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教育(その29)(「なぜ女性が妊娠するか」を学校で教えない…日本の性教育を世界最悪にした原因は旧統一教会にある メディアが宗教右派の存在を報じてこなかった理由、開成も麻布も実は“すべり止め”…両校を蹴って秀才が行く最高峰「筑駒」の実力、なぜ日本人はいくら勉強しても英語を話せないのか…養老孟司が考える「日本の学校教育はココがおかしい」 「学ぶ」より「倣う」に重きを置くべき) [社会]

教育については、昨年6月7日に取上げた。今日は、(その29)(「なぜ女性が妊娠するか」を学校で教えない…日本の性教育を世界最悪にした原因は旧統一教会にある メディアが宗教右派の存在を報じてこなかった理由、開成も麻布も実は“すべり止め”…両校を蹴って秀才が行く最高峰「筑駒」の実力、なぜ日本人はいくら勉強しても英語を話せないのか…養老孟司が考える「日本の学校教育はココがおかしい」 「学ぶ」より「倣う」に重きを置くべき)である。

先ずは、昨年10月4日付けPRESIDENT Onlineが掲載したジャーナリストの浜田 敬子氏による「「なぜ女性が妊娠するか」を学校で教えない…日本の性教育を世界最悪にした原因は旧統一教会にある メディアが宗教右派の存在を報じてこなかった理由」を紹介しよう。
・:安倍晋三元首相の銃撃事件をきっかけに、旧統一教会と自民党の関係に注目が集まっている。その関係は長年にわたるものだが、なぜこれまで正面から責任を問われてこなかったのか。ジャーナリストの浜田敬子さんがその背景を取材した――』、興味深そうだ。
・『「世界最悪の性教育」をめぐる闘い  20年以上にわたり、世界平和統一家庭連合(以下、旧統一教会)と闘ってきた一人の女性医師がいる。広島市で産婦人科医として、10代20代の女性たちの性被害や望まない妊娠の問題に向き合ってきた河野美代子さんだ。河野さんと旧統一教会の闘いの主戦場は、学校における「性教育」だった。 河野さんは日本の性教育は「世界でも最悪の状態」だという。中学高校で正しい避妊方法や妊娠の知識、自分自身を大切にするという考えの下でのセックスについて教わっていない。男女の体の成長段階や人の受精卵が胎内で成長する過程は学ぶが、受精の前提となる性交については教えていないのだ。学習指導要領に「妊娠の経過は取り扱わない」という「はどめ規定」があるためだ。 なぜこうした規定が残り、“中途半端な”性教育が続いてきたかは後述するが、河野さんは「性交やセックスという言葉すら使えず、セックスに対する正しい知識を教えられなければ、避妊方法や性暴力、性被害について伝えることもできない」と話す』、「河野さんは日本の性教育は「世界でも最悪の状態」だという。中学高校で正しい避妊方法や妊娠の知識、自分自身を大切にするという考えの下でのセックスについて教わっていない。男女の体の成長段階や人の受精卵が胎内で成長する過程は学ぶが、受精の前提となる性交については教えていないのだ。学習指導要領に「妊娠の経過は取り扱わない」という「はどめ規定」があるためだ」、「日本の性教育は「世界でも最悪の状態」」とはショッキングな診断だ。
・『信者からの攻撃、通報、そして裁判へ  学校現場で「教えることのできない」性の知識を知ってもらおうと、河野さんは広島県内だけでなく、全国各地で講演会を開いてきた。そして「講演会を開くたびに、旧統一教会から執拗しつような妨害を受けてきた」と証言する。 講演会に紛れ込んだ信者により、その内容が「小学生にピルを飲めと言った」「中学生にセックスをそそのかしている」と歪曲され、攻撃された。県教委などにも通報され、「あなたたちのグループは何をやっているのか」と責められた。教育委員会に講演会の後援を断られれば、現場の教師たちは講演会への参加を躊躇う。 広島市PTA協議会の会長には、月刊誌に「中学生にセックスをそそのかして家庭を崩壊させ革命を狙っている」とまで書かれた。河野さんは事実無根として、2005年1月に会長を名誉毀損きそんで提訴した。 この裁判の過程でこの会長は、旧統一教会の関連団体である世界平和女性連合の人たちとともに、「10代の性を考える母と医師と教師の会」なるものを作り、喫茶店で会合を開いていたことが判明した(会合には5、6人しか集まらなかった)』、「全国各地で講演会を開いてきた。そして「講演会を開くたびに、旧統一教会から執拗しつような妨害を受けてきた」、「講演会に紛れ込んだ信者により、その内容が「小学生にピルを飲めと言った」「中学生にセックスをそそのかしている」と歪曲され、攻撃された。県教委などにも通報され、「あなたたちのグループは何をやっているのか」と責められた」、「広島市PTA協議会の会長には、月刊誌に「中学生にセックスをそそのかして家庭を崩壊させ革命を狙っている」とまで書かれた。河野さんは事実無根として、2005年1月に会長を名誉毀損きそんで提訴」、「旧統一教会から執拗しつような妨害」は本当に酷いようだ。
・『「日本の伝統的家族観」を守る政治家たち  2000年代は広島県だけでなく全国で組織的な性教育排除、バッシングが広がっていた。国会では、今旧統一教会との深い関係を指摘されている山谷えり子参院議員が、「過激な性教育が学校に広がっている」と質問した。 今その質問を見返すと、極めて抑制的に正しい性の知識を伝えている副読本や、知的障害のある子どもたちに体の仕組みを教えるために教師たちが苦心して作った家族人形を「セックス人形」だとしてやり玉に挙げた。 2005年には、安倍晋三元自民党幹事長代理(当時)を座長、山谷議員を事務局長とする「過激な性教育・ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム」が結成され、全国の教育委員会に対して性教育の実態調査が行われる。その結果、山谷氏が問題視したような“過激な”性教育はなかったにもかかわらず、「性交や避妊指導は不必要」として学習指導要領や教科書から消えた。 こうした活動を展開してきた自民党の一部の議員の裏には、伝統的家族観を重視する日本会議や神社本庁など宗教右派と言われる存在があることは、ジェンダー関連の取材が長い記者たちは気づいていた。私もその一人だ。 彼らは性教育に限らず、男女共同参画や選択的夫婦別姓制度、同性婚などは、「日本の伝統的家族観を崩壊させるもの」として、ことごとくジェンダー平等、女性の権利に関わる政策に執拗に反対し続けてきた。 だが正直、このジェンダーバッシング、ジェンダーバックラッシュとも言われる動きの中で、旧統一教会がここまで草の根的に執拗に動いていたことは、私は恥ずかしながら安倍元首相襲撃事件後、取材をするまで気づいていなかった。先の河野さんはこう話す。 「私は旧統一教会の問題についてはずっと言い続けてきました。ですが、当時はメディアもほとんど聞く耳を持ってくれなかった。PTA連合会会長を提訴した時には記者会見も開きましたが、関心を持ってくれた記者は少なく、小さい記事になっただけでした」』、「2005年には、安倍晋三元自民党幹事長代理(当時)を座長、山谷議員を事務局長とする「過激な性教育・ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム」が結成され、全国の教育委員会に対して性教育の実態調査が行われる。その結果、山谷氏が問題視したような“過激な”性教育はなかったにもかかわらず、「性交や避妊指導は不必要」として学習指導要領や教科書から消えた。こうした活動を展開してきた自民党の一部の議員の裏には、伝統的家族観を重視する日本会議や神社本庁など宗教右派と言われる存在がある」、「こうした活動を展開してきた自民党の一部の議員の裏には、伝統的家族観を重視する日本会議や神社本庁など宗教右派と言われる存在がある」、「「性交や避妊指導は不必要」として学習指導要領や教科書から消えた」のは「山谷氏」らへの忖度だろう。
・『富山県議らに送り付けられた1冊の冊子  安倍元首相が凶弾に倒れるという事件が起きて改めて、旧統一教会のさまざまな問題が噴出している。2010年代に入っても強引な勧誘や、財産の収奪のような手法が続いていること、信者の親に育てられた宗教2世がいまだに苦しんでいること……。 こうした実際の被害者の救済も急がなければならないが、もう一つ解明し忘れてはならないのが、彼らが政治家を通じて、自分達の「価値観」をどこまで政策に反映させてきたかということだ。 自民党の富山県議で産婦人科医でもある種部恭子さんは、県議会の質問などで県に対して、同性・異性にかかわらずカップルであることを公的に証明する「パートナーシップ制度」の創設を求めてきた。 県は2021年の議会答弁で「導入の検討」を明言したが、その後2022年5月になって自民党県議らに送り付けられてきたのは、「世界日報LGBTQ問題取材チーム」による『「LGBT」隠された真実 人権」を装う性革命』という冊子だった。世界日報とは統一教会系の新聞である。 この冊子では、「偏見や差別の裏返しとして、同性愛を安易に美化してはならない。同性愛行為を行うことのリスクを客観的に評価する必要がある」と訴え、「パートナーシップ制度の拡大は、最終的には『夫婦』や『家族』についての日本人の考え方に混乱をもたらし、やがて夫婦を核とした伝統的な家族を破壊する」「パートナーシップ制度は行政による個人の信条・信仰への侵害だ」と主張している』、「自民党の富山県議で産婦人科医でもある種部恭子さんは、県議会の質問などで県に対して、同性・異性にかかわらずカップルであることを公的に証明する「パートナーシップ制度」の創設を求めてきた。 県は2021年の議会答弁で「導入の検討」を明言したが、その後2022年5月になって自民党県議らに送り付けられてきたのは、「世界日報LGBTQ問題取材チーム」による『「LGBT」隠された真実 人権」を装う性革命』という冊子だった。世界日報とは統一教会系の新聞である。 この冊子では、「偏見や差別の裏返しとして、同性愛を安易に美化してはならない。同性愛行為を行うことのリスクを客観的に評価する必要がある」と訴え、「パートナーシップ制度の拡大は、最終的には『夫婦』や『家族』についての日本人の考え方に混乱をもたらし、やがて夫婦を核とした伝統的な家族を破壊する」、よく地方議会にまでアンテナを張りめぐらし、すぐに反応するとは「統一教会」はすごい組織力だ。
・『旧統一教会の政治的活動は報道されなかった  この7月には富山を拠点にするチューリップテレビが、2019年と2021年1月に、統一教会の関連団体、国際勝共連合の幹部が富山市議会の自民党議員らに勉強会の講師として招かれていたことを報じた。この時の内容も、同性愛に反対する内容だったという。男女による合同結婚式を重要な儀式と位置付ける旧統一教会は、同性婚に強く反対している。 性教育だけでなく、パートナーシップ制度の導入についても、旧統一教会は保守系議員への働きかけを続けてきたが、この活動がメディアに出ることは最近までほぼなかった。 背景にはメディアがこの20年、旧統一教会の動きに注目していなかったこともあるが、「メディア自体が男性中心組織で、特にどの記事を掲載するかを決めるデスク以上に女性が少ないことが関係しているのではないか」と種部さんは指摘する。 性教育や同性婚、夫婦別姓の問題、ジェンダー平等に関する問題に関心を持つのは比較的女性の記者やディレクターが多い。これまで長くデスク以上の責任者を男性が占めるという構造だったメディアでは、ジェンダー関連のニュースの優先度が下がるという状態が続いてきた』、「これまで長くデスク以上の責任者を男性が占めるという構造だったメディアでは、ジェンダー関連のニュースの優先度が下がるという状態が続いてきた」、これが「旧統一教会は保守系議員への働きかけを続けてきたが、この活動がメディアに出ることは最近までほぼなかった」背景のようだ。
・『約40年間で主要3紙の関連記事はわずか  実際、データベースで1980年1月1日から2022年8月31日の間、朝日、毎日、読売の各新聞で、「統一教会」とジェンダー政策の関連性を検索してみても、記事はほとんどヒットしない。「統一教会と性教育」というキーワードで検索すると、朝日新聞で1件のみ、選択的夫婦別姓では朝日1件、毎日3件、同性婚では朝日1件、毎日7件という具合だ。 同じく伝統的家族観を重視する宗教団体や有識者らでつくる日本会議は、ここ数年その存在がクローズアップされてきたが、それでもこの団体とジェンダー政策との関係性を報じている記事は少ない。同じように3紙を検索すると、性教育では朝日が2件、毎日3件、読売1件、選択的夫婦別姓では朝日が6件、毎日9件、読売1件だ。 元朝日新聞記者でジャーナリストの竹信三恵子さんは、1995年の北京女性会議前からジェンダー政策について取材し続けてきた数少ない記者だ。2000年に入ると男女共同参画審議会の専門委員にも就任。竹信さんの30年間は、記者として、宗教右派や保守系議員によるバッシングの影との闘いでもあったという』、「元朝日新聞記者でジャーナリストの竹信三恵子さんは、1995年の北京女性会議前からジェンダー政策について取材し続けてきた数少ない記者だ・・・竹信さんの30年間は、記者として、宗教右派や保守系議員によるバッシングの影との闘いでもあったという」、なるほど。
・『「ジェンダー」でさえ言葉狩りの対象に  1996年2月に選択的夫婦別姓などを盛り込んだ民法改正案要綱が法政審議会で決定され、1999年に男女共同参画社会基本法が制定されると、保守勢力からの攻撃は加速した。男女平等を意味する言葉として使われていた「ジェンダーフリー」を男女の区別を無くす概念だと歪曲化。「ジェンダーフリー」だけでなく、「ジェンダー」という言葉すら、言葉狩りにあったかのように、行政やメディアから消えていった。 最近でこそ、朝日新聞でも「Think Gender」というキャンペーンも始まったが、メディアでも長らくこのジェンダーという言葉は使いづらい空気が蔓延していた。 ジェンダー叩きの極め付きは個別の記者や有識者に対するバッシングだった。竹信さんも、世界日報に名指しで「札付きのフェミニスト記者」と書かれた。当時、世界日報では男女共同参画会議に参加しているメンバーやフェミニストのバッシング記事が相次いで掲載されていた。 だが闘いは、宗教右派や保守系議員との間だけではなかった。新聞社内でも、男女平等やジェンダーに関する記事を取材し、掲載しようとすると、ある時には露骨に、ある時には無言の圧力があったという。当時の新聞社内は幹部も管理職も圧倒的に男性だった。「男女平等は大事だと言いながら、それに関する記事は嫌がる空気が社内にあった」と竹信さんは話す』、「闘いは、宗教右派や保守系議員との間だけではなかった。新聞社内でも、男女平等やジェンダーに関する記事を取材し、掲載しようとすると、ある時には露骨に、ある時には無言の圧力があったという。当時の新聞社内は幹部も管理職も圧倒的に男性だった。「男女平等は大事だと言いながら、それに関する記事は嫌がる空気が社内にあった」、社内にも「圧力があった」とは大変だ。
・『「ジェンダー問題」から距離を置く男性たちの事情  「一つは、ジェンダーは自分達にはよく理解できない問題だから介入できないし、したくないという姿勢。もう一つはこの問題を追及すると、自分たちの足元の家族の関係性が揺らぐという懸念があったのだと思います。 長時間労働や転勤が当たり前だった新聞社の働き方は、夫が稼ぎ、妻が家事育児をするという性別役割分業が前提で成り立っていたので、男女平等という概念を突き詰めると、自分たちの存在が否定されるような気持ちになったのではないでしょうか」 実際、私自身、週刊誌『AERA』時代、働く女性の記事を書くときでさえ、長年「ジェンダーという言葉は避けて」と釘を刺されてきた。当時私も、男性たちがこの言葉に微妙な忌避感を抱いていることは感じ取っていた。それは声を上げる女性を敬遠する空気と一体だった』、「長時間労働や転勤が当たり前だった新聞社の働き方は、夫が稼ぎ、妻が家事育児をするという性別役割分業が前提で成り立っていたので、男女平等という概念を突き詰めると、自分たちの存在が否定されるような気持ちになったのではないでしょうか」 実際、私自身、週刊誌『AERA』時代、働く女性の記事を書くときでさえ、長年「ジェンダーという言葉は避けて」と釘を刺されてきた」、マスコミも「ジェンダーという言葉」を忌避してきた理由が理解できた。
・『宗教右派という日本メディアのタブー  日本のメディアは、例えばアメリカの中絶論争や同性婚は重要な政治的イシューだとして、大きく取り上げてきた。2022年6月には、中絶権は憲法で保証されているという重要判例を覆した米最高裁判決が新聞一面で取り上げられ、背景にキリスト教福音派と言われる宗教的価値観があることも詳しく解説された。 一方で、日本のジェンダーバッシングの動きや、伝統的家族観を頑なに守ろうとする宗教右派や保守系議員の動きは、一部の記者やジャーナリストが報じてきてはいたが、それが決して大きくメディアで取り上げられることはなかった。 『日本会議の正体』の著者である青木理さんは、ジェンダー政策の遅れの背景に宗教右派の存在があることを指摘し続けたジャーナリストの一人だが、日本のメディアにおいて宗教右派の存在はある種のタブーだったと話す。 「キャラバン隊と称して、地方から改憲運動や、伝統的家族観に基づいた政策の実現という草の根活動を展開し、第2次安倍政権に強い影響力を及ぼしてきた日本会議ですら、海外のメディアが書くまで、日本のメディアはほとんど書いてこなかった」』、「日本のメディアにおいて宗教右派の存在はある種のタブーだった」、改めて驚かされた。
・『メディアが伝えてこなかった大きなツケ  確かに2014年から2015年にかけて欧米メディアはこぞって日本会議のことを報じている。青木さんが2016年に出版した『日本会議の正体』によると、 「国粋主義的かつ歴史修正的な目標を掲げ、戦前の古き良き時代のように天皇を敬う」(英ガーディアン紙)、「日本会議〜日本版ティーパーティー〜のような反動的グループが安倍内閣を牛耳り、歴史観を共有している」(米CNNテレビ)など、極めて復古的、国粋主義的な団体の性格だけでなく、「奇妙なことに、この団体は日本のメディアの注目をほとんど集めていない」(ガーディアン紙)とも報じている。 海外メディアが相次いで報道し、青木さんの著書などが出版されてやっと、朝日、毎日なども「日本会議の研究」などと本格的な報道を始めている。 それでも、今回の安倍首相襲撃事件が起こるまで、多くの人たちに日本会議や旧統一教会など宗教右派の活動が知られることはなかった。今になって、「メディアはなぜもっと早く知らせてくれなかったのか」という声をよく聞く。 そこにはこれまで書いてきたようなメディア内部の構造上の問題やジェンダー関連報道の優先度の低さ、また「政治報道を担当する政治部が、支援団体である宗教まで踏み込んでこなかった」(青木さん)など、さまざまな要因が絡んでいたのだと思う。 青木さんは『日本会議の正体』のプロローグでこう書いている。 「足下で起きている出来事であっても、メディアが伝えようとしなければ、私たちは出来事を認識することすらできない。その出来事が驚愕すべきようなことであったり、きわめて異常なことであったり、あるいは早急な対処が必要なほど深刻な事態であっても、メディアがきちんと伝えてくれなければ、私たちは(中略)出来事自体の発生を認知できず、漫然と事態をやりすごすしかなくなってしまう」 さまざまな場面で当事者たちは小さな声を上げてきたが、メディアはそれを汲み取り、継続的には伝えてこなかった。そのため「やり過ごされてきた」問題が、今私たちの目の前に吹き出しているのである』、「「やり過ごされてきた」問題が、今私たちの目の前に吹き出しているのである」、その責任は、「継続的には伝えてこなかった」「メディア」にあるようだ。

次に、本年2月4日付け日刊ゲンダイが掲載したジャーナリストの田中幾太郎氏による「開成も麻布も実は“すべり止め”…両校を蹴って秀才が行く最高峰「筑駒」の実力」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/318225
・『「うちに来る生徒の大半は挫折を味わっている。開成も同じでしょう」と話すのは麻布の元教師。1日、開成中学と麻布中学の入試が行われた。開成は東大合格者数41期連続首位、麻布は68期連続トップ10入りと、誰もが認める超ド級の名門中高一貫男子校だ。 今年の開成中の出願数は1289人、麻布中は918人となっているが、「彼らの本当の第1志望は別にある」(同)という。昨年、開成中は1206人の出願があり、当日試験に臨んだのは1050人。合格したのは416人だったが、実際に入学したのは305人。麻布中は合格者371人に対し307人だった。 難関の入試を突破しながら、開成は111人、麻布は64人が別の中学に入学していることになる。開成や麻布を蹴って行った先で最も多いのが男子中高一貫の筑波大学附属駒場(筑駒)だ。筑駒中の入試は開成や麻布の2日後の3日に行われる。 「中学定員120人、高校から採るのも40人という少数精鋭。国立なので中学は入学金や授業料がタダ、高校も初年度20万円程度と授業料が安いのも魅力ですが、何より大学進学実績が飛び抜けている。関西の雄である灘をも凌駕し、国内の進学校でナンバーワンといっても過言ではない」(大手学習塾スタッフ)「筑波大学附属駒場(筑駒)・・・中学定員120人、高校から採るのも40人という少数精鋭・・・何より大学進学実績が飛び抜けている。関西の雄である灘をも凌駕し、国内の進学校でナンバーワンといっても過言ではない」、「開成や麻布」ですら滑り止めのようだ。
・『4人に3人が東大に合格した年も  昨年の東大合格者数は97人。生徒数の約6割に当たるが、2019年までは7期連続で100人を超えており、4人に3人が東大に合格した年もある。 「半世紀以上も前から中学受験の最高峰であるのは変わらなかった」と振り返るのは麻布OB。1970年代前半に筑駒(当時の校名は教育大学付属駒場=教駒)と麻布を受験した。入試日が同じ男子御三家(開成、麻布、武蔵)のうちの1校と、別の日に行われる筑駒を併願するのはこの頃からの中学受験の代表的な組み合わせだった。 「僕が受けた時は学力試験で通っても、そのまま教駒に入学できるわけではなく、その後に抽選があった。そこで落とされ、非常に悔しい思いをしたことを覚えています」 60年代中ごろから、中学受験が過熱。国立校がその片棒を担ぐのは問題だと批判が高まり、入試に抽選を導入するなど、試行錯誤を繰り返していた。 現在は最初に抽選を行い、そこで通った受験生だけが学力試験に臨めることになっている。抽選を実施するのは出願数が定員の8倍を超えた場合。実際にはここ10年以上、そのボーダーに達したことはなく、抽選は行われていない。 「数年前に孫が筑駒を受験しましたが、残念ながらかなわず、開成に入りました。本当は麻布を受けてほしかったのですが、将来医者になりたいらしく、医学部進学の実績がより高い開成を選んだ。もちろん、筑駒に入れれば一番良かったのですが……」(前出の麻布OB)  開成や麻布がすべり止めとは、なんともゼイタクな話だ』、「中学受験が過熱。国立校がその片棒を担ぐのは問題だと批判が高まり、入試に抽選を導入するなど、試行錯誤を繰り返していた。 現在は最初に抽選を行い、そこで通った受験生だけが学力試験に臨めることになっている。抽選を実施するのは出願数が定員の8倍を超えた場合。実際にはここ10年以上、そのボーダーに達したことはなく、抽選は行われていない」、「開成や麻布がすべり止めとは、なんともゼイタクな話だ」、その通りだ。

第三に、4月19日付けPRESIDENT Onlineが掲載した解剖学者・東京大学名誉教授の養老 孟司氏と日本総合研究所調査部主席研究員の藻谷 浩介氏の対談「なぜ日本人はいくら勉強しても英語を話せないのか…養老孟司が考える「日本の学校教育はココがおかしい」 「学ぶ」より「倣う」に重きを置くべき」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/68538
・『日本の学校教育はどこに問題があるのか。解剖学者の養老孟司さんは「子供を椅子に座らせ、暗記で知識を詰め込む教育はもうやめたほうがいい」という。エコノミストの藻谷浩介さんとの対談を収録した新刊『日本の進む道 成長とは何だったのか』(毎日新聞出版)から一部を紹介する――』、興味深そうだ。
・『なぜ日本では「読み書きそろばん」というのか  【藻谷浩介(以下、藻谷)】日本の英語教育は、発音能力、会話能力、ディベート能力を鍛えません。だから学校で教える英語は意味がないという意見は少なくありません。先生からみるとこの辺りはどう思いますか。 【養老孟司(以下、養老)】学校で何年も英語を習っているのに英語がちっとも上手にならない、しゃべるのが上手にならないと言われますが、そんなことは当たり前でしょう。昔から日本では「読み書きそろばん」と言っていたように、「読み」が中心になっています。そのことを疑問に思った人はいませんでした。 ギリシアは二千年以上前からお金をとって弁論術を教えていました。しゃべることを教えて金になる国でしたが、読みが中心の言語は日本語の他にあるのでしょうかねえ。 「あの国ではできているのに日本では」などとよく言いますが、もともとそうに決まっていますよ。つまり、日本語を教えている段階で、何を教えているかがわかっていないのでしょうね。日本語を教えているということは、日本の文化そのものを叩き込んでいることです。 僕はそのことを漫画を例にして指摘してきました。なぜ日本で漫画が発達するかというと、日本語は音読みをするからです。漢字のもとは象形文字です、すなわち「漫画」です。それにいろいろな「音」を振るのが日本語の特徴です』、「なぜ日本で漫画が発達するかというと、日本語は音読みをするからです。漢字のもとは象形文字です、すなわち「漫画」です。それにいろいろな「音」を振るのが日本語の特徴です」、「漢字のもとは象形文字です、すなわち「漫画」です。それにいろいろな「音」を振るのが日本語の特徴です」、新たな面白い見方だ。
・『ニッポンの漫画は日本語そのもの  【養老】欧米の言語などは音が先にあってそれを表記する表音文字ですが、日本語は逆になっていて、ある意味のある図形があって、それに対して音を自由に振っていきます。その振った音が漫画の吹き出しです。だから吹き出しの中には難しい漢字を入れてはいけない。 アメリカの漫画を見ると吹き出しはセリフというよりもト書きになっていますが、日本の場合はト書きではなく、音と意味の文芸になっています。だから、僕たちが日本語を読むときには、仮名に対応する表音文字の部分と漢字に対応する意味の部分の二カ所の脳を使って、図形と意味を直結しているわけです。 国語の先生は「漫画を読んでいても字を覚えてないからだめだ」と言いますが、僕は、漫画は日本語そのものだと思います。つまり、日本で国語教育をすると漫画寄りの訓練をしていることになります。日本で平安時代から漫画が成立するのは、音訓読みが成立したからでしょう。僕は長年そう言っていますが、あまり聞いてもらえません』、「僕たちが日本語を読むときには、仮名に対応する表音文字の部分と漢字に対応する意味の部分の二カ所の脳を使って、図形と意味を直結しているわけです。 国語の先生は「漫画を読んでいても字を覚えてないからだめだ」と言いますが、僕は、漫画は日本語そのものだと思います。つまり、日本で国語教育をすると漫画寄りの訓練をしていることになります。日本で平安時代から漫画が成立するのは、音訓読みが成立したからでしょう」、なるほど面白い見方だ。
・『英語は挿絵のない論文をいきなり読むようなもの  【藻谷】なるほど。象形文字=面であって、いろんな音や意味を振れる漢字と、表音文字のかなを組み合わせた日本語はその構造自体が、面と吹き出しを組み合わせにした漫画と同じ。 そういう日本語で思考している日本人が、表音文字のみの英語での思考に切り替えるのは、漫画しか読んだことのない人がいきなり挿絵一つない論文を読むようなもの。そういうことですね。実際にも、漫画も日本語も要点をとらえて速読できるし、画像処理と言語処理を両方伴うので、英語より複雑なニュアンスを伝えられる。 しかし私の場合には、意図して読む方ではなく話す方の英語を鍛えたおかげで、頭を切り替えることで漫画も論文も両方読めるようになって、世界が広がりましたが。 私はカタカナと漢字だけの戦前の文章を読むと頭にすっと入って来ないのはなぜかと思っていましたが、戦後はカタカナは外来語にあてるようになったので、カタカナ語はいわば第二の漢字として、象形文字的に脳が理解しているのかな、といま気づきました。 「イノベーション」とか典型ですが、「進歩」とかいうのと同じで、意味不明なのに一つの固まった概念としてすっと頭に入ってきます。これが「いのべーしょん」とか「しんぽ」と書かれていると、思わず「どういう意図なんだろう」ともう一段深く考えるのですが』、「象形文字=面であって、いろんな音や意味を振れる漢字と、表音文字のかなを組み合わせた日本語はその構造自体が、面と吹き出しを組み合わせにした漫画と同じ。 そういう日本語で思考している日本人が、表音文字のみの英語での思考に切り替えるのは、漫画しか読んだことのない人がいきなり挿絵一つない論文を読むようなもの。そういうことですね」、「日本人」が「英語」に不得手な理由の一端が分かった気がする。
・『日本の学校教育がハマった「個性」の落とし穴  【藻谷】ところで先生は、日本の学校教育そのものはどうご覧になっていますか。 【養老】教育という言葉の意味にもよりますが、日本は「倣う」とか「真似する」とか「顰に倣う」というように、「学ぶ」より「倣う」ことに重きを置いてきました。古典芸能の教育が典型的ですが、師匠のやるようにやれということになっています。 言い方を変えれば、人真似を突き詰めると最後はオリジナルになるしかないという考え方があるわけです。徹底的に師匠の真似をしていくと、どこかで真似できないところに出る。それが師匠の個性であり、弟子の個性でもあるという考え方です。 しかし、戦後はずっと、そういう考え方は「封建的だ」という批判があり、「封建的でなぜ悪いんだ」とは言い返せませんでした。 【藻谷】その反動で「個性」を言い始めたら、子供たちが「普通ではいけない」「人と同じではいけない」と無理をして「個性」を出そうとするようになったりしてますね。 【養老】中高生に「個性」なんてそれほどありませんよ。昔、ある学生に「誰も君の隣の人と間違えないだろう、それが君の『個性』なんだよ」と言ったことがありますが、個性はあるに決まっています。逆にいうと、「その人はその人である」という個性に対する信頼感が消えてしまったのでしょうね。個性はあるに決まっていると思えば、個性を問題にすることはありません』、「日本は「倣う」とか「真似する」とか「顰に倣う」というように、「学ぶ」より「倣う」ことに重きを置いてきました。古典芸能の教育が典型的ですが、師匠のやるようにやれということになっています。 言い方を変えれば、人真似を突き詰めると最後はオリジナルになるしかないという考え方があるわけです。徹底的に師匠の真似をしていくと、どこかで真似できないところに出る。それが師匠の個性であり、弟子の個性でもあるという考え方です。 しかし、戦後はずっと、そういう考え方は「封建的だ」という批判があり、「封建的でなぜ悪いんだ」とは言い返せませんでした」、「中高生に「個性」なんてそれほどありませんよ。昔、ある学生に「誰も君の隣の人と間違えないだろう、それが君の『個性』なんだよ」と言ったことがありますが、個性はあるに決まっています。逆にいうと、「その人はその人である」という個性に対する信頼感が消えてしまったのでしょうね。個性はあるに決まっていると思えば、個性を問題にすることはありません」、さすが説得力がある。
・『点数がよければいい、知識だけを教えればいい…  【養老】「個性」とか「その人らしさ」は、だいたいは生まれつき変わらないものを言っています。 しかし、そういう価値を教育の中に持ち込むと、一番重要な価値に教育は関係ない、つまり教育は人間の本質的なことには関われないという常識ができてしまい、教育はいらないことになってしまう。それならば教師のやる気がなくなるのは当たり前です。 【藻谷】たしかに、個性というものは生まれつきの違いなのですから、個性尊重なのであれば、そこに教育は携わらない、知識だけを教えてればいいということになりますね。 【養老】そうです。だから教育が極めて表面的なものになって、点数がよければいいということになってしまう。 なにしろ日本は明治維新以来、外国からいいものが入ってきたら、それを摂ればいいという考え方でやってきたわけですから、教育はないですよ。だから、すぐに「他所ではどうやっているのか」という話になるわけです。 しかし、その意味では日本の教育は成功したんじゃないでしょうか。池田清彦くん(生物学者)が書いていますが、結局、戦後の日本の教育は卒業したらおとなしく会社に勤め、上司の言うことを聞いてきちんと働く人を養成したわけです。特に1960年代、70年代の大学紛争で懲りた国は、子供たちにそういう教育をするようになりました』、「個性というものは生まれつきの違いなのですから、個性尊重なのであれば、そこに教育は携わらない、知識だけを教えてればいいということになりますね。 【養老】そうです。だから教育が極めて表面的なものになって、点数がよければいいということになってしまう。 なにしろ日本は明治維新以来、外国からいいものが入ってきたら、それを摂ればいいという考え方でやってきたわけですから、教育はないですよ。だから、すぐに「他所ではどうやっているのか」という話になるわけです」、なるほど。
・『机に向かうだけの教育はもうやめたほうがいい  【藻谷】その教育が、経済や企業を発展させるために、ものの見事に役に立ったということですか。 【養老】そうです。実際にそういう大人が育ったわけですから、日本の教育は有効だったということじゃないでしょうか。しかし、その教育はもういい加減やめたほうがいいと思います。 【藻谷】日本の学校教育はもともと、百数十年前のヨーロッパの教育の仕組みを日本に持ちこんだものでした。目的は富国強兵。当時の資本主義、軍事覇権主義むき出しの世界を、国としてサバイブするためだったのでしょう。 【養老】そうです。子供を椅子に座らせて教育するという、いまでも日本の学校で行われている方法は、19世紀のイギリスで産業革命とともに始まったと言われています。彼らはいまになって、「椅子の生活は不自然だから文明人の8割は年を取ると腰痛になる」といっています(笑)。 僕の記憶でも、小学校に入って初めて椅子に座って机に向かいました。しかし、畳での正座の仕方を教わったことはありますが、椅子の座り方は一度も教わった記憶がない。覚えているのは、椅子に座って頬杖をついたら、嫌と言うほど先生に叩かれたことです』、「【藻谷】その教育が、経済や企業を発展させるために、ものの見事に役に立ったということですか。 【養老】そうです。実際にそういう大人が育ったわけですから、日本の教育は有効だったということじゃないでしょうか。しかし、その教育はもういい加減やめたほうがいいと思います」、「子供を椅子に座らせて教育するという、いまでも日本の学校で行われている方法は、19世紀のイギリスで産業革命とともに始まったと言われています。彼らはいまになって、「椅子の生活は不自然だから文明人の8割は年を取ると腰痛になる」といっています(笑)」、なるほど。
・『子供がウロウロするのは自然なこと  【養老】そういう教育でも僕たちの頃がよかったのは、子供が自由に遊びまわっていられたからです。当時の大人は生きるのに必死だったから、子供に構う暇がありません。学校がなくて放っておかれたら、僕たちは毎日、川に行って魚を釣ったり蟹を採って遊んでいたはずです。 そういう子を集めて学校でおとなしく座らせておくことには、子供にとってそれなりの意味がありました。僕は学校があったから静かに座って本を読むことを覚えました。 ところがいまは家に帰っても椅子に座ったまま、ゲームをやったりスマホをいじっています。学校に来ている子供は、むしろ外で遊ばせなければバランスがとれません。本も読みたくない子には無理して読ませることはありません。 物事にはタイミングがあるから、本が嫌いな子に無理やり読ませても、さらに嫌いになるだけです。 その意味では、いまの公教育は根本のところで崩れていると思います。そのうえ、教室で元気で自由に動き回る子供は、注意欠陥多動性障害だということになりました。教室の中で立ち上がってウロウロするのは、子供にすればごく自然なことです。子供は立ち上がってウロウロしているものですよ』、「いまの公教育は根本のところで崩れていると思います。そのうえ、教室で元気で自由に動き回る子供は、注意欠陥多動性障害だということになりました。教室の中で立ち上がってウロウロするのは、子供にすればごく自然なことです。子供は立ち上がってウロウロしているものですよ」、「子供は立ち上がってウロウロしているものですよ」、その通りだ。それを「注意欠陥多動性障害だ」とするのは確かに歪んでいる。
・『大人しく座らせ、暗記をさせるのが教育なのか  【養老】僕はいまでも講演の時は1時間半、ウロウロしながら話しています。それが人の自然の状態です。椅子に座ってじっとしている状態は決して自然ではない。それを自然な状態と思い込まされて、自分でもそう思ってしまっています。 ところが、アメリカでそういう子供に意識覚醒効果のあるリタリンを飲ませています。200万人の子供に飲ませていると読んだことがあります。 【藻谷】ウロウロしているのが正常だと。何でも薬でいいのかとは思いますが、その基準なら最近の日本の大人しいいい子たちは、みんな病気ということになりますね。中高一貫のお受験校なんて、全員がそうだったりして。 その真逆で、とにかく大人しく座って一方的に聞いて暗記してなさいというような日本の教育システムを、もう少し能動的な人材を育てるためにも、作り直すことはできるのでしょうか。 【養老】学校教育では親と先生の役割が非常に大きい。だから、先生方と親が考え方を変えれば、いまよりもっと子供にとってハッピーな学校ができるとは思います。 太田敏という監督の『夢見る小学校』という映画を見ましたが、フリースクールのようなスタイルをとっている公立の小学校を丁寧に追いかけています。校長先生を中心に、ほかの先生や親が協力して、子供が何でも話し合って自由に決めて実行していく。例えば、話し合いには先生も加わりますが、最後の多数決を取るときは子供も先生も同じ1票です』、「学校教育では親と先生の役割が非常に大きい。だから、先生方と親が考え方を変えれば、いまよりもっと子供にとってハッピーな学校ができるとは思います。 太田敏という監督の『夢見る小学校』という映画を見ましたが、フリースクールのようなスタイルをとっている公立の小学校を丁寧に追いかけています。校長先生を中心に、ほかの先生や親が協力して、子供が何でも話し合って自由に決めて実行していく。例えば、話し合いには先生も加わりますが、最後の多数決を取るときは子供も先生も同じ1票です」、なかなかいい考えだ。
・『子供がすくすく育つ学校の共通点  【養老】先生が子供のやることに口を出さないから、子供たちの学びへのモチベーションが高まっていくわけです。フリースクール的な学校で学んだ子が伸びると言われますが、当然です。そこには自分で考えることを教えているからです。 【藻谷】いまの文部科学省の教育指導要領でも、それが可能なのですか。締めつけが壊れてきているので、そういう公立学校も認められるようになってきたということなのでしょうか。 【養老】いや、壊れてきているというよりも、本来、学校指導要領はがちがちではなく、いまの決まりの中でもフリースクールに近いような教育もできるようになっています。つまり、先生方が考え方を変えれば公立学校がそちらの方向に動けるんです。文科省は公立学校でそうした教育が行われることを妨害しているわけではありません。 【藻谷】制度としてはできるはずなのに、子供にとっても先生にとっても苦しい教育になっています。 【養老】教師や親、みんながもう少し素直に本音で話さないといけないのでしょうね。現場の先生方が、「書類を書くために教師になったんじゃない、子供を育てたくて教師になったんだ」とか言い出せばいいのじゃないでしょうか』、「本来、学校指導要領はがちがちではなく、いまの決まりの中でもフリースクールに近いような教育もできるようになっています。つまり、先生方が考え方を変えれば公立学校がそちらの方向に動けるんです。文科省は公立学校でそうした教育が行われることを妨害しているわけではありません・・・教師や親、みんながもう少し素直に本音で話さないといけないのでしょうね。現場の先生方が、「書類を書くために教師になったんじゃない、子供を育てたくて教師になったんだ」とか言い出せばいいのじゃないでしょうか」、なるほど。
・『教育の方法を変えれば子供は伸びる  【藻谷】さはさりとて、戦前の教育と戦後の教育は大きく変わったと言われています。先生がご覧になって一番変わったのはどこだと思われますか。 【養老】一番変わったのは教育の価値観――教育というものの重みではないでしょうか。戦前の教育はいまより遥かに重たかったし、戦前の方が集団的でした。全体を重視する教育をしていましたが、いまは個人重視の教育になりました。 【藻谷】社会全体で構成員全員の教育のレベルを上げよう、という意識が高かったということですか。 【養老】そうですね。現代はそうした意識が希薄で、それぞれの人や家庭の事情によって全体よりも個人の能力を伸ばすように変わってきていると思います。 さきほど言ったように、個性主義が教育全体の価値を下げてしまったから。教育はやる側が一生懸命になっていることが子供に伝わる。そのことは明らかなので、学校も出来たばかりだといい生徒が出るんです、先生が熱心だから。教師のその「熱」に子供は影響を受ける。そういうことが忘れられている。 私も大学の解剖の実習を教えていたけれど、解剖の実習は非常に手間がかかる大変な授業です。2カ月くらいつきっきりで指導するわけだから。そのやり方は元があってだいたい決まっているのですが、あるときに、それを変えようという話になった。 やり方を変えると変えた年は、学生に必ず良い結果が出ます。それは、変えようと言った人は自分の責任だと思って一生懸命にやるからです。でも何年かすると惰性になって普通になってしまうと、学生もまたもとに戻ります』、「やり方を変えると変えた年は、学生に必ず良い結果が出ます。それは、変えようと言った人は自分の責任だと思って一生懸命にやるからです。でも何年かすると惰性になって普通になってしまうと、学生もまたもとに戻ります」、惰性とは恐ろしいものだ。
・『教師と親の「熱」が子供のモチベーションを高める  【藻谷】なるほど。私も講演のたびに、熱意を持って何とか事実を皆さんに伝えようと頑張っているのですが、確かに講演回数が月に50回を超えていたような時期には、何か湧き上がってくるものが足りなくて、ただでさえ伝わりにくい話がなおさら伝わらなかった感じがありますね。 それが20回ぐらいまで落ちてくると相当に熱意が復活してきます。……というのはちょっと私が特殊に病的に伝えたがりなのかもしれません(笑)。でも実にいろんなテーマで話していることが、確かにやる気のもとになっています。 つまり、カリキュラムの内容よりも、カリキュラムが新鮮なことで先生が熱心になるのが大事。そこが子供の本質的な何かに触れるわけですね。 【養老】そうだと思います。私の経験では、東日本大震災のあと東松島の小学校でも似たようなことがありました。亡くなった作家で冒険家のC.W.ニコルの「アファンの森財団」が援助してその小学校の裏山を校庭にし、校舎は全て木造で作り直しました。 そこで学んだ卒業生の話を聞いたり、ほかの調査をしていると、例えば「将来、人の役に立つ仕事につきたい」といったモチベーションが高い子供が多いことが分かりました』、「私の経験では、東日本大震災のあと東松島の小学校でも似たようなことがありました。亡くなった作家で冒険家のC.W.ニコルの「アファンの森財団」が援助してその小学校の裏山を校庭にし、校舎は全て木造で作り直しました。 そこで学んだ卒業生の話を聞いたり、ほかの調査をしていると、例えば「将来、人の役に立つ仕事につきたい」といったモチベーションが高い子供が多いことが分かりました」、なるほど。
・『今の教育は惰性の極みである  【養老】それは、大人たちが自分たちのために特別に新しい木造の学校を造ってくれたことに反応しているのではないかと思います。つまり、特殊な学校であることが大事なのではなく、特殊な学校を造ったということが大事なのだと思います。 【藻谷】前からあることではなく、新しく始めたことに、初期に学んだ子供たちが感心する。残念ながら普通の場合、いまの教育は惰性の極みのようになっています。 【養老】そうだと思います。いまは教育そのものではなく、制度の維持に専心している感じです。だから、先生が夏休みでも休まずに学校に行くというバカな話になる。子供がいないのになぜ学校に行くのかという疑問を誰も呈さない。 【藻谷】生徒が休みだからと言って先生が休んでいるのはずるい、といわれるから出勤することにしようとかだとすると、正に教育そのものではなく制度の維持が主眼になっていますね。 【養老】そう、税金泥棒と言われるから登校しているとかね。僕が入った中学校はできて4年目でしたから、学校の敷地の整備に子供たちが取り組みました。教育にはそういうことが大事なのではないかと思いますね』、「残念ながら普通の場合、いまの教育は惰性の極みのようになっています。 【養老】そうだと思います。いまは教育そのものではなく、制度の維持に専心している感じです。だから、先生が夏休みでも休まずに学校に行くというバカな話になる。子供がいないのになぜ学校に行くのかという疑問を誰も呈さない。 【藻谷】生徒が休みだからと言って先生が休んでいるのはずるい、といわれるから出勤することにしようとかだとすると、正に教育そのものではなく制度の維持が主眼になっていますね」、「惰性」に陥らないような仕組みを「教育」に取り入れていくのは至難の業だが、それを目指してゆくべきなのではなかろうか。 
タグ:教育 (その29)(「なぜ女性が妊娠するか」を学校で教えない…日本の性教育を世界最悪にした原因は旧統一教会にある メディアが宗教右派の存在を報じてこなかった理由、開成も麻布も実は“すべり止め”…両校を蹴って秀才が行く最高峰「筑駒」の実力、なぜ日本人はいくら勉強しても英語を話せないのか…養老孟司が考える「日本の学校教育はココがおかしい」 「学ぶ」より「倣う」に重きを置くべき) PRESIDENT ONLINE 浜田 敬子氏による「「なぜ女性が妊娠するか」を学校で教えない…日本の性教育を世界最悪にした原因は旧統一教会にある メディアが宗教右派の存在を報じてこなかった理由」 「河野さんは日本の性教育は「世界でも最悪の状態」だという。中学高校で正しい避妊方法や妊娠の知識、自分自身を大切にするという考えの下でのセックスについて教わっていない。男女の体の成長段階や人の受精卵が胎内で成長する過程は学ぶが、受精の前提となる性交については教えていないのだ。学習指導要領に「妊娠の経過は取り扱わない」という「はどめ規定」があるためだ」、 「日本の性教育は「世界でも最悪の状態」」とはショッキングな診断だ。 「全国各地で講演会を開いてきた。そして「講演会を開くたびに、旧統一教会から執拗しつような妨害を受けてきた」、「講演会に紛れ込んだ信者により、その内容が「小学生にピルを飲めと言った」「中学生にセックスをそそのかしている」と歪曲され、攻撃された。県教委などにも通報され、「あなたたちのグループは何をやっているのか」と責められた」、 「広島市PTA協議会の会長には、月刊誌に「中学生にセックスをそそのかして家庭を崩壊させ革命を狙っている」とまで書かれた。河野さんは事実無根として、2005年1月に会長を名誉毀損きそんで提訴」、「旧統一教会から執拗しつような妨害」は本当に酷いようだ。 「2005年には、安倍晋三元自民党幹事長代理(当時)を座長、山谷議員を事務局長とする「過激な性教育・ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム」が結成され、全国の教育委員会に対して性教育の実態調査が行われる。その結果、山谷氏が問題視したような“過激な”性教育はなかったにもかかわらず、「性交や避妊指導は不必要」として学習指導要領や教科書から消えた。こうした活動を展開してきた自民党の一部の議員の裏には、伝統的家族観を重視する日本会議や神社本庁など宗教右派と言われる存在がある」、 「こうした活動を展開してきた自民党の一部の議員の裏には、伝統的家族観を重視する日本会議や神社本庁など宗教右派と言われる存在がある」、「「性交や避妊指導は不必要」として学習指導要領や教科書から消えた」のは「山谷氏」らへの忖度だろう。 「自民党の富山県議で産婦人科医でもある種部恭子さんは、県議会の質問などで県に対して、同性・異性にかかわらずカップルであることを公的に証明する「パートナーシップ制度」の創設を求めてきた。 県は2021年の議会答弁で「導入の検討」を明言したが、その後2022年5月になって自民党県議らに送り付けられてきたのは、「世界日報LGBTQ問題取材チーム」による『「LGBT」隠された真実 人権」を装う性革命』という冊子だった。世界日報とは統一教会系の新聞である。 この冊子では、「偏見や差別の裏返しとして、同性愛を安易に美化してはならない。同性愛行為を行うことのリスクを客観的に評価する必要がある」と訴え、「パートナーシップ制度の拡大は、最終的には『夫婦』や『家族』についての日本人の考え方に混乱をもたらし、やがて夫婦を核とした伝統的な家族を破壊する」、よく地方議会にまでアンテナを張りめぐらし、すぐに反応するとは「統一教会」はすごい組織力だ。 「これまで長くデスク以上の責任者を男性が占めるという構造だったメディアでは、ジェンダー関連のニュースの優先度が下がるという状態が続いてきた」、これが「旧統一教会は保守系議員への働きかけを続けてきたが、この活動がメディアに出ることは最近までほぼなかった」背景のようだ。 「元朝日新聞記者でジャーナリストの竹信三恵子さんは、1995年の北京女性会議前からジェンダー政策について取材し続けてきた数少ない記者だ・・・竹信さんの30年間は、記者として、宗教右派や保守系議員によるバッシングの影との闘いでもあったという」、なるほど。 「闘いは、宗教右派や保守系議員との間だけではなかった。新聞社内でも、男女平等やジェンダーに関する記事を取材し、掲載しようとすると、ある時には露骨に、ある時には無言の圧力があったという。当時の新聞社内は幹部も管理職も圧倒的に男性だった。「男女平等は大事だと言いながら、それに関する記事は嫌がる空気が社内にあった」、社内にも「圧力があった」とは大変だ。 「長時間労働や転勤が当たり前だった新聞社の働き方は、夫が稼ぎ、妻が家事育児をするという性別役割分業が前提で成り立っていたので、男女平等という概念を突き詰めると、自分たちの存在が否定されるような気持ちになったのではないでしょうか」 実際、私自身、週刊誌『AERA』時代、働く女性の記事を書くときでさえ、長年「ジェンダーという言葉は避けて」と釘を刺されてきた」、マスコミも「ジェンダーという言葉」を忌避してきた理由が理解できた。 「日本のメディアにおいて宗教右派の存在はある種のタブーだった」、改めて驚かされた。 「「やり過ごされてきた」問題が、今私たちの目の前に吹き出しているのである」、その責任は、「継続的には伝えてこなかった」「メディア」にあるようだ。 日刊ゲンダイ 田中幾太郎氏による「開成も麻布も実は“すべり止め”…両校を蹴って秀才が行く最高峰「筑駒」の実力」 「筑波大学附属駒場(筑駒)・・・中学定員120人、高校から採るのも40人という少数精鋭・・・何より大学進学実績が飛び抜けている。関西の雄である灘をも凌駕し、国内の進学校でナンバーワンといっても過言ではない」、「開成や麻布」ですら滑り止めのようだ。 「中学受験が過熱。国立校がその片棒を担ぐのは問題だと批判が高まり、入試に抽選を導入するなど、試行錯誤を繰り返していた。 現在は最初に抽選を行い、そこで通った受験生だけが学力試験に臨めることになっている。抽選を実施するのは出願数が定員の8倍を超えた場合。実際にはここ10年以上、そのボーダーに達したことはなく、抽選は行われていない」、「開成や麻布がすべり止めとは、なんともゼイタクな話だ」、その通りだ。 養老 孟司氏 藻谷 浩介氏の対談「なぜ日本人はいくら勉強しても英語を話せないのか…養老孟司が考える「日本の学校教育はココがおかしい」 「学ぶ」より「倣う」に重きを置くべき」 『日本の進む道 成長とは何だったのか』(毎日新聞出版) 「なぜ日本で漫画が発達するかというと、日本語は音読みをするからです。漢字のもとは象形文字です、すなわち「漫画」です。それにいろいろな「音」を振るのが日本語の特徴です」、「漢字のもとは象形文字です、すなわち「漫画」です。それにいろいろな「音」を振るのが日本語の特徴です」、新たな面白い見方だ。 「僕たちが日本語を読むときには、仮名に対応する表音文字の部分と漢字に対応する意味の部分の二カ所の脳を使って、図形と意味を直結しているわけです。 国語の先生は「漫画を読んでいても字を覚えてないからだめだ」と言いますが、僕は、漫画は日本語そのものだと思います。 つまり、日本で国語教育をすると漫画寄りの訓練をしていることになります。日本で平安時代から漫画が成立するのは、音訓読みが成立したからでしょう」、なるほど面白い見方だ。 「象形文字=面であって、いろんな音や意味を振れる漢字と、表音文字のかなを組み合わせた日本語はその構造自体が、面と吹き出しを組み合わせにした漫画と同じ。 そういう日本語で思考している日本人が、表音文字のみの英語での思考に切り替えるのは、漫画しか読んだことのない人がいきなり挿絵一つない論文を読むようなもの。そういうことですね」、「日本人」が「英語」に不得手な理由の一端が分かった気がする。 「日本は「倣う」とか「真似する」とか「顰に倣う」というように、「学ぶ」より「倣う」ことに重きを置いてきました。古典芸能の教育が典型的ですが、師匠のやるようにやれということになっています。 言い方を変えれば、人真似を突き詰めると最後はオリジナルになるしかないという考え方があるわけです。徹底的に師匠の真似をしていくと、どこかで真似できないところに出る。それが師匠の個性であり、弟子の個性でもあるという考え方です。 しかし、戦後はずっと、そういう考え方は「封建的だ」という批判があり、「封建的でなぜ悪いんだ」とは言い返せませんでした」、「中高生に「個性」なんてそれほどありませんよ。昔、ある学生に「誰も君の隣の人と間違えないだろう、それが君の『個性』なんだよ」と言ったことがありますが、個性はあるに決まっています。逆にいうと、「その人はその人である」という個性に対する信頼感が消えてしまったのでしょうね。個性はあるに決まっていると思えば、個性を問題にすることはありません」、さすが説得力がある。 「個性というものは生まれつきの違いなのですから、個性尊重なのであれば、そこに教育は携わらない、知識だけを教えてればいいということになりますね。 【養老】そうです。だから教育が極めて表面的なものになって、点数がよければいいということになってしまう。 なにしろ日本は明治維新以来、外国からいいものが入ってきたら、それを摂ればいいという考え方でやってきたわけですから、教育はないですよ。だから、すぐに「他所ではどうやっているのか」という話になるわけです」、なるほど。 「【藻谷】その教育が、経済や企業を発展させるために、ものの見事に役に立ったということですか。 【養老】そうです。実際にそういう大人が育ったわけですから、日本の教育は有効だったということじゃないでしょうか。しかし、その教育はもういい加減やめたほうがいいと思います」、 「子供を椅子に座らせて教育するという、いまでも日本の学校で行われている方法は、19世紀のイギリスで産業革命とともに始まったと言われています。彼らはいまになって、「椅子の生活は不自然だから文明人の8割は年を取ると腰痛になる」といっています(笑)」、なるほど。 「いまの公教育は根本のところで崩れていると思います。そのうえ、教室で元気で自由に動き回る子供は、注意欠陥多動性障害だということになりました。教室の中で立ち上がってウロウロするのは、子供にすればごく自然なことです。子供は立ち上がってウロウロしているものですよ」、「子供は立ち上がってウロウロしているものですよ」、その通りだ。それを「注意欠陥多動性障害だ」とするのは確かに歪んでいる。 「学校教育では親と先生の役割が非常に大きい。だから、先生方と親が考え方を変えれば、いまよりもっと子供にとってハッピーな学校ができるとは思います。 太田敏という監督の『夢見る小学校』という映画を見ましたが、フリースクールのようなスタイルをとっている公立の小学校を丁寧に追いかけています。校長先生を中心に、ほかの先生や親が協力して、子供が何でも話し合って自由に決めて実行していく。例えば、話し合いには先生も加わりますが、最後の多数決を取るときは子供も先生も同じ1票です」、なかなかいい考えだ。 「本来、学校指導要領はがちがちではなく、いまの決まりの中でもフリースクールに近いような教育もできるようになっています。つまり、先生方が考え方を変えれば公立学校がそちらの方向に動けるんです。文科省は公立学校でそうした教育が行われることを妨害しているわけではありません・・・教師や親、みんながもう少し素直に本音で話さないといけないのでしょうね。現場の先生方が、「書類を書くために教師になったんじゃない、子供を育てたくて教師になったんだ」とか言い出せばいいのじゃないでしょうか」、なるほど。 「やり方を変えると変えた年は、学生に必ず良い結果が出ます。それは、変えようと言った人は自分の責任だと思って一生懸命にやるからです。でも何年かすると惰性になって普通になってしまうと、学生もまたもとに戻ります」、惰性とは恐ろしいものだ。 「私の経験では、東日本大震災のあと東松島の小学校でも似たようなことがありました。亡くなった作家で冒険家のC.W.ニコルの「アファンの森財団」が援助してその小学校の裏山を校庭にし、校舎は全て木造で作り直しました。 そこで学んだ卒業生の話を聞いたり、ほかの調査をしていると、例えば「将来、人の役に立つ仕事につきたい」といったモチベーションが高い子供が多いことが分かりました」、なるほど。 「残念ながら普通の場合、いまの教育は惰性の極みのようになっています。 【養老】そうだと思います。いまは教育そのものではなく、制度の維持に専心している感じです。だから、先生が夏休みでも休まずに学校に行くというバカな話になる。子供がいないのになぜ学校に行くのかという疑問を誰も呈さない。 【藻谷】生徒が休みだからと言って先生が休んでいるのはずるい、といわれるから出勤することにしようとかだとすると、正に教育そのものではなく制度の維持が主眼になっていますね」、「惰性」に陥らないような仕組みを「教育」に取り入れていくのは至難の業だが、それを目指してゆくべきなのではなかろうか。
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株式・為替相場(その18)(家計が「円売り」に動くとき円安の本番が到来する 資産防衛としての「円から外貨へ」という必然、日経平均「3万8915円超え」は必然!その先に迫る上場企業の“大・不安時代”とは?、それでも「日経平均の上昇は危うい」と言える理由) [金融]

