざるをえない人も一定数はいるということです。 不動産仲介業者を通じて借りる通常の賃貸物件は借地借家法によりある程度は入居者の居住権が守られますが、シェアハウスの場合はインターネットで情報を提供して大家と直接契約する形になっていて、入居者に不利な脱法的な契約になっているところが多いです。 家賃を滞納すると即刻退去など居住権が侵害されやすい状況にあり、コロナ禍での失業で家賃が払えず、追い出されて路上生活になってしまう若者が増えています。 Q:追い出された人たちはどうしているのですか。 A:東京都の場合、昨年4月に都内のホームレス支援団体の連名で自治体に申し入れ、都がビジネスホテルを提供しています。そういった公的な支援で住宅を確保した人もいますが、緊急事態宣言が終わったらネットカフェに戻ったという人もいます。 ただ、コロナ禍では仕事自体が非常に少なく、あったとしても短期の仕事ですから不安定な状況は変わりません。仕事が切れると路上生活になってしまうという状況です』、「シェアハウスの場合は・・・入居者に不利な脱法的な契約になっているところが多いです。 家賃を滞納すると即刻退去など居住権が侵害されやすい状況にあり、コロナ禍での失業で家賃が払えず、追い出されて路上生活になってしまう若者が増えています」、「コロナ禍では仕事自体が非常に少なく、あったとしても短期の仕事ですから不安定な状況は変わりません。仕事が切れると路上生活になってしまうという状況です」、深刻だ。
・『住まいを失うと求職活動のハードルが高くなる Q:稲葉さんは以前から「ハウジングファースト」を訴えていますね。 A:住まいは生活の拠点であるのと同時に、いったん失うと求職活動をするうえでハードルが高くなります。 例えば、アパートの家賃を滞納してネットカフェに移るとした場合、もといた住所に居住の実態がないとわかると、自治体は住民票を削除します。履歴書を書くときにはどうしても住所を書かないといけないですし、面接などをクリアして実際に就職するという際にも、住民票を出してくれと言われます。仕事探しのハードルが非常に高くなるんです。 今回のコロナ禍の公的な支援で典型的だったのは、昨年の特別定額給付金です。住民基本台帳のデータに基づき給付されたので、住民票のない人は受け取ることができませんでした。一部の自治体は融通を利かせて、ホームレスやネットカフェで暮らす人にも届きましたが、全体としてはほとんどもらうことができていません。公的なサービスのほとんどは住民票にひもづいているので、家がないと支援が受けづらくなります。 唯一といえる例外は生活保護で、住まいがない状態でも今いる場所で申請する「現在地保護の原則」が適用されます。ですが、自治体側が、窓口で申請を拒む水際作戦をおこなうケースがあるのです。 本来はこれ自体が違法行為で、あってはならないことです。ところが、昨年4月の第1回目の緊急事態宣言時に、東京23区で生活保護の申請件数がかなり増えたにもかかわらず、かなりの人が追い返されました。 生活困窮の相談に対して、きちんと生活保護につなげる自治体もある一方、とにかく追い返す、1人だとダメでも私たちのような支援者が同行すると応じるなど区によって対応にバラツキも見られ、若い人に対しては「親元に戻れば」と諭す職員もいました。 若年層の生活困窮者は、虐待があって親との関係が悪かったり、親自身も貧困で頼ることができなかったりすることも多いのに、そうした事情を考慮せずに追い返そうとるのです』、「もといた住所に居住の実態がないとわかると、自治体は住民票を削除」、「公的なサービスのほとんどは住民票にひもづいているので、家がないと支援が受けづらくなります」、「生活保護で・・・自治体側が、窓口で申請を拒む水際作戦をおこなうケースがある」、「本来はこれ自体が違法行為で、あってはならないこと」、けしからん自治体だ。
・『利用していない困窮者の3割超「家族に知られるのが嫌」 生活保護は世代を問わず忌避感が強く、制度につながれていない人がたくさんいます。生活保護を利用していない生活困窮者に理由を尋ねるアンケートをおこなったところ、3割超が「家族に知られるのが嫌」と答えました。 そこで、今年1月から扶養照会(申請者の親族に援助ができないかを確認すること)の運用見直しを求めるネット署名に取り組みました。その結果、4月からは本人が家族への連絡を拒む場合は、本人の意向を尊重するという運用に変更となりましたが、それでもまだ親族への照会にこだわる自治体もあります。 住まいを失いホームレス状態になると、社会的に孤立するのも特徴です。本人が「恥ずかしい」とスティグマ(負の烙印)を持ってしまい、自ら人間関係を断ってしまう人も多く見てきました。 家族や友人に打ち明けることができず、SOSを発することができないので追い詰められ、ますます孤立は深まるのです。 Q:そうなると、自力で何とかするしかない? A:リーマンショック以降、日本国内にも貧困があると知られるようにはなったんですけれども、それは個人で解決するべき問題だという意識が根強くあって、若者たちはその中で育ってきている。 私たちへのSOSも、路上生活になって所持金が数十円、数百円しかないという状態になってからが来ることが多い。そのときに生活保護などの公的な支援を利用することをお勧めするんですが、おそらく本人としては、とにかく次の仕事が見つかるまでのつなぎとしての生活費や宿泊先があればよいと言われる方が多く、また次が見つかれば自分で何とかするからという人が少なくありません。 なので、なかなか制度につながらないということはあります。日銭を稼ぐために短期の仕事でつないでいく生活を続けてきたので、そこから抜け出す方法がイメージできないという人も多いのではないかと思います。 Q:実際、それで何とかなっているんですか。 A:オリンピック関連のアルバイトとか、ワクチンの接種の電話受付とか、期間限定の仕事はあります。そうした短期の仕事で収入を得ながら、ネットカフェなどに泊まっているという方は少なくありません。ただ、それも本当に一時的なものなので、またいつ路上生活になってもおかしくないという状況です。 (ウーバーイーツなど)フードデリバリー関係の仕事をしている人もいますが、競争が激しくなってきているので、なかなか収入的には厳しいという話を聞きます。 短期の不安定な仕事をつないでいくという状況から脱して、安定した仕事を、長期で働けるような仕事を見つけるためにも、まずそのスタートラインとして住まいが必要なんです。 