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デジタル通貨(その3)(中央銀行デジタル通貨に関する連絡協議会における開会挨拶、FRB中銀デジタル通貨創設是非巡る討議資料公表 デジタル資産取り組む上で資料発表は重要節目、日の丸大連合が描く「国産デジタル通貨」の正体 NTTやメガバンクなど70社超が一斉に集う意味) [金融]

デジタル通貨については、昨年10月13日に取上げた。今日は、(その3)(中央銀行デジタル通貨に関する連絡協議会における開会挨拶、FRB中銀デジタル通貨創設是非巡る討議資料公表 デジタル資産取り組む上で資料発表は重要節目、日の丸大連合が描く「国産デジタル通貨」の正体 NTTやメガバンクなど70社超が一斉に集う意味)である。

先ずは、昨年3月28日付け日本銀行の理事の内田 眞一氏による挨拶「中央銀行デジタル通貨に関する連絡協議会における開会挨拶」を紹介しよう。
https://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2021/ko210326a.htm/
・『本日は、中央銀行デジタル通貨(CBDC)に関する連絡協議会にご参加頂き、誠にありがとうございます。 日本銀行では、昨年10月に「中央銀行デジタル通貨に関する取り組み方針」を公表したあと、この方針に沿って、実証実験の内容の検討や、実験に参加する外部ベンダーの選定など、開始準備を進めてまいりました。 この結果、本年4月から、CBDCの基本的な機能や具備すべき特性が技術的に実現可能かどうかを検証するための概念実証(Proof of Concept)をスタートします。その後、さらに必要と判断されれば、民間事業者や消費者が実地に参加する形でのパイロット実験を行うことも視野に入れて検討いたします。 日本銀行として「現時点でCBDCを発行する計画はない」という考え方に変わりはありません。決済システムの将来像は、使える技術(テクノロジー)に依存します。その時々の技術水準を所与として、便利で安全な決済システムを作っていけばよいのであって、そこにCBDCが必要となるかどうかは何とも言えません。ただ、現時点で分かっている技術的な要因や内外の情勢などを踏まえると、将来、「CBDCを一つの要素とする決済システム」が世界のスタンダードとなる可能性は相応にあります。そうした中で、今から実験を進めることは必要なステップであると考えています。 CBDCのプロジェクトが各国で盛り上がってきたのは、ここ1、2年のことです。わが国においても、当初は、「現金が安全に使えて、国民のほとんどが預金口座を持っている日本でCBDCは必要だろうか」とか、「具体的なユースケースが思いつかないし、あるとしてもここまで大がかりなことをしなくても解決策はあるのではないか」といった受け止め方が一般的であったように思います。このことは今も事実ですが、同時に、各国でCBDCが真剣に検討されている文脈を理解しておくことも必要です』、「日本銀行として「現時点でCBDCを発行する計画はない」という考え方に変わりはありません」、仮に一般向けにも発行するとなると、民間銀行の存立基盤がなくなってしまうので、一大事だ。
・『一昨年来、グローバル・ステーブルコインを巡って、G7やG20をはじめとして国際的な議論が行われてきましたが、これはより広範な問いかけのきっかけにすぎません。すなわち、我々は「デジタル社会における決済システムのあるべき姿」を考える必要に迫られています。この問いかけは本質的であり、例えば、バンクとノンバンクの役割をどう考えるのか、中央銀行などの公的セクターはどのような公共財を提供すべきなのか、データの活用とプライバシーの問題をどう調整するのか、等々の問題を提起するものです。いずれも、CBDCがあろうとなかろうと避けては通れない大きな問題です。 これらに対する答えは、決済や金融のロジックだけで導き出せるものではないかもしれませんし、国によって違うかもしれません。例えば、データの利用やそれを通じた顧客との接点作りは、デジタル社会のビジネスを動かしている主要なドライバーです。そうしたデータの利用範囲をプライバシーとの関係でどう画していくかは、各国がデジタル社会と向き合っていく際の基本的なルールといえます。現にこのことは、各国がCBDCを導入するかどうかを判断するうえで重要な背景の一つとなっていますし、今後、CBDCの具体的なデザインに大きく影響してくるものと考えられます。 テクノロジーの進歩によって、将来の決済システムが、より便利になっていくことは間違いないと思います。ただ、安全になるかどうかははっきりしません。現代においても、現金を持ち運ぶ危険が減少した一方、ネット上ではお金が盗まれたり、個人情報が漏洩したりすることが心配されています。このように、便利さと安全性は時にトレードオフの関係にあり、中央銀行や預金保険制度はこれを補完する役割を担ってきました。デジタル社会における便利さと安全性の最も良いバランスは何か、その際の中央銀行、バンク、ノンバンクの果たすべき役割は何なのか、いずれも重たい課題です。 これらの答えを今出すということではありませんが、その答えの結果として、将来、CBDCというパーツが必要となる可能性があるということです。ここに、実証実験を開始すること、そしてそれと並行して関係者の皆様方と対話を行うことの意義があるのだと思います。 もう少し具体的に申し上げますと、仮にCBDCを発行する場合、その設計は、決済システムの将来像と擦り合わせながら行っていかなければならないと考えています。将来の決済システムは、全体として、より便利で安全になる必要がありますが、それは、必ずしもCBDC自体があらゆる便利な機能を持つことを意味しません。実際、現在も、現金が物理的に適度に不便であること(嵩張ることや盗難の危険)が、預金やその他の決済サービスとの適切な棲み分けを可能にし、全体として便利さと安全性のバランスが図られています。CBDCのある世界においても、こうした役割分担は必須です。公共財として提供されるCBDCをいわば材料にして、便利な決済サービスという料理を完成させるのは、民間の皆様であるべきだと思っています』、「G7やG20をはじめとして国際的な議論が行われてきました」、これは実は中国が先行してCBDCの導入を急いでいるため、これに対抗して主要国としても研究を急いだことがある。
・『私は、中央銀行がイノベーションを生み出せないとは思っていません。これまでも金融政策やプルーデンス、決済などの分野で新しいアイデアを実現してきました。しかし、中央銀行が個人や企業との接点に立って、その多様なニーズに応えていくことは全く不可能です。そして、この分野では、競争が行われるべきです。より便利で、時々の、あるいは個々の人々のニーズに合ったサービスを提供することに成功した主体が利益を得るべきだと思います。そうした2層構造がうまく機能するように「材料」、「種」となるCBDCを設計していくためには、決済の主要な担い手である皆様との密接な対話が必要です。皆様におかれては、ぜひ、デジタル社会における決済システム像を一緒に考え、また、その中におけるビジネスのイメージを膨らませながら、このプロジェクトにお付き合い頂きたいと思っております。 ご清聴ありがとうございました』、「中央銀行が個人や企業との接点に立って、その多様なニーズに応えていくことは全く不可能です。そして、この分野では、競争が行われるべきです。より便利で、時々の、あるいは個々の人々のニーズに合ったサービスを提供することに成功した主体が利益を得るべきだと思います』、日銀としては、あくまで民間銀行が主体であるべきとの立場だ。

次に、1月23日付け東洋経済オンラインが転載したブルームバーグ「FRB中銀デジタル通貨創設是非巡る討議資料公表 デジタル資産取り組む上で資料発表は重要節目」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/504778
・『米連邦準備制度理事会(FRB)は20日、米国の中央銀行デジタル通貨(CBDC)創設の是非を巡る討議資料を発表した。CBDC創設の検討で重要な一歩となる。民間の暗号資産(仮想通貨)の急成長や、開発で先行する中国などの動向に対処する上で、ドルの優位を確保するのに役立つとする動きだ』、ドルの番人のFRBとしては、検討資料公開によって民間での議論を喚起したいのだろう。
・『CBDC創設には議会の立法化による法的な認可が理想的  FRBはCBDC発行が賢明であるかどうか確固たる判断を下しておらず、いずれにしてもホワイトハウスや議会の支持がないままプロセスを進める意図はないと表明しており、近いうちに発行される可能性はまずない。しかし、FRBがデジタル資産への取り組み強化を目指す上で、今回の資料発表は最も重要な節目と言える。 発行の場合の意義付けについてFRBは、「CBDCの導入は米国の通貨における極めて重要なイノベーションを意味するだろう」と討議資料で指摘した。この資料の内容に関して5月20日までの意見公募期間を設けており、CBDC創設には議会の立法化による法的な認可が理想的だと説明している』、確かに「議会の立法化による法的な認可」があれば、最も理想的だ。
・『CBDC創設のプラス面とマイナス面  資料ではCBDC発行のプラス面として、国際金融システムにおける突出した通貨としてのドルの地位確保のほか、国境をまたぐ決済の改善や一段と包摂的な金融システムの整備、新たなテクノロジーでのドル使用の利便性向上などを列挙。一方で、従来型の銀行から預金が引き揚げられたり、金融機関への取り付け騒ぎの頻発化・深刻化を招いたりする潜在的なマイナス面も警告した。 このほか個人のプライバシー保護と犯罪予防のための透明性確保の両立、サイバー攻撃対策などの課題にも言及している。FRB当局者は記者団との電話会議で、意見公募期間終了後に次のステップを検討するとしたが、CBDCが最終的にいつ導入される可能性があるかを巡って具体的なスケジュールは示さなかった。 FRBは口座の提供やCBDC決済の促進について、当局自体がその役割を果たすのではなく従来型の銀行やノンバンクに委ねる考えを示唆した。討議資料はパウエルFRB議長が昨年5月の時点で公表予定を明らかにし、これまでの検討の成果としてまとめられた。ボストン連銀は2月にもCBDCの技術面に関する別のリポートを公表する見通し』、「FRBは口座の提供やCBDC決済の促進について、当局自体がその役割を果たすのではなく従来型の銀行やノンバンクに委ねる考えを示唆」、資本主義下では当然だろう。

第三に、1月24日付け東洋経済オンライン「日の丸大連合が描く「国産デジタル通貨」の正体 NTTやメガバンクなど70社超が一斉に集う意味」:NTT、イオン、メガバンク3行――。日本を代表する大企業らが集結し、2022年度中に商用化を目指すのが、ブロックチェーン(分散型台帳)技術を活用したデジタル通貨「DCJPY(仮称)」だ。 通貨価値は銀行預金の日本円に紐づけられているため、実物資産の裏付けがないビットコインのように、荒い値動きがないとされる。送金・決済用の通貨として、当面は日本国内限定での提供を予定している。 『週刊東洋経済』1月24日(月)発売号では「全解明 暗号資産&NFT」を特集。米国発第2次ビットコインブームやデジタル通貨の行方などについて、まとめている。 オールジャパンの取り組みは、一体何を目指しているのか。DCJPYの普及組織「デジタル通貨フォーラム」の事務局長を務めるディーカレットの時田一広社長を直撃した(Qは聞き手の質問。Aは時田氏の回答)』、興味深そうだ。
・『銀行口座の日本円が裏付け資産  Q:まず、DCJPYの特徴や仕組みについて教えてください。 A:民間銀行の債務である預金として発行するスキームを検討している。現在、ステーブルコイン(法定通貨などと連動する通貨)が有望な支払い手段と捉えられながらも 、銀行預金などと比べて規制が強まることが世界的に懸念されている。 その点、日本円預金を裏付け資産とするスキームをとることで、このような問題を乗り越えることが可能と考えている。DCJPYも幅広い意味でステーブルコインの一種と位置づけている。 そのうえで、DCJPYは(発行・送金・償却する)共通領域と(アプリ・サービスを展開できる)付加領域との2層構造に分かれているのが特徴だ。銀行などの金融機関が共通領域を通じてDCJPYを発行したり、管理したりすることになる。 Q:通貨の管理者を設けたという意味では、ビットコインなどの暗号資産の主流からは外れています。そうした仕組みにした理由は。 A:暗号資産は、「パーミッション型(通貨の管理者が存在)」と「パーミッションレス型(管理者を設けずに不特定多数の参加者でネットワークを構築)」に分かれる。DCJPYは前者だが、ビットコインなどの一般的な暗号資産は後者にあたる。 パーミッションレス型を否定するつもりはまったくないし、両方あっていいと思う。だが、DCJPYは(通貨価値に連動するのが日本円という)法定通貨なので、(責任の所在が明らかになるなどの理由で)より安全なパーミッション型を選ばざるをえなかった。) Q:DCJPYを導入すると、どんなメリットがあるのでしょうか。 A:企業側のメリットが特に分かりやすい。デジタル通貨の一番の意義は(2層構造の付加領域に)プログラムを書けることだ。通貨の取引・決済にプログラムができると、例えば取引と決済を自動化できる「スマートコントラクト」を実装できる。 すると、「月末締めの翌月払い」などで、今まで企業などの経理が手作業でやっていた業務を自動化できる。事務作業の正確性を高めたり、事務コストを下げられたりするなどのメリットが生まれる。そういった企業がサービスを作るようになれば、利用しているユーザーである個人にも恩恵が出てくるはずだ。 Q:DCJPYが企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)にも寄与すると? A:そうだ。デジタル通貨フォーラムには、(2021年末時点で)74の企業・団体が参加してくれているが、いずれも自分たちのビジネスのデジタル化を進めるなら、通貨をデジタル化した方がいいと気が付いている。その考えがない企業・団体はここにはいない』、「取引と決済を自動化できる「スマートコントラクト」は確かに便利そうだ。
・『参加する企業・団体は1年で倍増  Q:2020年6月にフォーラムの前身となる「デジタル通貨勉強会」を立ち上げてから、参加企業・団体が増え続けています。 (時田氏の略歴はリンク先参照) デジタル通貨勉強会は当時、メガバンク3行などとともに「日本におけるデジタル通貨の見通しをつけよう」と立ち上げた。 2020年11月にデジタル通貨フォーラムとなり、DCJPYのユースケースなどを1年余り研究してきたが、その間、参加企業・団体の数は2倍近くに膨らんだ。足元でも多くの企業・団体から問い合わせを新たにいただいている。 Q:フォーラムに参加した企業・団体のみにメリットが生まれ、囲い込みと見ることもできませんか? A:まず、囲い込みはない。フォーラムへの無理な勧誘はしておらず、ほとんどの企業・団体は先方から問い合わせをいただいて参加してもらっている。排他的なことはこれまでしていないし、これからするつもりもない。 Q:DCJPYの商用化実現に向けたロードマップは。 A:2022年度中にはDCJPYとその運用を支える一部プラットフォームの実用化を目指している。 フォーラムでは、10の分科会に分かれてユースケースの研究・実証を進めているが、特に商用化に向けた動きが早いのは「電力取引」と「NFT(非代替性トークン)」の分科会だ。いずれの分野もブロックチェーン技術の実装が進んでいたため、デジタル通貨のニーズが強くある。 Q:DCJPYの商用化によって、企業の新たなビジネス展開も視野に入ります。 A:電力取引分科会では、DCJPYのブロックチェーン技術を使い、再生可能エネルギーの利用率を可視化するビジネスを検討している。DCJPYに対応した電力取引市場で売買した企業の再エネ利用率を捉え、それを銀行などの金融機関に提供するモデルだ。これは2021年度中にPoC(概念実証)を終えて、商用化を急ぎたい。 一方、NFT分科会では2022年中にもDCJPYを使ったNFTのマーケットプレースの実証実験を実施する予定だ』、「囲い込みはない。フォーラムへの無理な勧誘はしておらず、ほとんどの企業・団体は先方から問い合わせをいただいて参加してもらっている。排他的なことはこれまでしていないし、これからするつもりもない」、決済は幅広く開放的にやるのが原則で、閉鎖的な考え方はとるべきでない。
・『日銀や金融庁の大物OBが助言  Q:フォーラムの運営には、元金融庁長官などの大物も関わってきます。商用化に向けては省庁との制度のすり合わせなども重要になってきますね。 A:フォーラムの座長には元日銀決済機構局長の山岡浩巳氏、シニアアドバイザーには元金融庁長官の遠藤俊英氏に就任していただいた。フォーラムには、オブザーバーとして日銀や金融庁、財務省、経産省、総務省が参加しているので、省庁などの窓口はこの人たちでやっている。山岡氏や遠藤氏には、その知見からフォーラムに対してアドバイスをいただいている。 Q:DCJPYの最終的なビジョンをどう考えていますか。 A:社会インフラになることだ。(DCJPYを発行・管理する役割になる)銀行だけでも全国に100行ぐらいある。(フォーラムにすでに参加している)メガバンクなどの大きい銀行だけではなく、地方銀行とか信用金庫といった地場の金融機関にも提携先を広げていく。 全国の銀行に対して、「同じプラットフォームに乗ってください」というお願いをこれからしようとしているところだ。時間軸は今後20年ぐらいかかるかもしれないが、日本中の北から南まで、全国にくまなく行き届くことを目指したい』、「フォーラム」がこれからどう発展していくのか、楽しみだ。 
タグ:「取引と決済を自動化できる「スマートコントラクト」は確かに便利そうだ。 東洋経済オンライン「日の丸大連合が描く「国産デジタル通貨」の正体 NTTやメガバンクなど70社超が一斉に集う意味」: 「フォーラム」がこれからどう発展していくのか、楽しみだ。 「囲い込みはない。フォーラムへの無理な勧誘はしておらず、ほとんどの企業・団体は先方から問い合わせをいただいて参加してもらっている。排他的なことはこれまでしていないし、これからするつもりもない」、決済は幅広く開放的にやるのが原則で、閉鎖的な考え方はとるべきでない。 「FRB中銀デジタル通貨創設是非巡る討議資料公表 デジタル資産取り組む上で資料発表は重要節目」 「FRBは口座の提供やCBDC決済の促進について、当局自体がその役割を果たすのではなく従来型の銀行やノンバンクに委ねる考えを示唆」、資本主義下では当然だろう。 確かに「議会の立法化による法的な認可」があれば、最も理想的だ。 ドルの番人のFRBとしては、検討資料公開によって民間での議論を喚起したいのだろう。 ブルームバーグ 東洋経済オンライン 「中央銀行が個人や企業との接点に立って、その多様なニーズに応えていくことは全く不可能です。そして、この分野では、競争が行われるべきです。より便利で、時々の、あるいは個々の人々のニーズに合ったサービスを提供することに成功した主体が利益を得るべきだと思います』、日銀としては、あくまで民間銀行が主体であるべきとの立場だ。 「G7やG20をはじめとして国際的な議論が行われてきました」、これは実は中国が先行してCBDCの導入を急いでいるため、これに対抗して主要国としても研究を急いだことがある。 「日本銀行として「現時点でCBDCを発行する計画はない」という考え方に変わりはありません」、仮に一般向けにも発行するとなると、民間銀行の存立基盤がなくなってしまうので、一大事だ。 「中央銀行デジタル通貨に関する連絡協議会における開会挨拶」 内田 眞一 (その3)(中央銀行デジタル通貨に関する連絡協議会における開会挨拶、FRB中銀デジタル通貨創設是非巡る討議資料公表 デジタル資産取り組む上で資料発表は重要節目、日の丸大連合が描く「国産デジタル通貨」の正体 NTTやメガバンクなど70社超が一斉に集う意味) デジタル通貨
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バイデン政権(その3)(2022年米国連邦議会中間選挙を左右する 意図的な選挙区割り「ゲリマンダー」、「バイデンフレーション」がアメリカ民主党を直撃 中間選挙に向けて共和党が勢いに乗っている、「トランプ次期大統領」が濃厚 米国で進む投票抑圧のあきれた実態) [世界情勢]

バイデン政権については、昨年5月17日に取上げた。今日は、(その3)(2022年米国連邦議会中間選挙を左右する 意図的な選挙区割り「ゲリマンダー」、「バイデンフレーション」がアメリカ民主党を直撃 中間選挙に向けて共和党が勢いに乗っている、「トランプ次期大統領」が濃厚 米国で進む投票抑圧のあきれた実態)である。

先ずは、10月12日付けNewsweek日本版が掲載した政治アナリストの渡瀬 裕哉氏による「2022年米国連邦議会中間選挙を左右する、意図的な選挙区割り「ゲリマンダー」」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/watase/2021/10/2022_1.php
・『<ある政党の支持者を特定の選挙区に押し詰めて、その他の選挙区ではもう一方の政党候補者が総体的に多く当選するように選挙区割りを確定させる「ゲリマンダー(注)」が横行するようになる> 米国連邦議会中間選挙まで約1年、米国では共和党・民主党の議会議員候補者の席を巡って予備選挙が本格化しつつある。共和党内ではトランプ系と非トランプ系の候補者の内紛は依然として継続しており、民主党内ではバイデン系の中道候補者に対して党内左派からの圧力が高まっている。両党ともに複雑なお家事情を抱えていることは間違いない。 ただし、連邦下院議員選挙に関しては全く別の要素で勝敗が決まる可能性が濃厚だ。2020年の国勢調査にしたがって、連邦下院の選挙区が変わる影響が極めて大きいからだ』、さすが「ゲリマンダー」の発祥国らしい。よくぞ臆面もなくやるものだ。
(注)ゲリマンダー:1812、マサチューセッツ州知事が、自分の所属する政党に有利なように選挙区を区割り(Wikipedhia)。
・『州議会が選挙区の線引きに関する決定的な役割を担っている  米国の下院議員選挙は完全小選挙区制である。つまり、各選挙区から1名のみが選出される選挙制度であり、日本のように比例代表制は存在していない。したがって、共和党・民主党のいずれかの党派の支持者が多い選挙区では、最初から議員が選出される政党ことがほぼ確定している状況となる。 そのため、ある政党の支持者を特定の選挙区に押し詰めて、その他の選挙区ではもう一方の政党候補者が総体的に多く当選するように選挙区割りを確定させる「ゲリマンダー」が横行するようになる。 たとえば、共和党・民主党の人口比率が①3:2、②2:3、③1:4という民主党が2勝できる3選挙区があった場合、①4:1、②3:2、③0:5と選挙区支持者の人口比率に従って再振り分けすると共和党が逆に2勝するといった具合だ。 選挙区の線引きのためのルールは各州の制度によって規定されているが、大半の場合は州議会が線引きに関する決定的な役割を担っていると考えて良い。それ以外の要素としては司法が州議会に対する歯止めとなるケースもある。 実際、共和党州議会が2010年代にフロリダなどの幾つかの州で仕掛けたゲリマンダーを民主党側が司法を使って却下しなければ、2021年現在の民主党下院支配は存在しなかっただろう』、「司法が州議会に対する歯止めとなるケースもある」、「議会」の暴走を「司法」が止める理想的な姿だ。
・『特定の党派に偏った選挙区が増加する  共和党は2020年の人口統計に基づいて議席割当て数が増加する南部諸州の州議会において相対的に優位な勢力を築いており、更に連邦裁・州裁の保守化を進めることに成功している。そのため、共和党側は多くの州で民主党支持者を州都周辺の一部のエリアに押し込め、農村エリアが左傾化する郊外部を希薄化させて強引に下院議席を伸ばすことができる。その結果として、選挙区の見直しを通じて最大15議席程度を民主党から奪う可能性がある。 一方、民主党は自らが圧倒的優位に立つニューヨーク州の選挙区割りを恣意的に行うことで不利な状況をひっくり返すことを狙うことになるだろう。民主党側はニューヨーク州では最大5議席、その他の民主党優位州で更に3~5議席程度を共和党の手から奪い取る可能性があると見られている。 超党派の選挙区割り委員会が線引きを決める州も存在しており、現状では選挙区調整の最終結果が出ていないために正確な論評を行うことはできないが、共和党がゲリマンダー合戦において全体的に有利な状況にあると言えるだろう。 実際、2020年下院議員選挙は民主党220議席・共和党212議席の8議席差であるため、共和党に有利なゲリマンダーが行われることで、2022年連邦議会中間選挙では2020年と全く同じ各党の獲得票数であったとしても共和党勝利となるだろう。 また、ゲリマンダーが進展することは、特定の党派に偏った選挙区が増加することを意味する。その結果として、偏ったイデオロギーの選挙区民の意向に沿った連邦議員が選ばれてくることになる。各候補者がより過激な言動を行うほど資金も票も集まる傾向に拍車がかかり、米国の分断は更に促進されていくことになる。 ホワイトハウスは党派色が強まる連邦議会との対峙を今後も余儀なくされ続けることになるだろう。そして、仮に民主党が下院を失った場合、バイデン大統領のレイムダック化と米国政治の麻痺は一気に進むことになる。世界の政治潮流を静かに左右する米国連邦議会中間選挙は既に始まっている』、「各候補者がより過激な言動を行うほど資金も票も集まる傾向に拍車がかかり、米国の分断は更に促進」、「民主党が下院を失った場合、バイデン大統領のレイムダック化と米国政治の麻痺は一気に進む」、民主政治もなかなか難しいものだ。

次に、12月15日付け東洋経済オンラインが掲載した米州住友商事会社ワシントン事務所 調査部長の渡辺 亮司氏による「「バイデンフレーション」がアメリカ民主党を直撃 中間選挙に向けて共和党が勢いに乗っている」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/476274
・『先月、1ドルショップ(日本の100円ショップに相当)のチェーン店を全米で展開するダラーツリー(Dollar Tree)が、物価上昇を理由に大半の品を1ドルから1ドル25セントに値上げすることを発表した。ネット上では店名を「ダラー25ツリー」に改名すべきとの声も上がった。 身近でもインフレは感じられるようになってきた。近所で最安値のガソリンスタンドには連日、車が行列をなしている。筆者が住むワシントン近郊をはじめ都市部では公共交通機関を利用して通勤する人が多いが、アメリカでは内陸部に住んでいる人をはじめ大半の国民は車通勤のため、日々家計を直撃するガソリン価格上昇には神経質だ。 アメリカ労働省が12月10日に発表した11月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で6.8%。39年ぶりの高い数値を記録した。6カ月連続で5%を超え、今や連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長も認めたように「一過性」とは言えない。 アメリカ経済は新型コロナによる不況からの回復過程にあるが、インフレ懸念の強まりによってバイデン大統領そして民主党は政治面でこれまでにないほど、窮地に立っている』、「パウエル議長」の「一過性」との判断は早速外れた。
・『国民はバイデン政権がインフレの主因と見ている  インフレの責任追及では、政権を握るバイデン大統領に批判の矛先が向いている。「バイデンフレーション(Bidenflation)」。「バイデン大統領」と「インフレーション」を関連付けた造語が共和党支持者の間で今日、広まっている。 インフレの要因は新型コロナであるとバイデン政権はこれまで主張してきた。今のところ日本は例外だが、欧州をはじめ先進国の多くでアメリカほどではないものの、物価上昇が起きているのは確かだ。 しかし、ポリティコ紙・モーニングコンサルト紙の共同世論調査(2021年11月13~15日)によると、62%のアメリカの有権者が国内のインフレについてバイデン政権の政策に責任があると述べ、大統領にはまったく責任がないとの回答は11%にすぎない。新型コロナのせい、とのバイデン政権の主張は説得力を持っていない。) 今のインフレは過度な需要増と抑制された供給の両方によって生じた需給の不均衡と説明できる。つまりダブルパンチで物価上昇は起こっている。 供給サイド、つまりコストプッシュが起きているのには、「大量自主退職(Great Resignation)」と呼ばれる現象、すなわち、仕事を自主的に辞める国民が多くいることも影響している。特に人との接触があって新型コロナ感染のリスクのある低賃金労働の飲食産業をはじめとするホスピタリティ関連では労働力不足が生じている。 このほか、労働者によるストライキやアメリカの抱える構造的なインフラ問題、世界的なサプライチェーン問題などさまざまな供給抑制の要素が物価上昇に影響している。これらの多くはバイデン政権の責任とは言えない。 一方、需要サイド、すなわちディマンドプルでも新型コロナの影響は大きい。アメリカの消費の多くがサービスからモノにシフトした。例えば、フィットネスクラブを退会し、自転車や自宅用ダンベルなどを購入する人が増えるといった現象が見られる。 しかし、需要面ではバイデン政権にも明らかに責任がある。トランプ政権下の2回のコロナ経済対策の給付金(1人当たり1200ドル、600ドル)に続き、バイデン政権は2021年3月に民主党のみで成立させたアメリカ救済計画法(American Rescue Plan〈ARP〉 Act)に基づき追加給付金1人当たり1400ドルを支給した。ちなみに、トランプ氏も自らの政権時代に、この追加給付金は支持していた』、「バイデンフレーション」とは不名誉なネーミングだ。
・『火に油を注いだ追加給付金  アメリカ救済計画法は、成立当時は国民の支持も高く、大きな成果としても受け止められた。経済的影響など中身を十分に精査せずに民主党のみで同法を成立させた背景には、過去の反省がある。2008年リーマンショック後のアメリカ復興・再投資法(American Recovery and Reinvestment Act〈ARRA〉)で民主党は超党派合意を重視して審議に長時間を費やした結果、規模が小さくなり経済回復が遅れたと考えている。つまりオバマ政権を経験した多くのバイデン政権幹部は、今回の不況対策では失敗を繰り返さないことに執着した。 したがって、バイデン政権幹部は新たな課題に冷静に対応することを怠った面も否定できない。今となってみれば、経済回復の進む中での1400ドルの追加給付金は、火に油を注ぐ行為でインフレを加速させた失策であったとの見方が有力だ。つまり、アメリカ経済を生産拡大に移行させる規模以上に政権は市場にお金を投入してしまったのだ。一部のエコノミストはそのギャップは対GDP比で約10%にのぼると算出している。追加給付金は短期的には国民に好評であったものの、中長期的には不人気なインフレをもたらしたようだ。) 今や物価上昇を抑えるにあたって、政権が実行できることには限界がある。インフレ対策については、物価安定を2大責務の1つとするFRBに依存せざるをえない。 1974年、ジェラルド・フォード元大統領は、「今すぐ、インフレを打倒せよ(WIN: Whip Inflation Now)」の草の根キャンペーンを展開した。フォード大統領はインフレを「国民の最大の敵」と訴え、自動車の走行距離を減らし、暖房の利用を控え、ムダを減らすなど国民に呼びかけたものの、効果は見られなかった。 バイデン大統領は不景気を引き起こさない限り、インフレを抑えることはできないとも一部専門家は指摘する。FRB議長の指名権を保有しているのは大統領であるため、大統領はわずかながら政策の方向性に影響を及ぼすことは可能といえる。だが、中央銀行の独立性維持の観点から、リンドン・ジョンソン元大統領やリチャード・ニクソン元大統領のようにFRBの金利政策に公の場であからさまに口を出すことをバイデン大統領は控えるであろう。 だが、インフレの責任の所在はバイデン政権と国民は見ていることから、バイデン大統領は政治面でも自らの裁量で実施できる対策を打ち出し、国民にアピールすることが重要だ』、「経済回復の進む中での1400ドルの追加給付金は、火に油を注ぐ行為でインフレを加速させた失策であったとの見方が有力」、「インフレの責任の所在はバイデン政権と国民は見ている」、「バイデンの不手際」がまた1つ加わるのだろうか。
・『難航するビルド・バック・ベター法案  ロサンゼルス港の24時間稼働、アメリカ連邦取引委員会(FTC)による石油・ガス会社の違法な価格引き上げ行為などの監視、石油戦略備蓄(SPR)の放出などを発表したが、いずれもインフレを抑える効果は限定的だ。唯一、わずかながら効果が期待できるのは対中関税などの引き下げだ。しかし、民主党支持基盤である労働組合や鉄鋼業界などへの配慮からもこれは難しく、可能なのは同盟国や友好国に対する関税緩和や撤廃などに限られる。 民主党はソフトインフラとも称される歳出法案(ビルド・バック・ベター法案、Build Back Better、BBB)の早期可決を目指している。共和党は民主党が同法を成立させればインフレをさらに加速させ、国民生活をいっそう苦境に陥れると批判している。これに対し、ブライアン・ディーズ国家経済会議(NEC)委員長をはじめバイデン政権は、BBBはすでに財源を確保しており、サプライチェーン対策が盛り込まれていることで逆に物価上昇を抑えられると反論している。 たしかに10年間にわたる歳出であることからも、BBBによる物価の押し上げは微々たるものかもしれないが、政治的には共和党のシンプルな説明のほうに国民は納得するかもしれない。) トランプ前政権時代、アメリカの政策は大統領のツイッターに振り回され、右往左往した。2020年大統領選では政治の正常化を求めた多くの国民によってバイデン氏は当選したといっても過言ではない。年初に発足したバイデン政権は経験豊富な幹部を揃えたドリームチームで危機脱却と国の再建に臨んだ。 バイデン政権は新型コロナのワクチン普及、失業率低下をはじめ想定以上の急速な経済回復、超党派インフラ投資法成立など政権発足以来、短期間にさまざまな成果を出した。これまで共和党は経済政策においてバイデン政権の批判が可能な要素を見つけるのに苦労してきたが、広範囲にわたる国民が気にするインフレ問題浮上で、ようやくバイデン政権の急所を見つけたようだ。 クリントン政権時代に財務長官、オバマ政権時代に国家経済会議委員長を務めたハーバード大学のローレンス・サマーズ教授は、インフレの政治的悪影響を解説している。同氏は失業率悪化の影響は2~3%の国民が受ける一方、インフレ率の上昇は100%の国民が購買力を奪われると指摘。ヤフーニュース・ユーガブ世論調査(2021年11月17~19日)によると、100%ではないが、たしかに77%もの国民がインフレの影響が個人生活に及んでいると回答している。 過去の選挙でもたびたび、インフレが大統領および大統領率いる政党に対する攻撃材料として利用され、効果を発揮した。1980年大統領選を制したロナルド・レーガン元大統領は、選挙キャンペーンでジミー・カーター政権の責任を追及した。当時のインフレ率は14%まで上昇し、経済低迷でスタグフレーションに陥っており、今日よりもずっと深刻な状況であった。現在はそれほどの率ではないものの、共和党のケビン・マッカーシー下院少数党院内総務は1期だけで終わったカーター政権にバイデン政権を重ね合わせるキャンペーンを展開している』、「サマーズ教授は、インフレの政治的悪影響を解説・・・失業率悪化の影響は2~3%の国民が受ける一方、インフレ率の上昇は100%の国民が購買力を奪われると指摘」、なかなか興味深い指摘だ。
・『トランプ時代の混乱に戻るのか  中間選挙で民主党の勝利を可能にする手法は、国民の関心の焦点を、バイデン政権の失策からトランプ前大統領の問題点を再認識する方向へシフトさせることであろう。トランプ前大統領が争点となれば、共和党内でも亀裂が生じ、民主党内でも選挙に関心が高まる。しかし、引き続きバイデン政権のインフレ対策に焦点があたっていれば、共和党は一枚岩でインフレ批判を展開し中間選挙に臨むことができる。 2022年にはインフレ率がFRBの目標値である2%を下回ることは当面ないとしても、徐々に低下していくことが想定される。だが、中間選挙のころにはインフレ対策をはじめ政権の混乱のイメージが国民の間ですでに固定化されてしまっているリスクがある。 南北戦争以降の中間選挙で、下院で大統領率いる政党が議席を増やしたのは39回のうち3回のみだ。民主党が議会で多数派を維持する可能性はほとんどなく、今や、どこまでダメージを縮小できるかに議論は移りつつある』、「民主党の勝利を可能にする手法は、国民の関心の焦点を、バイデン政権の失策からトランプ前大統領の問題点を再認識する方向へシフトさせること」、「しかし、引き続きバイデン政権のインフレ対策に焦点があたっていれば、共和党は一枚岩でインフレ批判を展開し中間選挙に臨むことができる」、「民主党が議会で多数派を維持する可能性はほとんどなく、今や、どこまでダメージを縮小できるかに議論は移りつつある」、民主党には「トランプ前大統領の問題点を再認識する方向へシフトさせる」、べくもっと頑張ってもらいたいものだ。

