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倒産・経営破綻(その2)(なぜ倒産? 経営者が「しなくていい自己破産」をしてしまう理由、コロナ禍なのに企業倒産は過去50年で最低…そのツケを銀行に押しつける「私的整理徳政令」はやるべきか 中小企業救済は岸田政権の最優先課題だが…、国がゼロゼロ融資の債務減免「令和の徳政令」実施へ 救われる企業の「ボーダーライン」は?) [企業経営]

倒産・経営破綻については、5月24日に取上げた。今日は、(その2)(なぜ倒産? 経営者が「しなくていい自己破産」をしてしまう理由、コロナ禍なのに企業倒産は過去50年で最低…そのツケを銀行に押しつける「私的整理徳政令」はやるべきか 中小企業救済は岸田政権の最優先課題だが…、国がゼロゼロ融資の債務減免「令和の徳政令」実施へ 救われる企業の「ボーダーライン」は?)である。

先ずは、6月24日付け日経ビジネスオンライン「なぜ倒産? 経営者が「しなくていい自己破産」をしてしまう理由」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00087/061300295/
・『近年、話題になった倒産劇から普遍の失敗の法則を探る『なぜ倒産 令和・粉飾編 ― 破綻18社に学ぶ失敗の法則』が刊行された。刊行に合わせて、ある会社の実例から教訓を引き出す。 前回、前々回に引き続き、日経ビジネスのある編集部員が個人的によく知る、新興のファブレスメーカー、Xサイエンス社(仮名)の倒産劇を紹介する。社長のXさん(仮名)は、会社の破産と同時に自己破産し、貯金もマイホームも失った。しかし、企業再生の専門家によれば「自己破産する必要は100%なかった」という。なぜか? ※ 前々回:売上高が伸びていたのに倒産。某メーカーが破産に至った分岐点 ※ 前回:社長が語った倒産劇。なぜ一足飛びに「破産」を選んでしまったか? 前回、前々回と、記者の私が個人的に知るファブレスメーカーXサイエンス社の倒産劇と、経営者Xさんの自己破産について紹介してきました。 なぜ、私がこのような記事を書きたかったかというと、経営破綻や企業再生を取材するなかで、専門家から見て「破産する必要がないのに破産してしまう会社」や「自己破産する必要がないのに自己破産してしまう社長」に出会うことがあり、残念に思うからです。Xサイエンス社のケースもそうでした。会社や個人が特定されるのを避けるため、取材対象者と私自身の名前を伏せ、事実関係の一部を変えてご紹介することを、引き続きご了承ください。 前回、破産前後のXさんについてお伝えしました。売り上げは伸びていたものの、大口の仕入れ先からの供給が途絶えて、会社を破産させる決意をしたXさん。その後のエピソードというと、例えば……。 取引先に迷惑をかけないように、仕入れ先の工場と得意先の国内大手メーカーが直接、取引できるように両社をつないだこと。ご自身は現金99万円を残して個人資産のほぼすべてを失ったこと。Xサイエンス社に残された資産をできるだけ高く売る「換価作業」に約3カ月間、力を尽くしたこと。そのかいあって、Xサイエンス社の破産弁済率が30%を超え、破産にしては債権者に多くの弁済ができたこと。換価作業を終えた後、自責の念からうつ状態に陥り、引きこもってしまったこと……。 これらのエピソードのなかに「それなら会社を破産させなくてもよかったのではないか」と、専門家たちが注目したポイントが2点あります。皆さまは、どう思われるでしょうか』、先ずは詳細を知る必要がある。
・『売り上げは伸びていたが、供給が途絶えた  1つは、仕入れ先の工場と得意先の国内大手メーカーをつないだ、というところです。 ファブレスメーカーのXサイエンス社は、海外の現地資本の工場から半製品を仕入れ、現地で最終加工を施し、商品を完成させていました。この最終加工を任せていたY社との取引が続けられなくなり、Xさんは破産を決意したのでした。売り上げが伸びていても、仕入れの大半を頼っていたY社からの供給が途絶えた以上、事業継続は不可能という判断でした。 ところが、そのXさんが、Y社の仕入れ先である海外の工場と得意先をつないだといいます。これは、XさんがY社の仕入れ先との間にパイプを持っていたことを意味します。 それならば、Y社を介さない直接取引に切り替えて、事業を継続できたのではないか……。企業再生のプロからは、そんな疑問が提示されました。しかし、Xさんによると、自社商品にはその特性上、高い品質基準が求められ、その基準を満たせる取引先がほかになかったのだそうです。直接取引に切り替えることについてはXさんも以前から考えていて、いろいろと検討していました。しかし、品質基準に対する解が最後まで見つからなかったのでした。一方、得意先の国内大手メーカーには、この問題をクリアするだけの経営資源があったので、現地工場とつないだのだということでした』、「自社商品にはその特性上、高い品質基準が求められ、その基準を満たせる取引先がほかになかったのだそうです」、「品質基準に対する解が最後まで見つからなかったのでした。一方、得意先の国内大手メーカーには、この問題をクリアするだけの経営資源があったので、現地工場とつないだのだということでした」、なるほど。
・『得意先にとって「大事な取引先」だったか?  では、この国内大手メーカーにスポンサーになってもらうことで、事業継続はできなかったのか。別の専門家からは、そんな疑問の声も上がりました。この打ち手については、Xさんは「思いつきもしなかった」そうですが、すごく突飛(とっぴ)な話ではありません。代替の利かない重要な商品の仕入れ先であれば、大手の取引先が資金を出して守ってくれるというケースは存在します。 ただし、この場合、大手企業はまず、そこまでして守る必要がある仕入れ先であるかどうかを考えると、専門家は指摘します。そして「ほかに仕入れ先がないのか。探せ」という指示が現場に飛びます。その結果「ほかに仕入れ先がない」となってから支援を検討することになるので、よほどの独自性がある会社でないと難しいといいます。Xサイエンス社が納めていた商品の場合、Xさんが知る限り、少なくとも国内に1社は代替できる企業があったそうです。そう考えると、この方法も現実的ではなかったのかもしれません。 それにしても破産する必要があったのかと、専門家たちが首をかしげるのは、Xさんのエピソードのなかにもう1つのポイントがあったからです』、どういうことだろう。
・『「破産弁済率30%以上」が意味すること  2つ目のポイントは、破産弁済率が30%以上という数字でした。専門家から見るとかなり高い水準で「そこまで弁済できるなら、何かほかにやりようがあったのではないかと、つい思ってしまう」ということでした。 さて、最後に自己破産についてです。会社の破産については「もしかしたら避けられなかったのかもしれない」とおっしゃる専門家も、Xさんの自己破産については「100%する必要がなかった」と、断言されました。 Xさんにとっては酷な話です。今では倒産後のショックから脱し、生活の再建も進んでいますが、自己破産した直後、Xさんに残されたのは、わずかな日用品と現金99万円でした。その99万円も、税金や国民健康保険の保険料などを払うと、すぐ底を突き、ほぼ無一文になりました。しかし、そこまで追いつめられる必要など、なかったというのです。今回、この記事を書きたいとXさんにご相談したところ、「ほかの経営者の方々の学びになるなら」とご快諾いただきました。この場を借りて、Xさんにお礼を申し上げます。 会社が倒産したときに、経営者が自己破産してしまうのは、経営者保証をしているからです。Xさんのケースもそうでした。経営者保証というのは、会社が金融機関から借り入れをするとき、経営者個人が会社の連帯保証人になることです。本来、法人と個人は別の法人格ですが、経営者保証があると、会社と経営者個人の運命が一体になってしまいます。そのために、業績が悪化した企業の経営者が人生に絶望して自死するといったことも過去にはたびたび起きていて、問題視されることも多い慣行です。 そこで2013年に公表され、翌14年から適用が始まったのが、「経営者保証に関するガイドライン」です。原文は、こちら(https://www.zenginkyo.or.jp/adr/sme/guideline/)にありますが、ざっくりといえば、一定の要件を満たす場合、経営者保証を解除してほしいと経営者が申し入れたら、金融機関はしっかり対応しなくてはいけませんよ、ということです』、「Xさんのケースも」「経営者保証をして」いたのであれば、「一定の要件を満たす場合、経営者保証を解除してほしいと経営者が申し入れたら、金融機関はしっかり対応しなくてはいけません」、解除される可能性もあったことになる。
・『ガイドラインに、効力はあるのか?  このガイドラインのなかで、会社が法的債務整理の手続きをしている場合も、経営者が誠実に資力を開示している場合などは、残存する保証債務の免除要請について誠実に対応しなければならないと定められています(https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/abstract/adr/sme/guideline_leaf.pdfなどを、ご参照ください)。 つまり、Xさんの場合も「金融機関に申し入れる」ということさえしていれば、経営者保証を免除してもらえる可能性は十分にあったと専門家は指摘します。破産手続きをしている最中でも、免除してもらえたはずだといいます。免除されれば、自己破産までする必要はなかったはずです。しかし、残念ながら「金融機関に申し入れる」ということができませんでした。 「経営者保証に関するガイドライン」には法的な拘束力はなく、あくまで「中小企業、経営者、金融機関共通の自主的なルール」(中小企業庁のホームページ)です。「関係者が自発的に尊重し、遵守することが期待されている」(同)という位置付けです。 専門家によると「このガイドラインの要請を、金融機関はある程度は認識している」そうです。あとは弁護士さんが間に入って、このガイドラインを盾に取り仕切ってくれるかどうかが重要、ということでした。 「察するに、金融機関には、経営者が自己破産したほうが楽と思ってしまう担当者もいるのではないか」と指摘する専門家もいます。経営者保証を解除するまでには手続きが多く、書類仕事だけでも大変です。だから、金融機関が自己破産を回避する手を打ってくれることを期待していては、Xさんのような悲劇が繰り返されることは避けがたいといいます。経営者サイドから自発的に働きかけていく姿勢が必要です。 特に2022年の夏を迎えようとする今、「経営者保証に関するガイドライン」の存在に注目することには大きな意味があります』、「経営者保証を解除するまでには手続きが多く、書類仕事だけでも大変です。だから、金融機関が自己破産を回避する手を打ってくれることを期待していては、Xさんのような悲劇が繰り返されることは避けがたい」、金融機関が「手続き」の大変さから消極的とは困ったことだ。やはり「経営者サイドから自発的に働きかけていく姿勢が必要です」。
・『コロナ禍から正常化に向かうときのリスク  Xサイエンス社のように、実質的な債務超過に陥った企業には、よほどのことがない限りは、金融機関は融資しないと専門家はいいます。では、この「よほどのこと」というのが何かというと、例えば、新型コロナウイルス禍です。 コロナ禍の間は、債務超過でも融資が下りていた企業が多くありました。しかし、現在、コロナ禍で制限されていた経済活動が正常化されつつあります。そうすると、これらの企業に対する特例措置も解除されていくわけで、普通に考えれば、倒産が増加するはずです。それに伴い、経営者の自己破産が増えることは、絶対に避けたいところです。だから、特に経営者の方々には、いざというときのために「経営者保証に関するガイドライン」の存在を忘れないでほしいのです。 さらに企業再生の専門家たちが注意を促すのが、経済産業省が金融庁、財務省と連携して策定し、今年(22年)3月に発表した「中小企業活性化パッケージ」です(詳しくは、https://www.meti.go.jp/press/2021/03/20220304006/20220304006.html)。このなかで、「中小企業の再チャレンジの総合的支援策」として、「個人破産回避に向けたルールの明確化」が掲げられています。そして、「経営者保証に関するガイドラインに基づき債務整理を行った場合、保証人は個人破産しない」ことも、明記されています。 これらの情報を1つの糧として、絶えず変化する経営環境を力強く生き抜いていきましょう』、弁護士と付き合いのない企業の場合でも、取引金融機関と相談したり、経営者仲間と情報交換するなど、可能な限りの努力で「個人破産」を回避してほしいものだ。

次に、10月18日付けPRESIDENT Originalが掲載した経済ジャーナリストの森岡 英樹氏による「コロナ禍なのに企業倒産は過去50年で最低…そのツケを銀行に押しつける「私的整理徳政令」はやるべきか 中小企業救済は岸田政権の最優先課題だが…」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/62618
・『企業の“コロナ倒産”がここへきて急増中  企業倒産がじわじわと増加しつつある。東京商工リサーチが10月11日に発表した全国の4~9月の倒産件数は前年同期比6.94%増の3141件と、3年ぶりに増加した。9月単月では前年同月比18.61%増の599件と今年に入って最多で、6カ月連続で前年を上回った。 倒産が急増した最大の理由は、新型コロナウイルス感染拡大に対応して導入した実質無利子・無担保融資(いわゆるゼロゼロ融資)の返済が本格的に始まったことにある。 ゼロゼロ融資は、コロナ禍で売り上げが減った中小企業を対象に、金融機関が担保なしで融資する制度で、借り手が本来金融機関に支払う利子を3年間、国や都道府県が負担する仕組み。もし返済できない場合は信用保証協会が返済を肩代わりする。2020年3月にスタートし、民間金融機関の受け付けは昨年3月まで、政府系金融機関は今年9月末で終了した。 このゼロゼロ融資の効果は絶大で、コロナ禍にもかかわらず21年度の企業倒産は半世紀ぶりに6000件を下回るなど歴史的低水準に抑えられてきた。しかし、ゼロゼロ融資は最長5年まで元金の返済開始を猶予でき、最初の3年間は利払いも実質免除する仕組みで、「元金返済の猶予期間を3年以内に設定しているところが多い」(メガバンク幹部)とされる。 その猶予期間が過ぎ、返済が本格化する中、大幅な円安や燃料費・原材料費の高騰が重なり、倒産に追い込まれる企業が増えているのだ』、「ゼロゼロ融資は最長5年まで元金の返済開始を猶予でき、最初の3年間は利払いも実質免除する仕組みで、「元金返済の猶予期間を3年以内に設定しているところが多い」・・・とされる。 その猶予期間が過ぎ、返済が本格化する中、大幅な円安や燃料費・原材料費の高騰が重なり、倒産に追い込まれる企業が増えている」、大変だ。
・『岸田首相は倒産回避策を打ち出す予定  同時に、信用保証協会の返済肩代わり(代位弁済)も急増している。8月の代位弁済は前月比26%増の266億円で、前年同月を上回るのは12カ月連続だ。 中小企業庁によれば、ゼロゼロ融資の実行額は今年6月末で約234万件、42兆円に及ぶ。「ゼロゼロ融資という巨大な融資の塊を、企業倒産を回避しながらどうソフトランディングさせるか。返済猶予や返済条件の緩和には従来より前向き、かつ柔軟に対応しているが、債権放棄(私的整理)となると次元が異なる」(メガバンク幹部)という。 そこで、政府は10月末の総合経済対策で、岸田文雄首相が掲げる「新しい資本主義」の追加策を打ち出す。その柱のひとつに、経営不振に陥った企業が債務を圧縮する私的整理をすべての債権者が同意しなくても進められるようにする条件緩和策が盛り込まれる予定だ』、「私的整理をすべての債権者が同意しなくても進められるようにする条件緩和策が盛り込まれる予定」、これは大変なことだ。
・『メガバンク幹部は「本音ではやりたくない」  冒頭で紹介したように、コロナ禍で倒産寸前の企業の救済策として意図されるものだが、はたしてワークするのかは未知数。なにより肝心の銀行界の姿勢は及び腰だ。「政治的な要請で応じざるを得ないが、本音ではやりたくない」(メガバンク幹部)と冷ややかな声が聞かれる。 そもそも私的整理は、債権者である銀行が債務者(企業)の借り入れ負担を軽減するために債権放棄する枠組みだ。法的整理(倒産)を回避して、生かしながら再生させる手法であり、債権放棄の割合を銀行間で調整する機能がある。メインバンクや準メインバンクは他の債権者よりも重い負担を負うことになるが、融資銀行がおしなべて債権放棄という形で応分の負担を強いられることに変わりはない。 その私的整理の条件を緩和して、(企業が)利用しやすくするのが今回の措置なので、銀行がいい顔しないのは当然。しかも、私的整理では債権者全員の賛成が前提条件だったが、改正ではすべての銀行が同意しなくても利用できるということで、私的整理を申し出る企業が増えることは確実。融資する銀行が身構えるのも無理はない』、政府が人気取りのために、「私的整理では債権者全員の賛成が前提条件」を外すというのは、乱暴だ。
・『債権放棄を多数決で決めることのリスク  さらに、その実効性にも疑問符が付く。というのも、従来、私的整理する際にすべての債権者の合意を前提にしてきたのは、債権放棄後の再生過程で、すべての融資銀行で残高維持などの協力が不可欠なためだ。反対する銀行があれば、再生に非協力になったり、融資のメイン寄せ(足抜け)に動いたりしかねず、再生が頓挫しかねないリスクがあるのだ。 この点についてメガバンク幹部は次のように指摘する。「いわゆる多数決方式だと、その効果として迅速な債務整理が可能になる点が指摘されている。他方、法的手続きに拠よらない私的整理は、事業者、金融機関双方にとって経済合理性があることを前提として、関係者の合意に基づいて手続きを進めるのが基本的な枠組みであり、関係者が一丸となって再建計画を実行していくことに大きな意義、メリットがある。 それを多数決によって結論を得る場合、意思に反して債権放棄を迫られることになった債権者からは、その後の再建に向けた協力が得られず、かえって再建に支障が出る事態も想定されるのではないか」というのだ。 その懸念がまさに顕在化したのが、大手自動車部品メーカー・マレリホールディングスの再建だった』、「多数決によって結論を得る場合、意思に反して債権放棄を迫られることになった債権者からは、その後の再建に向けた協力が得られず、かえって再建に支障が出る事態も想定されるのではないか」、その通りで、政府の考え方は余りに安易だ。
・『過去最大規模の「負債額1兆円」の倒産劇  マレリが私的整理のひとつである事業再生ADR(裁判外紛争解決手続)の申請を行ったのは今年3月。親会社である米投資ファンドのKKRをスポンサー企業として、融資金融機関に約4500億円の債権放棄を求めていた。しかし、債権放棄の配分について全債権者の合意が得られず、結局、法的整理で民事再生の一種である簡易再生に向けた手続きに移行した。負債総額は1兆円を超え、製造業では過去最大規模の倒産劇となった。 今回の私的整理の条件緩和は、こうしたリスクを軽減し、ADR等の私的整理をまとめやすくするのが目的だが、裏を返せば、再建案に不満をもった債権者を多数決という形で強引に再建策履行に引っ張り込むことを意味する。「いったん、私的整理が成立して再建案が動き出しても、途中で債権者間の足並みが揃そろわず計画が宙に浮く事態も想定される」(地銀幹部)と危惧されている』、「マレリが私的整理のひとつである事業再生ADR(裁判外紛争解決手続)の申請を行ったのは今年3月。親会社である米投資ファンドのKKRをスポンサー企業として、融資金融機関に約4500億円の債権放棄を求めていた。しかし、債権放棄の配分について全債権者の合意が得られず、結局、法的整理で民事再生の一種である簡易再生に向けた手続きに移行した」、「今回の私的整理の条件緩和は、こうしたリスクを軽減し、ADR等の私的整理をまとめやすくするのが目的だが、裏を返せば、再建案に不満をもった債権者を多数決という形で強引に再建策履行に引っ張り込むことを意味する。「いったん、私的整理が成立して再建案が動き出しても、途中で債権者間の足並みが揃そろわず計画が宙に浮く事態も想定される」(地銀幹部)と危惧されている」、その通りだ。
・『中小企業の経営はブラックボックスが多い  だが、泣く子と地頭(政府)にはかなわない。銀行は企業救済を優先する政治的な要請を汲んで、3月に全国銀行協会が中小企業の事業再生手続きを定める新しい指針「中小企業版:私的整理ガイドライン(指針)」をまとめた。 弁護士や会計士など第三者支援専門家が中立的な立場から再生計画を策定・評価することで、中小企業の私的整理をやりやすくするもので、「コロナ後を見据え、中小企業が抱え込んだ過剰な債務を解消する手段となる」(メガバンク幹部)とされた。 しかし、具体的に企業の債務整理に踏み切るにはいくつかの壁が立ちはだかる。最大の壁と目されているのが税制だ。中小企業は決算の正確性に乏しく、財務状況の実態把握も難しいという難点がある。赤字で法人税を含めほとんど納税していない中小企業が少なくないことも税当局の不信感となっている。仮に私的整理のガイドラインが整備されても、国税当局から繰越欠損金の存在を否認されるケースが多数出かねないと予想される。 新指針で、弁護士や会計士などの専門的な第三者が再生計画の策定・評価に加わるのは、こうしたリスクを軽減するためだ。また、再生計画で債務超過の解消期間を従来の3年から原則5年に延ばすほか、経営者の退任を必須としていた条件を見直し、経営責任をただしつつも引き続き経営を担えるよう配慮している』、「中小企業は決算の正確性に乏しく、財務状況の実態把握も難しいという難点がある。赤字で法人税を含めほとんど納税していない中小企業が少なくないことも税当局の不信感となっている。仮に私的整理のガイドラインが整備されても、国税当局から繰越欠損金の存在を否認されるケースが多数出かねないと予想される。 新指針で、弁護士や会計士などの専門的な第三者が再生計画の策定・評価に加わるのは、こうしたリスクを軽減するためだ」、「中小企業」は「決算の正確性に乏し」いのは本当に困ったことだ。「弁護士や会計士などの専門的な第三者が再生計画の策定・評価に加わるのは、こうしたリスクを軽減するためだ」、なるほど。
・『“選挙対策“を銀行が丸ごとのむとは思えない  中小企業の経営は、トップの経験や人脈などに依存する部分が大きい。その継承は容易なことではない。属人的な要素が大きいためだ。コロナ禍にあってさらにその重要性は高まっている。今回の中小企業の事業再生に向けた新しい指針で、トップが引き続き経営を担える余地を残したことは高く評価できるのだが……。 政府は今月末の経済対策を受けて、2023年の通常国会に「私的整理円滑化法案」の提出を目指すという。岸田政権は10月で発足から1年を迎えたが、支持率は40%を下回る低空飛行。「来年春には統一地方選挙が控えている。コロナ禍で苦しむ地方の中小企業救済は政治の最優先課題となる」(同)とみられており、事実上、中小企業の負債を一部免除する「私的整理徳政令」は一丁目一番地の施策といっていい。 だが、コロナ禍に苦しむ企業を助けるといえば聞こえはいいが、実際は銀行の負担が増え、融資する銀行の足並みを揃えることはなかなか難しい。結局、形は作れど、魂が入らず、有形無実化しかねないリスクもある』、「私的整理徳政令」が出来れば、金融機関側としては、中小企業貸出に当たっては、そうしたリスクを織り込んで、金利など取引条件を厳しくせざるを得ないだろう。

第三に、11月1日付けダイヤモンド・オンライン「国がゼロゼロ融資の債務減免「令和の徳政令」実施へ、救われる企業の「ボーダーライン」は?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/311979
・『債務減免を含む事業再生――。ゼロゼロ融資で膨れ上がった債務の負担を軽減するため、政府は「令和の徳政令」を実行しようとしている。もちろん全ての企業が債務減免されるわけではない。倒産を回避して生き残らせる企業の“選別”が始まろうとしている。徳政令の恩恵にあずかれる企業と、そうではない企業の境目は?特集『選別開始!倒産危険度ランキング2022』(全20回以上)の#2では、倒産回避の最後の秘策ともいえる徳政令の行方に迫る』、興味深そうだ。
・『総合経済対策に明記された「債務減免」 中小企業支援の「令和の徳政令」が始まる  債務減免を含めた事業再生・再チャレンジを支援する――。 10月28日に政府が閣議決定した物価高克服・経済再生実現のための総合経済対策。エネルギー価格の高騰を受け、1家庭当たり約4.5万円となる電気やガス、ガソリン代の負担軽減策に話題が集まる中、中小企業の支援策に絡みひっそりと記されたこんな一文がひそかな注目を集めている。 債務減免とはすなわち借金の棒引き。「令和の徳政令」が実行されようとしているのだ。 新型コロナウイルスの感染拡大で、多くの企業の経営環境が悪化したにもかかわらず、2021年の企業の倒産件数は歴史的な低水準で推移した。これは実質無利子・無担保で融資を受けられるゼロゼロ融資をはじめとする、手厚い支援があったからだ。 自治体が最初の3年間の利子を負担し、元本は信用保証協会が保証してくれるゼロゼロ融資は、民間の金融機関にとって焦げ付きリスクなしで収入を得られるおいしいビジネスだった。だから、金融機関はカネを貸しまくった。 ゼロゼロ融資の申請基準を満たさない企業の業績を改ざんして不正融資をしたとして、9月30日に東海財務局から行政処分を受けた中日信用金庫のような悪質な例もある。 これまでに実行されたゼロゼロ融資は約244万件、総額で約42兆円にまで達した。このうち約23兆円が民間分だ。 一時的な企業の延命につながったゼロゼロ融資にも弊害があった。 東京商工リサーチが10月に約5200社を対象に実施した調査によれば、中小企業の33.0%、実に3社に1社が「過剰債務」と回答している。つまり、カネを借り過ぎたのだ。 そしてゼロゼロ融資の返済が一部の企業で始まり、23年7月~24年4月には民間のゼロゼロ融資の返済開始のピークを迎えようとしている。 そんな中、不穏な予兆が出始めている。帝国データバンクによれば、22年4~9月に倒産した企業のうち、ゼロゼロ融資など「コロナ融資後」の倒産件数は202件で、前年同期の約2.6倍に上った。(コロナ融資後倒産件数の推移のグラフはリンク先参照) 返済が本格化する来年以降、カネを借り過ぎて首が回らない企業の倒産が増加することは目に見えている。統一地方選挙が実施される23年に、大倒産時代の到来を食い止める最後の“秘策”が、債務減免なのだ。 令和の徳政令で救われるのはどんな企業か。そのヒントが、総合経済対策に債務減免などを盛り込むよう提言した自由民主党金融調査会が10月13日にまとめた緊急決議に隠されている。 決議をひもといた上でキーパーソンに取材をすると、債務減免のスキームが浮かび上がってきた。幾つかの業種は重点的に債務減免を受けられそうだ。そして、債務減免を受けられるかどうかは「ある型」にはまるか否かでチェックされそうで、企業の取捨選択が23年春までに始まる可能性が出てきた』、「債務減免を受けられるかどうかは「ある型」にはまるか否かでチェックされそうで、企業の取捨選択が23年春までに始まる可能性」、なるほど。
・『地域交通、宿泊・観光、飲食、小売り…支援が優先される“徳政令救済6業種”  「金融機関よりコロナ関連融資の返済を強く迫られ、厳しい経営環境に立たされている」「無利子無担保融資などの返済に当たっては、金融機関に柔軟に返済計画の見直しや相談に応じてもらえるよう、金融機関に対して国から重ねて働きかけてほしい」 自民党金融調査会の決議はこのような企業からの声を紹介した上で、コロナ禍や物価高騰で苦しむ事業者として、地域交通(旅客運送業)、宿泊・観光業、飲食業、小売業、医療・福祉業、冠婚葬祭業の6業種に言及した。 自民党金融調査会の片山さつき会長は、こうした業種の収益悪化の背景には、コロナ禍に伴う緊急事態宣言やロシアによるウクライナ侵攻などがあるとして、「経営者の責任の範囲では負えないリスクだ」と支援を強化する意図を説明。「最も深刻なのは地方の交通関連企業だ」と指摘した。 つまり、上記に挙げた業種こそが、債務減免も含めた支援策が優先される、“徳政令救済6業種”なのだ。 支援に当たっては、地域企業の事業再生を支援する官民ファンドの地域経済活性化支援機構(REVIC)や中小企業基盤整備機構の企業再生ファンドを活用する方針だ。REVICは前身の企業再生支援機構時代に日本航空の再生を手掛けている。 官民ファンドが企業の債務を金融機関から買い取り、過剰債務分については債務減免や債務の株式化(DES)などで債務を圧縮して企業の負担を軽減。さらに新たな資金を貸し出し、企業の事業再生を支援する構想だ。 現在、REVICの政府保証枠は2兆円だが、これを例えば3兆円に拡大するとともに、地域交通機関を対象とした特別な支援部門を立ち上げ、機能を強化する方針だ。 片山氏によれば、ゼロゼロ融資42兆円のうち、返済に問題が起きそうな貸出先は平均すると2割程度。また東日本大震災で被災し、過剰債務を負った中小企業を支援するために設立された東日本大震災事業者再生支援機構の債権カット率の平均が3~4割だったことから、今回の債務減免は「2兆~3兆円規模」になると片山氏はみる。 債務減免まで踏み込む理由について、片山氏は、「重過ぎる債務を圧縮しないと、経済が回復しても必要な投資ができず、飛び上がれない」と説明。その一方で、「何の改善のない“ゾンビ企業”を支援しても効果はない」とも断じた』、「ゼロゼロ融資42兆円のうち、返済に問題が起きそうな貸出先は平均すると2割程度。また東日本大震災で被災し、過剰債務を負った中小企業を支援するために設立された東日本大震災事業者再生支援機構の債権カット率の平均が3~4割だったことから、今回の債務減免は「2兆~3兆円規模」になると片山氏はみる」、「「重過ぎる債務を圧縮しないと、経済が回復しても必要な投資ができず、飛び上がれない」と説明」、「債務減免は「2兆~3兆円規模」」というのはやはり金融機関にとっては、思い負担だ。
・『23年春までに事業再生の「型」を確立 債務減免を受けられる企業の選別が始まる  どれだけ債務減免をすればいいのか。どんな事業再生プランならば支援できるのか。この「相場観」を確立するため、23年春までに主要業種について事業再生の「型」を確立するよう、金融庁に指示をしているという。 つまり、事業再生の型が完成し、ゼロゼロ融資の返済が本格化する23年に始まるのは企業の選別だ。国が理想とする型に当てはまる再生プランが描ければ債務減免などの恩恵が受けられ、そうでなければ救済されず、倒産・廃業という終わりが近づく。 ゼロゼロ融資を巡っては債務減免の他にも、借り換え需要の増加に備え、新たな資金需要に対応する制度を創設することが総合経済対策に盛り込まれた。 こうした中小企業の支援策について語った片山氏のインタビューの全文は、本特集#3『中小企業「債務減免規模は2~3兆円」、片山さつき氏が明かす“令和の徳政令”の理由』でお届けする。 企業の倒産は当事者や巻き込まれた関係者にとっては悲劇だが、時代に合わない企業を退場させ、経済を新陳代謝させる効果もある。 ゼロゼロ融資などのコロナ支援について、「戦後ここまで企業に優しい政策はなく、緊急避難として一定の効果はあった。しかし、出口戦略が描けず、結局最後は債務減免ではモラルハザードだ」とある信用調査会社の幹部は嘆く。 倒産件数が歴史的な低水準から増加に転じたとはいえ、リーマンショックなどかつての不況期と比べたらまだ半分以下にとどまっている。選挙対策として倒産件数を少なくするために徳政令が使われるのであれば、日本経済の弱体化を後押しするだけだ』、「ゼロゼロ融資などのコロナ支援について、「戦後ここまで企業に優しい政策はなく、緊急避難として一定の効果はあった。しかし、出口戦略が描けず、結局最後は債務減免ではモラルハザードだ」、「選挙対策として倒産件数を少なくするために徳政令が使われるのであれば、日本経済の弱体化を後押しするだけだ」、同感である。 
タグ:倒産・経営破綻 (その2)(なぜ倒産? 経営者が「しなくていい自己破産」をしてしまう理由、コロナ禍なのに企業倒産は過去50年で最低…そのツケを銀行に押しつける「私的整理徳政令」はやるべきか 中小企業救済は岸田政権の最優先課題だが…、国がゼロゼロ融資の債務減免「令和の徳政令」実施へ 救われる企業の「ボーダーライン」は?) 日経ビジネスオンライン「なぜ倒産? 経営者が「しなくていい自己破産」をしてしまう理由」 先ずは詳細を知る必要がある。 「自社商品にはその特性上、高い品質基準が求められ、その基準を満たせる取引先がほかになかったのだそうです」、「品質基準に対する解が最後まで見つからなかったのでした。一方、得意先の国内大手メーカーには、この問題をクリアするだけの経営資源があったので、現地工場とつないだのだということでした」、なるほど。 どういうことだろう。 「Xさんのケースも」「経営者保証をして」いたのであれば、「一定の要件を満たす場合、経営者保証を解除してほしいと経営者が申し入れたら、金融機関はしっかり対応しなくてはいけません」、解除される可能性もあったことになる。 「経営者保証を解除するまでには手続きが多く、書類仕事だけでも大変です。だから、金融機関が自己破産を回避する手を打ってくれることを期待していては、Xさんのような悲劇が繰り返されることは避けがたい」、金融機関が「手続き」の大変さから消極的とは困ったことだ。やはり「経営者サイドから自発的に働きかけていく姿勢が必要です」。 弁護士と付き合いのない企業の場合でも、取引金融機関と相談したり、経営者仲間と情報交換するなど、可能な限りの努力で「個人破産」を回避してほしいものだ。 PRESIDENT Original 森岡 英樹氏による「コロナ禍なのに企業倒産は過去50年で最低…そのツケを銀行に押しつける「私的整理徳政令」はやるべきか 中小企業救済は岸田政権の最優先課題だが…」 「ゼロゼロ融資は最長5年まで元金の返済開始を猶予でき、最初の3年間は利払いも実質免除する仕組みで、「元金返済の猶予期間を3年以内に設定しているところが多い」・・・とされる。 その猶予期間が過ぎ、返済が本格化する中、大幅な円安や燃料費・原材料費の高騰が重なり、倒産に追い込まれる企業が増えている」、大変だ。 「私的整理をすべての債権者が同意しなくても進められるようにする条件緩和策が盛り込まれる予定」、これは大変なことだ。 政府が人気取りのために、「私的整理では債権者全員の賛成が前提条件」を外すというのは、乱暴だ。 「多数決によって結論を得る場合、意思に反して債権放棄を迫られることになった債権者からは、その後の再建に向けた協力が得られず、かえって再建に支障が出る事態も想定されるのではないか」、その通りで、政府の考え方は余りに安易だ。 「マレリが私的整理のひとつである事業再生ADR(裁判外紛争解決手続)の申請を行ったのは今年3月。親会社である米投資ファンドのKKRをスポンサー企業として、融資金融機関に約4500億円の債権放棄を求めていた。しかし、債権放棄の配分について全債権者の合意が得られず、結局、法的整理で民事再生の一種である簡易再生に向けた手続きに移行した」、 「今回の私的整理の条件緩和は、こうしたリスクを軽減し、ADR等の私的整理をまとめやすくするのが目的だが、裏を返せば、再建案に不満をもった債権者を多数決という形で強引に再建策履行に引っ張り込むことを意味する。「いったん、私的整理が成立して再建案が動き出しても、途中で債権者間の足並みが揃そろわず計画が宙に浮く事態も想定される」(地銀幹部)と危惧されている」、その通りだ。 「中小企業は決算の正確性に乏しく、財務状況の実態把握も難しいという難点がある。赤字で法人税を含めほとんど納税していない中小企業が少なくないことも税当局の不信感となっている。仮に私的整理のガイドラインが整備されても、国税当局から繰越欠損金の存在を否認されるケースが多数出かねないと予想される。 新指針で、弁護士や会計士などの専門的な第三者が再生計画の策定・評価に加わるのは、こうしたリスクを軽減するためだ」、「中小企業」は「決算の正確性に乏し」いのは本当に困ったことだ。「弁護士や会計士などの専門的な第三者が再生計画の策定・評価に加わるのは、こうしたリスクを軽減するためだ」、なるほど。 「私的整理徳政令」が出来れば、金融機関側としては、中小企業貸出に当たっては、そうしたリスクを織り込んで、金利など取引条件を厳しくせざるを得ないだろう。 ダイヤモンド・オンライン「国がゼロゼロ融資の債務減免「令和の徳政令」実施へ、救われる企業の「ボーダーライン」は?」 「債務減免を受けられるかどうかは「ある型」にはまるか否かでチェックされそうで、企業の取捨選択が23年春までに始まる可能性」、なるほど。 「ゼロゼロ融資42兆円のうち、返済に問題が起きそうな貸出先は平均すると2割程度。また東日本大震災で被災し、過剰債務を負った中小企業を支援するために設立された東日本大震災事業者再生支援機構の債権カット率の平均が3~4割だったことから、今回の債務減免は「2兆~3兆円規模」になると片山氏はみる」、「「重過ぎる債務を圧縮しないと、経済が回復しても必要な投資ができず、飛び上がれない」と説明」、「債務減免は「2兆~3兆円規模」」というのはやはり金融機関にとっては、思い負担だ。 「ゼロゼロ融資などのコロナ支援について、「戦後ここまで企業に優しい政策はなく、緊急避難として一定の効果はあった。しかし、出口戦略が描けず、結局最後は債務減免ではモラルハザードだ」、「選挙対策として倒産件数を少なくするために徳政令が使われるのであれば、日本経済の弱体化を後押しするだけだ」、同感である。
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中国国内政治(その15)(「団派」の排除完了…! 習近平「超一強体制」の中国で「21世紀の毛沢東時代」が始動する、習近平 3選で逆に「失脚」が近づいた…不動産バブル「崩壊」で中国経済は大ダメージ!、中国「習近平」政権“瓦解”のサイン 権力基盤の脆さを露呈した「胡錦涛」途中退場の真相)

中国国内政治については、9月14日に取上げた。党大会終了を踏まえた今日は、(その15)(「団派」の排除完了…! 習近平「超一強体制」の中国で「21世紀の毛沢東時代」が始動する、習近平 3選で逆に「失脚」が近づいた…不動産バブル「崩壊」で中国経済は大ダメージ!、中国「習近平」政権“瓦解”のサイン 権力基盤の脆さを露呈した「胡錦涛」途中退場の真相)である。

