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政府財政問題(その7)(日本の問題をはき違えている「財務省」の大きな罪、政界で高まるMMT待望論 自民党内で二派に分裂する財政問題、年金受給者への「臨時給付金5000円案」に隠された、政府の甘くて怖い罠) [経済政策]

政府財政問題については、本年1月12日に取上げた。今日は、(その7)(日本の問題をはき違えている「財務省」の大きな罪、政界で高まるMMT待望論 自民党内で二派に分裂する財政問題、年金受給者への「臨時給付金5000円案」に隠された、政府の甘くて怖い罠)である。

先ずは、1月11日付け東洋経済オンラインが掲載した 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)のリチャード・カッツ 氏による「日本の問題をはき違えている「財務省」の大きな罪」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/500817
・『日本の財政赤字は「氷山に向かうタイタニック号」のようなものだという矢野康治財務事務次官の発言で唯一新鮮だったのは、選挙で選ばれた政府の政策を、水面下での会話ではなく、影響力のある『文藝春秋』誌上で厳しく批判したことだ。 約半世紀前、1978年から財務省は政府が抜本的な歳出削減と増税をしない限り「日本は崩壊ししかねない」と、首相を脅し続けて自分たちのいいなりにしようとしてきた。最近は国債市場の暴落を”ネタ”にしている。財務官僚たちは影で、首相を次々と「犠牲」にすることで消費増税を繰り返せると影でジョークを言っているほどだ』、「財務官僚たち」の思い上がった姿勢には腹が立つ。
・『かたくなに主張を改めようとしなかった  仮に財務省の警告が正しければ、それは国益のためだったと言えるだろう。しかし現実には、財務省は何度も間違ってきたし、かたくなに主張を改めようとしなかった。公平のために言うと、確かに財務省の見解は多くの高名なエコノミストの間でも共有されている。2012年にはエコノミスト2人が、財政緊縮策を実施しなければ、2020年から2023年までの間に国債の暴落が起こると予測していた。 1990年代半ば、財務省は橋本龍太郎首相を説得して消費税を3%から5%に引き上げさせた。引き上げ幅は健全な経済状態では問題にならないほど小さかったが、不良債権の肥大化により日本の体力が低下しているというアメリカ政府の指摘が無視されていた。 案の定、1997年4月の増税により、日本経済は深刻な不況に陥り、銀行危機はさらに拡大し、不況はさらに深刻化した。1998年3月、ロバート・ルービン財務長官が宮沢喜一蔵相との私的な会談で3%への引き下げを求めたところ、加藤紘一自民党幹事長が怒りを露わにした。「消費税導入のためにどれだけの首相が犠牲になったか……この発言は非常に不愉快だ」。 その数カ月後、参議院選挙で自民党が予想外の敗北を喫し、橋本首相は辞任せざるをえなくなり、犠牲者に名を連ねた。財務省もまた、予算と銀行債務に関する失敗で罰せられた。野党が参議院を制していたため、政府は野党の銀行救済への同意を得るために、銀行問題に関する財務省の介入を廃止することを黙認しなければならなかったのである。 そして、2010年には菅直人首相率いる民主党政権が誕生した。民主党政権を揺るぎないものにするには、夏の参議院選挙に勝てばよかった。しかし、財務省は菅首相に対し、消費税の再増税を実施しなければ、当時のヨーロッパのような債務危機に陥る可能性があると説得していた。 実際には、ヨーロッパで資本逃避に見舞われたのは、国内の政府債務と多額の対外債務を併せ持つ「双子の赤字」の国だけだった。日本のように、国内債務は多いが対外債務は少なく、むしろ黒字の国には、危機は訪れなかったのである。 それにもかかわらず、財務省の脅し文句に乗せられて、菅首相は増税を選挙の目玉にしてしまった。これでは民主党が負けるのも無理はない。そして2012年、衆議院選挙の数カ月前に、菅氏の民主党の後継者は、2015年までに消費税を10%に倍増させる法律を可決した。 当然のことながら、民主党は大敗し、自民党が政権に返り咲いたのである。2014年の第1段階の増税後に経済が落ち込むと、安倍晋三首相は財務省に反抗して第2段階の増税を数年遅らせた』、「1998年3月、ロバート・ルービン財務長官が宮沢喜一蔵相との私的な会談で3%への引き下げを求めたところ、加藤紘一自民党幹事長が怒りを露わにした」、初めて知ったが、「ルービン」の方が日本経済を的確に分析していたようだ。「財務省の脅し文句に乗せられて、菅首相は増税を選挙の目玉にしてしまった。これでは民主党が負けるのも無理はない」、「菅首相」の増税派への突然の変心には驚かされると同時に、失望した。