株式・為替相場については、昨年8月16日に取上げた。今日は、(その18)(家計が「円売り」に動くとき円安の本番が到来する 資産防衛としての「円から外貨へ」という必然、日経平均「3万8915円超え」は必然!その先に迫る上場企業の“大・不安時代”とは?、それでも「日経平均の上昇は危うい」と言える理由)である。

先ずは、本年6月8日付け東洋経済オンラインが掲載したみずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの唐鎌 大輔氏による「家計が「円売り」に動くとき円安の本番が到来する 資産防衛としての「円から外貨へ」という必然」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/677793
・『ドル円相場は年初来の円安圏で取引が続いている。この原因をどこに求めるかは識者により見方が異なるものの、筆者は円相場を取り巻く基礎的需給環境の変化から目をそらすべきではないという立場を続けている。 需給環境といった場合、象徴的には国際収支統計を軸に議論を展開するのが基本だが、家計の金融資産構成の動きに着目する価値も大きい。日本の家計金融資産は2000兆円にも及ぶため、多少の構成変化でも大きなインパクトになりうる。 日本の家計金融資産は現状、97%が円建て、しかも55%が現預金という保守的な構成にある。 (家計金融資産グラフはリンク先参照) リスクテイクに動く余地という意味では相当に大きい状況にあり、それが外貨だった場合の為替への影響は気がかりである』、「日本の家計金融資産は現状、97%が円建て、しかも55%が現預金という保守的な構成」、「リスクテイクに動く余地という意味では相当に大きい状況にあり」、確かにその通りで、要注意だ。
・『若年層ほど外貨建て投資  この点、気になる報道も断続的に見られている。 例えば、1カ月前の日本経済新聞(2023年5月1日)は「外貨資産『増やした』4割若手投資家、日本より米国株」と題し、若年層ほど外貨建て資産の比率を増やしていることを報じた。 かねて筆者はこうした「家計の円売り」こそ円相場、ひいては日本経済が抱える最大のリスクではないかと考えてきた。 上記の日経記事の中で紹介されていたアンケート結果に目をやると、「外国企業の方が日本企業よりも期待リターンが高いから」「右肩上がりの成長が不可能となり、日本株を長期で保有するにはリスクがある」など、内外の成長格差への意識が透ける。 これから投資をする個人にとって、国内よりも海外という志向はおおむね共通する志向だろう。) こうした「国内から海外へ」という資産運用の動きは今に始まったものではなく、過去数年の潮流である。 例えば投資信託経由の株式売買動向に目をやると、2015年以降じわじわと買いが積み上がる外国株式に対して国内株式の取得意欲は非常に弱く、2019年以降は国内から海外への代替が進んでいるかのような構図にも見える。 (投資信託経由の株式売買グラフはリンク先参照) 同統計からでは為替ヘッジの有無までは判別できないものの、こうした外国株式(おそらく多くは米国株式)への投資を通じた円売りも、今の円安局面に寄与しているのではないかと推測される』、「これから投資をする個人にとって、国内よりも海外という志向はおおむね共通する志向だろう」、「投資信託経由の株式売買動向に目をやると、2015年以降じわじわと買いが積み上がる外国株式に対して国内株式の取得意欲は非常に弱く、2019年以降は国内から海外への代替が進んでいるかのような構図にも見える」、「かねて筆者はこうした「家計の円売り」こそ円相場、ひいては日本経済が抱える最大のリスクではないかと考えてきた」、いよいよ「家計の円売り」が始まったのかも知れない。
・『空気で一気に動くおそれ  もっとも、上述した通り、家計金融資産の半分以上はまだ円建ての現預金に集中している。よって、外国株式への投資などが過去に比べて盛り上がっているのは事実としても、そうした「日本人の円売り」が資金循環構造を根本的に変容させるような状況にはまだない。 しかし、任意となっても大多数が続けているマスク着用のように、日本人は合理性よりも「皆がやっているから、やる」という空気で意思決定を下しやすい。冒頭の日経報道で指摘されたように、外貨建て資産を増やす層がこのまま増えていけば、どこかでそれが多数派として空気を形成することになる。 もはや窓口で高い手数料を払って外貨を購入する必要はなく、スマートフォン操作で簡単に外貨建て資産を購入できてしまうのだから、「動く時は一気に動く」というおそれは常にある。) 実際、「半世紀ぶりの安値」が続く実質実効為替相場(REER・物価格差を考慮し、主要貿易相手国に対する通貨の実力を測る指標)が象徴するように、日本が海外に対して持つ購買力はこの上なく弱まっている。 (円の実質実効為替相場のグラフはリンク先参照) よって外貨運用を増やすこと自体に相応の合理性もある。円の購買力が弱いからこそ海外から輸入される財の値段が押し上げられ、毎日のように値上げが報じられる状況に直結する。 片や、海外から日本へやってくる訪日外国人観光客(インバウンド)は「弱い円」の裏返しである「強い外貨」を背景として旺盛な消費・投資意欲を発揮し続けている』、「外貨建て資産を増やす層がこのまま増えていけば、どこかでそれが多数派として空気を形成することになる。 もはや窓口で高い手数料を払って外貨を購入する必要はなく、スマートフォン操作で簡単に外貨建て資産を購入できてしまうのだから、「動く時は一気に動く」というおそれは常にある」、その通りだ。
・『「弱い円」と「強い外貨」に諦観  日本人の多くは「こんな高いホテル誰が泊まるのか」「こんな高い鮨、誰が食べるのか」「どうせインバウンド向けでしょう」という会話をしたことがあるのではないか。これは「弱い円」と「強い外貨」に対する諦観に基づいた会話であり、「もう円で買えるものは少なくなっている」という日本人の胸中が透ける。 こうした状況に対し名目賃金が上昇してくればよいが、大きな望みは持てない。 6月6日に発表された4月の実質賃金は、前年比マイナス3.0%と13カ月連続でマイナスだった。日本人の懐事情は確実に貧しくなっている。 このような状況が極まっていった場合、合理的な経済人ならば、資産を「弱い円」ではなく「強い外貨」で持つという意欲は強まるはずである。毎日のように「円は安い(≒外貨は高い)」という情報にさらされれば、自国通貨の脆弱性に愛想を尽かす向きは増えて当然である。 事実、円の対ドル相場は2019年12月から足元までの間に、1ドル=110円から140円へと30%弱も下落している。これまで一番安全だと考えられていた「自国通貨建ての現預金」に置くだけでこれほど目減りしてしまった以上、何らかの形で対策を打とうと考えるのは普通である。) 円安が2022年の一過性の動きで終わればそのような心配もなかったかもしれないが、2023年に入ってからもしっかり持続している。必然的に「円から外貨へ」という投資意欲を持つ層は増えてくるだろう。 こうした動きは広義には「貯蓄から投資へ」という意味合いをはらむが、筆者は若干異なるように思っている。 「貯蓄から投資へ」のスローガンが企図するのは、資産運用を通じて保有資産を増やしていこうという「攻め」の姿勢転換だろう。だが、上述のような諦観に起因する「弱い円」から「強い外貨」へという動きは資産運用というより資産防衛であり、保有資産が減らないようにしようという「守り」の姿勢転換といえる。 高度経済成長以降、日本人は円高に悩んだことはあっても円安に悩んだことはなかった。だからこそ、今後起きることも未知の展開になる可能性があると筆者は危惧している』、「上述のような諦観に起因する「弱い円」から「強い外貨」へという動きは資産運用というより資産防衛であり、保有資産が減らないようにしようという「守り」の姿勢転換といえる。 高度経済成長以降、日本人は円高に悩んだことはあっても円安に悩んだことはなかった。だからこそ、今後起きることも未知の展開になる可能性があると筆者は危惧している」、確かに「円安に悩む」のは未知の展開だ。
・『1ドル=152円は序章にすぎないかもしれない  2022年12月末時点で日本の家計が保有する円の現預金は約1110兆円だった。この10%が「強い外貨」に移ろうとするだけでも110兆円規模の円売りが起きる。5%なら55兆円だ。 2022年の経常黒字(海外との貿易や投資で稼いだ額)が約11兆円なので、日本の年間経常黒字の5~10年分が家計の外貨シフトで相殺されるイメージになってしまう。 ちなみに、その経常黒字自体も第一次所得収支黒字を主軸としているため、実需としての円買いは乏しいという実情もある(この点は別の機会に深く議論させていただきたいが、同黒字の半分近くは円に転換されていない可能性が高い)。 このような需給環境の下で「日本人の円売り」がたきつけられた場合、円相場は相当にまとまった幅で下落する懸念があるのではないか。 裏を返せば、2022年に直面した113円付近から152円付近までの円急落は「日本人の円売り」を抜きにして起きた現象であり、その意味で限定的な円安相場だったという見方もできる。 本当の円安リスクはまだ顕在化していないという目線を持ちたい』、「2022年12月末時点で日本の家計が保有する円の現預金は約1110兆円だった。この10%が「強い外貨」に移ろうとするだけでも110兆円規模の円売りが起きる。5%なら55兆円だ。 2022年の経常黒字(海外との貿易や投資で稼いだ額)が約11兆円なので、日本の年間経常黒字の5~10年分が家計の外貨シフトで相殺されるイメージになってしまう」、これは私が異次元緩和の副作用として懸念していた円大暴落シナリオだ。植田新総裁が余りに慎重過ぎる政策運営をしていることが、「本当の円安リスク」「顕在化」につながる可能性がある。

次に、6月16日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「日経平均「3万8915円超え」は必然!その先に迫る上場企業の“大・不安時代”とは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/324520
・『日経平均は、年内にバブル期の最高値3万8915円を抜く――。私はそう確信しています。日経平均を押し上げる「三大要因」が強力に作用しているからです。しかし、「そのあとの世界」はどうなるのでしょうか。実は、上場企業の過半数が足をすくわれる「大・不安時代」がやってくるかもしれません。3メガバンクやオリックス、三井不動産や野村不動産ホールディングス(HD)、日本郵船や商船三井、鹿島建設や大林組、東レや旭化成、日本製鉄やJFEHD、ホンダにSUBARUなど……日本を代表する上場企業も例外ではないのです』、「日経平均は、年内にバブル期の最高値3万8915円を抜く」が、「その先に迫る上場企業の“大・不安時代”」、とは興味深そうだ。
・『日経平均は今年中にバブル最高値を抜くだろう  経済評論家の鈴木貴博です。未来予測を専門にしているせいで最近よく聞かれるテーマが、AIと日経平均です。日経平均は、バブル期の過去最高値(終値)の3万8915円87銭を今年中に抜く可能性が高まってきました。もう一歩踏み込んで予測すると9月までに一度、3万8000円台に到達する可能性も高いと思っています。 そこまで到達するのには、日経平均があと16%も上がる必要があります。株価の平均が16%上がるというのは相当なことなので、「年内に」と区切ればそのような予測をしている専門家は少数です。それでも、私は「たぶんそうなる」と確信しています。 今回の記事では、その根拠もお話しします。さらに、もう一つ問題にしたいのが「そのあとの世界」です。 日本経済にとって日経平均3万8915円という数字は呪いのような性格をもっていて、過去30年にわたって「われわれの成績はここを超えることができない」という目印になっていました。「もしそれを超えたらその先は?」というと、ここが問題で日本人にはイメージしづらい未知なる世界が待っているわけです。 ということで、今回の記事では「なぜ日経平均は3万8915円を超えるのか?」という話と、「超えた後、日本企業はどうなっていくのか」について、予測とその根拠を書いていきたいと思います。 まず、日経平均がなぜ上がっているのかですが、大きく三つ理由があります』、「日本経済にとって日経平均3万8915円という数字は呪いのような性格をもっていて、過去30年にわたって「われわれの成績はここを超えることができない」という目印になっていました」、確かにその通りだ。
・『日経平均の上昇要因は「異次元緩和」「円安」「地政学リスク」  一つ目に、日銀が相変わらず異次元緩和を継続していることです。もう1年以上、利上げによる引き締めを行っているアメリカやEUとは対照的な状況です。お金がじゃぶじゃぶ集まる場所では投資が過熱するわけですが、その場所が世界の中でも日本に限られているため日本が過熱しやすい。これが、一つ目の理由です。 二つ目に、円安です。今、都心に戻ってきたインバウンド消費で外国人がこれほど日本旅行を楽しんでいる最大の理由が、「日本は安い」からです。この日本が安いという感覚は観光客だけでなく外国人投資家にとっても同じで、日本企業は割安とその目に映っているのです。 円安は昨年と比べるとマイルドな形におさまっています。しかし、もしこの夏、円ドルレートが1ドル=160円台に突入したとしたらどうでしょう。 アメリカ人にとって「160円台での日経平均3万8915円」という価格は、「1ドル=140円での3万3500円」とドル建てで見れば同じ数字です。 冒頭で申し上げた今年9月までに日経平均が3万8000円台もありうるという予測の前提の一つが、「もしこの夏に円安進行の事態になれば」という懸念とつながっているのです。 そして三つ目が、地政学的リスクの高まりです。アメリカと中国の対立が深まってきたせいで、今年に入って棚ぼたで中国、台湾への投資分を日本へ振り替える動きが加速しています。たとえば今、熊本と北海道に急ピッチで半導体工場の建設が進められていますが、稼働は先でも当然、建設需要から半導体製造装置の受注まで経済を押し上げる動きが活発になっていきます。 関連して、世界の製造業にもそれまでのサプライチェーンを見直して日本に軸足を移す動きが出てきています。金融緩和、円安、サプライチェーンの見直しの3要因はどれも日本の製造業にとってはラッキーチャンスです。 ですからこの先、決算発表の記者会見の内容が悪くなるはずはない。全体的に明るいニュースが増え、投資家心理も「買い」に向かっていくでしょう。 ということで私は経済評論家の中では楽観的に「年内3万8915円超え」を予測しているのですが、一番の問題はその先です』、「地政学的リスクの高まりです。アメリカと中国の対立が深まってきたせいで、今年に入って棚ぼたで中国、台湾への投資分を日本へ振り替える動きが加速しています。たとえば今、熊本と北海道に急ピッチで半導体工場の建設が進められていますが、稼働は先でも当然、建設需要から半導体製造装置の受注まで経済を押し上げる動きが活発になっていきます」、確かにその通りだ。
・『日本の上場企業の大半は「たたんだほうが株主が喜ぶ」会社  よく、長年のゴールを達成した後に虚脱状態になるアスリートがいらっしゃいますが、私は「たぶん日本経済は3万8915円超えをした後に虚脱状態になる」と危惧しています。来年にかけてはコロナやウクライナのようなサプライズなマイナス要因が出現しない限り、日経平均が4万2000円ぐらいまでは余裕でいくと思うのですが、それが長くは続かないという予測です。 先に根拠を示しましょう。投資家界隈で問題になっていることの一つが、日本企業のPBR(株価純資産倍率)の低さです。PBRとは企業の時価総額を純資産、言い換えると会社の資産を全部売り払った後に残る価値で割ったもので、このPBRが1よりも低い会社は株主から見れば「ここでもう活動をやめちゃった方が、利益が出る会社」を意味しています。 今、問題になっていることは東証のプライム市場とスタンダード市場に上場する3274社のうち、過半数にあたる1728社がPBR1倍を割り込んでいることです(2023年6月14日時点)。 直近のデータで銘柄スクリーニングをしてみると、時価総額5000億円以上の超優良銘柄の中にも「会社をやめちゃったほうがお得な」PBR1倍以下の企業が79社あります。 主な企業名を挙げると、三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)、三井住友FG、みずほFGの3メガバンクやオリックス、SBIホールディングス(HD)のような金融関連の企業、三井不動産や野村不動産HD、日本郵船や商船三井、鹿島建設や大林組、東レや旭化成、日本製鉄やJFEHD、ホンダにSUBARUといったような会社の名前がずらりと並びます。 ちなみに13日、トヨタがPBR1.03倍と1倍以上のグループに昇格したことが経済ニュースになりましたが、それまでのトヨタも会社をたたんだほうが、株主が喜ぶ側の一員だったわけです。 このことの何が重要なのかというと、これらの会社はお金があるのに投資をしていない会社なのです。経営者目線で考えるとわかりやすいのですが、経済の先行きが不透明で不安な場合、内部留保を増やしてこれから先に備えようとします。何に備えるかというと、従業員の給料が払えなくなることがないように備えるわけです』、「「たぶん日本経済は3万8915円超えをした後に虚脱状態になる」と危惧」、「投資家界隈で問題になっていることの一つが、日本企業のPBR(株価純資産倍率)の低さ」、なるほど。
・『日本企業はチャンスがあっても「投資」を十分に行わない  日本人経営者から見れば「年功序列はもうすたれたにせよ、終身雇用は依然残っていて、正社員は家族のようなものだからそれを守る責任がある」と考えるので、お金を手元にためる性向があるのです。「会社は、本当は従業員のもの」という昔の経営哲学が、上場企業の半数以上でいまだに続いているのです。 これが海外の投資家から見ると不満なところです。日本企業は海外の投資家から見ると現金の保有比率が高いのです。その状況を「目の前にものすごく投資チャンスがあるのに投資をしていない」と受け止めるのです。 わかりやすい例を若干デフォルメしながらお伝えすると、金融業界は少なくともアメリカの場合は、AIの台頭を大チャンスだと捉えています。実際に、ゴールドマンサックスやモルガンスタンレーといった会社では従業員の3分の1がITエンジニアやデータサイエンティストに置き換わり、内部は実質的にIT企業と呼ぶべき状態になっています。 かたや日本のメガバンクはAIやDX化の流れを受けて2017年頃から大規模な行員のリストラ計画を発表して、人員削減には邁進(まいしん)しています。 人件費という固定費を削減するのはリスクにはならないので、経営者も自信をもって進められるのですが、投資の側がわからない。いまだにITは情報システム部が担い、経営の下請け業務の域を出ていません。あくまでデフォルメですが、外国人投資家からはその姿勢が疑問視されます。 そうなると、海外の投資家から見れば日本のメガバンクが成長するイメージがわかない。業績相応の株価しかつかず、結果として日本の銀行のPBRは1を大幅に割り込みます。 自動車会社も同じで、今、業界としては脱炭素とAIのダブルチャンスが起きていて、仕事の領域を「自動車製造」から「モビリティービジネス全般」ないしは「エネルギービジネスへの進出」まで、いくらでも投資を広げられる状態にあります。 にもかかわらず、トヨタが3兆円近い利益をたたき出しているのを筆頭に、自動車業界全般で過少投資の状態が続いています。これが海外の投資家にとっては不満で「利益を出さずに投資を3兆円増やせ」という怒号となり、ひいては株主総会で会長の不信任案がとりざたされるようになっている背景なのです。 まあ、「日本企業なんだし、外国人投資家のためにビジネスをやっているわけじゃないですから」という意見もわかります。 ただそれでも不安なのは、だからといって日本企業が投資を十分に行っていないことであり、そしてもっと恐ろしいことを言えば、それはアメリカ企業も実は同じなのです』、「日本のメガバンクは・・・いまだにITは情報システム部が担い、経営の下請け業務の域を出ていません。あくまでデフォルメですが、外国人投資家からはその姿勢が疑問視されます。 そうなると、海外の投資家から見れば日本のメガバンクが成長するイメージがわかない。業績相応の株価しかつかず、結果として日本の銀行のPBRは1を大幅に割り込みます。 自動車会社も同じで・・・トヨタが3兆円近い利益をたたき出しているのを筆頭に、自動車業界全般で過少投資の状態が続いています。これが海外の投資家にとっては不満で「利益を出さずに投資を3兆円増やせ」という怒号となり、ひいては株主総会で会長の不信任案がとりざたされるようになっている背景なのです」、なるほど。
・『大半の上場企業が日経平均を「押し下げる」時代が来る  日経平均と同じようなアメリカの株式インデックスがS&P500という上位500社の平均株価なのですが、このS&P500はリーマンショック以降、やはり右肩上がりでの上昇を続けています。 しかしその内訳をGAFAM5社、つまりグーグル、アップル、メタ、アマゾン、マイクロソフトと、それ以外の495社に分けて計算し直すと、前者がめちゃくちゃ成長している一方で、後者の株価は停滞しています。 495社からさらにエヌビディア、テスラ、ネットフリックスを除いたら、状況はもっと悲惨なことになるはずです。 つまりアメリカでも、機会への十分な投資ができていない企業の株価は伸びていない。だとすれば日本企業もマクロ要因で3万8915円超えを達成した後、その後でも成長を続けていくことができるのは、ほんのごく一部のチャレンジングな企業だけということになると予測されます。 具体的にはソニーグループ、キーエンス、ファーストリテイリング、信越化学、東京エレクトロン、三菱商事、伊藤忠、三井物産、任天堂あたりが「日本のGAFAM」を形成して、日経平均の成長をけん引するでしょう。その一方で、リスクをとらない過半数の上場企業群が平均点の足を大きく引っ張る構図が、「日経平均3万8915円のあとの世界」での不安材料です。 少子高齢化、人手不足、脱炭素、コスト高、エネルギー不足、防衛問題――何を考えてもこの先の日本経済には不安材料がめじろ押しだというのも事実です。 一方で、それを乗り越えるためには本質的には投資しかない。それができない企業が居座り続けることができる日本経済の構造自体に、大きな未来の不安材料があるのかもしれません』、「S&P500はリーマンショック以降、やはり右肩上がりでの上昇を続けています。 しかしその内訳をGAFAM5社、つまりグーグル、アップル、メタ、アマゾン、マイクロソフトと、それ以外の495社に分けて計算し直すと、前者がめちゃくちゃ成長している一方で、後者の株価は停滞・・・つまりアメリカでも、機会への十分な投資ができていない企業の株価は伸びていない」、「ソニーグループ、キーエンス、ファーストリテイリング、信越化学、東京エレクトロン、三菱商事、伊藤忠、三井物産、任天堂あたりが「日本のGAFAM」を形成して、日経平均の成長をけん引するでしょう。その一方で、リスクをとらない過半数の上場企業群が平均点の足を大きく引っ張る構図が、「日経平均3万8915円のあとの世界」での不安材料です」、「この先の日本経済には不安材料がめじろ押しだというのも事実です。 一方で、それを乗り越えるためには本質的には投資しかない。それができない企業が居座り続けることができる日本経済の構造自体に、大きな未来の不安材料があるのかもしれません」、なるほど。

第三に、6月19日付け東洋経済オンラインが掲載したブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリストの馬渕 治好氏による「それでも「日経平均の上昇は危うい」と言える理由」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/680453
・『日本株が続騰基調にある。代表的な指標である日経平均株価は反落も交えたものの、6月16日にはザラ場高値(3万3772円)と終値(3万3706円)がともに平成バブル崩壊後の最高値を更新した。 同日のアメリカではシカゴ日経平均先物は3万3675円で引けたが、これは現物指数に換算すると3万3750円辺りに相当する。今週(19~23日)も勢いだけの上振れが続くことで、「3万4000円超え」の局面到来を否定できない』、興味深そうだ。
・『相場予測は大外れ、率直にお詫びす  当コラムでは「今年前半は投資環境の悪化による株価下落が優勢になる」と唱え続け、安値のメドとして現時点では2万7000円を提示している。だが、実際の市況はこれとは真逆の株価暴騰となっており、筆者の見通しは大外れだ。 筆者は種々の機会において、専門家の予想数値だけを取り上げることは有益ではなく、その背景となる分析のほうがはるかに重要だと主張してきた。また、投資家の方々が自分自身で投資戦略を立案するうえで、専門家の主張や見解を丸ごと信じるのではなく、それを踏み台として、それらを上回り、高みに立つような展望を構築してほしい、とも述べてきた。 とはいっても、市況の予測数値は筆者から提示する情報の重要な一部であり、それが大外れであることは専門家として重責だ。すでに多くの叱責を頂戴しているが、そうした声をいただく以前から、筆者の予測の誤りが投資家の判断に悪影響を与え、投資収益面でご迷惑をおかけしているという点に日頃から思いを巡らせている。 実際、毎日胃が痛い思いをし、眠れない日も少なくない。当コラムの執筆だけでなく、雑誌、電子媒体などへの寄稿、テレビやラジオへの出演も「投資家にさらにご迷惑をおかけするばかりではないか」との恐怖にとらわれる。 だが、筆者が心痛を覚えても、皆さんに及ぼしたご迷惑は消えてなくならない。実際に投資成績に悪影響を被った投資家の方々のほうが、筆者の何倍も辛い思いだと拝察する。この場を借りて、心よりお詫び申し上げたい。) 筆者は、証券会社の調査部門に勤務した期間が長い。市場見通しを誤った際には、上司から「お前の軽い頭を下げて詫びられても、投資家の収益が改善するわけではない、そんな役に立たない謝罪をしている暇があったら、分析を再点検することに時間を使え」と諭された』、「上司」のアドバイスももっともだ。
・『日本への知見が浅い「ツーリスト投資家」が今の主役  当時の上司の教えに従って、現在の日本株暴騰の背景を再点検したい。その結論は、読者の方々は「懲りないやつだな」とあきれるだろうが、やはり世界の投資環境は悪化し続けており、日本を含む世界主要国の株価下落が示唆されているということだ。 投資家動向から述べると、5月以降の日経平均暴騰の主役は海外投資家の買いだ。ただし、筆者自身が情報交換している海外投資家から得られる感触では「日本株投資の経験が長く、日本を熟知している長期投資家は本格的な買いは行っていない」というものだ。 こうした感触は、海外投資家と接しているほかの多くの証券関係者からも寄せられる。加えて、日本株を大いに買っているのは「ツーリスト投資家」が中心だ、との言葉もよく聞く。 観光業界ではその国を団体旅行で初めて訪問したり、「単なる旅行者」として訪れるよう人を「ツーリスト」と呼ぶ。「ツーリスト投資家」はそれと同様、日本株への投資経験がないかほとんどない状態で「試しに日本に資金を投じるような投資家」を指す。ツーリストが短期間の旅行で本国に帰るのと同様に、ツーリスト投資家も日本株投資が短期間となる場合が多い。 こうした投資家について、豊島&アソシエイツ代表の豊島逸夫氏が、14日付の日本経済新聞電子版で披露していた見解が興味深いので、一部を引用したい。 「すでに日本株を購入した投資家は、日本株保有の『初体験組』が多いので、その決断が正しかったのかどうか、不安な心理状態にいる。そのため、日本株についての好意的な記事をあさるように探している。マーケティング理論でいうところの『認知的不協和』を最小限に抑えるように行動しているのだ」) ここで言う「認知的不協和」とは、自身の中に2つの矛盾する認識があることを意味する。人はその矛盾が不快なので、何かのこじつけでもそれを解消しようとする。 有名なのは「すっぱいブドウ」の逸話だ。キツネは、高い場所にブドウを見つけ、食べたいと思った。しかし、高すぎて手に取って食べることができない。「食べたい」という気持ちと「食べられない」という現実との矛盾を解消するため、キツネは「どうせあのブドウはすっぱくてまずい」といった、真実かどうかわからない言い訳で気持ちを落ち着かせる。 それと同様に、ツーリスト投資家も「自分は日本株を買った、儲かりたい」という願望と「自分は日本株投資の経験がなく、日本のこともよくわからないので、買いは失敗だったのでは」との不安が、矛盾しているのだろう。 その矛盾解消のため、「円安で日本株は上がる」「ウォーレン・バフェット氏が日本株に前向きだから上がる」「東京証券取引所が低PBR(株価純資産倍率)企業に改善を求めているから上がる」といった、確固たるものか定かではない報道にすがって、自身の投資判断を正当化しているのだろう』、「日本株を大いに買っているのは「ツーリスト投資家」が中心だ、との言葉もよく聞く・・・「ツーリスト投資家」は・・・日本株への投資経験がないかほとんどない状態で「試しに日本に資金を投じるような投資家」を指す。ツーリストが短期間の旅行で本国に帰るのと同様に、ツーリスト投資家も日本株投資が短期間となる場合が多い」、「「円安で日本株は上がる」「ウォーレン・バフェット氏が日本株に前向きだから上がる」「東京証券取引所が低PBR(株価純資産倍率)企業に改善を求めているから上がる」といった、確固たるものか定かではない報道にすがって、自身の投資判断を正当化しているのだろう」、「ツーリスト投資家」とは言い得て妙だ。
・『海外投資家のレベルを知り、椅子から転げ落ちそうに  「海外投資家」と聞くと、そのすべてが高度な投資手法を駆使し、知識も見識もすばらしい投資家だと、誤解しているかもしれない。 だが、日本を知らない海外投資家は本当に多い。最近、「ある豪州の機関投資家が日本株に関心があり、とくに日本の政治について知りたがっている」と知人から紹介され、メールで解散総選挙の可能性を中心に、政治情勢について質問を受けた。多くの質問のあと、最後のメールの末尾の文章を読んで、椅子から転げ落ちそうになった。 「ハル(筆者のニックネーム)、詳細に教えてくれてありがとう。衆議院の解散について、とてもよくわかったよ。ところで、参議院の解散についてはどう思う?」 日本の国会制度などをきちんと説明したが、その程度の投資家も今は日本株買いに多く参戦していると考えたほうがよい。) 世界の金融・経済環境も再点検しよう。金融政策については、最近2週間だけでも、ユーロ圏、カナダ、豪州で利上げが行われた。ユーロ圏では、昨年10~12月期、今年1~3月期と、実質経済成長率(前期比)が「景気後退の目安」とされる2四半期連続のマイナスとなった。それでも、根強いインフレを抑え込むため、景気をさらに押し下げ、株価には逆境となる政策が進行し続けている。 また、アメリカではFED(連銀)が、13~14日のFOMC(連邦公開市場委員会)でこそ利上げを見送ったものの、年末の政策金利予想値を0.5%幅引き上げた。アメリカの資金面では、経済全体の資金量を測るM2(現預金合計)の前年同月比は、昨年12月から直近の4月分(4.6%減)まで5カ月連続の減少だ。M2が前年同月比でマイナスとなるのは1960年1月以来初めてで、アメリカの景気や株価を締め上げていくだろう。 さらに中国でも、経済統計は4月以降、不振が目立つ。ゼロコロナ政策解除による景気押し上げが期待されたが、空振りに終わっている。確かに足元で中国は政策金利引き下げの姿勢を強めているが、景気悪化に歯止めがかかるかは心もとない。 こうした世界経済の悪化は、日本からの輸出に影を落としている。15日に公表された5月の貿易統計では、輸出数量は8カ月連続の前年同月比マイナスだ。 円安が外貨建て輸出の円換算値を膨らませていることで、輸出金額は増加してはいるが、5月の前年同月比はわずか0.6%増にすぎず、今後マイナス圏への転落もありえよう。 「円安だから輸出株中心に日本株は買いだ」などと楽観できる状況ではない。しかも、何とか増加している輸出金額でも、中国向けは6カ月連続の減少だ。中国と地理的・経済的に関係が深い日本への悪影響が強く懸念される事態で、「中国がダメだから日本株に資金が逃避する」などという主張は夢物語だろう』、「世界経済の悪化は、日本からの輸出に影を落としている。15日に公表された5月の貿易統計では、輸出数量は8カ月連続の前年同月比マイナスだ。 円安が外貨建て輸出の円換算値を膨らませていることで、輸出金額は増加してはいるが、5月の前年同月比はわずか0.6%増にすぎず、今後マイナス圏への転落もありえよう。 「円安だから輸出株中心に日本株は買いだ」などと楽観できる状況ではない」、その通りだ。
・『「長期展望は悲観せず」も不変  ただ筆者は、長期的には日本株に悲観ではない。長期展望を丁寧に解説するのには一定の分量が必要だ。また、筆者の予想では株価上昇は、いったん株価が下振れしたあとになる。よって、こうした長期予想はまたあらためて解説しよう。ただし『週刊東洋経済』(6月17日号)の40ページではその背景に簡単に触れているので、お読みいただければ幸いだ。 また、筆者が主催しているセミナーの参加者の方々には「日経平均はいったん下落したあと、今年末までには再度3万円の大台を奪回すると見込むし、2024年はさらに株価が上がるだろう。日本株を購入するなら、株価がいったん下振れすることを覚悟しつつ、じっと現物株やファンドを持ち続ければよい」と解説している。 避けるべきなのは、今後日経平均が2万7000円程度に「下がってから」、怖くなって株式などを思いっきり売却してしまうことだ。逆に、この水準に近いところまで下がったら買い場だ」とも伝えている。 今回コラムでは冒頭でお叱りの声があると述べたが、それ以上に激励や応援のメッセージを多く賜り、うれしさで涙することもある。そうしたご厚意に甘えてはいけないと自身を戒めつつも、この場を借りて心より御礼申し上げたい』、「筆者は、長期的には日本株に悲観ではない。長期展望を丁寧に解説するのには一定の分量が必要だ。また、筆者の予想では株価上昇は、いったん株価が下振れしたあとになる。よって、こうした長期予想はまたあらためて解説しよう」、短期悲観・長期楽観と分けるのも1つの考え方だ。
タグ:株式・為替相場 (その18)(家計が「円売り」に動くとき円安の本番が到来する 資産防衛としての「円から外貨へ」という必然、日経平均「3万8915円超え」は必然!その先に迫る上場企業の“大・不安時代”とは?、それでも「日経平均の上昇は危うい」と言える理由) 東洋経済オンライン 唐鎌 大輔氏による「家計が「円売り」に動くとき円安の本番が到来する 資産防衛としての「円から外貨へ」という必然」 「日本の家計金融資産は現状、97%が円建て、しかも55%が現預金という保守的な構成」、「リスクテイクに動く余地という意味では相当に大きい状況にあり」、確かにその通りで、要注意だ。 「これから投資をする個人にとって、国内よりも海外という志向はおおむね共通する志向だろう」、「投資信託経由の株式売買動向に目をやると、2015年以降じわじわと買いが積み上がる外国株式に対して国内株式の取得意欲は非常に弱く、2019年以降は国内から海外への代替が進んでいるかのような構図にも見える」、「かねて筆者はこうした「家計の円売り」こそ円相場、ひいては日本経済が抱える最大のリスクではないかと考えてきた」、いよいよ「家計の円売り」が始まったのかも知れない。 「外貨建て資産を増やす層がこのまま増えていけば、どこかでそれが多数派として空気を形成することになる。 もはや窓口で高い手数料を払って外貨を購入する必要はなく、スマートフォン操作で簡単に外貨建て資産を購入できてしまうのだから、「動く時は一気に動く」というおそれは常にある」、その通りだ。 「上述のような諦観に起因する「弱い円」から「強い外貨」へという動きは資産運用というより資産防衛であり、保有資産が減らないようにしようという「守り」の姿勢転換といえる。 高度経済成長以降、日本人は円高に悩んだことはあっても円安に悩んだことはなかった。だからこそ、今後起きることも未知の展開になる可能性があると筆者は危惧している」、確かに「円安に悩む」のは未知の展開だ。 「2022年12月末時点で日本の家計が保有する円の現預金は約1110兆円だった。この10%が「強い外貨」に移ろうとするだけでも110兆円規模の円売りが起きる。5%なら55兆円だ。 2022年の経常黒字(海外との貿易や投資で稼いだ額)が約11兆円なので、日本の年間経常黒字の5~10年分が家計の外貨シフトで相殺されるイメージになってしまう」、これは私が異次元緩和の副作用として懸念していた円大暴落シナリオだ。植田新総裁が余りに慎重過ぎる政策運営をしていることが、「本当の円安リスク」「顕在化」につながる可能性があ ダイヤモンド・オンライン 鈴木貴博氏による「日経平均「3万8915円超え」は必然!その先に迫る上場企業の“大・不安時代”とは?」 「日経平均は、年内にバブル期の最高値3万8915円を抜く」が、「その先に迫る上場企業の“大・不安時代”」、とは興味深そうだ。 「日本経済にとって日経平均3万8915円という数字は呪いのような性格をもっていて、過去30年にわたって「われわれの成績はここを超えることができない」という目印になっていました」、確かにその通りだ。 「地政学的リスクの高まりです。アメリカと中国の対立が深まってきたせいで、今年に入って棚ぼたで中国、台湾への投資分を日本へ振り替える動きが加速しています。たとえば今、熊本と北海道に急ピッチで半導体工場の建設が進められていますが、稼働は先でも当然、建設需要から半導体製造装置の受注まで経済を押し上げる動きが活発になっていきます」、確かにその通りだ。 「「たぶん日本経済は3万8915円超えをした後に虚脱状態になる」と危惧」、「投資家界隈で問題になっていることの一つが、日本企業のPBR(株価純資産倍率)の低さ」、なるほど。 「日本のメガバンクは・・・いまだにITは情報システム部が担い、経営の下請け業務の域を出ていません。あくまでデフォルメですが、外国人投資家からはその姿勢が疑問視されます。 そうなると、海外の投資家から見れば日本のメガバンクが成長するイメージがわかない。業績相応の株価しかつかず、結果として日本の銀行のPBRは1を大幅に割り込みます。 自動車会社も同じで・・・トヨタが3兆円近い利益をたたき出しているのを筆頭に、自動車業界全般で過少投資の状態が続いています。これが海外の投資家にとっては不満で「利益を出さずに投資を3兆円増やせ」という怒号となり、ひいては株主総会で会長の不信任案がとりざたされるようになっている背景なのです」、なるほど。 「S&P500はリーマンショック以降、やはり右肩上がりでの上昇を続けています。 しかしその内訳をGAFAM5社、つまりグーグル、アップル、メタ、アマゾン、マイクロソフトと、それ以外の495社に分けて計算し直すと、前者がめちゃくちゃ成長している一方で、後者の株価は停滞・・・つまりアメリカでも、機会への十分な投資ができていない企業の株価は伸びていない」、 「ソニーグループ、キーエンス、ファーストリテイリング、信越化学、東京エレクトロン、三菱商事、伊藤忠、三井物産、任天堂あたりが「日本のGAFAM」を形成して、日経平均の成長をけん引するでしょう。その一方で、リスクをとらない過半数の上場企業群が平均点の足を大きく引っ張る構図が、「日経平均3万8915円のあとの世界」での不安材料です」、 「この先の日本経済には不安材料がめじろ押しだというのも事実です。 一方で、それを乗り越えるためには本質的には投資しかない。それができない企業が居座り続けることができる日本経済の構造自体に、大きな未来の不安材料があるのかもしれません」、なるほど。 馬渕 治好氏による「それでも「日経平均の上昇は危うい」と言える理由」 「上司」のアドバイスももっともだ。 「日本株を大いに買っているのは「ツーリスト投資家」が中心だ、との言葉もよく聞く・・・「ツーリスト投資家」は・・・日本株への投資経験がないかほとんどない状態で「試しに日本に資金を投じるような投資家」を指す。ツーリストが短期間の旅行で本国に帰るのと同様に、ツーリスト投資家も日本株投資が短期間となる場合が多い」、 「「円安で日本株は上がる」「ウォーレン・バフェット氏が日本株に前向きだから上がる」「東京証券取引所が低PBR(株価純資産倍率)企業に改善を求めているから上がる」といった、確固たるものか定かではない報道にすがって、自身の投資判断を正当化しているのだろう」、「ツーリスト投資家」とは言い得て妙だ。 「世界経済の悪化は、日本からの輸出に影を落としている。15日に公表された5月の貿易統計では、輸出数量は8カ月連続の前年同月比マイナスだ。 円安が外貨建て輸出の円換算値を膨らませていることで、輸出金額は増加してはいるが、5月の前年同月比はわずか0.6%増にすぎず、今後マイナス圏への転落もありえよう。 「円安だから輸出株中心に日本株は買いだ」などと楽観できる状況ではない」、その通りだ。 「筆者は、長期的には日本株に悲観ではない。長期展望を丁寧に解説するのには一定の分量が必要だ。また、筆者の予想では株価上昇は、いったん株価が下振れしたあとになる。よって、こうした長期予想はまたあらためて解説しよう」、短期悲観・長期楽観と分けるのも1つの考え方だ。
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日韓関係(その17)(韓国人記者も「耳を疑った」…日本人住職が渡韓で再加熱 対馬“仏像盗難”裁判の奇妙すぎるゆくえ、国際社会も注目 対馬の仏像を巡る日韓の所有権争いにピリオド、韓国軍「レーダー照射問題」で日本が妥協した理由 元駐韓大使が解説)  [外交]

