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外国人労働者問題(その20)(技能実習制度「廃止」の議論に喜べない2つの理由 有識者会議の報告書案が残した「人材育成」の盾、日本の難民認定が厳しいのは 外国人に「ブラック労働」させるためという残酷、30年間以上 堂々巡りする「外国人の受入れ議論」 肯定論が7割占めるが一向に進まぬ移民政策) [社会]

外国人労働者問題については、本年2月14日に取上げた。今日は、(その20)(技能実習制度「廃止」の議論に喜べない2つの理由 有識者会議の報告書案が残した「人材育成」の盾、日本の難民認定が厳しいのは 外国人に「ブラック労働」させるためという残酷、30年間以上 堂々巡りする「外国人の受入れ議論」 肯定論が7割占めるが一向に進まぬ移民政策)である。

先ずは、本年4月29日付け東洋経済オンライン「技能実習制度「廃止」の議論に喜べない2つの理由 有識者会議の報告書案が残した「人材育成」の盾」を紹介しよう。
・『4月18日、広島県東広島市の空き地で乳児の遺体が見つかった。乳児の母親は19歳のベトナム人女性だった。 技能実習生だったというこの女性は、4月20日に死体遺棄容疑で逮捕された。一部報道によれば「妊娠が知られると帰国させられると思った」などと話しているという。 2020年には熊本で、同じく技能実習生だったベトナム人女性が死産した双子の遺体を遺棄したとして、死体遺棄罪に問われた。遺体を自宅の段ボールに入れていた行為が「遺棄」にあたるかが争点となり、1審と2審では執行猶予付きの有罪となったが、2023年3月の最高裁判所判決で逆転無罪となった。 技能実習生をめぐっては、これまでも多くの事件やトラブルが相次いできた。その根因と言える「技能実習制度」が今、大きな転換点に差し掛かっている』、「「技能実習制度」が今、大きな転換点に差し掛かっている」、とは甘過ぎる表現で、「「大きな転換点」を通過した」という方が適切だろう。
・『名ばかりの「廃止」になる?  「技能実習制度を廃止し、新たな制度の創設を検討すべきである」――。 4月10日に法務省が開催した、技能実習制度と特定技能制度の見直しを検討する有識者会議。そこで示された中間報告書のたたき台で、制度の「廃止」が提言されたことが各メディアで大きく報じられた。 技能実習制度は、国際貢献として途上国の外国人を受け入れ、技能を移転することを目的として1993年に創設された。しかし制度設計の問題から、かねて人権侵害や労働関係法違反の温床となっているとの指摘が国内外からなされていた。そうした背景から、4月28日に出された中間報告書案では、制度を「国際的にも理解が得られるものとなるよう」検討する必要があると明記された。 制度の廃止は、労働環境の改善に向けて一歩前進したとも受け取れる。ところが技能実習生の支援者らの間では、「名ばかりの廃止になるのではないか」との冷めた見方が広がっている。 「『人材育成』という言葉がなくならないと、人権侵害の構造はなくならない」。そう話すのは、国士舘大学教授で、NPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」共同代表理事の鈴木江理子氏だ。 中間報告書案では「人材確保と人材育成を目的とする新たな制度」を検討すべきと提言している。日本の技術を学ぼうと来日した外国人の育成に加えて、これまで明示されなかった国内の労働力不足対策という2つの目的を持たせる方向だ。) 現行の技能実習制度は、外国人実習生が日本で「実習」をする最長5年の間、原則として転職(転籍)を認めていない。制度には「外国人の育成による国際貢献」という建前があり、育成のためには、実習生は1つの受け入れ先で長く働くことが望ましいという理屈からだ。 今回の報告書案では、転職の制限を一部緩和する方向性が示されたが、あくまで「人材育成を制度趣旨とすることに由来する転籍制限は残す」と前置きしている。 技能実習制度に関する有識者会議の資料 しかしこの「育成」を理由とする転職の制限が、人手不足に悩む企業などにより、実習生を縛り付ける口実として悪用されているのが実態だ。 転職ができないために、賃金不払いや長時間労働などの不当な扱いに耐えているケースは後を絶たない。それでも多くの実習生は、雇い主とのトラブルを避けるため、不当な扱いを直接訴えない傾向にある。雇い主の判断で「実習」が継続できなくなれば、在留資格を失い帰国しなければならないためだ。そもそも日本語能力が乏しい実習生は、他の日本人に相談することも難しい。 実習生の中には、母国の送り出し機関へ支払う費用として50~100万円の「借金」を背負って来日した人もいる。簡単に帰国できない状況下で、過酷な労働環境にある実習先から「失踪」という形で逃れ、不法滞在につながるケースもある。 「強制労働の一形態」(鈴木教授)とまで言われる転職の制限がある限り、制度自体が人権侵害や労働関係法違反につながるとして、国内の支援団体や国連機関などから批判され続けてきた』、「今回の報告書案では、転職の制限を一部緩和する方向性が示されたが、あくまで「人材育成を制度趣旨とすることに由来する転籍制限は残す」と前置きしている。 しかしこの「育成」を理由とする転職の制限が、人手不足に悩む企業などにより、実習生を縛り付ける口実として悪用されているのが実態だ」、「実習生の中には、母国の送り出し機関へ支払う費用として50~100万円の「借金」を背負って来日した人もいる。簡単に帰国できない状況下で、過酷な労働環境にある実習先から「失踪」という形で逃れ、不法滞在につながるケースもある」、なるほど。
・『「妊娠したら解雇」が後を絶たない  冒頭のような実習生の孤立出産の問題も、多くは似たような背景から生じている。 ベトナム人技能実習生を支援するNPO法人「日越ともいき支援会」では2022年、28人の妊娠した技能実習生から解雇に関する相談を受け、雇用主と雇用継続の交渉を行った。同法人の吉水慈豊代表は「妊娠をした技能実習生を解雇しようとする雇用主は多い」と指摘する。 技能実習生は法律上労働者であり、本来は産休や育休が認められる存在だ。そもそも妊娠を理由とした解雇は法律違反に当たる。 入管庁は2019年から注意喚起として、実習生の受け入れ企業などに対し、男女雇用機会均等法や、実習生の私生活の制限を禁じた技能実習法の遵守を呼びかけている。) それにもかかわらず、一部の受け入れ企業や監理団体では法令遵守の意識が乏しい。「人材育成」という名目を盾に、「実習生は妊娠すべきではない」といった考え方が蔓延しているからだ。 出入国管理庁が2022年12月に公表した調査によると、送り出し機関や監理団体などから「妊娠したら仕事を辞めてもらう」などの発言を受けたことがある実習生の割合は、26.5%に上った。過去には実際に、妊娠が発覚したことで強制的に帰国させられた実習生も存在する。 今回の報告書案が積み残した大きな課題はもう1つある。実習生の人権侵害を防止・是正できない「監理団体」に対する処遇だ。 監理団体は、外国の送り出し機関から技能実習生を受け入れ、企業に紹介する役割を担う。非営利団体が多いが、中には送り出し機関に接待やキックバックの要求をする悪質な団体もあり、それらが実習生の借金にもつながっている。 報告書案は、新制度で「人権侵害等を防止・是正できない監理団体を厳しく適正化・排除する必要」があると記したものの、「悪質な監理団体の基準の議論すらされていない。現状の制度では監理団体も企業も適切に罰せられず、一元的に監督する機関である外国人技能実習機構も、その役割を果たせていない」(日越ともいき支援会の吉水代表)』、「技能実習生は法律上労働者であり、本来は産休や育休が認められる存在だ。そもそも妊娠を理由とした解雇は法律違反に当たる」、「報告書案は、新制度で「人権侵害等を防止・是正できない監理団体を厳しく適正化・排除する必要」があると記したものの、「悪質な監理団体の基準の議論すらされていない。現状の制度では監理団体も企業も適切に罰せられず、一元的に監督する機関である外国人技能実習機構も、その役割を果たせていない』、「悪質な監理団体の基準の議論すらされていない」、「監理団体」に対する甘さはどう考えても行き過ぎだ。
・『制度改革で必ず誰かがデメリットを被る  現在、監理団体は全国に2000近く存在している。岐阜一般労働組合で実習生のシェルターを運営する支援などを行う甄凱(けんかい)氏は、「国が監理団体を適切に管理できないのであれば、ハローワークを介するなど、別のマッチング手段も検討すべきだ」と主張する。 しかし監理団体の取り締まり強化や、監理団体を介さないマッチング方法の導入など、制度を抜本的に変えるには反発も予想される。監理団体は実習生1人当たり、月3~5万円の監理費などを受け入れ企業から受け取ることで運営しているからだ。 国士舘大学の鈴木教授は「すでに日本の産業構造に根付いた実習制度を大きく変えれば、必ず誰かがデメリットを被る。そのために見直しが引き延ばされてきた結果、実習生が自殺や死産に追い込まれ、多くの命が失われてきた」と指摘する。 厚生労働省の国立社会保障・人口問題研究所は4月26日、2070年に国内の人口が8700万人にまで減少し、その1割が外国人になるとの推計を発表した。少子高齢化が続く一方、実習生や留学生などの外国人の転入は増える見込みだ。 若い働き手を外国人に頼る構造は、今後ますます顕著になるだろう。技能実習制度が創設されてから30年の間、多くの問題が看過されてきた。「人材育成」を盾にした転職の制限や、悪質な監理団体の排除ができなければ、人権侵害のリスクはくすぶり続ける。新制度で痛みを伴う改革に踏み切れるかが、焦点となる』、「監理団体は全国に2000近く存在」、「監理団体は実習生1人当たり、月3~5万円の監理費などを受け入れ企業から受け取ることで運営」、「転職制限」の撤廃などで「監理団体」の整理統合を進めてゆくべきだろう。

次に、5月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「日本の難民認定が厳しいのは、外国人に「ブラック労働」させるためという残酷」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/322698
・『なぜ日本は難民に冷酷なのか  いつもは「日本の◯○を外国人が称賛!」とか「外国人観光客が日本のおもてなしに感動!」みたいな話に大はしゃぎをしているのに、なぜ「外国人が日本に保護を求めている」という話になると、人が変わったように冷酷になれるのか――。 入管法改正案が衆議院を通過したことを受けて、日本の難民政策への批判が寄せられている。国際的ハッカー集団「アノニマス」を名乗るアカウントも抗議の意味で、法務省のホームページにサイバー攻撃をした。 ご存じの方も多いだろうが、国際社会の中で日本は「難民に冷たい国」というイメージが定着しつつある。難民認定が非常に厳しく、認定率は諸外国と比べて異常に低いわずか0.3%(2021年、出入国在留管理庁)だからだ。 この狭き門がゆえ、過去には祖国に送還されたら命の危険もあるような外国人の難民申請をはねつけた例もあるほどだ。 「それは欧州のように紛争国や政治が不安定な国が近くにないからだ」とどうにかして、「日本いい国、すごい国」という方向で押し切りたい人も多いだろうが、日本と同じく四方を海に囲まれて、近くで紛争のないオーストラリアには世界中から飛行機で難民がやってきており、認定率が高い。日本が「難民に冷たい国」というのは否定し難い事実なのだ。 では、なぜ日本の難民認定は厳しいだろうか』、「日本と同じく四方を海に囲まれて、近くで紛争のないオーストラリアには世界中から飛行機で難民がやってきており、認定率が高い。日本が「難民に冷たい国」というのは否定し難い事実なのだ」、確かにその通りだ。
・『ブラック労働押し付ける「技能実習制度」を続けたい  よく言われるのは、「移民」をかたくなに拒む閉鎖性だ。五輪や観光に訪れる外国人は諸手を挙げて大歓迎し、「出稼ぎ外国人」も国をあげて拡大しているのに、その外国人が「日本で家族を持って暮らしたい」などと言い出すと途端にトーンダウンする日本人のなんと多いことか。中には、「日本を食い物にする気か」などと盗人扱いをするような人までいる。 そんな日本の排他主義を象徴するのが2021年3月、在留資格を失ったスリランカ女性が出入国在留管理局に長期収容されて亡くなるという痛ましい悲劇だ。抗精神病薬を服用してぐったりしている女性に職員が「ねえ、薬決まってる?」などの暴言を吐いていたことが明らかになっている。 このような「外国人嫌悪」のカルチャーが、国際社会の常識とかけ離れた難民政策の原因になっている、という説は確かに説得力がある。 ただ、筆者は日本政府が難民にやたらと冷たいのは、そういう人権感覚もさることながら、シンプルに日本の「国策」と整合性をつけるということが大きいと思っている。 その国策とは、「日本人が嫌がるようなブラック労働は、外国人労働者にやってもらう」という考えに基づいた技能実習制度だ。 難民認定をゆるくして、多く外国人を難民として迎え入れてしまうと、技能実習制度がガラガラと音を立てて崩壊してしまう。それは日本経済にとっても大打撃だし、自民党の選挙戦略的にもかなりマズい。 というわけで、祖国に送還されたら命の危険があるとか、国際社会があきれているぞ、なんて話は頑なに耳をふさいで、難民認定のハードルを上げ続けているというわけだ。 難民という国際社会が抱える人権問題と、外国人労働者の問題にどんな関係があるのか、と首を傾げる人も多いだろう。しかし、両者は密接に関わっている。というか、根っこはほぼ同じだ。 それをわかっていただくため、順を追って説明していこう』、「日本政府が難民にやたらと冷たいのは、そういう人権感覚もさることながら、シンプルに日本の「国策」と整合性をつけるということが大きいと思っている」、「その国策とは、「日本人が嫌がるようなブラック労働は、外国人労働者にやってもらう」という考えに基づいた技能実習制度だ。 難民認定をゆるくして、多く外国人を難民として迎え入れてしまうと、技能実習制度がガラガラと音を立てて崩壊してしまう。それは日本経済にとっても大打撃だし、自民党の選挙戦略的にもかなりマズい」、なるほど。
・『つらい技能実習から見て難民申請は希望だが…  日本の技能実習制度が「日本人がやりたくないブラック労働は外国人に」という考えに基づいていることは今更説明の必要もないだろう。外国人を、どんな辛い仕事でも安い賃金でニコニコ働く「おしん」のような存在だと勘違いした雇用主によるさまざまな人権侵害が、全国各地で報告されている。 そのため、国連の人種差別撤廃委員会は20年、借金返済のため労働を強いられる「債務労働」のような状況だとし制度の見直しと、政府の徹底した監督を要望している。 日本では「今度来たベトナム人は日本語もうまいし、働き者だなあ」なんてホッコリとした話にされがちな技能実習制度は、なんのことはない国際社会では「人身取引」「現代の奴隷制」なのだ。 ただ、残念ながら日本政府は、どれだけ国際社会から批判を受けても、この技能実習制度を死守しなくてはいけない。 日本の企業の99.7%を占めて、雇用の7割を担う中小零細企業の多くは、「低賃金」を前提としたビジネスモデルだからだ。 しかし最近、若者たちが続々と「闇バイト」や「賃金の高い国でワーホリ」に流れていることからもわかるように、今の日本の若者はそのような「低賃金重労働」は敬遠する。 そうなると、このような不人気業界を支えるのは、技能実習生しかないというわけだ。 ただ、ここに日本政府がごっそりと見落としている「盲点」がある。それは一言で言ってしまうと、「日本人が嫌がるような仕事は、ベトナム人だろうが、中国人だろうが、やりたくない」ということだ。だから、逃げ出す。 しかし、「現代の奴隷制」と評されるように、技能実習生はその雇用主のもとで働くということで日本への在留が認められている。無断で職場放棄して自由に生きようとすると、「不法滞在外国人」となってしまう。そこで技能実習生たちに利用されていたのが、「難民申請」なのだ。 現在は認められていないが、実は18年まで、技能実習生が難民申請すると、その申請をして6カ月後から就労が認められてきた。職種や労働時間の制限もない。難民申請の結果が出るまでの平均2年半、国からの十分な支援はないため、自分で働かないと生活ができないからだ。 我々の感覚では、「ふーん、まあそうでしょ」という感じだが、技能実習生からすればこんな「優遇措置」はない。奴隷契約のような形で、決められた雇用主に低賃金で働かされるわけでもなく、好きな仕事で、好きなだけ働ける。つまり、技能実習生にとって、難民申請は2年半の「就労ビザ」が得られるようなものなのだ。 難民認定の法的支援や、難民の就労支援をしている認定NPO法人・難民支援協会はホームページで、「技能実習生と留学生の一部が、日本で働き続けるために難民申請をしています」と次のように説明している。 <技能実習生は、法律で定められた最低賃金を大幅に下回る過酷な条件で雇用されているケースがあり、転職も認められないため、失踪が多発しています。しかし、送り出し機関から日本へと派遣される際、多額の「借金」を背負ってやってくる実習生たちにとって、そのまま帰国することはできず、日本で何とか就労を続けようとします。> <留学生は、 日本での生活費や日本語学校の学費を自ら稼がなければならない上、実家に仕送りをするなど、学業以外の目的も持ってきている場合が多く、法律で認められている週28時間の労働時間の制限を超えて働きたいというニーズがあります。>  今回、日本政府が難民認定をなぜ厳しくしたのかというと、このような技能実習生や留学生から「偽装難民」になろうという外国人を厳しく取り締まるという意味もあるのだ』、「現在は認められていないが、実は18年まで、技能実習生が難民申請すると、その申請をして6カ月後から就労が認められてきた。職種や労働時間の制限もない。難民申請の結果が出るまでの平均2年半、国からの十分な支援はないため、自分で働かないと生活ができないからだ。 我々の感覚では、「ふーん、まあそうでしょ」という感じだが、技能実習生からすればこんな「優遇措置」はない。奴隷契約のような形で、決められた雇用主に低賃金で働かされるわけでもなく、好きな仕事で、好きなだけ働ける。つまり、技能実習生にとって、難民申請は2年半の「就労ビザ」が得られるようなものなのだ」、なるほど。
・『「外国人の奴隷労働」を変えない、根本にある問題とは  さて、ここまで説明をすれば、日本政府が難民認定に厳しいのは、技能実習制度を守るためだという筆者の主張がご理解いただけのではないか。 日本側から見た、技能実習制度の最大のメリットは、外国人労働者から、職業選択の自由を奪って、人手不足業界に縛りつけることができるということだ。 この制度を利用する人の多くは祖国で多額な借金をしている。だから、どんなに辛くても、どんなに非人道的な扱いをしても、日本の若者のように急に飛んだりせず、歯を食いしばって働くだろう――。制度設計をした日本政府のエリートたちは、外国人に日本の技術を教えるのだと言っていたが、本当の「狙い」はそこだった。 ある意味、かつて東北の寒村で、貧しい農家が口減らしで、子どもたちを働き手として「人買い」に売っていたのと同じ感覚で、外国人労働者を見ていたのである。 この制度を守って、人手不足業界に外国人労働者を安定的に送り続けるには、「難民申請」なんて制度は百害あって一利なしだ。だから、厳しい審査で狭き門にした。自分で職業を選んで、好きな時間だけ働くことができる外国人が社会に増えてしまったら、低賃金でコキ使われて、しかも逃げることが許されない技能実習生の不満が爆発してしまう。 つまり、日本の難民認定が厳しいは、決して外国人を受け入れたくないわけではなく、国内にいる低賃金で働いてくれている「外国人奴隷」の皆さんを、人手不足業界につなぎ留めておくためなのだ。国際社会が思っているよりも、はるかに「内向き」な理由だ。 「難民という人命に関わる人権問題と、国内の労働者問題をごちゃ混ぜにするなんてそんな愚かなことをするわけがないだろ」という意見もあろうが、日本にとっては外国人労働者問題というのは100年続く、非常に重要な政治課題だ。 古くは、明治期に当時、不人気だった炭鉱での仕事を、朝鮮半島からの労働者で補う「労力の輸入」という国策を決定しから、「日本人が嫌がる仕事をどうやって外国人にやらせるか」というのは為政者たちが頭を悩ませ続けてきた永遠のテーマなのだ。 そういう「外国人を奴隷のように使う国」に憧れ、母国で借金を抱えてまでやってくる外国人がいるというのは、なんとも皮肉な話だ。 雇用主からパワハラや暴力を受けた技能実習生たちは会見や取材で、「日本はすごくいい国だと思ってやってきたけれど違っていた」というようなことを言う。 在留資格を奪われないため、劣悪な環境から逃げることも許されず「奴隷労働」を強いられている技能実習生も、ある意味で「難民」と言えなくもない。 祖国から逃げてきた外国人に人道的な支援をすることも大切だが、まずは国内で深刻な人権侵害を受けている技能実習生に手を差し伸べるのが先ではないか。 日本の難民政策を変えるには、今の「外国人の奴隷労働」を変えなくてはいけない。それはつまり、自民党の支持層である中小零細企業の保護政策に手を突っ込むということなので、政治力学的に難しい。 情けない話だが、日本が世界から多くの難民を受け入れる日は、まだかなり先のようだ』、「日本の難民認定が厳しいは、決して外国人を受け入れたくないわけではなく、国内にいる低賃金で働いてくれている「外国人奴隷」の皆さんを、人手不足業界につなぎ留めておくためなのだ」、「「日本人が嫌がる仕事をどうやって外国人にやらせるか」というのは為政者たちが頭を悩ませ続けてきた永遠のテーマなのだ。 そういう「外国人を奴隷のように使う国」に憧れ、母国で借金を抱えてまでやってくる外国人がいるというのは、なんとも皮肉な話だ」、「日本の難民政策を変えるには、今の「外国人の奴隷労働」を変えなくてはいけない。それはつまり、自民党の支持層である中小零細企業の保護政策に手を突っ込むということなので、政治力学的に難しい。 情けない話だが、日本が世界から多くの難民を受け入れる日は、まだかなり先のようだ」、「自民党の支持層である中小零細企業の保護政策に手を突っ込む」ことなのであれば、確かに解決など考え難いようだ。

第三に、7月17日付けAERAdot.「30年間以上、堂々巡りする「外国人の受入れ議論」 肯定論が7割占めるが一向に進まぬ移民政策」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dot/2023063000057.html?page=1
・『山梨県で「人口減少危機突破宣言」が出されるなど、減り続ける日本の人口。外国人の受け入れについて長年議論されているものの、実は30年前のその結果は変わらず、何も進んでいないと日本国際交流センター執行理事・毛受敏浩氏はいう。その詳細を『人口亡国 移民で生まれ変わるニッポン』(朝日新書)より一部を抜粋、再編集し、紹介する。 人口減少と少子高齢化が大問題であることが一般の市民にまで広く認識される時代になったが、その解決策として外国人の受入れ、あるいは移民政策についての考えはどのように変化してきたのだろうか。これまで行われてきたさまざまなアンケート調査を掘り起こして国民の意見を探ってみる。 驚くべきことは、国民の外国人、移民に対する感情は30年前からまったく変わっていないということである。変わっていないとは、移民への反対論が定着しているという意味ではない。受入れについては反対よりも賛成がやや多く、「どちらともいえない」が最も多い傾向がある。そして、最も懸念することとして、現実と異なる犯罪の増加の認識と、日本社会が外国人受入れの準備ができていないことが共通して挙げられている。 このことは人口減少が深刻化しながらも、日本として外国人受入れ政策に関して進展がなく、その結果、国民の感情も1990年代から置いてきぼりにされたままになっているということを示している。 日本人の移民に対する意識がここ数十年、大きく変わっていないということは、現状が続く限り、同じような認識が今後も継続するということだ。つまり、日本人の移民受入れに対する意識が完全に転換するのを待って、受け入れを開始するという姿勢は間違いということを意味する。なぜなら、自然にそうしたことが起こるとは言えず、国民の意識がポジティブに向かう状況を作り出すことこそが政府の責務であり、そうなるような働きかけと、国民が安心できる政策を行う必要があるということだ。) 人口減少と少子高齢化が大問題であることが一般の市民にまで広く認識される時代になったが、その解決策として外国人の受入れ、あるいは移民政策についての考えはどのように変化してきたのだろうか。これまで行われてきたさまざまなアンケート調査を掘り起こして国民の意見を探ってみる。 驚くべきことは、国民の外国人、移民に対する感情は30年前からまったく変わっていないということである。変わっていないとは、移民への反対論が定着しているという意味ではない。受入れについては反対よりも賛成がやや多く、「どちらともいえない」が最も多い傾向がある。そして、最も懸念することとして、現実と異なる犯罪の増加の認識と、日本社会が外国人受入れの準備ができていないことが共通して挙げられている。 このことは人口減少が深刻化しながらも、日本として外国人受入れ政策に関して進展がなく、その結果、国民の感情も1990年代から置いてきぼりにされたままになっているということを示している。 日本人の移民に対する意識がここ数十年、大きく変わっていないということは、現状が続く限り、同じような認識が今後も継続するということだ。つまり、日本人の移民受入れに対する意識が完全に転換するのを待って、受け入れを開始するという姿勢は間違いということを意味する。なぜなら、自然にそうしたことが起こるとは言えず国民の意識がポジティブに向かう状況を作り出すことこそが政府の責務であり、そうなるような働きかけと、国民が安心できる政策を行う必要があるということだ。)(図:日本人と在留外国人の増減はリンク先参照)』、「驚くべきことは、国民の外国人、移民に対する感情は30年前からまったく変わっていないということである。変わっていないとは、移民への反対論が定着しているという意味ではない。受入れについては反対よりも賛成がやや多く、「どちらともいえない」が最も多い傾向がある。そして、最も懸念することとして、現実と異なる犯罪の増加の認識と、日本社会が外国人受入れの準備ができていないことが共通して挙げられている。 このことは人口減少が深刻化しながらも、日本として外国人受入れ政策に関して進展がなく、その結果、国民の感情も1990年代から置いてきぼりにされたままになっているということを示している」、なるほど。
・『1980年代から続く議論  では日本で移民の議論はいつから始まったのだろうか? 1980年代後半のバブル景気以降、日本は深刻な人手不足に直面し、外国人労働者が断続的に増加する時期があった。すでにその時代に移民受入れの議論が開始されていた。 1990年、政府によって外国人受入れについて国民の意見を求めるアンケートが実施されている。内閣府は「外国人労働者問題に関する世論調査」を11~12月に実施している。 その回答をいくつか紹介しよう。 質問 我が国では就職を目的とする入国のうち、専門的な技術、技能や知識を持っている人は認めていますが、単純労働については認めていません。このような政策についてどう考えますか。この中から1つだけお答えください。 (ア)単純労働者の就職は認めない現在の方針を続ける 14.1% (イ)単純労働者であっても一定の条件や制限をつけて就職を認める 56.5% (ウ)特に条件をつけずに日本人と同じように就職を認める 14.9% 1990年はバブル期で人手不足が深刻化した時期だが、2019年に開始された新たな在留資格、特定技能に通じる一定の条件を付けて単純労働を認めることを半数以上がこの時点ですでに、肯定している。つまり、1990年から国民は一定の条件付きで単純労働者を含む外国人労働者の受入れを容認していたということだ。 また「単純労働者の就職を認めるべきでないと考えるのはどうしてですか」との質問について複数回答を求めたところ以下の回答となった。 (ア)景気がいい時はともかく、不況の時には日本人の失業が増加するおそれがあるから 52.7% (イ)治安が悪化するおそれがあるから 54.0% (ウ)日本人が就きたがらない仕事に外国人を使おうとするなど、外国人に対する歪んだ見方が生じるおそれがあるから 20.6% (エ)日本人の労働者も含め一般的な労働条件の改善が遅れるおそれがあるから 14.8%)) 以上の意見も現在、この問いを立てれば同じ傾向になるだろう。つまり、30年間以上、外国人の受入れの議論は堂々巡りをしていることになる。国民は外国人の受入れについて肯定的な認識と健全な問題意識を持っているが、それに沿った政策が行われてこなかったということだ。 その後、国民の認識はどう変わったのだろうか?』、「30年間以上、外国人の受入れの議論は堂々巡りをしていることになる。国民は外国人の受入れについて肯定的な認識と健全な問題意識を持っているが、それに沿った政策が行われてこなかったということだ。 その後、国民の認識はどう変わったのだろうか?」、なるほど。
・『小泉政権下で移民肯定する国民の声  小泉純一郎政権の2004年5月、内閣府が実施した「外国人労働者の受入れに関する世論調査」8 がある。バブル崩壊以降、長期の経済停滞が続いたが、2000年代に入ってようやく抜け出し、経済回復のサイクルに入っていた。2004年は小泉首相が韓国の盧武鉉大統領と済州島で会談した年でもある。 この調査では、外国人労働者についての以下の質問項目がある。 質問1 専門的な技術、技能や知識を持っている外国人の入国は認め、単純労働に就労することを目的とした外国人の入国は認めていない現制度に関して。 (ア)今後とも専門的な技術、技能や知識を持っている外国人は受け入れ、単純労働者の受入れは認めない 25.9% (イ)女性や高齢者など国内の労働力の活用を優先し、それでも労働力が不足する分野には単純労働者を受け入れる 39.0% (ウ)特に条件を付けずに単純労働者を幅広く受け入れる 16.7% (エ)わからない 17.7% 単純労働者を受入れる(イ)(ウ)を合わせればここでも半数以上が肯定していることになる。 さらに質問は続く。 質問2 日本人が就きたがらない職業に外国の人が就くことについて。 (ア)日本人が就きたがらない仕事に、単に外国人が就けばいいという考え方はよくない 32.6% (イ)外国人本人が就きたがっている場合にはどんどん就いてもらうのがよい 31.1% (ウ)よくないことだがやむを得ない 28.4% 質問3 外国人労働者に求めるもの。 (ア)日本語能力 35.2% (イ)日本文化に対する理解 32.7% (ウ)専門的な技術、技能、知識 19.7% (エ)預貯金等の資産 1.3%) これらの中で、日本人が就きたがらない職についての問いは意見が分かれている。外国人労働者への日本人の配慮がうかがわれるが、筆者は日本人が就きたがらない職に外国人が就くことは問題がないと考える。重要なのはそこから本人の努力次第で賃金が上がり、あるいはさらに良い職へと転職ができて、社会の階段を上がれる可能性があるかどうかだろう。もし、一生、その仕事で固定されるようなことであれば、そもそも優秀な人材からはそっぽを向かれ、他の国で受入れてもらえないような人ばかりが日本に集まってしまうことになる。今の状況こそがその可能性が高い。 では最近の調査結果はどうだろうか? 比較的新しいアンケート調査にNHK世論調査部による2020年3月の全国電話調査がある。「外国人増加への期待と不安」とのタイトルが付けられている。 この調査結果では、日本で働く外国人が増えることについては、賛成が26%、どちらかといえば賛成が44%で合計70%と多数を占める結果となった。反対派では、どちらかといえば反対が17%、反対は7%の結果となった。 この結果を見れば、過去から外国人の受入れを肯定する意見は変わっていないと言える。 その一方、この調査では、自分の住む地域に外国人が増えることに賛成する人は57%にとどまる。つまり、日本にとって外国人が増えることは必要であり賛成するが、自分の身近で増えることに対して尻込みする姿勢が見てとれる。 自分の住む地域に外国人が増えることへの不安として挙げられていることに、「言葉や文化の違いでトラブルになる」と「治安が悪化する」を挙げた人が多い。一方、外国人が増えることへの期待では、「新しい考えや文化がもたらされる」が最も多い。 言葉や文化の違いでのトラブルを心配する声は2004年の調査で、外国人労働者に求めるものへの回答が日本語能力と日本文化に対する理解とあったことと符合する。ここでもまた過去から同じ課題がそのまま引き継がれている。 新聞社による世論調査として、読売新聞は2019年3~4月にアンケート調査を実施した(「外国人材」世論調査、郵送方式)。外国人労働者の受入れ拡大についての問いでは、賛成が57%で反対の40%を上回った。 ここでも外国人受入れについての肯定的な意見が大多数を占めている。(毛受敏浩氏の略歴はリンク先参照)』、「過去から外国人の受入れを肯定する意見は変わっていないと言える。 その一方、この調査では、自分の住む地域に外国人が増えることに賛成する人は57%にとどまる。つまり、日本にとって外国人が増えることは必要であり賛成するが、自分の身近で増えることに対して尻込みする姿勢が見てとれる。 自分の住む地域に外国人が増えることへの不安として挙げられていることに、「言葉や文化の違いでトラブルになる」と「治安が悪化する」を挙げた人が多い。一方、外国人が増えることへの期待では、「新しい考えや文化がもたらされる」が最も多い」、「過去から外国人の受入れを肯定する意見は変わっていない」、しかし、「自分の住む地域に外国人が増えることに賛成する人は57%にとどまる。つまり、日本にとって外国人が増えることは必要であり賛成するが、自分の身近で増えることに対して尻込みする姿勢が見てとれる」、「アンケート」とはいえ、現金なものだ。 
タグ:「監理団体」に対する甘さはどう考えても行き過ぎだ。 「技能実習生は法律上労働者であり、本来は産休や育休が認められる存在だ。そもそも妊娠を理由とした解雇は法律違反に当たる」、「報告書案は、新制度で「人権侵害等を防止・是正できない監理団体を厳しく適正化・排除する必要」があると記したものの、「悪質な監理団体の基準の議論すらされていない。現状の制度では監理団体も企業も適切に罰せられず、一元的に監督する機関である外国人技能実習機構も、その役割を果たせていない』、「悪質な監理団体の基準の議論すらされていない」、 「実習生の中には、母国の送り出し機関へ支払う費用として50~100万円の「借金」を背負って来日した人もいる。簡単に帰国できない状況下で、過酷な労働環境にある実習先から「失踪」という形で逃れ、不法滞在につながるケースもある」、なるほど。 「今回の報告書案では、転職の制限を一部緩和する方向性が示されたが、あくまで「人材育成を制度趣旨とすることに由来する転籍制限は残す」と前置きしている。 しかしこの「育成」を理由とする転職の制限が、人手不足に悩む企業などにより、実習生を縛り付ける口実として悪用されているのが実態だ」、 「「技能実習制度」が今、大きな転換点に差し掛かっている」、とは甘過ぎる表現で、「「大きな転換点」を通過した」という方が適切だろう。 東洋経済オンライン「技能実習制度「廃止」の議論に喜べない2つの理由 有識者会議の報告書案が残した「人材育成」の盾」 外国人労働者問題 (その20)(技能実習制度「廃止」の議論に喜べない2つの理由 有識者会議の報告書案が残した「人材育成」の盾、日本の難民認定が厳しいのは 外国人に「ブラック労働」させるためという残酷、30年間以上 堂々巡りする「外国人の受入れ議論」 肯定論が7割占めるが一向に進まぬ移民政策) 「監理団体は全国に2000近く存在」、「監理団体は実習生1人当たり、月3~5万円の監理費などを受け入れ企業から受け取ることで運営」、「転職制限」の撤廃などで「監理団体」の整理統合を進めてゆくべきだろう ダイヤモンド・オンライン 窪田順生氏による「日本の難民認定が厳しいのは、外国人に「ブラック労働」させるためという残酷」 「日本と同じく四方を海に囲まれて、近くで紛争のないオーストラリアには世界中から飛行機で難民がやってきており、認定率が高い。日本が「難民に冷たい国」というのは否定し難い事実なのだ」、確かにその通りだ。 「日本政府が難民にやたらと冷たいのは、そういう人権感覚もさることながら、シンプルに日本の「国策」と整合性をつけるということが大きいと思っている」、「その国策とは、「日本人が嫌がるようなブラック労働は、外国人労働者にやってもらう」という考えに基づいた技能実習制度だ。 難民認定をゆるくして、多く外国人を難民として迎え入れてしまうと、技能実習制度がガラガラと音を立てて崩壊してしまう。それは日本経済にとっても大打撃だし、自民党の選挙戦略的にもかなりマズい」、なるほど。 「現在は認められていないが、実は18年まで、技能実習生が難民申請すると、その申請をして6カ月後から就労が認められてきた。職種や労働時間の制限もない。難民申請の結果が出るまでの平均2年半、国からの十分な支援はないため、自分で働かないと生活ができないからだ。 我々の感覚では、「ふーん、まあそうでしょ」という感じだが、技能実習生からすればこんな「優遇措置」はない。奴隷契約のような形で、決められた雇用主に低賃金で働かされるわけでもなく、好きな仕事で、好きなだけ働ける。 つまり、技能実習生にとって、難民申請は2年半の「就労ビザ」が得られるようなものなのだ」、なるほど。 「日本の難民認定が厳しいは、決して外国人を受け入れたくないわけではなく、国内にいる低賃金で働いてくれている「外国人奴隷」の皆さんを、人手不足業界につなぎ留めておくためなのだ」、「「日本人が嫌がる仕事をどうやって外国人にやらせるか」というのは為政者たちが頭を悩ませ続けてきた永遠のテーマなのだ。 そういう「外国人を奴隷のように使う国」に憧れ、母国で借金を抱えてまでやってくる外国人がいるというのは、なんとも皮肉な話だ」、「日本の難民政策を変えるには、今の「外国人の奴隷労働」を変えなくてはいけない。それはつまり、自民党の支持層である中小零細企業の保護政策に手を突っ込むということなので、政治力学的に難しい。 情けない話だが、日本が世界から多くの難民を受け入れる日は、まだかなり先のようだ」、「自民党の支持層である中小零細企業の保護政策に手を突っ込む」ことなのであれば、確かに解決など考え難いようだ。 AERAdot.「30年間以上、堂々巡りする「外国人の受入れ議論」 肯定論が7割占めるが一向に進まぬ移民政策」 「驚くべきことは、国民の外国人、移民に対する感情は30年前からまったく変わっていないということである。変わっていないとは、移民への反対論が定着しているという意味ではない。受入れについては反対よりも賛成がやや多く、「どちらともいえない」が最も多い傾向がある。そして、最も懸念することとして、現実と異なる犯罪の増加の認識と、日本社会が外国人受入れの準備ができていないことが共通して挙げられている。 このことは人口減少が深刻化しながらも、日本として外国人受入れ政策に関して進展がなく、その結果、国民の感情も1990年代から置いてきぼりにされたままになっているということを示している」、なるほど。 「30年間以上、外国人の受入れの議論は堂々巡りをしていることになる。国民は外国人の受入れについて肯定的な認識と健全な問題意識を持っているが、それに沿った政策が行われてこなかったということだ。 その後、国民の認識はどう変わったのだろうか?」、なるほど。 「過去から外国人の受入れを肯定する意見は変わっていないと言える。 その一方、この調査では、自分の住む地域に外国人が増えることに賛成する人は57%にとどまる。つまり、日本にとって外国人が増えることは必要であり賛成するが、自分の身近で増えることに対して尻込みする姿勢が見てとれる。 自分の住む地域に外国人が増えることへの不安として挙げられていることに、「言葉や文化の違いでトラブルになる」と「治安が悪化する」を挙げた人が多い。一方、外国人が増えることへの期待では、「新しい考えや文化がもたらされる」が最も多い」、 「過去から外国人の受入れを肯定する意見は変わっていない」、しかし、「自分の住む地域に外国人が増えることに賛成する人は57%にとどまる。つまり、日本にとって外国人が増えることは必要であり賛成するが、自分の身近で増えることに対して尻込みする姿勢が見てとれる」、「アンケート」とはいえ、現金なものだ。
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SNS(ソーシャルメディア)(その12)(フェイクニュース製造村の戦慄…月収5万円の村民が偽記事でベンツを買うまで、【ryuchellさん急逝】玉川徹氏が指摘した「暗澹たる誹謗中傷」 匿名の“言葉の暴力”のひどすぎた内容 SNSでは野放し 慌てて削除するユーザーも、ツイッター対抗馬「スレッズ」移行へ"3つの不安" ユーザー置き去りの「気持ち悪さ」が最大の障壁) [メディア]

