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自動車(一般)(その4)(マスコミはもういらない…トヨタ社長の「ロバの話」を考える 皆さんはどう思いますか、ホンダ GMとの提携拡大にみた自前主義の限界 収益低迷の「北米の4輪」に大幅なテコ入れ、「脱ガソリン車」を急ぐと 自動車業界が電機業界と同じ轍を踏む理由) [産業動向]

自動車(一般)については、2019年10月21日に取上げた。今日は、(その4)(マスコミはもういらない…トヨタ社長の「ロバの話」を考える 皆さんはどう思いますか、ホンダ GMとの提携拡大にみた自前主義の限界 収益低迷の「北米の4輪」に大幅なテコ入れ、「脱ガソリン車」を急ぐと 自動車業界が電機業界と同じ轍を踏む理由)である。

先ずは、昨年9月7日付け現代ビジネス「マスコミはもういらない…トヨタ社長の「ロバの話」を考える 皆さんはどう思いますか」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/75394?imp=0
・『「好き勝手に書きやがって」「監視するのが我々の役目」。古くから行われてきた、企業とメディアの丁々発止のやり取り。いまここに、日本一の企業の社長が、大きな波紋を投げかけようとしている。発売中の『週刊現代』が特集する』、何があったのだろう。
・『唐突に始まった寓話  「話は長くなりますが、ロバを連れている老夫婦の話をさせていただきたい」 6月11日に開かれたトヨタの定時株主総会の壇上、話題が2021年3月期決算の業績見通しに及ぶと、豊田章男社長(64歳)はおもむろに語りだした。 「ロバを連れながら、夫婦二人が一緒に歩いていると、こう言われます。『ロバがいるのに乗らないのか?』と。 また、ご主人がロバに乗って、奥様が歩いていると、こう言われるそうです。『威張った旦那だ』。 奥様がロバに乗って、ご主人が歩いていると、こう言われるそうです。『あの旦那さんは奥さんに頭が上がらない』。 夫婦揃ってロバに乗っていると、こう言われるそうです。『ロバがかわいそうだ』。 要は『言論の自由』という名のもとに、何をやっても批判されるということだと思います。 最近のメディアを見ておりますと『何がニュースかは自分たちが決める』という傲慢さを感じずにはいられません」 遡ること1ヵ月ほど前、トヨタが発表した見通しを元に、マスコミ各社は、「トヨタの今期営業利益、8割減の5000億円」(日本経済新聞)、「トヨタ衝撃『8割減益』危機再び」(朝日新聞)と報じていた。 豊田氏の不満は、こうした報道に対して向けられたものだった。 「マスコミの報道について、私も決算発表の当日は、いろんな方から『よく予想を出しましたね』『感動しましたよ』と言っていただきました。 ただ、次の日になると『トヨタさん大丈夫』『本当に大丈夫なの』と言われてしまい、一晩明けたときの報道の力に、正直悲しくなりました」 なぜ「こんな状況でも臆さずに決算予想を発表した」ことを評価せず、「8割減益」というネガティブな報じ方をするのか。豊田氏は、そう言いたかったのだろう。 豊田氏は、社長に就任して以来、幾度となくメディアの「掌返し」を味わってきた。 社長に就任した'09年から'10年にかけて、トヨタでは「大規模リコール」が発生し、一時は「経営危機」とまで報じられた。 ところが、'13年に世界の自動車メーカーで初の生産台数1000万台を超え、'15年3月期決算で日本企業として初の純利益2兆円超えを達成すると、今度は一転、豊田氏の経営を称賛する報道が相次ぐ。 その後も、コストをカットすれば「下請け叩き」と非難されたし、執行役員の数を減らせば「独裁体制」と言われた。 そして今度は、あらゆる企業が苦しんでいるコロナ危機のなかで、トヨタの減益だけがことさら大々的に報じられ―。 何を言おうが、何をしようが、その時々の気分で好き勝手に報じるだけのマスコミの相手はしていられない。今回の決算報道のみならず、積年の思いが込められたのが、「ロバの話」だったのだ』、「豊田章男社長」が「時株主総会」で切り出したとは、よほど腹に据えかねていたのだろう。
