日本の構造問題(その26)(大前研一がトップだったマッキンゼーに見た「会社滅びてコンサル栄える」、日本だけ給料が上がらない謎...「内部留保」でも「デフレ」でもない本当の元凶、日本はなぜ「成長を諦めた国」になっているのか 過剰なコロナ対策も購買力を大きく削いでいる) [経済政治動向]
日本の構造問題については、3月1日に取上げた。今日は、(その26)(大前研一がトップだったマッキンゼーに見た「会社滅びてコンサル栄える」、日本だけ給料が上がらない謎...「内部留保」でも「デフレ」でもない本当の元凶、日本はなぜ「成長を諦めた国」になっているのか 過剰なコロナ対策も購買力を大きく削いでいる)である。
先ずは、3月22日付け日刊ゲンダイが掲載した評論家の佐高信氏による「大前研一がトップだったマッキンゼーに見た「会社滅びてコンサル栄える」」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/302758
・『マッキンゼーなどに頼む経営者は経営者失格なのではないかと私は思う。大前研一がトップだったころのマッキンゼーで喜劇的なことが起こったからだ。本質的には喜劇ではなく悲劇である。 ワンマンの磯田一郎が君臨した住友銀行やドンの川上源一が支配したヤマハがマッキンゼーにコンサルタントを依頼したが、腐敗や衰退の最大の元凶である磯田や川上にはまったく触れずに”改革”を進めたために、「向こう傷を恐れるな」という磯田イズムが住銀では温存され、イトマン・スキャンダルを結果した。また、ヤマハでも社長世襲の問題は棚上げしたために、若社長が”職場放棄”することになった。 磯田や川上が頼んでいるのだから、彼らの害を追及できるわけがない。本当はそこに踏み込んでこそのコンサルタントだろう。 大前の唱える「維新」が、サラリーマンにとっても、ためになるどころか有害なものであることは、彼を支持する経営者に京セラの稲盛和夫がいることでもわかる。 稲盛は大前をこう持ち上げた。 「大前さんのやろうとしていることが大きな実験であることは間違いない。この国は真の民主主義が定義できる国なのか。借り物の民主主義、えせ民主主義で終わるのか。それを証明する機会だと思う。一般の国民の間、一般社員の間では民主主義になっているが、会社も役所も上に行くほど民主主義ではないという不思議な国だ。大前さんの問いは官僚組織よりも国民一人一人に向けられているのだという自覚が、国民の間にどれくらいあるかが肝心だ。大前さんには冷静に、勇気を持って、初心を忘れずに、常に一歩控えめに事を進めてほしい」 こう言っている稲盛の京セラには「京セラ従業員の墓」という気持ち悪いものがある。そんな京セラならぬ狂セラに「借り物」だろうが、「えせ」だろうが、民主主義がないことははっきりしているが、稲盛にはその自覚がないのだろう。 もし、大前が民主主義の使徒なら、コンサルタントを頼まれた住銀やヤマハで、磯田や川上にレッドカードを突き付けたのではないか。マッキンゼーだけでなく、堀紘一のいたボストン・コンサルティングでも、そこまで徹底してコンサルタント会社が改革案を出した例を私は知らない。だから、これらは新しさを好む経営者が化粧代わりに使っているもので、まさに無用の長物なのである。皮肉を言えば、会社滅びてコンサル栄えるだ。 大前は日本の漁村の港が漁師しか使えないことを批判し、税金で立派にしたのに「一部の人だけの特権になっている」とわめいている。「レジャーボートなんか、とても置かせてもらえない」「これはどう考えてもおかしい」と言うのだが、レジャーボートを置こうとする大前のような人間の方が「一部の人」であることは明らかではないか』、「住友銀行」では「磯田イズムが住銀では温存され、イトマン・スキャンダルを結果した」、「ヤマハでも社長世襲の問題は棚上げしたために、若社長が”職場放棄”」、「コンサルタント会社」はトップの意向を受けてコンサルティングする制約が出たのだろう。「大前」が「「レジャーボートなんか、とても置かせてもらえない」「これはどう考えてもおかしい」」、などと批判したというのは墓穴を掘ったようなものだ。
次に、4月1日付けNewsweek日本版が掲載した経済評論家の加谷珪一氏による「日本だけ給料が上がらない謎...「内部留保」でも「デフレ」でもない本当の元凶」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/kaya/2022/04/post-180_1.php
・『<順調に給料が上昇する諸外国と比べて、日本の賃金低迷はいよいよ顕著に。企業への賃上げ要求では解決不可能な根深い原因とその処方箋> 日本人の賃金が全くといってよいほど上昇していない。賃金の低下は今に始まったことではないが、豊かだった時代の惰性もあり、これまでは見て見ぬふりができた。だが諸外国との賃金格差がいよいよ顕著となり、隣国の韓国にも抜かれたことで、多くの国民が賃金の安さについて認識するようになっている。 OECD(経済協力開発機構)によると、2020年における日本の平均賃金(年収ベース:購買力平価のドル換算)は3万8515ドルと、アメリカ(6万9392ドル)の約半分、ドイツ(5万3745ドル)の7割程度。00年との比較では、各国の賃金が1.2倍から1.4倍になっているにもかかわらず、日本はほぼ横ばいの状態であり、15年には隣国の韓国にも抜かされた<参考グラフ:各国の平均賃金(年収)の推移>。 諸外国の賃金が上昇しているということは、それに伴って物価も上がっていることを意味する。食品など日本人が日常的に購入している商品の多くは輸入で支えられており、諸外国の物価が上昇すれば、当然の結果として輸入品の価格も上がる。日本人の賃金は横ばいなので、諸外国に対して買い負けすることになり、日本人が買えるモノの量は年々減少している。 日本の大卒初任給が20万円程度で伸び悩む一方、アメリカでは50万円を超えることも珍しくない。日本人に大人気のiPhoneは、高いモデルでは約15万円もするが、月収20万円の日本人と50万円のアメリカ人とでは負担感がまるで違う。このところ日本が貧しくなったと実感する人が増えているのは、こうした内外価格差が原因である』、「日本人の賃金」の伸び悩みは確かに深刻だ。なお、この記事でのグラフなどのリンクは記事にはない。
・『日本企業の内部留保は異様な水準 では、なぜ日本人の賃金は全くといってよいほど上がらないのだろうか。ちまたでよく耳にするのは、企業が内部留保をため込んでおり、社員の給料に資金を回していないという指摘である。21年3月末時点において日本企業が蓄積している内部留保は467兆円に達しており、異様な水準であることは間違いない。 だが内部留保というのは、賃金を含む全ての経費や税金を差し引いて得た利益(当期純利益)を積み上げたもので、本来は先行投資などに用いる資金である。内部留保が過剰に積み上がっているのは企業が先行投資を抑制した結果であって、内部留保を増やすために賃金を引き下げたわけではない。政府は企業に対して内部留保を賃金に回すよう強く求めたことがあったが、これは企業会計の原則を無視した議論であり、企業が応じることは原則としてあり得ない。 内部留保と並んでよく指摘されるのが、デフレマインドというキーワードに代表される日本人の価値観である。アベノミクス以降、デフレが日本経済低迷の元凶であり、デフレから脱却すれば経済は成長するという考え方が広く社会に浸透した。だが、この議論も先ほどの内部留保と同様、原因と結果を取り違えたものといってよいだろう。 一部の特殊なケースを除き、デフレ(物価の下落)というのは基本的に不景気の結果として発生する現象であり、デフレが不景気を引き起こしたわけではない。不景気でモノが売れず、企業は安値販売を余儀なくされ、これがさらに物価と賃金を引き下げている。高く売ることができる商品をわざわざ安く売っていたわけではない点に注意する必要がある。 一部の論者は最低賃金が低すぎるなど、制度に問題があると指摘している。日本の最低賃金が低すぎるのは事実であり、筆者も改善の余地があると考えているが、これが低賃金の直接的な原因になっているわけではない。ドイツではつい最近まで最低賃金制度が存在していなかったが、賃金は日本よりも圧倒的に高く推移してきた。 まともな賃金を払わない企業には人材が集まらないので、企業の側にも賃上げを行うインセンティブが存在する。企業が十分な利益を上げているのなら、最低賃金制度がなくても企業は相応の賃金を労働者に支払うはずだ』、「まともな賃金を払わない企業には人材が集まらないので、企業の側にも賃上げを行うインセンティブが存在する」、多くの企業が「賃上げ」を抑制しているなかでは、「インセンティブ」の「存在」は疑わしい。「企業が十分な利益を上げているのなら、最低賃金制度がなくても企業は相応の賃金を労働者に支払うはずだ」、も同様に疑わしい。「最低賃金」の引上げもプラスの効果を持つ筈だ。