SNS(ソーシャルメディア)については、昨年6月15日に取上げた。今日は、(その12)(フェイクニュース製造村の戦慄…月収5万円の村民が偽記事でベンツを買うまで、【ryuchellさん急逝】玉川徹氏が指摘した「暗澹たる誹謗中傷」 匿名の“言葉の暴力”のひどすぎた内容 SNSでは野放し 慌てて削除するユーザーも、ツイッター対抗馬「スレッズ」移行へ"3つの不安" ユーザー置き去りの「気持ち悪さ」が最大の障壁)である。

先ずは、昨年6月17日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したイトモス研究所所長の小倉健一氏による「フェイクニュース製造村の戦慄…月収5万円の村民が偽記事でベンツを買うまで」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/304894
・『ロシアによるウクライナ侵攻で勃発した戦争では、当初から情報線が繰り広げられている。その中には、「フェイクニュース」と指摘されるデマとおぼしき情報も入り交じる。そしてフェイクニュースがまん延するようになった現代社会の裏には、「フェイクニュース製造工場」とでもいうべき存在があった。しかもその場所は、月収5万円ほどの村民たちが暮らす小さな村だったのだ』、興味深そうだ。
・『ロシアによるウクライナ侵攻の口実すら「フェイクニュース」の可能性  ロシアのウクライナ侵攻において、ロシアとウクライナが共に双方の発表を「フェイクニュース」だと指摘するなど情報戦が続いている。 フェイクニュースとは、デマや一方的過ぎる情報を指す。メディアを通じて広がり、陰謀論や政治的なプロパガンダなどと結び付いて人々の生活や国の安全保障をも脅かす存在になっている。「ニュース」というだけに報道のような形で広がっていく。 その最たる例が、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領によるウクライナ侵攻を正当化するための主張だろう。ウクライナ東部でウクライナ政府軍によるロシア系住民の「ジェノサイド(集団殺害)」が起きていると主張したが、根拠に乏しいと指摘されている。 さらに別の疑惑もある。ロシアの国営メディアであるタス通信は、ロシアがウクライナへ侵攻する前の2月21日、ロシア領内に侵入したウクライナ軍車両をロシア軍が破壊したと伝えた。しかし、SNSで拡散した映像を英調査報道機関ベリングキャットが分析した結果、フェイクニュースの可能性があるという。べリングキャットは動画に映っている車両を「BTR70M」装甲兵員輸送車と判断したという。しかしウクライナ軍はBTR70Mを運用していないのだ。 「ジェノサイド」や「ウクライナ軍によるロシア領内への侵入・攻撃」というフェイクニュースが、今回の侵攻の口実に使われていた可能性が高いのだ。 対するウクライナからもフェイクと思しきニュースが流れており、両国によるフェイクニュースの情報戦が盛んだ。 フェイクニュース自体は、昔から「デマ」「虚言」などと表現は違っていたかもしれないが存在はしていただろう。ただ、私たちも世間話の中で、相手の話が信頼性が足らない気がしたときには「それ、フェイクニュースではないの?」と問う場面が増えてきたように感じる。 その裏には、「フェイクニュース製造工場」とでもいうべき存在があった。しかもその場所は、月収5万円ほどの村民たちが暮らす小さな村だったのだ』、「月収5万円ほどの村民たちが暮らす小さな村」に「フェイクニュース製造工場」があったというのは驚きだが、真のニュースだ。
・『「フェイクニュース」を有名にしたトランプ前米大統領  これほどまでに「フェイクニュース」という言葉が私たちの日常に広まったのは、ドナルド・トランプ前米大統領の影響だろう。 トランプ氏が大統領に就任する前後において、米国では主要メディアが偏向的な報道を流しているという不満が高まっていた。そんな中でトランプ氏は主要メディアに対して、ツイッターを使って「フェイクニュース!」と攻撃を続け、喝采を浴びたのだ。 その後、トランプ氏は大統領に就任すると、自分が気に食わない記事を「フェイクニュース」とレッテル貼りすることが増えた。大統領再選を狙ったジョー・バイデン氏との大統領選挙に敗北したときには、「選挙で不正が行われた」というフェイクニュースをツイッターに投稿。さらには米連邦議会議事堂の襲撃事件を巡って、支持者を扇動したとしてツイッターを永久追放されてしまった。 そして今、ツイッターの買収に乗り出している米テスラの最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏が、ツイッターの姿勢を批判している。「(ツイッターは)一見、穏健に見えるが、強い左派のバイアスがかかっている」「言論の自由を守る」として、トランプ氏の永久追放を「正しくなかった」と発言。「誰もが自分の意見を述べることができる場でなくなれば、根本的な信頼を損なってしまう」と述べた。 5月まで米大統領報道官を務めたジェン・サキ氏は、退任直前となる5月10日にマスク氏の発言を受けて言及。「誰が許され誰が許されないという判断はプラットフォームを運営する企業が決めるべきだ」「オンラインプラットフォームが言論の自由を守ると同時に、間違った情報の発信源にならないことを望む」と語っている。 言論の自由は、最大限に認められるべきなのだが、プーチン氏やトランプ氏のようなケースについては、受け取る側がフェイクを見抜く力をもっとつけていかねばならないだろう。 また、その2人のように「フェイクニュースをつくるのは権力者側」というだけでは決してないことにも注意した方がいい。誰もがだまされる当事者であると同時に、だます当事者でもある。世論工作は政党、メディアだけでなく、一般市民が自ら信じる組織のために実行しているケースは多いのだ』、「言論の自由は、最大限に認められるべきなのだが、プーチン氏やトランプ氏のようなケースについては、受け取る側がフェイクを見抜く力をもっとつけていかねばならないだろう」、その通りだ。
・『フェイクニュース製造村の驚きの実態とは?  これから紹介するのは、NHKが2018年に取材した「フェイクニュース村」だ。この村の名は、「ヴェレス」といって、北マケドニア(19年に「マケドニア」から国名を変更)という東欧のバルカン半島南部にある小さな国の中にある。北マケドニアの首都スコピエにあるスコピエ・アレクサンダー大王空港(現・スコピエ空港)は、米ニューヨークから飛行機を乗り継いで20時間かかる。そしてヴェレスは、空港から南に約50km車で走ったところにある。 人口約4万人のヴェレスは、住民の月収が5万円程度と貧しい地域だ。取材をしたNHK・佐野広記ディレクターによれば、この町では、市民たちがこぞって英文のフェイクニュースを作成し、ページビュー(PV)を稼ぐことで収益を得ているのだという。 「耳にピアスをして『渋谷で遊んでます』みたいな感じの大学生が、取材に応じてくれました。『アメリカ人はバカだ』『オレたちは、あるわけがないうそを書いているのに、やつらほんとに読むんですよ』『すげえ読まれてボロもうけできて、結構楽なんだ』と、軽いノリで小遣い稼ぎをしている。ヴェレスでフェイクニュースを作っているのは、彼らの肌感覚で200~300人とのことでした」(佐野氏) 北マケドニアは英語圏ではない。英語の記事は、単語だけ調べて中学で習ったレベルの文章にするのだという。記事はゼロから書くのではなく、CNNなどのサイトから引っ張ってきて、加工ソフトで面白くできるポイントだけ書き換える。 例えば、トランプ氏がメキシコとの国境に壁を造るというニュース記事は、文章の大半はそのまま使いつつ、一部を「ネバダに収容所を造ると言っている」などとセンセーショナルに書き換える。一見して普通のニュースサイト風の文章に仕立てあげ、作成した記事を自分のウェブサイトに掲載し、そこに広告配信のサービスを埋め込む。読者が広告を見たりクリックしたりすれば、広告料が入るという算段だ』、「北マケドニアは英語圏ではない。英語の記事は、単語だけ調べて中学で習ったレベルの文章にするのだという。記事はゼロから書くのではなく、CNNなどのサイトから引っ張ってきて、加工ソフトで面白くできるポイントだけ書き換える。 例えば、トランプ氏がメキシコとの国境に壁を造るというニュース記事は、文章の大半はそのまま使いつつ、一部を「ネバダに収容所を造ると言っている」などとセンセーショナルに書き換える。一見して普通のニュースサイト風の文章に仕立てあげ、作成した記事を自分のウェブサイトに掲載し、そこに広告配信のサービスを埋め込む。読者が広告を見たりクリックしたりすれば、広告料が入るという算段だ」、この程度であれば、「英語圏」でなくても出来るようだ。
・『高校生と母親のフェイクニュース共同製作 オンボロ車だらけの村に高級車が来た  佐野氏はさらにこう続ける。 「放課後に毎日5本のペースでフェイクニュースを作っているという高校生が言うには、『クラスでも4割くらいがやってるよ』と。自宅での取材に母親が居合わせたのは想定外でしたが、もっと驚いたのは、母親は息子を叱るどころか『もっとやれ』と……ビックリしました。共犯なんです」 「『ちゃんと作りなさい』と催促し、キーボードを打つわが子の手が止まったら『しょうがない、私が助けてあげる』といって、手伝うのです。著名な女優の名を挙げて、『怪我したとか大変な目にあった、みたいに書けばいいじゃない』『あーそうだねお母さん』というやりとりがありました」 そうして得た金で、BMWやベンツを買う。「ボロボロの車だらけの村に、突然ピカピカの高級車が走っている光景は異様でした」と、佐野氏は当時を振り返った。 主義主張は関係なく、ここまで金もうけに走るというのは驚きだ。ツイッターやフェイスブックといったプラットフォーム側も規制を試みているが、いたちごっこのような状態が続いている。 やはり、特定の情報の真偽を議論すること以上に、情報分析には情報の利用目的やタイミングの観点から背景を読み解くことが求められるのだ。フェイクニュースも含めた世論工作が氾濫する現代社会において、情報を読み解くスキルを持つことは欠かすことができないものとなるだろう』、「フェイクニュースも含めた世論工作が氾濫する現代社会において、情報を読み解くスキルを持つことは欠かすことができないものとなるだろう」、その通りだ。

次に、本年7月13日付けNEWSポストセブン「【ryuchellさん急逝】玉川徹氏が指摘した「暗澹たる誹謗中傷」 匿名の“言葉の暴力”のひどすぎた内容 SNSでは野放し、慌てて削除するユーザーも」を紹介しよう。
https://www.news-postseven.com/archives/20230713_1887552.html?DETAIL
・『タレントのryuchell(りゅうちぇる、27)さんが急逝したことで、衝撃が広がっている。7月12日夕方、東京都渋谷区内の事務所で倒れているのが見つかり、病院に搬送されたものの、まもなく死亡が確認された。現場の状況などから、自殺を図ったとみられている。 一夜明けた7月13日の朝は、スポーツ紙やワイドショーなどが一斉にryuchellさんの急死に言及した。テレビ朝日の「羽鳥慎一モーニングショー」でも、オープニング直後にトップニュース扱いで取り上げた。そのなかでコメンテーターの玉川徹氏は以下のような主旨の指摘をしていた。 「ひどい誹謗中傷があったという報道もありましたね。そういうことが関わっているかはわからないですが、そういうことがあったとしたら、またそんなことが起きてしまったのか、いつまで社会は匿名の名のもとに追い込むということを続けるんだろうと、すごく暗澹たる気持ちになります。 匿名の暴力をどうやって減らしていけばいいか、真剣に考えなければいけないと思います」 ryuchellさんは、2年前の2021年6月には自身のSNSへ「ブス、死ね」といったひどい誹謗中傷のコメントが届いたことを明かし、スクリーンショットを添付したうえで「僕は可愛いし、生きます」「そしてあなたも、生きて」というメッセージをつづっていた。 この対応には多くのファンから賞賛の声があがったが、その後も誹謗中傷が止むことはなかった。2021年後半から少しずつ女性的なファッションの写真をアップするようになったryuchellさんに対しては、SNSで一部ユーザーから誹謗中傷メッセージが届くようになった。 「2022年の6月頃にはInstagramをいわゆる『鍵付き』にしていましたが、同年8月に離婚を発表すると、『育児放棄』『子供捨てた奴』『死んでくれ』といった極めて悪質な誹謗中傷がツイッターなどにアップされるようになっていました」(芸能記者) 玉川氏が指摘した通り、これは匿名の言葉の暴力に他ならず、言語道断だろう。 Yahoo!ニュースのコメント欄では2022年11月から書き込むために携帯番号の登録を必須にしたり、AIを使って誹謗中傷や差別に当たるコメントを個別に削除するなど対策を強化しているが、ツイッターなどのSNSでは事実上野放し状態だ。 現在、ryuchellさんへの誹謗中傷をしていたユーザーが慌てて投稿を削除する動きも見受けられる。そうした書き込みが今回の一件につながったかどうかはわからないが、少なくともryuchellさんを傷つけていたことは間違いない。 今後、社会としてネット上の誹謗中傷にどう対応していくべきか、具体的な対策が求められるだろう。 ◆主な相談窓口 ・いのちの電話(一般社団法人 日本いのちの電話連盟) ナビダイヤル:0570-783-556 午前10時~午後10時  フリーダイヤル:0120-783-556 毎日午後4時~同9時 毎月10日:午前8時~翌日午前8時』、「いつまで社会は匿名の名のもとに追い込むということを続けるんだろうと、すごく暗澹たる気持ちになります」、「今後、社会としてネット上の誹謗中傷にどう対応していくべきか、具体的な対策が求められるだろう」、「匿名」なら勇ましく「誹謗中傷」するというのは卑怯だ。どうしても「誹謗中傷」したいのであれば、堂々と実名でやるべきだろう。

第三に、7月16日付け東洋経済オンラインが掲載した経済評論家・百年コンサルティング代表の鈴木 貴博氏による「ツイッター対抗馬「スレッズ」移行へ"3つの不安" ユーザー置き去りの「気持ち悪さ」が最大の障壁」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/686581
・『今年に入ってメディアからは「ツイッター経由の読者流入が目に見えて減少してきた」と不満の声が上がり始めていました。それに輪をかけて混乱を引き起こしたのが7月1日に発生した投稿閲覧制限です。有料の認証ユーザーは1日あたり6000件、一般のユーザーは1日600件しか投稿を見ることができないというものです。 原因については詳細が明らかにされていません。ツイッターは一部の機能をグーグルに依存していたのですが、その契約が6月30日に切れた影響だとも、バグによってサーバーにリクエストの無限ループが発生した障害のせいだとも噂される中、マスク氏は「一時的な緊急措置だ」と閲覧制限について表明しています。 とはいえそもそもSNSというものは広告収入が収益源で、儲かるためにはユーザーがツイッター上にどれだけ長くとどまるかがカギになります。そのユーザーがツイートを見られなくなり、広告主からは「流入が目に見えて減少している」と言われているのでは、確かに末期症状といえるほどひどい状況です。 ツイッターへの批判が高まったタイミングの7月6日、メタが新サービスのスレッズをぶつけてきたわけです』、「そもそもSNSというものは広告収入が収益源で、儲かるためにはユーザーがツイッター上にどれだけ長くとどまるかがカギになります。そのユーザーがツイートを見られなくなり、広告主からは「流入が目に見えて減少している」と言われているのでは、確かに末期症状といえるほどひどい状況です。 ツイッターへの批判が高まったタイミングの7月6日、メタが新サービスのスレッズをぶつけてきたわけです」、「マスク氏」の「ツイッター」改革も批判の的になっている。
・『スレッズはツイッターの"上位互換"  スレッズ自体は当初、ザッカーバーグ氏は7月中旬のサービス開始を匂わせていました。それを明らかに前倒ししたのは、ツイッターの失策で千載一遇のチャンスが到来していたからです。わずか5日で1億人というのも、このタイミングで莫大な数のツイッター難民が発生していたからこそ起こりえた現象です。 ここで興味深いことは、スレッズがツイッターの同質化サービスであることです。戦略の定石では新たにリリースするサービスには差異化が必要です。インスタグラムが登場した際には写真の加工や投稿が、TikTokは短い動画の編集が差異化としてユーザーに支持されて勢力を拡大することができました。 それと違いスレッズはツイッターと似た部分が目立つし多い。これは明らかに「過去の使いやすかったツイッターに戻りたい人は今すぐここに集まって!」というザッカーバーグ氏からのメッセージに映ります。 そのうえで差異というよりは、微妙なサービスアップも忘れてはいません。投稿可能な文字数500字、動画5分、写真10枚というのはすべてツイッターよりも上位互換のスペックです。 特に英語圏ではツイッターの140文字というのは本当の短文しか書けません。英語の140字の文章だと日本語の70文字分くらいの情報量になるのです。ですからアメリカのツイッターユーザーは今回のスレッズのスペックを歓迎しているはずです。 さて、こうしてにわかに巻き起こったスレッズ旋風ではあるのですが、この先、ツイッターが消えてしまい、スレッズがそれを補完する未来が来るのでしょうか?必ずしも未来がそちらに転がるかどうかは今のところわかりません。ツイッターとスレッズの未来を巡る3つの不安定要因をまとめていきたいと思います。 SNSを巡る不安定要因の1つ目が、マスク氏とザッカーバーグ氏の思想の違いです。 そもそもSNSは出現当初の理想と、現時点の現実に大きなギャップがあるサービスです。SNS出現当時は世界中の人がソーシャルネットワークを通じてつながり、そのことで相互理解が進み、新しいアイデアが生まれると期待されていました。 しかし現実には偏った意見が力を持つ世の中になり、社会の分断が進みました。背景には広告を主たる収入源とするビジネスモデルがあり、利用者個人のデータをもとに狙った個人へターゲットした情報が届けられる状況が「SNSの悪い現実」を生み出しました』、「スレッズはツイッターと似た部分が目立つし多い。これは明らかに「過去の使いやすかったツイッターに戻りたい人は今すぐここに集まって!」というザッカーバーグ氏からのメッセージに映ります。 そのうえで差異というよりは、微妙なサービスアップも忘れてはいません。投稿可能な文字数500字、動画5分、写真10枚というのはすべてツイッターよりも上位互換のスペックです。 特に英語圏ではツイッターの140文字というのは本当の短文しか書けません。英語の140字の文章だと日本語の70文字分くらいの情報量になるのです。ですからアメリカのツイッターユーザーは今回のスレッズのスペックを歓迎しているはずです」、「現実には偏った意見が力を持つ世の中になり、社会の分断が進みました。背景には広告を主たる収入源とするビジネスモデルがあり、利用者個人のデータをもとに狙った個人へターゲットした情報が届けられる状況が「SNSの悪い現実」を生み出しました」、なるほど。
・『スレッズは「穏やかな」SNSになる?  この理想と現実のギャップをどう埋めるか、実はマスク氏もザッカーバーグ氏もそれぞれ持論があります。マスク氏は買収当初から言論の自由を重視しています。買収後、永久凍結されていたトランプ前大統領のアカウントが凍結解除されたのはその象徴です。 一方のザッカーバーグ氏は、もっと穏やかなSNSを目指し介入を図る立場です。実際に彼はスレッズについて「オープンでフレンドリーな会話の空間」にしたいと言っています。 そのせいなのか、ないしは開発がまだ追いついていないのか、タイムラインは今のところおすすめのみ(フォローが反映されない)の状況。特定のコメントを非表示にできるなど、荒らし対策は簡単にできそうです。 私がスレッズを利用して一番驚いたことは、タイムラインに流れる情報が今まで私がツイッターで触れてきた情報とまったく毛色が違うことです。良く表現すればまったく新しい考えや情報が流れてくる。逆に言えば今まで私のツイッターに流れてくる情報は、いかに自分にとって居心地のいい偏った情報が多かったのかと再認識されました。) ただザッカーバーグ氏が標榜する思想は、今後変わる可能性があります。それは2番目の不安定要因になる「広告効果」が関係してきます。 そもそもツイッターにしてもスレッズにしても、私たちがサービスを無料で使える理由は、広告収入がSNSの経営を支えているからです。サービスが成り立つためには広告効果が高くなければいけません。 ツイッターとスレッズのどちらがスポンサー企業から見て広告効果のあるSNSであるのかが重要であり、その効果を左右するのはインフルエンサーから見て、どちらが収入になるSNSなのかが重要になります。 今回の混乱の中で、第三勢力としてマストドンやブルースカイのように広告収入に頼らない短文投稿SNSが台頭するのではないかという観測もありますが、私はその可能性は低いと考えています。あくまでSNSとは巨大な換金マシーンとして機能できているからこそ存在できるのです』、「私たちがサービスを無料で使える理由は、広告収入がSNSの経営を支えているからです。サービスが成り立つためには広告効果が高くなければいけません。 ツイッターとスレッズのどちらがスポンサー企業から見て広告効果のあるSNSであるのかが重要であり、その効果を左右するのはインフルエンサーから見て、どちらが収入になるSNSなのかが重要になります」、なるほど。
・『勝敗は広告効果で決まる  スレッズは今後の改修予定の機能として、段階的にツイッターに同質化するようキーワード検索ができるようになり、ハッシュタグが使えるようになり、フォローしている人の書き込みがタイムラインに表示されるようになり、DMが送れるようになるはずです。ますますツイッターと同じサービスになるため、ユーザーは今以上にスレッズを使うかもしれません。 しかし本当に重要なのは広告主が効果を感じてくれるかどうか、そしてその広告主とわたしたちユーザーをつなぐインフルエンサーが収益を上げられるかどうかです。ツイッターとスレッズのどちらが勝ち上がるのかは広告効果で決まってくるのです。 その観点で言えばメタが過去にフェイスブックで実現してきた「ビッグデータを駆使し、偏った情報を送ることで広告効果を極大化する」というノウハウがこの先、スレッズに反映されていくことで「新たな悪いSNSが力を持つ未来」が来ることは十分にありえそうです。 そしてスレッズとツイッターの未来を占う、3つ目の不安定要因が国別のユーザー数です。 世界のツイッター利用者は、月間アクティブユーザー数ベースで3.3億人です。これに対してスレッズの1億人というのはあくまで登録者数です。来月、再来月の段階でユーザーがどれだけスレッズを使い続けているかがそもそも大切で、1億人登録したことの意味がどこまで大きいかはまだわかりません) ただここで理解すべきことは、スレッズの登録がここまで短期間で増えた一つの背景要因がインスタグラムのアカウント経由で登録できたことです。インスタグラムの世界のアクティブユーザー数は10億人いますから、その1割が「とりあえずスレッズを試してみた」わけです。 そして「では残り9割もスレッズを始めたら勢力はいったいどうなるだろう?」というのがこれから先の関心事です。 さらにいえば同じくメタが運営するフェイスブックは世界のアクティブユーザー数は30億人とさらに多いわけで、その意味ではまだメタにはフェイスブックからスレッズにユーザーを流入させる力も温存しています。既存のSNSのユーザー数を武器にスレッズがツイッターを補完するという未来はありえるわけです』、「まだメタにはフェイスブックからスレッズにユーザーを流入させる力も温存しています。既存のSNSのユーザー数を武器にスレッズがツイッターを補完するという未来はありえるわけです」、なるほど。
・『マスク氏に訪れる「意味不明の未来」  ただし私たちにとって本当に重要なキーワードは「日本では」どうなるのかとういう視点です。 実はツイッターの利用者を国別で見ると、アメリカが1位で7700万人、そして日本は5900万人でアメリカに次ぐ第2位なのです。一方でインスタグラムはアメリカ1億7000万人であるのに対して日本は3300万人という状況で、日本ではインスタはそれほど強くはないという現実があります。 仮にアメリカではフェイスブック、インスタグラムからスレッズへのユーザー移住が本格的に起きて、スレッズがツイッターを補完する地位を手にしたとしても、日本はそうならない可能性があるということです。 さらに言えばメタからすると、短文投稿アプリでアメリカでツイッターを逆転した後に狙うべき重要市場は、ヨーロッパとインドなどのアジア圏が優先されるはずです。SNSは基本的に国ごとに勢力図が違うわけで、韓国ではカカオトークが優勢ですし中国ではウィーチャットなど国産SNSが主流です。 その流れで世界的にはツイッターが駆逐されても、日本だけガラパゴス的にツイッターが有力な短文投稿SNSとして生き残るというマスク氏にとっては意味不明な未来が訪れてもおかしくはないのです。 さて、このようにまとめてみたうえで改めて感じることは、今回の騒動は結局のところ私たちユーザーを置き去りにして起きているおかしな騒動であるということです。だからこそ、この先どうなるのか不安定で、しばらくの間、私たちは不自由を感じながらツイッターとスレッズ両方をしかめっ面をしながら利用することになるでしょう。 確実に予測できることはただ一つ「明日の私はSNSに対して不機嫌だろう」ということだけなのです』、「SNSは基本的に国ごとに勢力図が違うわけで、韓国ではカカオトークが優勢ですし中国ではウィーチャットなど国産SNSが主流です。 その流れで世界的にはツイッターが駆逐されても、日本だけガラパゴス的にツイッターが有力な短文投稿SNSとして生き残るというマスク氏にとっては意味不明な未来が訪れてもおかしくはないのです」、「今回の騒動は結局のところ私たちユーザーを置き去りにして起きているおかしな騒動であるということです。だからこそ、この先どうなるのか不安定で、しばらくの間、私たちは不自由を感じながらツイッターとスレッズ両方をしかめっ面をしながら利用することになるでしょう」、私は「マスク氏」がトランプ氏のアカウントを復活された動きをニガニガしく思っている。「ツイッター」がしばらく苦戦すれば、「マスク氏」へのいい薬になるのではなかろうか。 
タグ:(その12)(フェイクニュース製造村の戦慄…月収5万円の村民が偽記事でベンツを買うまで、【ryuchellさん急逝】玉川徹氏が指摘した「暗澹たる誹謗中傷」 匿名の“言葉の暴力”のひどすぎた内容 SNSでは野放し 慌てて削除するユーザーも、ツイッター対抗馬「スレッズ」移行へ"3つの不安" ユーザー置き去りの「気持ち悪さ」が最大の障壁) SNS(ソーシャルメディア) ダイヤモンド・オンライン 小倉健一氏による「フェイクニュース製造村の戦慄…月収5万円の村民が偽記事でベンツを買うまで」 「月収5万円ほどの村民たちが暮らす小さな村」に「フェイクニュース製造工場」があったというのは驚きだが、真のニュースだ。 「言論の自由は、最大限に認められるべきなのだが、プーチン氏やトランプ氏のようなケースについては、受け取る側がフェイクを見抜く力をもっとつけていかねばならないだろう」、その通りだ。 「北マケドニアは英語圏ではない。英語の記事は、単語だけ調べて中学で習ったレベルの文章にするのだという。記事はゼロから書くのではなく、CNNなどのサイトから引っ張ってきて、加工ソフトで面白くできるポイントだけ書き換える。 例えば、トランプ氏がメキシコとの国境に壁を造るというニュース記事は、文章の大半はそのまま使いつつ、一部を「ネバダに収容所を造ると言っている」などとセンセーショナルに書き換える。一見して普通のニュースサイト風の文章に仕立てあげ、作成した記事を自分のウェブサイトに掲載し、そこに広告配信のサービスを埋め込む。読者が広告を見たりクリックしたりすれば、広告料が入るという算段だ」、この程度であれば、「英語圏」でなくても出来るようだ。 「フェイクニュースも含めた世論工作が氾濫する現代社会において、情報を読み解くスキルを持つことは欠かすことができないものとなるだろう」、その通りだ。 NEWSポストセブン「【ryuchellさん急逝】玉川徹氏が指摘した「暗澹たる誹謗中傷」 匿名の“言葉の暴力”のひどすぎた内容 SNSでは野放し、慌てて削除するユーザーも」 「いつまで社会は匿名の名のもとに追い込むということを続けるんだろうと、すごく暗澹たる気持ちになります」、「今後、社会としてネット上の誹謗中傷にどう対応していくべきか、具体的な対策が求められるだろう」、「匿名」なら勇ましく「誹謗中傷」するというのは卑怯だ。どうしても「誹謗中傷」したいのであれば、堂々と実名でやるべきだろう。 東洋経済オンライン 鈴木 貴博氏による「ツイッター対抗馬「スレッズ」移行へ"3つの不安" ユーザー置き去りの「気持ち悪さ」が最大の障壁」 「そもそもSNSというものは広告収入が収益源で、儲かるためにはユーザーがツイッター上にどれだけ長くとどまるかがカギになります。そのユーザーがツイートを見られなくなり、広告主からは「流入が目に見えて減少している」と言われているのでは、確かに末期症状といえるほどひどい状況です。 ツイッターへの批判が高まったタイミングの7月6日、メタが新サービスのスレッズをぶつけてきたわけです」、「マスク氏」の「ツイッター」改革も批判の的になっている。 「スレッズはツイッターと似た部分が目立つし多い。これは明らかに「過去の使いやすかったツイッターに戻りたい人は今すぐここに集まって!」というザッカーバーグ氏からのメッセージに映ります。 そのうえで差異というよりは、微妙なサービスアップも忘れてはいません。投稿可能な文字数500字、動画5分、写真10枚というのはすべてツイッターよりも上位互換のスペックです。 特に英語圏ではツイッターの140文字というのは本当の短文しか書けません。英語の140字の文章だと日本語の70文字分くらいの情報量になるのです。ですからアメリカのツイッターユーザーは今回のスレッズのスペックを歓迎しているはずです」、「現実には偏った意見が力を持つ世の中になり、社会の分断が進みました。背景には広告を主たる収入源とするビジネスモデルがあり、利用者個人のデータをもとに狙った個人へターゲットした情報が届けられる状況が「SNSの悪い現実」を生み出しました」、なるほど。 「私たちがサービスを無料で使える理由は、広告収入がSNSの経営を支えているからです。サービスが成り立つためには広告効果が高くなければいけません。 ツイッターとスレッズのどちらがスポンサー企業から見て広告効果のあるSNSであるのかが重要であり、その効果を左右するのはインフルエンサーから見て、どちらが収入になるSNSなのかが重要になります」、なるほど。 「まだメタにはフェイスブックからスレッズにユーザーを流入させる力も温存しています。既存のSNSのユーザー数を武器にスレッズがツイッターを補完するという未来はありえるわけです」、なるほど。 「SNSは基本的に国ごとに勢力図が違うわけで、韓国ではカカオトークが優勢ですし中国ではウィーチャットなど国産SNSが主流です。 その流れで世界的にはツイッターが駆逐されても、日本だけガラパゴス的にツイッターが有力な短文投稿SNSとして生き残るというマスク氏にとっては意味不明な未来が訪れてもおかしくはないのです」、 「今回の騒動は結局のところ私たちユーザーを置き去りにして起きているおかしな騒動であるということです。だからこそ、この先どうなるのか不安定で、しばらくの間、私たちは不自由を感じながらツイッターとスレッズ両方をしかめっ面をしながら利用することになるでしょう」、私は「マスク氏」がトランプ氏のアカウントを復活された動きをニガニガしく思っている。「ツイッター」がしばらく苦戦すれば、「マスク氏」へのいい薬になるのではなかろうか。
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スポーツ界(その35)(高梨沙羅はなぜ「スーツ違反失格」を繰り返すのか 「緩いスーツを選んだのは彼女自身で、コーチのせいではない」、将来の会長含み?「宮本恒靖」が日本サッカー協会No.3に大抜擢された理由、イニエスタが最終戦で監督を“無視”した理由…人格者が見せた「もう一つの顔」) [社会]

スポーツ界については、昨年3月26日に取上げた。今日は、(その35)(高梨沙羅はなぜ「スーツ違反失格」を繰り返すのか 「緩いスーツを選んだのは彼女自身で、コーチのせいではない」、将来の会長含み?「宮本恒靖」が日本サッカー協会No.3に大抜擢された理由、イニエスタが最終戦で監督を“無視”した理由…人格者が見せた「もう一つの顔」)である。

