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安全保障(その12)(いま「経済安全保障」が 驚くほど「バブル化」している理由 経産官僚たちの思惑、上空を飛行する「謎の気球」に鈍感な日本の危うさ 外国人に平然と買われる無人島は米軍基地そば、中国軍へ技術流出の恐れ 東工大らが留学生受け入れる中国「国防七校」の危険性、中国人による「無人島購入」は沖縄だけじゃなかった!無防備ニッポンは大丈夫?) [外交・防衛]

安全保障については、昨年4月20日に取上げた。今日は、(その12)(いま「経済安全保障」が 驚くほど「バブル化」している理由 経産官僚たちの思惑、上空を飛行する「謎の気球」に鈍感な日本の危うさ 外国人に平然と買われる無人島は米軍基地そば、中国軍へ技術流出の恐れ 東工大らが留学生受け入れる中国「国防七校」の危険性、中国人による「無人島購入」は沖縄だけじゃなかった!無防備ニッポンは大丈夫?)である。氏

先ずは、昨年5月4日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの川邊 克朗氏による「いま「経済安全保障」が、驚くほど「バブル化」している理由 経産官僚たちの思惑」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/95001?imp=0
・『経済安保バブル  岸田内閣のもとで、経済安保政策が「バブル化」している。 岸田内閣が今国会で重要法案に掲げていた経済安全保障推進法案が4月7日、呆気なく衆院を通過してしまった。当初は「対決法案」と豪語し、立法に反対していた立憲民主党をはじめとする野党の議員が、こぞって、ロシアのウクライナ侵攻であらわになった「戦争リアリティ」に及び腰になり、法案反対どころか賛成に回ったからである。 もとはと言えば、この経済安全保障政策、安倍晋三政権時代に、今井尚哉首相秘書官ら経済産業官僚が主導したものだった。今井秘書官ら経産官僚は、外交・安全保障政策の司令塔である国家安全保障局(NSS)のトップに警察庁出身の北村滋内閣情報官が就いたことを利用し、米国の「中国脅威論」を引き合いに、経済安保政策を持ち出したのだった。 そして「首相官邸支配」の雰囲気のなか、「力の省庁」である防衛省、警察庁までもが、「バスに乗り遅れるな」と、「経済安保」担当セクション創設モードに前のめりとなった。その省益、利権確保の主戦場となったのが、今年度予算である。そこでは、経済安保推進法成立より一足早く、900億円超の経済安保関連予算が積み上げられ、「バブル化」が明らかになった。 この間、安倍後継の菅義偉内閣から岸田内閣へ政権が移行した。それにともなって、安全保障政策の「メインストリーム」を自負する外務省が、秋葉剛男事務次官によるNSS局長ポストを奪還し、首相官邸から経産官僚の影響力が排除されると、「オルタナティブ」である「経済安保」熱も冷めるかに見えた。 ところが、「商工族のドン」として経産官僚の後ろ盾となってきた甘利明元TPP担当相が、岸田内閣誕生の論功行賞人事で、二階俊博幹事長に取って代わると、経済安全保障政策の法案化は一気に加速した。同時にそれは、「本当にこれが国家安全保障政策の一環である経済安保政策なのか」と疑いたくなるようなものへと変質していったのである。) 法案は、具体的には、(1)重要物資のサプライチェーン(供給網)強化、(2)基幹インフラの安全性確保、(3)先端技術の育成・支援、(4)特許非公開の仕組み、を目指すというものだが、法律の運用は、国会審議も経ずに、政府が後日「政令」「省令」などで決めるというもので、その数は138項目に及んでいる。 要は、「『安全保障政治』と呼ばれる、私人、私企業、特定の圧力団体の利益の、『国家安全保障』の衣をまとったカモフラージュ現象」(船橋洋一『経済安全保障論 地球経済時代のパワー・エコノミックス』東経選書)という代物である』、「岸田内閣のもとで、経済安保政策が「バブル化」している」、「「首相官邸支配」の雰囲気のなか、「力の省庁」である防衛省、警察庁までもが、「バスに乗り遅れるな」と、「経済安保」担当セクション創設モードに前のめりとなった。その省益、利権確保の主戦場となったのが、今年度予算である。そこでは、経済安保推進法成立より一足早く、900億円超の経済安保関連予算が積み上げられ、「バブル化」が明らかになった」、「経済安全保障政策の法案化は一気に加速・・・法案は、具体的には、(1)重要物資のサプライチェーン(供給網)強化、(2)基幹インフラの安全性確保、(3)先端技術の育成・支援、(4)特許非公開の仕組み、を目指すというものだが、法律の運用は、国会審議も経ずに、政府が後日「政令」「省令」などで決めるというもので、その数は138項目に及んでいる。 要は、「『安全保障政治』と呼ばれる、私人、私企業、特定の圧力団体の利益の、『国家安全保障』の衣をまとったカモフラージュ現象」・・・という代物である」、まさに「バブル」だ。
・『甘利氏の存在感  経済安保法制のウラには、甘利氏の影響力が見え隠れする。 じつは岸田政権の経済安保戦略は、自民党内で甘利氏が座長として主導した「新国際秩序創造戦略本部」がすでに準備してきたものである。法案自体も、同本部が2020年12月に行った「提言」を上書きしたものに他ならない。 そして今年1月の施政方針演説で、経済安保は「外交・安保」の枠組みではなく、「成長と分配の好循環」を謳った「新しい資本主義」構想の文脈の中で語られるだけであった。とりわけ、コロナ危機のなかで露呈した、あまりにも海外に依存した情報技術(IT)のサプライチェーン・リスクの大きさに、今や「産業のコメ」となった半導体問題が、国産半導体計画へのテコ入れや工場建設等として、経済安保を絡めた政策へ拡大解釈されていった。 振り返れば甘利氏は、昨年10月の衆院選小選挙区で落選(比例区復活)し、幹事長職は退いたものの、その影響力はつづいている。選挙後の同年11月の改造内閣には、先述の自民党「新国際秩序想像戦略本部」でそれぞれ幹事長、事務局長として甘利座長を支えた山際大志郎氏が経済再生担当相(再任)、小林鷹之氏が新設の経済安全保障相、兼科学技術政策・宇宙政策担当相を配置し、経済安保シフトが敷かれた。しかも甘利氏と岸田首相の蜜月はその後も続いており、甘利氏が依然経済安保の「陰の主役」であるという』、なるほど。
・『経産官僚の動き  経産官僚の動きも注目に値する。 岸田首相官邸では、藤井敏彦内閣官房経済安保法制準備室室長が経済安保を差配するはずだった。しかし藤井氏は、国会への法案提出直前に、無届兼業と朝日新聞の女性記者との不倫問題などのスキャンダルで失脚した。藤井氏は、安倍首相秘書官だった今井氏らが、国家安全保障局に新たに立ち上げた経済班のリーダーとして、古巣の経産省の藤井氏を据え、官邸に経産省の新たな「拠点」とする野心があったようだ。 本来なら首相外交から安全保障政策まで取り仕切りたい外務官僚にとって、「経済安保バブル」は迷惑な話だったはずだが、こうした「失脚」騒動もあり、岸田首相が政務秘書官に抜擢した嶋田隆経産事務次官の前に目下のところ出番はなく、また安倍政権時代の「政高党低」から「政と党のバランス」へと是正され、さしあたっては事なきを得ているようだ。 しかし、今後そうしたバランスが崩れないとも限らない』、「岸田首相官邸では、藤井敏彦内閣官房経済安保法制準備室室長が経済安保を差配するはずだった。しかし藤井氏は、国会への法案提出直前に、無届兼業と朝日新聞の女性記者との不倫問題などのスキャンダルで失脚」、「安倍政権時代の「政高党低」から「政と党のバランス」へと是正され、さしあたっては事なきを得ているようだ」、推進派はミソを付けたようだ。
・『保守政治の伝統  そもそも経済安保と経産官僚・商工族議員の関係はどのようなものなのだろうか。 かつて戦後日本の経済的繁栄を支えてきた貿易・投資のルール(自由貿易)とパワーポリティクスが形成する国際秩序が崩壊過程に入り、日本が経済において最も深く相互依存している米国、中国の両国の構造的対立は、すでに一部では「冷戦(a cold war)」の局面に入ったとも言われる。 自国ファーストを打ち出し、「力による平和」を強行しようとしたトランプ前米大統領時代以降、日本もTPPを離脱した米国に歩み寄り、インド太平洋地域での中国進出を食い止めるために、日米の協力関係は、「経済」においても一歩踏み出していたのである。) 先の自民党「提言」を待つまでもなく、平和的方法としての「国際協調」を後景に追いやり、国民への説明を後回しにして、米国に追随して「同盟国」「同志国」との連携に舵を切ったということのようだ。 そしてそれが、この国の保守政治が脈々と受け継いできた、政治の統治技術であり、その担い手が今回、「通商国家」再生に生き残りに賭ける経産官僚、新商工族議員の面々だったようだ』、「平和的方法としての「国際協調」を後景に追いやり・・・米国に追随して「同盟国」「同志国」との連携に舵を切った」、なるほど。
・『経産省の来歴  こうした経産官僚や新商工族議員の存在の背景には、長い歴史がある。 1960年代、経産省の前身である通商産業省は、敗戦国・日本を奇跡的な高度経済成長で復活させたとの世界的な評価を得た。1970年代には、二度にわたる石油危機で、霞が関における通産省の地盤地下が始まったが、原子力エネルギー、通信・放送、IT等の科学技術の分野に活路を見出してきた。 しかし、「失われた30年」による国内産業の空洞化と福島原発事故による「原発ムラ」崩壊などを受けて、「経産省解体論」が再燃していた。最近では「霞が関のすき間産業」とも揶揄される、教育、医療、交通・観光等のデジタル分野にも触手を伸ばす。 経産官僚、商工族議員たちの人脈も興味深い。 先述の藤井氏が無届で兼業をしていた「バイト先」である「不識塾」という勉強会は、経営幹部向けのリベラルアーツ研修が売りだった。主宰の中谷巌代表は、1990年代、大阪大や一橋大といった国立大学を拠点に、グローバル資本主義を唱え、時の政権の経済ブレーンとして構造改革路線を主導した。しかし2008年に新自由主義からの転向を表明、以後ビジネスとしての経済への志向を強め、私立の多摩大学では学長までも務めるという異色の経歴を持つ。 その多摩大学に2016年に設置された「ルール形成戦略研究所」という研究開発機構に、顧問やシニアフェロー、客員教授といった肩書きで招聘されていたのが、甘利氏であり、藤井氏であった。逆に、多摩大の同研究所からは、政府や自民党の会合にスタッフが動員され、一連の経済安保戦略つくりに参画しており、「政・官」と「学」の、人脈はお互い共鳴し合ってきた。 またやや余談めくが、同研究所は米国系コンサルタント企業のような色彩が強いと言われてきただけに、中国企業の排除を念頭に、日米間のこれまでの貿易摩擦や防衛装備調達をめぐる衝突などと同様、経済安保も、米国に日本市場を開放していくことに収斂するのではとの懸念が政府内から早くも出ている。ちなみに国家安全保障局で経済安保を先取りした北村氏も、局長辞職後はコンサルト業を起業している。 これらが、経済安保がバブル化している背景と言えるが、では、経済安保にはどのような危うさがあるのだろうか。【後編】「岸田政権が進める「経済安全保障」、その「危うさ」を考える」で詳しく見ていこう』、「多摩大学に2016年に設置された「ルール形成戦略研究所」という研究開発機構に、顧問やシニアフェロー、客員教授といった肩書きで招聘されていたのが、甘利氏であり、藤井氏であった。逆に、多摩大の同研究所からは、政府や自民党の会合にスタッフが動員され、一連の経済安保戦略つくりに参画しており、「政・官」と「学」の、人脈はお互い共鳴し合ってきた」、「多摩大学学長」の「中谷巌」氏もキーマンのようだ。なお、【後編】の紹介は省略する。

次に、本年2月21日付け東洋経済オンラインが掲載した政治・教育ジャーナリスト/大妻女子大学非常勤講師の清水 克彦氏による「上空を飛行する「謎の気球」に鈍感な日本の危うさ 外国人に平然と買われる無人島は米軍基地そば」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/653558
・『2月15日、自民党が開いた国防部会などの合同部会。席上、自民党の安全保障調査会長を務める小野寺五典元防衛相は、このところ安全保障上の大きな問題となっている気球への対応について政府に矛先を向けた。 「中国のものと把握できていなかったなら大問題。把握していたのに抗議していなかったのなら、さらに大きな問題だ」 これまで何度か取材してきたが、小野寺元防衛相は温厚な政治家だ。その彼が語気を強めた背景には、2020年6月、仙台市などで目撃された気球について、当時の河野太郎防衛相(現・デジタル相)が、報道陣の問いに「気球に聞いてください」「どの気球? 安全保障に影響はございません」などと答えたことがある。政府の認識がどれだけ無防備だったかを指摘したのだ。 無防備といえば、34歳の中国人女性が沖縄県伊是名村(いぜなそん)の所管する無人島、屋那覇島の約半分を購入したことも、安全保障上の大きな懸念といえるだろう』、「河野太郎防衛相・・・が、報道陣の問いに「気球に聞いてください」「どの気球? 安全保障に影響はございません」などと答えた」、実に思い上がった不誠実な答弁だ。「政府の認識がどれだけ無防備だったかを指摘」、「小野寺元防衛相」の指摘は正鵠をついている。
・『無人島「屋那覇島」はどんな島か  屋那覇島は沖縄本島の北、約20キロのところにある県内最大の無人島だ。伊是名村(人口約1300人)が所管する島の1つで、広さは東京ドーム16個分。島の約3分の1は国と伊是名村(国8%、伊是名村26%)が所有している。 土地所有権は900以上に分かれていて、民間企業などが所有する土地が競売にかけられた結果、2021年2月、女性の親族が営む会社が購入したというのが主な経緯である。 同社に電話を入れると留守電が流れるだけ。ホームページ経由で問い合わせをして数日経つが、まだ返事は得られていない。そのホームページには、「創業以来行ってきた不動産売買・賃貸業を礎に、優良物件への積極的な投資を行っております。またリゾート開発事業へも進出し、直近では沖縄県の屋那覇島取得して現在リゾート開発計画を進めております」(原文ママ)とあり、屋那覇島については「島の周りはラグーンで囲まれていて、波が穏やか」とも記されている。 伊是名村役場に聞けば、屋那覇島は、沖縄本島からのキャンプ客や釣り客、潮干狩り客が多い島だという。SNSに投稿された女性の動画でも、「ビジネス目的で購入した」とあるため、購入の目的は本当にリゾート開発なのかもしれない。 とはいえ、沖縄の嘉手納基地や普天間基地などと60~70キロ程度しか離れていない島を、外国人が購入できてしまうのは、安全保障上、「大きな穴」というほかない。「へえ、買われちゃったの?」で済まされる話ではない。) 今回の問題について、伊是名村の奥間守村長は「戸惑っている」と述べる。 2月17日、伊是名村では別の案件を審議するため臨時の村議会が開かれたが、取材をすると担当者からは次のような声が聞かれた。 「ネットニュースで報道されてから、役場には問い合わせや苦情が殺到しています。前にも外資系企業が他の無人島、具志川島を視察したことがあったのですが、今回の件は驚きです」 「村が島を売ったわけではなく、あくまで民間の取引ですから、私どもとしましては、事実関係の把握に努め、誤解のないように説明していくとしか答えようがないです」(以上、伊是名村総務課・諸見直也さん)』、「沖縄の嘉手納基地や普天間基地などと60~70キロ程度しか離れていない島」、そんなに距離があるのであれば、大丈夫な気もする。
・『「法律で規制できない」と政府も困惑  今回の屋那覇島購入問題に関し、2月13日、松野博一官房長官は定例の記者会見で、「国境離島または有人国境離島、地域離島に該当するものではない」と述べて、土地取引が、国境離島やアメリカ軍、自衛隊基地周辺などの土地取引を規制する「重要土地等調査法」の対象にはならないと明言した。翌14日、高市早苗経済安保担当相も同様の見解を示している。 「重要土地等調査法」は、2022年9月に施行された法律で、自衛隊の基地や原子力発電所といった重要インフラ施設から1キロの範囲や、国境に近い離島などを「注視区域」や「特別注視区域」に指定し、国が土地などの所有者の氏名や国籍などを調査したり、一定の面積の土地を売買する場合、事前の届け出を必要としたりするためのものだ。 その区域で問題行為が確認されれば、国は土地や建物の利用を中止させることができるが、屋那覇島の場合、これに該当しないという。 日本では、「注視区域」や「特別注視区域」を除けば、日本人でなくても自由に土地を購入し所有できる。アメリカでは、フロリダ州やテキサス州で一部の外国人の土地購入を規制する法整備が検討されているが、日本ではそんな動きはない。 しかし、中国には「国家情報法」が存在する。この中の第7条がなかなか厄介なのだ。 いかなる組織及び個人も、法律に従って国家の情報活動に協力し、国の情報活動の秘密を守らなければならない。国は、そのような国民、組織を保護する。(第7条) つまり、土地の購入者が民間企業や個人であっても、中国政府が情報提供を求めた場合、応じる義務があるということだ。 いずれにせよ、外国人の土地購入に関し、規制する法律がない以上、政府は黙認するしかない。ただ、手をこまねいている間に、「注視区域」などを除く拠点の近くに、日本人以外が土地を購入するケースが増えたらどうするのか、検討はしておかなければならない。) もちろん、冒頭で述べた気球問題も、安全保障上、「大きな穴」になり得る。前述した自民党の合同部会は、2月16日、領空に許可なく侵入した気球や無人機を自衛隊が撃墜できるようにするため、武器の使用基準の見直しを了承した。 現在の自衛隊法84条では、このように定められている。 防衛大臣は、外国の航空機が国際法規又は航空法 、その他の法令の規定に違反してわが国の領域の上空に侵入したときは、自衛隊の部隊に対し、これを着陸させ、又はわが国の領域の上空から退去させるため必要な措置を講じさせることができる  この条文は、あくまで戦闘機のような有人機を想定したもので、撃墜は正当防衛と緊急避難の場合に限られている。 その範囲を拡大すれば、アメリカが領空を侵犯した気球などを相次いで撃墜したように、自衛隊も、仙台市などで目撃された中国のものと思われる気球を撃ち落とすことが可能にはなる。その反面、政府・防衛省には3つの課題がのしかかってくる』、「防衛大臣は、外国の航空機が国際法規又は航空法 、その他の法令の規定に違反してわが国の領域の上空に侵入したときは、自衛隊の部隊に対し、これを着陸させ、又はわが国の領域の上空から退去させるため必要な措置を講じさせることができる・・・その範囲を拡大すれば・・・自衛隊も、仙台市などで目撃された中国のものと思われる気球を撃ち落とすことが可能にはなる」、なるほど。
・『日本が抱える3つの大きな問題  (1)中国の猛反発をどうするか(中国は日本の姿勢を、「アメリカの大げさな騒ぎに追随するな」「根拠もなく誹謗中傷するな」と非難している。実際に撃墜すれば、政治だけでなく、経済面での関係が急速に冷え込む。特に人的交流や貿易面で影響が出る可能性がある。 (2)自衛隊の戦闘機で撃ち落とせるのか(アメリカは2月12日、ミシガン州のヒューロン湖上空で、F22戦闘機が「AIM-9Xサイドワインダー」ミサイルを発射して物体を撃ち落としたが、最初の1発は失敗した。気球は旅客機などよりも高い1万8000キロ程度まで上昇するため、レーダーで捕捉しにくい。エンジンを2つ搭載し出力が高いF22戦闘機でも目標を外すくらい、気球を撃ち落とすのは難しい。そもそも、日本はF15やF35戦闘機を保有しているもののF22戦闘機は持っていない。 (3)たくさん飛んでいる気球を見分られるのか(2月13~14日、在京メディアの報道部長クラスを招いて行われた那覇および与那国駐屯地視察研修で、航空幕僚監部の担当者(一等空佐)は、このように説明した。「観測用や調査用の気球がたくさん飛んでいる。我々も飛行の際、気を付けながら飛んでいるほどで、怪しいものかどうかの見極めが難しい。高度1万5000メートル以上を飛んでいる気球だと、撃墜するには相当なテクニックが必要」 これらのうち、(2)と(3)について、筆者が渡部悦和元陸将に聞いたところ、「命令があれば十分に撃墜できます」という答えが返ってきた。ただ、航空自衛隊トップの井筒俊司航空幕僚長が2月16日の定例記者会見で、「高い高度で飛行体が小さい場合、撃墜の難易度は高くなる」と語った点も無視できない。 こうして見ると、これまでの安全保障と防衛費を大きく見直すために防衛3文書を改定し、防衛費増額に踏み込んだだけでは、日本の安全保障は万全とは言えない。防衛の拠点に近い土地が外国人に買われてしまう可能性、あるいは、飛来する気球や無人機を撃墜できないというリスクも想定しながら、「大きな穴」を埋める対策が急務となりそうだ』、「防衛の拠点に近い土地が外国人に買われてしまう可能性、あるいは、飛来する気球や無人機を撃墜できないというリスクも想定しながら、「大きな穴」を埋める対策が急務」、同感である。

第三に、6月7日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した日本カウンターインテリジェンス協会代表理事の稲村 悠氏による「中国軍へ技術流出の恐れ、東工大らが留学生受け入れる中国「国防七校」の危険性」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/324055
・『6月2日、政府が閣議決定した答弁書により、2020年度の時点で、中国人民解放軍の兵器開発などと関係が深いとされる中国の「国防七校」のうち、6校から計39人が日本の大学に留学していたことがわかった。 答弁書によると、文部科学省の調査で「徳島大、東北大、千葉大、高知大、新潟大、名古屋大、会津大、東京工業大、京都情報大学院大、福岡工業大」の計10大学が留学生を受け入れていたという。受け入れ状況は表の通りだ。 (図表:留学生受け入れ状況はリンク先参照) そもそも国防七校とはどのような大学なのか。 国防七校とは、中国の最高国家権力機関の執行機関である国務院に属する国防科技工業局によって直接管理されている大学であり、中国人民解放軍と軍事技術開発に関する契約を締結し、先端兵器などの開発などを一部行っている。 前衆議院議員の長尾敬氏によれば、ハルビン工業大学の国防関連の研究費は年間約390億円で、これはオーストラリアの国防省の科学技術予算に匹敵する額だという。 さらに、国防七校の卒業生の30%弱である1万人以上が、中国の防衛研究部門に就職し、それ以外でも軍艦、軍備、軍用電子機器を専門とする複合企業、つまり華為技術(ファーウェイ)や中興通訊(ZTE)といった企業に就職していると指摘する。 上記を確認するだけでも、中国人民解放軍と強いつながりが見て取れる上に、中国には国家情報法という国家への情報提供義務を定めた非常に危険な法がある。 日本においても、経済産業省は、大量破壊兵器や通常兵器の開発に利用される恐れのある技術が外国に輸出されるのを規制するために「キャッチオール規制」を導入。その実効性を高めるため、外国ユーザーリストに掲載し、輸出者に対して、大量破壊兵器の開発などの懸念が払拭されない外国・地域所在団体の情報を提供している。 その外国ユーザーリストに国防七校の一部が含まれており、経済産業省としてもその危険性は認識している。また、同盟国である米国も、国防七校の一部を禁輸リストに加えるなど、その危険性に異論はないだろう。) 実際、国防七校が関与する過去の技術流出事例は多くある。 一般財団法人安全保障貿易情報センター(CISTEC)輸出管理アドバイザー(当時)森本正崇氏の「対中技術流出事案の分析」によると、HEU(後のハルビン工程大学)の研究室長であったA氏は、2002年から2014年にかけて、ハルビン工程大学の教授などの指示に基づき、無人潜水艇や、遠隔操作無人探査機、自律型無人潜水艇といった潜水艇のシステムや構成品を、HEUや他の政府機関のために、米国企業などから購入し、中国に送付していた。 A氏は、HEUの教授X氏や准教授らからの発注に基づき、米国、カナダ、欧州の企業から物品を購入し、HEUや人民解放軍海軍などの潜水艇開発のために、X氏らに輸出した。その際、A氏は経営するIFour International, Inc.をフロント企業とし、同社名義で調達活動をしていたという。 その他、2018年6月、米国検察当局は、対潜水艦戦闘に使用可能なハイドロフォン(水中聴音機)を入手するために共謀したとして、中国の西北工業大学を米国輸出法違反で起訴している。 また、同大と共謀し、マサチューセッツ州在住の中国人および同人が率いる海洋関連機器の輸入会社(中国・青島市)が、2015年~16年にハイドロフォン78個を商務省の許可を得ずに同大に輸出したという。 このように、単に留学生や研究室の人間が関与するだけではなく、国防七校の大学自体が主体となって、関与し、さらにフロント企業やビジネスマンを駆使して巧みに技術窃取を行っている』、「単に留学生や研究室の人間が関与するだけではなく、国防七校の大学自体が主体となって、関与し、さらにフロント企業やビジネスマンを駆使して巧みに技術窃取を行っている」、気を付けたいものだ。
・『国防七校とさまざまな提携をする日本の大学  2021年8月時点で読売新聞が確認したところ、国防七校には日本人研究者が8人所属しており、そのうち、ミサイル開発などを行う北京航空航天大に4人の日本人が所属していたという。 そして、国防七校との関連は確認されていないが、日本の大学・研究機関を通じた技術流出事案として、朝日新聞が2021年12月12日に以下の事例を報じている。 「朝日新聞が入手した同資料によれば、日本の国立大学や国立研究開発法人に助教授や研究員などの肩書で所属していた中国人研究者9人は、ジェットエンジンや機体の設計、耐熱材料、実験装置などを研究。(中略)このうち流体力学実験分野の中国人研究者は、1990年代に5年間、日本の国立大学に在籍。帰国後、軍需関連企業傘下の研究機関で、2017年に極超音速環境を再現できる風洞実験装置を開発。2010年代に日本の国立大学にいた他の研究者も帰国後に国防関連の技術研究で知られる大学に在籍するなど、9人は帰国後、研究機関などに所属したという」 先に述べたように、実際、日本の大学で優秀な研究・成績を収め、その知見・ノウハウを持ってファーウェイなどの人民解放軍に強いつながりを持つ企業に就職する例も非常に多い。 また、オーストラリアのシンクタンクが指摘しているように、中国人民解放軍関係者がその目的を秘して留学生の身分で日本の大学や研究所に入り込んでいる可能性は、海外での実例を見ても排除できない。さらに、善意の人間(留学生)が後に人民解放軍などの関係者に接触されて支配下に入るような事例が相当数確認されているなど、そのスキームは複雑となっている。 中国の「千人計画」もその手法として知られるところだ。 千人計画とは、1990年代に始まった海外の中国人留学生を呼び戻して先端技術を中国国内に取り込む「海亀政策」に倣い、優秀な外国人研究者を巨額の研究費や報酬、地位を与えて中国に誘致し、そのノウハウ・研究成果を「メード・イン・チャイナ」としてしまうもので、同計画には複数の日本人の参加も確認されている。) また、中国プロバガンダ・スパイ工作の一助となっていると指摘されている孔子学院を学内に設置する日本の大学(早稲田大、立命館大、桜美林大、武蔵野大、愛知大、関西外国語大、大阪産業大、岡山商科大、北陸大、福山大、山梨学院大、立命館アジア太平洋大、札幌大)があることにも留意しなければならない。 そのような状況下で、国防七校は以下の大学とさまざまな提携を行っている。(図表:国防七校とさまざまな提携をする日本の大学はリンク先参照)』、「「朝日新聞が入手した同資料によれば、日本の国立大学や国立研究開発法人に助教授や研究員などの肩書で所属していた中国人研究者9人は、ジェットエンジンや機体の設計、耐熱材料、実験装置などを研究。(中略)このうち流体力学実験分野の中国人研究者は、1990年代に5年間、日本の国立大学に在籍。帰国後、軍需関連企業傘下の研究機関で、2017年に極超音速環境を再現できる風洞実験装置を開発。2010年代に日本の国立大学にいた他の研究者も帰国後に国防関連の技術研究で知られる大学に在籍するなど、9人は帰国後、研究機関などに所属したという」、「日本の大学で優秀な研究・成績を収め、その知見・ノウハウを持ってファーウェイなどの人民解放軍に強いつながりを持つ企業に就職する例も非常に多い。 また、オーストラリアのシンクタンクが指摘しているように、中国人民解放軍関係者がその目的を秘して留学生の身分で日本の大学や研究所に入り込んでいる可能性は、海外での実例を見ても排除できない」、「千人計画とは、1990年代に始まった海外の中国人留学生を呼び戻して先端技術を中国国内に取り込む「海亀政策」に倣い、優秀な外国人研究者を巨額の研究費や報酬、地位を与えて中国に誘致し、そのノウハウ・研究成果を「メード・イン・チャイナ」としてしまうもので、同計画には複数の日本人の参加も確認」、「中国」にとっては「日本」はガードが甘いお得意様のようだ。
・『留学生の研究内容を把握していない日本政府の危機感の薄さ  日本では、外為法が改正され、大量破壊兵器開発につながる技術を日本国内の外国人に渡す行為を「みなし輸出」として規制して経済産業省の許可制としている。だが、その対象は、外国政府や機関との雇用関係にある者や、外国政府から奨学金を受け取るなど「実質的な支配下にある」と認められる者などに限定されている状況だ。 例えば、中国からの国費留学生は上記に当てはまる場合もあるが、私費で入学し、後に人民解放軍などが学生組織を通じて接触し、技術窃取の指示を出した場合、対応できるだろうか。 これまで解説したように、中国による大学・研究機関に対する技術窃取の手法は、そのスキームが複雑かつ見えづらいものが多く、大学や研究機関側で実効性のある対応を行うには限界があるだろう。 にもかかわらず、冒頭で触れた政府答弁書では、留学生の研究内容を把握していないと回答しており、政府の危機感のなさは明白だ。 国防七校に限らず、日本の大学・研究機関が危険な状況にさらされる中、国がより明確な指針と基準を示し、大学や研究機関と文部科学省、そして経済産業省や警察庁、防衛省、各公安部門などとより強力に連携していくことが重要であり、必要に応じて摘発できる体制・法整備が必要である。 孔子学院の問題と同様、社会において日本の大学・研究領域に浸潤する中国の危険性が認識され、日本の対策がより強固となることを期待したい』、「留学生の研究内容を把握していないと回答しており、政府の危機感のなさは明白だ」、「国がより明確な指針と基準を示し、大学や研究機関と文部科学省、そして経済産業省や警察庁、防衛省、各公安部門などとより強力に連携していくことが重要であり、必要に応じて摘発できる体制・法整備が必要である」、「孔子学院の問題と同様、社会において日本の大学・研究領域に浸潤する中国の危険性が認識され、日本の対策がより強固となることを期待したい」、同感である。