・『低収益によって賃金が低迷する悪循環 以上から、日本企業は何らかの原因で十分に利益を上げられない状況が続いており、これが低賃金と消費低迷の原因になっていると推察される。収益が低いので高い賃金を払えず、結果として消費も拡大しないため企業収益がさらに低下するという悪循環である。そうだとすると、政府が取り組んでいる賃上げ税制も十分な効果を発揮しない可能性が高い。 岸田政権は企業に対して賃上げを強く要請するとともに、賃上げを実施した企業の法人税を優遇する措置を打ち出した。政府からの要請を受けて、企業が賃金を上げたとしても、企業の収益が拡大しない状況では確実に減益になる。企業は品質の引き下げや下請けへの値引き要求など別なところで利益を確保しようと試みるので、賃上げ分は相殺されてしまう。最初から賃上げをする予定だった企業が、節税目的で制度を利用するという、本来の趣旨とは異なる使われ方もあり得るだろう。) 法人税が高い状態であれば、減税もある程度の効果を発揮するかもしれないが、安倍政権は経済界の要請を受け、在任中に3回も法人減税を実施した。日本の法人税は度重なる減税によって大幅に下がっており、企業にとって減税は魅力的に映らない。というよりも、低収益に苦しむ経済界が政府に減税を強く要請したという図式であり、背後には慢性的な低収益という問題が存在している。 結局のところ日本企業が十分な収益を上げられず、これが長期的な低賃金の原因になっているのはほぼ間違いない。では日本企業というのはどの程度、低収益なのだろうか。 一般的に企業の収益力は当期純利益など最終的な利益率で比較されるが、これは賃金を支払った後の数字。人件費を極端に削減すれば利益を上げることができてしまうため、賃金について議論する場合、この指標を使うのは適切ではない。企業がどの程度、賃金を支払う能力があるのかは、企業が直接的に生み出す付加価値を比較することが重要である。 企業というのは、商品を仕入れ、それを顧客に販売して利益を得ている。製造業の場合には原材料などを仕入れ、組み立てを行って製品を顧客に販売している。 販売額と仕入れ額の差分が全ての利益の源泉であり、この根源的な利益のことを企業会計では売上総利益と呼ぶ。商売の現場では粗利(あらり)という言い方が一般的だが、経済学的に見た場合、企業が生み出す付加価値というのは、この粗利のことを指している。企業は付加価値の中から人件費や広告宣伝費などを捻出するので、付加価値が高まらないと賃金を上げることができない』、「付加価値」のなかで「人件費」が占める割合が低いのではなかろうか。
・『全業種で付加価値が低い日本 日本とアメリカ、ドイツにおける部門(業種)ごとの付加価値(従業員1人当たり)の違いを比較すると、その差は歴然としている。図2のグラフ<参考:日米独の部門(業種)ごとの付加価値の違い>は日本企業の付加価値を1としたときの相対値だが、アメリカは全ての部門において、ドイツもほぼ全ての部門において日本よりも付加価値が高い(つまり儲かっている)。日本企業の付加価値が低く推移している以上、日本企業は賃金を上げられないのが現実だ。 では、なぜ日本企業は高い付加価値を得られないのだろうか。会計的に言えば、付加価値(粗利)を増やすには、①売上高を拡大する、②価格を引き上げる、③仕入れ価格を引き下げる、という3つの方法しかない。このうち③の仕入れ価格の引き下げは、品質の低下や取引先企業への悪影響といったデメリットをもたらすので、積極的には選択されない。結局のところ、付加価値を増やすためには売上高を増やすか、価格を引き上げるかの2択となる。) 図3のグラフ<参考:日米の企業売上高の推移>は日本とアメリカの企業全体の売上高の推移を示したグラフである(80年を100としたときの相対値)。アメリカ企業はリーマン・ショックなどの例外を除けば、基本的にほぼ毎年、売上高を拡大しており、過去40年間でアメリカ企業の売上高は7倍近くに増えた。 売上総利益率(売上高に対する売上総利益の割合)は大きく変わらないので、売上高の絶対値が増えれば、その分だけ付加価値の絶対額も大きくなり、賃金を捻出する原資が増える。一方、日本は90年代以降、むしろ売上高を減らしている。売上高が増えていない以上、仕入れ価格を極端に下げるか、販売価格を引き上げない限り、付加価値は増えない。 では価格の推移はどうだろうか。経済圏全体で販売されている全ての製品価格を調べることは不可能だが、輸出に関しては統計的に価格の推移を追うことができる。日本の輸出品目の価格は80年を境に一貫して低下が続いている。国内でもファストフード・チェーンが過度な低価格競争を繰り返してきたことは多くの人が理解しているだろう。 結局のところ、日本企業は売上高を拡大することができず、価格を引き上げることもできていないという状況であり、これが低賃金の元凶となっている。売上高も価格も変えられないということは、企業の競争力そのものに問題があるとの結論にならざるを得ない』、「企業の競争力そのものに問題がある」、その通りなようだ。
・『なぜ日本企業の国際競争力は低いのか では日本企業の競争力はなぜ諸外国と比較して低く推移しているのだろうか。国により主力となる産業は異なるのでタイプ別に考えてみたい。 昭和の時代まで、日本は輸出主導で経済を成長させてきた。輸出主導型経済において成長のカギを握るのは、輸出産業の設備投資である。海外の需要が拡大すると輸出産業は増産に対応するため工場などに設備投資を行い、これが国内所得を増やし、消費拡大の呼び水となる。 一方、アメリカのような消費主導型経済の場合、成長のエンジンとなるのは国内消費そのものである。消費が拡大すると、国内企業が商業施設などへの設備投資を増やし、これが所得を増やして消費を拡大させるという好循環が成立する。 GDPの支出面における比率を見ると、アメリカは個人消費が67.9%もあるが、日本は55.4%となっており、日本はアメリカと比較して消費の割合が低い。だが、ドイツやスウェーデン、韓国など、日本よりもさらに消費の割合が低い国はたくさんある。ドイツは今も昔も製造業大国であり、輸出産業の設備投資が経済に大きな影響を与えている。) 同じく製造業が強いスウェーデンに至っては個人消費の比率はわずか44.7%しかない。これらの国々はまさに輸出主導型経済と言ってよく、日本はどちららかというと輸出主導型経済と消費主導型経済の中間地点と見なせるだろう。 加えて言うと、同じ輸出主導型経済であっても、典型的な福祉国家のスウェーデンと、日本と同じく自助努力が強く求められ社会的弱者の保護に消極的な韓国とでは、政府支出の比率が大きく異なる。スウェーデンは、韓国よりも製造業の付加価値が高く、余力を社会保障に充当しているという図式であり、これが政府支出という形で経済に貢献している。 韓国はかつては外貨の獲得に苦しみ、海外への利払いや返済が企業経営の重荷となってきたが、リーマン・ショック以降、輸出が大幅に増え、国際収支は近年、劇的に改善している。企業資金需要の多くを国内貯蓄で賄えるようになり、豊かだった日本に近い状態となりつつある。 日本以外の先進諸外国は、日本がゼロ成長だった過去30年、順調に成長を続けることができたが、それは各国企業がそれぞれの経済構造に合致した形で、業績拡大の努力を続けたからである』、なるほど。