先ずは、10月25日付け現代ビジネスが掲載した『週刊現代』特別編集委員・『現代ビジネス』編集次長の近藤 大介氏による「「団派」の排除完了…! 習近平「超一強体制」の中国で「21世紀の毛沢東時代」が始動する」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/101391?imp=0
・『先週一週間の第20回中国共産党大会を見ていて思った。中国は、まったくもって「ふしぎな国」であると。 このたび、34個の中国の新語・流行語・隠語を駆使して、この「ふしぎの国」を解き明かそうと試みた新著を出した。題して、『ふしぎな中国』(講談社現代新書)。共産党大会で中国の「ふしぎさ」をたっぷりお感じになった方の中国理解の助力になれば幸いである』、興味深そうだ。
・『習近平「超一強体制」の確立  10月16日から22日まで開かれた第20回中国共産党大会と、23日に開かれた「1中全会」(中国共産党第20期中央委員会第1回全体会議)を、一言で表すなら、「『団派』の排除」と、それによる「習近平『超一強体制』の確立」だった。 団派とは、共産党の下部エリート青年組織(2018年時点で団員数8124万人)の中国共産主義青年団出身者たちのことだ。長く胡錦濤前総書記を頂点としてきた。 習近平総書記が誕生した10年前の第18回中国共産党大会は、私は北京の人民大会堂で取材したので、よく覚えている。江沢民元総書記が率いる「上海閥」(江沢民派)と、胡錦濤前総書記が率いる「団派」(胡錦濤派)との、長く激しい権力闘争の結果として、習近平新総書記が誕生した。 習仲勲元副首相という中国共産党史に名を残す魁偉な政治家の息子である習近平氏は、「太子党」(革命元老の子息)と呼ばれてきた。と言っても、こう呼ばれる政治家たちは、「我こそは中国共産党」という自負心が強いので、まとまりに欠ける一匹狼が多い。 習近平氏も同様だが、他の「太子党」と異なっていたのは、「強烈な自負心」をのんべんだらりとした風貌の奥に隠すことができた点だ。それで江沢民側も胡錦濤側も、「まあ習近平なら、群れていないし、おとなしそうだからよかろう」ということで、「神輿」の上に乗せたのだ。 当時、中国政界を長年取材してきた中国大手メディアのベテラン記者は、私に次のように解説した。 「革命第一世代の毛沢東は、『9割皇帝』(物事の9割を一人で決めるリーダー)だった。革命第二世代の鄧小平は、『7割皇帝』。革命第三世代の江沢民は、『5割皇帝』。革命第四世代の胡錦濤は、『3割皇帝』だった。 今回総書記に就いた革命第五世代の習近平は、『1割皇帝』だろう。江沢民派と胡錦濤派の間に挟まれて、何もできない史上最弱の『皇帝様』だ」 こうした見方が、10年前の北京では主流だったのだ。そのため習近平新総書記は、1期目の5年を、「反腐敗闘争」の名のもとで、主に多くの党内の利権を牛耳っていた「上海閥」を排除することに費やした。彼らは、いわば「反習近平派」だった』、「江沢民側も胡錦濤側も、「まあ習近平なら、群れていないし、おとなしそうだからよかろう」ということで、「神輿」の上に乗せたのだ」、「胡錦濤」は思惑が外れてホゾを噛んでいることだろう。「革命第五世代の習近平は、『1割皇帝』だろう。江沢民派と胡錦濤派の間に挟まれて、何もできない史上最弱の『皇帝様』だ」、この見方も大外れだ。
・『全ては「半永久政権」を築くため  5年が過ぎた2017年10月の第19回共産党大会で、党中央紀律検査委員会は、「153万7000人を立件した」と誇った。「トラ(大幹部)もハエ(小役人)も同時に叩く」というスローガンを掲げた反腐敗闘争で、見事に「上海閥」を、ほぼ根絶やしにしたのだった。 そこで習近平総書記は、次なる5年を、「団派」の排除と共青団の完全掌握を主目的とする政治闘争に打って出た。彼らは「反習近平派」ではないが、「非習近平派」だった。「2期10年で後身に道を譲る」という前例を覆して半永久政権を築くには、「親習近平派」で周囲を固める必要があった。 今回、党中央規律検査委員会は「この10年で464万8000人を立件した」と発表した。そして習近平総書記は、その総仕上げとして、第20回共産党大会を「『団派』排除の大会」に定めたのだ。 主な標的は、胡錦濤前総書記、その弟分の李克強首相(党内序列2位)と汪洋中国政治協商会議主席(党内序列4位)、それに「革命第六世代」を背負う逸材と言われてきた「胡錦濤の息子」こと胡春華副首相(党内序列22位)の4幹部である。 このことを広く党幹部たちに印象づけるため、習近平総書記は10月22日の党大会閉幕日に、一つの「仕掛け」を実行した。それは「主席団」の一員として壇上中央に習近平総書記とともに座る胡錦濤前総書記を「退席」させることだった。 前任の総書記が現職の総書記の隣に座るのは、共産党大会の慣例である。10年前の18回大会で、胡錦濤前総書記の横には、常に江沢民元総書記が座っていたのを、私は現場で目撃している。 その理由を共産党関係者に訊ねたら、「平和的で順調な総書記のバトンタッチを内外に印象づけるため」と言われた。なるほど、革命やクーデターなど、血なまぐさい党史を顧みれば、それは重要な儀式かもしれなかった。 だが今回の習近平総書記は、そもそも「平和的で順調なバトンタッチ」など一顧だにしていないのだから、胡錦濤総書記が横に座り続けることは、迷惑千万な話なのだ。開幕の時は仕方ないにしても、閉幕の日は「習近平新時代」をアピールする「晴れの日」なのだから、退席してもらおうというわけだ。 これは憶測だが、用意周到な習近平総書記がこうしたことをアドリブで行うはずはないので、少なくとも会議の直前には、胡錦濤前総書記サイドに伝えておいたはずだ。だが胡氏は難色を示し、そのまま「本番」に突入してしまったのではないか』、初めの「5年間」で「反腐敗闘争で、見事に「上海閥」を、ほぼ根絶やしにした」、「次なる5年を、「団派」の排除と共青団の完全掌握を主目的とする政治闘争」に打って出た」、「広く党幹部たちに印象づけるため・・・「主席団」の一員として壇上中央に習近平総書記とともに座る胡錦濤前総書記を「退席」させること」、「閉幕の日は「習近平新時代」をアピールする「晴れの日」なのだから、退席してもらおうというわけだ」、「少なくとも会議の直前には、胡錦濤前総書記サイドに伝えておいたはずだ。だが胡氏は難色を示し、そのまま「本番」に突入してしまったのではないか」、「退席」については、諸説が入り乱れているが、この解釈が自然な感じがする。なお、次のパラグラフでも「退席」をより詳細に説明している。
・『北朝鮮の「張成沢粛清」にソックリ  10月22日午前9時(北京時間)から、最終日を迎えた第20回共産党大会が、人民大会堂で始まった。この日は、共産党規約を改正し、205名の中央委員を選出した。決議の模様は非公開である。 すべての議案が無事、採択されたところで、内外の報道陣が、人民大会堂2階の記者席に通された。あとは、壇上の習近平総書記が総括スピーチを行い、閉会を宣言しておしまいである。 「事件」は、報道陣が入ってきた時に起こった。壇上には、「主席団」の42人が座っていた。「主席団」は、現役が党中央政治局委員の25人プラス王岐山副主席、長老が20人の計46人で構成されていた。だが健康のすぐれない人もいて、長老の出席者は胡錦濤前総書記以下、16人だった。最長老は、105歳になる宋平元常務委員だ。 その中で、習近平総書記の向かって右手に座っていた胡錦濤前総書記の後ろに、係員の男性が突然やって来て、退席を促した。「なぜだ?」という表情で拒絶するそぶりを見せる胡氏。ごねているうちに、胡氏の向かって右手に座る栗戦書全国人民代表大会常務委員長(党内序列3位で約40年にわたる習近平氏の忠臣)も、胡氏の退席をサポートしようとする。 ようやく立ち上がった胡氏は、前を向いている習近平総書記に何か話しかけるが、習氏は無視。肩を叩いたりしていると、ようやく習氏が軽く頷く仕草をした。胡氏は、その左隣で唇を横に真一文字に結び、無念さを表している「弟分」の李克強首相の肩をポンと叩いて、そそくさと壇上から去っていった。 私は30年前の第14回党大会から見てきたが、こんな光景は前代未聞だった。同じく30年見てきている同世代の中国ウォッチャー・武田一顕氏が、息せき切って電話をかけてきた。武田氏は「国会王子」のニックネームを持つTBSの名物記者だ。 「今日の胡錦濤は、まるで9年前の張成沢(チャン・ソンテク)だ。あんなおぞましいことが起きても、周囲の幹部たちが皆、見て見ぬフリをしていたところもソックリだ」 張成沢朝鮮労働党行政部長は、北朝鮮の先代の指導者・金正日(キム・ジョンイル)総書記の妹婿で、長年にわたって「不動のナンバー2」として君臨した。だが金正恩(キム・ジョンウン)新時代になって丸2年を経た2013年12月8日、金正恩氏か招集した朝鮮労働党政治局拡大会議で、突然糾弾され、警備員に引っ立てられて議場から追い出されてしまった。そしてその4日後に、火炎放射器で燃やされてしまったのである。 北朝鮮当局は、処刑した翌13日に、張成沢氏が議場から追い出されるシーンを写した写真を公開した。武田氏曰く、10月22日の胡錦濤前総書記の「強制退席」の様子が、それとソックリだというのである』、「「今日の胡錦濤は、まるで9年前の張成沢(チャン・ソンテク)だ。あんなおぞましいことが起きても、周囲の幹部たちが皆、見て見ぬフリをしていたところもソックリだ」、その通りなのかも知れない。
・『「団派」一掃の仕上げとして  そもそも、中国共産党の規則に照らすなら、胡前総書記は「主席団」のメンバー46人に選ばれているのだから、退席させられる理由はない。もし習総書記がどうしてもそうしたいなら、「退席のための決議」が必要なはずである。だが、そんな決議は行っていない。 また、「ここからの議事進行は現役だけで行う」というのなら、宋平元常務委員以下、他の長老たち16人に一斉にご退席願うはずである。だが「強制退席」を言い渡されたのは、胡錦濤前総書記一人だけなのだ。 この模様を世界のメディアが大々的に報じたため、新華社通信は「健康がすぐれなかったため退席した」と釈明の記事を出した。だが映像が示しているように、胡氏は男に退出を促されたのであり、かつ拒絶しているのである。最後は仕方なく立ち上がったが、その後、スタスタと速足で舞台左手に向かっている。「健康問題で退出」というのは甚だ無理がある。 おそらく習近平総書記は、この「胡錦濤退席」を、あくまでも「非公開の演出」と見立てていたはずだ。なぜならこの光景を、CCTV(中国中央広播電視総台)など中国メディアは放映していないからだ。だが図らずも、かつて10年間にわたって共産党総書記と国家主席を務めた79歳の男が「さらし者」にされる場面が、「世界の目」に留まってしまったのである。 この日、胡錦濤前総書記ばかりが注目されたが、「一掃」された「団派」は、他にもいた。李克強首相(序列2位)と、汪洋政協主席(序列4位)を、次の20期中央委員会のメンバーに選ばなかったのである。このことは、ともに現在67歳の両者が、来年3月の任期満了をもって、政界を完全引退することを意味する。 こうした一連の過程を経て、中央に一人デンと鎮座した習近平総書記は、満足そうな表情を浮かべて、「勝利のうちに閉幕する!」と言い放ったのだった。 こうして第20回共産党大会は閉幕したが、習近平総書記は翌23日午前中に「1中全会」を招集。「『団派』一掃の仕上げ」を行った。 何と、自分より10歳若く、「革命第六世代のホープ」「21世紀の鄧小平」などと称される胡春華副首相を、パージしてしまったのである。「パージ」という意味は、それまで党中央政治局委員(党内序列22位)だった胡春華副首相を、常務委員(トップ7)に引き上げないどころか、党中央政治局委員(トップ25)からも排除してしまったのだ。 ちなみに、これまで伝統的に「25人」が定員だった党中央政治局だが、今回は「24人」と一人減った。中国共産党は「多数決による表決」を標榜しているので、基本的に定員は奇数である。そのため、24人というのはいかにも不自然だ。 これは、党中央政治局委員を決議する際かその直前に、習近平総書記が「鶴の一声」で、胡春華副首相だけを排除した可能性がある。そのことがもしも事前に漏れ伝わると、胡春華サイドも当日までに反撃してきて、やっかいなことになるからだ。 胡春華副首相は、党中央委員(トップ205)には選ばれているから、「政界引退」とはならない。だが来年3月に副首相の任期を終えると、かなり「格落ち」の左遷ポストが用意され、政界から忘れ去られるのは必至の情勢だ』、「党中央政治局委員を決議する際かその直前に、習近平総書記が「鶴の一声」で、胡春華副首相だけを排除した可能性がある。そのことがもしも事前に漏れ伝わると、胡春華サイドも当日までに反撃してきて、やっかいなことになるからだ」、「党中央政治局」、「今回は「24人」と一人減った」理由としては説得的だ。
・『新たな党常務委員(トップ7)の面々  この胡春華副首相の「パージ」は、これまで30年以上にわたって中国政界を見続けてきた私にとっても、大変な衝撃だった。 だが同様に、10月23日昼の12時5分(北京時間)に、習近平総書記が人民大会堂3階の金色大庁に引き連れてきた、新たな党常務委員(トップ7)の面々にも、驚きを隠せなかった。 1位 習近平 総書記(69歳) 再任 2位 李強 上海市党委書記(63歳) 新任→首相へ 3位 趙楽際 中央紀律検査委員会書記(65歳) 再任→全国人民代表大会常務委員長(国会議長)へ 4位 王滬寧 中央書記処書記(67歳) 再任→中国人民政治協商会議主席へ 5位 蔡奇 北京市党委書記(66歳) 新任 6位 丁薛祥 党中央弁公庁主任(60歳) 新任 7位 李希 広東省党委書記(66歳) 新任→中央紀律検査委員会書記へ  2位の李強氏は、習近平総書記の浙江省時代の「大番頭」で、来年3月に首相になることが確実だ。今年4月と5月にロックダウンを喰らった2500万上海人たちが、「ミスター・ゼロコロナ」と呼んで怒りを爆発させた指導者だ。 3位の趙楽際氏は、青海省の地味な政治家だったが、2007年に陝西省党委書記になった時、2005年に故郷の陝西省富平県に移した習仲勲元副首相の墓を、大々的に改装。息子の習近平常務委員(当時)が感謝し、目を留めた。 4位の王滬寧氏は、江沢民、胡錦濤、習近平と3代にわたって仕えたブレーン。現夫人は習近平夫人(国民的歌手の彭麗媛氏)が紹介したという説がある。 5位の蔡奇氏は、習総書記の福建省及び浙江省時代の部下。5年前に「景観が悪い」と言って北京市の計1万7000本もの広告看板を撤去させ、2300万北京市民から「北京をハゲにするハゲ」と揶揄された。 今年2月の北京冬季五輪の大組織委員長を務めたが、大会会期中もオリンピックそっちのけで、習近平総書記を礼賛するイベントや会議を連日開き、顰蹙を買った。 6位の丁薛祥氏は、2007年に習氏が上海市党委書記を務めた際、見初めた。この5年、習総書記の「秘書長」を務め、すべての公務に同行してきた。 7位の李希氏も、甘粛省の地味な政治家だったが、2004年から陝西省に移り、習近平氏が青年時代に7年近く「下放」された陝西省梁家河を「聖地」にして、習氏に喜ばれた。習氏はトップに立った2015年の春節前に、梁家河に凱旋している。 現在は広東省党委書記だが、広東人から「広東省経済を史上最も停滞させた男」と言われている。ちなみに「広東省経済黄金の10年」は、汪洋書記(2007年~2012年)と胡春華書記(2012年~2017年)によってもたらされた。 ちなみに、この7人以外の党中央政治局メンバーの17人は、以下の通りだ(順番は漢字の筆画順で、共産党の序列順ではない)。 馬興瑞 新疆ウイグル自治区党委書記(63歳) 王毅 国務委員兼外交部長(69歳) 尹力 福建省党委書記(60歳) 石泰峰 中国社会科学院長(66歳) 劉国中 陝西省党委書記(60歳) 李幹傑 山東省党委書記(57歳) 李書磊 党中央宣伝部分管日常工作的副部長(58歳) 李鴻忠 天津市党委書記(66歳) 再任 何衛東 中央軍事委員会副主席(65歳) 何立峰 国家発展改革委員会主任(67歳) 張又侠 中央軍事委員会副主席(72歳) 再任 張国清 遼寧省党委書記(58歳) 陳文清 国家安全部長(62歳) 陳吉寧 北京市長(58歳) 陳敏爾 重慶市党委書記(62歳) 再任 袁家軍 浙江省党委書記(60歳) 黄坤明 党中央宣伝部長(66歳) 再任 これまで胡春華副首相(59歳)が「独走」していた感があった「革命第六世代」(習近平総書記の次の世代)の主力候補として、馬興瑞、尹力、劉国中、李幹傑、張国清、陳吉寧、袁家軍の7幹部が追いついた、というより抜き去った格好だ。これまで胡春華氏と「同等」だった陳敏爾氏も追い越した。いずれも「習近平総書記に絶対忠誠を尽くしている」点は変わらない。 記者団の前で「トップ7」を発表した習近平総書記は、さすがにお疲れの様子で、短いスピーチを行ったが、「中華民族の偉大なる復興という中国の夢を実現するため邁進していく」と強調した』、「新たな党常務委員(トップ7)の面々」が全て「習近平総書記」の「お追従軍団」で固められたのは、まさに異様だ。
・『毛沢東時代への先祖返り  かくして習近平総書記の「超お友達内閣」が発足した。内政においては李克強首相、王岐山副主席、劉鶴副首相、外交においては楊潔篪党中央政治局委員といった、時に耳の痛いことも伝える側近が、全員引退。代わって入ってきたのは、「お追従軍団」だった。 こんな最高幹部メンバーで、果たして世界最大14億の人口大国、世界第2位の経済大国(アメリカの8割規模)、同じく世界第2位の軍事大国(軍事費はアメリカの3分の1規模)を率いていけるのだろうか。 また今大会を通じて、「習近平総書記がすべてを決める」体制を整えたが、習総書記は神様ではなく、来年には古稀を迎える「高齢者」である。内政から外交まで、万事適切に一人で差配していけるのだろうか? 「アジアの貧国」だった毛沢東時代とは違うのだ。 私はこの10年、習近平総書記の公の席でのスピーチなどを、ほぼすべて注視してきたが、習総書記がこれまでやってきたこと、及びこれからやろうとしていることは、ほとんどが崇拝する毛沢東元主席の「マネゴト」である。 二つ例を挙げよう。第一に、10月16日に習近平総書記が行った「第19期中央委員会報告」の1時間44分のスピーチで、頻出語は以下の通りだ。 「社会主義」78回/「安全」44回/「新時代」25回/「偉大」22回/「強国」「闘争 」15回ずつ 毛沢東時代の個人崇拝と経済崩壊を反省した鄧小平氏は、1978年に「改革開放」に舵を切り、1992年にはそれをさらに発展させて「社会主義市場経済」に舵を切った。そころが習近平総書記が唱える強力な社会主義路線は、いわば30年ぶりの路線変更であり、毛沢東時代への先祖返りである。そのために「安全」を徹底強化していくというわけだ。 「新時代」というのも、本来ならすでに「2期10年」総書記を務めて後身に道を譲るべき時なのだから、「旧時代」のはずである。それをあえて「新時代」と自称するのは、昨年7月の中国共産党創建100周年を区切りとして、「最初の100年は毛沢東時代で、次の新たな100年は習近平時代」という発想に立っているためだろう。 「偉大」「強国」「闘争」も、毛沢東元主席が好んで使った用語だ。 第二に、この初日の「報告」では、昨年8月から唱えている「共同富裕」に加えて、「百花斉放、百家争鳴」まで飛び出した。毛沢東時代との比較を簡単な表にすると、以下の通りだ。 毛沢東主席は、「自由」よりも「平等」を重視する「共同富裕」を、建国4年後の1953年に唱え、その3年後に自由な発言を容認する「百花斉放、百家争鳴」を唱えた。それによって誰が「敵」かを炙り出し、翌年に「反右派闘争」を展開して100万人以上をパージした。 さらにその翌年、「大躍進」を唱えて大失敗し、4000万人もの餓死者を出した。それでも懲りずに「文化大革命」を起こし、丸10年にわたって中国経済を破綻に追い込んだ。 「21世紀の毛沢東」にならんとしている習近平総書記は、すでに第2段階まで来ている。そして今回、周囲を完全に「イエスマン」で固めた。これから少なくとも一定期間は、中国で「21世紀の毛沢東時代」が始まると見るべきではなかろうか。 だが、毛沢東主席が長年にわたって独裁的かつ独善的に政治を執り行えたのは、ひとえに「不動のナンバー2」周恩来首相が、八面六臂の活躍で支えたからである。それに比べて、「習近平の周恩来」は存在しない。周囲はペコペコヘラヘラする「お追従軍団」だ』、「習近平総書記が唱える強力な社会主義路線は、いわば30年ぶりの路線変更であり、毛沢東時代への先祖返りである。そのために「安全」を徹底強化していくというわけだ」、「毛沢東主席が長年にわたって独裁的かつ独善的に政治を執り行えたのは、ひとえに「不動のナンバー2」周恩来首相が、八面六臂の活躍で支えたからである。それに比べて、「習近平の周恩来」は存在しない」、1人で全てをやるつもりなのだろうか。
・『中国は分断と自壊の道を歩むのか  ちなみに、習近平総書記が中央党校(共産党の幹部学校)の校長を務めていた2007年から2012年まで、同校の教授として部下を務めた蔡霞氏(現在亡命中)は、アメリカで最も権威ある外交誌『フォーリン・アフェアーズ』(9・10月号)に、「習近平の弱点-狂妄と偏執がいかに中国の未来を脅かすか」と題した中国で1万4000字にも上る寄稿文を掲載した。 第20回共産党大会で3選を目指す習近平総書記を、痛烈に批判した内容で、米欧を中心に大反響を巻き起こした。その要旨は、先月号の本コラムで紹介した通りだ。 その蔡霞女史が下した「結論部分」を再掲する。 〈 そして、その後(第20回共産党大会後)はどうなるのか? 間違いなく習近平は勝利し、ある種の特権を得るだろう。すなわち、中国共産党が中国を振興させるという既定の目標を実現するため、もう何でもありになる。習近平の野心は、新たな高みにまで上がるだろう。民営企業にプレッシャーがかかり、経済を振興させる努力も失敗に帰す。 その後、習近平は自己の中央集権経済政策を倍加させるだろう。権力維持のため、いかなる潜在的なライバルに対しても、引き続き先制攻撃して消滅させる。社会のコントロールを強化し、中国はますます北朝鮮と化していく。 習近平は、3期目の任期が過ぎた後も、引き続き権力を掌握し続けようとするのではないか。誇大妄想的な習近平は、南シナ海の係争地域の軍事化を加速させ、台湾を強行的にコントロール下に置こうと企図するに違いない。そして、習近平が不断に中国の支配的地位を追求するのに伴い、中国は一段と、世界から孤立していくことになる。 ただ、こうした上述の挙措は、党内の不満の雰囲気を消すことにはならない。たとえ3選できても、中国共産党内部で習近平の権限拡大や個人崇拝に対する反対の声が減ることはない。さらに習近平は、日々悪化していくように映る国民の合法的権益の問題を解決することはできない。 事実上、習近平が3期目の任期内に起こることは、おそらくは戦争のリスク、社会動乱と経済危機を増すことだろう。つまりさらに、国民の不満の雰囲気を増加させるということだ。 中国においては、たとえ武力と恐怖のみによって権力を掌握しようとしても、うまくいかない。業績は依然として重要だ。毛沢東と鄧小平は、ともに成果を挙げて権威を獲得した。毛沢東は国民党を敗走させ、中国を解放した。鄧小平は中国を開放し、経済的繁栄の道を開いた。それらに較べて、習近平には勝利と呼べるものがない。同時に過失を犯す余地もない。 私が見るに、中国が習近平路線を改変するただ一つの可能な方法は、最も恐ろしくて最も致命的だが、中国が戦争を起こして屈辱的な敗北を喫することだ。もしも習近平が、その第一目標である台湾を攻撃すれば、戦争はおそらく計画通りには進まないだろう。また台湾も、アメリカの援護の下で侵入に抵抗し、中国大陸に深刻な破壊をもたらすだろう。 そのような状況下で、エリートと大衆は習近平を見放す。それは、習近平個人が失脚するだけでなく、中国共産党も失脚するだろう。歴史の先例を遡れば、19世紀の乾隆帝は帝国の版図を中央アジア、ミャンマー、ベトナムまで拡大することはできなかった。そして中国は、日清戦争で惨敗し、それは大清朝が滅亡する土台となった。さらに、長期的な政治的混乱を引き起こした。皇帝は必ずしも永遠のものではないのだ 〉 思えば、2016年のアメリカ大統領選でドナルド・トランプ候補が勝利した時、「中南海」(北京の最高幹部の職住地)は祝杯を挙げた。これでアメリカが分断と自壊の道を歩んでくれると思ったのだ。 蔡霞女史の鋭い指摘を読むと、もしかしたら、今頃密かにホワイトハウスが祝杯を挙げているかもしれない』、「中国が習近平路線を改変するただ一つの可能な方法は、最も恐ろしくて最も致命的だが、中国が戦争を起こして屈辱的な敗北を喫することだ。もしも習近平が、その第一目標である台湾を攻撃すれば、戦争はおそらく計画通りには進まないだろう。また台湾も、アメリカの援護の下で侵入に抵抗し、中国大陸に深刻な破壊をもたらすだろう。 そのような状況下で、エリートと大衆は習近平を見放す。それは、習近平個人が失脚するだけでなく、中国共産党も失脚するだろう」、恐ろしいシナリオで、日本も相当な悪影響を被るだろう。そんなことにならないよう祈るしかなさそうだ。

次に、10月28日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの長谷川 幸洋氏による「習近平、3選で逆に「失脚」が近づいた…不動産バブル「崩壊」で中国経済は大ダメージ!」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/101482?imp=0
・『「転落の始まり」になる可能性  中国の習近平総書記(国家主席)が、国の最高指導者として3選を果たした。「権力の座」は安泰なように見えるが、逆だ。むしろ、失脚への道を開いたのではないか。「台湾奪取」をはじめとする重要課題は、どれも自らの墓穴を掘る可能性が高いからだ。 習近平はいま、最高の気分だろう。自身の3選だけでなく、最大のライバルだった李克強首相を無役に追い落とし、大勢の子分たちも引き上げた。共産党大会では、胡錦濤前総書記まで会場から追い出した。「これで、当分は自分の権力が脅かされる心配はない。あとは課題の達成に邁進するだけだ」。そんな思いであるに違いない。 ところが、それこそが「転落の始まり」になる可能性が高い。日本の岸田文雄政権も7月の参院選に勝利した後「黄金の3年間」などと言われたが、あっという間に支持率が急落し、いま危機の渦中にある。頂点を極めれば、後は下っていくしかない。 私の手元に「チャイナ・デイリー」という中国共産党の英字日刊紙がある。中国共産党大会が最終日を迎えた10月22日、自宅の郵便ポストに投函されていた。これまでも何度かあったが、関係者が配っているのだろう。 中国の組織的な動きが、日本でも活発に展開されている証拠である。それはともかく、配られたタブロイド判の国際週刊版、10月21〜27日号は全32ページのうち、スポーツ欄などを除いて、実に23ページを共産党大会特集に割いていた。 見出しを紹介すれば「中国共産党は国家を再興の次の段階に招き入れた」「台湾統一は歴史的使命、揺るぎない公約」「より良き世界の安全保障を推進」「世界中の友好国と指導者が画期的な党大会を称賛」といった具合である。全編、自画自賛に満ちていた。 それは当然だ。だが、真の問題は、習氏が語らず、中国のメディアも報じなかった部分である。習氏が10月16日の党大会政治報告で多くを語らなかった部分にこそ、習氏自身と中国の運命がかかっている』、「習氏自身と中国の運命がかかっている」「部分」とはどんなことなのだろう。
・『不動産業がボロボロに…  中国が抱えている内政上の最大の難問は、不良債権問題だ。日本のメディアも大きく報じているように、コンクリートの骨組みだけで建設が中断しているマンションの無残な姿が、それを象徴している。 中国の不良債権問題は昨年7月、不動産開発大手の恒大集団の経営危機が表面化して、発覚した。この時点で、同社が抱えた債務は約33兆円とされ、同社は結局、12月に事実上倒産した。 経営危機はその後、不動産業界全体に拡大した。9月12日付の英エコノミスト誌は「少なくとも28社が投資家への支払いを中断し、香港証券取引所は上場している不動産開発会社30社の株式取引を停止している」と報じた。 建設が止まったマンションは、どれくらいあるのか。公式統計はないが、9月25日付の英ガーディアンは米格付会社、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)社の推計を基に「約200万戸」と報じている。 中国のマンション購入も、日本と同じように住宅ローンを利用するのが一般的だ。買った人は代金を頭金とローンで支払ったはいいが、建物は完成する見通しがないので、ローン支払いをボイコットする動きが広がっている。前例のない事態だ。 日本と異なるのは、多くの開発業者が完成前物件を売って得た資金の大部分を、すぐさま次の物件開発に投入していた点である。次の物件が売れない限り、先に売った物件を完成させる資金はない。ネズミ講に似ているので「ポンジー(ネズミ講)・スキーム」と呼ばれている。 先のエコノミスト誌によれば、不動産開発は7月、前年比45%も落ち込み、新規住宅販売は29%減少した。不動産関連業界は単に開発業者だけでなく、家具など消費財から鉄鋼、建設資材に至るまで幅広い。 統計自体がいい加減なので、信用できないが、中国の国内総生産(GDP)の約2割は不動産関連とされる。中国経済全体に悪影響を及ぼしているのは確実だ。中国は18日に予定していた7〜9月期のGDP統計の発表を延期した。「落ち込みが予想以上だったので、党大会への悪影響を懸念した」という見方が出ている』、「多くの開発業者が完成前物件を売って得た資金の大部分を、すぐさま次の物件開発に投入していた点である。次の物件が売れない限り、先に売った物件を完成させる資金はない」、文字通り「ポンジー(ネズミ講)・スキーム」だ。
・『習近平政権が招いたバブル崩壊  習氏が不動産問題をどう認識しているのか、と言えば、党大会演説では、わずかに次のように触れただけだった。 〈我々は、都市に引っ越しして永住権を得た地方居住者の法的な権利と利益を守る。そして法に基づき、自発的で、購入された権利と利益の移転を促進する。我々は、農業と地方の金融サービス体制を支援し保護する。…「住宅は住むためのものであって、投機のためではない」という原則にしたがって、我々は賃貸と購入双方を支援する多様な供給者とさまざまチャンネルを投入して、住宅システムを構築するために速やかに行動する〉 習氏が「投機」と言ったのは、中国では住宅を1軒だけでなく、2軒、3軒と買う人々が多いからだ。まさに住むためだけでなく、投機の手段になっているのだ。エコノミスト誌によれば「家計は資産の7割を不動産に振り向けている」という。 評論家の石平氏は「中国の経済学者がよく引用する数字に、いまや中国には『全国に34億人が住める住宅が出来上がっている』というものがある」と指摘している(「高橋洋一氏との対談本「経済原理を無視する中国の大誤算」、ビジネス社)。人口の2.4倍だ。) 上海では、住宅価格が「サラリーマンの平均年収の59倍」というから、あきらかにバブルだ。バブルを生み出したのは、税収欲しさに大量の土地使用権を売りさばいた地方自治体とマンション・ブームを煽った開発業者、それを放置した中央政府の責任である。 だが、バブルを崩壊させたのは習近平政権だ。 習政権は「3つのレッドライン」と呼ばれる開発業者に対する規制(総資産に対する負債比率と自己資本に対する負債比率、短期負債に対する現金比率)を導入して、締め付けを強化した。さらに、新型コロナに対するゼロ・コロナ政策もバブル崩壊に寄与した。 消費者はロックダウンで住宅に閉じ込められ、身動きできず、住宅モデルルームの見学にも、銀行にも行けなくなってしまったからだ。とても家を買うどころの話ではなくなってしまったのである。 ゼロ・コロナ政策を止めるのか、といえば、そんな気配はない。習氏は党大会で新型コロナ対策について、短くこう述べた。 〈突然の新型コロナ勃発に対応して、我々は何よりも人々と彼らの暮らしを優先して、外国からの侵入と国内での再発を食い止めるために、ダイナミックなゼロ・コロナ政策を徹底的に追求した。…我々は責任ある大国としての中国の義務を世界に示した。…ウイルスの拡大を防ぐために、我々は全面的な人民戦争を発動して、人々の健康と安全を最大限に守った。そして、疫病対応と経済・社会発展の両面で、とてつもなく勇気づけられる偉業を成し遂げたのだ〉 そうだとすれば、不良債権問題の出口どころか、経済が通常軌道に戻るかどうか、も新型コロナ次第の面が強くなる。習氏を批判する横断幕の掲示に続いて、トイレの落書きも報じられたが、ゼロ・コロナ政策が続けば、国民の不満は高まるだろう』、「ゼロ・コロナ政策もバブル崩壊に寄与した。 消費者はロックダウンで住宅に閉じ込められ、身動きできず、住宅モデルルームの見学にも、銀行にも行けなくなってしまったからだ。とても家を買うどころの話ではなくなってしまったのである。 ゼロ・コロナ政策を止めるのか、といえば、そんな気配はない」、「ゼロ・コロナ政策が続けば、国民の不満は高まるだろう」、大変深刻だ。
・『ますます困難な道を歩むことに  それから、何と言っても、ロシアによるウクライナ侵略戦争の行方だ。ロシアとウラジーミル・プーチン大統領の運命は、習氏の求心力に直結する。9月23日公開コラムに書いたように、ロシアが敗北し、プーチン氏が失脚すれば、プーチン氏に肩入れしてきた習氏への批判が高まるのは避けられない。 ところが、習氏はロシアについて演説で、どう言及したかと言えば、ただの一言もなかった。ロシアのロの字も、プーチンの一言もない。自分の運命にネガティブに関わる可能性が高くなって、何かを語ろうにも語れなかったのである。 そのうえで、台湾問題である。習氏はこう語った。 〈台湾問題の解決は中国人の問題であり、中国人によって解決されなければならない問題だ。我々は最大限の誠意と努力によって、平和的統一への努力を続ける。だが、我々は武力(the use of force)の放棄を約束することは、けっしてない。我々は必要なあらゆる手段(all measures necessary)をとる選択肢を保持する〉 習氏は台湾を奪取する夢をあきらめないだろう。だが、足元の国内情勢は揺らぎ、盟友のプーチン氏も失脚する可能性が高まっている。言い換えれば、習氏はますます困難な道を歩むことを宣言したのである。 不良債権問題と新型コロナ、ロシアの戦争。これらで、いずれも習氏は失敗した。台湾奪取だけが成功する保証はない。冒険に失敗すれば、習氏はもちろん、中国自体の運命も暗転するだろう』、「不良債権問題と新型コロナ、ロシアの戦争。これらで、いずれも習氏は失敗した。台湾奪取だけが成功する保証はない。冒険に失敗すれば、習氏はもちろん、中国自体の運命も暗転するだろう」、厳しい見立てだが、同感である。

第三に、10月30日付けデイリー新潮「中国「習近平」政権“瓦解”のサイン 権力基盤の脆さを露呈した「胡錦涛」途中退場の真相」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2022/10301103/?all=1
・『10月22日の中国共産党大会閉幕式で起きた胡錦涛・前総書記の“強制退場劇”——。その真相をめぐって様々な憶測が飛び交うなか、改めて映像を注意深く見てみると、いくつかの「新事実」に気付く。それは異例の3期目へと突入した習近平政権の権力が薄氷の上に立つことを物語っていた。 注目を集めているのがシンガポールのチャンネル・ニュース・アジアが撮影した3分弱の中継映像だ。そこには以下のような場面が映し出されている。 習近平総書記の隣に座る胡錦涛氏が目の前の机に置かれた書類を見ようとすると、左隣の栗戦書・全人代常務委員長が手を伸ばして書類を自分のもとに引き寄せる。まるで胡氏の目に触れないようにしたかに見えるが、この間、栗氏はずっと胡氏に何かを囁いていた。しかし胡氏は状況が理解できないのか、怪訝な表情を浮かべたままだ。 「その後、習総書記の護衛官とおぼしき男性が胡氏のもとに歩み寄って退席を促します。しかし胡氏がなかなか動こうとしないので、党中央委員会総局の副局長も駆け寄り、腕を取られる形で胡氏はようやく立ち上がりました」(全国紙外信部デスク) 退席する際、胡氏は習氏に何かを語りかけ、その隣に座る李克強首相の肩にソッと手を置いて、会場をあとにした――』、我々も日本のテレビで何度も見せられた。
・『苛立つ表情を見せる習総書記  中国共産党ナンバー2の要職にある李首相だが、今回の党大会で最高指導部から退くことが固まっている。 「かつて胡氏の“意中の後継候補”と見られていた李氏ですが、習氏との後継争いに敗れ、来春には完全引退する見通しです。胡氏の手元にあった書類は赤い表紙のもので、中国では重要書類によく用いられることから、新指導部の人事が記載された書類だったとの情報がある。そのため自分に近い李氏が引退することを事前に知らされていなかった胡氏が、新指導部メンバーを確認して“混乱”が起こるのを防ぐため、なかば無理やり退席させたという憶測が流れています」(同) 一方で、映像をよく見ると意外な事実に気付くと話すのは、中国事情に詳しいシグマ・キャピタル代表取締役兼チーフエコノミストの田代秀敏氏である。 「私が注目したのは、胡氏の退席までの間、習総書記が終始、苛ついたような表情を見せていたことです。それはまるで、議事が予定通りに進行しないことに苛立っているように映ります。また胡氏の書類を取り上げたように見える栗氏の表情にも慌てたような狼狽の色が浮かんでいる。さらには退場したあとも胡氏の名札と茶碗はそのままにされ、閉幕式が終わるまで習氏の向かって右隣は空席のままという異様な光景が映し出されていた。これらが意味するところは、胡氏の退席はあらかじめ計画されたものでなく、突発的なアクシデントだった可能性が高いということです」』、「李氏が引退することを事前に知らされていなかった胡氏が、新指導部メンバーを確認して“混乱”が起こるのを防ぐため、なかば無理やり退席させたという憶測」、或いは「胡氏の退席はあらかじめ計画されたものでなく、突発的なアクシデントだった可能性が高い」との見方も、
・『習近平と胡錦涛「本当の関係」  中国メディアは今回の件を「体調不良が原因」としているが、胡氏に健康不安説が浮上していたのは事実という。 「昨年7月に北京の天安門広場で行われた共産党結党100周年記念式典に胡氏も出席しましたが、付き添いを必要とし、手が激しく震える場面なども目撃されています。パーキンソン病やアルツハイマーを疑う声は以前からありました」(前出・外信部デスク) ただし“たとえ病気だったとしても、前総書記にあんな仕打ちをするはずはない”といった声も根強い。 「胡錦涛氏までの総書記はすべて鄧小平が指名することで正統性が担保されてきましたが、習総書記は各勢力の“妥協点”として総書記に選ばれた経緯があります。そんな習氏にとって胡氏はあくまで前任の最高指導者に過ぎず、自分を引き上げてくれた恩人でも、無条件の忠誠を誓った相手でもありません。党大会という5年に一度の最も重要な会議で議事進行の妨げとなるなら“丁重にお引き取りを願う”のも厭わない――そんな関係性にあります」(田代氏) 田代氏が続ける。「一部で“胡氏を見せしめとして退席させた”との説が流布していますが、自分の権威を誇示するのが目的なら、最初から胡氏を党大会の雛壇に座らせないほうがインパクトがありました。今回の退席ハプニングで、3期目の門出を祝うはずだった大会に“傷”が付いた格好になり、習総書記ら新指導部にとっては“大失態”だったと考えるほうが自然です」』、「習氏にとって胡氏はあくまで前任の最高指導者に過ぎず、自分を引き上げてくれた恩人でも、無条件の忠誠を誓った相手でもありません。党大会という5年に一度の最も重要な会議で議事進行の妨げとなるなら“丁重にお引き取りを願う”のも厭わない――そんな関係性にあります」、「自分の権威を誇示するのが目的なら、最初から胡氏を党大会の雛壇に座らせないほうがインパクトがありました。今回の退席ハプニングで、3期目の門出を祝うはずだった大会に“傷”が付いた格好になり、習総書記ら新指導部にとっては“大失態”だったと考えるほうが自然です」、確かにその通りだ。
・『ライバルが公然と“反旗”のポーズ  実は田代氏が胡氏の退席よりも驚いたのは、映像の最後に映る「次の首相候補」との呼び声が高かった胡春華・副首相の姿だったという。 「胡春華氏は16歳で北京大学に入学し、20歳で総代として卒業した“超”の付く秀才。胡錦涛氏や李克強氏と同じく、党のエリート養成機関・共産主義青年団のトップを務め、すこし前まで“次の総書記の大本命”と目された人物です。その彼が今回、ヒラの中央委員に降格されてしまった。どのメディアも指摘していませんが、胡氏が会場をあとにする間際に映る胡春華氏は口を真一文字に結び、憮然とした表情で腕組みしています。党の最も重要な行事である党大会の雛壇でこんな態度を示すのは前代未聞。無言の“抗議のポーズ”ではないかと受け止められています」(田代氏) ライバルが公然と“反旗を翻す”様子が世界に流れ、「波乱の船出」の印象を強める結果となった今回の党大会。つねに権力闘争を繰り返してきた中国共産党の歴史において「絶対安定」が実現したことはなく、退席騒動もまた、習近平の前途が多難に満ちたものであることを示唆している』、「「胡春華氏は16歳で北京大学に入学し、20歳で総代として卒業した“超”の付く秀才。胡錦涛氏や李克強氏と同じく、党のエリート養成機関・共産主義青年団のトップを務め、すこし前まで“次の総書記の大本命”と目された人物です。その彼が今回、ヒラの中央委員に降格されてしまった」、「胡氏が会場をあとにする間際に映る胡春華氏は口を真一文字に結び、憮然とした表情で腕組みしています。党の最も重要な行事である党大会の雛壇でこんな態度を示すのは前代未聞。無言の“抗議のポーズ”ではないかと受け止められています」、さぞや悔しかったのだろうが、「習氏」を恨む他なさそうだ。
タグ:中国国内政治 (その15)(「団派」の排除完了…! 習近平「超一強体制」の中国で「21世紀の毛沢東時代」が始動する、習近平 3選で逆に「失脚」が近づいた…不動産バブル「崩壊」で中国経済は大ダメージ!、中国「習近平」政権“瓦解”のサイン 権力基盤の脆さを露呈した「胡錦涛」途中退場の真相) 現代ビジネス 近藤 大介氏による「「団派」の排除完了…! 習近平「超一強体制」の中国で「21世紀の毛沢東時代」が始動する」 『ふしぎな中国』(講談社現代新書) 「江沢民側も胡錦濤側も、「まあ習近平なら、群れていないし、おとなしそうだからよかろう」ということで、「神輿」の上に乗せたのだ」、「胡錦濤」は思惑が外れてホゾを噛んでいることだろう。「革命第五世代の習近平は、『1割皇帝』だろう。江沢民派と胡錦濤派の間に挟まれて、何もできない史上最弱の『皇帝様』だ」、この見方も大外れだ。 初めの「5年間」で「反腐敗闘争で、見事に「上海閥」を、ほぼ根絶やしにした」、「次なる5年を、「団派」の排除と共青団の完全掌握を主目的とする政治闘争」に打って出た」、「広く党幹部たちに印象づけるため・・・「主席団」の一員として壇上中央に習近平総書記とともに座る胡錦濤前総書記を「退席」させること」、 「閉幕の日は「習近平新時代」をアピールする「晴れの日」なのだから、退席してもらおうというわけだ」、「少なくとも会議の直前には、胡錦濤前総書記サイドに伝えておいたはずだ。だが胡氏は難色を示し、そのまま「本番」に突入してしまったのではないか」、「退席」については、諸説が入り乱れているが、この解釈が自然な感じがする。なお、次のパラグラフでも「退席」をより詳細に説明している。 「「今日の胡錦濤は、まるで9年前の張成沢(チャン・ソンテク)だ。あんなおぞましいことが起きても、周囲の幹部たちが皆、見て見ぬフリをしていたところもソックリだ」、その通りなのかも知れない。 「党中央政治局委員を決議する際かその直前に、習近平総書記が「鶴の一声」で、胡春華副首相だけを排除した可能性がある。そのことがもしも事前に漏れ伝わると、胡春華サイドも当日までに反撃してきて、やっかいなことになるからだ」、「党中央政治局」、「今回は「24人」と一人減った」理由としては説得的だ。 「新たな党常務委員(トップ7)の面々」が全て「習近平総書記」の「お追従軍団」で固められたのは、まさに異様だ。 「習近平総書記が唱える強力な社会主義路線は、いわば30年ぶりの路線変更であり、毛沢東時代への先祖返りである。そのために「安全」を徹底強化していくというわけだ」、「毛沢東主席が長年にわたって独裁的かつ独善的に政治を執り行えたのは、ひとえに「不動のナンバー2」周恩来首相が、八面六臂の活躍で支えたからである。それに比べて、「習近平の周恩来」は存在しない」、1人で全てをやるつもりなのだろうか。 「中国が習近平路線を改変するただ一つの可能な方法は、最も恐ろしくて最も致命的だが、中国が戦争を起こして屈辱的な敗北を喫することだ。もしも習近平が、その第一目標である台湾を攻撃すれば、戦争はおそらく計画通りには進まないだろう。また台湾も、アメリカの援護の下で侵入に抵抗し、中国大陸に深刻な破壊をもたらすだろう。 そのような状況下で、エリートと大衆は習近平を見放す。それは、習近平個人が失脚するだけでなく、中国共産党も失脚するだろう」、恐ろしいシナリオで、日本も相当な悪影響を被るだろう。そんなことにならないよう祈るしかなさそうだ。 長谷川 幸洋氏による「習近平、3選で逆に「失脚」が近づいた…不動産バブル「崩壊」で中国経済は大ダメージ!」 「習氏自身と中国の運命がかかっている」「部分」とはどんなことなのだろう。 「多くの開発業者が完成前物件を売って得た資金の大部分を、すぐさま次の物件開発に投入していた点である。次の物件が売れない限り、先に売った物件を完成させる資金はない」、文字通り「ポンジー(ネズミ講)・スキーム」だ。 「ゼロ・コロナ政策もバブル崩壊に寄与した。 消費者はロックダウンで住宅に閉じ込められ、身動きできず、住宅モデルルームの見学にも、銀行にも行けなくなってしまったからだ。とても家を買うどころの話ではなくなってしまったのである。 ゼロ・コロナ政策を止めるのか、といえば、そんな気配はない」、「ゼロ・コロナ政策が続けば、国民の不満は高まるだろう」、大変深刻だ。 「不良債権問題と新型コロナ、ロシアの戦争。これらで、いずれも習氏は失敗した。台湾奪取だけが成功する保証はない。冒険に失敗すれば、習氏はもちろん、中国自体の運命も暗転するだろう」、厳しい見立てだが、同感である。 デイリー新潮「中国「習近平」政権“瓦解”のサイン 権力基盤の脆さを露呈した「胡錦涛」途中退場の真相」 我々も日本のテレビで何度も見せられた。 「李氏が引退することを事前に知らされていなかった胡氏が、新指導部メンバーを確認して“混乱”が起こるのを防ぐため、なかば無理やり退席させたという憶測」、或いは「胡氏の退席はあらかじめ計画されたものでなく、突発的なアクシデントだった可能性が高い」との見方も、 「習氏にとって胡氏はあくまで前任の最高指導者に過ぎず、自分を引き上げてくれた恩人でも、無条件の忠誠を誓った相手でもありません。党大会という5年に一度の最も重要な会議で議事進行の妨げとなるなら“丁重にお引き取りを願う”のも厭わない――そんな関係性にあります」、「自分の権威を誇示するのが目的なら、最初から胡氏を党大会の雛壇に座らせないほうがインパクトがありました。 今回の退席ハプニングで、3期目の門出を祝うはずだった大会に“傷”が付いた格好になり、習総書記ら新指導部にとっては“大失態”だったと考えるほうが自然です」、確かにその通りだ。 「「胡春華氏は16歳で北京大学に入学し、20歳で総代として卒業した“超”の付く秀才。胡錦涛氏や李克強氏と同じく、党のエリート養成機関・共産主義青年団のトップを務め、すこし前まで“次の総書記の大本命”と目された人物です。その彼が今回、ヒラの中央委員に降格されてしまった」、 「胡氏が会場をあとにする間際に映る胡春華氏は口を真一文字に結び、憮然とした表情で腕組みしています。党の最も重要な行事である党大会の雛壇でこんな態度を示すのは前代未聞。無言の“抗議のポーズ”ではないかと受け止められています」、さぞや悔しかったのだろうが、「習氏」を恨む他なさそうだ。
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SNS(ソーシャルメディア、除くツイッター)(その12)(「ネトウヨかパヨクか」二元論の危うさ 安倍元首相の銃撃事件でSNSは混乱、大阪王将 舞妓…「SNSスクープ告発」後追い時代が来たマスコミの深刻、「浅草の人力車」の意外な救世主 「映えたい」女性たちと米Amazonが繋いだ商機) [メディア]

SNS(ソーシャルメディア、除くツイッター)につては、6月15日に取上げた。今日は、(その12)(「ネトウヨかパヨクか」二元論の危うさ 安倍元首相の銃撃事件でSNSは混乱、大阪王将 舞妓…「SNSスクープ告発」後追い時代が来たマスコミの深刻、「浅草の人力車」の意外な救世主 「映えたい」女性たちと米Amazonが繋いだ商機)である。

