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日本の政治情勢(その64)(【独自】立民・国民の大惨敗を懺悔した「連合」選挙総括文書 驚きの中身、統一教会 安倍国葬 円安…この「三題噺」に象徴される日本の政治崩壊、自民党都連が「Dappi」発信元企業に400万円超支出 赤旗スクープで新たな“癒着”が発覚、12月解散・総選挙シミュレーション 旧統一教会汚染議員が大量落選 自公過半数割れも) [国内政治]

昨日に続いて、日本の政治情勢(その64)(【独自】立民・国民の大惨敗を懺悔した「連合」選挙総括文書 驚きの中身、統一教会 安倍国葬 円安…この「三題噺」に象徴される日本の政治崩壊、自民党都連が「Dappi」発信元企業に400万円超支出 赤旗スクープで新たな“癒着”が発覚、12月解散・総選挙シミュレーション 旧統一教会汚染議員が大量落選 自公過半数割れも)を取上げよう。

先ずは、9月4日付け現代ビジネス「【独自】立民・国民の大惨敗を懺悔した「連合」選挙総括文書、驚きの中身」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/99419
・『現職落選は「痛恨の極み」  7月の参院選では自民党と公明党の連立与党が圧勝した。日本維新の会が6議席増やして躍進するなかで、野党の中心である立憲民主党と国民民主党はいずれも惨敗した。 立民と国民の大きな支援組織が連合(日本労働組合総連合会)だ。連合のトップである芳野友子会長(56歳)は、参院選前に麻生太郎氏と面談するなど、自民党に「寄った」行動をとったこともあった。 この「連合」が、参議院選挙を総括した極秘文書が存在する。現代ビジネスが入手したこの文書には、《厳秘(メンバー限り)》と印が打たれている。《【推進分野―2】第26回参議院選挙の取り組みのまとめ》と名づけられたもので、8月26日付だ。 連合は参院選で、立民とは微妙な距離をとったうえで、国民に対しては積極的な支援と言える動きだった。文書の冒頭では、参議院選挙の結果について《真摯に受け止めて、取り組みのまとめ(案)を提起する》とある。 連合の候補は、比例代表で出馬した連合傘下の産業別労組(産別)の組織内候補が9人おり、選挙区では46人を推薦したが、当選者は前者が8人、後者が14人にとどまった。組織内候補が獲得した個人票は、《1,525,800票で過去最低となり、1構成組織平均の169,533票は2010年の第22回参議院選挙に次いで低い水準となった》と嘆く。 そして、比例代表で立民が7議席、国民が2議席に対して、維新が8議席となったことにも触れて《厳しい結果となった》と惨敗を認め、白旗をあげている。 とりわけ、比例代表で組織内候補の支援を最優先としたにもかかわらず、9人全員が当選できなかったことについて、《全組織が一丸となって取り組んだが、現職を落選させてしまい、痛恨の極み》としている。落選したのは、国民民主から立候補した電機連合の矢田稚子氏である。 連合幹部はこう打ち明ける。 「旧民主党時代は、党が1つなので活動に集中しやすかった。だが立民と国民に割れて、両者に溝ができてしまった。その結果、連合も立民派、国民派に分かれてしまい、組織の引き締めがしにくくなってしまった」』、「比例代表で組織内候補の支援を最優先としたにもかかわらず、9人全員が当選できなかった」、とは情けない限りだ。
・『自民党接近で迷走  そもそも、今回の選挙戦で立民・国民の溝の深さを象徴した出来事が、京都選挙区でのこと。国民の前原誠司衆議院議員は立民ではなく、維新候補を応援し、信じがたい選挙戦となってしまった。 国民は国会で連立政権の予算案に修正なしで賛成するなど、自民党と接近していた。それに歩調を合わせるように、連合の芳野会長は麻生太郎氏ら自民党幹部と会食したり、今年4月に自民党本部で開催された全世代型社会保障の実現に関する「人生100年時代戦略本部」に異例の出席を行った。 「トップが自民党に寄っていくという信じがたい動きで迷走に拍車がかかった」(前出・連合幹部) それゆえ、連合との「政策協定」は実現することなく、選挙に突入してしまった。立民と国民が2つに分かれている《難しい状況にあって、地方連合会は全力を尽くした》としながらも、総括文書では《構成組織と地方連合会のそれぞれが闘いやすい形を模索》《対外的にも十分に説明しきれていたか省みる必要がある》として、中途半端な支援による選挙戦だったことを記している』、「国民の前原誠司衆議院議員は立民ではなく、維新候補を応援し、信じがたい選挙戦となってしまった」、裏切り行為の極致だ。「連合の芳野会長は麻生太郎氏ら自民党幹部と会食」、「自民党本部で開催された全世代型社会保障の実現に関する「人生100年時代戦略本部」に異例の出席」、「連合と」「立民と国民」と「の「政策協定」は実現することなく、選挙に突入してしまった」、連合の迷走ぶりには呆れるばかりだ。
・『連合の総括文書連合の総括文書  立民と国民が2つに分かれている状況に対しては、《連合の組織力を最も発揮できるあり方は引き続き模索をしていく必要がある》と選挙の戦い方がまだ確立していないことを認めている。 昨年10月の衆院選では、野党統一候補の「一本化」が不発に終わった結果、連立政権が勝利。そのため、参院選では一本化が見送られた選挙区が多々あった。その点についてはこう記している。 《一人区での4勝28敗という数字を捉えて、「野党共闘が不十分だった」という評論も見受けられるが、一本化せずに勝ったところもあれば、一本化して敗れたところもある。また、仮に一本化していたとしても単純な票の合算では勝てなかったところが大多数である。その意味で、候補者調整による一本化は絶対条件候補者調整による一本化は絶対条件ではない》 そのうえで、こう続ける。 《「野党共闘」の名のもとに、戦術としての野党間の連携を優先して進めた結果、候補者個々では当選に結び付いたケースはあるものの、各党の党勢は上がるどころか低迷し続けているのが実態である》 連合と相いれない共産党をも含めた「一本化」には、相変わらず慎重な姿勢を打ち出しているのだ』、「連合と相いれない共産党をも含めた「一本化」には、相変わらず慎重な姿勢」、連合の相変わらずの反共ぶりにも呆れる他ない。
・『連合を覆う「統一教会」疑惑の行方  今回の総括文書を見た国民所属の国会議員はこう漏らす。 「立民と国民で割れている限り、連合もやりにくく、応援しづらいので1つになって欲しいというメッセージでしょう。トップの芳野氏が自民党に肩入れしているように見えるのは、もともとバラバラの立民・国民に対する苛立ちがあるからでしょう」 連合が二党支持という姿勢は変わらない。 《連合の「働くことを軸とする安心社会」とその実現に向けた主要政策を、現時点で一番共有しているのは立憲民主党と国民民主党であることに変わりはない。そのため、今後も両党とは政務調査会との意見交換会やトップ懇談を継続する中で、連合が求める「二大政党的体制」の一翼を担おうとする意思や、その場合の社会像や戦略等を確認しつつ、政策実現に向けて連携していくこととする》、 立民の幹部議員はこう分析する。 「一時、連合は自民党と本気で組む気かもしれないと思っていましたが、今回の総括では自民党と対峙する姿勢がハッキリしていたのでホッとしたというのが正直なところ。野党が2つに割れたままだと、総括にもあるように、党勢は低迷を続けるばかりだという気がする」 総括では、連合は700万人だから700万票を持っていると記している。だが、 「政権交代の可能性がほぼない政治動向の中で、組合員の政治への関心も薄れ、候補者の名前すら知らない、選挙に行く気もないという人が増えているのも事実」(連合幹部) 総括文書でも、《政権交代の機運が低下し続ける中にあって、与党を応援したほうがよいという組合員の意見もある》と危機感も示している。 いったいこの先、連合と政治の関係はどこへ行くのか。《内外への発信が不足していたと認識》《(連合も)期待に応えられる存在になっているかを率直に省みる》と言うが、連合は安倍元首相銃撃事件後のいま、連合は旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)との関係が取りざたされ、窮地に陥っている。 連合が研修で使用している「富士社会教育センター」が、旧統一教会と深い関係にあるのではないかとみられているためだ。同センターで理事長を務めていた松下正寿(注)7氏は、かつて旧統一教会の関連団体「世界平和教授アカデミー」で会長も務めた人物であったことから、疑惑が拡大している。 前出の国民所属の議員はこう語る。 「政権交代するには、やはり連合が中心になって野党再編するしかない。芳野さんには統一教会問題の説明責任を果たしてもらったうえで、ともに再出発したい」 連合が扇の要として動けるか、今後に注目である』、松下正寿氏は「旧統一教会と深い関係に」あったようで、「連合」も影響を受けているようだ。
(注)松下正寿:国際政治学者、立教大学元総長、世界日報論説委員

次に、9月19日付け日刊ゲンダイが掲載した同志社大学教授の浜矩子氏による「統一教会、安倍国葬、円安…この「三題噺」に象徴される日本の政治崩壊」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/311581
・『世間でいま大きな関心事となっているのが、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)と自民党との癒着、安倍元首相の死去にともなう国葬の是非、深刻な物価高をもたらしている急激な円安でしょう。この「三題噺」は日本の政策状況のとんでもなさを象徴していると思います。まさに政治崩壊。愕然としています。 「統一協会噺」は、安倍晋三氏の死去により実態があからさまになりました。彼がひとつの役割を果たしたと言えるのかはともかく、特定の宗教団体、しかも非常に危うい思想性を持っている宗教団体に、自民党が牛耳られていることが分かった。 そんな政党が政権を握っているのは、絶対に許されないはずです。自民党の憲法改正草案の文言が、統一教会の政治部門とされる国際勝共連合の改憲案と一致している実態も明らかになった。政教分離の観点からも容認し難い事実であり、政党政治の崩壊を示しています。 そしてそれは、「国葬噺」や「円安噺」と無縁ではありません。 国葬を実施するという決定がいきなり飛び出し、当たり前のように進行していることに愕然とするのはもちろんのこと、問題になっている統一教会との関係を利用して自民党議員を選挙に当選させてきたのが安倍氏です。その安倍氏を国葬とするわけで、そこに矛盾があるのに、国民の理解を得ることも、伺いを立てることすらなく、ずんずん進めてしまっている』、「自民党の憲法改正草案の文言が、統一教会の政治部門とされる国際勝共連合の改憲案と一致している実態も明らかになった」、初めて知ったが、たまたまの一致を否定する材料もない。
・『自民党は政権政党失格  そんなことをしたらどういう反発があるか、ということさえ気づかない感性になってしまっているのが自民党という政治集団だということも明確になってきました。国葬にする理由づけも、自分たちの都合や論理でしかない。しかも億単位の費用がかかり、16億円超と発表された金額はまだ膨らむ可能性がある。国民が納得できるようなものではなく、いずれも政党政治の体をなさない実態を表しています。 経済運営においても、背景に政治崩壊があるため円安がどんどん進んでいる。現象としては、世界の金融市場の潮目が変わり、各国が利上げに転じて内外金利差が拡大する中で、日本が置き去りにされ、その結果、円安になっているわけです。理由は、日銀が金融政策の担い手としての役割を果たさず、政府の言いなりになって金融の超大緩和を持続しているからですよね。ひたすら国債の利回りを上げないために動いている日銀の姿は、経済政策の機能不全を露呈し、政策責任を担える体制ではないということは明らかです。 やはり「三題噺」の底流はひとつ。政治崩壊なのです。我々はここから脱却しないと、さらにどんな変な噺が次々と加わってくるか分かりません。もはや国家的危機と言ってもいいかもしれません。 国家的危機をもたらしている自民党は政権政党失格です。政権を争う政党としての要件を欠いていると言わざるを得ません。野党には気概を見せてもらいたいし、ジャーナリズムの力でまっとうな日本を取り戻す、という雰囲気がみなぎってくれば、光が見えてくるのではないかと期待しています』、「やはり「三題噺」の底流はひとつ。政治崩壊なのです。我々はここから脱却しないと、さらにどんな変な噺が次々と加わってくるか分かりません。もはや国家的危機と言ってもいいかもしれません」、「ジャーナリズムの力でまっとうな日本を取り戻す、という雰囲気がみなぎってくれば、光が見えてくるのではないかと期待しています」、「雰囲気がみなぎってくれば・・・」は余りに楽観的見方だ。

第三に、11月18日付け日刊ゲンダイ「自民党都連が「Dappi」発信元企業に400万円超支出 赤旗スクープで新たな“癒着”が発覚」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/314679
・『自民党との癒着ぶりがまた明らかになった。 野党に対する数多くの誹謗中傷ツイートを投稿し、拡散させてきた匿名のツイッターアカウント「Dappi」の発信元であるウェブ関連会社「ワンズクエスト」(東京)に対し、自民党東京都支部連合会(自民党都連)が昨年、400万円超の支出をしていたことが分かったーーと、日本共産党の機関紙「赤旗」が18日付の紙面で報じた。 「Dappi」をめぐっては、誹謗中傷によるツイートで名誉を傷つけられたとして、立憲民主党の小西洋之、杉尾秀哉両参院議員がワンズ社を相手取り、計880万円の損害賠償などを求めて東京地裁に提訴。9月30日に6回目の口頭弁論が開かれている。 赤旗が、東京都選挙管理委員会が公表した2021年分の政治資金収支報告書を調べたところ、自民党都連は「テープ起こし」などの名目でワンズ社に対して計5件、計404万円余の支出が記されていた。 ワンズ社はこれまで、岸田文雄首相や自民党の甘利明元幹事長が代表取締役を務めていた企業と取引関係にあったことが判明しているほか、社長が「自民党本部事務総長の親戚」を名乗っていたことが報じられている。 小西、杉尾両議員の訴えに対し、ワンズ社は裁判で「投稿は従業員が私的にやったこと」とし、会社の業務としては行っていない、などと主張しているが、新たな自民党との蜜月ぶりが分かったことで、今後の裁判の行方も注目される』、「野党に対する数多くの誹謗中傷ツイートを投稿し、拡散させてきた匿名のツイッターアカウント「Dappi」の発信元であるウェブ関連会社「ワンズクエスト」」、かなり悪質な会社のようだ。「自民党都連が昨年、400万円超の支出をしていた」、「小西、杉尾両議員」は「裁判」で徹底的に追及すべきだ。

第四に、11月20日付けNEWSポストセブン「12月解散・総選挙シミュレーション 旧統一教会汚染議員が大量落選、自公過半数割れも」を紹介しよう。
https://www.news-postseven.com/archives/20221119_1814003.html?DETAIL&from=imagepage_f-1-17
・『旧統一教会問題の収束が見えないなかで、逆境に立たされる岸田政権が起死回生の機会を模索している。永田町ではまさかの解散風が吹き始めているのだ。政治ジャーナリストの藤本順一氏は、岸田文雄・首相の解散戦略をこう読む。 「今回は首相に解散を打つメリットがある。一つは、ネックとなっている旧統一教会問題を収束できること。旧統一教会の支援を受けていた議員は有権者の厳しい批判を受けて落選する可能性が高いし、それでも当選した議員は有権者の禊ぎを受けたことになる。総選挙によって自民党は旧統一教会とのしがらみを払拭した体制に生まれ変わることができる」 官邸と自民党は、“選挙向けの”バラマキ補正予算と被害者救済新法を成立させるために12月10日までの国会会期を1週間程度延長することを検討している。そうした布石を終えれば、新たな国会会期末となる12月18日前後に解散の準備が整うことになる。 では、岸田首相は解散で自民党を生まれ変わらせ、目論見通り政権の求心力を取り戻すことができるのだろうか。 今国会で衆院の定数を10増10減する新区割り法案が成立し、仮に「12・18解散」となれば変更後の区割りで総選挙が行なわれる。 そこで、選挙情勢分析の第一人者である政治ジャーナリスト・野上忠興氏の協力を得て、新区割りで議席予測をシミュレーションした』、「今回は首相に解散を打つメリットがある。一つは、ネックとなっている旧統一教会問題を収束できること。旧統一教会の支援を受けていた議員は有権者の厳しい批判を受けて落選する可能性が高いし、それでも当選した議員は有権者の禊ぎを受けたことになる。総選挙によって自民党は旧統一教会とのしがらみを払拭した体制に生まれ変わることができる」、他方で、後述のように獲得議席は激減せざるを得ないようだ。
・『楽勝選挙が落選危機に  『自民党の統一教会汚染 追跡3000日』の著者で同教団と政治家の関係を取材してきたジャーナリスト・鈴木エイト氏がこう指摘する。 「統一教会との関係を持った議員には選挙に弱い人が多い。教団の票そのものは多くないが、議員にすれば、信者は手弁当で熱心に選挙運動をしてくれるから集票マシンとして頼みになる。議員は1票でも多く欲しいから、選挙のたびに教団との関係が深まって抜けられなくなっていく。 しかし、次の選挙では統一教会からの支援がなくなるうえに、有権者の批判を浴びます。教団と関係のあった議員はとくに厳しい選挙になると考えられます」 では、選挙の専門家の野上氏の分析で汚染議員や辞任閣僚などの注目選挙区の情勢を見ていこう。) (解散総選挙 各党議席予測の表はリンク先参照) 【東京24区】萩生田光一氏(安倍派)(旧統一教会との深いつながりが指摘された萩生田光一・自民党政調会長は、前回総選挙では10万票以上の大差で当選したが、今回は苦戦を免れそうにない。 「前回は野党第一党の立憲民主党が候補者擁立を見送り、いわば萩生田氏にとって楽勝な選挙でした。しかし、今回は注目選挙区となり、立憲は“教団排除”を掲げて対立候補をぶつけるはずです。有権者の教団批判をまともに受けると予想されるうえ、頼みの公明党票の支援も期待薄ですから、前回とは一転して落選危機にあるといえます」(野上氏/以下同)) 【東京11区】下村博文氏(安倍派)(下村博文氏は文科相時代に教団の名称変更の認証(許可)に関わったと報じられ、選挙でも教団関連団体から推薦状を得ていたなど、関係がとくに深いとされる議員だ。小選挙区制導入以来9回連続当選と選挙に強いことでも知られる。 「都市部の選挙区は逆風が吹けば情勢は一変する。今回は自民党への逆風に加えて、下村氏本人も釈明に追われるでしょう。これまでと違って当選は容易ではない情勢です」) 【広島5区】寺田稔氏(岸田派)(政治資金問題で国会追及にさらされている寺田稔・総務相は、旧統一教会問題でも、教団関連団体「国際勝共連合」に会費を支払ったことが自民党の調査で明らかになっている。地元の広島5区は義理の祖父である池田勇人元首相、義理の叔父の池田行彦・元外相から3代引き継がれた固い地盤だが、今回は定数削減の影響をまともに受ける。 「定数1減の広島では5区は真っ二つに分割され、半分は4区と合併して新4区、残り半分は6区と合併して新5区となります。寺田氏がどちらから出馬するにしても、昔からの地盤は分割され、新しい有権者の審判を受けなければならないから非常に厳しい選挙になる」) 【茨城3区】葉梨康弘氏(岸田派)(法相は死刑のはんこを押したときだけニュースになる地味な役職」という発言で辞任に追い込まれた葉梨康弘・前法相も教団との接点がある。関連団体が発行する月刊誌にインタビューが掲載されていた。こちらも妻の父と祖父からの地盤を継いだ3世議員だ。 「保守王国の茨城でも3区はベッドタウン化が進んで都市住民が多い選挙区。葉梨家といえども有権者の厳しい視線を浴びる。今回は当落線上の戦いになると見ています」) 【神奈川18区】山際大志郎氏(麻生派)(閣僚辞任ドミノの先頭を切った山際大志郎・前経済再生相。教団との関係について「記憶にない」「資料が残ってない」とシラを切り続けた不誠実な言動が有権者の怒りを買った。 「はっきりいって当選は難しいでしょう」』、「萩生田光一氏」、「下村博文氏」は「落選危機」、「山際大志郎氏」は「当選は難しい」、「寺田稔氏」は「非常に厳しい選挙」、「葉梨康弘氏」は「当落線上」、これらは当然の報いだ、
・『「自公で過半数割れ」も  【神奈川13区】甘利明氏(麻生派) 「国会審議中の政策を説明するのは国会議員の義務でもあると受けた」 教団関連団体の会合で講演した経緯をそう強弁したのが甘利明・前幹事長だ。前回総選挙では政治資金問題を批判され、選挙区で敗北して比例復活。今回は雪辱を図る選挙となるはずだが、復権は簡単ではなさそうだ。 「甘利氏は父の地盤を引き継いだ2世議員だが、地盤の神奈川13区は区割り変更で3分割され、新しい有権者の審判を受けなければならない。神奈川を含む南関東ブロックは比例定数が2議席増となるとはいえ、今回は比例での復活当選も危ないかもしれません」) 【山口2区】岸信夫氏(安倍派)(安倍晋三・元首相の実弟の岸信夫・前防衛相(現・首相補佐官)は選挙で教団の支援を受けていたことを自ら認めている。祖父の岸信介・元首相、実父の安倍晋太郎・元外相以来の旧統一教会との系譜を引き継ぐ家系だ。 「山口は定数1減となるが、岸信介氏以来の地盤は健在。批判は受けても、出馬すれば当選は揺るがないと思われる」) では、選挙全体の結果はどうなるか。野上氏の総評だ。 「次の選挙で有権者の批判を受けるのは教団との接点があった議員だけにはとどまらず、自民党全体に大きな逆風が吹いている。自民党には前回総選挙で次点との差が1万票未満の接戦で当選した議員が33人、2万票未満まで含めると57人いる。小選挙区の当選ラインがそのくらいまで上がる可能性が高い。さらに前述の萩生田氏や下村氏、山際氏らのように前回大量得票した議員も今回は苦戦を免れないでしょう。 比例代表はもっと厳しい。新聞の世論調査では自民党の支持層の6割強しか岸田政権を支持していない。普通は8割前後あるので、いま選挙をやれば自民党の得票は2割くらい減ると予測しています」 さらに、10増10減の定数是正も自民党にはマイナスだという。 「定数削減される10県のうち、自民党が議席を独占している山口、岡山、愛媛、和歌山、滋賀の5県と自民が強い長崎、広島は定数削減がそのまま自民党の議席減につながる可能性が高い。代わりに定数が増える都市部の東京や神奈川、埼玉、千葉、愛知では自民党の議席増は難しい」(野上氏) 結果は表のように、自民党は193議席という大敗で自公合わせても過半数割れ、最大で80議席減もあり得るという予測となった。 岸田首相の一か八かの賭けが有権者の信を得られる可能性は低そうだ。 ※週刊ポスト2022年12月2日号) (「落選危機」「当落線上」「逃げ切り」・・・注目議員の当落予測【その1】はリンク先参照)  (「落選危機」「当落線上」「逃げ切り」・・・注目議員の当落予測【その2】はリンク先参照)』、「自民党は193議席という大敗で自公合わせても過半数割れ、最大で80議席減もあり得るという予測となった」、「岸田首相の一か八かの賭けが有権者の信を得られる可能性は低そうだ」、かくなる上は、「岸田首相」には選挙に踏み切ってほしいものだ。
タグ:日本の政治情勢 (その64)(【独自】立民・国民の大惨敗を懺悔した「連合」選挙総括文書 驚きの中身、統一教会 安倍国葬 円安…この「三題噺」に象徴される日本の政治崩壊、自民党都連が「Dappi」発信元企業に400万円超支出 赤旗スクープで新たな“癒着”が発覚、12月解散・総選挙シミュレーション 旧統一教会汚染議員が大量落選 自公過半数割れも) 現代ビジネス「【独自】立民・国民の大惨敗を懺悔した「連合」選挙総括文書、驚きの中身」 「比例代表で組織内候補の支援を最優先としたにもかかわらず、9人全員が当選できなかった」、とは情けない限りだ。 「国民の前原誠司衆議院議員は立民ではなく、維新候補を応援し、信じがたい選挙戦となってしまった」、裏切り行為の極致だ。「連合の芳野会長は麻生太郎氏ら自民党幹部と会食」、「自民党本部で開催された全世代型社会保障の実現に関する「人生100年時代戦略本部」に異例の出席」、 「連合と」「立民と国民」と「の「政策協定」は実現することなく、選挙に突入してしまった」、連合の迷走ぶりには呆れるばかりだ。 「連合と相いれない共産党をも含めた「一本化」には、相変わらず慎重な姿勢」、連合の相変わらずの反共ぶりにも呆れる他ない。 松下正寿氏は「旧統一教会と深い関係に」あったようで、「連合」も影響を受けているようだ。 (注)松下正寿:国際政治学者、立教大学元総長、世界日報論説委員 日刊ゲンダイ 浜矩子氏による「統一教会、安倍国葬、円安…この「三題噺」に象徴される日本の政治崩壊」 「自民党の憲法改正草案の文言が、統一教会の政治部門とされる国際勝共連合の改憲案と一致している実態も明らかになった」、初めて知ったが、たまたまの一致を否定する材料もない。 「やはり「三題噺」の底流はひとつ。政治崩壊なのです。我々はここから脱却しないと、さらにどんな変な噺が次々と加わってくるか分かりません。もはや国家的危機と言ってもいいかもしれません」、「ジャーナリズムの力でまっとうな日本を取り戻す、という雰囲気がみなぎってくれば、光が見えてくるのではないかと期待しています」、「雰囲気がみなぎってくれば・・・」は余りに楽観的見方だ。 日刊ゲンダイ「自民党都連が「Dappi」発信元企業に400万円超支出 赤旗スクープで新たな“癒着”が発覚」 「野党に対する数多くの誹謗中傷ツイートを投稿し、拡散させてきた匿名のツイッターアカウント「Dappi」の発信元であるウェブ関連会社「ワンズクエスト」」、かなり悪質な会社のようだ。「自民党都連が昨年、400万円超の支出をしていた」、「小西、杉尾両議員」は「裁判」で徹底的に追及すべきだ。 NEWSポストセブン「12月解散・総選挙シミュレーション 旧統一教会汚染議員が大量落選、自公過半数割れも」 「今回は首相に解散を打つメリットがある。一つは、ネックとなっている旧統一教会問題を収束できること。旧統一教会の支援を受けていた議員は有権者の厳しい批判を受けて落選する可能性が高いし、それでも当選した議員は有権者の禊ぎを受けたことになる。総選挙によって自民党は旧統一教会とのしがらみを払拭した体制に生まれ変わることができる」、他方で、後述のように獲得議席は激減せざるを得ないようだ。 「萩生田光一氏」、「下村博文氏」は「落選危機」、「山際大志郎氏」は「当選は難しい」、「寺田稔氏」は「非常に厳しい選挙」、「葉梨康弘氏」は「当落線上」、これらは当然の報いだ、 「自民党は193議席という大敗で自公合わせても過半数割れ、最大で80議席減もあり得るという予測となった」、「岸田首相の一か八かの賭けが有権者の信を得られる可能性は低そうだ」、かくなる上は、「岸田首相」には選挙に踏み切ってほしいものだ。
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日本の政治情勢(その63)(森喜朗元首相が「血まみれ」で倒れ 集中治療室へ…一体、何が起きたのか 「ポスト安倍」をめぐる内幕、【全文公開】キャバ嬢に「脱げ!脱げ!脱げ!」 安倍氏国葬責任者、森昌文・首相補佐官が過去に参加した「大仁田厚主催の乱倫パーティ」、「政権担当能力なし」と見なされ自滅…立憲の「提案型野党」が自公政権を利するだけに終わったワケ 「立憲として目指す社会像」を示せなかった) [国内政治]

日本の政治情勢については、7月24日に取上げた。今日は、(その63)(森喜朗元首相が「血まみれ」で倒れ 集中治療室へ…一体、何が起きたのか 「ポスト安倍」をめぐる内幕、【全文公開】キャバ嬢に「脱げ!脱げ!脱げ!」 安倍氏国葬責任者、森昌文・首相補佐官が過去に参加した「大仁田厚主催の乱倫パーティ」、「政権担当能力なし」と見なされ自滅…立憲の「提案型野党」が自公政権を利するだけに終わったワケ 「立憲として目指す社会像」を示せなかった)である。

先ずは、8月4日付け現代ビジネス「森喜朗元首相が「血まみれ」で倒れ、集中治療室へ…一体、何が起きたのか 「ポスト安倍」をめぐる内幕」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/98223?imp=0
・『集中治療室に運ばれた  森喜朗元首相といえば、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の前会長で、清和会(安倍派)の元会長だ。 安倍晋三元首相が凶弾に倒れた2日後の7月10日夜、血まみれになって倒れ、集中治療室へ運ばれたことがわかった。一体、何が起きたのだろうかーー。 まず、森元首相の党内におけるポジションを確認しておきたい。森元首相は'01年の首相退任後、小泉純一郎氏、安倍晋三氏、そして福田康夫氏など自派閥の政治家が次々と首相に就任したことで、彼らの後ろ盾となっていた。安倍派は、現在、97人の国会議員を擁する自民党最大派閥。安倍元首相亡き後、森元首相は実質的な最高権力者であり、言うなれば「安倍派のドン」だ。 自民党において、最大派閥の動向は、常に政局を左右している。岸田文雄首相が、安倍元首相の突き上げる政策に振り回されていたことは記憶に新しい。 政界において安倍派の次の会長になることは、有力な首相候補になるということであり、森元首相の後ろ盾が必要であるということでもある。今、安倍派では、その座を巡って、目に見えない水面下での暗闘が繰り広げられている。だが、誰が会長に就任すべきかを最終的に判断するのは、「ドン」である森元首相ではないかとされている』、「集中治療室に運ばれた」とは大変だ。
・『安倍元首相が直立して出迎えた  先述のように、森元首相は五輪組織委員会の前会長だった。オリンピック・パラリンピック運営のあらゆることは、森元首相の了解なしに進められることはなかったようだ。 都政関係者はこう語る。 「組織委員会立ち上げ当初、森元首相は政界を引退した人ぐらいの認識だった人も多かったが、あの安倍元首相が森会長(当時)を直立して出迎え、ここまでやるかと思うほど丁重に扱っていたことから、『この人、すごく偉いんだな』という認識が広まった」 五輪組織委員会のドンであり、安倍派のドンでもある森元首相は、かつて「がん」を患っていて、先は長くはないと考えていたようだ。記者会見ではこう語っている。 「私自身がね、もう駄目だと言われたガンが、新薬で助かったんですよ。本当は今頃ここにいないんですよ、ここには。2015年にお医者さんからダメだよと言われたんだ。だけどまさかと思ってた新薬で私は生かしてもらってんですよ」(2020年3月24日・五輪組織委員会記者会見)』、「もう駄目だと言われたガンが、新薬で助かったんです」、顔が異常に痩せてみえるのはそのためだろう。
・『「安倍さんのお通夜に行けなかった」  話を冒頭に戻そう。7月10日の夜、森元首相は血まみれになって倒れ、集中治療室に救急車で運ばれた。一体、何があったのか。 この日は、安倍元首相が亡くなった2日後で、参議院議員選挙の投票日だった。この大事な日に、突如として連絡がつかなくなった森元首相について、メディアや政界では色々な噂が飛び交った。 まず、「不祥事から雲隠れしているのではないか」ということだ。現在、五輪組織委員会で理事を務めていた高橋治之氏が、大会スポンサーだった紳士服の「AOKIホールディングス」側から計4500万円超を受領したとされる事件が報じられている。それへの関与等があって、捜査が森氏にも及んでいるのかという憶測だった。 次に流れた憶測は、安倍派の後継者を巡って、森元首相への関係者からの連絡が殺到し、わずらわしくなって無視を決め込んだのではないのかということだ。 結果的に、この2つの憶測は憶測のままに終わった。ここで、月刊誌『正論』(令和4年9月号)へ寄せた森元首相の自らの告白を聞こう。 「(7月10日・参院選開票日の夜に)こともあろうに私は風呂場で倒れるんだよ。初めて救急車に乗せられて病院に運ばれた。風呂場だから真っ裸で血だらけ。半分無意識で救急車に揺られたりしているときに思ったのは、これは相当やばい」 「サイレンが鳴る救急車に乗せられて搬送される途中でなんとなく気を失った。集中治療室に一晩入れられたから、翌日の安倍さんのお通夜にはいけなかった」』、「五輪組織委員会で理事を務めていた高橋治之氏」、による違法献金疑惑から逃げるにしては、大がかり過ぎる。やはり、本当に悪かったのだろう。
・『「退場」を命じられた下村氏  「このことを知った安倍派の議員たちは『森さんがもはや死ぬ気がしなくなってきた』『あと10年は死なないのでは』と話していた」(安倍派関係者)という。安倍元首相の通夜への出席はできなかったが、葬式には足を運んだ。 では、85歳で、血まみれで集中治療室に入りながらも意気揚々な安倍派のドンは、安倍元首相の後継をどう考えているのだろうか。 森元首相は「少なくとも二年か、三年のうちに、五人(松野博一、西村康稔、萩生田光一、高木毅、世耕弘成)のうちで自然に序列が決まっていく」(同誌)と名前をあげた。 この森元首相の発言は極めて大きな意味を持つが、一つ一つ解説していこう。 まず、本来ならあってもおかしくない人の名前がない。それは、派閥会長代行の下村博文氏だ。安倍元首相は、生前に自身の後継として「松野、西村、下村、萩生田」の名をあげていたが、森元首相からは首相レースからの「退場」を命じられたようだ。 森元首相は「みんなの一致していることは、下村博文だけは排除しようということ」「安倍さんは優しいから付き合っていたけど、やっと下村はいかがなものかということがわかってきた」と手厳しい』、「みんなの一致していることは、下村博文だけは排除しようということ」は当然だろう。
・『岐路に立たされた世耕氏  次に、高木氏と世耕氏の名が新たに加わったことだ。特に、国会対策委員長の高木氏は過去に『「安倍内閣」が踏んだ大型地雷! 「下着ドロボー」が「大臣閣下」にご出世で「高木毅」復興相の資質』と週刊新潮から報じられたことのある人物だ。そんなスキャンダル報道もあって、マスコミの前にはほとんど出てくることがなかった。国対委員長を務めて党務に汗をかく男として、森元首相の評価を上げたのだろう。 自民党参議院幹事長・世耕氏は、「ダークホース」(森元首相)として、存在感を高めている。参議院は、衆議院に対抗意識を燃やしていて派閥とは違うまとまりを見せる場面がある。近年そうした機会は少なくなってきたとはいえ、「衆議院で決めたことをそのまま従いたくない」という意識があるのだ。たとえば自民党参議院のドンであった青木幹雄氏は、参議院を束ねることができたために、小泉政権も含めて隠然たる権力を保持した。「最近まで経世会の参議院議員は、派閥会長である茂木敏充氏のいうことにほとんど耳を傾けなかった」(全国紙政治部記者)ことからも、それはわかる。 ただ、世耕氏は人生の岐路に立たされているようだ。このまま参議院議員を束ねられれば党内で強い権力を持つことになるが、参議院議員のままでは慣例的に首相になれないとされている。衆議院への鞍替えも模索しているが、森元首相は「参院から衆院に行く人は必ずしも成功していない」と指摘していて、「参院に留まったらどうか」と世耕氏に暗に勧めているようだ』、「世耕氏は人生の岐路に立たされているようだ。このまま参議院議員を束ねられれば党内で強い権力を持つことになるが、参議院議員のままでは慣例的に首相になれないとされている。衆議院への鞍替えも模索しているが、森元首相は「参院から衆院に行く人は必ずしも成功していない」と指摘していて、「参院に留まったらどうか」と世耕氏に暗に勧めているようだ」、なるほど。
・『ポスト安倍レースの行方  残りは、官房長官である松野氏、西村氏、萩生田氏の3人だ。この「正論」の論考を読む限り、森元首相は、西村氏と萩生田氏の2氏に注目しているようだが、「(一人一人の議員に)心服を得るようにしなければダメです」とお茶を濁している。現段階で、自分が決めるということはしないのだろう。全国紙政治部記者は、こう打ち明ける。 「5人の集団指導体制であれば派閥内は何となくまとまりますが、政権運営、党内運営について安倍派の誰に相談していいかわからないままでは交渉力を完全に失います。交渉力を失えば求心力を失い、派閥から出ていく議員もでてくるかもしれません。 安倍元首相の四十九日法要である8月25日までは、とにかく静かにしていようという話もありますから、秋にはポスト安倍レースが始まるはずです。候補は、萩生田氏と西村氏に絞られた感がありますが、争いの勝敗が決したからといってどちらかが出ていくと『最大派閥』という大看板を失うことになります。なので、今後二人は『仲良くケンカ』していくことになります」 安倍派のドン・森元首相が登場するのは最終盤であろうか。過去を振り返れば、2012年の自民党総裁選挙では、清和会から町村信孝氏と安倍元首相の二人が候補を出した。いくら安倍派のドンといえども、分裂は避けられないときもありそうだ。萩生田氏、西村氏の今後に注目が集まる』、さてどう決着がつくのだろうか。

次に、8月19日付けNEWSポストセブン「【全文公開】キャバ嬢に「脱げ!脱げ!脱げ!」 安倍氏国葬責任者、森昌文・首相補佐官が過去に参加した「大仁田厚主催の乱倫パーティ」」を紹介しよう。
https://www.news-postseven.com/archives/20220819_1785293.html?DETAIL
・『全国で乱交パーティの摘発が相次ぐなか、内閣の中枢である「首相補佐官」が過去、乱倫パーティに参加していたことが分かった。参加女性の証言で、当夜の様子が明らかになった。 「このご時世にあの人を登用して大丈夫なのか」──国交省のあるキャリア官僚がこう声を潜める。 俎上に載るのは、8月10日に発表された岸田政権の内閣改造で、首相補佐官の続投が決まった森昌文氏(63)のことである。 森氏は東大工学部出身のキャリア官僚で、1981年に建設省(現・国交省)に入省以来、道路畑を歩んできた。2018年に事務方のトップである事務次官に昇格。今年1月に岸田政権下で首相補佐官に任命され、9月27日に行なわれる安倍晋三元首相の国葬の実行幹事会首席幹事も務める。 だが永田町では森氏の任命を巡り、身体検査に疑問の声が上がる。 2007年6月、本誌・週刊ポストはプロレスラーで当時参議院議員だった大仁田厚氏主催の「性の乱痴気パーティ」を報じた。大仁田氏が住む都内高級マンションに集まったのは、複数のAV女優と19歳のキャバクラ嬢、20代のコンパニオンなど美女7人。男性は大仁田氏を含む3人で、そのうちひとりが森氏だったのだ(当時は匿名の国交省役人として報道)。 パーティに参加した女性が証言する。 「当時の大仁田さんのマンションは4LDKで、リビングは30畳くらい。広々としたテラスと庭もありました。リゾート気分に浸って、まず全員ビールで乾杯。大仁田さんは2人の男性を『どちらも東大卒の国交省キャリア』と紹介しました。森さんは小柄で人の良さそうな印象。『携帯番号教えて』って言われたので、連絡先も交換しました」 当初は合コンに近い雰囲気だったが、女性3人が先に帰宅すると「雰囲気が怪しくなってきた」と参加女性が続ける。 「大仁田さんがAV女優に『俺の部屋使ってもいいから2人を遊ばせてやってよ』と囁いたんです。するとそのAV女優は森さんともうひとりの男性にそれぞれ女性をあてがって、『さあ、さあ行ってらっしゃい』って。各々が個室に消えていき、20分くらいでリビングに戻ってきました」 その後、森氏はソファで女性の腰に手を回すなど距離が縮まった。 「ここからタガが外れた感じになりました。まずAV女優のひとりが全裸になって、ベリーダンスを踊り出したんです。で、次に男性陣がキャバ嬢の裸が見たいと言い出して。男性3人で『脱げ! 脱げ! 脱げ!』と手拍子であおり立てた。『上だけだったら』と恥ずかしそうにキャミソールを下げて乳首を見せると、『キレイだ!』『若い子の体っていいね』と歓声を上げていました」(同前) 深夜1時にお開きになると、森氏ともうひとりのキャリア官僚は部屋を共にした2人の女性と連れ立って夜の街に消えた。 この一件を報じた本誌の発売2日前に大仁田氏は会見し、「次の参院選には出ない」と突如政界引退を発表。 「第一次安倍政権の運営方針への不満を理由としましたが、パーティ報道に対して事前に手を打ったと見る向きもあった」(全国紙記者)』、「首相補佐官」、「安倍晋三元首相の国葬の実行幹事会首席幹事」、が「乱倫パーティ」に出席した「東大卒の国交省キャリア」とは、しまらない話だ。
・『「暑い時は脱ぐじゃない」  みだらなパーティといえば、昨今、警察による摘発が相次いでいる。 今年5月には東京・渋谷の巨大ハプニングバー『眠れる森の美女』が摘発され、6月には静岡県の浜名湖で120人が参加した乱交パーティで主催者が公然わいせつ幇助の容疑で逮捕。8月には、17歳の女子高生が参加した乱交パーティをめぐり、男性医師が児童福祉法違反と児童買春・ポルノ禁止法違反の疑いで逮捕された。 風紀の乱れへの取り締まりが厳しくなるなか、このタイミングで首相補佐官続投の任を受けた森氏に話を聞いた(Qは聞き手の質問、Aは森氏の回答)。 Q:2007年のパーティに参加した経緯は? A:「いや、参加はしましたけど、乱痴気な会合ではないですよ。記事はウソ」 Q:参加女性が全裸になっていますが。 A:「例えばですよ、暑い時にカーディガンを脱ぐじゃないですか。なぜ女性が脱いだのか、私が解釈することじゃない」 Q:この一件は岸田首相も知っている? A:「伝えてないよ。なんで私が伝えなきゃいけないの。参加女性の証言はウソばかりですから」 Q:当時、大仁田氏が政界引退宣言をしたことについては? A:「あの記事で彼は有名になったんだから、何がマイナスなの。結局は芸能人。私は大迷惑でしたがね。とにかく、もうこの件について話すことはない」 そうまくし立てた。 パーティを主催した大仁田氏にも話を聞くと、「パーティの件は記憶が曖昧なうえ森氏とは面識が浅く人物像も分かりかねます」との回答だった。 官僚に詳しいジャーナリストの小泉深氏が語る。 「首相補佐官の仕事は、内閣の政策の企画や立案について首相を補佐すること。国家運営に携わる重要な立場にあります。給与は年間約2400万円で、その出所は税金です。自分の言動について人一倍高いモラルが求められる。過去のこととはいえ、森氏は改めて襟を正す必要はあるでしょう」 こんな首席幹事が催す「国葬」に税金がつぎ込まれていいのだろうか。 ※週刊ポスト2022年9月2日号)』、済んだこととはいえ、「国葬」を「こんな首席幹事が催」していたとは世も末だ。