・『グローバル基準でも大手だった日本企業の現状 消費主導型経済であるアメリカの場合、経済をリードする企業はウォルマートやホーム・デポといった小売店、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)に代表される生活用品メーカーなどであり、一方、輸出主導型経済において成長のエンジンとなっているのは電機や機械、化学など典型的な製造業だ。 ドイツにはシーメンスやバイエルなど、グローバルに通用する巨大メーカーがたくさんあり、スウェーデンは小国でありながら、エリクソン、ボルボ、イケア、H&M、スポティファイといった著名企業がそろっている。韓国はサムスンとLGが有名である。 日本の大手企業は80年代まではグローバル基準でも大手だったが、30年間で様子は様変わりした。各国企業が軒並み売上高を拡大する中、日本企業だけが業績の横ばいが続き、多くが相対的に中堅企業に転落した。グローバル基準でも大手といえるのは、もはやトヨタや日立、ソフトバンクグループなどごくわずかである。 日本企業の凋落は全世界の輸出シェアを見れば一目瞭然だ。日本は80年代までは順調に世界シェアを拡大し、一時はドイツと拮抗していた。ところが90年代以降、日本企業はみるみるシェアを落とし、今では4%を割るまでになっている。) 90年代といえば全世界的にデジタル化とグローバル化が進んだ時代であり、日本メーカーはこの流れについていけず、競争力を大きく低下させた。かつては世界最強と言われた半導体産業がほぼ壊滅状態に陥ったのも、全世界的なデジタル・シフトに対応できなかったことが原因である。結果として日本の製造業の売上高は伸びず、単価が下がったことで収益力が低下し、賃金が伸び悩んだと考えられる。 豊かな先進国は通常、製造業の競争力が低下しても、国内の消費市場を活用して成長を維持できる。日本はアメリカほどではないが、相応の国内消費市場が存在しているので、容易に消費主導型経済に転換できたはずだが、国内産業も製造業と同様、業績を拡大できなかった。主な原因はやはりデジタル化の不備にある。 80年代から90年代前半にかけて、日本におけるIT投資の金額(ソフトウエアとハードウエアの総額)は、先進諸外国と同じペースで増加していた。ところが95年以降、その流れが大きく変化し、日本だけがIT投資を減らすという異常事態になっている(OECDの統計を基に筆者算定)。この間、アメリカはIT投資額を3.3倍に、スウェーデンは3.0倍に拡大させた<参考グラフ:各国のIT投資の水準>。 ITは企業の限界コスト(生産を1単位増やすために必要な追加投資の額)を引き下げる効果を持つので、デジタル化時代においてITを積極的に導入しない企業は経営効率が著しく低下する。日本企業の多くはITを活用した業務プロセスの見直しを実施せず、生産性が伸び悩んだ可能性が高い。生産性と賃金は比例するので、生産性が伸び悩めば当然、賃金も下がってしまう』、「日本企業の多くはITを活用した業務プロセスの見直しを実施せず、生産性が伸び悩んだ可能性が高い」、こうした「デジタル化投資」の遅れは生産性向上に致命的だ。
・『企業業績が拡大しないと賃金は上がらない これまでの議論を整理すると、賃金というのは企業の付加価値が源泉であり、企業の業績が拡大しないと賃金は上がらないということが分かる。付加価値が低迷している状態で、無理なコスト削減(非正規労働者の拡大や、低賃金の外国人労働者の受け入れなど)を実施すると、さらに賃金が下がるという悪循環に陥ってしまう。 こうした状態から脱却するためには、企業の経営環境を根本的に見直す必要がある。意外に思うかもしれないが、日本は先進諸国の中で最も大手企業の経営者を甘やかす社会である。 アメリカはもともと株主の意向が強く、利益を上げられない経営者は容赦なく追放される。ドイツも90年代、当時のシュレーダー首相が中心となって企業経営改革を行い、企業は外部に対し明確な説明責任を負うようになった。ドイツの法律では債務超過を一定期間以上放置すると罰則が適用されるなど、経営者の甘えを許さない仕組みになっている。 債務超過に陥ったいわゆるゾンビ企業を税金を使って延命させたり、粉飾決算を行った経営者を処罰しない日本とは雲泥の差といってよいだろう』、「日本は先進諸国の中で最も大手企業の経営者を甘やかす社会である」、同感である。
・『日本の中小企業は大企業の隷属的な下請け 日本でも徐々にコーポレートガバナンス改革が強化されつつあるが、いまだに企業間の株式の持ち合いが行われているほか、経営能力があるのか疑わしい単なる著名人を社外役員に迎えるケースが散見されるなど、ガバナンスについて疑問視せざるを得ない企業が多い。揚げ句の果てには、政府が大手企業から要請を受け、株主総会に不正介入した疑惑まで指摘されるなど、先進国としてはあってはならない事態も起こっている。 日本では中小企業の多くが大企業の隷属的な下請けとなっており、慢性的な低収益に苦しんでいるが、これも先進諸外国ではあまり見られない光景である(アメリカやドイツの中小企業の利益率は大企業とほとんど変わらない)。 ガバナンスが不十分な社会では、企業経営者は非正規労働者の拡大や下請けへの圧迫など安易なコスト削減策に走りやすい。日本の社会システムは大手企業経営者を過度に甘やかす一方で、中小零細企業の経営者には事実上の無限責任を課すなど、中小企業の行動を大きく制約している。 上場企業に対するガバナンスを諸外国並みに強化し、中小企業の自立を促す金融システム改革を進めれば、日本企業の収益は大きく改善すると考えられる。同時並行で、あらゆる企業がITを導入せざるを得なくなるよう、政策誘導することも重要だ。一連の改革を実施し企業が自律的に成長できるフェーズに入れば、企業が生み出す付加価値は増えるので賃金も上昇していくだろう。最大の問題はこの改革をやり抜く覚悟が日本社会にあるのかどうかである』、「上場企業に対するガバナンスを諸外国並みに強化し、中小企業の自立を促す金融システム改革を進めれば、日本企業の収益は大きく改善する」、同感である。「あらゆる企業がITを導入せざるを得なくなるよう、政策誘導することも重要だ」、ただ、システム投資をベンダーへ丸投げするのではなく、中核的部分は出来るだけ自社でやるようにすべきだ。
第三に、5月25日付け東洋経済オンラインが掲載したみずほ銀行 チーフマーケット・エコノミストの唐鎌 大輔氏による「日本はなぜ「成長を諦めた国」になっているのか 過剰なコロナ対策も購買力を大きく削いでいる」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/591513
・『5月18日、内閣府から公表された2022年1~3月期の実質GDP(国内総生産)成長率(1次速報値)は前期比年率マイナス1.0%(前期比マイナス0.2%)と、高成長(前期比年率プラス3.8%、2次速報後改訂)の2021年12月期から一転してマイナス成長に転落した。2021年1~3月期から1四半期ごとに成長率はプラスとマイナスを繰り返しており、日本経済がパンデミック局面から抜け出せずに足掻い(あがい)ている様子がよくわかる』、興味深そうだ。