先ずは、本年2月1日付けデイリー新潮「高梨沙羅はなぜ「スーツ違反失格」を繰り返すのか 「緩いスーツを選んだのは彼女自身で、コーチのせいではない」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/02011056/?all=1
・『失敗は成功のもと。失格になったのは残念だが、同じミスは繰り返さないはず。高梨沙羅(26)にそんな期待を抱いた人も多かったようだが、現実にはミスが繰り返される。彼女はなぜ経験に学ばないのか。 昨年2月の北京五輪では、混合団体でスーツの規定違反に問われ、まさかの失格になったスキージャンプの高梨。号泣する姿に涙を誘われたファンも多かったようだ。だが、そんな人も、失敗から学ぶことを期待したに違いない。 ところが、昨年10月にはドイツのグランプリ・クリンゲンタール大会で、この1月15日にも、山形県の蔵王で行われたワールドカップで、立て続けにスーツの規定違反に問われ、失格になったのである。結果、1本目も2本目も95メートルを飛びながら、最下位に』、「昨年2月」、「昨年10月」、「この1月15日」と「立て続けにスーツの規定違反に問われ、失格になった」、どういうことなのだろう。
・『日本人ならではの不利な面  どうして、こういうことが起きるのか。スポーツライターの折山淑美さんは、三つの理由を挙げる。 「高梨選手はベストコンディションで競技に臨むため、その都度、微妙な体重コントロールをし、水を飲んで体重を200グラム増やす、なんてこともします。その上、海外遠征や連戦で疲労が蓄積し、痩せることも。体重や腰回りを、いつも一定に保つのが難しいのです」 日本人ならではの不利な面もあって、 「欧州での試合が多く、欧州のチームは毎回、新調したスーツを試着して練習できます。反対に、日本チームは海外遠征中、新調したスーツを試着しつつ練習することが難しいのです」 スーツが手作りであることも関係あるといい、 「スーツ作りの専門家がチームに同行し、各選手のサイズに合わせて手作業で作り上げるので、手間暇がかかる上、規則いっぱいいっぱいの線を狙って仕上げます。しかし、着ているうちに伸びたり変形したりするし、手縫いのため、縫い目にも微妙な誤差が生じます。その辺りが、抜き打ちチェックで違反とみなされるケースがあるのです」 そして、こう加える。 「高梨選手にかぎらず、スキージャンプの選手はみな、スーツ作りの段階から、ギリギリのところで戦っていることを知ってほしい」』、「スーツが手作りであることも関係あるといい、 「スーツ作りの専門家がチームに同行し、各選手のサイズに合わせて手作業で作り上げるので、手間暇がかかる上、規則いっぱいいっぱいの線を狙って仕上げます。しかし、着ているうちに伸びたり変形したりするし、手縫いのため、縫い目にも微妙な誤差が生じます。その辺りが、抜き打ちチェックで違反とみなされるケースがあるのです」、なるほど。
・『国内開催の重圧から  とはいえ、1月のW杯は会場が蔵王。むしろ日本人に有利だったはずだが、国際スキージャーナリストの岩瀬孝文氏は、 「高梨選手ならではの責任感と、国内開催のための重圧からくる迷いもあり、ギリギリを狙っていたのだと察します」 と話す。実際、重圧がかかるのだろうが、ある元選手はこんな話を。 「ジャンプの選手は競技に際し、サイズが微妙に異なるスーツを4~5着用意するもので、1本飛ぶごとに別のスーツに着替えることもできます。今回、高梨選手は1本目のジャンプで着たスーツがセーフだったので、2本目で飛距離を伸ばすために、緩めでより浮力がつくスーツに着替え、違反になった。違反の可能性を認識しながら、絶対に勝たねば、というプレッシャーに屈したのです。違反を繰り返すのはコーチのせいではなく、彼女自身が判断した結果です」 きわどいところで勝負しているのである。だったら、試合後に記者会見を拒まず、自らそう訴えたほうがよかったのではないか。あるスポーツ紙の記者は、 「最近の高梨選手は、報道関係者や競技関係者に対し、強弁したり違背したり高飛車な態度をとったりしがち。彼女への風当たりが強まっているのを感じます」』、「今回、高梨選手は1本目のジャンプで着たスーツがセーフだったので、2本目で飛距離を伸ばすために、緩めでより浮力がつくスーツに着替え、違反になった。違反の可能性を認識しながら、絶対に勝たねば、というプレッシャーに屈したのです。違反を繰り返すのはコーチのせいではなく、彼女自身が判断した結果です」、相当無理を承知で際どい橋を渡っているようだ。

次に、3月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの藤江直人氏による「将来の会長含み?「宮本恒靖」が日本サッカー協会No.3に大抜擢された理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/318860
・『日本サッカー協会(JFA)が異例の人事を発令した。会長、副会長に次ぐナンバー3の要職で、日常の業務を統括する専務理事に2月1日付で、日本代表のキャプテンとしてW杯でも活躍し、ファン・サポーターから「ツネ様」の愛称で親しまれた46歳の宮本恒靖氏を抜擢した。古巣ガンバ大阪の監督などを経て、JFA理事および会長補佐に就任したのは昨年3月。まだ1期目の途中ながら、宮本氏本人も驚いた大出世にはどのような意図が込められているのか』、興味深そうだ。
・『W杯日本代表キャプテンを務めた「ツネ様」 JFAナンバー3の要職に  子どもの頃からサッカーが得意で、ガンバ大阪でプロになって2005年のJ1リーグを制覇。日本代表にも選出され、キャプテンを託され、2大会、計6試合にわたってW杯の舞台でもプレーし、02年の日韓共催大会では日本のW杯初勝利と初の決勝トーナメント進出の原動力になった。 現役の晩年に差しかかった07年にはヨーロッパへ移籍。オーストリア1部のレッドブル・ザルツブルクでもリーグ優勝を経験している宮本恒靖氏は、引退後に歩んでいくセカンドキャリアの選択肢のなかに、他のJリーガーや代表経験者とは明らかに一線を画す分野を加えた。 国際サッカー連盟(FIFA)が運営する大学院、FIFAマスターへの挑戦。第13期生として12年9月に入学し、サッカーを含めたスポーツ全般に関する組織論や歴史、哲学、法律、そして経営学を学び、翌13年7月に修了したときの心境を宮本氏はこう振り返っている。 「経営サイドに行く自分のことも想像していたので。スティーブ・ジョブズの言葉に『点と点をつなぐ』があるじゃないですか。自分にとっての点の一つがFIFAマスターだったんですね。自分のなかでは、いつかどこかで(経営サイドに)、といったイメージはありました」 大阪屈指の進学校である生野高から同志社大経済学部へ進学。サッカー選手との文武両道を実践してきた宮本氏の胸中には、人生における可能性をできる限り広げたい、という思いがあった。スポーツ界で活躍する人材輩出を目的とするFIFAマスターの門をたたいたのもその一環だった。 それでも修了から10年がたつ23年の自分自身の立ち位置は、想像できなかったはずだ。) 日本サッカー協会(JFA)は2月1日付で、宮本氏を専務理事に就ける人事を発令した。昨年3月の理事就任から1年もたたないうちに、会長と副会長に次ぐJFA内でナンバー3の要職で、日常の業務を統括する専務理事に大抜擢されたスピード出世を宮本氏はこう振り返る。 「JFAという組織がどのように回っているのかを知りながらの1年だったので、そのなかでこのように責任ある立場に就くのは、自分が思っていたよりも早いタイミングだったのかもしれません。回ってくる決裁文書も多いし、仕事の量自体も多いし、かなり鍛えられている日々ですが、自分が見てきたものを、課題として感じてきたものを整理しながらやっていくのは変わらないですね」』、「国際サッカー連盟(FIFA)が運営する大学院、FIFAマスターへの挑戦。第13期生として12年9月に入学し、サッカーを含めたスポーツ全般に関する組織論や歴史、哲学、法律、そして経営学を学び、翌13年7月に修了したときの心境を宮本氏はこう振り返っている。 「経営サイドに行く自分のことも想像していたので。スティーブ・ジョブズの言葉に『点と点をつなぐ』があるじゃないですか。自分にとっての点の一つがFIFAマスターだったんですね。自分のなかでは、いつかどこかで(経営サイドに)、といったイメージはありました」、「大阪屈指の進学校である生野高から同志社大経済学部へ進学。サッカー選手との文武両道を実践してきた宮本氏の胸中には、人生における可能性をできる限り広げたい、という思いがあった」、なるほど。
・『日本のサッカー界は事務方も世界レベルになる必要がある  そもそも、JFAとは何をしている組織なのか。端的に説明すれば日本のサッカー界を統括する、いわゆる総本山にあたる競技連盟であり、公式HP上では「サッカーを通じて豊かなスポーツ文化を創造し、人々の心身の健全な発達と社会の発展に貢献する」と組織としての理念が謳われている。 具体的な活動としてサッカーの普及、強化、社会貢献がある。普及の対象は老若男女におよび、強化のそれはA代表だけでなく、なでしこジャパンや年代別の男女代表、指導者、そして審判と幅広い。さまざまな施策を推進していくうえで、原資となるお金を稼ぎ出すスキームも考案・実践していく必要がある。国内で開催されるA代表戦が、大きな収入源となるのは言うまでもない。 社会貢献には国際舞台での活動も含まれる。FIFAだけでなくアジアサッカー連盟でもJFAのプレゼンスを高めていくうえで、現役時代から知名度が高く、14年のブラジルW杯ではFIFAのテクニカルスタディーグループの一員として戦術や技術など大会全体の傾向を分析。英語も自在に操れる宮本氏が事務方のトップとなる専務理事として、JFAを国内外でけん引していく体制が整えられた。 JFA専務理事は18年3月から、キンコーズ・ジャパンやベルリッツ・ジャパン、ドミノ・ピザジャパンなどで経営に携わってきた56歳の須原清貴氏が務めてきた。しかし、3期目の任期を来年3月まで残していた須原前専務理事は、経営の世界に戻りたいとして昨年末に辞意を表明した。 後任人事を急いできたJFAは、会長、4人の副会長、専務理事らで構成される常務理事会で宮本氏を専務理事に推挙する人事案を内定。1月の月例理事会へ提案し、承認された。2月は常勤理事としてJFAに残り、職務の引き継ぎを行ってきた須原氏は後任者への期待をこう語る。 「ピッチ上のパフォーマンスと事務方を含めたピッチ以外のパフォーマンスの両方が、世界基準になっていく必要性がより高まっています。ピッチ上においては、W杯カタール大会で選手たちが躍動してくれた。それに合わせて事務方も世界レベルになっていかなければいけない。マネジメント、マーケティング、あるいはガバナンスでさらに高みを目指していくためには若い力が絶対に必要です。宮本専務理事は冷静沈着で非常に優秀で、かつ選手だけでなく指導者としての経験もある。新しい時代を開いていくために、極めてふさわしい専務理事になってくれると確信しています」 就任直後に46歳になった宮本専務理事は前任者より10歳も若い。さらに選手だけでなく、15年からは古巣ガンバのアカデミーで指導者の道を歩み始め、18年7月からは不振に陥っていたトップチームの監督に就任。20年にはJ1リーグで2位、天皇杯では準優勝の成績を残した。 一転して翌21年は、開幕からつまずいたまま5月に解任された。捲土重来を期す上での宮本氏の動向が注目されていたなかで、前述したように昨年3月にJFA理事に就任。同時に国際委員会の委員長として現役時代から堪能な英語を駆使し、さらに新設された会長補佐も兼任した。 異例続きの人事には、JFAの田嶋幸三会長の意向が強く反映されていたとされる。意向とは要するに、宮本氏をごく近い将来のJFA幹部候補として育てていく方針に他ならない。常勤の理事および会長補佐として組織運営を学んできた矢先に、須原前専務理事の退任が重なった。) 歴代のJFA専務理事を振り返れば、田嶋会長も原博実氏(前Jリーグ副理事長)も元日本代表であり、原氏は浦和レッズとFC東京で監督も務めた。しかし、代表キャップと監督歴に加えて代表でキャプテンを務め、W杯で戦い、海外でプレーした経験をも持つのは宮本氏が初めてとなる。 自身も務めた専務理事職を「JFAの顔だと思っています」と語ったこともある田嶋会長は、一気に若返ったナンバー3への期待を「非常に大きいですよ」と言い、こう続ける。 「いろいろな経験をしてきたなかで、今度はJFAのなかで経験を積んでほしい。JFAのなかには彼が知らないことがまだまだたくさんあります。これからはヨーロッパを経験した人たちが日本サッカー界を変えていく時代になっていく。彼はその一人目の旗頭となれる人材だと思っています」』、「これからはヨーロッパを経験した人たちが日本サッカー界を変えていく時代になっていく。彼はその一人目の旗頭となれる人材だと思っています」、その通りなのだろう。
・『将来のJFA会長も宮本氏に敷かれたレール  16年3月にJFAの第14代会長に就任した65歳の田嶋氏は現在、4期目を務めている。JFAは19年10月の規則改定で、会長任期を最長で4期8年と明文化した。田嶋会長自身も最後の任期と明言しているなかで、今年12月から来年の年明けにかけて次期会長選挙が実施される。 以前はJFAの評議員会で理事会のメンバーが選ばれ、新理事による互選で代表者、すなわち会長が決められてきた。しかし、FIFAが13年になって傘下の全サッカー協会に対して、会長選挙の実施を含めた標準規約の制定を通達。JFAでも15年12月から会長選挙が導入された。 会長立候補者はJFAが定める「役員の選任及び会長等の選定に関する規定」で、実際に就任した場合に満70歳未満である年齢に加えて、次の要件を満たしていなければいけない。 「直近5年間のうち2年以上、本協会、地域サッカー協会、都道府県サッカー協会、Jリーグ、各種の連盟、リーグ、クラブ等の役員、職員、選手、審判、指導者、その他サッカーと関わりが深いと認められる立場で、サッカー界において実質的に活動し、貢献していること」(原文ママ) その上で評議員または理事から合計で20人以上の推薦を得て、選出管理委員会に対して初めて立候補の意思を表明できる。会長立候補者が複数になった場合は、次回でいえば24年1月の臨時評議員会で、75人を数える評議員による無記名投票で会長予定者1人が選出される。 いきなり次期会長はないとみられるものの、田嶋会長をして「顔」と言わしめた専務理事に抜擢された宮本氏を巡る人事には、将来的な会長就任への期待も込められていると言っていい。 一方で4人を数えるJFA副会長の1人で、日本代表監督としてW杯の2大会で指揮を執った66歳の岡田武史氏は、4年前の18年3月にS級ライセンスの更新を見送っている。理由は後進に道を譲るためであり、さらに「資格を持っていると(復帰への)色気が出ちゃうので」と語っていた。 岡田副会長の場合はJ3のFC今治の運営会社の代表取締役を務めるなど、指導者から経営者へシフトした立場もS級ライセンス返上を決意させた。ならば、宮本氏はどうか。もしも今後、監督就任のオファーが届いたときには、JFA専務理事としてどのような選択肢を持ち合わせるのか。 指導者への未練の有無を問われた宮本氏は「まあ、せっかく取得したS級ライセンスなので」と現場復帰優先をにおわせながら、すぐに「それは冗談です」と否定。さらにこんな言葉を紡いだ。 「日本におけるサッカーの存在を大きくしたい、という思いを常に強く持っていて、そのために選手、FIFAマスターで学んだ時期、指導者、コーチ、そして監督とさまざまな立場で貢献しようと考えてきました。まだS級ライセンスを持っているので、それだけに監督やコーチを全くしないとは思わないですし、いろいろな可能性を持っておきたいと思っていますけど、いまは自分の立場に集中して、自分が持っているもので貢献していきたい。このぐらいの答えでいいでしょうか」』、「宮本」氏は「S級ライセンス」を保持しながら、「さまざまな立場で貢献しようと考えてきました」、なるほど。
・『巨大組織でいかにリーダーシップを発揮するか  昨春に理事に就任して初めて、JFAは全部で19もの部署に分かれていて、250人を超える職員が勤務し、年間で300億円近い予算が動く公益財団法人だと知った。まずはJFA全体を把握し、巨大な組織を動かす力を身につけながら、自らのカラーを打ち出していく形になるだろう。 「自分自身、選手だった期間を含めてJFAという組織を外側から見てきて、どこかちょっと遠いところにあると思っていました。さらにJFAのなかにいると、外部の人たちも同じようにわかってくれるだろう、といった感覚に陥ってしまうようなところもちょっとある。JFAが外からどのように見られているのかが、ちょっと感じられなくなっているといいますか」 こう語った宮本氏は、専務理事就任とともにインスタグラム(@tsuneyasumiyamoto_official)を開設。JFAという組織が、そのなかでナンバー3として何をやっているのかを自身のプライベートを含めて発信しながら、双方向のコミュニケーションを築いていきたいと奮闘している。 組織内へ目を向ければ職員だけでなく、ともにJFA副会長に名を連ねるJリーグの野々村芳和チェアマン、WEリーグ(日本女子プロサッカーリーグ)の髙田春奈チェアに加えて、さらに47を数える都道府県サッカー協会ともコミュニケーションを密にしていかなければいけない。 現役時代はガンバやそのアカデミー、最後の所属クラブとなったヴィッセル神戸、年代別を含めた日本代表とほぼすべてでキャプテンを拝命。さまざまな場面で卓越したリーダーシップを発揮してきた宮本氏は、専務理事に求められるリーダーシップは「全然違いますね」と思わず苦笑する。 「専務理事としていきなり須原さんと同じことができるか、というのはちょっと違うと思っているし、いろいろな人の力を借りながら、自分なりのバックグラウンドを生かしてやっていきたい。組織としてはサッカーに対して熱い思いを持っている職員が多いし、ほぼ全員が中途採用で入ってきている関係もあって、さまざまなビジネスのバックグラウンドも持っている。強化部や競技運営部、チームコミュニケーション部などさまざまな部署の間で横のコミュニケーションも発揮していくことで、組織としてのパフォーマンスもよりよくなっていくのでは、という課題意識も持ってやっていきたい」 宮本氏が自身のキャリアを例えたスティーブ・ジョブズの「点と点をつなぐ」は、将来を見越して知識や経験などをつないでいく、という意味ではない。さまざまなことが将来的に線となってつながり、自らを高めていくと信じて取り組んでほしいという人生訓やエールが込められていた。 選手としての輝かしい実績。Jリーガー出身の日本人として初めて入学し、そして修了したFIFAマスターでの充実した日々。そして、成功と挫折を経験した指導者時代。そこへJFA専務理事の仕事が加わった結果として生まれる、未来へとつながる線を誰よりも宮本氏が楽しみにしている』、「宮本」「専務理事」の今後の活躍が楽しみだ。

第三に、7月16日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの藤江直人氏による「イニエスタが最終戦で監督を“無視”した理由…人格者が見せた「もう一つの顔」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/326186
・『名門バルセロナからヴィッセル神戸へ加入し、世界を驚かせてから5年余り。スペイン代表でも一時代を築いた司令塔、アンドレス・イニエスタが涙とともに日本を去った。だが「人格者」のイメージが強いイニエスタは、日本ラストマッチでの交代時に自チームの吉田孝行監督と目も合わせず、半ば“無視”するような形でピッチを後にした。愛する神戸での引退を望んでいた39歳のレジェンドは、なぜ「もう一つの顔」をのぞかせたのか――。その胸中に迫る』、興味深そうだ。
・『人格者イニエスタの「もう一つの顔」 高ぶった感情を抑え切れないことも  温厚な性格と常に謙虚な立ち居振る舞い。そして、ピッチを離れれば夫として生涯の伴侶と決めているアンナさんを心の底から愛し、父親として2男3女の幼い子どもたちを優しく見守る。 ヴィッセル神戸を退団した元スペイン代表のレジェンドで、名門バルセロナでも一時代を築いたアンドレス・イニエスタの素顔を問われれば、真っ先に「人格者」という言葉が思い浮かんでくる。 しかし、イニエスタはもう一つの顔も持ち合わせていた。ときに高ぶった感情を抑え切れない、と言えばいいだろうか。試合中に初めて「それ」をのぞかせたのは、2年前の9月だった。  北海道コンサドーレ札幌戦の後半に途中交代を告げられた直後。イニエスタはタッチライン際に置かれていたペットボトルを思い切り蹴り上げた。さらにベンチ前ではペットボトルが数本入ったケースにもキックを見舞い、ベンチに座ってからはそれまで履いていたスパイクも投げ出した。 当時のイニエスタは、試合後に自身のインスタグラム(@andresiniesta8)を更新。スペイン語と日本語の両方で、ファン・サポーターを驚かせた自らの行為を謝罪している』、「人格者イニエスタの「もう一つの顔」、「自分らしくない不適切な行動を示したので、サッカーファンやサポーターのみなさんに詫びます。時々フラストレーションが溜まりますが、僕はそのような人ではありません。申し訳ありません」 同じような光景は、昨年7月のジュビロ磐田戦でも再現された。後半途中に交代を告げられたイニエスタは、ねぎらおうと出迎えたコーチ陣やチームメイトを拒絶するように左手を小さく振り上げ、直後に左足を思い切り振って目の前に置かれていたペットボトルを蹴り上げた。 このときは試合後の取材エリアを無言で通過したイニエスタに代わって、元日本代表の酒井高徳が「ロッカールームでは、いつも通りのアンドレスでした」とレジェンドの胸中を代弁してくれた。 「試合途中で交代を告げられて、うれしいと思う選手はどこにもいないと思う。そういう姿勢はプロサッカー選手として絶対に持っていなければいけない。なので、誰もとがめませんでした」 そして、今年7月1日に行われたイニエスタのラストマッチ(札幌戦)では、これまでとは違った形で「怒り」が顔をのぞかせた』、「イニエスタはもう一つの顔も持ち合わせていた。ときに高ぶった感情を抑え切れない、と言えばいいだろうか。試合中に初めて「それ」をのぞかせたのは、2年前の9月だった。  北海道コンサドーレ札幌戦の後半に途中交代を告げられた直後。イニエスタはタッチライン際に置かれていたペットボトルを思い切り蹴り上げた。さらにベンチ前ではペットボトルが数本入ったケースにもキックを見舞い、ベンチに座ってからはそれまで履いていたスパイクも投げ出した。 当時のイニエスタは、試合後に自身のインスタグラム(@andresiniesta8)を更新。スペイン語と日本語の両方で、ファン・サポーターを驚かせた自らの行為を謝罪している。 「自分らしくない不適切な行動を示したので、サッカーファンやサポーターのみなさんに詫びます。時々フラストレーションが溜まりますが、僕はそのような人ではありません。申し訳ありません」 同じような光景は、昨年7月のジュビロ磐田戦でも再現された。後半途中に交代を告げられたイニエスタは、ねぎらおうと出迎えたコーチ陣やチームメイトを拒絶するように左手を小さく振り上げ、直後に左足を思い切り振って目の前に置かれていたペットボトルを蹴り上げた」、微笑ましい「フラストレーション」の発揮だ。
・『敵将と抱擁をかわした一方で 神戸・吉田監督とは目も合わせず  後半12分に交代を告げられたイニエスタは、代わりにキャプテンマークを託した山口蛍をはじめとするチームメイトと抱き合い、万雷の拍手を送るスタンドに手をたたいて応えながらタッチラインへ近づいていった。 交代出場へ向けてスタンバイしていた佐々木大樹へ笑顔でエールを送り、万感の思いを込めるようにピッチに向かって深々とお辞儀する。さらに試合中にもかかわらず反対側のベンチからわざわざ歩み寄ってきた、札幌のミハイロ・ペトロヴィッチ監督とも熱い抱擁をかわした。 だが直後に、異なる感情をあらわにした。ベンチ前で手をたたいて出迎えた、神戸の吉田孝行監督とは目を合わせようとしなかったのだ。視線を落としながら握手もせず、半ば“無視”するように指揮官の横を通り過ぎたイニエスタはベンチ前で再び顔を上げ、コーチ陣やリザーブの選手たちとタッチを繰り返した。 イニエスタの最終戦は、本拠地の名称が「ノエビアスタジアム神戸」となった2013年3月以降では歴代最多となる、2万7630人もの大観衆が駆けつけた。その一戦に、わずかに影を落とした吉田監督との一幕。試合後に臨んだ会見で、イニエスタは一度だけ吉田監督に言及した。契約を半年残して神戸を退団し、新天地を求める胸中を問われたときだった。 「自分はまだできる、選手として戦う準備ができている、チームに貢献できると日々感じてきました。ただ、監督はそのように考えていませんでした。しかし、自分にとってはそれがサッカーを続けるモチベーションにつながりました。だから、新天地でサッカーを続けたいと思っています」 過去の2度はより長く試合に出たい、神戸の勝利に貢献したい、という思いが悔しさに転じた末に、ペットボトルを蹴り上げるといった行為につながった。しかし、ラストマッチでのぞかせた怒りは理由が根本的に異なる。それは退団を決意するに至った過程に起因していると言っていい。 3年半契約での神戸移籍が発表され、世界中を驚かせたのが18年5月。さらに契約を今年いっぱいまで延長した21年5月以降で、イニエスタはこんな考えを抱くようになった。 「自分は、ずっとここ(神戸)で引退する姿を想像してきました」 過去形になっているのは、神戸における立ち位置が一変したからだ。5月に行われた退団会見。イニエスタは「時に物事は希望や願望通りにいかない」と、声を詰まらせながら理由を語っている』、「「自分は、ずっとここ(神戸)で引退する姿を想像してきました」 過去形になっているのは、神戸における立ち位置が一変したからだ。5月に行われた退団会見。イニエスタは「時に物事は希望や願望通りにいかない」と、声を詰まらせながら理由を語っている』、「(神戸)で引退する姿を想像してきました」とは初めて知った。
・『イニエスタが最終戦で監督を“無視”した理由…人格者が見せた「もう一つの顔」  「まだまだプレーを続けて、ピッチで戦いたい思いがありました。しかし、それぞれが歩んでいく道が分かれ始め、監督の優先順位も違うところにあるとも感じ始めました。ただ、それが自分に与えられた現実であり、リスペクトを持ってそれを受け入れました。最終的には現実と自分の情熱とをかけ合わせた結果、ここを去るのがベストな決断だとクラブとの話し合いの中で決めました」、なるほど。
・『「脱イニエスタ・エース大迫」で結果を残す吉田監督  神戸がJ1残留争いを強いられた昨シーズンの後半戦で、故障が続いたイニエスタはほとんどピッチに立てなかった。迎えた今シーズンもコンディション不良で出遅れ、2月にリーグ戦が開幕してからはアンナさんの第5子出産に立ち会うために一時帰国。再来日は3月中旬だった。 一方の吉田監督はシーズン途中の昨年6月に就任し、最下位にあえいでいた神戸を最終的に13位で残留させた。13年限りで現役を終えた神戸で指導者の道を歩み始めた吉田監督は、17年8月、19年4月に続く3度目の登板であり、過去2度はともにシーズン途中で解任されていた。 21年はJ2のV・ファーレン長崎の監督に就任するも、シーズン序盤の5月にはアシスタントコーチに配置転換された。その後は強化部スタッフとして神戸へ復帰。これまでと同じく、例えるなら「応急措置」的な形で率いた神戸を必死に立て直し、何とかJ1残留という結果を手繰り寄せた。 引き続き指揮を執った今シーズン。イニエスタを欠いた状態で開幕を迎える状況がわかっていた中で、キャンプから新しい戦い方を模索してきた吉田監督は一つの答えにたどり着いた。 守備では球際の強度を重視し、前線から激しく連動したプレスを展開。泥くささと運動量の多さを前面に押し出し、ハードワークによってボールを奪い取る。そして、ボールを奪えばロングボールをFW大迫勇也へ送る。ピッチ上の大黒柱をイニエスタから、オフの間にコンディションを整えて復活した大迫にスイッチさせた。 イニエスタの加入後に掲げられた「バルサ化」の対極に位置する、堅守速攻スタイルが鮮やかにはまった神戸は開幕ダッシュに成功。イニエスタが退団を表明した時点で首位に立っていた(本稿執筆時点では2位)。 サッカーの鉄則として「勝っている間はメンバーを代えない」がある。札幌戦を迎えるまでイニエスタのリーグ戦出場は3試合。すべて後半途中から投入され、プレー時間もわずか38分だった。 吉田監督は神戸を勝たせる手段として「脱・イニエスタ」を決断し、実際に昨シーズンまでとはまったく異なる結果を残してきた。5月に39歳になったイニエスタもまた、プロとして常に試合に出られる準備を整えながら、ベンチから、あるいはベンチの外から好調な神戸を見つめてきた。 その間にいつしか、居場所がなくなった神戸に別れを告げ、ピッチの上で最後の輝きを放った上でスパイクを脱ぎたいと思うようになった。イニエスタは退団会見でこんな言葉を残している。 「サッカーを続けていく限り、引退する日がどんどん近づいてくる、というのは誰もが感じること。その中で自分がこのチームを去るべきタイミングを、いろいろな局面で考え始めました」 だからこそ、札幌戦での先発出場はイニエスタにとっても意外だったはずだ。昨年8月を最後に遠ざかっていたイニエスタの先発起用の意図を問われた吉田監督は、苦笑しながら言葉を濁した。 「それに関しては説明はいらないかな、と。彼に対するリスペクトということです」』、「「脱イニエスタ・エース大迫」で結果を残す吉田監督」、「居場所がなくなった神戸に別れを告げ、ピッチの上で最後の輝きを放った上でスパイクを脱ぎたいと思うようになった」、なるほど。
・『「温情」での先発起用にイニエスタ自身が違和感!?  イニエスタを起用する上での難しさを問う質問には、吉田監督はこんな言葉を返している。 「もちろんそこは自分にしかわからない部分、というのもあると思いますし、スーパースターとしてずっとプレーしてきた彼にしかわからないつらさもあったと思っています」 しかし、堅守速攻にかじを切った神戸で、イニエスタは最終戦でも思うように攻撃に絡めなかった。後半開始とともに大迫が投入されてからは、中途半端な展開が余計に目立った。試合は札幌にリードを許して前半を折り返した神戸が、イニエスタがピッチを退いた後の後半40分に追いついて何とか引き分けた。 神戸における最後のプレーを、イニエスタは独特の表現で振り返っている。 「人生においても、スポーツにおいてもスーパーヒーローはいません。現実として自分もこの4、5カ月間、チームに継続的に絡んでいませんでした。その中で最大限の貢献ができるように、自分のすべてを出し尽くしました。自分が何をしたのか、どのような結果だったのかというよりは、チームでここまでやってきたことに対する誇りと達成感の気持ちをもって今日という日を終えました」 ラストマッチだからと、温情的な意味合いで先発起用されても難しい、という複雑な思いが「スーパーヒーローはいない」というくだりに反映されている。お互いにプロとしての矜持(きょうじ)を貫き、その結果として別々の道を歩む状況に至った以上は、最後まで非情に徹してほしかったのだろう。 ましてやイニエスタのラストマッチは、親善試合ではなく公式戦だ。悲願のリーグ戦優勝を目指す上で、一戦必勝の態勢で臨まなければいけない。イニエスタを送り出すのであれば結果を出してきた堅守速攻スタイルで臨み、リードを奪った上で後半途中から起用すべきだったのではないか。 川崎フロンターレが1-0でガンバ大阪を下した、2021年元日の天皇杯決勝を思い出す。この試合を最後に引退する中村憲剛をベンチでスタンバイさせていた川崎の鬼木達監督は、延長戦に突入するケースを含めて、さまざまな考えを巡らせた中でレジェンドをピッチに送り出せなかった。 試合後に「使ってあげられなくて申し訳ない」と謝った指揮官に対して、中村は「チームの勝利が最優先ですから」と笑顔で返した。お互いにリスペクトの思いがあったからこそのやり取りだ。中村は「個人的な感情は抜きにして、これがベストの筋書きでした」と指揮官に感謝している。 対照的にイニエスタ本人が違和感を覚えたことを示唆した57分間は、果たして神戸とイニエスタの双方にとってベストだったのか――。いずれにせよ、最後まで神戸の力になれなかったふがいなさが負の感情へと変わり、吉田監督を無視した交代直後の異例とも言える態度に反映されてしまったのだろう。 もちろん、5年間にわたって在籍した神戸へ注ぐ愛はまったく変わらない。札幌戦後に行われた退団セレモニー。何度も頬に涙を伝わせながら、イニエスタはこんな言葉を残している。 「ファン・サポーターのみなさんには、これまで通りチームを支えてほしい。チームは素晴らしいシーズンを送っていますが、後半戦はみなさんの力が必要になってきます。みなさんと一緒に、自分も離れたところからチームに力を送りたいと思っています」 イニエスタは「さようなら」ではなく「また会いましょう」という言葉で、神戸における日々を締めくくった。いまは手元に届いている中東やアメリカなどからのオファーを吟味しながら、引退後には何らかの形で再び関わりたいと望んでいる神戸が、これからも勝ち続けていく姿を祈っているだろう』、「ラストマッチだからと、温情的な意味合いで先発起用されても難しい、という複雑な思いが「スーパーヒーローはいない」というくだりに反映されている。お互いにプロとしての矜持(きょうじ)を貫き、その結果として別々の道を歩む状況に至った以上は、最後まで非情に徹してほしかったのだろう」、難しいものだ。「イニエスタは」「いまは手元に届いている中東やアメリカなどからのオファーを吟味しながら、引退後には何らかの形で再び関わりたいと望んでいる神戸が、これからも勝ち続けていく姿を祈っているだろう」今後、どんな活躍をするのだろうか。
タグ:スポーツ界 (その35)(高梨沙羅はなぜ「スーツ違反失格」を繰り返すのか 「緩いスーツを選んだのは彼女自身で、コーチのせいではない」、将来の会長含み?「宮本恒靖」が日本サッカー協会No.3に大抜擢された理由、イニエスタが最終戦で監督を“無視”した理由…人格者が見せた「もう一つの顔」) デイリー新潮「高梨沙羅はなぜ「スーツ違反失格」を繰り返すのか 「緩いスーツを選んだのは彼女自身で、コーチのせいではない」 「昨年2月」、「昨年10月」、「この1月15日」と「立て続けにスーツの規定違反に問われ、失格になった」、どういうことなのだろう。 「スーツが手作りであることも関係あるといい、 「スーツ作りの専門家がチームに同行し、各選手のサイズに合わせて手作業で作り上げるので、手間暇がかかる上、規則いっぱいいっぱいの線を狙って仕上げます。しかし、着ているうちに伸びたり変形したりするし、手縫いのため、縫い目にも微妙な誤差が生じます。その辺りが、抜き打ちチェックで違反とみなされるケースがあるのです」、なるほど。 「今回、高梨選手は1本目のジャンプで着たスーツがセーフだったので、2本目で飛距離を伸ばすために、緩めでより浮力がつくスーツに着替え、違反になった。違反の可能性を認識しながら、絶対に勝たねば、というプレッシャーに屈したのです。違反を繰り返すのはコーチのせいではなく、彼女自身が判断した結果です」、相当無理を承知で際どい橋を渡っているようだ。 ダイヤモンド・オンライン 藤江直人氏による「将来の会長含み?「宮本恒靖」が日本サッカー協会No.3に大抜擢された理由」 「国際サッカー連盟(FIFA)が運営する大学院、FIFAマスターへの挑戦。第13期生として12年9月に入学し、サッカーを含めたスポーツ全般に関する組織論や歴史、哲学、法律、そして経営学を学び、翌13年7月に修了したときの心境を宮本氏はこう振り返っている。 「経営サイドに行く自分のことも想像していたので。スティーブ・ジョブズの言葉に『点と点をつなぐ』があるじゃないですか。自分にとっての点の一つがFIFAマスターだったんですね。自分のなかでは、いつかどこかで(経営サイドに)、といったイメージはありました」、「大阪屈指の進学校である生野高から同志社大経済学部へ進学。サッカー選手との文武両道を実践してきた宮本氏の胸中には、人生における可能性をできる限り広げたい、という思いがあった」、なるほど。 「これからはヨーロッパを経験した人たちが日本サッカー界を変えていく時代になっていく。彼はその一人目の旗頭となれる人材だと思っています」、その通りなのだろう。 「宮本」氏は「S級ライセンス」を保持しながら、「さまざまな立場で貢献しようと考えてきました」、なるほど。 「宮本」「専務理事」の今後の活躍が楽しみだ。 藤江直人氏による「イニエスタが最終戦で監督を“無視”した理由…人格者が見せた「もう一つの顔」」 「人格者イニエスタの「もう一つの顔」、「自分らしくない不適切な行動を示したので、サッカーファンやサポーターのみなさんに詫びます。時々フラストレーションが溜まりますが、僕はそのような人ではありません。申し訳ありません」 同じような光景は、昨年7月のジュビロ磐田戦でも再現された。後半途中に交代を告げられたイニエスタは、ねぎらおうと出迎えたコーチ陣やチームメイトを拒絶するように左手を小さく振り上げ、直後に左足を思い切り振って目の前に置かれていたペットボトルを蹴り上げた。 このときは試合後の取材エリアを無言で通過したイニエスタに代わって、元日本代表の酒井高徳が「ロッカールームでは、いつも通りのアンドレスでした」とレジェンドの胸中を代弁してくれた。 「試合途中で交代を告げられて、うれしいと思う選手はどこにもいないと思う。そういう姿勢はプロサッカー選手として絶対に持っていなければいけない。なので、誰もとがめませんでした」 そして、今年7月1日に行われたイニエスタのラストマッチ(札幌戦)では、これまでとは違った形で「怒り」が顔をのぞかせた』、 「イニエスタはもう一つの顔も持ち合わせていた。ときに高ぶった感情を抑え切れない、と言えばいいだろうか。試合中に初めて「それ」をのぞかせたのは、2年前の9月だった。  北海道コンサドーレ札幌戦の後半に途中交代を告げられた直後。イニエスタはタッチライン際に置かれていたペットボトルを思い切り蹴り上げた。さらにベンチ前ではペットボトルが数本入ったケースにもキックを見舞い、ベンチに座ってからはそれまで履いていたスパイクも投げ出した。 当時のイニエスタは、試合後に自身のインスタグラム(@andresiniesta8) を更新。スペイン語と日本語の両方で、ファン・サポーターを驚かせた自らの行為を謝罪している。 「自分らしくない不適切な行動を示したので、サッカーファンやサポーターのみなさんに詫びます。時々フラストレーションが溜まりますが、僕はそのような人ではありません。申し訳ありません」 同じような光景は、昨年7月のジュビロ磐田戦でも再現された。後半途中に交代を告げられたイニエスタは、ねぎらおうと出迎えたコーチ陣やチームメイトを拒絶するように左手を小さく振り上げ、直後に左足を思い切り振って目の前に置かれていたペットボトルを 「「自分は、ずっとここ(神戸)で引退する姿を想像してきました」 過去形になっているのは、神戸における立ち位置が一変したからだ。5月に行われた退団会見。イニエスタは「時に物事は希望や願望通りにいかない」と、声を詰まらせながら理由を語っている』、「(神戸)で引退する姿を想像してきました」とは初めて知った。 「「脱イニエスタ・エース大迫」で結果を残す吉田監督」、「居場所がなくなった神戸に別れを告げ、ピッチの上で最後の輝きを放った上でスパイクを脱ぎたいと思うようになった」、なるほど。 「ラストマッチだからと、温情的な意味合いで先発起用されても難しい、という複雑な思いが「スーパーヒーローはいない」というくだりに反映されている。お互いにプロとしての矜持(きょうじ)を貫き、その結果として別々の道を歩む状況に至った以上は、最後まで非情に徹してほしかったのだろう」、難しいものだ。 「イニエスタは」「いまは手元に届いている中東やアメリカなどからのオファーを吟味しながら、引退後には何らかの形で再び関わりたいと望んでいる神戸が、これからも勝ち続けていく姿を祈っているだろう」今後、どんな活躍をするのだろうか。
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防衛問題(その21)(陸上自衛隊のヘリは海上を飛ばない…沖縄・ヘリ事故のパイロットはいつもの精神状態ではなかったのか、「40機」「整備士」「不仲」…沖縄・陸自ヘリ「UH-60JA」墜落事故で浮かび上がった陸上自衛隊の問題点、陸自銃乱射事件 指導隊員の安全管理はユルユル…逮捕の18歳候補生は無断で弾倉装填の衝撃、日本製兵器は性能が低く 価格は世界一…自衛隊創設から70年間の甘やかされてきた、1機300億円の「国産哨戒機P1」は飛行中にエンスト 半数は飛行不能状態) [国内政治]