第三に、1月25日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した国際ジャーナリスト・外交政策センター理事の蟹瀬誠一氏による「「トランプ次期大統領」が濃厚、米国で進む投票抑圧のあきれた実態」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/294186
・『「キング牧師の日」に全米各地でデモ  人種差別を撤廃して黒人にも選挙権をというアメリカの公民権運動を主導し、1968年に凶弾に倒れた故マーチン・ルーサー・キング牧師。そのキング牧師をたたえる祝日の17日、各地で民主主義の危機を訴えるイベントやデモ行進が行われた。 半世紀以上前に彼が命を賭して守ろうとした民主制の礎である公平な選挙権が今、復権を狙うトランプ前大統領とその一派の悪巧みによって危機にひんしているからだ。 「今そこにあるのは民主主義の緊急事態だ。我々は2024年にアメリカの民主主義の終わりを迎えるかもしれない深刻な危機に直面している」 米政治学者リチャード・ハセン教授は月刊誌「ジ・アトランティック」とのインタビューでそう述べ、危機感をあらわにした。 もっと恐ろしい発言は、国家安全保障会議(NSC)の元高官でトランプの副補佐官も務めたフィオナ・ヒルの口から飛び出した。 CBSニュースの番組に出演した彼女によれば、熱狂的トランプ支持者による昨年1月の連邦議会議事堂襲撃は、民主党政権を2024年に転覆させるための「ドレス・リハーサル(本番前の舞台稽古)」だったというのだ。 今は姿を潜めている極右勢力がトランプの扇動に呼応して中間選挙や次期大統領選に向けて再び活動を活発化させると』、「連邦議会議事堂襲撃は、民主党政権を2024年に転覆させるための「ドレス・リハーサル・・・」だった」、衝撃的発言だ。
・『陰湿で卑劣な投票抑圧の企て  実は、暴力よりももっと卑劣で陰湿な企てがすでに進行している。「投票抑圧」だ。 前回の大統領選挙は「不正選挙」だったと根拠のない主張を続けるトランプに同調する共和党は、郵便投票の制限、身元確認の厳格化、投票所の削減、投票時間の短縮など、ありとあらゆる手段を使ってライバル陣営の投票を阻もうとしている。 米ブレナン司法センターによると、昨年だけで全米50州のうち49州で440本以上の投票規制強化法案が提出され、少なくとも19州(ほとんどが知事や州議会多数派が共和党)で投票を抑圧する法律が成立している。今年に入ってその勢いはさらに加速しているという。) 南部ジョージア州では、郵便投票申請書が自動的に有権者に配布される制度が廃止、写真付き公的身分証(ID)の提示が義務化された。IDを所持していない黒人やマイノリティーの民主党支持者を投票が排除する狙いだ。 テキサス州では車の中からでも投票できる「ドライブスルー」投票も禁止されている。 新型コロナ大流行で多くの州で郵便投票などでの投票がしやすくなるように規則が変更された。それが民主党に追い風となりトランプ敗北につながったと共和党はみているのだ。 対抗する民主党のバイデン大統領も、もちろん黙ってはいない。「投票権は民主主義の出発点だ」として不公平な投票抑圧を厳しく批判している。 しかしバイデン政権の弱みは、共和党の企てを阻止する決定的な手段を持っていないことだ。 司法省は複数の州を提訴したが、大統領在任中にトランプが選任した3人を含む保守派の判事が多数を占める最高裁で却下される可能性が高い。 それならと、民主党は連邦議会で州政府の動きを封じる包括的な投票権法案を提出したが、こちらも上院での成立は絶望的だ。 重要法反可決には最低60票が必要だが民主党の現有勢力は50議席。そのうえ身内の民主党議員2人が造反しているからだ』、「身内の民主党議員2人が造反」、「民主党」の内部規律は一体、どうなっているのだろう。
・『トランプ前大統領の次期大統領就任が濃厚に  「共和党の愛国者たちの勢いは止められないぞ!民主党の社会主義者たちを落選させる!」 中間選挙を目指してアリゾナ州で今年初めての大規模集会を16日開いたトランプは、そう怪気炎を上げた。聴衆の数は約1万人。トランプ熱は日本で想像する以上にまだ熱いのだ。 2月下旬にトランプが立ち上げる新しい保守系のソーシャルメディアプラットフォーム“TRUTH Social”(真実のソーシャルメディア)を運営するSPAC(米特別買収目的会社)の時価総額も先月、24億ドルを上回った。 11月8日に実施される中間選挙では、連邦議会上院(任期6年、定数100)の約3分の1に当たる34議席と下院(任期2年、定数435)の全議席が争われる。 アフガニスタン撤兵の混乱やコロナ感染拡大、記録的な物価上昇などでバイデン大統領の支持率が40%程度と低迷している民主党の旗色が悪い。 歴史的に見ても、アメリカでは大統領就任から最初の中間選挙で与党がほとんど敗北している。よほどの逆転劇がない限り、今年も与党民主党が負ける確率は極めて高いと大方の専門家はみている。バイデン大統領の不人気と露骨な投票抑圧が相まって、共和党の圧勝ということも十分考えられるのだ。 そうなれば、復讐に燃えるトランプが次期共和党大統領候補に選ばれることは、現時点で確実だろう。それほど共和党はトランプに恐怖支配されている。大統領再選となれば、2024年に敗北するのは他ならぬアメリカの民主主義だ。選挙そのものの信頼性が失墜するからだ。 昨夏、「あなたの再出馬を阻むものはなにか」と保守派ケーブルテレビ番組で質問された75歳のトランプは、赤茶けた顔に笑みを浮かべながら次のように答えていた。 「医者からの悪い知らせだけだ」』、「バイデン大統領の不人気と露骨な投票抑圧が相まって、共和党の圧勝ということも十分考えられるのだ。 そうなれば、復讐に燃えるトランプが次期共和党大統領候補に選ばれることは、現時点で確実だろう」、「再出馬を阻むものはなにか」と・・・質問された75歳のトランプは「医者からの悪い知らせだけだ」、見たくないがまた「トランプ劇場」を見せられると思うと、気が重い、もっとも「バイデン」の不景気な顔を眺めるよりはましかも知れない。
タグ:バイデン政権 (その3)(2022年米国連邦議会中間選挙を左右する 意図的な選挙区割り「ゲリマンダー」、「バイデンフレーション」がアメリカ民主党を直撃 中間選挙に向けて共和党が勢いに乗っている、「トランプ次期大統領」が濃厚 米国で進む投票抑圧のあきれた実態) Newsweek日本版 渡瀬 裕哉氏による「2022年米国連邦議会中間選挙を左右する、意図的な選挙区割り「ゲリマンダー」」 さすが「ゲリマンダー」の発祥国らしい。よくぞ臆面もなくやるものだ。 (注)ゲリマンダー:1812、マサチューセッツ州知事が、自分の所属する政党に有利なように選挙区を区割り(Wikipedhia)。 「司法が州議会に対する歯止めとなるケースもある」、「議会」の暴走を「司法」が止める理想的な姿だ。 「各候補者がより過激な言動を行うほど資金も票も集まる傾向に拍車がかかり、米国の分断は更に促進」、「民主党が下院を失った場合、バイデン大統領のレイムダック化と米国政治の麻痺は一気に進む」、民主政治もなかなか難しいものだ。 東洋経済オンライン 渡辺 亮司氏による「「バイデンフレーション」がアメリカ民主党を直撃 中間選挙に向けて共和党が勢いに乗っている」 「パウエル議長」の「一過性」との判断は早速外れた。 「バイデンフレーション」とは不名誉なネーミングだ。 「経済回復の進む中での1400ドルの追加給付金は、火に油を注ぐ行為でインフレを加速させた失策であったとの見方が有力」、「インフレの責任の所在はバイデン政権と国民は見ている」、「バイデンの不手際」がまた1つ加わるのだろうか。 「サマーズ教授は、インフレの政治的悪影響を解説・・・失業率悪化の影響は2~3%の国民が受ける一方、インフレ率の上昇は100%の国民が購買力を奪われると指摘」、なかなか興味深い指摘だ。 「民主党の勝利を可能にする手法は、国民の関心の焦点を、バイデン政権の失策からトランプ前大統領の問題点を再認識する方向へシフトさせること」、「しかし、引き続きバイデン政権のインフレ対策に焦点があたっていれば、共和党は一枚岩でインフレ批判を展開し中間選挙に臨むことができる」、「民主党が議会で多数派を維持する可能性はほとんどなく、今や、どこまでダメージを縮小できるかに議論は移りつつある」、民主党には「トランプ前大統領の問題点を再認識する方向へシフトさせる」、べくもっと頑張ってもらいたいものだ。 ダイヤモンド・オンライン 蟹瀬誠一氏による「「トランプ次期大統領」が濃厚、米国で進む投票抑圧のあきれた実態」 「連邦議会議事堂襲撃は、民主党政権を2024年に転覆させるための「ドレス・リハーサル・・・」だった」、衝撃的発言だ。 「身内の民主党議員2人が造反」、「民主党」の内部規律は一体、どうなっているのだろう。 バイデン大統領の不人気と露骨な投票抑圧が相まって、共和党の圧勝ということも十分考えられるのだ。 そうなれば、復讐に燃えるトランプが次期共和党大統領候補に選ばれることは、現時点で確実だろう」、「再出馬を阻むものはなにか」と・・・質問された75歳のトランプは「医者からの悪い知らせだけだ」、見たくないがまた「トランプ劇場」を見せられると思うと、気が重い、もっとも「バイデン」の不景気な顔を眺めるよりはましかも知れない。
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女性活躍(その22)(タリバン並みにたちが悪い日本の男女格差 小池発言が大げさではない理由、スイスの男女平等を阻んだものは「民主主義」だった? 「上からの強制」が果たす役割(古市憲寿)) [社会]

女性活躍については、昨年8月1日に取上げた。今日は、(その22)(タリバン並みにたちが悪い日本の男女格差 小池発言が大げさではない理由、スイスの男女平等を阻んだものは「民主主義」だった? 「上からの強制」が果たす役割(古市憲寿))である。

先ずは、9月16日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「タリバン並みにたちが悪い日本の男女格差、小池発言が大げさではない理由」を紹介しよう。
・『百合子節もある意味正しい…男女格差がえげつない国・日本  日本にはタリバンがいないのに、なんでこんなに女性の活躍が遅れてきたのか不思議に思う」――。 自民党総裁選について尋ねられた、小池百合子東京都知事がこのように発言し、カチンとくる人が続出している。今回は高市早苗氏が立候補を表明しているが、実は自民党の長い歴史の中で、女性議員が出馬したのは2008年の小池氏のみ。この現実を女性の人権を抑圧するタリバンに引っ掛けるという“百合子節”で皮肉ったわけだが、これに愛国心溢れる方たちなどが猛反発しているのだ。 「なぜわざわざタリバンなんかを引き合いに出す!日本を貶める印象操作か!」「女性だからという理由でゴリ押しするのではなく、実力のある人が活躍すべきだ!」 不快になる気持ちも理解できるが、小池氏が“タリバンジョーク”を飛ばしてしまった気持ちもわからないでもない。 日本のジェンダーギャップ指数は、156カ国中120位でG7内でビリというのは有名だが、タイ(79位)、インドネシア(101位)、韓国(102位)、中国(107位)とアジア内でもかなり低い。むしろ、チュニジア(126位)、エジプト(129位)、ヨルダン(131位)、レバノン(132位)と中東諸国と同じグループといってもいい』、男尊女卑の「中東諸国と同じグループ」とはやれやれだ。
・『政治の面では、アフガニスタンよりもひどい!? なぜ日本は悲惨なのか  しかも、「政治への関与」というスコアで見れば、イスラム世界より女性に厳しい。タリバンが政権を奪取する前のアフガニスタン(111位)、サウジアラビア(138位)、シリア(142位)、ヨルダン(144位)を見上げる形で、日本はなんと147位。少し前、サッカーのクラブW杯が開催された際、王室メンバーが女性審判を「無視」して握手さえしなかったと話題になったカタール(148位)と大差のない、「男女格差がえげつない国」というのが、国際社会における日本の評価なのだ。 という話になると、「こんな指数は信用できない!」「日本の男女平等文化は数値化できない」といういつものちゃぶ台返しが聞こえてきそうだ。) OECD(経済協力開発機構)のデータで、日本の1人あたりの労働生産性が37カ国中26位で、韓国にまで抜かれてしまったというニュースを聞いても、「こんな数値はインチキだ」と耳を塞ぐ人がたくさんいるように、日本人は伝統的に自分たちに都合の悪いデータを受け入れることができないのだ。 が、どんなに現実から目を逸らしたところで、異常な低賃金や低成長が改善されないように、ジェンダーギャップ指数を否定しても、「日本のえげつない男女格差」という事実を覆すことはできない。 例えば今年2月、環境配慮型のフェムテックプロダクトを展開するアミーが女性288名を対象に、社会通念上やしきたりにおいて男女平等になっているかと尋ねたところ、92%が「なっていないと思う」と回答している。また、日本労働組合総連合会が就活生1000人を対象に実施した調査でも、およそ3割が「男女差別がある」と感じている。これらが「被害妄想」ではないことは、東京医科大学が入試で女子の得点を一律に減らし、女子の合格者が増えないよう調整していた事実からも明らかだ。 では、なぜ日本ではこんなにも男女格差が広がってしまったのか』、「日本人は伝統的に自分たちに都合の悪いデータを受け入れることができない・・・が、どんなに現実から目を逸らしたところで、異常な低賃金や低成長が改善されないように、ジェンダーギャップ指数を否定しても、「日本のえげつない男女格差」という事実を覆すことはできない」、その通りだ。
・『日本には「タリバン」のような人たちがいる 政治と経済に近づけない女性たち  日本の男たちの意識が低い、おじさん社会が悪い、いつまでも「サザエさん一家」のような専業主婦のいる家庭を「理想」とするような昭和の価値観を引きずっていることが諸悪の根源だ…などなどいろいろなご意見があるだろうが、個人的には、女性の人権を抑圧するタリバンのような人々がいるせいだと考えている。 といっても、それは本家のような政治的組織ではない。宗教やイデオロギーでもない。「日本のタリバン」とは一言で言ってしまうと、「低賃金労働に依存した企業」のことだ。 「こいつの頭は大丈夫か」と心配になる人も多いと思うので、順を追って説明していこう。) 先ほどのジェンダーギャップ指数を見てみると、実は「教育」(92位)と「医療」(65位)はそれなりに善戦している。「政治への関与」と「経済活動」のスコアの低さが足を引っ張っているのだ。 では、この2つの分野の男女格差を埋めるためにはどうすべきかというと、政府が女性の管理職を増やそうとしていることからもわかるように、「賃金格差」に手をつけなくてはいけない。 同じ仕事をしている男女が、格差なく賃金をもらう。つまり男女が格差なく評価をされ、格差なくポストに就くことができるということだ。これによって「経済活動」の格差が縮まるのは当然として、女性の政治参加も促すことができる。 というのは、男女の賃金格差が埋まって経済力のある女性が増えれば、その中から政界に進出しようという人も増えていく。政策だ、信念だ、ときれい事は言うが結局、政治家になるには「カネ」が必要なのだ。 それは連日の総裁選報道に登場する安倍、麻生、岸田、河野、石破、小泉という人たちがすべて物語っている。彼らは生まれながらのエスタブリッシュメント(支配階級)で、ブランド、選挙地盤に恵まれているということもあるが、何よりも「経済的基盤」という武器もあるのだ』、なるほど。
・『「低賃金労働に依存した企業」が女性の賃金を上げない  実際、ジェンダーギャップ指数を見ても、女性の経済力、政治参加はリンクしている。例えば、「経済活動」で4位のアイスランドは「政治への関与」でも1位。「経済活動」11位のスウェーデンは、「政治への関与」でも9位となっている。 では、それを踏まえて、我らが日本の男女間賃金格差を見てみると、衝撃の事実が浮かび上がる。OECDによれば、日本における男女の平均賃金の格差は23.5%で、国際平均のほぼ2倍。韓国に次いでワースト2という惨状だ。 これほど女性たちが低賃金労働を強いられている国で、女性管理職比率がそう簡単に上がっていくわけなどないし、ましてや女性政治家など増えるわけがないのだ。 「だったら、女性の賃金を上げていけばいいのでは」と思うだろうが、そこで「日本のタリバン」の登場となる。本家タリバンが女性の人権を抑圧しているように、日本では「低賃金に依存した企業」が女性の賃金を低く抑えているのだ。 わかりやすいのが、非正規労働者である。日本のさまざまな企業を支えているのが、非正規雇用の方たちであるということに異論はないだろう。低賃金で正社員並みに働かせることができるのに加えて、不況や業績悪化になれば「雇用の調整弁」としてサクッとクビを切れる。企業にとってありがたいことこの上ない存在だ。 そんな非正規雇用の内訳を見てみると、「女性労働者」が圧倒的に多い。令和元年の雇用者総数に占める非正規雇用労働者の割合を見ると、女性は56.0%。男性22.8%の約2.5倍となっている』、「日本における男女の平均賃金の格差は23.5%で、国際平均のほぼ2倍。韓国に次いでワースト2という惨状」、「雇用者総数に占める非正規雇用労働者の割合を見ると、女性は56.0%。男性22.8%の約2.5倍」、非正規がこんなに多いのでは、平均賃金の低さもうなずける。
・『非正規雇用に女性が多いのはなぜか 答えは明白  では、なぜ非正規労働者には圧倒的に女性が多いのか。男性よりも能力が劣っているということなのか。家事や育児に従事する女性が多いので、どうしても正社員で働くことが難しいということなのか。 いろいろなご意見があるだろうが、「日本のタリバン」的にはこの一言に尽きる。女性は「安価な労働力」だからだ。 2019(令和元)年の「民間給与実態統計調査」によると、男性の非正規労働者の年収は226万円、一方で女性の非正規労働者の年収は152万円にとどまっている。 最低賃金を3%引き上げて全国平均930円にすると決まったとたん、「地方に失業者が溢れかえって、日本経済は壊滅だ!」「そんな高い給料は払えないから、人減らしをするしかない」と中小企業団体が大騒ぎをして、政府に猛烈な抗議をしたことからもわかるように、日本の一部の経営者にとって、労働者とは安くてナンボの存在だ。 こういう経営手法が当たり前となっている中で、労働者の賃金を極限まで切り詰めることで利益を確保しているような企業が、非正規雇用の男性と女性のどちらを重宝するのかは、言うまでもあるまい。 つまり、日本の女性の賃金がビタッと低いままで固定され、非正規雇用の半数以上を女性が占めているのは、「低賃金労働に依存している企業」がそのような役割を女性に求めているからなのだ。 実際、賃金引き上げに強く反対している中小企業三団体は、自民党の有力支持団体である。全国の商工会議所の会員企業は、地域の与党議員にとって非常に頼もしい存在だ。そのような意味では、政治もある意味で、「日本のタリバン」の一味と言ってもいい』、「日本の女性の賃金がビタッと低いままで固定され、非正規雇用の半数以上を女性が占めているのは、「低賃金労働に依存している企業」がそのような役割を女性に求めているからなのだ」、同感である。
・『歴史が、女性の犠牲の上に経済成長していると証明  「そんなのは貴様の勝手な妄想だ」と怒られるかもしれないが、歴史を振り返ってみても、日本企業の成長が、女性の低賃金労働者の犠牲に上に成り立ってきたという動かし難い事実がある。その象徴が「職業婦人」や「労働婦人」だ。 よく「専業主婦は日本の伝統」みたいなことを言っている人がいるが、それは事実と異なる。江戸時代の庶民は夫婦同姓でもないし、「共働き」が基本だ。明治になってからも女性は積極的に社会に出て働いた。彼女たちは「職業婦人」「労働婦人」と呼ばれ、国家としても推奨をしていたのだ。 むしろ、「専業主婦」とは戦争が長引き、「女は家庭で銃後を守れ!」みたいな全体主義的ムードによって生み出されたニューノーマルで、日本の女性は外で働く方がデフォルトだった。なぜかというと、女性は日本経済に欠かせない「低賃金労働者」だったからだ。 例えば、作家として多くの作品を残した堺利彦は、1925年(大正14年)に発刊した「現代社会生活の不安と疑問」(文化学会出版部)の中でこう述べている。 <先ず女工。これが何と云っても第一番の労働夫人です。今日の資本制度は女工がなくては立ち行かない。紡績女工、製糸女工、その他いろいろの工場に働いている女工、彼等があつてこそ日本の資本家は富んでいるのである> いかがだろう。令和日本と丸かぶりではないか。スーパー、コンビニ、飲食店などさまざまな職場で、安い時給で働いているアルバイトやパートの女性の方たちがいてこそ、これらの企業は利益をたたき出せていることに異論はないだろう。 「東京2020」で来日した世界中のアスリートやメディアが、安くて高品質な商品やサービスを取り揃える日本のコンビニを称賛したように、日本経済はデジタル技術やイノベーションではなく基本、「低賃金労働」が支えている。つまりはパートやアルバイトという「現代の女工」の犠牲の上に成り立っているのだ。 この社会の理不尽さは、大正時代の日本人も気づいていた。堺利彦も日本経済が「労働婦人」を人身御供にしている現実をこう指摘している。 <彼等はそれほどに安い賃金で善く働くのである。彼等はそれほどに都合よく搾り取られるのである。其の代り、彼等の大部分は肺病になりつつある。彼等の中には折々堪りかねて逃げだそうとするのがあるが、大抵は巡査につかまつて引き戻される。一ばんに役に立つ者が一ばんに虐げられている。それが今の社会の実情なのである>(同上) 100年が経過しても、この社会構造は基本的に何も変わっていない。というか、さらに事態が悪化している。多くの女性に低賃金労働を強いておきながら、「日本は男女平等だ!」「無理に女性比率をあげるのもどうかと思う」という声も増え、女性の非正規雇用は死ぬまで低賃金労働に従事すべし、という無言の圧力が強まっている。 タリバンが女学生に黒い布を被せて、「タリバンは女性の人権を尊重してくれます」というような擁護デモをやらせたと話題になっているが、日本の場合は心の底から自分たちが、男女平等だと思っているところがタチが悪い。 賃金はある程度低くないと企業は経営できない、という「低賃金原理主義」から脱却しない限り、日本社会の「タリバン化」はさらに進行してしまうかもしれない』、「「低賃金原理主義」から脱却しない限り、日本社会の「タリバン化」はさらに進行してしまうかもしれない」、同感である。「低賃金原理主義」とは言い得て妙だ。

次に、9月30日付けデイリー新潮「スイスの男女平等を阻んだものは「民主主義」だった? 「上からの強制」が果たす役割(古市憲寿)」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2021/09300555/?all=1
・『スイスは女性参政権の導入が遅れた国の一つだ。国政では1971年、地方を含めた全土で実現したのは何と1990年のことだった。わずか三十数年前まで日本もびっくりの男女不平等の国だったのである。 なぜここまで遅れたのか。興味深いことに「民主制が徹底しすぎていたから」というのが大きな理由らしい。何事も政府が一方的に決めるのではなく住民の意見が大事にされるスイス。女性参政権は住民投票でことごとく反対に遭ってきたのだ。 速報【埼玉・白岡15歳少年暴行死】たい焼き1個を「3人で分けて食べるんだ」 同級生、近隣住民が明かす極貧生活と母親が受けていたDV ここに民主制の一つの限界が見て取れる。つまり既に「民」と認められた人にとって有利な決定ばかりがなされてしまうのだ。古くから続く直接民主制の好例として取り上げられるランツゲマインデ(青空議会)も、長らく女性を排することで成立していた。 実は国家レベルの男女平等は、「上からの強制」で進むことが多い。たとえばルワンダは女性議員の活躍する国として有名だが、クオータ制の果たした役割は大きい。法律によって国会議員の一定数を女性に割り当ててきたのだ。 今でこそ女子徴兵まで実施する男女平等国家ノルウェーも、かつては「専業主婦の国」と呼ばれるくらい性別役割分業が進んでいた。女性の政治参加が一気に進んだのは、やはりクオータ制によってだ。1970年代に各政党が選挙候補者のリストを男女同数にした。さらに2008年からは、上場企業の取締役会では、女性の割合を4割以上にしなければならない(結果的に、企業の業績悪化と非上場化が進んだという分析もある)。 民主制は人類が生み出した叡智の一つだと思うが、「民」認定されていない人に対して冷淡だ。ほとんどの国は自国人と外国人に待遇格差を設けている。国家に言わせれば、必要なら帰化しろという理屈なのかもしれない。だが性別を変えることは、国籍取得よりも遥かに困難だ。その意味で、たとえ「上からの強制」でも男女平等は正当化されるだろう。 同様の理屈で言えば、「未来の国民」への差別はどう考えるべきか。日本で選挙権を持つのは18歳以上である。17歳以下と、まだ生まれていない国民は、選挙で一票を投じることができない。 スイスの男たちが女性参政権を認めなかったように、現代を生きる国民は未来の国民に冷淡になりがちだ。財政赤字、環境破壊など数十年、100年単位で未来に持ち越される問題は多い。その重要な決定を、18歳以上の国民だけに任せることは、いかに正当化されるのか。「未来人の人権」は守らなくていいのか。 たとえば放射性廃棄物が生物に無害になるには約10万年かかるというが、未来人に「ここに捨ててもいいかい」などと聞くことはできない。1941年の日本人から「日米開戦してもいいかい」と聞かれないのと同じだ。過去に対しては「止めてよ」と言えないのに、責任だけは背負わされる。 未来の皆さん、そっちはどうですか。僕らに怒ってないといいけれど。(古市憲寿氏の略歴はリンク先参照)』、「女性の政治参加が一気に進んだのは、やはりクオータ制によってだ」。私は当初「クオータ制」には賛成ではなかったが、やはり「ノルウェー」、「ルワンダ」などいくつかの国ではこれを活用したのを知ると、抵抗感の強い日本では導入に際しては、やはり「クオータ制」が必要だろう。
タグ:窪田順生氏による「タリバン並みにたちが悪い日本の男女格差、小池発言が大げさではない理由」 ダイヤモンド・オンライン 女性活躍 (その22)(タリバン並みにたちが悪い日本の男女格差 小池発言が大げさではない理由、スイスの男女平等を阻んだものは「民主主義」だった? 「上からの強制」が果たす役割(古市憲寿)) 男尊女卑の「中東諸国と同じグループ」とはやれやれだ。 「日本人は伝統的に自分たちに都合の悪いデータを受け入れることができない・・・が、どんなに現実から目を逸らしたところで、異常な低賃金や低成長が改善されないように、ジェンダーギャップ指数を否定しても、「日本のえげつない男女格差」という事実を覆すことはできない」、その通りだ。 「日本における男女の平均賃金の格差は23.5%で、国際平均のほぼ2倍。韓国に次いでワースト2という惨状」、「雇用者総数に占める非正規雇用労働者の割合を見ると、女性は56.0%。男性22.8%の約2.5倍」、非正規がこんなに多いのでは、平均賃金の低さもうなずける。 「日本の女性の賃金がビタッと低いままで固定され、非正規雇用の半数以上を女性が占めているのは、「低賃金労働に依存している企業」がそのような役割を女性に求めているからなのだ」、同感である。 「「低賃金原理主義」から脱却しない限り、日本社会の「タリバン化」はさらに進行してしまうかもしれない」、同感である。「低賃金原理主義」とは言い得て妙だ。 デイリー新潮 「スイスの男女平等を阻んだものは「民主主義」だった? 「上からの強制」が果たす役割(古市憲寿)」 「女性の政治参加が一気に進んだのは、やはりクオータ制によってだ」。私は当初「クオータ制」には賛成ではなかったが、やはり「ノルウェー」、「ルワンダ」などいくつかの国ではこれを活用したのを知ると、抵抗感の強い日本では導入に際しては、やはり「クオータ制」が必要だろう。
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医療問題(その34)(遺伝子操作したブタの心臓 人に移植成功 世界初 アメリカ、診療報酬改定「想定外の決着」の裏事情 財務省も日本医師会も完敗?、ノーベル賞級の大発見!ウイルス研究者が疲労・うつの謎にたどり着いた理由) [生活]

医療問題については、昨年9月12日に取上げた。今日は、(その34)(遺伝子操作したブタの心臓 人に移植成功 世界初 アメリカ、診療報酬改定「想定外の決着」の裏事情 財務省も日本医師会も完敗?、ノーベル賞級の大発見!ウイルス研究者が疲労・うつの謎にたどり着いた理由)である。

先ずは、本年1月11日付けNHK NEWS WEB「遺伝子操作したブタの心臓 人に移植成功 世界初 アメリカ」を紹介しよう。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220111/k10013424401000.html
・『遺伝子を操作して、拒絶反応が起こりにくくしたブタの心臓を、人間に移植することに世界で初めて成功したと、アメリカのメリーランド大学は10日、発表しました。 動物の遺伝子を操作して、人間に移植できる臓器を作り出す研究は、各国で進められていて、将来的に移植用の臓器の確保につながる技術として期待されています。 アメリカのメリーランド大学医学部の研究チームは10日、遺伝子を操作したブタの心臓を、心臓疾患の男性に移植することに、世界で初めて成功したと発表しました。 研究チームによりますと、移植を受けたのは、不整脈で入院している57歳の男性で、症状が重いため通常の心臓移植の対象にならず、ほかの治療法では回復が見込めない状態だったということです。 手術は今月7日に行われましたが、3日後の10日現在も、男性の容体は安定しているということです。 移植に使われたブタの心臓は、再生医療の実用化に取り組むアメリカの企業が作ったもので、10か所の遺伝子を操作して、拒絶反応が起こりにくいようにしています。 移植にあたっては、アメリカFDA=食品医薬品局が、人命に関わる疾患で、ほかに治療の方法がない場合にかぎり、承認前の医療技術を使えるようにする、いわゆる「人道的使用」の許可を出したということです。 遺伝子操作した動物の臓器を、ヒトに移植する技術をめぐっては、各国で研究が進んでいて、アメリカではニューヨーク大学が去年、遺伝子操作したブタの腎臓を、実験的に脳死状態の人に移植する手術を2例、行っています。 今後、臓器の安全性が確認され、規制当局から治療法として承認されれば、将来的に移植用の臓器の確保につながる技術として期待されています』、「移植に使われたブタの心臓は、再生医療の実用化に取り組むアメリカの企業が作ったもので、10か所の遺伝子を操作して、拒絶反応が起こりにくいようにしています」、なるほど。「アメリカFDA=食品医薬品局が、人命に関わる疾患で、ほかに治療の方法がない場合にかぎり、承認前の医療技術を使えるようにする、いわゆる「人道的使用」の許可を出した」、認可条件も厳格なようだ。しかし、これで「移植」「医療」が大きく飛躍する可能性がある。

次に、1月17日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの横田由美子氏による「診療報酬改定「想定外の決着」の裏事情、財務省も日本医師会も完敗?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/292780
・『令和4年度予算案で焦点の一つだった診療報酬改定は、医師や看護師らの人件費や技術料に当たる本体部分を0.43%引き上げる方針で決着した。この結果を日本医師会(日医)関係者は「完敗」だと言い、財務省側も「敗れた」と見ているようだ。日医・厚生労働省(厚労省)・財務省や官邸など、各所の思惑が交錯する中、岸田文雄首相が+0.43%を決断するに至る背景を探った』、「日本医師会」、「財務省」とも「敗れた」、とはどういうことだろう。
・『診療報酬改定、日本医師会は「実質的な完敗」  「結局、中川執行部は、何もできなかったということです。岸田首相は、中川俊男日本医師会会長の顔を立てたわけではない。むしろ、中川会長の顔なんてどうでもよかった。重要なのは、半年後の参議院選挙で絶対に勝つことだった。それが、“本体微増”という岸田裁定に結びついたにすぎない。診療報酬全体では-0.94%。実質的には、日医と厚労省は財務省に完敗した。政治の世界を知らなすぎた」 日本医師会関係者は、眉をひそめて、日医の未来を憂えた。 日医に強い影響力を持つ地方の院長も、「この先、日医は、医療の現場はいったいどうなるのだろうか。政権にかみつくだけでは野党と一緒」と、不安を隠せない様子で、深くため息をつき、こう語った。 「会長が中川さんだったから仕方ないとは思う。逆に、よくあの数字で止まってくれた。もっと財務省に下げられていた可能性は十二分にあったからね」』、「“本体微増”」と「診療報酬全体では-0.94%」、この間にはどんな項目があるのだろう。
・『日本医師会と厚労省の「プラス改定」主張には説得力なし  2021年12月24日、令和4年度予算案が閣議決定した。 焦点の一つだった2年に1度の診療報酬改定は、当初、財務省側が主張する、「医師らの技術料にあたる本体部分は+0.3%台前半」で押し切られそうな勢いだった。中川会長の政界人脈のなさや、頑迷な性格がネックとなっていたのは言うまでもないが、医療現場の窮状を訴えるばかりで、財務省と戦うには、あまりに感情論に走り過ぎていたからだ。 現場の疲弊は間違いない。しかし、コロナで疲弊しているのは医療だけではない。それが一般的な国民感情だろう。 説得力のある数字を示すことなしに、プラス改定を主張する中川会長と厚労官僚。彼らは、昨年実施した「第23回医療経済実態調査(医療機関等調査)」の中で、自らの調査を基に「診療所の利益が6月にはコロナ前の水準に戻った」といった趣旨の記載をしたにもかかわらず、財務省サイドからその点を突っ込まれると「何の意味も持たない数字」と強弁した』、「中川会長と厚労官僚」が「自らの調査」を「「何の意味も持たない数字」と強弁」するとはいくら返答に窮したとはいえ、お粗末過ぎる。
・『財務省「完勝」の予測が外れた理由  誰もが、財務省の完勝を確信していた。では、なぜ財務省はそれができなかったのか。一つは、策士策に溺れるという言葉があてはまるかもしれない。今回の厚労第1担当主計官は10年に一人の逸材と呼ばれる一松旬氏。しかし、その優秀さが裏目に出る。財務省サイドは、中川会長の現在の不人気ぶり、前会長である横倉義武終身名誉会長がいまだに人望があること、また、その横倉前会長を引きずり下ろして中川氏が会長職をもぎとったことを熟知していた。 政界に幅広い人脈を持つ横倉名誉会長は、いまだ財務省に強い影響力を持つ麻生太郎現自民党副総裁に加え、安倍晋三前首相(現安倍派会長)らとも太いパイプを築いていた。それが、横倉時代、本体でのプラス改定が継続した背景でもある。 横倉前会長のような絶妙な人間力を持たない中川会長は、麻生副総裁を怒らせるという大失態を犯す。日医の頼みの綱である武見敬三議員も自見はなこ議員も、当選回数が少なく、数だけは多い厚労族議員をまとめきれない上に、大臣折衝の根回しもできずにいた。診療報酬の改定率は、毎回、最後は厚労省と財務省との間の大臣折衝で決着がつく「政治案件」なので、代表的な組織内候補に力量が足りないのは致命的だった。 中川会長自身にも現執行部にも政権との強いパイプはない。むしろ、敬遠されている。そう見た財務省は、本体部分で、横倉前会長時代の実質平均+0.42%を「横倉の壁」として、超えさせないようにという防波堤を自ら作ってしまったのだ。これを認めた厚労官僚はこう言った。 「本来的には0.3%台の攻防だったはずなのに、彼らが0.4%台にしてくれた」 実際、コロナ対策では何ら力を発揮できず、官邸との連携が最悪に等しかった中川会長に対しては、岸田首相も当初冷ややかだった』、「財務省」が「+0.42%を「横倉の壁」として、超えさせないようにという防波堤を自ら作ってしまった」、のはあえて敵に花を持たせたのではなかろうか。
・『木原官房副長官が動き、落としどころを模索 こうしたせめぎ合いと混乱を横で見ていた木原誠二官房副長官が動かなかったら、財務省の思い通りに進んでいたかもしれない。しかし、来る参議院選挙を案じた木原副長官は、元財務官僚ではあるが、医療分野にも精通している。彼が落としどころを模索することを決意したのだ。 岸田首相に進言する一方で、中川会長と麻生副総裁との会食の席をつくり、大家敏志財務副大臣とも調整を図った。財務省関係者はこう嘆く。 「最大の戦略は、『中川会長に口を開かせるな』だったと聞いています」 この戦略は当たった。木原副長官は、横倉前会長派の麻生副総裁に加え、安倍前総理にも調整をするなど八面六臂(ろっぴ)の活躍をしながら、岸田首相に財務官僚さながらの粘り強い説明を行ったという。 そして、最終的に、岸田首相が出した答えが「本体部分+0.43%」だったのだ』、「木原官房副長官」の調整力は聞きしに勝るようだ。
・『財務省にとっても、厚労省・日医にとっても「想定外の決着」  木原副長官を中心に着々と外堀を埋められていたことは、財務省のみならず、厚労省や中川会長すら理解しておらず、こうして皆にとって「想定外の決着」がついたのである。 12月22日に、中川会長が「令和4年度診療報酬改定率の決定を受けて」という記者会見で、「厳しい財政状況でのプラス改定を評価したい」と語ったのももっともである。 だがその会見でも、中川会長は、謝辞を述べた政治家から「安倍晋三前首相」の名前を抜かすという大失態を犯し、後から、文章で安倍前首相の名前を入れるという、政治センスのなさを露呈していた(記者会見の様子はYoutubeで閲覧できるので、ぜひご覧いただきたい)。 こうした結果を受けて、ある日医関係者は、次のように訥々(とつとつ)と話した。 「中川会長にもう一期やらせて、東京都の今村聡副会長や埼玉県の松本吉郎常任理事につなぎたいという思惑を持っている人がいるようですが、柵木充明愛知県医師会長の評判がいい。バランス感覚もあるし、政治力もなかなかです。僕個人としては、彼に日医の未来を託したいです」 日医の会長選挙は、診療報酬改定と交互に行われる。既に焦点は、今年の会長選挙で、中川氏が再選できるかどうかに移っている。日医に転職した元官僚の一人は、かつて筆者にこう語った。 「日医は北朝鮮のようなところ。会長が交代すれば、人事も一新する」 ウィズコロナの時代、医療は「公」のものとなっている。選挙戦も時代に合わせ、前回のように実弾が飛び交うような事態は避け、国民に開かれたものとなるべきだろう』、「日医」はもっと政治力があると思っていたが、現在はかつての威光にすがっているだけのようだ。次の「会長」はどうなるのだろう。

