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日本型経営・組織の問題点(その13)(見えない価値「非財務資本」こそが生死を分ける 日本企業がGAFAMの足元にも及ばない真の理由、「日本型経済システム」の成立条件が 完全なる終焉を迎えつつある根拠 『比較制度分析序説――経済システムの進化と多元性』(青木昌彦著)で読み解く、似た者同士で群れる日本人 リーダー量産するインド人とどう違う?) [経済政治動向]

日本型経営・組織の問題点については、昨年12月25日に取上げた。今日は、(その13)(見えない価値「非財務資本」こそが生死を分ける 日本企業がGAFAMの足元にも及ばない真の理由、「日本型経済システム」の成立条件が 完全なる終焉を迎えつつある根拠 『比較制度分析序説――経済システムの進化と多元性』(青木昌彦著)で読み解く、似た者同士で群れる日本人 リーダー量産するインド人とどう違う?)である。

先ずは、本年1月17日付け東洋経済オンライン「見えない価値「非財務資本」こそが生死を分ける 日本企業がGAFAMの足元にも及ばない真の理由」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/503177
・『「ウチの株価、どうしてこんなに低いんでしょうか。足元の業績も悪くないし、成長もしている。自己株買いだってやっているのに」――。ある東証1部上場企業のCFO(最高財務責任者)は、業績の良さとは裏腹に低迷する株価をみてうなだれる。 コロナ禍の大規模な金融緩和もあって、日本企業の株価はバブル期以降の低迷期を脱したようにみえる。しかし、足元では日経平均株価が3万円に届かないまま行ったり来たり。半導体や自動車のメーカーを中心に企業の業績は良くなっているのに、なぜか株価が思ったほど上がらない。 一方、株価が上昇し続けているのがアメリカの市場だ。GAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック(現メタ)、アマゾン、マイクロソフト)など、巨大IT企業の株価が牽引し右肩上がりが続く。コロナショックからの回復期を経て、S&P500などアメリカ市場の代表的な株価指数はまだまだ最高値を更新し続けている。 アメリカ株の上昇を「バブルだ」と片付けてしまうのは簡単だ。しかし、日本株が低迷してきた過去30年間でも、アメリカ株は中長期で見て上昇基調を維持している。日米の企業価値の差は歴然である』、興味深そうだ。
・『過去の業績では株価は動かない  1月17日(月)発売の『週刊東洋経済』1月22日号(1月17日発売)では「企業価値の新常識」を特集。「非財務資本」を巡る、企業の混乱と対処法について、まとめている。 企業会計の専門家たちは、近年、時価総額が財務諸表に載っている業績データで説明できなくなってきていると指摘する。財務諸表に載っていない、見えない価値を説明するために出てきたのが、「非財務資本」という概念だ。 産業の中心が製造業だった時代には、工場の生産能力から将来生み出される製品の量が予測でき、そこから未来の企業業績を比較的簡単に計算できた。まさに財務諸表全盛期だ。 しかし、現在では産業の中心がITを活用したサービス産業に移行している。とくにネット系のビジネスではユーザーの数や顧客満足度が将来の稼ぎに大きく影響するが、こうした情報は財務諸表にはほとんど載っていない。 サービス産業への移行にうまく適応したのがアメリカの企業だった。 GAFAMを代表とするIT企業群は、ソフトウェアや優秀なエンジニア、働きやすい環境作りなどに積極的に投資し、財務諸表に載らない「非財務資本」をうまく蓄積してきた。 翻って、日本の企業は環境変化への対応や人材への投資を怠ってきた、と言わざるをえない。例えば人材への投資という点では、入社時や昇進時に数日程度の研修を行うことはあっても、従業員のスキルアップにつながるような投資を地道にしてきただろうか。 あるいはDX(デジタルトランスフォーメーション)が近年話題にはなってきたものの、単純な業務の「デジタル化」にとどまっている例は枚挙にいとまがない。インターネットやさらにその先の革新的な技術による新たな事業の創出に結びつくことは稀ではないだろうか。 数字からも日本企業の出遅れ感は明らかだ。PBR(株価純資産倍率)は、倍率が高いほど「非財務資本」が大きいことを表すが、日本企業のPBRは1倍付近で停滞している。アメリカの上場企業平均が約3倍なのに対し、明確に低い水準だ。東証1部でも1000社以上がPBR1倍を下回る、すなわち時価総額が純資産より少ない状態にある』、「従業員のスキルアップにつながるような投資を地道にしてきただろうか。 あるいは「DX」も「単純な業務の「デジタル化」にとどまっている例は枚挙にいとまがない」、こうした「日本企業の出遅れ感」が、「日本企業のPBRは1倍付近で停滞・・・アメリカの上場企業平均が約3倍なのに対し、明確に低い水準」、その通りだ。
・『企業価値を高める秘策とは何か  では企業価値を高めるにはどうすればよいか。いきなり非財務資本を高めよと言われても難しい。ただし、手がかりはある。 例えば、気候変動関連の開示への対応を進めること。足元で国際的な枠組みの策定が進み、4月にスタートするプライム市場の企業には、新たな枠組みでの開示が求められる。開示対応には2つのメリットがある。 まず、こうした開示への要求に積極的に対応すれば、投資家から再評価される可能性があることだ。預かった資産を中長期で安定して運用する責任のある機関投資家にとって気候変動のリスクは大きい。適切な開示を行う企業には、投資家が安心して資金を投じる可能性が高い。 また、新しい開示の枠組みに対応しようとすれば、例えば「2100年に地球全体の気温が産業革命以前と比べて4度上昇するとき、あなたの会社のビジネスにはどのような財務影響がありますか?」といった難しい質問にも、答えていることになる。少なくともそうした問題意識を持ち、取り組んでいる姿勢を投資家に示していると、評価されやすい。 投資家のためだけでなく、自社のためにもなる。こうした新しい開示の枠組みに少しずつでも対応していくことで、中長期で自社のビジネスモデルや戦略を見直すきっかけにもなるというわけだ。 企業価値を巡る考え方は、実体のあるモノをどれだけたくさん抱えているかということから、人材やノウハウ、ブランド、顧客満足度など、数えたり測ったりできない対象へ主眼が移っている。 こうした新しい企業価値の考え方に基づいた開示を行っている企業もある。エーザイ、キリンホールディングス、伊藤忠商事などだ。まずはこうした先行企業の事例から学び、企業価値の向上につなげてほしい』、「企業価値を巡る考え方は、実体のあるモノをどれだけたくさん抱えているかということから、人材やノウハウ、ブランド、顧客満足度など、数えたり測ったりできない対象へ主眼が移っている。 こうした新しい企業価値の考え方に基づいた開示を行っている企業もある」、「こうした先行企業の事例から学び、企業価値の向上につなげてほしい」、同感である。

次に、3月23日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したプリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役の秋山進氏による「「日本型経済システム」の成立条件が、完全なる終焉を迎えつつある根拠 『比較制度分析序説――経済システムの進化と多元性』(青木昌彦著)で読み解く」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/299512
・『日本経済の停滞ぶりが「失われた○○年」と形容され、「日本は変わらなければならない」と言われ続けて久しい。「変わらなければ」論者は、あるときは、資本主義社会においてより普遍的といわれているアメリカ型の組織やシステムを、またあるときは、先ごろまでは好調だった中国経済を対象に現象面を比較し、異なる点を見つけては、日本のあり方は間違っている、遅れていると自虐的に指弾する。 そうした「反省」に基づいて、さまざまな改革が実際に試みられた。コーポレート・ガバナンス改革、DX改革、ROE重視の経営や、ジョブ型雇用……。日本経済が遅れていて、ガラパゴスだという論は果たして100%正しいのか。それとも改革は流行に流されていて、意味のないものなのか。あるべき姿とはどのようなものなのか――。疑問を持つ人は多いに違いない。 これらの疑問への多大なヒントを与えてくれるのが、ノーベル経済学賞候補に名を連ねたこともあり、スタンフォード大学でCIA(比較制度分析)の講座を立ち上げた、青木昌彦氏の著書『比較制度分析序説――経済システムの進化と多元性』である。丁寧に解説していきたい』、興味深そうだ。
・『日本経済が脅威であった時代にいち早く提言された日本企業の課題  本書の単行本が出版されたのは1995年。バブル崩壊後、いまだ日本経済が他国にとっての脅威であり、日本異質論に対応して日本の経済システムを他の先進国と同様のものに変えなければならない、という外圧が強かった頃である。 本書は、当時経済分析のツールとして機能し始めた情報の経済学、ゲームや契約の理論などの分析言語を使って、新たな視点から一国経済を分析し、多くの人が普遍的だというアメリカ型の経済システムも、特殊だといわれた日本型の経済システムも、多様な均衡解(さまざまな状況や条件が重なって暫定的に最適解のように収まっている状態)のひとつであり、状況によっては均衡解でなくなることを、一般向けに解説している。 経済システムの多様な在り方や日本の経済システムの原型を理解することで、現在のシステムのゆらぎの把握や、この先に(少なくとも理論上は)あるはずのよりよい均衡点(よりよいシステムの在り方)への展開を感じることができる。それはマクロな国家の経済システムとミクロな組織と人の在り様の両方を接続して考えるうえで、非常に大きなヒントになる。 本書の基本的な考え方は、以下のようなものである。 経済主体の合理性の限界、人々のあいだでの情報の分配の非対称性、市場の不完全性などのゆえに、時空を超えて普遍的な規範的価値を持った経済システムなどというものは本来ありえない」(『経済システムの進化と多元性―比較制度分析序説』(青木昌彦、講談社学術文庫、以下引用はすべて同書) 人も企業も完全に合理的な意思決定はできない。また、人々の間には情報格差がある。さらには現在の市場は、欲しいものを欲しい人が適正な価格で得られるような完璧に合理的な売買ができるように動いてはいない。だから、いつ誰にとっても合理的で完璧な経済システムというのはあり得ない、と言っている』、「時空を超えて普遍的な規範的価値を持った経済システムなどというものは本来ありえない」、「いつ誰にとっても合理的で完璧な経済システムというのはあり得ない」、との考え方は納得できる。
・『炙り出された企業の生産性を左右する要素  青木はその前提に立って、企業組織が実際にどのように運営されているかを分析した。その結果、企業の生産性は、企業の業務や生産に携わる人々が持つ情報の量や質と、その情報を基にした決定の権限や義務の組織的配置に依存しているということを明らかにした。 企業で働く人の情報量と質がどんなものであるかということと、それを基に誰が何を決められるかによって生産性が変わるというのである。そして組織の基本型は、ある職場や組織のシステム全体の活動のコストや売り上げに影響を与えるシステム環境パラメータと、それぞれの職場の活動のコストや売り上げに個別に影響を与える個別環境パラメータの2つの視点で分けることができると考えた。 「企業組織のコーディネーションには五つの基本型(※)がありうることを示す。それらは、古典的・機能分権的・水平的ヒエラルキーと情報同化型、情報異化型である。(中略)そしてもっとも重要なことは、これらのタイプのどれが最も(情報)効率的であるかは、組織環境の活動のあいだの技術的・確率的関連性、社会に存在する個人の情報処理能力(技能)のタイプと水準の分布などに依存するのである」 ※2003年の青木の『比較制度分析に向けて』では、その後の研究では3つの基本型に収斂している。ヒエラルキー分割、情報同化、情報カプセル化である。 2つのパラメータを使って、5つの基本型が導き出される論理展開は大変興味深い。たとえば、アメリカの典型的な産業である石油化学工業と日本の典型的な産業である自動車産業における企業の意思決定では、最終製品の販売や個別の部品に関する直近の情報がどれだけ生かされる仕組みになっているか(システム環境パラメータ)、現場にどれだけ裁量があり、全体の状況から独立してどれだけ自由に意思決定できるか(個別環境パラメータ)の、2つ観点による違いが明確にされる。 ある事業で、どのような組織運営がふさわしいか(どのような情報をどのように生かすしくみにするか、ある事柄についての意思決定がどのように決まるのか――現場の裁量で行われるのか、中央で統一的に決めるのか)は、産業構造によって決まるということが証明されていく。 さらにそこに影響を与えるのが、産業勃興時の初期条件である。たとえばアメリカでは、第二次世界大戦中の軍需生産で生産性が増大し、科学的なシステマティックな経営管理が導入され、労働者を組織的に訓練し、明確に職務を切り分けて、職務ごとにマニュアルに沿って運営する分権的ヒエラルキーが精緻化されていた。一方、同時期に日本では、大量の徴兵で労働力が不足し、仕事を専門化することが不可能になったため、労働者と工場長などの職長、ブルーカラーとホワイトカラーの身分差別が急速に消失し、互いに情報共有する傾向が飛躍的に高まった』、「産業勃興時の初期条件」の日米の違いは、納得できる。
・『分権型の経営が得意な米国と水平型の経営が浸透する日本  アメリカでは「仕事の種類を切り分けて権限移譲する分権的ヒエラルキー」的要素が、日本では「みんなで情報共有する水平的ヒエラルキー」的な要素が組織の中に浸透していたのである。 その結果、日本においては産業構造的に水平的なすり合わせ(情報共有)を必要とすることで優位性を発揮できる(水平的な)、自動車産業、工作機械、電気機械などが優勢になった(下請けの部品工場がサイバーアタックを受けたら、グローバルで全社的な生産まで止まってしまうような自動車産業は、その典型的な例であろう)。 一方、すり合わせなしでも意思決定できる(分権的な)、アメリカが得意な石油化学工業などは、競争力を持たなかった。石油化学は買ってきた原油を集めて、一旦ナフサや重油や軽油に分ければ、あとは、ナフサ部門、重油部門、軽油部門などから細かく何十、何百もの部門に派生していって、それぞれの部門で複雑な製品の製造を行うので、分かれたあとには横の連携はほぼないのだ。 このように、産業ごとにふさわしい組織型は異なる。したがって本来は、産業ごとに水平的、分権的など、マッチした組織の型を採用して運営すればよい。しかし、そうはならないのである。 「ある経済では、いずれかの基本型が支配的になっている。たとえば、日本では情報共有型あるいはその進化型としての水平ヒエラルキーが支配的であるし、アメリカでは従来、分権的ヒエラルキーが支配的であった」) なぜそうなるのか。それは経済主体(人や組織)が市場の支配的な組織の型に合わせて、自己の投資戦略を決めるからである。たとえば日本にいれば、日本に多いタイプの組織で必要な能力を身に着けておいたほうが出世するし賃金も上がるから、その技能を身に付けようとするということである。 「各経済主体は、企業組織に参加する前に(すなわち企業を興すか、雇用される以前に)、情報処理能力の形成の方向性に関して選択を行わねばならない。ひらたくいえば、教育、技能訓練などによって、一定の方向性を持った技能への投資を行わねばならない。たとえば、どのような組織においても通用するような特殊機能の技能(機能的技量)に投資するか、あるいは特定の企業組織参加後にその文脈で有用な技能(文脈的技能)に磨きをかけるという展望を持って、まずは一般的な問題処理能力や組織的コミュニケーションの能力(可塑的技能)に投資しておくか、の二つの選択肢がありえよう」』、「産業勃興時の初期条件」の日米の違いから、「分権型の経営が得意な米国と水平型の経営が浸透する日本」に分かれたというのも、説得力がある。
・『機能的技量と可塑的技量ではどちらの投資リターンが高いか  機能的技量の投資のほうがリターンを得られる可能性が高い地域では機能的技量が、可塑的技量への投資のほうが高いリターンが得られる可能性が高い地域では可塑的技量を高める選択することが、合理的な戦略になるのだ。おおざっぱにいえば、特殊機能の技能(機能的技量)とは、日本の会社における専門職で必要な技能、文脈的技能、可塑的技能は、総合職で必要な能力と考えておけばいいだろう。 学生時代に特殊機能的な技能を習得し、そうした仕事を得てその領域で生きていくことが前提とされている社会では、戦略的に特殊機能的な技能への投資が行われるが、入社した後に何をするか、どのようなキャリアを歩むのかなどが予測できない場合は、一般的な問題処理能力やコミュニケーション能力といった文脈的技能、可塑的技能への投資を人は選択するのである。 専門的なスキルを磨いたほうが就職しやすく、その後の収入も保証されているなら、人は学生時代にそのような勉強をするし、新卒で有名企業に総合職で入れば一生安泰という二昔くらい前の日本であれば、新卒を一括採用する大手有名企業の内定を取るため(入試の学力試験が問題処理能力には直結しないとはいえ)5教科を勉強し、より偏差値の高い大学に入り、アルバイトやサークル活動で「コミュ力」を磨こうとするのである。 個々の経済主体(個人)の間で、文脈的技能の獲得が支配的になれば、本来は機能的技能を優先すべき石油化学産業にあっても、文脈的技能を重視する組織運営が支配的になってしまう(これは進化ゲームという分析によって明らかになる)。) どちらが先なのかわからない、鶏と卵のような話でもあるが、学生が偏差値的学力やコミュ力を磨くことが一般的になれば、専門スキルを重視すべき業界でも、偏差値的学力とコミュ力を企業は重視するようになる。事実、日本企業が新卒採用時に最も重視するのは専門的なスキルや知識(機能的技能)ではなく、問題処理能力、コミュニケーション能力や主体性(文脈的技能、可塑的技能)であり、日本の石油化学産業にもそうした能力が高い人材が送り込まれることになった。 さらに本書では、このような雇用システムに加え、他のシステム(メインバンクによるガバナンスと内部者による会社の支配など)が補完的に機能し合い、日本型の経済システムが構築され機能してきたと説明されている。個々のシステムが相互拘束し合い、一連の強固なシステムとして機能し始めると、多少一部でルールや制度が変わろうと、経済システムや組織運営方法の基本型は変化することなく継続する。 メインバンクや系列企業同士で株を持ち合って、お互いにがっちり縛り合い、どこかの制度を少しいじって表面的に成果給を入れてみたり、「株主による経営者の監視(コーポレートガバナンス)をこれからはしっかりしてください」と規則を厳しくしたりする程度の変革では、びくともしない日本型経済システムの体系が作り上げられたということなのである』、「新卒を一括採用する大手有名企業の内定を取るため(入試の学力試験が問題処理能力には直結しないとはいえ)5教科を勉強し、より偏差値の高い大学に入り、アルバイトやサークル活動で「コミュ力」を磨こうとするのである。 個々の経済主体(個人)の間で、文脈的技能の獲得が支配的になれば、本来は機能的技能を優先すべき石油化学産業にあっても、文脈的技能を重視する組織運営が支配的になってしまう」、「個々のシステムが相互拘束し合い、一連の強固なシステムとして機能し始めると、多少一部でルールや制度が変わろうと、経済システムや組織運営方法の日本型は変化することなく継続する」、道理で「日本的経済システム」が「強固」なわけだ。
・『偏差値的学力向上と「コミュ力」磨きが成功への近道だった日本の学生  このようなことから、多くの外圧、内圧に晒され、部分的な手直しが多発しながらも、日本的経済システムの基底はこれまでなかなか変わらなかった。最も重要なことは、すり合わせを中心とする水平型の組織運営こそが競争力の源泉である産業がビジネス界の中核にあり、そのため経済主体(個人)は可塑的技能に投資することが合理的であり、またそれが当たり前であると信じて疑わない人が、組織運営の中核を担ってきた。 カンバン方式、ジャストインタイムなどの自動車産業のように、水平的に緊密に連携し合うチームワークの組織こそが、ものづくりの素晴らしい組織だと神格化され、そういう社会で育った学生たちも、専門スキルよりは偏差値的学力向上と「コミュ力」を磨くことに力を入れることが、人生での「成功」の近道であり、それが当たり前だ思う人たちが、日本経済の中心にいたということである。 しかしながら、このように強固であった日本型の経済システムも、とうとう分水嶺をこえて、まだ姿の見えない新たなシステムに向けて、流動する時代に突入してしまったのではないかと思われるのである。 すでに、これまでも日本の大企業(上場企業)は、メインバンクによるモニタリングから、株主によるガバナンスの方向へと舵が切られ続けてきたし、その方向性はますます強まっている。メインバンクによるガバナンスのシステムは、企業が不振になり銀行の債権が脅かされない限りは、利益創出にそれほどこだわらない。 銀行さえ損をしなければ、企業の運営がどうなろうと知ったことではないのであるが、一方、株主ガバナンスは常に企業価値の向上を求める。時代の変化に合わず、価値を創出できない組織運営は許容されない。株主が求めるような利益を上げられない会社は、株主からノーと言われる。) 産業構造においては、エレクトロニクスやIT産業でソフトウェアのアプリケーションひとつで性能を変えられるような、入れ替え可能なモジュール化が進み、自動車産業においてもEVに切り変わっていく中で、これまでのすり合わせ(水平ヒエラルキー)重視の組織や組織間の関係が過去ほどの優位性を持てなくなり、利益創出がピンチを迎えている。 さらに、もうすぐIoTの時代に入るから、系列を超えて誰とでもどことも繋がることを前提にした、これまでとは異なる規格に基づいたオープンな情報コーディネーションの時代に入る。 さらには、日本発のグローバル大企業においては、すでに製造拠点の多くは日本になく、研究や開発、商品企画などにおいても日本国内でのみ行われるわけではなくなっている。外国の自社社員との協働も当たり前である。このような状況下にあっては、いまだに日本においてのみ水平的ヒエラルキーを前提に、可塑的技能(総合職的な問題処理力とコミュ力)への投資が支配的な人事制度を維持しているデメリットが大きい』、「強固であった日本型の経済システムも、とうとう分水嶺をこえて、まだ姿の見えない新たなシステムに向けて、流動する時代に突入してしまったのではないか」、「エレクトロニクスやIT産業でソフトウェアのアプリケーションひとつで性能を変えられるような、入れ替え可能なモジュール化が進み、自動車産業においてもEVに切り変わっていく中で、これまでのすり合わせ・・・重視の組織や組織間の関係が過去ほどの優位性を持てなくなり、利益創出がピンチを迎えている」、「IoTの時代に入るから、系列を超えて誰とでもどことも繋がることを前提にした、これまでとは異なる規格に基づいたオープンな情報コーディネーションの時代に入る」、「日本発のグローバル大企業においては、すでに製造拠点の多くは日本になく、研究や開発、商品企画などにおいても日本国内でのみ行われるわけではなくなっている。外国の自社社員との協働も当たり前である。このような状況下にあっては、いまだに日本においてのみ水平的ヒエラルキーを前提に、可塑的技能・・・への投資が支配的な人事制度を維持しているデメリットが大きい」、「日本型の経済システムも」「新たなシステムに向けて、流動する時代に突入」、いよいよ変化しつつあるようだ。
・『水平型ヒエラルキー的な働き方にダメ押しをしたリモートワークの定着  具体的に言うと、高い専門スキルを持った外国人エキスパートを、総合職的な能力重視で深い専門的技能を持っていない上司は、マネジメントできないのである。また、職務ごとに市場価格が定められる労働市場において、高い給与を出せないと優秀な人も採用できない状況に追い込まれるのである。そのようなことから、過去のように建前としてではなく、必要に迫られて機能的技能(専門的スキル)が重要視されるジョブ型雇用に転換する大企業が出現しているのである。 皆がいつも顔を合わせて、なんでも”ホウレンソウ“しながら決めていく水平型ヒエラルキー的な日本企業の仕事の進め方は、これまでも長時間労働の温床であるため、効率的な運用に変えることが求められてきた。さらには、有給休暇も消化し切ることが普通になり、残業時間も厳しく制限されるようになってきている。 そこに、コロナ禍によるリモートワークの定着である。皆が顔を合わせる時間は大幅に減り、自分の仕事を明確に定め、他の同僚や他部署との接続部分においてのみ仕事上のコミュニケーションを重点的に行う仕組みに、変えざるを得ない。この状況下では、その分野に高い能力を持つ上司が、仕事を適切に切り分けモジュール化して、個々人に分権的に仕事を割り振りながら、必要なところだけ互いの業務を調節する仕組みに変えたほうが、圧倒的に効果的かつ効率的である。従来の水平型のコミュニケーションを促進し、調整の場だけをつくって合意を形成する能力(可塑的能力)だけが高い非専門家の上司は、不要なのである。) このような大きないくつもの変化を背景に(コーポレートガバナンスの形式を整えるといった制度的な小手先の変革でなく)、企業の組織運営システム(水平型なのか分権型なのか、それ以外なのか)の在り方と、経済主体(人や組織)の意思決定そのものが変わらざるを得なくなりつつある。水平型を前提とした個人の可塑的技能への投資は、大きく変化するだろう。つまり総合職人材を育てる企業は少なくなるということである。 「ある一つの進化的均衡から他の進化的均衡への移行のために最低限必要な、突然変異の総人口に占める比率を、前者から後者への『移行費用』と呼ぶ。一つの進化的均衡から他の進化的均衡への移行はかなりのサイズを以って一塊の集団(critical mass)による『同時的』変異によってもたらされる」 あるシステムから別のシステムへの変更には、それなりの人数がそのシステムに一斉に鞍替えしなければ行われない(この一斉の鞍替えを移行費用という)。グローバル化によるジョブ型の導入とリモートワーク時代の到来という2つの力が同時に加わり、クリティカルマスは超えられた、つまり社会が変わるのに必要な程度の大多数の人がシステムの鞍替えをしようとしているのではないか』、「グローバル化によるジョブ型の導入とリモートワーク時代の到来という2つの力が同時に加わり、クリティカルマスは超えられた、つまり社会が変わるのに必要な程度の大多数の人がシステムの鞍替えをしようとしているのではないか」、あり得る話だ。
・『最適な均衡点はどこか? 模索が続く日本の経済システム  ただ、この先どのような均衡点に移動するのかは、まだ見えていない。本書では、旧来のアメリカ型でもなく、日本型でもないところに、どの産業セクターにとっても良いP均衡(パレート最適)と呼ばれる均衡点、すなわち、ちょうどよい状態の経済やシステムの状態が、理論上は存在していることが示されてはいる。 過去の均衡点からどこか別の均衡点に移動し落ち着くまでの間、日本の経済システムは相当大きな混乱に陥ることになるだろう。ただ、その混乱は政府の政策がまずいからでも、外国の陰謀でもなく、システムが形を変えて生き残るために避けては通れない道であり、肯定的に評価できるものなのである』、「旧来のアメリカ型でもなく、日本型でもないところに、どの産業セクターにとっても良いP均衡・・・と呼ばれる均衡点、すなわち、ちょうどよい状態の経済やシステムの状態が、理論上は存在していることが示されてはいる」、「P均衡」がどこに着地するのか大いに注目される。

第三に、4月28日付け日経ビジネスオンライン「似た者同士で群れる日本人 リーダー量産するインド人とどう違う?」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00351/042600027/
・『中国出身の気鋭の経営学者、ジャクソン・ルー米マサチューセッツ工科大学(MIT)准教授は、日本人、中国人、韓国人といった東アジア系は、インド人のような南アジア系に比べ米国の組織でリーダーになりづらい理由を深く探ってきた。東アジア系の人々は他の人種よりも強く同質性を好むため、リーダーになりづらいと主張する。ルー氏に解説してもらった(Qは聞き手の質問)。 Q:東アジア系が米国の中で出世しづらいという「竹の天井」を検証した研究(注:2020年7月17日掲載「米国で東アジア系がインド人より出世できない理由」参照)の続編(注)を発表したそうですね。エスニックホモフィリー(同じ民族同士でつながりたがる傾向)が、東アジア系の人は南アジア系の人をはじめほかの民族より相対的に強いということです。これはどういうことですか。 ジャクソン・ルー米マサチューセッツ工科大学(MIT)経営大学院准教授(以下、ルー氏):英語にこんなことわざがあります。「類は友を呼ぶ」(Birds of a feather flock together)。古くからある言葉で、社会学研究でよく使われる概念です。つまり、人には住んでいる場所を問わず、自分と同類だと感じる人間同士で集まる傾向があるということです。 注:Lu, J. G. (2021). "A social network perspective on the bamboo ceiling: Ethnic homophily explains why East Asians but not South Asians are underrepresented in leadership in multiethnic environments.", Journal of personality and social psychology.』、「東アジア系が米国の中で出世しづらいという「竹の天井」を検証した研究」、とは興味深い。「竹の天井」とは初耳だ。
・『人間なら誰にでもある「似た者同士で群れる傾向」  ですからエスニックホモフィリーは、東アジア系だけの特徴というわけではありません。人種の多様性の高い環境、例えば米国のような環境では、どこに行っても多様な人種が暮らしています。見た目で黒人、白人、東アジア系の人、南アジア系の人と大体分かります。(ジャクソン・ルー氏の略歴はリンク先参照) 人種を問わず、人は見た目が似ている人を見かけると、ひょっとしたら自分に対して親切にしてくれるのではないかと無意識に反応して、その人に近づく傾向があるのです。 白人は白人同士で親しくなりやすい傾向がありますし、黒人はもちろん、南アジア出身の人も南アジア系の人と友達になりやすい。すべての人種にそうした傾向があるのですが、東アジア系の人はその傾向が一番強いということが、私の研究で確かめられたのです。 Q:確かに、日本、韓国、中国と自国にいるときは互いに距離があるのに、国外に住んでいると国籍を超えて東アジア系だけで集まるのが不思議な気はしていました。アジアの物を扱う小売店や市場でも、東アジアの様々な国の商品がごちゃごちゃで売っていたりとか。 ルー氏:例えばあなたが、MITスローン経営大学院のような米国のビジネススクールに入学し、初登校したとしましょう。あなたは、キャンパスに1人も知り合いがいない。そこでアジア系の学生を見かけると、見た目が似ているから、あの人なら私の考え方などを理解してくれそうだ、友達になろう、と無意識に行動するのです。 米国のような多様性の高い環境では当然ながら、リーダーになるためには自分と違う人種の人々ともしっかりつながる必要があります。エスニックホモフィリーが強く、仲間内だけでつながっているような人では、グループ全体の利益の代表になれないのです。 だから米国では選挙のときも、候補者は自分がたとえ白人であっても必死にスペイン語を使い、自分はラテンアメリカ人の利益に関心を持っているという姿勢をアピールするのです。 Q:すると今回の研究は、東アジア系のエスニックホモフィリーが米国で出世、あるいはリーダーになる上で妨げになっているという結論ですか。 ルー氏:その通りです。例えば特にビジネススクールなどの学校では、東アジア系の人が好んで集まっている様子が目に付くのです。学校以外でも、例えば米国や英国でも中華街のような地域がたくさんありますよね。一方、インドタウンのような地域はあまり見られません。 英語能力のレベルや出生地を統計的にコントロールして、2世である場合などの影響を勘案して分析しても、つまり米国で生まれ育った東アジア系の人であったとしても、やはりエスニックホモフィリーが高いという結果が出ました。) Q:東アジア系の人は人種的な仲間意識の度合いが他の人種よりも強いため、リーダーになりにくいということですね。これはイノベーションが起こせるかどうかの話にもつながりそうです。一匹おおかみの方が破壊的なイノベーションを起こしやすいと指摘する著名経営学者の話を聞いたことがあります。日本人は群れたがるから破壊的なイノベーションを起こせないという仮説も成り立ちそうな気がします。 ルー氏:東アジア文化圏の集団主義も(破壊的なイノベーションが起こしづらい)理由の1つだと思います。例えば日本では統計的に99%の人は同じ民族です。同様に韓国でも99%の人は同じような顔をしていますし、中国も92%は漢民族です。一方、南アジア、例えばインドとかパキスタンは、非常に多様な国です。 インドには公用語が22もあります。子供のころからそうした環境で育った人は、自分と見た目や習慣、育った環境の違う人と接することに慣れています。自分と違う人とつながる練習を積んでいます。だから、米国のような多様性の高い環境に移っても「よそ者」とのコミュニケーションに全く支障がありません』、「東アジア系」は「国外に住んでいると国籍を超えて東アジア系だけで集まる」傾向が強いようだ。「破壊的なイノベーションを起こせない」、というのも寂しい傾向だ。「日本では統計的に99%の人は同じ民族です。同様に韓国でも99%の人は同じような顔をしていますし、中国も92%は漢民族です。一方、南アジア、例えばインドとかパキスタンは、非常に多様な国です」、「インドには公用語が22もあります。子供のころからそうした環境で育った人は、自分と見た目や習慣、育った環境の違う人と接することに慣れています。自分と違う人とつながる練習を積んでいます。だから、米国のような多様性の高い環境に移っても「よそ者」とのコミュニケーションに全く支障がありません」、「「インドには公用語が22」、何と非効率だと思っていたが、「米国のような多様性の高い環境に移っても「よそ者」とのコミュニケーションに全く支障がありません」、と思わぬ効用があるようだ。
・『東アジア人同士の「圧」  一方、中国人や日本人は安全地帯から飛び出して、自分と違うタイプの人とコミュニケーションすることが苦手です。 米国で東アジア系の人同士が使う俗語で「バナナ」という表現をご存じですか。バナナの外皮は黄色い、でも中身は白いですね。東アジア系の人が白人社会に溶け込んでいる様子を見たとき、東アジア系のコミュニティーで、彼、彼女は東アジア系の顔をしているのに白人とばかり付き合っている、と言ったりする。 そこで登場するのが、この俗語です。これが日本人であれば、見た目は日本人なのになぜ日本人と付き合っていない、なぜ日本人とまず友達になれないのか、なぜ、白人と友達になるんだと皮肉を言うわけです。 文化的には、東アジア系であればコミュニケーションや文化の違いだけでなく、そうした周囲の目というプレッシャーもある。東アジア系だからまず東アジア系と友達になれ、そうでなければ裏切り者だ、といった「圧」ですね。だからこそバナナという表現が生まれるのです。 そのようなプレッシャーがあって、新しいグループや新しい環境にもう1人東アジア系の人がいると、では私たちがまず友達になりましょうという流れになるわけですね。) Q:ところで、東アジア出身の人が、実力があっても米国企業などで出世できないという「竹の天井」という言葉ですが、これは05年につくられた言葉ですね。女性が出世できないことを指す「ガラスの天井」から派生したものであると。 ルー氏:そうです、Jane Hyun氏が、『Breaking the Bamboo Ceiling: Career Strategies for Asians』という本を書いたのが始まりです。 言っていることは面白いし納得感があるのですが、研究に基づいて出した洞察ではありませんでした。そうした、納得はするけれどもエビデンスで検証されていないことを深掘りするのが、私たち研究者の役目です。 竹の天井の含意としては、東アジア系は自国民同士や同じ人種の仲間内だったらリーダーを目指せるけれど、多様な環境に入った途端に弱くなるということですね。仲間内の論理では強い。 ルー氏:そうですね。多様性の高い環境でリーダーになるには、いろいろな人とつながる力がないと難しいです。米国で面接すると、東アジア系の人はなぜみんないつも一緒にランチを食べるのですか、とよく聞かれます。 東アジア系は得てしてネットワークも内輪だけにとどまり、いつも同質なグループの人とばかり遊び、食事している。だから人事部門がリーダーとして候補に挙げにくいのです。 Q:そして今回の研究の結論もまた、以前の研究同様、多様性のある組織のリーダーはインド人などの南アジア系である、ということなわけですね。インド人は人口も多いですが、それも関係がありますか。 ルー氏:いえ、人口の問題ではないと思います。米国内でいえば、インド出身者の人口は東アジア系の人口の半分程度ではないですか。でも米ツイッターのCEO(最高経営責任者)も、仏シャネルのCEOもインドの方です。米マイクロソフト、グーグルを傘下に持つ米アルファベットもそう』、「米国内でいえば、インド出身者の人口は東アジア系の人口の半分程度」にも拘らず、有名企業のCEOになっているのは、確かに圧倒的だ。
・『東アジア系に立ちはだかる世界の壁  Q:東アジア系はどうすればリーダーになれるのでしょう。 ルー氏:多様性の高い環境でリーダーになるためには、自分とは違うタイプの人とつながることが大事です。 組織側の努力も必要です。東アジア系の人々が、米国の組織でリーダーになるハードルが傾向として高いということを認識した上で、じゃあ、どうすればサポートできるかと考えることです。多様な背景を持つ人々がつながる機会をつくることなどが考えられます。 米国の多様性を重視する大手企業では、東アジア系の人だからと東アジア系のメンターを付けたりはしないと聞いています。その代わりにもっと外から働きかける機会をつくります。 日本人なら日本人同士で毎日ランチを食べるのではなく、組織的にフリーランチなどの機会を設けて、東アジア系の人を他の人種の人と一緒にするなど、意図的につながる場をセッティングするのです。 Q:機会をつくって意図して訓練を重ねる。そうするとインド人のようにチャンスを得られるかもしれません。 ルー氏:人間というのは基本的に怠け者で、より楽で簡単な方を選ぼうとしてしまいます。心理的には、自分と同じ言語を話す人、自分と似た者同士と友達になりやすいのです。 その壁を乗り越えるには、やはり外からの強制が必要なときもあるのではないでしょうか。 Q:ところで、研究では東アジア系がリーダーになりづらいほかの理由の中に、アサーティブネス(自己主張)が足りないという指摘がありました。エスニックホモフィリーの克服とアサーティブネスの力を鍛えることは両立するのですか。両方を訓練して克服すれば東アジア系がリーダーになれる可能性があるということでしょうか。 ルー氏:東アジア系の人は、南アジア系の人と比べても集団の中で埋もれやすいということが研究でも分かっていますが、エスニックホモフィリーの強さとアサーティブネスの弱さはつながっていると思うのです。 アサーティブネスはコミュニケーションのスタイルの1つです。確かに、東アジア系の人はコミュニケーションするとき、あまり主張しない傾向があります。それも恐らく、エスニックホモフィリーが強い理由の1つなのだと思います。コミュニケーション上、アサーティブネスが低い人、つまりほかの東アジア系の人とより付き合いたい気持ちになってしまいやすいのです。 いずれにせよ、米国の企業や組織に東アジア系のリーダーは少なく、その一方でインド人のリーダーはたくさんいるという理由や背景を探る研究はまだまだ続けます。また、研究が完成したらお話ししたいと思います』、今後の「研究」の進展が楽しみだ。
タグ:日本型経営・組織の問題点 (その13)(見えない価値「非財務資本」こそが生死を分ける 日本企業がGAFAMの足元にも及ばない真の理由、「日本型経済システム」の成立条件が 完全なる終焉を迎えつつある根拠 『比較制度分析序説――経済システムの進化と多元性』(青木昌彦著)で読み解く、似た者同士で群れる日本人 リーダー量産するインド人とどう違う?) 東洋経済オンライン「見えない価値「非財務資本」こそが生死を分ける 日本企業がGAFAMの足元にも及ばない真の理由」 「従業員のスキルアップにつながるような投資を地道にしてきただろうか。 あるいは「DX」も「単純な業務の「デジタル化」にとどまっている例は枚挙にいとまがない」、こうした「日本企業の出遅れ感」が、「日本企業のPBRは1倍付近で停滞・・・アメリカの上場企業平均が約3倍なのに対し、明確に低い水準」、その通りだ。 「企業価値を巡る考え方は、実体のあるモノをどれだけたくさん抱えているかということから、人材やノウハウ、ブランド、顧客満足度など、数えたり測ったりできない対象へ主眼が移っている。 こうした新しい企業価値の考え方に基づいた開示を行っている企業もある」、「こうした先行企業の事例から学び、企業価値の向上につなげてほしい」、同感である。 ダイヤモンド・オンライン 秋山進氏による「「日本型経済システム」の成立条件が、完全なる終焉を迎えつつある根拠 『比較制度分析序説――経済システムの進化と多元性』(青木昌彦著)で読み解く」 「時空を超えて普遍的な規範的価値を持った経済システムなどというものは本来ありえない」、「いつ誰にとっても合理的で完璧な経済システムというのはあり得ない」、との考え方は納得できる。 「産業勃興時の初期条件」の日米の違いは、納得できる。 「産業勃興時の初期条件」の日米の違いから、「分権型の経営が得意な米国と水平型の経営が浸透する日本」に分かれたというのも、説得力がある。 「新卒を一括採用する大手有名企業の内定を取るため(入試の学力試験が問題処理能力には直結しないとはいえ)5教科を勉強し、より偏差値の高い大学に入り、アルバイトやサークル活動で「コミュ力」を磨こうとするのである。 個々の経済主体(個人)の間で、文脈的技能の獲得が支配的になれば、本来は機能的技能を優先すべき石油化学産業にあっても、文脈的技能を重視する組織運営が支配的になってしまう」、「個々のシステムが相互拘束し合い、一連の強固なシステムとして機能し始めると、多少一部でルールや制度が変わろうと、経済システムや組織 「強固であった日本型の経済システムも、とうとう分水嶺をこえて、まだ姿の見えない新たなシステムに向けて、流動する時代に突入してしまったのではないか」、「エレクトロニクスやIT産業でソフトウェアのアプリケーションひとつで性能を変えられるような、入れ替え可能なモジュール化が進み、自動車産業においてもEVに切り変わっていく中で、これまでのすり合わせ・・・重視の組織や組織間の関係が過去ほどの優位性を持てなくなり、利益創出がピンチを迎えている」、「IoTの時代に入るから、系列を超えて誰とでもどことも繋がることを前提に 「日本発のグローバル大企業においては、すでに製造拠点の多くは日本になく、研究や開発、商品企画などにおいても日本国内でのみ行われるわけではなくなっている。外国の自社社員との協働も当たり前である。このような状況下にあっては、いまだに日本においてのみ水平的ヒエラルキーを前提に、可塑的技能・・・への投資が支配的な人事制度を維持しているデメリットが大きい」、「日本型の経済システムも」「新たなシステムに向けて、流動する時代に突入」、いよいよ変化しつつあるようだ。 「グローバル化によるジョブ型の導入とリモートワーク時代の到来という2つの力が同時に加わり、クリティカルマスは超えられた、つまり社会が変わるのに必要な程度の大多数の人がシステムの鞍替えをしようとしているのではないか」、あり得る話だ。 「旧来のアメリカ型でもなく、日本型でもないところに、どの産業セクターにとっても良いP均衡・・・と呼ばれる均衡点、すなわち、ちょうどよい状態の経済やシステムの状態が、理論上は存在していることが示されてはいる」、「P均衡」がどこに着地するのか大いに注目される。 日経ビジネスオンライン「似た者同士で群れる日本人 リーダー量産するインド人とどう違う?」 「東アジア系が米国の中で出世しづらいという「竹の天井」を検証した研究」、とは興味深い。「竹の天井」とは初耳だ 「東アジア系」は「国外に住んでいると国籍を超えて東アジア系だけで集まる」傾向が強いようだ。「破壊的なイノベーションを起こせない」、というのも寂しい傾向だ。「日本では統計的に99%の人は同じ民族です。同様に韓国でも99%の人は同じような顔をしていますし、中国も92%は漢民族です。一方、南アジア、例えばインドとかパキスタンは、非常に多様な国です」、 「インドには公用語が22もあります。子供のころからそうした環境で育った人は、自分と見た目や習慣、育った環境の違う人と接することに慣れています。自分と違う人とつながる練習を積んでいます。だから、米国のような多様性の高い環境に移っても「よそ者」とのコミュニケーションに全く支障がありません」、「「インドには公用語が22」、何と非効率だと思っていたが、「米国のような多様性の高い環境に移っても「よそ者」とのコミュニケーションに全く支障がありません」、と思わぬ効用があるようだ。 「米国内でいえば、インド出身者の人口は東アジア系の人口の半分程度」にも拘らず、有名企業のCEOになっているのは、確かに圧倒的だ。 今後の「研究」の進展が楽しみだ。
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防衛問題(その19)(〈任官拒否72名〉防衛大学校「学生のSOS写真」極寒の体育館で雑魚寝する濃厚接触者200人超 幹部と“スキー合宿”酒宴で陽性者が…、日本が侵攻されたら「敗戦濃厚」な理由 核武装・防衛費増より大事なのは?、プーチンの天敵 ドローンの大活躍で「防衛省・自衛隊」が追い詰められる理由(一部)、プーチンの天敵 ドローンの大活躍で「防衛省・自衛隊」が追い詰められる理由(一部)) [国内政治]