ネットカフェで暮らすより、低家賃の住宅を借りたほうが生活コストは安くすむのに、初期費用のハードルがあるということで、貧困から抜け出せないという状況に追いやられてしまう。 Q:では、どうやって解決すればいいのでしょう。 A:公営住宅の拡充や、民間賃貸住宅の初期費用や家賃を補助する仕組みが必要でしょう。東京の場合、都営住宅は単身だと原則60歳以上でないと入居資格がないですし、抽選倍率も非常に高い。 昨年からずっと求めているのが、住宅の現物給付です。東日本大震災以降、賃貸住宅の空き家や空き室を行政が借り上げて、被災者に提供するという仕組みが進んでいます。私たちはコロナの影響で仕事と住まいを失う人が急増する事態を「コロナ災害」と言っているのですが、その仕組みを適用すべきではないか。 ただし、日本の住宅政策の管轄は国土交通省、福祉的な支援は厚生労働省というすみわけになっていて、両方が連動していません。まずは、関係省庁の連携が重要だと思います』、「タテ割り」行政の克服はいつも容易ではないようだ。
・『地方で仕事がなく上京した若者が困っている Q:日本では地方を中心に空き家が増えています。都心で住む場所がないなら、そういったところに移り住めば?と考える人もいそうです。 A:今、首都圏で住まいに困っている人の中は、地方で仕事がなく上京してきた人が少なくありません。なかには、地方で住み込みの仕事を見つけて移住する人もいますが、コロナ禍で仕事が減っているとはいえ、東京はまだ求人があるので、離れられない人が多いでしょう。 また、地方に空き家があったとしても、そこを貸してくれるかどうかわかりません。とくに住所がない、住民票がない方に貸すかというと、正直なところ難しいと思います。 Q:そのほかにも、打つべき施策はありますか。 A:最後のセーフティーネットである生活保護を、もっと使いやすくすることです。昨年12月から厚生労働省が「生活保護の申請は国民の権利」と情報を発信し始め、SNSでも話題になりました。 国としても貧困が広がっていることに対して、生活保護の利用を呼び掛ける方向に転換し始めたので、申請件数は少しずつ増えている状況ですが、自治体によって温度差があります。 昨年春以降、つくろい東京ファンドや反貧困ネットワークなど、首都圏を中心に40団体以上が集まり「新型コロナ災害緊急アクション」というネットワークを作り、生活に困窮した方々からのSOSをメールで受け付けて、駆け付け型の支援をするという活動を継続しています。 生活にお困りの方がいらっしゃれば、ぜひこうした民間支援団体にご相談いただければと思います』、「昨年12月から厚生労働省が「生活保護の申請は国民の権利」と情報を発信し始め」、好ましいことで、これまで抑制的だった自治体の姿勢も変わってほしいものだ。「新型コロナ災害緊急アクション」のような「民間支援団体」にも期待するところが大きい。
先ずは、昨年5月16日付け東洋経済オンラインが掲載した取材記者グループのFrontline Press による「隠れ暮らす「女性ホームレス」密着して見えた実態 京大准教授が7年かけて問題点を浮き彫りに」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/428121
・『「女性の貧困」――。近年、注目されているテーマだが、2000年代初めから「女性ホームレス」に着目し、研究を続けてきた人がいる。京都大学大学院文学研究科准教授の丸山里美氏は7年間にわたって、東京と大阪で女性ホームレス33人へのフィールドワークを行い、問題点をあぶり出した。
「女性の貧困」の深淵とは何か、その実態を測る難しさはどこにあるのか。「ニッポンのすごい研究者」は今回、女性ホームレスの研究者にスポットを当てた(Qは聞き手の質問、Aは丸山氏の回答)』、興味深そうだ。
・『男性ホームレスとの大きな違いは「結婚歴」 Q:丸山さんが調査された女性ホームレスには、どんな特徴があるのでしょうか。 A:私の調査はサンプル数が33と少なく、聞き取りの方法や時期が統一されていないため、統計的な価値は高くありません。ただ、女性に特化した調査はこれまでほとんど実施されていません。 そこで女性ホームレスの特徴をつかむために、対象を男性に特化した厚生労働省の「ホームレスの実態に関する全国調査」(おおむね5年ごとに実施)の2007年版と、私が2003年から2009年にかけて実施した調査で比較しましょう。 厚労省の調査は野宿者のみを対象にし、私の調査は野宿者と施設居住者を対象にしています。 私は東京と大阪の路上で会った19人、東京の福祉施設で会った14人、計33人から生育家族や学歴、職歴、居住場所、同居人といった生活史を詳細に聞き取っています。このうち、夫が失業して2人ともホームレスになった人は11人。本人の失業でホームレスになった単身女性が15人。夫や家族との関係性を失ってホームレスになった人が7人。これらのうち、野宿経験者は26人でした。平均年齢は59歳です。 男性ホームレスとの大きな違いは、まず、結婚歴です。厚労省の調査によると、男性のホームレスには結婚経験がない人が半数以上もいるのですが、女性の場合、9割近くに結婚歴(内縁関係含む)があり、そのうち半数以上が複数回しています。 貧困女性にとって男性のパートナーを持つことは、生活を維持するための手段になっている実態が改めて浮かび上がります。ホームレスの人は総じて学歴が低いのですが、女性では「最終学歴が中学校以下」という人が半数以上で、男性よりもさらに低い。職歴も大半はパート。多くの人が清掃、水商売、旅館の住み込み、飯場の賄いなどに従事しています。 Q:その女性たちは、どのようにしてホームレスになったのでしょうか。 A:いくつかパターンがあります。夫との死別や離別によって単身となった女性が失業する場合、もともと単身の人が病気や高齢などで働けなくなる場合、夫をはじめ家族との関係がうまくいかなくなる場合などです。 (丸山里美氏の略歴はリンク先参照) 中高年の女性ができる仕事は、低賃金の不安定労働に限られていますから、失業保険や厚生年金の対象にならない人も多い。働けなくなると、すぐに生活に困窮することになりがちです。 例えば、本人が失業したケース。60代の女性は、中学校卒業後に正社員としてガラス工場で働き始め、22歳で転職します。26年間勤めますが、そこでは失業保険や年金に入っていませんでした。 給料が上がらず生活が苦しくなったため、その会社を辞めて清掃のパートを2つ掛け持ちします。でも、アパートの家賃には足りない。友人からの援助で賄っていましたが、次第に友人宅に居候するようになった。その生活が10年ほど続きましたが、高齢になって仕事を解雇されると、友人への借金が気になって居候しづらくなり、野宿に至りました』、「男性のホームレスには結婚経験がない人が半数以上もいるのですが、女性の場合、9割近くに結婚歴・・・があり、そのうち半数以上が複数回しています」、「ホームレスになった」「パターン」には、「夫との死別や離別によって単身となった女性が失業する場合」、「もともと単身の人が病気や高齢などで働けなくなる場合」、「夫をはじめ家族との関係がうまくいかなくなる場合」などです。なるほど。
