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大学(その11)(技術者教育の「国立高専」 東大18人 難関国立大に多数編入、“専門バカ”をつくらない「東京科学大学」に期待できるか 東工大と医科歯科大の統合が心配な理由〈dot.〉、理系トップ「東工大」出身女優が語るわが母校 “新名称”と“女子枠”創設への思い、定員割れで募集停止の恵泉女学園大 「御三家」も厳しい女子大 第7回) [社会]

大学については、昨年5月2日に取上げた。今日は、(その11)(技術者教育の「国立高専」 東大18人 難関国立大に多数編入、“専門バカ”をつくらない「東京科学大学」に期待できるか 東工大と医科歯科大の統合が心配な理由〈dot.〉、理系トップ「東工大」出身女優が語るわが母校 “新名称”と“女子枠”創設への思い、定員割れで募集停止の恵泉女学園大 「御三家」も厳しい女子大 第7回)である。

先ずは、本年1月30日付け日経ビジネスオンライン「技術者教育の「国立高専」 東大18人、難関国立大に多数編入」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/plus/00050/012400005/
・『国立高等専門学校(以下、高専)の卒業生の4割が、大学への編入などによって進学していることをご存じだろうか。高専は15歳から5年間一貫の技術者教育を行って、高度な専門性を持つ学生を輩出することを重要なミッションにしている。1962年から各地で設置が始まり、2022年度は高専制度創設60周年の節目の年。現在は全国に51校がある。 30年ほど前は、卒業生の7割から8割はそのまま就職していた。それが、ここ20年は就職が6割、進学が4割となっていて、東京大学をはじめとする難関国立大学に編入する学生も少なくない。理系人材が求められる中で、大学側も受け入れ体制を整えている。高専生の進学状況について見ていきたい』、「高専の卒業生の4割が、大学への編入などによって進学」、そんなに多くが「進学」しているとは初めて知った。
・『東大18人、東工大26人など国立大学に多数編入  高専は全国に51校あり、1学年に9000人以上が学んでいる。中学校を卒業して高専に入学した学生は、5年間の一貫教育によって一般的な教養と共に産業界で活躍できる専門的な知識や技術を身に付ける。 高専卒業後の進路は就職が6割、進学が4割。就職希望者の就職率は、毎年98%台から99%台と高い数字を誇る。進学については、各高専でさらに2年間高度な教育を受けることができる専攻科に進む学生が約14%、大学に主に3年次から編入する学生が約24%だ。 ここで、2021年4月に、全国の高専51校から主な大学に編入した実数を見てみたい。 300人以上を受け入れているのが、豊橋技術科学大学と長岡技術科学大学。高専の卒業生を編入で受け入れることを主な目的として設置された国立大学だ。高専からの編入が1学年の約8割を占めている。 それ以外の大学を見ると、国立大学が多いことが分かる。東京大学には18人、東京工業大学には26人が編入しているほか、旧帝大でも九州大学の57人をはじめ多くの編入生を受け入れている。 編入に当たっては高専での成績がベースになる。その上で、大学によって異なるが、推薦試験の場合は6月から7月ごろに面接が、学力試験を課す場合は8月から9月ごろに試験が行われる。 大学入試に臨むのであれば、受験勉強をする必要がある。それが、高専生の場合は、高専で5年間集中して学び、大学へは編入試験を経て3年次に進む。専門的な知識を深めた状態で3年次に編入してくる高専卒業生は、大学側にとっても「欲しい人材」になっているのだ。 国立大学が高専生の受け入れを増やしてきた一方で、私立大学でも学生確保を目指す動きがある。東京都市大学は23年度から、高専から3年次に編入する学生に対して、授業料の75%を減免する制度を始める。減免額は最大で221万4000円にも及ぶ。 私立大学の理系学部は、国立大学に比べると学費が高い。高専の卒業生に振り向いてもらえるように、今後同様の施策を打ち出す大学が他にも出てくるのではないだろうか』、「高専卒業後の進路は就職が6割、進学が4割。就職希望者の就職率は、毎年98%台から99%台と高い数字を誇る。進学については、各高専でさらに2年間高度な教育を受けることができる専攻科に進む学生が約14%、大学に主に3年次から編入する学生が約24%だ」、「編入に当たっては高専での成績がベースになる。その上で、大学によって異なるが、推薦試験の場合は6月から7月ごろに面接が、学力試験を課す場合は8月から9月ごろに試験が行われる」、「高専生の場合は、高専で5年間集中して学び、大学へは編入試験を経て3年次に進む。専門的な知識を深めた状態で3年次に編入してくる高専卒業生は、大学側にとっても「欲しい人材」になっているのだ」、「私立大学でも学生確保を目指す動きがある。東京都市大学は23年度から、高専から3年次に編入する学生に対して、授業料の75%を減免する制度を始める。減免額は最大で221万4000円にも及ぶ。 私立大学の理系学部は、国立大学に比べると学費が高い。高専の卒業生に振り向いてもらえるように、今後同様の施策を打ち出す大学が他にも出てくるのではないだろうか」、なるほど。
・『高専の役割の変化と社会からの要請  なぜ高専からの進学が増えたのか。東京都八王子市にある国立高等専門学校機構本部に進学の現状について聞いた。教育総括参事で教授の下田貞幸氏によると、高専の役割が変化してきた面があると指摘する。 「高専の制度は60年前、即戦力の中堅技術者を養成する目的でスタートしました。『大学を卒業するまで待っていられない』『ある程度知識も技術もある即戦力が早く欲しい』という企業からの声や、社会からの要請が出発点でした。 今は社会の要請が変わってきました。即戦力や中堅技術者といった言葉は使っていません。高度な知識や技術を身に付けるともに、社会の課題を解決する、社会を良くするために学ぶ場に位置づけられています。起業する学生も増えていますね」 かつては高専を卒業すると、就職する学生が7割から8割を占め、進学は2割に満たないくらいだった。それが、約30年前から20年前にかけて、各高専に専攻科ができたことで、進学する学生の割合が増えた。 併せて、高専生を編入で受け入れる大学が増えて、その人数も多くなってきた。大学側も高専の卒業生への期待が大きくなっているという。 「高専では15歳から専門教育が始まって、5年生の時点で大学卒業と同じ程度の力をつけることを目指して教育しています。実習や実験も多く経験していますし、卒業研究も5年生で取り組みます。 一通りのことをやった上で大学に編入すると、1年生から大学に入学している学生に比べて手も動き、知識もあるので、大学で研究のリーダー的な存在になっている学生も結構います。そういう意味で、大学側からは『高専から学生が欲しい』という声をよく聞くようになりました。 東京大学に編入できるような学生は、高専の中でもトップクラスであることは確かですね。そもそも高専には、中学校卒の段階で優秀な学生が来てくれている場合が多いです。そういう学生が育って、より高度な勉強や研究がしたいという意識を持つことで、東京大学や東京工業大学などトップクラスの大学への編入を目指すケースが出てきています」』、「「高専の制度は60年前、即戦力の中堅技術者を養成する目的でスタートしました。『大学を卒業するまで待っていられない』『ある程度知識も技術もある即戦力が早く欲しい』という企業からの声や、社会からの要請が出発点でした。 今は社会の要請が変わってきました。即戦力や中堅技術者といった言葉は使っていません。高度な知識や技術を身に付けるともに、社会の課題を解決する、社会を良くするために学ぶ場に位置づけられています」、「「高専では15歳から専門教育が始まって、5年生の時点で大学卒業と同じ程度の力をつけることを目指して教育しています。実習や実験も多く経験していますし、卒業研究も5年生で取り組みます。 一通りのことをやった上で大学に編入すると、1年生から大学に入学している学生に比べて手も動き、知識もあるので、大学で研究のリーダー的な存在になっている学生も結構います。そういう意味で、大学側からは『高専から学生が欲しい』という声をよく聞くようになりました。 東京大学に編入できるような学生は、高専の中でもトップクラスであることは確かですね。そもそも高専には、中学校卒の段階で優秀な学生が来てくれている場合が多いです。そういう学生が育って、より高度な勉強や研究がしたいという意識を持つことで、東京大学や東京工業大学などトップクラスの大学への編入を目指すケースが出てきています」、「東京大学や東京工業大学などトップクラスの大学への編入を目指すケースが出てきています」、とは大したものだ。
・『半数以上が大学に編入する高専も  高専全体では編入する学生の割合は約4割だが、それを超える高専もある。最も割合が高いのは、6割を超えている群馬県の群馬工業高専と新潟県の長岡工業高専だ。次いで、6割に近い兵庫県の明石工業高専が続く。千葉県の木更津工業高専と奈良県の奈良工業高専は5割を超え、九州では久留米工業高専が4割以上となっている。下田氏が次のように解説する。 「大都市圏の高専は大学に進む割合が高いですね。おそらく、大学の数が多いからではないでしょうか。長岡工業高専については、長岡技術科学大学が近くにあることも要因の一つだと思います」 さらに、高専の専攻科から、各大学の大学院に進む学生も多い。専攻科修了生の約4割が大学院に進学している。次の表は、21年4月の大学院への入学者数だ。 多い順に見ていくと、奈良先端科学技術大学院大学、東北大学、筑波大学、九州大学など、国立大学の大学院に多数進学していることが分かる。修了生は高専と専攻科で学んだことを、大学院でさらに深めていく。高度な知識と技術を持つ人材が、高専から育っているのだ』、「修了生は高専と専攻科で学んだことを、大学院でさらに深めていく。高度な知識と技術を持つ人材が、高専から育っているのだ」、期待できそうな人材だ。
・『あまり知られていない進学率の高さ  以上のように、高専からの大学編入や、その先の大学院への進学を選ぶ学生の割合は高い。にもかかわらず、学生の親世代も含め、一般にはあまり知られていないのではないだろうか。 高専のパンフレットを見ると、「卒業後の多彩なキャリアパス」として、学生の約4割が進学していることが書かれている。ただ、その記述はあっさりしている。下田氏によると、中学生に説明する際に、進学率のことはそれほど打ち出していないという。 「そういう道もありますよ、というくらいの説明しかしていないと思います。どこまで伝わっているのかは分かりません。そもそも高専自体がマイナーな存在です。中学3年生が全国で約100万人いる中で、高専に進むのは1%弱です。高校の普通科に比べると、まだまだ認識されているとは言えないですね。 高専は各都道府県の第2、第3の都市に設置されているケースが多いので、寮に入って親元を離れる学生が多いです。それも一つの要因なのか、新型コロナウイルス禍では志願者数が減りました。各高専では、それまで寮では2人部屋や3人部屋が主流だったところを、コロナ対応のために個室に変えるといった対応を取った場合もあります」 高専では現在、デジタル分野の教育に力を入れている。サイバーセキュリティー分野では、サイバー攻撃を防ぐ側として活躍できるよう、高度なレベルの教育を行っている。また、22年からは半導体人材の育成にも動き出した。AI(人工知能)やデータサイエンスなども含めて、各分野について拠点校が指定されている。女子学生が9割以上を占める、ビジネス関連の学科を置いている高専もある。「高専について理解してもらうために、教員が中学校に出向いて説明に回っています。他にも、小・中学校への出前授業や、科学技術フェアなどを開催して、高専の教育内容を知ってもらう機会をつくっています。教育内容と合わせて、高専の卒業生には多彩なキャリアパスがあることも、もっと知っていただきたいですね」 全国の高専生の4割を占める進学率は、今後も下がることはなさそうだ。15歳から専門的な知識と技術を身に付けた高専生への注目度は、今後企業だけでなく、大学からもより高まっていくのではないだろうか』、「現在、デジタル分野の教育に力を入れている。サイバーセキュリティー分野では、サイバー攻撃を防ぐ側として活躍できるよう、高度なレベルの教育を行っている。また、22年からは半導体人材の育成にも動き出した。AI(人工知能)やデータサイエンスなども含めて、各分野について拠点校が指定されている。女子学生が9割以上を占める、ビジネス関連の学科を置いている高専もある」、ずいぶん多様化しているようだ。

次に、2月5日付けAERAdot「“専門バカ”をつくらない「東京科学大学」に期待できるか 東工大と医科歯科大の統合が心配な理由〈dot.〉」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dot/2023020200071.html
・『2024年度中をめどに統合を目指す東京工業大学(東工大)と東京医科歯科大学(医歯大)の統合計画案(統合案)は、1月19日に新しい統合大学名「東京科学大学」(仮称)が公表され、いよいよ現実味を帯びてきた。ネット上では「薄っぺらな軽すぎる大学名」「Fラン大学」などと揶揄され、両大学の統合を歓迎しないコメントが散見されるなど、大学の統合話にしては話題になっている。そこで、この統合案の妥当性を長い間、高等教育現場にいた者として考えてみることにした』、興味深そうだ。
・『Big Ten同士の統合は果たして実現するのか  統合案は1月中に、大学や学部の新設、大学内の教育的組織改革(改組)などの認可を判断する大学設置・学校法人審議会(設置審)に提出することも発表された。一般的に、設置審にかけるまでには文部科学省(文科省)との事前協議で計画案が了承されなければならないので、統合案は文科省からゴーサインが出されたものと考えられる。したがって今後、特別に問題がなければ両大学の統合は認可される公算が大きい。しかし、以前、勤務先の大学の学部と大学院の改組(博士課程設置など)で設置審の認可を受けた経験からすれば、両大学の統合には、いくつか問題があるように思う。詳しい統合案を読んでいないことを前提に以下、検証を試みたい。 この統合は、優れた大学として文科省から認められた指定国立大学法人同士なので、いやが上にも注目される。指定国立大学法人は、東北大学、筑波大学、東京大学、医歯大、東工大、一橋大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学の10校で、北海道大学を除く旧帝国大学6校に筑波大学、医歯大、東工大、一橋大学の4校が加わって、まさにBig Ten Conference(米国カレッジスポーツ)状態となっているといえば揶揄に聞こえるかもしれない。 このなかで、名古屋大学は、正確には国立大学法人東海国立大学機構名古屋大学で、岐阜大学はこの法人機構に所属し1法人機構2大学(傘下という意味でアンブレラ方式)となっている。そのほかの指定国立大学法人は1法人1大学方式である。ちなみに、国立大学法人は大学数でいえば86校あり、その組織形態のなかには上記の東海国立大学機構以外にも、北海道国立大学機構(小樽商科大学、帯広畜産大学、北見工業大学)、奈良国立大学機構(奈良教育大学、奈良女子大学)がある。なお、大学の再編・統合はそのほかでも進んでいる。) 今回の東工大と医歯大の統合は、前述のように指定国立大学法人同士であり、しかも1法人1大学を目指すという点で注目に値するが、以下に述べるように統合には疑問を感じる』、どういう「疑問」なのだろう。 
『言い尽くされた理念目標に目新しさは感じられない  ここで2022年10月14日に両大学で締結された4項目からなる基本合意のうち2項目目と3項目目の概要について言及したい。 2項目目には「多様な社会課題に立ち向かうために、理工学、医歯学、さらには情報学、リベラルアーツ・人文社会科学などを収斂させて獲得できる総合知に基づく『コンバージェンス・サイエンス』を展開します」と書かれている。また、3項目目には「教養教育と専門教育を有機的に関連させ、現代社会が直面する諸課題に対峙して、真に解決すべき 課題を設定し、解決へと導く役割を担う高度専門人材を輩出します」と謳っている。しかし、これらのことは他大学の改組の際にも言い尽くされてきた理念目標であり目新しさはどこにも感じられない。ちなみに俯瞰的・総合的教育研究を目指して、1974年に初めて広島大学に総合科学部が誕生し、その後にも他大学に同じような理念目標を掲げた学部が誕生している。 今回の東工大と医歯大の統合で、この2項目目と3項目目をどう達成するのか、特に人文社会系の教育研究をどう取り入れるのか、両大学とも理系の単科大学であることを考えると極めて心配になる』、「特に人文社会系の教育研究をどう取り入れるのか、両大学とも理系の単科大学であることを考えると極めて心配になる」、その通りだ。
・『専門バカをつくらない、は何を意味するのか  2022年11月1日、両大学の学長の話をテレビで長時間、聴いた。両大学とも、単科大学としての危機意識を持ち、理工学と医歯学を連携させて、新領域分野を創生、地球環境問題、感染症、少子高齢社会などの新たな地球規模の問題解決を目指すという。このことは、前述の基本合意の2項目目、3項目目を易しく言い換えているのだが、この目標も、以前から言い尽くされてきた大きなテーマで、まったくもって新しさを感じない。しかも、理工学と医歯学の連携は以前から、他大学内及び他大学間でも行われてきた。だから、両大学長の説明からは統合する確固たる理由が残念ながら伝わってこず、統合の理由としては説得力に欠ける。 地球規模の問題を解決するには、理工医歯系分野だけでは解決できず、人文社会系分野を含めた俯瞰的な視点が欠かせない。東工大学長も、“専門バカ”をつくらないという趣旨の発言を表立ってしていたことからも、両大学ともその視点の重要性を認めている。しかし、その視点は両大学の統合で達成されると考えているのか甚だ疑問である。言い過ぎかもしれないが、東工大学長の公言は、単科大学の危機意識、「職業大学からの脱皮」「職工教育の反省」とも受け取れる。 しかし、人文社会系分野を含めた俯瞰的な視点が重要というなら、なぜ既存の「四4大学連合」(東工大、医歯大、一橋大学、東京外国語大学)を足掛かりに4大学統合を目指さないのか分からない。これが難しいので、今回、東工大と医歯大の統合に安易に走ったとしか思えない。さらにいえば、政府が創設した国際卓越研究大学制度(2024年度から年間数百億円(1校あたり)を支援予定)に選定され易くするための統合といわれても仕方あるまい。これでは、理系寄りの中途半端な総合大学しか誕生しない最悪のシナリオになってしまうのではないかと心配する』、「“専門バカ”をつくらないという趣旨の発言を表立ってしていたことからも、両大学ともその視点の重要性を認めている。しかし、その視点は両大学の統合で達成されると考えているのか甚だ疑問である」、「人文社会系分野を含めた俯瞰的な視点が重要というなら、なぜ既存の「四4大学連合」(東工大、医歯大、一橋大学、東京外国語大学)を足掛かりに4大学統合を目指さないのか分からない。これが難しいので、今回、東工大と医歯大の統合に安易に走ったとしか思えない」、「政府が創設した国際卓越研究大学制度・・・を支援予定)に選定され易くするための統合といわれても仕方あるまい。これでは、理系寄りの中途半端な総合大学しか誕生しない最悪のシナリオになってしまうのではないかと心配する」、全く同感である。
・『日本は高校からすぐに医歯学部に入学する  テレビ番組での、医歯大学長の「日本は高校からすぐに医歯学部に入学する」という発言にも私は注目。この発言は直接統合の議論に関係しないのだが、統合理由として掲げた俯瞰的教育研究がなぜ日本ではなかなか進まないのかの理由として述べられた言葉だ。あまりにも人ごとの発言ともいえるが、日本の教育を考えるうえで極めて重要な指摘である。この発言は「米国流の日本版メディカルスクール化(4年制大学卒業後に医歯学部に入学)」を意味するようにも思う。大学が率先して医歯学部入学制度を変えてほしい。日本のメディカルスクール化は日本社会の「偏差値教育」の打開につながるかもしれない。幅広い教養を備えた専門家を育成する国家的な教育改革が求められるのだが』、「米国流の日本版メディカルスクール化・・・」を意味するようにも思う。大学が率先して医歯学部入学制度を変えてほしい。日本のメディカルスクール化は日本社会の「偏差値教育」の打開につながるかもしれない。幅広い教養を備えた専門家を育成する国家的な教育改革が求められる」、その通りだ。
・『統合案の先、将来は4大学統合の議論を  今回の東工大と医歯大の統合は、基本合意1項目目「両大学の尖った研究をさらに推進」を優先する、研究を主眼とした統合といえるのではないか。確かに、両大学の研究レベルは高く、統合することにより医療機器、医療材料、医療生命学、医療化学などの分野において格段の進歩が期待できるだろう。この統合は、世界的競争に打ち勝つ新たな挑戦ともいえる。文科省もそれを今回の統合に期待しているのかもしれない。 しかし、大学の役割はむしろ教育にあるといっても過言ではない。そのことを上で述べたつもりだ。公表されている統合案を設置審にかけるので、いまさら既存の四大学連合を足掛かりに、4大学統合を目指すのはもう無理なのだが、統合案の理念目標を達成するには将来的には4大学統合が不可欠な気がする。1法人1大学にするのか、それともアンブレラ方式にするのか、今現在、我が国の大学の再編・統合が進んでいるので、その進捗状況を見極める必要もある。いずれにしても大学の再編・統合は教育改革を見据えて考える必要があるように思う。 和田眞(わだ・まこと)/1946年生まれ。徳島大学名誉教授。理学博士(東京工業大学)。徳島大学大学院教授や同大学理事・副学長(教育担当)を務めた。専門は有機化学。現在、雑誌やWebメディアに「身の回りの化学」を題材に執筆している』、「公表されている統合案を設置審にかけるので、いまさら既存の四大学連合を足掛かりに、4大学統合を目指すのはもう無理なのだが、統合案の理念目標を達成するには将来的には4大学統合が不可欠な気がする。1法人1大学にするのか、それともアンブレラ方式にするのか、今現在、我が国の大学の再編・統合が進んでいるので、その進捗状況を見極める必要もある。いずれにしても大学の再編・統合は教育改革を見据えて考える必要があるように思う」、全面的に同意したい。

第三に、1月25日付けAERAdot「理系トップ「東工大」出身女優が語るわが母校 “新名称”と“女子枠”創設への思い」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dot/2023012400057.html?page=1
・『2024年度の統合を目指す東京工業大学(東工大)と東京医科歯科大学の新大学の名称が「東京科学大学」となると発表された。東工大は、同年に女性のみが出願できる「女子枠」を創設することも決まっており、大学改革を進めている。国立理系トップの東工大は女子学生が13%しかおらず、「男女差」が課題となっていた。その一方で、女子枠創設には、入試の平等性が損なわれるのでは、など疑問も上がっている。大学統合や女子枠創設について、卒業生はどう感じているのか。東工大環境・社会理工学院を卒業後、女優として活躍する山崎丹奈さんに大学への思いを聞いた。 「統合や女子枠の一報を聞いたときには、本当に驚きました。大学側が課題を感じた上で、新たな一歩を踏み出そう、改革しようという意識を感じました。東京科学大学、という名称については、シンプルで覚えやすいと思います。自分が両大学を知っている歴史以上にこれからの大学の未来は長いと思うので、新名称がなじむように、これからも変わりなくその専門性を磨いていってほしいです」 こう話すのは、2013年に東工大環境・社会理工学院(土木・環境工学系)を卒業した、女優の山崎丹奈さん(31)。学士課程(学部)の女子学生が約13%しかいないと言われる東工大において、“貴重”な女性の卒業生だ。さらに卒業生の多くが理系分野の研究職、技術職に進む中で、俳優として芸能界に入った山崎さんの経歴はかなり異色と言える。そんな山崎さんからみて、母校の改革はどう映っているのだろうか。 「確かに、入り口の入学者数を増やせば、出口も増えるわけで、女性の研究者や技術者も増えるでしょう。ただ、その仕事をするにあたって女性が働きやすい環境が整っているかといえば、受け入れ先の組織や企業で変わってくると思います。もちろん女性枠は大学ができる対応の一つだと思いますが、女性の人生をどう考えるか、という意味でソフト面でもっとやれることはあるのではないでしょうか。女子学生が増えても、たとえば、大学内の研究環境が改善しなければ、状況が良くなったとは言えないと思います」』、「女優の山崎丹奈さん」は「2013年に東工大環境・社会理工学院(土木・環境工学系)を卒業した・・・学士課程(学部)の女子学生が約13%しかいないと言われる東工大において、“貴重”な女性の卒業生だ。さらに卒業生の多くが理系分野の研究職、技術職に進む中で、俳優として芸能界に入った山崎さんの経歴はかなり異色」、この記事で「東工大」「卒業生」のなかに「女優」がいることを初めて知り、驚いた。
・『実際、山崎さんは過酷な研究環境に直面したことが、将来を考えるきっかけになった。山崎さんによると、当時の東工大では学部生の“ほぼ全員”が大学院に進学していたという。土木・環境工学科(当時)でサンゴ礁の勉強をしていた山崎さんも、最初は大学院で研究を続ける道を選んだ。 だが、明確な終わりがなく、突き詰められるだけ突き詰められてしまう研究という仕事は、山崎さんにとってハードだった。夜通し大学にいることも日常茶飯事だったという。さらに、女子学生は山崎さん1人だった時期もある。研究室に泊まることは避けたいと思い、徒歩で通える場所に引っ越したほどだった。深夜まで研究室に残る生活を強制されたわけではないが、研究を突き詰めようと思えば、“自己判断”でそうせざるを得なかった。 「女子が1人で周りがすべて男性で研究室に徹夜という状況は、今振り返ると、疑問に思うところはあります。課題に時間がかかったことは私の要領の悪さもあると思いますが、もし男性だったら引っ越さなくて済んだのかもしれないなと思います。社会に出てからは、よく『もったいない』という言われ方をされました。専門分野に進まないなんてもったいない、芸能界に入るなんてもったいない、という意味なんだろうと理解しています。ただ、この挫折があったから、自分が研究に対するストレス耐性が足りないことに気づき、女優という別の道に進むきっかけにもなったので、全てがマイナスだとは思っていません」 東工大が「女子枠」の創設を発表したのは、昨年11月のこと。25年度までに学校推薦型選抜と総合型選抜(AO入試)で計143人の「女子枠」を創設する。これにより、現在は学士課程(学部)に約13%しかいない女子学生の比率を20%以上に高めるという。女子枠は24年度入試から物質理工など4学院(学部)で先行的に開始する。総募集人数は変更せず、女子を増員した分は、一般選抜枠の人数を縮小することで調整するという』、「最後の部分にある略歴」を見ると、「幼少期は米ペンシルベニア州で育つ」と帰国子女のようだ。「土木・環境工学科(当時)でサンゴ礁の勉強をしていた山崎さんも、最初は大学院で研究を続ける道を選んだ。 だが、明確な終わりがなく、突き詰められるだけ突き詰められてしまう研究という仕事は、山崎さんにとってハードだった。夜通し大学にいることも日常茶飯事だったという・・・研究室に泊まることは避けたいと思い、徒歩で通える場所に引っ越したほどだった。深夜まで研究室に残る生活を強制されたわけではないが、研究を突き詰めようと思えば、“自己判断”でそうせざるを得なかった。 「女子が1人で周りがすべて男性で研究室に徹夜という状況は、今振り返ると、疑問に思うところはあります。課題に時間がかかったことは私の要領の悪さもあると思いますが、もし男性だったら引っ越さなくて済んだのかもしれないなと思います・・・自分が研究に対するストレス耐性が足りないことに気づき、女優という別の道に進むきっかけにもなったので、全てがマイナスだとは思っていません」、なるほど。
・『大学側は公式HPで「女子枠」創設の背景について「ダイバーシティ&インクルージョン(編集部注・多様性と受容)の取り組みの一環」「理工系分野における女性研究者・技術者を増やすこと」などとしている。日本の大学学部の女子学生の理工系分野の入学者は7%と、経済協力開発機構(OECD)加盟国(同15%)に比べて、極端に低い。こうした状況を是正しようと、名古屋大学など他の国立大学でも「女子枠」を設ける動きはある。 だが、これに対してSNS上では「女性の方が受験で有利になるのは逆差別だ」「女性の社会進出とは別の問題」など疑問視する声も上がっている。 大学側の意図や世間の反応について、山崎さんはどう思っているのだろうか。 「入試は受験生にとって、命がけといっても過言ではありません。推薦枠とはいえ女子限定で入試を行うことで、男子の一般受験生がないがしろにされていると感じないかは心配です。また、女子枠で入った生徒たちに対して、『男なら落ちていたのに女子だから受かった』など心無い言葉を投げかられないかという不安も残ります。大学側が強調する“多様性”というのも、すごく難しい言葉で、どのようにも使えてしまう。多様性は性差だけではありません。性差以外の“多様性”についても配慮しているのか、という点は考えるべきだと思います。制度を作ったら終わり、ではなく大学側はその後のフォローも必要なのではないでしょうか」 山崎さんは大学院を1年で中退し、芸能事務所に所属しながら旅行系の一般企業に就職。会社員を1年経験した後、俳優に専念して活動してきた。最近では、東京理科大卒の三浦透子さんなども活躍し、「リケジョ女優」という言葉も生まれた。山崎さんが東工大で学んだことで、俳優として生かされている部分はあるのだろうか。 「正直言って、研究内容という点ではないですね(笑)。ただ、勉強に対する姿勢だったり、課題に直面したときの精神面だったりは、大学で鍛えられたことは大きいと感じています。ムチャぶりのスケジュールになっても、何とかなるとか(笑)。あと会社員を経験したことは、組織や社会の仕組みを知ることができ、社会で生きる一人の人間として成長させてもらいました。これは演技をする上で役に立っています。女性の働き方、と言ってもそれこそ多様です。東工大の女子学生には、将来の道はひとつではないことも伝えたいと思います」 女子だから、理系だから、ということは本質ではない――唯一無二のキャリアを歩んできた山崎さんだからこそのメッセージだろう。 ◎山崎丹奈(やまざき・にな) 1991年生まれ。幼少期は米ペンシルベニア州で育つ。桐蔭学園を卒業後、東工大土木・環境工学科(当時)に入学。2009年に「ミス東工大グランプリ」に輝く。2012年に女優デビュー。17年に映画「トリノコシティ」で主演。その他、「母になる」(日本テレビ系)、「マザー・ゲーム」(TBS系)など多くのドラマに出演。一児の母として育児にも奮闘中』、「「女子枠」創設の背景について「ダイバーシティ&インクルージョン・・・の取り組みの一環」としているが、「性差以外の“多様性”についても配慮しているのか、という点は考えるべきだと思います。制度を作ったら終わり、ではなく大学側はその後のフォローも必要なのではないでしょうか」、なるほど。「女性の働き方、と言ってもそれこそ多様です。東工大の女子学生には、将来の道はひとつではないことも伝えたいと思います」 女子だから、理系だから、ということは本質ではない――唯一無二のキャリアを歩んできた山崎さんだからこそのメッセージだろう」、今後の活躍を期待したい。

第四に、4月19日付け日経ビジネスオンライン「定員割れで募集停止の恵泉女学園大 「御三家」も厳しい女子大 第7回」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/plus/00050/041200007/
・『恵泉女学園大(東京都多摩市)は2023年度の入試終了後の3月22日、今年の入学生を最後に学生の募集を停止すると発表した。入学者数の定員割れが続いたことが理由だが、他の多くの女子大も志願者を大幅に減らしている。23年度入試の結果から、女子大における志願者数の減少や、女子受験生の学部選びの変化について現状を見ていく』、興味深そうだ。
・『定員割れが続いていた恵泉女学園大  恵泉女学園大のホームページに掲載されている学生募集停止のお知らせ 「このたび、学校法人恵泉女学園は、2024年度以降の恵泉女学園大学・大学院の学生募集停止を、2023年3月20日開催の理事会において決定いたしました。(中略)18歳人口の減少、とくに近年は共学志向など社会情勢の変化の中で、入学者数の定員割れが続き、大学部門の金融資産を確保・維持することが厳しくなりました。これまで大学存続のためにあらゆる可能性を模索し、将来のありかたについて慎重に検討を重ねてまいりましたが、このたび閉学を前提とした募集停止という苦渋の決断に至りました」 これは3月22日に学校法人恵泉女学園と恵泉女学園大がホームページで発表した、学生の募集停止のお知らせだ。 恵泉女学園大は1988年に開学。東京都多摩市にキャンパスがあり、人文学部と人間社会学部、それに大学院を擁している。2022年5月1日現在のデータを見ると、2つの学部を合わせた定員1188人に対し、在籍する学生数は1028人で、定員率は86.5%となっている。前年同時期の定員率94.0%から7.5ポイントも下げていた。 入学者数の推移を見ると、13年度は2学部で466人だったが、翌14年度には346人に減少し定員割れする。そこから減少傾向は続き、17年度からは入学定員を減らしたものの、22年度は定員290人に対し入学者数は162人で、入学定員充足率は55.8%となった。 東京都内の女子大では、町田市の東京女学館大が17年に閉学した。大学入試に関する研究や情報提供を行う大学通信(東京・千代田)の井沢秀情報調査・編集部長は、恵泉女学園大の募集停止の背景を次のように分析する。 「私立大学は地方も厳しい状況ですが、東京都内でも郊外にある大学は学生を集めるのに苦慮しています。特に女子の場合、都内であればできるだけ都心の方がいいと考える受験生も多いでしょう。また、恵泉女学園大はとても素晴らしい教育を行っている大学ですが、人文系の学部しかない点も、入学者数が減少していた要因ではないでしょうか」』、「定員」を大幅引き下げたのに、「入学者」がそれ以上に減少してしまう状況では、「閉学を前提とした募集停止」はやむを得ないようだ。
・『女子大「御三家」でも志願者数が大幅減   募集停止を決めたことで恵泉女学園大が注目されたが、女子大を取り巻く環境は大きく変わってきている。特に23年度入試では、難関女子大が志願者数を減らした。次の表は、大学通信が調査した、東日本と西日本それぞれで「御三家」と呼ばれる女子大の志願者数だ。 東の御三家は津田塾大、東京女子大、日本女子大。いずれも志願者数は減少していて、特に東京女子大は前年より1486人減、前年比で83.2%と大幅に志願者数を減らした。学習院女子大、共立女子大、実践女子大、昭和女子大、清泉女子大などが前年よりも志願者数を増やしている中で、3大学の減少が目立っている。 一方、西の御三家である京都女子大、同志社女子大、神戸女学院大も志願者数が減少している。特に同志社女子大は1137人の減少、神戸女学院大は前年比61.8%と減少率が目立っている。 23年度入試では、私立大学全体で志願者数を減らした。前年比で数%の減少になる見込みで、4年連続の減少となる。その状況下で女子大の志願者数が減少するのも不思議ではないが、御三家クラスの減少幅が大きくなったのには、さまざまな要因が考えられる』、「東日本と西日本それぞれで「御三家」と呼ばれる女子大の志願者数」が減少したのは、何故なのだろう。
・『女子受験生の法学部人気が上昇  難関女子大が大きく志願者数を減らしたことについて、井沢部長は次のように指摘する。 「女子大は人文系の学部が中心ですが、以前のような人気がなくなったと言えます。人文系の学部を選ぶにしても、総合大学に進む傾向が強まりました。また、人文系以外の学部を選ぶ女子受験生が増えたという変化も出てきています」 大学通信の調査によると、23年度入試では難関大学における女子の合格者数に、これまでにない変化が見られるという。その1つが、法学部への進学だ。文系最難関であり、主に法学部に進学する東京大の文Iでは、女子の占有率が30.5%に上昇した。 「東京大では主に文学部に進学する文Ⅲで、女子の占有率は毎年40%程度と高い数字を出していました。文Ⅲが例年通りの占有率を見せている一方で、文Iでは21年度が22.8%、22年度が25.9%と右肩上がりとなり、23年度は30%を超えました。この数字はおそらく史上最高です。首都圏の女子校に話を聞いても法学部志向の生徒が増えているのは間違いなく、優秀な女子の進学先が変わってきたと言えます」 私立難関大学の法学部合格者数を高校別に見ても、トップは女子校が占めている。早稲田大では桜蔭、慶応義塾大では頌栄女子学院がトップ。さらに明治大では埼玉県立浦和第一女子、中央大では豊島岡女子学園が最も合格者を多く出した。女子校の法学部人気の高まりは顕著だ。 「法学部に進学した場合、想定される就職先の1つが公務員です。国家公務員の上級職に当たる総合職だけでなく、都道府県庁や政令指定都市、東京23区などの上級職もいろいろな仕事ができますので、就職先として魅力を感じているのではないでしょうか」と井沢部長は話す。 また、最難関でもある医学部の人気も根強い。東京大理Ⅲの女子占有率も年々上昇していて、23年度は24.7%となった。21年度の15.3%に比べると、2年間で10%近くも上昇したことになる。医学部は国立・私立ともに女子の人気は高く、将来を考えた結果として、医学部や法学部への進学が増えているのではないかと考えられる。 「医師や公務員は、女性にとっては結婚や出産を経ても影響がないキャリアと言えます。昔のように女子大で花嫁修業をするといった感覚は全くなくなりました。女子生徒自身もそうですし、親の世代の考え方も変わってきています。このような変化の中で、恵泉女学園大の募集停止は象徴的なケースと言えるのではないでしょうか」(井沢部長)』、「「医師や公務員は、女性にとっては結婚や出産を経ても影響がないキャリアと言えます。昔のように女子大で花嫁修業をするといった感覚は全くなくなりました。女子生徒自身もそうですし、親の世代の考え方も変わってきています。このような変化の中で、恵泉女学園大の募集停止は象徴的なケース」、それにしても、難関の「東大文Iでは21年度が22.8%、22年度が25.9%と右肩上がりとなり、23年度は30%を超えました」、「東京大理Ⅲの女子占有率も年々上昇していて、23年度は24.7%となった。21年度の15.3%に比べると、2年間で10%近くも上昇」、いわゆる花嫁修業のための進学が減っているのだろう。
・『女子大の理系学部新設は生き残りにつながるのか  国立や私立に限らず、女子大では新たな動きも起きている。それは理系学部の新設だ。背景には国の要請もあり、実際に動き始めている。 国立では奈良女子大が、22年4月に工学部を女子大で初めて開設した。24年4月にはお茶の水女子大が共創工学部(仮称)を新設する予定だ。その名称には、「工学と人文学・社会科学の知が協働し、共に未来の環境、社会、文化を創る」という意味が込められているという。また、私立では日本女子大が建築デザイン学部(仮称)を24年4月に開設を予定している。 理系人材の育成強化を掲げる文部科学省は22年度、既存学部を再編して理系学部の新設や拡充をする大学を財政支援しようと、3000億円の基金を創設した。このため、女子大でもさらに理系学部を新設する動きが出てくることも予想される。 ただ、23年度入試で2年目を迎えた奈良女子大工学部の前期の志願倍率は、前年度の6.3倍から2.7倍へと大幅に下がった。「理系学部を新設することが、女子大が生き残る道になるのかどうかは不透明」と井沢部長は指摘する。 「工学部など、これまでの女子大にない学部をつくる動きもありますが、工学を学ぶにしても、ある程度の規模感が必要になります。奈良女子大の場合は奈良先端科学技術大学院大学と共同で取り組んでいるので、理系の教員の充実は図れるとは思います。ただ、設備面などを考えると、やはり女子大では総合大学や理系の大学にはかなわない部分が出てくるでしょう。 女子大には就職率の良さや、面倒見の良さがあります。そういう面に引かれる受験生や、女子教育を望む受験生や保護者も一定数います。東京の郊外にある女子大や、関西の女子大が苦戦しているのは事実ですが、女子大の役割はまだまだあると思っています」(井沢部長) 女子大離れがこのまま進んでいくのかどうか、来年度以降の動向に注視したい』、「設備面などを考えると、やはり女子大では総合大学や理系の大学にはかなわない部分が出てくるでしょう」、なるほど。「女子大の役割はまだまだあると思っています」、希望的観測に過ぎないようだ。やはり、女子大の未来は厳しいと見るべきだろう。
タグ:「「高専の制度は60年前、即戦力の中堅技術者を養成する目的でスタートしました。『大学を卒業するまで待っていられない』『ある程度知識も技術もある即戦力が早く欲しい』という企業からの声や、社会からの要請が出発点でした。 今は社会の要請が変わってきました。即戦力や中堅技術者といった言葉は使っていません。高度な知識や技術を身に付けるともに、社会の課題を解決する、社会を良くするために学ぶ場に位置づけられています」、「「高専では15歳から専門教育が始まって、5年生の時点で大学卒業と同じ程度の力をつけることを目指して教 大学 (その11)(技術者教育の「国立高専」 東大18人 難関国立大に多数編入、“専門バカ”をつくらない「東京科学大学」に期待できるか 東工大と医科歯科大の統合が心配な理由〈dot.〉、理系トップ「東工大」出身女優が語るわが母校 “新名称”と“女子枠”創設への思い、定員割れで募集停止の恵泉女学園大 「御三家」も厳しい女子大 第7回) 日経ビジネスオンライン「技術者教育の「国立高専」 東大18人、難関国立大に多数編入」 「高専の卒業生の4割が、大学への編入などによって進学」、そんなに多くが「進学」しているとは初めて知った。 「高専卒業後の進路は就職が6割、進学が4割。就職希望者の就職率は、毎年98%台から99%台と高い数字を誇る。進学については、各高専でさらに2年間高度な教育を受けることができる専攻科に進む学生が約14%、大学に主に3年次から編入する学生が約24%だ」、「編入に当たっては高専での成績がベースになる。その上で、大学によって異なるが、推薦試験の場合は6月から7月ごろに面接が、学力試験を課す場合は8月から9月ごろに試験が行われる」、 「高専生の場合は、高専で5年間集中して学び、大学へは編入試験を経て3年次に進む。専門的な知識を深めた状態で3年次に編入してくる高専卒業生は、大学側にとっても「欲しい人材」になっているのだ」、「私立大学でも学生確保を目指す動きがある。東京都市大学は23年度から、高専から3年次に編入する学生に対して、授業料の75%を減免する制度を始める。減免額は最大で221万4000円にも及ぶ。 私立大学の理系学部は、国立大学に比べると学費が高い。高専の卒業生に振り向いてもらえるように、今後同様の施策を打ち出す大学が他にも出 てくるのではないだろうか」、なるほど。 「「高専の制度は60年前、即戦力の中堅技術者を養成する目的でスタートしました。『大学を卒業するまで待っていられない』『ある程度知識も技術もある即戦力が早く欲しい』という企業からの声や、社会からの要請が出発点でした。 今は社会の要請が変わってきました。即戦力や中堅技術者といった言葉は使っていません。高度な知識や技術を身に付けるともに、社会の課題を解決する、社会を良くするために学ぶ場に位置づけられています」、 「「高専では15歳から専門教育が始まって、5年生の時点で大学卒業と同じ程度の力をつけることを目指して教育しています。実習や実験も多く経験していますし、卒業研究も5年生で取り組みます。 一通りのことをやった上で大学に編入すると、1年生から大学に入学している学生に比べて手も動き、知識もあるので、大学で研究のリーダー的な存在になっている学生も結構います。そういう意味で、大学側からは『高専から学生が欲しい』という声をよく聞くようになりました。 東京大学に編入できるような学生は、高専の中でもトップクラスであることは確かですね。そもそも高専には、中学校卒の段階で優秀な学生が来てくれている場合が多いです。そういう学生が育って、より高度な勉強や研究がしたいという意識を持つことで、東京大学や東京工業大学などトップクラスの大学への編入を目指すケースが出てきています」、なるほど。 「修了生は高専と専攻科で学んだことを、大学院でさらに深めていく。高度な知識と技術を持つ人材が、高専から育っているのだ」、期待できそうな人材だ。 「現在、デジタル分野の教育に力を入れている。サイバーセキュリティー分野では、サイバー攻撃を防ぐ側として活躍できるよう、高度なレベルの教育を行っている。また、22年からは半導体人材の育成にも動き出した。AI(人工知能)やデータサイエンスなども含めて、各分野について拠点校が指定されている。女子学生が9割以上を占める、ビジネス関連の学科を置いている高専もある」、ずいぶん多様化しているようだ。 育しています。実習や実験も多く経験していますし、卒業研究も5年生で取り組みます。 一通りのことをやった上で大学に編入すると、1年生から大学に入学している学生に比べて手も動き、知識もあるので、大学で研究のリーダー的な存在になっている学生も結構います。そういう意味で、大学側からは『高専から学生が欲しい』という声をよく聞くようになりました。 東京大学に編入できるような学生は、高専の中でもトップクラスであることは確かですね。そもそも高専には、中学校卒の段階で優秀な学生が来てくれている場合が多いです。そういう学生が 育って、より高度な勉強や研究がしたいという意識を持つことで、東京大学や東京工業大学などトップクラスの大学への編入を目指すケースが出てきています」、「東京大学や東京工業大学などトップクラスの大学への編入を目指すケースが出てきています」、とは大したものだ。 AERAdot「“専門バカ”をつくらない「東京科学大学」に期待できるか 東工大と医科歯科大の統合が心配な理由〈dot.〉」 どういう「疑問」なのだろう。 「特に人文社会系の教育研究をどう取り入れるのか、両大学とも理系の単科大学であることを考えると極めて心配になる」、その通りだ。 「“専門バカ”をつくらないという趣旨の発言を表立ってしていたことからも、両大学ともその視点の重要性を認めている。しかし、その視点は両大学の統合で達成されると考えているのか甚だ疑問である」、「人文社会系分野を含めた俯瞰的な視点が重要というなら、なぜ既存の「四4大学連合」(東工大、医歯大、一橋大学、東京外国語大学)を足掛かりに4大学統合を目指さないのか分からない。これが難しいので、今回、東工大と医歯大の統合に安易に走ったとしか思えない」、 「政府が創設した国際卓越研究大学制度・・・を支援予定)に選定され易くするための統合といわれても仕方あるまい。これでは、理系寄りの中途半端な総合大学しか誕生しない最悪のシナリオになってしまうのではないかと心配する」、全く同感である。 「米国流の日本版メディカルスクール化・・・」を意味するようにも思う。大学が率先して医歯学部入学制度を変えてほしい。日本のメディカルスクール化は日本社会の「偏差値教育」の打開につながるかもしれない。幅広い教養を備えた専門家を育成する国家的な教育改革が求められる」、その通りだ。 「公表されている統合案を設置審にかけるので、いまさら既存の四大学連合を足掛かりに、4大学統合を目指すのはもう無理なのだが、統合案の理念目標を達成するには将来的には4大学統合が不可欠な気がする。1法人1大学にするのか、それともアンブレラ方式にするのか、今現在、我が国の大学の再編・統合が進んでいるので、その進捗状況を見極める必要もある。いずれにしても大学の再編・統合は教育改革を見据えて考える必要があるように思う」、全面的に同意したい。 AERAdot「理系トップ「東工大」出身女優が語るわが母校 “新名称”と“女子枠”創設への思い」 「女優の山崎丹奈さん」は「2013年に東工大環境・社会理工学院(土木・環境工学系)を卒業した・・・学士課程(学部)の女子学生が約13%しかいないと言われる東工大において、“貴重”な女性の卒業生だ。さらに卒業生の多くが理系分野の研究職、技術職に進む中で、俳優として芸能界に入った山崎さんの経歴はかなり異色」、この記事で「東工大」「卒業生」のなかに「女優」がいることを初めて知り、驚いた。 「最後の部分にある略歴」を見ると、「幼少期は米ペンシルベニア州で育つ」と帰国子女のようだ。「土木・環境工学科(当時)でサンゴ礁の勉強をしていた山崎さんも、最初は大学院で研究を続ける道を選んだ。 だが、明確な終わりがなく、突き詰められるだけ突き詰められてしまう研究という仕事は、山崎さんにとってハードだった。 夜通し大学にいることも日常茶飯事だったという・・・研究室に泊まることは避けたいと思い、徒歩で通える場所に引っ越したほどだった。深夜まで研究室に残る生活を強制されたわけではないが、研究を突き詰めようと思えば、“自己判断”でそうせざるを得なかった。 「女子が1人で周りがすべて男性で研究室に徹夜という状況は、今振り返ると、疑問に思うところはあります。課題に時間がかかったことは私の要領の悪さもあると思いますが、もし男性だったら引っ越さなくて済んだのかもしれないなと思います・・・自分が研究に対するストレス耐性が足り ないことに気づき、女優という別の道に進むきっかけにもなったので、全てがマイナスだとは思っていません」、なるほど。 「「女子枠」創設の背景について「ダイバーシティ&インクルージョン・・・の取り組みの一環」としているが、「性差以外の“多様性”についても配慮しているのか、という点は考えるべきだと思います。制度を作ったら終わり、ではなく大学側はその後のフォローも必要なのではないでしょうか」、なるほど。 「女性の働き方、と言ってもそれこそ多様です。東工大の女子学生には、将来の道はひとつではないことも伝えたいと思います」 女子だから、理系だから、ということは本質ではない――唯一無二のキャリアを歩んできた山崎さんだからこそのメッセージだろう」、今後の活躍を期待したい。 日経ビジネスオンライン「定員割れで募集停止の恵泉女学園大 「御三家」も厳しい女子大 第7回」 「定員」を大幅引き下げたのに、「入学者」がそれ以上に減少してしまう状況では、「閉学を前提とした募集停止」はやむを得ないようだ。 「東日本と西日本それぞれで「御三家」と呼ばれる女子大の志願者数」が減少したのは、何故なのだろう。 「「医師や公務員は、女性にとっては結婚や出産を経ても影響がないキャリアと言えます。昔のように女子大で花嫁修業をするといった感覚は全くなくなりました。女子生徒自身もそうですし、親の世代の考え方も変わってきています。このような変化の中で、恵泉女学園大の募集停止は象徴的なケース」、 それにしても、難関の「東大文Iでは21年度が22.8%、22年度が25.9%と右肩上がりとなり、23年度は30%を超えました」、「東京大理Ⅲの女子占有率も年々上昇していて、23年度は24.7%となった。21年度の15.3%に比べると、2年間で10%近くも上昇」、いわゆる花嫁修業のための進学が減っているのだろう。 「設備面などを考えると、やはり女子大では総合大学や理系の大学にはかなわない部分が出てくるでしょう」、なるほど。「女子大の役割はまだまだあると思っています」、希望的観測に過ぎないようだ。やはり、女子大の未来は厳しいと見るべきだろう。
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相続税・相続一般(その1)(「戸籍謄本全部集めて」「お父さんをおんぶして2階まで来て」「口座情報は開示できない」…銀行に無理難題を押し付けられた森永卓郎(65)が陥った“相続地獄”、70代母の資産総額、1億円超だが…50代息子「相続対策のため、母との同居を開始する」「ごめんだわ」妻の即レス【争続事例解説】) [社会]