防衛問題については、昨年10月12日に取上げた。今日は、(その19)(〈任官拒否72名〉防衛大学校「学生のSOS写真」極寒の体育館で雑魚寝する濃厚接触者200人超 幹部と“スキー合宿”酒宴で陽性者が…、日本が侵攻されたら「敗戦濃厚」な理由 核武装・防衛費増より大事なのは?、プーチンの天敵 ドローンの大活躍で「防衛省・自衛隊」が追い詰められる理由(一部)、プーチンの天敵 ドローンの大活躍で「防衛省・自衛隊」が追い詰められる理由(一部))である。

先ずは、3月30日付け文春オンライン「〈任官拒否72名〉防衛大学校「学生のSOS写真」極寒の体育館で雑魚寝する濃厚接触者200人超、幹部と“スキー合宿”酒宴で陽性者が…」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/53119
・『29日、岸信夫防衛相は記者会見で、今年度の防衛大学校の卒業生479人のうち、自衛官への任官辞退者が過去2番目に多い72人だったことを明かした。前年比44人増となる。辞退理由の内訳は「他業種への就職希望」33人、「一般の大学院進学」9人、「家庭の事情・その他」30人。これを受け岸氏は「極めて残念。全員がそろって任官するように努めたい」と述べ、任官拒否抑制のため、指導教官による面談などに取り組んでいると語った。 いったいなぜ、これほどまで辞退者が続出しているのか。2月上旬、「週刊文春」には、学生たちの窮状を訴えるSOSが多数届いていた。コロナ禍で杜撰な対応を繰り返す防衛大の実態をスクープした「週刊文春 電子版」の記事を公開する。(初出:週刊文春 電子版 2月9日掲載 年齢・肩書き等は公開時のまま) 〈防衛大学校では常に後手の対応のため、コロナ感染が収まりません。そのため、濃厚接触者に指定された生徒は避難所のような場所で生活を強いられています〉 2月上旬、防衛大学校の職員から文春リークスに届いた1通のメッセージ。そこには、学生たちの窮状を訴える文言が切々と綴られていた。 〈学生たちのストレスももう限界だと思います。喫煙所の前を通っても以前の学生たちの笑顔は無くなくなってしまいました。何より日々先の見えない生活を余儀なくされている学生たちのための記事を書いていただきたいです〉 昨年9月、「週刊文春 電子版」は防衛大学校で新型コロナウイルス対策が不十分なまま、学生たちの感染者が続出していることを報じた。1年生がマスクのみで陽性者や濃厚接触者に食事を配膳していたこと、隔離者が仕切りも冷房もない部屋に複数人で押し込められて雑魚寝をしていたこと、そして隔離部屋から出たゴミが至る所に放置されていたこと……現役の学生たちの情報提供をもとに写真と共に詳報している。 その後、コロナの波はいったん落ち着く。だが、年が明けてオミクロン株が猛威をふるうようになると、またしても防衛大の関係者から次々とSOSの声が寄せられるようになった。 小誌は今回も複数の防衛大の現役学生に連絡を試みた。彼らへの取材を通じて明らかになったのは、昨年9月からほとんど変わっていない感染対策の実態だった』、「卒業生479人のうち、自衛官への任官辞退者が過去2番目に多い72人」、誠に不名誉な数字だが、この記事にあるようなお粗末極まる「コロナ」対応からみれば、当然の結果といえるかも知れない。
・『「被災地の避難所のような状況」  全寮制の防衛大では約2000名の学生たちが日夜訓練を共にしているが、年明けから2月7日までの陽性者数は150名を超えた。学生だけでなく、自由に大学を出入りできる現役自衛官の指導官や職員の感染も多いという。 冬季休暇明けの1月5日のことだった。学校に戻ってきた学生たちは構内の記念講堂で抗原検査を受けたが、複数の陽性者が確認された。それを受けた防衛大はその日のうちに「校内ロックダウン」を決定した。 対面授業と訓練は当面中止。陽性者と濃厚接触者の学生がすぐに隔離されることになった。陽性者は「教育棟」や「旧医務室」などの場所で隔離され、治療を受ける。とくに理不尽な目にあっているのが、濃厚接触者となった学生たちだ。防衛大での濃厚接触者の定義は「陽性者と同部屋の学生」。彼らは学内の「総合体育館」や「武道場」「記念講堂」などで2週間隔離されなければならない。濃厚接触者は200名以上もいるという。 昨年9月と同様、1年生が隔離者への必要物資の運搬を命じられている。1年生のA君が証言する。 「何度か隔離された人に配膳をしに行きましたが、どの隔離場所もプライベートな空間は全くない状態で学生たちが隔離されています。特に『総合体育館』は被災地の避難所のような状況でした。ヒーターこそあるものの、施設自体が広く、空調設備もないため非常に寒いのです。濃厚接触者だからといって……そんな場所で何週間も雑魚寝して過ごすのは辛すぎる。毛布1枚で寒さをしのげるとは思えません。体調を崩してしまいます」 感染を防ぐため、配膳は“置き配”スタイルを採用。隔離場所の入り口まで1年生が必要物資を運び、彼らが撤収した後に隔離された学生たちが各々で取りに行くのだという。直接接しないとはいえ、A君は「正直、怖い気持ちはあります」と打ち明けた』、「濃厚接触者」は「総合体育館」・・・などで2週間隔離」、「総合体育館』は被災地の避難所のような状況でした。ヒーターこそあるものの、施設自体が広く、空調設備もないため非常に寒いのです。濃厚接触者だからといって……そんな場所で何週間も雑魚寝して過ごすのは辛すぎる。毛布1枚で寒さをしのげるとは思えません。体調を崩してしまいます」、これは酷い。
・『一歩も外に出られない。ほとんど“軟禁状態”  「校内ロックダウン」の対象となるのは、陽性者や濃厚接触者だけではない。すべての学生に「敷地の外に出てはならない」という指示が下されたのである。4年生のB君が語る。 「私たちは今、昨夏と同様、ほとんど“軟禁状態”の日々を過ごしています。平時であれば土日は外出可能ですが、『校内ロックダウン』では一歩も外に出られない。TOEICや資格試験、自動車学校の教習など、今後の生活に必要な外出に関しても一切認めてもらえません。もちろん、キャンセル料を防衛大側は負担してくれません。さらに酷いのは、陽性者や濃厚接触者でもない学生が『今年は成人式に参加するな』と言われたこと。結局、ほとんどの新成人の学生が成人式に参加できなかったようです」 3年生のC君はこのロックダウンのある“例外”について、疑問を感じているという。 「当初、私たちが言われたのは、授業・訓練・部活動の禁止と土日の外出禁止。始まった当初は学内に唯一あるコンビニの利用もダメと。両替をしようとしただけなのに、指導官から厳しく注意されました。学生である私たちは一歩も外には出れません。しかし、指導官たちはロックダウン中も普通に通勤が許されていますし、最初からコンビニの利用もOK。彼らの中にも陽性者はいるはずなのに、この“例外”に関する説明は一切ありません。こういう理不尽な出来事に学生たちはストレスを溜めていっています」 その後、1月17日に「校内ロックダウン」は一部緩和された。陽性者と濃厚接触者の隔離は引き続き行われるが、対面授業と訓練は再開されることになった。だが、前出の4年生・B君は「オンライン授業の設備があるのに、なぜ対面なのか」と首を傾げる。 「防衛大では、2020年夏にオンライン授業の設備を導入したばかりです。しかし、音が聞こえないなどのトラブルが多いため、個別の連絡以外ではほとんど使われていません。そのため、陽性者の出た部隊の学生と一緒に対面授業を受けています。濃厚接触者の隔離はあんなに厳しくやるのに、授業は簡単に対面に戻すのか……という思いです。 ほとんどの授業は40名程度で行われますが、教室が狭いため、席の間隔は2メートルも開いていませんね。平日の毎朝と月・水・金の昼に行われる課業行進(※学生たちが隊列を組んで行進曲に合わせて歩くこと)も、密集隊形をとるため、他の学生と距離を取れていない状態です」』、「『校内ロックダウン』では一歩も外に出られない。TOEICや資格試験、自動車学校の教習など、今後の生活に必要な外出に関しても一切認めてもらえません」、この「外出」制限は厳し過ぎる。「授業・訓練・部活動の禁止と土日の外出禁止。始まった当初は学内に唯一あるコンビニの利用もダメと。両替をしようとしただけなのに、指導官から厳しく注意されました」、学内での行動規制も厳しいようだ。「オンライン授業の設備を導入したばかりです。しかし、音が聞こえないなどのトラブルが多いため、個別の連絡以外ではほとんど使われていません。そのため、陽性者の出た部隊の学生と一緒に対面授業を受けています。濃厚接触者の隔離はあんなに厳しくやるのに、授業は簡単に対面に戻すのか……という思いです」、「授業」での規制は緩すぎる感じだ。
・『“三密状態”で飲み会。泥酔する学生も  陽性者と濃厚接触者の厳密な隔離。そして全ての学生の外出禁止……学生たちは辛いかもしれないが、防衛大が率先して感染の拡大を防ぐ規範を見せるという意味では、やむを得ないとも言える。しかし、この「ロックダウン」中に“ある訓練”が行われ、その参加者に陽性者が出たことで、学生たちの不信感は一気に高まったという。2年生のD君が明かす。 「1月17日から21日まで、2年生だけが参加する毎年恒例のスキー訓練が行われたのです。昨年は新型コロナウイルスの感染状況が悪化していたため、実施は見送られました。ところが今年は実施されたのです。圧倒的に今の方が感染者数は多いので、『当然ないだろう』と思っていたのですが、実施されると聞いた時は同期の間でも、『なぜ?』という声が上がりました。スキー訓練は他の訓練とは違い、学生たちの“思い出づくり”の意味合いが強いからです」 “訓練”とはいえ、全ての学生が外に出るのを禁じられている中、スキー合宿を実施していいものなのか。多くの2年生が疑問を抱いたが、大学側の説明は「この学年で陽性者は出ていないからOK」。2年生が4分隊に分かれ、指導官トップである訓練部長のもと、新潟県妙高市のゲレンデで訓練は行われた。訓練の前後でPCR検査は実施されなかったという。 「最初の頃はマスク着用を義務付けられていましたが、後半になってくると訓練部長から『息が切れて苦しいだろうから』とマスクを外す許可が出ました。ゲレンデには一般の中高生が合宿で来ていましたが、彼らの方が終始しっかりマスクを着けていたと思います」(2年生・D君) そして、訓練中に下された“ある指示”に学生たちは驚いたという。D君が明かす。 「毎日18時ごろには訓練を終え、宿泊している旅館に戻るのですが、『訓練部長から“幹部との懇談では飲酒してもいい”と許可が下りた』という通達が回ってきたのです。僕たちも、大学にずっと閉じ込められてストレスが溜まっていたので『許可が出たならいいか』とお酒を飲んでしまいました」 旅館側は当然コロナ対策に気を遣っている。大広間で宴会をすることはできなかった。そこでこの“懇談”は宿泊部屋で行われることになった。 「売店でお酒とお菓子を購入して持ち込みました。本来であれば3人~5人で泊まる部屋に多い時は10人くらいの学生が入って、指導官との飲み会が行われました。部屋はまさに“三密”そのもの。僕たち学生側もまさかこんな形でお酒が飲めるとは思いもしなかったので、中には泥酔している奴もいました。毎回21時頃にはお開きになっていましたね」(同前) ところが——。 「スキー訓練を終えて学校に戻ると、参加していた2年生から複数の陽性者が出たのです。誰がウイルスを保持しているかわからない状態で、あのような飲み会が行われていたかと思うと……非常に恐ろしいです」(同前)』、「訓練部長から“幹部との懇談では飲酒してもいい”と許可が下りた』という通達が回ってきたのです。僕たちも、大学にずっと閉じ込められてストレスが溜まっていたので『許可が出たならいいか』とお酒を飲んでしまいました」・・・ この“懇談”は宿泊部屋で行われることになった。 「売店でお酒とお菓子を購入して持ち込みました。本来であれば3人~5人で泊まる部屋に多い時は10人くらいの学生が入って、指導官との飲み会が行われました。部屋はまさに“三密”そのもの」、「学校に戻ると、参加していた2年生から複数の陽性者が出た」、当然だろう。
・『学生たちのSOSに防衛大はどう答えるか  2月6日時点で、防衛大が学生たちの“外出禁止令”を解除する気配はない。学生たちから届いた数々のSOSの声。防衛大はどう答えるのか(Qは聞き手の質問、Aは防衛大の回答)。 Q:学生が外出も禁じられている一方、指導官や職員はロックダウン中も変わらずに通勤しているのですか? A:「校外に居住する職員は校務運営のために通勤していますが、会食の自粛や必要に応じた交代制勤務の実施等の感染拡大防止策を講じています」 Q:TOEICや資格試験、自動車運転免許取得のためでも学生は学外に出ることができないとのことですが。 A:「学生については、校外での感染を局限するため、冠婚葬祭や通院といった真にやむを得ない場合を除き、外出させないこととしております」 Q:2021年に中止した「スキー訓練」を感染者数が多い今年は実施した理由は? A:「2021年のスキー訓練は、同年1月8日から神奈川県において緊急事態宣言が発出されていたため、スキー訓練の実施は見送りました。2022年については、訓練開始の時点では、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の発出がなく、感染拡大防止策を講じた上で実施可能であると判断したため、スキー訓練を実施しました」 Q:スキー訓練を引率した訓練部長が、「マスクをしていると息が切れて辛いから」と同訓練中にマスクを外すことを許可したのは事実でしょうか。 A:「スキー訓練中の学生については、原則としてマスクを着用させた上で、呼吸が苦しい場合には一時的にマスクを外すことを認めていました」 Q:訓練中、訓練部長が学生に対して幹部と懇談時の飲酒を許可し、宿泊部屋で指導官と学生ら10名が飲酒を含む会食をしたと聞いていますが。 A:「訓練に参加した学生に対しては、宿での飲酒は禁じており、また、訓練部長が懇談時の飲酒を許可した事実もありません」 Q:スキー訓練に参加した学生からコロナ陽性者が複数出ているのは事実ですか? A:「スキー訓練に参加した学生から、新型コロナウイルスの陽性者が複数出ていることは事実です」 Q:防衛大のコロナ対策に多くの学生がストレスを感じていることについての見解は? A:「学生の行動の制約を含む防衛大学校における感染拡大防止策及びその必要性については、これまでも、指導教官を通じて学生に説明をしてきたところであり、引き続き、学生への丁寧な説明に努めてまいります。また、職員についても、会食の自粛や必要に応じた交代制勤務の実施等の感染拡大防止策を講じています。 いずれにせよ、防衛大学校としては、引き続き感染拡大防止に努めるとともに、学生のストレス軽減のための努力を継続してまいります」 防衛大のあまりに杜撰なコロナ対策に振り回される学生たち。防衛大は、未来の日本の国防を担う若者たちを守れているだろうか』、「訓練部長が懇談時の飲酒を許可した事実もありません」、「訓練部長から“幹部との懇談では飲酒してもいい”と許可が下りた』という通達が回ってきた」、どちらかが嘘の筈で、後者が嘘の可能性が高そうだ。「防衛大のあまりに杜撰なコロナ対策に振り回される学生たち」、これでは「任官拒否」が過去2番目の高水準だったことも頷ける。

次に、4月14日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「日本が侵攻されたら「敗戦濃厚」な理由、核武装・防衛費増より大事なのは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/301571
・『潤沢な防衛費や核ミサイルよりも大切なこと  ウクライナ侵攻を受けて、防衛費増額の議論が盛り上がっている。自民党安全保障調査会も今のGDP比1%程度から2%へ引き上げる案を今後の論点整理として示した。 確かに、「戦争犯罪を繰り返す悪の帝国」と目されるロシアが、北海道にまで侵攻する恐れがあるという専門家やメディアは後を絶たない。この世界の混乱に乗じて、中国も尖閣諸島へ乗りこんでくると主張される論者もおり、簡単に侵略されないよう、日本も何かしらの形で核の抑止力を持つべきだと主張する評論家やコメンテーターも増えてきた。 「平和ボケ日本がようやく尻に火がついてきたな」と喜ぶ愛国心あふれる方も多いだろうが、残念ながら防衛費を増やしたり、核の抑止力を持ったりすれば日本が守られるという発想もなかなかの「平和ボケ」だと言わざるを得ない。潤沢な防衛費や核ミサイルがいくらあっても、間違いなく国を守れない。大事なものが、見事にスコーンと抜けているからだ。 それは、「エネルギーと食料の自給自足」である。 残念ながら日本はこの二つがほとんどできていない。なので、敵基地攻撃能力を身につけたとしても、アメリカ・中国と並ぶ軍事大国になったとしても、他国とガチンコで戦ったら間違いなく負けてしまうのだ。 「日本の自衛隊は世界一優秀だ!さては貴様はロシアや中国の手先だな!」というお叱りが飛んできそうなので、実際に日本が周辺国から攻められたと仮定して、日本のエネルギーと食料がどうなっていくのかを考えていこう』、「残念ながら日本は」、「エネルギーと食料の自給自足」の「二つがほとんどできていない。なので、敵基地攻撃能力を身につけたとしても、アメリカ・中国と並ぶ軍事大国になったとしても、他国とガチンコで戦ったら間違いなく負けてしまうのだ」、その通りだ。
・『エネルギーと食料を他国に依存、輸入止まれば生活大混乱  ご存じのように、日本の一次エネルギー自給率は12.1%(2019年)でOECD(経済協力開発機構)加盟の36カ国中35位と、エネルギーが自給できていない。 そんな中で周辺国と軍事衝突をすれば当然、石油などの海上輸入ルートも影響を受ける。 一方で、戦争には石油をはじめとした膨大なエネルギーを必要とする。必然的に「銃後」への供給は後回しになって、国民は深刻な電力不足などに陥る恐れがあるのだ。 というと、「だからこそ原発再稼働だ!」と叫ぶ人も多いが、今回の戦争でもわかるように、エネルギー施設というのは一番に標的になってしまう。しかも、今の時代はわざわざそこにミサイルを撃ち込まなくてもいい。 米中露のサイバー戦争を研究しているジャーナリストの山田敏弘氏の「ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する」(文藝春秋)によれば、既に原子力発電所などのインフラ施設を内部から破壊するサイバー攻撃も可能だという。 そんな危機的状況にさらに追い討ちをかけるのが、食糧難である。こちらも有名な話だが、日本のカロリーベースの食料自給率は37%(2020年度)で、エネルギー同様に他国と比べるとかなり脆弱だ。ちょっと前の「アサリ」のように国産をふれまわっていても、実は海外から輸入したものを国内で“産地ロンダリング”をするケースもあるので、実際はもっと自給率は低いかもしれない。 エネルギーの輸入が難しくなるように、食料の輸入が難しくなれば、外国産食品に支えられている日本人の食料事情はすぐに悪化してしまう。そしてこの事態を悪化させるのが「中国依存」である。 農林水産省の農林水産物輸出入概況(2021年)によれば、日本が最も食料を輸入しているのはアメリカで1兆8681億円で18.4%を占めているのだが、次は中国で1兆3214億円で13%を占めている。 よくネットやSNSで日中関係が悪化するたびに「中国と国交断絶せよ!」と威勢よく叫ぶ人たちがいるが、本当にそれをやってしまったら庶民の生活は大混乱に陥るのだ。 というと、「経済安全保障も法制化されたし、他国からの食料輸入を増やせばいいだけの話だ」と大したことがないように言う人もいるが、依存をしているのは食料だけではない』、どういうことだろう。
・『アメリカやEUと比べて、日本は次元が違う中国依存ぶり  輸入先上位1位の国でシェアが5割以上を占める財のことを指す、「集中的供給財」という言葉がある。これが多ければ多いほど、輸入先の国にベッタリと依存していることになる。 内閣府の資料によれば、中国からの「集中的供給財」はアメリカは約600品目、ドイツでは約300品目となっている。この中国依存の高さから、アメリカもEUもそれほど中国へ強いことが言えないという現実があるのだ。 翻って我が日本はどうかというと、なんと1000品目以上である。アメリカやEUとは次元が違う中国依存ぶりなのだ。輸入だけではない。日本経済を牽引する自動車産業などもガッツリと中国依存が進んでいる。今や中国は世界一の自動車市場で、トヨタが20年に中国で180万台を販売、これは世界全体の2割に相当するという。 こんな状態で日中が領土を巡って対立した場合、どんなことになるのか想像をしていただきたい。先ほどの内閣府資料の記述から、我々にどんな未来が待ち受けているかイメージできる。 「このように、仮に輸入先国の中国で何らかの供給ショックや輸送の停滞が生じ輸入が滞った場合には、アメリカやドイツと比較して日本ではより多くの品目でほかの輸入先国への代替が難しく、金額規模的にも影響が大きい可能性(リスク)がある構造といえよう」(「世界経済の潮流 2021年 II中国の経済成長と貿易構造の変化」) 今、プーチンの蛮行に対する怒りで「経済制裁でロシアをもっと追いつめろ」という世論ができていることを踏まえれば、もし中国が攻めてきたらそれ以上の「中国に厳しい制裁を!」の大合唱となるだろう。しかし、それは中国共産党を追いつめるどころか、特大ブーメランとして我々の脳天に突き刺さってしまう恐れが高いのだ』、「中国からの「集中的供給財」はアメリカは約600品目、ドイツでは約300品目」、「日本は・・・なんと1000品目以上・・・アメリカやEUとは次元が違う中国依存ぶり」、いまさらどうにもならないが、中国にとっての「日本」からの「集中的供給財」はどのていどあるのだろうか。あれば、相互に依存していることになるが、現実には殆どないのかも知れない。
・『防衛費は増やすべきだが、「優先順位」を考えて議論を  …と言う話を聞くと、「こいつは反戦左翼でとにかく防衛費増額に反対するためにこんなデタラメを吹聴しているのだな」と不快になられる方も多いだろうが、筆者は防衛費を増やしていくことには特に異論はない。 あまりにも語られることが少ないが、実は日本の人口減少によって、自衛隊はずっと「定員割れ」が続いている。さすがにこればっかりは「外国人労働者を増やせば解決」というわけにはいかないので、入隊できる年齢を引き上げてなんとかしのいでいるが、これから深刻な“国防力不足”が到来することは間違いない。 そうなったら、現場の負担を軽減するためにも、今回の戦争でも注目される無人ドローンやAIというハイテクで補完していくしかないので、当然それなりの予算をつけていくしかない。自衛隊が、人が減っているのにやたらと高い理想を掲げるブラック企業のようになり下がったら、国防もへったくれもない。 そのように防衛費増額はいい。ただ、「優先順位」が違うのではないかと申し上げているだけだ。 防衛費を急にドカンと上げたり、核共有議論が盛り上がったりすると当然、中国やロシアからすれば「おいおい、なに挑発してくれてんだよ」と一気に臨戦態勢になる。 こちらは「防衛」のつもりでも、緊張関係にある国からすれば、けんかを売っているように取られることも多い。ウクライナのゼレンスキー大統領が、分離独立派が支配する地域にドローンを飛ばしたり、NATO(北大西洋条約機構)入りを切望したりしたことを、プーチンが「度重なる侵略行為」ととったのと同じである。 相手が間違っている、狂っている、と批判するのは簡単だが、互いに背負っているものが違うので、ここは絶対に譲歩できない部分でもあるのだ。 だから、そのように緊張と対立をエスカレートさせるようなことに踏み切る前に、まずは国を守るために必要不可欠な「エネルギーと食料の自給自足」を、もっと向上させることに全力を注いだ方がいいのはないか、と言いたいのである。 なぜ筆者がそう考えるのかというと、実際に戦争が身近にあった時代、どうすれば日本は勝てるのか、生き残れるのかということを考えていた先人たちは、そのような結論を出したからだ』、「防衛費を急にドカンと上げたり、核共有議論が盛り上がったりすると当然、中国やロシアからすれば「おいおい、なに挑発してくれてんだよ」と一気に臨戦態勢になる。 こちらは「防衛」のつもりでも、緊張関係にある国からすれば、けんかを売っているように取られることも多い」、「緊張と対立をエスカレートさせるようなことに踏み切る前に、まずは国を守るために必要不可欠な「エネルギーと食料の自給自足」を、もっと向上させることに全力を注いだ方がいいのはないか」、同感である。
・『日米開戦、「日本必敗」というシナリオが導き出された理由  日米開戦前、当時の軍部や政府のエリートたちで結成された総力戦研究所が、何度シミュレーションをしても「日本必敗」という結論を導き出したのは有名な話だ。なぜ彼らが日本の破滅を見通すことができていたのかというと、戦争の勝敗を左右する「国力」というものをしっかりと正しく認識していたからである。 総力戦研究所の前身ともいう「陸軍省戦争経済研究班」を率いていた秋丸次朗中佐はこう語っている。 「一国の戦争能力がどの程度にあるかと云うことを判定する一つの基礎でありまして、其の国がどの程度に自給自足が出来るのかと云うことが、其の国の戦争力を判定する一の重要なる要素に相成って参る訳でございます」(東亜経済懇談会第一回大会報告書) 当時、海軍では世界一の軍艦を建造すれば勝てるとか、盛んに威勢のいいことが言われていた。陸軍では日本軍の勇ましさがあれば、米英など恐るるに足りんと国民を鼓舞していた。 しかし、軍隊内で戦争というものを科学的に分析していた人たちは、これがエネルギーと食料をめぐる「自給自足の戦い」だということを知っていた。秋丸中佐の上官にあたる岩畔豪雄の「昭和陸軍 謀略秘史」の中にある日米経済力の比較によれば、電力は「1対6」で石炭産出量は「1対10」、石油産出量にいたっては「1対数百」とある。 これは大和魂でひっくり返せるようものではない。だから、何をどう分析しても当時のエリートたちには「日本必敗」というシナリオしか導き出せなかった。 これは今のロシアにも当てはまる』、「日米経済力の比較によれば、電力は「1対6」で石炭産出量は「1対10」、石油産出量にいたっては「1対数百」とある。 これは大和魂でひっくり返せるようものではない。だから、何をどう分析しても当時のエリートたちには「日本必敗」というシナリオしか導き出せなかった」、「軍隊内で戦争というものを科学的に分析していた人たちは、これがエネルギーと食料をめぐる「自給自足の戦い」だということを知っていた」、なるほど。
・『ロシアは自給自足ができるから戦争ができる  ロシアが国際社会から激しく非難されても、なぜ強気の姿勢を崩さずにいられるのかというと、資源と食料があることも無関係ではない。豊富な天然ガスがあって、西側諸国との駆け引きに使っているのはご存じの通りだが、食料も豊富だ。世界トップの小麦輸出量を誇るなど最近では輸出にも力を入れているが、もともと食料自給率がかなり高いのだ。 西側メディアや日本のマスコミは、「制裁でロシアは貧しくなっている、もう一押しだ!」とか「物不足で国民の不満が高まって、プーチン暗殺はもうすぐだ」とうれしそうに報じている。しかし、『ロシアに住んで8年...日本食レストラン営む日本人に聞く現状「ロシアは経済危機を何度も経験...正直これくらいのは慣れている」』(MBS NEWS 4月12日)でも紹介されているように、モスクワは穏やかなものだ。グッチなどの西側のブランドが休業しているだけで、スーパーにはものがあふれて、人々も特に困った様子もない。 ロシアは経済的に豊かな国ではないが、実はそれは戦争の継続にはそれほど影響がない。本当に重要なのは「自給自足ができるか否か」だ。その視点が抜けているので、西側諸国の経済制裁は戦争終結にはほとんど意味はない。戦時中の日本軍の分析通りだ。 こういう話をすると必ず「当時と今では状況が違う」「昔の話は参考にならない」と言う人がいるが、今ウクライナで起きている虐殺やレイプ、略奪を見ても、使われる兵器が進化したくらいで、戦争というものの本質的なところは80年前とほとんど変わっていない。 80年ぽっちでは生きている人間がすべて入れ替わることがないので、文化や思想にそれほど大きな違いはない。歴史学では、「80年」というのは「同時代」の扱いなのだ。 しかし、今の日本ではすっかり平和になったことで、戦争の本質など考える必要がなくなり、先人たちが導き出した「自給自足」という「戦争力」を判定する重要な要素もすっかり忘れ去られてしまっている。 そのかわりに出てきたのが、最新鋭の兵器を持って、核で武装をして、強気な態度を見せることこそが国を守るためには何よりも大切だという考え方だ。しかし、過去の歴史に学べば、これは国を守るという点では深刻な事態を引き起こす可能性が高い。 あのひどい負け方をした戦争も、強気なやり方を選んでしまったからだ。最新兵器や戦う強気の姿勢こそが勝敗を決して、国防の要であるということが盛んに叫ばれた。世界一の戦艦「大和」ができれば戦局をひっくり返せるとか、反戦平和なんて弱気なことを言わずに日本人が一致団結すれば神風が吹くと、一部の人は本気で信じた。 防衛費増額も核共有議論もまったく否定はしないが、その前にまずは本当の戦争を経験していた偉大な先人たちの知恵に、真摯に学ぶことから始めるべきだ』、「あのひどい負け方をした戦争も、強気なやり方を選んでしまったからだ。最新兵器や戦う強気の姿勢こそが勝敗を決して、国防の要であるということが盛んに叫ばれた。世界一の戦艦「大和」ができれば戦局をひっくり返せるとか、反戦平和なんて弱気なことを言わずに日本人が一致団結すれば神風が吹くと、一部の人は本気で信じた」、「まずは本当の戦争を経験していた偉大な先人たちの知恵に、真摯に学ぶことから始めるべきだ」、同感である。

第三に、4月27日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したイトモス研究所所長の小倉健一氏による「プーチンの天敵、ドローンの大活躍で「防衛省・自衛隊」が追い詰められる理由」のうち、無料部分の1頁目を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/302413
・『ロシア軍に対するウクライナ軍の抵抗において、さまざまなドローンが戦場で大活躍している。日本の防衛省はドローンの有効性を否定し続けてきたが、いよいよ年貢の納め時だ。防衛省のドローン対策の圧倒的な遅れについて今、政府与党から防衛省への問い合せが増えているというのだ』、「日本の防衛省はドローンの有効性を否定し続けてきた」、嘆かわしいことだ。
・『防衛省のドローン対策は圧倒的な出遅れ 政府与党から問い合わせ相次ぐ(ロシア軍が侵攻したウクライナでは、南東部マリウポリを包囲され、ロシア軍が一方的に「制圧」を宣言するなど、被害が拡大している。他方、ウクライナも必死の抵抗を見せている。その反撃の主力となっているのが「ドローン」である。 例えば、日本の一般家電量販店(ヤマダ電機やビックカメラ他)で購入できる民生ドローンで、ロシア軍の位置を偵察・監視。対戦車ミサイル「ジャベリン」を持つ味方歩兵に位置を伝え、撃破しているのだ。 さらには、米政府がウクライナへの支援の新たな兵器として、自爆型ドローン(無人機)「スイッチブレード」100機の提供を表明。米国内でウクライナ兵に対して使用方法の訓練も実施したという。技術を得たウクライナ兵が近く帰国し、実戦への投入に備えている。 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、ウクライナ軍のドローンには相当手を焼いているようだ。CNNは4月9日付の記事で、「ウクライナ軍がトルコで製造されたドローン(無人機)『バイラクタルTB2』を使用している状況について、ロシアがトルコに抗議した」と報じている。 またウクライナの当局者は、バイラクタルTB2を「現在保有する兵器の中で最も効果的なものの一つと称賛している」のだという。 そんなドローンの大活躍を、苦々しい思いで見つめている存在がプーチン大統領の他にもいる。それは、日本の防衛省だ。彼らはドローンの有効性を否定し続けてきた。しかし、いよいよその姿勢にも限界が近づいてきている。 実は、ウクライナでのドローンの奮闘を指摘した筆者の寄稿文『「カミカゼドローン」100機にロシア兵が逃げ惑う…日本の防衛政策転換は急務』(ダイヤモンド・オンライン、4月6日)が大反響を呼んだ。そしてその記事で指摘していた、防衛省のドローン対策の圧倒的な遅れについて今、政府与党から防衛省への問い合せが増えているのだという』、「ウクライナでのドローンの奮闘を指摘した筆者の寄稿文」を最後に紹介しよう。