・『離婚によって貧困に陥るケースも 別の50代女性のケースは、こうでした。高校中退後、縫製工場に正社員として勤め始めます。18歳で専業主婦になり、4人の子供をもうけた。その後、35歳で離婚し、水商売を始めて3年後に独立。42歳で再婚しました。夫婦2人の収入があったため、その後は自らの子供と共にマンションで豊かに暮らしています。 ところが、女性は54歳のときに体を壊して店をたたみました。実は結婚直後から夫の精神的暴力に耐えていたのですが、末っ子が結婚したのを機に離婚し、家を出ます。しばらくはホテルやサウナに泊まっていましたが、所持金が尽きて野宿になりました。 もともと精神疾患や軽度の知的障害がある女性も一定数いて、人間関係のトラブルになりやすく、仕事が続かないという背景もあります。 Q:丸山さんが調査に着手する2003年まで、ホームレスと言えば男性の問題として認知され、女性のホームレスはほとんど注目されていませんでした。そんな中、7年もかけて綿密な調査を続けた。京都から東京へは夜行バスで通っていたと聞いています。 A:京都大学の大学院に通っていたときですね。約250人がテントで暮らしている東京都内の公園に何度も通いました。そこでは女性が10人ほど暮らしていて、顔見知りになった4人の女性たちと数年間にわたって人間関係をつくり、調査を行いました。 テントは平均で3畳くらいの広さです。中には洋服や布団といった日用品があり、発電機や電池式のテレビを置いてあるテントもありました。日雇いやアルバイト、保険の外交員、ビルの清掃、廃品回収などで現金収入を得ている人もいました。 食事はコンビニなどで廃棄物として出されるもの、福祉事務所で配布されるもの、炊き出しなどで確保。カセットコンロを使って自炊する場合も多いです。日用品は自分たちで購入するか、定期的に訪れるボランティアや教会に頼んで手に入れ、生理用品など男性に頼みにくいものは女性ボランティアに頼んでいたようです』、「京都から東京へは夜行バスで通っていた」、確かに「女性のホームレス」は「東京」に多いという事情があるにせよ、大変だ。
・『何度も足を運び、一緒に時間を過ごす Q:公園以外では、どんなところで調査されたのですか。 A:野宿者だけでなく、住居のない状態(=ホームレス)の女性たちが滞在する都内の福祉施設に泊まり込み、そこで最初はボランティア、後にアルバイト職員として働きながら、並行して聞き取り調査をしました。大阪では、女性野宿者の支援グループをつくって、その活動と並行して調査もしていました。 (こうした手法を取ったのは)まず、一緒に時間を過ごしたいと思ったからです。それに、1回だけのインタビューでわかることは限られています。何度も足を運んで人間関係をつくって話を聞けば、その分、調査は深みのあるものになると考えました。 東京で調査したのは、京都や大阪ではホームレスの女性になかなか出会えず、東京に行き着いてしまったということですね。) Q:日本では「ホームレス=中高年の男性」というイメージがあります。一般的には男性よりも女性のほうが貧困とされているのに、なぜ、女性ホームレスは少ないのでしょうか。 A:彼女たちは危険を避けるために物陰に隠れるように暮らしているので、なかなか目にとまりません。厚労省の「ホームレスの実態に関する全国調査」の2021年版によれば、全国の野宿者3824人のうち女性は197人。わずか5.2%です。 「ホームレス」の定義によるところも大きいと思います。日本でホームレスというと、一般的に路上生活をする人を指します。しかし、もっと解釈を広げ、「家のない状態の人」と定義し、インターネット・カフェやファストフード店、知人宅で夜を過ごすといった人もカウントすれば、5.2%よりずっと多いです。 女性ホームレスが少ない背景には、男性が稼ぎ主で女性は家事を主に行うことを前提にした、日本の労働や社会保障のあり方も問題として横たわっています。こうした結果、多くの女性は不安定な低賃金労働に従事している。低賃金だと1人で生きていくことが難しいので、貧困を恐れて、夫や親のいる家から出られないわけです。 また、雇用保険や年金といった保険から排除されていることも多く、単身者の場合、失業すると途端にホームレス状態になるリスクがある。 他方、男性より利用できる福祉的な選択肢は多い。そうしたことから、路上に出る一歩手前で踏みとどまっているケースが多く、数字上では女性ホームレスの比率が極端に低いのだと考えられます』、「もっと解釈を広げ、「家のない状態の人」と定義し、インターネット・カフェやファストフード店、知人宅で夜を過ごすといった人もカウントすれば、5.2%よりずっと多いです」、「多くの女性は不安定な低賃金労働に従事している。低賃金だと1人で生きていくことが難しいので、貧困を恐れて、夫や親のいる家から出られないわけです」、なるほど。