先ずは、7月27日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したフリーライターの鎌田和歌氏による「「ネトウヨかパヨクか」二元論の危うさ、安倍元首相の銃撃事件でSNSは混乱」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/306902
・『140文字の文章の中では、どうしても分かりやすさが優先される。単純な二元論で示される分かりやすさに、私たちは長らく逃避していたのではないか』、SNSを文化論的にみるとは興味深そうだ。
・『安倍政権の時代と重なるSNS興隆期  安倍晋三元首相を狙った銃撃事件が、列島を激震させた。あってはならない最悪の暴力によって命を奪われた故人の冥福を祈るのは当然のことであるのは前提として、この原稿では、事件以降とそれ以前では変わらざるを得ないように見えるネット上の世相について言及したい。 2010年代以降の日本において、良くも悪くも圧倒的な存在感を持っていたのが安倍元首相だろう。数年ごとに首相が代わるのが当たり前だった日本において、歴代最長の在任期間だった。そして熱烈に支持される一方で、安倍元首相自身が「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と応戦したように、激しい反感を持つ人も少なくなかった。 コロナ禍でその座を退いてからも、現職の首相よりも支持されているように見えたし、同時に怒りの矛先を向けられてもいた。 安倍元首相の在任期間である2012年12月から2020年9月は、ネット上でSNSが盛り上がり、ハッシュタグ文化が生まれた時期と重なる。特にツイッターで、有名無名の個人が発信することが当たり前となった。 近年、政治的なイシューについては、右派・左派という二項対立でくくられやすくなっているが、現実はそう分かりやすくない。そのことに、今回の銃撃をきっかけに、多くの人が徐々に気づき始めているのではないか』、「政治的なイシューについては、右派・左派という二項対立でくくられやすくなっているが、現実はそう分かりやすくない」、その通りだ。
・『2010年代におけるツイッター文化の功罪  東日本大震災をきっかけに日本のツイッターユーザーは増えたといわれるが、当時はまだそれぞれが思い思いの独り言を投稿し、たまにそれに反応があるといった、文字通り「つぶやき」文化だった。 しかし、次第に同じ趣味や思考を持った人とつながるためや、フォロワー数を増やすため、あるいはビジネスにつなげるためといった「目的」を持って使い始めるユーザーが目立つようになった。そして、RT(リツイート)での「拡散」行為を狙ったツイートが目立ち始める。 ある程度ツイッターを使っていると、どんなツイートをすれば拡散されやすいかや、どのような層に響くか、反発を受けるか分かってくる。次第に自分のフォロワーにウケるようなツイートをする誘惑からは、多くの人が逃れられない。 そのためにツイートがより過激に、排他的になっていくさまが見られるようになった。 また、世代間格差、男女論、学歴、教育……といった特定のトピックは一つのエピソードに多くの人が引用RTでツッコミを入れるかたちでシェアされ、さながらオンライン上バトルの様相を呈していく。 さらに政治的なイシューについては、右派・左派という二項対立でくくられやすく、例えば「選択的夫婦別姓に賛成」とツイートした途端に「リベラル」というレッテルを貼られてしまう。 この傾向は近年、拍車がかかり続けていたと感じる。 「選択的夫婦別姓」に強く反対しているのは実際に自民党であるから、これに賛成している人にリベラルが多い傾向は実際にあるだろう。しかし、ツイッター上では「リベラル」に付随して「左翼」「パヨク」「反日」「護憲派」「増税反対」「反原発」「アベガー」「朝日新聞」などなどのレッテルが自動的に貼られてしまう傾向がある。 逆に「ネトウヨ」であれば、「嫌韓」「改憲派」「軍備拡大」「原発容認」「愛国」「朝日新聞嫌い」といった具合で、本来、党派性抜きに検討されるべき個々の課題まで一緒くたに関連づけられる状況になっている。 ひどい場合だと、例えば、入管問題に声を上げれば「日本から出ていけ」、議員の女性蔑視発言に抗議すれば「日本が嫌いな韓国人なのだろう」と言われるほどの飛躍が一部では見られる』、確かに機械的な「レッテル」貼りにはうんざりさせられる。
・『銃撃犯は「アベガー」ではなかった  しかし、今回の銃撃事件をきっかけに、世の中はそれほど単純な二元論では分けられないという空気が次第に広がりつつあるように感じる。 もちろん、「そんなことは前から分かっている」という層もいるだろうが、近年のSNSでは何かにつけて対立構造が目立ち、それをあおるようなインフルエンサーもいた。 空気が変わりつつある理由は、二つある。 一つは、銃撃犯のものとされるツイッターアカウントが発見されたことだろう(現在は削除済みのそのアカウントは2019年10月に開設され、事件の9日前の投稿が最後だ)。 事件直後、犯行におよんだのは安倍元首相に批判的な人物であるとか、日本人ではないだろうといった臆測がSNSでは飛び交った。これは程なくして報道された「政治的な意味合いで狙ったのではない」という本人の供述や、元自衛隊という経歴によって否定された(自衛隊に入隊できるのは日本国籍を有する者のみ)。 しかし、それ以上のことが分からなかった中で、犯人のものとされたツイッターアカウントが発掘され、多くの人によって読み解かれた。 残されたツイートを読むと、供述通り、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)への恨みをつづった文章が多く、また韓国への嫌悪感情があることが分かる。旧統一教会が韓国で始まった宗教であり、「韓国はアダムで日本がイブ。日本は韓国に従属する国」といった教義を掲げていたことからの反発だと考えられる。 また、今年に入ってからも安倍元首相に批判的なツイートを引用して「下らないねえ」「安倍の味方する気もないが(以下略)」といった「安倍批判」に対する批判的なツイートをしている。 安倍元首相や自民党を全面的に支持しているようには見えないが、野党支持というわけでもなく、むしろ野党嫌いの「冷笑系」といった風に見える。日刊SPA!の「山上容疑者の全ツイートに衝撃。ネトウヨで“安倍シンパ”、41歳の絶望」では、タイトルにもある通り、「ネトウヨ」かのようなツイートも多いと分析されている。 ただし本人は、「ネトウヨとお前らが嘲る中にオレがいる事を後悔するといい。」(2019年12月7日)ともツイートしており、犯人自身が、ネトウヨだとみなされることもあると自覚しつつ、しかしそれほど単純な存在ではないと示したかったようにも見える。 銃撃犯のこのような自己認識は、単純二元論につかりきっていた層を混乱させるだろう。混乱のあまり、目を背けたくなる人もいるかもしれない。 これまでのネットの一部の論調では、安倍元首相を襲うほど憎む人は、「反日、野党支持、韓国には友好的」といった人物でなければならなかった』、「単純二元論」は現実の複雑性を度外視した空論に近いのだろう。
・『「日本はサタンの国」、旧統一教会と安倍氏の複雑な関係  単純な二項対立の世論から変わりつつあるもう一つの理由は、安倍元首相が旧統一教会にビデオメッセージを送るなど友好的に見える姿勢を示していたことだろう。祖父である岸信介元首相は「反共」で統一教会と思惑が一致し、近い関係にあったとも報道されている。 前述した通り、旧統一教会は韓国に始まる。その教えは、日本は「サタンの国」であり、贖罪(しょくざい)しなければならないと説く。 「ネトウヨ」の特徴の一つが「嫌韓」であることを考えると、これは彼らにとって大きな矛盾だろう。支持していた安倍元首相が、「反日」感情が強い韓国の宗教とつながっていたのだから。 ネット上でとうとうと語られてきた対立構造がいかに表面的で、実のないものだったか。その一端が、今回の事件以後に明らかになったのである』、「ネトウヨ」の論理破綻を見るのは心地よい。
・『「敵」「味方」の単純二元論に注意を  安倍元首相は、今年4月26日に第三者のツイートを引用する形で「相変わらずの朝日新聞。珊瑚は大切に。」とツイートした。 これは言うまでもなく1989年の朝日新聞サンゴ記事捏造事件を当てこすったもので、フォロワーからは絶賛を持って迎えられている。6月4日にも同じく「珊瑚を大切に」とツイートしたのは、この反応が良かったからだろう。 このように、フォロワーに対して分かりやすく「敵」を指し示す行為は、ツイッター上ではウケる。フォロワーにとっては「敵」に向かって団結することで忠誠心を示せるからだろう。 けれど本来、分かりやすく単純化して「敵」と「味方」に分けられることばかりではない。国葬に賛成か反対かにしても、賛成する人が全て「右寄り」というわけでも、反対する人が全て「左寄り」というわけでもない。 単純二元論の落とし穴にはまらずに、それぞれの個人が目の当たりにする複雑な現実をそのまま受け取り、どのように対話につなげていくか。どのように共通項を見いだせるか。これからの時代では、失われた対話を取り戻さなければならないと感じる。 ネット上では、安倍元首相と統一教会の関係を追及することに懐疑的な人に向かって「旧統一教会か」といった言葉が投げられているのも見かける。疑惑は追及されなければならないが、レッテル貼りは議論を幼稚にし、後退させることに気をつけたい』、「レッテル貼りは議論を幼稚にし、後退させることに気をつけたい」、同感である。

次に、8月5日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したフリーライターの鎌田和歌氏による「大阪王将、舞妓…「SNSスクープ告発」後追い時代が来たマスコミの深刻」を紹介しよう。
・『自衛隊のセクハラ、京都・舞妓の未成年飲酒や性的接待、大阪王将ナメクジ騒動など、SNS上での「告発」が相次いでいる。少し前まで、一般人の告発といえば週刊誌への持ち込みがメインだったが、告発の手段が変わってきた。これから考えられる展開とは』、興味深そうだ。
・『SNSで告発、3人の共通点とは  ナメクジが大量にいる――。 写真付きツイートが瞬く間に拡散されたのは、7月24日。大阪王将の仙台市内にある店舗の元従業員の男性が、勤務当時の不衛生さを訴えたのだ。ナメクジやゴキブリが大量発生していたことや、ネコを2年半にわたって飼育していた実態が明かされ、同社は7月27日にプレスリリースで謝罪した。 この元従業員男性は28日には顔出しで会見を行い、新聞社などの取材を受けている。また、7月末までに仙台保健所が、該当店舗に立ち入り検査を行ったことが報じられた。 飲食業にとって致命的とも言える衛生面についての告発とはいえ、これほどのスピードで企業側がある程度の事実を認め、対応が取られたのは驚きではないだろうか。 これがもしも内部告発であれば、根本的な対策は取られなかった可能性もある。実際、元従業員男性は、過去にあった保健所の衛生検査のあとも、環境改善には至らなかったと発言している。 告発が多くの人の目に止まり、企業が説明をしなければならない状況になったからこその対応であり、男性もそれを狙っていたはずだ。 これ以外にも、SNS発で世間を騒がす告発が相次いでいる。 元女性自衛官の五ノ井里奈さんが自衛隊在籍時代の壮絶なセクシュアルハラスメント被害を語った動画がアップされたのは6月末。この動画はツイッターなどで拡散され、五ノ井さんはその後もツイッターで自ら発信を続けている。 また、同じく6月末にツイッターで、京都・祇園で舞妓をしていた桐貴清羽さんが、宴席での未成年飲酒や「お風呂入り」と呼ばれる混浴など性的サービスが黙認されている状況があったと告発した。 五ノ井さんや桐貴さんの告発については、性的な被害が絡むためか主要紙は報道しておらず、週刊誌やウェブメディアが本人の告発を「後追い」をしている状況だ』、「五ノ井さん」の事件に関しては、9月29日に陸上自衛隊トップの陸上幕僚長が陳謝する形になった。
・『デジタルネイティブたちが選んだ告発手法  3人の「告発」には、共通点がいくつかある。 まず、3人とも20代前半と若いこと。いわゆるデジタルネイティブ世代であり、思春期の頃にはすでにSNSやウェブメディアに親しんでいたはずだ。 また、3人とも顔出しで会見や取材に臨んでおり、匿名の存在ではない。 これまでもツイッター上で告発やリークに近い投稿は見られたが、その多くは匿名であったり、あるいは拡散されるとアカウントごと消してしまうといったこともあった。 3人の場合は、最初から大きな問題に発展することを望んだ、覚悟の告発であることがうかがえる。SNSの使い方が身になじんでいるデジタルネイティブ世代が、共感も反発も受けることを覚悟した上で、なるべく大きなインパクトを与える手段を選んだように見える。 少し前まで、リークや告発、不祥事のスクープといえば週刊誌、それも週刊文春の独り勝ちという状況だった。ここへ来て、事件の当事者が自ら発信し、それをメディアが追いかける状況になりつつある。 ちなみに、世間を大きく騒がせた「センテンススプリング」騒動(人気女性タレントと人気バンドメンバーの不倫騒動)は2016年1月。すでに6年前であり、今回の告発者たち3人は10代後半だった時期である。30代〜40代以降にとっては当時のLINE漏洩はいまだに記憶に新しいが、当時10代だった若者たちの視点では、文春よりもSNSなのかもしれない』、確かにいまや「告発」の手段は「文春よりもSNSなのかもしれない」。
・『告発系インフルエンサーの「信頼感」  さらに、YouTuberら、ネット上のインフルエンサーの存在も見逃せない。 8月1日には、山口県阿武町の4630万円誤送金問題で起訴・保釈された田口翔被告の独占インタビューを人気ユーチューバーのヒカルが配信した。 田口被告は誤送金された給付金を使い込んでしまったものの、ことの経緯やその後明らかになった境遇などから同情も買い、注目度は高かった。一時はテレビ局もこぞって取り上げていた誤送金問題の被告を、「独占」でインタビューしたのがユーチューバーだったというのは、アラフォー以上の世代からすると時代の移り変わりを感じる出来事なのではないか。 あるいは、NHK党から出馬して当選し、あれよあれよという間に国会議員となったガーシーこと東谷義和氏は、自身のYouTubeで有名人の裏話を暴露し続けて大きな注目を集めた。多くは芸能人やYouTuberのうわさ話だったが、参院選前には楽天の三木谷浩史会長について連続で配信。動画が相次いで強制停止されたこともあって余計に話題となった。 このほかにも、ツイッターをメインとしてネット上では複数の告発系インフルエンサーが台頭し、それぞれのキャラクターによってファンを集めている。 特筆したいのは、彼らに対するタレ込みの多さである。 週刊誌などマスコミに情報をリーク、あるいは告発する人はこれまでもいたが、もともとマスコミにつながりがなければ心理的ハードルはやや高い。しかし毎日ネット上で個人発信を目にしているインフルエンサーならばその人柄がわかるし、ダイレクトメールですぐにコンタクトを取ることもたやすい。 インフルエンサー側でもそれがわかっているから、一見コワモテでありながら親近感を持たれやすく気さくな印象のキャラクターに見えるよう調整していくのだろう』、「ガーシーこと東谷義和氏」は、アラブ首長国(UAE)に滞在中で、国会からの帰国要請も無視して、詐欺容疑などでの逮捕を恐れて滞在を続ける意向だが、国会議員としての出席の義務を果たさない姿勢には、批判が高まっている。
・『個人、メディア、インフルエンサー…手段による長所短所  ここからは、個人によるネット上の告発、週刊誌などのメディアを通しての告発、あるいはインフルエンサーに情報をリークする形での告発、それぞれのメリットとデメリットについて考えてみたい。 個人が直接的にネット上で情報発信をし、なんらかの告発を行う場合のメリットは、まずはそのインパクトだろう。 メディアを通した場合、字数制限や媒体のフォーマットが踏まえられることから、良くも悪くも体裁が整えられ、情報が精査される半面、告発した当事者のリアルな語りがどうしても薄まりがちだ。 しかし、当事者の語りの細部に宿る生々しさを、受け手は見逃さない。本人がYouTube動画で語ったり、ツイートを投稿したり、あるいはブログに自らつづったりする行為により、それを見る人は当事者が差し出す情報をありのままに受け取る。 一方で、媒体を通さない告発は、発信者がその反応をダイレクトに受け取ってしまうデメリットもある。前述したように、それを最初から理解しての告発であればいいが、反響の大きさに恐れをなしてアカウントを消してしまうケースも過去にはあった。 また、個人での発信の場合、その責任を個人がそのまま引き受けることになる。媒体が取材をして記事にする場合、「これをそのまま書いたら名誉毀損で訴えられかねない」という箇所はあらかじめぼかしたり、その内容に触れなかったりすることがある。告発者が「それでも書いてほしい」という場合でも、媒体の都合でそれがかなわないことがある。 個人での発信の場合、責任は自分で引き受けるものの、出す情報を完全に自分でコントロールすることができる。リスクもある半面、当事者としては気持ちの折り合いがつけやすいだろう。 それではインフルエンサーによる告発やスクープの場合はどうか。インフルエンサーが当事者と受け手の間に入るクッションとなる。ファンの多いインフルエンサーが緩衝材となることで、賛否両論を受けやすい当事者のキャラクターを底上げすることができる場合がある。 「あのインフルエンサーが取り上げているのだから、ちょっと話を聞いてみよう」という気持ちになりやすく、親近感も湧きやすい。テレビで芸能人が一般人をインタビューするような企画のネットバージョンと言えるだろう』、「個人での発信の場合、責任は自分で引き受けるものの、出す情報を完全に自分でコントロールすることができる。リスクもある半面、当事者としては気持ちの折り合いがつけやすいだろう。 それではインフルエンサーによる告発やスクープの場合はどうか。インフルエンサーが当事者と受け手の間に入るクッションとなる。ファンの多いインフルエンサーが緩衝材となることで、賛否両論を受けやすい当事者のキャラクターを底上げすることができる場合がある」、その通りだ。
・『既存メディアはどう変わるべきなのか  スクープはこれまで、週刊誌や新聞などメディアの専売特許だった。それが今やネット上のインフルエンサーに取って代わられつつあり、さらに当事者自らが声を上げ、それが当たり前のように受け取られるようになった。 この時代におけるメディアの役割として求められているのは、当事者が望む社会の変化をどう促していけるかだろう。これまではスクープそのものに価値が置かれていたが、スクープの担い手が大手メディアだけではなくなった今、メディアがつとめるべきは徹底した調査報道であり、ハラスメントや劣悪な労働環境をはらむ構造へのメスだ。 世論感情に訴えるすべであれば、インフルエンサーの方がたけているようにも見える。スポンサーやしがらみにとらわれた及び腰の報道姿勢では受け手に見抜かれるし、もはや告発系YouTuberに勝てない。 過去の実績にあぐらをかかず、つぶされることを恐れない報道が求められているのではないか』、「スクープの担い手が大手メディアだけではなくなった今、メディアがつとめるべきは徹底した調査報道であり、ハラスメントや劣悪な労働環境をはらむ構造へのメスだ」、「スポンサーやしがらみにとらわれた及び腰の報道姿勢では受け手に見抜かれるし、もはや告発系YouTuberに勝てない」、「過去の実績にあぐらをかかず、つぶされることを恐れない報道が求められているのではないか」、同感である。

第三に、10月20日付けダイヤモンド・オンライン「「浅草の人力車」の意外な救世主、「映えたい」女性たちと米Amazonが繋いだ商機」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/311547
・『東京・浅草といえば、浅草寺、仲見世、人力車のある風景を思い浮かべる人も多いだろう。しかし、コロナ禍で観光業界は大打撃を受け、人力車業者も窮地に追いやられた。乗せる観光客の姿が消え、辞める車夫たちも相次いだのだ。そんな浅草の街で立ち尽くす車夫たちを救ったのが、これまで人力車に乗ろうとしなかった東京近郊で暮らす人たちと若い女性たち、そしてインターネット通販最大手の米Amazon.comだった』、「車夫たちを救ったのが」「若い女性たち」はともかく、「米Amazon.com」とはどういうことなのだろう。
・『浅草に戻りつつある活気、人力車が再び走り出した  新型コロナ感染拡大で打撃を受けた東京・浅草の街に、この夏、観光客が戻ってきた。雷門前の広場では、人力車の車夫たちが通りかかる人に声をかけたり、記念撮影を手伝ったりしている。 浅草には人力車で観光案内をする事業者が20社ある。観光客が激減した浅草の街で再び人力車が走るまで、車夫たちは試行錯誤を続けてきた。 「去年、おととしはですね…本当に浅草も大変でした。われわれの業態だけじゃないですけど、いつも人が並んでいた浅草の人気飲食店でも、客が入らない。われわれもコロナ前は人力車を何十台も稼働していたのが、2台だけ稼働させる状況でした。それでも1日営業してお客は1組いるか…という状況でした」 こう語るのは、全国の観光地で200台以上の人力車を所有し観光案内などを行うえびす屋浅草の梶原浩介所長(40)。今年は浅草にも人出が徐々に戻り、8月中旬の36度を超える真夏日でも、車夫一人につき一日5~10組ほどの客を乗せて走った。 新型コロナウイルスが感染拡大するまではえびす屋浅草に130人ほどの車夫が所属していたが、緊急事態宣言が発令されて一時期、約30人に減ったという。 「飲食店や宿泊施設などと違って、うちは季節やイベントごとに従業員の数も変わるんですが、大体従業員のうち3割ほどは、学生アルバイトでした。アルバイトが大学を卒業すると同時に、毎年入れ替えが起こるんですね。それが、コロナ禍でアルバイトは出ていく一方になりました」 辞める車夫たちが相次ぎ、観光客が来ない浅草の街で立ち尽くす車夫たちを救ったのが、インターネット通販最大手の米Amazon.comと、東京近郊で暮らす人たちだった』、「えびす屋浅草に130人ほどの車夫が所属していたが、緊急事態宣言が発令されて一時期、約30人に減った」、かなり大きな影響だったようだ。
・『行き場を失った地元民と「映え」を求める若い女性たちのニーズ  えびす屋浅草に所属する車夫歴17年のベテラン・平恒信さん(39)は、コロナ禍で観光客がいなくなった代わりに、今まで接することがなかった人たちが人力車に乗りにやってきたと話す。 「コロナ禍になってから、本当に東京、千葉、神奈川辺りに住むお客さんがめちゃくちゃ来てくれたんですよ。やっぱり遠くへ行けないっていうのもあると思うんですけれど、近場だけど今まで来たことがない場所に行く。そこで新しい発見があり、旅行気分に浸れて満足するという人が多いです。今までになかった流れです」 この流れは今も続いていて、地方からやってきた観光客の他に、都内周辺に住む人たちも人力車に乗り込むという。 さらに、東京都内や近郊に住む若い女性客が増えた。これまで20~30代の女性がメインだったのが、最近は10代から20代前半が増えてきている感覚があるという。実際、雷門の前や商店が並ぶ仲見世では、おそろいの浴衣や現代風にアレンジを加えた着物などを着て、スマホで撮影しながら歩く若い女性2人組が多くみられた。 「浅草で着物を着て、歩いて巡って食べて…っていうのが若い人たちの間で流行っているんですよね。インスタグラムでその様子を投稿したりしている人が多いようで、口コミで人力車の評判が伝わることが多いようです。友達におすすめされて乗りに来たという子もいます」(平さん) ちなみに、人力車の値段はコースによって異なるが、雷門から浅草寺付近を巡る一区間コース(12分)を2人で乗って4000円。高校生や大学生ら若い世代にとって決して安くはない金額だが、旅行やイベントに行きづらくなった今、近場で非日常的体験ができて、かつSNS映えするという魅力がある』、「コロナ禍で(外国人)観光客がいなくなった代わりに、今まで接することがなかった人たちが人力車に乗りにやってきたと話す。 「コロナ禍になってから、本当に東京、千葉、神奈川辺りに住むお客さんがめちゃくちゃ来てくれたんですよ」、「地方からやってきた観光客の他に、都内周辺に住む人たちも人力車に乗り込むという。 さらに、東京都内や近郊に住む若い女性客が増えた」、「「浅草で着物を着て、歩いて巡って食べて…っていうのが若い人たちの間で流行っているんですよね。インスタグラムでその様子を投稿したりしている人が多いようで、口コミで人力車の評判が伝わることが多いようです。友達におすすめされて乗りに来たという子もいます」」、なるほど。
・『米Amazonと進めたオンラインツアー、市場はグローバルに  さらに、えびす屋は、観光客が少なくなったことで、人力車以外のサービスに力を入れ始めている。 「2020年からオンラインツアーを始めました。オンライン観光の需要がコロナ禍で高まったんです」(平さん) オンラインツアーに参加する客とは、主に米国に暮らす人たちだ。場所は浅草のみならず、上野や大手町方面に足を伸ばすこともあるという。多い時は一日30組ほどツアーを行ったそうだ。 車夫たちは作務衣などを着て、専用アプリが入ったスマートフォンを片手に英語で街案内をしながら、自らライブ中継して浅草などの街を歩く。人力車を使って巡るツアーもあるが、車夫が歩きながら街案内するものが多い。 「例えば、ツアー途中でお客さんは画面越しに、実際に仲見世のお店などで商品を買うことができます。お客さんのクレジットカードとアプリがひも付いているので、僕らが仲介に入ったりする必要もなく、アメリカで見ているお客さんが日本の店で買うことができるんです」 「浅草寺周辺のお買い物ツアー以外にも、歴史的なスポットを巡るツアーや、人力車に乗るツアーなど10種類ほどのツアーを用意し、車夫たちが1日何件か回っていたという感じです」(平さん) 今でもオンラインツアーは海外から人気が高いという。これまでの街で声をかけてお客さんを乗せるというアナログの営業スタイルから、一気にオンライン化が進み、グローバルに市場が広がった形だ。 実は、これはインターネット通販最大手の米Amazon.comのプラットフォームに参入したことで生まれたサービスだ。 「元々口コミサイトで弊社の人力車は海外の観光客にも高く評価されていました。そういう背景もあり、コロナ禍前からオンラインツアーの計画を進めていましたが、本格的にサービスをスタートできたのがちょうど2020年だったんです」(梶原所長) それから、オンライン事業部という部署も新設して、新たに人を雇用することもできたという』、「オンラインツアーに参加する客とは、主に米国に暮らす人たちだ。場所は浅草のみならず、上野や大手町方面に足を伸ばすこともあるという。多い時は一日30組ほどツアーを行ったそうだ。 車夫たちは作務衣などを着て、専用アプリが入ったスマートフォンを片手に英語で街案内をしながら、自らライブ中継して浅草などの街を歩く。人力車を使って巡るツアーもあるが、車夫が歩きながら街案内するものが多い」、「ツアー途中でお客さんは画面越しに、実際に仲見世のお店などで商品を買うことができます。お客さんのクレジットカードとアプリがひも付いているので、僕らが仲介に入ったりする必要もなく、アメリカで見ているお客さんが日本の店で買うことができるんです」、案内の「車夫」には語学力が求められる筈だが、以下にみるように、「車夫たちは元々海外での就業経験や留学経験を持つ人たちが多く、意欲的だった」、と問題なさそうだ。
・『車夫たちの一番の強みは「おもてなし精神」  新たな事業かつ英語を必ず使わなくてはいけないという状況に急転したわけだが、車夫たちは元々海外での就業経験や留学経験を持つ人たちが多く、意欲的だった。 「もともと海外で身に付けた英語スキルを落としたくないという理由で、人力車で働きたいという人が多くいました。飲食店や宿泊施設ではマニュアル的な英語しか使わないこともあるようですが、車夫は会話が多様で、コミュニケーション力が必要とされます。自分のことを信用してもらう必要があるし、お客さんの心にスッと入っていくような語学力やスキルが大事なんです」(梶原所長) 平さんも元々オーストラリアの語学学校に通った後、カフェで働いていた経験もあり英語は堪能。しかし、語学力以上に大事なのは「おもてなし精神」だという。 「どこからどこまで行けたから良かったというのではなく、お客さまを楽しませるっていうのが、僕たちの根底にある。自分自身が商品とも言える部分があるので、毎日地域の勉強をしたり、お客さまのためにどんなことができるか、“おもてなし”を研究したりしています」(平さん) コロナ禍を経て、なお現場に残っているのはモチベーションあふれる「精鋭」ばかりだ。厳しい時期に、観光再開に向けて着実に力を付けてきたからだ。 (コロナ禍になってからは)雷門の近くをみんなで掃除したり、オンラインで集まって、『僕はこういうルートが好きです』っていう発表会をしたり。どうやったらお客さんを楽しませることができるのかなっていう勉強会とかを(緊急事態宣言下の頃に)始めたんですよ。今の機会だからできることっていうのをみんなで模索してきたんですね。いつかまた観光ができる日に向けて、この2年間準備してきたわけです」 今、浅草観光のビジネス業態はコロナ禍前よりも広がったように見える。思えば、東京オリンピック・パラリンピックで最大限に発揮されるはずだった日本の「おもてなし」だが、コロナ禍をきっかけに想定外の進化を遂げ、発展していきそうだ。 ※この記事はダイヤモンド・オンラインとYahoo!ニュースによる共同連携企画です』、「コロナ禍を経て、なお現場に残っているのはモチベーションあふれる「精鋭」ばかりだ。厳しい時期に、観光再開に向けて着実に力を付けてきたからだ」、インバウンドが本格化を受けて、「人力車」等のサービスも急速に「発展」しているのだろう。
タグ:SNS(ソーシャルメディア、除くツイッター) (その12)(「ネトウヨかパヨクか」二元論の危うさ 安倍元首相の銃撃事件でSNSは混乱、大阪王将 舞妓…「SNSスクープ告発」後追い時代が来たマスコミの深刻、「浅草の人力車」の意外な救世主 「映えたい」女性たちと米Amazonが繋いだ商機) ダイヤモンド・オンライン 鎌田和歌氏による「「ネトウヨかパヨクか」二元論の危うさ、安倍元首相の銃撃事件でSNSは混乱」 「政治的なイシューについては、右派・左派という二項対立でくくられやすくなっているが、現実はそう分かりやすくない」、その通りだ。 確かに機械的な「レッテル」貼りにはうんざりさせられる。 「単純二元論」は現実の複雑性を度外視した空論に近いのだろう。 「ネトウヨ」の論理破綻を見るのは心地よい。 「レッテル貼りは議論を幼稚にし、後退させることに気をつけたい」、同感である。 鎌田和歌氏による「大阪王将、舞妓…「SNSスクープ告発」後追い時代が来たマスコミの深刻」 「五ノ井さん」の事件に関しては、9月29日に陸上自衛隊トップの陸上幕僚長が陳謝する形になった。 確かにいまや「告発」の手段は「文春よりもSNSなのかもしれない」。 「ガーシーこと東谷義和氏」は、アラブ首長国(UAE)に滞在中で、国会からの帰国要請も無視して、詐欺容疑などでの逮捕を恐れて滞在を続ける意向だが、国会議員としての出席の義務を果たさない姿勢には、批判が高まっている。 「個人での発信の場合、責任は自分で引き受けるものの、出す情報を完全に自分でコントロールすることができる。リスクもある半面、当事者としては気持ちの折り合いがつけやすいだろう。 それではインフルエンサーによる告発やスクープの場合はどうか。インフルエンサーが当事者と受け手の間に入るクッションとなる。ファンの多いインフルエンサーが緩衝材となることで、賛否両論を受けやすい当事者のキャラクターを底上げすることができる場合がある」、その通りだ。 「スクープの担い手が大手メディアだけではなくなった今、メディアがつとめるべきは徹底した調査報道であり、ハラスメントや劣悪な労働環境をはらむ構造へのメスだ」、「スポンサーやしがらみにとらわれた及び腰の報道姿勢では受け手に見抜かれるし、もはや告発系YouTuberに勝てない」、「過去の実績にあぐらをかかず、つぶされることを恐れない報道が求められているのではないか」、同感である。 ダイヤモンド・オンライン「「浅草の人力車」の意外な救世主、「映えたい」女性たちと米Amazonが繋いだ商機」 「車夫たちを救ったのが」「若い女性たち」はともかく、「米Amazon.com」とはどういうことなのだろう。 「えびす屋浅草に130人ほどの車夫が所属していたが、緊急事態宣言が発令されて一時期、約30人に減った」、かなり大きな影響だったようだ。 「コロナ禍で(外国人)観光客がいなくなった代わりに、今まで接することがなかった人たちが人力車に乗りにやってきたと話す。 「コロナ禍になってから、本当に東京、千葉、神奈川辺りに住むお客さんがめちゃくちゃ来てくれたんですよ」、「地方からやってきた観光客の他に、都内周辺に住む人たちも人力車に乗り込むという。 さらに、東京都内や近郊に住む若い女性客が増えた」、 「「浅草で着物を着て、歩いて巡って食べて…っていうのが若い人たちの間で流行っているんですよね。インスタグラムでその様子を投稿したりしている人が多いようで、口コミで人力車の評判が伝わることが多いようです。友達におすすめされて乗りに来たという子もいます」」、なるほど。 「オンラインツアーに参加する客とは、主に米国に暮らす人たちだ。場所は浅草のみならず、上野や大手町方面に足を伸ばすこともあるという。多い時は一日30組ほどツアーを行ったそうだ。 車夫たちは作務衣などを着て、専用アプリが入ったスマートフォンを片手に英語で街案内をしながら、自らライブ中継して浅草などの街を歩く。人力車を使って巡るツアーもあるが、車夫が歩きながら街案内するものが多い」、 「ツアー途中でお客さんは画面越しに、実際に仲見世のお店などで商品を買うことができます。お客さんのクレジットカードとアプリがひも付いているので、僕らが仲介に入ったりする必要もなく、アメリカで見ているお客さんが日本の店で買うことができるんです」、案内の「車夫」には語学力が求められる筈だが、以下にみるように、「車夫たちは元々海外での就業経験や留学経験を持つ人たちが多く、意欲的だった」、と問題なさそうだ。 「コロナ禍を経て、なお現場に残っているのはモチベーションあふれる「精鋭」ばかりだ。厳しい時期に、観光再開に向けて着実に力を付けてきたからだ」、インバウンドが本格化を受けて、「人力車」等のサービスも急速に「発展」しているのだろう。
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キシダノミクス(その9)(岸田総理が「機能停止」…!? 支持率戻らず「腑抜け状態」で側近たちもサジを投げた、意味不明 岸田内閣の「便乗値上げ」を許さない「需要創出」って何だ 「政策目的」がチグハグ過ぎる、「山際大臣」辞任の真相 岸田首相の“更迭”決断の背景に自民党内の「山際下ろし」と迫る捜査当局の動き) [国内政治]

キシダノミクスについては、9月29日に取上げた。今日は、(その9)(岸田総理が「機能停止」…!? 支持率戻らず「腑抜け状態」で側近たちもサジを投げた、意味不明 岸田内閣の「便乗値上げ」を許さない「需要創出」って何だ 「政策目的」がチグハグ過ぎる、「山際大臣」辞任の真相 岸田首相の“更迭”決断の背景に自民党内の「山際下ろし」と迫る捜査当局の動き)である。

先ずは、10月3日付け現代ビジネス「岸田総理が「機能停止」…!? 支持率戻らず「腑抜け状態」で側近たちもサジを投げた」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/100502?imp=0
・『もしかしてオレ、最強では――ほんの数ヵ月前まで、岸田は根拠なき高支持率に酔っていた。だが砂上の楼閣は崩れるのも一瞬だ。あの日、二発の銃弾が起こした風は、政権をも吹き飛ばす暴風と化した』、興味深そうだ。
・『もう何も考えられない  鉄板の上でジリジリと音を立てる肉を眺めながら、自民党政調会長の萩生田光一は苛立っていた。9月14日、六本木「ステーキハウス ハマ」。 この夜、萩生田が総理大臣・岸田文雄を呼んだのは、10月3日の臨時国会召集まで3週間を切ったというのに、岸田が何の指示も出さないためだ。 「総理、もう党内の議論の取りまとめに入らないと間に合わなくなります。前年の実績を踏まえて、補正予算は30兆円規模で行かせていただきます」 迫る萩生田に、岸田は視線を泳がせながら、力無く答えるだけだった。 「うん。うん。任せる」 当日の岸田の様子は、党内でも噂になった。 「この手詰まりの状況で、できることといえば財政出動くらいしかない。それなのに、総理は支持率暴落がよほどこたえたのか、何も考えられない腑抜けの状態だ」(自民党閣僚経験者)』、「何も考えられない腑抜けの状態」、ここまで酷い状態に陥っていたとは初めて知った。
・『岸田派研修会での「異変」  派閥の会合でも、岸田の異変に所属議員たちがざわついた。9月6日、東京プリンスホテルで開いた岸田派の研修会。ゲストの政治ジャーナリスト・後藤謙次氏が講演でこう語った。 「参院選で勝利し、岸田さんは『黄金の3年間』を手にしたと言われているが、自民党の歴史を見ると、選挙がしばらくないと安心していた政権はみな短命で終わっている。岸田政権もそうならないように願っています」 それまで頷きつつ聞いていた岸田だが、瞬間、鬼のような形相に変わった。研修に参加した岸田派の議員が言う。 「以前なら笑って受け流していたでしょうが、最近の岸田さんは余裕を失っていて、ちょっとしたことでキレてしまう。まあ、その気持ちも分からんではない。安倍さんの国葬さえやれば支持率は上がると思っていたのに、逆に2割も下がったばかりか、安倍さんの支持層は『なんで台湾の総統を呼べないんだ』とか『ダライ・ラマが来ないのは岸田が媚中派だからだ』などと逆に文句を言い出したんですから」 安倍を悼む気持ちなど、もはや吹き飛んでいた。国葬は「弔問外交」の場と開き直り、海外からの参列者と前日から会いまくる日程を組んだ。 「ヤケクソになった岸田さんは『何をやっても叩かれるんだから、得意の外交一本に絞る』と言い出した。数撃ちゃ当たる戦法で、とにかくたくさんの要人に会って手数を増やせば、批判を打ち消せると踏んだのです」(前出・岸田派所属議員)』、「国葬は「弔問外交」の場と開き直り、海外からの参列者と前日から会いまくる日程を組んだ」、のも裏目に出たようだ。「最近の岸田さんは余裕を失っていて、ちょっとしたことでキレてしまう」、かなり重症のようだ
・『もはや「政権末期」の様相  しかし、その目論見も当てが外れた。国葬の直前、起死回生の場にすべく勇んで出かけたニューヨーク・国連総会。 アメリカ大統領のバイデンは「キシダ、フー?」とばかりに岸田の前を通り過ぎていった。岸田はツイッターで、わずか数分の立ち話を「懇談」と言い張るしかなかった。 意気消沈して帰国した岸田を待っていたのは、またも悪い報せだった。国葬まであと3日となった9月24日のことだ。 「外務省から官邸へ『カナダのトルドー首相が国葬を欠席すると伝えてきた』と連絡が入った。それを聞かされた岸田総理は、ヘナヘナと椅子にへたり込んだといいます。結局、安倍さんの国葬にはG7首脳が一人も来ず、弔問外交は空振りに終わった。一番の大物がインドのモディ首相では、さすがに無理がある」(前出・自民党閣僚経験者) やることなすこと、すべてが裏目に出る。岸田のメンタルは、もはやボロボロだ。 まさに安倍が世を去るまでは「何もしないから、誰からも批判されない」という無気力戦法で、支持率は高止まりしていた。 だがあの日以来、歯車は逆回転を始め、しかもその速度はどんどん上がっている。瞬く間に、政権は「末期」の様相を呈するようになった』、「岸田のメンタルは、もはやボロボロだ」、「政権は「末期」の様相を呈するようになった」、誠に酷い状況だ。
・『努力してこなかった人  党三役も経験したある自民党重鎮は「岸田さんの空虚さが、国民にも露呈した」と手厳しい。 「ヒラ議員時代から、岸田さんが党の部会で発言しているのを見たことがなかった。部会ではバカなことは言えないからそれなりに準備するものだが、岸田さんは何の努力もしてこなかったんだ。もっとも、そういう軽い人だからこそ、このタイミングで総理になれた面もあるんだがね」 10月4日で、岸田が総理総裁となって丸1年が経つ。そもそも岸田が政権を獲ったのは、前任の菅義偉がほぼ1年で政権を投げ出したことによる「棚ぼた」のおかげだった。 どだい、難局に対応できる総理ではなかったのである。前出と別の岸田派所属議員が言う。 「岸田さんは菅さんより線が細いボンボンだから、このままでは心がポキッと折れてしまう。ある日いきなり辞めるのではないか、と側近たちもハラハラしています。情緒不安定なのは、8月にかかったコロナの後遺症もあるのかもしれない。『あなたとは違うんです』と国民に逆ギレして辞めた、福田康夫元総理に雰囲気が似てきた」』、「「ヒラ議員時代から、岸田さんが党の部会で発言しているのを見たことがなかった。部会ではバカなことは言えないからそれなりに準備するものだが、岸田さんは何の努力もしてこなかったんだ」、「努力してこなかった」ツケが出てきているのだろうか。
・『官房副長官もキレっぱなし  八方塞がりでパニックに陥っているのは、当の岸田だけではない。岸田を支えるはずの官邸幹部の面々もまた、ある者は苛立って当たり散らし、ある者はやる気を失い、ある者はこっそりと逃げる算段をつけている。 「ダメだダメだ!」 官邸の一室で、集まった官僚たちを怒鳴りつける声が響く。官房副長官の木原誠二もこのところ、岸田に負けず劣らずの「湯沸かし器」と化しているのだ。官邸に出入りする某省庁幹部が言う。 「みんな幻滅していますよ。せっかく僕らが集まって何日も議論したものを、木原さんは決まって後から『ダメ』と言い出し、根拠のよくわからない感情論でひっくり返してしまうんだから。 国家安全保障局長の秋葉(剛男)さんも、安倍政権では外務審議官として汚れ役も引き受けていたのに、岸田政権では何もしないで黙っていて、最近は天下りのことばかり考えているみたいです。見限ったんでしょう。岸田政権は、僕ら役人から見ても末期ですよ」 政権にとっても一世一代の大舞台だった安倍晋三元総理の国葬でも、岸田官邸の混乱ぶりを示す事件が発生した。その詳細は、【岸田政権、もうガタガタ…木原誠二氏ら側近はミス連発、総選挙もムリで「万事休す」】でひきつづきお伝えする』、「官房副長官の木原誠二」は、財務省出身で岸田派だが、「岸田に負けず劣らずの「湯沸かし器」と化している」、とは情けない限りだ。

