SSブログ

カジノ解禁(その9)(IR汚職事件でアメリカ系企業の動きを黙認する検察の不可解、IR汚職~秋元議員をバックアップしていた大物議員の名、「秋元議員逮捕」はカジノ利権の末端の“小事”に過ぎない) [国内政治]

カジノ解禁については、昨年11月11日に取上げた。今日は、(その9)(IR汚職事件でアメリカ系企業の動きを黙認する検察の不可解、IR汚職~秋元議員をバックアップしていた大物議員の名、「秋元議員逮捕」はカジノ利権の末端の“小事”に過ぎない)である。

ずは、元イラン大使で外交評論家の孫崎享氏が本年1月10日付け日刊ゲンダイに掲載した「IR汚職事件でアメリカ系企業の動きを黙認する検察の不可解」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/267346
・『カジノを含むIR事業をめぐる汚職事件は拡大する一方だ。元日には、東京地検特捜部に逮捕された秋元衆院議員に現金を渡したとされる中国企業側が、特捜部の調べに対し、自民党などに属する他の国会議員5人の名前を挙げ、「それぞれに100万円前後の現金を配った」と供述した、と報じられた。 カジノでは、たまたま勝つ人もいるだろう。しかし、最終的には胴元が儲かるシステムだ。つまり、カジノは利用者が負け、彼らを不幸にする前提で成り立つ産業である。人の不幸を前提にする事業を国が推進するべきではない。まして、それに関連する贈収賄があるなら、厳しく追及するのは当然だろう。 一連の動きの中で興味深い報道があった。秋元議員が、朝日新聞の取材に対し、「中国企業なんて相手にしてないよ、こっちは。正直言って米国の企業の方がたくさん来てる」と答えていたというものだ。まさに、これが「核心」であろう』、「中国企業」は脇役に過ぎず、本命はやはり「米国の企業」のようだ。
・『カジノを最初に許可する都市は大阪とみられており、カジノ業界の働きかけも活発だった。 米MGMリゾーツ・インターナショナルはオリックスと共同で取り組むと表明し、米最大手ラスベガス・サンズ、香港企業なども積極的に関与した。産経新聞は<MGM、サンズなどが進出する中国・マカオのIR市場では、2020年以降に各社のカジノ免許が順次失効する。米中対立を背景に、米系企業には免許が再交付されない恐れが指摘され、対日進出意欲を高める一因になっているようだ>と報じた。 こうした状況を考えれば、カジノ参入に最も力を入れているのは米国企業のはずである。 安倍首相が2017年に訪米した際、全米商工会議所との朝食会にトランプ大統領を支援するカジノ企業代表が同席した。この件について、米調査報道専門のニュースサイトは<トランプ大統領が安倍氏に対し、トランプ氏の大口献金者が会長を務めるカジノ運営大手「ラスベガス・サンズ」の日本参入を働きかけていた>と報じた。 さらに週刊文春では<米カジノ大手 安倍政権中枢に「脱法献金」>とも報じている。 検察はなぜ、今回の贈収賄事件で中国企業だけを捜査し、米系企業の動きを黙認しているのか。疑問を持つ国民は少なくない』、「マカオのIR市場では・・・各社のカジノ免許が順次失効・・・米系企業には免許が再交付されない恐れが指摘され、対日進出意欲を高める一因に」、初めて知ったが、「トランプ大統領」まで使って大々的に働きかける筈だ。「検察はなぜ、今回の贈収賄事件で中国企業だけを捜査し、米系企業の動きを黙認しているのか」、その通りだ。

次に、1月20日付けYahooニュースがニッポン放送を転載した「IR汚職~秋元議員をバックアップしていた大物議員の名」を紹介しよう。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200120-00000005-nshaberu-soci&p=1
・『ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月20日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。通常国会が20日に召集されるニュースについて解説した』、「須田」氏の「解説」とは興味深そうだ。
・『通常国会召集  第201国会が20日に召集され、政府与党は2019年度補正予算案と2020年度予算案の早期成立を目指す。一方、野党はIR事業に絡む汚職事件や総理主催の「桜を見る会」の問題を取り上げ、徹底追及する構えである。 飯田)総理は20日に施政方針演説を行いますけれども、内閣最大のチャレンジと位置付ける全世代型社会保障制度改革、年金受給開始の選択肢を75歳に広げるというようなことも明記されています。演説は総花的にいろいろなことを言う、そのなかにはこういうことも入っているようです。 須田)「全世代型社会保障制度の改革」に注目しています。消費税増税は3党合意のなかで5%から10%に上げて、年金・介護・医療にお金を使うということでした。ところが10月1日に増税になったときから、これを待機児童問題の解消と幼児教育の無償化に振り分けるということになった。しかし、これは当初の目的と違うではないかと思ったのですよ。言い換えて全世代型、幼児の方にまで向けるということを意味するのですが、これは国民の了解・合意を取ったのかなと、私は疑問を持っています』、「3党合意」を完全に無視し、目的外に使うとは、安倍首相らしい。
・『「全世代型社会保障制度の改革」が当初の目的と違うところを野党は議論すべきなのだが  (須田)こういう部分に関して、特に旧民主党サイドは「3党合意の精神と違うではないか」と、政策論争を挑んで欲しいと思うのですが、そうはならないでしょうね。やはり「桜を見る会」を再び焼き直して、できるならばIR事業汚職の方で政権追及をするという方向に打って出るのでしょう。桜を見る会に関しても、国会開会を意識したのだと思います。責任の所在を明確にして、とりあえず官僚役人に責任を負わせるというところで、一旦幕を引いてしまいましたからね。 飯田)その文書を破棄したというところですね』、野党ももっとしっかりしてもらいたい。
・『特捜部の関心はパチンコ問題にある  (須田)破棄をするにあたって指揮命令がどういう形であったのか、これは出て来ないのだろうと思います。むしろIR汚職の方をきちんと追及してもらいたいと思うのですが、ここも野党としてはどうなのか。徹底追及ができないのではと思います。そもそも、IR汚職としていますが、結果的にはパチンコ汚職になりそうなのです。 飯田)そっちですか?  須田)この番組でも申し上げたように、秋元司衆議院議員が逮捕された翌日、大手パチンコホールチェーンのガイアが家宅捜索を受けています。やはりパチンコ問題の方に特捜部の関心があるようで、どちらかというと北海道留寿都村を舞台としたIR汚職の方は、目くらましではないかなと思います。むしろ、ここで秋元氏を逮捕して完落ちにさせ、彼も関わっていたパチンコ汚職の方へ、徹底的に捜査の矛先を向けて行きたいのではないでしょうか。 飯田)須田さんが前に指摘されていましたけれども、IR議連とパチンコ議連はほとんど重なっているところが多いとなると、そちらの方面の人たちへ広がる可能性がある』、検察としても、IRを突き詰めていくと、米国企業に突き当たるので、避けたのだろう。
・『パチスロの自主規制緩和の裏でパチンコ議連の議員が暗躍  (須田)2018年1月に、パチスロの自主規制が大幅に緩和されています。業界が自主規制していたのですね。 飯田)嗜好習慣が高まり過ぎるということもあって、という話ですね。 須田)よく出る台については、ホールの何%以下に抑えるという自主規制をしていたのです。これは警察の要請に基づいてのことでしたが、この自主規制が解除された。解除するに当たっては、それを警察庁が黙認しています。業界と警察庁の間にパチンコ議連の政治家が入って、警察庁に強烈な働きかけをしたのです。その辺りに特捜部が興味関心を持っているのではないか。2018年ですから、直近の話です。しかもそこで金が動いていたり、警察庁官僚という公務員に対して、特別公務員である国会議員が働きかけをしていたということになれば、これは綺麗な汚職事件につながりますから』、「パチンコ」疑惑も徹底的に解明してほしいが、これでお茶を濁されてはならない。
・『背後でバックアップしていた大物議員は誰なのか  (飯田)人事も含めて権限を持っているとなると、与党になりますか? 野党も含めて広範囲にやるかもしれませんが。 須田)そうですね。その働きかけたキーパーソンが秋元議員です。事務方として動いていた。では、それに誰が指示をしていたのか。背後でバックアップしていた大物議員が誰なのか。ここがポイントですね』、「大物議員は誰なのか」、と期待だけもたせて終わるとは、腹が立つ。

第三に、デモクラシータイムス同人・元朝日新聞編集委員の山田厚史氏が1月27日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「「秋元議員逮捕」はカジノ利権の末端の“小事”に過ぎない」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/226741
・『秋元議員らへの金のバラマキは「カジノの闇」の片隅の出来事  通常国会が始まり、「カジノ=統合型リゾート(IR)問題」は、与野党攻防の焦点だが、なんと情けないことか、という思いが強い。 この国の成長戦略は「賭博」で、人々から巻き上げるテラ銭に自治体や政府・企業が群がろうとしている。 それだけではなく、元内閣府副大臣でIR担当副大臣だった秋元司議員(自民)の贈収賄事件が発覚。秋元議員のほかにも、複数の国会議員に日本への進出を狙ったカジノ関連企業から金が流れていたとされる。 中国企業「500ドットコム」は、秋元議員に前後2回、計500万円を渡し、ほかの国会議員には100万円ずつが配られた疑いがある。 北海道・留寿都村にIR(カジノを核とする複合リゾート施設)を誘致しようと政治家に接近した。 同社は深センでオンラインカジノを営んでいたが、当局の取り締まりが厳しくなり、窮余の一策として国外のリアルなカジノに目をつけた。 カジノを事業化するほどの力はなく、周辺事業で稼ごうと留寿都村を標的にした。 受け取った政治家の脇の甘さには驚く。 「中国企業のカネとは知らなかった」「観光会社からの献金だと認識している」「講演の謝礼として受け取った」など、説明はまちまちだが、いずれもとってつけたようで説得力に欠ける』、「中国企業」といっても、「カジノを事業化するほどの力はなく、周辺事業で稼ごうと留寿都村を標的にした」、大したことはない企業で、「片隅の出来事のようだ」とは言い得て妙だ。
・『大もうけできる利権を得るための投資の一部  ビジネスや事業の進出をめぐって札束が飛び交い政治家が群がることは少なくはないが、この事件を考えるヒントは中国にある。 腐敗・汚職の横行と社会主義市場経済は無関係ではない。 「市場経済」は自由に金もうけをしていいシステムで、政府の統制を意味する「社会主義」と相容れない。それが中国で成功しているのは、社会主義とは、国家の経済への関与、すなわち「許認可」で産業を動かす仕組みになっているからだ。 大事な産業や商売は政府の許可がなければ参入できない。業者の適格性や市場規模を政府が判断し、認可を与える。「お墨付き」を得て初めて市場で自由にもうけることができる。 事業のスタートラインに付く前に「許認可獲得」というハードルがある。 企業にとって大事なのは「役所の認可」で、ハンコに「値段」がつく。賄賂はハンコ代だから、汚職・腐敗がまん延する。 カジノも同じ構造なのだ。限られた業者にしか許可が出ない。権益を得れば大もうけできる。ロビー活動(賄賂?)は投資の一部なのだ。 「500ドットコム」から100万円を受け取りながら政治資金報告書に記載しなかったことを問われた日本維新の会の下地幹郎議員(衆議院沖縄比例区)は、「私だけのことか」と居直った。 政治資金報告書の不記載を修正するのは大勢の議員がしている、というが、「カネを受け取って知らんふりをしているのは私だけじゃない」と言っているようにも聞こえた』、その通りだろう。早く全貌を明らかにしてもらいたいものだ。
・『秋元議員も逮捕直前にインタビューで「オレだけじゃない」と言っていた。 そうだろう。カジノビジネスでは政治家に現ナマ攻勢をかけることは当たり前の感覚なのだ。過疎の村を舞台に、中国企業が国会議員にカネをばらまいたことは、「カジノの闇」の片隅の出来事だ。 本筋は日米に横たわる利権構造にある。 アメリカの調査報道メディア「プロパブリカ」は、トランプ大統領とカジノ業界のつながりを暴いた記事にカジノ大手のラスベガス・サンズが出したコメントを以下のように紹介している。 「ゲーミング業界は長い間、日本市場に参入する機会を求めていた。ゲーミング会社はそれを実行すべく多大な資金を費やしており、ラスベガス・サンズも例外ではない」 サンズのアデルソン会長はトランプ大統領の最大の資金提供者として有名だ。 トランプ大統領が2017 年2月の日米首脳会談の後、フロリダの別荘で安倍首相に、カジノ業者の名を示し、日本でのビジネスを認めるよう要請したことは本コラム「世界かわら版」(2019年11月8日付)でも書いた。 アデルソン氏が日本を訪れ、政治家や自治体関係者と頻繁に会っていることは周知の事実だ。 政府が決めようとしたカジノ床面積の上限を撤廃させようと動いたのもアデルソン氏 である。(この動きが報じられ批判を受けて、その後、日本政府が「自主的に」上限規制をとりやめ、IR面積に比例する基準に変えた) アメリカでカジノは先住民の「貧困対策」として特別に許可されたものだった。 カジノを中核にする統合型リゾートは砂漠都市ラスベガスが発祥の地だが、味をしめたカジノ業者は東海岸にまで手を広げる。 過当競争になり共倒れという手痛い結果となった。不動産業からカジノに進出し失敗したトランプ氏も、事情は分かっているはずだ』、「本筋は日米に横たわる利権構造にある」、「カジノ床面積の上限を撤廃させようと動いたのもアデルソン氏」、「アデルソン氏」は「トランプ大統領」とのつながりもあって、やはり相当の力を持っているようだ。「アメリカでカジノは先住民の「貧困対策」として特別に許可されたものだった」、あくまでも昔の導入時のことにしても、初めて知った。
・『日本市場をこじ開けた大手カジノ 「当面3カ所」限定で寡占狙う?  「日本進出でカジノ資本が重視したのは過当競争の防止でした。許可する業者を制限し、地域独占を保証する仕組みを求めたのです」 カジノ業界に詳しい有識者の一人は指摘する。 政府が掲げた「大都市圏で2カ所、地方都市で1カ所」という方針はカジノ資本の要請とピタリ一致している。 米国での共倒れの後、成長市場をアジアに求めたカジノ資本は、マカオ、シンガポールで「参入規制」に成功、自らの「枠」を確保した。 マカオは、サンズ、MGMリゾーツインターナショナル、ウィンリゾーツの米国大手3社と中国資本3社。シンガポールはサンズとマレーシアの華人資本ゲンティンが権益を得た。 処女地・日本で「大都市2、地方1」の「3枠」をどこが取るか。ロビー活動が熱を帯びることになった。 政府による昨年の調査では、IR誘致を検討している自治体は8カ所あったが、北海道と千葉市が相次いで「断念」を表明した。「3枠に入るのは難しい」と判断したからだろう。 政府は自治体と運営業者をワンセットで認可する方針だ。北海道は自治体が苫小牧市、業者で意欲を示したのはハードロックカフェという中堅カジノ業者だった。 アメリカのようにカジノの認可が州によって決まるなら、北海道の過疎地でも可能だろう。だが、日本は、政権の成長戦略として位置付けられ中央が決める。 北海道の鈴木直道知事は、菅官房長官の直系で苫小牧は「地方枠1」に入るのではと見られたこともあったが脱落した。 鈴木知事は「環境対策が間に合わない」と断念の理由を語ったが、カジノ業界では「ハードロックカフェでは力不足。ふるい落とされた」と見られている。 日本市場をこじ開けたのはサンズをはじめとする大手カジノ資本だ。ハードロックカフェや中国企業など「便乗組は圏外」ということらしい。 つまり米国の大手カジノは「当面3カ所」に限定させて、寡占体制を確実にし、安値競争を仕掛けそうなライバルを締め出したのだ』、「米国の大手カジノ」の手回しの良さには、驚く他ない。
・『受け皿になったIR議連 注目は岩屋議連幹事長の“職務権限”  誰がそんなルールを決めたのか。 カジノ資本は他国で制度を作る権限はない。動いたのは超党派の国会議員による国際観光産業振興議員連盟だった。 通称「IR議連」といわれ、カジノをIRの中核に位置付け、外国から観光客を呼び込み、地域経済の起爆剤にするという。 2010年4月に74人で発足し、今や200人を超える大勢力になっている。 最高顧問に安倍晋三首相や麻生太郎副総理兼財務相らが就いた。その後、国会で追及されて辞任したが、議連は学者や商社、広告代理店などを呼んで勉強会を重ねカジノ推進法案をまとめ、2016年12月の国会で可決した。 今回、「500ドットコム」から100万円前後のカネが流れたとされる5人は、同社がIR参入を目指していた沖縄と北海道の議員やIR議連の幹部だったが、注目すべきは、議連幹事長の岩屋毅議員の名前があがっていることだ。 岩屋氏は、「500ドットコム」の3人の幹部とともに贈賄罪で起訴された北海道観光会社会長から200万円の「寄付」を受けた中村裕之議員(自民)から、そのうちの100万円の「寄付」を受けたとされる。「(中国企業から)金銭を受け取った事実はない」と会見で話したが、関係者の間で「カジノ資本と接点のあるキーマン」とされている。 2018年7月「週刊文春」が、カジノ大手のシーザーズ・エンターテインメントのアドバイザーが作成したという「パーティー券購入リスト」を報じた。 金額が突出していたのが岩屋議員で74万円だった。 日本にカジノ案が浮上したのは1999年、お台場カジノ構想として石原慎太郎都知事が打ち上げたことが発端といわれるが、それ以前から米国のカジノ大手は政治家などに働きかかけていた、という。 「衆議院議員だった鳩山邦男さんが窓口だった時期があり、秘書をしていた岩屋さんがカジノに詳しくなり国会議員になってからは議連作りに汗をかいた」と、鳩山事務所の関係者はいう。 カジノ資本の要望を一番よく知っている人が議連の幹事長を務めている、ということのようだ。 報道によると、東京地検特捜部は秋元議員を贈収賄で起訴する方針だが、国会議員5人の立件は難しいと見ている、という。 秋元議員にはIR担当副大臣として業者に便宜を図る「職務権限」があるが、岩屋議員を含め5人には職務権限がない。だから贈収賄にはならない、という理屈だ。 だが、どうだろう。「カジノ市場開放」を決めたのは役所ではなく、政治家だった。2016年のカジノ推進法案は議員立法である』、「秋元議員」よりも「議連幹事長の岩屋毅議員」の方が、立法過程では「職務権限」がある筈なのに、形式論で野放しとは確かに納得できない。
・『国会に提出される法律は、ほとんどが政府提出、つまり関係省庁で立案される。だが、政府の方針とは異なるような法案は、議員が提出するし審議する。 カジノは賭博であり、刑法で禁止されている。違法である賭博を合法にするカジノ解禁は、従来の政府の方針と違うので議員立法となった。推進母体はIR議連だった。 岩屋幹事長は法案の共同提案者の一人、「産みの親」だ。カジノを含むIRの整備地域を選ぶ基準を示す基本方針の策定に強い影響力を持つ岩屋氏は、秋元議員よりはるかに大きな力を持っている。 「職務権限なし」というのは上っ面だけを見た判断ではないか』、その通りだ。
・『「秋元議員逮捕」は巨悪から目をそらすいけにえ?  アメリカの業界が、長い時間と多額の投資で日本市場をこじ開け、いよいよ果実を手にする時というのが今の構図である。 北海道の過疎の村に進出を狙って「500ドットコム」がカネをばらまいたことは、カジノ狂想曲が巻き起こした末端の騒動で、副大臣になった政治家が業者からカネをかすめ取った情けない悪事にすぎないのだ。 アデルソン会長は、日本で認可を得られれば100億ドル(1兆1000億円)投資する用意がある、という。100億ドルを投資しても回収できる「もうけ」が期待できるからだ。 日本はマカオに次ぐカジノ市場に成長する、という。1兆円の事業ならロビー活動に億単位のカネが投じられてもおかしくない。 秋元議員が受け取った数百万円などと桁の違うカネが、さまざまな姿でカジノ実現に向けてばらまかれているのだろう。 アデルソン氏は、2016年の大統領選で選挙資金として2200万ドル(24億円)を寄付し、大統領就任式には500万ドル(5.5億円)を提供した。 今年の大統領選でも献金を惜しまないだろう。再選されれば首都圏はサンズが認可される、と関係者は見ている。 アメリカでは、政治献金に上限はない。その代わり金額と寄付者の名前を公開することが義務付けられている。だから「アデルソンはトランプ最大のスポンサー」と知られる。 日本はパーティー券を誰がどれだけ買ったかさえ不透明だ。カジノ事業者から政治家がどれだけ金銭的支援を受けているのか、その実態さえ明らかにされていない。 国会は、パーティー券の購入を含め、カジノ資本と利害関係のある企業とのカネのやりとりを透明にする責任がある』、説得力溢れた主張で、全面的に賛成する。
タグ:ニッポン放送 yahooニュース 日刊ゲンダイ 須田慎一郎 ダイヤモンド・オンライン 孫崎享 山田厚史 カジノ解禁 「飯田浩司のOK! Cozy up!」 (その9)(IR汚職事件でアメリカ系企業の動きを黙認する検察の不可解、IR汚職~秋元議員をバックアップしていた大物議員の名、「秋元議員逮捕」はカジノ利権の末端の“小事”に過ぎない) 「IR汚職事件でアメリカ系企業の動きを黙認する検察の不可解」 カジノは利用者が負け、彼らを不幸にする前提で成り立つ産業である。人の不幸を前提にする事業を国が推進するべきではない 中国・マカオのIR市場では、2020年以降に各社のカジノ免許が順次失効する。米中対立を背景に、米系企業には免許が再交付されない恐れが指摘され、対日進出意欲を高める一因になっているようだ 2017年に訪米した際、全米商工会議所との朝食会にトランプ大統領を支援するカジノ企業代表が同席 検察はなぜ、今回の贈収賄事件で中国企業だけを捜査し、米系企業の動きを黙認しているのか。疑問を持つ国民は少なくない 「IR汚職~秋元議員をバックアップしていた大物議員の名」 消費税増税は3党合意 年金・介護・医療にお金を使うということでした これを待機児童問題の解消と幼児教育の無償化に振り分ける 「全世代型社会保障制度の改革」が当初の目的と違うところを野党は議論すべきなのだが 特捜部の関心はパチンコ問題にある 大手パチンコホールチェーンのガイアが家宅捜索 北海道留寿都村を舞台としたIR汚職の方は、目くらましではないか パチスロの自主規制緩和の裏でパチンコ議連の議員が暗躍 背後でバックアップしていた大物議員は誰なのか 「「秋元議員逮捕」はカジノ利権の末端の“小事”に過ぎない」 秋元議員らへの金のバラマキは「カジノの闇」の片隅の出来事 中国企業「500ドットコム」 同社は深センでオンラインカジノを営んでいたが、当局の取り締まりが厳しくなり、窮余の一策として国外のリアルなカジノに目をつけた カジノを事業化するほどの力はなく、周辺事業で稼ごうと留寿都村を標的にした 大もうけできる利権を得るための投資の一部 秋元議員も逮捕直前にインタビューで「オレだけじゃない」と言っていた 本筋は日米に横たわる利権構造にある ゲーミング業界は長い間、日本市場に参入する機会を求めていた。ゲーミング会社はそれを実行すべく多大な資金を費やしており 政府が決めようとしたカジノ床面積の上限を撤廃させようと動いたのもアデルソン氏 である アメリカでカジノは先住民の「貧困対策」として特別に許可されたものだった 日本市場をこじ開けた大手カジノ 米国の大手カジノは「当面3カ所」に限定させて、寡占体制を確実にし、安値競争を仕掛けそうなライバルを締め出したのだ 受け皿になったIR議連 注目は岩屋議連幹事長の“職務権限” 秋元議員にはIR担当副大臣として業者に便宜を図る「職務権限」があるが、岩屋議員を含め5人には職務権限がない。だから贈収賄にはならない、という理屈 カジノを含むIRの整備地域を選ぶ基準を示す基本方針の策定に強い影響力を持つ岩屋氏は、秋元議員よりはるかに大きな力を持っている 「職務権限なし」というのは上っ面だけを見た判断ではないか 「秋元議員逮捕」は巨悪から目をそらすいけにえ? 国会は、パーティー券の購入を含め、カジノ資本と利害関係のある企業とのカネのやりとりを透明にする責任がある
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

東芝問題(その38)(東芝、10年ぶり好決算で「名門復活」は本物か 親子上場解消へ 上場3社を完全子会社化、東芝機械を揺さぶる村上グループの通告 買収防衛策の導入を取締役会で決めるな、東芝子会社で発覚、広がる「架空取引」の波紋 メガバンク系など5社以上が関わった疑い) [企業経営]

東芝問題については、2018年11月24日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その38)(東芝、10年ぶり好決算で「名門復活」は本物か 親子上場解消へ 上場3社を完全子会社化、東芝機械を揺さぶる村上グループの通告 買収防衛策の導入を取締役会で決めるな、東芝子会社で発覚、広がる「架空取引」の波紋 メガバンク系など5社以上が関わった疑い)である。

先ずは、昨年11月14日付け東洋経済オンライン「東芝、10年ぶり好決算で「名門復活」は本物か 親子上場解消へ、上場3社を完全子会社化」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/314246
・『経営再建中の東芝が久々に大型投資に踏み切る。 東芝は11月13日、上場子会社4社のうち3社を完全子会社化すると発表した。総額約2000億円の手元資金を投じてTOB(株式公開買い付け)を実施し、少数株主から株式を取得する。これまでグループ企業の株式売却などで資金を捻出してきた東芝にとって、まとまった額で買収に資金を投じるのは久しぶりのことだ』、どういう事情の変化があったのだろう。
・『生き残りかけ、保有株式を矢継ぎ早に売却  東芝が完全子会社するのは、プラント据え付け工事の東芝プラントシステム(売上高2442億円、営業利益203億円)、半導体製造装置メーカーのニューフレアテクノロジー(売上高578億円、営業利益118億円)、船舶用電機大手の西芝電機(売上高194億円、営業赤字5億円)の3社(いずれも2018年度)。 TOB価格は東芝プラントが1株あたり2670円(13日終値は2701円)、ニューフレアが同1万1900円(同1万1180円)、西芝電機が同240円(同300円)。買い付け期間はいずれも11月14日から12月25日までだ。 東芝は2015年の不正会計や2016年に起きたアメリカの原発事業の巨額損失で経営危機に陥った。生き残り策として上場株式や資産を矢継ぎ早に売却してきた。 昇降機世界大手フィンランド・コネ社の保有株式を2015年に総額約1180億円で売却したほか、グループ会社で測量機器大手トプコン株も約500億円で売却。同じくグループ会社で半導体製造装置を手がける芝浦メカトロニクスの株式も大半を手放した。 最近も保有するIHIやジャパンマテリアル株を次々売却しており、2015年から現在まで上場株式の売却額だけで約2600億円にのぼる。さらには、稼ぎ頭だった半導体メモリー事業を2018年に約2兆3000億円で売却するなど、キャッシュ捻出に奔走してきた。 しかし、今回の上場3社の完全子会社化により、東芝が違うフェーズに入ったことを示した。では今回、2000億円を投じてまで、上場3子会社を買収する必要はあったのだろうか』、これまでは、なりふり構わず売却してきたのが、一転して、購入に転じた理由を知りたいところだ。
・『完全子会社化はガバナンスの問題  東芝の車谷暢昭会長兼CEOは13日の決算説明会で「東芝にとって必要不可欠の3社だから」と繰り返したうえで、「上場子会社の問題は日本の産業界におけるガバナンスの大きなテーマでもある。そういう意味で優先順位が高かった。これだけのキャッシュを使ってM&A案件がほかにあるかというと多くない」と述べた。 そして、「社内の成長分野に投じるにも手順が必要だ。子会社の3社ほど1株利益が上がってシナジーを取れるものはほかにはない。株主にも成果を還元できる。グループ内の自社株買いみたいなものだ」と説明した。 実はこれに先立ち、東芝は10月に社外取締役と海外株主とのグループミーティングを実施し、海外投資家から上場子会社を問題視されていた。ミーティングに出席した、ある海外投資家は「東芝の大きな競合相手である日立は上場子会社を売却し、非常に戦略的に事業を集中するなどリストラクチャリングを行って成果を出してきた。東芝は今のところ劣勢だが、これから日立などにキャッチアップし、さらには追い越していくためにどうするのか」と質問した。 これに対して、社外取締役で取締役会議長の小林喜光氏(三菱ケミカルホールディングス会長)が「日立も上場子会社を今4つまで減らした。東芝も上場子会社の議論は相当今深くやっている」としたうえで、「M&Aはものすごく大」、きなものは別として、それぞれの事業を補完するというレベルではどんどんアグレッシブにやっていきたい。もう心は成長フェーズになった。上場子会社問題、M&Aを含めて分析していく」と応じた。 こうした自信の裏返しともいえるのが、同じ13日に発表した2019年4~9月期決算だ。 「東芝にきてちょうど1年半。上期決算はメモリを除くとここ10年で過去最高益。全セグメントで黒字化して増益となったのはここ10年で初めて。(2020年3月期通期で目標としている)年間1400億円の営業利益に向けて順調な滑り出しだ」 車谷会長がこう語るように、東芝の業績は急回復している。本業の儲けを示す営業利益は前年同期比約7.5倍の520億円と大幅増益を記録。受注案件を精査して赤字プロジェクトが減ったほか、全社的な取り組みである調達改革や構造改革、人員削減などが大きく効いた』、「海外投資家から上場子会社を問題視されていた」こと、さらに上期の好調な決算(営業利益)が理由のようだ。
・『東芝テックの子会社化は見送りに  三井住友銀行出身の車谷会長は2018年4月に東芝の再建を託された。2019年4月から中期経営計画「東芝Nextプラン」をスタートさせ、リストラを主導。6000億円にのぼる大幅増資によって株主となった「モノ言う株主」は車谷会長の手腕を注視していたが、まずは及第点と言えるだろう。 もっとも、東芝がリストラから成長段階に移れるかは未知数だ。車谷会長が以前から高く評価していた上場子会社でPOS大手の東芝テックについて、今回は完全子会社化を見送った。車谷会長は「データ事業で戦略的にどう企業価値を上げていくべきか、さまざまなモデルは検討している。ただそれに必要なお互いの組み方が何か、確信を持てる議論ができていない」と述べるにとどめた。 2019年4~9月期の業績も、営業利益以下をみると、最終損益は1451億円の赤字に転落した。アメリカのLNG事業の売却損892億円のほか、約40%出資する持分投資会社で、半導体メモリ大手のキオクシア(旧東芝メモリ)で613億円の損失を計上したからだ。キオクシアは早期の上場を予定しており、今後東芝が同社株を保有し続けるのか注目される。 目先の業績のV字回復が見えてきたかにみえる東芝だが、日立などライバルに再び追いつくことができるのか。道のりはまだまだ長そうだ』、「最終損益は1451億円の赤字に転落」したのは、これまでの膿を一気に出したためだ。自己資本比率も28.8%とまだまだ低水準のようだ。

次に、本年1月24日付け東洋経済オンライン「東芝機械を揺さぶる村上グループの通告 買収防衛策の導入を取締役会で決めるな」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/326368
・『東芝機械にとって痛恨の一撃となるのか。かつて“村上ファンド”としてニッポン放送株の買収などを手がけた村上世彰氏が、東芝機械に対するTOB(株式公開買い付け)で「妙手」を打ち出した。 TOBを開始した翌日の1月22日、村上氏が実質支配するオフィスサポートがプレスリリースを公表。対抗策である新たな買収防衛策の導入を、東芝機械の取締役会ではなく、臨時株主総会で決めるよう「待った」をかけたのだ。 東芝機械は射出、ダイカストなど成形機が主軸の工作機械メーカー。飯村幸生会長は日本工作機械工業会の会長を務める業界の顔である。2017年に東芝から自己株を取得し東芝グループから離脱。今年4月から社名を「芝浦機械」に変更する予定だが、その最中に新たな大株主からの突き上げを食らった格好だ』、「東芝グループから離脱」したので、「東芝問題」で扱うのは不適切だが、コーポレート・ガバナンスを考える上で、興味深いので、取上げた次第。
・『TOBで約44%の株式取得を目指す  オフィスサポートは現在、同じく村上氏が実質支配するエスグラントコーポレーション、シティインデックスイレブンスの3社で東芝機械株の12.75%を共同保有する実質筆頭株主である。これまで村上側はROE(株主資本利益率)や株主価値向上策を繰り返し提案してきた。 だが、会社側が応じないため、「発言権を強化しコーポレートガバナンスを改善する」として、1月21日からTOBを開始。買い付け期間は3月4日までと設定し、発行済株式の43.82%の取得を目指している。 これに対し東芝機械は、村上側がTOBを公表する4日前、「公開買付けの予告を受けた当社の対応方針」と題したリリースを発表。TOB開始前に、「予告を受けた」と当該会社が発表するのは異例のことだ。併せて東芝機械は新たな買収防衛策を導入するとともにTOBの反対意向も表明した。
 オフィスサポートが出した冒頭のリリースによると、臨時総会で2つの議題を扱うよう求めている。 1つは、1月17日に東芝機械が公表した買収防衛策(買収者が現れた際に第三者に新株予約権を無償付与する「新買収防衛策」)の導入を承認するべきか否か、もう1つは、新買収防衛策を村上氏の関連会社に発動すべきか否か、である。 村上側は取締役会に宛てた22日付の文書で、以下の論理で会社側に対応を迫っている。東芝機械が21日に公表したリリースで、TOBの判断は、「最終的には株主の皆様によってなされるべき」としている。そして、今回のTOBが、不十分な情報の中でいきなり始まったとして「株主の皆様の適切なご判断の機会を奪うものであり、誠に遺憾」としている。 これに対して村上側は「(2019年5月に)株主の意向に従って買収防衛策を廃止したのにもかかわらず、廃止からわずか7カ月後に株主の意思に反して『有事』という名目で買収防衛策を復活させた」と指摘。「(東芝機械の)取締役会こそ、株主の意思をないがしろにするものであり、許されるものではない」と村上自身も憤りを示す。 しかしながら、取締役会に宛てた文書は、「弊社は、株主の意思を確認することにやぶさかではありません」と続く。東芝機械が、株主が判断する機会を奪うものだというのであれば、TOBの対抗策である買収防衛策導入も株主の判断を仰ぐべき、という論法である』、「東芝機械」が「買収防衛策を廃止したのにもかかわらず、廃止からわずか7カ月後に株主の意思に反して『有事』という名目で買収防衛策を復活させた」、信じられないようなお粗末な対応で、どう考えても村上氏側に理がありそうだ。
・『臨時総会のためにTOB期間の延長も辞さず  村上氏は21日にこの提案をひらめき、「妙手」であると確信。興奮して寝付けなかったという。「株主のためと言ってきた手前、東芝機械には打ち手がなく、臨時総会を開催せざるをえないだろう」(村上氏)と自信を示す。 TOBの終了後に臨時総会を開いても意味がないため、総会の開催日が焦点となる。そこで村上氏側は、「(TOB中の臨時総会開催が)もしどうしても間に合わないということであれば、弊社は、公開買い付け期間を延長する用意があります」としている 臨時株主総会の議題のうち、新買収防衛策の導入については「普通決議(=過半数で可決)でも株主の賛成の意思表示と解することも可能」とする一方、村上氏の関連会社に新買収防衛策を発動するか否かは、「特別決議(=3分の2以上の賛成が必要)を要するものと考えます」としている。 特別決議が必要なことについては、過去のブルドックソース事件の最高裁判例を引用するとともに、「新株予約権の発行は有利発行と同視される」と指摘している。そのうえで臨時総会開催について、文書では「対応方針を早急にご回答願います」と締めくくっている。東芝機械はこの要請にどう対応するのか。頭を悩ませる日々が続きそうだ』、「東芝機械」側は、買収への取締役会の意思を決めるには情報不足として、賛否を留保。さらに、株主意思確認総会を3月下旬から4月上旬に開くが、株主名簿の基準日は2月15日とすると表明。これであれば、「東芝機械」側に有利に総会を運営できるのかも知れない。最終的には、どうなるのだろう。

第三に、1月25日付け東洋経済オンライン「東芝子会社で発覚、広がる「架空取引」の波紋 メガバンク系など5社以上が関わった疑い」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/326416
・『東芝の連結子会社、東芝ITサービスで発覚した架空取引が新たな展開を見せている。 鉄鋼国内最大手・日本製鉄の連結上場子会社である日鉄ソリューショズ、東証1部上場でIT大手のネットワンシステムズ、重電大手・富士電機の子会社である富士電機ITソリューション、さらに、みずほフィナンシャルグループのみずほリースの子会社であるみずほ東芝リースなど、少なくとも5社以上が関与する大規模な「循環取引」である疑いが強まっているのだ。 循環取引とは、製品やサービスの取引を伴わずに3社以上で架空取引を繰り返すことで、帳簿上の売上高や利益を見かけ上、増やしていく古典的な粉飾決算手法だ。東芝や日本製鉄、富士電機といった業界を代表する大手企業はなぜ子会社の暴走を止められなかったのか』、もともと東芝で問題化したのは、不正会計だったが、「循環取引」まで飛び出すとはいやはや・・・。
・『架空取引疑惑に投資家は厳しい目  事の発端は東芝が1月18日、「当社子会社における実在性の確認できない取引について」というリリースを発表し、ITサービスを手がける東芝ITサービスで架空取引があったことを明らかにしたことだ。同社が2019年4~9月期に計上した売上高のうち、約200億円に架空取引の疑いがあり、これは2019年3月期の売上高440億円の実に半分近くに上る。 東芝は2月14日に2019年4~12月の決算発表を予定している。そこで東芝ITサービスの架空取引分を業績に反映する予定だが、「連結全体に与える影響は少ない」(同社)としている。 実際、東芝の2020年3月期の売上高は3兆4400億円(会社予想)で、数字上のインパクトは小さい。「(東芝ITサービスは)利益率も低く、利益のインパクトも小さい」(東芝)という。ただ、2015年にパソコン事業などで不正会計が発覚した経緯もあり、子会社で発覚した粉飾決算疑惑に投資家などからは厳しい目が向けられている。 だが、今回は過去の東芝粉飾決算とは様相がまったく異なる。東芝の陰に隠れて目立たないが、カギを握っているのは東証1部に上場するネットワンシステムズと日鉄ソリューションズだ。両社は2019年12月13日に国税庁から「一部取引について納品の事実が確認できない取引がある」との指摘を受けた。現在、弁護士などから構成された特別調査委員会を設置し、調査を進めている。 両社はともにIT関連大手だ。ネットワンシステムズは、四季報上場業種別のSI・ソフトウエア開発関連194社中の時価総額で第10位。2019年3月期の売上高は1819億円、営業利益は130億円で、アメリカの通信機器大手シスコシステムズ製品関連の取扱比率が約5割と高いのが特徴だ。一方、日鉄ソリューションズはSI・ソフトウエア開発で時価総額第9位。2019年3月期の売上高は2652億円、営業利益は256億円。日本製鉄が約61%を出資する大株主になっている』、東芝にとって「数字上のインパクトは小さい」とはいっても、株価は大幅に下落した。「ネットワンシステムズと日鉄ソリューションズだ。両社は2019年12月13日に国税庁から「一部取引について納品の事実が確認できない取引がある」との指摘を受けた」、「国税庁」からの「指摘」が発端になったとは、ITシステム業界の闇は深そうだ。
・『循環取引で破綻する中堅・中小企業が増加  複数の関係者の話をまとめると、シスコ代理店をしているネットワンがシスコの通信機器などを東芝ITサービスを通じて日鉄ソリューションズに売却する流れとなっている。日鉄ソリューションズはさらに同じ機器をネットワンに売却していく循環取引を繰り返すものだ。輪のようにつながった流れが複数存在しており、その中で富士電機ITソリューションとみずほ東芝リースも組み込まれていた。この5社以外の企業が関わっている可能性もある。 これは業界用語で「Uターン取引」や「まわし」と呼ばれ、実際の製品の移動は伴わない売買を会社間で回し続け、帳簿上の売上高が増え続ける構図だ。昔からよく使われる循環取引だが、いつかは決済できずに破綻する一方、短期的な売上確保には大きな効果があるため、「麻薬」ともされる。 今後の焦点はどの会社が主導したかだ。主導した会社以外は知らないうちに循環取引に組み込まれている可能性がある。実際に入金されていれば、経理部門も循環取引に気づかない場合が少なくないという。 今回の取引の特徴は、どのルートでもネットワンを起点に日鉄ソリューションズからさらにネットワンへという共通の流れがある。東芝ITサービスや富士電機ITソリューション、みずほ東芝リースの3社はいずれも「架空取引であったことを認識していたことを示す事情が認められない」という趣旨のコメントや発言をし、架空取引に主体的に関わったことを否定している。 関係者によると、東芝ITサービスの担当者はネットワンの担当者から「日鉄ソリューションズに機器販売をしたいが、間に入って欲しい」との話があったという趣旨の説明を調査委員会にしている。その際にネットワンの担当者からは「官公庁の秘匿案件のため、実際に機器を納入するのはネットワンが直接行う」との趣旨だったという。東芝ITの社内からは機器の購入先も納入先もネットワンになっている資料が見つかっており、ネットワンが価格や販売ルートをすべて調整していたのではないかとみられている』、中心的な「ネットワン」は大丈夫なのだろうか。
・『増える中堅・中小企業の循環取引  実際に販売先の代理店を通さないで、機器を販売する商慣行自体はIT業界で普通にある。今回は入金も確認されていたため、東芝ITの担当者が架空取引に気づかなかった可能性はある。ただ、東芝ITでは5年前からこうした取引が始まっているとみられ、1件の取引額は数十億円以上に上ることもあったという。東芝ITの売上高はここ数年で急増しており、今後の調査結果が待たれる。 企業の信用調査などを手がける帝国データバンク横浜支店の内藤修情報部長は、「最近は中堅・中小企業が循環取引で破綻するケースが少なくないが、循環取引は破綻するまでプロでも見抜きにくい。売上高が増えていれば(成長会社として)融資を増やす金融機関も多く、被害に巻き込まれている」と話す。 「1社が資金繰りでおかしくなると、バタバタと連鎖してつぶれる」(内藤部長)ことも循環取引の特徴だ。2019年11月末には、20代女性向けに人気のカラーコンタクトレンズ「DopeWink」などを主力としていたシーンズが民事再生法の適用を申請。負債額は45億円にのぼった。循環取引の噂は出ていたが、取引先1社の破綻をきっかけに数社がつぶれる事態になっている。 大企業による循環取引も後を絶たない。IT大手のニイウスコーは2008年に過去5会計年度にわたる循環取引で売上高682億円の過大計上をしていたことを発表し、民事再生法適用を申請して事実上破綻。冷凍食品の加ト吉(現・テーブルマーク)は2007年に循環取引が発覚し、日本たばこ産業(JT)に救済された。 今回の循環取引はまだ全貌が明らかになっていない。ネットワンは1月21日、1月30日に予定していた決算発表を2月13日に延期すると発表した。関係各社の決算発表も今後本格化する。どこまで説明がなされるかが注目される』、「ニイウスコー」は日本IBMと野村総合研究所の合弁会社で、大規模な「循環取引」が発覚したことで衝撃的な事件だった。いまだに、「循環取引」が出てくるのは、「循環取引は破綻するまでプロでも見抜きにくい」とはいっても、日本企業の財務部門のチェックの甘さの表れなのではあるまいか。
タグ:東洋経済オンライン ネットワンシステムズ 東芝機械 東芝itサービス 東芝問題 (その38)(東芝、10年ぶり好決算で「名門復活」は本物か 親子上場解消へ 上場3社を完全子会社化、東芝機械を揺さぶる村上グループの通告 買収防衛策の導入を取締役会で決めるな、東芝子会社で発覚、広がる「架空取引」の波紋 メガバンク系など5社以上が関わった疑い) 「東芝、10年ぶり好決算で「名門復活」は本物か 親子上場解消へ、上場3社を完全子会社化」 上場子会社4社のうち3社を完全子会社化 生き残りかけ、保有株式を矢継ぎ早に売却 2015年から現在まで上場株式の売却額だけで約2600億円 半導体メモリー事業を2018年に約2兆3000億円で売却 完全子会社化はガバナンスの問題 海外投資家から上場子会社を問題視されていた 上期決算はメモリを除くとここ10年で過去最高益。全セグメントで黒字化して増益となったのはここ10年で初めて 東芝テックの子会社化は見送りに 2019年4~9月期の業績も、営業利益以下をみると、最終損益は1451億円の赤字に転落 LNG事業の売却損892億円 半導体メモリ大手のキオクシア(旧東芝メモリ)で613億円の損失 「東芝機械を揺さぶる村上グループの通告 買収防衛策の導入を取締役会で決めるな」 村上氏が実質支配するオフィスサポート 対抗策である新たな買収防衛策の導入を、東芝機械の取締役会ではなく、臨時株主総会で決めるよう「待った」をかけた 飯村幸生会長は日本工作機械工業会の会長を務める業界の顔 2017年に東芝から自己株を取得し東芝グループから離脱 今年4月から社名を「芝浦機械」に変更する予定 TOBで約44%の株式取得を目指す 東芝機械は新たな買収防衛策を導入するとともにTOBの反対意向も表明 (2019年5月に)株主の意向に従って買収防衛策を廃止したのにもかかわらず、廃止からわずか7カ月後に株主の意思に反して『有事』という名目で買収防衛策を復活させた」と指摘。「(東芝機械の)取締役会こそ、株主の意思をないがしろにするものであり、許されるものではない 臨時総会のためにTOB期間の延長も辞さず 株主意思確認総会を3月下旬から4月上旬に開く 「東芝子会社で発覚、広がる「架空取引」の波紋 メガバンク系など5社以上が関わった疑い」 東芝ITサービスで発覚した架空取引が新たな展開 日鉄ソリューショズ 富士電機ITソリューション みずほ東芝リース 少なくとも5社以上が関与する大規模な「循環取引」である疑い 架空取引疑惑に投資家は厳しい目 同社が2019年4~9月期に計上した売上高のうち、約200億円に架空取引の疑いがあり、これは2019年3月期の売上高440億円の実に半分近くに上る 数字上のインパクトは小さい ネットワンシステムズと日鉄ソリューションズだ。両社は2019年12月13日に国税庁から「一部取引について納品の事実が確認できない取引がある」との指摘を受けた 循環取引で破綻する中堅・中小企業が増加 昔からよく使われる循環取引だが、いつかは決済できずに破綻する一方、短期的な売上確保には大きな効果があるため、「麻薬」ともされる ネットワンが価格や販売ルートをすべて調整していたのではないかとみられている 増える中堅・中小企業の循環取引 循環取引は破綻するまでプロでも見抜きにくい。売上高が増えていれば(成長会社として)融資を増やす金融機関も多く、被害に巻き込まれている ニイウスコーは2008年に過去5会計年度にわたる循環取引で売上高682億円の過大計上をしていたことを発表し、民事再生法適用を申請して事実上破綻
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