・『一貫性がなく、矛盾した言動をとることがある Q:調査を通して、どんなことが明らかになったのでしょう。 A:女性野宿者たちは、さまざまな場面で一貫性がなく、矛盾した言動をとることがあります。例えば、DVを受けたある女性は、いったんは施設に逃げ込むけれど、その後、夫の元に戻る。また施設で暮らす、そして夫の元へ。そういうことを繰り返します。 私の家に居候したいと言った女性はある時、衝動的に公園を飛び出し、夫と違う男性とホテルで暮らし始めます。そして毎日のように電話をしてきては、「実家に帰ろうか」「公園で夫の帰りを待とうか」「生活保護を受けようか」などと言うのです。 彼女たちの多くは自らの重要な決断をする際、他者の意見や存在を考慮し、それに大きく影響されていた。女性に求められてきた社会的な期待に沿うことは、「自分で選択できる自立した生」とは矛盾するのです。 研究者として感じたことは、この合理的には理解しがたい存在のあり方が、それまでのホームレス研究から女性が排除されてきた一因ではないかということでした。 もしかすると皆さんは、「ホームレス=なくすべきもの」と思われているかもしれません。でも、すべてのホームレスが「ホームレス生活をやめたい」と願っているわけではないのです。この研究を通して、私は「その人がその人なりに望むことを実現できるような社会になればいい」と考えるようになりました。 Q:丸山さんがフィールドワークをされてから10年以上が経ちました。女性ホームレスの姿に変化はありましたか。 A:2010年代半ばには、女性の貧困が社会的に話題になりました。私の主な調査対象は中高年の女性でしたが、生活に困窮して性産業で働いている女性たちが「女性の貧困」や「女性ホームレス」としてイメージされるようになったことが、最も大きな変化だと思います。 おそらくこれからも、時が経つにつれ、女性の貧困の実態や、それに対する人々のイメージも変化していくことでしょう。 Q:そもそも、なぜ女性ホームレスの研究をしようと思ったのですか。 A:大学の卒業論文のフィールドに、釜ヶ崎(大阪市西成区の「あいりん地区」)というホームレスの人たちが多い所での炊き出しを選んで、3年間通いました。それが非常に楽しかった。 インドに1人、バックパックを背負って旅行に行ったことがあったんですが、釜ヶ崎にはそういうアジアの国に旅行しているかのような雑然とした雰囲気があって……。人間らしい行為や感情があふれていて、人々が生き生きしていると感じました。 でも、釜ヶ崎でトラブルに遭ってしまうんです。炊き出しのボランティアをしているときに知り合った男性にストーカーされて。「殺してやる」とも言われました。それまでは自分が女性であることや、ジェンダーの問題にあまり関心がなかった。だからこそ、男性ばかりの釜ヶ崎の街に楽しく通えていたんですね。 私はよそから通っていたので、そんなことがあったら釜ヶ崎に行かなければいい。でも、ときどき、街で見かけていたホームレスの女性たちは、住人のほとんどが男性という街で、きっと、私と同じような目に遭って困難を抱えているんじゃないか。人生の先輩である彼女たちがどういうふうに暮らしているのかを知りたいと思ったんです』、「すべてのホームレスが「ホームレス生活をやめたい」と願っているわけではないのです。この研究を通して、私は「その人がその人なりに望むことを実現できるような社会になればいい」と考えるようになりました」、より実態に即した考え方になったようだ。
・『世帯の中にいる女性の貧困は捉えきれていない Q:今の新しい研究テーマを教えてください。 A:「世帯に隠れた貧困」に関心があります。貧困者支援をしている、あるNPO法人に相談に訪れた人の記録を分析したときに「統計に表れない女性の困窮」に気づきました。 例えば、夫からのDV被害に遭っている妻は、統計上「家に住んでいる」「世帯収入がある」となり、貧困とは見なされません。でもDVに耐えかねて、いざ家を出ると、その妻は「住むところがない」「お金もない」となり、途端に貧困に陥る。 従来、(研究や政策は)貧困を世帯ごとに見ていたのですが、それでは、世帯の中にいる女性の貧困の実態を捉えきれないのです。 Q:その研究で、どんなことが明らかになるのでしょうか。 A:夫婦で生活していると、多くの場合、女性が家事や育児といった無償労働を担い、それに時間を投入するせいで満足な現金収入を得られません。一方、夫が現金を得られるのは、妻の無償労働に支えられているからです。 つまり、貧困という概念を考えるときには、経済的資源についてだけではなく、「時間資源」やそれに派生する「自由度」についても考慮すべきだと考えています。 今は研究の途上ですが、研究を進めていけば、貧困の捉え方や計測の方法、さらには貧困の概念を根本から問い直すことになるのではないか、と思っています。それは、困難を抱える女性たちの生きづらさを可視化させることになる。そう期待しています』、「経済的資源についてだけではなく、「時間資源」やそれに派生する「自由度」についても考慮」した新たな「貧困」の「概念」が出てくるのが、楽しみだ。
次に、12月1日付け東洋経済オンラインが掲載したライターの大河内 光明氏による「小学生で「自殺未遂繰り返す母」介護した彼の悲壮 全貌が見えていない「若者ケアラー」のリアル」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/470794
・『近年、障害や病気のある家族などの介護を主に担う18歳未満の人々、いわゆる「ヤングケアラー」の存在が、徐々に社会的な注目を浴びるようになってきた。今年3月に公表された国の調査によると、中学生の約17人に1人、高校生では約24人に1人がヤングケアラーだという。 また2019年公表の国の調査では、ヤングケアラーにおける生活保護受給世帯が29.6%、ひとり親世帯が48.6%とも報告され、貧困とも密接に関係すると考えられる。国も支援策を検討しており、少しずつ支援の輪が広がってきている。 一方で、ヤングケアラー以上に認知度が低いのが、18歳からおおむね30代までの介護者である「若者ケアラー」だ。進学や就職に際し、収入に直結する選択を迫られる時期でもあり、その中で介護を担わなければならない負担は大きい。しかし若者ケアラーを対象とした公共的な支援は少なく、ケアラー全体を支援する埼玉県や北海道栗山町、20代も含めた「こども・若者ケアラー」を支援する兵庫県神戸市などのわずかな例があるのみだ。若者ケアラーに絞った調査や統計資料も乏しく、全体像がつかみにくい状況だ。 貧困に陥った若者たちの実態に4日連続で迫る特集「見過ごされる若者の貧困」3日目の第3回は、ライターの大河内光明氏が若者ケアラーの実像に迫った(1日目、2日目の記事はこちらからご覧ください)。 【3日目のそのほかの記事】第1回:30代女性が"夜逃げ"した「ヤバい格安賃貸」の正体 第2回:コロナ禍で露呈「若者ホームレス」知られざる苦境』、「ヤングケアラー」より少し年上の「若者ケアラー」とは、興味深そうだ。