・『だからキレてしまった  他の企業の経営者たちは、いったいどのようにこの寓話を受け止めたのだろうか。 「すき家」「ココス」などを展開する外食チェーン大手・ゼンショーホールディングスの代表取締役会長兼社長の小川賢太郎氏は「豊田さんの気持ちは理解できる」と語る。 「民主主義国家である以上、それぞれのメディアが変な忖度をせず、自由に報道すべきなのは大前提です。しかし企業側の感覚からすると、メディアの取材を受けても、『こちらの真意がきちんと伝わった』と思えることはめったにありません。 たとえば、テレビであれば10分の取材を受けても、都合のいい10秒だけが切り取られて放送されることもある。『それは、あまりにもアンフェアだよ』という気持ちは、僕が知っている多くの経営者が持っています。 豊田さんは、日本を代表する企業のトップとして常に矢面に立ってきたから、なおのことでしょう。 企業の責務として山ほど社会貢献をしてもほとんど報じてもらえない一方、ほんの少しでもヘマをすれば、『それ見たことか』と鬼の首をとったように書きたてられる。経営する側も人間ですから、苛立たないほうがおかしいのです」 別の一部上場メーカーの広報担当役員も、大手マスコミの取材手法に対する不満を打ち明ける。 「新聞やテレビの記者さんたちと話していて思うのは、とにかく勉強不足だということ。彼らは頻繁に『担当替え』があるので、業界や企業のことをあまり勉強しないまま取材に来る。 別に、難しいことを要求するつもりはありませんが、ホームページで逐一公開しているIR情報とか、有価証券報告書に記載している基本的な経営事項すら頭に入っていない状態はさすがに困ります。 『そんなことも知らないで、ウチの経営を評価する記事を書くんですか?』と思ってしまいます」 くわえて、前出の小川氏は、メディアの報道姿勢が「結論ありき」になっていることにも疑問を感じているという。 「現場の若い記者さんと話していると、『私の考えとは違うのですが、デスクや次長が話の方向性をあらかじめ決めつけていて、異論を受け入れてくれないんです』と言われることが多々あります。 我々の商売もそうですが、本質は現場の人間が一番わかっているものです。しかし、それを重視せず、会社にいる上司が記事の方向性を決めるというのは時代遅れです」 こうした思いを、豊田氏もずっと感じ続けてきたのだろう。'19年には、豊田氏は自ら肝いりでオウンド(自社)メディア「トヨタイムズ」の運用を開始する』、「彼らは頻繁に『担当替え』があるので、業界や企業のことをあまり勉強しないまま取材に来る。 別に、難しいことを要求するつもりはありませんが、ホームページで逐一公開しているIR情報とか、有価証券報告書に記載している基本的な経営事項すら頭に入っていない状態はさすがに困ります」、同感だ。
・『マスコミを見捨てた  一時期、「編集長」を拝命した香川照之が、テレビ電話で豊田氏に取材するCMがやたらと流れていたので、このサイトの名前を知っている人も多いだろう。 ページを開いてみると、アナウンサー・小谷真生子の司会のもと、豊田氏とスズキの鈴木修会長が語らう対談動画から、先述の株主総会の一部始終を書き起こした記事まで、コンテンツがずらりと並んでいる。 デザインも機能も、大手メディアのニュースサイト顔負けの作りで、トヨタの「本気」が伝わってくる。 トヨタイムズが本格始動して以来、豊田氏は大手メディアのインタビューをほとんど受けなくなった。 決算後の会見も、現行の年4回から、年2回(中間、本決算)に減らすという。代わりに、トヨタイムズの記事や動画には頻繁に登場し、経営の理念や考えを事細かに語っている。 消費者に対し、自前でメッセージを発することのできる環境が整ったのだから、もはや大手マスコミを介する必要はないということだろう。 「ここのところ、大手各社が豊田社長にインタビューを依頼しても、すべて断られる状況が続いています。 7月7日には、めずらしく中日新聞にインタビュー記事が載りましたが、後に、まったく同じ内容が『トヨタイムズ』に掲載された。『あれでは、もはや取材ではなく広告だろう』と言われています」(在京キー局記者) こうしたトヨタの姿勢を、当の大手メディアの記者たちは複雑な思いで見つめている。 「今回の『5000億円の減益』という業績予想だって、客観的な数字を報じているだけで、どの社もトヨタを過剰に批判したり、叩いたりしたわけではありません。 東証一部上場企業であるトヨタは、株主にも、車の消費者に対しても、大きな責任を負っている。それを監視し、情報を提供するのはマスメディアの責務です。 企業の目線で選別された都合のいい情報だけを伝えるのであれば、我々の存在は必要ない」(全国紙経済部デスク)) 元日本経済新聞記者でジャーナリストの磯山友幸氏は、「ロバの話」そのものに異論を唱える。 「なぜロバに自分が乗るのか、なぜ妻を乗せるのか、あるいは、なぜ乗らないのか。あらゆる場面ごとに意図を丁寧に説明して、世の中に納得してもらうことこそが、経営者の仕事でしょう。 そもそも、消費者の側だって、オウンドメディアが企業のPRの延長上にあることくらいわかります。 ひとたび自分たちに都合の良い情報だけしか発信されていないと思われれば、常に眉に唾して読まれる媒体になってしまう。