防衛問題については、本年2月23日に取上げた。今日は、(その21)(陸上自衛隊のヘリは海上を飛ばない…沖縄・ヘリ事故のパイロットはいつもの精神状態ではなかったのか、「40機」「整備士」「不仲」…沖縄・陸自ヘリ「UH-60JA」墜落事故で浮かび上がった陸上自衛隊の問題点、陸自銃乱射事件 指導隊員の安全管理はユルユル…逮捕の18歳候補生は無断で弾倉装填の衝撃、日本製兵器は性能が低く 価格は世界一…自衛隊創設から70年間の甘やかされてきた、1機300億円の「国産哨戒機P1」は飛行中にエンスト 半数は飛行不能状態)である。

先ずは、本年4月24日付けデイリー新潮「陸上自衛隊のヘリは海上を飛ばない…沖縄・ヘリ事故のパイロットはいつもの精神状態ではなかったのか」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/04241115/?all=1
・『4月6日の午後3時56分、沖縄県の宮古島付近を飛行していた陸上自衛隊の多用途ヘリコプター「UH60JA」がレーダーから消えた。この事故に関して産経新聞(電子版)は12日、「<独自>緊急用フロート装備せず 陸自ヘリ事故」との記事を配信した。 だが、事故の詳細が次々と明らかになっている。産経新聞の報道を紹介する前に、21日時点の最新状況をまとめておこう。 この事故が連日、大きく報じられている理由の一つに、第8師団長の坂本雄一陸将を筆頭に複数の師団幹部が搭乗していたことが挙げられる。坂本陸将に関しては、21日に死亡が発表された。 第8師団は熊本県熊本市に司令部を置き、隊員は九州南部の熊本、鹿児島、宮崎の出身者が8割以上を占める。台湾有事などに備え、南西諸島など島嶼(とうしょ)防衛を主な任務としている。 中国の人民解放軍と対峙する師団と言っても過言ではない。事故が報道されて以来、ネット上で中国軍の攻撃を疑う声が非常に目立った。第8師団の任務が要因の一つと言えるだろう。 陸上自衛隊は20日、搭乗していた10人のうち5人の死亡が確認され、2人の身元が判明したと発表。第8師団司令部の庭田徹1等陸佐と神尊皓基3等陸佐の氏名を明らかにした。 庭田氏は師団のナンバー3に当たる幕僚長。さらに、宮古警備隊長の伊與田雅一1等陸佐もヘリに同乗していたことが発表された。伊與田隊長の行方は明らかになっていない』、平和ボケした「陸上自衛隊」らしい事故だ。
・『“陸上専門”だったヘリ  これほどの幹部クラスが、1機のヘリ事故に巻き込まれてしまったわけだ。防衛省や自衛隊が衝撃を受けているのは当然と言える。 それでは産経新聞の報道に戻る。記事から重要なポイントを引用しよう。 《事故機には緊急着水時に使用する「緊急用フロート」が装備されていなかったことが12日、陸自への取材で分かった》 《緊急用フロートは機体下部に装備し、緊急着水が想定されるときに空気で膨らませることで機体を浮かす装置。機内から脱出する時間が確保され、搭乗員の救命に役立つとされる》 《航空法施行規則は水上を30分以上または185キロ以上飛行するヘリに装備を義務付けているが、陸自関係者は「事故機は海上での飛行を主としておらず、安全に救命し得る最低限の装備で飛行していた」としている》 陸上自衛隊のヘリは、海上での飛行を想定していない──こうした事実が明らかになり、ネット上では議論が盛んになっている。 防衛省は18日、自民党の国防部会・安全保障調査会の合同会議で、事故機のフライトレコーダーが海上自衛隊や航空自衛隊のヘリとは異なり、洋上飛行を想定していない仕様だと明らかにした』、「事故機は海上での飛行を主としておらず、安全に救命し得る最低限の装備で飛行していた」、現実には師団首脳を乗せ、「洋上飛行」をしていたとは、とんでもないことだ。
・『フライトレコーダーの問題  フライトレコーダーは、機体の姿勢やエンジンの状態、高度や速度といったデータを記録する装置だ。事故の原因究明には、回収が必須と言っていい。 だが、主要メディアのほとんどは、フライトレコーダーの回収が困難を極めていると報じている。例えば、テレ朝NEWSは19日、「陸自ヘリ事故 回収困難か フライトレコーダーは陸仕様」との記事を配信した。担当記者が言う。 「防衛省が自民党合同会議や参院外交防衛委員会で行った説明によると、海自や空自のヘリは洋上飛行を想定しているため、機体が水没するとフライトレコーダーが自動的に分離、海上まで浮かび上がると、『ビーコン』という発信装置で現在地を知らせます。ところが陸自のヘリは洋上飛行を想定していないため、フライトレコーダーは機内に設置されており、ビーコンも取り付けられていなかったそうです」 軍事ジャーナリストの菊池征男氏は「確かに陸上自衛隊のヘリは、なるべく海上を飛ばないようにしています」と言う。 「今も全国各地を陸上自衛隊のヘリが飛んでいますが、防衛省の説明の通り洋上飛行を想定していません。そのため海に出るコースを取ることは基本的にありません。例えば、千葉県木更津市には陸自の木更津駐屯地があり、第1ヘリコプター団が置かれています。ヘリが富士山方面へ向かう場合は、東京湾上空を飛ぶほうが早く着きます。しかし約30分の余分な時間がかかっても陸の上を飛び続けるのです」』、「「今も全国各地を陸上自衛隊のヘリが飛んでいますが、防衛省の説明の通り洋上飛行を想定していません。そのため海に出るコースを取ることは基本的にありません」、今回は例外だったようだ。
・『熊本・那覇間の飛行  陸上自衛隊のヘリが「海上を飛ばない」という事実に、「有事の際は大丈夫か?」という議論が沸き起きる可能性がある。 しかも、洋上飛行を想定していないにもかかわらず、事故機が長時間の海上飛行を行った事実も明らかになっているのだ。 「ヘリの特別点検が3月20日から28日まで行われ、事故機は問題なしと判断されました。そして4月4日、熊本県益城町の高遊原分屯地を飛び立ち、鹿児島県の奄美駐屯地を経由して沖縄県の那覇基地に到着しました。5日は那覇市で待機し、6日に宮古島へ向かうと、レーダーから機影が消えたのです」(前出の記者) 熊本市から那覇市までの直線距離は約780キロ。全日空の熊本・那覇便は約1時間半で両空港を結んでいる。 使用機の1つはボーイング737-800で、最高速度は時速946キロ。一方、UH60JAの最高速度は時速295キロだ。事故機は全日空機の約3分の1のスピードしか出せないにもかかわらず、東シナ海の海上を飛び続けたことになる。 「師団長が乗るヘリとなると、パイロットを厳選する必要があったでしょう。常識的に考えれば、優れた技量を持つベテランのパイロットが選ばれたはずです。詳細は今のところ分かっていませんが、第8師団のパイロットが熊本から那覇まで機体を運び、同じパイロットが宮古島上空も飛んだとすると、慣れない洋上飛行に疲労し、師団長を乗せているという心理的なプレッシャーも相当なものがあったでしょう」(同・菊池氏)』、「優れた技量を持つベテランのパイロットが選ばれたはずです・・・慣れない洋上飛行に疲労し、師団長を乗せているという心理的なプレッシャーも相当なものがあったでしょう」、なるほど。
・『リスクマネジメントの欠如  菊池氏は「パイロットの精神状態が普段と違っていた可能性もあります」と指摘する。 「もし第8師団のパイロットだとしたら、宮古島の上空を飛んだ経験も少なかったはずです。管轄などの問題があるかもしれませんが、宮古島の空を熟知しているパイロットを選ぶべきだったのではないでしょうか」 有事の際、陸上自衛隊に迅速な行動が求められるのは言うまでもない。そのためにも平時から最高度の危機管理が求められる。 だが菊池氏は「あえて厳しいことを言いますが、今回の事故では残念なことに、陸自の危機管理に問題が浮き彫りになったと考えています」と指摘する。 「危機管理上、最大の問題点は、視察に訪れた第8師団の幹部全員が、1機のヘリに乗ってしまったことです。戦時下であれば、こんな行動は命取りです。師団の司令部を一気に失ってしまう危険性があり、実際、第8師団は一時的に司令部の機能が喪失するという大変な事態に陥りました。最低でも2機のヘリに分乗し、リスクを回避するのが軍隊の常識だと言えます」』、「最大の問題点は、視察に訪れた第8師団の幹部全員が、1機のヘリに乗ってしまったことです。戦時下であれば、こんな行動は命取りです」、平和ボケもここに極まれりだ。
・『「海軍甲事件」の教訓  第二次世界大戦中の1943年4月、ソロモン諸島ニューギニア方面の前線を視察していた連合艦隊司令長官・山本五十六大将の搭乗機が、アメリカ空軍の戦闘機に撃墜された。いわゆる「海軍甲事件」だ。 この時、リスク回避のため分乗が行われた。具体的には、山本大将は1番機に、参謀長の宇垣纏(まとめ)中将は2番機に搭乗。戦闘機の攻撃で2機とも墜落され、ジャングルの密林に墜落。1番機の山本大将は戦死した。一方の2番機は海上に不時着し、宇垣中将は九死に一生を得た。 「宇垣参謀長は1号機が撃墜された様子を詳細に目撃しており、墜落したおおよその場所も把握していました。もし第8師団が2機のヘリに分乗していたら、被害が半減した可能性があります。さらに、何が原因でヘリがレーダーから消えたのか、片方のヘリが目撃できたことも考えられます。ヘリの場合、墜落地点の上空でホバリングをすることもできます。事故機の発見はもっと早まったかもしれません」(同・菊池氏)』、確かに、「海軍甲事件」の教訓を生かして、2機で出動していれば、「事故機の発見はもっと早まったかもしれません」、その通りだ。

次に、5月24日付けデイリー新潮「「40機」「整備士」「不仲」…沖縄・陸自ヘリ「UH-60JA」墜落事故で浮かび上がった陸上自衛隊の問題点」を紹介しよう。
・『陸上自衛隊の関係者は「事故の直接的な“原因”だけでなく、組織的な問題が生んだ“遠因”も解明すべきです」と訴える──。4月6日、沖縄県の宮古島付近を飛行していた陸上自衛隊のヘリコプター「UH-60JA」が墜落した。このヘリには熊本県に司令部を置く第8師団の幹部が搭乗していた。 第8師団は有事即応を命じられた「機動師団」であり、東シナ海有事では沖縄県など南西諸島で敵軍を迎え撃つことが任務だ。 墜落したUH-60JAには10人が搭乗。師団長だった坂本雄一陸将(55)、庭田徹1等陸佐(48)、神尊皓基3等陸佐(34)らの死亡が確認された(註:年齢はいずれも事故当時)。 坂本師団長は3月30日に着任。今回のヘリ飛行は、有事の際に派遣される宮古島周辺を上空から視察することが目的だったようだ。 5月2日にはフライトレコーダーを回収。7日には機体の主要部分が熊本県益城町の高遊原分屯地に到着し、陸上自衛隊の事故調査委員会による調査も始まった。陸自の関係者が言う。 「事故の原因究明には時間がかかるかもしれませんが、徹底的な調査と情報開示が必要なことは言うまでもないでしょう。ただもう一つ、陸上自衛隊が抱える組織的・構造的な問題が浮き彫りになっており、これを無視するわけにはいきません。例えば、陸上自衛隊はUH-60JAをわずか40機しか保有していません。この問題点を真正面から報じたメディアは皆無と言っていいでしょう」 アメリカのシコルスキー・エアクラフトは1974年にUH-60の初飛行を成功させ、アメリカ陸軍は79年から運用を開始した』、「陸上自衛隊はUH-60JAをわずか40機しか保有していません」、「陸上自衛隊は古いUH-1Jなら100機以上を保有している」、何故なのだろう。
・『性能の高いUH-60  UH-60は多目的ヘリコプターと分類されるだけあり、その用途は広い。機関銃や榴弾砲、対戦車ミサイルなどを搭載して空中から敵を攻撃するだけでなく、特殊な電子機器を積めば敵軍のレーダーや通信機器を妨害することも可能だ。 医療用ヘリとして負傷した兵士を後送する機もあれば、輸送用ヘリとして兵站を担う機もある──UH-60は高性能で使い勝手がいい。そのため、大統領用専用ヘリ「マリーンワン」に採用されているほか、特別に無音、ステレス化したUH-60がウサマ・ビン・ラーデン(1957~2011)の殺害作戦にも投入された。 陸上自衛隊が使っているUH-60JAは、三菱重工業がライセンス生産を行っている。1995年度予算から調達を開始し、2013年度までに40機の予算を計上。22年3月末時点で、実際に保有している機数も同じ40機だ。 日本の領土を守る陸上自衛隊が保有するヘリが40機!?──ひょっとすると、驚いた方もおられるだろう。 陸上自衛隊はUH-1Jなら100機以上を保有している。1Jには機体の80%に国産技術が使われているとはいえ、1956年にアメリカのベル・エアクラフト社が開発したUH-1がベースになっている。 確かにUH-1を今でも現役で使っている軍隊は多い。しかし、ベトナム戦争で活躍したヘリだ。当然、最新鋭とは言い難く、UH-60JAとの性能の差は著しい』、「陸上自衛隊が使っているUH-60JAは、三菱重工業がライセンス生産を行っている。1995年度予算から調達を開始し、2013年度までに40機の予算を計上。22年3月末時点で、実際に保有している機数も同じ40機だ」、「40機」を上限にする理由でもあるのだろうか。
・『防衛予算の問題点  そのため陸上自衛隊も、UH-1からUH-60に切り替えようとしている。ところが、1995年に着手され約30年が経過したにもかかわらず、UH-60JAは40機しか稼働していない。 「対照的なのがフィリピン国防省です。2020年から21年にかけて計16機のUH-60を導入し、その高性能を確認すると、22年には32機の追加購入に踏み切りました。たった2年間で48機を導入したわけです。一方、日本の陸上自衛隊は30年で40機です。どれだけペースが遅いかは一目瞭然でしょう」(同・関係者) “まとめ買い”を行えば、業者が“サービス”してくれるのは軍需産業も変わらない。UH-60を大量購入すれば、1機あたりの値段は下げてくれる。 「さらにフィリピン国防省は、輸送や医療に使うUH-60には高性能のセンサーや特殊なレーダーといった“オプション”は付けません。迅速な購入計画で自軍の作戦能力を大幅に高めただけでなく、予算の削減まで実現したのです。ところが日本の場合、UH-60JAの整備に振り分けられる毎年の予算は決まっています。おまけに“フルオプション”によるライセンス生産が原則なので、1機あたりの価格は高止まりします。自国生産にメリットがあるのは否定しませんが、約30年で40機という信じられないスローペースになってしまいました」(同・関係者)』、「約30年で40機という信じられないスローペースになってしまいました」、「毎年の予算は決まっています。おまけに“フルオプション”によるライセンス生産が原則なので、1機あたりの価格は高止まりします」、理解できない購買政策だ。
・『整備の問題  戦後、革新陣営が発言力を持っていたこともあり、自衛隊がフル活動することは珍しかった。だが今では、米軍と共同訓練を日常的に行い、震災が発生すれば被災地に出動するのが当たり前の光景となっている。 「ヘリに限らず飛行機は、どんなに入念に整備しても、飛行時間に比例して不具合が発生します。所有機数が多ければ、1機あたりの飛行時間が減るため、故障も減少します。しかし、機数が少なければ、1機あたりの飛行時間は増えて、故障も必ず増加するのです。そして陸上自衛隊のUH-60JAは、高性能で使い勝手がいいため、わずか40機が延々とフル稼働しています。これは非常に危険な状況だと言えます」(同・関係者) 2011年の東日本大震災、14年の御嶽山噴火、15年の常総水害──UH-60JAは常に被災地の最前線で働き続けた。多くの住民を救出する様子がテレビに映し出されたのは記憶に新しい。 「ヘリの耐用年数は飛行時間で決まります。当初の想定以上に飛行時間が増加し、酷使に悲鳴を上げている機体は少なくありません。機体の不具合や飛行時間の超過で演習などに参加出来ないUH60JAも出ており、現場では憂慮されています。もっと防衛予算の使い方を柔軟にしないと、この問題は解決できないでしょう」(同・関係者) ヘリの更新が進まないため、陸上自衛隊では保有する機種が増えている。これが整備の現場に悪影響を与えているという。 「現在、アメリカ陸軍が保有するヘリは、基本、UH-60、AH64、CH-47の3タイプに集約されています。ところが陸上自衛隊は、UH-1Jや60JAを筆頭にAH-1Sと64Dなど、7タイプを運用しているのです。アメリカ陸軍が保有していないオスプレイも陸上自衛隊は使わされています。整備するヘリの種類が多いほど、交換部品の管理や整備情報の共有が大変になるのは言うまでもありません。おまけに自衛隊は、整備士の勤務環境が決して良好ではないのです」(同・関係者)』、「アメリカ陸軍が保有するヘリは、基本、UH-60、AH64、CH-47の3タイプに集約」、「陸上自衛隊は、UH-1Jや60JAを筆頭にAH-1Sと64Dなど、7タイプを運用」、ご本家より機種が多いとは非効率なことだ。
・『セクショナリズム  民間の航空会社との人材獲得競争が激化しており、自衛隊は後手に回っているのだという。例えばJALやANAの場合、工学系の大学生や大学院生、高等専門学校生などが「整備をやりたいです」と入社試験を受ける。 「自衛隊の場合、採用した隊員の中から希望と適正を見て整備部門に回すと言う人事をとっていますが、中には整備など全く考えたこともなかった隊員もいます。航空会社の整備士と比べると、どうしても意欲や専門知識に差が出てしまうことがあるのです。もちろん頑張っている整備士もたくさんいますが、どこも人員不足で相当な負荷がかかり、雑用を押し付けられることも日常茶飯事です。整備士が草むしりをやらされている光景は、陸上自衛隊員ならお馴染みでしょう」(同・関係者) UH-60JAと同じように、整備士も酷使されている。さらに今回の事故に関しては、セクショナリズムの弊害も加わったようだ。 「陸上自衛隊の西部方面隊は、福岡県の第4師団、熊本県の第8師団、そして沖縄県の第15旅団で構成されています。本来、2師団1旅団の関係は“対等”です。ところが、伝統的に第8師団は第15旅団を下に見る傾向があるなど、水面下では相当な軋轢があるのです」(同・関係者)』、「本来、2師団1旅団の関係は“対等”です。ところが、伝統的に第8師団は第15旅団を下に見る傾向があるなど、水面下では相当な軋轢がある」、こんな「セクショナリズムの弊害も加わった」、のでは問題だ。
・『第8師団vs.第15旅団  第8師団のある熊本県は、昔から自衛隊に理解のある県民が多い。そんな第8師団が沖縄県で演習を行うと、どうしても地域住民への配慮に欠けることが多い。 「一方、第15旅団は、自衛隊に批判的な県民の声にも真摯に耳を傾けてきました。演習を行う際は、県民の批判を招かないよう、海岸に残る轍のあと一つを取っても細心の注意を払うのです。第8師団は第15旅団への配慮に欠けている、そう批判されても仕方ないと思います」(同・関係者) デイリー新潮は4月24日、「陸上自衛隊のヘリは海上を飛ばない…沖縄・ヘリ事故のパイロットはいつもの精神状態ではなかったのか」の記事を配信した。 この記事で軍事ジャーナリストは「わざわざ第8師団のUH-60JAを宮古島まで飛行させた」ことと、「視察で第8師団の幹部が2機のUH-60JAに分乗しなかった」ことは、危機管理上、問題があると指摘した。 「確かに第15旅団のUH-60JAは、第8師団の機体より海上飛行に対応しています。何より旅団のパイロットは宮古島の空を知り尽くしています。しかし、師団と旅団の関係を考えると、第8師団の師団長が第15旅団のヘリに乗るというのは想像すらできません。おまけに、たった40機しかないUH-60JAの稼働状況を考えれば、いくら師団の幹部とはいえ2機に分乗する余裕はなかったでしょう。1機を宮古島に持って行くだけで手一杯だったはずです」(同・関係者)』、「第15旅団のUH-60JAは、第8師団の機体より海上飛行に対応しています。何より旅団のパイロットは宮古島の空を知り尽くしています。しかし、師団と旅団の関係を考えると、第8師団の師団長が第15旅団のヘリに乗るというのは想像すらできません」、そんな「セクショナリズム」に拘って、最適な運用を犠牲にた結果が悲惨な事故につながったとは、無駄の極致だ。

第三に、6月17日付け日刊ゲンダイ「陸自銃乱射事件 指導隊員の安全管理はユルユル…逮捕の18歳候補生は無断で弾倉装填の衝撃」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/324672
・『上官2人を射殺した候補生(18)は訓練規則に反して、射撃位置に就く前に無断で自動小銃に弾倉を装填していた──。 陸上自衛隊の日野基本射撃場(岐阜市)で自衛官3人が次々撃たれ、死傷した事件。殺人未遂容疑で逮捕された候補生は規定以外の場所で自動小銃に弾を込め、制止しようとした指導役の自衛官に発砲していた。 「動くな」 候補生が突然、後方にいた教官の菊松安親1曹(52)を狙うような不審な動きを見せたため、隣にいた八代航佑3曹(25)が制止しようとしたところ、候補生はとっさに自動小銃を構え、大声でこう叫んだ。 候補生は八代3曹の脇腹に銃弾を1発撃ち込み、後ろにいた菊松1曹の胸を目掛け、続けて2発発砲。さらに原悠介3曹(25)の左大腿部を撃った。 陸自によると、隊員は射撃場内に入ってから実弾を受け取り、次の射手が立つ「待機線」や待機線に入る前に服装や銃の点検を行う「準備線」で順番を待つ。銃に弾倉を充填するのは、射撃位置に入ってからというのが射撃訓練の決まり。候補生は誰にも気づかれずに、発砲の準備を終えていた』、安全管理の基本的ルールが完全に無視されていたようだ。
・『「射撃場内に入った時点で、実弾を渡したことが問題」  15日の会見でこの点を問われた陸自トップの森下泰臣幕僚長は、「まさしくそこが大きな事案の原因だと思っているので、今後それを調査し、明らかにしたい」と述べた。 海上自衛隊の元3等海佐で軍事研究家の文谷数重氏は、「射撃場内に入った時点で、実弾を渡したことが問題です」と、こう続ける。 「海上自衛隊では射座(射撃位置)に就き、射撃指揮官の指示があるまで弾倉に弾を込めません。民間の射撃場にも『射座に就いて銃を置いてから、弾を込めて下さい』という注意書きがあります。陸自は民間より、緩いやり方をしていたということ。今後、見直す必要があると思います。射座で弾を渡して困ることはありません。これまでは、たまたま事故がなかっただけです」 事件当日、現場には候補生70人、指導隊員50人がいたが、射撃場内には、候補生より多い人数の指導隊員を配置し、安全管理に当たっていた。日野基本射撃場は全幅30メートルと、それほど広くなく、候補生が指導隊員たちの目を盗み、コソコソ弾倉を装填している間、指導隊員たちは何を見ていたのか。 候補生は調べに対し、「(菊松1曹に)訓練中に注意された」と供述しているが、はっきりした動機は語っていない』、「射撃場内に入った時点で、実弾を渡したことが問題」であることは確かだが、こうしたルール無視が慣行化していたとすれば、さらに重大な問題だ。

第四に、7月11日付け日刊ゲンダイが掲載した元3等海佐・軍事研究家の文谷数重氏による「日本製兵器は性能が低く、価格は世界一…自衛隊創設から70年間の甘やかされてきた」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/325785
・『岸田政権が防衛産業への支援強化を決定した。国が資金を提供して兵器生産や兵器輸出を後押しする内容である。6月に「防衛装備品生産基盤強化法」を成立させた。 だが、もくろみどおりには進まないだろう。 甘やかしてきたダメな子をさらに甘やかす内容だからである。 まず、日本国内の防衛産業は自衛隊創設からの70年間、徹底して甘やかされてきた。 防衛市場は保護主義で守られてきた。防衛当局は安価で高性能な海外製兵器があっても買わない。産業保護として高価格で低性能の国産兵器を購入してきた。 またカルテルも公然と維持されてきた。当局と業界は阿吽の呼吸で会社ごとにショバとなる製品を割り当てている。戦闘機は三菱重工、哨戒機は川崎重工、中型ヘリは富士重工、飛行艇は新明和の形である。企業は国内競争も免れてきたのである。 契約や価格も非常識である。以前は随意契約ばかりであった。今の一般競争入札も新規参入は難しい。支払価格も契約額ではなく商議で決める例も多い。その場合は、かつての電力会社と同じ総括原価方式である。生産性が低く努力もしない企業でも利益を確保できる仕組みである。) そのため、珍無類の状況が発生している。 仕方なく海外兵器を導入する際にも、わざわざ国内生産をしている。製造権を買ったうえで国内生産しているのだ。だから本来の輸入価格の数倍となる。 人口1億の国に軍用機メーカーが4社林立するのも珍光景である。また軍用銃器メーカーも3社ある。 問題となった過大請求もその結果である。実際の支払額が商議で決まる。だから工数の水増しや契約間の付け替えが横行したのだ』、「仕方なく海外兵器を導入する際にも、わざわざ国内生産をしている。製造権を買ったうえで国内生産しているのだ。だから本来の輸入価格の数倍となる』、ここまで甘やかす必要があるのだろうか。 
・『甘やかし尽くせば腐る   これでは防衛産業がダメになるのは当たり前である。甘やかし尽くせば腐るのである。日本の防衛産業が衰退しているのは、国防族がいうように憲法9条や武器輸出三原則のせいではない。 当然だがロクな兵器もできない。日本製兵器は性能がイマイチ、使い勝手は悪く信頼性も怪しい。それでいて価格だけは世界一ときている。 すでに中韓の兵器産業に負けている。そのうち北朝鮮にも負けるのではないか。) 政府はこのダメな防衛産業をさらに甘やかそうとしている。「防衛装備品の生産基盤強化」と称して従来以上に手厚い産業保護を進めようとしている。 間違いなく無駄金に終わるだろう。何よりも当の業界に自立心がない。国の産業保護に依存し、さらには最適化してきた産業である。さらに甘やかしても何にもならない。=つづく』、「甘やかし尽くせば腐るのである。日本の防衛産業が衰退しているのは、国防族がいうように憲法9条や武器輸出三原則のせいではない。 当然だがロクな兵器もできない。日本製兵器は性能がイマイチ、使い勝手は悪く信頼性も怪しい。それでいて価格だけは世界一ときている。 すでに中韓の兵器産業に負けている」、「政府はこのダメな防衛産業をさらに甘やかそうとしている。「防衛装備品の生産基盤強化」と称して従来以上に手厚い産業保護を進めようとしている。 間違いなく無駄金に終わるだろう。何よりも当の業界に自立心がない。国の産業保護に依存し、さらには最適化してきた産業である。さらに甘やかしても何にもならない」、その通りだ。