日本郵政(その14)(かんぽ不正3社長辞任「官僚の人事」が郵政をいよいよつぶす 民営化が逆回転しはじめた、クローズアップ現代+:検証・かんぽ問題① 実態解明と顧客救済は?、② 郵政グループ 再生への課題は?) [国内政治]

昨日に続いて、日本郵政(その14)(かんぽ不正3社長辞任「官僚の人事」が郵政をいよいよつぶす 民営化が逆回転しはじめた、クローズアップ現代+:検証・かんぽ問題① 実態解明と顧客救済は?、② 郵政グループ 再生への課題は?)を取上げよう。

先ずは、1月26日付け現代ビジネス「かんぽ不正3社長辞任「官僚の人事」が郵政をいよいよつぶす 民営化が逆回転しはじめた」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/69924
・『「民間」とは遠い人物  2019年末、日本郵政の長門正貢氏ら3社長辞任のニュースが世間を騒がせた。事の発端は、日本郵政傘下のかんぽ生命での不適切な商品販売である。 また、この問題が明るみに出たのと同時期に総務省幹部による行政処分情報の漏洩問題が起こっていた。これにより鈴木茂樹前総務事務次官は辞任。その後を追うかたちで、長門氏らも引責辞任となった。 新たに日本郵政のトップに就いたのは、元総務大臣の増田寛也氏である。増田氏は「消滅可能性都市」への言及など、メディア露出も多い人物だが、官僚から政治家に転身した経歴の、「民間」とは遠い人物である。 1月9日の就任後初会見で、増田氏は行政処分情報の漏洩問題に関して「調査を行うべく準備を進めている」と述べた。情報漏洩とは具体的に、総務省(旧郵政省)キャリアの先輩・後輩の関係である鈴木康雄・日本郵政上級副社長と鈴木茂樹前事務次官とのあいだで行われた。茂樹事務次官から康雄副社長に対し、行政処分内容を伝えたとされている。 昨年の記者会見長門前社長は「鈴木康雄氏が退職しているので、情報の漏洩問題での調査は行わない」としていた。新体制になり、これを翻したことはいいことだ。 「辞めた人間を調べられない」というのは、民間でありがちな回答で、民間出身の長門氏らしい対応とも言える。一方で、元建設省キャリアで政治家出身の増田新社長は「説明責任」のようなことを考えたのだろう』、「辞めた」といってもまだ退職金を払っておらず、退職金に査定部分があるのであれば、強制力はないにしても調べることは可能だ。まして、半官半民の中途半端な状態にあるので、調べるのは当然だろう。
・『増田氏のようなキャリア官僚であれば、各省の官僚の序列などは周知のはずだ。しかも増田氏は'07年8月から'08年9月まで総務大臣を務めている。そのとき、鈴木前事務次官も鈴木前副社長もともに部下であったはずだ。情報漏洩に関わった二人について多少なりとも知っているだろう。 増田氏のほか、かんぽ生命には千田哲也氏、日本郵便は衣川和秀氏が新社長に任命された。千田氏と衣川氏はともに総務省(旧郵政省)キャリアである。9日の3社長が一堂に並んだ会見は、役人の会見を見ているかのような雰囲気だった。 新体制の下、情報漏洩問題はある程度解明されるだろう。ただ、その原因は、結局のところ現役事務次官も先輩に逆らえない霞が関の強固な上下関係だ、と指摘されるにとどまるはずだ。官庁を離れた後も、退職時のポストと先輩後輩とがあるから、平然と天下りが行われる。キャリア官僚の常であり、新3トップも官僚時代は身の回りで当たり前のように起こっていた出来事だから、深い問題意識は持っていないかもしれない。 それ以上に問題なのは、今後の郵政の経営である。小泉政権の時に「民営化」された郵政は、民主党時代に民間出身の幹部が追い出され、「再国有化」が進んだ。安倍政権では経営陣は民間出身に戻したが、今回の人事では元官僚が3トップとなり、まさに国営企業のようだ。 今の郵政に必要なのは、民間の経営者による事業の徹底的な見直しである。民間の物流・金融業界は生き残りをかけた激動の時代を迎えているというのに、なぜ逆行するような人事を行うのか。官僚のせいで郵政が潰れる日が来ても、まったくおかしくない』、「今の郵政に必要なのは、民間の経営者による事業の徹底的な見直しである」、もっともらしいが、昨日、郷原氏が指摘した「ユニバーサルサービスの確保義務」を外す法律改正がまず先だろう。

次に、1月15日付けNHKクローズアップ現代+「シリーズ 検証・かんぽ問題① 実態解明と顧客救済は?」を紹介しよう。
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4372/index.html
・『2年前からの郵便局の不適正な保険契約の問題を指摘してきたクローズアップ現代+。当時、番組の中で郵政グループの幹部が問題を認識し再発防止を約束したにも関わらず、その後、事態は社会問題化。郵政トップの3社長が辞任する事態にまで発展した。番組では2夜にわたって、再発防止のために何が必要か、多角的に検証する。 第1夜は、問題の全容解明と顧客への救済はどこまで進んだのか、検証する。郵政トップが「1人残らず、最後の1円まで不利益を解消する」と語った、18万3000件におよぶ「特定事案」への調査では、社内ルールや法令に違法する契約が670件に上るとしたが、調査からこぼれ落ちながら、顧客に不利益を生じさせる疑いがある契約が数多く残されている。我々の取材からは、郵政グループによる対応は未だ十分進んでいない実態が浮かび上がってきた。番組では、2年前に再発防止を約束した郵政グループの幹部に直撃。なぜ問題はここまで広がったのか。また本当に顧客本位の救済は進むのか。これまでの経緯を踏まえ、徹底的に聞いていく。 出演者 郷原信郎さん (弁護士、元日本郵政ガバナンス検証委員長) 宮田裕章さん (慶応義塾大学教授) 武田真一 (キャスター)』、この番組は、日本郵政の鈴木前副社長がNHKにねじ込んで、公表が遅れていたいわくつきのものである。
・『検証2年 かんぽ問題 あなたの保険は大丈夫?  武田:信頼していた郵便局に裏切られたという高齢者の声。ノルマに追い詰められて、顧客のためにならない契約を勧めてしまったという現場の局員の告白。私たちは、寄せられたこうした多くの声を埋もれさせてはならないと、2年前から取材を続けてきました。 そして、去年この問題が社会を揺るがし、郵政グループは大規模な調査に踏み切りました。およそ3000万件のすべての契約を対象とした全件調査。さらに、顧客に不利益を生じさせた疑いがある特定事案の調査。これは「二重払い」や「無保険」と呼ばれる状態のものなどで、対象は18万3000件に上ります。 この調査はどこまで進んでいるのか? 先月までに、特定事案の中で法令や社内ルールに違反した契約が670件確認され、契約の解除や生じた損失の返金など、救済が始まっています。しかし、弁護士で作る特別調査委員会の報告書には、不適正な契約はこうした特定事案だけではないことが記されています。 どんな実態があるのでしょうか』、「特定事案だけではない」とすれば、「不適正な契約」の件数はもっと膨らむようだ。
・『検証・かんぽ問題 埋もれた不適正契約とは?  埋もれた不適正な契約の実態とは? 関西在住の80代の母親と、その息子です。 母親の保険が特定事案に該当し、調査の対象となりました。 ところが、その調査の過程で思わぬ事実が発覚したといいます。 母親「1、2、3、4、5、6、7件、保険証券。」特定事案以外にも、見過ごされていた不適正な疑いのある契約が次々と見つかったのです。 息子「毎月60万円あまりの保険を、それを10年もかけるって。そんな金どないすんのやって。」 去年10月、かんぽ生命の社員が特定事案の調査のため自宅を訪ねてきました。母親が加入していた2件の保険が「無保険」に該当するため、その時の状況を調べに来たのです。 「無保険」とは、加入していた保険から新たな保険の契約に切り替える際に、保険のない期間が生じるもの。これによって、郵便局員は新規契約を獲得したと見なされ、手当が満額得られます。そのため、新契約の加入時期を意図的に遅らせた疑いがあります。 ところが、調査に同席した息子が「母親が加入している保険すべての詳しい状況を知りたい」と社員に申し出たところ、調査対象以外にも不審な契約が相次いで見つかったというのです。 息子「『これは大丈夫なんですか』っていうふうな感じでね。そうしたら、2件の事案どころじゃなしに、えらい(大変な)保険。ぞっとしてね。」 特定事案のほかに、母親が最近2年間で加入した保険契約は全部で7件。支払い額は月60万円で、90歳までの支払い総額は7000万円以上に上っていました。 顧客の支払い能力を超える多額の契約を多数取り交わすことは「多額契約」と呼ばれ、不適正の疑いがあります。 しかも、母親は最近、認知機能が低下。 会社のルールでは、顧客が70歳以上の場合は家族の同席を求める必要がありますが、息子が同席を求められたことは一度もありませんでした。 母親「郵便局から来はる人も、ほんまにええ人が来てはったなあと思うねんけど、こんなことしてはるとは思わへんだわ。」 息子「同席していなかったら、しまいですね。こんなん全然出てこなかったんです。末端まで、それ(調査)が行き届いているのか。今のところは届いていないでしょうね。」 息子は7件の保険すべてを解約。契約の無効と、解約で生じたおよそ200万円の損失の返金を求めています。 かんぽ生命は取材に対し、個別のケースについては答えられないとしたうえで、「特定事案以外でも、お時間をいただく場合もございますが、1件1件丁寧にお客様の声をお聞きし、不利益解消のための対応を進めております」としています。 なぜ、不適正な契約が見過ごされていたのか。これまで、みずからも不適正な契約を行ってきたという現役の郵便局員が取材に応じました。会社は、特定事案以外にも不適正な疑いのある契約があることを把握しているはずなのに、手がつけられていないと言います。 現役郵便局員 Aさん「今(特定事案が)調査されているんですが、一番取っかかりやすいようなところを見ているのかなと。(他にも)会社が把握していた、あくどい話法があります。こちらの方が(特定事案より)圧倒的に多い。」 さらに局員は、そうした不適正な疑いのある契約は仕組みが複雑で、顧客が問題を認識していないケースが少なくないと言います。 現役郵便局員 Aさん「(契約が)継続するような形なので、お客さまも自分が損をしたって気づきづらいんですよね。ほとんどのお客さまは(問題に)気づいていない。」 これは、かんぽ生命が不適正な契約をなくそうと、疑いのある契約を分類・集計した内部資料。今回の問題が大きく報じられる以前から作成されていました。 特定事案にあたる「無保険」や「二重払い」以外にも、さまざまな契約が集計されています。この数年、増加傾向にあったのが「料済(りょうずみ)」と呼ばれるケースです。 「料済」とは本来、保険を契約した顧客の利益を守るための仕組みです。例えば、契約した保険の支払いが難しくなった場合。最低2年以上支払っていれば、保険料支払い済み、つまり「料済」として、加入時にかかった手数料を差し引いた額を残りの期間の支払いにあてます。もらえる保険金や保障の額は下がりますが、保険を継続することができるのです。 この仕組みが悪用されたケースがありました。例えば、顧客が年間12万円で10年、総額120万円の保険を一括で支払おうとする場合。郵便局員は顧客に十分説明せずに、年間60万円を10年間支払う保険契約に切り替えるのです。そして3年目に、顧客に新たに60万円の支払いが発生したところで「料済」という方法を提示し、残りの期間の保険を継続させます。 こうすることで、郵便局員は本来の5倍の年間60万円の契約をしたという実績が残ります。しかし、顧客は意図していない契約で予定外に高い手数料を差し引かれるため、保険金や保障額が下がります。それでも、保険契約は継続するため、実態に気づきにくいのだといいます。 去年、作成された内部文書でも、「料済」や、同じく支払額を減額して契約を継続する「減額」などの手法について、顧客の意図に反して行うことを“絶対に行ってはいけない募集行為”として厳しく禁じています。 しかし、かんぽ生命の内部資料によれば「料済」と「減額」は、2018年度だけで6万5000件以上。 この中に、どれだけ不適正なケースが含まれているのか明らかになっていません。 弁護士でつくる特別調査委員会も、報告書の中で特定事案に含まれない不適正な契約について言及。「料済」を前提とした契約についても「2年話法」と呼ばれ、広く認知されていたと指摘しています。 さらに、郵便局員に行われたアンケート調査から、他にもさまざまな不適正な契約があるという声があがっています。 顧客の支払い能力を超えて、多数の契約を結ばせる「多額契約」をしたことがあると答えたのが、およそ1200人。契約者は変えずに、保険の対象となる被保険者の名義を変え、多数の契約をする「ヒホガエ」を行ったことがあると答えたのが、およそ4000人に上っていました。 現役郵便局員 Aさん「営業マンのスキルなんかも、さらに巧妙に悪質になったんじゃないか。これから先、5年後、10年後(問題が発覚したときに)お客さまにご迷惑をおかけするんじゃないかなと。今の私の一番感じていることですね。」 さらに、調査に消極的な会社の姿勢に問題があるとする声もあがっています。 実際に調査を行ってきた、かんぽ生命の現役社員は、調査が行き届いていない実情を明かしました。 現役かんぽ生命社員 Bさん「言い方は悪いですが、(調査の)数をこなす。完了率を求められている。簡単な仕組みになっているって、おかしいなって思いを抱えている社員も少なからずはいますけれども、そういう声を聞いてもらえるような会社にまだなっていないなというのは、現状として認識はあります。」 顧客の救済、本当に進むのでしょうか? 武田:この問題を2年にわたって取材してきた、ディレクターの望月さん。まだまだ調査、そして救済までは到達できていないというのが現実ですけど、いわゆる「二重払い」や「無保険」といった特定事案以外にも、どんなケースが埋もれている可能性があるのでしょうか。 望月ディレクター:例えば、VTRで紹介しました「料済」「減額」「ヒホガエ」「多額契約」のほかに、「相続話法」という手法もあります。「相続話法」は、実際には節税効果が見込めないような場合でも、保険に入れば相続税対策になりますなどと言って勧誘をする手法です。このような不適正な契約を結んでしまっている高齢者の方の場合ですと、郵便局に対して大きな信頼を持っている場合が多いので、詳しい保険の内容を分からないまま契約をしているというケースも本当に少なくないのです。 このようなケースに思い当たることがあれば、番組のホームページにも参考の情報を載せていますので、ご覧になっていただければと思います。 https://www.nhk.or.jp/gendai/kiji/153/index.html 武田:ご家族の方はぜひ、ご覧いただきたいです。 この郵政グループ、どのような会社か。持ち株会社の日本郵政のもとに、全国に郵便局網を持つ「日本郵便」という会社があります。さらには、保険を扱う「かんぽ生命」。貯金や投資信託を扱う「ゆうちょ銀行」というのがあります。この問題は、保険の販売をかんぽ生命から委託され、手数料を受け取る形で募集をしてきた日本郵便のもとにある郵便局で起きました。その実態調査は、かんぽ生命が担っています。 弁護士の郷原さん。かつて、かんぽの宿の売却問題で検証委員会の委員長も務められましたが、これだけ大規模な問題に発展していながら、いまだに不適正契約の全容が見えてこない。どう受け止めていらっしゃいますか。 ゲスト 郷原信郎さん(弁護士、元日本郵政ガバナンス検証委員長)郷原さん:日本郵政グループの保険事業で全体として、顧客の利益を損なうような契約が行われていたことが、ある程度は推測できるのですが、それに関して必要なことは、そういった問題の背景や構造を明らかにしていくこと。そして、個別の不適正事案について何が行われたのか、その原因はどういうところにあるのか、という両面から事案の全体像を明らかにする必要があるのですが、なかなかその背景や構造の解明が進まない。それによって、共通項となる原因が見えてこない。一方で、特定事案が中心となって調査の対象になっているんですが、それ以外に、どのような顧客の利益を損なうものがあるのかということがなかなか見えてこないので、調査の対象が具体的に定まらない。この両面から、事案の全体像が明らかになってこないのではないかと思います。 武田:経済部の安藤記者にも聞きたいと思います。 特定事案以外の契約について、郵政グループは全件調査として3000万件を調査して、一人も取りこぼさないとしていますが、こちらの実態はどんな調査なのでしょうか。 安藤記者:契約者の数にしてみますと1900万人という膨大な調査ですが、こちらの書類が契約者に届くようなことになっています。「ご加入いただいている保険契約は、お客さまのご意向に沿ったものでしょうか。」と契約者自身にチェックを求めて、そして、はがきを送り返してもらうというシンプルなものなんです。 今のところ、1900万人のうち100万通ほどのはがきが送り返されています。特別調査委員会の分析でも、不適正販売の契約者というのは7割以上が60歳以上ではないかということがありまして、なかなか自分の保険を正確に把握しているというケースも少ない可能性がありますので、調査の在り方というのが問われていると思います。 武田:データによる社会課題について研究されている宮田さんは、こういった調査の手法はどう見られていますか。 ゲスト 宮田裕章さん(慶応義塾大学教授)宮田さん:顧客目線で問題を把握する視点で考えると、データの取り方に改善の余地はあると思います。意向に沿っているかどうかという、あいまいな言葉では顧客はなかなかイメージすることができないので、支払いに困難を感じたか、契約時に不安を感じたか、具体的な言葉で把握させて、そこから不適正事案を絞り込むことも必要です。また、先ほどの映像でも、多くの顧客側は問題に気付いていないという指摘もありましたが、こういった場合には、主観的なデータではなく、収入や貯蓄に対して支払いのバランスが悪くないのかという客観的データを使うことで、被害を受けている可能性がある人を把握することも重要なのかなと思います。 武田:今後の調査をどう進めていくのか。かんぽ生命の幹部に聞きました』、「現役郵便局員 Aさん「・・・一番取っかかりやすいようなところを見ているのかなと。(他にも)会社が把握していた、あくどい話法があります。こちらの方が(特定事案より)圧倒的に多い。」、驚くべき証言だ。「意向に沿っているかどうかという、あいまいな言葉では顧客はなかなかイメージすることができないので、支払いに困難を感じたか、契約時に不安を感じたか、具体的な言葉で把握させて、そこから不適正事案を絞り込むことも必要」、その通りだ。
・『かんぽ問題 救済は?幹部に問う  2年前、私たちの取材に対し、不適正な契約を発生させないよう経営陣を挙げて取り組むと語っていた、かんぽ生命の幹部です。問題をどう認識しているのか、改めて問いました。 クロ現ディレクター:今の特定事案というのは、ほんの一部ですよね。問題が疑われる可能性のある類型、これらは調査の対象にはならないのでしょうか? かんぽ生命 堀家吉人専務執行役「お客さまのご意向に沿わないような多数のご加入をされているお客さま、特に高齢者のお客さまですね。こういったところにつきましては、当然、お客さまの不利益解消にむけて取り組む必要があると思っておりますし、また、そういったお客さまに不利益が生じるような募集をした募集人についても、しっかり調査をしていく必要があるということで進めて参ります。」 クロ現ディレクター:単にお客さまからの返事を待つということだけではなくて、能動的な調査に踏み込んでいくことを、今後お考えになられるのでしょうか? かんぽ生命 堀家吉人専務執行役「やはり(不利益の回復を)お申し出にならないお客さまがいらっしゃる。高齢のお客さまも含めて。そういったことも認識してございますので、お客さまからのお申し出を待つまでもなく、こちらから、しっかりとご対応すべきものがあるというふうにも考えております。 顧客本位について、われわれ意識をどう変えていくか、あるいは、どう浸透させていくかということにつきましては、まさにこの半年間の、たいへん世の中の厳しいご指摘であり、お客さまのことに思いを致す、あるいは、そのはざまで苦しんでいる社員に思いを致す、こういったことが足りなかったということだと思いますので、これを会社のあらゆる仕組みの中で、しっかりと取り上げていく。言葉だけに終わってはいけませんけれども、本当の意味で、これを進めていく必要がある。」 武田:郷原さん、顧客本位の姿勢を徹底するよう改めるということでしたが、これまでなぜ、こうした実態を把握できなかったのでしょうか。 郷原さん:日本郵政におけるコンプライアンスが、法令遵守に偏りすぎていたところに根本的な原因があると思いますね。法令違反やルール違反、こういったものがなくすべきもので、それには取り組んでいたのでしょうけど、実際には、いろんな事業の環境の変化の中で、法令やルールが追いついていない部分があると思うんですね。もっとストレートに、社会の要請、そして、その中のまさに重要なのは顧客の利益。本当に実績に沿うということですから、そこに目を向けてこなかったから問題が見えてこなかった。結局、そういうことだと思います。 武田:安藤さん、今回の調査や救済の在り方について、監督官庁はどのように指摘しているのでしょうか。 安藤記者:監督省庁の総務省と金融庁は先月、郵政グループに対して、3か月間の一部業務停止などを含む厳しい行政処分を行いました。そして、特定事案以外の契約に関しても、「多数・多額契約」ですとか、「ヒホガエ」といった契約調査をして、適切な顧客対応をするように求めました。そして、結果として解約、合意解除となっているようなもので、顧客に経済的な損失は発生していなくても、販売した時点で不適正なものがあったのではないか。こういった指摘もしています。 こうした指摘について先月、日本郵政グループの新しい社長に就任した増田氏は次のように会見で話しています。 日本郵政 増田寛也社長「一刻も早く全容を解明して、それでやるべきことをやる。それから、被害を解消するということは、どんな状況であっても、もう過去に起こったことですから、それは急いでやっていかなければいけません。全件調査の対象に入ってくるものの中で、ふるい分けをして、類型化できるものは、また別途、調査をしていきたいというふうに考えております。どういう類型のものについて、どういう網をかけていくかという詳細について、またこれから優先度を高めて、調査するということになると思います。」』、郷原氏の「いろんな事業の環境の変化の中で、法令やルールが追いついていない部分があると思うんですね。もっとストレートに、社会の要請、そして、その中のまさに重要なのは顧客の利益。本当に実績に沿うということですから、そこに目を向けてこなかったから問題が見えてこなかった」、持論のコンプライアンス論だ。
・『検証2年 かんぽ問題 顧客の救済に何が必要か?  安藤記者:日本郵政としては、詳しい調査を行っていく対象を広げていく方針を示しまして、今月中にも、より詳しい具体的な調査のやり方を固めていきたい意向です。そして、これまでは販売した社員が認めなければ不適正なものではないとしてきたんですけども、それも改めて、外形上で強く疑われる場合には、顧客側に立って救済などを進めていくとしています。今、日本郵政グループとして保険の営業活動というのはしていない状況で、再開のめどはたっていませんが、それだけに、今度こそ顧客の立場に立った調査で全容解明する。これが重要だと思います。 武田:その調査、そして救済をどう進めていくのか、そのために何が必要なのかという点ですが、宮田さんはどう考えますか。 宮田さん:長門前社長はじめ、今回辞任した首脳陣は外部から雇用された人材で、今日に至る郵政を形作ったのは、その下にいる人たち。そして、その中で長年にわたって積み上げられてきた仕組みですね。単にトップを代えるだけでは、恐らく問題は解決しません。巨大な組織を変革する道のりは長く険しいというのは、増田新社長、麻生財務相もすでに指摘していますが、非常にタフだろうと思います。一方で監督省庁である金融庁ともお話しましたが、今回のケースにもかかわらず、通常、販売停止を解除するには問題の実態を明らかにするだけではなくて、新たな被害者が出ないことを保証する必要があります。組織としての課題を改善するだけではなく、改革を継続するための仕組みを示す必要が、今の郵政にはあると思います。 武田:原因究明だけではなく、これからどうやって新しい仕組みを作っていくのかというところまで示すべきだということですね。 郷原さんは、何が必要だとお考えですか? 郷原さん:これまでのやり方というのは、不適切を自認した場合が調査の対象になると。 武田:みずから募集人が認めた場合ですね。 郷原さん:その場合は、厳しいペナルティーの対象になることが前提になっているので、その事案自体が広がってこないということがありました。そうすると、その事案を通して原因を究明して、さらにそれを再発防止につなげていくのはなかなか困難になる。今後は、あまり悪性のない事案であれば、制裁を軽減するとか免除するということも含めて、事案の実態を把握して、救済をしていくというのを結び付けていくことも必要ですし、そのために、世の中の理解、納得が得られるように、新たにトップが十分な説明をしていくことも必要ではないかと思います。 武田:あくまで実態を解明するためのひとつの手法として、ペナルティーを科さない。 郷原さん:悪質な事案はもちろん厳しいペナルティーの対象になりますが、流されてしまって、その状況の下で不適切に手を染めてしまった募集人に、ある程度話しやすい環境を作っていくのも、このようなタイプの問題には必要ではないかと思います。 武田:自分も不適正な契約を結んでしまったかもしれない人たちは、どうすればいいんでしょうか。 望月ディレクター:チェックリストを作ってみました。「記憶にない保険の加入・解約」がないか。「短期間に保険の解約・新規契約」が繰り返されていないか。あるいは、「保険料の支払額が認識以上に高い」。 こういった項目に思い当たる人は、かんぽのコールセンターや家族、保険に詳しい人と相談して、慎重に対応していただければと思います。 公的な相談先などもホームページに載せていますので、ご覧いただければと思います。 武田:高齢者の中には、なかなか自分では分からない方もいらっしゃると思いますが、ご家族の方もこういった項目に思い当たるところがあれば、ぜひ、かんぽのコールセンターや保険に詳しい人に相談していただければと思います』、「これまでは販売した社員が認めなければ不適正なものではないとしてきたんですけども、それも改めて、外形上で強く疑われる場合には、顧客側に立って救済などを進めていくとしています」、これまでの定義が余りに甘過ぎただけで、当然のことだ。郷原氏の「今後は、あまり悪性のない事案であれば、制裁を軽減するとか免除するということも含めて、事案の実態を把握して、救済をしていくというのを結び付けていくことも必要ですし、そのために、世の中の理解、納得が得られるように、新たにトップが十分な説明をしていくことも必要ではないかと思います」、現実的な対応策で、大いに検討に値する。