今日は、相続税・相続一般(その1)(「戸籍謄本全部集めて」「お父さんをおんぶして2階まで来て」「口座情報は開示できない」…銀行に無理難題を押し付けられた森永卓郎(65)が陥った“相続地獄”、70代母の資産総額、1億円超だが…50代息子「相続対策のため、母との同居を開始する」「ごめんだわ」妻の即レス【争続事例解説】)である。

先ずは、本年5月6日付け文春オンライン「「戸籍謄本全部集めて」「お父さんをおんぶして2階まで来て」「口座情報は開示できない」…銀行に無理難題を押し付けられた森永卓郎(65)が陥った“相続地獄”」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/62294
・『実父が亡くなった後、銀行口座、証券口座を探し当て相続税を申告するまでの10カ月間。ここでは経済アナリスト・森永卓郎が父が亡くなった後、悲しむ間もなく相続申告を行わざるを得ない苦難の日々を描いた『相続地獄』より一部抜粋してお届けする(全2回の1回目/続きを読む)』、興味深そうだ。
・『申告期限の10カ月を過ぎると脱税で立件される可能性も……  父が亡くなってから、10カ月にわたって続く「相続地獄」第1章が始まった。遺産分割協議や相続税の申告は、死去から10カ月以内に完了しなければならないと法律で決まっている。10カ月というと「1年近くあるじゃないか」と思うかもしれないが、本当にあっという間だ。皮膚感覚では「一瞬」というくらいあっという間だった。 横着して申告期限の10カ月を超過すると、脱税で立件される可能性がある。私は「経済アナリスト」という肩書きでテレビやラジオに出演し、日本中で講演会をこなし、大学の教員も務めている。立場上、脱税で捕まれば職業生命に関わる。だから正直言って、とても焦った。 相続税を節税しようとは思わなかった。天から降ってきたようなお金だからだ。ただ、とにかく期限内に正確に申告しなければ、自分の身が危うくなる。そこで父の死去直後から、相続税について猛勉強を始めた。そして、なすべき仕事を片っ端からこなしていった。 不幸中の幸いと言おうか、東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故によって、日本中に自粛ムードが漂っていた。講演会やイベントなどの予定は、軒並みキャンセルになった。 「この10年間でこんなにスケジュール表が空いていることはない」というほど暇だったおかげで、奇しくも相続対策に全力を傾注できた。もし父が亡くなったのが2011年でなければ、とてもあの膨大な作業を一人でこなすことは不可能だったと思う。 以下、私が取り組んでいった膨大な作業を、覚えている限り、ご紹介しよう。 「お父さんをおんぶして2階まで来て下さい」 まず最初に、某銀行の高田馬場支店にある父の貸金庫を開けに行った。 父が生きている間に一緒に銀行に出かけておいたおかげで、息子の私でも代理で貸金庫を開けられるように手続きは済んでいた。話は前後するが、この手続きの段階ですでに「相続地獄」の前夜は始まっていた。今思い返しても腹が立つ事件があったのだ。 半身不随になった父が、万が一のときのために、自分の貸金庫を私も開けられるようにしてくれると言った。「それも必要かな」と思って、銀行に聞くと、父と私と二人揃って銀行に出向いての手続きが必要だという。) 仕方がないので、「要介護4」の父を自家用車に乗せ、銀行まで出かけた。車イスのまま乗せられる車ではないので、自動車への乗り降りだけで大わらわだ。 ようやく銀行にたどり着くと、「貸金庫の窓口は2階にあります」と言う。「じゃあエレベーターで上がります」と言うと「ウチの銀行にエレベーターはありません」と言うではないか。 「じゃあ、悪いんですけど貸金庫の担当の人が1階に下りてきてくださいよ」) 「すみませんが、それはできません」 「えっ、どういう意味ですか」 「契約者であるお父さん本人が2階に来ていただかないことには、手続きはできません」 こんなものは嫌がらせにほかならないし、もっと言うと障碍者差別だとすら思う。目の前に車イスに乗った高齢の身体障碍者がいるというのに、「臨機応変」の「り」の字も見当たらない。いくら事情を説明しても言うことを聞いてもらえず、「とにかく2階に来てください」の一点張りだ。
 仕方がないので、銀行員に手伝ってもらいながら私が父をおんぶして、妻が横から支えながら銀行の2階に連れていった。こうしてようやく私もカギをもらい、貸金庫を開けられるようになったのだ。 実はこれが、父の生前に私がやっておいた唯一の相続対策だった。この秘策によって起死回生を図るはずだったのだが、状況は暗転する』、「横着して申告期限の10カ月を超過すると、脱税で立件される可能性がある。私は「経済アナリスト」という肩書きでテレビやラジオに出演し、日本中で講演会をこなし、大学の教員も務めている。立場上、脱税で捕まれば職業生命に関わる。だから正直言って、とても焦った」、確かに「10カ月」などあっという間だ。森永氏はまだ現役で頑張っているので、納税でミスをしては大変だ。
・『父が亡くなって初めて目の当たりにした「軍人国債」  今でも悔やまれる。なぜあのとき、父と一緒に貸金庫の中身を確認しておかなかったのだろう。人生最大のミスに近い、あまりにも致命的なミスだった。 貸金庫というからには、キャッシュカードや通帳、印鑑や貴金属、保険証券や証書が入っていると誰もが想像する。ところが父の死後、高田馬場の銀行へ出かけて貸金庫を開けてみると、そこには金目のものはほとんど入っていなかったのだ。 貸金庫の中には、大学の卒業証書や思い出のパンフレットなど、金銭的価値がまったくないシロモノがぎっしり詰まっていた。唯一金目のものといえば、軍人国債が出てきたのは意外だった。私は現行の金融商品はだいたい知っているものの、軍人国債の現物はあのとき初めて見た。 特攻隊員だった父は、一度国のために命を捨てた身だ。だから自分が軍人だったことに強い誇りをもっていた。軍人国債には切符のような紙がついていて、それを切り取るとお金と交換してくれる。誇り高き軍人である父は、もったいないことにそれを切り取らずにずっと大事にもっていた。 軍人国債には有効期限がある。有効期限が切れたものもあったのだが、何十万円分か、まだ権利が残っているものがあった。 ちなみに、相続を申告するとき税理士に「この軍人国債も申告しなければ駄目なんですかね」と訊いたところ「とにかく金目のものは全部出してください」と言われた。だから、まだ引き換え期間の到来していない切符も含めて、すべて申告した。 貸金庫に預金通帳や不動産の権利書、証券会社の口座の残高明細書といったものが入っていれば、相続対策はほとんど一件落着の予定だった。ところが、貸金庫を開けた瞬間、「まずい。これは全然手がかりがないということだぞ……」と、明日から押し寄せる膨大な作業量を覚悟した。 果たして銀行口座と証券口座は一体何個ある? 母は専業主婦だったため、手持ちの資産はヘソクリ程度しかなかった。だから母が亡くなったあとの相続対策は、何の問題にもならなかった。基礎控除の額にはるかに届かなかったからだ。もちろん、私も母からの相続は一切受けていない。問題は父だ。 父が脳出血で倒れてから、高田馬場にある実家のマンションに、私は月に2~3回足を運んでいた。そうしないと、郵便受けから郵便物があふれてしまう。その状態を放っておくと、不用心で空き巣にねらわれやすい。 郵便受けに溜まった郵便物を紙袋に入れると、実家のカギを開けて部屋に入り、ボーンとそのへんに放り投げておいた。父が亡くなったとき、それらの郵便物が部屋で山のように積み重なっていた。 実家にこもってそれらの郵便物を一つずつ開けてみることにした。その気の遠くなるような作業を経て、銀行口座が9つ、証券会社の口座が2つあることがわかった。 今はルールが変わって、銀行の全店照会(全国に散らばる本支店の横断検索)ができるようになった。2011年当時は、全店照会を頼んでもやってもらえなかった。私が「そちらの銀行に父の口座はありますか」と訊いても教えてもらえない。「××支店に口座がありますか」とまで訊かなければ、口座があるかどうかは教えてもらえなかった。 日本の金融機関は、地方銀行や信用金庫、信用組合まで含めると、全国に500くらいはある。それらの金融機関に枝葉のように支店があるわけだ。1個1個しらみつぶしに、自力で全店照会するなんて物理的にできるわけがない。だから郵便物の手がかりなどを頼りに、故人がどこの金融機関と取引していたか当たりをつけなければいけなかったのだ。 「生まれてから死ぬまでの全ての居住地で戸籍謄本を貰って来て下さい」 口座がありそうなA銀行に相談しに行ったところ、担当者はこう言う。 「とにかくお父さんが生まれてから亡くなるまでのすべての居住地の役場から、戸籍謄本をもらってきてください。そして、相続人全員の同意書をもってきていただく必要があります」) 相続人全員の同意書は、息子である私と弟の2人きりだから簡単だ。しかし、亡くなった父の銀行口座があるかどうか調べてもらうにあたり、なぜ過去のすべての居住地の戸籍謄本が必要なのだろう。銀行員は平然とこう言い放った。 「お父さんがどこかに隠し子を作っているかもしれないので、戸籍謄本が揃っていないと、銀行は相続人全員の同意があることを確認できないんです」 佐賀出身の父は、80年間の人生を通じて全国を飛び回っていた。「戸籍謄本を全部集めてきてください」と安易に言うが、毎日仕事をしている大人が、佐賀だの神戸だのにわざわざ出かけている暇なんてあるわけがない。それに旅費がいくらかかると思っているのだろう。仕方がないので、父が過去に暮らしていた自治体に電話をかけた。すると、「郵便小為替と返信用封筒を同封して、役場に申請書を出してください」と言う。腹立たしいことに、この申請書が全国統一フォーマットではない。だから自治体によって、いちいち別の文書を作成しなければならないのだ。 しかも郵便のやり取りだから、1週間以内に一つの作業が終了しない。こっちは次の作業がどんどん控えて焦っているのだが、相手は役人だからスピーディに動いてくれないのだ』、「相続を申告するとき税理士に」、やはり「税理士」も使っていたとはさすがだ。「過去のすべての居住地の戸籍謄本が必要なのだろう揃えるのには相続争いに巻き込まれることを避けるための銀行の知恵だ。私も父の相続の際には、「戸籍謄本」を揃えるのに苦労した。
・『「文京区役所は空襲で焼けたので、戸籍はありません」  相続の申告期限は、死去から10カ月以内と決まっている。作業を少しでも早く進めるため、直接足を運べる役所には極力出かけることにした。最後の最後で壁にぶつかったのは、東京都の文京区役所だ。 父はかつて文京区で暮らしていたことがある。なのに「戸籍謄本をください」と言うと「お父さんの戸籍謄本はありませんよ」と言うのだ。 「でも、確かに文京区に戸籍があったはずですよ」 「それはそうなんですけど、文京区役所は空襲で焼けましたので、そのとき焼けた戸籍の書類は残っていません」 戦争で焼けてしまったのだから、書類を出せと言っても先方もどうしようもない。文京区役所の戸籍謄本だけ抜け落ちた状態で「全部揃いました」と言って銀行にもっていったところ、銀行員が何と言ったか。 「文京区役所の書類だけ欠けてるじゃないですか」 「空襲で文京区役所が焼けたせいで、書類が残っていないんです」 「ならば、文京区役所が空襲で戸籍謄本を焼失したという証明書を取ってきてください」 どこの役場に「戸籍謄本焼失証明」なんていう書式があるというのだろうか。 文京区役所の総合相談窓口を訪れた。当然、そんな手続きをしてくれる担当部署はない。 結局、何度も交渉を重ねた挙げ句に、ようやく似たような内容の文書を作ってくれることになった』、「「空襲で文京区役所が焼けたせいで、書類が残っていない」、のを「文京区役所」側に何らかの証明書を出してもらうのは確かに凄い交渉力だ。
・『たった残高700円の口座のために……  たった一つの銀行口座を開示してもらうまでに、どれほど気の遠くなるような作業を繰り返したことか。今思い返してもゾッとする。 膨大な労力をつぎこんだ結果、父の口座が次々に明らかになっていった。父の言っていたとおり、全部で数千万円の預金が出てきた。ただ、それは合計金額で、なかには残高のほとんどない口座もあった。一番残高の少なかった銀行は、700円しかなかった。 「森永さん、この預金、どうしますか」 銀行員から訊かれた瞬間、パッと立ち上がって即答した。 「放棄します」 ふざけるのもいい加減にしてほしい。この銀行口座を開示してもらうまでに、私がどれだけ自分のお金と時間を投入したのか。たった700円しか残っていないのだったら、最初からコソッと「100円単位しか残っていないですよ」と耳打ちしてくれても良さそうなものだ。 結局、判明した父の銀行口座は9つあった。 ただ、私が探し当てることができなかった口座は、ほかにもあるのかもしれない。しかし、弟が遺品整理業者に依頼し、父の遺品は今では全部処分してしまったので、これ以上新しい口座が発見される可能性はゼロだ』、「一番残高の少なかった銀行は、700円しかなかった」、のであれば、相続放棄も当然だ。
・『もし休眠口座から払い戻されなければおカネはどこに?  10年以上取引が行われていない口座を、銀行は休眠口座へと移行する。その総額は1200億円にのぼると言われる。口座の持ち主や遺族からの請求があれば払い戻すことが可能だが、現実に払い戻されるのは1200億円のうち500億円程度しかない。残りの700億円は、政府に納付されることになっている。見つけられなければ、事実上、相続税で100%もっていかれるのと同じことになるのだ。 今は金融庁や警察庁の締めつけが強くなったため、金融機関は新しい口座を簡単に開設してくれなくなった。振り込め詐欺が頻発するようになり、使っていない銀行口座が闇社会で売買されてしまうからだ。 昔は口座を作るのがすごく簡単だった。銀行員がノルマ達成のために「口座を作ってくださいよ」とやってきて、言われるがままに口座を開設してあげると、貯金箱などの景品をプレゼントしてくれた。父の実家にも銀行の貯金箱がたくさんあったので、おそらくつきあいで口座を開いてあげたのだろう。 父が元気だったころとは違って、今ではジャパンネット銀行や楽天銀行、ソニー銀行などネット銀行も活況を呈している。ネット銀行は口座を開設したあと、やたらと郵便物なんて送ってこない。取引の記録はネット上のログイン画面で完結する。 大和証券や丸三証券などの証券会社も、ネット上の手続きで口座を開設できる。紙の文化が残っていれば遺族の手がかりになるものの、ネットバンキングとなると遺族にとっては雲をつかむような話だ。今父が亡くなり、手がかりが何もない中であのときと同じ作業をしなければならないとすれば、実に空恐ろしい』、確かに「ネット銀行」口座、「ネット証券」口座になると、「遺族にとっては雲をつかむような話だ」、気分的にはそうであっても、「相続」の基本は変わらないと思う。

次に、5月1日付け幻冬舎GOLDONLINE「70代母の資産総額、1億円超だが…50代息子「相続対策のため、母との同居を開始する」「ごめんだわ」妻の即レス【争続事例解説】」を紹介しよう。
https://gentosha-go.com/articles/-/51136
・『50代男性は、70代になった母親の相続を見越し、最も効果的な相続対策を考えていました。男性は妻に、節税実現のために生活スタイルの大転換を求めましたが、妻から一蹴されてしまいます。どうしたらいいのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、事例をもとに解説します』、興味深そうだ。
・『「70代の母の今後が、いろいろ心配になってきて…」  今回の相談者は、50代会社員の山田さんです。70代の母親の今後を心配し、筆者のもとへ相談に訪れました。 「母は5年前に父を亡くしてから、ひとり暮らしをしてきました。いまのところ元気ですが、いろいろ心配事が出てきまして…」 山田さんは2人きょうだいの長男で、3歳年下の妹がいます。いずれも20代で結婚して家を出ており、それぞれ自宅を保有しています。 未来の母親の相続のときに困らないよう、いまからできる対策をしておきたいということでした』、「未来の母親の相続のときに困らないよう、いまからできる対策をしておきたい」、いい心がけだ。
・『妻に反対され、「資産防衛」の方針が定まらず  母親の財産の内訳は、横浜市の40坪の自宅と自宅近くにある賃貸アパート、金融資産で、およそ1億5000万円です。いずれも配偶者である、山田さんの父親から相続したものです。 「母親の家を建て替えて同居すればお互いに安心ですし、節税にもなっていいのではと考えてたのですが…」 妹からは「お兄ちゃんに任せる」との言葉ももらい、意気揚々と妻に話をしたところ「ごめんだわ!」と一蹴されたといいます。 山田さんの妻は、いずれは資産を整理してホームに入ってもらった方がよいという考えをもっており、方向性が決まりそうにないというのです』、「妻に話をしたところ「ごめんだわ!」と一蹴された」ようだが、税金の支払いは。「「小規模宅地等の特例」、同居を満たせないと飛躍的に大きくなる。それでも、節税策のために自分たちの生活スタイルを変えたくないというのであれば、やむを得ないが、やはりシュミレーションはしておくべきだ
・『「小規模宅地等の特例」に固執する必要はあるか?  山田さんは、父親の相続のときに母親が資産のすべてを相続し、自宅も小規模宅地当の特例が使えて効果的だったことから、同居が節税になると知っていました。 そのため、元気なうちは別世帯でも、節税のためにいずれは同居しておかなければという思いがあり、準備に着手すべきときと考えたようです。 また、小規模宅地等の特例を使えば節税になるものの、どこのタイミングで使うことが最も効果的なのか知りたいとのご希望がおありでした。 筆者と提携先の税理士は、山田さんの説明を聞いたうえで、いくつかの提案を行いました。 居住用の特例は、同居する相続人がいれば、330㎡まで80%減額でき、確実な節税となりますが、それには「同居」「家を持たない」などいくつか要件があります。 そもそも、相続はいつ発生するかわかりません。それぞれ自分たちのペースで生活してきた成人が同居するとなると、ストレスになるのは当然です。 いくら相続税の節税になるといっても、節税ありきで人生設計を描くのはお勧めできません。何年もの間、未来の節税を目標に日常生活でストレスを抱えるなど、本末転倒ではないでしょうか。 これまでの生活を大切にし、快適な毎日を過ごすには、同居ではなく、金融資産で不動産対策をして、貸付用の特例を適用する方法も選択肢です。また、母親にはケアつきの高齢者住宅に住み替えてもらい、自宅を賃貸住宅に建替える方法も検討できます。 いくつか方法があることを説明すると、山田さんは安堵され、「妻と母と相談してみます」といってお帰りになりました。 相続対策は非常に重要ですが、そもそもの目的は、豊かで幸せな人生を送るために行うものです。家族の希望があるなら別ですが、特例の活用だけを目的に、これから先、何年続くかわからない同居生活をいやいや送っても、だれも幸せになりません。 資産防衛を行うには、近視眼的にならず、家族全員の幸せを考えたうえで、適切な方法を選択していくことが重要なのです。 ※登場人物は仮名です。プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります』、「相続税の節税になるといっても、節税ありきで人生設計を描くのはお勧めできません」、確かに一般論としてはその通りだが。節税効果との対比も重要だ。ここでは、具体例が示されてないので、判断しようがない。
タグ:相続税・相続一般 (その1)(「戸籍謄本全部集めて」「お父さんをおんぶして2階まで来て」「口座情報は開示できない」…銀行に無理難題を押し付けられた森永卓郎(65)が陥った“相続地獄”、70代母の資産総額、1億円超だが…50代息子「相続対策のため、母との同居を開始する」「ごめんだわ」妻の即レス【争続事例解説】) 文春オンライン「「戸籍謄本全部集めて」「お父さんをおんぶして2階まで来て」「口座情報は開示できない」…銀行に無理難題を押し付けられた森永卓郎(65)が陥った“相続地獄”」 「横着して申告期限の10カ月を超過すると、脱税で立件される可能性がある。私は「経済アナリスト」という肩書きでテレビやラジオに出演し、日本中で講演会をこなし、大学の教員も務めている。立場上、脱税で捕まれば職業生命に関わる。だから正直言って、とても焦った」、確かに「10カ月」などあっという間だ。森永氏はまだ現役で頑張っているので、納税でミスをしては大変だ。 「相続を申告するとき税理士に」、やはり「税理士」も使っていたとはさすがだ。「過去のすべての居住地の戸籍謄本が必要なのだろう揃えるのには相続争いに巻き込まれることを避けるための銀行の知恵だ。私も父の相続の際には、「戸籍謄本」を揃えるのに苦労した。 「「空襲で文京区役所が焼けたせいで、書類が残っていない」、のを「文京区役所」側に何らかの証明書を出してもらうのは確かに凄い交渉力だ。 「一番残高の少なかった銀行は、700円しかなかった」、のであれば、相続放棄も当然だ。 確かに「ネット銀行」口座、「ネット証券」口座になると、「遺族にとっては雲をつかむような話だ」、気分的にはそうであっても、「相続」の基本は変わらないと思う。 幻冬舎GOLDONLINE「70代母の資産総額、1億円超だが…50代息子「相続対策のため、母との同居を開始する」「ごめんだわ」妻の即レス【争続事例解説】」 「未来の母親の相続のときに困らないよう、いまからできる対策をしておきたい」、いい心がけだ。 「妻に話をしたところ「ごめんだわ!」と一蹴された」ようだが、税金の支払いは。「「小規模宅地等の特例」、同居を満たせないと飛躍的に大きくなる。それでも、節税策のために自分たちの生活スタイルを変えたくないというのであれば、やむを得ないが、やはりシュミレーションはしておくべきだ 「相続税の節税になるといっても、節税ありきで人生設計を描くのはお勧めできません」、確かに一般論としてはその通りだが。節税効果との対比も重要だ。ここでは、具体例が示されてないので、判断しようがない。
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女性活躍(その27)(3人の女性首相が世界に示した 「辞めたい」と言える勇気、「女の子だからできない」じゃなく「やってみたらできた」へ 昭和女子中高の女性校長が語る“理系教育”、「カエル好きのお姉さん」が昭和女子中高の校長になるまで 理系教育への情熱の“根っこ”とは) [社会]

女性活躍については、本年4月12日に取上げた。今日は、(その27)(3人の女性首相が世界に示した 「辞めたい」と言える勇気、「女の子だからできない」じゃなく「やってみたらできた」へ 昭和女子中高の女性校長が語る“理系教育”、「カエル好きのお姉さん」が昭和女子中高の校長になるまで 理系教育への情熱の“根っこ”とは)である。

先ずは、本年4月27日付けNewsweek日本版が掲載したジャーナリストのイモジェン・ウェストナイツ氏による「3人の女性首相が世界に示した、「辞めたい」と言える勇気」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/woman/2023/04/post-837_1.php
・『<「辞めたのは弱いからではない」...燃え尽きた時には誰もが「辞めたい」と言える社会に成長するために、3人の女性首相が教えてくれたこととは> 政治家が自ら職を辞すのは、たいてい何らかの「へま」をやらかしたときだ。へまの度合いは、その国の文化によって異なる。 些細なこと(公務用のクレジットカードでスナック菓子を買ったスウェーデンのモナ・サーリン議員)もあれば、とんでもない話(側近の痴漢行為を知りつつ隠していたイギリスのボリス・ジョンソン首相)もある。 しかし今年に入って辞意を表明した3人の首相の場合、その理由はもっと真摯で率直なものだった。 最初は1月、2017年からニュージーランドの首相を務めていたジャシンダ・アーダーン。次いで2月には、スコットランド自治政府の首相を8年以上務めたニコラ・スタージョン。そして4月初めには、フィンランド首相のサンナ・マリンが総選挙に敗れて辞意を表明した。敗れたとはいえ個人としての人気はまだ高いのに、与党・社会民主党の党首の座も退くという。 よほどの失言でもない限り、政治家が自ら身を引く本当の理由を知るのは難しい。だが3人は驚くほど率直に、辞める理由を語っている。 「私はこの仕事の過酷さを知っているし、自分にはもうこの役目を十分に果たすだけのエネルギーがないことも知っている」と言ったのはアーダーン。一方、マリンは「私の持久力の限界が試された。(首相になってからの日々は)おそろしく困難だった」と打ち明けた。 そしてスタージョンも、首相の職に全身全霊をささげるのはもはや限界だと気付いたと語った。「この仕事が私に及ぼす身体的・精神的な打撃に、私はここへ来てようやく気付き、受け入れました」』、「最初は1月、2017年からニュージーランドの首相を務めていたジャシンダ・アーダーン」、「次いで2月には、スコットランド自治政府の首相を8年以上務めたニコラ・スタージョン」、「4月初めには、フィンランド首相のサンナ・マリンが総選挙に敗れて辞意を表明」、「よほどの失言でもない限り、政治家が自ら身を引く本当の理由を知るのは難しい。だが3人は驚くほど率直に、辞める理由を語っている」、3人の女性「首相」が相次いで辞任したとは、偶然の一致にしても不思議だ。相互に影響を与え合っていたのだろうか。
・『政治家と人間の両立?  要するに「燃え尽きた」ということだが、職を辞す政治家がこうも率直に、それを口にしたのはたぶん前代未聞。ああ、そうした私的なことを誰もが口にできる時代が来たのか、と思いたいところだ。 でも違う。この3人が注目されたのは、働きすぎはいけないと誰もが気付き始めたからじゃない。3人とも女性だったからだ。) この点については、いくつかの見方ができると思う。高い地位に就いている女性ほど仕事の過酷さを進んで認め、それ故に燃え尽きるリスクがあると正直に言えるのかもしれない。 あるいは、一般論として女性のほうが心の健康に敏感で、それについてオープンに語れるということか。一方で男性陣は今も、心の問題で職を辞すのは敗北であり、弱さの証しだと信じている。 女性が指導的な立場に就くと、家庭と仕事をきちんと両立させるよう求められるのが常だ(男性だと、そんなことは言われない)。それがプレッシャーになって、仕事を辞める女性もいる。 そもそも、政治家と人間の両立は難しいのかもしれない。「私は人間。政治家も人間。私たちは可能な限り全力を尽くす。でも限界が来る」。アーダーンは辞意表明の演説でそう言った。スタージョンも基本的に同じことを言った。「私は政治家だけれど、人間でもある」と』、「要するに「燃え尽きた」ということだが、職を辞す政治家がこうも率直に、それを口にしたのはたぶん前代未聞。ああ、そうした私的なことを誰もが口にできる時代が来たのか、と思いたいところだ。 でも違う。この3人が注目されたのは、働きすぎはいけないと誰もが気付き始めたからじゃない。3人とも女性だったからだ」、「高い地位に就いている女性ほど仕事の過酷さを進んで認め、それ故に燃え尽きるリスクがあると正直に言えるのかもしれない。 あるいは、一般論として女性のほうが心の健康に敏感で、それについてオープンに語れるということか・・・女性が指導的な立場に就くと、家庭と仕事をきちんと両立させるよう求められるのが常だ・・・それがプレッシャーになって、仕事を辞める女性もいる。 そもそも、政治家と人間の両立は難しいのかもしれない」、「「私は人間。政治家も人間。私たちは可能な限り全力を尽くす。でも限界が来る」。アーダーンは辞意表明の演説でそう言った。スタージョンも基本的に同じことを言った」、なうほど。
・『無理なら辞めるが一番  政治家も人間だなんて、思えないこともある。他人の人間性など気にもかけない政治家がたくさんいるからだ。 もちろん、今の時代にそんな振る舞いをすれば必ずしっぺ返しに会う。横柄な政治家に、私たちはおまえを最低のクズだと思っているぞと伝える方法はいくらでもある。ツイッターやメールで、いくらでも文句を言える。 そんなふうにして炎上した政治家に、私は同情しない。英国首相を務めた過去5人の男女には、私だって残飯を投げ付けてやりたい。でもネット上の誹謗中傷や脅迫が、とりわけ女性の政治家に向けられやすいのは事実だ。この4カ月で自ら職を辞した3人の首相が全て女性だったのは、そのせいかもしれない。 とはいえ、一連の辞任が「フェミニズムの今後にどんな影響を及ぼす?」なんて考えるのはやめてほしい。そんなのは愚問だ。 いま必要なのは、性別や年齢に関係なく私たち全員が、この3人の女性のレベルまで成長すること。彼女たちが辞めたのは弱いからじゃない。誰もが自分を見つめ直し、「もう私はこの仕事に全力で取り組めない」と気付いたら、正直にそう言える。そんな世の中になってほしい。) 昨年の今頃は、私も含めてほとんどのイギリス人が心から、ジョンソンの首相退陣を願っていた。彼はもうボロボロで、失態に失態を重ねるばかりで見るに堪えなかった。さっさと辞めればいい首相や大統領は、たぶんほかにもいる。なにしろすごく難しくて、きつい仕事だから。 身も心も擦り切れるまで働くタイプと、何が起きても週末はゴルフというタイプ。その中間のどこかに、きっと適当な落としどころがある。 でも個人的には、政治家に休暇など必要ないと言わんばかりの人には違和感を覚える。疲れ果て、自分の地位の重責に押しつぶされそうな人物に、重要な物事の判断を委ねるのが得策とは思えない。 残念ながら、大多数の(ええ、とりわけ男性の)政治家には、そんなふうに自分の限界に気付く機会はなさそうだ。たぶん、そういう機会を持ちたいと思ってもいない。 自分の限界を知るのは大事なことだ。もう首相の重責に耐えられないと思ったら、正直にそう告げる。国のためには、それがベストな選択だろう。違う?』、「疲れ果て、自分の地位の重責に押しつぶされそうな人物に、重要な物事の判断を委ねるのが得策とは思えない。 残念ながら、大多数の(ええ、とりわけ男性の)政治家には、そんなふうに自分の限界に気付く機会はなさそうだ。たぶん、そういう機会を持ちたいと思ってもいない。 自分の限界を知るのは大事なことだ。もう首相の重責に耐えられないと思ったら、正直にそう告げる。国のためには、それがベストな選択だろう』、同感である。

次に、5月2日付けAERAdot「「女の子だからできない」じゃなく「やってみたらできた」へ 昭和女子中高の女性校長が語る“理系教育”」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dot/2023042700055.html?page=1
・『「理科の楽しさを伝えたい」と、理系教育に尽力してきた昭和女子大学付属昭和中高の真下峯子校長。スーパーサイエンスコースを設け、大学やブリティッシュスクールとの連携にも力を入れるなど、次々と策を講じてきた。「女の子がやってみたらできちゃった、というモデルを証明したい」と話す真下校長の思いとは(Qは聞き手の質問、Aは「真下」氏の回答)』、興味深そうだ。
・『メダカの記憶を研究  Q:昭和女子大学付属昭和中高は、サイエンス教育に力を入れています。  A:2015年から学校改革を行い16年にグローバル留学コースを、18年にスーパーサイエンスコース(SS)を設けました。SSコースは当初中3からが対象だったのですが、私の校長着任後の21年から中1に引き下げました。 前校長の判断ですが、小学生のころからサイエンスに興味がある生徒に来てもらおうという、狙いがあったようです。やはり1年次からやることでスキルも厚くなるし、経験を積むことで考察も深くなります。 Q:スーパーサイエンスコースの特徴はどのような点ですか。 A:1年次から実験や研究を重視し、サイエンスの学びをトレーニングします。その蓄えた力をもって、中3の後半からテーマを決めて研究に入ります。ある生徒は、「メダカの記憶の維持」というテーマを設定しました。観察のための実験装置を作って、いつのタイミングで測ればいいのか、試行錯誤しながらいろいろな条件で観察を続けました。 この成果として、中高生の研究のための学会「サイエンスキャッスル2021関東大会」で最優秀賞を受賞するなど、SSコースを設定した芽が出始めています。 Q:理科が苦手という女子生徒は多いです。何が理科嫌いにさせているのでしょうか。 A:小学生のころは、みんな理科が好きなんです。でも中学生になったとたん、起こっている現象の理屈を考えなくてはならなくなるので、一気に難しくなりお手上げになってしまうのだと考えています。 SSコースの1年生が神奈川県・足柄の林間学寮に行ったときのことですが、車中、みんなでダンゴムシの絵を描いてみようということになったんです。私たち大人だと、普通上から見たダンゴムシを描きますよね。なかには真横の姿や、ひっくり返しておなかを描いた生徒もいて、みんなで笑ったり、感心しあったりしました。そうやって楽しむのも理科の原点なんです。 理科の第一歩は、対象物をきちんと見ること。そうすると自然に「なぜ」という疑問が湧いてきます。次のステップとして調べてみようとか、考えてみようとなる。そのときお手上げにならないように、スキルや方法をきちんと教えていくことが大切なんです。) Q:楽しむことで、理科離れを防ぐのですね。 A:昨年夏に、専門家に依頼してデータサイエンスの特別講座を開催しました。募集したところ、30人集まればいいと思っていましたが、100人近く集まりました。SSだけでなく、本科コースやグローバル留学コースの生徒も、特に中学生が大勢参加しました。みんな関心はあるのです。 実験はもちろんですが、学校全体にデータサイエンス系も、プログラミング系もできるサイエンスをつくり上げていきたい。「女の子だからできない」じゃなくて、「やってみたらできちゃった」を、証明するモデルになってほしいと思います。 Q:サイエンスを学ぶことで、どんな力がつきますか。 A:実験は、そううまくいくものではありません。100失敗して、1つ成功すればいいほう。世の中で脚光を浴びている研究の基には、失敗が山ほどあります。科学とはそういうものです。実験を繰り返し、結果が出るまでやることで、うまくいかなくてもへこたれない力がつきます。 実はその力は汎用性が高くて、社会に出て困難にぶつかったときに役にたちます。中高時代、サイエンスにがっつりと取り組んで失敗を繰り返しながらも目的に向かっていく、そういうタフな力を身につけてほしいのです』、「スーパーサイエンスコースの特徴は」、「1年次から実験や研究を重視し、サイエンスの学びをトレーニングします。その蓄えた力をもって、中3の後半からテーマを決めて研究に入ります。ある生徒は、「メダカの記憶の維持」というテーマを設定しました。観察のための実験装置を作って、いつのタイミングで測ればいいのか、試行錯誤しながらいろいろな条件で観察を続けました」、「実験は、そううまくいくものではありません。100失敗して、1つ成功すればいいほう。世の中で脚光を浴びている研究の基には、失敗が山ほどあります。科学とはそういうものです。実験を繰り返し、結果が出るまでやることで、うまくいかなくてもへこたれない力がつきます。 実はその力は汎用性が高くて、社会に出て困難にぶつかったときに役にたちます」、「実験を繰り返し、結果が出るまでやることで、うまくいかなくてもへこたれない力がつきます」、その通りだが、うまくいくよう過剰なアドバイスをしないよう抑制するのも、我慢が必要なようだ。
・『大学との連携を強化し五修生制度導入  Q:昭和女子大学の坂東眞理子理事長は、ジェンダー教育に熱心に取り組んでいます。大学との連携は。 坂東先生は、女性にいろいろなところで活躍してほしいという思いがあり、必要と思うコンテンツをどんどん取り入れてくれます。大学には実務家の教員が大勢いて、学問だけではなく、社会とどうつながっているのか実践的な学びもなさっている。本科コースのなかには探究の授業のチームで大学の研究室を訪れて、そんな先生方に指導してもらっている生徒もいます。 40年前から、高2までに卒業のための必要単位を取り、高3から昭和女子大で学ぶ「五修生制度」を取り入れています。飛び級だと高校の卒業資格が取れませんが、この制度なら取得するこができます。 今年は6人、昨年は8人がこの制度を利用しました。先日面談したある生徒は国際的な公認会計士を目指しており、高3の1年間の余裕をその勉強にあてたいと考え制度を利用したと話していました。) 昭和女子大は中国の上海交通大学や、米国のテンプル大学などとダブルディグリープログラムを結んでおり、5年間で2つの大学の学位を取ることができますが、五修生制度を使えば大学4年修了時に取ることが可能です。 23年からは、他の大学に進学する可能性も残したい生徒のために、五修生制度とは別に昭和女子大科目等履修生制度も導入しました。高校2、3年生が対象で、放課後に大学の授業を履修できます。昭和女子大に進学した場合は、それが単位として認められます。いろいろな面で、大学との連携が強化されていますね。 Q:高大連携は、他大学にも広がっています。 A:生徒たちの進路選択を広げるために、昭和女子大にないコンテンツを持っている大学との連携をしていこうと、働きかけています。現在は東京理科大、早稲田大、芝浦工業大、東京農工大、お茶の水女子大に協力していただいています。 お茶の水女子大は千葉・館山に湾岸生物教育研究所があるのですが、すぐ近くに本校の海浜学寮があるので、生徒たちが研修で訪れたときに指導いただけるように、お願いしています。 Q:大学生もメンターとして受け入れていますね。 A:昭和女子大の学生はもちろんですが、東京理科大生はチームをつくり学習サポートに入ってくれています。今年からは早稲田大も学習支援に来てくれることになりました。実験には危険もつきものですから、1つのグループに学生さんがついてくれるのは、教員にとっても安心です。 実験だけでなく、授業にも入ってサポートしてもらっています。先生と生徒は1対36ですが、先生と生徒の間に学生がいることで、授業がもっと密になる。また先生ではない、年齢の近い学生がアドバイスしてくれたり、教えてくれたりするので、生徒も気負わず素直に受け入れられます。 勉強だけでなく、学生から研究や学問の苦労話や失敗談など生の声を聞くのも、生徒にとって貴重な体験です。学生が生徒たちのロールモデルになってくれています』、「高2までに卒業のための必要単位を取り、高3から昭和女子大で学ぶ「五修生制度」を取り入れています」、「今年は6人、昨年は8人がこの制度を利用しました。先日面談したある生徒は国際的な公認会計士を目指しており、高3の1年間の余裕をその勉強にあてたいと考え制度を利用したと話していました」、「高大連携は、他大学にも広がっています。 A:生徒たちの進路選択を広げるために、昭和女子大にないコンテンツを持っている大学との連携をしていこうと、働きかけています。現在は東京理科大、早稲田大、芝浦工業大、東京農工大、お茶の水女子大に協力していただいています」、なかなかいい制度のようだ。
・『グローバル教育への挑戦  Q:主にイギリス人の子弟が通う、ブリティッシュスクールとの連携も深まっています。グローバル教育はどうなっていますか。 A:お隣がブリティッシュスクールという、物理的に非常に恵まれた環境にあります。以前はボランティア活動を一緒にする程度でしたが、先方の校長先生ともっと交流を深めましょうということで思いが一致しました。 今はグローバル留学コースや本科コースの生徒とブリティッシュの生徒が、1週間ほど授業をエクスチェンジしたり、SSコースの生徒があちらの理科の授業を受けたりしています。当然英語での授業なので、サイエンスに英語という武器が加わります。授業でのアカデミックな交流がしやすいように、両校の時間割の調整を検討しているところです。 授業以外にも、地球環境を守るための活動をしたりブックトークをしたりと、できるだけいろいろなことを一緒にやる方向で動いています。生徒たちは「ブリティッシュスクールの子たちは同年代なのにとても教養が高い」と、良い刺激を受けていますね。 グローバル留学コースは、高1のときに1年間カナダへ留学するのが必須となっています。帰国して国際系の大学を目指す生徒が多いですが、なかには海外の医学部に行きたいという生徒もいます。サイエンスコースの生徒に影響されたのでしょう。お互いに刺激し合って、進路が広がっていると感じます。 真下峯子(ましも・みねこ) 昭和女子大学付属昭和中学校・高等学校校長。埼玉県生まれ。奈良女子大学理学部卒業。埼玉県に理科の教員として赴任。埼玉県立川越女子高等学校教頭、埼玉県立総合教育センター指導主事、大妻嵐山中学校・高等学校校長などを経て2020年から現職。 <<後編:「カエル好きのお姉さん」が昭和女子中高の校長になるまで 理系教育への情熱の“根っこ”とは>>へ続く』、「お隣がブリティッシュスクールという、物理的に非常に恵まれた環境にあります・・・今はグローバル留学コースや本科コースの生徒とブリティッシュの生徒が、1週間ほど授業をエクスチェンジしたり、SSコースの生徒があちらの理科の授業を受けたりしています。当然英語での授業なので、サイエンスに英語という武器が加わります・・・授業以外にも、地球環境を守るための活動をしたりブックトークをしたりと、できるだけいろいろなことを一緒にやる方向で動いています」、「生徒たちは「ブリティッシュスクールの子たちは同年代なのにとても教養が高い」と、良い刺激を受けていますね。 グローバル留学コースは、高1のときに1年間カナダへ留学するのが必須となっています。帰国して国際系の大学を目指す生徒が多いですが、なかには海外の医学部に行きたいという生徒もいます。サイエンスコースの生徒に影響されたのでしょう。お互いに刺激し合って、進路が広がっていると感じます」、「お互いに刺激し合って、進路が広がっている」、なかなかいいことだ。