日韓関係については、昨年6月10日に取上げた。今日は、(その17)(韓国人記者も「耳を疑った」…日本人住職が渡韓で再加熱 対馬“仏像盗難”裁判の奇妙すぎるゆくえ、国際社会も注目 対馬の仏像を巡る日韓の所有権争いにピリオド、韓国軍「レーダー照射問題」で日本が妥協した理由 元駐韓大使が解説)である。

先ずは、昨年6月18日付け文春オンラインが掲載したノンフィクションライターの菅野 朋子氏による「韓国人記者も「耳を疑った」…日本人住職が渡韓で再加熱、対馬“仏像盗難”裁判の奇妙すぎるゆくえ」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/55279
・『6月15日、対馬から盗まれ、韓国に持ち込まれた「観世音菩薩坐像」の所有権を巡る控訴審が韓国中部の大田高等裁判所で開かれた。 2017年3月に始まった控訴審の実に12回目。対馬・観音寺の田中節竜住職が被告側(韓国政府)の補助参加人として初めて出廷したこともあり、傍聴には整理券が配布され、中に入れない人のために別室で中継もされた。 当日夜にはさっそく原告側の浮石寺の前住職がテレビ出演して現状を訴えるなど韓国でも再び注目が集まっている』、「対馬・観音寺の田中節竜住職が被告側(韓国政府)の補助参加人として初めて出廷」、「控訴審の実に12回目」に「初めて出廷」とは驚いた。
・『「かつて倭寇に奪われた自寺の仏像である」浮石寺が主張  そもそもの発端は窃盗事件だった。 事件が起きたのは10年前の2012年10月。対馬にある海神神社から国指定の重要文化財「銅造如来立像」が、そして同じく対馬にある観音寺から長崎県指定の有形文化財「観世音菩薩坐像」が盗まれた。ほどなくその年末から翌年にかけて韓国で犯人は逮捕。 窃盗犯から運搬役、売買人と盗難にかかわった犯人7人の裁判が13年1月末に始まり、主犯格を含めた6人が懲役1~4年の実刑となり収監された。犯人が刑事罰となり、盗難品と確定した仏像は当然、それぞれの寺に返還されると思われたが、「観世音菩薩坐像」返還に待ったをかけたのが、韓国西部、瑞山市にある浮石寺だった。 仏像は「かつて倭寇に奪われた自寺の仏像である」と主張し、大田地方裁判所に「移転禁止の仮処分」を申請。大田地裁はこれを認め、「観世音菩薩坐像」は韓国に留め置かれることになった(「銅造如来立像」は2015年に返還された)』、「仏像は「かつて倭寇に奪われた自寺の仏像である」と主張し、大田地方裁判所に「移転禁止の仮処分」を申請。大田地裁はこれを認め、「観世音菩薩坐像」は韓国に留め置かれることになった」、「倭寇」まで持ち出すとは恐れ入ったが、これを認めた「大田地裁」もどうかしている。
・『まさかの原告勝訴に政府も驚きと困惑  しかしこの仮処分は裁判(本案訴訟)に移行しない場合は3年で効力が消失するもので、16年3月には、観音寺側も韓国政府に嘆願書を送付し、早期の返還を訴えてもいた。ところが、そうした動きに慌てた浮石寺は同年4月、今度は韓国政府を相手に仏像の引き渡しを求める裁判を起こす。 17年1月末に一審判決が出たが、大田地裁は「証言などから仏像は原告(浮石寺)の所有として十分に推定できる」として韓国政府に仏像を寺に引き渡すよう言い渡し、まさかの原告勝訴に。「耳を疑った」と事件をよく知る韓国紙記者は言う。 「当時は弾劾訴追されていた朴槿恵元大統領時代でしたが、政府もまさかの原告勝訴に驚いて、困惑していました。それは当日に控訴したことからも読み取れます」』、「大田地裁は「証言などから仏像は原告(浮石寺)の所有として十分に推定できる」として韓国政府に仏像を寺に引き渡すよう言い渡し、まさかの原告勝訴に」、この事件では、「韓国政府」の立場は「日本側」に近いようだ。
・『原告側が主張する「奪われた根拠」  控訴審は、17年3月から始まった。被告である韓国政府は、仏像に腹蔵されていた記録と仏像を所有していた高麗時代の浮石寺と現在の寺が同一かなどの問題提起をしたが、この間、仏像そのものの真贋まで検証するなど事件の本質とはかけ離れた弁論が繰り返されてきた。 今回の控訴審の後、浮石寺のウォヌ前住職はテレビに出演しこう訴えている。 「わたしたちは一審から一貫して仏像が正当な交流で渡ったものならば観音寺の所有であることを認めるが、そうではなく奪われたのであれば浮石寺の所有であると主張してきました。 浮石寺がある端山市一帯が高麗時代に倭寇の襲撃を受けていたという歴史的な記録と、日本の九州大学の教授が記した書物に観音寺を建て仏像を奉った人々が倭寇の家門であるという記述があり、これを(仏像が)倭寇に奪われた有力な証拠としています。そうした証拠と歴史的な記録に基づいて所有権を主張している」(KBS大田、6月15日)』、「証拠と歴史的な記録」といっても間接的なもののようだ。
・『判決がどちらの勝訴になっても上告は必至か  この事件は犯人が仏像を売り飛ばそうとしていたことからも分かるように、本来はあくまでも窃盗事件だ。 観音寺の田中住職は控訴審で「浮石寺の法的な意味での所有権成立の立証が不十分であり、日本および韓国の民法において取得時効が成立しており、仏像の所有権は観音寺にある」と訴えた。 そして、1950年代に観音寺を建てた人物が当時、朝鮮に渡って譲り受けたと代々伝えられて来たと話し、「仏像は檀家の拠り所で長い間大切に守られ、幼い頃には寺の本堂で溢れんばかりのこどもたちと檀家の人々と一緒に観世音菩薩坐像に祈りを捧げてきた」とその歴史も語った。  裁判では、浮石寺が観音寺設立の際の証拠となる記録を観音寺側に求め終了した。しかし、浮石寺とて仏像が奪われたとする確固たる証拠はない。大田高裁はあと1回の弁論で結審に持ち込むとされるが、判決がどちらの勝訴になっても上告は必至だろう。仏像返還にはまだ時間がかかりそうだ。 ※一部表現を変更しました(2022/6/18 23:05)』、「裁判」の行方が注目される。

次に、本年2月6日付けJAPAN ARTnews「国際社会も注目。対馬の仏像を巡る日韓の所有権争いにピリオド」を紹介しよう。
https://artnewsjapan.com/article/739
・『海外メディアも注目していた、韓国人窃盗団が日本の寺院から盗んだ仏像の所有権をめぐる裁判。この度、韓国の高等裁判所は、仏像の所有権は観音寺(長崎)にあると認めた。 渦中の仏像は、450年以上前につくられた観世音菩薩坐像だ。観世音菩薩は、仏教では「世の人々の音を聞き分け、苦悩する者に救いを与える」と言われている。 英字版朝日新聞によると、この菩薩像を巡る一件は、国際的な主導権争いの中心になっている。同像は、2012年に韓国の窃盗団によって長崎県対馬の観音寺から盗まれたが、翌年、韓国捜査当局はこの窃盗犯を逮捕。仏像は韓国政府に没収された。そして2016年、観音寺は日本政府の支援を受け、返還を求めて提訴した。 しかし、韓国瑞山市の浮石寺も、この像の所有権を要求。同寺によると、観世音菩薩は14世紀、倭寇(わこう)によって盗まれたという。 2017年、韓国の大田地方裁判所は、仏像が「窃盗・略奪 によって日本に移ったとみなすのが妥当」とする判決を下し、韓国政府が即日控訴していた。 そして2023年2月1日、韓国の高等裁判所は、この像が浮石寺から略奪された可能性が高いと判断したが、現在までに同寺は一度廃寺されており、現在の浮石寺が14世紀に存在した寺と同じであるという証拠はないとして、所有権を否定した。 一方、観音寺は、日韓両国の民法上の所有権取得に必要な期間である20年以上仏像を所有しており、「取得時効」が成立している。 観音寺の現住職である田中節竜は2022年、韓国の裁判所に対し、「伝説によると、1526年に観音寺を創建した僧侶が朝鮮半島を旅した際に、この像を受け取った」と証言した。 観世音菩薩は「国際法の原則を考慮しながら日本に返還される」判決だったと英字版朝日新聞は報じている。しかし、浮石寺は高等裁判所に上告する方針だという』、「韓国の高等裁判所は、この像が浮石寺から略奪された可能性が高いと判断したが、現在までに同寺は一度廃寺されており、現在の浮石寺が14世紀に存在した寺と同じであるという証拠はないとして、所有権を否定した」、「観世音菩薩は「国際法の原則を考慮しながら日本に返還される」判決だった」、「浮石寺は高等裁判所に上告する方針」、しかし、タイトルにある「対馬の仏像を巡る日韓の所有権争いにピリオド」では最終的な確定判決のようにも思える。なにかスッキリしない結末だ。

第三に、6月7日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元・在韓国特命全権大使の武藤正敏氏による「韓国軍「レーダー照射問題」で日本が妥協した理由、元駐韓大使が解説」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/324074
・『レーダー照射問題で韓国側は事実を歪曲  浜田靖一防衛相と韓国の李鐘燮(イ・ジョンソプ)国防相は6月4日、アジア安全保障会議が開催されているシンガポールで約40分会談し、韓国海軍が自衛隊機に火器管制レーダーを照射した問題を巡り、再発防止で合意した。具体策を詰める実務者協議を近く始める。日韓の防衛相会談は、2019年以来およそ3年半ぶりとなる。 日韓は対立してきた事実認識に関する見解の相違を残したまま、具体策の調整を始める。 この点に関し、日本国内には保守層を中心に、岸田政権がレーダー照射問題のけじめをつけず、なし崩しで事態収拾を図るものであるとする批判が強く起きている。 レーダー照射問題とは、日本の海上自衛隊の哨戒機「P1」が18年12月20日、竹島北東160kmの海上で、韓国軍の3900トン級駆逐艦「広開土王」によって攻撃を意図する火器管制レーダーを照射された事件である。事態を重く見た当時の岩屋毅防衛相は、記者会見を開いて事件の内容を公表し、「極めて危険な行為だ」と批判した。その上で12月22日、韓国側に再発防止を求めた。 日本側が火器管制レーダーの照射があったと抗議したのに対し、韓国側は「使用したのは探索レーダーで、哨戒機を追跡する目的ではない」「北朝鮮の遭難船のためにレーダーを稼働したのを日本側が誤解した」と弁明した。さらに韓国側は、海自の哨戒機が高度150m、距離500mにまで接近し、「威嚇飛行」を行ったと主張している。 日本側は、P1が撮影した事件当時の映像、音声記録を公開している。さらに12月27日に行われた実務者協議において、韓国側と証拠を突き合わせて共同で検証することを提案したが、韓国側は拒否した。「レーダー照射を一貫して否定してきた韓国側の引っ込みがつかなくなった」という見方が出ていた。 日本側は19年1月、「韓国側が事実とは全く異なる主張を繰り返している。客観的、中立的な事実認定に応じる姿勢が見られない」という最終見解を発表した』、「日本国内には保守層を中心に、岸田政権がレーダー照射問題のけじめをつけず、なし崩しで事態収拾を図るものであるとする批判が強く起きている」、しかし、改善傾向にある日韓関係のノドに刺さった骨を抜いた「岸田政権」の判断は正しいとみるべきだ。
・『文前政権の防衛対象は北朝鮮よりも日本の竹島侵攻  文在寅(ムン・ジェイン)前政権が国防の重点に置いたのは、北朝鮮よりも日本、特に日本の竹島侵攻への防衛だったのではないかと疑われる節がある。 文前政権は、18年平壌で行われた南北首脳会談で、軍事境界線付近の偵察飛行の中止と大規模軍事演習の協議などを取り決め、韓国側の安保体制を一方的に弱体化させた。 そればかりでなく同年、「国防改革2.0」を策定した。これは今後の国防体制に関し、国防省が大統領に報告し、確定したものである。 この「国防改革2.0」では「攻撃的新作戦概念」が削除されている。その概念とは「韓国軍が北朝鮮との全面的な戦争に陥った場合、韓国軍が平壌を2週間以内に占領して、短期間で戦争に勝利する」というものである。国防省が最初に大統領府に提出した報告には、その作戦概念が含まれていた。だが、大統領府が、北朝鮮の嫌う作戦構想を廃棄させたとのことである。 また、「国防改革2.0」には韓国軍の総兵力を22年までに61万8000人から50万人に削減する計画が盛り込まれており、削減する兵力のすべては北朝鮮に直接対峙(たいじ)する陸軍である。なお北朝鮮は128万人の兵力を保持している』、「文前政権」の「「国防改革2.0」では「攻撃的新作戦概念」が削除されている。その概念とは「韓国軍が北朝鮮との全面的な戦争に陥った場合、韓国軍が平壌を2週間以内に占領して、短期間で戦争に勝利する」というものである。国防省が最初に大統領府に提出した報告には、その作戦概念が含まれていた。だが、大統領府が、北朝鮮の嫌う作戦構想を廃棄させた」、「韓国軍の総兵力を22年までに61万8000人から50万人に削減する計画が盛り込まれており、削減する兵力のすべては北朝鮮に直接対峙・・・する陸軍」、「文前政権の防衛対象は北朝鮮よりも日本の竹島侵攻」、確かに「文前政権」の対日政策は腹立たしいものだった。
・『文前政権時代の国防力増強は日本を意識したもの  文前政権は、こうした北朝鮮に対する防衛体制の弱体化とは対照的に、対日防衛の強化に取り組んできた。 韓国海軍が手に入れようとしている軍艦の中には、日本を仮想敵国と意識しているのではないかと勘ぐらざるを得ないものが含まれている。 海軍増強計画で建造が予定されている軍艦の中で注目されるのは航空母艦である。海上自衛隊の「いずも」型より若干大型の3万トン級空母が建造されることになっている。しかし、韓国軍は、現時点ではSTOVL戦闘機をはじめとする艦載固定翼機を保有していないし、国産戦闘機(KXK)開発計画にもSTOVL機は含まれていないようである。 艦載固定翼機を保有しておらず、開発計画にも含まれていないのに、韓国はなぜ航空母艦を建造するのか。それは日本の軽空母保有に対抗するためであろう。 東亜日報は21年2月11日、「韓国国防部は竹島を巡る日本の仮想戦闘シナリオを作成し、国会で非公開報告を行った」と報じた。これは、軍が最新型軍備導入の必要性を説明する文書の一部であり「自衛隊による軍事的脅威からの防衛のため、新たな戦略資産が必要だ」と強調したという。 文前政権時代、韓国は竹島での軍事演習を拡大してきた。GSOMIA破棄を通告した19年の訓練には初めてイージス艦を投入、海軍の兵士がヘリコプターで竹島に上陸する訓練も実施した。訓練規模は例年の2倍だったという』、「艦載固定翼機を保有しておらず、開発計画にも含まれていないのに、韓国はなぜ航空母艦を建造するのか。それは日本の軽空母保有に対抗するためであろう」、これには苦笑せざるを得ない。
・『日本を仮想敵国とした特別な指針を作成  与党「国民の力」の申源シク(シン・ウォンシク)議員によれば、19年2月、軍当局は「日航空機対応指針」を海軍に通達した。同通達で、自衛隊機が2次警告通信にも応じず近距離を飛行した場合、「追跡レーダー照射」で対抗するよう規定した。追跡レーダーは艦艇で艦砲やミサイルを狙うために標的の方向や距離、高度を測定するレーダーであり、日本では火器管制レーダーとしても使う。 追跡レーダーを稼働し、レーダービームを航空機に照射するのは、攻撃する意思があると相手に伝える行為である。 中央日報によれば、「日航空機対応指針」は日本を韓国の軍事管轄権に対して友好的でない中国・ロシアよりも厳しく扱っている。軍当局が「日航空機対応指針」を作った際、軍内部から「日本と戦争をしろということか」という批判が多く出ていたという。 関連事情を知る匿名の政府筋は、同指針は大統領府安保室が主導したという。申議員は「日本の海上哨戒機を特定して、別の指針で現場指揮官に軍事的対応まで委任したというのは非常に危険な政策」だと指摘している。 これまで頻繁に韓国の領空を侵犯しているのはロシアの軍用機である。それでもロシアの軍用機への対応には日本のような特別なものはない。 文前政権が従北、親中ロであるとはいえ、常識では考えられない暴挙である。 ただ、実際の前線では対立状況を作らないように相互の動きを事前に知らせていたという。また、別の政府筋は「韓国と日本の政治家が国内政治を意識して強硬基調を取る場合も、両国安保当局では偶発的な衝突は大きな禍根を残す場合があるので、とりわけ注意が必要だという認識があった」と述べている』、「「日航空機対応指針」は日本を韓国の軍事管轄権に対して友好的でない中国・ロシアよりも厳しく扱っている。軍当局が「日航空機対応指針」を作った際、軍内部から「日本と戦争をしろということか」という批判が多く出ていたという。 関連事情を知る匿名の政府筋は、同指針は大統領府安保室が主導したという。申議員は「日本の海上哨戒機を特定して、別の指針で現場指揮官に軍事的対応まで委任したというのは非常に危険な政策」だと指摘している」、「ただ、実際の前線では対立状況を作らないように相互の動きを事前に知らせていたという。また、別の政府筋は「韓国と日本の政治家が国内政治を意識して強硬基調を取る場合も、両国安保当局では偶発的な衝突は大きな禍根を残す場合があるので、とりわけ注意が必要だという認識があった」、「両国安保当局では偶発的な衝突は大きな禍根を残す場合があるので、とりわけ注意が必要だという認識があった」というので一安心だ。
・『尹錫悦政権の防衛対象は北朝鮮であることが明白  尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は、昨年5月に発効した国防白書で、北朝鮮の核・ミサイル開発に対応、3軸体系で防衛していくことを明らかにした。3軸体系とは、北朝鮮のミサイル発射の兆候を探知して先制攻撃するキルチェーン、発射されたミサイルを迎撃する韓国型ミサイル防衛体系(KAMD)、北朝鮮から攻撃された場合に指導部などに報復攻撃を行う大量反撃報復(KMPR)の戦力を備えるという戦力増強計画を意味する。 韓国は23年度国防費として57兆1268億ウォン(5兆8000億円)の予算を組んでいる。中でも北朝鮮の核・ミサイル脅威に対応するため、「韓国版3軸体系」の予算を9.4%増加させた。文前政権が推進していた軽空母事業は予算に反映されなかった。 また、尹錫悦大統領が4月に訪米した際に、首脳会談において北朝鮮の核に対する拡大抑止に合意した。それに先立つ3月13日には米韓合同軍事演習が再開され、5年ぶりに大規模な野外機動訓練が行われた。 その半面、竹島での演習は尹錫悦政権になってから規模を縮小している。 韓国軍は昨年12月22日、竹島の防衛を想定した訓練を周辺海域で行った。ほぼ半年ごとに行ってきた定例訓練であるが、7月に行った前回同様、例年より規模を縮小し、非公開で、兵員の竹島への上陸もなかった。航空機も動員されず、海軍艦艇などが参加した。ただ、それでも日本としては、竹島での訓練は受け入れることができないと抗議している。 こうしたことを総合するに、韓国の仮想敵国であった日本は、北朝鮮の核・ミサイルに対抗する協力国となり、主敵は北朝鮮に回帰したといえるだろう』、「尹錫悦政権になってから」、「韓国の仮想敵国であった日本は、北朝鮮の核・ミサイルに対抗する協力国となり、主敵は北朝鮮に回帰したといえるだろう』、ようやく落ち着くところに落ち着いたようだ。
・『レーダー照射問題の事実認定に焦点を当てなかった背景  浜田防衛相は4日の韓国との防衛省会談で、レーダー照射問題に関する事実認定の表明は求めなかった。韓国側には「日航空機対応指針」を撤回する用意があるとの判断であろう。防衛当局間の最大の懸案が解決し日韓の安保協力は4年半ぶりに本格化する。 浜田防衛相と李国防相は3日、オースティン米国防長官と日米韓国防相会談を開催。これに先立ち3カ国首脳が合意した、北朝鮮ミサイル警報情報リアルタイム共有体系を年内に稼働することを確定した。 情報共有には国家間の信頼関係が重要であり、日韓の関係改善は必須要件となる。閣僚レベルではあえて事実関係の解明に焦点を当てず、未来志向での解決を目指す。今後は防衛当局間で信頼構築を図ることになる』、「情報共有には国家間の信頼関係が重要であり、日韓の関係改善は必須要件となる。閣僚レベルではあえて事実関係の解明に焦点を当てず、未来志向での解決を目指す。今後は防衛当局間で信頼構築を図ることになる」、賢明なやり方だ。
・『国民の意識の変化が日韓防衛協力を後押し  日韓で防衛協力をする上で重要なことの一つは、国民レベルでの支持である。 政府系のシンクタンク統一研究院が5日に公表した「統一意識調査」によると、米韓首脳会談で核に対する拡大抑止に合意して以降、韓国自身が核を保有すべきとの意見は2年前より10ポイント余り下落し60.2%となった。 その一方で、日本との軍事同盟に同意するとの回答は52.4%となり、国民の多数が日韓軍事協力を地域安保の観点から理解していることが示された。このようなことはこれまでなかったことである。 これは尹錫悦大統領の外交が評価された結果であり、文前政権時代の仮想敵国日本の意識が薄れたことを意味しよう。 海自哨戒機へのレーダー照射問題で事実関係の解明を避けたことは遺憾であるが、韓国の日本を見る視線が大きく変わった。これはレーダー照射事件の再発を防止するための重要な支援材料となるであろう』、「韓国自身が核を保有すべきとの意見は2年前より10ポイント余り下落し60.2%となった。 その一方で、日本との軍事同盟に同意するとの回答は52.4%となり、国民の多数が日韓軍事協力を地域安保の観点から理解していることが示された」、「韓国の日本を見る視線が大きく変わった。これはレーダー照射事件の再発を防止するための重要な支援材料となるであろう」、同感である。  
タグ:日韓関係 (その17)(韓国人記者も「耳を疑った」…日本人住職が渡韓で再加熱 対馬“仏像盗難”裁判の奇妙すぎるゆくえ、国際社会も注目 対馬の仏像を巡る日韓の所有権争いにピリオド、韓国軍「レーダー照射問題」で日本が妥協した理由 元駐韓大使が解説) 菅野 朋子氏による「韓国人記者も「耳を疑った」…日本人住職が渡韓で再加熱、対馬“仏像盗難”裁判の奇妙すぎるゆくえ」 文春オンライン 「対馬・観音寺の田中節竜住職が被告側(韓国政府)の補助参加人として初めて出廷」、「控訴審の実に12回目」に「初めて出廷」とは驚いた。 「仏像は「かつて倭寇に奪われた自寺の仏像である」と主張し、大田地方裁判所に「移転禁止の仮処分」を申請。大田地裁はこれを認め、「観世音菩薩坐像」は韓国に留め置かれることになった」、「倭寇」まで持ち出すとは恐れ入ったが、これを認めた「大田地裁」もどうかしている。 「大田地裁は「証言などから仏像は原告(浮石寺)の所有として十分に推定できる」として韓国政府に仏像を寺に引き渡すよう言い渡し、まさかの原告勝訴に」、この事件では、「韓国政府」の立場は「日本側」に近いようだ。 「証拠と歴史的な記録」といっても間接的なもののようだ。 「裁判」の行方が注目される。 JAPAN ARTnews「国際社会も注目。対馬の仏像を巡る日韓の所有権争いにピリオド」 「韓国の高等裁判所は、この像が浮石寺から略奪された可能性が高いと判断したが、現在までに同寺は一度廃寺されており、現在の浮石寺が14世紀に存在した寺と同じであるという証拠はないとして、所有権を否定した」、「観世音菩薩は「国際法の原則を考慮しながら日本に返還される」判決だった」、 「浮石寺は高等裁判所に上告する方針」、しかし、タイトルにある「対馬の仏像を巡る日韓の所有権争いにピリオド」では最終的な確定判決のようにも思える。なにかスッキリしない結末だ。 ダイヤモンド・オンライン 武藤正敏氏による「韓国軍「レーダー照射問題」で日本が妥協した理由、元駐韓大使が解説」 「日本国内には保守層を中心に、岸田政権がレーダー照射問題のけじめをつけず、なし崩しで事態収拾を図るものであるとする批判が強く起きている」、しかし、改善傾向にある日韓関係のノドに刺さった骨を抜いた「岸田政権」の判断は正しいとみるべきだ。 「文前政権」の「「国防改革2.0」では「攻撃的新作戦概念」が削除されている。その概念とは「韓国軍が北朝鮮との全面的な戦争に陥った場合、韓国軍が平壌を2週間以内に占領して、短期間で戦争に勝利する」というものである。国防省が最初に大統領府に提出した報告には、その作戦概念が含まれていた。だが、大統領府が、北朝鮮の嫌う作戦構想を廃棄させた」、 「韓国軍の総兵力を22年までに61万8000人から50万人に削減する計画が盛り込まれており、削減する兵力のすべては北朝鮮に直接対峙・・・する陸軍」、「文前政権の防衛対象は北朝鮮よりも日本の竹島侵攻」、確かに「文前政権」の対日政策は腹立たしいものだった。 「艦載固定翼機を保有しておらず、開発計画にも含まれていないのに、韓国はなぜ航空母艦を建造するのか。それは日本の軽空母保有に対抗するためであろう」、これには苦笑せざるを得ない。 「「日航空機対応指針」は日本を韓国の軍事管轄権に対して友好的でない中国・ロシアよりも厳しく扱っている。軍当局が「日航空機対応指針」を作った際、軍内部から「日本と戦争をしろということか」という批判が多く出ていたという。 関連事情を知る匿名の政府筋は、同指針は大統領府安保室が主導したという。申議員は「日本の海上哨戒機を特定して、別の指針で現場指揮官に軍事的対応まで委任したというのは非常に危険な政策」だと指摘している」、 「ただ、実際の前線では対立状況を作らないように相互の動きを事前に知らせていたという。また、別の政府筋は「韓国と日本の政治家が国内政治を意識して強硬基調を取る場合も、両国安保当局では偶発的な衝突は大きな禍根を残す場合があるので、とりわけ注意が必要だという認識があった」、「両国安保当局では偶発的な衝突は大きな禍根を残す場合があるので、とりわけ注意が必要だという認識があった」というので一安心だ。 「尹錫悦政権になってから」、「韓国の仮想敵国であった日本は、北朝鮮の核・ミサイルに対抗する協力国となり、主敵は北朝鮮に回帰したといえるだろう』、ようやく落ち着くところに落ち着いたようだ。 「情報共有には国家間の信頼関係が重要であり、日韓の関係改善は必須要件となる。閣僚レベルではあえて事実関係の解明に焦点を当てず、未来志向での解決を目指す。今後は防衛当局間で信頼構築を図ることになる」、賢明なやり方だ。 「韓国自身が核を保有すべきとの意見は2年前より10ポイント余り下落し60.2%となった。 その一方で、日本との軍事同盟に同意するとの回答は52.4%となり、国民の多数が日韓軍事協力を地域安保の観点から理解していることが示された」、「韓国の日本を見る視線が大きく変わった。これはレーダー照射事件の再発を防止するための重要な支援材料となるであろう」、同感である。
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高齢者交通事故(その1)(“上級国民”池袋暴走事故「否認」の衝撃 車のせい?裁判の行方と思わぬ余波、高齢ドライバーの「技能検査」開始 免許更新時の対象者と合否の基準は?、免許返納してもシニアが自由に動き回れる「翼」 WHILL杉江理はとことん困りごとを解消する) [社会]

今日は、高齢者交通事故(その1)(“上級国民”池袋暴走事故「否認」の衝撃 車のせい?裁判の行方と思わぬ余波、高齢ドライバーの「技能検査」開始 免許更新時の対象者と合否の基準は?、免許返納してもシニアが自由に動き回れる「翼」 WHILL杉江理はとことん困りごとを解消する)である。これまでは、高齢化社会(その9)にあったが、今回から独立させた。

先ずは、2020年10月8日付けAERAdot「“上級国民”池袋暴走事故「否認」の衝撃 車のせい?裁判の行方と思わぬ余波〈dot.〉」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dot/2020100800078.html?page=1
・『昨年4月、東京・池袋で高齢者の運転する車で母子が死亡した悲痛な事件から約1年半。車を運転し11人を死傷させたとして自動車運転処罰法違反(過失運転致死傷)罪に問われた旧通産省工業技術院元院長・飯塚幸三被告(89)の初公判が8日、東京地裁で開かれた。飯塚被告は起訴内容を否認したため、世間では驚きや怒りの声が噴出。長期化必至の裁判について専門家からは意外な指摘が……。 8日午前8時50分。小雨が静かに降り注ぐ中、遺族の松永拓也さん(34)が事故で亡くなった妻と長女の遺影を胸に抱え、しっかりとした足取りで東京地裁の正門に入っていった。報道陣によって一斉にフラッシュがたかれても、視線は常にまっすぐ前を見据えていた。 この日の一般傍聴席は新型コロナ対策のため、わずか20席。「コロナ前」の約3分の1の席数に、414人の傍聴希望者が集まった。 事故は2019年4月、高齢者による自動車事故が社会問題化する中で起きた。 検察側の主張によると、飯塚被告の運転する車は時速約96キロで、赤信号の交差点に突っ込んだ。自転車で横断歩道を渡っていた松永真菜さん(当時31)と長女の莉子さん(当時3)がはねられ死亡。通行人ら9人が重軽傷を負った。 何の落ち度もない幼い子どもと母親が巻き込まれ、事故直後から世間の関心は高かった。さらに、注目を集める要因の一つとなったのが、飯塚被告に対してネット上で使われた”上級国民”というワード。「証拠隠滅の恐れがない」と判断されて、飯塚被告が逮捕されなかったことなどから、「元官僚で東大卒の上級国民だから、特別扱いしているのでは」といった声が噴出した。格差社会を象徴するような存在とみなされた飯塚被告。遺族への同情もあり、飯塚被告の言動は世間の反感を買った。厳罰を求める署名は39万筆も集まった。 とはいえ、世間には飯塚被告が裁判で罪を認め、真摯に謝罪するのではないかという淡い期待もあった。しかし、初公判では無罪を主張。罪状認否では、遺族への謝罪を述べたうえで「アクセルペダルを踏み続けた記憶はない。車に何らかの異常が起きて暴走した。暴走を止められなかった」と主張し、起訴事実を否認した。 この日の冒頭陳述で、検察側は「事故前の車の定期点検ではブレーキやアクセルに異常が見つかっていなかった」と述べており、「自動車の瑕疵(かし)」をめぐって真っ向から対立の様相を見せている。 初公判のニュースが流れた直後、ネット上では驚きの声であふれた。また、「全然反省していないのではないか」「これでは遺族が浮かばれない」といった批判も相次いだ。 気になる裁判の行方について、過失運転致死傷に詳しい「にわ法律事務所」の丹羽洋典弁護士は、次のように推測。判決確定まで長くかかりそうだという。 「一般的に、車の性能に関する裁判は長期化する。少なくとも通常の2倍はかかるのではないか。今回も長期化のおそれはある。通常のケースであれば、1審だけでも半年。今回は1年近くかかるでしょう」 今回の初公判で世間が驚いたのは、飯塚被告の主張だ。 「自動車に問題がある場合も、可能性としてはあり得なくはない。一般的に自動車事故は、運転者の過失の有無が争点になりますが、今回は道路上で暴走したという特殊なケースですので、こうした主張ができたのでしょう。本人が供述している以上、むげにはできないため、自動車自体に瑕疵(かし)がなかったかという争点も加わることになったのだと思います。被告側にとっては、無罪の可能性が出てくるので都合がいい」 いくら本人が供述しているとはいえ、そう簡単にその主張が通るものだろうか。 「検察は、車の性能に問題がなかったという証拠を揃えてくるでしょう。弁護側には立証責任はありませんが、丸腰で臨んだら検察側の主張が通ってしまうので、瑕疵があったと証明するための証拠が必要になります。ただし、技術者や鑑定の専門家から証言を得る必要があるため、時間がかかる上、立証するための難易度が高いですね。時間だけがかかってしまうと思います。どこまで本気なのか疑問はあります。自動車に瑕疵があったという主張も、認められた例も数としては多くありません」 また、今回の裁判は別の意味でも注目度が高いという。 これらから自動運転が普及することが予想されるので、こうした『車の問題点』を指摘する主張が増えてくる可能性が高い。飯塚被告の主張が下手に通ると、今後はこうした事故で、ブレーキが利かなくなったといった主張が多くなる。司法側も慎重に判断することになるでしょう。今回の裁判は、今後の試金石になる」 長期化必至の裁判。2審、3審と続けば、最終決着は数年後……仮に有罪判決が下った場合、89歳の被告が量刑を終えるのは何歳のことだろうか。 遺族や世間は、誠実な説明を望んでいる』、「「証拠隠滅の恐れがない」と判断されて、飯塚被告が逮捕されなかったことなどから、「元官僚で東大卒の上級国民だから、特別扱いしているのでは」といった声が噴出した」、「「検察は、車の性能に問題がなかったという証拠を揃えてくるでしょう。弁護側には立証責任はありませんが、丸腰で臨んだら検察側の主張が通ってしまうので、瑕疵があったと証明するための証拠が必要になります。ただし、技術者や鑑定の専門家から証言を得る必要があるため、時間がかかる上、立証するための難易度が高いですね」、「これらから自動運転が普及することが予想されるので、こうした『車の問題点』を指摘する主張が増えてくる可能性が高い。飯塚被告の主張が下手に通ると、今後はこうした事故で、ブレーキが利かなくなったといった主張が多くなる。司法側も慎重に判断することになるでしょう。今回の裁判は、今後の試金石になる」、結果はどうなるのだろう。

次に、昨年5月13日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した事件ジャーナリストの戸田一法氏による「高齢ドライバーの「技能検査」開始、免許更新時の対象者と合否の基準は?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/302896
・『一定の交通違反歴がある75歳以上の運転者に運転免許更新時の技能検査(実車試験)を義務付ける改正道路交通法が、5月13日から施行される。同日からは衝突被害軽減ブレーキ(自動ブレーキ)などの機能を搭載した安全運転サポート車(サポカー)の限定免許制度も開始。既に実施されている認知機能検査や講習と併せ、母子が死亡した「池袋暴走事故」のような惨劇を防ぐための事故対策が強化される。一方、検査で不合格となれば免許が更新できなくなり、交通事情の悪い地方の高齢者にとっては厳しい措置となる』、「一定の交通違反歴がある75歳以上の運転者に運転免許更新時の技能検査(実車試験)を義務付ける改正道路交通法が、5月13日から施行」、「検査で不合格となれば免許が更新できなくなり、交通事情の悪い地方の高齢者にとっては厳しい措置となる」、なるほど。
・『75歳以上の運転者による事故は75歳未満の運転者の2倍以上  実車試験は起点日(免許有効期限に近い誕生日から160日前)から過去3年間に、11種類の違反が1つでもあった運転者が対象。自動車教習所や運転免許センターで実際に運転し、同乗する検査員の指示速度による走行、一時停止、右左折、信号通過、段差乗り上げなどの運転技能を採点する。 11種類の違反とは(1)信号無視、(2)反対車線へのはみ出し、逆走、(3)追い越し車線の通行、(4)速度超過、(5)禁止場所での横断、転回、後退、(6)踏切直前での不停止、(7)左折時に事前に左側に寄らない、(8)優先道路の進行を妨害、(9)横断歩行者の通行を妨害、(10)前方不注意、(11)携帯電話使用など「ながら運転」――である。) 100点満点中70点以上が合格で、信号無視と逆走があった場合は40点減点で不合格となる。免許更新期限の6カ月前から何度でも受検できるが、期限までに合格できなければ免許は失効する。ただし、希望すれば原付バイクの免許は維持できる。 全国紙社会部デスクによると、実車試験の受検対象は、免許更新となる75歳以上の約7%に相当する年間約15万人に上るとみられ、2割以上が不合格となる可能性があるという。 警察庁によると、昨年は75歳以上の運転者による車両やバイクの死亡事故が346件発生。全体(2289件)の15.1%を占め、統計がある1986年以降で最も高い割合になった。免許を所持する人口10万人あたりでは5.7件で、75歳未満の2倍を超えた。 事故の態様は電柱や標識などへの衝突が89件、出合い頭が54件、正面衝突が45件、人の横断中が37件など。車両に限定すると、33.1%がハンドルの操作ミスやブレーキとアクセルの踏み間違いだった。 昨年11月17日には大阪府大阪狭山市のスーパーで、当時89歳の男性が運転するトヨタプリウスが暴走し、3人をはねて入り口に衝突。はねられた男性(当時87歳)が死亡、運転していた男性の妻(同90)と買い物客の女性(同77)が重傷を負う事故があった。 運転していた男性は買い物をしていた妻を迎えに来ていたが、サイドブレーキを掛けずスーパー近くに停車していた。「止まっていたのに動き出し、慌ててブレーキとアクセルを踏み間違えた」と説明しているという。 事故は、買い物客もまばらな同日正午過ぎに発生。プリウスは自動販売機をなぎ倒しながら前方にいた2人をはねて停止した後、タイヤの摩擦音を響かせながらバックしてさらに1人を巻き込んだ。乗用車は急発進と後退を繰り返し、スーパー入り口に突っ込んだが、運転していた男性はパニックだったと推測される。 死亡した男性は数年前に「事故を起こすわけにいかない」と運転免許を自主返納していた。まさか、自分が高齢者の運転するクルマにはねられて命を落とすとは、想像していなかったに違いない』、「実車試験の受検対象は、免許更新となる75歳以上の約7%に相当する年間約15万人に上るとみられ、2割以上が不合格となる可能性がある」、「昨年は75歳以上の運転者による車両やバイクの死亡事故が346件発生。全体(2289件)の15.1%を占め、統計がある1986年以降で最も高い割合になった。免許を所持する人口10万人あたりでは5.7件で、75歳未満の2倍を超えた」、「死亡した男性は数年前に「事故を起こすわけにいかない」と運転免許を自主返納していた。まさか、自分が高齢者の運転するクルマにはねられて命を落とすとは、想像していなかったに違いない」、「運転免許を自主返納」したのに、「高齢者の運転するクルマにはねられて命を落とすとは」まさに悲劇だ。
・『池袋暴走事故の受刑者が実刑となった理由  「プリウス」と聞くと、東京都豊島区東池袋の都道で2019年4月、自転車に乗っていた松永真菜さん(当時31)と長女の莉子さん(同3)が死亡し、9人が重軽傷を負った「池袋暴走事故」を思い起こす読者も多いのではないだろうか。 旧通産省工業技術院の元院長・飯塚幸三受刑者(90)=自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪で禁錮5年の判決が確定=がアクセルとブレーキを踏み間違え、赤信号の横断歩道に突っ込んだ事故だ。 確定判決によると、飯塚受刑者は同19日昼過ぎ、プリウスに乗車し96キロのスピードで約150メートル暴走。横断歩道3カ所で松永さんらを相次いではねて2人を死亡させ、9人に重軽傷を負わせたとされる。 飯塚受刑者は初公判の罪状認否で「心からおわび申し上げます」と謝罪したが、一貫して「アクセルペダルを踏み続けたことはないと記憶している。クルマに異常が発生した」とあくまでもプリウスが故障したのであって、運転ミスではないと無罪を主張していた。 初公判での謝罪は、自分がハンドルを握っていたため「道義的責任でとりあえず」という意図で、公判では事故の原因は暴走したプリウスであり、罪に問われるべきは製造元のトヨタである、という主張だった。 被告人質問でも、検察側の問いに「アクセルを踏んでいないのに加速した」「車を制御できずパニックになった」と強弁。検察側から「ブレーキとの踏み間違いはなかったのか」と何度問われても「一切ない」と言い切った。 しかし公判中、トヨタは「(検察に対する)調査への協力の結果、車両に異常や技術的な問題は認められなかった」とするコメントを発表。工業技術院・元院長という霞が関のトップ経験者が、看板商品を「欠陥品」と主張しているわけで、黙っているわけにはいかない。異例の声明は「ユーザーに安心と安全を伝える必要」があったためだった。 結局、東京地裁は飯塚受刑者が約10秒にわたり、ブレーキと間違えてアクセルを踏み続けて加速させたと認定。その上で「母子2人の尊い命が失われ、遺族の悲しみは非常に深く、喪失感はまったく埋められていない。被害者らの身体的、精神的苦痛も大きく結果は甚大だ」と指弾した。 裁判長は判決言い渡し後に「判決に納得するなら、責任と過失を認め、遺族に真摯(しんし)に謝っていただきたい」と、静かに、ゆっくりと説諭。飯塚受刑者は目を閉じながら、納得したように軽くうなずいていた。 通常であれば、2人の生命を奪ったという結果が重大な重過失の事件ではあっても、心からの謝罪や賠償など誠意を示せば執行猶予が付くケースもある。東京地裁が実刑としたのは、さすがに瑞宝重光章受章者(実刑判決確定により剥奪)に向けて言葉にはしなかったが「見苦しい言い逃れに終止し、反省の姿勢もない」と断罪した結果だったのだろう。 飯塚受刑者は判決を受け入れ、確定した』、第一の記事の「「池袋暴走事故」・・・旧通産省工業技術院の元院長・飯塚幸三受刑者(90)・・・自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪で禁錮5年の判決が確定」、予想外に早く「判決」が出たようで、一安心だ。
・『過疎地域に住む高齢者の生活環境の整備が課題  この事故は、高齢運転者に多大な影響を与えた。同年の運転免許返納数は約60万1000件と、前年の約42万1000件から急増し、過去最多を更新した。翌20年も55万2000件となり、うち半数以上の29万7000件が75歳以上だった。自らの判断だけではなく、家族の説得を受けたケースもあったようだ。 交通事故総合分析センターが、千葉県警と同県内の70歳以上の運転者9000人を対象に調査したデータがある。それによると、認知機能に低下の恐れがない年代より、低下の恐れがある年代のほうが「運転に自信がある」と回答していた。 これは長年にわたり運転しているという理由からとみられるが、調査は「実際の運転能力より、過剰な自信を持っている」と結論づけている。当たり前だが、高齢になれば運動・認知機能は衰え、事故発生リスクは高くなるのだ。 そうはいっても、公共交通機関が衰退している過疎の地方で高齢者が運転免許を取り上げられたらどうなるのか。 実は筆者の実家は東北地方の山間部で、80代後半の両親が年金で暮らしている。回覧板を隣家に届けるため、収集場にゴミを運ぶため、クルマが必要な環境だ。もちろん、スーパーやコンビニなどは徒歩圏内にはない。買い物にクルマで30分かかる場所なのだ。 全国紙で記者・デスクとして10年以上、地方の職場を経験したが、実家のような生活環境は珍しくなかった。そのような場所に、クルマは生活になくてはならないものなのだ。筆者も実家の両親や、取材で知り合い、いろいろな訓示をいただいた懐かしい方々が、人生の幕引きに「人殺し」の汚名を背負って見送られることなど想像したくない。 できるならば両親を含め、お世話になった方々には免許返納を促したい。しかし、それは極論すれば「他人を殺さないために、自分たちが死ね」と言うも同然だ。 「高齢者の運転は危険だから、免許返納を促すべきだ」と言うのは簡単だ。できるならば、政府には、地方の高齢者が運転免許(そもそもクルマ)を所持していなくても、安心して生活できる環境を整備してほしいと切に願う』、「全国紙で記者・デスクとして10年以上、地方の職場を経験したが、実家のような生活環境は珍しくなかった。そのような場所に、クルマは生活になくてはならないものなのだ。筆者も実家の両親や、取材で知り合い、いろいろな訓示をいただいた懐かしい方々が、人生の幕引きに「人殺し」の汚名を背負って見送られることなど想像したくない」、「できるならば、政府には、地方の高齢者が運転免許(そもそもクルマ)を所持していなくても、安心して生活できる環境を整備してほしいと切に願う」、どう考えても、それは無理難題という他ない。