第四に、4月5日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したイトモス研究所所長の小倉健一氏による「「カミカゼドローン」100機にロシア兵が逃げ惑う…日本の防衛政策転換は急務」を紹介しよう。
・『戦力で大きく劣るとされていたウクライナ軍が、ロシア軍に善戦していることは驚きをもって報じられている。その要因の一つが「ドローン」の活躍だ。しかし、ウクライナ危機の前まで防衛省では「ドローンは戦場では使えない」という意見が主流だったという。日本の防衛政策の抜本的見直しが急務だ』、
・『ウクライナ大善戦の立役者「ドローン」 3種類が対ロシア戦で活躍中  ウクライナへの侵攻を続けるロシア軍は、軍事作戦の重点をウクライナ東部に移すと発表した。ウクライナ東部のマリウポリの掌握に向け、攻勢を強めている。また、「作戦を大幅に縮小する」とした首都キーウ(キエフ)周辺でも軍事的な圧力を維持しており、依然として緊張が続いている。 ロシアのウラジーミル・プーチン大統領の当初のもくろみだった「数日間でウクライナの主要拠点を制覇する」は、完全に崩れ去り、各地でロシア軍の苦戦と士気低下が指摘されている。このウクライナ軍の大善戦とも呼ぶべき事態の要因の一つに、「ドローン」の活躍がある。 ウクライナで活躍しているドローンにはいくつか種類があり、それぞれを簡単に説明していこう。(以下有料)』、「ウクライナ軍の大善戦とも呼ぶべき事態の要因の一つに、「ドローン」の活躍がある」、確かに見事な活用ぶりだ。「防衛省」も心を入れ替えて、真摯に学ぶべきだろう。
タグ:(その19)(〈任官拒否72名〉防衛大学校「学生のSOS写真」極寒の体育館で雑魚寝する濃厚接触者200人超 幹部と“スキー合宿”酒宴で陽性者が…、日本が侵攻されたら「敗戦濃厚」な理由 核武装・防衛費増より大事なのは?、プーチンの天敵 ドローンの大活躍で「防衛省・自衛隊」が追い詰められる理由(一部)、プーチンの天敵 ドローンの大活躍で「防衛省・自衛隊」が追い詰められる理由(一部)) 防衛問題 文春オンライン「〈任官拒否72名〉防衛大学校「学生のSOS写真」極寒の体育館で雑魚寝する濃厚接触者200人超、幹部と“スキー合宿”酒宴で陽性者が…」 「卒業生479人のうち、自衛官への任官辞退者が過去2番目に多い72人」、誠に不名誉な数字だが、この記事にあるようなお粗末極まる「コロナ」対応からみれば、当然の結果といえるかも知れない。 「濃厚接触者」は「総合体育館」・・・などで2週間隔離」、「総合体育館』は被災地の避難所のような状況でした。ヒーターこそあるものの、施設自体が広く、空調設備もないため非常に寒いのです。濃厚接触者だからといって……そんな場所で何週間も雑魚寝して過ごすのは辛すぎる。毛布1枚で寒さをしのげるとは思えません。体調を崩してしまいます」、これは酷い。 「『校内ロックダウン』では一歩も外に出られない。TOEICや資格試験、自動車学校の教習など、今後の生活に必要な外出に関しても一切認めてもらえません」、この「外出」制限は厳し過ぎる。「授業・訓練・部活動の禁止と土日の外出禁止。始まった当初は学内に唯一あるコンビニの利用もダメと。両替をしようとしただけなのに、指導官から厳しく注意されました」、学内での行動規制も厳しいようだ。「オンライン授業の設備を導入したばかりです。しかし、音が聞こえないなどのトラブルが多いため、個別の連絡以外ではほとんど使われていません。そ 「訓練部長から“幹部との懇談では飲酒してもいい”と許可が下りた』という通達が回ってきたのです。僕たちも、大学にずっと閉じ込められてストレスが溜まっていたので『許可が出たならいいか』とお酒を飲んでしまいました」・・・ この“懇談”は宿泊部屋で行われることになった。 「売店でお酒とお菓子を購入して持ち込みました。本来であれば3人~5人で泊まる部屋に多い時は10人くらいの学生が入って、指導官との飲み会が行われました。部屋はまさに“三密”そのもの」、「学校に戻ると、参加していた2年生から複数の陽性者が出た」、当然 「訓練部長が懇談時の飲酒を許可した事実もありません」、「訓練部長から“幹部との懇談では飲酒してもいい”と許可が下りた』という通達が回ってきた」、どちらかが嘘の筈で、後者が嘘の可能性が高そうだ。「防衛大のあまりに杜撰なコロナ対策に振り回される学生たち」、これでは「任官拒否」が過去2番目の高水準だったことも頷ける。 ダイヤモンド・オンライン 窪田順生氏による「日本が侵攻されたら「敗戦濃厚」な理由、核武装・防衛費増より大事なのは?」 「残念ながら日本は」、「エネルギーと食料の自給自足」の「二つがほとんどできていない。なので、敵基地攻撃能力を身につけたとしても、アメリカ・中国と並ぶ軍事大国になったとしても、他国とガチンコで戦ったら間違いなく負けてしまうのだ」、その通りだ。 どういうことだろう。 「中国からの「集中的供給財」はアメリカは約600品目、ドイツでは約300品目」、「日本は・・・なんと1000品目以上・・・アメリカやEUとは次元が違う中国依存ぶり」、いまさらどうにもならないが、中国にとっての「日本」からの「集中的供給財」はどのていどあるのだろうか。あれば、相互に依存していることになるが、現実には殆どないのかも知れない。 「防衛費を急にドカンと上げたり、核共有議論が盛り上がったりすると当然、中国やロシアからすれば「おいおい、なに挑発してくれてんだよ」と一気に臨戦態勢になる。 こちらは「防衛」のつもりでも、緊張関係にある国からすれば、けんかを売っているように取られることも多い」、「緊張と対立をエスカレートさせるようなことに踏み切る前に、まずは国を守るために必要不可欠な「エネルギーと食料の自給自足」を、もっと向上させることに全力を注いだ方がいいのはないか」、同感である。 「日米経済力の比較によれば、電力は「1対6」で石炭産出量は「1対10」、石油産出量にいたっては「1対数百」とある。 これは大和魂でひっくり返せるようものではない。だから、何をどう分析しても当時のエリートたちには「日本必敗」というシナリオしか導き出せなかった」、「軍隊内で戦争というものを科学的に分析していた人たちは、これがエネルギーと食料をめぐる「自給自足の戦い」だということを知っていた」、なるほど。 「あのひどい負け方をした戦争も、強気なやり方を選んでしまったからだ。最新兵器や戦う強気の姿勢こそが勝敗を決して、国防の要であるということが盛んに叫ばれた。世界一の戦艦「大和」ができれば戦局をひっくり返せるとか、反戦平和なんて弱気なことを言わずに日本人が一致団結すれば神風が吹くと、一部の人は本気で信じた」、「まずは本当の戦争を経験していた偉大な先人たちの知恵に、真摯に学ぶことから始めるべきだ」、同感である。 小倉健一氏による「プーチンの天敵、ドローンの大活躍で「防衛省・自衛隊」が追い詰められる理由」 「日本の防衛省はドローンの有効性を否定し続けてきた」、嘆かわしいことだ。 「ウクライナでのドローンの奮闘を指摘した筆者の寄稿文」を最後に紹介しよう。 小倉健一氏による「「カミカゼドローン」100機にロシア兵が逃げ惑う…日本の防衛政策転換は急務」 「ウクライナ軍の大善戦とも呼ぶべき事態の要因の一つに、「ドローン」の活躍がある」、確かに見事な活用ぶりだ。「防衛省」も心を入れ替えて、真摯に学ぶべきだろう。
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電力・ガス自由化(その2)(卸価格高騰が新電力を直撃 大手事業者優位に 電力値上げ 事業者撤退に困惑する電力ユーザー、新電力事業者の(株)ホープエナジーは3月25日 東京地裁に破産を申請し同日 破産開始決定を受けた、「契約お断り」大手電力で相次ぐ受付停止の異常 新電力が相次ぎ撤退 自由化の仕組みが崩壊) [産業動向]

電力・ガス自由化については、昨年6月16日に取上げた。今日は、(その2)(卸価格高騰が新電力を直撃 大手事業者優位に 電力値上げ 事業者撤退に困惑する電力ユーザー、新電力事業者の(株)ホープエナジーは3月25日 東京地裁に破産を申請し同日 破産開始決定を受けた、「契約お断り」大手電力で相次ぐ受付停止の異常 新電力が相次ぎ撤退 自由化の仕組みが崩壊)である。

先ずは、昨年12月20日付け東洋経済オンライン「卸価格高騰が新電力を直撃、大手事業者優位に 電力値上げ、事業者撤退に困惑する電力ユーザー」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/576285
・『卸電力価格が高騰し、法人向け電力販売から撤退する新電力会社が後を絶たない。困惑したユーザーからの相談も急増している。 卸電力市場での調達価格高騰による経営難を理由に、法人向け電力販売からの撤退を決める新電力会社が相次いでいる。 「誠に遺憾ではございますが、高圧供給につきまして、他の電力会社への切り替えをお願い申し上げます」 神戸市の新電力会社・リケン工業は2021年11月16日、顧客へのお願い文をホームページ上に掲載。契約解除日をわずか2週間ほど先の12月3日に設定したうえで、「契約解除日を超えて無契約となった場合には電気の供給が停止されることがございます」と言い切っている』、「契約解除日をわずか2週間ほど先」、ずいぶん急な通知だ。少なくとも1カ月はほしいところだ。
・『困惑したユーザーからの相談が急増  光通信の子会社であるハルエネ(東京都豊島区)も、高圧電力販売からの撤退を決め、契約期間の満了をもってサービス提供を終了する方針をユーザーに通知している。 寝屋川電力(大阪府寝屋川市)は「弊社事業停止につき」として、ユーザーに対して指定した他社への契約切り替えをするようにホームページ上で求めている。 電力やガス契約の切り替え支援サービスを提供するENECHANGEには、突然の撤退を告げられて困惑する電力ユーザーからの相談が急増している。11月の相談件数は前月の約8倍にものぼった。 「撤退を通告している新電力会社の数は把握できているだけでも7社。あまりにも急なため、切り替え先探しが間に合わないことも多い」(千島亨太執行役)という。 無契約となった場合でも、大手電力グループの一般送配電会社に顧客自身が「最終保障契約」を申し込めば、電力供給自体がストップすることはない。ただし、通常の契約と比べて料金が割高になるなど、顧客は不利益を被る。) リケン工業の電力供給約款は、地震などの天災地変や戦争、内乱などの非常事態が起きた場合でない限り、供給開始日から1年未満の期間での解約を禁止している。その一方で「双方が同意すればこの限りではありません」とも書かれている。だが今回、顧客の同意がない場合にも契約解除を行う構えだ。 新電力会社の撤退の原因となったのは、卸電力市場の価格高騰だ。10年に1度といわれる大寒波の襲来や、LNG(液化天然ガス)燃料の不足、石炭火力発電所や原子力発電所のトラブルによる相次ぐ停止などが原因となって、取引価格は2020年12月末から2021年1月にかけて暴騰した。 その後、同年10月以降、再び高騰している。その結果、市場で電力を調達して顧客に販売しても赤字になる事態が発生している』、現在のエネルギー情勢からすれば、「取引価格」の「暴騰」はやむを得ない。
・『突然の値上げ通告も  影響は地方自治体などの公共入札にも及んでいる。顧客の電力調達を支援している日本省電の久保欣也社長によれば、「2016年4月の電力小売り全面自由化以降、大きく下落した公共入札における落札単価は2021年初の卸電力価格高騰を機に反転上昇した。それ以来、大手電力会社の標準料金と比較して、新電力会社の料金の割安感が急速に失われている」。 突然、値上げを通告される企業も少なくない。 ある中堅新電力会社幹部は、「民間企業に対して見積もりを出せない新電力会社が多く、大手電力会社の思惑通りに価格が決まりつつある」と語る。 一方、撤退の引き金となった2021年秋の卸電力価格の高騰には、不自然な点もある。10~11月は一般に電力需要の少ない時期であるにもかかわらず、2021年の同時期に取引価格が1キロワット時当たり20~30円という高値が付いたからだ。 前出の久保氏は2021年秋の卸電力価格高騰について、「釜(=発電所)も薪(=燃料)もあるのに、十分な発電量が出てこない状態」と描写する。その理由については諸説あるが、業界では「大手電力会社によるブロック入札が一因ではないか」(新電力会社幹部)と見られている。 卸電力取引所で売買を行う場合、30分を1コマ(=1単位)として札を入れるが、ブロック入札とは4コマ(2時間)以上の時間帯をひとまとめにして売り札を入れる。 経済産業省の電力・ガス取引監視等委員会・制度設計専門会合が2021年11月に示した資料によると、卸電力価格が高騰した10月の入札量全体に占めるブロック入札の割合は73.8%に達する一方、売りブロック入札の約定率は24.7%にとどまった。これは売りブロック入札の大半で値段が折り合わず、買いに対して売りが不足していたことを意味している。 監視等委員会は現時点ではブロック入札が高騰の主因とは断定していないが、一部の事業者で入札量全体に占めるブロック入札の割合が90%を超えていると指摘。また、一部の大手電力会社で10月~11月という不需要期にもかかわらず、買い約定量が高水準で推移していることも判明している。 監視等委員会は「大きな問題を含む可能性があることから念を入れて分析を行い、より詳細な検証を進める」としている。 事業が行き詰まった新電力会社の一部が顧客を放り出す形で撤退を始める一方、新電力会社の撤退情報を流して自社に顧客を誘導しようとする大手電力会社の営業マンもいる。卸電力市場価格高騰の背後で起きた事態は、看過できなくなっている』、「監視等委員会は現時点ではブロック入札が高騰の主因とは断定していないが、一部の事業者で入札量全体に占めるブロック入札の割合が90%を超えていると指摘」、「一部の大手電力会社で10月~11月という不需要期にもかかわらず、買い約定量が高水準で推移」、今後、分析が進むことを期待したい。

次に、本年3月28日付けYahooニュースが転載したTSR東京商工リサーチ「東京商工リサーチ情報部の増田和史氏による「新電力事業者の(株)ホープエナジーは3月25日、東京地裁に破産を申請し同日、破産開始決定を受けた」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/2ae12193066ea4caefa34295a09fc28e9cc8b925
・『破産管財人には伊藤尚弁護士(阿部・井窪・片山法律事務所・・・)が選任された。 負債総額は約300億円。 東証マザーズ、福証Q-Board上場の(株)ホープの子会社。2021年12月、ホープの持株会社体制への移行に伴い、当社がエネルギー事業(電力小売、新電力)を承継していた。 ホープのエネルギー事業を巡っては、2020年12月から2021年1月に日本卸電力取引所(JEPX)での電力取引価格が高騰したことで調達コストが跳ね上がり、多額の不足インバランスが発生するなどして大幅な損失を計上。ホープは2021年6月期に69億円を超える当期損失を計上し、債務超過に転落した。さらに2021年10月以降、JEPXでの調達価格が想定以上に高値推移したことで逆ざや状態が続き、赤字が拡大。 持株会社体制へ移行しホープエナジーへ事業を移管後も、グループの資金繰りひっ迫が露呈するなか2022年3月14日、ホープエナジーが一部の電力小売契約者宛てに「電力供給停止にお知らせ」を通知。一般送配電事業者の中部電力パワーグリッド(株)・・・から託送供給契約にかかる解除通知を受け、電力供給を停止せざるを得ない状況として、他社への契約切り替えを要請した。 しかし、中部電力パワーグリッドは3月15日、東京商工リサーチの取材に対し、「正確にはホープエナジーとの契約は解約されていない。11日に現状の改善を申し入れ、改善されない場合は解約もあり得ると通知した」との認識を示すなど、通知内容などに混乱が生じていた。 こうしたなか、3月22日までに不足インバランス料金等の債務不履行に基づき、取引のあるすべての一般送配電事業者との託送供給契約が解除された。このため、同日開催のホープの取締役会で、当社の破産申立を決議していた』、「不足インバランス料金等の債務不履行」が発生しているのであれば、「破産申立」はやむを得ない。

第三に、4月16日付け東洋経済オンライン「「契約お断り」大手電力で相次ぐ受付停止の異常 新電力が相次ぎ撤退、自由化の仕組みが崩壊」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/584356
・『燃料価格が高騰し、電力会社との契約を断られる企業が増えている。国が進めてきた電力自由化の仕組みが崩壊しつつある。 燃料価格が高騰するさなか、電力会社から契約を断られるケースが急増している。 燃料高で新電力会社が事業から相次いで撤退。大手電力会社の多くも通常の料金メニューの申し込みに応じられず、「最終保障供給契約」と呼ばれる特別な契約の締結を余儀なくされる企業が急増している。 経済産業省によると、大手10電力会社の同契約の件数は3月時点で4782件に達した。2月には875件だったため、1カ月の間に5倍以上に急増した格好だ』、「最終保障供給契約」は「セーフティネット」の役割を果たしているが、「1カ月の間に5倍以上に急増」とは確かにすごい増加だ。
・『セーフティネットの契約が急増  同契約は、大手電力会社の小売部門や新電力会社が提供する通常の料金メニューと異なり、大手電力会社系列の一般送配電子会社が、行き場のない顧客へのセーフティネットとして設けているものだ。 例えば、契約していた新電力会社が経営破綻し、引き継ぎ先の電力会社が見つからない場合に一時的に同契約を結ぶケースがある。企業が電気料金を滞納して、電力会社から契約を解除された場合に申し込む場合もある。 ただ、きわめて例外的な契約であり、料金も通常の料金メニューの約1.2倍と割高な水準に設定されている。通常であれば自ら積極的に同契約を結ぶ企業はないはずだが、最近になってこの契約の件数が急増するという異例の事態が生じている。 経産省によると、燃料価格の高騰によって卸電力市場価格が大きく上昇し、一部の新電力会社が小売事業から撤退。その結果、新電力と契約していた企業が大手電力会社に契約を申し込んでいるが、大手電力の多くが「想定以上の申し込みに対応できない」として契約を断っている。企業は新たな小売事業者を見つけられず、やむをえず最終保障供給契約を申し込んでいる。) 原油や天然ガスの価格は2021年から上昇しており、そこに2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻が加わった。新電力会社が主たる調達先としていた卸電力取引所の電力価格が著しく高くなり、電力を売れば売るほど赤字になるという悪循環に陥った。 足元では新電力会社の撤退や倒産が相次ぎ、契約継続が困難になっている。帝国データバンクによると、新電力会社の倒産は2021年度に14件に達し、過去最多を更新した(2020年度は2件)。また、4月に営業が確認できた新電力約700社のうち、約4%に相当する31社が過去1年間に倒産や廃業、事業撤退に至った。 電力の契約切り替え支援サービスを提供しているENECHANGEの千島亨太執行役員は、企業向けの大口契約(特別高圧と高圧)の現状について、「北海道電力と沖縄電力を除き、大手電力は新電力の顧客だった企業からの申し込み受け付けを事実上停止している。新電力各社もほぼ受け付け停止中だ」と実態の深刻さを指摘する』、「最終保障供給契約」では「料金も通常の料金メニューの約1.2倍と割高な水準に設定」、なるほど。「新電力会社の倒産は2021年度に14件に達し、過去最多を更新」、「北海道電力と沖縄電力を除き、大手電力は新電力の顧客だった企業からの申し込み受け付けを事実上停止している。新電力各社もほぼ受け付け停止中」、確かに「事態」は「深刻」だ。
・『電力自由化の仕組みが壊れてしまった  企業に電力調達支援サービスを提供する日本省電の久保欣也社長は、「最近、企業に代わって新電力会社に契約申し込みを試みたところ、業界上位54社のうち新規受け付け中は1社もなく、条件付きで新規受け付け中は9社、新規受け付け中止39社、撤退4社などという結果となった」と明かす。 また、年内に受け付け再開のメドがあると答えたのはわずか3社で、久保氏は「電力小売自由化により顧客は電力会社を選ぶ自由を得たが、今やその仕組みが崩壊してしまった」と事態の深刻さを指摘する。 大手電力の顧客が新電力に移った後、再び戻ってきて申し込みを行う「戻り需要」は、とくに厳しい状況に追い込まれている。大手電力会社はこの戻り需要客との契約締結について、「(発電用燃料調達など)供給面での制約からご希望にお応えできない場合もある」(東京電力グループの電力小売り会社である東京電力エナジーパートナー)と説明している。経産省は「(戻り需要について)実質的に申し込みを一時停止している大手電力会社は10社のうち8社にのぼる」という。 東洋経済が大手10電力会社に聞き取り調査したところ、北海道電力と沖縄電力以外の8社は、新電力からの契約切り替えの新規受け付けを停止していたり、事実上対応できない状況であることがわかった。 ただ、各社がそのような事実をホームページ上で開示したのはつい最近になってからのことだ。萩生田光一経産相が4月15日の会見で「開示することが望ましい」と発言し、それまで開示に消極的だった大手各社の開示姿勢は一変した。 もっとも、九州電力のように一時受け付け停止を明示する会社がある一方、「ご希望に沿えない場合がございます」(東電エナジーパートナー)や「新規の契約のお申し出をお受けするのが難しい状況です」(中国電力)といった、あいまいな記述も目立つ。東洋経済の「申し込みを受け付けているか」との質問に対し、「詳細はお答えしかねる」という回答もあった』、「北海道電力と沖縄電力以外の8社は、新電力からの契約切り替えの新規受け付けを停止していたり、事実上対応できない状況」、これは本来、独禁法上問題がある行為ではなかろうか。
・『当事者能力を欠く経済産業省  最終保障供給契約の料金水準も問題だ。もともとは通常の料金メニューの約1.2倍と割高に設定されていたが、昨今の卸電力価格高騰に伴い、通常の料金の一部が最終保障供給契約の料金よりも割高になるという逆転現象が見られている。 そうしたことから、専門家から「最終保障供給契約に長くとどまろうとする誘因が働きかねない」という問題点が指摘されている。新電力会社からも「(最終保障供給のほうが安くなることにより)自由競争が阻害されているといった懸念の声も寄せられている」と経産省は説明している。 ただ、最終保障供給契約をやめて通常の契約に戻るのは簡単ではない。「新設案件」として新たな契約申し込みが必要となるうえ、構内平面図や単線結線図などの建物構造や電力設備に関する図面の提出を求められる。だが、「古いビルなどの場合、図面をすぐに探し出すことができず、大変な手間になりかねない」(前出の久保氏)という。新電力から大手電力に契約を移す通常の契約切り替えなら、このような手間は生じない。 なお、中部電力グループのように単線結線図などの提出を求めない電力会社もある。関西電力では、送配電子会社と最終保障契約を締結している顧客が関電との契約を希望する場合、構内平面図や単線結線図などの提出を4月より不要とした。 経産省は卸電力市場の価格を最終保障契約の料金に反映させるなどして引き上げを図ろうとしている。ただ、新電力の経営状況は悪化し、大手電力による契約停止も長期化しそうだ。 4月21日に開かれた経産省の審議会では、大手電力会社が新築ビルなど新規の顧客には従来通りの契約受け付けをする一方、戻り需要の受け付けを停止していることについて、「独占禁止法上問題はないのか」といった指摘もあがった。 問題は山積しているが、経産省は有効な対応策を示せずにいる。電力自由化が重大な危機を迎えている中、経産省による実効性のある危機克服の対策が求められている』、「戻り需要の受け付けを停止」はやはり「独占禁止法上問題」だ。「電力小売自由化」、の仕組みは抜本的な見直しが急務だ。「経産省」はもっと責任ある態度で、積極的に望むべきだ。
タグ:電力・ガス自由化 (その2)(卸価格高騰が新電力を直撃 大手事業者優位に 電力値上げ 事業者撤退に困惑する電力ユーザー、新電力事業者の(株)ホープエナジーは3月25日 東京地裁に破産を申請し同日 破産開始決定を受けた、「契約お断り」大手電力で相次ぐ受付停止の異常 新電力が相次ぎ撤退 自由化の仕組みが崩壊) 東洋経済オンライン「卸価格高騰が新電力を直撃、大手事業者優位に 電力値上げ、事業者撤退に困惑する電力ユーザー」 「契約解除日をわずか2週間ほど先」、ずいぶん急な通知だ。少なくとも1カ月はほしいところだ。 現在のエネルギー情勢からすれば、「取引価格」の「暴騰」はやむを得ない。 「監視等委員会は現時点ではブロック入札が高騰の主因とは断定していないが、一部の事業者で入札量全体に占めるブロック入札の割合が90%を超えていると指摘」、「一部の大手電力会社で10月~11月という不需要期にもかかわらず、買い約定量が高水準で推移」、今後、分析が進むことを期待したい。 Yahooニュースが転載したTSR東京商工リサーチ「東京商工リサーチ情報部の増田和史氏による「新電力事業者の(株)ホープエナジーは3月25日、東京地裁に破産を申請し同日、破産開始決定を受けた」 「不足インバランス料金等の債務不履行」が発生しているのであれば、「破産申立」はやむを得ない。 東洋経済オンライン「「契約お断り」大手電力で相次ぐ受付停止の異常 新電力が相次ぎ撤退、自由化の仕組みが崩壊」 「最終保障供給契約」は「セーフティネット」の役割を果たしているが、「1カ月の間に5倍以上に急増」とは確かにすごい増加だ。 「最終保障供給契約」では「料金も通常の料金メニューの約1.2倍と割高な水準に設定」、なるほど。「新電力会社の倒産は2021年度に14件に達し、過去最多を更新」、「北海道電力と沖縄電力を除き、大手電力は新電力の顧客だった企業からの申し込み受け付けを事実上停止している。新電力各社もほぼ受け付け停止中」、確かに「事態」は「深刻」だ。 「北海道電力と沖縄電力以外の8社は、新電力からの契約切り替えの新規受け付けを停止していたり、事実上対応できない状況」、これは本来、独禁法上問題がある行為ではなかろうか。 「戻り需要の受け付けを停止」はやはり「独占禁止法上問題」だ。「電力小売自由化」、の仕組みは抜本的な見直しが急務だ。「経産省」はもっと責任ある態度で、積極的に望むべきだ。
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外国人問題(その7)(大腿骨壊死のネパール人 放置されて「寝たきり」に…餓死事件後も「大村入管」改善みられず、元入管職員の弁護士が語る「入管職員の人権意識」 なぜ消えて失せてしまうのか、水際対策緩和で蠢くベトナム人利権の闇:(7)与野党の国会議員を動かす日本語学校の政治力は小さくない、(15)日本語学校に甘い入管庁 なぜ問題があっても処分しない理由)) [社会]

外国人問題については、昨年12月22日に取上げた。今日は、(その7)(大腿骨壊死のネパール人 放置されて「寝たきり」に…餓死事件後も「大村入管」改善みられず、元入管職員の弁護士が語る「入管職員の人権意識」 なぜ消えて失せてしまうのか、水際対策緩和で蠢くベトナム人利権の闇:(7)与野党の国会議員を動かす日本語学校の政治力は小さくない、(15)日本語学校に甘い入管庁 なぜ問題があっても処分しない理由))である。

先ずは、2月20日付け弁護士ドットコムニュース「大腿骨壊死のネパール人、放置されて「寝たきり」に…餓死事件後も「大村入管」改善みられず」を紹介しよう。
https://www.bengo4.com/c_16/n_14131/
・『法務省・出入国在留管理庁(入管)の収容施設内での外国人への人権侵害や、その根底にある日本の難民制度が抱える問題の改善を目指し、2020年5月に設立された「難民問題に関する議員懇談会」。 今年1月21日に開催された会には、昨年3月に名古屋入管で命を落としたスリランカ女性、ウィシュマ・サンダマリさんの生前の監視カメラ映像(部分開示)を見た議員が参加。収容状況に多くの問題があると指摘した。 このとき、長崎県大村市出身の山田勝彦衆院議員が、ウィシュマさん同様の状況が懸念されると訴えたのが、ネパール人男性Aさんのことだった。 2019年1月末に大村入国管理センター(大村入管)に収容されたAさんは、この年の8月、外部の病院で左大腿骨頭壊死症と診断された。だが、積極的な治療が施されることのないまま時間が経過し、2022年1月下旬の時点で、Aさんは歩くことも、自力で起き上がることもできなくなっている。 いったいなぜAさんは、このような状況になってしまったのか。2005年から大村入管で面会活動を続けている長崎インターナショナル教会の柚之原寛史牧師に、Aさんのこと、大村入管の状況などを聞いた』、「入国管理センター」は収容者の健康に責任を持っているにも拘らず、「左大腿骨頭壊死症」を放置し、「歩くことも、自力で起き上がることもできなくなっている」、とは恐るべき職務怠慢だ。「議員懇談会」も知った以上、責任ある対応をすべきだ。
・『大腿骨頭壊死症と診断されても治療はなく、鎮痛剤を処方するだけ  毎週火曜日、それ以外の日にも必要に応じて、大村入管で面会や礼拝など、支援活動を続けてきた柚之原さん。もともと普通に歩いていたAさんが、なぜ寝たきりになってしまったのか。面会を通じて本人に話を聞いてきた柚之原さんは、その経緯について次のように話す。 「2019年の春に、Aさんは施設の中庭にある運動場でサッカーをしていて、ほかの収容者とぶつかりました。その際、足に激痛が走り、すぐに受診したいと訴えたものの、医師の診察を受けることができたのは1週間後だったそうです。 事故の態様から骨折も疑われましたが、レントゲン検査がされたのは、事故から1カ月以上経ってからでした。入管はどうしてすぐに適切な治療をしないのでしょうか」 その後もAさんの足の痛みは引かず、2019年7月末にようやく外部の病院の整形外科で受診した。そして、同年8月初旬に長崎市内の病院でMRI検査を受けた結果、左大腿骨頭壊死症と診断された。 激痛が走った部位に関するスケッチ(Aさん提供) 「診断後も、1日2回、鎮痛剤が処方されるだけで、Aさんの状況は悪化していきました。Aさんに限った話ではありませんが、センター内では治療が積極的におこなわれることはなく、手術をしたという話も聞いたことがありません。 痛みを訴えても詐病を疑われ、なかなか外部の病院に診てもらえない状況が続く中、昨年12月、背中の痛みがひどくなり、Aさんは1カ月間、外部の病院に入院しました。 ところが退院後、面会に行くと、入院前は車椅子だった彼が、ストレッチャーに寝たままの状態で面会室に来たのです。声もかすれていて、具合がまるで改善されていない様子を見て、病院はよくこの状態でAさんを退院させたと、正直驚きました」 Aさんは昨年の入院以前から、排尿障害のために管をつけている。また排便のコントロールも難しく、現在はオムツを併用しているという。 「ケガを放置されたAさんは、松葉杖、コルセット、そして車椅子を使うようになり、排尿もできなくなりました。今はストレッチャーでほとんど寝たきりになっているように、悪化の一途をたどっています。 1月下旬に面会した際も、右足首は少し動かせるものの、左足はまったく動かすことができず、痛みが走るので寝返りを打てないため、上を向いて寝ることしかできないと話していました」』、「サッカーでのケガと「左大腿骨頭壊死症」との関連は不明だ。「外部の病院に入院」したが、「入院前は車椅子だった彼が、ストレッチャーに寝たままの状態で面会室に来た」、「病院はよくこの状態でAさんを退院させたと、正直驚きました」、確かに「病院」が「退院」させた経緯も不明である。
・『法務省の発令を機に「仮放免」が出なくなった  入管は、具体的な条件や判断基準を明示することなく、収容期間も、仮放免(一時的に身柄を解く措置)を出すも出さないも、そのときどき恣意的に変える。 18年にわたって支援活動を続けてきて、大村入管の体制が大きく変わった時期はあるか、あるとすればいつだったのか。こちらの問いに、柚之原さんはこう答える。 「大きく変わったのは、2016年ですね。東京オリンピックの開催が決まったのは2013年ですが、その後、法務省は安心安全を標榜し、社会に不安を与えるような外国人を厳しく取り締まるように全国の入管に発令しました。 この方針が出される前に、大村入管のある職員から『仮放免を申請するなら今ですよ』と言われました。私たちの支援は、面会と仮放免の手続きが中心です。具体的な理由は知らされませんでしたが、そう聞いて、東京や関西にいる保証人から委任状をもらって手続きを進め、実際、多い月には10人以上、仮放免が認められました。 そして、職員が言った通り、それ以降、仮放免はパタッと出なくなったのです。それまで大村では、(収容後)1年ほどで仮放免が認められていましたが、以降、収容者は長期収容に苦しめられるようになりました。これが2019年の餓死事件につながっていると私は思います」』、「「大きく変わったのは、2016年ですね。東京オリンピックの開催が決まったのは2013年ですが、その後、法務省は安心安全を標榜し、社会に不安を与えるような外国人を厳しく取り締まるように全国の入管に発令しました」、なるほど。
・『ナイジェリア人男性が亡くなった日のこと  柚之原さんが言う2019年の事件とは、長期収容が原因で精神を病み、衰弱した末、ナイジェリア出身の男性が6月に施設内で亡くなったことを指している。 男性が亡くなった当日、大村入管に足を運んでいた柚之原さんは、その日のことをこう振り返る。 「あの日は施設を見学してもらうため、県内のバプテスト教会の牧師15人ほどを午後から案内していました。たしか13時過ぎにサイレンの音を聞いた記憶があるので、男性はその救急車で運ばれたのでしょう。それでも何事もないように、中では施設見学がおこなわれました。 そして、この日の夜、ある新聞記者と、難民支援をしている東京のNGOの方から『センターで誰か亡くなったようですけど、ご存じですか?』と電話が入ったのです。私が一番恐れていた現実がとうとう起きてしまったと、非常にショックを受けました」 法務省が男性の死因を発表したのは事件から3カ月以上経った2019年10月1日。公表の1週間前には、ある新聞が、収容者の4分の1は刑事罰を受けていると報道し、強制退去に従わない側に問題があると世論を誘導する、一種のネガティブキャンペーンをおこなっている。 「男性の死後、残された収容者は怒りと悲しみにかられ、収容所の中では混乱が続きました。彼が大村に来たのは、収容が長期化した2016年です。オリンピック開催の陰で、社会の片隅で苦しめられた人たちがいたことは間違いないと思います」』、「公表の1週間前には、ある新聞が、収容者の4分の1は刑事罰を受けていると報道し、強制退去に従わない側に問題があると世論を誘導する、一種のネガティブキャンペーンをおこなっている」、マスコミ対策も巧妙だ。
・『夕食の時間は15時半から  面会の受付時間、一度の面会で会える収容者の数、面会室に入る前の金属探知機によるチェックの有無、差し入れできるもの、収容者の朝・昼・夜の食事時間――。全国の収容施設は、それぞれ異なるルールで運用されている。自分が面会活動をしている収容施設の事情は把握していても、ほかの施設のルールまで知る人は少ないだろう。 柚之原さんに聞いた大村入管のルールで、驚いたことが2つある。その1つが、面会に職員が必ず立ち合うということだ。 「大村入管では、面会に必ず職員が立ち合い、話の内容を記録します。私たちは収容者と仮放免の申請などについても話すので、職員がメモを元に、彼らの個人情報を漏洩するのは問題だと思い、担当者が代わるたびに申し入れをしていますが、これはずっと変わりません。 私自身、牧師の立場からするプライベートな話は聞かれたくないですし、立ち合いの職員が本気にして、仮放免に不利な判断をされても困るので、冗談ひとつ言うことができません。 今、大村入管に収容されているのは10人ほどですが、その中に1年ほど前、別の施設から来たスリランカの男性がいます。以前いた施設では面会に職員の立ち合いはなく、最初の面会時、本人は再三、職員に出て行ってほしいと訴えました。 結局、職員の立ち合いを拒否して、面会を望まなくなってしまったので、その後、彼がどんな状況でいるのか、誰もわからなくなっています」 もう1つが、収容者の食事時間だ。 大村入管の食事時間は、朝が7時。昼は10時半か11時半(いずれかを収容者が選ぶ)。そして夜が15時半。この夕食の時間は、誰が聞いても常識外れと感じるのではないだろうか。 「15時半というのは、おやつの時間ですよね。8時間半のあいだに3度、食事を出す。この食事の出し方も問題があると思い、入管に改善を求めましたが、経済的理由から改善できないという回答でした。大村センターでは業者が厨房に入るというのがその理由で、食事を出す時間は彼らの就労時間との兼ね合いなのでしょう。 ただ、収容者の大半は、鎮痛剤、睡眠剤、安定剤、あるいは基礎疾患用の薬を服用しています。薬は服用間隔が決められているので、それを考えても食事の時間帯に問題があると思うし、医師はこの状況を把握しているだろうかと思います」 柚之原さんたちの申し入れの効果があったのか、その後、「夕食の時間は16時に変えた」と連絡があったという』、「夕食の時間」が「15時半」というのは、「業者」の「就労時間との兼ね合い」があるとしても、いかにも早過ぎるようだ。
・『温かいフライドチキンの差し入れが認められた時期もあった  2016年以降、収容者にとって厳しい状況が続いていることがうかがえる大村入管だが、全国で初めて、施設内での礼拝が認められたように「かつては支援者と職員の関係が良好だった時期もあった」と柚之原さんは話す。 「2009年に初めて施設内での礼拝が認められたように、大村入管はほかにない、開かれた入管づくりを試みていました。今では考えられませんが、クリスマスにケンタッキー・フライドチキンを食べたいという収容者の要望を叶えたくて、年に一度でいいから、温かいフライドチキンを差し入れさせてほしいと交渉して、認められたこともあったんです。 問題を抱える収容者について、職員と弁護士と私たち支援者が三者会議をおこなって対応を考えるなど、2011年から2013年ごろまでは、互いに信頼し合える関係がありました。それが、2016年の法務省の発令以降、おかしくなっていったのです」 入管収容施設内で収容者が餓死するという事態を受けて、法務省は2019年10月、収容・送還に関する専門部会を立ち上げた。 長く支援活動を続けてきた柚之原さんは、専門部会からヒアリングにも呼ばれている。 「私に与えられた時間はわずか20分だったので、用意した資料は別に目を通してもらおうと、その20分で収容者の声を伝えることにしました。ヒアリングがおこなわれたのは最高検察庁の大会議室で、参加者は100人ほどいたと思います。 裁判所の被告席のように、前後左右から人に囲まれる場所に立った私は、どんな人が今、ここにいるのかを見てから話そうと思い、まずは自分の周囲に目を向けました。今から収容者の声を伝えるので、資料は使いませんと言って話し始めると、前方から罵声が上がりました。おそらく資料を使わないことへのクレームだったのでしょう。 罵声を聞き流して話を続けましたが、結局、"支援者を呼んでヒアリングをしましたよ"と専門部会が見せるために、私は20分間、ここに呼ばれたのではないか。終わってからそう感じましたし、実際、専門部会がまとめた提言書には、提出した資料も収容者の声もまったく反映されていませんでした」』、「問題を抱える収容者について、職員と弁護士と私たち支援者が三者会議をおこなって対応を考えるなど、2011年から2013年ごろまでは、互いに信頼し合える関係がありました。それが、2016年の法務省の発令以降、おかしくなっていったのです」、野党には「2016年の法務省の発令」の是非を突っ込んで質問してもらいたい。
・『寝たきりのAさんは介護施設に移された  ストレッチャーで面会する様子のスケッチ(柚之原さん提供) 柚之原さんへの取材は2月1日の午後におこなった。午前中、Aさんの面会に行くので、その後のほうが彼の状況を詳しく伝えられると思う、という話だったのだが、この日、柚之原さんはAさんに会うことができなかった。 「大村入管の処遇部門で面会の申請をすると、『Aさんはいません。それ以上は保安上の理由で話せません』と言われました。すぐに総務課にたずねると、リハビリ目的でAさんを介護施設に移送したと説明されました。 大村は小さな町で、思い当たる施設があったので、オンライン面会でも会えればと思いましたが、コロナ禍、介護施設では家族も面会ができない状況です。入管からは、Aさんは自分たちが管理している収容者だから、『外の人の面会は許可しない』と言われました」 寝たきりのAさんをリハビリ目的で介護施設に移すことは、本人にとって良いことなのか。この問いに、自身も介護施設の運営に携わっている柚之原さんはこう答えた。 「リハビリに必要なのは、本人の意思とやる気です。Aさんは以前から歩ける足に戻してほしい、そのために手術をしてほしいと望んでいました。手術で治したいと、2年以上、痛みに耐えてきました。 入管が、彼にどれだけリハビリを続けるかわかりませんが、大切なのは寝たきりから車椅子で動けるようになりたいと、本人が目標を定めることができるかどうかです。 コロナ以降、大村入管の収容者は10人ほどです。50人用のブロックに1人で収容されていたAさんは『1人はさびしい、何かあったときに助けてくれる人がいないのは心配だから、同じブロックに誰かいてほしい』とよく話していました。 彼にとって、人との関わりが心の支えになっていたので、どんな思いで生活しているか。今、Aさんに面会できるのは遠方にいる弁護士だけなので、不安はあります」 (【プロフィール】はリンク先参照)』、「Aさんに面会できるのは遠方にいる弁護士だけ」、これでは精神をおかしくしかねない。他の「収容者」と交われる機会をつくるべきだ。