・『脱コロナを望まず、成長を諦める国民 もっとも、足掻いているという表現は適切ではないかもしれない。いまだに新規感染者の絶対水準に拘泥し、マスクの手放せない生活を続けていることは、世界的に見れば異様な光景だが、日本では日常だ。もちろん、マスクがあるから低成長なのではなく、マスクが象徴する過剰な防疫意識が消費や投資の意欲を削いでいることが重要である。 過去2年間、「経済より命」路線は確実に実体経済を破壊し続けているが、岸田政権の支持率から判断するかぎり、この状況を大多数の国民が肯定している。悪化ペースが緩やかなので、今を生きる人々が実感しにくいのかもしれない。現在と先行きの経済よりも健康を重視しがちな高齢者の割合が高いことも影響しており、結果的に政権は若者よりも高齢者を重視しているのだろう。後述するように、日本経済が置かれている状況は客観的に見て、先進国の中でそうとう劣後しているのだが、「成長を諦めた国」は国民が望んだ結果とも言える。 1~3月期のマイナス成長はオミクロン変異株の感染拡大を受けて再び政府が行動制限に踏み切ったためだが、個人消費はマイナスではなく横ばいにとどまり、今期の落ち込みをやや抑制した。これは意外であるが、オミクロン変異株の感染拡大は1~2月がピークだたっため、3月以降は行動制限解除を視野に個人が消費を回復させた可能性はある。 「もう、ポーズだけの行動制限措置にすぎない」と達観した人々が以前より自粛に協力しなくなっているという可能性もあろう。まん延防止等重点措置の期間も人出が減らないという報道が散見された。実際、内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局が提供する地域経済分析システム(RESAS)のデータを見ると、オミクロン変異株の感染者数急増とともにまん延防止等重点措置を発出したにもかかわらず、人流が顕著に抑制されていない現実も確認できる。 なお、5月16日には大手飲食チェーン店が時短命令をめぐり、東京都に損害賠償を求めていた裁判で、「命令は特に必要と認められず、違法」との判決が出ている。飲食店への時短命令も行動制限措置の一環だが、違法な命令を下してまで効果の薄い防疫政策を打つことを、東京都が今後は自重することに期待したい』、「オミクロン変異株の感染拡大は1~2月がピークだたっため、3月以降は行動制限解除を視野に個人が消費を回復させた可能性はある」、その通りだ。
・『過剰な防疫対策で経済の自滅が続く 周知のとおり、まん延防止等重点措置は3月下旬に全面解除され、5月のゴールデンウィーク中の人出はかなりの程度回復した。GW前に警告が見られた「2週間後の感染拡大」は現時点では見られておらず、人流と感染拡大の因果関係はかなり怪しいものだと言わざるをえない。 このままいけば4~6月期は個人消費に牽引され、高い成長率に復帰できるだろう。エコノミストのコンセンサス予想である日本経済研究センターの「ESPフォーキャスト」によれば4〜6月期は前期比年率プラス5.18%まで加速する。 しかし、日本の過剰な防疫意識を前提にすれば、成長軌道はこの先も安定しないことになる。過去2年のパターンに従えば、仮に7~9月期以降に感染拡大が見られた場合、4~6月期の高成長を「気の緩み」と指差し、再び自滅的な低成長(行動制限)を選択する流れが想定される。その悪循環を脱却すべく現実的な政策を打つべきだが、「経済より命」路線に対する根強い国民の支持を踏まえれば、政府・与党もこの方針を変える理由がなく、同じことが繰り返される可能性は否定できない。 人々は感染対策のために生きているわけではないはずだ。だが、日本ではそうなってしまっている。主要国の実質GDP水準の推移を、2019年7~9月期を100として見てみよう。10~12月期ではなく7~9月期としているのは、10月に日本では消費増税と台風19号による大きな下押し圧力を受けており、その影響を除いて比較したいためだ。日本は当時の水準に対して依然としてマイナス4%ほど届いていない。これがいかに異様な姿なのかは下図を一瞥すればわかるだろう。 「成長を諦めた国」というのは大げさな形容ではなく、純粋な事実である。円が実効ベースで急落し、日経平均株価がその他主要国の株価指数にはっきり劣後している状況と無関係とは思えない。 なお、今の日本経済の実情をより正確に映し出すのは実質GDP(国内総生産)に交易条件の変化(=交易利得・損失)を加えた実質GDI(国内総所得)である。1~3月期の実質GDPが前期比年率マイナス1.0%であったのに対し、実質GDIは同マイナス2.7%と3倍弱の落ち込みになっている。 資源価格の高騰および円安によってそれだけ海外への所得流出が進み、日本経済としての購買力が失われたことを意味している。これまでも述べてきたように、実質GDPはプラスとマイナスを交互に繰り返しており「停滞」という形容が当てはまるが、実質GDIは「悪化」の一途をたどっている』、「成長を諦めた国」とは言い得て妙だ。
・『外部環境は厳しい、せめて国内の足枷を外せ この間、円の実質実効為替相場(複数の通貨間の実力を見たもので、物価の影響を除く)が半世紀ぶりの円安を記録し「安い日本」の象徴として取りざたされたことは周知のとおり。実質GDIも「安い日本」ないし「貧しい日本」の一端を示すデータと言える。巷間言われる「悪い円安」論は結局、家計部門のコスト負担を端的に述べた議論だが、そうした現状を把握するには、国内の生産実態を捕捉する実質GDPよりも、所得実態を捕捉する実質GDIのほうが向いている。 問題は、過剰な防疫政策が修正され、何の行動規制も入らない状態になれば実質GDPは相応に回復しそうだが、高止まりする資源価格に起因する実質GDIの低迷は出口が見当たらないということだ。少なくともウクライナ危機に伴う資源価格上昇は2月下旬以降であり、交易損失拡大の影響がフルに顕現化するのは4~6月期以降の国民経済計算統計なのだろう。 今後の実質GDIは低迷し、結果として家計部門の消費・投資意欲は委縮しやすくなる。おそらく実質GDPの足枷にもなるはずだ。資源高に象徴される国外環境は不可抗力だが、せめて国内環境くらいは足枷をはめるような行為を止めてほしいと願うばかりである』、「「悪い円安」論は結局、家計部門のコスト負担を端的に述べた議論だが、そうした現状を把握するには、国内の生産実態を捕捉する実質GDPよりも、所得実態を捕捉する実質GDIのほうが向いている。」、「今後の実質GDIは低迷し、結果として家計部門の消費・投資意欲は委縮しやすくなる。おそらく実質GDPの足枷にもなるはずだ。資源高に象徴される国外環境は不可抗力だが、せめて国内環境くらいは足枷をはめるような行為を止めてほしいと願うばかりである」、同感である。
先ずは、3月22日付け日刊ゲンダイが掲載した評論家の佐高信氏による「大前研一がトップだったマッキンゼーに見た「会社滅びてコンサル栄える」」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/302758