・『半年から1年周期で状態が変わる母 20代後半の男性Aさんは、物心ついたときから実の父がおらず、母の元で育てられた。平穏だった生活が一変したのは10歳のとき。母にうつ病(のちに双極性障害と判明)の診断がおりたのである。 元々「責任感のある完璧な人だった」という母だが、家族間での言い争いが増え、再婚した義父とは離婚し、一緒に暮らしていた祖母とも別居。さらに親戚からも離縁され、結果的に母との2人暮らしになった。 リストカットや飛び降り、過剰服薬など、たびたび自殺未遂を起こす母を子どもながらにケアする日々。経済的にも苦しかった。母は半年から1年周期で躁状態とうつ状態を繰り返した。 躁状態のときは働きに出られるが、うつ状態のときは寝込んでしまって仕事ができなくなる。このように就業状態が不安定だったため、中学、高校生活では生活保護を受給した。 「学校生活では自分だけ学食で定食を頼めなかったり、病院に行くにも医療券だったり、肩身が狭かったです。役所などでの手続きも、母が動けないときは私が代わりに行く必要があり、思い返すと不自由でした。自分がしっかりしないと終わりだと思っていました。子どもながら、緊張感のある生活でしたね」 Aさんは高校卒業後、作業療法士になるために専門学校に進学、その後、大学に編入した。作業療法士を志したのは「経済的に安定するし、母のことをもっと理解できるのでは」と考えたからだ。学費や生活費は奨学金などで賄った。奨学金の総額は800万円ほどになるという。 それでも前向きに生きていたAさん。ところが作業療法士として働き始めてから、精神的に非常にきつくなった。母の病状が悪化したからだ。 隣町に就職したAさんは、社会人1年目のある日、仕事終わりに「自殺する」という旨の連絡が母から入った。幸い大事にはならなかったが、過剰服薬していた。「自分に注目してほしいという気持ちが透けて見えました」とAさん。過激化する母からの連絡が煩わしくなり、着信拒否やブロックをすると、職場の夜間電話にも連絡するようになり、当然業務にも支障をきたした。 それ以外にもアパートで禁止されている犬を飼う、無職で借金をする、無計画に引っ越しや散財する、などを繰り返す母。その後始末をするのがAさんだった。 「訪問看護やヘルパーさんも母が自ら追い出してしまうので、手に負えませんでした」』、「アパートで禁止されている犬を飼う、無職で借金をする、無計画に引っ越しや散財する、などを繰り返す」、恐らく「躁」状態の時期の行動なのだろうが、困ったことだ。
・『母の再婚でケア生活を卒業 実はAさんは1年ほど前に、ケア生活を卒業した。きっかけは母の二度目の再婚だ。それを機に連絡が来なくなったという。「再婚しなければ、今ごろどうなっていたか」とAさん。ケアが終わった今だから言えるのかも、と前置きしながらもこう語る。 「発症前の母は掃除好きで真面目で働き者でした。クリスマスには決まって手作りケーキを作ってくれたのを覚えています。適切な処置を受けられない時期が長かったからか、躁状態とうつ状態の波の落差が激しくなり、少しずつ人格が変わってしまったんです。 今ではまるで別人で……。ただ、母は働けるときは必死に働いてくれていました。そこは感謝しています」 ケアが終わったとはいえ、Aさんの生活は楽とはいえない。奨学金は現在も月4万円近くを返済している。専門職とはいえ、作業療法士の月収も18~19万円ほどで、十分とはいえなかった。今は別の仕事を探している。 同時に、同じ悩みを持つケアラーの支援団体の運営をサポートしている。 「昔の私は孤立していました。どこにどう相談していいかわからない状態です。ケアラーと社会がつながる場所が必要です」 誰のせいでもないが、個々の家庭ですべては解決しきれない。せめて社会的な支援と人とのつながりがあればという切実な願いを聞かせてくれた。) Bさんは現在30代後半。20代から現在に至るまで、祖母、母と継続して介護してきた。 「うちは祖父母と母と私の3世代世帯でした。大学在学中に祖母が認知症になり3年ほどして他界、後を追うように祖父も亡くなりました。そこから経済的に立ち行かなくなり、生活保護を経験しました。生活保護を抜け出した後も、何とか立て直そうと20代後半で営業の仕事をしている最中に、今度は母が指定難病である前頭側頭型認知症になったんです」 前頭側頭型認知症は、同じ行動や言葉を繰り返すほか、万引きなど反社会的な行動が表れることもある。 Bさんの母親にしても、大声を出す、徘徊する、暴れるなどの行動を繰り返し、警察のお世話になったことが100回以上あるという。コロナ禍においては、マスクをつけようとすると逆上するため、出入り禁止になる施設もあった』、「警察のお世話になったことが100回以上ある」、「前頭側頭型認知症」とはいえ、本当にやっかいだ。
・『入れる介護施設がない 「母を介護施設に入れようと試行錯誤したのですが、この症状のせいで入れる施設がまったくない。親戚にも見放され、頼りにできません。母は非正規の教員だったため、年金は少額で5万円ほど。財産は一切なく、私は母のために介護離職せざるをえませんでした。 途中からネットで物を売る仕事をして月10万円前後の収入を得ているのと、会社員時代の貯金を切り崩して何とかしています。この間、国や自治体から経済的な支援は1円もありませんでした」 要介護4~5に認定された要介護者を介護する家族などに支給される家族介護慰労金は、Bさんの住む自治体では制度として組み込まれておらず、もし存在したとしても要介護度2にとどまることから利用できない。 また、重度障害者向けに支給される特別障害者手当も、日常生活動作評価で「一部体が動かせるため」という理由で対象にならないそうだ。 市の担当者からは「お気の毒ですが、あなたのような介護者には制度が何もなく支援できない」と言われたという。 生活保護を受給する方法もあるかもしれないが、それには抵抗感がある。 「生活保護を受給すると、母がこの状況の中、定期的に窓口に申請しに行かなければいけない。受給するためには家財を手放さないといけない可能性もあります。それに仕事で稼げないのもつらいんです。仕事は精神的なよりどころになっていますし、かつて生活保護から抜け出したのに逆戻りするのも抵抗感があります。 最後の手段として精神科病院に入院させる方法もありますが、患者を閉じ込めて放置しているような病院もあると聞きます。それは私がこれまでやってきた介護を否定するようなものです」 Bさんは「早急に何とか支援してほしい」と悲痛な思いを打ち明ける。 「母は眠ることなく徘徊して騒ぎます。私も夜は1時間ほどしか眠れません。もう何年ももたないかもしれない」) 「ヤングケアラーへの支援は進む一方、18歳以上の若者ケアラーの認知と支援は不十分です」 こう語るのは、自身も30代から認知症の祖母を介護し、ケアラーのコミュニティーを運営する作家・メディア評論家の奥村シンゴ氏だ。 「夜間のトイレ付き添いなどで睡眠時間も確保できない中、若者ケアラーが自分の進学や就職の準備するのは大変厳しいです。非正規雇用で働いたり、介護離職したりする人も多く、周囲と経済的な面でも差が出て結婚しにくいなどの問題も生じます。 長期化する介護でケアラー自身も心身の不調に陥るケースが少なくありません。また、コロナ禍では通う病院も限られ、デイサービスやショートステイも利用できない状況になりました。その間、国や自治体の支援はほとんどありませんでした」』、「「ヤングケアラーへの支援は進む一方、18歳以上の若者ケアラーの認知と支援は不十分です」、「ヤングケアラー」問題が大きく取上げられた結果なのだろうが、「若者ケアラーの認知と支援は不十分」は困ったことだ。