そのことをよく考えなければいけません」 インターネットやSNSの普及と共に、大手メディアの報道を「マスゴミ」「ウソばかり」とこき下ろす流れは、次第に大きくなっている。 「新聞通信調査会が行った調査によれば、『新聞の情報は信頼できますか』という質問に対し、70代以上であれば60%以上の人が『信頼できる』と評価したのに対し、30代になると50%弱、20代になると40%弱まで落ちてしまいます。 企業はそういう状況を見て、『マスコミよりも自分達が直に出す情報のほうが消費者に支持される』と踏んでいるのです。 だから、かつては決して表に出すことはなかったオールドメディアへの不満を露にすることをためらわなくなってきた」(元共同通信社記者で名古屋外国語大学教授の小野展克氏) 世間のメディアに対する不信の目は、今年の5月、東京高検の黒川弘務検事長(当時)と大手新聞2社の記者たちがコロナ禍の真っ最中に「賭け麻雀」をしていたことが発覚したのをピークに、更に広がっている。 「メディアのスタンスが問われているいま、取材対象と身内レベルで懇意になってネタをとるというかつての手法は、読者の理解を得られなくなっている。だからこそ、なおさら企業の意向を忖度するような報道はできません」(全国紙経済部記者) だが、コロナ禍においては、企業トップへの取材が、以前にも増して難しくなっているという。 「多くの企業の会見がオンライン化したため、広報担当者がチャットで事前に記者からの質問をチェックしたうえで、会見に関係のある内容しか、経営者に回答させないようになりました。質問数も各社1問と限定されることがほとんど。 これでは、予想外の質問をして経営者の反応を見たり、追加の質問を重ねて企業の本音に迫りにくい」(前出・全国紙経済部記者)』、「トヨタイムズ」のURL[は、https://toyotatimes.jp/
これによれば、タレントの「香川照之」氏は依然、「編集長」のようだ。お飾りなのだろうが、「トヨタの現在地を確認できた95分間」、「豊田章男が語ったトヨタの未来とは 極秘映像を香川編集長が見た!、などが掲載されている。
・『損をするのは誰か  こうした、報じる側と報じられる側の「相互不信」は、企業報道のみならず、官邸とメディアの間でも顕著になっている。 「一昨年、森友学園問題に関して『私たちは国民の代表として聞いているんですから、ちゃんと対応してください』と官邸に要求した東京新聞の記者に対し、官邸側が『国民の代表は国会議員。あなたたちは人事で官邸クラブに所属されているだけでしょ』と突き放したことがありました。以前の官邸なら、こんな態度に出ることはなかった。 ネットの普及と同時に、『マスコミなんて信用されていないし、取るに足りないものだ』と考える政治家や経営者は、今後どんどん増えていくでしょう」(前出・小野氏) かつて広報部門の責任者を務めた経験もあるキリンホールディングスの磯崎功典社長は「どんな状況でも、企業とマスコミは対等に、誠実にやっていかなければいけない」と語る。 「メディアから厳しく書かれて悔しい思いをすることもあります。でも、それを報じるのが彼らの仕事であり、逃げずに対応するのが我々の仕事。耳が痛い内容であっても、事実であれば素直に耳を傾けることが、状況の改善に繋がります。 一方で、メディアの側も、『見出しありき』の記事が通用する時代ではなくなったと認識する必要がある。 トヨタさんのように、企業が世の中に広く発信することも可能になった以上、結論ありきの報道では読者の支持も得られなくなる。『反目はしないけれど緊張感のある関係』を保っていくことが、一番大切でしょう」 豊田社長の「ロバの話」が図らずも浮き彫りにした問題。書く側にも、書かれる側にもいずれも理はある。しかし、相互不信のまま、不完全な情報公開が続けば、損をするのは受け取る側だ。 皆さんは、どうお考えになるだろうか』、「不完全な情報公開が続けば、損をするのは受け取る側だ」、さらにいえば、企業の株価に占める不確実性リスク・プレミアムが上昇し、企業も損をすることになる。

次に、9月10日付け東洋経済オンライン「ホンダ、GMとの提携拡大にみた自前主義の限界 収益低迷の「北米の4輪」に大幅なテコ入れ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/374627
・『ホンダがアメリカのゼネラル・モーターズ(GM)と提携拡大に踏み出した。 両社は9月3日、北米向けの車両でのエンジンやプラットホームの共通化、部品の共同購買など幅広い分野での包括提携を検討すると発表。ホンダがこれまでの部分的な提携から大幅に深化させる背景には、自前主義の限界が垣間見える。 「新たな協業を通じて、将来のモビリティ技術への投資に向け、最大市場の北米で大幅なコスト効率の向上が実現可能となる」。ホンダの倉石誠司副社長は発表声明の中で、提携拡大の意義を強調した』、「GMと提携拡大」は当然だろう。