第三に、上記の続き、1月16日付けNHKクローズアップ現代+「シリーズ 検証・かんぽ問題② 郵政グループ 再生への課題は?」を紹介しよう。
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4373/index.html
・『第2夜は、再発防止に向け、郵政グループの体質改善にどこまでメスが入るのか、検証する。調査報告書では、「一部のコンプライアンスの低い職員」の問題を指摘。経営陣は「現場の実情を把握していなかった」とされている。しかし、我々の取材から浮かび上がってきたのは、「優績者」と呼ばれる販売実績の高い社員が、不適正な疑いがある契約を行うのを許容する「不適正を誘因」するかのような仕組みだった。さらに、民営化途上の制約を抱えたまま、無理な販売を拡大していく構造も浮かび上がってきた。今月から経営陣を刷新した郵政グループ。真に再生するためには何が必要なのか?幹部への直撃インタビューのほか、スタジオに識者を招き徹底討論する。 出演者 郷原信郎さん (弁護士、元日本郵政ガバナンス検証委員長) 宮田裕章さん (慶應義塾大学 教授) 武田真一 (キャスター)』、「「優績者」と呼ばれる販売実績の高い社員が、不適正な疑いがある契約を行うのを許容する「不適正を誘因」するかのような仕組みだった」、多かれ少なかれ、日本の組織にはあるがちな傾向だ。
・『検証2年 かんぽ問題 巨大組織の体質に迫る  武田:昨日から2夜連続でお伝えしている、日本郵政グループの保険の不適正契約問題。今夜は一連の問題がなぜ起きたのか。二度と被害を出さないために何が必要かを考えていきます。 郵政グループには、持ち株会社の「日本郵政」と全国に郵便局を持つ「日本郵便」、そして「かんぽ生命」、「ゆうちょ銀行」があります。「かんぽ生命」や「ゆうちょ銀行」は、金融商品などの販売を郵便局に委託。郵便局は業績によって手数料を得ます。 問題の調査にあたった特別調査委員会は報告書で抜本的解決を先延ばしにし、「問題わい小化の組織風土」であったなど、組織の体質に言及しました。とりわけ「高い実績の局員に依存」せざるを得ない状況の中、「不適正を黙認する風潮」が形成されたと指摘しています。 この高い販売実績の局員の中でも、特に会社から評価されているのが“優績者”と呼ばれる人たちです。彼らを取材しますと、組織の中に長年染みわたっていた深刻な問題が見えてきました』、「「高い実績の局員に依存」せざるを得ない状況の中、「不適正を黙認する風潮」が形成された」、大いにありそうな話だ。
・『かんぽ問題 組織を支える“成績優秀者”の実態  問題の原因のひとつとして報告書が指摘しているのが、“成績優秀者”の存在です。1%あまりしかいない販売実績の優秀者が、違反が疑われる契約の、実に4分の1以上に関与していたと指摘しています。 こうした人たちはどのような契約をしていたのか。成績優秀者の中でも、会社が高く評価する“優績者”が取材に応じました。 みずからも不適正契約を行っていたことを認めたうえで、その手法について語りました。 郵便局 優績者 Cさん「ゆるいお客さん、こちらの言っていることに言いなりになってくれるお客さん。『ゆるキャラ』ですとか、1年間で何度も契約を交わす方もおいでになりますので、そういった世帯ばかりを訪問していました。」 主に高齢者や、持ちかけた話に疑いを持たない人にねらいを定め、契約数を稼いでいたといいます。 契約の数は、会社内での評価に直結していました。年間、数百万円から数千万円以上の販売実績を上げる局員だけが“優績者”と呼ばれ、模範として位置づけられていました。優績者の中でも、「ゴールド」「ダイヤモンド」などの称号でランク付けがなされ、契約額の多さなどで手当を支給。年収が2000万円を超える局員もいたといいます。 さらに取材を進めると、優績者であれば不適正の疑いのある契約でも、一定程度は許容されていたとも受け取れる実態が浮かび上がってきました。 取材に応じた優績者が差し出した内部資料。日本郵便の保険の販売実績、上位1000人のリストです。年間販売実績・数百万円から、トップクラスは1000万円以上が並んでいます。そこに示されていた、ある数値。契約に問題がないかどうかを示す、品質基準です。優績者の基準は甘く設定されていました。 不要な保険料を払い込ませ、客の不利益となる「二重払い」などの疑いがある契約については、全体の5%以下。本来、顧客の利益を守るための仕組みを悪用している可能性がある「料済」や「減額」は12%以下。こうした基準は、一般の局員を含む全局員の不適正な疑いのある契約の、実際の発生率よりも高いものだったのです。 郵政グループも取材に対して、「結果として優績者への基準は緩かった面があった」と認めています。こうした仕組みから、この優績者は「利益さえ上げれば、ある程度の不適正な契約は許される」と受け止めていたと言います。 郵便局 優績者 Cさん「会社も形の上では『不適正な行為は行うな』と言っていましたけれども、実際のところ不適正な募集をしても、会社から処分を受けることはないという感覚でした。優績者には数字を、契約を取ってきてもらわなければならないといった、会社のひとつの合図だったのかなと。」 さらに、優績者の手法が組織の中で広がっていた可能性も内部資料から浮かび上がってきました。これは、優績者などが有志の局員に販売手法を指導する、自主的な勉強会で配られた資料です。契約がたくさんある顧客ほど勧誘しやすいなど、ねらい目となる顧客の特徴などが具体的に記されています。ほかにも、特定事案にもなった「二重払い」については“いつやめるの?あとでしょ!”と解約時期を遅らせ、客に不利益を生じさせることを推奨するかのようなタイトルが付けられていました。 “自主研”と呼ばれる、こうした勉強会は全国で開かれていました。 自主研に参加し、優績者から指導を受けたという一般局員がその内容を語りました。 自主研の参加者「管理者である部長が『お前は参加しろ』という感じで、ほぼ強制的に参加させられました。二重払いとか、こういうやり方ですよと教えてもらいました。こういう方法で頑張っている人は推進しているから、それをまねしろみたいな形です。数字をやる(上げる)ものが全てだっていうような体質があった。」 優績者による手法が組織で共有され、顧客の利益はないがしろにされてきました。 優績者によって被害を受けたと訴える家族です。 契約した保険は、確認されただけで68件に上っていました。この契約に関わっていたのは、全国で上位30位以内に入り、9年連続ダイヤモンドの表彰を受けていた優績者。その優績者が母親の担当になった10年前から、毎年のように新規契約が繰り返されていました。最も契約数が多い2015年には、わずか2か月で20件の新規契約が行われ、1000万円以上の保険料が支払われていました。 娘「『保険に入れば(税金を)免れる』ということを聞いて『はい、わかりました』って。調べてもらったら、もう(お金が)減っていて。郵便局の人ということだけで信頼しきっていて。本当に悲しいですね。」 保険の多くは2年あまりで次々と解約され、払い戻された金を元手に新たな保険契約が繰り返されていました。その際、優績者が最大限の営業実績や手当を得るため、保険の対象となる被保険者を次々と変更する手法が用いられたとみられています。 異変に気づいた娘は郵便局に抗議。 しかし、自宅を訪れた上司は優績者をかばうかのような発言を繰り返したといいます。その音声記録を入手しました。 娘「どう思いました?あなたは。」 管理者「(担当の優績者は)お客さまの立場にたった仕事は一応させていただいておりますので。」 娘「親の財産が減っとるん。なんでそんなの勧めとんのよ。それを何とも思わんのよ。」 管理者「どうしたらよろしいんでしょうか?」 娘「母のもとに全部お金を戻してよ。」 管理者「それは、できることとできないことがございますので。」 娘「どうにもならんことぐらいわかるやん、私だって。取り返しのつかんことをやってくれたのは、あんたんとこなんやで。」 娘の再三にわたる抗議の結果、かんぽ生命は63件の契約を解約して、生じた損失1100万円の返還を認めました。 娘「本当にあきれるっていうか、会社は大丈夫なのって。おかしくないですかって。怒りが収まらないですね。」 別の郵便局の管理者が取材に応じました。 会社も売り上げ達成のために優績者に依存し、不適正な手法を黙認してきた風潮があると語りました。 郵便局 管理者 Dさん「優績者が頼りですから。頼りなんですよ。なので、どうしても営業優先のなかで、やっぱり優績者を守っていく、かばう形になる。いつの間にか、適正なのか不適正なのかがマヒしながらになったのかなと。経営陣の責任でしょうし、本社も支社も一番の責任かなと。」 問題を解決し、再発を防ぐことはできるのでしょうか? 武田:取材にあたった望月さん。新体制になった郵政グループ、この優績者の問題に厳しく対応していくとしていますが、なぜ、ここまで十分に対処しきれていなかったのでしょうか? 望月ディレクター:優績者が処分されにくい仕組みがありました。これは、実際に販売した局員本人が認めなければ不適正と認められなかったんですね。もし顧客側から強い苦情があったとしても、返金をして契約自体をなかったことにすると。これが問題として明るみに出ることはなくて、処分もほとんどされていなかったという状況で。これについては、実態を調査報告書も指摘をしています。 武田:昨夜に続いて弁護士の郷原さんに伺いますが、報告書も指摘するとおり、優績者個人の問題にとどまらず、むしろ利益を上げさえすれば一定の不適正は見過ごすという組織の問題もあったのではないかと思うのですが、いかがですか? ゲスト 郷原信郎さん(弁護士、元日本郵政ガバナンス検証委員長)郷原さん:本来、顧客の利益にかなっているかどうかを見たいのであれば、一人一人の顧客がどういう契約をしているのか、それがプラスになっているのかマイナスになっているのかをしっかり見極めるべきですね。ところが、実際には募集品質の向上という言葉でそれを隠れみのにして、顧客の利益に目をそむけてきたのではないかという気がします。募集品質というのは、法令違反とか社内規定違反があるかないか、しかも、それを認めるかどうかの問題です。そういうことであれば、優績者と言われる人たちは、不適正にならないようにうまくすり抜けながら、どんどん営業成績を上げている。そういった実態が放置されていたということは、組織として顧客の利益に本当の意味で向き合ってなかった。このような体質がずっと続いてきたということではないかと思います。 望月ディレクター:取材した優績者は、これまで散々自分たちをもてはやしてきた会社が、問題が明るみに出て以降、今度は自分たちを犯人扱いすると。これはトカゲの尻尾切りだということで、強く憤りを感じていました。もちろん不適正契約に携わった局員は責任を取るべきだとは思いますが、管理者も含めた組織全体に重い責任があると思います。 武田:果たして、対策がきちんと実効性を持って進められるのか。優績者の問題や、それを助長してきた組織の体質を変えられるのか。日本郵便の幹部に聞きました』、郷原氏の「実際には募集品質の向上という言葉でそれを隠れみのにして、顧客の利益に目をそむけてきたのではないかという気がします・・・優績者と言われる人たちは、不適正にならないようにうまくすり抜けながら、どんどん営業成績を上げている。そういった実態が放置されていたということは、組織として顧客の利益に本当の意味で向き合ってなかった。このような体質がずっと続いてきたということではないかと思います」、は鋭い本質を突く指摘だ。
・『かんぽ問題 幹部に問う 組織の体質は変わるのか?  以前、番組のインタビューで「踏み込んだ対策をする」と語っていた日本郵便の佐野公紀常務執行役員。保険の営業推進の責任者です。2年前の放送を踏まえ、今回の事態をどう受け止めるのか改めて問いました。 日本郵便 佐野公紀常務執行役員「(2年前の)番組放送後、私どもはかんぽ生命とともに募集品質改善に努めてきたつもりでございました。しかし今回、明るみになってきた事実を見ると、その取り組みというものが非常に不十分であったと。」 クロ現ディレクター:優績者が一般社員よりも緩い基準になっているのではないかと? 日本郵便 佐野公紀常務執行役員「従来に比べて、ここ近年、2年ぐらい、募集品質の水準は厳しく引き上げたわけではございますけれども、それでも今のこの状況で考えますと、募集品質を欠格にする水準は緩かったと思います。優績者のあり方も、これから見直しを考えることになる。自主研自体、いろいろな問題と不適正な話法の伝播の一因になっているというご指摘もいただいているところ。自主研のあり方ということも当然、見直しをこれからかけていくということだと思います。まだまだ遠い道のりですけど、お客さまへの信頼回復に向けては、お客さま本位の営業活動を組織全体として覚悟を持って取り組んでいく。」』、いまだに、「優績者のあり方」については、奥歯にモノ挟まったような言い方だ。
・『検証2年 かんぽ問題 再生への課題は?  武田:経済部の安藤さん。郵政グループは具体的に、どう対処していこうとしているのでしょうか? 安藤記者:郵政グループの再発防止策、主なものをまとめました。まず「営業目標の見直し」。新規契約の獲得に偏っていたものを改めて、「継続性も重視」して目標を決めていくとしています。それから「70歳以上への営業とりやめ」のほか、「顧客との会話を録音」。もし何かあったときに不適正な営業がなかったか確認できるような体制にするといいます。そして、「局員が否認しても不適正を認定」。不適正な販売だと認めなかったということも、外形上で十分に疑わしい場合は不適正だと認め、顧客の対応にあたっていくとしています。 武田:ただ、宮田さん、そうはいっても巨大な組織です。対策が実効性を持ってなされるためには、何が必要だと考えますか? ゲスト 宮田裕章さん(慶應義塾大学 教授)宮田さん:問題の原因に一つ一つ対応していくことも重要ですが、一方、全社員の問題として改革に取り組むことで、問題を生まない土壌を作ることも必要なんです。この点については、規模の違いはありますが、同じ旧官営企業のJALのケースが参考になります。経営破綻から再生した現在、振り返って何が一番大事なのかを考えたとき、その要素の1つが全従業員に行った意識改革です。例えば、顧客目線を徹底するということ。前線に立つ営業担当だけではなく、バックオフィスも含めて一人一人の従業員が目標を共有することで、マニュアルやコンプライアンスの外側の問題も含めて、真に質の高いサービスを実現することができるようになった。あるいは、体質性を作ることによって一部の暴走をみんなで抑えて、サービスの質を変えていくということにもつながったともいわれています。 武田:今回の報告書では、問題の背景に民営化の過程で生じた構造的な課題もあると指摘されています。長年、郵政問題を研究してきた田尻嗣夫さんは、利益優先の体質に変わってしまったのではと指摘しています。 東京国際大学 名誉教授 田尻嗣夫さん「民間企業として配当もしなきゃいかん、株主を喜ばせないといかん、ということです。国民を喜ばせなくてはいかんと考えていないんですよ。そこが問題なんです。民営化企業だから、新しいものをどんどん売り込めと。それは、だって能力主義で目標達成主義でね。(民営化前は)ノルマ、ノルマ、ノルマということを言う必要がなかったのですから。」 武田:一方で、民営化が徹底されていないことが問題の背景にあるという意見もあります。日本郵政公社の初代総裁を務めた生田正治さんです。日本郵政公社 初代総裁 生田正治さん「中途半端な民営化。(官と民の)中間にいると、両方のいいとこ取りでやれるならいい。ところが要は、悪いとこ取りになっちゃう。新商品の開発ができない。これは致命的。こういう状態がずっと残るわけですよ。半官半民の、変な不自由な事態が。普通の人と同じように商売できるようにならないと大変困る。」 武田:安藤さん、お二人が指摘したことを含めて、日本郵政グループが抱える構造的な問題はどういう点がありますか? 安藤記者:2007年に民営化した郵政グループですが、民間企業として当然、利益を追求していくことが求められるようになりました。一方で歴史的な低金利ということで、本来、かんぽ生命が得意としてきた貯蓄性の商品の魅力が大変に落ちてしまったと。こうなれば何か別の商品をということですが、まだ民営化のプロセスの途中ということもあって、政府が間接的に出資をしている状態なのが、かんぽ生命です。このため、ほかの民間の保険会社と競争条件を平等に保つために、新商品の開発などに制約もあるのです。こうした制約がある中で、2015年から2017年といった時期には“高齢者らの深耕”、つまり既存の高齢者のお客さんたちを深掘りしようということを経営計画上、掲げていた時期もあります。そして、終身保険の加入の年齢の上限も引き上げられました。不適正な契約を防ぐ体制が十分ならよかったんですけれども、結果的には、こうした体制が十分ではなかったことで、問題を広げた根っこになってしまったと思います。 武田:郷原さんは、背景にある構造的な課題はどう捉えていらっしゃいますか? 郷原さん:全国の郵便局網、ユニバーサルサービスの義務をそのままにしていこうと思えば、どうしても民業圧迫という観点からの制約を受けざるを得ない。そうした中で、民営化でどんどん利益を得ていこうと思えば、そこに無理がかかってしまうのです。そこに、かつての保険商品とは、魅力の問題というよりも全く性格の違う保障性商品を売っていくことになって。昔のように保険に入っても特に損はない。元本が保証されたものの販売と、入れば入るだけ、リスクによって逆に損失が生じてしまう商品の販売とは全く違うやり方をとらなくちゃいけないんです。どんどん契約を取っていく旧来のやり方で利益を確保してきた。これが結局、顧客の利益に反する結果につながったということなのではないかと思います。 武田:大きな課題を抱えて新たに組織を運営することになった増田社長は、次のように語ります。 日本郵政 増田寛也社長「民営化を進めていくという方針は揺るぎないもの。それは、いささかも変わっていない。われわれは半官半民のような形になっているので(商品開発などの)上乗せ規制もありますけれども、(不適正問題を)民営化の中途半端なことのせいにすべきではないというか、それをしては本当の民営化もできないしサービスの向上にはつながらない。愚直に感謝の気持ちを持って、1つ1つお客さまに対しての応対をしていくことが一歩一歩の信頼回復につながるのではないかと。」 安藤記者:民営化の推進そのものに変わりはないという話でした。政府は保有する郵政株を売却して、東日本大震災の復興に充てる財源にしたい方針なのです。ただ、今回の問題が起きて以降、次の売却の時期が不透明になっています。ですから、日本郵政が信頼回復をできるかどうかは、東日本大震災の復興という点で広く国民に影響する話でもあるんです。 武田:二度とこうした問題を繰り返さないためにどうするのか。そして、郵便局がこれからどういうふうに進んでいくのか。そのために何を考えるべきなのか。宮田さんは、いかがですか。 宮田さん:昨年、私はG20の生命保険会合に出席したのですが、いま業界を越えた大変革の中、単に契約を取り付ければいいという時代ではなくなっています。つまり契約をしたあと、一人一人、顧客はよりよい人生を歩む。あるいは病や事故に遭遇しても、その人らしく生きることができるという顧客目線の体験にコミットできなければ生き残ることができない。例えば、携帯のアプリを通して、その人を支え続けるというサービスだったり、健康にいい行動をとったら保険料が安くなる。こういう人生に寄り添うサービスが出始めています。事件が起きたからといって郵政が行ってきたすべてが否定されるのではなくて、地域を支えるサービスは今もありますし、あるいは実態調査を適切に行えば、顧客が何に困難を抱えるかという点を明らかにして、新しいサービスを開発するチャンスにもつながります。立ち止まらざるを得ない今だからこそ、マイナス面をなくすだけではなく、プラス面も含めて顧客視点に立ったビジョンを作り、そして、われわれ国民はそれを見守っていくことが必要かなと思います。 武田:郷原さんは? 郷原さん:郵政民営化の歩みも、常に同じ方向ではなかったということが言えます。一気に民営化を進めようとした時期と、それにブレーキがかかった時期がありました。そういう民営化のぶれが、いろんな問題を生じさせていることは間違いないです。日本郵政をどういうものとしていくのか、全国の郵便局網をどう守っていくのか、それとも、どんどん収益を上げる方向にいくのかという選択肢を、この辺りで政治が示していく必要があるのではないか。国民がそれを選択する必要があるのではないかと私は思います。 武田:最後に望月さん、取材を通じて何を感じますか。 望月ディレクター:ひとたび保険のトラブルが起きますと、専門知識があるわけでもないですし、すごく長い時間と労力がかかるのです。「おばあちゃん、なんでそんな保険に入ったの?」みたいなことで家族の中で不和が起こったりだとか。本来、もともと保険というのは安心を得るためのものなので、絶対あってはならないことだということを本当に重く受け止めて、再生に向けた取り組みに向かっていってほしいと思います。 武田:高齢者の中には、なかなか自分では分からない方もいらっしゃると思いますが、ご家族の方もこういった項目に思い当たるところがあれば、ぜひ、かんぽのコールセンターや保険に詳しい人に相談していただければと思います』、安藤記者の「2015年から2017年といった時期には“高齢者らの深耕”、つまり既存の高齢者のお客さんたちを深掘りしようということを経営計画上、掲げていた時期もあります。そして、終身保険の加入の年齢の上限も引き上げられました。不適正な契約を防ぐ体制が十分ならよかったんですけれども、結果的には、こうした体制が十分ではなかったことで、問題を広げた根っこになってしまった」、経営計画に問題があったとの指摘は新鮮だ。郷原氏の「民営化のぶれが、いろんな問題を生じさせていることは間違いないです。日本郵政をどういうものとしていくのか、全国の郵便局網をどう守っていくのか、それとも、どんどん収益を上げる方向にいくのかという選択肢を、この辺りで政治が示していく必要があるのではないか。国民がそれを選択する必要があるのではないか」、説得力がある主張だが、現実にはいまさらそんな原点に立ち返る議論をする政治家はいないだろう。残念だ。
タグ:日本郵政 現代ビジネス 増田寛也 NHKクローズアップ現代+ (その14)(かんぽ不正3社長辞任「官僚の人事」が郵政をいよいよつぶす 民営化が逆回転しはじめた、クローズアップ現代+:検証・かんぽ問題① 実態解明と顧客救済は?、② 郵政グループ 再生への課題は?) 「かんぽ不正3社長辞任「官僚の人事」が郵政をいよいよつぶす 民営化が逆回転しはじめた」 「民間」とは遠い人物 「シリーズ 検証・かんぽ問題① 実態解明と顧客救済は?」 検証2年 かんぽ問題 あなたの保険は大丈夫? 検証・かんぽ問題 埋もれた不適正契約とは? 「料済」「減額」「ヒホガエ」「多額契約」のほかに、「相続話法」という手法も 一番取っかかりやすいようなところを見ているのかなと。(他にも)会社が把握していた、あくどい話法があります。こちらの方が(特定事案より)圧倒的に多い 意向に沿っているかどうかという、あいまいな言葉では顧客はなかなかイメージすることができないので、支払いに困難を感じたか、契約時に不安を感じたか、具体的な言葉で把握させて、そこから不適正事案を絞り込むことも必要 かんぽ問題 救済は?幹部に問う 検証2年 かんぽ問題 顧客の救済に何が必要か? 「シリーズ 検証・かんぽ問題② 郵政グループ 再生への課題は?」 「優績者」と呼ばれる販売実績の高い社員が、不適正な疑いがある契約を行うのを許容する「不適正を誘因」するかのような仕組みだった 検証2年 かんぽ問題 巨大組織の体質に迫る 「高い実績の局員に依存」せざるを得ない状況の中、「不適正を黙認する風潮」が形成された かんぽ問題 組織を支える“成績優秀者”の実態 実際には募集品質の向上という言葉でそれを隠れみのにして、顧客の利益に目をそむけてきたのではないかという気がします・・・優績者と言われる人たちは、不適正にならないようにうまくすり抜けながら、どんどん営業成績を上げている。そういった実態が放置されていたということは、組織として顧客の利益に本当の意味で向き合ってなかった。このような体質がずっと続いてきたということではないかと思います かんぽ問題 幹部に問う 組織の体質は変わるのか? 検証2年 かんぽ問題 再生への課題は? 2015年から2017年といった時期には“高齢者らの深耕”、つまり既存の高齢者のお客さんたちを深掘りしようということを経営計画上、掲げていた時期もあります。そして、終身保険の加入の年齢の上限も引き上げられました。不適正な契約を防ぐ体制が十分ならよかったんですけれども、結果的には、こうした体制が十分ではなかったことで、問題を広げた根っこになってしまった 民営化のぶれが、いろんな問題を生じさせていることは間違いないです。日本郵政をどういうものとしていくのか、全国の郵便局網をどう守っていくのか、それとも、どんどん収益を上げる方向にいくのかという選択肢を、この辺りで政治が示していく必要があるのではないか。国民がそれを選択する必要があるのではないか
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

日本郵政(その13)(日本郵便「社員が社長にぶつけた不満」の全記録 返答はノルマ肯定、お付き合い容認 自爆放置、副社長が社長や総務次官より“偉い”「民営化郵政」の多重権力、保険不適切販売の背景としての「政治との関係」~政府は日本郵政を一体どうしようとしているのか) [国内政治]

日本郵政については、昨年8月12日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その13)(日本郵便「社員が社長にぶつけた不満」の全記録 返答はノルマ肯定、お付き合い容認 自爆放置、副社長が社長や総務次官より“偉い”「民営化郵政」の多重権力、保険不適切販売の背景としての「政治との関係」~政府は日本郵政を一体どうしようとしているのか)である。

先ずは、8月27日付け東洋経済オンライン「日本郵便「社員が社長にぶつけた不満」の全記録 返答はノルマ肯定、お付き合い容認、自爆放置」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/299500
・『保険料の二重払いなど少なくとも18万件に上る不適切販売が発覚したかんぽ生命保険。そのかんぽの約9割を販売代行しているのが日本郵便だ。8月下旬には同じく委託販売しているアフラックのがん保険でも10万件の保険料の二重払いが発覚。事態は収束に向かうどころか悪化の一途をたどっている。 非常事態を受けて、日本郵便の横山邦男社長は8月23日に本社22階「前島ルーム」で、首都圏の現場社員のうち400人との対話集会を開催した。 『週刊東洋経済』は8月26日発売号で「かんぽの闇 金融商品の罠」を特集。契約獲得に伴って支払われる「募集手当」を目当てに郵便局員が行う悪質な営業実態に迫った。 「かんぽの闇 金融商品の罠」特集取材班は校了後に開かれたこの対話集会の模様を追った。質問は抽選方式。参加者には番号が振られていて、質問があろうがなかろうが、抽選に当たった社員は質問用のマイクを持ち、発言をした(質疑応答2.8万字全文はこちら)』、やや古い記事だが、営業現場とトップとの認識のズレが如実に表れているので、紹介した次第である。
・『「ノルマは個人も組織も育てる」?  南関東の郵便局員は、「1年前(の2018年4月)にNHK『クローズアップ現代プラス』で不適切営業が取り上げられた段階で対策していれば、ここまで問題が大きくならなかったのではないか」と横山社長に疑問を投げかけた。 横山社長は、「この(不適切販売の)問題は今、クローズアップされているけれども」と、番組名になぞらえて語り始めた。「これは何年も続いていた話ですよね。(不適切募集は)企業風土になっている面もあるかもしれない。一部の人(=販売実績が高い社員)がやっていたことだが、その一部の人を褒めてきた本社がよくなかった。(販売)品質がどんどん悪くなっていったというのはそういうことだ」と、問題は今に始まったことではなく、販売実績が高い一部の社員の仕業であり、それを本社も容認。その結果、営業の仕方が悪質化してきたという見方を示した。 不適切営業の原因として厳しい営業ノルマの存在が複数の報道で指摘されている。が、横山社長は営業ノルマを肯定するような発言をした。北関東の郵便局員から「何で目標が達成できないのかを(研修などで上司が保険販売担当者を)恫喝するのではなく、一緒に原因を掘り下げるような、風通しのよい環境があったらいい」と意見を言うと、横山社長は「恫喝」については言及せずに「ちょっとストレッチ(背伸び)をして、(ノルマの数字に)届くということが、組織や個人の成長につながる」と答えたのだ』、民間出身の実務家社長らしい建前論だ。
・『「お付き合いはどこにでもある」?  横山社長は「お付き合い(で買ってもらう)というのはどこにでもある。他の金融機関にも自動車(ディーラー)にもある。それは信頼関係だからね」と、顧客ニーズとは無関係に保険に加入してもらうことを肯定する発言もした。 「高齢者は郵便局のファンです。われわれを助けてくれる。ところが(高齢者が)お亡くなりになった瞬間に(家族から)『なんでこんな経済合理性のない取引をやっているのだ』ということになる。(信頼関係で入ってもらうにしても)ご家族の納得のうえでないといけない。それが今回の反省だと思う」(横山社長)。 「お付き合いで」ニーズのない保険に加入してもらうこと自体は問題ではなく、それを家族に納得してもらえていなかったことが反省点だという、世間の常識とはかけ離れた見解を示したのだ。かんぽの監督官庁である金融庁は、現在、顧客ニーズに沿ったリテール営業を推進している。この横山社長の「お付き合いはどこにでもある」発言が耳に入ったら、遠藤俊英・金融庁長官はどう思うだろうか。 さすがにまずいと思ったのだろうか、その後に、横山社長は「今、ゼロベースで見直している。(過去を)断ち切っていくから。新たな金融ビジネスを立ち上げていきます。よろしくね」と言葉をつないだ。「新たな金融ビジネス」とは何か。横山社長から具体的な発言はなかったので不明だが、ほかの質疑応答や集会冒頭の話から総合すると、不適切な営業をしなくても保険契約を取ってくる仕組みづくり、手数料稼ぎではなく、ストック(=預かっている資産)の増加を評価する仕組みづくりなどを指しているようだった。 南関東で保険販売を担当しているという郵便局員は「ここ2年くらい本当に売りづらかった。ほとんどの客に断られ続けている」と、かんぽ生命の保険商品がニーズに合っていないことを訴えた。 横山社長は「保険というのは非常に難しい。ライフプラン・コンサルタントも『家計のリストラはまず保険の見直しだ』と言う。今、『この商品が顧客ニーズに刺さるんだ』という商品は確かに必要ですね。機会をつくるから主要メンバーになってください」とした。 その後に横山社長は南関東の郵便局員と以下のやり取りをした。 横山社長「逆にどんな商品が欲しいですか?」 郵便局員「死亡保障はいらないとか、医療を充実してほしいと言われている」 横山社長「わかりました。やります」』、商品性で逃げ切れるような問題ではない筈だ。
・『現場には手応えがない  かんぽ問題が最大の課題であるにもかかわらず、かんぽ関連の質問はそう多くなかった。むしろ、荷物の集配作業や郵便作業をしている社員から不満が噴出する結果となった。 別の南関東の郵便局員が「先ほど社長は『私が就任してから3年で日本郵便は変わった』と言ったが、現場では手応えがない」と指摘すると、 横山社長「何も変わってない?」 郵便局員「現場にいる者としては(変化が)体感できない。給料も上がっていない。業績上がったならきちんと社員に還元すべき。年収は数十万円、下がっている。公務員時代に入社して『年収は35歳くらいから上がっていく』と聞いていたが、民営化で給料が上がらなくなった。もらえる退職金が減るのも不満だ」 横山社長「信賞必罰、(結果だけではなく)プロセスを評価する会社、のびのび働ける会社にしていく」 郵便局員「評価と言うが、(上司は)よく見ていないじゃないか」 横山社長「(上司が)好き嫌いで評価を決めることがあるということ?」 郵便局員「私が嫌われているということはある。短期間に3回転勤させられた」 横山社長「ちゃんと働いているのに?」 郵便局員「そうでないとこんな大きな口、たたけませんから」 「局長と私の2人だけでやっている」という山梨の別の郵便局員は「客が1日に5人くらいしか来ない。今日は午前中、1人も客が来なかった。新しい客を探すこと自体難しい。局外活動(郵便局の外に営業に出かけること)をしない局は、目標(=営業ノルマ)未達が慣れっこになってきている。悲しいことに、今回、(積極的な)営業をしてはいけないことになってよかったな、と思っている人もいるだろう。未達の局がだんだん増えてきている。私自身は仕事がつまらない、将来が不安だなと感じている。局長自体、(数人でやっている郵便局の)マネジメントができていないのかなとも思う」と訴えた。 横山社長は、「(局長たちを)ちゃんと指導しますけど、あなたも局長を突き上げてください。それでもダメなら電話をちょうだい。私が強烈な指導をしますから」と語気を強めた』、特に、縁故や世襲でなる特定郵便局の局長なら大いにあり得るだろう。
・『「自爆営業はかなり多いんだろうな」  営業ノルマを達成するために社員や社員の家族・親族が買う「自爆営業」。東京23区内の郵便局員から「社員は実需のあるなしにかかわらず、営業ノルマのある物販を当たり前のように買っている。社員がどのくらい買っているかを把握しているか」と質問すると、横山社長は「ごめん、私はわかっていない」と断ったうえで、「しかし、(社長就任から)この3年間で何となくかなり多いんだろうなという気はしている」とした。 そのうえで、「もちろん愛社精神で実需に基づいて買うのはいいことだと思うが、それを超えるものは異常だと思う。物販のビジネスモデルは合っているのか、他社やライバルと比べてどんな強みや弱みがあるのか。(自爆営業は)かなりのレート(比率)に上るということは認識しています。だから手をつけていきます」と回答した。 社員に自爆営業を事実上強いておき、それを認識しておきながら放置していた責任は軽くないだろう。 別の局員は退職者の多さを指摘した。「新人が毎年140?150人入ってくるが、10年後に10人しか残っていない。数字(=営業ノルマ)に追われて、結果が出ないから退職していった人がたくさんいる」。 横山社長は「保険会社に転職したの?」と聞き、社員が「まったく別の仕事です。辞めてよかったと皆、言っている」と答えると、 「(辞めた人は)損したね。これからいい会社になるよ。(今でも)異次元の業績になっている」と横山社長は強気の姿勢を崩さなかった。 北関東のほかの郵便局員は、「8年前に入社したが、7人いた同期で残っているのは私ともう1人の2人。残っている1人も先月から休んでいる」と訴えた。 横山社長は「『こいつ、いいな』というのが辞めている?」と逆質問。この郵便局員は「いい人材でも目標が達成できなくて辞めている。同じ職場の人間としてお互いに長くやっていきたいと思っているがそうなっていない。人材確保にもっとカネをかけてほしい」と回答した。 横山社長は「人件費をどうするかはいろんな変数要因があるが、意欲のある人間に長く愛社精神を持ってやっていただきたいというのがあるので、採用の仕方も見直しさせていきます。仕事の厳しさに応じた報酬体系にするのが企業として当たり前」とした。 対話集会の最後に、横山社長は1人だけ、挙手による質問を許した。東京23区内の局員だった』、「退職者の多さ」には改めて驚かされた。
・『「現場が知らないだけじゃないの?」  郵便局員「『(本社の人間を)必ず現場に行かせます』と歴代社長は言ったが、本社の人間は誰もこない。これでは面従腹背ではないか。面従腹背をしている本社の部長などを処分すべきではないか。それと、(壇上など前にいる本社の幹部で)かんぽに入っている人、どれだけいますか?手を挙げてください。半分もいないでしょう?(研修などで)『家族や恋人に勧めるつもりでかんぽの保険を勧めてください』とよく言われるが、あなた方の半分も入っていない保険をどうして家族や恋人に勧めるように勧められますか? 某国の野菜を勧めろと言われているのと一緒。農薬だらけで某国の国民は誰も食べていませんよ。当局は近隣他局との合併で、かつて倉庫だったところに保険担当者が押し込められている。現場に来てくださいよ、そうすればこうしたこともわかるはずだから」 横山社長「現場に行きます。約束しますよ」 郵便局員「そう言って誰も来ないじゃないか。本当はこの会だって、現場の局員が本社に集まるのではなくて、本社の人間が現場に来るのが筋ではないか」 横山社長「この人たち(=本社の人間)はつねに現場に行っています」 郵便局員「来ていません」 横山社長「それは(君が)知らないだけじゃないの?」 現場の声を虚心坦懐に聞くはずが、最後は「現場が知らないだけではないか」と横山社長が現場に疑問を呈して終わった今回の対話集会。質問に立った社員21人の話で目立ったのは「報道が先行している」「新聞に書いてあったことを局長に聞いても『わからない』と言われた」という意見だった。横山社長は「対応が後手後手に回っている。申し訳ない」と繰り返した。 顧客への全件調査(契約数約3000万件、加入者数約2000万人)は始まったばかり。郵送で確認書類を送り終えるのは9月下旬だという。「9月末までには中間報告をする」としているが、これでは中間報告までに全件調査の全容は見えてこないだろう。 「これから全国を回る」という横山社長だが、社員との対話集会を契機にウミを出し切れるのか。首都圏社員との対話集会のように冒頭で延々と社長自らが独演をし、質問は抽選とし、質問をしたくても抽選に当たらなかった人には紙に質問を書くように促すという運営では、問題の洗い出しは難しいように思える』、こんな「対話集会」では、出席した郵便局員たちのフラストレーションが、ますます高まったのではなかろうか。

次に、デモクラシータイムス同人・元朝日新聞編集委員の山田厚史氏が12月28日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「副社長が社長や総務次官より“偉い”「民営化郵政」の多重権力」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/224926
・『「処分」の情報を漏洩した相手は「郵政のドン」、天下りの先輩次官  郵便局職員によるかんぽ生命の保険不正販売をめぐる処分は、土壇場で、監督官庁の総務省次官のクビが飛ぶ「波乱」が起きた。 大臣室の密談を、次官が処分対象の日本郵政に漏らすという前代未聞の出来事だが、この一件で、誰が郵政の実力者なのか、はからずも明らかになった。 「民営化」は掛け声だけで、実権は社長より「偉い」、「郵政のドン」である副社長が握り、その背後に官邸の実力者がいる。 日本郵政グループは27日、3社長の辞任と、日本郵政の後継社長に増田寛也元務総相の就任を発表。この「実力副社長」も退任させて、政府は立て直しを図ろうとする。 だが民営化から12年たっても続く「旧体制」を変えるのは容易なことではない。 組織で力を握っているのは誰か。外からは見えにくいが、中に入ればすぐわかる。管理職が、誰を見て仕事をしているか、である。 日本郵政グループの場合は、民間から来た日本郵政や日本郵便の社長ではなく、要所に据えられている旧郵政官僚であり、その「ドン」が総務次官から天下った鈴木康雄副社長だった。 その「力」は、出身母体の総務省にまでいまだ及んでいたことが、今回の情報漏洩事件はわかりやすい形で示した。 事務次官といえば官僚組織の最高位で、見識・実績の申し分ない人物が就く役所を代表するポストだ。 その「ミスター総務省」である鈴木茂樹次官(すでに辞職)は、郵政グループの違法販売とその責任を高市総務相と話し合ってきたが、その密談の内容を逐一、先輩の次官でもある、鈴木副社長に報告していた。 天下った先輩に、行政情報をこっそり伝える不心得者が官僚組織にいるとは聞いていたが、事務次官が大臣の処分方針を相手側に漏らすのは前代未聞だ。 「断れない事情があったのでしょう」と高市早苗総務相は言う。だが相手が先輩であっても、「処分方針についてはご勘弁を」とやんわり断るのが普通の対応だ。 二人の間に、情実を超えた「力関係」があったとしか思えない』、図らずも日本郵政と監督官庁である総務省の本当の力関係を示してしまったようだ。
・『菅官房長官を後ろ盾に郵政の内外に威光  鈴木康雄氏は73年に旧郵政省入省。情報通信や放送行政を手がけ、2005年に郵政行政局長になる。小泉首相が郵政民営化をはげしく論じていた時期だ。 当時の総務相は竹中平蔵氏。その下で省内人事を握っていたのは、総務副大臣だった菅義偉官房長官だ。 郵政改革法案は自民党から造反者が出て否決されたが、小泉首相は「郵政解散」に打って出て勝利。翌年、菅氏が総務相になると鈴木は情報通信局長に就いた。 政権との良好な関係を追い風に09年に事務次官に就任したが、この年、民主党政権が誕生し、わずか半年で退職した。 自民党が政権に復帰すると、13年6月、日本郵政の取締役副社長として復帰する。 郵政人事は一新され、安倍政権は財務省出身の坂篤郎社長を外し、財界に顔が利く東芝出身の西室泰三氏を社長に据えた。 民間人による経営を印象つけようとしたが、西室氏は郵政との馴染みは薄く、複雑な組織問題に手を付ける意欲はなかったようだ。 補佐役として旧郵政官僚のボスだった鈴木を送り込んだのが、官房長官になった菅氏だった。 鈴木副社長は西室氏と同じ山梨出身という縁で食い込み、懐に飛び込んだ。西室氏はのちに大失敗が明らかになる国際物流事業への進出問題に傾注し、経営の実務一切を鈴木氏が引き受けた。 菅官房長官が安倍政権で存在感を誇示するようになったのもそのころからだ。 「首相の女房役」の官房長官が、「携帯料金の引き下げ」など独自の政策を掲げ「ポスト安倍」を伺うかのような振る舞いを始めた。 鈴木氏は、官房長官として政権内や霞が関ににらみを利かすが、政治家として何をしたいのか、いまいちはっきりしないとの声もあった菅氏の政策ブレーンとしても仕え、日本郵政グループの外でも存在感が増すようになった。 菅長官の威を借りて「郵政のドン」として振る舞う鈴木副社長に、現役の事務次官も逆らえないことを示したのが、「処分案漏洩」の一件だった』、さすがの「菅長官」も自ら選任した閣僚が相次いで不祥事で辞任するなど、権力にも陰りが出てきたなかでの、今回の問題だ。
・『怒った高市総務相、首相に直訴 郵政内も二重権力構造、根ずく  情報漏洩を知って怒った高市総務相が官邸に駆け込んで、ことは表面化する。 12月19日の「首相動静」に「午後3時5分から28分まで高市早苗総務相」とある。次官の更迭の報告が話し合われたのだろう。 翌日、緊急記者会見が開かれ、秘密漏洩の事実と相手が鈴木副社長であることが公表された。「政権内部の暗闘が始まった」と霞ヶ関では語られている。 「高市さんは、2度目の総務大臣への就任。情報通信や放送行政は自分の縄張り、という意識が強い。菅さんが官房長官でありながら、管轄外の通信行政に口出しするのを苦々しく思っていたに違いない。高市氏は安倍首相と近い。菅氏の子分がこんなことをしていますよ、と直訴したのでしょう」。ある現役官僚はこう解説する。 似たような二重の権力構造は日本郵政内部にも根づき、旧郵政官僚による支配の体制ができあがっていた。 西室氏が東芝の不正会計問題への関与などを疑われ、病気を理由に退任した後、日本郵政社長には、ゆうちょ銀行社長だった長門氏が就いたが、すでに日本郵政は鈴木氏の顔を見て仕事する組織になっていた。 長門氏は「表の顔」でしかなく、責任はあるが実権はない。責任の軽い副社長が組織を仕切る。 日本郵便も三井住友銀行から来た横山邦男氏が社長を務めるが、「民営化反対」の牙城・全国郵便局長会(全特)の会長から抜擢された大澤誠副社長が睨みを利かす。会長は旧郵政官僚の高橋亨氏だ。 かんぽ生命も旧東京海上火災保険からトップが来たが、損保と生保は業務が全然違う。旧郵政官僚の堀金正章副社長が実務を握っている。 金融機関からやってきて、数年しかたっていないトップが、重層的で独特の職場慣行がまかり通る郵政の現場を理解するのは困難だ。 「現場の情報が上がってこなかった。日本郵便の社長もかんぽ生命の社長も気づいていなかった」と長門氏は、かんぽ保険の不正販売の調査報告書がまとまった際の記者会見で釈明したが、その通りだろう。 3社長は郵政組織にとって「他所からやってきたお客様」でしかない。責任と実権のねじれは、情報を遮断し、判断を誤らす』、「二重の権力構造は日本郵政内部にも根づき、旧郵政官僚による支配の体制ができあがっていた」、のでは、「お客様」の「3社長」はさぞかし居心地が悪かったろう。
・『NHKへの「抗議」問題でゆがんだ統治が露呈  「今回の郵政不祥事の責任を問うなら、鈴木副社長の責任抜きに語れない」と、事情を知る財務官僚は指摘する。 「表の顔」である3社長は、経営計画を立案、業務の執行状況を確認など会議や決済で忙殺される。現場で起こる違法行為などトラブルは、「募集品質改善委員会」が報告する仕組みになっていた。 不正行為を「募集品質」と呼ぶ“社風”も異様だが、「募集品質は改善されている」という報告がされていた。 副社長たちは実情を知っていても、面倒な話は社長の耳には届いていなかった。件数を減らすため報告事項の基準を狭くするなど、問題を隠蔽する方向へと組織は動いた。 旧郵政官僚が実効支配する二重権力の現実が世に知られるようになったのは、「かんぽの不正」が社会問題になる中で、この問題を放映したNHKに対する「抗議」だった。 「(NHKは)まるで暴力団と一緒。殴っておいて、これ以上殴ってほしくないならやめたるわ、俺の言うことを聞けって。バカじゃねぇの」と鈴木副社長は囲み取材の記者たちに語った。 「クローズアップ現代+」は昨年4月、「郵便局が保険を押し売り」という番組を放映。続編を製作するため7月、情報提供を求める動画を流した。 郵政側は「内容が一方的だ」と 当時の上田良一NHK会長に文書で抗議、動画の削除を要求した。 NHKが「政策と経営は分離されている。番組政策に会長は関与しない」と応じなかったことに郵政側は反発。「放送法で会長は協会(NHK)を代表し、その業務を総理する、となっている」と、NHK経営委員会(石原進会長)に「ガバナンスの検証」を求めた。 経営委員会は郵政側の主張を受け入れ、上田会長に「厳重注意」した。会長は放送局長に「詫び状」を持たせ、収拾をはかった。郵政側の意向に沿って動画は削除され、続編は放送されなかった。 一連の抗議を主導した鈴木副社長は、NHKに宛てた文書で、自分を「かつて放送行政に携わり、協会のガバナンス強化を目的にする放送法改正案の作成責任者であった」と強調するなど威圧的な態度に終始した。 上司である長門社長が「NHKの報道は正しかった。あの時点でもっと気をつけていれば」と反省の言葉を述べていることなど眼中にない振る舞いに、「社長より偉い副社長」が日本郵政にいることを世間は感じ取った』、問題のNHKの「クローズアップ現代+」は、今月になって2回にわたって放映された。これは明日、紹介する予定。
・『民営化から12年たっても利害もミッションもばらばら  「持ち株会社として日本郵政が果たすべき役割やグループガバナンスのあり方について、全役員のコンセンサスが得られておらず、持ち株会社としてのガバナンスに問題があったと言わざるをえない」 18日に発表された、保険の不正販売をめぐる調査特別委員会報告書にそう書かれている。 持ち株会社がグループを統括する、という仕組みが機能していない、というのである。 だがそれはいまさらの話で、持ち株会社の社長より偉い副社長が、政治とつながって裏で仕切る組織に透明なガバナンスが育つはずもなかったのだ。 問題の根深さを感じさせるのは、民営化から12年が経過しても、郵政グループがワンチームではないことだ。民営化についての考えや利害が異なる勢力の「混成組織」である。 このことは、調査報告書でも、郵政グループ内で意見はバラバラで「ミッションが定まっていない」という経営幹部の意見を紹介している。 竹中・小泉路線のような郵政民営化を掲げているのは、内閣官房に設けられた郵政民営化委員会(岩田一政委員長)であり、政府にありながら郵政グループの経営の指針を決める。 だが、現場は民営化委員会には同調していない。 労働組合の主流は連合に所属する日本郵政グループ労働組合(JP労組)で、23万人が参加している。参議院全国区に立憲民主党から二人の国会議員を送り出している。郵政民営化法案には反対した。 株式会社になると組合幹部が監査役に入り、態度は曖昧になっているが、民営化委員会とは距離を置いている。 特定郵便局長会が前身の全国郵便局長会(全特)は自民党から参議院議員二人を送り出しているが、こちらも民営化委員会とは溝がある。 郵便局長も労組員も、「民営化」に反対だったり距離を置いたりし、選挙でも、かつて民営化に反対して自民党を除名された造反議員を密かに応援している。 市場で競争にさらせば非効率な郵政事業は効率化する、という民営化万能の考えはすでにメッキが剥げたが、ではどうしたらいいのか、という議論は封じらたままだ』、中途半端な「民営化」、それを後押しする勢力によって、今日の事態が引き起こされたのは確かだ。
・『現場は「ノルマ」で疲弊 新体制で立て直しできるか  「かんぽの不正」は、市場原理では売れない保険の現実を晒した。郵便局の信用を悪用した「押し込み販売」でかろうじてノルマが達成されていた。 ゆうちょ銀行の投資信託販売も同じ構造。日銀による異次元金融緩和で国債がマイナス金利というご時世で、郵貯資金は深刻な運用難に陥っている。 数年のうちに「お宝国債」と呼ばれる利率の高い国債が償還され、収益減は避けられない。投信を売って手数料を稼ぐことがノルマになった。郵便局員はお客の資産を知っている。金利がほぼゼロでしかない郵貯を解約させ、手数料を稼げる外貨建て投信などを買わせたりする。 こんな経営のままで、「ゆうちょ」も「かんぽ」も、さらには郵便局網を抱える日本郵政がやってゆけるのだろうか。 郵政グループの従業員は、将来不安を抱えながら、目先の目標達成に追われている。世の中に貢献するお仕事と考えてきた郵政事業が、いつの間にかノルマ達成の苦役に変わってしまった。 政府は立て直しのため、3社長を「更迭」、また鈴木副社長も退任させる。日本郵政の後継社長には、第一次安部内閣で総務相を務め、第二次安倍政権で郵政民営化委員長を務めた増田氏を据え、また、かんぽ生命と日本郵便の後継社長にはいずれも旧郵政出身者を昇格させる。 増田氏も旧建設省出身で、3社のトップはいずれも官僚出身者。新体制は機能するのだろうか。 「民営化」を語る社長たちの陰で旧郵政官僚らが虎視眈々と失地回復を図る、「民営化」のますますの後退を予兆する人事といえないか』、その通りだ。となると、財務省が当てにしている政府保有株の売り出しは、遠い先のことになりそうだ。