第三に、5月11日付け東洋経済オンラインが掲載した早稲田大学商学学術院教授の井上 達彦氏による「免許返納してもシニアが自由に動き回れる「翼」 WHILL杉江理はとことん困りごとを解消する」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/669427
・『実践の経営学を探究する井上達彦教授がディープテックを訪ね、ビジネスモデルをとことん問うてゆく。世界に羽ばたくイノベーションの卵に迫る。 「今、私の願いごとが叶うならば、翼がほしい」 サッカー日本代表の応援歌としても有名な「翼をください」である。ここでいう「翼」は、多くの人にとって夢であり、憧れである。 昭和の時代を生きてきた現代のシニアにとっての翼は何かというと、それは自動車であった。大空に翼を広げるかのように、ハンドルを握り、駆け抜ける。当時はモビリティというようなしゃれた表現はなかったが、マイカーを運転することで自由を謳歌できた。 しかし、頑張ってきたシニアも自然の摂理には抗えず、視力・聴力・反射神経が衰える。そして、免許を返納しなければならなくなり、大なり小なり社会活動が制限されるのである。現役世代が考える以上に、免許の返納という出来事には喪失感が伴う。 だからこそ、シニアには翼が必要なのである。それが、WHILL株式会社のモデルSである。これは電動車いす規格でありながら、歩道を走れる電動4輪スクーターで、新定番のシニア向け移動手段として位置づけられている。 代表取締役社長の杉江理さんは、仲間たちとともに特にシニアや歩きづらさを抱える人に寄り添い、彼らのペインポイント(想定顧客の痛み=不快や不満に思う困りごと)からビジネスモデルを構築した。 今回は、このモビリティカンパニーに注目する。 井上:御社の事業について教えてください。 杉江:すべての人の移動を楽しくスマートにする、をミッションに掲げ、近距離モビリティのサービスと販売の2事業を展開しています。われわれはこれら2つの事業を通して、世界中のさまざまな場面での近距離用のソリューションを提供しています。 井上:歩行領域に特化したというのが一つポイントですね。そこに絞った理由は何でしょうか。 杉江:先進国を中心に高齢化が進んでいるので、歩行領域における移動が困難な方が増えています。歩行困難な方が世界で2億人いらっしゃる。 日本でいえば、免許の返納をする人が年間60万人前後いらっしゃって、その数は年々累積し、過去10年弱でも350万人程度に上ります。返納した後、移動をどうするのかが問題になっているんです。われわれはこの社会問題を、サービス、ないしはプロダクトで解決できないかと取り組んでいます』、「免許の返納をする人が年間60万人前後いらっしゃって、その数は年々累積し、過去10年弱でも350万人程度に上ります。返納した後、移動をどうするのかが問題になっているんです」、「近距離モビリティのサービスと販売の2事業を展開」、なるほど。
・『免許返納というペインポイントに向けて  井上:WHILLさんは顧客のペインポイントと市場の広がりを示す統計とでは、どちらを先に見るのでしょうか? 杉江:顧客のペインポイントが先ですね、市場の広がりを調べるのはその後です。 起業家のタイプには2種類あると思ってまして、1つは何のトピックで起業するかを考えている人ですね。いろいろなものを調べて、チャンスがあれば起業する。もう1つは、これがしたいから起業するという人なんです。そういう人はだいたい、何も見ないですよね。僕は後者です。 井上:マーケットと対話しながら、痛み(ペイン)を拾ってプロダクトのデザインに活かすということですね。われわれは顧客洞察アプローチと呼んでいます。なかなか、できていない会社も多いように思われます。 杉江:カッコよくて、機能性が高いものを作るのが、問題を解決する方法だと考えたのです。シンプルにユーザーが求めているのは何かを考え、使ってもらったりしながら、Plan-Do-Check-Actionのサイクルを回して改良していく。) 井上:PDCAサイクルを回すのは難しくないですか。 杉江:われわれは、ハードとソフト両方持っているので、お客さんの声を反映して、すぐに作ってマーケットに出すことができる。これが技術的な強みになっています。 ソフトだけ、あるいはハードだけだと、片方は既製品を使わなきゃいけない。お客さんから「これを変えてほしい」と言われたときも、すぐに対応できない。 だからどちらも持つことで、ユーザーのペインや要望を、すぐ開発に落とし込んでマーケットに出すことができるんです』、「われわれは、ハードとソフト両方持っているので、お客さんの声を反映して、すぐに作ってマーケットに出すことができる。これが技術的な強みになっています」、なるほど。
・『自転車ともシニアカーとも違う乗り物  井上:新しくモデルSを出されたそうですが、それもカスタマーペインを起点に、ハードとソフトを連動させて開発されたのでしょうか。 (WHILL杉江理氏の略歴はリンク先参照) 杉江:その通りです。 日本において、現在、歩きづらさを感じる方がシニアの3分の1もいらっしゃるんですね。つまり約1000万人に達します。 そして2022年5月13日に道路交通法が改正され、一定の違反歴のある高齢ドライバーは、運転技能検査を受けなければならなくなりました。これに不合格だと運転免許は失効するんです。免許返納者は年間40万?60万人いらっしゃる。 一方で、シニア向けの移動手段って限られていて、自動車の代わりになる移動手段が十分ではない。たとえば自転車だとバランスが取りづらくてふらついちゃうし、体力的にもきついです。 また、既存のシニアカーは、お客さまにとって、必ずしも積極的に乗りたいものではないようです。「昔ながらのものは乗りたくない」「自分向けのものとは思えない」という声も多く上がっていました。 井上:電動車いすは伸びていないのでしょうか。 杉江:電動車いす市場は、わずか2.5万台しかないんです。1000万人が歩きづらさを感じているにもかかわらず、その解決策としてカバーできていない。 だから、現状にない移動手段としてモデルSのプロジェクトが始まったんです。) 杉江:まず、ペルソナ(想定するユーザー像)のペインポイントを徹底的に洗い出しました。「歩道を走れるスクーター、私の新しいスタンダード」というキャッチコピーです。 新しいカテゴリが欲しいね、ということで、ポジショニングマップも描きました。左側がシニア向け、右側が若い人向け。上が歩行領域。下が車道領域。WHILLのモデルSは、イメージとして若々しく、安定感と安心感があって歩行領域を走れるというポジションです。 デザインはシンプルで軽快なものにしています。自転車のように気軽に乗れつつ、かつ4輪で安定感を出しました。車体のカラーも4色あります。500mは休みなく歩ける方が利用するのを想定していて、最大時速も6km/hなので免許不要で歩道を通行可能です。 井上:わたしも先ほど試乗させていただきましたが、運転がとても楽しくて、電気自動車に乗っている気分でした。ユーザーにとって便利な機能がたくさんありそうです』、「自転車のように気軽に乗れつつ、かつ4輪で安定感を出しました。車体のカラーも4色あります。500mは休みなく歩ける方が利用するのを想定していて、最大時速も6km/hなので免許不要で歩道を通行可能です」、ここで同社のホームページを見てみよう。
https://whill.inc/jp/
・『免許返納者、家族、売り手それぞれの事情  杉江:お客さまが外出する理由の1つはショッピングです。モデルSにつけるカゴの大きさもすごく考えました。 アメリカのシニアは1週間に1回まとめ買いしますが、日本の場合はこまめにします。だいたい2日に1回です。ご高齢の方が1日に買う量はどれくらいかを調査して、牛乳パックが6個分入る大きさに決めたんです。 さらにモデルSだけのプレミアムサービスとして、保険、ロードサービスなどがセットになったサポートサービスに、本人と家族が離れていてもモデルSを介して外出情報を共有できるWHILL Family Serviceを組み合わせたサービスを開始しました。 われわれの製品は自動車のディーラーのチャネルで扱ってもらっているので、自動車保険のようにアフターサポートも充実させて、販売だけでなくその後もお客さまと関係性を維持できる体制を整えています。販売する側にも馴染みがあるものがいいんですね。 息子さんや娘さんが、お母さんやお父さんのためにWHILLを購入するケースが増えてるんですよ。免許返納を促してプレゼントしたり、高齢になり足腰が弱くなった親を心配して外出してほしいと勧めたり。 そのとき、息子さんや娘さんにとってのペインは、「これに乗って事故に遭っていないか」「プレゼントしたWHILLでちゃんと出かけてくれているか」「ちゃんと家に帰ってきているか」という心配です。 だから、ちゃんと動いているかを知らせ、万が一の出来事が起こった時も通知が届き、そのままロードサービスを呼べるようにしているんです。 井上:ペルソナが免許を返納するときの状況を、徹底的に想定されたんですね。) 杉江:そうなんです。だから、自動車からの乗り換えがスムーズになる。操作パネルにも、「D」や「R」とかって書いてあって、これまで車に乗られていた方でも使いやすい。 自動車のディーラーでも購入できます。北海道から沖縄まで、さまざまなメーカーの販売店100社と取引して、全国に1200店舗あります。彼らにとってもメリットがあって、免許を返納した後にもつながり続けることができる。ご本人だけではなく、ご家族ともつながり続けることができる。 だからディーラーのショールームには、WHILLも自動車と一緒においていただいています。そうすると、WHILLは車いすではなくて、違う移動手段だと思ってもらいやすい。モビリティなんだという認識をもっていただきたかった。 井上:なるほど。トータルな価値提案、われわれの言葉でいうビジネスモデルですね。どのようにビジネスモデルをつくったのでしょうか。ペインを和らげる製品が先で、その後に収益の上げ方を考えたのでしょうか』、「われわれの製品は自動車のディーラーのチャネルで扱ってもらっているので、自動車保険のようにアフターサポートも充実させて、販売だけでなくその後もお客さまと関係性を維持できる体制を整えています」、「自動車からの乗り換えがスムーズになる。操作パネルにも、「D」や「R」とかって書いてあって、これまで車に乗られていた方でも使いやすい」、なるほど。
・『ビジネスモデルとは問題解決  杉江: ターゲットユーザーとしてのペルソナを先に決めました。こういうユーザーには、これが必要なのではないかを想定する。そしてプロトタイプを作ってユーザーに試していただき、使い方や仕様を全部確認して改善する。 ただ、私はペインを考えることとビジネスモデルを考えることは同じだと思うんですね、どちらも問題解決の話なので。 たとえば、法人向けのB2Bのビジネスだと複数台必要だったりしますが、一括で買い取りたいとは言われませんよ。300万円の物販ではなく、月に1回、リカーリング(継続取引)のビジネスの方が彼らにとっては望ましい。 お客さまにとって何がペインなのか。B2Bのペイン、B2Cのペイン、お客さまごとにペインは異なる。そしてわれわれが持っている武器で提供できるものは何か。どのくらいの費用がかかるのか、最終的にやる、やらないを決める。 (WHILLビジネスモデルの図はリンク先参照) 井上:仮説検証していく上で、見込みが違ったというような話はなかったのでしょうか。) 杉江:モデルSの場合は狙い通りでした。基本的には新しいものを作ってるという感覚は薄いんです。ペインありきなので、まったく新しい話じゃないんですよね。使っていくうちに「あ、ここが問題だ」というのがわかってきて、それに対応するという感じです。 創業当初からずっと歩行領域や近距離移動にフォーカスしてきていますし、これまでも他のモデルでも仮説検証してきたので、その結果も踏まえてモデルSができた。その意味で蓄積があるんですよ。 井上:このビジネスモデルは世界に通用するでしょうか。世界戦略についてもお聞かせいただけますか』、「ペルソナ」、「ペイン」、などネーミングが気取っているのが気になる。
・『高齢化が進む先進国中心に展開  杉江:現在、日本、北米、欧州、アジア太平洋に6つの拠点があります。 日本にはセールス&マーケティングとR&D、北米にはセールス&マーケティングとITのチームがいます。欧州に関しては、オランダを拠点にして、欧州のすべての領域を見ていて、ここはセールス&マーケティングがある。最後にアジア太平洋の拠点が中国になりますね。中国だけではなく、オーストラリア、韓国、台湾、香港を見ています。 基本的には4つのリージョンで損益を管理して、それをグローバルに一元管理しています。 井上:本当にグローバルですね。市場の攻め方に何か基本方針はあるのでしょうか。 杉江:基本的には先進国を中心に広げています。高齢化社会が特に進んでいるので、必要とされる方が多い。 われわれのビジネスモデルは2つありまして、それは「モビリティ販売」と「モビリティサービス」です。 モビリティ販売のポジショニングとしては、ちょっとプレミアムなセグメントに位置している価格帯なんですけど、その価格帯に刺さるような地域に力を入れています。アメリカの中で、例えばカリフォルニアだとか、高齢者が多いフロリダ、東海岸のボストンやニューヨークです。これらの地域には富裕層が多くて、高齢者もいらっしゃる。 モビリティサービスは、法人向けのビジネスなので、たとえばアミューズメントパークとか、ホテル、コンベンションセンター、あるいは空港がある場所です。このような基準で展開しています。 井上:確かに先進国で高齢化が進んでいる国や地域に響きそうですね。今後も楽しみにしています。 (WHILL設立:2012年5月所在地:東京都品川区資本金:非公開社員数:グローバル連結ベースで約300人(2023年4月時点)』、海外では法律面の違いが大きく、歩道で走行できる国と車道でしか走行できない国がある。つまり「グローバル」に展開するのは多くの困難がある筈で、これをどう乗り越えているのだろう。
・『経営学者・井上達彦の眼  WHILLのビジネスモデルづくりは、顧客洞察アプローチによるものである。このアプローチでは数字で示されるデータ以上に、人間性に目が向けられ、顧客との共感が大切にされる。顧客がどのような困りごとをもっているのか。顧客に寄り添いながら、ペインポイントが言葉やイメージで示される。 それゆえ分析対象は、「困りごと」を抱えた顧客である。顧客の立場で、顧客の世界に入り込んでビジネスモデルづくりに不可欠なインサイトを得る。観察やインタビューによって紡ぎ出されるわけだ。 このアプローチを育んだのはマーケティングやイノベーションの研究者だが、実践的な手法に体現したのはデザインコンサルタントたちだ。一般的に、デザインといえば、製品を美しく、あるいは使いやすくする、意匠設計にかかわるものだと理解されるが、身近な生活から社会システムのデザインまで、ありとあらゆるものに適用できる。 さて、ペインポイントを起点にするというWHILLのビジネスモデルづくりは、何も珍しいものではない。しかし、注目に値するのは、同社の徹底の度合いである。 1時間ちょっとのインタビューで「ペイン」という言葉が47回も出てきた。折に触れて、その大切さを伝えてくださったのである。いろいろな角度から質問させていただいたが、「単純にペインを解消しているだけです」とご説明されたのが印象的である。しかも、WHILLではこれが当たり前のごとく行われている。 インタビューにおいて、筆者らが「すごいですね」という感想を漏らすこともあったのだが、「別にすごくはないです」と日常の実践として説明してくださった。顧客洞察のベストプラクティスを、あたかも当たり前のごとく自然にやってのける会社。真の意味でそれが身についているからであろう。 インタビュー後に広報の方から「多分、うちはユーザー目線で伸びている会社だからなのかもしれません」と補足していただいた。いつまでも「らしさ」を失わずに世界に挑戦してほしい』、全体として、抽象的表現が多く、具体性を欠いている印象だ。つまらない記事を紹介してしまったことをお詫びしたい。
タグ:高齢者交通事故 (その1)(“上級国民”池袋暴走事故「否認」の衝撃 車のせい?裁判の行方と思わぬ余波、高齢ドライバーの「技能検査」開始 免許更新時の対象者と合否の基準は?、免許返納してもシニアが自由に動き回れる「翼」 WHILL杉江理はとことん困りごとを解消する) AERAdot「“上級国民”池袋暴走事故「否認」の衝撃 車のせい?裁判の行方と思わぬ余波〈dot.〉」 「「証拠隠滅の恐れがない」と判断されて、飯塚被告が逮捕されなかったことなどから、「元官僚で東大卒の上級国民だから、特別扱いしているのでは」といった声が噴出した」、「「検察は、車の性能に問題がなかったという証拠を揃えてくるでしょう。弁護側には立証責任はありませんが、丸腰で臨んだら検察側の主張が通ってしまうので、瑕疵があったと証明するための証拠が必要になります。 ただし、技術者や鑑定の専門家から証言を得る必要があるため、時間がかかる上、立証するための難易度が高いですね」、「これらから自動運転が普及することが予想されるので、こうした『車の問題点』を指摘する主張が増えてくる可能性が高い。飯塚被告の主張が下手に通ると、今後はこうした事故で、ブレーキが利かなくなったといった主張が多くなる。司法側も慎重に判断することになるでしょう。今回の裁判は、今後の試金石になる」、結果はどうなるのだろう。 ダイヤモンド・オンライン 戸田一法氏による「高齢ドライバーの「技能検査」開始、免許更新時の対象者と合否の基準は?」 「一定の交通違反歴がある75歳以上の運転者に運転免許更新時の技能検査(実車試験)を義務付ける改正道路交通法が、5月13日から施行」、「検査で不合格となれば免許が更新できなくなり、交通事情の悪い地方の高齢者にとっては厳しい措置となる」、なるほど。 「実車試験の受検対象は、免許更新となる75歳以上の約7%に相当する年間約15万人に上るとみられ、2割以上が不合格となる可能性がある」、「昨年は75歳以上の運転者による車両やバイクの死亡事故が346件発生。全体(2289件)の15.1%を占め、統計がある1986年以降で最も高い割合になった。免許を所持する人口10万人あたりでは5.7件で、75歳未満の2倍を超えた」、 「死亡した男性は数年前に「事故を起こすわけにいかない」と運転免許を自主返納していた。まさか、自分が高齢者の運転するクルマにはねられて命を落とすとは、想像していなかったに違いない」、「運転免許を自主返納」したのに、「高齢者の運転するクルマにはねられて命を落とすとは」まさに悲劇だ。 第一の記事の「「池袋暴走事故」・・・旧通産省工業技術院の元院長・飯塚幸三受刑者(90)・・・自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の罪で禁錮5年の判決が確定」、予想外に早く「判決」が出たようで、一安心だ。 「全国紙で記者・デスクとして10年以上、地方の職場を経験したが、実家のような生活環境は珍しくなかった。そのような場所に、クルマは生活になくてはならないものなのだ。筆者も実家の両親や、取材で知り合い、いろいろな訓示をいただいた懐かしい方々が、人生の幕引きに「人殺し」の汚名を背負って見送られることなど想像したくない」、 「できるならば、政府には、地方の高齢者が運転免許(そもそもクルマ)を所持していなくても、安心して生活できる環境を整備してほしいと切に願う」、どう考えても、それは無理難題という他ない。 東洋経済オンライン 井上 達彦氏による「免許返納してもシニアが自由に動き回れる「翼」 WHILL杉江理はとことん困りごとを解消する」 「免許の返納をする人が年間60万人前後いらっしゃって、その数は年々累積し、過去10年弱でも350万人程度に上ります。返納した後、移動をどうするのかが問題になっているんです」、「近距離モビリティのサービスと販売の2事業を展開」、なるほど。 「われわれは、ハードとソフト両方持っているので、お客さんの声を反映して、すぐに作ってマーケットに出すことができる。これが技術的な強みになっています」、なるほど。 「自転車のように気軽に乗れつつ、かつ4輪で安定感を出しました。車体のカラーも4色あります。500mは休みなく歩ける方が利用するのを想定していて、最大時速も6km/hなので免許不要で歩道を通行可能です」、ここで同社のホームページを見てみよう。 https://whill.inc/jp/ 「われわれの製品は自動車のディーラーのチャネルで扱ってもらっているので、自動車保険のようにアフターサポートも充実させて、販売だけでなくその後もお客さまと関係性を維持できる体制を整えています」、「自動車からの乗り換えがスムーズになる。操作パネルにも、「D」や「R」とかって書いてあって、これまで車に乗られていた方でも使いやすい」、なるほど。 「ペルソナ」、「ペイン」、などネーミングが気取っているのが気になる。 海外では法律面の違いが大きく、歩道で走行できる国と車道でしか走行できない国がある。つまり「グローバル」に展開するのは多くの困難がある筈で、これをどう乗り越えているのだろう。 全体として、抽象的表現が多く、具体性を欠いている印象だ。つまらない記事を紹介してしまったことをお詫びしたい。
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小池都知事問題(その8)(勢いづく維新…“次点”高市大臣と“本命”小池都知事「W女帝引き抜き」のトンデモ情報、「坂本龍一の手紙」の影響は大きかった…?小池百合子・東京都知事が「岸田首相テロに大反応」して「警備を20人に倍増」させた理由、小池都知事の“我関せず”もう通用せず! 神宮外苑「樹木伐採問題」を海外メディアも猛批判、安倍元首相に「ジョーカー」と評された したたかな小池百合子・東京都知事が画策する まさかの「ウルトラC」) [国内政治]

小池都知事問題については、本年4月26日に取上げた。今日は、(その8)(勢いづく維新…“次点”高市大臣と“本命”小池都知事「W女帝引き抜き」のトンデモ情報、「坂本龍一の手紙」の影響は大きかった…?小池百合子・東京都知事が「岸田首相テロに大反応」して「警備を20人に倍増」させた理由、小池都知事の“我関せず”もう通用せず! 神宮外苑「樹木伐採問題」を海外メディアも猛批判、安倍元首相に「ジョーカー」と評された したたかな小池百合子・東京都知事が画策する まさかの「ウルトラC」)である。

先ずは、本年4月14日付け日刊ゲンダイ「勢いづく維新…“次点”高市大臣と“本命”小池都知事「W女帝引き抜き」のトンデモ情報」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/321501
・『統一地方選の前半戦で躍進し、勢いづく日本維新の会。悲願の「全国政党化」に向けて、大物女性政治家の引き抜きを画策──こんなトンデモ情報が飛び出している。 引き抜きの対象として名前が挙がっているのは、高市早苗経済安保担当相だ。自らの調整不足によって、地元の奈良県知事選が保守分裂となり、維新の“漁夫の利”勝利を許した。自民党内から責任を問う声が上がり、孤立する高市氏に維新が触手を伸ばす可能性があるというのだ。「スポーツニッポン」が12日、人気コラム「政界 噂のマル秘日誌」で〈“背水”高市氏 維新引き抜き?〉とのタイトルで報じている』、「地元の奈良県知事選」での敗北で「孤立する高市氏に維新が触手を伸ばす可能性がある」、あり得る話だ。
・『高市大臣は居場所ナシ  記事によると、一部保守系メディアに根強い人気を誇る高市氏は、全国政党を目指す維新にとっては利用価値があるという。高市氏と維新は共に極右的な安保政策を掲げ、思想的に近い。「早苗ちゃん」と親しげに呼ぶ維新幹部もいるそうだ。 確かに、維新は高市氏に妙に甘い。放送法の解釈を巡る総務省文書を「捏造」と断じた高市氏を、立憲民主党が連日、追及していた時も「捏造か本物かは、国民にとってどっちでもいい話」(馬場代表)と距離を置いていた。国会で厳しく高市氏を追及することもなかった』、「維新は高市氏に妙に甘い」、なるほど。
・『小池百合子都知事の名前も浮上  気になるのは、スポニチの記事に、維新幹部の「ホンマは小池百合子(都知事)がええんやけど、高市氏でもええわ」というコメントが掲載されていることだ。維新は小池知事の取り込みまで描いているのか。 維新には、小池氏が率いる「都民ファーストの会」とケンカ別れした音喜多駿参院議員が所属。松井前代表との関係も良くないとされる。そんな維新と小池氏の合流はあり得るのか。「可能性ゼロではないでしょう」と言うのは、元都庁幹部の澤章氏だ。 「囁かれているのは、小池さんが知事を電撃辞任し、維新系の人物を後継指名。都知事選で勝利させるシナリオです。小池さん本人は自民には戻れないでしょうから、次期衆院選では維新から出馬し、国政で最後にひと花咲かせるつもりでは、といわれている。かつて石原知事も2012年、電撃辞任し、猪瀬副知事を後継指名。猪瀬氏を大勝させた後、国政に復帰しています」 首都圏進出を狙う維新側もウマミがあるという。 「ネームバリューのある小池知事を引き入れ、都政を掌握するメリットは大きい。大阪府知事・市長の“入れ替えダブル選挙”といったトリッキーな選挙戦術は維新の十八番ですから、あり得ない話ではないと思います。いまや全く勢いのない都民ファーストの中にも、維新に移りたいと考えている都議がいるはずです」(澤章氏) 維新関係者はこう言う。 「高市さんのことを『早苗ちゃん』と呼ぶ幹部がおるんは事実や。知事報酬をカットした小池さんとも『身を切る改革』という意味では一致点がなくもないわな。せやけど、さすがに2人を引き抜くなんて無理やろ。誰かが意図的に『怪情報』を流しとんちゃうか」 高市氏と小池氏の“W女帝”引き抜きはインパクト抜群だが、果たして……』、「小池さんが知事を電撃辞任し、維新系の人物を後継指名。都知事選で勝利させるシナリオです。小池さん本人は自民には戻れないでしょうから、次期衆院選では維新から出馬し、国政で最後にひと花咲かせるつもりでは、といわれている」、「かつて石原知事も2012年、電撃辞任し、猪瀬副知事を後継指名。猪瀬氏を大勝させた後、国政に復帰しています」、あり得るシナリオだ。

次に、4月27日付け現代ビジネス「「坂本龍一の手紙」の影響は大きかった…?小池百合子・東京都知事が「岸田首相テロに大反応」して「警備を20人に倍増」させた理由」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/109329
・『警察官とSPが数メートルおきにズラリと並び、選挙カーの周囲約5メートルに規制線が張られている。写真を撮ろうと足を止めた通行人には、すぐさま「立ち止まらないで!」という声が飛ぶ。
『税金で警護を倍増させ、選挙応援に入る小池都知事  警察犬まで出動した厳戒態勢の中心にいたのは、小池百合子都知事である。 「岸田(文雄)総理が襲撃された事件の翌日、東京都の統一地方選後半戦がスタートしました。これまで都知事が区議選で動くことはなかったのですが、自身が特別顧問を務める都民ファーストの会の勢力拡大のために、小池氏は異例の応援に入った。サプライズで豊島区、中野区、練馬区、大田区、目黒区をハシゴしました。 困ったのは警護を担当する警視庁です。事件があったため、慌てて警護を10人から20人に増やした。この費用はすべて都民が納めた税金で賄われています」(自民党都議) 警護の倍増は警視庁の判断だった。だが、その背景には小池氏からのプレッシャーがあったと都政関係者は語る。 「小池氏は『明治神宮外苑再開発』に対する反発に恐怖を感じていると、たびたび周囲に漏らしていたんです。特に3月28日に亡くなった音楽家・坂本龍一氏が、都知事宛に手紙を送っていたことが判明したのが逆風になっている。 手紙には『先人が100年をかけて守り育ててきた貴重な神宮の樹々を犠牲にすべきではありません』などと記され、『あなたのリーダーシップに期待します』と結ばれていた。3月22日に工事が始まって以降も、都知事室には反対派から攻撃的なメールが押し寄せています。また小池氏のツイッターも批判が殺到していて更新できない状態です」 小池氏の任期は来年7月末まで、その後は新しい区割りの東京28区から衆院選に出馬するという説もある。 身の安全を図ることは大事だが、都民の厳しい声に耳を傾けず、事なかれで任期をやり過ごそうとしているのであれば考えものだ』、「「小池氏は『明治神宮外苑再開発』に対する反発に恐怖を感じていると、たびたび周囲に漏らしていたんです」、「3月22日に工事が始まって以降も、都知事室には反対派から攻撃的なメールが押し寄せています。また小池氏のツイッターも批判が殺到していて更新できない状態です」、「これまで都知事が区議選で動くことはなかったのですが、自身が特別顧問を務める都民ファーストの会の勢力拡大のために、小池氏は異例の応援に入った。サプライズで豊島区、中野区、練馬区、大田区、目黒区をハシゴしました。 困ったのは警護を担当する警視庁です。事件があったため、慌てて警護を10人から20人に増やした。この費用はすべて都民が納めた税金で賄われています」、「警護」を倍増する必要はないように思うが、まあ、「警視庁」が判断したのであれば、やむを得ない。「都民の厳しい声に耳を傾けず、事なかれで任期をやり過ごそうとしているのであれば考えものだ」、その通りだ。

第三に、5月8日付け日刊ゲンダイ「小池都知事の“我関せず”もう通用せず! 神宮外苑「樹木伐採問題」を海外メディアも猛批判」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/322592
・『東京都の明治神宮外苑の再開発に伴い、大量の樹木が伐採される問題を巡って、海外メディアが連休中に批判記事を展開し、話題になっている。事業を認可した小池都知事は、これ以上無視できるのか。 米AP通信は先月29日配信の記事で〈神宮外苑は文化的・歴史的な宝物〉と強調し、〈小池氏は、環境への影響に疑問があるにもかかわらず、一部の建設を許可している〉と指摘。〈都の計画は(ニューヨークの)セントラルパークに「超高層ビル」を設置するがごとくだ〉と批判している。 30日には、米紙ニューヨーク・タイムズ電子版が〈未来に向け、日本は野球の歴史に別れを告げようとしている〉との見出しで報じた。再開発に伴う神宮球場の解体に焦点を当て、〈ベーブ・ルースが活躍し、小説家・村上春樹が影響を受けたスタジアムである明治神宮(球場)を、極端な再開発計画で平らにしてしまうのだ〉と指摘。村上春樹が神宮球場で野球観戦していた際に、処女作「風の歌を聴け」の着想を得たエピソードを紹介し、歴史ある球場の消失を惜しんでいる。 3月28日に亡くなった音楽家・坂本龍一さんが生前、小池知事を含む5氏に再開発の見直しを求める手紙を送っていたことが分かり、国内メディアが事業の問題点を報じているが、いよいよ海外メディアまでもが注目。小池知事の“敵”が続々と増えている状況だ』、「セントラルパークに「超高層ビル」を設置するがごとくだ〉と批判」、言い得て妙だ。「小池知事の“敵”が続々と増えている状況だ」、身から出た錆だ。
・『“忖度なし”の海外メディアからのプレッシャー  小池知事はこれまで、再開発の主体が三井不動産などからなる「事業者」であることを強調し“都は関係ない”というスタンスを貫いてきた。しかし、再開発工事を認可したのは、まぎれもなく小池知事だ。その点を海外メディアにもスッカリ見透かされている。もはや“我関せず”は通用しなくなるのではないか。元都庁幹部の澤章氏はこう言う。 「小池知事は『都は関係ない』という態度で逃げおおせると思っていたのでしょう。しかし、坂本龍一さんの手紙をきっかけに猛批判にさらされ、さらに“忖度なし”の海外メディアの追及も加わったわけですから、相当なプレッシャーを感じているはずです。“我関せず”という態度を示し続ければ、どんどん批判が集中することになるでしょう」 2021年の東京五輪を巡っては、当時、大会組織委員会会長の森元首相が、女性蔑視発言を海外メディアに猛批判されたことをきっかけに辞任に追い込まれた。なめていると小池知事も痛い目を見るに違いない』、「これまで、再開発の主体が三井不動産などからなる「事業者」であることを強調し“都は関係ない”というスタンスを貫いてきた。しかし、再開発工事を認可したのは、まぎれもなく小池知事だ。その点を海外メディアにもスッカリ見透かされている」、「“我関せず”という態度を示し続ければ、どんどん批判が集中することになるでしょう」、その通りだ。

第四に、6月12日付け現代ビジネス「安倍元首相に「ジョーカー」と評された、したたかな小池百合子・東京都知事が画策する、まさかの「ウルトラC」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/111460?imp=0
・『小池知事が維新、国民民主と協議!?  永田町に解散風が吹き荒れるなか、来年夏に任期満了を迎える小池百合子都知事が動き出した。 小池知事と日本維新の会、そして国民民主党の関係者との間で非公式な協議が断続的に行われているのです。この時期に政党間で話し合うことといえば、解散総選挙についてしかありません。 次期衆院選挙で躍進を遂げたいものの、東京ではまだまだ地盤が弱い維新にとって、小池知事の抜群の知名度と人気はノドから手が出るほど欲しい。そこで、現在自民党と距離がある知事に、打倒自民で手を組めないかを話し合っているようなのです」(都政記者) とはいえ、小池サイドにもうまみがなければ協力は成立しない。そこで浮上したのがこんなウルトラC案だ。 「小池知事率いる地域政党『都民ファーストの会』の前代表である荒木千陽氏を、都内の選挙区から出馬させる。維新はその選挙区に対抗馬を立てず、荒木候補を応援する代わりに、知事が都内の維新候補の選挙区に応援に入る、というものです」(同)』、「小池知事と日本維新の会、そして国民民主党の関係者との間で非公式な協議が断続的に行われているのです。この時期に政党間で話し合うことといえば、解散総選挙についてしかありません」、「現在自民党と距離がある知事に、打倒自民で手を組めないかを話し合っているようなのです」、内閣不信任案の否決で、解散風は弱まったようだ。
・『小池知事のしたたかな思惑  さすがのしたたかさ。うまくいけば自身の愛弟子を国政に送り込み、かつ維新とのパイプも構築できる。しかし、全選挙区に候補者を立てると宣言している維新がこの案を呑めるのだろうか。都民ファの関係者が明かす。 「維新が選挙区を譲っただけとなると見栄えが悪いが、そこに国民民主を巻き込むことで『改革派連合』というイメージを打ち出す。これなら維新も『大義のために選挙区を譲った』として乗れるだろう、というのが小池サイドの考えです。 生前の安倍元首相が小池知事を『ジョーカー』と評したように、知事は誰とでも組めるし、組む相手が大きいほど強力になる。維新・国民民主と組み、打倒自民に向けて動き出すのではないか」 奇しくも都民ファと維新のイメージカラーは同じ緑。有権者が「もともと同じ政党だったのね」と誤解してくれれば、好都合かもしれない』、「生前の安倍元首相が小池知事を『ジョーカー』と評したように、知事は誰とでも組めるし、組む相手が大きいほど強力になる。維新・国民民主と組み、打倒自民に向けて動き出すのではないか」、総選挙は遠のいたが、やがてこうした組み合わせが出てくる可能性があることを念頭に置いておきたい。
タグ:小池都知事問題 (その8)(勢いづく維新…“次点”高市大臣と“本命”小池都知事「W女帝引き抜き」のトンデモ情報、「坂本龍一の手紙」の影響は大きかった…?小池百合子・東京都知事が「岸田首相テロに大反応」して「警備を20人に倍増」させた理由、小池都知事の“我関せず”もう通用せず! 神宮外苑「樹木伐採問題」を海外メディアも猛批判、安倍元首相に「ジョーカー」と評された したたかな小池百合子・東京都知事が画策する まさかの「ウルトラC」) 日刊ゲンダイ「勢いづく維新…“次点”高市大臣と“本命”小池都知事「W女帝引き抜き」のトンデモ情報」 「地元の奈良県知事選」での敗北で「孤立する高市氏に維新が触手を伸ばす可能性がある」、あり得る話だ。 「維新は高市氏に妙に甘い」、なるほど。 「小池さんが知事を電撃辞任し、維新系の人物を後継指名。都知事選で勝利させるシナリオです。小池さん本人は自民には戻れないでしょうから、次期衆院選では維新から出馬し、国政で最後にひと花咲かせるつもりでは、といわれている」、「かつて石原知事も2012年、電撃辞任し、猪瀬副知事を後継指名。猪瀬氏を大勝させた後、国政に復帰しています」、あり得るシナリオだ。 現代ビジネス「「坂本龍一の手紙」の影響は大きかった…?小池百合子・東京都知事が「岸田首相テロに大反応」して「警備を20人に倍増」させた理由」 「「小池氏は『明治神宮外苑再開発』に対する反発に恐怖を感じていると、たびたび周囲に漏らしていたんです」、「3月22日に工事が始まって以降も、都知事室には反対派から攻撃的なメールが押し寄せています。また小池氏のツイッターも批判が殺到していて更新できない状態です」、 「これまで都知事が区議選で動くことはなかったのですが、自身が特別顧問を務める都民ファーストの会の勢力拡大のために、小池氏は異例の応援に入った。サプライズで豊島区、中野区、練馬区、大田区、目黒区をハシゴしました。 困ったのは警護を担当する警視庁です。事件があったため、慌てて警護を10人から20人に増やした。この費用はすべて都民が納めた税金で賄われています」、「警護」を倍増する必要はないように思うが、まあ、「警視庁」が判断したのであれば、やむを得ない。 「都民の厳しい声に耳を傾けず、事なかれで任期をやり過ごそうとしているのであれば考えものだ」、その通りだ。 日刊ゲンダイ「小池都知事の“我関せず”もう通用せず! 神宮外苑「樹木伐採問題」を海外メディアも猛批判」 「セントラルパークに「超高層ビル」を設置するがごとくだ〉と批判」、言い得て妙だ。「小池知事の“敵”が続々と増えている状況だ」、身から出た錆だ。 「これまで、再開発の主体が三井不動産などからなる「事業者」であることを強調し“都は関係ない”というスタンスを貫いてきた。しかし、再開発工事を認可したのは、まぎれもなく小池知事だ。その点を海外メディアにもスッカリ見透かされている」、「“我関せず”という態度を示し続ければ、どんどん批判が集中することになるでしょう」、その通りだ。 現代ビジネス「安倍元首相に「ジョーカー」と評された、したたかな小池百合子・東京都知事が画策する、まさかの「ウルトラC」」 「小池知事と日本維新の会、そして国民民主党の関係者との間で非公式な協議が断続的に行われているのです。この時期に政党間で話し合うことといえば、解散総選挙についてしかありません」、「現在自民党と距離がある知事に、打倒自民で手を組めないかを話し合っているようなのです」、内閣不信任案の否決で、解散風は弱まったようだ。 「生前の安倍元首相が小池知事を『ジョーカー』と評したように、知事は誰とでも組めるし、組む相手が大きいほど強力になる。維新・国民民主と組み、打倒自民に向けて動き出すのではないか」、総選挙は遠のいたが、やがてこうした組み合わせが出てくる可能性があることを念頭に置いておきたい。
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マイナンバー制度(その4)(「マイナ保険証」トラブル続発が示すポンコツ実態 別人情報「ひも付け」など法案成立前に問題噴出、マイナ公金受取登録「家族口座多数」でデタラメ横行…ポイント“エサ”に注ぎ込んだ血税2兆円、マイナンバー事業1兆円に群がる政官業“腐敗”の三角形…相次ぐトラブルの裏に巨額利権の甘い蜜、河野デジタル大臣はトンズラ準備? マイナンバーにトラブル続出「私を処分」答弁の裏の計算) [経済政策]

マイナンバー制度については、本年4月24日に取上げた。今日は、(その4)(「マイナ保険証」トラブル続発が示すポンコツ実態 別人情報「ひも付け」など法案成立前に問題噴出、マイナ公金受取登録「家族口座多数」でデタラメ横行…ポイント“エサ”に注ぎ込んだ血税2兆円、マイナンバー事業1兆円に群がる政官業“腐敗”の三角形…相次ぐトラブルの裏に巨額利権の甘い蜜、河野デジタル大臣はトンズラ準備? マイナンバーにトラブル続出「私を処分」答弁の裏の計算)である。