・『車の基幹部分にも提携範囲を拡大  1990年代に始まった両社の協業は近年、次世代技術の開発を中心に進んできた。2013年に燃料電池車(FCV)の開発で提携したほか、2018年にライドシェア向けの自動運転車、今年4月には電気自動車(EV)での共同開発を決めるなどしてきた。ただ、あくまで個別の技術分野ごとの協業にとどめてきた。 今回は車の土台に相当するプラットホームやエンジンなどを含め、車の商品力を左右する基幹部分にまで範囲を広げる。先進技術の研究開発全般での協力も模索しており、従来「独立独歩」を信条としてきたホンダにとっては大きな路線転換とも言える内容だ。 提携拡大における最大の目的は、低空飛行が続く4輪事業の収益改善にある。売上高では7割近くを占める4輪事業だが、2019年度の営業利益率は2輪事業が13.9%だったのに対し、4輪はわずか1.5%。高収益の2輪が不振の4輪を支える構図が近年定着している。 その4輪の低迷は、伊東孝紳・前社長の時代に世界販売600万台を掲げて推し進めた急激な拡大戦略が招いたものだ(2019年度は479万台)。身の丈を超えた生産能力が収益を押し下げたほか、モデル数の急増によって現場が混乱して開発効率も悪化した。 こうした事態を受け、2015年に就任した八郷隆弘社長は収益重視の方針に舵を切り、国内や英国などの工場閉鎖や研究開発体制の再編などに取り組んできた。とはいえ、業績面で目に見える成果はいまだ表れておらず、ここ数年は追加の収益改善策を迫られていた。 とりわけ北米は世界販売の4割近くを占める。本来であればホンダの屋台骨であるはずだが、2000年代後半に7~8%だった北米事業の利益率は2019年度には3.7%にまで低下。北米事業へのテコ入れが、そのまま4輪事業の再建に直結することになる。 ホンダはセダンを中心とした中小型車やハイブリッド車、GMはピックアップトラックなど大型車やEVを得意としており、新車開発での補完関係を築きやすい。ホンダ側の部品の現地生産も進んでおり、調達面での連携も比較的容易だ。 4輪事業の再建とGMとの協業深化を進めるのは、自動運転や電動化などCASEと呼ばれる次世代技術の開発競争が活発になっていることが背景にある。ホンダも年間8000億円超の開発費を投じるものの、独フォルクスワーゲン(VW)やトヨタ自動車など業界トップメーカーやIT大手に比べると見劣りする。ホンダはEVなど一部分野では出遅れも指摘されており、巻き返しのためにも協業は欠かせない。 新型コロナウイルスによる事業環境の悪化も提携拡大の背中を押した。ホンダの北米での4~6月期の4輪販売台数は前年同期比で68%も減った。世界の4輪需要がコロナ前の水準まで戻るには3~4年程度要するとの見方が大勢だ。2輪に至っては、主力市場のインドや東南アジアでの感染収束が遅れ、販売回復時期の見通しさえ立たない。苦しいのはGMも同様で、両社とも投資への余力を失いつつある』、「ホンダ」と「GM」は「新車開発での補完関係を築きやすい」、シナジーを大いに生かしてもらいたい。
・『資本提携には踏み込まず  自動車業界ではVWとアメリカのフォードが自動運転などの開発で提携したほか、仏グループPSAとFCAが経営統合を決めるなど、合従連衡の動きが加速。ホンダはこれまで業界の仲間づくりの波に乗り遅れ気味だったが、GMとの提携拡大が実現すれば巨大市場の北米でも有数のアライアンスになる。 「GMと資本関係の議論はまったくしていない」とホンダ幹部が言うように、提携の範囲は拡大しても、あくまで資本の独立は維持するという従来方針に変更はなさそうだ。今回の提携は北米での事業に限られるが、ほかの地域に展開していくことも考えられる。将来的には生産拠点を相互活用する可能性もある。 4輪改革を進めてきた八郷社長には、今回の提携を通じて、目に見える形で成果を出すことが求められる』、「将来的には生産拠点を相互活用する可能性もある」、その場合には「資本提携」も必要になるだろう。

第三に、12月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した早稲田大学大学院経営管理研究科教授の長内 厚氏による「「脱ガソリン車」を急ぐと、自動車業界が電機業界と同じ轍を踏む理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/256869