次に、10月22日付け現代ビジネスが掲載した経済ジャーナリスト・千葉商科大学教授の磯山 友幸氏による「意味不明、岸田内閣の「便乗値上げ」を許さない「需要創出」って何だ 「政策目的」がチグハグ過ぎる」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/101252?imp=0
・『一体何を言っているのだ  「便乗値上げについては、今般の需要創出支援の趣旨を逸脱するものであり認められるものではありません」 全国旅行支援が始まったタイミングでホテルの宿泊料などが値上がりしていることについて、斉藤鉄夫国土交通大臣は記者会見でそんな発言をした。意味不明である。そもそも需要と供給で価格が決まる市場経済の中で、供給が一定のところに需要を創出すれば価格は上がる。それを「便乗値上げ」とは言わない。 もっとも、「現時点で便乗値上げの報告はない」としたが、確認されれば「厳正に対処する」のだという。見ものである。国交省はどんな事例を「便乗値上げ」と認定するのか。 客室の電気代や、送迎車のガソリン代、朝食のパンの小麦粉など、価格が上昇しているものを宿泊代に上乗せするのは普通の感覚なら「便乗値上げ」とは言わないだろう。しかし、エネルギーや食料代などは、いずれも岸田内閣が価格上昇を抑えようと必死に補助金を投入しているから、それらの上昇分を転嫁すること自体が罷りならぬとでも言いたいのか。 需要が増えてホッとひと息ついたので、需要が増えて売り上げが増えた分、苦労をかけた従業員の給与を増やそうというのはどうなのだろう。これも便乗値上げとは言えないだろう。まして、岸田内閣は「賃上げ促進」と言い続けているから、賃上げのための価格引き上げは岸田内閣の「政策目的」に叶っていて、責められるはずはない。 いったいどんな値上げをすると「便乗値上げ」になるのか。かつて電力会社に課していた「総括原価主義」よろしく、国が認めた原価に「適正利潤」を上乗せした「適正価格」を計算して、それを上回る値上げについて「便乗値上げ」として「厳正に対処」するのだろうか。それとも、ホテルや旅館に「公定価格」でも導入したいのか』、「斉藤鉄夫国土交通大臣」の「便乗値上げ」発言は、そんなに深いものではなく、軽いものなのかも知れない。
・『需要が増えれば価格は上がるもの  全国旅行支援が10月11日から(東京都は10月20日から)始まり、旅行代金の40%、交通機関とセットの旅行でひとり1泊8000円まで、宿泊のみだと5000円までが補助される。さらに平日は3000円、休日は1000円の地域クーポンが付いてくる。かつて盛り上がったGoToトラベルに比べて上限金額は少ないものの、待ってましたとばかり旅行に行こうと考えた人は多い。 ところが、全国旅行支援開始のタイミングで、人気ホテルの宿泊料が上昇。「開始前よりも高くなって支援のメリットを感じない」と言った声が溢れた。それが大臣をして「便乗値上げは許さない」と言わしめた理由である。文句を言いたい人たちの気持ちも分かるし、それをなだめようとする政治家の姿勢も分かる。しかし、前述の通り、需要が増えれば価格が上がるのは仕方ないことなのだ。 ならば、全国旅行支援などやらなくても良かったではないか、という声も出て来よう。そう。その通り。無駄である。国家財政を数千億円も注ぎ込んで「需要を創出」しなくても、需要は爆発的に増えていた。何しろ2年半もの間、新型コロナで「外出自粛」を余儀なくされてきただけに、この秋こそは旅行にゆくぞ、と考えていた人は少なくない。 さらに外国人だ。新型コロナ対策を理由に外国人観光客の受け入れを大幅に制限、事実上「鎖国状態」にあったが、岸田内閣は「開国」に踏み切った。それが何と同じ10月11日からである。止めていた外国人の制限を無くすだけでも需要は急増する。そうすれば値段も間違いなく上がるわけだ。未曾有の円安だから、超割安になった日本旅行に外国人が押しかけるのは火を見るより明らかだった。 外国人需要でホテル代が急騰し、日本人が泊まれなくなるのはかわいそうだから、日本人には補助金を出してあげよう、というのなら分かる。需要増加を機にホテルや旅館はどんどん値上げをして、一気に収益力を高めて、従業員の給与を大幅に引き上げてください。今がチャンスです、というのなら、政策としては筋が通っているかもしれない。ところが、「値上げするな」と言わんばかりの大臣コメントである』、「国家財政を数千億円も注ぎ込んで「需要を創出」しなくても、需要は爆発的に増えていた」、「止めていた外国人の制限を無くすだけでも需要は急増する」、「全国旅行支援などやらなくても良かったではないか」、「大臣」発言もさることながら、不必要な需要喚起策の方がはるかに問題である。
・『もはや打っている手がチグハグ  いったい岸田内閣はどんな経済政策を取ろうとしているのか。 インフレを徹底的に抑えようと言うのなら、需要を抑えれば価格は下がる。ガソリン代の補助金を石油元売り会社に出して、価格を抑えれば、需要は減らないから、価格もなかなか下がらない。補助金など出さずに価格が上昇すれば皆倹約して需要量が減り、結果価格は下がるのだ。 また、インフレ退治には金利の引き上げが常套手段だが、景気悪化を恐れてゼロ金利を維持し続けている。日米の金利差は開く一方で、円安が進み、輸入に依存するエネルギー代は一向に下がらない。もはや、打っている手がチグハグなのだ。 結局、すべての打つ手が付け焼き刃のその場凌ぎのため、全体としてはチグハグにならざるを得ないと言うことだろう。 岸田首相の「聞く力」が災いしてか、ぎゃーと言ってきた業界のためになる補助金制度を次々に導入しているとしか思えない。全国旅行支援も結局は旅行業者の声を聞いた結果ということで、国民の生活や楽しみを考えてのことではない、ということだろう』、「岸田内閣」は「経済政策」を全面的に見直して、整合的なものに修正すべきだ。

第三に、10月26日付けデイリー新潮「「山際大臣」辞任の真相 岸田首相の“更迭”決断の背景に自民党内の「山際下ろし」と迫る捜査当局の動き」を紹介しよう。
・『急転直下の交代劇の裏側には何があったのか。見えてくるのは、岸田政権の相変わらずの“場当たり主義”と“ご都合主義”の二重奏だ。「瀬戸際大臣」がついに奈落に落ちた、山際大志郎・前経済再生大臣「辞任」の真相――。 今回の突然の事態急変に一番驚いたのは、実は「山際氏本人」だと言われている。 自民党関係者の話。「事実上の更迭。岸田首相の意向を受けて昨日、木原誠二官房副長官が“引導”を渡したとの話もあるが、確かなのは山際氏が自発的に辞めたわけではないということ。政権の浮沈を懸けた26兆円規模の総合経済対策の閣議決定を28日に控え、重要法案と担当大臣のクビを秤にかけ、ギリギリのタイミングで岸田首相が“損切り”の判断をした」 すでに党内では、先週半ばから大臣交代を求める声が急速に強まっていたというが、その空気を決定づけたのが18日の予算委員会での山際氏の答弁だった。 「本人みずから“これから何か新しい事実等々が様々なことで出てくる可能性がある”と発言したことで、大臣にとどまる限り、新たなスキャンダル発覚の可能性や野党の追及もやまないことが明らかになった。これで一気に“山際は辞任させるべき”との声が広がった」(同)』、「政権の浮沈を懸けた26兆円規模の総合経済対策の閣議決定を28日に控え、重要法案と担当大臣のクビを秤にかけ、ギリギリのタイミングで岸田首相が“損切り”の判断をした」、「判断」が遅過ぎたとの批判もある。
・『岸田首相の優柔不断ぶりを露呈  当然、党内の“山際下ろし”の声は官邸にも届いており、山際氏の答弁に不安を抱いていた岸田首相もこの間、松野博一官房長官を介して本人に辞任の意向を確認するも、山際氏は「辞任の考えはない」と答えたとされる。 24日の予算委員会で、岸田首相が山際氏の交代について「そういったことは全くない」と否定した数時間後の辞任発表だったため、さまざまな憶測が飛び交ったが、交代方針は週末には決まっていたとの情報も浮上している。 「さすがに予算委員会の場で首相が“交代させます”と表明するわけにもいかないので、24日の答弁はああ言うしかなかったのでは。8月の内閣改造時、山際氏の留任を首相にネジ込んだのは“親分”の甘利明氏でした。しかし甘利の親分に当たる麻生太郎副総裁が“交代やむなし”に傾いていたこともあり、週末以降、後見人の甘利氏も岸田首相の決断に口を挟めなかったようです」(全国紙政治部デスク) 岸田首相がここまでズルズルと更迭を先延ばしにした最大の理由は“辞任ドミノ”を恐れたからとされる。 「当初、山際氏が辞めれば“なら萩生田氏も辞めるべき”といった事態になるのは不可避と見られていました。しかし萩生田氏は閣僚ではないので、野党も山際氏ほどの勢いで追及してくることはないと政権側は判断した模様です。そもそも批判の急先鋒である立憲民主党の辻元清美氏が旧統一教会関連団体の勉強会に参加していた過去が判明しており、追及が過ぎるとブーメランとして跳ね返ってきかねない弱点がある。立民を除けば、追及の構えを崩していないのは共産党だけですが、“一党なら対処可能”と考えている節があります」(同)』、「山際氏の留任を首相にネジ込んだのは“親分”の甘利明氏でした。しかし甘利の親分に当たる麻生太郎副総裁が“交代やむなし”に傾いていたこともあり、週末以降、後見人の甘利氏も岸田首相の決断に口を挟めなかったようです」、「山際氏」辞任の経緯が理解できた。
・『議員辞職を求める動きは止まず  ただし、大臣を辞めたからといって山際氏への追及がやむわけではない。 10月30日から、山際氏の「議員辞職」を求める全国規模の署名運動が展開される予定だ。主催するのは山際氏の地元選挙区で辞任を求めるデモ行進を行った市民団体「神奈川18区市民の会」である。 「これまで明らかになった山際氏と旧統一教会との繋がりは異様といっていいほど深く、大臣職を辞したからといって済む話ではありません。すでに10月6日、横浜地検に対して告発状を提出済みの事務所費問題を含め、山際氏の疑惑は旧統一教会との関係のみにとどまらない。議員辞職が相当と考えています」(共同代表のひとり) 事務所費問題とは「週刊新潮」(9月8日号)が報じた疑惑で、山際氏が代表を務める自民党神奈川県第18選挙区支部と地元事務所が入居する川崎市内のマンション所有者が、山際氏の私設秘書が代表に就く会社で、かつ相場を上回る家賃が長年支払われていたというもの。所有会社の株を100%持つのは山際氏であるため“税金還流”の嫌疑も浮上しているが、同告発に対し、横浜地検は11月上旬にも受理するか否かの判断をくだすと見られている。 山際氏の本当の正念場はこれからだ』、「事務所費問題を含め、山際氏の疑惑は旧統一教会との関係のみにとどまらない。議員辞職が相当と考えています」、「山際氏の本当の正念場はこれからだ」、どうなるのか要注目だ。
タグ:キシダノミクス (その9)(岸田総理が「機能停止」…!? 支持率戻らず「腑抜け状態」で側近たちもサジを投げた、意味不明 岸田内閣の「便乗値上げ」を許さない「需要創出」って何だ 「政策目的」がチグハグ過ぎる、「山際大臣」辞任の真相 岸田首相の“更迭”決断の背景に自民党内の「山際下ろし」と迫る捜査当局の動き) 現代ビジネス「岸田総理が「機能停止」…!? 支持率戻らず「腑抜け状態」で側近たちもサジを投げた」 「何も考えられない腑抜けの状態」、ここまで酷い状態に陥っていたとは初めて知った。 「国葬は「弔問外交」の場と開き直り、海外からの参列者と前日から会いまくる日程を組んだ」、のも裏目に出たようだ。「最近の岸田さんは余裕を失っていて、ちょっとしたことでキレてしまう」、かなり重症のようだ 「岸田のメンタルは、もはやボロボロだ」、「政権は「末期」の様相を呈するようになった」、誠に酷い状況だ。 「「ヒラ議員時代から、岸田さんが党の部会で発言しているのを見たことがなかった。部会ではバカなことは言えないからそれなりに準備するものだが、岸田さんは何の努力もしてこなかったんだ」、「努力してこなかった」ツケが出てきているのだろうか。 「官房副長官の木原誠二」は、財務省出身で岸田派だが、「岸田に負けず劣らずの「湯沸かし器」と化している」、とは情けない限りだ。 現代ビジネス 磯山 友幸氏による「意味不明、岸田内閣の「便乗値上げ」を許さない「需要創出」って何だ 「政策目的」がチグハグ過ぎる」 「斉藤鉄夫国土交通大臣」の「便乗値上げ」発言は、そんなに深いものではなく、軽いものなのかも知れない。 「国家財政を数千億円も注ぎ込んで「需要を創出」しなくても、需要は爆発的に増えていた」、「止めていた外国人の制限を無くすだけでも需要は急増する」、「全国旅行支援などやらなくても良かったではないか」、「大臣」発言もさることながら、不必要な需要喚起策の方がはるかに問題である。 「岸田内閣」は「経済政策」を全面的に見直して、整合的なものに修正すべきだ。 デイリー新潮「「山際大臣」辞任の真相 岸田首相の“更迭”決断の背景に自民党内の「山際下ろし」と迫る捜査当局の動き」 「政権の浮沈を懸けた26兆円規模の総合経済対策の閣議決定を28日に控え、重要法案と担当大臣のクビを秤にかけ、ギリギリのタイミングで岸田首相が“損切り”の判断をした」、「判断」が遅過ぎたとの批判もある。 「山際氏の留任を首相にネジ込んだのは“親分”の甘利明氏でした。しかし甘利の親分に当たる麻生太郎副総裁が“交代やむなし”に傾いていたこともあり、週末以降、後見人の甘利氏も岸田首相の決断に口を挟めなかったようです」、「山際氏」辞任の経緯が理解できた。 「事務所費問題を含め、山際氏の疑惑は旧統一教会との関係のみにとどまらない。議員辞職が相当と考えています」、「山際氏の本当の正念場はこれからだ」、どうなるのか要注目だ。
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北朝鮮問題(その23)(金正恩総書記「ミサイル連射戦略」の狙いとは?元外交官が考察、「北朝鮮の核実験」は既定路線に 金正恩が最も恐れる“2つのこと”とは) [世界情勢]

北朝鮮問題については、昨年10月24日に取上げた。今日は、(その23)(金正恩総書記「ミサイル連射戦略」の狙いとは?元外交官が考察、「北朝鮮の核実験」は既定路線に 金正恩が最も恐れる“2つのこと”とは)である。

先ずは、本年10月7日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した著述家/芸術文化観光専門職大学教授の山中俊之氏による「金正恩総書記「ミサイル連射戦略」の狙いとは?元外交官が考察」を紹介しよう。
・『北朝鮮が弾道ミサイルを立て続けに発射している。金正恩総書記は、軍事的に圧倒的に強い米国を向こうに回して、後へ引かない。ロシアのプーチン大統領のように軍事侵攻を断行した後、国際的に厳しく追い詰められるような失敗はしない――金正恩総書記をこう捉えると、“希代の戦略家”と思えてしまうから不思議だ。世界96カ国を訪ねた元外交官が考察する』、「金正恩総書記を」、「“希代の戦略家”」とは興味深い比喩だ。
・『金正恩総書記が戦国時代に生まれていたら...  「してやったり」「プーチンのように追い詰められることはしない」――北朝鮮の金正恩総書記は、ゆったりとした椅子に座りながら、NHKの報道で慌てふためく日本の映像を見て、こうつぶやいているのではないか。 10月4日、北朝鮮が打ち上げた中距離弾頭ミサイルが4600キロメートルの距離を飛んで太平洋上に落下した。北朝鮮のミサイルが日本上空を通過したのは5年ぶりだ。 国内各地で「Jアラート」(全国瞬時警報システム)のサイレンが鳴り響いた。北朝鮮のミサイルが上空を飛んでいる、墜落するかもしれない――第2次大戦を経験した世代の人は、戦時中を思い出したかもしれない。また、ウクライナでの戦争が、人ごとではないと感じた人もいただろう。 いずれにしても、自国の上空を他国のミサイルが飛んでいくことは、安全保障上の重大な危機である。日本政府は厳しく批判するのが当然だ。日米韓が合同軍事演習などを通じて軍事的圧力をかけていくだろう。 片や、金正恩総書記は、軍事的に圧倒的に強い米国を向こうに回して、後へは引かない。ロシアのプーチン大統領のように軍事侵攻を断行した後、国際的に厳しく追い詰められるような失敗はしない――金正恩総書記をこう捉えると、“希代の戦略家”と思えてしまうから不思議だ。 もし、金正恩総書記が戦国時代に生まれていたら、徳川の大軍を撤退させた真田昌幸くらいの戦績を残したのではないか。 「対米抑止で自国の体制を守るためなら何でもする」――金正恩総書記の視点で考えると、実に合目的的(一定の目的にかなっているさま)であることが分かる。 そもそも、金正恩総書記の“ミサイル連射戦略”の狙いとは何か。 それは、北朝鮮の指導者として存在し続け、その存在を世界に誇示し、世界から恐れを抱かせることだ。 そのためには、暗殺やクーデターを避け、外国からの軍事侵攻をはねつける対米抑止が最も重要だ。なぜなら、それらの実行力があるのは、現実的には米国以外に考えにくい。日本には平和憲法があるし、韓国軍がいきなり単独で攻めることは想定しづらい。 そうした計算をしつくした上で、中国とロシアを味方につけ、日米韓に反撃させない形で軍事的な抑止効果のみを得るように動く――金正恩総書記の頭には、こうしたアルゴリズムが完璧にできあがっているはずだ。 今の時期に日本上空を通過する弾道ミサイルを撃つのは、日米を含む西側諸国と、中露の関係が悪化していることが大きな要因にある。 ロシアのウクライナ侵攻で、ロシアは西側と完全に対峙(たいじ)する国家となった。これは、ロシアが北朝鮮に味方する、少なくとも敵にはならないことを意味する。 中国も、8月のペロシ米下院議長の台湾訪問以降、特に台湾問題をめぐって米国と激しく対立している。過去25年間で最も高位の米政治家による訪台を、中国は「極めて危険」な行動だと非難していた。 北朝鮮としては、自分の“陣営”である中露両国が西側諸国と激しく対立しているので、国連安全保障理事会における新たな非難決議などに「拒否権を行使してくれる可能性が高い」と見ているはずだ。 中露から見ると北朝鮮は、地政学的に西側との緩衝材になる。北朝鮮という国がなければ、米国軍が駐留する韓国と地続きになる。これは大きな脅威である。 緩衝国・北朝鮮が、米国を仮想敵国としてミサイルを撃つことは、中露は歓迎しているだろう(ただし核弾頭は除く)』、「外国からの軍事侵攻をはねつける対米抑止が最も重要だ。なぜなら、それらの実行力があるのは、現実的には米国以外に考えにくい。日本には平和憲法があるし、韓国軍がいきなり単独で攻めることは想定しづらい。 そうした計算をしつくした上で、中国とロシアを味方につけ、日米韓に反撃させない形で軍事的な抑止効果のみを得るように動く――金正恩総書記の頭には、こうしたアルゴリズムが完璧にできあがっているはずだ」、「中露から見ると北朝鮮は、地政学的に西側との緩衝材になる。北朝鮮という国がなければ、米国軍が駐留する韓国と地続きになる。これは大きな脅威である。 緩衝国・北朝鮮が、米国を仮想敵国としてミサイルを撃つことは、中露は歓迎しているだろう」、その通りだ。
・『グアムまで届くことを米国に見せつけたかった  10月4日のミサイルは、飛行距離4000キロメートル級であり、初めて本格的に米国領であるグアムが射程距離に入った。5年前に日本上空を飛んだ際は、グアムまではまだ届かないとみられていたので、今回は技術的に大きな進捗を遂げている。 ただ、勘違いすべきでないのは、グアムが北朝鮮の実際の攻撃対象になるということではない。攻撃対象になりうること自体が、北朝鮮にとって大事な対米抑止になる。グアムまで届くミサイルを開発したことを米国に見せつけたかったわけだ。 そもそも、ミサイル発射にしても、合同軍事演習にしても、抑止のためである。実際に攻撃するためではない。安全保障の分野では、「こっちに何かしてきたら反撃するだけの軍事力を持っている、覚悟しておけ」と常日頃アピールすることが大事なのだ。 気がかりなのが、北朝鮮による核兵器の小型化・弾頭化だ。今後、核弾頭が米国領にまで到達しうることによって、対米抑止が真に効果を持つだろう。 西側の呼びかけに聞く耳を持たない金正恩総書記。今後の展開はどうなるのか。 第一に、北朝鮮は核兵器と核搭載のミサイル開発をいっそう進めるだろう。日米韓が何か言っても聞く耳を持たないことは明らかだ。 ただし、中国は北朝鮮の核開発には反対している。そのため、中国からの働きかけで核開発を緩める可能性はゼロではない。 とはいえ、それは限りなくゼロに近いだろう。繰り返すが、米国領に到達する核兵器と搭載可能ミサイルを持つことこそ、対米抑止につながり、自らの体制を守ることになるからだ。 金正恩総書記の頭の中には、「核開発を諦めたら、米国からクーデターなどの攻撃を仕掛けられる可能性が高まる」といったロジックがある。だから、他国から対話だとか、呼びかけて交渉のテーブルにつかせるとかいっても、受け入れられる余地はほとんどない』、「米国領に到達する核兵器と搭載可能ミサイルを持つことこそ、対米抑止につながり、自らの体制を守ることになるからだ。 金正恩総書記の頭の中には、「核開発を諦めたら、米国からクーデターなどの攻撃を仕掛けられる可能性が高まる」といったロジックがある。だから、他国から対話だとか、呼びかけて交渉のテーブルにつかせるとかいっても、受け入れられる余地はほとんどない」、確かにその通りのようだ。
・『プーチン氏を他山の石として示威行動に専念  第二に、プーチン大統領を「他山の石」として、実際の軍事的侵攻はせず示威的行動を続けるだろう。 北朝鮮は、ロシアのウクライナ侵攻に関して、国連総会におけるロシアへの非難決議に「反対票」を投じた数少ない国である(中国でも棄権だった)。それだけロシアには近い姿勢を続けてきたが、ここにきてロシア側の軍事的劣勢が明らかになり、複雑な思いを抱いていることだろう。 プーチン氏には2008年、ジョージアとの戦争においてわずか5日間で勝利し、ロシア占領地を拡大した“成功体験”がある。ところが、今回のウクライナ戦争では、ジョージアでの成功体験が完全にあだとなっている。 金正恩総書記は、そのような轍(てつ)を踏まないためにも、直接刃を向ける軍事作戦は行わない。示威行為を続けることで抑止力を高めるだろう。 10月6日、またしても北朝鮮が、今度は日本海へ短距離弾道ミサイル2発を発射した。Jアラートが国内各地で鳴るような事態は、いったいいつになったら終わるのだろうか』、「金正恩総書記」が「“希代の戦略家”」であると、「山中俊之氏」は記述した理由がよく理解できた。確かに「“希代の戦略家”」のようだ。

次に、10月12日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元・在韓国特命全権大使の武藤正敏氏による「「北朝鮮の核実験」は既定路線に、金正恩が最も恐れる“2つのこと”とは」を紹介しよう。
・『わずか約2週間で7回 弾道ミサイルを発射  北朝鮮は、9月25日に続き、28日、29日、10月1日、4日、6日、9日と2週間余りの間に、7回弾道ミサイルを発射した。 わけても注目すべきは4日に中距離弾道ミサイル(IRBM)を発射したことだ。これは日本の上空を通過、最高高度1000kmで4600kmの距離を飛行し、日本にJアラートを発出させ、太平洋上の日本のEEZ外に落下した。北朝鮮のミサイルとして最長の距離を飛び、米国のグアムを射程に入れた。 また、9日に発射したミサイルは、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)や「超大型放射砲」などさまざまな可能性があり、詳細は分析中である。 今後、大陸間弾道ミサイル(ICBM)を通常軌道で初めて発射する可能性も出ている。 さらに、北朝鮮は核実験の準備を終えていると言われている。 北朝鮮の核・ミサイル開発とその実験は、計画に基づき進められているように思われる。ミサイルの連続発射は、核実験に対する日米韓や国際社会の対応を見極めるものでもあろう。 核実験は止められない可能性が高い。しかし、日米韓は連携して、それが極めて危険な行為であることを北朝鮮に認識させる行動を取ること、中国に対し北朝鮮けん制の必要性を認識させることが、求められている』、「日米韓は連携して、それが極めて危険な行為であることを北朝鮮に認識させる行動を取ること、中国に対し北朝鮮けん制の必要性を認識させることが、求められている」、その通りだ。
・『核・ミサイル保有に向け北朝鮮は着実に前進  金正恩氏にとって、核・ミサイルの保有は自らの生存をかけた大事業である。 北朝鮮は、2021年1月の第8回朝鮮労働党大会で、「最大の主敵である米国を制圧・屈服させることに焦点を合わせる」と表明した上で、米本土を狙ったICBMの高度化や原子力潜水艦、戦術核兵器の開発にも言及し、非核化に応じない姿勢を鮮明にした。 22年4月、金正恩氏が労働党トップに就任し10年を記念する日には「国家核武力の歴史的大業を実現した」として成果を誇示した。 9月8日の北朝鮮の最高人民会議では、核による先制攻撃を容認する法律を制定した。それは、他国からの核による攻撃が迫ったり、通常兵器であっても国家指導部と国家核戦力指揮機構に対する攻撃である場合を想定している。 北朝鮮外務省は「先制攻撃は米国の奇襲攻撃に勝つことのできる唯一の方法だ」と指摘しており、北朝鮮国防委員会も「米国が北朝鮮体制の崩壊に向けて軍事作戦や斬首攻撃を敢行すれば、北朝鮮は先制的かつ公正的な核攻撃で反抗する」と警告している。 北朝鮮は既に核保有を前提に戦術を考えているようである』、「米国が北朝鮮体制の崩壊に向けて軍事作戦や斬首攻撃を敢行すれば、北朝鮮は先制的かつ公正的な核攻撃で反抗する」、確かに「核保有を前提に戦術を考えているようである」。
・『北朝鮮の弾道ミサイル発射は実験ではなく実戦配備を想定  北朝鮮の一連の弾道ミサイル発射も、既に実験段階から核を搭載した実用段階に移行している、と考えるべきだろう。 米韓情報当局によると、北朝鮮がこの間に発射したミサイルは、「プルアップ機動」(ミサイルが下降中に再上昇)が可能な機種であり、パトリオット(PAC3、MSE)や高高度防衛ミサイルシステム(THAAD)体系など、米韓のミサイル防衛システムを無力化する懸念のある新型戦略武器である。 北朝鮮は多種多様で戦術核搭載が可能なミサイルを発射することで、米韓による拡大抑止が有効でないことを示しているのかもしれない。米韓が拡大抑止カードを活用して圧力を加える場合、北朝鮮も武力示威の程度と頻度を高めて対抗することになろう。 9月25日と28日のミサイル発射は、米原子力空母「ロナルド・レーガン」が釜山に寄港、米韓合同演習、日米韓対潜水艦訓練に参加しているのに合わせたものであるが、これまで北朝鮮は、米原子力空母寄港の際には挑発を控えており、この間のミサイル発射は初めてのことである。米韓に対抗できるとの自信をのぞかせたものである。 また、29日の2発のミサイルは夜間に発射されたが、これは一日中いつでも発射できることを意味し、「実戦配備」が可能となったというメッセージといえる』、「これまで北朝鮮は、米原子力空母寄港の際には挑発を控えており、この間のミサイル発射は初めてのことである」、「北朝鮮」の自信の表れなのかも知れない。
・『北朝鮮の核実験が行われるのは中国共産党大会と米中間選挙の間か  9月7日、韓国国防部主催の会合で韓国の申範チョル(シン・ボムチョル)国防次官は、「北朝鮮は、追加核実験の準備はほとんどできているが、どんな意図をもってするかは明白ではない。1回のとても強力なメガトン級実験をするか、数回の連続的核実験をするかもしれない。おそらく核能力を最もよく見せる方法を選択するだろう」と予想した。 申次官は、北朝鮮の非核化を促すためには「金正恩政権に核保有よりも核保有のリスクと負担のほうがはるかに大きい点を認識させることが最も重要な非核化解決策」と強調した。 韓国の情報機関は、核実験が10月16日に開催される中国共産党大会と来月の米中間選挙の間に行われるだろうと予測している。この時、数回の実験が行われる可能性も排除できない。 北朝鮮の核実験が行われる場合には、米韓はこれまでにない対応をすると予告している。しかし、IRBM発射に対する国連安保理会合で何のアクションも取れなかったことを考えれば、効果的な制裁の強化が行えるか疑問もある。 北朝鮮の暴挙を遮断するためには、もはや対話の呼びかけは効果的ではなく、北朝鮮が何を一番恐れるか考える必要がある』、「北朝鮮の核実験」に対しては、「もはや対話の呼びかけは効果的ではなく、北朝鮮が何を一番恐れるか考える必要がある」、その通りだ。
・『北朝鮮のミサイル発射に対抗し日米韓と米韓の合同演習が活発化  北朝鮮の一連のミサイル発射に対抗し、日米韓、米韓、日米では合同演習を活発化させている。 米韓海軍は9月26日から28日の日程で合同演習を行った。これには米第7艦隊所属の原子力空母「ロナルド・レーガン」とミサイル巡洋艦1隻、イージス艦2隻などが含まれる空母打撃群が参加した。 このほかにも海軍のイージス駆逐艦など20隻を超える米韓の艦艇が日本海に展開した。北朝鮮全域を射程圏に置いたトマホーク巡航ミサイルを搭載した原子力潜水艦「アナポリス」も作戦に参加した。 日米韓3カ国は9月30日、日本海の竹島から150km離れた公海上で潜水艦を探知・追跡する対潜水艦訓練を実施した。3カ国によるこうした訓練は2017年に初めて行われ、今回は5年ぶりである。 この訓練は米海軍の原子力潜水艦「アナポリス」を潜水艦発射弾道ミサイルを搭載した北朝鮮潜水艦と仮定し、これを探知・追跡しながら情報をやりとりする方式で行われた。この訓練には、米「ロナルド・レーガン」、韓国海軍の駆逐艦「文武大王」、日本の海自の護衛艦「あさひ」が参加した。 また、在韓米軍特殊戦司令部は人質の救出や夜間の浸透などの訓練「ティークナイフ」の様子を公開した。「ティークナイフ」はいわゆる北朝鮮指導部を狙った「斬首作戦」とも呼ばれるものであり、北朝鮮が最も警戒する訓練である。 梨花女子大学の朴元坤(パク・ウォンゴン)教授は「米空母打撃群が動員された合同演習期間に北朝鮮がミサイル挑発を敢行したのは、核能力を完成した国が表出する攻撃的な軍事行為」と憂慮している』、「在韓米軍」の「ティークナイフ」作戦に対し、「北朝鮮」としても「ミサイル挑発」をする他ないのだろう。
・『北朝鮮のIRBM発射により米原子力空母が韓国に回航  しかし、米空母がいったん韓国を離れた後、北朝鮮によるIRBM発射に伴って、再び日本海に回航したのを見た北朝鮮の反応は注目に値する。 米空母「ロナルド・レーガン」は5日、進行方向を変え日本海に回航した。日本の海上自衛隊と米韓海軍は6日、日本海で北朝鮮によるミサイル挑発を想定し、標的に対する情報共有を通じて探知・追跡・迎撃の手順熟練に重点を置いた共同訓練を実施した。 また、米韓は7日と8日、日本海で海上機動訓練を行った。合同参謀本部は「北朝鮮のいかなる挑発にも対応できる作戦遂行能力と態勢を持続し、強化していく」と明らかにした。 さらに両国海軍は、空母を済州東南まで護送した。 加えて、米韓では合同で対応射撃を行い、地対地ミサイル「エイタクムス(ATACMS)」など4発を日本海に向けて発射した。ただ、韓国軍が発射した弾道ミサイル「玄武2」は通常の軌道を外れて落下するという異常事態が発生した。 日米韓の外交チャンネルもフル稼働している。日本でJアラートが発動したのを受け、日米では4日、岸田文雄首相とバイデン大統領の電話首脳会談が行われた。また、日韓でも6日、電話首脳会談が行われ、IRBMに対する緊急対応や、日韓関係の構築に向けた話し合いが行われた。 日本は在韓米軍と国連軍司令部の後方支援の役割を担っており、朝鮮半島有事の際、日本が巻き込まれる危険性は高い。日韓が軍事面でも連携していかなければならない要素は高まっている』、「日本は在韓米軍と国連軍司令部の後方支援の役割を担っており、朝鮮半島有事の際、日本が巻き込まれる危険性は高い。日韓が軍事面でも連携していかなければならない要素は高まっている」、その通りだ。
・『原子力空母の動きに神経をとがらせる北朝鮮  北朝鮮は「ロナルド・レーガン」が朝鮮半島水域に再び出現したことに対し、「朝鮮半島と周辺水域の情勢安定に重大な脅威を生じさせていることに対して注視している」と論評した。 「ロナルド・レーガン」の回航を受け、北朝鮮軍は6日、2発の短距離弾道ミサイルを発射した。北朝鮮の弾道ミサイルは変則軌道を取るため、現在の米韓弾道ミサイル迎撃体系で無力化するのは難しい。特に超音速ミサイルを「空母キラー」として開発中なことは、空母を狙った示威との分析が出ている。 さらに北朝鮮は同日、軍用機12機を出撃させた。空軍戦力を活用した挑発は新しい現象である。空中戦力では米韓が北朝鮮を圧倒している。北朝鮮は数十年前の老朽戦闘機が主力であるのに対し、米韓はステルス機能を備えたF35を保有している。北朝鮮が戦闘機まで動員したということは、あらゆる軍事力を動員した全面戦争で対応するという意思表示だろう。この後、北朝鮮は150機の戦闘機を動員した訓練も行った。 これに対し、韓国軍は約30機を出動させた。 統一研究院の呉庚燮(オ・ギョンソプ)研究委員は「北は基本的に米国の戦略資産展開を深刻な脅威と認識する」として米空母やB52の動向を注視している。「今後、北が核保有国の地位を主張しながら対応の程度をさらに高める可能性がある」と警戒する。 半面、北朝鮮としては、9月26~28日に米空母が演習に参加した機会に弾道ミサイルを発射したにもかかわらず、再度回航したことを深刻に受け止めている可能性がある。北朝鮮が脅威と感じることで、その姿勢をさらに強硬にする可能性がある。だが、韓国が譲歩姿勢を示しても核ミサイルの高度化を進めるだけであり、危機を遅らせ、より深刻にするだけである。日米韓も毅然(きぜん)とした姿勢を取る必要がある。 韓国の外交安保シンクタンク・峨山(アサン)政策研究院とランド研究所が4月13日に共同で発表した報告書「北朝鮮核兵器の脅威への対応」は、韓米の取るべき行動として「北朝鮮が核兵器を使用しても勝利できないという認識を与える抑止力戦略で対応すべき」と提案している。 具体的には、北朝鮮との核戦争を準備しながら、主要目標は北朝鮮政権の除去であり、いかなる状況でも安全保障公約を守るという米国の意思を見せることが重要という。 北朝鮮が今恐れているのは、米原子力空母の展開と斬首作戦であろう。金正恩氏を押さえ込むためには、対話の呼びかけと合わせ、金正恩氏に脅威を意識させることが重要である』、「北朝鮮は同日、軍用機12機を出撃させた。空軍戦力を活用した挑発は新しい現象である」、「この後、北朝鮮は150機の戦闘機を動員した訓練も行った」、今回の米韓の動きを深刻に捉えているためだろう。
・『北朝鮮を擁護し続ける中国の姿勢をいかに翻意させるか  北朝鮮の核・ミサイルによる挑発を抑えるためには中国の役割が重要である。しかし、中国は北朝鮮制裁を話し合う安保理で拒否権を行使し、北朝鮮制裁の抜け穴を提供するなど北朝鮮を擁護する姿勢を鮮明にしている。 とはいえ、中国の協力なくして北朝鮮を制御することは不可能である。 中国の姿勢を翻意させ、北朝鮮に対する圧力を加えさせるためには、「北朝鮮の挑発に対し、日米韓は一致して力による対抗姿勢を取る」「北朝鮮を助けたければ、北朝鮮の核・ミサイルを止めるしかない」と認識させることが不可欠である。 そのためにも、北朝鮮の挑発に対し、日米韓も空母常駐などあらゆる選択肢を排除せず強力な対抗姿勢を堅持することを鮮明にする必要があろう』、米中関係の悪化は、「中国の姿勢を翻意させ」ることを難しくしている。しかし、理想論の傾き過ぎるかも知れないが、「北朝鮮」と「米国」の関係改善に向けた努力を、再度、掘り起してみないと、事態打開の扉は開かないのでは、なかろうか。そのためには、前回の「北朝鮮」と「米国」の交渉を再検証し、そこから糸口を見出すべきだろう。
タグ:北朝鮮問題 (その23)(金正恩総書記「ミサイル連射戦略」の狙いとは?元外交官が考察、「北朝鮮の核実験」は既定路線に 金正恩が最も恐れる“2つのこと”とは) ダイヤモンド・オンライン 山中俊之氏による「金正恩総書記「ミサイル連射戦略」の狙いとは?元外交官が考察」 「金正恩総書記を」、「“希代の戦略家”」とは興味深い比喩だ。 「外国からの軍事侵攻をはねつける対米抑止が最も重要だ。なぜなら、それらの実行力があるのは、現実的には米国以外に考えにくい。日本には平和憲法があるし、韓国軍がいきなり単独で攻めることは想定しづらい。 そうした計算をしつくした上で、中国とロシアを味方につけ、日米韓に反撃させない形で軍事的な抑止効果のみを得るように動く――金正恩総書記の頭には、こうしたアルゴリズムが完璧にできあがっているはずだ」、 「中露から見ると北朝鮮は、地政学的に西側との緩衝材になる。北朝鮮という国がなければ、米国軍が駐留する韓国と地続きになる。これは大きな脅威である。 緩衝国・北朝鮮が、米国を仮想敵国としてミサイルを撃つことは、中露は歓迎しているだろう」、その通りだ。 「米国領に到達する核兵器と搭載可能ミサイルを持つことこそ、対米抑止につながり、自らの体制を守ることになるからだ。 金正恩総書記の頭の中には、「核開発を諦めたら、米国からクーデターなどの攻撃を仕掛けられる可能性が高まる」といったロジックがある。だから、他国から対話だとか、呼びかけて交渉のテーブルにつかせるとかいっても、受け入れられる余地はほとんどない」、確かにその通りのようだ。 「金正恩総書記」が「“希代の戦略家”」であると、「山中俊之氏」は記述した理由がよく理解できた。確かに「“希代の戦略家”」のようだ。 武藤正敏氏による「「北朝鮮の核実験」は既定路線に、金正恩が最も恐れる“2つのこと”とは」 「日米韓は連携して、それが極めて危険な行為であることを北朝鮮に認識させる行動を取ること、中国に対し北朝鮮けん制の必要性を認識させることが、求められている」、その通りだ。 「米国が北朝鮮体制の崩壊に向けて軍事作戦や斬首攻撃を敢行すれば、北朝鮮は先制的かつ公正的な核攻撃で反抗する」、確かに「核保有を前提に戦術を考えているようである」。 「これまで北朝鮮は、米原子力空母寄港の際には挑発を控えており、この間のミサイル発射は初めてのことである」、「北朝鮮」の自信の表れなのかも知れない。 「北朝鮮の核実験」に対しては、「もはや対話の呼びかけは効果的ではなく、北朝鮮が何を一番恐れるか考える必要がある」、その通りだ。 「在韓米軍」の「ティークナイフ」作戦に対し、「北朝鮮」としても「ミサイル挑発」をする他ないのだろう。 「日本は在韓米軍と国連軍司令部の後方支援の役割を担っており、朝鮮半島有事の際、日本が巻き込まれる危険性は高い。日韓が軍事面でも連携していかなければならない要素は高まっている」、その通りだ。 「北朝鮮は同日、軍用機12機を出撃させた。空軍戦力を活用した挑発は新しい現象である」、「この後、北朝鮮は150機の戦闘機を動員した訓練も行った」、今回の米韓の動きを深刻に捉えているためだろう。 米中関係の悪化は、「中国の姿勢を翻意させ」ることを難しくしている。しかし、理想論の傾き過ぎるかも知れないが、「北朝鮮」と「米国」の関係改善に向けた努力を、再度、掘り起してみないと、事態打開の扉は開かないのでは、なかろうか、
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環境問題(その13)(もう怒った…環境問題の研究者が小池都知事に「太陽光パネル義務化反対」請願を提出した理由、ゴッホの「ひまわり」にトマトスープかけたお粗末な犯人の言い分 過激化する「エコテロリスト」たちの「心の貧困」、環境問題の利害対立が一変 オランダで大気汚染対策に畜産農家が激昂した理由、陰謀論者の増加と「リベラル政党離れ」が世界中でつながる根深い事情) [経済政策]

環境問題については、4月23日に取上げた。今日は、(その13)(もう怒った…環境問題の研究者が小池都知事に「太陽光パネル義務化反対」請願を提出した理由、ゴッホの「ひまわり」にトマトスープかけたお粗末な犯人の言い分 過激化する「エコテロリスト」たちの「心の貧困」、環境問題の利害対立が一変 オランダで大気汚染対策に畜産農家が激昂した理由、陰謀論者の増加と「リベラル政党離れ」が世界中でつながる根深い事情)である。

先ずは、9月22日付け現代ビジネスが掲載したキヤノングローバル戦略研究所研究主幹の杉山 大志氏による「もう怒った…環境問題の研究者が小池都知事に「太陽光パネル義務化反対」請願を提出した理由」を紹介しよう。なお、出典のURLは省略。
https://gendai.media/articles/-/100106?imp=0
・『国民に経済的負担をかける  東京都は太陽光発電の新築住宅への義務付けを進める方針だ。 9月20日、小池知事は所信表明にて、「『環境確保条例』の見直しを図ります」としたうえで、以下のように述べた。 「住宅などの新築中小建物に対する太陽光発電の整備などを大手住宅供給事業者などに義務づける全国初の制度を掲げました」 しかしいま、太陽光発電には問題が山積している。 筆者はこれまで一介の研究者としてエネルギー環境問題に従事してきたが、東京都議会の上田令子議員(江戸川区選出)に励まされ、一人の都民として請願を出すことにした。 これまでも本コラムで述べてきたように、太陽光パネルの義務付けは、中国政府によるジェノサイドへの加担となり、国民に経済的負担で迷惑をかけることを都民に強制するものだ。のみならず、水害時には感電により人命に関わる懸念がある。 筆者は9月20日付で、小池知事宛に義務付けを中止・撤回するよう請願書を提出した。また東京都議会にむけては、上田令子議員に紹介議員となっていただいて、環境建設委員会へ同内容の請願書も提出した。この後、上田議員とともに都庁で記者会見を行った。 同日、上田議員の呼びかけで署名活動が始まった。ネット署名については、このウェブサイトを参照してほしい。 筆者による都知事あての請願について、原文のまま紹介しよう。 【小池百合子東京都知事宛請願】 新築物件への太陽光パネル等の設置義務化に関する請願書 令和4(2022)年9月20日提出 東京都知事 小池百合子 殿 杉山(すぎやま)大志(たいし) 貴職におかれましては、都民福祉と都政発展のため、日夜精励されておられると存じます。 憲法第16条及び請願法題3条に基づき、以下の事項を請願いたします。 同法第5条に則り、誠実な検討の上、私の願意への貴職のご所見を本年10月3日までに文書にてご回答ください』、「太陽光発電の新築住宅への義務付け」は私のつたない記憶では、知事選時の公約ではなく、急に出てきた話のようだ。
・『ジェノサイドへの加担を義務づけ? (願意) 新築物件への太陽光パネル等の設置を義務化する条例改正を直ちに中止・撤回していただきたい。 (理由) 現在、東京都は新築物件の屋根に太陽光パネルの設置を義務付ける条例を検討しております。 しかし、パブリックコメントでも多数の反対意見が寄せられているように、今や太陽光発電には問題が山積しています。資料を添付いたしますので、ご参照ください。 以下では特に、人権、経済、防災の観点から、3点に絞って意見を申し上げます。 1 中国政府によるジェノサイド・人権弾圧への加担を都民に義務付けることにならないか。 現在、世界の太陽光パネルの8割は中国製、半分は新疆ウイグル製と言われています。国際エネルギー機関の7月の報告によれば、中国製のシェアは今後更に上がり、95%にも達する見込みです。 他方で、新疆ウイグル自治区における少数民族へのジェノサイド・人権弾圧の証拠は、国際社会が認めるところとなり、ますますはっきりしてきています。先進諸国は軒並みジェノサイドを認定し非難決議をしています。国連においても、人権高等弁務官事務所が「深刻な人権侵害が行われている」などとした報告書を8月末に公表しました。 強制労働(ジェノサイドの一部)と太陽光発電パネル製造の関係もはっきり指摘されています。 米国では、ジェノサイドを問題視し、新疆ウイグル自治区で製造された部品を含む製品は何であれ輸入を禁止するウイグル強制労働防止法を6月21日に施行しました。 かかる現状において、東京都が太陽光パネルを都民に義務付けるならば、それは事実上、ジェノサイドへの加担を義務づけることになります。だがこれは私たち都民の望むところではありません』、「世界の太陽光パネルの8割は中国製、半分は新疆ウイグル製」、「米国では、ジェノサイドを問題視し、新疆ウイグル自治区で製造された部品を含む製品は何であれ輸入を禁止するウイグル強制労働防止法を6月21日に施行」、これでは「東京都が太陽光パネルを都民に義務付けるならば、それは事実上、ジェノサイドへの加担を義務づけることになります」、確かに大いに問題だ。
・『100万円は一般国民の負担  東京都は、太陽光パネルについて、その設置を義務付けるよりも、むしろ、米国と同様に、「新疆ウイグル自治区で製造された部品を含む太陽光パネルの利用禁止」を公共調達や事業者において義務付けるべきです。 なお、都はこれまでの事業者へのヒヤリングにおいて「新疆ウイグル自治区の製品を使っていない」旨の回答を得ているとのことです。(太陽光発電設置解体新書スライド43) だが、かかるヒヤリングだけでは全く不十分です。結果として都民をジェノサイド・人権弾圧に加担させた場合、都はどのようにしてその責任をとるのでしょうか。 2 国民・都民への負担が巨額に上るのではないか。 国土交通省の試算に基づけば、条件の良いところであれば、150万円のパネルを設置した場合、15年で元が取れるとされています。 確かに建築主は元が取れるようですが、これは一般国民の巨額の負担に依存するものです。太陽光発電による電力の本当の価値は50万円程度しかありません。残りの約100万円は一般国民の負担になります。このように負担の在り方が歪むのは、「再生可能エネルギー全量買取制度」を含め電気料金制度全体が、今のところ太陽光発電に極めて有利なように設計されているからです。だが太陽光発電の電力としての価値は、火力発電の燃料費を削減できる分だけであり、これは50万円程度にすぎません。 かかる事実が明らかになり、国民全般に負担を強要し迷惑をかけることを、東京都民は望んでいないと思います。 新築物件への太陽光パネル設置を義務付けることで、国民全般にどの程度の巨額の負担がかかるのか、東京都は明らかにすべきでしょう。 3 水害時に人命が失われるのではないか。 東京都では大規模水害が予測されています。江戸川区などでは最大で10メートル以上の浸水が1~2週間続く恐れがあると想定されています。 水没した太陽光発電設備に感電・漏電の危険があることは、政府機関NEDOの調査で明らかになっています。 感電・漏電による二次災害、感電の危険による避難・救助の遅れなどで、人命が失われる事態が想定される。水害の恐れのある地域において、太陽光パネルの設置を義務化すべきではなく、むしろ禁止すべきです。 以上の理由により、貴職による真摯な検討と太陽光パネル義務化の中止・撤回を求めます。以上』、「東京都は、太陽光パネルについて、その設置を義務付けるよりも、むしろ、米国と同様に、「新疆ウイグル自治区で製造された部品を含む太陽光パネルの利用禁止」を公共調達や事業者において義務付けるべきです」、その通りだ。