第三に、8月22日付けPRESIDENT Onlineが掲載したジャーナリストの尾中 香尚里氏による「「政権担当能力なし」と見なされ自滅…立憲の「提案型野党」が自公政権を利するだけに終わったワケ 「立憲として目指す社会像」を示せなかった」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/60760
・『7月の参院選で、立憲民主党は議席を減らし、敗北を喫した。その原因はどこにあったのか。ジャーナリストの尾中香尚里さんは「世間の批判にあおられて『提案型野党』に無理に舵を切り、与党との違いが不明瞭になった。批判を通じて与党との違いを明確に示すのが野党の役割のはずだ」という――』、『提案型野党』には私もかねて疑問を抱いていたので、興味深そうだ。
・『立憲の執行部刷新が関心を引かないのは良いこと  7月の参院選で敗北を喫した立憲民主党。続投を表明した泉健太代表は、10日に出された参院選の総括を踏まえ、近く新執行部の人事を行う見通しだが、ほとんど世論の関心を引いていない。 良いことだ、と筆者は思う。民主党の政権転落以降のこの10年、大きな選挙で負けるたびに「解党的出直し」と騒ぎ立てては、外野の声に振り回されて代表選や執行部人事に明け暮れ、党内の「バラバラ感」を露呈して国民の信頼を失うという「野党お決まりの姿」にうんざりしてきた者としては、良い意味で動揺の少ない党の現状が、むしろ清々しい。 だからと言って立憲にとって、参院選が大きな敗北だったことに論評の余地はない。良くも悪くも永田町が静かな今のうちに、筆者としても立憲の参院選を総括しておきたい』、「立憲の参院選を総括」は大きな意義がある。
・『「提案型野党」は国民民主党が既に失敗している  参院選における立憲の最大の敗因は「昨秋の衆院選の評価を誤った」ことだと、筆者は考えている。「決して負けてはいなかった」選挙結果を「惨敗」と思い込んだ立憲は、あふれるほどの「野党は批判ばかり」批判にあおられ「提案型野党」という無用の路線見直しにひた走った。 しかし「提案型野党」は、立憲への合流を拒んだ国民民主党が打ち出し、すでに失敗が見えている路線だ。 「提案型野党」というと何か新しい概念のように聞こえるが、要は20年以上も前から「是々非々」路線と呼ばれてきたものだ。二大政党のどちらにもくみしない「第三極」政党が、何度となくこの言葉を掲げて誕生しては、やがて「与党寄りか野党寄りか」で党内対立を起こして分裂し、消えていった。国民民主党自身、3年前の前回参院選のころは立憲と野党第1党を争う存在だったのに、気が付けば泉代表を含む多くの議員が立憲に流れ、今や党単体で野党の中核となるのはほぼ不可能になっている。 「提案型野党」にせよ「是々非々」路線にせよ、参院選で6議席を獲得する程度の支持なら得られるかもしれないが、衆院で二大政治勢力を志向する小選挙区制を導入している日本で、その旗印を掲げて政権を争う政党になるのは、どだい無理な話である。 そんな先細りの路線に「色目を使った」ことによって、立憲はコアな支持者の信頼を低下させたばかりか、自公政権に対峙たいじできる野党を求めた非自民系無党派層の大量離反も招いた。 立憲は衆院選の総括を誤った結果、参院選で「本当に負けてしまった」のだ』、「「提案型野党」にせよ「是々非々」路線にせよ、参院選で6議席を獲得する程度の支持なら得られるかもしれないが、衆院で二大政治勢力を志向する小選挙区制を導入している日本で、その旗印を掲げて政権を争う政党になるのは、どだい無理な話である」、その通りだ。
・『立憲は野党の中で「頭一つ抜け出した存在」と言えたはずだった  改めて昨秋の衆院選から総括してみたい。 立憲は「公示前議席を減らした」というが、同党が前回の2017年衆院選で獲得したのは、わずか55議席。野党第1党としては戦後最少の議席数だった。そこから同党は、選挙を経ずに国民民主党の大部分や社民党の一部の合流を経て所属議員を増やし、昨秋の衆院選の公示前には自らの基礎体力以上に議員数が膨らんでいた。それが選挙を経たことで、地力に欠ける党の基礎体力並みの議席数に落ち着いただけのことだ。 一方の日本維新の会について、メディアは「大躍進」というが、同党が2017年の衆院選で獲得したのは、わずか11議席。この選挙は小池百合子東京都知事率いる「希望の党」が存在していた特殊事情があり、維新は党の基礎体力を大きく下回る惨敗を喫していた。昨年の衆院選では、希望の党の消滅で従来の維新支持層が回帰し、元の勢力を取り戻したに過ぎない。 公示前議席を減らしたとは言え、立憲の野党第1党としての力は、衆院の議席という「リアルパワー」の面では、民主党が下野した2012年以降で最も強いものとなっていた。 立憲が2021年の衆院選で獲得した96議席は、民主党の下野後の野党第1党の獲得議席としては最も多い。また、野党第2党の日本維新の会は衆院選で議席を伸ばしたが、野党第1党の立憲と、第2党の維新との議席差(55議席)は、民主党下野後の選挙では最も大きい。 昨年の衆院選は「多弱」と言われた野党の中で立憲が頭一つ抜け出し、野党の中核として定着し始めたとの評価が可能な結果だった』、「立憲」「が前回の2017年衆院選で獲得したのは、わずか55議席。野党第1党としては戦後最少の議席数だった。そこから同党は、選挙を経ずに国民民主党の大部分や社民党の一部の合流を経て所属議員を増やし、昨秋の衆院選の公示前には自らの基礎体力以上に議員数が膨らんでいた。それが選挙を経たことで、地力に欠ける党の基礎体力並みの議席数に落ち着いただけのことだ」、「立憲が2021年の衆院選で獲得した96議席は、民主党の下野後の野党第1党の獲得議席としては最も多い」、「昨年の衆院選は「多弱」と言われた野党の中で立憲が頭一つ抜け出し、野党の中核として定着し始めたとの評価が可能な結果だった」、なるほど。
・『泉執行部の経験の浅さが招いた失敗  それでもメディアは、公示前議席との比較という1点に着目して「立憲惨敗、維新躍進」という印象を演出し続け、「敗因」の十分な分析もないまま「批判や抵抗ばかりの姿勢」「共産党との『共闘』」に容赦ない批判を立憲に浴びせ続けた。発足したばかりの泉執行部は、こうした批判に対抗するには経験が浅過ぎた。自ら選挙結果を冷静に分析する前に、必要以上に「惨敗」に振って評価してしまい、それが彼らの党改革を「提案型野党」という間違った方向に向かわせてしまった』、「発足したばかりの泉執行部は、こうした批判に対抗するには経験が浅過ぎた。自ら選挙結果を冷静に分析する前に、必要以上に「惨敗」に振って評価してしまい、それが彼らの党改革を「提案型野党」という間違った方向に向かわせてしまった」、お粗末極まりない。
・『「批判」か「提案」かは二者択一ではない  「提案型野党」がなぜ間違っているかというと、その言葉自体に「提案型なのだから批判を前面に出してはならない」という圧力があるからだ。野党の役割は「批判も提案も」が当然であり、二者択一を迫る必要は全くない。それなのに、野党批判勢力が「批判か提案か」の選択を迫るのは、野党の役割を一部に限定させ、結果として弱体化させる狙いがあるからだ。泉執行部はそれを見抜けなかった。 最大の失敗は、野党合同ヒアリングをなくしたことだろう。「提案型なのだから批判しているように見えるのは良くない」という、野党にあるまじき考えに陥ってしまった。共産党との選挙協力に当初消極的だったのも、連合への配慮というより「批判勢力に見られたくない」という意識があったとみられる。 こうして立憲は、衆院選以前に野党の存在感を高め、各種地方選挙などで野党勢力を勝利させ、衆院選直前に菅義偉首相の退陣という成果を生んできた最大の「武器」を、わざわざ放棄した。立憲は、国会での存在感をみるみる失っていった。参院選の敗北は火を見るより明らかだった。 「国会での存在感のなさ」という意味では、立憲と野党第1党の座を争う維新も、実は似たようなものである(その最大の原因は岸田政権の国会軽視にあることは言うまでもないが)。しかし、党幹部が大阪府知事や大阪市長の立場でメディアに露出する分、少なくとも有権者には維新の存在感の方が際立った。それが既成政党に飽き足らない層の「ふわっとした民意」に影響し、両党の比例票の得票差につながったことは否定できない。 「提案型野党」の失敗は、「提案型」それ自体にあるのではない。「提案型」を意識し過ぎて「批判」という野党固有の使命を忘れ、自公政権に居心地のいい国会を作ってしまったことにあるのだ』、「「提案型野党」の失敗は、「提案型」それ自体にあるのではない。「提案型」を意識し過ぎて「批判」という野党固有の使命を忘れ、自公政権に居心地のいい国会を作ってしまったことにあるのだ」、その通りなのだろう。
・『立憲が提案すべきなのは政府案への「修正案」ではない  「提案型野党」については、もう一つ指摘しておきたいことがある。そもそも「提案型とは何を意味するのか」ということについて、大きな事実誤認があるということだ。 野党批判勢力が求めてきた「提案型野党」とは、政府が提案する個別の法案への「対案」「修正案」を提示する野党、ということだ。「提案の一部でも政府が取り入れたら、野党も賛成に回れ」という無言の圧力がそこにある。) もちろん、日々の国会活動において「政府案をより良い方向に修正する」ための活動が日常的に存在すべきなのは言うまでもない。しかし、政権の選択肢となる野党第1党が行うべき「提案」とは、そういうものではない。立憲が現在の自公政権に取って代わり、自らの政権を樹立した時に「自公政権とは違うどんな社会像を描き、その実現に向けてどんな政策を用意するのか」を、パッケージで見せることだ』、「政権の選択肢となる野党第1党が行うべき「提案」とは、そういうものではない。立憲が現在の自公政権に取って代わり、自らの政権を樹立した時に「自公政権とは違うどんな社会像を描き、その実現に向けてどんな政策を用意するのか」を、パッケージで見せることだ」、その通りなのだろう。
・『立憲のキャッチフレーズが見せた自公政権との違い  実際に立憲が使った二つのキャッチフレーズを使って説明したい。 参院選で筆者が気に入っていたフレーズは「生活安全保障」だった。「安全保障」について日本人が思い描く概念を変える力がある言葉だと思ったからだ。 安全保障と言えば軍事面のこと。私たちは冷戦時代からそのようにすり込まれてきた。そのことは、防衛力の増強に慎重な野党勢力に「政権担当能力なし」というレッテルを貼ることにも、都合良く使われてきた。国際政治の現場には「人間の安全保障」という言葉が普通に使われているのに、国内の政治を語る時には、意図的に無視されているかのようだった。 ロシアによるウクライナ侵攻という非常事態を前に、実際に自公政権の側から、防衛費の増額など「軍事面」からの安全保障論が盛んに聞こえてきた。維新からは「核共有」「非核三原則の見直し」などといったことまで提示されていた。 しかし、非常事態に国民の生命と暮らしを守るためにまず考えるべきことが、常に軍事力であることは、本当に正しいのだろうか。戦闘のあおりで食糧やエネルギーの輸入価格が高騰したり、輸入自体が難しくなったりしたら、軍事力以前に国が持たなくなるのではないか』、「非常事態に国民の生命と暮らしを守るためにまず考えるべきことが、常に軍事力であることは、本当に正しいのだろうか。戦闘のあおりで食糧やエネルギーの輸入価格が高騰したり、輸入自体が難しくなったりしたら、軍事力以前に国が持たなくなるのではないか」、確かに多角的な対応が必要なようだ。
・『同じ提案でも「国の進むべき道の選択肢」を提案すべき  安全保障とは軍事的なものだけを指すのではない。この非常事態に立憲民主党は「食糧安全保障」「エネルギー安全保障」をより重視した上で、今なすべき具体策を示す――。野党第1党にはそういう「提案」を求めたい。自公政権とは違う「国の進むべき道の選択肢」を提示するのが、本来の「提案型野党」の姿ではないだろうか。 ちなみに前述の「生活安全保障」だが、そのキャッチフレーズの下にぶら下がった3本柱が、①物価高と戦う、②教育の無償化、③着実な安全保障――となっており、筆者は少々落胆した。もちろん、個別には大切な政策の柱だろうが、これではこのキャッチフレーズを「軍事的安全保障を重視する自公政権に対する選択肢」という形で位置づけることはできない。 野党第1党なら、常に「政権と対峙し選択肢を示す」形で、重要政策の選定から広報までを一貫して考えてほしい』、「この非常事態に立憲民主党は「食糧安全保障」「エネルギー安全保障」をより重視した上で、今なすべき具体策を示す――。野党第1党にはそういう「提案」を求めたい」、「野党第1党なら、常に「政権と対峙し選択肢を示す」形で、重要政策の選定から広報までを一貫して考えてほしい」、同感である。
・『「もっと良い未来」には方向性がない  もう一つ筆者を落胆させたフレーズに「もっと良い未来」がある。 選挙で政権を奪取し、現政権より「もっと良い未来」を目指すのは、野党第1党にとって当然だ。だが、この言葉には方向性がない。自公政権が作ってきた弱肉強食の自己責任社会を転換するのかしないのか、それがはっきりしない。同じ方向性のまま「どちらがうまく政策を実現できるか」を競っているかのように聞こえてしまう。政権交代前の民主党で2005年、前原誠司代表(現国民民主党)が当時の小泉政権に「改革競争」を挑んだ、あの時と同じテイストさえ感じさせる。 そんな意図はなかったのかもしれないが、言葉選びには慎重に気を配ってほしい。 かつて自民党の安倍政権は「この道しかない」と繰り返し説いた。これに対し「本当にこの道しかないのか」「別の道があるのではないのか」を政権に突きつけ続けるのが、野党第1党の役割だ。この「別の道」こそが、野党第1党が行うべき「提案」なのである』、「「本当にこの道しかないのか」「別の道があるのではないのか」を政権に突きつけ続けるのが、野党第1党の役割だ。この「別の道」こそが、野党第1党が行うべき「提案」なのである」、その通りだ。
・『高い授業料を払って「提案型野党」の誤りに気付いた  立憲が公表した参院選総括には、衆院選の総括を誤り「提案型野党」を標榜したことへの一定の反省がみられた。野党合同ヒアリングも、参院選後の8月になって旧統一教会問題をテーマに復活。ようやく野党の活動が少しずつ目に触れるようになってきた。 衆院選から半年余りという早い段階で、自らの誤りに気づけたのなら、不幸中の幸いというものだ。「高い授業料だったが早いうちに負けておいて良かった」と言ってもいいのかもしれない。 しかし「なぜ『提案型野党』が間違いなのか」を十分に掘り下げておかなければ、いつか再び「野党は批判ばかり」批判を浴びせられた時に、また持ちこたえられなくなってしまう。 だから繰り返す。「提案型」という言葉に惑わされ、批判を忘れてはいけない。政府の問題点をしっかりと提示し、批判すべき点は批判して、世論を味方に引きつけてほしい。 そもそも、政権の政策や政治姿勢を批判し、自らのそれと何が違うのかを明示できなければ、誰も政権交代の必要性を感じてはくれないだろう。立憲が国会の現場で政権としっかり対峙し「現政権を変えなければいけない」と伝えることができて初めて、有権者は政権交代のリアリティを少しずつ感じるようになる。そうすればいつかは「政権を取って自らの手で実現する政策」の提案に、耳を傾けてもらえるようにもなるだろう。 「提案型野党」とは、本来そういうものではないのか。少なくとも、現在の政府案に対案や修正案を提示し「政府に採用してもらって喜ぶ」ことであるわけがない。 まっとうな批判ができない野党が、まっとうな提案型野党になどなれるはずはないのだ』、「立憲が国会の現場で政権としっかり対峙し「現政権を変えなければいけない」と伝えることができて初めて、有権者は政権交代のリアリティを少しずつ感じるようになる。そうすればいつかは「政権を取って自らの手で実現する政策」の提案に、耳を傾けてもらえるようにもなるだろう」、「「提案型野党」とは、本来そういうものではないのか。少なくとも、現在の政府案に対案や修正案を提示し「政府に採用してもらって喜ぶ」ことであるわけがない。 まっとうな批判ができない野党が、まっとうな提案型野党になどなれるはずはないのだ」、完全に同感である。

明日も、この続きを取上げるつもりである。
タグ:日本の政治情勢 (その63)(森喜朗元首相が「血まみれ」で倒れ 集中治療室へ…一体、何が起きたのか 「ポスト安倍」をめぐる内幕、【全文公開】キャバ嬢に「脱げ!脱げ!脱げ!」 安倍氏国葬責任者、森昌文・首相補佐官が過去に参加した「大仁田厚主催の乱倫パーティ」、「政権担当能力なし」と見なされ自滅…立憲の「提案型野党」が自公政権を利するだけに終わったワケ 「立憲として目指す社会像」を示せなかった) 現代ビジネス「森喜朗元首相が「血まみれ」で倒れ、集中治療室へ…一体、何が起きたのか 「ポスト安倍」をめぐる内幕」 「集中治療室に運ばれた」とは大変だ。 「もう駄目だと言われたガンが、新薬で助かったんです」、顔が異常に痩せてみえるのはそのためだろう。 「五輪組織委員会で理事を務めていた高橋治之氏」、による違法献金疑惑から逃げるにしては、大がかり過ぎる。やはり、本当に悪かったのだろう。 「みんなの一致していることは、下村博文だけは排除しようということ」は当然だろう。 「世耕氏は人生の岐路に立たされているようだ。このまま参議院議員を束ねられれば党内で強い権力を持つことになるが、参議院議員のままでは慣例的に首相になれないとされている。衆議院への鞍替えも模索しているが、森元首相は「参院から衆院に行く人は必ずしも成功していない」と指摘していて、「参院に留まったらどうか」と世耕氏に暗に勧めているようだ」、なるほど。 さてどう決着がつくのだろうか。 NEWSポストセブン「【全文公開】キャバ嬢に「脱げ!脱げ!脱げ!」 安倍氏国葬責任者、森昌文・首相補佐官が過去に参加した「大仁田厚主催の乱倫パーティ」」 「首相補佐官」、「安倍晋三元首相の国葬の実行幹事会首席幹事」、が「乱倫パーティ」に出席した「東大卒の国交省キャリア」とは、しまらない話だ。 済んだこととはいえ、「国葬」を「こんな首席幹事が催」していたとは世も末だ。 PRESIDENT ONLINE 尾中 香尚里氏による「「政権担当能力なし」と見なされ自滅…立憲の「提案型野党」が自公政権を利するだけに終わったワケ 「立憲として目指す社会像」を示せなかった」 『提案型野党』には私もかねて疑問を抱いていたので、興味深そうだ。 「立憲の参院選を総括」は大きな意義がある。 「「提案型野党」にせよ「是々非々」路線にせよ、参院選で6議席を獲得する程度の支持なら得られるかもしれないが、衆院で二大政治勢力を志向する小選挙区制を導入している日本で、その旗印を掲げて政権を争う政党になるのは、どだい無理な話である」、その通りだ。 「立憲」「が前回の2017年衆院選で獲得したのは、わずか55議席。野党第1党としては戦後最少の議席数だった。そこから同党は、選挙を経ずに国民民主党の大部分や社民党の一部の合流を経て所属議員を増やし、昨秋の衆院選の公示前には自らの基礎体力以上に議員数が膨らんでいた。それが選挙を経たことで、地力に欠ける党の基礎体力並みの議席数に落ち着いただけのことだ」、「立憲が2021年の衆院選で獲得した96議席は、民主党の下野後の野党第1党の獲得議席としては最も多い」、「昨年の衆院選は「多弱」と言われた野党の中で立憲が頭一 つ抜け出し、野党の中核として定着し始めたとの評価が可能な結果だった」、なるほど。 「発足したばかりの泉執行部は、こうした批判に対抗するには経験が浅過ぎた。自ら選挙結果を冷静に分析する前に、必要以上に「惨敗」に振って評価してしまい、それが彼らの党改革を「提案型野党」という間違った方向に向かわせてしまった」、お粗末極まりない。 「「提案型野党」の失敗は、「提案型」それ自体にあるのではない。「提案型」を意識し過ぎて「批判」という野党固有の使命を忘れ、自公政権に居心地のいい国会を作ってしまったことにあるのだ」、その通りなのだろう。 「政権の選択肢となる野党第1党が行うべき「提案」とは、そういうものではない。立憲が現在の自公政権に取って代わり、自らの政権を樹立した時に「自公政権とは違うどんな社会像を描き、その実現に向けてどんな政策を用意するのか」を、パッケージで見せることだ」、その通りなのだろう。 「非常事態に国民の生命と暮らしを守るためにまず考えるべきことが、常に軍事力であることは、本当に正しいのだろうか。戦闘のあおりで食糧やエネルギーの輸入価格が高騰したり、輸入自体が難しくなったりしたら、軍事力以前に国が持たなくなるのではないか」、確かに多角的な対応が必要なようだ。 「この非常事態に立憲民主党は「食糧安全保障」「エネルギー安全保障」をより重視した上で、今なすべき具体策を示す――。野党第1党にはそういう「提案」を求めたい」、「野党第1党なら、常に「政権と対峙し選択肢を示す」形で、重要政策の選定から広報までを一貫して考えてほしい」、同感である。 「「本当にこの道しかないのか」「別の道があるのではないのか」を政権に突きつけ続けるのが、野党第1党の役割だ。この「別の道」こそが、野党第1党が行うべき「提案」なのである」、その通りだ。 「立憲が国会の現場で政権としっかり対峙し「現政権を変えなければいけない」と伝えることができて初めて、有権者は政権交代のリアリティを少しずつ感じるようになる。そうすればいつかは「政権を取って自らの手で実現する政策」の提案に、耳を傾けてもらえるようにもなるだろう」、 「「提案型野党」とは、本来そういうものではないのか。少なくとも、現在の政府案に対案や修正案を提示し「政府に採用してもらって喜ぶ」ことであるわけがない。 まっとうな批判ができない野党が、まっとうな提案型野党になどなれるはずはないのだ」、完全に同感である。 明日も、この続きを取上げるつもりである。
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投資(商品販売・手法)(その3)(インフレ時代の資産防衛はストレスフリーな「オヤジの節約術」 経済評論家・山崎元氏に聞く、さわかみ投信で最高投資責任者が“更迭” 創業者・澤上篤人氏が「5分の2くらい社員は辞めても構わない」、銀行の預貯金は一刻も早く引き出したほうがいい…インフレ時代に真っ先にやるべき「マネーの常識」 不動産やゴールドへ安易に手を出すのも危険、700億円集めた天才トレーダー「かけるん」の投資集団「エクシア合同」が訴訟頻発で大ピンチ) [金融]

投資(商品販売・手法)については、6月3日に取上げた。今日は、(その3)(インフレ時代の資産防衛はストレスフリーな「オヤジの節約術」 経済評論家・山崎元氏に聞く、さわかみ投信で最高投資責任者が“更迭” 創業者・澤上篤人氏が「5分の2くらい社員は辞めても構わない」、銀行の預貯金は一刻も早く引き出したほうがいい…インフレ時代に真っ先にやるべき「マネーの常識」 不動産やゴールドへ安易に手を出すのも危険、700億円集めた天才トレーダー「かけるん」の投資集団「エクシア合同」が訴訟頻発で大ピンチ)である。

先ずは、7月4日付け日刊ゲンダイが掲載した経済評論家の山崎 元氏による「インフレ時代の資産防衛はストレスフリーな「オヤジの節約術」 経済評論家・山崎元氏に聞く」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/307585
・『物価高が止まらない。菓子や清涼飲料水、食用油にビール……。値上げされない商品を探すほうが難しいぐらいだ。今月下旬に公表された5月の消費者物価指数(生鮮食品除く)は前年の同月に比べ2.1%上昇。9カ月連続で前年を上回った。このインフレ下、生活をどう守ればいいか。「全面改訂 第3版 ほったらかし投資術」がベストセラーになっている経済評論家に聞いた(Qは聞き手の質問、Aは山崎氏の回答)。 Q:長期化するウクライナ戦争に加え、過度な円安進行で物価上昇が続いています。給与が上がればいいのでしょうが、一部の大手企業を除くと収入アップは厳しい状況です。賢い生活防衛術とは? A:金融業界からみると、インフレ時の商材は2つあります。1つは老後不安、もう1つはインフレリスクです。物価は上昇しているのに、銀行に貯金してあるお金は超低金利のままだからほぼ増えません。預金しているお金の価値は実質的に目減りするので、投資したほうがいいと勧めます。大事なのはインフレでも基本的なお金の扱い方は変わらないということです。インフレでもインフレでなくても、お金はなるべく増やしたいし、ムダな支出はしないほうがいい。最近は雑誌などでも節約術の特集が目立ちますが、欠けている視点があります。「もっと稼ぐ」です。稼ぎを増やすにはどうしたらいいか。これが一番、建設的だし重要なポイントでもあります。 Q:どうやって稼ぎを増やすか……。簡単ではありません。 A:大きく3つあると思います。副業、転職、そして自分の人材価値を高めるです。仕事に役立つ経験を積むのは大事です。それと「時間をうまく買う」も効果的。例えば、今より通勤時間が30分短くなる場所に住むと、1日に往復で1時間余裕が生まれます。その時間で残業や副業をしてもいい。睡眠時間を1時間多く取れば、頭の回転もよくなり、能率は上がるはずです。人間関係も大切です。外食をやめて節約しようとすると、人間関係は貧相になります。人材としての価値も向上しにくくなるでしょう。自分への投資で大事なのは、能力、経験、時間、人間関係。この4つにしっかり投資すれば稼ぐ力を高められます』、「自分への投資で大事なのは、能力、経験、時間、人間関係。この4つにしっかり投資すれば稼ぐ力を高められます」、極めてオーソドックスな見方だ。
・『食費を減らすのは「良くない節約」  Q:いまの収入のまま生活防衛するには、節約するしかありません。 A:ムダなお金を使わないは基本です。その上で、「オヤジの節約術」を考えてみましょう。確実に節約できて、ストレスは小さく、実害がない。これがいい節約の3原則です。いい節約か、そうでないかを見分ける基準です。携帯電話を格安SIMに変更した場合はどうでしょう。変更後、確実に料金は下がります。近ごろは格安SIMも通話やデータのやりとりに不便を感じないのでストレスは小さい。実害もないのでいい節約です。 Q:悪い例は? A:食費の節約です。飲み会や外食の回数などは月ごとに異なるので、確実な節約にはなりません。それにランチ代を1000円から800円に削ったら、850円の焼き肉定食は食べられなくなります(笑)。これはストレスです。場合によっては食費を削減したために栄養が偏り病気になってしまう実害リスクもあります。良くない節約といえます。また節約のセオリーは固定費の大きい項目から見直していくこと。最大は家賃でしょう。ただ、引っ越しなどを伴うのですぐに見直すのは難しいとなれば、次は生命保険。保険が必要なのは基本的に貯金もなく、親にも頼れない「子どもが生まれたばかりの若い夫婦」ぐらいです。それも保険料は安く、掛け捨ての「ネット保険」で十分。医療保険に入っていなくても、健康保険には高額療養費制度があります。これは一定以上の医療費がかかったときは健保から医療費が還付される制度。だから、高額な医療保険に入る必要はありません』、「オヤジの節約術」は、「確実に節約できて、ストレスは小さく、実害がない。これがいい節約の3原則」というもの。好例は「携帯電話を格安SIMに変更」。「食費を減らすのは「良くない節約」」、「節約のセオリーは固定費の大きい項目から見直していくこと。最大は家賃」、その通りだろう。
・『今どきのワザ「サブスクを見直す」  Q:見直すべき削減項目は結構ありますね。 A:今どきの節約方法も見逃せません。サブスクです。ネットTVやオンラインサロンなど最初の数カ月こそよく利用していても、現在はあまり使わなくなっているサービスはあるものです。それを探していくと、それなりの節約になります。また支払いをクレジットカードにすると便利です。カード明細がほぼ家計簿になるので、不要なサブスクや支出をピックアップしやすい。できれば1枚のクレジットカードに集約したい。現金で管理するよりセキュリティー面や衛生面も優れています。支出の見える化は大切です。 Q:コロナ禍で趣味を充実させたり、何かを収集したりする人が増えました。 A:「地位財」へのこだわりを捨てるのも節約になります。地位財とは、自分のステータスを表すようなモノで典型的なのは不動産です。100坪の家はそれなりに広いし、世間からみれば十分に満足できる物件です。でも、周りの家が200坪、300坪あると、100坪に住んでいる人は満足できず、幸福を感じません。つまり他人との比較で幸福を得るのが地位財。クルマや腕時計、ファッションなどもそうでしょう。その競争から降りると、気持ちは楽になるし、余計な支出も減ります。地位財から“降りる”選択を検討してみて下さい』、「サブスクを見直す」は確かに有効そうだ。「「地位財」へのこだわりを捨てるのも節約になります」、その通りだ。
・『資産運用はコレ1本でOK  Q:老後資金2000万円問題はどう考えますか。 A:実際に2000万円必要かどうかは人によって違います。大切なのは自分にとって必要な老後資金はいくらか。そして計画的に貯めることです。仮に65歳で引退し、85歳まで生きるとしましょう。もしかすると95歳まで長生きするかもしれません。余裕を持って老後は30年とします。30年は360カ月。この360を、ひとつの単位として考えると分かりやすい。もし3600万円の老後資金を持っていたら、毎月10万円を取り崩せる計算です。年金プラス10万円になります。9万円でも大丈夫と思ったら、360万円分を投資などに回せます。 A:年齢によっても異なるでしょうが、自分は毎月いくら貯めれば老後の不安がなくなるのか。心配は尽きません。 「人生設計の基本公式」というサイトがあります。現在の平均手取り額や、老後の生活費を現状の何%と考えるか、資産額(貯蓄や将来の退職金など)、何歳まで働くかなどを入力すると、毎月の貯蓄額の目安が分かります。例えば年収600万円で老後生活費率を70%、資産額は1500万円、現役年数12年、老後年数20年と打ち込むと、必要貯蓄率は21.15%と出ます。一般的なサラリーマンだと、貯蓄率は15~20%が限界。これに近づくように現役年数を延ばすなどして下さい。 Q:資産運用は「ほったらかし投資」で大丈夫ですね。 A:運用とはお金を増やすこと。年齢が違っても目的は同じです。違うとすれば運用する金額と、リスクの取れる金額。運用する対象(金融商品)は20歳も60歳も同じでいい。具体的には改訂版の「ほったらかし投資」で触れているように、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」です。これ1本に絞って問題ありません。ただ、この投資信託はネット証券しか扱いはなく、証券会社の窓口では購入できません。では、どうするか。その場合は、窓口でETF(上場投資信託)の「MAXIS全世界株式(オール・カントリー)」(証券コード2559)を買う。窓口の人が勧める別の商品は決して手を出してはダメです。手数料が高いなど、金融機関が得する商品ばかりだからです。セールスされたときの対処法は「よく考えて、必要があれば、私のほうから連絡します」とキッパリ言うこと。また、どうしても減らしたくない資金は個人向け国債がふさわしいと思います』、「「人生設計の基本公式」というサイト」で「現在の平均手取り額や、老後の生活費を現状の何%と考えるか、資産額・・・、何歳まで働くかなどを入力すると、毎月の貯蓄額の目安が分かります」、「運用する対象(金融商品)」は「「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」です。これ1本に絞って問題ありません」、「証券会社の窓口では・・・ETF(上場投資信託)の「MAXIS全世界株式(オール・カントリー)」・・・を買う。「窓口の人が勧める別の商品は決して手を出してはダメです」、その通りだ。

次に、8月4日付け文春オンライン「さわかみ投信で最高投資責任者が“更迭” 創業者・澤上篤人氏が「5分の2くらい社員は辞めても構わない」」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/56340
・『日本初の独立系投信会社として知られる「さわかみ投信」(東京都千代田区)。同社の最高投資責任者が、6月30日の臨時株主総会で事実上、更迭されていたことが「週刊文春」の取材でわかった。創業者・澤上篤人元社長(75)らが取材に対し、退任を認めた。 さわかみ投信を1996年に創業した澤上氏は“金融界のレジェンド”と呼ばれる人物だ。「さわかみファンド」一本の運用にこだわり、長期投資の重要性を唱えてきた。 ただ、2011年に社長から会長に退くと、2013年に社長に就任したのが、息子の澤上龍氏(46)だった。 「龍氏は専門学校卒業後、飲食店勤務などを経て、2000年にさわかみ投信に入社しました。金融の知識は乏しかったものの、“御曹司”として出世を重ねていった。昨年6月には篤人氏が会長を退任し、龍氏が“一本立ち”を果たしたと見られました」(現役社員)』、「澤上篤人」氏は数少ない独立系運用会社創業者として、かねてから尊敬していたが、息子を後任にしたとはガッカリした。
・『会社の功労者を事実上“更迭”  だが、6月30日の臨時株主総会で、取締役最高投資責任者の草刈貴弘氏が突如、退任し、親会社のさわかみホールディングスへ異動することが発表された。「事実上の更迭人事」(同前)とされる。 草刈氏は2008年、さわかみ投信に入社。2015年に最高投資責任者に就き、社内では「約2000億円の運用資産を約3400億円に成長させた功労者」(同前)と言われてきた。社員からもこの人事に対し、反発の声が上がったという。 にもかかわらず、なぜ、更迭されたのか。 社長の澤上龍氏は次のように答えた(Qは聞き手の質問、Aは澤上龍氏、或いは澤上篤人氏の回答)。 Q:解任理由は? A:「私が解任したわけではない。株主が決めたこと」 株主とは、澤上篤人氏のこと。さわかみ投信の100%株主はさわかみホールディングス。同社の株式をほぼ100%保有するのが、篤人氏の財団だ』、「取締役最高投資責任者の草刈貴弘氏が突如、退任し、親会社のさわかみホールディングスへ異動」、どういうことなのだろう。
・『澤上篤人氏「俺の下で鍛え直ししているの」  創業者の澤上篤人氏は以下のように答えた。 Q:草刈氏の解任の理由は。 A:「解任ではない。もともとうちは暑苦しい会社だったけれど、草刈はスマートになりかけていたからもとに戻そうと。泥臭さ、暑苦しさが薄れてきた。ホールディングスに来て俺の下で鍛え直ししているの。更迭ではない」 Q:社員には動揺が。 A:「色々言われるだろうけれど、5分の2くらい社員は辞めても構わない。それくらいさわかみ投信の原点は大事にしているから」 8月3日(水)12時配信の「週刊文春 電子版」および8月4日(木)発売の「週刊文春」では、更迭されたもう1人の取締役の名前、全社員の定例会議で複数の女性社員が澤上龍社長に詰め寄った場面、最高投資責任者だった草刈氏の言葉についても報じている。また、「週刊文春 電子版」では、オリジナル記事として澤上龍社長と澤上篤人氏との詳細な一問一答を配信している』、「草刈はスマートになりかけていたからもとに戻そうと。泥臭さ、暑苦しさが薄れてきた」、理解し難い説明だ。所詮、創業者が思い通りに経営したいのだろうが、運用成果に悪影響が出ないか否かを注視したい。

第三に、10月25日付けPRESIDENT Onlineが掲載した経済評論家の加谷 珪一氏による「銀行の預貯金は一刻も早く引き出したほうがいい…インフレ時代に真っ先にやるべき「マネーの常識」 不動産やゴールドへ安易に手を出すのも危険」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/62492
・『日本経済は長く続いたデフレからインフレに状況が変化しつつある。経済評論家の加谷珪一さんは「インフレ時代に一番やってはいけないのは、銀行に預貯金を預けっぱなしにすること。物価上昇分だけ、資産を失うことになる」という――。(第3回) ※本稿は、加谷珪一『スタグフレーション――生活を直撃する経済危機』(祥伝社新書)の一部を再編集したものです』、興味深そうだ。
・『インフレでは「現金は最弱の投資対象」  ここからはインフレ時代において資産をどのように管理したらよいのかという運用の話に移ります。 デフレの時代においては、現金は最強の投資対象などと言われてきましたが、インフレ時代はまったくの逆になります。インフレが進んでいる時に多額の現金や銀行預金を保有していることは損失につながることを頭に入れておく必要があるでしょう。つまりインフレ時代において、現預金の保有はご法度なのです。 インフレとは継続的に物価が上がることを意味しています。たとえば、今年100万円だった自動車が5年後には150万円になっているという話です。この時、私たちの銀行預金はどうなるでしょうか。 今、銀行に預けている100万円を下ろせば、すぐに100万円の自動車を購入できます。しかし5年後には、この自動車は150万円出さなければ買うことができません。いっぽうで銀行預金は利子を除けば、5年経ってもやはり100万円のままです。つまり銀行預金の価値は5年で約3分の2に減ってしまったということになります』、「インフレ時代において、現預金の保有はご法度」、その通りだ。
・『現金の価値は気づかないうちに下がっている  インフレが進んでいる時、銀行預金や現金だけで資産を管理している人は、物価上昇分だけ、その資産を失っていきます。ただ、インフレというのはジワジワと進みますから、日常生活では現金の価値が下がっていることについてなかなか認識できません。5年や10年という時間が経過し、気がつくと自身の資産が減っていた、あるいはなくなっていた。 これがインフレの怖さです。 銀行預金と同様、国債など債券に対する投資もインフレ時は大敵となります。 債券という商品は、満期まで保有していれば、その間に発行体(その債券を発行した企業や政府など)が破綻しなければ、毎年、一定額の利子を獲得できます。しかし満期になった時には、債券を買った時の元本がそのまま返ってくるだけです。 したがって利用者から見れば、債券の購入は、銀行にお金を預けて、利子を得ることと大きな違いはありません。仮に期間が5年の債券で、5年間で物価が1.5倍に上昇していた場合には、債券の購入者は実質的に損してしまいます』、「インフレが進んでいる時、銀行預金や現金だけで資産を管理している人は、物価上昇分だけ、その資産を失っていきます」、「利用者から見れば、債券の購入は、銀行にお金を預けて、利子を得ることと大きな違いはありません」、その通りだ。
・『借金や固定金利の住宅ローンは「有利」  このように現金、銀行預金、債券はインフレにおいて著しく不利なわけですが、逆に借金は有利に働きます。 5年後に返済する契約で100万円を借りていた人がいるとしましょう。先ほど例に挙げたように、インフレが進み、5年後に物価が1.5倍になった場合、100万円の自動車は150万円になっているはずです。ところが100万円の借金は当初の契約通り、物価が1.5倍でも100万円を返すだけですみます。実はインフレが進んでいる時に借金をすると、インフレ分だけ利益を得ることができるのです。 だからといって、むやみに借金をすることは絶対にやめるべきですが、固定金利で住宅ローンを組んだようなケースでは、貸し主に対する支払い総額は変わりませんから、場合によってはインフレで大きな利益を獲得することも十分にありえます』、「借金や固定金利の住宅ローンは「有利」」、その通りだ。
・『物価が2倍になれば、政府の借金は半分に  過度なインフレでもっともトクをするのは政府でしょう。 現在、日本政府は1000兆円の債務を抱えており、これが原因でなかなか金利を上げられないということは第2回の記事でご説明しました。もし金利が大幅に上昇する前に過度にインフレが進んだ場合、物価は急上昇しているにもかかわらず、政府の借金の額は変わりません。最終的に物価が2倍になれば、実質的に政府の借金は半分になります。 この時、国全体で見れば、国民が銀行に預けたお金が実質的に半分に減らされ、いっぽうで政府の借金は実質的に半減していますから、これは国民の銀行預金に多額の税金をかけ、政府の債務返済に充当したことと同じになります。財政学の世界では、インフレが進むことを「インフレ課税」と呼びますが、国民にとってインフレというのは物価上昇分だけ課税されることと同じになります。 日本政府は今のところ税収を増やすことで政府債務を減らそうとしていますが、南米各国のように、意図的にインフレを発生させ、国民から実質的に預金を奪って政府の借金をチャラにしようと試みる政府もあります。 どちらがよいのかは国民の判断次第ですが、政府がインフレを放置した場合、基本的に重い税金が課せられていることと同じであるという現実について理解しておく必要があるでしょう』、「最終的に物価が2倍になれば、実質的に政府の借金は半分になります。 この時、国全体で見れば、国民が銀行に預けたお金が実質的に半分に減らされ、いっぽうで政府の借金は実質的に半減していますから、これは国民の銀行預金に多額の税金をかけ、政府の債務返済に充当したことと同じになります。財政学の世界では、インフレが進むことを「インフレ課税」と呼びますが、国民にとってインフレというのは物価上昇分だけ課税されることと同じになります」、「インフレ課税」とは嫌だが、実態をよく表した言葉だ。
・『不動産はインフレに強いと言われるが…  不動産は一般的にインフレに強い商品と言われており、インフレが予想される時に不動産を買うことはどこの国でも鉄則になっています。しかし日本の場合、特殊事情がありますから、不動産については条件付きの投資対象と考えてください。 実物不動産を現金で購入したり、固定金利の長期ローンを組んで購入している場合には、不動産への投資はきわめて有益です。 物価が上昇した分だけ不動産の価格は上がっていきますから、現金を保有している場合と比較して、資産の価値を維持することができます。しかし、金利によって返済額が変化するローンを組んでいた場合には、物価が上がると銀行への返済額も増えてしまうので、大きな利益にならないケースもあります。 第2回の記事で説明した変動金利での住宅ローンがこれに該当しますし、賃貸用の物件を短期ローンで購入している場合も、金利負担が大きくなりますから、必ずしも得策とは言えません』、「実物不動産を現金で購入したり、固定金利の長期ローンを組んで購入している場合には、不動産への投資はきわめて有益です」、なるほど。
・『価値を上げる物件を慎重に見極める  不動産会社への投資も基本的な仕組みは同じです。負債の割合が高く、しかも短期融資の比率が高い企業の場合、資産価格が上がっても業績は悪化する可能性が高く、株価はあまり期待できないでしょう。 加えて日本の場合、今後、人口が急ピッチで減少することが予想されており、不動産は供給過剰になることが確実です。いくらインフレで不動産の価格が上がるといっても、賃貸ニーズがないエリアの物件についてはその限りではありません。 地域の中心地から遠いエリア、あるいは近いエリアにあっても、駅からの距離が遠い物件の価格はあまり上昇しないと考えてください。今後、インフレが進むにつれて価値を上げる物件とそうでない物件の格差が急拡大すると予想されます。日本の場合、もともと価値が高かった物件の価格がさらに上がる可能性が高いですから、投資をする際には、物件の選別を慎重に行う必要があるでしょう』、「日本の場合、今後、人口が急ピッチで減少することが予想されており、不動産は供給過剰になることが確実です。いくらインフレで不動産の価格が上がるといっても、賃貸ニーズがないエリアの物件についてはその限りではありません」、その通りだ。
・『持っているだけでは収益を生み出さない金  一部の人はインフレと聞くと、金への投資を考えるかもしれません。 確かに、インフレが進む時は金の価格も上昇することが多く、インフレヘッジの有力な投資対象と言われています。しかしながら、金は特殊な商品であり、その特徴を理解せずに金投資を行うことは危険です。 一般的な投資対象と金の最大の違いは、金は持っているだけでは収益を生み出さないという点です。つまり、金は価格が上昇しない限り、収益を生み出さない商品なのです。 株式の場合、株価の値上がりが期待できるだけでなく、企業がしっかりと利益を上げていれば、配当を得ることができます。インフレ時に債券はお勧めできないという話をしましたが、債券も保有している間は利払いを受けることができます。ところが、金にはこうした利益の還元はいっさいありません。 それどころか、金は保有しているだけでお金が減っていく商品です。金を保有しておくには、貴金属会社に保管を依頼したり、自宅の場合には金庫を購入したりするなど、保管コストが必要となります。金への投資を金融商品化した金ETF(上場投資信託)などの商品もありますが、これも取引価格に変化がない場合には、毎日すこしずつ、その基準価格は下がっていきます』、「金にはこうした利益の還元はいっさいありません。 それどころか、金は保有しているだけでお金が減っていく商品です」、なるほど。
・『金投資に向いているのは投資家や富裕層  こうしたデメリットがあるにもかかわらず、金が投資対象になるのは、インフレ時に価格上昇が期待できるからです。厳密に言うと、金は世界の基軸通貨である米ドルと反対の値動きを示すことがほとんどです。インフレでドルの価値が下がると金の価格が上がるという流れです。 金にはこうした特徴がありますから、インフレ対策になるのは事実ですが、あまり使い勝手の良い商品ではありません。万が一、インフレがあまり進まなかった場合には価格が暴落するリスクもあります。 ですから、金への投資は一定以上の資産を持ち、インフレ対策を実施しているものの、さらにリスクヘッジをしたいという投資家や富裕層に向いた商品です。あまり資産を持っていない人が、いきなり金に多くの資金を注ぎ込むことはやめたほうがよいでしょう。 以上、3回にわたり、インフレが今後どのように進み、どう対応すべきかをテーマを絞って解説してきました。今回のインフレは非常にやっかいです。「自分の身を守る」ためにも、さらなる情報を集めることをおすすめします』、「金」は「インフレ対策になるのは事実ですが、あまり使い勝手の良い商品ではありません。万が一、インフレがあまり進まなかった場合には価格が暴落するリスクもあります。 ですから、金への投資は一定以上の資産を持ち、インフレ対策を実施しているものの、さらにリスクヘッジをしたいという投資家や富裕層に向いた商品です」、その通りだ。