第三に、この続きを、5月2日付けAERAdot「「カエル好きのお姉さん」が昭和女子中高の校長になるまで 理系教育への情熱の“根っこ”とは」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dot/2023042700056.html?page=1
・『「女子は理数が弱いという思い込みを捨てれば、もっと可能性が広がる」と、理系教育に力を入れる昭和女子大学付属昭和中高の真下峯子校長。その情熱の根っこは、幼いころの植物や動物への関心にあった。理科の面白さを追い求めてきた真下先生のこれまで、そしてこれからの教育への思いとは。 <<前編:「女の子だからできない」じゃなく「やってみたらできた」へ 昭和女子中高の女性校長が語る“理系教育”>>より続く』、「真下峯子校長。その情熱の根っこは、幼いころの植物や動物への関心にあった」、とは興味深そうだ。
・『生き物の不思議にひかれ、生物学科へ  Q:先生ご自身は子どものころから生き物に興味があったそうですね。 A:小学生のころから、植物や動物が好きでしたね。自然の現象について、母親にいつも「どうして、どうして」と聞いていました。母親の影響も大きくて、夏休みの自由研究を一緒にやっていました。小学3年生の担任が理科の専門の先生で、自分の研究についていろいろ話してくれ、ますます理科に興味を持つようになりました。 高校の生物の発生の授業で、カエルの卵の原口背唇部という部位が中に入り込んで神経になると教わり、何でそうなるのか不思議でしょうがなかったんです。 今でいうiPS細胞なんですね。運命が決まっていない細胞が、何かのきっかけで髪の毛や皮膚になる。その仕組みが不思議で、もっと勉強したいと生物学科に進みました。 Q:奈良女子大に進学されました。 A:学びたい発生学の研究が進んでいるのは、京都大や大阪大でした。たまたま奈良女子大に母親の知り合いがおり、奈良女子大ならと許されたのです。関西まで行けばなんとかなるだろうと(笑)。 奈良女子大では京都大や大阪大の先生も教えていました。オープン講座もあって、京都大や大阪大に出かけて授業を受けたりもしていました。大学院の特論は学部の学生も聴講できるのですが、一流の先生が最先端の研究を講義してくれる。感化されましたね。 Q:その後埼玉に戻られ、教職の道に入られたわけですね。 A:事情があって、埼玉の実家に戻ることになりました。でも、生物のことは好きでしょうがない。何も持っていないとカエル好きの変わったお姉さんですが(笑)、学校の先生になれば堂々と生物に関われると。) 中学の教員免許を取ったのですが、ちょっと物足りない。そこで高校の採用試験を受けました。高校ではいろいろな材料を使いながら、授業をするのが楽しかったですね。これでもか、というほど「理科は面白いよ」と生徒に伝えました。 ただ、私1人だと担当した生徒だけにしか理科の面白さを伝えられない。もっと大勢の子どもたちに伝えるために、私と同じような考えを持ってくれる先生を育てればいいと気が付いたんです。 そこで管理職の試験を受け、埼玉県立総合教育センターの指導主事になりました。私が研修を担当した先生のなかには、スーパーサイエンスハイスクールの指定校で理科を教えている先生もいる。1人でできることは限られていますが、次世代の先生方が活躍している姿を見ると、頼もしいです』、「小学生のころから、植物や動物が好きでしたね。自然の現象について、母親にいつも「どうして、どうして」と聞いていました。母親の影響も大きくて、夏休みの自由研究を一緒にやっていました」、「小学3年生の担任が理科の専門の先生で、自分の研究についていろいろ話してくれ、ますます理科に興味を持つようになりました」、「高校の生物の発生の授業で、カエルの卵の原口背唇部という部位が中に入り込んで神経になると教わり、何でそうなるのか不思議でしょうがなかったんです。 今でいうiPS細胞なんですね。運命が決まっていない細胞が、何かのきっかけで髪の毛や皮膚になる。その仕組みが不思議で、もっと勉強したいと生物学科に進みました」、「私1人だと担当した生徒だけにしか理科の面白さを伝えられない。もっと大勢の子どもたちに伝えるために、私と同じような考えを持ってくれる先生を育てればいいと気が付いたんです。 そこで管理職の試験を受け、埼玉県立総合教育センターの指導主事になりました」、「私と同じような考えを持ってくれる先生を育てればいいと気が付いた」とはさすがだ。
・『女子校は女子の特性を生かした理系教育ができる  Q:川越女子高校では、高2での文理選択をやめ、高2までは数学をしっかりやる、としたのですよね。 川越女子高校には教頭として赴任しました。生徒は能力が高く、やる気がある。この生徒たちが、理科や数学ができない、興味がないからといって選択肢を狭めるのは、実にもったいないと思ったんです。 「好きな子はどんどんやりましょう、そうでない子もやりましょう」と、女子生徒の選択肢を広げるためには、 理系の勉強をあきらめないことだと生徒に語り続けました。その時代の子たちも30歳を過ぎて、いろいろな方面でがんばっています。 Q:世の中にはまだ、女子は理系が弱いという偏見があります。女子校にできることはありますか。 A:女子の選択の幅を狭めているのは数学や理科です。でも、女子は苦手と思い込んでいるだけ。中高の数学や理科は、コツコツやればできるんです。 鴎友学園女子中高の吉野明・前校長が、「女子校は、女子の特性に合わせた理数教育ができる」とおっしゃっていましたが、本当にその通りだと思います。 女の子のコツコツやる特性は、実は研究向き。アイデアや発想は男子が勝っているといわれますが、そんなことはありません。研究を続けていれば、新しい着眼点が出てきます。何もないところから、発見はできません。) Q:今後の課題はありますか。 A:工学系にも興味をもってくれればいいな、と。生徒や保護者は昔のイメージで、工学というと「ガテン系で油にまみれている」という先入観があるようです。工学はものごとをコントロールする、バラエティーに富んだ可能生がある魅力的な分野です。 ある媒体でそういう発信をしたところ、いろいろな会社から「本当にその通り。工学がわかる女子社員がほしい」と連絡をいただきました。クレーンを作っている加藤製作所からは「工場見学や体験にもぜひ来てほしい」と招待を受け、中2の生徒と保護者と出かけて、クレーンの試乗体験や、建機を設計している女性社員との懇談会に参加させてもらいました。 Q:奈良女子大が工学部を開設、お茶の水女子大が共創工学部(仮称)を開設予定と、女子大に工学部をつくる動きが出ています。東京工業大や東京理科大も入試に「女子枠」を設けると表明しています。 A:生徒には「今がチャンスだよ」と、話しています。「女の子だから」という思い込みを捨てて学びの選択肢を狭めなければ、可能性は広がっていることを伝えていきたいですね。(構成/柿崎明子)〇真下峯子(ましも・みねこ)昭和女子大学付属昭和中学校・高等学校校長。埼玉県生まれ。奈良女子大学理学部卒業。埼玉県に理科の教員として赴任。埼玉県立川越女子高等学校教頭、埼玉県立総合教育センター指導主事、大妻嵐山中学校・高等学校校長などを経て2020年から現職』、「女子の選択の幅を狭めているのは数学や理科です。でも、女子は苦手と思い込んでいるだけ。中高の数学や理科は、コツコツやればできるんです」、「女の子のコツコツやる特性は、実は研究向き。アイデアや発想は男子が勝っているといわれますが、そんなことはありません。研究を続けていれば、新しい着眼点が出てきます。何もないところから、発見はできません」、「今後の課題は・・・工学系にも興味をもってくれればいいな、と」、「生徒には「今がチャンスだよ」と、話しています。「女の子だから」という思い込みを捨てて学びの選択肢を狭めなければ、可能性は広がっていることを伝えていきたいですね」、今後の展開を大いに期待したい。
タグ:女性活躍 (その27)(3人の女性首相が世界に示した 「辞めたい」と言える勇気、「女の子だからできない」じゃなく「やってみたらできた」へ 昭和女子中高の女性校長が語る“理系教育”、「カエル好きのお姉さん」が昭和女子中高の校長になるまで 理系教育への情熱の“根っこ”とは) Newsweek日本版 イモジェン・ウェストナイツ氏による「3人の女性首相が世界に示した、「辞めたい」と言える勇気」 「最初は1月、2017年からニュージーランドの首相を務めていたジャシンダ・アーダーン」、「次いで2月には、スコットランド自治政府の首相を8年以上務めたニコラ・スタージョン」、「4月初めには、フィンランド首相のサンナ・マリンが総選挙に敗れて辞意を表明」、「よほどの失言でもない限り、政治家が自ら身を引く本当の理由を知るのは難しい。だが3人は驚くほど率直に、辞める理由を語っている」、3人の女性「首相」が相次いで辞任したとは、偶然の一致にしても不思議だ。相互に影響を与え合っていたのだろうか。 「要するに「燃え尽きた」ということだが、職を辞す政治家がこうも率直に、それを口にしたのはたぶん前代未聞。ああ、そうした私的なことを誰もが口にできる時代が来たのか、と思いたいところだ。 でも違う。この3人が注目されたのは、働きすぎはいけないと誰もが気付き始めたからじゃない。3人とも女性だったからだ」、 「高い地位に就いている女性ほど仕事の過酷さを進んで認め、それ故に燃え尽きるリスクがあると正直に言えるのかもしれない。 あるいは、一般論として女性のほうが心の健康に敏感で、それについてオープンに語れるということか・・・女性が指導的な立場に就くと、家庭と仕事をきちんと両立させるよう求められるのが常だ・・・それがプレッシャーになって、仕事を辞める女性もいる。 そもそも、政治家と人間の両立は難しいのかもしれない」、「「私は人間。政治家も人間。私たちは可能な限り全力を尽くす。でも限界が来る」。アーダーンは辞意表明の演説でそう言った。スタージョンも基本的に同じことを言った」、なうほど。 「疲れ果て、自分の地位の重責に押しつぶされそうな人物に、重要な物事の判断を委ねるのが得策とは思えない。 残念ながら、大多数の(ええ、とりわけ男性の)政治家には、そんなふうに自分の限界に気付く機会はなさそうだ。たぶん、そういう機会を持ちたいと思ってもいない。 自分の限界を知るのは大事なことだ。もう首相の重責に耐えられないと思ったら、正直にそう告げる。国のためには、それがベストな選択だろう』、同感である。 AERAdot「「女の子だからできない」じゃなく「やってみたらできた」へ 昭和女子中高の女性校長が語る“理系教育”」 昭和女子大学付属昭和中高の真下峯子校長 「スーパーサイエンスコースの特徴は」、「1年次から実験や研究を重視し、サイエンスの学びをトレーニングします。その蓄えた力をもって、中3の後半からテーマを決めて研究に入ります。ある生徒は、「メダカの記憶の維持」というテーマを設定しました。観察のための実験装置を作って、いつのタイミングで測ればいいのか、試行錯誤しながらいろいろな条件で観察を続けました」、 「実験は、そううまくいくものではありません。100失敗して、1つ成功すればいいほう。世の中で脚光を浴びている研究の基には、失敗が山ほどあります。科学とはそういうものです。実験を繰り返し、結果が出るまでやることで、うまくいかなくてもへこたれない力がつきます。 実はその力は汎用性が高くて、社会に出て困難にぶつかったときに役にたちます」、 「実験を繰り返し、結果が出るまでやることで、うまくいかなくてもへこたれない力がつきます」、その通りだが、うまくいくよう過剰なアドバイスをしないよう抑制するのも、我慢が必要なようだ。 「高2までに卒業のための必要単位を取り、高3から昭和女子大で学ぶ「五修生制度」を取り入れています」、「今年は6人、昨年は8人がこの制度を利用しました。先日面談したある生徒は国際的な公認会計士を目指しており、高3の1年間の余裕をその勉強にあてたいと考え制度を利用したと話していました」、「高大連携は、他大学にも広がっています。 A:生徒たちの進路選択を広げるために、昭和女子大にないコンテンツを持っている大学との連携をしていこうと、働きかけています。現在は東京理科大、早稲田大、芝浦工業大、東京農工大、お茶の水女子大に協力していただいています」、なかなかいい制度のようだ。 「お隣がブリティッシュスクールという、物理的に非常に恵まれた環境にあります・・・今はグローバル留学コースや本科コースの生徒とブリティッシュの生徒が、1週間ほど授業をエクスチェンジしたり、SSコースの生徒があちらの理科の授業を受けたりしています。当然英語での授業なので、サイエンスに英語という武器が加わります・・・授業以外にも、地球環境を守るための活動をしたりブックトークをしたりと、できるだけいろいろなことを一緒にやる方向で動いています」、 「生徒たちは「ブリティッシュスクールの子たちは同年代なのにとても教養が高い」と、良い刺激を受けていますね。 グローバル留学コースは、高1のときに1年間カナダへ留学するのが必須となっています。帰国して国際系の大学を目指す生徒が多いですが、なかには海外の医学部に行きたいという生徒もいます。サイエンスコースの生徒に影響されたのでしょう。お互いに刺激し合って、進路が広がっていると感じます」、「お互いに刺激し合って、進路が広がっている」、なかなかいいことだ。 AERAdot「「カエル好きのお姉さん」が昭和女子中高の校長になるまで 理系教育への情熱の“根っこ”とは」 「真下峯子校長。その情熱の根っこは、幼いころの植物や動物への関心にあった」、とは興味深そうだ。 「小学生のころから、植物や動物が好きでしたね。自然の現象について、母親にいつも「どうして、どうして」と聞いていました。母親の影響も大きくて、夏休みの自由研究を一緒にやっていました」、「小学3年生の担任が理科の専門の先生で、自分の研究についていろいろ話してくれ、ますます理科に興味を持つようになりました」、 「高校の生物の発生の授業で、カエルの卵の原口背唇部という部位が中に入り込んで神経になると教わり、何でそうなるのか不思議でしょうがなかったんです。 今でいうiPS細胞なんですね。運命が決まっていない細胞が、何かのきっかけで髪の毛や皮膚になる。その仕組みが不思議で、もっと勉強したいと生物学科に進みました」、「私1人だと担当した生徒だけにしか理科の面白さを伝えられない。もっと大勢の子どもたちに伝えるために、私と同じような考えを持ってくれる先生を育てればいいと気が付いたんです。 そこで管理職の試験を受け、埼玉県立総合教育センターの指導主事になりました」、「私と同じような考えを持ってくれる先生を育てればいいと気が付いた」とはさすがだ。 「女子の選択の幅を狭めているのは数学や理科です。でも、女子は苦手と思い込んでいるだけ。中高の数学や理科は、コツコツやればできるんです」、「女の子のコツコツやる特性は、実は研究向き。アイデアや発想は男子が勝っているといわれますが、そんなことはありません。研究を続けていれば、新しい着眼点が出てきます。何もないところから、発見はできません」、 「今後の課題は・・・工学系にも興味をもってくれればいいな、と」、「生徒には「今がチャンスだよ」と、話しています。「女の子だから」という思い込みを捨てて学びの選択肢を狭めなければ、可能性は広がっていることを伝えていきたいですね」、今後の展開を大いに期待したい。
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民間デジタル化(その3)(韓国ソウルで感じた日本のデジタル後進国ぶり 入国システム・3Dディスプレイ…、「コンサルあまり」の時代が始まった…マッキンゼー、アクセンチュアが大規模リストラに追い込まれた理由 IT企業向けのサービス需要が行き詰まっている、27カ国中最下位…日本がIT人材足りない根本理由 このままでは最大80万人が不足する事態に) [技術革新]

民間デジタル化については、2021年6月25日に取上げた。久しぶりの今日は、(その3)(韓国ソウルで感じた日本のデジタル後進国ぶり 入国システム・3Dディスプレイ…、「コンサルあまり」の時代が始まった…マッキンゼー、アクセンチュアが大規模リストラに追い込まれた理由 IT企業向けのサービス需要が行き詰まっている、27カ国中最下位…日本がIT人材足りない根本理由 このままでは最大80万人が不足する事態に)である。なお、タイトルから「促進策」は削除。

先ずは、本年2月24日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したテクノロジーライターの大谷和利氏による「韓国ソウルで感じた日本のデジタル後進国ぶり、入国システム・3Dディスプレイ…」を紹介しよう。ただ、文中の説明にるURLの紹介は省略した。
https://diamond.jp/articles/-/318236
・『筆者は先日、所用と観光を兼ねて約4年ぶりに韓国のソウルを訪れた。欧米に拠点のある企業の取材もリモートでの対応が多くなった昨今、今回の渡韓は、新型コロナウィルス禍に見舞われて以降、初めての海外渡航でもあった。サムスン電子やLGエレクトロニクスのお膝元でもある韓国は、日本よりも社会のIT化が進んでいることが知られている。数日のソウル滞在の間に見聞きしたデジタル事情と比べると、残念ながら日本はかなり遅れていると言わざるを得ない』、「韓国」の先進「デジタル事情」とは興味深そうだ。
・『サムスンは折りたたみスマホのマーケティングに注力 縦開き・横開きの2種類  韓流の刑事ドラマでは、食事をインスタントラーメンで済ませるような新米刑事まで高価な折りたたみスマートフォンのGalaxy Flipを使っていたりして、あからさまなプロダクトプレイスメント(番組内に製品を登場させる間接広告:以下、PPL)に苦笑することがある。 実は、韓国のTVドラマは放送法の規定で途中にCMを入れることが禁じられており、制作側の収益面ではPPLの比重が高い。CMが挟まれない分、ストーリーに集中できそうだが、劇中の役には不釣り合いな製品を使用していたり、登場人物が急に化粧品や炊飯器を褒め始めたりするので、思わずツッコミを入れたくなる。 中には、そういうシーンの小道具にPPLの文字が配されている(たとえば、カフェで座っている3人の客が、それぞれ「P」「P」「L」のレター入りトレーナーを着ているなど)、正直というかある意味開き直った演出を行うドラマまであった。 そんなPPLで見かけることの多いGalaxy Flipだが、メーカーのサムスン電子は、ロシアのウクライナ侵攻などによる消費の冷え込みの影響で2022年に大幅減産を強いられた結果、シェアを拡大するよりも利益率の高いモデルに注力する方針を進めている。そのため、販売面ではたためないGalaxy Sシリーズに及ばなくても、縦開きのGalaxy Flipと横開きのGalaxy Foldのマーケティングに力を入れていくようだ。ただし、中国のOPPOも、Android製品の中で差別化を図るために自らが先行した縦開きのFlipタイプのスマートフォンに力を入れていくと公言しており、もしも価格競争になると苦しい戦いを強いられる可能性もある。 さすがはサムスン電子のお膝元で、たまたま地下鉄に乗ったときに、並びの親子連れの女性と向かい側の青年が、ともにGalaxy Flipを使っているような場面にも遭遇した。それでも、ソウルの某有名大学の副学長さんに話を聞くと、「韓国ではもちろんAndroidユーザーが多いが、学生たちの間ではiPhoneが人気」だという。この方自身も、そして同席された中堅の男性の先生もiPhoneユーザーで、Apple Watchの愛用者でもあり、3月から韓国でサービス開始予定のApple Payを使うことを楽しみにしていた。 韓国では、2019年の時点ですでに国民全体の92%にスマートフォンが普及しており、60代でも9割近くの普及率だった。これに対して、日本は2021年の調査でも88.6%(個人保有全体では74.3%、同じく60代では79.3%)となっている。Android対iPhoneの割合では、韓国がほぼ世界平均と同じ70%強:30%割弱で、日本は逆に35%弱:65%強だが、上記のように韓国の若い世代のiPhoneへの関心が高まっているとすると、今後、iPhoneがよりシェアを伸ばしていく可能性もありそうだ(ちなみに、韓流ドラマのPPLではアップル製品もそれなりに目にする)』、「韓国のTVドラマは放送法の規定で途中にCMを入れることが禁じられており、制作側の収益面ではPPLの比重が高い。CMが挟まれない分、ストーリーに集中できそうだが、劇中の役には不釣り合いな製品を使用していたり、登場人物が急に化粧品や炊飯器を褒め始めたりするので、思わずツッコミを入れたくなる」、「放送法の規定で途中にCMを入れることが禁じられており」、とは初めて知った。「Android対iPhoneの割合では、韓国がほぼ世界平均と同じ70%強:30%割弱」、「韓国の若い世代のiPhoneへの関心が高まっているとすると、今後、iPhoneがよりシェアを伸ばしていく可能性もありそうだ」、なるほど。
・『EV化が進む都市部のタクシー、ロボタクシーもテスト走行中  ソウルのタクシーは、一般のタクシーと、無事故歴10年以上のドライバーが乗り、運転や応対が丁寧な黒塗りの模範タクシーに分かれている。初乗り(1.6キロ)料金が2月1日から値上げされ、一般タクシーで約480円、やや高めの模範タクシーは約700円だが、それでも、東京23区内タクシーの初乗り約1キロ470円~500円よりは(距離も考慮すると)安価といえる。 ソウルでは流しのタクシーも次々にやってくるので困ることはないが、街中で観察していると、特に若い人はカフェなどでお茶している間にアプリで手配し、来たら乗るというようなスタイルが定着しているようだ。特に冬は、そのほうが寒い戸外で待つ必要がなく、支払いも同時に済むので、合理的ということなのだろう。 その一般タクシーで今回目立ったのが、現代自動車(ヒョンデ)のEV、「IONIQ 5」(アイオニックファイブ※)だった。日本でもインポート・カー・オブ・ザ・イヤーに選ばれ、京都のMKタクシーも計50台の導入が進行中。筆者自身も発表時から注目していた車である。 IONIQ 5のエクステリアは、パラメトリックピクセルと呼ばれるデジタル由来のデザイン要素がLEDヘッドランプ、同リアコンビランプ、アルミホイールに採り入れられている。インテリアのデジタルメーターにも、他には見られないホワイト系のベゼル(筆者は、iPodや白いバリエーションが存在した時代のiPhoneやiPadを想起した)を採用するなど、独自のEVイメージを確立しようとする意思に満ちている。 その意思は、テスラにもないヘッドアップディスプレイ(スピードやナビ、死角エリアの車両センサー情報などをフロントウィンドウにAR投影する)や、クラス最長の3メートルのホイールベースと切り詰めた前後のオーバーハングがもたらす全体のプロポーション(そのためにコンパクトに見えるが、実際のサイズはトヨタのRAV4よりも大きい)、全席に位置や背もたれ角度のメモリー機能が付き、センターコンソールを含めて大きく前後に移動できる電動シートアレンジ、停車中にフロントシートを座面ごと傾けて休めるリラックスポジションなど、インテリアの随所にも散りばめられている。 ※2022年6月に、韓国でIONIQ 5が高速道路上の構造物に突っ込む単独事故により、衝突後3秒でリチウムイオンバッテリーが発火し、ドライバーと同乗者が死亡という痛ましい報道があったが、これは時速100キロでノーブレーキの衝突、かつシートベルト未装着で死因は衝撃によるものだったことが明らかとなっている。車両自体はヨーロッパの厳しいNCAPの衝突安全テストにおいて最高評価の5つ星を獲得しており、それでも構造物がリチウムイオンバッテリーを突き抜けたことが発火の原因だった。スマートフォンも同様だが、リチウムイオンバッテリーはそのような危険を内包しており、この点は、全個体電池などが実用化されない限り、避けきれない問題といえる』、「一般タクシーで今回目立ったのが、現代自動車・・・のEV、「IONIQ 5」・・・だった」、「車両自体はヨーロッパの厳しいNCAPの衝突安全テストにおいて最高評価の5つ星を獲得」、大したものだ。
・『ソウルでテスト中のロボタクシーは早期にレベル4の自動運転を実用化を目指す  さらにIONIQ 5は、ヒョンデとアプティブ(アイルランドに本社のある自動車テクノロジー企業)との合弁企業のモーショナルが開発している、自動運転レベル4(決まった走行ルートなどの特定条件下で可能な、人ではなくシステム主体で車を走らせる自動運転)を実現するロボタクシーのベース車両ともなっている。今回の訪韓中には見かけなかったが、このロボタクシーもソウル市内でテスト走行中だ。 折りしも「人工知能(AI)産業の育成と信頼確保に関する法案」が、韓国国会科学技術情報放送通信委員会の情報通信放送法案審査小委員会を通過したとの報道があったが、そこにうたわれていたのは「まず認可・後に規制」という事後規制の原則だ。もちろん、実際の議会での可決までには踏むべき段階が残っているものの、おそらくほぼそのまま成立し、ロボタクシーもこのような原則の下での早期の実用化を目指すものと思われる。 ちなみにヒョンデは、EVではないものの、ビジネス用のリムジンから大型タクシー、幼稚園などの送迎用まで幅広い用途に対応する新世代の世界戦略ワンボックスカー「STARIA」も擁している。予約開始の初日だけで1万台のオーダーを受けたという人気車種だけに、こちらも市内のあちこちで見かけた。IONIQ 5もそうだが、周囲を威嚇するようなフロントマスクを持つ日本のワンボックスとは一線を画すSTARIAの佇まいを見ていると、K-POPや韓国ドラマのように、韓国車が価格ではなくコンセプトや質の面で世界に受け入れられる日が近いことを予感した』、「IONIQ 5は、ヒョンデとアプティブ・・・との合弁企業のモーショナルが開発している、自動運転レベル4・・・を実現するロボタクシーのベース車両ともなっている・・・このロボタクシーもソウル市内でテスト走行中だ」、「ロボタクシー」とは進んでいる。「新世代の世界戦略ワンボックスカー「STARIA」は・・・IONIQ 5もそうだが、周囲を威嚇するようなフロントマスクを持つ日本のワンボックスとは一線を画すSTARIAの佇まいを見ていると・・・韓国車が価格ではなくコンセプトや質の面で世界に受け入れられる日が近いことを予感した」、「周囲を威嚇するようなフロントマスクを持つ日本のワンボックス」、私もあの「フロントマスク」は嫌いだ。「韓国車が価格ではなくコンセプトや質の面で世界に受け入れられる日が近いことを予感した」、大したものだ。
・『新しいデジタルサイネージへの積極的な取り組み  2021年の暮れに新宿駅東口近くに設置されて話題を呼んだ、特定の角度から見ると猫やルンバが飛び出して見える3D街頭ビジョンも、韓国ではそれ以前から導入されていた。実際に機材の開発・製造を行っているのは中国企業だが、本国以外で設置した国は、韓国が最初だったようだ。 というのも、韓国は新しい技術や製品に対する抵抗感が少なく、スマートフォン普及率の例からも分かるように、全年齢層がアーリーアダプター的な消費動向を持っているためだ。それゆえ韓国市場は、国外企業からも新たな技術や製品を試験的に投入して反応を確かめる場として捉えられているところがある。 アパレルやアクセサリー系の問屋やテナントがひしめき合う東大門(トンデモン)のファッションビルの1つにも、新型コロナウィルス禍以前にはなかった新型の街頭ビジョンが設置されていたのだが、それはある意味で擬似的な3D街頭ビジョンを超える、リアルな3Dビジョンといえた。なぜなら、細かくブロック分けされたLEDパネルが、個々に物理的に前後しながら画像を表示する、本物の立体(構造)ディスプレイだったからだ。 「ウェーブスクリーン」と呼ばれるそれがウネウネと動いている様子は、少し離れた位置からはプロジェクションマッピング的な目の錯覚かとも思えた。だが、近づいてみると、実際にパネルが動いていることに驚かされた。これも作っているのは中国企業だが、韓国での反応を見たうえで、他国にも売り込んでいくのだろう。 ただし、正直なところインパクトの点では、擬似的とはいえ立体感に勝り、表示するイメージのバリエーションも豊富な3D街頭ビジョンのほうに軍配が上がるといわざるを得ない。また、可動部が多いのでメンテナンスも大変そうだ。しかし見る側の角度依存が少ないことや、既存のコンテンツもそのまま表示でき、専用コンテンツの制作も3D街頭ビジョンより簡単に行えそうな点ではメリットもある。設置場所の自由度も高く、特に近距離から見たときに迫力を感じるので、それぞれの特徴を生かして使い分けられていきそうだ』、「韓国は新しい技術や製品に対する抵抗感が少なく、スマートフォン普及率の例からも分かるように、全年齢層がアーリーアダプター的な消費動向を持っているためだ。それゆえ韓国市場は、国外企業からも新たな技術や製品を試験的に投入して反応を確かめる場として捉えられているところがある」、羨ましい限りだ。「特定の角度から見ると猫やルンバが飛び出して見える3D街頭ビジョン」、「ウェーブスクリーン」、などなかなか面白そうだ。
・『空港システムの進化に見る日韓の違い  最後に、韓国入出国と帰国時に感じた日韓の違いを書いておきたい。 現在、渡韓時にはK-ETA(電子渡航認証システム)とQ-CODE(検疫情報事前入力システム)の事前登録が求められる。前者は、ビザが免除されている国籍の渡航者に対して義務化されており、後者は任意だが、7日間の隔離を免除されるワクチン接種歴の確認を渡航前に済ませられるので、入国審査がスムーズになる。 K-ETAは英語のみ、Q-CODEは韓国語と英語のみの対応だが、旅行社などが公開している日本語の解説サイトがあるので、それらを参照すれば、さほど支障なく登録できるはずだ。 問題は、Q-CODE申請は無料だが、K-ETAは約1000円の申請料がかかり、クレジットカードのみでの支払いとなるため、そこを狙った偽サイトも少なからず存在するという点である。被害に遭わないためには、大使館や航空会社、大手旅行社の公式ページからのリンクを使って正しいサイトにアクセスするのが良いだろう。 日本出発時の空港は、平日にもかかわらず訪日外国人で大混雑しており、まだ制限されている中国からの団体客を除けば、ほぼ客足が戻ったかのような印象だった。そのため、ソウルの仁川空港でも入国審査で時間が取られることを覚悟していたのだが、幸いなことに窓口に並ぶ人数も少なく、また、パスポート照合によるK-ETAの確認と、Q-CODEの二次元バーコードの読み取りによって、拍子抜けするほど簡単に、短時間で通ることができた』、なるほど。
・『仁川空港では2014年からセルフバッグドロップシステムの導入が進む  また、航空便のオンラインチェックインはほぼ常識化しているが、機内持ち込みできないスーツケースなどのバッグドロップ(手荷物預け入れ)は、航空会社のカウンターで物理的に行う必要がある。しかし、仁川空港では、大韓航空などを皮切りにセルフバッグドロップシステムの導入が進んでおり、搭乗券とパスポートをスキャンして、荷物を乗せたコンベア台のカバーが閉まるとX線検査がその場で行われ、問題なければカバーが開き、プリントされたタグを自分で荷物に取り付けることで処理が完了する。 同種の機材は、日本でもANAが2015年に羽田空港の国内線カウンターに導入し、2017年に成田空港の国際線での実証実験を行って以来、普及が進んでいる。仁川空港では、オランダのスキポール空港、イギリスのヒースロー空港、オーストラリアのシドニー空港などに続いて、2014年から導入開始していたので、やはり、先に触れた先取精神が発揮されたようだ』、「先取精神」には我々も学ぶべきだ。
・『デジタル庁推進「Visit Japan Web」の使い勝手は……  実は、今回の旅で最も不可解だったのは、関西国際空港帰国時のVisit Japan Web(デジタル庁が推進する入国手続オンラインサービス)の対応だった。事前登録した画面またはプリントアウトを見せることで検疫を通過できるとの触れ込みで、実際にもその通りだったのだが、ターミナル間の移動用シャトルは利用できずに通路を延々と歩く必要があり、要所ごとにやたらと多くの係員が配置されている。 しかも、Webの説明では(ネット接続ができない場合に備えて)「縦に長いページの3つの要素を確実にスクリーンショットで保存するか、プリントアウトして見せること」となっていたものの、実際には、数をこなすためか移動途中で最初の画面をチラッと見る程度で、何の証明にもならず、最悪の場合、偽造も簡単に行える(適当なスクリーンショットを入手するだけ)と思われた。 さらに、帰国後に改めて登録ページを確認すると、先の縦長ページを一度にダウンロードできる機能が追加されていたのだが、リンク先に飛ぶと、スマートフォンのスクリーンに収まらないサイズの画像が縮小もスクロールもできない状態で表示され、ダウンロードボタンも表示されない状態だった。動作検証の有無や、その程度の改修にいくら税金が使われたのか、大いに気になる。 NIA(韓国知能情報社会振興院)の資料によれば、国連やOECDなどの国際機関によるDX、IT関連のランキングで、韓国はICTの国際競争力、ICTインフラ整備、電子的な社会参加、オープンデータ利用、AIの民主的利用の項目で1位を獲得している。もちろん、同時にさまざまな社会問題も抱えているものの、ことデジタル技術の推進やDXに関しては、政府が音頭を取るだけでなく、具体的に利用しやすい形で社会実装が進められなければ意味がないことが、きちんと理解されていると感じられた』、「「Visit Japan Web」の使い勝手は」余り良くないようだ』、「国連やOECDなどの国際機関によるDX、IT関連のランキングで、韓国はICTの国際競争力、ICTインフラ整備、電子的な社会参加、オープンデータ利用、AIの民主的利用の項目で1位を獲得」、「ことデジタル技術の推進やDXに関しては、政府が音頭を取るだけでなく、具体的に利用しやすい形で社会実装が進められなければ意味がないことが、きちんと理解されていると感じられた」、「日本」は「韓国」に残念ながら大きく水をあけられてしまったようだ。