・『元首相以外の財務省の「犠牲者」  財務省の間違ったアドバイスによる他の犠牲者は、日本国債の価格暴落に何度も賭けて、何度も大きな損失を出した投資家たちである。大損をする投資は「ウィドウ・メーカー」と呼ばれるが、日本国債の暴落に"賭ける"ことは、この時代の最大のウィドウ・メーカーの1つである。 景気後退を避けるために繰り返される財政出動に経済が過度に依存するようになると、財務省は思うような財政緊縮ができなくなった。それでも、多くの人が思っている以上に歳出削減は特に高齢者にとって厳しいものだった。 財務省は、今のままでは高齢化が進むにつれ、社会保障費や医療費などの支出がGDPに占める割合が大きくなっていくと主張している。しかし、数字のうえではそうではない。高齢者への支出はたしかに増加し、2013年には対GDP比12.5%でピークに達した。だがその後、これは横ばいになり、2019年には12.4%になっている。) これはどのようにして起こったのか。プリンストン大学経済学部のマーク・バンバ教授と、コロンビア大学経済学部のデビッド・ワインスタイン教授による指摘どおり、高齢者の数が増えたにもかかわらず、財務省は高齢者1人当たりの支出を大幅に削減することを推し進めた。結果、高齢者1人当たりの社会保障費は、1996年のピーク時には192万円だったのが、2019年には149万円と約20%減少している。 【追記:13時52分】初出時に翻訳上の間違いがあったため、表記の通り訂正いたします。 医療費はどうか。1999年のピーク時には高齢者1人当たり52万円だったのが、2019年には44万円とこちらも、15%削減された。 これらの削減は、65歳以上の1人暮らしの女性の貧困率が50%近くにまで上昇した理由の1つだ。また、2018年には、主に3000円相当の万引きの疑いで4万5000人の高齢者が逮捕されており(1989年は7000人だった)、多くは収監されないが、刑務所に入る人の3分の1以上は60歳以上が占めている(1960年には全体の5%だった)。多くは1年ほど刑務所で過ごした後、解放されるが、その後同じ罪で再び刑務所に戻る。刑務所には温かいご飯、ベッド、医療があって、仲間がいるからだ』、「2018年には、主に3000円相当の万引きの疑いで4万5000人の高齢者が逮捕されており(1989年は7000人だった)・・・刑務所に入る人の3分の1以上は60歳以上が占めている(1960年には全体の5%だった)」、「高齢者」の収監者増加は深刻だ。
・『教育や保育への支出が削減される  こうした削減が続くと、GDPに占める高齢者向け支出の割合が実際には減少する可能性がある。それは、高齢者の増加が横ばいになっているからだ。 1994年から2019年にかけて、高齢者の数は1760万人から3550万人へと倍増している。が、公式予測では、今後は非常に緩やかなペースで増加する見通しで、2030年には3720万人にとどまり、2043年には3940万人でピークに達した後、再び減少に転じるという。さらに、バンバ教授とワインスタイン教授が指摘するように、高齢者の増加は若年層の大幅な減少によって相殺され、これは教育や保育への支出減につながる。 だが、こうした事実があってもなお、財務省は同じ主張を繰り返している。財務省は2021年度版『日本の財政関係資料』の中で、IMFの調査結果を援用しているが、その内容は次のようなものだった。 「マクロ財政見通しに高齢化に伴う歳出増を織り込み、継続的に評価することは重要。スタッフによるシナリオは、高齢化に伴う歳出増を賄うためには、消費税率を段階的に2030年までに15%、2050年までに20%に引き上げる必要があると示唆(OECD平均の19%と比較して)。(中略)年金、医療、介護支出の主たる変化がなければ、財政の持続可能性は手の届かないものであり続ける可能性」) こうした状況に対し、財務省はシンプルで、一見もっともらしい答えを出している。肥大化を続ける債務残高(対GDP比)を見よ。これが永遠に続くはずがない。強力な対策を講じなければ、ある日突然、投資家が一斉に日本国債を売却するのは避けられないだろう、と。 問題は、財務省が言及しているのは「総」債務残高であり、確かに1990年にはGDPの70%だったものが、2020年には237%にまで増加している(主に日本国債)。しかし、この数字には、ある政府機関が別の政府機関に対して負っている債務が含まれているため、意味がない。日本銀行のような政府機関が日本国債を捨てる兆しもない。 重要なのは「純」債務残高、つまり民間投資家に対して負っている債務であり、2013年に黒田東彦氏が日銀総裁に就任して以来、実際には縮小している。