・『「家族として大切に看たい」が… では、若者を含めたケアラーに対する支援はどういうものが考えられるのか。奥村氏はこう提案する。 「イギリスやオーストラリアなどではケアラーに給付する『介護者手当』もあります。また、税金の控除や、介護者の休息を支援するレスパイトケアという形も考えられるでしょう。民間でも企業側がリフレッシュ休暇や介護休業の制度を充実させるなどの視点も重要といえます」 今回取材した当事者に共通していたのは、「家族として大切に看たい。しかし現状の手薄な支援では苦しすぎる」という葛藤に加えて、「身近に相談できるところがない」という苦しさだ。SNSが現実の人間関係以上に重要な居場所になっているという声も多かった。 経済的な支援だけでなく、当事者が気軽に相談できる社会的な環境づくりも必要といえそうだ』、関係省庁が緊密に連絡し合った上で、「当事者が気軽に相談できる社会的な環境づくり」を進めていくべきだ。
第三に、12月1日付け東洋経済オンライン「コロナ禍で露呈「若者ホームレス」知られざる苦境 「家がないと就職活動も難しい」日本の実態」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/471185
・『貧困問題を解決する方法の1つとして、「ハウジングファースト」を掲げるのが、生活困窮者の支援の最前線に立ち続ける稲葉剛氏だ。2014年に「一般社団法人つくろい東京ファンド」を設立し、アパートの空き室などを団体で借り上げ、住まいに困っている人に一時的な宿泊場所として提供する個室シェルターの事業を行っている。 貧困に陥った若者たちの実態に4日連続で迫る特集「見過ごされる若者の貧困」3日目の第2回は、日本が抱える「住まいの貧困」について、稲葉氏に聞いた(Qは聞き手の質問、Aは稲葉氏の回答)(1日目、2日目の記事はこちらからご覧ください)。【3日目のそのほかの記事】 第1回:30代女性が"夜逃げ"した「ヤバい格安賃貸」の正体 第3回:「小学生で「自殺未遂繰り返す母」介護した彼の悲壮』、「住まいの貧困」とは興味深そうだ。
・『住まいの貧困はコロナ以前から広がっていた Q:コロナ禍で「住まいの貧困」の実態はどうなっていますか。 A:新型コロナ以前は25室だった個室シェルターを56室まで増やしましたが、つねに満室状態です。コロナ禍で大きく変わったのは、10~20代の相談が珍しくなくなったこと。コロナ前はほとんどが中高年の単身男性でしたが、いまは17~18歳から上は70代まで、老若男女の方に個室シェルターをご利用いただいています。 われわれと連携しているNPO法人の「TENOHASHI(てのはし)」は池袋で炊き出しをしていますが、11月上旬には集まる人が430人を超えました。 これは、リーマンショック以来のことで、その中には多くの若者も含まれます。コロナで打撃を受けた飲食店をはじめとする対人サービス業に従事していた方が多く、性風俗やキャバクラなど「夜の街」関連で働いていた方も目立ちます。 ただし、間違えてはいけないのは、コロナ以前から住まいの貧困は広がっていたことです。2014年にビッグイシュー基金で若者の住宅問題に関するインターネット調査(対象は首都圏と関西圏に住む20~39歳、未婚、年収200万円未満の個人)を実施したところ、6.6%が定まった住居をもたず、ネットカフェ、マンガ喫茶、友人の家などで寝泊まりしていた経験をもつと回答しています。 中でも親と別居している若者の13.5%が定まった住居がない、つまり広い意味でホームレス状態を経験したことがあると答えました。 東京都が2017年に実施した調査でも、住居がなくネットカフェなどを寝泊まりするために利用している人が4000人いて、その半数が20~30代の若年層だとわかっています。もともと若年層の間で住まいの貧困は広がっていたんです。それが最初の緊急事態宣言のときに、ネットカフェに休業要請が行われて、可視化されたと考えています』、「6.6%が定まった住居をもたず、ネットカフェ、マンガ喫茶、友人の家などで寝泊まりしていた経験をもつ」、「中でも親と別居している若者の13.5%が定まった住居がない、つまり広い意味でホームレス状態を経験したことがあると答えました」、広義の「ホームレス状態」にある「若者」はかなり多いようだ。
・『さらに、シェアハウスの問題も浮き彫りになっています。(稲葉 剛氏の略歴はリンク先参照) 首都圏では敷金・礼金といった初期費用が高く、家賃保証の審査に通らず家を借りたくても借りられない若者がけっこういます。そこで初期費用がかからず、連帯保証人も不要なシェアハウスに暮らさざるをえない人も一定数はいるということです。 不動産仲介業者を通じて借りる通常の賃貸物件は借地借家法によりある程度は入居者の居住権が守られますが、シェアハウスの場合はインターネットで情報を提供して大家と直接契約する形になっていて、入居者に不利な脱法的な契約になっているところが多いです。 家賃を滞納すると即刻退去など居住権が侵害されやすい状況にあり、コロナ禍での失業で家賃が払えず、追い出されて路上生活になってしまう若者が増えています。 Q:追い出された人たちはどうしているのですか。 A:東京都の場合、昨年4月に都内のホームレス支援団体の連名で自治体に申し入れ、都がビジネスホテルを提供しています。そういった公的な支援で住宅を確保した人もいますが、緊急事態宣言が終わったらネットカフェに戻ったという人もいます。 ただ、コロナ禍では仕事自体が非常に少なく、あったとしても短期の仕事ですから不安定な状況は変わりません。仕事が切れると路上生活になってしまうという状況です』、「シェアハウスの場合は・・・入居者に不利な脱法的な契約になっているところが多いです。 家賃を滞納すると即刻退去など居住権が侵害されやすい状況にあり、コロナ禍での失業で家賃が払えず、追い出されて路上生活になってしまう若者が増えています」、「コロナ禍では仕事自体が非常に少なく、あったとしても短期の仕事ですから不安定な状況は変わりません。仕事が切れると路上生活になってしまうという状況です」、深刻だ。