・『「脱ガソリン車」の方針を明確化 温室効果ガスのゼロ目標は現実的か(菅政権は、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすると表明し、それに向けて2030年代半ばまでに、ガソリン車の国内での販売をやめる方針を打ち出した。 ハーバードビジネススクールのマイケル・ポーター教授は、1991年に環境規制に関するポーター仮説を発表し、環境規制が企業に明確な技術開発のターゲットを示すことで、各社がそのターゲットに向けて効率よく技術革新を行うため、こうした環境規制は結果的にイノベーションを促進する、と指摘した。菅政権のガソリン車廃止の方針も、世界的にEV(電気自動車)の開発競争が進む中で、日本の自動車メーカーの開発競争を刺激する起爆剤となる可能性がある。 その一方で、急速なEVシフトには気をつけなければならない点が2つある。EVの早期シフトだけが必ずしも温暖化問題を解決し、日本の競争力向上に繋がるとは限らないからだ。 1つは、日本の技術的優位性の特徴にある。日本の自動車産業は、トヨタ自動車をはじめとする世界を代表するメーカーが高い国際競争力を有していて、その源泉は自動車開発の技術にある。しかしそれは、エンジンやサスペンションといった個々の要素技術が強いからではなく、個々の部品の関係性を上手く調整するノウハウにある。少し難しい話になるが、経営学ではこれを「アーキテクチャ知識」と呼んでいる。 たとえば同じPCでも、デスクトップPCとノートPCを比較すると、デスクトップPCは、部品さえ手に入れれば素人でも組み立てることができる。実際、PC専門店などでCPUやマザーボードなどの部品を購入し、自作PCを組み立てた経験がある人も多いだろう。 しかし、同じ部品から構成されるノートPCを自作する人はまずいないだろう。デスクトップPCは個々の部品と部品のつなぎ合わせが汎用的な規格で標準化され、基本的にはソケットに部品を入れたり、ケーブルをつないだりするだけでPCが完成する。なぜなら、部品同士をつなぐインターフェースが事前に規格化され、標準化されているので、標準的な部品と標準的なケーブルを接続するだけで、製品が完成してしまうからだ。 こうした製品の構成を、モジュール型のアーキテクチャと呼ぶ。モジュールとは、調整なしに組み合わせることができる部品のことを指している。PCとマウスはUSB端子で接続するが、これもUSBという事前に標準化されたインターフェースを使って、PCとマウスをつないでいるので、マウスは独立して開発することができ、どこのメーカーのPCにでも接続することができる。このとき、PCに対してマウスはモジュールであり、マウスをPCに接続するときに専用のカスタマイズなどをする必要はない。 一方、ノートPCは狭い筐体の中に効率よく部品を詰め込み、CPUが発生する熱などを上手く放熱してやる必要があるので、部品と部品の配置や関係性を上手くコントロールしないと、PCとして組み上げることができない。この場合、部品と部品との間のインターフェースは個別にカスタマイズされ、標準的な部品やケーブルなどを組み合わせるだけでは完成させることができない』、なるほど。
・『日系自動車メーカーの強みの源泉 インテグラル型のアーキテクチャ  こうした製品の構成をインテグラル型のアーキテクチャと呼ぶ。インテグラルとは統合の意味で、東京大学の藤本隆宏教授は「すり合わせ」という日本語で表現するが、すり合わせのイメージの通り、部品と部品を一つひとつ調整しながら、カスタマイズしてつなげていくことで製品がつくられる構成が、インテグラル型のアーキテクチャである。 この際、より機能や性能を向上させたり、サイズを小さくしたりするために、部品間の調整を行う知識やノウハウのことをアーキテクチャ知識と呼び、日本の自動車メーカーは自動車をつくるためのアーキテクチャ知識に優れていることが、競争優位の源泉となっている。 たとえば燃費を向上させる、乗り心地をよくするといった性能や機能は、エンジンだけではなくブレーキやシャシー、タイヤなどさまざまな自動車部品を複雑に調整することによって実現される。CPUを取り替えれば処理速度が速くなる、メモリを取り替えれば記憶容量が増えるといった、PCのようなモジュラー型の製品とは異なり、自動車のような一つの機能の実現が複雑な部品間の調整によって成り立っているインテグラル型製品の場合、技術や部品だけを持ってきても新規参入企業が先発メーカーの自動車と同等のクオリティの製品を真似することは、簡単にはできない。 なぜならば、日本車の優位性は個別の要素技術だけでなく、部品と部品を複雑に調整するアーキテクチャ知識によって成り立っているからだ。 アメリカのテスラや中国のEVメーカーが躍起になってEVを開発しているのは、単にガソリンエンジンなどの内燃機関を電気モーターに置き換えようとしているだけではなく、従来のインテグラル型の内燃機関の自動車製品開発を、モジュール型の製品に変えようとしているためだ。 まずEVにすることで部品点数を減らし、アーキテクチャの複雑性を下げるとともに、電気モーターをコンピュータ制御することで、これまで機械的に行われてきた巧みな調整プロセスをなくそうという試みである。EVがモジュール型の製品として確立すれば、日本の自動車産業が持つアーキテクチャ知識を無意味なものにすることができる』、私は「すり合わせ」型はよく見聞きするが、恰好良く言えば、「インテグラル型のアーキテクチャ」となるようだ。