第四に、11月17日付け現代ビジネスが記載したジャーナリストの伊藤 博敏氏による「700億円集めた天才トレーダー「かけるん」の投資集団「エクシア合同」が訴訟頻発で大ピンチ」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/102287?imp=0
・『家賃5000万円のオフィス  「華麗なる投資集団」といって良かろう。 オフィスは、東京・港区の地下鉄六本木1丁目駅に直結した超高層「住友不動産六本木グランドタワー」の15階にある。1020坪のワンフロアを借り切り家賃は月約5000万円。インテリアに気を配った豪華オフィスでスタッフが投資家を出迎える。 経営するのは菊地翔(かける)氏。1977年生まれの「天才トレーダー」でFX(外国為替証拠金取引)では利益率2520%という驚異的なトラックレコードを記録したという“伝説”を持つ。ネットでは1日に数千万円を費やす豪快なキャバクラ遊びが暴露されており、遊びの際は「かけるん」と呼ばれている。居住するのは虎ノ門の高層マンション41階の87㎡。約3億円をキャッシュで購入した。 投資集団の名は「エクシア合同会社」──同社ホームページによれば、累計投資家数は1万1974名で累計出資金額は723億円である。投資ではなく出資となっているのは、顧客である投資家がエクシア合同の社員権を購入する形態となっているためだ。だから配当は社員権持分に応じて行われ、退社時に「持分払戻額」を受け取ることになる。 社員権販売で出資者を募るのはかなりイレギュラーである。近年、投資家保護を名目に金融取引業者の登録・取得は難しくなっており、証券取引等監視員会の監視も厳しい。菊地氏は、その締め付けを嫌って「社員権販売」という形を取った。他に例がないわけではないが、700億円を突破するまでに成長したのは過去に例がない。 その華麗さに今年3月以降、影が差し始めた。5月からは投資家の払戻請求に応じないことが多くなり、訴訟が相次いでいる。また証券監視委は、「合同会社の社員権取得に対する出資と称して、不適切な投資勧誘が行われている」として、6月21日、金融庁設置法第21条に基づく建議を行った。それを受けて内閣府令は改正され、10月3日から業務執行社員以外の従業員が社員権の募集を行う際には、金融商品取引業の登録が必要になった。エクシア合同のビジネスモデルは封じられたわけである。 追い打ちをかけるように、10月26日にエクシア被害対策弁護団のホームページが立ち上がり、広く情報が開示され、依頼受付が行われている。既に、第一次提訴(原告32名、被告エクシア合同)、第二次提訴(原告22名、被告エクシア合同)が行われ、第三次募集に入っている』、「近年、投資家保護を名目に金融取引業者の登録・取得は難しくなっており、証券取引等監視員会の監視も厳しい。菊地氏は、その締め付けを嫌って「社員権販売」という形を取った。他に例がないわけではないが、700億円を突破するまでに成長したのは過去に例がない」、「10月3日から業務執行社員以外の従業員が社員権の募集を行う際には、金融商品取引業の登録が必要になった。エクシア合同のビジネスモデルは封じられたわけである」、同社のバブルは終わったようだ。
・『訴訟の頻発と仮差押え  筆者が東京地裁で確認したところでは、法人や個人を原告、エクシア合同や菊地代表、及び同社ナンバー2の関戸直生人氏などを被告とする訴訟が20数件起こされていた。加えて集団訴訟である。請求は、「損害賠償」、「持分払戻金返還」、「不当利得返還」などさまざまだが、要は払い戻しに応ずる資金がないのだろう。またエクシア合同の出資金送金口座を仮差押えした債権者がいるし、元幹部社員が「不法行為に基づく損害賠償請求訴訟」を起こしている例もある。 菊地代表の富の象徴のような高層マンションにも、10月に入って2件の仮差押えが登記されていた。訴訟の頻発と会社の銀行口座や代表の個人資産への仮差押えは、2015年の設立以降、高い配当率と代表や幹部らの派手な私生活で人気を集めてきたエクシア合同が、危機的状況に陥っていることを意味する。 エクシア合同はどんな状況にあるのか。投資家からの依頼を受け、準備中も含めて10件の原告訴訟代理人となっている唐澤貴洋弁護士が説明する。 「エクシア合同は、設立から2021年の年初ぐらいまでは海外法人に貸し付け、そこが運用を行い、その利息をエクシア合同が受け取り、出資者(社員)に分配する形でした。最初はイギリス法人のエクシア・リミテッドで次がシンガポール法人のエクシア・プラベート・リミテッド。ところがエクシア・リミテッドは休眠状態のまま解散。エクシア・プラベート・リミテッドの会計情報を取り寄せると、資産は2017年の段階でなく、18年になっても4236シンガポールドル(約34万円)でした。 そうした状態で、どうして高額配当が可能だったかは疑問です。また、現在はエクシア合同が子会社のエクシア・アセット・マネジメント(第二種金融商品取引業者)とエクシア・デジタル・アセット(暗号資産交換業者)に投融資を行い、利益を得て出資者に配当する形となっていますが、この両社は経営が思わしくなく、配当に応じられる状況にはありません。つまり設立以来、どうやって収益を上げているかがわからない」 収益がどこに蓄積されて投資家に分配されるかは不明ながら、公表している年間平均払戻(利回り)実績は驚異的だ。 2016年 97・36% 2017年 43・84% 2018年 43・99% 2019年 35・33% 2020年 38・30% 2021年 18・49% これなら菊地、関戸両氏を始めとする幹部がどれだけ高額報酬を手にしてもいいし、豪華オフィスで余裕の業務を行うこともできる。また出金要請に応じることは可能なハズである。出資者は「マイページ」を割り当てられており、そこには出資額に応じた「現在評価額」が明示されている』、「エクシア合同や菊地代表、及び同社ナンバー2の関戸直生人氏などを被告とする訴訟が20数件起こされていた。加えて集団訴訟である。請求は、「損害賠償」、「持分払戻金返還」、「不当利得返還」などさまざまだが、要は払い戻しに応ずる資金がないのだろう」、「設立以来、どうやって収益を上げているかがわからない」 収益がどこに蓄積されて投資家に分配されるかは不明ながら、公表している年間平均払戻(利回り)実績は驚異的だ」、不可解だが危機的状況にあるようだ。
・『「究極の自転車操業」疑惑  ところがエクシア合同は、出資者が退社を要望し、「現在評価額」を請求してもそれに応じない。なぜなのか。 エクシア被害対策弁護団は、リンク総合法律事務所の弁護士を中心に結成されている。事務局長の小幡歩弁護士が説明する。 「原告らは、8月31日に到達する『通知書』によって、会社法に基づいた退社の意思表示をしました。それにより2ヵ月後の10月31日までには、全員の退社を認め、持分払戻請求に応じなければなりません。ところが、会社側は定款第15条の『代表社員は、その裁量により当社全体の払戻金の総額を設け、また、払戻金額の各社員ごとの配当を行うことができる』という但書を根拠に、払い戻しを拒絶しているのです」 合資会社の社員権を販売する、という形態の投資勧誘を憂慮した金融庁が、流行に歯止めをかけるべく内閣府令を改正したことは前述した。そのイレギュラーな社員権を使って定款で支払いを拒絶するのは、「会社法上も消費者契約法上も民法上も無効」というのが弁護団の見解である。 信用が第一に求められる金融業において、訴訟が頻発するのは望ましいことではない。また社員権販売を事実上、禁じた内閣府令の改正、仮差押えの数々は、「資金不足で会社存亡の危機にあるのではないか」という疑念に通じ、それは配当実績への疑問と重なって「ポンジスキームではないか」(唐澤弁護士)という疑惑に直結する。 高額配当を謳って投資を募りながら、実際には他に流用、あるいは自ら費消しながら、集めたカネを前の出資者に配当する究極の自転車操業がポンジスキーム。唐澤弁護士はこう続ける。 「海外での運用実態が見えず、国内子会社も総じて経常損失にある状態では、そう判断せざるを得ないのです」 出資者のなかには民事だけでなく、刑事告訴に踏み切ろうとする動きもある。まさに「華麗なる投資集団」のメッキは剥げ、崖っぷちに立たされている。 エクシア合同は、信頼醸成委員会、コンプライアンス委員会を立ち上げるなど内部規律の確立を図っている。また10月13日には広報PR部を設置、「メディアや顧客とコミュニケーションを図る」と発表した。しかし筆者が取材依頼を重ね、質問書を用意して回答を求めたものの、「対応は致しません」と、質問書を受け取ることさえしなかった。 批判があるとはいえ、“斬新”な投資手法で1万2000人近い投資家を集めた「かけるん」こと菊地代表は、この危機をどう乗り越えていくのか。このまま説明責任を果たさなければ、今もネットにあがっている売れっ子キャバクラ嬢とのらちもない散財写真が、「裏切りの証拠」として虚しく残り続けることになる』、「信用が第一に求められる金融業において、訴訟が頻発するのは望ましいことではない。また社員権販売を事実上、禁じた内閣府令の改正、仮差押えの数々は、「資金不足で会社存亡の危機にあるのではないか」という疑念に通じ、それは配当実績への疑問と重なって「ポンジスキームではないか」(唐澤弁護士)という疑惑に直結する」、「批判があるとはいえ、“斬新”な投資手法で1万2000人近い投資家を集めた「かけるん」こと菊地代表は、この危機をどう乗り越えていくのか。このまま説明責任を果たさなければ、今もネットにあがっている売れっ子キャバクラ嬢とのらちもない散財写真が、「裏切りの証拠」として虚しく残り続けることになる」、同感である。
タグ:投資(商品販売・手法) (その3)(インフレ時代の資産防衛はストレスフリーな「オヤジの節約術」 経済評論家・山崎元氏に聞く、さわかみ投信で最高投資責任者が“更迭” 創業者・澤上篤人氏が「5分の2くらい社員は辞めても構わない」、銀行の預貯金は一刻も早く引き出したほうがいい…インフレ時代に真っ先にやるべき「マネーの常識」 不動産やゴールドへ安易に手を出すのも危険、700億円集めた天才トレーダー「かけるん」の投資集団「エクシア合同」が訴訟頻発で大ピンチ) 日刊ゲンダイ 山崎 元氏による「インフレ時代の資産防衛はストレスフリーな「オヤジの節約術」 経済評論家・山崎元氏に聞く」 「自分への投資で大事なのは、能力、経験、時間、人間関係。この4つにしっかり投資すれば稼ぐ力を高められます」、極めてオーソドックスな見方だ。 「オヤジの節約術」は、「確実に節約できて、ストレスは小さく、実害がない。これがいい節約の3原則」というもの。好例は「携帯電話を格安SIMに変更」。「食費を減らすのは「良くない節約」」、「節約のセオリーは固定費の大きい項目から見直していくこと。最大は家賃」、その通りだろう。 「サブスクを見直す」は確かに有効そうだ。「「地位財」へのこだわりを捨てるのも節約になります」、その通りだ。 「「人生設計の基本公式」というサイト」で「現在の平均手取り額や、老後の生活費を現状の何%と考えるか、資産額・・・、何歳まで働くかなどを入力すると、毎月の貯蓄額の目安が分かります」、「運用する対象(金融商品)」は「「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」です。これ1本に絞って問題ありません」、「証券会社の窓口では・・・ETF(上場投資信託)の「MAXIS全世界株式(オール・カントリー)」・・・を買う。「窓口の人が勧める別の商品は決して手を出してはダメです」、その通りだ。 文春オンライン「さわかみ投信で最高投資責任者が“更迭” 創業者・澤上篤人氏が「5分の2くらい社員は辞めても構わない」」 「澤上篤人」氏は数少ない独立系運用会社創業者として、かねてから尊敬していたが、息子を後任にしたとはガッカリした。 「取締役最高投資責任者の草刈貴弘氏が突如、退任し、親会社のさわかみホールディングスへ異動」、どういうことなのだろう。 「草刈はスマートになりかけていたからもとに戻そうと。泥臭さ、暑苦しさが薄れてきた」、理解し難い説明だ。所詮、創業者が思い通りに経営したいのだろうが、運用成果に悪影響が出ないか否かを注視したい。 PRESIDENT ONLINE 加谷 珪一氏による「銀行の預貯金は一刻も早く引き出したほうがいい…インフレ時代に真っ先にやるべき「マネーの常識」 不動産やゴールドへ安易に手を出すのも危険」 加谷珪一『スタグフレーション――生活を直撃する経済危機』(祥伝社新書) 「インフレ時代において、現預金の保有はご法度」、その通りだ。 「インフレが進んでいる時、銀行預金や現金だけで資産を管理している人は、物価上昇分だけ、その資産を失っていきます」、「利用者から見れば、債券の購入は、銀行にお金を預けて、利子を得ることと大きな違いはありません」、その通りだ。 「借金や固定金利の住宅ローンは「有利」」、その通りだ。 「最終的に物価が2倍になれば、実質的に政府の借金は半分になります。 この時、国全体で見れば、国民が銀行に預けたお金が実質的に半分に減らされ、いっぽうで政府の借金は実質的に半減していますから、これは国民の銀行預金に多額の税金をかけ、政府の債務返済に充当したことと同じになります。 財政学の世界では、インフレが進むことを「インフレ課税」と呼びますが、国民にとってインフレというのは物価上昇分だけ課税されることと同じになります」、「インフレ課税」とは嫌だが、実態をよく表した言葉だ。 「実物不動産を現金で購入したり、固定金利の長期ローンを組んで購入している場合には、不動産への投資はきわめて有益です」、なるほど。 「日本の場合、今後、人口が急ピッチで減少することが予想されており、不動産は供給過剰になることが確実です。いくらインフレで不動産の価格が上がるといっても、賃貸ニーズがないエリアの物件についてはその限りではありません」、その通りだ。 「金にはこうした利益の還元はいっさいありません。 それどころか、金は保有しているだけでお金が減っていく商品です」、なるほど。 「金」は「インフレ対策になるのは事実ですが、あまり使い勝手の良い商品ではありません。万が一、インフレがあまり進まなかった場合には価格が暴落するリスクもあります。 ですから、金への投資は一定以上の資産を持ち、インフレ対策を実施しているものの、さらにリスクヘッジをしたいという投資家や富裕層に向いた商品です」、その通りだ。 現代ビジネス 伊藤 博敏氏による「700億円集めた天才トレーダー「かけるん」の投資集団「エクシア合同」が訴訟頻発で大ピンチ」 「近年、投資家保護を名目に金融取引業者の登録・取得は難しくなっており、証券取引等監視員会の監視も厳しい。菊地氏は、その締め付けを嫌って「社員権販売」という形を取った。他に例がないわけではないが、700億円を突破するまでに成長したのは過去に例がない」、「10月3日から業務執行社員以外の従業員が社員権の募集を行う際には、金融商品取引業の登録が必要になった。エクシア合同のビジネスモデルは封じられたわけである」、同社のバブルは終わったようだ。 「エクシア合同や菊地代表、及び同社ナンバー2の関戸直生人氏などを被告とする訴訟が20数件起こされていた。加えて集団訴訟である。請求は、「損害賠償」、「持分払戻金返還」、「不当利得返還」などさまざまだが、要は払い戻しに応ずる資金がないのだろう」、「設立以来、どうやって収益を上げているかがわからない」 収益がどこに蓄積されて投資家に分配されるかは不明ながら、公表している年間平均払戻(利回り)実績は驚異的だ」、不可解だが危機的状況にあるようだ。 「信用が第一に求められる金融業において、訴訟が頻発するのは望ましいことではない。また社員権販売を事実上、禁じた内閣府令の改正、仮差押えの数々は、「資金不足で会社存亡の危機にあるのではないか」という疑念に通じ、それは配当実績への疑問と重なって「ポンジスキームではないか」(唐澤弁護士)という疑惑に直結する」、「批判があるとはいえ、“斬新”な投資手法で1万2000人近い投資家を集めた「かけるん」こと菊地代表は、この危機をどう乗り越えていくのか。このまま説明責任を果たさなければ、今もネットにあがっている売れっ子キ ャバクラ嬢とのらちもない散財写真が、「裏切りの証拠」として虚しく残り続けることになる」、同感である。
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イーロン・マスク(その1)(イーロン・マスク「テスラ&スペースX」の隠れた共通点、モノづくりの極意とは、お騒がせ野郎イーロン・マスク「マンU買収は冗談、どんなスポーツチームも買わない」、マスク氏 プーチン氏と会話 中ロに接近 ツイッター所有懸念強まる、Twitter買収を手放しでは喜べない…「世界一の富豪」イーロン・マスクに世界中が冷視線を向けるワケ なぜ中国・ロシア寄りの発言を繰り返すのか) [イノベーション]

昨日のツイッターに続いて、今日はイーロン・マスク(その1)(イーロン・マスク「テスラ&スペースX」の隠れた共通点、モノづくりの極意とは、お騒がせ野郎イーロン・マスク「マンU買収は冗談、どんなスポーツチームも買わない」、マスク氏 プーチン氏と会話 中ロに接近 ツイッター所有懸念強まる、Twitter買収を手放しでは喜べない…「世界一の富豪」イーロン・マスクに世界中が冷視線を向けるワケ なぜ中国・ロシア寄りの発言を繰り返すのか)を取上げよう。

先ずは、7月28日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経営コンサルタントの竹内一正氏による「イーロン・マスク「テスラ&スペースX」の隠れた共通点、モノづくりの極意とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/306983
・『「自動車を作ることと、宇宙ロケットを作ることはまったく違う」と誰もが思う。ところが、イーロン・マスクがCEOを務めるEV企業「テスラ」と、宇宙ロケット企業「スペースX」には驚くほどの共通点があった。イーロン・マスクについての著書を数多く執筆する経営コンサルタントの竹内一正氏が、イーロンのモノづくりの極意を解き明かす』、興味深そうだ。
・『イーロン・マスクは業界の枠を超えてモノを見る  イーロンのモノづくりの特徴の一つ目は、業界の常識に縛られず、業界の枠を超えてモノを見る力だ。 例えば、テスラはモデルSに大型17インチのタッチパネルを搭載した。これは自動車業界初であり、アップルがまだiPadを出す前のことだった。 開発段階でイーロンは技術者とともに、ノートPCをモデルSの試作車に持ち込んでアイデアをぶつけ合った結果、コンソールボックスに縦型17インチのタッチパネルを設置することに決めた。モデルSの登場以降、大手自動車メーカーは大型タッチパネルを搭載するようになった。 「クルマは納車した日の性能から良くなることはない」 これは、自動車業界の暗黙の常識だった。だが、テスラ車はソフトウエアアップデートで購入後もクルマの性能がアップしていく仕組みを打ち立てた。しかし、PCやスマホ業界ではソフトウエアアップデートで機能や性能を向上させていくことは当たり前に行われてきたことだった。業界の枠や常識を超えてモノを見る姿勢が表れている。 それは、スペースXでも見られる。 ファルコンロケットの燃料タンクには、摩擦攪拌(かくはん)接合というタンカーなどで使われていた技術が使われている。摩擦攪拌接合は、作業速度が速く製造コストを抑えられる利点があった。 高エネルギーの宇宙線を浴びる宇宙ロケットには高信頼性の電子部品が必要とされ、民生品は使えないと考えられていた。そして“宇宙仕様”の電子部品はコストが高かった。 しかし、スペースXは業界の常識にとらわれることなく、コストのこなれた民生品をいろいろ導入している。たとえば、PCでおなじみのイーサネット(PCで使われているLAN規格)や、FPGA(フィールド・プログラマブル・ゲートアレイ)などだ。FPGAはロジック・デバイスの一種で、エンジニアが現場で書き換えが可能で、カスタムLSIよりコストが安くできる。 自動車業界も宇宙ロケット業界も歴史と伝統があるゆえに、業界の枠で物事を考えてしまい、枠を超えることを良しとしない風土がある。しかし、業界の枠を超えてモノを見ることで活路が開けることをイーロンは実証している』、「自動車業界も宇宙ロケット業界も歴史と伝統があるゆえに、業界の枠で物事を考えてしまい、枠を超えることを良しとしない風土がある。しかし、業界の枠を超えてモノを見ることで活路が開けることをイーロンは実証している」、凄いことだ。
・『イーロン・マスクが目指すゴールは「自動運転」  イーロンのモノづくりの特徴の二つ目は、「自動運転」だ。 テスラのEVが目指すのは、ハンドルを人が握って運転するのではなく、AIが運転する完全自動運転である。現時点でテスラの自動運転はレベル2だが、イーロン・マスクはレベル5の完全自動運転を実現すべく開発現場の技術者たちにハッパをかけている。 そこで重要なのがソフトウエアとハードウエアの融合だ。しかもそれをテスラの社内でやってのける。AIのソフトウエア開発からAIチップの設計までテスラは内製化している。詳しくは後述するが、テスラのモデル3のECU(電子制御ユニット)は、完全自動運転を見据えた設計となっている。 一方、スペースXのロケットも“自動運転”、つまりロケットの場合は“自動操縦“だが、これを目指して開発をしてきた。2021年9月には宇宙船クルードラゴンが4人の民間人を地上約580㎞の宇宙に運び、3日間の宇宙滞在を成功させたが、これは自動操縦で行われていた。 イーロンは、「火星に人類を移住させる」という目標を掲げて、スペースXを経営してきた。高度な訓練を受けたプロの宇宙飛行士ではなく、普通の人が火星に移住する。百万人単位で文明を作るのが目的だ。そのためには、普通の人が操縦できる宇宙ロケットが必要だ。 EVもロケットも乗り物にかわりはない。誰でも乗れる乗り物のゴールは、自動運転だ。そして自動運転はシンプルな設計とも関係する』、「EVもロケットも乗り物にかわりはない。誰でも乗れる乗り物のゴールは、自動運転だ」、言われてみれば、確かにその通りだ。
・『とことん極めればシンプルな設計になる  テスラのEVモデル3の内装は極めてシンプルにできている。フロアにシフトレバーがないし、サイドブレーキもない。ハンドルの前にあるはずのスピードメーターもない。 あるのは15インチの横型タッチスクリーンだけ。これで速度表示もドライビングモードも、エアコン操作も、ヘッドライトの点灯も行ってしまう。 モデル3のシンプルな設計はECUの数にも表れている。ECUとは電子制御ユニットのことで、作動させる機能ごとに搭載し管理を行う。エンジン用、パワーステアリング用などがあり車体の各部に配置し、分散管理でクルマの円滑な走行を担う。 従来のガソリン自動車だと60個以上、多ければ100個のECUが組み込まれている。ECUにはおのおの電源が必要で、そのための配線も必要となりECUが多いほど複雑化する。 しかし、テスラモデル3のECUは5個しかなく、高度な集中管理型を実現していた。 しかも、自動運転機能は1つのECUにまとめられ、その半導体はテスラが設計し、演算能力は144TOPS(毎秒144兆回)と高性能だ。ちなみに、半導体設計まで自社でやる自動車メーカーはテスラ以外にはない。そして、その先にあるのは完全自動運転であることは言うまでもない。 モデル3の少ないECUはOTA(オン・ジ・エアー)でも効果的だ。OTAとは無線通信でソフトウエアのアップデートを行う機能のことだ。従来の分散型のECUだと個々にバージョンアップが必要だが、集中管理のモデル3では簡単にできる。 ECUは少ない方が配線も減らせ、省スペース化もやりやすくコストを下げられる。少ないECU化が、モデル3の3万5000ドル級の価格帯の実現に貢献している。 スペースXの再利用可能なロケット、ファルコン9の設計もシンプルにできている。 ファルコン9は2段式ロケットで、打ち上がった1段目が逆再生ビデオのように地上に帰還し、着陸後、再度打ち上げに利用できる。ファルコン9に搭載した宇宙船「クルードラゴン」は国際宇宙ステーションを往復し大気圏に再突入して洋上に着水後も、回収・修理を施して再利用がきる。  再利用を目指した設計のスペースシャトルと比較すると違いがよくわかる。 スペースシャトルは、飛行機のような形で三角翼と3基のエンジンを持つオービターと、それを背負うような巨大な外部燃料タンク。この燃料タンクはオービターのエンジンに液体燃料を供給する役目だ。そして、燃料タンクの両脇に固体ロケットブースターが2基装備され、まるで4つの巨大な物体が組み合わさったかの状態で打ち上げる。 固体ロケットブースターも外部燃料タンクも飛行途中で切り離され、使い捨てにされる。帰還し再利用されるのはオービターだけで、理論上は100回の使用に耐えるとされた。だが、再利用する際には多大な作業が必要となった。さらに飛行中に二度爆発事故を起こしたことを記憶している人は多い。 しかも、オービターの三角翼は帰還する際、グライダーのように滑空する時だけしか用をなさない。つまり、打ち上げの時は空気抵抗を増やす邪魔な代物でしかない。スペースシャトルの設計は政治的な影響もあって複雑になりすぎたのだった。 再利用をうたったスペースシャトルだったが、1回の打ち上げコストは約15億ドルもかかったのに対し、スペースXのファルコン9は0.62億ドルで、24分の1のコストで済んだ。 物理思考で原理を突き詰めれば、シンプルな設計に行き着く。これもイーロンのモノづくりの特徴のひとつだ』、「従来のガソリン自動車だと60個以上、多ければ100個のECUが組み込まれている」、「テスラモデル3のECUは5個しかなく、高度な集中管理型を実現していた。 しかも、自動運転機能は1つのECUにまとめられ、その半導体はテスラが設計し、演算能力は144TOPS・・・と高性能だ。ちなみに、半導体設計まで自社でやる自動車メーカーはテスラ以外にはない。そして、その先にあるのは完全自動運転であることは言うまでもない」、「再利用をうたったスペースシャトルだったが、1回の打ち上げコストは約15億ドルもかかったのに対し、スペースXのファルコン9は0.62億ドルで、24分の1のコストで済んだ。 物理思考で原理を突き詰めれば、シンプルな設計に行き着く。これもイーロンのモノづくりの特徴のひとつだ」、既存の常識の枠にとらわれない自由な発想には脱帽するしかない。
・『テスラもスペースXも技術革新とコストダウンを同時進行している  テスラとスペースXに共通する重要で、しかも他社にはまねできない点を最後に取り上げよう。それは技術革新とコストダウンを同時に行う点だ。 テスラのEVは、従来のクルマにはない技術革新を遂げてきた。タッチパネルでの操作や、ソフトウエアアップデート機能、新型ECUの搭載などだ。しかも、これらをコストダウンと同時進行で行っていた。その結果は価格に表れている。 08年に出荷を始めたスポーツカーEVの「ロードスター」は10万ドルを超えていたが、12年に出したEVセダンの「モデルS」は7万ドル級になり、17年に登場した「モデル3」は3万5000ドルになった。 トヨタの燃料電池車「ミライ」が、いつまでたっても約700万円でもたついているのと大違いだ。 一方、スペースXのファルコン9は野口聡一宇宙飛行士たちを国際宇宙ステーションへ送ったことで日本でも有名になったが、再利用ができるロケットだ。ロケット再利用はNASAでもできなかった快挙だが、再利用以外の要素でも大幅なコストダウンも実現していた。 2011年、NASAは伝統的な方法でファルコン9を開発した場合、スペースXの約10倍のコストがかかると報告し、宇宙ロケット業界に衝撃を与えた。これは、ロケット再利用を考えない場合の試算であった。 2017年にスペースXが再利用ロケットの打ち上げに成功してからは、再利用を繰り返せば繰り返すほどロケットコストは安くなっていく。 さて、日本企業はどうかというと、まず技術革新を起こすことに注力する。そして、技術革新が成功してからコストダウンのフェーズに移る2ステップ方式が常識だった。自動車でも家電でもそうだった。 しかし、テスラとスペースXは技術革新と劇的なコストダウンを同時にやってしまう1ステップ方式だ。1ステップ方式はスピード感はあるが、その分リスクも大きい。経営トップにリスクテイクの覚悟がないとできない手法だ。しかし、グローバル競争ではこのスピード感がないと生き残れない。 リチウムイオン電池に代わるとされる「全固体電池」の開発記事を目にすることが多くあるが、重要な点は全固体電池が開発できたかどうかではない。その量産コストがいくらになるかだ。そろそろマスコミもその点に焦点を当てるべきだ。さもなければ、すぐに中韓企業に追いつき追い越され、日本企業は再び「三日天下」で終わってしまう』、「テスラとスペースXは技術革新と劇的なコストダウンを同時にやってしまう1ステップ方式だ。1ステップ方式はスピード感はあるが、その分リスクも大きい。経営トップにリスクテイクの覚悟がないとできない手法だ。しかし、グローバル競争ではこのスピード感がないと生き残れない」、その通りだ。変なモノづくり神話に囚われていたら、日本企業は取り残されるだけだ。

次に、8月17日付けNewsweek日本版がロイター記事を転載した「お騒がせ野郎イーロン・マスク「マンU買収は冗談、どんなスポーツチームも買わない」」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/08/u-4.php
・『米電気自動車大手中国のイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は17日、英サッカークラブのマンチェスター・ユナイテッド(マンU)を買収するとしたのは冗談だったとツイッターで明らかにした。 買収は本気かとのユーザーの問いに「いや、これはツイッターにおける長年のジョークだ。私はいかなるスポーツチームも買わない」とツイートした』、全く人騒がせな「ジョークだ」。

第三に、10月14日付けMSNが朝日新聞記事を転載した「マスク氏、プーチン氏と会話 中ロに接近 ツイッター所有懸念強まる」を紹介しよう。
・『米ツイッターの買収意向を示している米電気自動車大手テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が最近、ロシアや中国寄りと受け取れる言動を繰り返し、懸念が強まっている。両国による情報操作の問題が指摘されるなか、マスク氏が買収した場合のツイッターの投稿管理に不安の声が上がる。 マスク氏は3日のツイートに、ウクライナ戦争をめぐる独自の和平案を投稿した。ロシアがウクライナ4州で強行した「住民投票」をやり直し、ロシアが併合したクリミア半島をロシア領にするなどロシアの主張に沿う内容で、ウクライナ側から批判が出た。 米国際政治学者のイアン・ブレマー氏は10日、自らのニュースレターで、「2週間前にイーロンと話した」と言及。マスク氏はプーチン氏と直接会話し、その際にプーチン氏がウクライナ危機について「交渉の準備がある」と述べたという。ブレマー氏は、マスク氏の和平案がプーチン氏が話した内容とほぼ同じだと指摘した』、「ツイッター」経営者に求められる政治的中立性には、まだ馴れていないのだろうか。

第四に、11月15日付けPRESIDENT Onlineが掲載したフリーライター・翻訳者の青葉 やまと氏による「Twitter買収を手放しでは喜べない…「世界一の富豪」イーロン・マスクに世界中が冷視線を向けるワケ なぜ中国・ロシア寄りの発言を繰り返すのか」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/63441
・『イーロン・マスク氏の衛星通信サービスが日本で始まる  テック界の革命児、イーロン・マスク氏。買収によりTwitterを手中に収めた氏の勢いが止まらない。 だが、自動運転EV開発のテスラ、宇宙開発のスペースX、そして新たにTwitterを掌握した革命児の言動に、危うさが見え隠れする。中露寄りの発言を繰り返していることに加え、一度はロシアからの防衛戦でウクライナに寄与したスターリンク衛星通信サービスが、破竹の勢いで巻き返しを進めるウクライナ軍に「壊滅的な混乱」をもたらしているとの海外報道が聞かれるようになった。 家庭で衛星インターネットを利用できるスターリンクは10月以降、日本でも順次展開している。個人や企業が手軽に衛星経由での通信を楽しめるサービスだ。 このサービスは、イーロン・マスクCEO率いる米スペースX社が提供している。高度550km前後の低軌道に多数の中継衛星を浮かべ、空からデータ通信を中継するしくみだ。空の見渡せる場所に受信用のディッシュ(アンテナ)さえ設置すれば、既存のネット回線に依存せずにインターネットを利用可能となる。 僻地では光ファイバーを延々と敷設せずとも、目的の建物単体でネット環境を導入できる利便性がある。加えて都市部でも、万一の際のバックアップとして注目が集まるだろう。仮に大規模な震災などで通信網が寸断されても、スターリンクの受信用ディッシュと家庭用発電機があればネットを利用できる。家庭はもちろんのこと、役場や消防などで導入が進んでいれば、復旧への情報収集がスムーズに進みそうだ。 価格は初期費用として、アンテナなどを含むキットが7万3000円となっている。月額利用料金は1万2300円の設定だ。現時点で沖縄を除く日本のほぼ全土で利用可能となっている。 スターリンクの登場により、衛星通信を個人で利用できる時代が訪れた。ところがこの技術は個人の生活環境だけでなく、一国の在り方すら変えようとしている』、「価格は初期費用として、アンテナなどを含むキットが7万3000円・・・月額利用料金は1万2300円の設定だ」、これで「衛星通信を個人で利用できる時代が訪れた」、とは便利な時代になったものだ。
・『ウクライナの救世主になった  ロシアによる2月からの侵攻を受け、ウクライナ国内の被災地域では通信が寸断された。この状況を救ったのがスターリンクだ。ウクライナ政府の技術部門を統括するフェドロフ副首相がTwitterで支援を要請すると、スペースXのイーロン・マスク氏はわずか11時間弱で同国でのサービスを始動させた。 同時にマスク氏はウクライナには大量の受信ディッシュを送っており、病院や軍事拠点など重要施設に配備されている。ほか、市民も衛星通信経由のWi-Fiを利用しネットを再開することが可能となった。 スターリンクが戦局に大きな影響を与えたと指摘する報道もある。ウクライナ軍はロシアによる2014年のクリミア侵攻を契機として、攻撃・防御システムのIT化に力を入れてきた。現在はGIS Arta(ジーアイエス・アルタ)と呼ばれるシステムが各部隊に配備されており、ネットを通じて現在地や攻撃能力などの情報を常時共有しあっている。 英タイムズ紙の5月の報道によると、従来の常識では射撃命令から実際の攻撃までには部隊間の調整が必要であり、20分程度の時差を生じていた。だが、GIS Artaが部隊の展開状況に応じて最適な攻撃対象を自動で割り振ることで、30秒から1分程度での攻撃が可能となったという。これを支えているのがスターリンクによる通信インフラだ。 アメリカ国防契約管理局のトレント・テレンコ氏は5月、ツイートを通じ、「ウクライナの『GIS Art for Artillery(GIS Artaの別称)』アプリはスターリンクと組み合わさることで、アメリカ軍の一般的な砲術指揮統制よりもかなり優れたものをウクライナ軍にもたらした」と指摘している。氏はまた、「ウクライナ戦争は初のスターリンク戦争」だとも述べる』、「従来の常識では射撃命令から実際の攻撃までには部隊間の調整が必要であり、20分程度の時差を生じていた。だが、GIS Artaが部隊の展開状況に応じて最適な攻撃対象を自動で割り振ることで、30秒から1分程度での攻撃が可能となったという。これを支えているのがスターリンクによる通信インフラだ」、これほど短縮できるのであれば、戦闘能力は著しく向上する筈だ。
・『ネット遮断でウクライナ軍は大混乱  ところが、その後の形勢不利を経て反転攻勢に入った10月、ウクライナ軍を予期せぬ事態が襲うようになる。ロシア支配地域の奪還を進める一部部隊のあいだで、通信の途絶が報告されるようになったのだ。勢いに乗っていたウクライナ軍は、大混乱に陥った。 英フィナンシャル・タイムズ紙は10月8日、ウクライナ軍関係者および兵士らの話として、領土解放を進める最前線でスターリンクの通信機器に障害が発生し、作戦に支障をきたしていると報じた。 記事によるとウクライナ政府高官は、過去数週間でウクライナ軍の一部部隊が「壊滅的な」通信障害に陥っていると述べたという。同紙は首都キーウの別の当局者の話として、軍のヘルプラインに兵士たちから「パニック状態の電話」が相次いでいるとも報じている。 通信途絶は4~5の特定地域で発生しており、多くはロシア占領地域との境界上となっている』、「スターリンクの通信」に依存して有利に戦争を進めてきたのが、「通信途絶は4~5の特定地域で発生」とは大変だ。
・『マスク氏が意図的に遮断との見解も  サービス途絶の原因は何か。最も単純な仮説として、ウクライナ軍の領土奪還の勢いが速く、スターリンク側のサービス対象地域の更新が追いつかなかった可能性が指摘されている。スペースX社はロシア占領下に落ちたエリアを通信提供エリア外としており、これはロシア軍に利用されるのを防ぐためだとみられる。 だが、マスクCEOが意図的に、両軍が激しく衝突する地域でサービスを遮断したとの見解も聞かれるようになった。上記の通信障害が発生した地域とは別になるが、少なくともクリミア半島においては、明確な意志をもってサービスを遮断したようだ。 米インサイダーは、米有力政治アナリストのイアン・ブレマー氏の見解として、プーチンが核のボタンに手を伸ばす事態を懸念したマスク氏が、クリミアでのサービス提供を断ったと報じている。 クリミア奪還を進めたいウクライナ側から同地でのサービス開始を要請されたが、米有力政治アナリストのイアン・ブレマー氏によると、マスク氏は「(事態が)エスカレーションする可能性があるため断った」という』、「マスクCEOが意図的に、両軍が激しく衝突する地域でサービスを遮断したとの見解も聞かれるようになった・・・少なくともクリミア半島においては、明確な意志をもってサービスを遮断したようだ」、「プーチンが核のボタンに手を伸ばす事態を懸念」、あり得る話だ。
・『「ウクライナのネットを任せておくべきではない」  ウクライナ全土へのスターリンク提供についても、マスク氏はサービスの無償提供を続ける意向をツイッターで表明しているが、一時態度を硬化させた事実は見逃せない。 マスク氏は10月14日、米国政府が費用を負担しない場合、サービスを無償で無期限に提供することはできないとツイッターで警告した。ビジネスとしては当然の判断だが、重度に依存するウクライナにとっては死活問題だ。 米『ポリティコ』誌EU版によるとEUは、EU諸国が費用を負担することでウクライナへのサービス継続を要請できないか検討していると報じた。 リトアニアのガブリエリウス・ランズベルギス外相は同誌に対し、「ある朝目覚めて『もうやりたくないからやめだ』と言い、翌日には『ウクライナ人たちはネットなしでもやっていけるだろう』と言うような一人の『超強大な』人間に、ウクライナのネットアクセスを任せておくべきではない」と警告した』、「リトアニア」「外相」の発言は正論ではあるが、「米国政府」や「EU諸国」が負担するまでは、「ツイッター」に「無償提供を続け」てもらう必要がある。
・『ロシア・中国寄りの発言を繰り返してきた  こうした意見が聞かれるようになった背景には、各国の政治情勢に絡めて危うい発言を繰り返してきたマスク氏の過去がある。氏は今年に入ってから、ロシア寄り・中国寄りと取れる発言を繰り返している。 1億人以上のフォロワーを持つマスク氏はTwitter上にて、「1783年以来、(フルシチョフの過ちまで)そうであったように、クリミアを公式にロシアの一部とする」ことを含む独自の和平案を提案し、投票機能を通じて賛否を問うた。ウクライナ側は激しく反発している。 中台関係をめぐっては、台湾側が支配権の一部を中国に譲ることで和平がもたらされるとの考えを披露した。マスク氏はフィナンシャル・タイムズ紙のインタビューで、「私の提案としては……台湾の特別行政区という形で解決策を見出してはどうか。皆が納得するわけではないが、おおむね良い形だ」と語っている。 台湾の蕭美琴駐米代表はこれに反応したとみられる形でTwitter上で、「台湾は多くの製品を売っているが、自由と民主主義は売り物ではない。私たちの将来をめぐる提案はいずれも、平和的かつ強制的ではなく、そして台湾の人々の民主的な願いを尊重する形で決定されるべきである」と牽制している。 マスク氏のこれら独特な発言を念頭に、ウクライナの一部地域における衛星サービスの一時遮断についても臆測が広がった。一部の国においては、ウクライナ政府との関係が冷え込んだことから意図的に遮断に踏み切ったと取れる報道もあった』、「マスク氏」の気まぐれも困ったものだ。
・『カリスマCEOの強さと危うさ  マスク氏が技術で世界を変え、人類を前進させていることに疑いはないだろう。 テスラはEVを身近にし、夢物語だった自動運転を着実に実用化へ近づけている。スペースXは個人が月旅行に出かける時代を切り拓きつつある。地下トンネルで渋滞を回避したいという冗談から生まれたザ・ボーリング・カンパニーは、ラスベガスの地下に本物のテスト用地下自動車道を開通させた。 常識を超えた発想で未来を引き寄せるカリスマCEOには、独断で企業を率いる強力なリーダーシップが求められる。社会的な価値観と相違をものともせず、自らの信念を貫くタフさこそが強みとなるだろう。 だが、その影響は社内にとどまらず、国際社会にまで波及している。そこには彼の言動に左右される危うさがある。スターリンクのインフラに依存せざるを得ないウクライナ軍は、マスク氏の衛星なしには混乱状態に陥るまでに依存性を高めている。 クリミアをめぐる住民投票案や台湾情勢についても、独特な価値観に基づく発言を繰り出すマスク氏。おそらく政治情勢に深入りする意図はなく、独自の正義を世に示しているだけなのだろう。だが、発言の対象となった各国の政府が不快感を示すなど、巨大インフラを掌握するCEOの発言が世界を揺るがしていることは明らかだ』、「マスク氏」が全能感に酔って「発言」している訳ではないとしても、その影響力は甚大なだけに、責任感を自覚してほしいところだ。
・『「マスク依存」を深める世界の危険性  こうした危うさは、マスク氏のTwitter社の買収にも当てはまる。独自の価値観による「正義」が導入されればどうなるだろうか。仮にだが買収完了後、独自の発言規制やプライバシーに影響する機能が実装されれば、日本のユーザーにおいても影響は免れないだろう。 また、ワシントンポスト紙はマスク氏本人による発言を念頭に、Twitterは「事実上の街の公共広場」であり、マスク氏はいまやその市長になったのだと指摘している。Twitterの崩壊が、民主主義にとって世界規模の脅威になり得る恐れもある。 個人への影響に目を移せば、スターリンクは月額1万数千円という価格であるため、通常4~5千円程度する通常のネットサービスから乗り換え、災害対策を兼ねてメイン回線にすることも不可能ではない。しかし、通信網の寸断に強い反面、うつり気なCEOによるサービスという別のリスクを抱えることになる。 テクノロジーで世界を変革する男、イーロン・マスク。技術の進歩を数十年加速させる功績の一方で、気まぐれな言動が与える影響は年を追うごとに大きくなっている。一人のカリスマに依存する世界が、もろく、危ういことを彼自身が教えてくれている』、全く同感である。そろそろ、口を慎んでもらいたいものだ。 
タグ:「自動車業界も宇宙ロケット業界も歴史と伝統があるゆえに、業界の枠で物事を考えてしまい、枠を超えることを良しとしない風土がある。しかし、業界の枠を超えてモノを見ることで活路が開けることをイーロンは実証している」、凄いことだ。 (その1)(イーロン・マスク「テスラ&スペースX」の隠れた共通点、モノづくりの極意とは、お騒がせ野郎イーロン・マスク「マンU買収は冗談、どんなスポーツチームも買わない」、マスク氏 プーチン氏と会話 中ロに接近 ツイッター所有懸念強まる、Twitter買収を手放しでは喜べない…「世界一の富豪」イーロン・マスクに世界中が冷視線を向けるワケ なぜ中国・ロシア寄りの発言を繰り返すのか) 「テスラとスペースXは技術革新と劇的なコストダウンを同時にやってしまう1ステップ方式だ。1ステップ方式はスピード感はあるが、その分リスクも大きい。経営トップにリスクテイクの覚悟がないとできない手法だ。しかし、グローバル競争ではこのスピード感がないと生き残れない」、その通りだ。変なモノづくり神話に囚われていたら、日本企業は取り残されるだけだ。 「再利用をうたったスペースシャトルだったが、1回の打ち上げコストは約15億ドルもかかったのに対し、スペースXのファルコン9は0.62億ドルで、24分の1のコストで済んだ。 物理思考で原理を突き詰めれば、シンプルな設計に行き着く。これもイーロンのモノづくりの特徴のひとつだ」、既存の常識の枠にとらわれない自由な発想には脱帽するしかない。 「従来のガソリン自動車だと60個以上、多ければ100個のECUが組み込まれている」、「テスラモデル3のECUは5個しかなく、高度な集中管理型を実現していた。 しかも、自動運転機能は1つのECUにまとめられ、その半導体はテスラが設計し、演算能力は144TOPS・・・と高性能だ。ちなみに、半導体設計まで自社でやる自動車メーカーはテスラ以外にはない。そして、その先にあるのは完全自動運転であることは言うまでもない」、 「EVもロケットも乗り物にかわりはない。誰でも乗れる乗り物のゴールは、自動運転だ」、言われてみれば、確かにその通りだ。 「価格は初期費用として、アンテナなどを含むキットが7万3000円・・・月額利用料金は1万2300円の設定だ」、これで「衛星通信を個人で利用できる時代が訪れた」、とは便利な時代になったものだ。 青葉 やまと氏による「Twitter買収を手放しでは喜べない…「世界一の富豪」イーロン・マスクに世界中が冷視線を向けるワケ なぜ中国・ロシア寄りの発言を繰り返すのか」 PRESIDENT ONLINE 「マスク氏」の気まぐれも困ったものだ。 「リトアニア」「外相」の発言は正論ではあるが、「米国政府」や「EU諸国」が負担するまでは、「ツイッター」に「無償提供を続け」てもらう必要がある。 「マスクCEOが意図的に、両軍が激しく衝突する地域でサービスを遮断したとの見解も聞かれるようになった・・・少なくともクリミア半島においては、明確な意志をもってサービスを遮断したようだ」、「プーチンが核のボタンに手を伸ばす事態を懸念」、あり得る話だ。 「スターリンクの通信」に依存して有利に戦争を進めてきたのが、「通信途絶は4~5の特定地域で発生」とは大変だ。 「従来の常識では射撃命令から実際の攻撃までには部隊間の調整が必要であり、20分程度の時差を生じていた。だが、GIS Artaが部隊の展開状況に応じて最適な攻撃対象を自動で割り振ることで、30秒から1分程度での攻撃が可能となったという。これを支えているのがスターリンクによる通信インフラだ」、これほど短縮できるのであれば、戦闘能力は著しく向上する筈だ。 MSNが朝日新聞記事を転載 全く人騒がせな「ジョークだ」 「お騒がせ野郎イーロン・マスク「マンU買収は冗談、どんなスポーツチームも買わない」」 ロイター Newsweek日本版 イーロン・マスク 「ツイッター」経営者に求められる政治的中立性には、まだ馴れていないのだろうか。 「マスク氏、プーチン氏と会話 中ロに接近 ツイッター所有懸念強まる」 全く同感である。そろそろ、口を慎んでもらいたいものだ。 「マスク氏」が全能感に酔って「発言」している訳ではないとしても、その影響力は甚大なだけに、責任感を自覚してほしいところだ。 竹内一正氏による「イーロン・マスク「テスラ&スペースX」の隠れた共通点、モノづくりの極意とは」 ダイヤモンド・オンライン
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ツイッター(その1)(ツイッターを解雇された幹部4人に総額200億円以上の退職金、イーロン・マスクが打ち出した「Twitterの大量解雇」があながち暴挙でもない理由、イーロン・マスク氏の発言に 首を傾げる Twitter 広告主たち、「共和党に投票を」イーロン・マスク氏がツイート 米中間選挙迫る中 波紋広がる、「この鳥は今や自由だ」と言うイーロン・マスクの「監視評議会」に願うこと) [メディア]

今日は、ツイッター(その1)(ツイッターを解雇された幹部4人に総額200億円以上の退職金、イーロン・マスクが打ち出した「Twitterの大量解雇」があながち暴挙でもない理由、イーロン・マスク氏の発言に 首を傾げる Twitter 広告主たち、「共和党に投票を」イーロン・マスク氏がツイート 米中間選挙迫る中 波紋広がる、「この鳥は今や自由だ」と言うイーロン・マスクの「監視評議会」に願うこと)を取上げよう。