先ずは、本年5月20日付け東洋経済オンライン「「マイナ保険証」トラブル続発が示すポンコツ実態 別人情報「ひも付け」など法案成立前に問題噴出」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/673740
・『従来の健康保険証を廃止して、マイナンバーカードによる「オンライン資格確認」に一本化する「マイナンバー法等一括法案」の国会審議が続いている。法案は来週にも参議院を通過し、可決・成立する可能性がある。ところが、その成立間際になって、制度の信頼を揺るがすトラブルが相次いで表面化している。 厚生労働省は5月12日、マイナカードと保険証を一体化した「マイナ保険証」をめぐり、別人の情報を間違って本人の資格情報(加入している健康保険や自己負担限度額など)にひも付ける「誤登録」が2021年10月から2022年11月までの1年2カ月間に7000件以上見つかったと発表した。そのうち5件では別人の薬剤情報や医療費通知情報が閲覧されていたという。 サラリーマンなどが新たに健康保険に加入した場合、協会けんぽや健康保険組合などの保険者が本人の氏名や生年月日などの資格情報をデータベースに登録する。その際、本人のマイナンバーがわからない場合、住民基本台帳で本人の情報を照会する。 厚労省によれば、入手したマイナンバーの番号が間違っていることに気付かないまま健保組合が入力し、資格登録をしたことが原因だという。誤登録があると、患者情報の漏洩などのプライバシーの侵害や間違った処方につながるおそれがある』、「「マイナンバー法等一括法案」の・・・成立間際になって、制度の信頼を揺るがすトラブルが相次いで表面化」、「「マイナ保険証」をめぐり、別人の情報を間違って本人の資格情報・・・にひも付ける「誤登録」が2021年10月から2022年11月までの1年2カ月間に7000件以上見つかった」、「サラリーマンなどが新たに健康保険に加入した場合、協会けんぽや健康保険組合などの保険者が本人の氏名や生年月日などの資格情報をデータベースに登録する。その際、本人のマイナンバーがわからない場合、住民基本台帳で本人の情報を照会する。 厚労省によれば、入手したマイナンバーの番号が間違っていることに気付かないまま健保組合が入力し、資格登録をしたことが原因」、信じられないような基本的なミスが相次いでいる。
・『健保に加入していても「該当資格なし」  マイナンバー法等一括法案によれば、2024年秋以降はマイナカードによる本人確認に一本化される。 「オンライン資格確認」と呼ばれるこのシステムでは、患者がマイナカードを医療機関の窓口に設置されたカードリーダーにかざし、顔認証または4桁の暗証番号を入力することにより、医療機関が健康保険の資格内容(加入する健康保険組合名や自己負担の負担割合など)を確認する。しかし、その前提となる資格登録が間違っていると、マイナカードによる資格確認が意味をなさなくなる。 誤登録とは別に、オンライン資格確認をめぐるさまざまな不備が医療現場から報告されている。カードリーダーでマイナンバーカードをかざしても、医療機関のコンピューター画面で「該当資格なし」と表示されるケースが相次いでいるのだ。) 大阪府守口市の北原医院は、4月から原則義務化されたことを受けてオンライン資格確認システムを導入し、4月初めからシステムを稼働させた。ところがまもなくして、「信じがたいトラブルが毎日のように頻発するようになった」と井上美佐院長は説明する。 「当院の場合、1日に50~60人の患者さんが来院するが、うち約3割で保険証の内容とオンライン資格確認で出力された内容が合致しない」(井上院長)。そうしたトラブルは現在も続いているという。 井上院長によれば、「マイナカードで確認したところ、『該当資格なし』とコンピューター画面に表示されるケースが相次いでいる。その場合、決められたルールに従って患者さん本人に保険証を見せてもらい、そちらに記された内容が正しいと判断して所定の負担割合で医療費を支払ってもらっている」という。 そして、井上院長が気を揉んでいるのが「2024年秋以降」だ。 法律の成立によって従来の保険証が廃止された場合、マイナカードによる資格確認に頼らざるをえなくなる。その際、オンライン資格確認で『該当資格なし』となった場合、正確な資格内容がわからないので、窓口でいったん医療費全額(10割負担)を支払ってもらわなければならなくなる。そうなると患者さんとのトラブルは避けられず、大混乱になりかねない」(井上院長)』、「うち約3割で保険証の内容とオンライン資格確認で出力された内容が合致しない」・・・「マイナカードで確認したところ、『該当資格なし』とコンピューター画面に表示されるケースが相次いでいる。その場合、決められたルールに従って患者さん本人に保険証を見せてもらい、そちらに記された内容が正しいと判断して所定の負担割合で医療費を支払ってもらっている」という。 そして、井上院長が気を揉んでいるのが「2024年秋以降」だ。 法律の成立によって従来の保険証が廃止された場合、マイナカードによる資格確認に頼らざるをえなくなる。その際、オンライン資格確認で『該当資格なし』となった場合、正確な資格内容がわからないので、窓口でいったん医療費全額(10割負担)を支払ってもらわなければならなくなる。そうなると患者さんとのトラブルは避けられず、大混乱になりかねない」』、「『該当資格なし』とコンピューター画面に表示されるケースが」、「約3割」とはかなりあるようだ。このままでは、「2024年秋以降」には事態は一層深刻化する。
・『システム障害も多発、悲鳴上げる診療所  コンピューター画面で「該当資格なし」と表示される問題について、診療報酬の支払い事務を担う社会保険診療報酬支払基金の担当者は「一般論」としたうえで、「加入者が(転職などで)保険者を異動した場合の(登録の)タイムラグが考えられる」と説明する。 厚労省はこうした問題を踏まえ、これまで保険者によるデータ登録の期間の定めがなかったのを、「保険者によるデータ登録を5日以内とする」というルールに改めるという。ただ、「依然としてタイムラグがあることに変わりはなく、リアルタイムで正確に資格を確認しようとすること自体に無理がある」(全国保険医団体連合会の本並省吾事務局次長)。) 医師らで構成する大阪府保険医協会は、5月2日に会員の医療機関を対象にしたアンケート調査を実施。「オンライン資格確認システムを運用している」と答えた医療機関143件のうち「トラブルがあった」と答えた医療機関が78件と過半数に上った。トラブルの内容で多かったのが「該当の被保険者番号がない、資格情報が無効」「システム障害で資格確認ができない」などで、それぞれ44件、29件もあった。 前出の北原医院の井上院長は危機感を強め、次のように語る。 「4月初めのシステム稼働当初、接続不良がひどかった。今は保険証で確認できているので事なきを得ているが、保険証が廃止された後、システム障害や停電が発生した場合、診療は中断、休診になりかねない。保険証は廃止しないでほしい」 大阪府保険医協会のアンケート調査では、「顔認証の読み取りがうまくいかない。何度もやり直し、時間がかかる。勝手に電源が落ちる」「『接続を確認しています』という画面が出たまま、数時間も変化なく使用できない」といったトラブル事例が報告されている。 ▽正式な情報処理がされて初めて「役立つ」(厚労省で医療のデジタル化推進を担当する中園和貴・保険局医療介護連携政策課保険データ企画室長は、オンライン資格確認など医療のデジタル化のメリットについて「重複投薬や禁忌薬の回避にもつながる」と説明する。 しかしそれも、正確な情報処理がされて初めて意味を持つことは言うまでもない。 保険証の廃止とマイナカードへの一本化は2022年10月、マイナカードの普及を急ごうとした河野太郎デジタル担当相の鶴の一声によって決まった。それに続く今回の法案は、拙速のそしりを免れない。新制度が信頼性を欠く中で保険証を廃止した場合、社会の混乱は不可避だ。 この際、法案の採決をいったん見合わせ、制度改革の不備と対策について再検証すべきではなかろうか』、「「該当資格なし」と表示される問題について・・・「加入者が(転職などで)保険者を異動した場合の(登録の)タイムラグが考えられる」と説明。 厚労省はこうした問題を踏まえ、これまで保険者によるデータ登録の期間の定めがなかったのを、「保険者によるデータ登録を5日以内とする」というルールに改めるという。ただ、「依然としてタイムラグがあることに変わりはなく、リアルタイムで正確に資格を確認しようとすること自体に無理がある」、「リアルタイムで正確に資格を確認しようと」したのは、何故なのだろ。お粗末な仕組みだ。

次に、6月7日付け日刊ゲンダイ「マイナ公金受取登録「家族口座多数」でデタラメ横行…ポイント“エサ”に注ぎ込んだ血税2兆円」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/324087
・『「国民の皆さんに不安を与え、申し訳なく思う」──。 5日の参院本会議で、そう陳謝したのはマイナカード普及の旗振り役である河野デジタル担当相だ。マイナカードのトラブル続出に「申し訳なく思う」のなら、今すぐ活用拡大を止めて欲しい。家族内で同じ口座を登録した例が多数見つかった問題も、「マイナポイント欲しさ」のデタラメが横行し、血税2兆円超を投じた事業がアダになった可能性がある。 マイナンバーと紐付けた公金受取口座に本人ではない家族名義の口座が多数、登録されていたことが発覚。公金受取口座は本人名義と決まっているが、子どもに代わって親の口座や家族で使用している口座を登録した事例が相次いでいる。 5日の参院特別委員会で河野氏は「給付先の口座名が本人と違っていると、(公金が)給付できない」として、本人名義の口座に変更するよう呼びかけたが、「何を今更」だ。公金受取口座の登録を促進する新制度を盛り込んだ改正マイナンバー法などの関連法が2日に参院本会議で成立。それ以前に問題を把握していたのか。河野氏は詳しい経緯をつまびらかにしない。 さらに河野氏は「(公金受取口座を)赤の他人に紐付けすることができるかといえば、それはできる」とシレッと肯定。なりすまし犯罪を誘発する恐れがあるにもかかわらず、「(公金受取口座の登録は)本人の操作によるものであるということを前提に、特別な制御はしていない」(デジタル庁の楠正憲統括官)というから、ムチャクチャだ。再発防止に向けた道筋も不透明だ。 本人ではない家族名義の登録は何件あるのか。松野官房長官が5日の会見で「件数や調査の見通しはデジタル庁に聞いてもらいたい」と言うと、所管大臣の河野氏は「同一口座に複数の人が紐付けられていて名字が同じだということは分かっておりますが、その中の事情については分かりません」などとノラリクラリ。DV夫が別居中の妻の給付をかすめ取る恐れだって否定できないのに、「よく分からん」とはいくら何でもお粗末すぎる』、「河野氏は「(公金受取口座を)赤の他人に紐付けすることができるかといえば、それはできる」とシレッと肯定。なりすまし犯罪を誘発する恐れがあるにもかかわらず、「(公金受取口座の登録は)本人の操作によるものであるということを前提に、特別な制御はしていない」・・・というから、ムチャクチャだ・・・本人ではない家族名義の登録は何件あるのか。松野官房長官が5日の会見で「件数や調査の見通しはデジタル庁に聞いてもらいたい」と言うと、所管大臣の河野氏は「同一口座に複数の人が紐付けられていて名字が同じだということは分かっておりますが、その中の事情については分かりません」などとノラリクラリ」、「河野氏」の無責任さと不誠実ぶりには全く腹が立つ。
・『「国民がこしらえたニンジン」エサに普及促進  デジタル庁は家族名義の口座登録の動機に注意を払っていないが、ネットにあがった理由は「子どもの口座開設に手間がかかる」や「家族への給付を一元的に管理したい」などさまざまだ。加えて、マイナカードがあれば0歳児でも公金受取口座に登録可能。登録すれば、9月末まで期限延長された7500円相当のマイナポイントを受け取れる。親がポイント欲しさに、子どものカードに自分の口座を紐付けるケースが横行した可能性もある。 「小さな子どもにもポイントを付与する仕組みですから、ポイント欲しさに家族内で同じ親名義の口座登録が多発する事態はある程度、予想できたはず。そもそも、カードを取得したくない人もいるのに、ポイントという『ニンジン』を鼻先にブラ下げて普及を促進すること自体、違和感が拭えません。ポイント付与といっても原資は血税。いわば『国民がこしらえたニンジン』です。保険証との一体化で実質的に取得を強制するのであれば、普及促進目的のポイント事業は一体何だったのか。このムダを説明すべきです」(ITジャーナリスト・井上トシユキ氏) マイナポイントやテレビCMなど普及促進事業につぎ込まれた血税は2兆円超。カード普及を急ぐあまり、「ポイント欲しさ」の多少のインチキに目をつむった結果が、今回の事態を招いたのではないのか。バカげたカード普及策には、もうウンザリだ』、「マイナポイントやテレビCMなど普及促進事業につぎ込まれた血税は2兆円超。カード普及を急ぐあまり、「ポイント欲しさ」の多少のインチキに目をつむった結果が、今回の事態を招いたのではないのか。バカげたカード普及策には、もうウンザリだ」、同感である。「つぎ込まれた血税は2兆円超」には改めて怒りを覚えた。

第三に、6月10日付け日刊ゲンダイ「マイナンバー事業1兆円に群がる政官業“腐敗”の三角形…相次ぐトラブルの裏に巨額利権の甘い蜜」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/324278
・『絵に描いたような政・官・業の癒着ぶりだ。約13万件もの不適切な公金受取口座のひもづけが発覚するなどマイナンバー事業はトラブル続出。デメリットだらけの国民を尻目に巨額利権に群がり甘い蜜を吸う連中がいる。 マイナカード発行など事業の中核を担うのは「地方公共団体情報システム機構(J-LIS)」。国と地方公共団体の共同運営法人で、副理事や理事は所管の総務省出身者が務める。2014年の設立当初から、即戦力の民間人材を活用する名目で、特定の企業からの出向者が多数在籍。出向元となっているのは、マイナンバーの制度設計に深く関与した電機・通信などの大手企業だ。 制度設計を担ったのは、11年に内閣官房に創設された「情報連携基盤技術ワーキンググループ(WG)」だ。メンバー21人のうち、13人は民間企業の管理職が務めた。 NTTコミュニケーションズ、NTTデータ、NEC、日立製作所──当時、WGに名を連ねた大企業が、現在は機構の出向元となり、「出向者が4割を占める部署もある」(機構関係者)というほど密接な関係を築き上げている』、「マイナカード発行など事業の中核を担うのは「地方公共団体情報システム機構(J-LIS)」。国と地方公共団体の共同運営法人で、副理事や理事は所管の総務省出身者が務める。2014年の設立当初から、即戦力の民間人材を活用する名目で、特定の企業からの出向者が多数在籍。出向元となっているのは、マイナンバーの制度設計に深く関与した電機・通信などの大手企業だ。 制度設計を担ったのは、11年に内閣官房に創設された「情報連携基盤技術ワーキンググループ(WG)」だ。メンバー21人のうち、13人は民間企業の管理職が務めた。 NTTコミュニケーションズ、NTTデータ、NEC、日立製作所──当時、WGに名を連ねた大企業が、現在は機構の出向元となり、「出向者が4割を占める部署もある」・・・というほど密接な関係」、なるほどここが「マイナンバーの制度設計に深く関与した電機・通信などの大手企業」の集合体のようだ。
・『契約額9割独占の見返りに…  問題は出向社員が在籍しながらも、機構側が出向元企業への受注を制限していないことだ。本紙は、機構が公表した昨年度の契約実績を分析。すると、驚愕の「お手盛り」実態が見えてきた。 発注事業211件(計約783億円)の受注先には前出の大手4社がズラリ。同じくWGに参加した富士通、NTT、セコム、日本IBMを含めると計137件、全体の約64.9%を請け負っていた(関連会社、共同事業体含む)。多くは競争を経ない随意契約で、受注件数に占める割合は実に75.9%。契約額は計約718億円に達し、全体の9割を優に超える。 制度設計段階から関わったホンの一握りの大企業が、マイナンバー事業を独占とはムチャクチャだが、その見返りだろう。受注先には幹部官僚が天下りしている。 21年4月から22年12月の間にNTT、富士通、日立、NEC、セコムの本社や関連企業には、総務省など関係省庁OB26人が再就職していた。加えて日立、NTTデータ、NECは関連企業を巻き込み、自民党の政治資金団体「国民政治協会」にセッセと献金。その額は21年までの3年間で計2億5750万円に上る。 ランニングコストに毎年、数百億円もの税金が投じられ、事業規模はトータル1兆円ともいわれるマイナンバー事業。河野デジタル相は腐った癒着構造に切り込めるのか。得意の「突破力」の真価が問われる』、「発注事業211件(計約783億円)の受注先には前出の大手4社がズラリ。同じくWGに参加した富士通、NTT、セコム、日本IBMを含めると計137件、全体の約64.9%を請け負っていた・・・多くは競争を経ない随意契約で、受注件数に占める割合は実に75.9%。契約額は計約718億円に達し、全体の9割を優に超える」、「制度設計段階から関わったホンの一握りの大企業が、マイナンバー事業を独占とはムチャクチャだが、その見返りだろう。受注先には幹部官僚が天下りしている。 21年4月から22年12月の間にNTT、富士通、日立、NEC、セコムの本社や関連企業には、総務省など関係省庁OB26人が再就職していた。加えて日立、NTTデータ、NECは関連企業を巻き込み、自民党の政治資金団体「国民政治協会」にセッセと献金。その額は21年までの3年間で計2億5750万円に上る。 ランニングコストに毎年、数百億円もの税金が投じられ、事業規模はトータル1兆円ともいわれるマイナンバー事業。河野デジタル相は腐った癒着構造に切り込めるのか。得意の「突破力」の真価が問われる』、「自民党」にもしっかり「献金」しているようだ。とすれば、「河野デジタル相は腐った癒着構造に切り込」む気などさらさらなさそうだ。

第四に、6月11日付け日刊ゲンダイ「河野デジタル大臣はトンズラ準備? マイナンバーにトラブル続出「私を処分」答弁の裏の計算」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/324320
・『さんざん自治体や個人に責任を転嫁してきた河野太郎デジタル相が、ようやく自分の責任を認めた。 マイナンバー関連のトラブルが相次いでいる事態を受け、9日参院特別委員会で、「当然、責任は大臣たる私にある。なんらかの形で私に対する処分をやらなければいけないだろうと思う」と答弁した。トラブルが止まらず、自らを“処分”せざるを得なくなった形だ。なにしろ、マイナンバー関連のトラブルは拡大する一方だ。 本人ではない家族名義の口座の登録は13万件に達し、赤の他人の口座がマイナンバーに誤登録されていたケースも748件確認されている。しかも、家族名義については、デジタル庁は2月に問題を把握していたのに放置していたのだから無責任にも程があるという話だ。 「マイナ保険証」でもトラブルが続出。医療機関が保険資格を確認できず、患者がいったん10割負担を請求されるケースが、少なくとも533件も発生。 さらに、9日は「マイナポータル」で、他人の年金情報を閲覧できるトラブルがあったことも新たに発覚している』、「本人ではない家族名義の口座の登録は13万件に達し、赤の他人の口座がマイナンバーに誤登録されていたケースも748件確認」、「「マイナ保険証」でもトラブルが続出。医療機関が保険資格を確認できず、患者がいったん10割負担を請求されるケースが、少なくとも533件も発生」、「河野太郎デジタル相」が、「「当然、責任は大臣たる私にある。なんらかの形で私に対する処分をやらなければいけないだろうと思う」と答弁したのは当然だ。
・『辞めたくても岸田首相が認めない?  どんな“処分”を自分に下すのかは明らかにしなかったが、ネット上では、<最低でも大臣は辞任すべき。トラブルを知りつつゴリ押しして個人情報はダダ漏れ、確認と修正に年単位の時間がかかるとか話にならない>などと、批判が噴出している。河野大臣本人も辞任したいと考えているフシがあるという。 「マイナンバーカードのトラブルは簡単に終息しないのではないか。拡大していく恐れがある。実際、毎日のように新しい問題が発生しています。少なくとも、このままでは健康保険証の廃止は無理でしょう。河野大臣も、大臣を続けていたら火ダルマになる、いま辞任した方が傷が小さいと計算している可能性があります」(自民党関係者) しかし、岸田首相は“河野辞任”を認めないのではないか、とみられている。 「岸田首相は、マイナンバー関連のトラブルが起きても困っていないと思う。それどころか、内心、ニンマリしているに違いない。問題が大きくなればなるほど、総裁選のライバルだった河野太郎に批判の矛先が向かうからです。ライバルを完全に潰せる。高市大臣が国会で集中砲火を浴びていた時も、岸田首相は困っていませんでしたからね」(政界関係者) マイナンバーをゴリ押しした河野大臣はもちろん、岸田首相も責任を取るべきだ』、「「マイナンバーカードのトラブルは簡単に終息しないのではないか。拡大していく恐れがある」、「「岸田首相は、マイナンバー関連のトラブルが起きても困っていないと思う。それどころか、内心、ニンマリしているに違いない。問題が大きくなればなるほど、総裁選のライバルだった河野太郎に批判の矛先が向かうからです。ライバルを完全に潰せる」、「首相」が問題終息よりも、「ライバル」つぶしを重視しているとは考えたくないが、案外、真相を突いているのかも知れない。
タグ:マイナンバー制度 (その4)(「マイナ保険証」トラブル続発が示すポンコツ実態 別人情報「ひも付け」など法案成立前に問題噴出、マイナ公金受取登録「家族口座多数」でデタラメ横行…ポイント“エサ”に注ぎ込んだ血税2兆円、マイナンバー事業1兆円に群がる政官業“腐敗”の三角形…相次ぐトラブルの裏に巨額利権の甘い蜜、河野デジタル大臣はトンズラ準備? マイナンバーにトラブル続出「私を処分」答弁の裏の計算) 東洋経済オンライン「「マイナ保険証」トラブル続発が示すポンコツ実態 別人情報「ひも付け」など法案成立前に問題噴出」 「「マイナンバー法等一括法案」の・・・成立間際になって、制度の信頼を揺るがすトラブルが相次いで表面化」、「「マイナ保険証」をめぐり、別人の情報を間違って本人の資格情報・・・にひも付ける「誤登録」が2021年10月から2022年11月までの1年2カ月間に7000件以上見つかった」、 「サラリーマンなどが新たに健康保険に加入した場合、協会けんぽや健康保険組合などの保険者が本人の氏名や生年月日などの資格情報をデータベースに登録する。その際、本人のマイナンバーがわからない場合、住民基本台帳で本人の情報を照会する。 厚労省によれば、入手したマイナンバーの番号が間違っていることに気付かないまま健保組合が入力し、資格登録をしたことが原因」、信じられないような基本的なミスが相次いでいる。 「うち約3割で保険証の内容とオンライン資格確認で出力された内容が合致しない」・・・「マイナカードで確認したところ、『該当資格なし』とコンピューター画面に表示されるケースが相次いでいる。その場合、決められたルールに従って患者さん本人に保険証を見せてもらい、そちらに記された内容が正しいと判断して所定の負担割合で医療費を支払ってもらっている」という。 そして、井上院長が気を揉んでいるのが「2024年秋以降」だ。 法律の成立によって従来の保険証が廃止された場合、マイナカードによる資格確認に頼らざるをえなくなる。その際、オンライン資格確認で『該当資格なし』となった場合、正確な資格内容がわからないので、窓口でいったん医療費全額(10割負担)を支払ってもらわなければならなくなる。そうなると患者さんとのトラブルは避けられず、大混乱になりかねない」』、「『該当資格なし』とコンピューター画面に表示されるケースが」、「約3割」とはかなりあるようだ。このままでは、「20 24年秋以降」には事態は一層深刻化する。 「「該当資格なし」と表示される問題について・・・「加入者が(転職などで)保険者を異動した場合の(登録の)タイムラグが考えられる」と説明。 厚労省はこうした問題を踏まえ、これまで保険者によるデータ登録の期間の定めがなかったのを、「保険者によるデータ登録を5日以内とする」というルールに改めるという。ただ、「依然としてタイムラグがあることに変わりはなく、リアルタイムで正確に資格を確認しようとすること自体に無理がある」、「リアルタイムで正確に資格を確認しようと」したのは、何故なのだろ。お粗末な仕組みだ。 日刊ゲンダイ「マイナ公金受取登録「家族口座多数」でデタラメ横行…ポイント“エサ”に注ぎ込んだ血税2兆円」 「河野氏は「(公金受取口座を)赤の他人に紐付けすることができるかといえば、それはできる」とシレッと肯定。なりすまし犯罪を誘発する恐れがあるにもかかわらず、「(公金受取口座の登録は)本人の操作によるものであるということを前提に、特別な制御はしていない」・・・というから、ムチャクチャだ・・・本人ではない家族名義の登録は何件あるのか。松野官房長官が5日の会見で「件数や調査の見通しはデジタル庁に聞いてもらいたい」と言うと、所管大臣の河野氏は「同一口座に複数の人が紐付けられていて名字が同じだということは分かっており ますが、その中の事情については分かりません」などとノラリクラリ」、「河野氏」の無責任さと不誠実ぶりには全く腹が立つ。 「マイナポイントやテレビCMなど普及促進事業につぎ込まれた血税は2兆円超。カード普及を急ぐあまり、「ポイント欲しさ」の多少のインチキに目をつむった結果が、今回の事態を招いたのではないのか。バカげたカード普及策には、もうウンザリだ」、同感である。「つぎ込まれた血税は2兆円超」には改めて怒りを覚えた。 日刊ゲンダイ「マイナンバー事業1兆円に群がる政官業“腐敗”の三角形…相次ぐトラブルの裏に巨額利権の甘い蜜」 「マイナカード発行など事業の中核を担うのは「地方公共団体情報システム機構(J-LIS)」。国と地方公共団体の共同運営法人で、副理事や理事は所管の総務省出身者が務める。2014年の設立当初から、即戦力の民間人材を活用する名目で、特定の企業からの出向者が多数在籍。出向元となっているのは、マイナンバーの制度設計に深く関与した電機・通信などの大手企業だ。 制度設計を担ったのは、11年に内閣官房に創設された「情報連携基盤技術ワーキンググループ(WG)」だ。メンバー21人のうち、13人は民間企業の管理職が務めた。 NTTコミュニケーションズ、NTTデータ、NEC、日立製作所──当時、WGに名を連ねた大企業が、現在は機構の出向元となり、「出向者が4割を占める部署もある」・・・というほど密接な関係」、なるほどここが「マイナンバーの制度設計に深く関与した電機・通信などの大手企業」の集合体のようだ。 「発注事業211件(計約783億円)の受注先には前出の大手4社がズラリ。同じくWGに参加した富士通、NTT、セコム、日本IBMを含めると計137件、全体の約64.9%を請け負っていた・・・多くは競争を経ない随意契約で、受注件数に占める割合は実に75.9%。契約額は計約718億円に達し、全体の9割を優に超える」、「制度設計段階から関わったホンの一握りの大企業が、マイナンバー事業を独占とはムチャクチャだが、その見返りだろう。受注先には幹部官僚が天下りしている。 21年4月から22年12月の間にNTT、富士通、日立、NEC、セコムの本社や関連企業には、総務省など関係省庁OB26人が再就職していた。加えて日立、NTTデータ、NECは関連企業を巻き込み、自民党の政治資金団体「国民政治協会」にセッセと献金。その額は21年までの3年間で計2億5750万円に上る。 ランニングコストに毎年、数百億円もの税金が投じられ、事業規模はトータル1兆円ともいわれるマイナンバー事業。河野デジタル相は腐った癒着構造に切り込めるのか。得意の「突破力」の真価が問われる』、 「自民党」にもしっかり「献金」しているようだ。とすれば、「河野デジタル相は腐った癒着構造に切り込」む気などさらさらなさそうだ。 日刊ゲンダイ「河野デジタル大臣はトンズラ準備? マイナンバーにトラブル続出「私を処分」答弁の裏の計算」 「本人ではない家族名義の口座の登録は13万件に達し、赤の他人の口座がマイナンバーに誤登録されていたケースも748件確認」、「「マイナ保険証」でもトラブルが続出。医療機関が保険資格を確認できず、患者がいったん10割負担を請求されるケースが、少なくとも533件も発生」、「河野太郎デジタル相」が、「「当然、責任は大臣たる私にある。なんらかの形で私に対する処分をやらなければいけないだろうと思う」と答弁したのは当然だ。 「「マイナンバーカードのトラブルは簡単に終息しないのではないか。拡大していく恐れがある」、「「岸田首相は、マイナンバー関連のトラブルが起きても困っていないと思う。それどころか、内心、ニンマリしているに違いない。問題が大きくなればなるほど、総裁選のライバルだった河野太郎に批判の矛先が向かうからです。ライバルを完全に潰せる」、 「首相」が問題終息よりも、「ライバル」つぶしを重視しているとは考えたくないが、案外、真相を突いているのかも知れない。
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健康(その25)(「7年間のうつ」を脱した医師のシンプルな食事法 気合いだけで「自分」を変えるのは簡単ではない、屈強な自衛官でも 心は壊れる。うつで地獄を見た元自衛官2人が話す、本当に役に立つメンタルスキル【前編】、五月病 六月病にも効く「心の予防注射」とは? うつで地獄を見た元自衛官2人が話す 本当に役に立つメンタルスキル【後編】、日本人が知っているようで知らない 健康診断の「本当の話」…実は「意味がない数値」がほとんど) [生活]

健康については、本年5月22日に取上げた。今日は、(その25)(「7年間のうつ」を脱した医師のシンプルな食事法 気合いだけで「自分」を変えるのは簡単ではない、屈強な自衛官でも 心は壊れる。うつで地獄を見た元自衛官2人が話す、本当に役に立つメンタルスキル【前編】、五月病 六月病にも効く「心の予防注射」とは? うつで地獄を見た元自衛官2人が話す 本当に役に立つメンタルスキル【後編】、日本人が知っているようで知らない 健康診断の「本当の話」…実は「意味がない数値」がほとんど))である。

先ずは、本年6月4日付け東洋経済オンラインが掲載した精神科医・産業医の宮島 賢也氏による「「7年間のうつ」を脱した医師のシンプルな食事法 気合いだけで「自分」を変えるのは簡単ではない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/675914
・『ストレスのせいで常に気が重かったり、よく眠れなかったり、やる気が出なかったり、食欲がなかったり――特にこの時期は、梅雨のジメジメした天気が弱った心に追い打ちをかけます。「そんなときは無理して自分を変えようとするより、普段の食事を変えることがメンタル向上のきっかけになります」。そう言うのは、自らも7年間のうつに苦しみ、それを食事で克服した精神科医の宮島賢也さん。なぜ、食事が心の不調改善のカギとなったのか。宮島さんの著書『メンタルは食事が9割』より、本文を一部引用・再編集してご紹介します』、「精神科医の宮島賢也」氏が「自らも7年間のうつに苦しみ、それを食事で克服した」とは興味深そうだ。
・『気合いでメンタルは強くならない 私は産業医という立場で、企業の皆さんの健康増進のお手伝いをさせてもらっています。そこで日々感じるのは、誰もが多かれ少なかれ心の不調を感じているということ。なんとなく落ち込みがちだったり、やる気が出なかったり、疲れがなかなか取れなかったり、よく眠れなかったり、外出して人と会う気になれなかったり、とにかく皆さん、心に元気がないのです。 心の不調の原因になるのがストレスです。ストレスになるものは、どこにでもあります。なかでも人間関係から生まれるストレスや、リストラや転勤、身近な人の死など環境の変化から生まれるストレスは、メンタルに大きく影響します。 ところが、世の中には、同じストレスがかかっても、メンタルに不調をきたす人と、そうでない人がいます。 たとえば、長年勤めていた会社でリストラにあい、職を失ったとします。それを契機に、うつに足を踏み入れてしまう人と、そうならない人がいます。 この違いは、いったい何なのでしょうか? この場合は、リストラにあったことで、次に希望が持てるか持てないか、次の目標が持てるか否かで道が分かれます。 つまり、物事をどうとらえるか、自分をどう見つめるか、そうした心のあり方によって、うつになるかどうかが決まるというわけです。リストラにあったことで、「もう自分はダメだ、未来がない」と思えば、心身の状態はうつへ向かいます。 逆に、リストラにあったことを「転職のチャンスが来た」「新たな自分にチャレンジしてみよう」と思えれば、うつに陥ることはありません。 私の場合は、前者。医師としての自分に自信が持てず、診察するときはいつもびくびく、将来に向けては不安だらけ。そんな心の状態が、7年間に及ぶうつへの引き金になりました。) それなら、物事をネガティブにとらえがちな心を変えればいいじゃないか、ということになりますが、それがとても難しいのです。心の不調に悩む人は、完璧主義だとか、断れない性格だとか、まじめなタイプだとか、人の目が気になるタイプだとかいわれますが、何年もかけてつくってきた「自分」を、気合いだけで変えるのは簡単ではありません。 といって、ストレスそのものを排除できるかというと、それも難しいものです。人間関係のストレスには相手がいるので自分だけでは解決できませんし、リストラや身近に起きる不幸などは、自分ではどうすることもできません。 私の場合、その場の気持ちを抑えてくれる薬に頼りましたが、原因を解決できていないので、うつは一向に治りません。 そんな私でしたが、うつからすっかり抜け出すことができました。 性格は変わりませんし、仕事も、生活環境も、人間関係も、まったく同じでしたが、変えたものが1つだけありました。 それは「食事」です』、「物事をどうとらえるか、自分をどう見つめるか、そうした心のあり方によって、うつになるかどうかが決まるというわけです。リストラにあったことで、「もう自分はダメだ、未来がない」と思えば、心身の状態はうつへ向かいます。 逆に、リストラにあったことを「転職のチャンスが来た」「新たな自分にチャレンジしてみよう」と思えれば、うつに陥ることはありません。 私の場合は、前者。医師としての自分に自信が持てず、診察するときはいつもびくびく、将来に向けては不安だらけ。そんな心の状態が、7年間に及ぶうつへの引き金になりました」、「7年間に及ぶうつ」とはずいぶん長く大変だったろう。
・『心と体は食べたものでできている  心の不調と食事。一見、関連があるように思えないかもしれません。でも、私たちの体は食べたものでつくられていて、食べることで生命活動を維持しています。心の動きや脳の活動も、もちろん食べることによって支えられています。考えてみると、メンタルと食事に関連がないわけがないのです。 そのきっかけを与えてくれたのが、アメリカの経営コンサルタントであるジェームス・スキナー氏の『成功の9ステップ』という成功哲学の本の中で紹介されていた「ナチュラルハイジーン」という食事法と、もう一つ、医師の甲田光雄先生が考案した「西式甲田療法」という健康法です。 これらの理論を参考に生まれたのが、私が提案する「宮島式食事法」です。ポイントはいくつかあるのですが、まず私が取り組んだのは「体に負担をかけない食事を心がける」ことでした。 食べることは、意外に体を疲れさせる行為です。こう言うと、逆では?と思われるかもしれません。疲れを取って元気になるために食べるのでは、ということです。確かに、私たちの体は食べ物からの栄養を活動のエネルギーに換えています。 しかし、栄養を体に行き渡らせるには消化吸収が必要です。その前段階として食べ物の分解も必要です。つまり、食べることは、胃腸や肝臓など消化器官に負担をかける行為でもあるのです。 体は、胃腸や肝臓に頑張って働いてもらうために、大量の血液を送らなければなりません。それと同時に、消化酵素など大量の体内酵素も動員されます。酵素は栄養の消化吸収、そして分解と、すべてにわたって必要な体内物質だからです。消化吸収の担い手は、この酵素といってもいいと思います。 食べることは、消化器官からすれば一大イベントで、かなりの活動エネルギーを必要とします。だから、食べているときより食べた後のほうが疲れます。一説によれば、三度の食事はフルマラソンに匹敵するカロリーを消費するともいわれます。毎日フルマラソンを走れば、それは疲れると思いませんか?) そこで、胃腸に負担をかけない食事として私が実践したのは、「果物と生野菜中心の食生活」です。 ご存じの人も多いかもしれませんが、生の食べ物には酵素が含まれています。そのため、生の食べ物を食べると酵素を補うことになり、胃腸は援軍を得て重労働から解放されます。ですから、体があまり疲れなくなります。 疲れなくなると身軽な感じになって、動くのが億劫でなくなります。イライラすることも少なくなり、食後もスムーズに仕事に移れます。イライラが少なくなれば、人との衝突も減るでしょうし、人間関係にもよい影響が出てきます。 それが、心の不調の原因となるストレスを減らすことにつながるのです』、「食べることは、消化器官からすれば一大イベントで、かなりの活動エネルギーを必要とします。だから、食べているときより食べた後のほうが疲れます。一説によれば、三度の食事はフルマラソンに匹敵するカロリーを消費するともいわれます」、「胃腸に負担をかけない食事として私が実践したのは、「果物と生野菜中心の食生活」です・・・生の食べ物には酵素が含まれています。そのため、生の食べ物を食べると酵素を補うことになり、胃腸は援軍を得て重労働から解放されます。ですから、体があまり疲れなくなります。 疲れなくなると身軽な感じになって、動くのが億劫でなくなります。イライラすることも少なくなり、食後もスムーズに仕事に移れます。イライラが少なくなれば、人との衝突も減るでしょうし、人間関係にもよい影響が出てきます。 それが、心の不調の原因となるストレスを減らすことにつながるのです」、「「果物と生野菜中心の食生活」は大きな効果があったようだ。
・『食事の見直しは心が回復するきっかけ  私は、とにかく野菜を生で食べました。というより、野菜は「生でかじる」感覚です。普通は加熱して調理するごぼうでも、生でガリガリ食べました。 リンゴ、バナナ、オレンジ、キウイなど、果物もお腹がすいたら食べるようにしていました。宮島式食事法では、生野菜と果物ならいくら食べてもOKなのです。 食生活を改めると、日ごとに体が軽くなってくるのを感じるはずです。私の場合は、2週間ほどで明らかな体調の変化がありました。 まず、やせてきました。当時20代だったというのに、無駄なぜい肉が全身を覆って、動くのが億劫でした。それがスッキリし始めて、なんと2カ月で20㎏も減量。ダイエットが目的だったわけではありませんが、自分でも驚きました。 そのほかにも、便通がよくなったり、朝スッキリ起きられるようになったり、肌がツヤツヤしてきたり。体の変化にともない、心までらくになってきて、心配や不安を感じることが減り、全身にエネルギーが満ちてくるのを実感しました。そして、最終的にはうつから抜け出すことができました。 実は、「変わったかも」という感覚が、メンタルが上向くためにはとても重要なのです。私自身の経験からも言えますが、変わったという気づきが得られることで心の不調は一気に快方に向かうケースが多いからです。 私は、うつに苦しんだ7年間、ずっと抗うつ薬を飲み続けましたが、自分のうつも患者さんのうつも治せませんでした。それが、食事を変えることでうつを克服できたのです。 食事の内容を変えると、体が変化していきます。同時に、それまでの食事が変わることで、食べ物に対する見方、食事に対する考え方も変わっていきます。 こうした「見方の変更」「考え方の変更」が、メンタルを上向かせる手助けをしてくれます。それまで自分を苦しめていた考え方から解放されると、心がらくになっていきます。たかが食事ですが、大きな自信になります。 生き方や働き方はすぐには変えられなくても、食事なら今日から変えられます。まずは、できる範囲で2週間から。いや、1週間でもかまいません。ほんの少し食事を変えるだけで、体が変わります。そして、少しずつ心も変わっていくことを実感できるはずですよ』、「私は、うつに苦しんだ7年間、ずっと抗うつ薬を飲み続けましたが、自分のうつも患者さんのうつも治せませんでした。それが、食事を変えることでうつを克服できたのです」、「なんと2カ月で20㎏も減量・・・便通がよくなったり、朝スッキリ起きられるようになったり、肌がツヤツヤしてきたり。体の変化にともない、心までらくになってきて、心配や不安を感じることが減り、全身にエネルギーが満ちてくるのを実感しました。そして、最終的にはうつから抜け出すことができました」、「うつ」を何故克服できたのかについて「精神科医」としての医学的見方も知りたいところだ。