次に、4月3日付けPRESIDENT Onlineが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁 昭夫氏による「「コンサルあまり」の時代が始まった…マッキンゼー、アクセンチュアが大規模リストラに追い込まれた理由 IT企業向けのサービス需要が行き詰まっている」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/68014
・『マッキンゼーは1400人、アクセンチュアは1万9000人  2月下旬以降、米国の大手コンサルティング企業が相次いで人員の削減を進めている。まず、マッキンゼー・アンド・カンパニーは約2000人の削減計画が報じられた。削減規模は同社にとって過去最大規模とみられる。3月23日、アクセンチュアも大規模なリストラ計画を発表した。今のところ削減規模は1万9000人に達する見込みであり、コンサル業界で過去最大級のリストラが進もうとしている。 リーマンショック後、世界の有力コンサルティング企業は、新しい事業の育成、その運営体制の企画、設計などに関する業務をIT先端企業などから受託してきた。そうすることで企業は迅速に、必要な業務運営の体制を整備できた。コロナ禍の発生によって、世界経済のデジタル化は一時的に急加速した。その結果、IT先端分野などで新しい業務運営の確立に必要なコンサルティング・サービスへの需要も押し上げられた。 しかし、競争の激化、世界的なインフレ進行、ウィズコロナへの移行、さらには世界的な金利上昇などを背景に、IT関連企業の成長期待は急速にしぼんでいる。すでに、米メタ(旧フェイスブック)などで、コンサル出身の経営幹部が要職を退いた。IT業界でのリストラは加速している。その成長を取り込んだコンサル業界などにもより強いリストラ圧力がのしかかろうとしている』、「IT業界でのリストラは加速している。その成長を取り込んだコンサル業界などにもより強いリストラ圧力がのしかかろうとしている」、なるほど。
・『過剰投資、過剰採用を抱えたIT企業の退潮  足許、米国を中心に急速にコンサル業界でリストラが進んでいる。それだけ、多くの企業は、高い成長が続くと先行きの展開を楽観し、採用を強化した。しかし、世界経済の減速、特にIT先端分野での業績悪化懸念が急速に高まった。IT有力企業では過剰な投資や採用が顕在化している。それに伴い、IT先端分野での需要を取り込んできたコンサル業界でも、過剰人員などの問題が浮上し、コストカットが急がれている。 リーマンショック後、米国ではアップルの“iPhone”などのヒットをきっかけに、経済のデジタル化が加速した。“21世紀はデータの世紀”と呼ばれるように、ビッグデータの重要性は急速に高まった。データを活用することによって、新しいビジネスが次から次へと生み出された。 メタやツイッターなどはSNSという新しい業態を生み出した。それにデータを用いた広告ビジネスが結合され、収益はおおきく伸びた。物流分野では、アマゾンがネット通販で購入された品物の配達スピードを引き上げるために、物流施設の建設を増やすなどした』、「経済のデジタル化が加速した。“21世紀はデータの世紀”と呼ばれるように、ビッグデータの重要性は急速に高まった。データを活用することによって、新しいビジネスが次から次へと生み出された。 メタやツイッターなどはSNSという新しい業態を生み出した。それにデータを用いた広告ビジネスが結合され、収益はおおきく伸びた」、なるほど。
・『業務効率化でコンサルティング依頼は急増したが…  そうした新しい業務運営の在り方を確立し、実際のマネジメント手法を組織に浸透させるために、マッキンゼーやアクセンチュアへのコンサルティング依頼は急増した。 コンサルティング各社は、顧客企業が新しい分野に進出し、いち早く安定した業務の運営体制を確立するために必要な方法論を提供して対価を得る。具体的にマッキンゼーなどは、経営戦略や財務、管理会計の理論を結合することによって、効率的に業務運営を行う標準的な手法を確立した。 そうしたサービスを利用することによって、IT関連分野の企業は、データの利用など自社の強みがより発揮できる分野に集中しやすくなった。コンサル業界でのリストラ増加は、IT先端分野での企業の成長性が低下していることを意味する。そうした変化を機敏に感じとり、早い段階でIT先端企業を去った人もいる』、「新しい業務運営の在り方を確立し、実際のマネジメント手法を組織に浸透させるために、マッキンゼーやアクセンチュアへのコンサルティング依頼は急増した。 コンサルティング各社は、顧客企業が新しい分野に進出し、いち早く安定した業務の運営体制を確立するために必要な方法論を提供して対価を得る。具体的にマッキンゼーなどは、経営戦略や財務、管理会計の理論を結合することによって、効率的に業務運営を行う標準的な手法を確立した」、なるほど。
・『コンサル出身のサンドバーグ氏はいち早くメタを去った  その一人として、2022年6月、シェリル・サンドバーグ女史はメタの最高執行責任者(COO)を辞すと表明した。それは、メタなどの成長の勢いが弱まり、新たな成長分野を探さなければならないという認識に基づいた意思決定だったように見える。ハーバード・ビジネス・スクールを修了した後、サンドバーグ女史はマッキンゼーでコンサルタントとして働いた。グーグルなどを経て、2008年、COOとしてサンドバーグ女史はフェイスブックに参画した。 メタ創業者のマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)にとって、経営コンサルタントとしてのスキル、グーグルでの広告ビジネスの高い成長を支えたサンドバーグ女史の実力は、SNS分野でのビジネスモデルを確立し、高い成長を実現するために喉から手が出るほど欲しかった要素だったはずだ。 このようにして、多くのIT先端企業は、コンサル業界出身の人材採用を強化した。また、アクセンチュアやソフトウエア分野への選択と集中を進めたIBMなどに、ビジネスモデルの確立や、新規事業の業務運営体制の企画、マネジメント手法などのコンサルティングを委託する企業も増えた。 その結果、世界的にコンサルタント人材の求人は急増した。一部では、組織運営などに関する理論に加え、人工知能(AI)やネットワーク・テクノロジーに精通した人材の争奪戦に拍車がかかった』、「多くのIT先端企業は、コンサル業界出身の人材採用を強化した。また、アクセンチュアやソフトウエア分野への選択と集中を進めたIBMなどに、ビジネスモデルの確立や、新規事業の業務運営体制の企画、マネジメント手法などのコンサルティングを委託する企業も増えた。 その結果、世界的にコンサルタント人材の求人は急増した」、なるほど。
・『ビジネスモデルの行き詰まりを鮮明に理解している  しかし、高い成長がいつまでも続くことは考えづらい。2021年の秋ごろから、徐々にメタをはじめとするIT有力企業の成長鈍化懸念は高まった。株価も下落し始めた。 2022年3月に連邦準備制度理事会(FRB)は利上げを開始し、その後は急激に金融が引き締められた。世界全体で企業の資金調達などのコストも増加した。スタートアップ企業とGAFAなどの競争も激化した。SNSやサブスク型のビジネスモデルの優位性は行き詰まり、業績懸念は追加的に高まっている。 2023年2月には、ユーチューブのスーザン・ウォジスキーCEOの退任も発表された。ウォジスキー女史もベイン・アンド・カンパニーで経営コンサルタントとしてキャリアを積み、その上でグーグルに参画した。コンサルタントとして多くの企業を見てきた経験があるだけに、彼女らはビジネスモデルの行き詰まりをより鮮明に理解しているはずだ』、「2021年の秋ごろから、徐々にメタをはじめとするIT有力企業の成長鈍化懸念は高まった。株価も下落し始めた・・・世界全体で企業の資金調達などのコストも増加した。スタートアップ企業とGAFAなどの競争も激化した。SNSやサブスク型のビジネスモデルの優位性は行き詰まり、業績懸念は追加的に高まっている」、ようやく足元の状況に近づいてきた。
・『コンサル、会計監査需要は急速にしぼんでいる  コンサル業界だけでなく、米国では大手会計事務所のKPMGも2%程度の従業員(約700人)を削減すると報じられた。3月23日、リクルートホールディングスは2012年に買収した米インディードの従業員の15%を削減すると発表した。 リーマンショック後から2022年3月まで、世界全体で、超低金利環境の長期化観測は高まった。投資(投機)資金は成長期待の高いIT先端分野の株式などに流入した。高い成長は間違いないという過度な期待は一段と膨張した。そうした環境変化を追い風に、IT先端分野での起業は増えた。 コロナ禍の発生後は、カネ余りとデジタル化の加速期待に拍車がかかった。特別買収目的会社(SPAC)による買収を通した株式の公開によって資金を調達し、事業規模の拡大に取り組む企業は急増した。こうして、採用、コンサルティングや会計監査といったサービス需要も押し上げられた。 そうした強気な環境は急速にしぼんでいる。メタなどは追加リストラ策を発表した。IT先端企業などとの取引を強化した米欧金融機関のいくつかは破綻した。IT先端企業の成長を取り込んできたコンサル業界などでも、リストラの強化は避けられないだろう』、「コロナ禍の発生後は、カネ余りとデジタル化の加速期待に拍車がかかった。特別買収目的会社(SPAC)による買収を通した株式の公開によって資金を調達し、事業規模の拡大に取り組む企業は急増した。こうして、採用、コンサルティングや会計監査といったサービス需要も押し上げられた。 そうした強気な環境は急速にしぼんでいる。メタなどは追加リストラ策を発表した。IT先端企業などとの取引を強化した米欧金融機関のいくつかは破綻した。IT先端企業の成長を取り込んできたコンサル業界などでも、リストラの強化は避けられないだろう」、その通りだろう。
・『相次ぐリストラの背景にある「新たな成長機会」  しかし、すべての分野でコンサルティングの需要が減少しているわけではない。米国では、マイクロソフトなどが“チャットGPT”をはじめとする生成型のAIを用いた新しい広告サービスなどのビジネス創出に取り組んでいる。IBMは既存分野でリストラを進めつつAI関連の事業運営体制を強化している。 加えて、台湾問題の緊迫感は高まっている。世界の工場としての中国経済の成長鈍化懸念も上昇している。それらを背景に、世界全体でインドやASEAN地域の新興国、さらには企業の本国に近い場所に生産拠点などを移す動きも激化している。 世界規模で供給網の再編に取り組みつつ貿易管理体制を強化するためにも、企業はコンサルティング企業の助言を必要とする。コンサル業界でのリストラは、世界経済を支えたIT先端企業の成長性が鈍化し、新しい成長の機会が模索されていることの裏返しといえる』、「世界規模で供給網の再編に取り組みつつ貿易管理体制を強化するためにも、企業はコンサルティング企業の助言を必要とする。コンサル業界でのリストラは、世界経済を支えたIT先端企業の成長性が鈍化し、新しい成長の機会が模索されていることの裏返しといえる」、「新しい成長の機会が模索されていることの裏返し」とは興味深い捉え方だ。

第三に、5月2日付け東洋経済オンラインが掲載した東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)のリチャード・カッツ氏による「27カ国中最下位…日本がIT人材足りない根本理由 このままでは最大80万人が不足する事態に」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/669331
・『日本はデジタル分野の専門人材不足が深刻化する「2025年デジタルの崖」に直面する。経済産業省によると、2020年には30万人、2030年にはデジタルサービスの需要次第で45万人から80万人にまで不足が拡大するとされている。後者の場合、日本が必要とする190万人の専門人材を4割も下回ることになる。 経産省は、日本がこの崖を乗り越えなければ、2025年以降、日本のGDPは予測よりも毎年12兆円も低くなると警告している。その損失は、2022年のGDPの2%以上に相当する。ところが、政府はDXなどという聞こえのいいスローガンを掲げるだけで、この状況を改善するためにほとんど何もしていない。民間企業では心強い変化も起きているが、それが政府の動きによって増幅されない限り、崖の高さを低くすることしかできないだろう』、「経済産業省によると、2020年には30万人、2030年にはデジタルサービスの需要次第で45万人から80万人にまで不足が拡大」、「日本がこの崖を乗り越えなければ、2025年以降、日本のGDPは予測よりも毎年12兆円も低くなると警告している。その損失は、2022年のGDPの2%以上に相当する。ところが、政府はDXなどという聞こえのいいスローガンを掲げるだけで、この状況を改善するためにほとんど何もしていない」、「政府」の無責任ぶりには腹が立つ。
・『そもそも人材育成ができていない  最大の問題は人材の育成ができていないことだろう。日本は数学と科学の分野で世界トップクラスの成績を収めた高校生の割合で2019年、韓国に次いで2位の成績を収めている。にもかかわらず、日本は27の富裕国の中で、科学や工学の分野でのキャリアを目指す優秀な学生の割合が最下位となっている。日本は、STEM(科学、技術、工学、数学)コースを専攻した大学卒業生の割合が22位である。これに対し、韓国は3位につけている。(出典:OECD、注:STEM=科学、技術、工学、数学) これは単に優れたコンピュータを開発したり、新しいソフトウェアを書いたりする方法を知っている人たちが不足するという問題だけではない。日本は数学と科学の分野で世界トップクラスの成績を収めた高校生の割合で2019年、韓国に次いで2位の成績を収めている。にもかかわらず、日本は27の富裕国の中で、科学や工学の分野でのキャリアを目指す優秀な学生の割合が最下位となっている。日本は、STEM(科学、技術、工学、数学)コースを専攻した大学卒業生の割合が22位である。これに対し、韓国は3位につけている。さらに状況を悪化させているのは、日本の大企業と、日本の労働者の7割を雇用する中小企業との間にある大きな「デジタルデバイド」である。) 大企業が総投資額の10%をソフトウェアに割いているのに対し、従業員数300人以下の企業ではその比率はわずか4%である。2017年に何らかのデジタル機器やソフトウェアに投資した中小企業は、4社に1社にとどまっている。 経産省が中小企業にデジタル技術の利用が進んでいない理由を尋ねたところ、「ITを導入できる人材が不足している」という回答が43%と最も多い結果となった。また、「IT導入の効果が不明確、または十分でない」が40%と僅差で2位だった。日本には、こうした中小企業にITを活用した売り上げの向上や、効率化の方法を示すコンサルタントが数多く必要なのだ』、「日本は数学と科学の分野で世界トップクラスの成績を収めた高校生の割合で2019年、韓国に次いで2位の成績を収めている。にもかかわらず、日本は27の富裕国の中で、科学や工学の分野でのキャリアを目指す優秀な学生の割合が最下位となっている。日本は、STEM(科学、技術、工学、数学)コースを専攻した大学卒業生の割合が22位である。これに対し、韓国は3位」、「大企業が総投資額の10%をソフトウェアに割いているのに対し、従業員数300人以下の企業ではその比率はわずか4%である」、「日本には、こうした中小企業にITを活用した売り上げの向上や、効率化の方法を示すコンサルタントが数多く必要なのだ」、その通りだ。
・『高校教育が遅れている  この問題は高校から始まっており、教師自身のITスキル、こうしたテーマを教える能力、教師を養成するためのリソース、さらには十分な機器やオンライン学習プラットフォームといった重要な分野で、日本はOECDの中で最下位に位置している。 政府の教育改革アドバイザーである鈴木寛氏は、大学入試にデジタルスキルが含まれていないことが大きな理由の1つだと指摘する。そのため、高校の教師は教える必要性をほとんど感じていない。 鈴木氏によれば、2025年からは、入試にIT関連の問題が含まれるようになるとのことで、進んではいる。しかし、誰が教師を指導するのだろうか。そして、それにはどのくらいの時間がかかるのだろうか。 また、優秀な学生がデジタル専門人材になるために必要な時間とお金を費やすインセンティブも、他の富裕国よりはるかに低い。ほとんどの企業では、給料を決めるのに、依然として職業よりも年功序列が重視される。 2021年、日本のデジタル人材の平均年収は、2019年から4%減の438万円にとどまった。これは、日本の給与の中央値から2%下回る水準である。最もスキルの高いデジタル専門人材の給与では、その差はさらに大きくなっている。) ある調査によると、デジタル人材の65%の年収が390万円から540万円であり、615万円以上は5%、1000万円は一握りである。また、他の17カ国では、IT技術者の給与が日本より高いという調査結果も出ている。 残念ながら、DXは空虚な流行語にすぎないように思われる。日本政府は2021年にデジタル庁を創設したが、その使命は、政府内や政府と一般市民とのコミュニケーションのデジタル化に関するものがほとんどである。 文部科学省は、STEM専攻の学生が支払う高い授業料と費用を、社会科学や人文科学専攻の学生が支払う低い水準に引き下げる財政支援策を提案している。成立すれば、年間約20万人の学生が恩恵を受けることになる。これは歓迎すべき一歩だが、デジタルスキルの教え方を知らない教師たちの問題を解決するものではない』、「問題は高校から始まっており、教師自身のITスキル、こうしたテーマを教える能力、教師を養成するためのリソース、さらには十分な機器やオンライン学習プラットフォームといった重要な分野で、日本はOECDの中で最下位に位置している」、「「優秀な学生がデジタル専門人材になるために必要な時間とお金を費やすインセンティブも、他の富裕国よりはるかに低い。ほとんどの企業では、給料を決めるのに、依然として職業よりも年功序列が重視される」、「2021年、日本のデジタル人材の平均年収は、2019年から4%減の438万円にとどまった。これは、日本の給与の中央値から2%下回る水準である。最もスキルの高いデジタル専門人材の給与では、その差はさらに大きくなっている。 ある調査によると、デジタル人材の65%の年収が390万円から540万円であり、615万円以上は5%、1000万円は一握りである。また、他の17カ国では、IT技術者の給与が日本より高いという調査結果も出ている」、「残念ながら、DXは空虚な流行語にすぎないように思われる。日本政府は2021年にデジタル庁を創設したが、その使命は、政府内や政府と一般市民とのコミュニケーションのデジタル化に関するものがほとんどである。 文部科学省は、STEM専攻の学生が支払う高い授業料と費用を、社会科学や人文科学専攻の学生が支払う低い水準に引き下げる財政支援策を提案している。成立すれば、年間約20万人の学生が恩恵を受けることになる。これは歓迎すべき一歩だが、デジタルスキルの教え方を知らない教師たちの問題を解決するものではない」、「文部科学省」の「財政支援策を提案」は初耳で、実際に施行される可能性は殆どないだろう。
・『外国人の高度人材にとっても魅力がない  日本政府は、デジタルなどの分野で優れた技能を持つ移民を増やすため、複数の特別なビザを設けている。しかし、2022年現在、このビザ規則で高度専門職に指定された外国人は3275人にとどまっている。2022年の時点で、ICT分野の外国人就労者はわずか7万6000人ほどである。潜在的な人材が他の地域でもっと多くの給与を得ることができるので、不思議なことではない。 さらに、2019年のOECDの調査では、高学歴人材の魅力度において、日本は35カ国中25位となっている。例えば、日本では外国人の子弟が学校で日本語の授業を受けることが認められているが、教師不足のため、対象者のうち65%しか支援を受けていない。 昨年9月、岸田内閣の「教育未来創造会議」は、2032年までに大学のSTEM専攻者を半数以上にすることを提言したが、その方法はもちろん、そのような高い数値が望ましいかどうかも示さなかった。 政府による措置がない中で、最大の前向きな動きは、世代交代による意識の変化によって、一部の高度な技能を持つ人材が、企業による採用競争によって、より高い給与を得られるようになっていることである。) 20代、30代の働き手は、親よりもずっと、自分が面白いと思えるキャリアを手に入れたいと考えている。また、専門的なスキルを持つ人は、終身雇用の必要性をあまり感じない。そのため、よりやりがいのある仕事、より高い給与を求めて転職を希望する人が増えている。 1970年代から1980年代前半に採用された25歳から29歳の人たちが、最初は1つの会社に10年間勤めたとする。そのうちの70%は、少なくともさらに10年以上勤続している。しかし、15年後に採用された人たちでは、52%しか残らなかった。同様の傾向は、度合いは低いものの、それ以上の年齢層でも見られる』、「「教育未来創造会議」は、2032年までに大学のSTEM専攻者を半数以上にすることを提言したが、その方法はもちろん、そのような高い数値が望ましいかどうかも示さなかった」、無責任で「提言」に値しない。「政府による措置がない中で、最大の前向きな動きは、世代交代による意識の変化によって、一部の高度な技能を持つ人材が、企業による採用競争によって、より高い給与を得られるようになっていることである」、ただ、百年河清を待つようなものだ。
・『IT人材の給与を上げることは必然  この世代交代に加え、専門的なスキルを持つ社内人材の不足に対応するため、現在では中途採用の人材を確保せざるをえない企業も増えている。1999年当時、中途採用を実施していた企業は、大小問わず37%にすぎなかった。今では70%近くになっている。 さらに、優秀な中途人材を引きつけるために、企業はより高い給与を支払わなければならない。2009年当時、勤務先から別の勤務先に転職した人のうち、10%以上の賃上げを実現した人は13%にすぎなかった。しかし、2017年には、その割合は27%に倍増している。 経験則や各種調査によると、この変化の恩恵を最も受けているのは、熟練したデジタル人材であることがわかっている。 富士通やNTTデータなどの企業は、最もスキルの高いデジタル系社員に年間1000万円以上支払っている。 2019年、NECは優秀な研究開発職の採用者に初任給1000万円を提示したが、これは何年も前に採用した他の社員よりも高い給与を与えることになるケースが多い。パーソルホールディングスは、人材紹介会社として、企業のデジタル人材の確保を支援するとともに、ITに関する研修プログラムも提供している。外資系企業や日本の新興企業は、従来の日本の国内企業よりも大幅に高い給与を支払っている。 これだけですべての問題を解決することはできないが、正しい方向に進んでいることは間違いない。政府は、DXに関するレトリックを、しっかりとした現実的な対策に変えるべき時である』、「優秀な中途人材を引きつけるために、企業はより高い給与を支払わなければならない。2009年当時、勤務先から別の勤務先に転職した人のうち、10%以上の賃上げを実現した人は13%にすぎなかった。しかし、2017年には、その割合は27%に倍増している」、「政府は、DXに関するレトリックを、しっかりとした現実的な対策に変えるべき時である」、民間企業の努力に報いる政策を打ち出すべきだ。 
タグ:(その3)(韓国ソウルで感じた日本のデジタル後進国ぶり 入国システム・3Dディスプレイ…、「コンサルあまり」の時代が始まった…マッキンゼー、アクセンチュアが大規模リストラに追い込まれた理由 IT企業向けのサービス需要が行き詰まっている、27カ国中最下位…日本がIT人材足りない根本理由 このままでは最大80万人が不足する事態に) 民間デジタル化 ダイヤモンド・オンライン 大谷和利氏による「韓国ソウルで感じた日本のデジタル後進国ぶり、入国システム・3Dディスプレイ…」 「韓国」の先進「デジタル事情」とは興味深そうだ。 「韓国のTVドラマは放送法の規定で途中にCMを入れることが禁じられており、制作側の収益面ではPPLの比重が高い。CMが挟まれない分、ストーリーに集中できそうだが、劇中の役には不釣り合いな製品を使用していたり、登場人物が急に化粧品や炊飯器を褒め始めたりするので、思わずツッコミを入れたくなる」、「放送法の規定で途中にCMを入れることが禁じられており」、とは初めて知った。 「Android対iPhoneの割合では、韓国がほぼ世界平均と同じ70%強:30%割弱」、「韓国の若い世代のiPhoneへの関心が高まっているとすると、今後、iPhoneがよりシェアを伸ばしていく可能性もありそうだ」、なるほど。 「一般タクシーで今回目立ったのが、現代自動車・・・のEV、「IONIQ 5」・・・だった」、「車両自体はヨーロッパの厳しいNCAPの衝突安全テストにおいて最高評価の5つ星を獲得」、大したものだ。 「IONIQ 5は、ヒョンデとアプティブ・・・との合弁企業のモーショナルが開発している、自動運転レベル4・・・を実現するロボタクシーのベース車両ともなっている・・・このロボタクシーもソウル市内でテスト走行中だ」、「ロボタクシー」とは進んでいる。 「新世代の世界戦略ワンボックスカー「STARIA」は・・・IONIQ 5もそうだが、周囲を威嚇するようなフロントマスクを持つ日本のワンボックスとは一線を画すSTARIAの佇まいを見ていると・・・韓国車が価格ではなくコンセプトや質の面で世界に受け入れられる日が近いことを予感した」、「周囲を威嚇するようなフロントマスクを持つ日本のワンボックス」、私もあの「フロントマスク」は嫌いだ。「韓国車が価格ではなくコンセプトや質の面で世界に受け入れられる日が近いことを予感した」、大したものだ。 「韓国は新しい技術や製品に対する抵抗感が少なく、スマートフォン普及率の例からも分かるように、全年齢層がアーリーアダプター的な消費動向を持っているためだ。それゆえ韓国市場は、国外企業からも新たな技術や製品を試験的に投入して反応を確かめる場として捉えられているところがある」、羨ましい限りだ。「特定の角度から見ると猫やルンバが飛び出して見える3D街頭ビジョン」、「ウェーブスクリーン」、などなかなか面白そうだ。 「先取精神」には我々も学ぶべきだ。 「「Visit Japan Web」の使い勝手は」余り良くないようだ』、「国連やOECDなどの国際機関によるDX、IT関連のランキングで、韓国はICTの国際競争力、ICTインフラ整備、電子的な社会参加、オープンデータ利用、AIの民主的利用の項目で1位を獲得」、 「ことデジタル技術の推進やDXに関しては、政府が音頭を取るだけでなく、具体的に利用しやすい形で社会実装が進められなければ意味がないことが、きちんと理解されていると感じられた」、「日本」は「韓国」に残念ながら大きく水をあけられてしまったようだ。 PRESIDENT ONLINE 真壁 昭夫氏による「「コンサルあまり」の時代が始まった…マッキンゼー、アクセンチュアが大規模リストラに追い込まれた理由 IT企業向けのサービス需要が行き詰まっている」 「IT業界でのリストラは加速している。その成長を取り込んだコンサル業界などにもより強いリストラ圧力がのしかかろうとしている」、なるほど。 「経済のデジタル化が加速した。“21世紀はデータの世紀”と呼ばれるように、ビッグデータの重要性は急速に高まった。データを活用することによって、新しいビジネスが次から次へと生み出された。 メタやツイッターなどはSNSという新しい業態を生み出した。それにデータを用いた広告ビジネスが結合され、収益はおおきく伸びた」、なるほど。 「新しい業務運営の在り方を確立し、実際のマネジメント手法を組織に浸透させるために、マッキンゼーやアクセンチュアへのコンサルティング依頼は急増した。 コンサルティング各社は、顧客企業が新しい分野に進出し、いち早く安定した業務の運営体制を確立するために必要な方法論を提供して対価を得る。具体的にマッキンゼーなどは、経営戦略や財務、管理会計の理論を結合することによって、効率的に業務運営を行う標準的な手法を確立した」、なるほど。 「多くのIT先端企業は、コンサル業界出身の人材採用を強化した。また、アクセンチュアやソフトウエア分野への選択と集中を進めたIBMなどに、ビジネスモデルの確立や、新規事業の業務運営体制の企画、マネジメント手法などのコンサルティングを委託する企業も増えた。 その結果、世界的にコンサルタント人材の求人は急増した」、なるほど。 「2021年の秋ごろから、徐々にメタをはじめとするIT有力企業の成長鈍化懸念は高まった。株価も下落し始めた・・・世界全体で企業の資金調達などのコストも増加した。スタートアップ企業とGAFAなどの競争も激化した。SNSやサブスク型のビジネスモデルの優位性は行き詰まり、業績懸念は追加的に高まっている」、ようやく足元の状況に近づいてきた。 「コロナ禍の発生後は、カネ余りとデジタル化の加速期待に拍車がかかった。特別買収目的会社(SPAC)による買収を通した株式の公開によって資金を調達し、事業規模の拡大に取り組む企業は急増した。こうして、採用、コンサルティングや会計監査といったサービス需要も押し上げられた。 そうした強気な環境は急速にしぼんでいる。メタなどは追加リストラ策を発表した。IT先端企業などとの取引を強化した米欧金融機関のいくつかは破綻した。IT先端企業の成長を取り込んできたコンサル業界などでも、リストラの強化は避けられないだろう」、そ の通りだろう。 「世界規模で供給網の再編に取り組みつつ貿易管理体制を強化するためにも、企業はコンサルティング企業の助言を必要とする。コンサル業界でのリストラは、世界経済を支えたIT先端企業の成長性が鈍化し、新しい成長の機会が模索されていることの裏返しといえる」、「新しい成長の機会が模索されていることの裏返し」とは興味深い捉え方だ。 東洋経済オンライン リチャード・カッツ氏による「27カ国中最下位…日本がIT人材足りない根本理由 このままでは最大80万人が不足する事態に」 「経済産業省によると、2020年には30万人、2030年にはデジタルサービスの需要次第で45万人から80万人にまで不足が拡大」、「日本がこの崖を乗り越えなければ、2025年以降、日本のGDPは予測よりも毎年12兆円も低くなると警告している。その損失は、2022年のGDPの2%以上に相当する。ところが、政府はDXなどという聞こえのいいスローガンを掲げるだけで、この状況を改善するためにほとんど何もしていない」、「政府」の無責任ぶりには腹が立つ。 「日本は数学と科学の分野で世界トップクラスの成績を収めた高校生の割合で2019年、韓国に次いで2位の成績を収めている。にもかかわらず、日本は27の富裕国の中で、科学や工学の分野でのキャリアを目指す優秀な学生の割合が最下位となっている。日本は、STEM(科学、技術、工学、数学)コースを専攻した大学卒業生の割合が22位である。これに対し、韓国は3位」、 「大企業が総投資額の10%をソフトウェアに割いているのに対し、従業員数300人以下の企業ではその比率はわずか4%である」、「日本には、こうした中小企業にITを活用した売り上げの向上や、効率化の方法を示すコンサルタントが数多く必要なのだ」、その通りだ。 「問題は高校から始まっており、教師自身のITスキル、こうしたテーマを教える能力、教師を養成するためのリソース、さらには十分な機器やオンライン学習プラットフォームといった重要な分野で、日本はOECDの中で最下位に位置している」、 「「優秀な学生がデジタル専門人材になるために必要な時間とお金を費やすインセンティブも、他の富裕国よりはるかに低い。ほとんどの企業では、給料を決めるのに、依然として職業よりも年功序列が重視される」、「2021年、日本のデジタル人材の平均年収は、2019年から4%減の438万円にとどまった。これは、日本の給与の中央値から2%下回る水準である。最もスキルの高いデジタル専門人材の給与では、その差はさらに大きくなっている。 ある調査によると、デジタル人材の65%の年収が390万円から540万円であり、615万円以上は5%、1000万円は一握りである。また、他の17カ国では、IT技術者の給与が日本より高いという調査結果も出ている」、「残念ながら、DXは空虚な流行語にすぎないように思われる。日本政府は2021年にデジタル庁を創設したが、その使命は、政府内や政府と一般市民とのコミュニケーションのデジタル化に関するものがほとんどである。 文部科学省は、STEM専攻の学生が支払う高い授業料と費用を、社会科学や人文科学専攻の学生が支払う低い水準に引き下げる財政支援策を提案している。成立すれば、年間約20万人の学生が恩恵を受けることになる。これは歓迎すべき一歩だが、デジタルスキルの教え方を知らない教師たちの問題を解決するものではない」、「文部科学省」の「財政支援策を提案」は初耳で、実際に施行される可能性は殆どないだろう。 「「教育未来創造会議」は、2032年までに大学のSTEM専攻者を半数以上にすることを提言したが、その方法はもちろん、そのような高い数値が望ましいかどうかも示さなかった」、無責任で「提言」に値しない。「政府による措置がない中で、最大の前向きな動きは、世代交代による意識の変化によって、一部の高度な技能を持つ人材が、企業による採用競争によって、より高い給与を得られるようになっていることである」、ただ、百年河清を待つようなものだ。 「優秀な中途人材を引きつけるために、企業はより高い給与を支払わなければならない。2009年当時、勤務先から別の勤務先に転職した人のうち、10%以上の賃上げを実現した人は13%にすぎなかった。しかし、2017年には、その割合は27%に倍増している」、「政府は、DXに関するレトリックを、しっかりとした現実的な対策に変えるべき時である」、民間企業の努力に報いる政策を打ち出すべきだ。
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”右傾化”(その15)(全国約8万の神社を束ねる「神社本庁」で「2人の総長の闘い」が勃発中…傘下の東京都神社庁で幹部が巨額の金銭使い込み、神社庁が統一地方選候補に送りつけた「公約書」 「LGBT理解増進法案」国会提出の機運に水を差す、神政連がLGBTQを「精神疾患」と条例反対呼びかけ 「神政連の意図ではない」とした過去の回答と矛盾) [社会]

”右傾化”については、本年2月9日に取上げた。今日は、(その15)(全国約8万の神社を束ねる「神社本庁」で「2人の総長の闘い」が勃発中…傘下の東京都神社庁で幹部が巨額の金銭使い込み、神社庁が統一地方選候補に送りつけた「公約書」 「LGBT理解増進法案」国会提出の機運に水を差す、神政連がLGBTQを「精神疾患」と条例反対呼びかけ 「神政連の意図ではない」とした過去の回答と矛盾)である。

先ずは、本年3月14日付け現代ビジネス「全国約8万の神社を束ねる「神社本庁」で「2人の総長の闘い」が勃発中…傘下の東京都神社庁で幹部が巨額の金銭使い込み」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/107104
・『トップの内紛による事件複雑化  全国約8万の神社を束ねる「神社本庁」傘下の東京都神社庁で、金銭トラブルが発覚した。中堅幹部の一人が巨額の使い込みを行ったというもので、この幹部は1月17日付で「金銭上の非違行為があったので」解雇されたと公表された。 ところが、事件から1ヵ月半が経過しても全体像が見えてこない。都内の神社宮司は「早く警察に被害届を出して全容を解明すべきなのに、東京都神社庁の小野(貴嗣)庁長は『調査中』としてオープンにしない。事件を封印するつもりじゃないか」と不満を漏らす。 背景にあるのは、神社本庁の内紛だ。神社本庁では現在”2人の総長”が地位を争っている。'22年5月、神社本庁の象徴的存在で行事を担う「統理」の鷹司尚武氏は、事務方トップの「総長」として芦原高穂氏(北海道・旭川神社宮司)を指名した。しかし役員会は、'10年から総長を務める田中恆清氏(京都府・石清水八幡宮宮司)の続投を議決。芦原氏は訴訟を起こしたが、東京地裁は棄却、現在高裁で争われている。 実は今回、事件を起こした中堅幹部は、田中総長の側近、打田文博・神道政治連盟会長の親族だった。「ポスト田中」を窺う小野庁長は、田中氏に気を遣って事件を封印しようとしたのではないか、と見る関係者もいる』、「神社本庁」で金銭トラブルが発覚した。中堅幹部の一人が巨額の使い込みを行った」、「事件から1ヵ月半が経過しても全体像が見えてこない。都内の神社宮司は「早く警察に被害届を出して全容を解明すべきなのに、東京都神社庁の小野(貴嗣)庁長は『調査中』としてオープンにしない。事件を封印するつもりじゃないか」と不満を漏らす」、「神社本庁では現在”2人の総長”が地位を争っている。'22年5月、神社本庁の象徴的存在で行事を担う「統理」の鷹司尚武氏は、事務方トップの「総長」として芦原高穂氏(北海道・旭川神社宮司)を指名した。しかし役員会は、'10年から総長を務める田中恆清氏(京都府・石清水八幡宮宮司)の続投を議決。芦原氏は訴訟を起こしたが、東京地裁は棄却、現在高裁で争われている」、「事件を起こした中堅幹部は、田中総長の側近、打田文博・神道政治連盟会長の親族だった。「ポスト田中」を窺う小野庁長は、田中氏に気を遣って事件を封印しようとしたのではないか、と見る関係者もいる」、「神社本庁」は、組織としての体をなしていないようだ。「”2人の総長”」争いの決着も「高裁で争われている」とは情けない限りだ。

次に、4月22日付け東洋経済オンライン「神社庁が統一地方選候補に送りつけた「公約書」 「LGBT理解増進法案」国会提出の機運に水を差す」を紹介しよう。
・『全国8万社の神社を包括する神社本庁の政治団体・神道政治連盟(神政連)が、この4月に実施されている統一地方選挙で、LGBTQ(性的少数者)への理解増進や選択的夫婦別氏(姓)制度の導入に反対することなどを求める公約書(政策協定書)を各自治体の候補者に送っていたことがわかった。岸田文雄首相がLGBT理解増進法案を今国会に提出したい姿勢を示す中でのことだ。 公約書を受け取った自民党県議らが東洋経済に明かした。受け取った候補者のうち、公約に「同意」して神政連の推薦候補となった人の数は不明だ。 2月、首相秘書官が性的少数者や同性婚について「隣に住んでいるのもちょっと嫌だ」などと発言したことに各界から反発の声が上がると、岸田首相は即刻、秘書官を更迭した。 LGBT理解増進法について「今国会に法案提出して成立を図るべきだ」(山口那津男・公明党代表)という与党の声にも押され、首相自ら、自民党に法案提出の準備を急ぐよう指示した経緯がある。 ところが、高市早苗経済安全保障担当相など自民党内にも慎重な声があり、国会提出は統一地方選挙後に持ち越される運びとなった。しびれをきらした経団連の十倉雅和会長は3月の会見で「恥ずかしい。法案を出すことで差別が増進されるとか、わけのわからない議論がなされている」と苦言を呈している。 そんな中で実施された統一地方選挙で、神政連はLGBT理解増進法案の国会提出機運に水を差すような公約書を候補者たちに送っていた』、「岸田首相」としては、今月、広島で開催するG7サミットの前までに決着を付ける必要があるが、「自民党内にも慎重な声があ」る。その背後では、「神政連はLGBT理解増進法案の国会提出機運に水を差すような公約書を候補者たちに送っていた」、「岸田首相」の覚悟のほどがやがて明らかになるようだ。
・『「伝統的な家族制度の崩壊」  神政連が統一地方選挙の候補者に送っていたのは7項目の公約(冒頭の写真)だ。女性天皇につながる「女性宮家」創設への反対や憲法改正、宗教的情緒の涵養、首相や閣僚による靖国神社参拝などが挙げられている。 家族にかかわる政策については「伝統的な家族制度の崩壊につながりかねない選択的夫婦別氏(姓)制度の導入に反対し、その対処策として、旧姓の使用拡大に努めます」、「各自治体におけるパートナーシップ制の制定等の動向を注視するとともに、民法で定める法律婚を大事にしてその意義啓発に努めます」などと記されている。) 神政連の公約書を受け取った一人で、4月16日実施の埼玉県議会選挙で5期目の当選を果たした自民党の田村琢実埼玉県議は、「神政連から公約書が送られてきたのは今回の選挙が初めて。これまで一度もなかったのに、今回送られてきた理由はわからない」と首をかしげる。 埼玉県議会は2022年の議会で、性の多様性(LGBTQ)条例を可決した。可決前に実施されたパブリックコメントに際しては、神政連埼玉県本部の役員会で「事務局長が役員たちにパブコメで『反対意見を投稿するように』という趣旨の呼びかけをしていた」(埼玉県神社庁幹部)という。 条例制定に中心的な役割を果たした田村県議は、右翼団体の街宣車から「夫婦別姓推進の田村琢実は反保守活動家」などと“口撃”された。神政連の公約書にも同意しなかったため、推薦候補にはなっていない。 田村県議は「LGBTQの当事者たちは、(現行の)制度によって苦しんでいる。困っている人を助けるのが政治の役割なのだから、条例制定は政治家として当然のこと」と語り、こう続ける。「反対する人たちは、単に理解をしていないだけ。LGBTQを認めると国が壊れるという意見があるが、同性婚や夫婦別姓を認めている国が壊れたでしょうか」』、「田村県議」は「条例制定に中心的な役割を果たした」だけあって、考え方はまともだ。
・『同性愛は「ギャンブル依存症と同じ」  神政連は、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と並び、LGBTQに強力に反対してきた組織だ。2022年6月には、LGBTQの理解について大きな反発を受ける騒動があった。物議を醸したのは自民党の神政連国会議員懇談会で配布した「夫婦別姓同性婚パートナーシップLGBT」と題した冊子に掲載された楊尚眞・弘前学院大学教授(当時)の講演録。 講演録には、同性愛について「後天的な精神の障害、または依存症」「同性愛行為の快感レベルが高くてなかなか抜け出すことができないのは、ギャンブル依存症の人が沢山儲けた時の快感を忘れられず、抜け出せないのと同じなのです」などと記されていた。 これに対してLGBTQ当事者らによる抗議署名は5万筆を超え、自民党本部が抗議を受ける格好となった。本件について神政連は東洋経済の取材に「抗議は冊子自体に対するものではなく、楊教授の講演録の一部の表現に対してではないでしょうか」などと回答している。 今回の統一地方選挙で神政連埼玉県本部など地方本部が自民党の公認候補らに送っていた公約書は、2021年10月に実施された衆議院選挙の際、神政連中央本部(打田文博会長)が自民党の国会議員と交わした公約書と同じ内容だ。神政連の資料によると、神政連の公約に賛同・署名をした234人の候補を推薦候補とし、うち202人が当選を果たした。 ただ、賛同・署名をした人が必ずしも選択的夫婦別氏(姓)制度に反対しているかといえば、そうとは言いがたい。 手元に「選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟役員一覧」(2021年7月)という資料がある。役員のうち、顧問に就いた甘利明氏や小泉進次郎氏、河野太郎氏、茂木敏充氏、副会長の小渕優子氏、幹事長の木原誠二氏、事務局長の井出庸生氏ら39人は、一方で、神政連の公約書に賛同・署名をして神政連の推薦候補にもなっていた。 選択的夫婦別氏(姓)を早期に実現すべきだと主張する国会議員が神政連の公約書に賛同・署名している理由は不明だ。主張の一部に賛同できなくても、自民党支持者の中で、とりわけ保守的な票の獲得を期待してのことかもしれない』、「同性愛は「ギャンブル依存症と同じ」」との「楊尚眞・弘前学院大学教授」の「講演」は、大学教授とは思えないお粗末な認識だ。
・『賛成・反対派の両方に「良い顔」をする  一方の神政連は、選択的夫婦別氏(姓)に賛同する議員であっても、政治への影響力拡大のためにはこの点に目をつぶるということかもしれない。今回、統一地方選に向け都道府県議員レベルにも「公約書」の対象を広げたのは、LGBT理解増進法案の提出を控え、組織の引き締めを図る狙いがあるとみられる。 どちらにしても上記39人の国会議員は先の衆議院総選挙において、選択的夫婦別氏(姓)に関して賛成派、反対派の両方の有権者に「良い顔」をして当選したことになる。 では、最終盤に差しかかる今般の統一地方選挙の候補者はどうか。 東洋経済は神政連に対し「全都道府県の、どのくらいの数の県議候補、市議候補に公約書を送っているのか」を尋ねたが、「回答は差し控える」と答えた。 旧統一教会問題については安倍元首相の死去後、多くの国会議員や地方議員が教団のイベントに出席したり祝電を送ったりなどする代わりに国政選挙や地方選挙で強力な支援を受けていたことが発覚した。 旧統一教会と主張が似通う神政連の公約書は、どれだけの候補者に送られ、どの候補者が「賛同・署名」をして神社界の支援を受けているのか。実態はベールに包まれている。 候補者に関する十分な情報が開示されているか。そこにウソはないか。有権者は、実態を慎重に見極める必要がある』、「神政連」としては、「旧統一教会」に対抗して「議員」への働きかけを強めているようだ。