先ずは、10月31日付けForbes「ツイッターを解雇された幹部4人に総額200億円以上の退職金」を紹介しよう。
https://forbesjapan.com/articles/detail/51540
・『調査会社Equilarによると、イーロン・マスクが解雇したツイッターのCEOを含む幹部4人は、総額1億4110万ドル(約208億円)の退職金パッケージを受け取る可能性があるという。 ツイッターの前CEOのパラグ・アグラワル5740万ドル、CFOのネッド・シーガルは4450万ドル、ポリシーチーフのビジャヤ・ガッデは2000万ドル、最高顧客責任者のサラ・パーソネットは1920万ドルを受け取ると予想されるとEquilarのディレクターのAmit Batishは10月28日のフォーブス宛ての声明で述べている。 この金額には1年分の給与と医療補助が含まれており、MarketWatchによると2021年の基本給は、アグラワルが62万3000ドルで、シーガルとガッテはそれぞれ60万ドルだったという。 MarketWatchが入手したツイッターの米証券取引委員会(SEC)への提出書類によると、アグラワル、ガッテ、シーガルの3人は、退職金の一部として、合計1億1960万ドル相当の権利確定済み株式も付与されるという。 アグラワルはツイッターに11年近く勤務した後、昨年11月に同社のCEOに就任し、ガッテは11年間同社の法務主任を務め、パーソネットは5年間の在籍期間中に1年間、CCOを務めていた。また、シーガルは2017年からCFOを務めていた。 ワシントンポストは、マスクが先週、投資家らに同社の従業員の75%を削減し、7500人から約2000人にする計画だと伝えたと報じていた。しかし、マスクは26日、ツイッターの社員らに対して、75%という数字は不正確だと述べ、この報道を否定したとされている。 現時点で、マスクがツイッターをどのように変えるのかは不明だ。世界一の富豪である彼は、ツイッターのポリシーを繰り返し批判したが、その一方でこのプラットフォームが「何でも投稿できる地獄絵図にはなり得ない」と述べている。 また、マスクは、ドナルド・トランプ前大統領のアカウントの永久追放を解除することを申し出ており、先週は、カニエ・ウェストのインスタグラムのアカウントが反ユダヤ的な発言で制限された後、ツイッターに彼を歓迎するとツイートしたが、その後ツイッターは、ウェストのアカウントを凍結した』、「同社の従業員の75%を削減」はその後、「50%」に圧縮された。「マスクは、ドナルド・トランプ前大統領のアカウントの永久追放を解除することを申し出ており」、他方で、「ツイッター」は「「何でも投稿できる地獄絵図にはなり得ない」と述べている」。新政策の詳細は未定なのかも知れない。

次に、11月6日付け東洋経済オンラインが掲載した調達・購買業務コンサルタント・講演家の坂口 孝則氏による「イーロン・マスクが打ち出した「Twitterの大量解雇」があながち暴挙でもない理由」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/630935
・『Twitterを個人で440億ドル(約6兆5000億円)を投じて買収した起業家のイーロン・マスク氏が前代未聞ともいえるリストラを進めている。10月31日付でTwitterの最高経営責任者(CEO)に就任すると同時に取締役を全員解任。11月4日には全世界の従業員7500人の半分に当たる約3700人に解雇を通告したと、主要メディアが報じている。 テスラをはじめ、これまでさまざまな企業の創設にかかわってきた起業家のイーロン・マスク氏はリベラルというよりもリバタリアン=完全自由主義者である。 本稿執筆時点では、部門や正確な人数が発表されておらず、さらに非上場企業になったために情報の完全な把握は難しい。ただ報道されている人員削減数を示すように、Twitter上で解雇されたとみられる元従業員らが自身や周囲の雇用状況について積極的に“つぶやい”ている』、「個人で440億ドル・・・を投じて買収」、これは銀行団から借入金で調達。
・『Twitterのコスト体質  2021年にTwitterが発表した財務データを見てみよう。ここからの記事中の数字はいずれも概算だ。2021年12月期の連結最終損益は、2億2140万ドルの赤字だったと知られる。これは円換算で332億円ほどになる。売上高は50億ドル=7500億円ほどを得ている。 しかし、その後に差し引かれるコストとして下記がある。  売上原価:18億ドル=2700億円  研究開発費:12億ドル=1800億円  販売費:12億ドル=1800億円   一般管理費:6億ドル=900億円  上記がそれぞれかかっている。これらに訴訟関連費用を減じると営業損失が出る計算だ。 (Twitterの2021年業績はリンク先参照) (外部配信先ではTwitterの収益状況を示した図表など画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください) Twitterの財務レポートによれば、下記の通りの説明があり、それらは人件費の塊であるとわかる。つまり収益に対して人件費の重みが最終損益を赤字にしていたのだ』、これは、フェイクニュース防止のための事実関係のチェックなどに多くのスタッフを当てていることを反映したものだ。 
・『人件費がひたすら重い   売上原価:インフラ、ソフトウェア、ネットワーク機器の減価償却費を含むが、一部がオペレーションチームへの報酬  研究開発費:研究開発に関わるエンジニアの報酬が大半  販売費:セールスやマーケティングにかかわる人材への報酬が大半  一般管理費:役員、財務、法務、人事等にかかわる人材への報酬が大半 赤字にいたる費用の多くは人件費であり、さらにコストへかなりの比率を占めるとわかる。 なお公平に付け加えておけば、この純損失と実際の現金の減少はイコールではない。Twitterが経営危機に陥っているわけではない。現金及び現金同等物は22億ドル(3200億円)ほどを有している。 ただしこれも付け加えておけば、営業活動(=本業によって稼いだキャッシュ)は2019年度に13億ドル(1900億円)だったところ、2020年度は9.9億ドル(1450億円)、2021年度は6億ドル(880億円)と減少していた。これは研究開発費等の増加による。 このような試算は机上の空論だが、もし半分の従業員を解雇しても同等の収益を上げられれば当然ながら利益もキャッシュフローも劇的に改善することになる。 買収したTwitterの人員整理の対象となるのは、検閲部門などではないか」という憶測が流れていた。しかし、実際はその憶測の範囲にとどまらないようだ。日本法人の従業員も含まれ、その数も相当数に上るとみられる。 本稿執筆時点では、部門や正確な人数が発表されておらず、さらに非上場企業になったために情報の完全な把握は難しい。ただ報道されている人員削減数を示すように、Twitter上で解雇されたとみられる元従業員らが自身や周囲の雇用状況について積極的に“つぶやい”ている。 イーロン・マスク氏は、なぜここまで一気に大量解雇へと打って出たのか。アメリカならばまだしも、解雇要件の厳しい日本でいきなりこうしたリストラを進めることについての疑義は労働問題に詳しい論者が論じてくれるだろう。また法律問題を越え、プライベートカンパニーにおける労働慣行についても誰かが語ってくれるだろう。ここでは、財務面からTwitterの解雇問題を見ていきたい』、なるほど。
・『Twitterのコスト体質  2021年にTwitterが発表した財務データを見てみよう。ここからの記事中の数字はいずれも概算だ。2021年12月期の連結最終損益は、2億2140万ドルの赤字だったと知られる。これは円換算で332億円ほどになる。売上高は50億ドル=7500億円ほどを得ている。) クールに語るのであれば、次のようになるだろう。 これまでのコスト構造が続けば、人件費が大半を占めるため、このままでは黒字化もキャッシュフローの向上も難しい。そこで企業価値アップのために人件費にメスを入れるのは必然だった、と。 もしTwitterの業績が改善すれば、今回解雇した人材の再雇用も考えられる。それは、これまでTwitter社に尽力してきた従業員の努力を無視してきた言い方に聞こえるかもしれない。実際には、突如解雇されたことによって、生活が不安定になってしまう従業員の方々もたくさんいるだろう。そこは前述のように法律問題に発展するケースもあるはずだ。また退職の条件交渉なども水面下で行われているに違いない』、「人件費」が削減できても、チェック部門が機能しなくなって、「ツイッター」が荒れるようになれば、広告主が逃げてゆくから、限界がある。
・『解雇されたTwitter従業員の反応  それにしてもなんということだろうか。確かに日本企業の中にも、人件費が重荷になっている企業があるとして、その人件費を削減すれば改革できると思っている日本の経営者はたくさんいる。とはいえ、退職割増金を加算したとしてもリストラを進めるということには、さまざまな困難が伴う。倫理的にも躊躇がある。 非上場企業であれば、解雇は日常茶飯事であり、かつ訴訟があっても、ほとんどの場合に解雇は問題にならない。ただ、Twitterほどの有名な企業であれば通常は、なかなかここまで大規模で大胆な解雇に踏み切れないはずだ。 ところで、今回の解雇についてざっとSNSを見る限り、声をあげているTwitter従業員の方の中には、不当だと怒りをぶつけるものがあるいっぽうで、私の知り合いは奇妙なほどさっぱりとした明るさに満ちていた。ワインを飲みながら自身や所属するチームの激務をねぎらう投稿もあった。これはアメリカ企業で働く方々の覚悟の表れだろうか。 イーロン・マスク氏の意図はわかる。だが、これ以降の業績はどうなるか。Twitterユーザーのわれわれも気になる問題だ』、むしろ、問題は「ツイッター」が現在の品質を維持できるか否かにあると思われる。

第三に、11月7日付けDIGIDAY「イーロン・マスク氏の発言に、首を傾げる Twitter 広告主たち」を紹介しよう。
https://digiday.jp/platforms/elon-musks-appeal-to-twitter-advertisers-leaves-many-with-questions/
・『イーロン・マスク氏は自称「チーフ・ツイット(Chief Twit、Twitterのトップの意)」として、Twitterをどう変えてしまうのか。そんな広告主らの懸念を、氏は早くもツイートを介して鎮めにかかっている。 10月第4木曜の午前中、マスク氏はTwitter広告主に向けたツイートにおいて、氏が同社のコンテンツモデレーション(注)ポリシーを緩和するのでは、との懸念に言及した。 「私がTwitterを獲得した理由は、街にある公共広場のデジタル版を持つことが、未来の文明にとって極めて重要だからだ」と、マスク氏は書いた。「多種多様な信念について、健全な形で、暴力に訴えることなく、討論できる場のことだ。世界には今、ソーシャルメディアが極右と極左に分裂し、各々がエコーチェンバーとなって憎悪を増幅させ、社会を完全に分断してしまうという、大いなる危機が存在している」』、
「マスク氏」の「ソーシャルメディアが極右と極左に分裂し、各々がエコーチェンバーとなって憎悪を増幅させ、社会を完全に分断してしまうという、大いなる危機が存在している」、というのは同意できる。 (注)コンテンツモデレーション:ネット上の書き込みをモニタリングする投稿監視(インターネットモニタリング)。
・『自身の言動と矛盾する発言  かの億万長者――ちなみに、氏はこの何カ月も、Twitter買収を取り止めようとしていた――はさらに、同プラットフォームは引き続き広告を受け入れる旨の発言をしており、これを氏が同ビジネスモデルを受け入れた証だと見る向きもある(Twitterは収益の約90%を依然、広告から得ている)。とはいえ、広告に関する具体的な展開について、マスク氏は自身の見解はいまだ発信しておらず、氏が治める街の広場が、広告の有無にかかわらず、どんな様相を呈するのか、不安視する者も少なくない。 あるエージェンシー幹部によれば、Twitterの社員らは同プラットフォームの広告機能をマスク氏に説いているという。ただその一方、同じ情報筋によれば、Twitterの上級幹部らは古株社員らの退社を懸念しており、一応は残った者たちも社の将来を不安視しているという。 マスク氏のツイートに、一部のマーケターは呆れ返った。マスク氏は一体、広告主がTwitterに求めるものを本当にわかっているのだろうかと、首を傾げるマーケターもいる。クリエイティブエージェンシー、R/GAのグローバルチーフストラテジーオフィサー、トム・モートン氏いわく、ビジネスリーダーや政治家からセレブやスポーツファンに至るまで、幅広いユーザーにリーチできる、という強みを活かしたプロダクトを開発できれば、Twitterには依然、高い潜在能力があるという。 「マスク氏はTwitterをひっくり返す前に、自分の手の中にあるものの隠れた強みを自覚するべきだ」と、モートン氏は話す。「イーロン・マスク氏による広告プラットフォームの所有には、大きな矛盾がある。自身の言・行動に対するいかなるルールも縛りも認めない男が、Twitterをユーザーおよび広告主を広く受け入れる場にしたいなら、ある程度のモデレーションを受け入れねばならないからだ」』、「イーロン・マスク氏による広告プラットフォームの所有には、大きな矛盾がある。自身の言・行動に対するいかなるルールも縛りも認めない男が、Twitterをユーザーおよび広告主を広く受け入れる場にしたいなら、ある程度のモデレーションを受け入れねばならないからだ」、「マスク氏」に対する手厳しい批判だ。
・『マーケターにとって優先度の低いプラットフィーム  ブランド向けNFTプラットフォーム、ミント(Mint)のチーフマーケティングオフィサー/共同創業者マット・ワースト氏によれば、リーダーシップ、プロダクト、ポリシーに関する不安という「黄色信号」が出ているかぎり、広告主がTwitterに駆け寄ることはないだろうという。ただし、安定性を維持できれば、懸念は減るだろう、とも氏は言い添える。 ワースト氏いわく、「Twitterを広く牽引するリーダーシップチームは、同社の最大の強みだ。個人的には、現在の不安定が収まり、彼らリーダーたちが残り、以前どおりのフォーカスを保ってくれることを期待している」。 Twitterへの2022年度の広告費は、11%増と予想されている――調査グループWARCによれば、これは2021年の予想値42.5%を大きく下回るものであり、2023年度の成長はわずか2.7%とされている。ちなみに、WARCによれば、その成長率を下回る米プラットフォームはFacebookだけであり、2022年度は8.2%減、2023年度は8.6%減と予想されている。 Twitterは実際、マスク氏が買収を申し出る前からすでに、マーケターのなかでの優先順位が低かったと、WARCメディア(WARC Media)のトップ、アレックス・ブラウンゼル氏は話す。氏によれば、Twitterにはブランドセーフティに関する問題があり、一部の広告主はマスク氏が新オーナーになる前から「鼻をつまんでいた」という。同プラットフォームの効率改善や広告依存の解消に繋がる新収入源の開拓に努める、という話もあるが、Twitterについてはそもそも、未解決の商談やそれに伴う訴訟のせいで、多くは不安感を抱いていると、ブラウンゼル氏は話す。 ブラウンゼル氏いわく、「Twitterはしばらく宙ぶらり状態にあり、その間に他のメディア企業勢が遂げた巨大な革新を我々は目にしてきた。たとえば、TikTokが他を一気に追い抜いたように」』、「Twitterにはブランドセーフティに関する問題があり、一部の広告主はマスク氏が新オーナーになる前から「鼻をつまんでいた」という」、なるほど。
・『プランドセーフティの懸念が新たに生じるリスク  広告プラットフォームを改善し、収益の新形態を導入できたとしても、Twitterを「何でもありの地獄のような場」にはしない、というマスク氏の宣言は、この何カ月にもわたって氏が示唆してきたことに矛盾している、と見る向きもある。ソーシャルエンゲージメントプラットフォーム、オープンウェブ(OpenWeb)のCMOティファニー・シンウー・ワン氏は、モデレーションが緩くなれば、Twitterは「最も声高な、最も耳障りな物言いが支配する、無法地帯になりかねない」と話し、「言論の自由は、リーチの自由とは違う」、だからこそ「最も有害な声を最も声高にさせてはならない」と言い添える。 「それは実際、ブランドセーフティの構築に必要な行動の対極にある」と氏は続ける。「我々はモデレーションに、より健全な会話に、ユーザー間の、そしてコミュニティ、パブリッシャー、広告主間のなおいっそうの信頼にフォーカスする必要がある」。 また、Twitterの上場企業化に伴い、いわゆる抑制と均衡がなくなることで、広告主は同プラットフォームに関する説明責任を負うという、さらなるプレッシャーに直面させられる、と見る向きもある。 左派の監視グループ、メディア・マターズ(Media Matters)の長、アンジェロ・カーソソーニ氏いわく、Twitterにおけるブランドセーフティの懸念が新たに生じれば、それが何であれ、2020年のFacebookの場合と同じく、ブランド勢はTwitterへの支出を控えるべきではないか、との疑問をユーザーに抱かせることに繋がりかねないという。しかも、Facebookは当時、中小および地方企業の広告主からなる頑強な基盤のおかげで、その痛手を緩和できたが、Twitterは前者と違い、いわゆる一流どころの広告主に依存している。 「リスナーとのやり取りを中心とするトークラジオ番組はAppleのCMを流さないし、コカ・コーラ(Coca-Cola)のCMも流さない。いずれも極めて有害だと見なされているからだ」と、カーソソーニ氏は話す』、「Twitterにおけるブランドセーフティの懸念が新たに生じれば、それが何であれ、2020年のFacebookの場合と同じく、ブランド勢はTwitterへの支出を控えるべきではないか、との疑問をユーザーに抱かせることに繋がりかねないという。しかも、Facebookは当時、中小および地方企業の広告主からなる頑強な基盤のおかげで、その痛手を緩和できたが、Twitterは前者と違い、いわゆる一流どころの広告主に依存している。」、「Twitterにおけるブランドセーフティの懸念」は深刻にならざるを得ないようだ。

第四に、11月8日付けFNNプライムオンライン「「共和党に投票を」イーロン・マスク氏がツイート 米中間選挙迫る中、波紋広がる」を紹介しよう。
https://www.fnn.jp/articles/-/441857
・『ツイッター社のイーロン・マスクCEOは、アメリカの中間選挙で、無党派層の人に向けて共和党に投票するよう呼び掛ける投稿を行い、波紋を広げています。 7日、ツイッター社のマスクCEOは中間選挙の投開票が迫る中、無党派層の有権者に向けて「権力を2つの党が共有することで、最悪の行き過ぎた事態が抑制される。大統領が民主党であることを考えると、私は共和党の議員に投票することを勧める」とツイッターに投稿しました。 マスク氏は今年4月、「ツイッターが社会の信頼に値するためには、政治的に中立でなければならない」などと表明していたため、今回の投稿には矛盾を指摘するコメントが相次ぎました。 その後、マスク氏は「はっきりさせておくが、私はこれまで無党派で、実際に投票歴は今年までは完全に民主党だった」と投稿しています』、「マスクCEOは」、「これまで無党派で、実際に投票歴は今年までは完全に民主党だった」が、「中間選挙の投開票が迫る中、無党派層の有権者に向けて「権力を2つの党が共有することで、最悪の行き過ぎた事態が抑制される。大統領が民主党であることを考えると、私は共和党の議員に投票することを勧める」とツイッターに投稿」、「大統領」と「議員」を分けるのは筋が通ている。

第五に、11月15日付けNewsweek日本版が掲載した米プリンストン大学生命倫理学教授のピーター・シンガー氏による「「この鳥は今や自由だ」と言うイーロン・マスクの「監視評議会」に願うこと」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/11/post-100108_1.php
・『<「絶対的な言論の自由」を自称するマスクは、全従業員の約半数を解雇した。掲げる目標は立派だが、このままでは「健全な」議論を促進することはできない> 8500万の国民にはツイッターの使用を禁じておきながら、自分は好き勝手にツイートして女性を侮蔑するメッセージを発信し、小説『悪魔の詩』の著者サルマン・ラシュディに対する残虐な襲撃を美化している男がいる。 公共の場で自分の美しい髪を見せたいと願う若い女性たちを平然と殺している国、イスラム共和国イランの最高指導者アリ・ハメネイだ。 許せない、こんな男はツイッターから永久追放しろ。イラン系アメリカ人の活動家マシ・アリネジャドは何年も前から、そう要求してきた。実に頼もしい女性だ。 実際、イランの最高指導者に反旗を翻すには勇気が要る。この8月にはラシュディが、ニューヨーク州で襲撃されて重傷を負った。 ラシュディは1989年に、『悪魔の詩』をイスラムの教えに対する冒瀆と認定され、ハメネイの前任者であるホメイニから死刑宣告のファトワ(宗教令)を出されていた。 さて、そのツイッターをイーロン・マスクが買収した。ハメネイをツイッターから締め出したい人々は、当然のことながらマスクの出方を注視している。 マスクはツイッターの広告主に宛てた公開書簡に、自分がツイッターを買収したのは「文明社会の未来にとって、多様な信念を健全な態度で、暴力に頼らず議論できる共通のデジタル広場の存在は重要」と思うからだと書いた。 それを守れなければソーシャルメディア上の対話は「極右と極左の意見に分かれ、それぞれが増幅されて憎悪を生み出し、社会を分裂させる」ことになると警告してもいる。 そういう懸念は理解できる。自分の気に入らない主張を掲げる人を片っ端から攻撃するような議論は好ましくない。必要なのは見解の相違を超えた真の対話だ。 しかし問題は、それをどうやって実現するか。 ツイッターには毎秒6000件の投稿がアップされている。そんなに膨大な数の投稿をチェックするには、いくら人手があっても足りないだろう(それでもマスクは全従業員の約半数の解雇に踏み切った)。 人工知能(AI)で補えればいいが、あいにく今のAIでは「議論に有意な貢献をするツイート」と「憎悪や分断を促すだけのツイート」を的確に判別できない』、「必要なのは見解の相違を超えた真の対話だ。 しかし問題は、それをどうやって実現するか。 ツイッターには毎秒6000件の投稿がアップされている。そんなに膨大な数の投稿をチェックするには、いくら人手があっても足りないだろう(それでもマスクは全従業員の約半数の解雇に踏み切った)。 人工知能(AI)で補えればいいが、あいにく今のAIでは「議論に有意な貢献をするツイート」と「憎悪や分断を促すだけのツイート」を的確に判別できない」、やはり人手でやる他ないようだが、従業員を半減させては無理だろう。
・『「絶対的な言論の自由」を掲げるマスクは、ツイッターの買収後、同社の青い鳥のロゴにちなんで、「この鳥は今や自由だ」とツイートした。 だが投稿内容についての規制を全て廃止することは、大きく異なる信念を持つ人々の間での「健全な」議論を促進する方法にはならない。マスクのツイッター買収完了後に人種差別的なツイートが急増したことからも、それは明らかだ。 マスクの掲げる目標は立派だ。しかしそれを実現するためには、論拠と証拠に基づき人々の共感や理解を求める言説と、他人を非難して憎悪をあおろうとする言説を区別する必要がある。 おそらくマスクも、このことに気付いているのだろう。ツイッター買収後、彼は幅広い視点を持つ人々で構成する「コンテンツ監視評議会」を立ち上げるとツイートした。 女性の社会的地位をおとしめ、自分の信ずる宗教に対する冒瀆と見なされた文芸作品の著者に対する死刑宣告を擁護するような男にもツイッターの使用を認めるべきかどうか。この点こそ、新設される評議会には真っ先に検討してほしい。 ツイッターのようなプラットフォームを支配する人間は、極めて大きな権力と、それに伴う責任を手にすることになる。 マスク(と、彼の指名するコンテンツ監視評議会のメンバー)は、果たしてその重い責任を果たせるだろうか』、「ツイッターのようなプラットフォームを支配する人間は、極めて大きな権力と、それに伴う責任を手にすることになる。 マスク(と、彼の指名するコンテンツ監視評議会のメンバー)は、果たしてその重い責任を果たせるだろうか」、大いに注目したい。 

明日は、イーロン・マスク氏を取上げる予定である。
タグ:むしろ、問題は「ツイッター」が現在の品質を維持できるか否かにあると思われる。 「人件費」が削減できても、チェック部門が機能しなくなって、「ツイッター」が荒れるようになれば、広告主が逃げてゆくから、限界がある。 これは、フェイクニュース防止のための事実関係のチェックなどに多くのスタッフを当てていることを反映したものだ。 「個人で440億ドル・・・を投じて買収」、これは銀行団から借入金で調達。 坂口 孝則氏による「イーロン・マスクが打ち出した「Twitterの大量解雇」があながち暴挙でもない理由」 東洋経済オンライン 「同社の従業員の75%を削減」はその後、「50%」に圧縮された。「マスクは、ドナルド・トランプ前大統領のアカウントの永久追放を解除することを申し出ており」、他方で、「ツイッター」は「「何でも投稿できる地獄絵図にはなり得ない」と述べている」。新政策の詳細は未定なのかも知れない。 Forbes「ツイッターを解雇された幹部4人に総額200億円以上の退職金」 (その1)(ツイッターを解雇された幹部4人に総額200億円以上の退職金、イーロン・マスクが打ち出した「Twitterの大量解雇」があながち暴挙でもない理由、イーロン・マスク氏の発言に 首を傾げる Twitter 広告主たち、「共和党に投票を」イーロン・マスク氏がツイート 米中間選挙迫る中 波紋広がる、「この鳥は今や自由だ」と言うイーロン・マスクの「監視評議会」に願うこと) ツイッター DIGIDAY「イーロン・マスク氏の発言に、首を傾げる Twitter 広告主たち」 「マスク氏」の「ソーシャルメディアが極右と極左に分裂し、各々がエコーチェンバーとなって憎悪を増幅させ、社会を完全に分断してしまうという、大いなる危機が存在している」、というのは同意できる。 (注)コンテンツモデレーション:ネット上の書き込みをモニタリングする投稿監視(インターネットモニタリング)。 「イーロン・マスク氏による広告プラットフォームの所有には、大きな矛盾がある。自身の言・行動に対するいかなるルールも縛りも認めない男が、Twitterをユーザーおよび広告主を広く受け入れる場にしたいなら、ある程度のモデレーションを受け入れねばならないからだ」、「マスク氏」に対する手厳しい批判だ。 「Twitterにはブランドセーフティに関する問題があり、一部の広告主はマスク氏が新オーナーになる前から「鼻をつまんでいた」という」、なるほど。 「Twitterにおけるブランドセーフティの懸念が新たに生じれば、それが何であれ、2020年のFacebookの場合と同じく、ブランド勢はTwitterへの支出を控えるべきではないか、との疑問をユーザーに抱かせることに繋がりかねないという。しかも、Facebookは当時、中小および地方企業の広告主からなる頑強な基盤のおかげで、その痛手を緩和できたが、Twitterは前者と違い、いわゆる一流どころの広告主に依存している。」、「Twitterにおけるブランドセーフティの懸念」は深刻にならざるを得ないようだ。 FNNプライムオンライン「「共和党に投票を」イーロン・マスク氏がツイート 米中間選挙迫る中、波紋広がる」 「マスクCEOは」、「これまで無党派で、実際に投票歴は今年までは完全に民主党だった」が、「中間選挙の投開票が迫る中、無党派層の有権者に向けて「権力を2つの党が共有することで、最悪の行き過ぎた事態が抑制される。大統領が民主党であることを考えると、私は共和党の議員に投票することを勧める」とツイッターに投稿」、「大統領」と「議員」を分けるのは筋が通ている。 Newsweek日本版 ピーター・シンガー氏による「「この鳥は今や自由だ」と言うイーロン・マスクの「監視評議会」に願うこと」 「必要なのは見解の相違を超えた真の対話だ。 しかし問題は、それをどうやって実現するか。 ツイッターには毎秒6000件の投稿がアップされている。そんなに膨大な数の投稿をチェックするには、いくら人手があっても足りないだろう(それでもマスクは全従業員の約半数の解雇に踏み切った)。 人工知能(AI)で補えればいいが、あいにく今のAIでは「議論に有意な貢献をするツイート」と「憎悪や分断を促すだけのツイート」を的確に判別できない」、やはり人手でやる他ないようだが、従業員を半減させては無理だろう。 「ツイッターのようなプラットフォームを支配する人間は、極めて大きな権力と、それに伴う責任を手にすることになる。 マスク(と、彼の指名するコンテンツ監視評議会のメンバー)は、果たしてその重い責任を果たせるだろうか」、大いに注目したい。
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女性活躍(その26)(187票差で杉並区初の女性区長 岸本聡子さんの異色経歴 「男社会に風穴あけなきゃダメ」、日本人の「女性は家を守る」呪縛の根源は?専業主婦と働く女性の論戦が勃発、「女子アナ」は"人生の成功者"だという最大の誤解 ドラマ「エルピス」が描く彼女たちの生きづらさ) [社会]

女性活躍については、7月19日に取上げた。今日は、(その26)(187票差で杉並区初の女性区長 岸本聡子さんの異色経歴 「男社会に風穴あけなきゃダメ」、日本人の「女性は家を守る」呪縛の根源は?専業主婦と働く女性の論戦が勃発、「女子アナ」は"人生の成功者"だという最大の誤解 ドラマ「エルピス」が描く彼女たちの生きづらさ)である。

先ずは、8月19日付けAERAdot「187票差で杉並区初の女性区長、岸本聡子さんの異色経歴 「男社会に風穴あけなきゃダメ」」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/wa/2022081700072.html?page=1
・『「学生時代に、週刊朝日でバイトしたことがあったんですよ。まだ携帯がない時代で、何かあった時に記者のポケベルを鳴らして呼び出す仕事をしていたんです。懐かしいな」 気さくな笑みを浮かべて話すのは、2022年6月に東京都杉並区長選で初当選した岸本聡子さん(47)だ。大学卒業後、オランダとベルギーで約20年暮らし、国際シンクタンクの職員として公共政策の研究に携わった。区長選への出馬を表明したのは今年4月。区内に移り住んだのも同月だ。行政職や議員の経験もなく、一見無謀に見える挑戦。だが、支援者らと繰り広げた草の根の選挙活動が注目を集め、投票日前日にはその氏名がTwitterでトレンド入りするほどの話題に。最終的に現職の区長をわずか187票差で破り、接戦を制した。 たとえ区民であっても、区議選挙に出たり、ましてや区長に立候補する発想は浮かびづらいものだ。「区長って、誰でもなれるんでしょうか?」そんな記者の素朴な問いかけも、軽んじることなくまっすぐに答える。 「25歳以上であれば、誰でもなれますよ。私自身、選挙に出る前は公職選挙法も読んだことがありませんでした。選挙上の細かいルールを学ぶ必要はありますし、『供託金』という預け金も必要になってきます。でも、それはどちらかといえばテクニカルな話。選挙を通して実現したいことが明確であれば、誰にでも門戸は開かれています」 岸本さんの「区長への道」は、いかにして開かれたのだろうか。 東京都大田区に生まれ、大学時代までを横浜市で過ごした。日本大学文理学部に入学すると、環境NGO「A SEED JAPAN」に入り、若者たちによる地球温暖化防止キャンペーンなどに邁進する。4年時に代表に就任し、卒業後はそのまま、団体の専従スタッフとなった。当時から政治への関心は高かったのだろうか。 「いえいえ、それはもっともっと後の話です。環境運動にも生物多様性、気候変動、オゾン層と色んなテーマがあって、提言をしたりイベントを開いたりと、『運動』というよりサークル活動に近い感覚でした。みんなで一つの事を成し遂げることが楽しくて、会社に入ることも全然考えられなくて。今思えば、行政職を目指す道もあったと思いますが、そんな計画性もなかったです」』、「オランダとベルギーで約20年暮らし、国際シンクタンクの職員として公共政策の研究に携わった」、「区長選への出馬を表明したのは今年4月。区内に移り住んだのも同月だ」、「支援者らと繰り広げた草の根の選挙活動が注目を集め、投票日前日にはその氏名がTwitterでトレンド入りするほどの話題に。最終的に現職の区長をわずか187票差で破り、接戦を制した」、大したものだ。
・『環境NGOでの活動を通じ、「環境的レイシズム(環境的人種差別)」という概念に出会い、衝撃を受けた。有色人種、女性、子どもなど、経済力の弱い社会的マイノリティほど、原子力発電所や軍事基地の近くに住まざるを得ない傾向が高く、汚染や健康の被害も集中しやすいという考え方だ。環境問題を考えるうえで、科学的要因に限らず政治的な力関係への着目が重要だと気づいた経験は「運動を続けた原動力でもあり、その後の政治活動にもつながった」と振り返る。 01年、長男の出産を機にパートナーの母国であるオランダのアムステルダムに移住。10年代に入り、地域から民主主義を志向する「ミュニシパリズム」と呼ばれる運動がアルゼンチン、スペイン、イタリアなど世界各国で広がる様子を目の当たりにし、地方自治に関心を持つようになった。「外国人」として地域活動に関わることができる範囲への限界を感じていた折、杉並区政の刷新を考える住民らが立ち上げた市民団体「住民思いの杉並区長を作る会」から、区長選出馬の打診を受ける。 「面白いことに、選挙権は3カ月住民票がないと与えられないんですが、立候補は住民票さえあればいつでもできるんです。最初は『杉並区に住んでるわけでもないし、無理無理』と何度も断っていたんですが、支援者の方々がネットで調べて『出られるよ』と教えてくださって。選挙時期もかなり近づいていたので、とりあえず住民票を杉並に移して住み始めたという感じです」 約20年間の海外生活を経て、暮らし始めたのは東京・西荻窪。駅周辺に個人経営の飲食店や雑貨店が立ち並び、「ニシオギ」の愛称で親しまれる人気のエリアだ。 「うちからちょっと歩くと昔ながらの豆腐屋や肉屋が並んでいて、タイムスリップしたような衝撃を受けました。元々、東京にはあまりいいイメージがなかったんですが、一発で街が好きになりました」 選挙戦では、区立施設の統廃合や駅前再開発、大規模道路拡幅計画など、住民の合意が得らない計画の抜本的な見直しを訴えた。 「(政策については)私がゼロから考えたわけではありません。住民思いの杉並区長を作る会が何年も議論をしてできていた政策集があり、まずはそこから出発しました。土台があったとはいえ、伝え方は試行錯誤でした。選挙は正解がない世界。何の経験もないから、これはやるべきかことか、正しいことをやっているのか、何もかもがわからないんです」』、「01年、長男の出産を機にパートナーの母国であるオランダのアムステルダムに移住。10年代に入り、地域から民主主義を志向する「ミュニシパリズム」と呼ばれる運動がアルゼンチン、スペイン、イタリアなど世界各国で広がる様子を目の当たりにし、地方自治に関心を持つようになった」、「杉並区政の刷新を考える住民らが立ち上げた市民団体「住民思いの杉並区長を作る会」から、区長選出馬の打診を受ける」、「(政策については)私がゼロから考えたわけではありません。住民思いの杉並区長を作る会が何年も議論をしてできていた政策集があり、まずはそこから出発しました」、選挙の中心は「市民団体」だったようだ。
・『それでも、毎日街頭に立って演説をしていると、立ち止まってもらったり、質問をされたりすることも増えていく。街宣と街宣の間には「タウンミーティング」という名前で地域住民とディスカッションを重ねながら、政策集をバージョンアップしていった。 無名の新人候補を支援すべく、歴史教科書問題、児童館廃止などの問題に関わってきたグループ、環境カフェ、地域の保育士など様々な団体や個人が連なり、ともにアイデアを練った。その中で生まれたのが「サポメンひとり街宣」。岸本さんが街頭宣伝に出ているときは、支援者の誰かが、代わりに駅前で応援演説に立つというスタイルだ。 「(ひとり街宣は)自然発生的に生まれたものです。選挙戦が始まった時、支援者の方々には『無名候補なんだから、とにかく住民に顔を知ってもらうことが大切』と言われていて。そんな状態を見かねて、その中のお一人が『それなら私がポスター持って立っています』と申し出てくださったんです。そうしたら『じゃあ僕も、私も』とスタイルが広がって行きました」 演説時はマイクを回して聴衆が質問や意見を述べる時間を作るなど、傾聴と対話を大切にした。学生時代、「A SEED JAPAN」で岸本さんと活動したファシリテーターの青木将幸さんは、選挙初日、永福町駅前で岸本さんの演説を聞いた際の印象をこう語る。 「同じ団体で活動していた時代から、さっちゃん(岸本さん)は先輩後輩関係なく、どんな人にも対等に話ができる人でした。聴衆の中には初めてマイクを握る方も多く、初めは戸惑う様子もありましたが、候補者に聞く姿勢があることがわかり、だんだん『この人は話して大丈夫だな』という、安心感のようなものがその場に広がっていきました」 こうした姿勢の理由を、本人はこう話す。 「選挙では、たとえ誰も聞いていなくても人前で話すという、拷問のようなことを何週間もやらないといけません。今までもレクチャーや会議で話すことはありましたが、目の前には人がいたので、最初は苦痛でした。足を止めて聞いてくださる方が増えていくにつれ、せっかくなので皆さんから質問を出してほしいなと思ったんです。例えば教員なら教育、保育士なら保育、看護士なら医療と、それぞれの分野で話したいことがある。マイクを回していくと、もうなんでもかんでも話題が出てくるんですよね。そうした中で、少しずつスタイルが出来上がっていきました」』、「「サポメンひとり街宣」」は「無名候補」の選挙戦術としては有効だったようだ。
・『当選後の今、勝因をこう振り返る。 「とにかく色んな立場の人たちが関わってくれた選挙でした。その人たちにとって『自分ごと』になったということが一番大きかったと思っています」 就任後の報道では、「杉並区初の女性区長」という点も強調された。過去に記者が取材をした中では、性別にのみ注目が当たることを当の本人が快く思っていないケースもあった。「岸本さんの場合はどうですか?」と聞いてみると、あっけらかんと答えた。 「むちゃくちゃ強調したいです(笑)。こないだ、省庁発の学習イベントに参加したんですが、講師は25人全員が男性だったんです。もしこれが国際的な会合であれば、性別はもちろんのこと、人種のバランスも考慮しないといけない。でも、日本の社会はこの状態が当たり前に粛々と続いてきたんだなと思ったのね。そのくらい男社会なんだから、風穴あけなきゃダメでしょ、ぐらいの気持ちでいます」 当選後は日本外国特派員協会で会見を開くなど、海外メディアからの関心も高い。杉並区というローカルな単位から、今後どのような変革が起こるのか。いま、世界からの注目が集まる』、「省庁発の学習イベントに参加したんですが、講師は25人全員が男性だったんです・・・そのくらい男社会なんだから、風穴あけなきゃダメでしょ、ぐらいの気持ちでいます」、今後の活躍に期待したい。

次に、10月27日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「日本人の「女性は家を守る」呪縛の根源は?専業主婦と働く女性の論戦が勃発」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/311884
・『「専業主婦」vs「働く女性」、女性同士で煮え切らない思い  専業主婦は24時間休みなく働いているので、家事育児代行の時給に照らし合わせると、年収1314万円分の仕事をしている――。 先日、ある市長選に立候補予定の女性が、こんな内容のツイートをした。ほどなくして削除されてしまったが、この主張についてはさまざまな議論がわきあがった。タレントのフィフィさんもそのひとりで、こんなツイートをして話題になった。 <専業主婦の労働を時給にすると1,500円で、24時間働いていることになるから…って算出して、私たちは大変なの!ってツイート見たけど、稼ぎたいなら外で働けばいいじゃない。家事も育児も独りでやって、さらに外で働いている私からしたら、こうした愚痴を何のためにツイートしているのかが分からない。>(参照) これには大きくうなずく、「外で働く女性」も多いのではないか。ブラック労働ぶりでいえば、男性が家事や育児を手伝わないワーキングマザーの方が専業主婦よりもはるかに過酷だからだ。 フルタイムで働いて退社してから、保育園まで自転車をすっ飛ばして子どものお迎えをして、スーパーで買い物をして、食事を作って子どもに食べさせる。そこから、洗濯や掃除をして、子どもを寝かせつけてから、夜遅くまで会社の仕事をして、わずかな睡眠時間で朝食をつくって再び満員電車へ…なんて女性は今や日本中にあふれている。 総務省によれば2021年の共働き世帯は1247万世帯で、専業主婦世帯は566万世帯となっている。つまり、冒頭で言う「年収1314万円換算の専業主婦」よりもはるかにハードに働く女性などゴマンといるのだ。) 専業主婦の仕事が年収1314万円というのなら、ワンオペ家事・育児をしながら、外でストレスフルに働く「兼業主婦」の年収はいくらになるのか。いや、そもそも自分が選んだ専業主婦という生き方を「カネ」に置き換えるのもおかしな話ではないか。 そんな声が多く聞かれ、フィフィさんの今回の一連の投稿には約7万の「いいね」が付いている』、「男性が家事や育児を手伝わないワーキングマザーの方が専業主婦よりもはるかに過酷だからだ。 フルタイムで働いて退社してから、保育園まで自転車をすっ飛ばして子どものお迎えをして、スーパーで買い物をして、食事を作って子どもに食べさせる。そこから、洗濯や掃除をして、子どもを寝かせつけてから、夜遅くまで会社の仕事をして、わずかな睡眠時間で朝食をつくって再び満員電車へ…なんて女性は今や日本中にあふれている」、「共働き世帯は1247万世帯で、専業主婦世帯は566万世帯となっている。つまり、冒頭で言う「年収1314万円換算の専業主婦」よりもはるかにハードに働く女性などゴマンといるのだ」、その通りだ。
・『「女性は家庭を守る」という思想に追い詰められている  もちろん、批判の声もある。中でも多いのは、フィフィさんのようなことを言うのは、心ない「専業主婦叩き」だというものだ。 ご存じの方も多いだろうが、今や衰退の一途をたどっている専業主婦の皆さんは近年、ネットやSNSでボロカスに叩かれることがある。代表的なものは「年金払ってない」というものだ。 会社員の妻で、パートなどの収入も少ない場合、「第3号被保険者」という扱いになるので、国民年金の保険料を支払わなくても将来は満額の年金を受け取る事ができる。これが一部のワーキングマザーから「特権」ではないかとかねてから批判されているのだ。 そこでこの“専業主婦バッシング”へのカウンターとして、「専業主婦はブラック労働」「自分を犠牲にして夫や子どもを支えることほど過酷で尊い仕事はない」という訴えをする人も増えている。「主婦の仕事を時給換算すると年収1314万円」という主張もこのようなムードの中で生まれたものだ。 つまり今、日本では、女性活躍だ、ジェンダー平等だ、などとカッコいいことを掲げているが、専業主婦と兼業主婦が「家事や育児をバカにするな」「そんなのこっちは働きながらやってんだよ」なんて感じで、激しくののしり合っているというのが実態なのだ。 では、なぜこうなってしまうのか。いろいろなご意見があるだろうが、筆者は「女性は家庭を守る」という思想が、日本人の頭にさながらマインドコントロールのように刷り込まれてしまっていることが大きいと考えている。 一口に「専業主婦」と言ってもさまざまな人がいる。家庭の事情などで、働きたくても働けない専業主婦の方もいらっしゃるだろう。 しかし、中には「女性は家庭を守らなくてはいけない」という強い思い込みがあって、専業主婦という生き方を選んでいる人もいるのではないか。そういう考えに基づいて、あれもこれもすべて自分で背負い込んでしまう人というのは、夫を甘やかしてしまっている部分もある。いい歳こいて仕事以外、料理も洗濯もできない、自分のシャツがどこにあるのかもわからない「子供のようなオッサン」を日本社会に大量につくってしまっている。 「兼業主婦」側も、「女性は家庭を守る」という思想を引きずっていると、苦しめられるケースが多い。「女性は家庭を守らなくてはいけない」という罪悪感がある人は、ハードに働きながらも、家事や育児も「自分がやらなくては」と頑張ってしまう。 さらに事態を悪化させるのが、夫側がイクメンを気取りながらも、実は心の奥底で、「女性は家庭を守らなくてはいけない」という考えを持っている場合だ。家事分担と言っても、食器洗いやゴミ出しくらいしかしないので、「共働き」なのに女性側の負担ばかりが重くなる。 つまり、我々が無意識のうちに受け入れてしまっている「女性は家庭を守る」という「教義」こそが、専業主婦や兼業主婦の皆さんを苦しめている諸悪の根源なのだ』、「あれもこれもすべて自分で背負い込んでしまう人というのは、夫を甘やかしてしまっている部分もある。いい歳こいて仕事以外、料理も洗濯もできない、自分のシャツがどこにあるのかもわからない「子供のようなオッサン」を日本社会に大量につくってしまっている」、「子供のようなオッサン」とは言い得て妙だ。「我々が無意識のうちに受け入れてしまっている「女性は家庭を守る」という「教義」こそが、専業主婦や兼業主婦の皆さんを苦しめている諸悪の根源なのだ」、その通りだ。
・『ジェンダー平等の時代に呪縛から逃れられないのはなぜ  「いやいや、今どき女性は家庭を守るものなんて考えているヤツはいないって」という人もいるだろうが、そんなことはない。 「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考えには、アメリカの熱烈なトランプ支持者同様に「岩盤支持層」がいるのだ。 内閣府の男女共同参画社会に関する世論調査では、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という意識について聞いている。 令和元年9月では「賛成」「どちらかといえば賛成」は合わせて35%もいた。3年前の平成28年9月には40.5%だったので確実に減少しているが、それでもまだ日本人の3分の1は、「女性は家を守れ」と考えているということなのだ。 しかも、女性蔑視の男たちがそのように押し付けているわけでもない。令和元年調査を性別で見ると、「賛成」をしている女性は31.1%にも及んでいるのだ。 では、ジェンダー平等、女性活躍などと言われて久しいのに、「女性は家庭を守る」という役割に固執する女性が多いのか』、「「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という意識について聞いている。 令和元年9月では「賛成」「どちらかといえば賛成」は合わせて35%もいた。3年前の平成28年9月には40.5%だったので確実に減少しているが、それでもまだ日本人の3分の1は、「女性は家を守れ」と考えているということなのだ」、「令和元年調査を性別で見ると、「賛成」をしている女性は31.1%にも及んでいるのだ」、やはり「女性は家庭を守る」との伝統的考え方は根強いようだ。
・『自民党の独特の思想が、令和の時代も奇妙に存在  「それが日本人の伝統だ!」「母親が家庭にいるのは当然だ」と主張される人も多いだろうが、実はこれは戦後80年にわたって日本人の教育を牛耳ってきた、自民党の「家庭長」という独特の思想によるところが大きい。 1979年、自民党が「家庭基盤の充実に関する対策要綱」というものを発表した。その中では、結婚した女性は、家庭の長として、家族経営を采配する存在であると定めて、「家庭長」と呼んでいる。 ちなみに、こういう考え方は、日本古来の伝統とかは一切関係ない。江戸時代まで庶民は「家庭」など意識せず、今より自由に結婚・恋愛をしていた。所帯を持っても共働きが一般的だったのだ。 では、いつから「専業主婦」が生まれたのかというと、明治以降だ。富国強兵を実現するために「家父長制度」というものが広まった。その流れの中で既婚女性を「家庭」に強固に縛りつけるようになるきっかけがあった。戦争だ。 男たちが兵役に出たことで、未婚女性は労働力として動員されたが、既婚女性だけは免除された。アメリカなど他国では戦争になると既婚女性も工場で働いたり、中には軍隊に入るケースもあったが、日本はなぜか「家庭を守れ」と家から出ることを許さなかった。 個人的には、この戦時中の女性の扱いが、「女性は家庭を守る」という奇妙な表現のルーツになったと思っている。)  冷静に考えれば、家事や育児をしていることを「守る」と表現するのはおかしい。泥棒や自然災害から家庭を守るというのなら、肉体的にも男性の方が向いている。にもかかわらず、なぜ女性が「家庭を守る」ことを求められたのかというと、夫が徴兵された間に「銃後を守る」というところから来ているのではないか。 いずれにせよ、自民党の専業主婦を「家庭長」とする思想、つまりは「女性は家庭を守る」という考え方は令和の今も健在だ。だから、「こども庁」が土壇場で「こども家庭庁」に変更される。子どもは家庭長(母)が守る、「家庭の付属物」というような扱いなので、欧米のように、子どもを「1人の独立した人間」と見ることに強い抵抗があるのだ。 選択的夫婦別姓に反対しているのも同じだ。家庭を守るべき家庭長(妻)が、夫と異なる姓を名乗るなど、自民党的国家観・家族観からすれば許されることではない。そういう思想が根っこにあるので、自民党議員は、女性を「産む機械」などと呼んだり、「女性がいる会議は長い」なんて失言をしてしまう。「女は家庭に入って子どもを産んで育てろ」が本音なのだ』、「いつから「専業主婦」が生まれたのかというと、明治以降だ。富国強兵を実現するために「家父長制度」というものが広まった。その流れの中で既婚女性を「家庭」に強固に縛りつけるようになるきっかけがあった。戦争だ」、「アメリカなど他国では戦争になると既婚女性も工場で働いたり、中には軍隊に入るケースもあったが、日本はなぜか「家庭を守れ」と家から出ることを許さなかった。 個人的には、この戦時中の女性の扱いが、「女性は家庭を守る」という奇妙な表現のルーツになったと思っている」、「自民党の専業主婦を「家庭長」とする思想、つまりは「女性は家庭を守る」という考え方は令和の今も健在だ。だから、「こども庁」が土壇場で「こども家庭庁」に変更される。子どもは家庭長(母)が守る、「家庭の付属物」というような扱いなので、欧米のように、子どもを「1人の独立した人間」と見ることに強い抵抗があるのだ」、「家庭長」というのは初めて知ったが、「自民党」が「女性は家庭を守る」という考え方が強い理由の一端はここにあるのだろう。
・『旧統一教会とウマが合う自民党、「女性」の役割においても一致  自民党が「家庭長」と言い出した1979年というのは、約2年続いた福田赳夫内閣が終わったタイミングだ。選挙では日本共産党が39議席と大躍進して、自民党としては「共産主義勢力」に対して危機感を強めていた時だ。 そこで自民党の選挙で心強い味方となっていたのが、共産主義との戦いを掲げて、岸信介、福田赳夫という政治家との距離をつめていた旧統一教会系の政治団体「国際勝共連合」である。 この5年前の1974年5月7日、文鮮明氏が帝国ホテルに1700人を集めて開催された「希望の日晩餐会」では、岸信介元首相が名誉実行委員長を務め、当時大蔵大臣だった福田赳夫氏がこうスピーチした。 「アジアに偉大なる指導者現る。その名は文鮮明である」 偶然かもしれないが、そんな偉大な指導者も、「世界平和は真の家庭から」ということを強く主張していた。5年前に自分を褒め称えて福田氏率いる自民党が、「家庭長」構想を公表した時は、さぞ喜んだに違いない。 さて、現代に戻ろう。10月20日、世界平和統一家庭連合の記者会見で、スーツ姿の男性17人がズラッと並んだ。これは教会改革を主導的に進めていく男性たちで、2世信者問題の対応にもあたるという。ただ、この様子を見ていた紀藤正樹弁護士はバッサリ切り捨てた。 「女性がいない。これは統一教会の教義である男尊女卑を表している」 そういえば、第2次岸田改造内閣では女性の入閣は2人しかいない。自民党4役を務める女性議員はゼロになった。旧統一教会と何十年も蜜月だったのは、やはりこういうところもウマが合ったのだろう。 陰謀論の世界では、「戦後の自民党を裏で操っていたのは旧統一教会」なんて話がまことしやかにささやかれている。が、この政党の「女性」と「家庭」に対するスタンスを見ていると、あながちデタラメではないような気もしてしまう。 旧統一教会と縁を切っても、自民党には「家庭」の重要性を説く支持団体が山ほどある。ということは、自民党政権が続く限り、残念ながら、日本人の「女性は家庭を守る」という病も治らないのではないか』、「旧統一教会とウマが合う自民党、「女性」の役割においても一致」、「自民党政権が続く限り、残念ながら、日本人の「女性は家庭を守る」という病も治らないのではないか」、誠に残念だ。