デフレ対策の名目で、日銀は日本国債を大量に購入した。 デフレ脱却の音頭のもと、日銀は国債の約半分、GDPの94%に相当する額を購入した。これは、2012年から18%の増加だ。一方で、個人投資家などを中心とする日銀以外の者が保有する日本国債は、2012年にはGDPの145%だったのが、現在は103%にまで落ち込んでいる。 加えて、国債危機の真の引き金となるのは、債務残高そのものではない。政府が利子を払えなくなったときに起こるのだ。日本にはそのような問題はない。2021年には、日銀がマイナス金利政策を実施したため、利払いはGDPのわずか0.4%にまで減少した。個人投資家への負債額と利払い額の両方が今よりはるかに大きかったときには日本は危機に陥らなかったのに、なぜ今になって危機に陥るというのか』、それは「日銀」が国債購入の形で膨大な財政ファイナンスをしているからだ。それが続く限りは大丈夫だが・・・。
・『「低金利は永遠に続かない」は本当か  財務省の答えはこうだ。低金利は永遠には続かない。危機が訪れるのは、必然的に金利が上昇したときである、と。これももっともらしく聞こえるが、日本の過去に即していない。日銀は自由にインフレを起こせないことを証明したが、これまで四半世紀以上にわたって行ってきたように、超低金利を維持することはできる。 日本は世界から借金する必要がないので、金利をコントロールすることができる。はたして、日銀は、必要に応じて市中に資金を流し続ける代わりに、わざわざ金融の大混乱を招くだろうか?) もちろん、日本の慢性的な赤字は悪影響を及ぼす。しかし、その所産は日本国債の暴落ではなく、経済のゆっくりとした腐食が続くことである。診断が違えば、処方箋も大きく異なってくる。 第1に、財政赤字そのものは日本経済の不調の原因ではなく、むしろ民間需要の弱さを示す症状である。そのため、第一に優先すべきは、実質賃金の低迷や企業の資金繰りなど、需要低迷の根本原因を解決することだ。 第2に、課税ベースを拡大するために、税や支出などの政策の足並みを成長とそろえる必要がある。国によっては消費税課税が適切だが、日本はそのような国ではない。なぜなら、ただでさえ弱い消費者の需要をさらに弱めてしまうからだ。 ほかにより適した税目がある。支出面では、河川敷を舗装したり、ゾンビ企業に信用保証を提供したりすることは、成長を阻害するだけでなく、税金が無駄遣いされるだけだと国民にあらゆる増税に対する不信感を抱かせる』、「日銀は自由にインフレを起こせないことを証明したが、これまで四半世紀以上にわたって行ってきたように、超低金利を維持することはできる」、国債利回りは海外の影響も受けるので、日銀は最後の手段として購入価格を指定する「指値オペ」という異常な手段で管理するようになった。
・『超金利が長引く意味  最後に、慢性的な赤字は、日銀に超低金利政策を維持するよう、さらなる圧力をかける。今は必要があるが、際限なく長引かせれば経済基盤を弱体化させる。例えば現在、銀行融資の36%が0.5%未満、17%が0.25%未満の金利である。このような無視できるほどわずかな金利が、ゾンビ企業の事業を継続し、他の健全な企業に打撃を与え、結果としてGDP成長率の足を引っ張ることになるのだ。 かつて、高齢者における収入の大部分は預金金利が占めていた。今は違う。1000万円を1~2年の定期預金に預けると、利息はわずか1000円で、チェーン店でカプチーノを2杯飲むのがやっとだ。退職者の家計支出の40%が貯蓄の取り崩しによるものだというのもうなずける。多くの人は、寿命を迎える前に貯金を使い果たしてしまうだろう。 成長率の向上だけで政府債務の対GDP比が安定するわけではないが、問題ははるかに管理しやすくなる。一方で、構造改革を伴わない増税や歳出削減は、成長を妨げることになるだけた』、欧米の長短金利が上昇、これを日本では日銀が強引にゼロに抑えようとしても、長期金利の抑制には苦労する筈だ。

次に、3月12日付け日刊ゲンダイが掲載した金融ジャーナリストの小林佳樹氏による「政界で高まるMMT待望論 自民党内で二派に分裂する財政問題」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/302420
