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日本の構造問題(その23)(「日本で賃金が上がらない」本当の理由 GAFAがなくても給料は上がる?、「自動車一本足打法」で日本沈没 分水嶺を迎えた日本経済の行方) [経済政治動向]

日本の構造問題については、11月13日に取上げた。今日は、(その23)(「日本で賃金が上がらない」本当の理由 GAFAがなくても給料は上がる?、「自動車一本足打法」で日本沈没 分水嶺を迎えた日本経済の行方)である。

先ずは、11月22日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した内閣府出身で名古屋商科大学ビジネススクール教授の原田 泰氏による「「日本で賃金が上がらない」本当の理由、GAFAがなくても給料は上がる?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/287848
・『岸田文雄新政権が、成長だけでなく分配が大事という「新しい資本主義」を打ち出して、分配が話題になるかと思ったら、どうやら成長が話題になっているようだ。1990年以降、他の国の賃金が上がっているのに日本の賃金だけがほとんど上がっていない。事実を確認した上で、なぜ日本の賃金が上がっていないのか、どうすれば上がるのかを考えてみたい』、興味深そうだ。
・『「日本の実質賃金が上がっていない」という事実  図1のグラフは、OECDのデータから描かれた、主要国の実質賃金の推移である。 (図1・主要国の実質賃金(2020年ドル購買力平価)の推移 はリンク先参照) 図1を見ると、確かに日本の賃金は上がっていない。1990年に比べて、2020年にはアメリカの実質賃金は48%、イギリスは44%、フランスは31%も上がっているのに、日本の賃金は4%しか上がっていない。ただし、イタリアは上がるどころか3%低下している。韓国の賃金は92%も上昇して、今や日本を追い越している。韓国はすでに日本に勝っているのである』、「韓国の賃金は92%も上昇して、今や日本を追い越している」、「韓国」より低いとは落ちるところまで落ちたものだ。
・『実質賃金のグラフは、アメリカの所得格差のグラフと似ている?  この図1から、次の図2を思い出した。図2は、アメリカで所得の高い人の所得は上がっているが、所得の低い人の所得は上がっていないことを示している。どちらも、あるグループの所得は上がっているのに他のグループの所得は上がっていないということを示すので形が似ている。 (図2・アメリカの所得シェアの推移 はリンク先参照) ただし、世間に出回った図2は、所得の水準ではなく、全ての人々の所得に占める所得の高い人と低い人の所得のシェアの推移である。シェアであるから、所得の低い人の所得水準が上がっていてもシェアは下がってしまうことがある。シェアでなくて所得の絶対値で見れば、これほどひどいことにはなっていないが、所得の高い人の所得は上がっているが、所得の低い人の所得は上がっていないというのは同じである。 図1と図2から何が言えるだろうか。 図2のようになる理由は、現在のグローバル化した世界では、世界で通用する高度な技能を身に着けた人々の所得はいくらでも上がり、そうでない人の所得は全世界の所得の低い人々との競争圧力によって上がらないからだとされている。アメリカの仕事は、GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル。あるいはマイクロソフトやネットフリックスを加えてGAFAM、FAANGとも。社名変更もあるのでビッグ・テックと呼んだほうが良いかもしれない)に代表される高度な技能を必要とする仕事と、「ラストベルト」の産業の仕事に分かれてしまい、二極化しているというのだ。 これを日本とアメリカに当てはめてみると、アメリカはGAFAの世界で、日本はラストベルトの世界ということになるのだろうか。もちろん、日本の製造業はラストベルトではないが、アメリカのGAFAには到底追いつけない。 すると、日本の賃金を上げるためには、日本もGAFAを生むしかないということになるのだろうか。しかし、どうやったら良いのか。補助金を付けて日本版GAFAを生むのだろうか。その補助金はどこからか持って来ないといけない。MMT(現代貨幣理論)で政府がいくら借金をしても大丈夫だと考えて、そこから持ってくるのだろうか。MMTでなければ、日本の既存産業に課税するしかない。しかし、そんなことをすれば、日本である程度成功している企業の足を引っ張ることになる。 図1をもう一度見てみよう。ドイツもイギリスもフランスも、GAFAに匹敵するような企業はないが、それでも賃金は上がっている』、「ドイツもイギリスもフランス」、と「日本」との対比が欲しいところだ。