第三に、11月15日付け東洋経済オンラインが掲載したライター/「チェリー」編集長の霜田 明寛氏による「「女子アナ」は"人生の成功者"だという最大の誤解 ドラマ「エルピス」が描く彼女たちの生きづらさ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/632822
・『これほどまでに“女子アナの生きづらさ”に焦点を当てた作品が、かつてあっただろうか。狭き門を通り抜けて女子アナとなり、“人生の成功者”のように扱われる彼女たちのもう一方の姿——。 関西テレビ(以下、カンテレ)制作のドラマ『エルピス—希望、あるいは災い—』は、それを生々しく描いている。月曜22時という、かつての『SMAP×SMAP』の時間に放送されるエンターテインメント作品でありながら、冤罪の死刑囚を救おうと奮闘するテレビ局員の姿を描くなど、東海テレビのドキュメンタリーかと感じるくらいに重厚だ。 論点は多く存在するが、長澤まさみが演じる女性アナウンサーの姿に、彼女たちの“生きづらさ”が集約されているように感じた。『エルピス』を通して見える、女子アナが置かれている状況、彼女たちとジャーナリズムとの距離、就職活動における選抜の段階から本来の役割を見失わせてしまう構造などについて論じていきたい。(文中敬称略)』、興味深そうだ。
・『女子アナが抱える「生きづらさ」  筆者は2009年にテレビ局の就活に関する著書を出して以来、各企業や大学の主催する就活講演はもとより、自身の運営する就活セミナーで多くの学生をアナウンサーとして輩出してきた。その数は100名以上に及ぶが、現在の彼女たちの年齢は20代~30代半ばあたりになる。彼女たちが抱える生きづらさと、主人公の抱えるものに重なりを感じたのである。 第2話「女子アナと死刑囚」の序盤に、こんなシーンがある。長澤まさみ演じる浅川恵那は「エナーズ・アイ」というニュースを紹介するコーナーを担当している。しかし、扱うニュースの題材を決めるのに自分の意見は取り入れられない。自分の本当に注目したニュースを提案すると、番組の男性プロデューサーに否定され、こうたしなめられる。 「浅川恵那が何に注目してるかを決めるのは、浅川恵那じゃねえの。浅川恵那は、“俺らが浅川恵那が注目してることにしたいニュース”を、あたかも本当に注目してるみたいに“読む”ための人」) このセリフに、女子アナの置かれている状況が集約されている気がした。若くて美しい人形として、局の上層部の考えたことを、その口を通して喋らされている――。花形の職業に見られがちな彼女たちだが、このシーンが象徴するように、彼女たちの局内での立ち位置は意外にもそう高くはない。 ニュース番組を担当すると、女子アナがキャスターと呼ばれることもあるが、彼女たちは決してジャーナリストではない。いち会社員であり、局の代弁をさせられている。そんなことを考えさせられるのが、同じ第2話のラストのシーンである。 かつてキャスターを務めていた浅川は「自分があたかも真実かのように伝えたことに、本当の真実がどれだけあったのか……」と悩み始める。そして現在、その苦悩が体調にも表れてきたことに対し、「私には今バチが当たっているんだと思います」と語り、過去の番組内での自分を思い出す。 福島第一原発事故を受けて「問題ありません」と言う専門家に頷く自分。東京オリンピックの招致活動で安倍晋三首相が「原発はコントロール下」とプレゼンする、いわゆる“アンダーコントロール”発言をニュースとして伝える自分。東京五輪開催決定時、福島に行って「被災地の復興にもはずみになる」と笑顔で子どもたちを煽る自分……。 権力の監視がメディアの仕事であるとすれば、女子アナたちがさせられているのは監視ではなく、笑顔での権力容認では――とも思えるシーンだ。ジャーナリストであれば、そこに意見をすることもできるかもしれないが、彼女たちにその権限はない。むしろ、その選択肢を持った人間が、ニュース番組のキャスターとして抜擢される例はほぼ存在しないと言っていいだろう』、「扱うニュースの題材を決めるのに自分の意見は取り入れられない。自分の本当に注目したニュースを提案すると、番組の男性プロデューサーに否定され、こうたしなめられる。 「浅川恵那が何に注目してるかを決めるのは、浅川恵那じゃねえの。浅川恵那は、“俺らが浅川恵那が注目してることにしたいニュース”を、あたかも本当に注目してるみたいに“読む”ための人」 このセリフに、女子アナの置かれている状況が集約されている気がした。若くて美しい人形として、局の上層部の考えたことを、その口を通して喋らされている」、「女子アナたちがさせられているのは監視ではなく、笑顔での権力容認では――とも思えるシーンだ」、確かにその通りだ。
・『入社試験のために「競馬」や「麻雀」を始める就活生  入社試験でも「気になるニュース」程度のことは聞かれるが、そこでも強い問題意識は求められておらず、そこから関連して自分の人となりがわかるような話にすり替えるか、仮に意見を述べるとしてもその意見は強すぎないほうがウケがいい。 面接ではニュースに対する知識や関心よりも、立場が上の局員たちにうまく笑顔で話をあわせる力を求められている。それを察知し、そのために、わざわざ競馬や麻雀をやり始める就活生まで出始める始末だ。 アナウンサー試験は、アイドルレベルのルックスを持ちながら「アイドルでは終わりたくない」と考えている女性、ルックスだけではなく、大学まで通ったその知性を少しでも活かした職業につきたいと考えている女性が多く受ける傾向にある。 そんな“外見的にも内面的にも優秀な女性たち”が、入社後、この構造に取り込まれていく。給料面などの待遇は悪くない彼女たちが、ときに国連職員といった仕事に転職するのはその反動といってもいいかもしれない。逆に、その構造に馴染むことができれば、国葬の司会にだって上り詰めることができる。政府の代弁者としての仕事の完成形である。 女性誌などで、“働きながら自己実現をする女性”の代表のような取り上げ方をされることも多い女子アナたち。だが、驚くほど発言の自由度は少なく、最近は個人のSNSも局内で監視されている状況で、その実“テレビ局という男性社会が望んだ女性像”の枠をはみ出ることが許されていないのが現状と言っていいだろう』、「女子アナたち。だが、驚くほど発言の自由度は少なく、最近は個人のSNSも局内で監視されている状況で、その実“テレビ局という男性社会が望んだ女性像”の枠をはみ出ることが許されていないのが現状」、寂しい限りだが、これが現実だろう。
・『「弘中綾香」という存在  “女子アナらしくない”を売りにして名を売る人もいるじゃないか、という反論もあるかもしれない。たとえば近年、象徴的な存在のひとりとされるのがテレビ朝日アナウンサーの弘中綾香だろう。 彼女の主戦場はバラエティ番組で、経費削減の最中にあるテレビ局の“出演料のかからないタレント”という側面もある。辛辣な言い方かもしれないが、タレントが言ったら、それなりな発言を、女子アナが言うから面白く聞こえたりもする。視聴者の中に無意識に存在する“女子アナ”という枠がどれだけ強固だったかを再確認させられる。 制作者たちにとって弘中綾香という存在は、これまで自分たちで決めてきた“女子アナ”という枠を少しはみ出したが、全体に脅威を及ぼすほどではない――という絶妙さがあると筆者は感じる。“枠の外だけれども安全地帯”がどこにあるかの掴み方はうまいと言えるが、女子アナのあり方や概念を覆すような事例ではない。 ここまで、厳しく考察してしまったが、では“女子アナ”として働く彼女たちの多くは何も考えていないのだろうか? もちろん、女子アナの中にもいろいろなタイプがいる。もともと自身の考え自体がない者、考えはあったがSDGsなどに代表される “流行の正しさ”を口にすることで満足してしまった者、考えはあるが出自が恵まれているがゆえの強者の論理を強固にする者……とさまざまだ。 『エルピス』の浅川のように、正しさへの感覚が鋭敏なほど、悩んでしまう傾向がある。結局、真剣に考える人ほど病んでいく構造になっているのだ。 その点、フジテレビが掲げた「楽しくなければテレビじゃない」とは、局員が健やかに生きていくために、“楽しくないもの”から目を逸らすための道標にもなっている、極めて秀逸なキャッチコピーである。) とはいえ、『エルピス』はカンテレが制作だが、フジテレビ系列で放送されている。そもそもプロデューサーの佐野亜裕美はTBSの局員だったが、TBSでは実現できなかった本作をカンテレが制作するということで同局に移籍したのだという。 キー局ではこのドラマの企画が通らなかったという事実自体が、「正しさを追求した」取材内容がなかなか放送できないドラマの登場人物たちと重なる。自分たちにブーメランのように返ってくる可能性もあるこの作品にGOを出したカンテレをはじめ、この役を受けた長澤まさみや、脚本家・プロデューサーといったスタッフの覚悟に心からの賛辞をおくりたい。 だからこそ、例えば「長澤まさみの色気にメロメロ」といったような記事が多く出回ることは本人たちも不本意だろうし、もし実際に女子アナたちが何らかのメッセージを訴えたとしても、結局は彼女たちの表面にしか大衆の関心はたどり着かないのではないだろうか、という諦めにも繋がってしまう』、「プロデューサーの佐野亜裕美はTBSの局員だったが、TBSでは実現できなかった本作をカンテレが制作するということで同局に移籍したのだという。 キー局ではこのドラマの企画が通らなかったという事実自体が、「正しさを追求した」取材内容がなかなか放送できないドラマの登場人物たちと重なる。自分たちにブーメランのように返ってくる可能性もあるこの作品にGOを出したカンテレをはじめ、この役を受けた長澤まさみや、脚本家・プロデューサーといったスタッフの覚悟に心からの賛辞をおくりたい」、「自分たちにブーメランのように返ってくる可能性もあるこの作品にGOを出したカンテレをはじめ、この役を受けた長澤まさみや、脚本家・プロデューサーといったスタッフの覚悟に心からの賛辞をおくりたい」、その通りだ。
・『女子アナたちの思いを“ないもの”としていいのか  だが、それでも――女性アナウンサーたちの中にある思いを“ないもの”のようにしてしまうのはマズいのではないだろうか。 実際に存在するのに、誰かにとって不都合なものが“ないもの”のようにされる。そのうちに、誰も目の届かないところに置かれ、人々は忘れてしまう。 それこそ、このドラマで扱われている死刑制度にも通じるものがある。実際に行われているにもかかわらず、多くの人はその詳細を知らない。大衆が無関心なばかりか、その執行の責任者たる法務大臣までもが「はんこを押す」「地味な仕事」という感覚になる。 仮に権力者にとって不都合なものだったとしても、ちゃんと“ある”のならば、その存在を提示する――それこそが、マスメディアの役割ではないだろうか。 本作の脚本を務める渡辺あやは、人間には“不都合な欲望”があると語る。昨今はそれを〈「見えるところには置かないようにしましょう」という風潮がある。これが果たして本当にいいことなんだろうか……というのが、ずっと思っているところ〉なのだと言う(「文春オンライン」2022年10月31日)。 隠されているけれど、実際は存在するものを、ちゃんと“ある”と提示すること。同じテレビ局の中でも、ジャーナリズムの前にドラマが体現しているのは皮肉なことかもしれない。 『エルピス』で浅川は、マスコミが犯した罪を、自分が犯した罪かのように謝罪する。組織に所属していると、“私の罪”を“私たちの罪”に薄めようとする者が多い中で、彼女は“私たちの罪”を“私の罪”ととらえて謝るのだ。 主語を大きくすることで、見えなくなることがある。本稿でもわかりやすく“女子アナ”と括ってしまったが、その実はさまざまだ。浅川のように逆に主語を狭め、“私たちの罪”を“私の罪”と自覚する人が増えることが、何かが変わる希望になるのではないか、と信じている』、「主語を大きくすることで、見えなくなることがある。本稿でもわかりやすく“女子アナ”と括ってしまったが、その実はさまざまだ。浅川のように逆に主語を狭め、“私たちの罪”を“私の罪”と自覚する人が増えることが、何かが変わる希望になるのではないか、と信じている」、同感である。
タグ:AERAdot「187票差で杉並区初の女性区長、岸本聡子さんの異色経歴 「男社会に風穴あけなきゃダメ」」 女性活躍 (その26)(187票差で杉並区初の女性区長 岸本聡子さんの異色経歴 「男社会に風穴あけなきゃダメ」、日本人の「女性は家を守る」呪縛の根源は?専業主婦と働く女性の論戦が勃発、「女子アナ」は"人生の成功者"だという最大の誤解 ドラマ「エルピス」が描く彼女たちの生きづらさ) 「オランダとベルギーで約20年暮らし、国際シンクタンクの職員として公共政策の研究に携わった」、「区長選への出馬を表明したのは今年4月。区内に移り住んだのも同月だ」、「支援者らと繰り広げた草の根の選挙活動が注目を集め、投票日前日にはその氏名がTwitterでトレンド入りするほどの話題に。最終的に現職の区長をわずか187票差で破り、接戦を制した」、大したものだ。 「01年、長男の出産を機にパートナーの母国であるオランダのアムステルダムに移住。10年代に入り、地域から民主主義を志向する「ミュニシパリズム」と呼ばれる運動がアルゼンチン、スペイン、イタリアなど世界各国で広がる様子を目の当たりにし、地方自治に関心を持つようになった」、「杉並区政の刷新を考える住民らが立ち上げた市民団体「住民思いの杉並区長を作る会」から、区長選出馬の打診を受ける」、 「(政策については)私がゼロから考えたわけではありません。住民思いの杉並区長を作る会が何年も議論をしてできていた政策集があり、まずはそこから出発しました」、選挙の中心は「市民団体」だったようだ。 「「サポメンひとり街宣」」は「無名候補」の選挙戦術としては有効だったようだ。 「省庁発の学習イベントに参加したんですが、講師は25人全員が男性だったんです・・・そのくらい男社会なんだから、風穴あけなきゃダメでしょ、ぐらいの気持ちでいます」、今後の活躍に期待したい。 ダイヤモンド・オンライン 窪田順生氏による「日本人の「女性は家を守る」呪縛の根源は?専業主婦と働く女性の論戦が勃発」 「男性が家事や育児を手伝わないワーキングマザーの方が専業主婦よりもはるかに過酷だからだ。 フルタイムで働いて退社してから、保育園まで自転車をすっ飛ばして子どものお迎えをして、スーパーで買い物をして、食事を作って子どもに食べさせる。そこから、洗濯や掃除をして、子どもを寝かせつけてから、夜遅くまで会社の仕事をして、わずかな睡眠時間で朝食をつくって再び満員電車へ…なんて女性は今や日本中にあふれている」、 「共働き世帯は1247万世帯で、専業主婦世帯は566万世帯となっている。つまり、冒頭で言う「年収1314万円換算の専業主婦」よりもはるかにハードに働く女性などゴマンといるのだ」、その通りだ。 「あれもこれもすべて自分で背負い込んでしまう人というのは、夫を甘やかしてしまっている部分もある。いい歳こいて仕事以外、料理も洗濯もできない、自分のシャツがどこにあるのかもわからない「子供のようなオッサン」を日本社会に大量につくってしまっている」、「子供のようなオッサン」とは言い得て妙だ。「我々が無意識のうちに受け入れてしまっている「女性は家庭を守る」という「教義」こそが、専業主婦や兼業主婦の皆さんを苦しめている諸悪の根源なのだ」、その通りだ。 「「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という意識について聞いている。 令和元年9月では「賛成」「どちらかといえば賛成」は合わせて35%もいた。3年前の平成28年9月には40.5%だったので確実に減少しているが、それでもまだ日本人の3分の1は、「女性は家を守れ」と考えているということなのだ」、「令和元年調査を性別で見ると、「賛成」をしている女性は31.1%にも及んでいるのだ」、やはり「女性は家庭を守る」との伝統的考え方は根強いようだ。 「いつから「専業主婦」が生まれたのかというと、明治以降だ。富国強兵を実現するために「家父長制度」というものが広まった。その流れの中で既婚女性を「家庭」に強固に縛りつけるようになるきっかけがあった。戦争だ」、「アメリカなど他国では戦争になると既婚女性も工場で働いたり、中には軍隊に入るケースもあったが、日本はなぜか「家庭を守れ」と家から出ることを許さなかった。 個人的には、この戦時中の女性の扱いが、「女性は家庭を守る」という奇妙な表現のルーツになったと思っている」、 「自民党の専業主婦を「家庭長」とする思想、つまりは「女性は家庭を守る」という考え方は令和の今も健在だ。だから、「こども庁」が土壇場で「こども家庭庁」に変更される。子どもは家庭長(母)が守る、「家庭の付属物」というような扱いなので、欧米のように、子どもを「1人の独立した人間」と見ることに強い抵抗があるのだ」、「家庭長」というのは初めて知ったが、「自民党」が「女性は家庭を守る」という考え方が強い理由の一端はここにあるのだろう。 「旧統一教会とウマが合う自民党、「女性」の役割においても一致」、「自民党政権が続く限り、残念ながら、日本人の「女性は家庭を守る」という病も治らないのではないか」、誠に残念だ。 東洋経済オンライン 霜田 明寛氏による「「女子アナ」は"人生の成功者"だという最大の誤解 ドラマ「エルピス」が描く彼女たちの生きづらさ」 関西テレビ(以下、カンテレ)制作のドラマ『エルピス—希望、あるいは災い—』 「扱うニュースの題材を決めるのに自分の意見は取り入れられない。自分の本当に注目したニュースを提案すると、番組の男性プロデューサーに否定され、こうたしなめられる。 「浅川恵那が何に注目してるかを決めるのは、浅川恵那じゃねえの。浅川恵那は、“俺らが浅川恵那が注目してることにしたいニュース”を、あたかも本当に注目してるみたいに“読む”ための人」 このセリフに、女子アナの置かれている状況が集約されている気がした。 若くて美しい人形として、局の上層部の考えたことを、その口を通して喋らされている」、「女子アナたちがさせられているのは監視ではなく、笑顔での権力容認では――とも思えるシーンだ」、確かにその通りだ。 「女子アナたち。だが、驚くほど発言の自由度は少なく、最近は個人のSNSも局内で監視されている状況で、その実“テレビ局という男性社会が望んだ女性像”の枠をはみ出ることが許されていないのが現状」、寂しい限りだが、これが現実だろう。 「プロデューサーの佐野亜裕美はTBSの局員だったが、TBSでは実現できなかった本作をカンテレが制作するということで同局に移籍したのだという。 キー局ではこのドラマの企画が通らなかったという事実自体が、「正しさを追求した」取材内容がなかなか放送できないドラマの登場人物たちと重なる。自分たちにブーメランのように返ってくる可能性もあるこの作品にGOを出したカンテレをはじめ、この役を受けた長澤まさみや、脚本家・プロデューサーといったスタッフの覚悟に心からの賛辞をおくりたい」、 「自分たちにブーメランのように返ってくる可能性もあるこの作品にGOを出したカンテレをはじめ、この役を受けた長澤まさみや、脚本家・プロデューサーといったスタッフの覚悟に心からの賛辞をおくりたい」、その通りだ。 「主語を大きくすることで、見えなくなることがある。本稿でもわかりやすく“女子アナ”と括ってしまったが、その実はさまざまだ。浅川のように逆に主語を狭め、“私たちの罪”を“私の罪”と自覚する人が増えることが、何かが変わる希望になるのではないか、と信じている」、同感である。
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アパレル(その4)(フランスで1月から売れ残り品の廃棄が禁止に 世界初の「衣服廃棄禁止令」がアパレルに迫る変革、ユニクロ失速「真の要因」とZARAやH&Mなど欧米ブランドを打ち破る“秘策”、過去5年で売り上げ倍増 コロナの逆風跳ね返す ノースフェイス 「爆発的人気」はいつまで続くか、ノースフェイス 成長のカギ握る「女性と子ども」 主力のメンズに続く「第2 第3の柱」を強化) [産業動向]

アパレルについては、2020年7月18日に取上げた。久しぶりの今日は、(その4)(フランスで1月から売れ残り品の廃棄が禁止に 世界初の「衣服廃棄禁止令」がアパレルに迫る変革、ユニクロ失速「真の要因」とZARAやH&Mなど欧米ブランドを打ち破る“秘策”、過去5年で売り上げ倍増 コロナの逆風跳ね返す ノースフェイス 「爆発的人気」はいつまで続くか、ノースフェイス 成長のカギ握る「女性と子ども」 主力のメンズに続く「第2 第3の柱」を強化)である。

先ずは、本年1月15日付け東洋経済オンライン「フランスで1月から売れ残り品の廃棄が禁止に 世界初の「衣服廃棄禁止令」がアパレルに迫る変革」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/576527
・『ファッションの発信地で始まった異例の規制。日本でも、在庫の焼却処分ゼロに踏み切るアパレル企業が出始めている。 トップス、ボトムス、アウター。魅力的な服が並ぶ店内で、陳列された商品を手に取っては鏡の前で合わせたり、試着したり。全国のアパレルショップで日々繰り広げられる光景だ。 しかしその裏には、予期せぬ天候不順やトレンドの変化で簡単に売れ残ってしまう大量の商品と向き合う販売員らがいる。在庫問題はアパレル企業にとって積年の課題なのだ』、興味深そうだ。
・『リサイクル、寄付での処理を義務づけ  そんなアパレル業界の根本を揺るがしかねない規制の運用が2022年1月、ファッションの発信地であるフランスで始まった。売れ残った新品の衣類を、企業が焼却や埋め立てによって廃棄することを禁止するという内容だ。 禁止令は、2020年2月に公布された循環経済に関する法律(loi anti-gaspillage pour une économie circulaire)で定められたもの。同法は、脱プラスチックや、廃棄される製品の再利用を促し、大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会構造を是正することを目的に制定された。 その中で衣類や家電については2022年1月から、売れ残り品をリサイクルや寄付によって処理することを義務付ける。食品以外の在庫廃棄の規制に踏み切った法律は世界初となる。 フランスでは、ラグジュアリーブランドなどによる売れ残り品の廃棄が社会問題化していた。経済産業省生活製品課の永澤剛課長は「循環経済の基本的な思想をより具現化した法律と言える。世界的に同様の廃棄禁止が一般化するかはわからないが、ファッション分野で影響力のあるフランスが規制を開始したという点で、一定程度の影響があるかもしれない」と見る』、「衣類や家電については2022年1月から、売れ残り品をリサイクルや寄付によって処理することを義務付ける。食品以外の在庫廃棄の規制に踏み切った法律は世界初」、「ファッション分野で影響力のあるフランスが規制を開始したという点で、一定程度の影響があるかもしれない」、少なくとも環境問題に関心が深い欧州各国には影響力がありそうだ。
・『衣類のCO₂排出量は自家用車に匹敵  国内でも、ファッション産業による環境への負荷は以前から指摘されてきた。 環境省の調査によると、2019年度に日本が排出した温室効果ガスは二酸化炭素(CO₂)換算で約12億トン。一方、国内で供給される衣類によるCO₂の排出量(原材料調達から製造、販売、廃棄まで、海外での排出を含む)は約9500万トンと推計されている。これは同年度に国内の自家用乗用車から排出された9458万トン(国交省調べ)に匹敵する量だ。 衣類による排出の大部分は、原材料調達や紡績、染色といったものづくりの段階が占める。海外での大量生産や低価格化が進み、国内の衣類の供給枚数は直近30年間でおよそ倍増。しかし少子化などの影響で市場規模は縮小傾向が続き、店頭の売れ残り品や、家庭でもほぼ新品のまま廃棄される衣類が大量に発生している。 焼却処分の過程でも当然多くのCO₂が発生し、環境負荷を減らすには、こうした供給過剰状態からの脱却が急務となる。 企業の間では、売れ筋データを基に在庫投入量を調整する動きも広まっている。ただ、流行り廃りの激しい業界で顧客の需要を見通すことは難しい。あるアパレル企業の社員は「どんなにデータを駆使しても、ファッションにおいて確実に売れるものを作るのは至難の業。その過程で生まれるブレや無駄が、ファッションにおける楽しみだとも感じる」と苦悩を打ち明ける。 商品を作りすぎないためにも、まずは売れ残りを極力減らし、今ある在庫を市場で循環させる。廃棄禁止令は、アパレル業界が直視できなかった仕組みの構築を、企業の責任として迫った格好だ。脱炭素化の潮流が世界的に加速する中、今回の規制は日本企業にとっても他人事ではないだろう。 2020年春、ある国内の大手アパレル企業が在庫の焼却処分をゼロにする方針をまとめた。「グローバルワーク」「ニコアンド」などのカジュアルブランドを多数展開するアダストリアだ。 同社の福田泰己取締役は「フランスを皮切りに、世界的に同様の(売れ残り品の廃棄を禁止する)流れになると推測する。各企業に一定のインパクトがあり、サステナビリティの観点からきちんと対応する姿勢が求められるようになる」と語る』、「国内で供給される衣類によるCO₂の排出量(原材料調達から製造、販売、廃棄まで、海外での排出を含む)は約9500万トンと推計されている。これは同年度に国内の自家用乗用車から排出された9458万トン(国交省調べ)に匹敵する量」、「衣類によるCO₂の排出量」がこんなに多いとは初めて知った。
・『各店舗で”残在庫ライン”を死守する  アダストリアは前2021年2月期から、在庫の焼却処分を行わないことを決定。売れ残り品を減らすため、最優先で取り組んでいるのが在庫回転率の向上だ。 同社の在庫管理の肝は、「前月からの持ち越し在庫(月初の在庫量)に対し、月末の在庫を何%以内に収める」という“残在庫ライン”を各店舗が順守すること。通称OTB(Open to Buy、残っている在庫量から逆算して仕入れ量を決める手法)と呼ばれるもので、アダストリアは業界平均と比べても厳しい基準を設けているという。 仮に月末の在庫量がラインを越えた場合、その店舗の翌月の仕入れ量は減ることになる。1店舗当たりが持つことのできる在庫の上限は変わらず、売り切れなかった分だけ、新たに仕入れられる商品の量が減ってしまうわけだ。 ラインを死守するうえでは、販売員による店頭陳列やコーディネート提案での工夫に加え、こまめな値引きがカギを握る。) 型番ごとの売れ行き動向を日々管理し、在庫が減らない商品は夏や冬のセールシーズンなどを待たずに値引きをかける。動きが悪い商品の価格は早めに下げ、在庫水準に応じて商品別の値引率も早期に調整する。在庫をつねに軽い状態に保って過剰な生産も抑えることで、人気商品まで安売りする大規模なセールは減らし、業界では年始恒例の福袋販売も3年前に廃止した。 こうした取り組みにより、アダストリアでは現在、期初に仕入れた在庫の期末時点での消化率は約95z%。仕入れた在庫の大半を1年以内に売り切っている計算になる』、個別には「アダストリア」のように「在庫」管理の厳格化で対応するケースはあるだろうが、全体ではそう上手くはいかないだろう。
・『”焼却”によるリサイクルをゼロに  1年以上滞留している在庫はアウトレットや自社EC(ネット通販)で再販し、それでも売れ残った場合は新興国での再販、衣服を繊維に戻すリサイクルを行う。以前はサーマルリサイクル(廃棄物を焼却する際に生じた熱をエネルギーとして再利用する方法)などによる最終処分を行っていたが、2021年2月期からは実施していない。 日本ではサーマルリサイクルもリサイクル手法の1つとみなされている。ただ、売れ残った商品を焼却するという事実に変わりはない。アダストリアではサーマルリサイクルにすべての顧客の納得を得ることは難しいと判断し、運用の中止を決めた。 焼却以外の方法でのリサイクルには、それなりのコスト負担が発生する。あらゆる種類の繊維や、ボタン・チャックなどの付属品を組み合わせて仕立てる衣服は、単一素材で作られるプラスチック容器などと比べてリサイクルが難しいとされるためだ。 売り上げ規模の大きい企業は「社会的責任」としてその負担を一定程度のみ込めても、焼却を行わずに売れ残り品のリサイクルを拡大しようとすれば「価格転嫁するしかない」(アパレル企業幹部)と嘆く声も上がる。リサイクルのハードルが高い現状では、まずは商品をできる限り期中に売り切るサイクルの構築が各社共通の課題となりそうだ。 廃棄禁止令が国内ですぐ導入されるわけではないにせよ、ブランドが自社の在庫により大きな責任を求められる潮流は避けられない。アパレル企業1社1社が、構造的な難題と向き合う覚悟を問われている』、「ブランドが自社の在庫により大きな責任を求められる潮流は避けられない」、「まずは商品をできる限り期中に売り切るサイクルの構築が各社共通の課題となりそうだ」、その通りだ。

次に、2月3日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した流通ジャーナリストの森山真二氏による「ユニクロ失速「真の要因」とZARAやH&Mなど欧米ブランドを打ち破る“秘策”」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/295063
・『最近、ユニクロがさえない。既存店売上高の前年同月比は落ち込み、株価も下落基調。ZARAやH&Mなど欧米ブランドから後れを取っている。ユニクロ失速の「真の要因」と、欧米ブランドを打ち破る“秘策”を探った』、興味深そうだ。
・『勝ち組・ユニクロが失速中 コロナ以外に真の要因あり?  ユニクロ低迷、「真の要因」と復活の“秘策”は何か――。 日本を代表するアパレルブランドのユニクロ。かつてより、「勝ち組」ともてはやされてきたが、足元での状況はさえない。 その一端が、小売業界の“体温計”である既存店売上高の前年同月比から見て取れる。運営会社であるファーストリテイリングが公表する国内ユニクロ事業の既存店売上高推移を見てみよう。 ファストリは8月期決算であるため、今期は2021年9月から始まっているが、21年12月までの推移は決して好調といえるものではなかった。9月が前年同月比19.1%減、10月が同4.8%減、11月が同4.6%減、12月は「感謝祭」があったにもかかわらず、同11.1%減と落ち込んだ。 もちろん、「ユニクロはすでに十分育っているではないか」「売り上げが2兆円もあれば十分だ」という声があることも承知している。 それゆえ、負け組として論じること自体、ナンセンスと言われかねない。ましてや、足元では、新型コロナウイルスの感染拡大という要因もある。 だが、それだけではすべてを解決できないと私は考えている』、「ユニクロはすでに十分育っているではないか」「売り上げが2兆円もあれば十分だ」などの「声」は、企業は成長を続けなければならないという大原則を無視した暴論だ。
・『時価総額はZARAの半分に ユニクロ中国躍進のキーマン  ファストリの株価はピーク時には10万円以上だったが、今では6万5670円(22年2月1日終値)という状況だ。時価総額も今や6兆円台となっている。 これに対しよくユニクロと比較されるスペインの「ZARA」を展開するインディテックスの現在の時価総額は約11兆円。一時期、ファストリはインディテックスを抜いたこともあった。しかし、今や倍近い差をつけられている。 これでは、「しょせん、ユニクロはアジアのブランドだった」と世界中から言われかねない。 そもそも、ファストリが世界的なブランドに名を連ねることができた成長要因は、中国市場での躍進であった。何より、中国事業の責任者として中国出身の潘寧氏を据えたことが大きかった。 潘氏の功績は大きく、ファストリを「日本のブランド」から、中国市場拡大によって、「アジアのブランド」に押し上げた。 潘氏は日本の大学を出て、ファストリに入社。潘氏の活躍がなければ、中国市場の攻略はできていなかったと業界内では言われている。 中国での勢いのままに、ファストリの時価総額は、先述のように一時、ZARAのインディテックスを追い越したというわけだ。 しかし、極めて刹那的だった。海外の投資家、特に欧米の投資家からは「ユニクロはアジアのブランドとしか映らない」(証券アナリスト)のであった。 つまり、ファストリには越えられない「アジアの壁」があるといっていいし、それが真の世界的なブランドになり得ていない要因なのだろう』、「欧米の投資家からは「ユニクロはアジアのブランドとしか映らない」(証券アナリスト)のであった。 つまり、ファストリには越えられない「アジアの壁」があるといっていい」、やむを得ないのではなかろうか。「ファストリが世界的なブランドに名を連ねることができた成長要因は、中国市場での躍進であった。何より、中国事業の責任者として中国出身の潘寧氏を据えたことが大きかった」、なるほど。
・『アパレルに「アジアの壁」あり 秘策は「中国で突き抜ける」  アジアの壁とは何か――。 工業製品は機能や性能で評価されるが、ファッション製品はそうはいかない。ファッション製品を販売するには必ず、アジアの壁がある。日本のブランドは、欧米人からすれば「アジアのブランド」つまり、「東洋人が製造した商品」なのだ。アジアのブランドは欧米ではマイノリティーの扱いなのだ。 アジアの殻を破ることがファストリ最大の命題といってもいいし、ユニクロが近年、低迷している“真の要因”なのかもしれない。 アジアの壁を破ることなくして、ファストリの柳井正会長兼社長が言うところの「真のグローバルナンバーワン」に脱皮ができないのは間違いない。 逆に欧米人とてZARAやH&Mの展開に満足しているわけではないだろう。攻めきれていない国に進出するなど、ZARAやH&Mだって、まだ欧米でシェアを伸ばすことができるし、アジアでシェアを伸ばせば、さらに高みにいくことも可能だろう。 だが、それは実際のところ難しい。なぜか。 その要因は、アジアには「ユニクロ」というブランドがあり、ある種の“防波堤”になっていると私は考えている。 日本の商業施設にはきめ細かくユニクロが入っている。ZARAやH&Mに今からユニクロをどかして入る実力はないだろう。デベロッパーとて、「売れている」ユニクロを出してZARAやH&Mを入れる勇気もないだろう。 逆もまた真で、欧米のデベロッパーがZARAやH&Mをどかしてユニクロを入れることもないだろう。 結局のところ、ユニクロが欧米ブランドを打ち破る“秘策”は中国依存を強め、突き詰めることなのかもしれない。 変わり身が早い中国の人々に魅力的な商品を届け、ハートをつかみ続ける。実は、これが真のグローバルブランドへの近道なのかもしれない』、「ユニクロが欧米ブランドを打ち破る“秘策”は中国依存を強め、突き詰めることなのかもしれない。 変わり身が早い中国の人々に魅力的な商品を届け、ハートをつかみ続ける。実は、これが真のグローバルブランドへの近道なのかもしれない」、そんなに簡単なことではなさそうだ。「中国事業の責任者として・・・潘寧氏」、以外にも頼れる人物が必要になるかも知れない。

第三に、2月26日付け東洋経済オンライン「過去5年で売り上げ倍増、コロナの逆風跳ね返す ノースフェイス、「爆発的人気」はいつまで続くか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/576940
・『アパレル不況の中でも高成長が続き異彩を放つ、アウトドアブランドのザ・ノース・フェイス。その快進撃を支える強さの秘密に迫る。 ファッション好きな若者たちが集まる東京・原宿。2月中旬の週末、明治通り沿いにあるザ・ノース・フェイス(以下ノース)の店内は多くの買い物客で賑わっていた。 同エリアには本格的な登山・アウトドア衣料を扱う旗艦店「ザ・ノース・フェイス マウンテン」を始め、カジュアル衣料が中心の新業態など複数のノース直営店舗があるが、どの店も客足が途絶えず、ブランドの人気の高さがうかがえる。 ノースは、1960年代にアメリカ・カリフォルニア州で誕生した世界的な本格派のアウトドアブランド。国内ではスポーツ衣料品メーカーのゴールドウインが長く輸入総代理店を務め、1994年に日本で自由にブランドを使用できる商標権を取得。衣料に関しては、国内で正規販売されているものはほぼすべて、同社が日本市場向けに企画・製造したものだ。 その人気たるや凄まじい。冬の定番商品であるダウンジャケットの中心価格帯が4万〜6万円台と決して安くはないが、それでもブランドの売り上げが毎年伸び続けている。安価なファストファッションが世の中にあふれ、中高価格帯の服が売れないアパレル不況時代にあって、極めて稀有な“勝ち組”だ』、「中高価格帯の服が売れないアパレル不況時代にあって、極めて稀有な“勝ち組”だ」、興味深そうだ。
・『ブランドの売上高は700億円規模に  直営店戦略を推し進めた効果もあって、とくに2010年代半ば以降は販売の勢いが増し、この5年でブランドの売上高は倍増した。2020年度では推計で700億円を超え、ゴールドウインの全社売り上げの実に7割以上を稼ぎだす文字通りの大黒柱だ。ノース事業が牽引して業績も拡大し、同社の直近の株価は5年前の4倍以上の水準で推移している。 コロナ下にあっても足元の販売は好調だ。2021年秋冬もダウンジャケットやフリースなど単価の高い重衣料が飛ぶように売れ、同年12月の月次販売は過去最高だった。協力工場から一部商品の入荷が遅れるなどコロナの影響は残るが、2021年度の会社業績はコロナ直前の過去最高益に次ぐ水準となる見通しだ。 国内の登山人口自体はむしろ減っている。にもかかわらず、ノースの売り上げが右肩上がりで伸びたのは、日常の外出時に着用するタウンユース目的で購入する消費者が増えているからだ。20~40代の男性を中心として、アウトドア衣料を普段着に取り入れるファッションスタイルが広く浸透し、中でもノースはもっとも人気が高いアウトドアブランドになっている。 例えば、春秋の代表的な人気商品であるマウンテンライトジャケット(定価は約4万円)。もともとは軽登山やアウトドアでの使用を想定して作られた防風・防水機能を備えるシェルジャケットだが、今ではスウェットパーカーやスーツなどの上に羽織るといった普段使いで購入する消費者が大半を占める。 東京・神保町の登山専門店の販売員は、「アウトドアブランドのダウンやジャケット類、フリースなどを普段着として買いに来る若いお客さんが増えている。中でもノースは突出して人気が高く、テクニカルな商品を除けば、タウンユース用に買っている人のほうが多い」と話す。 実際、原宿の直営店を訪れていた20代後半の会社員の男性は、登山経験はないが、通勤や週末の外出用にノースのアウターを好んで買っているという。「アウトドアブランドは軽さや保温性など機能重視なのがいい。ノースはかっこいいイメージがあるし、いかにも登山という感じがしないデザインの商品も多くて、普段使いしやすい」。 こうしてノースのファンになった若い消費者が、パーカーやシャツ、バッグ類など一般的なカジュアルアイテムも購入するようになり、さらなる売り上げ拡大につながっている』、「アウトドアブランドのダウンやジャケット類、フリースなどを普段着として買いに来る若いお客さんが増えている。中でもノースは突出して人気が高く、テクニカルな商品を除けば、タウンユース用に買っている人のほうが多い」、「ノースのファンになった若い消費者が、パーカーやシャツ、バッグ類など一般的なカジュアルアイテムも購入するようになり、さらなる売り上げ拡大につながっている」、すごい成長ストーリーだ。
・『ノース事業を「若い世代」に託す  ブランドの“作り手側“も、中心を担っているのは若い世代の社員たちだ。ノースの売上高の4分の3を占める衣料部門の責任者、ザ・ノース・フェイス事業一部長の髙梨亮氏は、2019年に37歳の若さで現在の役職に抜擢された。 髙梨氏はアパレルセレクトショップのバイヤーを経て、2009年にゴールドウインに転職。2012年からノースに関わり、アウトドア衣料の機能を都市生活用の服に活用した新ラインの立ち上げや、他社とのコラボレーションなどで実績を残した人物だ。 ノース事業の前責任者で、現在はゴールドウインが展開する全ブランドを統括する森光・事業本部長(58)は、「いかに世代交代するかをつねに考えていた。時代とともにブランドも進化が必要。髙梨を始めとする若い世代に新しいノースを作ってもらいたい」と語る。 現在、衣料部門には約100人のスタッフが在籍。登山やアスレチック、カジュアル系のライフスタイル、キッズなどのグループに分かれ、各チームがそれぞれの商品を専門に開発・企画している。それを取りまとめつつ、ブランドの方向性や全体戦略などを考えるのが髙梨氏の大きな仕事だ。 ノースは登山などのアウトドアをベースとしつつ、そこで用いた機能や素材をタウンユースの商品にも落とし込む「コア&モア」戦略で商品展開を広げ、多くの顧客獲得に成功してきた。髙梨氏はこうした基本戦略を踏襲しつつ、「モア」をさらに発展させて、ノースのファンをもっと増やしたいという。 「コアの登山はブランドの原点であり、ここは絶対におろそかにしない。引き続きアウトドアをベースにしながら、あとは時代時代に合わせてチューニングしていく。自分よりもっと若い社員たちの発想力も積極的に取り入れていきたい」(髙梨氏) アウトドアブランドでありながら、今やファッションブランドとしても国内で絶大な人気を誇る存在となったノース。連載2回目では、そのさらなる成長戦略に焦点を当てる』、「ノースは登山などのアウトドアをベースとしつつ、そこで用いた機能や素材をタウンユースの商品にも落とし込む「コア&モア」戦略で商品展開を広げ、多くの顧客獲得に成功してきた」、「アウトドアブランドでありながら、今やファッションブランドとしても国内で絶大な人気を誇る存在となったノース」、続きをみてみよう。