第四に、6月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの姫田小夏氏による「中国人による「無人島購入」は沖縄だけじゃなかった!無防備ニッポンは大丈夫?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/324174
・『中国人女性が沖縄県にある無人島・屋那覇島を購入したというニュースは、日本で大きな話題になった。私たち日本人も連日の報道に「一体どういう意図で購入したのか」と身構えた。今も水面下では中国資本による“離島買い”は続いている。背景には日本で復活するインバウンドがあるようだが、そこに潜在する死角はないのか』、興味深そうだ。
・『中国人投資家が視線を送る沖縄県  今年1月末、34歳の中国人女性が沖縄県の「屋那覇島(やなはじま)」について、「日本の無人島を買った」と島を撮影した動画をSNSに投稿した。2020年に島の約半分を取引し、2021年には彼女の親族の法人である中国系不動産会社に所有権の移転登記を行った――などのことが日本でも報道された。 無人島とはいえ、いとも簡単に外国人が土地を所有できる実態に、日本では「中国に乗っ取られるのではないか」という危機感が高まった。中国語のSNSでも「沖縄侵入の第一歩か」などと意味深長なコメントが飛び交った。不透明な部分もあり、中国人女性の動機についてはさまざまな臆測を呼んだ。 もっとも今は沖縄県全体が不動産バブルに沸いている。沖縄に移住した日本人のAさんは「屋那覇島に限らず、沖縄県は中国人の格好の不動産投資市場です。那覇市内のマンションの上層階は中国人の所有になっているケースが少なくありません」と話す。 実際Aさんが2010年代に購入した那覇市内のマンション価格は上昇し、多額の差益を生んでいるという。また同県宮古島市の不動産市場も、島外から入って来る資本でバブル状態になっている』、「沖縄県は中国人の格好の不動産投資市場です。那覇市内のマンションの上層階は中国人の所有になっているケースが少なくありません」、なるほど。
・『宮古島の地価が急上昇、外資も高い取引  宮古島市では新型コロナウイルスが流行する以前から地価上昇の傾向にあったが、今年3月に発表された地価公示では、同市の住宅地は7.7%の高い上昇率となった。 「投資物件は、海の見えるビーチサイドではもはや億単位で、伊良部島もすごい人気。背景には中国人の購入があるようだ」とする都内在住の不動産投資家の話からは、高騰の背景にインバウンドなどの観光需要があることがうかがえる。 一方で、宮古島市でも上野野原(うえののばる)の公示価格は前年比19.6%と、沖縄県内で最大の上昇率を記録した。ここはビーチ沿いの観光地ではなく、航空自衛隊の宮古島分屯基地の目と鼻の先だ。近傍の県道190号沿いには陸上自衛隊の駐屯地もある。 上野野原地域における地価の急上昇の原因について、国土交通省は「このエリアは農家集落地域ですが、陸上自衛隊の配備(注:開設年は2019年)などもあり、将来的予測から強い上昇率を示しています。外資を含む島外からの資本が入り、高い値段の取引が行われているもようです」と回答している。 宮古島市に入り込む“外資”の中には中国資本が含まれている可能性は十分にある』、「「投資物件は、海の見えるビーチサイドではもはや億単位で、伊良部島もすごい人気。背景には中国人の購入があるようだ」とする都内在住の不動産投資家の話からは、高騰の背景にインバウンドなどの観光需要があることがうかがえる」、「宮古島市でも上野野原(うえののばる)の公示価格は前年比19.6%と、沖縄県内で最大の上昇率を記録した。ここはビーチ沿いの観光地ではなく、航空自衛隊の宮古島分屯基地の目と鼻の先」、「中国人の購入」意欲は旺盛なようだ。
・『今度は瀬戸内海の無人島か  中国人投資家が熱視線を注ぐのは沖縄県だけではなかった。瀬戸内海は700余の島(環境省)があるというが、先日、筆者は日本に在住する中国出身のBさんが瀬戸内海の無人島を購入したという情報を知り得た。 購入目的は「リゾート開発」なのだというが、Bさんが発音する島の名前を地図でたどると、米軍と海上自衛隊が共同使用する航空基地からほど近い沖合の無人島に行き着く。 その無人島は、昭和初期に軍事関連施設が置かれ、戦後は米軍が利用した形跡も残す。筆者は、自分がBさんの「発音」を聞き違えたのかもしれないと疑ったが、もし本当にBさんがこの島を購入していたとしたらどうだろう、とも思った。日本の現行の土地取引制度では、複雑な歴史と地理関係を持つ島でありながらも、外国人や外国資本が簡単に所有権を設定できてしまうのである。 ちなみに日本では2022年に、国の安全保障などに関係する重要な土地や国境離島に対し、利用規制を課す「重要土地等調査法」が施行されたが、対象地は非常に限定的だ。 同時にBさんには「リゾート開発」以外に「隠れた目的」があるのではないかとも思ってしまった。 筆者は都内の大手不動産企業の社員からこんな話を聞いたことがある。それは「再開発計画が決まったエリアで、立ち退き対象となる中古物件を意図的に購入する中国人が増えている」というものだった。購入後にデベロッパーの足元を見て、多額の立ち退き費用を要求してくるケースが後を絶たないのだという。 Bさんにとってはとんだ濡れ衣だろうが、中には、あえて複雑な因果関係を持つ土地に手を出し、立ち退きを要請されたら多額の保証金や立ち退き費用を積ませるといった算段を持つ購入者もいるのかもしれない』、「筆者は日本に在住する中国出身のBさんが瀬戸内海の無人島を購入したという情報を知り得た。 購入目的は「リゾート開発」なのだというが、Bさんが発音する島の名前を地図でたどると、米軍と海上自衛隊が共同使用する航空基地からほど近い沖合の無人島に行き着く」、「「再開発計画が決まったエリアで、立ち退き対象となる中古物件を意図的に購入する中国人が増えている」というものだった。購入後にデベロッパーの足元を見て、多額の立ち退き費用を要求してくるケースが後を絶たない」、後者は日本人にもいる悪質な投資家だ。
・『クルーズ船の販売好調が裏付ける“観光目的”  売れているのは日本の不動産だけではない。今、インバウンドが回復しつつある日本で、“あるもの”がよく売れているという。 日本在住でインバウンド事業に従事する中国出身のCさんは「今、中国人の間で関心が高まっているのは小型のクルーズ船です」と語る。 船艇の販売を取り扱う事業者にも問い合わせてみると「確かに外国の方からの問い合わせはポツポツ出てきています」という。この事業者によれば、購入した船の利用目的はクルーズ船を使った観光だという。無人島を購入し、クルーズ船を使って中国人客を島に遊びに連れていく――それが中国人にとっての新たな訪日旅行の楽しみ方になりつつあるようだ。 またCさんは「特に中国の内陸部で生まれ育った人は海への憧れが強く、訪日旅行でも海沿いのエリアを見せると非常に喜びます」と話し、こう続けた。 「日本の離島に目を向けているのは、屋那覇島を買った中国人女性だけではありません。ただ、中国人による島の購入は単純に観光目的だといえます」 確かに中国人による日本の不動産投資は、インバウンドを追い風にしたリゾート開発を狙うものが多い。中国人の間では、北海道のニセコで成功している外国資本をビジネスモデルに、日本の観光産業への投資意欲を強めている一面が見られる』、「確かに中国人による日本の不動産投資は、インバウンドを追い風にしたリゾート開発を狙うものが多い。中国人の間では、北海道のニセコで成功している外国資本をビジネスモデルに、日本の観光産業への投資意欲を強めている一面が見られる」、なるほど。
・『「いずれ所有に耐え切れなくなる」という見方も  1月末に冒頭の“屋那覇島購入劇”が中国で報じられたとき、中国人の読者コメントの中には「うらやましい」というものもあった。「憧れの海」と「無人島という不動産」、この二つを同時に満たす“買い物”だったからなのだろう。 それに反して「たとえ手に入れたとしても、いずれ所有に耐えられなくなるのでは」という冷ややかな視線もあった。 実は中国にも1万1000を超える離島がある。 2003年、中国政府は個人や団体が最長50年間という期間の中で無人島の開発・利用ができることを認め、また2010年には無人島の使用権登録を適正化するための条例を制定し、土地使用権の公開入札制度を導入した。 2011年、浙江省寧波市の民営企業が市内の無人島の使用権を2000万元(当時のレートで約2.4億円)で落札するなど、沿海部ではいくつかの進出事例が見られた。しかし、リゾート開発には電力供給や上下水道をはじめとする生活インフラの整備とそのための多額の追加投資が必要とされ、乗り出した企業の中には、資金ショートにより中断を余儀なくされたところもあったのだ。 生活インフラの整備以外にも、桟橋や防波堤の建設費用や自然災害による施設の維持費・修繕費もかかる。それなのに、離島リゾートの観光シーズンは限定的で、安定的な収益は生みにくい。こうした事例を知る中国人の間では、「日本で離島を購入してもいずれ所有に耐え切れなくなる」という見方が強い。 中国ビジネスに詳しいある日本人経営者は「中国人がやりたいのは瞬間的な金もうけです」とその特徴を捉えるが、その移り気な性格と撤退後に残された離島は、新たな問題をもたらすことになるかもしれない』、「中国ビジネスに詳しいある日本人経営者は「中国人がやりたいのは瞬間的な金もうけです」とその特徴を捉えるが、その移り気な性格と撤退後に残された離島は、新たな問題をもたらすことになるかもしれない」、そうしたことを前提に日本側も備えておく必要がありそうだ。
・『外資の土地所有を禁じる国も  日本では外資や外国人がいとも簡単に離島(あるいは島の一部の土地)を所有できてしまうが、アジアには直接的な所有を禁止している国がある。その一つがフィリピンだ。 フィリピンには7641の島がある(2023年、外務省HP)が、土地は国家の資産とみなされ、フィリピン国民のみが所有できることになっている。フィリピンの法律に詳しい弁護士法人OneAsiaの難波泰明弁護士は、「外国人は土地や島全体を直接購入し所有することはできません」と語る。 また、島嶼国モルディブの島の数は1192(2023年、外務省HP)に上るが、外国人の土地所有を認めた2015年の法律を、「主権喪失の可能性がある」との懸念から2019年に撤回した。インド洋の重要なシーレーン(経済や貿易、有事の際に重要な位置付けになる海上交通路)上にある同国は、当時、中国資本の開発進出が相次いでいたという。 1万3500の島々(2020年、外務省HP)を擁する世界最大の島嶼国インドネシアも法律により外国人は島や土地を所有することはできないが、一方、スリランカではそれができる。スリランカのある村で観光業を営むハニファ・ファイスさんが「中国人の資金力は地元民とは桁が違いすぎる、このままでは再びコロニー(植民地)になりかねない」と、その危機感を過去の歴史に重ねていた。 アジアの島嶼国には、植民地時代の苦しみから生まれた法制度や離島の保全・管理制度がある。フィリピンやモルディブなどで外資が離島のリゾート開発を行う場合、期間限定のリース形式を要求されるのは、外資や外国人による“完全な支配”を排除するためなのだろう。 こうした経験のない日本は今まで無防備でいられたが、アジアの海が大きく変化する今、離島の保全・管理について一歩突っ込んだ早急な議論が求められている』、「こうした経験のない日本は今まで無防備でいられたが、アジアの海が大きく変化する今、離島の保全・管理について一歩突っ込んだ早急な議論が求められている」、同感である。
タグ:安全保障 (その12)(いま「経済安全保障」が 驚くほど「バブル化」している理由 経産官僚たちの思惑、上空を飛行する「謎の気球」に鈍感な日本の危うさ 外国人に平然と買われる無人島は米軍基地そば、中国軍へ技術流出の恐れ 東工大らが留学生受け入れる中国「国防七校」の危険性、中国人による「無人島購入」は沖縄だけじゃなかった!無防備ニッポンは大丈夫?) 現代ビジネス 川邊 克朗氏による「いま「経済安全保障」が、驚くほど「バブル化」している理由 経産官僚たちの思惑」 「岸田内閣のもとで、経済安保政策が「バブル化」している」、「「首相官邸支配」の雰囲気のなか、「力の省庁」である防衛省、警察庁までもが、「バスに乗り遅れるな」と、「経済安保」担当セクション創設モードに前のめりとなった。その省益、利権確保の主戦場となったのが、今年度予算である。そこでは、経済安保推進法成立より一足早く、900億円超の経済安保関連予算が積み上げられ、「バブル化」が明らかになった」、 「経済安全保障政策の法案化は一気に加速・・・法案は、具体的には、(1)重要物資のサプライチェーン(供給網)強化、(2)基幹インフラの安全性確保、(3)先端技術の育成・支援、(4)特許非公開の仕組み、を目指すというものだが、法律の運用は、国会審議も経ずに、政府が後日「政令」「省令」などで決めるというもので、その数は138項目に及んでいる。 要は、「『安全保障政治』と呼ばれる、私人、私企業、特定の圧力団体の利益の、『国家安全保障』の衣をまとったカモフラージュ現象」・・・という代物である」、まさに「バブル」だ。 「岸田首相官邸では、藤井敏彦内閣官房経済安保法制準備室室長が経済安保を差配するはずだった。しかし藤井氏は、国会への法案提出直前に、無届兼業と朝日新聞の女性記者との不倫問題などのスキャンダルで失脚」、「安倍政権時代の「政高党低」から「政と党のバランス」へと是正され、さしあたっては事なきを得ているようだ」、推進派はミソを付けたようだ。 「平和的方法としての「国際協調」を後景に追いやり・・・米国に追随して「同盟国」「同志国」との連携に舵を切った」、なるほど。 「多摩大学に2016年に設置された「ルール形成戦略研究所」という研究開発機構に、顧問やシニアフェロー、客員教授といった肩書きで招聘されていたのが、甘利氏であり、藤井氏であった。逆に、多摩大の同研究所からは、政府や自民党の会合にスタッフが動員され、一連の経済安保戦略つくりに参画しており、「政・官」と「学」の、人脈はお互い共鳴し合ってきた」、「多摩大学学長」の「中谷巌」氏もキーマンのようだ。なお、【後編】の紹介は省略する。 東洋経済オンライン 清水 克彦氏による「上空を飛行する「謎の気球」に鈍感な日本の危うさ 外国人に平然と買われる無人島は米軍基地そば」 「河野太郎防衛相・・・が、報道陣の問いに「気球に聞いてください」「どの気球? 安全保障に影響はございません」などと答えた」、実に思い上がった不誠実な答弁だ。「政府の認識がどれだけ無防備だったかを指摘」、「小野寺元防衛相」の指摘は正鵠をついている。 「沖縄の嘉手納基地や普天間基地などと60~70キロ程度しか離れていない島」、そんなに距離があるのであれば、大丈夫な気もする。 「防衛大臣は、外国の航空機が国際法規又は航空法 、その他の法令の規定に違反してわが国の領域の上空に侵入したときは、自衛隊の部隊に対し、これを着陸させ、又はわが国の領域の上空から退去させるため必要な措置を講じさせることができる・・・その範囲を拡大すれば・・・自衛隊も、仙台市などで目撃された中国のものと思われる気球を撃ち落とすことが可能にはなる」、なるほど。 「防衛の拠点に近い土地が外国人に買われてしまう可能性、あるいは、飛来する気球や無人機を撃墜できないというリスクも想定しながら、「大きな穴」を埋める対策が急務」、同感である。 ダイヤモンド・オンライン 稲村 悠氏による「中国軍へ技術流出の恐れ、東工大らが留学生受け入れる中国「国防七校」の危険性」 「単に留学生や研究室の人間が関与するだけではなく、国防七校の大学自体が主体となって、関与し、さらにフロント企業やビジネスマンを駆使して巧みに技術窃取を行っている」、気を付けたいものだ。 「「朝日新聞が入手した同資料によれば、日本の国立大学や国立研究開発法人に助教授や研究員などの肩書で所属していた中国人研究者9人は、ジェットエンジンや機体の設計、耐熱材料、実験装置などを研究。(中略)このうち流体力学実験分野の中国人研究者は、1990年代に5年間、日本の国立大学に在籍。帰国後、軍需関連企業傘下の研究機関で、2017年に極超音速環境を再現できる風洞実験装置を開発。2010年代に日本の国立大学にいた他の研究者も帰国後に国防関連の技術研究で知られる大学に在籍するなど、9人は帰国後、研究機関などに所 属したという」、「日本の大学で優秀な研究・成績を収め、その知見・ノウハウを持ってファーウェイなどの人民解放軍に強いつながりを持つ企業に就職する例も非常に多い。 また、オーストラリアのシンクタンクが指摘しているように、中国人民解放軍関係者がその目的を秘して留学生の身分で日本の大学や研究所に入り込んでいる可能性は、海外での実例を見ても排除できない」、 「千人計画とは、1990年代に始まった海外の中国人留学生を呼び戻して先端技術を中国国内に取り込む「海亀政策」に倣い、優秀な外国人研究者を巨額の研究費や報酬、地位を与えて中国に誘致し、そのノウハウ・研究成果を「メード・イン・チャイナ」としてしまうもので、同計画には複数の日本人の参加も確認」、「中国」にとっては「日本」はガードが甘いお得意様のようだ。 「留学生の研究内容を把握していないと回答しており、政府の危機感のなさは明白だ」、「国がより明確な指針と基準を示し、大学や研究機関と文部科学省、そして経済産業省や警察庁、防衛省、各公安部門などとより強力に連携していくことが重要であり、必要に応じて摘発できる体制・法整備が必要である」、「孔子学院の問題と同様、社会において日本の大学・研究領域に浸潤する中国の危険性が認識され、日本の対策がより強固となることを期待したい」、同感である。 姫田小夏氏による「中国人による「無人島購入」は沖縄だけじゃなかった!無防備ニッポンは大丈夫?」 「沖縄県は中国人の格好の不動産投資市場です。那覇市内のマンションの上層階は中国人の所有になっているケースが少なくありません」、なるほど。 「「投資物件は、海の見えるビーチサイドではもはや億単位で、伊良部島もすごい人気。背景には中国人の購入があるようだ」とする都内在住の不動産投資家の話からは、高騰の背景にインバウンドなどの観光需要があることがうかがえる」、「宮古島市でも上野野原(うえののばる)の公示価格は前年比19.6%と、沖縄県内で最大の上昇率を記録した。ここはビーチ沿いの観光地ではなく、航空自衛隊の宮古島分屯基地の目と鼻の先」、「中国人の購入」意欲は旺盛なようだ。 「筆者は日本に在住する中国出身のBさんが瀬戸内海の無人島を購入したという情報を知り得た。 購入目的は「リゾート開発」なのだというが、Bさんが発音する島の名前を地図でたどると、米軍と海上自衛隊が共同使用する航空基地からほど近い沖合の無人島に行き着く」、 「「再開発計画が決まったエリアで、立ち退き対象となる中古物件を意図的に購入する中国人が増えている」というものだった。購入後にデベロッパーの足元を見て、多額の立ち退き費用を要求してくるケースが後を絶たない」、後者は日本人にもいる悪質な投資家だ。 「確かに中国人による日本の不動産投資は、インバウンドを追い風にしたリゾート開発を狙うものが多い。中国人の間では、北海道のニセコで成功している外国資本をビジネスモデルに、日本の観光産業への投資意欲を強めている一面が見られる」、なるほど。 「中国ビジネスに詳しいある日本人経営者は「中国人がやりたいのは瞬間的な金もうけです」とその特徴を捉えるが、その移り気な性格と撤退後に残された離島は、新たな問題をもたらすことになるかもしれない」、そうしたことを前提に日本側も備えておく必要がありそうだ。 「こうした経験のない日本は今まで無防備でいられたが、アジアの海が大きく変化する今、離島の保全・管理について一歩突っ込んだ早急な議論が求められている」、同感である。
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先ずは、2021年3月25日付け東洋経済オンラインが掲載した財務省出身で、ニューヨーク州弁護士・信州大学特任准教授の山口 真由氏による「米国人驚愕「子が親の介護する日本」深刻な盲点 「家の時代」から「個人の時代」へシフト」を紹介しよう。
・『東京大学を卒業後、財務省を経て、現在はニューヨーク州弁護士、信州大学特任准教授の山口真由氏は、アメリカ留学で家族法を学び、家族に関するさまざまな疑問にぶつかります。山口氏の新著『「ふつうの家族」にさようなら』を基に、今回はアメリカと日本の家族観の違いについて解説します。 前回:何でも入手できる米国「精子バンク」の驚く値段』、興味深そうだ。
・『日本では聞いたことがない訴訟  「あら、どうして?子どもが年老いた親の面倒をみるっていう義務が、そんなにはっきり法律に書いてあるの?」 ハーバード・ロースクールの家族法の授業で、教壇のエリザベス・バーソレッテ教授が、片方の眉をつり上げる。授業中に英語で質問をされると、心臓が縮む。それでも今日の私は、ここで引き下がるわけにはいかない。なんせ、日本を背負って手をあげたのだから。 発端は授業で習った判例だった。年老いた母は、老人ホームで人生の最期を迎える。母の死後、その老人ホームは介護にかかった費用を精算しようとした。だが、毎年、老女のために使われるはずの財産は息子が使ってしまっている。 そこで、彼女の残りの財産を相続した息子に、ホームは残額を請求した。ところが、息子は自分には支払義務がないとして裁判所で争ったのだ。 アメリカと日本の家族観の違いを感じるのは、こういう瞬間である。すかさず私は手をあげる。 「日本では、こんな訴訟は聞いたことがありません」 勢いにまかせて、私は話し出す。バーソレッテ教授は驚いたように私に尋ねる。 「あら、どうして? 子どもが年老いた親の面倒をみるっていう義務が、そんなにはっきり法律に書いてあるの?」 今度は私が驚く番だ。親子の間で、まず法律上の義務を持ち出すなんて!) 「確かに、子どもは親を扶養する義務が民法に定められていると思います。でも、そんなに細かくきっちりとした定めではありません。これって、法律上の義務というよりは道義的な義務ではないでしょうか。 確かに、親子関係はさまざまです。親の面倒をみろとすべての子どもに押しつけることはできないかもしれない。ただ、日本では、一般的には、自分を育ててくれた親が年老いて介護を必要とすれば、子どもが面倒をみることになります」 バーソレッテ教授は、目を見開いたまま黙り込んでしまう。しばしの沈黙の後、彼女は再び口を開く。 「日本と比べると、アメリカは年寄りに冷たい国だわ。私もね、年寄りの部類に入るようになって心からそう思うのよ。大統領候補者はこぞって若作りをする。健康不安を心配するよりも批判の対象にする。 子どもたちは、年老いた両親を養うことはしない。老後に備えて、私たちは自分でお金を貯めておかないといけないの。この若い国は、この国を必死に支えて、そして、老いていった人たちをいたわろうとはしてこなかったわ」 ここにおそらく、アメリカの「家族」と日本の「家」の決定的な違いがある』、「バーソレッテ教授は」、「日本と比べると、アメリカは年寄りに冷たい国だわ。私もね、年寄りの部類に入るようになって心からそう思うのよ・・・子どもたちは、年老いた両親を養うことはしない。老後に備えて、私たちは自分でお金を貯めておかないといけないの。この若い国は、この国を必死に支えて、そして、老いていった人たちをいたわろうとはしてこなかったわ」、その通りだ。
・『日本の「家」は会社だった  「江戸時代までの日本の『家』っていうのはね、これは、会社なのよ」 日本に戻った私は、東京大学の博士課程で家族法の勉強を継続した。そのときに、家族法の大家である教授が、日本の「家」の本質をそう端的に表現した。江戸時代の武家制度のなかで確立した日本の「家」というのは、家の財産をバラバラにせずに、次の世代に、その次の世代に、脈々と伝えていくための装置なのだという。 江戸時代の家は、武士であれ町人であれ、「家業」を持っていた。浅草の老舗のお煎餅屋さんを想像してほしい。祖父の代から頑固一徹で守ってきた秘伝のたれをしみこませながら、煎餅を焼く。この技法が評判になり、今ではかなり遠くからも煎餅を買い求める人が引きも切らない。 だが、足腰も弱りはじめた三代目は隠居することを考えていた。子どもは長男、次男、そして、長女がいて、全員がお店で働いている。のれんという信用、そして、煎餅づくりのノウハウという無形資産があってこそ、お煎餅屋さんは価値を持つ。 だから、お店の土地とか建物とか、はたまた煎餅を焼く機器なんかの有形資産をバラバラにして、子どもたちに受け継がせても意味がないのだ。) 長女は、家業につながりのある家にお嫁に行くだろう。次男には、後々、のれん分けをしてあげるかもしれない。ここは、とりあえず長男にお店を丸ごと継いでもらうことにしよう。 こうやって、浅草の老舗のお煎餅屋さんは、世代に1人と跡継ぎを定めて、祖父から父へ、そして、父から息子の代へと事業を丸ごと受け継がせる。日本の「家」というのは、もともとそういうものだったらしい。そう考えるとこれは家族経営の中小企業とおんなじだ。 家族法の大家である教授は、私たちにこう諭す。 「江戸時代まで、日本には『相続』なんて考え方はなかったのよ。『相続』というのはね、個人を単位に財産を管理する方法なの。個人が亡くなると財産の帰属主体が消滅する。それで、その時点の財産をすべてお金に換算して、それを相続人に平等に分配しましょうという考え方でしょう」 「じゃあ、江戸時代の日本では、おじいさんが亡くなったら財産をどうやって分けるんですか?」 「分けたりしないのよ。江戸時代までの日本の相続は、今でいう会社の『事業承継』と同じ。財産の帰属主体は個人じゃないの。家なのよ。だから、社長を交代するように家長を交代して、世代を超えて家の財産を引き継いでいく。 個人が亡くなるたびに、財産の帰属主体が消滅して、財産を清算してっていう考え方はとっていなかったの。個人が亡くなってもなお、家は連綿と残っていくものなのよ」 アメリカの「家族」は点である。子どもが成人すれば、親の家族とは別個の個人となり、やがて新しい家族を作っていく。 もちろん、点在する家族と家族の間には精神的な交流がある。クリスマスには、子どもが孫たちを連れて、懐かしい両親の家に帰るだろう。ただし、親の家族と子どもの家族ははっきりと区切られている。両者は経済的には完全に独立した主体なのだ』、「江戸時代の武家制度のなかで確立した日本の「家」というのは、家の財産をバラバラにせずに、次の世代に、その次の世代に、脈々と伝えていくための装置なのだという。 江戸時代の家は、武士であれ町人であれ、「家業」を持っていた・・・長女は、家業につながりのある家にお嫁に行くだろう。次男には、後々、のれん分けをしてあげるかもしれない。ここは、とりあえず長男にお店を丸ごと継いでもらうことにしよう。 こうやって、浅草の老舗のお煎餅屋さんは、世代に1人と跡継ぎを定めて、祖父から父へ、そして、父から息子の代へと事業を丸ごと受け継がせる。日本の「家」というのは、もともとそういうものだったらしい。そう考えるとこれは家族経営の中小企業とおんなじだ」、「江戸時代までの日本の相続は、今でいう会社の『事業承継』と同じ。財産の帰属主体は個人じゃないの。家なのよ。だから、社長を交代するように家長を交代して、世代を超えて家の財産を引き継いでいく。 個人が亡くなるたびに、財産の帰属主体が消滅して、財産を清算してっていう考え方はとっていなかったの。個人が亡くなってもなお、家は連綿と残っていくものなのよ」 アメリカの「家族」は点である。子どもが成人すれば、親の家族とは別個の個人となり、やがて新しい家族を作っていく」、「「江戸時代までの日本の相続は・・・財産の帰属主体は個人じゃないの。家なのよ。だから、社長を交代するように家長を交代して、世代を超えて家の財産を引き継いでいく」、その通りだ。
・『一方、日本の「家」は線である。隠居した親の面倒は子どもがみる。その子も将来は、自分の息子やそのお嫁さんに面倒をみてもらう。家業を、親から子ども、そして、孫へと引き継いでいくその裏で、家業を営むことで得られるあがりで、年老いた親、出戻りの娘、引きこもった息子、家の構成員全員を養っていく。 家は、世代を超え、核家族の境界を超えて、一族を縦に結びつける。そしてこの家は、精神的な結びつきのみならず、経済的な基盤でもあるのだ。 今、日本では、もともとの「家」の価値観と西欧由来の「個人」の価値観が交錯する過渡期にある。相続というのは「個人」の側の概念である。日本には、もともと財産が個人に帰属するという考え方はなかった。そういう考えが輸入されたことで、相続という制度ができあがった』、「アメリカの「家族」は点である。子どもが成人すれば、親の家族とは別個の個人となり、やがて新しい家族を作っていく」、「日本の「家」は線である。隠居した親の面倒は子どもがみる。その子も将来は、自分の息子やそのお嫁さんに面倒をみてもらう。家業を、親から子ども、そして、孫へと引き継いでいくその裏で、家業を営むことで得られるあがりで、年老いた親、出戻りの娘、引きこもった息子、家の構成員全員を養っていく。 家は、世代を超え、核家族の境界を超えて、一族を縦に結びつける。そしてこの家は、精神的な結びつきのみならず、経済的な基盤でもあるのだ」、極めてクリアだ。「今、日本では、もともとの「家」の価値観と西欧由来の「個人」の価値観が交錯する過渡期にある。相続というのは「個人」の側の概念である。日本には、もともと財産が個人に帰属するという考え方はなかった。そういう考えが輸入されたことで、相続という制度ができあがった」、なるほど。
・『社会に色濃く残る「家」という感覚  だが、こういう相続争いの法廷で、私は「家」という感覚が、社会に色濃く残っていることに気づく。例えば、長男次男という序列が慣習として存在する。長男は、幼い頃から「お兄ちゃん、お兄ちゃん」と呼ばれてなにかと優遇される。家業を継ぐとすれば、まずは長男が第一候補者だ。 それと引き換えに、年老いた両親は長男が自分の家に引き取って介護をするものだという価値観、これが今でも地方ではそれなりに強く残る。 考えてみれば、日本で社会問題となりつつある親の介護も、「家」という制度の遺物なのかもしれない。 年老いた親が介護を必要とするならば、すでに家を出ていたとしても、まずは子どもが担い手となるべきだ。そういう感覚が日本にはある。老人ホームに入所させる費用を親の貯金で賄うことができなければ、それは子どもが負担するべきだと考える人も多いだろう。 財産が個人にではなく家にあると考える。すると、この価値観はとても自然だ。子どもの財布から親の介護を賄っているように見えて、その実、家の財産から隠居した先代の生活費を出しているにほかならないのだから。そして、同じ制度が続くならば、自分の介護についても子どもに面倒をみてもらえるという期待が生じる。) 要するに、同じお財布を共有している人の単位が異なるということだ。日本の場合には、別々の家族を営んでいるようで、親も子どもも、いつまでも緩やかに同じお財布を共有している。 一方のアメリカは、子どもが独り立ちした時点で独立採算制になる。もちろん、親の遺産を相続することもあるだろうが、アメリカ人の多くが遺言を残すとされ、日本の遺留分に当たる制度はない。個人の人生の後始末は個人の意思によるのが原則なのだ。 そういう全体像の下で、ロー・スクールの教授は、「子どもが年老いた親の面倒をみるっていう義務が、そんなにはっきり法律に書いてあるの?」と私に問うた。そして、法学部の教授は、「江戸時代までの日本の『家』っていうのはね、これは、会社なのよ」と指摘したのだ』、「日本の場合には、別々の家族を営んでいるようで、親も子どもも、いつまでも緩やかに同じお財布を共有している。 一方のアメリカは、子どもが独り立ちした時点で独立採算制になる。もちろん、親の遺産を相続することもあるだろうが、アメリカ人の多くが遺言を残すとされ、日本の遺留分に当たる制度はない。個人の人生の後始末は個人の意思によるのが原則なのだ」、なるほど。
・『「個人の時代」へ踏み出そうとしている日本社会  そう考えると、アメリカのロー・スクールでの授業風景が異なったものに見えてくる。日本の子どもたちに思いやりがあって、アメリカの子どもたちは年老いた親に冷淡だという、そういう国民性みたいな話ではない。これは、アメリカの「家族」と日本の「家」の決定的な違いなのだ。 アメリカの家族は点々と社会に散りばめられている。一方、日本の家は世代を超えて連綿とつながる線を描く。だが、問題はここでは終わらない。私たちの社会は、今、「家の時代」からアメリカのような「個人の時代」へと足を踏み出そうとしている。 夫婦別姓の問題も、森喜朗氏の発言に端を発した「女性という属性ではなく個人を評価しましょう」という動きも、私たちを「家」の世界観から「個人」へと押し出そうとする。 「個人の自律」というと聞こえはよい。だが、介護の問題、パラサイトチルドレン、8050問題――そこに頼って生きてきた人々が「家」から押し出されたとき、社会が彼らに居場所を用意できるのかが真の問題だろう』、「アメリカの家族は点々と社会に散りばめられている。一方、日本の家は世代を超えて連綿とつながる線を描く。だが、問題はここでは終わらない。私たちの社会は、今、「家の時代」からアメリカのような「個人の時代」へと足を踏み出そうとしている。 夫婦別姓の問題も、森喜朗氏の発言に端を発した「女性という属性ではなく個人を評価しましょう」という動きも、私たちを「家」の世界観から「個人」へと押し出そうとする。 「個人の自律」というと聞こえはよい。だが、介護の問題、パラサイトチルドレン、8050問題――そこに頼って生きてきた人々が「家」から押し出されたとき、社会が彼らに居場所を用意できるのかが真の問題だろう」、「私たちの社会は、今、「家の時代」からアメリカのような「個人の時代」へと足を踏み出そうとしている・・・「個人の自律」というと聞こえはよい。だが・・・「家」に頼って生きてきた人々が「家」から押し出されたとき、社会が彼らに居場所を用意できるのかが真の問題だろう」、さて、どうなるのだろうか。

次に、本年5月30日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したコラムニストの河崎 環氏による「医学部9浪の31歳娘が58歳母をバラバラ死体にするまで…話題本の著者が迫った事件の本質」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/323361
・『5年前に滋賀県で、医学部受験に失敗した31歳の女が母親をメッタ刺しにして殺害したという事件を覚えている方もいるかもしれない。この事件について書いたノンフィクション『母という呪縛 娘という牢獄』が、いまヒット中だ。しかしこの本は、おどろおどろしい猟奇物でも、のぞき見根性の本でもない。淡々とした筆致で、鮮やかに濃密な親娘関係に迫る。読み始めたら引き込まれ、一気に最後まで読んでしまった。こんなに読む者の胸を打つ本を書いたのはどんなベテラン作家かと思ったら驚いた。インタビューに現れたのは、20代の女性だったのだ』、大ヒットの「ノンフィクション『母という呪縛 娘という牢獄』」の作家が「20代の女性」とは私も驚かされた。
・『捜査線上に浮かび上がったひとり娘  ストレートなノンフィクション書籍にヒット作の出づらい現代、昨年12月の発売以来4カ月で7刷5.5万部という、注目すべきスマッシュヒットを飛ばしている作品がある。著者はいわゆるZ世代、刊行当時27歳の齊藤彩(敬称略)。共同通信社の司法記者を経て、初の著書となる『母という呪縛 娘という牢獄』(講談社)を上梓した途端、SNSを中心に大きな反響が起こった。 2018年3月、滋賀県守山市、琵琶湖の南側へ流れ入る野洲川の南流河川敷で、両手・両足・頭部のない、女性の人体の体幹部が発見された。遺体は激しく腐敗して変色、悪臭を放ち、無数のトンビが群がる異常な光景を、通りかかった住民が目に留めたのである。 滋賀県警守山署が身元の特定に当たったが、遺体の損傷が激しく、捜査は難航した。やがて遺体の身元は行方不明となっていた高崎妙子さん※(仮名・死亡時58)と判明。捜査線上に浮かび上がったのは、そのひとり娘である高崎あかり※(仮名・31)だった。 ※正しくは、「高」の字ははしご高、以下すべて同じ』、事件の背景を詳しく知りたいものだ。
・『「モンスターを倒した。これで一安心だ」  妙子さんは20年以上前から夫と別居し、あかりと二人暮らし。あかりは幼少期から学業優秀で中高一貫の進学校に通っており、20代中盤まで母娘で一緒にお風呂に入るほどの濃密な母娘関係を築いていた。 だがその間、実はあかりは常人の理解を超える執拗な干渉、暴言や拘束など、いわゆる“教育虐待”を母から長年受け続けていたのだ。 超難関の国立大医学部への進学を強要されて医学部を9浪の末、母からの妥協案として医大の看護学科へ進学する。しかし母は、看護師よりさらに専門知識を要する助産師にさせようとあかりに助産師学校の受験を求めており、看護学科を卒業して手術室看護師になりたいとの希望を持っていたあかり自身は助産師学校の試験に失敗。それに気づいた母から激しい叱責を受けていた。 あかりは、周到に用意した凶器で母親を刺殺した直後、「高揚感のようなものから」誰に見せるでも聞かせるでもなく、 「モンスターを倒した。これで一安心だ」 とのツイートを残していたのである』、「妙子さんは20年以上前から夫と別居し、あかりと二人暮らし。あかりは幼少期から学業優秀で中高一貫の進学校に通っており、20代中盤まで母娘で一緒にお風呂に入るほどの濃密な母娘関係を築いていた。 だがその間、実はあかりは常人の理解を超える執拗な干渉、暴言や拘束など、いわゆる“教育虐待”を母から長年受け続けていたのだ。 超難関の国立大医学部への進学を強要されて医学部を9浪の末、母からの妥協案として医大の看護学科へ進学する。しかし母は、看護師よりさらに専門知識を要する助産師にさせようとあかりに助産師学校の受験を求めており、看護学科を卒業して手術室看護師になりたいとの希望を持っていたあかり自身は助産師学校の試験に失敗。それに気づいた母から激しい叱責を受けていた」、「あかりは、周到に用意した凶器で母親を刺殺した直後・・・「モンスターを倒した。これで一安心だ」とのツイート」、“教育虐待”がよほど強かったのだろう。
・『母を殺した娘と筆者との膨大な往復書簡  守山署はあかりを死体遺棄容疑で逮捕後、死体損壊、さらに殺人容疑で逮捕・起訴に踏み切った。一審の大津地裁では死体損壊と遺棄については認めるも、あくまで殺人を否認していたあかりだが、二審の大阪高裁に陳述書を提出し、一転して自らの犯行を認める。 「母は私を心底憎んでいた。私も母をずっと憎んでいた。『お前みたいな奴、死ねば良いのに』と罵倒されては、『私はお前が死んだ後の人生を生きる』と心の中で呻いていた」「何より、誰も狂った母をどうもできなかった。いずれ、私か母のどちらかが死ななければ終わらなかったと現在でも確信している」(2020年11月5日、あかりの控訴審初公判における本人陳述書より) 著者の齊藤は、あかりが逮捕・起訴された当時、共同通信社大阪支社で社会部の司法記者として働いていた。「大阪高裁の刑事の担当だったので、そのルーティンワークの一環でちょっと公判をのぞいてみるか、程度の気持ちで行ったんです。ところが被告が、一審と変わって控訴審の初公判で認否をひっくり返すということが起きた。認否を変えるという行為が珍しくて、この事件の内容を深く知ろうと思いました。最初にこの法廷に行ったときは、この事件がこんなに親子の確執をはらんでいるとは知りませんでした」。齊藤は静かに振り返る。) 一審では「母は私の目の前で、突然首に包丁を当てて自殺を図りました」「遺体は私がバラバラにして、現場に捨てました」とのつじつまの合わない主張で否認し続けた殺人を、控訴審で突然認めた。あかりはなぜ認否をひっくり返したのだろう。齊藤は、あかりが控訴審結審に際して発表した文書の一節、「母の呪縛から逃れたい」という部分に強く引きつけられたという。 「調べていくと、母親から医学部への進学を強制されて、本人はその期待に応えることができなくて、苦しい思いをしていたということが分かってきた。私にとってもそれは決して他人事とは思えず、興味深いテーマだと思って引き込まれました」 公判の取材を続ける中、齊藤は拘置所のあかりと面会を重ね、あかりの刑務所移送後も膨大な往復書簡を交わした。共同通信のウェブメディアに掲載された、齊藤の書いた事件深掘り記事は大反響を呼び、書籍化へとつながる。そこに書かれたのは、娘・あかりから見た約30年分の家族の真実だった』、「被告が、一審と変わって控訴審の初公判で認否をひっくり返すということが起きた。認否を変えるという行為が珍しくて、この事件の内容を深く知ろうと思いました」、「公判の取材を続ける中、齊藤は拘置所のあかりと面会を重ね、あかりの刑務所移送後も膨大な往復書簡を交わした。共同通信のウェブメディアに掲載された、齊藤の書いた事件深掘り記事は大反響を呼び、書籍化へとつながる」、なるほど。
・『「同じ思いを持つ人が多いのかも」SNSの大きな反響  本書の序盤、齊藤による忘れられない表現が登場する。「(医師になりたいという)娘の憧れに母親が憑依し、母娘で引き返せない道を歩み始めることになってしまった」。毒親や毒母、教育虐待というキーワードがインターネット社会をにぎわす昨今だが、著者の齊藤は、あかりが置かれた状況や抱いた感情に分かりやすいレッテルを貼って誰かを断罪することで事件を片付けようとはしない。 「自分はこの高崎親子ほどではないんですけど、妙子さんに自分の母親の片鱗を見たような気もしていて。そういう意味で思い入れは強い事件でしたね。共同通信時代に、ネットニュースとして記事を出させてもらっていたんですけど、なんかあまりにも反響が大きかったんですよね。なので、これは私と高崎さんだけの問題ではないのかもしれない、と」 もしかして同じ思いを持つ人が多いのかもしれない、と直感した齊藤の本書がこれまでの事件本と決定的に異なるのは、事件を社会学的な文脈で語ることもなく、「分析」も「評価」もしないところだ。母や娘、周囲の人々の何がどういけなかったのかと、精神分析医や社会学者の分析を引用して「正解」を知ったような気分になり、ホッとふたを閉めて他人事として片付けてしまいそうなところを、齊藤は母娘や関係者の言葉を分析しようとはしない。一貫して生のままの言葉をつづり、読み手の理解へ預け続ける』、「ネットニュースとして記事を出させてもらっていたんですけど、なんかあまりにも反響が大きかったんですよね。なので、これは私と高崎さんだけの問題ではないのかもしれない、と」 もしかして同じ思いを持つ人が多いのかもしれない、と直感した齊藤の本書がこれまでの事件本と決定的に異なるのは、事件を社会学的な文脈で語ることもなく、「分析」も「評価」もしないところだ・・・齊藤は母娘や関係者の言葉を分析しようとはしない。一貫して生のままの言葉をつづり、読み手の理解へ預け続ける」、「「分析」も「評価」もしない」のが受けたとは分からないものだ。
・『行く手を阻む母、なすすべをなくした娘  まだ“正気”の側にいるつもりの人間なら、読み終えるまでずっと気持ちがザワザワする本だ。LINEやメールの記録、あかりの手紙を中心に、あくまでも狂った母と娘のやりとりから明らかになる「母娘の真実」が丹念につづられる。 「どうしてちゃんとできないの?」「嘘付き」「バカ」「デブ」「不細工」「寝るな!」「勉強しろ!」「素直に謝れ」「開き直りやがって!」「土下座して頼め」「お父さんみたいになるよ」「次やったら家から追い出すからね」「ちゃんと成績取れなかったら学校辞めさせるからね」「死ねばいいのに」「消えろ」 母親の叱責を恐れたあかりが学校の成績表を改ざんして見せたら、粗末な偽造が見破られ、灯油ストーブの上で湯気を出していたやかんの熱湯を太ももにぶちまけられたこともあったという。 微量の狂気がずっと混じる、論理の飛躍や欠陥の目立つ、暴力的で他責的な母の主張。何をぶつけられても「そうですね。私がいけなかったです」と諦めたように応じる娘。医大受験失敗以降の9年で母の狂気と暴力がさらに加速していく。より粗野に、何かのタガが外れていくように。 齊藤は指摘する。「浪人生活を断ち切る努力は、あかりさんもしているんです。それが9浪にまでなってしまったのは、あかりさんの試みがことごとくかなわなかったからだと思うんですね。あかりさんは高3から何度も家出していますが、妙子さんが警察や私立探偵を使って、ことごとく連れ戻しているんです。あかりさんが会社に就職して寮で自活しようとしても、気づいたお母さんに電話を入れられて内定取り消しになっていたり。私の見立てですが、ここまで脱出を阻まれると、戦意喪失してしまったのではないか。もうなすすべがなかったのではないかと、そう思います」』、「高3から何度も家出していますが、妙子さんが警察や私立探偵を使って、ことごとく連れ戻している」、「あかりさんが会社に就職して寮で自活しようとしても、気づいたお母さんに電話を入れられて内定取り消しになっていたり」、「ここまで脱出を阻まれると、戦意喪失してしまったのではないか。もうなすすべがなかったのではないかと、そう思います」、なるほど。
・『礼儀正しく理知的な言葉でつづられた“異常な手紙”  二人だけの密室へ、さらにその暗い隅へと自分たちを追い詰めていく母娘。なるほど、このようにして狂った母の異常“論理”が娘を組み伏せてきたのだ、と痛感できるくだりがある。 医学部を目指してアルバイト生活をしながら仮面浪人をし、妥協案として看護学科を受験する前に「もうお母さんに迷惑をかけないように家出します。春には合格の知らせを聞かせますね」などという、長い置き手紙が引用されるのだ。 一見、礼儀正しく清潔で理知的な言葉で、「不甲斐ない私の受験失敗のせいで自殺未遂までしたお母さんを守るために、家出して勉強に集中します」。 だが手紙はこのように続く。「いま、保険証を借りようと金庫を開けたら、和田さん(私立探偵)の名刺と6通の報告書が入っていました」「やっぱりお母さんは私のことを信用していなかったんですね」「お母さんが動転してまた私立探偵に連絡したりお金を払ったりしないよう、電話線を外し、金庫の現金は他に移し、念のため私の学費通帳と印鑑は預からせてもらいます」「本当にごめんなさい。必ず帰ってきます」。 既に異常な内容なのだが、この後に続く齊藤の文章がさらに衝撃的だ。「あかりの意思で家出前に書いた置き手紙のように見えるが、違う。母がパソコンで原文を作成し、あかりに手書きで清書させ、祖母と大叔母に送ったものである」。予備校代を工面してくれる米国在住の祖母に近況を伝え、納得してもらうための、うそで塗り固めた“演出”。これを母は「一世一代の大うそ」と呼び、あかりもまた親戚付き合いとはそういうものだと思っていた』、「「あかりの意思で家出前に書いた置き手紙のように見えるが、違う。母がパソコンで原文を作成し、あかりに手書きで清書させ、祖母と大叔母に送ったものである」。予備校代を工面してくれる米国在住の祖母に近況を伝え、納得してもらうための、うそで塗り固めた“演出”。これを母は「一世一代の大うそ」と呼び、あかりもまた親戚付き合いとはそういうものだと思っていた」、「母」と「あかり」で「祖母と大叔母」にうその手紙を送っていたとは信じ難いが、あり得る話だ。
・『母親が欲しかったもの、足りなかったもの  祖母(通称・アメばあ)や大叔母という肉親に対してまで、なぜそんな大それたうそをつくのか。それこそが、この母子関係の核心ともいえる部分なのである。 齊藤は、実際に面会で対面したあかりをこう表現した。「あかりさんは内省的で、思っていること、考えていることを言語化するのが的確な方です。大阪拘置所で面会したときも、中肉中背で、メガネをかけて、髪を耳の後ろで一つ縛りにしていて。趣味趣向はどこにでもいる人の感性という印象で、特別に何か異質さを感じることはない。好きな食べ物や好きな俳優さんの話をしたり、そんなに『この人とは心が通じ合えない』などと感じることはありませんでした」 だが、娘には何がなんでも医学部に受かってほしいという願いから9浪するまで教育に投資し、その学資を自分の米国在住の実母(アメばあ)に捻出してもらう妙子には、屈折した背景があった。 アメばあは、米軍の軍医と再婚して米国に暮らしているわけです。推測ですが、妙子さんはアメばあから十分な愛情を得られないまま育ってしまったという印象を受けます。小さい頃に再婚した両親だけ米国に行ってしまって、日本に取り残された妙子さんは愛情に飢えていた。娘を医者にしたいからと学費の協力をお願いしたり、何かとアメばあに報告したりというやりとりも、娘を引き合いに出してアメばあを喜ばせ、振り向いてもらえなかった部分を埋めていた気がします。お金をもらっている以上は結果を出さねばという固執も、もしかして彼女はアメばあのために子育てしていたのかなと想像しました」』、「小さい頃に再婚した両親だけ米国に行ってしまって、日本に取り残された妙子さんは愛情に飢えていた。娘を医者にしたいからと学費の協力をお願いしたり、何かとアメばあに報告したりというやりとりも、娘を引き合いに出してアメばあを喜ばせ、振り向いてもらえなかった部分を埋めていた気がします。お金をもらっている以上は結果を出さねばという固執も、もしかして彼女はアメばあのために子育てしていたのかなと想像しました」、母親自身が「愛情に飢えていた」、「もしかして彼女はアメばあのために子育てしていたのかなと想像」、想像以上に複雑な事情だ。
・『これは「毒親」「教育虐待」なのか?  齊藤の解説を聞いて、ようやく事件の補助線を引いてもらった気がした。 「書籍に盛り込んでいるLINEのやりとりはほんの一部なので、交わされた全体を見る限り、看護学科に妥協して落としどころをつけたのは、お母さんの方なんです。あかりさんが折り合いをつけようとしてもできなかったのを、お母さんの方からつけることで『9浪で済んだ』とも考えられます。お母さんとしても、ずっと浪人させていることが自分を苦しめていたのが、置き手紙を書かせたことにもつながっているんです。浪人させ続けたのは妙子さんで、妙子さんの意思で浪人生活を終わらせるというのはアメばあには言いにくかったんでしょう。あくまであかりさん本人が『努力したけど届かないから看護学科で許してくれ』と懇願して落としどころにした、というシナリオにしたかったんですね」 「うそを使って人間関係をつなぎ留めるこのお母さん自体、承認欲求を満たす場が他になかったんじゃないのかなと感じます。妙子さんも孤独な状況だった。仕事はしていたけれども、パートだったり途中でやめたり、友人も多くはなくて、子育てが自分の人生の中心になってしまっている。取材した範囲で、彼女が社会で人とのつながりを持って誰かに喜んでもらうとか、自分で何かをやり遂げた経験が見当たらないんです」 孤独な母親は、承認を求めて狂っていったのだ。 「その妙子さんができることとしては、娘の子育てを頑張って立派に育て上げましたというのが、他人から承認される唯一の手段だったのかなと。家庭以外のコミュニティーにお母さんは属していなかったところがあって、家庭だけが人生になってしまうとお母さんは孤立を深める。誰からも承認されないというのが、なんとしても子育てを成功させねばとのプレッシャーになったのではないか。だから、志望校を落とさせてけりをつけるのは、母の意向ではなくて娘の意向であると見せなければいけなかった。『私は頑張ったのよ』と周りの人に知られたかったのかもしれません」 「浪人中に妙子さんが自殺未遂をする一幕がありますが、看護師との会話の記録に『娘と二人で受験を頑張ってきた』『母親は娘あっての母親でしょ!?』というものがあります。妙子さんも悪気があって娘を苦しめているのではなくて、愛しているが故に期待が大きくなってしまって、自分も苦しめられているのが感じ取れたんです。毒母や毒親と呼ばれる現象も、関係性の問題ですよね。お母さんの立場からは良かれと思ってやっているし、愛情の一つの表れ方にすぎない。どこまでが愛情で、どこからが虐待や毒になるんだろうと、線引きがすごく難しいです」』、「看護学科に妥協して落としどころをつけたのは、お母さんの方なんです。あかりさんが折り合いをつけようとしてもできなかったのを、お母さんの方からつけることで『9浪で済んだ』とも考えられます。・・・アメばあには・・・あくまであかりさん本人が『努力したけど届かないから看護学科で許してくれ』と懇願して落としどころにした、というシナリオにしたかったんですね」、なるほど。
・『父親の存在があかりを変えた  齊藤は、この母子関係の事件において、父親の存在が意外と大きいことにも気づいたという。 「別居してしまったお父さんは、あかりさんにとって最大と言っても過言ではないほどの理解者なんですね。あかりさんが逮捕された後にお父さんが面会に来るのですが、裁判では『お母さんは自殺した』との主張が展開されているさなか、お父さんは娘が殺したということを分かっていた。本当のことを言った方がいいと(あかりに)助言しているんです。子どものことを理解してくれるお父さんだったんですね」 「両親はあかりさんが生まれてから10年ほどで別居していて、お父さんは妙子さんという人と対峙するしんどさを理解しているところがある。あかりさんがお父さんと休日に遊びに行った幼い頃の思い出をつづった手記がありますが、その中でお父さんを『止まり木のような存在』と表現し、唯一心を許せる存在だった」 母・妙子と向き合うつらさを理解できている、唯一の関係。あかりはそのつらさを共有できた父との面会をきっかけに、心を動かしていった』、「幼い頃の思い出をつづった手記・・・その中でお父さんを『止まり木のような存在』と表現し、唯一心を許せる存在だった」、なるほど。
・『母親という生き物を理解する  「あかりさんには同情できる部分がある」と、齊藤は言葉を探すように言った。「自分が娘という立場だからというのも理由ですが、お母さんが喜んでくれると自分もうれしくなってしまうんです。妙子さんが浪人中のあかりさんのために28万円の振り袖を買うことに、あかりさんは母の『娘にきれいなものを着てほしい、晴れ姿にはお金を使いたい』気持ちを理解して、同意します。母親にとって娘とは可愛い存在で、親が喜んでくれることは子にとっても喜びである。勉強もそうだと思うんですよね。いい点数を取ると母親が喜んでくれるから、もっと頑張る」 子どもの人生を侵食するほどの母親の過干渉の理由を、あかりもまた、拘置所で他の母親でもある女囚たちと交流する中で理解していったようだ。子への愛情と、自分の献身や期待に応えない子を憎いと思ってしまう感情は、程度の差はあれ、母親という生き物の中に奇妙に同居している。) あかりと妙子の30年を追い、つぶさに言語化した齊藤は「私としてはもう、あかりさんへの取材に関してはやり切ったという思いがあって」と前置きして、こう語った。 「この事件に、誰かがもっとこうすれば良かったとか、そこまで思い至ってないですね。いろんな要因が重なってしまった結果起こった事件で、こうすればというサジェスチョンはできかねるかな。これを書いているとき、公私共にしんどかったです。あかりさんに手記を寄せてもらったり、さまざまな方に取材に協力していただいたり、こんなにいろんな人に手がけてもらったら出さねばならぬという使命感で書籍を書き上げました」 冷静に誠実に事件を描き、語る齊藤だが、著者の中では取材執筆を通じてすさまじいエネルギーを燃やし続け、母娘のヒリヒリとした感情と向き合い続け、事件関係者だけでなく自分自身の心の中をも深くのぞき込んでいたのだろうと感じられる言葉だった。  Amazonの書籍ページにはあかりの状況に共感するとするたくさんのレビューが寄せられ、SNSでもそれぞれのユーザーが自分の経験を語るなど、反響は大きい。「特に男性の読者は、親子関係に限らず呪縛からの逃げ方という視点で感想を書いてくださる方が多くて、それは一つの発見でした」。それだけ、さまざまな形の呪縛に苦しめられた経験のある人が多いことの表れでもあるのかもしれない。 「この事件や本は教育虐待というキーワードで語られますが、取材をした私としては、どこまでが教育でどこからが虐待か分からないと感じています。むしろ私は『愛情のもつれ』についての本だと思って書きました。一つの愛情の形であり、教育はあくまでツールなのだと」 誰か悪者を見つけて断罪するのではなく、「家族のあり方について考えるきっかけになれば」と語る齊藤。これほどに広く深く人々の心を揺さぶるノンフィクション作品を書き上げた彼女が、知的で冷静な目を備えた27歳だったことに、ただ舌を巻く』、「アメばあ」がまだ生きていれば、さぞかし嘆いたことだろう。「教育虐待というキーワードで語られますが、取材をした私としては、どこまでが教育でどこからが虐待か分からないと感じています。むしろ私は『愛情のもつれ』についての本だと思って書きました」、「これほどに広く深く人々の心を揺さぶるノンフィクション作品を書き上げた彼女が、知的で冷静な目を備えた27歳だったことに、ただ舌を巻く」、同感である。