第三に、1月25日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した医療ジャーナリストの木原洋美氏による「ノーベル賞級の大発見!ウイルス研究者が疲労・うつの謎にたどり着いた理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/293526
・『名医やトップドクターと呼ばれる医師、ゴッドハンド(神の手)を持つといわれる医師、患者から厚い信頼を寄せられる医師、その道を究めようとする医師を取材し、仕事ぶりや仕事哲学などを伝える。今回は第44回。現代に生きる日本人を悩ませる「疲労」と「うつ病」という二大問題のメカニズムを世界で初めて解明した、東京慈恵会医科大学ウイルス学講座教授の近藤一博氏を紹介する。近藤教授が見いだした“ウイルスの使命”とは』、興味深そうだ。
・『世界初、疲労とうつ病の謎を解き明かした  現代人の健康をおびやかす二大問題「疲労」と「うつ病」。世界の中でも日本人は特に、疲労やストレスによるうつ病患者や自殺者の数がトップクラスに多いという。そのことは、「過労死」という単語が「KAROSHI」としてそのまま英語になっていることからもうかがい知れる。 東京慈恵会医科大学ウイルス学講座の近藤一博教授は、この二大問題のメカニズムを世界で初めて解明するという快挙を成し遂げた。 疲労については ・原因物質を発見した ・「疲労感」と「労働や運動による生理的疲労」からなる疲労のメカニズムを解明し、従来「疲労回復効果がある」と思われていた物質のほとんどは「疲労感を軽減させる物質であり、疲労回復効果はない」ことを明らかにした ・疲労を客観的に測る技術を発明した ……というように、従来の常識を覆してしまった。 また、うつ病についても ・ほとんど全ての人に潜伏感染している「ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)」の遺伝子「SITH-1(シスワン)」を発見し、これがストレスレジリエンス(ストレスを跳ね返す力)を低下させることで、うつ病を発症させることを見いだした ・「うつ病は心の弱さや性格が原因」という説は間違いであることを明らかにした ・SITH-1を持っている人がうつ病を発症する確率は持っていない人の12.2倍、患者5人中4人はSITH-1を持っていることを明らかにした ……など、快進撃中なのである。) ただ、うつ病の謎を解いた論文は2020年6月、アメリカの権威ある科学誌『iScience(アイサイエンス)』(Cell Press)に掲載され、日本のマスコミも大々的に報じたにもかかわらず、「疲労の新事実」を含めて周知のされ方はいまだに不十分と言わざるを得ない』、「疲労感」は「日本」特有のものなのでやむを得ない面もあるが、グローバルな「うつ病」も「周知のされ方はいまだに不十分」なのは残念だ。
・『ノーベル賞級の大発見!ウイルス研究者が疲労・うつの謎にたどり着いた理由  「うつ病は2030年には世界で最も重要な疾患になると言われています。世界では全年齢層にわたって2億6400万人以上が罹患(りかん)しているという調査結果もあります」(近藤一博教授、以下同) しかも、うつ病は過労死の最大の原因とされている。正しい知識が周知されることは、うつ病の予防法や治療法の開発を促進するのみならず、疲労やストレスが原因とされる多くの病気や諸問題の解消にもつながるものすごく大切なことなのだ』、「うつ病」の「謎」解明の功績はもっとPRすべきだ。
・『がん研究から派生したノーベル賞級の研究  「もともと高い志を持って医学部に入ったわけではないんです」と笑う近藤教授だが、ウイルスの研究に進んだ背景からは、若者らしい志が見える。 「ウイルス学というと感染症の研究を思い浮かべるかもしれませんが、私が学生の頃は、ウイルスの研究と言えばがんのウイルスが主流でしたので、私も大阪大学の微生物研究所で、がんとウイルスの研究から始めました。ウイルスの研究から発がん遺伝子を発見したことで知られる花房秀三郎先生(故人)は、大学院時代の教授である高橋理明・大阪大学名誉教授の兄弟弟子でした」 かつてのウイルス学は、がん研究の中心的な存在だったのだ。 「一方、高橋先生は、ヘルペスウイルスのワクチン作成に世界で唯一成功した功績で知られています。その人のもとで私も『体の中に潜んでいるウイルスが病気を起こす』ということに興味を持ち、体の中に潜んでいるウイルスと言えばヘルペスウイルスだということで、ヘルペスウイルスに着目するようになりました。 そこから疲労の研究に発展したのは、当時『慢性疲労症候群』という病気が注目されるようになり、原因はヘルペスウイルス6だといわれていたことがきっかけです」 がんの研究から疲労の研究への転身は、ごく自然な流れだったようだ。 「ヘルペスウイルスは研究対象としては地味だと捉えられるかもしれませんが、子宮頸(けい)がんなどの発生要因であるヒトパピローマウイルスの(HPV)の発見者であるツアハウゼンも、元々はヘルペスウイルスとがんの研究者でした。ただ当時の定説では、子宮頸がんの原因は単純ヘルペスウイルスだという説が有力でしたが、証明はされませんでした。彼は代わりにパピローマウイルスを研究し、ノーベル賞を取ったのです」 近藤教授の発見もまさにノーベル賞級の研究なのだが、受賞の可能性については存外諦め顔だ。 「発見するのが早すぎました。周囲からもよく、死んでから評価される仕事だと言われます。がん遺伝子を見つけた花房先生も、画期的な発見すぎてノーベル賞を受賞していません。受賞できたのは、その仕事に追随した人たちです。私も生きている間に認められるのは無理でしょう」』、「がん遺伝子を見つけた花房先生も、画期的な発見すぎてノーベル賞を受賞していません。受賞できたのは、その仕事に追随した人たちです。私も生きている間に認められるのは無理でしょう」、「ノーベル賞」にこんな不当なことがあることを初めて知った。
・『死体を見るトラウマが原因?日本と欧米の認識格差  うつ病と疲労をめぐる認識には、日本と欧米間では格差がある。 「アメリカで『あなたは今、疲れていますか』というアンケートを取ったところ、『YES』と答えた人は10%にも満たなかったそうです。日本では、56%が同じ質問に対して『はい』と答えています。 これはアメリカ人のほうが元気だからではありません。おそらく欧米では、疲れをためる前に休むのが当たり前という文化があるからでしょう。我慢して勤勉に働き続けることが美徳とされる日本と違って『働き過ぎて死ぬ』なんていう概念もないので、『過労死』という言葉も存在しない。疲労は日本人の国民病なのです」 ゆえに疲労が深刻な問題になるのは日本ならではの事象であり、近藤教授の快挙も、日本人だからこそ成し得たことといえる。欧米では日本ほど、疲労は重要な問題とは認識されてこなかったからだ。 しかし、うつ病は世界中の人が発症している。欧米人のうつ病は、疲労やストレスとは無関係なのだろうか。 「欧米でもうつ病は深刻な問題になっています。患者数も日本より多いでしょう。ただし、疲労はリスクファクターとは考えられていません。欧米でうつ病になりやすい職業を調べると、教師、弁護士、医師、警察官、軍人、消防士と、日本とほぼ共通する職業が並ぶのですが、これらの仕事の人がうつ病になるのは、『死体を見るトラウマ』だというのが定説です。 原因はストレスによるトラウマ、PTSD(心的外傷後ストレス障害)で疲労の要素はない。最近の有力な説では、『うつ病の原因は貧困』というのもあります。ちょっと首を傾げざるを得ませんよね。 やはり、社会的に疲労というものの重要性を認識していないから、こういう考え方になるのだと思います」』、「欧米でうつ病になりやすい職業を調べると、教師、弁護士、医師、警察官、軍人、消防士と、日本とほぼ共通する職業が並ぶのですが、これらの仕事の人がうつ病になるのは、『死体を見るトラウマ』だというのが定説です」、『死体を見るトラウマ』には笑ってしまった。
・『生存に有利な動物に進化させるヘルペスウイルスの恩返し  実は、近藤教授にとってヘルペスウイルスは愛すべき存在でもある。監修・原作を務めたマンガ『うつ病は心の弱さが原因ではない』(河出書房新社)の中で教授は、ネアンデルタール人を絶滅させた現代人の祖先クロマニヨン人について触れ、「ヘルペスウイルスによって生き残りに有利な動物に進化させられたのではないか」と語っている。ウイルスは単に悪さをするだけの存在ではないというのだ。 「私には一つの信念があります。それは、体に長期間潜伏しているようなウイルスは、何か人に対して良いことをしないと歴史から抹殺されてしまうという思いです。そこでヘルペスウイルスはどんな良いことをしているのかを考えてみた時に一番思い当たるのは、ストレスを亢進(こうしん)させるという働きでした。 ストレスは悪いことばかりじゃない。クロマニヨン人が現代まで生き延びてこられたのは、ヒトヘルペスウイルス6に感染してSHTH-1を持ったことでストレスが亢進され、不安を解消するために集団生活を営むようになるなどの“進化”がもたらされたおかげ。ですから私は、『SITH-1遺伝子は人類の進化に貢献してきたのではないか』という説を提唱しています」) つまり、宿主である人類に対する“ウイルスの恩返し”だろうか。 「そうですね。人もウイルスもお互いに利益がないと、両者とも滅びるか、ウイルス側が消されてしまうかのいずれかの道をたどります。だとしたら、ヘルペスウイルスがこんなにも長い年月、存在し続けられるはずがないのです。ある意味ヘルペスウイルス6は究極のウイルス。生まれてすぐに感染し、突発性発疹を発症させるものの、それは大した病気じゃない。その後は延々と体のなかに潜伏し続け、大した悪さをしないまま、人と共存する究極のウイルスです。 そんなウイルスがうつ病を引き起こし、ただ悪さをするだけのはずがありません」 なるほど、ヘルペスウイルスは人類との共存戦略を粛々と実践する、賢いウイルスなのかもしれない。 「だから私は、新型コロナウイルスのような感染症のウイルスは嫌いです。しょうもない病気を引き起こして、駆逐されてしまう。まったくウイルスの風上にも置けない(笑)」 ウイルス研究を始めて36年余り。近藤教授は疲労とうつ病に関する研究成果を一般の人に伝えるための手法として、漫画家のにしかわたく氏とタッグを組んで2冊のコミック本を出版した。ノーベル賞級の学者にしてはかなりユニークな試みだ。 「マンガを選んだ理由は二つあります。私はマンガしか読まないので、本を出すなら当然マンガだろうと。さらに二つ目として、皆に説明するならマンガがいいだろうと思いました。自分がそうだからです」 太古から続く人類とヘルペスウイルスの関係は、近藤教授の研究によって壮大なロマンの様相を呈して私たちを引きつける。そこには、人類と自然界が共存共栄していくヒントまでも潜んでいるような気がしてくるのだ。 (近藤一博氏の略歴はリンク先参照)』、「クロマニヨン人が現代まで生き延びてこられたのは、ヒトヘルペスウイルス6に感染してSHTH-1を持ったことでストレスが亢進され、不安を解消するために集団生活を営むようになるなどの“進化”がもたらされたおかげ」、「集団生活」という「進化」までウィルスの影響なのだろうか。「ヘルペスウイルス6は究極のウイルス。生まれてすぐに感染し、突発性発疹を発症させるものの、それは大した病気じゃない。その後は延々と体のなかに潜伏し続け、大した悪さをしないまま、人と共存する究極のウイルスです。 そんなウイルスがうつ病を引き起こし、ただ悪さをするだけのはずがありません」』、「うつ病」は「悪さ」の典型だ。どんないいことをもたらしてくれるのだろうか、ここでは不明である。せっかく「近藤教授の快挙」を紹介しながら、肝心なことが本文中で明らかにされてないのは、誠に残念だ。
タグ:医療問題 (その34)(遺伝子操作したブタの心臓 人に移植成功 世界初 アメリカ、診療報酬改定「想定外の決着」の裏事情 財務省も日本医師会も完敗?、ノーベル賞級の大発見!ウイルス研究者が疲労・うつの謎にたどり着いた理由) NHK NEWS WEB「遺伝子操作したブタの心臓 人に移植成功 世界初 アメリカ」 「移植に使われたブタの心臓は、再生医療の実用化に取り組むアメリカの企業が作ったもので、10か所の遺伝子を操作して、拒絶反応が起こりにくいようにしています」、なるほど。「アメリカFDA=食品医薬品局が、人命に関わる疾患で、ほかに治療の方法がない場合にかぎり、承認前の医療技術を使えるようにする、いわゆる「人道的使用」の許可を出した」、認可条件も厳格なようだ。しかし、これで「移植」「医療」が大きく飛躍する可能性がある。 ダイヤモンド・オンライン 横田由美子氏による「診療報酬改定「想定外の決着」の裏事情、財務省も日本医師会も完敗?」 「日本医師会」、「財務省」とも「敗れた」、とはどういうことだろう。 「“本体微増”」と「診療報酬全体では-0.94%」、この間にはどんな項目があるのだろう。 「中川会長と厚労官僚」が「自らの調査」を「「何の意味も持たない数字」と強弁」するとはいくら返答に窮したとはいえ、お粗末過ぎる。 「財務省」が「+0.42%を「横倉の壁」として、超えさせないようにという防波堤を自ら作ってしまった」、のはあえて敵に花を持たせたのではなかろうか。 「木原官房副長官」の調整力は聞きしに勝るようだ。 「日医」はもっと政治力があると思っていたが、現在はかつての威光にすがっているだけのようだ。次の「会長」はどうなるのだろう。 木原洋美氏による「ノーベル賞級の大発見!ウイルス研究者が疲労・うつの謎にたどり着いた理由」 「疲労感」は「日本」特有のものなのでやむを得ない面もあるが、グローバルな「うつ病」も「周知のされ方はいまだに不十分」なのは残念だ。 「うつ病」の「謎」解明の功績はもっとPRすべきだ。 「がん遺伝子を見つけた花房先生も、画期的な発見すぎてノーベル賞を受賞していません。受賞できたのは、その仕事に追随した人たちです。私も生きている間に認められるのは無理でしょう」、「ノーベル賞」にこんな不当なことがあることを初めて知った。 「欧米でうつ病になりやすい職業を調べると、教師、弁護士、医師、警察官、軍人、消防士と、日本とほぼ共通する職業が並ぶのですが、これらの仕事の人がうつ病になるのは、『死体を見るトラウマ』だというのが定説です」、『死体を見るトラウマ』には笑ってしまった。 「うつ病」は「悪さ」の典型だ。どんないいことをもたらしてくれるのだろうか、ここでは不明である。せっかく「近藤教授の快挙」を紹介しながら、肝心なことが本文中で明らかにされてないのは、誠に残念だ。
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電機産業(その5)(「不戦敗」日の丸電機がアップルやサムスンに再び挑むための絶対条件、ガバナンスにも厳しい目線が向けられている スマホ出荷停止「バルミューダ」に問われる成長力、伊藤忠と投資ファンドに日立建機株を売却へ 日立、グループ再編「最終章」に待ち受ける課題) [産業動向]

電機産業については、昨年10月2日に取上げた。今日は、(その5)(「不戦敗」日の丸電機がアップルやサムスンに再び挑むための絶対条件、ガバナンスにも厳しい目線が向けられている スマホ出荷停止「バルミューダ」に問われる成長力、伊藤忠と投資ファンドに日立建機株を売却へ 日立、グループ再編「最終章」に待ち受ける課題)である。

先ずは、本年3月19日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した早稲田大学大学院経営管理研究科教授の長内 厚氏による「「不戦敗」日の丸電機がアップルやサムスンに再び挑むための絶対条件」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/265923
・『垂直統合的な巨大開発組織が重荷となった総合電機メーカー  3月2日の日本経済新聞朝刊『経済教室』欄に「規模に合う複数の収益源を 電機業界生き残りの条件」という論考を寄稿した。この寄稿では、日本の規模の大きな電機メーカーは、その規模を支えるために必要な事業が求められるので、開始時点では小規模なビジネスでしかない新規事業だけでは、会社が支えられないという話をした。 前世紀、日本の総合電機メーカーはその規模を生かして、垂直統合的な巨大開発組織を使い、新たな技術と製品を世の中に送り出すことで、成功のパターンをつくり上げてきた。しかし、国際的に分業が進む中で、垂直統合的な製品開発組織や企業の規模がなくても主要なコンポーネントを外部から調達したり、製造を外部に委託したりすることで、会社の規模以上の製品開発が行えるようになった。 そうなると、巨大な総合電機メーカーはスピードの遅さや冗長性といったマイナス面が目立つようになり、むしろ小規模の専業メーカーの方が小回りが利き、変化の速い技術や市場の環境に適合できるようになった。 ダイソン、ボーズといった専業メーカーは、高付加価値な製品を発売し、規模を追求しなくても十分に利益を出せる程度の規模感の企業であり、組織と事業範囲の小ささがメリットになっている。アップルはもはや小規模な企業ではないが、PC、スマホ、タブレットといった特定の事業に集中し、詳細な設計や製造も外部に委託することで、ひとつひとつの製品のつくりこみに集中し、付加価値の高い製品を世の中に送り出してきた。 また、事業領域が広がり過ぎないことから、アップルのブランドや世界観をわかりやすく的確に消費者に伝えることができ、いたずらに規模を追わない事業を行うことができている。 いたずらに規模を追わないという言葉は、日本の大手電機メーカーの経営者からもよく語られることであるが、日本の大手企業の場合、垂直統合的な開発組織を自前で構築した結果、相対的に組織の規模が大きく、小さい事業の規模では自社の固定費をカバーできるだけの利益を確保することが難しい』、「日本の大手企業の場合、垂直統合的な開発組織を自前で構築した結果、相対的に組織の規模が大きく、小さい事業の規模では自社の固定費をカバーできるだけの利益を確保することが難しい」、その通りだ。
・『パナソニックもオンキョーも規模の大きさが経営を苦しめている  経営状況が苦しいパナソニックも、個々のビジネスや製品を見るとユニークで将来性を感じさせるものが多く見受けられる。かつて「マネシタ電器」とか「二番手商法」と呼ばれていた同社を考えると、今日のパナソニックの方が先進的で野心的な新製品が多く見られる。しかしそのどれもが、28万人の従業員、8兆円の売り上げの規模の総合電機メーカーの規模感という意味では、物足りなさを感じる。 同じ大阪企業のオンキヨーも、規模感が経営を苦しめていると言える。オンキヨーはオーディオ専業メーカーであり、総合メーカーより規模は小さいものの、パイオニアのホームエンタテインメント事業も吸収し、オーディオ専業メーカーとしては企業の規模が大きい。その規模感に見合う売り上げを求めようとすると、必然的に製品ラインナップが膨らみ、自社製品間での競合も起き、収益性は悪くなる。 日本はまだまだ終身雇用が雇用形態のベースにあるので、なかなかドラスティックに組織の規模を変えることはできない。また、日本にメーカーというエンジニア集団が残ることにも意味があるだろう。日本企業がリストラや倒産によって、日本のエンジニアの雇用が継続できなくなり、ちりぢりに世界中に散らばってしまうと、日本の雇用が守れないだけでなく、日本の技術蓄積が弱くなる。 これまで筆者が当連載において、「日本のダメな経営者の下で雇用が守られないのであれば、外資の優れた経営者の下で日本の雇用を守る方がマシだ」と述べてきたのは、そうした理由からである。 かつて日本の総合電機メーカーは、いずれも家電部門を持ち、1990年代頃までは日本国内にはおよそ10ブランドほどの家電ブランドが存在していた。これだけ多くのブランドが同じ家電製品でしのぎを削った結果、日本市場の消費者は非常に目の肥えた感度の高いユーザーに成長し、ダイソンなどの多くの海外家電メーカーは日本を格好のテストマーケティングの市場として、自社製品の価値向上に努めている。) 一方で、あまりに数多くの家電ブランドが併存することで、各社の競争は激しく、収益性を悪化させた面もある。現在のように、それぞれのメーカーがそれぞれの得意分野で戦うような個性を出し始めたのは、よい傾向と言える。 しかし、パナソニックやシャープといった、総合家電メーカーが全く不必要になったわけではない。グローバルな市場を見れば、LGやサムスンといった総合家電ブランドを全世界に展開している企業もあるし、中国の美的集団などはそれに追いつこうとしている。また、洗濯機のハイアール、テレビのTCLといった、得意な家電製品に特化した中国企業の伸長も著しい』、「総合家電」、「得意な家電製品に特化」、それぞれに存立基盤があるようだ。
・『パナソニックの「二番手商法」を韓国企業が真似て気炎を上げている  こうした世界の家電市場の中で、総合家電ブランドとしての日本メーカーは不戦敗を続けている。商品力がない、ということではないと思う。そもそも、総合家電メーカーとしてのラインナップをほとんど海外で展開していないことが問題である。 パナソニックであれば、同社が注力している中国やインドでは、総合メーカーとしての商品ラインナップを日本国内同様に揃えているが、日本市場同様に高付加価値製品に感度の高い欧米市場での存在感は薄い。何より残念なのは、かつてパナソニックが「二番手商法」と言われていたやり方を、規模を大きくしてサムスンやLGが行っていることだ。 パナソニックは、創業者の松下幸之助氏が健在のときに、「うち(松下電器)は東京にソニーという研究所がある」と言って、ソニーが初めて商品化した製品を後追いで発売し、より大きな市場を取るという戦略を示していた。 経営学で言うところの「2nd mover advantage」である。これは単なるものまねではなく、先行者が開発した製品を徹底的に研究し、先行者が先行者であるが故に見逃した製品の問題点や消費者の不満な点を満を持して解決し、より満足度の高い製品を上市するというやり方であり、製品開発力に自信がなければ二番手商法はできない。 その二番手商法が得意だったパナソニックが、今日ではかつてのソニーのようにアイデアを提供する側に回り、韓国メーカーが全世界に規模を拡大して、市場を席巻する構図が続いているのが現状である。 昨今、家庭内の家電をスマホやスマートスピーカーで操作するスマート家電がIoTブームの中で普及してきている。このコンセプトはかなり早くからパナソニックが提唱してきたものだ。しかし欧米のマーケットでは、スマート家電の元祖はサムスンやLGだと思われている。 サムスンやLGはパナソニックよりも後からスマート家電を製品化したのだが、欧米市場にパナソニックの冷蔵庫やエアコン、洗濯機は存在しておらず、多くの消費者は初めてサムスンやLGでスマート家電を知ることになった。 せっかく研究開発投資を行っても、主に日本市場からしか投資が回収できていないのが、日本の総合家電メーカーの実態である』、「日本の総合家電メーカー」が欧米市場だけでなく、アジア市場でも存在感を示せてない理由は何なのだろう。
・『足もとで日本メーカーに追い風が吹き始めた理由  しかし、昨今の状況は日本メーカーにチャンスが来たことを示している。韓国では4年にわたる文在寅政権の反財閥的経済政策によって、サムスンなどの大企業の経営が国内政治に足を引っ張られた格好になっている。 サムスン電子のグローバル戦略は、独立した事業部を多く抱える総合メーカーでありながら、社長直轄の未来戦略室という戦略部門が、事業部ごとの個別最適ではなく総合メーカーとしてのサムスンブランドのブランド力向上という全社的な視点から、世界各地域の商品戦略を担ってきた。しかし、この未来戦略室は2017年に廃止に追い込まれ、戦略室の経営幹部は辞任している。 また、韓国の財閥企業は、度々不祥事を起こすなど問題点も存在しているが、ファミリービジネス特有の長期的で力強いリーダーシップによって、首尾一貫した戦略的行動が採れるメリットがあり、こうしたトップダウンの軍隊式経営が韓国企業の成長を支えてきた。しかし、ここにきてサムスンのトップ・李在鎔副会長が逮捕起訴され、実刑判決を受けている。この逮捕が妥当かどうかはここでは議論しないが、司令塔をもぎ取られたサムスンと戦うとしたら、今が絶好のタイミングと言えよう。 また、スマート家電の進化は、家電の新たな価値の次元をつくろうとしている。これまで家電の価値は、製品の機能・性能が優れているか、価格が安いか、あるいはデザインや使い勝手が良いかによって評価されてきた。しかし、携帯電話の基地局やスマートフォンで、ファーウエイ製品に対してプライバシーや安全保障上の懸念が示されるようになると、通信機器の安全性がにわかにクローズアップされてきた。 スマート家電は全てがインターネットに接続され、多くの製品の場合、メーカーのサーバーで使用環境が把握され、通信回線を通じて家電のモニターや操作が行われている。つまり、スマート家電を導入するということは、家庭内のプライベートな空間の情報をメーカーのサーバーに預けるということに他ならない。 そうなれば、その家電が使いやすいか、機能性があるかとは別に、自分のプライバシーを預けるだけの信頼がある企業かどうか、という点が重要になってくる』、「スマート家電を導入するということは、家庭内のプライベートな空間の情報をメーカーのサーバーに預けるということに他ならない」、「その家電が使いやすいか、機能性があるかとは別に、自分のプライバシーを預けるだけの信頼がある企業かどうか、という点が重要になってくる」、日本の「家電メーカ」反撃のチャンスだ。
・『「安心」「信頼」こそが市場で生き残るための価値となる  企業に対する安心感や信頼感も、製品の価値を構成する要素である。長年、自由主義経済圏で実績のある日本ブランドの価値を示すことができる、格好の状況とも言える。欧州の携帯電話基地局整備は、一時は費用対効果の高さから中国製機器の導入が検討されてきたが、多くの国で安心、信頼の観点から見直しがかかり、NECや富士通など信頼性という価値が評価されたメーカーに、出番が回ってきている。 しかし、いくら携帯電話のセキュリティだけを高めても、家中のスマート家電が抜け穴になっていれば意味がない。これからのスマート家電は、便利なだけでなく、安心で信頼のある製品でなければならないし、そういうムーブメントを日本メーカーが積極的に欧米市場でつくっていくことも、新たな戦略の1つとなるだろう』、「日本メーカー」は既にそうした方向に舵を切っているのだろうか。

次に、1月15日付け東洋経済Plus「ガバナンスにも厳しい目線が向けられている スマホ出荷停止「バルミューダ」に問われる成長力」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/29416/?utm_campaign=EDtkprem_2201&utm_source=edTKO&utm_medium=article&utm_content=502114&login=Y&_ga=2.78672788.1051327066.1643071219-441898887.1641535678#tkol-cont
・『上場から1年が経った、中堅家電メーカーのバルミューダ。ここにきて、さまざまな問題が噴出している。 スマホ発売で話題を呼んだ、中堅家電メーカーのバルミューダ。だが、発売から約1カ月後の1月10日、同社はスマホの新規出荷の一時停止を発表した。 バルミューダは2021年5月にスマホ市場への参入を表明。11月16日に同社として初めてのスマートフォンを発表し、同月26日から発売した。 同社の寺尾玄社長は「世の中にあるスマートフォンは画一的になってしまっている」、「何かを買おうとするときにいくつかの選択肢から選べるが、スマートフォンの世界にはそれがない」と違いを出すことに熱を入れた。 4.9インチの小型画面で、曲線を基調とした丸みを帯びた「芸術」により他社との差別化を狙ったほか、寺尾社長は元ミュージシャンとしてアラーム音にもこだわり、メモやスケジュール管理などで高い体験価値を提供できるとするオリジナルアプリも入った。その一方で価格はSIMフリー版で10万4800円とハイエンド機種を彷彿させるものの、スペックはミドルレンジにとどまった。競合する国内メーカーからは「全く脅威にならない」との声まで出る。 それから約1カ月後の2022年1月10日、バルミューダはスマホの新規出荷停止を発表した。製造委託先の京セラから日本の通信規格に適合していることを示す「技術適合証明の認証に確認すべき事項が発生した」との連絡を受けたためだ。7日から新規出荷を見合わせていたが、14日には販売を再開し、既存利用者のソフトウェアのアップデートも行う。それでも短期間での出荷停止はブランドイメージの悪化につながる可能性もある。 スマホのみならず、経営体制にも厳しい視線が向けられている。スマホ発表から2日後の2021年11月18日に社外取締役の田中仁ジンズホールディングスCEOが内部者取引に関する社内規定を5月に違反していたと発表。 田中氏とともに「取引発覚時点で適切に対応しなかった」として寺尾社長など経営陣の報酬減額など処分を行った。バルミューダはガバナンス強化のため12月に新たに社外取締役を1人選任したが、その後田中氏は社外取締役を辞任した。 バルミューダは2020年12月16日に上場した。「そよ風のような扇風機」「窯から出したばかりのパンの味を再現するトースター」など、創業者の寺尾社長が追求する「芸術性」を極めた家電を高単価で販売する経営を強みとしている。 上場時の同社の株価は公開価格を63%上回る3150円で初値を付け、翌月には1万0610円まで上昇した。その後株価の値動きは落ち着き、2021年3月から11月までは6000円前後での安定した値動きが続いた』、「バルミューダ」の株価は、足元では上場「初値」をも下回る3005円と低迷している。
・『決算を受けて株価は下降線をたどる  ところが11月半ば以降、株価は下降線をたどる。株価の下落基調への転機となったのは、2021年11月9日に発表された2021年1~9月期決算だった。スチームトースターなどの販売が好調だったことから、売上高は前年同期比36.9%増の110億円で着地。だが、営業利益は同52.7%減の4.34億円にとどまり、営業利益率は3.9%になった。部品の需給逼迫による原価率上昇や、新規事業への投資にともなう人件費や研究開発費の増加が響いたためだ。 バルミューダは自社工場を持たず国内外の工場に製造委託して、自社では企画開発と販売に注力するファブレス経営をとりつつ、相場にとらわれない高単価で製品を販売する。ゆえに営業利益率は10%以上と高収益だったが、今回の決算を受けて市場は敏感に反応した。 12月15日に株価は4000円を割り込むようになった。12月20日にバルミューダのオンラインストアで使える株主優待割引クーポンの導入が発表されたことを受け、一時的に株価は持ち直した。しかしスマホの出荷一時停止を受け、1月11日は一時、年初来安値となる3575円まで値を下げた』、株価推移は次のグラフの通りで、もはや下げを止める材料はなさそうだ。
https://finance.yahoo.co.jp/quote/6612.T/chart?styl=cndl&frm=wkly&scl=stndrd&trm=2y&evnts=volume&ovrIndctr=sma%2Cmma%2Clma&addIndctr=
・『差別化戦略を維持することができるか  寺尾社長は上場時に行った1年前の東洋経済のインタビューに対して「(上場は)目的ではなく手段だ」と語っていた。上場前のバルミューダは品質管理がアキレス腱だった。2017年に扇風機、2018年にトースター、2019年には家庭用オーブンレンジのリコールをそれぞれ発表したこともある。 「一般的な会社としての管理能力を身につけないと成長できない」(寺尾社長)ことからIPO(新規株式公開)を目指して、品質やコストなどの管理体制を「上場企業品質」へ向上させることを狙った。寺尾社長は「以前と比べものにならないくらいいい会社になったと自負している」と話していた。 ただ製品面やガバナンス面が問われるなど、上場企業としての責任が重くのしかかっている。またマス層に簡単に理解される製品でないと評価されづらいなど、上場前よりも窮屈な環境が、本来のバルミューダの強みを奪っている可能性もある。 これまでもバルミューダの製品は初動の売上が低いものの、口コミなどで消費者の理解を得ていき、一度発売したら同じ型の製品を何年もかけて売り続けて拡大することが強みだった。2020年末に投入した掃除機も「当初の想定計画より初動は遅い」(バルミューダ関係者)ほか、スマホも今回投入した台数がすべて売れても国内シェアでは1%に遠く及ばず、ニッチ層にアプローチしている戦略が明らかだ。 2021年11月には初の旗艦店となる「バルミューダ ザ・ストア青山」を東京・港区に開店。バルミューダ製品やコンセプトをより理解してもらうことに注力している。12月に導入したオンラインストアで使用できる割引クーポンの株主優待も製品への理解を深めてもらうのが狙いだ。 寺尾社長のこだわりに基づく製品群による差別化戦略という強みを上場企業としても継続できるのか。話題の新興家電メーカーとしてだけでなく、「芸術性」という核をもつ企業として理解され、多くの支持を得られるかが上場2年目となる2022年の焦点となる』、「寺尾社長のこだわりに基づく製品群による差別化戦略という強みを上場企業としても継続できるのか」、最近の株価低迷を見る限り、期待薄のようだ。

第三に、1月20日付け東洋経済Plus「伊藤忠と投資ファンドに日立建機株を売却へ 日立、グループ再編「最終章」に待ち受ける課題」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/29501
・『最後の上場子会社、日立建機の株をついに放出。伊藤忠とのシナジーは。 2009年に22社もあった日立製作所の上場子会社の整理がついに完了する。 日立は1月14日、建設機械大手の日立建機の株式26%を1824億円で売却すると発表した。伊藤忠商事と投資ファンドの日本産業パートナーズが出資する特別目的会社が取得する。51.5%だった持ち分は25.4%となる。日立建機は日立の連結から外れ、持ち分法適用会社になる。 当局の審査を経て、6月には売却が完了する見通し。日立は2023年3月期に売却益770億円を計上する。 リーマンショック直後の2009年3月期に国内製造業で最悪の赤字を計上した日立は、モノ売りからITを活用する社会インフラ事業へと事業再編を進めてきた。日立化成、日立金属といった上場子会社を売却する一方、米国のIT企業グローバルロジックの1兆円買収などの手を打ってきた。 日立建機株の一部売却で、事業再編はひとまず完成する。日立の小島啓二社長は一連の再編を「基礎工事」と語り、2022年度から始まる新たな中期経営計画を「社会イノベーションというビジョンを実現する中計にしたい」と話していた。 ただ売却をめぐっては、曲折もあった。販売した建機の稼働率を監視してメンテナンスに生かすといったビジネスは日立のIoT基盤「ルマーダ」との親和性が高い。「(全株売却となった)化成や金属とは違う」(日立幹部)という意見もあった。 一方、リース資産を多く抱える日立建機は総資産が大きく、資本効率がよくない。加えて単体でも事業を展開できるという独立心が強く、完全子会社化にはハードルがあった。 こうした事情もあって、株式の一部売却という結論に落ち着いた。伊藤忠などによる出資の話が具体化したのは2021年末から。伊藤忠側も中長期で日立建機株を保有する意向があったことから早期決着になった。 日立の上場子会社再編では、日立物流や日立キャピタル(現三菱HCキャピタル)も持ち分を残したまま一部売却という手段を取った。この2社に関しては残った持ち分も徐々に売却しており、日立建機についても同じように今後売却していくかが注目される。 ただ、部品取引や技術連携のほか、日立ブランドの継続利用といったグループとの関係も維持する。そのため早期に売却することはないとみられる』、「販売した建機の稼働率を監視してメンテナンスに生かすといったビジネスは日立のIoT基盤「ルマーダ」との親和性が高い」、のであれば、「日立ブランドの継続利用といったグループとの関係も維持」されるのは当然だ。
・『浮沈を握る米州攻略  今回の売却は日立本体よりも日立建機にとって、大きな意味がある。「物流とファイナンスにおいて、伊藤忠の持つネットワークを最大限活用できないか考えている」。日立建機の平野耕太郎社長は14日の会見で、新たに大株主に加わる伊藤忠への期待を語った。日立との協業関係も変わらないと強調し、「この結果を非常にポジティブに捉えている」と笑顔を見せた。 建機業界でアメリカのキャタピラーや日本のコマツを追いかける日立建機にとって、目下の経営課題は世界市場の4割を占める米州市場の攻略だ。上位2社はこの市場で高い売り上げ規模を誇る一方、日立建機は全社売り上げの14%しかない。平野社長は2021年10月の東洋経済のインタビューで「今後の事業拡大には米州戦略が最重要」と語っていた。 日立建機は2021年8月、米州事業に関して大きな決断をしている。2001年以来続けてきたアメリカの農機大手、ディアとの合弁を2022年2月末で解消することを決めたのだ。当初は米州に販売網がなかったために現地企業と手を組んだが、近年はレンタルや部品販売・メンテナンスといったサービス事業を拡大する際に、どちらのプラットフォームを使うのかで隙間風が吹いていた。 近年、建機業界でも遠隔管理や電動化、自動運転化の流れが急速に進んでいる。日立建機はルマーダを生かした遠隔管理サービス「コンサイト」を展開しているが、米州だけ非搭載の製品を販売せざるをえなかった。合弁を解消すると、コンサイトを米州で展開できる一方、ディアに頼ってきた販売・物流体制は改めてつくらなくてはいけない。 伊藤忠は北米で小型建機を販売する子会社を持っており、オンライン建機レンタルの会社にも出資している。これらを生かすとともに、総合商社の持つ海上物流やファイナンスのノウハウも吸収したいところだ。そうした意味で伊藤忠はうってつけのパートナーだと日立建機は強調する。 ただ、市場関係者の目は厳しい。会見では「伊藤忠にサヤを抜かれるのではないか」という指摘も出た。平野社長は「使えるものは何でも使う」と応じたが、14日の日立建機の株価(終値)は前日比17%の大幅な下落となった。日立、日立建機、伊藤忠の3社で「三方よし」を達成できるか。結果で示すしかない』、「日立建機」の「株価」は次のように、年初来、暴落して、27日現在、2845円となった。市場は、「日立建機」の決断に疑問を持っているようだ。
https://finance.yahoo.co.jp/quote/6305.T/chart
タグ:電機産業 (その5)(「不戦敗」日の丸電機がアップルやサムスンに再び挑むための絶対条件、ガバナンスにも厳しい目線が向けられている スマホ出荷停止「バルミューダ」に問われる成長力、伊藤忠と投資ファンドに日立建機株を売却へ 日立、グループ再編「最終章」に待ち受ける課題) ダイヤモンド・オンライン 長内 厚氏による「「不戦敗」日の丸電機がアップルやサムスンに再び挑むための絶対条件」 「日本の大手企業の場合、垂直統合的な開発組織を自前で構築した結果、相対的に組織の規模が大きく、小さい事業の規模では自社の固定費をカバーできるだけの利益を確保することが難しい」、その通りだ。 「総合家電」、「得意な家電製品に特化」、それぞれに存立基盤があるようだ。 「日本の総合家電メーカー」が欧米市場だけでなく、アジア市場でも存在感を示せてない理由は何なのだろう。 「スマート家電を導入するということは、家庭内のプライベートな空間の情報をメーカーのサーバーに預けるということに他ならない」、「その家電が使いやすいか、機能性があるかとは別に、自分のプライバシーを預けるだけの信頼がある企業かどうか、という点が重要になってくる」、日本の「家電メーカ」反撃のチャンスだ。 「日本メーカー」は既にそうした方向に舵を切っているのだろうか。 東洋経済Plus 「ガバナンスにも厳しい目線が向けられている スマホ出荷停止「バルミューダ」に問われる成長力」 「バルミューダ」の株価は、足元では上場「初値」をも下回る3005円と低迷している。 株価推移は次のグラフの通りで、もはや下げを止める材料はなさそうだ。 「寺尾社長のこだわりに基づく製品群による差別化戦略という強みを上場企業としても継続できるのか」、最近の株価低迷を見る限り、期待薄のようだ。 東洋経済Plus「伊藤忠と投資ファンドに日立建機株を売却へ 日立、グループ再編「最終章」に待ち受ける課題」 「販売した建機の稼働率を監視してメンテナンスに生かすといったビジネスは日立のIoT基盤「ルマーダ」との親和性が高い」、のであれば、「日立ブランドの継続利用といったグループとの関係も維持」されるのは当然だ。 「日立建機」の「株価」は次のように、年初来、暴落して、27日現在、2845円となった。市場は、「日立建機」の決断に疑問を持っているようだ。
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金融業界(その13)(ついに新生銀行を手に入れたが…SBI「第4のメガバンク構想」に立ちはだかる深刻な問題 実現する前に地銀の体力がもつのか、2022年地銀再編を促すキーファクター MUFGやSBIの動向は?、「言うべきことを言わない」と金融庁が糾弾したみずほ銀行から学べる本当の教訓) [金融]