第五に、7月12日付け日刊ゲンダイが掲載した元3等海佐・軍事研究家の文谷数重氏による「1機300億円の「国産哨戒機P1」は飛行中にエンスト 半数は飛行不能状態」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/325844
・『政府は国産兵器の生産拡大に躍起である。「防衛産業は防衛力そのものである」方針から産業支援し、国内兵器生産を強化しようとしている。 しかし、国産兵器は日本の防衛のためにはならない。日本製兵器の実態からすれば逆に足を引っ張る存在である。 自衛隊からすればいい迷惑でしかない。国産兵器は性能3流であり問題が多いからだ。それでいて価格だけは世界一なので数が全く揃わない。 国民にとっても防衛費の無駄づかいである。 実例は無数にある。いくつか紹介しよう。 最も有名な国産ダメ兵器は62式機関銃である。フシダラな出来であり褒める話は絶無である。 「引き金を引いても弾丸が出ない」だけではない。発射しても連発が途中で止まる、逆に引き金を戻しても連発が止まらない問題がある。まったく信用できない兵器なのだ。 国産戦闘機F2では、わざわざ国産化の手間をかけた上で高額兵器を造る無駄をしている。) 米国製F16のコピーだが最終価格は3倍の150億円となった。アルミ製の機体を日本航空産業の都合でカーボン繊維で造り直したため購入価格は100億円となった。さらにコピーに際しては再設計で1機あたり50億円もの開発費もかかっている。 現状の対中劣勢も、F2導入の影響が大きい。価格3分の1のF16にしておけば3倍の数は買えた。戦闘機の数の比率は今の対中2割ではなく、対中4割を維持できたはずである。 目下、大炎上中の案件は国産哨戒機P1である。1機300億円の高価格に加えてそもそも飛ばない。飛行場にあるP1の半数はステータス・ズールーという飛行不能状態にある。 肝心の国産エンジンがどうしようもない。試験飛行の段階でエンストした素性の悪さがある。また各部の故障が頻発する問題もあり、今では根本部品の強度不足の話も出ている。 不安を抱えているので海外には出せない。実際に完成お披露目でパリのエアショーに出そうとしたが、機体トラブルでフランスにはたどり着かなかった。それから6年経つがソマリア沖の海賊対処にも出せていない。) 国産哨戒機P1は、性能も芳しくない。肝心の潜水艦探知能力はいまひとつらしい。また操縦操作にも難があるといわれている。新型ミサイルの搭載対応でも先を行く米国製P8哨戒機に大きく遅れている。 自衛隊員に「P1のよかったところは」と聞いても「国産にしなければよかった」「石破大臣の意見どおりP8にすればよかった」と言われる始末である。(つづく)』、「国産兵器は日本の防衛のためにはならない。日本製兵器の実態からすれば逆に足を引っ張る存在である。 自衛隊からすればいい迷惑でしかない。国産兵器は性能3流であり問題が多いからだ。それでいて価格だけは世界一なので数が全く揃わない。 国民にとっても防衛費の無駄づかいである」、「62式機関銃・・・「引き金を引いても弾丸が出ない」だけではない。発射しても連発が途中で止まる、逆に引き金を戻しても連発が止まらない問題がある。まったく信用できない兵器」、「国産戦闘機F2では、わざわざ国産化の手間をかけた上で高額兵器を造る無駄をしている。 米国製F16のコピーだが最終価格は3倍の150億円となった。アルミ製の機体を日本航空産業の都合でカーボン繊維で造り直したため購入価格は100億円となった。さらにコピーに際しては再設計で1機あたり50億円もの開発費もかかっている。 現状の対中劣勢も、F2導入の影響が大きい。価格3分の1のF16にしておけば3倍の数は買えた」、「国産哨戒機P1である。1機300億円の高価格に加えてそもそも飛ばない。飛行場にあるP1の半数はステータス・ズールーという飛行不能状態にある。 肝心の国産エンジンがどうしようもない。試験飛行の段階でエンストした素性の悪さがある。また各部の故障が頻発する問題もあり、今では根本部品の強度不足の話も出ている」、信じられないようなお粗末な話だ。技術力を誇ってきた日本での話とは思えない。防衛省の検収部門は何をしてるのだろう。会計検査院も防衛省は財務省の出先なので、手加減しているとすれば、職務怠慢のそしりを免れないだろう。
タグ:確かに、「海軍甲事件」の教訓を生かして、2機で出動していれば、「事故機の発見はもっと早まったかもしれません」、その通りだ。 「最大の問題点は、視察に訪れた第8師団の幹部全員が、1機のヘリに乗ってしまったことです。戦時下であれば、こんな行動は命取りです」、平和ボケもここに極まれりだ。 「優れた技量を持つベテランのパイロットが選ばれたはずです・・・慣れない洋上飛行に疲労し、師団長を乗せているという心理的なプレッシャーも相当なものがあったでしょう」、なるほど。 「「今も全国各地を陸上自衛隊のヘリが飛んでいますが、防衛省の説明の通り洋上飛行を想定していません。そのため海に出るコースを取ることは基本的にありません」、今回は例外だったようだ。 (その21)(陸上自衛隊のヘリは海上を飛ばない…沖縄・ヘリ事故のパイロットはいつもの精神状態ではなかったのか、「40機」「整備士」「不仲」…沖縄・陸自ヘリ「UH-60JA」墜落事故で浮かび上がった陸上自衛隊の問題点、陸自銃乱射事件 指導隊員の安全管理はユルユル…逮捕の18歳候補生は無断で弾倉装填の衝撃、日本製兵器は性能が低く 価格は世界一…自衛隊創設から70年間の甘やかされてきた、1機300億円の「国産哨戒機P1」は飛行中にエンスト 半数は飛行不能状態) 防衛問題 「陸上自衛隊が使っているUH-60JAは、三菱重工業がライセンス生産を行っている。1995年度予算から調達を開始し、2013年度までに40機の予算を計上。22年3月末時点で、実際に保有している機数も同じ40機だ」、「40機」を上限にする理由でもあるのだろうか。 「事故機は海上での飛行を主としておらず、安全に救命し得る最低限の装備で飛行していた」、現実には師団首脳を乗せ、「洋上飛行」をしていたとは、飛んでもないことだ。 平和ボケした「陸上自衛隊」らしい事故だ。 デイリー新潮「陸上自衛隊のヘリは海上を飛ばない…沖縄・ヘリ事故のパイロットはいつもの精神状態ではなかったのか」 「陸上自衛隊はUH-60JAをわずか40機しか保有していません」、「陸上自衛隊は古いUH-1Jなら100機以上を保有している」、何故なのだろう。 「事故機は海上での飛行を主としておらず、安全に救命し得る最低限の装備で飛行していた」、現実には師団首脳を乗せ、「洋上飛行」をしていたとは、とんでもないことだ。 デイリー新潮「「40機」「整備士」「不仲」…沖縄・陸自ヘリ「UH-60JA」墜落事故で浮かび上がった陸上自衛隊の問題点」 「約30年で40機という信じられないスローペースになってしまいました」、「毎年の予算は決まっています。おまけに“フルオプション”によるライセンス生産が原則なので、1機あたりの価格は高止まりします」、理解できない購買政策だ。 「アメリカ陸軍が保有するヘリは、基本、UH-60、AH64、CH-47の3タイプに集約」、「陸上自衛隊は、UH-1Jや60JAを筆頭にAH-1Sと64Dなど、7タイプを運用」、ご本家より機種が多いとは非効率なことだ。 「本来、2師団1旅団の関係は“対等”です。ところが、伝統的に第8師団は第15旅団を下に見る傾向があるなど、水面下では相当な軋轢がある」、こんな「セクショナリズムの弊害も加わった」、のでは問題だ。 「第15旅団のUH-60JAは、第8師団の機体より海上飛行に対応しています。何より旅団のパイロットは宮古島の空を知り尽くしています。しかし、師団と旅団の関係を考えると、第8師団の師団長が第15旅団のヘリに乗るというのは想像すらできません」、そんな「セクショナリズム」に拘って、最適な運用を犠牲にた結果が悲惨な事故につながったとは、無駄の極致だ。 日刊ゲンダイ「陸自銃乱射事件 指導隊員の安全管理はユルユル…逮捕の18歳候補生は無断で弾倉装填の衝撃」 安全管理の基本的ルールが完全に無視されていたようだ。 「射撃場内に入った時点で、実弾を渡したことが問題」であることは確かだが、こうしたルール無視が慣行化していたとすれば、さらに重大な問題だ。 日刊ゲンダイ 文谷数重氏による「日本製兵器は性能が低く、価格は世界一…自衛隊創設から70年間の甘やかされてきた」 「仕方なく海外兵器を導入する際にも、わざわざ国内生産をしている。製造権を買ったうえで国内生産しているのだ。だから本来の輸入価格の数倍となる』、ここまで甘やかす必要があるのだろうか。 「甘やかし尽くせば腐るのである。日本の防衛産業が衰退しているのは、国防族がいうように憲法9条や武器輸出三原則のせいではない。 当然だがロクな兵器もできない。日本製兵器は性能がイマイチ、使い勝手は悪く信頼性も怪しい。それでいて価格だけは世界一ときている。 すでに中韓の兵器産業に負けている」、 「政府はこのダメな防衛産業をさらに甘やかそうとしている。「防衛装備品の生産基盤強化」と称して従来以上に手厚い産業保護を進めようとしている。 間違いなく無駄金に終わるだろう。何よりも当の業界に自立心がない。国の産業保護に依存し、さらには最適化してきた産業である。さらに甘やかしても何にもならない」、その通りだ。 文谷数重氏による「1機300億円の「国産哨戒機P1」は飛行中にエンスト 半数は飛行不能状態」 「国産兵器は日本の防衛のためにはならない。日本製兵器の実態からすれば逆に足を引っ張る存在である。 自衛隊からすればいい迷惑でしかない。国産兵器は性能3流であり問題が多いからだ。それでいて価格だけは世界一なので数が全く揃わない。 国民にとっても防衛費の無駄づかいである」、 「62式機関銃・・・「引き金を引いても弾丸が出ない」だけではない。発射しても連発が途中で止まる、逆に引き金を戻しても連発が止まらない問題がある。まったく信用できない兵器」、「国産戦闘機F2では、わざわざ国産化の手間をかけた上で高額兵器を造る無駄をしている。 米国製F16のコピーだが最終価格は3倍の150億円となった。アルミ製の機体を日本航空産業の都合でカーボン繊維で造り直したため購入価格は100億円となった。さらにコピーに際しては再設計で1機あたり50億円もの開発費もかかっている。 現状の対中劣勢も、F2導入の影響が大きい。価格3分の1のF16にしておけば3倍の数は買えた」、「国産哨戒機P1である。1機300億円の高価格に加えてそもそも飛ばない。飛行場にあるP1の半数はステータス・ズールーという飛行不能状態にある。 肝心の国産エンジンがどうしようもない。試験飛行の段階でエンストした素性の悪さがある。また各部の故障が頻発する問題もあり、今では根本部品の強度不足の話も出ている」、信じられないようなお粗末な話だ。技術力を誇ってきた日本での話とは思えない。防衛省の検収部門は何をしてるのだろう。会計検査院も防衛省は財務省の出先なので、手加減しているとすれば、職務怠慢のそしりを免れないだろう。
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政府の賃上げ要請(その7)(23年春闘「未曾有の賃上げ」は錯覚 現実は「未曾有の実質賃金下落」、「15%賃上げ」板金加工機の世界大手アマダの危機感 賃上げなくして日本の成長なし、ジョブ型 労働移動の促進で賃下げが増加?岸田政権「三位一体の労働市場改革」が愚策なワケ) [経済政策]

政府の賃上げ要請については、本年3月13日に取上げた。今日は、(その7)(23年春闘「未曾有の賃上げ」は錯覚 現実は「未曾有の実質賃金下落」、「15%賃上げ」板金加工機の世界大手アマダの危機感 賃上げなくして日本の成長なし、ジョブ型 労働移動の促進で賃下げが増加?岸田政権「三位一体の労働市場改革」が愚策なワケ)である。

先ずは、5月18日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏による「23年春闘「未曾有の賃上げ」は錯覚、現実は「未曾有の実質賃金下落」」を紹介しよう。これは、有料記事だが、この記事は今月、無料。
https://diamond.jp/articles/-/323029
・『今春闘賃上げ率、3.7% 「93年以来の伸び」喜んでいいのか  連合の春闘の第4回回答集計結果によると、2023年の春闘賃上げ率は3.69%となった。これまでの伸び率に比べると、格段と高い(図表1)。 「1993年以来の高い伸び率」などと、報道では好調が強調され「このように高率の賃上げが実現したのは、人手不足が深刻化しているからだ」といった解説も見受けられる。今年の春闘で「未曾有の賃上げ」が行なわれたかのような錯覚に陥る。 しかし、実際に起きているのは、正反対のことだ。 春闘賃上げ率が高くなったのは、輸入物価高騰などによる原材料コスト上昇の価格転嫁が行われ企業の粗利益(付加価値)が増えたからだ。 しかし物価上昇率ほど賃金は上がっていないので、実質賃金指数は未曾有の低水準に落ち込んだ。そして賃金分配率も低下している。働き手にとっては、事態はむしろ悪化している』、「物価上昇率ほど賃金は上がっていないので、実質賃金指数は未曾有の低水準に落ち込んだ。そして賃金分配率も低下している。働き手にとっては、事態はむしろ悪化」、なるほど。
・『「実質春闘賃上げ率」はこれまで並みか、それ以下  春闘賃上げ率から消費者物価指数を引いたものを「実質春闘賃上げ率」と呼ぶことにしよう これまでの実質春闘賃上げ率は、図表1に見るように、1%台の後半から2%台の前半の値だった。例外は、消費税増税のあった2014年で、この年には実質春闘賃上げ率はマイナスになった。22年もマイナスだ。 (図表1:春闘賃上げ率と一般労働者賃上げ率 はリンク先参照)  では、23年はどうか? 消費者物価指数(生鮮食料品を除く総合)の前年同月比は、22年4月から2%を超えている。8月以降は3%を超え、12月は4%だ。今後は低下していくことが期待されるが、3%台の値が続く可能性もある。 円ベースの輸入物価指数は、資源価格などの上昇や円安が一時より落ち着いたことから10月までは40%台の上昇だったのが、11月に急速に低下し20%台に、3月に9%台になった。 日本の消費者物価指数は、数カ月のラグで輸入物価の変動をフォローする。したがって、消費者物価は今後、上昇率が鈍化すると予測される。 なお、日本銀行は、4月28日の金融政策決定会合後に公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」で、23年度の物価上昇率見通しを1.8%にした。すると、23年の実質春闘賃上げ率は、3.7-1.8=1.9%となる(ここでは、年と年度を厳密に区別していない)。この値は、21年までの値とあまり変わらない。むしろ、若干低めだ。 つまり、23年が異例なのは、春闘賃上げ率ではなく、物価上昇率なのだ。 仮に連合が主張していたように春闘で5%台の賃上げ率が実現していたとしたら、実質春闘賃上げ率は5-1.8=3.2%ということになり、16年の2.66%をも上回る値になっただろう。しかし、春闘賃上げ率が3.7%では、物価上昇率が1%程度にまで下がらないと、そうはならない』、「仮に連合が主張していたように春闘で5%台の賃上げ率が実現していたとしたら、実質春闘賃上げ率は5-1.8=3.2%ということになり、16年の2.66%をも上回る値になっただろう。しかし、春闘賃上げ率が3.7%では、物価上昇率が1%程度にまで下がらないと、そうはならない」、「連合」の「春闘賃上げ率」は腰砕けだ。
・『経済全体では実質賃金は未曾有の低水準  全体でみた賃上げ率はどうか。春闘の対象となっているのは主として大企業の従業員なので、経済全体の賃上げ率は、春闘賃上げ率より低くなる。これまでのデータを見ると、図表1に示す通りだ。 b欄で示される経済全体の賃上げ率は、a欄で示される春闘賃上げ率に比べると、かなり低い。2014年以降「官製春闘」と言われたように、政府が春闘に介入したのだが、経済全体の賃金にまで影響を与えることはできなかったのだ。 ただし、22年は例外で、b欄の数字のほうがa欄の数字より大きくなっている。これは、3月30日の本コラム「春闘の好調を生んだ『22年特有の現象』、全体の持続的賃上げは望み薄」で指摘したように、22年は、大企業より中企業の賃上げ率のほうが高かったためだ。 ただし経済全体の実質賃金は、物価高騰によって22年から下落が顕著になっている。 毎月勤労統計調査によると、実質賃金指数(現金給与総額、5人以上の事業所)の対前年同月比は、22年4月から連続してマイナスが続いており、23年1月には△4.1%、2月には△2.9%となった。 その結果、図表2に示すように、実質賃金指数は未曾有の低水準に落ちこんでいる(ここに示すのは、各年1月の値。20年を100とする指数で表しているが、例年1月の値は年平均値より低くなるので、図表2の20年の数字も100より低くなっている)』、「実質賃金指数」の落ち込みは顕著だ。
・『粗利益増えたが賃金分配率は低下 結局、「損をした」労働者  では23年春闘の賃上げ率がかつてなく高いのはなぜか。 それは、前記の本コラムでも書いたように22年は、価格転嫁によって企業の粗利益(付加価値)が大幅に増えたからだ。 輸入物価の高騰による原材料価格の高騰を多くの企業が販売価格に転嫁し、それによる売上額の増加は原価増より大きかったため、粗利益(売上げ-原価)が増えた。22年の粗利益は、前年より4.95%も増えたから、分配率を変えなければ、賃金を5%近く上昇させることが可能だったのだ。 ところが実際には、給与・賞与総額は3.13%しか増えなかった。賃金(従業員一人当たりの給与・賞与)の伸びは2.56%でしかなかった。例外が前述した中企業で、粗利益の増加分以上に賃金を増やしたのだ。 ただ全体でみれば、このデータで見る限り賃金分配率は下がったことになる。22年の分配率の正確なデータ(国民経済計算、制度部門別所得支出勘定)はまだ得られないのだが、賃金の分配率がかなり低下したことは間違いないと考えられる。 以上のように、22年の物価高騰によって、労働者は「損をした」ことになる。賃金上昇率が物価上昇率に追いつかなかったので、実質賃金が下落した。そして分配率も低下したのだ。「未曾有の春闘賃上げ率」といって喜んでいてよい状態ではない。労働者は経済政策の変更を求めなければならない』、「22年の粗利益は、前年より4.95%も増えたから、分配率を変えなければ、賃金を5%近く上昇させることが可能だったのだ。 ところが実際には、給与・賞与総額は3.13%しか増えなかった。賃金(従業員一人当たりの給与・賞与)の伸びは2.56%でしかなかった。例外が前述した中企業で、粗利益の増加分以上に賃金を増やしたのだ。 ただ全体でみれば、このデータで見る限り賃金分配率は下がったことになる」、「22年の物価高騰によって、労働者は「損をした」ことになる。賃金上昇率が物価上昇率に追いつかなかったので、実質賃金が下落した。そして分配率も低下したのだ。「未曾有の春闘賃上げ率」といって喜んでいてよい状態ではない」、その通りだ。

次に、5月30日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「「15%賃上げ」板金加工機の世界大手アマダの危機感、賃上げなくして日本の成長なし」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/323629
・『「従来の労働慣行のまま、成長性を維持することは難しい」――。こう気づいた企業から動き始めている。一例として、板金加工機世界大手のアマダは、2025年の給与水準を現行から15%引き上げる。高い専門性を持つ優秀な人材を確保するために、競争力ある賃金を提示しなければならないとの危機感は強いといえる』、「板金加工機世界大手のアマダは、2025年の給与水準を現行から15%引き上げる」、とは思い切った措置だ。
・『「付加価値に占める人件費の割合」が低い日本  最近、賃金を大幅に引き上げるわが国の企業が相次いでいる。その主たる要因は、人手不足だ。帝国データバンクが公表した、「人手不足に対する企業の動向調査(2023年4月)」によると、正社員が不足していると回答した企業は51.4%に達した。 「賃金を引き上げ優秀な人材を確保しなければ、企業の成長性を維持することが難しい」といった経営者の危機感は強い。物価の上昇が続く中で、私たちの生活を守るためには賃上げは欠かせない。これまでの労働慣行に守られた、わが国の賃金体系は変化しつつあるともいえる。 国際比較を行うと、わが国の「労働分配率」(付加価値に占める人件費の割合)は依然として低い。国際労働機関(ILO)によると20年、わが国の労働分配率は56.9%、米国は60.4%、ドイツは63.4%、G7(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国)平均は60.2%だった。 背景には多くの要因がある。特に、バブル崩壊後、急激な株価・地価下落に直面した企業の多くが過度にリスク回避の心理を強めた。その状況から脱却するため、賃上げを進め、優秀な人材確保を急ぐ企業が増えている。 今後の注目点は、賃上げを持続的に続けられるかだ。そのために企業は、収益基盤を拡充し経営体力をつける必要がある。企業が収益の向上を実現し、賃金を引き上げることによって、労働市場の改革を実践することが日本の成長に不可欠だ』、「わが国の労働分配率は56.9%、米国は60.4%、ドイツは63.4%、G7・・・平均は60.2%だった」、「背景には多くの要因がある。特に、バブル崩壊後、急激な株価・地価下落に直面した企業の多くが過度にリスク回避の心理を強めた」、「わが国の労働分配率」の低さは確かに異常だ。
・『非製造業で賃上げ率が高い、「人手不足」倒産も増加  5月19日、経団連は「2023年春季労使交渉・大手企業業種別回答状況」を公表した。加重平均ベースでみると、回答92社の定期昇給とベースアップ(ベア)を合わせた賃上げ率は3.91%に上昇した。昨年の実績(2.35%)からの上昇幅は大きい。 業種別にみると、製造業(85社、3.88%)よりも非製造業(7社、4.02%)の賃上げ率が高い。ウィズコロナの経済と社会運営によって国内外で人の往来が活発化している。それに伴い、飲食、宿泊、交通などサービス業を中心に労働力の確保が喫緊の課題だ。 5月17日に帝国データバンクが公表した「企業における人材確保・人手不足の要因に関するアンケート」からも、賃金を積み増して優秀な人材の確保を急ぐ企業の増加が確認できる。その要旨によると、人手不足が発生していない要因として、回答企業の51.7%が「賃金や賞与の引き上げ」を挙げた。一方、「働きやすい職場環境づくり」「定年延長やシニア再雇用」の回答割合はいずれも30%台だった。 逆に賃上げを実施することが難しい場合、事業の継続に行き詰まる企業が増えている。東京商工リサーチによると、4月、人手不足に関連した企業の倒産が12件あった。要因として、人件費の高騰は大きい。 なお、日本商工会議所の早期景気観測の4月調査結果によると、「22年度、予定した採用人数を確保できなかった」と回答した企業が、全体の52.4%に達した。競合他社を上回る賃金を提示できない場合、目先の事業運営に必要な人員を確保できず淘汰される企業が増えそうだ。 人手不足に直面するのは民間企業だけではない。政府は国家公務員の給与を引き上げようとしている。わが国全体で、事業の継続、中長期的な収益の増大などを目指し、人材争奪戦は激化している』、「回答92社の定期昇給とベースアップ(ベア)を合わせた賃上げ率は3.91%に上昇した。昨年の実績(2.35%)からの上昇幅は大きい。 業種別にみると、製造業(85社、3.88%)よりも非製造業(7社、4.02%)の賃上げ率が高い」、「昨年の実績・・・からの上昇幅は大きい」とするが、上昇幅の少なさにはガッカリさせられる。
・『板金加工機のアマダが給与15%引き上げの訳  わが国の雇用慣行にも、ようやく変化の兆しが出始めた。これまで多くの企業は、新卒一括採用、年功序列、終身雇用を続けてきた。毎年度、企業は新卒学生を一括で採用した。「和を以て貴しとなす」の考えに基づき、業務を通した教育(OJT)が行われゼネラリストが育成された。 一定の時間が経過すると、従業員は年功に基づいて昇進する。給料も上がる。成績が良い人などが管理職、さらには役員に抜てきされる。組織内、あるいはグループ企業内で労働力の過不足を調整する形で人事異動が行われ、定年退職まで勤め上げる――。ある意味、わが国では企業内に独自の労働分配メカニズムが整備され、労働市場の流動性の向上は遅れた。 しかし、バブル崩壊後、わが国の雇用環境は企業の成長促進よりも「足かせ」の側面が増えたと考えられる。国内では急速な資産価格下落により、企業経営者、家計、政府のリスク回避的心理は高まった。 一方、世界経済は急速にグローバル化し、デジタル家電などの国際分業が加速した。製品の設計開発から生産、販売などを自己完結したわが国企業のビジネスモデルは優位性を失った。2008年以降は人口減少も加速した。経済の縮小均衡を背景に、専守防衛型の経営を優先する企業は増えた。 「従来の労働慣行のまま、成長性を維持することは難しい」――。こう気づいた企業から動き始めている。一例として、板金加工機世界大手のアマダは、25年の給与水準を現行から15%引き上げる。高い専門性を持つ優秀な人材を確保するために、競争力ある賃金を提示しなければならないとの危機感は強いといえる。また、ビール業界では、マーケティングのプロを経営トップに登用して、新商品開発や販売戦略の強化を目指している』、「板金加工機世界大手のアマダは、25年の給与水準を現行から15%引き上げる。高い専門性を持つ優秀な人材を確保するために、競争力ある賃金を提示しなければならないとの危機感は強い」、「ビール業界では、マーケティングのプロを経営トップに登用して、新商品開発や販売戦略の強化を目指している」、こうした動きがもっと広がって欲しいものだ。
・『期待される“令和版ソニーやホンダ”の登場  過去30年以上、わが国では実質ベースで賃金が伸び悩んだ。わが国は持続的な賃上げを目指す極めて重要な局面を迎えている。企業に求められることは、収益分野を拡大して賃上げの原資を増やすことだ。 それが難しい場合、企業収益は伸び悩み、賃上げは一時的な現象にとどまる。その状況が続くと経済の縮小均衡は加速し、わが国が世界第3位の経済規模を維持することも難しくなる。その展開は何としても避けたい。 企業が収益分野を拡充する選択肢の一つは、新しい商品の創出に取り組むことだ。かつて、わが国にはそうした考えを積極的に実行する企業が多かった。代表例は、1946年に誕生したソニー(当時は東京通信工業)や、1948年創業のホンダだ。 ソニーが、トランジスタラジオで磨いた音響関連の技術を用いて、より良い音質で音楽を楽しみたいという願望を実現しようと生み出したのが、「ウォークマン」だった。また、ホンダは二輪車で磨いた内燃機関の製造技術を駆使し、CVCCエンジンを開発し高い走行性と燃費性能を確立した。 そこに共通するのは、最先端の理論や製造技術と「人々により良い生き方を」といった思いを結合し、商品化を実現したことだ。それによってソニーのウォークマンは「ポータブル音楽生成機器」、ホンダのCVCCエンジンは「低燃費車」という世界に新しい市場を創造した。 ソニーは音楽再生機器やCDなど、ホンダは四輪車や航空機へ事業領域を広げ、収益分野は増えた。それが一時期の両社の高成長と、給料の増加を支えた。 最近では、世界の半導体大手企業が対日直接投資を積み増すなど、わが国の製造技術の重要性は高まっている。そうした環境変化をうまく活用して本邦企業が収益分野を拡充し、高付加価値の新しい商品を提供できれば、賃金上昇の持続性は高まるだろう。わが国にはそれが必要だ』、「期待される“令和版ソニーやホンダ”の登場」はその通りだが、その萌芽すら見えないのは残念だ。

第三に、7月12日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した室伏政策研究室代表・政策コンサルタントの室伏謙一氏による「ジョブ型、労働移動の促進で賃下げが増加?岸田政権「三位一体の労働市場改革」が愚策なワケ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/325780
・『6月21日に通常国会は閉会、芸能人の不倫などの話題の陰に隠れて、政治・政策的な話への国民の関心は低下すると思いきや、そうはならなかった。マイナンバーカードを巡る不祥事が相次いで明らかになっていっているからだ。それにもかかわらず、「不安の解消」などと的外れなことを発言し、紙保険証の廃止や、さらには運転免許証との統合まで強行しようとしている岸田政権の支持率は大幅に下落。そもそも何が成果だったのか分からない広島サミットを受けて支持率が上昇したこと自体が理解不能であるが、そうした中で、多少は話題にはなったものの、シラッと決められ、静かに進められている政策がある。三位一体の労働市場改革である』、「三位一体の労働市場改革」は初めて知った。
・『「構造的賃上げ」という聞き慣れない言葉を使う理由  この三位一体の労働市場改革は、岸田政権の目指す賃上げのために進められることとされ、先日閣議決定された経済財政運営と改革の基本方針2023、いわゆる骨太の方針2023にも多く記載されている。 賃上げを政権の重要課題と考えていることの表れということなのだろうが、結論から言えば、この三位一体の労働市場改革は賃上げにはほとんどつながらず、かえって多くの労働者の賃金を引き下げることとなり、貧困化、デフレ、そしてごく一部の賃金が大幅に上昇する高所得者と、賃金が上がらないその他大勢との分断が進むことにつながりかねないだろう。 賃上げを進めたい岸田政権がそんな政策を進めるはずがないだろうと思われた方もおられるかもしれないが、なぜそんなことが言えるのか、以下解説していきたい。) 三位一体の労働市場改革の具体的な内容、進め方を規定しているのが、「三位一体の労働市場改革の指針」である。本年5月16日、第16回新しい資本主義実現会議において決定された。 この中で、三位一体の労働市場改革による賃上げのことを、「構造的に賃金が上昇する仕組みを作っていく」ものであるとして、「構造的賃上げ」と呼んでいる。聞き慣れないこの言葉、当然のことながら、骨太の方針2023にも何カ所か登場する。 その意味するところはといえば、(1)リ・スキリングによる能力向上の支援、(2)個々の企業の実態に応じた職務給の導入、そして(3)成長分野への労働移動の円滑化により、賃金が上昇する状況を創出するということ。三位一体とはこれらの3つを一体で進めるということのようである。 しかし、この中には国民経済のお金が増える、お金を増やす措置がないので、これらの措置を講じたところで必然的に賃金が上昇するわけではないであろうことは容易に推測できる。だからこその「構造的」であり、賃金を上げるとは書くことができず、賃金が上昇する仕組みという曖昧な表現となっているのであろう』、「「構造的に賃金が上昇する仕組みを作っていく」・・・その意味するところはといえば、(1)リ・スキリングによる能力向上の支援、(2)個々の企業の実態に応じた職務給の導入、そして(3)成長分野への労働移動の円滑化により、賃金が上昇する状況を創出するということ。三位一体とはこれらの3つを一体で進めるということのようである」、なるほど。
・『リ・スキリング普及の恩恵を受けるのは労働者よりも人材関係企業か  これらの措置を一つ一つ見ていこう。 まず、(1)のリ・スキリングによる能力向上の支援。リ・スキリングとは、定まった定義はないようであるが、一般的には学び直し、仕事で必要な新しい知識を学ぶことと考えられている。現在、このリ・スキリングを世界的に強力に提唱しているのは世界経済フォーラム(World Economic Forum)であり、日本で言われるリ・スキリングとは少々方向性を異にするようであるところ、その動きは注視する必要があると考えられるが、その実態については別稿に譲る。 さて、「仕事で必要な」といっても、今の仕事でというよりは新しい仕事で必要とされるであろう知識の習得が念頭に置かれているようである。「エンプロイアビリティ」なる聞き慣れない言葉まで同指針には登場するが、その意味するところは、雇われる能力、要するに「転職できる能力」であるので、リ・スキリングは転職を前提にしたものとしての意味合いが強いと考えていいだろう。 その一方で、優秀な人材を離職させず、引き付けておくためには、企業は「人への投資」として社員個人へのリ・スキリングの支援強化を行うべきであるとも述べられている。相矛盾するような内容が同じ文書の中に記載されているというのはなんともお粗末な話であるが、つまるところ、「リ・スキリングが広まり、行われるようになればいい」ということなのだろう。 リ・スキリングが広まれば転職が活発になり賃金が上がる、リ・スキリングでスキルアップを図れば賃金が上がる、そんなことは確約などできないのだが、リ・スキリングが活況を呈するようになれば、人材育成を行う人材関係企業にとっては新たなマーケットが生まれ、事業機会が拡大する(そうなれば人材関係企業の社員にとっては賃上げが期待できるかもしれないが)。 さらに、民間に在籍するキャリアコンサルタントの本分野における役割強化もうたわれていることも併せ考えると、そのあたりにリ・スキリングが強調される背景事情があるのではないだろうか』、「「エンプロイアビリティ」なる聞き慣れない言葉まで同指針には登場するが、その意味するところは、雇われる能力、要するに「転職できる能力」であるので、リ・スキリングは転職を前提にしたものとしての意味合いが強いと考えていいだろう。 その一方で、優秀な人材を離職させず、引き付けておくためには、企業は「人への投資」として社員個人へのリ・スキリングの支援強化を行うべきであるとも述べられている。相矛盾するような内容が同じ文書の中に記載されているというのはなんともお粗末な話であるが、つまるところ、「リ・スキリングが広まり、行われるようになればいい」ということなのだろう」、「リ・スキリングが活況を呈するようになれば、人材育成を行う人材関係企業にとっては新たなマーケットが生まれ、事業機会が拡大する(そうなれば人材関係企業の社員にとっては賃上げが期待できるかもしれないが)。 さらに、民間に在籍するキャリアコンサルタントの本分野における役割強化もうたわれていることも併せ考えると、そのあたりにリ・スキリングが強調される背景事情があるのではないだろうか」、「「リ・スキリングが活況を呈するようになれば、人材育成を行う人材関係企業にとっては新たなマーケットが生まれ、事業機会が拡大する・・・さらに、民間に在籍するキャリアコンサルタントの本分野における役割強化」、つまり「リ・スキリング」を受ける労働者ではなく、「人材関係企業」や「民間に在籍するキャリアコンサルタント」、などが重要な役割を果たすようだ。
・『ごく少数の賃上げしか期待できず賃下げの可能性もある職務給の導入  次に、(2)個々の企業の実態に応じた職務給の導入。「同じ職務であるにもかかわらず、日本企業と外国企業の間に存在する賃金格差を、国毎の経済事情の差を勘案しつつ、縮小することを目指す」ための措置のようであるが、同じ職務といっても、まさに「個々の企業の実態に応じ」て、その職務の実態は異なるのであるから、同列比較するということ自体おこがましい。 需要が旺盛で、成長している国であれば、賃金が上昇するのは当たり前であり、そのような状況を国が創出すればいいのであって、個別の企業で職務給を導入したところで、どうにかなる話ではない。そもそも、需要が伸びていないか、収縮している経済で、個別企業内で職務給を導入して特定の職務の賃金を増やしたとして、その原資は他の職務の社員の賃金を削ってくるか、何がしかのコスト削減を図るかしかない。 つまりどこかを削ってどこかに付けるということだが、これでは一部の人は賃金が増えるかもしれないが、他の人は賃金が上がらないということになる。これが岸田政権の目指す賃上げであるのであれば、まさに看板に偽りあり、である。 この職務給はジョブ型雇用(人事)とも呼ばれるが、これは職務に対して人を就けるというものであり、その職務の内容や必要とされる能力が明確に定義され、評価基準が設定される。その職務に対して採用なり任用なりされているので、その仕事の実施に徹することが前提である。 士業のような特殊な仕事であれば別だが、年俸制を採るコンサルティング会社のような場合でもチームや組織で仕事をするので、特定の仕事だけしていればいいという話にはならず、人事の評価基準にもチームワーク的なものが設定されることもある。 つまり、職務給の導入が可能な職務は相当程度限定されることが考えられ、その導入によって賃金が上がる人がいたとしてもごく少数になるのではないか。 もしそうではない、職務給になじまない職務に対しても無理やりこれを導入した場合、組織や業務が硬直的になることも想定され、導入したはいいが、返って生産性が低下し、企業の業績が悪化し、職務給の額を引き下げざるを得ない状況になるといったことも考えられるのではないか』、「年俸制を採るコンサルティング会社のような場合でもチームや組織で仕事をするので、特定の仕事だけしていればいいという話にはならず、人事の評価基準にもチームワーク的なものが設定されることもある。 つまり、職務給の導入が可能な職務は相当程度限定されることが考えられ、その導入によって賃金が上がる人がいたとしてもごく少数になるのではないか」、なるほど。
・『労働移動を円滑化することで成長産業が生まれるという詭弁  そして、(3)成長分野への労働移動の円滑化。失業給付制度の見直しや、退職所得課税制度等の見直し(と称した勤続20年以上の者に対する実質的な増税の検討)によってこれを進めようということのようであるが、要するに、転職すれば賃金が上がるはずだという根拠なき前提に立ってこれを進めようとしているということだろう。 そもそも成長分野と言うが、成長していて人手不足の分野であれば、労働移動を円滑化しなくとも転職は進んでいくだろう。かく言う筆者も、成長著しいコンサル会社からの人員増強・新部門設立のお話をいただいて転職した。 それをあえて「成長分野への」と記載するところに、何か本当の目的があるようだ。 「日本に成長産業が生まれないのは、成長分野への労働移動が円滑ではないからだ。円滑にするためには解雇規制を緩和すべきだ」という話を聞いたことがある方もいるのではないだろうか。 なんとなくもっともらしく聞こえてしまうのかもしれないが、筆者からすれば支離滅裂な話でしかない。成長産業が生まれるのは、長期・大規模・計画的な国の投資があっての話。このことについては、筆者が前書きおよび解説を執筆して翻訳版が復刻された、マリアナ・マッツカートの『企業家としての国家』に詳しいのでそちらを参照いただきたいが、少なくとも労働移動の円滑化うんぬんとは関係がない。 国が役割を果たして成長産業を創出し、その事業を安定化させるまで面倒を見ることで、その事業が拡大し、その周辺産業も含めて働き手が集まるようになる。つまり、順番が逆ということであるが、そんな詭弁(きべん)のような話まで作り上げて何をしたいのかと考えれば、本丸は「解雇規制の緩和」ということだろう。 同指針では一言も書かれていないが、これまでの「労働移動の円滑化」を巡る言説を思い返せば、そのことが分かるだろう。 容易に解雇ができるようになって、雇用が不安定化すれば、当然イノベーションは起こりにくくなるし、企業は成長しにくくなる。成長しにくくなるということは賃金が上がりにくくなるか、下がりやすくなるということである。つまり、賃上げは極めて期待薄になるだろうということである。 以上見てきたように、岸田政権の三位一体の労働市場改革を検証していけば、賃上げなど夢のまた夢どころか、多くの人にとってはかえって賃下げにつながることになりかねないことがお分かりいただけたのではないか。 そもそも、なぜ日本で賃金が下がってきたのかといえば、一つには株主資本主義、金融資本主義のまん延により、株主価値の最大化に重きが置かれるようになり、株主配当を増やすためのコスト削減の格好の対象に人件費がなったことである。 さらに加えて、超短期的な経営により中長期的な研究開発が困難になり、イノベーションが起こりにくくなり、マクロで見た場合に賃金が上昇しにくくなったこと、過剰なグローバル化による価格競争のために、製造業を中心にコスト削減の一環として人件費が削減されるか伸びにくくなったこと、人件費削減の手法として正規労働者の非正規労働者による置き換えが進んだこと、政府が緊縮財政を続けたため、国内の需要が収縮するデフレに陥り、そうした中で消費税の増税を強行したため、さらに需要は収縮し、価格を下げて需要を喚起するため人件費を削減せざるを得ない状況が続いてきたことなどである。 これらに加えて、技能実習生や特定技能と称する低賃金移民の受け入れ拡大を進めたことで、賃金を押し下げる圧力がさらに強まっていっていると言っていいだろう。この賃金が上がらない状況は、結婚ができない状況、結婚して子どもを産み育てることができない状況を併発し、少子化の深刻化の大きな原因ともなっている。 したがって、岸田政権が本気で賃上げを実現したいのであれば、最低でもデフレギャップを埋めるだけの国の財政支出を拡大することである。つまり、国全体としてのパイを増やす、お金を国が率先して増やすことである。そして、岸田文雄首相が総裁選の時に掲げた新自由主義からの転換を、株主資本主義の本格的な修正を中心に、本気で進めることである。しかし、そうした措置を講じる気配は、岸田政権には、今のところ見られない』、「岸田政権の三位一体の労働市場改革を検証していけば、賃上げなど夢のまた夢どころか、多くの人にとってはかえって賃下げにつながることになりかねないことがお分かりいただけたのではないか。 そもそも、なぜ日本で賃金が下がってきたのかといえば、一つには株主資本主義、金融資本主義のまん延により、株主価値の最大化に重きが置かれるようになり、株主配当を増やすためのコスト削減の格好の対象に人件費がなったことである。 さらに加えて、超短期的な経営により中長期的な研究開発が困難になり、イノベーションが起こりにくくなり、マクロで見た場合に賃金が上昇しにくくなったこと、過剰なグローバル化による価格競争のために、製造業を中心にコスト削減の一環として人件費が削減されるか伸びにくくなったこと、人件費削減の手法として正規労働者の非正規労働者による置き換えが進んだこと、政府が緊縮財政を続けたため、国内の需要が収縮するデフレに陥り、そうした中で消費税の増税を強行したため、さらに需要は収縮し、価格を下げて需要を喚起するため人件費を削減せざるを得ない状況が続いてきたことなどである。 これらに加えて、技能実習生や特定技能と称する低賃金移民の受け入れ拡大を進めたことで、賃金を押し下げる圧力がさらに強まっていっていると言っていいだろう。この賃金が上がらない状況は、結婚ができない状況、結婚して子どもを産み育てることができない状況を併発し、少子化の深刻化の大きな原因ともなっている。 したがって、岸田政権が本気で賃上げを実現したいのであれば、最低でもデフレギャップを埋めるだけの国の財政支出を拡大することである。つまり、国全体としてのパイを増やす、お金を国が率先して増やすことである。そして、岸田文雄首相が総裁選の時に掲げた新自由主義からの転換を、株主資本主義の本格的な修正を中心に、本気で進めることである」、同感である。「岸田政権の三位一体の労働市場改革」には呆れ果てた、絶対反対である。  
タグ:ダイヤモンド・オンライン 政府の賃上げ要請 (その7)(23年春闘「未曾有の賃上げ」は錯覚 現実は「未曾有の実質賃金下落」、「15%賃上げ」板金加工機の世界大手アマダの危機感 賃上げなくして日本の成長なし、ジョブ型 労働移動の促進で賃下げが増加?岸田政権「三位一体の労働市場改革」が愚策なワケ) 野口悠紀雄氏による「23年春闘「未曾有の賃上げ」は錯覚、現実は「未曾有の実質賃金下落」」 「物価上昇率ほど賃金は上がっていないので、実質賃金指数は未曾有の低水準に落ち込んだ。そして賃金分配率も低下している。働き手にとっては、事態はむしろ悪化」、なるほど。 「仮に連合が主張していたように春闘で5%台の賃上げ率が実現していたとしたら、実質春闘賃上げ率は5-1.8=3.2%ということになり、16年の2.66%をも上回る値になっただろう。しかし、春闘賃上げ率が3.7%では、物価上昇率が1%程度にまで下がらないと、そうはならない」、「連合」の「春闘賃上げ率」は腰砕けだ。 「実質賃金指数」の落ち込みは顕著だ。 「22年の粗利益は、前年より4.95%も増えたから、分配率を変えなければ、賃金を5%近く上昇させることが可能だったのだ。 ところが実際には、給与・賞与総額は3.13%しか増えなかった。賃金(従業員一人当たりの給与・賞与)の伸びは2.56%でしかなかった。例外が前述した中企業で、粗利益の増加分以上に賃金を増やしたのだ。 ただ全体でみれば、このデータで見る限り賃金分配率は下がったことになる」、 「22年の物価高騰によって、労働者は「損をした」ことになる。賃金上昇率が物価上昇率に追いつかなかったので、実質賃金が下落した。そして分配率も低下したのだ。「未曾有の春闘賃上げ率」といって喜んでいてよい状態ではない」、その通りだ。 真壁昭夫氏による「「15%賃上げ」板金加工機の世界大手アマダの危機感、賃上げなくして日本の成長なし」 「板金加工機世界大手のアマダは、2025年の給与水準を現行から15%引き上げる」、とは思い切った措置だ。 「わが国の労働分配率は56.9%、米国は60.4%、ドイツは63.4%、G7・・・平均は60.2%だった」、「背景には多くの要因がある。特に、バブル崩壊後、急激な株価・地価下落に直面した企業の多くが過度にリスク回避の心理を強めた」、「わが国の労働分配率」の低さは確かに異常だ。 「回答92社の定期昇給とベースアップ(ベア)を合わせた賃上げ率は3.91%に上昇した。昨年の実績(2.35%)からの上昇幅は大きい。 業種別にみると、製造業(85社、3.88%)よりも非製造業(7社、4.02%)の賃上げ率が高い」、「昨年の実績・・・からの上昇幅は大きい」とするが、上昇幅の少なさにはガッカリさせられる。 「板金加工機世界大手のアマダは、25年の給与水準を現行から15%引き上げる。高い専門性を持つ優秀な人材を確保するために、競争力ある賃金を提示しなければならないとの危機感は強い」、「ビール業界では、マーケティングのプロを経営トップに登用して、新商品開発や販売戦略の強化を目指している」、こうした動きがもっと広がって欲しいものだ。 「期待される“令和版ソニーやホンダ”の登場」はその通りだが、その萌芽すら見えないのは残念だ。 室伏謙一氏による「ジョブ型、労働移動の促進で賃下げが増加?岸田政権「三位一体の労働市場改革」が愚策なワケ」 「三位一体の労働市場改革」は初めて知った。 「「構造的に賃金が上昇する仕組みを作っていく」・・・その意味するところはといえば、(1)リ・スキリングによる能力向上の支援、(2)個々の企業の実態に応じた職務給の導入、そして(3)成長分野への労働移動の円滑化により、賃金が上昇する状況を創出するということ。三位一体とはこれらの3つを一体で進めるということのようである」、なるほど。 「「エンプロイアビリティ」なる聞き慣れない言葉まで同指針には登場するが、その意味するところは、雇われる能力、要するに「転職できる能力」であるので、リ・スキリングは転職を前提にしたものとしての意味合いが強いと考えていいだろう。 その一方で、優秀な人材を離職させず、引き付けておくためには、企業は「人への投資」として社員個人へのリ・スキリングの支援強化を行うべきであるとも述べられている。相矛盾するような内容が同じ文書の中に記載されているというのはなんともお粗末な話であるが、つまるところ、「リ・スキリングが広まり 、行われるようになればいい」ということなのだろう」、「リ・スキリングが活況を呈するようになれば、人材育成を行う人材関係企業にとっては新たなマーケットが生まれ、事業機会が拡大する(そうなれば人材関係企業の社員にとっては賃上げが期待できるかもしれないが)。 さらに、民間に在籍するキャリアコンサルタントの本分野における役割強化もうたわれていることも併せ考えると、そのあたりにリ・スキリングが強調される背景事情があるのではないだろうか」、 「「リ・スキリングが活況を呈するようになれば、人材育成を行う人材関係企業にとっては新たなマーケットが生まれ、事業機会が拡大する・・・さらに、民間に在籍するキャリアコンサルタントの本分野における役割強化」、つまり「リ・スキリング」を受ける労働者ではなく、「人材関係企業」や「民間に在籍するキャリアコンサルタント」、などが重要な役割を果たすようだ。 「年俸制を採るコンサルティング会社のような場合でもチームや組織で仕事をするので、特定の仕事だけしていればいいという話にはならず、人事の評価基準にもチームワーク的なものが設定されることもある。 つまり、職務給の導入が可能な職務は相当程度限定されることが考えられ、その導入によって賃金が上がる人がいたとしてもごく少数になるのではないか」、なるほど。 「岸田政権の三位一体の労働市場改革を検証していけば、賃上げなど夢のまた夢どころか、多くの人にとってはかえって賃下げにつながることになりかねないことがお分かりいただけたのではないか。 そもそも、なぜ日本で賃金が下がってきたのかといえば、一つには株主資本主義、金融資本主義のまん延により、株主価値の最大化に重きが置かれるようになり、株主配当を増やすためのコスト削減の格好の対象に人件費がなったことである。 さらに加えて、超短期的な経営により中長期的な研究開発が困難になり、イノベーションが起こりにくくなり、マクロで見た場合に賃金が上昇しにくくなったこと、過剰なグローバル化による価格競争のために、製造業を中心にコスト削減の一環として人件費が削減されるか伸びにくくなったこと、人件費削減の手法として正規労働者の非正規労働者による置き換えが進んだこと、政府が緊縮財政を続けたため、国内の需要が収縮するデフレに陥り、そうした中で消費税の増税を強行したため、さらに需要は収縮し、価格を下げて需要を喚起するため人件費を削減せざ るを得ない状況が続いてきたことなどである。 これらに加えて、技能実習生や特定技能と称する低賃金移民の受け入れ拡大を進めたことで、賃金を押し下げる圧力がさらに強まっていっていると言っていいだろう。この賃金が上がらない状況は、結婚ができない状況、結婚して子どもを産み育てることができない状況を併発し、少子化の深刻化の大きな原因ともなっている。 したがって、岸田政権が本気で賃上げを実現したいのであれば、最低でもデフレギャップを埋めるだけの国の財政支出を拡大することである。つまり、国全体としてのパイを増やす、お金を国が率先して増やすことである。そして、岸田文雄首相が総裁選の時に掲げた新自由主義からの転換を、株主資本主義の本格的な修正を中心に、本気で進めることである」、同感である。「岸田政権の三位一体の労働市場改革」には呆れ果てた、絶対反対である。
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スタートアップ(その8)(VCからの資金調達3題(VCから上手く資金調達する技、VCが使う3つの投資基準、VCが決してやってはいけない3つの致命的ミス)、「肩書きがいつのまにか『教授』から『寄付講座教授』に…」「阪大医学部の承認も受けず上場して大問題」安倍政権を後ろ盾にしていた「大阪パビリオン・総合プロデューサー」への疑問、国税ショックに揺れるスタートアップの報酬制度 ストックオプション課税で予想外の「見解」) [イノベーション]