・『日本の賃金上昇のカギは、「GAFA欠如論」ではなく 「PCR検査目詰まり論」  私は、日本の賃金が上がらない理由として、おそらく多くの人が信じている「GAFA欠如論」ではなくて、「PCR検査目詰まり論」を提唱したい。日本の感染症学者はPCR検査の拡大に一貫して反対していた。安倍首相(当時)がPCR検査を拡大しろと指示しても増加せず、首相自らこの状況をPCR検査の「目詰まり」と説明した(『増えないPCR検査 安倍首相が旗振れど、現場は改善せず』東京新聞2020/7/29)。 なぜPCR検査が増えないのか私は分からなかったが、PCR検査を手作業でする姿と自動検査機でする姿の映像を見て理解できた(『日本生まれ「全自動PCR」装置、世界で大活躍 なぜ日本で使われず?』TBS NEWS23 2020/6/29)。 複雑な検査を手作業ですれば急に検査数を増やすことはできない。人を訓練して間違いのないようにしなければ、無用の混乱が起きるため、急には検査数を増やせないのだ。しかし、機械で行えば熟練者は必要なく、いくらでも検査できる。自動検査機の生産性は人手でする場合の100倍を上回るだろう。しかし、感染症学者も厚生労働省も、なぜか機械の導入に熱心でなく、機械が手作業と同等の精度を持つかをチェックすることに時間をかけ、導入を遅らせた。そもそも、この自動検査機は日本製で、全世界で使われている。世界中で性能をチェックしているのだから、厚生労働省がチェックしなくても大丈夫に決まっているように思えるのだが。 ここから、日本の生産性が低い理由が理解できる。ありとあらゆるところで、このような自動化機械あるいはコンピュータによる手作業の合理化に反対する人々がいるのではないだろうか。これでは、日本の生産性は上がらない。 韓国は、コロナ感染の広がりとともにすぐさま自動機械で大量の検査を行った。熟練の技などに拘泥しない。検査の生産性は日本の100倍以上あるのではないだろうか。韓国では、ありとあらゆるところでこのような生産性の向上が実現している。だから、全体として生産性が上がり、賃金は上昇し、日本を追い抜いた。もちろん、他の国も同様である。きっと、自動化機械に反対する人はおらず、反対する人は退場させてしまうのだろう。日本では、さまざまな分野での生産性向上に反対する人々が、生産性向上の目詰まりを起こさせてしまうのではないかと考えている。 「GAFAがないから日本はダメだ」と言っても仕方がない。イタリアを除けば、GAFAのない国でも給料は上がっている。イタリアにも、日本と同じように、あらゆる場所に生産性の向上を邪魔する組織があるのかもしれない。賃金を上げるためには、生産性の向上を邪魔する人々にはご遠慮いただくより仕方がない。これは、GAFAを生むよりも簡単なはずである。 生産性の向上を邪魔する人々がいなくなれば、日本版GAFAが自然と生まれてくるかもしれない』、「日本では、さまざまな分野での生産性向上に反対する人々が、生産性向上の目詰まりを起こさせてしまうのではないかと考えている」、1つの仮設ではあるが、「ドイツもイギリスもフランス」などより生産性向上が低い理由は何なのだろう。「生産性の向上を邪魔する人々」は、日本より欧州の方が多いような気もするので、仮設はやはり成立せず、別の要因で説明する必要がありそうだ。

次に、11月30日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した法政大学大学院教授の真壁昭夫氏による「「自動車一本足打法」で日本沈没、分水嶺を迎えた日本経済の行方」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/288962
・『11月から国内の自動車生産台数が回復し始めた。にもかかわらず、日本株の上値は重い。対照的に、米国の株価は最高値を更新し続けている。カネ余りの影響に加えて、GAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)等のIT先端企業が経済運営の効率性を上げている。わが国経済は、「自動車一本足打法」を続けるか否かの分水嶺を迎えた。このまま自動車依存が続けば、わが国の地盤沈下は避けられず、国民の生活水準をも引き下げなければならない恐れが出てくる。それほど脱炭素やデジタル化への遅れは深刻だ』、興味深そうだ。