金融業界については、昨年11月17日に取上げた。今日は、(その13)(ついに新生銀行を手に入れたが…SBI「第4のメガバンク構想」に立ちはだかる深刻な問題 実現する前に地銀の体力がもつのか、2022年地銀再編を促すキーファクター MUFGやSBIの動向は?、「言うべきことを言わない」と金融庁が糾弾したみずほ銀行から学べる本当の教訓)である。

先ずは、昨年12月20日付けPRESIDENT Onlineが掲載した法政大学大学院 教授の真壁 昭夫氏による「ついに新生銀行を手に入れたが…SBI「第4のメガバンク構想」に立ちはだかる深刻な問題 実現する前に地銀の体力がもつのか」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/52943
・『“第4のメガバンク”実現へついに動き出す  12月11日、SBIホールディングスとSBI地銀ホールディングス(以下SBI)は、新生銀行に対して実施した株式公開買い付け(TOB)が成立したと発表した。TOBで議決権比率は47.77%に達し、SBIは新生銀行を連結子会社化する。 今回のTOBは、基本的にSBIが“第4のメガバンク”を目指す重要な取り組みとみられる。SBIは地方銀行8行と戦略的資本・業務提携を結び、金融商品ラインナップの拡充などを進めている。SBIは、そこに新生銀行の消費者金融や有価証券関連のビジネスを結び付けることで収益を拡大し、大手メガバンク3行に伍する金融ビジネスの確立を狙っているのだろう。各地方銀行と新生銀行の協業が加速すれば、SBIの銀行ビジネスは相応の成果を上げることができそうだ。 ただ、そこにリスクがあることは忘れてはならない。特に、わが国の超低金利環境は長期化する可能性が高い。それによって提携する地方銀行の経営体力が低下し、期待したほど収益力が上向かない展開も想定される。早期の成果実現に向けてSBIがどのように銀行ビジネスの効率性向上に取り組むかが注目される。SBIの取り組み次第では、銀行業界での再編が加速する展開もあるかもしれない』、今回のTOB劇では、「新生銀行」の企業価値が、公的資金を返済できるところまで向上するかが最も重要なポイントであって、「SBI」の「“第4のメガバンク”実現」は実は二義的問題である。
・『政府の「買収防衛策反対」が決定打に  SBIによるTOB成立に決定的な影響を与えたのは、政府(金融庁や新生銀行の株式を保有する預金保険機構など)が、新生銀行が成立を目指した買収防衛策に賛成しなかったことだ。 これまでの経緯を簡単に振り返ると、9月上旬にSBIは新生銀行に対するTOBを発表した。10月に入ると、新生銀行はTOBに条件付きで反対すると正式に発表し、11月下旬に臨時の株主総会を開催して買収防衛策の発動をめざした。その時点で、SBIによるTOBは敵対的なものに発展した。また、新生銀行は買収者から自行を助けてくれる“白馬の騎士(ホワイトナイト、友好的な買収者を指す)”の獲得も目指したが、ホワイトナイトは現れなかった。 11月に入ると状況は大きく変わった。新生銀行の株式の約2割を保有する政府が買収防衛策の発動に賛成しない方針を固めたのだ。その結果、新生銀行は買収防衛策を撤回し、SBIによるTOBが成立するに至った』、「新生銀行」が「公的資金返済」のメドも示さず、単純な「買収防衛策」発動を目指しても、「公的資金返済」を強く求めている「政府」にとっては、「賛成しない」のは当然であろう。
・『約3500億円もの公的資金を回収したい  政府が賛成しなかった理由の一つは、新生銀行の買収防衛策がすべての株主を公平に扱っているとはいいがたいとの判断があったからだろう。12月13日に預金保険機構が新生銀行の買収防衛策に「正当かというと疑義が残ると言わざるを得ない」との見解を示したのは、そうした認識の表れといえる。 また、政府は、旧日本長期信用銀行時代に注入した公的資金(約3500億円)を回収したい。政府は新生銀行に民間の一上場企業として独り立ちしてもらいたい。しかし、これまでの経営の実績や経営計画を振り返ると、公的資金返済のめどはたっていない。その一方で、SBIは積極的な買収・提携戦略やデジタル技術の活用などによって急速に証券や銀行ビジネスの成長を実現してきた。経済合理性の観点から考えると、SBIの提案は政府などの株主に新生銀行のさらなる成長期待を与えただろう。 以上の内容から政府は新生銀行の買収防衛策に反対したと考えられる。同様の判断から一部の投資ファンドも新生銀行が一時目指した買収防衛策に疑義を持ったようだ』、公的資金3500億円分は1株7500円で普通株に転換されているので、政府が損を出さずに売却できるためには、株価が1株7500円以上になっている必要があるが、現実の株価は2078円と1/3以下と程遠い。SBIの剛腕をもってしても、かなり難しそうだ。
・『超低金利環境で地銀はどこも厳しいが…  新生銀行買収によって、SBIが掲げる第4のメガバンク構想は相応の成果を上げる可能性が高まった。最も重要なことは、買収によって提携する地方銀行、および新生銀行のビジネスチャンス拡大が見込まれることだ。 わが国では、ゼロ金利政策などを背景に超低金利環境が続き、地方銀行の収益環境は厳しさを増している。特に、銀行の重要な収益源である短期と長期の金利差は縮小傾向で推移してきた。2000年1月初旬の10年国債の流通利回り(長期金利)と無担保コール翌日物金利の差は1.7ポイント程度あった(長期金利が1.7%、翌実物の金利がほぼゼロ)。 その後、日本銀行は金融緩和策を強化し2001年から量的緩和政策が実施された。リーマンショック後も日本銀行は緩和的な金融政策を続けた。2013年4月以降は異次元の金融緩和の実施によって長短の金利差は一段と縮小した。足許の長短金利差は0.10%程度だ。銀行が預金を集め、中長期の資金を貸し出すことによって利ザヤを稼ぐことは難しくなっている』、こうした「異次元の金融緩和」の副作用は深刻だ。
・『カードローン事業で収益源を増やしたい  その一方で、企業は内部に資金をため込み、借り入れのニーズが少ない。財務省が発表する年次別法人企業統計調査によると2020年度末の金融と保険業を除くわが国企業の利益剰余金(新聞報道などで内部留保と呼ばれる)は約484兆円の過去最高に達した。コロナ禍の発生によって一時的に資金需要が増えた場面はあったが、わが国企業全体として資金需要は弱い。 銀行にとって、資金を貸したくても、借りてくれる企業は少ない。結果的に、多くの地方銀行が投資信託の販売などによって収益を得なければならなくなっている。経営体力が相対的に小さい地方銀行が自力で成長期待が相対的に高い海外事業を強化し、海外企業への信用供与などに取り組むことも難しい。 SBIと提携する地方銀行にとって、相対的に厚い利ザヤが期待されるカードローン事業で新生銀行と協業することは、収益源の多角化につながる。新生銀行の証券化商品ビジネスも、地方銀行の収益獲得に資す可能性がある。新生銀行にとっても、地方銀行との協業の強化によって、地域ブランド創生などビジネスチャンスは増えるだろう』、もともと「新生銀行」など長期信用系の銀行は、「地方銀行」とのつながりは強かった。しかも「新生銀行」は傘下に消費者金融事業を抱えているだけに、「カードローン事業」での「協業」は上手くいく可能性がある。
・『第4のメガバンク構想に立ちはだかる問題  ただし、SBIの第4のメガバンク構想が想定通りの成果につながらないリスクはある。その一つが、超低金利環境が長引き、想定外に地方銀行の経営体力が低下する展開だ。 SBIが地方銀行との提携を増やした根底には、急速に地方銀行の経営体力が低下する可能性は低いとの見方があるはずだ。その見方に基づき、まずはデジタル技術の導入などによって地方銀行の事業運営の効率性を高める。そのうえでSBIは新生銀行のノウハウを持ち込むことによって銀行ビジネスの成長を加速させたい。 その事業戦略にとって、超低金利環境の長期化の影響は軽視できない。わが国では人口の減少などによって経済の縮小均衡化が加速している。本来であれば、政府はエネルギー政策の転換を急いで新しい産業の創生に取り組まなければならないが、今のところ岸田政権にはそうした考えが見られない。経済全体で新しい需要の創出を目指した取り組みが加速する展開は期待しづらい』、「エネルギー政策の転換を急いで新しい産業の創生」、など夢物語でしかない。
・『カードローン事業で収益源を増やしたい  その一方で、企業は内部に資金をため込み、借り入れのニーズが少ない。財務省が発表する年次別法人企業統計調査によると2020年度末の金融と保険業を除くわが国企業の利益剰余金(新聞報道などで内部留保と呼ばれる)は約484兆円の過去最高に達した。コロナ禍の発生によって一時的に資金需要が増えた場面はあったが、わが国企業全体として資金需要は弱い。 銀行にとって、資金を貸したくても、借りてくれる企業は少ない。結果的に、多くの地方銀行が投資信託の販売などによって収益を得なければならなくなっている。経営体力が相対的に小さい地方銀行が自力で成長期待が相対的に高い海外事業を強化し、海外企業への信用供与などに取り組むことも難しい。 SBIと提携する地方銀行にとって、相対的に厚い利ザヤが期待されるカードローン事業で新生銀行と協業することは、収益源の多角化につながる。新生銀行の証券化商品ビジネスも、地方銀行の収益獲得に資す可能性がある。新生銀行にとっても、地方銀行との協業の強化によって、地域ブランド創生などビジネスチャンスは増えるだろう』、「新生銀行」はもともとつながりがある「地方銀行」との「協業」はかなりやっていた筈で、さらに追加的にどの程度「強化」できるかは疑問だ。
・『第4のメガバンク構想に立ちはだかる問題  ただし、SBIの第4のメガバンク構想が想定通りの成果につながらないリスクはある。その一つが、超低金利環境が長引き、想定外に地方銀行の経営体力が低下する展開だ。 SBIが地方銀行との提携を増やした根底には、急速に地方銀行の経営体力が低下する可能性は低いとの見方があるはずだ。その見方に基づき、まずはデジタル技術の導入などによって地方銀行の事業運営の効率性を高める。そのうえでSBIは新生銀行のノウハウを持ち込むことによって銀行ビジネスの成長を加速させたい。 その事業戦略にとって、超低金利環境の長期化の影響は軽視できない。わが国では人口の減少などによって経済の縮小均衡化が加速している。本来であれば、政府はエネルギー政策の転換を急いで新しい産業の創生に取り組まなければならないが、今のところ岸田政権にはそうした考えが見られない。経済全体で新しい需要の創出を目指した取り組みが加速する展開は期待しづらい』、なるほど。
・『企業のアニマルスピリットにどう影響するか  そのため、成長期待が高まって資金需要が盛り上がる展開を想定することは難しい。日本銀行が異次元の金融緩和を続ける可能性は高い。かなりの期間にわたって国内の長短の金利差は足許のような低水準で推移する、あるいはさらに縮小することが考えられる。それに加えて、地域によっては急速に過疎化が進行し、都市部以上のスピードで資金需要が低下することも考えられる。 その結果としてデジタル技術導入によるコスト削減や新生銀行のカードローンビジネスによる収益強化などのシナジー効果が発揮されるよりも前に、地方銀行の経営体力が弱まる展開は排除できない。その場合、SBIの銀行ビジネスが持続的に収益を獲得することは難しくなる恐れがある。 そうしたリスクに対応するために、SBIは新生銀行と地方銀行の協業強化を急ぐだろう。それに加えて、SBIは傘下の銀行勢と異業種企業の提携や、より多くの地方銀行との提携を進めることによって、事業運営の効率性を一段と高めようとするだろう。それが、わが国の個人や企業のアニマルスピリットにどういった影響を与えるかが見ものだ』、「傘下の銀行勢と異業種企業の提携」、といっても、銀行法の制約から限定的だろう。簡単なものであれば、既に実行されている筈だ。

次に、 1月8日付け日刊ゲンダイが掲載した金融ジャーナリストの小林佳樹氏による「2022年地銀再編を促すキーファクター MUFGやSBIの動向は?」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/299647
・『2022年、地銀再編は進むであろうか。その帰趨を占うキーファクターはいくつかある。 まず試金石とみられるのが年末に経営統合を発表した愛知銀行と中京銀行のケースだ。名古屋に本店を置く両行は、22年10月に共同持ち株会社を設立し、その傘下に両行がぶら下がった後、2年後の24年をめどに合併する計画だ。統合後の預金量は5兆円規模、貸出残高で地域トップの地銀グループが誕生することになる。 愛知銀行の伊藤行記頭取は経営統合の狙いについて、「単独でシェアを増やすことは難しく、長い将来を見据えたときに、経営統合が必要だ」とした上で、「生き残りのためではなく、愛知の(融資)シェアはトップになる。攻めの統合だ」と強調した。事実、中京地区の金融機関の競争が厳しい。貸出金利も“名古屋レート”と呼ばれるほどシビアだ。厳しい競争に打ち勝つためには経営統合による規模拡大が必要だということであろう。 こうした経営を取り巻く厳しい環境が両行を統合へと舵を切らせたと言っていいが、同時に、資本政策を巡る大株主との関係も統合を決断させた要因となっている。中京銀行は、三菱UFJ銀行の前身である旧東海銀行と親密な関係にあり、歴代頭取も東海銀行出身者が就いていた。だが、1990年代後半からの金融危機のあおりを受け、2000年代初頭に経営危機に陥り、02年に東海銀行などが合併して誕生した旧UFJ銀行から資本支援を受けた。この関係から現在も三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が中京銀行株の39%を保有する持ち分法適用会社となっている。 だが、グローバルに事業展開するMUFGは、国際的な自己資本規制(バーゼル3)の適用を受けており、「株式などのリスク資産、とりわけ銀行株については基本的に保有そのものが抑制される方向にある」(エコノミスト)とされる。このためMUFGは中京銀行株の売却を検討してきた経緯がある。愛知銀行と中京銀行の経営統合の背景には、メガバンクの戦略転換も影を落としている。22年の地銀再編を占うキーファクターはメガバンクが大株主となっている親密地銀の資本政策といえそうだ』、合併しても、「貸出金利も“名古屋レート”と呼ばれるほどシビア」なのが多少緩和する程度だろう。
・『SBIはどうなるか  また、昨年、金融界の話題を席巻したSBIホールディングスの動向もキーファクターとなる。昨年末にSBIが新生銀行に仕掛けたTOB(株式公開買い付け)が成立。さらにSBIは株式を買い増し完全子会社化する方針である。SBIは地銀を糾合する「第4のメガバンク構想」を進めており、新生銀行をそのプラットフォームの中核に据える考えでいる。SBIはすでに第二地銀を中心に8行に出資しており、市場では、「新生銀行の買収手続きと並行して、SBIが次に狙う出資地銀の物色に入っている」(市場関係者)とされる。地銀再編は22年も進展を予感させる』、「SBI」、「新生銀行」は台風の目のようだ。

第三に、1月22日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した広報コンサルタントの風間 武氏による「みずほが「経営陣一新」、それでもメディアの辛口批判がやまない理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/294035
・『みずほの再出発に、早くも黄信号がともった。相次いだシステム障害問題の幕引きとなるはずだった新経営陣のお披露目会見では、社外取締役への不信がメディアから噴出した。現状のガバナンス体制へ“NO”が突き付けられたかたちだ。みずほフィナンシャルグループ(FG)と銀行のトップ2人を引責辞任に追い込んでなお、メディアが納得しない理由とは何か? ――。信頼回復へ第一歩を踏み出すための処方箋を探る』、興味深そうだ。
・『「みずほの顔」の坂井社長突然の降板という番狂わせ  「本日のご説明に先立ち、ご報告がございます」 1月17日に開いた記者会見の冒頭、みずほ銀行の藤原弘治頭取は厳しい表情でこう切り出した。 問題の陣頭指揮をとってきた坂井辰史FG社長が体調不良で、医師の指導により治療に専念せざるを得ないことを明かした。後任となる木原正裕執行役への交代が2月1日付へ2カ月早まった経緯を説明するためだった。 坂井社長は、これまで会見を取り仕切ってきたいわば“みずほの顔”だ。致し方ない事情とはいえ、“主役不在”のなんとも釈然としない会見がこうして始まった。) みずほはこの日、再発防止に向けてシステムの総点検や人材の増員などを盛り込んだ業務改善計画を金融庁に提出した。本来、策定の最高責任者である坂井社長がメインの説明者となるべきはずだった。 一般に、企業不祥事においては、経営陣の引責辞任や再発防止策の監督官庁への提出・発表のタイミングで、新旧経営陣のバトンタッチが行われることが多い。企業側としては、トップ交代劇によってメディア、ひいては世論の納得を勝ち取ろうとする。 旧経営陣が問題解決へ道筋をつけ、メディアからの批判や不信を一手に引き受けて舞台上から消える。新経営陣は初会見で過去との決別を宣言し、抱負を語る。メディアもいったんは矛を収め、お手並み拝見と模様眺めのスタンスへと変わる。 みずほも過去の不祥事において、下表の通り、トップ交代劇を繰り返してきた。 【みずほの不祥事と「経営責任明確化」の歴史】(リンク先参照) ところが、今回は、坂井社長降板による番狂わせにより、狙い通りの演出効果を発揮できなかった。 代わりにメディアの関心が集まったのは、後任トップ木原氏の所信表明ではなく、同席した社外取締役の甲斐中辰夫、小林いずみ両氏の発言だった』、「社外取締役」に焦点が当たったのも当然だ。
・『新聞各社の社説が一致したガバナンス体制への不信  新聞で最も読まれない記事、と揶揄されることもある「社説」。筆者も記者時代はそんな陰口をたたいたこともあったが、社論が込められていて軽んずるべきではない。今回は、メディアの真意を読み取る手掛かりとしたい。 各社には論説委員と呼ばれる専門記者がいる。局長、部長経験者というベテラン中のベテランが中心で、草稿をベースに議論を交わし練り上げ、最終稿として掲載される。つまりは、ある問題に対する社としての主張・見解の総括となる。 みずほの発表を受けた各社の社説で、一点、共通して厳しく指摘されていることがある。社外取締役の責任だ。 毎日新聞(20日付)「歴代経営陣を選んだ社外取締役の責任も、あいまいなままだ。(中略)人選は、社外取締役が主導している。失策を重ねた旧経営陣を選んだ責任を明確にしないままでは、新経営陣の正当性が疑われる」  日経新聞(20日付)「一連の障害を通じて、みずほの企業統治(コーポレートガバナンス)が十分に機能していないこともはっきりした。社外取締役を登用した取締役会は業務執行を適切に監督する役割を果たせなかったと言わざるを得ない」  読売新聞、朝日新聞 は昨年11月に金融庁が業務改善命令を出した段階で、社説を掲載している。 読売新聞(11月28日付)「金融庁は、取締役会の機能不全も問題視した。みずほFGは13人の取締役のうち6人が社外取締役で、大手企業の元社長らが並ぶ。危機対応の強化や企業統治の改革を迫る必要があった」  朝日新聞(11月28日付)「金融庁は今回の処分で、(中略)執行側だけでなく監督側の機能不全も指摘した。問われているのは企業統治総体の変革だ」 各社の社説がそろって手厳しい通り、17日の会見でも社外取締役の責任についての質問が相次いだ。 なお、みずほFGの社外取締役と重要な兼職については下記の通りだ(1月17日現在。みずほFGの公式サイトから引用)』、「新聞各社が共通して「社外取締役」の責任を取上げたのも当然だ。
・『会見で浮き彫りになった社外取締役の限界  みずほFGは2014年6月、メガバンク3社としては初めて「委員会等設置会社」(15年会社法改正から「指名委員会等設置会社」)へ移行した。前年に発覚した暴力団などへの不正融資事件を受けたコーポレート・ガバナンス(企業統治)強化をうたったものだった。 取締役会が経営を監督する一方、業務執行については執行役にゆだね、監視と執行を分離している。取締役会に監査、指名、報酬の三つの委員会を置き、各委員会のメンバーの過半数は社外取締役にしなければならない。人事や報酬の決定で外部視点を持つ社外取締役が強い権限を持つことになる。 みずほはガバナンス強化の“優等生”であっただけに、会見での社外取締役への追及も厳しかった。 矛先が向かったのは、取締役会議長でもある小林いずみ(注)氏だった。 「金融庁からの行政処分での指摘について認識はどうか?」 「コスト構造改革を進めることで歪みが生じることをどう考え、議論してきたのか?」 小林氏は、見ていて気の毒になるほど繰り返し「反省」を口にしながら、取締役会トップとして本問題への見解を初めて明らかにした。 経営陣の人選については、「経営チーム全体として最強となるようなあり方について、十分な目配りをしていたかというと十分ではなかったと反省している」。ガバナンス全体については、「巨大グループとしての各業態子会社のガバナンスについて十分な目配りが出来ていたかというと、自分としてまだ十分でなかったという非常に強い反省を持っている」と認めた。 会見の模様をネット中継したメディアは、日経新聞、NHKはじめ多数あり、社会的注目度の高さをうかがわせた。いわば衆人環視の下、社外取締役の限界があらわになったと言わざるを得ない。 各社がコメントを引用している青山学院大の八田進二名誉教授は、産経新聞記事(1月18日付)で、「実務型の社外取締役が現場で声を吸い上げ、みずほの歴史的、制度的課題にメスを入れなければ組織は変わらない」と締めくくっている』、「八田」氏の指摘は妥当だ。
(注)小林いずみ:成蹊大学卒、三菱化成、メリルリンチ日本証券の社長、ANA社外取締役などを歴任。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E6%9E%97%E3%81%84%E3%81%9A%E3%81%BF
・『報道と向き合うことが信頼回復の第一歩  会見と社説でメディアから指摘されたことは、その背後にある世論の認識であると受け止めるべきだろう。そして、信頼回復はメディアを通じてしかできないのが冷厳な事実だ。 現状のままでは、もはや何を語ってもメディアの理解は得られまい。 筆者の呼ぶところの“説明責任の迷路”( 詳しくは『三菱電機の相次ぐ「検査不正」、メディアが納得しない本当の理由とは』を参照)に陥っていると考える。 状況打開の次のチャンスは、4月1日以降の新経営陣の着任会見となる。メディアを納得させる具体的な善後策を示せるかに、全てがかかっている』、今度こそ「信頼回復」してほしいものだ。

第四に、1月24日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したプリンシプル・コンサルティング・グループ株式会社 代表取締役の秋山進氏による「「言うべきことを言わない」と金融庁が糾弾したみずほ銀行から学べる本当の教訓」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/293768
・『幹部向けのリスクマネジメント研修をやる際に、「最近の事件で最も印象に残ったものは何ですか」と聞く。たいてい「みずほ銀行のシステムトラブル」の話が出る。実際に、振り込みができなくなったりして、大きな社会問題になった。会社は信用を失い、その結果、経営陣は退任することになった。その後もシステム障害は頻発し、経営陣が頭を下げる写真はもう見飽きたほどだろう。 事件の印象をさらに強くしたのが、金融庁による業務改善命令の文書である(詳細はhttps://www.fsa.go.jp/news/r3/ginkou/20211126/20211126.html)。 他の原因についても述べられてはいるが、この文書によると、社員の「言うべきことを言わない、言われたことしかしない姿勢」がシステム上、ガバナンス上のトラブルを起こした真因だという』、興味深そうだ。
・『「言うべきことを言わない」の「言うべき」とは何か  さて、では、この「言うべきことを言わない」「言われたことしかしない」というのはいったい何のことを指すのか。考えてみると意外に難しい。 「言うべきことを言わない」から考えてみよう。言うべき――べきというからには、何かに照らして「すべきこと」が決まっているはずと考えられよう。では、その参照先とは何か。以下のようなものがありえる。 ・職業倫理に照らして――金融事業者、またはシステム開発者(運用)としてのあるべき姿 ・会社の経営理念や、行動指針に照らしてのあるべき姿  これらは一般的であり、おそらく金融庁の文書が言いたいのはこのことであろう。 しかしながら、組織の中の人間というのは、それ以外にもたくさんの「べき」に取り囲まれているのだ。 ・(○○事業部と対抗する)○○事業部の一員としてのあるべき姿 ・(○○派閥と対抗する)○○派閥のリーダーXさんの部下としてのあるべき姿 さらには ・子育てや住宅ローンにお金のかかる、一家の大黒柱としてのあるべき姿 これらのあるべき姿は、表向きは語られないが、実際のところは大変強い力を持つ。そして、これらは時として職業倫理や経営理念の求めるあるべき姿と真っ向から対立することもある。 そのような状況下にある組織の構成員に向かって、職業倫理や経営理念に照らして言うべきことを言え、と言ったところで、できるならとっくにしているのであって、そんなことは先刻承知、重々わかっていても、それができないからしていないのである。「職業倫理や経営理念に照らして」は、個々人に求めるのは厳しいものがある。「言うはやすし、行うは難し」の典型例といえるだろう。 たとえば、組織の中でマイナス情報を上げることは絶対的に好まれない。古今東西、およそ組織の体をなすものの上層部にとっての苦心は、マイナス情報をいかに上に上げさせるかに集約されるといっても過言ではない。多くの情報将校、インテリジェントスタッフが、トップの好まないマイナス情報を上に上げただけで左遷されたり、クビになったり、はなはだしきは斬首されたりした。どんな組織でも、余計な一言を言ったばかりに、トップの逆鱗に触れて職場を追われたという話の一つや二つはあるはずだ。ある情報を上に上げることが、いかに組織のためになるとわかっていようと、学費のかかる子どもの親としては、それを言ったばかりに路頭に迷うことになっては困るのだ。“言うべきことを言え”などと命じたところで、かしこまりました、と「言うべきこと」が上申されるわけがないのである。 マイナス情報を上げてほしいなら、「言うべきこと」などといった抽象論ではなく、具体的にどのような情報を欲しているか(NEED TO KNOW)を優先順位の整理を行った上で、トップ以下、各層の管理職が下に対して明確に定義する必要がある。好例としてはナポレオンの「午前二時の勇気」がある。 ナポレオンは、「寝室に退いたら、原則として我を起こすな。よい報告は翌朝でいい。しかし、悪い報告のときは、即刻我を起こせ。なぜなら我が決断と指揮命令がいるだろうから。不完全な報告で幕僚もいないときに決断を下す勇気を、我は『午前二時の勇気』と呼ぶ。その勇気において、我、人後に落ちず」と述べたという。(佐々淳行『重大事件に学ぶ「危機管理」』、「マイナス情報を上げてほしいなら、「言うべきこと」などといった抽象論ではなく、具体的にどのような情報を欲しているか・・・を優先順位の整理を行った上で、トップ以下、各層の管理職が下に対して明確に定義する必要がある」、「ナポレオンの「午前二時の勇気」」は本当によく練られた格言だ。
・『言われたことしかやらない姿勢とは何か  「言われたことしかやらない姿勢」がシステムトラブルの真因というのも不思議である。言われたことしかやらないというのは、「個別具体的で限定された行為のみをやる姿勢」と考えられるが、ここで思い出されるのは、SL(状況適応)理論である。 「指示的行動」⇒具体的な指示命令を与え、仕事の達成をきめ細かく監督する関わり方 「共労的行動」⇒部下に援助や指示を与え、問題解決や意思決定への参加を促す関わり方(図1はリンク先参照) つまり、部下の発達度がきわめて低ければ、行動をすべて管理して、なになにをせよ、と細かく命じる、これが教示型(指示型)。慣れてくれば、なになにをせよ、と指示はするが、本人にも裁量を持たせて、がんばってくれ、と見守るのが説得型(コーチ型)。さらに発達度が上がれば、本人の裁量を増やし、やり方にあまり口は出さず援助にとどめ、責任は持つのが参加型(援助型)。最も高度に発達した部下には、すべての権限を委譲して任せるのが委任型である。 指示を受けたことだけをするというのは、単純労働的な非熟練労働者に適用される「教示型」の仕事の進め方である。この方法が、銀行の高度なシステム開発に使われたとはいったいどういうことか。部下の発達度が低いのだろうか。 メガ銀行は最も優秀な人(少なくとも賢い人)たちが集まる会社の一つである。ベテランも多数いるのだ。それに、複雑なシステム開発の業務を担う人たちが、マニュアル的労働と同じような教示型で達成できるわけがないし、高度な内容を達成するのに、そのような自由度の低い仕事の仕方を本来は好むはずがない。つまり、これは、システム開発を担当した人たちにとっての自衛手段、リスクヘッジなのだ。 システムを担当した人たちの胸のうちはこんなふうではないだろうか。 ・かなりの確率で失敗が見込まれる状況であり、経営陣はシステムには興味がなく、できるだけ関わり合いたくないと思っている(何か起こったら、知らん顔をして、こちらの責任問題にするに決まっている)。 ・上司たちも、できれば我関せずで、支援的活動は見込めない(説得型ではない)。・成功しても特に褒められることもないが、失敗したらどえらく怒られる(左遷される)。 ・もし失敗したら、失敗の犯人捜しが行われる。その際には、“従前”と異なること、変わったこと、新しく挑戦したこと、など“余計なこと”が真っ先に疑われる(少なくともみずほ銀行の問題のシステムが組まれた時点では、銀行は前例主義の強いカルチャーに支配されている)。 ・抽象的な目標をもとにその内容を自分の裁量で決定し遂行すると(委任型)、失敗したらその責任は自分に帰することになる。そこで、すべての実施すべき行為をブレークダウンして具体化し、きわめて保守的な範囲を自分の業務範囲と設定し、その上で何をやるかを上司に指定してもらい(教示型)、それだけを実施するという方法を採る。 ・そうすれば、何か問題が起こっても「自分の持ち場については完璧に遂行しました」と言えるので、疑いがかからずに、責任を問われなくて済む。余計な提案もしていない(何かあったときに降りかかる火の粉を最小限にすることができる)。 ・もし、自分の持ち場と、他人の持ち場との間の連結で問題が起こったとしても、自分としては上司に指定されたことはしっかりとやっているので、自分の責任ではないと言い逃れができる。 だいたいこんなところであろう。 「言われたことしかしない姿勢」というのは、本来は高い能力のある人たちが、あえて委任型から教示型に仕事のやり方を退化させ、自己の裁量を大幅に下げることによって「責任追及から逃れる」ためにしているリスクヘッジの行為なのである。 本来、システム構築はクリエイティブであり、委任型や参加型の仕事の進め方でなければ成功しない。幾度にもわたる失敗からの自信喪失、または過度の細かいチェックの強制によって、あるいは時限爆弾のようにどこに埋まっているかわからない不具合の存在によって、現場の社員を教示型へ逃避させてしまったのではないか。そして、このような仕事のやり方が真因ではないとまではいわないが、むしろ、問題が起こることが高い確率で予測されたからこそ、言われたことしかやらない仕事のやり方に変えたというのが実際のところであろう。 このように、「言うべきことを言わない、言われたことしかしない姿勢」がそもそも何のことを言っているのかを把握すること自体が難しい。それを改善するのはもっと難しい。おそらく金融庁は、公開された文書とは別に表に出せない具体的な指導をしているはずであろうから、みずほ銀行側に十分に真意は伝わっているのであろう。 しかし、もし、この文書を見たどこかの社長が、これを教訓として(あるいはおこがましいが「他山の石」として?)、自分の会社の組織にリスクを感じ、思いつきのように「言うべきことを言わない、言われたことしかしない姿勢ではみずほ銀行のようなことが起こってしまう。皆さん、言うべきことは言ってください。言われていないこともどんどん実施してください……」などと命じても、聞く側はちんぷんかんぷんで、何ら実質的な内容は伝わっていないし、仮に表面的な言葉の意味が伝わったところで、「言うべきこと」「やるべきこと」は決して実行されないということをこそ、教訓として学び取るべきであろう。 「言うべきことを言わない姿勢」を非難するのではなく、役員および管理職が「どんな情報を欲しているか、下の人間は何を言うべきか」をあらかじめ明確にして、部下に伝える。そして、可能な限り、情報を上げた人が不利益を被らないような予防措置を講じておく。そうやって、初めて情報は上にも伝わり始める』、「「言われたことしかしない姿勢」というのは、本来は高い能力のある人たちが、あえて委任型から教示型に仕事のやり方を退化させ、自己の裁量を大幅に下げることによって「責任追及から逃れる」ためにしているリスクヘッジの行為なのである」、「「言うべきことを言わない姿勢」を非難するのではなく、役員および管理職が「どんな情報を欲しているか、下の人間は何を言うべきか」をあらかじめ明確にして、部下に伝える。そして、可能な限り、情報を上げた人が不利益を被らないような予防措置を講じておく。そうやって、初めて情報は上にも伝わり始める」、その通りなのだろう。
・『言われたことしかやらない姿勢とは何か  「言われたことしかやらない姿勢」がシステムトラブルの真因というのも不思議である。言われたことしかやらないというのは、「個別具体的で限定された行為のみをやる姿勢」と考えられるが、ここで思い出されるのは、SL(状況適応)理論である。 「指示的行動」⇒具体的な指示命令を与え、仕事の達成をきめ細かく監督する関わり方 「共労的行動」⇒部下に援助や指示を与え、問題解決や意思決定への参加を促す関わり方 (図1はリンク先参照) つまり、部下の発達度がきわめて低ければ、行動をすべて管理して、なになにをせよ、と細かく命じる、これが教示型(指示型)。慣れてくれば、なになにをせよ、と指示はするが、本人にも裁量を持たせて、がんばってくれ、と見守るのが説得型(コーチ型)。さらに発達度が上がれば、本人の裁量を増やし、やり方にあまり口は出さず援助にとどめ、責任は持つのが参加型(援助型)。最も高度に発達した部下には、すべての権限を委譲して任せるのが委任型である。 指示を受けたことだけをするというのは、単純労働的な非熟練労働者に適用される「教示型」の仕事の進め方である。この方法が、銀行の高度なシステム開発に使われたとはいったいどういうことか。部下の発達度が低いのだろうか。 メガ銀行は最も優秀な人(少なくとも賢い人)たちが集まる会社の一つである。ベテランも多数いるのだ。それに、複雑なシステム開発の業務を担う人たちが、マニュアル的労働と同じような教示型で達成できるわけがないし、高度な内容を達成するのに、そのような自由度の低い仕事の仕方を本来は好むはずがない。つまり、これは、システム開発を担当した人たちにとっての自衛手段、リスクヘッジなのだ。 システムを担当した人たちの胸のうちはこんなふうではないだろうか。 ・かなりの確率で失敗が見込まれる状況であり、経営陣はシステムには興味がなく、できるだけ関わり合いたくないと思っている(何か起こったら、知らん顔をして、こちらの責任問題にするに決まっている)。 ・上司たちも、できれば我関せずで、支援的活動は見込めない(説得型ではない)。 ・成功しても特に褒められることもないが、失敗したらどえらく怒られる(左遷される)。 ・もし失敗したら、失敗の犯人捜しが行われる。その際には、“従前”と異なること、変わったこと、新しく挑戦したこと、など“余計なこと”が真っ先に疑われる(少なくともみずほ銀行の問題のシステムが組まれた時点では、銀行は前例主義の強いカルチャーに支配されている)。 ・抽象的な目標をもとにその内容を自分の裁量で決定し遂行すると(委任型)、失敗したらその責任は自分に帰することになる。そこで、すべての実施すべき行為をブレークダウンして具体化し、きわめて保守的な範囲を自分の業務範囲と設定し、その上で何をやるかを上司に指定してもらい(教示型)、それだけを実施するという方法を採る。 ・そうすれば、何か問題が起こっても「自分の持ち場については完璧に遂行しました」と言えるので、疑いがかからずに、責任を問われなくて済む。余計な提案もしていない(何かあったときに降りかかる火の粉を最小限にすることができる)。 ・もし、自分の持ち場と、他人の持ち場との間の連結で問題が起こったとしても、自分としては上司に指定されたことはしっかりとやっているので、自分の責任ではないと言い逃れができる。 だいたいこんなところであろう。 「言われたことしかしない姿勢」というのは、本来は高い能力のある人たちが、あえて委任型から教示型に仕事のやり方を退化させ、自己の裁量を大幅に下げることによって「責任追及から逃れる」ためにしているリスクヘッジの行為なのである。 本来、システム構築はクリエイティブであり、委任型や参加型の仕事の進め方でなければ成功しない。幾度にもわたる失敗からの自信喪失、または過度の細かいチェックの強制によって、あるいは時限爆弾のようにどこに埋まっているかわからない不具合の存在によって、現場の社員を教示型へ逃避させてしまったのではないか。そして、このような仕事のやり方が真因ではないとまではいわないが、むしろ、問題が起こることが高い確率で予測されたからこそ、言われたことしかやらない仕事のやり方に変えたというのが実際のところであろう。 このように、「言うべきことを言わない、言われたことしかしない姿勢」がそもそも何のことを言っているのかを把握すること自体が難しい。それを改善するのはもっと難しい。おそらく金融庁は、公開された文書とは別に表に出せない具体的な指導をしているはずであろうから、みずほ銀行側に十分に真意は伝わっているのであろう。 しかし、もし、この文書を見たどこかの社長が、これを教訓として(あるいはおこがましいが「他山の石」として?)、自分の会社の組織にリスクを感じ、思いつきのように「言うべきことを言わない、言われたことしかしない姿勢ではみずほ銀行のようなことが起こってしまう。皆さん、言うべきことは言ってください。言われていないこともどんどん実施してください……」などと命じても、聞く側はちんぷんかんぷんで、何ら実質的な内容は伝わっていないし、仮に表面的な言葉の意味が伝わったところで、「言うべきこと」「やるべきこと」は決して実行されないということをこそ、教訓として学び取るべきであろう』、「「言われたことしかしない姿勢」というのは、本来は高い能力のある人たちが、あえて委任型から教示型に仕事のやり方を退化させ、自己の裁量を大幅に下げることによって「責任追及から逃れる」ためにしているリスクヘッジの行為なのである」、「このような仕事のやり方が真因ではないとまではいわないが、むしろ、問題が起こることが高い確率で予測されたからこそ、言われたことしかやらない仕事のやり方に変えたというのが実際のところであろう」、深く掘り下げると、面白いことが隠れているものだ。
タグ:今回のTOB劇では、「新生銀行」の企業価値が、公的資金を返済できるところまで向上するかが最も重要なポイントであって、「SBI」の「“第4のメガバンク”実現」は実は二義的問題である。 真壁 昭夫氏による「ついに新生銀行を手に入れたが…SBI「第4のメガバンク構想」に立ちはだかる深刻な問題 実現する前に地銀の体力がもつのか」 PRESIDENT ONLINE (その13)(ついに新生銀行を手に入れたが…SBI「第4のメガバンク構想」に立ちはだかる深刻な問題 実現する前に地銀の体力がもつのか、2022年地銀再編を促すキーファクター MUFGやSBIの動向は?、「言うべきことを言わない」と金融庁が糾弾したみずほ銀行から学べる本当の教訓) 金融業界 「八田」氏の指摘は妥当だ。 「新聞各社が共通して「社外取締役」の責任を取上げたのも当然だ。 「社外取締役」に焦点が当たったのも当然だ。 風間 武氏による「みずほが「経営陣一新」、それでもメディアの辛口批判がやまない理由」 ダイヤモンド・オンライン 「SBI」、「新生銀行」は台風の目のようだ。 合併しても、「貸出金利も“名古屋レート”と呼ばれるほどシビア」なのが多少緩和する程度だろう。 小林佳樹氏による「2022年地銀再編を促すキーファクター MUFGやSBIの動向は?」 日刊ゲンダイ 「傘下の銀行勢と異業種企業の提携」、といっても、銀行法の制約から限定的だろう。簡単なものであれば、既に実行されている筈だ。 「新生銀行」はもともとつながりがある「地方銀行」との「協業」はかなりやっていた筈で、さらに追加的にどの程度「強化」できるかは疑問だ。 「エネルギー政策の転換を急いで新しい産業の創生」、など夢物語でしかない。 もともと「新生銀行」など長期信用系の銀行は、「地方銀行」とのつながりは強かった。しかも「新生銀行」は傘下に消費者金融事業を抱えているだけに、「カードローン事業」での「協業」は上手くいく可能性がある。 こうした「異次元の金融緩和」の副作用は深刻だ。 公的資金3500億円分は1株7500円で普通株に転換されているので、政府が損を出さずに売却できるためには、株価が1株7500円以上になっている必要があるが、現実の株価は2078円と1/3以下と程遠い。SBIの剛腕をもってしても、かなり難しそうだ。 「新生銀行」が「公的資金返済」のメドも示さず、単純な「買収防衛策」発動を目指しても、「公的資金返済」を強く求めている「政府」にとっては、「賛成しない」のは当然であろう。 「「言われたことしかしない姿勢」というのは、本来は高い能力のある人たちが、あえて委任型から教示型に仕事のやり方を退化させ、自己の裁量を大幅に下げることによって「責任追及から逃れる」ためにしているリスクヘッジの行為なのである」、「このような仕事のやり方が真因ではないとまではいわないが、むしろ、問題が起こることが高い確率で予測されたからこそ、言われたことしかやらない仕事のやり方に変えたというのが実際のところであろう」、深く掘り下げると、面白いことが隠れているものだ。 「「言われたことしかしない姿勢」というのは、本来は高い能力のある人たちが、あえて委任型から教示型に仕事のやり方を退化させ、自己の裁量を大幅に下げることによって「責任追及から逃れる」ためにしているリスクヘッジの行為なのである」、「「言うべきことを言わない姿勢」を非難するのではなく、役員および管理職が「どんな情報を欲しているか、下の人間は何を言うべきか」をあらかじめ明確にして、部下に伝える。そして、可能な限り、情報を上げた人が不利益を被らないような予防措置を講じておく。そうやって、初めて情報は上にも伝わり始め 「マイナス情報を上げてほしいなら、「言うべきこと」などといった抽象論ではなく、具体的にどのような情報を欲しているか・・・を優先順位の整理を行った上で、トップ以下、各層の管理職が下に対して明確に定義する必要がある」、「ナポレオンの「午前二時の勇気」」は本当によく練られた格言だ。 秋山進氏による「「言うべきことを言わない」と金融庁が糾弾したみずほ銀行から学べる本当の教訓」 今度こそ「信頼回復」してほしいものだ。 (注)小林いずみ:成蹊大学卒、三菱化成、メリルリンチ日本証券の社長、ANA社外取締役などを歴任。
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中国情勢(軍事・外交)(その12)(中国の自信過剰と誤算が戦争を招く最大の脅威 MI6長官、習近平のメンツ丸つぶし 欧州「中国離れ」に火をつけたリトアニアの勇敢さ、中国が幸せの国「ブータン」を侵略 40年の国境画定交渉を無視するあり得ない手口とは) [世界情勢]