・『マッキンゼーなどに頼む経営者は経営者失格なのではないかと私は思う。大前研一がトップだったころのマッキンゼーで喜劇的なことが起こったからだ。本質的には喜劇ではなく悲劇である。 ワンマンの磯田一郎が君臨した住友銀行やドンの川上源一が支配したヤマハがマッキンゼーにコンサルタントを依頼したが、腐敗や衰退の最大の元凶である磯田や川上にはまったく触れずに”改革”を進めたために、「向こう傷を恐れるな」という磯田イズムが住銀では温存され、イトマン・スキャンダルを結果した。また、ヤマハでも社長世襲の問題は棚上げしたために、若社長が”職場放棄”することになった。 磯田や川上が頼んでいるのだから、彼らの害を追及できるわけがない。本当はそこに踏み込んでこそのコンサルタントだろう。 大前の唱える「維新」が、サラリーマンにとっても、ためになるどころか有害なものであることは、彼を支持する経営者に京セラの稲盛和夫がいることでもわかる。 稲盛は大前をこう持ち上げた。 「大前さんのやろうとしていることが大きな実験であることは間違いない。この国は真の民主主義が定義できる国なのか。借り物の民主主義、えせ民主主義で終わるのか。それを証明する機会だと思う。一般の国民の間、一般社員の間では民主主義になっているが、会社も役所も上に行くほど民主主義ではないという不思議な国だ。大前さんの問いは官僚組織よりも国民一人一人に向けられているのだという自覚が、国民の間にどれくらいあるかが肝心だ。大前さんには冷静に、勇気を持って、初心を忘れずに、常に一歩控えめに事を進めてほしい」 こう言っている稲盛の京セラには「京セラ従業員の墓」という気持ち悪いものがある。そんな京セラならぬ狂セラに「借り物」だろうが、「えせ」だろうが、民主主義がないことははっきりしているが、稲盛にはその自覚がないのだろう。 もし、大前が民主主義の使徒なら、コンサルタントを頼まれた住銀やヤマハで、磯田や川上にレッドカードを突き付けたのではないか。マッキンゼーだけでなく、堀紘一のいたボストン・コンサルティングでも、そこまで徹底してコンサルタント会社が改革案を出した例を私は知らない。だから、これらは新しさを好む経営者が化粧代わりに使っているもので、まさに無用の長物なのである。皮肉を言えば、会社滅びてコンサル栄えるだ。 大前は日本の漁村の港が漁師しか使えないことを批判し、税金で立派にしたのに「一部の人だけの特権になっている」とわめいている。「レジャーボートなんか、とても置かせてもらえない」「これはどう考えてもおかしい」と言うのだが、レジャーボートを置こうとする大前のような人間の方が「一部の人」であることは明らかではないか』、「住友銀行」では「磯田イズムが住銀では温存され、イトマン・スキャンダルを結果した」、「ヤマハでも社長世襲の問題は棚上げしたために、若社長が”職場放棄”」、「コンサルタント会社」はトップの意向を受けてコンサルティングする制約が出たのだろう。「大前」が「「レジャーボートなんか、とても置かせてもらえない」「これはどう考えてもおかしい」」、などと批判したというのは墓穴を掘ったようなものだ。
次に、4月1日付けNewsweek日本版が掲載した経済評論家の加谷珪一氏による「日本だけ給料が上がらない謎...「内部留保」でも「デフレ」でもない本当の元凶」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/kaya/2022/04/post-180_1.php
・『<順調に給料が上昇する諸外国と比べて、日本の賃金低迷はいよいよ顕著に。企業への賃上げ要求では解決不可能な根深い原因とその処方箋> 日本人の賃金が全くといってよいほど上昇していない。賃金の低下は今に始まったことではないが、豊かだった時代の惰性もあり、これまでは見て見ぬふりができた。だが諸外国との賃金格差がいよいよ顕著となり、隣国の韓国にも抜かれたことで、多くの国民が賃金の安さについて認識するようになっている。 OECD(経済協力開発機構)によると、2020年における日本の平均賃金(年収ベース:購買力平価のドル換算)は3万8515ドルと、アメリカ(6万9392ドル)の約半分、ドイツ(5万3745ドル)の7割程度。00年との比較では、各国の賃金が1.2倍から1.4倍になっているにもかかわらず、日本はほぼ横ばいの状態であり、15年には隣国の韓国にも抜かされた<参考グラフ:各国の平均賃金(年収)の推移>。 諸外国の賃金が上昇しているということは、それに伴って物価も上がっていることを意味する。食品など日本人が日常的に購入している商品の多くは輸入で支えられており、諸外国の物価が上昇すれば、当然の結果として輸入品の価格も上がる。日本人の賃金は横ばいなので、諸外国に対して買い負けすることになり、日本人が買えるモノの量は年々減少している。 日本の大卒初任給が20万円程度で伸び悩む一方、アメリカでは50万円を超えることも珍しくない。日本人に大人気のiPhoneは、高いモデルでは約15万円もするが、月収20万円の日本人と50万円のアメリカ人とでは負担感がまるで違う。このところ日本が貧しくなったと実感する人が増えているのは、こうした内外価格差が原因である』、「日本人の賃金」の伸び悩みは確かに深刻だ。なお、この記事でのグラフなどのリンクは記事にはない。
・『日本企業の内部留保は異様な水準 では、なぜ日本人の賃金は全くといってよいほど上がらないのだろうか。ちまたでよく耳にするのは、企業が内部留保をため込んでおり、社員の給料に資金を回していないという指摘である。21年3月末時点において日本企業が蓄積している内部留保は467兆円に達しており、異様な水準であることは間違いない。 だが内部留保というのは、賃金を含む全ての経費や税金を差し引いて得た利益(当期純利益)を積み上げたもので、本来は先行投資などに用いる資金である。内部留保が過剰に積み上がっているのは企業が先行投資を抑制した結果であって、内部留保を増やすために賃金を引き下げたわけではない。政府は企業に対して内部留保を賃金に回すよう強く求めたことがあったが、これは企業会計の原則を無視した議論であり、企業が応じることは原則としてあり得ない。 内部留保と並んでよく指摘されるのが、デフレマインドというキーワードに代表される日本人の価値観である。アベノミクス以降、デフレが日本経済低迷の元凶であり、デフレから脱却すれば経済は成長するという考え方が広く社会に浸透した。だが、この議論も先ほどの内部留保と同様、原因と結果を取り違えたものといってよいだろう。 一部の特殊なケースを除き、デフレ(物価の下落)というのは基本的に不景気の結果として発生する現象であり、デフレが不景気を引き起こしたわけではない。不景気でモノが売れず、企業は安値販売を余儀なくされ、これがさらに物価と賃金を引き下げている。高く売ることができる商品をわざわざ安く売っていたわけではない点に注意する必要がある。 一部の論者は最低賃金が低すぎるなど、制度に問題があると指摘している。日本の最低賃金が低すぎるのは事実であり、筆者も改善の余地があると考えているが、これが低賃金の直接的な原因になっているわけではない。ドイツではつい最近まで最低賃金制度が存在していなかったが、賃金は日本よりも圧倒的に高く推移してきた。 まともな賃金を払わない企業には人材が集まらないので、企業の側にも賃上げを行うインセンティブが存在する。企業が十分な利益を上げているのなら、最低賃金制度がなくても企業は相応の賃金を労働者に支払うはずだ』、「まともな賃金を払わない企業には人材が集まらないので、企業の側にも賃上げを行うインセンティブが存在する」、多くの企業が「賃上げ」を抑制しているなかでは、「インセンティブ」の「存在」は疑わしい。「企業が十分な利益を上げているのなら、最低賃金制度がなくても企業は相応の賃金を労働者に支払うはずだ」、も同様に疑わしい。「最低賃金」の引上げもプラスの効果を持つ筈だ。