次に、10月17日付けJBPressが掲載した作曲家=指揮者でベルリン・ラオムムジーク・コレギウム芸術監督・東京大学大学院情報学環同准教授の伊東 乾氏による「ゴッホの「ひまわり」にトマトスープかけたお粗末な犯人の言い分 過激化する「エコテロリスト」たちの「心の貧困」」を紹介しよう。
閲覧には無料会員登録が必要。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/72279
・『10月14日、ロンドンのナショナル・ギャラリーで情けない事件が発生しました。 ゴッホの油画作品「ひまわり」にトマトスープをかけて、自然保護を「アピール」してみせるという(https://www.cnbc.com/2022/10/14/oil-protesters-arrested-after-throwing-tomato-soup-at-van-gogh-painting.html)、何とも表現しようのない失態です。 ちなみに絵画そのものはガラスで覆われていて無傷のまま。 汚損があった場合請求されるだろう莫大な損害賠償金(「ひまわり」の評価額は80億円程度と報じられています)を支払わずにすむよう、あらかじめ「安全策」を施された状態での「テロリズム」であることも最初に記しておきます。 今回は、このところ頻発し、また先鋭化の傾向を見せているこうした「エコテロリズム」と、その背景を考えてみたいと思います』、「エコテロリズム」とは興味深そうだ。
・『「エコテロリスト」その主張とは  まず、ゴッホの「ひまわり」にトマトスープをかけた人たちが何を主張しているかを見てみましょう。 上のリンクを見ると分かるように、ゴッホ「ひまわり」に「ハインツ」の缶入りトマトスープをぶちまけたのは環境保護団体「JUST STOP OIL」メンバーを名乗る若い女性2人。 少なくとも1人は髪をピンク色に染めて、なかなかパンクな装いです。揃いの「JUST STOP OIL」Tシャツを着、「インスタ映え」でも狙っていそうなポーズを決めながら、彼女たちは言います。 「こんな絵を一枚守ることと、地球と人々の生命を守るのと、どっちが大切なのか?」 英国政府がここ2週間に決定した「北海油田における石油とガス採掘政策」に抗議し、「地球の生態系、そして人類をを守るため」ゴッホの絵画にトマトスープをぶちまけたというのですが・・・。 まず最初に言えることは、髪の毛をピンクに染めるのにも、相当の環境負荷がかかっている可能性があるのを自覚しているのか、といったあたりからでしょう。 「有名絵画」を襲えばニュースになるので、自分たちの主張が安く、手っ取り早く世界に報道される。 だから、防備の薄い、知名度の高い絵画をスキャンして、あらかじめカメラその他も手配したうえで、その手のアピールをして見せる。 というのが彼ら彼女らの手法で、言って見れば「炎上型ユーチューバー商法」の一種と呼べそうです。 警備の手薄な所を狙い、逃げも隠れもできない「絵画」を襲うというのは典型的な「弱い者いじめ」の発想です。 2001年に発生したイスラム原理主義勢力「タリバーン」による「バーミヤン摩崖仏」爆破(https://www.isan-no-sekai.jp/column/7979)にも通じる卑劣な犯行と言わざるを得ません。 しかし、この卑怯な手口そのものも「JUST STOP OIL」のオリジナルというわけではありません。 このところ相次いでいる「エコテロリズム」模倣犯の一つに過ぎない、21世紀の視聴覚高度情報メディア化ネットワークが見せる、典型的な社会病理のサンプルに過ぎないものです』、「防備の薄い、知名度の高い絵画をスキャンして、あらかじめカメラその他も手配したうえで、その手のアピールをして見せる。 というのが彼ら彼女らの手法で、言って見れば「炎上型ユーチューバー商法」の一種と呼べそうです」、「「炎上型ユーチューバー商法」の一種」とは言い得て妙だ。
・『「エコテロリスト」の共通項「名画イジメ」  タリバーンもまた、野卑で拙劣な方法ながら、自分たちの存在をアピールするため、わざわざ音声動画を収録しながら、世界的に著名でかつ完全に無抵抗なバーミヤンの石窟寺院を爆破してみせ、それを全世界にコンテンツ配信してみせました。 2001年3月10日のことです。それから半年が経った2001年9月11日、何が起こったか? やはり、あらかじめカメラの砲列を準備したうえで、ニューヨークの世界貿易センタービルに航空機を用いた自爆特攻が仕掛けられた。 言わずと知れた「9・11同時多発テロ」です。この経緯を彷彿させる「いやな感じ」を、こうした犯行から抱かざる得ません。 今年の5月29日、パリのルーブル美術館内で、車いすに乗せられた老婦人(を偽装した犯人)が人混みを掻き分け、レオナルド・ダ・ヴィンチの手になるとされる絵画「モナ・リザ」(「ジョコンダ」)の正面まで案内されました。 すると、老婦人と思われた人物はかつらを脱ぎ捨て、おじさんの本性が露わとなり、全身でモナリザを防護しているガラス面に突入していったのです。 残念ながら、そのおじさんの「自爆特攻」ではガラスは破れなかった。 すると今度は、車いすに隠し持っていた「クリームケーキ」、いわゆる「パイ投げ」のパイと思われます、をモナリザに投げつけた(https://www.marca.com/en/lifestyle/world-news/2022/05/29/6293b4df22601dc3408b45b6.html)のです。 幸か不幸か、この絵の顔の位置は3メートルほどの高さにありました。 そのため、人混みの中でも遠くから見えるわけですが、おじさんの投げたパイはモナリザの顔を直撃するアメリカンコミックを成立させられず、胸のあたりを汚すにとどまりました。 取り押さえられた犯人のおじさんは「地球環境を考えろ!アーチストはアートにかまけたいならエコロジーに目を向けろ」などと呼号していた。 モナリザの前には、無数の「スマホの砲列」が並んでおり、ここでアピールすれば全世界に情報が拡散するだろう・・・というのはユーチューバー的発想として正解だったでしょう。 それ以上の知性はほとんど感じられない。 「ひまわり」も「モナリザ」も一切抵抗などできない弱い存在の絵画です。ただ有名ではある。 そういう「名画イジメ」を通じて自己アピールしたいという、お粗末な犯行でした。 これ以降、車いすに乗ってルーブルを回る高齢者の身体チェックが厳しくなったことは想像に難くありません。何とも情けないことをしてみせるものです。 こうしたユーチューバー型の稚拙な犯行に終始とどまるのであればまだしも、20年前のバーミヤンを考えるとき、人の集まる美術館でより危険性の高い「アピール」が発生するリスクが心配です。 ルーブルを筆頭に、現在、世界各国の著名美術館、博物館は持ち物チェックのセキュリティを徹底しており、銃や爆弾などを持ち込むことは困難です。 そこで「トマトスープ」やら「パイ投げ」やらといった投擲物が選ばれているわけです。 接着剤など新手の手法を用いる「エコテロリスト」も登場しており、ガードとのいたちごっこがしばらくは続く可能性があるでしょう』、「「名画イジメ」を通じて自己アピールしたいという、お粗末な犯行」、「「エコテロリスト」も登場しており、ガードとのいたちごっこがしばらくは続く可能性があるでしょう」、困ったことだ。
・『真因は閉塞した社会経済への不満  一連の事件を見渡すと、こうしたアピールをした連中がどの程度真剣に「エコロジー」を考えているのか、かなり首を傾げざるを得ません。 こうした破壊行為は「ヴァンダライゼーション」と呼ばれます。 実行犯の声明に共感する大衆などはほとんどおらず、教養層は嫌悪感を示すでしょうし、その場の映像を見ても分かる通り、居合わせた大衆は予想外のハプニングに喜んで自撮りをあちこちに散布する程度。 日本のテレビで蔓延した「イジメ芸」を喜ぶ視聴者とほぼ同様のリアクションが見られるにとどまります。 何にしろおよそ地球環境保護のメッセージなどにはならない。浅い大衆受けを狙った心貧しい犯人による一過性の自己顕示以上のものにはなり得ません。 この「心貧しさ」に注目せざるを得ないのです。 こうした犯行が実行できてしまうもう一つの背景は、犯人たちが「心豊かな」教養を備えそこなっているという事実でしょう。 これは何も低所得層で教育の機会を得られなかったといったことではありません。 例えば、世界各地の高校や大学でSTEMとかSTEAMとか称して、IT・AI時代の人材育成はSサイエンスTテクノロジーEエンジニアリングとM数学を重視して、プログラミング人材不足に対処すべきだとかいう動きがあります。 これにアートAも加えてシステム創成に役立つSTEAM人材をなどと、米国企業由来の社会ニーズに合致させようとするものです。 ここでいう「アート」のお粗末なこと、これは専門の観点から客観的に指摘する必要のある事実です。 そういう「心の貧困」を、それなりの高等教育機関であるはずの場所でも、どれだけたくさん見てきたことか、名状し尽くすことができません。 それこそ「有名絵画にパイをぶつけたら面白い」程度のSTEMもSTEAMも、極めて残念なことですが、仕事柄あちこちで見るわけです。 批判的な観点があってスパイスが利いていて面白い程度のリアクションも目にします。 そうしたもの全般、小手先の小器用さと別に、教養の水準が低い。心が狭く、豊かな広がりがない。 そういうモラルも倫理も教えない低見識な「人材量産」に走り、問題が起きると「自己責任」と切り捨てる米国企業発のマスプロ教育に、ここ20年来EUやOECD(経済協力開発機構)は一貫して厳しい視線を向けて来ました。 私もそちらから物事に向き合っています。 ただ今回は皮肉なことに、一連の事件が「ロンドン」「パリ」など、もっぱら欧州で発生していることでしょう。 犯人の素性など、いまだ報じられない面も多いですが、一概に米国式量産教育だけの責任にはできません。 しかし、各地での事件報道を見ても『「ひまわり」は時価80億円』『「モナリザ」は時価1000億円』といった銭ゲバ的で、スキャンダリズムを喜ぶ報道が目についたのも、残念ながら事実でした。 さて、果たして「芸術の価値」は価格にあるのか? 「エコ」と比肩しうる人類史の貴重な遺物が持つ価値を人々は正確に把握できているのか・・・実の所定かでありません。 「どうして『ひまわり』に価値があるのか?」「モナリザが美術史的に占める位置は?」という問いは、「なぜバーミヤン石窟寺院は人類史において貴重な遺物だったか?」とほとんど同質の、文化にとって本質的な問いを投げかけています。 これに対して「そんな能書きどうでもいい、儲かりゃいいんだから」といったモノカルチャーと「絵画の価値なんかどうでもいい、環境問題を標榜して目立ちゃいいいんだから」という似非エコテロリストの背景土壌はほとんど同じもの。 これを放置したままでは、累犯を防ぐことはできないでしょう。 まずは日本国内で、こうした模倣犯が起きないよう、事前予防の対策が必要になってしまうのが、残念で仕方ありません』、「「そんな能書きどうでもいい、儲かりゃいいんだから」といったモノカルチャーと「絵画の価値なんかどうでもいい、環境問題を標榜して目立ちゃいいいんだから」という似非エコテロリストの背景土壌はほとんど同じもの。 これを放置したままでは、累犯を防ぐことはできないでしょう」、同感である。

第三に、11月3日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した株式会社ニューラルCEOで経営・金融コンサルタントの夫馬賢治氏による「環境問題の利害対立が一変、オランダで大気汚染対策に畜産農家が激昂した理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/311795
・『環境問題への経済認識に関して、歴史的には、オールド資本主義と脱資本主義の衝突という構図がはっきりとあった。オールド資本主義側にいたのはグローバル企業と機関投資家で、環境問題に対処することは経営コストだとみなしていた。一方、脱資本主義側にいたのが、環境NGO、農家、労働者だ。だが最近、経済認識の対立構造は複雑化している。その変化の一端を、オランダで畜産農家が大規模デモをした理由からみていこう。※本記事は『ネイチャー資本主義 環境問題を克服する資本主義の到来』(PHP新書)の抜粋・転載です』、「環境問題への経済認識に関して」「対立構造は複雑化」、とは興味深そうだ。
・『環境問題を「陰謀論」と結び付ける人が増えるワケ  2000年以降の資本主義は大きな変貌を遂げた。かつては環境問題など考慮するに値しないと考えていたグローバル企業や機関投資家たちは、環境問題の深刻さに気付き、積極的に向き合うようになっている。そしていつの間にか、環境NGOと並ぶほどに世界の中で最も環境問題の解決を志向するようになった。 では、あらためて、人々が抱いている経済認識を整理しておきたい。下の図は、拙著『ESG思考』の中で提示した経済認識の分類図だ。横軸は、ビジネスが環境や社会へ及ぼす影響を企業が考慮するようになると、利益が減るとみるか、それとも増えるとみるか、の違いだ。一方、縦軸は、企業が環境や社会の影響を考慮することに賛成か、それとも反対か、というものだ。(図表:経済認識に関する4分類モデル はリンク先参照) この2軸で分けると、異なる4つの経済認識が浮かび上がってくる。まず、左下の「オールド資本主義」。環境や社会へ考慮することはコストでしかないので、考慮するに値しないという考え方だ。マルクス主義が想定した、あのあくどい「資本家」は、オールド資本主義の典型的な例だ。この次元にいる人たちは、基本的に環境問題への関心は薄い。また経済と環境を相反するものと考えているため、経済発展するには、ある程度の環境問題は致し方ないと考えていたりする。 2つ目が、左上の「脱資本主義」。オールド資本主義と同様に、この次元の人たちも経済と環境は相反するものと考える。そして、まさにマルクス主義が主張しているように、徒に短期的な利益を追求するオールド資本主義は、環境や社会を荒廃させるので、そこから脱するには資本主義そのものを捨て去るしかないと主張している。だが、人口が増加していく人間社会で、脱資本主義でどのようにプラネタリー・バウンダリー問題を解決できるかについて、残念ながら説得力のある議論ができていない』、「経済認識に関する4分類モデル」は議論の整理には有益そうだ。
・『うまい話の裏には陰謀があると考えるタイプの人たち  3つ目が、右上の「ニュー資本主義」。長期的な持続可能性(サステナビリティ)の観点から、未来の経営リスクを感じ取った企業や機関投資家は、オールド資本主義からニュー資本主義へと経済認識を転換してきている。代表的なキーワードは「ESG」だ。そして、環境・社会を重視した経営は、競争力を高め、企業価値を長期的に向上していけると理解されるようになった。最近では政府からも「経済と環境の好循環」という政策が出てくるようになった。 4つ目が、右下の「陰謀論」。うまい話の裏には陰謀があると考えるタイプの人たちだ。この次元の思想の持ち主は、特にニュー資本主義のように、経済と環境が好循環するというような綺麗事を聞くと、誰かの陰謀ではないかと勘ぐりたくなる。企業が環境・社会への影響を積極的に考慮することは、利益を生むのかもしれないが、結局それは誰か他の人の利益であって、自分たちの利益はむしろ蝕まれると考えていたりする。 これら4つのタイプの人たちは、水平のラインを境に上下の次元で対立しやすい。つまり、環境・社会への影響考慮に賛成か、反対かという意見衝突だ。歴史的には、オールド資本主義と脱資本主義の衝突という構図がはっきりとあった。オールド資本主義側にいたのはニュー資本主義に移行する前のグローバル企業と機関投資家で、環境問題に対処することは経営コストだとみなしていた。 一方、脱資本主義側にいたのが、環境NGO、農家、労働者だ。1999年にWTO(世界貿易機関)閣僚会議を巡ってNGOが道路を封鎖した「シアトル暴動」の頃は、ちょうど両者が激しく対立していた。この頃は、資本主義vs.反資本主義の時代だった。 だが最近、経済認識の対立構造は複雑化している。まず、その変化の一端をみていこう』、「最近、経済認識の対立構造は複雑化」、どういうことだろう。
・『オランダで畜産農家が大規模デモをした理由  2019年10月、オランダで数千台ものトラクターが、主要都市ハーグを中心に高速道路を封鎖した。その結果、オランダ中の高速道路で総長1000キロメートル以上の異常な交通渋滞が発生。街の機能は麻痺した。トラクターを運転していたのは、畜産農家だった オランダは、国土が小さな国で、農地面積は日本のわずか約4割しかない。それなのに世界有数の農業・畜産国で、農業関連輸出額はアメリカに次ぐ世界第2位を誇る。特にチューリップや野菜、チーズなどの乳製品は世界的にも有名だ。デジタル技術やAIも積極的に採用しており、生産性が抜群に高い。オランダの農地は国土全体の55%(牧草地含む)を占めるほど、国内経済を支える産業となっている。 当時オランダでは、大気汚染対策のために、農業と畜産業で窒素排出量を削減する政策が政府で検討されていた。特に課題視されていたのは、家畜牛の排泄物だった。国家公共衛生・環境研究所(MIRV)は、オランダ国内の窒素化合物(NOx)排出の46%が農業・畜産業によるものと分析し、そのうち牛の排泄物が約9割を占めると報告していた。 そのため、まだ政策議論の途中ではあったが、2019年9月9日には家畜の数を半分に減らすという案も出ていた。提案したのはオランダ緑の党や社会リベラル政党D66で、まさに環境NGOが支持している政党だった。これに畜産農家が反発した。なぜ自分たちが悪者扱いされなければならないのかと。 トラクターによる道路封鎖行動は、2019年10月1日の午後に一旦落ち着くが、10月14日から10月17日にかけ再び、オランダ全土で抗議活動が再燃。オランダ全土の高速道路がまたもや麻痺した。そして最終的に政府は、家畜の半減策を検討しないと公表した。 その後もオランダではたびたび畜産農家による抗議行動が発生している。直近でも2022年6月10日に再度、大規模な道路封鎖が発生した。争点はやはり窒素化合物の排出削減だった。今度はEU全体で大気汚染を大幅に削減することが決まり、オランダ政府は2030都市までに窒素化合物排出とアンモニア汚染を50%削減する政策を提案。そして政府は、オランダの畜産農場の30%が閉鎖される必要があるという試算を伝えた。 畜産農家はまたしてもこれに大きく反発。今回の抗議活動は長期化しており、本書を執筆している22年8月上旬時点でまだ事態は収束していない。さらに畜産農家だけでなく、他の農家や漁師までもが抗議活動に加勢。飛行機、自動車、建設業からも窒素化合物は出ているのに、なぜ自分たちだけが狙い撃ちにされるのかと憤った。畜産農家たちは、もし改革を進めるのであれば、政府は改革の方向性を明確に示すべきだと訴えた』、「今度はEU全体で大気汚染を大幅に削減することが決まり、オランダ政府は2030都市までに窒素化合物排出とアンモニア汚染を50%削減する政策を提案。そして政府は、オランダの畜産農場の30%が閉鎖される必要があるという試算を伝えた。 畜産農家はまたしてもこれに大きく反発。今回の抗議活動は長期化」、「事態は収束していない」、これは大変だ。
・『かつての脱資本主義陣営が大きく分裂  この事件は、かつての脱資本主義陣営が大きく分裂していることを意味している。かつて畜産農家と環境NGOは、一緒にグローバル企業と対峙する存在で、仲間同士だった。しかし、今では畜産農家が環境規制の強化に反発し、環境NGOと対立するまでになった。 他の国でも同様の事象が起きている。例えば2016年のアメリカ大統領選挙では、炭鉱労働者と環境NGOが反目し合った。当時の民主党バラク・オバマ政権では、気候変動や大気汚染への対策として、石炭火力発電を減少させる政策が打ち出されていた。 それに怒ったのが、ウエストバージニア州やペンシルベニア州の炭鉱労働者たちだった。オランダの畜産農家と同様に、なぜ自分たちが悪者扱いされなければいけないのかと環境政策を敵視した。そしてこの大統領選挙では、最終的に彼らからの支持を獲得した共和党ドナルド・トランプ候補が勝利を収めた。 2020年のアメリカ大統領選挙でも、労働組合側はなかなか一枚岩になれなかった。公務員労組の多くは、民主党ジョー・バイデン候補が掲げたグリーン・ニューディール政策を支持したが、すぐには賛成に回れない労働組合も少なくなかった。 例えば、米国炭鉱労働組合は、石炭労働者の生活が危ぶまれると主張し、グリーン・ニューディール政策に反対の姿勢を表明した。民主党支持派の多いカリフォルニア州では、人口密集地での油田開発を禁止する州法案が提出されたが、電気工、鉄工、パイプ工、ボイラー工、建設労働者が加入しているカリフォルニア州建設労働者協議会が反対したため、廃案となった』、「かつて畜産農家と環境NGOは、一緒にグローバル企業と対峙する存在で、仲間同士だった。しかし、今では畜産農家が環境規制の強化に反発し、環境NGOと対立するまでになった。 他の国でも同様の事象が起きている」、「例えば2016年のアメリカ大統領選挙では、炭鉱労働者と環境NGOが反目し合った。当時の民主党バラク・オバマ政権では、気候変動や大気汚染への対策として、石炭火力発電を減少させる政策が打ち出されていた。 それに怒ったのが、ウエストバージニア州やペンシルベニア州の炭鉱労働者たちだった。オランダの畜産農家と同様に、なぜ自分たちが悪者扱いされなければいけないのかと環境政策を敵視した。そしてこの大統領選挙では、最終的に彼らからの支持を獲得した共和党ドナルド・トランプ候補が勝利を収めた」、「2020年のアメリカ大統領選挙でも、労働組合側はなかなか一枚岩になれなかった。公務員労組の多くは、民主党ジョー・バイデン候補が掲げたグリーン・ニューディール政策を支持したが、すぐには賛成に回れない労働組合も少なくなかった」、確かに「労働組合側」にとっては、事態は複雑になったようだ。

第四に、この続きを、11月4日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した株式会社ニューラルCEOで経営・金融コンサルタントの夫馬賢治氏による「陰謀論者の増加と「リベラル政党離れ」が世界中でつながる根深い事情」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/311796
・『アメリカでは、民主党の支持基盤が安定しなくなった。ヨーロッパでも、リベラル政党の支持が薄まってきた。そして、日本でも同様に労働組合や低所得者層が、共産党、社民党、立憲民主党から距離をおくようになった。なぜ、これほどまでのリベラル政党離れが起きているのだろうか。そして、リベラル政党から離れていく人々は、どこに向かうのか。昨今、受け皿の役割を果たすようになってきているのが「陰謀論」だ。※本記事は『ネイチャー資本主義 環境問題を克服する資本主義の到来』(PHP新書)の抜粋・転載です。 >>前編『環境問題の利害対立が一変、オランダで大気汚染対策に畜産農家が激昂した理由』から読む』、「リベラル政党離れ」とは興味深そうだ。
・『ニュー資本主義の浸透とリベラル政党の迷走  こうした事態は、世界中のリベラル政党にとって、悩みの種となってきている。グローバル企業と機関投資家がオールド資本主義の次元にいた時代には、とりあえずグローバル企業と機関投資家を環境軽視と批判していれば、環境NGO、農家、労働者の結束は固かった。 しかし今では、グローバル企業・機関投資家はニュー資本主義に移行してしまい、批判の対象にはしづらくなってしまった。あれほど犬猿の仲だったグローバル企業・機関投資家と環境NGOは、プラネタリー・バウンダリーの危機に対処するための社会変革(トランスフォーメーション)を実現するというビジョンを共有するまでになった。 こうしてリベラル政党は、新たな批判の矛先を探さなくてはならなくなってしまった。そして気付いたら、自分たち自身が、今まで重要な支持層だった農家や労働者に批判される時代が来ていた。アメリカでは、民主党の支持基盤が安定しなくなった。ヨーロッパでも、リベラル政党の支持が薄まってきた。そして、日本でも同様に労働組合や低所得者層が、共産党、社民党、立憲民主党から距離をおくようになった。 なぜ、これほどまでのリベラル政党離れが起きているのだろうか。かつてリベラル政党は、社会的弱者の味方を自称し、弱者を救済する政策を掲げていた。その点で、環境問題は社会的弱者が被害を受けることが多く、リベラル政党の重要な政策テーマだった。公害問題はその典型例だ。そして、環境規制を強化するためにグローバル企業と闘おうとする姿勢が、リベラル政党支持層からの共感を呼んでいた』、「環境問題は社会的弱者が被害を受けることが多く、リベラル政党の重要な政策テーマだった。公害問題はその典型例だ。そして、環境規制を強化するためにグローバル企業と闘おうとする姿勢が、リベラル政党支持層からの共感を呼んでいた」、その通りだ。
・『リベラル政党から離れていく人々の受け皿が「陰謀論」  しかし、今は違う。カーボンニュートラルやネイチャーポジティブを実現するには、産業構造を大幅に転換し、イノベーションを進める必要があることがわかってきた。そうなると、社会的弱者と言われる人たちの仕事内容も大きく転換していかなければならなくなる。 例えば、衰退する産業の労働者は、新たなスキルを習得して、違う分野で働く準備をしていかなければならない。規制が強化されれば、自分たちが培ってきた技能が使えなくなる。場合によっては生活の変化も余儀なくされる。そして準備や実行には資金もいるが、社会的弱者には資金的余裕が少ない。これに嫌気がさした人々にとって、リベラル政党はもはや味方ではなくなってしまう。リベラル政党離れが起きる。 では、リベラル政党から離れていく人々は、どこに向かうのか。昨今、受け皿の役割を果たすようになってきているのが「陰謀論」だ。実際に、2016年のアメリカ大統領選挙で共和党トランプ候補が勝利したとき、その少し前からアメリカ国内では陰謀論の関連本が多数出版されていた。 例えば「アンチ・アジェンダ21」という陰謀論がある。この論者は、世界政府の樹立を目指す闇の勢力が、環境危機を捏造することで社会を統制しようとしており、人々の自由が脅かされていると主張している。この陰謀論は、実際に共和党支持層の一派「ティーパーティ運動」にも大きな影響を与え、トランプ候補支持へとつながった。別の陰謀論では、闇の勢力は環境危機を喧伝し、世界の人口の85%を削減しようとしていると主張する論者もいた。 日本ではきっと、「陰謀論のようなくだらない話を真面目に論じるのはいかがなものか」と感じる方も少なくないだろう。だが、すでに世界各国で気候変動は陰謀だと考える「気候変動陰謀論者」が9~30%、平均では22%もいるという論文まで発表されている※注釈69。 陰謀論が増えてきているため、学術界では陰謀論に関する研究や論文が続々と出てきている。そして、日本でも陰謀論が醸成されやすい風土がある。例えば、20カ国で世論調査70を実施したところ、環境科学への信頼に関する設問で、「とても信頼する」と回答した人は、日本はロシアに次いで下から2番目と非常に少なく、25%しかいなかった。アメリカの45%をも下回っていた』、「日本でも陰謀論が醸成されやすい風土がある。例えば、20カ国で世論調査70を実施したところ、環境科学への信頼に関する設問で、「とても信頼する」と回答した人は、日本はロシアに次いで下から2番目と非常に少なく、25%しかいなかった。アメリカの45%をも下回っていた」、「日本でも陰謀論が醸成されやすい風土がある」とは意外だが、気を付ける必要がありそうだ。
・『ハンガリー首相「グローバリストは地獄へ落ちろ」  陰謀論者は、気候変動対策の結果、誰が得をするのかという点に着目してロジックを構築する人が多い。例えば、気候変動が危機だと伝えることで得をするのは大企業であり、大企業の陰謀だという説もある。欧米では、太陽光発電やバッテリーの分野で産業競争力の強くなった中国の陰謀だという人もいる。一方、日本では、ルール形成に長けているヨーロッパが、産業競争の構造を変えるために気候変動の話をあえて持ち出し、日本の産業競争力を弱体化させているという人もいる。 その中でも昨今、世界的に際立ってきているのが「反グローバリスト運動」だ。反グローバリスト運動は、かつて「資本主義vs.脱資本主義」という構図があった頃の「反グローバリゼーション運動」とは性格が違う。当時の反グローバリゼーション運動は、オールド資本主義の次元にいたグローバル企業を敵対視し、グローバル企業が引き起こしている環境破壊や社会荒廃から世界を守ろうという脱資本主義的運動だった。 一方、反グローバリスト運動は普遍的な価値観というようなものを嫌悪し、地元を守るために「世界全体思考」の人を攻撃する。当然、プラネタリー・バウンダリーの観点から世界全体で協力して社会・経済を大きく転換させようとする環境NGOは「グローバリスト」側にいるととらえられ、反グローバリスト運動の非難の対象となる。 反グローバリスト思想を表明している重要人物の1人が、ハンガリーのオルバーン・ヴィクトル首相だ。オルバーン首相は、2022年のロシアのウクライナ侵攻でロシア政府がEU向けのガス供給を減らす戦略を打ち出したときに、天然ガス消費量を削減しようというEUの政策に堂々と反対したことでも知られる。 オルバーン首相は、2022年8月にアメリカのテキサス州で開催された共和党系イベント「保守政治行動会議(CPAC)」にも出席した。そしてそこで、EUと民主党バイデン政権を名指しで非難し「グローバリストは地獄へ落ちろ」と声を荒らげた。このことは全米のメディアでも大きく取り上げられた』、「反グローバリスト運動は普遍的な価値観というようなものを嫌悪し、地元を守るために「世界全体思考」の人を攻撃する。当然、プラネタリー・バウンダリーの観点から世界全体で協力して社会・経済を大きく転換させようとする環境NGOは「グローバリスト」側にいるととらえられ、反グローバリスト運動の非難の対象となる」、「環境問題の利害対立が一変」、「複雑化した」実態が理解できた。 
タグ:環境問題 (その13)(もう怒った…環境問題の研究者が小池都知事に「太陽光パネル義務化反対」請願を提出した理由、ゴッホの「ひまわり」にトマトスープかけたお粗末な犯人の言い分 過激化する「エコテロリスト」たちの「心の貧困」、環境問題の利害対立が一変 オランダで大気汚染対策に畜産農家が激昂した理由、陰謀論者の増加と「リベラル政党離れ」が世界中でつながる根深い事情) 現代ビジネス 杉山 大志氏による「もう怒った…環境問題の研究者が小池都知事に「太陽光パネル義務化反対」請願を提出した理由」 「太陽光発電の新築住宅への義務付け」は私のつたない記憶では、知事選時の公約ではなく、急に出てきた話のようだ。 「世界の太陽光パネルの8割は中国製、半分は新疆ウイグル製」、「米国では、ジェノサイドを問題視し、新疆ウイグル自治区で製造された部品を含む製品は何であれ輸入を禁止するウイグル強制労働防止法を6月21日に施行」、これでは「東京都が太陽光パネルを都民に義務付けるならば、それは事実上、ジェノサイドへの加担を義務づけることになります」、確かに大いに問題だ。 「東京都は、太陽光パネルについて、その設置を義務付けるよりも、むしろ、米国と同様に、「新疆ウイグル自治区で製造された部品を含む太陽光パネルの利用禁止」を公共調達や事業者において義務付けるべきです」、その通りだ。 JBPRESS 伊東 乾氏による「ゴッホの「ひまわり」にトマトスープかけたお粗末な犯人の言い分 過激化する「エコテロリスト」たちの「心の貧困」」 「エコテロリズム」とは興味深そうだ。 「防備の薄い、知名度の高い絵画をスキャンして、あらかじめカメラその他も手配したうえで、その手のアピールをして見せる。 というのが彼ら彼女らの手法で、言って見れば「炎上型ユーチューバー商法」の一種と呼べそうです」、「「炎上型ユーチューバー商法」の一種」とは言い得て妙だ。 「「名画イジメ」を通じて自己アピールしたいという、お粗末な犯行」、「「エコテロリスト」も登場しており、ガードとのいたちごっこがしばらくは続く可能性があるでしょう」、困ったことだ。 「「そんな能書きどうでもいい、儲かりゃいいんだから」といったモノカルチャーと「絵画の価値なんかどうでもいい、環境問題を標榜して目立ちゃいいいんだから」という似非エコテロリストの背景土壌はほとんど同じもの。 これを放置したままでは、累犯を防ぐことはできないでしょう」、同感である。 ダイヤモンド・オンライン 夫馬賢治氏による「環境問題の利害対立が一変、オランダで大気汚染対策に畜産農家が激昂した理由」 「環境問題への経済認識に関して」「対立構造は複雑化」、とは興味深そうだ。 「経済認識に関する4分類モデル」は議論の整理には有益そうだ。 「最近、経済認識の対立構造は複雑化」、どういうことだろう。 「今度はEU全体で大気汚染を大幅に削減することが決まり、オランダ政府は2030都市までに窒素化合物排出とアンモニア汚染を50%削減する政策を提案。そして政府は、オランダの畜産農場の30%が閉鎖される必要があるという試算を伝えた。 畜産農家はまたしてもこれに大きく反発。今回の抗議活動は長期化」、「事態は収束していない」、これは大変だ。 「かつて畜産農家と環境NGOは、一緒にグローバル企業と対峙する存在で、仲間同士だった。しかし、今では畜産農家が環境規制の強化に反発し、環境NGOと対立するまでになった。 他の国でも同様の事象が起きている」、「例えば2016年のアメリカ大統領選挙では、炭鉱労働者と環境NGOが反目し合った。当時の民主党バラク・オバマ政権では、気候変動や大気汚染への対策として、石炭火力発電を減少させる政策が打ち出されていた。 それに怒ったのが、ウエストバージニア州やペンシルベニア州の炭鉱労働者たちだった。オランダの畜産農家と同様に、なぜ自分たちが悪者扱いされなければいけないのかと環境政策を敵視した。そしてこの大統領選挙では、最終的に彼らからの支持を獲得した共和党ドナルド・トランプ候補が勝利を収めた」、「2020年のアメリカ大統領選挙でも、労働組合側はなかなか一枚岩になれなかった。公務員労組の多くは、民主党ジョー・バイデン候補が掲げたグリーン・ニューディール政策を支持したが、すぐには賛成に回れない労働組合も少なくなかった」、確か に「労働組合側」にとっては、事態は複雑になったようだ。 夫馬賢治氏による「陰謀論者の増加と「リベラル政党離れ」が世界中でつながる根深い事情」 「リベラル政党離れ」とは興味深そうだ。 「環境問題は社会的弱者が被害を受けることが多く、リベラル政党の重要な政策テーマだった。公害問題はその典型例だ。そして、環境規制を強化するためにグローバル企業と闘おうとする姿勢が、リベラル政党支持層からの共感を呼んでいた」、その通りだ。 「日本でも陰謀論が醸成されやすい風土がある。例えば、20カ国で世論調査70を実施したところ、環境科学への信頼に関する設問で、「とても信頼する」と回答した人は、日本はロシアに次いで下から2番目と非常に少なく、25%しかいなかった。アメリカの45%をも下回っていた」、「日本でも陰謀論が醸成されやすい風土がある」とは意外だが、気を付ける必要がありそうだ。 「反グローバリスト運動は普遍的な価値観というようなものを嫌悪し、地元を守るために「世界全体思考」の人を攻撃する。当然、プラネタリー・バウンダリーの観点から世界全体で協力して社会・経済を大きく転換させようとする環境NGOは「グローバリスト」側にいるととらえられ、反グローバリスト運動の非難の対象となる」、「環境問題の利害対立が一変」、「複雑化した」実態が理解できた。
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ハラスメント(その22)(ENEOS元会長“謎の辞任”理由は性加害! 那覇でホステスに「銀座では当たり前」言い放つ、「性欲が旺盛だからではない」精神科医が解説"一発アウトの性加害"を犯してしまう本当の理由 香川照之、エネオス前会長…地位のある中高年男性がなぜ、元陸自・性被害告発者への誹謗中傷でまた露見 日本人の伝統的ハラスメント体質) [社会]

ハラスメントについては、9月12日に取上げた。今日は、(その22)(ENEOS元会長“謎の辞任”理由は性加害! 那覇でホステスに「銀座では当たり前」言い放つ、「性欲が旺盛だからではない」精神科医が解説"一発アウトの性加害"を犯してしまう本当の理由 香川照之、エネオス前会長…地位のある中高年男性がなぜ、元陸自・性被害告発者への誹謗中傷でまた露見 日本人の伝統的ハラスメント体質)である。三番目の記事は、近来、稀に見る傑作である。

先ずは、9月21日付け日刊ゲンダイ「ENEOS元会長“謎の辞任”理由は性加害! 那覇でホステスに「銀座では当たり前」言い放つ」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/311746
・『“凄絶”と表現された性加害が、またしても発覚した。 だが今回「デイリー新潮」(9月21日配信)で性加害が報じられたのは、ENEOS代表取締役会長グループCEOを務めていた杉森務氏(66)だ。ENEOSは石油元売り最大手、売上高は10兆円を超える。 銀座の高級クラブでの3年前の性加害が明らかになった俳優の香川照之(56)が、この一件でテレビのレギュラー番組やCMの降板、休止で、次々に仕事を失ったことは記憶に新しいが、杉森氏の性加害は、香川のそれを上回るという。 今年8月12日、杉森氏は「一身上の都合」を理由に突如辞任を表明。業界のみならず経済界全体が騒然としたが、退いた理由が性加害だったとは……エネオスHDは21日、杉森氏の性加害を認め、杉森氏も事実関係を認めていると、各紙が報じた。 7月1日、沖縄・那覇市の歓楽街の高級クラブに得意先と訪れた杉森氏は、VIPルームで初対面の30代のホステスの女性を気に入り、手を握り、抱きつくなどしていたのがだんだんエスカレートしていった。 《持ち込みのワインを飲みだして気持ちが大きくなったのか、杉森さんは彼女のドレスの中に手を入れて、下着をまさぐるように胸をもみ始めた》(9月21日配信「デイリー新潮」より) さらにキスに飽き足らず、最終的には上半身を素っ裸にし、強引なやり方に女性は肋骨を骨折、PTSD(心的外傷後ストレス障害)のような症状に悩まされているという。 拒む女性に対して、杉森氏は「銀座では普通だよ、こんなの」と言い放ったという』、「女性は肋骨を骨折、PTSD・・・のような症状に悩まされている」、これではセクハラの域を超えて、障害罪が成立する可能性もあるのではなかろうか。「杉森氏」の「辞任」は当然だろう。
・『銀座では性加害は当たり前?  風営法に関して都内の弁護士はこういう。 「高級クラブが該当する風営法の1号営業の場合、客の接待は、『歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと』と定義されています。公然わいせつになるような行為は当然禁止されていますが、キスなどの身体的密着はある程度認められていると解釈していいでしょう。ただ接待の中身は経営者の方針次第で、実際に何がどこまで行われているかは店ごとで違うものと思われます」) しかし、学生時代から銀座の高級クラブで働く30代のホステスによると、 「ここまでの行為が日常的に許されているかといったら、なじみの店であればあるほどそれはないと言えるでしょう。おさわりやキス程度なら関係性次第でOKなことは当然ありますが、それ以上のことなら、気に入った女性がいれば店外でそういう関係になれるわけですから」 銀座の高級クラブが日常的に性加害の許される“無法地帯”だと思われたら、ホステスもはなはだ迷惑だろう』、「銀座の高級クラブが日常的に性加害の許される“無法地帯”だと思われたら、ホステスもはなはだ迷惑だろう」、その通りだ。