中国情勢(軍事・外交)については、昨年10月26日に取上げた。今日は、(その12)(中国の自信過剰と誤算が戦争を招く最大の脅威 MI6長官、習近平のメンツ丸つぶし 欧州「中国離れ」に火をつけたリトアニアの勇敢さ、中国が幸せの国「ブータン」を侵略 40年の国境画定交渉を無視するあり得ない手口とは)である。

先ずは、昨年12月1日付けNewsweek日本版「中国の自信過剰と誤算が戦争を招く最大の脅威 MI6長官」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2021/12/mi6_1.php
・『<007シリーズで有名な英諜報機関MI6の局長が長い歴史のなかで初めて公の場で演説をした。民間からの技術協力がなければ中国に勝てないと判断したからだ> イギリスの対外諜報機関の責任者が情報活動で最も重視している相手国として中国を名指しし、中国政府の「誤算」は戦争につながる可能性があると警告した。 2020年10月にイギリスの諜報機関MI6(正式名称「秘密情報部」)の長官に就任したリチャード・ムーアは11月30日に初めて公の場で演説を行った。そして、イギリスのスパイが直面する「4大脅威」として中国、ロシア、イラン、国際テロ組織の名を挙げ、中国がそのなかで最も重視すべき相手であると語った。 AP通信の報道によれば、ムーアは中国を「われわれとは異なる価値観を持つ独裁的国家」と呼んだ。そして、中国政府はイギリスとその同盟国に対して「大規模なスパイ活動」を仕掛け、「一般世論と政治的意思決定を歪めようと」試み、世界中に「独裁的支配の網」をはりめぐらすためのテクノロジーを輸出していると語った。 「中国政府は西側の弱点に関する自作のプロパガンダをみずから信じており、米政府の決意を過小評価している」と、ムーアは付け加えた。「自信過剰によって中国が判断ミスをするリスクは存在する」 ムーアはまた、中国の現政権は「大胆で決定的な行動」を後押ししていると述べ、その最たる証拠として1949年に中国本土から分裂した台湾を独立国として認めることを拒んでいることを挙げた。 「中国が軍事力を増強していること、そして中国共産党が、必要であれば力づくでも台湾を統一したがっていることも、世界の平和と安定を脅かす深刻な課題を提起している」と、ムーアは述べた』、「英諜報機関MI6の局長が長い歴史のなかで初めて公の場で演説をした」、「イギリスのスパイが直面する「4大脅威」として中国、ロシア、イラン、国際テロ組織の名を挙げ、中国がそのなかで最も重視すべき相手であると語った」、妥当な判断だ。
・『ウクライナ侵略も防ぐ  AP通信が報じたより詳細な報道は以下のとおり。 イギリスは「ロシアからの深刻な脅威にも直面している」と、ムーアは語った。さらに、ロシア政府が2018年にイギリスで起きた元スパイのセルゲイ・スクリパリの毒殺未遂など、暗殺事件の黒幕となり、サイバー攻撃を仕掛け、他国の民主的プロセスに干渉していると指摘した。 「わが国と同盟国、そしてパートナー国は、国際ルールに基づくシステムに違反するロシアの活動に立ち向かい、阻止しなければならない」とMI6長官は述べた。 「欧州およびその周辺のどの国も、ロシアの態度が改善されることを期待してバランスの悪い譲歩をする誘惑に負けてはいけない」と彼は言い、ロシアが2014年にウクライナからクリミアを併合し、最近もウクライナとの国境付近で軍を増強していることを指摘した。 この発言は、ウクライナにおけるさらなる侵略を防ぐためにロシア政府を牽制しようとするイギリスと北大西洋条約機構(NATO)の高官が発した最新の警告を反映している。 イランもまた大きな脅威を与える存在であり、「国家内の国家」とよばれるイスラム教過激派組織ヒズボラを利用して近隣諸国の政治的混乱をあおっている、とムーアは語った。 非政府組織の脅威に関して、ムーアはアフガニスタンの国際的に支援された政府の崩壊と武装勢力タリバンの政権復帰は、武装勢力を「奮い立たせる」要素になったと述べた。 「私はこの件について問題をぼかして語るつもりはない。米軍がアフガニスタンを去った今、脅威は成長する可能性が高い」とムーアは語る。だが彼はタリバンの支配の驚くべきスピードを、西側の諜報活動の失敗と呼ぶのは、「大げさ」であるとも言った。 一方、敵対的な国や集団にこれまでにない能力を与えているサイバーセキュリティの軍拡競争について、これに勝つためには、イギリスのスパイ組織はみずから根付いた極秘文化の一部を手放し、テック企業からの助けを求めなければならない、ともムーアは論じた。 ロンドンの国際戦略研究所で行われた今回の講演で、人工知能やその他の急速に発展する技術には破壊的な潜在能力があることからして、MI6は技術の進歩によって不安定化する世界で「秘密を保つためには、よりオープンになる」必要がある、とムーアは語った。 「われわれに敵対する者たちは、こうした技術を習得することで力を獲得できることを知っているため、人工知能、量子コンピューティング、合成生物学に資金と野心を集中している」と、ムーアは論じた。情報と権力を得るために膨大な規模でデータを収集している国の例として彼は中国の名をあげた』、「サイバーセキュリティの軍拡競争について、これに勝つためには、イギリスのスパイ組織はみずから根付いた極秘文化の一部を手放し、テック企業からの助けを求めなければならない、ともムーアは論じた」、今回、禁を破ってマスコミに登場したのも、こうした事情変化を反映しているのだろう。
・『ボンド映画とは違う  この状況に追いつくために、イギリスのスパイ組織は、「最大のミッションをも解決する世界レベルのテクノロジーを開発するために、ハイテク産業とのパートナーシップを追求していく」と、ムーアは言った。 「007」シリーズに登場する架空のMI6は自ら数々のガジェットを作り出していることに触れ、「ボンド映画のQとは違う。情報機関の中だけですべてをまかなうことはできない」とムーアは付け加えた。 民間部門と協力することは、秘密に包まれた組織にとって「大変化」であるとムーアは言う。イギリス政府は1992年までMI6の存在を認めなかった。最近、情報部は徐々にオープンになってきており、公認の歴史を本にして出版することも認められた。ただし、1949年までしかさかのぼることはできない。 コードネーム「C」で呼ばれる局長の名前が公表されるようになったのも1990年代のこと。ムーアはツィッターのアカウントを持っているが、これもMI6局長として初めてのことだ』、「民間部門と協力することは、秘密に包まれた組織にとって「大変化」であるとムーアは言う」、秘密を解き明かしていくスパイ物小説の醍醐味が若干薄らいだような感じを抱くのは、筆者だけではあるまい。

次に、本年1月15日付けNewsweek日本版が掲載した筑波大学 人社系国際公共政策専攻 准教授の東野篤子氏による「習近平のメンツ丸つぶし 欧州「中国離れ」に火をつけたリトアニアの勇敢さ」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/01/post-97855_1.php
・『欧州で存在感を増していた中国が、想定外の逆風にあえいでいる。きっかけは、小国・リトアニアが中国との経済協力関係を解消し、台湾に接近したことだ。筑波大学の東野篤子准教授は「激怒した中国政府はリトアニアに圧力をかけ、苦境に陥れた。だが、この報復行為に近隣諸国が強く反発。これまで良好だった欧州と中国の関係に隙間風が吹き込んでいる」という――』、興味深そうだ。
・『リトアニアと中国との関係はさほど険悪ではなかった  近年、欧州の小国リトアニアが注目を集めている。同国は中国との関係に見切りを付け、台湾との関係構築を大胆に進めているのだが、これに中国が猛然と反発し、あらゆる手段を用いてリトアニアへの圧力を強めている。 それでも台湾への接近をやめようとしないリトアニアの大胆さと、なりふり構わず同国へのけん制と報復に走る中国という構図に、国際社会の関心が集まっているというわけだ。 なぜこのようなことになったのか、経緯を簡単に振り返っておきたい。もともと、リトアニアと中国との関係はさほど険悪ではなかった。 2012年に中国と中・東欧や西バルカンの16カ国との経済協力枠組みである「16+1」が創設された際には、リトアニアはむしろ中国との関係強化に期待を寄せていたとみられる(なお、同枠組みは2019年にギリシャが参加した際に「17+1」と改称されたが、後述するようにリトアニアの離脱によって「16+1」へと逆戻りすることになる。また、本稿では混乱を防ぐため、時期的には「17+1」とすべきところもすべて「16+1」と記述する)』、もともと「リトアニアはむしろ中国との関係強化に期待を寄せていた」ようだ。
・『中国による「途上国扱い」に不満  発足から数年後、リトアニアだけでなく「16+1」諸国の多くは、同枠組みに不満を抱くようになった。 「16+1」で約束された中国による原発や高速道路の建設などの大型インフラ投資案件には、計画倒れに終わったものが少なくなかった。 実施されても計画が大幅に遅れ、予算が当初予定の何倍にも膨れ上がったものもある。 このため、中国主導のインフラ投資計画に大きな疑問符がつくようになったのである。 また、そもそも中国は「16+1」を、中国による「途上国支援」としてとらえていた側面がある。経済危機や不況に苦しむ中・東欧諸国や西バルカン諸国に対し、中国がインフラ投資を携えて手を差し伸べる――。これが中国の描いていた「16+1」のイメージであった。 しかし、「16+1」の加盟国には、欧州を代表するIT先進国のエストニアやリトアニアから、経済不況にあえぎ、支援を渇望する旧ユーゴ諸国まで、実にさまざまな国が存在していた。こうした国々を十把一絡げに「途上国」扱いしてきたことに、「16+1」の根本的な問題が存在していたのである』、「「16+1」の加盟国には、欧州を代表するIT先進国のエストニアやリトアニアから、経済不況にあえぎ、支援を渇望する旧ユーゴ諸国まで、実にさまざまな国が存在していた。こうした国々を十把一絡げに「途上国」扱いしてきたことに、「16+1」の根本的な問題が存在」、いくら大国とはいえ、ずいぶん荒っぽ過ぎるやり方だ。
・『習近平が出席した会議に首脳が欠席  リトアニアの中国離れが可視化されるようになったのは2021年以降のことである。同年2月にオンラインで開催された「16+1」首脳会議は、習近平自ら出席したにもかかわらず、6カ国が首脳ではなく閣僚を出席させた。 中国はとくに、首脳の欠席をいち早く表明したリトアニアとエストニアを問題視したようであり、両国の駐中国大使は深夜に外交部に呼び出され、叱責されたという。 中国との軋轢が表面化し、一層中国離れを加速させたリトアニアは同5月、「16+1」からの離脱を発表した。 この決定に関する当時の駐中国リトアニア大使の説明は以下のようなものだった。 すなわち、「16+1」にはEU加盟国と非加盟国が混在しているため、2つに分断される恐れがあった。 また、リトアニアは「16+1」を通じて中国への市場アクセスの改善を働きかけてきたが、中国の市場の閉鎖性は全く変わらなかった。つまるところ、「16+1」にこれ以上参加する意義を見いだすことができなくなった――。 リトアニア大使の説明には、「16+1」が抱えていた問題点が凝縮されていたのである』、「リトアニアは「16+1」を通じて中国への市場アクセスの改善を働きかけてきたが、中国の市場の閉鎖性は全く変わらなかった」、これでは「リトアニア」にとってメリットがないが、「中国」にはそこまで個別対応するヒマもなかったからなのかも知れない。
・『欧州で初となる「台湾代表処」を設立  「16+1」からの離脱宣言と相前後するように、リトアニアは台湾への急速な接近を開始した。7月には台湾の大使館に相当する「台湾代表処」を設立することを発表。 EUの27の加盟国のうち、すでに18カ国が台湾の出先機関である代表処を有しているが、その看板にはすべて「台湾」ではなく「台北」が用いられていた。「台湾」の名称を用いることは、中国が求める「ひとつの中国」原則に反するため認められないとする中国側の主張を、多くの欧州諸国が受け入れていたためである。 しかしリトアニアは欧州諸国として初めて「台湾」の名称を冠した代表処を設立することを選択した。対台湾関係の構築において、もはや中国の顔色をうかがうことはしないという決意の表れに他ならない。 また、「台湾」の名称を用いることは台湾を国家承認することを意味するものではないため、「ひとつの中国」原則違反にはあたらない、というのがリトアニアの立場であった。同代表処はその後、11月18日には正式に開設されている。 リトアニアはさらに、台湾に累計25万本近くの新型コロナウイルスワクチンを提供。またリトアニアと台湾の要人同士の訪問も今秋以降活発に行われている。 蔡英文台湾総統も、「状況が許せば、リトアニアという勇敢な国をぜひ訪問したい」と明言している。リトアニアと台湾は、「中国という共通の脅威に立ち向かう民主主義パートナー」と互いを位置づけ、連携をアピールするようになった』、「EUの27の加盟国のうち、すでに18カ国が台湾の出先機関である代表処を有しているが、その看板にはすべて「台湾」ではなく「台北」、「代表処を有している」「国」がこんなに多いとは初めて知った。
・『「歴史のごみ箱にたたきこまれるだろう」  こうした一連の動きは、中国をいたく刺激した。 中国共産党系の新聞『環球時報』英語版は、リトアニアを非難する記事を日々更新している。小国のリトアニアは、米国の歓心を買いたいがために中国に歯向かい、台湾に接近しているというのが、その主な論調である。 また、高圧的な発言で知られる趙立堅外交部報道官は12月20日、「ひとつの中国」原則は「国際関係における基本的な規範であり、国際社会における普遍的コンセンサス」であると強調したうえで、それを尊重しないリトアニアは「歴史のゴミ箱にたたきこまれるだろう」と切り捨てている』、「歴史のゴミ箱にたたきこまれるだろう」とは、「高圧的な」「趙立堅外交部報道官」らしい発言だ。
・『中国が行った報復措置の数々  中国のリトアニアに対する具体的な報復措置も次第にエスカレートしていった。8月には、駐中国リトアニア大使が中国側の要求で本国への帰任を余儀なくされた。 代表処の正式開設以降、駐リトアニア中国大使館は領事館レベルに格下げされたうえ、11月下旬以降はビザ発行などを含めた領事業務も停止された。 ほぼ同時期に、中国に輸出されたリトアニア製品が中国税関を通らなくなった。 そして12月中旬、それまで中国に踏みとどまっていたリトアニア外交官4名とその家族は、中国当局から外交特権の剝奪をちらつかされ、全員が中国から撤退した。 当面はリトアニアの外務本省からリモートで業務を行うという。外交官らへのこうした圧力は、外交官特権に関するウィーン条約にも違反している恐れがある』、「外交官特権に関するウィーン条約にも違反している恐れがある」ような対抗策を打ち出した「中国」も余程、腹に据えかねたのだろう。
・『リトアニアで製造・加工された製品は輸出を認めない  とはいえ、ここまでの段階では、リトアニアが実質的に被った被害は限定的であったといえる。そもそもリトアニアの対中貿易は同国の貿易全体の1%前後であり、中国との2国間貿易が滞っても、同国への経済全体に影響を及ぼすほどではなかった。) リトアニア大使館員の中国からの撤退にしろ、中国当局の厳しい監視と嫌がらせが続く中で、リトアニア人外交官らが中国で十分な外交活動ができる状況ではそもそもなかった。このまま中国にとどまれば拘束の危険もあり、引き上げはむしろ正解であったともいえる。 ただし、その後中国が採用した措置により、リトアニアはいよいよ窮地に追い込まれつつある。 中国は12月中旬以降、欧州諸国を中心とした多国籍企業に対し、リトアニアで製造・加工された製品を用いた場合には中国への輸出を認めないと通告したとされる。 リトアニアには、ドイツ、フランス、スウェーデンなどのEU加盟国の多国籍企業が多数活動しており、そのなかにはドイツの自動車部品大手コンチネンタルなども含まれる。同社はリトアニアの工場で、自動車の座席コントローラーなどの電子部品を製造し、中国にも輸出しているが、同社の製品も中国の税関を通過できない状況である』、「リトアニア」の弱点を突き「中国」のやり方は憎いばかりだ。
・『「ドイツ企業は工場を閉鎖する可能性がある」  影響は徐々に出始めている。EU加盟国の企業の一部は中国の圧力を受け、リトアニア関連の製品の使用停止を検討しているという。 また在バルト諸国ドイツ商工会議所は今週、リトアニア政府に対して書簡を送付し、「リトアニアと中国の経済関係回復のため、建設的な解決法が提示されるのでなければ、ドイツ企業はリトアニアにおける工場を閉鎖する可能性がある」と通知したという。 中国だけではなくリトアニアにも、態度を改める余地があるというメッセージが、ドイツのビジネス界から発せられた意味は重い。 リトアニアにとって、国内で稼働するドイツ企業はまさに生命線といえる。そのドイツのビジネス界が中国側に回るとなれば、リトアニア経済は完全に身動きが取れなくなる。 欧州の企業に直接圧力をかけるという中国の手法は、EU加盟国間の分断を深く静かに進行させている』、「欧州の企業に直接圧力をかけるという中国の手法は、EU加盟国間の分断を深く静かに進行させている」、「中国」の手法は外交巧者だけある。
・『ここまで妨害活動をする中国の「焦り」  中国がここまでしてリトアニアへの妨害活動を行う理由はなにか。それは、台湾への接近を検討している他の諸国に対する「みせしめ」に他ならない。 リトアニアに続いて「台湾」代表処を開設し、台湾との関係強化を図ろうとする国が間違ってもこれ以上増えないよう、全力で阻止しようとしている。 リトアニアの動きを今止めなければ、「ひとつの中国」原則が、中国から遠く離れた欧州の小国をきっかけに突き崩されてしまいかねないというのが中国の焦りである。 このため、国際法違反も厭わずあらゆる手段を用いてリトアニアに圧力をかけ、台湾との関係構築を断念させようとしているのだろう。 EUは、代表処の開設や台湾との交流の深化は「ひとつの中国」原則の違反ではない、とするリトアニアを支持している。そもそもEUでも、現在のEUの事実上の代表部である「欧州経済通商台北弁事処」を、「EU駐台湾弁事処」へと改称する動きも出ているし、2021年秋に公表されたEUのアジア太平洋戦略でも、対台湾関係の構築には積極的な姿勢を見せていた』、「リトアニアの動きを今止めなければ、「ひとつの中国」原則が、中国から遠く離れた欧州の小国をきっかけに突き崩されてしまいかねないというのが中国の焦りである。 このため、国際法違反も厭わずあらゆる手段を用いてリトアニアに圧力をかけ、台湾との関係構築を断念させようとしているのだろう」、そんな危機感が背後にあるのであれば、強硬措置も理解できる。
・『一丸となって対抗する体制にはないEU  その一方で、リトアニア製品が中国の税関でブロックされ、中国が欧州域内の多国籍企業にリトアニア製品のボイコットを強要していることに対しては、EUとして有効な対抗策をとることができていない。 EUは、中国の一連の行動には明確なWTOルール違反がみられるとして、WTOへの提訴を検討中だが、WTOを通じた問題には多大な時間が必要とされる。 また、中国がこうした理不尽な経済的圧力をEUに対して行使してくる可能性を念頭に、かねてEUでは独自の「反強要措置(ACI)」の策定が進んでいたが、このACIの発動までにはまだ多くのEU内部の調整を必要とするうえ、WTOルールとACIの整合性については、EU内部でも慎重な声がある。 すなわち、EUが一丸となって中国の対リトアニア圧力に対抗しうる体制には程遠いのである』、「EUが一丸となって中国の対リトアニア圧力に対抗しうる体制には程遠い」、多くの国の集合体である「EU」の宿命ともいえる。
・『小国を窮地に追い込んだ中国が失ったもの  しかし、リトアニアに対する強硬姿勢によって、中国が失いつつあるものも決して小さくないことには留意しておく必要があろう。 例えば、2020年末にドイツのメルケル首相が主導して基本合意にこぎつけたEU・中国包括的投資協定(CAI)は、中国の人権状況をめぐって中国とEUとの軋轢が鮮明になり、欧州議会が2021年5月に凍結を決めていた。 中国側は依然としてCAIの凍結解除を望んでいるとされるが、中国がEU加盟国への敵対行動を続ける以上、CAIの復活は絶望的である。 さらに、この一連の中国の言動で明らかとなった中国の「小国蔑視」は、これまで中国と密接な経済関係にあった中・東欧諸国の中国離れを確実に加速させている。 チェコやスロバキア、ポーランドなどの中・東欧諸国はリトアニアに続けとばかりに、台湾へのワクチン提供や要人の相互往来を、もはや中国に臆することなく展開している。 中国のさまざまな措置は徐々にリトアニアを窮地に追い込んでいるが、それと引き換えに中国は、かつてのような欧州諸国との良好な関係を、自ら手放しつつあるともいえるのである。(東野篤子氏の略歴はリンク先参照)』、「中国の「小国蔑視」は、これまで中国と密接な経済関係にあった中・東欧諸国の中国離れを確実に加速させている。 チェコやスロバキア、ポーランドなどの中・東欧諸国はリトアニアに続けとばかりに、台湾へのワクチン提供や要人の相互往来を、もはや中国に臆することなく展開している」、面白い展開になってきた。

第三に、1月22日付けデイリー新潮が掲載した経産省、内閣情報調査室内閣情報分析官の藤和彦氏による「中国が幸せの国「ブータン」を侵略 40年の国境画定交渉を無視するあり得ない手口とは」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2022/01220600/?all=1&page=1
・『「中国がブータンと係争中の国境地帯での入植地建設を加速させている」 これを報じたのは1月12日付ロイターだ。ロイターは米国のデータ分析会社ホークアイ360から衛星画像とその分析結果の提供を受け、専門家2人に検証を依頼した。その結果、中国がブータン西部の国境沿いの6か所で200以上の構造物の建設を進めていることがわかった。中国が入植地の建設計画を発表したのは2017年だ。2020年から工事が始まり、昨年になって建設が加速したとされている。政府が住民に補助金を出して、入植を進めていると噂されている。 日本で「幸せの国」として知られるブータンの人口は80万人に満たない。中国と国交を結んでいないブータンは約40年間、およそ500kmに及ぶ国境を画定させるために中国と粘り強く交渉を続けてきた。 だが今や超大国になった中国は、「吹けば飛ぶ」ようなブータンとまともに向き合おうとはしていない。既成事実を積み上げることで国境問題を強引な形で解決しようとしている。南シナ海で人口島を建設し領有権を主張する手口と同じだと言っても過言ではない。ブータンの領土保全のための長年の努力は水泡に帰そうとしている』、「今や超大国になった中国は、「吹けば飛ぶ」ようなブータンとまともに向き合おうとはしていない。既成事実を積み上げることで国境問題を強引な形で解決しようとしている」、「ブータン」を半ば無視した形で「国境問題を強引な形で解決しようとしている」、とは酷い話だ。
・『インドも反発する中国の入植地建設  領土の侵略ともいえる中国の入植地建設は、ブータンの庇護者を任ずるインドの安全保障にも直結する問題だ。入植地は中国、インド、ブータンが国境を接するドクラム高原にほど近く、この場所に中国が軍用道路を建設したことが原因で、2017年に中印両国の部隊が2カ月以上にわたって対峙した経緯がある。 ドクラム高原の南に位置するシリグリ回廊はインドの中心地域と北東地域を結ぶ戦略的に重要な場所だ。シリグリ回廊の幅は狭い(最小で約22km)ことから「ニワトリの首」と呼ばれている。中国がドクラム高原を制圧し、さらに南下して「ニワトリの首」を押さえてしまえば、インドの北東地域は孤立してしまう可能性が高い。 自らのアキレス腱を脅かす中国の入植地建設に対し、インドもブータンと同様、反発しているが、有効な対応をとれないでいるという。 インドと中国の間の3500kmにも及ぶ国境は未画定のままだ。 ドクラムから約1100km離れたラダック地域でも2020年両軍の間で乱闘が生じ犠牲者が出たことから、両軍の大部隊は今でも緊張したままの状態だ。 ラダック地域では今年1月1日、10地点で新年の挨拶とお菓子の交換が行われ、20カ月にわたる両軍の緊張緩和の兆しが見えていた。だがその直後に中国が密かに軍備拡張を進めていることが明らかになった。衛星画像を分析したインドメデイアは「ラダック地域にあるバンドン湖で、軍隊や武器を円滑に前線に移動させるために橋を建設している」と報じた。橋はバンドン湖の中国側にあり、ほぼ完成しているという。「中国はこれにより軍隊や武器を係争地帯に送るためのルートをもう一つ確保したことになる」としてインド側は警戒感を一層強めている。 中国はヒマラヤ高地での活動に200台以上のロボットを派遣する計画を実行に移そうとしている(2021年12月30日付デイリーメール)。兵士は極寒の山間部の酸素の薄い条件下で警戒活動などを行うことが困難なため、ロボットに入れ替えることを決定したのだという。派遣されるロボットは物資を運搬できる。小銃も装備しており、砲撃戦などの際にも様々な任務を遂行できるとされている。 中国は昨年末にも、インドが実効支配する北東部アルナチャルプラデシュ州内に「古里」「馬加」といった漢字表記の「公式名称」を一方的に発表した。中国が「有史以来の中国の領土に条例に基づいて命名した」としているのに対し、インドは「中国語の地名を付けようとアルナチャルプラデシュ州がインドの不可分の領土であるという事実が変わることはない」と猛反発している』、「中国はヒマラヤ高地での活動に200台以上のロボットを派遣する計画を実行に移そうとしている」、「派遣されるロボットは物資を運搬できる。小銃も装備しており、砲撃戦などの際にも様々な任務を遂行できるとされている」、「ロボット」を導入すると、和平がますます遠のきそうだ。
・『インドの“反撃”は  国境地域などで挑発行為を続ける中国を、インドも黙ってみているわけではない。従来の防御中心の戦略から転換し、攻撃能力を強化し始めている。インド側の攻撃能力の一翼を担うのは陸軍第17軍団だ(1月6日付Wedge)。9万人を擁する大規模部隊であり、インド空軍の支援を受けて機動的に部隊を展開することができる。中国の重要インフラを効果的に攻撃できる能力を持つ第17軍団は、昨年から作戦実行可能な状態になったとされている。 「インドは日米豪印による首脳会合「クアッド」に加盟したことで中国に対して今後は強気の態度で臨むのではないか」と指摘する専門家もいる。 「中国が一方的に挑発し、インドがこれに受け身で対応する」というこれまでの構図が崩れつつあるのだ。 日本では中国の台湾への軍事侵攻への懸念が強まっているが、米国は中国による台湾の統一を拒否する姿勢を鮮明にしつつある。自らの過ちで台湾侵攻のコストを極めて高価にしてしまった中国が「米軍のプレゼンスが低い南アジアなら国威発揚のための領土の拡張が比較的容易に行うことができる」と考えたとしても不思議ではない。 その一環がブータンとの国境沿いへの入植地建設かもしれないが、ブータンの背後に控えるインドは中国に次ぐ世界第3位の軍事大国だ。1962年の中国との大規模な国境紛争に大敗したことを機に核兵器を開発したことも忘れてはならない。 中国がこれまでと同様、南アジアで傍若無人な振る舞いを続ければ、捲土重来を期すインドと全面的な軍事衝突につながってしまうのではないだろうか』、「自らの過ちで台湾侵攻のコストを極めて高価にしてしまった中国が「米軍のプレゼンスが低い南アジアなら国威発揚のための領土の拡張が比較的容易に行うことができる」と考えたとしても不思議ではない。 その一環がブータンとの国境沿いへの入植地建設かもしれないが、ブータンの背後に控えるインドは中国に次ぐ世界第3位の軍事大国だ」、「中国」には大国らしい賢明な振舞いを期待したい。
タグ:「中国」には大国らしい賢明な振舞いを期待したい。 「リトアニアは「16+1」を通じて中国への市場アクセスの改善を働きかけてきたが、中国の市場の閉鎖性は全く変わらなかった」、これでは「リトアニア」にとってメリットがないが、「中国」にはそこまで個別対応するヒマもなかったからなのかも知れない。 そんな危機感が背後にあるのであれば、強硬措置も理解できる。 「欧州の企業に直接圧力をかけるという中国の手法は、EU加盟国間の分断を深く静かに進行させている」、「中国」の手法は外交巧者だけある 「リトアニア」の弱点を突き「中国」のやり方は憎いばかりだ。 「外交官特権に関するウィーン条約にも違反している恐れがある」ような対抗策を打ち出した「中国」も余程、腹に据えかねたのだろう。 「「16+1」の加盟国には、欧州を代表するIT先進国のエストニアやリトアニアから、経済不況にあえぎ、支援を渇望する旧ユーゴ諸国まで、実にさまざまな国が存在していた。こうした国々を十把一絡げに「途上国」扱いしてきたことに、「16+1」の根本的な問題が存在」、いくら大国とはいえ、ずいぶん荒っぽ過ぎるやり方だ。 「自らの過ちで台湾侵攻のコストを極めて高価にしてしまった中国が「米軍のプレゼンスが低い南アジアなら国威発揚のための領土の拡張が比較的容易に行うことができる」と考えたとしても不思議ではない。 その一環がブータンとの国境沿いへの入植地建設かもしれないが、ブータンの背後に控えるインドは中国に次ぐ世界第3位の軍事大国だ」、「中国」には賢明な振舞いを期待したい。 「歴史のゴミ箱にたたきこまれるだろう」とは、「高圧的な」「趙立堅外交部報道官」らしい発言だ。 「EUの27の加盟国のうち、すでに18カ国が台湾の出先機関である代表処を有しているが、その看板にはすべて「台湾」ではなく「台北」、「代表処を有している」「国」がこんなに多いとは初めて知った。 「中国はヒマラヤ高地での活動に200台以上のロボットを派遣する計画を実行に移そうとしている」、「派遣されるロボットは物資を運搬できる。小銃も装備しており、砲撃戦などの際にも様々な任務を遂行できるとされている」、「ロボット」を導入すると、和平がますます遠のきそうだ。 (その12)(中国の自信過剰と誤算が戦争を招く最大の脅威 MI6長官、習近平のメンツ丸つぶし 欧州「中国離れ」に火をつけたリトアニアの勇敢さ、中国が幸せの国「ブータン」を侵略 40年の国境画定交渉を無視するあり得ない手口とは) 中国情勢(軍事・外交) もともと「リトアニアはむしろ中国との関係強化に期待を寄せていた」ようだ。 東野篤子氏による「習近平のメンツ丸つぶし 欧州「中国離れ」に火をつけたリトアニアの勇敢さ」 「今や超大国になった中国は、「吹けば飛ぶ」ようなブータンとまともに向き合おうとはしていない。既成事実を積み上げることで国境問題を強引な形で解決しようとしている」、「ブータン」を半ば無視した形で「国境問題を強引な形で解決しようとしている」、とは酷い話だ。 藤和彦氏による「中国が幸せの国「ブータン」を侵略 40年の国境画定交渉を無視するあり得ない手口とは」 デイリー新潮 Newsweek日本版 「民間部門と協力することは、秘密に包まれた組織にとって「大変化」であるとムーアは言う」、秘密を解き明かしていくスパイ物小説の醍醐味が若干薄らいだような感じを抱くのは、筆者だけではあるまい。 「サイバーセキュリティの軍拡競争について、これに勝つためには、イギリスのスパイ組織はみずから根付いた極秘文化の一部を手放し、テック企業からの助けを求めなければならない、ともムーアは論じた」、今回、禁を破ってマスコミに登場したのも、こうした事情変化を反映しているのだろう。 「英諜報機関MI6の局長が長い歴史のなかで初めて公の場で演説をした」、「イギリスのスパイが直面する「4大脅威」として中国、ロシア、イラン、国際テロ組織の名を挙げ、中国がそのなかで最も重視すべき相手であると語った」、妥当な判断だ。 Newsweek日本版「中国の自信過剰と誤算が戦争を招く最大の脅威 MI6長官」 「中国の「小国蔑視」は、これまで中国と密接な経済関係にあった中・東欧諸国の中国離れを確実に加速させている。 チェコやスロバキア、ポーランドなどの中・東欧諸国はリトアニアに続けとばかりに、台湾へのワクチン提供や要人の相互往来を、もはや中国に臆することなく展開している」、面白い展開になってきた。 「EUが一丸となって中国の対リトアニア圧力に対抗しうる体制には程遠い」、多くの国の集合体である「EU」の宿命ともいえる。
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事件一般(その1)(京アニ放火事件で関心高まる「防火設備」 学ぶべき教訓は何か、京アニ事件「犯人野放し」批判で検証 病歴と犯罪の知られざる関係性、「京都アニメーション放火事件」など続発する事件は「下級国民によるテロリズム」なのか?、“人を殺して死のうと思った”事件続発 「孤立を防げ」の連呼が逆に危険な理由) [社会]