・『低収益によって賃金が低迷する悪循環 以上から、日本企業は何らかの原因で十分に利益を上げられない状況が続いており、これが低賃金と消費低迷の原因になっていると推察される。収益が低いので高い賃金を払えず、結果として消費も拡大しないため企業収益がさらに低下するという悪循環である。そうだとすると、政府が取り組んでいる賃上げ税制も十分な効果を発揮しない可能性が高い。 岸田政権は企業に対して賃上げを強く要請するとともに、賃上げを実施した企業の法人税を優遇する措置を打ち出した。政府からの要請を受けて、企業が賃金を上げたとしても、企業の収益が拡大しない状況では確実に減益になる。企業は品質の引き下げや下請けへの値引き要求など別なところで利益を確保しようと試みるので、賃上げ分は相殺されてしまう。最初から賃上げをする予定だった企業が、節税目的で制度を利用するという、本来の趣旨とは異なる使われ方もあり得るだろう。) 法人税が高い状態であれば、減税もある程度の効果を発揮するかもしれないが、安倍政権は経済界の要請を受け、在任中に3回も法人減税を実施した。日本の法人税は度重なる減税によって大幅に下がっており、企業にとって減税は魅力的に映らない。というよりも、低収益に苦しむ経済界が政府に減税を強く要請したという図式であり、背後には慢性的な低収益という問題が存在している。 結局のところ日本企業が十分な収益を上げられず、これが長期的な低賃金の原因になっているのはほぼ間違いない。では日本企業というのはどの程度、低収益なのだろうか。 一般的に企業の収益力は当期純利益など最終的な利益率で比較されるが、これは賃金を支払った後の数字。人件費を極端に削減すれば利益を上げることができてしまうため、賃金について議論する場合、この指標を使うのは適切ではない。企業がどの程度、賃金を支払う能力があるのかは、企業が直接的に生み出す付加価値を比較することが重要である。 企業というのは、商品を仕入れ、それを顧客に販売して利益を得ている。製造業の場合には原材料などを仕入れ、組み立てを行って製品を顧客に販売している。 販売額と仕入れ額の差分が全ての利益の源泉であり、この根源的な利益のことを企業会計では売上総利益と呼ぶ。商売の現場では粗利(あらり)という言い方が一般的だが、経済学的に見た場合、企業が生み出す付加価値というのは、この粗利のことを指している。企業は付加価値の中から人件費や広告宣伝費などを捻出するので、付加価値が高まらないと賃金を上げることができない』、「付加価値」のなかで「人件費」が占める割合が低いのではなかろうか。
・『全業種で付加価値が低い日本 日本とアメリカ、ドイツにおける部門(業種)ごとの付加価値(従業員1人当たり)の違いを比較すると、その差は歴然としている。図2のグラフ<参考:日米独の部門(業種)ごとの付加価値の違い>は日本企業の付加価値を1としたときの相対値だが、アメリカは全ての部門において、ドイツもほぼ全ての部門において日本よりも付加価値が高い(つまり儲かっている)。日本企業の付加価値が低く推移している以上、日本企業は賃金を上げられないのが現実だ。 では、なぜ日本企業は高い付加価値を得られないのだろうか。会計的に言えば、付加価値(粗利)を増やすには、①売上高を拡大する、②価格を引き上げる、③仕入れ価格を引き下げる、という3つの方法しかない。このうち③の仕入れ価格の引き下げは、品質の低下や取引先企業への悪影響といったデメリットをもたらすので、積極的には選択されない。結局のところ、付加価値を増やすためには売上高を増やすか、価格を引き上げるかの2択となる。) 図3のグラフ<参考:日米の企業売上高の推移>は日本とアメリカの企業全体の売上高の推移を示したグラフである(80年を100としたときの相対値)。アメリカ企業はリーマン・ショックなどの例外を除けば、基本的にほぼ毎年、売上高を拡大しており、過去40年間でアメリカ企業の売上高は7倍近くに増えた。 売上総利益率(売上高に対する売上総利益の割合)は大きく変わらないので、売上高の絶対値が増えれば、その分だけ付加価値の絶対額も大きくなり、賃金を捻出する原資が増える。一方、日本は90年代以降、むしろ売上高を減らしている。売上高が増えていない以上、仕入れ価格を極端に下げるか、販売価格を引き上げない限り、付加価値は増えない。 では価格の推移はどうだろうか。経済圏全体で販売されている全ての製品価格を調べることは不可能だが、輸出に関しては統計的に価格の推移を追うことができる。日本の輸出品目の価格は80年を境に一貫して低下が続いている。国内でもファストフード・チェーンが過度な低価格競争を繰り返してきたことは多くの人が理解しているだろう。 結局のところ、日本企業は売上高を拡大することができず、価格を引き上げることもできていないという状況であり、これが低賃金の元凶となっている。売上高も価格も変えられないということは、企業の競争力そのものに問題があるとの結論にならざるを得ない』、「企業の競争力そのものに問題がある」、その通りなようだ。
・『なぜ日本企業の国際競争力は低いのか では日本企業の競争力はなぜ諸外国と比較して低く推移しているのだろうか。国により主力となる産業は異なるのでタイプ別に考えてみたい。 昭和の時代まで、日本は輸出主導で経済を成長させてきた。輸出主導型経済において成長のカギを握るのは、輸出産業の設備投資である。海外の需要が拡大すると輸出産業は増産に対応するため工場などに設備投資を行い、これが国内所得を増やし、消費拡大の呼び水となる。 一方、アメリカのような消費主導型経済の場合、成長のエンジンとなるのは国内消費そのものである。消費が拡大すると、国内企業が商業施設などへの設備投資を増やし、これが所得を増やして消費を拡大させるという好循環が成立する。 GDPの支出面における比率を見ると、アメリカは個人消費が67.9%もあるが、日本は55.4%となっており、日本はアメリカと比較して消費の割合が低い。だが、ドイツやスウェーデン、韓国など、日本よりもさらに消費の割合が低い国はたくさんある。ドイツは今も昔も製造業大国であり、輸出産業の設備投資が経済に大きな影響を与えている。) 同じく製造業が強いスウェーデンに至っては個人消費の比率はわずか44.7%しかない。これらの国々はまさに輸出主導型経済と言ってよく、日本はどちららかというと輸出主導型経済と消費主導型経済の中間地点と見なせるだろう。 加えて言うと、同じ輸出主導型経済であっても、典型的な福祉国家のスウェーデンと、日本と同じく自助努力が強く求められ社会的弱者の保護に消極的な韓国とでは、政府支出の比率が大きく異なる。スウェーデンは、韓国よりも製造業の付加価値が高く、余力を社会保障に充当しているという図式であり、これが政府支出という形で経済に貢献している。 韓国はかつては外貨の獲得に苦しみ、海外への利払いや返済が企業経営の重荷となってきたが、リーマン・ショック以降、輸出が大幅に増え、国際収支は近年、劇的に改善している。企業資金需要の多くを国内貯蓄で賄えるようになり、豊かだった日本に近い状態となりつつある。 日本以外の先進諸外国は、日本がゼロ成長だった過去30年、順調に成長を続けることができたが、それは各国企業がそれぞれの経済構造に合致した形で、業績拡大の努力を続けたからである』、なるほど。
・『グローバル基準でも大手だった日本企業の現状 消費主導型経済であるアメリカの場合、経済をリードする企業はウォルマートやホーム・デポといった小売店、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)に代表される生活用品メーカーなどであり、一方、輸出主導型経済において成長のエンジンとなっているのは電機や機械、化学など典型的な製造業だ。 ドイツにはシーメンスやバイエルなど、グローバルに通用する巨大メーカーがたくさんあり、スウェーデンは小国でありながら、エリクソン、ボルボ、イケア、H&M、スポティファイといった著名企業がそろっている。韓国はサムスンとLGが有名である。 日本の大手企業は80年代まではグローバル基準でも大手だったが、30年間で様子は様変わりした。各国企業が軒並み売上高を拡大する中、日本企業だけが業績の横ばいが続き、多くが相対的に中堅企業に転落した。グローバル基準でも大手といえるのは、もはやトヨタや日立、ソフトバンクグループなどごくわずかである。 日本企業の凋落は全世界の輸出シェアを見れば一目瞭然だ。日本は80年代までは順調に世界シェアを拡大し、一時はドイツと拮抗していた。ところが90年代以降、日本企業はみるみるシェアを落とし、今では4%を割るまでになっている。) 90年代といえば全世界的にデジタル化とグローバル化が進んだ時代であり、日本メーカーはこの流れについていけず、競争力を大きく低下させた。かつては世界最強と言われた半導体産業がほぼ壊滅状態に陥ったのも、全世界的なデジタル・シフトに対応できなかったことが原因である。