第三に、6月7日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏による「「子供部屋おじさん」が合理的なのかは、実は深い問いだ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/324056
・『「子供部屋おじさん(おばさん)」とも呼ばれる、成人後も親と同居を続ける中年の増加が日本で取り沙汰されてきたが、米国や英国でもそうした人々やその予備軍が増えつつあるという。子供が親と同居するのは経済合理性が主な理由とされるが、合理的かどうかという問いは、未来の家族形態やライフスタイルの考察にまでつながる「深い問い」といえる』、「子供部屋おじさん」なる言葉は初めて知ったが、米英でも広がっているようだ。
・『日本だけでなく米英でも親と子の同居が増えている  米国や英国で、親と同居する若者が増えているという(「巣立たぬ若者、英米も急増 3分の1が親と同居」日本経済新聞、5月28日)。成人したら親元を離れて自立した生活を営むことが常識的とされてきた米国や英国にあって、18歳から34歳の若者が親と同居する割合が上昇して共に約3分の1に達した。 主たる要因は、主に家賃の上昇だと記事は分析する。2000年を100とした家賃は22年に、米国では180を超えて、英国でも160以上となっている。親と同居して家賃を節約することができれば、同じく高騰している学費などにお金を使うことができるし、もちろん遊興費なども多く確保できる理屈だ。経済合理的とも思えるが、子供の「自立」はどうなるのかという問題や、親と同居した状態が心地いいと結婚して子供を作ることが減ると予想され、少子化に拍車が掛かるのではないかと懸念する声もある。 ちなみに記事では、18歳から34歳の親との同居率は、ポルトガル、イタリア、スペインといった南欧やクロアチア、ポーランドといった東欧が高いと報じている(60%半ばから70%前後)また、16~34歳のデータという注釈付きだが、アジア諸国では韓国が70%と高いという。その一方で、米英と北欧で低い。わが国は、20年の国勢調査によると47%程度と、ややアジア諸国寄りの中位にある。 わが国では家賃の上昇はそれほどでもないが、勤労者層の実質賃金が伸びていないので「生活が苦しい」ことは同様だ。「親との同居」が経済合理的なら、親との同居を前提としたライフスタイルや居住スタイルの変更を考えてもいいのではないか、とも思える。 ただし、いささか揶揄(やゆ)気味に「子供部屋おじさん(おばさん)」という言葉が使われているように、成人して加齢しても子供が家族を持つような独立心や経済力を持たない状態を容認するのがいいことなのかどうか、また、前述のように、この生活形態が少子化を加速する可能性があることについてどう考えるべきかという問題がある。 家族と居住の形態は、考える価値のあるテーマだ』、「巣立たぬ若者、英米も急増 3分の1が親と同居」、「18歳から34歳の親との同居率は、ポルトガル、イタリア、スペインといった南欧やクロアチア、ポーランドといった東欧が高いと報じている(60%半ばから70%前後)、アジア諸国では韓国が70%と高い」、「わが国は、20年の国勢調査によると47%程度と、ややアジア諸国寄りの中位」、想像以上に高いようだ。「家賃」高騰が背景にあるようだ。
・『親と子の同居に対する筆者自身の価値観と偏見  一般論を考える前に、筆者個人が現実にこの問題をどう考えているかについて述べておこう。 筆者の息子は今年の春に東京の大学に進学することになった。家族は東京に居るので、家族の元から大学に通うことが可能だったが、大学の近くにワンルームマンションを借りて一人暮らしをさせることにした。費用的には少々不経済である。 理由は、家族から引き離して「早く大人にしよう」と父親である筆者が考えたためだ。家族と同居している子供は、毎日親(特に母親)と話すので、ものの見方や価値観に対して親の影響を受けるし、生活面でもさまざまに親に依存する。この関係を早く断ち切ることが、息子の成長に有効だと考えたのだ。 背景には、息子が将来十分経済的に自立して生活できるようになるだろうという息子個人への評価があったし、それ以上に、独立して暮らすことが自立心につながるという、筆者の年代が持ちがちな価値判断があったと思う。たぶん偏見が含まれているが、過去に多くの男性を観察していて、精神的に「母親離れ」ができていない人物の性格に残念な面を多く感じてきたということもある。 偏見のついでに告白しておくと、娘(息子の2学年下)に対しても同じようにするかどうかは決めていない。 子供の性差と子育てをどう考えるかは、難しい問題だ。「原則として、性別に関係なく本人の個性次第だ」と頭では考えているが、「女の子は、こうした方が生きやすい」という世間の環境に適応して、男の子と扱いを変える可能性はある。ジェンダー問題がご専門の方などからは大いに批判される態度かもしれない。私が政治家など公職にあれば、そもそもこの点について正直に述べることが難しかろう。幸い気楽な立場なので、正直に書いた。 筆者自身が、核家族化が進行し「成人したら自立」が当たり前だった時代に育ち(筆者は昭和の真ん中、昭和33年生まれだ)、かつての男の子だった自分固有の経験に影響されていることは否めない』、我が家の場合は、娘2人は片道1時間半かかっても、自宅から通わせたが、息子は片道1時間強でも下宿させた。
・『生活にも働く「規模の経済効果」 Nを大きくすると生活は楽になる  経済効率という意味では、大家族には効率的な面がある。通常の調査では、世帯別の裕福・困窮の度合いを測る上で、世帯所得を世帯人数(N人)の平方根で割った数字を使う。2人暮らしは独り暮らしの1.4倍強のコストで賄えるし、4人暮らしなら独り暮らしの2倍の所得があれば概ね同等の豊かさだということだ。 つまり、生活にも「規模の経済効果」が働くということだ。確かに、キッチンも、冷蔵庫も、洗濯機も、人数分必要だということはないし、何よりも一人一人が毎食炊事に関わる必要もない。この効果の大きさと確かさを考えると、ある意味では「独り暮らしは贅沢」なのであり、例えば生活保護を考える場合に独り暮らしのコストまで補償することが適切なのかといった問題にも行き着く。 「N」は必ずしも親子や親戚同士である必要はないが、例えば、親・子・孫3世代の同居を考えると、一つには働く親(第2世代の親)の子供の保育に関する問題、もう一つには高齢になった親(第1世代の親)の初期段階の介護における問題が、大家族の中である程度は解決可能になるという大きなメリットがあることにも気付く。 国が国民の大家族化に期待して保育園の整備を手抜きするようでは問題だが、送り迎えや在宅での見守り、教育などにおいて、働く親のさらに親世代が大いに頼りになることは確かだ。また、終末期の介護を大家族に丸投げするのも問題だし、規模の利益に反する場合もあろうが(例えば入浴の介助は素人よりもプロが行う方が効率的だ)、高齢者がある程度自分でも動ける段階での介護は大家族の中で分担して吸収できそうな問題だ。 大家族には、働く世代をしばしば制約する、「子供の保育」と「親の介護」の問題を解決する上でもメリットがありそうだ。例えば、まだ働くことができる年齢の子供が親の介護に張り付くために退職するといった、核家族親子の非効率を何がしか避けることができる可能性がある。 人類学者のエマニュエル・トッド氏によると、米英などアングロサクソンの国で一般的な核家族の形態は、人類史的には最も原始的なもので、アジアなどに多い直系家族や、さらにロシアやアラブなどに存在する各種の共同体家族の方がより新しい進化した家族形態なのだという。 筆者の世代では、成人したら小さくても住居を確保して核家族を作る方が、かつて農家などに見られたような大家族よりも、新しくて進んだ暮らし方であるとのイメージを持ちがちだ。しかしこれは、都市への労働力の吸収と、小さくても家を持たせる住宅振興政策、さらに米英の文化の影響を受けた、「特定の時代のトレンドだった」と解釈するのが妥当なのだろう。 どのような家族形態、居住形態が合理的なのかは、改めて考えてみるべき問題だろう』、「エマニュエル・トッド氏によると、米英などアングロサクソンの国で一般的な核家族の形態は、人類史的には最も原始的なもので、アジアなどに多い直系家族や、さらにロシアやアラブなどに存在する各種の共同体家族の方がより新しい進化した家族形態なのだという」、にわかには信じ難い話だ。
・『家族形態を考える上で重要な原則とは?  では、どうするべきなのか。 この問題を考える上で、何としても重要な原則は、家族形態や居住形態は、個々の国民が自由に(=国家に介入されずに)決めるべき問題だということだ。 家族や住居は、個人の暮らし方の根幹に関わる問題なので、税制や社会保障制度などで特定の方向に誘導すべきではない。 例えば、大家族の同居を前提とすると世帯数は減るから、一時的に大家族仕様の住宅に対するニーズが発生するかもしれないが、長期的には住宅費は節約されることになるだろう。これを政策で阻害してはならない。 また、白物家電などを典型とする耐久消費財の需要も大家族化で減少するはずだが、それは消費者側での合理的な選択の結果なのであって、この点への介入も無用だ。 家族制度の選択は、少子化対策や産業の振興などと分けて考えるべきだ。 子供に対して給付金を配るなどの少子化対策は別個に行われてもいいが、かつて「標準家族」を優遇したような、特定の家族形態に対する優遇・誘導を税制や社会保障制度を通じて行うことは厳に慎むべきだろう。 国民には、多少不経済でも核家族を選択する自由も、大家族を選択する自由もあるべきで、そこに制度上の損得を絡ませるべきではない。「暮らし方」を少子化対策など別の目的の手段としてはならない。 その上でだが、世帯の「N」を大きくすることによる経済性には大いに魅力がある。単に「親子の同居」にとどまらない、合理的に暮らせる大家族の形態および住居について、提案し、ロールモデルとなる人物がいるといい。 もっとも、「N」をいかにマネジメントするかは簡単ではない。世界にある各種の共同体家族でも、父親に権威があって兄弟が平等な家族形態もあれば、母方の住居において共同で生活する母系的なシステムもあるようだ。何らかの習慣を形成することが合理的なのかもしれない。 われわれは、世界の別のシステムに学ぶべきなのかもしれないし、あるいは全く新しい仕組みを考えるべきなのかもしれない。 合理的な住居と大人数のマネジメントの仕組みをセットで提案してくれる「生活の発明家」の登場に大いに期待したい』、「家族や住居は、個人の暮らし方の根幹に関わる問題なので、税制や社会保障制度などで特定の方向に誘導すべきではない」、その通りだ。「合理的な住居と大人数のマネジメントの仕組みをセットで提案してくれる「生活の発明家」の登場に大いに期待したい」、同感である。
タグ:親子関係 (その1)(米国人驚愕「子が親の介護する日本」深刻な盲点 「家の時代」から「個人の時代」へシフト、医学部9浪の31歳娘が58歳母をバラバラ死体にするまで…話題本の著者が迫った事件の本質、「子供部屋おじさん」が合理的なのかは 実は深い問いだ) 東洋経済オンライン 山口 真由氏による「米国人驚愕「子が親の介護する日本」深刻な盲点 「家の時代」から「個人の時代」へシフト」 「バーソレッテ教授は」、「日本と比べると、アメリカは年寄りに冷たい国だわ。私もね、年寄りの部類に入るようになって心からそう思うのよ・・・子どもたちは、年老いた両親を養うことはしない。老後に備えて、私たちは自分でお金を貯めておかないといけないの。この若い国は、この国を必死に支えて、そして、老いていった人たちをいたわろうとはしてこなかったわ」、その通りだ。 「江戸時代の武家制度のなかで確立した日本の「家」というのは、家の財産をバラバラにせずに、次の世代に、その次の世代に、脈々と伝えていくための装置なのだという。 江戸時代の家は、武士であれ町人であれ、「家業」を持っていた・・・長女は、家業につながりのある家にお嫁に行くだろう。次男には、後々、のれん分けをしてあげるかもしれない。ここは、とりあえず長男にお店を丸ごと継いでもらうことにしよう。 こうやって、浅草の老舗のお煎餅屋さんは、世代に1人と跡継ぎを定めて、祖父から父へ、そして、父から息子の代へと事業を丸ごと受け継がせる。日本の「家」というのは、もともとそういうものだったらしい。そう考えるとこれは家族経営の中小企業とおんなじだ」、「江戸時代までの日本の相続は、今でいう会社の『事業承継』と同じ。財産の帰属主体は個人じゃないの。家なのよ。だから、社長を交代するように家長を交代して、世代を超えて家の財産を引き継いでいく。 個人が亡くなるたびに、財産の帰属主体が消滅して、財産を清算してっていう考え方はとっていなかったの。個人が亡くなってもなお、家は連綿と残っていくものなのよ」 アメリカの「家族」は点である。子どもが成人すれば、親の家族とは別個の個人となり、やがて新しい家族を作っていく」、「「江戸時代までの日本の相続は・・・財産の帰属主体は個人じゃないの。家なのよ。だから、社長を交代するように家長を交代して、世代を超えて家の財産を引き継いでいく」、その通りだ。 「アメリカの「家族」は点である。子どもが成人すれば、親の家族とは別個の個人となり、やがて新しい家族を作っていく」、「日本の「家」は線である。隠居した親の面倒は子どもがみる。その子も将来は、自分の息子やそのお嫁さんに面倒をみてもらう。家業を、親から子ども、そして、孫へと引き継いでいくその裏で、家業を営むことで得られるあがりで、年老いた親、出戻りの娘、引きこもった息子、家の構成員全員を養っていく。 家は、世代を超え、核家族の境界を超えて、一族を縦に結びつける。そしてこの家は、精神的な結びつきのみならず、経済的な基盤でもあるのだ」、極めてクリアだ。「今、日本では、もともとの「家」の価値観と西欧由来の「個人」の価値観が交錯する過渡期にある。相続というのは「個人」の側の概念である。日本には、もともと財産が個人に帰属するという考え方はなかった。そういう考えが輸入されたことで、相続という制度ができあがった」、なるほど。 「日本の場合には、別々の家族を営んでいるようで、親も子どもも、いつまでも緩やかに同じお財布を共有している。 一方のアメリカは、子どもが独り立ちした時点で独立採算制になる。もちろん、親の遺産を相続することもあるだろうが、アメリカ人の多くが遺言を残すとされ、日本の遺留分に当たる制度はない。個人の人生の後始末は個人の意思によるのが原則なのだ」、なるほど。 「アメリカの家族は点々と社会に散りばめられている。一方、日本の家は世代を超えて連綿とつながる線を描く。だが、問題はここでは終わらない。私たちの社会は、今、「家の時代」からアメリカのような「個人の時代」へと足を踏み出そうとしている。 夫婦別姓の問題も、森喜朗氏の発言に端を発した「女性という属性ではなく個人を評価しましょう」という動きも、私たちを「家」の世界観から「個人」へと押し出そうとする。 「個人の自律」というと聞こえはよい。だが、介護の問題、パラサイトチルドレン、8050問題――そこに頼って生きてきた人々が「家」から押し出されたとき、社会が彼らに居場所を用意できるのかが真の問題だろう」、「私たちの社会は、今、「家の時代」からアメリカのような「個人の時代」へと足を踏み出そうとしている・・・「個人の自律」というと聞こえはよい。だが・・・「家」に頼って生きてきた人々が「家」から押し出されたとき、社会が彼らに居場所を用意できるのかが真の問題だろう」、さて、どうなるのだろうか。 ダイヤモンド・オンライン 河崎 環氏による「医学部9浪の31歳娘が58歳母をバラバラ死体にするまで…話題本の著者が迫った事件の本質」 『母という呪縛 娘という牢獄』 大ヒットの「ノンフィクション『母という呪縛 娘という牢獄』」の作家が「20代の女性」とは私も驚かされた。 事件の背景を詳しく知りたいものだ。 「妙子さんは20年以上前から夫と別居し、あかりと二人暮らし。あかりは幼少期から学業優秀で中高一貫の進学校に通っており、20代中盤まで母娘で一緒にお風呂に入るほどの濃密な母娘関係を築いていた。 だがその間、実はあかりは常人の理解を超える執拗な干渉、暴言や拘束など、いわゆる“教育虐待”を母から長年受け続けていたのだ。 超難関の国立大医学部への進学を強要されて医学部を9浪の末、母からの妥協案として医大の看護学科へ進学する。しかし母は、看護師よりさらに専門知識を要する助産師にさせようとあかりに助産師学校の受験を求めており、看護学科を卒業して手術室看護師になりたいとの希望を持っていたあかり自身は助産師学校の試験に失敗。それに気づいた母から激しい叱責を受けていた」、「あかりは、周到に用意した凶器で母親を刺殺した直後・・・「モンスターを倒した。これで一安心だ」とのツイート」、“教育虐待”がよほど強かったのだろう。 「被告が、一審と変わって控訴審の初公判で認否をひっくり返すということが起きた。認否を変えるという行為が珍しくて、この事件の内容を深く知ろうと思いました」、「公判の取材を続ける中、齊藤は拘置所のあかりと面会を重ね、あかりの刑務所移送後も膨大な往復書簡を交わした。共同通信のウェブメディアに掲載された、齊藤の書いた事件深掘り記事は大反響を呼び、書籍化へとつながる」、なるほど。 「ネットニュースとして記事を出させてもらっていたんですけど、なんかあまりにも反響が大きかったんですよね。なので、これは私と高崎さんだけの問題ではないのかもしれない、と」 もしかして同じ思いを持つ人が多いのかもしれない、と直感した齊藤の本書がこれまでの事件本と決定的に異なるのは、事件を社会学的な文脈で語ることもなく、「分析」も「評価」もしないところだ・・・齊藤は母娘や関係者の言葉を分析しようとはしない。 一貫して生のままの言葉をつづり、読み手の理解へ預け続ける」、「「分析」も「評価」もしない」のが受けたとは分からないものだ。 「高3から何度も家出していますが、妙子さんが警察や私立探偵を使って、ことごとく連れ戻している」、「あかりさんが会社に就職して寮で自活しようとしても、気づいたお母さんに電話を入れられて内定取り消しになっていたり」、「ここまで脱出を阻まれると、戦意喪失してしまったのではないか。もうなすすべがなかったのではないかと、そう思います」、なるほど。 「「あかりの意思で家出前に書いた置き手紙のように見えるが、違う。母がパソコンで原文を作成し、あかりに手書きで清書させ、祖母と大叔母に送ったものである」。予備校代を工面してくれる米国在住の祖母に近況を伝え、納得してもらうための、うそで塗り固めた“演出”。これを母は「一世一代の大うそ」と呼び、あかりもまた親戚付き合いとはそういうものだと思っていた」、「母」と「あかり」で「祖母と大叔母」にうその手紙を送っていたとは信じ難いが、あり得る話だ。 「小さい頃に再婚した両親だけ米国に行ってしまって、日本に取り残された妙子さんは愛情に飢えていた。娘を医者にしたいからと学費の協力をお願いしたり、何かとアメばあに報告したりというやりとりも、娘を引き合いに出してアメばあを喜ばせ、振り向いてもらえなかった部分を埋めていた気がします。お金をもらっている以上は結果を出さねばという固執も、もしかして彼女はアメばあのために子育てしていたのかなと想像しました」、母親自身が「愛情に飢えていた」、「もしかして彼女はアメばあのために子育てしていたのかなと想像」、想像以上に複雑 な事情だ。 「看護学科に妥協して落としどころをつけたのは、お母さんの方なんです。あかりさんが折り合いをつけようとしてもできなかったのを、お母さんの方からつけることで『9浪で済んだ』とも考えられます。・・・アメばあには・・・あくまであかりさん本人が『努力したけど届かないから看護学科で許してくれ』と懇願して落としどころにした、というシナリオにしたかったんですね」、なるほど。 「幼い頃の思い出をつづった手記・・・その中でお父さんを『止まり木のような存在』と表現し、唯一心を許せる存在だった」、なるほど。 「教育虐待というキーワードで語られますが、取材をした私としては、どこまでが教育でどこからが虐待か分からないと感じています。むしろ私は『愛情のもつれ』についての本だと思って書きました」、「これほどに広く深く人々の心を揺さぶるノンフィクション作品を書き上げた彼女が、知的で冷静な目を備えた27歳だったことに、ただ舌を巻く」、同感である。 「アメばあ」がまだ生きていれば、さぞかし嘆いたことだろう。 山崎 元氏による「「子供部屋おじさん」が合理的なのかは、実は深い問いだ」 「子供部屋おじさん」なる言葉は初めて知ったが、米英でも広がっているようだ。 「巣立たぬ若者、英米も急増 3分の1が親と同居」、「18歳から34歳の親との同居率は、ポルトガル、イタリア、スペインといった南欧やクロアチア、ポーランドといった東欧が高いと報じている(60%半ばから70%前後)、アジア諸国では韓国が70%と高い」、「わが国は、20年の国勢調査によると47%程度と、ややアジア諸国寄りの中位」、想像以上に高いようだ。「家賃」高騰が背景にあるようだ。 我が家の場合は、娘2人は片道1時間半かかっても、自宅から通わせたが、息子は片道1時間強でも下宿させた。 「エマニュエル・トッド氏によると、米英などアングロサクソンの国で一般的な核家族の形態は、人類史的には最も原始的なもので、アジアなどに多い直系家族や、さらにロシアやアラブなどに存在する各種の共同体家族の方がより新しい進化した家族形態なのだという」、にわかには信じ難い話だ。 「家族や住居は、個人の暮らし方の根幹に関わる問題なので、税制や社会保障制度などで特定の方向に誘導すべきではない」、その通りだ。「合理的な住居と大人数のマネジメントの仕組みをセットで提案してくれる「生活の発明家」の登場に大いに期待したい」、同感である。
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携帯・スマホ(その10)(楽天 「3300億円増資」でも続くモバイルの綱渡り 今期黒字化は早々に断念 当面はKDDIの助けも、「楽天にとって不運だったのは菅首相の誕生」楽天モバイルが苦戦を強いられている"本当の原因" 「官製値下げ」は長期的に見て国民の利益になっているのか、「日本ネット企業の雄」だった楽天は なぜここまで追い込まれた? 迫る「決断の日」) [産業動向]

携帯・スマホについては、本年4月27日に取上げた。今日は、(その10)(楽天 「3300億円増資」でも続くモバイルの綱渡り 今期黒字化は早々に断念 当面はKDDIの助けも、「楽天にとって不運だったのは菅首相の誕生」楽天モバイルが苦戦を強いられている"本当の原因" 「官製値下げ」は長期的に見て国民の利益になっているのか、「日本ネット企業の雄」だった楽天は なぜここまで追い込まれた? 迫る「決断の日」)である。

先ずは、本年5月19日付け東洋経済オンライン「楽天、「3300億円増資」でも続くモバイルの綱渡り 今期黒字化は早々に断念、当面はKDDIの助けも」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/673675
・『不退転の決意は、はたして実を結ぶのか。 モバイル事業に巨額の投資を続ける楽天グループ。同社は5月16日、公募増資と第三者割当増資により最大3300億円の資金を調達し、モバイル事業への投資や社債の償還に振り向けると発表した。 新たに発行する株式は最大5億4690万株で、同社の発行済み株式総数の34%に相当する。うち9割弱は国内外の一般投資家向けに発行し、残りの1割強を三木谷浩史会長兼社長の親族の資産管理会社2社のほか、サイバーエージェントと東急に割り当てる。 増資によって調達する資金のうち、6割弱をモバイル事業の設備投資に、残りを社債償還などに充てる方針だという。 公募増資を検討している旨の報道が流れた5月15日以降、株式の大幅な希薄化に対する懸念から、投資家の間では楽天グループ株の売りが殺到。報道前と比べ、足元の株価は2割近く下落している。 こうした事態は当然、楽天側も織り込み済みだっただろう。だが、リスクを負ってでも、楽天は資金調達する必要に迫られていた』、「最大3300億円の資金を調達」というのでは、「株式の大幅な希薄化に対する懸念」から、「株価は2割近く下落」したようだ。
・『決算短信には従来目標を撤回する一文  2020年にサービスを本格的に始動した楽天モバイルの大赤字が続く中、楽天グループの自己資本比率は3.8%(2023年3月末時点)と危険水域に到達。さらには今後3年で約9000億円の社債償還が控えている。 (償還時期の近い楽天グループの社債一覧はリンク先参照) 手元資金を確保すべく、4月に楽天銀行を上場させて717億円を調達したほか、楽天証券ホールディングスの上場も計画している。5月12日には、20%を出資する西友ホールディングスの株式をすべて売却することを発表した。 ここに来て、あの手この手で資金調達に奔走する楽天。その最大の誤算は、モバイル事業の契約数の伸び悩みにある。 「計画の見直しを行った結果、モバイル事業単体での2023年中の単月営業黒字化は困難だと考えている」 5月12日に開示された2023年第1四半期の決算短信。「連結業績予想に関する定性的情報」の項目には、こんな一文がひっそりと載せられている。 これまで三木谷氏は2023年中の単月黒字化を掲げ、2月時点でも「年内に頑張って目指したい」と公言していた。ところが年度が始まって早々、その目標を断念した格好だ。) 2023年第1四半期決算で、モバイル事業は1026億円の営業赤字(前年同期は1323億円の営業赤字)を計上した。楽天グループ全体でも761億円の営業赤字となっており、本業のECと金融が稼いだ利益を食い潰している』、「モバイル事業の契約数の伸び悩み」、「黒字化」の「目標を断念」とは深刻だ。
・『楽天グループの決算短信  楽天モバイルの契約回線数(MVNOを除くMNO)は、3月末時点で454万。四半期ベースでは1年前から減少が続いていたが、2022年12月末時点(446万)と比べると、わずかながら増加へと転じた。 ただ、事業単体での営業黒字化には最低でも1000万以上の回線数が必要との見方が多い。足元の回復度合いでは、2023年中に黒字化することは到底無理だと判断したもようだ。 それでも三木谷氏は強気な姿勢を崩していない。5月12日の決算説明会では、「将来的にはナンバーワン携帯キャリアになる」と豪語した。 株価を犠牲にしてでも、巨額の資金調達に踏み切る決断をしたのは、モバイル事業から撤退しない意思の表明とも受け取れる』、「契約回線数」はかろじて下げ止まったが、「事業単体での営業黒字化には」程遠いようだ。
・『KDDIとの新たな契約で方針転換  モバイル事業をめぐる楽天の方針転換は、黒字化計画の後ろ倒しだけではない。通信網の整備についても、従来の「自前主義」を見直す方向へと舵を切った。 5月11日、楽天はKDDIとの間で、自社回線でカバーできていないエリアでKDDIの回線を利用できる「ローミング」契約を新たに締結したと発表した。2023年6月から2026年9月まで、これまでローミングの対象ではなかった東京23区や大阪市といった都市部繁華街や地下空間などにおいて、KDDIの回線を使えるようになるという。 楽天モバイルがKDDIのローミングを使い始めたのは、2019年10月。契約期間は2026年3月末までとし、KDDIに使用料を支払う代わりに、サービス参入当初から全国で顧客へのデータ提供を行えるようにした。 ただ、当時の契約の約款から推計すると、KDDIのローミングが使われた場合、ユーザーの利用料金が仕入れ値を数百円ずつ割り込む「逆ザヤ」が起きていたとみられる。そのためローミングエリア内では、月5GB(ギガバイト)以上は速度制限がかかるプランとなっていた。 こうした事情から、楽天は自前の通信網をできるだけ早く整備するべく、基地局の設置を急ピッチで推進。とくに都市部など人口密集地帯から自社回線のみでカバーするエリアを広げて、KDDIのローミング地域を段階的に減らしてきた。 今回締結した新たなローミング契約の詳細な条件は明かされていない。ただ、楽天はローミング費用については当初計画に対して「若干の増加」としており、以前より単価は下がった可能性が高い。 楽天としては、当面KDDIの助けを借りることで、基地局の整備スケジュールを見直して資金難の急場をしのぐ狙いだ。新たな契約により、2023年の基地局設備投資額を1000億円減と当初計画から3割減らすほか、今後3年間で3000億円の設備投資削減を見込む。 背に腹は代えられない楽天がすがったように映る今回の契約だが、実はKDDIにとってもメリットは大きい。ある通信業界関係者は「KDDIは2023年度に楽天からのローミング収入が前期比で600億円減少する見込みで、この埋め合わせは容易ではない。KDDIから楽天に話を持ちかけた可能性もある」と推測する。 楽天の自社回線による人口カバー率(通常速度でデータを無制限で使えるエリア)は、2023年4月末時点で98.4%。それが新契約によって一気に99.9%と、大手3キャリア並みに広がることになる。 新契約の下、楽天モバイルは6月1日から新プラン「最強プラン」を投入する。料金は従来の980~2980円(税抜き)のまま、楽天回線もKDDI回線も使い放題にするという』、「KDDIのローミング」の再拡大で、「2023年の基地局設備投資額を1000億円減と当初計画から3割減らすほか、今後3年間で3000億円の設備投資削減を見込む」、「楽天の自社回線による人口カバー率は・・・新契約によって一気に99.9%と、大手3キャリア並みに広がることになる」、なるほど。
・『最強プランでどこまで契約を伸ばせるか  今後の焦点は、新プランを契機として楽天モバイルの契約回線数が伸びるかどうかだ。 月々2980円で良質な通信が全国で使い放題となれば、大手キャリアが展開するプランの中では最安値圏と言える。楽天経済圏のサービス利用が多いユーザーなどが、一定数流入する可能性はあるだろう。 ただ、KDDIのローミングを使えるようになったとはいえ、ローミングがカバーするエリアは都市部など一部にとどまる。契約獲得や解約抑止に当たって障壁となってきた通信品質の問題では、イメージ改善へのハードルは依然として高い。 通信品質という点で、楽天と大手3キャリアとの最大の違いは、障害物を避けてつながりやすい700~900MHz(メガヘルツ)の周波数帯「プラチナバンド」の有無だ。楽天モバイルのみがプラチナバンドを割り当てられていない。 楽天は総務省に対して長らくプラチナバンドの割り当てを求めてきた経緯があり、同社の想定では早ければ今秋にも獲得できる見通しという。ただし、競合する既存キャリアの意向なども加味する必要があり、その行方はまだ流動的だ。 仮に楽天の新プランへのユーザー流出が起きれば、競合各社が何かしらの対抗策を打ってくる可能性もある。増資や投資計画の見直しで一息つく暇もなく、今後も綱渡りの経営は続きそうだ』、「長らくプラチナバンドの割り当てを求めてきた経緯があり、同社の想定では早ければ今秋にも獲得できる見通しという。ただし、競合する既存キャリアの意向なども加味する必要があり、その行方はまだ流動的だ。 仮に楽天の新プランへのユーザー流出が起きれば、競合各社が何かしらの対抗策を打ってくる可能性もある」、「プラチナバンドの割り当て」が当面の注目点だ。

次に、5月25日付けPRESIDENT Onlineが掲載した経済ジャーナリストの磯山 友幸氏による「「楽天にとって不運だったのは菅首相の誕生」楽天モバイルが苦戦を強いられている"本当の原因" 「官製値下げ」は長期的に見て国民の利益になっているのか」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/69905
・『楽天銀行を上場させて資金調達をしたばかり  楽天グループが「金食い虫」と化したモバイル事業に悪戦苦闘を迫られている。5月16日には公募増資と第三者割当増資で最大3300億円の資金を調達すると発表。調達資金はモバイル事業の設備投資と社債償還に当てるとしている。 増資で新たに発行する株式は最大5億4690万株に達する。増資前の発行済株式総数の34%に相当する株式が増えることになるため、報道が流れた直後から株式価値の希薄化を懸念した売りに押されて株価は大きく下げた。市場全体は海外投資家の買いで活況を呈し、株価が大幅に上昇したのとは対照的だった。 5月17日に日経平均株価は3万円を突破、その後も上昇し続けて22日には33年ぶりに3万1000円台に乗せた。そんな中で楽天の株価は5月12日の707円から5月18日には606円にまで下落、22日は613円で引けたものの、取引時間中には602円の安値を付けた。 それほど投資家に動揺を与えながらも大型の増資に踏み切らざるを得ないところに、楽天の苦しさが滲み出ている。なりふり構わぬと言ったところだが、つい1カ月前にも市場を使った資金調達をしたばかりだった。子会社の楽天銀行を東証のプライム市場に上場、保有株の一部を売却して717億円を調達した。これも携帯電話の基地局整備などに当てられる』、「つい1カ月前にも」、「子会社の楽天銀行を東証のプライム市場に上場、保有株の一部を売却して717億円を調達」、今回は「公募増資と第三者割当増資で最大3300億円の資金を調達」、「投資家に動揺を与えながらも大型の増資に踏み切らざるを得ないところに、楽天の苦しさが滲み出ている」、その通りだ。
・『携帯事業は1026億円の赤字  こうして調達を繰り返している資金も、砂漠に水を撒くように消えていく。2023年12月期は3000億円の設備投資を予定しているほか、今後3年間で9000億円の社債償還が控える。それだけではない。さらに毎年巨額の赤字を計上しているからだ。 楽天グループの連結最終損益は、携帯電話サービスを始めた2019年12月期から4期連続で赤字が続いている。2022年12月期は3759億円と最大の赤字を計上した。2023年12月期に入っても赤字が減る気配はない。 5月12日に発表した2023年第1四半期(1~3月)も825億円の赤字だった。携帯事業の契約者数が454万件と前年同期の492万件から大きく減った。データ使用量1ギガバイトまで料金を「0円」とするプランを廃止した影響で解約が増えた。携帯事業は1026億円の赤字を出している。 なぜ、楽天が携帯事業でこんなに苦戦を強いられているのか。もともと、ドコモ、au、ソフトバンクの3社寡占で、楽天が新規参入する余地などなかったのではないか、と見られがちだ。ソフトバンクが携帯事業に参入する際は旧ボーダフォンを買収したにもかかわらず、それでも苦汁を舐める時期が続いた。楽天は一から自前で始めたわけで、そもそも事業として自立するのは無理なのではないか、というわけだ』、「楽天グループの連結最終損益は、携帯電話サービスを始めた2019年12月期から4期連続で赤字が続いている。2022年12月期は3759億円と最大の赤字を計上した。2023年12月期に入っても赤字が減る気配はない」、「もともと、ドコモ、au、ソフトバンクの3社寡占で、楽天が新規参入する余地などなかったのではないか、と見られがちだ」、なるほど。
・『楽天銀行を上場させて資金調達をしたばかり  楽天グループが「金食い虫」と化したモバイル事業に悪戦苦闘を迫られている。5月16日には公募増資と第三者割当増資で最大3300億円の資金を調達すると発表。調達資金はモバイル事業の設備投資と社債償還に当てるとしている。 増資で新たに発行する株式は最大5億4690万株に達する。増資前の発行済株式総数の34%に相当する株式が増えることになるため、報道が流れた直後から株式価値の希薄化を懸念した売りに押されて株価は大きく下げた。市場全体は海外投資家の買いで活況を呈し、株価が大幅に上昇したのとは対照的だった。 5月17日に日経平均株価は3万円を突破、その後も上昇し続けて22日には33年ぶりに3万1000円台に乗せた。そんな中で楽天の株価は5月12日の707円から5月18日には606円にまで下落、22日は613円で引けたものの、取引時間中には602円の安値を付けた。 それほど投資家に動揺を与えながらも大型の増資に踏み切らざるを得ないところに、楽天の苦しさが滲み出ている。なりふり構わぬと言ったところだが、つい1カ月前にも市場を使った資金調達をしたばかりだった。子会社の楽天銀行を東証のプライム市場に上場、保有株の一部を売却して717億円を調達した。これも携帯電話の基地局整備などに当てられる』、「楽天の株価は5月12日の707円から5月18日には606円にまで下落、22日は613円で引けたものの、取引時間中には602円の安値を付けた。 それほど投資家に動揺を与えながらも大型の増資に踏み切らざるを得ないところに、楽天の苦しさが滲み出ている。なりふり構わぬと言ったところだが・・・」、なるほど。
・『携帯事業は1026億円の赤字  こうして調達を繰り返している資金も、砂漠に水を撒くように消えていく。2023年12月期は3000億円の設備投資を予定しているほか、今後3年間で9000億円の社債償還が控える。それだけではない。さらに毎年巨額の赤字を計上しているからだ。 楽天グループの連結最終損益は、携帯電話サービスを始めた2019年12月期から4期連続で赤字が続いている。2022年12月期は3759億円と最大の赤字を計上した。2023年12月期に入っても赤字が減る気配はない。 5月12日に発表した2023年第1四半期(1~3月)も825億円の赤字だった。携帯事業の契約者数が454万件と前年同期の492万件から大きく減った。データ使用量1ギガバイトまで料金を「0円」とするプランを廃止した影響で解約が増えた。携帯事業は1026億円の赤字を出している。 なぜ、楽天が携帯事業でこんなに苦戦を強いられているのか。もともと、ドコモ、au、ソフトバンクの3社寡占で、楽天が新規参入する余地などなかったのではないか、と見られがちだ。ソフトバンクが携帯事業に参入する際は旧ボーダフォンを買収したにもかかわらず、それでも苦汁を舐める時期が続いた。楽天は一から自前で始めたわけで、そもそも事業として自立するのは無理なのではないか、というわけだ』、「もともと、ドコモ、au、ソフトバンクの3社寡占で、楽天が新規参入する余地などなかったのではないか、と見られがちだ・・・楽天は一から自前で始めたわけで、そもそも事業として自立するのは無理なのではないか、というわけだ」、なるほど。
・『「Rakuten最強プラン」が起死回生の一打になるか  ネット上では、楽天は携帯事業から撤退するのではないかとか、他のキャリアと統合するのではないかと言った見方も出ている。だが、万が一、そんなことになれば、菅首相の介入が新規参入を疎外し、競争を排除したことになってしまう。結局、既得権を持つ3社が有利になるということだろう。それを菅首相が意図していたとは思わないが、政府が価格をコントロールしようとして介入すれば、市場競争は大きく歪むことになるのは現実だろう。 楽天自身は、今回の公募増資の発表資料の中で、Eコマースやトラベル、金融決済などの同社のサービスを展開していく中で、「モバイル端末が最も重要なユーザーとのタッチポイントであることに疑いの余地はなく」重要だとし、携帯事業を死守し続けていく覚悟を示している。三木谷浩史会長兼社長が描く、全体の事業構造に携帯事業は不可欠だということだろう。 つながりにくいと批判される楽天モバイルの通信環境を改善する切り札としてauを運用するKDDIとの間で、自社でカバーできていないエリアでの「ローミング」契約を新たに締結した。また、6月1日から「Rakuten最強プラン」と銘打って、データ高速無制限で最大2980円という新プランを投入する。これが起死回生の一打になるかどうかが楽天にとっての正念場だろう』、「6月1日から「Rakuten最強プラン」と銘打って、データ高速無制限で最大2980円という新プランを投入」、「起死回生の一打になるかどうかが楽天にとっての正念場」、その通りだ。
・『「官製値下げ」は国民の利益に繋がるのか  政治家の介入による「官製値下げ」は国民受けが良いこともあって、繰り返されがちだ。6月からの電気料金の値上げに対しても河野太郎大臣と消費者庁が苦言を呈したことで、値上げ幅が圧縮された。電力料金も新規参入を促し競争状態を作ることで価格引き下げを進めていたはずが、いつの間にか「官製価格」の時代に舞い戻っている。一見、消費者のために動いているように見えて、結局は政府が競争をコントロールするようになり、市場は歪み、新規参入が阻害されることになる。 競争のルールが突然変わったことで悪戦苦闘を余儀なくされた楽天を見ていると、似たようなことが繰り返されかねない予感を覚える。岸田文雄内閣はガソリン価格の上昇を抑えるために巨額の補助金を出し、小麦粉の価格を引き下げ、電気やガスの価格もコントロールしようとしているからだ。果たして、それが長期的に見て国民の利益に繋がるのかどうか改めて考えてみる必要がありそうだ』、「いつの間にか「官製価格」の時代に舞い戻っている。一見、消費者のために動いているように見えて、結局は政府が競争をコントロールするようになり、市場は歪み、新規参入が阻害されることになる。 競争のルールが突然変わったことで悪戦苦闘を余儀なくされた楽天を見ていると、似たようなことが繰り返されかねない予感を覚える」、「岸田文雄内閣はガソリン価格の上昇を抑えるために巨額の補助金を出し、小麦粉の価格を引き下げ、電気やガスの価格もコントロールしようとしているからだ。果たして、それが長期的に見て国民の利益に繋がるのかどうか改めて考えてみる必要がありそうだ」、その通りだ。

第三に、5月30日付けNewsweek日本版が掲載した経済評論家の加谷珪一氏による「「日本ネット企業の雄」だった楽天は、なぜここまで追い込まれた? 迫る「決断の日」」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/kaya/2023/05/post-236_1.php
・『<かつては極めて良好な財務体質を誇り、市場の期待も高かった楽天だが、「最後の軍資金」で立ち直れるかどうかの瀬戸際に立たされている> 楽天が約3000億円の公募増資に踏み切った。同社は携帯電話事業の不振で4期連続の最終赤字を計上しており、財務が急激に悪化している。資金を捻出するため楽天銀行を上場させたものの、親子上場に当たることから、市場の評判はすこぶる良くない。 今回の増資でも携帯電話事業が軌道に乗らなかった場合、同社は重大な決断を迫られることになるだろう。 楽天は、日本のネット企業の雄と言われ、2000年に上場(店頭公開)を果たした際には、当時としては過去最高額の資金を調達している。財務体質も極めて良好で、上場直後の00年12月期における自己資本比率は何と95.2%もあった。 ネットバブルの崩壊によって株価は一時、下落したものの、その後は順調に時価総額を増やし、15年には株価が2400円目前まで上昇。豊富な資金を背景に次々と諸外国のネット企業を買収し、市場の期待は高まったが、ここが成長のピークとなった。 相次ぐ買収がうまく収益に結び付かず、17年12月、同社は携帯電話事業への参入を決断した。これまで同社にはネット企業として高い成長期待が寄せられていたが、携帯電話は巨額の設備投資を必要とする典型的なオールド・ビジネスである。 日本の携帯電話市場は人口減少から縮小が予想されており、しかもNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社による寡占状態が続く。経営学的に見て新規参入が困難であることは明らかだ』、「楽天グループ」の株価は足元552円と、ピークの「2400円目前」の約1/4となった。「上場直後の00年12月期における自己資本比率は何と95.2%もあった」、22年12月期は3.98%だ。
・『社員の50億円横領事件も  同社トップの三木谷浩史氏は、日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)出身で、ハーバード大学経営大学院でMBA(経営学修士)を取得した人物であり、この状況を理解できないはずがない。それにもかかわらず携帯電話事業への参入を決めたことから、市場関係者は「楽天はよほど追い込まれている」と判断せざるを得なかった。 実際、携帯電話事業は先行投資ばかりがかさみ、軌道に乗っていない。他事業の黒字を携帯電話事業が食いつぶす状況が続く。基地局の設置を急ぐあまり社内管理体制も追い付いておらず、グループ会社の社員が50億円もの金額を横領するという刑事事件まで発生した。株価もピーク時と比較すると4分の1まで下落している。 日本では同社について、米アマゾンや中国のアリババなどに対抗できるネット企業として高く評価する向きがある一方、同社はテクノロジー企業ではなく、アマゾンやアリババと同じ土俵では戦えないとする冷めた見方も多かった。 実際、アマゾンやアリババが高度な技術力を駆使して次々と革新的なサービスを展開するなか、楽天は出店者から出店料を徴収する事業形態から脱却できず、高度な物流網の構築やAI(人工知能)を使った販促システム、大規模なクラウド・サービスのいずれも実現していない。 直近の決算では、約20兆円の総資産に対して自己資本はわずか8700億円と4%程度にまで減少しており、財務的には危険水域に近づきつつある。楽天銀行の上場と公募増資で得た約4000億円はいわば最後の軍資金であり、これで携帯事業黒字化のメドが立たなかった場合、同社の選択肢は限られてくる。 ハイテク企業と似て非なる存在だった同社の姿は、IT後進国となった日本そのものといえるかもしれない』、「社員の50億円横領事件」は「同社トップの三木谷浩史氏」の力量の限界を示している。「日本では同社について、米アマゾンや中国のアリババなどに対抗できるネット企業として高く評価する向きがある一方、同社はテクノロジー企業ではなく、アマゾンやアリババと同じ土俵では戦えないとする冷めた見方も多かった。 実際、アマゾンやアリババが高度な技術力を駆使して次々と革新的なサービスを展開するなか、楽天は出店者から出店料を徴収する事業形態から脱却できず、高度な物流網の構築やAI(人工知能)を使った販促システム、大規模なクラウド・サービスのいずれも実現していない」、「財務的には危険水域に近づきつつある。楽天銀行の上場と公募増資で得た約4000億円はいわば最後の軍資金であり、これで携帯事業黒字化のメドが立たなかった場合、同社の選択肢は限られてくる。 ハイテク企業と似て非なる存在だった同社の姿は、IT後進国となった日本そのものといえるかもしれない」、同感である。 
タグ:・サービスのいずれも実現していない」、「財務的には危険水域に近づきつつある。楽天銀行の上場と公募増資で得た約4000億円はいわば最後の軍資金であり、これで携帯事業黒字化のメドが立たなかった場合、同社の選択肢は限られてくる。 ハイテク企業と似て非なる存在だった同社の姿は、IT後進国となった日本そのものといえるかもしれない」、同感である。 「社員の50億円横領事件」は「同社トップの三木谷浩史氏」の力量の限界を示している。「日本では同社について、米アマゾンや中国のアリババなどに対抗できるネット企業として高く評価する向きがある一方、同社はテクノロジー企業ではなく、アマゾンやアリババと同じ土俵では戦えないとする冷めた見方も多かった。 実際、アマゾンやアリババが高度な技術力を駆使して次々と革新的なサービスを展開するなか、楽天は出店者から出店料を徴収する事業形態から脱却できず、高度な物流網の構築やAI(人工知能)を使った販促システム、大規模なクラウド 「楽天グループ」の株価は足元552円と、ピークの「2400円目前」の約1/4となった。「上場直後の00年12月期における自己資本比率は何と95.2%もあった」、22年12月期は3.98%だ。 加谷珪一氏による「「日本ネット企業の雄」だった楽天は、なぜここまで追い込まれた? 迫る「決断の日」」 Newsweek日本版 「岸田文雄内閣はガソリン価格の上昇を抑えるために巨額の補助金を出し、小麦粉の価格を引き下げ、電気やガスの価格もコントロールしようとしているからだ。果たして、それが長期的に見て国民の利益に繋がるのかどうか改めて考えてみる必要がありそうだ」、その通りだ。 「いつの間にか「官製価格」の時代に舞い戻っている。一見、消費者のために動いているように見えて、結局は政府が競争をコントロールするようになり、市場は歪み、新規参入が阻害されることになる。 競争のルールが突然変わったことで悪戦苦闘を余儀なくされた楽天を見ていると、似たようなことが繰り返されかねない予感を覚える」、 磯山 友幸氏による「「楽天にとって不運だったのは菅首相の誕生」楽天モバイルが苦戦を強いられている"本当の原因" 「官製値下げ」は長期的に見て国民の利益になっているのか」 PRESIDENT ONLINE 「長らくプラチナバンドの割り当てを求めてきた経緯があり、同社の想定では早ければ今秋にも獲得できる見通しという。ただし、競合する既存キャリアの意向なども加味する必要があり、その行方はまだ流動的だ。 仮に楽天の新プランへのユーザー流出が起きれば、競合各社が何かしらの対抗策を打ってくる可能性もある」、「プラチナバンドの割り当て」が当面の注目点だ。 「KDDIのローミング」の再拡大で、「2023年の基地局設備投資額を1000億円減と当初計画から3割減らすほか、今後3年間で3000億円の設備投資削減を見込む」、「楽天の自社回線による人口カバー率は・・・新契約によって一気に99.9%と、大手3キャリア並みに広がることになる」、なるほど。 「6月1日から「Rakuten最強プラン」と銘打って、データ高速無制限で最大2980円という新プランを投入」、「起死回生の一打になるかどうかが楽天にとっての正念場」、その通りだ。 「契約回線数」はかろじて下げ止まったが、「事業単体での営業黒字化には」程遠いようだ。 「もともと、ドコモ、au、ソフトバンクの3社寡占で、楽天が新規参入する余地などなかったのではないか、と見られがちだ・・・楽天は一から自前で始めたわけで、そもそも事業として自立するのは無理なのではないか、というわけだ」、なるほど。 「楽天の株価は5月12日の707円から5月18日には606円にまで下落、22日は613円で引けたものの、取引時間中には602円の安値を付けた。 それほど投資家に動揺を与えながらも大型の増資に踏み切らざるを得ないところに、楽天の苦しさが滲み出ている。なりふり構わぬと言ったところだが・・・」、なるほど。 「楽天グループの連結最終損益は、携帯電話サービスを始めた2019年12月期から4期連続で赤字が続いている。2022年12月期は3759億円と最大の赤字を計上した。2023年12月期に入っても赤字が減る気配はない」、「もともと、ドコモ、au、ソフトバンクの3社寡占で、楽天が新規参入する余地などなかったのではないか、と見られがちだ」、なるほど。 「つい1カ月前にも」、「子会社の楽天銀行を東証のプライム市場に上場、保有株の一部を売却して717億円を調達」、今回は「公募増資と第三者割当増資で最大3300億円の資金を調達」、「投資家に動揺を与えながらも大型の増資に踏み切らざるを得ないところに、楽天の苦しさが滲み出ている」、その通りだ。 「モバイル事業の契約数の伸び悩み」、「黒字化」の「目標を断念」とは深刻だ。 「最大3300億円の資金を調達」というのでは、「株式の大幅な希薄化に対する懸念」から、「株価は2割近く下落」したようだ。 東洋経済オンライン「楽天、「3300億円増資」でも続くモバイルの綱渡り 今期黒字化は早々に断念、当面はKDDIの助けも」 (その10)(楽天 「3300億円増資」でも続くモバイルの綱渡り 今期黒字化は早々に断念 当面はKDDIの助けも、「楽天にとって不運だったのは菅首相の誕生」楽天モバイルが苦戦を強いられている"本当の原因" 「官製値下げ」は長期的に見て国民の利益になっているのか、「日本ネット企業の雄」だった楽天は なぜここまで追い込まれた? 迫る「決断の日」) 携帯・スマホ
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災害(その14)(「成城、田園調布、自由が丘まで」高級住宅街が次々と壊滅…?最新理論が警告する東京「大地震で消滅する町」マップ、「世田谷、目黒、杉並区も危ない!」最新指標が警告する「東京の住みたい街ランキング上位」でも危険な街の名前、「史上最大の南海トラフ地震・宝永地震」と「富士山の宝永大噴火」の発生はわずか49日差だった…そして今観測され始めたヤバすぎる「富士山大噴火の予兆」、「明日来てもおかしくない大災厄」《南海トラフ地震と富士山大噴火のダブルパンチ》の被害規模がヤバすぎる…「想定死者数34万人 30 [社会]