スタートアップについては、昨年5月31日に取上げた。今日は、(その8)(VCからの資金調達3題(VCから上手く資金調達する技、VCが使う3つの投資基準、VCが決してやってはいけない3つの致命的ミス)、「肩書きがいつのまにか『教授』から『寄付講座教授』に…」「阪大医学部の承認も受けず上場して大問題」安倍政権を後ろ盾にしていた「大阪パビリオン・総合プロデューサー」への疑問、国税ショックに揺れるスタートアップの報酬制度 ストックオプション課税で予想外の「見解」)である。

先ずは、本年3月28日付け東洋経済オンラインが掲載したアンドリーセン・ホロウィッツ マネージング・パートナー のスコット・クポール氏による「先輩、VCから上手く資金調達する技教えて下さい 君のビジネスとVC投資との相性を探るコツとは」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/660057
・『事業を大きくしたい起業家であれば誰もが通るであろうプロセスに、資金調達がある。シリコンバレーの著名なVC(ベンチャー・キャピタル)、アンドリーセン・ホロウィッツの最初期のメンバーであり、起業家としての経験も持つスコット・クポール氏の著書『VCの教科書』から、資金調達の際の基本的な問いについて、3回に分けて考えていこう。今回は1回目となる』、本場のベンチャー・キャピタル事情とは興味深そうだ。
・『資金調達するときの3つの基本的問い  まず、資金調達の3つの基本的な問いかけをしよう。 1、VCから資金調達するべきか? 2、するならば、その金額は? 3、どんなバリュエーションで?  この3つに対する答えは、一見きわめて明白に思える。 できるだけ多くの資金を、自分のビジネスを成長させるために、できるだけ高いバリュエーションで調達すること、となるだろう。 (伝説のベンチャー投資家として知られる)ジョン・ドーアが、資金調達をカクテルパーティーになぞらえたことはよく知られている。 ウェイターがミニホットドッグのトレイを持って近くに来たら、必ず1つもらうこと。その後、ウェイターがいつやって来るかわからないからだ。 それと同じで、資金調達に最適の時期とは、資金が手に入るときだ。あなたが資金を集める準備ができたと判断したタイミングで、資金調達のウェイターが戻って来るかどうかなど、誰にもわからない。 しかしまずは、あなたがふさわしいカクテルパーティーに来ているのかどうか考えることにしよう。 ビジネスにとっての「カンパニー・ベンチャー・キャピタル・フィット」がどんなものか、想像がつくのではないかと思う。 プロダクト・マーケット・フィット──製品と市場の適合性──のように、あなたの会社がVCにふさわしいかどうか見きわめる必要がある。) VC投資の基本ルールは、すべては市場規模に始まり、市場規模に終わる、というものだ。 興味深く、知的刺激を与えるビジネスであっても、最終的に独立し自立できるビジネスを築けるほど市場の規模が大きくなければ、VC投資の対象にはならないだろう』、「資金調達に最適の時期とは、資金が手に入るときだ。あなたが資金を集める準備ができたと判断したタイミングで、資金調達のウェイターが戻って来るかどうかなど、誰にもわからない」、なるほど。
・『ビジネスの規模に見合った調達方法を考える  はっきり言って経験則とは、過剰な一般化と、複雑なテーマを単純化する荒削りな方法だ。 とはいえ一般的な経験則として、市場機会は十分に大きくて、7年から10年で数億ドルの収益が出る、高成長で儲かる事業を築けるのだと、あなたは自身を(それにパートナーとなるVC候補を)しっかり納得させることができなくてはいけない。 それほどの利益を生み出すのは並たいていのことではないが、公開会社になるために何が必要か考えれば、こうした財政的特徴は(少なくとも現在の市場では)、数十億ドル規模の公開株式時価総額に裏づけを与えられるだろう。 その時点でのVCの持ち株比率次第で、この投資に対するVCのリターンは、ファンド全体の経済状態に目立った変化をもたらせるほどの額になるはずだ。 では、市場機会がそれほど大きくなかったら? だからといって、あなたに責任があるとか、あなたのビジネスがよくないというわけではない。多くの創業者がそんなふうに思ってしまうのは残念だ。 あなたは大きな利益を挙げる大規模事業を運営できるだろうし、幸福で豊かで、他人に大きな影響を与える人生を歩めるだろう。そのビジネスは人の役に立ち、人の生活を豊かにし、人を救うかもしれない。 だが、それでもやはりVCからの資金調達とは合わない。 つまりこの場合、どこからどうやって資金を集めるか別の方法を考え、異なるアプローチを見つける必要があるということだ。 たとえば、ごく早い段階で企業に投資し、もっぱら低額の最終バリュエーションの買収によってイグジットすることをビジネスモデルにする、小規模のVCファンド(おもに1億ドル規模のファンドを運用する)があるとする。 市場規模が理由で独立型ビジネスが維持できないならば、この種のVC企業のほうが、あなたのビジネスにふさわしいかもしれない。) すべての小規模ファンドがこの戦略をとるわけではない。ちまたには多くのエンジェル投資家やシード投資家がおり、投資金額は少ないが、彼らも本塁打率で勝負している。 よって、パートナー候補がどんな中心戦略を持つかは、あらかじめ必ず理解しておくことが肝心だ。また、銀行からの負債による資金調達も、このような状況での1つの資金源の可能性としてある』、様々な選択肢があるようだ。
・『VCの課すルールの下でプレーしたいかも考える  端的に言えば、どんな場合でも資金源としてVCがふさわしいわけではない。あなたのビジネスにふさわしいツールではないかもしれないのだ。 それはどういうことなのだろうか? VCも人間であり、彼らのために作られたインセンティブに反応するということだ。そのインセンティブとは要するに(金銭的なインセンティブに要約すれば)、次のようなものだ。 ■多くはうまくいかず、少数がファンドの金銭的リターンの大部分を生み出すことを理解して、投資ポートフォリオを作ること。 ■そうした巨額のリターンを挙げるビジネスを10年から12年以内に現金化すること。そうすることで、リミテッド・パートナー(LP)に現金を返すことができるし、LPがVCに出資して、新ファンドで再びゲームに参加することが期待できる。 これが、VCのライフサイクルだ。 また、たとえあなたのビジネスが(最終的な市場規模やその他要因から)VCにふさわしいとしても、あなたはVCが課したルールの下でプレーしたいのかどうか、自分で判断する必要がある。 そのルールとは、VCに自社株を分配し、取締役会の支配権やガバナンスをVCとともに握ることであり、「現実の」結婚と同じくらい継続する結婚生活を始めることである(アメリカの平均結婚年数は8年から10年だ……想像はつくだろうが)』、「インセンティブとは要するに・・・次のようなものだ。 ■多くはうまくいかず、少数がファンドの金銭的リターンの大部分を生み出すことを理解して、投資ポートフォリオを作ること。 ■そうした巨額のリターンを挙げるビジネスを10年から12年以内に現金化すること。そうすることで、リミテッド・パートナー(LP)に現金を返すことができるし、LPがVCに出資して、新ファンドで再びゲームに参加することが期待できる。 これが、VCのライフサイクルだ。 また、たとえあなたのビジネスが・・・VCにふさわしいとしても、あなたはVCが課したルールの下でプレーしたいのかどうか、自分で判断する必要がある。 そのルールとは、VCに自社株を分配し、取締役会の支配権やガバナンスをVCとともに握ることであり、「現実の」結婚と同じくらい継続する結婚生活を始めることである』、なるほど。

次に、4月30日付け東洋経済オンラインが掲載したアンドリーセン・ホロウィッツ マネージング・パートナー のスコット・クポール氏による「本場米国のプロが教える、VCが使う3つの投資基準 VCがパワポのピッチだけで投資判断する理由」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/661591
・『起業家が資金調達を考える際の有力な候補の1つに、ベンチャーキャピタルがある。 シリコンバレーの著名なVC、アンドリーセン・ホロウィッツの最初期のメンバーであり、起業家としての経験も持つスコット・クポール氏の著書『VCの教科書』から、VCがアーリー・ステージの投資先をどのように判断するのかについて、抜粋・編集して3回に分けてお届けしよう。今回は1(正しくは2)回目となる』、興味深そうだ。
・『VCが用いる3つの評価基準  ベンチャー投資のアーリー・ステージでは、ありのままのデータの入手は非常に難しい。 それはそうだ!企業は普通、その時点では市場に進出していない。よって、多くのVCが投資の可能性についてスタートアップを評価しているとき、定性的評価は定量的評価を小さく見せる。 古い格言の「ごみを入れればごみしか出てこない」は、アーリー・ステージのベンチャー投資にとくにあてはまる。 起業家が(ときにはVC企業とのピッチミーティングのほんの数時間前に)まとめたパワーポイントのスライド上にしか存在しないビジネスに、将来見込まれるリターンを有意義にモデル化できるほどの金融的指標は、ないに等しいのだ。 では、どうするのか? じつは、VCが投資見込みを評価するために用いる、定性的かつ高水準の定量的ヒューリスティクスがある。それは一般に、人、製品、市場の3つに分類される。) ここでは、「人」について見ていこう。これはアーリー・ステージの投資にとって、間違いなく定性的評価基準であり、おそらく最重要となる評価基準だ。 「企業」とは、あるアイデアを持った個人のごく小さな集合ーー創業者1人か2人だけのこともあるーーにほかならないので、VCの評価はチームを重視する傾向がある』、「「人」について見ていこう。これはアーリー・ステージの投資にとって、間違いなく定性的評価基準であり、おそらく最重要となる評価基準だ」、なるほど。
・『競合の見極めがVC投資のカギ  とりわけ、彼らがアイデアを実行するときの効率性について手がかりを得ようとして、多くのVCは創業者の背景を深く探る。 この場合の考え方の基本として、アイデアは独占的なものではないということが前提となる。要するに、対抗馬がいることを仮定する。 それが優れたアイデアだと判明した場合、当然、このアイデアを追求する創業者や、それを実現するために作られる企業がたくさんあるだろうと考えるのだ。 だから、VCとして何より重要になるのは、このアイデアを形にしようと現れるその他無数のチームのなかで、どうしてこのチームを支援したいのか、ということだ。 このチームに投資する機会費用は計り知れない。つまり、ひとつのチームに投資を決定すれば、そのアイデアを達成する能力が高い別のチームが現れても、VCはそこに投資できないのだ。 クライナー・パーキンス社のパートナーである、ベンチャー・キャピタリストのジョン・ドーアは、VCの基本ルールは「競合なくして利益なし」と言ったとされるが、現代のVCにとって、競合の見きわめが大きな影響を与えるのは事実である』、「ひとつのチームに投資を決定すれば、そのアイデアを達成する能力が高い別のチームが現れても、VCはそこに投資できないのだ」、「競合の見きわめが大きな影響を与える」、その通りだろう。
・『VC投資の機会費用とは  ベンチャー・キャピタリストは事実上、同じチャンスを追求する企業には投資できない。もっとも、競合相手をどう見きわめるかは、見る人によって当然異なる。 なぜかと言えば、VCが企業への投資を決定するということは、その領域における事実上の勝者として、その企業を実質的に承認することだからである。 たとえば、フレンドスターがソーシャルネットワーキング市場を独占しそうだと思っていたら、フェイスブックではなくフレンドスターに投資するだろう。 VCはその領域の直接の競争相手に投資できなくなるという点で、どの投資決定にも計り知れない機会費用が備わる。どの馬に乗るかは、自分で決めなくてはいけない。 これを踏まえると、正しい分類を選択しても(つまり、ある特定の領域に大企業ができると的確に予想しても)、企業を間違える(つまり、支援する馬を間違える)ことがあれば、VCは大きな誤りを犯したことになる。 たとえば、2000年代初めに、ソーシャルネットワーキングが広がると気づいていたかもしれないが、フェイスブックではなくフレンドスターに投資をした。 または1990年代後半に、検索がビッグビジネスになると気づいていたのに、グーグルではなくアルタリターン(AltaReturn)への投資を選んだ、という具合にだ。) では、創業チームをどう評価したらいいのか?当然、VCによってやり方はそれぞれ異なるが、何を調べるかについてはいくつかの共通点がある。 まずひとつは、この創業チームがそのアイデアを追求するにいたった独特のスキルやバックグラウンド、経験は何かということだ。わたしのパートナーは、「製品ファーストの企業」に対して「企業ファーストの企業」という概念を用いる』、「VCはその領域の直接の競争相手に投資できなくなるという点で、どの投資決定にも計り知れない機会費用が備わる。どの馬に乗るかは、自分で決めなくてはいけない」、「正しい分類を選択しても・・・企業を間違える・・・ことがあれば、VCは大きな誤りを犯したことになる」、なるほど。
・『「製品ファースト」か「企業ファースト」か  製品ファーストの企業の場合、創業者はある問題を特定するか経験し、その問題を解決する製品を開発するにいたった。そしてついに、その製品を市場に出すための手段として、企業を設立するよりほかになかった。 企業ファーストの企業では、創業者はまず企業を起こしたいと決意する。そして企業を中心に構築するために、関心を集めるだろう製品のアイデアを出す。 もちろん最終的には、成功を収める企業はどちらの形式からでも生まれるのだが、実際には製品ファーストの企業が企業設立の本来の性質を表している。創業者が経験した現実社会の問題が、製品を(そしてついには会社を)創る刺激となる。 このような本質的なきっかけが、VCには非常に魅力的に映るものだ。 プロダクト・マーケット・フィット(製品と市場の適合性)という概念は、間違いなく多くの人になじみがある。 スティーブ・ブランクとエリック・リースによって世に広まったプロダクト・マーケット・フィットは、適切な市場に向けて、その市場のニーズを満足させる製品を送り出せている状態を指摘した概念だ。消費者の「喜び」と再購入は、プロダクト・マーケット・フィットの典型的特徴である。 エアビーアンドビーにはこれがある。インスタカートにも、ピンタレスト、リフト、フェイスブック、インスタグラムにもこれがある。その製品が登場する前はどうしていたのか、消費者には想像がつかない。 製品の画期的な性質と、製品が目的とした市場の問題に対する適合性から登場したので、やはり本質的に顧客を引きつけるのだ』、「プロダクト・マーケット・フィットは、適切な市場に向けて、その市場のニーズを満足させる製品を送り出せている状態を指摘した概念だ。消費者の「喜び」と再購入は、プロダクト・マーケット・フィットの典型的特徴である」、なるほど。

第三に、5月12日付け東洋経済オンラインが掲載したアンドリーセン・ホロウィッツ マネージング・パートナーのスコット・クポール氏による「VCが決してやってはいけない3つの致命的ミス 「チームも製品も素晴らしい」だけでは足りない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/661596
・『起業家が資金調達を考える際の有力な候補の1つに、ベンチャーキャピタルがある。 シリコンバレーの著名なVC、アンドリーセン・ホロウィッツの最初期のメンバーであり、起業家としての経験も持つスコット・クポール氏の著書『VCの教科書』から、VCがアーリー・ステージの投資先をどのように判断するのかについて、抜粋・編集して3回に分けてお届けしよう。今回は3回目となる』、興味深そうだ。
・『なぜ大規模な市場が好ましいのか?  VCがアーリー・ステージで投資機会の評価に用いる基準として、人、製品、市場がある。 前々回では人について、前回は製品について見た。ここでは、「市場」について解説しよう。 VCにとって最も重要なものは、創業者が追求する市場機会の最終的な規模ということがわかっている。 不動産についての格言が、「1に立地、2にも3にも立地」ならば、VCの場合は、「1に市場規模、2にも3にも市場規模」だ。大規模な市場が好ましく、小規模な市場は好ましくない。 その理由は? 大きな市場のルールは、べき乗則カーブと「本塁打率」の説明から直接導かれる。 VCが正解よりも誤りが多いならば、また、VCとしての成功(または失敗)が投資の20~30%をホームランできるかどうかの結果であるならば、勝者の規模だけが重要になる。 ベンチャー投資の犯す誤りは、カテゴリーを正確に選びながら、正しくない企業を選ぶことだ。それに加えて、あと2つの誤りがある。 ひとつは、正しい企業を選ぶが、誤った市場を選ぶことだ。つまり、優良で利益の大きなビジネスを行い、チームも製品も素晴らしいが、さほど大きくない市場にいる企業に投資することだ。 チームがいかに業務を立派に遂行しても、収益が5000万~1億ドルに達しなければ、その企業の時価総額は伸びない。 もうひとつは、不作為の罪は作為の罪よりも重いということだ。 最終的に失敗に終わった企業にVCが投資することはかまわない。このビジネスではよくあることだ。 やってはいけないことは、次のフェイスブックになる企業に投資しないことだ。このビジネスで成功を収めるためには、リスクを回避してはいけない』、「このビジネスで成功を収めるためには、リスクを回避してはいけない」、その通りだろう。
・『その市場は、必要なリターンをもたらしうるか?  以上の点から、VCは大きな市場機会に投資すべきだという自明の理が導かれる。小さな市場で成功を収めても、ビジネス継続のために必要なリターンを、決してVCにもたらさない。 たとえば、スタートアップの成功の可能性を評価する際、VCは市場規模を「そんなの大した問題じゃない」と考えることがよくある。 だが素晴らしいチームと素晴らしい製品はいいとして、市場規模がビッグビジネスを維持するのに十分でなければ、それは大した問題、ということになる。 ベンチマーク・キャピタルの創業者アンディ・ラクレフはこう言っている。平凡なチームでも巨大な市場にいれば企業は成功できるが、素晴らしいチームでも貧弱な市場にいては必ず失敗する。 市場規模を適切に評価することが、なぜそれほど難しいのか?それは、市場の実際の大きさは、投資する時点ではわからないことが多いからだ。だから、市場を評価する際に、VCはさまざまな形で自らをごまかしている。 新製品が既存製品にそのまま置き換わる場合、市場規模は最も評価しやすい。 例としてデータベースを挙げよう。 オラクルはデータベース市場では巨大企業なので、その市場機会をつかもうとするスタートアップは、大きな市場で勝負することになると難なく推測できる。いとも簡単なことだ。 だが、データベース市場全体が、時間がたつにつれてどう展開するのかはわからない。) データベースの機能に取って代わる新たなテクノロジーが現れて、市場を空洞化することになるのか? それとも、クラウド・コンピューティングがワークフローで主流となるにつれて、データベースを必要とするアプリケーションの数が飛躍的に増加し、結果としてデータベース市場が今以上に大きくなるのか? どちらも良い質問だが、おそらくほとんどのVCは、データベース市場を狙うスタートアップには大企業を築くのに十分な規模の市場があるので、もし成功すれば投資のホームランになると考えるだろう』、「市場の実際の大きさは、投資する時点ではわからないことが多いからだ。だから、市場を評価する際に、VCはさまざまな形で自らをごまかしている」、「ほとんどのVCは、データベース市場を狙うスタートアップには大企業を築くのに十分な規模の市場があるので、もし成功すれば投資のホームランになると考えるだろう」、なるほど。
・『エアビーアンドビーの市場規模は?  市場規模の見積もりをさらに難しくするのは、現在存在しない市場を狙うスタートアップや、テクノロジー的な制約があるためまだ規模が小さい市場を狙うスタートアップがもたらす影響だ。 たとえばエアビーアンドビーを考えてみよう。同社が最初に資金を集めたとき、使用した事例の大部分は、他人の家のソファで寝る人たちだった。 そのような、ひどくお腹を空かせている大学生がどれくらいいるのか調べればーーハンバーガーやチーズやラーメン、つまり、お腹を空かせた大学生が購入するその他製品の市場規模と同じようにーー論理的に結論を下すこともできただろう。 だが、時間がたつにつれて、サービスがほかの要素にまで拡大したらどうなるだろう?そのときはおそらく、既存のホテル市場が、全体的な市場規模の代わりとなるだろう。 なるほど、だがエアビーアンドビーの予約しやすさや低価格により、それまであまり旅行しなかった人たちが旅行するようになったらどうだろうか? 宿の必要な旅行者の市場が、エアビーアンドビーの登場によってむしろ拡大したとしたら? 今になってみると、エアビーアンドビーの成功は、これまでなかった旅行宿泊施設の新形態のおかげで、市場規模が拡大したことが背景にあると思われる。 幸運をつかむか逃すかは、VCの市場規模を理解する能力、発展途上の新市場でテクノロジーの果たす役割について創造的に考える能力によって決まるのだ』、「幸運をつかむか逃すかは、VCの市場規模を理解する能力、発展途上の新市場でテクノロジーの果たす役割について創造的に考える能力によって決まるのだ」、その通りなのだろう。

第四に、5月25日付け現代ビジネス「「肩書きがいつのまにか『教授』から『寄付講座教授』に…」「阪大医学部の承認も受けず上場して大問題」安倍政権を後ろ盾にしていた「大阪パビリオン・総合プロデューサー」への疑問」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/110588?imp=0
・『麻布で開かれた阪大大学院教授森下竜一の誕生日パーティー。一見普通の誕生日パーティーだが調べていくとどうやら"黒い”部分が…。著名人も絡む「金権人脈」を巡ったパーティーの実情に迫る。 前編記事『【追及・大阪万博】「「肩書きがいつのまにか『教授』から『寄付講座教授』に…」「阪大医学部の承認も受けず上場して大問題」安倍政権を後ろ盾にしていた「大阪パビリオン・総合プロデューサー」への疑問』に引き続き紹介する』、興味深そうだ。
・『人脈形成の秘訣  森下は安倍政権下、規制改革会議のメンバーにも名を連ね、内閣官房参与に就いてきた。 大阪パビリオンの総合プロデューサーになったのも、そんな安倍・菅政権や日本維新の会といった政界の後ろ盾があればこそ、という以外にない。森下はどうやってここまでの政界人脈を築き、成り上がることができたのか。 森下竜一の政界人脈の中心は、やはり安倍晋三である。生まれ故郷の岡山県が選挙区の大物厚労族議員、元首相の橋本龍太郎の伝手で安倍と知り合ったと前に書いた。そこから政府参与や万博プロデューサーに成り上がれた原動力は、創薬ベンチャー、アンジェスの創業にほかならない。 アンジェスの設立は'99年12月、森下が初めに手掛けた創薬が慢性動脈閉塞症向けのコラテジェンなる遺伝子治療薬だった。当の森下はまだ阪大医学部の助教授であり、37歳という若さだ。国立大学発の医療ベンチャーが一種のブームになり、東大や京大などでも起業が相次いだ時期と重なる。 いち早く起業に飛びついた森下は、そこからわずか3年後の'02年9月、大学発の創薬ベンチャー第1号として、東証マザーズ市場にアンジェスの株式上場を果たした。 ときは小泉純一郎政権下、規制緩和が金科玉条のごとく叫ばれ、若い起業家が雨後の筍のように現れて株式市場は活況を呈した。アンジェス上場時の一株の公募価格も22万円と高額だった。1万5185株を保有していた筆頭株主の森下は、公募価格で33億4000万円を手に入れた計算だ。文字通り一夜にして億万長者になったわけである』、「アンジェス上場」で「筆頭株主の森下は、公募価格で33億4000万円を手に入れた計算だ。文字通り一夜にして億万長者になった」、なるほど。
・『未公開株を「ばらまき」  半面、大阪の医学界を取材すると、森下ならびにアンジェスの評判はすこぶる悪い。ある医師会の重鎮が語る。 「アンジェスが上場を目指した2000年代初め、彼は阪大医学部の承認も受けず、薬の有効性についてろくな検証もないまま臨床試験のデータを使って株式上場したのです。医学部は出し抜かれたようなものですから、教授会でそれが大問題になりました。倫理委員会が立ち上がり、彼を詰問した場面もありました。 あのときは担当教授が彼をかばってとりなしていたけれど、今の基準ならあの臨床データはかなり怪しい。それでも曲がりなりにも株式を上場できたのですが、大儲けしたのは森下だけじゃなかったから、大変な騒ぎになりました」 アンジェスの株式上場時、第三者割当増資が実施され、未公開株が阪大関係者にばらまかれていたのである。 アンジェスが開発したコラテジェンという遺伝子治療薬の臨床試験に携わった教授や医師ら10人のうち、5人が一株5万円で未公開株を割り当てられた。おまけに、上場後のアンジェス株は公募価格の22万円どころではなく、瞬く間に100万円を突破、その後数年間は70万円前後で推移してきた』、「阪大医学部の承認も受けず、薬の有効性についてろくな検証もないまま臨床試験のデータを使って株式上場したのです。医学部は出し抜かれたようなものですから、教授会でそれが大問題になりました。倫理委員会が立ち上がり、彼を詰問した場面もありました。 あのときは担当教授が彼をかばってとりなしていたけれど、今の基準ならあの臨床データはかなり怪しい」、「アンジェスの株式上場時、第三者割当増資が実施され、未公開株が阪大関係者にばらまかれていた」、未公開株をネタに政治資金をばら撒いたリクルート事件の再来だ。
・『アンジェスの問題発覚  アンジェスの未公開株問題が発覚したのは上場から2年後の'04年6月のことだ。 未公開株を手にしたおかげで、創薬にかかわった阪大関係者の中には家まで買った医師もいたという。リクルート事件を彷彿とさせる出来事でもあった。アンジェス株上場で森下が手にしたのは、33億円どころか100億円という計算になる。 だが、結局株を受け取った大学関係者は法的に罪に問われることなく、いつしか話題にも上らなくなる。 そうして森下はアンジェスを使い、安倍との距離を縮めていったようだ。小泉の後を受けて'06年9月に第一次政権を発足させた安倍は、翌年6月「イノベーション25」と題し、'25年までの長期経済成長計画をぶち上げた。 その主眼の一つが、バイオ・医薬品のベンチャー育成であり、森下のアンジェスもそこに名乗りを上げた。森下はコラテジェンの医薬品承認を厚労省に申請することを決めた。 しかし翌'07年9月、安倍は自ら首相の椅子を手放し、第一次政権が幕を閉じた。すると、当然のようにコラテジェンの承認は見送られ、しばらく日の目を見なかった。と同時に、アンジェスの株価は下がり続けた。 そんな森下が再浮上するのはやはり第二次政権がスタートした'12年12月以降だ。政権にカムバックした安倍は翌'13年1月、内閣府に規制改革会議を設置し、その15人の委員の一人として、アンジェス取締役、大阪大学大学院医学系研究科教授という肩書の森下が加わった。 それについて、別の大阪医学界の医師はこう指摘する。 「森下さんの肩書は、今の寄附講座教授ではなく、医学部の教授。そのあと'16年頃までは、ずっとその肩書を使っていました。ですが、大学にお金を寄付さえすれば講座を持てるそれと、研究成果を認められた学部の教授とは雲泥の差があり、森下さんは教授会のメンバーでもありません。 つまり、森下さんは政府の審議会で嘘の肩書で委員になっていたことになる。安倍総理や官房長官の菅(義偉)さんには大学の事情はわからないかもしれないけれど、森下さんは肩書を詐称して政府を騙したことになります」』、「アンジェス株上場で森下が手にしたのは、33億円どころか100億円という計算になる。 だが、結局株を受け取った大学関係者は法的に罪に問われることなく、いつしか話題にも上らなくなる」、「寄附講座教授」は「大学にお金を寄付さえすれば講座を持てるそれと、研究成果を認められた学部の教授とは雲泥の差があり、森下さんは教授会のメンバーでもありません」、「森下さんは肩書を詐称して政府を騙したことになります」、飛んでもない話だ。
・『安倍ブレーンとのパイプ  アンジェスの未公開株のときほどではないにしろ、それもまた医学部内で問題になり、'17年から森下は寄附講座教授の肩書に変わったという。 第二次安倍政権の規制会議の中に「健康・医療ワーキンググループ」という部会が設置され、森下は委員に加わった。先の厚労省の官僚が言う。 「その流れで、内閣官房(官邸)に『健康・医療戦略室』が設置されたのです。医療そのものを成長産業としてとらえ、医薬品や病院を海外に輸出していこうという発想で、経産省出身の今井尚哉元首相秘書官が提唱したとされています。経産、厚労、文科の各省の縦割りをなくし、官邸が指揮を執って先端医療を進めるという部署です」 その健康・医療戦略室のトップが官房長官だった菅、室長に菅の側近である首相補佐官の和泉洋人が就任し、さらに和泉の愛人とされた厚労省の医系技官である大坪寛子が次長に抜擢された。和泉・大坪は海外出張の際、つながった隣の部屋に宿泊していたことからコネクティングカップルなどと揶揄された。 そして森下がこの健康・医療戦略室の担当参与に就き、さらに政府に対する影響力を増していったという。 「森下さんの強みは『アベ友』というだけではなく、何かと厚労行政に口を挟んできた和泉さんとのパイプがあることです。とくに第二次安倍政権ができてからアンジェスの売り込みが激しく、それまで何度申請しても門前払いだった遺伝子治療薬のコラテジェンが第一段階の承認を受けました」(同前) アンジェスは'18年1月に医薬品承認を申請し、1年後の'19年2月に厚労省から条件・期限つきで承認されている。先の厚労官僚はこうも付け加えた。 「この間、アンジェスは増資を繰り返し、株価もかなり上下しています。そこに疑問の声も上がってきました。コロナワクチンの開発なども、相当株価に影響していると思います」 医療ベンチャーを使って億万長者となり、万博を取り仕切る森下竜一。冒頭の誕生パーティ参加者たちは、単なる知人として駆け付けただけだというが、怪しげなその金脈に吸い寄せられているようにも感じる』、「医療ベンチャーを使って億万長者となり、万博を取り仕切る森下竜一」、もっと叩けばホコリも出てきそうだ。