結果として日本の製造業の売上高は伸びず、単価が下がったことで収益力が低下し、賃金が伸び悩んだと考えられる。 豊かな先進国は通常、製造業の競争力が低下しても、国内の消費市場を活用して成長を維持できる。日本はアメリカほどではないが、相応の国内消費市場が存在しているので、容易に消費主導型経済に転換できたはずだが、国内産業も製造業と同様、業績を拡大できなかった。主な原因はやはりデジタル化の不備にある。 80年代から90年代前半にかけて、日本におけるIT投資の金額(ソフトウエアとハードウエアの総額)は、先進諸外国と同じペースで増加していた。ところが95年以降、その流れが大きく変化し、日本だけがIT投資を減らすという異常事態になっている(OECDの統計を基に筆者算定)。この間、アメリカはIT投資額を3.3倍に、スウェーデンは3.0倍に拡大させた<参考グラフ:各国のIT投資の水準>。 ITは企業の限界コスト(生産を1単位増やすために必要な追加投資の額)を引き下げる効果を持つので、デジタル化時代においてITを積極的に導入しない企業は経営効率が著しく低下する。日本企業の多くはITを活用した業務プロセスの見直しを実施せず、生産性が伸び悩んだ可能性が高い。生産性と賃金は比例するので、生産性が伸び悩めば当然、賃金も下がってしまう』、「日本企業の多くはITを活用した業務プロセスの見直しを実施せず、生産性が伸び悩んだ可能性が高い」、こうした「デジタル化投資」の遅れは生産性向上に致命的だ。
・『企業業績が拡大しないと賃金は上がらない これまでの議論を整理すると、賃金というのは企業の付加価値が源泉であり、企業の業績が拡大しないと賃金は上がらないということが分かる。付加価値が低迷している状態で、無理なコスト削減(非正規労働者の拡大や、低賃金の外国人労働者の受け入れなど)を実施すると、さらに賃金が下がるという悪循環に陥ってしまう。 こうした状態から脱却するためには、企業の経営環境を根本的に見直す必要がある。意外に思うかもしれないが、日本は先進諸国の中で最も大手企業の経営者を甘やかす社会である。 アメリカはもともと株主の意向が強く、利益を上げられない経営者は容赦なく追放される。ドイツも90年代、当時のシュレーダー首相が中心となって企業経営改革を行い、企業は外部に対し明確な説明責任を負うようになった。ドイツの法律では債務超過を一定期間以上放置すると罰則が適用されるなど、経営者の甘えを許さない仕組みになっている。 債務超過に陥ったいわゆるゾンビ企業を税金を使って延命させたり、粉飾決算を行った経営者を処罰しない日本とは雲泥の差といってよいだろう』、「日本は先進諸国の中で最も大手企業の経営者を甘やかす社会である」、同感である。
・『日本の中小企業は大企業の隷属的な下請け 日本でも徐々にコーポレートガバナンス改革が強化されつつあるが、いまだに企業間の株式の持ち合いが行われているほか、経営能力があるのか疑わしい単なる著名人を社外役員に迎えるケースが散見されるなど、ガバナンスについて疑問視せざるを得ない企業が多い。揚げ句の果てには、政府が大手企業から要請を受け、株主総会に不正介入した疑惑まで指摘されるなど、先進国としてはあってはならない事態も起こっている。 日本では中小企業の多くが大企業の隷属的な下請けとなっており、慢性的な低収益に苦しんでいるが、これも先進諸外国ではあまり見られない光景である(アメリカやドイツの中小企業の利益率は大企業とほとんど変わらない)。 ガバナンスが不十分な社会では、企業経営者は非正規労働者の拡大や下請けへの圧迫など安易なコスト削減策に走りやすい。日本の社会システムは大手企業経営者を過度に甘やかす一方で、中小零細企業の経営者には事実上の無限責任を課すなど、中小企業の行動を大きく制約している。 上場企業に対するガバナンスを諸外国並みに強化し、中小企業の自立を促す金融システム改革を進めれば、日本企業の収益は大きく改善すると考えられる。同時並行で、あらゆる企業がITを導入せざるを得なくなるよう、政策誘導することも重要だ。一連の改革を実施し企業が自律的に成長できるフェーズに入れば、企業が生み出す付加価値は増えるので賃金も上昇していくだろう。最大の問題はこの改革をやり抜く覚悟が日本社会にあるのかどうかである』、「上場企業に対するガバナンスを諸外国並みに強化し、中小企業の自立を促す金融システム改革を進めれば、日本企業の収益は大きく改善する」、同感である。「あらゆる企業がITを導入せざるを得なくなるよう、政策誘導することも重要だ」、ただ、システム投資をベンダーへ丸投げするのではなく、中核的部分は出来るだけ自社でやるようにすべきだ。
第三に、5月25日付け東洋経済オンラインが掲載したみずほ銀行 チーフマーケット・エコノミストの唐鎌 大輔氏による「日本はなぜ「成長を諦めた国」になっているのか 過剰なコロナ対策も購買力を大きく削いでいる」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/591513
・『5月18日、内閣府から公表された2022年1~3月期の実質GDP(国内総生産)成長率(1次速報値)は前期比年率マイナス1.0%(前期比マイナス0.2%)と、高成長(前期比年率プラス3.8%、2次速報後改訂)の2021年12月期から一転してマイナス成長に転落した。2021年1~3月期から1四半期ごとに成長率はプラスとマイナスを繰り返しており、日本経済がパンデミック局面から抜け出せずに足掻い(あがい)ている様子がよくわかる』、興味深そうだ。
・『脱コロナを望まず、成長を諦める国民 もっとも、足掻いているという表現は適切ではないかもしれない。いまだに新規感染者の絶対水準に拘泥し、マスクの手放せない生活を続けていることは、世界的に見れば異様な光景だが、日本では日常だ。もちろん、マスクがあるから低成長なのではなく、マスクが象徴する過剰な防疫意識が消費や投資の意欲を削いでいることが重要である。 過去2年間、「経済より命」路線は確実に実体経済を破壊し続けているが、岸田政権の支持率から判断するかぎり、この状況を大多数の国民が肯定している。悪化ペースが緩やかなので、今を生きる人々が実感しにくいのかもしれない。現在と先行きの経済よりも健康を重視しがちな高齢者の割合が高いことも影響しており、結果的に政権は若者よりも高齢者を重視しているのだろう。後述するように、日本経済が置かれている状況は客観的に見て、先進国の中でそうとう劣後しているのだが、「成長を諦めた国」は国民が望んだ結果とも言える。 1~3月期のマイナス成長はオミクロン変異株の感染拡大を受けて再び政府が行動制限に踏み切ったためだが、個人消費はマイナスではなく横ばいにとどまり、今期の落ち込みをやや抑制した。これは意外であるが、オミクロン変異株の感染拡大は1~2月がピークだたっため、3月以降は行動制限解除を視野に個人が消費を回復させた可能性はある。 「もう、ポーズだけの行動制限措置にすぎない」と達観した人々が以前より自粛に協力しなくなっているという可能性もあろう。まん延防止等重点措置の期間も人出が減らないという報道が散見された。実際、内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局が提供する地域経済分析システム(RESAS)のデータを見ると、オミクロン変異株の感染者数急増とともにまん延防止等重点措置を発出したにもかかわらず、人流が顕著に抑制されていない現実も確認できる。 なお、5月16日には大手飲食チェーン店が時短命令をめぐり、東京都に損害賠償を求めていた裁判で、「命令は特に必要と認められず、違法」との判決が出ている。飲食店への時短命令も行動制限措置の一環だが、違法な命令を下してまで効果の薄い防疫政策を打つことを、東京都が今後は自重することに期待したい』、「オミクロン変異株の感染拡大は1~2月がピークだたっため、3月以降は行動制限解除を視野に個人が消費を回復させた可能性はある」、その通りだ。