次に、6月6日付けAERAdot.「屈強な自衛官でも、心は壊れる。うつで地獄を見た元自衛官2人が話す、本当に役に立つメンタルスキル【前編】」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dot/2023053100015.html?page=1
・『4月から新しい環境で生活をスタートさせた人も多いでしょう。新生活に慣れた頃にやってくるのが、五月病。最近では六月病という言葉も使われます。 元陸上自衛隊のメンタル教官で、定年退官後はNPO法人メンタルレスキュー協会理事長を務め、数多くのカウンセリング経験を持ち、新書『自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れをとる技術』の著者の下園壮太さん。陸上自衛隊の幹部自衛官だったときに、上司のパワハラでうつとなり地獄を見て、その後、退官して現在は航空業界で働くわびさん。その際の経験を記した著書『メンタルダウンで地獄を見た元エリート幹部自衛官が語る この世を生き抜く最強の技術』は、各方面で反響を呼びました。 自衛官の先輩、後輩でもある二人が、自身の自衛官時代のうつ体験、そしてそこからの回復の道のりについて、語りあいました』、「うつで地獄を見た元自衛官2人」による対談とは興味深そうだ。
・『自衛隊でまず、叩きこまれること  わび:下園先生は防衛大学を何期に卒業されたのですか。 下園:26期です。 わび:私は一般の大学を卒業してから陸上自衛隊に入隊したのですが、下園先生の25年ほど後輩になります。 下園:わびさんも、入隊後に「陸上自衛隊幹部候補生学校」で学んだんですよね。鍛えられる場所だったでしょう。 わび:のんびりとした大学生活を送っていたので、幹部候補生学校の規律の厳しさには面食らいました。起床ラッパで目を覚ましたら3分以内に着替えて外で整列しないといけないわけですから。印象的だったのが半長靴(はんちょうか)という隊員用のブーツを毎日ピカピカに磨かなければならず、できなければ何度でもやり直しになることでした。 下園:大学時代から全寮制の生活を送ってきた防大卒でも厳しいと感じるので、一般大卒の方にはなおさらだったでしょう。そうしたしきたりを通じて、それまでの価値観をいったん壊し、自衛隊の流儀をたたき込みながら、メンタルの強さを育んでいくのが自衛隊の流儀ですね。戦場にいることを想定した組織ですから、普通の日常生活とは違う感覚、意識を植え付けます。) 戦場にいるときに、上官の命令にいちいち、「これをやる意味はあるのですか?」などと反論していたら、その間に敵にやられてしまうかもしれないので、まずは上官の命令に即座に動けるような訓練をするわけです。 わび:自衛隊で教わったことで今も役に立っていることはたくさんありますが、「簡明を基調とせよ」というのも心に刻まれています。上官に報告するときに、モタモタと話していると、「結論から言え。グダグダ話して、結論を言わないうちにお前が敵にやられたら、他に報告する人間はいないんだぞ」と叱られました。 極端に聞こえるかもしれませんが、言われてみれば、これが戦場の現実です。それ以来、口頭の報告でも文章でも、簡明を基調とし、結論から伝えることを習慣にしています。 下園:その考え方は、自衛隊以外の会社でも当てはまるものですね。自衛隊というのは、シビアな戦場を生き抜くことを基本とした行動や考え方が蓄積されていますので、その他の世界でも有用なことがたくさんあります』、「幹部候補生学校の規律の厳しさには面食らいました」、「防大卒でも厳しいと感じるので、一般大卒の方にはなおさらだったでしょう。そうしたしきたりを通じて、それまでの価値観をいったん壊し、自衛隊の流儀をたたき込みながら、メンタルの強さを育んでいくのが自衛隊の流儀ですね。戦場にいることを想定した組織ですから、普通の日常生活とは違う感覚、意識を植え付けます。 戦場にいるときに、上官の命令にいちいち、「これをやる意味はあるのですか?」などと反論していたら、その間に敵にやられてしまうかもしれないので、まずは上官の命令に即座に動けるような訓練をするわけです」、確かにその通りだ。
・『屈強な自衛官だからといって、メンタルが強いわけではない  わび:本当にそう思います。ただ、だからといって、自衛官がみんな絶対に壊れない強靱なメンタルを持っているのかというと、そういう訳ではありません。 下園:そうですね。自衛官は、自分の身体に自信を持っている人が多いです。だからこそ、ちょっとした病気をしたり、ケガで思うように動けなくなったりしたときに、ズンと落ち込んでしまうことがあります。 有名な人でいえば、東京オリンピックのマラソンで銅メダルを獲得した円谷幸吉さん。陸上自衛隊の幹部候補生学校の登山走大会では、彼が残した記録が今でも破られていないはずです。 そんな円谷さんも、持病の腰痛が悪化し、理想となる走りができなくなり、メキシコ五輪に向けての訓練中に自死してしまったわけです。 そこから読み取れるのは、1つのことに全集中してしまうよりも、複数のより所を持つべきであるということ。それも、「静」と「動」、身体を動かすことと、静かにできることの両方を持つことをオススメしています。) わび:私自身もメンタルを壊したことがあるので、よくわかります。「剛健」であれという幹部候補生学校の理念に染まった私は、学級委員的なポジションである「自律実践係」に立候補します。幹部のあるべき姿を追いかけ、「意識高い系」の幹部自衛官としてキャリアをスタートしました。 その後、師団司令部から幹部上級課程(AOC)を経て、方面総監部へと異動したのですが、そこでうつになったんです。 下園:師団司令部と方面総監部、それに陸上幕僚監部を加えた3つの部署は業務内容の高度さや多忙さ、緊張感などで過酷な部署なんですよ。私も師団司令部で任務に当たっていたときは辞めたくなりました(笑)。 わび:師団司令部の仕事は非常に高度で緊張感もありましたが、人間関係に恵まれ、明るく前向きに取り組むことができました。私生活も順調で、AOCを修了したころに双子に恵まれました。転落のきっかけとなったのは、方面総監部への転属です。そこで、パワハラにあったんです』、「転落のきっかけとなったのは、方面総監部への転属です。そこで、パワハラにあったんです」、どんなことがあったのだろう。
・『パワハラで身も心もぼろぼろに  下園:どんなパワハラでしたか。 わび:嫌がらせと理不尽な叱責です。報告や連絡を後回しにされるのは当り前。仕事のことばかりでなく、弁当の中身や子どもの名前などのプライベートについても言いがかりをつけられました。 常に「怒られる」ことが頭から離れず、缶コーヒーの種類も選べないほどになってしまいました。どの缶コーヒーなら怒鳴られずに済むのかなって考えてしまって……。 覚えていないのですが、ある日、職場で叫びながら自分のデスクの中に潜っていたようで、そのまま病院に運ばれました。「過労状態」「うつ病」「不安神経症」と診断を受け休職することになりました。 下園:アメリカの学者であるホームズとレイがまとめた、ライフイベントのストレス表があります。様々なライフイベントが心に与えるストレスを数値化して評価するものです(表参照 ※外部配信先では図版などの画像が全部閲覧できない場合があります。図版をご覧になりたい方は、AERA dot.でご覧ください)。) お子さんが生まれたとわびさんはおっしゃっていましたが、家族が増えるという幸せな出来事も、実は心に重圧を与えるものなんです。さらに異動による新しい仕事と労働環境の変化があった。そんな状態の時に、たまたま強烈なパワハラのストレスが加わって、心が悲鳴を上げてしまったのでしょうね。 わび:追い込まれすぎてしまっていて、別の上司に助けを求めたり、担当窓口に相談したりする気力もありませんでした』、「パワハラ・・・嫌がらせと理不尽な叱責です。報告や連絡を後回しにされるのは当り前。仕事のことばかりでなく、弁当の中身や子どもの名前などのプライベートについても言いがかりをつけられました。 常に「怒られる」ことが頭から離れず、缶コーヒーの種類も選べないほどになってしまいました。どの缶コーヒーなら怒鳴られずに済むのかなって考えてしまって……。 覚えていないのですが、ある日、職場で叫びながら自分のデスクの中に潜っていたようで、そのまま病院に運ばれました。「過労状態」「うつ病」「不安神経症」と診断を受け休職することになりました」、「職場で叫びながら自分のデスクの中に潜っていた」とは凄い症状だ。「家族が増えるという幸せな出来事も、実は心に重圧を与えるものなんです。さらに異動による新しい仕事と労働環境の変化があった。そんな状態の時に、たまたま強烈なパワハラのストレスが加わって、心が悲鳴を上げてしまったのでしょうね」、なるほど。
・『メンタルを指導する教官自身がうつになる  下園:私も在職中にうつになったことがあります。でも、言葉は変ですが、わびさんに比べると“恵まれた”うつでした。 1996年に自衛隊初の心理幹部に就任してから、色々な場所に派遣されてカウンセリングをしたり、講演をしたり、最初の著書を執筆したり、家を建てたり、新しい車買ったりと、私も、多数のライフイベントが重なっていたんです。 そんな折、アメリカで「9.11」テロが発生し、よりメンタルヘルスの重要性が認知されるようになりました。張り切った私はより精力的に仕事をしていたのですが、ある講演のときに急に吐き気がして話せなくなって講演を中止して、そのまま倒れてしまったんです。 わび:それは大変ですね。 下園:講演では「誰でもうつになる」と言いながら、自分は絶対にならないという変な自信がありました。でも、まんまとそうなったわけです。 翌日には師団等の幹部約500名を集めた重要な講演があったのですが、それもドタキャンさせてもらいました。私がラッキーだったのは、それを許容できる職場だったことですね。講師役を変わってくれる勇気ある同僚もいたし、メンタルヘルスを担当する部署だったので、休める雰囲気もあったのです。信頼できる精神科のドクターと一緒に活動していたので、すぐに受診し、うつの診断をもらいました。 休養のため1カ月は完全に休みを取り、休み後も業務量を絞って勤務をするうちに、1年ほどで元の状態に戻ることができました。「また壇上で喋れなくなったらどうしよう」という恐怖のあった講演の仕事も、復帰から1年経った頃には再びできるようになりました』、「張り切った私はより精力的に仕事をしていたのですが、ある講演のときに急に吐き気がして話せなくなって講演を中止して、そのまま倒れてしまったんです・・・講演では「誰でもうつになる」と言いながら、自分は絶対にならないという変な自信がありました。でも、まんまとそうなったわけです。 翌日には師団等の幹部約500名を集めた重要な講演があったのですが、それもドタキャンさせてもらいました」、「信頼できる精神科のドクターと一緒に活動していたので、すぐに受診し、うつの診断をもらいました。 休養のため1カ月は完全に休みを取り、休み後も業務量を絞って勤務をするうちに、1年ほどで元の状態に戻ることができました」、環境的にも恵まれていたようだ。
・『うつからの回復には「自信」がポイントになる  わび:復活するきっかけはあったのですか? 下園:やはり「自信」を回復したことでしょう。自信とは、成功を重ねて、「もう失敗しないだろう」という予測ができるようになることだと思うんです。 私の場合は、先ほども言ったように周りの理解のもとに少しずつ仕事をできたことにあると思います。カウンセラーとしてクライアントと面談をする際にも、回復を焦らないように抑えつつ、ある段階からは1歩ずつ挑戦して、「できた」という達成感を積み重ねて自信にするように伝えています。 わび:私の場合も、小さな達成感の積み重ねでメンタルダウンから回復しました。医師の指示に従いながらトレーニングをしたり、神社の御朱印巡りをしたりすることで、職場復帰への自信をはぐくむことができたんです。 下園:それはよかった。 わび:復帰後には、陸上自衛隊のある学校へと異動になるのですが、そこでの自衛官との出会いが私を大きく変えました。「自衛官はかくあるべき」と凝り固まっていた思考から、人生という物事を戦略的、大局的に見る術を獲得できたのです。 その方は高度な知識を持っていましたが、いわゆる出世コースからは外れた人でした。以前の自分でしたら、自分の目標とする自衛官ではないとたいして気にもしなかったかもしれませんが、その生き方は爽快で、組織にとって本当に必要だと思うことは、上司に忖度することなく意見していました。 この方の「人生戦略」とも言える生き方、考え方は、私のメンタルを回復する土台となりました。 下園:わびさんのキャリアを拝見していると、今の言葉は非常に納得できます。AOC(幹部上級課程)では戦術・戦略についても学びます。ただ、一般的な自衛隊幹部は、AOCで学んだことをきちんと理解できる人はそれほど多くないと思っています。なぜなら、現場での経験が少ないから。また、戦場では当たり前の「人の極限の心理状態」を知らないから。) でも、わびさんはAOC入校前から師団司令部に所属し、宮崎県の口蹄疫問題や東日本大震災などの災害派遣の実績もある。さらに幸か不幸かメンタルダウンを経験した。だからこそ、その戦術的・戦略的な考え方を自分のものにできたのだと思います。その知識を生かし、退官後も異なる職場で活躍できている。しっかりとレジリエンス(しなやかな回復力)を身に付けられたのとだと思います。 わび:ありがとうございます』、「うつからの回復には「自信」がポイントになる」、「AOC入校前から師団司令部に所属し、宮崎県の口蹄疫問題や東日本大震災などの災害派遣の実績もある。さらに幸か不幸かメンタルダウンを経験した。だからこそ、その戦術的・戦略的な考え方を自分のものにできたのだと思います。その知識を生かし、退官後も異なる職場で活躍できている。しっかりとレジリエンス(しなやかな回復力)を身に付けられたのとだと思います」、なるほど。
・『うつからの回復は慎重に、でもどこかで勇気も必要になる  下園:もうひとつ、わびさんのキャリアで良いチョイスだと思ったのが、メンタルヘルス回復期の熊本地震の災害派遣です。 わび:私も運命的な出来事だったと考えています。職場復帰から3年ほどの時間が経っていましたが、薬は手放せず、メンタルダウン以前の自信を取り戻せてはいませんでした。その頃に熊本地震が発生しました。 災害派遣に参加することに周囲の人は反対しましたが、熊本は幹部候補生学校を出た後に最初に配属されたところであり、東日本大震災での活動経験もある私にとっては、なかば使命感のような思いから志願したんです。 災害派遣先の南阿蘇司令部は、師団長自らが指揮をとる緊張感のある現場でした。まったく知り合いもおらず、手探りの任務でしたが最終的に「来てもらってよかった」との言葉をいただけたのです。それがすごく自信になりました。 下園:うつからのリカバリーは、とても難しいことです。沈んでしまった心をなんとか引き上げて現実に向き合えるまで持ってこなければならないのですが、どのステージで挑戦するのかのチョイスが大事です。私もカウンセリングで、「焦らないで復帰しよう」と伝えながら、どこかのタイミングで、「勇気を出してやってみよう」と背中を押すようにしています。周囲が反対したにもかかわらず、飛び込んでいったわびさんの勇気は素晴らしいと思います。 ※後編「五月病、六月病にも効く「心の予防注射」とは? うつで地獄を見た元自衛官2人が話す、本当に役に立つメンタルスキル」へつづく』、「災害派遣先の南阿蘇司令部は、師団長自らが指揮をとる緊張感のある現場でした。まったく知り合いもおらず、手探りの任務でしたが最終的に「来てもらってよかった」との言葉をいただけたのです。それがすごく自信になりました」、「どこかのタイミングで、「勇気を出してやってみよう」と背中を押すようにしています」、ちょうど「背中を押す」タイミングだったようだ。

第三に、この続きを、6月6日付けAERAdot.「五月病、六月病にも効く「心の予防注射」とは? うつで地獄を見た元自衛官2人が話す、本当に役に立つメンタルスキル【後編】」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dot/2023053100017.html?page=1
・『4月から新しい環境で生活をスタートさせた人も多いでしょう。新生活に慣れた頃にやってくるのが、五月病。最近では六月病という言葉も使われます。 元陸上自衛隊のメンタル教官で、定年退官後はNPO法人メンタルレスキュー協会理事長を務め、数多くのカウンセリング経験を持ち、新書『自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れをとる技術』の著者の下園壮太さん。陸上自衛隊の幹部自衛官だったときに、上司のパワハラでうつとなり地獄を見て、その後、退官して現在は航空業界で働くわびさん。その際の経験を記した著書『メンタルダウンで地獄を見た元エリート幹部自衛官が語る この世を生き抜く最強の技術』は、各方面で反響を呼びました。 自衛官の先輩、後輩でもある二人が、本当に役に立つメンタルスキル、バーンアウトしてしまう前に知っておいて欲しい「心の予防注射」について、語りあいました。 ※前編「屈強な自衛官でも、心は壊れる。うつで地獄を見た元自衛官2人が話す、本当に役に立つメンタルスキル」よりつづく』、興味深そうだ。
・『「我の健在」──まずは自分が生き残ることが大事  下園:自衛隊の幹部候補生は、戦場で自分たちが生き残ることが大事であることを基礎の基礎として必ず学びます。わびさんの著書でも「我の健在」という表現を紹介してますよね。 わび:おっしゃるとおりです。 下園:戦争というと、敵を倒すことだけが目標であるとイメージする人も多いでしょう。しかし、実際は違います。敵を倒すことだけでなく、その戦いで自分たちが消耗しつくさないようにすることも重視するのです。仮に戦闘で負けても、自分たちが生き残っているかぎり、リベンジのチャンスがあるわけです。 わびさんもそれを習ったはずだと思うのですが、「意識高い系」の志がそれを忘れさせてしまったのでしょうね。 わび:仕事をとにかく全力でと思っていて、その後のこと考慮せずに行動をしていました。だからこそ、精神を激しく消耗してしまったのだと思います。 その後、カウンセリングやメンタルヘルス関連の書籍を読むことなどからも「我の健在」の大切さを再確認し、今でも考え方の礎においています。) 下園:人生は長期戦です。なおさら「我の健在」を重視する戦略が必要となるわけです。自分が犠牲になってもいいから、与えられた課題をとにかく完遂する(したくなる)のが日本人のメンタリティですが、それは短期決戦の考え方です。長期戦の場合、過重なミッションを果たした後は、しっかりとリカバリー期間を設けていかなければいけません。 わび:同感です。戦争でも、相手を倒す「決戦」と、一挙に決着をつけずに戦況を維持する「持久戦」を明確に分けています。現在の私はこの考え方を応用し、スケジュールの全体を把握して、「全力を出すべきポイント」と、「手を抜いて心身を休めるポイント」を見極めて仕事をしています』、「自分が犠牲になってもいいから、与えられた課題をとにかく完遂する(したくなる)のが日本人のメンタリティですが、それは短期決戦の考え方です。長期戦の場合、過重なミッションを果たした後は、しっかりとリカバリー期間を設けていかなければいけません」、その通りなのだろう。
・『「二正面作戦の否定」と「7~3バランス」  下園:自衛隊で学んだことが役に立っているわけですね。 わび:そうですね。だから、同じ自衛隊出身である下園先生と自分の考え方に共通点が多いように感じています。 例えば、私はベクトルの異なる目標を立てる「二正面作戦」を否定しています。かけ離れた目標は、両者が足を引っ張り合ってしまうからです。また、自分の人生の中で主となるものをしっかりと決めておけば、さらなる選択肢が現われた時にも迷子にならず、重要度が低いほうを切り捨てやすくもなります。 下園先生が提唱する「7~3バランス」がこれに近いなと思ったんです。 下園:そうですね。「7~3バランス」とは、無意識が望む「今の自分」を“0”、意識が望む「新しい自分」を“10”としたときに、“3~7”になるように目標を設定することです。多くの人は、「今の自分」と「なりたい自分」のギャップにイライラしてしまいがちです。分かりやすい例で言うと、ダイエットですね。「なりたい自分」に向けて完璧を目指して10頑張ってしまうと、どこかで無理が来て、リバウンドして「今の自分」に戻る0の状態になってしまいます。 0か10かの極端な方向を目指すのではなく、「3~7」の間に入るバランスの良い目標や、「3~7」の間の行動をしていたらOKと自分を評価する考え方で、わびさんの「二正面作戦の否定」と通じるものがあります』、「分かりやすい例で言うと、ダイエットですね。「なりたい自分」に向けて完璧を目指して10頑張ってしまうと、どこかで無理が来て、リバウンドして「今の自分」に戻る0の状態になってしまいます。 0か10かの極端な方向を目指すのではなく、「3~7」の間に入るバランスの良い目標や、「3~7」の間の行動をしていたらOKと自分を評価する考え方」、なるほど。
・『先を読み過ぎず「今」に集中  わび:私は“今”に集中することも大事にしています。私の悪い癖のひとつとして、先のことを心配したり、過去のことを振り返ってくよくよ後悔したりすることがあります。そうするとメンタルがどんどん疲れていくんですね。 対策として、思考を“今”に戻すようにしています。心配や後悔を断ち切って心に平穏を取り戻せるからです。私の場合は、筋トレや神社やお寺のお参り、ハーゲンダッツを食べることが思考を“今”に戻すスイッチです。 下園:自衛隊でも、そういう考え方はありますよね。戦場では、いつ何が起こるかわかりません。だから、不安に駆られて先の先まで読んでいくと、戦いの前に疲れ切ってしまいます。そこで“読まない”訓練をします。大きな計画ほど、当初だけを詰め、後はざっくりとした案にとどめておくのです。後半部分は、その時になって考えればいい、“今”に集中するというわびさんの考え方に近いですね。 わび:そのとおりですね。 下園:強大な敵が目の前にいるとき、正面から挑むことを自衛隊では「突破」と言います。一方で、正面の敵と戦わず、その後方に回り込み、戦わないで勝利する方法を「迂回」と言います。戦術セオリーとしては後者が圧倒的に有効とされているんです。 わびさんも、自衛隊生活では「突破」を繰り返して消耗してうつになってしまいましたが、その過程で得られた考え方も多いと思います。その結果、目の前の自衛隊という課題から離れることになったのですが、これは迂回しているものと考えることができます。戦術のセオリー通り、最も有効なルートを進み始めているのです。今、わびさんは重要な目標に向かって邁進しているなとお見受けしました。 わび:ありがとうございます。おかげさまで、現在携わっている仕事は大変なのですが、消耗せずに取り組むことができています。もし、これを読んでいる方のなかで心が弱っている方がいたら、「我の健在」を意識して、仕事への向き合い方を見直してみてはどうでしょうか。 そして疲れたときは、下園先生が仰る「おうち入院」も実践しています。病院に入院したつもりで、例えば週末の2日間、とにかくごろごろと寝るようにする。家族の理解が欠かせませんが、これでもかなり回復します。) (ライフイベントのストレスの図はリンク先参照)』、「疲れたときは、下園先生が仰る「おうち入院」も実践しています。病院に入院したつもりで、例えば週末の2日間、とにかくごろごろと寝るようにする。家族の理解が欠かせませんが、これでもかなり回復します」、「おうち入院」とは面白いネーミングだ。
・『「心の予防注射」──知っていることは力になる  下園:わびさんがやっているような、戦略的に仕事を見て、いつ「休める」かを先に考えておくのも大事ですし、疲れたときは「おうち入院」も有効です。ライフイベントのストレス表を見て、仕事だけでなく、家族関係で色々あったときは、自分がいつもより疲れていると知っておくことも大事です。 わび:人は仕事をしているだけでなく、家庭生活も含めて、トータルで生きているわけですから、全体を見て、自分の疲れ具合を確認しておくことも大事なんですね(ライフイベントのストレス表参照 ※外部配信先では図版などの画像が全部閲覧できない場合があります。図版をご覧になりたい方は、AERA dot.でご覧ください)。 下園:うつの一番わかりやすい兆候は、眠れなくなる、食べられなくなることです。この二つが出てきたら、迷うことなく精神科医やカウンセラーなどの専門家に速やかに相談してください。 わび:私もうつになったときは、まさしくその状況でした。 下園:自衛隊の災害派遣のときに、私が隊員に教えているのもそのことなんです。災害派遣では多くのご遺体に接したり、非常につらい現実を目の当たりにします。そうしますと、誰でもご飯が食べられなくなったり、眠れなくなったりします。それは当然の反応ですし、やがて時が経てば、それも収まってきます。 ところが、そのことを知らない隊員は、「こんなことで食べられくなったり、眠れなくなったりするなんて、自分はなんて弱い人間なんだ」「とても、こんなことは人には言えない」と思い、挙げ句には「こんな自分では自衛隊は務まらない」とまで思い詰めてしまう。 だから事前に、その反応は当たり前で、誰もがなることなんだよ、と伝えておきます。私はそれを「心の予防注射」と言っていますが、知っていることで救われることはたくさんあるんです。 わび:「心の予防注射」に私も深く共感いたします。私もうつというつらい経験をして、それを乗り超えた今だからこそ、もっと早く知っておいたほうが良かった、と思うことがたくさんあります。 つらいときは、逃げてもいいし、うつでつらい思いをする人がもっと減って欲しいと思い、『メンタルダウンで地獄を見た元エリート幹部自衛官が語る この世を生き抜く最強の技術』(ダイヤモンド社)という本も出版しました。 下園先生の『自衛隊メンタル教官が教える 心の疲れをとる技術』(朝日新書)も「心の予防注射」として多くの人に読んで欲しいと思います。 下園:知っていることは力になりますからね。人間は誰でも疲労するし、疲れ切るとまともな判断もできなくなる。そのことを多くの人が知って、適切に休みを取りながら、それぞれの人生を楽しんで欲しいと心から願います』、「うつの一番わかりやすい兆候は、眠れなくなる、食べられなくなることです。この二つが出てきたら、迷うことなく精神科医やカウンセラーなどの専門家に速やかに相談してください」、リタイアした私にはもう無縁だが、心しておきたい。

第四に、6月12日付け現代ビジネスが掲載した精神科医の和田 秀樹氏による「日本人が知っているようで知らない、健康診断の「本当の話」…実は「意味がない数値」がほとんど」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/111387?imp=0
・『「老いと闘う」のか「老いを受け入れる」のか——。 どれほど医学が進歩しても、人間は不老不死を得ることだけはおそらくできません。そうである以上、しかるべきタイミングがやってきたらそのときは自分自身の老いと向き合う必要が当然あります。 本記事では、精神科医の和田秀樹氏が特に40代以降で気を付けるべき点について、くわしく解説していきます。 ※本記事は和田秀樹『年代別 医学的に正しい生き方 人生の未来予測図』から抜粋・編集したものです』、興味深そうだ。
・『知っているようで知らない健康診断の話  40代で特に気をつけるべき身体の衰えとしては、前頭葉の萎縮やセロトニン、性ホルモンの分泌量減少がありますが、人によってはこれ以外の点でも医師から肉体的な衰えを指摘され、焦ることは当然あるでしょう。 特に日本の場合、使用者が労働者に健康診断を受けさせなければいけないという世界的には珍しい労働安全衛生法の規定があり、事実上健康診断を受けなければいけなくなっています。40代以降はこの健診に「ひっかかる」、つまり検査データに異常な数値が出ることが増えてきます。 ただこの健康診断に関しては取り扱いをまちがえないようにしたいものです。というのも日本の健康診断の検査データは多くの場合、健康と考えられる人の平均をはさんで95%の範囲におさまる人を「正常」、高いほうでも低いほうでもそれをはみ出した5%を「異常」と判定されるように作られており、GOT(グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ=肝機能障害の兆候を知る手がかりとされる数値。現在はASTと呼ぶことが多い)が高かろうが、コレステロール値が高かろうが、それはあくまで平均プラスマイナスの標準偏差で決めているだけのものであるからです。 数値が異常だからといって、それが明らかに病気につながるかといえば、そのようなしっかりしたエビデンスのある検査はじつはあまりありません。そもそも「健康と考えられる人」なのに、その95%をはみだした値の人が「異常値」だとされているのですから。 現在、日本の健康診断では50~60項目に関する検査をおこなうのが一般的かと思いますが、これらのうち、エビデンスがあるものは血圧や血糖値などせいぜい5項目ぐらいです。つまり、血圧や血糖値がものすごく高い場合などは、その時点や将来にその人の健康状態に明らかによくないことが起こる(これも確率論なのですが)と認められるものの、それ以外の項目に関しては数値がよかろうと悪かろうとほぼ当てになりません。 特に典型的なのがコレステロール値の検査でしょう。健康診断でコレステロールの値が高かったせいで食生活の改善を求められた人は多いでしょうが、じつはコレステロール値の上昇と健康の悪化を関係づけるはっきりしたエビデンスというものは、少なくとも日本では存在しないのです。 正直なことを言えば、私は健康診断については受ける価値などほとんどないと思っています。 健康診断を受けた人がコレステロールや血圧の数値になぜ一喜一憂するかといえば、それらが原因となって起こると言われている動脈硬化や脳梗塞、心筋梗塞などの重篤な病気になることを恐れ、それらを予防したいと思っているからでしょう。 しかしその割に、健康診断で悪い数値が出てその後もほったらかしにしていたのに心臓の血管が一向に狭くならない人もいれば、逆にまったくの正常値だったのに心筋梗塞で倒れる人もいるなど、健康診断の結果と実際の健康状態があまりリンクしていないのが日本の健康診断の実際なのです。 それ以上に問題なのは、そのリンクを長期の大規模調査で追跡した研究が日本ではほとんどないことです。疾病構造も(世界中の多くの国で死因のトップは心疾患なのですが、日本はガンで死ぬ人が急性心筋梗塞で死ぬ人の10倍以上いて、心筋梗塞で死ぬ人は世界で最低レベルです)食生活も違う海外のデータを無理に信じ込まされているという実情があります』、「健康診断の検査データは多くの場合、健康と考えられる人の平均をはさんで95%の範囲におさまる人を「正常」、高いほうでも低いほうでもそれをはみ出した5%を「異常」と判定されるように作られており、GOT(グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ=肝機能障害の兆候を知る手がかりとされる数値。現在はASTと呼ぶことが多い)が高かろうが、コレステロール値が高かろうが、それはあくまで平均プラスマイナスの標準偏差で決めているだけのものであるからです。 数値が異常だからといって、それが明らかに病気につながるかといえば、そのようなしっかりしたエビデンスのある検査はじつはあまりありません。そもそも「健康と考えられる人」なのに、その95%をはみだした値の人が「異常値」だとされているのですから。 現在、日本の健康診断では50~60項目に関する検査をおこなうのが一般的かと思いますが、これらのうち、エビデンスがあるものは血圧や血糖値などせいぜい5項目ぐらいです。つまり、血圧や血糖値がものすごく高い場合などは、その時点や将来にその人の健康状態に明らかによくないことが起こる(これも確率論なのですが)と認められるものの、それ以外の項目に関しては数値がよかろうと悪かろうとほぼ当てになりません」、「コレステロール値の上昇と健康の悪化を関係づけるはっきりしたエビデンスというものは、少なくとも日本では存在しないのです」、私は「コレステロール値」が高過ぎると警告されているが、一安心だ。
・『意味があるのは脳ドックと心臓ドックだけ  ただ私は、心臓ドックと脳ドックにかぎっては受ける価値があると思っています。その理由は心臓ドックに関して言えば、日本の心臓外科医は海外とくらべて圧倒的に医師一人当たりの手術件数が少ない(要するに手術に慣れていない)ため一般的にバイパス手術の技術が低いかわりに、内科的な血管内治療の技術がきわめて高いからです。 内科的な血管治療というのは、カテーテルを通してバルーンを膨らませて、血管が狭く詰まりそうになっているところを広げたり、あるいはステントという器具を血管内に入れることでそこを詰まらなくする治療です。要するに心臓ドックで、冠動脈と言われる心臓を取り巻く血管に狭窄が見られたら、そこを広げる技術が充実しているということです。あるいは、このドックで解離性大動脈瘤などがみつかれば、それに対する処置もある程度可能です。 また脳ドックに関しても、多くの人は認知症予防のために受けているという認識でしょうが、残念ながら脳ドックは認知症の予防にはなりません。しかしそのかわりMRIで脳の血管がかなりきれいに撮影できるので、脳ドックを受けることである程度以上の大きさの動脈瘤を見つけることができます。動脈瘤を早期発見できれば、カテーテルを用いてその部分を固めるなど動脈瘤を破裂させないようにする予防手技が受けられます。 2018年には西城秀樹さん、大杉漣さんなどまだ60代の著名人があいついで急性心不全で亡くなっていますが、私は新聞でこの2人の死亡記事を読んで、少しばかりやりきれない気持ちになりました。 解剖結果などがわかりませんが、大杉さんの場合は腹痛を訴えた約4時間後に亡くなっており、直接の死因は心筋梗塞か大動脈解離、いずれにしても心臓のどこかの血管に問題があったことが原因と考えられます。じつはこれらはいずれも、心臓ドックを受けてさえいれば発見される可能性の高い病気です。 また西城秀樹さんのケースでは、48歳と56歳のときに2度の脳梗塞を起こしています。2度も脳梗塞を起こすのは相当に血管が詰まりやすい体質ということでしょうから、2度目の脳梗塞を起こした時点では脳だけでなく心臓の動脈硬化が起こっている可能性も当然疑ってみるべきでした。 こうしたことの背景には、日本の医師特有の縦割り意識があったのではないかと私は疑っています。一般に、診療が「臓器別」でおこなわれる日本の医療現場では、脳梗塞を複数回起こしたからといって、「じゃあ、心臓も調べておきましょう」と言ってくれる親切な脳外科医はなかなかいないものなのです』、「診療が「臓器別」でおこなわれる日本の医療現場では、脳梗塞を複数回起こしたからといって、「じゃあ、心臓も調べておきましょう」と言ってくれる親切な脳外科医はなかなかいないものなのです」、なんとか改善してほしいものだ。
・『「20年理論」  私は、健康診断を受ける意味が仮にあるとすれば、それをもとに自分自身の「20年後」の健康状態を予測することだろうと考えています。つまり、検査でコレステロール値や血圧、血糖値が高いと診断されたのならそれは動脈硬化のリスクファクター(危険因子)ということになりますが、ほんとうにそれによって脳梗塞や心筋梗塞になるのはだいたいの場合20年などかなり先である、ということです。 したがって、仮に40代で血圧や血糖値などの異常値が出はじめたのならばその検査データを過剰に恐れるのではなく、脳梗塞や心筋梗塞が「20年以内に」起こりかねないという自覚をもち、そうなる前に脳ドックや心臓ドックを受けるという心構えが大事だということです。 こうした考え方は「20年理論」と呼ばれることがあります。要するに喫煙であれ飲酒であれ、40代のうちはそのリスクが20年後にやってくるという意味で気にしましょうということです(したがって病気予防のために運動などを始めるなら、40代のうちがベストでしょう)。 もっとも、20年といえば医学の研究が大幅な進歩を遂げるにはじゅうぶんな時間ですので、ひょっとしたら20年後にはiPS細胞(人工多能性幹細胞)をフル活用した再生医療が実用化されていて、多少の動脈硬化であればiPS細胞をぱらぱらと動脈にまくことで血管が若返って治ってしまうことだってあるかもしれません。 もちろん、ほんとうにそうなるかどうかは誰にもわかりません。しかし、未来における医学の進歩を信じられるのであれば、検査結果を闇雲に恐れるよりは、とりあえず先ほど述べたように心臓ドックなり脳ドックなりを受けて突然死のリスクだけは避けておき、それ以上のことに頭を悩ませるのはやめておくのが精神衛生上もベターであろうと思います。 本記事の抜粋元『年代別 医学的に正しい生き方 人生の未来予測図』ではさらに、会社で出世レースから脱落したら、子どもの就職がうまくいかなかったら、親や配偶者の介護に直面したら、ガンになったら——、という不安について、どの年代で何が起きるのか解説し、 後悔しない人生を過ごすための年代別傾向と対策が書かれています』、「検査結果を闇雲に恐れるよりは、とりあえず先ほど述べたように心臓ドックなり脳ドックなりを受けて突然死のリスクだけは避けておき、それ以上のことに頭を悩ませるのはやめておくのが精神衛生上もベターであろうと思います」、同感である。
タグ:「精神科医の宮島賢也」氏が「自らも7年間のうつに苦しみ、それを食事で克服した」とは興味深そうだ。 宮島 賢也氏による「「7年間のうつ」を脱した医師のシンプルな食事法 気合いだけで「自分」を変えるのは簡単ではない」 東洋経済オンライン (その25)(「7年間のうつ」を脱した医師のシンプルな食事法 気合いだけで「自分」を変えるのは簡単ではない、屈強な自衛官でも 心は壊れる。うつで地獄を見た元自衛官2人が話す、本当に役に立つメンタルスキル【前編】、五月病 六月病にも効く「心の予防注射」とは? うつで地獄を見た元自衛官2人が話す 本当に役に立つメンタルスキル【後編】、日本人が知っているようで知らない 健康診断の「本当の話」…実は「意味がない数値」がほとんど) 健康 「物事をどうとらえるか、自分をどう見つめるか、そうした心のあり方によって、うつになるかどうかが決まるというわけです。リストラにあったことで、「もう自分はダメだ、未来がない」と思えば、心身の状態はうつへ向かいます。 逆に、リストラにあったことを「転職のチャンスが来た」「新たな自分にチャレンジしてみよう」と思えれば、うつに陥ることはありません。 私の場合は、前者。医師としての自分に自信が持てず、診察するときはいつもびくびく、将来に向けては不安だらけ。そんな心の状態が、7年間に及ぶうつへの引き金になりました」、「7年間に及ぶうつ」とはずいぶん長く大変だったろう。 「食べることは、消化器官からすれば一大イベントで、かなりの活動エネルギーを必要とします。だから、食べているときより食べた後のほうが疲れます。一説によれば、三度の食事はフルマラソンに匹敵するカロリーを消費するともいわれます」、「胃腸に負担をかけない食事として私が実践したのは、「果物と生野菜中心の食生活」です・・・生の食べ物には酵素が含まれています。そのため、生の食べ物を食べると酵素を補うことになり、胃腸は援軍を得て重労働から解放されます。ですから、体があまり疲れなくなります。 疲れなくなると身軽な感じになって、動くのが億劫でなくなります。イライラすることも少なくなり、食後もスムーズに仕事に移れます。イライラが少なくなれば、人との衝突も減るでしょうし、人間関係にもよい影響が出てきます。 それが、心の不調の原因となるストレスを減らすことにつながるのです」、「「果物と生野菜中心の食生活」は大きな効果があったようだ。 「私は、うつに苦しんだ7年間、ずっと抗うつ薬を飲み続けましたが、自分のうつも患者さんのうつも治せませんでした。それが、食事を変えることでうつを克服できたのです」、「なんと2カ月で20㎏も減量・・・便通がよくなったり、朝スッキリ起きられるようになったり、肌がツヤツヤしてきたり。体の変化にともない、心までらくになってきて、心配や不安を感じることが減り、全身にエネルギーが満ちてくるのを実感しました。 そして、最終的にはうつから抜け出すことができました」、「うつ」を何故克服できたのかについて「精神科医」としての医学的見方も知りたいところだ。 AERAdot.「屈強な自衛官でも、心は壊れる。うつで地獄を見た元自衛官2人が話す、本当に役に立つメンタルスキル【前編】」 「うつで地獄を見た元自衛官2人」による対談とは興味深そうだ。 「幹部候補生学校の規律の厳しさには面食らいました」、「防大卒でも厳しいと感じるので、一般大卒の方にはなおさらだったでしょう。そうしたしきたりを通じて、それまでの価値観をいったん壊し、自衛隊の流儀をたたき込みながら、メンタルの強さを育んでいくのが自衛隊の流儀ですね。戦場にいることを想定した組織ですから、普通の日常生活とは違う感覚、意識を植え付けます。 戦場にいるときに、上官の命令にいちいち、「これをやる意味はあるのですか?」などと反論していたら、その間に敵にやられてしまうかもしれないので、まずは上官の命令に 即座に動けるような訓練をするわけです」、確かにその通りだ。 「転落のきっかけとなったのは、方面総監部への転属です。そこで、パワハラにあったんです」、どんなことがあったのだろう。 「パワハラ・・・嫌がらせと理不尽な叱責です。報告や連絡を後回しにされるのは当り前。仕事のことばかりでなく、弁当の中身や子どもの名前などのプライベートについても言いがかりをつけられました。 常に「怒られる」ことが頭から離れず、缶コーヒーの種類も選べないほどになってしまいました。どの缶コーヒーなら怒鳴られずに済むのかなって考えてしまって……。 覚えていないのですが、ある日、職場で叫びながら自分のデスクの中に潜っていたようで、そのまま病院に運ばれました。「過労状態」「うつ病」「不安神経症」と診断を受け休職するこ とになりました」、「職場で叫びながら自分のデスクの中に潜っていた」とは凄い症状だ。「家族が増えるという幸せな出来事も、実は心に重圧を与えるものなんです。さらに異動による新しい仕事と労働環境の変化があった。そんな状態の時に、たまたま強烈なパワハラのストレスが加わって、心が悲鳴を上げてしまったのでしょうね」、なるほど。 「張り切った私はより精力的に仕事をしていたのですが、ある講演のときに急に吐き気がして話せなくなって講演を中止して、そのまま倒れてしまったんです・・・講演では「誰でもうつになる」と言いながら、自分は絶対にならないという変な自信がありました。でも、まんまとそうなったわけです。 翌日には師団等の幹部約500名を集めた重要な講演があったのですが、それもドタキャンさせてもらいました」、 「信頼できる精神科のドクターと一緒に活動していたので、すぐに受診し、うつの診断をもらいました。 休養のため1カ月は完全に休みを取り、休み後も業務量を絞って勤務をするうちに、1年ほどで元の状態に戻ることができました」、環境的にも恵まれていたようだ。 「うつからの回復には「自信」がポイントになる」、「AOC入校前から師団司令部に所属し、宮崎県の口蹄疫問題や東日本大震災などの災害派遣の実績もある。さらに幸か不幸かメンタルダウンを経験した。だからこそ、その戦術的・戦略的な考え方を自分のものにできたのだと思います。その知識を生かし、退官後も異なる職場で活躍できている。しっかりとレジリエンス(しなやかな回復力)を身に付けられたのとだと思います」、なるほど。 「災害派遣先の南阿蘇司令部は、師団長自らが指揮をとる緊張感のある現場でした。まったく知り合いもおらず、手探りの任務でしたが最終的に「来てもらってよかった」との言葉をいただけたのです。それがすごく自信になりました」、「どこかのタイミングで、「勇気を出してやってみよう」と背中を押すようにしています」、ちょうど「背中を押す」タイミングだったようだ。 AERAdot.「五月病、六月病にも効く「心の予防注射」とは? うつで地獄を見た元自衛官2人が話す、本当に役に立つメンタルスキル【後編】」 「自分が犠牲になってもいいから、与えられた課題をとにかく完遂する(したくなる)のが日本人のメンタリティですが、それは短期決戦の考え方です。長期戦の場合、過重なミッションを果たした後は、しっかりとリカバリー期間を設けていかなければいけません」、その通りなのだろう。 「分かりやすい例で言うと、ダイエットですね。「なりたい自分」に向けて完璧を目指して10頑張ってしまうと、どこかで無理が来て、リバウンドして「今の自分」に戻る0の状態になってしまいます。 0か10かの極端な方向を目指すのではなく、「3~7」の間に入るバランスの良い目標や、「3~7」の間の行動をしていたらOKと自分を評価する考え方」、なるほど。 「疲れたときは、下園先生が仰る「おうち入院」も実践しています。病院に入院したつもりで、例えば週末の2日間、とにかくごろごろと寝るようにする。家族の理解が欠かせませんが、これでもかなり回復します」、「おうち入院」とは面白いネーミングだ。 「うつの一番わかりやすい兆候は、眠れなくなる、食べられなくなることです。この二つが出てきたら、迷うことなく精神科医やカウンセラーなどの専門家に速やかに相談してください」、リタイアした私にはもう無縁だが、心しておきたい。 現代ビジネス 和田 秀樹氏による「日本人が知っているようで知らない、健康診断の「本当の話」…実は「意味がない数値」がほとんど」 和田秀樹『年代別 医学的に正しい生き方 人生の未来予測図』 「コレステロール値の上昇と健康の悪化を関係づけるはっきりしたエビデンスというものは、少なくとも日本では存在しないのです」、私は「コレステロール値」が高過ぎると警告されているが、一安心だ。 「診療が「臓器別」でおこなわれる日本の医療現場では、脳梗塞を複数回起こしたからといって、「じゃあ、心臓も調べておきましょう」と言ってくれる親切な脳外科医はなかなかいないものなのです」、なんとか改善してほしいものだ。 「検査結果を闇雲に恐れるよりは、とりあえず先ほど述べたように心臓ドックなり脳ドックなりを受けて突然死のリスクだけは避けておき、それ以上のことに頭を悩ませるのはやめておくのが精神衛生上もベターであろうと思います」、同感である。
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インド(その2)(グローバルサウスの盟主を目指すインドの危うさ モディ首相の触れられたくない過去も問題視、悪名高き「お役所仕事」が最大障壁…!インドが「人口世界一」になっても「世界経済を引っ張る“次の中国”」になる日は来ない「残念なワケ」、「第2の中国」になるのは難しいのか?…インドの「経済成長」を阻む「政情不安」と「ナショナリズム」の不穏な関係) [世界情勢]

インドについては、2021年8月13日に取上げた。今日は、(その2)(グローバルサウスの盟主を目指すインドの危うさ モディ首相の触れられたくない過去も問題視、悪名高き「お役所仕事」が最大障壁…!インドが「人口世界一」になっても「世界経済を引っ張る“次の中国”」になる日は来ない「残念なワケ」、「第2の中国」になるのは難しいのか?…インドの「経済成長」を阻む「政情不安」と「ナショナリズム」の不穏な関係)である。

先ずは、本年4月11日付けデイリー新潮が掲載した経済産業研究所コンサルティングフェローの藤和彦氏による「グローバルサウスの盟主を目指すインドの危うさ モディ首相の触れられたくない過去も問題視」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/04110602/?all=1
・『「中国という全体主義国家は、多方面からの戦略を用いて米国を追い落とし、世界に君臨する超大国になろうとしている」 インド陸軍のパンデ参謀長は3月27日、米誌ニューズウィークのインタビューでこのように述べた。近年のインドの高官としては最も過激な中国批判の1つだ。 パンデ氏は中印国境の最前線で指揮をとるインド軍の最高幹部だ。 インドと 中国が軍事衝突したのは、1962年。両国の間の全長約3400キロメートルに及ぶ実効支配線の一部をめぐっての争いだった。その後、小康状態が続いていたが、2020年6月に、半世紀近くなかった死者を出す衝突が発生し、昨年12月にはインド軍が米国情報機関の支援を得て実効支配線の西側から侵入した中国軍を撃退したとされている。 パンデ氏は「北部国境沿いの軍の配備を見直し、高次の準備態勢を維持している」と自信を示しているが、中国との対立は長期にわたって続くことが懸念されている。 中国との国境紛争を重く見たインド政府は3月中旬、銀行や貿易業者に対して、ロシアからの輸入代金支払いに中国の人民元を使わないように働きかけている(3月13日付ロイター)。 これは、インドがロシア産の原油や石炭の最大の買い手になったことが関係している。 ウクライナ戦争の影響でロシアでは、米ドルに代わり人民元が最も取り引きされている外貨となっている。中国は3月末、アラブ首長国連邦(UAE)産の液化天然ガス(LNG)を人民元建てで購入する契約を成立させた。 エネルギー取引の分野で人民元のプレゼンスが高まっているのにもかかわらず、「インド準備銀行(中央銀行)は人民元による貿易決済に乗り気ではない」とインドの銀行関係者は語り、「政府が人民元の利用を妨げている」と嘆いている。 インド政府はさらに4月から自国通貨ルピー建ての貿易を促進する方針を明らかにしており、マレーシアやミャンマーとの貿易をルピーで決済することを発表している』、「中国との国境紛争を重く見たインド政府は3月中旬、銀行や貿易業者に対して、ロシアからの輸入代金支払いに中国の人民元を使わないように働きかけている」、「インド政府はさらに4月から自国通貨ルピー建ての貿易を促進する方針を明らかにしており、マレーシアやミャンマーとの貿易をルピーで決済することを発表」、「ルピーで決済」は「ルピー」の通貨価値が不安定なので、それほど進まないだろう。
・『「今年はインドが世界を主導するきっかけに…」  中国との確執が通貨の問題に波及した形だが、最近のインドはとにかく鼻息が荒い。インドの経済規模は中国の6分の1に過ぎないが、足元はインドが俄然優勢だからだ。 インドの昨年の実質国内総生産(GDP)は6.7%の成長となり、中国の伸び率を上回った。 ドルベースの昨年の名目GDP(約3兆3800億ドル)は日本の8割に迫っている。 昨年、中国が人口減に転じたのに対し、インドは2060年代まで人口増が続き、17億人に近づくと予測されている。 パンデ氏はこのような現状を踏まえ「インドは今日、世界の舞台で一大勢力として台頭している。現在のインドは、経済成長や他国との戦略的連携を後ろ盾に『グローバルサウス』の声となっている。今年はインドが世界を主導するきっかけとなる分水嶺の年になる」と自信満々だ。 グローバルサウスとは、南半球に多いアジアやアフリカなどの新興国・途上国の総称だ。北半球の先進国と対比して使われることが多い。 ウクライナ情勢を巡り欧米諸国とロシアとの対立が深まる中、国連決議などの場面でグローバルサウスの動向が注目されるようになっている。 成長著しいインドだが、世界銀行による位置づけは「下位中所得国」であり、途上国が直面する問題を当事者として理解できる立場にある。 西側諸国が中国やロシアと対抗する上で、同じ民主主義を看板に掲げるインドを重視するようになっていることも追い風だ。特に、日米豪との「クアッド」の枠組みはインドにとって戦略的な強みとなっている。 モディ首相もこのことを十分に自覚している。西側諸国と良好な関係を武器にグローバルサウスの盟主として、目障りなライバルである中国を追い詰めようとしている』、「グローバルサウスとは、南半球に多いアジアやアフリカなどの新興国・途上国の総称だ」、「ウクライナ情勢を巡り欧米諸国とロシアとの対立が深まる中、国連決議などの場面でグローバルサウスの動向が注目」、「日米豪との「クアッド」の枠組みはインドにとって戦略的な強みとなっている」、なるほど。
・『強権国家に近づいているとの指摘も  だが、「世界最大の民主主義国家に危うい一面が目立つようになってきた」との指摘も出てきている。 モディ首相は最近「欧米など先進国のツケをサウスの国々が不当に払わされている」との不満をたびたび口にするようになっている。 モディ首相は3月2日、ブリンケン米国務長官が参加している20カ国・地域(G20)外相会合の場で、米国が築いた第2次世界大戦後の国際秩序を「失敗」と一刀両断した。インドの批判に対し、西側諸国は同国の人権状況を問題視し始めている。 米人権団体フリーダムハウスは2020年の報告書で「ニューデリーと北京の価値観の違いが曖昧になりつつある」と記述し、インドが中国のような強権国家に近づく可能性に警鐘を鳴らしている。2021年には政治状況に関するインドの評価を「自由」から「部分的自由」に引き下げている。 モディ首相についても「州首相時代の2002年に少数派イスラム教徒を弾圧した」との批判が持ち上がっているが、植民地時代への恨みが根強く残るインドでは「旧宗主国の傲慢な物言いだ」との反発が高まるばかりだ。 インドは成長著しいものの、深刻な雇用不足に悩んでいる。都市部では若年層の失業増加で治安が悪化しつつあり、インド政府が強権的な取り締まりに踏み切れば、人権状況を巡る西側諸国との軋轢はさらに激化することだろう。 インドと西側諸国との蜜月関係はいつまで続くかどうかわからない。日本でもインドは大きな存在になったが、その距離の取り方は一筋縄ではいかないのではないだろうか。 (藤和彦氏の経歴は1960年名古屋生まれ、1984年通商産業省(現・経済産業省)入省、2003年から内閣官房に出向(内閣情報調査室内閣情報分析官) はリンク先参照)』、「米人権団体フリーダムハウスは2020年の報告書で「ニューデリーと北京の価値観の違いが曖昧になりつつある」と記述し、インドが中国のような強権国家に近づく可能性に警鐘を鳴らしている。2021年には政治状況に関するインドの評価を「自由」から「部分的自由」に引き下げている。 モディ首相についても「州首相時代の2002年に少数派イスラム教徒を弾圧した」との批判が持ち上がっているが、植民地時代への恨みが根強く残るインドでは「旧宗主国の傲慢な物言いだ」との反発が高まるばかりだ。 インドは成長著しいものの、深刻な雇用不足に悩んでいる。都市部では若年層の失業増加で治安が悪化しつつあり、インド政府が強権的な取り締まりに踏み切れば、人権状況を巡る西側諸国との軋轢はさらに激化することだろう』、「ニューデリーと北京の価値観の違いが曖昧になりつつある」との「警告」は重く受け止める必要がある。「インドは成長著しいものの、深刻な雇用不足に悩んでいる。都市部では若年層の失業増加で治安が悪化しつつあり、インド政府が強権的な取り締まりに踏み切れば、人権状況を巡る西側諸国との軋轢はさらに激化することだろう」、その通りだ。