災害については、本年3月27日に取上げた。今日は、(その14)(「成城、田園調布、自由が丘まで」高級住宅街が次々と壊滅…?最新理論が警告する東京「大地震で消滅する町」マップ、「世田谷、目黒、杉並区も危ない!」最新指標が警告する「東京の住みたい街ランキング上位」でも危険な街の名前、「史上最大の南海トラフ地震・宝永地震」と「富士山の宝永大噴火」の発生はわずか49日差だった…そして今観測され始めたヤバすぎる「富士山大噴火の予兆」、「明日来てもおかしくない大災厄」《南海トラフ地震と富士山大噴火のダブルパンチ》の被害規模がヤバすぎる…「想定死者数34万人 30mの津波 長期大規模停電…」)である。

先ずは、5月6日付け現代ビジネス「「成城、田園調布、自由が丘まで」高級住宅街が次々と壊滅…?最新理論が警告する東京「大地震で消滅する町」マップ」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/109799?imp=0
・『「東京都を襲ひて一瞬の間に之を粉砕し尽したり」。100年前の未曽有の地震を、当時の新聞はこう報じた。来る天災に備え、少しでも生き残る確率を上げたい―東京に安心できる場所はあるのか。 ▽住んでいる町のリスクを知ろう(1923年9月1日11時58分、東京を壊滅的な状況に追い込んだ関東大震災から今年で100年の節目を迎える。そして今、我々は再び大地震の危機に頻している。「今後30年以内の発生確率が70%」といわれる首都直下地震だ。 '22年に東京都が10年ぶりに見直した被害想定によれば、起こりうる最大クラスの「都心南部直下地震」(M7.3)では、約20万棟の建物が全壊・全焼、約6100人が死亡すると試算されている。 もちろん、この数字はあくまで想定値にすぎない。東京での大地震という「国難」の前では、より多くの人命が失われる可能性もある。 まずは「自分の住んでいる町はどれだけ危険なのか?」を知ることが、準備となる。そこで今回、だいち災害リスク研究所の所長であり、地盤災害のプロフェッショナルである横山芳春氏に、地震の最新理論に基づき、東京の中で被害が大きくなる可能性が高い町を分析してもらった。 「よく参考にされるのが、都が公表している『地震に関する地域危険度測定調査』です。これは、大地震が発生した際のリスクに関して、5年に一度、行政上の区画である町丁目をすべて調べ上げ、危険度の順位付けをしたものです」』、『地震に関する地域危険度測定調査』は確かに見やすい。https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/bosai/chousa_6/home.htm
・『「山の手」も危ない  実際に'22年に公表された、最新の「地震に関する地域危険度測定調査」を調べてみた。危険度が高い上位5つの町丁目は以下の通りだ。 1位/荒川区荒川6丁目 2位/荒川区町屋4丁目 3位/足立区柳原2丁目 4位/足立区千住柳町 5位/墨田区京島2丁目 こうして見ると、荒川区、足立区、墨田区と、「下町」エリアが上位に来ていると分かる。危険とされている理由のひとつは、その軟弱な地盤だ。 「東京都は東西に長く、西ほど標高が高い地形となっています。詳しく見ると、西から関東山地、多摩丘陵、武蔵野台地、東京低地と分類できます。 山地は数百万年以上、丘陵地は100万年などと長い時間をかけて自然の地層の重みで締め固められているため、硬く揺れにくいことが多い。しかし、いわゆる下町は、東京湾が内陸に入り組んでいた頃の泥と砂の堆積物でできた低地に属します。地層の歴史は長くても5000年ほどと浅く、緩い地盤で揺れやすいわけです」 下町は危ない。これは紛れもない事実のようだ。では、武蔵野台地の東端にあたる「山の手」はどうだろうか。 「高台は地盤が強い」というのは定説であり、住宅を買う上での目安とする人も少なくないはずだ。だが、横山氏の解説では、そんな常識が覆る。 「確かに数万年以上前に作られた武蔵野台地は、概ね固い地盤です。しかし、ここ最近の研究で、台地の地盤の地下に、厚い泥の層からなる緩い地盤がある場所がいくつも見つかっています。こうした場所は低地と同等か、それ以上に揺れやすく、地震に弱いのです」』、「台地の地盤の地下に、厚い泥の層からなる緩い地盤がある場所がいくつも見つかっています。こうした場所は低地と同等か、それ以上に揺れやすく、地震に弱いのです」、そんな場所があるとは初めて知った。
・『高級住宅地が次々全滅  では、そんな「隠れ揺れスポット」ともいえる町を探すにはどうすればいいのか。横山氏が注目するのが「表層地盤増幅率」という数値だ。 「表層地盤増幅率の数値が大きい場所ほど、地盤は弱く、地震の揺れも大きくなります。例えば増幅率1.0の町と2.0の町とでは、揺れ幅の大きさは2倍になり、震度の階級も1~2級変わるのです。目安としては1.6~1.8程度で注意が必要となり、2.0以上になると特に揺れやすい危険な場所と考えたほうがいいでしょう」 各地の表層地盤増幅率は、国立研究開発法人防災科学技術研究所が運営するウェブサイト「地震ハザードステーション」内にあるJ-SHIS Map(https://www.j-shis.bosai.go.jp/map/)で確認できる。それをまとめたハザードマップが上の通りである。さっそく東京の町々を見ていこう。 先述の通り、都の調査で危険度が判明した下町エリアは総じて「地盤が弱い危険地域」と再確認できた。東京の「住みたい街ランキング」上位に名を連ねる北千住が2.66、赤羽が2.09と、いずれも2以上を示した。 「下町と同じく、2以上の増幅率が密集しているのが湾岸エリアです。2.31の豊洲など、埋め立て地は基本的に地盤が非常に弱い場所が多いと考えるべきです」 後編記事『「世田谷、目黒、杉並区も危ない…」最新指標《表層地盤増幅率》が警告する「東京の住みたい街ランキング上位」で危険な街はどこなのか』に続く』、「後編記事」を見てみよう。

次に、5月6日付け現代ビジネス「「世田谷、目黒、杉並区も危ない!」最新指標が警告する「東京の住みたい街ランキング上位」でも危険な街の名前」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/109802?imp=0
・『「東京都を襲ひて一瞬の間に之を粉砕し尽したり」。100年前の未曽有の地震を、当時の新聞はこう報じた。来る天災に備え、少しでも生き残る確率を上げたい―東京に安心できる場所はあるのか。 前編記事『「成城、田園調布、自由が丘まで…」高級住宅街が次々と壊滅…?【関東大震災から100年目の検証】最新理論が警告する東京「大地震で消滅する町」マップ』から続く』、興味深そうだ。
・『人気住宅地も危険  新興住宅地として栄える湾岸エリアに対して、昔から高級住宅地が集まっている世田谷区はどうか。同区は、武蔵野台地の南縁部に位置し、地理的には、ほぼ全域が高台にあるといえる。だが、実は多くの隠れ揺れスポットが眠るエリアだ。 「地盤の面で安心といわれてきた世田谷区の高級住宅街ですが、成城が1.80、田園調布が1.93と、表層地盤増幅率が高い町が潜んでいます。逆に、区の南側、多摩川に面した氾濫平野で知られる二子玉川は1.58ほど。砂利が運ばれる川沿いのほうが、かえって地盤が強い傾向にあることが分かっています」 「住みたい街ランキング」第1位に輝く、若者に人気の町、三軒茶屋も1.72と、注意が必要。また、区の中でも商店街が賑わいを見せるなど、比較的庶民的といわれている千歳烏山に至っては2.04となっている。 世田谷区と並び、落ち着きのある住宅地が多い目黒区の場合、代表的な中目黒は1.52と、比較的地盤が固くなっている。だが、そこから南西に進んでいくと、危険度は一気に跳ね上がる。 「要注意なのは、区内でも人気の高い自由が丘で、増幅率は1.95もあります。この付近は、台地が河川によって削られた谷底低地であり、特に自由が丘は古地図で調べると、『西谷畑』という名前の田んぼだったと分かります。つまり、地盤の下に多くの水を含んでおり、大変緩いのです」 目黒区は今でこそほとんどが暗渠化されているが、かつては谷あいにいくつもの川が流れており、多くの谷底低地が生まれた。閑静な住宅地である碑文谷、武蔵小山の増幅率が、2.37、2.23と、きわめて高いのがその証左だ。 同じ谷底低地では、中央線沿線の町々も危ない。三軒茶屋に次ぐ人気を誇る高円寺の1.78を始め、荻窪は2.01にも達する。 「武蔵野台地の中央部に位置する杉並区は、高円寺~荻窪間のエリアがちょうど北の妙正寺川、南の善福寺川に挟まれており、その分、谷底低地も散在しています。また、このエリアは、古い木造住宅が密集しています。地震による火災時に燃え広がる危険度が高い点から、より注意が必要です」』、「「地盤の面で安心といわれてきた世田谷区の高級住宅街ですが、成城が1.80、田園調布が1.93と、表層地盤増幅率が高い町が潜んでいます。逆に、区の南側、多摩川に面した氾濫平野で知られる二子玉川は1.58ほど。砂利が運ばれる川沿いのほうが、かえって地盤が強い傾向にあることが分かっています」、「目黒区の場合、代表的な中目黒は1.52と、比較的地盤が固くなっている。だが、そこから南西に進んでいくと、危険度は一気に跳ね上がる。 「要注意なのは、区内でも人気の高い自由が丘で、増幅率は1.95もあります。この付近は、台地が河川によって削られた谷底低地であり、特に自由が丘は古地図で調べると、『西谷畑』という名前の田んぼだったと分かります。つまり、地盤の下に多くの水を含んでおり、大変緩いのです」 目黒区は今でこそほとんどが暗渠化されているが、かつては谷あいにいくつもの川が流れており、多くの谷底低地が生まれた。閑静な住宅地である碑文谷、武蔵小山の増幅率が、2.37、2.23と、きわめて高いのがその証左だ」、かなり細かくみていく必要がありそうだ。
・『皇居周辺なら安全か?  ここまで、大地震で消滅する危険性のある町々を見てきた。では逆に、首都直下クラスの地震が起きても安全といえる場所はあるだろうか。 「揺れやすさの観点では、最も安全なのは千代田区の中心部でしょうか。皇居は1.20、永田町の国会議事堂は1.16と、地盤の強さが見て取れます」 このエリアはかつて江戸城があった。江戸城は防衛上の理由から台地に建てられたのは当然のこと、当時すでに地盤固めの作業も施されていたという。そのため、江戸城付近とその西側にある町は今でも都内屈指の地震に強い傾向にある。 だが、例外がないわけではない。 「江戸城周りの町でも、揺れやすい場所はあります。関東大震災の震度を評価した研究では、皇居は震度5弱の揺れと判定されていますが、すぐ北に位置する竹橋は震度7と判定されています。現在も、増幅率は1.91で、近隣とは一線を画す大きさであり、やはり細かく見ていく必要があります」 かつて大名屋敷があった文京区小石川。その中でも春日駅付近のエリアはタワマン建設が進んでいるが、増幅率は1.93を示す危険な場所だ。ここは古くから台地より水が流れ込む、水はけの悪い場所で知られており、その溜まり水が地盤の弱さへとつながっている』、「最も安全なのは千代田区の中心部でしょうか。皇居は1.20、永田町の国会議事堂は1.16と、地盤の強さが見て取れます」、「関東大震災の震度を評価した研究では、皇居は震度5弱の揺れと判定されていますが、すぐ北に位置する竹橋は震度7と判定されています。現在も、増幅率は1.91で、近隣とは一線を画す大きさであり、やはり細かく見ていく必要があります」、なるほど。
・『家一軒ごとに地盤は異なる  また、今年7月に虎ノ門ヒルズ ステーションタワーが竣工を控えるなど再開発が進む港区虎ノ門も2.06と高い。ここにはかつて江戸城の外堀と溜池があったことで知られる。 J-SHIS Mapを使えば、誰でも簡単に250m四方ごとの表層地盤増幅率を確認し、自分の住んでいる町が地震で揺れやすい地域かどうか分かる。その上で、横山氏は「さらに地震対策をするなら」と前置きして、こう語る。 「私は'16年の熊本地震などの被災地を実地調査してきましたが、わずか数軒隣り、道路一本隔てただけでも、家屋の被害状況が大きく違う様子を目にしてきました。家一軒ごとに地盤の状況は異なり、揺れやすさも変わることを知ってほしい。 今は表層地盤増幅率を宅地ごとに計測できる『微動探査』という調査技術が進歩し、民間でも調べてくれる会社があります。もし緩い地盤と判明したら、家の耐震性を強化するなどの対策をとりましょう」 自分の住まいが置かれている状況を今一度確認し、「その日」に備えたい』、「熊本地震などの被災地を実地調査してきましたが、わずか数軒隣り、道路一本隔てただけでも、家屋の被害状況が大きく違う様子を目にしてきました。家一軒ごとに地盤の状況は異なり、揺れやすさも変わることを知ってほしい」、「家一軒ごとに地盤の状況は異なり、揺れやすさも変わる」、きめ細かくみていく必要がありそうだ。

第三に、6月6日付け現代ビジネス「「史上最大の南海トラフ地震・宝永地震」と「富士山の宝永大噴火」の発生はわずか49日差だった…そして今観測され始めたヤバすぎる「富士山大噴火の予兆」」を紹介しよう。
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:長きにわたり眠りについていた山がついに目を覚ます。様々な事象で無理やり叩き起こされ、ストレスは最高潮。溜まりに溜まったエネルギーが噴出し、地上に降り注げば、人間などひとたまりもない』、「富士山大噴火」とは不気味だ。
・『巨大地震の前触れか 「また地震か……」  日本中の誰もがそう感じたに違いない。5月22日、伊豆諸島の新島・神津島近海でM5.3、最大震度5弱の地震が発生した。 5月に入り、震度5以上の地震が立て続けに発生しているのは周知の通りだ。GW終盤の5日に発生した石川県能登地方の地震を皮切りに、11日に千葉県南部、13日には鹿児島県のトカラ列島近海でも観測されている。 ここへきて不気味な活動を見せる日本列島―、危惧されるのは、今後30年以内に70~80%の確率で発生するとされる「南海トラフ地震」への影響だ。武蔵野学院大学特任教授で地震学者の島村英紀氏はこう語る。 「南海トラフ地震のような海溝型の巨大地震の前には、内陸直下型の地震が活発化する例が、過去いくつもあります。昭和の東南海地震('44年)、南海地震('46年)の前には、1000人以上の死者を出した鳥取地震('43年)がありました。今、頻発している内陸直下型地震が南海トラフ地震の『前兆』である可能性は十分にあります」 そうなると気がかりなのが、南海トラフ地震発生のXデー。専門家の間で警戒されているのが「2035年」だ。これは文部科学省の特別機関・地震調査研究推進本部も利用する「高知県室戸岬を使った時間予測」に基づいている。 室戸岬近くの室津港は南海トラフの巨大地震の前に沈降し、後に隆起するといった関係性があると見られている。これまでの発生サイクルは90~265年であり、前回の南海地震に最短の90年を当てはめると、2035年頃になる、というわけだ』、「「南海トラフ地震のような海溝型の巨大地震の前には、内陸直下型の地震が活発化する例が、過去いくつもあります・・・今、頻発している内陸直下型地震が南海トラフ地震の『前兆』である可能性は十分にあります」 そうなると気がかりなのが、南海トラフ地震発生のXデー。専門家の間で警戒されているのが「2035年」だ。これは文部科学省の特別機関・地震調査研究推進本部も利用する「高知県室戸岬を使った時間予測」に基づいている」、「2035年」とはもうじきだ。
・『南海トラフ地震で富士山噴火の可能性  しかし、島村氏はこの予測に疑問を呈す。 「予測の根拠とされた室津港ですが、実は江戸期に工事されており、地盤隆起のデータの信憑性が揺らいでいます。私は想定より早く、2020年代中に南海トラフ地震が起こるかもしれないと考えています」 南海トラフ地震のタイムリミットは迫る。だが、怖いのは地震だけだろうか。本当に恐ろしいのは、その先に待つ”大災厄”だ。島村氏が続ける。 「地震と連動して起きる富士山噴火を無視することはできません。富士山が最後に大噴火したのは、1707年のことです。この宝永大噴火の49日前に、南海トラフ史上最大の地震と呼ばれる宝永地震(推定M8.6)が起きています。次の南海トラフ地震で再び富士山噴火が誘発される可能性は非常に高い」 歴史は繰り返す。事実、富士山がいつ噴火してもおかしくないといえる「6つの前兆現象」が存在する。さっそく見ていこう』、「次の南海トラフ地震で再び富士山噴火が誘発される可能性は非常に高い」、大変だ。
・『今すぐ噴火しても不思議ではない  現時点で、富士山は約300年もの間、火山活動を休んでいる状態だ。しかし、油断はできない。というのも、富士山は歴史的に見て頻繁に噴火してきた活火山だからだ。 山梨県富士山科学研究所富士山火山防災研究センター長の吉本充宏氏が語る。 「特に大規模とされた『三大噴火』として、宝永噴火以外に延暦噴火(800~802年)と貞観噴火(864~866年)があります。間隔がわずか約60年しかないように、西暦1000年くらいまで富士山は頻繁に噴火する活火山だったのです」 富士山火山防災対策協議会の資料によれば、5600年前まで遡って富士山の地層を調査したところ、180層の堆積物が確認されたことから、平均して約30年に一度の頻度で噴火してきたという見解もある。歴史を鑑みれば、今すぐに噴火しても不思議ではない。 富士山の地下で不気味な動きが起こっている。火山活動が活発化すると多く発生することから、噴火の前触れといわれる「深部低周波地震」の急増だ。吉本氏が続ける。 「火山で起こる深部低周波地震とは、火山の非常に深い部分、マグマ溜まりの上部で起こる、人体では感知できないほどの小さな地震を指します。これは休眠中だったマグマの活動が始まった時に起きますが、富士山でも'00年秋頃から急増し、今も常時起こっている状態です」 気象庁による富士山の観測データを見ても明らかだ。'21年に88回だった深部低周波地震は、'22年に141回と、実に1.5倍以上になっている。 「週刊現代」2023年6月3・10日号より 後編記事『「明日来てもおかしくない大災厄」《南海トラフ地震と富士山大噴火のダブルパンチ》の被害規模がヤバすぎる…「想定死者数34万人、30mの津波、溶岩流、長期大規模停電…」』に続く』、「平均して約30年に一度の頻度で噴火してきたという見解もある。歴史を鑑みれば、今すぐに噴火しても不思議ではない。 富士山の地下で不気味な動きが起こっている。火山活動が活発化すると多く発生することから、噴火の前触れといわれる「深部低周波地震」の急増だ。吉本氏が続ける・・・富士山でも'00年秋頃から急増し、今も常時起こっている状態です」 気象庁による富士山の観測データを見ても明らかだ。'21年に88回だった深部低周波地震は、'22年に141回と、実に1.5倍以上になっている」、「今すぐに噴火しても不思議ではない」とは不気味だ。

第四に、6月6日付け現代ビジネス「「明日来てもおかしくない大災厄」《南海トラフ地震と富士山大噴火のダブルパンチ》の被害規模がヤバすぎる…「想定死者数34万人、30mの津波、長期大規模停電…」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/110962?imp=0
・『長きにわたり眠りについていた山がついに目を覚ます。様々な事象で無理やり叩き起こされ、ストレスは最高潮。溜まりに溜まったエネルギーが噴出し、地上に降り注げば、人間などひとたまりもない。 前編記事『「史上最大の南海トラフ地震・宝永地震」と「富士山の宝永大噴火」の発生はわずか49日差だった…そして今観測され始めたヤバすぎる「富士山大噴火の予兆」』より続く』、興味深そうだ。
・『地下はマグマでパンパン  マグマの動きが活発になれば、やがて地表にも影響が現れる。前出の島村氏は富士山近辺で地殻変動が起きていると指摘する。 「異常が起き始めたのは数年前からです。河口湖の水が減少したり、静岡県富士宮市で地下水が溢れてきたりといった報告が出ています。2年前には富士山の登山道の一つである滝沢林道に割れ目が走る現象も起きています」 すでに地下はマグマでパンパンの状態。そこに追い打ちをかけるように地震のエネルギーによる圧力がかかれば、いよいよ噴火は秒読みとなる。 実は'11年に一度、「富士山噴火は回避できない」といわれるほどの危険水域に至ったことがある。東日本大震災の4日後、静岡県東部でM6.4の大地震が起きた時だ。富士宮市では震度6強が観測されたが、この時、富士山直下の断層が約1mも上下に動いたことが観測された。 「断層が大きく動いたことで、富士山のマグマ溜まりの天井部分が割れたと見られています。そのためマグマがこの割れ目から噴出すると予想されました。奇跡的に噴火こそ免れましたが、10年以上経った今も、東日本大震災による圧力がかかっている状況には変わりありません」(島村氏)』、「すでに地下はマグマでパンパンの状態。そこに追い打ちをかけるように地震のエネルギーによる圧力がかかれば、いよいよ噴火は秒読みとなる」、「東日本大震災の4日後、静岡県東部でM6.4の大地震が起きた時だ。富士宮市では震度6強が観測されたが、この時、富士山直下の断層が約1mも上下に動いたことが観測された。 「断層が大きく動いたことで、富士山のマグマ溜まりの天井部分が割れたと見られています。そのためマグマがこの割れ目から噴出すると予想されました。奇跡的に噴火こそ免れましたが、10年以上経った今も、東日本大震災による圧力がかかっている状況には変わりありません」、微妙なバランス下にあるようだ。
・『連動する2つの地震  そして今年5月に入り、前述した群発地震は、南海トラフだけでなく、富士山にも影響を及ぼしている。それが新島・神津島の地震との連動だ。 富士山と新島・神津島は、海を隔てて直線距離にして約100kmしか離れていない。両者は共に「富士火山帯」に属しているのだ。 「富士火山帯は伊豆諸島から箱根、そして富士山にまで及びます。同じ火山帯の線上にある場所は連動して、火山性地震や噴火を引き起こしやすい。当然、富士山噴火との関連も疑われます」(島村氏) 富士山との連動が予期される直近の「異変」は日本だけにとどまらない。5月19日に起きた、南太平洋にあるニューカレドニアのローヤリティー諸島付近での巨大地震(M7.7)がそうだ。 なぜ連動するのか。それは震源であるローヤリティー諸島は、日本列島も属する「環太平洋造山帯」に含まれているからだ。この環太平洋造山帯、その名の通り、太平洋を囲むように形成されているが、その特徴に造山帯内で大地震と大規模な火山噴火が連動して起きるというものがある。そのため、造山帯は別名「炎の輪」とも呼ばれている。 '16年の熊本地震が良い例だ。本震が発生した同年4月16日、エクアドルでもM7・8の大地震が発生した。すると翌日、同じ環太平洋造山帯上にあるアメリカ・クリーブランド山、メキシコ・コリマ山、チリ・ビジャリカ山が3つ同時に噴火したのだ。 ローヤリティー諸島の地震が引き金になって富士山に”着火”する。その可能性も否定できない』、「富士山との連動が予期される直近の「異変」は日本だけにとどまらない。5月19日に起きた、南太平洋にあるニューカレドニアのローヤリティー諸島付近での巨大地震(M7.7)がそうだ。 なぜ連動するのか。それは震源であるローヤリティー諸島は、日本列島も属する「環太平洋造山帯」に含まれているからだ」、「ローヤリティー諸島の地震が引き金になって富士山に”着火”する。その可能性も否定できない」、そんなに遠くの火山が連動しているとは、初めて知った。
・『富士山噴火が及ぼす甚大な影響  では、南海トラフ地震などと連動する形で富士山が噴火するという最悪なケースが起きた場合、どれほどの被害に見舞われるのか。それを示したのが左頁の図だ。 プレート境界を震源にM9級の超巨大地震が発生。愛知県名古屋市、静岡県浜松市、四国全域など153市町村を震度7の揺れが襲う。その後、30m超の大津波が九州から関東の沿岸部に到達する。この間、最短で3分だ。さらに本震の1~2ヵ月以内に、宝永噴火の時と同じように、富士山が噴火する。まず危険なのは溶岩流だ。前出の吉本氏が解説する。 「火口のできる場所によっては、富士山麓の市街地に2時間で到達します。規模が大きくなると神奈川県にまで届く場合もあります。主要交通網にも届き、寸断を余儀なくされるでしょう」 周辺自治体だけでなく、遠く離れた首都圏にも影響が及ぶ。火山灰だ。吉本氏が続ける。 噴火の規模や風向きによって首都圏で数cmから10cmもの火山灰が積もる恐れがあります。何より心配なのが交通網への影響です。灰が道路に積もると車両の走行が困難になります。また、湿った灰が碍子(送電するのに必要な器具)に付着すると、絶縁破壊が起こり、大規模な停電を引き起こすことも考えられます」 停電によって、あらゆるコンピュータが機能不全に陥れば、首都機能は麻痺。加えて舞い上がる火山灰が原因で気管支喘息や角膜剥離を引き起こす人も続出する。 政府の試算に基づけば、南海トラフ地震、富士山噴火による想定死者数の合算値は約34万人。その1人にならないためにも、と吉本氏はこう警告する。 「300年間噴火していない富士山ですが、実はその理由すら研究者の間でも分かっていません。それほど未知の火山であることを今一度、理解してもらいたいです」 明日、噴火してもおかしくない。それくらいの心構えが求められている』、「南海トラフ地震などと連動する形で富士山が噴火するという最悪なケースが起きた場合、どれほどの被害に見舞われるのか・・・プレート境界を震源にM9級の超巨大地震が発生。愛知県名古屋市、静岡県浜松市、四国全域など153市町村を震度7の揺れが襲う。その後、30m超の大津波が九州から関東の沿岸部に到達する。この間、最短で3分だ。さらに本震の1~2ヵ月以内に、宝永噴火の時と同じように、富士山が噴火する。まず危険なのは溶岩流だ・・・「火口のできる場所によっては、富士山麓の市街地に2時間で到達します。規模が大きくなると神奈川県にまで届く場合もあります。主要交通網にも届き、寸断を余儀なくされるでしょう」 周辺自治体だけでなく、遠く離れた首都圏にも影響が及ぶ。火山灰だ。吉本氏が続ける。 噴火の規模や風向きによって首都圏で数cmから10cmもの火山灰が積もる恐れがあります」、「湿った灰が碍子・・・に付着すると、絶縁破壊が起こり、大規模な停電を引き起こすことも考えられます」 停電によって、あらゆるコンピュータが機能不全に陥れば、首都機能は麻痺。加えて舞い上がる火山灰が原因で気管支喘息や角膜剥離を引き起こす人も続出する。 政府の試算に基づけば、南海トラフ地震、富士山噴火による想定死者数の合算値は約34万人」、「「300年間噴火していない富士山ですが、実はその理由すら研究者の間でも分かっていません。それほど未知の火山であることを今一度、理解してもらいたいです」、さらに私が最も懸念するのは、原発が火山灰で運転できなくなり、冷却不能に追い込まれ、福島原発と同様の事故を起こすことだ。原発を抱える中での、大地震、大噴火の影響は、被害をさらに深刻にさせる懸念が強い。 
タグ:「「南海トラフ地震のような海溝型の巨大地震の前には、内陸直下型の地震が活発化する例が、過去いくつもあります・・・今、頻発している内陸直下型地震が南海トラフ地震の『前兆』である可能性は十分にあります」 そうなると気がかりなのが、南海トラフ地震発生のXデー。専門家の間で警戒されているのが「2035年」だ。これは文部科学省の特別機関・地震調査研究推進本部も利用する「高知県室戸岬を使った時間予測」に基づいている」、「2035年」とはもうじきだ。 「富士山大噴火」とは不気味だ。 現代ビジネス「「史上最大の南海トラフ地震・宝永地震」と「富士山の宝永大噴火」の発生はわずか49日差だった…そして今観測され始めたヤバすぎる「富士山大噴火の予兆」」 「熊本地震などの被災地を実地調査してきましたが、わずか数軒隣り、道路一本隔てただけでも、家屋の被害状況が大きく違う様子を目にしてきました。家一軒ごとに地盤の状況は異なり、揺れやすさも変わることを知ってほしい」、「家一軒ごとに地盤の状況は異なり、揺れやすさも変わる」、きめ細かくみていく必要がありそうだ。 「最も安全なのは千代田区の中心部でしょうか。皇居は1.20、永田町の国会議事堂は1.16と、地盤の強さが見て取れます」、「関東大震災の震度を評価した研究では、皇居は震度5弱の揺れと判定されていますが、すぐ北に位置する竹橋は震度7と判定されています。現在も、増幅率は1.91で、近隣とは一線を画す大きさであり、やはり細かく見ていく必要があります」、なるほど。 (その14)(「成城、田園調布、自由が丘まで」高級住宅街が次々と壊滅…?最新理論が警告する東京「大地震で消滅する町」マップ、「世田谷、目黒、杉並区も危ない!」最新指標が警告する「東京の住みたい街ランキング上位」でも危険な街の名前、「史上最大の南海トラフ地震・宝永地震」と「富士山の宝永大噴火」の発生はわずか49日差だった…そして今観測され始めたヤバすぎる「富士山大噴火の予兆」、「明日来てもおかしくない大災厄」《南海トラフ地震と富士山大噴火のダブルパンチ》の被害規模がヤバすぎる…「想定死者数34万人 30 災害 政府の試算に基づけば、南海トラフ地震、富士山噴火による想定死者数の合算値は約34万人」、「「300年間噴火していない富士山ですが、実はその理由すら研究者の間でも分かっていません。それほど未知の火山であることを今一度、理解してもらいたいです」、さらに私が最も懸念するのは、原発が火山灰で運転できなくなり、冷却不能に追い込まれ、福島原発と同様の事故を起こすことだ。原発を抱える中での、大地震、大噴火の影響は、被害をさらに深刻にさせる懸念が強い。 奈川県にまで届く場合もあります。主要交通網にも届き、寸断を余儀なくされるでしょう」 周辺自治体だけでなく、遠く離れた首都圏にも影響が及ぶ。火山灰だ。吉本氏が続ける。 噴火の規模や風向きによって首都圏で数cmから10cmもの火山灰が積もる恐れがあります」、「湿った灰が碍子・・・に付着すると、絶縁破壊が起こり、大規模な停電を引き起こすことも考えられます」 停電によって、あらゆるコンピュータが機能不全に陥れば、首都機能は麻痺。加えて舞い上がる火山灰が原因で気管支喘息や角膜剥離を引き起こす人も続出する。 「南海トラフ地震などと連動する形で富士山が噴火するという最悪なケースが起きた場合、どれほどの被害に見舞われるのか・・・プレート境界を震源にM9級の超巨大地震が発生。愛知県名古屋市、静岡県浜松市、四国全域など153市町村を震度7の揺れが襲う。その後、30m超の大津波が九州から関東の沿岸部に到達する。この間、最短で3分だ。さらに本震の1~2ヵ月以内に、宝永噴火の時と同じように、富士山が噴火する。まず危険なのは溶岩流だ・・・「火口のできる場所によっては、富士山麓の市街地に2時間で到達します。規模が大きくなると神 「富士山との連動が予期される直近の「異変」は日本だけにとどまらない。5月19日に起きた、南太平洋にあるニューカレドニアのローヤリティー諸島付近での巨大地震(M7.7)がそうだ。 なぜ連動するのか。それは震源であるローヤリティー諸島は、日本列島も属する「環太平洋造山帯」に含まれているからだ」、「ローヤリティー諸島の地震が引き金になって富士山に”着火”する。その可能性も否定できない」、そんなに遠くの火山が連動しているとは、初めて知った。 「断層が大きく動いたことで、富士山のマグマ溜まりの天井部分が割れたと見られています。そのためマグマがこの割れ目から噴出すると予想されました。奇跡的に噴火こそ免れましたが、10年以上経った今も、東日本大震災による圧力がかかっている状況には変わりありません」、微妙なバランス下にあるようだ。 「すでに地下はマグマでパンパンの状態。そこに追い打ちをかけるように地震のエネルギーによる圧力がかかれば、いよいよ噴火は秒読みとなる」、「東日本大震災の4日後、静岡県東部でM6.4の大地震が起きた時だ。富士宮市では震度6強が観測されたが、この時、富士山直下の断層が約1mも上下に動いたことが観測された。 現代ビジネス「「明日来てもおかしくない大災厄」《南海トラフ地震と富士山大噴火のダブルパンチ》の被害規模がヤバすぎる…「想定死者数34万人、30mの津波、長期大規模停電…」」 気象庁による富士山の観測データを見ても明らかだ。'21年に88回だった深部低周波地震は、'22年に141回と、実に1.5倍以上になっている」、「今すぐに噴火しても不思議ではない」とは不気味だ。 「平均して約30年に一度の頻度で噴火してきたという見解もある。歴史を鑑みれば、今すぐに噴火しても不思議ではない。 富士山の地下で不気味な動きが起こっている。火山活動が活発化すると多く発生することから、噴火の前触れといわれる「深部低周波地震」の急増だ。吉本氏が続ける・・・富士山でも'00年秋頃から急増し、今も常時起こっている状態です」 「次の南海トラフ地震で再び富士山噴火が誘発される可能性は非常に高い」、大変だ。 うだ。 「要注意なのは、区内でも人気の高い自由が丘で、増幅率は1.95もあります。この付近は、台地が河川によって削られた谷底低地であり、特に自由が丘は古地図で調べると、『西谷畑』という名前の田んぼだったと分かります。つまり、地盤の下に多くの水を含んでおり、大変緩いのです」 目黒区は今でこそほとんどが暗渠化されているが、かつては谷あいにいくつもの川が流れており、多くの谷底低地が生まれた。閑静な住宅地である碑文谷、武蔵小山の増幅率が、2.37、2.23と、きわめて高いのがその証左だ」、かなり細かくみていく必要がありそ 「「地盤の面で安心といわれてきた世田谷区の高級住宅街ですが、成城が1.80、田園調布が1.93と、表層地盤増幅率が高い町が潜んでいます。逆に、区の南側、多摩川に面した氾濫平野で知られる二子玉川は1.58ほど。砂利が運ばれる川沿いのほうが、かえって地盤が強い傾向にあることが分かっています」、「目黒区の場合、代表的な中目黒は1.52と、比較的地盤が固くなっている。だが、そこから南西に進んでいくと、危険度は一気に跳ね上がる。 現代ビジネス「「世田谷、目黒、杉並区も危ない!」最新指標が警告する「東京の住みたい街ランキング上位」でも危険な街の名前」 「後編記事」を見てみよう。 「台地の地盤の地下に、厚い泥の層からなる緩い地盤がある場所がいくつも見つかっています。こうした場所は低地と同等か、それ以上に揺れやすく、地震に弱いのです」、そんな場所があるとは初めて知った。 『地震に関する地域危険度測定調査』は確かに見やすい。https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/bosai/chousa_6/home.htm 現代ビジネス「「成城、田園調布、自由が丘まで」高級住宅街が次々と壊滅…?最新理論が警告する東京「大地震で消滅する町」マップ」
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少子化(その4)(出生率低下は日本の「経済・労働力・社会保障」にどんな影響を与えるか、「少子化は最悪だ」という日本人は間違っている 日本の「人口問題の本質」とは一体何なのか)

少子化については、本年3月14日に取上げた。今日は、(その4)(出生率低下は日本の「経済・労働力・社会保障」にどんな影響を与えるか、「少子化は最悪だ」という日本人は間違っている 日本の「人口問題の本質」とは一体何なのか)である。