第三に、元東京地検特捜部検事で弁護士の郷原信郎氏が12月28日付け同氏のブログに掲載した「保険不適切販売の背景としての「政治との関係」~政府は日本郵政を一体どうしようとしているのか」を紹介しよう。なお、同氏は2010年に総務省が設置した「日本郵政ガバナンス検討委員会」の委員長を務めた経歴の持ち主である。
https://nobuogohara.com/2019/12/28/%e4%bf%9d%e9%99%ba%e4%b8%8d%e9%81%a9%e5%88%87%e8%b2%a9%e5%a3%b2%e5%95%8f%e9%a1%8c%e3%81%ae%e8%83%8c%e6%99%af%e3%81%a8%e3%81%97%e3%81%a6%e3%81%ae%e3%80%8c%e6%94%bf%e6%b2%bb%e3%81%a8%e3%81%ae%e9%96%a2/
・・・・『3社長の引責辞任は当然  今回、かんぽ生命の保険の不適切販売問題の表面化以降、私は、長門社長・横山社長などの対応を批判してきた。 長門社長は、問題発覚前の今年4月に日本郵政がかんぽ生命株式を売却したことに関して、郵政民営化委員会の岩田一政委員長と日本取引所グループの清田瞭最高経営責任者(CEO)から、適切な情報開示がなかったことについて問題を指摘された際にも、直後に開いた記者会見で、「株式売却の際には不祥事について全く認識がなかった」「冗談ではない」と憤ってみせるなどした。保有していたかんぽ生命株式を一般投資家に売却した後、同社の保険販売に重大な問題が発生していることが明らかになって、株価が大きく値下がりしていることについて、長門社長個人としてではなく、日本郵政グループの経営トップとしての責任が問われているのに、個人レベルでの言い訳をするなど、長門社長の対応には重大な問題があった(【長門社長「冗談ではない」発言で、日本郵政株売却は絶望か】)。 日本郵便の横山社長も、保険不適切販売の原因について、記者会見などで、超低金利など販売環境が激変し、郵便局がこれまで多数販売してきた貯蓄型の商品は魅力が薄れているにもかかわらず「営業推進体制が旧態依然のままだった」と原因を説明したが、なぜ営業推進体制が旧態依然の営業体制のままであった原因についての言及も、それに対する反省も全くなかった。(【「日本郵政のガバナンス問題」としての保険不適切販売問題~日本郵便横山社長への重大な疑問】)。 これらの経過からしても、不適切販売の直接の当事者企業のかんぽ生命のトップ植平社長も含め、3社長の辞任は当然であり、むしろ遅きに失したと言うべきであろう』、その通りだ。
・『日本郵政をめぐる根本的問題は全く解消されていない  しかし、今回の問題は、日本郵政グループの経営トップの個人の問題ではない。民間金融機関出身の3社長は、全く弁解の余地のない、苦しい状況に晒された末に、結局、辞任に追い込まれた。民営化後の日本郵政の社長の辞任は5人目である。このような状況の日本郵政グループの経営トップに、民間企業から経営者を迎えることは困難だったために、日本郵便、かんぽ生命も含め官僚出身者3人を社長に就任させることにせざるを得なかったのであろう。 今回の日本郵政グループ3社長が辞任し、増田氏を中心とする新経営体制に代わることで、今後、日本郵政の経営が正常化するのだろうか。残念ながら、それは、全く期待できない。「郵政民営化をめぐる根本的な問題」が解消されない限り、今後も日本郵政をめぐる混乱が続くことは避けられない。 12月18日には、日本郵政が設置した「特別調査委員会報告書」が公表されたが、その内容は、ほとんどが一般的な民間生保会社の視点によるものであり、「日本郵政」という組織の特異性、それが一般の民間会社とは大きく異なっているという視点が欠けている。一般の民間会社で起きたことであれば、この報告書に書かれているような再発防止策も有効であろうが、日本郵政においては、それで問題が解決するとは思えない。  横山社長は、日本郵便の保険営業の在り方に関して、「お客様本位がすべてに優先するという考えが全局に徹底すれば、ユニバーサルサービスの一環として、全国津々浦々で郵便局員が保険を適切に販売することは十分可能」とも述べた。金融庁が、金融モニタリングの基本方針として掲げているのが、「顧客本位の業務運営」であり、それは、保険を含む金融商品の販売において重要な原則とされている。しかし、日本郵政をめぐる根本問題が解決されていない以上、顧客本位の業務運営を日本郵便の保険販売において徹底していくことは決して容易ではない』、「特別調査委員会報告書」は弁護士が中心になってまとめたのだろうが、「ほとんどが一般的な民間生保会社の視点によるものであり、「日本郵政」という組織の特異性、それが一般の民間会社とは大きく異なっているという視点が欠けている」、発注した3社長の意向を踏まえたとはいえ、情けない内容だ。
・『郵政民営化をめぐる政治情勢とユニバーサルサービス   日本郵政は、小泉純一郎首相が2005年の総選挙で「郵政民営化」を公約に掲げて圧勝したことで、2007年に民営化されて株式会社となり、日本郵政を中心とする巨大な企業グループが生まれた。しかし、第一次安倍政権になって以降、郵政民営化に反対する政治勢力が勢いを回復し、日本郵政への逆風が強まっていった。そして、民主党への政権交代後に、郵政民営化は大幅に見直され、2012年に成立した改正郵政民営化法で、日本郵政には、日本郵便の完全親会社として同社にユニバーサルサービスを提供させる責務が定められた。ユニバーサルサービスというのは、「社会全体で均一に維持され、誰もが等しく受益できる公共的なサービス」という意味であり、郵便局のサービスについては、(1)利用者本位の簡便な方法で、 (2)郵便局において一体的に、(3)あまねく全国において公平に利用できるようにすることが、郵便の役務だけでなく、簡易な貯蓄、送金及び債権債務の決済の役務、簡易に利用できる生命保険の役務についても義務づけられている。 今回の保険の不適切販売の問題が発生した要因として、かんぽ生命では、民業圧迫の懸念などから保険金の上限額が2千万円と決まっていて、一般的に保険の「転換」の際に用いられる「新旧の契約の一時的併存」ができないため、旧契約を解約した後に新契約に入り直す「乗り換え」で新旧の契約に切れ目が生じることによって問題が生じるということが指摘できる。一般の民間企業とは異なる条件による制約を受けることは、巨大であり民業圧迫の恐れが高いうえ、全国に販売網を持ち、法的にもユニバーサルサービスの確保義務を負う日本郵政グループにおいては致し方ないこととも言える。 横山社長が言う「お客様本位の営業」を徹底しようと思えば、顧客の多種多様な立場や事情に適合する多様な商品を提供することが必要となる。しかし、ユニバーサルサービスとの関係で、日本郵政グループが取り扱う生命保険は、「簡易に利用できる生命保険」でなければならない。全国で均一な商品の提供が求められている関係で、基本的に商品の内容も単純なものでなければならない。顧客への「個別適応」を追求することには限界があるのである。 ユニバーサルサービスの責務との関係で制約を受けることから、結局のところ、日本郵便という企業が行う保険販売の事業に、競争価値(コアコンピタンス)を見出すことは困難なのである。 そのような制約があるにもかかわらず、投資信託や保障性商品などというコンプライアンスリスクが高い商品について、郵便局員にノルマや営業上のプレッシャーを与えながら販売実績を上げようとしていた経営方針そのものに問題があったのであるが、その背景に、2022年に日本郵政の株式をすべて売却することが法律上義務づけられ、その時点までに、日本郵政グループを民間企業として自立させることが政治的な至上命題とされているという事情があった。それが、郵便局の現場に過大な負荷をかけることにつながったのである』、「ユニバーサルサービスの責務との関係で制約を受ける・・・そのような制約があるにもかかわらず、投資信託や保障性商品などというコンプライアンスリスクが高い商品について、郵便局員にノルマや営業上のプレッシャーを与えながら販売実績を上げようとしていた経営方針そのものに問題があった」、問題の本質を極めて明確に指摘しているのはさすがだ。
・『「政治情勢の変化の影響」と日本郵政のガバナンス問題  私は、郵政民営化後の西川善文日本郵政社長時代に起きた「かんぽの宿」問題などの一連の不祥事を受けて2010年に総務省が設置した「日本郵政ガバナンス検討委員会」の委員長を務めた。その際、不祥事の事実関係の調査、原因分析、再発防止策の策定を行い、成果として公表したのが「日本郵政ガバナンス問題調査専門委員会報告書」であった。 同報告書では、日本郵政のガバナンス問題について、「西川社長時代の日本郵政においては、政治情勢の激変の中、『郵政民営化を後戻りさせないように』との意図が背景あるいは誘因となって、拙速に業務執行が行われたことにより多くの問題の発生につながった」との基本認識に基づき、「日本郵政の事業をめぐる環境は、外部要因に強く影響される。そのため、今回の個別検証でも明らかになったが、これまでの日本郵政の経営をみると、その変化を見越し、環境が大きく変化する前に短期的に結果を出そうとして拙速に経営上の意思決定が行われ、事業が遂行される危険性を有しているものと推察される。」と述べている。 不動産売却やゆうパック事業とペリカン便事業との統合等の経営上の意思決定に関する問題であった西川社長時代の日本郵政の不祥事と、営業の現場で発生した今回の保険商品の不適切販売に関する問題は、性格が異なる問題ではある。しかし、日本郵政グループには、とりわけ日本郵便という組織に対して、民営化による成果の早期実現を求める政治的バイアスと、全国の郵便局網を活用し、日本社会全体に対してユニバーサルサービスを提供する責務を従来どおりに維持することを求める政治的バイアスの両方が働くという「ガバナンス問題」が、事業場のコンプライアンスリスクにつながるという面では共通している』、「民営化による成果の早期実現を求める政治的バイアスと、全国の郵便局網を活用し、日本社会全体に対してユニバーサルサービスを提供する責務を従来どおりに維持することを求める政治的バイアスの両方が働くという「ガバナンス問題」が、事業場のコンプライアンスリスクにつながる」、これも適格な指摘だ。
・『保険不適切販売問題と日本郵政の完全民営化に向けてのスケジュール  今回の保険不適切販売問題の背景には、株式会社化されたものの、その事業に様々な制約を課せられている日本郵政グループにおいて、その制約を無視して、日本郵政株式の全株売却という民営化スケジュールを進め、売却によって得た資金を東日本大震災の復興財源に充てることを予定していた政府の方針がある。 まさに政治的判断によって決められていた民営化スケジュールに沿って、それを可能にする業績目標を掲げざるを得なかったために、営業目標実現のために、保険営業の現場へのインセンティブや、ノルマの押しつけが行われ、高齢者を中心とする郵便局の顧客の利益を大きく損なう結果となったのである。 横山氏が保険不適切販売の原因としている「旧態依然の営業推進体制」は、保険営業に関する限り、日本郵政が公社であった昔から続いているものではない。2015年に、営業を担当する郵便局員の基本給を1割削減し、代わりに手当を手厚くする給与体系の見直しが行われたことで、インセンティブ中心の営業が導入されたものであり(7月24日毎日「かんぽ不正、被害拡大 暴走助長、問われる体質」)、正確に言えば、民営化された日本郵政において、民営化の成果を上げるためにインセンティブ・ノルマ中心の営業推進手法が導入されたことが、今回の保険の不適切販売につながったのである。 それは、小泉首相が進めようとした郵政民営化の流れが、民主党への政権交代で「再国有化」されたことが原因という単純なものでは決してない。 小泉首相による「郵政選挙圧勝」によって、「日本郵政の株式会社化」だけは、短兵急に実現した。しかし、全国の郵便局網、その全国特定郵便局長会による政治力などは、旧来のまま残っていた。それは、自民党が、民主党政権から政権を奪還し、第二次安倍政権になった後も変わらなかった。 日本郵政に関する法的枠組みは、民主党政権時代の2012年の改正郵政民営化法以降変わっていない。それは、自民党内でも、郵政民営化に対する反対勢力が厳然たる力を持っているからである。そのために、ユニバーサルサービスの義務という、完全民営化に対しては明らかに「足かせ」になる要因が残ったまま、日本郵政の株式売却の予定は法的に義務付けられ、その方向に向かって、日本郵政の経営が行われた結果が、今回の保険不適切販売となった。 政治的バイアスは、民営化を促進する方向にも、抑制する方向にも働く。民営化され、上場企業になったにもかかわらずユニバーサルサービスの責務を負っているというのも、まさに、両面の政治的バイアスの産物だと言える。日本郵政は、このような政治的バイアスを受けて、無理に短期的な目標設定をしたり、強引に成果を実現しようとした結果、問題や不祥事が発生するということが繰り返されてきた。 日本郵政を完全に民営化し、純粋に民間会社として運営し、利潤の極大化という株式会社の論理を貫徹していく、というのは一つの選択である。その場合は、ユニバーサルサービスの責務は見直さなければならないし、過疎地も含め全国に残る郵便局のうち、不採算局は統廃合し、郵便局員の人員整理も行わなければならないであろう。 一方、日本の「田舎」「故郷」の最後の砦とも言える郵便局網を最後まで守り抜いていく、というのも選択肢としてあり得る。その場合は、日本郵政の民営化の進め方も相当な制約を受けざるを得ないであろう。 いずれの方向を指向するのか、それは、日本社会の選択であり、政治の決断である。その根本問題をなおざりにしたまま、民間会社的な考え方による「不正の再発防止」だけで、今回の問題を決着させた場合には、日本郵政グループ内で、金融商品販売をめぐる問題が今後も多発し、混迷が一層深まることにつながりかねない。 政府は、日本郵政を、今後どうしようとしているのだろうか』、説得力に溢れた主張で、全面的に同意する。民営化時に守旧派が課した「ユニバーサルサービスの責務」がこうした矛盾の根源にあるようだ。私は増田氏はこれまで評価してきたのだが、日本郵政の社長という「火中の栗を拾う」に至った背景も知りたいものだ。
タグ:東洋経済オンライン 日本郵政 郷原信郎 ダイヤモンド・オンライン 山田厚史 同氏のブログ (その13)(日本郵便「社員が社長にぶつけた不満」の全記録 返答はノルマ肯定、お付き合い容認 自爆放置、副社長が社長や総務次官より“偉い”「民営化郵政」の多重権力、保険不適切販売の背景としての「政治との関係」~政府は日本郵政を一体どうしようとしているのか) 「日本郵便「社員が社長にぶつけた不満」の全記録 返答はノルマ肯定、お付き合い容認、自爆放置」 首都圏の現場社員のうち400人との対話集会 「ノルマは個人も組織も育てる」? 「お付き合いはどこにでもある」? 現場には手応えがない 「自爆営業はかなり多いんだろうな」 「現場が知らないだけじゃないの?」 「副社長が社長や総務次官より“偉い”「民営化郵政」の多重権力」 「処分」の情報を漏洩した相手は「郵政のドン」、天下りの先輩次官 菅官房長官を後ろ盾に郵政の内外に威光 怒った高市総務相、首相に直訴 郵政内も二重権力構造、根ずく NHKへの「抗議」問題でゆがんだ統治が露呈 「クローズアップ現代+」 民営化から12年たっても利害もミッションもばらばら 現場は「ノルマ」で疲弊 新体制で立て直しできるか 「保険不適切販売の背景としての「政治との関係」~政府は日本郵政を一体どうしようとしているのか」 3社長の引責辞任は当然 日本郵政をめぐる根本的問題は全く解消されていない 郵政民営化をめぐる政治情勢とユニバーサルサービス ユニバーサルサービスの責務との関係で制約を受ける そのような制約があるにもかかわらず、投資信託や保障性商品などというコンプライアンスリスクが高い商品について、郵便局員にノルマや営業上のプレッシャーを与えながら販売実績を上げようとしていた経営方針そのものに問題があった 「政治情勢の変化の影響」と日本郵政のガバナンス問題 民営化による成果の早期実現を求める政治的バイアスと、全国の郵便局網を活用し、日本社会全体に対してユニバーサルサービスを提供する責務を従来どおりに維持することを求める政治的バイアスの両方が働くという「ガバナンス問題」が、事業場のコンプライアンスリスクにつながる 保険不適切販売問題と日本郵政の完全民営化に向けてのスケジュール
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

ゴーン逃亡問題(その1)(ゴーンに惨敗した日本 森法相の大失言が世界に印象付けた「自白強要文化」、ゴーン逃亡劇の背景にある 司法と水際危機管理の「構造欠陥」、「ゴーンは無罪の可能性高い」元特捜部検事が語る、ゴーン氏を逃がしたのは誰か?「チーム・ゴーン」驚きの正体と実力 佐藤優が事件を徹底分析する) [司法]

これまでは日産ゴーン不正問題として取上げてきた。ゴーン逃亡を受けて、タイトルもゴーン逃亡問題に変更する。今日は、(その1)(ゴーンに惨敗した日本 森法相の大失言が世界に印象付けた「自白強要文化」、ゴーン逃亡劇の背景にある 司法と水際危機管理の「構造欠陥」、「ゴーンは無罪の可能性高い」元特捜部検事が語る、ゴーン氏を逃がしたのは誰か?「チーム・ゴーン」驚きの正体と実力 佐藤優が事件を徹底分析する)である。特に4番目の記事は必読である。なお、このブログで日産ゴーン不正問題を最近取上げたのは、昨年6月15日である。

先ずは、ノンフィクションライターの窪田順生氏が本年1月16日付けダイヤモンド・オンライン に掲載した「ゴーンに惨敗した日本、森法相の大失言が世界に印象付けた「自白強要文化」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/225890
・『日本から逃亡してレバノンで記者会見を開いたゴーン氏に対して、森雅子法務大臣が放った一言が、国際社会で「日本の司法制度の欠点を表している」と物議を醸している。この一言で、日本vsゴーンの第1ラウンドは、「日本の惨敗」が決定的となった』、お粗末極まる発言だ。
・『森法相の「失言」に日本の司法の本質が出ている  世界が注目した日本vsカルロス・ゴーン。その第1ラウンドは完全にこちらの「惨敗」のようだ。 メディアの注目がマネロン疑惑へ向かわぬよう、日本の司法制度をこれでもかとディスった“ゴーン劇場”。それを受けて、珍しく迅速にカウンターを打った日本政府だったが、森雅子法務大臣がドヤ顔で「ゴーン被告は司法の場で無罪を証明すべきだ」と口走ったことが、国際社会をドン引きさせてしまったのである。 逃亡を許した途端、大慌てでキャロル夫人を国際手配したことで、全世界に「へえ、やっぱ日本の捜査機関は好きな時に好きな罪状をつくれるんだ」と印象付けたことに続いて、ゴーン氏のジャパンバッシングにも一理あると思わせてしまう「大失言」といえよう。 実際、森法相が「無罪の主張と言うところを証明と間違えた」と訂正をしたことに対して、ゴーン氏の代理人がこんな皮肉たっぷりな声明を出している。 「有罪を証明するのは検察であり、無罪を証明するのは被告ではない。ただ、あなたの国の司法制度はこうした原則を無視しているのだから、あなたが間違えたのは理解できる」(毎日新聞1月11日) つまり、ゴーン陣営が国際世論に対して仕掛けた「日本の司法制度はうさんくさい=ゴーン氏にかけられた疑いもうさんくさい」という印象操作に、まんまと日本側が放った「反論」も一役買ってしまっているのだ。 と聞くと、「ちょっとした言い間違いで日本を貶めやがって!」と怒りで我を忘れそうな方も多いかもしれないが、ゴーン氏の代理人の指摘はかなり本質をついている。 ほとんどの日本人は口に出さないが、捜査機関に逮捕された時点で「罪人」とみなす。そして、そのような人が無罪を主張しても、「だったら納得できる証拠を出してみろよ」くらい否定的に受け取る傾向があるのだ。 森法相も同様で、あの発言は言い間違えではない。もともと弁護士として立派な経歴をお持ちなので当然、「推定無罪の原則」も頭ではわかっている。しかし、世論を伺う政治家という職業を長く続けてきたせいで、大衆が抱くゴーン氏への怒りを忖度し、それをうっかり代弁してしまったのだ。 なぜそんなことが断言できるのかというと、我々が骨の髄まで「推定有罪の原則」が叩き込まれている証は、日本社会の中に山ほど転がっているからだ』、「森法相も・・・もともと弁護士として立派な経歴をお持ちなので当然、「推定無罪の原則」も頭ではわかっている。しかし、世論を伺う政治家という職業を長く続けてきたせいで、大衆が抱くゴーン氏への怒りを忖度し、それをうっかり代弁してしまったのだ」、納得できる説明だ。「ゴーン氏の代理人」の声明は、確かに最大限の皮肉だ。
・『「被疑者が無罪を証明すべき」 ズレている日本の感覚  例えば、森法相が生きる政治の世界では2010年、小沢一郎氏にゴーン氏のような「疑惑」がかけられた。マスコミは、起訴もされていない小沢氏周辺のカネの流れを取り上げ、逮捕は秒読みだとか、特捜部の本丸はなんちゃらだとお祭り騒ぎになった。いわゆる陸山会事件だ。 では当時、日本社会は「疑惑の人」となった小沢氏にどんな言葉をかけていたのか。民主党のさる県連幹事長はこう述べている。 「起訴されれば無罪を証明すべきだ」(朝日新聞2010年4月28日) ワイドショーのコメンテーターたちも、渋い顔をして似たようことを述べていた。新橋のガード下のサラリーマンも、井戸端会議の奥様たちも同様で、日本中で「小沢氏は裁判で無罪を証明すべき」のシュプレヒコールをあげていた。 日本人としては認めたくないだろうが、この件に関して国際社会の感覚からズレているのは、ゴーン氏の代理人ではなく、我々の方なのだ。 「図星」であることを指摘されてムキになって正当化することほど見苦しいものはない、というのは世界共通の感覚だ。つまり、「被告人は無罪を証明すべき」という言葉をあれやこれやと取り繕ったり、誤魔化したりすればするほど、「うわっ、必死すぎて引くわ」と国際社会に冷ややかな目で見られ、ゴーン陣営の思うツボになってしまうのである。 「テキトーなことを言うな!世界中から尊敬される日本がそんな嘲笑されるわけないだろ!」という声が聞こえてきそうだが、「愛国」のバイアスがかかった日本のマスコミがあまり報じないだけで、この分野に関してはすでに日本はかなりヤバイ国扱いされているのだ。 2013年5月、スイス・ジュネーブで、国連の拷問禁止委員会の審査会が開かれた。これは残酷で非人道的な刑罰を禁じる「拷問等禁止条約」が、きちんと守られているかどうかを調べる国際人権機関なのだが、その席上でアフリカのモーリシャスのドマー委員がこんな苦言を呈した。 「日本は自白に頼りすぎではないか。これは中世の名残だ」 アフリカの人間に、日本の何がわかると不愉快になる人も多いだろうが、この指摘は非常に的を射ている。足利事件、袴田事件、布川事件などなど、ほとんどの冤罪は、捜査機関の自白強要によって引き起こされている』、「アフリカのモーリシャスのドマー委員」の「苦言」はその通りで、日本の司法関係者は深く反省し、考え直すべきだった。日本のマスコミもこれを余り取上げなかったのは問題だ。
・『痛いところを突かれて逆ギレする  それは遠い昔のことで今はそんな酷いことはない、とか言い訳をする人もいるが、2012年のPC遠隔操作事件で、無実の罪で逮捕され、後に警察から謝罪された19歳の大学生も、取調室で捜査官から「無罪を証明してみろ」(朝日新聞2012年12月15日)と迫られたと証言している。 この自白偏重文化が中世の名残であるということは、そこからやや進んだ江戸時代の司法を見れば明らかだ。死罪に値するような重罪の場合、証拠がいかに明白だろうと自白を必要とした、と記録にある。さらに、自白をしない被疑者に対しては「申しあげろ。申しあげろ」とむち打ち、えび責めなどの拷問で強要した、という感じで、罪を告白するまで100日でも自由を奪う「人質司法」のルーツを見ることもできる。 罪を吐くまで追い込むので当然、現代日本のような冤罪も量産される。名奉行で知られる大岡越前は、徳川吉宗にこれまで何人殺したかと聞かれ、冤罪で2人を死刑にしたと告白している。 話を戻そう。ゴーン氏の代理人同様に、鋭い指摘をするドマー委員に対して、日本の代表として参加した外務省の上田秀明・人権人道大使は「この分野では、最も先進的な国のひとつだ」と返したが、日本の悪名高い人質司法などは、参加者たちの間では常識となっているので、思わず失笑が漏れた。すると、上田大使はこのようにキレたという。 「Don't Laugh! Why you are laughing? Shut up! Shut up!」(笑うな。なぜ笑っているんだ。黙れ!黙れ!) 昔から日本は、海外から痛いところを突かれると逆ギレして、とにかく日本は海外とは事情は違うという結論に持っていって、変わることを頑なに拒んできた。 このままやったら戦争に負けて多くの国民が死にますよ、という指摘があっても、この国は世界の中でも特別な「神の国」だと、頑なに耳を塞いだ結果、凄まじい悲劇を招いた。 先進国で唯一、20年間も経済成長をしていないのは日本だけなので、異様に低い賃金を引き上げて生産性を向上させていくしかない、と指摘をされても、日本の生産性が低いのは、日本人がよその国よりもサービスや品質にこだわるからだ、ちっとも悪いことではない、などというウルトラC的な自己正当化をしている。 筆者が生業とするリスクコミュニケーションの世界では、「図星」の指摘に対して、逆ギレ気味に自己正当化に走るというのは、事態を悪化させて新たな「敵」をつくるだけなので、絶対にやってはいけない「悪手」とされる』、「自白偏重文化」、「「人質司法」のルーツ」、が江戸時代にもあるとの指摘はさすがだ。「リスクコミュニケーションの世界では、「図星」の指摘に対して、逆ギレ気味に自己正当化に走るというのは、事態を悪化させて新たな「敵」をつくるだけなので、絶対にやってはいけない「悪手」とされる」、その通りなのだろう。
・『国際人権団体も日本の司法を批判  しかし、今回も日本はやってしまった。国内的には、森法相や東京地検の反論で溜飲の下がった日本人も少なくないかもしれないが、国際社会ではかなりヘタを打ってしまったと言わざるを得ない。 それを如実に示すのが、ニューヨークの国連本部で14日に催された、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチの記者会見だ。ケネス・ロス代表はゴーン氏が「取り調べに弁護士が立ち会えなかった」と批判していることに対して、以下のように述べた。 「日本の刑事司法制度が容疑者から自白を得るために課した巨大な圧力を物語っている」「司法制度ではなく、自白(強要)制度だ」(時事通信1月15日) 慰安婦問題や徴用工問題なども然りだが、日本政府は「人権問題」の対応がうまくない。人権という多様な価値観が衝突するテーマであるにも関わらず、「日本は正しい」というところからしか物事を考えることができないので、傲慢かつ独善的な主張や対応になることが多い。そのゴリ押しが裏目に出て、揚げ足を取られ、オウンゴールになってしまっているのだ。 これは一般社会などでもそうだが、「オレ様は絶対に間違っていない」と自己主張するだけの者は、次第に誰からも相手にされなくなる。その逆に、厳しい指摘や批判にもしっかりと耳を傾けるような真摯な姿勢の人は、周囲から信頼される。 日本の司法制度や懲罰主義は、国際社会から見るとかなりヤバい。――。ゴーン氏側のジャパンバッシングを迎え撃つためにも、まずはこの厳しい現実を受け入れることから始めるべきではないか』、非常に説得力溢れる指摘で、全面的に同意する。

次に、司法ジャーナリストの村山 治氏が1月21日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「ゴーン逃亡劇の背景にある、司法と水際危機管理の「構造欠陥」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/226345
・『世界中を驚かせた日産前会長、カルロス・ゴーン被告=会社法違反(特別背任)などの罪で起訴=のレバノン逃亡には、米軍特殊部隊の元隊員やプロの「運び屋」らが関わったとされる。 検察は、ゴーン氏の身柄確保にやっきだが、国家主権などの壁があり、すぐ連れ戻すのは難しそうだ。 一方、逃亡劇は、日本の刑事司法と水際危機管理の構造的な欠陥を露呈した』、興味深そうだ。
・『空疎な内容の会見だったが  「世論という法廷では無罪」?「非人道的な扱いを受け、私自身と家族を守るためには、(逃亡する以外の)選択肢がなかった」 1月8日午後10時(日本時間)に始まったレバノン・ベイルートでの記者会見。黒っぽいスーツに赤いネクタイのゴーン氏は、身ぶり手ぶりを交え、雄弁に語った。しかし、1時間余りの独演会の中身は拍子抜けするほど、空疎だった。 メディアが注目した逃亡方法などは語らず、「日本の政府高官と日産の国ぐるみの陰謀」と主張しておきながら、「レバノン政府に迷惑がかかる」として高官の名も挙げなかった。 無罪主張の根拠や日本の刑事司法批判も、これまで弁護人が発表した範囲を出なかった。 会見をテレビで見た検察幹部は、「中身がなくてがっかり。裁判で白黒つける法の支配の基本から逃げた男に正義を語る資格なし」と皮肉まじりに切り捨てた。 ゴーン氏の主張を額面通りに受け取る日本メディアの報道は皆無だったが、海外メディアの中には、「日産や検察から説得力のある新しい証拠がなければ、ゴーンは世論という法廷で無罪になるはずだ」(2020年1月9日付ウォール・ストリート・ジャーナル日本版)などゴーン氏の「潔白」主張に理解を示す報道もあった。 これには森雅子法相が「制度を正確に踏まえていない」と反論を同紙に寄稿する一幕もあった』、森法相のお粗末な発言に触れなかったのは、忖度著しい「司法ジャーナリスト」らしい。
・『逃亡にはプロの「運び屋」と「サポート組織」を利用した可能性  内外メディアが伝えるゴーン氏の逃亡劇はアクション映画のようだ。 帽子とマスクで顔を隠したゴーン氏が、保釈中の住居と定められた東京都港区の住宅を1人で出たのは昨年12月29日午後2時半ごろ。六本木のホテルで米国籍の男2人と合流し、その後、新幹線で大阪に移動。関西空港近くのホテルに入った。 ゴーン氏は男たちが用意した楽器の収納箱の中に隠れて空港まで移動した可能性がある。同空港第2ターミナルのプライベートジェット専用ゲートの出国検査をかいくぐり、用意したプライベートジェット機(PJ)で午後11時すぎ、同空港を飛び立った。 トルコ・イスタンブールで男たちと別れ、別の小型のビジネスジェット機に乗り換え翌30日にレバノンに到着した、とされている。 その直後に「キャロル夫人から、夫との再会は『私の人生にとって最高の贈り物』とのテキストメッセージを受け取った」というウォール・ストリート・ジャーナルによると、戦闘地域で拘束された人質の救出経験を持つ元米陸軍特殊部隊(グリーンベレー)の隊員を含む十数人のチームがゴーン氏逃亡に関わったという。 チームのメンバーは数カ月前から日本を20回以上訪問して国内の10カ所以上の空港を下見。関空のプライベートジェット専用ゲートのX線検査機械が大きな荷物には対応していないことから、関空を脱出ルートに選んだという。逃亡計画には数百万ドルがかけられたとしている。 検察関係者は「脱出支援チームのほか、中東などのサポートする組織も介在したとみられる国際的組織犯罪だった」という。 ゴーン氏が、逃亡の詳細を語るのを避けたのは、チームやサポート組織から口止めされている可能性もある』、「チームのメンバーは数カ月前から日本を20回以上訪問して国内の10カ所以上の空港を下見」、これでは抜け穴は容易に把握できたのだろう。
・『裁判の開始は当面無理 最悪の場合は「棚ざらし」に  ゴーン氏が金商法違反(有価証券報告書虚偽記載)、会社法違反(特別背任)の4事件で起訴され、4月下旬に東京地裁で金商法違反事件から公判が始まる予定だった。 「(最高裁で決着するまで)10年ほども耐えろというのか」(朝日新聞1月12日付朝刊)と、違法承知で逃亡したゴーン氏が自らの意思で日本の裁判所に出頭する可能性はまずない。 金商法違反などは被告人不在では裁判は開けない。最悪の場合、起訴した事件は棚ざらしになり、真相はうやむやになる恐れがある。 菅義偉官房長官は1月6日、テレビ番組に出演。ゴーン氏の身柄の引き渡しについて「さまざまな外交的手段を行使しながら、総力を挙げる」と宣言。国際刑事警察機構(ICPO)にゴーン前会長を起訴済みの罪について国際手配する手続きを取り、駐レバノン日本大使がアウン大統領に面会し、身柄の引き渡しを求めた。 しかし、日本はレバノンとは容疑者の身柄の引き渡しに関する条約を結んでおらず、さらに、レバノン国内法が自国民を他国に引き渡さないと規定していることから、引き渡しが実現する可能性は高くない。 それでも政府は経済支援などをてこにして粘り強く交渉する方針だ。 ゴーン氏は、「公正な裁きが受けられるなら、どこの国でも裁判を受ける用意がある」と会見で述べた。 刑事裁判を他国に依頼する「代理処罰」という国際ルールがあり、日本政府が、レバノン政府に要請すれば、それは可能だ。しかし、刑事裁判の規定は国ごとに異なり、証拠の翻訳も必要で、専門家は技術的に難しく、実現の可能性は小さいとみている。 何よりメンツを失う日本の検察が認めるはずがない』、「代理処罰」は、「刑事裁判の規定」だけでなく、法体系そのものが大きく異なっている以上、「メンツ」を抜きに考えても無理だろう。
・『検察の追っ手 米当局が摘発する可能性も  検察は、「国家の威信」をかけて逃亡の事実解明に乗り出している。 レバノンでゴーン氏と合流したキャロル夫人が昨年4月の東京地裁での証人尋問で偽証した疑いがあるとして、逮捕状を取り、警察庁を通じて国際刑事警察機構(ICPO)に国際手配を要請した。 キャロル夫人がゴーン氏の不正の証拠隠滅を主導し、逃亡にも関与したとみているためだ。夫婦ともにレバノン国外への移動を制限する狙いもあるとみられる。 検察は昨年12月、ゴーン氏側に還流したとされる日産資金の一部が米国在住の息子が経営に関わっていた米国の投資会社に流れた疑いがあるとして米司法当局に要請してゴーン氏の息子や娘から事情を聴いた。 息子は、投資会社の資産には前会長からの送金も含まれていたことを認めたとされる。 これは、不正資金の洗浄(マネー・ロンダリング)に当たる可能性がある。米国では、不正資金洗浄を厳しく取り締まり、資金の移動や保管の形態に「出所」を隠す意図がうかがわれるだけで処罰されることもある。 今後、米国がゴーン氏の摘発に乗り出す可能性もあり、そうなれば、事態は一変するだろう』、確かに米国の出方は1つの鍵だろう。
・『保釈認めた裁判所はひたすら沈黙 弁護団も裏切られた形に  ゴーン氏逃亡で、ゴーン氏の保釈を認めた裁判所の責任を問う声も噴出した。 刑事訴訟法では、証拠隠滅や逃亡の恐れがある場合を除き、保釈を許さなければならないと定め、裁判官の裁量による保釈も認めている。 「無罪請負人」の異名をとる弘中惇一郎氏や米国流の刑事手続きに詳しい高野隆氏ら著名刑事弁護士らで構成するゴーン弁護団は、制限住居への監視カメラの設置など15項目にわたる保釈条件を提示。裁判官は弁護団を信用し、逃亡や証拠隠滅の恐れはないと判断し、15億円の保釈保証金を納付させてゴーン氏を保釈した。 弘中弁護士は当時、「知恵を絞って逃亡や証拠隠滅がありえないシステムを考えて裁判所に評価された」と語った。弁護団もゴーン氏に裏切られた形だ。 弘中、高野氏らは16日に弁護人を辞任、ゴーン氏の公判手続きは止まった。 共犯に問われた日産元代表取締役のグレッグ・ケリー被告と法人としての日産の裁判は、分離して行われる見通しだ。 2000年代初めの司法制度改革以来、保釈のハードルを低くする流れがあり、また、海外メディアなどからの「長期勾留」「人質司法」批判も考慮したとみられるが、いずれにしろ「被告は逃げるはずがない」という性善説の上に立った判断だった。 検察幹部は「ゴーン氏ほどの金と人脈があれば逃げる、と我々は主張した。裁判所は本来なら、保釈できない事件と認識しながら、実効性のない条件をつけて出した。結果的に間違った判断で、膨大な血税を無駄にし、国の威信を失墜させた」と批判し、これには一部のマスコミも同調した。 東京の司法記者クラブは裁判所に説明を求めたが、黙殺し、コメントを拒否している』、保釈を認めた裁判所を批判するのは筋違いだろう。問題は保釈後のフォロー体制にある。
・『保釈中の逃亡に「逃走罪」にならず 「逃げるはずはない」の“共同幻想”  一方、ゴーン氏の逃亡は、日本の刑事司法の制度的欠陥を露呈した。 保釈された被告人に対する管理の「空白」である。 裁判所も、検察も、弁護人も、誰にも管理責任がなかったのだ。 拘置所や刑務所などで身体を拘束されている容疑者や被告、受刑者らが逃走した場合、刑法の逃走罪が適用されるが、保釈中の逃走については同罪の対象になっていなかった。 被告人が逃亡や証拠隠滅をしないよう責任を持って監視する存在がない。逃亡を実質的に担保するのは保釈保証金だけだった。 「15億円もの大金を捨てるはずがない」という共同幻想があった。ゴーン氏にとってはその程度は、はした金だった。 実は、国内でも逃亡事件は後を絶たない。ゴーン氏のような大金持ちは別にして、現在は、保証金も立て替える業者もいて、保釈保証金の重みは減った。 古来の日本人の「お上に対する畏敬」「公序を尊重するマインド」に期待するしかなかったのが実態だ。 お上意識も日本の公序良俗にも関心がなく、逃げる意思と能力(脱出のプロを雇えるカネ)があるゴーン氏が、逃げないと損という気になってもおかしくない。 今回の逃亡劇を受け、森雅子法相は1月7日の閣議後会見で「できる限り速やかに法制審に諮問できるよう検討を進めたい」と述べた。 ようやく、保釈被告人に逃走罪を適用する法改正や、衛星利用測位システム(GPS)装着による常時行動監視の議論が始まるとみられる』、「保釈中の逃走については同罪(逃走罪)の対象になっていなかった」、とは驚きだ。「法制審」でしっかり議論してほしいものだ。
・『プライベートジェットは盲点に 保安検査は機長の判断次第  ゴーン氏が脱出に使った関空のPJ専用ゲートには、あってはならない「穴」があった。 乗客が「身内」に限られるPJでは一般の民間航空会社が行うX線を使った手荷物や身体の保安検査を乗客が受ける必要はなく、検査するかどうかは機長の判断に任される。 保安検査の後にはPJの乗客もCIQ(税関・出入国管理・検疫)の検査を受ける必要があるが、税関のチェックは甘く、大きな荷物の中身を透視するX線装置も設置されていなかった。 検察幹部は「ゴーン氏の逃亡を支援した組織は、中東などのテロ組織ともつながり、テロリストの密入出国をサポートしているとの情報もある」という。 ゴーン氏の脱出を支援したチームは日本への出入りにPJを使っていたとされる。その全てがゴーン氏の案件だったとは限らない。テロリストや武器、禁止薬物などを運んでいた可能性はないのか。 赤羽一嘉国土交通相は7日の閣議後記者会見で、羽田、成田、中部、関西の4空港にあるPJ専用ゲートで全ての大型荷物の保安検査をするよう6日から義務付けた。 こちらも泥縄の対応だ。数カ月後には東京五輪が始まる。大会の安全管理は大丈夫なのか』、PJで「武器、禁止薬物などを運んでいた可能性は」、大いにあり得ると考えるべきだろう。こんな「あってはならない「穴」」があったというのは、国際的にも恥ずかしいことだ。
・『ゴーン氏の復権はあるのか 大金使ったがレバノン出国は困難  ブルームバーグ通信によると、ゴーン氏の資産は、この1年間で約1億2000万ドル(約131億8000万円)から約7000万ドル(約76億9000万円)に減ったという。 逃亡で保釈保証金15億円を裁判所に没取され、さらに逃亡費用として1500万ドル(約16億円)以上かかったためだ。 それでも、ゴーン氏が億万長者であることに変わりはない。レバノンでは「ビジネスの成功者」として遇されるだろう。 しかし、国際的な経済シーンで「名経営者」として復権できるかは疑問だ。 逃げたこと自体を疑問視する見方が広がっている中で復権を果たすには、裁判で無罪を証明する必要がある。だが、日本以外で裁判を受けるのは困難だ。 検察が開示した捜査記録を自分で雇った法律家に分析させ「無実だ」と主張したところで、PRと受け取られるだけだ。 行動の自由も制約される。ゴーン夫妻は、不正出国や証拠隠滅容疑で国際手配され、お尋ね者状態にある。 米国など日本の友好国に行けば、身柄を引き渡される恐れがある。国籍のあるフランスでは、捜査当局が2016年にベルサイユ宮殿でゴーン氏が結婚披露宴を開いた際にルノーの会社資金を不正使用した疑惑や、中東オマーンの販売代理店への不審な支出についてルノー本社を捜索した。 渡仏すれば身柄拘束され、訴追される恐れがあり、もうひとつ国籍のあるブラジルは、レバノンからの直行の航空便がなく、中継地で身柄拘束され日本に引き渡される恐れがある。 ゴーン氏はレバノンでじっとしているしかない。 しかし、レバノンは経済が疲弊し、昨年秋から反腐敗を訴える大規模な反政府デモが頻発し、首相が辞意を表明した。 ゴーン氏はその政府に近い「特権階級」とみられている。政権が転覆するようなことになれば、「腐敗」の象徴としてやり玉に挙げられかねない。 「そうなると生きた心地はしないだろう」と検察関係者は指摘する』、政情不安な「レバノンでじっとしているしかない」、これも覚悟の上での逃亡だったのだろう。