・『HVは向かうべき「旗印」だった EVではすり合わせ技術の重要性が低下  「自動車一本足打法」と揶揄されるほどに、わが国経済はハイブリッド車(HV)を中心とする自動車産業への依存度が高い。その一方で、脱炭素を背景に、世界的な電気自動車(EV)シフトが鮮明である。その変化に、わが国経済全体の対応が遅れ、今後の成長が懸念されている。 一つの例として、工作機械関連銘柄の株価が不安定だ。過去、自動車の生産が増える局面で、工作機械メーカーの業績への期待が高まる傾向にあった。端的に、工作機械メーカーにとってHVは向かうべき「旗印」だった。精緻な「すり合わせ技術」に磨きをかける自動車メーカーの要望に応え、工作機械メーカーはより微細な製造技術を実現した。同じことがわが国産業全体に当てはまる。 しかし、EV生産ではすり合わせ技術の重要性が低下する。わが国経済の大黒柱である自動車産業の競争力が、そがれる恐れが高まっている。 そのリスクに対応して中長期の視点で経済の実力を高めるために、政府は再生可能エネルギーの利用を増やし、脱炭素やITなどの先端分野における企業の研究開発をより積極的に支援すべきだ。新しい産業を育成して自動車依存が高い産業構造を転換するためには、そうした国の支援は欠かせない』、その通りだ。
・『工作機械メーカーがスマホ製造や制御機器で成長できたのはなぜか   1990年1月に株価、翌91年7月ごろに地価が下落に転じて「資産バブル」が崩壊して以降、わが国の経済は実質的に自動車産業の成長に依存してきた。特に、97年に量産型のHVが発表されたインパクトは大きかった。 端的に言えば、自動車メーカーが世界の需要を取り込んで業況が上向けば、国内の経済はそれなりに落ち着く。それが難しい場合は減速、あるいは失速が鮮明となる景気循環が今日まで続いている。その間、わが国企業はHVに続く新しい、世界的な高付加価値商品を創出することができなかった。 HVはわが国の製造業など産業界にとって、向かうべき旗印としての存在感を強めた。その状況は今なお鮮明だ。自動車メーカーは内燃機関の製造などに不可欠なすり合わせ技術を磨き、環境性能や耐久性を高めてきた。 1次、2次と重層的に連なるサプライヤーは、産業界の盟主である自動車メーカーの要望に応じて工作機械、鋼材、車載半導体、車内装備に使われる化成品などの生産技術を強化した。自動車がわが国製造技術のかなりの部分を育て、鍛えたと言っても過言ではない。 例えば、工作機械メーカーは、自動車メーカーの要望に応えて他国の競合企業が実現困難な動作制御や切削の技術を生み出してきた。重要なのは、それが自動車以外の需要獲得に重要な役割を果たしたことだ。 リーマンショック後、わが国の工作機械メーカーはスマートフォンの製造や、中国のファクトリー・オートメーションに必要な制御機器などの需要を取り込み、成長した。コロナショック後のわが国経済の展開を振り返っても、海外からの工作機械需要は、景気の持ち直しを支えた。 このようにして自動車産業がわが国経済に与える影響は大きくなっている。国内の雇用の8%程度が自動関連産業に従事している。まさに、自動車は日本経済の大黒柱だ』、「自動車産業」は確かに裾野が広く「日本経済の大黒柱だ」。
・『日本株と対照的に米国の株価は最高値を更新  しかし現在、自動車に大きく依存した経済運営は難しくなり始めている。特に、EVシフトは決定的だ。 11月から国内の自動車の生産台数は回復し始めた。にもかかわらず、日本株の上値は重い。世界的な脱炭素を背景に、欧州などでは内燃機関を搭載した自動車の販売が禁止される予定だ。それはわが国自動車産業の競争力をそぐ恐れが高い。わが国経済への逆風が強まる一方、自動車に代わる経済成長のけん引役は見当たらず、日本経済全体で成長期待が低下している。 日本株と対照的に、米国の株価は最高値を更新し続けている。カネ余りの影響に加えて、先端分野を中心に企業の成長期待が高い。米国ではGAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)等のIT先端企業が経済運営の効率性向上を支えた。脱炭素の加速などを背景に、テスラの成長期待は非常に強い。 それを追いかけるようにして、ゼネラルモーターズとフォードは韓国企業と合弁を組んでバッテリー生産を強化し、EV生産を増やそうとしている。自己変革を進めて新陳代謝を高める米国企業に比べ、バブル崩壊後、在来分野での雇用維持を重視したわが国の経済運営のツケは深刻だ。 わが国の自動車メーカーが需要を獲得してきたアジア新興国も、競争環境が急速に変化している。