次に、10月4日付けPRESIDENT Onlineが掲載した精神科医 聖マリアンナ医科大学医学部医学科神経精神医学教室准教授の安藤 久美子氏による「「性欲が旺盛だからではない」精神科医が解説"一発アウトの性加害"を犯してしまう本当の理由 香川照之、エネオス前会長…地位のある中高年男性がなぜ」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/62163
・『俳優・香川照之の性加害報道に続き、ENEOS(エネオス)ホールディングスの前会長も同様にホステスへの性加害が報じられ電撃辞任するなど、地位のある中高年男性のスキャンダルが絶えない。そんなとき、彼らは番組降板、辞任などの責任の取り方をするが、性暴力そのものの病理にフォーカスせず、臭いものに蓋をするような幕の引き方でよいのだろうか。精神科医であり、法務省の治療プログラムにも携わり、性加害者の分析・治療に当たる聖マリアンナ医科大学准教授の安藤久美子さんが解説する――』、「精神医学」からの解説とは興味深そうだ。
・『精神医学ではどこからが「性暴力」に当たるのか  性暴力の定義としては、確立したものはないが、われわれ専門家が加害者臨床のなかで扱う「性加害行為」というときは、「同意のない性行為全般」を指している。したがって、このなかには、刑法上の犯罪未満の行為も当然含まれてくることになる。 こうした前提で「性暴力」を考えてみると、その行為の範囲は非常に幅広く、わいせつな言葉掛けなどの非接触の行為から、実際に身体に触れるような接触性の高い行為まで含まれる。また、一般的には、接触性の高い行為は攻撃性の高さと比例しているように思われているかもしれないが、必ずしもそうではない。たとえば、いわゆるのぞきや露出などは、直接的な接触はなかったとしても、被害者を持続的で甚大な恐怖に陥れることは間違いない』、「のぞきや露出などは、直接的な接触はなかったとしても、被害者を持続的で甚大な恐怖に陥れる」ことから、「接触性の高さ」と「攻撃性の高さ」とは「比例し」ないようだ。
・『性暴力における「同意」とは  また、性犯罪において法的に問題となりやすいのは「同意の有無」である。しかし、そこには日本社会の文化的背景も影響しており、正しく同意の有無を確認することは難しい場合もある。たとえば、驚くかもしれないが、現代においても「女性なのに逆らうのか」「上司の命令には従わざるを得ない」といった発言に代表されるようなジェンダーに関する問題や年功序列的な考えがいまだに根強く残っているのである。 さらにこうした考えは、強要する側だけでなく、強要される側にも共通してみられることがある。たとえば、「明確な意思表示は女性らしくない」といった考えを持っていたり、「出世したい」「気に入られたい」といった考えが脳裏をかすめたというだけで、「少しくらい強要されても仕方ない」「自分にも下心があったのだから、被害者とは言えない」などと考え、被害者側も自身に起こった出来事を被害体験としてではなく、むしろ自責的に捉えていることさえもある』、「日本社会の文化的背景も影響しており、正しく同意の有無を確認することは難しい場合もある。たとえば、驚くかもしれないが、現代においても「女性なのに逆らうのか」「上司の命令には従わざるを得ない」といった発言に代表されるようなジェンダーに関する問題や年功序列的な考えがいまだに根強く残っているのである。 さらにこうした考えは、強要する側だけでなく、強要される側にも共通してみられることがある」、確かに難しい面がありそうだ。
・『「世の中への怒りを示すため」弱い女性を狙う加害者もいる  また、近年の傾向としては、「年上の女性なら許してくれると思った」などと誤った母性を相手に重ねていたり、あるいは、女性の地位向上を推進する政策的・社会的背景への不満から、「世の中への怒りを示すために女性に屈辱的な思いをさせたかった」という犯行動機を語る犯人もいた。 こうしてみると、もし性犯罪防止に対して適切に対処しようとするならば、加害者と被害者の両者の心性について正しく理解しておく必要があるだろう』、「性犯罪防止に対して適切に対処しようとするならば、加害者と被害者の両者の心性について正しく理解しておく必要があるだろう」、その通りだ。
・『性欲ではなく支配欲  まずは加害者の心性について正しく理解するために、加害者に関する誤解されやすい項目の例を【図表1】にまとめて示した。 (【図表1】性犯罪について誤解されやすい4つの事項図表=筆者作成 はリンク先参照) 「誤解されやすい事項1」として挙げられるのは、「性暴力は抑えがたい性的欲求による」という誤解である。性犯罪の根底にあるのは、セクシャルな言動を通じて表現された他者への支配欲である。それゆえ、性的関心はもちろん存在するものの、いわゆる一般的に考えられているような性的満足を得ることだけが目的ではないことも少なくない。 筆者が精神鑑定などの場面で男性の強姦犯らの話を聞く限りでは、犯罪行為の際に必ずしも射精にいたっていないことも珍しくない。また、性犯罪者は普段から性欲が強いとか、男性ホルモンが高値であるなどとも誤解されがちであるが、これまでに精神鑑定を行った性犯罪者たちのなかには男性ホルモンの値が異常値を示していた者はいなかった』、「「性暴力は抑えがたい性的欲求による」という誤解」、「性犯罪者は普段から性欲が強いとか、男性ホルモンが高値であるなどとも誤解されがちであるが、これまでに精神鑑定を行った性犯罪者たちのなかには男性ホルモンの値が異常値を示していた者はいなかった」、なるほど。
・『性加害者は常に「抵抗しないであろう者」を選んでいる  「誤解されやすい事項2」は、「性的欲求は衝動的でコントロールが不能である」という誤解である。加害者はほとんどの場合、「抵抗しないであろう」者を選んで加害行為を行っている。このことからしても、コントロールできない衝動的な行動であったなどということはできない。刺激によって性的欲動が発動する時点では、年齢、容姿や服装など、自身の好みの相手を物色していたとしても、最終的に実行に至る際には好みよりもより狙いやすい相手にターゲットを絞っているのである』、「コントロールできない衝動的な行動であったなどということはできない」、「最終的に実行に至る際には好みよりもより狙いやすい相手にターゲットを絞っている」、なるほど。
・『性犯罪の多くは家族など親密な関係間で起こっている 「誤解されやすい事項3」は、「加害者は発覚を恐れて見知らぬ被害者を選ぶ」という誤解である。よく取り上げられる「レイプ神話」として、暗い夜道で見知らぬ犯人から女性がむりやり襲われたといったストーリーがあるが、性犯罪加害者の多くは身近にいる信頼されている人々である。 つまり実際には、親密な関係間、家族間のほうが、性犯罪の発生率は高いのである。しかし、親密な関係であるほど、被害者は「こんなことで訴えて関係を悪くしたくない」と考えるだろうし、加害者もそうした被害者心理に付け込み、「こんなことでは訴えないだろう」などと高をくくっている。これが「誤解されやすい事項4」にも挙げたように、性犯罪はすぐに発覚するどころか、ほとんどが暗数(注)となっている大きな理由のひとつなのである』、「実際には、親密な関係間、家族間のほうが、性犯罪の発生率は高いのである。しかし、親密な関係であるほど、被害者は「こんなことで訴えて関係を悪くしたくない」と考えるだろうし、加害者もそうした被害者心理に付け込み、「こんなことでは訴えないだろう」などと高をくくっている」、初めて知った。
(注)暗数:実際の数値と統計結果との誤差で、なんらかの原因により統計に現れなかった数字のこと(Wikipedia)。
・『性加害者に潜む知られざる病理を理解するために  では、こうした加害者のこころのなかでは何が起こっているのであろうか。ここではいくつかの要因のなかから3つを取り上げて概説解説する。 (【図表2】性犯罪加害者の認知のゆがみの例図表=筆者作成 はリンク先参照) 1)「相手は嫌がっていない」などと、認知がゆがんでいる  ひとつめは図表1に示した「誤解されやすい4つの事項」のすべてにも関係している「認知のゆがみ」である。認知のゆがみには大きく分けて「否認」と「最小化」がある。「否認」とは、例えば「相手から誘ってきたのに、こんなことになり迷惑だ」などというように自身を被害者として位置づけていたり、「むこうもその気だった」「相手の嫌がることはしていない」などと相手が非同意であったことを認めなかったり、「相手は傷ついていない」とか「いつまでも恨んだりはしない」といったように相手の傷つきを認めなかったり、さらには「他の人も同じようなことをやっている」などと自分の行動がもたらす影響を軽視し楽観的に捉えすぎるといったパターンがある』、「相手は嫌がっていない」などと、認知がゆがんでいる」、「認知のゆがみには大きく分けて「否認」と「最小化」がある」、中味については次で説明される。
・『「接客業の女性はこれぐらいで傷つかない」と考える「最小化」  次に、「最小化」とはどんな傾向を指すのだろう。これは、たとえば「少しぐらいなら大丈夫だろう」とか「この程度なら傷つかない」といった自身の行動の結果を過小評価したり、「水商売をやっているんだから傷つくことはない」、「嫌だと言っていても実際にはそれほど嫌がってはいないだろう」などと相手の気持ちや感情を理解していないパターンがある。さらには、「お金を払っているのだから何をやってもいい」「普段から面倒をみてあげているのだから、これくらいはいいだろう」といった自分が支配者であるかのような所有者意識をもっている場合もある。 これらの「否認」と「最小化」は、どちらか一方だけというよりも両方を持ち合わせており、状況に応じてそれらの誤った認知を都合よく変容させて自己の行動を合理化しているのである』、「「否認」と「最小化」は、どちらか一方だけというよりも両方を持ち合わせており、状況に応じてそれらの誤った認知を都合よく変容させて自己の行動を合理化している」、「状況に応じてそれらの誤った認知を都合よく変容させて自己の行動を合理化している」、ありそうな行動だ。
・『2)ストレスを受けることで支配性と攻撃性が発動する  ふたつめは「支配性と攻撃性」である。先述した「誤解されやすい4つの事項」でも少し触れたが、性犯罪とは、セクシャルな言動を通じて表現された他者への支配欲である。では、どうして支配したり攻撃したりしたくなるのか。分析にあたっては、もともとの攻撃的なパーソナリティーが関係していたり、過去に加害者自身が受けた被害体験への復讐的な意味合いを含んだ加害行動であったりすることもある。しかし、もっともわかりやすく、そして高い比重を占めているのは、もっと単純な「ストレス解消」であったり、自己の「劣等感や自己評価の低さの反動」であったりする。 これは子どものいじめの構造と類似している。うまくいかないことや不快な体験があったときに、自分よりも弱いものを攻撃してその状況を支配し優位性を実感することで、抑圧された不満や怒りの感情を発散する。これによって平素より感じている劣等感や自己評価の低さから一瞬だけでも目を背けられるからである。だからこそ、加害者は失敗しないように被害となる対象をよく選んでいるし、はじめから意図していなかったとしても、時に暴力的な手段にまで発展してしまうこともあるのである』、「うまくいかないことや不快な体験があったときに、自分よりも弱いものを攻撃してその状況を支配し優位性を実感することで、抑圧された不満や怒りの感情を発散する。これによって平素より感じている劣等感や自己評価の低さから一瞬だけでも目を背けられるからである」、「だからこそ、加害者は失敗しないように被害となる対象をよく選んでいるし、はじめから意図していなかったとしても、時に暴力的な手段にまで発展してしまうこともあるのである」、なるほど。
・『3)「今回で最後だから」と犯罪思考を自己擁護して実行  そして3つめの大切な要因は「依存の構造」である。 多くの性犯罪者は、犯罪行為を行う前に、自分がこれからやろうとしている行動の意味を理解しており、さらには「捕まったらどうしよう」というように行動の結果、何が起こりうるかということも想像できている。しかし、いったん犯罪行為のスイッチが入ってしまうと、行動を遂行する方向にしかベクトルが向きにくくなる。 すると次には、「これでもう終わりにする」とか「あと1回だけだから」などと事前に言い訳をすることで自身の思考や行動に合理性を与え、さらには「今回もうまくいく」「やめようと思えば自分はいつでもやめることができる」などと自分に言い聞かせ、犯罪思考を擁護する方向に自らを進めていく。その結果、この「あと1回だけ……」という誓いは永遠に繰り返されていくことになるのである』、「多くの性犯罪者は、犯罪行為を行う前に、自分がこれからやろうとしている行動の意味を理解しており、さらには「捕まったらどうしよう」というように行動の結果、何が起こりうるかということも想像できている。しかし、いったん犯罪行為のスイッチが入ってしまうと、行動を遂行する方向にしかベクトルが向きにくくなる。 すると次には、「これでもう終わりにする」とか「あと1回だけだから」などと事前に言い訳をすることで自身の思考や行動に合理性を与え、さらには「今回もうまくいく」「やめようと思えば自分はいつでもやめることができる」などと自分に言い聞かせ、犯罪思考を擁護する方向に自らを進めていく。その結果、この「あと1回だけ……」という誓いは永遠に繰り返されていく」、恐ろしいことだ。
・『性犯罪者は治療によって更生できるのか  最後に治療についても触れておく。「性犯罪者の行動は医学的治療によって改善できるのか」。この問いへの答えは2つある。つまりイエスとノーである。 通常、治療の前には必ずアセスメント(分析と評価)があるが、治療によって効果を上げるためにはどのようなケースにどのような治療を施すのかというアセスメントをいかに正確に行うかが重要となる。なぜなら性犯罪ほど年齢や、知的レベル、社会的地位に関係なく、さまざまな階級の加害者が幅広く分布している罪種はないからだ。したがって、治療にあたってもそれぞれの特性にあった介入方法をみつけてアプローチしていく。 欧米では選択的セロトニン再取込阻害剤(SSRI)やホルモン作用物質などを中心とした薬物療法が導入されている国もあるが、いずれの場合でも薬物療法単体で行われているわけではなく、心理療法と併用で実施されている。わが国においても、ここまでに記載してきた通り、認知のゆがみや、依存的な心性が犯罪行為に深く関係しているとするならば、基本的な治療選択は認知行動療法を中心とした心理療法となるであろう。しかし、もしその根底には日本社会におけるジェンダー不平等などの文化的背景があり、それが犯罪促進的に作用しているとしたならば、問題解決までにはまだすこし時間がかかりそうである。 ただし、そうはいっても実はやるべきことは単純なはずであるである。たとえば、対人関係を円滑にしてストレスをため込まないことや適切なストレス発散の方法をみつけること、そして何よりも常に相手を尊重する気持ちをもって接することといった、犯罪歴の有無を問わず、誰もが日常から気をつけるべき、ごく普通の生活を繰り返すことこそがすべての犯罪行為から自分を遠ざけるための一番の秘訣ひけつなのだから』、「欧米では選択的セロトニン再取込阻害剤(SSRI)やホルモン作用物質などを中心とした薬物療法」が「心理療法と併用で実施されている」、「わが国においても、ここまでに記載してきた通り、認知のゆがみや、依存的な心性が犯罪行為に深く関係しているとするならば、基本的な治療選択は認知行動療法を中心とした心理療法となるであろう」、「やるべきことは単純なはずであるである。たとえば、対人関係を円滑にしてストレスをため込まないことや適切なストレス発散の方法をみつけること、そして何よりも常に相手を尊重する気持ちをもって接することといった、犯罪歴の有無を問わず、誰もが日常から気をつけるべき、ごく普通の生活を繰り返すことこそがすべての犯罪行為から自分を遠ざけるための一番の秘訣ひけつなのだから」、これは分かるが、「薬物療法」に触れられてないがどうしてなのだろう。

第三に、10月20日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「元陸自・性被害告発者への誹謗中傷でまた露見、日本人の伝統的ハラスメント体質」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/311534
・『不快な誹謗中傷の言葉を直視して見えた根本の問題  「気持ちはわかるが、その程度のことも切り抜けられないで自衛官なんて勤まるかよってんだ 周りは試してんだよ ヌクヌク生きたいなら自衛隊なんか入るんじゃねぇっての」 「飲み会で尻や胸を触られたくらいで騒ぐやつwww 飲み会で練習と称して首キメされたくらいで騒ぐやつwww」 「だいたいよ、血気盛んな男達の場所に女が入る この意味をちゃんと考えろよ 女の見通しが甘いとしか言えないわ 外出たら7人の敵がいると思えないバカは働くな!」 「男も女もジャンダーも同じだから触り返したらええだけやん」(すべて原文ママ) これらの誹謗中傷はすべて、陸上自衛官時代の性被害を告発した五ノ井里奈さんのもとに送られたものである。五ノ井さん本人がスクリーンショット画像をTwitterで投稿したものを引用させていただいた。このほかにも個人の尊厳を傷つける侮辱や事実無根の暴言も多くあった。 読んでいるだけでも気分が悪い、怒りが込み上げるという人も多いだろう。ただこの実情をしっかり見てほしい。実はこれらの誹謗中傷には、「なぜ日本ではいつまで経ってもハラスメントがやめられないのか」という問題を考えるうえで、ヒントになることが多く含まれている。 セクハラやパワハラ撲滅が叫ばれて久しいが、厚生労働省によれば、総合労働相談コーナーには年間130万件も相談がある。経団連の調べでも「5年前よりもパワハラ相談が増えた」という会員企業が4割になったという。 つまり、「許されることではない」「もはやそういう時代ではない」と口では言いながら、陰では部下や後輩をネチネチでいじめて、女性には性的な嫌がらせをする人が後を絶たないというのが、「美しい国、日本」の現実なのだ。 なぜこうなってしまうのか。個人的には、先ほどの誹謗中傷のような考え方を持つ日本人がかなり存在しているからではないかと思っている。この考え方を端的に言えばこうなる。 「ちょっと嫌な目にあったくらいでいちいち騒ぐなよ、これくらいの辛いことを乗り越えられないと、一人前の社会人になれないぞ」』、「「許されることではない」「もはやそういう時代ではない」と口では言いながら、陰では部下や後輩をネチネチでいじめて、女性には性的な嫌がらせをする人が後を絶たないというのが、「美しい国、日本」の現実なのだ」、同感である。
・『「強い組織人をつくるために必要な負荷」と考えてしまう  もちろん、現実社会でこんなことを大っぴらに言う人は少ない。 しかし、先ほどの誹謗中傷をしている人たちが「匿名」でネチネチと攻撃していることからもわかるように、匿名SNS、ヤフーコメント、仕事終わりの居酒屋など「安全地帯」にいる日本人はよくこういう類の主張をしている。つまり、現実世界では地位も名誉もあるので言えないが、心の奥ではこのように考えている日本人は、想像以上に多い可能性があるのだ。 実際、筆者も報道対策アドバイザーとして、さまざまな企業のセクハラやパワハラ問題の会見や謝罪コメントを作成する関係で、加害者や企業側からヒアリングする機会があるのだが、こういう「本音」をよく耳にする。最初は「深く反省しています」「相手の方に申し訳ない」と殊勝なことを言うが、次第に自分の正当性を主張する。中には、勢いあまって先ほどの誹謗中傷のようなことを口走ってしまう人も少なくないのだ。 彼らに共通するのは、「ハラスメント=強い組織人をつくるために必要な負荷」と心の底から信じていることだ。 例えば、飲み会でのセクハラを訴えられた某企業の管理職は、筆者の聞き取りで、「あれくらいで騒ぐならこの世界では通用しない」と訴えてきた。確かに、この企業のいる業界は、女性が少ない上に夜の接待も多くて、顧客企業の経営者の中にはセクハラ常習犯もいる。 そこで、この管理職は「体を触られたと泣くのではなく、逆にセクハラしてきた相手の股間を触って笑い飛ばすくらい豪胆な女性でなければ大きな契約は取ってこられない」ということで、顧客を接待させる前に、自分がセクハラをして「免疫」をつけさせたというのである。なんとも苦しい言い訳とあきれるだろうが、ご本人はいたって真面目だった。 先ほど匿名で五ノ井さんに誹謗中傷をしていた人々もまったく同じ思想だ。五ノ井さんへの暴力やセクハラについて「周りは試している」と主張をした人がいた。要するに、女性自衛官としてどこまで苦痛に耐えられるのかという「テスト」だったというのだ。ほかにも、男女平等なのだから同じように自分もセクハラを「倍返し」して対抗しろという人もいた。 ここでも共通しているのは、「セクハラやパワハラは人を大きく成長させる好機なのだから弱音を吐かずに立ち向かえ」というスポ根的な思想だ。この「ハラスメント=人生修練」という考え方が日本人の頭に洗脳のように叩き込まれていることこそが、日本でいつまでたってもパワハラやセクハラがなくならない「諸悪の根源」ではないかと考えている』、「共通しているのは、「セクハラやパワハラは人を大きく成長させる好機なのだから弱音を吐かずに立ち向かえ」というスポ根的な思想だ。この「ハラスメント=人生修練」という考え方が日本人の頭に洗脳のように叩き込まれていることこそが、日本でいつまでたってもパワハラやセクハラがなくならない「諸悪の根源」ではないかと考えている」、その通りだ。
・『日本の「人材教育」は日本軍がベースとなっている  なぜ「ハラスメント=人生修練」という思想が叩き込まれているのか。それは陸上自衛隊だけではなく、日本のあらゆる企業・団体の「人材教育」に大きな影響を与えたある組織が、「ハラスメント=人生修練」を掲げていたからだ。 ある組織とは、日本軍だ。 あまり知られてないが、実は我々の働き方、社会システム、企業文化などはすべて日本軍がつくったと言っても過言ではない。そのあたりを一橋大学大学院経営管理研究科特任教授で、シティグループ証券顧問の藤田勉氏が端的に説明しているので、引用させていただく。 「戦時体制の影響は、今もなお、広範囲に残っている。所得税の源泉徴収、地方交付税、国民皆保険、厚生年金、9電力体制、経団連、新幹線も、戦時中にその原型ができた。同様に、年功序列、終身雇用制、系列・下請、メインバンク、天下り、行政指導のルーツは、すべて戦時体制である。戦後できた日本的経営の要因は、株主持合いのみである。それほど、戦時体制を出発点とする日本的経営は根が深いのである」(月刊資本市場 2015年5月) なぜこうなったかというと、国民総動員体制で総力戦となった時、民間企業で働く人の多くは「産業戦士」という軍の監督下になったからだ。戦時体制によって、日本全体の働き方から組織マネジメントまであらゆることに日本軍式の方法論が叩き込まれたのである。 戦争に負けたからといってそれがいきなりリセットされるわけもない。しかも、戦後復興の中心になった経済人は従軍経験があるか、産業戦士か、軍国教育を受けた人だ。だから、戦後の日本企業は「上司の命令は絶対」「滅私奉公」という感じで、どうしても軍隊チックになる。ちなみに、「長時間・重労働」「現場の人間を使い捨てにする」「粉飾・改ざん」「隠ぺい体質」という一部の日本企業で見られる悪癖も、すべて日本軍にあった文化だ。 そんな日本軍カルチャーのひとつが、「ハラスメント=人生修練」という思想だ。実は日本軍にも、「新兵いじめ」という現代のパワハラ・いじめとほぼ同じようなものがまん延していた。 例えば、1944年に学徒出陣で、陸軍北部第178部隊に入った男性は以下のようなパワハラを経験している。 「就寝前、汚れてもいない銃を見て班長が『手入れがなっていない』と激怒。銃床で頭をこづかれ殴られた。新兵同士で殴り合いを強いられたこともある。自尊心を打ち砕くいじめもあった。軍人勅諭を言わされ、間違えた戦友は柱によじ登ってセミのまねをさせられた。『ミーン、ミーン』。今度は『鳴き声が違う』と罵声が飛んだ」(朝日新聞 2014年8月15日) 気分が悪くなる人も多いだろうが、当時はそこまで悪いことだとされなかった。精神的にもまだひ弱で、戦争の厳しさもまだよく知らない新兵を強く鍛え上げるためには必要な鍛錬、つまり「人生修練」だと捉えられていた。 五ノ井さんが受けた同僚からの暴力やセクハラを「テスト」と捉える人たちと全く同じ考え方なのだ』、「日本軍カルチャーのひとつが、「ハラスメント=人生修練」という思想だ。実は日本軍にも、「新兵いじめ」という現代のパワハラ・いじめとほぼ同じようなものがまん延していた」、「精神的にもまだひ弱で、戦争の厳しさもまだよく知らない新兵を強く鍛え上げるためには必要な鍛錬、つまり「人生修練」だと捉えられていた。 五ノ井さんが受けた同僚からの暴力やセクハラを「テスト」と捉える人たちと全く同じ考え方なのだ」、なるほど。
・『日本の小中学校も日本軍方式  歴史学者・一ノ瀬俊也氏の『皇軍兵士の日常生活』(講談社現代新書)の中では、1933年に千葉県の佐倉の歩兵第五七連隊に入隊した「石川」という上等兵が書いた日記を紹介している。 そこには日々の過酷な訓練などとともに、初年兵たちに行われた「学科」と呼ばれる体罰などの記述がある。が、これも理不尽な暴力という扱いではなく「人生修練」と捉えられた。『皇軍兵士の日常生活』の言葉を借りると、『当時の軍が軍隊教育の過程でさかんに唱えていた<軍隊=人生の修練道場>という思考法』に基づいた、立派な「教育」だったのである。 ちなみに、このように体罰やいじめという「痛み」や「辛い経験」「我慢」によって、人間を成長させるという日本軍式教育を受け継いだ先のひとつが、日本の「学校」だ。 幼い子どもに、まるで拷問のように重いランドセルを背負わせて、前ならえ、休め、と軍隊のような「集団行動」を叩き込む教育は、先進国では日本だけだ。 ほかにも、部活動の体罰や、「みんな平等」「ルールを守る」を異常なまでに叩き込む一方で、「自分の頭で考える」「ルールを疑う」ということを禁止しているところなど、日本の小中学校は、日本軍の教育方針をそのまま踏襲している』、「このように体罰やいじめという「痛み」や「辛い経験」「我慢」によって、人間を成長させるという日本軍式教育を受け継いだ先のひとつが、日本の「学校」だ。 幼い子どもに、まるで拷問のように重いランドセルを背負わせて、前ならえ、休め、と軍隊のような「集団行動」を叩き込む教育は、先進国では日本だけだ。 ほかにも、部活動の体罰や、「みんな平等」「ルールを守る」を異常なまでに叩き込む一方で、「自分の頭で考える」「ルールを疑う」ということを禁止しているところなど、日本の小中学校は、日本軍の教育方針をそのまま踏襲している」、「日本の小中学校は、日本軍の教育方針をそのまま踏襲している」との鋭い指摘は同感である。
・『脈々と受け継がれてきた日本の「ハラスメント・体罰体質」  話を整理しよう。日本軍では「ハラスメントは人生修練」「体罰は教育」という考え方が一般的だった。 国家総動員体制になると、そのような考えは民間企業にもウイルスのように広がっていく。それは戦争に敗れた後も継続された。戦時教育を受けた人々が戦後復興をしたのだから当然だ。 かくして、「ハラスメントは人生修練」「体罰は教育」という考え方は、社長から幹部へ、幹部から平社員へ、そして平社員から新入社員へ…という感じで次世代に受け継がれていったというわけだ。 このようなサイクルで、「ハラスメントは人生修練」「体罰は教育」というカルチャーは高度経済成長からバブル期、平成不況を乗り越えて現代まで続いている。それがいきなり、「あらゆるハラスメントは許されません」「体罰は禁止です」と言われて、「はい、そうですか」などと素直に従うことができるだろうか。 できるわけがない。今の「マスク圧力」と一緒で、社会的制裁が怖いので、表向きは「ハラスメント反対」「体罰は絶対にダメ」なんて言ってみんなに調子を合わせるだろうが、人の目がない密室や、閉鎖的なムラ社会の中だと「本性」が出てしまう人も多いはずだ。 つまり、弱い立場の人を「鍛える」という名目でハラスメントをして、「口で言ってもわからないやつは体に叩き込む」に体罰を繰り返すのだ。 これが日本で、ハラスメントや体罰がいつまでもたっても撲滅できない根本的な原因ではないのかと個人的には思っている。 いずれにせよ、五ノ井さんへ寄せられた多数の誹謗中傷は、この国にはいまだに日本軍のように「ハラスメントは人生修練」と信じている人が多いことを浮き彫りにした。 銃弾に倒れた安倍晋三元首相は戦後レジームからの脱却を掲げていたが、実は我々はまだ「戦前レジーム」からも脱却できていないのかもしれない』、「弱い立場の人を「鍛える」という名目でハラスメントをして、「口で言ってもわからないやつは体に叩き込む」に体罰を繰り返すのだ。 これが日本で、ハラスメントや体罰がいつまでもたっても撲滅できない根本的な原因ではないのかと個人的には思っている」、同感である。「銃弾に倒れた安倍晋三元首相は戦後レジームからの脱却を掲げていたが、実は我々はまだ「戦前レジーム」からも脱却できていないのかもしれない」、故安倍氏も草葉の陰でくしゃみをしているかも知れない。
タグ:ハラスメント (その22)(ENEOS元会長“謎の辞任”理由は性加害! 那覇でホステスに「銀座では当たり前」言い放つ、「性欲が旺盛だからではない」精神科医が解説"一発アウトの性加害"を犯してしまう本当の理由 香川照之、エネオス前会長…地位のある中高年男性がなぜ、元陸自・性被害告発者への誹謗中傷でまた露見 日本人の伝統的ハラスメント体質) 日刊ゲンダイ「ENEOS元会長“謎の辞任”理由は性加害! 那覇でホステスに「銀座では当たり前」言い放つ」 「女性は肋骨を骨折、PTSD・・・のような症状に悩まされている」、これではセクハラの域を超えて、障害罪が成立する可能性もあるのではなかろうか。「杉森氏」の「辞任」は当然だろう。 「銀座の高級クラブが日常的に性加害の許される“無法地帯”だと思われたら、ホステスもはなはだ迷惑だろう」、その通りだ。 PRESIDENT ONLINE 安藤 久美子氏による「「性欲が旺盛だからではない」精神科医が解説"一発アウトの性加害"を犯してしまう本当の理由 香川照之、エネオス前会長…地位のある中高年男性がなぜ」 「精神医学」からの解説とは興味深そうだ。 「のぞきや露出などは、直接的な接触はなかったとしても、被害者を持続的で甚大な恐怖に陥れる」ことから、「接触性の高さ」と「攻撃性の高さ」とは「比例し」ないようだ。 「日本社会の文化的背景も影響しており、正しく同意の有無を確認することは難しい場合もある。たとえば、驚くかもしれないが、現代においても「女性なのに逆らうのか」「上司の命令には従わざるを得ない」といった発言に代表されるようなジェンダーに関する問題や年功序列的な考えがいまだに根強く残っているのである。 さらにこうした考えは、強要する側だけでなく、強要される側にも共通してみられることがある」、確かに難しい面がありそうだ。 「性犯罪防止に対して適切に対処しようとするならば、加害者と被害者の両者の心性について正しく理解しておく必要があるだろう」、その通りだ。 「「性暴力は抑えがたい性的欲求による」という誤解」、「性犯罪者は普段から性欲が強いとか、男性ホルモンが高値であるなどとも誤解されがちであるが、これまでに精神鑑定を行った性犯罪者たちのなかには男性ホルモンの値が異常値を示していた者はいなかった」、なるほど。 「コントロールできない衝動的な行動であったなどということはできない」、「最終的に実行に至る際には好みよりもより狙いやすい相手にターゲットを絞っている」、なるほど。 「実際には、親密な関係間、家族間のほうが、性犯罪の発生率は高いのである。しかし、親密な関係であるほど、被害者は「こんなことで訴えて関係を悪くしたくない」と考えるだろうし、加害者もそうした被害者心理に付け込み、「こんなことでは訴えないだろう」などと高をくくっている」、初めて知った。 (注)暗数:実際の数値と統計結果との誤差で、なんらかの原因により統計に現れなかった数字のこと(Wikipedia) 「相手は嫌がっていない」などと、認知がゆがんでいる」、「認知のゆがみには大きく分けて「否認」と「最小化」がある」、中味については次で説明される。 「「否認」と「最小化」は、どちらか一方だけというよりも両方を持ち合わせており、状況に応じてそれらの誤った認知を都合よく変容させて自己の行動を合理化している」、「状況に応じてそれらの誤った認知を都合よく変容させて自己の行動を合理化している」、ありそうな行動だ。 「うまくいかないことや不快な体験があったときに、自分よりも弱いものを攻撃してその状況を支配し優位性を実感することで、抑圧された不満や怒りの感情を発散する。これによって平素より感じている劣等感や自己評価の低さから一瞬だけでも目を背けられるからである」、「だからこそ、加害者は失敗しないように被害となる対象をよく選んでいるし、はじめから意図していなかったとしても、時に暴力的な手段にまで発展してしまうこともあるのである」、なるほど。 「多くの性犯罪者は、犯罪行為を行う前に、自分がこれからやろうとしている行動の意味を理解しており、さらには「捕まったらどうしよう」というように行動の結果、何が起こりうるかということも想像できている。しかし、いったん犯罪行為のスイッチが入ってしまうと、行動を遂行する方向にしかベクトルが向きにくくなる。 すると次には、「これでもう終わりにする」とか「あと1回だけだから」などと事前に言い訳をすることで自身の思考や行動に合理性を与え、さらには「今回もうまくいく」「やめようと思えば自分はいつでもやめることができる」などと自分に言い聞かせ、犯罪思考を擁護する方向に自らを進めていく。その結果、この「あと1回だけ……」という誓いは永遠に繰り返されていく」、恐ろしいことだ。 「欧米では選択的セロトニン再取込阻害剤(SSRI)やホルモン作用物質などを中心とした薬物療法」が「心理療法と併用で実施されている」、「わが国においても、ここまでに記載してきた通り、認知のゆがみや、依存的な心性が犯罪行為に深く関係しているとするならば、基本的な治療選択は認知行動療法を中心とした心理療法となるであろう」、 「やるべきことは単純なはずであるである。たとえば、対人関係を円滑にしてストレスをため込まないことや適切なストレス発散の方法をみつけること、そして何よりも常に相手を尊重する気持ちをもって接することといった、犯罪歴の有無を問わず、誰もが日常から気をつけるべき、ごく普通の生活を繰り返すことこそがすべての犯罪行為から自分を遠ざけるための一番の秘訣ひけつなのだから」、これは分かるが、「薬物療法」に触れられてないがどうしてなのだろう。 ダイヤモンド・オンライン 窪田順生氏による「元陸自・性被害告発者への誹謗中傷でまた露見、日本人の伝統的ハラスメント体質」 「「許されることではない」「もはやそういう時代ではない」と口では言いながら、陰では部下や後輩をネチネチでいじめて、女性には性的な嫌がらせをする人が後を絶たないというのが、「美しい国、日本」の現実なのだ」、同感である。 「共通しているのは、「セクハラやパワハラは人を大きく成長させる好機なのだから弱音を吐かずに立ち向かえ」というスポ根的な思想だ。この「ハラスメント=人生修練」という考え方が日本人の頭に洗脳のように叩き込まれていることこそが、日本でいつまでたってもパワハラやセクハラがなくならない「諸悪の根源」ではないかと考えている」、その通りだ。 「日本軍カルチャーのひとつが、「ハラスメント=人生修練」という思想だ。実は日本軍にも、「新兵いじめ」という現代のパワハラ・いじめとほぼ同じようなものがまん延していた」、「精神的にもまだひ弱で、戦争の厳しさもまだよく知らない新兵を強く鍛え上げるためには必要な鍛錬、つまり「人生修練」だと捉えられていた。 五ノ井さんが受けた同僚からの暴力やセクハラを「テスト」と捉える人たちと全く同じ考え方なのだ」、なるほど。 「このように体罰やいじめという「痛み」や「辛い経験」「我慢」によって、人間を成長させるという日本軍式教育を受け継いだ先のひとつが、日本の「学校」だ。 幼い子どもに、まるで拷問のように重いランドセルを背負わせて、前ならえ、休め、と軍隊のような「集団行動」を叩き込む教育は、先進国では日本だけだ。 ほかにも、部活動の体罰や、「みんな平等」「ルールを守る」を異常なまでに叩き込む一方で、「自分の頭で考える」「ルールを疑う」ということを禁止しているところなど、日本の小中学校は、日本軍の教育方針をそのまま踏襲している」、「日本の小中学校は、日本軍の教育方針をそのまま踏襲している」との鋭い指摘は同感である。 「弱い立場の人を「鍛える」という名目でハラスメントをして、「口で言ってもわからないやつは体に叩き込む」に体罰を繰り返すのだ。 これが日本で、ハラスメントや体罰がいつまでもたっても撲滅できない根本的な原因ではないのかと個人的には思っている」、同感である。「銃弾に倒れた安倍晋三元首相は戦後レジームからの脱却を掲げていたが、実は我々はまだ「戦前レジーム」からも脱却できていないのかもしれない」、故安倍氏も草葉の陰でくしゃみをしているかも知れない。
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医療問題(その39)(フリー転身2カ月でがんに…笠井アナが見た世界 闘病生活を「セルフワイドショー」にした真意、「主治医に遠慮不要」セカンドオピニオンの受け方 どんな時に必要か「ポイント3つ」を医師が解説) [社会]

医療問題については、9月19日に取上げた。今日は、(その39)(フリー転身2カ月でがんに…笠井アナが見た世界 闘病生活を「セルフワイドショー」にした真意、「主治医に遠慮不要」セカンドオピニオンの受け方 どんな時に必要か「ポイント3つ」を医師が解説)である。

先ずは、10月7日付け東洋経済オンラインが掲載したライターの松永 怜氏による「フリー転身2カ月でがんに…笠井アナが見た世界 闘病生活を「セルフワイドショー」にした真意」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/623828
・『56歳で「悪性リンパ腫」と診断された笠井信輔さん。約33年間勤めたフジテレビを退社して、そのわずか2カ月後のことだった。 しかも入院生活は、短くても4カ月、長くて1年掛かると医師から聞かされる。長期に及ぶ入院に対して、ブログやInstagramで発信しながら、笠井さんが意識していたこととは何か。がんになって良かったと思う人はいない。それでも笠井さんが得たもの、失ったものは何だったのか。がんになった人を描く映画『愛する人に伝える言葉』についても聞いた(今回は、前後編の後編です) 前編:「追いやられて会社脱出、笠井アナどん底で見た景色」』、興味深そうだ。
・『人のプライバシーを伝えることを生業としてきた  がんが発覚した後、その2カ月前まで担当していた『とくダネ!』に出演して、自らがんの公表に踏み切った笠井さん。 病気を隠したまま過ごす人もいる中で、あえて生放送で公表したのはなぜか。 「フジテレビ人生の中で、約33年間ずっと情報番組やワイドショーを担当してきました。有名人、著名人のプライバシーを伝えることを生業としてきたんです。そこで自分が一大事になったときに、プライバシーのことなのでそっとしておいてほしい、というのは違うと思いました。贖罪だと思う部分もあります」 他にもいくつか理由がある。 1つは、『とくダネ!』で長年一緒に番組を担当していた小倉智明さんの存在だ。小倉さんは、膀胱がんを患って復帰した際、自分の症状や闘病生活をここまで言うかというくらい、赤裸々に語った。喋り手としての信念をみた。 2つ目に、自分が闘病生活を送る姿を記録に残したいと思ったことだ。ドキュメンタリーとして記録があれば、生きて帰ってきたときはもちろん、自分が死んだらさらに価値が上がると思った。職業柄といえる。家族は嫌かもしれないが、自分の最後の仕事としてはふさわしいと思った。 3つ目に、自分たち報道人は間接報道を行っている。震災や事故現場に行って、人から聞いた話を伝えている。しかし、自分自身について声を出すことは、セルフワイドショーとして、とても意味のあることだと思った。 4つ目は『とくダネ!』で独占取材していた西城秀樹さんの闘病生活だ。西城さんは、最後は言葉がもつれ、痛みに顔を歪め、杖をついてフラフラしながら歩いていた。そうした姿をすべてさらけ出した。 それは、今までファンでいてくれた人、同じように歳を重ねている人に対して、「俺は今頑張っているから、みんなも頑張ろうよ」と伝えるためだったという。自分がもし大病を患ったときは、自分も何かの役に立てるようなことをしようと思っていた』、「自分自身について声を出すことは、セルフワイドショーとして、とても意味のあることだと思った」、「セルフワイドショー」とは言い得て妙だ。
・『競合、テレビ東京のTシャツを着た理由  『とくダネ!』で病気を公表した当日。すでに普通に歩ける状態ではなかった笠井さんは、そのまま病院に向かい、入院生活が始まった。 短くても入院生活は4カ月から1年。そう医師から言われていたため、入院前からいくつか考えていたことがあった。 まずは、とにかく情報発信をすること。がんが分かり、初めてInstagramやブログを開設した。Instagramのアカウントを開設した当初は、フォロワーは300人程度。当時大学生だった息子は1000人だった。 しかし、『とくダネ!』でガンを公表すると、フォロワーが300人から3000人、一時は30万人まで増えた(2022年9月27日現在21.7万人)。 「もちろん自分の人気ではなく、がんに興味がある人たちの数字です。ものすごい現実を見せられたような気もしましたが、その30万人が励みになったのも確かです」 そして着るものも意識した。コロナ禍では面会制限があって、家族が頻繁に病院に来られない。着替えは、病院で一日300円程度のパジャマを頼んでいたが、毎日同じ服を着て、ひたすら単調な時間を過ごす。これは気持ちが滅入る。 そこで、周りからお見舞いのリクエストを聞かれるとTシャツを頼んだ。 「面白い文字が載っているものや、蛍光色とか派手なもの。毎日違ったTシャツを着ると、それだけでも気持ちが上がるんです。妻がテレビ東京勤務だったので、『Iラブテレ東』のTシャツを買ってきてくれました。そのTシャツを着てInstagramに載せたら、フォロワーさんが喜んでくれました」 長期におよぶ入院生活では、毎日の彩りをどこでつけるか工夫した。 また、入院中は時の移ろいが感じにくい。そのため早い段階で「病室にいても、年間行事をちゃんとやる」と決めた。 クリスマスにお正月、節分にひな祭り、花見、息子の誕生日などなど。正月は、妻がミニおせち料理を作ってきてくれた。節分では、鬼のコスプレと金棒が送られてきて静かに部屋で豆まきをしたことも。 コロナ禍になって、部屋から外に出られなかった笠井さん。世の中から取り残されたような、隔離されたような気持ちにならぬよう、家族や周りの人間がそれを防いでくれた』、「節分では、鬼のコスプレと金棒が送られてきて静かに部屋で豆まきをしたことも」、微笑ましい。
・明るい話だけを伝えるつもりでいたが…  ブログでは、抗がん剤の副作用で寝込む姿や、髪の毛が抜けていく様子も公開した。当初は、明るいニュースだけ伝えるつもりだった。入院患者でもこんなに前向きで頑張っていると。 しかし、現実は大量の抗がん剤があまりにも辛かった。いいところばかり切り取っていたら、同じ治療をしている人から「笠井は嘘をついている」と思われる。または、がんを患ったことがない人には、「抗がん剤治療ってこんな感じなんだ」と誤解を与えてしまう。そうならぬよう、抗がん剤を打って、わずか4日でどんどん髪の毛が抜けていく様子もしっかり伝えた。 ただし――。最後の砦として、スキンヘッドになった姿だけは、公表する勇気がなかった。確かに、がんサバイバーがYouTubeやInstagramでスキンヘッドで登場する姿を見て助けられたのも事実。ただ、自分がそこまでできるかといったら、勇気はなかった。 復帰後にそのイメージがつくことが嫌だった。 もうひとつ、当時明かさなかったことがある。ステージ4だったということだ。 テレビは印象のメディアでもある。「笠井ステージ4」と世の中に出た時点で、「笠井終わった」「笠井、死ぬな」といった雰囲気を醸し出されてしまう。それは悔しいと思った。そのため、ステージ4を公表したのは退院した後、『とくダネ!』に出演したタイミングになった。 笠井さんは、報道に携わるメディアの人間だ。何か思ったからといって、そのままの感情を、ただ雑然とブログに載せることは、メディアの人間としてできないと思った。 もちろん仕事柄、読みやすい文章を作ることには自信があった。しかし、がんだからといって何を言ってもいいのか。そうではない。これを言ったら別のがん患者さんが嫌な気持ちになるかもしれない。失望する可能性もある。とくに、自分の治療がうまくいっているとき。「俺はこんな治療でうまくいった!」なんて書いてしまうと、そうではない患者さんはどう感じるか――。 そのため、SNSに投稿する前に一度妻のチェックが入り、少し整えた形で投稿した。妻は、報道取材、アナウンサー歴が長かったため、的確なアドバイスをしてくれた。「こういうことは書かないで」「ダメ、この表現直して」とまるで編集デスク。チェックなしで掲載したときは、すぐにLINEがきたこともあったという』、「テレビ東京勤務」の奥さんは、「報道取材、アナウンサー歴が長かったため、的確なアドバイスをしてくれた」、ラッキーだ。
・『「令和の患者」は受け身では足りない  入院してみて、気づきもあった。患者として受け身でいるだけでなく、自分の意志をハッキリ表明することだ。 今までは、インフォームドコンセントといって、医療者=ピッチャーが投げた球に対して、患者はキャッチャーとしてボールを受け取るだけだったかもしれない。しかし令和は違う。自らピッチャーとなって、医療従事者にボールを投げることが大切だという。 それは単なるコミュケーションではない。自分の意見をきちんと伝えるのだ。そう思えたのは、担当の医師が笠井さんの体調や要望を常に意識して聞いてくれたこと。 自分がどういう治療をしたいか。したくないのか。どう過ごしたいのかと。そのおかげで笠井さんも治療方法はどうか。薬の量は適切か。いろいろな点でディスカッションができたという。) 気づけば、自分も悪性リンパ腫の治療を行う、医療者の一人だ、との自覚が芽生えたという。 次第に薬剤師、栄養士、看護師にも自分の細かな要望を伝えるようになった。看護師は、1人ひとりの名前やキャラクターを覚えていくと、会話がしやすくなった。頼みごともしやすくなって、入院生活、QOL(生活の質)が上がった。 栄養士との打ち合わせも大事だった。味覚障害や食欲不振もあったので、朝は、ご飯ではなくてパン、その代わり昼は頑張ってご飯を食べる、夜は食べやすい麺類はどうかと話し合った。または、量が食べられないと言えば、ハーフ食といって、量は半分だが高カロリーなものを教えてくれた。薬剤師さんにも痛みの相談をした。いずれも、大半の患者は遠慮してやらないことだ。 もちろん、病院側にもできること・できないことがある。ただ、今までのいわゆる昭和の患者たちは、わがままを言ったらいけない、これ以上迷惑をかけられないと我慢することが多かったかもしれない。 しかし、自分の意見を言うことはわがままではない。令和の時代、医療者側も患者の言葉を待っているという。「また、あの患者がなにか言ってるよ」というのも違うのだ』、「自分の意見を言うことはわがままではない。令和の時代、医療者側も患者の言葉を待っているという」、なるほど。
・『病院でWiFiが使えない…  2019年4月末。4カ月の入院生活を終えて無事に退院した。2020年6月にはすべての治療が終わり、今は、とても元気に、そして活き活きと仕事をしている。 退院後は、「#病室WiFi協議会」という団体を作った。コロナ禍で入院を経験し、誰もお見舞いに来られないときにインターネット環境が自分を助けてくれた。 しかし後から調べてみると、全国の7割の病院では、入院患者用の無料のWi-Fiは飛んでいないと知った。有料だからと入院中にネット接続を我慢している人が多くいることにも驚いた。 そこで、#病院WiFi協議会を8人の仲間と作り、厚生労働省に訴えた。活動の結果、補助金がつくようになった。ただ、緊急的な措置で半年で期限が切れたため、また新たに厚生労働省に頼んでいるところだという。) 改めて、がん発覚から今までを振り返ると「引き算の縁と、足し算の縁」だったと笠井さんは語る。 はじめに「引き算・足し算」を感じたのは東日本大震災を取材していたとき。 震災2日目から現場で取材をしたが、現場で聞こえてくるのは、「もうダメだ」といった、マイナスな言葉が多かった。しかし、震災から3週間くらい経つと、ボランティアの知り合いが増えた、病院で看護師さんと知り合った、避難所で新しい友達ができたなど、足し算の縁も聞こえてきた。最悪な状態のときに生まれた縁や、出会った人、ものを取り込んで生きていく。その強さを被災地で学んだ。 そして数年後、自分が「がん」になった。もちろん、はじめはマイナスの出来事、引き算しかない。フリーになって早々というショックもある。しかし、このまま凹んでいても被災者の人たちに笑われてしまう。 がんになったから終わりではなく、がんになったからこうなれた。そう言える人生を歩もうと入院中に切り替えた』、「がんになったから終わりではなく、がんになったからこうなれた。そう言える人生を歩もうと入院中に切り替えた」、賢明な「切り替え」だ。
・『料理をしない三男が卵焼きを作ってきてくれて…  それに、些細なことにも喜びはある。たとえば、テレビをつけたら、たまたまやっていた漫才がめちゃくちゃ面白かった。今日見たYouTubeの音楽が泣けた。誰々がお見舞いに来てくれた――。 特に覚えているのは、三男が病室にきたとき。「高校生だった三男が、卵焼きを作ってきてくれたんです。料理なんか全くしない奴だったのに。それが、いつもと違う味、懐かしい味だったんです。聞いたら、おばあちゃんに習ってきたっていうんですよ。いや、こういうときはお袋の味でしょって笑ったけど、こんな感動なかったですよ」 がんにならないと体験できなかったこと。これこそ、足し算の縁だという。 もちろん、がんになって良かったなんて思っていない。とても辛いしきつい。マイナス面も多いけれど、それとは違った次元のプラスがあるということだ。 がんになって、たくさんの“がん友”もできた。無二の親友に出会う人たちもいる。 それに現役世代はガンになっても回復して日常に戻ってくる人も多い。確かにがんは、日本人の死亡理由の第1位だ。しかし、がん=死ぬ時代は、現役世代に関して言えば違う。だから諦めてはいけないと、笠井さんは力強く語る』、「三男が病室にきたとき。「高校生だった三男が、卵焼きを作ってきてくれたんです。料理なんか全くしない奴だったのに。それが、いつもと違う味、懐かしい味だったんです。聞いたら、おばあちゃんに習ってきたっていうんですよ」、「高校生だった三男が、卵焼きを作ってきてくれたんです。料理なんか全くしない奴だったのに。それが、いつもと違う味、懐かしい味だったんです。聞いたら、おばあちゃんに習ってきた」、「がんになって良かった一例」だろう。
・『がんになったとき、どう生きたいか  笠井さんは最後に、がんになった男性が主人公をつとめる映画『愛する人に伝える言葉』についても語ってくれた。 映画のストーリーは、がんで余命宣告を受けた男とその母親が、限られた時間の中で人生の整理をしながら死と向き合う姿を描くもの。笠井さんには印象的なシーンがいくつもあったという。 ひとつは主治医について。 「主治医役のエデ医師を演じたのは、ガブリエル・サラという実在する医師。こんな先生がいたらいいな、と思ったら本当にいました」 他に出演している病院のスタッフも役も、本当の医療従事者たちが含まれているという。非常に珍しい映画だといえる。 サラ医師が大事にする信念は、嘘をつかないこと。映画では、実際にサラが普段仕事でやっていること、言っていることしかやらないとし、それを基に脚本を作ったという。 患者にもウソはつかない。そのため、患者の男性には「あなたは長くないです」とハッキリ伝える。本当のことしか言わないが、完全に各患者に寄り添うと決めている。 特に印象的だった言葉は、息子の母に対して「旅立つ許可を与えましょう」「死ぬタイミングを決めるのは患者さんです」と伝える場面だという。 患者が「もう自分は頑張り尽くしたから、死んでもいい」と思ったら、そこで認めてあげるのが家族。それが最大の贈り物だと、そのシーンが心に残ったという。 一日でも長く生きていて欲しいと家族は思うかもしれない。これだけ医学が進めば延命もできる。でも、本人は生き抜きたいのか。最後はどう着地したいのか。希望とは何か。 笠井さん自身が聞かせてくれた、がんになったとき、自分がどう生きたいのかというメッセージとも重なってくる。 新たな船出をするタイミングでがんが発覚した笠井さん。怒りや悲しみに苛まれながらも、決して前を向くことをやめなかった。心を閉じなかった。自分にできるベストを尽くし、抗がん剤に苦しみながらも世の中に発信を続けた。 単調になりがちな入院生活も、早い段階で工夫した。患者として、一人の人間として、常に能動的に生きたのだ。 がんという言葉のパワーはとても強い。体に大きな負担が強いられる。もし、自分ががんになったら――。自分がどうありたいか。誰とどんな人生を過ごしたいか。 笠井さんの生き方から学ぶことは多い』、「怒りや悲しみに苛まれながらも、決して前を向くことをやめなかった。心を閉じなかった。自分にできるベストを尽くし、抗がん剤に苦しみながらも世の中に発信を続けた。 単調になりがちな入院生活も、早い段階で工夫した。患者として、一人の人間として、常に能動的に生きたのだ」、こうした「前向き」な姿勢は闘病にもプラスな筈だ。