・『ハイブリッド車は技術優位性の延命策だった  トヨタ自動車やホンダといった日本メーカーが、これまでハイブリッド車に力を入れてきた理由の1つは、電気モーターに内燃機関をセットにすることによって、複雑でインテグラルなアーキテクチャを自動車の製品開発に残すという、技術優位性の延命策でもあった。 意外に思われるかもしれないが、そもそもEVとは決して新しい技術ではない。実は、100年以上前のアメリカでは多くのEVが生産されていた。19世紀末から20世紀初頭の自動車の黎明期には、さまざまな自動車の動力源が提案され、ガソリン車の他に蒸気自動車や電気自動車など、さまざまなアイデアの自動車が製品化された。 愛知県長久手市にあるトヨタ博物館には、1902年にアメリカで発売されたベイカー・エレクトリックというEVが展示されている。「1馬力のモーターで時速40キロメートルの走行が可能。走れる距離は80キロメートルだった」という。 しかし、当時の電池やモーターの技術では十分な自動車の性能を引き出すことができず、内燃機関に一日の長があったので、今日までガソリン車やディーゼル車といった内燃機関の自動車が自動車界の主流を占めてきたのである。 その意味で言えば、どの自動車メーカーにとっても、EVは決して見たこともない新しい技術ではなく、かつて一度捨てたアイデアの1つに過ぎない。高容量のリチウムイオン電池や高性能な電気モーターの技術が登場するに至って、初めて内燃機関に並ぶ性能の自動車がつくられるようになった、というだけの話である。 日本の自動車産業にとって怖いのは、急速なEVの普及が自動車の製品アーキテクチャを急速に変化させ、モジュール型の製品にしてしまうことである。デスクトップPCやデジタル家電などはモジュール型アーキテクチャの製品の代表例であるが、どれも標準的な部品の組み合せによって誰でもつくることができる製品になったので、新規参入企業が増え、価格競争が激化し、あっという間にコモディティ化に陥ったのである』、「ハイブリッド車は技術優位性の延命策」、言われてみれば、その通りだ。「電機業界」の「コモディティ化」は、確かに業界構造を一変させた。
・『急速なモジュール化によって強みを奪われてしまった電機業界  日本のエレクトロニクスメーカーが2000年代以降、業績が振るわなくなったのは、急速なエレクトロニクス製品のモジュール化によって、日本が得意とするインテグラル型のアーキテクチャ知識が無意味になったことも一因だ。 エレクトロニクス産業の失敗の轍を踏まないためには、内燃機関からEVへのシフトはある程度慎重に行う必要がある。少なくとも、日本の主要自動車メーカーがEV化しても競争優位を維持できるような体制づくりができるようになるまで、ガソリン車という既存製品のビジネスが「キャッシュカウ」となって利益を出し続ける必要がある。ハイブリッド車という既存のアーキテクチャ知識を必要としながら、電気モーターという新たな潮流を組み合わせたまさに「ハイブリッド」なアイデアは、内燃機関からEVへのソフトランディングを行うための上手い戦略といえる。 また、現在のEVの性能は、かつてに比べれば飛躍的に向上したものの、まだ世界中の自動車をEVに置き換えるほどの性能にまで達しているとは言い切れない。一番の問題は、寒冷地対策だろう。気温が下がるとバッテリーの性能は低下するので、満充電からの連続走行距離は低下する。 さらに、暖房の問題もある。現在のガソリン車の暖房は、エンジンが発する余熱を利用しているので、暖房は燃費に影響しない。冷房の場合は、エアコンコンプレッサーを作動させるためにエンジンの力を必要とするし、送風のために電力も使うので、燃費に影響する。一方のEVは、そもそも熱を発するエンジンがないので、暖房をつけるためにもわざわざ電気を消費する必要があり、さらに走行距離は短くなる。 中国ではEVが急速に普及しているイメージがあるが、南部の沿岸部の比較的温暖な地域でこそ、タクシーはほとんどEVに置き換わっているものの、東北部などではまだまだガソリン車が主力だ。