第五に、6月12日付け東洋経済オンライン「国税ショックに揺れるスタートアップの報酬制度 ストックオプション課税で予想外の「見解」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/678343
・『「われわれの想定とは、まったく違う税務上の解釈となりました」──。6月上旬、都内に本社を置くあるスタートアップ企業の経営陣は、社員にそのような説明を行った。 事の発端は5月29日、あるストックオプション(SO)の税率をめぐって国税庁が示した見解にある。SOはあらかじめ決めた価格で自社株を買える権利で、「株式購入権」ともいう。そのうち「信託型SO」が焦点となった。 スタートアップ関係者らを集めて開かれた説明会の場で国税庁の担当者は、「(SOの)権利行使と株式の交付が行われている場合、給与課税の対象となり、源泉所得税の納付が必要」などと指摘。これにより、約800社に及ぶとされる信託型SOの発行企業には突如、追加の税負担が生じることとなった。冒頭の会社もその一社だ』、興味深そうだ。
・『株売却時の課税のみと考えられていた  SOは通常、役員や社員に直接与えられる。それに対して信託型では、信託会社などにオプションプール(SOの交付枠)として割り当て、信託契約期間中や契約終了時に、企業が指定する役員や社員などに同一条件のSOを交付する。 発行時に、誰にどれだけ権利を与えるかを決めておく必要がなく、SOの発行後に入社した人も同一条件でSOを得ることができる公平性などを売りにしていた。従来この信託型SOは、SOの行使時に給与所得課税は行われず、株式売却時の譲渡益課税のみになるとの見方が広がっていた。 ところが国税庁が示した見解に沿えば、役職員が信託型SOを行使した時点で、給与所得として最大55%の課税がなされる。20%の譲渡益課税が生じる前の時点で、キャッシュインなき課税が発生する。) SOの行使と株式の売却でキャピタルゲインを得て20%の納税をすでにしていても、過去5年にさかのぼり、給与所得として追徴課税される。年収4000万円を超えていた場合は、最高税率55%が課せられる。 「所属会社の税解釈を信じてお金を使い切っていた場合、納税のために家などの資産を手放さざるをえない人が出てくるのでは」。スタートアップ関係者からは不安の声が上がる。 信託型SOを導入していた会社やそれを支援していたコンサルティング会社などは行使時点の課税について、一貫して負担は生じないと見ていた。しかし国税庁の説明で、それがひっくり返ることとなった。 (信託型ストックオプションでの課税の流れの図はリンク先参照) 源泉所得税を徴収して納付する立場の企業では、会計上の損失計上が必要になる可能性もある。 日本公認会計士協会や企業会計基準委員会(ASBJ)の見解次第では、信託型SOを発行し、すでに役職員による行使が行われていた場合、追加の税負担を会計上で処理しなければならなくなる。上場企業では、人工知能(AI)開発で知られるPKSHA Technologyなどで、その影響が大きいとみられている。 いったいなぜ、このような事態になってしまったのか。あるベンチャーキャピタルの幹部は、「信託型SOはもともと課税関係がグレーだった。今回の件を機に抜け道がふさがれたのはよかった」と指摘する。 一方で投資先が信託型SOを導入している別のベンチャーキャピタルの幹部は、「多くの会社が慎重に調べて信託型SOを導入している。課税関係はクリアだったと信じており、国による後出しじゃんけんは許せない。『税金が安い』と推奨してきたコンサル会社の罪も大きい」と憤る』、「「信託型SOはもともと課税関係がグレーだった。今回の件を機に抜け道がふさがれたのはよかった」と指摘する。 一方で投資先が信託型SOを導入している別のベンチャーキャピタルの幹部は、「多くの会社が慎重に調べて信託型SOを導入している。課税関係はクリアだったと信じており、国による後出しじゃんけんは許せない。『税金が安い』と推奨してきたコンサル会社の罪も大きい」と憤る』、なるほど。
・『SOの環境整備では一歩前進  立場によって見方は分かれるが、国税庁は説明会当日、日本のスタートアップにとって追い風となるSOの環境整備策も公表している。それは一定の要件を満たすことで、税制の優遇措置を受けることができる「税制適格SO」の行使時における新たな株価算定ルールだ。 従来は明確な算定式がなく保守的な運用が行われていたが、新ルールによって、20%の譲渡益課税のみで済む税制適格SOが発行しやすくなる。信託型SOの特長だった低い行使価格で、税制適格SOを発行できるメリットが生まれる。 自社でも信託型SOを発行していたフォースタートアップスの志水雄一郎社長は、「株価算定ルールが新しくなったのは画期的。既存の信託型SOを新しくして、税制適格SOの仕組みにつくり直すところが多くなるだろう」と予測する。 SOの環境整備をめぐっては、政治による後押しも進む。自民党は5月に公表した提言で、株主総会の決議事項であるSOの行使期間や期間に関する承認を取締役会に委任できるよう会社法を改正することなどを求めた。政府の側も、使い勝手のよいSOの制度設計はスタートアップの人材獲得力向上に欠かせないという意識を持っている。 「国税ショック」を機に、日本のスタートアップの活性化に弾みをつけられるか』、「「税制適格SO」の行使時における新たな株価算定ルールだ。 従来は明確な算定式がなく保守的な運用が行われていたが、新ルールによって、20%の譲渡益課税のみで済む税制適格SOが発行しやすくなる。信託型SOの特長だった低い行使価格で、税制適格SOを発行できるメリットが生まれる」、「既存の信託型SOを新しくして、税制適格SOの仕組みにつくり直すところが多くなるだろう」と予測する」、これであれば、「信託型SO」の解釈変更をことさら、問題視すべきではないように思える。
タグ:スタートアップ (その8)(VCからの資金調達3題(VCから上手く資金調達する技、VCが使う3つの投資基準、VCが決してやってはいけない3つの致命的ミス)、「肩書きがいつのまにか『教授』から『寄付講座教授』に…」「阪大医学部の承認も受けず上場して大問題」安倍政権を後ろ盾にしていた「大阪パビリオン・総合プロデューサー」への疑問、国税ショックに揺れるスタートアップの報酬制度 ストックオプション課税で予想外の「見解」) 東洋経済オンライン スコット・クポール氏による「先輩、VCから上手く資金調達する技教えて下さい 君のビジネスとVC投資との相性を探るコツとは」 スコット・クポール氏の著書『VCの教科書』 本場のベンチャー・キャピタル事情とは興味深そうだ。 「資金調達に最適の時期とは、資金が手に入るときだ。あなたが資金を集める準備ができたと判断したタイミングで、資金調達のウェイターが戻って来るかどうかなど、誰にもわからない」、なるほど。 様々な選択肢があるようだ。 「インセンティブとは要するに・・・次のようなものだ。 ■多くはうまくいかず、少数がファンドの金銭的リターンの大部分を生み出すことを理解して、投資ポートフォリオを作ること。 ■そうした巨額のリターンを挙げるビジネスを10年から12年以内に現金化すること。そうすることで、リミテッド・パートナー(LP)に現金を返すことができるし、LPがVCに出資して、新ファンドで再びゲームに参加することが期待できる。 これが、VCのライフサイクルだ。 また、たとえあなたのビジネスが・・・VCにふさわしいとしても、あなたはVCが課したルールの下でプレーしたいのかどうか、自分で判断する必要がある。 そのルールとは、VCに自社株を分配し、取締役会の支配権やガバナンスをVCとともに握ることであり、「現実の」結婚と同じくらい継続する結婚生活を始めることである』、なるほど。 スコット・クポール氏による「本場米国のプロが教える、VCが使う3つの投資基準 VCがパワポのピッチだけで投資判断する理由」 「「人」について見ていこう。これはアーリー・ステージの投資にとって、間違いなく定性的評価基準であり、おそらく最重要となる評価基準だ」、なるほど。 「ひとつのチームに投資を決定すれば、そのアイデアを達成する能力が高い別のチームが現れても、VCはそこに投資できないのだ」、「競合の見きわめが大きな影響を与える」、その通りだろう。 「VCはその領域の直接の競争相手に投資できなくなるという点で、どの投資決定にも計り知れない機会費用が備わる。どの馬に乗るかは、自分で決めなくてはいけない」、「正しい分類を選択しても・・・企業を間違える・・・ことがあれば、VCは大きな誤りを犯したことになる」、なるほど。 「プロダクト・マーケット・フィットは、適切な市場に向けて、その市場のニーズを満足させる製品を送り出せている状態を指摘した概念だ。消費者の「喜び」と再購入は、プロダクト・マーケット・フィットの典型的特徴である」、なるほど。 スコット・クポール氏による「VCが決してやってはいけない3つの致命的ミス 「チームも製品も素晴らしい」だけでは足りない」 「このビジネスで成功を収めるためには、リスクを回避してはいけない」、その通りだろう。 「市場の実際の大きさは、投資する時点ではわからないことが多いからだ。だから、市場を評価する際に、VCはさまざまな形で自らをごまかしている」、「ほとんどのVCは、データベース市場を狙うスタートアップには大企業を築くのに十分な規模の市場があるので、もし成功すれば投資のホームランになると考えるだろう」、なるほど。 「幸運をつかむか逃すかは、VCの市場規模を理解する能力、発展途上の新市場でテクノロジーの果たす役割について創造的に考える能力によって決まるのだ」、その通りなのだろう。 現代ビジネス「「肩書きがいつのまにか『教授』から『寄付講座教授』に…」「阪大医学部の承認も受けず上場して大問題」安倍政権を後ろ盾にしていた「大阪パビリオン・総合プロデューサー」への疑問」 「アンジェス上場」で「筆頭株主の森下は、公募価格で33億4000万円を手に入れた計算だ。文字通り一夜にして億万長者になった」、なるほど。 「阪大医学部の承認も受けず、薬の有効性についてろくな検証もないまま臨床試験のデータを使って株式上場したのです。医学部は出し抜かれたようなものですから、教授会でそれが大問題になりました。倫理委員会が立ち上がり、彼を詰問した場面もありました。 あのときは担当教授が彼をかばってとりなしていたけれど、今の基準ならあの臨床データはかなり怪しい」、 「アンジェスの株式上場時、第三者割当増資が実施され、未公開株が阪大関係者にばらまかれていた」、未公開株をネタに政治資金をばら撒いたリクルート事件の再来だ。 「アンジェス株上場で森下が手にしたのは、33億円どころか100億円という計算になる。 だが、結局株を受け取った大学関係者は法的に罪に問われることなく、いつしか話題にも上らなくなる」、「寄附講座教授」は「大学にお金を寄付さえすれば講座を持てるそれと、研究成果を認められた学部の教授とは雲泥の差があり、森下さんは教授会のメンバーでもありません」、「森下さんは肩書を詐称して政府を騙したことになります」、飛んでもない話だ。 「医療ベンチャーを使って億万長者となり、万博を取り仕切る森下竜一」、もっと叩けばホコリも出てきそうだ。 東洋経済オンライン「国税ショックに揺れるスタートアップの報酬制度 ストックオプション課税で予想外の「見解」」 約800社に及ぶとされる信託型SOの発行企業には突如、追加の税負担が生じることとなった 「「信託型SOはもともと課税関係がグレーだった。今回の件を機に抜け道がふさがれたのはよかった」と指摘する。 一方で投資先が信託型SOを導入している別のベンチャーキャピタルの幹部は、「多くの会社が慎重に調べて信託型SOを導入している。課税関係はクリアだったと信じており、国による後出しじゃんけんは許せない。『税金が安い』と推奨してきたコンサル会社の罪も大きい」と憤る』、なるほど。 「「税制適格SO」の行使時における新たな株価算定ルールだ。 従来は明確な算定式がなく保守的な運用が行われていたが、新ルールによって、20%の譲渡益課税のみで済む税制適格SOが発行しやすくなる。信託型SOの特長だった低い行使価格で、税制適格SOを発行できるメリットが生まれる」、「既存の信託型SOを新しくして、税制適格SOの仕組みにつくり直すところが多くなるだろう」と予測する」、これであれば、「信託型SO」の解釈変更をことさら、問題視すべきではないように思える。
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日本の政治情勢(その66)(前代未聞のことが起きた日本共産党 志位和夫も不破哲三も反論できず打つ手なしの大ピンチ、「日本一の子育て政策」「暴言、毒舌」で知られた明石市長・泉房穂氏がいま「本音」で話すこと…「『人から嫌われたくない』なんて思ったことはない」、「立憲民主党が野党第一党ではムリ!だとしたら…」明石市で革命を起こした泉房穂がリアルに見つめる「政権交代へのロードマップ」、昭恵夫人に5億円「晋三記念館」計画の仰天…政治資金を使えば国民からの批判は必至) [国内政治]

日本の政治情勢については、5月29日に取上げた。今日は、(その66)(前代未聞のことが起きた日本共産党 志位和夫も不破哲三も反論できず打つ手なしの大ピンチ、「日本一の子育て政策」「暴言、毒舌」で知られた明石市長・泉房穂氏がいま「本音」で話すこと…「『人から嫌われたくない』なんて思ったことはない」、「立憲民主党が野党第一党ではムリ!だとしたら…」明石市で革命を起こした泉房穂がリアルに見つめる「政権交代へのロードマップ」、昭恵夫人に5億円「晋三記念館」計画の仰天…政治資金を使えば国民からの批判は必至)である。

先ずは、5月29日付けデイリー新潮「前代未聞のことが起きた日本共産党 志位和夫も不破哲三も反論できず打つ手なしの大ピンチ」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/05290601/?all=1
・『日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」(電子版)は5月13日、「8中総の日程延期」との記事を配信した。8中総とは「第8回中央委員会総会」を指す。元参議院議員で共産党の政策委員長を務め、2005年に離党した筆坂秀世氏は「中総の延期など一度も聞いたことがなく、まさに前代未聞です」と驚く。 筆坂氏は1966年、18歳で共産党に入党し、1995年の参議院選挙で初当選。2003年に議員を辞職している。 約40年の党員歴を持ち、離党しても共産党の動向を注視してきた。そんな筆坂氏でも中央委員会総会(以下、中総)の延期は初めて聞いたという。 それではまず、共産党にとって中総がどのような意味を持つのか、筆坂氏の解説を聞こう。 「日本共産党の意思決定プロセスにおいて最も重要なのは『日本共産党大会』です。ところが、党大会は重要であるが故に準備も大変で、全党員のエネルギーを結集する必要があります。党大会が開かれるのは2年から3年に1回ですが、それくらいの間隔を空けないと党員が疲弊してしまうのです」 数年に1度の党大会で意思決定を行うというのでは、あまりに非効率的だろう。そこで党幹部が中総を開き、様々な方針を決めるのだ。 これまで開催された党大会は計28回。今回延期された中総が第8回となっていることに疑問を覚える人もいるかもしれないが、これは党大会が開催されるたびに第1回に戻して数えなおすからだ。 「党大会は2年後とか3年後の予定を組むため、直前の政治情勢を受けて延期されるのは珍しいことではありません。今年1月に党大会が開かれる予定でしたが、4月に統一地方選が行われるため、来年1月に延期されています。一方、中総は党大会に比べて小回りが利くからこそ、様々なタイミングを捉えてスピーディーに開催してきたわけです。そのため中総の延期は、極めて異例の事態と言えます」(同・筆坂氏)』、「党大会が開かれるのは2年から3年に1回ですが、それくらいの間隔を空けないと党員が疲弊してしまうのです」、「そこで党幹部が中総(中央委員会総会)を開き、様々な方針を決める」、なるほど。
・『原因はサミット?  冒頭で紹介した赤旗の記事を読むと、一応は延期の理由が書かれている。わずか2文という短い記事なので全部を引用しよう。 《日本共産党中央委員会書記局は12日、5月21、22両日に招集していた第8回中央委員会総会について、国会日程との関係で開催が困難となったことから、日程を延期することを発表しました》 《延期の時期は、主要7カ国首脳会議後の政治情勢の展開も見極めて、6月中旬以降の適切な時期に再度招集します》 筆坂氏は「延期の理由として国会日程と広島でのG7サミットを挙げていますが、これはとても変です」と首を傾げる。 「政界で突発事態が発生したのなら延期も分かります。しかし政変など起きていません。広島サミットに至っては、昨年から決まっていました。党執行部が本気で『国会とサミットが原因で延期します』と主張するのなら、党員でさえ『あまりに先見性がなさすぎる。来年の予定を立てることもできないのか』と納得しない人はいるでしょう」』、「「延期の理由として国会日程と広島でのG7サミットを挙げていますが、これはとても変です」と首を傾げる・・・広島サミットに至っては、昨年から決まっていました。党執行部が本気で『国会とサミットが原因で延期します』と主張するのなら、党員でさえ『あまりに先見性がなさすぎる。来年の予定を立てることもできないのか』と納得しない人はいるでしょう」、その通りだ。
・『除名への批判  要するに、国会とサミットは口実に過ぎない。では、本当の理由は何なのだろう。担当記者が言う。 「関係者の間で指摘されているのは、5月10日に発売された月刊誌『文藝春秋』6月号に掲載されたインタビュー記事です。『志位和夫は習近平以下だ』というタイトルで、元日本共産党京都府委常任委員の鈴木元氏が取材に応じ、党の問題点を洗いざらい指摘しました。叩き上げの運動家が赤裸々に語ったのですから、記事の迫真性は相当なものがあり、多くの関係者が衝撃を受けているのです」 鈴木氏は1944年生まれの78歳。立命館大学の経済学部に進学し、62年に共産党に入党した。京都に強固な共産党支持層を作り上げ、その手腕から「京都に鈴木あり」と畏敬の念を持つ保守層もいたという。 2023年1月、鈴木氏は著書『志位和夫委員長への手紙』(かもがわ出版)を上梓。すると共産党は3月、鈴木氏を除名処分とした。この著書で鈴木氏が志位和夫委員長(68)の辞任を求めたことが原因とする指摘もある。 同じく1月、ベテラン党員の松竹伸幸氏が『シン・日本共産党宣言』(文春新書)を上梓。こちらも党首公選制を主張したことなどが問題視され、共産党は2月、松竹氏を除名した。 相次いでベテランの党員を除名した共産党に、“異論を許さないのか”との批判が殺到した。反共の立場を表明することが多い産経新聞だけでなく、共産党の主張に一定の理解を示すこともあった朝日新聞や毎日新聞さえ記事や社説で批判した。「統一地方選で共産党が敗北した原因」と指摘する識者もいるほどだ』、「元日本共産党京都府委常任委員の鈴木元氏が取材に応じ、党の問題点を洗いざらい指摘しました。叩き上げの運動家が赤裸々に語ったのですから、記事の迫真性は相当なものがあり、多くの関係者が衝撃を受けているのです」・・・鈴木氏は著書『志位和夫委員長への手紙』(かもがわ出版)を上梓。すると共産党は3月、鈴木氏を除名処分とした」、「ベテラン党員の松竹伸幸氏が『シン・日本共産党宣言』(文春新書)を上梓。こちらも党首公選制を主張したことなどが問題視され、共産党は2月、松竹氏を除名」、「相次いでベテランの党員を除名した共産党に、“異論を許さないのか”との批判が殺到した」、「党大会延期」の真の理由になり得るようだ。
・『共産党の弱点  「共産党の委員長は志位さんが務めていますが、前任者の不破哲三さん(93)が現在も常任幹部会のメンバーであることなどから、依然として院政を敷いているという指摘は根強いものがあります。今回の延期問題も、不破さんが志位さんに『インタビュー記事の片が付くまで、8中総は延期だ』と命令したという話が流れています」(同・記者) 筆坂氏は「私も鈴木さんのインタビュー記事は読みました。インパクトは充分で、8中総が延期された理由として挙げられるのも無理はありません」と言う。 「取り上げたテーマは広範で、共産党の抱える様々な問題点を丁寧に論じています。その中で私が注目するのは、党勢が衰退し、赤旗の購読者が減少していることを痛烈に指摘したくだりです。近年、共産党の党勢は常に右肩下がりだったというのは事実で、志位さんは反論できないはずです。鈴木さんは党の弱点を見事に突いたのです」 少し長くなるが、インタビュー記事から当該部分を引用しよう。数字の表記はデイリー新潮のスタイルに改めた。 《党員数は50万人(1990年)から27万人(2020年)と半分近くになりました。1980年に355万部あった赤旗の部数は3分の1以下の90万部にまで低迷。さらに決定的なのは、一昨年の総選挙で衆議院は12議席を10議席に、昨年の参議院選挙は改選6議席を4議席にまで減らした。かつて49人(2000年)いた国会議員数は、今や、21人です》 《統一地方選挙は道府県議選、政令市議選だけでもそれぞれ5分の1を減らす大敗北でしたが、小池晃書記局長は前半戦の翌日、「前進したところもある」と強弁。また、常任幹部会は声明で昨年の参院選の数字の一部を持ち出し「得票数や得票率が上がった」と取り繕っています》 《子ども騙しのような論法で敗北を認めないから、改革のメスも入れられない。これこそが、共産党の最大の問題です》』、確かに、選挙戦の総括を捻じ曲げるようでは、「改革のメスも入れられない」、これでは「共産党の最大の問題です」というのも納得できる。
・『遠い改革  記事には《私が「個人独裁的運営」と呼ぶのは、志位体制の「続投ありき」の案が、「満場一致で決まる」という形式を繰り返しているからです》とのくだりもある。 鈴木氏の口調は冷静だが、志位氏を断罪していると言っても過言ではない。8中総を延期してでも対処しようと志位氏が考えるのも不思議ではないが、実際のところ打つ手などあるのだろうか? 打つ手など何もないでしょう。志位さんは反論さえできず、真っ青になっていると思います。いまだに党執行部は党員と赤旗の購読者数を増やせとハッパをかけています。しかし、私が入党した時から40年間、全く同じ指示が繰り返され、党員は奔走に奔走を重ねてきました。にもかかわらず、党員も購読者数も減る一方です。実現性の乏しい拡大路線ばかり指示する中央委員会は、無責任で無能な集団だと批判されても仕方ありません」(同・筆坂氏) もし志位氏が陣頭指揮を執り、党員と赤旗の読者を増やし、国政選挙でも議員を増やしたとしたら、鈴木氏は兜を脱がざるを得ない。だが、そんなことはあり得ない。 「鈴木さんの指摘のほうが正しく、志位さんだって手の打ちようがないことは分かっているはずです。党員は新規党員や購読者の獲得に忙殺され、肝心の選挙に力を注げず、敗北を許すという悪循環に陥っています。共産党に残る最後の宝は地方議員と支援者で、その象徴が鈴木さんでした。しかし、党は鈴木さんを排除しました。あれだけ重要な人を蔑ろにしたのですから、統一地方選の惨敗は当たり前でしょう。志位さんが反省し、鈴木さんの除名を取り消せば、改革の一歩を踏み出したことになりますが、もちろんそんなことが実現するはずもありません」(同・筆坂氏)』、「党員は新規党員や購読者の獲得に忙殺され、肝心の選挙に力を注げず、敗北を許すという悪循環に陥っています。共産党に残る最後の宝は地方議員と支援者で、その象徴が鈴木さんでした。しかし、党は鈴木さんを排除しました。あれだけ重要な人を蔑ろにしたのですから、統一地方選の惨敗は当たり前でしょう。志位さんが反省し、鈴木さんの除名を取り消せば、改革の一歩を踏み出したことになりますが、もちろんそんなことが実現するはずもありません」、硬直化した「共産党」の体制はどうなるのだろう。

次に、4月24日付け現代ビジネスが掲載した前明石市長の泉 房穂氏とジャーナリストの鮫島 浩氏の対談「「日本一の子育て政策」「暴言、毒舌」で知られた明石市長・泉房穂氏がいま「本音」で話すこと…「『人から嫌われたくない』なんて思ったことはない」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/109370?imp=0
・『昨日(4月23日)に投開票された統一地方選後半戦で、兵庫県明石市に新しい女性市長が誕生した。中央政界にとっては大きな出来事と捉えられていないが、「これは政界におけるバタフライエフェクト(遠く離れた場所の小さな出来事が世界に大きな影響を及ぼす)になる」と言われている。 明石市は泉房穂氏が3期12年にわたって市長を務めてきた。全国に先駆けて「異次元の子ども施策」を実行し、市の出生数のみならず人口、税収も飛躍的に伸ばして「明石モデル」と称賛された。今回はその名物市長が、これまたお馴染みとなった「暴言」を理由に辞職(政治家引退)したために、後継市長が誕生したわけだ。 泉氏の市長任期はこの4月いっぱい。市長退任翌日の5月1日に出版される泉氏の著書『政治はケンカだ! 明石市長の12年』がいま、話題を呼んでいる。市長在任中にはけっして口に出来なかった、改革に抵抗する勢力との闘いの内幕を明らかにしているからだ。聞き手を『朝日新聞政治部』の著者で気鋭の政治ジャーナリスト・鮫島浩氏が務めている。市議会、政党、宗教団体、マスコミ、市役所職員……。泉氏が「四面楚歌」の状態でいかに闘争してきたか、同書にはすべて記されている。発売に先駆け、泉氏が書いた「まえがき」を特別に公開する』、興味深そうだ。
・『四面楚歌」とか「絶体絶命」という言葉が好きだ  「人から嫌われたくない」なんて思ったことはない。 誰もが納得する方針転換などないのだから、市長が改革を進めたらハレーションが起こり、反発する層が出てくることは当然だ。嫌われても、恨まれても、市民のために結果を出すことが政治家としての私のミッションだったから、そして多くの市民が私を信じてくれたから、ブレることなく走り切ることができた。 元々、「四面楚歌」とか「絶体絶命」という言葉が好きで、四方を囲まれたら終わり、とは思わない。地上が無理なら空にジャンプするか、地面を潜って逃げるか、と体中の細胞が活性化して状況を打開するアイデアが次々に浮かぶ。 そんな私のやり方は、乱暴だと思われたかもしれないが、私のまちづくりの理念を真っ先に理解し、いちばん近くで応援してくれたのが市民だった。街を歩くと、「私たちはわかってるから」「マスコミに負けないで!」と口々に声をかけてくれた。 市長への意見箱には、「こんなことを言ってもだめかもしれないけど、泉市長だから言います」とさまざまな意見が届いた。私を身近に感じ、まちづくりの仲間だと思ってくれているからだ、と思い、できる限り対応した』、「元々、「四面楚歌」とか「絶体絶命」という言葉が好きで、四方を囲まれたら終わり、とは思わない。地上が無理なら空にジャンプするか、地面を潜って逃げるか、と体中の細胞が活性化して状況を打開するアイデアが次々に浮かぶ。 そんな私のやり方は、乱暴だと思われたかもしれないが、私のまちづくりの理念を真っ先に理解し、いちばん近くで応援してくれたのが市民だった」、「市民」が「理解し」、「いちばん近くで応援してくれた」、とは幸せだ。
・『市長の仕事は駅伝の走者に似ている  一生明石市長でいたい、と思ったこともあったが、もちろんそんなことはできない。 市長は駅伝の走者に似ている。ひとりでできることには限りがあり、自分でゴールを切ることはできない。歴代の市長がタスキをつなぎながらまちづくりを進めるものだ。 私も中間走者として、苦しい登り坂が続く区間を精一杯走り切った。悔いはない。苦しい区間を伴走してくれた市民が、これからも明石のまちを支えてくれる、もう私が市長でなくても大丈夫、という自信がある。 まちづくりは、選挙で選ばれた者だけが担うのではなく、市民が選挙で選ばれた首長と一緒にやるものというのが持論だ。市長でなくなったからといって、まちづくりや政治と無関係になるわけではない。これからは私もひとりの市民となり、タスキをつないだ新しい市長とともに走る側にまわるだけだ。 私は当たり前のことをやったにすぎない 市長として、やさしい社会を「明石から始める」については、ある程度結果を残せたと思う。 明石市の人口が増えたことがその答えだが、誤解して欲しくない。人口増を目指したのではない。誰でも自分に冷たいまちで暮らしたいとは思わない。「数が少ないから」と切り捨てず、一人ひとりに光をあてた政策をすれば、「ここに住み続けたい」と思う人が増えるのはあたりまえのことだ。 そしてそれができるのが「市長」なのだ。市長にだけはその権限がある。一人ひとりの市民が暮らしやすいまちづくりをしたら、「明石に住みたい」「明石に住み続けたい」と思う人が増えただけのこと。 あたりまえのことなのに、珍しい市長のように言われるなんて、不思議なことだ。 明石市は子ども施策だけに力を入れたと思われがちだが、そうではない。「困ったとき」は誰にでも、突然訪れる。そのときに必要な支援を届けるのが行政の役割だ。少数の困りごとを切り捨てず、寄り添い解決することが多数の人々のセーフティネットになるという思いで、様々な施策を「条例」にして、残してきた。 「手話言語・障害者コミュニケーション条例」 「障害者配慮条例」 「犯罪被害者支援条例」 「更生支援・再犯防止条例」 「優生保護法被害者支援条例」 「インクルーシブ条例」 「子どもの養育費条例」 それぞれの対象者は多数派ではないが、市民の理解を得て制定してきた』、「「数が少ないから」と切り捨てず、一人ひとりに光をあてた政策をすれば、「ここに住み続けたい」と思う人が増えるのはあたりまえのことだ。 そしてそれができるのが「市長」なのだ。市長にだけはその権限がある。一人ひとりの市民が暮らしやすいまちづくりをしたら、「明石に住みたい」「明石に住み続けたい」と思う人が増えただけのこと。 あたりまえのことなのに、珍しい市長のように言われるなんて、不思議なことだ」、「「困ったとき」は誰にでも、突然訪れる。そのときに必要な支援を届けるのが行政の役割だ。少数の困りごとを切り捨てず、寄り添い解決することが多数の人々のセーフティネットになるという思いで、様々な施策を「条例」にして、残してきた。 「手話言語・障害者コミュニケーション条例」 「障害者配慮条例」 「犯罪被害者支援条例」 「更生支援・再犯防止条例」 「優生保護法被害者支援条例」 「インクルーシブ条例」 「子どもの養育費条例」 それぞれの対象者は多数派ではないが、市民の理解を得て制定してきた」、凄いことだ。
・『誰ひとり取り残さないやさしいまちづくりを目指して  なかでも特に思い入れが強かったのは「優生保護法被害者支援条例」。私が政治家をめざした原点でもある悪法「優生保護法」によって、強制的に不妊手術や人工妊娠中絶を受けさせられた被害者に寄り添い、優生思想を許さないことを誓う条例である。本書でも語るが、この条例制定には、議会多数派の強烈な反対があった。 それに対して、市民からは多くの賛成と応援の意見が届いた。「困ったときはお互いさま」「誰ひとり排除しない」よく使われる言葉だが、明石市民には、この言葉の本当の意味が浸透していると実感し、感慨深かった。 明石市のまちづくりの根幹である「誰ひとり取り残さないやさしいまちづくり」の理念をカタチにしたのが「インクルーシブ条例」である。条例づくりの過程もインクルーシブを意識して進めた。制定時ほとんど話題にもならず、報道もされなかったが、「すべての人が自分らしく生きられる」ことを目的としたこの条例こそが真骨頂だと思っている。 明石市長としての12年を終えた今、とても清々しい気持ちだ。名残惜しい気持ちや、やり残した感はなく、次のステージに行くぞ、とやる気が満ちてくる。 やさしい社会を「明石から広げる」のがこれからの私の役割だ。「明石市でできたことは他の自治体でもできる。まして国なら簡単にできる」と言い続けてきたことを、さらに発信し、実現していく。 こんな冷たい社会のままで死にたくない、自分の手でやさしい社会に変える、と子どもの頃に誓った気持ちは今も変わらない。 在任中、毒舌、暴言と言われた私だが、これでも市長の任期中は慎重に言葉を選び、奥歯にモノが挟まったような言い方しかできなかった。市長退任翌日に出る私の新刊『政治はケンカだ!明石市長の12年』では、市長としての12年間を、聞き手を務めてくれた鮫島浩さんに本音で語った。 政治についての本音トークは少々刺激が強いかもしれないが、多くの方に現場のリアルを感じていただき、それでも諦めることなく声をあげてほしい、という思いだ。 一人ひとりが声をあげなければ、社会を変えることはできないのだから』、「「優生保護法被害者支援条例」。私が政治家をめざした原点でもある悪法「優生保護法」によって、強制的に不妊手術や人工妊娠中絶を受けさせられた被害者に寄り添い、優生思想を許さないことを誓う条例である。本書でも語るが、この条例制定には、議会多数派の強烈な反対があった。 それに対して、市民からは多くの賛成と応援の意見が届いた。「困ったときはお互いさま」「誰ひとり排除しない」よく使われる言葉だが、明石市民には、この言葉の本当の意味が浸透していると実感し、感慨深かった」、「明石市のまちづくりの根幹である「誰ひとり取り残さないやさしいまちづくり」の理念をカタチにしたのが「インクルーシブ条例」である。条例づくりの過程もインクルーシブを意識して進めた。制定時ほとんど話題にもならず、報道もされなかったが、「すべての人が自分らしく生きられる」ことを目的としたこの条例こそが真骨頂だと思っている」、なるほど。