次に、4月24日付け弁護士ドットコムニュース「元入管職員の弁護士が語る「入管職員の人権意識」、なぜ消えて失せてしまうのか」を紹介しよう。
https://www.bengo4.com/c_16/n_14405/
・『「入国管理局(現・出入国在留管理庁)のことが報道されるようになったのは、ここ数年の話ですよね。ようやく入管という場所に社会の目が向けられるようになったというのが、私の実感です」 こう話すのは、1990年代半ばから3年近く入管に勤務したのち、2004年に弁護士登録した渡邉祐樹さんだ。現在、在留資格の問題を抱える人たちの案件に多く関わっている。 弁護士へと転身した理由の一つには、先輩職員からの「暴力」があったと告白する。入管で関わった仕事や転身を決めた経緯、そして今どのように外国人たちに向き合っているか、渡邉さんに聞いた』、「元入管職員の弁護士」とは興味深そうだ。
・『「徐々に意識が変わっていく」  法学部出身の渡邉さんが入管に入ったのは1994年4月。勤務地は成田国際空港、配属先は入国審査部門だった。 「具体的には、空港のブースで外国籍者の出入国審査や、日本国籍者の出帰国を確認していました。ここでは『特定の国からの入国者は審査を厳しくするように』と本省(法務省)から通達が入る、いわゆる摘発の強化月間がありました。 統計的に不法就労が増えている国や、経済格差を考えると、その国から日本に観光で来ることは考えにくい国の人を厳しく見るように、というのが通達の意図です。日本人のブースでも、偽造旅券を使うケースや日本人のなりすましによる不法入国があるので、気は抜けませんでした」 学生時代、接客のバイトをしていたこともあり、渡邉さんは審査待ちで並んでいる外国人たちにも、笑顔で声をかけていたという。だが、その様子を見た先輩職員は渡邉さんを呼び出して、こう言った。 <おい、おまえ、何やっているんだよ。あんな態度だと、なめられるんだよ> 「先輩から怒られたのです。仕方ないので、入国カードを記入していない人や、指示に従わない人に、きつい口調で命令するようにすると『おまえもやっと一人前になったな』と。一人ではなく何人にも、同じことを言われました。 そういう世界なので、徐々に意識が変わってくるというか・・・。それでも丁寧に対応していると、『あいつ、何はりきっているんだ』と逆に目をつけてくる職員もいました」』、「審査待ちで並んでいる外国人たちにも、笑顔で声をかけていたという。だが、その様子を見た先輩職員は渡邉さんを呼び出して、こう言った。 <おい、おまえ、何やっているんだよ。あんな態度だと、なめられるんだよ>」、どうも権威主義的な体質がありそうだ。
・『「先輩職員から腹や背中を蹴られ、顔を踏まれた」  渡邉さんが入管をやめた理由はいくつかあった。 「大学の同期が司法試験に合格し始めていたんです。当時の司法試験の合格率は2%ほどで、『自分には無理だろう』とあきらめていたのですが、彼らを見て、『(自分も)やれば合格できるかも』と思うようになりました。 ただ、決定的だったのは、職場の人たちから暴行を受けたことです。あるとき、呼び出されてカラオケボックスに行くと、先輩職員が7~8人いました。彼らはすでに酔っていて、私が座ると『おまえはむかつくんだよ』と腹を蹴られ、うずくまると背中を蹴られました。 そして、床に倒れ込むと、顔面を踏まれ、『こぼれちゃった~』といいながら、顔に飲み物をかけられました。反社やブラック企業の話ではありません。法務省下にある入管で、こういうことが起きていたのです」 当時、職場では、渡邉さんに暴行をふるったグループが幅を利かせていた。ハラスメントを相談できる上司も制度もなく、口にすれば、職場にいられなくなる状況だったことについて、「いじめの相談(ができないこと)と一緒です」と渡邉さんは話す。 「入局した年のことなので鮮明に覚えているのですが、1994年、入管職員にボコボコに殴られ、顔の腫れ上がった外国人女性の写真が写真週刊誌に載ったんです。『こういうことがあったから、職員は気をつけるように』と現場でも注意がありました。 そのとき、職員の一人がこう言いました。『顔は皮膚が薄くてアザになるから、やるならケツ。ケツは皮下脂肪が厚いから、よっぽどじゃないとバレないから』。冗談ではなく、彼はそう話していたのです。 私の在職中、入管では、入局後に2週間、2年目に1カ月ほど研修がありましたが、そこで学ぶのは入管法です。在留資格の種類や退去強制の手続きなどが中心で、人権教育はありませんでした。 最近、入管を相手に国家賠償訴訟を起こして、勝っている案件もあります。すでにそういうこともやっているかもしれませんが、入管はこうした事例から、職員がやってはいけないことをきちんと学習するべきだと思います」 入管をやめたあと、司法試験に向けて勉強を始めた渡邉さんは、その過程で、当時の入管職員がやっていたことが違法であることを知ったという。 「司法試験の勉強をする中で、相手が不法入国を図っていたとしても、勝手に荷物を開けたりすることは原則としてできないことを知りました。法学部出身とはいえ、職員時代は私自身、こうしたルールを理解していなかったし、勝手に荷物を開ける職員に、さほど違和感を持っていなかったんです。 収容施設に勤務した経験はないので、施設内での暴行を自分の目で見たことはありません。ただ、入国審査時にも、ごく一部の職員でしたが、外国人を殴る職員はいました。当時の入管の人権意識は今よりも低かったと思います」』、「「司法試験の勉強をする中で、相手が不法入国を図っていたとしても、勝手に荷物を開けたりすることは原則としてできないことを知りました。法学部出身とはいえ、職員時代は私自身、こうしたルールを理解していなかったし、勝手に荷物を開ける職員に、さほど違和感を持っていなかったんです」、私は法学部出身ではないとはいえ、知らなかった。
・『非正規滞在者をつくり出す「日本社会の構造」  弁護士になってからは、埼玉弁護士会の「外国人人権センター運営委員会」に所属。元入管職員という経歴もあって、最初から外国人の相談を多く扱ってきた。 「離婚や借金など、日本人同様の相談もありますが、在留資格や対入管の問題についてどの弁護士に相談すればよいか、当事者である外国人にもなかなか分からないだろうと相談会を開いていました」 当初、多かったのは、非正規滞在だけれど、日本国籍の子どもを養育している外国人の在留特別許可(在特)の案件だった。 「たとえば、日本人男性と婚姻して出産し、離婚した後に在留期間の更新ができずに非正規滞在となってしまった方や、もともと非正規滞在で日本人男性と交際して婚姻はせずに出産した方で、子どもを養育しているといったケースです。 法務省は1996年(平成8年)、日本人の子どもを養育している非正規滞在者に定住者の資格を与えるという『平成8年通達』を出しています。私が弁護士登録した2004年は、5年間で非正規滞在者を半減するキャンペーンを展開していたので、こうした方々はほぼ在特を取得できました。 しかし、みなさんが言うように、ここ数年は本当に厳しくなっていて、在特はなかなか認められなくなっています」 非正規滞在者と聞くと、それだけでマイナスのイメージを持つ人は多い。 だが、中東のクルド人のように、政治的な対立から、自国では命の危険があるため、国を逃れたものの、難民申請が認められない人たちも日本にはいる。日本で育ちながら、生まれたときから仮放免というクルドの子どもたちのように、本人の責めに帰すべきものがないケースも少なくない。 入管職員として、空港という「水際」で外国人の審査をしていた渡邉さんは、在留外国人の就労には構造的な問題があるとも話す。 「バブルのころは、反社のブローカーがマニラに飛んで、『日本で3年働けば、家を建てられるし、兄弟を大学に通わせることもできる』などと言って、現地で女性を集めていました。女性が日本に行った一家が豪邸を建てるのを見て、親は自分の娘に『お金は何とか集めるから、あなたも日本に行きなさい』とすすめるのです。 空港に行くと、用意されているのは偽造旅券で、おかしいと思っても、もう後には引けない。旅券が偽変造であることが見破られず、日本に入国後、その旅券を取り上げられた彼女たちが、どんな仕事に就かされていたか。 私自身、入局したころは『日本の治安を乱す人は入国させない』と思っていたし、実際、問題のある外国人もいます。しかし、彼女たちのように、日本と現地のブローカーに騙されて来日している人も少なくありません。 バブル期、東南アジア諸国では、『日本に行って外貨を稼いで来るように』と国がサポートしていました。トラブルの根本にあるのは、ブローカーが暗躍する余地をつくっている制度であって、これは今に続く構造的な問題です。 海外から『現代の奴隷制』と批判されているように、厳しい就労状況が問題になっている技能実習制度もそうです。劣悪な職場環境から逃げ出した人たちは在留資格を失い、非正規滞在者になってしまう。でも、そうせざるを得ない状況に彼らを追いやり、人権を侵害しているのは、この制度なのです。 この問題に取り組んでいる弁護士たちがあれほど熱心にやっていても、地方の中小企業は、技能実習制度を広げてほしいと霞が関に陳情に行きます。その実態は外国の人たちを安い労働力として利用しているだけだと、誰もがわかっているのに、そこを突くことができない。 外国人就労者に不利な状況が変わっていかないのは、日本ではそれだけ経済界の声が強いということなのでしょう」』、「海外から『現代の奴隷制』と批判されているように、厳しい就労状況が問題になっている技能実習制度もそうです。劣悪な職場環境から逃げ出した人たちは在留資格を失い、非正規滞在者になってしまう。でも、そうせざるを得ない状況に彼らを追いやり、人権を侵害しているのは、この制度なのです」、人権尊重の観点から制度を抜本的に見直すべきだ
・『「大切なのはとにかく外の目を入れること」  外国人の在留資格や就労の問題に関わる弁護士、支援者の人たちの地道な努力で、以前に比べれば少しずつではあるものの、人々の目が入管に向けられるようになっている。 一方で、世間の耳目を集めるのは、収容施設内で誰かが命を落とすなど、不幸な事件が起きたときで、そこに至る収容者の処遇問題や、入管の制度上の問題に目を向ける人は、まだまだ多くない。 「多くの日本人は、入管職員の外国人への対応を知りません。もっと知ってもらいたいと思いますが、コロナ禍、自分だって苦しいのに、外国人のことに関わってなどいられないという人も多いのでしょう。 今は公務員の人気が上がっていて、仕事で入管に行くと、職員の窓口対応も丁寧になっていると思います。それでも収容施設で制圧される人、亡くなる人はいます。名古屋入国管理局での死亡事件など、二度と起きてはいけないと思いますが、職員がどんな対応をしていたか、私には想像がつくのです。 入管職員の人権意識はまだまだ低いと思います。人の命を預かっている以上、入管では人権教育をする必要があるでしょう。 視察についても、入管が選んだ人が形式的にやるのではなく、第三者委員が定期的におこない、その視察結果を誰もが読めるように公表するべきです。外部による人権研修を含め、大切なのはとにかく外の目を入れることだと思います」』、「視察についても、入管が選んだ人が形式的にやるのではなく、第三者委員が定期的におこない、その視察結果を誰もが読めるように公表するべき」、同感である。

第三に、4月13日付け日刊ゲンダイが掲載したジャーナリストの出井康博氏による「水際対策緩和で蠢くベトナム人利権の闇:(7)与野党の国会議員を動かす日本語学校の政治力は小さくない」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/303806
・『政府の水際対策によって外国人の新規入国が停止していた頃、緩和を求めて永田町で陳情を繰り返していた業界団体がある。一般財団法人「日本語教育振興協会」(日振協)をはじめとする日本語学校の団体だ。 日振協など業界6団体は、今年に入ってからだけでも1月19日と24日に木原誠二官房副長官、自民党の柴山昌彦元文部科学大臣、片山さつき元内閣府特命担当大臣らを訪問している。木原氏とは、岸田文雄首相が水際対策緩和を発表する前日の2月16日にも会い、同月25日には、山下貴司元法務大臣とも面談している。 陳情の中身は主に2つ。水際対策が緩和された際、留学生を増枠で受け入れること、そして入国する留学生への経済的な支援である。 その要望はどちらもかなえられる。留学生は入国者の上限とは別枠での来日が認められ、さらには新型コロナで困窮する学生への「10万円」給付金の支給対象に、新規入国する留学生までも含めることが決まった。 留学生にとって最大の支出は学費だ。仮に10万円を受け取っても学費の一部となる可能性が高い。学校側としては学費が入って助かる。岸田政権は、まさに日本語学校の救世主となったわけだ。 もちろん、留学生の入国再開を求めていたのは日本語学校だけではない。大学や専門学校、また留学生を労働力として利用したい産業界も同様だ。とはいえ、最も熱心にロビー活動を展開したのは日本語学校業界だったのではないか』、「新型コロナで困窮する学生への「10万円」給付金の支給対象に、新規入国する留学生までも含めることが決まった」、これはどう考えてもやり過ぎだ。
・『超党派の「日本語教育推進議員連盟」  そんな業界の大きな後ろ盾が超党派の「日本語教育推進議員連盟」だ。日振協のホームページで公開された3月4日時点の同連盟役員(案)リストには、会長の柴山氏をはじめ、片山氏や山下氏も副幹事長として名前がある。他にも会長代行の中川正春・立憲民主党衆院議員(元文科相)、顧問の下村博文・自民党衆院議員(元文科相)、公明党の斉藤鉄夫・国土交通相、泉健太・立憲民主党代表など、計34人の国会議員の名前が載っている。自民、公明、立憲民主に加え、国民民主党や日本維新の会の議員もいる。日本語学校の政治力は小さくない。) 事実、日本語学校を取材すると、 「入管が留学生にビザを出すのを渋るので、〇〇先生にお願いして助けてもらった」 といった具合に、国会議員の名前を口にする経営者がよくいる。学校経営者が政治家と親しくしようが、業界団体がロビー活動を展開しようが違法性はない。ただし、近年の留学生増加で急拡大した日本語学校業界が、与野党を問わず政治に太いパイプを築き、国政への強い影響力まで身につけていることは紛れもない事実である。 しかし、岸田政権が救いの手を差し伸べた日本語学校とは、無条件に救うべき存在なのだろうか。(つづく)』、「与野党を問わず政治に太いパイプを築き、国政への強い影響力まで身につけていることは紛れもない事実」、既得権化してしまったようだ。「岸田政権が救いの手を差し伸べた日本語学校とは、無条件に救うべき存在なのだろうか」、やり過ぎだ。

第四に、4月23日付け日刊ゲンダイが掲載したジャーナリストの出井康博氏による「水際対策緩和で蠢くベトナム人利権の闇:(15)日本語学校に甘い入管庁 なぜ問題があっても処分しない理由」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/304319
・『福岡市の日本語学校「西日本国際教育学院」で、ベトナム人留学生が職員から鎖で拘束された事案に関して、日本語学校を監督する立場の法務省出入国在留管理庁(入管庁)は、どう考えるのか。 同庁在留管理支援部の担当者は、<当該事案に関する報道については、承知しております>とした上で、文書でこう回答してきた。 <個別の事案に係るお問い合わせについては、回答を差し控えさせていただきますが、一般論として申し上げると、告示基準に適合していない可能性がある日本語教育機関に対しては、地方出入国在留管理局において、必要な調査等を通じて、事実関係を確認した上で適切な対応を行うことになります。>
・『有名無実のルール  担当者が言う<告示基準>とは、入管庁が日本語学校に対して定めるルールのことだ。それにしても、<一般論>のくだりをはじめ、いかにも木で鼻をくくった役所らしい答えである。 「鎖拘束」以外にも、西日本国際教育学院に関する2つの“疑惑”に関し、入管庁にたずねてみた。留学生に対する「系列専門学校への内部進学強要」と「強制帰国」という問題だ。 すると担当者は、やはり<個別の事案への回答は差し控える>とした上で、<一般論>と断りつつも、事実であればどちらのケースも「告示基準」違反に該当すると認めた。ならばぜひ、同庁として調査に乗り出してもらいたい。 3年前、私のもとに、栃木県の大手日本語学校がベトナム人留学生たちの卒業後の進路を妨害しているとの情報提供があった。他校への進学に必要な証明書を発行せず、系列の専門学校への内部進学を強要していたのだ。 留学生たちは意を決し、約20人で最寄りの入管当局に助けを求めた。しかし当局は彼らに対し、証明書なしでも入学可能な進学先を探すよう告げ、学校を指導すらしなかった。結果、多くの留学生が希望の進路を断たれてしまうことになった。) 私は被害に遭った留学生から証拠となる資料を集め、学校に取材した上で記事にした。もちろん、入管庁への取材も行った。その後、入管庁は調査こそ実施したが、学校への処分はなく、現在に至るまで何事もなかったように留学生の受け入れを続けている。進路選択の妨害があったことは明白なのに、である。 入管庁が日本語学校に甘いのには理由がある。同庁は文部科学省と共に、政府が進める「留学生30万人計画」の推進役を担ってきた。その過程で、出稼ぎ目的の偽装留学生にもビザを発給し続けた。そんな偽装留学生の急増によって、バブルを謳歌してきたのが日本語学校業界なのである。 つまり、入管庁と日本語学校は「30万人計画」でタッグを組んできた。今さらそんなパートナーを「やり方が悪質だ」などと取り締まれないのだ。(つづく)』、「入管庁」「は文部科学省と共に、政府が進める「留学生30万人計画」の推進役を担ってきた。その過程で、出稼ぎ目的の偽装留学生にもビザを発給し続けた。そんな偽装留学生の急増によって、バブルを謳歌してきたのが日本語学校業界なのである。 つまり、入管庁と日本語学校は「30万人計画」でタッグを組んできた。今さらそんなパートナーを「やり方が悪質だ」などと取り締まれないのだ』、「入管庁」が「推進役を担ってきた」、こんな利益相反めいたことを認めてきた政府は、恥ずかしいと思わないのだろうか。
タグ:外国人問題 (その7)(大腿骨壊死のネパール人 放置されて「寝たきり」に…餓死事件後も「大村入管」改善みられず、元入管職員の弁護士が語る「入管職員の人権意識」 なぜ消えて失せてしまうのか、水際対策緩和で蠢くベトナム人利権の闇:(7)与野党の国会議員を動かす日本語学校の政治力は小さくない、(15)日本語学校に甘い入管庁 なぜ問題があっても処分しない理由)) 弁護士ドットコムニュース「大腿骨壊死のネパール人、放置されて「寝たきり」に…餓死事件後も「大村入管」改善みられず」 「入国管理センター」は収容者の健康に責任を持っているにも拘らず、「左大腿骨頭壊死症」を放置し、「歩くことも、自力で起き上がることもできなくなっている」、とは恐るべき職務怠慢だ。「議員懇談会」も知った以上、責任ある対応をすべきだ。 「サッカーでのケガと「左大腿骨頭壊死症」との関連は不明だ。「外部の病院に入院」したが、「入院前は車椅子だった彼が、ストレッチャーに寝たままの状態で面会室に来た」、「病院はよくこの状態でAさんを退院させたと、正直驚きました」、確かに「病院」が「退院」させた経緯も不明である。 「「大きく変わったのは、2016年ですね。東京オリンピックの開催が決まったのは2013年ですが、その後、法務省は安心安全を標榜し、社会に不安を与えるような外国人を厳しく取り締まるように全国の入管に発令しました」、なるほど。 「公表の1週間前には、ある新聞が、収容者の4分の1は刑事罰を受けていると報道し、強制退去に従わない側に問題があると世論を誘導する、一種のネガティブキャンペーンをおこなっている」、マスコミ対策も巧妙だ。 「夕食の時間」が「15時半」というのは、「業者」の「就労時間との兼ね合い」があるとしても、いかにも早過ぎるようだ。 「問題を抱える収容者について、職員と弁護士と私たち支援者が三者会議をおこなって対応を考えるなど、2011年から2013年ごろまでは、互いに信頼し合える関係がありました。それが、2016年の法務省の発令以降、おかしくなっていったのです」、野党には「2016年の法務省の発令」の是非を突っ込んで質問してもらいたい。 「Aさんに面会できるのは遠方にいる弁護士だけ」、これでは精神をおかしくしかねない。他の「収容者」と交われる機会をつくるべきだ。 弁護士ドットコムニュース「元入管職員の弁護士が語る「入管職員の人権意識」、なぜ消えて失せてしまうのか」 「元入管職員の弁護士」とは興味深そうだ。 「審査待ちで並んでいる外国人たちにも、笑顔で声をかけていたという。だが、その様子を見た先輩職員は渡邉さんを呼び出して、こう言った。 <おい、おまえ、何やっているんだよ。あんな態度だと、なめられるんだよ>」、どうも権威主義的な体質がありそうだ。 「「司法試験の勉強をする中で、相手が不法入国を図っていたとしても、勝手に荷物を開けたりすることは原則としてできないことを知りました。法学部出身とはいえ、職員時代は私自身、こうしたルールを理解していなかったし、勝手に荷物を開ける職員に、さほど違和感を持っていなかったんです」、私は法学部出身ではないとはいえ、知らなかった。 「海外から『現代の奴隷制』と批判されているように、厳しい就労状況が問題になっている技能実習制度もそうです。劣悪な職場環境から逃げ出した人たちは在留資格を失い、非正規滞在者になってしまう。でも、そうせざるを得ない状況に彼らを追いやり、人権を侵害しているのは、この制度なのです」、人権尊重の観点から制度を抜本的に見直すべきだ 「視察についても、入管が選んだ人が形式的にやるのではなく、第三者委員が定期的におこない、その視察結果を誰もが読めるように公表するべき」、同感である。 日刊ゲンダイ 出井康博氏による「水際対策緩和で蠢くベトナム人利権の闇:(7)与野党の国会議員を動かす日本語学校の政治力は小さくない」 「新型コロナで困窮する学生への「10万円」給付金の支給対象に、新規入国する留学生までも含めることが決まった」、これはどう考えてもやり過ぎだ。 「与野党を問わず政治に太いパイプを築き、国政への強い影響力まで身につけていることは紛れもない事実」、既得権化してしまったようだ。「岸田政権が救いの手を差し伸べた日本語学校とは、無条件に救うべき存在なのだろうか」、やり過ぎだ。 出井康博氏による「水際対策緩和で蠢くベトナム人利権の闇:(15)日本語学校に甘い入管庁 なぜ問題があっても処分しない理由」 「入管庁」が「推進役を担ってきた」、こんな利益相反めいたことを認めてきた政府は、恥ずかしいと思わないのだろうか。
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異次元緩和政策(その41)(始まってしまった円売り投機ゲーム 日銀を引きずり込む泥沼のゆくえ 当局の覚悟を試す市場参加者 為替市場のコメントに価値判断は禁物、日銀金融正常化への「8段階の行動計画」を示そう 円安は異常な金融政策が終わればすぐに止まる、ついに来た! 1ドル135円で日本は韓国・イタリアより貧しい国に これがアベノミクスによる没落効果) [金融]

異次元緩和政策については、3月11日に取上げた。今日は、(その41)(始まってしまった円売り投機ゲーム 日銀を引きずり込む泥沼のゆくえ 当局の覚悟を試す市場参加者 為替市場のコメントに価値判断は禁物、日銀金融正常化への「8段階の行動計画」を示そう 円安は異常な金融政策が終わればすぐに止まる、ついに来た! 1ドル135円で日本は韓国・イタリアより貧しい国に これがアベノミクスによる没落効果)である。

先ずは、4月20日付けJBPressが掲載したみずほ銀行チーフマーケットエコノミストの唐鎌 大輔氏による「始まってしまった円売り投機ゲーム、日銀を引きずり込む泥沼のゆくえ 当局の覚悟を試す市場参加者、為替市場のコメントに価値判断は禁物」を紹介しよう』、興味深そうだ。
・『ゲームのきっかけを与えているのは当局者  危惧した展開に入っているように見える。 4月18日、ドル/円相場は128円を突破し、断続的に年初来安値を更新している。過去の経験則を踏まえると、円高であれ円安であれ、相場について政策当局者が嫌気するような情報発信をすれば、必ず具体的な政策介入を求めて市場参加者はつけ上がる。 このところ、政府関係者からは円安を「悪い」と評価するような情報発信が見られる。4月17日には、頑なだった黒田日銀総裁が「急速な円安はマイナス」と述べた。こうなると、「口先だけではないのか試す」という意欲を投機筋は持つ。 例えば、円売りで攻め続けた結果、日銀が何らかの引き締め措置を出してくれれば、その時は(一瞬でも)円高になるだろうから、そこで反対売買すれば勝算は立ちやすい。また、そうした状況に至れば(既にそうなっているように)、メディアは「日銀は動くのか?」と大仰に報じて「日銀 vs. 為替市場」の対立構図を煽るため、円売り投機ゲームは大衆にも注目されるようになる。 そうして政府・日銀の一挙手一投足に因縁をつけ、為替売買が行われるようになると、無用な政策資源を浪費する展開が予見される。白川体制の円高対応で散々経験した話だ。あれだけ緩和カードを消費しても、結局、円高はFRBが正常化プロセスに着手し、欧州債務危機が終息するまで止まらなかった。 そうした泥沼化の兆候はまま見られている。 4月13日、都内で開かれた信託大会で、黒田総裁は「現在の強力な金融緩和を粘り強く続ける」といつも通りの挨拶をした。これが円売り材料となり、ドル/円相場は126円台に乗せた。「信託大会における日銀総裁挨拶」を注目していた市場参加者はほとんどいないと思われるが、為替市場では盛大な円売り材料として扱われた。投機筋から注意深く見られていたということなのだろう。 2016年9月のイールドカーブコントロール(YCC)導入を経て表舞台から(狙い通り)消えた日銀だが、信託大会挨拶を受けた円安進行は、再び日銀が表舞台に引きずり出されたのだと感じさせるものだった』、「2016年9月の・・・YCC導入を経て表舞台から・・・消えた日銀だが、信託大会挨拶を受けた円安進行は、再び日銀が表舞台に引きずり出されたのだと感じさせるものだった」、「信託大会挨拶」はやはり相当なインパクトがあったようだ。
・『いよいよ始まった円売り投機ゲームの背景  4月17日の黒田総裁による円安けん制発言も、この経験を踏まえて軌道修正したというのが実情かもしれない。当然、月末の政策会合にも影響するだろう。 なお、遡れば、3月に指値オペを通告したことから円売りは始まっていた。あの頃から「この状況でも緩和にこだわる日銀」という文脈で注目されるようになってしまった。今となってはあとの祭りだが、2021年10~12月期、欧米がインフレ警戒を高めた際、緩和路線に拘こだわらずイールドカーブコントロール(YCC)の枠組みを修正しておくべきだったのだろう。 いずれ手をつけなければならない正常化プロセスならば、欧米と一緒に少しずつでも手を加えておくべきとの意見は常にあった。YCCの枠組みを抱えたまま3月の金利上昇に直面してしまったので、指値オペの通告は不可避だった。それが円売り投機を焚きつけてしまったのは周知の通りである。「策に溺れた」感は否めない。 いずれにせよ、円売り投機ゲームは始まった感がある。厄介なことに、今回は日本の貿易赤字拡大、過剰な防疫政策による成長率低迷、米連邦準備理事会(FRB)を筆頭とする海外中央銀行の引き締め路線など、ファンダメンタルズに照らして円売りに正当性がある。元々正当性のある行為(円売り)に、政策当局者がゲームのきっかけを与えているのだから、円安は当然勢いづく。 では、どうすればよかったのか。そもそも政府・日銀による為替市場へのコメントは無味乾燥を貫徹すればいい。円安の善悪などの価値判断はせず、「円安にはプラスもあればマイナスもある」と述べ続ければよかった。 もちろん、黒田総裁においては1月展望レポートで「全体としてプラス」と結論付けた以上、そう述べるしかなかったという考え方もある。だが、展望レポートでは功罪両面が分析されていた。「円安にはプラスもあればマイナスもある」という情報発信でも特に矛盾しなかっただろう。 無味乾燥なものであればあるほど、投機筋にとっては掴みどころがなくなる。今からでも遅くないので、政府・日銀ともに、「円安にはプラスもあればマイナスもある」という退屈な情報発信でワンボイス化を徹底した方がいいように感じる。為替動向に為政者から価値判断を提供するほど取引材料として利用されやすいため、「相手にしない」を貫くのが最善である』、「ファンダメンタルズに照らして円売りに正当性がある。元々正当性のある行為(円売り)に、政策当局者がゲームのきっかけを与えているのだから、円安は当然勢いづく」、「そもそも政府・日銀による為替市場へのコメントは無味乾燥を貫徹すればいい。円安の善悪などの価値判断はせず、「円安にはプラスもあればマイナスもある」と述べ続ければよかった」、その通りだ。
・『今からでも遅くない日銀が市場に言うべきこと  なお、円高であれ、円安であれ、為替の急変動は企業の為替戦略上、マイナスの影響が大きいのは事実だ。そのため、「急速な変動は望ましくない」という情報発信は基本的に問題ない。1月展望レポートでもその点には言及があった。 この点、17日の黒田総裁による「急速な円安はマイナス」という発言はボラティリティを問題視した言動だったと考えれば、特別なものではなかった。しかし、もはや日銀は投機ゲームの表舞台に立つ主役であり、一挙一動が注目されてしまう。こうなった以上、「円安にはプラスもあればマイナスもある」と方向感のない発言を繰り返すのが最も無難なのだろう。 今後、政府・日銀はどう動くだろうか。本気で円安が日本経済にとってマイナスだと判断するのであれば、まずは金融政策の修正以外にあり得ない。この際、効果の有無は二の次である。 この手の相場になると必ず為替介入の可能性を問われるが、それは話が飛躍し過ぎている。理論的には、金融政策と通貨政策は必ず同じ方向を向いている必要がある。円安に不満を漏らしながら金融緩和を継続するという姿勢は自己矛盾しており、まずは緩和に傾斜し過ぎた政策姿勢の修正が必要である。 通貨政策を司る鈴木財務相から「悪い円安」とのフレーズが出てしまった以上、金融政策を司る黒田総裁も平仄を合わせるというのが自然な流れだろう。それがYCCの修正なのか、マイナス金利の解除なのか定かではないが、仮に対応するならば政策の「小出し」だけは避けるべきだ。それは投機ゲームの参加者を喜ばせるだけである。 2013年4月、「戦力の逐次投入はしない」と華々しく表舞台に躍り出てきたあの時のように、考えられる最高のカードで対応した方がいい。また当時、「分かりやすさ」で期待に働きかけたことも思い返されるべきである』、「円安に不満を漏らしながら金融緩和を継続するという姿勢は自己矛盾しており、まずは緩和に傾斜し過ぎた政策姿勢の修正が必要」、「YCCの修正なのか、マイナス金利の解除なのか定かではないが、仮に対応するならば政策の「小出し」だけは避けるべきだ」、その通りだ。
・『誰にも分かりやすい引き締めカードとは?  現在の屋上屋を架す複雑怪奇な枠組みではなく、誰しもが分かりやすい強力な引き締めカードは何だろうか。 直感的にはマイナス金利解除が最右翼に思えるが、奇想天外の一手もあり得るだろうか。内外で耳目を集めたように、日銀で金融政策の立案を担う企画ラインの事務方トップである内田真一理事が異例の再任となったことからも、「次の一手」への注目度は極めて高い。 もちろん、FRBが積極的に利上げをして、バランスシート縮小に勤しんでいる以上、日銀が何をしようと円安が修正される保証は全くない。冒頭で述べたように、結局、円高もFRBが正常化プロセスに着手したことで小康を得た。だとすれば、今回の円安が止まる契機はやはりFRBの正常化プロセスの停止になってくるというのが経験則上、最もありそうな展開ではある。 しかし、現在の日本の世相を踏まえる限り、そうした他力本願で「何もしない」というのが許される雰囲気ではなくなっているようにも見える。効果がないと分かっていても何かをしなければならないほど、日銀は追い詰められつつあるように見える』、「効果がないと分かっていても何かをしなければならないほど、日銀は追い詰められつつあるように見える」、これは大変だ。