第三に、 4月29東洋経済オンライン「神政連がLGBTQを「精神疾患」と条例反対呼びかけ 「神政連の意図ではない」とした過去の回答と矛盾」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/669659
・『2022年7月に施行された埼玉県の「性の多様性(LGBTQ)条例」について、県議会での審議を前に自民党埼玉県連が意見募集をした際、埼玉県神社庁の関連団体・神道政治連盟埼玉県本部が下部団体に反対意見を投稿するよう呼びかけ、「LGBTQは何れも、精神疾患であることが明らかになりつつある」などと記した文書を送付していたことがわかった。 LGBTQを疾患とみなす考え方は現在の精神医療では否定されており、科学的に誤った情報をもとに、投稿を促していたことになる。さらにLGBTQ当事者への無用な偏見や差別を助長しかねない内容で、神社関係者からも批判が出ている』、「埼玉県神社庁の関連団体・神道政治連盟埼玉県本部が下部団体に反対意見を投稿するよう呼びかけ、「LGBTQは何れも、精神疾患であることが明らかになりつつある」などと記した文書を送付」、「LGBTQ当事者への無用な偏見や差別を助長しかねない内容で、神社関係者からも批判が出ている」、「神道政治連盟埼玉県本部」の認識は余りにお粗末だ。
・『科学的に誤った説明  文書は、神道政治連盟埼玉県本部によって、2022年4月に県内各支部に送られた。 「埼玉県性の多様性に係る理解増進に関する条例(仮称)の骨子案問題点・疑問点(事務局作成)」とのタイトルが付けられている。自民党埼玉県連が作成したLGBTQ条例の骨子案に対する、神政連埼玉県本部の見解を示したものだ。 文書では、同性愛や両性愛について「生まれつき同性愛・両性愛である人はいなく、環境要因に基づくことが明らかになっている」と記載。 LGBTQについては「幼少期での虐待、性的虐待、家庭内暴力、両親の不仲、親の薬物依存、アルコール依存、思春期での同性愛行為など環境要因による精神疾患(統合失調症や双極性障害等)であることが明らかになりつつある」「行動療法や宗教などで『治癒』する」などと、科学的に誤った説明がされている。 神政連の中央本部は2022年6月にもLGBTQの認識をめぐって大きな批判を招いた。同性愛を「精神の障害、または依存症」と記した冊子を国会議員に配布したのだ。(詳細は神社庁が統一地方選候補に送りつけた「公約書」)。当時、神政連は東洋経済の取材に、冊子は大学教授の講演録を掲載しただけであり「神政連の意図に基づくものではない」と回答していた。 文書の発信は神政連埼玉県本部になっているが、関係者によると「実際に文案を作成したのは神政連中央本部の幹部」だという。 東洋経済はあらためて神政連中央本部に「2022年の取材時には、『LGBTQを精神の障害や依存症とする意図は神政連にはない』と回答していたが、今回の文書を読む限り、神政連も精神の障害であると認識しているのではないか」と質問した。しかし「回答は致しかねる」という返答だった。 文書を受け取った埼玉県内の神職は、「かつて神政連はマスコミからの非難をかわすため『冊子の論考の内容は神政連の見解ではない』などと弁解していた。しかし、文面を読むと真っ赤なうそだったことがわかる」と語る』、「LGBTQについては「幼少期での虐待、性的虐待、家庭内暴力、両親の不仲、親の薬物依存、アルコール依存、思春期での同性愛行為など環境要因による精神疾患(統合失調症や双極性障害等)であることが明らかになりつつある」「行動療法や宗教などで『治癒』する」などと、科学的に誤った説明がされている」、「かつて神政連はマスコミからの非難をかわすため『冊子の論考の内容は神政連の見解ではない』などと弁解していた。しかし、文面を読むと真っ赤なうそだったことがわかる」、「神政連」は実にいい加減だ。
・『LGBTQ当事者の神社関係者もあきれる  当たり前すぎることだが、神職や神社関係者、あるいはその家族にもLGBTQの当事者はいる。LGBTQ当事者である神社関係者は、文書を読んであきれかえったという。そしてこう話した。 「神政連は、『神道にはLGBTQを差別する考えはない』と公式には述べている。神政連は、明治以降の家父長的な家族形態を勝手に『日本の伝統』だと思い込み、明治の価値観にそぐわないLGBTQや姓名の多様なあり方をないものとして扱おうとしている。伝統であれば差別が許されるわけではないし、ましてや、いつの時代にもあったはずの多様性を無視した偏向的な伝統観にこだわって、差別を扇動するなどあってはならない」 LGBTQは個人の政治信条や価値観、宗教観によって、受け止め方がさまざまに違う。さらに当事者の権利擁護について法律や条例が必要かどうか、「賛成・反対」どちらの立場もありうる。 しかし科学的に誤った内容をもとに「精神疾患」だと決めつけ、条例反対の投稿を呼びかけるのは全国8万社の神社を包括する宗教法人の関連団体として適切なのかどうか。 折しも国会では、神政連と関係が深い自民党が「LGBT理解増進法案」の議論を本格化させている。2021年に実施された衆議院選挙の際、200人以上が神政連から推薦を受けている中、果たして法案成立にこぎつけられるのか』、「科学的に誤った内容をもとに「精神疾患」だと決めつけ、条例反対の投稿を呼びかけるのは全国8万社の神社を包括する宗教法人の関連団体として適切なのかどうか」、そもそも「神社」が宗教を離れて、政治的に偏った活動をするのは、大きな問題だ。「神政連」は解散すべきなのではなかろうか。
タグ:”右傾化” (その15)(全国約8万の神社を束ねる「神社本庁」で「2人の総長の闘い」が勃発中…傘下の東京都神社庁で幹部が巨額の金銭使い込み、神社庁が統一地方選候補に送りつけた「公約書」 「LGBT理解増進法案」国会提出の機運に水を差す、神政連がLGBTQを「精神疾患」と条例反対呼びかけ 「神政連の意図ではない」とした過去の回答と矛盾) 現代ビジネス「全国約8万の神社を束ねる「神社本庁」で「2人の総長の闘い」が勃発中…傘下の東京都神社庁で幹部が巨額の金銭使い込み」 「神社本庁」で金銭トラブルが発覚した。中堅幹部の一人が巨額の使い込みを行った」、「事件から1ヵ月半が経過しても全体像が見えてこない。都内の神社宮司は「早く警察に被害届を出して全容を解明すべきなのに、東京都神社庁の小野(貴嗣)庁長は『調査中』としてオープンにしない。事件を封印するつもりじゃないか」と不満を漏らす」、 「神社本庁では現在”2人の総長”が地位を争っている。'22年5月、神社本庁の象徴的存在で行事を担う「統理」の鷹司尚武氏は、事務方トップの「総長」として芦原高穂氏(北海道・旭川神社宮司)を指名した。しかし役員会は、'10年から総長を務める田中恆清氏(京都府・石清水八幡宮宮司)の続投を議決。芦原氏は訴訟を起こしたが、東京地裁は棄却、現在高裁で争われている」、 「事件を起こした中堅幹部は、田中総長の側近、打田文博・神道政治連盟会長の親族だった。「ポスト田中」を窺う小野庁長は、田中氏に気を遣って事件を封印しようとしたのではないか、と見る関係者もいる」、「神社本庁」は、組織としての体をなしていないようだ。「”2人の総長”」争いの決着も「高裁で争われている」とは情けない限りだ。 東洋経済オンライン「神社庁が統一地方選候補に送りつけた「公約書」 「LGBT理解増進法案」国会提出の機運に水を差す」 「岸田首相」としては、今月、広島で開催するG7サミットの前までに決着を付ける必要があるが、「自民党内にも慎重な声があ」る。その背後では、「神政連はLGBT理解増進法案の国会提出機運に水を差すような公約書を候補者たちに送っていた」、「岸田首相」の覚悟のほどがやがて明らかになるようだ。 「田村県議」は「条例制定に中心的な役割を果たした」だけあって、考え方はまともだ。 「同性愛は「ギャンブル依存症と同じ」」との「楊尚眞・弘前学院大学教授」の「講演」は、大学教授とは思えないお粗末な認識だ。 「神政連」としては、「旧統一教会」に対抗して「議員」への働きかけを強めているようだ。 東洋経済オンライン「神政連がLGBTQを「精神疾患」と条例反対呼びかけ 「神政連の意図ではない」とした過去の回答と矛盾」 「埼玉県神社庁の関連団体・神道政治連盟埼玉県本部が下部団体に反対意見を投稿するよう呼びかけ、「LGBTQは何れも、精神疾患であることが明らかになりつつある」などと記した文書を送付」、「LGBTQ当事者への無用な偏見や差別を助長しかねない内容で、神社関係者からも批判が出ている」、「神道政治連盟埼玉県本部」の認識は余りにお粗末だ。 「LGBTQについては「幼少期での虐待、性的虐待、家庭内暴力、両親の不仲、親の薬物依存、アルコール依存、思春期での同性愛行為など環境要因による精神疾患(統合失調症や双極性障害等)であることが明らかになりつつある」「行動療法や宗教などで『治癒』する」などと、科学的に誤った説明がされている」、「かつて神政連はマスコミからの非難をかわすため『冊子の論考の内容は神政連の見解ではない』などと弁解していた。しかし、文面を読むと真っ赤なうそだったことがわかる」、「神政連」は実にいい加減だ。 「科学的に誤った内容をもとに「精神疾患」だと決めつけ、条例反対の投稿を呼びかけるのは全国8万社の神社を包括する宗教法人の関連団体として適切なのかどうか」、そもそも「神社」が宗教を離れて、政治的に偏った活動をするのは、大きな問題だ。「神政連」は解散すべきなのではなかろうか。
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金融関連の詐欺的事件(その13)(【岐阜発】99歳女性を追い込んだ「農協職員の鬼畜な全所業」【むしり取られた額、3146万】、【支払い総額3146万円】99歳の女性を狙った「JA農協の不正疑惑」の手口がヤバすぎる、Z世代を狙う投資詐欺への注意点 「FIRE」「億り人」は怪しい!) [金融]

金融関連の詐欺的事件については、昨年4月14日に取上げた。今日は、(その13)(【岐阜発】99歳女性を追い込んだ「農協職員の鬼畜な全所業」【むしり取られた額、3146万】、【支払い総額3146万円】99歳の女性を狙った「JA農協の不正疑惑」の手口がヤバすぎる、Z世代を狙う投資詐欺への注意点 「FIRE」「億り人」は怪しい!)である。

先ずは、本年2月1日付け現代ビジネスが掲載した農業ジャーナリストの窪田 新之助氏による「【岐阜発】99歳女性を追い込んだ「農協職員の鬼畜な全所業」【むしり取られた額、3146万】」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/105378?imp=0
・『保険の不正販売や口座の借用、貯金の横領……。全国のJAで顧客の金融資産を狙った不祥事が絶えない中、岐阜県のJA職員たちは白寿を迎えた女性を食い物にしていた。その動機と手口とは—』、「JA」で「顧客の金融資産を狙った不祥事」とは興味深そうだ。
・『記憶にない保険契約が37件  '20年3月、都内に住む40代男性・新開希さん(仮名)にとって身に覚えのないJA共済の契約書が、岐阜県大垣市で一人暮らしをしている祖母・康子さん(99歳・仮名)の家から見つかった。 それは「養老生命共済」で、死亡時や介護状態になったときに金銭が保障される生命保険である。康子さんはJA(農業協同組合)の組合員。ただ、新開さんはJAとは無縁の生活を送ってきた。それなのに、なぜかJA共済の契約者となっていた。 新開さんは、保険事業も手がける金融機関に勤めている。保険営業の基本は知っているので、契約書を見た瞬間に「アウト」だと感じたという。 「契約者だという私とは一度も面会していないので。保険会社は契約者に商品を説明する義務があり、契約者と被保険者は加入時に、保険会社に健康状態を告知する義務があるわけですから」 さらに怪しんだのは、保険の販売元が岐阜県大垣市に本店がある「JAにしみの」だったことだ。契約書の住所欄には、新開さんが一度も住んだことがない康子さん宅がある本籍地が記されていた。 新開さんがJAにしみのに電話で問いただしたところ、契約は白紙にして、すべての掛け金はその出所である康子さんの口座に払い戻すという。それ以上の詳しい説明がないまま、やがて約43万7000円が祖母の口座に振り込まれてきた。 ところが、すぐにまたおかしな契約書が康子さん宅から見つかる。今度は新開さんの父を契約者と被保険者にした「JA安心倶楽部」。これはJAグループの「共栄火災海上保険」が扱う傷害保険だ。販売元のJAにしみのに再び苦情を入れると、過去の掛け金の総額約8万5000円が、その出所である康子さんの口座に払い戻された』、なるほど。
・『保険料の支払い総額「3146万」  不信感を強めた新開さん父子は、康子さんのJAバンク口座から掛け金が引き落とされてきた保険の契約件数について情報の開示を求めた。その結果、JAにしみのが回答した件数は12件に及んだ。だが、たちまちこれは杜撰な調べ方だったことがわかる。 新開さん父子が通帳の入出金情報を基に契約を確認していくと、最終的に計37件の保険契約があることが判明した。これらは転換や解約、新規加入を繰り返してきた累計の契約件数である。 続けてJAにしみのに契約内容を開示させ、中身を見ていくと、新開さん父子以外にも、康子さん本人や彼女に近い親族4人が契約者や被保険者になっていた。それぞれ本人に確認したところ、いずれもJAの保険に加入した記憶はないという。共通点は、康子さんの口座から掛け金が引き落とされていたことである。 「複数のJA職員が祖母を標的に不適正な保険契約をしたのではないか」 新開さん父子はこう強く疑っている。 康子さんの口座から引き落とされた保険料の支払い総額は、実に3146万円。JA職員が康子さんの大事な老後資産を食い物にしようとしたのであれば、鬼畜の所業と言わざるを得ない。 JA職員が本人の了承も得ずに保険の契約や解約を繰り返す背景には、JAを蝕む「ノルマ」の存在があると推測できる。後述するように、一定数の保険の新規契約を取ることがJA職員に課せられているのだ。 住居以外の資産はとくにないものの、夫婦共働きだった康子さん。70歳まで正職員として働いてきた。保険営業の目的でJA職員が康子さんに近づくようになったのは、遅くとも退職間際の'92年から。前年に夫を亡くし、一人暮らしとなった康子さんの家には、JA職員が「近所の家で仕事があるから、それまで待たせて」とお願いするなど、何かと用事をつくっては上がり込むようになった。以後、少なくとも5人のJA職員によって、保険契約が契約者や被保険者に無断で行われていった』、「康子さんのJAバンク口座から掛け金が引き落とされてきた保険の契約件数について情報の開示を求めた。その結果、JAにしみのが回答した件数は12件」、「最終的に計37件の保険契約があることが判明」、「康子さんの口座から引き落とされた保険料の支払い総額は、実に3146万円。JA職員が康子さんの大事な老後資産を食い物にしようとしたのであれば、鬼畜の所業と言わざるを得ない」、信じ難いような酷い話だ。
・『異常な口座の記録  JA職員が課せられたノルマは、保険の契約だけにとどまらない。JAバンクの口座新設や貯金の獲得にもノルマがあるようだ。実際、康子さんのJAバンク口座が、JA職員の手によって悪用されていたと思われる痕跡がいくつも見つかった。 一つは、康子さんの定期積立口座の解約と新規契約が'07〜'18年の間で計44件と異常な数にのぼったこと。最短では2ヵ月で解約している。 康子さんには、短期間で積立預金を解約する理由はおろか、そもそも高齢のため一人で店舗を訪れる体力もない。自宅から最寄りのJAの店舗までは1km以上。自動車や自転車には乗れない。おまけに外出ができないほど足腰は衰え、白内障と緑内障を併発してから長い。それなのに、康子さんは一連の手続きを店舗でしたことになっているのだ。 さらに不可解なのは、定期積立口座の解約日と開設日が同じであることだ。おまけに毎月の積立金の設定が奇妙である。7万円にしていた口座を解約すると、今度は2万円と5万円で2つの口座を作る。続いてこれらの口座を解約し、7万円の口座を1つ新設する。この繰り返しだ。 新開さんの父は、 「母のノートには通帳と印鑑をJA職員に預けていたと記されている」と語る。 さらにJAが開示した別口座の入出金の履歴をたどると、定期積金口座と普通貯金から毎回3万〜15万円の現金が合計27件も窓口で引き出されていた。現金が引き出された記録がある時間帯の一部については、康子さんは別の場所にいたことが、彼女の日記からわかっている。JA職員が直接横領した証拠はないものの、誰が何のために引き出したのか不明だ。 新開さん父子は「普通では考えられないことだらけ」と驚きを隠せない。 後編記事『【支払い総額3146万円】99歳の女性を狙った「JA農協の不正疑惑」の手口がヤバすぎる』につづく』、「定期積立口座の解約と新規契約が'07〜'18年の間で計44件と異常な数にのぼったこと。最短では2ヵ月で解約」、「康子さんには、短期間で積立預金を解約する理由はおろか、そもそも高齢のため一人で店舗を訪れる体力もない。自宅から最寄りのJAの店舗までは1km以上。自動車や自転車には乗れない。おまけに外出ができないほど足腰は衰え、白内障と緑内障を併発してから長い。それなのに、康子さんは一連の手続きを店舗でしたことになっているのだ」、「母のノートには通帳と印鑑をJA職員に預けていたと記されている」、「定期積金口座と普通貯金から毎回3万〜15万円の現金が合計27件も窓口で引き出されていた。現金が引き出された記録がある時間帯の一部については、康子さんは別の場所にいたことが、彼女の日記からわかっている」、「JA」の職員が実質的に管理していたのだろう。これはどうみても違法だ。

次に、この続きを、2月1日付け現代ビジネスが掲載した農業ジャーナリストの窪田 新之助氏による「【支払い総額3146万円】99歳の女性を狙った「JA農協の不正疑惑」の手口がヤバすぎる」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/105385?imp=0
・『前編『【岐阜発】99歳女性を追い込んだ「農協職員の鬼畜な全所業」【むしり取られた額、3146万】』から続く。 「カモ」が引き継がれて  康子さんは言葉巧みに物品も売りつけられていたようだ。判明している中で最も金額が大きいのは、'03年に購入した仏具のおりん。木箱に「十八金製」と書かれたその価格は160万円だった。 「祖母によると、JA職員が『隣の家だけでなく私も買ったから、あなたもぜひ』と言うんで、買わされたようなんです」(新開さん) いずれも長年にわたって、複数の職員が高齢者を食い物にしてきた形跡がある。その理由について、近畿圏に勤める筆者の知人のJA職員は次のように推測する。 「JA職員はだいたい3〜5年で別の地区担当に異動します。歴代の担当者の間で『あの家は簡単に保険や物を買ってくれる』と、カモになる組合員の家が引き継ぎされてきたんでしょう。JAではよくあることです」 不思議なのは、なぜ保険の契約や口座の開設を本人に代わってできるのか、ということだ。 JA職員が続ける。 「少なくとも10年くらい前まで、JAの金融事業は『何でもあり』でした。保険の契約だと本人の了解を得なくても、百均で買ってきた印鑑や代筆署名でいけたんです。遠くに住んでいる息子や娘を保険に入れる親に対して、JA職員がよく使う手ですね。 口座開設もそう。本来であれば本人の了解と身分証明書が必要ですが、免許証や保険証の番号さえわかれば、あとは何とでもできた。ただ、さすがにここ5年ほどは、どのJAでもそれを許さないほどに厳しくなっているとは思うんですが……」』、「'03年に購入した仏具のおりん。木箱に「十八金製」と書かれたその価格は160万円だった」、金融商品だけでなく、物販もしていたようだ。「不思議なのは、なぜ保険の契約や口座の開設を本人に代わってできるのか、ということだ。 JA職員が続ける。 「少なくとも10年くらい前まで、JAの金融事業は『何でもあり』でした。保険の契約だと本人の了解を得なくても、百均で買ってきた印鑑や代筆署名でいけたんです。遠くに住んでいる息子や娘を保険に入れる親に対して、JA職員がよく使う手ですね。 口座開設もそう。本来であれば本人の了解と身分証明書が必要ですが、免許証や保険証の番号さえわかれば、あとは何とでもできた。ただ、さすがにここ5年ほどは、どのJAでもそれを許さないほどに厳しくなっているとは思うんですが……」、「「少なくとも10年くらい前まで、JAの金融事業は『何でもあり』でした」、一般の金融機関では、コンプライアンスはもっと以前から厳しく求められたが、「JA」は遅れたようだ。
・『高齢者や認知症を狙う  康子さんへの保険の不正販売疑惑について、JAにしみのに取材すると、計37件の契約のうち8件は不祥事として、'22年12月に行政庁の岐阜県に届けたという。 さらに10件は「事務不適のため、契約者の意向によっては取り消しに応じる予定」として、なぜか不祥事にしていない。 残る19件の保険契約や口座絡みの不正疑惑については、「調査中。謝罪とともに誠意をもって、迅速に対応してまいります」と回答した。 JAにしみのは新開さん父子に直接謝罪した。ただ、払込額が大きい「終身共済」については「引き続き、ご加入したままにしておいてください」と説得しようとしたというから、謝罪もどこまで本気なのかわからない。 それにしても、JA職員はなぜ不正販売を繰り返したのか。それを解く鍵はやはり「ノルマ」だ。 全国の多くのJAは保険の営業に関して、毎年、職員に過大な営業ノルマを課している。それをこなせる職員はごく一部だ。 そこで、自らが必要以上に加入する。あるいは知人や友人に加入させて、その掛け金を代わりに払う。JA職員はそれらの営業行為を「自爆」と呼んでいる。その負担額は、年間で数十万円は当たり前で、数百万円というのもざらだ。 自爆による負担を減らすには、とにかくノルマをこなすしかない。とはいえ、過大なノルマを達成するほどの数の新規顧客を獲得するのは容易ではない。 そこで、既存の顧客に「転換」や「解約新規」を勧めることになる。JAによって違いはあるものの、新規契約から一定期間が経つと、転換や解約新規でもノルマ消化のポイントとして計上されるからだ。 もちろん顧客が納得し、その利益となるなら問題ない。だが、そうではない事例が全国で多数報告されている。契約者に不利な保険に切り替えられたり、不要な保険に加入させられたり、ときには顧客が知らないうちに転換や新規契約がなされていることもある。とくに高齢者や認知症の人が被害に遭いやすい中、康子さんもその標的にされたのではないか』、「ノルマ」は「JA」だけでなく、ゆうちょ銀行、日本郵政、さらには一般の民間金融機関にもあるが、民間金融機関ではコンプライアンスが厳格化され、現在ではそれほどの問題にはなっていない。
・『組合員と職員を犠牲にするノルマ  多くのJAでは、口座の新設でもノルマが残っている。ノルマは定期貯金の満期総額の場合もあれば、獲得件数の場合もある。JAにしみのでは、職員が短期間で解約と新規開設を繰り返させたので、後者のノルマがあったと疑われる。 康子さんはJA職員から勧められるままに、年金の受取口座を地方銀行からJAバンクに移している。そしてJA職員はその口座内容を見ることができるという。 かつて取材したJA職員が「あとはパズルゲーム」だとし、次のように証言したことがある。 「つまり組合員の口座にある貯金を、ノルマ達成のためにどこにどうはめ込むか。過大なノルマを抱えたJA職員ならみんな考えていることです」 一方、JAが職員にノルマを課すのは、上部団体から営業実績に応じた手数料が入るからである。共済(保険)では保有残高に対しても発生する。JAにしみのが新開さん父子に謝罪しながらも、既存契約の一部を残してもらおうとした理由はおそらくここにある。 岐阜県内の保険事業を担うJA共済連岐阜にノルマについて尋ねると、 「各JAで組合員や利用者への万全な保障提供に向けて、地域における保障充足状況や推進体制もふまえて検討いただいております」 と回答した。 今年8月に100歳を迎える康子さんはいま、こう嘆き悲しんでいる。 「JA職員には誠実さと親切さがあるとずっと信じてきました。それなのに裏切られて、あまりにショックです」 最も大事なはずの組合員と職員を犠牲にするJAの闇はどこまでも深い』、「最も大事なはずの組合員と職員を犠牲にするJAの闇はどこまでも深い」、同感である。

第三に、5月3日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏による「Z世代を狙う投資詐欺への注意点、「FIRE」「億り人」は怪しい!」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/322326
・『Z世代を狙った投資詐欺の被害が目立っているという。「FIRE(早期リタイア)」が実現できるだとか、「億り人」になれるという誘い文句がはやっているようだ。そこで今回は、詐欺が疑われる「怪しい話」のチェックポイントを二つに絞って解説する』、興味深そうだ。
・『新年度から1カ月 詐欺の「だまし頃」?  5月に入り、典型的な日本企業の新年度の開始から1カ月が経過した。新入社員もオフィスに慣れる頃である一方、「5月病」など特有の問題が生じやすい季節だが、昨今、1990年代後半以降に生まれた「Z世代」をターゲットにした投資詐欺の被害が目立っているという(「Z世代狙う投資詐欺 『FIRE』『億り人』が売り文句」日本経済新聞電子版、5月1日)。 確かに、新入社員は給与振り込みの口座を作り、おそらく同時にクレジットカードの申し込みが済み、会社の社員としてのステータスが確立するとともに、「借金」をしやすくなっている。しかも、社会経験が乏しく、SNSなどに流通するものも含めて、他人からの情報に影響されやすい。詐欺の加害者側から見て、「だまし頃」のターゲットである。 ちなみに、新入社員を中心とした若いビジネスパーソンに問いたい。クレジットカードの決済は、「一括払い」にしたか、「リボルビング払い(リボ払い)」にしたか? リボ払いは、カード会社に対して借金の残高が残り、しかもその利率が非常に高いので避けた方がいい支払い方法だ。この点を明確に意識して、「リボ払い」を断固避け、「一括払い」を選択したのであれば、少し安心だ』、「新入社員は・・・社会経験が乏しく、SNSなどに流通するものも含めて、他人からの情報に影響されやすい。詐欺の加害者側から見て、「だまし頃」のターゲットである」、「「だまし頃」のターゲット」とは言い得て妙だ。
・『しかし、勧められるままに  金融機関はリボ払いを選んでくれる方がもうかるので、こちらを勧める)「リボ払い」を設定していたとすると、はっきり言ってあなたは「マネーリテラシーが低い」。投資詐欺のカモ予備軍であることを自覚した方がいい。 カードの支払い設定は、すぐに見直してみてほしい。 「あの時は手続きを急いでいた。だからよく考えずに、勧められるままにリボ払いをチェックした」などという言い訳は恥ずかしい。投資詐欺であったり、詐欺まで非合法ではなくても明らかに拙い投資案件に引っ掛かったりする経緯の本質は同じなのだ。十分に恥じてから、今後に気を付けることだ』、「リボ払い」は止めておこうというのは、同感だ。
・『うたい文句がFXでも暗号資産でも 投資詐欺には典型的パターンがある  投資詐欺自体は、古くからある。FX(外国為替証拠金取引)や暗号資産(俗に言う「仮想通貨」)など、新種の投資対象が現れても手口の本質は変わらない。(1)初期に期待させて、(2)まとまったお金を振り込んだら、それが返ってこなくなる、というパターンが繰り返される。 例えば、FXの優れた自動売買のシステムがあるとされる(本当は、そのようなものが「あるはずがない」と考えるのが大人の経済常識だ)。これに従って、例えば、10万円を先方が設定したアプリ上で投資してみると、数万円の含み益が出たと表示される。この時点で、もうけに興奮する一方で、ノウハウを信じているし、紹介者に対して恩義を感じ始めていたりする。 次に「まとまったお金を投資しましょう」と言われて、カードローンなどで資金を調達して、指定の口座(海外口座である場合が多い)にお金を振り込むと、その後、相手方との連絡がスムーズでなくなる状態が現れ、解約しようとすると音信不通になる、といったコースが一つのパターンだ。 昨今は、マネー関係の有名人の画像を勝手に使って、投資サークルを装って会員を募るケースもあるので、気を付けたい。 また、もう一つのタイプは、「もうかる出資話」でお金を集めるものだ。投資先は、国内であることもあれば、海外であることもあり、例えば未上場のベンチャー企業に資金を回すという設定になる。出資対象が、フィリピンのエビの養殖だったり、高級なワインだとされたり、実物に投資すると称する場合もある。) 当初は順調に、例えば一月に3%といった配当が得られて喜ぶけれども、出資額が大きくなると、配当が滞ったり、連絡が付かなくなったりする。あるいは、新規の出資者の紹介を求められる場合もある。友人をお金のトラブルに巻き込むと悲惨である。 付け加えておきたいのは、これらは違法な詐欺であって売り手側にも引っ掛かる投資家側にも問題があるが、非合法ではないとしても似たようなケースがあることだ。「サラリーマンでも大家さんになって、不労所得を得よう」などと若いサラリーマンに大きな借り入れを伴う不動産投資(ワンルームマンション投資など)を持ちかけるケースなどだ。 金融商品・不動産などをセールスする側から見て、会社に職を得たZ世代は、「今はお金を持っていないけれども、借金を引っ張ることができる金づる」なのである』、「会社に職を得たZ世代は、「今はお金を持っていないけれども、借金を引っ張ることができる金づる」なのである」、その通りだ。
・『怪しい話のチェックポイント 二つに絞って解説  大人の経済常識としては、「他人から紹介された、有利な投資話は全て怪しい」と思っておいて、ほぼ間違いはない。ただ、例えば若手社員の場合、詐欺話をまだ信じている先輩から話を聞く場合もあろうし、セミナーなどに誘われるケースもあろうから、「なぜ、断るのか?」について、チェックポイントを持っている方がいいだろう。 業者の登録免許とか、各種の評判とか、関係すると考えられるものが幾つかあるが、これらは実際には存在しないものを「装う」ことも可能だし、煩雑だ。 ポイントを以下の二つに絞ってお伝えする。 【ポイント1】不自然に有利な利回りの提供ではないか? 【ポイント2】資金の預け先は確かで、解約が可能か? どちらかに、問題があるものは「直ちに」関係を切るべきで、「絶対に」お金を払うべきではない。) 不自然に有利な利回りとは、例えば「毎月2%が確実に配当される」「年間の期待投資利回りが20%」といった、「法外に有利」な利回りのことだ。 毎月2%が法外なのだから、これが、3%、4%となると、ますます怪しいと思っていい。 現在、プロの運用者がマーケットから得ることができる利回りは、「リスクなし」を前提とすると「年率で」0%から(せいぜい)0.5%だ。「確実に配当される」という話の前提の「確実」が本当なら、これ以上の利回りを他人に提供すること自体が合理的な行動ではない。関わらないことだ。 ちなみに、かつて筆者の身内が、「3カ月後に10%の利息を付けて返す」という借金に、友人の紹介で応じたことがある(幸い、家計が傾くほどの多額ではなかった)。当然、後日トラブルになった。この場合に筆者が感じたのは「3カ月で10%」という利回りを「おかしい」「引っ掛かると恥ずかしい」と思わない感覚の者が、何と身内にいたのか、という身もだえしそうな恥ずかしさだった』、「筆者の身内が、「3カ月後に10%の利息を付けて返す」という借金に、友人の紹介で応じたことがある」、「筆者が感じたのは「3カ月で10%」という利回りを「おかしい」「引っ掛かると恥ずかしい」と思わない感覚の者が、何と身内にいたのか、という身もだえしそうな恥ずかしさだった」、「山崎」氏の「身内」にもそんな「感覚の者」がいたのを白状した勇気は大したものだ。
・『「元本保証で年間5~10%の利回り」がまともであるわけがない理由  期待される収益率は、リスクを取ることによって増やすことができるが、例えばプロが内外の株式に投資する場合、期待される利回りは年率でせいぜい金利+5〜6%くらいだ。しかも、年間に3割程度は値下がりすることが十分あり得る、というリスク付きが前提だ。 例えば、「元本保証で、年間5〜10%の利回りが期待できます」などいう話が「まとも」であるわけがない。 さて、実際にお金をどうやって支払わせるかは、詐欺であるにせよないにせよ、投資案件の売り手側にとって、大いに工夫が必要なポイントだ。 出資する側から見ると、「投資の運営会社の銀行口座」「アプリにひも付いた海外口座」、案件の紹介者から見て「あの人の銀行口座」、あるいは「俺の口座」、などなどがあり得る。ただ、いずれもお金を預ける側から見ると、会ったばかりの人に多額の現金を預けるくらい心もとない。 例えば、国内の信託銀行に口座を開いて資産を預かり、出資者ごとに資産が管理されている、というくらいのレベルであれば、一応信用してもいいだろう。それ以外の「指定の口座」は、そもそも存在が怪しい場合もあるし、一度支払ったお金の取り戻しようがない。 「断る理由」というのは、現実の人間関係では案外難しい場合があるが、「親しい人との間でお金のやりとりをしてはいけない。投資話には乗ってもいけないし、人を誘ってもいけない。お金で人間関係が壊れるからだ」と親からきつく申し渡されていて、これは家訓の一つなのです、とでも言って逃げ切りを図るべきだ。苦しい言い訳だろうと、恥をかこうと、お金を支払ってしまうよりはマシだ。つまらないお金の話に関わるのは、人生の損失だ』、私は親から本当に「親しい人との間でお金のやりとりをしてはいけない。投資話には乗ってもいけないし、人を誘ってもいけない。お金で人間関係が壊れるからだ」と、「きつく申し渡されてい」たので、頷ける。
・『「FIRE」「億り人」を投資で目指すな  仕事を得て大いに稼ぎ、使わないお金を投資に回し、気が付いたら、「FIREが可能になっていた」「資産が億を超えている」といったことは、人生が順調なら大いにあり得ることだ。 ただ、若いビジネスパーソンが、投資を手段として「億」を目指したり、「不労所得で食える状態」を目指したりするのは、はっきり言って効率が悪すぎる。 そもそも、本人の本業は何で、どのような経済条件で働いているのだろうか。 会社が与えてくれる仕事(他の労働者と取り替え可能な仕事)をこなして、毎月決まった給料を受け取る、といった工夫のない働き方をしているのであれば、そもそもその状態で大きな資産を作ろうとすること自体が「間違っている」と言わないまでも「ひどく非効率的」だ。 仮に、そこそこに有利な条件でストックオプションを持てるベンチャー企業に入社できたとしよう。仕事は忙しいだろうし、会社は不安定だろうし、たぶん(ほぼ確実に)社長のわがままに振り回される。しかし、会社が軌道に乗って株式公開まで至ると、「億」はそれほど非現実的ではない。 この場合「失敗したら、失業して再就職を目指さなければならない」という程度の賭け金で、成功した場合は「億の資産」という、非常に大きなレバレッジが掛かったコールオプションを手に入れることができる。 普通のビジネスパーソンが「大金持ち」を目指せるとすると、多分これが最も見込みがあって、かつ最短のルートだ。もちろん、事業は自分で始めてもいい。その代わり、何度かの失敗は覚悟する必要がある。しかし、「この程度のリスクで済むなら有利だ」と考えるたくましさが必要だ。あなたにできるか? 定時出勤、定型勤務、定額報酬の「工夫のないサラリーマン」をやりながら(本当にそのままでいいと思っているのだろうか?)、そこに手を付けずに、金融資産の投資にばかり関心を向け、爪に火を灯す(FIREする!)ような暮らしをしつつ、「ファイナンシャル・フリーダム」を求めるのは、むしろ、お金の奴隷になって人生を送ることに近いように思うのだが、いかがだろうか。「守銭奴型FIRE」は目指さない方がいいと、心から思う。人生そのものがもったいない。 資産運用でFIREを目指すと意気込む若者を見ると、「お金だけでつまらなくないか?」「脳みそが暇なのではないか」と余計な心配をしたくなる。 「投資でFIREを目指している」などと言うと、いかにもツマラナイ人間像が思い浮かぶ。仮に心で思っていても、秘密にしておく方がいい』、「定時出勤、定型勤務、定額報酬の「工夫のないサラリーマン」をやりながら(本当にそのままでいいと思っているのだろうか?)、そこに手を付けずに、金融資産の投資にばかり関心を向け、爪に火を灯す(FIREする!)ような暮らしをしつつ、「ファイナンシャル・フリーダム」を求めるのは、むしろ、お金の奴隷になって人生を送ることに近いように思うのだが、いかがだろうか。「守銭奴型FIRE」は目指さない方がいいと、心から思う。人生そのものがもったいない」、同感である。
タグ:私は親から本当に「親しい人との間でお金のやりとりをしてはいけない。投資話には乗ってもいけないし、人を誘ってもいけない。お金で人間関係が壊れるからだ」と、「きつく申し渡されてい」たので、頷ける。 「筆者の身内が、「3カ月後に10%の利息を付けて返す」という借金に、友人の紹介で応じたことがある」、「筆者が感じたのは「3カ月で10%」という利回りを「おかしい」「引っ掛かると恥ずかしい」と思わない感覚の者が、何と身内にいたのか、という身もだえしそうな恥ずかしさだった」、「山崎」氏の「身内」にもそんな「感覚の者」がいたのを白状した勇気は大したものだ。 【ポイント1】不自然に有利な利回りの提供ではないか? 【ポイント2】資金の預け先は確かで、解約が可能か? 怪しい話のチェックポイント 二つに絞って解説 「会社に職を得たZ世代は、「今はお金を持っていないけれども、借金を引っ張ることができる金づる」なのである」、その通りだ。 「リボ払い」は止めておこうというのは、同感だ。 「新入社員は・・・社会経験が乏しく、SNSなどに流通するものも含めて、他人からの情報に影響されやすい。詐欺の加害者側から見て、「だまし頃」のターゲットである」、「「だまし頃」のターゲット」とは言い得て妙だ。 山崎 元氏による「Z世代を狙う投資詐欺への注意点、「FIRE」「億り人」は怪しい!」 ダイヤモンド・オンライン 「最も大事なはずの組合員と職員を犠牲にするJAの闇はどこまでも深い」、同感である。 「ノルマ」は「JA」だけでなく、ゆうちょ銀行、日本郵政、さらには一般の民間金融機関にもあるが、民間金融機関ではコンプライアンスが厳格化され、現在ではそれほどの問題にはなっていない。 口座開設もそう。本来であれば本人の了解と身分証明書が必要ですが、免許証や保険証の番号さえわかれば、あとは何とでもできた。ただ、さすがにここ5年ほどは、どのJAでもそれを許さないほどに厳しくなっているとは思うんですが……」、「「少なくとも10年くらい前まで、JAの金融事業は『何でもあり』でした」、一般の金融機関では、コンプライアンスはもっと以前から厳しく求められたが、「JA」は遅れたようだ。 「'03年に購入した仏具のおりん。木箱に「十八金製」と書かれたその価格は160万円だった」、金融商品だけでなく、物販もしていたようだ。「不思議なのは、なぜ保険の契約や口座の開設を本人に代わってできるのか、ということだ。 JA職員が続ける。 「少なくとも10年くらい前まで、JAの金融事業は『何でもあり』でした。保険の契約だと本人の了解を得なくても、百均で買ってきた印鑑や代筆署名でいけたんです。遠くに住んでいる息子や娘を保険に入れる親に対して、JA職員がよく使う手ですね。 窪田 新之助氏による「【支払い総額3146万円】99歳の女性を狙った「JA農協の不正疑惑」の手口がヤバすぎる」 「母のノートには通帳と印鑑をJA職員に預けていたと記されている」、「定期積金口座と普通貯金から毎回3万〜15万円の現金が合計27件も窓口で引き出されていた。現金が引き出された記録がある時間帯の一部については、康子さんは別の場所にいたことが、彼女の日記からわかっている」、「JA」の職員が実質的に管理していたのだろう。これはどうみても違法だ。 「定期積立口座の解約と新規契約が'07〜'18年の間で計44件と異常な数にのぼったこと。最短では2ヵ月で解約」、「康子さんには、短期間で積立預金を解約する理由はおろか、そもそも高齢のため一人で店舗を訪れる体力もない。自宅から最寄りのJAの店舗までは1km以上。自動車や自転車には乗れない。おまけに外出ができないほど足腰は衰え、白内障と緑内障を併発してから長い。それなのに、康子さんは一連の手続きを店舗でしたことになっているのだ」、 「康子さんのJAバンク口座から掛け金が引き落とされてきた保険の契約件数について情報の開示を求めた。その結果、JAにしみのが回答した件数は12件」、「最終的に計37件の保険契約があることが判明」、「康子さんの口座から引き落とされた保険料の支払い総額は、実に3146万円。JA職員が康子さんの大事な老後資産を食い物にしようとしたのであれば、鬼畜の所業と言わざるを得ない」、信じ難いような酷い話だ。 「JA」で「顧客の金融資産を狙った不祥事」とは興味深そうだ。 窪田 新之助氏による「【岐阜発】99歳女性を追い込んだ「農協職員の鬼畜な全所業」【むしり取られた額、3146万】」 現代ビジネス (その13)(【岐阜発】99歳女性を追い込んだ「農協職員の鬼畜な全所業」【むしり取られた額、3146万】、【支払い総額3146万円】99歳の女性を狙った「JA農協の不正疑惑」の手口がヤバすぎる、Z世代を狙う投資詐欺への注意点 「FIRE」「億り人」は怪しい!) 金融関連の詐欺的事件
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認知症(その1)(安藤優子氏が語る認知症介護「最もつらい時期」 大好きな母がヘルパーをクビにし罵詈雑言…、天国のような村の謎、認知症を取り巻く闇に迫る 『アルツ村』著者、医師・作家の南杏子氏に聞く、「徘徊のつもりない」認知症の人から見える世界 当事者はゴールだけを見ているとは限らない) [生活]

今日は、認知症(その1)(安藤優子氏が語る認知症介護「最もつらい時期」 大好きな母がヘルパーをクビにし罵詈雑言…、天国のような村の謎、認知症を取り巻く闇に迫る 『アルツ村』著者、医師・作家の南杏子氏に聞く、「徘徊のつもりない」認知症の人から見える世界 当事者はゴールだけを見ているとは限らない)を取上げよう。

先ずは、本年4月4日付けダイヤモンド・オンライン「安藤優子氏が語る認知症介護「最もつらい時期」、大好きな母がヘルパーをクビにし罵詈雑言…」を紹介しよう。
https://dw.diamond.ne.jp/articles/-/29851
・『安藤優子氏激白「大好きだった母の壮絶介護16年」  『週刊ダイヤモンド』4月9日・16日合併号の第一特集は「後悔しない『認知症』」です。大好きな母が壊れていく・・・。ジャーナリストの安藤優子氏が経験した認知症介護の日々は、誰の身にも降りかかり得るものです。皆がかかるかもしれないのが認知症という脳の病。親、家族がなったとしても焦らずに済む情報、「こうしておけば・・・」と後悔せずに済む情報を網羅しています』、興味深そうだ。
・『「自分は至って普通」だと 受診を拒んだ母が壊れていった  「しっかり者で社交的だった母がなぜこうなってしまったのか」──。ジャーナリストの安藤優子氏が、多忙な日々の裏で、16年間にわたった実母の壮絶な認知症介護の日々を振り返る。 母の場合、実は「認知症」と明確に診断されたのはそれらしき症状が現れてから数年後、高齢者施設に入居してからでした。多くの認知症の方と同様だと思うのですが、母も「自分は至って普通」だと、病院にはかたくなに行こうとしませんでしたから。 そして専門医はどこにいるのか、どの診療科にかかればいいのか。適切な診断を受けるための情報も乏しい。受診を嫌がる認知症の親を医療につなげるのは、ごく普通の家族にとって非常にハードルが高いと感じました。幸い、母が入居した施設にクリニックが併設されていて、そこでやっと認知症の確定診断を得ることができたのです。 最初に母の様子がおかしくなったのは、70代前半の頃でした。ある日「ベランダから飛び降りてやる!」と叫んだのです。当時は年齢的に「まだ早いな」と思ったのですが、今にして思えばすでに老人性うつの症状が現れていたのでしょう。 それからしばらくして、母が玄関先で転倒してそのまま起き上がれず、一緒に暮らしていた父も助け起こすことができずに、一晩毛布だけ掛けて床に横たわって過ごすという事件が起こりました。 明朝、駆け付けた姉が万が一のために救急車を呼んだのですが、マンションの高層階に住んでいたため、はしご車が出動するなどの大騒ぎに。大正生まれの母にとって、たかが転倒で近所を騒がせたショックと羞恥心は耐え難く、その一件以来人が変わったようにふさぎ込むようになりました。 本格的に母に認知症の症状が現れるきっかけになったのが、父の死です。最初の異変から5年後のことでした。父ががんを患い入院してからというもの、目に見えて症状が進みましたね』、「最初に母の様子がおかしくなったのは、70代前半の頃でした。ある日「ベランダから飛び降りてやる!」と叫んだのです・・・今にして思えばすでに老人性うつの症状が現れていたのでしょう」、「父ががんを患い入院してからというもの、目に見えて症状が進みましたね」、「「自分は至って普通」だと 受診を拒んだ母が」次第に「壊れていった」、あり得る話だ。 
・『助けてもらうはずのヘルパーさんを母が次々にクビにし始めた・・・  当時、母はすでに要介護認定を受けていて、父は母の身の回りの一切合切を担っていました。父がいなくなれば誰かが面倒を見なければ母は生活できません。そこで私たちきょうだいが日替わりで在宅介護をし、昼間はヘルパーさんに助けてもらうことにしたのですが、なんと、困ったことに母がヘルパーさんを次々にクビにし始めたのです。 私は週5日の生放送番組を抱え、突発的な海外取材もある仕事。兄も姉も家庭があるのに、ヘルパーさんに頼れないとなれば、早晩行き詰まりますよね。 もちろん母本人の生活の質も大幅に下がります。介護の素人である私たちではお風呂に入れることもままなりませんから。でも、母は「知らない他人に裸を触らせることなどとんでもない」と断固拒否。 日本の介護制度は優秀ですが、制度があってもサービスを受ける本人が他人の存在を拒絶すれば、もう家族だけで背負うしかありません。心身共に最もつらい時期でしたね。 ある日私が行くと、焦げ付いた鍋の臭い、物が散乱する部屋、そして床を見るとペットの犬の排せつ物があらゆる所に転がっている、壮絶な状態でした。その光景を見て「犬もかわいそうだし、もう自宅で介護するのは限界だ」と、きょうだい3人で話し合い、施設に入居してもらうことにしたのです。 実際に施設に入ってもらうまでにも一悶着ありました。「家の水道が壊れたからしばらく住めなくなった」と母にうそをついて入居させたのですが、頭のいい人だからすぐに見抜かれましたね。面会に行けば「自宅があるのになぜそこに住んではいけないのか」「苦労して育ててきたのになぜこんな仕打ちをするのか」など、私たちきょうだいにありとあらゆる罵詈雑言を浴びせました。 罪悪感のあまり、一度は母を引き取ることも考えましたが、私の自宅に来ていたお手伝いさんにこう諭されたのです。 「優子さんが海外取材に 行っている間は誰が見るんですか? 一時の感情に任せてできないことは言わない方がいい」と』、「安藤」さんら子供たちにとってはさぞかしつらかっただろう。
・『後悔の芽を摘んでおくための「医療・介護・相続・保険」全対策  『週刊ダイヤモンド』4月9日・16日合併号の第一特集は「後悔しない『認知症』」です。 同じことを何度も聞いてくる。些細なことで怒りっぽくなった。よく物をなくして探し物をしている。ごみの分別ができていないようだ……・。離れて暮らす親や家族の様子がおかしい。認知症かもしれない。そのとき、何をどうすればいいのでしょうか。診断・医療、介護、相続、保険などさまざまな分野について、「こうしておけばよかった」と後悔しないための情報をお送りします。 認知症という病気には、困ったことに誤診がつきまといます。治せるはずの病気をみすみす放置することになりかねません。厄介な病気であることをまずは理解すること、そしてアルツハイマー型認知症だろうと決めつけずにきちんと診断を受けることが大切です。認知症専門の医療機関への調査結果リストも受診の参考にしてください。 認知症は、認知機能の低下によって生活に支障が出ている状態を指します。誰もがかかり得る脳の病気であり、その介護も誰もが直面する可能性があります。ところが、予備知識がないまま、引きずり込まれるように経験することになる家族がほとんどです。在宅介護サービス、高齢者向けの施設など、公的介護保険を賢く使うにはどこに注意すればいいのか。必須ポイントをきちんと押さえておきましょう。 認知症によって不幸を呼び込まないために、欠かせないのはお金に関わるリスクへの対処です。「認知症相続」に何の備えもなければ、残された家族が大損する事態に陥りかねません。もしものときの備えとして、生命保険なども選択肢となります。元気なうちに講じておくべき手立てとは何なのか。肝心なところをとらえておきましょう。 親、家族、あるいは自分もいずれ認知症にかかるかもしれません。なったとしても焦らずに済む情報、「こうしておけばよかった」と後悔せずに済む情報を網羅しました。問題や悩みを一人で抱え込まず、地域包括支援センターなど公的な相談窓口を活用することも大切です。家族や自分の将来のため、本特集をぜひご活用ください』、「認知症という病気には、困ったことに誤診がつきまといます。治せるはずの病気をみすみす放置することになりかねません」、「治せるはずの病気」というのには違和感がある。ただ、全体としては、やはり事前に備えておく必要がありそうだ。