第三に、1月22日付けNewsweek日本版がロイター記事を転載した「「ゴーンは無罪の可能性高い」元特捜部検事が語る」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2020/01/post-92202.php
・『日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告の事件で検察側に批判的な元東京地検特捜部検事の郷原信郎弁護士は22日、ゴーン被告と側近だった日産前代表取締役グレッグ・ケリー被告の金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)について、両被告とも「無罪の可能性が高い」と述べ、ゴーン被告の会社法違反(特別背任)に関しては「絶望的に長期間の刑事裁判になっていただろう」との見方を示した』、郷原氏はかねてから「無罪の可能性が高い」と主張していた(このブログの昨年6月15日)。
・『金商法違反、刑事事件としての立件は「異常」  郷原氏は同日、日本外国特派員協会で会見。金商法違反が無罪になる可能性が高いとみる理由について、刑事処罰の対象は「重要な事項についての虚偽記載」であり、まだ受け取っていない役員報酬の記載の有無は「重要事項に該当しない」と指摘。逮捕が必要なほど「明白で重大な犯罪ではないことは明らか」で、刑事事件として立件されたのは「異常だ」と批判した。その上で「ケリー氏の無罪判決が出れば、ゴーン氏も無罪であっただろうという結論になる」と語った。 金商法違反と会社法違反の罪で逮捕・起訴され、保釈中だったゴーン被告は昨年12月29日夜に保釈条件に違反して日本を不法出国したとみられ、国籍を持つレバノンに逃亡。日本はレバノンと容疑者の身柄引き渡しに関する条約を結んでおらず、レバノンも国内法で自国民を他国に引き渡さないことを定めている。このため、身柄引き渡しが実現する見通しはなく、ゴーン被告の裁判は開かれない可能性が極めて高い。 一方、ゴーン被告のみ起訴されている会社法違反については「証拠が十分にないまま検察が逮捕・起訴したことに問題がある」と指摘。「証拠がないので有罪か無罪かはっきりしないまま、公判が長期化する可能性が高い」と述べた。 ゴーン被告は8日にレバノンで開いた会見で「2つの罪状の公判が同時に進行できない」ことや、当初は今年9月に特別背任の公判開始と聞いていたのに検察の意向で「2021年以降と言われた」こと、妻や子供に会えないことが出国を決意した理由と説明していた』、「金商法違反」については、確かに「ケリー氏の無罪判決が出れば、ゴーン氏も無罪であっただろうという結論になる」ので、今後も注目したい。
・『問題の背景に前近代的な日本の刑事司法制度  郷原氏は、ゴーン被告の不法出国は「犯罪行為」だが、今回の事件は検察が加担・日本政府も関与したクーデターの可能性が高いこと、ゴーン氏の犯罪事実の根拠が薄弱なこと、関与者への措置・処罰の不公平感があること、無実を訴える被告人は身柄拘束が続くという「人質司法」など日本の刑事司法制度の前近代性が問題の背景にある、との認識を示した。 郷原氏はゴーン事件に関する書籍を今年4月に出版する予定で、昨年11月から12月27日までに計10時間以上、ゴーン氏のインタビューを実施。しかしその後、ゴーン氏は不正出国し、レバノンへ逃亡したことから、出版計画は白紙となった』、「出版計画は白紙となった」のは残念だ。

第四に、1月26日付け現代ビジネスが掲載した作家の佐藤 優氏と野村邦丸氏の対談「ゴーン氏を逃がしたのは誰か?「チーム・ゴーン」驚きの正体と実力 佐藤優が事件を徹底分析する」を紹介しよう。
※本記事は『佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」』に収録している文化放送「くにまるジャパン極」の放送内容(2020年1月17日)の一部抜粋です。野村邦丸氏は番組パーソナリティです。
・『「獄中死」を避けるための逃亡  佐藤:私は去年から「ゴーンさんは逃亡する」と指摘していたんです。理由は簡単です。逮捕されていた時、ゴーンさんには次のような可能性がありました。最初の罪状は金融商品取引法違反。これは罰金か、あるいは2件あっても確実に執行猶予がつくんです。ところがゴーンさんが頑なに罪を認めないから、たぶん検察はカッとなったんですね。それで会社法を使って特別背任にした。これは最高刑が10年なんです。 そうなると、2つの罪状が複合するので、最高刑がいちばん長い刑の5割増しまでいけるんです。だから最高で懲役15年になる。 さらに、ゴーンさんの保釈が検察の意思に反して認められちゃったので、検察はまたカッとなって、もう一本の背任で再逮捕した。これは「絶対に実刑にしてくれ、できるだけ長く刑務所に入れてやる」という検察の強い意思表示なんですね。この場合、求刑の相場感は懲役12年だと思います。 検察官が求刑した7割以下の量刑になると、検察が控訴する可能性がある。そうすると、ゴーンさんの刑はだいたい相場感として8年なんです。それで、裁判自体に10年はかかります。そうしたら、10年裁判やって、それから刑務所に8年行く。 今、ゴーンさんは65歳なので、出てくるときは83歳です。刑務所の中の医療はベストとはいえないですから、たぶん獄中死するでしょう。つまり、ゴーンさんにとって最もありそうなシナリオは「獄中死」だったんです。 密出国の場合の刑期は1年。ということは、もし国外脱出しようとして、バレて捕まっても1年刑期が増えるだけで、成功すれば自由の身になれる可能性がある。どっちを取るかって話ですよ。 邦丸:獄中死は嫌ですよね。 佐藤:だから賭けたということで、脱出はごく合理的な判断なんです』、「金融商品取引法違反」だけでなく、「会社法を使って特別背任」を付け加えた理由が理解できた。「10年裁判やって、それから刑務所に8年行く。 今、ゴーンさんは65歳なので、出てくるときは83歳です。刑務所の中の医療はベストとはいえないですから、たぶん獄中死するでしょう・・・脱出はごく合理的な判断なんです」、説得力ある説明だ。
・『「IR汚職」との関連性  佐藤:それと、なんで12月末のあのタイミングでやったか。これは、私はIRの汚職で逮捕された秋元司議員の件と関係していると思う。 邦丸:一見、関係ないように見えますけど。 佐藤:実は深い関係があるんです。 警察というのは、人がたくさんいます。警察官は全国に30万人いる。しかし、検察には特捜部の事務官しかいないんです、尾行とかする人材は。報道によると、検察は12月29日にゴーンさんの尾行を外した。 邦丸:これは日産側が依頼した警備会社とは違うんですか。 佐藤:違います。検察本体です。日産とは別に、検察も事務官がゴーンさんの行動をウォッチしているわけです。これを業界用語で「行確」といいます。行動確認。これがどうして12月に外れたのか。クリスマスに秋元司議員を捕まえたでしょ。それで人手が足りなくなったからなんです。 邦丸:え、物理的にですか? 佐藤:そう。東京地検はこういうとき、警察に応援をお願いしないんです。 邦丸:はあ~。 佐藤:警察も「お手並み拝見」で、協力しない。その辺のことを、ちゃんとゴーンさんの背後にある組織は見ているんですよね。 さらに、ゴーンさんには日産も尾行をつけていたでしょ、これ、尾行のプロなんです。だいたい警察の公安部とかを中途退職している人たちで、こういうプロが10人ぐらいチームを組んで尾行すると、まずわからないです。 じゃあ、なぜゴーンさんは気づいたのか。彼らを上回る能力を持つ尾行の専門家が、ゴーンさんのチームにいたからです』、「検察は12月29日にゴーンさんの尾行を外した」のは、「IR汚職」で「人手が足りなくなった」、「東京地検はこういうとき、警察に応援をお願いしないんです」、とは検察のメンツが招いたオウンゴールのようなものだ。
・『元グリーンベレーは「見せ玉」  邦丸:これは報道されているように、アメリカ陸軍の特殊部隊にいた、元グリーンベレーのマイケル・テイラーさんという人が首謀したんじゃないかと言われていますけど……。 佐藤:違うでしょうね。テイラーさんは前科がありますから。前科がある人は顔も名前も知られてしまっているわけです。 邦丸:アメリカで禁固刑を受けている。 佐藤:だから、前科のある人はこういうオペレーションの中心には入りません。 私も以前、そういった国際的な警備保障会社から「就職しないか」と誘われることがあったんですよ。 邦丸:へえ~。 佐藤:でも、それは使い捨てにされちゃうの。どうしてかというと、いったん捕まって表に出た人は、裏の世界で動けなくなるから。このテイラーさんも同じで、陽動作戦、すなわち見せるために使われている人です。計画の全体像は知らされていない。 邦丸:じゃ、誰なんですか? 佐藤:誰がゴーンさんを連れて行ったか。それは、地面師みたいなネットワークなんですよ。 邦丸:というと。 佐藤:何かあるとその都度、ガーッと湧いてくる人たちです。ゴーンさん救出プロジェクトがある、じゃあやろうか、と何人か集まってくる、お互いに横の連絡はない。ですから、トルコの航空会社で捕まった人たちは、何も知らない。 邦丸:パイロットの人たちですね。 佐藤:オレオレ詐欺の入れ子や出し子と一緒ですから。 邦丸:要するに、パーツでしかない』、「元グリーンベレーは「見せ玉」」、この世界の闇の深さを改めて知らされた。
・『弘中弁護士も「パーツ」  佐藤:そうです。これを「クオーター化」というんです、業界用語で。区分に分けるという意味です。 そういう組み立てだから、「おい、ブツの運びがある。いい金になるぞ」「ヤバいものじゃないですよね?」「麻薬や兵器ではない。中身は知らなくていい」「わかりました」──こういう世界ですよ。 邦丸:なるほど。 佐藤:それで、尾行されていることを知っていて、「こんな尾行は人権侵害だから解除してくれ」とゴーンさんが弘中弁護士たちに頼むわけでしょ。そういう意味では、弘中さんたちも知らず知らず、パーツとして利用されているわけですよ。 それで解除を要求したら、その日に脱出した。すでに救出のネットワークはでき上がっていて、関空に穴が開いているといったことも調べあげて、車も飛行機も全部手配してと、こういうやり方ですよ。 しかもゴーンさんは、逃亡時の経緯については、ウォール・ストリート・ジャーナルに独占的に流すということに決めていますね。今回、報道ではここが全部早いですから。 邦丸:早かったですよね。 佐藤:なんでだと思います? 私は、ゴーンさんはウォール・ストリート・ジャーナルをあえて選んでいるんだと思う。なぜかというと、日本語版があるから。 ちなみに、毎日新聞の電子版とか琉球新報などの毎日系の新聞をとっていると、ウォール・ストリート・ジャーナルが無料で読めるんですけど、日本語版があるから、日本の検察とかマスメディアにメッセージをすぐに出せるでしょ。実際、ゴーンさん関連の日本の報道は、よく見るとすべてウォール・ストリート・ジャーナルの後追いになっているんですよ。 邦丸:そうですね。 佐藤:こういうつくりにすることも全部、このチームは計算していますね』、どこまで真実かはともかく、なかなかよく練られた救出劇だったようだ。
・『日本政府も「深入りしたくない」  邦丸:そのゴーンさんのチームですが、ゴーンさんはインタビューで「日本人が今回の逃亡にかかわっているという話があるけど、どうなんだ?」と聞かれて、「日本人がかかわっていないなんて考えること自体が幻想だ」と言っているわけですね。 佐藤:もちろん、かかわっていますよ。しかし、それが誰なのか、どういうネットワークかというのは、ゴーンさんも知らないと思う。 邦丸:え、それじゃあどんな窓口に助けを求めたんですか。 佐藤:これはあくまで私の推定ですが、こうした種類のことになると、彼がいつも頼む「仕事師」がいるんでしょう。イメージでいうと、ゴルゴ13みたいな感じ。殺しは今回はやらないですけどね。 邦丸:グレート東郷ですか……グレートじゃないか。 佐藤:デューク東郷。彼に頼んで、あとは何も知らなくていい。こういう世界ですよ。 それで、今回の最大の争点は、レバノン政府が噛んでいるかどうか。 邦丸:はい。 佐藤:レバノン政府が噛んでいなければ、1人の容疑者とそれをサポートしている犯罪組織の話で、単なる刑事事件なんです。しかし、もしレバノン政府が噛んでいると日本国家の主権侵害になって、北朝鮮の拉致問題とか金大中事件とかと同じ話になっちゃいます。 そうすると日本政府として、レバノン政府と全面的に構えないといけないんです。ただし、今は中東情勢のなかでレバノンはカギを握る国なので、ケンカしたくない。だから、本来ならレバノン政府に引き渡しを強く要求するとか、レバノンにいる日本の大使を一時日本に戻すとかするんですけど、しないでしょ。 邦丸:しないですね) 佐藤:これは、真相が明らかにならないほうが日本政府も都合がいい。レバノン政府も都合がいい。ゴーンさんも都合がいい。みんな都合がいいので、迷宮入りになろうとしていますね。 ですから、すごく変な感じの事件になっている。国家を超えるようなネットワークがあって、機能しているということですね』、「真相が明らかにならないほうが日本政府も都合がいい。レバノン政府も都合がいい。ゴーンさんも都合がいい。みんな都合がいいので、迷宮入りになろうとしていますね」、なるほど、さすが深い読みだ。
・『宗教という重要ファクター  佐藤:ゴーンさんは15億円の保釈金が没収されたでしょ。新聞報道だと、脱出計画に22億円かかった──私はそれだとちょっと安いという気がしますが──けれど、でも十分取り返せる。 まず、手記を書くでしょ。その後、ハリウッド映画にする。そうすると数百億儲かりますから、逃亡劇までちゃんとマネーになる。映画ができたら、検察官役とか、とんでもない大物役者をつけてくると思いますよ。 邦丸:えーと、ちょっと戻っていいですか。ゴルゴ13のような人が日本にいるんですか。それともアメリカですか。 佐藤:中東だと思う。 邦丸:中東! 佐藤:中東で、今までいろんなヤバい仕事をするときの相棒がいたんだと思う。その人に「助けてくれ、ここから出たい」とひと言だけメッセージを送ると、あとは組み立ててくれる。今までもいろんな仕事をしているんだと思う。 邦丸:へえ~~。 佐藤:そういうふうに私は見ています。それからもうひとつ、これはぜんぜん報道に出てこないけれど、重要なのはゴーンさんの宗教なんですよ。彼はキリスト教徒です。キリスト教のマロン派、これはカトリック教会に属しているんです。 もし、ゴーンさんがレバノンのイスラム教徒だったら、国際的にこれだけの支援は受けられなかったと思う。要するに「東洋のなんかおっかない国で、キリスト教徒が弾圧されている」と、こういうイメージですよね。このイメージをつくることに成功している。 レバノンのキリスト教徒というのは、ヨーロッパのいわば利益代表みたいな意味があるんですね。それだから、レバノンはヨーロッパ諸国と非常に関係がいいんですよ。実は、宗教の要素が今回は非常に大きいんです。そういうところは、日本の報道ではぜんぜんわからない』、「宗教という重要ファクター」、読み過ぎの気もしないではないが、ありそうな面白い見方だ。
・『日本がいくら正当性を主張しても…  佐藤:日本の報道では、「ゴーンの会見は見苦しい言い訳だ」「世界でも非難囂々だ」というトーンでしょ。ところが、ちょっとウォール・ストリート・ジャーナル日本語版を見てみると、社説を立てて、「ゴーンの説明には説得力がある」とか「マクロン大統領は、安倍総理に何度も処遇を改善してくれと話をしている」とか出てきているでしょ。 日本だけ情報空間がズレている。実際は、ゴーンさんはかなり有利です。 邦丸:はあ~~。 佐藤:でも、今回は分けて考えなければいけない。私は、この件のあと国内外のメディアから「日本の刑事司法手続きをどう思いますか?」とか「拘置所の処遇をどう思いますか?」と聞かれて、言いたいことはたくさんあるんだけれど、ほとんど言っていないんです。 どうしてかというと、私はやはり元外交官、つまり日本の公務員だったわけで、この事件は日本国家の主権が侵されていると私は思っている。国際的なネットワークとレバノン政府に。 そのときに、私が「検察の対応に問題がある」とか「日本の拘置所はおかしい」と言ったら、それはゲームのなかで利用されてしまうわけです。深刻なのは、日本の法手続きが無視されて、国家主権が無視されて、コケにされているんだから、それを助長する方向には加わりたくないんです。 ただ、日本はメディアにしても、法務省にしても、事態が見えていない。森法務大臣が一生懸命、日本の手続きには問題ありません、人権を尊重していますと言ったって、拘置所へ入所するときの検査では、「お前、指詰め、入れ墨、玉入れ(性器にシリコンの玉を入れること)はあるか」というような質問をしている。 邦丸:それはそういうスジの人ではなくてもやるんですか。 佐藤:全員です。私もやらされましたから。 拘置所の中では小さな机の前で、畳のところで一日じゅう座っている。お風呂は週に2回で、お風呂に行くときはパンツ1枚、希望すればシャツを着ることができる。支給されるサンダルには水虫菌がたっぷり付いていて、水虫に苦しめられる。こういうことは事実です。ですから、日本がいくら「手続きに則しています」と言っても、国際的には「やっぱりひどい」という感じになるじゃないですか』、日本の「拘置所」の人権無視の扱いなどについては、これを熟知している「佐藤」氏が、「ゲームのなかで利用されてしまう」ので、こに点には敢えて触れないというのはさすが大人の対応だ。
・『『大岡越前』は国際的には「気持ち悪い」  邦丸:逆に諸外国、欧米各国っていうのは、拘置所に入所した、要するに罪になるかどうか決まっていない人たちに対する接し方は、日本とは違うんですか。 佐藤:違いますね。電話もできるし、家族とも会えるし、ましてや裸にするなんて最低限しかしない。ぜんぜん違うんですよね。 しかも、日本の場合は懲役刑があるでしょ。囚人労働というのは今、欧米ではないですから。 邦丸:欧米は懲役刑がないんですか。 佐藤:禁固です、みんな。ですから、確かに日本には日本の手続き、制度の伝統があるんだけれど、その話をすればするほど、国際的には調子が悪くなるわけ。 邦丸:墓穴を掘ってしまう。 佐藤:そう。日本人は今でも『忠臣蔵』が好きでしょ。浅野内匠頭の家臣たちは解散が決まったのに、何十人がかりで1年も待って、七十いくつのおじいさんを襲ってなぶり殺しにして、首を槍の先に付けて凱旋して、最後に腹を切る。これを感動のドラマだといって観ているのが日本人だ、という話になったら、やっぱり普通のヨーロッパ人とかアメリカ人はびっくりしますよ。それで、戦時中の日本のイメージと重なってくる。 『遠山の金さん』とか『大岡越前』にしても、基本は弁護人がいなくて裁判官と検察が一緒で、一審制で、拷問を使った自白が証拠になって、判決理由は物証ではなくて心象。「不届き至極」とか「この桜吹雪を覚えているか」というのは、心象主義ですよ。 邦丸:はははは。 佐藤:日本ではこういう考え方が今でも生きている、というのは、その雰囲気自体がすごく変なんですよ。 邦丸:要するに、異文化というふうに見られちゃうんでしょうな。司法制度云々というより、ちょっと気持ち悪いという。 佐藤:死刑制度も残っていますしね。そういうことをトータルすると、日本はあまり調子よくないので、もう少し情報戦をうまくやって、都合が悪いことは黙っていたほうがいいと思う』、確かにその通りだろう。
・『事件は迷宮入り、ゴーンは生き残る  邦丸:レバノン政府はその辺が上手いですよね。 佐藤:「日本から資料を送ってください、ウチで裁判しますから」と、こういうことでしょ。無罪になるに決まってます。 邦丸:ちゃんと裁判したよ、ということですね。 佐藤:ゴーンさんの言い分を聞いて、日本政府の言い分も聞いて、「これはレバノンの法律では無罪ですね」──これで終わりですよ。 ですから日本としては、主権放棄みたいなレバノンへの裁判委譲はしない。こういうモヤモヤのまま時間が経って、迷宮に入っていくという、これがゴーン事件の今後ですね。しかもその間も、ゴーンさんは日本を攻撃し続ける。めんどくさいです。 邦丸:ところで中東のデューク東郷って、普段は何をやっているんですかね。 佐藤:収入は非常にいいですから、普段はぶらーっとして、ネットワークだけ維持しているんでしょうね』、どこまで真実かはともかく、「佐藤」氏の深い読みには感服するほかない。
タグ:ロイター ダイヤモンド・オンライン 窪田順生 佐藤 優 現代ビジネス Newsweek日本版 郷原信郎弁護士 野村邦丸 日産ゴーン不正問題 村山 治 人質司法 ゴーン逃亡問題 (その1)(ゴーンに惨敗した日本 森法相の大失言が世界に印象付けた「自白強要文化」、ゴーン逃亡劇の背景にある 司法と水際危機管理の「構造欠陥」、「ゴーンは無罪の可能性高い」元特捜部検事が語る、ゴーン氏を逃がしたのは誰か?「チーム・ゴーン」驚きの正体と実力 佐藤優が事件を徹底分析する) 「ゴーンに惨敗した日本、森法相の大失言が世界に印象付けた「自白強要文化」」 森法相の「失言」に日本の司法の本質が出ている 「ゴーン被告は司法の場で無罪を証明すべきだ」と口走った 国際社会をドン引きさせてしまった 「無罪の主張と言うところを証明と間違えた」と訂正 ゴーン氏の代理人がこんな皮肉たっぷりな声明を出している。 「有罪を証明するのは検察であり、無罪を証明するのは被告ではない。ただ、あなたの国の司法制度はこうした原則を無視しているのだから、あなたが間違えたのは理解できる 「被疑者が無罪を証明すべき」 「被告人は無罪を証明すべき」という言葉をあれやこれやと取り繕ったり、誤魔化したりすればするほど、「うわっ、必死すぎて引くわ」と国際社会に冷ややかな目で見られ、ゴーン陣営の思うツボになってしまう 国連の拷問禁止委員会の審査会 ドマー委員がこんな苦言を呈した。 「日本は自白に頼りすぎではないか。これは中世の名残だ」 痛いところを突かれて逆ギレする リスクコミュニケーションの世界では、「図星」の指摘に対して、逆ギレ気味に自己正当化に走るというのは、事態を悪化させて新たな「敵」をつくるだけなので、絶対にやってはいけない「悪手」とされる 自白偏重文化 国際人権団体も日本の司法を批判 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチの記者会見 ケネス・ロス代表 日本の刑事司法制度が容疑者から自白を得るために課した巨大な圧力を物語っている」「司法制度ではなく、自白(強要)制度だ」 日本の司法制度や懲罰主義は、国際社会から見るとかなりヤバい 「ゴーン逃亡劇の背景にある、司法と水際危機管理の「構造欠陥」」 空疎な内容の会見だったが ゴーンは世論という法廷で無罪になるはずだ 逃亡にはプロの「運び屋」と「サポート組織」を利用した可能性 チームのメンバーは数カ月前から日本を20回以上訪問して国内の10カ所以上の空港を下見。関空のプライベートジェット専用ゲートのX線検査機械が大きな荷物には対応していないことから、関空を脱出ルートに選んだ 裁判の開始は当面無理 最悪の場合は「棚ざらし」に 検察の追っ手 米当局が摘発する可能性も 息子は、投資会社の資産には前会長からの送金も含まれていたことを認めたとされる。 これは、不正資金の洗浄(マネー・ロンダリング)に当たる可能性 保釈認めた裁判所はひたすら沈黙 弁護団も裏切られた形に 保釈中の逃亡に「逃走罪」にならず プライベートジェットは盲点に 保安検査は機長の判断次第 ゴーン氏の復権はあるのか 大金使ったがレバノン出国は困難 「「ゴーンは無罪の可能性高い」元特捜部検事が語る」 金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)について、両被告とも「無罪の可能性が高い」 金商法違反、刑事事件としての立件は「異常」 問題の背景に前近代的な日本の刑事司法制度 「ゴーン氏を逃がしたのは誰か?「チーム・ゴーン」驚きの正体と実力 佐藤優が事件を徹底分析する」 「獄中死」を避けるための逃亡 10年裁判やって、それから刑務所に8年行く。 今、ゴーンさんは65歳なので、出てくるときは83歳 たぶん獄中死 「IR汚職」との関連性 検察は12月29日にゴーンさんの尾行を外した 秋元司議員を捕まえたでしょ。それで人手が足りなくなったから 東京地検はこういうとき、警察に応援をお願いしないんです 元グリーンベレーは「見せ玉」 弘中弁護士も「パーツ」 日本政府も「深入りしたくない」 宗教という重要ファクター 日本がいくら正当性を主張しても… 『大岡越前』は国際的には「気持ち悪い」 事件は迷宮入り、ゴーンは生き残る
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

医薬品(製薬業)(その3)(「花粉症薬が保険適用外に」医療費約600億円削減でも現役医師が困る理由とは?、捨てられ続ける抗インフルエンザ薬の備蓄薬、たくさんの薬は害になる!? ~“多剤服用”の深刻なリスク~) [産業動向]

医薬品(製薬業)については、昨年8月21日に取上げた。今日は、(その3)(「花粉症薬が保険適用外に」医療費約600億円削減でも現役医師が困る理由とは?、捨てられ続ける抗インフルエンザ薬の備蓄薬、たくさんの薬は害になる!? ~“多剤服用”の深刻なリスク~)である。

先ずは、9月15日付けダイヤモンド・オンラインがAERAdot. 週刊朝日を転載した「「花粉症薬が保険適用外に」医療費約600億円削減でも現役医師が困る理由とは?」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dot/2019083100010.html?page=1
・『「花粉症薬が保険適用外に」というニュースが、8月下旬に話題になりました。これが正式に決まるとどういうことになるのでしょうか? 著書『心にしみる皮膚の話』が好評発売中の京都大学医学部特定准教授の大塚篤司医師が解説します。 「花粉症に対する抗アレルギー薬が保険適用外」というニュースに大きな反響がありました。これはまだ決まったわけではなく、企業の健康保険組合からなる健康保険組合連合会(健保連、けんぽれん)が、2020年度の診療報酬改定にむけて秋から開催される中央社会保険医療協議会で提起する内容の一部です。 17年度の医療費は42.2兆円。ここ数年は年間2%の割合で費用が増えています。医療費の増加は人口の高齢化に加え高額薬剤の登場による影響もあります。医療費削減は毎年マスコミで取り上げられるテーマの一つです。 大々的に取り上げられた健保連の「花粉症に対する抗アレルギー薬が保険適用外」ですが、皮膚科でも抗アレルギー薬を頻用します。例えば、じんましんやアトピー性皮膚炎など、かゆみを伴う皮膚疾患の患者さんには抗アレルギー剤を処方します。皮膚疾患を治療するうえで抗アレルギー薬は大事な武器の一つです。 健保連は、この提言以外に診療報酬改定に向けて五つの提案をしています。 今回のコラムでは、健保連が提案した五つの政策提言を、一つずつ解説したいと思います』、「健保連」も台所事情が苦しくなっているので、やむを得ない提言なのだろう。
・『【1】機能強化加算のあり方についての検討  機能強化加算とは18年度に施行された、診療所(クリニック)や200床未満の病院の初診料に上乗せされた費用です。保険点数は80点(1点10円)、つまり800円。3割負担の場合は240円が患者さんの自己負担になります。 機能強化加算を請求している医療機関は、地域のかかりつけ医として機能し、夜間や休日の問い合わせへの対応を行っている医療機関になります。この加算を設けることで、かかりつけ医制度を普及させる狙いです。 かかりつけ医制度とは、いきなり専門の診療科に行くのではなく、まずは相談できる地域の医師をつくる制度のことを指します。 大学病院などの高度な専門分野では、限られたリソースを必要としている患者に回す必要があるため、かかりつけ医の普及が重要です。 さて、18年4月から施行された機能強化加算ですが、患者の約6割が1回のみの受診で再診がなかったことがわかりました。かかりつけ医制度の定着を目的としたこの加算ですが、実際のところ4割の患者さんにはかかりつけ医となっていない可能性が指摘されています。また、二つ以上のクリニックから機能強化加算を算定された患者さんも6割いたとのことで、この制度の本来の目的とはかけ離れていることが明らかとなりました。 そのため、この加算は生活習慣病などの継続的な管理が必要な疾患に絞ることを健保連は提案しています』、「かかりつけ医制度」が実態としては余り機能してないのであれば、絞り込みは当然だ。
・『【2】 生活習慣病治療薬の適正な選択(フォーミュラリー)の導入に向けた検討  フォーミュラリーは08年に発表された手法(Am J Health-Syst Pharm 2008;65:1272-83)です。日本語では「医学的妥当性や経済性等を踏まえて作成された医薬品の使用方針」と訳されます。もう少しわかりやすく説明すると、病気の治療方針に薬剤のコストも考えて選択を提案する手法のことです。 フォーミュラリーに関しては独自に取り組んでいる医療施設があります。例えばインフルエンザの場合、重症の場合は薬剤A、妊婦さんには薬剤B、それ以外の患者さんには薬剤C、というように、医学的な根拠に加えてコストの問題も視野に入れた薬剤選択を提示しています。 薬の使い方に関して、多くの疾患で学会主導のガイドラインが公開されています。しかし、そのガイドラインの中で具体的な薬剤名の指定をしたものはなく、コストの観点から一歩踏み込んで使用する薬剤を提案するのがフォーミュラリーです。 このフォーミュラリーを導入すると医療費削減につながると健保連は提案しています。健保連の算定では、血圧をさげる降圧薬で1794億円、高脂血症などに対する脂質異常症治療薬で765億円、糖尿病に対する血糖降下薬で582億円。合計で約3100億円の薬剤費削減額が見込まれるとのことです。 健保連は、薬剤コストを加味したガイドライン作成の環境整備を国がすることを提言しています』、「学会主導のガイドライン」が徹底されないのであれば、「環境整備を国がする」のも当然だ。
・『【3】 繰り返し利用可能な処方箋(リフィル処方)の導入に向けた検討  リフィルとは「おかわり」の意味の英語。リフィル処方箋とは、繰り返し使える処方箋のことです。患者さんが医師の診察を受けることなく繰り返し使える処方箋を指します。薬剤の変更がない長期処方の場合に活用できる可能性があります。 医師限定のポータルサイト「m3(エムスリー)」がおこなった調査では、薬剤師の半数以上がリフィル処方箋に賛成していますが、医師は半数近くが反対しています。反対する医師はおそらく副作用のリスクを考え、賛成する薬剤師の方々は医師でなくとも対応できると判断しているのでしょう。 フィル処方箋と似た制度に分割調剤というものがあります。これは薬を長期処方された患者さんで家での保管が難しいなどの方を対象として、最大3回にわけて薬剤師が調剤できる仕組みです。 分割調剤はリフィル処方箋に近い概念の制度ですが、現在0.1%未満しか使用されていません。リフィル処方箋を活用することで、健保連は年間約362億円の医療費削減を見込んでいます』、「医師は半数近くが反対」、本音では診断・処方箋の機会が減るので反対しているのだろう。提言に賛成だ。
・『【4】 調剤報酬のあり方についての検討  薬局で薬を受け取る際、調剤基本料という項目があります。これは薬局の立地や処方箋の受け付け回数で異なるものです。具体的には、町中にある個人経営の薬局では調剤基本料1、大きな病院の前などにあるチェーン店では調剤基料本2もしくは3。大学病院の中にある薬局では、特別調剤基本料となり、それぞれ点数が41点、25点、(20点、15点)、10点となっています。つまり、町中の個人経営の小さな薬局の点数を上げ、かかりつけ薬局として機能してほしいという政策です。 しかし現実には、大きな病院の近くにある薬局で調剤基本料1を算定していたとのことでした。 かかりつけ医と同じように、かかりつけ薬局やかかりつけ薬剤師の普及が望まれていますが、複数の病院を利用した患者さんのうち、かかりつけ薬局をもっている患者さんは4.5%とのこと。健保連は調剤報酬の体制を改善するように提言しています』、「かかりつけ薬局をもっている患者さんは4.5%」、驚くべき低さだ。提言はもっともだ。
・『【5】花粉症治療薬の保険適用範囲についての検討  そして、五つ目の提言がニュースで大きく取り上げられた「花粉症治療薬の保険適用外」です。 花粉症の薬は病院の処方箋がなくとも、薬局で購入することができます。いわゆるスイッチOTCと呼ばれるものです。 OTCはOver The Counterの略。カウンター越しに販売者のアドバイスを受け、医者の処方箋がなくとも買える医薬品です。スイッチOTCとは医薬品で使われていた成分がOTCに変わったものです。今回の花粉症に関係したもので言うと、アレジオン、アレグラ、エバステルなどが該当します。つまり、同じ成分の薬を医療機関で処方されると、患者さんの負担は3割ですみますが、処方箋なく薬局で購入すると全額負担となります。 これらの薬剤を保険適用外とすると、医療機関での処方も患者の全額負担となり、その結果約600億円の医療費削減となるようです。 花粉症は日本人の多くが罹患している疾患であり、この提言は国民の負担増につながることから、多くの反対の声があがりました。 また、国が花粉症の治療を健康保険を通してサポートすることは国益につながるのではないかという意見もあります。花粉症や鼻炎は仕事の生産性を下げる報告(J Allergy Clin Immunol Pract. 2018 Jul - Aug;6(4):1274-1286.)や、疾患による患者さんの損失は年間25万円以上との報告があるからです(Allergy. 2017 Jun;72(6):959-966.)』、これは確かに難しく、ここで判断するのは材料不足だ。
・『まとめ  花粉症治療薬の保険適用外だけがニュースで注目されましたが、健保連は五つの提言をしていることを紹介しました。それぞれの提言は負担増(もしくは収入源)を求める相手が異なることがわかります。 抗アレルギー薬が保険適用外になると、皮膚科医の私も困る状況が訪れそうです。例えば、他の病気で入院中の患者さんに皮膚病が出現したとき、抗アレルギー薬が効くとわかっていても入院中は処方できないことになります。 「申し訳ないですが、薬局で抗アレルギー薬を買ってきてください」とは言えません。 国の財源が限られている中で、国民だけが負担増にならないよう2020年度の診療報酬改定を注目しておく必要があります』、健保財政の立て直しも重要な課題で、必要があれば国民負担も求めてゆくばきだろう。

次に、11月28日付け日経メディカル「捨てられ続ける抗インフルエンザ薬の備蓄薬」を紹介しよう。
https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/mem/pub/eye/201911/563183.html
・『政府は、「新型インフルエンザ等対策特別措置法」に基づき、国民の45%に相当する5650万人分の抗インフルエンザ薬を備蓄目標量に設定。うち約1000万人分は流通備蓄薬とし、約4650万人分を国と都道府県で備蓄している。備蓄しているのは、タミフル(一般名オセルタミビルリン酸塩)の錠剤およびドライシロップ、リレンザ(ザナミビル水和物)、イナビル(ラニナミビルオクタン酸エステル水和物)、ラピアクタ(ペラミビル水和物)。ちなみに、承認後5年程度経った薬が備蓄される仕組みなので、ゾフルーザ(バロキサビルマルボキシル)は現時点では備蓄品目になっていない。 2005年に始まった抗インフルエンザ薬の備蓄に費やした国費は、購入費だけでおおよそ800億円。ここに保管費や輸送費などが上乗せされる。その金額を聞いただけでも驚くが、しかも、使用されることなく期限を迎えると、巨額を投じた備蓄薬がただ廃棄されていることをご存じだろうか。 2006年に購入された1093万人分(約200億円)のタミフルは16年に期限切れとなり、18年には1123万人分(約220億円)、19年には527万人分(約100億円)が期限切れとなった。同様にリレンザも、16年に59.5万人分(約15億円)、17年に75万人分(約18億円)が廃棄され、22年には14.3万人分、23年には215.7万人分(約54億円)が使用期限を迎える(図1、2)。 実は備蓄される抗インフルエンザ薬は、薬価よりも安い金額で購入されている。具体的にはタミフルは薬価の約65%、リレンザは約80%の価格といった具合だ。価格が安いのは、市場に流通させないことを条件に国が直接製薬会社と価格交渉しているから。ここで決まった金額が、全国の自治体が購入する場合にも適用される仕組みだ。 この条件があるため、購入した都道府県は、使用年限が迫ってきた薬剤を市場に放出したり、備蓄以外の目的に使ったりすることができない。大量の備蓄薬が安価に市場に流れれば、医薬品卸ルートで通常価格で購入する医療機関が減り、市場が混乱する。それを避けるために、製薬会社は備蓄薬の市場流通の禁止を条件にしているわけだ』、「製薬会社は備蓄薬の市場流通の禁止を条件にしている」、事情は理解できるが、「使用期限」切れで大量廃棄とはもったいない話だ。何とか工夫できないのだろうか。
・『このような大量廃棄の事態に陥ることは当初から予想されてはいた。備蓄を開始した2005年当時は、使用期限が5年だったため、2010年には期限切れを迎える備蓄薬が出始め、大量の薬が破棄される。このことを問題視する声が専門家の間で広がっていた。 そこで2008年には、厚労省が備蓄薬のタミフルの使用期限を5年から7年に延長。13年には、さらに10年に延長した。リレンザに関しても同様に、2009年に使用期限が5年から7年に、2013年には10年に延長されている。 しかし当然のことながら、こうした問題の先送りにも限界がある。そして、10年目を迎えた2016年から続々と抗インフルエンザ薬の大量廃棄が始まった。もちろん廃棄したのと同じ分を新規に購入し備蓄する必要があるため、今後も莫大な費用が新型インフルエンザ薬に投じ続けられることになる。 備蓄のコストを抑えるべく、厚労省は2019年1月に原薬で備蓄することを認めた。これは国内に製造工場ができ、安定な製造体制が確保できるようになったためだ。原薬の状態で保管すれば、保管スペースが少なくて済み、その分のコストを浮かせることができる。原薬保管の方が、備蓄期間をさらに延長できる可能性もありそうだ。 インフルエンザA(H1N1)pdm09型のパンデミックから10年。もし再び日本で新型インフルエンザによるパンデミックが起こると、全人口の最大25%の約3200万人が感染し、最大で65万人が死亡するという推計もある。 そうした危機的状況を想定すれば、抗インフルエンザ薬の備蓄を中止することは現実的ではない。しかしだからといって、未使用薬が使用期限を迎えるとただ廃棄されるという現実は看過できない。原薬備蓄も抜本的な解決になっているとは言い難い。備蓄薬とは別に、毎年大量の抗インフルエンザ薬が使用されている我が国だからこそ、国と製薬会社・卸が協力して流通を工夫すれば、ある程度、薬剤を無駄なく使用する仕組みができるのではないだろうか』、「流通を工夫」は是非やってほしい。ただ、もともと「インフルエンザ」は毎年型が違っている筈だが、こうした「抗インフルエンザ薬」は万能なのだろうか。素人の私には気になるところだ。