次に、4月23日付け東洋経済オンラインが掲載した財務省出身で 慶應義塾大学大学院准教授の小幡 績 氏による「日銀金融正常化への「8段階の行動計画」を示そう 円安は異常な金融政策が終わればすぐに止まる」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/584018
・『この2カ月、日銀は、突然袋叩きにあっている。しかも、私達のように「もともと金融緩和をやりすぎている」「リフレはヤバい」などと批判している方面からの批判だけではない。 むしろ、これまで「物価を上げろ」「インフレ率2%を達成できていない」「次の金融緩和の一手はないのか」などと金融緩和拡大、物価上昇を求めていたグループから「物価高騰に対処せよ、そのためには円安を抑えろ」「いつまで緩和しているんだ、欧米に追随せよ」と、これまでと正反対の非難、攻撃を浴びている。 可哀そうだ。 そこで、私が四面楚歌の日銀に窮地脱出のためのアクションプラン(行動計画)を授けよう。題して、「日銀金融政策正常化アクションプラン」である』、確かに「この2カ月、日銀は、突然袋叩きにあっている」、「窮地脱出のためのアクションプラン」とは興味深そうだ。
・『小幡版「8段階のアクションプラン」とは?(DAY 1デフレ、デフレマインド脱却宣言をする  日銀は、これまでの金融政策により、デフレ脱却に成功し、デフレマインドの払拭にも成功した。「金融政策ではなく、単に資源高などによる輸入インフレ、コストプッシュインフレではないか」、という批判に対しては、これまでも資源高はあったし、海外からのコストプッシュインフレもあった。 しかし、そのときは、完全なデフレマインド払拭とはならなかった。今回は、企業物価の上昇が消費者物価にも波及し始めており、今後もその流れは継続すると思われる。企業サイドが先行し、消費者もデフレマインドからついに脱却した。 これは「これまでの金融緩和の継続によるものが、人々のマインドに時間をかけて浸透したことが背景にあって、そこへコスト上昇が加わったものである」という説明ができるし、これはあながち嘘でもない』、「企業サイドが先行し、消費者もデフレマインドからついに脱却した」、異論はない。
・『金融緩和は継続でもETF買い終了、規模も縮小へ  DAY2金融政策の正常化、ただし、金融緩和は継続する、という意向を示唆する(デフレマインド脱却に成功し、デフレも解消した。よって、危機対応、緊急対応の金融政策から、通常の金融政策に移る。そう宣言する。 しかし、金融緩和は止めないし、緩和の縮小もしない。現状では、ロシアのウクライナ侵攻の影響による、景気後退懸念が残っている。したがって、これまでと同様に金融緩和は継続し、企業や家計にとって、同様の緩和的な状態を維持する。危機対応の特別な金融緩和、非常事態モードは解消するが、通常モードでの最大の金融緩和は行う、と説明する』、「危機対応の特別な金融緩和、非常事態モードは解消」、それが「ETF買い終了」につながるのだろうが、とにかく「ETF買い」のような恥ずかしいことから止めるのは大賛成だ。
・『DAY3正常化の第1歩を踏み出す。「ETF(上場投資信託)の買い入れを終了する」と宣言す  今行っている中でもっとも特殊な金融緩和政策は、株式ETFの買い入れである。これを止めても、長期金利には影響しないはずである。つまり、金融緩和姿勢は一切崩さずに、正常化の第一歩を踏み出せるのである。 しかし、株式市場の暴落、混乱を懸念する声があるだろう。これに対応するために、ETFの買い入れはやめるが、一時的な措置として、日経平均先物、TOPIX(東証株価指数)先物について、売買する選択肢を導入する。これはまさに、正常化の中での特殊な措置であり、移行期間に何か波乱が起きたときの「万が一の措置」である。日銀がヘッジファンド化するのでもないし、株価を買い支えるのでもない。混乱したときに、市場を正常化するためだけの緊急手段である』、「一時的な措置として、日経平均先物、TOPIX(東証株価指数)先物について、売買する選択肢を導入する」、「移行期間に何か波乱が起きたときの「万が一の措置」」があるのであれば、安心だ。
・『DAY4正常化の第2歩として、保有するETFの規模縮小を開始する  国債保有は、金融政策そのものであるが、ETFを保有し続けることは金融政策とは無関係である。企業に対するガバナンス上の問題もある。よって、時間をかけてゆっくり、ETF保有額の縮小を行う。) 例えば、毎日機械的にわずか8億円程度を必ず売却すると決める。相場が上がっても下がっても売る。少額なのでまったく影響はないだろう。 問題は、売却開始、というニュースがインパクトを持つ可能性があることだが、もし市場が大混乱したならば、DAY3に導入した先物買い入れによる市場の正常化を図る。売却には賛否があるだろうが、ETF保有額の縮小は必ず行わなければならないプロセスであり、時間をかける必要があるから、現在始めるのが妥当である。 そのショックが生じるとすれば、それをどうやって少しでも和らげることができるか、ということが焦点だ。先物の利用は一見トリッキーであるが、合理的であり、投機的に動いたり、株価維持政策として使われたりしなければ、妥当である』、「ETF保有額の縮小は必ず行わなければならないプロセスであり、時間をかける必要があるから、現在始めるのが妥当」、その通りだ。
・『超長期国債の買い入れを極限まで絞る DAY5超長期債のステルステーパリング 超長期債の買い入れ量を極限まで絞る。10年物の0.25%の上限以下に抑えるためには、超長期債も買い入れないとバランスが悪いし、そもそも0.25%に抑え込むのが難しくなるが、それでも、徹底して、10年物は10年物で直接コントロールする。 これにより、超長期の期間におけるイールド(利回り)については、市場で完全に投資家だけで決定することになり、市場の価格機能の回復を図る。「10年物国債の利回り0.25%」は何がなんでも死守する。それは日銀の金融政策に対するクレディビリティ、ひいては中央銀行の存在そのものに対するクレディビリティを確保することになる。これが、現在の日銀にもっとも重要なことである』、「日銀の金融政策に対するクレディビリティ」「を確保する」のが、「現在の日銀にもっとも重要なことである」、その通りだ。
・『DAY6様子見  様子見をする。次のアクションは極めて難しく、かつ、柔軟に行わなければならないからだ。すなわち、いよいよ、なんらかの形で利上げと市場に受け止められるアクションを取ることになるからだ。 実際に利上げを開始するときの実施の仕方は、そのときの世界経済情勢、世界金融市場情勢、および日本の国債市場の情勢による。とりわけ、DAY5で行った、超長期債市場の完全復活がどのような影響をもたらしているか、注意深く観察する必要がある。DAY5の超長期債買い入れ実質停止の影響で、当初は超長期債価格は乱高下するだろうが、この市場が安定するまで、少し待つことが重要である。安定してからでないと、利上げには移れない』、ずいぶん慎重なようだ。
・『DAY7 4つの選択肢の中から、その時の情勢に応じたアクションを取る(4つとは以下だ。 選択肢1:コールレートのマイナス金利を解消してゼロ金利にする 選択肢2:イールドカーブコントロールのターゲット期間を短期化(10年から5年、あるいは可能ならば、その中間に)する 選択肢3:イールドカーブコントロールにおけるターゲット10年物の変動許容幅を0.25%から0.5%程度に引き上げる 選択肢4:イールドカーブコントロールにおけるターゲットを10年物0%程度から、明示的に0.25%(変動許容幅プラスマイナス0.25%、つまり0%から0.5%)に引き上げる』、なるほど。 
・『「コールレートのマイナス金利解消」が先か  現時点で予想される困難の度合いは1から4に向けて高まると思われるが、DAY7の時点の状況によっては、異なる可能性がある。 個人的には、選択肢1を早く行ってもよいと考えている。つまり、DAY5よりも前に行うという選択肢もあると思う。しかし、これも状況次第である。明確な利上げであるから、観念的なインパクトはある。実際的なインパクトはゼロである。ほとんどマイナス金利は機能していないからだ。 しかし、異常な、例外的な金融政策という意味では、イールドカーブコントロールのほうが特異な政策であり、短期金利マイナスというのは、ゼロの先がマイナスだから、短期金利の引き下げが金融緩和の本質であることから考えると、もっとも正常な政策である。通常時の金融政策ということも可能である。実際、マイナス金利のほうがイールドカーブコントロールよりも先に導入されたので、外すのも後だ、という考え方もある。ただ実質的なインパクトという点ではゼロ(皆無)であるから、やはり、これからやるのが無難だろう。 一方、ターゲット期間の短期化と明示的な利上げ(選択肢2と4)の比較は難しい。個人的には、選択肢3は「利上げでない」、という言い逃れであり、日銀の揚げ足を取りたい人々から集中砲火を浴び、それが国際的なトレーダーの仕掛けの餌食になってしまい、なにより、日銀の信頼性を下げる可能性があるので、避けたほうが良いと思う。 これと同じ意味で、世界金融市場の情勢が「利上げ当然」という雰囲気であれば、選択肢4のほうがやりやすいと思う。「短期金利も長期金利もゼロでなくなった、しかし、イールドカーブはフラットではない」、ということが示されるので良いと思う。その後、ターゲットの短期化を図り、イールドカーブコントロールを最後には解消して、通常の短期金利ゼロ、普通のゼロ金利政策に戻す。これがDAY8だ』、「選択肢3は「利上げでない」、という言い逃れであり、日銀の揚げ足を取りたい人々から集中砲火を浴び、それが国際的なトレーダーの仕掛けの餌食になってしまい、なにより、日銀の信頼性を下げる可能性があるので、避けたほうが良いと思う」、ずいぶん深い考察のようだ。
・『DAY8:金融政策正常化の完成  しかし、金融緩和は続けており、ゼロ金利政策である、ということを強調する。 さて、問題はスピード感である。どのくらいの期間でDAY8の完成とするか。これが一番重要なところで、腕の見せ所である。これこそ、まさに状況次第、観察を十分にして、慎重にかつうまくやり、結果的には手早く、手遅れにならないうちに異常な緩和から脱出することが必要である』、「まさに状況次第、観察を十分にして、慎重にかつうまくやり、結果的には手早く、手遅れにならないうちに異常な緩和から脱出することが必要」、その通りだ。
・『「黒田総裁時代」にどこまで実行するか?  早ければ、最初のDAY1は次の金融政策決定会合で打ち出すことも可能ではないか。つまり、4月28日である。そして、世間の議論をGW中に行わせる。 一方、世界の金融市場は動いているのに、日本だけGWで閉まっているというリスクを考えると、4月28日の決定会合では「少しニュアンスが変わってきた」という雰囲気を打ち出すにとどめ、GW明けから、さまざまな機会をとらえて、発言のトーンを寄せていくことにする。そして、6月の決定会合で行う。これが現実的だと思う。 そして、7月にETF買い入れ終了を宣言し、売却開始を9月に示す。 DAY5の「超長期債ステルステーパリング」のタイミングは難しい。間合いを測ってやる必要があり、水面下で、政府財政当局とのすり合わせも必要だと思う。しかし、これは政府、政治から大きな反発がある可能性もあり、困難かもしれない。 その場合は、切り替えて、マイナス金利解消を先に行う。それが12月になるだろう。 この辺で、次の総裁、副総裁の人事が固まっているだろう。その後は、あまり動けないので、ステルステーパリングを目立たないように徐々に行い、極限まで絞るのは次の総裁、次の年度ということになるか。後は、まさに情勢次第である。しかし、こうすれば、黒田東彦総裁は、退任までに、ETF買い入れ終了とマイナス金利解消を自ら実現でき、デフレマインド解消に成功し、金融政策の正常化にもほぼ成功し、次の体制へ引き継げることになり、10年間の金融政策は成功裏に終わったとも主張できるのではないだろうか。) 黒田総裁自身は自分で成功したなどとは言わないし、手柄を強調したいとも思わないだろうが、日銀という中央銀行が「金融政策に失敗していない」「今後も信頼を得続ける」という最重要のことを死守するためには「失敗だった」というのは避ける必要がある』、「日銀という中央銀行が「金融政策に失敗していない」「今後も信頼を得続ける」という最重要のことを死守するためには「失敗だった」というのは避ける必要がある」、政治臭プンプンの判断だが、その通りなのだろう。
・『円安はすぐに止められるが、金融正常化が難しい  最後に、政府、政治としては「円安を止めたい」という短期的な意図があると思われる。だが私は、DAY1だけですぐに円安は止まると予想する。現在の円安進行、そして、今後の円安の加速化リスクというのは、直接的な金利差というよりも、今後の政策スタンスの違いから来ていると考えられるので、姿勢を示すだけですぐにも円安方向の動きは変化すると思う。 むしろ問題は、その後、うまく正常化へ脱出できるかである。したがって、DAY5以降は、次の体制に任せるのはもちろんのこと、DAY4も先送りして構わないし、最悪DAY3も次の体制で構わない。ともかく、DAY1とDAY2を実現し、正常化に向かうというニュアンスだけで十分だ。 最重要の哲学は、中央銀行としての信認を失わない、ということである。その中での方針は、金融緩和政策の正常化を行うが、金融緩和自体の縮小は行わない、ということである。そして、最優先の短期の目的は、急激な円安進行を止め、異常な為替市場を正常化することである。そして、この短期の目的は、長期の金融政策正常化にとっても整合的であり、かつ望ましく、さらに正常化にとって必須である。 これにより、黒田日銀における異次元緩和は軟着陸の着地に成功することになると期待される』、説得力溢れた提言だ。日銀の金融政策担当部局である企画局も目を皿のようにして読んでいるのだろう。審議委員にして中から変えてほしいところだ。

第三に、4月24日付け現代ビジネスが掲載した大蔵省出身で一橋大学名誉教授の野口 悠紀雄氏による「ついに来た! 1ドル135円で日本は韓国・イタリアより貧しい国に これがアベノミクスによる没落効果」を紹介しよう。
・『急激な円安のため、日本の国際的地位が急低下している。それだけでなく、輸入物価高騰を増幅し、国民生活と企業を圧迫している。円安に対する評価が変ってきたいまこそ、金融政策を基本から転換しなければならない』、興味深そうだ。
・『1人あたりGDPで韓国に抜かれる?  急激な円安が進んでいる。しかも、他国通貨に比べて下落率が大きい。最近では、ロシアのルーブルより下落率が大きい(日本経済新聞4月8日)。4月20日には一時、1ドル129円台を付けた。 こうなっているのは、アメリカが金融緩和政策からの脱却を急ぎ、各国もそれに対して必死で利上げを行っているにもかかわらず、日本銀行は金利を抑えているからだ。 急激な円安のため、日本の国際的地位が大きく低下している。このまま進んで、1ドル=130円台になると、重大な局面が訪れそうだ。日本の一人あたりGDPが、韓国やイタリアに抜かれる可能性が高いのである。 まず韓国との関係を見よう。2021年においては、日本の1人当たりGDPは、韓国より15.7%ほど高かった(図表1参照)。 (図表1はリンク先参照) ところが、2022年になって円安が進んだ結果、この状況がすでに大きく変っている。2022年4月12日のレートで計算すると、韓国との差は7.2%と、大幅に縮まっている。 円安がさらに進んで1ドル135円になり、ウォンのレートが変らないとすれば、日本の1人あたりGDPは、韓国より低くなる。 賃金や生産性などの指標では、日本はすでに韓国に抜かれている。それだけでなく、最も基本的な指標である一人当たりGDPでも抜かれることになる。つまり、豊かさを示すほとんどすべての指標において、日本は韓国を下回ることになるのだ』、「豊かさを示すほとんどすべての指標において、日本は韓国を下回ることになる」、寂しい限りだ。
・『G7中で日本が最下位に  台湾との間でも、似たことが起こる。2021年においては、日本一人当たりGDPは、台湾より21.9%ほど高かった。2022年4月12日のレートでは、この値が9.1%になった。1ドル135円になれば、台湾の値は日本とあまり変らなくなる。 最近の円レートの動向から見ると、1ドル135円は十分あり得る値だ。したがって、日本が韓国や台湾よりも貧しくなるという事態は、十分あり得ることなのである。 G7の中ではどうか? 2021年では、最下位はイタリアで、日本はこれより14.4%高かった。ところが、2022年4月12日のレートでは、この値が6.7%になった。1ドル135円になれば、イタリアの方が高くなる。すると、日本はG7の中で、もっとも貧しい国になる。 G7は先進国の集まりということになっている。そこにとどまれるかどうかの議論が出てきても、反論するのは難しいだろう』、「G7」で最貧国というのも不名誉な話だ。
・『アベノミクスの円安政策が日本を没落させる  アベノミクスが始まる直前の2012年、日本の1人あたりGDPは、アメリカとほとんど変らなかった。そして、韓国は日本の51.8%、台湾は43.2%でしかなかった(図表2参照)。 (図表2はリンク先参照) それから10年たって、上記のように、この関係は大きく変ったのだ。 アメリカの1人あたりGDPは、日本の1.73倍になった。そして、すでに見たように、韓国と台湾の1人あたりGDPが、日本とほぼ同じになっている。アベノミクスがもたらしたものが何であったかを、これほど明確に示しているものはない。 企業の時価総額世界ランキングでも、日本のトップであるトヨタ自動車(第41位、2286億ドル)より、台湾の半導体製造会社TSMC(第10位、5053億ドル)や、韓国のサムスン(第18位、3706億ドル)が、いまや上位にある(2022年4月13日現在)。日本の凋落ぶりは明白だ』、「アベノミクスがもたらしたものが何であったかを、これほど明確に示しているものはない」、その通りだ。
・『円安が物価上昇を加速する  円安は、日本の国際的地位を低下させるだけではない。現実の経済活動にきわめて深刻な影響を与えている。なぜなら、円安は物価上昇を増幅するからだ。 ウクライナ情勢を背景として、原油などの資源価格が世界的に値上がりしており、それが国内の消費者物価を高騰させている。円安が進めば、円ベースでの上昇率はさらに高まる。 4月12日に発表された輸入物価指数に、それがはっきりと現れている。3月の指数の対前月比は、契約通貨ベースでは1.0%であるのに、円ベースでは3.3%になっている。つまり、円安の進行によって、価格高騰率がが3.3倍にも増幅されているのだ。(なお、対前年同月比は、それぞれ、25.2%と33.4%)。 株価も、円安を歓迎せず、むしろ、円安で下落するようになってきている。輸入価格の高騰による原材料価格の上昇を製品価格に完全に転嫁できず、企業の利益が減少するからだ。 そして、物価は上がるのに賃金が上がらないので、国民の不満が高まる』、「株価も、円安を歓迎せず、むしろ、円安で下落するようになってきている」、円安を歓迎してきた「株式市場」も変わったようだ。
・『円安スパイラルの阻止が緊急の課題  すでに述べたように、急激な円安が進行しているのは、日銀が長期金利抑制の姿勢を強く打ち出しているからだ。このため、円安が円安を呼ぶというスパイラル現象が起きつつある。 しかし、金利抑制策は、日本経済に何のメリットも与えていない。むしろ、金融機関の経営を圧迫するなどネガティブな影響が強い。 こうした政策から一刻も早く脱却して、円安スパイラルを食い止めることが必要だ。日銀が通貨価値安定という中央銀行本来の使命に戻り、金利抑制策からの転換を明言すれば、事態は大きく変るだろう。 ただし、口先介入だけでは不十分かもしれず、為替市場への介入が必要とされるかもしれない。 為替介入には、アメリカに承諾を求める必要があるという意見があるが、自国通貨の価値を守るための介入に外国の許しが必要という考えは理解できない。 ただし、円高に向けての介入が容易でないことは事実だ。これまで行ってきたのは、円安誘導の介入だ。円を売ってドルを買うのは、簡単にできる(政府短期証券を発行して調達した円資金を用いて、為替市場でドルを買い入れる)。2000年頃には、総額35兆円を超える大規模な円売りドル買いの介入が行なわれた。 それに対して、円高介入は、外貨準備の範囲内でしかできない。だから、限度がある(2021年9月末における日本の外貨準備高は1.4兆ドル)』、なるほど。
・『日本でもようやく円安の評価が変ってきた  トルコや韓国は、通貨価値の下落によって国が破綻しかねない事態に直面した経験がある。そうした国では、自国通貨安に対する国民の危機感がきわめて強い。 日本人はそうした危機感を持っておらず、むしろ、自国通貨安を歓迎するという不思議な状況がこれまで続いてきた。 しかし、価格転嫁が不充分にしかできない現状で、やっと円安の本質が理解されるようになってきた。日本でも、通貨安が経済を破壊しかねないという認識が、日本でもようやく広まりつつある。 7月の参議院選挙では、物価問題が最大の争点となるだろう。そこでの議論を、バラマキ的な物価対策のレベルで終わらせてはならない。円安政策からの転換という本質的な問題が争点となることを期待したい』、第二の記事で小幡氏は「DAY1だけですぐに円安は止まると予想する。現在の円安進行、そして、今後の円安の加速化リスクというのは、直接的な金利差というよりも、今後の政策スタンスの違いから来ていると考えられるので、姿勢を示すだけですぐにも円安方向の動きは変化すると思う」、としている。現実には「バラマキ的な物価対策のレベル」に止まるようで、本格的な政策論議が欠けているのは残念だ。
タグ:(その41)(始まってしまった円売り投機ゲーム 日銀を引きずり込む泥沼のゆくえ 当局の覚悟を試す市場参加者 為替市場のコメントに価値判断は禁物、日銀金融正常化への「8段階の行動計画」を示そう 円安は異常な金融政策が終わればすぐに止まる、ついに来た! 1ドル135円で日本は韓国・イタリアより貧しい国に これがアベノミクスによる没落効果) 確かに「この2カ月、日銀は、突然袋叩きにあっている」、「窮地脱出のためのアクションプラン」とは興味深そうだ。 小幡 績 氏による「日銀金融正常化への「8段階の行動計画」を示そう 円安は異常な金融政策が終わればすぐに止まる」 東洋経済オンライン 「効果がないと分かっていても何かをしなければならないほど、日銀は追い詰められつつあるように見える」、これは大変だ。 「円安に不満を漏らしながら金融緩和を継続するという姿勢は自己矛盾しており、まずは緩和に傾斜し過ぎた政策姿勢の修正が必要」、「YCCの修正なのか、マイナス金利の解除なのか定かではないが、仮に対応するならば政策の「小出し」だけは避けるべきだ」、その通りだ。 「ファンダメンタルズに照らして円売りに正当性がある。元々正当性のある行為(円売り)に、政策当局者がゲームのきっかけを与えているのだから、円安は当然勢いづく」、「そもそも政府・日銀による為替市場へのコメントは無味乾燥を貫徹すればいい。円安の善悪などの価値判断はせず、「円安にはプラスもあればマイナスもある」と述べ続ければよかった」、その通りだ。 「2016年9月の・・・YCC導入を経て表舞台から・・・消えた日銀だが、信託大会挨拶を受けた円安進行は、再び日銀が表舞台に引きずり出されたのだと感じさせるものだった」、「信託大会挨拶」はやはり相当なインパクトがあったようだ。 唐鎌 大輔氏による「始まってしまった円売り投機ゲーム、日銀を引きずり込む泥沼のゆくえ 当局の覚悟を試す市場参加者、為替市場のコメントに価値判断は禁物」 異次元緩和政策 JBPRESS 小幡版「8段階のアクションプラン」とは? DAY 1デフレ、デフレマインド脱却宣言をする 「企業サイドが先行し、消費者もデフレマインドからついに脱却した」、異論はない。 DAY2金融政策の正常化、ただし、金融緩和は継続する、という意向を示唆する 「危機対応の特別な金融緩和、非常事態モードは解消」、それが「ETF買い終了」につながるのだろうが、とにかく「ETF買い」のような恥ずかしいことから止めるのは大賛成だ。 DAY3正常化の第1歩を踏み出す。「ETF(上場投資信託)の買い入れを終了する」と宣言 「一時的な措置として、日経平均先物、TOPIX(東証株価指数)先物について、売買する選択肢を導入する」、「移行期間に何か波乱が起きたときの「万が一の措置」」があるのであれば、安心だ。 DAY4正常化の第2歩として、保有するETFの規模縮小を開始する 「ETF保有額の縮小は必ず行わなければならないプロセスであり、時間をかける必要があるから、現在始めるのが妥当」、その通りだ。 DAY5超長期債のステルステーパリング 「日銀の金融政策に対するクレディビリティ」「を確保する」のが、「現在の日銀にもっとも重要なことである」、その通りだ。 DAY6様子見 ずいぶん慎重なようだ。 DAY7 4つの選択肢の中から、その時の情勢に応じたアクションを取る 「選択肢3は「利上げでない」、という言い逃れであり、日銀の揚げ足を取りたい人々から集中砲火を浴び、それが国際的なトレーダーの仕掛けの餌食になってしまい、なにより、日銀の信頼性を下げる可能性があるので、避けたほうが良いと思う」、ずいぶん深い考察のようだ。 DAY8:金融政策正常化の完成 「まさに状況次第、観察を十分にして、慎重にかつうまくやり、結果的には手早く、手遅れにならないうちに異常な緩和から脱出することが必要」、その通りだ。 「日銀という中央銀行が「金融政策に失敗していない」「今後も信頼を得続ける」という最重要のことを死守するためには「失敗だった」というのは避ける必要がある」、政治臭プンプンの判断だが、その通りなのだろう。 説得力溢れた提言だ。日銀の金融政策担当部局である企画局も目を皿のようにして読んでいるのだろう。 審議委員にして中から変えてほしいところだ。 現代ビジネス 野口 悠紀雄氏による「ついに来た! 1ドル135円で日本は韓国・イタリアより貧しい国に これがアベノミクスによる没落効果」 「豊かさを示すほとんどすべての指標において、日本は韓国を下回ることになる」、寂しい限りだ。 「G7」で最貧国というのも不名誉な話だ。 「アベノミクスがもたらしたものが何であったかを、これほど明確に示しているものはない」、その通りだ。 「株価も、円安を歓迎せず、むしろ、円安で下落するようになってきている」、円安を歓迎してきた「株式市場」も変わったようだ。 第二の記事で小幡氏は「DAY1だけですぐに円安は止まると予想する。現在の円安進行、そして、今後の円安の加速化リスクというのは、直接的な金利差というよりも、今後の政策スタンスの違いから来ていると考えられるので、姿勢を示すだけですぐにも円安方向の動きは変化すると思う」、としている。現実には「バラマキ的な物価対策のレベル」に止まるようで、本格的な政策論議が欠けているのは残念だ。
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リニア新幹線(その6)(調布市の道路陥没事故でリニア新幹線工事が不安になる理由、JR「超電導リニア」の技術は本当に完成したのか 気鋭の技術ライターの疑問と JR東海の見解、静岡リニア「トンネル湧水全量戻し」本当の問題点 有識者会議の結論は妥当だったが静岡県は反発) [産業動向]

リニア新幹線については、2020年5月24日に取上げた。また、昨日のJR(一般)(その1)のなかでリニア問題を取上げた。今日は、(その6)(調布市の道路陥没事故でリニア新幹線工事が不安になる理由、JR「超電導リニア」の技術は本当に完成したのか 気鋭の技術ライターの疑問と JR東海の見解、静岡リニア「トンネル湧水全量戻し」本当の問題点 有識者会議の結論は妥当だったが静岡県は反発)である。

先ずは、2020年10月23日付けダイヤモンド・オンライン「調布市の道路陥没事故でリニア新幹線工事が不安になる理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/251962
・『突然、住宅の前の道路が陥没する――。衝撃を禁じ得ない現場の直下では、東京外郭環状道路のトンネル工事が進められていた。同じ工法で大深度地下を掘り進むリニア中央新幹線工事に不安はないのか』、このニュースは昨日のこのブログでも紹介した。
・『47メートル下をシールドマシンが通過 因果関係は不明で工事が中断(休日の朝、自宅のガレージのすぐ前を走る道路に亀裂が入り、少しずつ広がって、昼ごろには深さ5メートルの大きな穴になった――。 そんな“嘘のような本当の話”が起きたのは10月18日、東京都調布市の京王線つつじヶ丘駅から徒歩4~5分ほどの住宅街だ。 すでに報じられている通り、この現場の約47メートル直下では、千葉県から埼玉県、そして現場のあった調布市などを通って東名高速道路に接続する全長約85キロメートルの東京外郭環状道路(外環道)のトンネル建設工事が進められ、9月中旬にシールドマシンが通過していた。 ここは外環道を南に向かって東名高速道路に接続するまでのトンネルで、施工主は東日本高速道路(ネクスコ東日本)。工事を請け負ったのは、鹿島建設・前田建設工業・三井住友建設・鉄建建設・西武建設共同企業体(JV)だ。 ネクスコ東日本は翌19日に、「東京外環トンネル施工等検討委員会」を開いた後の記者会見で、陥没と道路工事の関連の有無や原因が判明するまで工事を中断する、と説明した。再開の時期は未定だ。 検討委員会の委員長を務める小泉淳・早稲田大学名誉教授は会見で、「断定するのはまだ早い。ただ、(道路工事と陥没の)因果関係はないとは言えないし、(道路が)急に落ちるとは思えない」と述べた上で、陥没の原因として、(1)シールドマシンが土を取り込みすぎたことによる地盤への影響、(2)陥没した地表付近に以前から空間があった――の2つの可能性を挙げた。 外環道は、都心での渋滞緩和を目指して1966年に都市計画決定した。ところが、住民の反対や用地買収の難航によって計画が遅れ、2007年に当初の高架から地下方式に変更した上で工事が進められた。 首都高速道路の渋滞の大きな要因が、東京都心を目的地とせずに通過する長距離運転の車両の進入だった。これを外環道や首都圏中央連絡自動車道(圏央道)を経由させることで都心の交通渋滞を緩和するという、交通政策の面から見ると非常に理にかなった計画といえる』、確かに「外環道計画」自体は「交通政策」上は合理的だ。
・『トンネル付近の地盤は強固だが 地表から数メートルには弱い層も  ただ、地下トンネル工事という自然を相手にするプロジェクトゆえ、机上の合理的な計画がそのまま通用するとは限らないのが、こうした巨大土木プロジェクトの常である。 しかも「大深度地下」と呼ばれる地下40メートル以上の深さを掘り進むことで、地上の土地所有者の同意が原則不要となったものの、その地質的な影響を事前に予測することは困難だった可能性がある。 ネクスコ東日本によると、工事現場となった地下約47メートル付近は、東久留米層と呼ばれる地層であり、砂層(砂でできた層)に一部、礫層(石ころの層)が入っており、総じて強固な地層だという。検討委員会への報告によると、トンネル内で事故や異常につながるひび割れ、漏水は確認されていない。 一方で、今回の現場の地表では道路の陥没だけでなく、住宅の玄関前のコンクリートのズレや、建物の壁のヒビも発生した。地元で民生委員を務める東村達夫さんは、シールドマシンが通過した9月中旬、自宅で強い振動を感じたことがあったという。 ネクスコ東日本によると、大深度地下をシールドマシンで掘り進むという今回と同様に行われたこれまでの外環道の工事によって、東村さんが訴えたような地上の住民が振動を感じたとの報告はあったそうだ。しかし、道路の陥没だけでなく、今回生じたような地面や建物の亀裂やヒビも報告はなかったという。 また国土交通省によると、国などの認可を受けた大深度地下の工事は過去5件あり、うち外環道と、大深度地下に送水管を通す工事を行った神戸市の工事が着工済みだ。神戸市水道局によると、今回のように道路や建物への損害が発生した事例はないという。 ただ土木工事に詳しい関係者によると、神戸市の工事で使われたシールドマシンの直径はわずか3メートルであり、地下40メートルの深さに対して13分の1しかない。一方で今回調布市の現場で使われたものは16メートルと巨大で、47メートルという深さの3分の1にも達する。「これだけの大きさだと、地表に影響を与えることがあるのかもしれない」(前述の土木工事に詳しい関係者)。 さらに、今回陥没が起きた地表付近の地盤は、必ずしも強固とは言えないようだ。地表に最も近い部分は、数メートルの深さの盛り土で固められていた。一般的に、盛り土は造成時に締め固められるため、強さがある。ところが、さらにその下の数メートルは「沖積層」と呼ばれる、地震などによって液状化現象が起きやすい弱い地層だった。 今回の陥没の深さは5メートルだが、盛り土の中で起きたのか、沖積層にまで達していたのか、現時点では不明だ。ただ東村さんによると、住宅が立ち並ぶ現場付近は数十年前までは水田が多く、すぐ横を流れる入間川は現在のようにコンクリートで護岸工事がされるまで数回、護岸工事後も1回、氾濫を起こしていたという。一般的に水害があった土地の地盤は、決して強くないと考えられることが多い』、本年2月28日付けNHKナビによれば、東京地裁は「外環道」の 東名JCT~中央JCTの区間の工事中止を命じたようだ。
・『静岡県の抵抗に遭うリニア中央新幹線計画 都市部の大深度地下工事は大丈夫なのか!?  ネクスコ東日本が記者会見を開いたまさに同じ日である10月19日、JR東海は山梨県の施設で、リニア中央新幹線の改良型の試験車両を報道機関に公開した。 リニア新幹線を巡っては、静岡県の川勝平太知事が、静岡工区のトンネル工事の影響で大井川の水の流量が減少する懸念があるとして、流量の確保を強く求めている。さらに「リニア計画に反対しない」としながらも、環境保護などを理由に計画の大幅な見直しを訴えている。 トンネルなどの土木工事では、地下水の管理が最大の課題であり、事前に地下水の動きや、掘削工事による流れ方と流量の変化を予測し、工事の最中にこれを管理することは極めて難しい。 だからこそ、国やJR東海は静岡県に対して有効な解決策を打ち出せず、静岡県側も納得する姿勢を見せないという面がある。 一方でリニアの計画路線では、静岡工区のような山岳トンネルではない都内や神奈川県、愛知県内は、外環道と同様の工事を予定。住宅地や商業地の下の40メートル以上の大深度地下をシールドマシンで掘り進んでトンネルを通すことになる。こうした工事については従来、強い不安を訴える声は上がってこなかった。 ちなみにリニアの首都圏の地下トンネル工事に用いられるシールドマシンの直径は14メートルと、こちらもかなり巨大だ。 繰り返すが、今回の調布市での道路陥没と、外環道でのシールドマシン工事との因果関係は現時点では不明だ。逆に因果関係が特定されなければ、都内や神奈川県内などのリニア工事でも、地表部の地盤が弱い箇所で陥没事故が起きるのではないか――。このような不安が沿線住民に付きまとい続けることになる。 調布市の道路陥没現場は、砂を積んだダンプカーが列をなし、夜を徹した作業で、翌19日にはとりあえずふさがれた。とはいえ、付近の住民やリニア中央新幹線計画にまで飛び火した不安の穴をふさぐには、しばらく時間がかかりそうだ』、「リニア」の平地部分は、多くが「大深度地下」の「トンネル」なので、今回の問題がどういう形で決着するか、大いに注目される。

次に、2020年12月28日付け東洋経済オンライン「JR「超電導リニア」の技術は本当に完成したのか 気鋭の技術ライターの疑問と、JR東海の見解」を紹介しよう。
・『リニア中央新幹線は2014年にJR東海の工事実施計画が国から認可され、沿線各地で工事が行われている。走行する車両の研究開発は1960年代からスタートし、これまで数種類の試験車両が開発され、走行試験を繰り返してきた。2013年には営業仕様の「L0(エルゼロ)系」を活用した走行試験が行われ、リニアに関する国の実用技術評価委員会は、2017年に「営業に必要な技術開発は完了」と結論付けた。 現在は、「さらなる快適性の向上や保守の効率化等」を目指したL0系の改良型試験車が走行試験を重ねている。静岡工区におけるトンネル工事が始まらず、目標としていた2027年の開業は事実上不可能となったが、走行に関する技術開発は着々と進んでいるように見える。 しかし、「技術的に本当に実現可能なのか、わからないことがたくさんある」と交通技術ライターの川辺謙一氏は超電導リニアの技術開発に疑問を呈する。川辺氏は大手化学メーカーの技術者を経て独立。難しい技術を一般向けにわかりやすく解説することをモットーに、鉄道、交通分野での著書も多い。 超電導リニアの何が問題なのか、このたび『超電導リニアの不都合な真実』(草思社)を著した川辺氏に聞いた(Qは聞き手の質問、Aは川辺氏の回答)』、興味深そうだ。
・『超電導磁石「クエンチ」の問題  Q:著書では、走行に関わるリスクとして、「クエンチ」という問題を指摘しています。 A:クエンチとは、超電導磁石から発生する磁力が急激に低下する現象です。超電導リニアは超電導磁石から発生する磁力によって浮上や推進を行っているのですが、クエンチが起きると正常な走行ができなくなる可能性があります。 クエンチの原因はわかっていない部分がたくさんあります。技術者向けの専門書『超伝導・低温工学ハンドブック』には「クエンチ発生の可能性を完全に回避することは不可能である」と書いてあります。このような不確定な要素を持ったものを鉄道車輪の代わりに使うというのは飛躍的だと感じます。) 超電導磁石が使われているのは超電導リニアだけではありません。医療機器のMRIや私がメーカー勤務時代に化学分析で使っていたNMR(核磁気共鳴装置)にも超電導磁石が使われていますが、MRIやNMRではクエンチが起きています。国内の病院の約12%でMRIのクエンチを経験しているというデータもあります。 MRIは空調の利いた室内に静置されているという非常に条件のいい状態で使われているにもかかわらず、クエンチが起きています。それに比べると、超電導リニアの超電導磁石は外気にさらされ、振動や衝撃も受けやすいという過酷な状況にさらされています。クエンチが起きやすい状態なのです』、「MRIは空調の利いた室内に静置されているという非常に条件のいい状態で使われているにもかかわらず、クエンチが起きています」、「外気にさらされ、振動や衝撃も受けやすいという過酷な状況にさらされて」いる「超電導リニアの超電導磁石」は「クエンチが起きやすい状態なのです」。走行中に発生したら恐ろしいになりそうだ。
・『技術に100%はないが…  Q:超電導リニアの山梨実験線ではクエンチが起きているのですか。 (川辺氏の略歴はリンク先参照) JR東海の葛西敬之名誉会長の著書『飛躍への挑戦』の中で、「山梨実験線ではクエンチは1度も起きていない」と記されているほか、私自身も超電導リニアに関する記事を書く際に、JR東海から「山梨実験線ではクエンチは1度も起きていない」と書くようにとの指示が編集部経由で伝わってくることがありました。 一方で、1999年8月に山梨リニア実験線でクエンチが起きて車両が停止したとことを報じる新聞報道もあります(山梨日日新聞1999年9月4日付「山梨リニア実験線クエンチで車両停止」)。ところが、国の超電導リニアの実用技術評価委員会の資料はこのクエンチのトラブルについて一切触れていません。 Q:クエンチを完全に回避することが不可能だとしたら、超電導リニアはやめるべきでしょうか? A:技術に100%はありません。90数%で安全が確保されるなら技術として使える部分はあると思います。ただ、その残りの数%で何が起きているのかは技術を評価するうえで、非常に重要です。実用技術評価委員会はクエンチが1度も起きていない、超電導磁石の故障が1度も起きていないということを前提に評価していますが、それはおかしいと私は思います。 Q:著書では、トイレの設置についても言及しています。 A:私はL0系の乗車体験にも参加しましたが、その際、スタッフの方は「車内にご利用いただける化粧室はございません」と案内していました。L0系より以前に製造されたMLX01という車両にはトイレが設置されていましたが、リニア中央新幹線公式サイトで公開されているL0系の車両の図面にはトイレが見当たりません。 しかし、営業運転を想定すれば、トイレがないのは不自然です。スタッフがトイレがないと案内した理由について、私は、高速走行する車両におけるトイレに関する技術が確立できていないと推測します。車両メーカーの技術者の方が、時速360km運転する車両のトイレは使用禁止だと話していました。車両が高速走行すると、トイレの汚物タンクに大きな気密荷重がかかり、トイレの使用に支障をきたす可能性が高まるというのです。時速360kmで難しいのなら、時速500kmではもっと難しいのではないでしょうか』、「JR東海から「山梨実験線ではクエンチは1度も起きていない」と書くようにとの指示が編集部経由で伝わってくる」、不自然な指示だ。「L0系の車両の図面にはトイレが見当たりません」、「高速走行する車両におけるトイレに関する技術が確立できていないと推測」、「「高速走行」では「トイレ」まで難しくなるとは初めて知った。
・『乗り心地は改善できるか  Q:乗り心地についても辛口の評価をしていますね。私は0系や300系など以前の東海道新幹線ほど揺れないと思いますし、線路の状態が悪いローカル線ならもっと揺れると思いますが。 A:人によって感じ方が違うので評価が難しいのですが、私は乗り心地があまりよくないと感じました。特に「耳ツン」に関しては、私の妻も乗りましたが、乗った後、30分以上耳ツンが止まらなかったと言っていました。 Q:技術的に改善できると思いますか。 A:改善できると思います。ただ、そのためには時間もコストもかかります。実際の営業運転を考えると、どこで折り合いをつけるかという問題があると思います。 Q:車内の空調装置や照明装置の電力を賄う誘導集電技術にも疑問を呈していますね。 A:誘導集電方式はMLX01で導入され、性能試験をした実績があります。国の実用技術評価委員会はその実績を踏まえて「誘導集電については、車上電源として実用化に必要な技術が確立している」と評価しました。しかし、本格的な導入はこれからです。 L0系の初期型には先頭車にガスタービン発電装置が搭載されており、そこから空調装置や照明装置の電力を賄っていました。その後登場したL0系改良型試験車は電磁誘導を利用して電力を取り込む誘導集電方式を採用し、ガスタービン発電装置は搭載されていません。 でも、今年9月に撮影した写真では、2つある先頭車のうち1両はガスタービン発電装置が搭載された初期型のL0系で、写真に陽炎がたっていることからガスタービン発電装置が作動している証拠といえます。もし誘導集電方式だけで車内電源を確保できるのであれば、改良型先頭車を2両製造して同じ編成に組み込むはずです。それをやっていないのは、誘導集電の技術が十分に磨かれていないことを意味します。 Q:JR東海の技術に対して、国の技術評価委員会の突っ込みが足りない? A:そう思います。それと、もっと情報を開示してほしいです。論文も出ていないので、どうなっているかがさっぱりわかりません』、「もし誘導集電方式だけで車内電源を確保できるのであれば、改良型先頭車を2両製造して同じ編成に組み込むはずです。それをやっていないのは、誘導集電の技術が十分に磨かれていないことを意味します」、「JR東海の技術に対して、国の技術評価委員会の突っ込みが足りない」、その通りだ。
・『建設的な議論が盛り上がれば  Q:中央新幹線は在来線の開業を匂わせていると著書に書かれています。山梨実験線には超電導リニアには不要な架線柱のようなものも立っているとのことですが。 架線柱のようなものがおおむね50m間隔で立っています。東海道新幹線とほぼ同じ間隔です。電柱がなぜここに立っているのか疑問に感じました。 Q:全般的に超電導リニアに対して辛口に書かれていると感じました。せっかく、さまざまな事実を丁寧に並べているので、ご自身の意見は抑えて、是非の判断は読者に委ねたほうがよかったのでは? A:そこは難しかったのです。本書の目的は批判ではなく、建設的な議論を進めることです。国もJR東海も批判するつもりはまったくありません。私の意見を述べないことも考えたのですが、編集者と相談して、私の意見を述べることにしました。私の意見が正しいとは限らないので、いろいろな意見が出てきてほしいと思っています。そのうえで、もし議論が盛り上がったらうれしいです』、「本書の目的は批判ではなく、建設的な議論を進めることです」、なるほど。
・『インタビューを終えて 難しい技術をわかりやすく伝えるというのが川辺氏の信条だけあって、川辺氏の著書によって超電導の技術やその問題をきちんと理解することができた。著書に記されている内容についても、基となる文献の出典も丁寧に紹介されている。また、鉄道、リニア、航空の現役、OBの技術者ともディスカッションを繰り返したという。 では、川辺氏の指摘についてJR東海はどのように考えているか。同社に確認を取ったところ、以下のような回答があった。 「クエンチについては、山梨リニア実験線で実験の目的上、意図的に起こしたことはあるが、意図せずに起きたことは1度もない。また、1999年の新聞報道については、車両が停止するトラブルは起きたが、その後の調査で原因は冷却材の配管の亀裂による真空度の低下に伴う温度上昇が発生し、磁力が低下した事象であり、超電導磁石のクエンチではなかったことが判明した」』、「超電導磁石のクエンチではなかったことが判明した」、確かにそのようだ。
・『さらなる情報開示が必要では  では、MRIではクエンチが起きているのに、超電導リニアでは1度も起きていないのはなぜか。この点を尋ねたところ、「MRIとの比較はしてないので違いについては説明できないが、超電導リニアは宮崎実験線以来長年にわたってクエンチが起きないように研究を重ね、改良を続けてきたので、その成果である」という回答があった。 また、「L0系にはトイレが付いている」とのことで、高速走行中にトイレが使えないということも「絶対にない」という。体験乗車の際は、「L0系は試験車両であることからトイレは1両しか設置されておらず、乗車イベント等の際は、乗車前にトイレの利用を促しているだけ」ということであった。 現在の走行試験でL0系の両方の先頭車両が初期型と改良試験車に分かれている理由は、「乗り心地の改善に向け初期型を先頭にした走行と改良試験車を先頭にした走行を比較検証するため」であり、ガスタービンを用いている理由は、「誘導集電に必要な地上ループは技術開発に必要な一部の区間にのみ敷設され、実験線の42.8km全線に敷設していない」ためで、誘導集電に関する技術が磨かれていないということはないとしている。また、山梨実験線に立っている架線柱のようなものは、「架空地線という避雷設備」で、役割としては避雷針のようなものだという。 JR東海の回答からは走行試験は順調に進んでいることがうかがえるが、川辺氏のように技術に明るい人からも疑問の声が上がるのは、情報開示が不完全だからだろうか。 とはいえ、先端技術の情報開示は難しい。中国も超電導リニアの開発に乗り出している中、高度な技術をあからさまに開示するのは競争上得策ではない。逆に、完全な秘匿は疑心暗鬼を生む。 難しい問題だが、国民の不安を払拭するためには、情報開示も含めて川辺氏の提唱するような「国民の幅広い議論」が必要かもしれない。それは、膠着状態にある静岡工区の未着工問題においても同様だ』、「国民の不安を払拭するためには、情報開示も含めて川辺氏の提唱するような「国民の幅広い議論」が必要かもしれない」、同感である。