先ずは、本年3月13日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏による「出生率低下は日本の「経済・労働力・社会保障」にどんな影響を与えるか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/318575
・『岸田文雄首相が「異次元の少子化対策」に着手するなど、出生率の低下は日本の喫緊の課題とされています。最近の出生率の低下は、高齢化社会や労働力人口など、日本の将来にどのような影響を与えるのでしょうか。一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏の著書『2040年の日本』(幻冬舎新書)より抜粋して紹介します』、興味深そうだ。
・『日本は世界で最も高齢化が進んだ国  労働力の推移は、長期的成長率に大きな影響を与える。そして、労働力の状況を決めるのは、人口動態の変化だ。そこで、本節では、人口構造がどのように変わるかを見ることとしよう。 65歳以上人口が総人口に占める比率を「高齢化率」と呼ぶことにしよう。日本の2020年の値は、28.7%だ。 他の国を見ると、アメリカ16.6%、イギリス18.7%、ドイツ21.7%、フランス24.1%、韓国15.8%などとなっている(総務省統計局『世界の統計2022』による)。日本は、これらの国に比べて、飛び抜けて高い。 新興国や開発途上国ではこの値は低いので、日本は世界で最も高齢化が進んだ国だ。日本経済から活力が奪われたとしばしば言われるが、その大きな原因が人口高齢化にあることは、間違いない』、「高齢化率」で「日本の2020年の値は、28.7%だ」、「フランス24.1%」、「ドイツ21.7%」、「イギリス18.7%」、「アメリカ16.6%」、「韓国15.8%」、確かに「日本」は高い。
・『かつては英米のほうが高齢化国  日本は、昔から高齢化率が高かったわけではない。図表1-4に示すように、1980年代頃までは、イギリスやアメリカのほうが高かった。 (図表1-4 高齢化率の推移 はリンク先参照) とくに、イギリスが高かった。観光地に行くと、老人が多いのが印象的だった。それに対して、日本の観光地には若い人たちが多い。大きな違いだと思った。 当時は、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と賞賛されていた時代だ。そしてイギリスは、「イギリス病」で疲弊の極にあった。アメリカ経済もふるわず、アメリカ人は、「われわれの子供たちは、われわれより貧しくなる」と真剣に心配していた。 その当時の英米と日本との経済力の違いをもたらした大きな原因が、人口構造の違いだったのだ。 ところが、1990年代の中頃以降、日本の高齢化率が急速に高まり、英米を抜いた。そして、この頃から、日本経済の長期停滞が始まった。なお、図表1-4には示していないが、多くのヨーロッパ諸国も、英米と同じような推移をたどっている』、「1990年代の中頃以降、日本の高齢化率が急速に高まり、英米を抜いた。そして、この頃から、日本経済の長期停滞が始まった。なお・・・多くのヨーロッパ諸国も、英米と同じような推移をたどっている」、「日本」は「高齢化率」でも「英米を抜」いたとは、有難くない話だ。
・『出生率低下で、少子化がさらに深刻化  これまでも深刻であった日本の少子化が、さらに深刻化している。厚生労働省が2022年6月に発表した人口動態統計によると、2021年の日本の出生数は81.1万人で、1899年以降で最少となった。 国立社会保障・人口問題研究所が2017年に公表した将来推計は、3パターンの出生数を想定している。このうち通常使われるのは「中位」だが、そこでは、2021年の出生数を86.9万人としている。そして、「低位」(悲観的なシナリオ)では75.6万人としている。2021年の実際の出生数は、これらの中間の数字になった。 人口推計は、長期予測の基本となるものだ。これまでは、さまざまな政府見通しのほとんどが「中位推計」を用いていた。前記の結果を踏まえて、今後は、さまざまな長期推計の見直しが必要になるだろう』、「中位推計」ではなく、「中位」と「低位」の「中間の数字になった」、ので、「今後は、さまざまな長期推計の見直しが必要になるだろう」、大変だ。
・『出生率が低下しても、労働力人口や高齢者人口は変わらない  では、最近の出生率低下は、将来の日本にどのような影響を与えるだろうか? とりわけ、人口高齢化との関係では、どうか? 出生率が低下すれば、人口高齢化がますます深刻化することは間違いない。では、いつ頃の時点において、いかなる影響を与えるだろうか? 以下では、仮に「低位推計」が現実化した場合に、高齢化率が「中位推計」からどのように変わるかを見ることとしよう。 実は、低位推計の結果を見ると、高齢者の数は、2060年頃まで見ても、出生率中位推計の場合と変わらないのだ。これは意外なことと思われるかもしれないが、つぎのように考えれば、当然であると分かるだろう。 2060年において65歳以上の人とは、1995年以前に生まれた人だ。その人たちは、2040年時点においては、すでに45歳以上になっている。だから、2020年に出生率が低下しても、2060年の高齢者数は影響を受けないのである(ただし、死亡率がいまより低下すれば、総数が増えるなどの影響はある)。 現役世代人口(=生産年齢人口=15~64歳人口)も、同様の理由によって、2030年までを見る限りは、ほとんど変わらない。2040年になって100万人程度減るだけだ。このように、今回の調査で分かった出生率の低下は、2040年頃までの高齢者数や労働力人口には、ほとんど影響を与えない。 しかし、以下に述べるように、これは、高齢化問題や労働力不足問題を楽観視してよいことを意味するものではない。出生率が中位推計のままでも、これらは深刻な問題だからである。 なお、出生率低下が、何の影響ももたらさないわけではない。影響はもちろんある。それは、0~14歳人口が、これまで想定されていたよりは、2040年で2割程度減ることだ。これは、教育関係の諸事項には大きな影響を与えるだろう。 現在でもすでに、私立大学の定員割れが問題となっている。この問題は、今後さらに深刻さを増すだろう』、「今回の調査で分かった出生率の低下は、2040年頃までの高齢者数や労働力人口には、ほとんど影響を与えない。 しかし、以下に述べるように、これは、高齢化問題や労働力不足問題を楽観視してよいことを意味するものではない。出生率が中位推計のままでも、これらは深刻な問題だからである。 出生率低下が、何の影響ももたらさないわけではない。影響はもちろんある。それは、0~14歳人口が、これまで想定されていたよりは、2040年で2割程度減ることだ。これは、教育関係の諸事項には大きな影響を与えるだろう」、なるほど。
・『社会保障制度を維持できるか  先に記したように、中位推計の場合でも、高齢化はきわめて深刻だ。それは、高齢者と現役世代の人口比を見れば、明らかだ。 図表1-5では「出生中位」と「出生低位」の比較を示したが、ここから分かるように、2020年には一人の高齢者をほぼ現役2人で支えていた。ところが、2040年にはほぼ1.5人で支えることになるのだ(注1)。 (図表1-5:出生中位推計と低位推計の比較 はリンク先参照) だから、仮に高齢者一人当たりの給付がBで変わらないとすれば、現役世代一人当たりの負担は、B/2からB/1.5になる。つまり、0.5Bから0.67Bへと33.3%増えることになる(注2)。これは、大変な負担増だ。しかも、賃金は今後もさして伸びないと考えられるので、負担の痛みは、きわめて強いだろう。 後期高齢者医療制度では、すでに負担増が行なわれている。2022年10月1日から、医療機関の窓口で支払う医療費の自己負担割合が、これまでの「1割」または「3割」から、「1割」「2割」「3割」の3区分となった。一定以上所得のある人は、現役並み所得者(3割負担)を除き、自己負担割合が「2割」になる。 今後は、負担増だけで対処することはできず、給付を相当程度引き下げざるをえないだろう。年金については、支給開始年齢を、現在の65歳から70歳に引き上げるといった対策が必要になるだろう。 なお、国民年金保険料を65歳まで納付する議論がスタートした。また、65歳以上の人の介護保険料(国の基準をもとに、市区町村が決める)を引き上げることも議論されている。これらの議論のゆくえも注目される。 (注1) 「出生中位」とは、出生率が2065年に1.44に収束していくとの仮定。「出生低位」では、1.25に収束する。なお、図表1-5はいずれも死亡中位。 (注2)ここで示したのは概算である。正確な計算を、次回行なう』、「現役世代一人当たりの負担は」「33.3%増える」、「これは、大変な負担増だ」、「後期高齢者医療制度」は「給付を相当程度引き下げざるをえないだろう」、「年金については、支給開始年齢を、現在の65歳から70歳に引き上げるといった対策が必要になるだろう」、なるほど。
・『2060年には現役世代人口と高齢者人口がほぼ同じに  先に、「低位推計でも、労働力人口は中位推計とあまり変わらない」と述べた。しかし、これは、2030年頃までのことである。これ以降になると、低位推計では労働力不足が中位推計の場合より深刻化する。 現役世代の総人口に対する比率は、現在は約6割だが、2060年頃には、これが約5割にまで低下する。そして高齢者人口とほぼ同数になる。 前項で述べたのと同じ計算を行なうと、現役世代一人当たりの負担は、B/2からBになる。つまり、高齢者の給付を不変とすれば、負担は0.5BからBへと2倍に増えることになる。このような制度は、到底維持できないだろう。 つまり、現在出生率が低下していることの結果は、40年後、50年後に、きわめて深刻な問題になるのだ。こうした条件の下で日本社会を維持し続けるための準備を、いまから行なう必要がある。 なお、ここでは社会保障制度を維持するための負担について考えたが、労働力の面から見ても、深刻な問題に直面する』、「現役世代の総人口に対する比率は、現在は約6割だが、2060年頃には、これが約5割にまで低下する。そして高齢者人口とほぼ同数になる」、「現役世代一人当たりの負担は」、「2倍に増えることになる。このような制度は、到底維持できないだろう」、「現在出生率が低下していることの結果は、40年後、50年後に、きわめて深刻な問題になるのだ。こうした条件の下で日本社会を維持し続けるための準備を、いまから行なう必要がある」、大変だ。
・『出生率引き上げより、高齢者や女性の労働力率引き上げが重要  先に、「現時点で出生率が低下しても、高齢化率や労働力率が大幅に悪化するわけではない」と述べた。このことを逆に言えば、「仮に現時点において出生率を大幅に引き上げられたとしても、将来の高齢化問題や労働力不足問題が解決されるわけではない」ことを意味する。 出生率を高めることは、さまざまな意味において、日本の重要な課題だ。しかし、それによって社会保障問題や労働力不足問題が緩和されると期待してはならない。近い将来においては、0~14歳人口が増えるために、問題はむしろ悪化するのである。 将来時点における労働力人口の減少に対処するのは重要な課題だが、そのためには、出生率を引き上げることよりも、高齢者や女性の労働力率を上げることのほうが、はるかに大きな効果を持つ。) 税制は労働力率に大きな影響を与える。とりわけ、配偶者控除が女性の労働力率にきわめて大きな影響を与える。税制度の設計にあたっては、将来の労働力不足問題を十分考慮に入れるべきだ。 これまで日本では、「103万円の壁」ということが言われていた。配偶者の給与収入が103万円を超えれば、配偶者控除を受けることができなくなるので、労働時間を抑えて働いていた人が多かったのである。 2018年の税制改正で、それまでの制度は変更された。配偶者の給与収入が103万円を超えても、150万円までなら配偶者控除と同額の配偶者特別控除を受けられ、201万5999円までであれば控除を段階的に受けられるようになったのである。 この改正に対応して、人々は労働時間を増やした。しかし、増えたのは非正規雇用だ。そして、増えたとはいえ、非正規の労働時間は、正規労働者に比べれば短い。したがって、一人当たりの平均賃金は、むしろ低下することになってしまった。 もともと、配偶者控除という制度は、「女性は専業主婦」という時代の名残だ。労働力が減少する社会において、このような制度が適当かどうかは、大いに疑問だ。こうした制度を変えなければ、女性の社会参加を本格的に増やすことはできないだろう。 また、新しい技術やビジネスモデルを採用して生産性を引き上げ、労働力不足を補うことが可能だ。超高齢化社会に対応するには、こうした施策を進める必要がある。さらに、外国からの移民を認めることも必要だ』、「将来時点における労働力人口の減少に対処するのは重要な課題だが、そのためには、出生率を引き上げることよりも、高齢者や女性の労働力率を上げることのほうが、はるかに大きな効果を持つ」、「もともと、配偶者控除という制度は、「女性は専業主婦」という時代の名残だ。労働力が減少する社会において、このような制度が適当かどうかは、大いに疑問だ。こうした制度を変えなければ、女性の社会参加を本格的に増やすことはできないだろう」、ここまではいとしても、「外国からの移民を認めることも必要だ」には反対である。
・『雇用延長で対処できるか  高齢者の労働力率は、これまでも上昇しつつある。また、年金支給開始年齢を65歳まで引き上げたことに対応して、政府は、65歳までの雇用を企業に求めている。今後、年金支給開始年齢を70歳に引き上げれば、70歳までの雇用延長を企業に求めることとなる可能性がある。 しかし、ここには、大きな問題がある。それは、日本の賃金体系では、50歳代までは賃金が上昇するが、60歳代になると急激に減少することだ。 組織から独立した形で高齢者が仕事をできるような仕組みを作る必要もあるだろう。単なる雇用延長だけでなく、こうした可能性をも含めた検討を進める必要がある』、「日本の賃金体系では、50歳代までは賃金が上昇するが、60歳代になると急激に減少すること」、「組織から独立した形で高齢者が仕事をできるような仕組みを作る必要もあるだろう」、「単なる雇用延長だけでなく、こうした可能性をも含めた検討を進める必要がある」、同感である。

次に、4月16日付け東洋経済オンラインが掲載した 慶應義塾大学大学院教授の小幡 績氏による「「少子化は最悪だ」という日本人は間違っている 日本の「人口問題の本質」とは一体何なのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/666735
・『「日本はもっと少子化対策をしっかり実行して、一刻も早く縮小均衡状態から脱すべきだ」 今、有識者、メディア、政治家は、皆こぞって「この国の縮小均衡を壊すことが必要だ」と力みまくっている。 だが、これは間違いだ。なぜなら、均衡は理由があって均衡となっているのであり、その理由を理解、特定せずに、ただ都合が悪いからぶっ壊すというのは、社会を壊すことにすぎないからだ』、「小幡 績氏」らしい出だしだ。
・『「少子化のそもそも論」として重要な3つのこと  そもそも、なぜ人口が減っているのか。なぜ人口減少は悪いことなのか。「今が危機を回避するラストチャンスだ」というが、では「今起きている危機」とは何なのか。 これらを議論せずに「少子化は困る、だから全力で回避する」という正義感は、社会を壊し、日本社会を不幸にすることになるだろう。 「そもそも論」として、3つ重要なことがある。 「そもそも①」少子化は経済発展の結果である。所得水準が上がれば、少子化が進む。これは人類の歴史において動かしがたい、変えようのない事実である。だから、そもそも少子化を止めることは不可能である。 「そもそも②」少子化が悪いとは決めつけられない。むしろ1970年代は、人口爆発が地球上の最大の問題と言われ、それを止められなかったアフリカは非難され、それを止める気がなかった中南米諸国は経済が停滞し、一人っ子政策を無理矢理行った中国は、この点に関しては成功だと思われ、経済も発展した。 しかし、今や一人っ子政策は間違った政策とされ、アフリカはHIV感染症で人口が減少し、21世紀には「人口を増やせ」という話に180度変わった。すなわち、人口に関する常識は、時代の状況の都合に合わせて、変わるのである。そして、人口政策の影響は、時代の状況の変化を超えて何百年間も続く。だから、一時の政治家の情熱はつねに危険だが、人口に関する議論の場合、とくに注意が必要なのだ。 「そもそも③」仮に少子化が止めるべき課題だとしても、現在行われている、あるいは行われようとしている政策は、ほとんどすべて効果がない。なぜなら、ほとんどの政策が現金のバラマキであり、出生数を増やす理由はないからである。 そもそも経済的理由が少子化の原因ではない。「最大のそもそも」として、少子化の原因は特定できない。誰も、なぜ少子化が起きているのか確信がないままに、「カネを配って悪いことはない」と、ひたすらバラまいている。 結果として、ただの票の買収活動になっている。だから、所得制限を外して対象者をひたすら増やすなどしている。バラマキで出生率が上がろうか否かなどは関係ないのである。給付と出生率の上昇の検証などに関心がないのである。そして、その流れをメディアも国民も無検討に受け入れ、大きな潮流をつくってしまっている』、「「そもそも①」少子化は経済発展の結果である。所得水準が上がれば、少子化が進む。これは人類の歴史において動かしがたい、変えようのない事実である。だから、そもそも少子化を止めることは不可能である」、は暴論に近い印象だ。確かフランスでは「少子化」に歯止めがかかった。「少子化」には「所得水準」以外の要因も影響している筈だ。「そもそも②」、「そもそも③」については違和感はない。
・『なぜ人口は増加し始めたのか  この3つの根本的な問題をもう少し議論してみよう。まずは「そもそも①」の「少子化は経済発展の結果」と、「そもそも③」の「仮に少子化が止めるべき課題だとしても、現在行われている、あるいは行われようとしている政策は、ほとんどすべて効果がない」から、である。 例えば、欧州の人口は18世紀半ば以降にテイクオフ(離陸)した。一方、中国をはじめとするアジアでは、はるか前、約1000年(11世紀)前後から農業生産力が上昇し、経済が発展、人口が増え始める兆しがあった。だがその後、周辺の遊牧民族の席巻や、欧州から持ち込まれたともいわれるペストなどの感染症の流行で、人口は押し下げられ、増加は目立たなくなった。 しかし、要は世界的に見れば、人類の歴史上、経済発展と生活水準の上昇は、まずは人口を増やしたのである。これは、マルサスの人口論的な増加である。皮肉にも英国のT・R・マルサスが18世紀の末において「人口増加は不可能だ」と宣言した直後から、欧州の人口は目に見えて増え始めたのである。 このとき、人口が増加した理由は、食料の入手量が増加したからである。また19世紀以降の増加は、衛生面の改善や医薬の進歩などにより、乳幼児死亡率が低下したためである。当時の平均的な生活水準は「生存維持以下、またはギリギリ」であった。だから、経済水準が上がると人口は増加したのである。) だが、この反転が始まる。19世紀後半以降の欧州では、経済水準の上昇は出生率を低下させるほうに働くようになった。これは20世紀にそのほかの地域にも広がり、21世紀には世界的な現象になったのである。 理由は、子供が死ななくなったことにより、少数の出産でも十分な数の子息を残せることになったからであり、同時に、賃金水準が上昇、所得機会が増えたことから、出産育児に時間を使うよりも、働く時間を増やすことで所得が増加するようになったからである。 さらに、賃金の上昇、所得機会の増加は、高等教育による生涯所得の増加をもたらしたから、子供にかける教育期間と費用を増加させた。教育投資を増やしたのである。 経済水準の上昇が、労働への投資と教育への投資を可能にし、家族全体で人的投資をしたのである。これが、さらなる所得水準の上昇、経済発展をもたらし、少子化は傾向として完全に定着したのだった』、「出産育児に時間を使うよりも、働く時間を増やすことで所得が増加するようになったから」、確かに「少子化」の一因ではあるが、これ以外の要因もあるのではなかろうか。
・『所得水準を上げるだけでは少子化を深刻化させるだけ  これを逆流させる力は、どこにも存在しない。不可能なのである。さらに働きやすい環境を作り、またカネをばらまき、教育コストを低下させれば、さらに少数精鋭の子供たちを育てるようになるだけだ。すなわち、むしろ少子化を促進させる効果のほうが明確に存在する。 つまり、「そもそも①」=少子化は経済発展してきた以上、止められないのである。少子化を止めようとして行われている政策は、むしろ少子化を進めるものだ。また「そもそも③」、つまり、所得水準を上げることは少子化の解決策であるどころか、深刻化させるのである。 では、なぜ有識者も政治家も、カネをバラまくことが少子化対策となると主張しているのだろうか。票のため、少子化対策にならなくても、バラまく口実があればいいという理由は明らかに存在する(子供を増やすことと無関係な経済補助がほとんどである)。しかし、良心的な政治家たちや有識者たちまで、なぜ「経済的な支援が子供を増やすことになる」と盲信してしまっているのであろうか。 それは、アンケート調査で「なぜ結婚しないのか」と聞かれて、「所得が安定しないから」という答えが一定数あるからだ。また、結婚している夫婦に「なぜ子供を持たないか」あるいは「もう一人持たないか」と聞くと、「カネがかかるから」と答えるからである。 これは大きく誤ったアンケート結果の解釈である。) 第1に、経済的理由はアンケート結果で最多の回答ではない。結婚しない理由で一番多いのは「結婚の必要性を感じない」であり、第2位は「自分の時間、自由な生活を優先したい」ということであり、ようやくその次の第3位が「経済的理由」である。 子供を持たない、あるいは多くを持たない理由を見ても、確かに「カネがかかるから」という回答が1位になることもある。だが、これはインタビューを受けて「子供を持つのが面倒だ」とか「自分の時間が欲しい」と言うのがはばかられるからである。なぜなら、アンケートもインタビューも「なぜあなたは子供を持たないのか」という非難のニュアンスを含むからである。 さらに、自分をよく見せようと意識していない人々も「カネがかかるから」と答えるのと、「カネをもらったら子供を持つ」とでは、まったく別のことだからである。 この2つは、アンケート調査の経験があれば、誰でも知っていることだ。①アンケートの回答は本音ではない、②アンケートという仮定の回答と現実行動は異なるという、基本中の基本の事実である。 つまり、最も多い回答は経済的要因でないし、回答が経済的要因であったとしても、彼らの実際の行動は異なるのである。そして、「カネをあなたに配る」と言われて「いりません」と断る人はいないし、「ありがたい」と答えるに決まっている。一方、子育てを自分ではしない人間がバラまきに反対すると、子育てをする人々の敵と見なされてしまうので、反対しにくいのである』、「アンケート結果」の問題点については、筆者の言う通りだろう。
・『所得と結婚率の相関関係の誤解  さらに、このような行動経済学的な議論ではなく、「所得水準と子供の数や所得と結婚率の関係が正である」という実証研究結果も、その多くについてはそのまま日本の現状には当てはめられないし、無理して適用するのは、ほとんどの場合、間違いだと言える。 なぜなら、第1に「所得の高い人ほど結婚している」という所得と結婚率の相関関係は、「所得が増えれば結婚するようになる」という因果関係とはまったく別であるからである。 所得水準が低い人が結婚しないのではなく、社会の中で他人と交流する機会が少ない人(交流したくない人)は、所得水準の高い仕事に就く機会が少なく、それとは独立の現象として、出会いが少ないということがありうる(そして、実際にそうであろう)。 第2に、フランスやハンガリーなどではマネーインセンティブを与えたら子供が増えたという事実があったとしても、日本でも同じことが起こるとは限らない。むしろ、起こると考えることは難しい。 なぜなら、社会環境が違いすぎるし、価値観も違いすぎるからである。世界で日本だけが出生率が低いのではなく、中国をはじめ、ほとんどのアジア諸国で低下し続けている。韓国の極端に低い出生率も、つとに有名である。 アジアでは社会のあり方、とくに男女の役割分担のあり方が急激に変わってきている。出生率の低下はその移行期の中で、経済的な理由とこの社会の急激な変化が絡み合っているから起きているのであり、過去にそれが終わっている欧米とは異なる。 また、例えば「アメリカでは出生率が日本より高い」といっても、白人系の出生率はそのほかの人々よりも低いし、欧州の多くの国でもこの現象が存在する。) さらに、例えば北欧諸国は少子化問題解決の優等生のように思われているが、出生率は低下を続けている。所得水準が上がっても、子供関連、教育関連の政府支出が極めて高くても、少子化は進んでいるのである。 第3に、日本のB村が子ども手当などを大幅に増やしたら、出生率が大幅に上がった「奇跡の村」などと言われ、もてはやされている。だが、これは子供を産もうとした夫婦が「どこで子育てをしたら得か」を考えて、単にA町からこのB村に移住した要因が大きいのである。B村で出生率が奇跡のように上がったように見える一方、その他の町ではさらに出生率が絶望的に下がっただけなのである。 そして、百万歩譲って、経済的な理由が一部の家庭にとって子供を持たない理由であるとしよう。しかし、その場合の経済的理由とは、5万、10万、100万円などではなく、2億円などというレベルの話なのである。 すなわち、女性が大学を出て会社に就職した場合、30歳前後で会社勤めを退職し、子育てをして、数年後に賃労働を再開し、パートタイムや非正規社員として働いた場合、子育てをせずに大卒後に就職した会社で定年まで働いた場合に比べて生涯所得が2億円前後少ないというシミュレーション結果を、多くの調査が示している』、「フランスやハンガリーなどではマネーインセンティブを与えたら子供が増えたという事実があったとしても、日本でも同じことが起こるとは限らない。むしろ、起こると考えることは難しい。 なぜなら、社会環境が違いすぎるし、価値観も違いすぎるからである」、「フランス」で「子供が増えた」というのにここで触れたようだが、「社会環境が違いすぎるし、価値観も違いすぎる」として、「日本」には当てはまらないとしている。「社会環境」や「価値観」の違いをここで持ち出したのには違和感がある。出すのであれば、もっと前の方で出すべきだろう。
・『少子化の原因は社会のあり方の問題  だから、働く夫婦に子育てのための所得支援をするのであれば、各夫婦に2億円ずつ配らなくてはならないのである。すなわち、少子化の原因は、社会のあり方の問題であり、その一部は経済的要因であるが、その要因をもたらしているのは日本社会における都市部での企業での働き方にある。 それは政府の責任ではないうえに、政策で直接子育てを支援したり、現金をバラまいたりしても、解決できる次元のものではないのだ。「異次元の少子化対策」などと言っているが、その最低100倍、3次元ぐらい違わないと無理なのだ。 しかし、解決策はあるし、簡単だ。女性が子育てのために退職し、その後転職したときに、その女性の人的資本の価値に見合った、以前の給料と同等の水準で働けるような民間労働市場に、日本の労働市場が変わればいいだけだ。) 「そんなに革命的に労働市場が変わるのは難しいのではないか」という意見が多そうだが、本当だろうか。 そもそも、その退職女性はもともと働き手として有能だ。もし退職前の価値よりも安い賃金でパートとして働いていたら、それは超掘り出し物だ。ただでさえ人手不足なのだから、彼女には求人が殺到するだろう。単純なごく普通の経済原則、企業の利益最大化行動で、すぐに解決してしまう。これが私の自然で「普通の」少子化対策だ。 なぜ、これを実現するのが難しいのか。それは日本の企業が阿呆であるからである。日本社会が意味不明だからである。逆に言えば、そんな異常な企業と社会においては、何をしようとも問題は解決しないのだ』、「その退職女性はもともと働き手として有能だ。もし退職前の価値よりも安い賃金でパートとして働いていたら、それは超掘り出し物だ。ただでさえ人手不足なのだから、彼女には求人が殺到するだろう。単純なごく普通の経済原則、企業の利益最大化行動で、すぐに解決してしまう。これが私の自然で「普通の」少子化対策だ」、市場原理に任せておけば解決する筈だが、「これを実現するのが難しいのか。それは日本の企業が阿呆であるからである」、というのは天にツバするものだ。
・『「日本にとっての少子化問題」とは何か  最後に「そもそも②」の「少子化が悪いとは決めつけられない」である。少子化は本当に問題なのか。なぜ問題なのか。一般的な答えは「当たり前だ。子供が少ない社会は、まともな社会でない。活力がなくなってしまうではないか」ということなのだろう。 しかし、それならば、日本のほとんどの社会はすでに壊れている。壊れていないのは、東京、名古屋、そのほかごく一部の大都市だけで、ほとんどの地域社会は少子化どころか、中年もおらず、高齢者だけになり、さら高齢者までも減り始めている。社会は壊れ、消失しているのである。 もし「健全な社会を維持する」ということが少子化対策の目的なら、まず、大都市以外の地域社会を一刻も早く立て直さなければいけない。少子化対策のラストチャンスというが、地域社会にとっては子供が減るというのが問題なのであれば、何十年前にもうゲームオーバーになっているのである。 しかし、私がこんなことを主張しても相手にされない。「地域社会はもう無理に決まっている。とにかく日本全体で人口を増やせ、それが日本にとっての問題だ」というだろう。しかし、しかし、だ。ここでの「日本の問題」とは一体何のことだろうか。 それは人口が減ると経済規模が小さくなり、日本市場に依存している企業の売り上げが減るという問題であり、勤労者層が減ると社会保険料を払う人が減り、年金も医療も介護も破綻するからであり、日本人の存在感が減ると、国際的に日本代表の政治家といっても世界では大して影響力がなくなるからであり、人口が減れば兵力が減るからである。 すなわち、それは少子化問題ではなく、企業利益の問題であり、社会保障システムの問題であり、プライドの問題であり、覇権争いの問題なのである』、「少子化問題ではなく、企業利益の問題であり、社会保障システムの問題であり、プライドの問題であり、覇権争いの問題なのである」、その通りだ。
・『経済主体が個別課題に正面から向き合うしかない  これらの問題を解決するのはとても難しい。「人口が減ったことが問題なのだから、人口が元に戻ってくれれば、問題は存在しなくなるはずだ」――。こうした課題の裏返しを解決策とするのは、まったく無意味なことだ。 これらの社会問題を直接解決することでしか、日本の問題は解決しない。現在人々が「人口減少こそ最大の課題」と言っているのは、実は社会の変化に対応できない、経済主体や経済システム、社会制度が機能不全を起こしているにすぎない。これらの制度をリフォームして、それぞれの経済主体が自分自身の個別の課題に正面から向き合うことでしか解決しないのである。 つまり、少子化対策とは、課題設定も解決策もすべて間違っている。このままでは、あえて日本社会の傷を拡大し、破綻させることにしか貢献できないのである。 (本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)』、今回の論文はやや粗く、部分的には違和感があったが、「現在人々が「人口減少こそ最大の課題」と言っているのは、実は社会の変化に対応できない、経済主体や経済システム、社会制度が機能不全を起こしているにすぎない。これらの制度をリフォームして、それぞれの経済主体が自分自身の個別の課題に正面から向き合うことでしか解決しないのである」、同感である。なお、筆者は准教授から、正式な教授になったようだ。
タグ:「日本の賃金体系では、50歳代までは賃金が上昇するが、60歳代になると急激に減少すること」、「組織から独立した形で高齢者が仕事をできるような仕組みを作る必要もあるだろう」、「単なる雇用延長だけでなく、こうした可能性をも含めた検討を進める必要がある」、同感である。 「もともと、配偶者控除という制度は、「女性は専業主婦」という時代の名残だ。労働力が減少する社会において、このような制度が適当かどうかは、大いに疑問だ。こうした制度を変えなければ、女性の社会参加を本格的に増やすことはできないだろう」、ここまではいとしても、「外国からの移民を認めることも必要だ」には反対である。 「現役世代の総人口に対する比率は、現在は約6割だが、2060年頃には、これが約5割にまで低下する。そして高齢者人口とほぼ同数になる」、「現役世代一人当たりの負担は」、「2倍に増えることになる。このような制度は、到底維持できないだろう」、「現在出生率が低下していることの結果は、40年後、50年後に、きわめて深刻な問題になるのだ。こうした条件の下で日本社会を維持し続けるための準備を、いまから行なう必要がある」、大変だ。 「現役世代一人当たりの負担は」「33.3%増える」、「これは、大変な負担増だ」、「後期高齢者医療制度」は「給付を相当程度引き下げざるをえないだろう」、「年金については、支給開始年齢を、現在の65歳から70歳に引き上げるといった対策が必要になるだろう」、なるほど。 「今回の調査で分かった出生率の低下は、2040年頃までの高齢者数や労働力人口には、ほとんど影響を与えない。 しかし、以下に述べるように、これは、高齢化問題や労働力不足問題を楽観視してよいことを意味するものではない。出生率が中位推計のままでも、これらは深刻な問題だからである。 出生率低下が、何の影響ももたらさないわけではない。影響はもちろんある。それは、0~14歳人口が、これまで想定されていたよりは、2040年で2割程度減ることだ。これは、教育関係の諸事項には大きな影響を与えるだろう」、なるほど。 ダイヤモンド・オンライン 今回の論文はやや粗く、部分的には違和感があったが、「現在人々が「人口減少こそ最大の課題」と言っているのは、実は社会の変化に対応できない、経済主体や経済システム、社会制度が機能不全を起こしているにすぎない。これらの制度をリフォームして、それぞれの経済主体が自分自身の個別の課題に正面から向き合うことでしか解決しないのである」、同感である。なお、筆者は准教授から、正式な教授になったようだ。 「少子化問題ではなく、企業利益の問題であり、社会保障システムの問題であり、プライドの問題であり、覇権争いの問題なのである」、その通りだ。 「その退職女性はもともと働き手として有能だ。もし退職前の価値よりも安い賃金でパートとして働いていたら、それは超掘り出し物だ。ただでさえ人手不足なのだから、彼女には求人が殺到するだろう。単純なごく普通の経済原則、企業の利益最大化行動で、すぐに解決してしまう。これが私の自然で「普通の」少子化対策だ」、市場原理に任せておけば解決する筈だが、「これを実現するのが難しいのか。それは日本の企業が阿呆であるからである」、というのは天にツバするものだ。 「社会環境」や「価値観」の違いをここで持ち出したのには違和感がある。出すのであれば、もっと前の方で出すべきだろう。 「フランスやハンガリーなどではマネーインセンティブを与えたら子供が増えたという事実があったとしても、日本でも同じことが起こるとは限らない。むしろ、起こると考えることは難しい。 なぜなら、社会環境が違いすぎるし、価値観も違いすぎるからである」、「フランス」で「子供が増えた」というのにここで触れたようだが、「社会環境が違いすぎるし、価値観も違いすぎる」として、「日本」には当てはまらないとしている。 「アンケート結果」の問題点については、筆者の言う通りだろう。 「出産育児に時間を使うよりも、働く時間を増やすことで所得が増加するようになったから」、確かに「少子化」の一因ではあるが、これ以外の要因もあるのではなかろうか。 「「そもそも①」少子化は経済発展の結果である。所得水準が上がれば、少子化が進む。これは人類の歴史において動かしがたい、変えようのない事実である。だから、そもそも少子化を止めることは不可能である」、は暴論に近い印象だ。確かフランスでは「少子化」に歯止めがかかった。「少子化」には「所得水準」以外の要因も影響している筈だ。「そもそも②」、「そもそも③」については違和感はない。 「小幡 績氏」らしい出だしだ。 小幡 績氏による「「少子化は最悪だ」という日本人は間違っている 日本の「人口問題の本質」とは一体何なのか」 東洋経済オンライン 「中位推計」ではなく、「中位」と「低位」の「中間の数字になった」、ので、「今後は、さまざまな長期推計の見直しが必要になるだろう」、大変だ。 「1990年代の中頃以降、日本の高齢化率が急速に高まり、英米を抜いた。そして、この頃から、日本経済の長期停滞が始まった。なお・・・多くのヨーロッパ諸国も、英米と同じような推移をたどっている」、「日本」は「高齢化率」でも「英米を抜」いたとは、有難くない話だ。 「高齢化率」で「日本の2020年の値は、28.7%だ」、「フランス24.1%」、「ドイツ21.7%」、「イギリス18.7%」、「アメリカ16.6%」、「韓国15.8%」、確かに「日本」は高い。 野口悠紀雄氏の著書『2040年の日本』(幻冬舎新書) 野口悠紀雄氏による「出生率低下は日本の「経済・労働力・社会保障」にどんな影響を与えるか」 (その4)(出生率低下は日本の「経済・労働力・社会保障」にどんな影響を与えるか、「少子化は最悪だ」という日本人は間違っている 日本の「人口問題の本質」とは一体何なのか) 少子化
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バブル崩壊(その他、その2)(バブルの狂乱 いま明かされる銀行と権力の「すさまじい暗闘」の全深層、投資額は2兆7700億円 江本孟紀が初めて明かす“女帝相場師・尾上縫”の素顔、「バブル」に踊らされた経営者に共通する考え方 EIEインターナショナルとバブル紳士に学ぶ) [金融]

バブル崩壊については、2021年3月8日に取上げた。久しぶりの今日は、(その他、その2)(バブルの狂乱 いま明かされる銀行と権力の「すさまじい暗闘」の全深層、投資額は2兆7700億円 江本孟紀が初めて明かす“女帝相場師・尾上縫”の素顔、「バブル」に踊らされた経営者に共通する考え方 EIEインターナショナルとバブル紳士に学ぶ)である。

先ずは、2021年3月20日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの児玉 博氏による「バブルの狂乱、いま明かされる銀行と権力の「すさまじい暗闘」の全深層」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/80850?imp=0
・『「賭け麻雀」騒動が投げかけた問い  その人事は「賭け麻雀」が発覚し、あっけなく幕引きとなったのが安倍政権下で行われようとしていた検事総長人事だった。昨年5月のことだ。 官僚人事を掌握し、その人事権で官僚を統治した安倍政権。その象徴でもあったのが東京高検検事長の黒川弘務を検事総長にするために、検事長の退官を63歳と定めた検察庁法を改め、退官年時を半年間延長した、いわゆる“定年問題”だった。この“定年問題”は、賭け麻雀で一気に終息したが、この問題は改めて政治と検察との在りようを問うこととなった。 かつて検察庁はロッキード事件(1976年)では元首相、田中角栄を逮捕した。検察庁は行政機関に組み込まれた一組織であることに変わりはない。 けれども、このロッキード事件に国民の多くが喝采を送ったのは、たとえ元首相であろうとも逮捕に踏み切った政治からの独立性だった。当時、主任検事だった吉永祐介(後の検事総長)は、“ミスター特捜”とも呼ばれ、ドラマの主人公となるほどその検察官としての高潔さを讃えられた。 しかし、検察と政治家など権力者との距離感は常に微妙な問題を孕んでいる。 筆者はかつて住友銀行(現、三井住友銀行)の伝説の“MOF(大蔵省担当)担”と呼ばれ、住友銀行を窮地に追いやったイトマン事件では、救世主となり、事件の元凶であった“住友銀行の天皇”磯田一郎(当時、会長)とその取り巻きを一掃するきっかけを作り出した国重惇史(元丸の内支店長)が、20数年間、秘匿し続けたメモを託された。 かつて、1986年に住友銀行により吸収合併された平和相互銀行という銀行が存在していた。後に金屏風事件など数々の事件を引き起こすきっかけとなったこの合併劇に深く関わっていたのが國重だった。その国重が合併劇の内幕を一部始終を書き残したのが“國重メモ”だ』、「住友銀行により吸収合併された平和相互銀行・・・この合併劇に深く関わっていたのが國重だった。その国重が合併劇の内幕を一部始終を書き残したのが“國重メモ”だ」、「伝説の“MOF担”」による「メモ」とは興味深そうだ。
・『国重メモとは何か  筆者はそのメモを元に『堕ちたバンカー 國重惇史の証言』という本を上梓した。 国重は39歳ながらこの合併劇に立役者の1人だった。大蔵省、日銀、竹下登(当時、大蔵大臣)、そし検察庁幹部などに接近しては、住友銀行に吸収合併させて行く様を克明に描いた“國重メモ”の迫力、詳細さは圧巻だった。この“國重メモ”が明らかになったことにより、長らく日本金融史史の闇とされていた、合併劇の内幕、金屏風事件の内幕などがすべて明らかとなったのである。 このメモの中で、筆者を驚愕させた1つが住友銀行と検察幹部との関係だった。 そもそも、住友銀行が、検察・国税との関係が深まるきっかけとなったのは、検事総長だった安原美穂(戦後12代目。1981〜1983)を顧問弁護士に迎えたことだった。安原を囲む現役検察幹部らの親睦の会ができ、それを住友銀行が支えた。 当初、大阪で始まり、その宴席が料亭「花月」で行われたことからその会は「花月会」と呼ばれた。料亭「花月」は後に東京にも出店し、その後は東京での会合が主になっていった。どの金融機関も検察、警察との関係を築いてはいる。けれども、住友銀行のそれは他の金融機関を圧するほどのものだったことが“国重メモ”からはうかがえる』、「住友銀行が、検察・国税との関係が深まるきっかけとなったのは、検事総長だった安原美穂・・・を顧問弁護士に迎えたことだった。安原を囲む現役検察幹部らの親睦の会ができ、それを住友銀行が支えた」、「親睦の会」の費用も「住友銀行」が負担したのだろうか、当時だったらあり得る話だ。
・『平和相互銀行をめぐる暗闘  当時は、“住友銀行の天皇”と呼ばれていた会長、磯田一郎の号令一下始まった「平和相互銀行」の吸収合併工作が行われていた。 住友銀行の水面下での工作は、大蔵省(現財務省)、日本銀行、蔵相、竹下登(後の総理大臣)、そして検察庁と多岐に渡った。しかも、工作する相手は幹部ばかり。“国重メモ”を読めば読むほど、住友銀行という一民間金融機関に過ぎない銀行が、金融当局のみならず、政界、検察の最深部にこれほどの人脈を築きあげていることにまず驚かされる。 “国重メモ”の中身を見ていこう。 まず昭和60年11月22日の項には次のように記されている。面談をしているのは、住友銀行取締役、松下武義。国重の上司であり、当時、住友銀行の“政治部長”と言われていた人物。この松下に相対している人物の名前は、伊藤栄樹。この時、東京高等検察庁検事長だった。検察庁ナンバー2の座にあった伊藤は、誰もが認める次期検事総長候補だった。 「平和相互銀行」の吸収合併を目論む住友銀行には1つの大きな障害があった。それは、「平和相互銀行」内で合併に強行に反対している勢力の存在だった。その筆頭が元東京地検特捜部の検事で“カミソリ伊坂”とも異名をとった監査役、伊坂重昭だった。伊坂を筆頭に同銀行幹部3人は合併に反対しており、特に伊坂の存在は悩ましかった。そんな折に実現したのが、松下と伊藤との宴席だった。 松下から聞き取った“国重メモ”はこう記している。 〈伊藤 心配するな。自分が(検事)総長になるであろう。12月下旬以降、1月か2月には必ずなる。あの銀行は年々1000オク(億円)悪くなっている。今やらねばならない。MOF(大蔵省)はだらしない。自分は第一相互の時の主任検事だったが、その時もMOFをギュギュやった。MOFに再建プランを出せと言ってある〉 伊藤栄樹は“ミスター検察”と呼ばれたほど、誰もが認めるエースだった。伊藤自身が就任時の訓示で吐いた「巨悪は眠らせるな」のフレーズは余りに有名だった。 退官後、「秋霜烈日」という回想録を記した伊藤は、その中で検察と政治との微妙な距離感について触れ、検事といえども行政官であることの苦渋を遠回しな表現ながら吐露している。その“ミスター検察”が、住友銀行側に「心配するな」「大蔵省には言ってある」などと発言をしているわけだ。 同年12月19日、松下から国重への電話での会話は次のようにメモされていた。 〈検察に行って話を聞いた。「騒がしくなる」 伊坂の逮捕は間違いないだろう〉 松下は直接、東京地検に出向き、そこで東京地検幹部と面談。事件の感触を掴み、それを国重に伝えている。このように松下、つまり住友銀行の検察担当は捜査当局に入り込み、情報を入手していた。もちろん、捜査当局側とて微妙な駆け引きはしていただろうが』、「「平和相互銀行」内で合併に強行に反対している勢力の存在だった。その筆頭が元東京地検特捜部の検事で“カミソリ伊坂”とも異名をとった監査役、伊坂重昭だった。伊坂を筆頭に同銀行幹部3人は合併に反対しており、特に伊坂の存在は悩ましかった」、これに対し、「伊藤 心配するな。自分が(検事)総長になるであろう。12月下旬以降、1月か2月には必ずなる」、「「騒がしくなる」 伊坂の逮捕は間違いないだろう〉 松下は直接、東京地検に出向き、そこで東京地検幹部と面談。事件の感触を掴み、それを国重に伝えている。このように松下、つまり住友銀行の検察担当は捜査当局に入り込み、情報を入手していた。もちろん、捜査当局側とて微妙な駆け引きはしていただろうが」、反対派をそれを上回る「検察の序列」を通じて潰すとは、凄い工作だ。
・『自宅への電話  これ以前の「国重メモ」にも東京地検特捜部と住友銀行との関係が伺える部分が見られる。 たとえば昭和60年6月25日、地検内部の声を次のように記している。 〈H(平和相互銀行)の職員を呼んで事情聴取することは消極的。「やる時は一斉にバサッとやる」「そのためにOBらと極秘裏に会いたい。仲介を頼みたい」 さらにメモは続く。〈同年7月12日 今日、検察に追加資料を持っていった。地検は「何かスパッとどぎついのはないか」。 同年7月18日 地検に行く。「パンチのきいた材料が欲しい」〉 最終的に平和相互銀行は、こうした昭和61年(1986年)10月1日をもって住友銀行に吸収合併され、その名前は日本の金融史から消える。が、実質的に平和相互銀行が住友銀行の軍門に降るのは同年2月6日、合併反対を唱え続けていた伊坂ら反対派の幹部が辞任した時だったといえるだろう。 そんな折の昭和61年1月9日、松下は検事総長、伊藤と面会する。メモはこう記している。 〈伊藤栄樹に会った。「金繰りピンチ。早く動いてくれないとパンクしてしまうかも」と言ったら、「わかった」と。1月中に動くかもしれない。〉 平和相互銀行の信用不安が株式市場に流れ始め、同銀行からの預金流失が続いている状況を松下は「金繰りピンチ」と訴えたのである。 同年1月14日、松下の動きを国重はこうメモしている。 〈昨日、地検の吉永部長と会った。「総長の陣頭指揮で危なくて、情報が取れない。ただそんなに早くやれるとは思えない」〉 この吉永部長というのは、ロッキード事件で名を馳せ、“ミスター特捜”とも呼ばれたあの吉永祐介だ。吉永はこの時、最高検公判部長の職にあった。その吉永が、平和相互銀行事件は検事総長、伊藤の直轄で捜査をしていた。〈同年1月24日 今朝、吉永公判部長より自宅から(松下の)自宅に電話あり。「昨日、次席検事と会った。その話では本件大きくならない。伊坂についてのデータ、集まりが悪い。地検も急いではいないようだ。但し、地検は仲間内でもウソあり」と〉』、「松下は検事総長、伊藤と面会する。メモはこう記している。〈伊藤栄樹に会った。「金繰りピンチ。早く動いてくれないとパンクしてしまうかも」と言ったら、「わかった」・・・「平和相互銀行の信用不安が株式市場に流れ始め、同銀行からの預金流失が続いている状況を松下は「金繰りピンチ」と訴えた」、「吉永公判部長より自宅から(松下の)自宅に電話あり。「昨日、次席検事と会った。その話では本件大きくならない・・・」、「住友銀行」の情報網は、驚くほどしっかりしていたようだ。
・『メモが投げかける「大きな意味」  結局、先にも触れたように吸収合併を画策する住友銀行の最大の障害であった伊坂らは2月6日に銀行をさり、さらにおよそ5ヶ月後の7月6日、特別背任容疑で東京地検特捜部の手によって逮捕される。 “国重メモ”が明らかにされるまで、こうした事実は一切明らかにあることはなかった。 “国重メモ”は、ひとつの銀行が、大蔵省、日銀、政治家などに広く、そして深くかかわっていた時代の現実を詳らかにした。そんな“国重メモ”が投げかける意味は今も変わらない――』、住友との合併に反対していた検察OBで平和相互銀行監査役の「伊坂」を「特別背任容疑で東京地検特捜部の手によって逮捕」とは、単に反対していただけでなく、どこかから裏金でも受け取っていたのかも知れない。「検察」をここまで利用し尽くしたとは、さすが住友銀行だ。