第三に、10月22日付けNHKクローズアップ現代+「たくさんの薬は害になる!? ~“多剤服用”の深刻なリスク~」を紹介しよう。
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4343/
・『たくさんの薬を飲む“多剤服用”。最新の研究で、高齢者が6種類以上の薬を服用すると副作用の危険性が高まることがわかってきた。中には、多種類の薬の副作用で寝たきりになったり、認知機能の低下から認知症と診断されてしまうケースまで起きている。現役世代もひと事ではない。健康食品として扱われるサプリメントと薬を併用すると副作用の危険性が高まる可能性が指摘され始めている。“多剤服用”の深刻なリスクの実態とその対策を考える。 出演者:秋下雅弘さん (東京大学大学院教授・医師) 武田真一 (キャスター) 、 合原明子 (アナウンサー)』、「薬漬け」の弊害とは興味深そうだ。
・『寝たきりの人が劇的改善 原因は薬だった  多剤服用が原因で、寝たきりの状態にまでなったという人に、話を聞くことができました。新江敏子さん、80歳です。3年前、うつや狭心症、不眠などで同時に複数の医療機関にかかっていた、新江さん。それぞれの病院から処方された薬は、12種類にのぼっていました。 新江敏子さん「(飲むだけでも)大変ですね。飲みすぎているかなというのも、その時はあまり考えていなかったです。」 ある日、新江さんに異変が起こり始めます。その様子を、夫の祥泰さんが目の当たりにしました。 夫 祥泰さん「ここで倒れちゃっているんですよ。顔半分があざでした。」 ふらつくことが増え、転倒。動くことが少なくなり、その後、寝たきりの状態にまで陥ってしまいました。当時のカルテです。日常的に介護が必要になり、夫の祥泰さんがつきっきりで、行っていました。 夫 祥泰さん「何が(原因で)悪いんだか、トイレ行くのでも歩けなくなって。」 新江敏子さん「『早く死にたい、死にたい』って言っていました。もう治らないし、ただ寝てるだけはでしょうがないから、『もう早く死にたい』って言っていました。」 転機となったのが、現在の主治医、橋本昌也さんに出会ったことでした。高齢者の医療に詳しい橋本さんは、ふらつきの原因が、薬の種類の多さにあるのではないかと疑いました。 医師 橋本昌也さん「どうも睡眠薬とか安定剤とか、そういうのを飲んでいたようだと。もしかしたら原因なんじゃないかなと思って見ていった。」 最新の研究で、高齢者は薬の種類が増えるほど、体に異常が起こりやすくなることが明らかになっています。特に、6種類を超えるとそのリスクがより高まるのです。 薬の種類が増えると、なぜ、体に異常が起こるのか。大きくかかわっているのが、老化に伴って、薬を代謝する肝臓や、排泄する腎臓の機能が衰えることです。薬の種類が少ないうちは、代謝、排せつされ、さほど問題は起きません。しかし、6種類以上では代謝する機能を超えるため、体内に蓄積されやすくなってしまいます。薬の種類が増えるほど、思いもよらない異常をきたすというのです。 新江さんの場合、蓄積された薬の中で、睡眠薬などの4種類に問題があったのではないかと、橋本さんは考えました。それぞれの薬には、ふらつきなどを引き起こす副作用があります。1つでは副作用が少なくても、複数、蓄積されていると症状が強く現れる可能性があるからです。 合原「薬が原因だって疑うことはありましたか?」 新江敏子さん「いや、疑ってなかったですね。飲めば治ると思っていたから。」 橋本さんは、新江さんの体調を見ながら、副作用を疑った睡眠薬から見直しました。最終的に、5種類にまで減りました。すると、1か月ほどで自力で歩けるほど、回復。夫婦の日常を取り戻すことができました。 新江敏子さん「本当に先生にお会いしてなかったら今がないと思います。」 新江さんのように、多剤服用のリスクを抱える高齢者は、少なくありません。7種類以上の薬をもらう人の割合は、64歳以下では10%。一方、75歳以上になると、24%に増加。4人に1人にのぼります』、「6種類以上では代謝する機能を超えるため、体内に蓄積されやすくなってしまいます。薬の種類が増えるほど、思いもよらない異常をきたす」、「7種類以上の薬をもらう人の割合は・・・75歳以上になると、24%に増加」、恐ろしいことだ。医者には処方箋を出す際に、患者の常用薬を確かめさせるべきだろう。
・『認知症の疑い 2割の人が薬の多さが原因  多剤服用による、体の異変。ある病院では、認知症を疑った患者のうち、実は薬の種類の多さに原因があったという人が2割にのぼっていました 神戸市にある認知症患者が多く訪れる、脳の専門病院です。認知症の検査に来た、小池斐太郎さん、85歳です。3年前、ガスやたばこの火を消し忘れるなど、物忘れが急に増え、他のクリニックを受診しました。 娘 晴美さん「1日寝ているような状態が続いたりして、ちょっと認知症になったのか。」 この時、「認知症」と診断され薬も処方されました。小池さん親子は、さらに詳しい検査をしてもらいたいと、この病院を訪れました。 小池さんを診察した、医師の平田温さんです。脳の画像を見ると、認知症の特徴の一つ、脳の萎縮は、さほど見られませんでした。 医師 平田温さん「隙間が多いと脳が縮んでいるんだけど、あなたの場合は年齢相応ぐらい。」 平田さんは、小池さんが飲んでいた16種類の薬のうち、鎮痛薬と睡眠薬、合わせて4種類に注目しました。それぞれの薬には、物忘れや認知機能の低下を招く副作用があります。小池さんの場合は、これらの薬の副作用が、認知症と同じような症状として現れていると考えました。原因とみられる薬を減らすと、小池さんの物忘れは大きく改善しました。 医師 平田温さん(物忘れのテストで)「何があったのか1回隠すので覚えてください。」 小池斐太郎さん「スプーン、歯ブラシ、時計。」 医師 平田温さん「すごい、30点満点で27点。」 物忘れのテストの結果も、問題ありませんでした。小池さんは、認知症ではないと判断されたのです。 医師 平田温さん「現実に悪さをしている薬をやめてないために(症状が)良くならない。早い時期に気が付いてやめることで対応できるのではないかと。だから、非常に大きな問題だと思っているんです。」 複数の薬を飲んでいる皆さん。決してひと事ではありません』、「小池さん」や先の「新江さん」の場合は、幸いいい医師にめぐり会って治ったから幸運だったとはいえ、多くのケースではそのまま「多剤服用」を続け、副作用に苦しめられ続けているのだろう。
・『なぜ薬が6種類以上でリスク高まる?  武田:多剤服用のリスクを実際に研究された秋下さん、6種類を超えると体に異常が出やすくなるという研究結果ですけれども、詳しくは、どういうふうに見たらいいのでしょうか。 ゲスト 秋下雅弘さん(東京大学大学院教授・医師)秋下さん:基本的には、薬が多くなればなるほど薬の副作用は出やすくなるということなんです。しかし、この研究では、特に6種類以上の方は副作用の発現率が10%を超えていましたし、何種類以上から増えるのかなというのを特殊な解析で検討したところ、5種類まではそうでもないけど、6種類以上から急に増えるというような解析結果になりましたので、6種類ということを報告させていただきました。高齢者はやはり、薬の代謝・排泄機能にもかなり個人差がありますので、2種類でも問題が起きる人もいますし、10種類でも大丈夫という人もいます。ですから、6種類というところにこだわって、自分が6種類より多いからと、自己判断で薬をやめるようなことはしていただきたくないと思います』、「6種類以上の方は副作用の発現率が10%を超えていました」、驚くべき高さだ。一般の医師にも周知徹底させるべく、厚労省も「ガイドライン」など示すべきだ。
・『高齢者だけ?現役世代にリスクは?  武田:多剤服用の問題、高齢の方は特にということですけれども、私たちの世代も何種類も薬を飲んでいる人はいると思うんですよね。 合原:こちら、年代別にどのくらい薬をもらっているかを示したグラフです。64歳以下の現役世代でも、オレンジから赤の範囲、実に半数以上で3種類以上の薬をもらっているということなんです。秋下さん、まだ高齢ではないから大丈夫だと考えていいんでしょうか。 秋下さん:やはり、そうではないです。高齢者に比べると、まだ代謝、あるいは排出する機能は保たれていますのでリスクは低いです。しかし、背景となっている病気をいくつかお持ちで、こういう薬の種類になっていると思うのですが、(年を重ねると)そういう病気もどうしてもまた増えてきます。そうすると、薬ももっと増えてきますので、多剤服用予備軍というような状態の人たちだと思います。 武田:ということは、私たちの世代から、ちゃんと知っておいたほうがいいということですね。 秋下さん:はい。多剤服用にならないように、予備軍でとどまっていただけるように、なるべく新しい病気を増やさない、新しい病気にかからない。そのためにどうしたらいいかということを考えていただく必要があると思います』、我々自身が気を付ける必要があることは当然だが、それ以上に医師や薬剤師などの医療従事者がまずは気を付けるべきだろう。
・『副作用に注意!薬の種類との関係は?  武田:薬の種類、どんな薬を飲んでいるのかはやはり関係あるんですか。 秋下さん:その中に含まれているお薬に、睡眠薬とか鎮痛薬、あるいは精神安定剤といった、いわゆる副作用を起こしやすいお薬が入っていることが多いので、まず、そういったお薬が問題を起こすことがあります。ただ、必ずしもそういうお薬が入っていなくても、薬の種類が多い人は副作用が多いんですね。しかも、例えば高血圧のお薬や、花粉症のお薬、胃薬ですとか、ごく普通に皆さんが飲まれているお薬でもそういうことが起きうるということなんです』、これも医療従事者がまずは気を付けるべきだろう。
・『薬とサプリメントの併用に注意!  合原:この多剤服用のリスクというのは、処方される薬だけではないんです。サプリメントや健康食品にも注意が必要です。いわば、「隠れ多剤服用」ともいえる、医療者が把握できず、本人も気づきにくい問題なんです。 合原「今、サプリとか飲んでいますか?」 50代女性「1、2、3、4。それから腸内環境を良くするものを飲んでいるので、6種類。」 30代女性「ビタミン系が3種類と、亜鉛と、あとアルファリポ酸っていうので5種類飲んでいます。」 合原「お薬と併用していますか?」 30代女性「していますね。頭痛薬とか、風邪薬とか、胃薬とか。」 50代男性「血圧の薬を飲んでいるので、1個だとなんか寂しいからサプリをいっぱい飲んで。なんか薬いっぱい飲んでいるなって感じ。サプリは基本的に毒じゃないと思うので。薬でもないから、別に特にそんなことは気にしてないです。」 サプリメントを複数飲んでいる人の割合は、年齢とともに増えていきます。20代では3割ほどですが、50代を超えるとおよそ半数にのぼります。専門家は、薬だけでなく、サプリメントもその種類が増えるほど、リスクは高まると指摘します。 国立健康・栄養研究所 薬学博士 千葉剛さん「健康食品は薬ほどは作用は強くないんですけれども、やはり何かしら人の健康に影響する、影響を及ぼす成分が入っていますので、そういうものをやはり多量にとる、複数とることによって体に何かしら影響が出てくる可能性はあります。」 去年発表された、高齢者の多剤服用に関する国の指針です。その中でも、サプリメントを含む健康食品と薬を併用すると、重大な影響があると指摘されています。 高血圧の薬と合わせて多くのサプリメントを飲んでいると話してくれた、津田広信さん、59歳。健康が気になり始めた30代から飲みはじめ、年齢とともに種類が増えていきました。 津田広信さん「酵素アンド酵母、ミドリムシダイエットなど、14種類です。ふだんから毎日お酒も飲むし、太ってきているので、せめてこういうのを飲んでごまかしている。自分の気持ちをごまかしているみたいなものです。」 津田さんの飲み方をチェックするため、今回、薬とサプリメントに詳しい薬剤師の力を借りました。薬剤師が特に注意する必要があると指摘したのは、薬とサプリメントの飲み合わせ。血圧の薬と飲み合わせの悪いサプリメントを見つけました。 薬剤師 千葉一敏さん「血圧のために飲んでいるということで、2つの健康食品(サプリメント)を飲まれているということだった。医薬品と健康食品を見ると、確かに健康食品のほうがかなり弱い作用ではあるんですけど、足すことによってさらに医薬品の効果が出すぎてしまうことがあるので、こういうのは控えたほうがいいですね。」 津田さんは、高血圧でかかっている医師に、サプリメントを使っていることを伝えていませんでした。 津田広信さん「実際に飲んでいる血圧の薬に対して悪い作用が起きるのは、ちょっと問題。とりあえずお医者さんに持っていって見てもらいます。」 薬とサプリメントの飲み合わせについて、相談を受け付けているサプリメントメーカーもあります。およそ150種類のサプリメントを取り扱う会社。飲み合わせについての電話相談は、年間2万5千件にのぼっています。 合原「どうやって電話対応ってされているんですか。」 スタッフ「お客様から電話がかかってまいりましたら、こちらに商品名を打ち込みましてこちらにお薬名を入力いたします。」 薬とサプリメントをそれぞれ入力し、飲み合わせが悪い場合、サプリメントの摂取を控えるよう、アドバイスしています。 サプリメントメーカー 検索システム担当部門 阿部泉さん「今サプリメントを飲んでいらっしゃる方は、やはり50代60代の方が多くいらっしゃいます。そういった方はお薬を飲み始める年代とちょうど重複する年代でもありますので、お客さまにきちんと情報を提供するということを優先して行っております。」 薬とサプリメントの多剤服用。減らすとき、どんな事に気をつければいいでしょうか。 合原:サプリメントなどを飲んでいることを医師に伝えていないという人の割合というのが、実に7割にものぼるという調査もあるんですね。実際に取材をした中にも、高血圧を治療中の女性が、医師に相談をせずに血圧が高めの方にというサプリメントを多くとって、急激に血圧が下がってしまうというケースもありました。 武田:私はそれほど飲んでないのですけれども、周りに飲んでいるという人が多いんですよね。処方された薬に加えて何種類ものサプリメントをとってしまう。秋下さん、どんなリスクがあるとお考えですか。 秋下さん:何種類も、特に10種類も飲んでいらっしゃるような方の場合には、やはり多剤服用と同じような問題というのが起きうる。しかも、処方薬も一緒に飲まれていたりしますので、そういうものと合算するとかなりの数になることを考えますと、リスクを自覚していただく必要はあると思います。 武田:サプリメントは、きちんと相談して、医師や薬剤師さんに相談してとったほうがいいということですか。 秋下さん:はい。厚生労働省の指針でも、「サプリメントなどを含めて注意しましょう」と出していますので、薬剤師さんに聞いていただいて、そういうことをチェックすることも必要になります。その一方で、特に高齢者で栄養状態などに問題がある方の場合は、必要なサプリメントもありますので、サプリメントは無用であるということではなくて、よく相談した上で使うというふうにしていただきたいと思います』、「サプリメントを複数飲んでいる人の割合は・・・50代を超えるとおよそ半数にのぼります」、私は一切飲んでないので、割合の高さに驚いた。サプリメントの広告が目立つが、「多剤服用」のリスクも明記させるべきだ。
・『減らすときのポイントは?  武田:今とっている薬、あるいはサプリメントの種類を、自分にとって適切な量に減らしたいと思った場合、どうしたらいいのでしょう。 合原:こちらがそのポイントです。まず、自己判断で薬を減らさない。そして、やめないということですね。そして、病院にかかるときは、お薬手帳に薬の情報だけではなくて、飲んでいるサプリメントについても書いて、きちんと医師と情報共有をすることが大事になってきます。 武田:お薬手帳に、こんなサプリメントをとっていますというのを自分で書いてもいいんですか。 秋下さん:もちろんです。お薬手帳はシールを貼ることが多いのですが、それ以外のところというのはただの手帳ですので、手書きで書いていただくのもいいと思いますし、できたら、サプリメントを買ったときについている説明書などを切り取ってペタッと貼っていただく。名前を間違えたりすると調べるにも調べられなくなりますので、正確な情報という意味ではそういうものをうまく使っていただくといいかなと思います。 合原:そうした中、いま、多剤服用の問題を大きく動かすのではないかと期待されている取り組みがあります。薬を減らすことで、進行した認知症の症状を改善しようという大規模なプロジェクトです』、「お薬手帳に薬の情報だけではなくて、飲んでいるサプリメントについても書いて、きちんと医師と情報共有をすることが大事」、その通りだろう。
・『注目される認知症“減薬”プロジェクト  首都圏に48ある、有料老人ホームです。2300人あまりの入居者のうち、半数以上が認知症を患っています。薬を減らして認知症を防ぐ、去年10月から始まったプロジェクト。薬を減らすことで、認知症の症状の改善を目指しています。東京大学の薬学の専門家や、高齢者医療の専門医などが協力して、認知症の高齢者1000人以上を対象に、薬を調整。効果がどの程度出るのか、検証しています。 まず取り組んだのが、薬の種類や量が適正なのか、確認することです。医師や薬剤師、介護士などの専門チームを立ち上げ、日々の体調の変化をみながら、慎重に検討しています。 プロジェクトが始まって半年あまり。薬の種類や量が適正ではなく、改善の余地がある人が実に、7割を超えていることが分かりました。 プロジェクトに参加する医師 髙瀬義昌さん「今までの日本の医療は、どちらかというと薬の種類は多くて、減らすタイミングを見逃して、かえって副作用が大きくなってしまうことがあるので、これから頑張って挑んでいかなきゃいけないと思っています。」 薬を減らすことで、症状が大きく改善する人も出てきました。稲垣ミヨさん、91歳です。12種類の薬を飲んでいた、稲垣さん。当時、症状は悪化していました。 介護士「はいかいされたりとか、大声出して、『助けて』なんていう声も頻回に聞こえていました。」 暴力や暴言で、トラブルを起こすこともありました。稲垣さんの薬をチェックすると、12種類から7種類に減らすことができました。それから2ヶ月。暴力行為は一切なくなり、会話を楽しむまで回復しました。 介護士「ここの生活はどうですか?」 稲垣ミヨさん「いいですね。」 さらに、思いがけない効果が。周囲にも、いい影響が広がり始めたのです。 合原「(介護士の)負担としてもかなり減った?」 介護士 山﨑善斗さん「かなり減りましたね。やはり家族の方は、身体的な負担より、心の負担が大きいと思うので、何でこうなっちゃったんだろうとか。あとはここに足を運ぶのが重くなっていたりとか、そういうのが軽減されたほうが僕たちは嬉しいと思います。」 薬との上手なつきあい方。高齢者と現役世代、それぞれのポイントをみていきます。 合原:このプロジェクトによって、症状の改善だけではなくて周囲の人たちの負担もとても軽くなっているのを感じました。例えば、介護スタッフの方は入所者1人1人に向き合える時間が増えたといいます。さらに家族は、症状が改善したことで、再び親とコミュニケーションを取ることができるようになったと喜びを感じている方もいらっしゃいました。このプロジェクトでは、今後、減薬による効果をまとめて、指標を作成し、さまざまな医療機関や介護施設に広めていきたいとしています』、「認知症“減薬”プロジェクト」はいい取り組みだ。今後の展開が楽しみだ。
・『薬との上手なつきあい方  武田:多剤服用のリスクや減薬の効果を見てきましたけれども、やはり対策を進めていくべきだと感じました。患者や医師や薬剤師、すべての人の意識の変化というのが求められると思うんですけれども、そのために何が必要なのかキーワードを書いていただきました。 秋下さん:「足し算医療からの脱却」ということだと思います。薬が効かない場合に、ついつい、次の薬、次の薬ともらう、あるいは処方すると。こういうことが行われてきたわけですが、もし1つ足すのであれば、1つ引くと、こういう考え方です。それが「足し算医療からの脱却」ということではないかと思います。 武田:いま患者さんが持っていらっしゃるすべての症状を改善しようということで薬が増えていってしまう。そうではなくて、その患者さんの状態の何が大事なのかっていうのを、見極める作業にもつながると思うのですが。 秋下さん:例えば若い人であれば、心筋梗塞とか脳梗塞、あるいはがんといったような、かなり命に関わるような病気が大切。これは異論がないところだと思いますが、高齢者になってきますと、転倒して骨折をする。その原因となっている、ふらつきという問題もあります。それから、もう1つは認知症の問題ですね。こういったことのほうが、心筋梗塞の予防などより重要な場合があるんですね。そうしますと、若い人と高齢者では優先順位が変わってくるということが起きますので、そこはよく考える必要があると思います。 武田:そういった優先順位をつけて、薬の種類も整理していくことによって、患者さん自身も状況が改善し、周りも、社会全体もメリットがあると、その可能性があるということなんですね。 秋下さん:そうですね。 武田:ありがとうございました。 ※専門家が「多剤服用のリスク」情報をまとめた一般向けパンフレット『高齢者が気を付けたい多すぎる薬と副作用』をこちらからダウンロードできます。(NHKサイトを離れます)』、「足し算医療からの脱却」は確かに重要だ。「多剤服用のリスク」は、一般のメディアは製薬会社や医師、薬剤師らを忖度して余り取上げられないが、あえて取り上げたNHKはさすがだ。
『高齢者が気を付けたい多すぎる薬と副作用』のURLは下記
https://www.jpn-geriat-soc.or.jp/info/topics/pdf/20161117_01_01.pdf
タグ:まとめ 医薬品 ダイヤモンド・オンライン 日経メディカル NHKクローズアップ現代+ AERAdot. 週刊朝日 (製薬業) (その3)(「花粉症薬が保険適用外に」医療費約600億円削減でも現役医師が困る理由とは?、捨てられ続ける抗インフルエンザ薬の備蓄薬、たくさんの薬は害になる!? ~“多剤服用”の深刻なリスク~) 「「花粉症薬が保険適用外に」医療費約600億円削減でも現役医師が困る理由とは?」 『心にしみる皮膚の話』 大塚篤司医師 健康保険組合連合会(健保連、けんぽれん) 中央社会保険医療協議会で提起する内容の一部 五つの政策提言 【1】機能強化加算のあり方についての検討 「かかりつけ医制度」が実態としては余り機能してないのであれば、絞り込みは当然だ 【2】 生活習慣病治療薬の適正な選択(フォーミュラリー)の導入に向けた検討 医学的な根拠に加えてコストの問題も視野に入れた薬剤選択を提示 【3】 繰り返し利用可能な処方箋(リフィル処方)の導入に向けた検討 【4】 調剤報酬のあり方についての検討 かかりつけ薬局をもっている患者さんは4.5% 【5】花粉症治療薬の保険適用範囲についての検討 「捨てられ続ける抗インフルエンザ薬の備蓄薬」 「新型インフルエンザ等対策特別措置法」 国民の45%に相当する5650万人分の抗インフルエンザ薬を備蓄目標量に設定。うち約1000万人分は流通備蓄薬とし、約4650万人分を国と都道府県で備蓄 005年に始まった抗インフルエンザ薬の備蓄に費やした国費は、購入費だけでおおよそ800億円 使用されることなく期限を迎えると、巨額を投じた備蓄薬がただ廃棄されている 備蓄される抗インフルエンザ薬は、薬価よりも安い金額で購入 市場に流通させないことを条件に国が直接製薬会社と価格交渉している 都道府県は、使用年限が迫ってきた薬剤を市場に放出したり、備蓄以外の目的に使ったりすることができない 10年目を迎えた2016年から続々と抗インフルエンザ薬の大量廃棄が始まった 備蓄のコストを抑えるべく、厚労省は2019年1月に原薬で備蓄することを認めた 原薬保管の方が、備蓄期間をさらに延長できる可能性も 国と製薬会社・卸が協力して流通を工夫すれば、ある程度、薬剤を無駄なく使用する仕組みができるのではないだろうか 「たくさんの薬は害になる!? ~“多剤服用”の深刻なリスク~」 寝たきりの人が劇的改善 原因は薬だった 高齢者は薬の種類が増えるほど、体に異常が起こりやすくなることが明らかになっています。特に、6種類を超えるとそのリスクがより高まるのです 6種類以上では代謝する機能を超えるため、体内に蓄積されやすくなってしまいます。薬の種類が増えるほど、思いもよらない異常をきたす 7種類以上の薬をもらう人の割合は、64歳以下では10%。一方、75歳以上になると、24%に増加。4人に1人にのぼります 認知症の疑い 2割の人が薬の多さが原因 なぜ薬が6種類以上でリスク高まる? 6種類以上の方は副作用の発現率が10%を超えていました 高齢者だけ?現役世代にリスクは? 医師や薬剤師などの医療従事者がまずは気を付けるべき 副作用に注意!薬の種類との関係は? 薬とサプリメントの併用に注意! サプリメントを複数飲んでいる人の割合は、年齢とともに増えていきます。20代では3割ほどですが、50代を超えるとおよそ半数にのぼります サプリメントもその種類が増えるほど、リスクは高まる サプリメントを含む健康食品と薬を併用すると、重大な影響があると指摘 サプリメントは、きちんと相談して、医師や薬剤師さんに相談してとったほうがいい 減らすときのポイントは? お薬手帳に薬の情報だけではなくて、飲んでいるサプリメントについても書いて、きちんと医師と情報共有をすることが大事 注目される認知症“減薬”プロジェクト 薬との上手なつきあい方 「足し算医療からの脱却」 『高齢者が気を付けたい多すぎる薬と副作用』
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

シェアリングエコノミー(その2)(儲からないのに「シェアオフィス増殖」のなぜ 貸会議室大手・TKP「500億円買収」の狙い、IPO後株価低迷のウーバーが映すライドシェアの壁、ウーバーイーツに苦情のオンパレード…配達員が料理投げ捨て→本部は「警察に連絡しろ」) [産業動向]

シェアリングエコノミーについては、2017年7月19日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その2)(儲からないのに「シェアオフィス増殖」のなぜ 貸会議室大手・TKP「500億円買収」の狙い、IPO後株価低迷のウーバーが映すライドシェアの壁、ウーバーイーツに苦情のオンパレード…配達員が料理投げ捨て→本部は「警察に連絡しろ」)である。

先ずは、昨年4月17日付け東洋経済オンライン「儲からないのに「シェアオフィス増殖」のなぜ 貸会議室大手・TKP「500億円買収」の狙い」を紹介しよう(追記は省略)。
https://toyokeizai.net/articles/-/277208
・『貸会議室大手のティーケーピー(TKP)は4月15日、シェアオフィスを展開するIWGの日本法人「日本リージャスホールディングス」(以下、リージャス)を買収すると発表した。取得額は約500億円弱とみられる。 IWGは世界110ヵ国以上で約3300カ所ものシェアオフィスを展開し、日本では「リージャス」ブランドなどで全国145カ所(2018年末時点)を展開している。 シェアオフィスとは、オフィス家具やネット環境が揃い、そのまま仕事に取りかかれる時間貸しの事務所だ。フリーアドレスから個室ブースまで形態は様々で、フリードリンクや郵便物の受取、法人登記ができるものもある。各社によっては「レンタルオフィス」や「コワーキングスペース」などと呼ばれることもある』、「レンタルオフィス」であれば、かつてから流行していた。
・『前途多難のシェアオフィス経営  買収の理由について、TKPの河野貴輝社長は「リージャスとは同じビルに入居していることが多く、リージャスの利用者がTKPの会議室を使うなど、提携前から利用者が重複する部分があった。互いに組むことのシナジーは大きい」と力説する。TKPの国内拠点数は、自社の貸会議室と買収したシェアオフィスを合わせて約400カ所。将来的には1500カ所まで増やしていく。 シェアオフィスは拡大の一途をたどっている。アメリカの不動産サービス大手JLLによれば、シェアオフィスの延床面積はここ数年で急増。日本の大手デベロッパーやアメリカのウィーワークなどの外資系企業がこぞって参入し、さながら乱戦模様となっている。国内勢で最大手の三井不動産は、自社で展開するシェアオフィス「WORK STYLING」を2020年度までに50カ所まで拡大する予定だ。 沸騰するシェアオフィス市場だが、実態は「収益性に疑問符が付く」(不動産筋)。通常のオフィスであれば、法人テナントが一度入居すれば中長期的に安定した賃料収入が見込める一方、個人が相手のシェアオフィスでは月額会員を積み上げる必要がある。会員の入れ替わりも激しく、収益が安定しない。 住友不動産は2014年10月、本社を置く新宿住友ビル内にシェアオフィス「World Lounge」を開業したが、翌2015年12月に閉鎖した。同社は「シェアオフィスについては研究を続けているが、今は主力のビル賃貸に力を入れる」と距離を取る。1等地のビルに集中して出店するウィーワークも赤字が常態化。当のIWGも新規開業費がかさみ、営業利益はここ数年伸び悩んでいる』、「個人が相手のシェアオフィスでは・・・会員の入れ替わりも激しく、収益が安定しない・・・1等地のビルに集中して出店するウィーワークも赤字が常態化」、まだまだのようだ。
・『シェアオフィス単独のビジネスは厳しい  実は、TKP自身も2017年4月にベンチャー企業向けのシェアオフィス運営会社を買収したものの、事業が軌道に乗らず手放した過去がある。成長が著しい反面、淘汰も激しいベンチャー企業向けのビジネスは、営業コストがかかる割に収益がついてこなかった。河野社長は「シェアオフィスを単独の事業として運営するのは難しい」と振り返る。 不採算事業であるはずにもかかわらず、各社はシェアオフィス事業をなぜ拡大しようとしているのか。それは、シェアオフィスはその後に続くビジネスの「入口」にすぎず、月額利用料そのものを収益源にしていないからだ。IWG自身、他社と比べて優位な点について、「シェアオフィス利用料ではなく会員向けの付帯サービスによるものが、売上高のうち29%を占める。これは競合他社の約4倍だ」(マーク・ディクソンCEO)と認める。 三井不動産のシェアオフィス「WORK STYLING」の場合、フリーランスやテレワーカーだけでなく、同じビルに入居するテナントも得意客だ。自社オフィスの会議室が埋まっている場合に同施設で会議を行ったり、オフィスを移転・増床したい企業が仮住まいとしてフロアの一部を月単位で借りたりする場合もある。シェアオフィスは、自社ビルのテナント向けサービスという顔も併せ持つ。) ベンチャー企業向けのシェアオフィス事業も、単なる起業支援では終わらない。ベンチャー企業が成長してシェアオフィスが手狭になった際に、シェアオフィスの運営会社が保有する別の賃貸ビルにテナントとして入居してもらうことを見込んでいる。 TKPが今後も成長していくには、貸会議室を新規に出店し続けなければならないが、足下では肝心のオフィスビルに空きがなく、出店の余地が狭まっている。 オフィス仲介会社の三鬼商事によれば、今年3月時点で東京都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)の空室率はわずか1.78%。人手不足ならぬ「床不足」がTKPに立ちはだかる。新築ビルやテナントが移転して空室となったビルに出店攻勢をかけているものの、飛躍的な成長は難しい』、「東京都心5区・・・の空室率はわずか1.78%。人手不足ならぬ「床不足」がTKPに立ちはだかる」、これでは「飛躍的な成長は難しい」、のは確かなようだ。
・『「貸会議室以外」で稼ぐ  リージャスの買収により、TKPがすでに保有する貸会議室11.4万坪に加えてシェアオフィス約2.9万坪が加わった。「リージャスの一部をTKPの会議室に変えたり、逆に稼働率の低い会議室の一部をシェアオフィスに変えていく」(河野社長)といったことが可能になる。TKPとしては、シェアオフィスそのものによってもたらされる収益よりも、リージャスのシェアオフィスを高単価サービスを利用してもらうための「呼び水」にすることを期待しているようだ。 TKPの売上高に占める貸会議室関連売上の比率は年々低下し、2019年2月期にはついに50%を切った。代わりに存在感を増すのは、弁当や宴会、宿泊など会議室の利用に付帯するサービス。今回の買収によって、リージャスの会員向けに上記のサービスを提供していくことも可能になった。「シェアオフィスは(場所を貸し出すだけの)シンプルなビジネスモデルだと思われているが、実際には複雑なオペレーションが要求される」(IWGのディクソンCEO)。働き方改革が叫ばれる中、自由な働き方を支えるインフラとして重宝されるシェアオフィスだが、収益化には表面では見えない企業努力が必要なようだ』、なるほど、濡れ手に粟のビジネスではなさそうだ。

次に、5月17日付け日経ビジネスオンライン「IPO後株価低迷のウーバーが映すライドシェアの壁」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00019/051400050/?P=1
・『「CEOの年収は4300万ドル、我々の時給は9ドル」 5月8日正午、米ライドシェア大手、ウーバーテクノロジーズの本社の前には100人を超える人だかりができていた。集まったのはウーバーや同業のリフトのドライバーたち。冒頭の文言が記された横断幕を掲げ、ウーバー本社の周辺をデモ行進した。デモに加えてアプリをオフにするストも呼びかけられ、ごく一部のドライバーが参加したもようだ。 ドライバーのデモから2日後の5月10日、ウーバーはニューヨーク証券取引所に上場した。時価総額は約760億ドル(約8兆3600億円)。米ブルームバーグによると、米国で9番目の規模のIPO(新規株式公開)となり、2014年の中国・アリババ集団以来だという。 ただ、上場後の株価は振るわない。IPO時の売り出し価格を45ドルと、事前想定の44~48ドルの下限に設定したものの、上場初日から株価は下落。米株式市場の軟調もあるが、14日の終値は39.96ドルと、40ドルを割り込んだ。3月に上場した同業のリフトはさらに売り込まれている。3月29日の初値は87.24ドルと売り出し価格の72ドルを2割以上上回った。ただ、5月10日の終値は51.09ドルと初値を3割も下回っている。 評価額10億ドル以上のユニコーン企業の代表として、注目されたライドシェア2社の株価が低迷しているのは、投資家らが両社のビジネスモデルの将来性を疑問視し始めているからだ。 1つ目の課題は、冒頭のデモに象徴されるドライバーとの関係だ。 390万人ものウーバーのドライバーは正社員ではない。アプリを通してウーバーから配車の依頼を受ける“個人事業主”だ。案件ごとに個人に仕事が発注される「ギグエコノミー」の典型例である。当然ながら労働組合はないので、5月8日のデモはソーシャルメディアやウェブサイトを通じて告知された。 デモやストに参加したドライバーの不満はやはり報酬だ。 ウーバーやリフトは運賃から2割を差し引いて残りの8割をドライバーに渡しているとしている。ただデモに参加した男性ドライバーは「前は20%だったが、最近は25%を引かれている。なんでそうなっているのかきちんと説明するなど透明性が必要だ」と不満をぶちまけていた』、日本にはライドシェアを「白タク」として原則禁止する規制がある。規制のない米国でも「ドライバーとの関係」が問題化しているようだ。
・『車両が増えてドライバーの効率が悪化との声も  取り分が下がる上に、効率も悪くなっている。 シリコンバレー在住でリフトと契約する日本人ドライバー吉元逸郎氏は「そもそもサンフランシスコなど都市部ではウーバーやリフトの車両が増えて、時間当たりに稼げる金額が減っている。乗車を多くこなすドライバーへのインセンティブも減らされている」と解説する。 この状況を解消するには、ウーバーの取り分を減らすか、乗客の支払う料金を引き上げるしかない。いずれにしても収益の悪化や、顧客の離反につながる。 2つめの課題が自動運転開発で後れを取っていることだ。 ウーバーの将来は完全自動運転の実現に懸かっていると言っても過言ではない。完全自動運転が実現すれば、1つ目の課題であるドライバーに対する処遇の問題を解決できる上、収益力を高められる可能性もあるからだ。 ウーバーの乗客が支払う運賃の総額は「売上高」ではなく「取扱高」と呼ばれる。18年の取扱高はおよそ5兆5000億円(497億9900万ドル)。ドライバーの取り分は、8割で換算して4兆4000億円にも上る。 ウーバーは毎年、本業で3000億~4000億円の赤字を出している。車両の調達や運用で追加費用がかかったとしても、自動運転の導入によりドライバーへの支払いが必要なくなれば、大きな利益を生み出す可能性がある。 ただ、ウーバーの自動運転技術は多くの乗客を乗せるレベルには至っていない。米アリゾナ州では18年3月に自動運転車による世界で初めての死亡事故を起こしているが、そもそもの技術レベルに疑問符がついている』、「ウーバーは毎年、本業で3000億~4000億円の赤字」、しかも「ウーバーの自動運転技術は多くの乗客を乗せるレベルには至っていない」、「自動運転」が可能になる前に、破綻してしまう懸念もありそうだ。
・『560mごとに自動走行モードから離脱  米カリフォルニア州の車両管理局(DMV)は19年2月、自動運転の実験車両に関する18年11月までの1年間のデータを公開した。これによるとウーバーの実験車両は8217マイルを走行し、何らかの理由で自動走行モードを離脱したのは2万3499回だった。クルマの人工知能(AI)が判断不能になるケースが、実に0.35マイル(約560m)の走行ごとに発生している計算だ。 一方で、先行する米グーグル系のウェイモはほとんど離脱することがなくなっている。同資料によると、ウェイモの実験車は平均で1万マイル以上、自動運転モードで走行している。 さらには新たな競合も登場している。ウーバーが米国のタクシー業界を短期間にディスラプト(崩壊)させたように、ウーバー自身も競合から攻め込まれている。ライドシェアのビジネスは参入が容易なのだ。 例えば、米テスラのイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)は4月末、2020年以降に実現するテスラ車の自動運転機能「ロボタクシー」によって、オーナーが副収入を得られるという構想をぶち上げた。テスラのアプリを通して、知り合いなどに自分のテスラを貸し出すことができるというものだ。ピックアップ場所までテスラ車が自動で迎えにいくという。 ライドシェアの台頭によって多くの人がクルマを所有しなくなる将来が予測されている。駐車場などのコストの高い都市部では特に顕著になるだろう。テスラのロボタクシーのように、ライドシェアなどの影響を受ける自動車メーカーからの逆襲も起こりうる。テスラは市販車の走行データを収集し続けており、完全自動運転でも優位に立つ可能性が高い。 上場直後から逆風にさらされるウーバーは今後も成長を続けられるのか。IPOで得た資金を有効に使えるかがカギを握りそうだ』、「ウーバー」では「560mごとに自動走行モードから離脱」、「ウェイモ」と大きな格差は何故なのだろう。「テスラ」の「ロボタクシー」が登場したら、「ウーバー」は蹴散らされてしまうかも知れない。

第三に、10月7日付けBusiness Journal「ウーバーイーツに苦情のオンパレード…配達員が料理投げ捨て→本部は「警察に連絡しろ」」を紹介しよう。
https://biz-journal.jp/2019/10/post_122278.html
・『お気に入りの料理を簡単に取り寄せられるフードデリバリーサービス「Uber Eats(ウーバーイーツ)」。サービス開始以来、注目度が高まる一方で悪評も目立ち、配達員に“料理を投げ捨てられた”というクレームまで飛び出した。 話題になっているのは、ツイッターへ投稿された利用者の声で、「Uber Eats頼んだら、配送30分ぐらい遅れたうえに、スープこぼされてグチャグチャになってたから受取拒否したら、マンション共有部分に投げ捨てられてた」というコメント。続けて「かなりありえないんだけど、(Uber Eatsの)サポートに連絡したら、個人事業主だから関与できない、勝手に警察に連絡しろの一点張り。ありえない」とUber Eats本部の対応を非難しつつ、紙袋が破れ、食べ物が床に散乱した様子の写真も公開した。 ウーバーイーツをめぐっては、ネット上にたびたびクレームが寄せられている。たとえば、口コミサイト「みん評」でユーザー評価を確認できる。寄せられた口コミのなかには、「商品不足してるし、ウーバーもお店も知らんぷり」「商品延着の上、商品一部なし」「配達員のマナーが悪すぎる」といった厳しい声がある。 今回ユーザーから寄せられた投稿は物議を醸し、ネット上には「悪質な配達員はごく一部だろうけど、ウーバーイーツは使いたくないな」「遅延は仕方ないにしても、料理を投げ捨てるというのは酷すぎる」「こういう人が運んでいると思うと、料理が届いても怖くて食べられない」「トラブルを想定して利用しないといけないなんて、サービスとして成立してるの?」といった反応が相次いだ。 ウーバーイーツを展開するUber(ウーバー)の公式サイトを見ると、「法的情報」ページに「ユーザーは、輸送業者が提供する輸送サービスに関する苦情を、輸送業者に提出するものとします」と明記。つまり、ウーバー側は責任を負わないと宣言しているわけだ。とはいえ、ウーバーに対して不信感を抱くユーザーも多く、「ウーバー本体に責任追及できないとなると、ずいぶん高額なサービスなのだなという気持ちになる」「ウーバーは仕組みを提供して稼ぐだけで、そのサービスには無責任」という批判も上がっている。 他方、ウーバーイーツについては配達員からクレームが上がることも珍しくない。2016年には、配達員がツイッターに「Uber Eats、オペレーションやばいのは知ってるけど給料が説明会やウェブに記載されてる予定日に入ってないのはさすがにマジでやばいだろ」と投稿。ほかの配達員からもネット上に、予定されていた給料日に未入金となっている現状を訴える投稿が相次いだ。 また今年7月には、配達中に事故に遭った配達員が、ウーバー事件対応担当者から、「(事故が)再度あれば、あなたのアカウントは永久停止になるかもしれません」と、脅しをかけるようなメールを送られたとネット上に投稿し、ウーバー本部の対応が非人道的だと非難の声が高まった。 配達員の行動に対して一切の責任を負わないとしているウーバー本部の立場は、法的に問題はないのだろうか。弁護士法人ALG&Associates執行役員の山岸純弁護士は次のように解説する』、自転車に乗って、「ウーバーイーツ」のロゴの入ったバッグをしょった配達員の姿をよく見かけるようになったが、「本部の対応」には明らかに問題がありそうだ。
・『かつての「バイク便」と類似の関係  確かに、ウーバー本部と配達員は、給料を払って働いてもらうという「雇用関係」にあるわけではなく、「料理等をお客さまに届ける」という業務を依頼されている関係(準委任関係)にあるので、ウーバー本部は、配達員が第三者に対し行った不法行為などの責任を負わないのが原則です。 ところで、かつてバイク便の「本部」と「ドライバー」も、同じような問題がありました。当初、バイク便の本部は、個人のドライバーとは雇用契約にないから残業代なども支払わないし、第三者に対し行った不法行為(交通事故など)も責任を負わない、という態度をとっていましたが、多くの裁判や厚生労働省の指針などにより、今ではドライバーは、(1)配達に従事する時間を拘束されている(配達業務がなくても、何時から何時まではどこどこで待機しているようにといった指示がある)、(2)指揮命令に従っている(日報などの提出を求められたり、配送ルートなどが逐一指定されているなど)ことなどを理由に、「本部に雇用される労働者である」という判断がなされています。 これと同じように、もし、ウーバーの配達員にも、(1)配達に従事する時間を拘束されている、(2)指揮命令に従っている、といった要素があるのであれば、やはり労働者と判断される可能性が高くなることと思われます。 この場合、「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う」旨、規定する民法715条(使用者責任)が直接適用されないまでも、人を“雇用”して利益を得ているのであれば責任も負うべきであるとする「報償責任」の考え方から、ウーバー本部も配達員が第三者に対し行った不法行為(スープをマンション共用部に投げ捨てて汚すなどの行為)の責任を負うと考えることができます』、「山岸純弁護士」の言い分はもっともだ。そのうち、訴訟が相次ぐ可能性がありそうだ。シェアリングエコノミーはまだまだ問題が山積しているようだ。
タグ:レンタルオフィス 東洋経済オンライン 日経ビジネスオンライン コワーキングスペース Business Journal シェアリングエコノミー 山岸純弁護士 (その2)(儲からないのに「シェアオフィス増殖」のなぜ 貸会議室大手・TKP「500億円買収」の狙い、IPO後株価低迷のウーバーが映すライドシェアの壁、ウーバーイーツに苦情のオンパレード…配達員が料理投げ捨て→本部は「警察に連絡しろ」) 「儲からないのに「シェアオフィス増殖」のなぜ 貸会議室大手・TKP「500億円買収」の狙い」 貸会議室大手のティーケーピー シェアオフィスを展開するIWGの日本法人「日本リージャスホールディングス」(以下、リージャス)を買収 「リージャス」 シェアオフィスとは、オフィス家具やネット環境が揃い、そのまま仕事に取りかかれる時間貸しの事務所だ 前途多難のシェアオフィス経営 シェアオフィスの延床面積はここ数年で急増 実態は「収益性に疑問符が付く」 個人が相手のシェアオフィス 会員の入れ替わりも激しく、収益が安定しない シェアオフィス単独のビジネスは厳しい 東京都心5区 空室率はわずか1.78% 「床不足」がTKPに立ちはだかる 「貸会議室以外」で稼ぐ 収益化には表面では見えない企業努力が必要なようだ 「IPO後株価低迷のウーバーが映すライドシェアの壁」 CEOの年収は4300万ドル、我々の時給は9ドル ウーバー本社の周辺をデモ行進 上場後の株価は振るわない 投資家らが両社のビジネスモデルの将来性を疑問視し始めている 1つ目の課題は、冒頭のデモに象徴されるドライバーとの関係 車両が増えてドライバーの効率が悪化との声も ドライバーの取り分は、8割で換算して4兆4000億円 ウーバーは毎年、本業で3000億~4000億円の赤字 560mごとに自動走行モードから離脱 米グーグル系のウェイモはほとんど離脱することがなくなっている テスラのロボタクシーのように、ライドシェアなどの影響を受ける自動車メーカーからの逆襲も 「ウーバーイーツに苦情のオンパレード…配達員が料理投げ捨て→本部は「警察に連絡しろ」」 悪評も目立ち、配達員に“料理を投げ捨てられた”というクレームまで飛び出した サポートに連絡したら、個人事業主だから関与できない、勝手に警察に連絡しろの一点張り ウーバー側は責任を負わないと宣言 かつての「バイク便」と類似の関係 多くの裁判や厚生労働省の指針などにより、今ではドライバーは、 「本部に雇用される労働者である」という判断
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