第三に、本年1月5日付け東洋経済オンラインが掲載した「静岡経済新聞」編集長の小林 一哉氏による「静岡リニア「トンネル湧水全量戻し」本当の問題点 有識者会議の結論は妥当だったが静岡県は反発」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/479860
・『南アルプス・リニアトンネルに伴う大井川の水環境問題を議論した国の有識者会議の結論(中間報告)が2021年12月19日に取りまとめられた。その結論は以下のとおりだ。 1) トンネル湧水量の全量を大井川に戻すことで中下流域の河川流量は維持される。 2) トンネル掘削による中下流域の地下水量への影響は、極めて小さい。 ところが、翌日の静岡県内の朝刊各紙は『湧水全量戻し 示さず』(中日)、『全量戻し 方法示さず』(静岡)、『水「全量戻し」議論残る』(朝日)などの大見出しで、中間報告への疑問を投げかけた。 静岡県の川勝平太知事は会見で、「全量戻しができるのかできないのかわからないのが中間報告を読んでの率直な感想。全量戻せないならばおそらくは工事はできないだろうと思う人が多い」と述べ、約2年間もかけた議論を粉々に打ち砕いてしまった。 「全量戻し」とはいったい、何か。国は流域住民に有識者会議の結論をわかりやすく伝えなければ、リニア静岡工区の着工は遠のいたままだ』、「1)」がどうして『湧水全量戻し 示さず』になるのか、理解できない。しかし、「全量戻せないならばおそらくは工事はできないだろうと思う人が多い」と述べ、約2年間もかけた議論を粉々に打ち砕いてしまった」、「中間報告」の意味はどこにあったのだろう。
・『「全量戻し問題」の発端は?  JR東海は2013年9月、環境アセス準備書の中で「トンネル工事によって、大井川上流部の流量が毎秒2㎥減少する」と予測した。この予測に対して、静岡県は「毎秒2立方メートル減少するメカニズムを関係者に分かりやすく説明するとともに(中略)同施設内の湧水を大井川へ戻す対策をとることを求める」などの知事意見書を提出した。 JR東海は2015年11月、トンネル内の湧水減量分の6割強、毎秒1.3立方メートルをリニアトンネルから大井川までの導水路トンネル設置で回復させ、残り0.7立方メートルは『必要に応じて』ポンプアップで戻す対策を明らかにした。 JR東海の対策に、川勝知事は「62万人の“命の水”が失われる。全量を戻してもらう。これは県民の生死に関わる」などと反発、流域住民らは知事を強く支援した。『必要に応じて』の対策では「県民の生死に関わる」としたから、知事は「減少する毎秒2立方メートルの全量戻し」を主張、工事の着工を認めない方針を示した。これが「全量戻し」問題の始まりだった。) その後、県は減量分の毎秒2立方メートルだけでなく、トンネル内の湧水全量を試算して、そのすべてを戻せとハードルを上げた。県の求めに応じて、JR東海は2018年10月になって、『原則としてトンネル湧水の全量を大井川に戻す措置を実施する』と表明した。減量分の毎秒2立方メートルだけでなく、湧水全量を毎秒2.67立方メートルと試算、その全量を戻すとしたのだ。この表明で、川勝知事の“命の水”問題は解決したはずだった。 しかし、今回の有識者会議結論に、新聞各紙は「全量戻しの方法示さず」などと報道。静岡新聞1面トップ記事は『表流水の量は「トンネル湧水の全量戻し」をすれば維持され、地下水量の影響も「極めて小さい」としたが、全量戻しの具体的な方法は示さず、JRと県、流域市町の協議に問題解決を委ねた』と伝え、有識者会議結論を厳しく批判した。 新聞報道を踏まえ、川勝知事は「実質は毎秒2トンの水が失われる、と(JR東海は)言っていた。毎秒2トンの水は60万人の水道水の量」などと述べたから、ふつうに考えれば、JR東海は、トンネル湧水毎秒2.67立方メートルの「全量戻しの方法」を示さなかったと考えるだろう』、地元マスコミにも批判されるような「結論」を出すよう「有識者会議」には、意味がないようだ。
・『静岡県民には理解できない  ところが、JR東海は、毎秒2.67立方メートルについて、導水路トンネルとポンプアップという具体的な方法で、「湧水の全量を戻す」計画を示していた。有識者会議は、JR東海の「湧水全量戻しの方法」を認めたうえで、中下流域の河川流量は維持され、地下水への影響はほぼないという結論を出したのだ。 JR東海は、最大の難工事となる、南アルプス断層帯が続く山梨県境付近の工事で、山梨県側から上り勾配で掘削、まったく対策を取らなければ、最大300万〜500万立方メートルの湧水が県外に流出すると推計した。工事期間のうち、10カ月間だけは県外流出することを当初から説明していた。 静岡県は、トンネル湧水全量の毎秒2.67立方メートル戻しをJR東海が表明してから、約1年後の2019年8月になって、「湧水の県外流出を認めない」と、さらにハードルを上げた。「全量戻し」には、「水1滴」も含まれるという主張に変わってしまった。 県内の新聞各紙が有識者会議結論に疑問を投げかけた「全量戻しの方法を示せ」とは県外流出分についてだったが、一般の県民にはまったく理解できない記事となった。 JR東海は有識者会議で、作業員の安全確保を踏まえ、静岡県側からの下り勾配よる水没の可能性などを説明した。有識者会議の専門家は、静岡県側からの下り勾配工事の危険性を認め、作業員の人命安全を優先、山梨県側からの上り勾配による掘削で、県外流出する300万〜500万立方メートルが中下流域の水環境に影響を及ぼすのかどうかを議論した。) 2021年2月の有識者会議で、県外流出される水量(最大500万立方メートル)について、水循環研究の第一人者、沖大幹・東大教授(水文学)は「非常に微々たる値でしかない」と指摘した。今回の結論となった中下流域への水環境への影響はほぼないという大きな理由のひとつである。 川勝知事の“命の水”とされる上水道だけでなく、農業、工業用水は下流域にある川口発電所付近の2つの取水口から年約9億立方メートルの表流水を導水管で取り入れている。 川口発電所直下の神座地区の河川流量は年平均約19億立方メートルで、上水道などに取られる約9億立方メートルを合計すると、実際の河川流量は年約28億立方メートルにも上る。 さらに、神座地区の河川流量は平均約19億立方メートルだが、変動幅はプラスマイナス9億立方メートルもある。沖教授は、この部分に着目、県外流出する量が最大500万立方メートルとしても、変動幅約9億立方メートルの0・55%と極めてわずかであり、リニア工事による県外流出量は年間の変動幅に吸収されてしまう値である、と説明した』、なるほど。
・『水問題は感情に結び付きやすい  「非常に微々たる値でしかない」県外流出量を静岡県は大きな問題にするのに、利水安定のために変動幅約9億立方メートルもの水をコントロールする対策に取り組んでいないと、沖教授は厳しく批判した。つまり、有識者会議は県外流出についての湧水全量戻しは取るに足らない問題だと結論づけたのだ。 ところが、有識者会議の中間報告が決定した直後、静岡県の難波喬司副知事は会見で「静岡県の意見もかなりの部分を反映してもらったが、必ずしも100%評価できない」としたうえで、県外流出する湧水について「関係者が納得する方策を協議すべきだ」などと述べた。静岡県内の記者たちは、そもそもの「全量戻し」や有識者会議の議論を理解しておらず、「JR東海の説明の不十分さが証明された」(難波氏)という指摘をそのまま受け入れてしまった。 県は2018年8月作成のリニア資料「水循環の状況(断面)」で、源流部から下流域まで地下水路が続き、下流域で大量の地下水が湧出していて、リニア工事が地下水路を遮断するイメージ図を提供、下流域の住民らの不安を煽ったのを皮切りに、川勝知事が先頭に立ち、リニア工事によって、下流域の水資源が枯渇するというイメージをつくり上げるのに躍起だった。 第1回有識者会議で、金子慎JR東海社長は「トンネル工事がどういう仕組みで(下流域に)被害を発生させるのか、専門的な知見から影響が起きる蓋然性(確率)を示してほしい」と要望、有識者会議は「ほぼ影響ない」という結論を示し、問題解決への道筋を示した。県外流出する湧水を含めて、「感情に結び付きやすい水問題」(沖教授)だけに、国、JR東海は有識者会議の結論をわかりやすく丁寧に流域住民に説明すべきである』、こじれ切った「水」問題、改めて中立的な「有識者会議」を作り、「JR東海」、「静岡県」とも冷静になって、ゼロから議論してゆくほかないのではなかろうか。
タグ:リニア新幹線 (その6)(調布市の道路陥没事故でリニア新幹線工事が不安になる理由、JR「超電導リニア」の技術は本当に完成したのか 気鋭の技術ライターの疑問と JR東海の見解、静岡リニア「トンネル湧水全量戻し」本当の問題点 有識者会議の結論は妥当だったが静岡県は反発) ダイヤモンド・オンライン「調布市の道路陥没事故でリニア新幹線工事が不安になる理由」 このニュースは昨日のこのブログでも紹介した 、確かに「外環道計画」自体は「交通政策」上は合理的だ。 、本年2月28日付けNHKナビによれば、東京地裁は「外環道」の 東名JCT~中央JCTの区間の工事中止を命じたようだ。 「リニア」の平地部分は、多くが「大深度地下」の「トンネル」なので、今回の問題がどういう形で決着するか、大いに注目される。 東洋経済オンライン「JR「超電導リニア」の技術は本当に完成したのか 気鋭の技術ライターの疑問と、JR東海の見解」 「MRIは空調の利いた室内に静置されているという非常に条件のいい状態で使われているにもかかわらず、クエンチが起きています」、「外気にさらされ、振動や衝撃も受けやすいという過酷な状況にさらされて」いる「超電導リニアの超電導磁石」は「クエンチが起きやすい状態なのです」。走行中に発生したら恐ろしいになりそうだ。 「JR東海から「山梨実験線ではクエンチは1度も起きていない」と書くようにとの指示が編集部経由で伝わってくる」、不自然な指示だ。「L0系の車両の図面にはトイレが見当たりません」、「高速走行する車両におけるトイレに関する技術が確立できていないと推測」、「「高速走行」では「トイレ」まで難しくなるとは初めて知った。 「もし誘導集電方式だけで車内電源を確保できるのであれば、改良型先頭車を2両製造して同じ編成に組み込むはずです。それをやっていないのは、誘導集電の技術が十分に磨かれていないことを意味します」、「JR東海の技術に対して、国の技術評価委員会の突っ込みが足りない」、その通りだ。 「本書の目的は批判ではなく、建設的な議論を進めることです」、なるほど。 「超電導磁石のクエンチではなかったことが判明した」、確かにそのようだ。 「国民の不安を払拭するためには、情報開示も含めて川辺氏の提唱するような「国民の幅広い議論」が必要かもしれない」、同感である。 東洋経済オンライン 小林 一哉氏による「静岡リニア「トンネル湧水全量戻し」本当の問題点 有識者会議の結論は妥当だったが静岡県は反発」 「1)」がどうして『湧水全量戻し 示さず』になるのか、理解できない。しかし、「全量戻せないならばおそらくは工事はできないだろうと思う人が多い」と述べ、約2年間もかけた議論を粉々に打ち砕いてしまった」、「中間報告」の意味はどこにあったのだろう。 地元マスコミにも批判されるような「結論」を出すよう「有識者会議」には、意味がないようだ。 こじれ切った「水」問題、改めて中立的な「有識者会議」を作り、「JR東海」、「静岡県」とも冷静になって、ゼロから議論してゆくほかないのではなかろうか。
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JR一般(その1)(JR東労組 大量脱退の背景に何があったの タブーに切り込んだ「暴君」著者インタビュー、リニアとコロナ JR東海を襲う「二重苦」 ドル箱の新幹線に大逆風、JR西日本が「赤字ローカル線」公表 廃線議論のための3つの論点とは) [産業動向]

本日は、JR一般(その1)(JR東労組 大量脱退の背景に何があったの タブーに切り込んだ「暴君」著者インタビュー、リニアとコロナ JR東海を襲う「二重苦」 ドル箱の新幹線に大逆風、JR西日本が「赤字ローカル線」公表 廃線議論のための3つの論点とは)を取上げよう。

先ずは、やや古いが、2019年7月29日付け東洋経済オンライン「JR東労組、大量脱退の背景に何があったの タブーに切り込んだ「暴君」著者インタビュー」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/292377
・『JR東日本で最大の労働組合・JR東労組から2018年春、3万3000人もの組合員が一挙に脱退し、同労組の組合員はあっという間に3分の1に激減した。いったい、何が起きたのか。 旧国鉄時代から労働運動を牽引し、JR東労組の初代委員長を務めた松崎明氏がJR東日本を支配していく様子を丹念な取材で描いたのが牧久氏の著書『暴君』(小学館)である。 元日経新聞記者として長年にわたり鉄道業界を取材してきた牧氏には、国鉄分割民営化の軌跡を追った『昭和解体』(講談社)という著書がある。この『昭和解体』が表の歴史だとすれば、『暴君』はまさに裏の歴史である。松崎氏は“JRの組合のトップ”という表の顔の裏に、極左組織・革マル派の最高幹部の顔を持っていたのだ。 JR最大のタブーともされる組合問題をなぜ真正面から取り上げたのか。牧氏に聞いた(Qは聞き手の質問、Aは枚氏の回答)』、「組合員はあっという間に3分の1に激減」「労組の「トップ」が、「極左組織・革マル派の最高幹部の顔を持っていた」、かねて噂にはなっていたが、事実だったようだ。
・『マスコミ側に「恐怖心」があった  Q:JR東日本の鉄道路線を多くの国民が毎日利用しており、同社は就職したい会社としても学生に高い人気があります。その会社の内部で、しかも現代の日本で、本書に書かれているようなことが起きていたというのが信じられません。世間が持つJR東日本のイメージと、なぜここまでかけ離れているのでしょうか。 A:われわれマスコミが正確に報道しなかったからです。恐怖心がマスコミの側にあったのだと思います。 Q:恐怖心? A:そうです。決定的となったのは、1994年にJR東日本管内のキヨスクの売り場から『週刊文春』が全部排除された問題です。小林峻一氏の「JR東日本に巣くう妖怪」と題する連載記事にJR東日本の労使が激しく反発、キヨスクでの販売拒否という信じがたい行動に出たのです。 あの当時は新聞も雑誌の駅売りの比率が非常に高く、キヨスクで販売できないと経営的には非常に痛い。キヨスクに『週刊文春』だけ並ばないという状態が3カ月も続きました。結局文春が「全面降伏」して事態は収束しましたが、こうなるとマスコミの側で自己規制が働き、松崎明氏や異常な労使関係の問題は扱いづらくなってしまいました。) それでも、2006年には『週刊現代』でジャーナリストの西岡研介氏が「テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実」を連載しました。しかし、この記事は松崎・組合側から50件もの訴訟を受けたのです。私も日経新聞の社会部長時代に名誉毀損で3件の訴訟を受けた経験がありますが、当事者として訴訟を受けるのは大変なことはよくわかります。 (牧 久氏の略歴はリンク先参照) メディアがこの問題を扱うのはどうしても慎重にならざるをえない。だからJRの内部で起きていることが世間に伝わらなかったのだと思います。 Q:では、今回、『暴君』を執筆した理由は? A:この年になって、知っていながら書かなかった、書けなかったことへの苦い思いと強い反省の念がふつふつとわいてきたんです。われわれがやるべき仕事を放棄しているようなものだから。生きている間に書き残したいという思いもありました。 本が出たら、昔の国鉄記者クラブの仲間や私がお世話になった人たちが、「ご苦労さん会」をやってくれました。みな新聞記者として、知っているのに書かなかった、書けなかったことを無念に感じていたようです。「お前はよくぞ書いてくれた」と言ってくれましたよ』、「小林峻一氏の「JR東日本に巣くう妖怪」と題する連載記事にJR東日本の労使が激しく反発、キヨスクでの販売拒否という信じがたい行動に出たのです。 あの当時は新聞も雑誌の駅売りの比率が非常に高く、キヨスクで販売できないと経営的には非常に痛い。キヨスクに『週刊文春』だけ並ばないという状態が3カ月も続きました。結局文春が「全面降伏」して事態は収束しましたが、こうなるとマスコミの側で自己規制が働き、松崎明氏や異常な労使関係の問題は扱いづらくなってしまいました」、このような騒ぎがあったことを思い出した。それにしても、「結局文春が「全面降伏」して事態は収束」、とは現在の「文春砲」で築いた圧倒的地位からは考えられないような事態だ。
・『JR東が毅然とした態度をとれなかった理由  Q:JR東日本の歴代の経営者は、組合に対してなぜ毅然とした態度をとらなかったのでしょうか。 A:分割民営化に際して、JR東日本の初代社長は元運輸事務次官の住田正二氏に決まりました。ただ、あのとき、民営化を推し進めた国鉄の若手幹部「改革3人組」の1人、井手正敬氏が住田氏を補佐すると誰もが思っていました。松田昌士氏、葛西敬之氏、井手氏という3人組の中では井手氏が最年長で、改革派の“総指揮官的な立場”にいたからです。 一方で、松田氏は旧国鉄では珍しい北海道大学出身で企画畑。東大出身者が幅を利かす旧国鉄時代には運輸省に出向していた時期もあります。住田氏にとっては旧国鉄のエリートコースを走り続けた、やり手の井手氏や葛西氏よりも、運輸省時代に部下として使ったことがあり気心も知れている松田氏がやりやすかったのでしょう。) 松田氏自身はJR北海道に行くと思っていたのですが、「JR東日本で住田を助けて、労務をやれ」ということになりました。JR西日本に行った井手氏、JR東海に行った葛西氏は、当時JR東労組の委員長だった松崎明氏の“革マルの本性”を見抜いて、いち早く決別しましたが、松田氏は松崎氏の力量をJR東日本の経営改革に活用しようと考え、積極的に手を握ったと、今回の取材で語りました。 また、松田氏は国鉄時代に手ごわい組合を相手にしてきた経験豊富な井手氏や葛西氏のような労務屋さんではないので、JR東日本で労務をうまくやっていくためには、松崎明氏と手を握らざるをえなかったという側面もあるでしょう。 2012年から2018年まで社長を務めた冨田哲郎氏が、2018年春の賃上げ交渉で会社側がJR東労組と全面対決に踏み切る姿勢を見せたわけですが、松田氏、大塚陸毅氏、清野智氏のJR東日本の歴代社長は労使関係の正常化は時間をかけて軟着陸するしかないと考えていました。それが2018年の動きにつながったともいえます。それにしても、ここまで時間をかけなければ変わらなかったというのはやっぱりおかしい』、「松田氏は国鉄時代に手ごわい組合を相手にしてきた経験豊富な井手氏や葛西氏のような労務屋さんではないので、JR東日本で労務をうまくやっていくためには、松崎明氏と手を握らざるをえなかったという側面もある」、「それにしても、ここまで時間をかけなければ変わらなかったというのはやっぱりおかしい」、その通りだ。
・『多くの組合員はじっと見ていた  Q:昨年、JR東労組から大量に組合員が脱退したのはなぜですか。 A:発端は春闘での賃上げをめぐってJR東労組がスト権を確立し、ストを構えたことです。JR東労組は全組合員一律のベースアップや格差ベアの永久的根絶を要求しましたが、実力によって賃金に差を付けることは当たり前で、どこの会社でもやっていることです。一律の賃上げを会社がのめないのは当然です。 かといって、平成の終わりの時代に昭和のような大規模な交通ストに突入するようなことがあれば、世間の厳しい目が労使双方に向けられるのは必至でしょう。 しかし、ここで会社側は一歩も引かず、JR東日本発足以来、JR東労組との間で結んできた、労使ともに過激な手段に訴えることなく平和的手段で問題を解決するという「労使共同宣言」の失効を宣言しました。この過程でJR東労組の12の地方本部が、強硬姿勢を崩さない地本と、それ以外の地本に分裂し、組合員の脱退に拍車がかかったのです。 松崎氏が組合を私物化し、当局に業務上横領容疑で送検されるなど失意のうち亡くなったのが2010年末ですから、それから8年経過してのことです。松崎氏の行動や発言には、彼の革命理論としては正しい部分もありましたが、松崎氏の死後にそれを受け継ぐリーダーは誰もいなかった。松崎氏は自らの権力を守るため、力のある後継候補を次々と排除したためです。多くの組合員はそれをじっと見ていたのでしょう。 Q:JR東日本の組合問題は今後どのような方向に向かうのでしょうか。 A:ここに至るまで30年もの時間がかかったのですから、JR東日本の経営者も性急に事を進めず、時間をかけて慎重に判断していくのではないでしょうか。 Q:『昭和解体』と『暴君』で、国鉄からJRにつながる歴史はすべて書き尽くしましたか。あるいは第3弾があるのでしょうか。 A:昭和解体の前に『不屈の春雷――十河信二とその時代』(ウェッジ)という本を書いています。これは明治から始まって、十河氏が後藤新平氏と出会い、そして十河氏が新幹線を造るまでの話です。 十河氏は、国鉄内外の誰もが猛反対する中で、当初の建設予算をわざと低く見積もって国会で予算を通した、つまりウソをついてまで新幹線を完成させました。東京オリンピック直前の開業式のときは国鉄を石もて追われ、1人寂しくその様子をテレビで見ていたんです。彼がいなければ、その後、高度成長を遂げる日本の「背骨」となる新幹線はこの世に生まれなかったでしょう』、「会社側は一歩も引かず、JR東日本発足以来、JR東労組との間で結んできた、労使ともに過激な手段に訴えることなく平和的手段で問題を解決するという「労使共同宣言」の失効を宣言しました。この過程でJR東労組の12の地方本部が、強硬姿勢を崩さない地本と、それ以外の地本に分裂し、組合員の脱退に拍車がかかったのです」、冒頭の「JR東労組、大量脱退の背景」が理解できた。「十河氏は、国鉄内外の誰もが猛反対する中で、当初の建設予算をわざと低く見積もって国会で予算を通した、つまりウソをついてまで新幹線を完成させました」、新幹線の真の功労者で、初めて知った。
・『リニアの経済効果を検証すべき  しかしその年(1964年)、皮肉なことに国鉄は赤字に転落し、以降、どんどん赤字が膨らみ、最後に解体され、そして今日、JRができておよそ30年が経ちました。明治から平成に至る鉄道の物語を書き尽くしたという思いはあります。 今、気になっているのはリニア中央新幹線です。日本のものづくりという点において、リニアという技術が、ITなど先端分野で後手に回っている日本の起死回生の武器になる可能性はもちろんありますが、リニアがもたらす経済効果についての検証はきちんと行われているのでしょうか。 もはや東海道新幹線開業時のような元気な時代でもないし、むしろ人口が減少期に入っているのは誰の目にも明らかです。そこに巨額の資金を投入して建設する必要性がどこまであるのか、この点についてメディアはもっと俎上に載せて、議論を盛り上げていくべきではないでしょうか』、「リニア」については、このブログでも紹介しているが、私は新幹線と競合するとして反対の立場だ。

次に、本年2月3日付け東洋経済オンライン「リニアとコロナ、JR東海を襲う「二重苦」 ドル箱の新幹線に大逆風」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/573358
・『名古屋城天守閣の南南東、愛知県庁や愛知県警のビルが立ち並ぶ官庁街の一角でリニア中央新幹線の建設工事が進められている。 品川と名古屋を結ぶリニアは、ルートの大半で地下を走る。首都圏や中京圏の都心部では、用地買収の必要がない地下40メートルより深い「大深度地下」と呼ばれる地下区間が使用される。 この大深度区間を含めた本線トンネルはシールドマシンで掘削工事が行われる。名古屋地区におけるシールドマシンの発進拠点の1つが、現在工事中の「名城非常口」である』、「大深度地下」の工事では、外環道の調布市周辺の工事で、予想外の土砂崩れが起こり、工事の安全性そのものに疑問符がつきつつある。
・『2027年のリニア開業は絶望的に  地表から約83メートルの地下に直径37メートルの円形の空間が広がる。シールドマシンはここから出発し、まず品川方面に向けてトンネルを掘り進める。その後、途中で引き返し、今度は逆に名古屋方面に向けて掘り進める。非常口という名称のとおり、リニアの営業運転開始後は異常時の乗客避難や保守作業の拠点として使用される。 首都圏と中京圏を結ぶリニアのルート上には、約5キロメートル間隔で非常口が設置され、首都圏では9カ所、中京圏では4カ所が設置される。この非常口のようにリニアは各所で工事が本格化しているが、唯一着工していないのが静岡工区だ。 リニアのトンネル工事は南アルプスの最深部を掘り進める。工事に伴って発生する湧水が大井川流域の利水者や南アルプスの生物多様性に影響を与えかねないとして、静岡県の川勝平太知事が工事にゴーサインを出さないためだ。 JR東海が目標としていた2027年の品川―名古屋間の開業はもはや絶望的だ。リニア駅周辺の自治体も2027年開業を前提に開発を予定しており、開業時期がいつになるか気をもんでいる。静岡工区の工事をいつ開始できるかわからないため、JR東海も新たな開業時期も見通せないというのが実情だ。) 「リニアの開業延期が静岡のせいにされるのは遺憾だ」。静岡県内からはこうした声も聞こえてくる。「静岡以外でも、工事が遅れているところがあるのではないか」。 実は、冒頭の名城非常口の工事も、掘削中に大量の地下水が噴出して工事が一時中断。そのため、工事完了は予定から1年半遅れの2022年7月となる。ただ、名城非常口の工事担当者は「工事の遅れはリニア全体の工期に影響を与えるものではない」と断言している』、「唯一着工していないのが静岡工区だ」、「JR東海が目標としていた2027年の品川―名古屋間の開業はもはや絶望的だ」、この際、「リニア工事」の中止を検討すべきではなかろうか。
・『東海道新幹線が追い打ち  膠着状態に陥ったリニア工期問題に追い打ちをかけたのが、コロナ禍による東海道新幹線の利用者激減だ。 東海道新幹線はJR東海の鉄道事業の9割を占める、経営の屋台骨というべき存在だ。2020年4月の緊急事態宣言により、同4〜5月における東海道新幹線の輸送量は前年比90%減少した。 6月以降、輸送量はじわじわと盛り返し、11月には同46%減まで回復したが、2020年の年末年始の利用は同68%減まで低下してしまった。 通勤や通学、買い物といった日常利用の多い在来線と比べると、出張や観光目的の利用が多い東海道新幹線の利用頻度はどうしても低くなりがち。新幹線への依存度が大きい分、在来線の割合の高いJR東日本よりも経営的には苦しい。その反面、好材料もある。それは、利用者数が過去20年間で4割近く増えた一方で、運行の効率化により経費は漸減傾向にあり、東海道新幹線の利益率が高くなっているためだ。 JR東海は東海道新幹線の利益率を開示していないため、JR東海単独決算から推計すると、新型コロナの影響を受けなかった2019年4〜9月期は売上高7512億円に対して営業利益は3900億円。売上高営業利益率は実に5割を超える。 新幹線の運行コストは運転士・車掌らの人件費、駅や設備の維持費用、車両や設備の減価償却費などが大半を占める。収入の多寡にかかわらず発生する固定費が中心だ。) コロナ禍の2020年4〜9月期(単独決算)は、売上高が前期比70%減の2217億円、営業損益は1000億円の赤字だった。ところが、2020年10~12月期の売上高は前年同期比51%減の1867億円にとどまり、177億円の営業利益を実現した。通期でも、売上高が前期比5割減程度であれば営業損益を黒字に持ち込むことができるわけだ。 【2021年2月3日10時10分追記】初出時の通期業績に関する表記を修正いたします』、足元の業績は改善傾向のようだ。
・『コロナ長期化ならリニア計画に影響も  2020年11月に行われた決算説明会でJR東海は、運輸収入(在来線を含む)は2021年3月に前年比40%減まで、6月には20%減まで回復するという見通しを発表した。このレベルであれば2022年3月期は営業黒字に復帰する可能性が高い。 問題はコロナの再拡大だ。もし新幹線の利用率が半減以下では営業赤字は解消できない。 コロナ禍があまり長引くようだと、リニアの建設計画にも影響が出かねない。品川―名古屋間の建設費用は約5兆5000億円と見込まれており、そのうち3兆円は政府から借り入れた財政投融資でまかなう。財投の資金使途はリニア工事に限定されており、当面はこの資金を取り崩せば、しのぐことができる。 2020年9月末時点で財投から調達した3兆円のうち、すでに7458億円を取り崩した。工事が佳境を迎え、これを使い切ってしまうと自己資金で賄う必要が生じる。そのときに業績が悪化したままの状況は避けたいはずだ。 これまでのJR東海は毎期数千億円単位で内部留保を積み上げてきた。コロナがなければ今後も同じペースで積み上がっていたはずだ。リニア建設費のうち財投で足りない2.5兆円は、これまでの内部留保の取り崩しや今後積み上がる利益で賄える予定だった。 コロナ禍による旅客収入の減少がもたらす資金不足が続くようだと、当初描いていたシナリオは根本から見直しを迫られることになる』、「コロナ禍」の影響は長引くと考えざるを得ないことも考えると、前述の「リニア工事」の中止を真剣に考えるべきだ。

第三に、4月22日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家の塚崎公義氏による「JR西日本が「赤字ローカル線」公表、廃線議論のための3つの論点とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/302093
・『JR西日本が赤字ローカル線の収支状況を公表した。ローカル線の状況が苦しいのは、ここだけにとどまらない。赤字ローカル線を存続させるのか、廃止してバスなどに代替させるかを、国民的に議論すべき時に来ているのではないだろうか』、興味深そうだ。
・『100円稼ぐのに経費2万5000円以上? 赤字ローカル線の収支は悲惨  JR西日本が赤字ローカル線の収支状況を公表した。過密と過疎が叫ばれて久しいので、ローカル線の赤字が悲惨であることは当然に予想されていたが、それにしてもすごい赤字だ。最悪の路線は、100円の収入を得るために2万5000円以上の経費がかかっている計算だという。 過疎地に暮らす人々にとっては、極めて重要な交通の足であろうが、その路線の赤字を誰かが負担しているということを忘れてはならない。 もう一つ重要なのは、鉄道を廃止しても、同じ区間にバスなどを運行すれば、住民にとって死活問題にはならないのではないか、ということである。 「おらが村には鉄道の駅がある」ということを誇りに感じている人もいるだろう。問題は、そうした誇りのために、他人に巨額の費用を負担してもらっている事態をどう考えるか、である。 以下では、赤字ローカル線を廃止してバス路線に切り替えることの是非について、「存続させるとして、費用は誰が負担すべきか」「費用負担者が納得しているのか」「人口減少社会で永遠に存続させるのは不可能」という3つの観点から論じてみたい』、論点は整理され、もっともだ。
・『赤字ローカル線を存続させるなら費用は誰が負担すべきか  赤字ローカル線の場合には、誰が費用を負担しているのか、明確でない部分もあろう。黒字路線の乗客が負担している部分が大きいのだろうが、株主も負担していることは疑いないし、沿線の自治体などから補助金が投入されているケースもある。) 都市部の黒字路線の乗客が負担するのは、筋が違うのではないか。「都市部の便利な所に住んでいる人が不便な人の分も負担すべき」というのは、一応理屈にはなる。しかし、そうであれば、都市部で私鉄通勤している人や、自動車通勤している人にも負担してもらうべきだ。 これは、「べき論」にとどまらない。潜在的な乗客が私鉄やマイカーなどに逃げてしまえば、JRの収入が減ってしまい、一層都市部の運賃を値上げしなければならない、といった悪循環に陥る可能性があるからだ。 株主が負担するのも、筋が違うだろう。過疎地に住む人のために、株主の利益を削ってローカル線を運転する義務はないからだ。 そうだとすれば、仮に存続させるとした場合には、政府が負担すべきだと思われる。「過疎地に住む人が困っているから、政府が助ける」というのは政府の重要な役割の一つだから、政府が負担するのは自然であろう。 ここで、中央政府なのか自治体なのか、という議論は当然必要だ。すなわち、大都市からの税収で過疎地のローカル線の赤字を補填(ほてん)すべきか、それともその自治体の中で完結すべきか、という議論だ。それはそもそも、地方自治体の財政をどう考えるべきか、という極めて大きな枠組みで議論されるべきであろう』、これは政策負担を中央政府と「地方自治体」でどう分け合うかというかなり難しい問題になる。
・『負担する人の納得は得られているか  日本人は、政府に対しても「かわいそうな人は助けてやれ」と言うだけの人が多く、「かわいそうな人は助けてやれ。そのための増税なら喜んで受け入れるから」「そのためなら、俺たちへの行政サービスを減らしてもいいから」と言う人は少ないのではなかろうか。 しかし、政府が「かわいそうな人」を助けるためには金がかかる。その金をどう捻出すべきなのかを併せて言わないと、政府としては困ってしまう。「かわいそうな人を助ける費用は赤字国債で賄って、子供たちに払わせろ」では無責任だ。増税、もしくは自分たちの行政サービスの縮小が不可避になる。 そうとなれば、国民的な議論が必要だ。自分たちがコストを負担すべきか、誰を優先的に助けるべきか、などを議論した上で、ローカル線の存廃を政治が決めればよい。 筆者は納税者が負担すべきだと考えている。都市部の乗客が負担するという現在の制度を維持するのであれば、都市部の乗客の理解を得なければなるまい。「過疎地のローカル線を維持しなければ運賃は半額になりますが、それでも過疎地のローカル線を維持するために現在の運賃を支払い続けていただけますでしょうか」といったアンケートを取ってはどうだろうか』、この場合、「過疎地」と一括りにしただけでは、判断し難いので、個別の路線毎にブレークダウンする方がよさそうと思うが、やはりそれも無理が多そうだ。
・『人口減少社会でローカル線の存続は困難  高度成長期にも赤字ローカル線の問題はあったが、当時は人口も増えていて経済も発展していたので、今とは状況が異なる。 日本の人口は、今後数十年は間違いなく減っていく。しかも、高度成長期に金の卵たちを都会に送り出した地域では、残った親たちが高齢化している一方で若者が少ないため、これからさらに人口減少が加速する。 そうした中で、乗客が何人まで減ったら廃線にするのか、といった基準も必要になる。「乗客が1人でもいる限り、廃線しない」という選択肢も当然あり得るが、納税者や都会の通勤客が納得するとは思えない。 この問題についても、人口減少と過疎地の問題として広範な議論が必要だ。例えば、人口3人の離島に郵便を届けるコストを全国民が負担すべきか、といったものだ。 筆者は、補助金を支払って問題を解決すべきだと考えている。「ローカル線をバス路線に転換してくれたら、沿線住民に多額の補助金を支払います」「人口3人の離島から引っ越してくれたら多額の補助金を支払います」という具合である。 赤字企業が希望退職を募るときには、割増退職金を支払う。それと同様に、こちらの要望に応えてくれた人にはそれに応じて謝礼を払う、というのが解決策になるのではなかろうか。 本稿は、以上である。なお、本稿は筆者の個人的な見解である。また、わかりやすさを優先しているので、細部は必ずしも厳密ではない』、現実には、既に「ローカル線をバス路線に転換した」「沿線住民」や、少人数の「離島」から「引っ越した」住民に、今さら「謝礼」を払うとすえば歯止めがなくなってしまう。アイデア倒れで、余りに粗削りだ。本人も「細部は必ずしも厳密ではない」と認めているが、やはり単なる頭の体操に過ぎないようだ。
タグ:JR一般 (その1)(JR東労組 大量脱退の背景に何があったの タブーに切り込んだ「暴君」著者インタビュー、リニアとコロナ JR東海を襲う「二重苦」 ドル箱の新幹線に大逆風、JR西日本が「赤字ローカル線」公表 廃線議論のための3つの論点とは) 東洋経済オンライン「JR東労組、大量脱退の背景に何があったの タブーに切り込んだ「暴君」著者インタビュー」 「組合員はあっという間に3分の1に激減」「労組の「トップ」が、「極左組織・革マル派の最高幹部の顔を持っていた」、かねて噂にはなっていたが、事実だったようだ。 「小林峻一氏の「JR東日本に巣くう妖怪」と題する連載記事にJR東日本の労使が激しく反発、キヨスクでの販売拒否という信じがたい行動に出たのです。 あの当時は新聞も雑誌の駅売りの比率が非常に高く、キヨスクで販売できないと経営的には非常に痛い。キヨスクに『週刊文春』だけ並ばないという状態が3カ月も続きました。結局文春が「全面降伏」して事態は収束しましたが、こうなるとマスコミの側で自己規制が働き、松崎明氏や異常な労使関係の問題は扱いづらくなってしまいました」、このような騒ぎがあったことを思い出した。それにしても、 「松田氏は国鉄時代に手ごわい組合を相手にしてきた経験豊富な井手氏や葛西氏のような労務屋さんではないので、JR東日本で労務をうまくやっていくためには、松崎明氏と手を握らざるをえなかったという側面もある」、「それにしても、ここまで時間をかけなければ変わらなかったというのはやっぱりおかしい」、その通りだ。 「会社側は一歩も引かず、JR東日本発足以来、JR東労組との間で結んできた、労使ともに過激な手段に訴えることなく平和的手段で問題を解決するという「労使共同宣言」の失効を宣言しました。この過程でJR東労組の12の地方本部が、強硬姿勢を崩さない地本と、それ以外の地本に分裂し、組合員の脱退に拍車がかかったのです」、冒頭の「JR東労組、大量脱退の背景」が理解できた。「十河氏は、国鉄内外の誰もが猛反対する中で、当初の建設予算をわざと低く見積もって国会で予算を通した、つまりウソをついてまで新幹線を完成させました」、新幹 「リニア」については、このブログでも紹介しているが、私は新幹線と競合するとして反対の立場だ。 東洋経済オンライン「リニアとコロナ、JR東海を襲う「二重苦」 ドル箱の新幹線に大逆風」 「大深度地下」の工事では、外環道の調布市周辺の工事で、予想外の土砂崩れが起こり、工事の安全性そのものに疑問符がつきつつある。 「唯一着工していないのが静岡工区だ」、「JR東海が目標としていた2027年の品川―名古屋間の開業はもはや絶望的だ」、この際、「リニア工事」の中止を検討すべきではなかろうか。 足元の業績は改善傾向のようだ。 「コロナ禍」の影響は長引くと考えざるを得ないことも考えると、前述の「リニア工事」の中止を真剣に考えるべきだ。 ダイヤモンド・オンライン 塚崎公義氏による「JR西日本が「赤字ローカル線」公表、廃線議論のための3つの論点とは」 論点は整理され、もっともだ。 これは政策負担を中央政府と「地方自治体」でどう分け合うかというかなり難しい問題になる。 この場合、「過疎地」と一括りにしただけでは、判断し難いので、個別の路線毎にブレークダウンする方がよさそうと思うが、やはりそれも無理が多そうだ。 現実には、既に「ローカル線をバス路線に転換した」「沿線住民」や、少人数の「離島」から「引っ越した」住民に、今さら「謝礼」を払うとすえば歯止めがなくなってしまう。アイデア倒れで、余りに粗削りだ。本人も「細部は必ずしも厳密ではない」と認めているが、やはり単なる頭の体操に過ぎないようだ。
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環境問題(その12)(原発は「グリーンエネルギー」と言えるか?「脱原発vs原発回帰」でEU分裂、冷蔵庫こそ「フードロスの原因」と断言する理由 「食べ物を保存するための装置」のはずがなぜ?) [経済政策]