・『過剰な防疫対策で経済の自滅が続く 周知のとおり、まん延防止等重点措置は3月下旬に全面解除され、5月のゴールデンウィーク中の人出はかなりの程度回復した。GW前に警告が見られた「2週間後の感染拡大」は現時点では見られておらず、人流と感染拡大の因果関係はかなり怪しいものだと言わざるをえない。 このままいけば4~6月期は個人消費に牽引され、高い成長率に復帰できるだろう。エコノミストのコンセンサス予想である日本経済研究センターの「ESPフォーキャスト」によれば4〜6月期は前期比年率プラス5.18%まで加速する。 しかし、日本の過剰な防疫意識を前提にすれば、成長軌道はこの先も安定しないことになる。過去2年のパターンに従えば、仮に7~9月期以降に感染拡大が見られた場合、4~6月期の高成長を「気の緩み」と指差し、再び自滅的な低成長(行動制限)を選択する流れが想定される。その悪循環を脱却すべく現実的な政策を打つべきだが、「経済より命」路線に対する根強い国民の支持を踏まえれば、政府・与党もこの方針を変える理由がなく、同じことが繰り返される可能性は否定できない。 人々は感染対策のために生きているわけではないはずだ。だが、日本ではそうなってしまっている。主要国の実質GDP水準の推移を、2019年7~9月期を100として見てみよう。10~12月期ではなく7~9月期としているのは、10月に日本では消費増税と台風19号による大きな下押し圧力を受けており、その影響を除いて比較したいためだ。日本は当時の水準に対して依然としてマイナス4%ほど届いていない。これがいかに異様な姿なのかは下図を一瞥すればわかるだろう。 「成長を諦めた国」というのは大げさな形容ではなく、純粋な事実である。円が実効ベースで急落し、日経平均株価がその他主要国の株価指数にはっきり劣後している状況と無関係とは思えない。 なお、今の日本経済の実情をより正確に映し出すのは実質GDP(国内総生産)に交易条件の変化(=交易利得・損失)を加えた実質GDI(国内総所得)である。1~3月期の実質GDPが前期比年率マイナス1.0%であったのに対し、実質GDIは同マイナス2.7%と3倍弱の落ち込みになっている。 資源価格の高騰および円安によってそれだけ海外への所得流出が進み、日本経済としての購買力が失われたことを意味している。これまでも述べてきたように、実質GDPはプラスとマイナスを交互に繰り返しており「停滞」という形容が当てはまるが、実質GDIは「悪化」の一途をたどっている』、「成長を諦めた国」とは言い得て妙だ。
・『外部環境は厳しい、せめて国内の足枷を外せ この間、円の実質実効為替相場(複数の通貨間の実力を見たもので、物価の影響を除く)が半世紀ぶりの円安を記録し「安い日本」の象徴として取りざたされたことは周知のとおり。実質GDIも「安い日本」ないし「貧しい日本」の一端を示すデータと言える。巷間言われる「悪い円安」論は結局、家計部門のコスト負担を端的に述べた議論だが、そうした現状を把握するには、国内の生産実態を捕捉する実質GDPよりも、所得実態を捕捉する実質GDIのほうが向いている。 問題は、過剰な防疫政策が修正され、何の行動規制も入らない状態になれば実質GDPは相応に回復しそうだが、高止まりする資源価格に起因する実質GDIの低迷は出口が見当たらないということだ。少なくともウクライナ危機に伴う資源価格上昇は2月下旬以降であり、交易損失拡大の影響がフルに顕現化するのは4~6月期以降の国民経済計算統計なのだろう。 今後の実質GDIは低迷し、結果として家計部門の消費・投資意欲は委縮しやすくなる。おそらく実質GDPの足枷にもなるはずだ。資源高に象徴される国外環境は不可抗力だが、せめて国内環境くらいは足枷をはめるような行為を止めてほしいと願うばかりである』、「「悪い円安」論は結局、家計部門のコスト負担を端的に述べた議論だが、そうした現状を把握するには、国内の生産実態を捕捉する実質GDPよりも、所得実態を捕捉する実質GDIのほうが向いている。」、「今後の実質GDIは低迷し、結果として家計部門の消費・投資意欲は委縮しやすくなる。おそらく実質GDPの足枷にもなるはずだ。資源高に象徴される国外環境は不可抗力だが、せめて国内環境くらいは足枷をはめるような行為を止めてほしいと願うばかりである」、同感である。
タグ:佐高信氏による「大前研一がトップだったマッキンゼーに見た「会社滅びてコンサル栄える」」 日刊ゲンダイ 「住友銀行」では「磯田イズムが住銀では温存され、イトマン・スキャンダルを結果した」、「ヤマハでも社長世襲の問題は棚上げしたために、若社長が”職場放棄”」、「コンサルタント会社」はトップの意向を受けてコンサルティングする制約が出たのだろう。「大前」が「「レジャーボートなんか、とても置かせてもらえない」「これはどう考えてもおかしい」」、などと批判したというのは墓穴を掘ったようなものだ。 「企業の競争力そのものに問題がある」、その通りなようだ。 「付加価値」のなかで「人件費」が占める割合が低いのではなかろうか。 「上場企業に対するガバナンスを諸外国並みに強化し、中小企業の自立を促す金融システム改革を進めれば、日本企業の収益は大きく改善する」、同感である。「あらゆる企業がITを導入せざるを得なくなるよう、政策誘導することも重要だ」、ただ、システム投資をベンダーへ丸投げするのではなく、中核的部分は出来るだけ自社でやるようにすべきだ。 (その26)(大前研一がトップだったマッキンゼーに見た「会社滅びてコンサル栄える」、日本だけ給料が上がらない謎...「内部留保」でも「デフレ」でもない本当の元凶、日本はなぜ「成長を諦めた国」になっているのか 過剰なコロナ対策も購買力を大きく削いでいる) 「まともな賃金を払わない企業には人材が集まらないので、企業の側にも賃上げを行うインセンティブが存在する」、多くの企業が「賃上げ」を抑制しているなかでは、「インセンティブ」の「存在」は疑わしい。「企業が十分な利益を上げているのなら、最低賃金制度がなくても企業は相応の賃金を労働者に支払うはずだ」、も同様に疑わしい。「最低賃金」の引上げもプラスの効果を持つ筈だ。 「日本人の賃金」の伸び悩みは確かに深刻だ。なお、この記事でのグラフなどのリンクは記事にはない。 「「悪い円安」論は結局、家計部門のコスト負担を端的に述べた議論だが、そうした現状を把握するには、国内の生産実態を捕捉する実質GDPよりも、所得実態を捕捉する実質GDIのほうが向いている。」、「今後の実質GDIは低迷し、結果として家計部門の消費・投資意欲は委縮しやすくなる。おそらく実質GDPの足枷にもなるはずだ。資源高に象徴される国外環境は不可抗力だが、せめて国内環境くらいは足枷をはめるような行為を止めてほしいと願うばかりである」、同感である。 加谷珪一氏による「日本だけ給料が上がらない謎...「内部留保」でも「デフレ」でもない本当の元凶」 「日本は先進諸国の中で最も大手企業の経営者を甘やかす社会である」、同感である。 順調に給料が上昇する諸外国と比べて、日本の賃金低迷はいよいよ顕著に。企業への賃上げ要求では解決不可能な根深い原因とその処方箋 Newsweek日本版 「成長を諦めた国」とは言い得て妙だ。 「日本企業の多くはITを活用した業務プロセスの見直しを実施せず、生産性が伸び悩んだ可能性が高い」、こうした「デジタル化投資」の遅れは生産性向上に致命的だ。 「オミクロン変異株の感染拡大は1~2月がピークだたっため、3月以降は行動制限解除を視野に個人が消費を回復させた可能性はある」、その通りだ。 唐鎌 大輔氏による「日本はなぜ「成長を諦めた国」になっているのか 過剰なコロナ対策も購買力を大きく削いでいる」 東洋経済オンライン 日本の構造問題