第四に、この続きを、2月26日付け東洋経済オンライン「ノースフェイス、成長のカギ握る「女性と子ども」 主力のメンズに続く「第2、第3の柱」を強化」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/577215
・『今やメンズファッションを代表するブランドになったザ・ノース・フェイス。さらなる成長に向け、レディースやキッズの強化に取り組む。 多くの買い物客でにぎわう千葉県船橋市の大型商業施設、ららぽーとTOKYO-BAY。1階のキッズエリアには複数の子供服の店があるが、その中でも高い人気を誇る1店が、ザ・ノース・フェイス(以下ノース)のキッズ専門店だ。 ノースのキッズ用衣料は、Tシャツが4000円前後、トレーナーやスウェットパーカーが8000円台からと子供服としては価格が高め。にもかかわらず、毎週末には小さな子供を連れた多くのファミリー客が同店を訪れる。 「キッズ衣料がものすごく伸びている。親世代になったノースフェイスのファンが、自分の子供にも着せたいと買ってくれている」。国内でノース事業を展開するスポーツ衣料品メーカー、ゴールドウインの渡辺貴生社長は嬉しそうに話す』、「キッズ専門店」は「親世代になったノースフェイスのファンが、自分の子供にも着せたいと買ってくれている」、こんな有難いファンがいるとはラッキーだ。
・『女性との接点や専用商品増やす  アウトドア系のノースはとくに20〜40代の男性からの支持率が高く、売り上げの約6割をメンズが占める。ブランドの裾野をもっと広げるため、現在取り組んでいるのがレディースやキッズの強化だ。 レディースでは数年前から女性誌への広告掲載を積極化。売り場にも工夫を凝らし、ゴールドウインが取り扱う女性用のヨガ・スポーツウェアブランド「ダンスキン」との複合店舗を出店するなど、女性との接点を増やす施策を進めている。 商品面でも女性用の衣料の展開を強化中だ。例えば、2019年に発売したダウンジャケットの「ショートヌプシ」は、メンズで絶大な人気を誇るヌプシの女性用モデル。従来は男女兼用のみでの展開だったが、新たに女性用を立ち上げ、ショート丈にしてワンピースやスカートと合わせやすくした。 こうした取り組みの効果もあって、「この1、2年のレディース売り上げの伸び率はメンズを大きく上回っている」(ゴールドウイン)。それでも全体の売り上げに占める構成比はまだメンズの半分程度で、レディース市場の開拓余地は大きい。) 衣料部門の責任者を務めるザ・ノース・フェイス事業一部長の髙梨亮氏は、「男性が着る服はアウトドアシーンと日常の境目がなくなってきたが、女性はまだ大きな壁がある。いろんな提案をしていくことで、その壁を少しでも取り払いたい」と語る』、「「男性が着る服はアウトドアシーンと日常の境目がなくなってきたが、女性はまだ大きな壁がある。いろんな提案をしていくことで、その壁を少しでも取り払いたい」、男女で違いがあるようだ。
・『キッズ衣料が急成長のなぜ?  そのレディースと並んで力を入れるのがキッズだ。ノースは1990年代に子供服を立ち上げ、2016年からロンパース(ベビー用つなぎ)など乳児向け商品の展開も始めた。販売が目に見えて伸び始めたのは最近で、売り上げ規模は過去5年間で約2.5倍に拡大し、衣料全体に占める構成比も1割近くに上がってきた。 子供服でもアウトドアブランドならではの機能性が大きな売りだ。秋冬の人気定番商品「コージージャケット」(定価約1万2000円)は、表地に軽さと強度を兼ね備えた特殊ナイロン、裏地には柔らかなフリースを使った中綿入りのリバーシブルジャケット。動きやすくて保温性が高く、中間着やアウターとして秋冬を通して長く使えるため、秋冬物で1、2を争う売れ筋商品になった。 「小さな子供たちは重い服や生地が硬い服を嫌がる。軽くて、柔らかく、動きやすいことが必須条件。ノースらしい機能性にこだわりつつ、子供が好んで着てくれる服作りを心がけている」。衣料部門の副部長でキッズグループのマネージャーも務める畑野健一氏はそう話す。 実は、数年前に同社が市場調査を行ったところ、ノースが子供服を取り扱っていることが世間であまり知られていなかった。そこで、主販路であるブランドの総合直営店で子供服の展示を目立たせるなど、認知度の向上に取り組んだ。 加えて、ブランドのファン自体が増えたことも売り上げ拡大の大きな要因だ。「近年のノースは若い人たちからの支持率が高くなった。そうしたお客さんたちが結婚して子供を持つ年齢になり、キッズ衣料の購買を牽引してくれている」(畑野氏)。 現在の最大販路はキッズ専門店を含むノースの直営店だが、百貨店でのギフト需要やアウトドアショップでの取り扱いも伸びている。 2021年秋に石井スポーツがさいたま新都心駅前に開業した大型アウトドア専門店では、レジ前に大きなキッズコーナーが設けられ、ノースのキッズ衣料が数多く並ぶ。「この店の商圏には若いファミリー層が多く住んでいるので、人気が高いノースを中心に子供服の品ぞろえも充実させた」(木下雄貴店長)という』、「近年のノースは若い人たちからの支持率が高くなった。そうしたお客さんたちが結婚して子供を持つ年齢になり、キッズ衣料の購買を牽引してくれている」、顧客のローヤルティ(Loyalty、忠誠心)はかなり高そうだ。
・『ノースブランドのマタニティも登場  ノースではキッズ衣料担当グループが企画するマタニティ衣料の展開も2019年から始まった。 その代表的な商品であるマタニティダウンコートは、アウトドア用の機能素材を用いた保温性が高い軽量ダウンコートだ。普段は通常のコートとして使え、付属の同色のベビーキャリアカバーをフロントファスナーに連結すれば、乳児を抱っこした状態でも着用できる。8万円台と高額ながら、生産量が少なかった初年度は発売から2週間で直営店分が完売し、翌年以降も順調に販売を伸ばしている。 畑野氏は「キッズは今後も戦略的に強化していくカテゴリー。単にモノを売るだけでなく、子供たちがアウトドアフィールドに出ていく機会をもっと創出していきたい」と言う。 ノースは子供を対象としたハイキングや川遊びなどのアウトドア体験教室を定期的に開催しており、コロナ収束後にはその開催頻度を増やしていく方針だ。「自然の中での楽しい思い出をたくさん作ってもらいたい。そうした体験を通じて子供たちがブランドに愛着を持ってくれれば、新たなファン作りにもつながる」(畑野氏)。 レディースとキッズの強化を進めるノース。すでにメンズでは街で見かけない日がないほどの人気ぶりだが、あまりに人と被ると、離れていく消費者も出てくる。ファッションビジネスの難しいところだ。 メンズでの高い人気を維持しつつ、レディースやキッズをもっと太い柱へと育てていけるかどうか。今後の成長性やブランドの未来が、その成否にかかっている』、「すでにメンズでは街で見かけない日がないほどの人気ぶりだが、あまりに人と被ると、離れていく消費者も出てくる。ファッションビジネスの難しいところだ。 メンズでの高い人気を維持しつつ、レディースやキッズをもっと太い柱へと育てていけるかどうか。今後の成長性やブランドの未来が、その成否にかかっている」、今後の展開を注視したい。 
タグ:個別には「アダストリア」のように「在庫」管理の厳格化で対応するケースはあるだろうが、全体ではそう上手くはいかないだろう。 「国内で供給される衣類によるCO₂の排出量(原材料調達から製造、販売、廃棄まで、海外での排出を含む)は約9500万トンと推計されている。これは同年度に国内の自家用乗用車から排出された9458万トン(国交省調べ)に匹敵する量」、「衣類によるCO₂の排出量」がこんなに多いとは初めて知った。 「衣類や家電については2022年1月から、売れ残り品をリサイクルや寄付によって処理することを義務付ける。食品以外の在庫廃棄の規制に踏み切った法律は世界初」、「ファッション分野で影響力のあるフランスが規制を開始したという点で、一定程度の影響があるかもしれない」、少なくとも環境問題に関心が深い欧州各国には影響力がありそうだ。 東洋経済オンライン「フランスで1月から売れ残り品の廃棄が禁止に 世界初の「衣服廃棄禁止令」がアパレルに迫る変革」 アパレル (その4)(フランスで1月から売れ残り品の廃棄が禁止に 世界初の「衣服廃棄禁止令」がアパレルに迫る変革、ユニクロ失速「真の要因」とZARAやH&Mなど欧米ブランドを打ち破る“秘策”、過去5年で売り上げ倍増 コロナの逆風跳ね返す ノースフェイス 「爆発的人気」はいつまで続くか、ノースフェイス 成長のカギ握る「女性と子ども」 主力のメンズに続く「第2 第3の柱」を強化) 「ブランドが自社の在庫により大きな責任を求められる潮流は避けられない」、「まずは商品をできる限り期中に売り切るサイクルの構築が各社共通の課題となりそうだ」、その通りだ。 ダイヤモンド・オンライン 森山真二氏による「ユニクロ失速「真の要因」とZARAやH&Mなど欧米ブランドを打ち破る“秘策”」 「ユニクロはすでに十分育っているではないか」「売り上げが2兆円もあれば十分だ」などの「声」は、企業は成長を続けなければならないという大原則を無視した暴論だ。 「欧米の投資家からは「ユニクロはアジアのブランドとしか映らない」(証券アナリスト)のであった。 つまり、ファストリには越えられない「アジアの壁」があるといっていい」、やむを得ないのではなかろうか。「ファストリが世界的なブランドに名を連ねることができた成長要因は、中国市場での躍進であった。何より、中国事業の責任者として中国出身の潘寧氏を据えたことが大きかった」、なるほど。 「ユニクロが欧米ブランドを打ち破る“秘策”は中国依存を強め、突き詰めることなのかもしれない。 変わり身が早い中国の人々に魅力的な商品を届け、ハートをつかみ続ける。実は、これが真のグローバルブランドへの近道なのかもしれない」、そんなに簡単なことではなさそうだ。「中国事業の責任者として・・・潘寧氏」、以外にも頼れる人物が必要になるかも知れない。 東洋経済オンライン「過去5年で売り上げ倍増、コロナの逆風跳ね返す ノースフェイス、「爆発的人気」はいつまで続くか」 「中高価格帯の服が売れないアパレル不況時代にあって、極めて稀有な“勝ち組”だ」、興味深そうだ。 「アウトドアブランドのダウンやジャケット類、フリースなどを普段着として買いに来る若いお客さんが増えている。中でもノースは突出して人気が高く、テクニカルな商品を除けば、タウンユース用に買っている人のほうが多い」、「ノースのファンになった若い消費者が、パーカーやシャツ、バッグ類など一般的なカジュアルアイテムも購入するようになり、さらなる売り上げ拡大につながっている」、すごい成長ストーリーだ。 「ノースは登山などのアウトドアをベースとしつつ、そこで用いた機能や素材をタウンユースの商品にも落とし込む「コア&モア」戦略で商品展開を広げ、多くの顧客獲得に成功してきた」、「アウトドアブランドでありながら、今やファッションブランドとしても国内で絶大な人気を誇る存在となったノース」、続きをみてみよう。 東洋経済オンライン「ノースフェイス、成長のカギ握る「女性と子ども」 主力のメンズに続く「第2、第3の柱」を強化」 「キッズ専門店」は「親世代になったノースフェイスのファンが、自分の子供にも着せたいと買ってくれている」、こんな有難いファンがいるとはラッキーだ。 「「男性が着る服はアウトドアシーンと日常の境目がなくなってきたが、女性はまだ大きな壁がある。いろんな提案をしていくことで、その壁を少しでも取り払いたい」、男女で違いがあるようだ。 「近年のノースは若い人たちからの支持率が高くなった。そうしたお客さんたちが結婚して子供を持つ年齢になり、キッズ衣料の購買を牽引してくれている」、顧客のローヤルティ(Loyalty、忠誠心)はかなり高そうだ。 「すでにメンズでは街で見かけない日がないほどの人気ぶりだが、あまりに人と被ると、離れていく消費者も出てくる。ファッションビジネスの難しいところだ。 メンズでの高い人気を維持しつつ、レディースやキッズをもっと太い柱へと育てていけるかどうか。今後の成長性やブランドの未来が、その成否にかかっている」、今後の展開を注視したい。
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宗教(その8)(政治家の「二股」を黙認してきた宗教団体の末路 2022年の夏は日本宗教史の大転換点になる、青山学院大の宗教部長が語る「カルト」と「健全な宗教」の違いとは、池上彰氏が解説「聖書を知らないと損をする訳」 世界情勢を知るうえで押さえたい前提知識) [社会]

宗教については、8月1日に取上げた。今日は、(その8)(政治家の「二股」を黙認してきた宗教団体の末路 2022年の夏は日本宗教史の大転換点になる、青山学院大の宗教部長が語る「カルト」と「健全な宗教」の違いとは、池上彰氏が解説「聖書を知らないと損をする訳」 世界情勢を知るうえで押さえたい前提知識)である。

先ずは、9月7日付け東洋経済オンラインが掲載した『宗教問題』編集長の小川 寛大氏による「政治家の「二股」を黙認してきた宗教団体の末路 2022年の夏は日本宗教史の大転換点になる」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/616266
・『安倍晋三元首相銃撃事件以降、マスコミ報道は世界平和統一家庭連合(旧統一教会、以下、統一教会)を中心とした「政治と宗教」の話題一色になった。  安倍氏を撃った山上徹也容疑者の母親は統一教会の熱心な信者で、教団に多額の献金などを行って家庭が崩壊、山上容疑者は「安倍元首相と統一教会はつながっている」と思い犯行に及んだと供述している。統一教会に注目が集まるのは当然だ。  実際、多くの政治家が統一教会と数々の接点を持っていたことが事件後に明らかとなった。このような報道に触れていると、一般有権者の中から「日本の政治は特定宗教団体の強い影響下にあるのではないか」といった不安が出てくるのも道理だろう。  しかし、「政治家と宗教団体」の関係を個別に吟味すると、少し違った状況が見えてくる。特集「宗教を問う」の第4回は、宗教専門誌『宗教問題』編集長の小川寛大氏が、政治家と宗教団体の「いい加減な関係」と、宗教団体の未来は決して明るいものではなくなっている現実を解説する』、「宗教団体の未来は決して明るいものではなくなっている」とは興味深そうだ。
・『政治家がつながる宗教団体は統一教会だけではない   統一教会との接点で注目を浴びた国会議員の一人に自民党の下村博文元文部科学相がいる。過去に統一教会関係の雑誌にインタビュー記事が掲載されたり、統一教会が現在の「世界平和統一家庭連合」へと名称変更された2015年時の文科相でもあることから、同教会との関係性が特別に濃いとされる人物だ。 ただ、下村氏が接点を持ってきたとされる宗教団体は統一教会だけではない。彼は同時に崇教真光やワールドメイトといった新宗教団体とも親密な関係を取り沙汰されてきた人物であり、何より選挙の際には創価学会を支持母体とする公明党の推薦を受けている。  同じく、自民党には山谷えり子参議院議員という国会議員がいる。彼女も過去に統一教会関係のメディアにインタビューが掲載されるなど、同教会との浅からぬつながりが指摘されている。しかし、山谷氏はそもそも神道の統括団体・神社本庁の関係政治組織である神道政治連盟の組織的なバックアップを受けて選挙を戦ってきた政治家であり、かつ、自身はカトリックを信仰するクリスチャンだと言っている。 今マスコミで「統一教会と接点があった」とされる政治家の「宗教事情」を調べてみると、彼らが実に多種多彩な宗教団体と接点を持ってきたことが浮かび上がる。こうした構図から浮上する疑問は、「彼らは特定の宗教団体に洗脳され、その強い影響下にあるのではないか」といったものより「彼らはいったい何教の信者なのか。いったい宗教を何だと思っているのか」というものではないだろうか。 一般有権者が憤る以上に、各宗教団体は自分たちが政治家から都合よく〝二股、三股〟をかけられている現実に怒るべきであろう。もし仮に、自民党が統一教会から言われるがままの政治を行っているのだとしたら、創価学会にとっては「自民党との連立を解除せよ」と公明党に指示する理由にもなるはずだ。 にもかかわらず、現在「政治と宗教」の問題について明確な意見表明をする宗教団体はほぼない。なぜなら、政治家も宗教団体も「もちつもたれつ」の関係にあることを互いによく知っているからだ。政治家が宗教団体に近づくのは信仰心などではなく、票や選挙運動支援をアテにしているからであり、宗教団体が政治家をイベントに招いたり祝電を要請したりするのは「自分たちはこんな国会議員とつながっている」という箔付け、広告塔に利用できるからだ。だから、宗教団体は政治家のいい加減な態度を黙認してきたのだ』、「山谷えり子参議院議員」は「自身はカトリックを信仰」しながら、「神道政治連盟の組織的なバックアップ」を受けている。「政治家も宗教団体も「もちつもたれつ」の関係にあることを互いによく知っている」、「宗教団体は政治家のいい加減な態度を黙認してきた」、本当にいい加減だ。
・『「宗教票」は着実に減っている   政治家のいい加減な態度を黙認してきた果てに、とでも言っていいのだろうか、日本の宗教界は「国の政治を支配して操っている」どころか、足下の基盤が崩れかかっている。10~20年後、果たして宗教界がどのような惨憺たる姿になっているか、想像もつかない状態だ。 1つのメルクマールとして、7月の参議院議員選挙結果を見てみよう。公明党が今回の選挙で全国から集めた比例票は618万票だった。公明党が国政選挙で集める比例票の数は2005年の衆院選における898万票を頂点に低落傾向にあるが、600万台前半に落ち込んだのは今回が初めてのこと。党本部が目標に掲げていた800万票には遠く及ばなかった。 自民党の一部から「公明票は昔ほどあてにならない」という声も上がるなか、岡山選挙区では自民・小野田紀美候補が公明の推薦を断って勝利。また京都選挙区では公明票のかなりの割合が野党側に流れるなど、自公連立のゆがみが、かつてなく見られた選挙でもあった。 また創価学会に次ぐ国内第2位の規模を持つとされる立正佼成会は、比例代表で推した白眞勲候補(立憲民主党)、藤末健三候補(自民党)のいずれもが落選する事態となった。立正佼成会が参院選比例で推薦した候補が全滅するのは、現行制度になって以降初めてのことである。 幸福の科学を母体とする幸福実現党も党勢の衰えが目立つ。今回の比例代表で集めた票数は14万。幸福実現党は2009年の結党以来、国政選挙で一度も当選者を出したことはないが、20万~30万程度の比例票を集めてきた経緯がある。10万台前半にまで落ち込んだのは、やはり今回が初めてだ。 衰退傾向にあるのは伝統宗教も同じだ。前述した自民党の山谷参院議員(比例)は神道政治連盟の組織的なバックアップを受けてきたが、今回の選挙で彼女が獲得した票は17万。当選はしたものの2016年の前回選挙で得た24万票から7万票も減らした。 「宗教票」は着実に減っているのだ。 近年、「パワースポット」や「スピリチュアル」といった志向で神社仏閣に足を向ける若者が増えている事実はある。ただ、彼らは観光客的な目線で宗教的雰囲気を「消費」する人々であり、特定宗教団体に入信する例は少ない。 統一教会も安倍氏銃撃事件が起きたがゆえに世間の注目の的になってしまったが、票数としては数万票程度。創価学会票はおろか幸福実現党の票数にも遠く及ばない。2012年に教祖文鮮明(ムン・ソンミョン)が死去して以降は妻の韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁と息子たちによる親族内争いが表面化し、教団の求心力は衰えていた。安倍氏の事件がなくとも、組織としては既に息切れし始めていたのだ』、「公明党」の「比例票は618万票」と「党本部が目標に掲げていた800万票には遠く及ばなかった」、「創価学会に次ぐ国内第2位の規模を持つとされる立正佼成会は、比例代表で推した白眞勲候補(立憲民主党)、藤末健三候補(自民党)のいずれもが落選する事態」、「幸福実現党も・・・今回の比例代表で集めた票数は14万。20万~30万程度の比例票を集めてきた経緯がある。10万台前半にまで落ち込んだのは、やはり今回が初めて」、「統一教会も安倍氏銃撃事件が起きたがゆえに世間の注目の的になってしまったが、票数としては数万票程度。創価学会票はおろか幸福実現党の票数にも遠く及ばない」、「「宗教票」は着実に減っている」のは確かだ。
・『参政党と福音派が議席を確保  ゆるやかに凋落してきた宗教界に、安倍元首相銃撃事件は衝撃をもたらしている。2022年の夏は、この国における「政治と宗教」の大きな転換点として記憶されるだろう。 それは、安倍元首相銃撃事件が宗教団体の衰退に一気に拍車をかけるという意味だけではない。「政治と宗教」の新しい形が垣間見えたのだ。 まずは国政選挙初挑戦で1議席を獲得した参政党の存在である。参政党は宗教政党ではないが、出馬した候補者たちに「宗教っぽい人々」が目立った。「聖書的保守主義を名乗る牧師」、「コロナ禍の到来を事前に予見したとする占星術師」、「他人の身体に触れることによって真なる健康と生命力を開花させると称するセラピスト」といった面々だ。 参政党の候補者が選挙を通じて自分たちの「信者」を募っていた状況は確認されていない。ただし、スピリチュアルな「宗教っぽい癒し」を求める人々の共感を集めたのは事実だ。現に議席を確保しており、日本人の新しい宗教観を反映した政党と言えるのかもしれない。 さらに、日本維新の会からは金子道仁氏というキリスト教福音派の牧師が比例で当選した。福音派は現在、世界的規模で存在感を増すキリスト教の一派で、政治的傾向は保守。特にアメリカのドナルド・トランプ前大統領の強力な支持基盤として知られた信仰勢力だ。キリスト教の地盤が薄い日本で、今後どこまで存在感を発揮していくかは未知数だが、福音派が日本の国会で議席を取った意味は小さくないだろう。 連日のマスコミによる統一教会批判は「宗教は怖い」という社会の空気を強め、宗教団体の力を削いでいくだろう。その裏側で、スピリチュアルな雰囲気に下支えされた新しい「宗教っぽい運動」や外来の宗教が台頭している現実を見逃すべきではない。 その意味でも2022年という年は、この国の宗教史の節目になるはずだ』、「参政党」は「スピリチュアルな「宗教っぽい癒し」を求める人々の共感を集めたのは事実だ。現に議席を確保しており、日本人の新しい宗教観を反映した政党と言えるのかもしれない」、「日本維新の会からは金子道仁氏というキリスト教福音派の牧師が比例で当選した。福音派は現在、世界的規模で存在感を増すキリスト教の一派で、政治的傾向は保守。特にアメリカのドナルド・トランプ前大統領の強力な支持基盤として知られた信仰勢力だ・・・福音派が日本の国会で議席を取った意味は小さくないだろう」、その通りだ。

次に、9月15日付けAERAdot「青山学院大の宗教部長が語る「カルト」と「健全な宗教」の違いとは」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dot/2022091400082.html?page=1
・『安倍晋三元首相の銃撃死亡事件で、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に焦点が当たり、再び「カルト宗教」が注目を集めている。「信教の自由」が認められているこの日本で、健全な宗教とカルトと呼ばれる宗教や危険な宗教との違いはどこにあるのか。キリスト教の牧師を経て、現在は青山学院大で宗教部長を務める塩谷直也さん(法学部教授)に見解を聞いた(Qは聞き手の質問)。 Q:日本国憲法の19、20条では「思想・良心の自由」「信教の自由」が保証されています。 塩谷さん:「イワシの頭も信心から」ということわざがあります。信仰心が深いと、どのようなものでも尊く思えてしまうという意味ですね。同じように、信じる対象が非合理であっても、それ自体になんら問題はありません。 Q:その自由がある中で、健全な宗教と危険な宗教との違いはどこにあるのでしょうか。青山学院大は、ホームページで旧統一教会などを名指しして勧誘被害にあわないように注意喚起しています。 塩谷さん:明らかな人権侵害をしているかどうか、だと考えます。最も分かりやすいのが「結婚の自由」の侵害でしょう。旧統一教会の合同結婚式など、その最たる例と言えます。また、正体を隠しての勧誘もそうです。宗教だと名乗らず、サークルやボランティア、今注目されているSDGsなど、入り口を魅力的に偽装して、興味を持って入ってきたターゲットと人間関係を作り上げていく。輪の中に入り込み、もう引くことができないという状況を作ってから宗教色を出し始め、取り込んでいきます。このやり方は明らかな自己決定権の侵害に当たり、詐欺と同じ行為です。 Q:AERA dot.の取材でも、いわゆる「カルト宗教」がSDGsやボランティア、サークルなどに偽装して勧誘する手口が明らかになっています。ただ、一般的にはカルトとされていない大きな宗教団体の信者にも、素性を名乗らずに勧誘している人はいます。 塩谷さん:正体隠しの勧誘は、あってはなりません。健全な団体なら、最初に何者かを名乗りますよね。宗教に限らず、当たり前のコミュニケーションのあり方です。現代における宗教は、きっちり名乗ったうえで、勧誘したとしても相手の選択権を尊重し、さらに入退会を自由にする。そうした透明性が大切だと思います。もちろん、例えば友人に、「ちょっと話を聞いてよ」などと言って、後から自分の信仰について話す信者がいる可能性は否定できません。ただ、相手の選択権は奪ってはいけない。嫌だ、興味がない、とはっきり言える権利は守る。それが健全な宗教のあり方です。』、「明らかな人権侵害をしているかどうか、だと考えます。最も分かりやすいのが「結婚の自由」の侵害でしょう。旧統一教会の合同結婚式など、その最たる例と言えます。また、正体を隠しての勧誘もそうです。宗教だと名乗らず、サークルやボランティア、今注目されているSDGsなど、入り口を魅力的に偽装して、興味を持って入ってきたターゲットと人間関係を作り上げていく。輪の中に入り込み、もう引くことができないという状況を作ってから宗教色を出し始め、取り込んでいきます。このやり方は明らかな自己決定権の侵害に当たり、詐欺と同じ行為です」、その通りだ。 
・『Q:危険な宗教の特徴として「マインドコントロール」が指摘されていますが、神を信じることとマインドコントロールは何が違うのでしょうか。 塩谷さん:健全な宗教は、その人の考える力を奪いません。むしろ、その力を与え、考えることを放棄させないのです。逆に、マインドコントロールなどによって考える力を奪うのが危険な宗教のやり口です。ここはまったく違います。キリスト教で言えば、健全なキリスト教は「聖書の神様はこう言っているけど、あなたはどう思いますか?」という問いかけがあります。神と対話し続ける、いわば「悩む力を与える」のです。 一方、危険な宗教団体はどうですか。抱えている悩みや苦しみに対し、ご先祖の問題が今のあなたに影響を与えているなど根拠のない答えを示したり、世界の終わりがやってくると明言し、恐怖心でその人の心を支配しますよね。閉ざされた世界を作り、そこには「カリスマ」が必ずいて、「正しいことをしているのに迫害されている」などとありもしない話で被害者意識を作り上げる。そこにハマってしまうと、考える力を宗教に預けるようになり、その人の頭は、鋼鉄のヘルメットが覆っているような状態になってしまい、やがてそのヘルメットによって「組織の教え」以外の考えをすべて跳ね返し、否定するようになります。考える力を奪うということは、きわめて犯罪的な行為だと思います。 Q:信仰の薄い人から見れば「そんなバカな」ということを本気で信じていますよね。 塩谷さん:私がかつて関わった、20歳で旧統一教会に入り40代で脱会した女性は「体は40代になったけど、精神は20歳のままなんですよね」と話していました。カルト宗教が、その人の考える力を奪い続けたという表れですよね。信仰とは、その人が主体的に何を信じるかであって、信じ込ませることではないのです。 Q:なぜ、カルトや危険な宗教にはまってしまう人が後を絶たないのでしょうか。 塩谷さん:危険な宗教の特徴として、二分法を用いるという点があります。この世界を「正しい世界」と「間違った世界」だったり、「善人」と「悪人」に分ける。性格が真面目で「正しい人」や「善人」でありたい人、正解を求めてしまいがちな人は狙われやすい。カルトはその人の不安をいかにも理解したように装って安心させ、取り込んでいく。そして自分は「正しいことをやっている」と信じさせて、今度は勧誘する側に取り込む。そうなると彼ら・彼女らは一生懸命勧誘(伝道活動)を始めます。基本、真面目な人が多いからです』、「健全な宗教は、その人の考える力を奪いません。むしろ、その力を与え、考えることを放棄させないのです。逆に、マインドコントロールなどによって考える力を奪うのが危険な宗教のやり口です」、「危険な宗教の特徴として、二分法を用いるという点があります。この世界を「正しい世界」と「間違った世界」だったり、「善人」と「悪人」に分ける。性格が真面目で「正しい人」や「善人」でありたい人、正解を求めてしまいがちな人は狙われやすい。カルトはその人の不安をいかにも理解したように装って安心させ、取り込んでいく。そして自分は「正しいことをやっている」と信じさせて、今度は勧誘する側に取り込む」、「カルト」のやり口は、危険で悪どいようだ。
・『Q:とはいえ、赤の他人に近い人が話すことを、疑いもせずに「正解」「正しい」と思ってしまうものでしょうか。 塩谷さん:勧誘・接触の中で、個人情報を吸い取っているから、それが可能になるのです。何回か集会に行くうちに突然「偉い先生」が現れる。そして今の状況や心理状態をズバリ言い当てるので、「ご先祖が~」などという荒唐無稽な話でも、悩みや苦しみを抱えている人にはストンと落ちてしまうのです。また、危険な宗教の中には「この世の終わり」をしばしば持ち出す団体がありますが、それは信者が人生を諦めて献金してくれるから。お金を集めたいから言っているだけなのです。組織の上に行くと、そうした集金システムが見えてくる。そこではっと気が付いて脱会できるかどうかが鍵です。 Q:旧統一教会は身を滅ぼすような高額の献金が問題視されています。ただ、寄付や献金は健全な宗教でもあります。どう違うのですか。 塩谷さん:おっしゃるように、どの宗教も寄付や献金はあります。何が違うのかを分かりやすく例えると、大学の卒業生が大学に寄付をするとしたら、「その学校に通ったことへの感謝」「学校が好きだから」といった前向きな気持ちがあると思います。健全な宗教への寄付や献金も、それと似ています。 一方で危険な宗教団体は、恐怖心や不安をあおってその人の考える力を奪い、その不安の解消のために多額の献金や物品の購入を迫ります。健全な宗教の愛は「無償の愛」ですが、危険な宗教は「見返りを求める愛」なのです。お金を出してこれを買えば、あなたも家族も、ご先祖も救われると。教えが本物なら、「押し売り」は必要ありません。偽物だから、なんだかんだと理屈をつけて押し売りするしかないのです。 Q:そもそも「ご先祖が~」などという教えは、キリスト教に基づくものなのでしょうか。先祖を気にするのは日本独特の文化のようにも思えるのですが。 塩谷さん:聖書の教えからは完全に逸脱しています。一神教であるキリスト教は「一人一人を神様が作った」という考え方です。その人に起こることはその人だけのもので、それは罪であっても、その人だけのもの。「ご先祖が~」と語ること自体が、あり得ないことです。旧統一教会の教義書である『原理講論』と聖書はまったく別物だということは知ってほしいと思います。集金目的のために、ご先祖を大切にするという日本人の心情を、巧妙に利用しているだけなのです。) Q:これだけ世間から批判を受けて問題視されても、危険な宗教団体がなくならないのはなぜでしょうか。 塩谷さん:被害者意識が植えつけられているので、批判を「迫害」ととらえ、結束がより強固になります。今の旧統一教会もそうした状況でしょう。安倍元首相の国葬も、旧統一教会に勢いを与えると思います。「国葬されるほどの人と、私たちは関係していた。やはり私たちは正しかったんだ」と。抜本的な解決策はありません。山上徹也容疑者がその一人ですが、困窮する二世、三世をどう救っていくのか。それを考えなければならない時期が来ていると感じています』、「健全な宗教の愛は「無償の愛」ですが、危険な宗教は「見返りを求める愛」なのです。お金を出してこれを買えば、あなたも家族も、ご先祖も救われると。教えが本物なら、「押し売り」は必要ありません。偽物だから、なんだかんだと理屈をつけて押し売りするしかないのです」、「被害者意識が植えつけられているので、批判を「迫害」ととらえ、結束がより強固になります。今の旧統一教会もそうした状況でしょう」、こうした「カルト」には何らかの法規制が必要だ。現在、文科省で検討している質問権行使を通じて、規制すべきだろう。

第三に、11月13日付け東洋経済オンラインがジャーナリストの池上 彰氏による「池上彰氏が解説「聖書を知らないと損をする訳」 世界情勢を知るうえで押さえたい前提知識」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/631742
・『世界で最も読まれている書物である『聖書』を多くの日本人は読んだことがありません。しかし、『聖書』を知ることは、世界に通用する教養を身につけることであり、世界を理解することにもつながる、と池上彰氏は言います。同氏の著書『聖書がわかれば世界が見える』より、教養として押さえておきたい聖書の基本を一部抜粋して解説します』、興味深そうだ。
・『『聖書』は世界の教養である  先日、あるイギリス映画を見ていたところ、主人公が友人たちの前で、自分の妻を褒め、次のような形容をしていました。 「ソロモンより賢く、サムソンより強く、ヨブより忍耐強い」 要は、私の妻でいられるのだから、という自虐的なギャグなのですが、ここに出てくる名前は、すべて『聖書』に登場します。これなど『聖書』の内容を知らないと理解できませんね。観客はみんなキリスト教の基礎的な素養があることを前提に映画が制作されていることがわかります。 国際政治の場でもキリスト教は登場します。アメリカの大統領就任式で、大統領は『聖書』に手を置いて宣誓します。アメリカの紙幣にもコインにも「我々は神を信じる」と記されています。アメリカがキリスト教国家であることがわかります。 欧州統一の動きが進むEU(欧州連合)は27カ国にまで増えましたが、トルコは加盟申請をしても、なかなか加入が認められません。EU側は言を左右にして認めませんが、本音はイスラム教徒の多いトルコを入れたくないからです。27カ国を見ると、カトリック、プロテスタント、東方正教会の違いはあれ、いずれもキリスト教徒が多数を占める国ばかりなのです。) その証拠に、欧州の国々には、国旗に十字架をあしらったものが多いですね。スイスはEUに加盟していませんが、赤地に白く十字が描かれています。赤十字を創設したアンリ・デュナンはスイス出身で、祖国の国旗の赤と白を逆にして赤十字の旗にしました。 長らく続く中東紛争。これは、欧州のキリスト教社会で迫害を受けたユダヤ人(ユダヤ教徒)たちが、『聖書』の記載を元に「自分たちの王国があった場所に新たな国をつくろう」とイスラエルを建国したことがきっかけです。 このように考えると、国際情勢を理解する上で、『聖書』の知識が必須であることがわかります。その点、日本はキリスト教徒が少ないから不利だなあ、などと思っていませんか。 でも、日本社会にもキリスト教由来のものがあります。たとえば1週間は、なぜ7日間なのでしょうか。それは、「旧約聖書」の冒頭で、神様がこの世界をお作りになったとき、6日働いて7日目に休まれたと書いてあるからです。かくしてヨーロッパのキリスト教社会で1週間というリズムが生まれ、日本にも輸入されたのです。 私たちの日常会話で「目からうろこ」という表現が出てきますね。これは「新約聖書」の中の「使徒言行録」に出てくるエピソードが由来です。後にキリスト教の熱心な伝道師になるパウロは、当初はキリスト教徒を迫害する側にいました。するとある日、目が見えなくなってしまうのですが、イエスを信じるようになった途端、「目からうろこのようなものが落ち」、再び目が見えるようになったというのです。 どうですか。さまざまな場面に登場する『聖書』。世界最大のベストセラー書籍の内容を知らないと、恥をかくことが出てくると思いませんか。 かく言う私はキリスト教徒ではなく、むしろ仏教に親近感を覚える立場ですので、「キリスト教徒になりなさい」などと宣教するつもりはありませんが、常識として、あるいは教養として、キリスト教を知っておく必要があると思います。 今回は『旧約聖書』から、3つの有名な話を紹介します』、「目からうろこ」も「新約聖書」の中の「エピソードが由来」、とは初めて知った。
・『エデンの園追放の物語  最初の人間は男で、名前は「アダム」。その名前は土の塵から造形されたからなのです。男のあばら骨から女は造られました。「人を助ける者」として創造されたというのです。この記述を根拠に男女格差は長らく是認されてきました。女性は男性を助ける役割だというわけです。 神は2人に「善悪の知識の木」から実を取って食べることを禁じたにもかかわらず、エデンの園にいた蛇がイブを誘惑して実を食べるように唆します。) 誘惑に負け、イブは知恵の実を食べ、アダムにも食べさせます。 「2人の目は開け、自分たちが裸であることを知り、2人はいちじくの葉をつづり合わせ、腰を覆うものとした」 人間は、禁断の実を食べたことで知恵がつきます。神は人間たちが知恵をつけることを望んでいなかったというのです。人間は知恵を得たことで、その後の苦難の道が始まります。 ちなみに「知恵の実」はリンゴというイメージを持っている人もいると思いますが、『聖書』にはそうは書かれていません。後世にリンゴと誤解されるようになったと言われています。iPhoneなどで知られるアップルのシンボルマークは、リンゴの一部が齧られたもの。これも「知恵を持った」ということを示しています。ここにも『聖書』に関する知識が背景にあるのです。 2人が知恵の実を食べた日、神がやってきて2人が裸でないことに気づき、2人は知恵の実を食べたことを白状します。そして、アダムとイブはエデンの園から追放されてしまうのです』、「人間は知恵を得たことで、その後の苦難の道が始まります」、私は「苦難」があっても、「知恵を得た」メリットの方が大きいように思う。
・『ノアの箱舟の物語  地上に人間たちが増えると、悪いことをする人間が増え、神は人間を創造したことを後悔したといいます。 主は、地上に人の悪が増し、常に悪いことばかりを心に思い計っているのを御覧になって、地上に人を造ったことを後悔し、心を痛められた。主は言われた。 「私は人を創造したが、これを地上から拭い去ろう。人だけでなく、家畜も這うものも空の鳥も。わたしはこれらを造ったことを後悔する」 神様でも後悔することがあるのですね。 この時代の神様は、実に人間的です。 後悔した神は、地上のすべての生き物を絶滅させようと考えるのです。神を怒らせると怖いですね。神の一存で、人間など消えてしまうのです。 神は大洪水を起こし、地上の生き物すべてを絶滅させようとしますが、ノアは信心深かったので、ノアとノアの一族だけは助けようと考えます。そこで事前にノアに「箱舟」を造るように指示します。 箱舟とは、屋根のある船です。大雨を降らせるので、船が浸水しないようにというわけです。 さらに集められるだけの食料を積み込み、あらゆる動物をメスとオスの一対ずつ船に収容させるように命じます。 これだけの巨大な船を、ノアの一族だけでどうやって建造できるのだろうと思ってしまうのですが、遂に箱舟は完成。あらゆる動物を収容し、ノアの一族が乗り込むと、扉を閉めて閉じこもります。 その直後、大雨が降り出し、40日間降り続けます。地表は水に覆われ、地上のあらゆる生き物は死に絶えてしまいます。 雨が止んだ後も110日間にわたって水は引きませんでしたが、やがて水は引き、ノアの一族は船から出ることができました。そのノアに対し、神は、二度と洪水によって地を滅ぼすことはないと約束します。 こうしてノアの一族は次々と子孫をつくり、世界に再び人間たちがあふれるようになりました。『聖書』によれば、日本に住む私たちもノアの子孫だということになります』、「あらゆる動物をメスとオスの一対ずつ船に収容」、近親交配の問題は無視されたようだ。
・『「バベルの塔」の物語  ノアの子孫の人間たちは、やがて不遜な行動に出ます。「天まで届く塔のある町を建て、有名になろう」と言い出すのです。 高い塔を建てて有名になろう。中東ドバイの世界一高い建物「ブルジュ・アル・ハリファ」は、確かに有名になりましたし、日本でも日本一高いビルの建設競争が続いています。 しかし、神はこれを見て不快に感じたようです。当時の人々は、みな同じ言葉を話していました。同じ言葉を話しているから建設作業員同士の意思の疎通が容易で建設が進んでしまう。人々の話す言葉をバラバラにして、工事ができないようにしよう。こうして人々は別々の言葉を話すようになり、工事は中断。塔は完成しなかったといいます。 神は混乱(バラル)させたので、「バベルの塔」と呼ばれるようになったといいます。日本では1980年代のバブルの時代、高層ビルや高層マンションが競って建設されましたが、バブルがはじけた結果、完成した建物が売れなくなったり、工事が中断したりするケースが相次ぎました。こうしたビルは「バブルの塔」と揶揄されました。 このように日常で使われる言葉も、『聖書』を知らなければその真の意味がわからないことはたくさんあります。常識として、あるいは教養として、ぜひこの機会に『聖書』を押さえてみてください』、「同じ言葉を話しているから建設作業員同士の意思の疎通が容易で建設が進んでしまう。人々の話す言葉をバラバラにして、工事ができないようにしよう。こうして人々は別々の言葉を話すようになり、工事は中断。塔は完成しなかったといいます」、「人々の話す言葉をバラバラにして、工事ができないようにしよう」、日本では考えつかないような国際色溢れた話だ。私も一度、聖書を読んでみたい。
タグ:「健全な宗教は、その人の考える力を奪いません。むしろ、その力を与え、考えることを放棄させないのです。逆に、マインドコントロールなどによって考える力を奪うのが危険な宗教のやり口です」、「危険な宗教の特徴として、二分法を用いるという点があります。この世界を「正しい世界」と「間違った世界」だったり、「善人」と「悪人」に分ける。性格が真面目で「正しい人」や「善人」でありたい人、正解を求めてしまいがちな人は狙われやすい。 カルトはその人の不安をいかにも理解したように装って安心させ、取り込んでいく。そして自分は「正しいことをやっている」と信じさせて、今度は勧誘する側に取り込む」、「カルト」のやり口は、危険で悪どいようだ。 宗教 「人々の話す言葉をバラバラにして、工事ができないようにしよう」、日本では考えつかないような国際色溢れた話だ。私も一度、聖書を読んでみたい。 「あらゆる動物をメスとオスの一対ずつ船に収容」、近親交配の問題は無視されたようだ。 「人間は知恵を得たことで、その後の苦難の道が始まります」、私は「苦難」があっても、「知恵を得た」メリットの方が大きいように思う。 「目からうろこ」も「新約聖書」の中の「エピソードが由来」、とは初めて知った。 『聖書がわかれば世界が見える』 池上 彰氏による「池上彰氏が解説「聖書を知らないと損をする訳」 世界情勢を知るうえで押さえたい前提知識」 「統一教会も安倍氏銃撃事件が起きたがゆえに世間の注目の的になってしまったが、票数としては数万票程度。創価学会票はおろか幸福実現党の票数にも遠く及ばない」、「「宗教票」は着実に減っている」のは確かだ。 (その8)(政治家の「二股」を黙認してきた宗教団体の末路 2022年の夏は日本宗教史の大転換点になる、青山学院大の宗教部長が語る「カルト」と「健全な宗教」の違いとは、池上彰氏が解説「聖書を知らないと損をする訳」 世界情勢を知るうえで押さえたい前提知識) 「参政党」は「スピリチュアルな「宗教っぽい癒し」を求める人々の共感を集めたのは事実だ。現に議席を確保しており、日本人の新しい宗教観を反映した政党と言えるのかもしれない」、「日本維新の会からは金子道仁氏というキリスト教福音派の牧師が比例で当選した。福音派は現在、世界的規模で存在感を増すキリスト教の一派で、政治的傾向は保守。特にアメリカのドナルド・トランプ前大統領の強力な支持基盤として知られた信仰勢力だ・・・福音派が日本の国会で議席を取った意味は小さくないだろう」、その通りだ。 AERAdot「青山学院大の宗教部長が語る「カルト」と「健全な宗教」の違いとは」 「公明党」の「比例票は618万票」と「党本部が目標に掲げていた800万票には遠く及ばなかった」、「創価学会に次ぐ国内第2位の規模を持つとされる立正佼成会は、比例代表で推した白眞勲候補(立憲民主党)、藤末健三候補(自民党)のいずれもが落選する事態」、「幸福実現党も・・・今回の比例代表で集めた票数は14万。20万~30万程度の比例票を集めてきた経緯がある。10万台前半にまで落ち込んだのは、やはり今回が初めて」、 「山谷えり子参議院議員」は「自身はカトリックを信仰」しながら、「神道政治連盟の組織的なバックアップ」を受けている。「政治家も宗教団体も「もちつもたれつ」の関係にあることを互いによく知っている」、「宗教団体は政治家のいい加減な態度を黙認してきた」、本当にいい加減だ。 「宗教団体の未来は決して明るいものではなくなっている」とは興味深そうだ。 このやり方は明らかな自己決定権の侵害に当たり、詐欺と同じ行為です」、その通りだ。 「明らかな人権侵害をしているかどうか、だと考えます。最も分かりやすいのが「結婚の自由」の侵害でしょう。旧統一教会の合同結婚式など、その最たる例と言えます。また、正体を隠しての勧誘もそうです。宗教だと名乗らず、サークルやボランティア、今注目されているSDGsなど、入り口を魅力的に偽装して、興味を持って入ってきたターゲットと人間関係を作り上げていく。輪の中に入り込み、もう引くことができないという状況を作ってから宗教色を出し始め、取り込んでいきます。 東洋経済オンライン 小川 寛大氏による「政治家の「二股」を黙認してきた宗教団体の末路 2022年の夏は日本宗教史の大転換点になる」 「健全な宗教の愛は「無償の愛」ですが、危険な宗教は「見返りを求める愛」なのです。お金を出してこれを買えば、あなたも家族も、ご先祖も救われると。教えが本物なら、「押し売り」は必要ありません。偽物だから、なんだかんだと理屈をつけて押し売りするしかないのです」、「被害者意識が植えつけられているので、批判を「迫害」ととらえ、結束がより強固になります。今の旧統一教会もそうした状況でしょう」、こうした「カルト」には何らかの法規制が必要だ。現在、文科省で検討している質問権行使を通じて、規制すべきだろう。
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中国情勢(軍事・外交)(その15)(【緊急警告】中国大型軍事ドローンの飛行高度が低すぎてヤバすぎる…沖縄周辺で民間機と衝突事故の可能性も、中国「一帯一路」失敗の象徴…親中だったパキスタンが米国に急接近する理由、「あなたの企業にも中国のスパイが」現役FBI長官C・レイが世界のビジネスパーソンに向けて発した“警告”) [世界情勢]