・『岸田文雄首相は昨年10月の参院本会議で、日銀保有国債の一部永久国債化や教育国債の発行について、安定財源や財政の信認確保の観点から「慎重に検討する必要がある」と距離を置いた発言を行った。国民民主党の大塚耕平氏の質問に答えたもので、同党は日銀保有国債の一部永久国債化や教育国債の発行を公約としている。 永久国債化は名称の通り、国債を永久に償還せずに利払いのみにとどめるもので、天文学的な残高に達した日本国債の値崩れを回避しつつ発行を続けられる有効な方策との見方がある。しかし、その一方で「国債を無制限に発行するための禁じ手」(市場関係者)と批判する声は根強い。 そうした国債を無制限に発行しても大丈夫だとする理論の基本になっているのがMMT(現代貨幣理論)だ。そのMMT待望論がいま、政界で急速に高まっている。) MMTは「自国通貨を発行している国では財政赤字を拡大しても、インフレを招かない限りいくらでも発行でき、デフォルトは起きない」という考え方で、安倍晋三元首相や高市早苗政調会長らが参加する自民党の「財政政策検討本部」はその急先鋒だ。本部長には西田昌司参議院議員が就いている』、「MMT」については、前回、1月12日付けブログで詳細に取上げた。
・『分裂する自民  一方で自民党内には額賀福志郎氏が本部長を務める「財政健全化推進本部」も立ち上がっている。「財政健全化推進本部のバックには国債の際限なき発行に危機感を強める財務省がいる。次期財務次官と目されている茶谷栄治主計局長が自民党の有力議員に働きかけて設置してもらったと聞いている」(中央官庁幹部)という。設立会合には、岸田首相も駆け付けている。自民党内には2つの財政問題に対する検討会が併存しているわけだ。) 自民党内で二派に分かれた財政問題だが、財政健全化路線を堅持したい財務省と、自民党有力議員を中心に高まるMMT待望論がどういった折り合いをつけるのか。 いずれにしてもコロナ禍で大盤振る舞いした財政の穴埋めをはじめ、危機的な状況に立たされている日本の財政赤字への対応は避けて通れない問題だ』、「MMT派」には、「安倍晋三元首相や高市早苗政調会長ら」がいるだけに強力だが、「財政健全化派」には「財務省」、「岸田首相」も支援するなど、これに劣らず強力だ。

第三に、3月18日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「年金受給者への「臨時給付金5000円案」に隠された、政府の甘くて怖い罠」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/299419
・『年金受給者への臨時給付金の思惑は 「選挙前の人気取り」とは言い切れない  2022年3月15日、自民・公明の与党幹部は約4000万人の年金受給者らを対象に臨時給付金を配る案をまとめ、岸田文雄首相に実施を提言しました。一人あたり5000円の給付案が浮上しているといいます。 新型コロナの影響で、我が国全体の賃金が低下しました。公的年金の支給額は賃金と連動して下がるために、22年度は引き下げが決まっています。5000円はそれを補うための支援策ですが、生活に困っているのは賃金をもらう現役世代の労働者も同じはずです。 今年6月には参議院選挙が公示される中で、高齢者全員に給付金をばらまくのは露骨な選挙対策だという批判も上がっています。確かに、年代別に与党の支持率を確認すると、50〜60代と比べて70代は若干高いので一見、そう見えるのはその通りなのですが、実はこの話、それだけの単純な話ではありません。ちょっと怖い話です。 “朝三暮四(ちょうさんぼし)”という言葉をご存じでしょうか。中国の春秋戦国時代、諸子百家の一人「列士」が伝える寓話(ぐうわ)です。ちなみに、この話のように人をサルにたとえるのは現在のコンプライアンス上はいささか問題があるのですが、ここは故事成語の語源ということでご容赦いただきたい。それはこういう話です。 宋に狙公(そこう)という人がおりました。彼は近所のサルにエサとしてドングリを与えていたのですが、だんだん生活が困窮してきたため、エサの数を減らすことを決めました。 サルたちに「ドングリを与えるのを、朝に三つ夕方に四つへ減らそうと思う」と伝えると、サルたちは立ち上がって怒ります。そこで考えた狙公は、「それではドングリを、朝に四つ夕方に三つ与えるとしよう」と伝えると、サルたちは喜んだという寓話です。 これが“朝三暮四”です。結局総数で見ると同じ七つなのに、「朝に四つもらえる」というような目先の利益にだまされる人間の愚かさを戒めた寓話です。実は、この“朝三暮四”、行動経済学的にはなぜか意外と有効であることが知られています』、「今年6月には参議院選挙が公示される中で、高齢者全員に給付金をばらまくのは露骨な選挙対策だという批判」、「この“朝三暮四”、行動経済学的にはなぜか意外と有効であることが知られています」、どういうことなのだろう。