第二に、10月22日付け東洋経済オンラインが掲載した腫瘍内科医・山口大学医学部附属病院腫瘍センター准教授の井岡 達也氏による「「主治医に遠慮不要」セカンドオピニオンの受け方 どんな時に必要か「ポイント3つ」を医師が解説」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/623156
・『この病院でいいのか、この治療法でいいのか、受けている治療がうまくいっていない気がするが、誰に相談すればいいのか……。そんな不安が常につきまとうのががんという病気です。 たとえ同じ治療をしていても「効果が上がりやすい患者さんには多くの共通点がある」と、抗がん剤治療の名医である井岡達也氏は分析します。それは一体何でしょうか? 治療法の選択、主治医を味方にする話し方からお金の使い道など……。後悔のない治療をし、効果を最大限にするために患者側でできることを親身かつ具体的にアドバイスする同氏の新刊『がん治療 うまくいく人、いかない人』より、抜粋してお届けします(3回目)。 1回目:もしもがんに…「治療効果を上げる」告知の受け方 2回目:がん患者でも仕事を続けたほうがいい絶対的理由』、興味深そうだ。
・『適した治療は患者によって違う  がんの治療には、外科手術、抗がん剤による薬物療法、放射線療法の三大療法があり、これらを組み合わせて治療を行う集学的治療もあります。どの治療法を選択するか、あるいはどの組み合わせで治療するかは、がんの種類、進行度といった、患者さん一人ひとりの病状によって変わってきます。 医師はその時点で最も適切と考えられる治療法を患者さんに提案するわけですが、ほかにもいくつかある選択肢の中から選ぶのですから、患者さんとしては「別の選択もあり得るのでは?ほかの医師の意見も聞いてみたい」と考えるのは無理もないことだと思います。 そこで、セカンドオピニオンです。セカンドオピニオンとは、言葉通り、現在診てもらっている医師とは別の医師に、第二の意見を求めることです。ほかの医師にも意見を聞きたいなどと言い出したら、主治医の機嫌を損ねることになるのではないか、と心配する患者さんもいるかもしれませんが、セカンドオピニオンは患者さんの権利として認められていますから、躊躇することなく活用すればよいと思います。 ほとんどの医師が、患者さんがセカンドオピニオンを受けたいと申し出ることを想定していると思います。他の医師への紹介状もすぐ書いてくれるでしょう。 といっても、セカンドオピニオンは必ず受けたほうがよいというわけではありません。現在診てもらっている医師と信頼関係ができていて、治療法にも納得しているならば、わざわざ受ける必要はありません。) では、どんなときにセカンドオピニオンを受けたほうがよいのでしょうか? ①選択肢を1つしか提示されないとき(医師から治療法を1つしか提示されず、ほかの選択肢を示されない場合は、セカンドオピニオンを受けることを考えたほうがよいでしょう。普通に通院できるほどの体調であれば、治療の選択肢が1つということはないはずです。治療法の選択肢を複数用意して、その中で優先順位があることを伝え、どうして優先順位があるのかについてや、各治療法の良い点、悪い点を説明して、患者に選んでもらうことが、医師のすべきことです。 特に、それが標準治療ではない臨床試験段階の治療ならばなおさら、医師は患者に対して効果と安全性、リスクをていねいに説明して、納得して治療を受けてもらうようにしなければなりません』、「医師から治療法を1つしか提示されず、ほかの選択肢を示されない場合は、セカンドオピニオンを受けることを考えたほうがよいでしょう」、その通りだ。
・『研究的な治療法には要注意  もし、「あなたにはこれがいいから、この治療法にしなさい」と、標準治療ではない研究的な治療法を主治医から勧められた場合は要注意です。その医師は自分の開発している研究的治療が、標準治療より優れていると信じて疑わないのかもしれませんが、まだ試験結果が出ていない以上、自信があっても患者に強要することはできません。 患者さんも、主治医の機嫌を損なわないようにと気遣って、希望していない治療法を選択するのはよくありません。 ②主治医が、どうしたらいいか迷っているようなとき  「あなたのがんは、この病院では治療経験に乏しい」と言われたならば、それは患者さんが少ない希少がんなのかもしれません。情報不足にならず、最適な治療を受けるために、できればあなたの患う希少がんを扱う医療機関、医師を探してセカンドオピニオンを受けてください。 しかし、患者さんにとっても医師にとっても、希少がんは最新の情報を集めることが難しいがんです。わが国で希少がんを最も多く扱っている国立がん研究センターには、希少がんセンターがあり、希少がんの患者さん、家族のための「希少がんホットライン」が設けられていますので、まず、こちらに相談するのもよいかもしれません。 希少がんでなく、肺がんや胃がんのような患者数が非常に多いがんでも、経過が特殊な場合には、その後はどのように治療したらよいか医師が迷うことがあると思います。主治医がどうしたらよいか迷っているときは、セカンドオピニオンを受けることを考えてください。 ③標準治療以外の治療法に興味があるとき(日本の病院では、通常、がんの患者さんはがんの種類、進行状態に対して決められた標準治療を受けます。標準治療とは、前述しましたが、今までで一番優れていると確認されたチャンピオンである、現時点で最良の治療法です。 標準だから平凡というわけではありません。現在の標準治療よりも効果が高いと実証された治療法が登場すれば、それが新チャンピオンとして新しい標準治療となります。) ところが、日本人の悪いクセでしょうか、「標準」というとイマイチで、もっと上のランクがあると感じてしまうのか、「標準」よりも「特別」とか「最新」と謳われた治療法を選びたがります。「特別な治療法」とか「最新の治療法」と形容されても、それが最もれた治療法であることを意味しているわけではありません。 標準治療ではない「最新の治療法」が本当にベストなのか、それを確かめるために経験のある医師の意見を聞くことは重要だと思います。そのために、セカンドオピニオンを受けるという選択肢もあるでしょう。 ただし、セカンドオピニオンで説明されたのと同じ治療法を現在通院している病院でしてくれというのは難しいことがありますから、セカンドオピニオンを受け入れる場合は転院が必要になります。通院可能な範囲にある、治療実績が多い病院でセカンドオピニオンを受けてください』、「セカンドオピニオンを受け入れる場合は転院が必要になります。通院可能な範囲にある、治療実績が多い病院でセカンドオピニオンを受けてください」、その通りなのだろう。
・『セカンドオピニオンはどこで?  どうせセカンドオピニオンを受けるなら、日本一の病院や医師に受けることをお勧めします。ハイボリュームセンターに勤務する経験豊富な医師から得られる意見は、あなたの今後の治療に必ずプラスになるはずです。 ただし、素晴らしい治療成績に感動して転院したいと思っても、週に1回程度の通院も難しいような遠方の病院への転院は現実的ではありません。あとで落胆しないように、通院が可能な範囲で、セカンドオピニオンを受ける医療機関を探してください。 どこに受けに行ったらいいのかわからないという場合は、先に触れたようにウエブサイト「がん情報サービス」→「がん診療連携拠点病院などを探す」にアクセスし、がん診療連携拠点病院などのがん相談支援センターに相談するのもよいでしょう。 セカンドオピニオンを受けたい病院が決まったら、申し込みです。その病院の窓口に連絡して、日時の予約、必要な書類などの確認をしてください。近年では、セカンドオピニオン外来を設ける病院が増えてきました。 セカンドオピニオンを受けるためには、現在の担当医に紹介状、血液検査などの記録、CTなどの画像データやフィルムを準備してもらうことが必要です。 有名な医師の場合、セカンドオピニオンの希望も多く、予約がかなり先になることがあります。病状を踏まえて、そこまでしてセカンドオピニオンを受ける意味があるのか、治療開始時期を遅らせても問題はないのか、などを主治医に確認してからセカンドオピニオンの手配をしてください。 セカンドオピニオンは公的保険が利かない自由診療ですから、病院によって費用が異なります』、「通院が可能な範囲で、セカンドオピニオンを受ける医療機関を探してください」、「セカンドオピニオンを受けるためには、現在の担当医に紹介状、血液検査などの記録、CTなどの画像データやフィルムを準備してもらうことが必要です」、「セカンドオピニオンは公的保険が利かない自由診療ですから、病院によって費用が異なります」、ただし、オピニオン自体は「自由診療」でも、治療は「公的保険」がつく。
タグ:医療問題 (その39)(フリー転身2カ月でがんに…笠井アナが見た世界 闘病生活を「セルフワイドショー」にした真意、「主治医に遠慮不要」セカンドオピニオンの受け方 どんな時に必要か「ポイント3つ」を医師が解説) 東洋経済オンライン 松永 怜氏による「フリー転身2カ月でがんに…笠井アナが見た世界 闘病生活を「セルフワイドショー」にした真意」 「自分自身について声を出すことは、セルフワイドショーとして、とても意味のあることだと思った」、「セルフワイドショー」とは言い得て妙だ。 「節分では、鬼のコスプレと金棒が送られてきて静かに部屋で豆まきをしたことも」、微笑ましい。 「テレビ東京勤務」の奥さんは、「報道取材、アナウンサー歴が長かったため、的確なアドバイスをしてくれた」、ラッキーだ。 「自分の意見を言うことはわがままではない。令和の時代、医療者側も患者の言葉を待っているという」、なるほど。 「がんになったから終わりではなく、がんになったからこうなれた。そう言える人生を歩もうと入院中に切り替えた」、賢明な「切り替え」だ。 「三男が病室にきたとき。「高校生だった三男が、卵焼きを作ってきてくれたんです。料理なんか全くしない奴だったのに。それが、いつもと違う味、懐かしい味だったんです。聞いたら、おばあちゃんに習ってきたっていうんですよ」、「高校生だった三男が、卵焼きを作ってきてくれたんです。料理なんか全くしない奴だったのに。それが、いつもと違う味、懐かしい味だったんです。聞いたら、おばあちゃんに習ってきた」、「がんになって良かった一例」だろう。 「怒りや悲しみに苛まれながらも、決して前を向くことをやめなかった。心を閉じなかった。自分にできるベストを尽くし、抗がん剤に苦しみながらも世の中に発信を続けた。 単調になりがちな入院生活も、早い段階で工夫した。患者として、一人の人間として、常に能動的に生きたのだ」、こうした「前向き」な姿勢は闘病にもプラスな筈だ。 井岡 達也氏による「「主治医に遠慮不要」セカンドオピニオンの受け方 どんな時に必要か「ポイント3つ」を医師が解説」 「医師から治療法を1つしか提示されず、ほかの選択肢を示されない場合は、セカンドオピニオンを受けることを考えたほうがよいでしょう」、その通りだ。 「セカンドオピニオンを受け入れる場合は転院が必要になります。通院可能な範囲にある、治療実績が多い病院でセカンドオピニオンを受けてください」、その通りなのだろう。 「通院が可能な範囲で、セカンドオピニオンを受ける医療機関を探してください」、「セカンドオピニオンを受けるためには、現在の担当医に紹介状、血液検査などの記録、CTなどの画像データやフィルムを準備してもらうことが必要です」、「セカンドオピニオンは公的保険が利かない自由診療ですから、病院によって費用が異なります」、ただし、オピニオン自体は「自由診療」でも、治療は「公的保険」がつく。
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コンビニ(その10)(ローソン 虎の子「成城石井」を上場検討の懐事情 成長資金確保で狙う「コンビニ3位」からの脱却、セブンイレブンで「客数10%減」の衝撃…! コンビニ「最強」から一転 いま起きている“意外すぎる現実”…!、セブンイレブンに「異変」あり…! “1億総コンビニ時代”の終焉で「コンビニから消えた人」の正体と 「コンビニ格差社会」の“意外すぎる現実”…!) [産業動向]

コンビニについては、昨年8月28日に取上げた。今日は、(その10)(ローソン 虎の子「成城石井」を上場検討の懐事情 成長資金確保で狙う「コンビニ3位」からの脱却、セブンイレブンで「客数10%減」の衝撃…! コンビニ「最強」から一転 いま起きている“意外すぎる現実”…!、セブンイレブンに「異変」あり…! “1億総コンビニ時代”の終焉で「コンビニから消えた人」の正体と 「コンビニ格差社会」の“意外すぎる現実”…!)である。

先ずは、本年5月17日付け東洋経済オンライン「ローソン、虎の子「成城石井」を上場検討の懐事情 成長資金確保で狙う「コンビニ3位」からの脱却」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/589235
・『ローソンの営業利益の4分の1を稼ぎ出す、優良子会社の成城石井。あえて今、持ち株を一部手放すのはなぜなのか。 「2000億円でも安いと個人的には考えている」。ローソンの唐沢裕之・経営戦略本部長はそう語った。 ローソンが、完全子会社の高級スーパー・成城石井の上場を検討している。一部報道によれば、上場時の時価総額は2000億円を上回る可能性がある。食品スーパー大手のライフコーポレーションでさえ、時価総額は1390億円(5月16日終値換算)。実現すれば、国内のスーパーとしては破格の規模となる。ローソンの持ち株比率をどの程度まで下げるかについても検討中という。 ローソンは2014年に総額約550億円を投じ、三菱商事系の投資ファンドである丸の内キャピタルから成城石井の全株式を取得した。その後も順調に成長を続け、関東を中心に展開する店舗数は現在、買収時の約1.7倍に当たる200店超に達する。 業績も拡大している。買収直後の2016年2月期に690億円だった営業総収入は、前2022年2月期に約1.6倍の1092億円、同じく58億円だった営業利益は約2倍の120億円に成長。直近まで4期連続の増益を達成している。 営業利益率約11%と食品スーパーでは異例の高収益体質を誇り、ローソンの直近の連結営業利益の4分の1を稼ぎ出す。今後も成長が見込める“虎の子”の持ち分を、このタイミングで一部売却する狙いは何なのか』、「2014年に総額約550億円を投じ、三菱商事系の投資ファンドである丸の内キャピタルから成城石井の全株式を取得」、「営業利益率約11%と食品スーパーでは異例の高収益体質を誇り、ローソンの直近の連結営業利益の4分の1を稼ぎ出す」、「このタイミングで一部売却する狙いは何なのか」、興味深そうだ。
・『競合も一目を置くSPAモデル  成城石井の強さの源泉は、自社のセントラルキッチンで総菜などを製造・開発するSPA(製造小売業)型のビジネスモデルだ。 飲食店で食べるような高品質の料理を自宅で楽しむことができるなど、他社では買えない独自の商品を強みにしている。外食が制限されたコロナ禍においても、調理済みの食品を家庭内で食べる中食需要をうまく取り込んだ。 成城石井は現在2カ所の総菜調理センターを関東に持つ。店舗数の拡大に伴って総菜調理のキャパシティーも限界に近づいており、今夏には3カ所目のセンターが稼働予定。最終的には総菜の生産能力を現状の2倍以上に増強するという。 【2022年5月17日12時01分追記】初出時の表記を上記のように修正いたします。 自社の製造拠点を軸に培った商品力や開発力を武器に、高級スーパーとしてのブランドを確立。競合スーパーの関係者も「成城石井のブランド認知度は非常に高い」と一目を置く) 上場を実現させたとしても、ローソンは成城石井株を相当数保有し続ける方針ではある。商品の共同開発など事業面での協業も継続するという。 上場の狙いについて、成城石井の取締役も兼任するローソンの唐沢経営戦略本部長は「成城石井が成長していくためには、西日本への出店強化や海外展開などに向けた他社との提携が必要になる。上場すれば信用の観点から海外展開が有利になったり、他社との提携がしやすくなったりする」と説明する。 また、「成城石井は成長志向が強い一方、ガバナンスなどの経営体制の整備は弱かった。ローソンの支援によって体制が整ったことで、上場を検討できる状態になった」(唐沢本部長)という』、「SPA(製造小売業)」はユニクロなど小売業のものと思っていたが、コンビニでも成立するとは初めて知った。「成城石井が成長していくためには、西日本への出店強化や海外展開などに向けた他社との提携が必要になる。上場すれば信用の観点から海外展開が有利になったり、他社との提携がしやすくなったりする」、確かに「上場」のメリットはありそうだ。
・『SPAのノウハウ吸収を狙ったが…  一方、あるコンビニ大手の幹部は「成城石井とローソンにシナジーはほとんどなかった」と指摘する。想定されたシナジーが生まれなかった結果、成城石井をローソングループ内にとどめる必要性が小さくなったことが、上場を検討している背景にあると見ているわけだ。 成城石井の買収時、ローソンが想定したシナジーの1つが、成城石井が持つSPAのノウハウを取り入れることだった。 買収を主導したローソンの玉塚元一社長(当時、現ロッテホールディングス社長)は、「(買収の狙いは)小商圏の製造小売業という本業の強化だ。成城石井は原材料調達から製造方法まで非常にこだわっている」と期待を語っていた(当時のインタビューはこちら)。 しかし、結果として思い描いたとおりのシナジーが発現したとは言い難い。両社による商品の共同開発は実現したとはいえ、ローソンがSPAのノウハウを吸収して自ら総菜製造に乗り出したわけでもない。 客層の違いなどから、高級路線の成城石井の商品をローソンで扱うハードルも高かった。地方にある一部のローソン店舗に成城石井コーナーを展開したことや、ローソンで成城石井のワインや冷凍食品などを扱っていることなど、商品展開における協業効果はかなり限定的だった。) 「ローソンは国内コンビニ事業を立て直すために、投資を集中する必要がある。そのために、成城石井に限らず非コンビニ事業の見直しを検討しているようだ」。あるコンビニ業界関係者はそう明かす。 ローソン側は「現金がどうしても必要というわけではない」(唐沢本部長)と、あくまで成城石井の資本戦略としての側面を強調するが、株式売却によって得られる巨額のキャッシュは、ローソンにとって大きな意味を持つ。 1店舗の1日当たり売上高である平均日販でローソンは現在、セブン-イレブンとファミリーマートに次ぐ業界3位の座に甘んじている。ローソンの平均日販は約50万円で、首位のセブンと15万円近い差がある。日販で長年上回っていたファミマにも、コロナまっただ中の2020年度に逆転された』、「「成城石井とローソンにシナジーはほとんどなかった」と指摘する。想定されたシナジーが生まれなかった結果、成城石井をローソングループ内にとどめる必要性が小さくなったことが、上場を検討している背景にあると見ているわけだ」、確かに「成城石井」と「ローソン」では、顧客層が違い「シナジー」はほとんどなかったようだ。
・『販促施策でセブン、ファミマに出遅れ  ローソンが反転攻勢に向けて強化を迫られるのが、従来他社に劣後してきたマーケティング関連施策への投資だ。 2022年2月期、ローソン単体で広告費用や値引きキャンペーンなどに用いた広告宣伝費は109億円だった。同期に456億円を計上したセブン-イレブン・ジャパンの2割にすぎない。ローソン関係者も「以前から、資金があればもっと広告費を投下したいとは思ってきた。広告は集客効果も高い」と、販促施策の重要性を強調する。 ファミマは2020年、日本マクドナルド復活の立役者としても知られるマーケターの足立光氏をCMO(最高マーケティング責任者)として招聘。足立CMOの下でブランド戦略の強化を推し進めている。 ローソンの竹増貞信社長は「コストを削って加盟店利益を伸ばしてきたがそれももう限界。売り上げを伸ばしていかないといけない」と語る。国内でコンビニの店舗数が飽和状態にある現状では、日販を伸ばす以外に成長曲線を描くことは難しい。 再び業界2位に浮上し、セブンの背中を捉えることはできるか。虎の子の上場で得る資金をバネに、ローソンの大きな挑戦が始まるかもしれない』、「虎の子の上場で得る資金をバネに、ローソンの大きな挑戦が始まるかもしれない」、「ローソン」の今後を注目したい。

次に、10月28日付け現代ビジネスが掲載した経営戦略コンサルタントの鈴木 貴博氏による「セブンイレブンで「客数10%減」の衝撃…! コンビニ「最強」から一転、いま起きている“意外すぎる現実”…!」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/101403?imp=0
・『セブンイレブンの「顧客数が1割減」の衝撃…!  セブンアンドアイHDの発表によれば今年上半期のセブンイレブンの既存店売上高がコロナ前を上回ったそうです。 「ようやくアフターコロナで経済が戻ってきたな」というのも正しい感想ですが、実は内情を見てみるとちょっと違うのです。 コロナ前の2019年上期と比較すれば確かに売上高は1.1%増と回復しているのですが、じつは顧客数はマイナス11.0%と1割以上減っています。 「コロナ禍に加えて円安不況でコンビニを使うことができる日本人の数は減少傾向にある」ということがこの数字から裏付けられます。 ではなぜ売上高が回復したかといえば客単価が13.5%も増えているからです。 「値上げラッシュのせいかな?」と思うかもしれませんが、消費者物価指数の伸びよりもずっと増えています。 つまりコンビニでちょっとお高めの商品が売れるようになったのです』、「売上高は1.1%増と回復」、「顧客数はマイナス11.0%」、「客単価が13.5%も増えている」、「ちょっとお高めの商品が売れるようになった」、何故だろう。
・『「コンビニ」に起きている変化  それを象徴するかのようについ先日、「節約しようとコンビニでカップヌードルを買ったら1個231円もした」という主旨のツイートが炎上しました。 中流層から見ればコンビニのカップヌードルがここまで高くなるというのは驚きだったのでしょう。 けれども、低所得層から見れば、「そんなことに今ごろ気づいたのか」というところでしょう。 後編記事『セブンイレブンに「異変」あり…! “1億総コンビニ時代”の終焉で「コンビニから消えた人」の正体と、「コンビニ格差社会」の“意外すぎる現実”…!』では、さらにそんなコンビニ業界をめぐっていま起きている“顧客の異変”についてレポートしましょう』、「後編記事」を見てみよう。

第三に、この続きを、10月28日付け現代ビジネスが掲載した経営戦略コンサルタントの鈴木 貴博氏による「セブンイレブンに「異変」あり…! “1億総コンビニ時代”の終焉で「コンビニから消えた人」の正体と、「コンビニ格差社会」の“意外すぎる現実”…!」を紹介しよう』、前編記事では、「ちょっとお高めの商品が売れるようになった」という事実だけの指摘に終わっていた。
・『コンビ二界の王者であるセブンイレブンに「異変」が起きています。 セブンアンドアイHDの発表によれば今年上半期のセブンイレブンの既存店売上高がコロナ前を上回ったそうですが、じつはそのウラで、顧客数はマイナス11.0%と1割以上減っていたのです。 いまコンビニをめぐって「お客」の姿が大きく変わってきていることを気が付いている人はどれくらいいるでしょうか。 いったいいま何が起きているのか。そして、その変化は何を意味しているのか――。その最前線をレポートします』、早く各論に進もう。
・『コンビニは「富裕層」のもの…?  リーマンショックの後、デフレ経済で低所得層が増加していく中で、「いずれコンビニを使うことができるのは中流層か富裕層だけになる」という予測がありました。 今回の数字はそれを裏付けているようにもとれる数字ですが、実態はもう少し複雑です。 アフターコロナのコンビニの売上を支えているのは3種類の違ったひとたちです。 それぞれが違う理由でコンビニを利用し、それぞれが違う日本経済への不満を感じ、それぞれが異なる購買行動をとることで全体としてコンビニを支えています』、「アフターコロナのコンビニの売上を支えているのは3種類の違ったひとたち」、具体的にはどういうことだろう。
・『1億総中流の「コンビニ」の時代は終わった…!  20世紀のように1億総中流が「便利だからちょっと高くてもちょうどいい」といってコンビニエンスストアを使う時代は終わりつつあります。 令和のコンビニ事情から垣間見られる日本経済について考えてみましょう。 では令和の現在、コンビニを利用する日本人はどのような人たちなのでしょう。典型的には次の3種類の顧客層がコンビニをよく利用する層といえそうです。 1. 惰性で利用するひとたち 2. 手に届く贅沢を楽しむ中流のひとたち 3. 買い物難民としての高齢者たち ちなみに減ってしまった1割の顧客層は経済の変化に過敏な顧客層でしょう』、「典型的には次の3種類の顧客層がコンビニをよく利用する層といえそうです。 1. 惰性で利用するひとたち 2. 手に届く贅沢を楽しむ中流のひとたち 3. 買い物難民としての高齢者たち」、なるほど。
・『コンビニから「消えた」のはこんな人たち  簡単に言えば、「ガソリン代、電気代からインスタントラーメンまでこんなに値段が上がっているのだから生活スタイルを変えなくては。コンビニよりもドラッグストアやスーパーの方が同じ商品が安く買えるのだから買う場所を変えよう」と言うような行動をとるひとです。 この行動は所得が多いか少ないかとは関係なく幅広い層で起きます。 たとえば私は経済評論家なのでついつい経済合理的な行動をとってしまう傾向があります。コンビニは仕事柄毎日のように売り場を覗くのですが、手ぶらで出てくる日が多い。一か月でコンビニで使うお金は2000円ぐらいだと思います。私は間違いなくコンビニから消えた1割の顧客層のひとりです』、「こんなに値段が上がっているのだから生活スタイルを変えなくては。コンビニよりもドラッグストアやスーパーの方が同じ商品が安く買えるのだから買う場所を変えよう」と言うような行動をとるひと」、が「コンビニから消えた1割の顧客層」、確かに「経済合理的」だ。
・『とにかくコンビニに行くひとたち  ではコンビニに残ったのはどのような層でしょう。ひとつずつ順に見ていきましょう。まず最初の「惰性で利用するひとたち」とは私の逆で、経済合理性では行動しない人たちです。 たとえば習慣としてお昼はコンビニで弁当を買う。缶コーヒーも自動販売機かコンビニで買って飲む。家に帰る前にコンビニでビールとポテトチップスを買って帰る。そんな生活を10年以上変えていないひとたちは、コロナ禍があっても、ウクライナ侵攻があってもコンビニを使う日々は変わりません。) ところでこの記事のすべての読者の皆さんに一度やってみたら面白いと思うことがあるのですが、ぜひ一か月のコンビニのレシートを取っておいて合計してみてください。 私は20代の頃にこれをやってみたところコンビニで使った金額が5万円を超えていて驚いたことがあります。当時、勤務先の近所にはコンビニがなかったのでお昼の弁当とか午後の缶コーヒー代とか抜きでこの金額でした。 このように惰性でコンビニを使う層はコンビニの収益を支えます。 さて、このような惰性でコンビニを使う層がいるから、コンビニはどんどん単価を上げても大丈夫だろうというのは素人考えです。 実はコンビニはこのような惰性層が価格の変化に敏感にならなくてもいいように商品を構成しています。 たとえば冒頭で話題にしたように日清のカップヌードルは大手コンビニの店頭で231円(税込、以下同じ)で売られていますが、同じカップ麺の棚で最安値近辺のものを探すと、セブンイレブンの場合はセブンプレミアムの醤油ヌードルを138円で買うことができます。 おにぎりの場合でも高くて美味しそうなプレミアム価格のおにぎりもたくさんありますが、相変わらず120円前後で買えるおにぎりも用意されています。 レトルトカレーも「金のビーフカレー」あたりだと473円もする商品もある中で、セブンプレミアムのボンカレーと同等品のカレーは105円とかなりお値ごろです。 スナック菓子も108円の自社開発商品が幅広い品ぞろえで置いてあるのでわざわざ高いお菓子を買う必要はありません。 結局のところ給料日前のお金が減ってきた時期でもコンビニで買うことができないという状態には絶対にならないように商品が構成されています。 一方でこの惰性層は、値段を厳密に比較したりはしない傾向があります。 250円とか400円の商品があった場合、それが相場と比較して高いのか安いのかでは判断せずに、買えるか買えないかで判断します。ですから給料日後はコンビニにとってよいお客さんになる。 こういった購買行動を想定して商品を揃えている。ここがコンビニの最初の強みです』、「給料日前のお金が減ってきた時期でもコンビニで買うことができないという状態には絶対にならないように商品が構成されています」、「こういった購買行動を想定して商品を揃えている。ここがコンビニの最初の強みです」、確かに強みではある。
・『「プレミアム」という魔法の言葉  次に、手に届く贅沢を楽しむ中流のひとたちというふたつめの客層を眺めてみましょう。 一億総中流が崩れて所得格差が広まったとはいえ、人口ベースで最大の層はあいかわらず中流層です。当然、この層はコンビニにとっても最大の利用者層なのですがこの中流の消費のキーワードが、客層のキーワードとして使った「手に届く贅沢」という言葉です。 私が最初にこの言葉を聞いたのは1990年代の初め、まだ日本にスタバが上陸する前のことでした。当時所属していたコンサルティングファームのグローバルトレーニングで、「スターバックスというコーヒーチェーンがアメリカのコーヒー業界を変え始めている」というレクチャーを受けた際に、講師が口にしたのがこの言葉でした。 要するに、それまでアメリカでは1杯50セントの薄くてまずいアメリカンコーヒーしか売られていなかったところにスタバが出現してブームになっていたのですが、その当時のアメリカのアナリストはアメリカ市場で高いコーヒーが売れるとは誰も考えてませんでした。 ところが日本よりも先に所得格差が広がったアメリカでは「手に届く贅沢」が新しい消費トレンドになり、その象徴としてスタバがケーススタディに取り上げられたというわけです。 日本でもスタバ上陸後、「100%アラビカ種のコーヒー豆を使った濃いコーヒー」を250円ぐらいの価格で買うというのが手に届く贅沢の象徴のような消費スタイルとして定着するのですが、そのトレンドをコンビニはカフェ商品としてそのまま取り込みます。 それだけではなくこのトレンドを多くの商品ラインに広げ、辛抱強く長年に亘って育て磨いてきたのが日本のコンビニといっていいと思います。 たとえばケーキのようなデザートは以前は特別な日にケーキ屋さんで買うものでしたが、現在ではコンビニで本格的なケーキ店とそん色ない品質のスイーツが売られています。 「今日は仕事、頑張っちゃったな」 そんな日に酒飲みの人がビールを買って帰るように、主に下戸のビジネスパーソンは、コンビニのプレミアムスイーツを自分のご褒美に買って帰るようになりました。 セブンイレブンのPB商品であるセブンプレミアムは、気づいていない方も多いかもしれませんがラベルの色が違う5種類のロゴの商品に分かれています。 その中でもこの層に人気なのが金色のラベルのセブンプレミアムゴールドです。私の周囲でも「金のビーフシチューは本当に大好き」とか「金の蟹トマトクリームは専門のイタリア料理店に負けない」といったファン層の声をよく聞きます』、「人口ベースで最大の層はあいかわらず中流層です。当然、この層はコンビニにとっても最大の利用者層なのですがこの中流の消費のキーワードが、客層のキーワードとして使った「手に届く贅沢」という言葉です」、「下戸のビジネスパーソンは、コンビニのプレミアムスイーツを自分のご褒美に買って帰るようになりました。 セブンイレブンのPB商品であるセブンプレミアムは、気づいていない方も多いかもしれませんがラベルの色が違う5種類のロゴの商品に分かれています」、「コンビニのプレミアムスイーツを自分のご褒美に買って帰るように」、そんな時代になったようだ。
・『「ぜいたく」の絶妙な演出  これは経済評論家としての私の観察からの経験則のようなものですが、セブンイレブンはこのような手に届く贅沢の商品について「通常の商品の1.67倍までの価格なら売れる」と判断しているように見えます。 たとえば冷凍パスタで普通のボロネーゼが279円で、金のプレミアムが430円だとか、レトルトカレーで通常のビーフカレーが289円で、金のビーフカレーが473円なのですが、それくらいの価格差は「今日は手に届く贅沢を楽しもう」と思う人にとってちょうどいい価格なのです。 重要なことはその1.67倍以内の価格でどれだけプレミアム感を出せるかなのですが、ここがコンビニの中でもセブンイレブンが非常にうまいところで、絶妙な贅沢感がある商品を開発して、それを金色のロゴに認定しています。 要するにコンビニには現在、3つの価格帯の商品が混在して売られています。 低所得層が気にせずに買うことができる安い商品(カップ麺ならPB品の127円)と、通常の価格帯の商品(例:日清カップヌードル231円)、そして手に届く贅沢品としてそれよりも高い商品(例:ラーメンの名店とコラボした特別なカップ麺、300円前後)という3種類の商品がコンビニの棚に並んでいるのです。 こうした細かい商品政策で経済性に敏感な一割の顧客層がコンビニを離れた後でも、コンビニエンスストアは客単価を上げることで売上を維持できているわけです』、「コンビニには現在、3つの価格帯の商品が混在して売られています。 低所得層が気にせずに買うことができる安い商品・・・と、通常の価格帯の商品・・・、そして手に届く贅沢品としてそれよりも高い商品という3種類の商品がコンビニの棚に並んでいるのです。 こうした細かい商品政策で経済性に敏感な一割の顧客層がコンビニを離れた後でも、コンビニエンスストアは客単価を上げることで売上を維持できているわけです」、実に巧みな「商品政策」だ。
・『買い物難民とコンビニ  さて、それとは別にもうひとつ違う軸でコンビニを利用する3番目の顧客層がいます。それが買い物難民としての高齢者たちです。 人生百年と政府がいうように、周囲の大人たちの大半は後期高齢者になってしまいました。私のまわりではみんなそこそこ元気なのはよいことですが、話を聞いてみるとやはり生活の中でも買い物が大きな課題になっているといいます。 そして皆が口をそろえて言うのが、日常生活の買い物のかなりの部分をコンビニを往復することに負っているというのです。 肉や魚、野菜などはスーパーに買いに行くのですが、一日一回、スーパーに出かけるのも一苦労なうえに、昔のように必要なものをすべて買ったら一度に持ち帰ることができない。結果として、コンビニで買えないものだけを主にスーパーで買って、残りは別の時間帯にコンビニに買い足しに行くのだといいます。 地域的な買い物難民もいます。私の実家は愛知県でも車がないと生活できない場所にあります。電車は一時間に一本しか走っていない、そんな場所です。そこに住んでいると若い人でも同じような買い物スタイルになります。 大きなスーパーは車で40分、往復1時間以上かけないと行けないのでまとまった買い物は週に1~2回しか行きません。それ以外の日常の買い物はすべてコンビニで済まします。なぜならコンビニならそのような土地でも片道10分ぐらいのところに必ず一軒はあるからです。 幸いにして買い物弱者であるそのようなひとたちから見ても、今のコンビニは安いものから高級品まで自分が必要とする価格帯の商品が揃っている。だから便利に使うことができるというわけです』、「大きなスーパーは車で40分、往復1時間以上かけないと行けないのでまとまった買い物は週に1~2回しか行きません。それ以外の日常の買い物はすべてコンビニで済まします。なぜならコンビニならそのような土地でも片道10分ぐらいのところに必ず一軒はあるからです。 幸いにして買い物弱者であるそのようなひとたちから見ても、今のコンビニは安いものから高級品まで自分が必要とする価格帯の商品が揃っている。だから便利に使うことができるというわけです」、さすが「コンビニエンス」を売り物にするだけある。
・『それぞれの階層のためのコンビニ  さて、話をまとめましょう。 アフターコロナ経済でコンビニエンスストアの業績もようやくコロナ禍前の水準に戻ってきました。ところがこの間、日本人の階層化はさらに進んだ様子です。 コンビニは商品構成を変化させることで、それらのうち3つの層をうまく取り込んで成功しています。そしてコンビニの品揃えの変化から、これら3つの異なる消費者層にとっての日本経済がとてもよくわかるという話なのでした。・・・』、「日本人の階層化はさらに進んだ様子です。 コンビニは商品構成を変化させることで、それらのうち3つの層をうまく取り込んで成功しています」、柔軟な適応能力が「成功」のカギのようだ。
タグ:コンビニ (その10)(ローソン 虎の子「成城石井」を上場検討の懐事情 成長資金確保で狙う「コンビニ3位」からの脱却、セブンイレブンで「客数10%減」の衝撃…! コンビニ「最強」から一転 いま起きている“意外すぎる現実”…!、セブンイレブンに「異変」あり…! “1億総コンビニ時代”の終焉で「コンビニから消えた人」の正体と 「コンビニ格差社会」の“意外すぎる現実”…!) 東洋経済オンライン「ローソン、虎の子「成城石井」を上場検討の懐事情 成長資金確保で狙う「コンビニ3位」からの脱却」 「2014年に総額約550億円を投じ、三菱商事系の投資ファンドである丸の内キャピタルから成城石井の全株式を取得」、「営業利益率約11%と食品スーパーでは異例の高収益体質を誇り、ローソンの直近の連結営業利益の4分の1を稼ぎ出す」、「このタイミングで一部売却する狙いは何なのか」、興味深そうだ。 「SPA(製造小売業)」はユニクロなど小売業のものと思っていたが、コンビニでも成立するとは初めて知った。「成城石井が成長していくためには、西日本への出店強化や海外展開などに向けた他社との提携が必要になる。上場すれば信用の観点から海外展開が有利になったり、他社との提携がしやすくなったりする」、確かに「上場」のメリットはありそうだ。 「「成城石井とローソンにシナジーはほとんどなかった」と指摘する。想定されたシナジーが生まれなかった結果、成城石井をローソングループ内にとどめる必要性が小さくなったことが、上場を検討している背景にあると見ているわけだ」、確かに「成城石井」と「ローソン」では、顧客層が違い「シナジー」はほとんどなかったようだ。 「虎の子の上場で得る資金をバネに、ローソンの大きな挑戦が始まるかもしれない」、「ローソン」の今後を注目したい。 現代ビジネス 鈴木 貴博氏による「セブンイレブンで「客数10%減」の衝撃…! コンビニ「最強」から一転、いま起きている“意外すぎる現実”…!」 「売上高は1.1%増と回復」、「顧客数はマイナス11.0%」、「客単価が13.5%も増えている」、「ちょっとお高めの商品が売れるようになった」、何故だろう。 「後編記事」を見てみよう。 鈴木 貴博氏による「セブンイレブンに「異変」あり…! “1億総コンビニ時代”の終焉で「コンビニから消えた人」の正体と、「コンビニ格差社会」の“意外すぎる現実”…!」 前編記事では、「ちょっとお高めの商品が売れるようになった」という事実だけの指摘に終わっていた。 早く各論に進もう。 「アフターコロナのコンビニの売上を支えているのは3種類の違ったひとたち」、具体的にはどういうことだろう。 「典型的には次の3種類の顧客層がコンビニをよく利用する層といえそうです。 1. 惰性で利用するひとたち 2. 手に届く贅沢を楽しむ中流のひとたち 3. 買い物難民としての高齢者たち」、なるほど。 「こんなに値段が上がっているのだから生活スタイルを変えなくては。コンビニよりもドラッグストアやスーパーの方が同じ商品が安く買えるのだから買う場所を変えよう」と言うような行動をとるひと」、が「コンビニから消えた1割の顧客層」、確かに「経済合理的」だ。 「給料日前のお金が減ってきた時期でもコンビニで買うことができないという状態には絶対にならないように商品が構成されています」、「こういった購買行動を想定して商品を揃えている。ここがコンビニの最初の強みです」、確かに強みではある。 「人口ベースで最大の層はあいかわらず中流層です。当然、この層はコンビニにとっても最大の利用者層なのですがこの中流の消費のキーワードが、客層のキーワードとして使った「手に届く贅沢」という言葉です」、「下戸のビジネスパーソンは、コンビニのプレミアムスイーツを自分のご褒美に買って帰るようになりました。 セブンイレブンのPB商品であるセブンプレミアムは、気づいていない方も多いかもしれませんがラベルの色が違う5種類のロゴの商品に分かれています」、「コンビニのプレミアムスイーツを自分のご褒美に買って帰るように」、そんな時代になったようだ。 「コンビニには現在、3つの価格帯の商品が混在して売られています。 低所得層が気にせずに買うことができる安い商品・・・と、通常の価格帯の商品・・・、そして手に届く贅沢品としてそれよりも高い商品という3種類の商品がコンビニの棚に並んでいるのです。 こうした細かい商品政策で経済性に敏感な一割の顧客層がコンビニを離れた後でも、コンビニエンスストアは客単価を上げることで売上を維持できているわけです」、実に巧みな「商品政策」だ。 「大きなスーパーは車で40分、往復1時間以上かけないと行けないのでまとまった買い物は週に1~2回しか行きません。それ以外の日常の買い物はすべてコンビニで済まします。なぜならコンビニならそのような土地でも片道10分ぐらいのところに必ず一軒はあるからです。 幸いにして買い物弱者であるそのようなひとたちから見ても、今のコンビニは安いものから高級品まで自分が必要とする価格帯の商品が揃っている。だから便利に使うことができるというわけです」、さすが「コンビニエンス」を売り物にするだけある。 「日本人の階層化はさらに進んだ様子です。 コンビニは商品構成を変化させることで、それらのうち3つの層をうまく取り込んで成功しています」、柔軟な適応能力が「成功」のカギのようだ。
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大阪万博(その2)(大阪万博の「闇」4題:第1回「大阪ワクチン」失敗のお騒がせ男が、「大阪万博」総合プロデューサーになっていた!、第2回「大阪万博・大阪パビリオン」プロデューサーの顧問先企業が”最高位”スポンサーに決定した「不可解」、第3回「大阪万博」が汚れた東京五輪の二の舞に…シャワーヘッド「ミラブル」を売る新興企業の正体、第4回「ホンマにやりたい放題や」…関係者も呆れる「大阪万博」の理解しがたい実態) [国内政治]