公文書管理(その5)(森友問題の背後に透ける「保守派の影響力」と「他国の政治介入」、ディストピアを現実化 安倍政権の正体を忘れてはいけない、行政文書を捨てない「ドイツ」のアーカイブ感覚 専門の教育を受けているアーキビストがいる) [国内政治]

公文書管理については、2018年7月20日に取上げた。久しぶりの今日は、(その5)(森友問題の背後に透ける「保守派の影響力」と「他国の政治介入」、ディストピアを現実化 安倍政権の正体を忘れてはいけない、行政文書を捨てない「ドイツ」のアーカイブ感覚 専門の教育を受けているアーキビストがいる)である。

先ずは、立命館大学政策科学部教授の上久保誠人氏が昨年3月27日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「森友問題の背後に透ける「保守派の影響力」と「他国の政治介入」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/164815
・『学校法人「森友学園」への国有地売却に関する決裁文書改ざんを巡り、与野党は、3月27日に当時財務省理財局長だった佐川宣寿前国税庁長官の証人喚問を行うことで合意した。 麻生太郎副総理・財務相は記者会見で、自らの書き換え指示を否定し、「理財局で行ったものであり、外部からの指示で行われたことはない」とも述べ、「責任は佐川にある」と断じた。麻生財務相のみならず、予算委員会で質問に立った自民党議員も、次々と批判の矛先を財務省ばかりに向けている。だが、今頃になって財務省を「スケープゴート」にしても遅すぎた(本連載第172回)。 また、安倍晋三首相は予算委員会で、「書き換え前の文書を見ても、私や私の妻が関わっていないことは明らかだ」と答弁した。それならば、昨年2月の時点で言っておけば、財務省が公文書書き換えに手を染める必要などなかった。結局、今更財務省に全ての責任を負わせようとしても、「限りなくクロ」の印象は拭えなくなってしまった。 世論の批判が高まる中、安倍政権は証人喚問容認に追い込まれてしまった。国有地が破格で売却されたことと、膨大な文書改ざんには多くの謎がある。証人喚問によって真実に迫ることが重要であるのは言うまでもない。しかし今回は、そのこととは少し距離を置きたい。 この連載では、森友学園問題について最初に論考を書いた時、この問題が「安全保障問題化」するリスクを指摘していた(第151回)。現在、与野党、官僚、メディアの終わりの見えない「潰し合い」の様相となっているが、この問題が起きた時に考えたことに戻りたい。それは、森友学園問題を国際社会に広がっている2つのリスク、「ナショナリズム」と「外国による国内政治への介入」に位置づけて、「潰し合い」の背景にある、より本質的な問題を考えてみることだ』、「森友学園問題」の「より本質的な問題」とは、興味深そうだ。
・『森友学園問題の本質は「保守系の団体」の政治・行政への強い影響力の広がりではないか  まず、「ナショナリズム」の問題を考える。国会が森友学園問題で紛糾する間に、新たな問題が発覚した。自民党の赤池誠章参院議員と池田佳隆衆院議員が複数回に渡って文科省初等中等教育局に電話をし、天下りあっせん問題による引責辞任や「出会い系バーの利用」の問題があった前川喜平・前文部科学事務次官が名古屋市内の中学校で講師を務めた授業の内容や経緯を照会した。文科省は、照会に基づき、名古屋市教育委員会に授業の内容の報告や録音データの提供を求めていた。 赤池氏、池田氏は文科省に経緯を照会していたことを認めた上で、「法令違反をした人が教壇に立っていいのか事実確認した。文科省への圧力には当たらない」と説明した。一方、文科省幹部は「問い合わせたのは省としての判断だ」と説明している。 赤池氏、池田氏は、「日本会議国会議員懇談会」と「神道政治連盟国会議員懇談会」のメンバーである。メディアの報道は、直接的ではないものの、教育行政に対して政治家の背後にいる「保守系の団体」の政治的介入が頻繁に行われていることを暗に匂わせている。 昨年2月に森友学園問題が明らかになった当初、その教育や運営の異様な実態が注目されたものだった。籠池泰典森友学園理事長は、「日本会議」(第144回)のメンバーであり、同学園系列の幼稚園は、明治天皇の名で教育理念などを規定した「教育勅語」を暗唱させる教育方針で知られた。新たに設立しようとした小学校は「日本で初めてで唯一の神道の小学校」を謳っていた(第153回)。 そして、この問題に関して、次々と地方議員や国会議員の名前が浮上すると、彼らに対する日本会議など「保守系の団体」の影響力の強さが指摘されていた。だが、籠池理事長の政治家への接触が、合法的な「陳情」の範囲内の行為で、政治家は単に「役所の担当者につないだ」というだけであることが判明していくと、次第に世間の焦点は、「安倍夫妻の関与」「財務省の忖度」に集中するようになった(第152回)。そして、「保守系の団体の政治・行政への異様な影響力」という話は、どこかに消え去ってしまったのだ。 しかし、佐川前国税庁長官・元理財局長への証人喚問で野党、メディアがヒートアップし、野党が元々「敵」であったはずの籠池理事長に接見してヒアリングしている状況を見ると、逆に「首相夫妻の関与か財務省の忖度か」だけに過度に注目が集まることに、少し距離を置きたくなってくる。要は、財務省の忖度が仮にあっても、それは「首相夫妻」に対する忖度だと単純に済ませていいのかということだ。 赤池氏、池田氏の文科省への照会から垣間見えた「保守系の団体」による政治・行政に対する働きかけが日常的に行われているであるならば、「合法的な陳情」とされた森友学園問題の「書き換え前の文書」に記載されていた政治家の名前も、もう一度見直す必要が出てくるのではないか。 自民党や維新の会のような「保守」の地方政治家や国会議員と、保守系の団体の間に日常的に様々な接触があると考えるのは、いまや「常識」だ。なんと、現在の安倍政権の閣僚20人中19人が神道政治連盟メンバーだ(週刊ダイヤモンド2018年3月24日号『特集:劣化する伝統宗教 神社・仏教 大騒乱』)。 政治家が「団体」の会員となる目的は、普通に考えれば、その団体の思想信条に賛同するからではない。選挙での集票を期待するからだ。換言すれば、いまや保守系の団体は自民党の非常に有力な「集票マシーン」となっているということだ。 逆に、「集票マシーン」の団体が自民党に期待することは、自民党を通じて自らの「利益」を実現することだ。保守系団体の様々な「声」が、全国の国会議員や地方議員が日常の政治活動を通じて、財務省や文科省などの中央の官僚組織に多く届けられていたことは、容易に想像できる。そして、官僚はそれらの「声」を無視できなくなっているのではないか。 日本会議は「同一視されるのは心外」と籠池理事長を切り捨てた。森友学園問題は、籠池理事長という「変わった人」が「首相夫妻と深い関係にある」と言って財務省に絡んだ「特殊な問題」という扱いだ。だが、むしろこの問題は、全国の政治の現場と霞が関に広がっていることの「氷山の一角」が見えたということではないか。保守系の団体が、政治家の日常活動への影響力を次第に強めていき、中央の政治・行政への介入が日常的に起こるようになり、官僚が無視できないレベルに達したという、日本社会に起きている深刻な構造的問題と捉えるべきなのではないだろうか。 この連載では、保守派の神がかったような非科学的な主張が、日本を衰退させると批判してきた(第144回)。野党は、この問題をどうしても「首相夫妻の資質問題」に持っていきたいようだ。だが、もっと根深く、面倒で、深刻な問題を、逃げることなく追及すべきなのではないだろうか」、「保守系の団体が、政治家の日常活動への影響力を次第に強めていき、中央の政治・行政への介入が日常的に起こるようになり、官僚が無視できないレベルに達したという、日本社会に起きている深刻な構造的問題と捉えるべき」、その通りだ。ただ、「野党は、この問題をどうしても「首相夫妻の資質問題」に持っていきたいようだ」、としているが、根深い問題よりも、攻め易い問題に絞ったのは、政治的には理解できる。
・『「南スーダンPKO日報破棄問題」に関してある専門家から聞いた話  次に、「外国による国内政治への介入」という、国際社会に広がるもう1つのリスクを考えてみたい。2017年の通常国会で、森友学園問題、加計学園問題とともに野党やメディアから厳しく追及されたのが「南スーダンPKOの日報破棄問題」であった。南スーダンで自衛隊の任務遂行中に「戦闘」があったという文言が記載された日報が、ジャーナリストの布施祐仁氏が情報公開請求したことで発見された。だが、当初防衛省の回答は、開示でも不開示でもなく「日報は既に破棄しており不存在」だった。 これに対して、布施氏が「常識的に考えても廃棄したというのはおかしい」とSNSで発信して拡散し、防衛省に対する批判が殺到した。結局、防衛省相は日報を出さざるを得なくなり、国会で野党から「隠ぺい」と厳しく追及された。最終的には、安倍首相は南スーダンからのPKO部隊の撤退を決定し、答弁が迷走した稲田朋美防衛相は国会閉会後の内閣改造で退任となった(第164回)。 要するに、森友学園問題や南スーダンPKO日報問題など、国会で野党やメディアが厳しく追及を続けてきたことの本質は、「中央官庁における情報公開と公文書管理」の杜撰さだといえる。この連載では何度でも繰り返すが、「公文書書き換え」は、議会制民主主義の根幹にかかわる深刻な事態であり、国会でこの問題が徹底的に追及されるのは当然だ(第178回)。だが、ここでも連日メディアが安倍夫妻の関与の有無をスキャンダラスに報道し、国民が感情的になる状況で、より深刻な問題が隠れていくように思える。 筆者が、日本のある専門家から聞いた話がある。防衛省には「日本の市民団体」から多くの情報公開請求が来る。防衛省がその内容を確認すると、明らかに外国の「代理人」として請求していると見られるものが多数あるという。これに対して防衛省では、国家安全保障の観点から海外に漏洩させたくない情報を、保存せずに破棄していた。防衛省内では、このような文書の破棄がなかば習慣化しており、その延長線上に南スーダンPKO日報破棄の問題があったというのだ。 残念ながら、この専門家から聞いた情報は裏が取れない。だが、物事は最悪の事態を想定しておくべきだ。ここからは、仮にこの情報が真実だという前提で考えていきたい』、「防衛省には「日本の市民団体」から多くの情報公開請求が来る・・・明らかに外国の「代理人」として請求していると見られるものが多数あるという。これに対して防衛省では、国家安全保障の観点から海外に漏洩させたくない情報を、保存せずに破棄していた」、いくら「外国の「代理人」として請求」があるとしても、開示を安全保障に係るとして拒否すればいいだけで、「破棄」までしてしまうのは、余りにも乱暴だ。
・『日本の情報公開法は行政機関の裁量権が広い半面、情報公開圧力を強く受ける  日本では、「行政機関情報公開法」が1999年に成立し、2001年から施行されている。国や地方自治体の行政機関全般と独立行政法人等、防衛研究所図書館、外務省外交史料館などが保有する文書について、国民の知る権利に基づき原則、公開することを定めた法律である。 情報公開法の制定は、政治腐敗や汚職、公害問題などに対する追及が、情報の非公開という壁に阻まれていた1970年代に、その機運が盛り上がった。情報公開法制定を目的とした市民団体が発足し、少しずつ地方自治体において情報公開制度の制定が進み、1999年に国会で成立した。 情報公開法が成立した当時は、日本では自民党一党の長期政権時代が終結し、自民党は都市部を支持基盤とする公明党と連立を組む、「自公政権」が誕生していた。また、リベラルな民主党が台頭した時代でもあった。行政情報公開法は、それらの政党が、都市部のリベラルな「市民団体」の強い要求を受けて動くことで、実現したともいえる。 情報公開法では、請求されたことは原則公開することになっているが、個人情報に該当する情報、外交や防衛など国の安全に関する情報、国民に誤解と混乱をもたらす恐れのある情報、国民のプライバシーを侵害するような事項、捜査に関する情報などは公開できないこと、外交、防衛、警察、治安などは例外的に行政機関の判断で非開示にできる。 このように、非開示の判断について、行政機関の裁量が広く認められている点が批判されている。一方、開示した内容に不服がある場合は行政訴訟を起こすことができるし、日本人だけではなく外国人も請求できる。情報公開への圧力が非常に強いものになっている側面もある。 この制度的な矛盾によって、行政機関は、市民団体からの膨大な情報公開請求を前にして、右往左往してきた。そして、「森友学園」や「南スーダンPKO」の問題発覚は、「隠ぺい」「破棄」「改ざん」が横行する、日本の中央官庁の「前近代的」な公文書管理を白日に晒したのだ』、やはり日本では、「寄らしむべし知らしむべからず」(《「論語」泰伯から》人民を為政者の施政に従わせることはできるが、その道理を理解させることはむずかしい。転じて、為政者は人民を施政に従わせればよいのであり、その道理を人民にわからせる必要はない(goo辞書))、といった伝統的考え方が、いまだに政治・行政の側には強いのだろうか。
・『中央官庁の情報公開と公文書管理の徹底化が日本を外国から「丸裸」にすることは避けるべき   「公文書書き換え問題」を受けて、今後日本の中央官庁の情報公開と公文書管理が徹底化されることになるだろう。何よりも、公文書の保存期間が短すぎるとともに、規定が曖昧であることは問題だ。 森友学園問題の国会審議では、政府側が交渉記録の保存期間は「1年未満」なので、保存していなくても「法令に即して適切に処理した」という答弁を連発した。実際には、具体的な「文書保存期間」は省庁レベルの文書管理規則によって定められているが、今後はこのような行政機関の裁量の幅は大幅に狭められていくだろう。 国会では、公文書の管理のあり方をどのように改善すべきか、既に議論が始まっている。例えば参議院予算委員会では、浅田均参院議員(維新)が「ブロックチェーンを公文書管理に取り入れるべき」と発言し、麻生財務相も前向きに対応すると答えざるを得なかった(高橋洋一『森友問題、公文書改ざんの首謀者は「オールド世代」の官僚だ』)。「前近代的」な制度をテクニカルに改革していくことは、当然必要なことだ。 だが、情報公開と公文書管理の徹底化は、単にテクニカルな問題にとどまらず、政治問題化する可能性がある。野党が麻生財務相の辞任など、国会で大きな成果を挙げた場合、勢いに乗って「特定秘密保護法」(第72回)の撤廃を目指すかもしれない。野党を支持する「市民団体」からの行政訴訟の頻発による情報公開の圧力も、これまで以上に強まることになるだろう。 安倍政権の支持率低下が続き、9月の自民党総裁選で、安倍首相が不出馬あるいは敗北する事態となれば、後継の首相は安倍政権との違いを出すために、野党側に寄り、「特定秘密保護法」や「対テロ準備法」(第154回)、「安保法制」(第115回)の修正に向かうかもしれない。 だが、その際に考えなければならないことがある。国際社会を見れば、米国の大統領選挙や、英国のEU離脱の国民投票におけるロシアの介入が明らかになっている。英国では、亡命中の元スパイ毒殺事件が起きて、英国政府がロシアの犯行と断定し、外交官を国外追放した。韓国の朴槿恵大統領の汚職による辞職も、中国の関与が取りざたされた(第151回)。いまや、国内政治への外国の介入は普通に起こりえるリスクと考えねばならない。 例えば、森友学園問題の傍らで、日本年金機構が個人情報の入力を委託していた会社が、中国の業者に入力業務を再委託していたという事件が発覚している(『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実』)。中国は、日本のマイナンバーを狙っており、それに対する、日本年金機構の情報管理意識が低すぎることが問題となっているという。 情報公開請求を熱心に行う日本の「市民団体」が、日本の機密情報を狙う外国政府と直接つながっていると言うつもりはない。だが、間違いなく安全保障に対する感覚は薄いだろうし、団体の内部に誰が入り込んでいてもおかしくない。入手した情報を他者に渡して、広げていくことには、むしろ積極的だろう。 少なくとも、強力な諜報機関を持ち、情報管理が徹底した英国(第157回)でさえ起こったようなことが、日本では起きないという楽観的な考えには、何も根拠がなく同意できない。 この連載では、安全保障問題は争点化すべきではないと主張してきた。テロの脅威、中国の海洋進出、北朝鮮のミサイル危機、外国の内政への介入などのリスクに対しては、与野党が現実的に議論して最善の策を打つべきである(第168回・P4)。中央官庁の情報公開と公文書管理の徹底化が、結果的に日本を外国から「丸裸」にするということは、与野党の激突を超えて、絶対に避けなければならないことである』、「結果的に日本を外国から「丸裸」にする」、というのには違和感がある。前述のように、「情報公開法では」「外交や防衛など国の安全に関する情報、国民に誤解と混乱をもたらす恐れのある情報」などは公開不要なのであるから、仮に請求があっても、堂々と拒否できる。「丸裸」などになることなどない筈だ。

次に、作家の適菜収氏が本年1月18日付け日刊ゲンダイに掲載した「ディストピアを現実化 安倍政権の正体を忘れてはいけない」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/267723
・『安倍政権がまた公文書を改ざんした。もはや反国家的な犯罪組織と言っていい。菅義偉は事実を認め(1月14日)、内閣府が昨年11月に国会に「桜を見る会」の推薦者名簿を提出した際に、推薦した部局名を隠す加工をしていたと明らかにした。「極めて不適切な対応で、今後、このような行為を厳に慎むよう内閣府に徹底した」とのこと。菅はつい先日(1月9日)にも、招待者名簿の廃棄記録を内閣府が残していなかった件について「文書管理の徹底を指示した」などと言っていたが、アホにも限度がある。腐敗した組織の幹部が指示しても意味がない。第三者が徹底的に検証すべきだ。 近代の悪はどのような形で現れるか。ジョージ・オーウェルの近未来小説「一九八四年」の主人公の仕事は公文書の改ざんである。「党」にとって都合が悪い過去の事実を抹消し、新たに歴史を捏造する。そこでは、言葉の破壊活動が継続的に行われる。たとえば強制収容所を「歓喜キャンプ」と言い換える。「党」の目的は国民の思考を止めることだ』、「ジョージ・オーウェルの近未来小説「一九八四年」」を持ち出すとはさすがだ。
・『これは全体主義国家のパロディーだが、こうしたディストピア(注)をそのまま現実化したのが安倍政権だった。安保法制騒動では憲法の解釈をひっくり返し、最後には首相補佐官が「法的安定性は関係ない」と言い放った。一連の安倍晋三事件では、省庁をまたがる形で公文書改ざん、日報隠蔽、データ捏造などが行われ、嘘とデマ、プロパガンダが連日のように社会に垂れ流された。連中が説明を拒絶し、証拠隠滅を図ろうとするのには理由がある。これまでも時間稼ぎをして新しいトピックを打ち出すことで逃げ切ってきたからだ。 だからわれわれは何度も思い出さなければならない。「桜を見る会」には、統一教会の関係者、悪徳マルチ商法の「ジャパンライフ」会長、反社会的勢力のメンバー、半グレ組織のトップらが呼ばれていた。安倍と周辺の一味は税金を使って支援者を接待し、後援会関係者による前夜祭の明細書も隠蔽。「反社」の定義も勝手に変更した。嘘と現実の矛盾が生まれ、整合性が取れなくなれば、現実のほうを歪めていく。今回の改ざんも、「推薦者名簿は廃棄済み」という国会答弁との整合性を図るためだった。安倍政権は日本の敵であるだけではなく、人類の敵、文明の敵である』、(注)ディストピア:ユートピア(理想郷)とは逆の社会(ニコニコ大百科)。「ディストピアをそのまま現実化したのが安倍政権だった」、「嘘と現実の矛盾が生まれ、整合性が取れなくなれば、現実のほうを歪めていく」、その通りで、例示されたものを眺めるだけで、腹が立ってくる。 

第三に、ドイツ在住ジャーナリストの高松 平藏氏が1月22日付け東洋経済オンラインに掲載した「行政文書を捨てない「ドイツ」のアーカイブ感覚 専門の教育を受けているアーキビストがいる」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/324873
・『公文書のずさんな扱いが露呈する日本。一方、欧米の国々の公文書管理、ひいてはそれらを保管しておくアーカイブが充実している。公文書の扱いに関する制度整備を見ることも大切だが、制度の背景には歴史観や国家観、デモクラシーといったことがある。ドイツの例を見ながら考えてみたい』、興味深そうだ。
・『後世に残す文書はアーカイブの専門家が選ぶ  日本は公文書の扱いや、それらを永続的に保管するアーカイブの位置づけが脆弱である。これは専門家のあいだで度々指摘され、主に欧米を見ながら、法整備が少しずつ行われてきた。筆者が住むドイツも参照にされる国のひとつだ。 現在のドイツ連邦アーカイブは1952年に発足。1949年以降の連邦の記録、ドイツ帝国/ドイツ民主共和国、旧東ドイツ、軍事、フィルムといったように扱う部門がある。実際の施設はドイツ全国8箇所に分散しており、ドイツ西部の人口11万人の都市、コブレンツがその本部だ。 永久に増え続ける文書類、デジタル化などの新技術への信頼性、旧来の紙やフィルムの経年劣化との戦いなど課題は多い。それにしても、連邦政府のすべての記録は同アーカイブに渡されることが法律で義務化されている。そして大切なのは、後世に残すべきかどうか判断する権限は政府ではなく、アーカイブにある点だろう。 アーカイブは誰でも利用可能だ。すなわち、収蔵された行政文書で施策をたどることができる。政府側からすれば情報開示である。これらはデモクラシーとも重要な関係がある。 どういうことかというと、デモクラシーの国では選挙の投票がある。これは政治的な「自己決定」のひとつだが、大切なのはそこへ至るための意見形成だ。場合によっては「投票率」よりも重要なことである。そのためには正しい情報が必要で、時には過去の行政文書にあたる必要性も出てくるだろう。このときにアーカイブが力を発揮する。 アーカイブで働くアーキビストの資質も見るべきものがある。彼らは歴史的知識、複雑な思考スキル、ラテン語などの言語スキルを有している。ドイツは一般に職業教育が強いが、アーキビストも同様で、専門の教育がなされている。後に述べるが、この歴史的知識の有無がとても大切だ。 中央政府全体のアーカイブは現在の連邦アーカイブに先立ち1919年に「中央アーカイブ」として設立された。他のヨーロッパ諸国に比べると遅かったが、アーカイブそのものは中世からある』、「アーカイブそのものは中世からある」、歴史的に根付いているようなのはさすがだ。
・『年度始まりの9月に起きること  また日本に目を転じると、昔から記録類を残す重要性は認知されており、数々の古文書があるのはその証左だ。むしろなぜ、現代日本がこれほど文書類の扱いがずさんになったのか考察する必要もあるだろう。 しかし本稿ではドイツの強い「アーカイブの感覚」がなぜあるのかについて続ける。この感覚はドイツの人々が一般に持っているように思われる。ドイツに住む筆者にとって、それを感じるのが、年度始まりの9月。書類をファイリングするバインダーがスーパーの特売品として大量にワゴンに並ぶのだ。スタンダードのバインダーは幅8センチ程度。A4の用紙を保管していけるものだ。 この理由は明らかで、授業で大量に教材としてプリントが配布される生徒や学生のためでもあるが、新しい年度がはじまり、証明書や領収書の類を保管するためだ。 もとより、ドイツは文書類を大量に作り、何かにつけ文書・証明書類を重要視する「文書国家」だ。実際、ドイツの人々は出生証明書から成績表、職業証明書まですべてきれいにファイリングしている。個人でさえこうなのだから、官庁、企業、非営利組織などは言わずもがなだ。 個人的な体験をいうと、「ドイツという国は『文書主義』の国だね」とドイツの友人に少々皮肉っぽく話したことがある。友人は「む、いや、そのとおり」と肩をすくめて、ニヤっと笑った。 この「文書主義」を歴史的にさかのぼると、ローマ時代あたりから見いだすことができる。ローマ帝国は紀元前4世紀あたりから、イタリア半島からアフリカ、アジアにまで勢力を伸ばした。各領域はローマと同盟を結ぶかたちで統治を行ったが、言語や文化も異なる領域を統治するにはラテン語の文書をベースに執り行った』、「日本に目を転じると、昔から記録類を残す重要性は認知されており、数々の古文書があるのはその証左だ。むしろなぜ、現代日本がこれほど文書類の扱いがずさんになったのか考察する必要もあるだろう。 しかし本稿ではドイツの強い「アーカイブの感覚」がなぜあるのかについて続ける」、確かに日本で酷くなったのは、安倍政権になってからだと思う。古代から国家の統治の正当性や効率性を確保するには、文書の保管は重要だった筈だ。
・『中世の都市も文書の保管は大切だった。都市は領主に対して自治権などを獲得していくが、その証明書がとても重要だったからだ。 また中世都市は市壁に囲まれた人工空間だった。壁の内と外が明確で、市壁は明示的な「国境」のようなものだ。そのためパスポートといった「証明書」の感覚も強くなる。そして内側では当然、管理や所有関係など重要な公文書も出てくる。また、公文書によって人々の権利が保証される案件もある。この感覚が先述した年度始まりのバインダー販売ともつながっているように思えてならない。 翻って、都市文書類を蓄積しなければどうなるか?都市の信頼性を失い、アイデンティティーを証明できなくなるだろう。ましてや改ざんや、後世を考えずに廃棄をしてしまうと信頼性は言うにおよばず、都市のアイデンティティーすら怪しげなものになる。 現代ドイツの都市は日本に比べると小ぶりなところが多いが、小都市でも自律性と自立性が比較的高い。これは地方分権の傾向をつくる連邦制など、制度的な理由もあるが、公文書の蓄積で作られてきた、「独自の歴史がある自立したわれわれの都市」という感覚のひとつの背景だ。 そして現代においては、自治体はアーカイブを設置する義務と権利を有している』、日本よりはるかに地方分権的なので、国家だけでなく、「自治体」も「アーカイブを設置する義務と権利を有している」のだろう。
・『歴史とアーカイブへの偏執的態度  自治体のアーカイブには行政文書、新聞、書籍、写真、フィルムなどかなりのものを保存している。働いている人たちも専門教育を受けたアーキビストで、修士・博士号の取得者も多い。 アーカイブに保管されているものは、自治体の「物語」とでもいえる歴史の源泉であり、言い換えれば「都市の背骨」である。それが都市のアイデンティティーを作るわけだが、「国」に置き換えてもアーカイブの重要性は十分見いだせるだろう。行政の記録ということ以上に、国や自治体というコミュニティー全体の記憶なのである。 地元のミュージアムや歴史・郷土クラブなどと協力することも多い。節目に展覧会の開催や歴史書が書かれるが、アーカイブがその第一次資料だ。当然のことだが、過去の歴史は時代によって評価が変わる。展覧会や出版される歴史書は、その時代の目で都市の過去を見直すことにほかならない。 同時に人間の行動には時代が変われども普遍的なものもある。歴史をきちんと見るということは、現在と未来を理解するということだ。「歴史的専門知識」を持つアーキビストたちは、こういうことをよくわかっているのだろう。そんな彼らが、大量の行政文書から後世に残すものを選んでいるのだ。 現代において行政文書の保存はデモクラシーにとって重要であることは言うまでもない。同時にドイツの都市を見ていくと、歴史から導かれるアイデンティティー、都市の独立性と信頼性などのためにアーカイブは不可欠という態度がある。これが行政文書を捨てない感覚を作っているのだと思う』、ドイツなどの欧州大陸諸国は、都市国家から出発したので、「歴史から導かれるアイデンティティー、都市の独立性と信頼性などのためにアーカイブは不可欠という態度がある」、日本は江戸時代から明治時代に切り替わる際に、余りに強く中央集権化を図り、地方統治機構も再編成したことが、「アーカイブ」文化を壊してしまったのかも知れない(後半は小生の独断と偏見)。
タグ:東洋経済オンライン 日刊ゲンダイ 選挙の投票 ダイヤモンド・オンライン 適菜収 上久保誠人 高松 平藏 公文書管理 (その5)(森友問題の背後に透ける「保守派の影響力」と「他国の政治介入」、ディストピアを現実化 安倍政権の正体を忘れてはいけない、行政文書を捨てない「ドイツ」のアーカイブ感覚 専門の教育を受けているアーキビストがいる) 「森友問題の背後に透ける「保守派の影響力」と「他国の政治介入」」 森友学園問題の本質は「保守系の団体」の政治・行政への強い影響力の広がりではないか 赤池氏、池田氏は、「日本会議国会議員懇談会」と「神道政治連盟国会議員懇談会」のメンバー 赤池氏、池田氏は文科省に経緯を照会していたことを認めた上で、「法令違反をした人が教壇に立っていいのか事実確認 世間の焦点は、「安倍夫妻の関与」「財務省の忖度」に集中 「保守系の団体」による政治・行政に対する働きかけが日常的に行われているであるならば、「合法的な陳情」とされた森友学園問題の「書き換え前の文書」に記載されていた政治家の名前も、もう一度見直す必要が出てくるのではないか 保守系の団体は自民党の非常に有力な「集票マシーン」 保守系の団体が、政治家の日常活動への影響力を次第に強めていき、中央の政治・行政への介入が日常的に起こるようになり、官僚が無視できないレベルに達したという、日本社会に起きている深刻な構造的問題と捉えるべき 「南スーダンPKO日報破棄問題」に関してある専門家から聞いた話 防衛省には「日本の市民団体」から多くの情報公開請求が来る。防衛省がその内容を確認すると、明らかに外国の「代理人」として請求していると見られるものが多数ある 防衛省では、国家安全保障の観点から海外に漏洩させたくない情報を、保存せずに破棄 日本の情報公開法は行政機関の裁量権が広い半面、情報公開圧力を強く受ける 外交や防衛など国の安全に関する情報、国民に誤解と混乱をもたらす恐れのある情報、国民のプライバシーを侵害するような事項、捜査に関する情報などは公開できない 「結果的に日本を外国から「丸裸」にする」 「ディストピアを現実化 安倍政権の正体を忘れてはいけない」 ジョージ・オーウェルの近未来小説「一九八四年」 主人公の仕事は公文書の改ざんである。「党」にとって都合が悪い過去の事実を抹消し、新たに歴史を捏造 全体主義国家のパロディーだが、こうしたディストピア(注)をそのまま現実化したのが安倍政権 「行政文書を捨てない「ドイツ」のアーカイブ感覚 専門の教育を受けているアーキビストがいる」 後世に残す文書はアーカイブの専門家が選ぶ 連邦政府のすべての記録は同アーカイブに渡されることが法律で義務化 後世に残すべきかどうか判断する権限は政府ではなく、アーカイブにある 正しい情報が必要で、時には過去の行政文書にあたる必要性も出てくる アーカイブそのものは中世からある ドイツは文書類を大量に作り、何かにつけ文書・証明書類を重要視する「文書国家」 「文書主義」を歴史的にさかのぼると、ローマ時代あたりから見いだすことができる 日本に目を転じると、昔から記録類を残す重要性は認知されており、数々の古文書があるのはその証左だ。むしろなぜ、現代日本がこれほど文書類の扱いがずさんになったのか考察する必要もあるだろう。 しかし本稿ではドイツの強い「アーカイブの感覚」がなぜあるのかについて続ける 中世の都市も文書の保管は大切だった 歴史とアーカイブへの偏執的態度 ドイツの都市を見ていくと、歴史から導かれるアイデンティティー、都市の独立性と信頼性などのためにアーカイブは不可欠という態度がある。これが行政文書を捨てない感覚を作っているのだと思う
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

日本の構造問題(その14)(「沈黙は金」を押し付けるワンチームならいらない、小田嶋氏:五輪で「全員団結!」しなくてもいい) [社会]

日本の構造問題については、昨年12月13日に取上げた。今日は、(その14)(「沈黙は金」を押し付けるワンチームならいらない、小田嶋氏:五輪で「全員団結!」しなくてもいい)である。

先ずは、イラン生まれで、留学で来日、日本人女性と結婚し日本国籍取得して異文化コミュニケーションアドバイザーとして活躍する石野シャハラン氏が本年1月11日付けNewsweek日本版に掲載した「「沈黙は金」を押し付けるワンチームならいらない」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/tokyoeye/2020/01/post-8_1.php
・『日本人になる条件として、意見を言わないで風習や前例に従うことを突き付けられた苦い経験  しばらく時間がたったが、ラグビーワールドカップは、本当に大成功を収めた。令和に入ってからの最も明るいニュースの1つだ。海外から日本にやって来たラグビーファンとメディアが、世界に日本の大会運営の素晴らしさやホスピタリティーを大いに広めてくれた。まさに日本と世界をつないだ素晴らしい大会だった。 前回のコラムで、さまざまなダイバーシティと個人、㆒人一人を尊重したコミュニケーションの重要さについて書いた。個人の相互理解の次に大事なのは、組織や社会が「ワンチーム」になることだ。過度な個人主義で勝手な行動を際限なくされては、秩序や社会は保てない。 ただ、イランという海外にルーツを持つ日本人である私はこの「ワンチーム」というスローガンに、実は少し複雑な気持ちを持った。なぜなら、しゃべらないこと、意見を言わないで風習や前例に従うことが、日本人になるための条件としてたびたび突き付けられてきたからだ。「沈黙は金」を強要され、息苦しさにあえいできた経験はなかなか忘れられない。 郷に入っては郷に(黙って)従えの「ワンチーム」だとしたら、とても怖い。滅私奉公や和を尊ぶという価値観が行き過ぎると、自分の可能性や世界を狭め、新しい人や新しいやり方を拒んでしまうリスクがある。私はそれを心配している。今回のラグビー日本代表のように、さまざまなルーツを持つ人々が、互いに認め合い、互いに助け合うための自己犠牲の美しさを意味する「ワンチーム」なら大歓迎だが』、「しゃべらないこと、意見を言わないで風習や前例に従うことが、日本人になるための条件としてたびたび突き付けられてきた」、大いにありそうな話だ。「郷に入っては郷に(黙って)従えの「ワンチーム」だとしたら、とても怖い」、同感だ。
・『押し売りサービスはもう要らない  私は「元外人」だからという理由だけでなく、世界中のさまざまな国の人と交流して友人になることができる。これはビジネスシーンの営業においても重要なスキルだ。 日本企業で「沈黙は金」を乱用し言論統制をする人は、社外の営業スキルゼロでもなぜか給料が高い。そのような人が高い給料をもらっている日本では、解決型の営業マンを育てるのはとても難しい。達成不可能な目標を押し付け、成功事例を水平展開――と、クライアントが求めてもいないのに無駄に売り付けてくる駄目セールスマンを量産してしまう。もう日本にそんな押し売りサービスを買う余裕も体力もない。 営業拡大は、減点ではなく加点を採点基準にする体質改善をしなくてはならない。イランにも古くからの格言やことわざが多くあるが、「沈黙は金」と同じ意味のことわざはすぐに思いつかない。「自分ができること、与えられた能力を精いっぱい鍛えて、最大限活用しなさい」という逆の意味のことわざは存在するが』、「日本では、解決型の営業マンを育てるのはとても難しい。達成不可能な目標を押し付け、成功事例を水平展開――と、クライアントが求めてもいないのに無駄に売り付けてくる駄目セールスマンを量産してしまう。もう日本にそんな押し売りサービスを買う余裕も体力もない」、さすが「元外人」だけあって、日本流の営業が抱える問題点を鋭く指摘している。
・『外国人にとって、日本が、文化的にも経済的にもキャリア的にも人間関係的にも魅力的な国であり続ければ、より多くの優秀な外国人が集まってくる。高齢化・少子化に伴う人口減少が予想される日本を、経済的に今後も維持発展させようとすれば、より多くの外国人を呼び寄せる魅力が必要である。 そして、日本に集まってきた「人財」(私はあえてこの言葉を使っている)を、ワンチームにする必要がある。私は、ラグビー日本代表の外国人選手たちはその先駆けだと思っている。 日本のパスポートは、世界一精密で格好が良い。それなのに、持っている人は国民の4人に1人しかいないそうだ。 私は、いつも自分の日本のパスポートを見ると日本人であることが誇らしく思える。パスポートを手に取れば、あの素晴らしいラグビー日本代表を見たときのように、日の丸を背負って世界を相手に戦いたくなるはずだ。そのような自覚が広まって初めて、世界の「人財」が集まるワンチームの日本になれる』、「日本人であることが誇らしく思える」「元外人」の言葉だけに、貴重な提言だ。「今回のラグビー日本代表のように、さまざまなルーツを持つ人々が、互いに認め合い、互いに助け合うための自己犠牲の美しさを意味する「ワンチーム」なら大歓迎」、強く同意したい。