今日は、事件一般(その1)(京アニ放火事件で関心高まる「防火設備」 学ぶべき教訓は何か、京アニ事件「犯人野放し」批判で検証 病歴と犯罪の知られざる関係性、「京都アニメーション放火事件」など続発する事件は「下級国民によるテロリズム」なのか?、“人を殺して死のうと思った”事件続発 「孤立を防げ」の連呼が逆に危険な理由)を取上げよう。

先ずは、2019年7月22日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した株式会社さくら事務所 マンション管理コンサルタントの土屋輝之氏による「京アニ放火事件で関心高まる「防火設備」、学ぶべき教訓は何か」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/209374
・『34人が死亡、34人が重軽傷という大惨事になった京都アニメーション放火事件。3階建てのビルが丸ごと焼けるという事態に、驚いた人も多いはずだ。京アニの建物の状況がどうだったのかは今後の検証を待たねばならないが、この未曾有の大火災からオフィスビルやマンションが学ぶべき教訓を考えてみよう』、興味深そうだ。
・『ホテルニュージャパン火災を超える死者が出てしまった  3階建てのビルが全焼した京アニ。34人もの死者を出すというのは、未曾有の大火事といっていい。過去、とりわけ規模が大きい火災が起きると、それを契機に消防法を見直す、という流れになってきた。例えば死者118人を出した1972年の大阪・千日デパート火災。1982年の東京・ホテルニュージャパン火災(死者33人)、さらに2001年の新宿・歌舞伎町ビル火災(同44人)などだ。 死者100人を超える千日デパート火災は別格としても、今回の京アニは、ホテルニュージャパン火災を超える死者が出てしまった。 もちろん、犯人がガソリンを撒いて火をつけるという暴挙に出たわけだから、通常の火災とは訳が違う。おそらく爆風が事務所内を駆け巡り、通常の火災以上に、中にいた人たちはパニックに陥ったはずだ。 しかし、この特殊要因を考慮に入れても、鉄筋コンクリートの建物で各フロアがあれほどの勢いで全焼するというのは、かなり考えにくい。本稿執筆時点(7月19日)での情報を見る限り、その一番大きな理由は、すでに多くのメディアで指摘されているように、1階から3階までを貫く、らせん階段があったこと、そして「区画」されていなかったため、と考えられる。 オフィスビルであれマンションであれ、防火シャッターや防火扉によってスペースを区切り、火の手が急激に広がらないような対策をするが、具体的な基準は「建物の用途」や「床面積」によって異なる。 オフィスビルの場合、不特定多数の人が訪れる場所ではなく社員たちは建物の中をよく知っているから、避難にはさほど手間取らないと考えられる。かつ、危険物を扱うような業務内容ではないだろうし、ごく小規模なビルである。これらを考えると、緩めの基準が適用されたはずで、吹き抜けた形状のらせん階段もOKが出たのだろう。もしもっと大きなビルであったり、用途が異なる場合であれば、こうした形状のらせん階段はNGだった可能性が高い。 そして、らせん階段部分に防火扉や防火シャッターがあって区画されていればまだしも、それがなかったとなると、らせん階段が炎や爆風の通り道となって、建物の内部全体があっという間に炎と煙に包まれても不思議ではない』、建物の構造について言及している数少ない記事だ。
・『避難階段から屋上に出られなかったのはなぜか?  らせん階段や吹き抜けは開放感を演出できるので、戸建住宅でも多く設置されているが、各フロアが区画されず、連続性のある構造というのは、火の手が回るのも、煙が充満するのも極めて早い。防火の観点からは、かなり危険だといえるのだ。 もちろん、条件さえ満たしていれば、区画されないらせん階段を設置することは法令で認められている。しかし、「法令で認められているから絶対に安心」ではないのだ。ここに防火の難しさがある。 次に気になるのは、らせん階段とは別に屋上につながる階段が建物内にあったにもかかわらず、屋上に抜けるドアから外に出られなかったこと。各フロア別の死者数を見ると、19人とダントツで多いのは、3階から屋上に抜けるドア前の階段スペースだった。このドアが開かなかった理由は定かではないが、内部からカギが開くようにしていなければならないはずの場所だ。 そして、この階段は防火扉で区画されていたのか、もしそうなら防火区画として適切に機能していたか、今後検証すべきだろう。というのも、せっかく防火扉などが設置されているのに、扉の前にモノを置いているなどで正常に作動せず、大火災になった例が後を絶たないからだ。2013年に起きた福岡市整形外科医院火災(死者10人)でも、防火扉が閉まらないようにロープで固定されるなどして、作動しなかったことが明らかになった。 同じく、過去の火災事例では、せっかくの避難通路なのに、可燃性のモノを置いていたばかりに火の手が回ってしまい、逃げられなかったというケースも散見される』、「屋上に抜けるドアから外に出られなかったこと」、「この階段は防火扉で区画されていたのか、もしそうなら防火区画として適切に機能していたか、今後検証すべきだろう」、この点についての続報は見た記憶がない。
・『一般家庭や会社では何に注意すべきか?  このような痛ましい大火災が起きると、自宅マンションや会社の防火態勢がどうなっているのか、気になる人は少なくないはずだ。 そこで、3つのことをご提案したい。 まずは日々の点検。これは建物の防火管理者を中心に行うものだが、避難経路や防火扉・防火シャッター前にモノを置いていないかをチェックするのだ。 前述したように、ここにモノが置いてあるばかりに防火扉が作動しなかったり、避難経路に可燃物が置いてあって火が燃え広がり、避難できなかった、という悲劇は繰り返されている。 そもそも防火扉や防火シャッターがどこに設置してあるのか、無頓着な人も多いはず。デパートなどでは、防火シャッターの下のスペースは赤いビニールテープなどで囲ってあったりする。「ここにモノを置くな」と注意を促すためである。防火管理者のみならず、社員や住人全員が、こうした意識を共有すべきである。 そして半年ごとの点検。これは、消防法など、法令に基づく設備の点検であり、必須であるのはいうまでもない。 さらに年に1度の避難訓練。避難経路を自分の目で確かめ、実際に通ってみたり、防火扉、防火シャッターの場所を確認するいい機会である。また、建物の防火システムがどのように作動するか、皆さんはご存じだろうか? 例えば、あるマンションでは、あるフロアで火災が起きた場合、火災報知機が鳴るのはそのフロアと、1つ上のフロアのみ。そしてエレベーターは避難階で停止し、エントランスの自動ドアは開かなくなる、という仕組みとなっている。これは外部から入ってくる人を食い止めるためで、住民は非常用出口(誘導灯で表示されている)から外に出られる。 こういう仕組みを知らないまま火事に遭遇した場合、エレベーターが止まったとパニックになった挙句、避難階段で転んで怪我をする、というような事態になりかねない。火災など災害時には、誰もが慌てて正常な判断が難しくなる。だからこそ、避難訓練で非常時のシミュレーションをすることはとても大切なのだ』、ロンドンはかつての大火の経験から「避難訓練」が義務付けられており、シティの近代的ビルでの「訓練」は壮観である。
・『隣戸に逃げる経路は確保できているか?  また、マンションでは、非常時にはベランダに出て、隣戸との仕切りの板(「隔て板」と呼ぶ)を蹴破るなどして逃げるという避難経路が設定されているが、実はこの隔て板、意外と硬くて、非力な女性や高齢者、子どもの力では容易に蹴破れないことをご存じだろうか? ぜひ、避難訓練の際には、隔て板を蹴破ってみる機会も設けて、実際にどれくらい硬いかを、住民の皆さんで確かめていただきたい。最近では、蹴破るタイプではなく、レバーを回して板を外せるタイプも発売されている。大規模修繕に合わせて隔て板を交換するのも手だろう。 そして最後に煙対策。いざ火災に遭遇した場合、焼かれる以前に煙を吸い込んでしまい、一酸化炭素中毒で亡くなる方が少なくない。火災現場でもうもうと立ち上がる黒い煙で、人間はわずか1〜2分で簡単に意識を失い、死に至る。 もし不幸にしてそんな現場に遭遇してしまった場合には、ぜひビニール袋を口にあてて、袋の中で呼吸していただきたい。これで数分間は持ちこたえられるから、逃げるための時間稼ぎに有効だ。私は不測の事態に備えて、いつも財布の中にビニール袋を折りたたんで持ち歩いている。 京アニのケースのように、ガソリンを撒かれるという事態は、そうそう起きるものではない。しかし、火災の危険性はどんな建物でも少なからずある。「あのケースは特殊だった」で終わらせず、この事件から得るべき教訓を得ていただきたいと願う』、「ビニール袋を口にあてて、袋の中で呼吸していただきたい。これで数分間は持ちこたえられるから、逃げるための時間稼ぎに有効だ」、貴重なノウハウだ、出来るだけ「ビニール袋」を持ち歩くようにしよう。

次に、7月26日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したフリーランス・ライターのみわよしこ氏による「京アニ事件「犯人野放し」批判で検証、病歴と犯罪の知られざる関係性」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/209741
・『京アニ事件の疑問は増すばかり 社会は悲しみを乗り越えられるか  京都市伏見区にある「京都アニメーション」第1スタジオへの放火が報道されてから、1週間になる。心より、亡くなられた34名の方々のご冥福と、負傷された34名の方のご回復を祈りたい。 また、自身も火傷を負って重体と伝えられる容疑者・A氏(41歳)に対しても、1人の人間として回復を望む。できれば、回復後は適切なサポートのもとで取り調べを受け、人生と事件への歩み、そして自分の事件に対する思いを、自ら語ってほしい。 A氏と事件のディテールについての報道が重ねられるたびに、私は「とはいえ、なぜあんなことを?」という疑問が増えるばかりなのだ。 ちょうど1週間前の事件当日、仕事をしながら目に飛び込んでくる報道を時折り横目で見ながら、気になっていることがあった。身柄を確保されたA氏が、事件直後、「さいたま市在住の41歳の男」と報道されていたことだ。 警察は当然、実名と居住地と年齢を同時に把握していたはずだ。実名をメディアに公表することに対して警察が慎重な場合、考えられる可能性の1つは、本人の精神疾患や精神障害による人権への配慮だ。 ともあれ、事件当日の夜間から翌日にかけてA氏の実名報道が開始され、「精神的な疾患がある」「訪問看護を受けていた」「生活保護を受給していた」といった情報とともに拡散され始めた。SNSには、「なぜ野放しに?」「公金で生きさせる必要はなかった」といった意見が次々と現れ始めた。 精神障害を持つ当事者を主体に、誰もが地域で充実した暮らしを営める社会を実現するために活動してきた、「認定NPO法人地域精神保健福祉機構(コンボ)」という千葉県の団体がある。コンボは取材に対して「精神疾患のある人が事件に関与した場合、事件と精神疾患に関連性があるのかどうかが定まっていない時点でメディアは病歴を報じ、その内容がSNSで無軌道に拡散してしまいます。この状況を、大変憂慮しております」と答えた。 事件の翌々日にあたる7月20日、コンボは今回の事件報道に関する見解と、精神疾患を持つ当事者たちへのメッセージを公表している。 見解では、精神疾患という病歴を報道すると、事件の原因や動機という印象を与えたり、精神障害者は危険という偏見を助長したりすることが「過去の例から見て明らか」とされる。メッセージでは、怖れから外出もままならない辛い時間を乗り切るための知恵や、理解者や仲間に思いを受け止めてもらうことの重要性など、具体的で有益なアドバイスが並ぶ。身近に理解者や仲間がいない人々のために、思いを吐き出すフォームも設置された。 しかし、過去とは異なる成り行きも見受けられる。コラムニストのオバタカズユキ氏は、事件直後から「精神疾患と犯行を安易に結びつけないで」という注意喚起の声がSNSのあちこちに上がったのを発見し、「嬉しい誤算」「この世の中もまだまだ捨てたものじゃない」と思ったという(『NEWSポストセブン』記事による)。重大事件のたびに、悲しみや怒りや憤りを受け止めてきた私たちは、私たちそれぞれの力で、社会を緩やかに成熟させているのかもしれない』、「事件直後から「精神疾患と犯行を安易に結びつけないで」という注意喚起の声がSNSのあちこちに上がった」、確かに「社会」は「緩やかに成熟」しているようだ。
・『「精神障害者だから重大犯罪」 データに見るその信憑性  まず、「精神障害者だから重大な犯罪を起こす」という事実はあるのだろうか。 『平成30年版犯罪白書』をもとに、2017年の刑法犯と精神障害者による犯罪を整理したものが、以下の表だ。検挙された事件に対して、検挙された人のうち精神障害者等(知的障害者を含む)とその他の人々の比率を、「全犯罪」「殺人」「放火」「殺人+放火」「殺人と放火を除く」のそれぞれに対して求めたものだ。 殺人や放火の件数は減少傾向にあり、2017年も年間1500件に満たなかった。不幸にして、被害者や被害者家族になってしまった人々にとっては、「少ないから良い」と言える問題ではないけれども、そもそも件数が少ないことには留意が必要になりそうだ。 全犯罪のうち精神障害者によるものは非常に少なく、全体の1.5%にとどまる。殺人と放火に関しては精神障害者によって行われた比率が高く、殺人で13.4%、放火で18.7%、殺人と放火の合計で15.5%となる。とはいえ、これらの総件数がそもそも少ない上に、精神障害者ではない人々によって行われた件数のほうが圧倒的に多い(全犯罪で98.5%、殺人で86.6%、放火で81.3%、殺人+放火で84.5%)。 では、「精神障害者は犯罪を発生させやすい」と言えるだろうか。犯罪白書と統計の年次が揃わず恐縮だが、『平成30年版障害者白書』によれば、2016年、精神障害者(392.4万人)と知的障害者(108.2万人)の合計は500.6万人であった(犯罪白書では、「精神障害者等」に知的障害者が含まれるため、合計を計算)。障害者として公認されていない人々も多いため、精神障害と知的障害の重複を考慮しない限り、この人数が最少の見積もりとなる。 同年の日本の総人口は、1億2693.3万人であった。精神障害者でも知的障害者でもない人は1億2192.7人となる。これらのことから、精神障害者および知的障害者の犯罪者発生率を求めると0.07%、そのいずれでもない人からの犯罪者発生率は0.2%となる。つまり、精神障害者と知的障害者は犯罪者になりにくいのだ』、「精神障害者および知的障害者の犯罪者発生率を求めると0.07%」、「精神障害者と知的障害者は犯罪者になりにくい」、なるほど。
・『将来の犯罪につながるかは誰にも予見できない  しかしながら、「ヤバい人を識別して隔離すれば、ヤバいことは起こらない」と確実に言えるのなら、話は異なってくる。2002年の池田小学校事件の後、この考え方を基本とした「心身喪失者等医療観察法」(以下、医療観察法)が制定され、2005年に施行開始されて、現在に至っている。 この法律の目的は、軽いものでも犯罪を発生させた精神障害者を「触法精神障害者」として治療することだ。しかし国会での審議において、将来を予見できるという可能性は否定され、趣旨が再犯予防から医療と福祉へと転換した経緯がある。) 問題は、今日の「落ちていた500円玉を拾ってネコババ」が、将来の重大犯罪につながるかどうかは、その人が精神障害者であろうがなかろうが、誰にも予見できないということだ。 しかし精神障害者である場合、医療観察法施設に入院させることが可能だ。懲役とは異なり、出所の見通しがあるわけではない。「人権侵害」という法曹や精神医療関係者からの批判は、当時も現在も続いている。 とはいえ、今回の京都の放火事件のA氏には、下着泥棒やコンビニ強盗の前科があり、実刑にも服してきた。「いずれかの時点で医療観察法が適用されていれば、今回の事件は予防できた」という考え方には、一定の説得力はありそうだ。医療観察法に対して肯定的ではない弁護士たちは、どう考えているだろうか』、人権侵害の恐れがある「予防」的措置には、慎重であるべきだ。
・『「二度と起きてほしくない」その希望を実現するには  障害者の状況に詳しく、日弁連や政府の委員会で長年にわたって活動している弁護士の池原毅和さんは、警察が逮捕の直後に行った情報公開と報道に「逮捕直後に疾患歴の正確性が確保できているか疑問があります」と釘をさす。 「精神科を受診した経歴、治療中という事実、精神疾患の診断名だけでは、概括的すぎます。犯罪行為との関係の有無は判断のしようがないはずです。けれども一般の方々は、『だから』『なるほど』と短絡的に、動機や犯行内容を理解しがちです。報道機関としては、犯罪との関連性を示せない情報は出さない対応や、『病歴や病名だけでは、ほとんど犯罪との関連性を検証できない』という医学的解説を加える必要があると思います」(池原さん) とはいえ、一般市民には知る権利がある。司法福祉分野の問題や刑事政策に取り組む弁護士の吉広慶子さんによれば、単純な解答はなく、「メディアによる報道は、国民の知る権利とプライバシー権との利益衡量になります」ということだ。 「捜査機関によるメディアへの情報提供には、捜査の都合や防犯など、数多くの意味合いが含まれることもあります。しかし、保護受給歴を警察が明らかにする必要性はないように思います。精神疾患の有無への言及も、精神鑑定など今後の方向性の説明に必要な範囲に限るべきではと思います」(吉広さん) しかし「もしも予防できるのであれば」という思いは、誰もが抱くことだろう。 「このような極めて稀な犯罪を防ぐために精神疾患の人を監視下に置くと、大量の“偽陽性者”を出してしまいます。精神疾患の判定自体、クリアなものではありません。いつの間にか、誰もが監視対象となり、多様性や寛容性を欠いた生きづらい社会になり、精神疾患者による問題行動は増加する可能性があります」(池原さん)』、「社会」の「多様性や寛容性」の維持はなんとしてでも守る必要がある。
・『「閉じ込めておけばよかった」で終わらせると何にもならない  予防の網に、誰もが絡め取られてしまう可能性はありそうだ。 「罪を犯す人には、社会的ステータスが高い人も、初犯の人も、精神疾患のない人もいます。長い人生で、精神的に、あるいは経済的に不安定な状態になることは、誰にでもあります。そのとき、極端な逸脱行動を取る前にシグナルを察知して、ケアできる体制を考えることが必要ではないでしょうか」(吉広さん) A氏は、数多くの近隣トラブルを抱えていたという。 「近隣は、『地域の厄介者』として『触らぬ神に祟りなし』という対応だったのではないでしょうか。もちろん、周囲の人々が何をしても、起きることは起きてしまう場合があります。でも、不安定だったAさんが安定するために、当時どういうフォローをなし得たのか。じっくり考えることが、今後に活きると思います。 今回、『やっぱり危ないやつだった』『なぜ放置しておいたんだ。閉じ込めておけばよかった』と騒いで終わりにしてしまうと、毎回同じ反応を繰り返すだけでしょう」(吉広さん) 悲惨さを言い表す言葉も思い浮かばない事件だ。だからこそ、これまでとは異なる考え方や方向性が求められていることは、確かであるように思われる』、実際には難しい問題だ。

第三に、昨年8月26日付けダイヤモンド・オンライン「「京都アニメーション放火事件」など続発する事件は「下級国民によるテロリズム」なのか?【橘玲の日々刻々】」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/212972
・『死者35人、負傷者33人という多くの被害者を出した「京都アニメーション放火事件」は、放火や殺人というよりまぎれもない「テロ」です。しかし犯人は、いったい何の目的で「テロ」を行なったのでしょうか。 報道によれば、容疑者はさいたま市在住の41歳の男性で、2006年に下着泥棒で逮捕され、2012年にコンビニ強盗で収監されたあとは、生活保護を受けながら家賃4万円のアパートで暮らしていたとされます。事件の4日前に起こした近隣住民とのトラブルでは、相手の胸ぐらと髪をつかんで「殺すぞ。こっちは余裕ねえんだ」と恫喝し、7年前の逮捕勾留時には、部屋の壁にハンマーで大きな穴が開けられていたとも報じられています。 身柄を確保されたとき、容疑者は「小説をパクリやがって」と叫んだとされます。アニメーション会社は、容疑者と同姓同名の応募があり、一次審査を形式面で通過しなかったと説明しています。 ここからなんらかの被害妄想にとらわれていたことが疑われますが、精神疾患と犯罪を安易に結びつけることはできません。これは「人権問題」ではなく、そもそも重度の統合失調症では妄想や幻聴によって頭のなかが大混乱しているので、今回のような犯罪を計画し、実行するだけの心理的なエネルギーが残っていないのです。欧米の研究でも、精神疾患がアルコールやドラッグの乱用に結びついて犯罪に至ることはあっても、病気そのものを理由とする犯罪は一般よりはるかに少ないことがわかっています。 じつは、あらゆるテロに共通する犯人の要件がひとつあります。それが、「若い男」です。ISIS(イスラム国)にしても、欧米で続発する銃撃事件にしても、女性や子ども、高齢者が大量殺人を犯すことはありません。 これは生理学的には、男性ホルモンであるテストステロンが攻撃性や暴力性と結びつくことで説明されます。思春期になると男はテストステロンの濃度が急激に上がり、20代前半で最高になって、それ以降は年齢とともに下がっています。欧米の銃撃事件の犯人の年齢は、ほとんどがこの頂点付近にかたまっています。 日本の「特殊性」は、川崎のスクールバス殺傷事件の犯人が51歳、今回の京アニ放火事件の容疑者が41歳、元農水省事務次官長男刺殺事件の被害者が44歳など、世間に衝撃を与えた事件の関係者の年齢が欧米よりかなり上がっていることです。さまざまな調査で、20代の若者の「生活の充実度」や「幸福度」がかなり高いことがわかっています。日々の暮らしに満足していれば、「社会に復讐する」理由はありません。 このように考えると、日本の社会の歪みが「就職氷河期」と呼ばれた1990年代半ばから2000年代はじめに成人した世代に集中していることがわかります。当時、正社員になることができず、その後も非正規や無職として貧困に喘ぐ彼らは、ネットの世界では自らを「下級国民」と呼んでいます。とりわけ低所得の男性は結婚もできず、社会からも性愛からも排除されてしまいます。 この国で続発するさまざまな事件は、「下級国民のテロリズム」なのかもしれません。そんな話を、新刊の『上級国民/下級国民』で書いています』、「重度の統合失調症では妄想や幻聴によって頭のなかが大混乱しているので、今回のような犯罪を計画し、実行するだけの心理的なエネルギーが残っていない」、「日本の社会の歪みが「就職氷河期」と呼ばれた1990年代半ばから2000年代はじめに成人した世代に集中」、「当時、正社員になることができず、その後も非正規や無職として貧困に喘ぐ彼らは、ネットの世界では自らを「下級国民」と呼んでいます。とりわけ低所得の男性は結婚もできず、社会からも性愛からも排除」、「この国で続発するさまざまな事件は、「下級国民のテロリズム」なのかもしれません」、面白い見方で、特に「下級国民のテロリズム」とは言い得て妙だ。

第四に、本年1月20日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「“人を殺して死のうと思った”事件続発、「孤立を防げ」の連呼が逆に危険な理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/293752
・『少年が通っていた高校のコメントは「模倣犯」を生みやすい!?  東京大学前の歩道で高校生の男女と男性の3人が刃物で切りつけられた事件で、逮捕された17歳少年が通っている進学校の対応が称賛されている。 事件の翌日、「保護者・学校関係者の皆さんにご心配をおかけしたことについて、学校としてお詫びをします」というコメントを出すとともに、「勉学だけが学校生活のすべてではないというメッセージ」をコロナ禍で生徒たちに、しっかりと届けることができなかったと反省の弁まで述べたのだ。 これを受けて、ネットやSNS上で「学校側として言える最善のコメント」「危機管理体制がしっかりしている」などとベタ褒めされている。 仕事柄、多くの学校の危機管理に関わってきた経験がある筆者もこれにはまったく同感だ。誰に対して、何について謝罪をしているのかということも明確だし、反省から再発防止まで、紋切り型のコピペ文章ではなく自分たちの言葉でしっかりとまとめられている。 ただ、「学校の危機管理」ということをちょっと脇に置いて、「模倣犯を出さない」という視点から見ると、この高校の出したコメントはやや問題がある。次のように「言ってはいけないこと」まで言及してしまっているからだ。  <『密』をつくるなという社会風潮のなかで、個々の生徒が分断され、そのなかで孤立感を深めている生徒が存在しているのかもしれません。今回の事件も、事件に関わった本校生徒の身勝手な言動は、孤立感にさいなまれて自分しか見えていない状況のなかで引き起こされたものと思われます。> 「これのどこが悪い!教育者らしい的確な分析ではないか!」というお叱りを受けるかもしれないが、この手の事件が起きた際、「孤立によって引き起こされた」などと原因を推測したり、「孤立を防げ」などと声高に叫ぶことは、少年と同じような心理状態に陥っている人にかえって悪影響を及ぼす恐れがあるのだ。 見ず知らずの他人を傷つけているので「少年による刺傷事件」だと勘違いしている人も多いが、今回の少年がやったことは「拡大自殺」と呼ばれる自殺の形態のひとつだからだ』、「拡大自殺」とは初めて聞いた。
・『なぜ原因を推測で言ってはいけないのか  メディアでもちょこちょこ報じられるようになったのでご存じの方も多いだろうが、「拡大自殺」というのは、人生に絶望したり、社会に憎悪を抱いたりした人が、無関係の人を大勢巻き込む形で自殺を図ることだ。昨年10月の京王線刺傷事件や、年末の大阪で24人が犠牲になったクリニック放火事件もこの「拡大自殺」だと言われている。 と聞くと、「やはり日本でも格差が広がって社会が分断されているからだ」と感じる人もいるだろうが、これは近年になって急にあらわれた現象ではない。 古くは昭和13年に、岡山県の山村で男が親族や近隣住民を次々と猟銃で殺害し、最後に自殺をした「津山30人殺し」なども、凶行前に遺書を準備していたことから「拡大自殺」だったと言われている。これ以降も、「死にたい!」と叫びながら、見ず知らずの人を切りつけるような「拡大自殺」事件は定期的に発生している。今回、事件を起こした17歳少年もその系譜である可能性が高い。「人を殺して罪悪感を背負って切腹しようと考えた」と言っているからだ。 さて、では今回の事件が「拡大自殺」だったとしたら、なぜ「孤立感にさいなまれて引き起こした」みたいに、原因を推測で言ってはいけないのか。  WHO(世界保健機関)の「自殺対策を推進するために メディア関係者に知ってもらいたい 基礎知識 2017年最新版」から引用しよう。 「有名人の死を報道する上で自殺の原因がすぐにはわからない場合は注意が必要である。有名人の死として考えられる原因を、メディアが不確かな情報に基づいて推測することで悪影響を及ぼす可能性がある」 どんな悪影響かというと「影響を受けやすい人による模倣」、つまりは後追い自殺だ。 例えば、有名人が自殺してメディアが「恋人に別れを告げられて絶望した」「育児ノイローゼが引き起こした」などと原因を憶測で報じてしまうと、その有名人のファンで、なおかつ失恋したり育児のノイローゼになっていたりする人は影響を受けて、亡くなった有名人と自分を重ねて、同じ行動に走ってしまうケースがあるのだ。 実際に、いのち支える自殺対策推進センターによれば昨年、2人の著名人が自殺してから10日間程度、自殺者数が急増しているという。特に衝撃的なのが次の分析だ。 「自殺日を含めた10日間で、約200人が女性俳優の自殺・自殺報道の影響を受けて亡くなった可能性がある」(厚生労働省 著名人の自殺に関する報道にあたってのお願い 令和3年12月19日)』、「自殺日を含めた10日間で、約200人が女性俳優の自殺・自殺報道の影響を受けて亡くなった可能性がある」、「著名人が自殺」した「原因を憶測で報じてしまうと、その有名人のファンで、なおかつ失恋したり育児のノイローゼになっていたりする人は影響を受けて、亡くなった有名人と自分を重ねて、同じ行動に走ってしまうケースがある」、気を付けるべきことのようだ。
・『「拡大自殺の後追い」が起こる可能性  さて、ここまで言えば、なぜ、今回の少年が東大前で他人を切りつけた原因を「孤立感にさいなまれて引き起こした」などと推測で語ることを避けるべきなのか、ご理解いただけたのではないか。 今回の少年がやったことは「拡大自殺」という自殺の一種なので、「模倣」や「後追い」を防ぐためには情報発信には細心の注意を払わなくてはいけない。有名人の自殺のようにセンセーショナルに報道をしてさまざまな憶測が飛び交うようであれば、当然「影響を受けやすい人による模倣」が引き起こされてしまうからだ。 例えば、今回のような事件でマスコミの“動機予想合戦”が繰り広げられて、「孤立感にさいなまれて自分しか見えていない状況のなかで引き起こされた」というストーリーが社会に広まったらどんなことが起きるか。 まず、少年と同じように「なりたいものになれない」「思うように生きられない」という境遇にある人や、孤立感にさいなまれている人はこのストーリーに関心を持つ。「あ、オレと同じかも」と自分と少年を重ねてしまう者も現れるだろう。 そうなれば次に起きるのは「模倣」だ。有名人の自殺に影響を受けて、同じように命を断つ人があらわれてしまうのと同じ現象だ。この少年のように精神的に追い込まれて、「もう死ぬしかない」という考えが頭によぎると、少年と同じアクションに走ってしまうのだ。 つまり、自分が死ぬため、たまたま目に入った人を殺すという「拡大自殺の後追い」である』、「拡大自殺の後追い」に巻き込まれた被害者こそ最大の被害者だ。
・『「拡大自殺」にも早急に報道ガイドラインを  今回の事件の原因を早々に「孤立感にさいなまれて自分しか見えていない状況のなかで引き起こされた」などと推測をしたり、「このような人がでないように孤立を防げ」と声高に叫んだりすることが、実はかなり危険な行為だということがおわかりいただけたと思う。しかし、ここで断っておきたいのは、コメントを出した高校を批判しているわけではないということだ。 確かに、事件の当事者でもない高校側が、捜査もしっかりと進んでいない発生翌日に、少年の心情や犯行に及んだ原因まで言及するというのは「蛇足」である。通常は「捜査に全面的に協力して、事実関係が判明し次第、ご説明します」くらいに留めるのが定石だ。 ただ、生徒や保護者の不安を一刻も早くとりのぞきたいという思いからしたことだと考えれば、そこまで責められない。多くの子どもがコロナ禍で孤立を感じているのは事実なので、「君たちは独りじゃないよ」としっかり言って励ますというのは、教育者という立場からは当然だ。問題はそんな「身内向けのメッセージ」を報道機関にまで発表してしまったことだ。 メディアというのは「拡声器」なので、発信者側の意図を無視して、強いワードをチョキンと切り取って、「わかりやすいストーリー」に落とし込む。例えば、次の通りだ。 ●「孤立し自分しか見えず」と高校 東大前刺傷事件で謝罪コメント(共同通信 1月16日) ●【東大刺傷】逮捕少年通う高校が謝罪「孤立感にさいなまれ引き起こされた」(日刊スポーツ 1月16日) こういうニュースが大量に拡散されれば、「孤立している人はあのような事件を起こしがちなんだな」と受け取る人が増えて、「孤立を防げ」の大合唱が始まる。一見すると、「孤立する人に手を差し伸べる機運が高まっている」ので良いことだと錯覚するが、それはあくまで「孤立していない人」の視点だ。 本当に孤立している人たちには心の余裕がないので、「わかりやすいストーリー」を示されたらそこに飛びついてしまう。つまり、「孤立している人が無差別殺人を起こしました」というニュースを朝から晩まで流されると、「孤立している人」は精神的に追いつめられる。そして、人によっては「あなたが進むべき道はこっちですよ」と暗示にかけられて誘導されてしまうのだ。 情報操作の世界では、これは「アナウンス効果」と呼ばれる。 自殺報道がまさしくこれだ。今はだいぶ自制してきたが、かつてマスコミは有名人が自殺をすると、それを1週間くらいぶっ続けで扱った。通夜、葬式、出棺まですべて中継し、自殺の手法をCGで詳しく解説した。家族や友人、幼なじみ、果てはなじみの店まで探して、店員や常連客にまで追悼コメントをしゃべらせて、ワイドショーのコメンテーターたちは、ああでもない、こうでもないと好き勝手に自殺の理由を推測していた。神妙な顔をしていたが、やっていることは完全に「祭り」だった。 マスコミ側は、「故人をしのぶ」「愛したファンのため」「このような悲劇を繰り返さない」ともっともらしいことを言って、自分たちの行いを正当化したが、なんのことはない。亡くなった有名人の熱心なファンや、自殺の動機だと推測されるようなことと同じ悩みを抱えている人たちに、「あなたが進む道はこっちですよ」と煽っていたのである。 海外から十数年遅れで、ようやく自殺報道はガイドライン遵守の動きが出てきた。「人を殺して死のうと思った」と他人を道連れにする「拡大自殺」にも、早急に報道ガイドラインが必要なのではないか』、厚労省の傘下の(社)いのち支える自殺対策推進センターは、下記のような啓発・提言等を行っている。
https://jscp.or.jp/action/
確かに「拡大自殺」にも対象を広げるべきだろう。
タグ:(その1)(京アニ放火事件で関心高まる「防火設備」 学ぶべき教訓は何か、京アニ事件「犯人野放し」批判で検証 病歴と犯罪の知られざる関係性、「京都アニメーション放火事件」など続発する事件は「下級国民によるテロリズム」なのか?、“人を殺して死のうと思った”事件続発 「孤立を防げ」の連呼が逆に危険な理由) ダイヤモンド・オンライン 建物の構造について言及している数少ない記事だ。 土屋輝之氏による「京アニ放火事件で関心高まる「防火設備」、学ぶべき教訓は何か」 ロンドンはかつての大火の経験から「避難訓練」が義務付けられており、シティの近代的ビルでの「訓練」は壮観である。 「屋上に抜けるドアから外に出られなかったこと」、「この階段は防火扉で区画されていたのか、もしそうなら防火区画として適切に機能していたか、今後検証すべきだろう」、この点についての続報は見た記憶がない。 人権侵害の恐れがある「予防」的措置には、慎重であるべきだ。 「精神障害者および知的障害者の犯罪者発生率を求めると0.07%」、「精神障害者と知的障害者は犯罪者になりにくい」、なるほど。 「事件直後から「精神疾患と犯行を安易に結びつけないで」という注意喚起の声がSNSのあちこちに上がった」、確かに「社会」は「緩やかに成熟」しているようだ。 みわよしこ氏による「京アニ事件「犯人野放し」批判で検証、病歴と犯罪の知られざる関係性」 「ビニール袋を口にあてて、袋の中で呼吸していただきたい。これで数分間は持ちこたえられるから、逃げるための時間稼ぎに有効だ」、貴重なノウハウだ、出来るだけ「ビニール袋」を持ち歩くようにしよう。 実際には難しい問題だ。 「社会」の「多様性や寛容性」の維持はなんとしてでも守る必要がある。 窪田順生氏による「“人を殺して死のうと思った”事件続発、「孤立を防げ」の連呼が逆に危険な理由」 「重度の統合失調症では妄想や幻聴によって頭のなかが大混乱しているので、今回のような犯罪を計画し、実行するだけの心理的なエネルギーが残っていない」、「日本の社会の歪みが「就職氷河期」と呼ばれた1990年代半ばから2000年代はじめに成人した世代に集中」、「当時、正社員になることができず、その後も非正規や無職として貧困に喘ぐ彼らは、ネットの世界では自らを「下級国民」と呼んでいます。とりわけ低所得の男性は結婚もできず、社会からも性愛からも排除」、「この国で続発するさまざまな事件は、「下級国民のテロリズム」なのか ダイヤモンド・オンライン「「京都アニメーション放火事件」など続発する事件は「下級国民によるテロリズム」なのか?【橘玲の日々刻々】」 「拡大自殺」とは初めて聞いた。 「拡大自殺の後追い」に巻き込まれた被害者こそ最大の被害者だ。 「自殺日を含めた10日間で、約200人が女性俳優の自殺・自殺報道の影響を受けて亡くなった可能性がある」、「著名人が自殺」した「原因を憶測で報じてしまうと、その有名人のファンで、なおかつ失恋したり育児のノイローゼになっていたりする人は影響を受けて、亡くなった有名人と自分を重ねて、同じ行動に走ってしまうケースがある」、気を付けるべきことのようだ。 WHO(世界保健機関)の「自殺対策を推進するために メディア関係者に知ってもらいたい 基礎知識 2017年最新版」 厚労省の傘下の(社)いのち支える自殺対策推進センターは、下記のような啓発・提言等を行っている。 https://jscp.or.jp/action/ 確かに「拡大自殺」にも対象を広げるべきだろう。 事件一般
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インフラ輸出(その13)(中国にさらわれたインドネシア高速鉄道プロジェクトはいま… 予想外に膨らんだコスト 営業開始から数年で経営破綻の可能性も、日立、英新幹線受注で狙う「高速鉄道トップ」の座 アルストムやシーメンスと肩を並べる存在に?、台湾鉄道の信頼回復担う「日立製新型特急」の実力 相次ぐ事故と座席供給不足のイメージ払拭狙う) [インフラ輸出]