環境問題については、1月8日に取上げた。今日は、(その12)(原発は「グリーンエネルギー」と言えるか?「脱原発vs原発回帰」でEU分裂、冷蔵庫こそ「フードロスの原因」と断言する理由 「食べ物を保存するための装置」のはずがなぜ?)である。

先ずは、1月12日付けNewsweek日本版が掲載したゾーエ・ストロズースキ氏による「原発は「グリーンエネルギー」と言えるか?「脱原発vs原発回帰」でEU分裂」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/01/eu-284.php
・『<脱炭素の過程における原子力発電を認めるか否かで、ドイツとフランスなど方針が異なる国同士でEUが割れている> EUの欧州委員会は1月1日、脱炭素化への過程で原発を「グリーンエネルギー」に認定し活用する方針を発表したが、EU内は支持と不支持で割れている。脱原発を掲げるドイツは反対し、2045年までに温室効果ガスの実質排出ゼロを目指すための「つなぎ」の電源としては天然ガスを重視すると強調した。 EU諸国の中ではオーストリアとルクセンブルクも原発に反対しているが、チェコやフィンランド、フランスは化石燃料から脱却するには原発が不可欠だと考えている。ドイツは昨年12月末に国内に残る6基の原発のうち3基を停止。今年末までに残る3基を停止する予定だが、隣国のフランスは既存の原発の改良や新規設営を目指すなど原発回帰路線だ。 原発は二酸化炭素をほとんど出さないが、有害な放射性廃棄物が残り続ける。一方で天然ガスも、燃やせば石炭ほどではないものの二酸化炭素を排出すると、環境保護主義者たちは批判している』、「ドイツ」は「「つなぎ」の電源としては天然ガスを重視」、としたようだが、その後のロシアのウクライナ侵攻により姿勢が変わった可能性がある。「オーストリアとルクセンブルク」も同様である。独電力大手が石炭に回帰 停止している石炭火力発電所の稼働検討しているようだ。

次に、4月17日付け東洋経済オンラインが掲載した元朝日新聞論説委員でフリーランサーの稲垣 えみ子 氏による「冷蔵庫こそ「フードロスの原因」と断言する理由 「食べ物を保存するための装置」のはずがなぜ?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/582213
・『疫病、災害、老後……。これほど便利で豊かな時代なのに、なぜだか未来は不安でいっぱい。そんな中、50歳で早期退職し、コロナ禍で講演収入がほぼゼロとなっても、楽しく我慢なしの「買わない生活」をしているという稲垣えみ子氏。不安の時代の最強のライフスタイルを実践する筆者の徒然日記、連載第53回をお届けします』、興味深そうだ。
・『フードロスが減らない根本理由  先日、おそらくは日本最高レベルなんじゃ……と勝手に自負している、わが7年にわたる「フードロスゼロ生活」の実態を具体的にご紹介させていただいた。机上の空論でも掛け声でもない、まごう事なき貴重な実体験ゆえ、それなりに面白く読んでいただければ体を張った者としてはこれ以上の幸せはないと思うところであります。 稲垣えみ子氏による連載53回目です。 で、それはいいんだが。 改めて冷静に読み返してみると、われながらあまりのレベルの高さ(低さ?)に、「私もやってみたい!」と思う方がどれほどおられるか、なんとも確信が持てなくなってきた。っていうか、正直言って一人でもおられるかどうかすら怪しい気がする。 でもまあいいの。自分でコントロールできないことをいくら思い悩んでも時間のムダですからね。構わずどんどん話を先に進める。 このようにフードロスゼロで暮らすことは現実に可能だし、加えて、多くの人ができるならフードロスなど出したくないと思っていることもまた事実であろう。そう、みんなやる気はちゃんとあるのだ。だがしかし、現実にはほとんどの人がフードロスを出しまくる人生からどうしても縁を切ることができないでいる。 それは一体「なぜ」なのか。 この「なぜ」を解明することなく、いくら「フードロスをなくしましょう」と呼びかけたところで何も変わらないのではなかろうか。 つまりは「なぜ」がいまだに解明されていないからこそ、このように十年一日のごとく「買いすぎないようにしましょう」「作りすぎないようにしましょう」という呼びかけだけがむなしく響いているのではなかろうか。 ってことで、まずはその巨大な謎の解明が急務だと個人的に思っているわけです。 とはいえ、それが簡単にわかるくらいならとっくに問題は解決しているわけで、ってことは、きっと少なからぬ人が解明を試みては跳ね返されてきたに違いなく、それを考えればこれこそは人類に残された三大ミステリーの一つと言っても過言ではなかろう(注:過言です)。 で、不肖私、実はその巨大な謎の答えを知っているのであります! というのは、前も書いたが、私もそもそもはフードロスを普通に出しまくっており、しかし7年前を境にピタッと、フードロスという単語そのものがわが人生から消えたのである。 ってことは、注目すべきは7年前だ。7年前に一体何が起きたのか?その出来事の中に、フードロスをなくすための決定的な要因が含まれていることはどう考えても疑いのないことである』、「現実にはほとんどの人がフードロスを出しまくる人生からどうしても縁を切ることができないでいる。 それは一体「なぜ」なのか。 この「なぜ」を解明することなく、いくら「フードロスをなくしましょう」と呼びかけたところで何も変わらないのではなかろうか」、その通りだ。
・『冷蔵庫の電源を抜いたらフードロスゼロになった  結論から言う。 私は7年前に、冷蔵庫の電源を抜いた。そうしたらいきなり、そうその電源を抜いたその日から、いきなりフードロスがゼロになったのである。 いや……これってどう考えてもおかしいですよね。だって、言うまでもなく冷蔵庫とは食べ物を保存するための装置。つまりは「フードロスを減らすための装置」と言い換えても良いはずである。常識的に考えれば、冷蔵庫をなくしたらフードロスが増えるはずではないか。 でも現実はその真逆だった。一番びっくりしたのは私である。事実は小説より奇なりと言いますが、いやホント、何事もやってみなければわかりませんな。 ってことで、なぜそんな予想だにしなかったことが起きたのか、順を追って書く。 冷蔵庫をやめて起きたことその1:食べ物がうかつに買えなくなる まずは何と言ってもこれである。 ……って言うと、少なからぬ人が「だよねー」「冷蔵庫がないと毎日外食になっちゃうよねー」などとシタリ顔でおっしゃる。イヤイヤそーなんですヨ、そもそも自炊なんてやめちゃえばフードロスとか出さなくて済むわけで……なーんて話じゃありません! 冷蔵庫がないと食べ物がまったく買えなくなるというわけではない。私、野菜も豆腐もちゃんと買っております。つまりは普通に生鮮食品を買い、普通に自炊している。それは冷蔵庫がなくたってちゃんとできたのだった。ただ、そこにはいくつかちょっとしたコツがあるというだけのことだ。 で、その「ちょっとしたコツ」の一丁目一番地が、「食材を買いすぎない」ということである。 え、そんなことなら私もやってるって?うん、そうでしょうそうでしょう。誰だって食材を無駄にしたくないもんね。でもたぶん、あなたがイメージする「買いすぎない」ってことと、冷蔵庫を持っていない私が日々やっている「買いすぎない」ってことは、おそらくそのレベルが月とスッポンほど異なるはずである。 私の食生活の基本は「その日に買ったものはその日に食べる」。これが原則だ。実に単純な発想だが、これならば食材を保管しなくとも済むので、冷蔵庫がなくとも何の問題もなくやっていけるのだ』、「私の食生活の基本は「その日に買ったものはその日に食べる」。これが原則だ。実に単純な発想だが、これならば食材を保管しなくとも済むので、冷蔵庫がなくとも何の問題もなくやっていけるのだ」、なるほど。ただ、通常は安い商品を多目に買って、それを徐々に使えば、節約になる筈だが、それは放棄したようだ。
・『「お金があるのに買えない」人生初の異常事態  ただ唯一の「難点」は、やってみて初めてわかったんだが、このようなことを始めると、どんなにキラキラしたスーパーに行っても、ほとんど何も買うことができないということなのだった。 その「買えなさ」といったら衝撃的なレベルで、仕事帰りにいつものようにスーパーに寄ったはいいものの、結局は一周しただけで何も買えずにがっくりと肩を落として出てくることも少なくなかったのである。 だってですよ、想像してみてください。 例えばある日、ハクサイを買ったとしよう。無論、買いすぎぬよう4分の1カットの小さいやつを選ぶ。それでも1日で食べきるのは100%無理だ。 そうなんです。先ほど「その日に買ったものはその日に食べる」と書いたが、それはあくまで原則というか目標であって、一人暮らしとなれば現実にはどうやっても、つまりは必死にシャクシャク食べたところでどうやってもその日にはなくならないものが多いんである――ってことがやってみて初めてわかった。 4分の1のハクサイだったら最低3日はかかる。となれば、3日間は他の野菜なんぞ買ってる場合じゃない。ってことで、スーパーに行けば特売のキャベツなどに一瞬手が伸びるんだが、いや待て待てそんなことしてる場合かとグッとこらえることになる。買ったものを腐らせぬようにするためには、とにかくそれを必死に食べきってから次を買うしかないのである。 ってなことになると、いったい何が起きるかと言いいますと、何度も言うが、ほぼ何も買えないんである。どう頑張っても一度に数百円しか使うことができない。) なんというか、実に不思議な心持ちであった。お金がないから「買いたくても買えない」ってことはこれまでだって何度も経験した。でも、お金があろうがなかろうがそもそも「買いたくても買えない」なんて、どう考えても人生初の異常事態である。なんというか、これはこれで寂しいというか物足りないような気もして、どうもフクザツである』、「買ったものを腐らせぬようにするためには、とにかくそれを必死に食べきってから次を買うしかないのである」、「「買いたくても買えない」なんて、どう考えても人生初の異常事態である・・・これはこれで寂しいというか物足りないような気もして、どうもフクザツである」、なるほど。
・『「食べもしないもの」を買いまくっていた日々  こんな妙チキリンな日々を過ごすうちに、私はふと気づいた。 いうまでもなく、私という人間は、冷蔵庫を使っていようが使っていまいが同一人物である。つまりは急に少食になったとか、そういうことはまったくない。それなのに、冷蔵庫をやめた途端、食べ物を買う量が激減した。当然、それに使うお金も激減した。 ってことは……結論は一つしかないのであった。 私はこれまで、ずーっと長い間、「食べもしないもの」を、来る日も来る日も貴重なお金を使って、買って買って買いまくっていたんである。 なぜそんなことをしていたのかといえば、それは冷蔵庫があったからだ。「とりあえず冷蔵庫」に入れておいて、いつか食べれば良いと思っていたからだ。だからこそ、カゴいっぱいに食品を詰め込んで、2480円とか当たり前にレジで支払っていたのである。 もちろん「いつか」食べることもあった。でも考えたくないことだが、圧倒的に多くのものは、その「いつか」が来ぬまま冷蔵庫の奥へと追いやられてすっかり忘却の彼方。何かの拍子に発掘された時にはとっくに干からび、かび、あるいは腐ってベトベトになり、顔をしかめて捨てられていたに違いないんである。 だって、こうして冷蔵庫をなくしてあらゆるものをちゃんと「食べきって」みればどう頑張っても数百円程度のものしか買えないってことはですよ、その差額の1000円とか2000円とかで買ったものは、結局ゴミ箱行きになっていた可能性しかないではないか。 いやはやなんということでしょう! その事実も恐ろしいが、もっと恐ろしいのは、もし私が冷蔵庫をやめていなければ、きっと死ぬまでその事実に気づくことはなかったに違いないということだ。) 冷蔵庫を使うことが当たり前になった現代人は、自分が生きていくためにどれほどの食べ物が必要なのかがまったくわからなくなってしまっている。 そもそもほとんどの人は、ものを「食べきってから次を買う」体験などほぼしたことがないんじゃないだろうか?まだ大根を食べきらぬうちにネギやら人参やらピーマンやらトマトやら多種多様な食材を次々買い足していくのはごく普通の行動だ。 結果、いつだって冷蔵庫はあれやこれやの食べ物でいっぱいで、中に一体何が入っているのかを日々把握し続けることすら大事業すぎて絶対無理である。となれば、今日の献立にたまたま大根おろしを添える場合は「ああ大根があってちょうどよかった」と思うけれど、一本の大根ではたして何日生きられるのかを考える機会など決して訪れない。 なので、結局は何がどれだけ買ってあっても「もしかして足りないかも」という不安に苛まれることになる。冷蔵庫がパンパンじゃないと心配というのは、ごく一般的な現代人の感覚であろう』、「冷蔵庫がパンパンじゃないと心配というのは、ごく一般的な現代人の感覚であろう」、その通りだ。
・『人間が食べられる量は驚くほど少ないという事実  でも、大根を一本買って、それを食べてしまってから次の野菜を買うってことを一度でもやってみればわかる。心配なんぞどこにもない。大根一本じゃあさすがに……というのであれば、今冷蔵庫にあるものをまずは食べつくしてから次の買い物に行くということでも良い。 それをやりとげることがどれほど大変なことか!人間が食べられる量など、どれほど欲張りだろうが食いしん坊だろうが驚くほどたいしたことないんである。 ……ってことを知らぬままでいると、「フードロスを出さぬよう無駄なものは買わないで」といくら呼びかけられたところで、一体どこから先が無駄なのかさっぱり想像もつかないので努力したくとも努力のしようがない。だってそもそも無駄なものなんて買っているつもりなどさらさらないのだから。とりあえず冷蔵庫に入れておけばいいんだからね! そうなのだ。この永遠の「とりあえず」を保証してくれる魔法の箱が存在する限り、「今ここ」で本当に必要なものの量などどうしてわかるだろう? ってことで、まずは冷蔵庫とフードロスの切っても切れない深い関係がわかっていただけただろうか? 次回はさらに一歩進んで、冷蔵庫に「食べきれないもの」がどこまでもたまってしまうもう一つの強力な原動力、みんな大好きな「あるもの」についてご紹介したい』、「この永遠の「とりあえず」を保証してくれる魔法の箱が存在する限り、「今ここ」で本当に必要なものの量などどうしてわかるだろう?」、さすが「魔法の箱」を捨て、「フードロス」と無縁になった筆者ならではの言葉だ。
タグ:環境問題 (その12)(原発は「グリーンエネルギー」と言えるか?「脱原発vs原発回帰」でEU分裂、冷蔵庫こそ「フードロスの原因」と断言する理由 「食べ物を保存するための装置」のはずがなぜ?) Newsweek日本版 ゾーエ・ストロズースキ氏による「原発は「グリーンエネルギー」と言えるか?「脱原発vs原発回帰」でEU分裂」 「ドイツ」は「「つなぎ」の電源としては天然ガスを重視」、としたようだが、その後のロシアのウクライナ侵攻により姿勢が変わった可能性がある。「オーストリアとルクセンブルク」も同様である。独電力大手が石炭に回帰 停止している石炭火力発電所の稼働検討しているようだ。 東洋経済オンライン 稲垣 えみ子 氏による「冷蔵庫こそ「フードロスの原因」と断言する理由 「食べ物を保存するための装置」のはずがなぜ?」 「現実にはほとんどの人がフードロスを出しまくる人生からどうしても縁を切ることができないでいる。 それは一体「なぜ」なのか。 この「なぜ」を解明することなく、いくら「フードロスをなくしましょう」と呼びかけたところで何も変わらないのではなかろうか」、その通りだ。 「私の食生活の基本は「その日に買ったものはその日に食べる」。これが原則だ。実に単純な発想だが、これならば食材を保管しなくとも済むので、冷蔵庫がなくとも何の問題もなくやっていけるのだ」、なるほど。ただ、通常は安い商品を多目に買って、それを徐々に使えば、節約になる筈だが、それは放棄したようだ。 「買ったものを腐らせぬようにするためには、とにかくそれを必死に食べきってから次を買うしかないのである」、「「買いたくても買えない」なんて、どう考えても人生初の異常事態である・・・これはこれで寂しいというか物足りないような気もして、どうもフクザツである」、なるほど。 「冷蔵庫がパンパンじゃないと心配というのは、ごく一般的な現代人の感覚であろう」、その通りだ。 「この永遠の「とりあえず」を保証してくれる魔法の箱が存在する限り、「今ここ」で本当に必要なものの量などどうしてわかるだろう?」、さすが「魔法の箱」を捨て、「フードロス」と無縁になった筆者ならではの言葉だ。
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パンデミック(経済社会的視点)(その22)ウィズコロナVSゼロコロナ(「ウィズコロナ」に転換したら何が起こるか? 中国が恐れる不都合な事態 中国はなぜゼロコロナ政策に固執するのか、上海ロックダウン 阿鼻叫喚の舞台裏((1)混乱の元凶は上海に「ゼロコロナ」を強要した中国中央政府、(2)習主席の子飼いも市民“ガン無視”…豊かになった上海人に「自由」の目覚め) [パンデミック]

パンデミック(経済社会的視点)については、4月10日に取上げたばかりだが、今日は、(その22)ウィズコロナVSゼロコロナ(「ウィズコロナ」に転換したら何が起こるか? 中国が恐れる不都合な事態 中国はなぜゼロコロナ政策に固執するのか、上海ロックダウン 阿鼻叫喚の舞台裏((1)混乱の元凶は上海に「ゼロコロナ」を強要した中国中央政府、(2)習主席の子飼いも市民“ガン無視”…豊かになった上海人に「自由」の目覚め)である。

先ずは、3月24日付けJBPressが掲載したジャーナリストの福島 香織氏による「「ウィズコロナ」に転換したら何が起こるか? 中国が恐れる不都合な事態 中国はなぜゼロコロナ政策に固執するのか」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/69430
・『現在、国際社会にとってウクライナ戦争が最も深刻な大事件なので、メディアはしばし新型コロナウイルス感染症やオミクロン株のことを忘れたかのようだが、実は中国では相変わらず厳しいゼロコロナ政策が採られ、吉林省長春、上海など多くの地域で都市封鎖、地域封鎖が続けられている。 3月22日に深圳の都市封鎖が解除されたかと思えば、今度は遼寧省瀋陽市全市の住宅区、農村のロックダウンが始まった。早い話が、いくらゼロコロナ政策を続けていても、オミクロン株の感染拡大は防げていない。 幸い死者数はさほど増加しておらず、中国のゼロコロナ政策は成功している、という当局の姿勢に変化はないが、経済、生活に対する悪影響は深刻で、一体いつまでこうしたゼロコロナ式都市封鎖を続けていくのか、という恨み節がそろそろ隠せなくなっている』、興味深そうだ。
・『続けていくべきか?党内専門家の間でも議論  ゼロコロナ政策とは中国語で「動態清零」と呼ばれ、感染者が見つかると、その感染者が行動した地域を丸ごと封鎖し、徹底的なPCR検査によって感染が広がっていないと確認されるまで物流や人流を凍結させるやり方だ。 中国は2020年1月に武漢で感染拡大してから、習近平が自ら指揮をとるゼロコロナ政策を、コロナ対策の基本としてきた。このやり方で、2月の北京冬季オリンピック、3月のパラリンピックも強引に成功させたのだった。 だが、実のところ冬季五輪前から感染力の極めて強いオミクロン株が中国でも拡大しており、強感染力の感染症をゼロコロナ政策で防ぐのは事実上無理ではないかという議論が党内専門家の間でずっと続いている。 3月11日の全人代閉幕時の李克強首相の記者会見では、ゼロコロナ政策についての質問に「起こり得る変化に速やかに対応しつつ、少しずつ物流や人の行き来を正常化させていく」と答え、中国もついにゼロコロナ政策を軌道修正していくというシグナルではないか、という見方もあった』、「李克強首相」がウィズコロナへの転換を示唆したとは初めて知った。
・『「最少の代償で最大の防疫効果を」と習近平  中国の2022年の経済成長目標は5.5%と国際社会の予想よりもずっと低い。中国経済が直面する状況を、非常に厳しく見積もっているからだ。2021年第1四半期は前年同期比18.3%で、他国に先駆けてコロナ禍からいち早く経済回復基調に乗ったかのように見えた。だが第3四半期は4.9%、第4四半期は4.0%と一気に減速した。その原因の1つが、ゼロコロナ政策の長期化だったと見られている。 他国に比べて新型コロナの感染が広がっていないにもかかわらずゼロコロナ政策の方針に従って大規模な地域封鎖や隔離を実施し、経済が戻りかけては、またブレーキをかけてしまう。その繰り返しが消費を冷え込ませ、需要の縮小に拍車をかけたというわけだ。 だが、中国国家衛生健康委員会副主任で国家疾病コントロール局の王賀勝局長は「ゼロコロナ政策が中国の国情に合っており、科学的にも正しく効果も上がっていることは、事実が証明している」と3月18日の会見で発表。ゼロコロナ政策が一部の社会生活や生産に悪影響を与えているとしても、この影響は短期的で範囲も限定的だとして、政策の見直しの可能性を否定した。いわく「どんな感染症対策であっても一定の代償は支払わねばならない。人民の生命の安全と身体の健康を守るために、代償を支払う価値はあった」。 中国規律監督委員会サイトによれば、習近平は3月17日に中央政治局常務委員会議を招集し、防疫工作における「ゼロコロナ政策」の社会コストについて、最小の代償で最大の防疫効果を実現し、経済社会の発展に対するマイナス影響を最小限に抑えるよう努力せよと強調した。つまり習近平には、ゼロコロナ政策を撤回する意思は全くないのと同時に、ゼロコロナ政策による経済成長低下などネガティブな影響も認識しているということである』、「習近平」は、「ゼロコロナ政策による経済成長低下などネガティブな影響も認識している」が、「ゼロコロナ政策を撤回する意思は全くない」ようだ。
・『厳しい行動管理で生活苦に  長期化するゼロコロナ政策の有効性と、経済悪化、物価上昇という代償のバランスが本当にとれているかどうかは、当局の情報統制などによって実際のところは不透明な状況だ(当局はゼロコロナリスクのネガティブ報道を禁じている)。すでに一部ネットユーザーたちがゼロコロナ政策への不満をSNSなどで語り始めているが、こうした投稿もすぐさま削除されている。 たとえば河北省郊外に住み北京で仕事をしている人々の中には、ゼロコロナ政策によって、省境を超えて移動できず、帰宅できないコロナ帰宅難民もかなりいるという。 感染者が1人でも出れば地域の全員がPCR検査を受けて陰性を証明しない限り足止めが解けないため、零下の極寒の中であろうが大雪の中であろうが、何時間、何十時間と屋外で待たねばならなかったり、施設に閉じ込められたりする。そういう不自由な目に遭う市民が、ときおり写真をSNSに投降して不満をぶつけるのだが、そうした写真ですら削除対象になっている。 3月21日の人民ネットによれば、遼寧省では新たな感染者が67人確認されており、うち瀋陽市は7人、大連市は5人、営口市は55人だった。また183人の無症状感染者も新たに確認された。感染人数としてはわずかと言えるのだが、このため3月22日から、瀋陽市の住宅街、郊外の村はロックダウン式管理が始まった。住民全員にPCR検査を行い、居民出入証を発行する。住民はその出入証に基づいて行動が管理されることになる。 住民たちは微博やSNS上で、こうした対処について、「もっと前もって言ってよ!」「防疫のやりすぎだ。病院に入院していた患者を全員追い出している」「人道があるのか。生活が苦しくなっている。金をくれ!」といった不満の書き込みを投稿していたが、これもすぐに削除されてしまうのだった。 吉林省長春市のロックダウンは3月11日から始まり、なお継続中だ。22日も新たに1979人の感染者が確認された。ある宅配便配達員がロイターの取材に対して「90%の市内のコミュニティ(小区)が封鎖されている。地元住民に呼び止められ、ただ封鎖が解かれるのを待つしかない、この街には全く希望がない、と言われた」などと語っていた。 一方で、吉林省では1万人以上の感染者が出ているにもかかわらず、死者が1月以降、3月18日までの段階で2人に抑えられていることこそが、ゼロコロナ政策の成功の証、という評価もある』、「当局はゼロコロナリスクのネガティブ報道を禁じている」、ため、断片的情報から推察するしかなさそうだ。
・『中国はなぜゼロコロナ政策に固執するのか  動態清零」ゼロコロナ政策は、台湾、香港、中国で実施されてきた。このうち、実質的にゼロコロナをほぼ成功させ、感染状況を落ち着かせたのは台湾だけである。 香港はゼロコロナ政策の完敗で、2021年末からオミクロン株の感染が拡大し、人口750万人の同地域で106万人以上の感染者を出し、死者を6000人近く出している。結局香港当局は、事実上ゼロコロナ政策の失敗を認める形で政策を転換した。4月1日以降、禁止していたアメリカやイギリスなど9つの国からの航空機乗り入れを再開し、香港到着後の強制隔離期間を14日間から7日間に短縮する。また外食産業、映画娯楽産業に対する規制も4月下旬以降緩和していくと発表している。) だが、中国は今のところゼロコロナ政策に固執しているようだ。それはなぜなのか。 中国国家衛生健康委員会・感染症対応処置工作指導チームの専門家組長、梁万年はCCTV(中国中央電視台)のインタビュー番組で、中国は多くの国家と違って現行の防疫措置政策を転換できないとし、その理由として目下のワクチン接種率を挙げた。特にブースター接種率が高くなく、老人や虚弱な体質の人々が依然として感染しやすい状況にあると説明していた。 梁万年は「もし中国でワクチン接種が強化され、科学技術研究が加速して治療薬、ワクチン開発が進めば、そしてオミクロン株がまた変異してより感染率や致死率が低くなれば、それがもっと良い(ゼロコロナ政策を転換する)機会となる」とも説明していた。 梁万年の発言はブースター接種率の問題に焦点をずらしているのだが、実は中国製ワクチンの効き目の問題ではないか、という説もある。香港当局がこの2カ月の香港内の新型コロナ肺炎による死者5100人について調べたところ、1300人がワクチン接種済で、そのうちシノバックワクチンを選択したのは87%だった。このことから、シノバックワクチンがファイザーなどのワクチンよりも予防効果が劣っていたのではないか、と言われている。 ただ、一部親中派の香港専門家は、死者の多くが長期療養中の高齢者で、高齢者はもともと体が弱く、副反応が比較的穏やかなシノバックワクチンを推奨されていたと説明し、シノバック=予防効果が低い=死亡率が高い、という図式にはならない、としている。もし、シノバックワクチンに重症化や死亡率を防ぐ効果がないのなら、中国製不活化ワクチンしか選択肢がなかった中国で死者が少なかったことの説明がつかない、とも指摘する。だが、これについては、中国の新型コロナに関する感染者数や死者数が本当に正しいかどうかを疑問視する声もある』、「香港内の新型コロナ肺炎による死者5100人について調べたところ、1300人がワクチン接種済で、そのうちシノバックワクチンを選択したのは87%だった。このことから、シノバックワクチンがファイザーなどのワクチンよりも予防効果が劣っていたのではないか、と言われている」、やはり中国製の限界だ。
・『「ウィズコロナ」に転換すると何が起きるか  ゼロコロナ政策は習近平の肝煎りの政策であり、途中で転換することは、習近平にとっては一種の敗北である。 しかも、中国製ワクチンに期待されていたほど予防効果、重症化予防効果がないならば、もしもゼロコロナ政策から欧米並みの「ウィズコロナ」(コロナと共存)政策に転換したとき、欧米以上の感染拡大や重症化が引き起こされる可能性もあるわけだ。農村部の医療保険体制の不十分さや人口に対する医療資源の少なさを考えれば、いったん感染が拡大し重症化率が高まると、2020年1月に武漢で新型コロナがアフトブレイクしたときのような阿鼻叫喚のパニックに再び陥ることは十分考えられる。 ちなみに2017年の段階で中国の1万人当たりの医者の数は22人で、これは米国の26人(2018年統計)よりもちょっと低いくらいのレベルなのだが、医師、病院は一部の都市に集中している。たとえば、中国の上位100の病院のうち半分は北京、上海、広州に集中している。ICUの数も、公式の調査は2015年以降行われていないので最近の状況はつかめないのだが、復旦大学の数名の医師による論文の中での予測数値によれば、10万人あたり4.37床で、米国の34.7床、イタリアの12.5床などよりもかなり少ない。 つまり「ウィズコロナ」に政策転換して、感染が拡大すれば、予想を超える重症者、死者が増える可能性がある。しかも中国が途上国に恩着せがましくばらまいていたワクチンが、実はほとんど役に立たないこともばれてしまい、ワクチン外交の失敗が決定づけられるリスクもあるのだ。 とはいえ、国際社会がウィズコロナで経済活動を回復させていく中で、中国がゼロコロナ政策で鎖国状態を継続し、思うように経済を回せない状況が続くと、人民の生活もじわじわ逼迫し、社会不満も募っていく。 つまり、ゼロコロナ政策を転換しても、あるいはしなくても、習近平にとっては党内アンチ習近平派からの「政策の失敗」という批判の根拠になりうるわけだ。 これが、秋の第20回党大会で習近平が狙う第3期目任期継続の野望にどう影響するのか。ウクライナ戦争と並ぶ中国政治にとっての大きな不確定要素と言えそうだ』、「農村部の医療保険体制の不十分さや人口に対する医療資源の少なさを考えれば、いったん感染が拡大し重症化率が高まると、2020年1月に武漢で新型コロナがアフトブレイクしたときのような阿鼻叫喚のパニックに再び陥ることは十分考えられる」、「ゼロコロナ政策を転換しても、あるいはしなくても、習近平にとっては党内アンチ習近平派からの「政策の失敗」という批判の根拠になりうる」、「秋の第20回党大会で習近平が狙う第3期目任期継続の野望にどう影響するのか。ウクライナ戦争と並ぶ中国政治にとっての大きな不確定要素と言えそうだ」、当面の大きな注目点だ。

次に、4月21日付けJBPressが掲載した近藤 大介氏による「北京のコロナ責任者が失脚、ゼロコロナ政策の不首尾で中国指導部に地殻変動 東アジア「深層取材ノート」(第134回)」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/69841
・『「動態清零」(ダイナミック・ゼロコロナ)という独自のコロナ対策に固執する中国で、「コロナ政局」とも言える状況が、むくむくと蠢動している――。 4月16日午後3時、中国共産党中央紀律検査委員会・中華人民共和国国家監察委員会の合同のホームページで、漢字41文字からなる短文の「通知」が発表された。 <北京市政協副主席・于魯明は、厳重な紀律法律違反の嫌疑により、現在まさに、中央紀律検査委員会・国家監察委員会の紀律審査及び監察調査を受けている> 2200万北京市民は、このサラリと書かれた通知の「対象者」を見て、仰天した。于魯明(う・ろめい)氏は、北京市の新型コロナウイルス対策のトップ、北京市衛生健康委員会主任を務めているからだ。北京市トップの蔡奇(さい・き)北京市党委書記の右腕として、首都のコロナ対策全般を仕切っていた重要人物なのだ』、興味深そうだ。
・『権力の階段を駆け上った元精神科医  于魯明主任は、1961年12月に北京で生まれた。北京医学院を卒業し、精神科医となった。だが、医師としてよりも、医療行政や政治方面に関心を示していく。1986年に中国共産党の友好党である農工党に入党し、1992年には中国共産党にも入党した(二重党籍)。その後、北京市南部の大興区の副区長や衛生局長などを経て、北京市病院管理局長となった。 2016年10月、習近平主席の福建省、浙江省時代の側近だった蔡奇氏が、習主席の「鶴の一声」で、北京市党委副書記兼副市長となった。蔡氏は、翌2017年1月に北京市長になり、同年6月には、市トップの北京市党委書記に就任した。 さらに、同年10月の第19回中国共産党大会で、習近平総書記が満場一致で再任されると、蔡書記は党中央政治局委員(トップ25)に選出された。今年2月4日には、北京冬季オリンピック・パラリンピック組織委員会主席として、オリンピック開会式で挨拶を行っているので、日本でも記憶にある人がいるかもしれない。 そんな蔡奇北京市党委書記が、全幅の信頼を置いていたのが于主任だった。2018年11月、蔡書記が主導した北京市政府の機構改革で、医療保障局を新設すると、于氏を初代医療保障局長に据えた』、「「動態清零」(ダイナミック・ゼロコロナ)政策」が改めてお墨付きを得た形だ。
・『「習近平-蔡奇-于魯明」ライン  2020年に入って、北京も含めた中国全土が新型コロナウイルスで激震すると、同年11月に于氏を、北京市政協副主席兼北京市衛生健康委員会主任に抜擢した。衛生健康委員会は、日本で言えば厚生労働省にあたり、中国で新型コロナウイルス対策を統括している官庁だ。 于主任は、北京冬季オリンピック・パラリンピックの準備に忙しい蔡奇党委書記に代わって、習近平主席が厳命する「動態清零」(ダイナミック・ゼロコロナ)政策の旗振り役となった。つまり、日本を含めて現在、世界の主流となっている「コロナとの共存」は目指さないということだ。 昨年、習近平政権が「三人っ子政策」を打ち出すと、于主任は、今年1月に開かれた北京市の人民代表大会・政協会議の場で、「子供を養育する費用を下げて、北京市の出生率を上げていかなければならない」と力説した。于主任が最後に公の場に顔を出したのは、4月8日で、北京市政協の常務委員会会議に出席した。 「厳重な紀律法律違反の嫌疑により、紀律審査及び監察調査を受けている」と記されれば、想起されるのは汚職や腐敗だ。だが、于主任は医療分野での汚職・腐敗撲滅運動の旗振り役も務めていただけに、その理由かどうかはっきりしない。) ともあれ、首都・北京で、「習近平-蔡奇-于魯明」という「動態清零」政策のラインの一角が、崩壊してしまったのだ。このため北京では、「すわ、コロナ政局か?」という声が上がっている』、「「すわ、コロナ政局か?」という声が上がっている」、実態はどうなのだろう。
・『習近平総書記の腹心、市民から罵倒される様子がSNSに  今年は、後半に第20回中国共産党大会を開く「政治の年」である。本来なら11月で「2期10年」を勤め上げる習近平総書記は、引退しなければならない。 ところが習総書記は、異例の「3期目続投」を目論んでいる。中国共産党内には、この「習総書記3選」に反対する勢力も存在する。そのため、「世界最大規模の権力闘争」が、水面下で始まっているのだ。 そんな中、習近平体制のアキレス腱になっているのが、「動態清零」政策による中国経済の低迷と、ウラジーミル・プーチン大統領との「盟友関係」を基軸としたロシアにベッタリの外交だ。 中でも、3月28日から中国最大の経済都市・上海で行っている事実上の「封城」(ロックダウン)は、2500万上海市民の怒りを買っている。このままGWの連休に突入する可能性も出てきたことで上海市民のストレスは、いまや「爆発」寸前だ。 4月11日には、厳しい統制国家の中国ではあり得ないような映像が、SNS上で拡散した。上海市トップの李強(り・きょう)上海市党委書記が、市内のマンション群を視察中に、市民たちから罵倒されたのだ』、「上海市党委書記が、市内のマンション群を視察中に、市民たちから罵倒された」、「党委書記」が「罵倒」されるとは、よほどのことだ。
・『習近平総書記の3選阻止を阻止しようとする者たち  李強書記は、浙江省瑞安の出身で、習近平主席が浙江省党委書記(省トップ)だった後半の2004年から2007年まで、習書記の最側近の秘書長を務めた。当時を知る上海人が証言する。 「習近平浙江省党委書記はたびたび、李強秘書長を伴って、上海西郊賓館で隠居生活を送る江沢民(こう・たくみん)元総書記のもとを訪れていた。それで習総書記は、2017年10月の第19回共産党大会で権力固めを行った後、満を持して李強氏を、上海市党委書記に抜擢したのだ。 つまり李強書記は、上海における『習近平代理人』だ。加えて、来年3月に引退する李克強(り・こくきょう)首相の最有力後継者とも囁かれている。それだけに、李書記が上海市民に罵倒される映像が拡散したことは、李書記の次期首相就任を阻止する、ひいては習近平総書記の3選を阻止しようという動きとも見られるのだ」 かつて2006年にも、「ポスト胡錦濤(こきんとう)総書記」を巡って、上海を基盤とする江沢民グループと、当時北京で政権を担っていた胡錦濤グループが激しく対立した。この時は、同年9月に、江沢民グループの有力な後継候補だった陳良宇(ちん・りょうう)上海市党委書記(当時)を、胡政権が北京で拘束してしまうという「事件」が起こった(懲役18年の実刑判決)。そこから、この両グループはさらに仁義なき権力闘争に明け暮れ、その結果、漁夫の利のようにトップに立ったのが、いまの習近平総書記だ。 歴史は繰り返す。習近平総書記の3選を巡る「コロナ政局」の行方から、目が離せなくなってきた』、「習近平」氏が、「江沢民グループ」と「胡錦濤グループ」の対立の「漁夫の利」を得て「党委書記」になったことを、改めて思い出した。