・『住まいを失うと求職活動のハードルが高くなる Q:稲葉さんは以前から「ハウジングファースト」を訴えていますね。 A:住まいは生活の拠点であるのと同時に、いったん失うと求職活動をするうえでハードルが高くなります。 例えば、アパートの家賃を滞納してネットカフェに移るとした場合、もといた住所に居住の実態がないとわかると、自治体は住民票を削除します。履歴書を書くときにはどうしても住所を書かないといけないですし、面接などをクリアして実際に就職するという際にも、住民票を出してくれと言われます。仕事探しのハードルが非常に高くなるんです。 今回のコロナ禍の公的な支援で典型的だったのは、昨年の特別定額給付金です。住民基本台帳のデータに基づき給付されたので、住民票のない人は受け取ることができませんでした。一部の自治体は融通を利かせて、ホームレスやネットカフェで暮らす人にも届きましたが、全体としてはほとんどもらうことができていません。公的なサービスのほとんどは住民票にひもづいているので、家がないと支援が受けづらくなります。 唯一といえる例外は生活保護で、住まいがない状態でも今いる場所で申請する「現在地保護の原則」が適用されます。ですが、自治体側が、窓口で申請を拒む水際作戦をおこなうケースがあるのです。 本来はこれ自体が違法行為で、あってはならないことです。ところが、昨年4月の第1回目の緊急事態宣言時に、東京23区で生活保護の申請件数がかなり増えたにもかかわらず、かなりの人が追い返されました。 生活困窮の相談に対して、きちんと生活保護につなげる自治体もある一方、とにかく追い返す、1人だとダメでも私たちのような支援者が同行すると応じるなど区によって対応にバラツキも見られ、若い人に対しては「親元に戻れば」と諭す職員もいました。 若年層の生活困窮者は、虐待があって親との関係が悪かったり、親自身も貧困で頼ることができなかったりすることも多いのに、そうした事情を考慮せずに追い返そうとるのです』、「もといた住所に居住の実態がないとわかると、自治体は住民票を削除」、「公的なサービスのほとんどは住民票にひもづいているので、家がないと支援が受けづらくなります」、「生活保護で・・・自治体側が、窓口で申請を拒む水際作戦をおこなうケースがある」、「本来はこれ自体が違法行為で、あってはならないこと」、けしからん自治体だ。
・『利用していない困窮者の3割超「家族に知られるのが嫌」 生活保護は世代を問わず忌避感が強く、制度につながれていない人がたくさんいます。生活保護を利用していない生活困窮者に理由を尋ねるアンケートをおこなったところ、3割超が「家族に知られるのが嫌」と答えました。 そこで、今年1月から扶養照会(申請者の親族に援助ができないかを確認すること)の運用見直しを求めるネット署名に取り組みました。その結果、4月からは本人が家族への連絡を拒む場合は、本人の意向を尊重するという運用に変更となりましたが、それでもまだ親族への照会にこだわる自治体もあります。 住まいを失いホームレス状態になると、社会的に孤立するのも特徴です。本人が「恥ずかしい」とスティグマ(負の烙印)を持ってしまい、自ら人間関係を断ってしまう人も多く見てきました。 家族や友人に打ち明けることができず、SOSを発することができないので追い詰められ、ますます孤立は深まるのです。 Q:そうなると、自力で何とかするしかない? A:リーマンショック以降、日本国内にも貧困があると知られるようにはなったんですけれども、それは個人で解決するべき問題だという意識が根強くあって、若者たちはその中で育ってきている。 私たちへのSOSも、路上生活になって所持金が数十円、数百円しかないという状態になってからが来ることが多い。そのときに生活保護などの公的な支援を利用することをお勧めするんですが、おそらく本人としては、とにかく次の仕事が見つかるまでのつなぎとしての生活費や宿泊先があればよいと言われる方が多く、また次が見つかれば自分で何とかするからという人が少なくありません。 なので、なかなか制度につながらないということはあります。日銭を稼ぐために短期の仕事でつないでいく生活を続けてきたので、そこから抜け出す方法がイメージできないという人も多いのではないかと思います。 Q:実際、それで何とかなっているんですか。 A:オリンピック関連のアルバイトとか、ワクチンの接種の電話受付とか、期間限定の仕事はあります。そうした短期の仕事で収入を得ながら、ネットカフェなどに泊まっているという方は少なくありません。ただ、それも本当に一時的なものなので、またいつ路上生活になってもおかしくないという状況です。 (ウーバーイーツなど)フードデリバリー関係の仕事をしている人もいますが、競争が激しくなってきているので、なかなか収入的には厳しいという話を聞きます。 短期の不安定な仕事をつないでいくという状況から脱して、安定した仕事を、長期で働けるような仕事を見つけるためにも、まずそのスタートラインとして住まいが必要なんです。 ネットカフェで暮らすより、低家賃の住宅を借りたほうが生活コストは安くすむのに、初期費用のハードルがあるということで、貧困から抜け出せないという状況に追いやられてしまう。 Q:では、どうやって解決すればいいのでしょう。 A:公営住宅の拡充や、民間賃貸住宅の初期費用や家賃を補助する仕組みが必要でしょう。東京の場合、都営住宅は単身だと原則60歳以上でないと入居資格がないですし、抽選倍率も非常に高い。 昨年からずっと求めているのが、住宅の現物給付です。東日本大震災以降、賃貸住宅の空き家や空き室を行政が借り上げて、被災者に提供するという仕組みが進んでいます。私たちはコロナの影響で仕事と住まいを失う人が急増する事態を「コロナ災害」と言っているのですが、その仕組みを適用すべきではないか。 ただし、日本の住宅政策の管轄は国土交通省、福祉的な支援は厚生労働省というすみわけになっていて、両方が連動していません。まずは、関係省庁の連携が重要だと思います』、「タテ割り」行政の克服はいつも容易ではないようだ。