各社がEVにシフトする中で、内燃機関の自動車を必要とする地域が残るとすれば、ガソリン車をつくり続けるメーカーが残存者利益を獲得できるかもしれない。 さらに、Well-to-Wheel(油井から自動車まで)の考え方でいえば、日本でEVを走らせても「ゼロエミッション」にはならない。日本では東日本大震災以降、全ての原子力発電所を止めており、順次再稼働の方向性ではあるが、現在の電力の大半は石油などを燃やしてつくっている(参考URL)。電気は電池に充電する以外は燃料のように貯めておくことができないので、発電しても使われなかった電力や、電線の抵抗による電力のロスなども含めて考えると、発電所で重油を燃やすより、走るときに必要なだけガソリンを消費する方が効率は良い、という考え方もある』、「内燃機関からEVへのシフトはある程度慎重に行う必要がある」、理屈の上ではその通りだが、現実の競争社会では「中国」や「欧米」のライバルに遅れをとるわけにはいかない。「発電所で重油を燃やすより、走るときに必要なだけガソリンを消費する方が効率は良い、という考え方もある」、もっと実証的な論文などで裏付けてほしいものだ。
・『国内のガソリン消費を減らすだけで済む話なのか  もう1つの問題は、ガソリンだけが石油製品ではないという問題だ。ガソリンは原油を精製することによって取り出される石油製品の1つだが、同時に原油からは産業用に使われる重油、ディーゼル車に使われる軽油、家庭の暖房などに使われる灯油、家庭の調理器具やお風呂に使われるLPガス、プラスチックなどの化学製品の原料となるナフサなどが精製されている。 (石油製品の得率のグラフはリンク先参照) ガソリンの消費だけを減らしても、他の石油由来の製品の使用もバランス良く減らしていかなければ、日本国内のガソリン消費量を削減できたとしても、地球全体ではガソリン消費量が変わらないかもしれない。日本では、1970年代頃の公害問題が契機となってディーゼル車規制が強化され、極端にディーゼル車の販売台数が少ない。そのため、日本で原油から精製される軽油は国内消費よりも多くなり、韓国などに輸出されている。 ガソリンでも、同じことが起こるかもしれない。重油やナフサ、LPガスなどを必要とする産業がある限り、原油を輸入し精製するというビジネスは残り続け、これらを精製する過程でガソリンも生産されてしまう。余剰のガソリンを外国に輸出するようになれば、日本国内でガソリン車がなくなったとしても、世界のどこかでガソリンが消費されることには変わらないことになる。 温室効果ガス排出ゼロを実現するためにガソリン車を削減するということであれば、ガソリンが輸出され他国で消費されるのでは意味がなく、原油の消費全体を下げていくことを同時並行で行っていかなければならない。そのためには、重油を使う工場や、ナフサを使う化学メーカーなどが消費している石油由来製品の削減と歩調を合わせて、バランスを取る必要がある。その意味でも、ガソリン車だけを急速に削減することには課題が残る。 長期的な視点で見れば、自動車の大半はEVへシフトしていくだろう。またEVは、温室効果ガス排出量の削減に大きな貢献をすることが期待できる。しかし、自動車単体だけを捉えたガソリン消費削減ではなく、石油製品を使用する産業全体のエコシステムを見直すことが必要となり、また日本の自動車産業の競争優位の源泉を転換させるための時間稼ぎも必要となる。 冒頭に述べたように、政府がEVシフトの具体的な目標を掲げたことは産業界のイノベーション促進にプラスではあるが、目標数値だけが一人歩きしないようにする必要がある。全体のバランスを取りながら、何が地球環境と日本の自動車産業の競争優位にとってプラスなのかを、考えていく必要があるだろう。 また、本気でゼロエミッションを実現するためには、EVを走らせるだけでは意味がなく、動力源の電力の生産も含めてEVのサプライチェーン全体をゼロエミッション化することも必要だ。 サプライチェーン全体のゼロエミッション化では、スウェーデンに本社があるノースボルトという会社の取り組みが面白い。スウェーデンには、リチウムイオン電池の原料となるリチウムなどのレアメタル鉱山があり、ノースボルト社はリチウムの採掘から、EV用リチウムイオン電池の生産までを手がけているのだが、リチウムを細工するために必要なドリルなどの工具も、風力発電などのゼロエミッションエネルギーによって充電された機器だけを利用しているという。同様に、リチウムイオン電池の工場の建設や、生産設備の稼働も、ゼロエミッションエネルギーだけを利用して生産している。 同社の電池工場には、ドイツ政府やドイツの自動車メーカーも注目していて、メーカーとの提携や政府による融資保証などに基づいて、ドイツ国内にノースボルト社のリチウムイオン電池生産のためのギガファクトリー建設が進んでいる』、「全体のバランスを取りながら、何が地球環境と日本の自動車産業の競争優位にとってプラスなのかを、考えていく必要があるだろう」、正論だが、具体的姿を出さずに、筋論だけ主張するのは、問題だ。