次に、5月9日付け東洋経済オンライン「天国のような村の謎、認知症を取り巻く闇に迫る 『アルツ村』著者、医師・作家の南杏子氏に聞く」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/586518
・『生と死、医療が抱える問題を静謐(せいひつ)なタッチで描いてきた著者の、新境地とも評されるミステリー。一見ユートピアのように映る高齢者たちの村には、不気味かつ衝撃的な真相が隠されていた(Qは聞き手の質問、Aは南氏の回答)。 Q:舞台は北海道、認知症の高齢者たちが住む村、という設定です。 A:今回はちょっとミステリアスな、ある意味ホラーな、異次元に連れていかれるような物語を書きたい、と思いました。それで、医療の現場で日々接しており、切実な問題と考えている認知症をテーマにしました。スタートは「まったく新しいミステリーを書く」という作家としての意欲でしたが、書いていくうちに、診察室で普段考えていることをぐいぐい、気持ちに任せて盛り込んでいった感じです。 Q:金銭的な負担感なしでそれぞれ快適な家に住まい、自由に暮らす生活ケア付きの村は、最初「悪くないかも」と思ってしまう。 A:北海道には以前住んだことがあって、本当に何もないし人もいない、「この先には何があるんだろう」というような場所が結構あるんです。交通の便が悪く外部と遮断しやすい、広大な村の敷地内は豊かな自然を生かしつつ整備されており落ち着いた暮らしを描けるなど、物語上求める条件が重なりました。そこへ39歳の主人公が偶然迷い込み、暮らすことになる』、充実した内容を予感させるなかなか面白そうな設定だ。
・『認知症についてもっと知ってもらいたい  Q:村の正体は後半暴かれていきますが、それとは別に、認知症に関する情報も多く記されていて、よりリアルに伝わってきました。 A:今、日本の65歳以上の人で認知症を発症している割合は15%超。それが3年後、2025年には20%、5人に1人になります。そこには軽度認知障害の人は勘定されておらず、残る4人の中に認知症前段階の人も含まれるわけで、もうひとごとじゃないのです。 まずは認知症について知ってもらいたい、と思いました。ひとくくりに皆が皆、終始目が離せない状態になるわけじゃない。本の中で解説しましたが、認知症にはアルツハイマー型、脳血管性、レビー小体型と種類があり、障害や症状は異なります。進行の程度によって生活がどう変わるかもそれぞれなんです。認知症と聞いただけで頭を抱えてしまうのではなく、まずは知って、冷静に対応していっていただきたいと思います。 Q:認知症解明に向けた米国の「脳バンク」構築の話が登場します。医師としてどう考えますか? A:脳のデータベースを作ることには賛同します。脳の疾患である認知症は、医学的な「答え合わせ」ができていない病気なんです。 肺や肝臓などは腫瘍ができたら組織を採取して、原発性がんなのか転移したものなのかなどを特定し、適切な治療方法を採れる。脳はそれができません。なのでどの認知症か特定が難しい。できることといえばMRIや血液検査。あとはどの程度引き算ができるか、記憶障害が起きているかなどを問診し、総合的に「アルツハイマー病らしい」などと診断します。それで死亡後に頭部を解剖させてもらうと実は違っていた、ということが起こる。正しく診断できなければ、有効な治療に結び付かない。日本ではそのための研究材料が圧倒的に不足している状況です。) Q:その原因は何なのでしょう? A:亡くなった後にまで痛い思いをさせなくても、という精神文化が日本にはありますよね。亡くなった体はもう物体、とは割り切れない。とくに脳は、抜かれて解剖されるなんて絶対嫌だと思う人が多い。でも、認知症の治療や医学の発展のためには、献体し脳を提供していただくのはとても意義のあること。ある登場人物が、彼の思想は別として、その必要性を力説する部分は、冷静に読んでいただければきっと響くものと思います』、「できることといえばMRIや血液検査。あとはどの程度引き算ができるか、記憶障害が起きているかなどを問診し、総合的に「アルツハイマー病らしい」などと診断します。それで死亡後に頭部を解剖させてもらうと実は違っていた、ということが起こる。正しく診断できなければ、有効な治療に結び付かない。日本ではそのための研究材料が圧倒的に不足している状況です」、「亡くなった体はもう物体、とは割り切れない。とくに脳は、抜かれて解剖されるなんて絶対嫌だと思う人が多い。でも、認知症の治療や医学の発展のためには、献体し脳を提供していただくのはとても意義のあること」、やはり日本人には「献体し脳を提供」するのは抵抗感があるようだ。
・『Q:主人公は元看護師。プロの目で老人たちの謎言動・謎行動の意味を理解し、いたわりのある接し方をする。勉強になりました。 A:介護する家族、介護される側、それぞれが苦悩しているわけですよね。認知症の当人が誰よりももどかしい感覚を抱え生きている。 認知症外来でよく見かけるのは、介護する子が親の変貌を受け止められず「違うでしょ」「覚えてないの?」と叱ってしまう光景。親は親で、優しかった子が怖い顔をして怒鳴るようになった、と悲しいわけで、それぞれ言い分がある。お互いを受け止めないし認めないから、怒ってけんかになり、そのうち手が出るようになったり。 認知症はある種、老化現象みたいなもので、多かれ少なかれ理解力も記憶力も衰える。家で叱られてばかりで、「安心していられるのが自分の家。ここじゃない、帰りたい」と言い出して徘徊するパターン。認知症の人にとってみれば、やむにやまれぬ行動なんです』、「介護する子が親の変貌を受け止められず「違うでしょ」「覚えてないの?」と叱ってしまう光景。親は親で、優しかった子が怖い顔をして怒鳴るようになった、と悲しいわけで、それぞれ言い分がある。お互いを受け止めないし認めないから、怒ってけんかになり、そのうち手が出るようになったり。 認知症はある種、老化現象みたいなもので、多かれ少なかれ理解力も記憶力も衰える。家で叱られてばかりで、「安心していられるのが自分の家。ここじゃない、帰りたい」と言い出して徘徊するパターン。認知症の人にとってみれば、やむにやまれぬ行動なんです」、私の母親も10年以上前に死んだが、僕が叱るので、怖がっていたのを思い出した。
・『共存し心地よく生きていける社会に  Q:親が認知症になったら、家族でどう看るかをまず考えてしまう傾向は、まだ根強いですよね。 A:施設へ預けることに罪悪感を持つ人がいますが、それまで大切にしてきた親を「早くどうにかなってくれ」と思うようになるのは悲しいじゃないですか。いとしい人を最後までいとしいと思って送る、そのための工夫の1つが施設入所です。家族はそこへ会いに行って一緒にランチしたり、散歩したり、楽しいところだけいい関係のまま、大変な介護の部分はプロの手に委ねる。そう意識を切り替えていくのが大事ですね。 愛情があるからこそ、プロのマンパワー、知恵、設備が総合的に整っている施設にお願いする。それがむしろ親孝行、という考え方です。 Q:介護で大事なのは、とにかく愛情をかけてあげること、と? A:一口に愛情というと難しいですね。もう、あるがままを認めるってことです。「ちゃんと覚えて」と言っても覚えられない能力の低下が起きている。それを受け止め、じゃあどうするか。自分が覚えておくのでもメモしてあげるのでもいい、工夫をしてほしい。できないことをいちいち責め立てていたら、介護する側も病んでしまいます。 本の中でいちばん思いを込めたのは、認知症の高齢者たちと主人公が一緒に料理するシーンです。いい「共存」の道を探っていきたい。認知症になったとしても心地よく生きていける社会にしたい。共存がこれからのキーワードになると思っていて、そういったところを作品の中で出すようにしました』、「「ちゃんと覚えて」と言っても覚えられない能力の低下が起きている。それを受け止め、じゃあどうするか。自分が覚えておくのでもメモしてあげるのでもいい、工夫をしてほしい。できないことをいちいち責め立てていたら、介護する側も病んでしまいます」、無駄と分かっていながら「責め立てて」しまったことを思い出す。当時、こういった本などに出合っていたらと思う。

第三に、5月3日付け東洋経済オンラインが掲載した理学療法士の川畑 智氏による「「徘徊のつもりない」認知症の人から見える世界 当事者はゴールだけを見ているとは限らない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/669371
・『「認知症は自分の家族にはまだ関係ない」と感じていても、ある日突然やってくることがあります。いきなり介護をすることになって戸惑わないために、事前に備えておくことが重要です。理学療法士の川畑智さんが認知症ケアの現場で経験したエピソードをまとめた『さようならがくるまえに認知症ケアの現場から』より、一部抜粋してお届けします』、興味深そうだ。
・『普通の人であり続けたいと願う  広く認知症のことを知ってもらうために、地方で講演を行うこともまた私の大切な仕事の一つである。 講演では、認知症はこういう症状が出てくるので、先回りして様子を見ていきましょうね、と認知症の症例や対策などについて一つずつ具体的に説明している。 医者ではない私がなぜ講演をしているのか、不思議に思われるかもしれない。たいていの医者は、医学的知見からアプローチしていくため、一般的な認知症の講演というのは、教科書通りの無機的な説明をして、認知症の大変さを強調するものがとても多い。私はそのように皆さんを過度に怖がらせたくはないので、認知症を正しく認知してもらうための講演を地道に行っているというわけだ。 そして近年、認知症について語るのは、認知症のことを研究しているプロよりも、認知症を患っている本人が直接話すことが一番良いのではないか、という風潮が広がってきた。 そうしてできたのが、認知症の方の本人ミーティングという考え方だ。「私たちを放置しないで。私たちを抜きにして、国の認知症対策を決めないで」という思いのもと、国の会議に認知症の方々が入っていくようになったのである。この本人ミーティングは、こんなことが大変だったとか、今こんな対策をしているよといったように、認知症の方同士が直接情報交換をする場にもなっている。 東京町田市にDAYSBLG!という団体がある。BLGは「Barriers Life Gathering」の略で、認知症の方々がボランティア活動などへ参加し、働くことを通して仲間と楽しい時間を過ごしたり、社会とのつながりをつくったりしていく、新しい形のデイサービスである。 私は本人ミーティングのような講演を目指すべく、DAYSBLG!代表の前田隆行さんに、若年性認知症の杉山さんという方にも講演会で話してもらえないだろうかとお願いすることにした。 「もちろん本人がOKしてくれれば全然構わないんだけど、やっぱり日によって浮き沈みがあるからなぁ。調子の波までは、さすがに私にも分からないんですよ」と、前田さんは淡々と話していた。 「本人の調子が良いときは本当に認知症の人なのかと疑われるほどスムーズに順序良く話してもらえるが、調子が悪いときは、話が変わったり、振出しに戻ったり。杉山さん頼むよ。任せたよ」なんて、笑いながら話している会話の内容は、認知症の人だからと区別も差別もしない素敵な関係の表れに感じた』、「認知症について語るのは、認知症のことを研究しているプロよりも、認知症を患っている本人が直接話すことが一番良いのではないか、という風潮が広がってきた。 そうしてできたのが、認知症の方の本人ミーティングという考え方だ。「私たちを放置しないで。私たちを抜きにして、国の認知症対策を決めないで」という思いのもと、国の会議に認知症の方々が入っていくようになったのである」、いいことだ。「「本人の調子が良いときは本当に認知症の人なのかと疑われるほどスムーズに順序良く話してもらえるが、調子が悪いときは、話が変わったり、振出しに戻ったり。杉山さん頼むよ。任せたよ」なんて、笑いながら話している会話の内容は、認知症の人だからと区別も差別もしない素敵な関係の表れに感じた」、なるほど。
・『徘徊しているつもりはまったくありません  結局、一番近くでサポートしている前田さんが補足しながら当日の講演をリードしてもらう形でお二人に熊本まで来てもらえることになった。 そうして迎えた講演会当日、ありがたいことに杉山さんの体調はとても良かった。杉山さんは、少し緊張した足取りで舞台の中央に立った。 「『認知症の人は徘徊するものだ』とよく言われます。だけど、私たちは徘徊しているつもりはまったくありません。ただわからなくなっているだけなんです。もしかしたら私も10分後には、どうしてここに立っているのかわからなくなっているかもしれません」という杉山さんの冒頭の言葉に、聴衆が一気に引き込まれていくのがわかった。) 認知症になると、巨大なミラーハウスに迷い込んだ感覚に陥り、外出中に急に道がわからなくなることがある。それがたとえ慣れ親しんだ場所であったとしても、自分がどこにいるのかわからなくなってしまうのだ。 「今いる場所がわからなくなったとき、皆さんはどうしますか?おそらく、普通の健康な人であれば、歩いている人に聞くと答えるのではないでしょうか」と客席に問いかけると、確かにそうだなと多くの人が頷いていた』、「認知症になると、巨大なミラーハウスに迷い込んだ感覚に陥り、外出中に急に道がわからなくなることがある。それがたとえ慣れ親しんだ場所であったとしても、自分がどこにいるのかわからなくなってしまうのだ」、私もまだ「認知症」ではない筈だが、これに近い経験をして、知っている筈の場所で、方向感をなくし、待ち合わせ時間に間に合わせるため、タクシーを拾ってなんとかなった。
・『認知症の人に声をかけられたら  「ここでちょっと想像してください」と、一呼吸置いて話し始めた杉山さんの声に、一層の力が入ったのがわかった。 「私のような若年性認知症の人間が、道端で見ず知らずの人に、『すみません。ここは一体どこですか?』と声をかけたとき、どんな反応が返ってくると思いますか。『急に変な人に声をかけられた』と思い、皆さんが足早に去って行く姿は想像に難くありません。皆さんが思っているほど、私たちは気軽に道を聞くことはできないのです。そもそも、聞ける世の中になっていないのです」と訴える杉山さんの言葉には、想像もしていなかった世界が広がっていた。そんな聴衆の気持ちを表すかのように、客席は重い静寂に包まれてしまった。 認知症の方は、恥ずかしいという気持ちが強く残っていて、道行く人に尋ねることができないケースが多い。また、認知症を患っている方が身近にいない人にとっては、認知症の方から急にここはどこ?と聞かれたら、不気味だと思うこともあるだろう。 杉山さんは、この静まりかえった状況に怯むことなく話し続けた。 「私は歩いている最中に道が分からなくなったとき、真っ先にコンビニに駆け込みます。店員さんに、『ここはどこですか?こっちに行きたいんだけど、どうすればいいですか?』と尋ねると、必ず教えてくれるのです。そう、私はただコンビニを探して歩いているだけなんです。それなのに、ボケて徘徊していると思われるのはちょっと悲しいですよね」と残念そうに語った。 これまで私は、認知症の方はてっきりゴールだけを見ている、つまり家を探して彷徨っているとばかり思っていた。しかし、目的地に向かうためのポイントを探している場合もあるということを知った。 徘徊とは「あてもなく歩きまわること」を意味する言葉であるが、杉山さんの話によると、認知症の方の徘徊の中には、ちゃんと目的を持って考えながら歩いていて、迷ったからといって誰にでも簡単に声はかけないケースもあるという。この視点は、私の頭からスッポリと抜け落ちていたものだった』、「徘徊とは「あてもなく歩きまわること」を意味する言葉であるが、杉山さんの話によると、認知症の方の徘徊の中には、ちゃんと目的を持って考えながら歩いていて、迷ったからといって誰にでも簡単に声はかけないケースもあるという」、私の体験もその通りだ。
・『コンビニ、ガソリンスタンド、交番を探す  「あと道に迷ったとき、ガソリンスタンドがあれば迷わず飛び込みます。ガソリンスタンドの店員さんも、しっかりと対応してくれますよ。ガソリンを入れない私にまで親切にしてくれるなんて最高ですよね」と、杉山さんの少しおどけた言い方に、それまで張り詰めていた会場の空気が一気に緩んだ。 「本当は交番がベストです。ただ交番は、お巡りさんがいないときが多いですよね。だから私は道に迷ったら、コンビニ、ガソリンスタンド、そして交番の順にそれらを探し求めて歩きます。なぜなら、私は普通の人であり続けたいから」という杉山さんの締めくくりの言葉に、客席からは大きな拍手が湧き起こった。 やはり経験に勝るものはなく、今回の講演を杉山さんにお願いして本当に良かった。いくら私が認知症について学んだとしても、認知症の方の気持ちすべてを理解することは不可能なのだ。 人間とは知らないものに対して恐怖心を抱きやすい生き物だ。 私は、杉山さんが講演会で話してくれた内容を、その後さまざまな場で伝えるようになった。そうやって、認知症の方の思いと我々が見ている世界のギャップを埋めることが、認知症に対する誤解を減らしていく近道となるだろう。 ▽本人ミーティング(認知症の本人が集い、本人同士が主になって、自らの体験や希望、必要としていることを語り合い、自分たちのこれからのよりよい暮らし、暮らしやすい地域のあり方を一緒に話し合う場です。「集って楽しい!」に加えて、本人だからこその気づきや意見を本人同士で語り合い、それらを地域に伝えていくための集まりです。 引用:厚生労働省』、私が迷った体験では、「交番」ではなく、パトロール中の警官に出会ったが、周辺の地理を私以上に知らず、全く役に立たなかった。ただ、私が迷った体験をよくよく考えると、「認知症」の初期段階との可能性も否定できず、ゾッとした。
タグ:私が迷った体験では、「交番」ではなく、パトロール中の警官に出会ったが、周辺の地理を私以上に知らず、全く役に立たなかった。ただ、私が迷った体験をよくよく考えると、「認知症」の初期段階との可能性も否定できず、ゾッとした。 「徘徊とは「あてもなく歩きまわること」を意味する言葉であるが、杉山さんの話によると、認知症の方の徘徊の中には、ちゃんと目的を持って考えながら歩いていて、迷ったからといって誰にでも簡単に声はかけないケースもあるという」、私の体験もその通りだ。 「認知症になると、巨大なミラーハウスに迷い込んだ感覚に陥り、外出中に急に道がわからなくなることがある。それがたとえ慣れ親しんだ場所であったとしても、自分がどこにいるのかわからなくなってしまうのだ」、私もまだ「認知症」ではない筈だが、これに近い経験をして、知っている筈の場所で、方向感をなくし、待ち合わせ時間に間に合わせるため、タクシーを拾ってなんとかなった。 「私たちを放置しないで。私たちを抜きにして、国の認知症対策を決めないで」という思いのもと、国の会議に認知症の方々が入っていくようになったのである」、いいことだ。「「本人の調子が良いときは本当に認知症の人なのかと疑われるほどスムーズに順序良く話してもらえるが、調子が悪いときは、話が変わったり、振出しに戻ったり。杉山さん頼むよ。任せたよ」なんて、笑いながら話している会話の内容は、認知症の人だからと区別も差別もしない素敵な関係の表れに感じた」、なるほど。 「認知症について語るのは、認知症のことを研究しているプロよりも、認知症を患っている本人が直接話すことが一番良いのではないか、という風潮が広がってきた。 そうしてできたのが、認知症の方の本人ミーティングという考え方だ。 (その1)(安藤優子氏が語る認知症介護「最もつらい時期」 大好きな母がヘルパーをクビにし罵詈雑言…、天国のような村の謎、認知症を取り巻く闇に迫る 『アルツ村』著者、医師・作家の南杏子氏に聞く、「徘徊のつもりない」認知症の人から見える世界 当事者はゴールだけを見ているとは限らない) 認知症 『さようならがくるまえに認知症ケアの現場から』 川畑 智氏による「「徘徊のつもりない」認知症の人から見える世界 当事者はゴールだけを見ているとは限らない」 東洋経済オンライン 「「ちゃんと覚えて」と言っても覚えられない能力の低下が起きている。それを受け止め、じゃあどうするか。自分が覚えておくのでもメモしてあげるのでもいい、工夫をしてほしい。できないことをいちいち責め立てていたら、介護する側も病んでしまいます」、無駄と分かっていながら「責め立てて」しまったことを思い出す。当時、こういった本などに出合っていたらと思う。 家で叱られてばかりで、「安心していられるのが自分の家。ここじゃない、帰りたい」と言い出して徘徊するパターン。認知症の人にとってみれば、やむにやまれぬ行動なんです」、私の母親も10年以上前に死んだが、僕が叱るので、怖がっていたのを思い出した。 「介護する子が親の変貌を受け止められず「違うでしょ」「覚えてないの?」と叱ってしまう光景。親は親で、優しかった子が怖い顔をして怒鳴るようになった、と悲しいわけで、それぞれ言い分がある。お互いを受け止めないし認めないから、怒ってけんかになり、そのうち手が出るようになったり。 認知症はある種、老化現象みたいなもので、多かれ少なかれ理解力も記憶力も衰える。 「亡くなった体はもう物体、とは割り切れない。とくに脳は、抜かれて解剖されるなんて絶対嫌だと思う人が多い。でも、認知症の治療や医学の発展のためには、献体し脳を提供していただくのはとても意義のあること」、やはり日本人には「献体し脳を提供」するのは抵抗感があるようだ。 「できることといえばMRIや血液検査。あとはどの程度引き算ができるか、記憶障害が起きているかなどを問診し、総合的に「アルツハイマー病らしい」などと診断します。それで死亡後に頭部を解剖させてもらうと実は違っていた、ということが起こる。正しく診断できなければ、有効な治療に結び付かない。日本ではそのための研究材料が圧倒的に不足している状況です」、 充実した内容を予感させるなかなか面白そうな設定だ。 東洋経済オンライン「天国のような村の謎、認知症を取り巻く闇に迫る 『アルツ村』著者、医師・作家の南杏子氏に聞く」 「認知症という病気には、困ったことに誤診がつきまといます。治せるはずの病気をみすみす放置することになりかねません」、「治せるはずの病気」というのには違和感がある。ただ、全体としては、やはり事前に備えておく必要がありそうだ。 「安藤」さんら子供たちにとってはさぞかしつらかっただろう。 「最初に母の様子がおかしくなったのは、70代前半の頃でした。ある日「ベランダから飛び降りてやる!」と叫んだのです・・・今にして思えばすでに老人性うつの症状が現れていたのでしょう」、「父ががんを患い入院してからというもの、目に見えて症状が進みましたね」、「「自分は至って普通」だと 受診を拒んだ母が」次第に「壊れていった」、あり得る話だ。 ダイヤモンド・オンライン「安藤優子氏が語る認知症介護「最もつらい時期」、大好きな母がヘルパーをクビにし罵詈雑言…」
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税制一般(その4)(なぜ「パートのままがいい」という人がいるのか…理不尽な「年収の壁」を壊すために岸田政権がやるべきこと 「同一労働同一賃金」がかけ声倒れに終わる理由、GWに家族全員で話したい「生前贈与」のススメ おトクな相続術やシミュレーション法を伝授) [経済政策]

税制一般については、昨年6月2日に取上げた。今日は、(その4)(なぜ「パートのままがいい」という人がいるのか…理不尽な「年収の壁」を壊すために岸田政権がやるべきこと 「同一労働同一賃金」がかけ声倒れに終わる理由、GWに家族全員で話したい「生前贈与」のススメ おトクな相続術やシミュレーション法を伝授)である。

先ずは、本年3月29日付けPRESIDENT Onlineが掲載した経済ジャーナリストの磯山 友幸氏による「なぜ「パートのままがいい」という人がいるのか…理不尽な「年収の壁」を壊すために岸田政権がやるべきこと 「同一労働同一賃金」がかけ声倒れに終わる理由」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/68005
・『パート社員の待遇を正社員と同等に引き上げ  イオングループの中核企業で総合スーパーを展開するイオンリテールが、パート社員の待遇を正社員と均等にする制度を導入することを決めた。月120時間以上働き、昇格試験に合格した「正社員と同等」の仕事をしているパート社員を、「地域限定正社員」と同等の待遇にする。法改正で2020年から適用されている「同一労働同一賃金」を強く意識した改革であることは間違いない。 イオングループの従業員数は2022年2月末で15万5465人だが、このほかに26万5198人の時給で働くパートがいる。もっともこの人数は1日8時間勤務に換算したもので、実際に採用している総数はさらに上回る。パート、アルバイトを最も雇用している日本企業のひとつである。 「同一労働同一賃金」は安倍晋三内閣時の2018年6月に成立した「働き方改革関連法」によって導入された。正社員と同一の仕事をしている非正規雇用の働き手について、正社員と同一の待遇、つまり給与水準だけでなく、賞与や手当てなども同一にしなければならない、と法律で定められた。 当時、「働き方改革」が大きな課題になっていた中で、長時間勤務の是正とともに、正社員と非正規雇用者の待遇の違いが格差を生んでいるとして、野党が強く批判していた。これを安倍内閣が法制化したものだ』、興味深そうだ。
・『売り場責任者の9%をパート従業員が担っていた  この法律は、2020年から大企業を対象に施行が始まっており、企業側の対応が焦点になってきた。 もっとも「同一労働同一賃金」には抜け穴があると、かねて指摘されている。「正社員と同一」という条件を厳しく捉えると、正社員同等の責任や権限があるかどうかが基準になり、同じような仕事をしていたとしても、「同一」とは言えないという判断が成り立ってしまう。 イオンなど大手スーパーの場合、パート社員として雇用した主婦の中でも経験を積んで「売り場責任者」などとして働く人が増えている現実がある。本来は正社員が行う仕事をパートが行っているとも言え、さすがに「同一労働同一賃金」の適用は回避できないとの見方が広がっていた。 今回のイオンの制度もこうした売り場責任者などが対象で、すべてのパートが含まれるわけではない。ちなみに「リーダー」など売り場責任者の場合、関東圏のパート時給で16%(約180円)上がり、年収は2割増える見通しだという。報道によると、イオンリテールの350店舗の売り場責任者1万1000人のうち、9%がパートだという』、「パート社員として雇用した主婦の中でも経験を積んで「売り場責任者」などとして働く人が増えている現実がある。本来は正社員が行う仕事をパートが行っているとも言え、さすがに「同一労働同一賃金」の適用は回避できないとの見方が広がっていた」、「イオンリテールの350店舗の売り場責任者1万1000人のうち、9%がパート」、「パート」は重要な役割を担っているようだ。
・『小売・旅館・飲食ではむしろ雇用の大半を占めている  もちろん、パートなど非正規の働き方をあえて選択している人たちもいる。一定の年収を超えると社会保障などの負担が増す「年収の壁」を嫌ったり、休みが取りやすかったり、重い責任が伴わないことをむしろメリットとして働いている人が子育て層などに少なくない。 日本でパートや派遣社員など「非正規雇用」が大きく拡大した背景には、経済成長が止まり、デフレの色彩が強まる中で、企業の多くが、販売価格を抑えるために、コストである人件費を圧縮しようとしてきたことが大きい。 本来、雇用は正社員が中心で、パートなどの非正規雇用は補完的な役割とされてきたが、小売店や旅館・ホテル、飲食店などではむしろパートが雇用の大半を占めるケースが増えている。 一方で、働く側も本来のパートタイム=短時間勤務ではなく、フルタイムを「パート」の待遇で働いている人も増えた。企業としては人件費総額を抑えることにつながったものの、一方で、生活給としては十分ではない困窮世帯が増えることにつながっているという指摘もある』、「小売店や旅館・ホテル、飲食店などではむしろパートが雇用の大半を占めるケースが増えている」、「生活給としては十分ではない困窮世帯が増えることにつながっているという指摘も」、その通りだ。
・『人件費の増大分は「販売価格」に転嫁するしかない  もっともここへ来てイオンなどがパートの待遇改善に踏み切った背景には、深刻な人手不足がある。 ここ10年ほど増えていた高齢者や女性の労働力に頭打ちの気配が見えているうえに、出生率の低下による若年層の著しい人口減少が加わり、アルバイトなどが十分に雇用できなくなりつつある。 大手スーパーなどでは売り場のレジを無人化するなどの対応も急いできたが、今後、少子化の影響がさらに出てくることが明らかで、中長期にわたって人材をどう確保していくかが焦点になっている。そうした中で、パートの中でも有能な人材により責任の重い仕事を任せるなど、「戦力化」を進める必要性に迫られている。 岸田文雄内閣が「インフレ率を上回る賃上げ」を求めていることもあり、大手企業を中心に賃上げに踏み切っている。 最低賃金が毎年引き揚げられていることもあり、パートの時給も上昇しているが、まだまだ正規雇用に比べて給与格差は大きい。一方で、パートに依存している企業が、仮に正社員並みの給与をパート全員に払おうとした場合、人件費が激増して、赤字に転落することになりかねない。人件費の増加分を賄うためには販売価格への転嫁が必要で、企業は価格引き上げによってさらに利益をあげる体制への転換が求められる』、「人件費の増加分を賄うためには販売価格への転嫁が必要」、その通りだ。
・『コスト削減のために「非正規化」されてきた  総務省が発表した1月の労働力調査によると、働いている人、つまり就業者の総数は6689万人。このうち、6034万人が企業などに「雇用」されている。その雇用者のうち37.4%に当たる2133万人がパートやアルバイト、派遣社員といった非正規雇用だ。働く人全体の3分の1弱は非正規ということになる。しかも、37.4%という非正規雇用の割合は2013年1月には33.1%だった。新型コロナウイルスの蔓延で非正規雇用が減っていたが、ここへきて再び増加している。 前述のようにパートなどの「非正規」がひとつの「働き方」として定着し、選ばれている面もあるが、本来ならば「正規」で雇うべき雇用が、コスト削減のために「非正規化」されている部分も少なからずあると見ていいだろう。 その部分を「適正化」する意味で、「同一労働同一賃金」の規定が一定の役割を果たし始めたと言えるかもしれない。これをさらに進めていくには、一定時間以上働くと社会保障費負担が増えてしまうことから労働時間を削減しているとされる「年収の壁」を取り除くことだろう』、「本来ならば「正規」で雇うべき雇用が、コスト削減のために「非正規化」されている部分も少なからずあると見ていいだろう」、「「年収の壁」を取り除く」、のは大賛成だ。
・『1時間でも働けば社会保険を負担する仕組みに変える  ポイントは一定時間以上働いた場合に社会保険の適用とするのではなく、1時間でも働けば社会保険を負担する仕組みに変えることだ。 実は、「年収の壁」は働く側の意識ばかりが強調されるが、使う側の企業の事情も影響していると言える。つまり、一定時間以上働かせて社会保険適用となると、健康保険料などを働き手が負担する必要が生じるとともに、雇用者側が半額負担することが求められる。つまり、社会保険適用にならない時間数だけ働いてもらうほうが企業にとっても人件費負担を抑える効果があるということになるわけだ。 かつて、労働力が有り余っている時代は、社会保険料が免除される短時間労働の働き方を設けることが、働き手、企業双方にとってのインセンティブだったと言える。絶対的な雇用数を増やすことにつながったからだ。だが、人手が足らなくなった現在は、この政策は意味を失っていると見ていい』、「人手が足らなくなった現在は、この政策は意味を失っている」、その通りだ。
・『「同一負担」が一人当たりの保険料減額につながる  また、一定時間以下を社会保険の対象外にすることで、事務処理の手間を省く意味もあったと思われるが、今やコンピューターの進化と普及によって、大量のデータ処理・データ管理も容易になり、1時間でも働いた人から社会保険料を徴収して管理することは、そう難しいことではなくなった。 さらに、働く人全員から社会保険料を徴収できれば、一人当たりの保険料自体を引き下げることができるかもしれない。 つまり、「同一労働同一賃金」だけでなく、「同一負担」にすることが重要なのだ。岸田内閣は賃上げとともに、この「年収の壁」の打破に向けて制度変更を行うとの方針を示している。岸田内閣お得意の「掛け声」だけにとどまらず、実効性のある改革にたどり着いてもらいたいものだ』、「今やコンピューターの進化と普及によって、大量のデータ処理・データ管理も容易になり、1時間でも働いた人から社会保険料を徴収して管理することは、そう難しいことではなくなった」、「「同一労働同一賃金」だけでなく、「同一負担」にすることが重要なのだ。岸田内閣は賃上げとともに、この「年収の壁」の打破に向けて制度変更を行うとの方針を示している。岸田内閣お得意の「掛け声」だけにとどまらず、実効性のある改革にたどり着いてもらいたいものだ」、同感である。

次に、5月3日付け東洋経済オンラインが掲載した一般社団法人相続終活専門協会 代表理事の貞方 大輔氏による「GWに家族全員で話したい「生前贈与」のススメ おトクな相続術やシミュレーション法を伝授」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/670285
・『数年にわたり議論されてきた「生前贈与」が、2023年度の税制改正で大きく変更され、2024年1月から適用されることになった。 この議論の発端となったのは、2020年度の税制大綱だった。「相続税と贈与税の一体化に向け、現行の暦年課税と相続時精算課税を見直す」と記されたことで、一時は「年間110万円の非課税枠が使えなくなるのでは」といった噂も飛び交い、注目を浴びてきた。 最終的に制度はどう変わったのか。どう活用すべきなのか。改正内容を解説しつつ、“生前贈与のススメ”をご紹介したい。 相続や贈与を検討する際には、当然、家族との相談も必要になるだろう。親、子、孫が集まる数少ない機会であるこのゴールデンウィーク(GW)を使って、話をする場を設けてみてはいかがだろうか』、「最終的に制度はどう変わったのか。どう活用すべきなのか。改正内容を解説しつつ、“生前贈与のススメ”をご紹介したい」、興味深そうだ。
・『生前贈与するための2つの手法  改正の内容を解説する前に、まずは生前贈与の制度を見ていこう。生前贈与には大きく2つの課税方式がある。「暦年贈与」と「相続時精算課税制度」だ。 「暦年贈与」は年間110万円までの贈与が非課税となり、110万円を超えた分に対して累進で税率10〜55%の贈与税がかかる制度だ。冒頭の「110万円の非課税枠が使えなくなる」というのは、この制度のことだ。最終的に110万円の基礎控除(非課税枠)があり、2024年以降も存続することが決まっている。 「相続時精算課税制度」は2500万円までの贈与については贈与税がかからないが、贈与した人が亡くなったとき(相続時)に、贈与した額を相続財産に加算して相続税を計算する制度だ。生きているうちにお金を受け取ることはできるが、相続財産に加算されてしまうため、相続税の節税にはならない。 今回の改正ではこの2つの制度それぞれに変更が加えられている』、どんな「変更」があったのだろう。
・『暦年贈与の持ち戻し期間  暦年贈与において変更された点は、「持ち戻し期間の延長」だ。持ち戻しとは、贈与者(お金をあげた人)が贈与後の一定年数以内に亡くなってしまうと、贈与したはずのお金が、贈与者の相続財産にカウントされ、相続税の課税対象になってしまうというものである。せっかく贈与したのに、当初の意図とは異なる結果になってしまうのだ。 従来、持ち戻し期間は3年とされていたが、2024年以降は段階的に7年持ち戻しに延長されることになった。せっかく贈与したお金で相続税を取られないためには、“生前贈与はできるだけ早くおこなって長生きすべし。最低でも7年は生きよう”ということが言える。 なお、2023年12月31日までの生前贈与は、7年持ち戻しの対象にはならず、従来通り3年の持ち戻しとなる。駆け込み贈与の猶予はまだ残されている』、「暦年贈与の持ち戻し期間」が「3年」から「段階的に7年」に延びたようだ。
・『相続時精算課税制度の改良  相続時精算課税には明確なデメリットがあった。先述したとおり、相続税の節税にならなかったのだ。さらにこの制度を使い始めると、暦年贈与との併用ができなくなる。つまり、暦年贈与の110万円の基礎控除(非課税枠)が使えなかった。こうしたデメリットは今回の改正でテコ入れされている。 改良点の1つ目は「暦年贈与同様に年間110万円まで控除できるようになった」こと。そして2つ目は「相続時に相続財産に加算する額も、110万円を控除した後の額になった」ことだ。 つまり、相続時精算課税でも非課税枠が使えるようになり、相続税の節税もできるようになったということだ。これまではほとんど利用するメリットがなかった制度が、選択肢に入るようになった。 なお、非課税枠が使えると言っても、相続時精算課税制度と暦年贈与が一体化されたわけではなく、今後もそれぞれの制度は存在することは付け加えておきたい』、「改良点の1つ目は「暦年贈与同様に年間110万円まで控除できるようになった」こと。そして2つ目は「相続時に相続財産に加算する額も、110万円を控除した後の額になった」ことだ」、「つまり、相続時精算課税でも非課税枠が使えるようになり、相続税の節税もできるようになったということだ」、なるほど。
・『いくら贈与するべきか  今回の税制改正によって、どちらの制度を使っても年間110万円の非課税枠が使えるようになった。ただし、どんな人でも「贈与する額は年間110万円“以内”がおトク」とは限らない。場合によっては、贈与税を支払ってでも大きな金額を贈与したほうが税負担を抑えられるケースがあるのだ。 もし、この「年間110万円以上の贈与」をしたほうがいい場合、相続税の観点からは選択肢は暦年贈与一択になる。相続時精算課税の場合、110万円を超えた分は相続財産に加算され、相続税がかかってしまうからだ。 では、年間110万円以上の贈与をしたほうがいい人とはどんな人か、解説していこう。) 結論から言えば、相続財産が相続税の基礎控除(3000万円+600万円×法定相続人数)以下の人であれば、年間110万円以内の生前贈与が適している。そもそも相続税がかからないため、わざわざ贈与税を負担するメリットはないからだ。 一方、一定額以上の財産を保有している人の場合、贈与税を納めてでも110万円を超えた額を贈与したほうが相続税の負担額を減らすことができる。財産の規模が大きければ大きいほど、どの負担軽減効果も大きくなる。 どんな状況の人が、いくら贈与したらおトクになるのか。計算をするために次の表をご覧いただきたい。 (相続税の負担率の表はリンク先参照) こちらは相続税の負担率を一覧にしたものだ。例えば、相続財産が3億円で、相続人が配偶者、子ども2人の場合相続税の負担率は9.5%になる。3億円の9.5%なので、相続税は2850万円となる』、「相続財産が相続税の基礎控除・・・以下の人であれば、年間110万円以内の生前贈与が適している。そもそも相続税がかからないため、わざわざ贈与税を負担するメリットはないからだ。 一方、一定額以上の財産を保有している人の場合、贈与税を納めてでも110万円を超えた額を贈与したほうが相続税の負担額を減らすことができる。財産の規模が大きければ大きいほど、どの負担軽減効果も大きくなる」、なるほど。
・『贈与税の負担率と比較  次にこちらの表をご覧いただきたい。 贈与税の負担率の表はリンク先参照) こちらは、直系尊属から18歳以上の人への贈与を前提とした場合の贈与税の負担率を一覧にしたものだ。先ほどの例では、相続税は9.5%だった。一方、贈与税を見ると、450万円より小さい額を贈与した際の税負担率は9.5%より小さくなっている。 つまり、450万円以下であれば、贈与税は支払ったとしても、将来支払う相続税よりも低い税負担率でお金を渡すことができるのだ。 この相続税と贈与税の損益分岐点は、相続財産の規模や配偶者の有無、相続人の数で異なる。この2つの表に、自分の相続財産や相続人の数を当てはめることで、最適な贈与額を計算することができる。) 改めてまとめると、生前贈与の選び方は下記のようになる。 <暦年贈与を使うべき人>(・110万円を超える贈与で節税できる人(最適金額は表で計算) ・7年以上生きる自信がある人) <相続時精算課税制度を使うべき人>(・毎年、110万円以内の贈与が最適な人 ・7年以上生きる自信がない人) 暦年贈与は110万円を超える贈与が可能で、相続税の税負担を減らせる可能性がある。一方で、7年以内に死んでしまうと贈与したお金が相続財産に加算されてしまうという懸念点もある。 相続時精算課税は110万円以内の贈与で事足りる人に適している。また、7年以上生きる自信がない場合は、直前の贈与であっても持ち戻す必要のない相続時精算課税のほうが有利だ』、「<暦年贈与を使うべき人>(・110万円を超える贈与で節税できる人(最適金額は表で計算) ・7年以上生きる自信がある人」、<相続時精算課税制度を使うべき人>(・毎年、110万円以内の贈与が最適な人 ・7年以上生きる自信がない人)、なるほど。
・『孫に渡す選択肢  さらに賢く贈与を行う方法もある。ポイントは暦年贈与の持ち戻しの「対象」にある。実は、すべての生前贈与が持ち戻しの対象になるわけではないのだ。 対象となるのは「相続又は遺贈により財産を取得した者」に対しておこなった生前贈与となっている。逆に言えば、法定相続人の立場にない孫や息子の妻、娘の夫への贈与、あるいは遺言による遺贈を受けていない人への贈与は、持ち戻しの対象外となる。こうした人たちへの贈与は、7年以内であっても持ち戻す必要はないのだ。 息子の妻、娘の夫への贈与には、二の足を踏むかもしれないが、孫への贈与は現実的ではないだろうか。孫に贈与すれば、世代を1つスキップすることにもなる。自分の渡した財産を子どもが孫に贈与・相続する必要がなくなり、その際の税金を抑えることもできるのだ。にもかかわらず、孫への贈与はまだしていないという方は意外と多い。 場合によっては、子どもには相続時精算課税制度を、孫には暦年贈与を、というように、贈与する相手によって、両方の制度を使い分けることもできる。贈与の対象者、金額、方法などを総合的に検討して最適な形を決めるのがいいだろう』、「孫への贈与は現実的ではないだろうか。孫に贈与すれば、世代を1つスキップすることにもなる。自分の渡した財産を子どもが孫に贈与・相続する必要がなくなり、その際の税金を抑えることもできるのだ」、「場合によっては、子どもには相続時精算課税制度を、孫には暦年贈与を、というように、贈与する相手によって、両方の制度を使い分けることもできる。贈与の対象者、金額、方法などを総合的に検討して最適な形を決めるのがいいだろう」、貴重な情報を基に、じっくり考えてみることにしたい。
タグ:磯山 友幸氏による「なぜ「パートのままがいい」という人がいるのか…理不尽な「年収の壁」を壊すために岸田政権がやるべきこと 「同一労働同一賃金」がかけ声倒れに終わる理由」 PRESIDENT ONLINE 「場合によっては、子どもには相続時精算課税制度を、孫には暦年贈与を、というように、贈与する相手によって、両方の制度を使い分けることもできる。贈与の対象者、金額、方法などを総合的に検討して最適な形を決めるのがいいだろう」、貴重な情報を基に、じっくり考えてみることにしたい。 「孫への贈与は現実的ではないだろうか。孫に贈与すれば、世代を1つスキップすることにもなる。自分の渡した財産を子どもが孫に贈与・相続する必要がなくなり、その際の税金を抑えることもできるのだ」、 「<暦年贈与を使うべき人>(・110万円を超える贈与で節税できる人(最適金額は表で計算) ・7年以上生きる自信がある人」、<相続時精算課税制度を使うべき人>(・毎年、110万円以内の贈与が最適な人 ・7年以上生きる自信がない人)、なるほど。 「相続財産が相続税の基礎控除・・・以下の人であれば、年間110万円以内の生前贈与が適している。そもそも相続税がかからないため、わざわざ贈与税を負担するメリットはないからだ。 一方、一定額以上の財産を保有している人の場合、贈与税を納めてでも110万円を超えた額を贈与したほうが相続税の負担額を減らすことができる。財産の規模が大きければ大きいほど、どの負担軽減効果も大きくなる」、なるほど。 「改良点の1つ目は「暦年贈与同様に年間110万円まで控除できるようになった」こと。そして2つ目は「相続時に相続財産に加算する額も、110万円を控除した後の額になった」ことだ」、「つまり、相続時精算課税でも非課税枠が使えるようになり、相続税の節税もできるようになったということだ」、なるほど。 相続時精算課税制度の改良 「暦年贈与の持ち戻し期間」が「3年」から「段階的に7年」に延びたようだ。 暦年贈与の持ち戻し期間 どんな「変更」があったのだろう。 「最終的に制度はどう変わったのか。どう活用すべきなのか。改正内容を解説しつつ、“生前贈与のススメ”をご紹介したい」、興味深そうだ。 貞方 大輔氏による「GWに家族全員で話したい「生前贈与」のススメ おトクな相続術やシミュレーション法を伝授」 東洋経済オンライン 「今やコンピューターの進化と普及によって、大量のデータ処理・データ管理も容易になり、1時間でも働いた人から社会保険料を徴収して管理することは、そう難しいことではなくなった」、「「同一労働同一賃金」だけでなく、「同一負担」にすることが重要なのだ。岸田内閣は賃上げとともに、この「年収の壁」の打破に向けて制度変更を行うとの方針を示している。岸田内閣お得意の「掛け声」だけにとどまらず、実効性のある改革にたどり着いてもらいたいものだ」、同感である。 「人手が足らなくなった現在は、この政策は意味を失っている」、その通りだ。 「本来ならば「正規」で雇うべき雇用が、コスト削減のために「非正規化」されている部分も少なからずあると見ていいだろう」、「「年収の壁」を取り除く」、のは大賛成だ。 「人件費の増加分を賄うためには販売価格への転嫁が必要」、その通りだ。 「小売店や旅館・ホテル、飲食店などではむしろパートが雇用の大半を占めるケースが増えている」、「生活給としては十分ではない困窮世帯が増えることにつながっているという指摘も」、その通りだ。 「パート社員として雇用した主婦の中でも経験を積んで「売り場責任者」などとして働く人が増えている現実がある。本来は正社員が行う仕事をパートが行っているとも言え、さすがに「同一労働同一賃金」の適用は回避できないとの見方が広がっていた」、「イオンリテールの350店舗の売り場責任者1万1000人のうち、9%がパート」、「パート」は重要な役割を担っているようだ。 (その4)(なぜ「パートのままがいい」という人がいるのか…理不尽な「年収の壁」を壊すために岸田政権がやるべきこと 「同一労働同一賃金」がかけ声倒れに終わる理由、GWに家族全員で話したい「生前贈与」のススメ おトクな相続術やシミュレーション法を伝授) 税制一般
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医療事故(その1)(「医師を呼んで!」と訴えた患者 放置され死亡…京大が犯した3つの「開いた口がふさがらない」重大ミス、「群馬大医学部附属病院」腹腔鏡手術後に「8人死亡」4題:(執刀医暴走の全貌を明かす、「ずっとおかしいと思っていたんです…」群馬大医学部附属病院で18人が死亡 遺族へ告げられなかった信じ難い事実、内部情報を漏らしたのは誰だ…病院側の呆れた「最大の関心事」)) [社会]