まず、中国では不動産市況の悪化などを背景に景気減速が鮮明だ。消費者は先行きの不安心理を強め、自動車の購入を手控え始めた。 さらに、わが国自動車メーカーの牙城といわれていた東南アジア地域では、インドネシアやタイ政府がEVや車載バッテリー生産のための「直接投資」を韓国や中国、ドイツ企業などに求めている。 このように世界経済全体で見るとEVシフトによる自動車の電動化が鮮明だ。南米やアフリカなどでEVが普及するかは見通しづらいが、現時点でEVシフトは加速している。それに対して、本邦自動車メーカーのHV重視姿勢は強く、EVシフトに後れを取った。自動車依存の日本経済の先行き懸念は高まっている』、「本邦自動車メーカーのHV重視姿勢は強く、EVシフトに後れを取った」、その通りだ。
・『国民の生活水準をも引き下げなければならない恐れ  わが国経済は、自動車一本足打法を続けるか否かの分水嶺を迎えた。 わが国経済の自動車依存が続けば、中長期的にわが国経済の地盤沈下は避けられないだろう。自動車産業の稼ぐ力が低下すれば、わが国経済全体で生活水準をも引き下げなければならない恐れが出てくる。それほど脱炭素やデジタル化への遅れは深刻だ。今後、成長期待の高い海外市場への進出を、これまで以上に重視する日本企業は増えるだろう。 そうした展開を防ぐ手だてはある。自動車が支えた経済の総力を挙げて、新しい産業を育成できれば、わが国経済の縮小均衡に歯止めをかけることはできる。そのためには、政府が経済の安全保障の根幹であるエネルギー政策を大転換しなければならない。とにもかくにも、再生可能エネルギーの利用増加を急ぐことだ。 それと同時に、労働市場などの規制改革を進め、企業が必要な人材を柔軟に登用できる環境を整え、職業訓練やリカレント教育を徹底するべきだ。 例えば2000年代初めのドイツは、社会保障改革と職業の訓練と紹介の強化によって経済の停滞を脱却し、自動車や機械、さらには再生可能エネルギーの利用によって経済成長を実現した。 わが国もそうした前例に学び、人々のアニマルスピリットのさらなる発揮を目指すべきだ。それができれば、新しい産業が育ち、わが国が自力で需要を創出することはできる。反対に、そうした改革を進めることが難しい状況が続くと、わが国経済は世界経済の変化から取り残される。 1990年代以降、30年以上もわが国経済全体で新しい発想の実現を目指すことは難しかった。新産業育成の重要性は繰り返し議論されたが、本格的な取り組みは進まなかった。 それだけに、日本経済の先行きには慎重、あるいは悲観的にならざるを得ない。岸田政権は強い危機感を持って迅速にエネルギー政策の転換や規制改革に取り組み、新しい産業を盛り上げていくべきだ』、私は「エネルギー政策の転換や規制改革」を推進することで、結果的に「新しい産業」が育ってくるのであって、直接的に「新産業育成」をしようとするのは誤りだと思う。「本格的な取り組みは進まなかった」、のは当然である。
タグ:日本の構造問題 (その23)(「日本で賃金が上がらない」本当の理由 GAFAがなくても給料は上がる?、「自動車一本足打法」で日本沈没 分水嶺を迎えた日本経済の行方) ダイヤモンド・オンライン 原田 泰 「「日本で賃金が上がらない」本当の理由、GAFAがなくても給料は上がる?」 「新しい資本主義」 「韓国の賃金は92%も上昇して、今や日本を追い越している」、「韓国」より低いとは落ちるところまで落ちたものだ。 「ドイツもイギリスもフランス」、と「日本」との対比が欲しいところだ。 「日本では、さまざまな分野での生産性向上に反対する人々が、生産性向上の目詰まりを起こさせてしまうのではないかと考えている」、1つの仮設ではあるが、「ドイツもイギリスもフランス」などより生産性向上が低い理由は何なのだろう。「生産性の向上を邪魔する人々」は、日本より欧州の方が多いような気もするので、仮設はやはり成立せず、別の要因で説明する必要がありそうだ。 真壁昭夫 「「自動車一本足打法」で日本沈没、分水嶺を迎えた日本経済の行方」 「自動車産業」は確かに裾野が広く「日本経済の大黒柱だ」。 「本邦自動車メーカーのHV重視姿勢は強く、EVシフトに後れを取った」、その通りだ。 私は「エネルギー政策の転換や規制改革」を推進することで、結果的に「新しい産業」が育ってくるのであって、直接的に「新産業育成」をしようとするのは誤りだと思う。「本格的な取り組みは進まなかった」、のは当然である。
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