第三に、4月19日付け日刊ゲンダイが掲載したジャーナリストの姫田小夏氏による「上海ロックダウン 阿鼻叫喚の舞台裏(1)混乱の元凶は上海に「ゼロコロナ」を強要した中国中央政府」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/304072
・『上海は今、崩壊寸前だ。ロックダウンは2020年に武漢市でも行われたが、そもそも人口規模が違う。 武漢市の倍の約2500万人を抱える上海市では当初、ロックダウンは危険すぎて計画されていなかった。 昨年のコロナ蔓延後も感染者は少なく、ロックダウンはおろか全住民を対象にしたPCR検査も経験したことがない上海だったが、今年3月に入りオミクロン株の感染者が急激に増えた。上海市政府は同15日の記者会見で「ロックダウンは必要ない」として住宅地ごとの封鎖にとどめていたが、突然、市の東側の浦東は28日から、西側の浦西は4月1日から全面封鎖された。 流れが変わったのは3月22日だった。この日、上海市に国務院督査組が派遣され、上海市トップの李強・党委員会書記ほか、市首脳陣と話し合いが行われた。督査組とは党中央の政策を徹底指導する組織だ』、「上海市に国務院督査組が派遣され」、「上海市」のやり方に対する「党中央」の不信感の表れだろう。
・『背景に江沢民vs習近平の政治対立も  上海はこれまで、感染症専門の張文宏氏(復旦大学付属華山医院感染科主任)の分析のもと、オミクロン株に対しては「ゼロコロナ」ではなく、「ウィズコロナ」に近いやり方が採られてきた。 張氏については「欧米や日本などの諸外国のモデルを取り入れる国際派」との評価もあり、教育水準の高い居住者が集まる上海では支持を得ていた。 ところが、中央政府から派遣されてきた、この督査組が「ゼロコロナ政策は不変だ」だとゴリ押しし、“上海式”を頭から否定した。その後、張氏の姿は公の場から消え、浦東では28日からロックダウンが始まった。 「ロックダウンは感染の封じ込めなどではなく、政治だ」と言い切る市民もいる。もとより、上海市の実力者でもある江沢民・元国家主席(上海閥)と習近平国家主席(太子党)の間には根深い政治的対立があり、今回の督査組の派遣も「コロナに乗じて上海閥を抑えつけたい習の意向だ」とささやかれている。 督査組がかけた圧力で、上海市は何の準備もないままにロックダウンに突入した。春節前に行われた武漢市のロックダウンは、長い休暇を家族や親戚と過ごすために大量の食料備蓄があったという点で大きく異なる。もっとも76日間も続いたロックダウンで、配給の食料の量や質に不満を訴える住民がいたのは武漢も同じだった。 上海市のロックダウンは「5日間で終わる」として開始されたが今なお解除されず、全面封鎖前から外出規制を受けてきた住民は、ほぼ1カ月間幽閉されていることになる。これも政治だというなら恐ろしい。「お上に盾突く上海の場合、武漢の76日では済まされないかも」という悪い冗談さえある。(つづく)』、「上海はこれまで」、「オミクロン株に対しては「ゼロコロナ」ではなく、「ウィズコロナ」に近いやり方が採られてきた」のが、「督査組が「ゼロコロナ政策は不変だ」だとゴリ押しし、“上海式”を頭から否定」、「上海市は何の準備もないままにロックダウンに突入した」、これでは市民生活は大変だ。

第四に、4月20日付け日刊ゲンダイが掲載したジャーナリストの姫田小夏氏による「上海ロックダウン 阿鼻叫喚の舞台裏(2)習主席の子飼いも市民“ガン無視”…豊かになった上海人に「自由」の目覚め」を紹介しよう。
・『4月12日、上海で公務員が自殺した。 銭文雄氏(55)の勤務先は上海市虹口区衛生健康委員会の情報センター。日本で言うなら厚生労働省の下部組織に当たり、感染状況のデータ管理にかかわるのが銭氏の仕事だった』、「感染状況のデータ管理にかかわるのが銭氏の仕事だった」、彼が自殺したとはどういう背景があるのだろう。
・『「彼の仕事量はあまりに多かった」  中国語メディアは「彼の仕事量はあまりに多かった。このまま行けば自殺者は彼だけにとどまらないだろう」と伝えた。銭氏を含め、感染症対策の専門家たちは、“上司”からの非科学的で非現実的な命令に疲れ果てているという。 非現実的な命令とはすなわち「ゼロコロナ政策」であり、その“総司令官”こそが上海市トップの李強氏(62・党上海市委員会書記)だ。市内の住宅区を視察した際、住民から「食べ物がない」「恥を知れ」などと罵詈雑言を浴びせられた張本人だが、李氏への不満は、老人など弱者を含む一般庶民に限らない。上海の某大学教授はこうこき下ろす。) 「ニンジンやダイコンでも配給しておけば、上海市民はありがたがると思っていることからして、感覚がズレている。インターネット上では富裕層から『我々はヤギやウサギじゃない』『上海人をなめてんのか』といった不満が噴出しています」 プライドの高い上海市民は中央政府に決して従順ではなく、「中央政府から送り込まれた習近平国家主席の子飼い」といわれる李氏に対しては、なおさら“ガン無視”だった。 過去を振り返れば、上海は19世紀から対外貿易の窓口として発展し、租界を通して西欧文化を受容した。国際感覚を持ち合理的に思考する上海人には、今でこそ高層マンションが建つが僻地といわれる浙江省瑞安県出身でエリート教育とは無縁だった李氏やその“親分”(北京市出身)のやることなすことが、あまりにばかばかしく映る。 「中央の要求に対して、やらなくてもいいことまでやって点数を稼ごうとするから、大混乱になる」(前出の大学教授)) 李氏は習氏の第3期続投とともに「次期首相候補の一人」と噂されている重要人物だが「早晩、親分に見捨てられるのでは」とささやかれている。 上海市の感染者数は1万9000人を超えて高止まりのまま。感染拡大に歯止めがかからず、当局と市民は各地で衝突や小競り合いを繰り返している。 衣食足り、高収入を得る上海市民は、コロナ直前まで最先端の物質的生活を謳歌していた。静安区在住の60代の中国人男性は「それが最高の生活だと思っていたが、ロックダウンで『人間の自由』に目覚めてしまった」と語る。 4月3日、上海に医療支援を名目に解放軍2000人余が派遣されてきた。上海のロックダウンの目的はコロナではなく、市民動乱の封じ込めに目的が変わってきたのか。=つづく』、「僻地といわれる浙江省瑞安県出身でエリート教育とは無縁だった李氏やその“親分”(北京市出身)のやることなすことが、あまりにばかばかしく映る」、「李氏は習氏の第3期続投とともに「次期首相候補の一人」と噂されている重要人物だが「早晩、親分に見捨てられるのでは」とささやかれている。 上海市の感染者数は1万9000人を超えて高止まりのまま。感染拡大に歯止めがかからず、当局と市民は各地で衝突や小競り合いを繰り返している」、「上海に医療支援を名目に解放軍2000人余が派遣されてきた。上海のロックダウンの目的はコロナではなく、市民動乱の封じ込めに目的が変わってきたのか」、これでは「李氏」は「次期首相候補の一人」どころか、「早晩、親分に見捨てられる」可能性が高そうだ。
タグ:パンデミック(経済社会的視点) (その22)ウィズコロナVSゼロコロナ(「ウィズコロナ」に転換したら何が起こるか? 中国が恐れる不都合な事態 中国はなぜゼロコロナ政策に固執するのか、上海ロックダウン 阿鼻叫喚の舞台裏((1)混乱の元凶は上海に「ゼロコロナ」を強要した中国中央政府、(2)習主席の子飼いも市民“ガン無視”…豊かになった上海人に「自由」の目覚め) JBPRESS 福島 香織氏による「「ウィズコロナ」に転換したら何が起こるか? 中国が恐れる不都合な事態 中国はなぜゼロコロナ政策に固執するのか」 「李克強首相」がウィズコロナへの転換を示唆したとは初めて知った。 「習近平」は、「ゼロコロナ政策による経済成長低下などネガティブな影響も認識している」が、「ゼロコロナ政策を撤回する意思は全くない」ようだ。 「当局はゼロコロナリスクのネガティブ報道を禁じている」、ため、断片的情報から推察するしかなさそうだ。 「香港内の新型コロナ肺炎による死者5100人について調べたところ、1300人がワクチン接種済で、そのうちシノバックワクチンを選択したのは87%だった。このことから、シノバックワクチンがファイザーなどのワクチンよりも予防効果が劣っていたのではないか、と言われている」、やはり中国製の限界だ。 「農村部の医療保険体制の不十分さや人口に対する医療資源の少なさを考えれば、いったん感染が拡大し重症化率が高まると、2020年1月に武漢で新型コロナがアフトブレイクしたときのような阿鼻叫喚のパニックに再び陥ることは十分考えられる」、「ゼロコロナ政策を転換しても、あるいはしなくても、習近平にとっては党内アンチ習近平派からの「政策の失敗」という批判の根拠になりうる」、「秋の第20回党大会で習近平が狙う第3期目任期継続の野望にどう影響するのか。ウクライナ戦争と並ぶ中国政治にとっての大きな不確定要素と言えそうだ」、 近藤 大介氏による「北京のコロナ責任者が失脚、ゼロコロナ政策の不首尾で中国指導部に地殻変動 東アジア「深層取材ノート」(第134回)」 「「動態清零」(ダイナミック・ゼロコロナ)政策」が改めてお墨付きを得た形だ。 「「すわ、コロナ政局か?」という声が上がっている」、実態はどうなのだろう。 「上海市党委書記が、市内のマンション群を視察中に、市民たちから罵倒された」、「党委書記」が「罵倒」されるとは、よほどのことだ。 「習近平」氏が、「江沢民グループ」と「胡錦濤グループ」の対立の「漁夫の利」を得て「党委書記」になったことを、改めて思い出した。 日刊ゲンダイ 姫田小夏氏による「上海ロックダウン 阿鼻叫喚の舞台裏(1)混乱の元凶は上海に「ゼロコロナ」を強要した中国中央政府」 「上海市に国務院督査組が派遣され」、「上海市」のやり方に対する「党中央」の不信感の表れだろう。 「上海はこれまで」、「オミクロン株に対しては「ゼロコロナ」ではなく、「ウィズコロナ」に近いやり方が採られてきた」のが、「督査組が「ゼロコロナ政策は不変だ」だとゴリ押しし、“上海式”を頭から否定」、「上海市は何の準備もないままにロックダウンに突入した」、これでは市民生活は大変だ。 姫田小夏氏による「上海ロックダウン 阿鼻叫喚の舞台裏(2)習主席の子飼いも市民“ガン無視”…豊かになった上海人に「自由」の目覚め」 「感染状況のデータ管理にかかわるのが銭氏の仕事だった」、彼が自殺したとはどういう背景があるのだろう。 「僻地といわれる浙江省瑞安県出身でエリート教育とは無縁だった李氏やその“親分”(北京市出身)のやることなすことが、あまりにばかばかしく映る」、「李氏は習氏の第3期続投とともに「次期首相候補の一人」と噂されている重要人物だが「早晩、親分に見捨てられるのでは」とささやかれている。 上海市の感染者数は1万9000人を超えて高止まりのまま。感染拡大に歯止めがかからず、当局と市民は各地で衝突や小競り合いを繰り返している」、「上海に医療支援を名目に解放軍2000人余が派遣されてきた。上海のロックダウンの目的はコロナで
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不動産(その9)(「実は雨漏りしやすい」タワマン老後を楽しみにする人を待つ悲惨な末路【2020年BEST5】2050年にはほとんどが廃墟になる、「世田谷の地価下落」が示す不動産三極化の現実 好立地マンションの価格上昇は止まらないが…、「日本の空き家問題はほぼデマ」データが示す根拠 本当に対処すべき問題は別のところにある) [産業動向]

不動産については、昨年11月12日に取上げた。今日は、(その9)(「実は雨漏りしやすい」タワマン老後を楽しみにする人を待つ悲惨な末路【2020年BEST5】2050年にはほとんどが廃墟になる、「世田谷の地価下落」が示す不動産三極化の現実 好立地マンションの価格上昇は止まらないが…、「日本の空き家問題はほぼデマ」データが示す根拠 本当に対処すべき問題は別のところにある)である。

先ずは、本年1月6日付けPRESIDENT Onlineが掲載した住宅ジャーナリストの榊 淳司氏による「「実は雨漏りしやすい」タワマン老後を楽しみにする人を待つ悲惨な末路【2020年BEST5】2050年にはほとんどが廃墟になる」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/52386
・『2020年(1~12月)、プレジデントオンラインで反響の大きかった記事ベスト5をお届けします。老後部門の第5位は――。(初公開日:2020年12月29日) タワーマンションと低層マンション、どちらのほうが住みやすいのか。住宅ジャーナリストの榊淳司氏は「タワーマンションは維持費も通常の2倍以上かかり、コストが大きい。建て替えも困難であるため、30年後にはほとんど廃墟になっている可能性が高いんど廃墟になっている可能性が高い」という――。(第1回/第2回)』、「タワーマンションは」「30年後にはほとんど廃墟になっている可能性が高い」』とはショッキングは予測だ。
・『日本にあるマンションの95%が建て替え不可能  オフィスビルというのは、古くなったら建て替えればいい。 これは実に簡単な話である。ところが、分譲マンションはそう簡単に建て替えられない。 理由は、オーナーが何人もいるからである。オフィスビルや賃貸マンションというのは、基本的にワンオーナーである。持ち主が一人、あるいは一社なのだ。複数の場合でも、せいぜい数人か数社。 そのオーナーが「建て替える」という意志を持てば、あとは資金だけの問題となる。仮に、そのオフィスビルや賃貸マンションの立地が、都心や近郊の不動産的評価として一等地であった場合、銀行が喜んで建て替えの資金を貸してくれる。 もちろん土地を担保に差し出さなければならないが、それでもマンションに比べれば建て替えは容易である。 それが、マンションの場合はそんなに簡単ではない。簡単でないどころか、かなり難しい。 そして、日本中の95%以上のマンションは、現行法上では実質的に建て替えは不可能なのだ。こう書くと、多くの人は不思議に思われるだろう』、「日本中の95%以上のマンションは、現行法上では実質的に建て替えは不可能」、これもショッキングな数字だ。
・『104万戸あるマンションのうち建て替えられたのは300件  東京の都心を歩けば、新しく建て替えられているマンションがいくつもあるではないか、と考える人がいそうだ。しかし実際のところは、2020年の4月時点において、全国で建て替えられたマンションは、準備中も含めて300件に満たないのだ。 これは国土交通省が把握している全国の旧耐震基準(1981年以前の建築確認基準)のマンションの総数である約104万戸に比べると、ほんのわずかでしかない。 東京の街角で見かける建て替えられたマンションは、非常に幸運な300事例未満の中の一つなのだ。では、なぜマンションが老朽化しても建て替えられないのか。 簡単に説明しよう。 日本は私有財産をかなり強力に守る国である。これは日本国憲法第29条で明記されている。よほどの公益的な理由がない限り、この国では国民の持つ私有財産権を制限することはできない。 マンションの区分所有権も立派な私有財産権に当たる。高いお金を払って購入した(区分所有権を得た)マンションの住戸は、私有財産として制度的にしっかりと守られている。 ところが、マンションは鉄筋コンクリートで作られた頑丈な建物ながら、必ず老朽化する。建物ができて何十年も経過すると、日常の生活に支障をきたすほどに老朽化する場合もある。 そうなると、区分所有者の多くは「建て替えたい」と考えるようになるはずだ。マンションを建て替える場合、最も大きな問題はお金である。要するに、建て替える資金を誰が出すか、という問題だ』、「東京の街角で見かける建て替えられたマンションは、非常に幸運な300事例未満の中の一つなのだ」、「建て替える資金を誰が出すか、という問題だ」、なるほど。
・『東京の高級住宅街であれば建て替えは可能  東京の真ん中にあるマンションなら、この問題を易々やすやすと解決できたりする。 その仕組みを説明すると、以下のようになる。まず、建て替えがうまくいくのは、容積率が余っている場合がほとんどだ。容積率とは、その土地に建てられる建物の床面積が土地面積と比べてどれくらいになるか、という比率のことだ。 これは基本的に市区町村などの行政が定めている。例えば面積が1000平方メートルの土地の容積率が400%だったとすると、その土地には床面積の総計が4000平方メートルまでの建物が建てられることになる。 仮に港区高輪にある容積率400%の地域に、敷地面積1000平方メートルで築50年超のマンションがあって、たまたま容積率が半分ほど余っていたとする。 つまり、その土地では延べ床面積が4000平方メートルの建物までが建築可能だけれども、その老朽マンションの現況床面積は2000平方メートルだったという場合だ。 この場合、新しく床面積が4000平方メートルのマンションに建て替えても、元の住民に前と同じ面積の住戸を配分したうえで、残り2000平方メートル分の住戸を誰かに販売することができる。 港区高輪あたりだと、新しく建築した2000平方メートル分のマンション住戸がけっこうな値段で販売できるので、残り2000平方メートル分の建築費までそこから出すことができる。元の住民は1円も払わずに、ピカピカの新しいマンションを手に入れられることになる。 相対的に元の住民が所有している敷地の持ち分は半分になってしまうが、それでも新しいマンションがタダで手に入るわけだから、計画に反対する人はほとんどいない、というわけだ』、「建て替えがうまくいくのは、容積率が余っている場合がほとんどだ」、「港区高輪あたりだと、新しく建築した2000平方メートル分のマンション住戸がけっこうな値段で販売できるので、残り2000平方メートル分の建築費までそこから出すことができる。元の住民は1円も払わずに、ピカピカの新しいマンションを手に入れられることになる」、これは幸運なケースの筈だ。
・『容積率が低く高齢者の多いマンションは建て替えられない  ところが、築50年超のマンションが港区高輪ではなく、東京都下の郊外某市にあったとする。仮に私鉄の最寄り駅から徒歩12分、容積率を調べてみると、まったく余っていなかったら……。 この場合、このマンションを建て替えようとすると、費用はすべて現在の区分所有者の負担となる。 今の建築費相場観から推計すると、マンションを新たに建て替えるには取り壊し費用も含めて、1戸当たり約2500万円が必要となる。他に、建て替え期間中の仮住まい費用まで発生する。 「そんなお金はないから、建て替えなくてもいい」建物が老朽化しているということは、そこに住む区分所有者も少なからず高齢化している。特に郊外型の分譲マンションは、区分所有者の入れ替わりが少ない。 新築時から暮らしていて高齢化した方の中には、建て替え費用を負担できる人もいれば、年金でギリギリに暮らしている人もいる。 こうして区分所有者同士で建て替えについての意見が賛成と反対に分かれた場合は、どうなるのか。 現実的には、ほとんど建て替えは不可能となるのだ。 現行の区分所有法をはじめとした諸法規では、全区分所有者の5分の4が賛成すれば、建て替えを決定することが可能である。最後まで反対する人の住戸は、強制的に買い上げることができるという規定もある。しかし、そこまでして建て替えているケースは稀まれである』、「容積率が低く高齢者の多いマンションは建て替えられない」、やむを得ないだろう。
・『ほとんどのマンションは自己負担で建て替えるしかない  だいたいからして、各自が約2500万円以上を負担する建て替え決議案に、全区分所有者の5分の4が賛成するケースは少ない。 というより、私は今までにそのような「全額負担」で建て替えたケースを知らない。 建て替えたら、負担した約2500万円よりもはるかに資産価値評価が高い住戸を得られるようなケースなら、5分の4まで賛成者を増やせるかもしれないが、先に上げたように「東京都郊外の○○市、駅徒歩12分」の場合、約2500万円以上の資産価値評価になるケースは少ない。 今後はさらに、こういった条件が厳しくなりそうだ。 このように現行法の規定では、マンションの建て替えはかなり困難である。それでも、マンションの老朽化は日々進んでいく。 では、どうすればいいのか。私も日々この問題を考えているが、うまい解決策はない。ある程度私有財産権を制限するような法規を新たに設けるか、現行法の運用規定を変えていくしかないだろう。 そうした法規制の緩和で、よりスムーズに建て替えが進むようにするのだ。私有財産権を一部制限するなどの法規制緩和が実現したとしても、費用の問題は残る。 マンションはあくまでも私有財産であり、そこに公的な資金は注ぎ込めない。建て替えるにしても、費用負担は各自の自己責任で賄まかなうしかないのだ』、「私は今までにそのような「全額負担」で建て替えたケースを知らない」、「「東京都郊外の○○市、駅徒歩12分」の場合、約2500万円以上の資産価値評価になるケースは少ない」、「マンションの老朽化は日々進んでいく。 では、どうすればいいのか。私も日々この問題を考えているが、うまい解決策はない」、困ったことだ。
・『タワマンの建て替えは非常にやっかい  そんな未来を考えると、区分所有のマンションというのは何とも不安定な住形態である。 これは東京だけではなく、日本全体を悩ます問題になりそうだ。そして東京には、さらに厄介やっかいなタワーマンションという、区分所有のモンスターのような建物が何百棟もある。 実のところ、タワマンは普通の板状マンションに比べて、さらに深刻な老朽化問題を抱えそうなのである。2050年頃の東京を考える時、都市を形作っている様々なハードの中で、最も問題が深刻化していそうなのがタワマンではないかと考える。 タワマンも、基本的には普通のマンションと同じく区分所有法が適用される。そこに何も違いはない。だから建て替えの時には、全区分所有者の5分の4が賛成しなければならない。 もちろん、費用の問題も普通のマンションと同じだ。まだ例がないので何とも言えないが、タワマンの場合は建物の取り壊し費用が通常型の2倍程度になるのではないか。 取り壊しただけで、おおよそ1住戸当たり1000万円見当である。これだけでも相当に厄介だ。お気づきだとは思うが、タワマンで「容積率が余っている」という事象はほぼありえない。 それどころか、規制緩和の特例をいくつも重ねて建設されているのがタワマンである。2050年時点でそうした規制緩和がなくなっていた場合、多くのタワマンが既存不適格にさえなってしまう可能性がある。 それがタワマンというものなのだ。つまり、タワマンには未来における「幸運な建て替え」はありえないと言っていい』、「タワマンで「容積率が余っている」という事象はほぼありえない。 それどころか、規制緩和の特例をいくつも重ねて建設されているのがタワマンである。2050年時点でそうした規制緩和がなくなっていた場合、多くのタワマンが既存不適格にさえなってしまう可能性がある」、大変だ。
・『タワマンの寿命は45年で尽きる  次に、タワマンにはやたらと維持費がかかる。管理費や修繕積立金は通常タイプのマンションに比べると、だいたい倍だと思っていい。 そして当然ながら、タワマンも大規模修繕が必要である。必要という以上に、プレハブのパネルを張り合わせるようにして外壁が作られているタワマンは、その隙間から雨漏りがしやすいという弱点がある。 だから15年に一度くらいの割合で、必ず外壁の修繕補修工事をすべきだろう。これにはかなりの費用がかかる。それでも、これをやらないと雨漏りだらけのマンションになりかねない。 タワマンがやたらと増え出したのは、2000年前後からである。その理由は、1997年に建築基準法の大きな改正があって、タワマンが作りやすくなったことだ。 その頃から猛烈な勢いで東京にタワマンが増え出した。私はかねがね「タワマン45年寿命説」というものを唱えている。前述のように、タワマンは15年程度の年数ごとに、外壁の補修をともなった大規模修繕工事が必要である。 1回目の築15年頃の工事では、せいぜい外壁とその他劣化部分の修繕補修でいいはずだ。2回目の築30年頃の工事では、上下水道の配管を取り替えたほうがいいだろう。縦管はもちろん、各住戸の給湯管も取り替えるべきだ。これにも多額の費用がかかる。 3回目の大規模修繕工事は、スケジュール通りだと築45年あたりになる。2000年頃から竣工ラッシュを迎えた東京のタワマンにとって、その時期は2050年頃になるのではないか』、「3回目の大規模修繕工事は、スケジュール通りだと築45年あたりになる」、「東京のタワマンにとって、その時期は2050年頃になるのではないか」、なるほど。
・『特注のエレベーターに多額の費用がかかる  2回目、もしくは3回目の工事では、エレベーターの交換があるはずだ。30年から45年も経過すると、エレベーターもさすがに交換時期である。 何といってもエレベーターは人の命を預かって運ぶ装置だ。安全性には特に配慮すべきである。タワマンのエレベーターは、すべてが特注である。 数十階を行き来するようなタワマンのエレベーターは、既製品化できないからだ。交換の際にも特注でメーカーに作ってもらうしかない。これにも当然、多額の費用が発生する。 多くのタワマンの管理組合は、これらの費用負担に見合った額の修繕積立金を徴収していない。だから、ほとんどのタワマンが築30年前後にくる2回目の大規模修繕工事の時には、すでに資金不足に陥っているはずだ。 そこを銀行融資などで乗り切っても、築45年前後の3回目の大規模修繕工事が実施できるだろうか。そう考えると、2050年頃には3回目の大規模修繕工事が実施できないタワマンが、東京の街で目立ってくるのではないかと予測する。 考えたくはないが、タワマンが廃墟化すると、東京の街にとってはかなり厄介なお荷物になる。それにしてもタワマンという住形態は、建造物としても区分所有のコミュニティとしても、未完成で未知な部分が多すぎる。我々はタワマンという異形の住形態の、壮大な耐久実験をしているようなものなのだ』、「2050年頃には3回目の大規模修繕工事が実施できないタワマンが、東京の街で目立ってくるのではないかと予測する」、「タワマンが廃墟化すると、東京の街にとってはかなり厄介なお荷物になる」、「我々はタワマンという異形の住形態の、壮大な耐久実験をしているようなものなのだ」、恐ろしい事態だ。
・『2050年には大量のタワマンが廃墟化する  そして、どうやらこれは厄介なことになりそうだ、という未来も見えてきた。最悪の場合、タワマンは廃墟となる。少なくとも現行法規では救いようがない。 そうなれば、もちろん資産価値もなくなる。廃墟化の危機を迎えたタワマンが立ち並ぶ2050年の東京。今からでも何か対策は立てられないものかと考えるが、良い考えは出てこない。 できることがあるとすれば、これ以上はタワマンを作らないことだ。また、現に所有しているのなら早めに手放したほうがよい。 そもそもタワマンとは、限られた敷地に多くの住戸を作るために作られた必要悪のような存在である。であるにもかかわらず、所かまわずに建てられたのは、デベロッパー側に「儲もうかる」という強烈な理由があったからだ。 だから、敷地が余っている湾岸の埋立地にまで建ててしまった。考えてみれば相当に無責任なことである。2050年にそういったタワマンが廃墟化の危機を迎えているのであれば、それは製造者責任として開発分譲したデベロッパーに、それなりの負担を課すべきではないのか』、「2050年には大量のタワマンが廃墟化する」、「製造者責任として開発分譲したデベロッパーに、それなりの負担を課すべきではないのか」、余りに乱暴な議論で法律上も、実態上も「実現不可能だ。

第三に、4月17日付け東洋経済オンラインが掲載した不動産コンサルタントの沖 有人氏による「「日本の空き家問題はほぼデマ」データが示す根拠 本当に対処すべき問題は別のところにある」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/582125
・『日本において、長期的な空き家率の上昇という現実と、将来のいっそうの悪化というイメージは描きやすい。なぜなら、総人口はすでに減少しており、現在でも空き家率が高いうえに、新規着工戸数が毎年100万戸弱あるからだ。単純に住宅ストックは今後も余り続けるに違いないと思うかもしれない。 私たちが空き家問題で想像していたことは、賃貸でいうと空室が多くて賃貸住宅経営が立ち行かないという問題であり、持ち家でいうと放置されて廃墟化しつつあり異臭を放つような空き家の問題ではないだろうか。 しかし、この空き家の基となる5年おきに行われる「住宅・土地統計調査」の空き家の定義はその想像とは異なっている。入居者が募集されている賃貸住宅、売りに出されている住宅、通常は住んでいない別荘が含まれているのだ。国土交通省の「令和元年空き家所有者実態調査」によると、それらは43%(二次的住宅・別荘用25.8%、貸家用4.4%、売却用12.8%)もある。つまり、何らかの形で利用されている住宅で、それほど問題視する対象ではない』、興味深そうだ。
・『実家が「トランクルーム化」しているケースも多い  それ以外で最も多いのは、物置として利用しているケースで23%。建て替え・取り壊し予定や、転勤で長期不在なども入れると、何も利用される予定のない空き家は2割を割り込む。 空き家の中で賃貸のシェアはこの5年で減少したのに対して、増加したのが持ち家の戸建てで、全体の4割強を占めて急増中だ。いちばん多いケースは親の実家を相続したものだ。先ほどの物置はほとんどこれで、地方・郊外で多く、売却などの対応が放置されている。 放置すると固定資産税が相続した所有者にかかるが、遺品整理も何もしないという選択は「実家のトランクルーム化」を意味する。固定資産税を月1万円程度のトランクルーム代と考えると相続した財産で当面まかなえてしまう。 この実家を空き家問題とするなら、誰にも迷惑をかけていないので問題にはならない。有効活用されていないと主張されても、築年数は40年以上に及ぶ木造が中心で住むにはすでに環境がよいとはいえない状況にある。) 空き家についてあたかも問題のように感じさせてしまったのが、野村総合研究所が2015年に出した空き家率予測だ。空き家問題で必ずといっていいほど引用された。そこでは、問題が今後急速に深刻になり、2033年には空き家率が30%を超えるというものだった(2013年の実績値は13.5%)。 しかし、この予測は大きくはずれた。2018年の空き家率を16.9%と予測していたが、実績は13.6%。住宅ストックは約180万戸増えたが、世帯数は150万世帯以上増えていて、空き家は26万戸しか増えなかった。人口は減っても、まだ世帯数は増えているし、住宅との対比は世帯数である。 また、この5年間の着工戸数は466万戸だが、住宅ストックが180万戸しか増えないのは、滅失(取り壊し)が286万戸あることになる。要は、世帯数予測と滅失戸数予測が正確にできていないだけだ。 実際に増えた空き家総数は26万戸だったのに対し、180万戸多い206万戸と予測し、約8倍も違った。この予測差は桁外れに大きい』、「実際に増えた空き家総数は26万戸だったのに対し、180万戸多い206万戸と予測し、約8倍も違った。この予測差は桁外れに大きい」、外れたのは、「世帯数予測と滅失戸数予測が正確にできていない」ためのようだ。
・『公表されている数字はいろいろあるが…  これ以外で引用されるのが、TASという会社の空室インデックスだ。数十%にも及ぶこの数字は賃貸住宅経営が立ち行かないように見える。しかし、この数字は通常では考えられない変な計算で算出されている。それは満室物件を除いて空室率を計算するというものだ。 A物件の総戸数が10戸で空室3戸、B物件総戸数の20戸で空室無しとすると、B物件を除くので、空室率は30%となる。しかし、実質は10%だ。 数字は整合性を取らないといけないし、誤解されないようにしなければならない。公表されている数字だけでもいろいろある。住宅REITの空室率は4%程だし、管理会社の団体である日本賃貸住宅管理協会の空室率(2020年度下期)は3%程だ。 明らかに実態と乖離した印象を持たれやすい数字には意味がない。 実際、東京都の2018年時点の空き家率減少が明らかになった。5年前の10.9%から10.4%に0.5%下がった。たった0.5%と思われるかもしれないが、これまで5年ごとに1%ずつ上がってきた過去から見ると、逆回転の様相を呈する。これを証明するように、家賃は値上げされているのが現実である。 廃墟化した空き家の問題は、強制撤去できるようになっている。2015年5月26日に施行された「空家等対策特別措置法」では、次のように定義されている。 「特定空家等とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態、その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう」 この数がどの程度あるかというと、例えば、世田谷区の「世田谷区空家等実態調査」によると、調査した1492件中8件が「特定空き家」に該当していたという。率にして0.5%だ。問題視するには少ないので、空き家を全調査するよりも住民の苦情を発端にして対応したほうがいいような数字だ。 これらの結果から、空き家問題はデマに近い情報にすぎない。それよりも問題は築古のストックが今後急増することだ。また、そのストックの構造も木造から鉄筋コンクリート造に割合がシフトしていく。滅失することもなく残っていくが、快適に住める住戸は減っていく』、「空き家問題はデマに近い情報にすぎない。それよりも問題は築古のストックが今後急増することだ。また、そのストックの構造も木造から鉄筋コンクリート造に割合がシフトしていく。滅失することもなく残っていくが、快適に住める住戸は減っていく」、なるほど。
・『海外の先進国と比較しても意味がないワケ  この手の古いストックを問題視するときに、引き合いに出されるのが、海外の先進国の事例だが、日本とは根本的に置かれた環境が異なる。決定的に違うのは、地震の有無だ。イギリスではヴィクトリア朝時代(1837~1901年)に建てられた建物がいまだに有効活用されているし、入居者の人気もある。 しかし、イギリスでは大きな地震はほとんどない。建物がそれに耐える必要もなく、状態が大きく変わることもないから、利用し続けることができるが、日本ではそうはいかない。古い住宅はそれなりに傷んでしまうので、諸外国と比較しても意味がない。 世帯数は増え続けているし、一定量の滅失があるので、需給はタイトになる可能性のほうが明らかに高い。だからこそ、空き家よりも古い住宅ストックが増えていくことが問題であり、そこに住み続けられるかを問題視すべきである。 快適に住める環境とするには、リフォームがコスト高であるわりに物件自体に魅力(立地や外観など)がない。つまり、新しい家が必要だということで、空き家問題とはまったく逆の答えになる。 その認識に立たないと、新規供給が減り、需給バランスがいっそうタイトになり、その結果として私たちは持ち家価格(とくにマンション)の高騰と家賃の上昇に苦しめられることになってしまう』、「空き家よりも古い住宅ストックが増えていくことが問題であり、そこに住み続けられるかを問題視すべきである」のはともかく、「リフォームがコスト高であるわりに物件自体に魅力(立地や外観など)がない」、は実証抜きに決めつけるのは乱暴な気がする。
タグ:PRESIDENT ONLINE (その9)(「実は雨漏りしやすい」タワマン老後を楽しみにする人を待つ悲惨な末路【2020年BEST5】2050年にはほとんどが廃墟になる、「世田谷の地価下落」が示す不動産三極化の現実 好立地マンションの価格上昇は止まらないが…、「日本の空き家問題はほぼデマ」データが示す根拠 本当に対処すべき問題は別のところにある) 不動産 榊 淳司氏による「「実は雨漏りしやすい」タワマン老後を楽しみにする人を待つ悲惨な末路【2020年BEST5】2050年にはほとんどが廃墟になる」 「タワーマンションは」「30年後にはほとんど廃墟になっている可能性が高い」』とはショッキングは予測だ。 「日本中の95%以上のマンションは、現行法上では実質的に建て替えは不可能」、これもショッキングな数字だ。 「東京の街角で見かける建て替えられたマンションは、非常に幸運な300事例未満の中の一つなのだ」、「建て替える資金を誰が出すか、という問題だ」、なるほど。 「建て替えがうまくいくのは、容積率が余っている場合がほとんどだ」、「港区高輪あたりだと、新しく建築した2000平方メートル分のマンション住戸がけっこうな値段で販売できるので、残り2000平方メートル分の建築費までそこから出すことができる。元の住民は1円も払わずに、ピカピカの新しいマンションを手に入れられることになる」、これは幸運なケースの筈だ。 「容積率が低く高齢者の多いマンションは建て替えられない」、やむを得ないだろう。 「私は今までにそのような「全額負担」で建て替えたケースを知らない」、「「東京都郊外の○○市、駅徒歩12分」の場合、約2500万円以上の資産価値評価になるケースは少ない」、「マンションの老朽化は日々進んでいく。 では、どうすればいいのか。私も日々この問題を考えているが、うまい解決策はない」、困ったことだ。 「タワマンで「容積率が余っている」という事象はほぼありえない。 それどころか、規制緩和の特例をいくつも重ねて建設されているのがタワマンである。2050年時点でそうした規制緩和がなくなっていた場合、多くのタワマンが既存不適格にさえなってしまう可能性がある」、大変だ。 「3回目の大規模修繕工事は、スケジュール通りだと築45年あたりになる」、「東京のタワマンにとって、その時期は2050年頃になるのではないか」、なるほど。 「2050年頃には3回目の大規模修繕工事が実施できないタワマンが、東京の街で目立ってくるのではないかと予測する」、「タワマンが廃墟化すると、東京の街にとってはかなり厄介なお荷物になる」、「我々はタワマンという異形の住形態の、壮大な耐久実験をしているようなものなのだ」、恐ろしい事態だ。 「2050年には大量のタワマンが廃墟化する」、「製造者責任として開発分譲したデベロッパーに、それなりの負担を課すべきではないのか」、余りに乱暴な議論で法律上も、実態上も「実現不可能だ。 東洋経済オンライン 沖 有人氏による「「日本の空き家問題はほぼデマ」データが示す根拠 本当に対処すべき問題は別のところにある」 「実際に増えた空き家総数は26万戸だったのに対し、180万戸多い206万戸と予測し、約8倍も違った。この予測差は桁外れに大きい」、外れたのは、「世帯数予測と滅失戸数予測が正確にできていない」ためのようだ。 「空き家問題はデマに近い情報にすぎない。それよりも問題は築古のストックが今後急増することだ。また、そのストックの構造も木造から鉄筋コンクリート造に割合がシフトしていく。滅失することもなく残っていくが、快適に住める住戸は減っていく」、なるほど。 「空き家よりも古い住宅ストックが増えていくことが問題であり、そこに住み続けられるかを問題視すべきである」のはともかく、「リフォームがコスト高であるわりに物件自体に魅力(立地や外観など)がない」、は実証抜きに決めつけるのは乱暴な気がする。
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