今日は、医療事故(その1)(「医師を呼んで!」と訴えた患者 放置され死亡…京大が犯した3つの「開いた口がふさがらない」重大ミス、「群馬大医学部附属病院」腹腔鏡手術後に「8人死亡」4題:(執刀医暴走の全貌を明かす、「ずっとおかしいと思っていたんです…」群馬大医学部附属病院で18人が死亡 遺族へ告げられなかった信じ難い事実、内部情報を漏らしたのは誰だ…病院側の呆れた「最大の関心事」)を取上げよう。

先ずは、2019年11月21日付けヨミドクター(読売新聞)「「医師を呼んで!」と訴えた患者 放置され死亡…京大が犯した3つの「開いた口がふさがらない」重大ミス」を紹介しよう。
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20191121-OYTET50023/
・『11月19日、京都大学医学部付属病院が発表し、メディアで大きく報道された多重ミスによる患者死亡が大きな波紋を呼んでいます。外部委員も入れて調査した結果、これは発表せざるをえないとなって発表されたものと思いますが、あまりの 杜撰ずさん さに開いた口が塞がりません。 私は、京大病院が発表した書面を何度も読み返しましたが、これでは、亡くなった患者さんは本当に浮かばれません』、興味深そうだ。
・『「医師を呼んで」の声むなしく、放置  医療は人間が行うので、医療現場にミスはつきものです。ミスはあってはいけませんが、問題はミスをしたら、それにいち早く気づき、適正な措置が取れるかどうかです。こちらも重大なのですが、今回は全くそれが見られませんでした。しかも、患者さんは「医師を呼んでほしい」と何度も訴えたというのに放っておかれたのです』、「問題はミスをしたら、それにいち早く気づき、適正な措置が取れるかどうかです。こちらも重大なのですが、今回は全くそれが見られませんでした」、酷い話だ。
・『誤った点滴が第1のミス  亡くなられた患者さんは、心不全と腎臓機能の低下で入院中の男性です。造影剤を使ったCT(コンピューター断層撮影)検査の際の点滴で、本来使うべき炭酸水素ナトリウムの6.7倍の濃度の薬剤を投与されたのです。この患者さんは、直後から痛みやしびれなどを訴えたのに、投与はそのまま続けられました。 これが最初のミスです。このような医療過誤は何度も起きています。ですので、ここで検査医と看護師は気づくべきでした。しかし、チェックはされず、検査後は造影剤によるアレルギーと考えて、投与が続けられたのです』、「検査医と看護師は気づくべきでした。しかし、チェックはされず、検査後は造影剤によるアレルギーと考えて、投与が続けられた」、ここまではあり得ることだ。
・『異常があったのに投与を継続  しかも投与は3時間も続きました。本来なら1時間で終えるべきところなのに、担当医師は全量投与を指示しています。これが、第2のミスです。驚くべきことに、この病棟では炭酸水素ナトリウムを使用した経験がなかったというのです。 こうして、患者さんは病棟のトイレで倒れ、心停止となりました。そのため、慌てて駆けつけた医師らによって心臓マッサージが行われましたが、このとき、口から大量出血しました。これは、患者さんが、血液が固まるのを抑える抗凝固薬を服用していたからです。このことを医師たちは知らず、集中治療室に移し、開胸手術まで行っています。 これが、第3の致命的ミスです。 これほどミスが重なり、また、患者さんの訴えを無視した例を私は知りません』、「患者さんが、血液が固まるのを抑える抗凝固薬を服用していたからです。このことを医師たちは知らず、集中治療室に移し、開胸手術まで行っています」、「患者」の「常用薬」をチェックするのは基本中の基本でこれを怠ったのはお粗末という他ない。
・『私の息子は造影検査で右半身まひ  私はこれまで、医療過誤を告発する本を何冊か書いてきています。また、自分の息子も、大学生のときに医療過誤にあい、障害を持つ身となったので、医療ミスに関しては、一家言があります。息子の場合も、造影検査がアダになりました。 手足のしびれが続くので母校の病院に連れて行ったところ、「脳血管障害」を疑われ、診断をするために、必要もない造影検査を受けさせられたのです。そして、検査中に脳梗塞を起こし、右半身がまひしてしまいました。 医療過誤が起こるのは、たいていの場合、検査か手術のどちらかです。検査も手術も、経験がない未熟な医師や看護師が行った時は要注意です。しかし患者側が、そうした医師や看護師を見分けることは困難です』、「自分の息子・・・手足のしびれが続くので母校の病院に連れて行ったところ、「脳血管障害」を疑われ、診断をするために、必要もない造影検査を受けさせられたのです。そして、検査中に脳梗塞を起こし、右半身がまひしてしまいました。 医療過誤が起こるのは、たいていの場合、検査か手術のどちらかです。検査も手術も、経験がない未熟な医師や看護師が行った時は要注意」、患者の立場では不運という他ない。
・『医療過誤の報道は減ったけれど……  最近、医療過誤の報道がめっきり減っています。しかし、医療過誤そのものが減ったわけではありません。医療過誤は、毎日、全国どこかの病院で間違いなく起きています。その死亡者数は、交通事故の死亡者数をはるかに上回るはずです。「はずです」と書かざるを得ないのは、驚くべきことに、日本には医療過誤の正確な統計がないからです。 昨年の交通事故死者数は3532人で、毎日平均10人ほどの方が亡くなられています。これに対し、医療過誤による死者数は、その3倍以上、いや、数万人に達している可能性があります。 というのは、人口が日本の約3倍のアメリカの医療過誤死亡者数が、1年間に約25万人だからです。2016年、アメリカで最も権威ある医学部を持つジョンズ・ホプキンス大学の研究チームが発表しています』、「日本には医療過誤の正確な統計がない」、厚労省の怠慢だ。「医療過誤による死者数は、その3倍以上、いや、数万人に達している可能性があります。 というのは、人口が日本の約3倍のアメリカの医療過誤死亡者数が、1年間に約25万人だからです」、なるほど。
・『日本の医療過誤の把握は不十分  日本では、01年度から厚生労働省が全国の病院から医療事故の情報を収集するようになりました。現在、日本で医療過誤の統計を公表しているのは、日本医療機能評価機構(05年から)と日本医療安全調査機構(2015年から)の二つです。 しかし、両者とも医療機関から上がってくる報告を基にしており、とくに後者は「医者のため」のもので「予期せぬ死亡例」だけの報告となっています。 ちなみに、日本医療機能評価機構が公表している医療事故は、ここ2、3年は平均約4000件で、このうち死亡事例は300件、障害が残る可能性が高い事例は400~500件となっています。この数字をそのまま受け取る、医療関係者はいません』、「日本医療機能評価機構(05年から)と日本医療安全調査機構(2015年から)の二つです。 しかし、両者とも医療機関から上がってくる報告を基にしており、とくに後者は「医者のため」のもので「予期せぬ死亡例」だけの報告となっています。 ちなみに、日本医療機能評価機構が公表している医療事故は、ここ2、3年は平均約4000件で、このうち死亡事例は300件、障害が残る可能性が高い事例は400~500件となっています」、「両者とも医療機関から上がってくる報告を基にしており」、これでは、信頼性はあと1つだ。
・『京大のように自ら発表する例は珍しい  このような点を考えると、今回の京大病院のように、医療機関が自ら発表する例は 稀まれ です。たいていの場合、医療過誤は 隠蔽いんぺい されるので、院長自らが「患者さんご本人、そしてご家族には、薬剤の誤った処方による死亡という、期待を裏切るような結果となったことは誠に申し訳なく、心よりお 詫わ び申し上げる」とコメントするのも異例です。 ミスを犯しても、ほとんどの場合、医者は認めません。患者側から民事訴訟を起こされても、ほぼ勝訴するからです。通常の民事裁判では、訴えた側が8割方勝訴するのに、医療過誤裁判では8割方訴えられた医者側が勝訴します。 医者側は民事訴訟を起こされても痛くもかゆくもありません。民事ならミスはうやむやになり、必要な示談金は保険が下りるからです。しかし、刑事事件となると、そうはいきません。ただし、最近は、よほどのことでないと警察は介入せず、刑事告訴しても受理されません。 遺族の方の悲しみは察するに余りありますが、今後、どのように対応されるのでしょうか?』、「医者側は民事訴訟を起こされても痛くもかゆくもありません。民事ならミスはうやむやになり、必要な示談金は保険が下りるからです。しかし、刑事事件となると、そうはいきません」、「民事訴訟を起こされても痛くもかゆくもありません」とは初めて知った。

次に、4月15日付け現代ビジネスが掲載した読売新聞論説委員の高梨 ゆき子氏による「遺族の深き慟哭…「群馬大医学部附属病院」腹腔鏡手術後に「8人死亡」…執刀医暴走の全貌を明かす」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/108354?imp=0
・『群馬大学医学部附属病院で腹腔鏡手術を受けた患者8人が、相次いで死亡していた。 2014年、読売新聞のスクープ記事から、医学界を揺るがす大スキャンダルが明らかになる。亡くなった患者・8人の手術は、いずれも早瀬(仮名)という40代の男性医師が執刀していた。院内調査によって、開腹手術でも10人が死亡していたことが発覚。技量の未熟な早瀬が、超一流外科医でも尻込みすると言われた高難度の最先端手術に挑んだのはなぜなのか。 「白い巨塔」の病理と、再生への道のりを、話題書『大学病院の奈落』(高梨ゆき子)より取り上げる』、信じられないような医療事故だ。
・『遺族は何も知らなかった  立っているだけで汗がにじむようなあの日、群馬大学病院で不可解な手術死が続発している、という重大な情報の端緒をつかんだ。 社会部で厚生労働省を担当したことから医療の分野にかかわり始め、のちに医療部に移って臨床現場の取材を手がけるようになっていた私は、この年四月、週刊誌で報じられていた千葉県がんセンターの医療事故について強い関心を抱いていた。それは膵臓の腹腔鏡手術に関するもので、千葉県が調査を進めていた。 このとき耳にした群馬大学病院の情報は、断片的でにわかに信じがたい内容ながら、そのケースを思い起こさせた。取材を進め、いよいよ死亡した患者の遺族にたどり着いて接触してみようとしたころには、10月も半ばを過ぎていた。 群馬大学病院が内部調査に着手してから、すでに数ヵ月が経過していることはわかっていた。遅くとも秋口には文部科学省に大学から内々のお伺いを立てた感触もある。遺族にもすでに、病院側から連絡を入れておいてしかるべき状況だ。しかし実際には、そうはなっていなかった。 10月下旬に設けた急ごしらえの取材班で手分けして、最終的に8人すべての患者の遺族に接触できたが、取材に応じたのは6組。最初に接触した時点で、この6組の遺族は誰もが、まだ群馬大学病院から何の連絡も受けていないと語った。患者が亡くなって遺体の姿で退院して以来、病院側からはまったく接触がないという。このほかにも、遺族たちへの取材で、その証言にはいくつも共通点があると気づくのに時間はかからなかった』、「群馬大学病院」の秘密主義には心底驚かされた。
・『あいまいな態度  記事を書く前日の11月12日午後――群馬大学病院の病院長、野島美久は、病院と同じ敷地内にある臨床研究棟の教授室を突然訪ねた私たちの姿に驚き、訪問の目的を聞くやいなや表情を曇らせた。野島は、やや狼狽した様子を見せたものの、しばらくすると腹をくくったとでもいうような様子で口を開いた。 「私はこれからすぐ、大学本部に行かなければならない用事があるのです」 群馬大学の本部は、医学部と附属病院がある前橋市昭和町から車で10分ほどの同市荒牧町に置かれている。野島は電話で事務方を呼び出し、取材に応対するよう指示を出すと、私たちを振り切るようにして足早に臨床研究棟を後にした。 取材に応じた総務課長の小出利一は、当初、肝臓の腹腔鏡手術をめぐり、この病院で起きたことについて、こちらの質問をはぐらかすようにあいまいに話をそらした。 事実関係を問いただすと、小出は、このような言葉を投げかけてきた。 「お話しするとしたら、あなたたちにするより先に亡くなった患者さんのご家族に話すべきことですよね」 病院は死亡した患者の遺族に対し、一切連絡をしていないという。どうりで誰も知らないはずである。 「ただ、病院は、8人の診療に問題がある可能性があるということで、すでに調査の俎上に載せているんですよね?」 「ちゃんと調べきって、伝えなければいけないタイミングで遺族にはきちんと伝えますよ、それは……」 約2時間にわたった取材で、小出は、一つ一つ突きつけられた事実を前に次第に重い口を開き、病院が把握していることについて認め始めた。その間、小出は、病院は遺族に説明して公表するつもりだった、ということを何度も口にした。 「それはいつですか。今月?」 「今月中は無理だと思いますけど。わからないですけど……。これからアポイントメントを取るんでしょうから……」 その時期となると、途端に歯切れが悪くなった――』、「病院長」には逃げられて、代わりに「取材に応じた総務課長」は、「約2時間にわたった取材で、小出は、一つ一つ突きつけられた事実を前に次第に重い口を開き、病院が把握していることについて認め始めた」、なるほど。
・『「大丈夫、大丈夫」と  遺族への取材から、問題の輪郭は実感を伴う形で見えつつあった。 60代前半の克喜さん(仮名)とその家族は、執刀医の早瀬稔(仮名)から、このような説明をされたという。 「腹腔鏡手術は、おなかに5ヵ所くらい小さい穴を開ければよいので、開腹手術のように腹部を大きく切り開くのと違って臓器が空気に触れないですから、患者さんのためにも楽だし、回復が早いですよ」 腹腔鏡手術は、腹部に数ヵ所開けた小さな切り口から細いカメラや手術器具を挿し入れ、モニター画面に映し出された体内の映像を見ながら、臓器の切除や縫合をする手術である。開腹手術に比べて腹部の切開創が小さくて済み、体への負担が少ないことがメリットといわれる。手術後に残る傷痕が目立たないということも、一般の患者には大きな魅力として受け止められているかもしれない。大腸や胃の手術ではすでによく知られており、素人にも耳慣れたものになっていた。 早瀬は説明のなかで、開腹手術についても触れなかったわけではない。ただ、それは腹腔鏡手術の説明とはかなり様子が違っていた。 「開腹手術だと傷が大きくなりますので術後の痛みも強いですし、患者さんにとっては大変です。大きな傷痕も残りますしね」 克喜さんの妻は振り返った。 「腹腔鏡手術のデメリットは聞きませんでした。そっちのほうがいいですよ、と勧めている感じで」』、「腹腔鏡手術のデメリットは聞きませんでした」、というのはやはり問題だ。
・『正反対の認識  医師からの説明は終始、「腹腔鏡がメインだった」と、克喜さんの息子も断言した。 克喜さんの病名は、肝門部胆管がん。胆管は、肝臓で作られた消化液の一種である胆汁が、十二指腸に流れる通り道となる。肝臓からの出口部分に当たる「肝門部」にできた胆管のがんが「肝門部胆管がん」である。手術で克喜さんのがんを取り除くには、肝臓の三分の一と胆管の一部を切り取ったうえで、消化機能を維持するために、胆管の切り口を腸とつなぎ合わせる必要がある。肝門部胆管がんは、構造が複雑な部分にできたがんで、消化器がんのなかでも手術の難易度が高いことで知られている。開腹したとしてもきわめて難しい手術であり、専門家の間で、「腹腔鏡手術を行うべきではない」という意見が大勢を占めている。にもかかわらず、克喜さんの家族は、そうした実情とはむしろ正反対の認識を持っていた。 「まだ60代前半で若いし、手術すれば悪いところは全部取れて、元気になりますよ」 遺族は、早瀬の前向きな言葉を記憶している。 克喜さんの妻は話した。 「先生は、主人の場合は大丈夫、大丈夫と。がんとわかってショックで落ち込んでいた私たちに、笑顔で大丈夫ですよ、と。だから安心して手術を受けたんです」 肝門部胆管がんは、予後の悪いがんとしても知られている。早瀬は、深刻な病気におののく患者とその家族に少しでも希望を持ってもらおうと、あえて明るい言葉を選んだのかもしれない。しかし、肝門部胆管がんの手術方法として「危険」とさえ言う医師もいる腹腔鏡手術に踏み切るにしては、患者と家族に与えた認識は、現実とかけ離れている。それどころか、事実に反している、と言ってもよいかもしれない。 「低侵襲でリスクの低い手術を受けたはずなのに、なぜこんなに早く亡くなることになったのか」 克喜さんが亡くなったとき、家族は強い疑問を抱いた。) ほかの遺族も、自分たちの家族が受けた手術が実際どういう位置づけのものなのか、事実を聞いた様子がなかったという点で共通していた。 60代後半だった裕美さん(仮名)の遺族は、当時の様子をこう説明している。 「腹腔鏡のほうが、おなかを開けて切るより出血が少なく、傷口が小さくて済むというメリットがあるので、体力的にもおなかを切り開いてやるより、そっちの方向でいきたいと思います、と言われました」 裕美さんには別の持病があり、すでに数年間の闘病生活を送っていた。肝切除の手術を受けたのは、ほかのがんが肝臓に転移したためである。 「手術で悪いものを取れるなら取ったほうがいい。いまならまだ手術できます」 早瀬からは、このように提案されたと裕美さんの娘は記憶している。当時、裕美さんの病状は、それまでの闘病生活のなかで最も悪い状態だと家族には感じられた。体がだるく、神経マヒで耳が聞こえにくいうえに、目はかすみ、味もしないと訴え、座るのがやっとだった。しかし、「いまなら手術できる」という言葉に追い立てられるように、裕美さん本人も手術を願い出た。苦痛のなかで、藁わらにもすがる気持ちだったのだろう。家族も、弱った体で手術を受けさせることに不安を感じたものの、「お願いします」と同意したという。 裕美さんの娘は語った。 「腹腔鏡手術しか選択肢はないんじゃないかと思っていました。あのときは助けたいという一心で、お願いしますと言ってしまったんです」 ほかにも、これと似た話をした遺族がいる。 70代前半で亡くなった武仁さん(仮名)の妻である。 「腹腔鏡手術しかないと思っていました。ほかに手術の方法があったんですか?」 手術が腹腔鏡を使ったものだったということさえ認識していなかった遺族もいた。 術後一ヵ月余り、70代前半で亡くなった圭子さん(仮名)の遺族だ。 家族にことのほか愛され、慕われていた圭子さんの大病は、仲がよく、結束の固い一家にとって一大事だったに違いなかった。それなのに、圭子さんの娘たち夫婦も孫も誰一人、「腹腔鏡」という言葉さえ思い出せなかった。圭子さんの娘が保管していた手術同意書の術式名にも、「腹腔鏡」という文字はない。 患者や家族への説明では、「保険適用外で安全性や有効性が確立していない腹腔鏡手術だった」という事実が伏せられていたのではないか。遺族の証言は、インフォームド・コンセント(正しい情報提供に基づいた合意)に重大な問題があることを強く疑わせた。 後編記事【「ずっとおかしいと思っていたんです…」群馬大医学部附属病院で18人が死亡、遺族へ告げられなかった信じ難い事実】に続く』、「肝門部胆管がんは、構造が複雑な部分にできたがんで、消化器がんのなかでも手術の難易度が高いことで知られている。開腹したとしてもきわめて難しい手術であり、専門家の間で、「腹腔鏡手術を行うべきではない」という意見が大勢を占めている」、こんな難しいケースに「腹腔鏡手術」に慣れてない医師に手術をさせるのを、病院が組織として放置していたというのは、恐ろしいことだ。

第三に、この続きを、4月15日付け現代ビジネスが掲載した読売新聞論説委員の高梨 ゆき子氏による「「ずっとおかしいと思っていたんです…」群馬大医学部附属病院で18人が死亡、遺族へ告げられなかった信じ難い事実」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/108355?imp=0
・出だし省略 『学長選直前の不祥事  遺族たちが病院内部に調査の動きがあることを知ったのは、10月下旬になってから、私たちの取材によってであったことはすでに書いた。 記者の訪問に、遺族の誰もが驚きを隠せなかった。あきらめかけ、いっそ忘れたいと思っていたつらい記憶が呼び覚まされ、平静ではいられなかった人もいた。 「こんなテレビドラマみたいなことがあるんですね……」 思わず、まるでひとごとのような感想を漏らした人さえいる。 多くの遺族が、取材前に予想していたより落ち着いて、前向きな様子で応じてはくれたが、おそらく思いがけない事実を突然、見知らぬ相手から突きつけられ、どれだけ心を波立たせたことだろうか。その衝撃は察するにあまりある。 しかし、遺族は、心の奥底にくすぶっていた疑念と符合するものを感じたようだ。 「やっぱりそうだったんですね」「ずっとおかしいと思っていたんです」 そんな言葉を漏らした遺族もいた。 このとき、家族が亡くなって以来、ずっと抱え続けてきた疑問の答えが、ようやく得られるのかもしれないという期待も抱いたのではないだろうか。知らされるべき事実が、当事者には何も明かされてこなかったのだから』、「遺族は、心の奥底にくすぶっていた疑念と符合するものを感じたようだ。 「やっぱりそうだったんですね」「ずっとおかしいと思っていたんです」 そんな言葉を漏らした遺族もいた」、なるほど。
・『動きが鈍い病院側の思惑  病院のほうは、なかなか遺族への説明や公表に踏み切れなかった。11月に入っても、病院側の動きは鈍かった。 院内事故調査委員会の初会合から一週間後の9月4日には、第二外科肝胆膵グループによるすべての手術の休止が決まっている。予定していた手術や、地域病院からの紹介を他へ回さなければならないことになり、この頃から、近隣病院への影響も出始めていたはずである。それでも、病院側は事態の発覚を極度に恐れ、調査は内々に進められた。 院内事故調査委員会は、8月28日の初会合から11月14日の報道までに、二度にわたり開会している。顧問弁護士以外の外部委員抜きで、執刀医の早瀬稔(仮名)本人や、その上司であり第二外科の責任者でもあった教授の松岡好(仮名)をはじめ、手術に関係した第二外科の医師たちから直接の事情聴取もしていた。また、実際は、「院内ミーティング」と称し、もっと頻繁に調査のための会合は開かれていたという。しかし、家族の死の裏に重大な事実が隠されており、それをめぐって正式な調査が行われていることについて、遺族には一切、伏せられていたことに変わりはなかった。 なぜ、そのようなことになったのか。 病院当局には、事態の表面化を恐れる大きな理由があった。 2014年12月5日に予定されていた次期学長選である。2015年春、群馬大学は学長の任期満了を迎える。学長選はそれに伴うもので、次期学長の座を争っていたのは、病院長を務める野島美久と、その前任の病院長であった石川治。二人は2014年10月、学内外の有識者による選考会議から「学長適任者」に選出されており、学長選は、新旧の病院長による一騎打ちの情勢だった。 当時の病院幹部の間では、野島を推す声が大勢だったといわれている。野島本人が内心どのように考えていたのかは定かでないが、大事なときに、このように深刻な不祥事を公表すれば、学長選で不利に働くのではないかと懸念する雰囲気が、病院内には漂っていたという』、「病院当局には、事態の表面化を恐れる大きな理由があった。 2014年12月5日に予定されていた次期学長選である」、真相解明よりも「学長選」を重視するとは、余りの内向き姿勢には驚かされる。
・『責任の所在は……  腹腔鏡手術の問題を見過ごし、早期に止められなかった責任は、新旧どちらの病院長にもあった。2011年3月まで病院長を務めていたのが石川で、野島が病院長に就任したのは4月である。前述の通り、第二外科は問題の腹腔鏡手術を2010年12月に導入し、2011年3月までに二人の患者が死亡している。 だからといって、亡くなった患者の遺族にさえ説明をしていなかったのは、どうしたことだろう。それも、問題を知る人の数が増え、遺族という外部の人間にもその範囲が広がれば、情報が拡散するリスクが高まり、学長選に響くことを恐れたのではないか、と考えれば合点がいく。 関係者によると、実は、11月初めには院内調査の中間報告書がまとめられていた。それをもとにすべての患者の遺族に説明して回り、関係省庁に正式に報告して、それが完了した後で記者会見を開いて公表、という段取りが、内々に想定されてはいたようだ。それなのに、11月第二週の水曜日だった12日、私たちが病院長の野島を訪ねた段階で、八組ある遺族への面談のアポイントメントを入れる作業にさえ取りかかっていなかった。11月後半になってアポイントメントをとり始めれば、先方の都合に合わせて日程調整しているうちに、12月5日が過ぎていく。それを指折り数えていたのではないのか。 結果として、病院側は11月12日に取材を受けた直後から、遺族への電話連絡を始めた。記事に出る前に当事者に一報だけは入れておかなければと、慌てて連絡をとった形だった。厚生労働省に報告したのも、取材を受けた翌日の13日である。学長選は翌月五日に迫っていただけに、この時点での事態の発覚は、病院当局からすると最悪のタイミングだったかもしこのことが、事態の公表過程に影響を与えていたのかどうかについては、その後の調査でも解明されなかった。しかし、報道の後手に回り続けた対応は、群馬大学病院への不信感を、むしろ増幅させる結果になった』、「11月初めには院内調査の中間報告書がまとめられていた。それをもとにすべての患者の遺族に説明して回り、関係省庁に正式に報告して、それが完了した後で記者会見を開いて公表、という段取りが、内々に想定されてはいたようだ。それなのに、11月第二週の水曜日だった12日、私たちが病院長の野島を訪ねた段階で、八組ある遺族への面談のアポイントメントを入れる作業にさえ取りかかっていなかった。11月後半になってアポイントメントをとり始めれば、先方の都合に合わせて日程調整しているうちに、12月5日が過ぎていく。それを指折り数えていたのではないのか」やはり「学長選挙」の終了を待っていたようだ。

第四に、この続きを、4月21日付け現代ビジネスが掲載した読売新聞論説委員の高梨 ゆき子氏による「内部情報を漏らしたのは誰だ…群馬大医学部附属病院で腹腔鏡手術後に「8人」死亡、病院側の呆れた「最大の関心事」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/108367?imp=0
・出だし省略 病院の最大の関心事  弁護団は、遺族に対し、患者のカルテや検査画像、手術の録画映像など診療記録一式を病院側に開示請求するようアドバイスした。開示された記録一式は、ある大学病院の消化器外科医に託された。二人の患者の診療内容に問題がなかったか、弁護団で独自に調査するためである。この独自調査により、目を覆うような診療の実態が生々しく伝えられることになる。群馬大学病院が調査報告書を公表するための記者会見を開いてから3日後の2015年3月6日、弁護団は記者会見し、腹腔鏡手術の二例について、独自調査の結果を報道陣の前に明らかにした。 協力医の厳しい指摘は、大きなインパクトがあった。たとえば手術手技について、手術の録画映像を見た協力医は以下のように評した。 「(執刀医の)手技はかなり稚拙である。鉗子(注・ハサミ状の医療器具)のハンドリングもよくなく、剥離操作、止血操作にしても全部悪い。相当下手。術野(注・手術中の目に見える範囲)も出血で汚染されており、血の海の中で手術をしているような状態。腹腔鏡の技量についてはかなり悪いといえる。無用に肝臓に火傷させるなど、愛護的操作がない。助手のカメラ操作も下手」 このとき、協力医の調査対象となった患者は木村さんら二人で、腹腔鏡の死亡者二人目と三人目に当たり、いずれも第二外科肝胆膵グループが腹腔鏡手術を導入した最初の年の患者である。おぼつかない技量で新しい領域に踏みこんだ危うさをうかがわせる』、「手術の録画映像を見た協力医は以下のように評した。 「(執刀医の)手技はかなり稚拙である。鉗子(注・ハサミ状の医療器具)のハンドリングもよくなく、剥離操作、止血操作にしても全部悪い。相当下手。術野(注・手術中の目に見える範囲)も出血で汚染されており、血の海の中で手術をしているような状態。腹腔鏡の技量についてはかなり悪いといえる。無用に肝臓に火傷させるなど、愛護的操作がない。助手のカメラ操作も下手」、酷い評価だ。「無用に肝臓に火傷させる」のもお粗末だ。
・『これほど死亡例を重ねるまで改善策が採られなかったことについても、協力医は痛烈に批判し、次のように述べている。 「通常の大学病院では、予期せぬ死亡があった場合、医療安全委員会が開かれて検討をする。通常は1例何か事件が起きれば、反省して改善案を検討していく。 次に同じことが起きないようにルールを作る。診療科長が何らかの処置を取るのが通常である。診療科長がしっかりマネジメントできていなかったといわざるを得ない。1年間で4人も腹腔鏡下で死亡したのであれば、通常の大学病院ではそれ自体で手術停止となる。腹腔鏡下で1例死亡したのであれば、腹腔鏡下での術式を中止することも考えられる。1例目が出た段階で検討していれば、ICG(注・肝切除の術前検査として一般的に必須とされているICG15分停滞率の測定。)を実施していない点について相当叱責された上で改善策がとられたであろう」 弁護団は記者会見で訴えた。 「病院側の調査は、教授や執刀医からの聴取が不十分で、全容が解明できていません。改めてきちんと調査をし直すべきです」) 〈中略〉 辞職する前、早瀬は、上司である教授の松岡と連名で、調査報告書に対する反論文を提出した。反論文では、公表された調査報告書で、自分たちの言い分が十分に反映されないまま「過失があった」との結論が導き出されていることに強い不満を表明し、再検討を求めた。術前評価、インフォームド・コンセントなど、問題とされていた各項目に逐一、異を唱えたこの文書は全13ページにわたっている。 カルテの記載が乏しいことについては認め、「申し訳ない」としたものの、それ以外は、彼らなりの立場から、事細かに言い分を述べている』、「「通常の大学病院では、予期せぬ死亡があった場合、医療安全委員会が開かれて検討をする。通常は1例何か事件が起きれば、反省して改善案を検討していく。 次に同じことが起きないようにルールを作る。診療科長が何らかの処置を取るのが通常である。診療科長がしっかりマネジメントできていなかったといわざるを得ない。1年間で4人も腹腔鏡下で死亡したのであれば、通常の大学病院ではそれ自体で手術停止となる。腹腔鏡下で1例死亡したのであれば、腹腔鏡下での術式を中止することも考えられる」、その通りだ。
・『インフォームド・コンセントについては、「図表を用いて、わかりやすく説明することを心がけていました。時間は一時間以上かけることとし、最後には不明な点がないか必ず確認するようにしておりました」と釈明した。死亡症例の検討も、記録はないものの実際には行っていたとの認識を示している。手術成績は、病院側の発表では「93例中死亡8例」とされていたが、実際は「103例中死亡8例」であるとし、訂正を求めた。分母となる症例数の違いは死亡率に影響を及ぼすことから、この点には強いこだわりが見られた。 特に多くの行数が費やされていたのは、腹腔鏡手術を始めるまでの準備に関する取り組みについてだ。2010年から2011年にかけて数々の関連学会に参加していたこと、先進的な取り組みで知られる岩手医科大学に二回出向いて実習したこと、動物を使った技術実習を受けたことが詳細に列挙された。当初は、一部のみ腹腔鏡を使う「腹腔鏡補助下」手術を選び、12例目以降、「完全腹腔鏡下」手術に移行したことから、「十分な体制をとっての導入だった」と訴えた。) 発生した医療事故の事実関係と直接かかわりはないが、興味深いことも記されていた。開腹手術について言及した項目に書かれたもので、内容は以下の通りだ。 本委員会の調査中に、開腹の肝切除術においても10例の死亡があることが判明した、とのみありますが、この問題には情報管理上の不備から、新聞社への意図的な情報漏洩が先にあり、その対応を迫られるようになった背景があります。少なくとも、当方が、医療安全管理部長とお話しする過程では、医療安全管理部長も開腹手術症例の件が情報漏洩することを強く心配し、間もなく、その懸念通りに情報漏洩が起きたことから、開腹手術の対応を早急に迫られたものと思います。 また、少なくとも、これまでに4回分の新聞記事(平成26年11月14日、15日、16日、および12月22日)は院長、副院長、病院長補佐レベルの病院中枢の特定関係者しか知り得ないような情報が含まれており、特定の新聞社に病院の中枢から意図的に流出されたのではないかと聞いています(情報の詳細を知る医療安全管理部長が言ったことです)。しかも、そのうち11月の1回は患者さんが特定されてしまうような個人情報をも含む情報が漏洩されており、調査中にこのような違法な漏洩がなされたことに驚いています。 これらの事実に対して、院長先生が平成27年1月7日に第二外科医会員を集めて、事情説明をした上で情報漏洩が起きた問題について謝罪されました。その上で、「きちんと調査して、原因を特定してしかるべき対処をする」ことを約束されましたが、今まで、情報漏洩が起きた問題に対して実質的な対処をされないままの状態が続いています。 事態発覚の経緯に関する恨み言に、彼らがこれだけの行数を費やしたくなる背景は、折に触れ内紛を繰り返してきた群馬大学病院の過去を抜きにして語れない。 問題が報道された当初、第二外科関係者の念頭に真っ先に浮かんだのは、ライバルである第一外科の存在だったという。群馬大学病院では、外科が第一外科と第二外科に分かれ、同種の外科診療を別々に行っており、以前から対立関係にあった。 2014四年11月に腹腔鏡手術の問題が明らかになって間もなく、早瀬の外来を受診した患者に付き添った家族の女性は、早瀬のおかしな反応が印象に残っているという。患者は肝臓がんで早瀬の腹腔鏡手術を受け、退院して通院治療を続けていた。 「報道されているのは、先生のことですか」 死亡例が相次いでいるという報道に触れ、不安に思った女性がこのように尋ねたところ、こんな話が持ち出されたというのだ。 「報道されているのはうちのグループのことですが、仲の悪い第一外科が、よくない情報を流しているんだと思います」 女性は「そんなことがあるんですか。まるでテレビドラマみたいですね」と言って受け流したものの、内心はいぶかしく思っていたという。 「先生はいったい何を言っているんだろうと思いました。患者には、そんなこと関係ないですよね」 患者側の立場からすれば奇妙な説明だったから、この出来事が記憶に刻まれたに違いない。彼女が話したエピソードには、当時の群馬大学病院内部の人びとの心理状態が映し出されているようだ。 内部関係者の間では、学長選に絡むリークではないか、という臆測も流れていた。 手術死の続発という深刻な事態が明るみに出てなお、彼らの何より最大の関心事は、事故の原因究明や再発防止策などではなく、別のところにあった。 「誰が、誰を陥れるために内部情報を漏らしたのか?」 「このことで得をするのは誰なのか?」 誰もがそこに気を取られていた。 後編記事『これが「大学病院」の闇…「第一外科vs.第二外科」18人もの患者が死亡した医療事故の裏で起きた医師たちの「権威闘争」』に続きます』、「これまでに4回分の新聞記事・・・は院長、副院長、病院長補佐レベルの病院中枢の特定関係者しか知り得ないような情報が含まれており、特定の新聞社に病院の中枢から意図的に流出されたのではないかと聞いています」、「問題が報道された当初、第二外科関係者の念頭に真っ先に浮かんだのは、ライバルである第一外科の存在だったという。群馬大学病院では、外科が第一外科と第二外科に分かれ、同種の外科診療を別々に行っており、以前から対立関係にあった」、「群馬大学病院」は信じられないような極めて深刻な問題を抱えているようだ。閉鎖性がその重要な背景にありそうだ。ここまで来ると、文科省や厚労省の監督責任も厳しく問われるべきだ。
タグ:高梨 ゆき子氏による「「ずっとおかしいと思っていたんです…」群馬大医学部附属病院で18人が死亡、遺族へ告げられなかった信じ難い事実」 「肝門部胆管がんは、構造が複雑な部分にできたがんで、消化器がんのなかでも手術の難易度が高いことで知られている。開腹したとしてもきわめて難しい手術であり、専門家の間で、「腹腔鏡手術を行うべきではない」という意見が大勢を占めている」、こんな難しいケースに「腹腔鏡手術」に慣れてない医師に手術をさせるのを、病院が組織として放置していたというのは、恐ろしいことだ。 「腹腔鏡手術のデメリットは聞きませんでした」、というのはやはり問題だ。 「病院長」には逃げられて、代わりに「取材に応じた総務課長」は、「約2時間にわたった取材で、小出は、一つ一つ突きつけられた事実を前に次第に重い口を開き、病院が把握していることについて認め始めた」、なるほど。 「群馬大学病院」の秘密主義には心底驚かされた。 信じられないような医療事故だ。 高梨 ゆき子氏による「遺族の深き慟哭…「群馬大医学部附属病院」腹腔鏡手術後に「8人死亡」…執刀医暴走の全貌を明かす」 現代ビジネス 「医者側は民事訴訟を起こされても痛くもかゆくもありません。民事ならミスはうやむやになり、必要な示談金は保険が下りるからです。しかし、刑事事件となると、そうはいきません」、「民事訴訟を起こされても痛くもかゆくもありません」とは初めて知った。 (その1)(「医師を呼んで!」と訴えた患者 放置され死亡…京大が犯した3つの「開いた口がふさがらない」重大ミス、「群馬大医学部附属病院」腹腔鏡手術後に「8人死亡」4題:(執刀医暴走の全貌を明かす、「ずっとおかしいと思っていたんです…」群馬大医学部附属病院で18人が死亡 遺族へ告げられなかった信じ難い事実、内部情報を漏らしたのは誰だ…病院側の呆れた「最大の関心事」)) 医療事故 「「通常の大学病院では、予期せぬ死亡があった場合、医療安全委員会が開かれて検討をする。通常は1例何か事件が起きれば、反省して改善案を検討していく。 次に同じことが起きないようにルールを作る。診療科長が何らかの処置を取るのが通常である。診療科長がしっかりマネジメントできていなかったといわざるを得ない。1年間で4人も腹腔鏡下で死亡したのであれば、通常の大学病院ではそれ自体で手術停止となる。腹腔鏡下で1例死亡したのであれば、腹腔鏡下での術式を中止することも考えられる」、その通りだ。 「手術の録画映像を見た協力医は以下のように評した。 「(執刀医の)手技はかなり稚拙である。鉗子(注・ハサミ状の医療器具)のハンドリングもよくなく、剥離操作、止血操作にしても全部悪い。相当下手。術野(注・手術中の目に見える範囲)も出血で汚染されており、血の海の中で手術をしているような状態。腹腔鏡の技量についてはかなり悪いといえる。無用に肝臓に火傷させるなど、愛護的操作がない。助手のカメラ操作も下手」、酷い評価だ。「無用に肝臓に火傷させる」のもお粗末だ。 高梨 ゆき子氏による「内部情報を漏らしたのは誰だ…群馬大医学部附属病院で腹腔鏡手術後に「8人」死亡、病院側の呆れた「最大の関心事」」 11月後半になってアポイントメントをとり始めれば、先方の都合に合わせて日程調整しているうちに、12月5日が過ぎていく。それを指折り数えていたのではないのか」やはり「学長選挙」の終了を待っていたようだ。 「11月初めには院内調査の中間報告書がまとめられていた。それをもとにすべての患者の遺族に説明して回り、関係省庁に正式に報告して、それが完了した後で記者会見を開いて公表、という段取りが、内々に想定されてはいたようだ。それなのに、11月第二週の水曜日だった12日、私たちが病院長の野島を訪ねた段階で、八組ある遺族への面談のアポイントメントを入れる作業にさえ取りかかっていなかった。 「病院当局には、事態の表面化を恐れる大きな理由があった。 2014年12月5日に予定されていた次期学長選である」、真相解明よりも「学長選」を重視するとは、余りの内向き姿勢には驚かされる。 「遺族は、心の奥底にくすぶっていた疑念と符合するものを感じたようだ。 「やっぱりそうだったんですね」「ずっとおかしいと思っていたんです」 そんな言葉を漏らした遺族もいた」、なるほど。 ちなみに、日本医療機能評価機構が公表している医療事故は、ここ2、3年は平均約4000件で、このうち死亡事例は300件、障害が残る可能性が高い事例は400~500件となっています」、「両者とも医療機関から上がってくる報告を基にしており」、これでは、信頼性はあと1つだ。 「日本医療機能評価機構(05年から)と日本医療安全調査機構(2015年から)の二つです。 しかし、両者とも医療機関から上がってくる報告を基にしており、とくに後者は「医者のため」のもので「予期せぬ死亡例」だけの報告となっています。 「日本には医療過誤の正確な統計がない」、厚労省の怠慢だ。「医療過誤による死者数は、その3倍以上、いや、数万人に達している可能性があります。 というのは、人口が日本の約3倍のアメリカの医療過誤死亡者数が、1年間に約25万人だからです」、なるほど。 「自分の息子・・・手足のしびれが続くので母校の病院に連れて行ったところ、「脳血管障害」を疑われ、診断をするために、必要もない造影検査を受けさせられたのです。そして、検査中に脳梗塞を起こし、右半身がまひしてしまいました。 医療過誤が起こるのは、たいていの場合、検査か手術のどちらかです。検査も手術も、経験がない未熟な医師や看護師が行った時は要注意」、患者の立場では不運という他ない。 「患者さんが、血液が固まるのを抑える抗凝固薬を服用していたからです。このことを医師たちは知らず、集中治療室に移し、開胸手術まで行っています」、「患者」の「常用薬」をチェックするのは基本中の基本でこれを怠ったのはお粗末という他ない。 「検査医と看護師は気づくべきでした。しかし、チェックはされず、検査後は造影剤によるアレルギーと考えて、投与が続けられた」、ここまではあり得ることだ。 「問題はミスをしたら、それにいち早く気づき、適正な措置が取れるかどうかです。こちらも重大なのですが、今回は全くそれが見られませんでした」、酷い話だ。 ヨミドクター(読売新聞)「「医師を呼んで!」と訴えた患者 放置され死亡…京大が犯した3つの「開いた口がふさがらない」重大ミス」
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小売業(一般)(その7)(年間300本以上の取材に対応!? 各局のニュース番組が「スーパーアキダイ」を取材し続ける“納得の理由” 『いつか小さくても自分の店を持つことが夢だった スーパーアキダイ式経営術』より #2、「無印良品」にセブンやZOZO元幹部が集まる事情 2月以降 外部から執行役員を新たに5人採用、イオンが「いなげや」を子会社化する3つの狙い 減益が続く事業を拡大する裏事情) [産業動向]