次に、2021年11月26日付けデイリー新潮「投資額は2兆7700億円 江本孟紀が初めて明かす“女帝相場師・尾上縫”の素顔」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2021/11261057/?all=1
・『店のテーブルには金融関係者がずらりと陣取り、奥の庭からは時折、どんな銘柄が上がるのか占うご託宣が聞こえる。2700億円をだまし取ったとして浪花の料亭経営者「尾上縫」が摘発されて30年、彼女がベタ惚れしたプロ野球解説者・江本孟紀氏(74)が振り返る。 内閣府のレポートには、かつて日本中を狂奔させたバブル経済は、1991年3月をもって“崩壊”が始まったとある。ちょうど30年前のことだが、人々に宴の終りを感じさせたのは、その5カ月後の出来事だったに違いない。 同年8月13日の早朝、大阪地検特捜部は大阪・千日前の料亭「恵川」のおかみ・尾上縫(61)=当時=を有印私文書偽造などの容疑で逮捕する。東洋信用金庫に巨額の預金があるように見せかけ、それを担保に大手金融機関から2700億円もの金をだまし取っていたのだ。 詐欺そのものは複雑ではなく、端緒は日本興業銀行が発行していたワリコー(割引金融債)を大量に買ったことだった。 奈良の貧困家庭の出身だった尾上は、ミナミの料亭で仲居だった時、大手住宅メーカーの会長が“旦那”になり、恵川を開店。会長からもらった三十数億円を元手にワリコー10億円分を買い付ける。それを担保に興銀が融資し、さらにワリコーを買い増した。いつしかワリコーの額が膨れ上がると興銀の黒澤洋頭取が、夫婦連れで恵川を表敬訪問したこともあった。 一介の料亭経営者ながら天下の興銀が融資している。それを知った他の大銀行も競うように金を貸し、5年間で彼女に貸し付けられた金は延べで2兆7736億円にものぼった。これは本州と四国を結ぶ瀬戸大橋を含む本四架橋の総工費に匹敵する。さらに尾上はこの金でNTTや新日鉄の株を買い漁ったものだから、北浜の証券界では「謎の女相場師」として名を馳せたのだ。だが、所詮は借金をぐるぐる回すだけの錬金術である。怪しんだ銀行が資金を引き揚げると、彼女が手を染めたのが架空預金証書による詐欺だったというわけである』、超大企業としか取引しない「興銀」の「黒澤洋頭取が、夫婦連れで」、「料亭「恵川」のおかみ・尾上縫」、「を表敬訪問」、との事実は国会喚問で明らかにされただけに、全国に大きな衝撃を与えた。
・『江本氏が特ダネを取れた理由  尾上逮捕の一報に新聞・テレビは料亭に押しかけ、連行される姿を追いかけた。が、地検に入る彼女はただの地味な老女にしか見えない。女傑からはほど遠いイメージに誰もが首をひねった。ところが、その日のニュースで、すぐさまフジテレビだけが、彼女の生々しい“素顔”を流す。株の注文欲しさに料亭に蝟集する大手証券マンや、融資話を持ち込んでくる大銀行の幹部。そして数千万円の着物を身にまとい、満面の笑みで株券の束をわし掴みにしてみせる尾上。その様子は、歪み切った世相そのものだったといえよう。 ネタを明かせば、同局が尾上の映像を流すことができたのは、逮捕の2年前に運よく恵川や姉妹店「大黒や」の奥までカメラを入れ、彼女のインタビュー映像を撮っていたからだ。フジテレビに、この特ダネを提供したのは、株や金融の世界には門外漢のはずの、あのエモやんこと江本孟紀氏である。当時の江本氏は阪神のピッチャーを引退して、著書『プロ野球を10倍楽しく見る方法』が大ヒット。野球解説者のほか、ドラマの役者、歌手などマルチタレントとして活動していた。 その江本氏が言う。 その頃、私はフジの『なんてったって好奇心』という番組の司会を三田寛子さんと一緒にやっていたんです。当時、プロデューサーだった太田英昭さん(後のフジ・メディア・ホールディングス社長)に“大阪にすごいオバさんがいる”って教えてあげたら、ぜひ会って取材したいという。それで尾上のおばちゃんに電話で聞いてみたら“ええよ”って二つ返事でOKだったのです」 謎の女相場師を登場させた番組は、ゴールデンタイムに放送されたが、その時点で錬金術の正体を知る者は誰もいなかった。それにしても、株取引もせず、酒も飲まない江本氏と、尾上には、どんな接点があったのだろうか』、「江本氏と、尾上には、どんな接点があったのだろうか」、確かに不思議だ。
・『江本氏に入れ込んでいた尾上  「もともと尾上さんを私に紹介してくれたのは、日本リスクコントロールという会社を経営している寺尾文孝さんという人なのです」 と江本氏。ここで寺尾氏のことを説明しておこう。寺尾氏は、警察官出身で、警視総監、法務大臣を歴任した秦野章氏の秘書を務めたのちに日本リスクコントロールを設立。政界・警察・芸能界に顔が利くことで知られた人物だ。今年6月に寺尾氏が半生を振り返って出版した『闇の盾』(講談社)には、寺尾氏が対峙してきたバブル紳士に並んで、 〈尾上縫がベタ惚れした男〉として、江本氏が登場する。 それによると、寺尾氏から江本氏を紹介された尾上は、初対面からすっかり彼のことを気に入ってしまう。当時40歳前後の江本氏は188センチのすらりとしたスタイルに端正な甘いマスク。人当たりが良くて話も面白く、おまけに有名人である。江本氏が豪華客船でディナーショーを開くと聞けば、チケットを数十枚も買い証券会社や銀行の幹部らを引き連れて観に行くほどの入れ込みようだった。そんな江本氏の頼みだからと、テレビの取材も快諾したのだろう。 改めて江本氏が尾上との出会いを話す。 「私の父親が高知県で警察官をしていたことから、寺尾さんとは気が合って昭和51年ぐらいからの付き合いでした。年に数度食事に行くような関係だったのですが、その寺尾さんが日本ドリーム観光という会社の副社長に就いて大阪に行くことになった。私も大阪で阪神戦の野球解説があるので、向こうで会う約束をしたのです。その際、寺尾さんと待ち合わせしたのが料亭『恵川』でした」』、「尾上は、初対面からすっかり彼のことを気に入ってしまう。当時40歳前後の江本氏は188センチのすらりとしたスタイルに端正な甘いマスク。人当たりが良くて話も面白く、おまけに有名人である。江本氏が豪華客船でディナーショーを開くと聞けば、チケットを数十枚も買い証券会社や銀行の幹部らを引き連れて観に行くほどの入れ込みようだった」、大いにあり得る話だ。
・『特別な客  日本ドリーム観光とは、大阪の新歌舞伎座や横浜ドリームランドなどを経営していた老舗の興行会社。だが、当時、元暴力団組長で、株の仕手戦で巨額の金を動かした「コスモポリタン」の会長・池田保次氏に“食い物”にされており、経営陣の内紛も勃発していた。寺尾氏は立て直しのため、87年、日本ドリーム観光に乗り込む。 大阪に常駐するようになった寺尾氏は、自分の友人・知人も連れて恵川に通った。江本氏のほか、勝新太郎、当時の大阪府警本部長や刑事部長もその中にいた。上客ばかりを紹介してくれる寺尾氏は、尾上にとって特別な客だったに違いない。当時、銀行から湯水のように金を引き出していた彼女は、寺尾氏に「新歌舞伎座を600億円で私に売ってほしい」と持ち掛けたこともある。 江本氏が続ける。 「でも、実をいえば私は和食が嫌いだったんです。酒も飲まないし、寺尾さんに誘われただけなら、彼女の店に行くのは、その一回だけで終わっていたかもしれません」』、「江本氏・・・「でも、実をいえば私は和食が嫌いだったんです。酒も飲まないし、寺尾さんに誘われただけなら、彼女の店に行くのは、その一回だけで終わっていたかもしれません」、「江本氏」も無理をして付き合ったのだろうか。
・『NTT株の束  会食当日、寺尾氏から教えてもらった住所を頼りに繁華街のミナミに出かけた江本氏は、とある木造3階建ての小料理屋の前で、打ち水をしている女性従業員に「この辺で恵川って店知りません?」と尋ねる。 「すると、その人が“あんた江本さんやないの!? うちの板前が、あんたのこと懐かしがってたわ”と言うではありませんか。聞けば、私が以前、贔屓にしていた料理人が、その小料理屋にいるという。彼はもともと北新地の料亭にいて、和食嫌いの私でも美味しく食べられる料理を作ってくれた。鴨料理やカツオのたたきなどが絶品なのです。ところが、ある日突然、料亭は閉店。料理人もぷっつりと連絡がつかなくなっていました。それが、たまたま道を聞いた従業員の店にいるというではありませんか。偶然の再会とはこのこと。その小料理屋の名が『大黒や』だったのです」 前述のとおり、大黒やは恵川の姉妹店で店もすぐ裏手にあった。尾上は“旦那”の住宅メーカー会長からもらった三十数億円を、しばらく大黒やの3階にある箪笥の引き出しに現金のまま保管していたこともある。 とまれ、この日を境に江本氏は大阪に行くたび大黒やを訪れるようになる。江本氏からすれば、板前の料理が目当てだった。 「恵川はちゃんとした料亭でしたが、大黒やは小料理屋。玄関を入るとカウンターがあって、20人も入ればいっぱいになるような店だった。料金も1人7千~8千円と安めでしたが、店に顔を出すと必ずといっていいほど、尾上のおばちゃんがやってきて私のテーブルについたんです」』、「和食嫌いの私でも美味しく食べられる料理を作ってくれた。鴨料理やカツオのたたきなどが絶品なのです。ところが、ある日突然、料亭は閉店。料理人もぷっつりと連絡がつかなくなっていました。それが、たまたま道を聞いた従業員の店にいるというではありませんか。偶然の再会とはこのこと。その小料理屋の名が『大黒や』だったのです」、「この日を境に江本氏は大阪に行くたび大黒やを訪れるようになる。江本氏からすれば、板前の料理が目当てだった」、「店に顔を出すと必ずといっていいほど、尾上のおばちゃんがやってきて私のテーブルについたんです」、「「和食嫌いの私でも美味しく食べられる料理を作ってくれ」る「料理人」が「目当てだった」とは面白いものだ。
・『怪しげな儀式を行う尾上  尾上は、隣に来ると、なぜか箸の柄にガーゼを巻いて水で濡らして眼を何度も拭いていたという。何のおまじないだったのか?と江本氏は今でも首を傾げるのだが、そこでさらに奇妙な光景を目にする。 「目立たない店でしたが、大黒やはびしっとスーツを着込んだお客さんでいつもいっぱいでした。また店の奥には坪庭があって、そこに仏像が鎮座していたのが印象的だった。スーツのお客さんたちは、店に来ると皆、おかみさんに言われて仏像を拝むんです。さらに、坪庭の奥には事務所があって、男性が2人ほど常駐していました。お客さんの中には野球ファンもいるので、プロ野球の話をしているうちに何となく彼らの職業が分かってきた。スーツ姿の客は全員が銀行員か証券マン。それも支店長とか部長といった役職者ばかりだったのです」 恵川が尾上の「表向きの顔」なら、大黒やは「本業」の投資ビジネスを行う場所だった。だが、彼女のやることはすべて神がかりである。毎週日曜日の夕刻には、坪庭に金融マンを集め、尾上は「行(ぎょう)」に入る。頃合いを見計らって証券マンが「〇×株はどうでしょうか?」と聞くと、彼女の口から「この株、上がるぞよ~」とか「売りじゃ」とご託宣が降りてくる。株をやらない江本氏にはピンとこないシーンだが、大黒やの中で行われていることは世間の常識からも大きく外れており、異様な世界だった。 「ある時などは、大黒やの事務所にNTT株が束になって積んであるのを見ました。100枚以上あったと思います。同社の株は86年に初めての売り出しがあって、翌年2月の上場後数カ月で株価が3倍近くまで上がった。当時、公募株は抽選になり、一般の人にはなかなか手に入りにくかったはず。それが事務所の机に山のように積んである。これには、さすがに驚きました」』、「毎週日曜日の夕刻には、坪庭に金融マンを集め、尾上は「行(ぎょう)」に入る。頃合いを見計らって証券マンが「〇×株はどうでしょうか?」と聞くと、彼女の口から「この株、上がるぞよ~」とか「売りじゃ」とご託宣が降りてくる」、「ご託宣」が外れる場合も多いだろうが、どうするのだろう。
・『「チケット買うたる」  銀行・証券マンたちと話していると、尾上が彼らを引き連れてパチンコに出かけることがあると聞かされた。 「私はパチンコをやらないんだけど、尾上は“ここでやりなさい”などと台を指示するそうなのです。すると、ジャンジャカ出るという。そんなことってあるのかと思いました」 当時、ワイドショーの司会を始めていた江本氏にとって、尾上は格好の取材先だったのである。 寺尾氏の著書にも出てくるように、尾上は江本氏のために大サービスもしてくれた。大阪港に寄港していた豪華客船、クイーン・エリザベス2でのショーだ。 「それはね、ある時、大阪で僕のトークショーがあると大黒やで飯を食っているとき話をしたんです。そうしたら尾上のおばちゃんが“じゃあチケット買うたるから”と言う。チケットが売れても私が儲かる仕組みではなかったのですが、彼女は店に来ている客たちを10人かそこら連れて、来てくれたんですよ」 江本氏が本拠地の東京から大阪に行くのは、年に数度。プロ野球解説の合間に大黒やを訪れていたが、91年になると、店にもバブル崩壊の足音が聞こえはじめた。 「途中から店をとりまく雰囲気が変わってきましてね。何だか事件になるような話がマスコミから流れてきたりしたのです。それで、行きにくくなり、大阪で用があっても大黒やを訪れることはなくなりました」』、「大阪港に寄港していた豪華客船、クイーン・エリザベス2でのショーだ・・・尾上のおばちゃんが“じゃあチケット買うたるから”と言う。チケットが売れても私が儲かる仕組みではなかったのですが、彼女は店に来ている客たちを10人かそこら連れて、来てくれたんですよ」、「途中から店をとりまく雰囲気が変わってきましてね。何だか事件になるような話がマスコミから流れてきたりしたのです。それで、行きにくくなり、大阪で用があっても大黒やを訪れることはなくなりました」、「江本氏」はバブル崩壊は経験せずに済んだようだ。さすがだ。
・『尾上から影響されたこと  すでに、大阪ではイトマン事件が表面化し、同社の河村良彦元社長や伊藤寿永光元常務が大阪地検特捜部に特別背任容疑で逮捕されていた。そしてマスコミ関係者の間では「イトマンの次は、尾上縫」と囁かれていたのだ。どこからか、それを聞きつけた尾上は、精神的に追い詰められるようになり、最後は自殺しかねない様子だったという。そのため大阪地検は捜査を早め、急遽、奈良地検から応援人員を頼んで、彼女の逮捕に踏み切る。 事件後、江本氏は彼女について人に話すことはほとんどなかった。一方、実刑判決を受けた尾上は出所後、2014年に亡くなり、生前に建てた高野山の墓所に葬られる。 当時、尾上との会話で印象に残っている言葉があるか、江本氏に聞いてみた。 「店の中で尾上のおばちゃんとは、世間話ぐらいしかしませんでした。でも彼女が“朝はちゃんと仏壇に線香と蝋燭を立てて、花の水も毎日替えてあげなアカンよ”とよく話していたのを覚えています。やることが神がかっていたのは確かだけど、昔の女性らしく親や先祖のことは大事にしていました。そう言われてから、私も先祖供養をきちんとやるようになった。彼女の言葉に影響されたのかもしれません」 30年という年月は長い。だが、つわものどもが徒花として散ったバブルの記憶は昨日のことのようでもある。 (江本氏の略歴はリンク先参照) 週刊新潮 2021年11月25日号掲載 特集「バブル崩壊から30年 不思議なめぐり逢いでベタ惚れされて…『江本孟紀』が初めて明かす“女帝相場師”『尾上縫』という徒花」より』、「江本氏」とのつながりは、今回の記事で初めて知った。最後は距離を置いたとは、「江本氏」はさすがだ。

第三に、本年5月27日付け東洋経済オンラインが掲載した作家・ジャーナリストの金田 信一郎氏による「「バブル」に踊らされた経営者に共通する考え方 EIEインターナショナルとバブル紳士に学ぶ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/673654
・『「景気が良くなんねえなあ」 そう嘆く社長は多い。いや、社長だけではない。大企業から中小企業まで、50代後半以上のオヤジ(私も含む)は、高い確率で「経済状態が悪い」と思っている。 昔はタクシーがつかまらなくて、1万円札をヒラヒラさせて止めたよなあ」 彼らの頭に焼き付いているのは、1980年代のバブル景気である。 だが、残念ながら、いくら待っても、そんな大波はやってこない。バブル景気とは、一般の景気循環とまったく違う。実質価値より価格が大きく超えて上昇している状態を指すものであり、そうなると皆が「われ先に」と買いに走るので、さらに価格が高騰する。そして、いつか夢がはじけ、経済が壊滅的な打撃を受ける。バブルは順ぐりに巡ってくるものではないし、そもそも巡らせてはならない』、興味深そうだ。
・『「バブル四天王」の多くの逸話  私はかつて『真説 バブル』(共著)を書くため、1年半にわたってバブル経済について調査・取材をした。バブル経済はカオスであり、集団的陶酔状態でもある。人々は正常な判断ができない。そして、そこには必ず、異常な状態に導いている人物がいる。 経済学者のガルブレイスもバブルを検証し、先導者の存在を指摘した。カネ集めに長けた「悪魔の錬金術師」が登場するというのだ。 80年代の日本のバブル経済にも、そんな男たちがいた。 「バブル四天王」。そう呼ばれたのは、麻布自動車の渡辺喜太郎氏、第一不動産の佐藤行雄氏、秀和の小林茂氏、そしてEIEインターナショナルの高橋治則氏だ。 彼らはそれぞれ数千億円から兆円単位のカネを動かしていた。不動産を転がし、銀行を手玉に取った彼らは多くの逸話を残している。 「社員旅行先はサイパン。専用ジェットを飛ばし、日本から花火師まで連れていった」「銀座のクラブを200万円で貸し切りにして、ママと風呂に入っていた」 中でも伝説的な男は高橋氏だろう。長銀などの金融機関から2兆円ものカネを借りて、世界の高級リゾートや一流ホテル、大学、ゴルフ場などを買いあさった。 慶応大学卒で、日本航空に入社、血縁に元長銀頭取がいたこともあって、バブル紳士の中では毛並みが良い人物とみられた。 だから、80年代後半、高橋氏が株式上場を目指すと、銀行がこぞってメインバンクの座を狙った。結果は、慶大出身の長銀マンが高橋氏に食い込んで勝利する。その頃、栃木に高橋氏のゴルフ場が完成、会員権は450万円から3000万円に跳ね上がった。その後、国内に次々とゴルフ場を造り、そのたびに会員権が数千万円で売れていった。 「日銀は1万円札しか刷れない。でも、私は1億円札が刷れるんですよ」。高橋氏はそう豪語した。 その1億円札こそが「環太平洋リゾート会員権」だった。EIEのリゾートを使える会員権を、億単位の価格で売り出す計画だった。そのため3機の自家用ジェットを購入。豪華な内装の中、シャンパンを飲みながら南の島に飛ぶ。このホテル買い占めツアーに、金融関係者や政治家が同行した。そして、即決に近い形で100億円単位の買い物に融資をしていった。 サイパンの最高級ホテル、ハイアット・リージェンシー・サイパンを皮切りに、「南太平洋最高のリゾート」と称された豪サンクチュアリー・コーブ、ハワイ高級リゾートなどを手にしていく。80年代後半だけで長銀は約5000億円を高橋氏のグループに注ぎ込む。 要するに、カネは膨らませたもの勝ちなのだ。リゾート構想なる大風呂敷を広げて、金額を膨らませていく。倍々ゲームである。どこの銀行も、貸し出し競争に負けじとマネーを注ぎ込んでいった。 だが中身は空っぽだった。高橋氏の部下にこっそり資産一覧を見せてもらったことがある。そこには物件名と買収額こそ記載されていたが、売上高や利益の数字が見当たらない。部下はこう解説した。 「それは、はっきり言って売上高がほとんどないからです。あれば書きますよ」 え、売り上げがない……。2兆円を使って買いあさった施設が、最盛期でも売上高は数十億円……。ということは、巨額の借金の利払いすらできないのでは』、「「日銀は1万円札しか刷れない。でも、私は1億円札が刷れるんですよ」。高橋氏はそう豪語」、「その1億円札こそが「環太平洋リゾート会員権」だった。EIEのリゾートを使える会員権を、億単位の価格で売り出す計画だった。そのため3機の自家用ジェットを購入。豪華な内装の中、シャンパンを飲みながら南の島に飛ぶ。このホテル買い占めツアーに、金融関係者や政治家が同行した。そして、即決に近い形で100億円単位の買い物に融資をしていった」、「2兆円を使って買いあさった施設が、最盛期でも売上高は数十億円……。ということは、巨額の借金の利払いすらできないのでは」、返済のことを考えずに借金するムードも確かにあった。
・『「責任」を負わない高橋兄弟  そして90年代、バブル経済が崩壊する。慌てた長銀はEIEグループに役員を送り込み、資産売却を進めるが、価格暴落でほとんど回収できなかった。結果、名門バンクの長銀は、98年にあえなく破綻し、高橋氏の会社も破産宣告を受け、自身も背任の罪に問われることになる。 だが当時、高橋氏を訪ねて元赤坂のオフィスに行くと、彼は悠然とデスクにふんぞり返っていた。 「あれは、銀行が勝手に貸し付けてきたものですからね」 はあ。でも、借りたのは高橋さんですよね? 当時、兄の高橋治之氏にも会いに行った。場所は築地の旧電通本社ビル。そう。五輪汚職事件で受託収賄罪に問われている電通元専務が実兄である。 治之氏はこう弟をかばった。 「周囲にはめられただけだ」 え、はめられた? だって、銀行から借りたのは事実であり、その経営トップは治則氏では? だが、この兄弟に「責任」という文字はない。今回の五輪の贈収賄事件もそうだ。公職の立場にありながらスポンサー選定で便宜を図り、見返りにカネを受け取っていた。なのに「関わっていない」「公職とは知らなかった」という。 おそらく、スポーツの世界大会を日本に引っ張ってきてやったんだ、という思いが強いのだろう。 スポーツにカネを出せ、と。 誰が払うって、スポンサーになりたい大企業だよ、大企業! テレビ局も、もっと放映権料を出せよ。じゃないと、ほかの局に持ってくぞ。今はアマゾンやネット放送だってあるんだからな! この豪腕によって、五輪やワールドカップなどの国際スポーツ大会は費用が吊り上げられている。つまり、バブル状態なのだ。 これからも、巨額の放映権料をテレビ局が払えず、視聴者である我々は、その都度、アマゾンプライムやらWOWOWやらに加入するかどうか、迷うことになる。 「地上波で流せるように、テレビ局が払えよ」という声もある。だが、問題はそう単純ではない。テレビ局が放映権を買うということは、広告を出している大企業が払っている構図なのだ。だから、商品価格が上がるなどして、結局は国民が「高すぎるスポーツ放映権料」を払うことになる。 その上、高橋氏は各企業にコンサルティング料を5000万円とか7000万円とか払わせている。やはり、バブルってやつが巡ってきてはいけないのである。 【情報提供をお願いします】東洋経済ではあなたの周りの「ヤバい会社」「ヤバい仕事」の情報を募っています。ご協力いただける方はこちらへ』、「兄の高橋治之氏にも会いに行った・・・五輪汚職事件で受託収賄罪に問われている電通元専務が実兄である。 治之氏はこう弟をかばった。 「周囲にはめられただけだ」 え、はめられた? だって、銀行から借りたのは事実であり、その経営トップは治則氏では? だが、この兄弟に「責任」という文字はない。今回の五輪の贈収賄事件もそうだ。公職の立場にありながらスポンサー選定で便宜を図り、見返りにカネを受け取っていた。なのに「関わっていない」「公職とは知らなかった」という。 おそらく、スポーツの世界大会を日本に引っ張ってきてやったんだ、という思いが強いのだろう」、それにしても、兄弟揃って、無責任なのには呆れる。「スポーツにカネを出せ、と。 誰が払うって、スポンサーになりたい大企業だよ、大企業! テレビ局も、もっと放映権料を出せよ。じゃないと、ほかの局に持ってくぞ。今はアマゾンやネット放送だってあるんだからな! この豪腕によって、五輪やワールドカップなどの国際スポーツ大会は費用が吊り上げられている。つまり、バブル状態なのだ。 これからも、巨額の放映権料をテレビ局が払えず、視聴者である我々は、その都度、アマゾンプライムやらWOWOWやらに加入するかどうか、迷うことになる」、「国際スポーツ大会」では「バブル状態なのだ」、とはやれやれだ。
タグ:「和食嫌いの私でも美味しく食べられる料理を作ってくれた。鴨料理やカツオのたたきなどが絶品なのです。ところが、ある日突然、料亭は閉店。料理人もぷっつりと連絡がつかなくなっていました。それが、たまたま道を聞いた従業員の店にいるというではありませんか。偶然の再会とはこのこと。その小料理屋の名が『大黒や』だったのです」、「この日を境に江本氏は大阪に行くたび大黒やを訪れるようになる。江本氏からすれば、板前の料理が目当てだった」、 「江本氏」とのつながりは、今回の記事で初めて知った。最後は距離を置いたとは、「江本氏」はさすがだ。 「住友銀行が、検察・国税との関係が深まるきっかけとなったのは、検事総長だった安原美穂・・・を顧問弁護士に迎えたことだった。安原を囲む現役検察幹部らの親睦の会ができ、それを住友銀行が支えた」、「親睦の会」の費用も「住友銀行」が負担したのだろうか、当時だったらあり得る話だ。 「大阪港に寄港していた豪華客船、クイーン・エリザベス2でのショーだ・・・尾上のおばちゃんが“じゃあチケット買うたるから”と言う。チケットが売れても私が儲かる仕組みではなかったのですが、彼女は店に来ている客たちを10人かそこら連れて、来てくれたんですよ」、「途中から店をとりまく雰囲気が変わってきましてね。何だか事件になるような話がマスコミから流れてきたりしたのです。それで、行きにくくなり、大阪で用があっても大黒やを訪れることはなくなりました」、「江本氏」はバブル崩壊は経験せずに済んだようだ。さすがだ。 「住友銀行により吸収合併された平和相互銀行・・・この合併劇に深く関わっていたのが國重だった。その国重が合併劇の内幕を一部始終を書き残したのが“國重メモ”だ」、「伝説の“MOF担”」による「メモ」とは興味深そうだ。 児玉 博氏による「バブルの狂乱、いま明かされる銀行と権力の「すさまじい暗闘」の全深層」 「大阪港に寄港していた豪華客船、クイーン・エリザベス2でのショーだ・・・尾上のおばちゃんが“じゃあチケット買うたるから”と言う。チケットが売れても私が儲かる仕組みではなかったのですが、彼女は店に来ている客たちを10人かそこら連れて、来てくれたんですよ」、 「毎週日曜日の夕刻には、坪庭に金融マンを集め、尾上は「行(ぎょう)」に入る。頃合いを見計らって証券マンが「〇×株はどうでしょうか?」と聞くと、彼女の口から「この株、上がるぞよ~」とか「売りじゃ」とご託宣が降りてくる」、「ご託宣」が外れる場合も多いだろうが、どうするのだろう。 「江本氏・・・「でも、実をいえば私は和食が嫌いだったんです。酒も飲まないし、寺尾さんに誘われただけなら、彼女の店に行くのは、その一回だけで終わっていたかもしれません」、「江本氏」も無理をして付き合ったのだろうか。 「尾上は、初対面からすっかり彼のことを気に入ってしまう。当時40歳前後の江本氏は188センチのすらりとしたスタイルに端正な甘いマスク。人当たりが良くて話も面白く、おまけに有名人である。江本氏が豪華客船でディナーショーを開くと聞けば、チケットを数十枚も買い証券会社や銀行の幹部らを引き連れて観に行くほどの入れ込みようだった」、大いにあり得る話だ。 「兄の高橋治之氏にも会いに行った・・・五輪汚職事件で受託収賄罪に問われている電通元専務が実兄である。 治之氏はこう弟をかばった。 「周囲にはめられただけだ」 え、はめられた? だって、銀行から借りたのは事実であり、その経営トップは治則氏では? だが、この兄弟に「責任」という文字はない。 そのため3機の自家用ジェットを購入。豪華な内装の中、シャンパンを飲みながら南の島に飛ぶ。このホテル買い占めツアーに、金融関係者や政治家が同行した。そして、即決に近い形で100億円単位の買い物に融資をしていった」、「2兆円を使って買いあさった施設が、最盛期でも売上高は数十億円……。ということは、巨額の借金の利払いすらできないのでは」、返済のことを考えずに借金するムードも確かにあった。 「「日銀は1万円札しか刷れない。でも、私は1億円札が刷れるんですよ」。高橋氏はそう豪語」、「その1億円札こそが「環太平洋リゾート会員権」だった。EIEのリゾートを使える会員権を、億単位の価格で売り出す計画だった。 金田 信一郎氏による「「バブル」に踊らされた経営者に共通する考え方 EIEインターナショナルとバブル紳士に学ぶ」 「店に顔を出すと必ずといっていいほど、尾上のおばちゃんがやってきて私のテーブルについたんです」、「「和食嫌いの私でも美味しく食べられる料理を作ってくれ」る「料理人」が「目当てだった」とは面白いものだ。 「江本氏と、尾上には、どんな接点があったのだろうか」、確かに不思議だ。 超大企業としか取引しない「興銀」の「黒澤洋頭取が、夫婦連れで」、「料亭「恵川」のおかみ・尾上縫」、「を表敬訪問」、との事実は国会喚問で明らかにされただけに、全国に大きな衝撃を与えた。 デイリー新潮「投資額は2兆7700億円 江本孟紀が初めて明かす“女帝相場師・尾上縫”の素顔」 住友との合併に反対していた検察OBで平和相互銀行監査役の「伊坂」を「特別背任容疑で東京地検特捜部の手によって逮捕」とは、単に反対していただけでなく、どこかから裏金でも受け取っていたのかも知れない。「検察」をここまで利用し尽くしたとは、さすが住友銀行だ。 「松下は検事総長、伊藤と面会する。メモはこう記している。〈伊藤栄樹に会った。「金繰りピンチ。早く動いてくれないとパンクしてしまうかも」と言ったら、「わかった」・・・「平和相互銀行の信用不安が株式市場に流れ始め、同銀行からの預金流失が続いている状況を松下は「金繰りピンチ」と訴えた」、「吉永公判部長より自宅から(松下の)自宅に電話あり。「昨日、次席検事と会った。その話では本件大きくならない・・・」、「住友銀行」の情報網は、驚くほどしっかりしていたようだ。 「「騒がしくなる」 伊坂の逮捕は間違いないだろう〉 松下は直接、東京地検に出向き、そこで東京地検幹部と面談。事件の感触を掴み、それを国重に伝えている。このように松下、つまり住友銀行の検察担当は捜査当局に入り込み、情報を入手していた。もちろん、捜査当局側とて微妙な駆け引きはしていただろうが」、反対派をそれを上回る「検察の序列」を通じて潰すとは、凄い工作だ。 「「平和相互銀行」内で合併に強行に反対している勢力の存在だった。その筆頭が元東京地検特捜部の検事で“カミソリ伊坂”とも異名をとった監査役、伊坂重昭だった。伊坂を筆頭に同銀行幹部3人は合併に反対しており、特に伊坂の存在は悩ましかった」、これに対し、「伊藤 心配するな。自分が(検事)総長になるであろう。12月下旬以降、1月か2月には必ずなる」、 東洋経済オンライン これからも、巨額の放映権料をテレビ局が払えず、視聴者である我々は、その都度、アマゾンプライムやらWOWOWやらに加入するかどうか、迷うことになる」、「国際スポーツ大会」では「バブル状態なのだ」、とはやれやれだ。 「スポーツにカネを出せ、と。 誰が払うって、スポンサーになりたい大企業だよ、大企業! テレビ局も、もっと放映権料を出せよ。じゃないと、ほかの局に持ってくぞ。今はアマゾンやネット放送だってあるんだからな! この豪腕によって、五輪やワールドカップなどの国際スポーツ大会は費用が吊り上げられている。つまり、バブル状態なのだ。 今回の五輪の贈収賄事件もそうだ。公職の立場にありながらスポンサー選定で便宜を図り、見返りにカネを受け取っていた。なのに「関わっていない」「公職とは知らなかった」という。 おそらく、スポーツの世界大会を日本に引っ張ってきてやったんだ、という思いが強いのだろう」、それにしても、兄弟揃って、無責任なのには呆れる。 現代ビジネス (その他、その2)(バブルの狂乱 いま明かされる銀行と権力の「すさまじい暗闘」の全深層、投資額は2兆7700億円 江本孟紀が初めて明かす“女帝相場師・尾上縫”の素顔、「バブル」に踊らされた経営者に共通する考え方 EIEインターナショナルとバブル紳士に学ぶ) バブル崩壊
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今日は更新を休むので、明日にご期待を!

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電気自動車(EV)(その13)(日本電産 業績急悪化に潜んだ巨額買収のツケ ヨーロッパ買収企業が顧客とトラブル 損失に、日産元COOの志賀氏がEVの出遅れに警鐘「日本は世界から取り残される」) [産業動向]

電気自動車(EV)については、昨年2月21日に取上げた。今日は、(その13)(日本電産 業績急悪化に潜んだ巨額買収のツケ ヨーロッパ買収企業が顧客とトラブル 損失に、日産元COOの志賀氏がEVの出遅れに警鐘「日本は世界から取り残される」)である。

先ずは、本年2月10日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリストの大清水 友明氏による「日本電産、業績急悪化に潜んだ巨額買収のツケ ヨーロッパ買収企業が顧客とトラブル、損失に」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/651556
・『1月24日、日本電産は2023年3月期第3四半期の決算説明会で、通期の営業利益を当初予想より1000億円少ない1100億円、最終利益を1050億円少ない600億円と、大幅に下方修正した。パソコンのハードディスク市場の急速な縮小や中国でのロックダウンによる影響などで市場環境が急速に悪化しているとして、第3四半期に128億円、第4四半期には500億円を投じて収益構造を改善するための改革に乗り出すという。 説明会で永守重信会長は、「前経営陣が外部から来て好き放題の経営をやって、大きな負の遺産を作って去っていった。そうしたいろいろなゴミをすべてきれいにしてしまおうということだ」と述べて、昨年9月に辞任へと追い込んだ関潤前社長に責任転嫁するかのような発言をした。 とても聞き捨てできるものではないが、こうした構造改革費用には、ほかにも看過できない事情があった』、「日本電産」は本年4月1日から社名をニデックに変更した。「永守重信会長」は都合が悪いことは「関潤前社長に責任転嫁」したが、本当のところは自分自身の責任のようだ。
・『誰も突っ込まなかった問題  出席したアナリストが構造改革に取り組む理由を重ねて尋ねたところ、永守氏はヨーロッパで起きた問題に前経営陣が「スピード感を持って対応せず、客先にも行かず、工場にも出向かなかったばかりか、さまざまな問題を処理せずに放置した」と述べた。 「日本電産の基本的な姿勢は『すぐやる、必ずやる、できるまでやる』で、それが強い行動指針になっている。(前経営陣のように)問題を半年も1年も放置すれば、どんなものでも腐って臭いが出てきて、誰も直すことができなくなる。それが今回の大きな損害を出した主因だ」 ただ、ヨーロッパで起きた問題の具体的な中身について、この日の説明会では十分な説明はなく、出席したアナリストや記者からも突っ込んだ質問がなかった。そのため、もやもやとした消化不良感ばかりが残った。 ヨーロッパで起きた問題とは何だったのか。筆者はその一端を示す日本電産の内部資料を入手した。) 資料とは、日本電産の子会社であるドイツの自動車部品メーカーGPM社が起こした顧客とのトラブルについてのものだ。顧客はイギリスの自動車メーカーのジャガー・ランドローバー(以下、ジャガー社)である。GPM社が生産したウォーターポンプの不具合によって出た損害に対して、2021年10月にジャガー社から賠償を求められたという。 GPM社はエンジンの冷却水を循環させるための部品であるウォーターポンプのメーカーとしてヨーロッパでもトップクラスのシェアをもち、日本電産が2015年2月に買収した。ジャガー社との間でトラブルとなったポンプは2016年6月に生産を開始、2019年3月になって最初の市場不具合が報告された。 不具合の内容は、流量をコントロールする機能がうまく作動しないために冷却水の水温が上昇し、それが原因でラジエーターのファンが騒音を出すというものだ。GPM社では対策に苦慮し、翌年にソフトウェアを変更する改善策を取ったが、部品交換代やソフトウェアの変更コストとしてジャガー社から31億円余りを請求されるに至った』、「ジャガー社との間でトラブルとなったポンプ・・・不具合の内容は、流量をコントロールする機能がうまく作動しないために冷却水の水温が上昇し、それが原因でラジエーターのファンが騒音を出すというもの・・・ジャガー社から31億円余りを請求されるに至った」、みっともないトラブルだ。
・『「コスト感性をもっと磨け!」日本電産の稟議書  入手した資料の中には、ジャガー社からの求償に対し25億3300万円を上限に和解調停することに、取締役会の了解を求める稟議書も含まれている。決裁の日付は2022年6月22日。会長である永守氏の大きな決裁印が押され、「AMEC(=車載事業本部)のデタラメな先おくり対応が大問題である」、「天からお金はふってこない」と手書きで書き込まれた永守氏によるメモや「コスト感性をもっと磨け!」との赤字のスタンプが押され、永守氏が巨額の和解金を支払うことに強い不満を持っていたことがうかがえる。 なお、この決裁の後、直ちに和解に至ったが、この経緯を日本電産は詳しく説明していない。それはなぜか。こうしたトラブルを説明することによって過去の買収が失敗だったと批判される可能性があるからではないか。 日本電産がM&Aを繰り返すことで事業規模を大きくしてきたことはよく知られている。その数は2021年9月までで67社に上る。メディアでは「M&Aの名手」などと喧伝され、永守氏自身も日経BP社から出版した『永守流 経営とお金の原則』で、〈これまでのM&Aの成果を勝ち負けでいうなら「67勝0敗」である。つまりすべて成功、失敗はゼロだ〉と自画自賛するが、日本電産の元幹部は「M&Aで100%成功はウソ。少なくともドイツでの買収は完全に失敗している」と言い切る。 社内でも「ババを引いた」と言われるのが、このGPM社である。買収前からその技術力を不安視する声もあったが、永守氏自身は自信満々に買収を進めたのである。数百億円もの巨費を投じたGPM社の買収について2014年12月12日付日本経済新聞でこう述べていた。 「GPMは75年の歴史があり、多くの人が商品イメージを持ち、技術力を高く評価している。環境規制で最低でも世界の車の半分はアイドリングストップが搭載されるようになり、売り上げ、利益の成長が短期で期待できる」) なお、ジャガー社とのトラブルのもととなったポンプの生産開始は2016年、最初の市場不具合が報告されたのは2019年で、いずれも関氏が社長に就任する以前のことだ。それなのに、「処理が遅い」と責任だけ負わされては関氏もたまったものではないだろう。 稟議書が決裁された昨年6月といえば、2年前に社長に就任したばかりの関氏が永守氏と衝突し、事実上、国内から追放される形でドイツに常駐して欧州の問題案件の処理に当たっていたころである。その3カ月後には社長を解任されてしまう』、「「永守氏」は「M&Aの名手」などと喧伝され・・・これまでのM&Aの成果を勝ち負けでいうなら「67勝0敗」である。つまりすべて成功、失敗はゼロだ〉と自画自賛」、「GPM社・・・買収前からその技術力を不安視する声もあったが、永守氏自身は自信満々に買収を進めた・・・数百億円もの巨費を投じたGPM社の買収」、「トラブルのもととなったポンプの生産開始は2016年、最初の市場不具合が報告されたのは2019年で、いずれも関氏が社長に就任する以前のことだ。それなのに、「処理が遅い」と責任だけ負わされては関氏もたまったものではないだろう」、その通りだ。
・『関前社長「本件以外の“負の遺産”」  入手した内部資料の中には、稟議書が関係する役員や担当者らに回覧された際に、それぞれが付したコメントの一覧も含まれる。その中の1つに興味深いものがある。当時、社長だった関氏によるコメントだ。 「本件以外の“負の遺産”も含め健全化を急ぎます」 GPM社がトラブルを抱える顧客はジャガー社だけではない。すでにダイヤモンドオンラインが報じているが、ダイムラー社との間でもGPM製のポンプの不具合をめぐって巨額の損害賠償を求められているという。関氏の指す「本件以外の“負の遺産”」はどこまで広がっているのだろうか。 1月24日の決算説明会で永守氏は、構造改革に600億円以上の金額を積むことについて質問され、こう述べている。 「(構造改革にかかる費用は)欧州の負の遺産がいちばん多いわけで8割ぐらい占める。いま品質問題でトラブっているやつがリコールになるんじゃないかとか、そういうことを想定して金額を算出しているわけだ。必ずしもそうなると決まったわけではないが、来期以降に減益要因にならないように引き当てを済ませておく」 説明会の翌日にインターネットで公開された音声を聞いて私は驚いた。そして、説明会に参加したアナリストや記者からさらなる説明を求める質問が出なかったことが不思議で仕方がなかった。処理に数百億円もかかりかねない品質問題が起き、リコールになるおそれもあることを永守氏が自ら認めているというのに、それを追及しないとは。 筆者は以前に日本電産の子会社が顧客に無断で製品の仕様を変更していた問題を明らかにしたが(「仕様を無断変更か、日本電産が抱える新たな問題空調機器用モーター子会社に無理な収益要求」)、このときも日本電産は事実を明らかにしようとせず、他のメディアはこの問題をさして追及しようとはしなかった。 仕様の無断変更という重大問題はメーカーには説明しても公表されず、今回のGPMの問題もいっさい公に説明がない。こんなことを続けていれば、日本電産が信用を失うことになるのではないか』、「ダイムラー社との間でもGPM製のポンプの不具合をめぐって巨額の損害賠償を求められている」、その分の損失は今回引き当てしたようだ。取材記者が「永守」氏に忖度して甘やかしてきたことが、後継者問題をこじらせた問題につながったのではあるまいか。