・『地方で仕事がなく上京した若者が困っている Q:日本では地方を中心に空き家が増えています。都心で住む場所がないなら、そういったところに移り住めば?と考える人もいそうです。 A:今、首都圏で住まいに困っている人の中は、地方で仕事がなく上京してきた人が少なくありません。なかには、地方で住み込みの仕事を見つけて移住する人もいますが、コロナ禍で仕事が減っているとはいえ、東京はまだ求人があるので、離れられない人が多いでしょう。 また、地方に空き家があったとしても、そこを貸してくれるかどうかわかりません。とくに住所がない、住民票がない方に貸すかというと、正直なところ難しいと思います。 Q:そのほかにも、打つべき施策はありますか。 A:最後のセーフティーネットである生活保護を、もっと使いやすくすることです。昨年12月から厚生労働省が「生活保護の申請は国民の権利」と情報を発信し始め、SNSでも話題になりました。 国としても貧困が広がっていることに対して、生活保護の利用を呼び掛ける方向に転換し始めたので、申請件数は少しずつ増えている状況ですが、自治体によって温度差があります。 昨年春以降、つくろい東京ファンドや反貧困ネットワークなど、首都圏を中心に40団体以上が集まり「新型コロナ災害緊急アクション」というネットワークを作り、生活に困窮した方々からのSOSをメールで受け付けて、駆け付け型の支援をするという活動を継続しています。 生活にお困りの方がいらっしゃれば、ぜひこうした民間支援団体にご相談いただければと思います』、「昨年12月から厚生労働省が「生活保護の申請は国民の権利」と情報を発信し始め」、好ましいことで、これまで抑制的だった自治体の姿勢も変わってほしいものだ。「新型コロナ災害緊急アクション」のような「民間支援団体」にも期待するところが大きい。
タグ:「昨年12月から厚生労働省が「生活保護の申請は国民の権利」と情報を発信し始め」、好ましいことで、これまで抑制的だった自治体の姿勢も変わってほしいものだ。「新型コロナ災害緊急アクション」のような「民間支援団体」にも期待するところが大きい。 「タテ割り」行政の克服はいつも容易ではないようだ。 「もといた住所に居住の実態がないとわかると、自治体は住民票を削除」、「公的なサービスのほとんどは住民票にひもづいているので、家がないと支援が受けづらくなります」、「生活保護で・・・自治体側が、窓口で申請を拒む水際作戦をおこなうケースがある」、「本来はこれ自体が違法行為で、あってはならないこと」、けしからん自治体だ。 「シェアハウスの場合は・・・入居者に不利な脱法的な契約になっているところが多いです。 家賃を滞納すると即刻退去など居住権が侵害されやすい状況にあり、コロナ禍での失業で家賃が払えず、追い出されて路上生活になってしまう若者が増えています」、「コロナ禍では仕事自体が非常に少なく、あったとしても短期の仕事ですから不安定な状況は変わりません。仕事が切れると路上生活になってしまうという状況です」、深刻だ。 「6.6%が定まった住居をもたず、ネットカフェ、マンガ喫茶、友人の家などで寝泊まりしていた経験をもつ」、「中でも親と別居している若者の13.5%が定まった住居がない、つまり広い意味でホームレス状態を経験したことがあると答えました」、広義の「ホームレス状態」にある「若者」はかなり多いようだ。 「住まいの貧困」とは興味深そうだ。 東洋経済オンライン「コロナ禍で露呈「若者ホームレス」知られざる苦境 「家がないと就職活動も難しい」日本の実態」 関係省庁が緊密に連絡し合った上で、「当事者が気軽に相談できる社会的な環境づくり」を進めていくべきだ。 「「ヤングケアラーへの支援は進む一方、18歳以上の若者ケアラーの認知と支援は不十分です」、「ヤングケアラー」問題が大きく取上げられた結果なのだろうが、「若者ケアラーの認知と支援は不十分」は困ったことだ。 「警察のお世話になったことが100回以上ある」、「前頭側頭型認知症」とはいえ、本当にやっかいだ。 「アパートで禁止されている犬を飼う、無職で借金をする、無計画に引っ越しや散財する、などを繰り返す」、恐らく「躁」状態の時期の行動なのだろうが、困ったことだ。 「ヤングケアラー」より少し年上の「若者ケアラー」とは、興味深そうだ。 大河内 光明氏による「小学生で「自殺未遂繰り返す母」介護した彼の悲壮 全貌が見えていない「若者ケアラー」のリアル」 「経済的資源についてだけではなく、「時間資源」やそれに派生する「自由度」についても考慮」した新たな「貧困」の「概念」が出てくるのが、楽しみだ。 「すべてのホームレスが「ホームレス生活をやめたい」と願っているわけではないのです。この研究を通して、私は「その人がその人なりに望むことを実現できるような社会になればいい」と考えるようになりました」、より実態に即した考え方になったようだ。 「もっと解釈を広げ、「家のない状態の人」と定義し、インターネット・カフェやファストフード店、知人宅で夜を過ごすといった人もカウントすれば、5.2%よりずっと多いです」、「多くの女性は不安定な低賃金労働に従事している。低賃金だと1人で生きていくことが難しいので、貧困を恐れて、夫や親のいる家から出られないわけです」、なるほど。 「京都から東京へは夜行バスで通っていた」、確かに「女性のホームレス」は「東京」に多いという事情があるにせよ、大変だ。 「男性のホームレスには結婚経験がない人が半数以上もいるのですが、女性の場合、9割近くに結婚歴・・・があり、そのうち半数以上が複数回しています」、「ホームレスになった」「パターン」には、「夫との死別や離別によって単身となった女性が失業する場合」、「もともと単身の人が病気や高齢などで働けなくなる場合」、「夫をはじめ家族との関係がうまくいかなくなる場合」などです。なるほど。 Frontline Press による「隠れ暮らす「女性ホームレス」密着して見えた実態 京大准教授が7年かけて問題点を浮き彫りに」 東洋経済オンライン 貧困問題 (その4)(隠れ暮らす「女性ホームレス」密着して見えた実態 京大准教授が7年かけて問題点を浮き彫りに、小学生で「自殺未遂繰り返す母」介護した彼の悲壮 全貌が見えていない「若者ケアラー」のリアル、コロナ禍で露呈「若者ホームレス」知られざる苦境 「家がないと就職活動も難しい」日本の実態)