大阪万博については、2018年11月30日に取上げた。今日は、(その2)(大阪万博の「闇」4題:第1回「大阪ワクチン」失敗のお騒がせ男が、「大阪万博」総合プロデューサーになっていた!、第2回「大阪万博・大阪パビリオン」プロデューサーの顧問先企業が”最高位”スポンサーに決定した「不可解」、第3回「大阪万博」が汚れた東京五輪の二の舞に…シャワーヘッド「ミラブル」を売る新興企業の正体、第4回「ホンマにやりたい放題や」…関係者も呆れる「大阪万博」の理解しがたい実態)である。 

先ずは、10月18日付け現代ビジネスが掲載したノンフィクション作家の森 功氏による「【追及スクープ】「大阪ワクチン」失敗のお騒がせ男が、「大阪万博」総合プロデューサーになっていた! 大阪万博の「闇」第1回」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/100906?imp=0
・『「大阪ワクチン」仕掛け人がなぜか…  かつてコロナ特効薬として「嘘のようなホントの話」と紹介されたうがい消毒液があった。それに近い受け止め方をされてきたのではないか。 大阪大学発の創薬ベンチャー「アンジェス」の新型コロナウイルスワクチンのことである。 ウイルスの遺伝情報を操作する「国内初のDNAワクチン」と鳴り物入りで'20年3月から開発を始めた。 翌4月には、大阪府知事の吉村洋文が「オール大阪でバックアップしたい。9月にも実用化したい」と大きく鼻を膨らませ、アンジェスも「年内100万人にワクチンを提供したい」と大風呂敷きを広げて臨床試験に入った。 もっとも、そこから鳴かず飛ばず。昨年11月には最終段階の臨床試験を断念。さる9月、ついに開発中止の発表を余儀なくされたのである。 この国内産ワクチン開発の中心人物がアンジェスの創業者で、阪大大学院医学系研究科寄附講座教授の森下竜一(60歳)、その人である』、「吉村」「知事」が「ワクチ」に関してテレビで大はしゃぎしていたのを思い出した。
・『安倍晋三のゴルフ仲間だった  大阪の学者なので東京ではさほど知名度がないかもしれないが、政府内ではかなりの有名人だ。'12年12月の第二次安倍晋三政権の発足後、内閣官房に設置された「健康・医療戦略室」の参与を務めてきた。 同室は元首相秘書官の今井尚哉が提唱してつくられた官邸の直轄部隊で、首相補佐官の和泉洋人が初代室長に就いた。森下は安倍のゴルフ仲間で、「アベ友」の一人でもある。 その森下が創業した大学ベンチャーアンジェスは'02年9月に東証マザーズに上場し、'20年のワクチン開発の発表により株価が急騰。年初1月6日の629円からピーク時の6月には2492円の最高値を付けた。 アンジェスはワクチン開発にあたり、厚生労働省などから75億円もの巨額の補助金を受けてきた。 が、株式市場はすでにワクチン開発の頓挫を織り込み済みで現在の株価はピーク時の10分の1以下、210円前後に低迷している。株主は怒り狂い、なにより75億円の血税が無駄になってしまう』、「森下は安倍のゴルフ仲間で、「アベ友」の一人でもある、初めて知った。「アンジェス」の「株価」は現在、156円とさらに低迷。
・『「大阪ワクチン」の次は「大阪万博」  だが森下自身は意に介しない。毎日新聞の取材にもこうだ。 〈開発や治験デザインなど、実際にかかる費用からすると全然足りない。(75億円は)決して莫大な金額ではない〉(9月29日付電子版) まさかワクチンの代わりというわけではあるまい。その森下が目下、一生懸命取り組んでいるのが、大阪で開催される2025年日本国際博覧会である。 万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」だ。 医学博士の森下はライフサイエンスやアンチエイジングを提唱し、昨年2月に発足した「大阪パビリオン推進委員会」の総合プロデューサーに就任。 その設置規程の第3条はこう記す。 〈総合プロデューサーは、出展や協賛等を希望する企業等からの示される提案や意向について円滑な調整を行い、出展内容等を取りまとめる〉 〈調整〉〈取りまとめ〉という表現がややわかりづらいが、とどのつまり総合プロデューサーは、万博パビリオンに出展する協賛企業選びにおける主要な役割を担う。森下は万博成功のカギを握る最重要人物の一人と目されている』、「医学博士の森下はライフサイエンスやアンチエイジングを提唱し、昨年2月に発足した「大阪パビリオン推進委員会」の総合プロデューサーに就任」、「総合プロデューサーは、万博パビリオンに出展する協賛企業選びにおける主要な役割を担う。森下は万博成功のカギを握る最重要人物の一人と目されている」、なにやら東京五輪に似ているようだ。
・『東京五輪と同じ構図が...  ところが、その最重要人物にとんでもない醜聞が持ち上がっているのである。 万博の中核スポンサーに自ら顧問を務める会社を押し込んだのではないか、まるで東京五輪そっくりだ、という疑惑が浮上しているのだ。 くだんの企業は浄水器販売の「サイエンス」。石鹸を使わず油性マーカーの汚れまで落とすシャワーヘッド「ミラブル」のCMをしている会社だ。 パビリオン推進委員会のあるスタッフが指摘する。 「東京五輪汚職では高橋治之元組織委員会(公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会)理事が、コンサルタント料を受け取り、その見返りに顧問先企業を東京五輪のスポンサーに選んだ。 森下先生も万博のスポンサーになったサイエンスから結構な金額の顧問料をもらっているはず。森下先生のケースは東京五輪と同じ構図に見えるのです」 国際博覧会という五輪と並ぶ国家イベントで、個人的な利害関係のある会社を大阪パビリオンに出展させた。となれば、それだけでも大問題だ。 大阪パビリオンは160億円の建設予算が計上され、民間協賛企業と大阪府市が折半してそれを賄う。府と市で80億円の税投入が予定されていたが、ここへ来て建設費が膨らみ予算オーバーしそうだ』、「森下先生も万博のスポンサーになったサイエンスから結構な金額の顧問料をもらっているはず。森下先生のケースは東京五輪と同じ構図に見えるのです」、「国際博覧会という五輪と並ぶ国家イベントで、個人的な利害関係のある会社を大阪パビリオンに出展させた。となれば、それだけでも大問題だ。 大阪パビリオンは160億円の建設予算が計上され、民間協賛企業と大阪府市が折半してそれを賄う」、「東京五輪汚職」のイメージが重なる。
・『シャワーヘッドで急成長した新興企業  問題のサイエンスは'07年8月、浄水器の卸販売を主業務として大阪市に設立された。社長は水上康洋だが、会社のオーナーは会長の青山恭明である。青山はシャワーヘッドの開発、販売に目を付け、この3年ほどで会社を急成長させた。 派手なCMのおかげで、'19年3月期に21億円だった売り上げは'20年に42億円、'22年は72億円と倍々ゲームで伸ばしてきた。そこに加え、万博のスポンサー企業になったものだから、得意満面の様子だ。サイエンスのホームページでは、7月29日付のニュースリリースにこう書く。 〈「未来型人間洗濯機」の再現に向けて躍進する、サイエンス 2025年日本国際博覧会「大阪ヘルスケアパビリオン」のスーパープレミアムパートナーに決定! ~SDGs達成に向けて動くリーディングカンパニーの挑戦~〉 「人間洗濯機」は、高度経済成長期の52年前に日本中を熱狂させた大阪万博EXPO'70で展示された。三洋電機(現パナソニック)が出展し、カプセルから顔だけ出して温水シャワーで身体を洗う装置が大きな人気を呼んだものである。サイエンスは'70年の大阪万博の再現を狙っているのだそうだ。 そんなサイエンスが獲得したスーパープレミアムパートナーは、万博スポンサーの中でも最上位の協賛企業と位置付けられている。スポンサー料は最低10億円である』、「サイエンス」は、「大阪万博EXPO'70で展示された。三洋電機・・・が出展し、カプセルから顔だけ出して温水シャワーで身体を洗う装置」を「「未来型人間洗濯機」の再現」として出すようだ。
・『「企業規模」が違いすぎる  ちなみに他のプレミアムパートナーは、従業員数約7万4600人の日本生命と約6900人(連結)のロート製薬の2社で、約70人のサイエンスの企業規模とは比べようもない。 先のパビリオン推進委員会のスタッフが言う。 「サイエンスがスーパープレミアムパートナーになれたのは、まさに森下さんのおかげでしょう。多額の顧問料を払っているのだから、やってもらって当たり前という感覚かもしれません。ただ、日生やロート製薬に比べると、会社の格落ち感は否めません」 事実、売り上げこそ伸びているが、今年の利益は5億円ほどしかない。スーパープレミアムパートナー以外の協賛企業でいえば、カプコンや小林製薬、パナソニックといった大企業が並んでいる。 それらを押さえ、万博における最上位のスポンサーとなったというから、企業の箔付けに大いに役立ったのは間違いない。 第2回につづく。 巨額のマネーが動くビッグイベントでは、華やかな表舞台のウラ側に深い闇が存在する。昨年の東京五輪がまさにそうだった。そして、大阪万博でも、納得し難い不可解なスポンサー選びが行われていた。第2回『【追及スクープ】「大阪万博・大阪パビリオン」プロデューサーの顧問先企業が「最高位」スポンサーに決定した「不可解」』で引き続き紹介する』、「他のプレミアムパートナーは、従業員数約7万4600人の日本生命と約6900人(連結)のロート製薬の2社で、約70人のサイエンスの企業規模とは比べようもない」、「サイエンスがスーパープレミアムパートナーになれたのは、まさに森下さんのおかげでしょう。多額の顧問料を払っているのだから、やってもらって当たり前という感覚かもしれません」、やはり「サイエンス」の「スーパープレミアムパートナー」は不自然過ぎるようだ。

次に、この続きを、10月18日付け現代ビジネスが掲載したノンフィクション作家の森 功氏による「【追及スクープ】「大阪万博・大阪パビリオン」プロデューサーの顧問先企業が”最高位”スポンサーに決定した「不可解」 大阪万博の「闇」第2回」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/100909?imp=0
・『巨額のマネーが動くビッグイベントでは、華やかな表舞台のウラ側に深い闇が存在する。昨年の東京五輪がまさにそうだった。そして、大阪万博でも、納得し難い不可解なスポンサー選びが行われていた。『【追及スクープ】「大阪ワクチン」失敗のお騒がせ男が、「大阪万博」総合プロデューサーになっていた!』に引き続き紹介する』、興味深そうだ。
・『顧問料は月30万円  サイエンスHPによれば会社の顧問は、「総合戦略アドバイザー」の肩書を持つ医学博士の森下をはじめ弁護士や弁理士など6人いる。 同社の関係者に聞くと、顧問料は最低でも月額30万円を払っているという。 「もともと(サイエンス)青山会長と森下先生は、'18年5月のアンチエイジングフェア2018で出会っています。一般社団法人・日本抗加齢医学会の副理事長である森下先生たちと関西テレビが催し、そこにサイエンスが出展しました。 すでに大阪万博が決まりかけていた時期で、青山会長は万博に影響力のある森下先生に食い込みたかったのでしょう。すぐに顧問になってほしい、と打診しました」 サイエンス関係者によると、森下は'19年7月に顧問に就任したという。 一方、大阪府と大阪市が万博誘致のために動き始めたのが、'16年に入ってからだ。別の大阪パビリオン推進委員会のスタッフが説明する』。「すでに大阪万博が決まりかけていた時期で、青山会長は万博に影響力のある森下先生に食い込みたかったのでしょう。すぐに顧問になってほしい、と打診しました」、もともとは、「サイエンス」側の働きかけのようだ。
・『東京五輪では一大贈収賄事件に発展した  森下自身、顧問就任から現在にいたる3年3ヵ月サイエンスの経営にかかわってきた。月額30万円と少なく見積もっても、顧問料はトータル1170万円という計算になる。先のサイエンス関係者が説明を補う。 「これはあくまで定額の顧問料ですが、森下先生は他の顧問の方々とは別格。青山会長と医学雑誌で対談したり、会長をマスコミに登場させたり、サイエンスを映画のスポンサーにしたりと、かなりの面倒を見てもらっています。当然その追加報酬が払われている可能性もあります」 先の五輪汚職では、「コモンズ」なるコンサルタント会社を介入させ、元組織委員会理事の高橋が多額の顧問料やコンサルタント料を受け取ってきた。 報じられているように、公益財団法人である組織委員会の理事や職員は「令和三年東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会特別措置法」(五輪特措法)第28条により、みなし公務員と規定されている。 それゆえ一大贈収賄事件に発展。東京地検が高橋関連のスポンサー契約について立件してきた』、「顧問料」は「月額30万円と少なく見積もっても、・・・トータル1170万円」、「青山会長と医学雑誌で対談したり、会長をマスコミに登場させたり、サイエンスを映画のスポンサーにしたりと、かなりの面倒を見てもらっています。当然その追加報酬が払われている可能性もあります」、かなりの額になりそうだ。
・『五輪と万博の「類似性」  五輪と万博は、法的にも似たような建て付けに見える。 五輪と同じように万博もまた「令和七年に開催される国際博覧会の準備及び運営のために必要な特別措置に関する法律」(万博特措法)に基づき、博覧会開催のために公益社団法人「2025年日本国際博覧会協会」が置かれている。 万博特措法の第36条ではその理事や職員についてこう規程する。 〈博覧会協会の役員及び職員は、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす〉 一方、公益財団法人の五輪組織委員会や博覧会協会と異なり、大阪パビリオン推進委員会は五輪の組織委員会のように法律に規程された組織ではなく、任意団体に位置付けられている。そのため総合プロデューサーも、みなし公務員ではない。 しかし極めて公的な組織であることに変わりない。大阪府市のパビリオン推進委員会は会長が大阪府知事の吉村で、会長代行が大阪市長の松井だ。 規程の第4条には〈総合プロデューサーは委員会会長が選任する〉とある』、「総合プロデューサーも、みなし公務員ではない」、「しかし極めて公的な組織であることに変わりない」、なるほど。
・『「設置規程」違反ではないのか  また、推進委員会における総合プロデューサーの設置規程(地位乱用の禁止)第10条には、こうもある。 〈総合プロデューサーは、その地位を利用して、自らが経営する又は雇用されている企業等やその商品を宣伝してはならない〉 万博パビリオンの出展はまさしく企業宣伝にほかならない。サイエンス会長の青山は万博のスーパープレミアムパートナーになって以降、関西のテレビ番組に頻繁に出演し、しきりに自社商品を売り込んでいる。 総合プロデューサーの顧問先企業が万博パビリオンのスポンサーになること自体、設置規程違反ではないのか。 森下ならびにサイエンスに話を聞こうとすると、どちらも判で押したように多忙を理由に取材を拒否する』、「総合プロデューサーの顧問先企業が万博パビリオンのスポンサーになること自体、設置規程違反ではないのか」、確かにその通りだ。
・『実はさらに大きな抜け穴がある  だが、元東京地検特捜部副部長の若狭勝は指摘した。 「結論的に言えば、総合プロデューサーの森下氏の行為は顧問先の企業を宣伝していると評価ができるでしょう。したがって規程に反するといえます。そもそも総合プロデューサーについて規程を設けるのは、推進委員会が公的な組織だからです。 総合プロデューサーは、みなし公務員とはされていないため、今のオリンピック・パラリンピック組織委員会のような贈収賄事件には発展しないものの、社会的に批判されるべき問題がある点は同じです」 実はさらに、大きな抜け穴がある。 大阪府市は任意団体のパビリオン推進委員会には160億円も投じる資金管理を任せられない。そこで新たに7月1日、一般社団法人「2025年日本国際博覧会大阪パビリオン」を設立した。 その理事にサイエンスの青山が就任。パビリオンの資金管理まで担う立場になっている。第3回につづく』、「総合プロデューサーは、みなし公務員とはされていないため、今のオリンピック・パラリンピック組織委員会のような贈収賄事件には発展しないものの、社会的に批判されるべき問題がある点は同じです」(「若狭勝」氏)」、「「2025年日本国際博覧会大阪パビリオン」を設立」に関わる問題は次の記事で。

第三に、この続きを、10月27日付け現代ビジネスが掲載したノンフィクション作家の森 功氏による「【追及スクープ】「大阪万博」が汚れた東京五輪の二の舞に…シャワーヘッド「ミラブル」を売る新興企業の正体大阪万博の「闇」第3回」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/101344?imp=0
・『プロデューサーの顧問先である新興企業が、超大手企業と並んで大阪パビリオンの「最高位」スポンサーを務めている。疑いの目で見られても仕方なく、透明性とは程遠い。当事者は説明すべきだろう。第2回『【追及スクープ】「大阪万博・大阪パビリオン」プロデューサーの顧問先企業が”最高位”スポンサーに決定した「不可解」』に引き続き紹介する』、興味深そうだ。
・『「160億円」を動かす「一般社団法人」の設立  2025年大阪・関西万博でスポンサー選定を取り仕切ってきた大阪パビリオン推進委員会の総合プロデューサーが、協賛企業から多額の金銭を受けとってきたという。まさに五輪汚職と瓜二つというほかない。 反面、五輪組織委員会の元理事は逮捕され、万博の仕切り役はいまだその地位に居座っている。 この仕切り役が、前号で報じた大阪大学大学院医学系研究科寄附講座教授の森下竜一(60歳)である。摘発された五輪とお咎めなしの万博の違いはどこにあるのか。 あらためてそこを整理すると、組織委が五輪特措法で規程された団体なのに対し、パビリオン推進委が法的設立根拠のない任意団体だからだ。五輪組織委の理事と異なり、万博パビリオンの総合プロデューサーは公務員に準ずるみなし公務員と位置付けられていないわけだ。 だがそこに疑問がわく。大阪府市は万博パビリオンに官民合わせて160億円を投じる。うち80億円が血税である。法的規程のないそんな曖昧な立場の人間に大事な万博の予算を預けていいのか』、「組織委が五輪特措法で規程された団体なのに対し、パビリオン推進委が法的設立根拠のない任意団体だからだ。五輪組織委の理事と異なり、万博パビリオンの総合プロデューサーは公務員に準ずるみなし公務員と位置付けられていないわけだ」、しかし、「法的規程のないそんな曖昧な立場の人間に大事な万博の予算を預けていいのか」、確かに問題だ。
・『会長が理事に就任  そこを気にしたのだろうか、大阪府市はさる7月1日、新たに「2025年日本国際博覧会大阪パビリオン」なる一般社団法人を立ち上げた。 目的が〈大阪パビリオンの建設、展示、運営、資金管理等〉だ。 こちらは任意団体ではないので、「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」という法律により、団体の設立や理事、職員を規程している。 万博の一般社団法人、大阪パビリオンの代表理事には大阪市長の松井一郎が就任。法人設立にあたり、松井のほか、大阪府知事の吉村洋文とともに森下も記者に説明した。だが、理事に森下の名はない。 で、森下が顧問を務める万博スポンサーの浄水器販売「サイエンス」会長の青山恭明が理事に就任している。 大阪府市万博推進局に青山理事就任の理由を尋ねると、「パビリオン出展趣旨にご賛同いただき、最大の協賛金・寄付を頂戴している」からだという。サイエンスは万博スポンサーの中で最高位のスーパープレミアムパートナーに認定され、10億円以上の協賛をしている。 他のスーパープレミアムパートナーは日本生命とロート製薬だが、2社は社団法人の理事に入っていない。 大阪・関西万博は「いのち輝く未来社会のデザイン」を掲げ、長寿や健康をテーマにしている。むろん両社もそこに賛同している看板スポンサーだ。サイエンスは2社より大口のスポンサーなのだろうか。 というより、単に森下に成り代わって理事に就いているように受け取れる。 加えて同社は実務を担う社団法人の社員にもなっている。つまり金の出し手が160億円もの資金管理、金勘定をすることになる。そんなことがあっていいのだろうか』、「万博の一般社団法人、大阪パビリオンの代表理事には大阪市長の松井一郎が就任。法人設立にあたり、松井のほか、大阪府知事の吉村洋文とともに森下も記者に説明した。だが、理事に森下の名はない。 で、森下が顧問を務める万博スポンサーの浄水器販売「サイエンス」会長の青山恭明が理事に就任」、「単に森下に成り代わって理事に就いているように受け取れる」、「金の出し手が160億円もの資金管理、金勘定をすることになる。そんなことがあっていいのだろうか」、これは大問題だ。
・『新興企業の「過去」  サイエンスは'07年に設立された創業15年の新興企業だ。 創業者が青山で、シャワーヘッドのCMが当たって評判になった一方で、怪しげな噂も絶えない。ある大阪府警OBが説明してくれた。 サイエンスの青山はかつてディスポーザー(生ごみ処理機)を大々的に売り出して失敗しています。台所のシンクの下に備え付け、生ごみを粉砕して下水道に流す装置で、マンションデベロッパーと組んで派手な広告をうち、大々的に売り出して羽振りがよかったように見えました。 が、結局、資金繰りに行き詰まって破産。それで、債権者が計画倒産ではないか、と騒いでいた時期もありました。そうしているうちにサイエンスを立ち上げたので驚きました」 そもそもサイエンスは万博という国家プロジェクトの看板企業としてふさわしいのだろうか。 もとはといえば大阪万博は、大阪府知事だった橋下徹が大阪維新の会を旗揚げし、大阪府議だった松井一郎らとともにぶち上げた計画である。 '08年3月、橋下が上海万博の予定地を訪ねたときに思いついたとされる。その2年後の'10年5月、松井たち維新の府議団が上海万博を視察し、誘致活動をスタートさせた』、「サイエンスの青山はかつてディスポーザー(生ごみ処理機)を大々的に売り出して」、「資金繰りに行き詰まって破産」、「サイエンスは万博という国家プロジェクトの看板企業としてふさわしいのだろうか」、どう考えても不適当だ。
・『「万博」と「カジノ」の同時実現  転機は'12年12月の安倍晋三が首相に返り咲いた自民党政権の復活だ。維新の橋下・松井コンビは安倍首相、菅義偉官房長官と気脈を通じ、安倍政権と連携してきた。わけても万博とカジノIR構想は大阪の景気浮揚を謳い、経済対策の目玉となってきた。 橋下、松井の維新コンビは大阪北港の夢洲に会場を決める。それは'25年に万博とカジノ構想を同時に実現するためだった。 が、カジノ計画はずれ込み、万博が先行して開かれることになった。 一方、維新の会では'15年の住民投票により大阪都構想を断念し、橋下が政界を引退。そのあと松井・吉村の新コンビが万博の計画を引き継いだ。 大阪府知事だった松井が大阪大学医学部の先端医療をテーマに据え、'16年6月に有識者を任命して「2025年万博基本構想検討会議」を設置する。そのメンバーに加わったのが森下だ。 他の検討会議委員の一人が指摘する。 「この検討会議は大阪府知事の諮問機関として機能してきました。府の副知事や大阪市、堺市の副市長、経産省や厚労省からの出向者が会議の委員になってきた。まさに大阪府の組織として万博を検討していたのです。 その検討会議が大阪開催の決定後に解散し、任意団体のパビリオン推進委員会となった。そこから実態がより見えづらくなったのです」 検討会議が解散され、さらに見えづらくなる実態。森下氏を中心として進むスポンサー選び。サイエンスは一体なにをしようとしているのか。そして森下氏に万博を任せた吉村知事と松井市長の責任とは。第4回『「ホンマにやりたい放題や」…関係者も呆れる「大阪万博」の理解しがたい実態』で引き続き紹介する』、「2025年万博基本構想検討会議」、「大阪府の組織として万博を検討していたのです。 その検討会議が大阪開催の決定後に解散し、任意団体のパビリオン推進委員会となった。そこから実態がより見えづらくなったのです」、続きを見てみよう。

第四に、この続きを、10月27日付け現代ビジネスが掲載したノンフィクション作家の森 功氏による「「ホンマにやりたい放題や」…関係者も呆れる「大阪万博」の理解しがたい実態 大阪万博の「闇」第4回」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/101345?imp=0
・『検討会議が解散され、さらに見えづらくなる実態。森下氏を中心として進むスポンサー選び。サイエンスは一体なにをしようとしているのか。そして森下氏に万博を任せた吉村知事と松井市長の責任とは。第3回『【追及スクープ】「大阪万博」が汚れた東京五輪の二の舞に…シャワーヘッド「ミラブル」を売る新興企業の正体』に引き続き紹介する』、「シャワーヘッド・・・を売る新興企業の正体」とは興味深そうだ。
・『スーパーバイザーの怒り  '21年2月、大阪パビリオン推進委員会が立ち上がり、総合プロデューサーの森下を中心としてスポンサー選びが始まる。 組織上、総合プロデューサーの下にアドバイザーが置かれ、パビリオンのあり様について検討することになっている。大阪府立病院機構理事長の遠山正彌元阪大医学部長ら7人がスーパーバイザーに名を連ねている。 その遠山が憤る。 「われわれはあくまでアドバイザリーボードメンバーで、推進委員会の委員ではありません。大阪パビリオンは最初にREBORN(生まれ変わり)をテーマにしようと決め、僕は先端医療分野から意見を言うてきました。 森下君がそのトップいうことになっている。けど、僕らはアンチエイジングなんて反対で、それが万博の売りやとしたら、大阪の医療は全世界に恥をさらす。僕らは先端医療をやってきたつもりやから、一緒にせんといてほしい」 遠山はスポンサー選びにはタッチしないというが、協賛企業の多くはパビリオンの出展企業になる。事実、パビリオンの中核になると目されているサイエンスは「人間洗濯機」なる装置の出展を決め、各方面で宣伝している。スポンサー選びのアドバイスはしないのか。 「それは私らの役割ではなく、推進委員会そのものの仕事でしょう。だからまったく相談はありません。というより、森下君が一人で決めているのと違うやろか。 スーパープレミアムパートナーも知らんし、サイエンスも知らん。けれど、もしそこが中心になるとしたら、それこそ恥ずかしい。そうとしか、よう言いません」』、「大阪パビリオンは最初にREBORN(生まれ変わり)をテーマにしようと決め、僕は先端医療分野から意見を言うてきました。 森下君がそのトップいうことになっている。けど、僕らはアンチエイジングなんて反対で、それが万博の売りやとしたら、大阪の医療は全世界に恥をさらす。僕らは先端医療をやってきたつもりやから」、「スポンサー選び・・・まったく相談はありません。というより、森下君が一人で決めているのと違うやろか」、「スーパーバイザーに名を連ねる」「大阪府立病院機構理事長の遠山正彌元阪大医学部長」の発言は驚くべきことだ。
・『「いくらなんでも、あかんと思う」  森下はそのサイエンスから相当な金銭を受け取っているようだが、そこについて遠山に感想を求めると、諦め顔だ。 「ホンマにやりたい放題やな。(公務員でもなく職務権限がないとしても)いくらなんでもあかんと思う。 実はもともと万博パビリオンの跡地には、森下君と親しい籔本(雅巳)君ところの錦秀会グループの病院が入ることになってたんやで。例の(日大)事件でそれがダメになったんで、僕らで慌てて跡地利用の方法を考えたんです」 医療法人錦秀会元理事長である籔本は、日大医学部附属板橋病院の建て替えを巡り、2億円もの医療コンサルタント料を受け取り、背任罪に問われた。 遠山のいう日大事件とはそれを指す。籔本は阪大医学部大学院を修了しており、森下とも入魂だった。 医療をテーマにする大阪パビリオンは、'25年に万博が閉幕した後、建物をそのままクリニックとして使えるよう計画されていた。 そこで籔本は中国人富裕層のインバウンド需要を当て込み、夢洲のパビリオンをアンチエイジングクリニックとして開業する計画を立ててきたという。 結局、事件により計画は沙汰やみとなったが、森下、籔本の馴れ合いの一つに違いない』、「実はもともと万博パビリオンの跡地には、森下君と親しい籔本(雅巳)君ところの錦秀会グループの病院が入ることになってたんやで。例の(日大)事件でそれがダメになったんで、僕らで慌てて跡地利用の方法を考えたんです」、こんなところで「(日大)事件」が出てくるとは、偶然の一致にしろ驚かされた。
・『破産して即、会社設立  顧問先企業であるサイエンスをパビリオンの中核企業にしたのも然りだ。おまけに経営者の青山の評判は決してよくない。先の大阪府警OBの指摘した生ごみ処理機の販売会社は「日本ゼスト」という。 官報によれば代表の青山が'07年7月、大阪地裁第6民事部に破産を申請し、開始決定が下っている。青山がサイエンスを設立したのはその直後の'07年の8月である。 表向きサイエンス設立時の社長は水上康洋となっているが、水上は日本ゼストの元取締役総務部長だった。サイエンスは設立当時から現在にいたるまで青山が支配する会社にほかならない。 大阪府警OBが説明を加える。 「青山本人はひた隠しにしているのでしょうけど、破産によりマンション業者など債権者に対する債務を免除されています。まさに借金を棒引きしてもらう破産手続きの渦中にサイエンスを立ち上げている。だから、計画倒産といわれても仕方ない」 裁判所がサイエンスの設立を承知していたのかどうか。大阪地裁への破産申請から4年後の'11年9月、神戸地裁が青山に対し、破産決定をする。官報にはこうある。 〈破産者について免責を許可する〉 債務を帳消しにされた当人がサイエンスの会長となり、現在にいたっているのである。 サイエンスが業績を伸ばしたのは、ミラブルというシャワーヘッドのおかげだ。ウルトラファインバブルなる細かい泡が油性マーカーまで洗い落とすと謳う。毎日のようにシャワーや入浴のシーンがテレビCMで流れ、人気を呼んだ』、「破産手続きの渦中にサイエンスを立ち上げ」、「裁判所がサイエンスの設立を承知してい」「れば設立資金は「債務者」への「返済」に充当された筈だ。
・『医療的な効果は疑問  前号に書いた通りサイエンスは森下たちが企画した「アンチエイジングフェア」に出展。青山は'19年から森下を顧問に迎え入れる。 もとより目的は医療をテーマにする万博出展を睨んでのことだろう。 と同時に青山は、自慢のシャワーヘッドの医療効果を意識し始めたようだ。 青山はアトピー性皮膚炎の患者に、ウルトラファインバブルのシャワーを当てる治験計画を立てる。その手始めとして'19年9月1日から12週間のプレ治験を実施。 15名の男女にシャワーを試した。結果、まずまずの効果が出たという。が、これはあくまで社内のプレ治験であり、医療行為として公表すべきものではない。 だがサイエンスはわずか15人のプレ治験を大々的に発表する。まるで森下の開発してきた国産コロナワクチンを彷彿とさせる。 で、本治験に入ったとたん、医療的な効果が見られなかったという。ある専門医は手厳しい。 「医療用の泡はシングルナノで、彼らのファインバブルはそれの100倍以上の大きさです。サイエンティフィックには意味がなく、医療的な効果もなかったのでしょう」 案の定、サイエンスは治験を放り出してそれきり。これが大阪パビリオンの看板企業の実情である。 元東京地検特捜部副部長の若狭勝が言う。 「パビリオン推進委員会と一般社団法人2025年日本国際博覧会大阪パビリオンがどんな位置づけなのか、2つの組織を作る必要があるのか。 何らかの必要があってそうしたとしても、推進委員会の総合プロデューサーである森下氏は、関連団体の一般社団法人へさまざまな影響力を行使できるように見えてしまいます。そこにサイエンスが関わっているとなればなおさら疑いが出てくる。 仮説ですが、青山氏が公的色彩を有する社団法人の金を不正に使えば公金に係る背任罪等が問題になります。そうした状況にある公益性のある団体の理事になぜ彼をしたのか、市長や府知事には説明責任があります」 サイエンスは弁護士を通じてこう言うのみだ。 「(日本ゼストの)債務は10億円程度。(サイエンスは)ゼロから立ち上げ、'19年9月に博報堂のアンケートに応じ、大阪万博の協賛を思い付き、森下氏に相談したこともなく、森下氏が大阪万博に関与していることすら知らなかった。(アトピー治療の)治験は継続中につき答えられない」 森下と松井、吉村にも取材を申し込んだが、いずれも回答を拒否した。2025年大阪・関西万博は五輪より姑息で、汚れているかもしれない。(敬称略 了)』、「推進委員会の総合プロデューサーである森下氏は、関連団体の一般社団法人へさまざまな影響力を行使できるように見えてしまいます。そこにサイエンスが関わっているとなればなおさら疑いが出てくる。 仮説ですが、青山氏が公的色彩を有する社団法人の金を不正に使えば公金に係る背任罪等が問題になります。そうした状況にある公益性のある団体の理事になぜ彼をしたのか、市長や府知事には説明責任があります」、いかがわしい「青山氏」を「理事」にした「市長や府知事には説明責任があります」、その通りだ。
タグ:「サイエンス」は、「大阪万博EXPO'70で展示された。三洋電機・・・が出展し、カプセルから顔だけ出して温水シャワーで身体を洗う装置」を「「未来型人間洗濯機」の再現」として出すようだ。 「森下先生も万博のスポンサーになったサイエンスから結構な金額の顧問料をもらっているはず。森下先生のケースは東京五輪と同じ構図に見えるのです」、「国際博覧会という五輪と並ぶ国家イベントで、個人的な利害関係のある会社を大阪パビリオンに出展させた。となれば、それだけでも大問題だ。 大阪パビリオンは160億円の建設予算が計上され、民間協賛企業と大阪府市が折半してそれを賄う」、「東京五輪汚職」のイメージが重なる。 「医学博士の森下はライフサイエンスやアンチエイジングを提唱し、昨年2月に発足した「大阪パビリオン推進委員会」の総合プロデューサーに就任」、「総合プロデューサーは、万博パビリオンに出展する協賛企業選びにおける主要な役割を担う。森下は万博成功のカギを握る最重要人物の一人と目されている」、なにやら東京五輪に似ているようだ。 「吉村」「知事」が「ワクチ」に関してテレビで大はしゃぎしていたのを思い出した。 森 功氏による「【追及スクープ】「大阪ワクチン」失敗のお騒がせ男が、「大阪万博」総合プロデューサーになっていた! 大阪万博の「闇」第1回」 「森下は安倍のゴルフ仲間で、「アベ友」の一人でもある、初めて知った。「アンジェス」の「株価」は現在、156円とさらに低迷。 現代ビジネス 大阪万博 (その2)(大阪万博の「闇」4題:第1回「大阪ワクチン」失敗のお騒がせ男が、「大阪万博」総合プロデューサーになっていた!、第2回「大阪万博・大阪パビリオン」プロデューサーの顧問先企業が”最高位”スポンサーに決定した「不可解」、第3回「大阪万博」が汚れた東京五輪の二の舞に…シャワーヘッド「ミラブル」を売る新興企業の正体、第4回「ホンマにやりたい放題や」…関係者も呆れる「大阪万博」の理解しがたい実態) 「他のプレミアムパートナーは、従業員数約7万4600人の日本生命と約6900人(連結)のロート製薬の2社で、約70人のサイエンスの企業規模とは比べようもない」、「サイエンスがスーパープレミアムパートナーになれたのは、まさに森下さんのおかげでしょう。多額の顧問料を払っているのだから、やってもらって当たり前という感覚かもしれません」、やはり「サイエンス」の「スーパープレミアムパートナー」は不自然過ぎるようだ。 森 功氏による「【追及スクープ】「大阪万博・大阪パビリオン」プロデューサーの顧問先企業が”最高位”スポンサーに決定した「不可解」 大阪万博の「闇」第2回」 「すでに大阪万博が決まりかけていた時期で、青山会長は万博に影響力のある森下先生に食い込みたかったのでしょう。すぐに顧問になってほしい、と打診しました」、もともとは、「サイエンス」側の働きかけのようだ。 「顧問料」は「月額30万円と少なく見積もっても、・・・トータル1170万円」、「青山会長と医学雑誌で対談したり、会長をマスコミに登場させたり、サイエンスを映画のスポンサーにしたりと、かなりの面倒を見てもらっています。当然その追加報酬が払われている可能性もあります」、かなりの額になりそうだ。 「総合プロデューサーも、みなし公務員ではない」、「しかし極めて公的な組織であることに変わりない」、なるほど。 「総合プロデューサーの顧問先企業が万博パビリオンのスポンサーになること自体、設置規程違反ではないのか」、確かにその通りだ。 「総合プロデューサーは、みなし公務員とはされていないため、今のオリンピック・パラリンピック組織委員会のような贈収賄事件には発展しないものの、社会的に批判されるべき問題がある点は同じです」(「若狭勝」氏)」、「「2025年日本国際博覧会大阪パビリオン」を設立」に関わる問題は次の記事で。 森 功氏による「【追及スクープ】「大阪万博」が汚れた東京五輪の二の舞に…シャワーヘッド「ミラブル」を売る新興企業の正体大阪万博の「闇」第3回」 「組織委が五輪特措法で規程された団体なのに対し、パビリオン推進委が法的設立根拠のない任意団体だからだ。五輪組織委の理事と異なり、万博パビリオンの総合プロデューサーは公務員に準ずるみなし公務員と位置付けられていないわけだ」、しかし、「法的規程のないそんな曖昧な立場の人間に大事な万博の予算を預けていいのか」、確かに問題だ。 「万博の一般社団法人、大阪パビリオンの代表理事には大阪市長の松井一郎が就任。法人設立にあたり、松井のほか、大阪府知事の吉村洋文とともに森下も記者に説明した。だが、理事に森下の名はない。 で、森下が顧問を務める万博スポンサーの浄水器販売「サイエンス」会長の青山恭明が理事に就任」、「単に森下に成り代わって理事に就いているように受け取れる」、「金の出し手が160億円もの資金管理、金勘定をすることになる。そんなことがあっていいのだろうか」、これは大問題だ。 「サイエンスの青山はかつてディスポーザー(生ごみ処理機)を大々的に売り出して」、「資金繰りに行き詰まって破産」、「サイエンスは万博という国家プロジェクトの看板企業としてふさわしいのだろうか」、どう考えても不適当だ。 「2025年万博基本構想検討会議」、「大阪府の組織として万博を検討していたのです。 その検討会議が大阪開催の決定後に解散し、任意団体のパビリオン推進委員会となった。そこから実態がより見えづらくなったのです」、続きを見てみよう。 森 功氏による「「ホンマにやりたい放題や」…関係者も呆れる「大阪万博」の理解しがたい実態 大阪万博の「闇」第4回」 「シャワーヘッド・・・を売る新興企業の正体」とは興味深そうだ。 「大阪パビリオンは最初にREBORN(生まれ変わり)をテーマにしようと決め、僕は先端医療分野から意見を言うてきました。 森下君がそのトップいうことになっている。けど、僕らはアンチエイジングなんて反対で、それが万博の売りやとしたら、大阪の医療は全世界に恥をさらす。僕らは先端医療をやってきたつもりやから」、 「スポンサー選び・・・まったく相談はありません。というより、森下君が一人で決めているのと違うやろか」、「スーパーバイザーに名を連ねる」「大阪府立病院機構理事長の遠山正彌元阪大医学部長」の発言は驚くべきことだ。 「実はもともと万博パビリオンの跡地には、森下君と親しい籔本(雅巳)君ところの錦秀会グループの病院が入ることになってたんやで。例の(日大)事件でそれがダメになったんで、僕らで慌てて跡地利用の方法を考えたんです」、こんなところで「(日大)事件」が出てくるとは、偶然の一致にしろ驚かされた。 「破産手続きの渦中にサイエンスを立ち上げ」、「裁判所がサイエンスの設立を承知してい」「れば設立資金は「債務者」への「返済」に充当された筈だ。 「推進委員会の総合プロデューサーである森下氏は、関連団体の一般社団法人へさまざまな影響力を行使できるように見えてしまいます。そこにサイエンスが関わっているとなればなおさら疑いが出てくる。 仮説ですが、青山氏が公的色彩を有する社団法人の金を不正に使えば公金に係る背任罪等が問題になります。そうした状況にある公益性のある団体の理事になぜ彼をしたのか、市長や府知事には説明責任があります」、いかがわしい「青山氏」を「理事」にした「市長や府知事には説明責任があります」、その通りだ。
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