次に、4月18日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した佃モビリティ総研代表の佃 義夫氏による「日産元COOの志賀氏がEVの出遅れに警鐘「日本は世界から取り残される」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/321435
・『EV化は製品ではなく産業構造のシフト 日本の出遅れに懸念  カーボンニュートラル(CN)実現に向けて、世界的な“EVシフト”という大きなうねりが自動車業界に押し寄せている。「CASE革命」がありふれた言葉となったように、「コネクテッド」「自動運転」「カーシェアリングサービス」や、とりわけ「電動車」などでの技術革新が生き残りへのカギを握る。 だが、日本自動車産業全体のEV出遅れは、世界新車販売において明確な実績として反映されている。2022年のBEV世界販売は約726万台で21年に比べ7割増となったが、日本市場は軽自動車EVが注目されたものの全体で約5万8800台、乗用車に占める割合は1.7%にとどまっている。 その中にあって日本車を引っ張るトヨタ自動車は、佐藤恒治新社長へ体制を移行するとともに、4月7日に方針説明会を行ってEV戦略強化に拍車をかけることを明言にした。佐藤トヨタ新体制は全方位戦略を貫きつつ「EVファースト」を前面に掲げてきている。 この佐藤トヨタ新体制の方針発表に先立つ3月末には、EU委員会が35年以降も合成燃料e-fuelを使用するエンジン車を容認することを発表するなど、方針転換の動きも出てきた。元々「脱炭素は、EV一辺倒ではない」ことも確かだが、それでも、世界の趨勢はEVシフトにあることは間違いない。 志賀俊之・元日産COOは「日本車全体のEV施策の遅れによって、日本は世界から取り残されることになる」と危惧し真剣に警鐘を鳴らす。前回のインタビューに引き続き、改めて日産の最高執行責任者としての経営体験に加え、官民ファンドで日本のスタートアップ企業などを支援する今の立場で志賀氏に俯瞰した日本自動車産業の進むべき道を聞いた(Qは聞き手の質問)。 Q:まずは、EVシフトに対して日本車の出遅れがよく指摘されています。CNの実現、脱炭素に向けてはいろいろな見方がありますが、世界では大きなうねりとしてEVシフトが進んでいる中で、志賀さんは日本の出遅れに警鐘を鳴らしていますね。) 志賀俊之・元日産COO(以下、志賀氏) 業界の将来に対して、いくつか心配しているところがあるんですが、一番心配しているのは日本の自動車産業の行方ですね。私は、日本自動車工業会の会長をやった時に東日本大震災も経験したんですが、そこで実感したのは日本の自動車産業の強みはOEM(自動車メーカー)だけでなく、部品産業のティア1、2、3、4とあらゆる部品企業によるものということでした。現在、スタートアップを支援している立場でティア2、3クラスの社長さんたちと議論する機会が多いんですが、彼らから「これからどうなっていくんですか?EVシフト・EV化は本当に起きるんですか?」と聞かれるのが実態なんですね。 Q:確かに、内燃機関エンジン車からEVに置き変われば、部品点数が約3万点から2万点に3分の1に減るといわれています。関連部品企業は、その方向がよく見えないことで不安視しているんでしょうね。 志賀氏 そう、インフラ充電網が整備され、航続距離が上がりコストは下がって、EVの価値が認められるようになればお客様もEVが買えるようになるね、ということですが、EVシフトとは、製品のシフトというより産業のシフトということですから、産業転換が必要なんです。私が心配してるのは、本当にEVシフトが起きた際に、これだけ大きなピラミッド構造を抱える日本の自動車産業の構造転換が間に合いますか、ということで警鐘を鳴らしているんです。 Q:つまり、日本はエンジン部品を軸とした従来の自動車サプライチェーン(供給網)の産業構造転換を急ぐべきだと。 志賀氏 EVシフトが遅れれば、産業構造転換が遅れ、ひいては日本が世界から取り残されることになる。これをものすごく不安なこととして懸念しています。また、EVになると部品点数が減るといわれますが、そうでもない。自動運転やCASE対応で車は複雑になり、モジュール化の中でもこれに対応する新たな部品が出てくることにもなります。 Q:日本のモノづくりを管轄する経済産業省などはどう見てるんでしょうか。また、世界を見るとEVシフトで構造転換はどう動いているんですかね』、「内燃機関エンジン車からEVに置き変われば、部品点数が約3万点から2万点に3分の1に減るといわれています。関連部品企業は、その方向がよく見えないことで不安視しているんでしょうね」、「私が心配してるのは、本当にEVシフトが起きた際に、これだけ大きなピラミッド構造を抱える日本の自動車産業の構造転換が間に合いますか、ということで警鐘を鳴らしているんです」、「EVシフトが遅れれば、産業構造転換が遅れ、ひいては日本が世界から取り残されることになる。これをものすごく不安なこととして懸念しています。また、EVになると部品点数が減るといわれますが、そうでもない。自動運転やCASE対応で車は複雑になり、モジュール化の中でもこれに対応する新たな部品が出てくることにもなります」、「自動運転やCASE対応で車は複雑になり、モジュール化の中でもこれに対応する新たな部品が出てくる」、一般論では見落とされがちな点だ。
・『志賀氏 経産省も地方の経産局とも連動して「ミカタプロジェクト」なるもので動き出していますよ。部品企業はみんな迷っているんですから。海外では特に欧州が割り切って進んでいますね。マフラーやトランスミッションなどの部品企業が集約したり残存者利益を得たりすることで、新規事業への構造転換に動いています。その意味では、日本は一口で言えば「じれったい」のが本音です。 Q:それでは、日本の自動車産業はどうすればいいんですかね。 志賀氏 その意味では、自動車は日本の市場だけでは食っていけない。日本だけではガラパゴスになってしまう。世界のトレンド、マーケットの動向に対抗してやっていかねばならない。 OEMサイドはそれができちゃうんですが、部品系はどうなのか。35年には欧米でエンジン車が販売できなくなるが(欧州は合成燃料限定でエンジン車容認に転じた)、日本ではハイブリッド車も含めて電動車として容認されているから、エンジン車は残るとされる。だから20年先なら何もしなくていいよね、との考えにもなる。 国全体で35年、40年が見えているかどうかが分かりづらいのが問題なんです。日本のマーケットも縮んではいるが、年間約500万台販売しており35年にEVが4割、40年には8割となると、そこに向かって対応しなければならない、ということです。 Q:EVシフトとともに、この100年に一度の大変革におけるCASE関連で産業構造の転換を促すのがソフトウエアといわれています。EVと自動運転は親和性が高いし、つながるクルマなども含めてソフトウエアがカギを握る。 志賀氏 そう、もう一つ日本自動車産業の方向の中で心配しているのが、ソフトウエアですね。独フォルクスワーゲン(VW)なども苦労しており、世界中の自動車メーカーがソフトウエアとEVをパッケージで考えて、自動運転も含めた競争力をどう維持していけるかということを考えています』、「海外では特に欧州が割り切って進んでいますね。マフラーやトランスミッションなどの部品企業が集約したり残存者利益を得たりすることで、新規事業への構造転換に動いています。その意味では、日本は一口で言えば「じれったい」のが本音です」、「日本自動車産業の方向の中で心配しているのが、ソフトウエアですね。独フォルクスワーゲン(VW)なども苦労しており、世界中の自動車メーカーがソフトウエアとEVをパッケージで考えて、自動運転も含めた競争力をどう維持していけるかということを考えています」、「ソフトウエア」では「日本」は苦労しそうだ。
・『今のままでは日本は弱い。内燃機関関連が減っていく中で自動車メーカーも従来のメカニカルエンジニアからソフトウエアエンジニアを増やしていくなど、人的なシフトが求められている。あるいは最近はやりのリスキリングですかね(笑)。本当にこれを加速していかないと間に合わなくなる。これも大きな警鐘の一つですね。 Q:日本の自動車メーカーは乗用車8社にトラック4ブランドが生き残ってきた世界でもまれなケースですが、自動車メーカーの牙城が強くスタートアップがなかなか育たない状況もあります。 志賀氏 EVのスタートアップは何社か出てきていますが、実は資金調達、投資が間に合わない。米国などはテスラの他にも新興メーカーのリヴィアンなどが出てきて、相当資金が流れています。日本は乗用車と商用車で12ものブランドがあり、大企業エコシステムがデカくてなかなか隙間がない。新たなイノベーションが起こらない一つの理由でしょう。われわれのような官民ファンドも含めてベンチャーキャピタルが応援していますが、欧米に比べるとまだまだ規模が小さい。 それでもソニー・ホンダのような新たなフォーメーションも出てきています(筆者注:日立オートモティブシステムズとホンダ系部品3社が統合した日立AstemoがEVシフトをにらんで工場投資をするのに、官民ファンドのJICキャピタルが出資して支援することが3月30日に発表されるなど、ファンドの動きも見られるようになっている)。 Q:日本のEV市場も中国BYDや韓国・現代自動車が参入し、昨年は日産・ホンダの軽EVがカーオブザイヤー三冠を独占するなど、ようやく「EV元年」スタートと言われました。 志賀氏 軽EVは本当にようやくですね。私が日産COO最後の年の13年6月に三菱自動車工業と共同開発の軽デイズの発表を三菱の水島工場でやったんですが、その時に益子さん(故益子修三菱自工元社長)と「次は軽EVをやろうね」と言ってたのがちょうど10年かかったんですよ。それでも日本のEVは緒に就いたばかりです。 Q:豊田章男自工会会長の日本自動車連合を引っ張るリーダーシップが脱炭素は「EV一辺倒でない」という立場を取っていることから、日本のEVが出遅れているとの見方もあります』、「昨年は日産・ホンダの軽EVがカーオブザイヤー三冠を独占するなど、ようやく「EV元年」スタートと言われました」、「豊田章男自工会会長の日本自動車連合を引っ張るリーダーシップが脱炭素は「EV一辺倒でない」という立場を取っていることから、日本のEVが出遅れているとの見方もあります」、出遅れにはトヨタの責任も大きそうだ。
・『志賀氏 まあ、章男自工会会長ということだけではなく、各社が悩ましい時期に来ているんじゃないんですかね。かつて私が日産COOをやっていたころは経営オペレーションが明快でしたから。つまり、どうしたら成長できるか、もうけることができるかについて本当にシンプルな答え、法則があったんです。「いいものをより安く提供する」ということですね。9年間、日産のCOOとしてオペレーションを任され迷うことはなかったんです。 しかし、この100年に一度の大変革期における経営者は「全方位でやるのか、集中と選択でやるのか」、集中するなら「限られた経営資源でどこに集中するのか」ということに悩んでいるのでしょう。 世界を見渡すと、GMのメアリー・バーラCEOの戦略が明快ですね。「EVと自動運転」に集中するという明確な戦略です。経営者が方向性をはっきりさせて集中と選択を進める好例として受け止めています。 もちろん、経営資源が限られる中で行う集中と選択に対して、世界各地域に対応した全方位戦略も必要でしょう。だが、例えば「全方位といわれてもどこに行くんですか」との問いに、2030年には○○で、2040年には○○で、そして「2050年には内燃機関車はないぞ」とのマイルストーンを、OEMから裾野のサプライヤーに対して出してあげることも必要なんじゃないかな。 世界の趨勢を見渡すと、ここ数年で各国政府によるEVへの傾斜が鮮明になっている。温暖化防止の大義で先行する欧州だけでなく、EVを世界自動車覇権の柱に据える中国や、バイデン政権の米国もEV重視を明確に打ち出している(バイデン米政権は4月12日に自動車新環境規制の導入を発表、この新規制で32年に新車販売の最大7割がEVとなる)。こうした情勢にあって日本車のEV出遅れがかねて指摘されてきた』、「世界の趨勢を見渡すと、ここ数年で各国政府によるEVへの傾斜が鮮明になっている。温暖化防止の大義で先行する欧州だけでなく、EVを世界自動車覇権の柱に据える中国や、バイデン政権の米国もEV重視を明確に打ち出している」、「日本車のEV出遅れがかねて指摘されてきた」、その通りだ。
・『日本の電源構成ではEVの実質的なCO2排出量はさほど減らない上、高コストな電池や充電設備の未整備、航続距離の問題など、消費者サイドが自発的にEVを選ぶには課題も多い。 日本車をリードするトヨタが脱炭素へ全方位(ハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、燃料電池車、バッテリーEV、水素、CN燃料)戦略を掲げる中で「EVも本気」と宣言したのが豊田章男前社長(現会長)だった。それが4月に就任した佐藤恒治新社長は、7日のトヨタ新体制方針説明会で「マルチパスウェイ(全方位)の軸をぶらさずに、BEVの開発、投入に積極的に取り組んでいく」と、EV本格転換を打ち出した。また、「これまでBEVに対する具体的なファクトを十分に示せていなかったかなと反省しています」と、トヨタのEV出遅れを指摘する声に応えるような発言も示した。 いずれにしても、志賀氏の「日本車のEV出遅れは日本自動車産業の構造転換の遅れとなり、世界から取り残されることになる」という主張と懸念に対し、トヨタもこのEV本格化の方針で、産業構造転換に向けた歩みが進むことになった。 軽EVの日産「サクラ」/三菱自「ekクロスEV」がヒットした22年は「日本のEV元年」と言われたものの、日本の新車販売に占めるEVは1.7%にとどまる。世界販売ではEV比率は1割に達し、中国は約2割、欧州は1割、米国は5%で日本車のEVシフトの遅れが逆に鮮明となった。 カーボンニュートラルの時代、世界のEVシフトの進展スピードが加速する中で、モビリティの在り方やビジネスモデルはどう変革していくのか。注視していきたい』、「4月に就任した佐藤恒治新社長は、7日のトヨタ新体制方針説明会で「マルチパスウェイ(全方位)の軸をぶらさずに、BEVの開発、投入に積極的に取り組んでいく」と、EV本格転換を打ち出した。また、「これまでBEVに対する具体的なファクトを十分に示せていなかったかなと反省しています」と、トヨタのEV出遅れを指摘する声に応えるような発言も示した」、「トヨタ」が遅まきながら「EV本格転換を打ち出した」のは結構なことだ。ただ、これまでの世界的な遅れを取り戻すのは容易ではないだろう。
タグ:電気自動車(EV) 「ダイムラー社との間でもGPM製のポンプの不具合をめぐって巨額の損害賠償を求められている」、その分の損失は今回引き当てしたようだ。取材記者が「永守」氏に忖度して甘やかしてきたことが、後継者問題をこじらせた問題につながったのではあるまいか。 「トラブルのもととなったポンプの生産開始は2016年、最初の市場不具合が報告されたのは2019年で、いずれも関氏が社長に就任する以前のことだ。それなのに、「処理が遅い」と責任だけ負わされては関氏もたまったものではないだろう」、その通りだ。 「4月に就任した佐藤恒治新社長は、7日のトヨタ新体制方針説明会で「マルチパスウェイ(全方位)の軸をぶらさずに、BEVの開発、投入に積極的に取り組んでいく」と、EV本格転換を打ち出した。また、「これまでBEVに対する具体的なファクトを十分に示せていなかったかなと反省しています」と、トヨタのEV出遅れを指摘する声に応えるような発言も示した」、「トヨタ」が遅まきながら「EV本格転換を打ち出した」のは結構なことだ。ただ、これまでの世界的な遅れを取り戻すのは容易ではないだろう。 「世界の趨勢を見渡すと、ここ数年で各国政府によるEVへの傾斜が鮮明になっている。温暖化防止の大義で先行する欧州だけでなく、EVを世界自動車覇権の柱に据える中国や、バイデン政権の米国もEV重視を明確に打ち出している」、「日本車のEV出遅れがかねて指摘されてきた」、その通りだ。 「昨年は日産・ホンダの軽EVがカーオブザイヤー三冠を独占するなど、ようやく「EV元年」スタートと言われました」、「豊田章男自工会会長の日本自動車連合を引っ張るリーダーシップが脱炭素は「EV一辺倒でない」という立場を取っていることから、日本のEVが出遅れているとの見方もあります」、出遅れにはトヨタの責任も大きそうだ。 「ソフトウエア」では「日本」は苦労しそうだ。 「海外では特に欧州が割り切って進んでいますね。マフラーやトランスミッションなどの部品企業が集約したり残存者利益を得たりすることで、新規事業への構造転換に動いています。その意味では、日本は一口で言えば「じれったい」のが本音です」、「日本自動車産業の方向の中で心配しているのが、ソフトウエアですね。独フォルクスワーゲン(VW)なども苦労しており、世界中の自動車メーカーがソフトウエアとEVをパッケージで考えて、自動運転も含めた競争力をどう維持していけるかということを考えています」、 「EVシフトが遅れれば、産業構造転換が遅れ、ひいては日本が世界から取り残されることになる。これをものすごく不安なこととして懸念しています。また、EVになると部品点数が減るといわれますが、そうでもない。自動運転やCASE対応で車は複雑になり、モジュール化の中でもこれに対応する新たな部品が出てくることにもなります」、「自動運転やCASE対応で車は複雑になり、モジュール化の中でもこれに対応する新たな部品が出てくる」、一般論では見落とされがちな点だ。 「内燃機関エンジン車からEVに置き変われば、部品点数が約3万点から2万点に3分の1に減るといわれています。関連部品企業は、その方向がよく見えないことで不安視しているんでしょうね」、「私が心配してるのは、本当にEVシフトが起きた際に、これだけ大きなピラミッド構造を抱える日本の自動車産業の構造転換が間に合いますか、ということで警鐘を鳴らしているんです」、 佃 義夫氏による「日産元COOの志賀氏がEVの出遅れに警鐘「日本は世界から取り残される」」 ダイヤモンド・オンライン 「「永守氏」は「M&Aの名手」などと喧伝され・・・これまでのM&Aの成果を勝ち負けでいうなら「67勝0敗」である。つまりすべて成功、失敗はゼロだ〉と自画自賛」、「GPM社・・・買収前からその技術力を不安視する声もあったが、永守氏自身は自信満々に買収を進めた・・・数百億円もの巨費を投じたGPM社の買収」、 「ジャガー社との間でトラブルとなったポンプ・・・不具合の内容は、流量をコントロールする機能がうまく作動しないために冷却水の水温が上昇し、それが原因でラジエーターのファンが騒音を出すというもの・・・ジャガー社から31億円余りを請求されるに至った」、みっともないトラブルだ。 「日本電産」は本年4月1日から社名をニデックに変更した。「永守重信会長」は都合が悪いことは「関潤前社長に責任転嫁」したが、本当のところは自分自身の責任のようだ。 大清水 友明氏による「日本電産、業績急悪化に潜んだ巨額買収のツケ ヨーロッパ買収企業が顧客とトラブル、損失に」 東洋経済オンライン (その13)(日本電産 業績急悪化に潜んだ巨額買収のツケ ヨーロッパ買収企業が顧客とトラブル 損失に、日産元COOの志賀氏がEVの出遅れに警鐘「日本は世界から取り残される」)
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NHK問題(その6)(NHK(上)続投を阻まれた前田前会長の無念…背後にチラつく財界サロン「四季の会」の影、NHK(下)「岸田vs菅」の壮絶バトルの末に決まったトップ人事、稲葉NHK新会長が職員へ異例のメッセージ 前田・前会長の“銀行員的改革”はなぜ不評だったのか、【NHKワクチン被害者遺族放送問題】3題:なぜニュースウォッチ9は「ワクチン死」に触れなかったのか――遺族の決死の告白を踏みにじった「NHKの粗暴」、「私たちはNHKを許さない」コロナワクチン死を訴える気持ちを踏みにじった遺族が明かす「取材の全 [メディア]

NHK問題については、2021年9月6日に取上げた。久しぶりの今日は、(その6)(NHK(上)続投を阻まれた前田前会長の無念…背後にチラつく財界サロン「四季の会」の影、NHK(下)「岸田vs菅」の壮絶バトルの末に決まったトップ人事、稲葉NHK新会長が職員へ異例のメッセージ 前田・前会長の“銀行員的改革”はなぜ不評だったのか、【NHKワクチン被害者遺族放送問題】3題:なぜニュースウォッチ9は「ワクチン死」に触れなかったのか――遺族の決死の告白を踏みにじった「NHKの粗暴」、「私たちはNHKを許さない」コロナワクチン死を訴える気持ちを踏みにじった遺族が明かす「取材の全容」、なぜNHKは「ワクチン死遺族の悲痛な声」を報じなかったのか…証言で浮かび上がった深層)である。

先ずは、本年2月8日付け日刊ゲンダイが掲載した経済ジャーナリストの有森隆氏による「NHK(上)続投を阻まれた前田前会長の無念…背後にチラつく財界サロン「四季の会」の影」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/318375
・『任期満了に伴い退任するNHKの前田晃伸会長(78)が1月10日、会長として最後の会見に臨んだ。 前田氏は、みずほフィナンシャルグルーブの会長などを務めた後、2020年にNHK会長に転じ、1期3年務め1月24日退任した。人事制度や受信契約の営業手法など大胆な改革を進めるとともに、徹底したコスト削減を図り、今年10月からの過去最大の受信料値下げを実現した』、興味深そうだ。
・『スリム化に尽力  会見で前田会長は3年の任期を振り返り、「スリムで強靱なNHKに生まれ変わるため、今までの会長が手をつけなかったところに全部着手した」と人事制度の改革を強調した。 総務省が求める①業務のスリム化、②受信料値下げ、③ガバナンス強化の「三位一体の改革」を推進し、銀行出身の前田氏はとりわけ、手慣れた組織のスリム化に力を入れてきた。 外部のコンサルタント会社に大胆に業務委託しながら効率化を図り、19年度に7163億円あった業務支出を21年度には6609億円まで削減した。コロナ禍で、改革が進めやすかった側面は確かにあるが、元バンカーらしいやり方をした。 前田会長は3年間の成果を強調したが、「実態は無念さをにじませた会見だった」(全国紙の記者)。前田氏は22年9月ごろまでは続投に意欲を燃やしていた。それが、総務族の政治家の手で、引きずり降ろされた悔しさは、隠しようがなかったからだ。 その間、何が起きたのか。 安倍晋三元総理は22年7月8日、選挙応援中の奈良で暗殺された(享年67)。その1カ月半ほど前の5月25日、葛西敬之JR東海名誉会長が間質性肺炎で亡くなった(享年81)。 葛西氏は安倍氏を、再度、総理に押し上げた財界サロン「四季の会」の主宰者として知られている。中部地区の主要企業のトップたちは、「怖い人だ」と隠れて言い合い、彼を敬して遠ざけた。葛西氏は最後のフィクサーの異名を持っていた。 葛西氏が安倍晋三・菅義偉両政権を通じて重視したのが「NHKの支配」だったとされる。源流は第1次安倍政権(06年9月~07年9月)の菅義偉総務大臣時代にさかのぼる。NHKの報道に不満をもつメンバーが重用され、NHKの会長などを決める経営委員長に安倍氏の強い意向で富士フイルムの古森重隆社長(当時)が送り込まれた。 ところが安倍政権はわずか1年の短命で終わった。これ以降、「四季の会」がNHKの会長人事を実質的に仕切ることになった、とみる関係者が多い。古森経営委員長はアサヒビール(現・アサヒグループホールディングス)の福地茂雄相談役をNHK会長(08年1月~11年1月)に任命した。福地氏も「四季の会」のメンバーだった。 09年、民主党政権が誕生したが、「四季の会」の勢いはとまらない。葛西氏は、元部下でJR東海の副会長だった松本正之氏を福地氏の後任としてNHK会長(11年1月~14年1月)に据えた。 この間、「四季の会」は“素浪人”となった安倍晋三氏を支え続けた。 12年12月、第2次安倍政権が発足した。20年9月に退任するまでの長期政権となった。歴代のNHK会長の選考では、葛西敬之氏らの考え方が色濃く反映された。 20年1月、元みずほフィナンシャルグループ会長の前田晃伸氏がNHK会長に就任した。前田氏は記者会見で記者に問われ、「四季の会」のメンバーであることを認めた。) 前田氏の心のうちをのぞいたわけではないが、みずほのトップとして実績を上げていないとの忸怩たる思いがあったことは間違いない。NHK会長の椅子を前田氏は自らの経歴のリベンジのために使おうとした節がある。 時は移ろいやすい。葛西氏も安倍氏も鬼籍に入った。菅氏も、いっときだった政権の座から滑り落ちた。権力構造の急激な変化に伴い、前田氏はNHK会長の続投を断念しなければならないと意識するようになる。こうした間隙を縫って、会長人事の大逆転が起きた。時系列でたどってみよう。 =つづく』、「葛西氏が安倍晋三・菅義偉両政権を通じて重視したのが「NHKの支配」だったとされる。源流は第1次安倍政権(06年9月~07年9月)の菅義偉総務大臣時代にさかのぼる。NHKの報道に不満をもつメンバーが重用され、NHKの会長などを決める経営委員長に安倍氏の強い意向で富士フイルムの古森重隆社長(当時)が送り込まれた」、「アサヒビール(現・アサヒグループホールディングス)の福地茂雄相談役をNHK会長(08年1月~11年1月)に任命した。福地氏も「四季の会」のメンバーだった。 09年、民主党政権が誕生したが、「四季の会」の勢いはとまらない。葛西氏は、元部下でJR東海の副会長だった松本正之氏を福地氏の後任としてNHK会長(11年1月~14年1月)に据えた」、「元みずほフィナンシャルグループ会長の前田晃伸氏がNHK会長に就任した。前田氏は記者会見で記者に問われ、「四季の会」のメンバーであることを認めた」、「葛西氏が実質的な仕切り役」だったようだ。

次に、2月9日付け日刊ゲンダイが掲載した経済ジャーナリストの有森隆氏による「NHK(下)「岸田vs菅」の壮絶バトルの末に決まったトップ人事」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/318439
・『NHKの会長は、表向きは経営委員会内に設置される指名部会が決めることになっている。だが、実際は違う。指名部会が開かれる1週間前には永田町や霞が関の根回しが終わっているものなのだ。相前後して報道各社の「スクープ合戦」となるが、今回は極めて異例な展開を見せた。 経営委員会委員長の森下俊三氏(NTT西日本元社長)が記者会見で指名部会を立ち上げたことを明かしたのは2022年7月末。当初は、20年1月にNHK会長に就いた前田晃伸氏の続投が有力視されていた。何より、前田氏自身が続投を望んでいたからである。 そこへ突然、「NHK次期会長人事、丸紅元社長の朝田氏で最終調整」というニュースが飛び込んできた。 東洋経済ONLINE(22年12月3日付)が、23年1月に任期満了を迎える前田氏の後任が丸紅元社長の朝田照男氏に絞り込まれたとスクープ(!?)を放ったのだ。 〈事情に詳しいNHK関係者によれば、前田会長は一時、2期目も務める意思を示していた。しかし、受信料の引き下げをめぐって自民党と対立。前田会長ら経営陣は23年から衛星契約のみを引き下げるべきと主張していたが、自民党に押し切られる形で、最終的には地上波契約・衛星契約ともに1割値下げすることを決めた。こうした経緯を踏まえて“ポスト前田”の後任の人選が進められた〉(要旨、表現は異なる)とした。) 人選は経済界を中心に進められ、数人の候補が浮上したが、前田氏の出身母体である、みずほフィナンシャルグループと親密な関係にあり、(しかも)経済団体などで親交のあった丸紅の朝田氏に白羽の矢が立ったと伝えた。 ところが、これが大誤報(!?)となる。経営委員会は12月5日、日本銀行元理事の稲葉延雄氏(72)を会長に任命することを決めた。 「本人もやる気満々だった」(丸紅関係者)といわれた朝田氏はなぜ敗れたのか?』、「日本銀行元理事の稲葉延雄氏(72)を会長に任命することを決めた」、背景には何があったのだろう。
・『岸田官邸が朝田案を阻止  「週刊現代」(22年12月24日号)は「NHK『トップ人事』をめぐる『岸田VS菅』壮絶バトルの内幕」を報じた。 〈そもそもNHKの会長人事は、放送行政を牛耳るドン・菅義偉前総理の意向が働いてきた。「菅氏は前田会長を支配下に置き、機構改革や番組内容にも影響力を及ぼしてきたと言われます」(NHK幹部)。前田氏は菅氏の威を借り続投を希望していたが、ある事件により道を断たれた。「菅さんと近い板野裕爾(専務理事)を再任しない人事案を出し、菅さんの怒りを買った」(別のNHK幹部)のである〉) 前田氏の代わりに菅氏が目をつけたのが朝田氏だった、朝田氏は前田氏に頭が上がらないため、菅氏は間接的に朝田氏をコントロールできると踏んだ、と伝わる。 〈ところが、菅氏のNHKへの影響力を削ぎたい岸田官邸が横槍を入れた。「岸田総理のいとこの宮沢洋一自民党税調会長が『日銀の元プリンスでいいのがいる』と稲葉氏を推した。それに総理が乗っかった」(NHK関係者)。岸田総理は菅氏に「稲葉会長案」を直談判。菅氏は難色を示したが「麻生(太郎自民党副総裁)さんが『会長はお飾りだ。実務者の副会長を取れよ』と菅さんをなだめて呑ませた」(自民党閣僚経験者)>  NHKの会長人事は、いつでもそうだし、今回もまさに官邸、自民党、総務省がせめぎあう「政治案件」である。稲葉新会長は「やる気満々」だが、NHK経営委員会の森下俊三委員長は、稲葉氏に対して「改革で生じた副作用(=歪み)は直してほしい」と注文をつけた。 「スリムで強靱なNHK」を掲げ、人事制度や営業のやり方を強引に変えてしまった「前田改革」の、強烈な揺り戻しが始まった』、「菅氏のNHKへの影響力を削ぎたい岸田官邸が横槍を入れた。「岸田総理のいとこの宮沢洋一自民党税調会長が『日銀の元プリンスでいいのがいる』と稲葉氏を推した。それに総理が乗っかった」、「NHK経営委員会の森下俊三委員長は、稲葉氏に対して「改革で生じた副作用(=歪み)は直してほしい」と注文をつけた。 「スリムで強靱なNHK」を掲げ、人事制度や営業のやり方を強引に変えてしまった「前田改革」の、強烈な揺り戻しが始まった」、「「前田改革」の、強烈な揺り戻し」、とは見物だ。

第三に、3月7日付けデイリー新潮が掲載したコラムニスト・ジャーナリストの高堀冬彦氏による「稲葉NHK新会長が職員へ異例のメッセージ 前田・前会長の“銀行員的改革”はなぜ不評だったのか」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/03071100/?all=1
・『今年1月に就任したNHKの稲葉延雄新会長(72)が3月1日、職員向けに「改革の検証と発展へ」と題したメッセージを出し、組織内で不満が渦巻いている前田晃伸前会長(78)による改革を再検討する考えを示した。前会長による改革を新会長がたちまち見直すのは、極めて異例のこと。NHKの現状はどうなっているのか。 現在、NHKは毎月20~30人程度の職員が依願退職している。約1万人体制とはいえ、多い。そもそも離職率の低かった組織なのだ。前田体制になってから辞める職員が増えた。 前田氏は元みずほフィナンシャルグループ会長。2020年1月にNHK会長に就くと、今年1月の退任までの3年間に、ドラスティックな改革を行った。 まず人事。「役職定年制」を導入した。52歳以上の職員は職階に応じ、ある年齢に達したら役職を剥奪され、平社員になった。これにより管理職は3割も減り、人件費コストは大幅に削減された』、「毎月20~30人程度の職員が依願退職」、「役職定年制」で「管理職は3割も減り、人件費コストは大幅に削減された」、確かにドラスティックな改革だ。
・『「銀行屋の発想」50歳以上の職員を疎んじる傾向も  それだけではない。職員によっては50代半ばから賃金が時給制になった。これに青ざめる職員が相次いだという。前田体制は職員たちの暮らしをどう考えていたのだろう。 「ベテラン職員には鬱屈が溜まり、若手や中堅の職員も未来に希望が持てなくなった。これでは退職者が増える」(職員) ベテラン職員たちを戸惑わせた改革はこれにとどまらない。幹部職員になるためには試験に合格しなければならなくなった。例えば水戸放送局、静岡放送局など地方局の局長も試験で決まるようになった。 試験で誕生した実績の乏しい40代の局長が、それに勝るキャリアと指導力を持つ50代の記者やディレクターたちに指示を与えるようになった。これでは組織に軋みが生じるはずだ。 職員たちは口々に「銀行屋の発想」と不満を漏らしたという。確かに、銀行界は経営陣に気に入られた一部エリートを除き、50歳以上の職員を疎んじる傾向がある。定年前に片道切符で出向させられる社員が多い』、「試験で誕生した実績の乏しい40代の局長が、それに勝るキャリアと指導力を持つ50代の記者やディレクターたちに指示を与えるようになった。これでは組織に軋みが生じるはずだ。 職員たちは口々に「銀行屋の発想」と不満を漏らしたという」、なるほど。
・『NHKから専門家がいなくなる  前田体制は大胆な組織改革も行った。これにも局内から不満や疑問の声が上がり続けている。 NHKは長らく放送総局(約3500人)の下に報道局と制作局などが置かれていた。さらに報道局の下部には取材センター、ニュース制作センターなどが置かれていた。制作局の中にはバラエティをつくるエンターテインメント番組部やドラマ番組部などがあった。 だが、前田体制は2022年4月に放送総局を廃止。新たにメディア総局を設けた。その下に制作局に代わるクリエイターセンターを設けた。「縦割りを廃するため」などと前田体制は説明した。 それにより、制作者たちが畑違いの番組も手掛けるようになった。専門性が削がれつつある。 また、大河ドラマ、連続テレビ小説以外のドラマは外注化が進んでいる。やはりコストカットが第一の目的だ。 「これではエキスパートが育ちにくく、番組の質が保てなくなる恐れがある。NHKが受け継いできた制作力が伝承できるのだろうか」(別の職員)』、「大胆な組織改革」では、「「縦割りを廃するため」などと前田体制は説明した。 それにより、制作者たちが畑違いの番組も手掛けるようになった。専門性が削がれつつある。 また、大河ドラマ、連続テレビ小説以外のドラマは外注化が進んでいる。やはりコストカットが第一の目的だ。 「これではエキスパートが育ちにくく、番組の質が保てなくなる恐れがある。NHKが受け継いできた制作力が伝承できるのだろうか」』、大胆過ぎたようだ。
・大掛かりな編成・番組改革も裏目に  前田体制は大掛かりな編成・番組改革も行った。これも裏目に出ているのが明らか。 前田体制スタートから1年半後の2021年10月第1週の視聴率はこうだった。まだ編成・番組改革の規模は小さかった。 〇プライム帯(午後7時~同11時):個人4.9%(世帯8.9%) 〇全日帯(午前6時~午前0時):個人3.0%(世帯5.7%) 翌2022年4月、大胆な編成・番組改革が行われた。「ガッテン!」などを打ち切り、平日午後10時45分から同11時30分を「若年層ターゲットゾーン」とした。民放ですら、あり得ない。 その大改革から半年が過ぎた同10月第1週の視聴率は次の通りだ。 〇プライム帯:個人4.1%(世帯7.3%) 〇全日帯:2.7%(個人4.9%) 週単位の平均値でこの数字だから、視聴率の下げ幅はかなり大きい。前田体制は受信料を1割下げたものの、NHKを観る人が減ったり、満足度が落ちたりしたら、値下げも意味が乏しい。 NHKは誰のものかというと、視聴者のものである。収入のほぼ全てが受信料で、それによって組織や機器、施設を整えてきたのだから。株式会社と株主の関係に近い。それなのに前田体制は視聴者ファーストで改革を行ったとは思えない。 また、株式会社であろうが、組織を支える社員の暮らしは守らなくてはならない。サラリーマンならご存じの通りである。前田体制は受信料値下げを図ろうとするあまり、過度なコストカットに走り、職員の生活をないがしろにしたのではないか。それでは番組づくりへの影響は避けられない』、「前田体制は受信料値下げを図ろうとするあまり、過度なコストカットに走り、職員の生活をないがしろにしたのではないか。それでは番組づくりへの影響は避けられない」、なるほど。
・『不祥事続発の遠因も前田改革?  昨年10月、阿部渉アナウンサー(55)の局内不倫が取りざたされた。今年2月にはアナの船岡久嗣容疑者(47)が後輩女性アナの邸宅に侵入した疑いで逮捕された。どちらも前田体制下のNHK内では厳しい立場のベテランだ。 2人の行為はもちろん自己責任だ。庇う余地はない。だが、不祥事の背景に改革の影響はないのか。組織は実績ある2人を大切にしていたのだろうか。 前田体制はベテラン職員に関わる人事制度を激変させただけでなく、新人採用の仕組みも大きく変えた。2022年4月入局組から、職種別採用を止め、一括採用にした。報道記者志望者もドラマ制作を目指す者も技術者志望者も一括りで採用するようになった。 報道記者志願者は朝日や毎日、読売などの新聞社との併願が多かった。ドラマ制作者や技術者になる可能性もあると、受験をためらう者もいるだろう。 ドラマ制作を希望する者も同じ。記者になるのを恐れ、映画会社や動画配信会社などに流れてしまうこともあるに違いない。「人材の宝庫」と言われ続けたNHKだが、クリエイターセンターへの移行や外注増加もあって、今後は危ういのではないか。 もっとも、職員たちの危機感や嘆きは日銀元理事の稲葉延雄会長も知っていた。今年1月25日の就任会見で、前田改革についてこう口にした。 「若干のほころびが生じているかもしれない」(稲葉会長)。新会長が就任するなり、前会長のやったことを否定するような発言をするのは前代未聞だった。 それから1カ月余。職員に向けて「改革の検証と発展へ」とするメッセージを出した。前田改革を見直すつもりに違いない』、「新会長」が「前田改革を見直すつもりに違いない」とはお手並み拝見だ。
・『NHKは真の公共放送になるしかない  前田体制下でNHKの報道や番組の魅力が落ちたためなのか、受信料を下げたにも関わらず、民営化やスクランブル化を求める声が高まっている。だが、それは視聴者にとってプラスなのだろうか。 まず民営化はマイナスが大きい。そうでなくても在京キー局が5局もあるのは多い。米国ですら4大ネットワークなのだ。民放ばかりになったら、俗な番組が増えるだけ。また、NHKがスポンサーを獲るのは簡単ではない。やったことがないのだから。 スクランブル化するくらいなら、いっそ廃局にしてしまったほうが良い。既に有料CS放送のニュースチャンネルや有料配信動画が数多くあり、そこにNHKが加わるだけで、意味がない。 ただし、受信料で築き上げられたNHKを失うのは勿体ない。現在、なぜ民営化論などが高まっているかというと、それはNHKが視聴者の手の届かないところにあるから。前田改革も視聴者は蚊帳の外だった。 NHKが進むべき道は視聴者のための公共放送になるしかない。「既に公共放送じゃないか」と言うなかれ。現在の形態は英国のBBCなど諸外国の公共放送とは似て非なるものだ。 まず全放送局が総務省の支配下から脱する。突飛な話ではない。先進国では政府がテレビ局を監督するほうが極めて異例なのである。テレビ局は報道機関であり、本来は政府を監視する側の立場なのだ』、「NHKが進むべき道は視聴者のための公共放送になるしかない。「既に公共放送じゃないか」と言うなかれ。現在の形態は英国のBBCなど諸外国の公共放送とは似て非なるものだ。 まず全放送局が総務省の支配下から脱する。突飛な話ではない。先進国では政府がテレビ局を監督するほうが極めて異例なのである。テレビ局は報道機関であり、本来は政府を監視する側の立場なのだ」、確かに「政府を監視する側の立場」なのに、「政府がテレビ局を監督」するとは不自然だ。
・『NHKを国営放送にする案はなぜ「論外」?  テレビ局の監督はほかの先進国のように独立放送規制機関が行う。米国にはFCC、英国にはOfcom、フランスにはCSAがある。これらの組織は政府から独立している。 独立放送規制機関はテレビ局に対して強い権限を持つ一方、政治がテレビ局に介入することを許さない。テレビ局を厳正にチェックしながら、政治から守っている。米国のCBSや英国のBBCが厳しい政府批判が出来る背景には独立放送規制機関の存在がある。 また、NHK経営委員を事実上政府が選び、それに国会が同意するという悪しき仕組みはあらためるほかない。会長は経営委員会が決めているから、オーナーは視聴者であるにも関わらず、運営権は政権党が握るという不可思議な状態が続いている。 BBCの場合、経営委員会の代わりに、組織の方向性を決める理事会がある。経営委員の定員は12人だが、BBC理事会は14人。トップの理事長は公募制だ。理事長と4人の地域担当理事は公平性と透明性を確保した上で決められ、最終的には政府が任命する。残り9人の理事はBBCが任命する。会長はBBCが任命した理事から選ぶ。 経営委員会と理事会はまるで仕組みが違う上、Ofcomがあるから、BBCは独立性が極めて高い。NHKも海外の公共放送に倣うべきだ。 NHKを国営放送にするという案は論外だ。政権党の思う壺である。労せず受信料を徴収し、都合の良い主張を流せてしまうようになる。それもあり、国営放送の報道は海外で信用されない。 海外の国営放送は中国の中国中央電視台、ロシアのロシア1、北朝鮮の朝鮮中央放送など。大掛かりな国営放送を持つのは社会主義国か旧社会主義国ばかりなのである。 NHKを視聴者の手に届く存在にしない限り、いくら受信料を下げても視聴者側は納得しない。(高堀冬彦氏の略歴はリンク先参照)』、「テレビ局の監督はほかの先進国のように独立放送規制機関が行う。米国にはFCC、英国にはOfcom、フランスにはCSAがある。これらの組織は政府から独立している。 独立放送規制機関はテレビ局に対して強い権限を持つ一方、政治がテレビ局に介入することを許さない。テレビ局を厳正にチェックしながら、政治から守っている。米国のCBSや英国のBBCが厳しい政府批判が出来る背景には独立放送規制機関の存在がある」、「NHK経営委員を事実上政府が選び、それに国会が同意するという悪しき仕組みはあらためるほかない。会長は経営委員会が決めているから、オーナーは視聴者であるにも関わらず、運営権は政権党が握るという不可思議な状態が続いている。 BBCの場合、経営委員会の代わりに、組織の方向性を決める理事会がある。経営委員の定員は12人だが、BBC理事会は14人。トップの理事長は公募制だ。理事長と4人の地域担当理事は公平性と透明性を確保した上で決められ、最終的には政府が任命する。残り9人の理事はBBCが任命する。会長はBBCが任命した理事から選ぶ。 経営委員会と理事会はまるで仕組みが違う上、Ofcomがあるから、BBCは独立性が極めて高い。NHKも海外の公共放送に倣うべきだ」、「NHKを国営放送にするという案は論外だ。政権党の思う壺である。労せず受信料を徴収し、都合の良い主張を流せてしまうようになる。それもあり、国営放送の報道は海外で信用されない」、全く同感である。

第四に、5月26日付け現代ビジネス「なぜニュースウォッチ9は「ワクチン死」に触れなかったのか――遺族の決死の告白を踏みにじった「NHKの粗暴」【NHKワクチン被害者遺族放送問題#1】」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/110832?imp=0
・『5月15日に放送されたNHK「ニュースウォッチ9」のエンドロールで流れた映像がいま、問題となっている。コロナワクチン接種後に「副反応との因果関係が疑われる症状」で肉親を亡くした遺族たちの告白を「切り取って」放送していたのだ。なぜそうした事態に陥ったのか――関係者に話を聞いた』、信じ難いような話だ。
・『コロナ禍の3年を振り返る放送で  「NHKは番組の中で『偏向報道』をした事実については認めました。しかし、私たちが求めた『なぜそんな形で放送をしたのか』という意図については、説明すらされていない。謝罪はあった。しかし、いくら謝られたからといっても、遺族たちの怒りがおさまったわけではありません」 こう憤るのは、コロナワクチン被害者遺族会「つなぐ会」代表の鵜川和久氏だ。 5月15日に放送されたNHK『ニュースウォッチ9』のエンディング映像を巡り、NHKに抗議の声が集まっている。発端となったのは、新型コロナが第5類に移行することを受けて制作された「この3年を振り返る」という趣旨の、1分ほどの短い映像だ。 なぜこの短い映像が、騒動に発展したのだろうか――。まずはその映像を振り返ろう。 冒頭では、かつてクラスターが発生した「ダイヤモンドプリンセス号」の現在の姿が映り、「私たちの3年あまり」というテロップが流れる。そして、コロナ禍で肉親を失った3人の「遺族」が登場した。 まず、〈夫を亡くした河野亜樹子さん〉との字幕とともに、河野さんという女性が「いったいコロナって何だったんだろう」と語る。 次に〈父を亡くした宮城彰範さん〉との字幕と父親の写真を見つめる男性が映る。その背後からは「5類になったとたんにコロナが消えるわけではない」「風化させることはしたくない」との声が聞こえた。 最後は〈母を亡くした佐藤かおりさん〉が登場する。佐藤さんは涙ぐみながら「遺族の人たちの声を届けていただきたい」と語っていた。 そして動画は「戻りつつある日常」という声と共に現在の街の様子へと続いていく――。 問題となっているのはこの3人の紹介の仕方だ。 一見すると視聴者は、彼ら、彼女らを「新型コロナウイルス感染症にかかった肉親を失った遺族」ととらえるだろう。 だが、ここに登場した遺族全員が「肉親は、新型コロナのワクチン接種後の副反応による疑いで命を落とした」と主張している。決してコロナに感染して亡くなったわけではないのだ。 しかし、番組動画を見る限りでは、彼らは「コロナに感染して亡くなった」と受け止められるつくりになっている。ここに、遺族は憤っているのだ』、「ここに登場した遺族全員が「肉親は、新型コロナのワクチン接種後の副反応による疑いで命を落とした」と主張している。決してコロナに感染して亡くなったわけではないのだ。 しかし、番組動画を見る限りでは、彼らは「コロナに感染して亡くなった」と受け止められるつくりになっている。ここに、遺族は憤っているのだ」、「遺族」が「憤る」のも当然だ。
・『「ワクチン」には一言も触れていなかった  「放送を見て、『えー!?』って驚きました。私たちが訴えたかった『ワクチン死』については一言も触れられていなかった……」 取材を受けた一人、佐藤かおりさん(46歳)は悔しさを滲ませながら訴える。 佐藤さんの母親はワクチン接種直後に還らぬ人となった 佐藤さんは昨年11月に母・政美さんを亡くした(享年68)。5回目のワクチン接種後のことだった。夕飯の準備をしていたとき、急に体調が悪くなった政美さん。ちょっと休むと台所を離れた直後――。 「あかん!」 そう最後の言葉を残し、突然倒れた。救急搬送されるも目を覚ますことなく、還らぬ人となった――。 政美さんのCT画像をみると、肺に血が溜まり、気管まであふれている状態が映し出されていた。大病を患うことなく、亡くなる直前まで元気に家事をこなしていた政美さん。遺族は「ワクチン以外の原因が考えられない」と主張している(その詳しい状況については週刊現代2023年1月28日号でも伝えている)。 佐藤さんらはNHKから先の取材を受けた際、「肉親がワクチン接種直後に亡くなったこと」「遺族らはワクチン関連死であると思っていること」を、接種後の状況や死因などともに丁寧に伝えていた。しかし、そのほとんどが放送ではカットされ、ただ「コロナで亡くなった人々」という括りのなかで紹介されたのだ。 「私は母の死を無駄にしたくないと思い、ワクチン接種後に亡くなったという事実をしっかり伝えたくて取材に応じました。ワクチンの副反応で苦しんでいる方や、肉親を亡くしてどこに被害を訴えていいかわからない人もたくさんいます。役所や病院に被害を訴えても『さあ、わからない』と突き放された事実もあります。 そうした現状や遺族たちがいることをきちんと報道してほしい、遺族の声を届けてほしいんです……という趣旨を、カメラの前で話しました。ところが、放送で使われたのはその後半部分。亡くなったという事実だけ。その前段を伝えてもらいたかったのに、放送された映像はそうではなかった」(前出の佐藤さん) 取材を担当したNHKのディレクター・X氏らは、佐藤さんら遺族の話を神妙な面持ちで終始聞いていたという』、「取材を担当したNHKのディレクター・X氏らは、佐藤さんら遺族の話を神妙な面持ちで終始聞いていた」のに、「放送で使われたのはその後半部分。亡くなったという事実だけ。その前段を伝えてもらいたかったのに、放送された映像はそうではなかった」、余りに不自然だ。
・『「僕の気持ちとしてはちゃんと伝えたい」  「私たちの言葉をしっかり受け止め、哀しんでいた感じでした。彼は『今日、取材したことは時間の関係上一度に放送できない。上とのこと(社内での調整)もありますが、僕の気持ちとしてはちゃんと伝えたい。でも上の反応があるので、そのあたりはどうも言えない』というニュアンスの説明を私たちにしていました。 組織の問題はあるので、すべて流すことができないのは、十分承知しています。ただ、『ワクチンを打った後に亡くなったこと』を伝えたかったのに、その部分はまったく報じられないとは思っておらず、単に『コロナで亡くなった人』ということで放送されてしまったので、とても驚きました……」(前出の佐藤さん) 番組の時間は限られており、取材で話したことすべてを流せるわけではないことは、佐藤さんも理解していた。しかし、取材で話したことと放送内容がかけ離れていたことに、悔しさをにじませるのだ。 「取材に来た記者が、ワクチンについての話を最初から聞く気がなかったとも思いたくないし、彼らの様子が演技だと思いたくもない……」(前同) 一体、なぜこんな事態に発展したのだろうか――。 NHKサイドに佐藤さんら放送に登場した3人の遺族を紹介した、コロナワクチン被害者遺族会「つなぐ会」代表の鵜川和久氏に話を聞いた。『「私たちはNHKを許さない」コロナワクチン死を訴える気持ちを踏みにじった遺族が明かす「取材の全容」【NHKワクチン被害者遺族放送問題#2】』で続けて紹介する』、「「つなぐ会」代表」の見解は次の記事だ。