中国情勢(軍事・外交)については、8月31日に取上げた。今日は、(その15)(【緊急警告】中国大型軍事ドローンの飛行高度が低すぎてヤバすぎる…沖縄周辺で民間機と衝突事故の可能性も、中国「一帯一路」失敗の象徴…親中だったパキスタンが米国に急接近する理由、「あなたの企業にも中国のスパイが」現役FBI長官C・レイが世界のビジネスパーソンに向けて発した“警告”)である。

先ずは、9月5日付け現代ビジネスが掲載した元航空自衛隊情報幹部の鈴木 衛士氏による「【緊急警告】中国大型軍事ドローンの飛行高度が低すぎてヤバすぎる…沖縄周辺で民間機と衝突事故の可能性も」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/99430?imp=0
・『台湾へのペロシ訪問以後、中国は台湾やわが国周辺で軍事活動を活発化させているが、無人機(大型ドローン)も例外ではない。しかし、この運用の実態はあまりに危険で、飛行高度の問題で最悪、日本の沖縄周辺の領域を飛ぶ民間旅客機との事故の危険性があり得ることを緊急で報じたい。 まず、7月28日の拙稿『中国大型軍事ドローンが日本周辺で活発化、でも「領空侵犯されても撃墜できない」日本政府見解がヤバすぎる』において、中国軍がわが国周辺における大型無人機(ドローン)の運用を本格化させたことなどを指摘した。この時以来、中国軍はわが国、特に沖縄周辺の空域で、偵察型無人機BZK-005や偵察/攻撃型無人機TB-001など大型ドローンの活動を常態化させようとしている。 ちなみに、大型無人機、大型ドローンという言葉に関してだが、無人機の中でも「ドローン」は通常小型のものを指し、大型の無人機は自衛隊や米軍などでは「UAV(Unmanned aerial vehicle)」と呼称しているが、本記事では一般読者に分かりやすいように「大型無人機」「大型ドローン」などと使い分けて使用する。なお大きさについてだが、今回の写真のものを含めて軍用の大型ドローンでだいたい全長10m以上、翼幅20m以上に達する』、「軍用の大型ドローンでだいたい全長10m以上、翼幅20m以上」、かなり大きく、本格的なようだ。
・『中国大型軍事ドローンの「飛行高度」が危険すぎる  それにしても、中国の無人機の運用方法は、傍若無人で危険極まりない。 前述の拙稿のとおり、7月25日以来、中国の大型ドローンは、単独で自国のレーダ・カヴァレッジ(覆域)外をはるかに超えて、沖縄・宮古島間というわが国の島嶼(とうしょ)間を通過し、太平洋側からわが国の領空へ接近するという活動を繰り返しているが、自国レーダで安全監視していない領域でのこの運用がいかに危険なことか、中国軍は本当に理解しているのだろうか。 分かってやっているなら、これは明らかな挑発行為であり、それはそれでわが国の対応の仕方もあろう。しかし、もしこれが危険という認識が欠如しているものならば、わが国にとってこれほど恐ろしいことはない。 筆者が現役時代、中国空軍から幾度も接触(自衛隊でいうスクランブル)を受けたことのある米軍のパイロットは、中国軍の対応は、「アン・プロフェッショナル(さじ加減を知らないの意)でとても危険だ」と嘆いていたものである。同様な発言は、米海軍艦艇の軍人からも聞いたことがある。この十数年で急成長した人民解放軍の海軍や空軍の軍人らは対外的な経験が乏しく、軍事的に「これ以上は危険である」という認識が甘いのではないかと、筆者は今もこれを危惧している。 そして、何よりこの大型ドローンの危険性の本質は、その高度帯にある。 わが国も装備を始めた米国製の大型ドローン・グローバルホーク(RQ-4)は、ハイハイ(high high altitude)と呼ばれる超高高度帯域約13,000m~18,000mで飛行する。これは、何よりも敵戦闘機からの要撃を回避するためではあるが(酸素濃度の理由で戦闘機のこの高度帯域での攻撃は困難となっている)、これによって民間機などとの高度帯による隔離が可能(民間機の上昇限度は約13,000m)となり、飛行経路の自由度(安全性)が高くなるというメリットもある。 これに対して、中国の大型ドローンの最高高度は、7,800m~10,000mであり、民間機の飛行高度帯域と完全にバッティング(合致)している。にもかかわらず、あらかじめセッティングされた(と推定される)彼らの飛行目的に応じた経路や空域を飛行し、中国側によるレーダ・モニター(監視)などの安全策も取られないまま、長時間わが国周辺で活動しているのである。 民間の飛行監視サイト「Flightradar24」を見ても分かるように、沖縄・宮古島間は少ない時で2~3機、多い時では7~8機の民航機が常時行き来している。これを考えると、この大型ドローンの飛行は、北朝鮮や中国の弾道ミサイルがわが国EEZに落下するよりは、「はるかに危険な行為である」ということが分かるだろう』、「この十数年で急成長した人民解放軍の海軍や空軍の軍人らは対外的な経験が乏しく、軍事的に「これ以上は危険である」という認識が甘いのではないかと、筆者は今もこれを危惧」、「中国の大型ドローンの最高高度は、7,800m~10,000mであり、民間機の飛行高度帯域と完全にバッティング(合致)している。にもかかわらず、あらかじめセッティングされた(と推定される)彼らの飛行目的に応じた経路や空域を飛行し、中国側によるレーダ・モニター(監視)などの安全策も取られないまま、長時間わが国周辺で活動している」、危険なことこの上ない。
・『ついに台湾は中国小型ドローンを撃墜した  ここで、近日の中国軍事ドローンに関する変化について振り返ってみよう。我々が特に注目すべきは、9月1日、ついに台湾陸軍が中国大陸に近い(台湾が実効支配する)金門群島の石宇島上空を飛行した3機の中国から飛来してきた小型ドローンを撃墜したことである。 ナンシー・ペロシ米下院議長の台湾訪問に反発して台湾周辺で行った大規模な軍事演習以来、わが国や台湾周辺で大型ドローンの活動を活発化させていたが、この金門群島周辺でも(市販のものと見られる)小型のドローンが再三領空内へ侵入して来ていたが、台湾はついにこれを撃墜したのである。 この経緯について、順を追って説明すると、まず中国がこの大規模な軍事演習において、わが国の排他的経済水域(EEZ)を含む演習(航行警報)海域に弾道ミサイルを発射した8月4日、前述2機種の大型ドローンなど3機が、この演習海域を含む沖縄周辺の空域において、午前から夜間にかけて長時間活動した。 また、同30日には、TB-001が単機で7月25日と同様のコースで沖縄・宮古島間を通過し、宮古島の南方空域から台湾東方の海域で昼間帯に活動し、往路と同じコースで帰投した。 
台湾国防部によると、この演習以降、中国に近い(台湾が実効支配する)金門群島では、中国から飛来した小型ドローンが度々領空に侵入し、これらのドローンから撮影した台湾の軍事施設の動画が中国のSNSで拡散されていたとのことである。 中でも、前述のTB-001がわが国周辺に飛来した8月30日には、金門島の離島である二胆島に中国から飛来した小型ドローンに対して、台湾軍が「度重なる(音声や信号弾などの)警告に応じなかったため、実弾射撃を実施した」と発表した。台湾軍が中国のドローンに対して実弾を発射したのは、これが初めてであった。 そして9月1日、台湾陸軍は、金門群島の石宇島上空に侵入してきた3機のドローンに対して、信号弾を発射し、警告射撃を行ったのち、いずれにも従わず引き返さなかったドローンを撃墜した(同陸軍発表)。 このドローンは、一般でも入手可能な撮影用の小型ドローンと見られる。しかし、ラジコン程度の大きさであっても、軍事施設付近ならば軍用ヘリなども飛行するだろうし、不安定な飛翔をする小型ドローンが周辺を飛行するのはとても危険なことだ。中国本土から6kmしか離れていない領域であることなどから、民間人による悪質ないたずらの可能性も考えられるが、これが相手国の軍事施設の上空を飛行したとすれば、その実行者が誰であれ国際問題となる類の行為である。 国籍不明の無人機が領空侵犯したら「問答無用で撃墜すべき」というのは、前述の拙稿で主張したとおりである。まさに、台湾軍の対応は正しいといえる。無人機はあくまで「機械」であり、警告に応じるはずもなく、意思疎通ができないのだから「問答無用」は当たり前の話なのだ。さらにそもそも無人機は、「消耗装備品」であり、一線を越えれば撃墜されることも承知で運用しているものだというのは、拙稿で述べたとおりだ』、「無人機はあくまで「機械」であり、警告に応じるはずもなく、意思疎通ができないのだから「問答無用」は当たり前の話なのだ。さらにそもそも無人機は、「消耗装備品」であり、一線を越えれば撃墜されることも承知で運用しているものだ」、その通りだ。
・『ドローンは「飛ぶロボット」に過ぎないから即撃墜を  国際民間航空(ICAO)条約においては、長距離洋上及び航空機用救命無線機(ELT)を装備しなければならない区域を飛行する場合には、航空機に対して国際緊急周波数(VHF:121.500MHzまたはUHF:243.000MHz)の聴取を義務付けているが、通常各国の軍用機や艦艇もこれに準じてこの周波数をモニター(聴取)している。 したがって、領空に接近する国籍不明機(軍用機等)に対しても、航空自衛隊のレーダサイトからこの周波数帯を使用して通告や警告を実施している。その他、突発的な危険回避などの際にも、この周波数で相手との通信を試みるのが通例である。 2018年12月20日に発生した「韓国海軍レーダ照射事案」の際も、海上自衛隊の哨戒機から韓国海軍の艦艇へ向けてこの周波数帯で交信を試みたが、この際は(おそらく聞いていたであろう)韓国海軍艦艇からの応答はなかった。応答はなかったものの、この艦艇がこれをモニターしていた(可能性は大)とすれば、海上自衛隊の哨戒機が「危険を感じた」ということは認識したであろう。 これに対し、ドローンの場合は、これをモニターする人間が搭乗していないのだから、このような手順はすべて無効である。例えば、ドローンがこのままのコースで飛行すれば民間機と衝突する恐れがあると、航空自衛隊のレーダサイトや航空管制用レーダサイトで認識されたとしても、これを伝えるすべがないのである』、「国際緊急周波数」、を使用して通告や警告を実施しても返答・応答がなく、領空に侵入したり、民間機に近づいて行ったり、明らかに制御不能と思われるような飛行形態となった時は、「躊躇なくこれを撃墜する撃ち落とすのは当然だ。
・『民間機と衝突する前にまずは抗議し、我の方針を伝えよ  中国の大型ドローンの単独による長距離進出は、いまだ緒に就いたばかりである。中国軍に言わせれば、「日本の民航機の通過時間などはすべて承知している」と言うかも知れない。しかし、民航機が何時間も遅れることなどよくあることだ。コースも高度もその時の気象などによっては変化する。 パイロットによる安全監視もなく、自国レーダによる監視もなく、接近する領空や航空機などに関わる通報や警告にも耳を貸さず、ただひたすらに命じられたコースや空域で任務を遂行するこのドローンは、一歩間違えばとてつもない凶器となる。民航機と衝突して大惨事が発生する前に、十分な対策を講じておく必要があろう。 まず政府は、このような危険なドローンの運用を続ける中国側に抗議し、ドローンが領空に侵入したり、民間機に近づいて行ったり、明らかに制御不能と思われるような飛行形態となった時は、「躊躇なくこれを撃墜する」という方針を明確に伝えておくことだ。このような姿勢があってこそ、航空自衛隊などの確固たる対応行動が可能となるのである。 決して、この行動に対応する航空自衛隊などの現場が、いざという時に躊躇することのないよう、政府は毅然とした姿勢を明確にしておいてもらいたいと切に願う』、「政府は、このような危険なドローンの運用を続ける中国側に抗議し、ドローンが領空に侵入したり、民間機に近づいて行ったり、明らかに制御不能と思われるような飛行形態となった時は、「躊躇なくこれを撃墜する」という方針を明確に伝えておくことだ。 このような姿勢があってこそ、航空自衛隊などの確固たる対応行動が可能となる」、その通りだ。

次に、10月6日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した評論家・翻訳家の白川 司氏による「中国「一帯一路」失敗の象徴…親中だったパキスタンが米国に急接近する理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/310709
・『9月の大洪水をきっかけに親中国のパキスタンが米国に接近  アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官が、9月26日に首都ワシントンでパキスタン外相のビラーワル・ブットー・ザルダリ氏と会談した。 ブリンケン国務長官は洪水による被害を受けたパキスタンへの支援を約束すると同時に、中国に対してもパキスタンが負っている債務を軽減するように呼びかけている。パキスタンでは9月に大洪水が発生して国土の実に3分の1が水没し、死者は1600人にものぼり、700万人以上が避難する壊滅的な被害を受けている。 ブリンケン国務長官は5600万ドル(約80億円)の人道支援のほか、航空機17機分の物資など、長期にわたるパキスタン支援を表明している。 反米色の強かったカーン前首相が辞任したあとの7月6日に、両国外相は電話会談を行って、パートナーシップの強化を確認している。 パキスタンはこれまで、中国からの援助を最も受けている大の親中国であったが、今回の水害をきっかけにアメリカに急激に接近し始めており、アメリカ側もパキスタンを親米側に引き入れるべく全力で支援するつもりのようだ』、「パキスタンはこれまで、中国からの援助を最も受けている大の親中国であったが、今回の水害をきっかけにアメリカに急激に接近し始めており、アメリカ側もパキスタンを親米側に引き入れるべく全力で支援するつもりのようだ」、「9月に大洪水が発生して国土の実に3分の1が水没し、死者は1600人にものぼり、700万人以上が避難する壊滅的な被害」、とは深刻な被害だ。
・『一帯一路離れを招いた中国の「自国第一主義」 パキスタンにとって中国は最大の経済パートナーである。中国にとっても、パキスタンはライバル関係にあるインドと隣接していることで、インド洋において最も信頼する戦略的パートナーである。中国は一大インフラ事業である「中国経済パキスタン回廊(CPEC)」を2015年から進めており、その予算規模は実に540億ドル(約7兆8000億円)に上る。 CPECには海港の整備、新鉄道の敷設、地下鉄建設、水力発電、ファーウェイによる中パ間の光ファイバーの敷設などがある。いずれも国家的な大規模プロジェクトであり、中国はパキスタンにとって最大の投資者だったわけだ。 だが、アメリカ政府はCPECに対して「持続可能な投資ではない」と警告を繰り返してきた。中国を全面的に頼るパキスタン政府はこの警告を無視してきたが、高金利と高インフレによる財政危機に見舞われ、親中のカーン首相が辞任に追い込まれてしまった。そして、今回の大水害がダメを押す形になって、ついにアメリカとの本格交渉が開始される運びとなった。 パキスタンはインドの陰に隠れて目立っていないが、人口は世界第5位の2億2000万人を有している。ただ、腐敗が横行したまま政治改革が遅れ、経済規模も外貨準備高も年々縮小し、失業率が急上昇。自国通貨パキスタン・ルピーも2015年以降下落の一途をたどっている。そのため、対外債務は1310億ドル(約18兆9000億円)という、その経済規模に似つかわしくない莫大な額に積み上がってしまった。 政府は負債の返済のために借り入れを増やす債務の雪だるま状態に陥っている。パキスタン政府は、紅茶の輸入量を減らすために国民に紅茶を飲む量を減らすことまで求めて、当然のことながら国民から強い反発を受けている。 パキスタンの債務の4分の1が中国からで、これは一帯一路の受け入れで急速に借り入れを増やしたものだ。中国にとってCPECは一帯一路最大のプロジェクトであることから、中国がパキスタンをかなり重視していることがうかがえる。 また、パキスタン政府もその見返りとして中国に対して最大限の配慮をして、たとえば世界中から批判を浴びているウイグル人虐待に対して、同じイスラム教徒の多い国ながらノータッチを貫いてきた。このあたりは経済連携を深めながらも、反中感情を隠さないインドとは根本的な違いがある。 ただ、中国による投資には大きな問題がある。 中国が大規模プロジェクトで投資する場合、それを請け負うのは中国企業であり、働き手も現地から採用するのは肉体労働者ばかりで、それ以外の多くを中国から派遣する。さらに、中国政府は相手政府に対してプロジェクト工事の優遇を求めるのが普通で、パキスタンの場合も免税を強要するために、パキスタンの財政にはほとんど寄与していないのである。 これはパキスタン国民からすれば、見えない損失を負わされたようなものである。 また、中国とパキスタンは自由貿易協定(FTA)を2006年から実施しているが、中国からの輸入が一方的に増えるだけで、パキスタンからの輸出はいっこうに増えていない。これは、「自由貿易協定」と言いながら、実際は中国に有利な品目の関税ばかりを減らしたからだろう。そのためパキスタン側の不満が鬱積して、2020年に仕切り直しをして中国側が歩み寄らざるをえなくなった。だがそれでも、パキスタンの中国に対する債務は増すばかりだ』、「中国による投資には大きな問題がある。 中国が大規模プロジェクトで投資する場合、それを請け負うのは中国企業であり、働き手も現地から採用するのは肉体労働者ばかりで、それ以外の多くを中国から派遣する。さらに、中国政府は相手政府に対してプロジェクト工事の優遇を求めるのが普通で、パキスタンの場合も免税を強要するために、パキスタンの財政にはほとんど寄与していないのである」、「FTA」では、「中国からの輸入が一方的に増えるだけで、パキスタンからの輸出はいっこうに増えていない。これは、「自由貿易協定」と言いながら、実際は中国に有利な品目の関税ばかりを減らしたから」、「中国」も悪どいやり方をしたものだ。
・『グワダル港から見える中国投資の問題点  パキスタンが中国投資に関していま最も不満をもっているのが、グワダル港に対するものである。グワダルは南西部にある小さな港町だが、中国が巨大投資を行って商業用深水港を建設し、急成長している。 このプロジェクトで特筆すべきは、無償援助が含まれていることだった。中国が無償援助を行うことはほとんどなく、それはパキスタンを重視していたことの証明だと考えられてきた。 もちろん、相手のことを思いやって無償援助するわけではない。グワダルが中国西部と近いことで、もともとはパイプライン建設や軍港建設を通して「中国の飛び地」とすべく計画している。 結局、グワダル港は中国政府に40年間リースされることになり、中国国有企業が港の利益の91%を受け取る「ほぼ利益総取り」の状態にある。 グワダルはさらに大きな問題を抱えている。グワダルのあるバルチスタン州はパキスタンの中でも最貧地域であるが、反体制派で分離独立主義の「バルチスタン解放軍(BLA)」が存在しているのだ。 BLAは中国の経済侵略に抗議していることから、今後プロジェクト自体に攻撃を仕掛ける可能性がある。実際、すでに工事関係者の中国人がBLAによって何人も殺害されている。本来はインド洋での勢力拡大に使うための駐留軍隊を、中国は在パキスタン中国人の安全確保のために使わざるをえなくなっている。 グワダルはいまだに上水道が完備されておらず、電気も安定供給からはほど遠い。莫大な投資はしたはいいが、本当に計画どおりに発展させられるのかにも疑問符がつく』、「グワダル港は中国政府に40年間リースされることになり、中国国有企業が港の利益の91%を受け取る「ほぼ利益総取り」の状態」、「グワダルのあるバルチスタン州はパキスタンの中でも最貧地域であるが、反体制派で分離独立主義の「バルチスタン解放軍(BLA)」が存在」、「すでに工事関係者の中国人がBLAによって何人も殺害されている。本来はインド洋での勢力拡大に使うための駐留軍隊を、中国は在パキスタン中国人の安全確保のために使わざるをえなくなっている」、「中国」にしたら身から出た錆なのかも知れない。
・『一帯一路の重荷を背負い続ける中国政府  一帯一路は主に陸のシルクロード(一帯)と海のシルクロード(一路)を中国からヨーロッパまで経済的につなぐという構想だが、実際にはアジアやアフリカ、中南米などの新興国を中心に莫大なカネを投資してきた。 だが、ウクライナ戦争をきっかけに、エネルギーや食糧価格の高騰、金利上昇などが新興国の経済を直撃している。先述のパキスタンや、最近政変が起こったスリランカ、その前に政変が起こったモルディブなど、中国依存が大きい国ほど、危機下で大きな打撃を被っており、一帯一路を受け入れた債務国からの返済が滞ってきている。 一帯一路受け入れ国には独裁国家が多いが、あまり雇用を生まない中国からの投資は国民から反発されることが多く、反政府的な感情を高めやすくなる。 また、一帯一路は欧米機関が「採算の見込みが認められない」としたプロジェクトが多く含まれており、実際、中国への借金が膨らむだけで、完成しても採算が見込めないことが多いことが、返済の行き詰まりに拍車を掛けている。 今後のプロジェクトについて、中国側では融資の基準を厳格化する案も浮上しているが、いずれにせよ、これまで投じた資金の回収が困難になりつつある状況は変わらない。また、今後の投資案件は著しく絞り込まざるをえなくなっている。 さらに、中国は借金返済を他国より優先することを義務づけて、財政危機の際に「債権国同士で話し合って、返済スキームを作る」といった会議に参加しないことが多い。債務軽減を認めない中国の態度は、一帯一路受け入れ国政府に反発を生む要因となっている。また、中国への債務返済のために増税して国民の反中感情を高めるといった事例も出てきている。) とくに、スリランカ南部のハンバントタ港などのように、借金返済ができず、その「カタ」として港が中国に占領されると、「債務のわな」ではないかと中国は国際的な批判を浴びるようになっている。 体面を重視する中国政府にとって、一帯一路の評判の悪さは頭痛の種になっており、中国国内の反習近平勢力を中心に「一帯一路は失敗」という論調が高まっているという見方をする専門家も出てきている。 10月に習近平国家主席の3期目が決定すれば、中国の影響力拡大を続けるためにも一帯一路を撤回することはありそうもない。だが、だからといって、今後、債務国の財政が健全化して資金回収がスムーズになることもありえない。 中国経済が強かった時代であればそれでも続ける体力があるだろうが、中国経済は低成長期に入っている。中国がこれまで一帯一路という莫大な大型投資の原資に困らなかったのは、政府が社会福祉への財政を絞り込み、将来が不安な人民が勤勉に貯蓄してきたことが大きいが、今後の経済状況次第ではそれもどうなるかわからない。 だが、一帯一路をいったん緩めてしまうと、今まで広げてきた中国の影響範囲を再び欧米に覆させる可能性がある。進めるのもやめるのも困難な「不良債権」と化しつつある。 一帯一路は中国の世界覇権を広げる重要な政策だが、同時に中国経済に混乱をもたらしかねない不安定要素として、今後も中国政府を苦しめる可能性がある』、「中国は借金返済を他国より優先することを義務づけて、財政危機の際に「債権国同士で話し合って、返済スキームを作る」といった会議に参加しないことが多い。債務軽減を認めない中国の態度は、一帯一路受け入れ国政府に反発を生む要因となっている。また、中国への債務返済のために増税して国民の反中感情を高めるといった事例も出てきている」、「一帯一路は中国の世界覇権を広げる重要な政策だが、同時に中国経済に混乱をもたらしかねない不安定要素として、今後も中国政府を苦しめる可能性がある」、こんな問題を抱えながら、「習近平」はよくぞ「3期目」を手にしたものだ。

第三に、10月16日付け文春オンライン「「あなたの企業にも中国のスパイが」現役FBI長官C・レイが世界のビジネスパーソンに向けて発した“警告”」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/57918
・『7月6日、ロンドンで米連邦捜査局(FBI)長官、英情報局保安部(MI5)長官による企業経営者向け合同講演会が開かれました。その際のクリストファー・レイFBI長官の講演録をFBIの許可を得て文藝春秋11月号に掲載(「FBI長官からの警告」翻訳・布施哲)。その一部を公開します』、興味深そうだ。
・『「中国政府こそが長期的かつ最大の脅威である」  ありがとう、ケン(・マッカラム、MI5長官)。今週ここに来て我々が直面している共通の脅威と我々の2つの機関の素晴らしい協力について話せることはとても光栄です。 FBIにとってMI5ほど親密なパートナーはいません。テロ対策からサイバー攻撃を使った知的財産の窃取、国際的な弾圧から諜報活動まで、私たちの機関が直面するほとんどすべての任務において連携しています。私たちが共に取り組む課題に共通項があることにお気づきでしょう。そしてどれも困難な課題ばかりです。 私たちの世界はさまざまな困難な課題であふれています。ロシアによるウクライナへの侵攻、民間人に対する無慈悲な殺害行為、民間インフラの破壊はその最たるものです。 我々両機関は目下、ロシアの脅威に取り組んでいますが、その一方で本日は、ここにいるビジネスパーソンの皆さんにとっても脅威となる、複雑かつ広範な問題について話したいと思います。私たちは一貫して、中国政府こそが私たちの経済と国家安全保障に対する、長期的かつ最大の脅威であると認識してきました。「私たち」とは、米英両国と欧州やその他の地域の同盟国という意味です』、「私たちは一貫して、中国政府こそが私たちの経済と国家安全保障に対する、長期的かつ最大の脅威であると認識してきました」、「一貫して」は言葉がスベリ過ぎた感もある。
・『中国政府はあらゆる手段を使って盗む  ここで明確にしておきたいのは、中国政府と中国共産党こそが、私たちが対抗しようとしている脅威であることです。中国国民でもなければ、中国政府による弾圧の犠牲者ともいえる、わが国に住む中国系移民でもありません。中国でのビジネス、中国とのビジネスが魅力的であることはわかっています。私は公職に戻る前は12年間、民間において世界有数の企業に助言をする仕事をしていました。FBIでは日々、さまざまな規模の企業と関わっています。中国市場に目を向け、競争力を維持しようとする企業の考え方も理解しているつもりです。しかし、今日皆さんにお伝えしたいのは、賢明なるビジネスパーソンの皆さんが認識している以上に、中国が欧米の企業にとって深刻な脅威だという事実です。その脅威を見極め、それに対処するための計画を立てるには長期的視点が不可欠です。 その脅威とはどのようなものか。 中国政府は貴社の技術を盗むこと、つまり貴社の事業を成り立たせているものが何であれ、それを利用して貴社のビジネスを弱体化させ、市場を支配することを目指しているのです。そして、そのためにあらゆる手段を使おうとしています。例えば、狙った民間企業の情報を諜報員を使って入手しています。諜報機関の動きを支援しているのが協力者の存在です。厳密には中国政府の関係者ではないですが、諜報活動を支援し、リクルートするべき情報源の発見と評価を行い、偽装工作や連絡手段を提供し、さまざまな手段を通じて機密を盗むことを支援しているのが協力者です。 中国の諜報機関、国家安全部(MSS)が持つ数々の地方支局が欧米企業の技術情報を狙った工作を展開しています。狙われている欧米企業は大都市から小さな町にまで至り、企業規模もフォーチュン上位100社からベンチャーまで、所属セクターも航空、AI、製薬などあらゆる分野にわたっています。 中国企業のために働いている協力者がアメリカ国内のある畑に忍び込み、独自に開発した遺伝子組み換え種子を掘り出したのを逮捕したこともあります。この種子は、開発するのに10年近くの期間と、数十億ドルの研究費がかかったものでした。そうした長年の企業努力も、すべての主要国の予算を足した額を大幅に超える資金を使った中国のサイバー攻撃工作にかかったらひとたまりもないのです』、「中国政府は貴社の技術を盗むこと、つまり貴社の事業を成り立たせているものが何であれ、それを利用して貴社のビジネスを弱体化させ、市場を支配することを目指しているのです。そして、そのためにあらゆる手段を使おうとしています。例えば、狙った民間企業の情報を諜報員を使って入手しています。諜報機関の動きを支援しているのが協力者の存在です。厳密には中国政府の関係者ではないですが、諜報活動を支援し、リクルートするべき情報源の発見と評価を行い、偽装工作や連絡手段を提供し、さまざまな手段を通じて機密を盗むことを支援しているのが協力者です。 中国の諜報機関、国家安全部(MSS)が持つ数々の地方支局が欧米企業の技術情報を狙った工作を展開しています」、こうした組織的な情報工作に対抗するのは容易ではなさそうだ。
・『中国政府は、サイバー攻撃を大規模な不正行為や窃盗を行うための有力な手段だと考えています。例えば、昨年の春、マイクロソフト社はExchange Serverソフトウェアにかかわる、これまで知られていなかった脆弱性をいくつか公表しました。中国のハッカーはこの脆弱性を利用して、米国のネットワークに1万以上のバックドアをインストールし、これらのシステム上のデータへの継続的なアクセスを可能にしていました。これは中国政府が脆弱性を悪用した一例に過ぎません。) ここ数年、中国政府の支援を受けたハッカーが、脆弱性を修正するパッチが適用されていないネットワーク機器やインフラへの侵入方法を執拗に探し出そうとしているのを私たちは注視してきました。中国のハッカーは、防御策を回避する戦術を常に進化させています。彼らは、ネットワーク・ディフェンダー(セキュリティ担当者)のアカウントを監視し、検知されないように必要に応じて戦術を変えることすらします。カスタマイズしたハッキング・ツールと、通常のネットワーク環境に存在するツールを組み合わせることで、ネットワークの「ノイズ」や通常のネットワーク環境に紛れ込ませて、自分たちの動きをカムフラージュしています。重要なのはその規模の大きさだけではありません。それらの戦術が効果的でもあることです。 さらに伝統的なサイバー攻撃によるデータ窃取に加えて、彼らはもっと陰湿な手口で表玄関から侵入し、お金を奪おうともしています。中国政府は技術を盗み取ることを目的とする投資や提携を好む傾向があります。中国企業の多くは、中国政府、つまり実質的には中国共産党に支配されています。その所有権は間接的でわかりにくく、対外的に公表されることもありません。そうでない中国企業についても実際は政府の統制下にあるといえます。なぜなら中国企業は、その規模にかかわらず、共産党の下部組織を組織することが義務付けられているからです。つまり、中国企業と付き合うということは、中国政府、つまり国家安全部と人民解放軍という影のパートナーと付き合うことを意味します。 また、海外において中国は、外国企業やCFIUS(米国の対米外国投資委員会)といった外国からの投資を審査するプログラムを欺くため、より手の込んだ偽装工作を展開しています。例えば、SPAC(特別買収目的会社)のような特殊な企業形態を利用し、過大な議決権をもたらす株数を購入することで、出資額とは釣り合わないほどの支配力を行使できるようにしています。また、中国政府は正確なデューデリジェンス(投資先企業の調査)を可能にするデータの多くを遮断しており、例えば、取引先の企業が中国国有企業の子会社であるかどうかを中国国外の企業が見極めることは非常に難しい。私たちは、MI5やその他のパートナーと協力して、この種の秘密の投資を特定しようとしています。米国では何百もの不自然な取引を特定し、CFIUSの投資審査にかけました』、「中国企業と付き合うということは、中国政府、つまり国家安全部と人民解放軍という影のパートナーと付き合うことを意味します。 また、海外において中国は、外国企業やCFIUS(米国の対米外国投資委員会)といった外国からの投資を審査するプログラムを欺くため、より手の込んだ偽装工作を展開しています。例えば、SPAC(特別買収目的会社)のような特殊な企業形態を利用し、過大な議決権をもたらす株数を購入することで、出資額とは釣り合わないほどの支配力を行使できるようにしています」、巧みなやり方だ。
・『中国政府指定の税務ソフトを使うと……  中国国内になると、同じような問題はさらにあります。中国政府が米国や英国の企業に対して、中国企業との合弁を義務づけていることは、皆さんもご存知でしょう。その合弁相手は往々にして競合相手にその後変貌するのです。それだけではなく、中国政府はあなたがた企業が持つ知的財産やデータの扱いについて、中国のやり方を求める立法措置をとっています。 2015年以降、中国政府は中国で事業を行う企業の権利とセキュリティを侵害する法律を次々と可決させています。例えば、2017年の法律では、中国政府によって「重要情報インフラ」と指定された場合、その企業は中国国内にデータを保存しなければならないと定めており、当然ながら、中国政府はデータに容易にアクセスできるようになりました。 2017年の別の法律では、中国にいる中国人従業員に中国の諜報活動を支援するよう強制することができるようになりました。そして、2021年に可決された法律では、中国で収集されたデータを集中管理し、そのデータへのアクセス権とコントロール権が中国政府に与えられています。その他の新しい法律では、中国に対する国際的な制裁の実施に参加した場合、中国政府が罰則を科すことが可能になり、外国企業は制裁参加か、中国政府の側に立つかの板挟みの状態に置かれます。また、中国株式を保有する企業に対して、自社ネットワーク製品の脆弱性情報を報告するよう求める規定もあり、中国当局がその脆弱性を悪用することができるようになりました。 そうした法律があっても中国政府が信頼に足る存在であれば問題はないのですが、残念ながら中国政府が法律や規制を悪用して外国企業の知的財産やデータを盗む実例を、私たちはこれまでにも見てきました。 例えば2020年には、中国に進出している多くの米国企業が、中国政府が使用を義務化した税務ソフトによって標的にされていることがわかりました。中国の法律を遵守するために、これらの企業は政府公認の特定のソフトウェアを使用する必要がありましたが、米国企業はこのソフトウェアを通じて、マルウェア(悪意あるソフトウェア)がネットワークに移植されていることを発見しました。 つまり、中国でビジネスを行うために中国の法律を遵守することで、知らず知らずのうちにシステムにバックドアが設置され、プライベートであるはずのネットワークにハッカーがアクセスできるようになってしまったのです。これはすべてほんの一例であり、このほかにもいくらでも例を挙げられます。 ◆ FBI長官クリストファー・レイ氏による講演録「FBI長官からの警告」(翻訳・布施哲)全文、そして布施氏による解説「日本企業の経営者への警鐘でもある」は、文藝春秋11月号、および文藝春秋digitalに掲載しています』、「中国に進出している多くの米国企業が、中国政府が使用を義務化した税務ソフトによって標的にされていることがわかりました。中国の法律を遵守するために、これらの企業は政府公認の特定のソフトウェアを使用する必要がありましたが、米国企業はこのソフトウェアを通じて、マルウェア(悪意あるソフトウェア)がネットワークに移植されていることを発見しました。 つまり、中国でビジネスを行うために中国の法律を遵守することで、知らず知らずのうちにシステムにバックドアが設置され、プライベートであるはずのネットワークにハッカーがアクセスできるようになってしまったのです。これはすべてほんの一例であり、このほかにもいくらでも例を挙げられます」、ここまでされても「中国」でビジネスをしたいという欧米企業は、本当にあるのだろうか。われ先に逃げ出してもおかしくなさそうだ。ただ、ドイツのフォルクスワーゲンのように特別待遇を享受しているような企業は残るのだろう。シュルツ首相も驚きの訪中をしたことだし・・・。
タグ:「グワダル港は中国政府に40年間リースされることになり、中国国有企業が港の利益の91%を受け取る「ほぼ利益総取り」の状態」、「グワダルのあるバルチスタン州はパキスタンの中でも最貧地域であるが、反体制派で分離独立主義の「バルチスタン解放軍(BLA)」が存在」、「すでに工事関係者の中国人がBLAによって何人も殺害されている。本来はインド洋での勢力拡大に使うための駐留軍隊を、中国は在パキスタン中国人の安全確保のために使わざるをえなくなっている」、「中国」にしたら身から出た錆なのかも知れない。 文春オンライン「「あなたの企業にも中国のスパイが」現役FBI長官C・レイが世界のビジネスパーソンに向けて発した“警告”」 中国情勢(軍事・外交)(その15)(【緊急警告】中国大型軍事ドローンの飛行高度が低すぎてヤバすぎる…沖縄周辺で民間機と衝突事故の可能性も、中国「一帯一路」失敗の象徴…親中だったパキスタンが米国に急接近する理由、「あなたの企業にも中国のスパイが」現役FBI長官C・レイが世界のビジネスパーソンに向けて発した“警告”) 現代ビジネス 「FTA」では、「中国からの輸入が一方的に増えるだけで、パキスタンからの輸出はいっこうに増えていない。これは、「自由貿易協定」と言いながら、実際は中国に有利な品目の関税ばかりを減らしたから」、「中国」も悪どいやり方をしたものだ。 「中国による投資には大きな問題がある。 中国が大規模プロジェクトで投資する場合、それを請け負うのは中国企業であり、働き手も現地から採用するのは肉体労働者ばかりで、それ以外の多くを中国から派遣する。さらに、中国政府は相手政府に対してプロジェクト工事の優遇を求めるのが普通で、パキスタンの場合も免税を強要するために、パキスタンの財政にはほとんど寄与していないのである」、 「軍用の大型ドローンでだいたい全長10m以上、翼幅20m以上」、かなり大きく、本格的なようだ。 「パキスタンはこれまで、中国からの援助を最も受けている大の親中国であったが、今回の水害をきっかけにアメリカに急激に接近し始めており、アメリカ側もパキスタンを親米側に引き入れるべく全力で支援するつもりのようだ」、「9月に大洪水が発生して国土の実に3分の1が水没し、死者は1600人にものぼり、700万人以上が避難する壊滅的な被害」、とは深刻な被害だ。 白川 司氏による「中国「一帯一路」失敗の象徴…親中だったパキスタンが米国に急接近する理由」 ダイヤモンド・オンライン 鈴木 衛士氏による「【緊急警告】中国大型軍事ドローンの飛行高度が低すぎてヤバすぎる…沖縄周辺で民間機と衝突事故の可能性も」 「一帯一路は中国の世界覇権を広げる重要な政策だが、同時に中国経済に混乱をもたらしかねない不安定要素として、今後も中国政府を苦しめる可能性がある」、こんな問題を抱えながら、「習近平」はよくぞ「3期目」を手にしたものだ。 「政府は、このような危険なドローンの運用を続ける中国側に抗議し、ドローンが領空に侵入したり、民間機に近づいて行ったり、明らかに制御不能と思われるような飛行形態となった時は、「躊躇なくこれを撃墜する」という方針を明確に伝えておくことだ。 このような姿勢があってこそ、航空自衛隊などの確固たる対応行動が可能となる」、その通りだ。 「この十数年で急成長した人民解放軍の海軍や空軍の軍人らは対外的な経験が乏しく、軍事的に「これ以上は危険である」という認識が甘いのではないかと、筆者は今もこれを危惧」、「中国の大型ドローンの最高高度は、7,800m~10,000mであり、民間機の飛行高度帯域と完全にバッティング(合致)している。にもかかわらず、あらかじめセッティングされた(と推定される)彼らの飛行目的に応じた経路や空域を飛行し、中国側によるレーダ・モニター(監視)などの安全策も取られないまま、長時間わが国周辺で活動している」、危険なことこの 「国際緊急周波数」、を使用して通告や警告を実施しても返答・応答がなく、領空に侵入したり、民間機に近づいて行ったり、明らかに制御不能と思われるような飛行形態となった時は、「躊躇なくこれを撃墜する撃ち落とすのは当然だ。 「中国は借金返済を他国より優先することを義務づけて、財政危機の際に「債権国同士で話し合って、返済スキームを作る」といった会議に参加しないことが多い。債務軽減を認めない中国の態度は、一帯一路受け入れ国政府に反発を生む要因となっている。また、中国への債務返済のために増税して国民の反中感情を高めるといった事例も出てきている」、 「無人機はあくまで「機械」であり、警告に応じるはずもなく、意思疎通ができないのだから「問答無用」は当たり前の話なのだ。さらにそもそも無人機は、「消耗装備品」であり、一線を越えれば撃墜されることも承知で運用しているものだ」、その通りだ。 ただ、ドイツのフォルクスワーゲンのように特別待遇を享受しているような企業は残るのだろう。シュルツ首相も驚きの訪中をしたことだし・・・。 つまり、中国でビジネスを行うために中国の法律を遵守することで、知らず知らずのうちにシステムにバックドアが設置され、プライベートであるはずのネットワークにハッカーがアクセスできるようになってしまったのです。これはすべてほんの一例であり、このほかにもいくらでも例を挙げられます」、ここまでされても「中国」でビジネスをしたいという欧米企業は、本当にあるのだろうか。われ先に逃げ出してもおかしくなさそうだ。 「中国に進出している多くの米国企業が、中国政府が使用を義務化した税務ソフトによって標的にされていることがわかりました。中国の法律を遵守するために、これらの企業は政府公認の特定のソフトウェアを使用する必要がありましたが、米国企業はこのソフトウェアを通じて、マルウェア(悪意あるソフトウェア)がネットワークに移植されていることを発見しました。 「中国企業と付き合うということは、中国政府、つまり国家安全部と人民解放軍という影のパートナーと付き合うことを意味します。 また、海外において中国は、外国企業やCFIUS(米国の対米外国投資委員会)といった外国からの投資を審査するプログラムを欺くため、より手の込んだ偽装工作を展開しています。例えば、SPAC(特別買収目的会社)のような特殊な企業形態を利用し、過大な議決権をもたらす株数を購入することで、出資額とは釣り合わないほどの支配力を行使できるようにしています」、巧みなやり方だ。 厳密には中国政府の関係者ではないですが、諜報活動を支援し、リクルートするべき情報源の発見と評価を行い、偽装工作や連絡手段を提供し、さまざまな手段を通じて機密を盗むことを支援しているのが協力者です。 中国の諜報機関、国家安全部(MSS)が持つ数々の地方支局が欧米企業の技術情報を狙った工作を展開しています」、こうした組織的な情報工作に対抗するのは容易ではなさそうだ。 「中国政府は貴社の技術を盗むこと、つまり貴社の事業を成り立たせているものが何であれ、それを利用して貴社のビジネスを弱体化させ、市場を支配することを目指しているのです。そして、そのためにあらゆる手段を使おうとしています。例えば、狙った民間企業の情報を諜報員を使って入手しています。諜報機関の動きを支援しているのが協力者の存在です。 「私たちは一貫して、中国政府こそが私たちの経済と国家安全保障に対する、長期的かつ最大の脅威であると認識してきました」、「一貫して」は言葉がスベリ過ぎた感もある。 文藝春秋11月号に掲載(「FBI長官からの警告」翻訳・布施哲)
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韓国(財閥問題)(その5)(サムスンのトップ、「世襲決別宣言」の背景事情 実刑判決回避を狙ったパフォーマンスなのか、ロッテ創業者はなぜ事業承継に失敗したのか(前編)――“老害”がもたらした後継者の「疑心暗鬼」 ロッテを奪われた男・重光武雄~なぜ事業承継に失敗したのか(11)、ロッテ創業者はなぜ事業承継に失敗したのか(後編)――稲盛和夫と重光武雄の違いに見る「指南役」の優劣 ロッテを奪われた男・重光武雄~なぜ事業承継に失敗したのか(12))

韓国(財閥問題)については、2020年4月27日に取上げた。久しぶりの今日は、(その5)(サムスンのトップ、「世襲決別宣言」の背景事情 実刑判決回避を狙ったパフォーマンスなのか、ロッテ創業者はなぜ事業承継に失敗したのか(前編)――“老害”がもたらした後継者の「疑心暗鬼」 ロッテを奪われた男・重光武雄~なぜ事業承継に失敗したのか(11)、ロッテ創業者はなぜ事業承継に失敗したのか(後編)――稲盛和夫と重光武雄の違いに見る「指南役」の優劣 ロッテを奪われた男・重光武雄~なぜ事業承継に失敗したのか(12))である。