小売業(一般)については、2021年12月11日に取上げた。久しぶりの今日は、(その7)(年間300本以上の取材に対応!? 各局のニュース番組が「スーパーアキダイ」を取材し続ける“納得の理由” 『いつか小さくても自分の店を持つことが夢だった スーパーアキダイ式経営術』より #2、「無印良品」にセブンやZOZO元幹部が集まる事情 2月以降 外部から執行役員を新たに5人採用、イオンが「いなげや」を子会社化する3つの狙い 減益が続く事業を拡大する裏事情)である。

先ずは、昨年5月16日付け文春オンライン「年間300本以上の取材に対応!? 各局のニュース番組が「スーパーアキダイ」を取材し続ける“納得の理由” 『いつか小さくても自分の店を持つことが夢だった スーパーアキダイ式経営術』より #2」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/54008
・『天候不順による野菜の高騰、レジ袋の有料化、消費税の増額といった、生活に直結するニュースが出るたびに、「スーパーアキダイ」社長の秋葉弘道氏は、市井の景況感についてコメントを求められる。なんと、その取材量は年間300本以上。なぜ、数ある八百屋・スーパーのなかで「スーパーアキダイ」は取材先として選ばれ続けるのか。 ここでは、秋葉氏の著書『いつか小さくても自分の店を持つことが夢だった スーパーアキダイ式経営術』(扶桑社)の一部を抜粋。TV局からの取材が殺到する理由について紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)』、確かにTVが取上げるのは、「スーパーアキダイ」が圧倒的に多い。
・『年間300本! テレビに出る本当の理由  近年、アキダイには年間300本以上のテレビ局の取材が来ています。 いつ頃から取材依頼が舞い込むようになったかははっきりと覚えていませんが、記憶に残っているのは、農林水産省が作成した「野菜高騰」と書かれた資料を手にしたテレビや新聞の記者さんたちが、取材でウチを訪れたのが始まりです。 その資料に目を通して、すぐに気づいたのは書いてある情報が古いことでした。役所のデータは僕らのような小売業の情報を収集・集計して、分析を加えてから公表されるので、どうしてもリアルタイムの情報とはタイムラグが生じてしまう。そうした点を指摘して丁寧に説明すると、記者の方にとても喜んでもらえました。 そのことで信頼を得られたのか、徐々に取材が増え始めて、東日本大震災が起きた2011年を境に、現在のように店の前にテレビ局のクルーが取材の順番待ちの列を作るようになったんです。震災によって日本の物流網が寸断され、野菜や果物の価格が高騰していたのと、原発事故によって福島県産の青果物の風評被害が懸念されていたので、当時、テレビ局のみなさんはこの点について話を聞きたがっていました。 現在では、民放をはじめ、NHKのEテレまで、テレビは地上波の全局がよく取材に来ています。なぜ、アキダイばかりに取材が集中するのか? よく聞かれる質問ですが、決して僕が目立ちたがりというわけではないのです』、「年間300本以上のテレビ局の取材が来ています」、「資料に目を通して、すぐに気づいたのは書いてある情報が古いことでした。役所のデータは僕らのような小売業の情報を収集・集計して、分析を加えてから公表されるので、どうしてもリアルタイムの情報とはタイムラグが生じてしまう。そうした点を指摘して丁寧に説明すると、記者の方にとても喜んでもらえました」、記者に迎合せず、自分の主張を堂々とする姿勢が評価されたのだろう。「2011年を境に、現在のように店の前にテレビ局のクルーが取材の順番待ちの列を作るようになった」、「クルーが取材の順番待ちの列を作るように」とは凄いことだ。
・『番組ディレクターが「今日、これから行ってもいいですか?」  取材を受ける理由は大きく二つあります。 一つめの理由としては、メディアの方々が野菜の価格について誰かに話を聞くにしても、たとえば大手スーパーなどの大企業に取材を申請する際には、通常は企画書を送って、それを精査され、何日か後に取材ができるかどうかの返事が来るようです。でも、アキダイの場合、朝に僕の携帯電話が鳴って「今日、これから行ってもいいですか?」と番組ディレクターの方が直接交渉してくる。よほどの用事が入っていない限り、僕は二つ返事で取材を受けるので、今日アポを取って、今日取材というパターンばかり。 取材に来るテレビはニュースか情報番組が大多数で、彼らは鮮度の高い情報を求めているので、リアルタイムで取材を取り付けることができるアキダイは使い勝手がいいのかもしれません。だから僕のスマホには、テレビ各局の情報番組のディレクターの電話番号がたくさん入っています。当日お昼に「夕方のニュースに間に合わせたい」と電話が入っても、すぐに対応できるのはそのためです。 二つめの理由は、6店舗の八百屋を経営しているとはいえ、ウチが個人店だからでしょう。 通常、テレビ番組がどこかの企業や店に取材する場合、事前にADさんがリサーチを重ねて、ここなら大丈夫だろうと判断して取材先が決まるようです。アキダイは1日の仕入れ量が金額にして800万~1000万円ほどと個人店にしては多く、長年の付き合いで関係を構築した青果市場がいくつかあり、仕入れ値も比較的安定しています。 一般的に、個人店の八百屋さんは、仕入れる量が多くないので価格にばらつきが出てしまう。テレビ局の取材テーマはたいてい野菜の値段についてなので、価格が店の個別事情でばらついていては情報として扱いにくいが、ウチはそうしたことがないので取材しやすいというわけです。 また、ウチが東京の八百屋というのも、テレビ局が取材したがる理由の一つでしょう。日本の首都で人口がもっとも多い東京は物流が多いので、地方のように隣町と野菜の値段が大きく変わるようなことはない。平均的な価格相場の中心になっているから、ウチに取材に来る民放キー局の立ち場で考えると全国放送に適しているのかもしれません』、「大手スーパーなどの大企業に取材を申請する際には、通常は企画書を送って、それを精査され、何日か後に取材ができるかどうかの返事が来るようです。でも、アキダイの場合、朝に僕の携帯電話が鳴って「今日、これから行ってもいいですか?」と番組ディレクターの方が直接交渉してくる。よほどの用事が入っていない限り、僕は二つ返事で取材を受けるので、今日アポを取って、今日取材というパターンばかり。 取材に来るテレビはニュースか情報番組が大多数で、彼らは鮮度の高い情報を求めているので、リアルタイムで取材を取り付けることができるアキダイは使い勝手がいいのかもしれません」、「個人店の八百屋さんは、仕入れる量が多くないので価格にばらつきが出てしまう。テレビ局の取材テーマはたいてい野菜の値段についてなので、価格が店の個別事情でばらついていては情報として扱いにくいが、ウチはそうしたことがないので取材しやすいというわけです」、確かに使い勝手がよさそうだ。
・『毎日市場に行き、店頭に立つから言えること  さらに言うなら、取材に答える僕は経営者ではあるけれど、今も毎朝市場に仕入れに行き、店頭にも立つし、商品を実際に見て、触れて、食べていることも大きい。売上げも数字というデータではなく、現実にお客さんが買っていく姿をこの目で見ているので、お客さんの気持ちがわかるし、取材で仕入れ値を聞かれてもすぐに答えられる。自分で言うのも何ですが、この他にも経営状況や従業員のことも把握しているし、経営者の立場で受け答えもできれば、経営者目線も消費者目線も持ち併せている……等々、引き出しが多いところがお声がけいただいている理由なのかもしれません。 関西や九州から東京に転勤してきたディレクターさんの中には、「『スーパー関係の取材で困ったら、秋葉社長は信用できるんで電話してみな』とプロデューサーに言われて、連絡しました」という人も何人かいました。とはいえ、信頼されているということは、当然、責任も生じます。 取材に答えるときに自分の責任と思っているのは、いい加減なことは言わないということ。 アキダイはいくつかの市場とお付き合いさせてもらっていて、それぞれの市場は個々の産地からの情報を持っています。そうやって貴重な情報を入手するラインがいくつもあるおかげで、産地の生産者も僕のことを知ってくれている。 だから、生産者は市場の売り子さんを介して、たとえば「洪水の影響でどの程度の被害が出たか」「大雪で今後どれくらい出荷が落ち込む見通しか」といったリアルタイムの情報を提供してくれるし、何かあれば写真をスマホに送ってきてくれることもあります。 2016年8月、北海道に1週間で三つの台風が上陸し、道東が豪雨に襲われたときも、多くの畑が冠水し、プカプカ浮いた玉ねぎが流されていく様子を撮った動画を送ってくれました。それを知ったテレビ局のディレクターにこの動画データを貸してくれと頼まれて、その日のうちにニュースで映像が放送されたのです。報道は早い者勝ちで、マスコミ各社が競争しているので、北海道に画を撮りに行っていたのでは遅すぎますからね。 こうしたことは自分の役割だと思っているんです。生産者も産地の惨状を伝えたいけれど、どう発信していいかわからない……。だから、僕はその橋渡し役を務めたい。 たとえば、豊作で生産過剰になっていたら、商品を無駄にしないために少しでも消費したいで、ウチで「今、安いからお買い得ですよ!」と一所懸命売るわけです。大したきっかけで取材を受け始めたわけじゃないのですが、多くの取材を通して産地の事情や生産者の気持ちがわかるようになったのは、僕にとっても大きな財産になっています』、「今も毎朝市場に仕入れに行き、店頭にも立つし、商品を実際に見て、触れて、食べていることも大きい。売上げも数字というデータではなく、現実にお客さんが買っていく姿をこの目で見ているので、お客さんの気持ちがわかるし、取材で仕入れ値を聞かれてもすぐに答えられる」、「多くの取材を通して産地の事情や生産者の気持ちがわかるようになったのは、僕にとっても大きな財産になっています」、その通りだろう。
・『テレビ出演はすべてノーギャラ  店頭での取材の収録が終わり、オンエアの映像でテレビ画面の中の自分を見ると、すごく新鮮でワクワクするというのも本音です。取材にきちんと答えられていれば、それは僕の商品知識がしっかりしている証でもありますから。 取材を通して、いわば自分で自分をテストしているようなものです。普段はこうした商品知識を、お客さんに品質のいい野菜や果物を美味しく食べてもらい、喜んでもらうために役立てていますが、取材では僕の知識が正しくてタイムリーな報道に繋がる。アキダイのお客さんの役に立つことが嬉しいのと同じくらい、メディアのみなさんのお役に立てることも嬉しいんです。 ちなみに取材はすべてノーギャラで、一銭ももらったことはありません。アキダイという店の名前はずいぶん知名度が上がりましたが、僕がテレビに出たくらいで店の売上げが増えるなどということはない。八百屋という商売はお客さんの日々の買い物によって成り立っているので、少しくらい名前が売れたから業績が上がるほど甘くはない。 それでも取材を受けるのは、困っている人がいたら放っておけない性分だから。テレビ局のディレクターさんが僕を頼りにして取材を申し入れてきたのに、断ったら困るでしょう。だから、ノーギャラでも何の不満もありません。誰だって街で人に道を聞かれたら教えてあげますよね。そのときにお金なんて要求しませんよね。僕からすれば、テレビの取材も一緒。 前にも述べたように、これは人のためというより自分のため。仮に、僕が困っている人を放っておいたら、その後、「あの人どうなったかな?」って気になってしょうがない。そんなふうに気を揉むのが嫌なんです。 それと、これは僕が“ブーメランの法則”と呼んでいるんですけれど、人にいいことをすると、いつか巡りめぐって自分に返ってくるような気がする。それを見込んで困っている人を助けているわけではないし、たとえ見返りがなくても、僕は放っておけないんでしょうね。 【前編を読む】「『儲かっているでしょ?』なんて言われますが…」TV番組でおなじみ“スーパーアキダイ”社長の“意外な実生活”』、「僕がテレビに出たくらいで店の売上げが増えるなどということはない。八百屋という商売はお客さんの日々の買い物によって成り立っているので、少しくらい名前が売れたから業績が上がるほど甘くはない。 それでも取材を受けるのは、困っている人がいたら放っておけない性分だから。テレビ局のディレクターさんが僕を頼りにして取材を申し入れてきたのに、断ったら困るでしょう。だから、ノーギャラでも何の不満もありません」、「取材を受けるのは、困っている人がいたら放っておけない性分だから」、なかなか感心な心構えだ。

次に、昨年6月15日付け東洋経済オンライン「「無印良品」にセブンやZOZO元幹部が集まる事情 2月以降、外部から執行役員を新たに5人採用」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/596482
・『外からの風は、独特の世界観を持つ無印にどんな化学反応をもたらすのか。 「無印良品」を運営する良品計画が今年2月以降、セブン-イレブン・ジャパンやZOZOなど外部から、6月14日時点で5人の執行役員を採用していたことがわかった。 新たに役員に就いたのは、セブン-イレブン・ジャパンで商品本部長などを務めた高橋広隆氏、ゼネラル・エレクトリック日本法人などでの勤務経歴がある辻祥雅氏、コンサルや民泊サイト「Airbnb」日本法人での経歴を持つ長田英知氏、「ZOZOTOWN」を運営するZOZOの元執行役員の久保田竜弥氏と宮澤高浩氏。 5人が加わったことにより、良品計画の執行役員は取締役兼務者も含めて30人体制となった』、興味深そうだ。
・『役員の3割近くが外部出身組に  良品計画では2021年9月、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングで過去に副社長などを歴任した堂前宣夫氏が、同社初の外部出身社長に就任。その新体制発足時にも、堂前氏と同じファストリで上席執行役員を務めた横濱潤氏ら3人の外部出身者を役員に迎えている。 高橋氏ら新役員に託す担当業務もすでに決まっており、30人の執行役員のうち、3割近くが直近1年の間に外部から採用してきた人材だ。 西友のPB(プライベートブランド)から派生した良品計画では従来、西友出身者や良品計画の生え抜き社員が順当に役員に就くケースが多かった。それが今、外部人材の登用にここまで力を入れるのはなぜなのか。) 今回の役員人事の意図について、良品計画は「人材のプロフェッショナル化を進めるため、外部人材の積極的な採用を行っている。内部人材と外部人材が密度濃く一緒に仕事をして、相乗効果を生んでいきたい」と説明する。 2021年7月、同社は堂前社長が中心となって策定した中期経営計画を公表している。無印の店舗で実現したい具体的な事業イメージとともに、「2030年に売上高3兆円」などの数値目標を設定。それらを達成するうえで土台となる組織のあり方に関しては、「自律」や「プロ化」といった言葉をたびたび用いて、人材育成を強化する方針を掲げていた。 中計では、各店舗が地域の特産品を商品化したり、地域住民の困りごとを解決したりする、“地域密着型の個店経営”を目標に据える。自分事として地域の課題を考え、率先して行動に移せるような店長やスタッフで構成された店舗を目指す、ということだ。 その実現に当たっては、常日頃からインフラ整備や商品の開発・投入などの面で的確な支援を行えるよう、本部側の体制強化も不可欠となる。商品計画やデジタルなど各分野の専門性をいっそう高めるため、中計では本部人員の約3割に当たる200人を順次社外から採用する方針を明記している』、「30人の執行役員のうち、3割近くが直近1年の間に外部から採用してきた人材だ」、「「人材のプロフェッショナル化を進めるため、外部人材の積極的な採用を行っている。内部人材と外部人材が密度濃く一緒に仕事をして、相乗効果を生んでいきたい」と説明する」、「各分野の専門性をいっそう高めるため、中計では本部人員の約3割に当たる200人を順次社外から採用する方針を明記」、「社長」自身も「外部」出身と、ずいぶんオープンな組織のようだ。
・『ZOZO出身役員の下でEC強化へ  外部人材の採用強化は、社員の意識改革を促す狙いもある。2021年10月に東洋経済が行ったインタビューで堂前社長は次のように語っていた。「(2019年に)無印に入社したとき、思った以上にトップダウン型の組織風土で、自律型の組織に変えなければと思った。力がある人に(外部から)入ってもらい、切磋琢磨してチームを強くすることが必要だ」。 長年小売業界をウォッチしている市場関係者も「無印は会社の世界観が好きで入社する社員が多い。一枚岩になれる強さはある半面、草食系の“仲良しクラブ”になりがちで、激しい競争に勝ち残ることは難しい」と、同社固有の課題を指摘する。社外からプロ人材を多数登用することにより、組織風土も一気に変革が進みそうだ。 今後は新たに就任した役員らの知見を取り入れ、事業課題や成長領域のテコ入れを一段と進める構えだ。 ZOZO出身の役員のうち、久保田氏はITサービス部門を、宮澤氏はEC(ネット通販)・デジタルサービス部門を担当する。両者はともにZOZOで子会社社長を長年務めるなど、急拡大するECビジネスの最前線においてサービス運営や技術開発に携わった実績を持つ。) 無印はほかの小売企業と同様、自社サイトを軸にECへ注力してきたが、サイトの利便性などが課題で成長が遅れていた。コロナ禍が始まった当初、巣ごもりで自社ECへの注文が殺到した際には、出荷作業が間に合わず配送の大幅な遅延が発生。物流インフラの面でも体制の脆弱さが露呈していた。 今年4月に行われた決算会見で堂前社長は「懸念はデジタルだが、(自社ECの)売り場としての整備も進み、これから売り上げが増えていくと思う。人材の体制も十分になりつつある」と言及している。 久保田氏と宮澤氏がZOZOで培ったノウハウも注入しながら、サイトの購買利便性を高めるための機能強化やシステム改修などを急ぐとみられる』、「無印は会社の世界観が好きで入社する社員が多い。一枚岩になれる強さはある半面、草食系の“仲良しクラブ”になりがちで、激しい競争に勝ち残ることは難しい」、しかし、「社外からプロ人材を多数登用することにより、組織風土も一気に変革が進みそうだ」、「久保田氏と宮澤氏がZOZOで培ったノウハウも注入しながら、サイトの購買利便性を高めるための機能強化やシステム改修などを急ぐとみられる」、なるほど。
・『セブンプレミアムでの知見を食品に  セブン-イレブン・ジャパン出身の高橋氏は、食品部門を担当する。同氏は商品本部長として、国内最大のPB(プライベートブランド)である「セブンプレミアム」の開発などで陣頭指揮を執った経験も持つ人物だ。 良品計画の売り上げの約1割を占める食品は、顧客の来店頻度を高める効果も期待でき、同社が近年とくに力を注ぐ分野。実際、この3年で食品カテゴリの売り上げは2倍近くに跳ね上がっている。 堂前社長も「今まではレトルトカレーやバウムクーヘンが食品の中心になっていたが、これ以外で柱となる商品を増やしたい」と意気込んでいた。 セブンプレミアムと言えば、製造元の食品メーカーなどとの密な協業体制で知られ、価格よりも品質に重点を置いた商品戦略で他社のPBと一線を画す。その開発を率いた高橋氏の知見を取り入れることで、食品の売り上げ拡大へ弾みをつける狙いだろう。 足元の業績に目を向けると、堂前社長にとって就任1年目の今2022年8月期は、厳しい情勢を強いられている。売上高の4割近くを占める衣服では商品施策が外れたことで値引き処分が増え、利益率が悪化。中国事業も上海ロックダウンなどの打撃を受けた。4月には期初に出した通期の業績予想を下方修正し、前期比で増収減益となる見込みだ。 外部からの新しい風で社内に変化を起こせるか。人材交流の成果が本格的に現れてくる来期以降、堂前体制の真価が問われることになる』、将来への布石は着実に打っているので、今後の展開が楽しみだ。

第三に、本年4月28日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「イオンが「いなげや」を子会社化する3つの狙い、減益が続く事業を拡大する裏事情」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/322292
・『イオンが食品スーパーの「いなげや」を子会社化すると発表しました。しかしイオンの食品スーパー部門における営業利益は2年連続で減益し「ほぼ半減」状態です。なぜ、利益が減る事業を拡大するのでしょうか。その裏には3つの狙いがあるのです』、興味深そうだ。
・イオンがいなげやを子会社化 スーパー業界に激震  イオンが首都圏の食品スーパー「いなげや」を子会社化すると発表しました。現在の出資比率の17%を今年11月をめどに51%の過半数に引き上げたうえで、最終的には同じイオン傘下のユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(USMH)に経営統合する方針です。 イオン傘下の食品スーパー部門は売上高に相当する営業収益が約2兆6400億円と、国内最大です。USMHに参加するマルエツ、カスミ、マックスバリュ関東に加えて、マックスバリュ東海、中四国を地盤とするフジ、旧ダイエーの店舗や、小型スーパーのまいばすけっとなど、合計49社で構成されるのですが、今回のいなげやで50社目のメンバーが加わるわけです。 いなげやがイオンの連結子会社になる理由は、単独での成長に限界を感じたからでしょう。 歴史的経緯としては1989年のバブル当時、不動産大手の秀和に株式を買い占められる事件が起きました。バブル崩壊後、秀和の経営が行き詰まったこともあり2002年に秀和の株式をイオンが引き取り、業務提携が始まります。 ただ、それはあくまで資本問題の解決が主目的であり、その後の20年間、経営としては首都圏の独立したスーパーとしての成長を目指してきました。しかし、コロナ禍の発生、諸物価の高騰、DXへの対応など単独では解決が難しい経営環境に直面して今回の決断に至ったものと考えられます。 いなげや側の事情はこのように推察できるのですが、では、イオンの側の事情はどうでしょうか?』、「2002年に秀和の株式をイオンが引き取り、業務提携が始まります。 ただ、それはあくまで資本問題の解決が主目的であり、その後の20年間、経営としては首都圏の独立したスーパーとしての成長を目指してきました」、「コロナ禍の発生、諸物価の高騰、DXへの対応など単独では解決が難しい経営環境に直面して今回の決断に至ったものと考えられます」、なるほど。
・『イオンの食品スーパー部門は2年連続で減益、ほぼ半減に  実は、イオンの2023年2月期の本決算を眺めると食品スーパー部門は2年連続して営業利益が減り続けています。2年前の営業利益は462億円だったのですが、今期が228億円ですから利益は2年でほぼ半減。 いなげやと同じくコロナ禍、物価高騰、DX化への投資負担増など経営環境の悪化はイオンの食品スーパー部門にも等しく打撃を与えているのです。 ここで気になるのは、なぜイオンが減益の続く事業の規模を拡大しているのかということです。 経営理論としては利益が減る事業を拡大するのはあまり良い手には見えません。しかし、戦略としてこのような規模拡大が正しい打ち手になる場合が3つあります。 おそらくイオンの経営陣はこれから解説する「3つの逆手定石」を意識しているのでしょう。順に説明していきたいと思います』、「3つの逆手定石」とは何なのだろう。
・『イオンの強みは子会社の成功を全体に還元できること  減益部門の規模拡大が経営戦略的に正しい場合の一つ目の条件は「全体としては苦境だが、その中にうまくやっている地域や子会社があって、その成功を全体に移植できる場合」です。 イオンの食品スーパーが傘下に50社あるということは、言い換えると50種類の実験ができるわけで、その中で成功している戦略やカイゼン施策を部分から全体に移し続けていけば、やがて全体も高収益になっていくはずです。 イオンのスーパー事業にはたとえば「コンビニキラー」と呼ばれる“まいばすけっと”があります。私の住んでいる東京都新宿区には「コンビニと同じくらいの密度でお店があるのではないか」と思えるほど、たくさんのまいばすけっとがあります。 近くにあって便利なうえに、コンビニではなくスーパーの価格で安く買い物ができますから住民としては使いやすい。コンビニの客を奪うことからコンビニキラーと呼ばれるのですが、このやり方が首都圏で通用するのであれば、全国の同じような事情の地域に同じように出店していくことで全国のコンビニの顧客を奪えるかもしれません。 また今期の営業減益の要因でみると旧ダイエー、カスミ、マルエツ、マックスバリュ西日本、マックスバリュ東海などが軒並み営業利益を減らしているのですが、中四国のフジは営業増益に貢献しています。 このように規模が大きいことを活用して、一部の成功を全体へと拡大していくことができれば、減益下での規模の拡大は経営戦略として成立します。これが一つ目の条件です』、「イオンの食品スーパーが傘下に50社あるということは、言い換えると50種類の実験ができるわけで、その中で成功している戦略やカイゼン施策を部分から全体に移し続けていけば、やがて全体も高収益になっていくはずです」、その通りなのだろう。 
・『DX投資は大規模スーパーほどメリットが大きい  二つ目の条件は、共通して使える大規模投資が必要なケースです。スーパー業界が直面する課題にDXがありますが、このDX投資は共通化によるプラスが大きく見込める投資項目の一つで、かつ規模の効果が効く項目です。 食品スーパー部門では多くのオペレーションは人力に頼る必要があり、規模が大きくなると逆に営業経費がかさむというデメリットも大きかったものです。しかしDXでの自動化が進めば進むほど、規模は利益につながります。 イオングループで面白いと思うのは、ネットスーパーへの進出にあたりイギリスのオカドと提携している点です。オカドはアマゾンの倉庫と同じようにロボットを多く活用したやり方で、ネットスーパーのオペレーションの自動化を実現しています。 オカドがこの先、どこまでイオングループのネットスーパー事業をけん引していくのかは、私には未知数です。しかし、経営陣はすでに成功の感触をもっているのかもしれません。 そうだとすればリアルとネットスーパー双方の営業エリアを拡大すれば拡大するほど、将来の利益はプラスになっていくわけですから、ここにきてイオンがさらに規模を拡大する意味は出てきます。これが逆手定石の2つ目の条件です』、「スーパー業界が直面する課題にDXがありますが、このDX投資は共通化によるプラスが大きく見込める投資項目の一つで、かつ規模の効果が効く項目です」、「ネットスーパーへの進出にあたりイギリスのオカドと提携している点です。オカドはアマゾンの倉庫と同じようにロボットを多く活用したやり方で、ネットスーパーのオペレーションの自動化を実現しています。 オカドがこの先、どこまでイオングループのネットスーパー事業をけん引していくのかは、私には未知数です。しかし、経営陣はすでに成功の感触をもっているのかもしれません。 そうだとすればリアルとネットスーパー双方の営業エリアを拡大すれば拡大するほど、将来の利益はプラスになっていくわけですから、ここにきてイオンがさらに規模を拡大する意味は出てきます」、なるほど。
・『イオンは赤字要因縮小を予想しているのではないか  そして3つ目はこれまでの赤字要因の縮小が確実に見込める場合です。イオンの食品スーパー部門が減益傾向にある中で、その赤字要因には変化が起きています。 イオンの食品スーパー部門の状況をシンプルにまとめると、客数は減少ないし停滞する中で、客単価が増加してその減少を補っています。そしてその客単価増加の武器になっているのが低価格のプライベートブランド(以下PB)である「トップバリュ」の売り上げです。直近では前年同期比で二桁も増加しています。 仮に客数の減少がコロナ禍での必然だったとすれば、そのマイナス要因はアフターコロナに突入する今年度以降、回復傾向になるでしょう。 値上げラッシュによって消費者の財布のひもが固くなるのは小売業全体で見ればマイナス要因ですが、低価格のPBを持つイオンではプラス要因になっている。つまり値上げが続いたせいで消費者はイオンを選ぶように状況が変わってきた。その最大の武器がトップバリュではないかということです。 これまで日本では消費者はプライべートブランドを一段低く見て、基本的にはナショナルブランドを好んで購入する傾向がありました。まだそのナショナルブランド信仰自体は揺らいではいないのですが、物価高騰が引き金となったことでプライベートブランドの売上比率は年々上昇しています。 小売業からみればプライベートブランドの方が当然利益率が高いため、このような変化も黒字増加につながります。プライベートブランドに関しては、コンビニ最大手のセブンイレブンが先行していて、売り場のかなりの部分をプライベートブランドが占めるようになってきています。それと同じ変化がイオンの売り場に起きると経営陣が確信すれば、規模の拡大戦略にゴーサインが出るようになるでしょう。これが3つ目の定石です。 そしてもうひとつ、これとは別の戦略定石があります。これら3つの要因がいずれ後からついてくるであろうと想定される場合にも、先物買いの形で困難に直面する中堅スーパーを先に経営統合していくのが正しい戦略です。 イオンの食品スーパー部門拡大戦略が、これらの戦略定石のどの部分に確信をもって進められているのかはイオン側が詳細に語ることはないでしょう。 しかし、日本の小売業は長らく非効率な構造が続いていたことから、欧米と比較してなかなか規模が大きくならないままここまで来ていました。 今回、イオンがまた頭一つ抜き出るところまできたということは、今回書いたような前提条件の変化を意味するのかもしれません。いよいよスーパーという日本の小売流通の本丸にも大きな変化が訪れそうです』、「客単価増加の武器になっているのが低価格のプライベートブランド(以下PB)である「トップバリュ」の売り上げです。直近では前年同期比で二桁も増加しています。 仮に客数の減少がコロナ禍での必然だったとすれば、そのマイナス要因はアフターコロナに突入する今年度以降、回復傾向になるでしょう。 値上げラッシュによって消費者の財布のひもが固くなるのは小売業全体で見ればマイナス要因ですが、低価格のPBを持つイオンではプラス要因になっている。つまり値上げが続いたせいで消費者はイオンを選ぶように状況が変わってきた。その最大の武器がトップバリュではないかということです」、「これら3つの要因がいずれ後からついてくるであろうと想定される場合にも、先物買いの形で困難に直面する中堅スーパーを先に経営統合していくのが正しい戦略です」、「今回、イオンがまた頭一つ抜き出るところまできたということは、今回書いたような前提条件の変化を意味するのかもしれません。いよいよスーパーという日本の小売流通の本丸にも大きな変化が訪れそうです」、「イオン」の今後が要注目だ。 
タグ:「30人の執行役員のうち、3割近くが直近1年の間に外部から採用してきた人材だ」、「「人材のプロフェッショナル化を進めるため、外部人材の積極的な採用を行っている。内部人材と外部人材が密度濃く一緒に仕事をして、相乗効果を生んでいきたい」と説明する」、「各分野の専門性をいっそう高めるため、中計では本部人員の約3割に当たる200人を順次社外から採用する方針を明記」、「社長」自身も「外部」出身と、ずいぶんオープンな組織のようだ。 東洋経済オンライン「「無印良品」にセブンやZOZO元幹部が集まる事情 2月以降、外部から執行役員を新たに5人採用」 「僕がテレビに出たくらいで店の売上げが増えるなどということはない。八百屋という商売はお客さんの日々の買い物によって成り立っているので、少しくらい名前が売れたから業績が上がるほど甘くはない。 それでも取材を受けるのは、困っている人がいたら放っておけない性分だから。テレビ局のディレクターさんが僕を頼りにして取材を申し入れてきたのに、断ったら困るでしょう。だから、ノーギャラでも何の不満もありません」、「取材を受けるのは、困っている人がいたら放っておけない性分だから」、なかなか感心な心構えだ。 「今も毎朝市場に仕入れに行き、店頭にも立つし、商品を実際に見て、触れて、食べていることも大きい。売上げも数字というデータではなく、現実にお客さんが買っていく姿をこの目で見ているので、お客さんの気持ちがわかるし、取材で仕入れ値を聞かれてもすぐに答えられる」、「多くの取材を通して産地の事情や生産者の気持ちがわかるようになったのは、僕にとっても大きな財産になっています」、その通りだろう。 取材に来るテレビはニュースか情報番組が大多数で、彼らは鮮度の高い情報を求めているので、リアルタイムで取材を取り付けることができるアキダイは使い勝手がいいのかもしれません」、「個人店の八百屋さんは、仕入れる量が多くないので価格にばらつきが出てしまう。テレビ局の取材テーマはたいてい野菜の値段についてなので、価格が店の個別事情でばらついていては情報として扱いにくいが、ウチはそうしたことがないので取材しやすいというわけです」、確かに使い勝手がよさそうだ。 「大手スーパーなどの大企業に取材を申請する際には、通常は企画書を送って、それを精査され、何日か後に取材ができるかどうかの返事が来るようです。でも、アキダイの場合、朝に僕の携帯電話が鳴って「今日、これから行ってもいいですか?」と番組ディレクターの方が直接交渉してくる。よほどの用事が入っていない限り、僕は二つ返事で取材を受けるので、今日アポを取って、今日取材というパターンばかり。 「2011年を境に、現在のように店の前にテレビ局のクルーが取材の順番待ちの列を作るようになった」、「クルーが取材の順番待ちの列を作るように」とは凄いことだ。 「年間300本以上のテレビ局の取材が来ています」、「資料に目を通して、すぐに気づいたのは書いてある情報が古いことでした。役所のデータは僕らのような小売業の情報を収集・集計して、分析を加えてから公表されるので、どうしてもリアルタイムの情報とはタイムラグが生じてしまう。そうした点を指摘して丁寧に説明すると、記者の方にとても喜んでもらえました」、記者に迎合せず、自分の主張を堂々とする姿勢が評価されたのだろう。 確かにTVが取上げるのは、「スーパーアキダイ」が圧倒的に多い。 文春オンライン「年間300本以上の取材に対応!? 各局のニュース番組が「スーパーアキダイ」を取材し続ける“納得の理由” 『いつか小さくても自分の店を持つことが夢だった スーパーアキダイ式経営術』より #2」 将来への布石は着実に打っているので、今後の展開が楽しみだ。 「無印は会社の世界観が好きで入社する社員が多い。一枚岩になれる強さはある半面、草食系の“仲良しクラブ”になりがちで、激しい競争に勝ち残ることは難しい」、しかし、「社外からプロ人材を多数登用することにより、組織風土も一気に変革が進みそうだ」、「久保田氏と宮澤氏がZOZOで培ったノウハウも注入しながら、サイトの購買利便性を高めるための機能強化やシステム改修などを急ぐとみられる」、なるほど。 小売業(一般) (その7)(年間300本以上の取材に対応!? 各局のニュース番組が「スーパーアキダイ」を取材し続ける“納得の理由” 『いつか小さくても自分の店を持つことが夢だった スーパーアキダイ式経営術』より #2、「無印良品」にセブンやZOZO元幹部が集まる事情 2月以降 外部から執行役員を新たに5人採用、イオンが「いなげや」を子会社化する3つの狙い 減益が続く事業を拡大する裏事情) ダイヤモンド・オンライン 鈴木貴博氏による「イオンが「いなげや」を子会社化する3つの狙い、減益が続く事業を拡大する裏事情」 「2002年に秀和の株式をイオンが引き取り、業務提携が始まります。 ただ、それはあくまで資本問題の解決が主目的であり、その後の20年間、経営としては首都圏の独立したスーパーとしての成長を目指してきました」、「コロナ禍の発生、諸物価の高騰、DXへの対応など単独では解決が難しい経営環境に直面して今回の決断に至ったものと考えられます」、なるほど。 「3つの逆手定石」とは何なのだろう。 「イオンの食品スーパーが傘下に50社あるということは、言い換えると50種類の実験ができるわけで、その中で成功している戦略やカイゼン施策を部分から全体に移し続けていけば、やがて全体も高収益になっていくはずです」、その通りなのだろう 「スーパー業界が直面する課題にDXがありますが、このDX投資は共通化によるプラスが大きく見込める投資項目の一つで、かつ規模の効果が効く項目です」、「ネットスーパーへの進出にあたりイギリスのオカドと提携している点です。オカドはアマゾンの倉庫と同じようにロボットを多く活用したやり方で、ネットスーパーのオペレーションの自動化を実現しています。 オカドがこの先、どこまでイオングループのネットスーパー事業をけん引していくのかは、私には未知数です。しかし、経営陣はすでに成功の感触をもっているのかもしれません。 そうだとすればリアルとネットスーパー双方の営業エリアを拡大すれば拡大するほど、将来の利益はプラスになっていくわけですから、ここにきてイオンがさらに規模を拡大する意味は出てきます」、なるほど。 「客単価増加の武器になっているのが低価格のプライベートブランド(以下PB)である「トップバリュ」の売り上げです。直近では前年同期比で二桁も増加しています。 仮に客数の減少がコロナ禍での必然だったとすれば、そのマイナス要因はアフターコロナに突入する今年度以降、回復傾向になるでしょう。 値上げラッシュによって消費者の財布のひもが固くなるのは小売業全体で見ればマイナス要因ですが、低価格のPBを持つイオンではプラス要因になっている。つまり値上げが続いたせいで消費者はイオンを選ぶように状況が変わってきた。その最大の 武器がトップバリュではないかということです」、「これら3つの要因がいずれ後からついてくるであろうと想定される場合にも、先物買いの形で困難に直面する中堅スーパーを先に経営統合していくのが正しい戦略です」、「今回、イオンがまた頭一つ抜き出るところまできたということは、今回書いたような前提条件の変化を意味するのかもしれません。いよいよスーパーという日本の小売流通の本丸にも大きな変化が訪れそうです」、「イオン」の今後が要注目だ。
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