インフラ輸出については、昨年8月5日に取上げた。今日は、(その13)(中国にさらわれたインドネシア高速鉄道プロジェクトはいま… 予想外に膨らんだコスト 営業開始から数年で経営破綻の可能性も、日立、英新幹線受注で狙う「高速鉄道トップ」の座 アルストムやシーメンスと肩を並べる存在に?、台湾鉄道の信頼回復担う「日立製新型特急」の実力 相次ぐ事故と座席供給不足のイメージ払拭狙う)である。

先ずは、昨年9月24日付けJBPressが掲載した立命館アジア太平洋大学客員教授の塚田 俊三氏による「中国にさらわれたインドネシア高速鉄道プロジェクトはいま… 予想外に膨らんだコスト、営業開始から数年で経営破綻の可能性も」を紹介しよう。なお、文中の注記は省略
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/67048
・『インドネシアの首都ジャカルタと第三の都市バンドンとを結ぶ高速鉄道プロジェクトは、ご承知の通り、日本が先行して準備を進めいていたにも拘わらず、途中から中国が参戦し、最終的には、中国側に契約を奪われた。日本にとっては苦々しい思いが残るプロジェクトである。 2015年9月に中国に発注され、今月でちょうど6年になるそのプロジェクトは、現在どのような状態にあるのだろうか? 残念ながらそれは、中国の当初の売り込み時点での提案からかけ離れたものとなっている。当初、2019年には操業開始としていたが、プロジェクトは、操業どころか、今もなお工事中である。プロジェクトコストに至っては、その総額は大きく膨れ上がり、当初の予定価格を4割も上回るとされている。 着工当時は大きな脚光を浴びて登場したプロジェクトが、今どうしてこのような残念な状況に陥っているのであろうか? 事業者側(中国側)に非があったからなのか? あるいは、発注者側(インドネシア側)に十分なプロジェクト実施能力がなかったからなのか? 本稿においては、これまでの経緯を詳しくレヴューするとともに、その契約の裏に隠された構造を明らかにすることにより、これらの問いに答えてみたい』、「インドネシア高速鉄道プロジェクト」の現状とは興味深そうだ。
・『初めから疑問視されていたプロジェクトの経済性  上記のプロジェクトの構想は、突然浮かび上がったものではなかった。当初は、インドネシアの二大都市であるジャカルタとスラバヤとを高速鉄道で結ぶとする構想であった。だが、実際にこれら2つの都市を結ぶとなると、730kmもの鉄道路線を建設する必要があり(東京—広島間に匹敵する距離)、その投資額は巨額となり、インドネシアの当時の財政事情からみて、到底取り上げられるようなプロジェクトではなかった。 しかし、このプロジェクトに対する地元政財界の関心は高く、その推進派は、代替案として、プロジェクトを二期に分け、第一期でジャカルタとバンドンを結び、第二期でスラバヤまで延伸するという案を出してきた。一見すると現実的な案に見えるが、これは当初案以上に難しいプロジェクトであった。 というのも、ジャカルタ—バンドン間はわずか142kmしかなく、日本でいえば、東京—静岡間に当たり、高速鉄道を走らせるにはいかにも中途半端な距離であった。加えて、バンドンは標高700mの高地にあり、これを沿岸都市であるジャカルタから結ぶとなると大変な勾配を車両が駆け上らなければならない。更に、数多くのトンネル(13カ所)を建設する必要があった。また、一部経路は、人口集積地を通ることから、路線全体の4割弱は高架に、1割は地下に路線を建設する必要があり、建設コストは並外れて高いものになると予想された。 JICAが2012年に行ったフィージビリティスタディ(F/S調査)でも、建設費の半分は政府が出さなければ採算は取れないとしていた』、「JICAが2012年に行ったフィージビリティスタディ(F/S調査)でも、建設費の半分は政府が出さなければ採算は取れないとしていた」、始めから無理のある計画だったようだ。
・『日中の受注合戦  では、このように採算がとれそうもないプロジェクトが、どうして、国の最優先プロジェクトにまで伸し上がったのであろうか? それは、このプロジェクトがインフラ開発を最優先に掲げる3人の有力政治家の着目するところとなり、それ以来、このプロジェクトは、経済ベースでというよりは、むしろ政治家ベースで議論が進められるようになったからである。 1人目は日本の安倍晋三首相(当時)だ。2012年末に発足した第二次安倍政権は、海外インフラの開発をその優先課題として取り上げ、中でも、日本技術の粋ともいえる新幹線技術の輸出には格段の力を入れた。 他方、中国の習近平総書記は2013年に一帯一路構想を打ち出し、その拡大を、海外進出政策の核として推進していた。中でも、新幹線技術については、日本に劣らぬ高い技術を有することを世界に誇示したいと考えていた。彼が2人目の政治家だ。 3人目はもちろんインドネシアのジョコ・ウィドド大統領である。2014年10月に大統領に就任したジョコ氏は、就任早々、インフラ・プランを打ち出し、これを政権の最優先施策とするとした。同大統領は、当初は、ジャカルタとバンドンとを結ぶ高速鉄道プロジェクトはコストがかかりすぎるとして懐疑的に見ていたが、途中で、「日中間の競争をうまく利用すれば、有利な条件を引き出せるかもしれない」と考え、その可能性を探るべく、翌年3月に、先ず日本を訪れ、安倍総理に会い、また、その足で中国を訪れ、習近平総書記とも会い、両首脳からプロジェクトに対する支援を取り付けた。こうしてインドネシアの高速鉄道計画は、3人の政治家の思惑が激しく交錯するプロジェクトとなった。 他方、F/S調査については、日本は2012年に既に実施していたが、その内容は採算面で問題ありとするものであったこともあり、インドネシアは、中国に対してもF/S調査を実施するよう上記訪問中に求めた。これを受けて、中国側は即座にF/S調査に取り掛かり、わずか3カ月で報告書を仕上げた(環境影響調査に至ってはわずか7日間で)。JICAのF/S調査が1年弱を要したことを考えると、中国側のF/S調査はいかにも拙速との感を免れないが、いずれにせよ、報告書の内容は、JICAのそれとは際立った対照を見せた。プロジェクトの操業開始時期は、JICAが2023年とみていたのに対し、中国側は大統領選が行われる2019年には操業を開始できるとした。建設コストについても、JICAは61億ドルを要するとみていたところを、中国は55億ドルで完成できるとした。 これ以降、高速鉄道プロジェクトを巡る日中間の競争は激しさを増す。そのような中で、中国側は、2015年4月突如プロジェクト企画書をインドネシア政府に提出したが、これは、日本側から見れば、不意打ちとも映る行為であった。このように激しさを増す両国間の競争を見て、インドネシア政府は、2015年7月、日中両国の事業者に対し、それぞれ提案を出すよう求めた。その後の2カ月は、両国間の競争は、入札を巡る技術的な競争の域を超え、現地でのロビー合戦に発展した。 2015年8月、習近平主席の特使としてジャカルタを訪問した中国の徐紹史・国家発展改革員会主任らと会談するジョコ・ウィドド大統領。中国側はこの時、高速鉄道事業化に向けた報告書を提出した(写真:新華社/アフロ) 両国事業者の提案に対する審査結果は、関係者の間では、2015年9月初めに出るとみられていたところ、9月3日インドネシア政府は、突如会見を開き、その場において、高速鉄道プロジェクトはキャンセルすると発表した。同時に、仮に実施するとしても、G-Gベース(政府対政府ベース)では難しく、business-to-businessベース(企業対企業ベース)で進めるしかないとした。この背景には、インドネシア政府が、これ以上海外からの借入れ(政府の債務保証も含む)を増やせば、政府の対外債務の上限に達することが明らかになったことがある。 この予想外の発表を受けて、中国側はいち早く対応し、2015年9月半ば、改訂版入札書をインドネシア側に再提出した。そこで、プロジェクトはbusiness-to-businessベースに切り替えることを明確にするとともに、インドネシア政府からは一切の政府支出を求めないし、政府保証も不要とした。 中国側の提案はインドネシア側の要望を全面的に受け入れたものであったことから、9月下旬、インドネシア政府は、高速鉄道プロジェクトは中国に発注すると発表した。インドネシア政府のこの唐突な発表を受け、菅官房長官は即座にジョコ政権に対し遺憾の意を表明したが、時すでに遅しであった。 この発表を受けて、中国の国営企業(中国鉄道建設公社)は、インドネシアの国営企業3社(建設会社のWijaya Karyaがリーディングカンパニー)との間で、高速鉄道プロジェクトの実施に関する契約を締結し、両者の出資による特別目的会社(SPC)を設置することに合意した。総コストは、55億ドルと見積もり、建設期間は、2016年から2019年までとし、その後50年間は政府から得るコンセッションの下、高速鉄道サービスを提供し、その事業収入をもって初期投資コストを回収するとするBOT(=Build Operate Transfer。民間が施設を建設・維持管理・運営し、契約期間終了後に公共へ所有権を移転する方式)に準じた契約構造を取るとした。更に、本プロジェクトの建設に係る必要資金は、中国開発銀行を通じて提供するとし、融資比率は、総コストの75%、grace periodは10年間、融資期間は50年とした』、「インドネシア政府が、これ以上海外からの借入れ(政府の債務保証も含む)を増やせば、政府の対外債務の上限に達することが明らかになった」、「プロジェクトはbusiness-to-businessベースに切り替え・・・インドネシア政府からは一切の政府支出を求めないし、政府保証も不要」、こんな成行きになるのは始めから想像できた筈だ。「インドネシア政府が」、日中を競わせて好条件を引き出そうとするのであれば、日本が手を引いたのは当然だ。
・『遅れに遅れたプロジェクトの建設  契約当時、ジョコ大統領は日中間の競争を巧みに利用し、インドネシアに有利な条件を引き出したとして、大きな喝采を浴びた。だが、プロジェクトが実際に始まると形勢は大きく変わり、中国ぺースで事が運び、インドネシア側は、常に守勢に立たされることになった。 プロジェクトは2016年1月に開催された起工式で始まった。この起工式はジョコ大統領の列席の下華々しく開催されたが、その後は、土地収用が思うように進まず、建設工事はなかなか始まらなかった。運輸省からの「建設」許可は、直ぐには発出されず、2016年8月まで待たされた。また、路線の一部が空軍基地に掛かったことから、49haの土地は翌年3月まで明け渡されなかった。 このような土地収用の遅れに対し中国側からは再三にわたりその促進を促されていた。このため、インドネシアは、国営企業大臣を北京に派遣し、中国政府への直接説明を行ったほどであった。 中国開発銀行からも厳しい条件が提示され、土地収用が100%終了しなければ、融資は開始しないとされた。同行が資金を供給し始めたのは、起工式から2年半も経った2018年5月からであった。 このように出足は大きく遅れたが、2018年半ばからは建設工事は徐々に進み始め、2019年に入るとそのスピードは加速化し、2019年5月には、工事進捗の象徴ともいえる最初のトンネルが完成した。 一方、工事が進み始めると、逆に、周辺地域の環境への影響が増大し、地元企業、住民からの苦情が相次ぎ、2020年初めには2週間の工事中止命令が出されたほどであった。これに追い打ちをかけるように、2020年3月からは、新型コロナが蔓延し始め、このため、建設工事は一時中断された。 このように個別問題は次々と発生したものの、工事全体的としては、順調に進み始め、2021年3月時点では、70%が完了した。このまま順調に進めば、工事は2022年末までには完成するであろうとの見通しを出せるまでになった』、「工事全体的としては、順調に進み始め、2021年3月時点では、70%が完了した。このまま順調に進めば、工事は2022年末までには完成するであろうとの見通しを出せるまでになった」、なるほど。
・『膨れ上がったプロジェクトコスト  建設工事の遅れは、ここに来て漸く解決の目途が付いたが、ここで別の問題が浮上してきた。それは、コストオーバーラン問題であった。プロジェクトコストは、契約締結当時は55億ドルとされていたが、その翌年には、早くも、61億ドルに膨れ上がり、この9月1日の国会での国営建設会社の証言によれば、75~80億ドルに達するであろうとされた。 このような大幅なコストオーバーランが発生したのは、そもそも中国が拙速で準備したF/S調査のコスト見積もりが低過ぎたことに起因するが、勿論中国側が、これを認める訳はなく、このコストオーバーランは、主に、土地収用の遅れ等によるものとされた。 このように言われてしまうのは、一つには、プロジェクトは(特別目的会社が下請けに出した)インドネシアの国営建設会社によって実施されていたからである。このようなアレンジの下では、プロジェクトの遅れや費用の拡大は、工事の実施業者の責任とされがちである。 上記の国営建設会社がSPCと結んだサブコントラクトは、Engineering, Procurement and Construction契約(EPC契約)に基づくものであったが、Engineering部分は中国鉄道建設公団に委託して行われ、そこでは、資機材等は、中国の高速鉄道の規格に準じたものとすべしとされ、また、Procurementに関しては、中国開発銀行の貸付条件に従い、その資機材等はすべて中国サプライヤーから購入しなければならないとされた。通常のEPC契約であれば、これら資機材等については、幾つかのサプライヤーから見積もりを取り、それらを見比べたうえ、最も安価なものを購入するのが通常であるが、このプロジェクトにおいては、このような原則は働かず、全ての資機材、システムは、中国のサプライヤーから、しかも、その言い値で購入するしかない。このようなアレンジの下では、資機材やシステムの購入価格は、高いものにつきがちであり、今回のコストオーバーランの背景には実は、このような要因が隠されていたと推察される。 このコストオーバーランは、国営企業が負担しうる額を遥かに超えていたので、国営企業省は、この問題を政府レベルでの討議に持ち込んだ。これに対するジョコ大統領の指示は、「本件国有鉄道の運営は、ジャカルタ-バンドン間だけでは、営業距離が短く、商業的には成り立たないので、これをスラバヤまで延伸すべきであり、このためには、日本側と協議を行い、その参画の可能性を当たってみるべきだ」とするものであった。これを受け、2020年7月、インドネシア側は、日本との交渉に入った。しかし、日本側は、これまでの経緯もあり、当然のことながら後向きの回答を行った。 このような回答を受けたインドネシアは、今度は、中国側との折衝に入り、そこでSPCへの追加の資本投入を求めた(2021年1月)。その交渉結果は、“いつもの通り”明らかにされていないが、中国側からもいい返事はもらえなかったのであろうと推定される。 これら2つの打開策が受け入れられなかったことから、インドネシア政府は、自ら動かざるを得なくなり、国営企業省は、本年7月に国会に対し、国営企業への追加の資本投入を認めるよう求めた。これを受けて、下院VI委員会は、3つの国営企業に対する33兆ルピアの資本注入を認め、その一部はSPCへの追加出資に当てられることとなった。ただ、この金額だけでは、コストオーバーランをカバーするには十分ではなかったので、現在更なる追加支援策について下院VI委員会で議論されている模様である』、「通常のEPC契約であれば、これら資機材等については、幾つかのサプライヤーから見積もりを取り、それらを見比べたうえ、最も安価なものを購入するのが通常であるが、このプロジェクトにおいては、このような原則は働かず、全ての資機材、システムは、中国のサプライヤーから、しかも、その言い値で購入するしかない。このようなアレンジの下では、資機材やシステムの購入価格は、高いものにつきがちであり、今回のコストオーバーランの背景には実は、このような要因が隠されていたと推察」、こんな一方的契約では「コストオーバーラン」も当然だ。
・『政府が乗り出さざるを得なくなった理由  先にみたように、このプロジェクトは、business-to-businessベースで進めることが合意されたのであるから、インドネシア政府は、大幅なコストオーバーランが出たとしても、それは民間ベースで処理すればよいとして突き放しておけばよかったはずあるが、何故に、政府が、財政資金を使ってまで、その解決に乗り出さざるを得なくなったのであろうか? 以下、ここに至るまでの、経緯を分析することによって、この問いに答えたい。 ●中国側は、ジャカルタ-バンドン間の高速鉄道という、コスト高で、到底採算がとれそうもないプロジェクトを、コストを(人為的に)低く見積もり、その上で、これをいわゆるBOTベースで進めれば商業ベースに乗りうるとして売り込みをかけた。 ●インドネシア側は、この提案に乗り、中国側に契約を付与した。その後、プロジェクトは建設段階に入るが、その過程で、大幅なコストオーバーランが生じた。通常のBOTプロジェクトであれば、プロジェクトは、海外企業が実施するので、コストオーバーラン問題も、外国側に(中国側に)に処理させておけばよかったはずである。 ●だが、このプロジェクトは上手く仕組まれており、プロジェクトを実施するために設置された特別目的会社は、インドネシアの企業で、しかも、その資本の6割は国営企業が保有している。このような体制の下では、コストオーバーランが起きれば、インドネシアの国営企業が大半を負担しなければならなくなる。 ●ところが、これら国営企業は、既に多額の対外債務を抱えており、このような支払を行えるような財務状況にはない。このまま放置すれば、国営企業は破産に追い込まれることとなるので、このような事態を避けるため、国営企業の保有者である政府は、国営企業に対する財政支援に乗り出さざるを得なくなった。これが、本来は民間ベースで進められるべきであったプロジェクトに、政府が財政支援を行わなければならなくなった理由である』、「本来は民間ベースで進められるべきであったプロジェクトに、政府が財政支援を行わなければならなくなった理由」、こうしたシナリオは「中国側」が密かにつくったのではなかろうか。
・『今後更に起きうる、より大きな問題  上記の問題は、数年間の建設期間中の問題であるが、プロジェクトは一旦完成すれば、その後50年間事業運営されることになる。従って、この間、もしも、経営が成り立たなくなれば、それは累積し、より大きな問題となる可能性がある。特に懸念されるのが、キャッシュフローの問題である。 というのは、先に述べたように、このプロジェクトは、高速鉄道プロジェクトとしては、中途半端な距離であり、また、ジャカルタ、バンドンの二都市間には、既に既存路線が走っていることから、十分な運賃収入が見込めない。また、鉄道事業は、一種の装置産業であることから、(多額の減価償却費は勿論)高い維持管理費を払う必要がある。このような状況下では、営業段階に入ると、すぐに赤字経営に陥る可能性がある。 それでも最初の数年間は、債務の弁済は猶予されているので、何とかしのいでいけるとしても、grace periodが終わる2026年からは毎年債務支払義務が発生する。この毎年の債務の支払は、SPCの経営に重い負担となる。なんとなれば、その金額は、元本に50年間の累積金利を足し合わせたものを40年間の均等払いとして計算される。これが、例えば、ADBからの融資であれば、その金利は1%弱(今年8月段階では0.856%)と低利であり、50年間の累積金利はそれほど高くはならないが、それが中国開発銀行からの融資である場合は、その金利は6%台と高く、50年間の累積金利額も多額となる。要するに、2026年からは、この債務負担がSPCの経営に重く圧し掛かり、数年もしないうち経営破綻に陥ってしまう可能性が高い』、「中国開発銀行からの融資である場合は、その金利は6%台と高く、50年間の累積金利額も多額となる」、まるで高利貸だ。
・『インドネシア側が今後取りうる対応  このように、このプロジェクトは、一旦事業運営段階に入れば、営業赤字に陥り、その赤字額は雪だるま式に増え続けていくと予想される。ということであれば、このプロジェクトについては、早めに見切りをつけ、出来るだけ早く撤退した方がいいということになる。 だが、できるだけ早くと言っても、建設途中の今、これを投げ出し、巨大な施設を錆び付かせてしまうことは、現実的な方策とは言えない。兎にも角にも、残り3割の工事は終わらせ、鉄道プロジェクトとして一応完成させるべきであろう。プロジェクトが完成すれば、インドネシアは、専門家パネルを設置し、そこで、このプロジェクトを継続し、次の営業段階に入るべきか、あるいは、ここでプロジェクトをストップさせ、その解散に踏み切るべきかを、ファイナンスの問題を中心に検討する必要があろう。 おそらくそこで出て来るである結論は、このままプロジェクトを継続すれば、累積赤字は年々増えていくことが予想されるので、傷口を最小に抑えるためのには、営業段階に入る前にこのプロジェクトをストップさせ、早期にSPCを解散させてしまうべきだ、ということになろう。) するとSPCはdefaultを起こすことになるので、中国開発銀行は、即座に債権の回収に乗り出すであろう。その際、SPCが有する唯一の資産はプロジェクト資産、即ちジャカルタ-バンドン間の高速鉄道施設、であるから、中国開発銀行はこれを先ず差し押さえるであろう。すると、高速鉄道施設の所有権は中国側に移ることとなるが、これは必ずしもインドネシア側にとって悪いことではない。というのは、インドネシアは、この赤字を生むだけの巨大な「ホワイトエレファント」を手放すことができるようになるからである。 高速鉄道が中国の手に渡れば、中国側は、これを遊ばせておこうとはせず、直に事業運営に入ろうとするであろう。その際、鉄道サービスだけでは十分採算がとれないとして、必ずや、周辺地域での土地開発の権利の付与を求めて来ると予想される。 中国側がこの土地開発権を得たとしても、それだけでは十分ではないとみた場合は、更に要求を拡大し、(他国で行ったように)原油や他の地下資源の採掘権も併せ、要求して来る可能性がある。 そこまで、中国側の要求が拡大すれば、インドネシアとしてはこれを頑としてはねのけなければならない。というのは、中国からの借り入れ事案においては一旦債務の罠にはまってしまうと、どんどん深みにはまってしまい、ついには身動きがとれなくなる恐れがあるからである。これは、どこかで食い止める必要があり、このためには、断固とした姿勢で交渉に臨む必要がある。 ただ、中国側も、インドネシアはスリランカやタジキスタンのような小国とは異なることは十分承知しているので、両国間の関係を悪化させてまで強引な要求を持ち出すことは避けようとするかもしれず、その場合は、インドネシア側も、中国側と対等に交渉できよう』、「中国からの借り入れ事案においては一旦債務の罠にはまってしまうと、どんどん深みにはまってしまい、ついには身動きがとれなくなる恐れがある」、「これは、どこかで食い止める必要があり、このためには、断固とした姿勢で交渉に臨む必要がある」、「インドネシア」にそんな芸当が出来るだろうか。
・『おわりに  以上、本プロジェクトについてその経緯をレヴューし、その隠された構造を明らかにしてきたが、ここで冒頭で取り上げた2つの問いに戻りたい。 第一の問い〈プロジェクトの遅れやコストオーバーランは事業者の非か〉に関しては、事業者側の非というよりは、むしろそれは戦略だったといった方が適切であろう。 中国側が設定した工事の完成時期は、技術者の積み上げに拠って弾き出したものではなく、ジョコ大統領の再選時期に合わせて、政治的に設定されたものであり、初めから無理と分かっていたと言えよう。プロジェクトコストも、日本との競争に勝つために、JICAのそれよりは低めに出したというだけのことである。一旦これで受注を獲得すれば、工事の執行段階で、何かと理由をつけて、これを変えることはできるとみていたのであろう。 BOT契約においては最初に出したコミットメントはこれを守らなければならないが、請負契約の場合は、正当な事由があればこれを変更できるので、契約の運用形態も、(当初これに基づくとされていた)BOTから、徐々に請負契約的なものに替えられていったように見える。中国側はこれを意識的にやったとは言わないが、少なくともインドネシア側は、この微妙な契約の変質に気が付かなかったと言える。 第二の問い〈インドネシアは十分なプロジェクト実施能力を有していたのかどうか〉に関しては、プロジェクトの実施能力が欠けていたとまでは言わないが、事業者に最初にコミットした約束を守らせることができなかったという点で事業監督能力が不足していたと言えよう。 というのは、事業を的確に監督するためには資機材の価格を始めとするコスト関係情報を十分に把握している必要があるが、高速鉄道に関する情報は、中国側に独占的に保有されており、インドネシア側はこのような情報を持たないので、サプライヤーの言い値をそのまま受け入れるしかなく、プロジェクトコストは徐々に膨らんでいった。 要するに、このプロジェクトは、発注段階までは、インドネシアのペースで運んだが、一旦、実施段階に入ると中国ペースで進み、建築工事はいつの間にかBOTというよりは、むしろ請負契約に近い形で運用されてしまった。最後には、当初払わなくてもいいとされていた財政資金をインドネシア政府がつぎ込むこまざるを得なくなった。一方、中国側は、当初は儲からないとみられてきたプロジェクトから、その資機材等の納入を通じ、着実に利益を上げていった。 このように契約が中国ペースで運用されてしまったことの背景には、インドネシア側が(中国版)高速鉄道に関する詳細情報を持っていなかったことに由来するが、この‟情報の非対称性“の影響がより顕著な形で現れるのは、プロジェクトが運営段階に入ってからである。この段階で何か問題が起きたとしても、高速鉄道の経営に関する十分な情報を持たないインドネシア側は中国側と有効に議論できず、結局は相手方の言いなりになるしかない。このような状況下では、プロジェクトは長く持てば持つほど、不利になり、相手側に取り込まれてしまう恐れがあるので、このプロジェクトについては、先に述べたように、早めに撤退し、SPCを解散した方がより賢明な選択といえよう。 ただ、この最後の手段を取るに当たって、一点チェックしなければならないことがある。それは中国側と結んだ契約書である。中国側が途上国と結ぶ契約は、通常、対外秘とされ、国際慣習に添わない不利益条項が多々含まれている。注意を要するのは、キャンセル条項である。これまで、中国とのプロジェクトを途中で破棄したいとする途上国は幾つかあったが、その際降りかかってくるペナルティーの額があまりにも大きいので、マレーシアの例に見られるように、これを諦めた国が多い。途上国が中国と契約を締結するときは、その内容に格段の注意を払う必要があるが、今回インドネシアが中国と結んだ契約はそのような不利益条項を含んでいなかったことを希望する』、「これまで、中国とのプロジェクトを途中で破棄したいとする途上国は幾つかあったが、その際降りかかってくるペナルティーの額があまりにも大きいので、マレーシアの例に見られるように、これを諦めた国が多い」、こんな「国際慣習に添わない不利益条項が多々含まれている」、「対外秘とされ」るわけだ。「中国側」の不正な手口には怒りを覚える。

次に、本年1月12日付け東洋経済オンラインが掲載した欧州鉄道フォトライターの橋爪 智之氏による「日立、英新幹線受注で狙う「高速鉄道トップ」の座 アルストムやシーメンスと肩を並べる存在に?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/501814
・『2021年12月、日立製作所のグループ企業である日立レールがフランスのアルストムと共同で英国の高速鉄道HS2向け新型車両の製造・保守を受注したニュースは、センセーショナルに伝えられた。新型車両の設計から製造、導入後12年間の保守業務までを請け負い、その契約金額は19億7000万ポンド(約2957億円)という大型契約だ。日本の鉄道技術が世界で認められたということを誇らしく感じた方も多かっただろう。 だが気になるのは、ライバルであるはずのアルストムと共同受注という点だ。アルストムと言えばTGVで有名な会社である。なぜ同社と手を組むのか、日立とアルストムの役割分担はどうなるのか、不思議に思われるのではないだろうか』、興味深そうだ。
・『日立は当初別メーカーと共同で応札  今回の日立による受注については、まず英国の高速鉄道HS2プロジェクトの入札がどのように進んでいたかを知る必要がある。 2017年、車両納入に関する最初の入札では、アルストム、ボンバルディア、シーメンス、日立、タルゴの5社が最終候補に挙げられていた。しかしその翌年、ボンバルディアは日立と共同での応札が決まり、一方でシーメンスとアルストムは当時、合併が取り沙汰されていたため、万が一この合併が実現した場合に入札に参加するメーカーが減ることが懸念された。そのため、競争を維持するためにCAFを追加でリストアップすることになった。 入札に対し、各社はそれぞれ自社の優位性をアピールしている。 アルストムは、「従来のネットワークでも新しいHS2インフラでも同様に快適な、ワールドクラスのモダンで柔軟性のある列車」を提供すると述べた。同社はフランスのTGV、「イタロ」のブランドで知られるイタリアのNTV社に納入したAGV、アメリカのアムトラック向けに製造中のAvelia Liberty(アヴェリア・リバティ)、モロッコと韓国の高速鉄道など、数多くの高速列車を納入した実績がある。 日立は「日本が世界に誇る」新幹線への取り組み、ボンバルディアはヨーロッパと中国における世界最大の高速鉄道ネットワークでの国際的な経験を強調した。 両社は共同で、イタリアのトレニタリア社に「フレッチャロッサ1000(ミッレ)」ETR400型を納入しており、「現在ヨーロッパで最も速く、かつ最も静かな高速列車」であると述べている。ETR400型は、営業最高時速360kmで走行するように設計されているが、インフラの関係で現状は300kmで営業運転している。 シーメンスは英国と欧州大陸を結ぶ国際列車「ユーロスター」を筆頭に、ドイツ、スペイン、中国、ロシアといった国々で運用されている高速列車Velaro(ヴェラロ)の優位性をアピールした。すでに英国内でユーロスターとして運用実績のあるヴェラロを例に、「英国の鉄道事業における存在感、技術知識、グローバルな高速化の経験により、シーメンスこそ理想的なパートナー」であると述べた』、なるほど。
・『TGVやAGVの技術ではない  ところが最終決定へと至る前に、また業界内で大きな動きがあった。アルストムとシーメンスの合併話が破談となったことで、これまでどおりアルストムとシーメンスはそれぞれ独自に入札へ参加することとなったが、今度はアルストムがボンバルディアを買収するという話が持ち上がったのだ。最終的に、この合併は欧州委員会によって承認され、2021年3月をもってボンバルディアはアルストムへ吸収合併されることになった。 結局、日立とアルストムの共同受注という結果に至ったが、ここでいう「アルストム」とは、「旧来のアルストム」ではなく、「元ボンバルディアで、買収されそのまま事業を引き継いだアルストム」ということになる。 つまりアルストムと言っても、今回のHS2の受注を勝ち取ったのはTGVやAGVの技術ではなく、日立+旧ボンバルディアの技術ということになる。 日立+旧ボンバルディアと言えば、先のレポートでご紹介したZEFIRO(ゼフィロ) V300プラットフォームで、イタリアのフレッチャロッサ・ミッレでお馴染みの技術だ。その点について、日立は「HS2向けの新型車両は、ZEFIROと新幹線の技術を融合した車両になる」と説明している。車体にはアルミニウムを採用し、騒音対策としてより空力を考慮したデザインを採用するという。 新幹線車両の知的財産権はJRが保有しているので、そのままそれらの技術を用いるとは考えにくいが、これまで新幹線の製造現場で蓄積してきた経験や技術は、HS2車両の製造でも生かされるだろう。アルミニウム製車体の製造も、英国ニュートン・エイクリフ工場にはIEP(Intercity Express Programme)向け800(801/802)系車両の製造を任された段階で、日本で使用されているものと同じ摩擦攪拌接合の最新式溶接機を導入しており、日立としてはお手の物だ』、「日立+旧ボンバルディア」は確かに強力な組み合わせだ。
・『世界有数の高速列車メーカーに?  日立はほかに、運行システムと制御システムを担当するとしている。特に制御システムに関しては、同社が得意としているSiC(炭化ケイ素)を用いた低損失パワーデバイスを採用。従来のIGBTに代わるSiCインバーターに関しては、すでに国内外で多くの採用実績があるため、開発に大きな支障はないだろう。 今後、日立とアルストムは開発を進め、2025年から製造を開始する予定だ。製造を担当するのは日立のニュートン・エイクリフ工場とアルストムのダービー工場だが、このダービー工場が旧ボンバルディアの工場という点も、ボンバルディアの影響が色濃く残っていることを示しているといえるだろう。 HS2向け車両の受注は、日立が世界へ向けてより大きく踏み出す一歩となることは間違いない。このプロジェクトの成功いかんでは、アルストムやシーメンスに並ぶ世界有数の高速列車メーカーとして、確固たる地位を築くことになるはずだ』、「日立が世界へ向けてより大きく踏み出す一歩となる」、今後の展開が楽しみだ。