次に、6月6日付け現代ビジネスが掲載した経済産業研究所コンサルティングフェローの藤 和彦氏による「悪名高き「お役所仕事」が最大障壁…!インドが「人口世界一」になっても「世界経済を引っ張る“次の中国”」になる日は来ない「残念なワケ」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/111119?imp=0
・『インドは中国のように経済大国になるか?  世界一の人口大国となることが確実視されるインド経済の存在感が、大きくなっている。 過去20年間、世界経済を牽引してきた中国が、人口が減少に転じ「ピークが過ぎた」との見方が強まっていることが背景にある。 世界経済の減速が懸念される中、「人口が増加し続けるインドが『第2の中国』となる」との期待が高まっているが、はたしてそうだろうか。 インドは世界で最も若年人口の比率が高い国の1つだが、2021年の労働参加率(生産年齢人口(15歳から64歳までの人口)に占める労働力人口の割合)は46%とアジアで最も低い(日本は84%)。 女性の労働参加率はさらにひどく、世界最低の水準で推移している』、「2021年の労働参加率・・・は46%とアジアで最も低い・・・女性の労働参加率はさらにひどく、世界最低の水準で推移」、若年労働力へ職を提供できないというのは、致命的だ。
・『高度成長できないインドの弱点  中国を始めアジアの国々は、労働集約型の製造業の製品輸出のおかげで多くの雇用を創出できたが、製造業に弱みを抱えるインドは慢性的な雇用不足に苦しめられている。 世界銀行によれば、製造業がGDPに占める割合(2021年時点)は中国が27%、ベトナムが25%であるのに対し、インドは14%に過ぎない。 インドでは過去10年、毎年700万職者が市場に参入してきたが、新規の雇用を満足につくることができなかった。このため、職にありつけない若者は農村にとどまるしかなく、インドでは全労働者の半数近くが農村などで日々を生き抜くための低賃金の仕事に従事している。 「宝の持ち腐れ」になっていると言っても過言ではない』、「製造業に弱みを抱えるインドは慢性的な雇用不足に苦しめられている」、「製造業がGDPに占める割合(2021年時点)は中国が27%、ベトナムが25%であるのに対し、インドは14%に過ぎない。 インドでは過去10年、毎年700万職者が市場に参入してきたが、新規の雇用を満足につくることができなかった。このため、職にありつけない若者は農村にとどまるしかなく、インドでは全労働者の半数近くが農村などで日々を生き抜くための低賃金の仕事に従事している。 「宝の持ち腐れ」になっていると言っても過言ではない」、「宝の持ち腐れ」とは言い得て妙だ。
・『足を引っ張る「お役所仕事」  モデイ政権は「GDPに占める製造業の比率を25%にまで引き上げる」との政策目標を掲げているが、言うは易し、行うは難しだ。 中国一辺倒の投資に不安を感じ、グローバル企業はリスクの分散先としてインドを選択し始めているが、苦戦を強いられている。米アップルは、インドで現地生産の拡大を目指しているが、製造される部品のうちiPhoneの組み立て工場に納品できる合格品が約半分にとどまっている。 インド経済の足かせとなってきた悪名高い「お役所仕事」も変わっていない。 米格付け会社ムーデイーズ・インベスター・サービスは5月23日「政策の実行ベースの遅さやお役所仕事のせいで、製造業やインフラなどのセクターで外国からの投資が減少する恐れがある」と指摘した。 後編記事『「第2の中国」になるのは難しいのか?…インドの「経済成長」を阻む「政情不安」と「ナショナリズム」の不穏な関係』では、インドの内情から経済成長への障壁をさらに検証していこう』、「米アップルは、インドで現地生産の拡大を目指しているが、製造される部品のうちiPhoneの組み立て工場に納品できる合格品が約半分にとどまっている」、これほど「合格品」が低いのは労働力の質も低いと考えざるを得ない。「米格付け会社ムーデイーズ・インベスター・サービスは5月23日「政策の実行ベースの遅さやお役所仕事のせいで、製造業やインフラなどのセクターで外国からの投資が減少する恐れがある」と指摘」、これは深刻だ。

第三に、この続きを、6月6日付け現代ビジネスが掲載した経済産業研究所コンサルティングフェローの藤 和彦氏による「「第2の中国」になるのは難しいのか?…インドの「経済成長」を阻む「政情不安」と「ナショナリズム」の不穏な関係」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/111120?imp=0
・『インドを取り巻く火種の数々  過去20年間、世界経済を牽引してきた中国が人口減少に転じたことで、やがて世界一の人口大国となるインドの存在感が高まっている。しかし、残念ながらインドが「第2の中国」となる日は、やってきそうにない。 前編『インドが「人口世界一」になっても「世界経済を引っ張る“次の中国”」になる日は来ない「残念なワケ」』でも紹介したとおり、アジア最下位の労働参加率や高度成長に不可欠な製造業に発展の兆しが見られないことが、足を引っ張っているからだ。 さらに近年では、ナショナリズムの台頭から様々な火種がくすぶるようになってきた。 インドで活動するグローバル企業にとってのさらなるリスクは、テロの脅威だ。 統制が厳しい中国とは異なり、インド国内ではイスラム過激派などにテロ事件が多発しており、2008年のムンバイ同時多発テロでは日本人も犠牲になった。 このところ卑劣なテロ事件は発生していないが、インドの治安機関などは頻繁にテロ警戒アラートを発信しているのが現状だ(3月28日付FNNプライムオンライン)』、「残念ながらインドが「第2の中国」となる日は、やってきそうにない・・・アジア最下位の労働参加率や高度成長に不可欠な製造業に発展の兆しが見られないことが、足を引っ張っているからだ。 さらに近年では、ナショナリズムの台頭から様々な火種がくすぶるように」、「インドで活動するグローバル企業にとってのさらなるリスクは、テロの脅威だ。 統制が厳しい中国とは異なり、インド国内ではイスラム過激派などにテロ事件が多発しており、2008年のムンバイ同時多発テロでは日本人も犠牲になった。 このところ卑劣なテロ事件は発生していないが、インドの治安機関などは頻繁にテロ警戒アラートを発信しているのが現状だ」、「インドの治安機関などは頻繁にテロ警戒アラートを発信している」、外資にとっては嫌な国だ。
・『最高峰のエコノミストも「経済減速」を指摘  好調に見えるインド経済にも景気後退の影が忍び寄ってきている。 インド人材採用連盟は5月23日「同国のIT業界で昨年4月から今年3月までの1年間に嘱託社員の雇用が前年に比べ7.7%減少し、約6万人が失業した」と発表した。 識者の間でもインド経済の今後を悲観視する声が強まっている。その代表格は元インド準備銀行(中央銀行)総裁のラグラム・ラジャン氏だ。 ラジャン氏は「高成長を見込める要因が見当たらず、インド経済は減速する」と手厳しい(2023年4月19日付日本経済新聞)。 1950年代から80年代にかけて、インドの経済成長は途上国の中で低かったため、「ヒンズー成長率」と揶揄されてきたが、この用語が再び囁かれるようになっている。インドは過去何度となく高成長の期待を裏切ってきたが、今回も「二の舞」を踏むことになるのだろうか』、「1950年代から80年代にかけて、インドの経済成長は途上国の中で低かったため、「ヒンズー成長率」と揶揄されてきたが、この用語が再び囁かれるようになっている」、「インドは過去何度となく高成長の期待を裏切ってきたが、今回も「二の舞」を踏むことになるのだろうか」、「「ヒンズー成長率」とは有り難くないネーミングだ。
・『豊富な若年層が政権の凶器となる日  グローバルサウスの代表を自認するインドに対して、西側諸国は同国の人権状況を問題視し始めていることも気になるところだ。 米人権団体フリーダムハウスは2020年の報告書で「ニューデリーと北京の価値観の違いが曖昧になりつつある」と記述し、インドが中国のような強権国家に近づく可能性に警鐘を鳴らしている。 2021年には政治状況に関するインドの評価を「自由」から「部分的自由」に引き下げている。 経済が失速すればインドの失業問題がさらに悪化するのは明らかだ。 若年人口が社会の過半を占めるインドでは暴力事件が多発しており、過去には政権を揺るがす事態に発展したこともあった。豊富な若年人口は、インドにとって好機とともに脅威をもたらす「諸刃の剣」なのだ。 インド政府が強権的な取り締まりに踏み切れば、人権状況を巡る西側諸国との軋轢はさらに激化することだろう。 イスラム教徒への差別の問題も火種となりつつある』、「インドが中国のような強権国家に近づく可能性に警鐘」、「豊富な若年人口は、インドにとって好機とともに脅威をもたらす「諸刃の剣」なのだ。 インド政府が強権的な取り締まりに踏み切れば、人権状況を巡る西側諸国との軋轢はさらに激化することだろう。 イスラム教徒への差別の問題も火種となりつつある」、 「豊富な若年人口は、インドにとって好機とともに脅威をもたらす「諸刃の剣」」とは、高齢化が激化している「日本」からみると、贅沢な悩みだ。
・『台頭するナショナリズム  米政治学者のフランシス・フクヤマ氏は「インドはかつて宗教的にも言語的にも多様性に富んだ国だったが、現在のインド与党はヒンドウー教のナショナリストの国に変えようとしている。必ず暴力が起きる」と警告を発している(5月27日付AERA)。 モデイ首相についても「州首相時代に少数派イスラム教徒を弾圧した」との批判が英国から出ているが、与党サイドは「旧宗主国の傲慢な物言いだ」とけんもほろろだ。 「世界最大の民主主義国家」と称されるインドだが、西側諸国との蜜月関係はいつまで続くかどうかわからなくなっている。 残念ながら、インドは「次の中国」になれないのではないだろうか。 さらに連載記事『習近平から逃げ出した中国人が、アメリカで直面した「過酷な現実」…!その原因となったとある「薬物」の名前』では、いまアメリカで起こる異変について詳しくレポートしよう』、「フランシス・フクヤマ氏は「インドはかつて宗教的にも言語的にも多様性に富んだ国だったが、現在のインド与党はヒンドウー教のナショナリストの国に変えようとしている。必ず暴力が起きる」と警告を発している」、「「世界最大の民主主義国家」と称されるインドだが、西側諸国との蜜月関係はいつまで続くかどうかわからなくなっている。 残念ながら、インドは「次の中国」になれないのではないだろうか」、「インド」にはつくずく失望した。

なお、鉄道事故については、まだきちんとした記事がないので、出次第、取上げるつもりだ。
タグ:インド (その2)(グローバルサウスの盟主を目指すインドの危うさ モディ首相の触れられたくない過去も問題視、悪名高き「お役所仕事」が最大障壁…!インドが「人口世界一」になっても「世界経済を引っ張る“次の中国”」になる日は来ない「残念なワケ」、「第2の中国」になるのは難しいのか?…インドの「経済成長」を阻む「政情不安」と「ナショナリズム」の不穏な関係) デイリー新潮 藤和彦氏による「グローバルサウスの盟主を目指すインドの危うさ モディ首相の触れられたくない過去も問題視」 「中国との国境紛争を重く見たインド政府は3月中旬、銀行や貿易業者に対して、ロシアからの輸入代金支払いに中国の人民元を使わないように働きかけている」、「インド政府はさらに4月から自国通貨ルピー建ての貿易を促進する方針を明らかにしており、マレーシアやミャンマーとの貿易をルピーで決済することを発表」、「ルピーで決済」は「ルピー」の通貨価値が不安定なので、それほど進まないだろう。 「グローバルサウスとは、南半球に多いアジアやアフリカなどの新興国・途上国の総称だ」、「ウクライナ情勢を巡り欧米諸国とロシアとの対立が深まる中、国連決議などの場面でグローバルサウスの動向が注目」、「日米豪との「クアッド」の枠組みはインドにとって戦略的な強みとなっている」、なるほど。 「米人権団体フリーダムハウスは2020年の報告書で「ニューデリーと北京の価値観の違いが曖昧になりつつある」と記述し、インドが中国のような強権国家に近づく可能性に警鐘を鳴らしている。2021年には政治状況に関するインドの評価を「自由」から「部分的自由」に引き下げている。 モディ首相についても「州首相時代の2002年に少数派イスラム教徒を弾圧した」との批判が持ち上がっているが、植民地時代への恨みが根強く残るインドでは「旧宗主国の傲慢な物言いだ」との反発が高まるばかりだ。 「ニューデリーと北京の価値観の違いが曖昧になりつつある」との「警告」は重く受け止める必要がある。「インドは成長著しいものの、深刻な雇用不足に悩んでいる。都市部では若年層の失業増加で治安が悪化しつつあり、インド政府が強権的な取り締まりに踏み切れば、人権状況を巡る西側諸国との軋轢はさらに激化することだろう」、その通りだ。 現代ビジネス 藤 和彦氏による「悪名高き「お役所仕事」が最大障壁…!インドが「人口世界一」になっても「世界経済を引っ張る“次の中国”」になる日は来ない「残念なワケ」」 「2021年の労働参加率・・・は46%とアジアで最も低い・・・女性の労働参加率はさらにひどく、世界最低の水準で推移」、若年労働力へ職を提供できないというのは、致命的だ。 「製造業に弱みを抱えるインドは慢性的な雇用不足に苦しめられている」、「製造業がGDPに占める割合(2021年時点)は中国が27%、ベトナムが25%であるのに対し、インドは14%に過ぎない。 インドでは過去10年、毎年700万職者が市場に参入してきたが、新規の雇用を満足につくることができなかった。このため、職にありつけない若者は農村にとどまるしかなく、インドでは全労働者の半数近くが農村などで日々を生き抜くための低賃金の仕事に従事している。 「宝の持ち腐れ」になっていると言っても過言ではない」、「宝の持ち腐れ」とは言い得て妙だ。 「米アップルは、インドで現地生産の拡大を目指しているが、製造される部品のうちiPhoneの組み立て工場に納品できる合格品が約半分にとどまっている」、これほど「合格品」が低いのは労働力の質も低いと考えざるを得ない。 「米格付け会社ムーデイーズ・インベスター・サービスは5月23日「政策の実行ベースの遅さやお役所仕事のせいで、製造業やインフラなどのセクターで外国からの投資が減少する恐れがある」と指摘」、これは深刻だ。 藤 和彦氏による「「第2の中国」になるのは難しいのか?…インドの「経済成長」を阻む「政情不安」と「ナショナリズム」の不穏な関係」 「残念ながらインドが「第2の中国」となる日は、やってきそうにない・・・アジア最下位の労働参加率や高度成長に不可欠な製造業に発展の兆しが見られないことが、足を引っ張っているからだ。 さらに近年では、ナショナリズムの台頭から様々な火種がくすぶるように」、「インドで活動するグローバル企業にとってのさらなるリスクは、テロの脅威だ。 統制が厳しい中国とは異なり、インド国内ではイスラム過激派などにテロ事件が多発しており、2008年のムンバイ同時多発テロでは日本人も犠牲になった。 このところ卑劣なテロ事件は発生していないが、インドの治安機関などは頻繁にテロ警戒アラートを発信しているのが現状だ」、「インドの治安機関などは頻繁にテロ警戒アラートを発信している」、外資にとっては嫌な国だ。 「1950年代から80年代にかけて、インドの経済成長は途上国の中で低かったため、「ヒンズー成長率」と揶揄されてきたが、この用語が再び囁かれるようになっている」、「インドは過去何度となく高成長の期待を裏切ってきたが、今回も「二の舞」を踏むことになるのだろうか」、「「ヒンズー成長率」とは有り難くないネーミングだ。 「インドが中国のような強権国家に近づく可能性に警鐘」、「豊富な若年人口は、インドにとって好機とともに脅威をもたらす「諸刃の剣」なのだ。 インド政府が強権的な取り締まりに踏み切れば、人権状況を巡る西側諸国との軋轢はさらに激化することだろう。 イスラム教徒への差別の問題も火種となりつつある」、 「豊富な若年人口は、インドにとって好機とともに脅威をもたらす「諸刃の剣」」とは、高齢化が激化している「日本」からみると、贅沢な悩みだ。 「フランシス・フクヤマ氏は「インドはかつて宗教的にも言語的にも多様性に富んだ国だったが、現在のインド与党はヒンドウー教のナショナリストの国に変えようとしている。必ず暴力が起きる」と警告を発している」、「「世界最大の民主主義国家」と称されるインドだが、西側諸国との蜜月関係はいつまで続くかどうかわからなくなっている。 残念ながら、インドは「次の中国」になれないのではないだろうか」、「インド」にはつくずく失望した。 なお、鉄道事故については、まだきちんとした記事がないので、出次第、取上げるつもりだ。
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金融業界(その18)(「アップル預金」年利4.15%の衝撃 日本でのサービス開始に待望の声も 立ちはだかる意外な障壁、金融界で囁かれる「トヨタ銀行創設」の現実味 名古屋市長選に意欲の大塚耕平議員が過去に発言、SBI新生銀 TOBでも簡単ではない公的資金返済 少数株主との平等性を保ちつつ返済は可能か、三菱UFJ みずほFG 三井住友銀行の「出戻り社員」対策が想像以上においしいワケ) [金融]

金融業界については、本年4月22日に取上げた。今日は、(その18)(「アップル預金」年利4.15%の衝撃 日本でのサービス開始に待望の声も 立ちはだかる意外な障壁、金融界で囁かれる「トヨタ銀行創設」の現実味 名古屋市長選に意欲の大塚耕平議員が過去に発言、SBI新生銀 TOBでも簡単ではない公的資金返済 少数株主との平等性を保ちつつ返済は可能か、三菱UFJ みずほFG 三井住友銀行の「出戻り社員」対策が想像以上においしいワケ)である。

先ずは、本年4月24日付けデイリー新潮「「アップル預金」年利4.15%の衝撃 日本でのサービス開始に待望の声も、立ちはだかる意外な障壁」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/04241102/?all=1
・『米IT大手のアップルが「金利4.15%」の預金サービスに乗り出したことが話題になっている。“雀の涙”以下の預金金利に慣れきった日本人にとっては夢のような話のため「上陸」を待ち望む声も多いが、コトはそう簡単でないという。 4月17日から始まったアップルの新しい預金サービスは、同社のクレジットカード「アップルカード」の利用者を対象としたものだ。提携する米ゴールドマン・サックスの普通預金口座を利用し、Walletアプリで開設可能。またアカウントに紐づけされた銀行口座やApple Cashの残高から入金や送金が無料でできるという。 「金利4.15%は、米連邦預金保険公社(FDIC)に加盟する金融機関の平均預金金利0.37%の10倍以上、日本のメガバンクの普通預金金利0.001%と比べると4000倍以上になります。口座維持手数料や最低預金額などの条件はない一方で、残高の上限はFDIC保護対象の25万ドル。新サービスの前提となるアップルカードは米国在住者向けサービスのため、日本のiPhoneユーザーらは利用できません」(米在住ジャーナリスト) アップルが2月に発表した決算(2022年10~12月期)では、中国でのコロナ感染再拡大を受けたiPhone減産などによって、19年以来となる減収減益を記録。そのためモバイル決済部門の伸長が経営課題に浮上していたという。 ITジャーナリストの三上洋氏の話。「アメリカの地方銀行やネットバンキングでは年利3~4%の預金金利はそれほど珍しくなく、また“アップル預金”の金利は4月の米FRB政策金利5%を下回るものです。それでも新サービスが与えるインパクトは大きく、金利面の魅力だけでなく、既存のiPhoneユーザーの利便性向上に直結することから、顧客の囲い込み効果は非常に大きいと見られています」』、「同社のクレジットカード「アップルカード」の利用者を対象としたものだ。提携する米ゴールドマン・サックスの普通預金口座を利用し、Walletアプリで開設可能。またアカウントに紐づけされた銀行口座やApple Cashの残高から入金や送金が無料でできる」、「新サービスの前提となるアップルカードは米国在住者向けサービスのため、日本のiPhoneユーザーらは利用できません」、「「アメリカの地方銀行やネットバンキングでは年利3~4%の預金金利はそれほど珍しくなく、また“アップル預金”の金利は4月の米FRB政策金利5%を下回るものです」、なるほど。
・『「アップル内ですべて完結」  三上氏が続ける。 「もともとアップルは、iPhoneならOSから端末、アプリなどのコンテンツまで“アップル内ですべて完結させる”との企業理念のもと事業を展開してきました。そんななか、iPhoneに唯一欠けていたのが銀行機能だった。電子決済ではアップルカードのほか、iPhoneの支払い機能もありますが、これまで支払い口座は別の銀行でした。新サービスの開始によって“アップル内ですべてお金が回る”仕組みが完成したことになります」 アップルの具体的な狙いについては、 「クレジットカード事情が日米では異なっており、アメリカでは“ミニマムペイメント”と呼ばれる、日本でいう“リボルビング払い”が主流でアップルカードも同様です。またアップルは『Apple Pay Later』というApple Payでの後払いサービスも先行して始めていました。いずれも手堅い手数料収入が見込め、利用者がカードを使うほどアップルの収益に繋がる仕組みとなっています」(三上氏) 顧客の囲い込みだけでなく、収益向上にも資する“一石二鳥”のサービスだという』、「新サービスの開始によって“アップル内ですべてお金が回る”仕組みが完成したことになります」、「顧客の囲い込みだけでなく、収益向上にも資する“一石二鳥”のサービスだという」、なるほど。
・『「日本上陸」が簡単でない理由  他国と比べてiPhone(OS)シェア率の高い日本はアップルにとっても重要市場とされ、今後「アップル預金」が日本に上陸する可能性も指摘されている。 しかし話はそう簡単ではないとの声も。 「携帯キャリアでいえば、日本でもauのじぶん銀行やソフトバンク系のpaypay銀行などがありますが、いずれも普通預金金利は0.001%と、金利だけを単純比較すれば日本勢はとても太刀打ちできない。しかしアップルが同様のサービスを日本で展開するには越えなければならないハードルが幾つかあり、その一つが日本の場合、大手キャリアがiPhoneの販売代理店も兼ねている点です。アップル側も本気で“潰し合い”になるようなサービス展開は避けると見られ、仮に日本で預金サービスを開始するとしても、大手キャリアとの“棲み分け”を模索する可能性が指摘されています」(ITジャーナリストの井上トシユキ氏) 経済評論家の荻原博子氏もこう言う。「アップルの新サービスが日本で話題になっているのは、それだけ日本の銀行の預金金利が低すぎることの裏返しです。長く続いたゼロ金利政策で、お金を預け入れるメリットがない状況に慣れきった日本人からすれば、“上陸”を待望する声が上がるのも当然。ただしアップルが日本の銀行と提携するなどして預金サービスを日本で始めるとなっても、為替リスクや資金の調達・運用面での課題から、アメリカと同程度の金利はとても望めないでしょう」 「異国の夢物語」と考えたほうがいいのかも』、「大手キャリアがiPhoneの販売代理店も兼ねている点です。アップル側も本気で“潰し合い”になるようなサービス展開は避けると見られ、仮に日本で預金サービスを開始するとしても、大手キャリアとの“棲み分け”を模索する可能性が指摘」、「アップルが日本の銀行と提携するなどして預金サービスを日本で始めるとなっても、為替リスクや資金の調達・運用面での課題から、アメリカと同程度の金利はとても望めないでしょう」、やはり「異国の夢物語」なのだろう。

次に、5月13日付け日刊ゲンダイが掲載した金融ジャーナリストの小林佳樹氏による「金融界で囁かれる「トヨタ銀行創設」の現実味 名古屋市長選に意欲の大塚耕平議員が過去に発言」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/322866
・『参議院の愛知選挙区選出の大塚耕平議員(63)が次の名古屋市長選に立候補する意向を表明した。大塚議員は1959年、名古屋市生まれ。旭丘高校、早稲田大学政治経済学部を卒業後、日本銀行の職員を経て、2001年の参院選に当時の民主党から立候補し初当選した。 民主党政権時代は、内閣府の副大臣や厚生労働副大臣を歴任。民主党から民進党に変わった後の17年、総選挙の際に衆院議員が「希望の党」と「立憲民主党」に分かれて党を出ていく中で、民進党の代表に就いた。現在4期目で、国民民主党の代表代行と政調会長を務めている。学生時代や日銀時代はバレーボール部所属で、スキューバダイビングのインストラクターという一面もある。 大塚議員は出馬の動機について、「経済界や地元議員らから出馬の要請があり、統一地方選直後に市長選への立候補の意思を固めた」と語り、「日本全体が非常にさまざまな課題を抱えて低迷しているという実感を私は持っていますので、そういう中で名古屋というのは非常に重要な位置づけにあると思っています。国政の課題は十分理解しているつもりでありますし、貢献できる潜在的なスキルを持っていると思いますので」と抱負を語った。名古屋市長選挙は25年4月に行われる予定だ。) 市長選は2年後だが、早くも大塚氏が名古屋市長になれば動き出すのではないかと金融界で囁かれている構想がある。名古屋市に本店を置く大手銀行の創設だ。大塚氏は「名古屋の経済規模にふさわしい大手銀行が必要」と語ったことがあるためだ。 名古屋にはかつて東海銀行という都銀があったが、幾度かの再編を経て三菱UFJ銀行となっている。名古屋を本店とする都銀は今はなく、第二地銀以下の中小金融機関の牙城となっている。このため東海銀行以上の規模の大手銀行を創設すべきというのが大塚氏の主張だった。 その有力候補とみられているのがトヨタ自動車だ。トヨタの財務基盤はメガバンクをしのぐ。金融界では大塚氏が名古屋市長になれば、「トヨタ銀行の創設も絵空事ではなくなる」との声が漏れ始めた』、「名古屋市長選挙」では、2009年に民主党推薦の河村たかし氏が当選、その後は減税日本推薦として、民主党や自民党・公明党が推薦する候補を破って勝ち続けている。大塚氏はさわやかな印象で、十二分に河村氏に対抗し得る。推薦母体は未定だが、国民民主党、立憲民主党、自民党・公明党などが推薦すると思われる。「「トヨタ銀行の創設も絵空事ではなくなる」との声が漏れ始めた」、「トヨタ」はいまさら銀行経営などに興味を示す筈はないとみるべきだろう。

第三に、5月26日付け東洋経済オンライン「SBI新生銀、TOBでも簡単ではない公的資金返済 少数株主との平等性を保ちつつ返済は可能か」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/674481
・『4半世紀にわたって未解決だった公的資金の返済はすんなりと進むのか。 SBIホールディングス(以下、SBI)は5月12日、50.04%の株式を保有するSBI新生銀行をTOB(株式公開買い付け)によって非公開化すると発表した。子会社であるSBI地銀ホールディングスを通し、政府系株主である預金保険機構と整理回収機構が保有する22.98%を除くすべての株式を買い取る。TOB価格は1株当たり2800円で、総額は約1542億円になる。 5月15日に始まったTOBの期限は6月23日。東証スタンダード市場に上場しているSBI新生銀は、TOB後上場廃止になる。TOBに応じなかった少数株主に対しては、同じく2800円で強制的に株式を買い取るスクイーズアウト(締め出し)を行うことから、SBI新生銀の株主はSBIと政府系株主のみになる。 今回のスクイーズアウトでは、株式併合で株式の単位を切り下げ、少数株主の保有株を1株未満とすることで強制的に買い上げる手法をとる。株式併合には臨時株主総会で3分の2の賛成が必要だが、SBIと政府系株主を合わせて考えれば、議決権を7割超保有している。このためTOBに応じる株主がゼロでもスクイーズアウトは必ず成功するという仕組みだ』、「北尾社長」らしい実に巧妙なやり方だ。
・『SBI北尾社長の狙い  2019年以来、SBIは新生銀をグループに引き入れるために心血を注ぎ、銀行業界初ともいわれた敵対的TOBを2021年に成功させた。SBIの北尾吉孝社長は側近である川島克哉氏をSBI新生銀の社長として送り込むなどしてきた。 同行がSBI傘下に入ったことによるシナジーは徐々に発揮されつつある。法人向けビジネスでの連携などの施策が寄与。2022年度はSBI新生銀の純利益を50億円押し上げた。 SBIは上場廃止によって、より積極的なシナジーを狙った施策が可能になると主張する。一時的なコスト増になる先行投資など中長期的な取り組みについても、意思決定を迅速に行えるようになるという。北尾社長はこの日の会見で「少数株主がいなくて(株主が)われわれと政府系だけになれば、経営の自由度が高まっていくから、それだったらいろいろやり方があるんじゃないか」と狙いを語った。) SBI新生銀にとって、かねて懸案だったのは前身の旧日本長期信用銀行が破綻した1998年に国から注入された公的資金の返済だ。現在、未回収の額は約3500億円。その返済は進むのだろうか。 公的資金の返済には、これまでも難しい壁が立ちはだかっていた。返済すべき公的資金の裏付けとなっているのは、政府系株主が保有する22.98%(約4900万株)の株式。政府系株主が保有分を売却すればその分が「回収額」となる。 ところが、新生銀の株価は2000円近辺で推移しており、政府系株主の持分では1000億円程度の価値しかない。3500億円を回収するためには単純計算で株価が3倍超に上がる必要があり、7000円を超える水準にならないといけない。このことが足かせになり、政府系株主は新生銀の株式をいつまでも手放せない袋小路に陥っていた』、「新生銀の株価は2000円近辺で推移しており、政府系株主の持分では1000億円程度の価値しかない。3500億円を回収するためには単純計算で株価が3倍超に上がる必要があり、7000円を超える水準にならないといけない」、「このことが足かせになり、政府系株主は新生銀の株式をいつまでも手放せない袋小路に陥っていた」、打開しようとするのが今回の動きだ。
・『少数株主との不平等  逆に言えばSBI新生銀の株式は、将来の返済に伴って「7000円」を超える価値になりうる株式だ。今回のTOBは、その株を「2800円」で買うということになる。少数株主から見れば、不平等ともとられかねない。 非公開化すれば、市場での株価はつかなくなり、政府系株主が持つ株式の価値は明確には見えなくなる。しかし、不平等になる懸念を考慮すれば、政府系株主が持つ4900万株に要回収額である3500億円をすぐさま払うわけにもいかないだろう。 SBIはこの問題をどう考えているのか。TOB開始を知らせる公表文によると、「持株比率に応じた配当を行う方法等により公的資金の返済を行う」としている。要するに、今は2800円が適切であるSBI新生銀の企業価値を、時間をかけて向上させ、配当の形で返済していくということだ。) ところが、ここにひとつの問題が立ちふさがる。TOBに際して、SBIと政府系株主、そしてSBI新生銀との間で交わされた「公的資金の取扱いに関する契約書」だ。 契約書では、回収すべき公的資金の額を3493億円と確認。そのうえでSBI新生銀は「可能な限り早期に要回収額を返済するよう努める」としている。ただ、具体的な方法については2025年6月末までに政府系株主と具体的仕組みについて合意するとした』、「具体的な方法については2025年6月末までに政府系株主と具体的仕組みについて合意するとした」、なるほど。
・『「可能な限り早期」どのように  「可能な限り早期」の具体的な時期は不明だ。配当により返済するにしろ、SBI新生銀の直近2023年3月期の純利益は427億円。政府系株主に回せる配当金は数十億円程度とみられる。これでは、全てを返済するのに20年以上かかってしまい、到底「可能な限り早期」とは言えない。 実際SBIは、SBI新生銀が設置したTOBの是非を諮る特別委員会に対し、配当が公的資金の残額に達するには「相応の期間」がかかることを説明したという。結局、公的資金返済の期間が明確にならないことから、SBI新生銀の社外取締役の1人はTOB賛同決議に反対した。 「可能な限り早期」と「相応の期間」。この2つの期間の矛盾を解決しない限り、公的資金の返済は実現しない。2025年6月末という期限について、北尾社長は「返し方の道筋について合意するということであって、いついつまでに返すという話ではない」と予防線を張った。 TOB発表の翌5月15日のSBI新生銀の終値は2806円と、TOB価格の2800円を上回った。予定通りTOBが行われればこの価格で購入した株主は損をすることになる。投資家がこうした事情を見て、TOBまでにはまだ一波乱があると踏んだ可能性もある。SBIとSBI新生銀、そして政府系株主を巡る問題はまだ一筋縄ではいかないようだ』、「「可能な限り早期」と「相応の期間」。この2つの期間の矛盾を解決しない限り、公的資金の返済は実現しない。2025年6月末という期限について、北尾社長は「返し方の道筋について合意するということであって、いついつまでに返すという話ではない」と予防線を張った」、今後の展開が要注目だ。

第四に、5月26日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「三菱UFJ、みずほFG、三井住友銀行の「出戻り社員」対策が想像以上においしいワケ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/323454
・『メガバンク3行(三菱UFJ銀行、みずほフィナンシャルグループ〈FG〉、三井住友銀行)が、退職者交流サイトの立ち上げと出戻り社員の採用に踏み切りました。ついに「中途退職者=裏切り者」の意識を変えようとしているのです。「人手不足なんだから当たり前でしょ」と思った銀行業界以外の方、実は、あなたにとっても「おいしい話」かもしれません』、興味深そうだ。
・『中途退職者=「裏切り者」は時代遅れ! ついにメガバンクも姿勢をチェンジ  メガバンク3行(三菱UFJ銀行、みずほFG、三井住友銀行)が相次いで退職者の交流サイトを立ち上げ、また、一度退職して銀行を離れた人を再び採用するカムバック採用(いわゆる“出戻り採用”)が活発になってきました。このことが銀行業界の常識を覆す施策として話題になっています。 というのもメガバンクを中途で退職して外資系金融機関に移籍した行員は、これまで「裏切り者」呼ばわりされてきたからです。 メガバンク以外でも、退職者のネットワークが活発な会社とそうではない会社があります。日本の大企業も退職者について「もう外部の他人だ」と冷たく捉える風土の会社と、離職した後も仲間だと考える会社に分かれるのです。 退職者の交流ネットワークは、日本でもアルムナイ(卒業生)ネットワークと呼ばれることが定着しています。 実は、「アルムナイネットワークが強いかどうか」が企業の命運を分ける時代がすぐそこまできています。さらに、アルムナイネットワークは個人が自分自身の転職を「成功」させるためにも重要なのです。) 今回の記事では、日本社会で退職者を裏切り者と考える会社と大切に考える会社がある理由とその変化、そして転職が当たり前になった時代のアルムナイネットワークの意味についてまとめてみたいと思います。 私の個人的な経験からお話しすると、私が最初に所属したコンサルティングファームでは、少なくとも25年前までは他のコンサルティングファームに転職した人間は裏切り者と認定されていました。 外資のコンサルファームなので社員の大半は日本の大企業からの転職者です。当時は日本企業は終身雇用が当たり前の時代で、コンサルファームに転職してきた段階で前の会社からは裏切り者扱いされた社員も少なくなかったと記憶しています。このあたりはその会社の社風もありますが、本人が辞めた際の経緯によるケースも多々あったようです。 特に印象に残っているのは中堅社員で比較的後輩の面倒見もよく、周囲から慕われていたコンサルタントが競合他社に転職したときのことです』、「私が最初に所属したコンサルティングファームでは、少なくとも25年前までは他のコンサルティングファームに転職した人間は裏切り者と認定されていました。 外資のコンサルファームなので社員の大半は日本の大企業からの転職者です。当時は日本企業は終身雇用が当たり前の時代で、コンサルファームに転職してきた段階で前の会社からは裏切り者扱いされた社員も少なくなかったと記憶しています」、当時は「裏切り者扱い」が普通だったようだ。
・『コンサル業界は90年代後半から「アルムナイ歓迎」にチェンジ  私がまだ20代だった頃の話です。 その直後の社員集会で幹部から、「個人的な知り合いも多い業界ではあるけれども、プロフェッショナルとして仕事をする以上、競合するコンサルティングファームの社員とプライベートで食事をしたりするのは気をつけるように」とお達しがありました。 その際に、「付き合い方次第では自分の評価に影響する」とまで言われたので、あとでこっそりとどういう意味なのかをパートナーの一人に尋ねたところ、「あいつとはもう付き合うなという意味だ」と厳しく言われたことを覚えています。 90年代後半になって、わたしのいた会社ではグローバル本社のお達しで日本でもアルムナイパーティーが開催されるようになりました。その時も当初は裏切り者をパーティーに呼ぶか呼ばないか幹部が議論したぐらい、競合への転職についてはピリピリした空気がありました。 最終的には、その議論をしていた幹部たちがごっそりと移って新しいコンサルファームを立ち上げたうえで、堂々とアルムナイパーティーに顔を出すようになり、今では当時の空気はなくなったようです。 私もその時期にアルムナイになったのですが、退社して初めて知ったのは競合コンサルのアルムナイネットワークがとても強固だということでした。ちなみに競合コンサルとは、アクセンチュアのことです。 当時の私はネットベンチャーに転職して、その仲間にはコンサルファーム出身者が何人かいました。そのひとりがアクセンチュア出身だったのですが、彼がこっそりアクセンチュアのアルムナイネットワークの画面を見せてくれたうえで、アルムナイネットワークの意義について熱く語ってくれたことがあります』、「退社して初めて知ったのは競合コンサルのアルムナイネットワークがとても強固だということでした。ちなみに競合コンサルとは、アクセンチュアのことです」、なるほど。
・『アクセンチュア、ソニー、リクルートはアルムナイのおかげで成長した  そこでは退職者同士、お互いの悩みを打ち明けあい、ビジネス上で困っていることを助け合っている実態がありました。 「会社を離れると肩書も通用しなくなる。それでもアクセンチュア出身者がビジネス界で成功する事例が増えれば力になる。こうやって元仲間が助けてくれる風土を意図的につくりあげることは重要なのだ」 これは西暦2000年頃の話なのですが、それをWeb上で当時のアクセンチュアが行っていたのです。「ずいぶん違うな」と感心したものです。 その当時の日本では、アルムナイネットワークが強いことで知られる会社は数えるほどでした。アクセンチュアはそのひとつで、他に名前がよく挙がるところとしては、リクルートとソニーがアルムナイの絆の強さで有名でした。 ソニーには当時、ソニーを退社した人たちのソバの会という組織がありました。ソバとはSONYのOBのASSOCIATIONの略だと言われたのですが、もし間違っていたらごめんなさい。 私によくしてくれた先輩がちょうどソニーOBで、転職した上場企業の常務まで上り詰めたうえで自分の会社を立ち上げた人だったのですが、彼はソバの会に出るたびに元気をもらっていたようで、直後に会ったりするとその場でどんなことがあったのかよく話してくれました。 伝聞ではありますが、その雰囲気を解説すると、その頃のソバの会にはよくソニーの現役のトップが来たそうなのです。テレビのWBSとかでよく見かけるぐらい偉い人です。 その人がソバの会では「偉くない」ところがポイントで、社外で成功している人の方が偉い雰囲気がある。だからみんな後ろを振り返らずに元気をもらって帰ってくるという話です。あくまで個人の感想かもしれませんが、雰囲気の伝わるエピソードだと思います。 リクルートでは元リクと呼ばれる人的ネットワークがあって、何百人もいる伝説の元社員を中心に、巨大な交流ネットワークが出来上がっています。それが公式な組織ではなく、無数に存在する個人同士がつながるアメーバのようなネットワークになっているところが面白い。 離れていても「元リク」だとわかるだけで急に打ち解けるような、不思議な資格にもなっています。 さて、これら3社は今でも存在感の強い大企業です。何かと不安定な要素が多く人材流出の激しい現代でも3社がトップ企業の座を守ることができている理由の一つは、「アルムナイネットワークの強さ」ではないかと思います。 一方、前述した3社のアルムナイネットワークと比較すると、冒頭でお話ししたような銀行のアルムナイネットワークは構築しはじめたばかりの新参者です。報道によれば、みずほFGではカムバック採用も10人規模で行われているようですが、ある意味その程度の規模でもあります。 こういった状況の日本企業は、これからアルムナイネットワークをどうしていくべきなのでしょうか? 三つのポイントがあると思います』、「アクセンチュア」では、「「会社を離れると肩書も通用しなくなる。それでもアクセンチュア出身者がビジネス界で成功する事例が増えれば力になる。こうやって元仲間が助けてくれる風土を意図的につくりあげることは重要なのだ」」、「ソニーには当時、ソニーを退社した人たちのソバの会という組織がありました・・・私によくしてくれた先輩がちょうどソニーOBで、転職した上場企業の常務まで上り詰めたうえで自分の会社を立ち上げた人だったのですが、彼はソバの会に出るたびに元気をもらっていたようで、直後に会ったりするとその場でどんなことがあったのかよく話してくれました。 伝聞ではありますが、その雰囲気を解説すると、その頃のソバの会にはよくソニーの現役のトップが来たそうなのです。テレビのWBSとかでよく見かけるぐらい偉い人です。 その人がソバの会では「偉くない」ところがポイントで、社外で成功している人の方が偉い雰囲気がある」、「社外で成功している人の方が偉い雰囲気がある」とは凄い。「リクルートでは元リクと呼ばれる人的ネットワークがあって、何百人もいる伝説の元社員を中心に、巨大な交流ネットワークが出来上がっています。それが公式な組織ではなく、無数に存在する個人同士がつながるアメーバのようなネットワークになっているところが面白い。 離れていても「元リク」だとわかるだけで急に打ち解けるような、不思議な資格にもなっています」、「リクルート」もさもありなんだ。
・『アルムナイ同士が結束するほど自分自身が「転職で成功」する  一つは「一度同じ釜の飯を食ったことがある仲間」の結束を強めるということは、本人たちにとってものすごく重要なサポートになるということです。 20代、30代の転職が当たり前になった日本社会ではありますが、本人にとって転職は相変わらず大きなチャレンジです。確率でいっても転職で成功する人と失敗する人の比率は、事後の調査などを見る限り半々だと思われます。 「会社の常識は他社の非常識」と言われるくらい、前の組織の経験が新しい会社では通用しないことも少なくありません。一方で、アルムナイネットワークの仲間はその点で同じような苦労をし、同じようなチャレンジをしてきています。そして一人で挑戦するよりも大勢で力を合わせたほうが挑戦は成功しやすいものです。 アルムナイネットワークに積極的にかかわることは、自分自身の転職を「成功」させるためにも重要だというのが一つ目のポイントです』、「「一度同じ釜の飯を食ったことがある仲間」の結束を強めるということは、本人たちにとってものすごく重要なサポートになるということです・・・本人にとって転職は相変わらず大きなチャレンジです。確率でいっても転職で成功する人と失敗する人の比率は、事後の調査などを見る限り半々だと思われます」、「転職で成功する人」の「比率」は「半々」とは予想以上に高いようだ。
・『アルムナイは会社の「顔」 企業側もサポートするほど得をする  二つ目に、退職者の中に成功者が多いことはその会社にとっても重要だということです。ソニーやリクルート、アクセンチュアはその退職者の評判が高いことで、新卒や中途の採用において競合する他社よりも有利な状況にあります。 もし仮に、メガバンクを退職した社員たちが新しい職場で「使えない」などという評判が立ってしまうとしたら、それはそのまま銀行の評判に跳ね返ってくることは明らかでしょう。 そう考えたら、新しくアルムナイネットワークを作り始めた会社こそ、その構築やサポートに相応の力を入れるべきなのです。少なくともネットワークというものは、自走し始めるまではものすごく大きなエネルギーを必要とするものなのですから』、「退職者の中に成功者が多いことはその会社にとっても重要だということです。ソニーやリクルート、アクセンチュアはその退職者の評判が高いことで、新卒や中途の採用において競合する他社よりも有利な状況にあります」、「新しくアルムナイネットワークを作り始めた会社こそ、その構築やサポートに相応の力を入れるべきなのです。少なくともネットワークというものは、自走し始めるまではものすごく大きなエネルギーを必要とするものなのですから」、その通りだ。
・『競合からの出戻り人材は企業にとってイノベーションの特効薬になる  そして三つ目に、カムバック人材は会社にとってさらに使える人材だということです。 別に他社の企業秘密を知っているからということではありません。 単純にゴールドマン・サックスからみずほ銀行に戻ってくる人材や、テスラからトヨタ、グーグルからソニー、TSMCからNECに戻ってきた人材をイメージしてみればわかります。 みずほ銀行の仕組みを知ったうえで、違う仕組みを持つ外資系金融機関で何年か働き、そのうえでまた戻ってくる人材はそもそも有能な人材だというだけでなく、企業にイノベーションをもたらしてくれる人材です。 これはメガバンクだけの話ではありません。中国、韓国、台湾、そして欧米などまったく違う仕組みをもった競合企業と戦わなければならないという点では金融業界も製造業もIT業界も環境は同じです。そういった外部を知るカムバック人材が、まったく違う他業界からの転職者よりも、重要な人材であることは間違いないでしょう。 だとしたら問題は「受け入れるかどうか」ではなく、「現状、10人ぐらいしかカムバック人材がいない状況を、いかに速いスピードで年間数十人規模に拡大できるか」が課題のはずです。 そうなるためにはどうすればいいでしょうか? 要点はシンプルです。アルムナイネットワークが強固になればいいのです。日本企業は令和に入り、もはや昭和のようなよそ者意識や裏切り者意識は薄れてきたとは思います。 ただ、企業風土に基づく意識というものはそう簡単に変わるものではないことも事実。それを考えるとアルムナイネットワークの拡充は、人為的に力を入れていかなければならない重要経営課題だと考えるべきでしょう。 メガバンクを筆頭に第2次アルムナイブームが来れば、転職時代を生きる私たち個人にとっても「おいしい話」になるかもしれません』、「みずほ銀行の仕組みを知ったうえで、違う仕組みを持つ外資系金融機関で何年か働き、そのうえでまた戻ってくる人材はそもそも有能な人材だというだけでなく、企業にイノベーションをもたらしてくれる人材です」、「これはメガバンクだけの話ではありません。中国、韓国、台湾、そして欧米などまったく違う仕組みをもった競合企業と戦わなければならないという点では金融業界も製造業もIT業界も環境は同じです。そういった外部を知るカムバック人材が、まったく違う他業界からの転職者よりも、重要な人材であることは間違いないでしょう。 だとしたら問題は「受け入れるかどうか」ではなく、「現状、10人ぐらいしかカムバック人材がいない状況を、いかに速いスピードで年間数十人規模に拡大できるか」が課題のはずです」、「アルムナイネットワークが強固になればいいのです。日本企業は令和に入り、もはや昭和のようなよそ者意識や裏切り者意識は薄れてきたとは思います。 ただ、企業風土に基づく意識というものはそう簡単に変わるものではないことも事実。それを考えるとアルムナイネットワークの拡充は、人為的に力を入れていかなければならない重要経営課題だと考えるべきでしょう。 メガバンクを筆頭に第2次アルムナイブームが来れば、転職時代を生きる私たち個人にとっても「おいしい話」になるかもしれません」、同感である。
タグ:「北尾社長」らしい実に巧妙なやり方だ。 東洋経済オンライン「SBI新生銀、TOBでも簡単ではない公的資金返済 少数株主との平等性を保ちつつ返済は可能か」 「名古屋市長選挙」では、2009年に民主党推薦の河村たかし氏が当選、その後は減税日本推薦として、民主党や自民党・公明党が推薦する候補を破って勝ち続けている。大塚氏はさわやかな印象で、十二分に河村氏に対抗し得る。推薦母体は未定だが、国民民主党、立憲民主党、自民党・公明党などが推薦すると思われる。「「トヨタ銀行の創設も絵空事ではなくなる」との声が漏れ始めた」、「トヨタ」はいまさら銀行経営などに興味を示す筈はないとみるべきだろう。 小林佳樹氏による「金融界で囁かれる「トヨタ銀行創設」の現実味 名古屋市長選に意欲の大塚耕平議員が過去に発言」 日刊ゲンダイ 「大手キャリアがiPhoneの販売代理店も兼ねている点です。アップル側も本気で“潰し合い”になるようなサービス展開は避けると見られ、仮に日本で預金サービスを開始するとしても、大手キャリアとの“棲み分け”を模索する可能性が指摘」、「アップルが日本の銀行と提携するなどして預金サービスを日本で始めるとなっても、為替リスクや資金の調達・運用面での課題から、アメリカと同程度の金利はとても望めないでしょう」、やはり「異国の夢物語」なのだろう。 「新サービスの開始によって“アップル内ですべてお金が回る”仕組みが完成したことになります」、「顧客の囲い込みだけでなく、収益向上にも資する“一石二鳥”のサービスだという」、なるほど。 「「アメリカの地方銀行やネットバンキングでは年利3~4%の預金金利はそれほど珍しくなく、また“アップル預金”の金利は4月の米FRB政策金利5%を下回るものです」、なるほど。 「同社のクレジットカード「アップルカード」の利用者を対象としたものだ。提携する米ゴールドマン・サックスの普通預金口座を利用し、Walletアプリで開設可能。またアカウントに紐づけされた銀行口座やApple Cashの残高から入金や送金が無料でできる」、「新サービスの前提となるアップルカードは米国在住者向けサービスのため、日本のiPhoneユーザーらは利用できません」、 デイリー新潮「「アップル預金」年利4.15%の衝撃 日本でのサービス開始に待望の声も、立ちはだかる意外な障壁」 金融業界 (その18)(「アップル預金」年利4.15%の衝撃 日本でのサービス開始に待望の声も 立ちはだかる意外な障壁、金融界で囁かれる「トヨタ銀行創設」の現実味 名古屋市長選に意欲の大塚耕平議員が過去に発言、SBI新生銀 TOBでも簡単ではない公的資金返済 少数株主との平等性を保ちつつ返済は可能か、三菱UFJ みずほFG 三井住友銀行の「出戻り社員」対策が想像以上においしいワケ) 「新生銀の株価は2000円近辺で推移しており、政府系株主の持分では1000億円程度の価値しかない。3500億円を回収するためには単純計算で株価が3倍超に上がる必要があり、7000円を超える水準にならないといけない」、「このことが足かせになり、政府系株主は新生銀の株式をいつまでも手放せない袋小路に陥っていた」、打開しようとするのが今回の動きだ。 「具体的な方法については2025年6月末までに政府系株主と具体的仕組みについて合意するとした」、なるほど。 「「可能な限り早期」と「相応の期間」。この2つの期間の矛盾を解決しない限り、公的資金の返済は実現しない。2025年6月末という期限について、北尾社長は「返し方の道筋について合意するということであって、いついつまでに返すという話ではない」と予防線を張った」、今後の展開が要注目だ。 ダイヤモンド・オンライン 鈴木貴博氏による「三菱UFJ、みずほFG、三井住友銀行の「出戻り社員」対策が想像以上においしいワケ」 「私が最初に所属したコンサルティングファームでは、少なくとも25年前までは他のコンサルティングファームに転職した人間は裏切り者と認定されていました。 外資のコンサルファームなので社員の大半は日本の大企業からの転職者です。当時は日本企業は終身雇用が当たり前の時代で、コンサルファームに転職してきた段階で前の会社からは裏切り者扱いされた社員も少なくなかったと記憶しています」、当時は「裏切り者扱い」が普通だったようだ。 「退社して初めて知ったのは競合コンサルのアルムナイネットワークがとても強固だということでした。ちなみに競合コンサルとは、アクセンチュアのことです」、なるほど。 「アクセンチュア」では、「「会社を離れると肩書も通用しなくなる。それでもアクセンチュア出身者がビジネス界で成功する事例が増えれば力になる。こうやって元仲間が助けてくれる風土を意図的につくりあげることは重要なのだ」」、 「ソニーには当時、ソニーを退社した人たちのソバの会という組織がありました・・・私によくしてくれた先輩がちょうどソニーOBで、転職した上場企業の常務まで上り詰めたうえで自分の会社を立ち上げた人だったのですが、彼はソバの会に出るたびに元気をもらっていたようで、直後に会ったりするとその場でどんなことがあったのかよく話してくれました。 伝聞ではありますが、その雰囲気を解説すると、その頃のソバの会にはよくソニーの現役のトップが来たそうなのです。テレビのWBSとかでよく見かけるぐらい偉い人です。 その人がソバの会では「偉くない」ところがポイントで、社外で成功している人の方が偉い雰囲気がある」、「社外で成功している人の方が偉い雰囲気がある」とは凄い。「リクルートでは元リクと呼ばれる人的ネットワークがあって、何百人もいる伝説の元社員を中心に、巨大な交流ネットワークが出来上がっています。それが公式な組織ではなく、無数に存在する個人同士がつながるアメーバのようなネットワークになっているところが面白い。 離れていても「元リク」だとわかるだけで急に打ち解けるような、不思議な資格にもなっています」、「リクルート」もさもありなんだ。 「「一度同じ釜の飯を食ったことがある仲間」の結束を強めるということは、本人たちにとってものすごく重要なサポートになるということです・・・本人にとって転職は相変わらず大きなチャレンジです。確率でいっても転職で成功する人と失敗する人の比率は、事後の調査などを見る限り半々だと思われます」、「転職で成功する人」の「比率」は「半々」とは予想以上に高いようだ。 「退職者の中に成功者が多いことはその会社にとっても重要だということです。ソニーやリクルート、アクセンチュアはその退職者の評判が高いことで、新卒や中途の採用において競合する他社よりも有利な状況にあります」、「新しくアルムナイネットワークを作り始めた会社こそ、その構築やサポートに相応の力を入れるべきなのです。少なくともネットワークというものは、自走し始めるまではものすごく大きなエネルギーを必要とするものなのですから」、その通りだ。 「みずほ銀行の仕組みを知ったうえで、違う仕組みを持つ外資系金融機関で何年か働き、そのうえでまた戻ってくる人材はそもそも有能な人材だというだけでなく、企業にイノベーションをもたらしてくれる人材です」、 「これはメガバンクだけの話ではありません。中国、韓国、台湾、そして欧米などまったく違う仕組みをもった競合企業と戦わなければならないという点では金融業界も製造業もIT業界も環境は同じです。そういった外部を知るカムバック人材が、まったく違う他業界からの転職者よりも、重要な人材であることは間違いないでしょう。 だとしたら問題は「受け入れるかどうか」ではなく、「現状、10人ぐらいしかカムバック人材がいない状況を、いかに速いスピードで年間数十人規模に拡大できるか」が課題のはずです」、 「アルムナイネットワークが強固になればいいのです。日本企業は令和に入り、もはや昭和のようなよそ者意識や裏切り者意識は薄れてきたとは思います。 ただ、企業風土に基づく意識というものはそう簡単に変わるものではないことも事実。それを考えるとアルムナイネットワークの拡充は、人為的に力を入れていかなければならない重要経営課題だと考えるべきでしょう。 メガバンクを筆頭に第2次アルムナイブームが来れば、転職時代を生きる私たち個人にとっても「おいしい話」になるかもしれません」、同感である。
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インフラ輸出(その14)(インドネシア高速鉄道が「中国の中古車両が走る中国の鉄道」に成り果てる可能性、「日立製車両」が欧州鉄道界進出に成功した背景 「国鉄と共同開発」からメーカー主導へ業界一変、台湾新幹線「新型車」日立・東芝連合受注の全内幕 難航した価格交渉、どう折り合いをつけた?) [インフラ輸出]