第五に、5月26日付け現代ビジネス「「私たちはNHKを許さない」コロナワクチン死を訴える気持ちを踏みにじった遺族が明かす「取材の全容」【NHKワクチン被害者遺族放送問題#2】」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/110833?imp=0
・『NHKが番組内でコロナ禍を振り返る映像に、コロナワクチン被害者遺族らから抗議が集まっている問題。なぜこうした事態に発展したのか――。 前半記事『なぜニュースウォッチ9は「ワクチン死」に触れなかったのか――遺族の決死の告白を踏みにじった「NHKの粗暴」【NHKワクチン被害者遺族放送問題#1】』から続けて紹介する』、興味深そうだ。
・『NHKからの依頼メールの全文公開  事の発端は、コロナワクチン被害者遺族会「つなぐ会」のホームページの問い合わせフォームを通して、NHKのX氏から取材の依頼が来たことだった。NHKサイドに佐藤さんら放送に登場した3人の遺族を紹介した、同会代表の鵜川和久氏に話を聞いた。 送られたメールには次のように書かれていた。 『先般から各社報道していますように、(新型コロナが※編集部注)5類移行となり、社会には明るい兆しが見えているようにも受け止められていますが、その実、非常に強い危機感を個人的に覚えずにいられません。 あった事をなかったようにされ忘れられていくのではないか、数えきれない嘆きの声が埋もれているのではないか。そして我々の報道の姿勢としてもこのままで良いのか。 歴史的にも非常に重要な意味を帯びるタイミングが現在であるとすら考えるのですが自分ではなかなか答えに辿りつけず、それでも番組でもどうにか取り上げて提起したい狙いから、厚労省や自治体にも取材をすすめていたところ、鵜川さまの活動に辿り着くことができました。 求めは長年活動されてきた鵜川さまのご意見をぜひ賜われないか、そしてご遺族の声を後年に残すことができないか、取材のご相談であります』 丁寧で熱い志を秘めた文面に好感を持った鵜川氏は、以後、X氏と複数回やり取りを重ねた』、「あった事をなかったようにされ忘れられていくのではないか、数えきれない嘆きの声が埋もれているのではないか。そして我々の報道の姿勢としてもこのままで良いのか」、ここまで「取材依頼」の「メール」内にここまで書かれていれば、「コロナワクチン被害者遺族会」側が大きく期待するのは当然だ。
・『3人のワクチン副反応死遺族に取材  「遺族をつなぎ、遺族の証言を残し、風化させないことを目的にしていることを彼は訴えていました。やり取りの中では『鵜川様との協議の通り、初手はワクチンの戒めを問うというより、コロナ禍を忘れさせないためのメッセージを帯びた放送を目指します。(編集部注:ワクチン死については)効果的に出すタイミングを綿密に測りつつ、鵜川様にもご意見を賜り、継続的に皆様に報います』と言っていました。 NHK側は、最初から私たちがワクチン接種後に副反応との因果関係が疑われる症状で肉親を亡くした遺族たちの会であること、活動内容を理解したうえで連絡をしてきているということです。『ワクチン遺族の会だということは知りませんでした』では通用しません」(鵜川氏) 取材は5月13日、京都府内で行われた。前述のX氏のほか、若いカメラマンと照明の3人が東京からやってきた。3人の遺族への取材は一人20~30分、計1時間ほど。故人の写真や思い出の品を持参し、生前のエピソードを明かした。そしてワクチン接種後に何が起きたのか、当時の状況、無念さ、悔しさ、そして接種した後悔について、ときおり声を詰まらせながら説明していた。 しかし、冒頭でも説明したように放送された映像では遺族らの意図に反し、「ワクチンについて訴えた場面」が使われることはなかった。 「X氏は取材時、『(ワクチン関連死)遺族のことは伝えなければならない』と涙を流しながら、遺族の声に耳を傾けてくれました。それなのにあの放送では、コロナ感染によって亡くなったようにしか見えない内容でした。肉親が『ワクチン接種後に亡くなった』という根幹部分が切り取られていたのです。彼のあの涙はいったい何だったのでしょうか」(前同)』、「「X氏は取材時、『(ワクチン関連死)遺族のことは伝えなければならない』と涙を流しながら、遺族の声に耳を傾けてくれました。それなのにあの放送では、コロナ感染によって亡くなったようにしか見えない内容でした。肉親が『ワクチン接種後に亡くなった』という根幹部分が切り取られていたのです」、「取材」から「放映」までの間で、NHKの姿勢が変化したのだろうか。
・『放送後には感想を求める電話が  放送終了、「なんだこの放送は……」と呆然としている鵜川氏の元に、X氏から番組の感想を求める電話がかかってきたという。鵜川氏は当然、抗議する。 「これワクチン遺族ではなく、コロナ感染死の遺族、ということになっていませんか?」 そう伝えるとX氏の声色が変わった。 「『あ、やべっ』と、言う感じでしたね。そこで事態の大きさに気が付いた様子でした」 X氏は「局に持ち帰り検討する」と伝え、その後、彼の上司が謝罪の電話をしてきたという。そして翌16日、同番組の最後に田中正良キャスターが「コロナウイルスに感染して亡くなったと受け取られるように伝え、ワクチンが原因で亡くなったというご遺族の訴えを伝えていませんでした」とし、映像について謝罪した。 謝罪さえすればすべてが終わるとNHKは踏んだのだろうか。だが、遺族の怒りはおさまらない。 「なぜこうした編集がされていたか、その経緯については説明がありませんでした。今後のNHK側の動きによってはBPO(放送倫理・番組向上機構)への提言含めてしかるべき措置を検討していくことになります」(前出の鵜川氏) 番組の放送時間の都合はあるにせよ、なぜNHKは「ワクチン死遺族」に取材し、入念に話を聞いておきながら、「コロナ死」という広い括りでその死に触れたのか。 そこにはNHKの内部事情が関係しているとみられる。 後半記事『なぜNHKは「ワクチン死遺族の悲痛な声」を報じなかったのか…証言で浮かび上がった深層【NHKワクチン被害者遺族放送問題#3】』では内情に詳しい関係者が明かす』、「NHKの内部事情が関係しているとみられる」、次の記事に移ろう。

第六に、5月26日付け現代ビジネス「なぜNHKは「ワクチン死遺族の悲痛な声」を報じなかったのか…証言で浮かび上がった深層【NHKワクチン被害者遺族放送問題#3】」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/110834?imp=0
・『NHKが番組内でコロナ禍を振り返る映像に、コロナワクチン被害者遺族らから抗議が集まっている問題。その内部事情について関係者が批判を含めて明かしてくれた。 「「私たちはNHKを許さない」コロナワクチン死を訴える気持ちを踏みにじった遺族が明かす「取材の全容」【NHKワクチン被害者遺族放送問題#2】」から続けて紹介する』、興味深そうだ。
・『最初から「コロナ死」として取材  最初から「ワクチン」に言及しないつもりであれば、NHKもコロナワクチン被害者遺族の会を取材しないはずだ。取材後に、「ワクチン死について報じるな」というなんらかの政治的な圧力でも働いたのだろうか――。 「政治的な圧力は働いていないと思います。むしろ最初からそうするつもりで取材をしていたと考えられます」 そう指摘するのはNHKでの勤務経験もある記者のA氏。 「あの企画は、遺族を取材した報道局映像センターのX氏自らが提案したそうです。5類になったからといって、新型コロナを風化させてはいけない、コロナで亡くなった遺族に話を聞き振り返りをしたい、と提案したものだった。若手からのやる気のある提案に、上層部も喜んでいた、と局内でも話題になっていました」 だが、取材を進めていく過程で、X氏の思惑通りにはいかない事態に直面した可能性をA氏は指摘する。 「当初X氏は、『コロナ感染』が原因で亡くなった方のご遺族を探していたのでしょう。でもなかなか見つからなかった。そんな中、放送日は刻一刻と近づいて来るし、上からのプレッシャーもあったのでしょう。 そこで、コロナ感染死ではなく、ワクチン接種後の副反応との因果関係が疑われる症状で亡くなった遺族の会(『つなぐ会』)に依頼を出したのではないか、と言われています」 つまり、当初はコロナに感染して亡くなった人の遺族を探していたが、見つからなかったため、「広い意味ではコロナで亡くなった方」ととらえて、ワクチンとの因果関係を訴える遺族に取材をしたのではないか、ということだ』、「当初はコロナに感染して亡くなった人の遺族を探していたが、見つからなかったため、「広い意味ではコロナで亡くなった方」ととらえて、ワクチンとの因果関係を訴える遺族に取材をしたのではないか」、ご都合主義的だ。
・『ワクチン死には触れられない事情  とはいえ、「コロナ感染死」と「ワクチンの副反応との因果関係が疑われる副反応死」とでは、その性質は大きく異なる。 「取材依頼をかける段階で、X氏は上層部には『ワクチン関連死を訴える遺族に取材する』とは伝えていなかったのでしょう。ワクチン死についてはさまざまな評価がありますし、局内でも医学的あるいは政治的な観点から、触れるべきではないという声も上がったでしょうから」(前出のA氏) 現にX氏から来た取材依頼のメールの文面では、意図的なのか、「ワクチン」という文言は使われていなかった。だが、つなぐ会のホームページに連絡してきたということは、ワクチン接種後に肉親を失い、関連性を訴える遺族たちの会であることは、天下のNHKの記者ならばわかっていたはずだ。 おそらくNHKの中ではX氏がワクチン死を訴える遺族を取材した後、その報告を受けて「ワクチン後遺症やワクチン死に触れるといろいろ面倒だ。広い意味では『コロナ禍で亡くなった方々』なのだから、ワクチンの部分を放送せず『遺族の証言』として放送できるだろう」という判断が下されたのだろう。 鵜川氏によると、17日にもNHKから改めて謝罪を受けたという。だが、それで憤りがおさまったわけではない。 「訂正放送も求めています」 しかし前出のNHK関係者は「訂正放送には応じないのでは」と見通しを明かす。 「先ほども言った通り、NHKの局内ではワクチン死はセンシティブな問題。遺族が主張する『ワクチンで亡くなった』という訂正放送をすることはできないでしょう。『今回の放送は放送倫理に反していました』と認めて謝罪するにとどめ、ワクチンに言及するのではなく、自分たちの番組作りを反省する流れに持っていきたいのではないか、とみています。 局内では今回のことをX氏とその上司の責任にし、チェック機能を強化して再発防止策を講じることで幕引きにしたいのでしょうね」』、「NHKの局内ではワクチン死はセンシティブな問題。遺族が主張する『ワクチンで亡くなった』という訂正放送をすることはできないでしょう」、「局内では今回のことをX氏とその上司の責任にし、チェック機能を強化して再発防止策を講じることで幕引きにしたいのでしょうね」、それにしても、「X氏」はどうしようもなく無責任だ。
・『NHKはどのように考えているのか  ワクチン死の扱いの難しさもさることながら、訂正放送などすれば「NHKは信用できない」という声が高まり、受信料不払い運動につながるのでは――そんな懸念も胸の内にはあるのかもしれない。 NHKは、どのように考えているのだろうか。真偽を聞こうと質問を送ったところ、次のような回答がメールで寄せられた。全文を掲載する。 〈放送までの経緯などについては現在、詳細を調査中ですが、担当者は、NPO法人を通じてご遺族を紹介してもらい、取材の過程で、ワクチン接種後に亡くなった方のご遺族だと認識しました。番組は、コロナ禍で亡くなった方のご遺族の思いを伝えるという考えで放送しましたが、適切ではありませんでした。ご遺族に対してはNPO法人を通じて謝罪しました。 16日には、ニュースウオッチ9で、キャスターが、伝え方が適切ではなかったとお詫びしたほか、動画を載せたツイッターなどの投稿を削除した上で、お詫びの投稿を行いました。 ワクチンを接種後に亡くなった方のご遺族だということを正確に伝えず、新型コロナに感染して亡くなったと受け取られるような伝え方をしてしまったことは適切ではなく、取材に応じてくださった方や視聴者の皆さまに深くお詫び申し上げます。 取材・制作の詳しい過程をさらに確認し、問題点を洗い出した上で、再発防止策を徹底し、信頼回復に努めます〉 取材をしたこれまでのやり取りを振り返ると、X氏は当初から「コロナワクチンによる副反応死疑い死の遺族」だということをわかっていて取材依頼を出したことは明らかだ。しかし、NHKはあくまで「取材を進める中でそのことがわかった」としたいようだ。真偽も含めてX氏に直接コンタクトをとってみると……「今、たてこんでおりますので後ほどお電話いたします」との返答で、以後連絡はなかった。 NHKの取材に応じた、ワクチン接種後に母親を亡くした佐藤かおりさんはこう反応する。 「私たちがNHKに求めているのは『真実を伝えること』です。ワクチン死の訴えを聞き、取材の場では『このことを伝えたい』といったのですから、それを実行してほしい。 今回、NHKの取材に応じたのは、ワクチン被害や遺族についてきちんと報道してもらえるものと思ったからです。実名で顔を出してカメラの前に出ること……そこには期待と覚悟、さまざまな思いもありました。だからこそ、今回の放送はとてもショックでした。改めて、私たちの声を全国に問うてほしいのです」 「コロナ禍で亡くなった方の遺族」に取材をしなければ、番組が成立しない。しかし、意図したとおりに取材が進まない――その焦りからワクチン死を訴える遺族を取材したのだろうが、であるならば、取材前にその趣旨を伝え、遺族の了解を取るべきだったはずだ。自分たちが求めている部分しか放送では使わず、彼ら彼女らの真意を踏みにじったのなら、遺族が憤るのは当然である。 「関係者に聞いたところ、取材をしたX氏はワクチンで亡くなった旨をなんとか放送しようとしたみたいですけどね。ただ、上が『それでは通らない』と突っぱねたようです。放送すれば遺族とトラブルになることなどわかっていたはずですが、X氏にはどうすることもできなかった」(前出のA氏) 愛する肉親を突然亡くした遺族たちの痛みに寄り添うことなく、番組の都合に合わせて彼らの声を切り取り放送したNHK。信頼回復を言うのなら、まずは遺族の訴えにもう一度向き合うことが必要ではないか』、「取材をしたX氏はワクチンで亡くなった旨をなんとか放送しようとしたみたいですけどね。ただ、上が『それでは通らない』と突っぱねたようです。放送すれば遺族とトラブルになることなどわかっていたはずですが、X氏にはどうすることもできなかった」、やはりこれは、「遺族会」が「番組BPO」に訴えて、公開の場で責任を明らかにする他ないのではなかろうか。 
タグ:(その6)(NHK(上)続投を阻まれた前田前会長の無念…背後にチラつく財界サロン「四季の会」の影、NHK(下)「岸田vs菅」の壮絶バトルの末に決まったトップ人事、稲葉NHK新会長が職員へ異例のメッセージ 前田・前会長の“銀行員的改革”はなぜ不評だったのか、【NHKワクチン被害者遺族放送問題】3題:なぜニュースウォッチ9は「ワクチン死」に触れなかったのか――遺族の決死の告白を踏みにじった「NHKの粗暴」、「私たちはNHKを許さない」コロナワクチン死を訴える気持ちを踏みにじった遺族が明かす「取材の全 NHK問題 日刊ゲンダイ 有森隆氏による「NHK(上)続投を阻まれた前田前会長の無念…背後にチラつく財界サロン「四季の会」の影」 「葛西氏が安倍晋三・菅義偉両政権を通じて重視したのが「NHKの支配」だったとされる。源流は第1次安倍政権(06年9月~07年9月)の菅義偉総務大臣時代にさかのぼる。NHKの報道に不満をもつメンバーが重用され、NHKの会長などを決める経営委員長に安倍氏の強い意向で富士フイルムの古森重隆社長(当時)が送り込まれた」、 「アサヒビール(現・アサヒグループホールディングス)の福地茂雄相談役をNHK会長(08年1月~11年1月)に任命した。福地氏も「四季の会」のメンバーだった。 09年、民主党政権が誕生したが、「四季の会」の勢いはとまらない。葛西氏は、元部下でJR東海の副会長だった松本正之氏を福地氏の後任としてNHK会長(11年1月~14年1月)に据えた」、 「元みずほフィナンシャルグループ会長の前田晃伸氏がNHK会長に就任した。前田氏は記者会見で記者に問われ、「四季の会」のメンバーであることを認めた」、「葛西氏が実質的な仕切り役」だったようだ。 有森隆氏による「NHK(下)「岸田vs菅」の壮絶バトルの末に決まったトップ人事」 「日本銀行元理事の稲葉延雄氏(72)を会長に任命することを決めた」、背景には何があったのだろう。 「菅氏のNHKへの影響力を削ぎたい岸田官邸が横槍を入れた。「岸田総理のいとこの宮沢洋一自民党税調会長が『日銀の元プリンスでいいのがいる』と稲葉氏を推した。それに総理が乗っかった」、「NHK経営委員会の森下俊三委員長は、稲葉氏に対して「改革で生じた副作用(=歪み)は直してほしい」と注文をつけた。 「スリムで強靱なNHK」を掲げ、人事制度や営業のやり方を強引に変えてしまった「前田改革」の、強烈な揺り戻しが始まった」、「「前田改革」の、強烈な揺り戻し」、とは見物だ。 デイリー新潮 高堀冬彦氏による「稲葉NHK新会長が職員へ異例のメッセージ 前田・前会長の“銀行員的改革”はなぜ不評だったのか」 「毎月20~30人程度の職員が依願退職」、「役職定年制」で「管理職は3割も減り、人件費コストは大幅に削減された」、確かにドラスティックな改革だ。 「試験で誕生した実績の乏しい40代の局長が、それに勝るキャリアと指導力を持つ50代の記者やディレクターたちに指示を与えるようになった。これでは組織に軋みが生じるはずだ。 職員たちは口々に「銀行屋の発想」と不満を漏らしたという」、なるほど。 「大胆な組織改革」では、「「縦割りを廃するため」などと前田体制は説明した。 それにより、制作者たちが畑違いの番組も手掛けるようになった。専門性が削がれつつある。 また、大河ドラマ、連続テレビ小説以外のドラマは外注化が進んでいる。やはりコストカットが第一の目的だ。 「これではエキスパートが育ちにくく、番組の質が保てなくなる恐れがある。NHKが受け継いできた制作力が伝承できるのだろうか」』、大胆過ぎたようだ。 「前田体制は受信料値下げを図ろうとするあまり、過度なコストカットに走り、職員の生活をないがしろにしたのではないか。それでは番組づくりへの影響は避けられない」、なるほど。 「新会長」が「前田改革を見直すつもりに違いない」とはお手並み拝見だ。 「NHKが進むべき道は視聴者のための公共放送になるしかない。「既に公共放送じゃないか」と言うなかれ。現在の形態は英国のBBCなど諸外国の公共放送とは似て非なるものだ。 まず全放送局が総務省の支配下から脱する。突飛な話ではない。先進国では政府がテレビ局を監督するほうが極めて異例なのである。テレビ局は報道機関であり、本来は政府を監視する側の立場なのだ」、確かに「政府を監視する側の立場」なのに、「政府がテレビ局を監督」するとは不自然だ。 「テレビ局の監督はほかの先進国のように独立放送規制機関が行う。米国にはFCC、英国にはOfcom、フランスにはCSAがある。これらの組織は政府から独立している。 独立放送規制機関はテレビ局に対して強い権限を持つ一方、政治がテレビ局に介入することを許さない。テレビ局を厳正にチェックしながら、政治から守っている。米国のCBSや英国のBBCが厳しい政府批判が出来る背景には独立放送規制機関の存在がある」、 「NHK経営委員を事実上政府が選び、それに国会が同意するという悪しき仕組みはあらためるほかない。会長は経営委員会が決めているから、オーナーは視聴者であるにも関わらず、運営権は政権党が握るという不可思議な状態が続いている。 BBCの場合、経営委員会の代わりに、組織の方向性を決める理事会がある。経営委員の定員は12人だが、BBC理事会は14人。トップの理事長は公募制だ。 理事長と4人の地域担当理事は公平性と透明性を確保した上で決められ、最終的には政府が任命する。残り9人の理事はBBCが任命する。会長はBBCが任命した理事から選ぶ。 経営委員会と理事会はまるで仕組みが違う上、Ofcomがあるから、BBCは独立性が極めて高い。NHKも海外の公共放送に倣うべきだ」、 「NHKを国営放送にするという案は論外だ。政権党の思う壺である。労せず受信料を徴収し、都合の良い主張を流せてしまうようになる。それもあり、国営放送の報道は海外で信用されない」、全く同感である。 現代ビジネス「なぜニュースウォッチ9は「ワクチン死」に触れなかったのか――遺族の決死の告白を踏みにじった「NHKの粗暴」【NHKワクチン被害者遺族放送問題#1】」 信じ難いような話だ。 「ここに登場した遺族全員が「肉親は、新型コロナのワクチン接種後の副反応による疑いで命を落とした」と主張している。決してコロナに感染して亡くなったわけではないのだ。 しかし、番組動画を見る限りでは、彼らは「コロナに感染して亡くなった」と受け止められるつくりになっている。ここに、遺族は憤っているのだ」、「遺族」が「憤る」のも当然だ。 「取材を担当したNHKのディレクター・X氏らは、佐藤さんら遺族の話を神妙な面持ちで終始聞いていた」のに、「放送で使われたのはその後半部分。亡くなったという事実だけ。その前段を伝えてもらいたかったのに、放送された映像はそうではなかった」、余りに不自然だ。 「「つなぐ会」代表」の見解は次の記事だ。 現代ビジネス「「私たちはNHKを許さない」コロナワクチン死を訴える気持ちを踏みにじった遺族が明かす「取材の全容」【NHKワクチン被害者遺族放送問題#2】」 「あった事をなかったようにされ忘れられていくのではないか、数えきれない嘆きの声が埋もれているのではないか。そして我々の報道の姿勢としてもこのままで良いのか」、ここまで「取材依頼」の「メール」内にここまで書かれていれば、「コロナワクチン被害者遺族会」側が大きく期待するのは当然だ。 「「X氏は取材時、『(ワクチン関連死)遺族のことは伝えなければならない』と涙を流しながら、遺族の声に耳を傾けてくれました。それなのにあの放送では、コロナ感染によって亡くなったようにしか見えない内容でした。肉親が『ワクチン接種後に亡くなった』という根幹部分が切り取られていたのです」、「取材」から「放映」までの間で、NHKの姿勢が変化したのだろうか。 「NHKの内部事情が関係しているとみられる」、次の記事に移ろう。 現代ビジネス「なぜNHKは「ワクチン死遺族の悲痛な声」を報じなかったのか…証言で浮かび上がった深層【NHKワクチン被害者遺族放送問題#3】」 「当初はコロナに感染して亡くなった人の遺族を探していたが、見つからなかったため、「広い意味ではコロナで亡くなった方」ととらえて、ワクチンとの因果関係を訴える遺族に取材をしたのではないか」、ご都合主義的だ。 「NHKの局内ではワクチン死はセンシティブな問題。遺族が主張する『ワクチンで亡くなった』という訂正放送をすることはできないでしょう」、「局内では今回のことをX氏とその上司の責任にし、チェック機能を強化して再発防止策を講じることで幕引きにしたいのでしょうね」、それにしても、「X氏」はどうしようもなく無責任だ。 「取材をしたX氏はワクチンで亡くなった旨をなんとか放送しようとしたみたいですけどね。ただ、上が『それでは通らない』と突っぱねたようです。放送すれば遺族とトラブルになることなどわかっていたはずですが、X氏にはどうすることもできなかった」、やはりこれは、「遺族会」が「番組BPO」に訴えて、公開の場で責任を明らかにする他ないのではなかろうか。
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原発問題(その21)(これが証拠メールだ 地震本部の警告を骨抜きするよう圧力かけた内閣府の罪 【地震大国日本の今】「津波リスクはなぜ軽んじられた」地震学会元会長が告発、日本原子力発電は“ぼったくりバー”? 2カ所とも稼働停止なのに1000億円の売り上げで黒字) [国内政治]

原発問題については、本年4月28日に取上げた。今日は、(その21)(これが証拠メールだ 地震本部の警告を骨抜きするよう圧力かけた内閣府の罪 【地震大国日本の今】「津波リスクはなぜ軽んじられた」地震学会元会長が告発、日本原子力発電は“ぼったくりバー”? 2カ所とも稼働停止なのに1000億円の売り上げで黒字)である。

先ずは、4月29日付けJBPressが掲載した科学ジャーナリストの添田 孝史氏による「これが証拠メールだ、地震本部の警告を骨抜きするよう圧力かけた内閣府の罪 【地震大国日本の今】「津波リスクはなぜ軽んじられた」地震学会元会長が告発」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/74999
・『地震のリスクを科学的に評価する(リスク評価)。その評価をもとに、被害を小さくするためハードやソフトの対策を進める(リスク管理)。それが地震防災の進め方だ。 しかし311前の東北地方の津波リスク評価は、電力会社を中心とする「原子力ムラ」の圧力でねじ曲げられており、そのため津波で多くの人が亡くなり、原発事故も引き起こした可能性がある。そんな疑惑を、元日本地震学会会長の島崎邦彦・東大名誉教授が、3月末に発売された著書『3.11 大津波の対策を邪魔した男たち』(青志社)で告発した。この告発は、一般の人だけでなく、地震学者など専門家の間でも話題になっている』、「島崎邦彦」氏は前原子力規制委員会委員(委員長代理)でTVでもよく顔が放映されていた。勇気ある内部告発だ。
・『「おかしなことが起こっている」だが背景はわからなかった  島崎さんは、2002年以降、津波のリスク評価が水面下で巧妙にねじ曲げられていった経緯を、公開されていなかった議事録や電子メールなどを引用して、研究者や官僚など関係者の実名も出して細かく描写している。 311前に、津波のリスクを小さくしようとする「おかしなこと」が起こっていると島崎さんは感じていたが、背景はわかっていなかった。後になって、原子力ムラが関係していたと考えると、疑問が氷解したという。原子力ムラの実体は、原発を推進するために、電力会社を中心に、大企業や経済産業省、研究者、メディアなどが絡み合ったコングロマリットのようなものだとされている。 地震リスク評価の第一人者だった島崎さんによる内部告発であることには重みがある。震災後には原子力規制委員会の委員長代理も務め、原子力ムラの実態と力の大きさをよく知る立場にあったことから、告発の信頼性が高まっている』、「地震リスク評価の第一人者だった島崎さんによる内部告発であることには重みがある。震災後には原子力規制委員会の委員長代理も務め、原子力ムラの実態と力の大きさをよく知る立場にあったことから、告発の信頼性が高まっている」、その通りだ。
・『告発「地震本部のリスク評価を内閣府がねじ曲げた」  この本で主に描かれているのは、2002年から2005年にかけて、政府の地震調査研究推進本部(地震本部)による地震のリスク評価(長期評価)を、内閣府がねじ曲げていく過程だ。 地震本部は、文部科学省に事務局があり、地震学者らが月一回程度集まって、各地域でこれからどんな地震が発生するか、長期的な予測(長期評価)をまとめている。「マグニチュード(M)7程度の首都直下地震の発生確率は、今後30年以内で70%程度」「南海トラフでM8〜9級の巨大地震が20年以内に起こる確率は60%程度」*1といった予測を発表している組織だ。 一方の内閣府は、国の防災を担当しており、中央防災会議の事務局でもある。地震などの災害にどう備えるか、防災基本計画の作成などをしている。リスクを評価する地震本部、そのリスクを管理するのが内閣府という役割分担になる。 2002年7月、島崎さんらが中心になって、東北地方の太平洋側で、どこでも津波高さが10mを超えるようなM8級の地震(津波地震)が発生するおそれがあるという新たな予測(長期評価)を地震本部がまとめた*2。これに従えば、福島第一原発の津波想定は従来の3倍近くに上昇し、大がかりな対策工事を迫られることになる*3。 この長期評価の発表直前、内閣府の担当者から「防災担当大臣が非常に懸念している」「発表を見送れ」と、地震本部事務局にメールが送られる(画像参照)。発表が止められないとわかると「津波対策をしなくて良い」と読める文言を挿入するよう内閣府は迫り、長期評価は改変されてしまう*4。 さらに2003〜2005年にかけて、中央防災会議が東北地方の津波対策をまとめる過程で、地震本部の津波地震は葬られてしまう。明治三陸地震のようなすでに起きた津波地震より、長い間地震が起きた記録が無いその南側(宮城〜福島沖)の方が危ないという地震学者らの警告は無視されたのだ。 (*配信先サイトのためメール画像が表示されていない方はJBpressにて記事をご覧ください)』、「2002年7月、島崎さんらが中心になって、東北地方の太平洋側で、どこでも津波高さが10mを超えるようなM8級の地震(津波地震)が発生するおそれがあるという新たな予測(長期評価)を地震本部がまとめた*2。これに従えば、福島第一原発の津波想定は従来の3倍近くに上昇し、大がかりな対策工事を迫られることになる*3。 この長期評価の発表直前、内閣府の担当者から「防災担当大臣が非常に懸念している」「発表を見送れ」と、地震本部事務局にメールが送られる(画像参照)。発表が止められないとわかると「津波対策をしなくて良い」と読める文言を挿入するよう内閣府は迫り、長期評価は改変されてしまう*4」、「さらに2003〜2005年にかけて、中央防災会議が東北地方の津波対策をまとめる過程で、地震本部の津波地震は葬られてしまう。明治三陸地震のようなすでに起きた津波地震より、長い間地震が起きた記録が無いその南側(宮城〜福島沖)の方が危ないという地震学者らの警告は無視されたのだ」、「内閣府」の妨害工作が功を奏した形だ。 
・『内閣府の担当者が地震本部に送ったメール  「内閣府の防災担当は、津波地震のうち、明治三陸地震だけにそなえれば良い、とした。このため『備える必要がない』とされた地域で、多数の人々が3.11大津波の犠牲となった」と島崎さんは述べている』、「内閣府の防災担当は、津波地震のうち、明治三陸地震だけにそなえれば良い、とした。このため『備える必要がない』とされた地域で、多数の人々が3.11大津波の犠牲となった」、これは初めtて知ったが、犯罪的だ。
・『中央防災会議が想定した津波の発生場所  東日本大震災による死者・行方不明者は1万8423人*5。死者の9割は津波による溺死だった。さらに震災関連死も3789人*6に上る。津波による死者の大半は、中央防災会議が「備える必要がない」と油断させていた宮城県より南で亡くなっている。 *1 地震調査研究推進本部 今までに公表した活断層および海溝型地震の長期評価結果一覧(2023年1月13日) *2 地震調査研究推進本部 地震調査委員会 「三陸沖から房総沖にかけての地震活動の長期評価について」 2002年7月31日 *3 当時、原発の規制を担当していた原子力安全・保安院は、長期評価によれば福島第一原発にどれぐらいの津波が襲来するか計算するよう要請したが、東電は40分くらい抵抗して、逃げ切った。長期評価が福島第一に大きな影響をもたらすことを長期評価発表当時から東電は知っていたのだ。 *4 木野龍逸 「長期評価の発表を防災担当大臣が『懸念』し修正を要求」 2018年8月1日 Level7news *5 警察庁緊急災害警備本部 平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の警察措置と被害状況 2023年3月10日 *6 復興庁 東日本大震災における震災関連死の死者数 2022年6月30日)』、「原発の規制を担当していた原子力安全・保安院は、長期評価によれば福島第一原発にどれぐらいの津波が襲来するか計算するよう要請したが、東電は40分くらい抵抗して、逃げ切った。長期評価が福島第一に大きな影響をもたらすことを長期評価発表当時から東電は知っていたのだ」、これまで「東電」は大きな津波襲来を予想してなかったとしているが、実際は大きな津波襲来のシミュレーションを「40分くらい抵抗して、逃げ切った」、悪質だ。
・『津波対策には金が必要、ならば評価を小さくしてしまえ  科学者たちが津波のリスク評価をまとめた。それは従来の想定よりかなり大きいので、対策にお金がかかる。「ならば評価を小さくしてしまえ」とリスクを管理する側(内閣府)が迫る。それは科学をねじ曲げる異常な動きだ。食品安全委員会が調べた食品のリスクを、厚生労働省が、対策が難しいからと変えさせてしまうようなものである。ところが東北地方の津波想定では、それが起きていたのだ。 「原子力ムラが内閣府防災担当を使って、国の地震防災計画から福島県沖の津波地震を除かせたのだ。私はそう思っている」と島崎さんは推察している。 それは島崎さんの思い込み、根拠の無い陰謀論だという批判もある。確かに、2002年から2005年にかけて地震本部のリスク評価がねじ曲げられた過程で、原子力ムラの圧力が働いた証拠は見つかっていない。ただし別の時期では、同様のリスク評価ねじ曲げに、原子力ムラが関わっていた。行政文書に記録が残っている。 例えば本書の8、9章では、東電が震災直前の2011年、地震本部の長期評価の改訂作業に介入し、自社に都合の悪い津波想定が公開されないようにしていた事実が明らかにされている。長期評価の事務局である文科省と東電が秘密会合を何度も開き、公開前の長期評価の文言を改変していた*7。 本書の第1章で触れられている事例は、1997年の津波想定つぶしだ。これは2002年長期評価の一つ前の津波想定についての出来事である。建設省(現国土交通省)など4省庁がまとめていた津波想定は、福島第一の津波想定を超え、敷地に遡上してしまうものだった。電力会社は、これが発表されることを恐れて、原発を推進する通商産業省(現経済産業省)を通して、発表しないように、あるいは内容を書き換えるように、建設省に圧力をかけていた。その内部文書が、311の後に開示されている*8。 このように、1997年と2011年については、原子力ムラが圧力をかけた確実な証拠がある。その間の2002〜2005年にかけてだけ、何も裏工作が無かったとは、むしろ考えにくい。 また、津波想定ではないが、2000年代に開かれた政府の原発耐震強化についての審議会で、電力会社が専門家たちに根回しして都合の良い内容を代弁してもらったり、あるいは具合の悪いことは黙っていてもらったりして、耐震策を骨抜きしようとしていたことも明らかになっている*9。裏工作する手法、実行を担当する社員、予算、コネクション、それらを電力会社はずっと豊富に維持していたのだ。 *7 橋本学、島崎邦彦、鷺谷威 「2011年3月3日の地震調査研究推進本部事務局と電力事業者による日本海溝の長期評価に関する情報交換会の経緯と問題点」 日本地震学会モノグラフ第3号「日本の原子力発電と地球科学」 2015年3月 p.34-44 木野龍逸 「文科省から政府事故調および国会事故調に提出された資料」 2019年1月22日  添田孝史 「原子力安全・保安院 行政文書ファイル『企調課提出資料』の残りぜんぶ」 2019年1月9日 *8 添田孝史 「四省庁報告書、七省庁手引き関連」 *9 石橋克彦 電力会社の「虜(とりこ)」だった原発耐震指針改訂の委員たち:国会事故調報告書の衝撃 科学82(8)2012年8月 p.841-846 添田孝史 「電力業界が地震リスク評価に干渉した4つの事例」 日本地球惑星科学連合2015年大会 [S-CG56] 日本の原子力発電と地球科学:地震・火山科学の限界を踏まえて 口頭発表 添田孝史 「事故前、対策をとるべきだと伝えていた」Level7news 2021年3月12日 東電の担当者が、津波や地震の研究者に根回していたとメールで報告している』、「津波対策には金が必要、ならば評価を小さくしてしまえ」との「内閣府」のやり方は乱暴極まる。「2000年代に開かれた政府の原発耐震強化についての審議会で、電力会社が専門家たちに根回しして都合の良い内容を代弁してもらったり、あるいは具合の悪いことは黙っていてもらったりして、耐震策を骨抜きしようとしていたことも明らかになっている」、「東電の担当者が、津波や地震の研究者に根回していたとメールで報告している」、なるほど。
・『1000億円規模の利益を守るために見捨てられた津波死者  古い原発を無対策のまま延命させて運転継続できれば、年に1000億円オーダーの利益を得ることができる。そのために津波想定の見直しを、少しでも遅らせたい。そんな動機による東電の裏工作が、原発事故を引き起こしただけでなく、311の津波の死者を増やしてしまったのだろうか。 中央防災会議は311後、「これまでの地震・津波の想定結果が、実際に起きた地震・津波と大きくかけ離れていたことを真摯に受け止め、今後の地震・津波の想定の考え方を抜本的に見直さなければならない」と反省した*10。しかし、なぜ想定を誤ったのか、原因は追及されていない。 「原因の追及がなければ、過ちは繰り返される。過ちがどのようにして起こったか、誰が何をしたかが追及されない限り、何も変わらない」と島崎さんは述べている。 島崎さんは、福島原発事故を調べた政府の事故調査委員会も、内閣府の圧力についての追及が腰砕けになってしまったことを指摘している。「政府事故調は途中で変わったようだ。追及していくうちに、政府自身が追及される立場となり、急に方向転換したのだろう」 震災から12年経つが、まだよくわかっていない重要なことは多い。 *10 中央防災会議 東北地方太平洋沖地震を教訓とした地震・津波対策に関する専門調査会報告 2011年9月28日)』、「政府の事故調査委員会も、内閣府の圧力についての追及が腰砕けになってしまったことを指摘している。「政府事故調は途中で変わったようだ。追及していくうちに、政府自身が追及される立場となり、急に方向転換したのだろう」、こうした勇気ある内部告発が出てきたことは大いに結構なことだ。ただ、第一線を引退してから出てきたのは残念だ。事故原因の追究がこれにより少しでも進展することを期待したい。

次に、5月25日付け日刊ゲンダイが掲載した経済ジャーナリストの重道武司氏による「日本原子力発電は“ぼったくりバー”? 2カ所とも稼働停止なのに1000億円の売り上げで黒字」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/323463
・『「原子力ムラのぼったくりバー」。電力業界関係者らの間ではこんな皮肉も飛び交う。日本原子力発電──原電のことだ。 東京・上野に本店を置く原発専業の卸電気事業者で、茨城県東海村と福井県敦賀市の2カ所に発電所を持つ。ここで発電した電気を東京電力ホールディングス(HD)をはじめとした電力大手に売って収益を稼ぐというのがビジネスモデルだ。 だが、どちらの原発も2011年の東日本大震災による東京電力福島第1原発の過酷事故以降、稼働停止中だ。要するに現時点では売り物となる商品が何もない。にもかかわらず、この会社は毎期1000億円前後の売上高を着実に計上し、しかも黒字を維持し続けているのである。 先週18日に発表された23年3月期決算も減収減益とはいえ売上高は921億円(前期比0.9%減)。9億円弱の特別利益を計上したこともあって最終利益18億円(同25.1%減)を確保した。6年連続の黒字だ。 なぜこんな芸当が可能なのか。その“からくり”が「基本料金」と呼ばれる料金体系だ。原電と電気の供給契約を交わしている電力大手5社(東電HD、東北電力、中部電力、北陸電力、関西電力)は購入した電力量が仮にゼロであっても毎年一定の料金を原電に支払い続けなければならないような仕組みになっているのである。これが原電の経営を支えているわけで、今や「(原電に対する)一種の支援金・寄付金と化している」(東電HD関係者)と言ってもよい。 その総額たるや12年度から22年度までで実に1兆2141億円。原電の連結総資産7285億円(今年3月末)を軽く上回る。 原電の購入先5社のうち東電HD、東北電と北陸電の3社は6月分から家庭用電気の規制料金の値上げに踏み切る。経済産業省が値上げの認可に向けて開いた公聴会などでは当然、こうした原電への「対価なき巨額支出」(事情通)を疑問視する声が上がったとされるが、西村康稔経産相は「(原電と)共同開発した原発の人件費や修繕費などだ」と断定。あっさりと原価算入を認めた。最終的には家計の負担で原電を延命させていることにもなる』、「電力大手5社」は「購入した電力量が仮にゼロであっても毎年一定の料金を原電に支払い続けなければならないような仕組み」、「12年度から22年度まで」の「売上高」は年平均1103億円、「原子力村」のなかで優雅に儲け続けられる「仕組み」のようだ。 
タグ:原発問題 (その21)(これが証拠メールだ 地震本部の警告を骨抜きするよう圧力かけた内閣府の罪 【地震大国日本の今】「津波リスクはなぜ軽んじられた」地震学会元会長が告発、日本原子力発電は“ぼったくりバー”? 2カ所とも稼働停止なのに1000億円の売り上げで黒字) JBPRESS 添田 孝史氏による「これが証拠メールだ、地震本部の警告を骨抜きするよう圧力かけた内閣府の罪 【地震大国日本の今】「津波リスクはなぜ軽んじられた」地震学会元会長が告発」 「島崎邦彦」氏は前原子力規制委員会委員(委員長代理)でTVでもよく顔が放映されていた。勇気ある内部告発だ。 「地震リスク評価の第一人者だった島崎さんによる内部告発であることには重みがある。震災後には原子力規制委員会の委員長代理も務め、原子力ムラの実態と力の大きさをよく知る立場にあったことから、告発の信頼性が高まっている」、その通りだ。 「2002年7月、島崎さんらが中心になって、東北地方の太平洋側で、どこでも津波高さが10mを超えるようなM8級の地震(津波地震)が発生するおそれがあるという新たな予測(長期評価)を地震本部がまとめた*2。これに従えば、福島第一原発の津波想定は従来の3倍近くに上昇し、大がかりな対策工事を迫られることになる*3。 この長期評価の発表直前、内閣府の担当者から「防災担当大臣が非常に懸念している」「発表を見送れ」と、地震本部事務局にメールが送られる(画像参照)。発表が止められないとわかると「津波対策をしなくて良い」と読める文言を挿入するよう内閣府は迫り、長期評価は改変されてしまう*4」、「さらに2003〜2005年にかけて、中央防災会議が東北地方の津波対策をまとめる過程で、地震本部の津波地震は葬られてしまう。明治三陸地震のようなすでに起きた津波地震より、長い間地震が起きた記録が無いその南側(宮城〜福島沖)の方が危ないとい う地震学者らの警告は無視されたのだ」、「内閣府」の妨害工作が功を奏した形だ。 「内閣府の防災担当は、津波地震のうち、明治三陸地震だけにそなえれば良い、とした。このため『備える必要がない』とされた地域で、多数の人々が3.11大津波の犠牲となった」、これは初めtて知ったが、犯罪的だ。 「原発の規制を担当していた原子力安全・保安院は、長期評価によれば福島第一原発にどれぐらいの津波が襲来するか計算するよう要請したが、東電は40分くらい抵抗して、逃げ切った。長期評価が福島第一に大きな影響をもたらすことを長期評価発表当時から東電は知っていたのだ」、これまで「東電」は大きな津波襲来を予想してなかったとしているが、実際は大きな津波襲来のシミュレーションを「40分くらい抵抗して、逃げ切った」、悪質だ。 「津波対策には金が必要、ならば評価を小さくしてしまえ」との「内閣府」のやり方は乱暴極まる。「2000年代に開かれた政府の原発耐震強化についての審議会で、電力会社が専門家たちに根回しして都合の良い内容を代弁してもらったり、あるいは具合の悪いことは黙っていてもらったりして、耐震策を骨抜きしようとしていたことも明らかになっている」、「東電の担当者が、津波や地震の研究者に根回していたとメールで報告している」、なるほど。 「政府の事故調査委員会も、内閣府の圧力についての追及が腰砕けになってしまったことを指摘している。「政府事故調は途中で変わったようだ。追及していくうちに、政府自身が追及される立場となり、急に方向転換したのだろう」、こうした勇気ある内部告発が出てきたことは大いに結構なことだ。ただ、第一線を引退してから出てきたのは残念だ。事故原因の追究がこれにより少しでも進展することを期待したい。 日刊ゲンダイ 重道武司氏による「日本原子力発電は“ぼったくりバー”? 2カ所とも稼働停止なのに1000億円の売り上げで黒字」 「電力大手5社」は「購入した電力量が仮にゼロであっても毎年一定の料金を原電に支払い続けなければならないような仕組み」、「12年度から22年度まで」の「売上高」は年平均1103億円、「原子力村」のなかで優雅に儲け続けられる「仕組み」のようだ。
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