・『身近に潜む「朝三暮四」の甘いワナ 行動経済学でも説明がつく  身内で最近こんなことがありました。高齢の家族が、携帯電話の料金を見直してほしいというのです。以前聞いていた話では月3500円ぐらいのプランだと言っていたのですが、実際に見てみたら毎月5800円払っています。 それで一緒に販売店に行って、格安プランの携帯会社に転入することにしました。帰り道に、 「ずいぶん安くなったねえ。月990円だなんて」と喜んでいるので、 「違うよ。初年度はそうだけど、来年からは毎月2090円だからね」 と教えておきました。同じ説明を聞いていても最初に説明してもらった初年度割引の数字しか頭に入っていなかったようです。 以前のプランもどうやら初年度3500円、2年目が4500円で3年目以降が5800円になる契約で、高くなった携帯料金をもう何年も支払っていた。まさに“朝三暮四”の仕組みなのですが、初年度割引に消費者は弱いのです』、「初年度割引に消費者は弱いのです」、確かにその通りだ。
・『ガソリン価格高騰による家計圧迫も政府の「朝三暮四」と関連あり  政府の政策にも、このような“朝三暮四”の仕組みがあります。今、ガソリン価格の高騰で話題になっている「トリガー条項凍結」もその一つです。 もともとガソリン税には、原油価格が高騰したときにはガソリン税の上乗せ分を取らないというトリガー条項が存在していました。これを、東日本大震災をきっかけに凍結したのが「トリガー条項凍結」です。 当時決めた仕組みは、こういうことです。 「震災復旧・復興のために、これからたくさんお金を使います。その代わりの財源として、将来ガソリン代が上がったときに取らない予定だったガソリン税は取りますからね」 国会でそう決めたところ、当時の国民は喜んで賛成したのです。ところが、コロナ禍やウクライナ情勢の影響で原油高が進んでもガソリン税を支払わなければならなくなった。つまり、今になってガソリン代が下がらないことがと、立ち上がって怒り出すわけです。 そして、ここからが怖い話なのですが、国民が受け取る年金にも“朝三暮四”の仕組みがインストールされています』、「国民が受け取る年金にも“朝三暮四”の仕組みがインストールされています」、どういうことだろう。
・日本の年金制度にインストールされている“朝三暮四”の怖い仕組みとは  それが、年金の「マクロ経済スライド条項」というものです。 年金の受給額は、賃金が下がると連動して減少します。これが冒頭にお話ししたことで、コロナ禍で賃金が下がっていることを踏まえて、2022年度は2年連続で年金受給額は下がることが決まっています。 ところが、年金の「マクロ経済スライド条項」ではインフレ時は物価が上がっても、受給額は物価と同じように上がるわけではないことが決められています。これを「スライド調整率」といいます。 つまり、仮に物価が2%上がったとしても、年金受給額が同様に2%上がることはない。年金受給額は、物価の上昇率(2%)から、「スライド調整率」を差し引いた分しか上がらないことが法律で決まっているのです。 もともとこの条項は、将来インフレになったときに社会保障財政が破綻しないように決められました。これまでは、日本経済はデフレが続いていたので問題になることはありませんでした。ところが、2023年はインフレが進み、年金受給額に対して、いよいよこの「スライド調整率」が発動されそうなのです。 なにしろ生産者物価指数は、昨年12月、今年の1月と2カ月続けて約8%も上昇しています。小麦、トウモロコシの国際価格上昇で、パスタやパン、サラダオイルなど食料品の値上げラッシュが予定されています。原油価格が上昇し、ガソリンだけでなくプラスチック製品の価格も高くなっているのに加えて、足元では1ドル=118円と大幅な円安が進行しています。海外から輸入した商品で成り立つのが我が国の経済ですから、今年の消費者物価指数は大幅なインフレになることが確定的です。 物価が上昇することで、年金生活者は今年後半ぐらいから生活が苦しくなるでしょう。来年度になると、ようやくそこから年金受給額が引き上げられるのですが、「その引き上げ幅は、物価上昇よりも低い」と決められている。つまり、“朝三暮四”でいう“暮四”が“暮三”に減ることが既に法律で決められているのですが、多くの年金受給者はそれを知りません。 そこで、冒頭のニュースです。年金受給者の生活が困窮するといけないので選挙前に5000円を支給すべきだと言う政策が浮上した。これはあえてざっくり言うのであれば、「“朝三”を“朝四”に増やそう」という政策提言です。 有権者はこの政策に対して喜んで選挙に臨むのでしょうか、それとも怒りに立ち上がって選挙に臨むのでしょうか? 行動経済学によれば人類はだいたい前者だといわれていますが、日本人はどうでしょう』、やはり「行動経済学」の勝利になるのではなかろうか。
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