・『自動車業界だけでなく各産業の協力が必要に  日本でも、単にEVを走らせるだけでは温室効果ガス排出ゼロは実現しないため、サプライチェーン全体のゼロエミッション化のために、多くの産業の協力が必要であろう。 太陽光発電も期待されるエネルギー源だが、発電量は天候に左右されるという問題があり、さらに森林を切り開いて無秩序に太陽光パネルを設置するような発電設備をつくることにより、景観破壊の問題も指摘されている。地域の景観問題とも両立し得る、高効率で小型化が可能、なしいはデザイン的に自然と調和するような太陽光パネルの新しい技術開発、製品開発も必要だろう。 ガソリン車ゼロの目標を柔軟に活用しながらも、将来的な温室効果ガス排出ゼロを目指して、自動車産業だけではなく各産業の協力が必要だろう。また、そこには新たなビジネスチャンスがあるだろう』、筋論としては異論はないが、そこまで話を広範囲に広げて、どうするつもりなのだろうか。「各産業の協力」、というのも、道義的なものではなく、価格メカニズムを通じたものでなければ、機能しないだろう。
タグ:自動車 東洋経済オンライン 現代ビジネス 長内 厚 イヤモンド・オンライン (一般)(その4)(マスコミはもういらない…トヨタ社長の「ロバの話」を考える 皆さんはどう思いますか、ホンダ GMとの提携拡大にみた自前主義の限界 収益低迷の「北米の4輪」に大幅なテコ入れ、「脱ガソリン車」を急ぐと 自動車業界が電機業界と同じ轍を踏む理由) 「マスコミはもういらない…トヨタ社長の「ロバの話」を考える 皆さんはどう思いますか」 唐突に始まった寓話 トヨタの定時株主総会 ロバを連れている老夫婦の話 「豊田章男社長」が「時株主総会」で切り出したとは、よほど腹に据えかねていたのだろう だからキレてしまった 彼らは頻繁に『担当替え』があるので、業界や企業のことをあまり勉強しないまま取材に来る。 別に、難しいことを要求するつもりはありませんが、ホームページで逐一公開しているIR情報とか、有価証券報告書に記載している基本的な経営事項すら頭に入っていない状態はさすがに困ります」、同感だ マスコミを見捨てた トヨタイムズ 「香川照之」氏は依然、「編集長」 損をするのは誰か 不完全な情報公開が続けば、損をするのは受け取る側だ」、さらにいえば、企業の株価に占める不確実性リスク・プレミアムが上昇し、企業も損をすることになる 「ホンダ、GMとの提携拡大にみた自前主義の限界 収益低迷の「北米の4輪」に大幅なテコ入れ」 ホンダがアメリカのゼネラル・モーターズ(GM)と提携拡大 車の基幹部分にも提携範囲を拡大 「ホンダ」と「GM」は「新車開発での補完関係を築きやすい」、シナジーを大いに生かしてもらいたい 資本提携には踏み込まず 「将来的には生産拠点を相互活用する可能性もある」、その場合には「資本提携」も必要になるだろう 「「脱ガソリン車」を急ぐと、自動車業界が電機業界と同じ轍を踏む理由」 日系自動車メーカーの強みの源泉 インテグラル型のアーキテクチャ 私は「すり合わせ」型はよく見聞きするが、恰好良く言えば、「インテグラル型のアーキテクチャ」となるようだ ハイブリッド車は技術優位性の延命策だった 「ハイブリッド車は技術優位性の延命策」、言われてみれば、その通りだ。「電機業界」の「コモディティ化」は、確かに業界構造を一変させた 急速なモジュール化によって強みを奪われてしまった電機業界 内燃機関からEVへのシフトはある程度慎重に行う必要がある」、理屈の上ではその通りだが、現実の競争社会では「中国」や「欧米」のライバルに遅れをとるわけにはいかない 「発電所で重油を燃やすより、走るときに必要なだけガソリンを消費する方が効率は良い、という考え方もある」、もっと実証的な論文などで裏付けてほしいものだ。 国内のガソリン消費を減らすだけで済む話なのか 「全体のバランスを取りながら、何が地球環境と日本の自動車産業の競争優位にとってプラスなのかを、考えていく必要があるだろう」、正論だが、具体的姿を出さずに、筋論だけ主張するのは、問題だ 自動車業界だけでなく各産業の協力が必要に 筋論としては異論はないが、そこまで話を広範囲に広げて、どうするつもりなのだろうか。「各産業の協力」、というのも、道義的なものではなく、価格メカニズムを通じたものでなければ、機能しないだろう
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