次に、コラムニストの小田嶋 隆氏が1月17日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「五輪で「全員団結!」しなくてもいい」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00116/00053/?P=1
・『「全員団結プロジェクト」をごぞんじだろうか。 私は、つい昨日、その存在をはじめて知った。わがことながら、自分の情報感度の鈍さに落胆している。 毎日新聞が伝えているところによれば、このプロジェクトは、2019年の8月にはすでに始まっている。それが、なぜなのか、20年になってから、突如として、SNS上で賛否の声が渦巻く展開になっているのだという。 私自身は、賛否をどうこう言う以前に、なにより、そのデザインのチープさに心を打たれた。 特にキャンペーン公式サイトの、「全員団結について」と題された説明のページがすごい。 このデカいポップ体の赤文字がひしめき合う画面を一瞥して、最初に思い浮かべたのは、あの懐かしい大学の「立看」(タテカン)だった。 念のために解説しておく。 立看とは「立て看板」の略称で、1960~80年代の大学構内には当たり前のように見られた左翼学生による手製のアジテーション看板を指す。ベニヤ板と角材で作られた木枠に模造紙を貼って、その上に、朱色や黒色のペンキで政治的なスローガン(「米帝打倒!」とか「中教審粉砕!」だとか)を大書したものが多かった。私の世代の、学生運動のピークから5年ほど乗り遅れた学生たちは、その立看の中国共産党風の簡体字を駆使した独特の右肩上がりの角張った書体を「左翼文字」と呼んで、なにかと冗談のタネにしたものだった。 もっとも 「西洋史の◯◯先生とかは、レポートの中で闘争の闘の字を斗で書くと成績がワンランクアップするらしいぞ」という定番の軽口は、まるっきりの都市伝説でもなかった。いや、確認を取ったわけではないのだが。 大学のキャンパスが左翼学生による立看で埋め尽くされていたあの時代は、街宣右翼の活動が活発だった時代でもあった。で、その街宣右翼の皆さんが町中の電柱やガードレールに貼り付けるアジビラの中で躍っていた文字は、書体や用語法こそ左翼文字とは一線を画していたものの、赤文字と体言止めとビックリマークを多用するそのテイストにおいては、立看の中の左翼文字と選ぶところのない代物だった』、私も「全員団結プロジェクト」の「全員団結について」(下記)を見たが、確かに小田嶋氏の言う通りだ。電通などは一体、何をしているのだろう。
https://danketsu.jp/about/
・『つまり、なんというのか、私は、「全員団結プロジェクト」のホームページから、「政治宣伝の匂いのする」「スローガンっぽい」「アジテーションくさい」「マニピュレーション臭」それ自体を感じ取ったわけで、それゆえ、内容以前に、その「演説口調の」「大量の唾液が飛んできそうな」「絶叫調の」文体に、時代錯誤の印象を抱かざるを得なかった次第なのだ。 「おいおい、何を大音声で呼ばわってるんだ?」と。 ぜひ決めつけないでほしいのだが、私は、 「50年ぶりに迎える国家的なイベントである夏季オリンピックを、国民全員で、心をひとつにして盛り上げようではありませんか」という、このプロジェクトの趣旨そのものを、正面から全否定しようとたくらんでいるのではない。 私は、主催者がイベントを盛り上げたいと願うのは当然のことだと考えている。そのために彼らが努力を傾けていることについても、ごく自然な態度だと思っている。 ただ、その努力の結果として完成したホームページが、どうしてこれほどまでに前時代的なデザインに着地したのかにいささか意表を突かれているわけで、それで、余計なお世話だとは思いながらも、JOCの中枢を占める人々の頭の中身を心配しているということだ。 あるいは、あの「全員団結」のデザインは、新しいとか古いとか、そういう物差しで評価すべき対象ではないのかもしれない。というのも、実のところ、あのデザイン(というよりも、事実上は「デザインの放棄」なのだが)は、21世紀の現時点に至ってなお、街頭やウェブ上のあらゆる場所に溢れかえっている王道の意匠でもあるからだ。 具体的には、価格なり商品名なりプロジェクト名なりを、目もあやな赤色太文字の安ピカPOP体で強調表記するそのデザイン思想は、スーパーの安売りチラシや家電量販店の店内ポップや霞が関の役人が内製するポンチ絵において、常に第一の選択肢になっている。とすれば、あれは古いとか新しいとかいうよりは、端的に「うるさい」と評価すべき物件なのであって、あの絶叫調の赤色極太ゴシック体はティッシュが5箱で247円だったりすることを強調するために利用されるべき書体だ、と、そういう話なのだろう。 サッカーやラグビーのW杯を思い出してもらえばわかる通り、この種の国際的なスポーツイベントは、期日が迫って競技が始まれば、いやでも盛り上がることになっている。なにも、お国や組織委員会がカネや太鼓で煽り立てなくても、夢中になって駆けずり回る人たちは必ずや大量発生する。 もちろん、競技やイベントに興味を示さない国民もいるはずだ。大会がもたらす喧騒や混雑に不快感を表明する人々も少数ながら現れるだろう。 とはいえ、総体としてみれば、国民の大多数は自国の選手を応援するはずだし、彼らは、そうやって大勢で自国開催のスポーツイベントを観戦することを心から楽しむに決まっているのだ。 それでいったい何が不満なのだろう。 このうえ、JOCはわれわれに何を望んでいるのだろうか』、さすが小田嶋らしい鋭い指摘だ。
・『以下、「全員団結」の説明のページに記されているボディーコピーを引用してみる。 《団結。それは人々が力を合わせ、強く結びつくこと。 みんなが待ち望んだ、東京2020オリンピック。 じっとしていても、何もはじまらない。 勇気を出して、オリンピックに参加しよう。 そうすればきっと、あなたの中で何かが変わる。 みんなで手を繋げばきっと、ものすごい力が生まれる。 心をひとつに、全員団結! さあ、いくぞ。がんばれ!ニッポン!》 この文章を読んで何を感じるのかは、それこそ人それぞれだ。 素直に共感する人もたくさんいるのだろう。 私は、体言止めの多用と、イクスクラメーションマーク(!)の連発に圧迫感を感じる。 もっと言えば、 「じっとしていても、何もはじまらない」という一行の説教くささには、辟易するし、 「勇気を出して、オリンピックに参加しよう」の部分に対しては、「どうして勇気が必要なのですか?」と、問い返したい気持ちを持つ。 「つまり、あなたたちは、われわれに、参加するのに勇気が必要であるような過酷なブラック労働ボランティアを期待しているのですか?」と。 「そうすればきっと、あなたの中の何かが変わる。」という部分には、当然のことながら 「うるせえ。余計なお世話だ」と反発しないわけにはいかない。 そして、最後の「心をひとつに、全員団結!」というアジテーションには、当然のことながら警戒感を抱くことになるし 「さあ、いくぞ。がんばれ!ニッポン!」という決め台詞には、恐ろしさをさえ感じる。だって、オレ、ニッポンの話なんかひとつもしていないのに、なぜなのかいつの間にやら大いなるニッポンの一部分として総決起しないといけないみたいな展開になってるわけだし。 類似のネタとして思い出すのは、1968年に制作された(日本での公開は翌1969年)ビートルズのアニメ映画『ビートルズ イエロー・サブマリン』だ。 私は、この映画を中学生の時に見た。色彩の素晴らしさと、音楽にただただ圧倒されたことを覚えている。 で、どうしてこれが「全員団結」なのかというと、この映画のエンディングで流された歌が「オール・トゥゲザー・ナウ」(←直訳すれば、「みんな一緒に」ぐらいですね)だったからだ』、「「さあ、いくぞ。がんばれ!ニッポン!」という決め台詞には、恐ろしさをさえ感じる。だって、オレ、ニッポンの話なんかひとつもしていないのに、なぜなのかいつの間にやら大いなるニッポンの一部分として総決起しないといけないみたいな展開になってるわけだし」、全く同感だ。
・『私は、当時、この歌を偏愛していた。 理由は、たぶん、この作品が、歌詞といい、歌いっぷりといい、ノイズとして収録されているスタッフの笑い声といい、どうにもユルいツクリだったからだと思う。 1968年から69年にかけてのビートルズは、世界の音楽をひっくり返す革命の中心にいる、神の如き存在だった。 その彼らがリリースする楽曲は、どれもこれも、パラノイアック(偏執的)なほどに異様な集中力で作られた緻密な工芸品ばかりだった。 だからこそ私は、スタジオ作業のお遊びの中で生まれた感じのする、即興的な、思いつきっぽい「オール・トゥゲザー・ナウ」に魅了されたのだと思う。 私は、昔から、大家だったり天才だったりする人たちが、片手間でこしらえた感じのやっつけ仕事に目がない。たとえば三島由紀夫で言えば「肉体の学校」だとか「絹と明察」あたりの軽めの読み物が好きだし、そのほか、ピカソによる牛のスケッチだとかにも強い愛着を感じる。 話をもとに戻す。 「オール・トゥゲザー・ナウ」は、テーマだけを取り出すなら「全員団結」を呼びかけた歌ではある。 とはいえ、そのテイストは、JOCによる「全員団結!」とは、まるで違う。 というのも、ビートルズの「オール・トゥゲザー・ナウ」は、そもそも「てんでんばらばら」で、「ごちゃごちゃ」で「サイケデリック」な、世界中のファンに向けて歌われた、即興の祝祭歌だからだ。 それゆえ、歌い出しもバラバラなら、エンディングも適当で、コーラスさえピタリと合っていない。 で、この歌は、映画『ビートルズ イエロー・サブマリン』のエンドロールが流れる中、全世界の何十という言語による"All together now"の翻訳字幕を代わる代わる表示しながら、日本語字幕での 「それでは皆さんご一緒に」という表示を最後に、あくまでも楽しげに、酔っぱらいっぽく、演奏・歌唱される。 ごらんの通り、「オール・トゥゲザー・ナウ」は、世界中に散らばる人間の多様さとその彼らの間にある不一致をまるごと受容したうえで、その混乱した世界の中の矢鱈滅鱈に素っ頓狂な人々(歌詞の中では、「数」や「文字」や「色」を順次列挙することで、世界の多様性を表現している)に向けて、 「一緒に歌おうよ」と呼びかけていたわけで、これは、どう見ても「挙国一致」だったり「一億総決起」だったりのスローガンとは似ても似つかない「斉一性」よりは「多様性」を志向した歌なのである』、「ビートルズ イエロー・サブマリン」との対比は、違いを際立たせて秀逸だ。
・『『ビートルズ イエロー・サブマリン』という映画を見ればわかる通り、あれは、愛と平和と音楽と黄色い潜水艦の力で、この腐り切った世界を救おうではありませんかという、あくまでもお気楽なお花畑のおとぎ話だ。 とすれば、その映画の中で歌われる「みんな一緒に」もまた、おとぎ話の中のお花畑で歌われる鼻歌以上のものではない。 引き比べて、JOCの言っている「全員団結!」は、そもそもが画一的、斉一的、集団主義的であると言われがちなわが国の国民に向けて発令されている中央からの号令である点で、「オール・トゥゲザー・ナウ」とは、真逆の運動原理に基づいたものだと申し上げてよい。 なにしろ、財務大臣兼副総理たる人間が、 「ひとつの民族ひとつの王朝が2000年続いている国はほかにない」と明言(あとで取り消したのだそうですが)している国の「全員団結」だ。 こんなスローガンが、脅迫的に響かない道理がどこにあるというのだろうか。 麻生太郎大臣やJOCの中の人たちは、うっかり忘れているのかもしれないが、そもそもオリンピックは、多様性の祭典だ。 世界中の200を超える地域と国から、何百もの民族が一堂に会するところに、その意義がある……と、私は、前回の東京オリンピックに先立つあれこれの宣伝の中で、その種のお説教をさんざん聞かされた世代の者なのだからして、この点は間違いない。オリンピックは、「ひとつになる」ことより「多様である」ことを寿ぐべく開催される祝典だ。少なくとも五輪憲章にはその意味のことが書かれている。 であるからして、こういう舞台で達成されるべき「オール・トゥゲザー」は、「互いの違いを認めつつ、ともあれひとつの場所を共有する」ということであって、 「全員がひとつの旗のもとに結集して、個々の自我を捨てて完全に一致する」ということではない。 麻生副総理は賛成してくれないかもしれないが、日本は、日本生まれ日本育ちの日本人が暮らしている国である一方で、日本の外の様々な国にルーツを持つ日本人が住んでいる国でもある。長らく海外で暮らした経験を持つ国民も少なくないし、異国からやってきたパートナーや混血の子供たちを家族に持つ日本人もたくさんいる。 そういう人々は、競技によっては、父や母の国の選手を応援するかもしれない。昨今の状況からすれば、海外在住時になじみのあった特定の選手を応援する人だってそんなに珍しくはないはずだ。 こういう時代に、JOCは、いったい、誰を指して「全員」と言い、何をもって「団結」と考えているのだろうか。 多様な外国人が集う国際競技大会で、多様な日本人がそれぞれ多様な価値観に基づいて多様な楽しみ方をすることのどこがいったい彼らにとって残念であるのか、そこのところが私にはどうしてもわからない。 私個人は、せっかくなので、勇気を出して、外国人と交流する機会を持てればよろしかろうと考えている』、「JOCの言っている「全員団結!」は、そもそもが画一的、斉一的、集団主義的であると言われがちなわが国の国民に向けて発令されている中央からの号令である点で、「オール・トゥゲザー・ナウ」とは、真逆の運動原理に基づいたものだ」、「オリンピックは、「ひとつになる」ことより「多様である」ことを寿ぐべく開催される祝典だ。少なくとも五輪憲章にはその意味のことが書かれている。 であるからして、こういう舞台で達成されるべき「オール・トゥゲザー」は、「互いの違いを認めつつ、ともあれひとつの場所を共有する」ということであって、 「全員がひとつの旗のもとに結集して、個々の自我を捨てて完全に一致する」ということではない」、その通りで、JOCや麻生副総理は猛省すべきだ。
タグ:日経ビジネスオンライン Newsweek日本版 小田嶋 隆 日本の構造問題 (その14)(「沈黙は金」を押し付けるワンチームならいらない、小田嶋氏:五輪で「全員団結!」しなくてもいい) 石野シャハラン 「「沈黙は金」を押し付けるワンチームならいらない」 しゃべらないこと、意見を言わないで風習や前例に従うことが、日本人になるための条件としてたびたび突き付けられてきた 郷に入っては郷に(黙って)従えの「ワンチーム」だとしたら、とても怖い。滅私奉公や和を尊ぶという価値観が行き過ぎると、自分の可能性や世界を狭め、新しい人や新しいやり方を拒んでしまうリスクがある 今回のラグビー日本代表のように、さまざまなルーツを持つ人々が、互いに認め合い、互いに助け合うための自己犠牲の美しさを意味する「ワンチーム」なら大歓迎 押し売りサービスはもう要らない 達成不可能な目標を押し付け、成功事例を水平展開――と、クライアントが求めてもいないのに無駄に売り付けてくる駄目セールスマンを量産してしまう。もう日本にそんな押し売りサービスを買う余裕も体力もない 日本人であることが誇らしく思える 「五輪で「全員団結!」しなくてもいい」 全員団結プロジェクト 全員団結について デザインのチープさに心を打たれた 立看の中の左翼文字と選ぶところのない代物 内容以前に、その「演説口調の」「大量の唾液が飛んできそうな」「絶叫調の」文体に、時代錯誤の印象を抱かざるを得なかった この種の国際的なスポーツイベントは、期日が迫って競技が始まれば、いやでも盛り上がることになっている。なにも、お国や組織委員会がカネや太鼓で煽り立てなくても、夢中になって駆けずり回る人たちは必ずや大量発生する 「さあ、いくぞ。がんばれ!ニッポン!」という決め台詞には、恐ろしさをさえ感じる。だって、オレ、ニッポンの話なんかひとつもしていないのに、なぜなのかいつの間にやら大いなるニッポンの一部分として総決起しないといけないみたいな展開になってる 『ビートルズ イエロー・サブマリン』 JOCの言っている「全員団結!」は、そもそもが画一的、斉一的、集団主義的であると言われがちなわが国の国民に向けて発令されている中央からの号令である点で、「オール・トゥゲザー・ナウ」とは、真逆の運動原理に基づいたものだ オリンピックは、「ひとつになる」ことより「多様である」ことを寿ぐべく開催される祝典だ。少なくとも五輪憲章にはその意味のことが書かれている こういう舞台で達成されるべき「オール・トゥゲザー」は、「互いの違いを認めつつ、ともあれひとつの場所を共有する」ということであって、 「全員がひとつの旗のもとに結集して、個々の自我を捨てて完全に一致する」ということではない
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

資本主義(その3)(既得権と独占を壊せ!自由な社会の作り方 若き天才経済学者が「ラディカル」に提言、「現代最強の経済学者」スティグリッツの挑戦状 ピケティと挑む「資本主義100年史」の大転換) [経済]

資本主義については、昨年10月3日に取上げた。今日は、(その3)(既得権と独占を壊せ!自由な社会の作り方 若き天才経済学者が「ラディカル」に提言、「現代最強の経済学者」スティグリッツの挑戦状 ピケティと挑む「資本主義100年史」の大転換)である。

先ずは、経済学者の安田 洋祐氏が昨年12月20日付け東洋経済オンラインに掲載した「既得権と独占を壊せ!自由な社会の作り方 若き天才経済学者が「ラディカル」に提言」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/319184?page=2
・『21世紀を生きる私たちには3つの課題がある。富裕層による富の独占、膠着した民主主義、巨大企業によるデータ搾取だ。この難問に独自の解決策を見いだそうとする野心的な理論書が刊行された。気鋭の経済学者として名を馳せるグレン・ワイル氏を共著者とする『ラディカル・マーケット 脱・私有財産の世紀』だ。 プリンストン大学留学時にワイル氏とも接点があり、今回、本書の監訳を担当した大阪大学大学院経済学研究科准教授の安田洋祐氏による「日本語版解説」を、一部加筆・編集してお届けする』、興味深そうだ。
・『学部生ながら大学院生に教えた「天才経済学者」  本書の執筆者の一人であるグレン・ワイル氏は、筆者のプリンストン大学留学時代のオフィスメートである。と言っても、当時の私は大学院生で彼はまだ学部生。 ワイル氏は学部生でありながら大学院の難解な講義を楽々と突破し、さらには大学院生たちを(ティーチング・アシスタントとして)教える、スーパーな学部生だった。 すでに大学院生用の研究スペースまでもらい、ハイレベルな学術論文を何本も完成させていた彼は、プリンストン大学を首席で卒業したあと、そのまま同大学の大学院に進学。平均で5、6年はかかる経済学の博士号(Ph.D.)を、驚くべきことにたった1年でゲットしてしまう。 この規格外の短期取得は経済学界でも大きな話題となり、「若き天才経済学者登場」「将来のノーベル賞候補」、といった噂が駆け巡った。 そんな若き俊英が、はじめて世に送り出した著作が本書『ラディカル・マーケット』である。今回、記念すべきこの本を監訳することができて、イチ友人として、またイチ経済学者として、とても光栄に思う』、「若き天才経済学者」が「はじめて世に送り出した著作」、何を主張するのだろう。
・『「ラディカル」(Radical)という単語は、「過激な・急進的な」という意味と「根本的な・徹底的な」という意味の、2通りで用いられる。本書『ラディカル・マーケット 脱・私有財産の世紀』は、まさに両方のラディカルさを体現した「過激かつ根本的な市場改革の書」である。 市場が他の制度――たとえば中央集権的な計画経済――と比べて特に優れているのは、境遇が異なる多様な人々の好みや思惑が交錯するこの複雑な社会において、うまく競争を促すことができる点である。 市場はその存在自体がただちに善というわけではなく、あくまで良質な競争をもたらすという機能を果たしてこそ評価されるべきだ。 もしもその機能が果たされていないのであれば、市場のルールを作り替える必要がある。今までのルールを前提に市場を礼賛する(=市場原理主義)のではなく、損なわれた市場の機能を回復するために、過激で根本的なルール改革を目指さなければならない(=市場急進主義)。本書の立場は、このように整理できるだろう』、「市場原理主義」ではなく、「市場急進主義」とは面白そうだ。
・『現代世界が直面する問題とその解決策  では、著者たちが提案する過激な改革とは、いったいどのようなものなのか?本論にあたる第1章から第5章までの各章で、私有財産、投票制度、移民管理、企業統治、データ所有について、現状および現行制度の問題点がそれぞれ整理され、著者たちの独創的な代替案が提示されている。 どの章もそれだけで1冊の専門書になってもおかしくないくらい内容が濃く、驚かれた読者も多いに違いない。第3章から第5章では、世界が現在進行形で抱える深刻な社会・経済問題に対する処方箋が示されており、移民、ガバナンス、データ独占などの現代的な問題に関心のある方は必読だ。 本書の中心となる第1章と第2章は、資本主義および民主主義の大前提を揺るがし、思考の大転換を迫るようなラディカルな提案を読者へと突きつける。 たとえば、第2章「ラディカル・デモクラシー」では、民主主義の大原則である1人1票というルールに改革のメスが入る。具体的には、ボイスクレジットという(仮想的な)予算を各有権者に与えたうえで、それを使って票を買うことを許すという提案だ。 ここで登場する「2乗する」というルールは、単なる著者たちの思い付き、というわけではもちろんない。現在までに購入した票数と追加的に1票を買い足すために必要なボイスクレジットが比例的な関係になる、という二次関数の性質がカギを握っているのだ。 そのうえで著者たちは、一定の条件の下で、QVによって公共財の最適供給が実現できることを示している。独創的なアイデアをきちんと先端研究によって補完する、という組み合わせは他の章にも通底する本書の大きな魅力である』、「ボイスクレジット」については、ここでの短い説明だけでは、理解不能だ。
・『さて、ここからは第1章「財産は独占である」の中身と、その評価について述べたい。本書の中でも最もラディカルなこの章で著者たちが改革の矛先を向けるのは、財産の私的所有に関するルールである。 私有財産は本質的に独占的であるため廃止されるべきだ、と彼らは主張する。言うまでもなく、財産権や所有権は資本主義を根本から支える制度のひとつだ。財産を排他的に使用する権利が所有者に認められているからこそ、売買や交換を通じた幅広い取引が可能になる。 所有者が変わることによって、財産はより低い評価額の持ち主からより高い評価額の買い手へと渡っていくだろう(配分効率性)。さらに、財産を使って得られる利益が所有者のものになるからこそ、財産を有効活用するインセンティブも生まれる(投資効率性)』、総論としては理解できる。
・『私有財産制度がもたらす問題  著者たちは、現状の私有財産制度は、投資効率性においては優れているものの配分効率性を大きく損なう仕組みであると警告している。私的所有を認められた所有者は、その財産を「使用する権利」だけでなく、他者による所有を「排除する権利」まで持つため、独占者のように振る舞ってしまうからだ。 この「独占問題」によって、経済的な価値を高めるような所有権の移転が阻まれてしまう危険性があるという。 一部の地主が土地を手放さない、あるいは売却価格をつり上げようとすることによって、区画整理が必要な新たな事業計画が一向に進まない、といった事態を想定するとわかりやすいだろう。 代案として著者たちが提案するのは、「共同所有自己申告税」(COST)という独創的な課税制度だ。COSTは、1.資産評価額の自己申告、2.自己申告額に基づく資産課税、3.財産の共同所有、という3つの要素からなる。具体的には、次のような仕組みとなっている。 1.現在保有している財産の価格を自ら決める。 2.その価格に対して一定の税率分を課税する。 3.より高い価格の買い手が現れた場合には、 3─i.1の金額が現在の所有者に対して支払われ、 3─ⅱ.その買い手へと所有権が自動的に移転する。 仮に税率が10%だった場合に、COSTがどう機能するのかを想像してみよう。あなたが現在所有している土地の価格を1000万円と申告すると、毎年政府に支払う税金はその10%の100万円となる。申告額は自分で決めることができるので、たとえば価格を800万円に引き下げれば、税金は2割も安い80万円で済む。 こう考えて、土地の評価額を過小申告したくなるかもしれない。しかし、もし800万円よりも高い価格を付ける買い手が現れた場合には、土地を手放さなければならない点に注意が必要だ。 しかもその際に受け取ることができるのは、自分自身が設定した金額、つまり800万円にすぎない。あなたの本当の土地評価額が1000万円だったとすると、差し引き200万円も損をしてしまうのである。 このように、COSTにおいて自己申告額を下げると納税額を減らすことができる一方で、望まない売却を強いられるリスクが増える。このトレードオフによって、財産の所有者に正しい評価額を自己申告するようなインセンティブが芽生える、というのがCOSTの肝である』、確かに「COST」は優れた仕組みのようだ。
・『現代によみがえるジョージ主義やハーバーガー税  実は、COSTのような仕組みの発想自体は、著者たちのオリジナルというわけではない。シカゴ大学の経済学者アーノルド・ハーバーガーが、固定資産税の新たな徴税法として同様の税制を1960年代に提唱しており、彼の名前をとって「ハーバーガー税」とも呼ばれている。 またその源流は、19世紀のアメリカの政治経済学者ヘンリー・ジョージの土地税にまで遡ることができる。ただし、適切に設計されCOSTを通じて、所有者にきちんと正直申告のインセンティブを与えることができることや、配分効率性の改善がそれによって損なわれる投資効率性と比べて十分に大きいことなどを示している点は、著者たち(特にグレン・ワイル氏と、別論文での彼の共同研究者)の大きな貢献だ。 整理すると、大胆な構想と洗練された最先端の学術研究によって、本書はジョージ主義やハーバーガー税を現代によみがえらせ、土地をはじめとするさまざまな財産に共同所有への道筋を切り拓いた、といえる。 財産の私的所有は、確かに著者たちが主張するように「独占問題」を引き起こし、現在の所有者よりも高い金額でこの財産を評価する潜在的な買い手に所有権が移転しにくくなる、という配分の非効率性を引き起こす。 ただし、この非効率性は悪い面ばかりとは限らないのではないだろうか。非効率性の正の側面として、3つの可能性に思い至ったので書き留めておきたい。 1つ目は、予算制約である。ある所有者にとって非常に価値がある財産であっても、租税に必要な現金が足りず、高い金額を申告することができないような状況が当てはまる。 私有財産が認められていれば、手元に現金がなくても大切な財産を守ることができるが、COSTはこの「守る権利」を所有者から奪ってしまう。経済格差の解消が大幅に進まない限り、この種の「不幸な売却」をなくすことは難しいのではないだろうか。 2つ目は、生産財市場の独占化だ。いま、2つの企業が同じビジネスを行っており、事業継続のためにはお互いが所有している財産――たとえば事業免許――が欠かせないとしよう。 ここで、ライバルの免許を獲得すれば自社による一社独占が実現できるため、高い金額で相手の免許を買い占めるインセンティブが生じる。 免許の所有権がCOSTを通じて円滑に移転することによって財産市場の独占問題は解消されるものの、その財産を必要とする生産財市場において独占化が進んでしまう危険性があるのだ。 3つ目は単純で思考コストが挙げられる。COSTにおいて申告額をいくらに設定すれば最適なのかは、税率だけでなく、自分の財産に対する他人の購買意欲に左右される。 需要が大きければ価格を上げ、小さければ下げるのが所有者にとっては望ましい。つまり、市場の動向をつぶさに観察して、戦略的・合理的な計算をする必要があるのだ。こうした調査や分析は、市井の人々に大きな負担を強いるかもしれない』、「非効率性の正の側面として、3つの可能性」、「安田 洋祐氏」の指摘はその通りなのかも知れない。 
・『「スタグネクオリティ」を解決する卓越したアイデア  最後に、COSTや本書全体に対する監訳者の評価を述べておきたい。現在の資本主義が抱える問題として特に深刻なのは、経済成長の鈍化と格差の拡大が同時並行で起きていることだろう。著者たちが「スタグネクオリティ」と呼ぶ問題である。 こうした中で、一部の富裕層に過剰なまでに富が集中する経済格差の問題を見過ごせない、と考える経済学者も増えてきた。 ただし、著者たちのように、私有財産という資本主義のルールそのものに疑いの目を向ける主流派経済学者はまだほとんどいない。ポピュリズムや反知性主義が世界中で台頭する中で、専門家として経済の仕組みを根本から考え抜き、しかも過激な具体案を提示した著者たちの知性と勇気を何よりも称えたい。 COSTを幅広い財産に適用していくのは、少なくとも短期的には難しいかもしれない。しかし、補完的なルールをうまく組み合わせて、前述したような問題点にうまく対処していけば、実現可能な領域は十分に見つかると期待している。 ポズナー氏とワイル氏の卓越したアイデアをさらに現実的なものとするためにも、本書が多くの読者に恵まれることを願っている。 さぁ、ラディカルにいこう!』、確かに、「経済成長の鈍化と格差の拡大」という「スタグネクオリティ」に対する革命的な処方箋のようだ。今後の議論の発展を待ちたい。

次に、作家、研究者の佐々木 一寿氏が1月8日付け東洋経済オンラインに掲載した「「現代最強の経済学者」スティグリッツの挑戦状 ピケティと挑む「資本主義100年史」の大転換」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/321057
・『稀代の「武闘派」エコノミストが怒っている。長年、格差問題に取り組んできた、ノーベル経済学賞受賞者のジョセフ・E・スティグリッツがその人だ。 このたび上梓された『スティグリッツ PROGRESSIVE CAPITALISM』をもとに、スティグリッツとはどのような経済学者なのか、同書で示唆されているある主流派大物経済学者への野心的「挑戦状」とは何かを探る』、主流派経済学者が触れたがらない「格差問題」に、どのような処方箋を示すのだろう。
・『スティグリッツが最強経済学者である理由  一流学者たちから尊敬を集めるほどの学術的な練度、行動力、そして目的の倫理性において、ジョセフ・スティグリッツは他の経済学者を圧倒するほど抜きん出た存在である。 世界中を飛び回る彼にとって象牙の塔ほど似合わないところはない、そんな印象があるが、若い頃には研究室に寝泊りしすぎたために大学側からアパートの契約書の提出を求められたという伝説的な研究の虫であり、MITが誇る当時の二枚看板、ポール・サミュエルソンとロバート・ソロー(ともにノーベル経済学賞受賞学者)に認められた、見紛うかたなき理論家でもある。 そして彼の理論は実践されるためにある。どこにでも出かけて行き、経済学者にも専門外の者にも丁寧に熱心に(時に憤慨しながら)考えを伝える。 学者以上に学者らしく、それでいて“学者風情”とはまったくかけ離れている。実際、行動だけを追うAIが分析をすれば、活動家と見紛うのではないだろうか』、「サミュエルソンとソローに認められた」、確かに「見紛うかたなき理論家でもある」ようだ。
・『彼の経済理論を、惜しみなく隈なく実践に投入する彼の目的はなんなのか。それは、ほかでもない経済学(あるいは今ならcapitalism、資本主義)の副作用を緩和し、万人の生活を向上させることにあるように思える。 また、自身の経済学者としての名声のためではなさそうということは、時にはそれを危うくするような行動もいとわないからだ。 例えば、結果的に彼の名声を不動のものにし2001年のノーベル賞授与の理由となった「非対称情報下の市場経済」は、経済学が依拠する前提を根底から問うもので、当時の主流派を心底から寒からしめる反逆的な色彩のものであったし、四半世紀前から取り組んでいる「グローバリズム施策批判」は時の政府や巨大機関の権力に文字どおりけんかを売るものであった。 また、経済政策の歪みから暴動に発展しそうになればデモの先頭に駆けつけて同情を示しつつ説得を試みるなど、リスクをいとわない行動は枚挙にいとまがない。 彼は徹底して「経済学で万人の生活を向上させる」という目的のために身体を張っているように見える。並の経済学者とは一味も二味も違う存在といえるだろう。 傑出した理論家であり、稀代の武闘派でもあり、人々の生活の向上を願ってやまないこの最強経済学者はといえば、現在もご立腹のようなのである』、功なり名をとげても「稀代の武闘派」とは珍しい存在だ。
・『一貫して「格差拡大」に警鐘を鳴らす  スティグリッツは一貫して経済格差拡大に関して神経をとがらせている。それは、国内であっても国際間であってもそうで、悪意がある欺瞞(わざとそうしている)はもちろんのこと、悪意なき欺瞞(わざとではないがメカニズム的に不可避である)であっても見過ごすことをよしとしない。 そして、後者こそが経済学者スティグリッツの慧眼が冴え渡るところであり、理論と実践に通暁する彼の仕事の真骨頂でもある。 例えば1990年代後半に起きたアジア通貨危機の遠因は、プロの経済学者でも容易には気づけないものも多分にあった。そういう場合には(とくに先進国の専門家は)、つい発展途上国の未熟さのせいにしてしまいがちではある。 しかし、スティグリッツは、先進国の専門家のアドバイス(彼らはえてして先進国政府や巨大国際機関に所属している)こそが不幸な帰結をもたらしたのだと、メカニズム分析を通じて主張する。 専門家たちもよくよく言われてみればそのとおりかもしれないとは思うものの、ただすぐにはピンとこない(悪意のない)彼らにとってはなぜスティグリッツがそこまで憤慨しているのか理解しにくいケースもあるのだろう。 スティグリッツへの批判的な意見も勘案してみると、おそらくスティグリッツはメカニズムの構造がすぐにわかるがゆえに、不幸が引き起こされる帰結が目の前にありありと浮かんでしまい、瞬間的に憤慨してしまうといったこともよくあるのではないか。見えすぎることの副作用として、誤解されることも多いのかもしれない。) ただこのような行動は、時の権力者からは疎まれやすく、煮え湯を飲まされたり冷や飯を食わされたりは日常茶飯事ではあるだろう。 だが、スティグリッツはそれであっても分析や助言をやめない。そして、彼の助けを求める国々は彼を大いに歓迎したし、また不都合な真実を明るみにしたいメディアも彼に好意を示すようになる。スティグリッツが経済学者として異例の人気を誇るのは、このような人柄によるものだろう。 そして、スティグリッツの立腹は、いまは主にアメリカに向かっているようだ。 スティグリッツの最新刊『スティグリッツ PROGRESSIVE CAPITALISM』では、これまでのようにグローバリズムの不幸や金融への危惧にももちろん言及されているが、いま彼の多くの関心はアメリカの格差問題に向かっているように感じる。それはとくに序文にはっきり現れている。 とくにトランプ大統領には物言いが辛辣だし、ウォール街へも相変わらずの苦言を呈するが、なかには同僚の主流派経済学者たちがドキリとする宣言もある。 いま、スティグリッツは経済学者として大きな挑戦をしようとしているように見える。それは、経済政策の転換を主張・説得するものとして書かれているが、それ以上のもの、つまり経済学の根幹を問い直すスケールの大きなもくろみを感じさせる』、アジア通貨危機時のIMFの処方箋に対する「スティグリッツ」の手厳しい批判はまだ覚えている。「いま彼の多くの関心はアメリカの格差問題に向かっている」、のは当然だろう。
・『経済学のここ50年の歴史を清算する意思  序文でスティグリッツは、トランプ大統領への苦言を一通りは呈するものの、その(悪意ある)欺瞞はいかにも小物的、表面的だと言わんばかりの書き方をしている。トランプ大統領はいさかいをあおって問題を表面化させたが、実は本来的な経済構造のほうに根本的な問題があるのだという。 その根本的な問題とは何か。それを示唆するために、スティグリッツは突然、ルーズベルトの時代のアメリカ経済に言及する。 「本書では、トランプやその支持者が主張する政策とは真っ向から対立する進歩的な政策を紹介する。それはいわば、セオドア・ルーズベルトとフランクリン・D・ルーズベルトの政策を21世紀風に混ぜ合わせたものだ。」(『スティグリッツ PROGRESSIVE CAPITALISM』「はじめに」より) このスティグリッツの宣言には、主流派(この50年で最大勢力となった新古典派経済学)の学者たちはきっとドキリとしたに違いない。50年前の経済学(ニューディーラー、つまり政府の財政支出による計画経済を重視する立場で『アメリカ・ケインジアン』とも呼ばれていた)に戻らなければいけないね、と“あの”最強経済学者がほのめかしているからだ。 経済学会ではここ長らく、主流派でなければ学者として名を成すことが事実上難しい状況が続いている。いまの主流派は歴史的に、不況対策で功績を上げたニューディーラー(1930〜1970年代)を学術的・政治的に葬り去って「新しい古典派」として数理的な市場均衡モデルを武器にその座に着く(1980年代以降)。 そして、主流派であるかどうかは、一般的なイメージよりもずっと経済学者にとって切実なものである。) スティグリッツ自身ももちろん、名うての新古典派の「巣窟」から頭角を現してきた理論家である。その彼自身が、いまの主流派に苦言を呈しているのだ。 格差問題をきちんと考えるように主流派経済学者たちに見直しを迫っているということであれば、主流派であっても柔軟な学者であれば、少し謙虚に見直しもしてみようと思う者もいるだろうし、スティグリッツもそれを期待しているに違いない。 実際、著名な理論家であるノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマンなど、かなり柔軟に対応する主流派学者も存在する。 そのような見直しプロセスによって主流派経済学がより汎用性を獲得し、より強靭になれるのであれば、主流派経済学にとっても耳が痛いとはいえ最終的に悪い話ではないだろう。 私は、今でもそのように楽観している。 ただ、スティグリッツは広がるばかりの格差拡大の深刻さに、かなりいら立っている様子ではある。 そして、もしかしたら主流派経済学の基本的な処方箋自体にとうとう“No”を突き付けつつあるのではないか。 本書を謝辞まで読み終えたとき、何か言いようのない違和感を覚えたのである』、「スティグリッツ」といえども、「主流派経済学」と正面から戦うまでには至らないようだ。
・『資本主義100年の歴史を問い直す  最後の謝辞の結文では、ケンブリッジ大学留学時代に触れている。 スティグリッツはMITでの研究の総仕上げとして、ジョーン・ロビンソンのいたケンブリッジ大学に留学しているが、期間は1年ほどである。 「私は1965年、フルブライト奨学生としてイギリスのケンブリッジ大学に入学し、ジェームズ・ミード、ジョーン・ロビンソン、ニコラス・カルダー、フランク・ハーン、デビッド・チャンパーノウンといった偉大な学者のもとで研鑽を積んだ。いずれも、格差の問題や資本主義制度の性質について並々ならぬ関心を抱いていた方々である。」(前掲書より) ロビンソンはケインズの直弟子で、ケインズの直弟子たちのグループは「ケインズ・サーカス」と呼ばれていた。 ロビンソンはそのなかでも武闘派で鳴らしていたが、「数式で簡単に扱えるほど経済の不確実性は甘いもんじゃない」というケインズ・サーカスの経済観は、のちにポスト・ケインジアンと呼ばれる流派に受け継がれる。 そして、ポスト・ケインジアンは傍流の経済学派として今でも主流派から距離を置かれている。 スティグリッツは、ケインズ・サーカスに言及し、資本主義制度を丸ごと疑うことで、主流派を相対化しようとしているのではないか。 並の経済学者であればともかく、スティグリッツであれば、あながちありえない話でもないだろう』、「「数式で簡単に扱えるほど経済の不確実性は甘いもんじゃない」というケインズ・サーカスの経済観」、に私は魅力を感じる。
・『「資本主義は格差を広げる」か  そのようにも思いながら、再び序文を見返してみると、また何か引っかかるところが出てくる。 「私たちはこれまで、国がある発展段階に到達すれば格差は縮小する、アメリカはその理論を実証していると教えられてきた(注9)。<中略>だが、2016年の大統領選挙が行われるころには、19世紀末の「金ぴか時代」以来なかったほどのレベルにまで格差が拡大していた。」(前掲書より) 非常に注意深い言い回しで、具体的な人物名は注で後述に逃がしているが、資本主義経済が格差を広げるか縮めるかに関して、意味深長な記述である。格差を縮めるという意見に反対をしたいようである。 その「資本主義経済が格差を縮める」という意見を確立したのは、アメリカの黎明期の経済学で多大な功績を残した当時の最強の経済学者、サイモン・クズネッツである。 クズネッツは自由主義陣営(いわゆる西側諸国)の理論的支柱であり、対東側諸国(社会主義、共産主義陣営)としての、また第三諸国を自由主義陣営に誘ううえでの最重要の経済学者だった。 そのクズネッツのテーゼが「国がある発展段階に到達すれば格差は縮小する」、つまり資本主義経済による経済発展は分厚い中産階級を作ることにつながり、皆が裕福になり格差が縮まる、というものだ。 これはいまでも(例えば開発経済学等での)コンセンサスとして資本主義経済、市場経済推進の根幹をなす考えである。 クズネッツは最初期のノーベル賞経済学賞受賞者であり、西側諸国のコンセンサスを作ってきた、つまり現在の世界の大部分を形作ってきた大物中の大物だが、スティグリッツはいま、そのクズネッツに挑戦をしようとしているのではないか。 「クズネッツは本当に正しかったのか」 つまり、彼が必ずしも正しくなかったとしたら、主流派経済学はいま一度、相対化されたほうがいいのではないか。) 本書の内容はこれまでのスティグリッツの延長にあるが、彼はこれまでよりもより踏み込んだ領域に経済学の可能性を探しに行き始めたのかもしれない』、「クズネッツのテーゼが「国がある発展段階に到達すれば格差は縮小する」、これが「コンセンサスとして資本主義経済、市場経済推進の根幹をなす考えである」、スティグリッツでなくても、どう考えても崩れつつあるとしか思えない。
・『大きな転換を訴えるマクロ経済学の潮流  実はスティグリッツのほかにももう1人、すでにクズネッツに挑戦しようとしている経済学者がいる。 トマ・ピケティだが、『21世紀の資本』で有名な彼も格差拡大を問題視する名うての理論家だ。「金ぴか時代」(ベル・エポック)はピケティがよく使う言葉でもある。スティグリッツの新著とピケティの著書を併せて読み比べてみても面白いかもしれない。 学者たちから尊敬を集める2人の天才モデラー(理論構築を得意とする学者)は、軌を一にして、経済学100年の資本主義上のコンセンサスの転換に挑んでいる。 また最近、主流派重鎮のオリビエ・ブランシャールも、クルーグマン同様、主流派としてはかなり踏み込んだマクロ経済学観(財政政策のこれまで以上の重要性の強調)を表明して話題になっている。 スティグリッツやピケティに比べれば慎重ではあるものの、主流派の大御所たちの転換表明自体が経済学の新しい時代の幕開けを感じさせる。 経済学はいま、大きな地殻変動の中にあるのかもしれない。そしてその中心にいる人物は、間違いなくスティグリッツだろうと私は思う』、スティグリッツですら「主流派」といまだに正面から対峙できないとは、主流派のレガシーはやはり強力なようだ。
タグ:資本主義 東洋経済オンライン ニューディーラー トマ・ピケティ (その3)(既得権と独占を壊せ!自由な社会の作り方 若き天才経済学者が「ラディカル」に提言、「現代最強の経済学者」スティグリッツの挑戦状 ピケティと挑む「資本主義100年史」の大転換) 安田 洋祐 「既得権と独占を壊せ!自由な社会の作り方 若き天才経済学者が「ラディカル」に提言」 3つの課題 富裕層による富の独占、膠着した民主主義、巨大企業によるデータ搾取 グレン・ワイル氏 『ラディカル・マーケット 脱・私有財産の世紀』 学部生ながら大学院生に教えた「天才経済学者」 平均で5、6年はかかる経済学の博士号(Ph.D.)を、驚くべきことにたった1年でゲットしてしまう 過激かつ根本的な市場改革の書 市場はその存在自体がただちに善というわけではなく、あくまで良質な競争をもたらすという機能を果たしてこそ評価されるべき 今までのルールを前提に市場を礼賛する(=市場原理主義)のではなく、損なわれた市場の機能を回復するために、過激で根本的なルール改革を目指さなければならない(=市場急進主義) 現代世界が直面する問題とその解決策 「ラディカル・デモクラシー」 民主主義の大原則である1人1票というルールに改革のメスが入る。具体的には、ボイスクレジットという(仮想的な)予算を各有権者に与えたうえで、それを使って票を買うことを許すという提案 私有財産は本質的に独占的であるため廃止されるべきだ、と彼らは主張 私有財産制度がもたらす問題 投資効率性においては優れているものの配分効率性を大きく損なう仕組みであると警告 独占問題 代案として著者たちが提案するのは、「共同所有自己申告税」(COST)という独創的な課税制度 財産の所有者に正しい評価額を自己申告するようなインセンティブが芽生える、というのがCOSTの肝 現代によみがえるジョージ主義やハーバーガー税 非効率性の正の側面 予算制約 生産財市場の独占化 思考コスト 「スタグネクオリティ」を解決する卓越したアイデア 経済成長の鈍化と格差の拡大が同時並行で起きている 佐々木 一寿 「「現代最強の経済学者」スティグリッツの挑戦状 ピケティと挑む「資本主義100年史」の大転換」 『スティグリッツ PROGRESSIVE CAPITALISM』 スティグリッツが最強経済学者である理由 稀代の武闘派 一貫して「格差拡大」に警鐘を鳴らす アジア通貨危機時のIMFの処方箋に対する「スティグリッツ」の手厳しい批判 いま彼の多くの関心はアメリカの格差問題に向かっている 経済学のここ50年の歴史を清算する意思 アメリカ・ケインジアン スティグリッツ自身ももちろん、名うての新古典派の「巣窟」から頭角を現してきた理論家である。その彼自身が、いまの主流派に苦言を呈している 資本主義100年の歴史を問い直す 「数式で簡単に扱えるほど経済の不確実性は甘いもんじゃない」というケインズ・サーカスの経済観は、のちにポスト・ケインジアンと呼ばれる流派に受け継がれる 「資本主義は格差を広げる」か クズネッツのテーゼが「国がある発展段階に到達すれば格差は縮小する」、つまり資本主義経済による経済発展は分厚い中産階級を作ることにつながり、皆が裕福になり格差が縮まる、というもの 大きな転換を訴えるマクロ経済学の潮流 『21世紀の資本』で有名な彼も格差拡大を問題視する名うての理論家 経済学はいま、大きな地殻変動の中にあるのかもしれない。そしてその中心にいる人物は、間違いなくスティグリッツだろう
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感