先ずは、2020年5月9日付け東洋経済オンライン「サムスンのトップ、「世襲決別宣言」の背景事情 実刑判決回避を狙ったパフォーマンスなのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/348946
・『韓国を代表する財閥企業・サムスングループのトップが、「子どもに経営権を承継しない」という「世襲決別宣言」を行った。 韓国の経済発展をリードしてきた韓国の財閥は、その多くが戦後に設立され、現在は創業者の3代目、4代目の時代になっている。サムスンは創業者一族が代々経営権を握ってきた財閥の代表例だ。なぜ今になって、子どもに承継しないと発表したのか』、興味深そうだ。
・『国民向け謝罪に追い込まれた事情  サムスンは、1938年に三星商会を設立した故・李秉喆(イ・ビョンチョル)会長が3男の李健熙(イ・ゴンヒ)会長へバトンを渡した。そして2014年に李会長が病に倒れてからは、李会長の長男であるサムスン電子の李在鎔(イ・ジェヨン)副会長が経営をリードしてきた。トップの世襲は韓国企業では珍しくない。 その李副会長が5月6日、「国民向け謝罪」を行った。これはサムスンがソウル高等裁判所の助言を受けて設立した「サムスン遵法監視委員会」が5月11日までに国民向けの謝罪を行うよう勧告したためだ。 なぜ国民に向けて謝罪するのか。今回謝罪した内容は2つに分けられる。1つは「経営権を今後、子どもに継がせない」という事業承継の問題。そして、「グループ内に労働組合を設け、創業以来続けてきた無労組経営を放棄する」ことだ。 サムスンは企業規模が拡大するにつれ、後継者問題や経営権をどう掌握するかという問題に苦しめられてきた。今回、李副会長が謝罪に追い込まれた原因もこの承継問題にあるのだ。 李副会長はこの5年間で、国民に向けて何回か謝罪を繰り返している。特に2019年6月にはグループ会社の粉飾会計と証拠隠滅を図ったことが判明し、同12月には、グループの主要企業であるサムスン電子の経営陣が労働組合法違反で有罪判決を受けてそれぞれ謝罪に追い込まれている。さらに、「国政不正介入事件」に関連しても、2019年8月と同10月に謝罪を繰り返している。 国政不正介入事件とは、朴槿恵(パク・クネ)前大統領が知人を不当に政治に参加させ、便宜を図っていたのではないかとされる事件のことだ。これは、朴氏の長年の知人である崔順実(チェ・スンシル)氏が朴大統領の政治運営に不正・不当に介入したとの疑惑が2016年に発覚、国中を揺るがす一大スキャンダルとなった。このスキャンダルは、2017年の大統領弾劾と罷免につながった。 2014年に李健熙会長が倒れた当時のサムスンは、今後のグループ経営をどう受け継ぐかという大問題が浮上していた。後継者は李副会長と決まっていたが、李一族が経営権を保有し続けるためには、他の大株主との調整や保有株主にかかる相続税負担などを解決する必要があった。そのために政治の手を借りざるをえなくなり、李副会長が朴大統領にそれを求めたことで結局、贈収賄や横領などの罪で李副会長は逮捕、起訴されてしまった』、「李一族が経営権を保有し続けるためには、他の大株主との調整や保有株主にかかる相続税負担などを解決する必要があった。そのために政治の手を借りざるをえなくなり、李副会長が朴大統領にそれを求めたことで結局、贈収賄や横領などの罪で李副会長は逮捕、起訴されてしまった」、「政治の手を借りざるをえなくなり」、というのは民間企業にあるまじき酷さだ。
・『李副会長に実刑判決の可能性も  それまでのサムスンのグループ支配は、複雑な株式の持ち合いで成り立っていた。発行株式の半数以上を外国人株主が占めており、グループ会社の株式を李一族やグループ各社の間で持ち合うことで均衡を保っていた。 こうした複雑な仕組みのもとで経営権をスムーズに承継させる解決策の1つが、李副会長が大株主で、主要グループ会社の一つである第一毛織と、サムスン電子の株式を多く持つサムスン物産を合併させる案だった。グループの核心企業であるサムスン電子の経営を李副会長が引き継ぐには、この合併が必要とされた。 ところが、この合併案にサムスン物産の株主である海外ヘッジファンドなどが強く反対した。そこで、サムスン物産の大株主だった韓国・国民年金公団が合併に賛成するよう朴大統領に頼んだ。国民年金公団の賛成によって合併は成功したが、なぜ賛成したのか現在でもよくわかっていない。国政不正介入事件の過程でこのことが発覚し、李副会長は贈収賄などの容疑で逮捕された。 李副会長は2017年の一審で懲役5年の実刑判決、2018年の二審では懲役2年6カ月、執行猶予4年を受け、釈放されている。ところが最高裁判所となる大法院は2019年に二審を破棄、差し戻した。これにより、釈放された李副会長が再収監を受ける可能性が出ていた。) 今回の李副会長の謝罪は、自社内の遵法監視委員会の勧告があったとはいえ、裁判を意識したパフォーマンスにすぎないという意見が支配的だ。判決前の、世論向けのアピールという見方だ。実際、「経営権の問題と労組問題について具体的な取り組みについて説明がない以上、本当にサムスンは変わることができるのか疑わしい」という見方も広がっている。 李副会長個人は、巨額の税負担とそれを回避するために違法・不法行為にまで踏み込まざるをえない現実に嫌気がさしているのかもしれない。再収監の可能性も出ている今、ここまで踏み込んで謝罪したことには、相当な決意が必要だったに違いない』、「サムスン物産の大株主だった韓国・国民年金公団が合併に賛成するよう朴大統領に頼んだ。国民年金公団の賛成によって合併は成功」、酷い政治工作だ。なお、2021年1月/18日付けロイターは、「韓国サムスントップに懲役2年6月の実刑判決、再び収監」と伝えた。
https://jp.reuters.com/article/samsung-elec-heir-idJPL4N2JT1P5
・『集団経営体制にうまく移行できるか  とはいえ、「子どもには承継しない」という約束を本当に果たすことができるのか、疑問は残る。李副会長には2人の実子のほかに、2人の妹がいる。母親も健在だ。そして、父から子へ経営権を渡すことは、韓国人にとってあまりにも当然のことで、それ以外の方法はないと考えている人も少なくない。 サムスンは今後、プロ経営者による集団経営体制を目指すことになる。だが、創業以来、オーナー経営を続けてきた企業が突然、集団経営体制にうまく移行できるか大いに疑問だ。実際にサムスンをはじめ韓国の主要財閥は、オーナーの指示待ち経営者が少なくない。 さらに、もう1つの謝罪内容である「無労組経営」の本気度にも疑問符がつく。サムスンは創業以来、「管理のサムスン」と呼ばれ、それを誇ってきた。労働組合が結成されるような大きな労使問題はないほど、労使一体となってうまく経営しているという創業者の自負心からだった。労組が設立されるということは経営に過ちがあることを意味するため、労組の設立を容認できなかったとも言える。 韓国では1987年の民主化以降、労働者の権利も拡大し、主要財閥でも労組が相次いで設立された。この流れに反していたのがサムスンであり、これまで労組設立を執拗に妨害してきたことも事実だ。サムスンは労災などが絶えず、深刻な労使問題も発生させてきた。経営陣と激しくぶつかり、スト連発も辞さない労組は、今後のサムスンの経営にとって大きな不安材料となるだろう。 「サムスンの労使文化は時代の変化に合わせることができなかった。責任を痛感している。これまで労使問題で傷を負った方々に心から謝罪する」。李副会長の決意はこれまでのサムスンのあり方を根本から覆すことにもなりかねない難題だが、それは同時に韓国の財閥企業すべてに突きつけられた課題でもある』、「主要財閥でも労組が相次いで設立された。この流れに反していたのがサムスンであり、これまで労組設立を執拗に妨害してきたことも事実だ。サムスンは労災などが絶えず、深刻な労使問題も発生させてきた。経営陣と激しくぶつかり、スト連発も辞さない労組は、今後のサムスンの経営にとって大きな不安材料となるだろう」、「李副会長の決意はこれまでのサムスンのあり方を根本から覆すことにもなりかねない難題だが、それは同時に韓国の財閥企業すべてに突きつけられた課題でもある」、その通りだ。

次に、8月31日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したライターの船木春仁氏による「ロッテ創業者はなぜ事業承継に失敗したのか(前編)――“老害”がもたらした後継者の「疑心暗鬼」 ロッテを奪われた男・重光武雄~なぜ事業承継に失敗したのか(11)」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/308809
・『日韓にまたがる巨大財閥、ロッテグループを創り上げた重光武雄。起業から韓国の5大財閥の一角にのし上がるまでの人生は、まさに「今太閤」を思わせる立身出世の歩みだった。しかし晩年は、二男のクーデターによって、後を託すはずだった長男への事業承継に失敗し、自らもまた実権を奪われ寂しい余生を強いられた。稀代の経営者も事業承継の失敗で晩節を汚すことになってしまったのである。周到な事業承継の準備を進めてきたにもかかわらず、なぜ武雄は承継に失敗したのか。そこからはいくつかの教訓が浮かび上がる』、「船木氏」は2020年11月以降、7回にわたって「ロッテ」問題を取上げてきたが、その集大成がこの記事と、次の記事である。
・『ロッテのクーデターから浮かび上がる「事業承継7つの教訓」  本連載第1回『魑魅魍魎のクーデターですべてを失った、ロッテ重光の「末路」』で紹介したように、重光武雄は事業承継の準備に無頓着だったわけではない。ロッテグループの巨大な事業基盤は韓国にあったが、グループの「総司令部」といえる持株会社や一族の資産管理会社は日本にあることから、武雄は若い頃から資本再編などを通じて事業承継の準備を重ねてきた。 その結果、武雄がたどり着いたのが、持株会社のトップには長男が就き、「日本事業は長男、韓国事業は二男」と棲み分ける形だった。ロッテグループの売上高(5兆~6兆円)のうち日本事業の売上高は1割にも満たない。「財閥」として君臨する韓国の基幹事業は二男に任せ、資本管理と日本事業は長男に任せる。 李氏朝鮮の貴族階級である「両班(ヤンバン)」出身の武雄にすれば、長男は戸主の座と祭祀(チェサ)を引き継ぎ、家長として一族を率いるかけがえのない存在だ。事業承継策はまさに儒教的な長子尊重と長子相続を軸とした当然のものと考えていたようだ。 直感的に見えて非常に緻密で思慮深い経営そのままに、事業承継においても丁寧な準備が行われてきたのである。 しかし、二男は父の承継策を諾とせず、クーデターによって持株会社の実権を奪った。長男は資産管理会社の筆頭株主として、まさに形だけのオーナーとしての立場に追いやられた。 この一連の過程を取材するなかから、私たちは事業承継について7つの教訓を得た。それは以下の通りだ。 教訓1 後継者指名を公の場で正式に行う 教訓2 後継候補が複数なら“継承順位”を明確にする 教訓3 後継のタイミングを見誤るな 教訓4 後継者に経営理念を継承せよ 教訓5 持株会社の多様な機能を活用せよ 教訓6 トップの専権事項にせず取締役会と議論せよ 教訓7 万全の備えを崩す“欠陥”を見逃すな そもそも事業承継は、経営の承継、資産の承継、相続という3つの課題を片づけることである。 1つ目の「経営の承継」は、いわゆる後継者問題であり、それは後継者の育成と決定という2つの課題から成る。「資産の承継」の課題も2つある。自社株の承継と事業用資産の承継だ。特に自社株の承継では、株主構成を最適化し、後継者決定とも絡んで「後継者への集中」という措置が必要になる。経営の承継において経営権と資産(自社株)の掌握は不即不離の課題である。 そして3つ目が「相続」だ。いわゆる相続税対策を盛り込んで財産の承継がよりスムーズに行われ、一族としての資産の目減りと分散を防ぎ、残された者への負担軽減と資本の集中を維持するために取り組まれる。 これら3つの課題を「抜かりなく」片づけることが事業承継の最大の目標である。どれか一つをクリアすればよいというものではない。だからこそ、時にはジャンルの異なる複数の専門家に助力を依頼する。これは町工場のような零細企業の事業承継でも大きくは変わらない。 こうした前提を確認した上で、私たちがロッテの兄弟の乱の取材から得た7つの教訓を一つずつ解説していく』、先に進もう。
・『はっきりと言ってくれなければ分からない  まずは、【教訓1】「後継者指名を公の場で正式に行う」である。 前述したように武雄は、長子相続という儒教的な考え方を持っていた。実際、資本再編において長男に多くの株式を配分したことからも、長男を後継者と考えていたのは間違いない。 だからこそ、武雄にすれば「後継者指名など今さら言うまでもないこと」と考えていたようだ。 とはいえ、後継決定に際して武雄が長男や二男をどのように評価し、それを本人たちへはもちろん、側近にさえ明らかにすることはなかった。側近が探りを入れても、「俺は考えているから」とはねつけ、臭わせることさえない。 しかしこれは、経営者としては後継指名を公の場で正式に行うという重要な役目を武雄は怠ったことになるのである。これが、長男も、二男も、共に疑心暗鬼に陥った原因であり、最大の失敗だった。 息子たちの「教育係」であった常務は、父から「お前が後継者なのだ」と明確に告げられることのなかった長男の心情を察しつつ、「社長はあなたを本気で次の社長にしようと思っているのですよ、と何度も伝えていた」と打ち明ける。すると長男は「ビックリしたような顔をした」とも語ったが、それはとりもなおさず、武雄が後継者本人にさえ後継の意向を明言していなかったことを示している。 事業承継で必ず問題になるのが兄弟間の対立であり、どちらが承継しても、承継できなかった側から不平は出るし、場合によっては衝突することも珍しくない。こうした問題を回避するには、2つのステップを踏む必要がある。 まず、「誰が後継者であるか」を親族内だけでなく社員や株主、取引先などステークホルダーに広く宣言しなければならない。 そのうえで、会社なり、事業なりで分割して、兄弟で分けるのである』、「側近が探りを入れても、「俺は考えているから」とはねつけ、臭わせることさえない。 しかしこれは、経営者としては後継指名を公の場で正式に行うという重要な役目を武雄は怠ったことになるのである。これが、長男も、二男も、共に疑心暗鬼に陥った原因であり、最大の失敗だった」、その通りだろう。
・『専制的ともいえる態度で差を付けることこそが合理だ  【教訓2】は「後継候補が複数なら“継承順位”を明確にする」である。 長男を後継者にと考えていた武雄は、二男のロッテグループの主導権への執着を感じ取り、それを牽制してきた。しかし一方で、長男と同じくらい二男も大切にしていたと思わせる事柄がある。それは、長男と二男の職位に上下の差を付けていなかったことだ。そのことを、教育係を命じられていた管理担当常務は、「武雄会長の最大の失敗は、兄弟に差を付けなかったことです」とつくづく悔やむ。 2人の息子は共にロッテホールディングスの取締役副会長に就いていた。もちろん会長の武雄が最高位のカリスマ的な存在であり、息子たちには最終決定権を与えず、しかもそれぞれが管轄する事業は日韓で分けていたから、兄弟は平等で、バランスも取れていると考えていたのだろう。しかし、この悪平等ともいえる人事そのものが兄弟対立の火種になったのは間違いない。 2人の息子は年子であり、同じ学校を卒業し、兄は日本の大学院、弟はアメリカの大学院を出て、結婚して子どもにも恵まれた。兄が長子相続の古い伝統意識を持つ父の寵愛を受けてはいるものの、それで兄が優越感を持つこともない。 「ならばいったい2人はなにが違い、どこに絶対的な差があるというのか」 弟がそのように考えてもなんらおかしくない。それはおそらく他の家族でもごくごく普通にあることだろう。「兄と弟の2人には差はないのだから、我こそはと名乗りを上げてなぜいけないのか」と考える人もいれば、「そもそも長子相続自体がナンセンスなのだから誰がリーダーに躍り出てもおかしくはないだろう」と考える人もいる。 その理屈や平等論の見地からの正否はともかく、事業承継という社員や組織にとっての大問題では、後継者候補が複数いて、しかもそれが親族同士の場合は、専制的ともいえる態度で“順位”を付けておかなければならない。これは、大企業での後継者育成プログラムにおける候補者選定とは違い、親族間での後継者たちの争いを防ぐための先人の知恵である。 下位継承者がその地位にとどまるか、はたまた下剋上を挑むかは、あくまで事業承継の手続きが完了してからのことである。前述したように、あくまで手続きの過程においては、誰が後継者かを公に明示したうえで、その後継者がどのような判断によって、あるいはどんな基準に基づいて選ばれたのかも公開してしかるべきである。 武雄は息子たちに、会社再建などの“宿題”を課したりすることで彼らの経営能力を見比べてきた。息子たちの人望や気質も熟知していた。だから、後継者指名を公にすることも、その判断基準を示すことも決して難しいことではなかったはずだ。 どのような理由であれ、武雄が決定理由と自分なりの判断基準を示せば、周囲は一も二もなく従っただろうし、ここまで事業承継がこじれることはなかっただろう。まさに、「ヒエラルキーなき事業承継は“争続”を誘引する」を地で行ったのがロッテである』、「どのような理由であれ、武雄が決定理由と自分なりの判断基準を示せば、周囲は一も二もなく従っただろうし、ここまで事業承継がこじれることはなかっただろう。まさに、「ヒエラルキーなき事業承継は“争続”を誘引する」を地で行ったのがロッテである」、確かに失敗例の典型だ。
・『あまりにも高齢で、もっと早く仕事を離れるべきだった  【教訓3】は「後継のタイミングを見誤るな」である。事業承継にあたってどんなに周到な準備をしても、それを実際に行うタイミングを間違えれば、準備したものがまったく意味をなさなくなることがある。 この点、武雄は、90歳を過ぎてもなおカリスマとして圧倒的な支配力を持っていた。事業承継の準備、体制は整えられていたが、その発動について武雄に具体的に進言できる人材はいなかったし、当然ながら諫言できる人材もいなかった。それはカリスマゆえの仕方がない事情である。しかし、だからこそ「早すぎる」と思えるぐらいに自身で承継のタイミングを決断することが重要になる。つまり、自らの老いを隠さず、真摯に向き合うべきなのである。 私たちは3つ目の教訓として「後継のタイミングを見誤るな」を抽出したが、実は、ロッテの事業承継においては、これこそが最も重要なポイントではなかったかと考えている。 人は誰もが歳を取る。歳を取ればこれまでやってこられたことができなくなっていく。「竈の灰まで自分のものだ」という強烈な執着心で企業を育ててきた創業者が引退するのは簡単なことではない。多くの場合、自身に引導を渡せるのは、自分自身しかいないからだ。「まだ自分はやれる」という思いに支配されている間は、事業承継はできない。しかし「老い」は、経営者の意思決定を鈍らせる。 武雄はどうだったか。武雄は自身の老いを受け入れられず、自身に引導を渡すことはできなかった。そのため、年齢と共に企業のガバナンスも揺らぎ始めた。失礼を承知で言えば、「長すぎた晩年」であったのだ。 そんな武雄の「隙」を突かれて起こったのが、二男によるクーデターだった。この連載でも、自らを実質的に馘首した二男や経営幹部とのやり取りが何度か紹介されているが、クーデター組が何度も口にしたのが「すでにお話しした」とか「ご自身では判断もおぼつかなく」といった言葉だ。簡単に言えば、武雄はすでにぼけていたと強調したかったのだ。 老子の教えにこんな言葉がある。 「富貴にして驕れば自らその咎を遺す。功遂げて身退くは天の道なり」 言わんとするのは、財産と地位ができて傲慢になれば、自ら災難を招くことになる。功なり名を遂げたなら身を引く。それが天の道である(道理にかなっている)ということである。(続く)』、「武雄は自身の老いを受け入れられず、自身に引導を渡すことはできなかった。そのため、年齢と共に企業のガバナンスも揺らぎ始めた。失礼を承知で言えば、「長すぎた晩年」であったのだ。 そんな武雄の「隙」を突かれて起こったのが、二男によるクーデターだった」、「財産と地位ができて傲慢になれば、自ら災難を招くことになる。功なり名を遂げたなら身を引く。それが天の道である・・・ということである』、その通りだ。

第三に、この続きを、10月5日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したライターの船木春仁氏による「ロッテ創業者はなぜ事業承継に失敗したのか(後編)――稲盛和夫と重光武雄の違いに見る「指南役」の優劣 ロッテを奪われた男・重光武雄~なぜ事業承継に失敗したのか(12)」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/310610
・『2014年から15年にかけて引き起こされたロッテグループの経営権をめぐるクーデター、つまり二男が、後継者とされていた長男のすべての役職を解き、創業者である父さえも実質的に棚上げするという事件では、事業承継に関わるいくつかの教訓が導き出されている。私たちはそれを7つに集約したが、本連載第11回では、1つ目から3つ目までの教訓について紹介した。今回は、残りの4つについて解説していきたい』、先に進もう。
・『完璧な仕組みを準備しても、「人」から穴が開き始めてしまう   改めて7つの教訓とは次のようなものである。 教訓1 後継者指名を公の場で正式に行う 教訓2 後継候補が複数なら“継承順位”を明確にする 教訓3 後継のタイミングを見誤るな 教訓4 後継者に経営理念を継承せよ 教訓5 持株会社の多様な機能を活用せよ 教訓6 トップの専権事項にせず取締役会と議論せよ 教訓7 万全の備えを崩す“欠陥”を見逃すな ロッテ創業者の重光武雄は、長男を後継者とすべく資本の再編などの準備を整えてきた。それは、武雄が手掛ける事業同様に非常に緻密なものであったが、二男のクーデターによってすべてがひっくり返されてしまう。 武雄が準備した承継の仕組みは緻密で完璧に見えたが、それを執行する人間の心理を見誤っていた。事実、そこに思わぬ陥穽があり、それがクーデターを可能とし、事業承継の失敗につながったともいえる。 先に示した7つの教訓のうち「1」は、「後継者は長男であるというのは言わずもがなのこと」として長男にはもちろん、側近にも具体的な「指名活動」を行っていなかった武雄自身の手痛いミスに注目した教訓である。 「2」も、「1」に関連することであるが、複数の後継候補者がいる場合は、それが我が子であろうが他人であろうが、明確に後継順位を決め、開示しておくことが必要であるということだ。 いわゆる1位指名を受けなかった者が職場にとどまれば、軋轢なども生じるだろう。それが実子であれば、情けをかけたいところだが、たじろいではならない。後継者候補は企業価値を向上させる能力を備えているか、また経営の安定性、企業の継続性を最優先に考えて、その適性を判断することが、最大の使命であることを忘れてはならない。 「3」は、いつ後継者にバトンを渡すかという問題だ。実はロッテの事業承継では、これが最も大きな失敗であったともいえる。武雄がクーデターによってロッテホールディングス(HD)会長を解任され、名誉会長に祭り上げられたのは、武雄が94歳の時のことである。事ここに至るまで武雄は、明確にバトンを渡していなかったのだ。 ロッテグループのクーデター問題を追い、重光武雄について2冊の著書を上梓したフリーライターの松崎隆司は、2冊目の『経営者交代 ロッテ創業者はなぜ失敗したのか』で、アミューズメント関連事業大手のナムコ(現・バンダイナムコ)の創業者、中村雅哉に後継問題についてインタビューしたときの思い出を書き留めている。 取材時の中村は80歳を超えていたが、「これまで会社を創業し道を作ってきた人間からすると、間違った選択をしないようにするのが肝心」と語った。中村の後継指名で驚かされるのは、娘とは離婚した娘婿だということである。松崎は、「そんな血縁関係を乗り越えての判断だった。それだけ手塩にかけて育て、経営の力を認めてきた人物を後継指名したということであり、その経営判断の徹底した合理性に驚かされるのである」と書いている。 つまり経営とは、徹底した合理性の戦いであり、その最後の戦いが「事業承継」であるといえるのである』、「ナムコ」「創業者」が、「後継指名で驚かされるのは、娘とは離婚した娘婿だ」、「経営判断の徹底した合理性」には私も驚かされた。
・『経営理念を語り継がなければ会社は崩壊する  【教訓4】は「後継者に経営理念を継承せよ」である。 晩年の武雄は、2011年の東日本大震災をきっかけに韓国国内にとどまるようになり、日本にいることはなくなった。実はこの「地理的空白」が、二男によるクーデターを可能たらしめる突破口になった。 韓国にいる武雄は定期的な事業報告を受けるだけで、自身の目や耳で現場を確認することがなくなり、当時のロッテHDの社長でクーデター組の一人である佃孝之の報告を鵜呑みにしてしまうミスを犯した。生涯、現場主義を貫いた人間が、天災と事故で現場を離れたわずかな隙を突かれたのである。 さらに、人生の最晩年を迎えた創業者として、武雄はさらなる将来への展望を語り損ねた。「画竜点睛」の故事のごとく、事業承継の最後の「ピリオド」を打つことができなかった。それが自らの追放にもつながる一因になった。 これは武雄と旧知の間柄であった京セラの創業者、稲盛和夫が事業承継にあたって心を砕いた取り組みとは対照的だ。武雄は1989年の韓国ロッテワールドのオープニングセレモニーに稲盛を招き、稲盛もまた応じるなど深い親交があった。 特に84年、稲盛が日本電信電話公社(現・NTT)の独占状態にあった通信業界に競争原理を導入しようと第二電電(DDI=現・KDDI)を設立した際、武雄はいち早く出資要請に応じている。「日本はどうしてこんなに電気代と電話代が高いのだ」と武雄がこぼすのを側近たちは何度も聞いており、稲盛の挑戦に心からエールを送っていたのである。 京セラには、事業に向き合うための基本的な考え方をまとめた「京セラフィロソフィ」がある。常に事業の大義を問い、自ら企業経営が可能かを試そうとする基本指針であり、稲盛は、企業が持続的に発展していくために「思想の徹底した承継作業」が必要だと考えていた。稲盛が一線を退いた後も、後継者で社長、会長を務めた人物(相談役)が、会社設立50周年を前に稲盛に代わって京セラの創業の精神、京セラフィロソフィの必要性を訴え、同時に警鐘を鳴らす活動を続けていたほどである。 相談役の活動に対し、稲盛は、「『京セラフィロソフィ』が希薄化したとき、京セラの命運は尽きると繰り返し説き、なんとしても京セラフィロソフィを一般社員にまで広め、共有化しなければならない、しかもただ知っているだけではなく、自分のものとして実行に移していけるよう、まさに血肉化することがとても大切なのだと、ことあるごとに社員に語ってくれている」と感謝の言葉を惜しまない。 この相談役のような指南役としての役割を、武雄はロッテHD社長の佃に期待した。長男に事業を承継するための「中継ぎ」として佃を招聘したのは、後継者としての覚悟を持たせ、事業のなんたるかを教えてくれることを期待していたのだ。 「京セラフィロソフィ」を継承することへの稲盛の思い入れは生半可なものではない。だからこそ相談役のような人材も育つのだろうが、これは同時に、企業のフィロソフィや理念を後世に継承することがいかに困難な作業であるかを物語ってもいる。 大手銀行の役員から関連会社に天下り、晩年の最後の仕事としてロッテに招かれた佃は、京セラの相談役のような情熱も覚悟もなかった。武雄が彼に期待した「中継ぎ」の役目は果たされなかった。 武雄の失敗は、その状況を見抜けなかったことである。後継指導を託すことのできる人物がいないならば、後継者を自身の隣に置き、自ら語り、自分で自分にピリオドを打つ作業が不可欠だ。ただし、それは必要条件であって、それだけで継承が十分に行えるわけではない。 創業者と2世、2世と3世のそれぞれの個性は違い、従業員の見る目、評価も違う。だからこそ後継者は、自らを評価してもらえるやり方を必死になって考える。創業者と同じ振る舞いをすればよいというものではないし、反面教師というケースもあるが、いずれにせよその苦悩こそが事業承継における後継者育成のプロセスには不可欠なのである。 「息子といえども、娘といえども、ましてや他人は、自分とは違う」 創業者自身が、こうした徹底した自覚と覚悟を持って経営理念と経験をくどいほどに語り、後継者に腹落ちさせる努力を続けなければ承継は全うできない。 「武雄が最晩年にソウルで立て籠もらず、もう少し日韓を往復する生活を続けていられれば、ロッテの事業承継が台無しになることはなかった」と関係者が口を揃える通り、それが悔やまれてならないのだ』、「大手銀行の役員から関連会社に天下り、晩年の最後の仕事としてロッテに招かれた佃は、京セラの相談役のような情熱も覚悟もなかった。武雄が彼に期待した「中継ぎ」の役目は果たされなかった。 武雄の失敗は、その状況を見抜けなかったことである」、「佃」に「期待した「中継ぎ」の役目」、そもそも初めから無理がある。「その状況を見抜けなかった」とはお粗末だ。
・『不易流行の司令塔になり得るところに持株会社の本当の価値がある  【教訓5】は「持株会社の多様な機能を活用せよ」である。 日韓で約200社を展開するロッテグループの頂点に立つのは、日本にある持株会社ロッテHDだ。武雄は、グループの資本再構成と相続税対策の2つの視点から最終的な形として2007年に持株会社のロッテHDを設立した。 この持株会社の設立は、有能なスタッフを事業会社に振り分け、自立・自律的な経営を行わせる、いわゆる「企業の所有と経営の分離」を促すものでもあった。実際、武雄は、韓国内の事業においては、そのような形で成功を収めてきた。 タナベ経営の経営コンサルティング本部九州本部副本部長である中須悟は、その著作『ホールディング経営はなぜ事業承継の最強メソッドなのか』(ダイヤモンド社)で、「(ホールディング経営を導入することで)一貫した理念を受け継ぎながら、環境適応のスピード経営を実現する不易流行体制」を構築できると説いている。 「不易流行」は、俳人の松尾芭蕉が『おくの細道』の旅の過程で見出した芭蕉風俳諧の理念の一つで、それは、「不易を知らざれば基立ちがたく、流行を知らざれば風新たならず」と説明されている。これは、「不易」すなわち変わらないものを基本にしつつ、状況に応じて「流行」すなわち変わるものを取り入れながら柔軟に変わっていく重要さを説いている。 これは企業マネジメントにも通じ、中須は「経営者の哲学に近い経営理念という思想を不易なものとして受け継ぎながら、次代の経営者は新たなビジネスモデルを打ち出して革新していかなければならない」と指摘した。そのうえで、不易流行体制を構築するのに有効なのが「ホールディング経営モデル」だと強調する。 つまり一貫した経営理念や不易の価値判断はホールディングカンパニー(HDC)がヘッドクォーターとして継承し続け、環境に適応したスピード経営という「流行」の領域はHDC傘下の事業会社が受け持つのである。 残念ながらロッテHDにおいては、資本と相続の管理に重点が置かれたままとなり、中須が指摘するようなHDカンパニーの多様な機能を醸成させ、活用するには至らなかった。 さらにHDカンパニーは、「企業の所有と経営の分離」を促すものでもあるが、その際、自律的な経営をめざす事業会社がグループの枠組みから逸脱するリスクもはらんでいる。いわば遠心力と求心力の二律背反を調整するのもHDカンパニーの重要な機能で、それは「内部統制」という言葉で表現される。 武雄もまた、自身の経営哲学を継承して実践している長男を中心とするロッテHDの取締役会がグループ全体の内部統制を担い、グループの事業会社には自律的な経営を促す姿をイメージしていたのは明らかだ。だからこそ、「日本は長男、韓国は二男」と事業を棲み分け、互いが自由に動ける体制を創った。 しかし、これだけで二男を満足させることはできなかった。HDカンパニーが担うガバナンスや機能の多様性について、すべての関係者に咀嚼され、腹に落ちる理解になっていなかったともいえる』、「ロッテHDにおいては、資本と相続の管理に重点が置かれたままとなり、中須が指摘するようなHDカンパニーの多様な機能を醸成させ、活用するには至らなかった。 さらにHDカンパニーは、「企業の所有と経営の分離」を促すものでもあるが、その際、自律的な経営をめざす事業会社がグループの枠組みから逸脱するリスクもはらんでいる。いわば遠心力と求心力の二律背反を調整するのもHDカンパニーの重要な機能で、それは「内部統制」という言葉で表現される」、「HDカンパニーが担うガバナンスや機能の多様性について、すべての関係者に咀嚼され、腹に落ちる理解になっていなかったともいえる」、なるほど。
・『後継問題に対する活発な議論が、取締役を鍛える  【教訓6】は「トップの専権事項にせず取締役会と議論せよ」である。 武雄の側近によると、創業当初から日本ロッテの取締役会は名ばかりのもので、1986年に管理担当常務の奮闘で初めて本格的な取締役会が開かれたという。現代ならば、「ガバナンスの欠如!」と批判を浴びることだろうが、戦後に起業してオーナーがカリスマ的な力を持っているような会社はロッテと同じ状況で、取締役会など無きに等しかった。 それは同時に、カリスマ経営者には他者の諫言など通じないということを意味する。 そもそもカリスマとは、「超人間的・非日常的な資質」(『広辞苑』)である。天賦の才としてそれを備えたカリスマ経営者は、武雄に限らず経営においては独断専行の専制君主となりがちだ。 ロッテにおいても、長男はカリスマたる父の鬼才的マーケティングセンスとリーダーシップに圧倒されつつも、それを組織と人の団結で合理的にカバーしようと試みていた。一方、MBA保持者である二男は、父の専制型の経営スタイルを引き継ごうとした。 長男の取り組みは、取締役会のガバナンス機能が強まれば強まるほど初期の狙い通りの力を発揮してくるだろうし、二男の取り組みでもやはり取締役会のガバナンス機能が強まらなければ専制と暴走を生み出してしまうことになる。いずれにしても経営者としては冷静で合理的な発想で取締役会を強化しなければならない。 プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)CEOを9年間務め、同社の後継者育成プログラムの充実に力を注いだことで知られるアラン・G・ラフリーは、『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌に寄せた論文で、「CEO交代は取締役会に実力向上を迫る」という教訓を紹介している(*)。CEO交代への備えを厳正に、包括的に、時間をかけて行うと、取締役会がCEOと協力しながら仕事をする力が高まり、取締役会と経営チームの関係が強まる、というのである。 彼はこうも語っている。 「P&Gで気づいたのは、長い期間をかけて後継CEO選びをする手法によって本当の効果を引き出すには、取締役同士、そして取締役とCEOが、胸襟を開いて活発に協議、検討、討論を行うことである」 つまり後継者育成や指名という経営課題そのものをあえて社内の議論の俎上に載せることで、少なくとも取締役会の機能強化につながったというのだ。 これは親族だけで経営しているような会社にも重要な示唆がある。事業承継をめぐる議論を、創業者や社長の胸の内にとどめず、日常的な話題として議論を繰り返していくことが大事なのだ。それによって先述した経営理念の承継や後継者に必要な能力について誰もが理解するようになるし、後継者指名や後継順位などもしっかりと浸透させられる。 *「P&Gに学ぶ:正しいCEOの選び方」『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』2011年10月号)』、「親族だけで経営しているような会社にも重要な示唆がある。事業承継をめぐる議論を、創業者や社長の胸の内にとどめず、日常的な話題として議論を繰り返していくことが大事なのだ。それによって先述した経営理念の承継や後継者に必要な能力について誰もが理解するようになるし、後継者指名や後継順位などもしっかりと浸透させられる」、その通りなのだろう。
・『鉄壁も小さな瑕疵で崩れ、経営者の生殺与奪につながる  【教訓7】は「万全の備えを崩す“欠陥”を見逃すな」である。 ロッテグループのクーデター劇で最も驚かされるのは、二男を軸とするクーデター組がロッテHDの株式の過半数を握っていなかったにもかかわらず経営権の奪取に成功したことだ。 議決権ベースでは二男の保有割合は4.64%、役員持株会が6.67%、関係会社15.60%の合計26.91%でしかない。この株式数では本来は、株主総会で議決権の過半数の賛成が必要な取締役の解任はできない。しかしそれを可能にしたのが、従業員持株会の存在だった。従業員持株会はロッテHD株式の31.06%(議決権ベース)を所有している。 ロッテHDの取締役を解任されてからも長男は、毎年の株主総会で自らを取締役に選任すべきとする株主提案を続けているが、否決され続けている。その理由も、従業員持株会の投票(議決権)が否決に投じられているからである。 ロッテに従業員持株会ができたのは1985年のことだが、当初、武雄は、設立を躊躇していた。というのも82年に起きた三越の岡田茂社長が解職されるクーデターで、労働組合が深く関与していたことに大きな危機感を持っていたからである。保有株式が自分の手から離れることを強く警戒していた。 しかし結局は、側近の説得により自身が保有していたロッテの株式の27.75%(議決権ベースで31.06%)を移譲した。 このとき、武雄の不安を忖度した側近は、持株会の議決権行使に対する対策として「権限を持株会の理事長に一任し、会員や理事長は武雄自身が選べる」という仕組みを創った。この仕組みは、武雄がしっかりと人事権を握っているときはなんらトラブルのタネにはならないが、ひとたび武雄から人事権を奪ってしまえば議決を左右する“浮動株”が生まれることになる。 武雄が、高齢で日韓を往復して経営ににらみを利かせられなくなったことを改めて思い起こしてほしい。ソウルの自室に籠もっている間に、従業員持株会の理事長には二男らの息のかかった人物が登用され、クーデターの突破口が開かれたのだ。 つまり、完璧と思われた仕組みを見事に逆手に取られてしまった。従業員持株会の保有株式がキャスティングボートを握る一方で、それが「理事長一任」という持株会会員の総意を反映せずに都合のよいように使われる状態のままである限り、大株主であっても長男の取締役就任議案が可決されることはないだろう。 敵対的買収など、外部からの攻撃を防ぎ、経営支配権を固守する鉄壁が、内部からの攻撃にいともたやすく陥落し、本来守るはずだった“城主”を排除する武器となったのである。まさに両刃の剣であり、鉄壁に開いていた穴である。 万全と思われた備えが、かくも小さな瑕疵で崩れ去り、経営者の生殺与奪権を握る存在となることもあるということを肝に銘じなければならない』、「武雄が・・・ソウルの自室に籠もっている間に、従業員持株会の理事長には二男らの息のかかった人物が登用され、クーデターの突破口が開かれたのだ。 つまり、完璧と思われた仕組みを見事に逆手に取られてしまった」、恐ろしいことだ。 
・『武雄の友人であった京セラの稲盛和夫の語録に、「おもしろくもない人生に耐える経営者でなければ従業員も幸せにできないし、株主もお客様も幸せにできない」という言葉がある。自虐めいているように思えるが、実は戒めの思いを込めた言葉だ。 経営で成功して自分の人生が楽しく、愉快になり、もっと面白い人生を送りたいと思うのは間違いで、人生をエンジョイするような経営者は、周囲の者を幸せにできない、というのである。「勝って兜の緒を締めよ」である。 そして稲盛は、次のように言葉を続ける。 「経営者とは、成功すればするほど、おもしろくもおかしくもない、くそ真面目な経営でなければ、企業を伸ばし、周辺の人たちをよくしてあげられない」  経営の神髄は、論理を越えた領域で見えてくるものなのだ。だから、経営者はくそ真面目に取り組め、という教訓である。事業の発展においても、承継においても、最も大事にしなければならない姿勢なのである』、「経営の神髄は、論理を越えた領域で見えてくるものなのだ。だから、経営者はくそ真面目に取り組め、という教訓(稲盛和夫)」、自分のような凡人には「おもしろくもない人生に耐える」ことは到底無理だ。
タグ:東洋経済オンライン「サムスンのトップ、「世襲決別宣言」の背景事情 実刑判決回避を狙ったパフォーマンスなのか」 韓国(財閥問題) (その5)(サムスンのトップ、「世襲決別宣言」の背景事情 実刑判決回避を狙ったパフォーマンスなのか、ロッテ創業者はなぜ事業承継に失敗したのか(前編)――“老害”がもたらした後継者の「疑心暗鬼」 ロッテを奪われた男・重光武雄~なぜ事業承継に失敗したのか(11)、ロッテ創業者はなぜ事業承継に失敗したのか(後編)――稲盛和夫と重光武雄の違いに見る「指南役」の優劣 ロッテを奪われた男・重光武雄~なぜ事業承継に失敗したのか(12)) 「李一族が経営権を保有し続けるためには、他の大株主との調整や保有株主にかかる相続税負担などを解決する必要があった。そのために政治の手を借りざるをえなくなり、李副会長が朴大統領にそれを求めたことで結局、贈収賄や横領などの罪で李副会長は逮捕、起訴されてしまった」、「政治の手を借りざるをえなくなり」、というのは民間企業にあるまじき酷さだ。 「サムスン物産の大株主だった韓国・国民年金公団が合併に賛成するよう朴大統領に頼んだ。国民年金公団の賛成によって合併は成功」、酷い政治工作だ。なお、2021年1月/18日付けロイターは、「韓国サムスントップに懲役2年6月の実刑判決、再び収監」と伝えた。 https://jp.reuters.com/article/samsung-elec-heir-idJPL4N2JT1P5 「主要財閥でも労組が相次いで設立された。この流れに反していたのがサムスンであり、これまで労組設立を執拗に妨害してきたことも事実だ。サムスンは労災などが絶えず、深刻な労使問題も発生させてきた。経営陣と激しくぶつかり、スト連発も辞さない労組は、今後のサムスンの経営にとって大きな不安材料となるだろう」、「李副会長の決意はこれまでのサムスンのあり方を根本から覆すことにもなりかねない難題だが、それは同時に韓国の財閥企業すべてに突きつけられた課題でもある」、その通りだ。 ダイヤモンド・オンライン 船木春仁氏による「ロッテ創業者はなぜ事業承継に失敗したのか(前編)――“老害”がもたらした後継者の「疑心暗鬼」 ロッテを奪われた男・重光武雄~なぜ事業承継に失敗したのか(11)」 「船木氏」は2020年11月以降、7回にわたって「ロッテ」問題を取上げてきたが、その集大成がこの記事と、次の記事である。 教訓1 後継者指名を公の場で正式に行う 教訓2 後継候補が複数なら“継承順位”を明確にする 教訓3 後継のタイミングを見誤るな 教訓4 後継者に経営理念を継承せよ 教訓5 持株会社の多様な機能を活用せよ 教訓6 トップの専権事項にせず取締役会と議論せよ 教訓7 万全の備えを崩す“欠陥”を見逃すな 「側近が探りを入れても、「俺は考えているから」とはねつけ、臭わせることさえない。 しかしこれは、経営者としては後継指名を公の場で正式に行うという重要な役目を武雄は怠ったことになるのである。これが、長男も、二男も、共に疑心暗鬼に陥った原因であり、最大の失敗だった」、その通りだろう。 「どのような理由であれ、武雄が決定理由と自分なりの判断基準を示せば、周囲は一も二もなく従っただろうし、ここまで事業承継がこじれることはなかっただろう。まさに、「ヒエラルキーなき事業承継は“争続”を誘引する」を地で行ったのがロッテである」、確かに失敗例の典型だ。 「武雄は自身の老いを受け入れられず、自身に引導を渡すことはできなかった。そのため、年齢と共に企業のガバナンスも揺らぎ始めた。失礼を承知で言えば、「長すぎた晩年」であったのだ。 そんな武雄の「隙」を突かれて起こったのが、二男によるクーデターだった」、「財産と地位ができて傲慢になれば、自ら災難を招くことになる。功なり名を遂げたなら身を引く。それが天の道である・・・ということである』、その通りだ。 船木春仁氏による「ロッテ創業者はなぜ事業承継に失敗したのか(後編)――稲盛和夫と重光武雄の違いに見る「指南役」の優劣 ロッテを奪われた男・重光武雄~なぜ事業承継に失敗したのか(12)」 「ナムコ」「創業者」が、「後継指名で驚かされるのは、娘とは離婚した娘婿だ」、「経営判断の徹底した合理性」には私も驚かされた。 「大手銀行の役員から関連会社に天下り、晩年の最後の仕事としてロッテに招かれた佃は、京セラの相談役のような情熱も覚悟もなかった。武雄が彼に期待した「中継ぎ」の役目は果たされなかった。 武雄の失敗は、その状況を見抜けなかったことである」、「佃」に「期待した「中継ぎ」の役目」、そもそも初めから無理がある。「その状況を見抜けなかった」とはお粗末だ。 「ロッテHDにおいては、資本と相続の管理に重点が置かれたままとなり、中須が指摘するようなHDカンパニーの多様な機能を醸成させ、活用するには至らなかった。 さらにHDカンパニーは、「企業の所有と経営の分離」を促すものでもあるが、その際、自律的な経営をめざす事業会社がグループの枠組みから逸脱するリスクもはらんでいる。いわば遠心力と求心力の二律背反を調整するのもHDカンパニーの重要な機能で、それは「内部統制」という言葉で表現される」、 「HDカンパニーが担うガバナンスや機能の多様性について、すべての関係者に咀嚼され、腹に落ちる理解になっていなかったともいえる」、なるほど。 「親族だけで経営しているような会社にも重要な示唆がある。事業承継をめぐる議論を、創業者や社長の胸の内にとどめず、日常的な話題として議論を繰り返していくことが大事なのだ。それによって先述した経営理念の承継や後継者に必要な能力について誰もが理解するようになるし、後継者指名や後継順位などもしっかりと浸透させられる」、その通りなのだろう。 「武雄が・・・ソウルの自室に籠もっている間に、従業員持株会の理事長には二男らの息のかかった人物が登用され、クーデターの突破口が開かれたのだ。 つまり、完璧と思われた仕組みを見事に逆手に取られてしまった」、恐ろしいことだ。 「経営の神髄は、論理を越えた領域で見えてくるものなのだ。だから、経営者はくそ真面目に取り組め、という教訓(稲盛和夫)」、自分のような凡人には「おもしろくもない人生に耐える」ことは到底無理だ。
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