第三に、1月20日付け東洋経済オンラインが掲載した東アジアライターの小井関 遼太郎氏による「台湾鉄道の信頼回復担う「日立製新型特急」の実力 相次ぐ事故と座席供給不足のイメージ払拭狙う」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/503429
・『2021年の暮れも押し迫った12月29日、日立製作所が製造した台湾鉄路管理局(台鉄)の都市間特急用新型車両「EMU3000」が、台北と東部の台東を結ぶ東部幹線の特急列車として営業運転を始めた。 台湾ではかねて、東部方面への移動需要に対して鉄道の座席数がまったく足りず、指定券を入手しづらい「一票難求」と呼ばれる状態が続いてきた。従来車両は編成が短く、全席指定のうえ立席での乗車も不可能と、どうしても利用したい人々を見捨てるような状況だった。それに加え、台鉄では近年、多数の乗客が死亡する大事故が相次いで発生しており、信頼性とイメージの回復は必須の課題となっている。 このたび運行が始まった新型特急は、こうした問題を解決するための救世主となりうるのか』、興味深そうだ。
・『真っ白なボディでイメージ一新  黒いフェイスに白のボディが特徴的なEMU3000は、2024年までに計600両(12両×50編成)が投入される予定で、台鉄史上最大規模かつ国際的にもまれに見る増備計画となる。今までの台鉄にはなかった斬新なデザインは、現地鉄道ファンの間で「ペンギン」や「くろさぎ」などといったあだ名で運行前から人目を集め、一般の人々の間でも注目されている。 台鉄は2019年から車両や駅構内のデザインをリフレッシュし、国営鉄道のイメージを一新しようと「台鉄美学復興(FUTURE—RENAISSANCE)」と銘打ち、外部デザイナーと連携しながら新たなコンセプトによる車両の開発を進めてきた。通勤型電車の「EMU900」や観光列車の一種である「鳴日号」がその例だ。EMU3000は第3弾に当たり、日立側が当初提案した「TEMU1000」(タロコ号)をベースとしたデザイン案を突き返して再検討を進めた。その結果として生まれた、シンプルかつ落ち着きのあるデザインは今までの台鉄に見られなかった意匠が感じられる。 こうした努力の結果、EMU3000は台湾の公共交通車両として初めて日本の「グッドデザイン・ベスト100」に選出されている。 EMU3000は第1陣の納入分として3編成・36両が台湾に到着しており、まずは東部幹線の特急列車3往復に投入された。当面は同線方面を走ることになる。 時刻表を見ると、今回12月29日のダイヤ改正でEMU3000へ車両を置き換えた列車は、従来と比べて所要時間が10分ほど延びている(樹林―台東間の場合)。所要時間が延びてでも新型車両に置き換えなければならない「切羽詰まった事情」とはどのようなものだろうか』、どんな「事情」なのだろう。
・『振り子式車両は輸送力不足  台湾は全体的に山がちで、西部と東部の海岸沿いに人口が密集している。とくに東部海岸エリアは険しい山や峡谷が続く。戦前の日本統治時代から建設が始まった鉄道は、2005年に東部の主要都市である花蓮までの複線化が実現したものの、線形が悪くスピードが出しにくい悪条件を伴う。 台鉄は、台北―花蓮―台東間の所要時間が高速バスより長く競争力が劣るとみて、振り子式電車の「TEMU1000」(タロコ号)や、車体傾斜式の「TEMU2000」(プユマ号)を相次いで導入し速達性の向上を図ってきた。しかし、これらの列車は8両編成と短く、さらに振り子式車両であることから高速走行時の揺れを考慮して立席をなくし、全席指定制とした。こうした事情もあって、増え続ける旅客需要に対する抜本的な改善策とはならなかった。 今回投入されたEMU3000は12両編成で、従来と比べ座席数が1.4倍となる。これにより、「一票難求(注)」問題は解決が進むことだろう。しかし、振り子式車両ではないことから、カーブでの通過速度が従来のTEMU1000よりも遅いため、スピードダウンを余儀なくされたことになる。 台北と東部各都市を結ぶ交通については、台鉄が振り子式電車を導入してスピードアップを図る一方、道路も2020年に宜蘭―花蓮間の改善工事完了で「蘇花改道路」が開通し、最大で1時間ほどの所要時間短縮が実現した。マイカーの通行量が増加したほか、高速バスも「北花線回遊号」と呼ばれるコンセントを備えた車両による新路線を開設するなど、サービスの改善が見られる。 こうした状況の中、台鉄としては高速バスに打ち勝つべく、速度面以外での付加価値を利用客に訴える必要性が高まった。そこで登場したのが、EMU3000のビジネスクラス(商務艙、定員30人)だ。台湾を初めて走った機関車の愛称から名付けられた「騰雲座艙」と呼ばれるこのシートは、横3席×10列の30席という広々とした座席配置を誇る。 フットレストがないことやリクライニングの角度が比較的浅いことなど気になる点はあるものの、ソフト面では車内限定弁当、ハーゲンダッツのアイスクリーム、もしくはパイナップルケーキなどのいずれか1つと飲み物が選択できる飲食物の無料サービスが提供される。また、主要駅を中心に専用のチケットカウンターを設け、乗車変更も無料で受け付ける。 そのサービス内容は航空会社のエグゼクティブクラスを多分に意識している。対応に当たる客室乗務員も投入に合わせて特別に募集し、チャイナエアラインによる訓練を受けたという肝いりだ。料金は距離に応じて普通車の1.4倍~2.2倍で、長距離客に対する配慮がみられる』、「線形が悪くスピードが出しにくい悪条件」、「高速バス」との競争など、大変なようだ。
(注)一票難求:一枚の切符さえ手 に入れるのが非常に難しい。
・『トイレは編成中全車両に  2列×2列の座席が並ぶ普通車の居住性も大幅に改善された。全席にUSBの充電ソケットと100Vのコンセントを備え、Wi-Fiのサービスもある。また、編成中すべての車両に大型の荷物置き場とトイレを設置している。 トイレの数は一見過多にも感じるが、台鉄は通勤車両も4両に1箇所トイレを設置しているほか、自転車搭載スペースも設けるなど、長距離利用者を考慮した設計が特徴だ。 筆者はEMU3000の運行開始直後、台北駅を平日夜6時台に出発する台東行き438次列車に宜蘭まで乗車した。土休日の帰省・行楽需要は比較的旺盛だが、平日の普通席利用率は5割に満たない。一方、新設されたビジネスクラスは満席だった。 列車が入線する際にカメラを構える人も多かった。乗客に新型車両の印象を聞くと、「荷物置き場が増設されキャリーケースを足元に置かずに済む」「客室扉がガラス製なので、開放的で圧迫感がない」といった声が聞かれた。 東部幹線の優等列車は高速鉄道(新幹線)との接続を考慮して台北近郊の副都心に停車する列車が多いが、この列車は台北を出ると、東部幹線の北部側の主要駅である宜蘭まで停まらない直達型の停車パターンとなっている。 台北駅を出るとすぐに加速し、台北近郊を高速で走行。山間部に入るとその足並みは落ちるものの、持ち前の加速力を発揮して加減速を繰り返し、雪山山脈のふもとを越える。振り子式のTEMU1000やTEMU2000に比べると騒音やカーブでの振動が気になるものの、車体の傾きによる不快感は低減された。山間区間を抜け、太平洋の海岸線を左手に臨むと列車は再び加速を重ね、宜蘭に到着した。 翌朝、台北に戻るために利用したのは411次列車のビジネスクラス。車内は満席で、発車するとすぐに専用エプロンを身に付けた客室乗務員が、事前予約していた軽食と飲料を運んできた。軽食類はカートから直接選ぶこともできる。メニューにある限定弁当は時間帯によって提供する区間が決まっており、短距離区間だと選択できない場合があるなど、ソフト面でも長距離客に対する配慮が見られる。 ビジネスクラスの座席は広々とスペースを取っており、カーブの多い山間部でもしっかりとしたホールド感を感じられる一方、フットレストやブランケットといった設備やサービスはなく、基本的に「広めの普通車シート」と表現するのが妥当そうだ。 車内のWi-FiはSSIDがビジネスクラスの6号車を示す「EMU3000-6」で、同クラスの乗客に対して優先的に提供していることがわかる。ただ、パスワードなしで隣接車両からも接続できることや走行区間による電波の障害を考えると改善の余地がありそうだ』、「普通車の居住性も大幅に改善・・・全席にUSBの充電ソケットと100Vのコンセントを備え、Wi-Fiのサービス・・・編成中すべての車両に大型の荷物置き場とトイレを設置」、なるほど。
・『安定したメンテナンスに課題  EMU3000は、日立の鉄道車両工場である笠戸事業所(山口県下松市)で完成品として組み上げられ、台湾まで船で輸送される。 台湾の鉄道ファンの間からは「まるで日本の列車に乗っているようだ」といった好感の声もある一方、「地元で組み上げられたものではないので、はたして台鉄にしっかりメンテナンスするだけの技術が備わっているのか」と疑問を投げかける声も聞こえてくる。 実際、投入初日からトイレの故障や乗降ドアの不具合が発生した。また、TEMU2000(プユマ号)についても「日本製でそんなに古くないのに、座席に相当のガタがきている」と苦情を訴える乗客もいるようだ。 車両の保守作業については、同じ日立製の英国向け車両であるクラス800シリーズの場合、日頃の運用に必要な保守点検作業も同社が長期スパンで受注し、車両の細かい点検補修ができる体制が整っている。一方、台湾の場合は部品の純国産化を目指す政府の方針もあり、保守作業は基本的に台鉄のスタッフが担うことになるという。 加えて、台湾ならではの「外交事情」が複雑に絡む一面もある。入札書類では中国本土メーカーの参加を明確に禁止しており、契約書でも主要機器については中国が加盟していない、「政府調達に関する協定(GPA)」加盟国しか供給できないように定めている。「中国製部品を使ってほしくない」と訴える台鉄側の意向もあったといわれ、設計・生産での調整には苦労の跡が忍ばれる』、「台湾の場合は部品の純国産化を目指す政府の方針もあり、保守作業は基本的に台鉄のスタッフが担うことになる」、「入札書類では中国本土メーカーの参加を明確に禁止」、などの制約のなかでやる必要があるようだ。
・『「台鉄改革」の一歩に  台鉄のスピードアップや前述の道路改良など改善が進む東部各都市への交通網だが、長期的視点ではこれだけにとどまらない。日本の国土交通大臣に当たる交通部部長の王國材氏は先ごろ、台湾全土に高速鉄道網を拡げる「高鐵環島計画」を発表し、実際に宜蘭地区への高速鉄道延伸に向けたルートの選定が進んでいる。日本の新幹線と異なり、台湾の高速鉄道は在来線を運行する台鉄とは別会社の運営で、対立関係にある。高速鉄道が完成すれば厳しい競争になることは間違いない。 台鉄の計画からは、今からそれに対抗しようとする様子が垣間見られる。発表によると、EMU3000は今後、東部幹線のみならず西部幹線に直通するルートにも投入する予定という。これによって運用が減るTEMU2000を比較的需要の少ない南回り線を経由するルートにも転用し、速達性の劣る気動車や客車列車を置き換える目論見があるようだ。また、EMU3000の契約には観光列車として使われる特別仕様車4編成の製造も含まれており、ツアー客に特化したサービスを提供する予定だ。 台鉄は目下、輸送力の確保に加え、高品質のサービスと多様なルートの提供でイメージの一新を目指している。台湾の鉄道文化研究の第一人者である台湾師範大学の洪致文教授はEMU3000導入について、「当局の徹底した乗客目線の姿勢に、利用客の反応はおおむね好評だ。これをきっかけに、今後さまざまな面で台湾鉄道が変わっていくことが期待できる」と評価する。 EMU3000は「台鉄改革」の一手として、重大事故の連続で失った信頼を取り戻す救済者となるだろうか』、「EMU3000は「台鉄改革」の一手として、重大事故の連続で失った信頼を取り戻す救済者と」なってほしいものだ。
タグ:(その13)(中国にさらわれたインドネシア高速鉄道プロジェクトはいま… 予想外に膨らんだコスト 営業開始から数年で経営破綻の可能性も、日立、英新幹線受注で狙う「高速鉄道トップ」の座 アルストムやシーメンスと肩を並べる存在に?、台湾鉄道の信頼回復担う「日立製新型特急」の実力 相次ぐ事故と座席供給不足のイメージ払拭狙う) インフラ輸出 JBPRESS 塚田 俊三氏による「中国にさらわれたインドネシア高速鉄道プロジェクトはいま… 予想外に膨らんだコスト、営業開始から数年で経営破綻の可能性も」 「インドネシア高速鉄道プロジェクト」の現状とは興味深そうだ。 「JICAが2012年に行ったフィージビリティスタディ(F/S調査)でも、建設費の半分は政府が出さなければ採算は取れないとしていた」、始めから無理のある計画だったようだ。 「インドネシア政府が、これ以上海外からの借入れ(政府の債務保証も含む)を増やせば、政府の対外債務の上限に達することが明らかになった」、「プロジェクトはbusiness-to-businessベースに切り替え・・・インドネシア政府からは一切の政府支出を求めないし、政府保証も不要」、こんな成行きになるのは始めから想像できた筈だ。「インドネシア政府が」、日中を競わせて好条件を引き出そうとするのであれば、日本が手を引いたのは当然だ。 「工事全体的としては、順調に進み始め、2021年3月時点では、70%が完了した。このまま順調に進めば、工事は2022年末までには完成するであろうとの見通しを出せるまでになった」、なるほど。 「通常のEPC契約であれば、これら資機材等については、幾つかのサプライヤーから見積もりを取り、それらを見比べたうえ、最も安価なものを購入するのが通常であるが、このプロジェクトにおいては、このような原則は働かず、全ての資機材、システムは、中国のサプライヤーから、しかも、その言い値で購入するしかない。このようなアレンジの下では、資機材やシステムの購入価格は、高いものにつきがちであり、今回のコストオーバーランの背景には実は、このような要因が隠されていたと推察」、こんな一方的契約では「コストオーバーラン」も当然だ 「本来は民間ベースで進められるべきであったプロジェクトに、政府が財政支援を行わなければならなくなった理由」、こうしたシナリオは「中国側」が密かにつくったのではなかろうか。 「中国開発銀行からの融資である場合は、その金利は6%台と高く、50年間の累積金利額も多額となる」、まるで高利貸だ。 「中国からの借り入れ事案においては一旦債務の罠にはまってしまうと、どんどん深みにはまってしまい、ついには身動きがとれなくなる恐れがある」、「これは、どこかで食い止める必要があり、このためには、断固とした姿勢で交渉に臨む必要がある」、「インドネシア」にそんな芸当が出来るだろうか。 「これまで、中国とのプロジェクトを途中で破棄したいとする途上国は幾つかあったが、その際降りかかってくるペナルティーの額があまりにも大きいので、マレーシアの例に見られるように、これを諦めた国が多い」、こんな「国際慣習に添わない不利益条項が多々含まれている」、「対外秘とされ」るわけだ。「中国側」の不正な手口には怒りを覚える。 東洋経済オンライン 橋爪 智之氏による「日立、英新幹線受注で狙う「高速鉄道トップ」の座 アルストムやシーメンスと肩を並べる存在に?」 「日立+旧ボンバルディア」は確かに強力な組み合わせだ。 「日立が世界へ向けてより大きく踏み出す一歩となる」、今後の展開が楽しみだ。 小井関 遼太郎氏による「台湾鉄道の信頼回復担う「日立製新型特急」の実力 相次ぐ事故と座席供給不足のイメージ払拭狙う」 どんな「事情」なのだろう。 「線形が悪くスピードが出しにくい悪条件」、「高速バス」との競争など、大変なようだ。 (注)一票難求:一枚の切符さえ手 に入れるのが非常に難しい。 「普通車の居住性も大幅に改善・・・全席にUSBの充電ソケットと100Vのコンセントを備え、Wi-Fiのサービス・・・編成中すべての車両に大型の荷物置き場とトイレを設置」、なるほど。 「台湾の場合は部品の純国産化を目指す政府の方針もあり、保守作業は基本的に台鉄のスタッフが担うことになる」、「入札書類では中国本土メーカーの参加を明確に禁止」、などの制約のなかでやる必要があるようだ。 「EMU3000は「台鉄改革」の一手として、重大事故の連続で失った信頼を取り戻す救済者と」なってほしいものだ。
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維新の会(その4)(問題人物を引き寄せる「維新の実態」政策以前の不祥事オンパレードを振り返る、ナチスの手法を彷彿とさせる維新とメディアの連携 読売の報道姿勢を厳しくチェック、大阪カジノで市負担の土壌対策費790億円が WTCの二の舞になりそうな理由、維新ヨイショ!吉村・橋下・松井3氏が出演したMBS元旦番組に「偏向報道」の目) [国内政治]

維新の会については、昨年8月3日に取上げた。今日は、(その4)(問題人物を引き寄せる「維新の実態」政策以前の不祥事オンパレードを振り返る、ナチスの手法を彷彿とさせる維新とメディアの連携 読売の報道姿勢を厳しくチェック、大阪カジノで市負担の土壌対策費790億円が WTCの二の舞になりそうな理由、維新ヨイショ!吉村・橋下・松井3氏が出演したMBS元旦番組に「偏向報道」の目)である。

先ずは、昨年11月20日付け日刊ゲンダイが掲載した作家の適菜収氏による「問題人物を引き寄せる「維新の実態」政策以前の不祥事オンパレードを振り返る」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/297675
・『「維新の会周辺にはなぜ犯罪者が多いのか」と問うのは順番が逆だ。問題を起こすような人物だから維新に接近していくのである。順法意識や社会性の欠如、短く言えば、人間性の欠如。前回に続き、「思い出に残る維新の犯罪ベスト10」を振り返る(逮捕容疑や肩書などは発生当時)。 【第5位】中学生を恐喝(衆院選愛知5区から出馬を予定していた府議の山本景が、通信アプリ「LINE」を通じてトラブルになった女子中学生に「ただでは済まさない」などのメッセージを送り恐喝。山本は無断で小学校のフェスティバルで児童に名刺を配ったり、下校途中の中学生たちを自分の事務所内に入れていた。中学生を脅すというのがいかにも維新的』、「女子中学生に「ただでは済まさない」などのメッセージを送り恐喝」、変な性的被害がなかっただけよかったのかも知れない。
・『【第4位】金銭の不祥事(政務活動費の流用など、維新とカネの問題は多すぎて記載しきれない。事務所賃料のうち9割を政務調査費で支払いながら、事務所オーナーの父親からキックバックを受けていた市議の飯田哲史のような素朴なものから、配布していない政策ビラの印刷代金を政務活動費に計上し、不正受給していた市議の小林由佳のような手の込んだものまで幅広い。 また、経営する整骨院で療養費をだまし取っていた市議の羽田達也や、診療報酬を過大に請求していた歯科医院を実質的に管理し、治療にあたっていた歯科医で衆院議員の新原秀人ら、チンピラ出身だけではなくインテリ層も悪事に手を染めるのが維新の特徴でもある。 【第3位】変態系(週刊誌に女性の足の臭いを嗅いでいる写真を掲載された市議の田辺信広。同じ場所にいた市議の井戸正利が女性の胸を触っている写真も流出したが、その弁明の言葉は素晴らしかった、「胸を触ったのは事実です。でも揉んだわけではない」』、「診療報酬を過大に請求」、「変態系」、よくぞこんな人物を議員として推薦したものだ。
・『【第2位】中国からカネ(市駐車場私物化の中谷恭典府議、市役所に家庭用サウナを持ち込んでいた市長の冨田裕樹らセコイ連中も多いが、カジノを含むIR汚職事件で、中国企業から現金を受け取っていた衆院議員の下地幹郎とか、やりすぎにも程がある。 【第1位】維新という罪(ここに挙げた犯罪や不祥事の数々は一部にすぎない。これは政策がどうこう以前の話だ。社会のルールを守ることができない集団は政治に関わる資格はない』、「IR汚職事件」は立派な刑事事件だ。「社会のルールを守ることができない集団は政治に関わる資格はない」という「維新という罪」は、誠に重大だ。

次に、1月8日付け日刊ゲンダイが掲載した同じ作家の適菜収氏による「ナチスの手法を彷彿とさせる維新とメディアの連携 読売の報道姿勢を厳しくチェック」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/299642
・『2022年は本音と建前の境界が完全に崩壊し、外道がフリチンで公道を歩く世の中になると思われる。それを端的に示すのが、2021年12月27日に行われた大阪府と読売新聞大阪本社の包括連携協定である。これは自治体と民間企業が協力する官民提携の一種であり、教育、人材育成、情報発信など8分野にわたる。そこには大阪・関西万博の開催に向けた協力なども盛り込まれている。 協定締結式には吉村洋文と読売新聞大阪本社社長の柴田岳が出席。「権力監視や中立性はどう保てるのか」「巨大な行政機関がひとつのメディアと特別な関係になるのは良くないのではないか」といった記者からの質問に対し、吉村は「締結によって報道活動への制限、優先的な取り扱いはない」、柴田は「取材・報道とは一切関係がない協定となっている」と返答。しかし、具体的に癒着を制限する方法に言及はなく、柴田は「これまで通り事実に基づいた公正な報道と責任ある論評を通じて、是々非々で大阪府の行政を監視して参る所存であります」と宣言するだけだった。読売の報道が公正だと思っている人は少数だろうが、それでもこれまでは「公正」のフリくらいはしてきた。しかし今回はその建前すら放り投げ、完全に開き直ったわけだ』、「大阪府と読売新聞大阪本社の包括連携協定」とは、驚かされた。
・『この連載では事実に基づき、維新が嘘とデマにより拡大した危険な勢力であることを指摘してきたが、その手法はナチスそのものである。テーマを絞り、感情に訴えかけるスローガンを繰り返す。指導者を美化し、その過去を隠蔽する。特定の集団を憎悪の対象に仕立て上げ、不況に苦しむ国民のルサンチマンに火をつける。ヒトラーはプロパガンダのために新聞を最大限に利用した。 現在、維新礼賛や吉村を個人崇拝する異常な記事が連日のように社会に垂れ流されている。国家と国家の武力衝突だけが戦争ではない。今回の件は、国家の中枢に食い込む悪党が合法的に日本および日本人に総攻撃を仕掛けてきたと考えたほうがいい。 こうしたメディアの連中に倫理や道徳を説くのは無駄だ。それが欠如しているからこそ平気な顔で悪に加担するのだ。 今後、国民は読売の報道姿勢を厳しくチェックすべきだ。維新ベッタリの広報紙に成り下がるのなら、カネを出して購読する必要はない』、「維新ベッタリの広報紙に成り下がるのなら、カネを出して購読する必要はない」、同感である。

第三に、1月21日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した「大阪カジノで市負担の土壌対策費790億円が、WTCの二の舞になりそうな理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/293913
・『大阪市は、カジノを含むIR予定地の土壌対策費790億円を負担すると昨年末に公表した。なぜ例外的に負担することになったのか。その経緯を知る手がかりとなる資料は「黒塗り」になっている。大阪維新の会も強く批判してきた、大阪市の過去の湾岸開発の二の舞にはならないか』、「経緯を知る手がかりとなる資料は「黒塗り」に」、維新が不都合な事実を隠蔽するとはとんでもないことだ。
・『松井市長は大阪IRがもたらす「市民へのリターン」を強調するが  新型コロナウイルスの「オミクロン株」の感染拡大が止まらない中、その発信力で注目を集める大阪府の吉村洋文知事。一連の対応には批判もあるが、それでも人気は絶大だ。ただ、同氏が代表を務める大阪維新の会にとって「大阪都構想」に並ぶ看板政策である、カジノを含むIR(統合型リゾート)を大阪市の湾岸に整備する計画には、暗雲が垂れ込めている。 大阪維新の会の“国政部門”である日本維新の会の代表で、維新の最高実力者である松井一郎大阪市長は2021年12月、IRの計画地である大阪市南西部の埋め立て地「夢洲」に土壌汚染や液状化の対策が必要であるとし、市の負担額が790億円になると公表した。 さらに今年1月には、大阪メトロ中央線の新駅を夢洲に設置するための延伸工事の費用が、当初の540億円から、129億円膨らむ見通しであることも判明した。 維新のキャッチフレーズは「身を切る改革」――。民間の手法を導入して行政コストを削減し、IRなどの成長戦略につなげると訴えてきた。 松井市長は土壌対策費790億円について、「負担」と報じられたのがよほど気に障ったらしく、この金額が公表された21年12月20日、大阪府立大学の住友陽文教授に反論する形でツイッターに「IRの経済効果は年、1兆2000億円、カジノの負担金は大阪市だけでも毎年550億円、借地料が毎年25億円、これらが市民へのリターンです。これでも市民負担ですか?」と投稿した』、「市民へのリターン」がかなり不確実なものであることを考慮すべきだ。
・『土壌対策費790億円に加え地下鉄分も負担 “政治主導”で一般会計による穴埋めが決定  府・市IR推進局の資料によると、IR施設の運営による近畿圏での経済波及効果の見込みは年間1兆1400億円、カジノ運営業者から府と市に毎年入る納入金と入場料の推計額は、それぞれ530億円だ。数字が微妙に異なるが、松井市長はこれらの数字を挙げたとみられる。 市が負担を決定した経緯を報じた毎日新聞の記事によると、21年6月に松井市長ら市の幹部が出席した会議で、港営事業会計を所管する市の大阪港湾局が、民間企業であるカジノ事業者の建設費用を市が一部負担するのは住民訴訟の対象になる恐れがあるとの弁護士の指摘を紹介。一方でIR推進局が市の負担は妥当とする弁護士の見解を示した。 最終的に土壌対策費790億円は、市債を発行し、一般会計ではなく、港湾地域の倉庫の利用料や土地の賃料などで成り立つ港営事業会計から返済されることになった。 なお前述の松井市長のツイートの通り、カジノ事業者らから港営事業会計に支払われる賃料は毎年25億円で、35年間の定期借地契約で得られる収入は単純計算で875億円となる。ただ、土壌対策費790億円との差はわずか85億円。さらに前述の大阪メトロ延伸の追加費用の一部も、港営事業会計で負担することとなっている。 一般的に港湾や埋め立て地の開発で必要となる土壌汚染対策や地盤改良などの工事は、計画時はその規模を見通しにくく、工事を進めるほど費用が膨らむことが多い。東京・築地から18年に移転した豊洲市場で大問題になったのがいい例だ。夢洲での工事費用が今後さらに膨らめば、想定される賃料収入を上回ってしまう恐れがある。 6月のこの会議の場で松井市長は「港営事業会計が破綻しないよう、一般会計で支えていくのが当然必要だ」と述べた。これで、市民からの税収などで成り立ち、福祉、教育、土木など市民サービスのために支出する一般会計で港営事業会計を穴埋めすることとなった。財政局が難色を示したが、“政治主導”だったようだ』、「カジノ事業者らから港営事業会計に支払われる賃料は毎年25億円で、35年間の定期借地契約で得られる収入は単純計算で875億円となる。ただ、土壌対策費790億円との差はわずか85億円。さらに前述の大阪メトロ延伸の追加費用の一部も、港営事業会計で負担・・・一般的に港湾や埋め立て地の開発で必要となる土壌汚染対策や地盤改良などの工事は、計画時はその規模を見通しにくく、工事を進めるほど費用が膨らむことが多い」、「夢洲での工事費用が今後さらに膨らめば、想定される賃料収入を上回ってしまう恐れがある」、かなり際どい収支見通しのようだ。
・『カジノ事業者に足元を見られた? 再募集前の会議資料は「黒塗り」  カジノ運営を担う事業者の中核となるのは、米カジノ大手のMGMリゾーツ・インターナショナルの日本法人とオリックスの2社だ。19年12月に始まった事業者の募集に唯一、この2社の企業連合が応募して、21年9月に決定した。 事業者の募集は、夢洲の土壌汚染が判明してから21年3月に再度実施され、その際の募集要項には以下の文言が追加されていた。 IR施設を整備するに当たり支障となる地中障害物及び土壌汚染等に起因して設置運営事業者の負担が増加すると見込まれる場合は、設置運営事業者の施設計画や施工計画等を踏まえ、対応方法等について事前に協議の上、大阪市の設計・積算基準等により、大阪市が当該増加負担のうち妥当と認める額を負担するものとする。詳細については、事業条件書等において示す。 大阪市はこれまで、夢洲と同様の咲洲(さきしま)や舞洲(まいしま)といった埋め立て地を売却したり賃貸したりする際、土壌汚染対策などの費用を市が負担しないことを原則としてきたが、夢洲のIRをめぐっては、これが例外的に放棄された形だ。なぜか。 唯一の応募事業者だったMGM・オリックス連合と市とのやり取りが要因となりうるが、それが一体どのようなものだったのか、今なお明かされていない。 自民党大阪府連は都構想やIRをめぐって、維新と激しく対立してきた。大阪市議会自民党の川嶋広稔議員は21年12月24日、市当局から興味深い資料を受け取った。 21年3月の追加募集の前の2月12日、夢洲の整備計画の修正案を協議した市の「戦略会議」の資料提供を市当局に求めたが、松井市長ら出席者と概要以外の記述が黒塗りにされていた(下写真)。 戦略会議黒塗り資料) 川嶋市議はダイヤモンド編集部の取材に「MGM・オリックス連合側から市に対し、土壌汚染対策などの費用負担の要求があったのではないか。黒塗りの資料にはその内容が記されている可能性がある。どうしてもIRを実現したい市側が、唯一の応募者に足元を見られ、いいようにされているのではないか」と指摘する。 それでも年間530億円という「リターン」が府と市にそれぞれもたらされるからいいではないか、というのが松井市長の言い分だ。では、その根拠を検証してみよう』、「どうしてもIRを実現したい市側が、唯一の応募者に足元を見られ、いいようにされているのではないか」、お粗末極まる交渉姿勢だ。
・『府と市の収入は「コロナ収束が前提」 維新の看板政策、WTCの二の舞に?  530億円のうち府と市への納入金は、事業者が得る粗利の15%。入場料も当然、入場者数に左右されるので、彼らの事業が不振になれば、府と市の収入も減る。コロナ禍でMGMら世界のカジノ大手が大打撃を受け、大阪・ミナミの商店街を埋め尽くした中国系インバウンド観光客が消え去ったことを考えれば、決して安定した収入とは言えない。 市IR推進局は取材に対し、これらの見込み額の試算には外国からの来訪客の影響も含んでおり、コロナ禍が今後収束していくことを前提としていると説明した。現在まさに進行している事態の教訓が生かされていないのである。 かつて大阪湾岸では、市が超高層のワールドトレードセンタービル(WTC、現大阪府咲洲庁舎)を建設したもののテナントが入らず、第三セクターである運営会社が破綻。09年に一般会計から港営事業会計に164億円を拠出して支援した。大阪市民にとっては実に忌まわしい記憶だが、もし夢洲の土壌改良工事で港営事業会計を穴埋めすれば、この時以来の悪夢となる。松井市長がいかに「リターン」を強調しようとも、資料を黒塗りにするようでは、あまりに説得力を欠く。 橋下徹元大阪市長ら維新はもともと、こうした行政の乱開発の失敗を強く批判して大阪の有権者に浸透。今や地元民放テレビ局の番組に吉村知事らがたびたび出演する人気ぶりで、昨年10月の総選挙では、大阪府内の全選挙区で候補者が当選するほど盤石な地位を築いた。 ちなみに橋下氏は府知事時代に「増税よりカジノ。収益の一部は教育、福祉、医療に回す」と豪語した。だがコロナ禍で医療の危機は目下、継続中であり、それは維新の行政改革による医療や保健所機能の低下が一因と批判されている。 コロナ禍初期の20年4月、橋下氏はツイッターで「僕が今更言うのもおかしいところですが、大阪府知事時代、大阪市長時代に徹底的な改革を断行し、有事の今、現場を疲弊させているところがあると思います。保健所、府立市立病院など。そこは、お手数をおかけしますが見直しをよろしくお願いします」と言及した。 挙句、IRへの「投資」が市民負担に転じれば、WTCの二の舞となり、大阪市政に新たな負の遺産を作り出すことになる。後になって「見直し」をすることはできない。 【訂正】記事初出時より、以下のように修正しました。1ページ目3段落目:127億円膨らむ見通しであることも判明した。→129億円膨らむ見通しであることも判明した』、「大阪府知事時代、大阪市長時代に徹底的な改革を断行し、有事の今、現場を疲弊させているところがあると思います。保健所、府立市立病院など。そこは、お手数をおかけしますが見直しをよろしくお願いします」、との「橋下氏」の自己批判は遅きに失したきらいはあるが、もっともだ。「IRへの「投資」が市民負担に転じれば、WTCの二の舞となり、大阪市政に新たな負の遺産を作り出すことになる」、大阪の「IR」はやはり「市民負担に転じ」るのだろうか、大いに注目される。

第四に、1月21日付け日刊ゲンダイ「維新ヨイショ!吉村・橋下・松井3氏が出演したMBS元旦番組に「偏向報道」の目」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/geino/300253
・『今年の元日に毎日放送(MBS)で放送された関西ローカル番組「東野&吉田のほっとけない人」に、日本維新の会の橋下徹元代表、大阪市長の松井一郎代表、大阪府知事の吉村洋文副代表の3人がそろって出演したことについて、MBSが「政治的中立性を欠く」として調査チームを立ち上げたことが分かった。同社の虫明洋一社長が19日の会見で明らかにした。 虫明社長によると、社内では放送前から問題視する声が上がっていたという。視聴者からも、約20件の問い合わせがあった。放送後に開かれた社内の月例番組審議会でも、「中立・公平性を求める放送法の観点から問題がある」という意見が出たという。そのため、社内に調査チームを立ち上げて、制作過程を検証することになった。その結果は3月の番組審議会で報告される。 MBSは、在阪メディアの中では維新に批判的なことで知られていた。維新側からも「偏向報道のMBS」とたびたび名指しされてきたくらいだ。そういう放送局だから、社会から異論も出たのだろうが、在阪メディアの維新偏重はMBSにかぎった話ではない』、「在阪メディアの中では維新に批判的なことで知られていた」「MBS」が、「維新ヨイショ!」番組を放映、「「政治的中立性を欠く」として調査チームを立ち上げた」とは、驚かされた。
・『維新をバケモノにした在阪メディア  「在阪メディアでは、吉本興業の芸人が連日のようにテレビ各局で『維新はさすがやわぁ』『吉村知事はようやっとる』と持ち上げている。それが維新の支持拡大につながってきました。東京に対する対抗心から維新をことさら持ち上げる傾向があるのでしょうが、維新を大阪で敵なしのバケモノにしたのは在阪メディアです。さすがに、現場の報道記者からは『やりすぎだ』と不満の声も出ています」(ジャーナリスト・横田一氏) 昨年末には、読売新聞大阪本社が大阪府と包括連携協定を結んだことも話題になった。その直後の12月30日、読売新聞オンラインで「吉村洋文知事、休日の筋トレ姿を公開! たくましい筋肉に黄色い声殺到『カッコ良すぎ』『キャー!』」という記事が公開され、物議を醸したものだ。吉村が自身のSNSで筋トレの様子をアップしたところ絶賛コメントが殺到したという愚にも付かない内容だった。) 「関西圏では吉村知事や維新関係者を取り上げると視聴率やPV数を稼げるのかもしれませんが、そういう人気者に仕立て上げたのは在阪メディアであり、マッチポンプです。MBSの調査結果によっては、他局にも影響が及ぶのではないか。この機会に正気を取り戻し、権力のチェックというメディア本来の役割を思い出してくれることを願います」(横田一氏) MBSはどんな調査結果を出すのか』、「そういう人気者に仕立て上げたのは在阪メディアであり、マッチポンプです」、「MBSの調査結果によっては、他局にも影響が及ぶのではないか。この機会に正気を取り戻し、権力のチェックというメディア本来の役割を思い出してくれることを願います」、同感である。
タグ:「診療報酬を過大に請求」、「変態系」、よくぞこんな人物を議員として推薦したものだ。 「女子中学生に「ただでは済まさない」などのメッセージを送り恐喝」、変な性的被害がなかっただけよかったのかも知れない。 適菜収氏による「問題人物を引き寄せる「維新の実態」政策以前の不祥事オンパレードを振り返る」 日刊ゲンダイ (その4)(問題人物を引き寄せる「維新の実態」政策以前の不祥事オンパレードを振り返る、ナチスの手法を彷彿とさせる維新とメディアの連携 読売の報道姿勢を厳しくチェック、大阪カジノで市負担の土壌対策費790億円が WTCの二の舞になりそうな理由、維新ヨイショ!吉村・橋下・松井3氏が出演したMBS元旦番組に「偏向報道」の目) 維新の会 「IR汚職事件」は立派な刑事事件だ。「社会のルールを守ることができない集団は政治に関わる資格はない」という「維新という罪」は、誠に重大だ。 適菜収氏による「ナチスの手法を彷彿とさせる維新とメディアの連携 読売の報道姿勢を厳しくチェック」 「大阪府と読売新聞大阪本社の包括連携協定」とは、驚かされた。 「維新ベッタリの広報紙に成り下がるのなら、カネを出して購読する必要はない」、同感である。 ダイヤモンド・オンラインが掲載した「大阪カジノで市負担の土壌対策費790億円が、WTCの二の舞になりそうな理由」 「経緯を知る手がかりとなる資料は「黒塗り」に」、維新が不都合な事実を隠蔽するとはとんでもないことだ。 「市民へのリターン」がかなり不確実なものであることを考慮すべきだ。 「カジノ事業者らから港営事業会計に支払われる賃料は毎年25億円で、35年間の定期借地契約で得られる収入は単純計算で875億円となる。ただ、土壌対策費790億円との差はわずか85億円。さらに前述の大阪メトロ延伸の追加費用の一部も、港営事業会計で負担・・・一般的に港湾や埋め立て地の開発で必要となる土壌汚染対策や地盤改良などの工事は、計画時はその規模を見通しにくく、工事を進めるほど費用が膨らむことが多い」、「夢洲での工事費用が今後さらに膨らめば、想定される賃料収入を上回ってしまう恐れがある」、かなり際どい収支見 「どうしてもIRを実現したい市側が、唯一の応募者に足元を見られ、いいようにされているのではないか」、お粗末極まる交渉姿勢だ。 「大阪府知事時代、大阪市長時代に徹底的な改革を断行し、有事の今、現場を疲弊させているところがあると思います。保健所、府立市立病院など。そこは、お手数をおかけしますが見直しをよろしくお願いします」、との「橋下氏」の自己批判は遅きに失したきらいはあるが、もっともだ。「IRへの「投資」が市民負担に転じれば、WTCの二の舞となり、大阪市政に新たな負の遺産を作り出すことになる」、大阪の「IR」はやはり「市民負担に転じ」るのだろうか、大いに注目される。 日刊ゲンダイ「維新ヨイショ!吉村・橋下・松井3氏が出演したMBS元旦番組に「偏向報道」の目」 「在阪メディアの中では維新に批判的なことで知られていた」「MBS」が、「維新ヨイショ!」番組を放映、「「政治的中立性を欠く」として調査チームを立ち上げた」とは、驚かされた。 「そういう人気者に仕立て上げたのは在阪メディアであり、マッチポンプです」、「MBSの調査結果によっては、他局にも影響が及ぶのではないか。この機会に正気を取り戻し、権力のチェックというメディア本来の役割を思い出してくれることを願います」、同感である。
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