インフラ輸出については、昨年1月23日に取上げた。今日は、(その14)(インドネシア高速鉄道が「中国の中古車両が走る中国の鉄道」に成り果てる可能性、「日立製車両」が欧州鉄道界進出に成功した背景 「国鉄と共同開発」からメーカー主導へ業界一変、台湾新幹線「新型車」日立・東芝連合受注の全内幕 難航した価格交渉、どう折り合いをつけた?)である。

先ずは、昨年4月30日付け現代ビジネスが掲載したPanAsiaNews記者の大塚 智彦氏による「インドネシア高速鉄道が「中国の中古車両が走る中国の鉄道」に成り果てる可能性」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/94929?imp=0
・『3兆ルピアを国庫から負担  インドネシアの首都ジャカルタと西ジャワ州の州都バンドン間150kmを結ぶ高速鉄道計画が壁に直面している。 インドネシア側と中国側で合弁を組む「インドネシア中国高速鉄道会社(KCCI)」などによると、建設費用が不足しており、このままでは2022年度中の開業も難しい局面になりかねない、というのだ。 資金不足は主に用地買収の遅れや建設現場周辺への環境対策によるものとされ、当初の見通しの甘さや杜撰な資金計画が浮き彫りとなっている。 この高速鉄道計画は2015年、ジョコ・ウィドド政権が公表し、日本や中国など海外業者の入札を求めた。鉄道技術では世界有数の日本は官民連携でこの入札に応じたが、インドネシア政府は突如入札の延期を発表、その直後に再度の入札を実施して中国が落札した経緯がある。 当時の菅官房長官は、安全性を最優先して有力視されていた日本から突然中国に鞍替えしたインドネシアの姿勢に「常識的に考えられない」と不快感を露わにした。 中国側は、早期着工・早期完成・開業をうたい上げ、環境アセスメントもいい加減なものと言われる。一説にはインドネシア側が日本の環境アセス資料を裏で流し、中国はそれに少し手を加えて提出したともいわれるなど、いわくつきの落札だった。 さらに建設に関わる一切の費用について「国庫負担を求めない」としたことが、「自分の懐が痛まない」と歓喜したインドネシア側が中国に落札させた最大の決め手と言われた。ところが、建設費は様々な要因から不足し、2021年11月にはインドネシアが当初の約束に反する不足費用の国庫負担を決め、3兆ルピア(約357億円)を支出することになった。 このころから最初は諸手を上げて大規模国家プロジェクトである高速鉄道計画を持ち上げていたインドネシアメディアの中にも「本当に実現できるのか」という疑心暗鬼が生まれ、以後、ジョコ・ウィドド政権に対して否定的な報道もみられるように事態が変化した』、「日本は官民連携でこの入札に応じたが、インドネシア政府は突如入札の延期を発表、その直後に再度の入札を実施して中国が落札した経緯」、「中国側は、早期着工・早期完成・開業をうたい上げ、環境アセスメントもいい加減なものと言われる。一説にはインドネシア側が日本の環境アセス資料を裏で流し、中国はそれに少し手を加えて提出したともいわれるなど、いわくつきの落札だった。 さらに建設に関わる一切の費用について「国庫負担を求めない」としたことが、「自分の懐が痛まない」と歓喜したインドネシア側が中国に落札させた最大の決め手と言われた」、「建設費は様々な要因から不足し、2021年11月にはインドネシアが当初の約束に反する不足費用の国庫負担を決め、3兆ルピア(約357億円)を支出することになった」、「日本」が煮え湯を飲まされた案件が難航しているようだ。
・『資金不足はなぜ生じたのか  高速鉄道計画は当初、建設に関わる資金として55億ドルを金利2%で中国開発銀行から融資を受け、40年で返済することになっていた。ところが建設に際し土地の収用が思ったように進まず、建設地周辺の環境問題も発生、そこにコロナ禍が追い打ちをかけ、工事中断や中国からの労働者の入国制限、労働者のPCR検査費用などが膨れ上がり、資金不足に陥ったとされる。 これにより2018年完工という当初の目標は何度も延期され、現在では2023年初めの完工となっている。 2022年初めにはインドネシアは2022年中の完工としており、11月にバリ島で開催予定のG20会議(主要20カ国・地域の首脳・財務相、中央銀行総裁会議)に出席予定の中国の習近平国家主席とジョコ・ウィドド大統領が完成した高速鉄道に試乗する計画を打ち上げたが、これさえも危うくなっている。 そのため、一部区間だけの完成を急ぎ、その限定区間だけの試乗ならあり得るかも知れないとの観測も出ている。 資金不足に直面したインドネシア政府は2021年11月、国庫の支出に踏み切らざるを得なくなった。中国との間では「インドネシア側に国庫負担は負わせず、資金の保証も求めない」と約束していたにもかかわらず、約4.3兆ルピア(約357億円)の支出を決めたのだった。 この国庫支出は、高速鉄道の運営にあたる「インドネシア中国高速鉄道会社(KCCI)」に出資している「国営インドネシア鉄道(KAI)」への融資という形をとっている。 KCCIは一応、国費投入の資金不足は工事費増大とは直接関係なく、インドネシア側の企業連合体からKCCIへの出資額が不足していることが主な要因と説明している。 こういうわけで「資金不足の悪夢」が再びインドネシアを襲ったのだが、インドネシア政府への融資増額という国庫への負担はなく、胸をなでおろしたものの、2023年6月への完工延期、工事進捗率が82%に過ぎず全路線で13あるトンネルのうち3本が未完であること、高架工事でミスがあり橋脚撤去工事中に事故が起きるなど、依然として不安材料は山積している』、「2023年6月への完工延期、工事進捗率が82%に過ぎず全路線で13あるトンネルのうち3本が未完であること、高架工事でミスがあり橋脚撤去工事中に事故が起きるなど、依然として不安材料は山積」、やはり大変そうだ。
・『中国側にさらなる追加融資依頼へ  こうした中、4月21日、高速鉄道計画は再び資金不足に陥り、今回は中国側に追加融資を要請することになりそうだと米系メディアが報じた。 それによると、インドネシア側は約20億ドルに及ぶ不足分の75%を中国開発銀行に求めるものとみられるという。当然、どうして再び資金不足となったのか、あまりにも杜撰ではないかとの批判が噴出している。 コロナ禍という予期せぬ未曾有の出来事があったために出資が膨れ上がったとしても、そもそもの中国の応札時の見積もりに不備があったなどと、今さらあれこれ言っても詮無いこととはいえ、当然のことながら、中国の杜撰な計画を鵜呑みにして進めたインドネシア側にも責任はあるだろう』、「インドネシア側は約20億ドルに及ぶ不足分の75%を中国開発銀行に求めるものとみられるという。当然、どうして再び資金不足となったのか、あまりにも杜撰ではないかとの批判が噴出・・・コロナ禍という予期せぬ未曾有の出来事があったために出資が膨れ上がったとしても、そもそもの中国の応札時の見積もりに不備があった・・・中国の杜撰な計画を鵜呑みにして進めたインドネシア側にも責任はあるだろう」、その通りだ。
・『首都移転計画の前途にも暗雲  インドネシア政府は2045年の独立100周年までに現在の首都ジャカルタを約1200キロ北に離れたカリマンタン島(マレーシア名ボルネオ島)東カリマンタン州の熱帯雨林地帯に移転する大型国家プロジェクトを抱えている。 このジョコ・ウィドド大統領の肝いり政策とされる国家的プロジェクトにも大きな問題があり、早くも実現は難しい、一部移転に留まるのでは、などという後ろ向きの見方がでている。 資金問題に関しては高速鉄道計画と同様、政府はその多くの費用を外国や外国企業からの投資に頼っている。日本のソフトバンクも孫正義会長が2021年1月にジャカルタを訪問、ジョコ・ウィドド大統領、ルフット・パンジャイタン調整相(海事・投資)らと会談して、首都移転計画に賛同して融資する方針を明らかにした。 孫氏は英国のブレア元首相らとともにインドネシア政府の首都移転問題審議委員会のメンバーに選ばれており、インドネシア側の期待が大きかったことをうかがわせた。 だが2022年3月、ソフトバンクは突然、インドネシアの首都移転計画への融資を取りやめると、インドネシア側に理由を詳しく明かさないまま撤退を通告した。 ソフトバンク側は予定していた融資額については明確にしていないが、インドネシアのルフット・パンジャイタン調整相(海事・投資)などからは「資金額は200〜400億ドルだった」と大きな失望の声が漏れた。 あわてたインドネシア政府は「今後は別の企業、さらに中国にも支援を求めていきたい」と表明、再び中国頼みの巨額プロジェクトとなりそうな気配が漂っている。 国際協力機構(JICA)がインドネシアの日系企業に勤める日本人を対象にした調査では、「首都移転が実現するかどうかは半信半疑」との回答が実に77%に達した。「実現の可能性は低い」は8.5%、「移転は確実に実現する」は14.5%という結果が出たという。 インドネシア側も、首都移転に伴う財政的裏付けの確保に躍起の財務省を中心に、政府部内にも実現の可能性に疑問を抱く声が広がっているという。 首都移転計画では国会や各省庁の機能が移転するが、経済的な機能を持つ関係省庁はジャカルタに残す方針だ。これは首都移転に伴い、ジャカルタに進出している外国企業の事務所や営業所、工場などの大半が移転を計画していないことなどが影響しているという。 先のJICAの調査でも72%が現地法人・駐在員地味所を新首都に移転させる可能性は「低い、またはない」と回答している』、「2045年の独立100周年までに現在の首都ジャカルタを約1200キロ北に離れたカリマンタン島(マレーシア名ボルネオ島)東カリマンタン州の熱帯雨林地帯に移転する大型国家プロジェクトを抱えている」、「ソフトバンクは突然、インドネシアの首都移転計画への融資を取りやめると、インドネシア側に理由を詳しく明かさないまま撤退を通告」、「ソフトバンク」はいいタイミングで断ったが、仮に抱えていたら大変な事態に陥っていたろう。あわてたインドネシア政府は「今後は別の企業、さらに中国にも支援を求めていきたい」と表明、再び中国頼みの巨額プロジェクトとなりそうな気配が漂っている」、こえ以上の中国依存は危険だが、それもインドネシアの身から出たサビだ。
・『どうなる高速鉄道計画  中国主導で進められてきた高速鉄道計画は、4月には一部で線路の着工が始まるなど建設工事自体は止まっていない。しかし資金問題を抱え、このままでは中国の銀行からの増資を受けることになり、ますます中国依存が高まり、「中国の鉄道」となりかねない。 すでにジャカルタに到着したという中国製車両も、当初予定の新型ではなく「中古」の車両だったとの報道もある。KCCI側はあくまで試験用車両と説明しているが、このまま資金不足が続けば、中国の中古車両が走る中国の高速鉄道となる可能性も残る。 中国が一方的に推し進める「一帯一路」政策の甘い罠に乗ってしまったインドネシアは今後、中国による「債務の罠」にはまる危険性も十分あり、ジョコ・ウィドド政権の冷静な目による観察と判断が求められている』、「このまま資金不足が続けば、中国の中古車両が走る中国の高速鉄道となる可能性も残る。 中国が一方的に推し進める「一帯一路」政策の甘い罠に乗ってしまったインドネシアは今後、中国による「債務の罠」にはまる危険性も十分あり、ジョコ・ウィドド政権の冷静な目による観察と判断が求められている」、「日本」を裏切った「ジョコ・ウィドド政権」の自己責任だろう。

次に、本年2月24日付け東洋経済オンラインが掲載した 欧州鉄道フォトライターの橋爪 智之氏による「「日立製車両」が欧州鉄道界進出に成功した背景 「国鉄と共同開発」からメーカー主導へ業界一変」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/654546
・『日立製作所がイギリス国内高速新線向けの中高速車両である395系「ジャベリン」をひっさげ、ヨーロッパ鉄道市場への進出を本格的に果たしてから15年以上の歳月が経過した。 当時のヨーロッパにおいて、日本メーカーは部品供給程度の案件はあったものの、車両そのものを供給する例は少なかった。旧東急車輛(現・総合車両製作所)が製造したアイルランド向けの気動車や電車、三菱電機が設計・製造し、外見がJRのEF66形電気機関車に酷似していることで有名なスペイン国鉄251型電気機関車などの先例はあったが、いずれも小ロットでの生産に終始した。 日本の鉄道メーカーがヨーロッパへ大々的に進出し、現地工場を構えて数百両規模の大量生産をするということなど、当時はとても信じられない状況だった。それがなぜ大きく変化したのか』、「ヨーロッパ」のマーケットはどう変化したのだろう。
・『欧州内でも「他国製」は少なかった  そもそも、工業製品の中でも鉄道という分野は非常に特殊だ。工業水準が高い国においては、各国の鉄道と地元メーカーが手を組んで車両やインフラを開発し、地元だけで使用する「地産地消」が一般的だった。日本もこれに当てはまるが、ヨーロッパでも20世紀までは、かつてのソビエト連邦を中心に東欧の社会主義国家で形成されたコメコン(経済相互援助会議)のように加盟国間で分業するといったケースを除けば、鉄道車両やインフラの輸出入事例はそれほど多かったわけではない。 他国から車両など鉄道関連の製品を輸入するのは、その国の工業水準が高くない場合と、高速列車や低床式路面電車など、自国で開発することが難しい特殊技術が必要な場合に限られていた。 理由は明白である。自国企業から製品を購入することで、その企業の収益を確保することができるうえ、工業水準が高い国であれば、その技術力維持につながる。為替相場の変動リスクを抑えるという側面もあった。ユーロ導入前は、ヨーロッパ内でも各国別の通貨だったから、為替差損のリスクがつきまとった。 部品供給やメンテナンスも大きな要素の1つだ。日本では一時期、ドイツのシーメンス製品が積極的に導入された時期があった。広島電鉄は、同社のトラム「コンビーノ」を導入、グリーンムーバー5000形として運行しており、最初の車両は大型貨物機で空輸されるなど、大きな話題となった。京急電鉄は同社製の制御装置を導入し、音階を奏でる走行音が広く一般にも知れ渡り、人気を呼んだ。 だが、その後はシーメンス製品を導入する鉄道は増えず、採用した会社もその後は日本製品を採用している。2019年には、シーメンスが日本の鉄道ビジネス市場から事実上撤退することになった。 同社が日本市場で成功できなかった理由は、工場を含む生産拠点を日本へ置かず、部品供給を本国からの輸送に頼るため時間がかかり、各社で十分な整備ができなかったことが大きい。広島電鉄は当初1編成を休車にして、ほかの編成に不具合があった場合に部品を供出していたが、現在は逆に運行している本数の方が少なくなってしまった。京急電鉄は、車両更新の際に日本製の制御装置へ換装、独特な走行音は聞かれなくなってしまった』、確かに「部品供給」は大きな問題だ。
・『「部品取り」用の車両を発注する例も  実は、同様の事例はヨーロッパ内でも頻繁に起きている。もともとメーカーは、生産中の車両用を除いて部品を常時在庫していない。生産中止になった部品の入手は、現役車両から抜き取るしか方法がなくなるのだ。 対策として、鉄道会社によってはわざわざ部品供給用の予備車両を別に注文しているところもある。例えば、ドイツの最新型高速列車「ICE4」は、大きな不具合や事故で使用不能になった車両を差し替える必要が生じた際、中間車と異なり他の編成からの差し替えや抜き取りができない先頭車両単体が2両、予備車として納入されている。これらは予備車であると同時に、不具合が発生した際に部品を供給するのが目的の車両で、通常は営業運転で使用されることはない。 だが、21世紀に入る頃からヨーロッパの車両開発・生産の流れは一変してきた。技術の開発はメーカー主導へと移行、各国の鉄道会社はよりよい条件を提示したメーカーを選択するようになり、国の中で鉄道会社とメーカーががっちり手を組んで他国メーカーを寄せ付けないという時代は終わりを告げた。ヨーロッパの中でも高い技術力を誇り、大小多くの地元メーカーが存在したドイツですら、予算や技術的要件次第ではポーランドやチェコといった中欧製の車両や技術を導入する時代となった。 車両の導入も、アフターサービスを含めた契約が主流となった。鉄道会社は車両保守をメーカーへ委託して、不具合があればメーカーが対処する形だ。万が一部品供給が滞って運行不能という状況にでも陥れば契約不履行となり、メーカー側に賠償責任が生じるだけでなく信頼も損なうことになる。メーカー側はそのような事態を避けるべく努力するため、部品が足りないといった心配は減る。) このような流れの中、設計や技術開発がそれまでの各国国鉄との共同からメーカー主導に切り替わったことで、従来は参入が困難だった日本メーカーにも事実上門戸が開かれた形となった。そして、その隙にうまく割って入ったのが日立製作所だったといえる。 とはいえ、日本の鉄道システムは「ガラパゴス」と呼ばれるほど、世界から見ると特殊な市場で、ヨーロッパのシステムとは似て非なるものであり、要求される性能や仕様もまったく異なる。 そんな中、日立が最初にイギリス市場へ入っていったのは正解だった。イギリスの鉄道はもともとヨーロッパ域内でも特殊で、線路幅以外の規格は大陸とまったく異なり、ほかの欧州系メーカーとスタートラインは同じということになる。加えて、日本と同様に機関車牽引列車よりも電車や気動車が主流で、比較的参入しやすい土壌が整っていた。 そして、最初から車両丸ごとではなく、まずは制御装置などの供給から始め、少しずつ実績を積み上げていった。これがその後の「ジャベリン」導入と、IEPプログラムによる都市間特急列車の大規模な受注を獲得するきっかけとなった。現地に組み立て工場を開設し、雇用を創出したこともプラスに働いた。 その後、大陸側の拠点としてイタリアのアンサルドブレダおよびアンサルドSTSを買収したことも、同社にとって大きな転機だった。生産拠点として大陸側に工場を置くことはもちろんだが、複雑怪奇なヨーロッパの認可取得や信号システムなど、今後本格的にヨーロッパ市場へ参入するとなったとき、こうしたノウハウは必要不可欠だったはずだ』、「鉄道会社によってはわざわざ部品供給用の予備車両を別に注文しているところもある」、「技術の開発はメーカー主導へと移行、各国の鉄道会社はよりよい条件を提示したメーカーを選択するようになり、国の中で鉄道会社とメーカーががっちり手を組んで他国メーカーを寄せ付けないという時代は終わりを告げた」、「ドイツですら、予算や技術的要件次第ではポーランドやチェコといった中欧製の車両や技術を導入する時代となった。 車両の導入も、アフターサービスを含めた契約が主流となった。鉄道会社は車両保守をメーカーへ委託して、不具合があればメーカーが対処する形だ」、「車両の導入も、アフターサービスを含めた契約が主流となった」、「設計や技術開発がそれまでの各国国鉄との共同からメーカー主導に切り替わったことで、従来は参入が困難だった日本メーカーにも事実上門戸が開かれた形となった。そして、その隙にうまく割って入ったのが日立製作所だった」、「日立が最初にイギリス市場へ入っていったのは正解だった。イギリスの鉄道はもともとヨーロッパ域内でも特殊で、線路幅以外の規格は大陸とまったく異なり、ほかの欧州系メーカーとスタートラインは同じということになる。加えて、日本と同様に機関車牽引列車よりも電車や気動車が主流で、比較的参入しやすい土壌が整っていた。 そして、最初から車両丸ごとではなく、まずは制御装置などの供給から始め、少しずつ実績を積み上げていった」、「生産拠点として大陸側に工場を置くことはもちろんだが、複雑怪奇なヨーロッパの認可取得や信号システムなど、今後本格的にヨーロッパ市場へ参入するとなったとき、こうしたノウハウは必要不可欠だったはずだ」、「日立」はこうした流れに巧みに乗れたようだ。
・『欧州企業買収に失敗の中国は苦戦  一方、同じくヨーロッパ市場への参入を目指す中国のCRRC(中国中車)は、地元メーカーの買収に失敗したことで今も認可取得に苦戦しており、鉄道会社から契約を破棄されるなど苦汁をなめている。 現在、日立製作所のグループ会社である日立レールは、2023年後半を目標にフランスのタレス社からグラウンド・トランスポーテーション・システムズ部門(GTS)の買収へ向け、欧州委員会の競争当局とEU内での買収の承認を得るための手続きを進めている。現在のアルストムやシーメンスがそうであったように、日立もグループ会社を含め現地の関連企業を買収し、着実に国際的鉄道メーカーとしてステップアップしている。 少し前まではシーメンス・アルストム・ボンバルディアの3社がビッグスリーと呼ばれ、鉄道メーカーの世界シェアで過半数を超えていたが、わずかな間に業界は大きく姿を変えた。業界2位だったこともあるボンバルディアですら、今はアルストムへ飲み込まれ、ヨーロッパの鉄道市場からその名が消えた。 他方、中国に誕生した巨大メーカーCRRCは規模では一躍業界のトップへと上り詰めたものの、ヨーロッパ市場では足跡を残せず、今も足踏み状態が続いている。弱肉強食のこの業界、いったい次にはどんな変化が待ち受けているのか。3年先ですら予想が付かない世界なのだ』、「中国」系が「ヨーロッパ市場では足跡を残せず、今も足踏み状態が続いている」、今後どう巻き返してくるのか要注目だ。

第三に、4月3日付け東洋経済オンライン「台湾新幹線「新型車」日立・東芝連合受注の全内幕 難航した価格交渉、どう折り合いをつけた?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/663455
・『台湾の高速鉄道に新しい日本製車両が導入される。台湾高速鉄路(高鉄)は3月15日、今後導入予定の新型車両について、同日に開かれた取締役会で日立製作所と東芝の連合体に発注することを決めたと発表した。 新型車両は12両で1編成の列車が12編成、計144両製造され、高鉄は1240億9100万円で購入する。新型車両はJR東海の東海道新幹線などで活躍する16両で1編成の「N700S」をベースに開発されるとみられる。JR東海で海外展開を推進する海外高速鉄道プロジェクトC&C(Consulting and Coordination)事業室は2014年から高鉄に対して技術コンサルティングを行っている。与謝野優C&C事業室長は「N700Sをベースとした車両がスムーズに導入されるように必要な技術支援をしっかりやっていく」と話す』、興味深そうだ。
・『早ければ2027年に運転開始か  営業運転の開始時期について発表文では明らかにされていないが、高鉄は東洋経済の取材に対し、「新型車両は製造開始から42カ月後に台湾に到着する予定であり、その後必要な走行テストが行われ、製造開始してから50カ月後に営業運転に投入できる見込み」としている。もし2〜3カ月以内に製造開始できれば、2026年中に台湾に到着し、翌2027年に営業運転というスケジュールになりそうだ。 一方、日立製作所は、「高鉄の発表内容は承知しているが、当社から発表できることはない」とコメントした。現時点では高鉄と日立・東芝連合の間で正式に契約調印されたわけではないというのが理由だ。 新型車両導入計画のスタート、すなわち高鉄が各国の主要メーカーに意向の打診を始めたのは2017年6月のことだ。 高鉄は東海道・山陽新幹線などに使われている「700系」をベースに開発した「700T」を34編成保有している。700Tは2004年から2015年にかけて製造され、日立のほか、川崎重工業と日本車両製造も製造を担当した。) 高鉄は将来の利用者増に伴う輸送力増強の必要性を見越し、4編成を追加製造するオプションを川重に与えていた。 しかし、ベース車両の700系の製造は2006年に終わっており、2017年時点で700T製造に必要な部品が確保できないことが判明し、700Tの追加製造は不可能となった。 高鉄は国際入札による新型車両の導入に方針を切り替えた。もっとも、多額の開発コストをかけても製造数がわずか4編成とあってはメーカーにとっては割に合わない。そこで、初期に製造された700Tはいずれ老朽化による更新時期を迎えることを見越し、その置き換え需要も考慮して発注数を12編成に増やした』、「多額の開発コストをかけても製造数がわずか4編成とあってはメーカーにとっては割に合わない。そこで、初期に製造された700Tはいずれ老朽化による更新時期を迎えることを見越し、その置き換え需要も考慮して発注数を12編成に増やした」、なるほど。
・『メーカー選定に6年かかった理由は  2019年2月および2020年8月に入札を実施した。たが、「メーカーが提示した価格と市場価格の差が大きいことや、入札書類の一部が要件を満たしていない」(高鉄)ことなどを原因として入札は不調に終わる。 戦略の見直しを行い、2022年3月に3回目の入札を実施。高速鉄道車両の開発経験を持つ海外メーカーを含む複数の企業が入札した。審査の結果、日立・東芝連合に優先交渉権が与えられ、3月15日に高鉄の取締役会が同連合への発注を決定するに至った。 2017年の新型車両導入方針の決定から実に6年。なぜ車両メーカーの選定にここまで時間がかかったのか。その理由を読み解いてみる。 台湾で高速鉄道を運営するのは高鉄だが、在来線を運営するのは日本の旧国鉄に相当する台湾鉄路管理局(台鉄)である。台鉄の路線には多数の日本製車両が走っている。つまり、台鉄は何度も日本メーカーから車両を購入しているわけだが、購入価格でもめたという話を聞いたことはない。その理由は台鉄が国営企業だからである。公共事業では予定価格が発表されている場合もあるし、予算書から目安をつけることもできる。) 一方で、高鉄は国の関与が強いとはいえ民間企業であり、そのような開示をしない。そのため、高鉄側の想定している価格がメーカーにわからない。そのため、メーカーは高鉄が示した仕様に則り、さまざまなコストを積み上げて入札価格を決めるしかない。 高鉄は第1回、第2回の入札でなぜメーカーが提示した価格を高いと考えたのか。たとえば、日本におけるN700Sの1編成当たりの価格を参考にしたのかもしれない。JR東海はその価格を公表していないものの、2020〜2022年度に導入した40編成について補修費用などを含めた工事費について2400億円と発表しており、1編成当たりに直せば60億円と推測できる。また、高鉄には2015年に導入した700Tの価格が1編成当たり16.5億台湾ドル(約71億円)という実績もある。これも参考指標になったかもしれない。 今回、高鉄が日立・東芝連合に発注する価格は12編成で1240億9100万円。1編成当たりでは103億円になる』、「2019年2月および2020年8月に入札を実施した。たが、「メーカーが提示した価格と市場価格の差が大きいことや、入札書類の一部が要件を満たしていない」(高鉄)ことなどを原因として入札は不調に終わる」、「今回、高鉄が日立・東芝連合に発注する価格は12編成で1240億9100万円。1編成当たりでは103億円になる」、なるほど。
・『N700Sより割高になる要因  ではなぜ、N700Sの価格と今回の発注価格にこれほどの価格差があるのか。N700Sには本来の16両編成から基本設計を変更することなく、8両、12両といった短い編成に変更することが可能だ。この特性を活用すれば、1編成当たりの車両数が少ない分だけ安くなってもいいように思えるが、そのメリットを生かしてもなお、割高になる要因があった。 要因の1つは購入するのがJR東海ではなく、高鉄だという点だ。東海道新幹線の場合、車両を製造するのはメーカーだが、開発にかかわるプロジェクトマネジメントや品質管理などの業務はJR東海が行っている。車両に使われる電気機器など主要な構成要素はJR東海が選定し、単品での性能確認はもとより、ほかの構成要素と問題なく調和するかなどの確認もJR東海が行う。これらに要する人件費などの費用は、JR東海が購入する車両価格には含まれていない。) 次の要因は、日本の車両をそのまま台湾に持ち込めるわけではなく、台湾の法律や基準に合致させる必要があるという点だ。 よく知られた例では、台湾では火災発生時に乗客が窓ガラスを割って脱出できるような対応が法令で求められているため、窓ガラスの材質変更が必要になる。それ以外でも、700系と700Tでは運転室専用ドアの有無や運転台のレイアウトなども異なる。新型車両ではこうした点もN700Sから変更される可能性がある。さらに、高鉄の運行システムに合わせるような、見た目ではわからない変更もあるだろう。 このような仕様変更にはそのためのプロジェクトマネジメントが必要になる。設計コストのほか、新たな部品の選定、ほかの構成要素との調和確認に要するコストもかかる。スケジュール管理などの人件費もかかる。メーカーはこうしたコストを車両価格に含める。 台湾では、近年開業したLRTの車両などで部品の国産化率を高める機運がある。今回の高速鉄道の新型車両においてもN700Sに使用されている部品に代わって台湾製部品が採用するとしたら、性能確認やほかの構成要素との調和確認などのコストがその分だけかさむ可能性がある』、「日本の車両をそのまま台湾に持ち込めるわけではなく、台湾の法律や基準に合致させる必要があるという点だ。 よく知られた例では、台湾では火災発生時に乗客が窓ガラスを割って脱出できるような対応が法令で求められているため、窓ガラスの材質変更が必要になる。それ以外でも、700系と700Tでは運転室専用ドアの有無や運転台のレイアウトなども異なる」、なるほど。
・『議論を重ねて見出す着地点  事情をよく知る関係者は、「高鉄と日立・東芝連合が真摯に協議を重ねて、理解が深まり、合意に至った」と話していた。つまり、「高いから少しまけて」といった単純な話ではなく、構成要素ごとに「この方法は○○円かかるが、ほかの方法にすれば××円になる」といった具合に一つひとつ議論を重ねて、着地点を見出したのだ。 早ければ2026年には登場する新型車両はどのようなデザインになるのだろうか。日台友好のシンボルとなるような列車であることを願ってやまない』、「「高いから少しまけて」といった単純な話ではなく、構成要素ごとに「この方法は○○円かかるが、ほかの方法にすれば××円になる」といった具合に一つひとつ議論を重ねて、着地点を見出したのだ」、ずいぶん大変な作業を重ねたようだ。「早ければ2026年には登場する新型車両はどのようなデザインになるのだろうか」、楽しみだ。
タグ:(その14)(インドネシア高速鉄道が「中国の中古車両が走る中国の鉄道」に成り果てる可能性、「日立製車両」が欧州鉄道界進出に成功した背景 「国鉄と共同開発」からメーカー主導へ業界一変、台湾新幹線「新型車」日立・東芝連合受注の全内幕 難航した価格交渉、どう折り合いをつけた?) インフラ輸出 現代ビジネス 大塚 智彦氏による「インドネシア高速鉄道が「中国の中古車両が走る中国の鉄道」に成り果てる可能性」 「日本は官民連携でこの入札に応じたが、インドネシア政府は突如入札の延期を発表、その直後に再度の入札を実施して中国が落札した経緯」、「中国側は、早期着工・早期完成・開業をうたい上げ、環境アセスメントもいい加減なものと言われる。一説にはインドネシア側が日本の環境アセス資料を裏で流し、中国はそれに少し手を加えて提出したともいわれるなど、いわくつきの落札だった。 さらに建設に関わる一切の費用について「国庫負担を求めない」としたことが、「自分の懐が痛まない」と歓喜したインドネシア側が中国に落札させた最大の決め手と言われた」、「建設費は様々な要因から不足し、2021年11月にはインドネシアが当初の約束に反する不足費用の国庫負担を決め、3兆ルピア(約357億円)を支出することになった」、「日本」が煮え湯を飲まされた案件が難航しているようだ。 「2023年6月への完工延期、工事進捗率が82%に過ぎず全路線で13あるトンネルのうち3本が未完であること、高架工事でミスがあり橋脚撤去工事中に事故が起きるなど、依然として不安材料は山積」、やはり大変そうだ。 「インドネシア側は約20億ドルに及ぶ不足分の75%を中国開発銀行に求めるものとみられるという。当然、どうして再び資金不足となったのか、あまりにも杜撰ではないかとの批判が噴出・・・コロナ禍という予期せぬ未曾有の出来事があったために出資が膨れ上がったとしても、そもそもの中国の応札時の見積もりに不備があった・・・中国の杜撰な計画を鵜呑みにして進めたインドネシア側にも責任はあるだろう」、その通りだ。 「2045年の独立100周年までに現在の首都ジャカルタを約1200キロ北に離れたカリマンタン島(マレーシア名ボルネオ島)東カリマンタン州の熱帯雨林地帯に移転する大型国家プロジェクトを抱えている」、「ソフトバンクは突然、インドネシアの首都移転計画への融資を取りやめると、インドネシア側に理由を詳しく明かさないまま撤退を通告」、「ソフトバンク」はいいタイミングで断ったが、仮に抱えていたら大変な事態に陥っていたろう。 あわてたインドネシア政府は「今後は別の企業、さらに中国にも支援を求めていきたい」と表明、再び中国頼みの巨額プロジェクトとなりそうな気配が漂っている」、こえ以上の中国依存は危険だが、それもインドネシアの身から出たサビだ。 「このまま資金不足が続けば、中国の中古車両が走る中国の高速鉄道となる可能性も残る。 中国が一方的に推し進める「一帯一路」政策の甘い罠に乗ってしまったインドネシアは今後、中国による「債務の罠」にはまる危険性も十分あり、ジョコ・ウィドド政権の冷静な目による観察と判断が求められている」、「日本」を裏切った「ジョコ・ウィドド政権」の自己責任だろう。 東洋経済オンライン 橋爪 智之氏による「「日立製車両」が欧州鉄道界進出に成功した背景 「国鉄と共同開発」からメーカー主導へ業界一変」 「ヨーロッパ」のマーケットはどう変化したのだろう。 確かに「部品供給」は大きな問題だ。 「鉄道会社によってはわざわざ部品供給用の予備車両を別に注文しているところもある」、「技術の開発はメーカー主導へと移行、各国の鉄道会社はよりよい条件を提示したメーカーを選択するようになり、国の中で鉄道会社とメーカーががっちり手を組んで他国メーカーを寄せ付けないという時代は終わりを告げた」、 「ドイツですら、予算や技術的要件次第ではポーランドやチェコといった中欧製の車両や技術を導入する時代となった。 車両の導入も、アフターサービスを含めた契約が主流となった。鉄道会社は車両保守をメーカーへ委託して、不具合があればメーカーが対処する形だ」、「車両の導入も、アフターサービスを含めた契約が主流となった」、「設計や技術開発がそれまでの各国国鉄との共同からメーカー主導に切り替わったことで、従来は参入が困難だった日本メーカーにも事実上門戸が開かれた形となった。そして、その隙にうまく割って入ったのが日立製作所 だった」、「日立が最初にイギリス市場へ入っていったのは正解だった。イギリスの鉄道はもともとヨーロッパ域内でも特殊で、線路幅以外の規格は大陸とまったく異なり、ほかの欧州系メーカーとスタートラインは同じということになる。加えて、日本と同様に機関車牽引列車よりも電車や気動車が主流で、比較的参入しやすい土壌が整っていた。 そして、最初から車両丸ごとではなく、まずは制御装置などの供給から始め、少しずつ実績を積み上げていった」、 「生産拠点として大陸側に工場を置くことはもちろんだが、複雑怪奇なヨーロッパの認可取得や信号システムなど、今後本格的にヨーロッパ市場へ参入するとなったとき、こうしたノウハウは必要不可欠だったはずだ」、「日立」はこうした流れに巧みに乗れたようだ。 「中国」系が「ヨーロッパ市場では足跡を残せず、今も足踏み状態が続いている」、今後どう巻き返してくるのか要注目だ。 東洋経済オンライン「台湾新幹線「新型車」日立・東芝連合受注の全内幕 難航した価格交渉、どう折り合いをつけた?」 「多額の開発コストをかけても製造数がわずか4編成とあってはメーカーにとっては割に合わない。そこで、初期に製造された700Tはいずれ老朽化による更新時期を迎えることを見越し、その置き換え需要も考慮して発注数を12編成に増やした」、なるほど。 「2019年2月および2020年8月に入札を実施した。たが、「メーカーが提示した価格と市場価格の差が大きいことや、入札書類の一部が要件を満たしていない」(高鉄)ことなどを原因として入札は不調に終わる」、「今回、高鉄が日立・東芝連合に発注する価格は12編成で1240億9100万円。1編成当たりでは103億円になる」、なるほど。 「日本の車両をそのまま台湾に持ち込めるわけではなく、台湾の法律や基準に合致させる必要があるという点だ。 よく知られた例では、台湾では火災発生時に乗客が窓ガラスを割って脱出できるような対応が法令で求められているため、窓ガラスの材質変更が必要になる。それ以外でも、700系と700Tでは運転室専用ドアの有無や運転台のレイアウトなども異なる」、なるほど。 「「高いから少しまけて」といった単純な話ではなく、構成要素ごとに「この方法は○○円かかるが、ほかの方法にすれば××円になる」といった具合に一つひとつ議論を重ねて、着地点を見出したのだ」、ずいぶん大変な作業を重ねたようだ。「早ければ2026年には登場する新型車両はどのようなデザインになるのだろうか」、楽しみだ。
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