第三に、6月5日付け現代ビジネスが掲載した前明石市長の泉 房穂氏とジャーナリストの鮫島 浩氏の対談「立憲民主党が野党第一党ではムリ!だとしたら…」明石市で革命を起こした泉房穂がリアルに見つめる「政権交代へのロードマップ」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/111180
・『「暴言王」だけど市民には大人気で、その発言が中央政界にまで影響力を持っていた泉房穂前明石市長が、市長を辞めてこれからどんな動きをするのかに注目が集まっている。その実績とリーダーシップから、「総理大臣になってほしい!」と切望する国民もいる。国政の複雑なシステムを考えるとそれは不可能だと思いがちだが、実はそうではない。小選挙区制の特徴は、「変わるときは一気に変わる」こと。強烈な風が吹けば、泉房穂総理の誕生は、けっして夢物語ではない。 たとえば、橋下徹氏と泉氏の連携が実現したら……自民党執行部がいまいちばん恐れているのは、それかもしれない。話題の新刊『政治はケンカだ!明石市長の12年』より抜粋してお届けする連載第9回。 連載『政治はケンカだ!』第9回後編 前回記事【日本は「お上主義」が強すぎる…泉房穂前明石市長がぶち上げる「新・日本改造計画」の中身】』、興味深そうだ。
・『政権交代は次の次、と言う野党第一党はいらない  鮫島 今日は政権交代への道筋を考えましょう。野党が知事や市長として成果を上げた人を総理大臣候補に担いで総選挙を戦うことはできます。当選回数や大臣経験よりも、自治体のトップとして何を成し遂げたのか、たとえば人口を増やして税収を伸ばしたという実績を掲げて「この街の人々をこれだけ豊かに、幸せにしたこの政治家に、国の舵取りを任せてみましょう。これが私たち野党の提案です」と有権者に向かって訴えれば、実現できるかどうかよくわからない公約を並べるよりも、はるかに説得力が増すでしょう。 知事や市長の経験者を総理大臣候補に担ぐのは、そのリーダーの実績や能力を可視化してリアリズムを高めるという点で、今の選挙制度の中で野党が取りうる最も効果的な選挙戦略ではないでしょうか。 泉 大いにあり得る話じゃないでしょうか。 首長が国会議員と違う点は、有権者を向いていること。もちろん、国会議員も選挙で選ばれるわけですが、実際に彼らが見ているのは派閥の動向だったり、業界団体だったりして、国民のことを見ているようで見ていません。 でも、市長や知事は市民・県民を見るのが仕事ですし、自然と市民・県民を気にして仕事せざるを得ない。かつ、最終決定権を持っていますから、リスクも含めて自分が決断して権限を行使するしかない。それで実績を上げたのならば、一定のふるいにかけられているわけです。有能な首長経験者は、総理大臣の適性があると言えるでしょう。 大阪府知事だって所得制限の撤廃を主張し始めてるし、東京都知事も子育て支援の方向に舵を切っている。「えっ」とみんなが驚くような方針転換も、できてしまうのが首長です。そりゃあ、全員が賛成な政策などないから「ばら撒き」と批判されることもあるし、「財源どうするんだ?」と追及されることもあるけど、なんとかするんです。どこかに嫌われたり怒られたりしても、やりきる。それが政治です。 個人的な好き嫌いは置いておいて、権限を使って方針転換を示す首長が出てきたことは嬉しいし、少なくとも、ずっと永田町にいる国会議員よりは、国のリーダーとしてふさわしいでしょう。だって、リスクを伴う決断を下した経験があるわけですから。 そういう意味で、与党と野党が首長経験者を担いで選挙を戦うというのは、理にかなっていると言えます。 鮫島 この新しい選挙の提案は、与党である自民党からは絶対に出てきません。新しい政治文化をもたらすのは、いつだって挑戦者たる野党なんです。 政治が停滞しきっているいまこそ、実は野党にとってチャンス。水と油の野党が共闘するための唯一の方法は、誰にとっても説得力のある強力な総理候補を立てること。みんなを納得させられるその総理候補の条件は「実績」のみです。どこでもいいのですが、とにかくどこかの自治体で行政手腕を発揮して結果を残した人物。「私たち野党が目指すモデルがここにある。この人の行政手腕を国政の場で発揮させてみましょう」と、有権者を説得できる人物です。 これが可能になれば、色んな違いを乗り越えて野党が手を組むことができる。党首ではなく、その時に一番実績を上げている自治体の首長を担ぐ。「今回の選挙は、この人を総理大臣にするために手を結びます」と。そういう形の与野党一騎打ちこそ、二大政党政治が用意した、これからの闘争のあり方なのではないかと考えます。 だって、「政権交代を目指すのは次の次」とか言ってる野党第一党の党首なんか担いだって、絶対に勝てません。もともと「やって見せることができない」のが野党の弱みなんだから、自治体の首長経験者を担ぐことは、その弱みをカバーすることにもなる。 だからこそ、「明石市でやって見せた泉さんに国政の舵取りを任せてみたい」と、泉さんへの期待が高まっているんです。 泉 自分のことはちょっと喋りにくいのですが。 鮫島 やっぱり政治は結果だから。どんなに小さな自治体であっても、そこで責任を背負いながら首長として結果を出した人間は、それだけで評価に価する。なぜなら、実績や結果は嘘をつけませんから。やったことのない人がいくら「やります」と言ったところで、リアリティは薄い。 泉 それはそうですね』、「「政権交代を目指すのは次の次」とか言ってる野党第一党の党首なんか担いだって、絶対に勝てません。もともと「やって見せることができない」のが野党の弱みなんだから、自治体の首長経験者を担ぐことは、その弱みをカバーすることにもなる」、その通りだ。
・『政権交代のためにマスコミが果たすべき役割  鮫島 マスコミにも責任がある。日本のマスコミは印象報道ばかりで、きちんと政治家の実績を評価してこなかった。 泉 たしかに、政治家を実績で評価する文化が、日本ではほとんど見受けられません。選挙の際に政治家が掲げた公約がきちんと守られたか、チェックすらしませんからね。 長く付き合わせてもらってる元三重県知事の北川正恭さんは、マニフェスト(公約)を大事にされている方でして、「マニフェストは地方で生きている」と主張した上で、公約に掲げていない防衛増税や原発の運転期間の延長を決める首相を批判されています。 たとえば、ある政治家が初めて、市長に立候補して当選したとしますよね。彼には実績がないわけですので、掲げた公約がきちんと果たされたかどうかで、その手腕を評価するしかない。彼自身も、果たされなかったなら、なぜ果たされなかったのかをきちんと検証しないことには、引き続き公約実現に向けて動くべきか、それとも転換を図るのか、方針を決定することができない。 公約の中身と、公約実現に向けての実行力。この両輪が大事なんです。マスコミは選挙になったら公約ばかり報道しますが、マスコミ自身が「公約なんてどうせ実現しない」と思っているかのように、当選後に公約実現に向けてどう動いたのか、という点に関してはほとんど追及しない。ホンマ適当なんですわ。公約がどうせ実現しない、どうでもいい代物なら、そもそも選挙する意味がない。 公約は市民との約束なんですよ。当然、守らなくてはならない。少なくとも、守るためにベストを尽くさないといけません。 鮫島 これもやっぱり、2009年に誕生した民主党政権の罪が大きい。あの時、みんな民主党に期待しました。革新的なマニフェストもありました。でも、そこになかった消費増税が実施された。あれがもたらした政治不信がいまにつながっているわけですから、公約中心に政治を変えようと言ったところで、国民はもうついてこないでしょう。 民主党に絶望して自民党しか選べないんだけど、自民党も全然ダメで、嘘ばっかりつくし景気も悪いままだし、格差は広がる一方。どちらにも期待 抱けず「これどうするの?」と真っ暗闇な状況のなかで、明石市に代表されるような、実績を上げた自治体が唯一の光なんです』、「2009年に誕生した民主党政権の罪が大きい。あの時、みんな民主党に期待しました。革新的なマニフェストもありました。でも、そこになかった消費増税が実施された。あれがもたらした政治不信がいまにつながっているわけですから、公約中心に政治を変えようと言ったところで、国民はもうついてこないでしょう」、「マニュフェスト」のいい加減さの代表例になっているとは、みっともない限りだ。
・『「非自民の総理候補者」の実名を挙げるとすると  鮫島 「実績」「結果」を評価軸にした場合、日本には数多の政治家がいますけど、国民の期待を引き寄せられる総理候補はそういない。何度も言っているように、泉さんがその一人であることは間違いないのですが、総理候補の有資格者は本当に限られています。思い当たる人います? 泉 難しい質問ですね。 鮫島 まだまだ粗削りですが、れいわ新選組の山本太郎さんなんかは、傑出したリーダーの一人だと思います。たった一人でゼロから立ち上げて国政政党にまで育て、思い切った政策を提案し、政治的影響力を行使できることを証明したわけですから。しかし、やっぱり実績がない。 泉 そこが弱いところですね。その点維新が強いのは、大阪で一定の勢力となり、実際に政治行政を担っていること。賛否両論はありますが、維新を支持している大阪府民は、生活のリアリティに基づいて支持しているわけだから、そこは強い。 鮫島 山本太郎さんが東京都知事を狙った戦略は正しかったと思います。つまり、れいわ新選組という弱小政党が、やって見せるには自治体の長を取るしかないと。負けちゃったけど、戦略としては正しかった。維新とは政策的立場は真逆ですが、政治的戦略は維新に倣ったといえるでしょう。 そう考えるとやって見せたことのある人って本当に少ない。小池百合子さんも東京で維新に倣って都民ファーストをつくりましたが、維新ほど地域政党として機能せず、今のところ「東京が変わった」という実績も示していません。今なお「期待」を引き寄せる政治手法から抜け出していない。希望の党があっけなく頓挫した一つの理由はそこにあると思います。 大阪維新の会の橋下徹さんや松井一郎さんは、やって見せた。政策転換の方向性について評価は割れていますが、「大阪は変わった」という実感を府民や市民が持ったからこそ、維新は10年以上にわたって強い支持を維持しているのだと思います。松井さんは政界引退を表明し、橋下さんはすでに引退してますけど、この二人はやって見せたという意味で、一種の政治的影響力を残している。 同じように、泉さんも政治家引退を表明されましたけど、やって見せたわけですから、政治的影響力を残しました。そういう影響力を残したと言える政治家は、ほとんど見当たらないんですよ。今後の泉さんの、国政に対する役割は非常に重要。むしろ、これからのほうが重要と言えるかもしれない。 泉 自分も市長になった後に、実績ある首長のやり方を勉強しながら参考にしました。市民の声を聞き、空気を感じながら、真似していった経緯がある』、「「大阪は変わった」という実感を府民や市民が持ったからこそ、維新は10年以上にわたって強い支持を維持しているのだと思います」、私自身は関西のマスコミの抱き込み方が上手かっただけとの考えだ。
・『泉房穂の「これからの闘い」  鮫島 他の自治体や首長を応援していきたいとおっしゃっていましたが、今後は具体的にどんな活動が中心になっていきますか? 泉 市長という公職の制約が無くなり、明石だけでなく、他のまちのこともできる立場になりますから、明石市の範囲を超えて、より広域での活動にシフトしていくつもりです。 実際に、冷たい社会は変えることができるんです。私は、明石のまちだけが良くなればいいなんて、思ったことはありません。だからツイッターでも、明石市ですでにできたことは「他の自治体でも、国でもできる」と、ずっと声を大にして言い続けています。これまでは控え目な発言しかできなかったけど、市長職を離れたら、ようやく遠慮することなくハッキリ物言うこともできる(笑)。明石から「始める」段階から、本格的に全国各地へ「広げる」活動へ、さらにギアを上げてガンガンいきますよ。 思えば私の市長時代は、総スカンの6年から、周囲の目が変わった3年、認識が広がった3年と続きました。次のステージへ向けた今の心意気は、かつて小中高の12年を終え、地元明石から上京した頃のように、やる気に満ち満ちています。さあ、やるぞ! って(笑)。 子どもの頃に強く誓った「冷たい社会を変える」という思いは、今もしっかり胸に刻まれています。心ある首長を応援しながら、一緒に優しいまちへ、次々と変えていきます。 鮫島 議会や役所と戦って孤立しながら、12年間、改革市長をやり続けた泉さんの経験が何よりのアドバイスになるでしょう。 泉 当面の見立てとしては、次の総選挙でがらりと変わると期待しています。2025年7月に衆参ダブル選挙になると睨んでいまして、兵庫県の場合は知事選も重なってトリプル選挙になる。ここが一つの山場でしょう。何度も言ってますが、変わる時は一気に変わるから。それこそ、ずずずっと地球の地盤が動くようなイメージかな。 いま、国民は苦しんでいます。私が増税批判のツイートをすると、共感が溢れかえる。それだけキツキツの生活をしてるわけです。その結果、人生が変わっちゃってる人もたくさんいます。「これ以上税金上がるなら、子どもは一人でやめておこう」とか。 にもかかわらず、国の政治家は「子どもが少ないのは、女性が早く結婚しないから」なんてズレたことをいう。 「何言うてるねん! あんたら、私らのこと全然わかってへんな!」 という国民の不満が、マグマのように溜まっているのが、今の状況です。国民の根っこのところにある不満に対して、どこの既成政党も新たな道を示せていない。そこが示せる政党なり政治家が出てくると、状況は一気に変わるでしょう。 私、こう見えて選挙が大好きでね。自分が出なくても選挙そのものが好き。だって、私みたいなモンでも出れますやん。 鮫島 2011年、「どうかしてる泉」が突然市長選に出馬したように。 泉 そうそう。出ると言ったら、誰も止められないわけよ。おまけに、全員に等しく一票が与えられている。どんな有名人も有力者も、全く名前の知られてない人も、みんな一人一票なの。等しい一票を、等しく行使できる。選挙というものは、やっぱり可能性の宝庫なんです。どんなに期待の持てない状況でも、そこを諦めてはいけません。 そのために、私にできることがある。市長という看板は下ろしますが、政治に携わることはやめません。「冷たい社会を優しくする」闘いは、これからも一生、続きます』、「「何言うてるねん! あんたら、私らのこと全然わかってへんな!」 という国民の不満が、マグマのように溜まっているのが、今の状況です。国民の根っこのところにある不満に対して、どこの既成政党も新たな道を示せていない。そこが示せる政党なり政治家が出てくると、状況は一気に変わるでしょう」、「選挙というものは、やっぱり可能性の宝庫なんです。どんなに期待の持てない状況でも、そこを諦めてはいけません。 そのために、私にできることがある。市長という看板は下ろしますが、政治に携わることはやめません。「冷たい社会を優しくする」闘いは、これからも一生、続きます」、どんな形で「政治に携わる」のだろうか。

第四に、7月11日付け日刊ゲンダイ「昭恵夫人に5億円「晋三記念館」計画の仰天…政治資金を使えば国民からの批判は必至」を紹介しよう。
・『これは問題になるのではないか。亡くなった安倍晋三元首相の昭恵夫人が、多額の資金をかけて「晋三記念館」を建てる計画を持っているという。 ニュースサイト「マネーポストWEB」が、<安倍昭恵さん「晋ちゃんが生きた証を残したい」と遺産5億円を注ぎ込み「晋三記念館」建設構想、地元からは懸念の声>とのタイトルで報じている。 記事によると、安倍元首相が亡くなった直後から、昭恵さんは<『彼が政治の世界で残した功績をみんなの目に触れる形でまとめたい』と、周囲に『晋三記念館』建設の夢を語っていました>という。 さらに、地元関係者の証言をこう伝えている。<昭恵さんが安倍さんから相続した遺産は、少なく見積もっても3億円はあるのではと試算されています。また、安倍さんの政治団体にも約2億5000万円のお金が残っていると報じられました> 相続した3億円の遺産と、引き継いだ政治資金2億5000万円──の計5億円を使って記念館を建てる構想が持ち上がっているということらしい。) ただ、地元関係者は<いまはまだ経済的に余裕があるにせよ、いずれ安倍さんの財産を食い潰してしまわないか、本当に心配です>と、記念館構想を懸念しているという。 実際、ネット上でも記念館建設について、<残念ながら開館しても長からず閉館になると思う><次第に来館者の足取りも遠退くのは目に見えている>などと指摘されている。 問題となりそうなのは、引き継いだ「政治資金」を使って記念館を建設する構想だ。 昭恵さんは、2022年7月8日付で、安倍元首相が代表者だった資金管理団体「晋和会」と「自民党山口県第4選挙区支部」の代表に就任。「晋和会」には約5200万円、「選挙区支部」には約1億9200万円の残金があった。昭恵さんは、計2億4400万円の政治資金を引き継いでいる。 総務省によると、「政治資金の使途については、原則として特段の制限はない」(政治資金課)という。「晋三記念館」を建設しても、違法ではないということだ。 しかし、「選挙区支部」に残っていた1億9200万円のうち、約2400万円は政党助成金である。税金を使って記念館を建設したら批判が噴出するのではないか。) 「そもそも、一私人である昭恵夫人が、政党の支部代表を引き継ぐのは、おかしいと思う。政治家を目指さないのなら、昭恵夫人は、引き継いだ政治資金を国庫に返上するか、慈善団体に寄付すべきでしょう。記念館を建設するより生きたカネになるし、昭恵夫人の評価も上がりますよ」(政治評論家・本澤二郎氏) どうするのか』、「「晋和会」には約5200万円、「選挙区支部」には約1億9200万円の残金があった。昭恵さんは、計2億4400万円の政治資金を引き継いでいる。 総務省によると、「政治資金の使途については、原則として特段の制限はない」(政治資金課)という。「晋三記念館」を建設しても、違法ではないということだ。 しかし、「選挙区支部」に残っていた1億9200万円のうち、約2400万円は政党助成金である。税金を使って記念館を建設したら批判が噴出するのではないか」、なるほど。「そもそも、一私人である昭恵夫人が、政党の支部代表を引き継ぐのは、おかしいと思う。政治家を目指さないのなら、昭恵夫人は、引き継いだ政治資金を国庫に返上するか、慈善団体に寄付すべきでしょう」、その通りだ。
タグ:デイリー新潮「前代未聞のことが起きた日本共産党 志位和夫も不破哲三も反論できず打つ手なしの大ピンチ」 日本の政治情勢 (その66)(前代未聞のことが起きた日本共産党 志位和夫も不破哲三も反論できず打つ手なしの大ピンチ、「日本一の子育て政策」「暴言、毒舌」で知られた明石市長・泉房穂氏がいま「本音」で話すこと…「『人から嫌われたくない』なんて思ったことはない」、「立憲民主党が野党第一党ではムリ!だとしたら…」明石市で革命を起こした泉房穂がリアルに見つめる「政権交代へのロードマップ」、昭恵夫人に5億円「晋三記念館」計画の仰天…政治資金を使えば国民からの批判は必至) 「党大会が開かれるのは2年から3年に1回ですが、それくらいの間隔を空けないと党員が疲弊してしまうのです」、「そこで党幹部が中総(中央委員会総会)を開き、様々な方針を決める」、なるほど。 「「延期の理由として国会日程と広島でのG7サミットを挙げていますが、これはとても変です」と首を傾げる・・・広島サミットに至っては、昨年から決まっていました。党執行部が本気で『国会とサミットが原因で延期します』と主張するのなら、党員でさえ『あまりに先見性がなさすぎる。来年の予定を立てることもできないのか』と納得しない人はいるでしょう」、その通りだ。 「元日本共産党京都府委常任委員の鈴木元氏が取材に応じ、党の問題点を洗いざらい指摘しました。叩き上げの運動家が赤裸々に語ったのですから、記事の迫真性は相当なものがあり、多くの関係者が衝撃を受けているのです」・・・鈴木氏は著書『志位和夫委員長への手紙』(かもがわ出版)を上梓。すると共産党は3月、鈴木氏を除名処分とした」、 「ベテラン党員の松竹伸幸氏が『シン・日本共産党宣言』(文春新書)を上梓。こちらも党首公選制を主張したことなどが問題視され、共産党は2月、松竹氏を除名」、「相次いでベテランの党員を除名した共産党に、“異論を許さないのか”との批判が殺到した」、「党大会延期」の真の理由になり得るようだ。 確かに、選挙戦の総括を捻じ曲げるようでは、「改革のメスも入れられない」、これでは「共産党の最大の問題です」というのも納得できる。 「党員は新規党員や購読者の獲得に忙殺され、肝心の選挙に力を注げず、敗北を許すという悪循環に陥っています。共産党に残る最後の宝は地方議員と支援者で、その象徴が鈴木さんでした。しかし、党は鈴木さんを排除しました。あれだけ重要な人を蔑ろにしたのですから、統一地方選の惨敗は当たり前でしょう。志位さんが反省し、鈴木さんの除名を取り消せば、改革の一歩を踏み出したことになりますが、もちろんそんなことが実現するはずもありません」、硬直化した「共産党」の体制はどうなるのだろう。 現代ビジネス 泉 房穂氏 鮫島 浩氏の対談「「日本一の子育て政策」「暴言、毒舌」で知られた明石市長・泉房穂氏がいま「本音」で話すこと…「『人から嫌われたくない』なんて思ったことはない」」 泉氏の著書『政治はケンカだ! 明石市長の12年』 「元々、「四面楚歌」とか「絶体絶命」という言葉が好きで、四方を囲まれたら終わり、とは思わない。地上が無理なら空にジャンプするか、地面を潜って逃げるか、と体中の細胞が活性化して状況を打開するアイデアが次々に浮かぶ。 そんな私のやり方は、乱暴だと思われたかもしれないが、私のまちづくりの理念を真っ先に理解し、いちばん近くで応援してくれたのが市民だった」、「市民」が「理解し」、「いちばん近くで応援してくれた」、とは幸せだ。 「「数が少ないから」と切り捨てず、一人ひとりに光をあてた政策をすれば、「ここに住み続けたい」と思う人が増えるのはあたりまえのことだ。 そしてそれができるのが「市長」なのだ。市長にだけはその権限がある。 一人ひとりの市民が暮らしやすいまちづくりをしたら、「明石に住みたい」「明石に住み続けたい」と思う人が増えただけのこと。 あたりまえのことなのに、珍しい市長のように言われるなんて、不思議なことだ」、「「困ったとき」は誰にでも、突然訪れる。そのときに必要な支援を届けるのが行政の役割だ。少数の困りごとを切り捨てず、寄り添い解決することが多数の人々のセーフティネットになるという思いで、様々な施策を「条例」にして、残してきた。 「手話言語・障害者コミュニケーション条例」 「障害者配慮条例」 「犯罪被害者支援条例」 「更生支援・再犯防止条例」 「優生保護法被害者支援条例」 「インクルーシブ条例」 「子どもの養育費条例」 それぞれの対象者は多数派ではないが、市民の理解を得て制定してきた」、凄いことだ。 「「優生保護法被害者支援条例」。私が政治家をめざした原点でもある悪法「優生保護法」によって、強制的に不妊手術や人工妊娠中絶を受けさせられた被害者に寄り添い、優生思想を許さないことを誓う条例である。本書でも語るが、この条例制定には、議会多数派の強烈な反対があった。 それに対して、市民からは多くの賛成と応援の意見が届いた。「困ったときはお互いさま」「誰ひとり排除しない」よく使われる言葉だが、明石市民には、この言葉の本当の意味が浸透していると実感し、感慨深かった」、「明石市のまちづくりの根幹である「誰ひとり取り残さないやさしいまちづくり」の理念をカタチにしたのが「インクルーシブ条例」である。条例づくりの過程もインクルーシブを意識して進めた。制定時ほとんど話題にもならず、報道もされなかったが、「すべての人が自分らしく生きられる」ことを目的としたこの条例こそが真骨頂だと思っ ている」、なるほど。 鮫島 浩氏の対談「立憲民主党が野党第一党ではムリ!だとしたら…」明石市で革命を起こした泉房穂がリアルに見つめる「政権交代へのロードマップ」」 「「政権交代を目指すのは次の次」とか言ってる野党第一党の党首なんか担いだって、絶対に勝てません。もともと「やって見せることができない」のが野党の弱みなんだから、自治体の首長経験者を担ぐことは、その弱みをカバーすることにもなる」、その通りだ。 「2009年に誕生した民主党政権の罪が大きい。あの時、みんな民主党に期待しました。革新的なマニフェストもありました。でも、そこになかった消費増税が実施された。あれがもたらした政治不信がいまにつながっているわけですから、公約中心に政治を変えようと言ったところで、国民はもうついてこないでしょう」、「マニュフェスト」のいい加減さの代表例になっているとは、みっともない限りだ。 「「大阪は変わった」という実感を府民や市民が持ったからこそ、維新は10年以上にわたって強い支持を維持しているのだと思います」、私自身は関西のマスコミの抱き込み方が上手かっただけとの考えだ。 「「何言うてるねん! あんたら、私らのこと全然わかってへんな!」 という国民の不満が、マグマのように溜まっているのが、今の状況です。国民の根っこのところにある不満に対して、どこの既成政党も新たな道を示せていない。そこが示せる政党なり政治家が出てくると、状況は一気に変わるでしょう」、 「選挙というものは、やっぱり可能性の宝庫なんです。どんなに期待の持てない状況でも、そこを諦めてはいけません。 そのために、私にできることがある。市長という看板は下ろしますが、政治に携わることはやめません。「冷たい社会を優しくする」闘いは、これからも一生、続きます」、どんな形で「政治に携わる」のだろうか。 日刊ゲンダイ「昭恵夫人に5億円「晋三記念館」計画の仰天…政治資金を使えば国民からの批判は必至」 「「晋和会」には約5200万円、「選挙区支部」には約1億9200万円の残金があった。昭恵さんは、計2億4400万円の政治資金を引き継いでいる。 総務省によると、「政治資金の使途については、原則として特段の制限はない」(政治資金課)という。「晋三記念館」を建設しても、違法ではないということだ。 しかし、「選挙区支部」に残っていた1億9200万円のうち、約2400万円は政党助成金である。税金を使って記念館を建設したら批判が噴出するのではないか」、なるほど。「そもそも、一私人である昭恵夫人が、政党の支部代表を引き継ぐのは、おかしいと思う。政治家を目指さないのなら、昭恵夫人は、引き継いだ政治資金を国庫に返上するか、慈善団体に寄付すべきでしょう」、その通りだ。
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電子政府(その6)(デジタル人材必読 電子立国エストニアはこれだけすごい 安全保障によって鍛えられた歴史、役所のDXはなぜ難しい?行政にはびこる「絶対間違えられない」の呪縛、役所に残る「メールよりFAX」信仰 時代錯誤な住民の行政批判もDXの壁に) [経済政治動向]

電子政府については、2021年11月1日に取上げた。今日は、(その6)(デジタル人材必読 電子立国エストニアはこれだけすごい 安全保障によって鍛えられた歴史、役所のDXはなぜ難しい?行政にはびこる「絶対間違えられない」の呪縛、役所に残る「メールよりFAX」信仰 時代錯誤な住民の行政批判もDXの壁に)である。

先ずは、昨年2月2日付けWedge ONLINEが掲載した中曽根康弘世界平和研究所 主任研究員の大澤 淳氏による「デジタル人材必読 電子立国エストニアはこれだけすごい 安全保障によって鍛えられた歴史」を紹介しよう。
https://wedge.ismedia.jp/articles/-/25609
・『バルト三国の一番北に位置するエストニアは、森と湖が国土の大半を占める平坦な国である。人口約132万人、国土面積は約4万5000平方キロメートルで、例えるなら、関東地方と新潟県を合わせた広さの土地に、さいたま市と同じ人口が暮らしている。 1918年にロシアから独立したが、40年にソビエト連邦に占領・編入された苦難の歴史がある。89年の東欧の民主化の波をうけ、91年に独立を回復した。 エストニアの首都タリンは、写真のように中世ハンザ都市の面影を強く残していて、観光で訪れる日本人が持つ第一印象は恐らく、「おとぎ話の舞台のような北欧」というものであろう。世界遺産に登録されているタリンの旧市街を歩けば、ドイツ騎士団領時代に建設された丸い塔が特徴のヴィル門や、ロシア統治時代に建設されたタマネギ型のドームが印象的なアレクサンドル・ネフスキー大聖堂があり、大国に翻弄されてきたこの国の歴史を感じることができる』、普段縁がない「エストニア」とは興味深そうだ。
・『道路にパーキング・メーターがない理由  街の中を一見しただけでは、この小国エストニアが、世界最先端の「電子立国」であることを見逃してしまうだろう。だが、街路で目をこらして見ると、世界の大都市によくあるパーキング・メーターがないことに気がつく。 駐車スペースと思われる道端には、駐車区域コードと駐車料金が記載されたPのマークの看板が設置されている。看板には、「m-pakimine」すなわち「モバイル・パーキング」との表示がある。 駐車するドライバーは、スマホから位置情報アプリかショートメッセージサービス(SMS)で区域コードを送信して駐車登録を行い、出発する際に駐車登録を解除する。小銭を取り出して料金を支払う必要はなく、月末に携帯電話料金と共に利用者の銀行口座から引き落とされる。m-パーキングでは、利用者の本人確認、車両登録情報、位置情報、携帯電話情報、銀行口座情報のデータが、瞬時に行政機関や通信事業者のサーバー間で交換されている』、「モバイル・パーキング」は確かに便利そうだ。
・『北欧の「電子立国」エストニア  エストニアは、「e-Estonia」を掲げ、世界で最先端の「電子立国」を実現している。電子サービスは、m-パーキング以外にも、e-タックス、e-スクール、e-チケット、i-投票、e-警察、e-司法、e-医療、e-処方箋、e-土地登記簿、e-ビジネス(企業登録)、e-バンキングなどほぼすべての公的サービスに広がっている。 例えば、申告の95%がオンラインで行われているe-タックスでは、納税者の1年間の収入・控除などが自動集計され、納税者はシステムにログインして、自分のデータを確認・修正して電子署名を承認するだけで、3〜5分で申告が終了する。その他、処方箋の98%、銀行取引の99.8%、駐車料金の90%がオンライン経由で行われており、行政サービスの99%はオンラインで提供され、24時間365日利用可能である』、「行政サービスの99%はオンラインで提供され、24時間365日利用可能である」、これは便利だ。
・『「電子立国」を支える2つの基盤技術  エストニアの「電子立国」を支える最も重要な基盤が、安全なeID(デジタル身分証)と安全が担保されたX-Road(データ交換基盤)である。エストニアのIDカードは、日本のマイナンバーカードと同様のもので、個人識別コード、eID(デンタル本人確認証明書、暗号化証明書、電子署名証明書)が格納されている。 2002年に導入されたeIDは、プラステック製のIDカード専用の読取り装置か携帯電話のSIM(モバイルIDを入れた特別なもの)経由でも利用が可能である』、「eIDは、プラステック製のIDカード専用の読取り装置か携帯電話のSIM・・・経由でも利用が可能」、なるほど。
・『普及のためなら高齢者に何度も説明  このIDカードの普及率はなんと驚きの98%である。筆者はエストニア政府の担当者に「普及の秘訣は何ですか。高齢の方にどうやって納得してもらったのですか?」と質問する機会があったが、「落伍者を一人も出さないという目標を掲げ、街頭での普及活動に加え、高齢者のご家族にも説明を手伝ってもらい、必要なら担当者が何度も森の中のお宅に出向いて説明した」との答えが返ってきた。 エストニアの「電子立国」は、とことん国民に寄り添い、国民生活を楽に、便利にすることに主眼が置かれている。カードの普及率を上げることが目的化し、2兆円近い税金を使ってポイントで釣る日本のやり方は、再考の余地がある。 「電子立国」のもう1つの基盤X-Roadは、規格化された分散型のデータ交換基盤で、01年に政府により導入された。データベースを統合して1つにすると効率的だが、天変地異やサイバー攻撃で破壊されてしまえば、すべてのデータが消失するリスクがある。そのため、データベースを分散し、データベース間を安全につなぐことにしたのである。 X-Roadはインターネット通信プロトコル(TCP/IP)ベースで、インターネットを介してデータを交換する。そのため、データベースとX-Roadの間にセキュリティサーバーを置き、交換されるデータを暗号化して通信を行っている。また、それぞれのデータベースへのアクセスには、正当なアクセスであるユーザー認証を認証局から得る必要があり、不正なアクセスや情報漏洩が起こらない仕組みを構築している。昨今セキュリティ業界では「ゼロトラスト(何も信用せずにセキュリティ対策を講ずる)」が流行だが、エストニアのX-Roadは、20年前からゼロトラストの思想で設計されている』、「エストニアのX-Roadは、20年前からゼロトラストの思想で設計されている」、ずいぶん先進的だったようだ。
・『基盤を支える「暗号アルゴリズム」  「電子立国」の基盤であるeIDとX-Roadの安心・安全を担保しているのが、権限を持つ本人であるかどうかをデジタルで証明する技術(アナログ社会の日本ならハンコと印鑑と印鑑証明にあたる)と、漏洩や改ざんされずにデータをやりとりできる技術(封書と書留にあたる)となる。この2つの技術の土台となるのが、「暗号アルゴリズム」である。 「暗号アルゴリズム」は、情報の暗号化や復号を行うための手順や計算式を定めたルールのことで、忍者の「山」「川」といった合言葉や真珠湾攻撃の開戦を指示した暗号電報「ニイタカヤマノボレ」も事前に意味が合意されたルールであり、暗号アルゴリズムの一種である。例をあげて簡単に説明すれば、文字を2文字後ろにずらすルール(アルゴリズム)を使うと、「ABC」という通信は「CDE」となり、「DOG(犬)」という内容も「FQI」という全く意味不明の通信となり、アルゴリズムを知らない他人には通信内容がわからなくなる。) 現在では、上記の例のようなルール(鍵)を共有する「共通鍵暗号」と、暗号化ルール(公開鍵)と複合化ルール(秘密鍵)をセットにした「公開鍵暗号」の両方が使われている。公開鍵暗号は、ルールを事前に共有しなくても暗号通信のやりとりができるため、ネット時代のデジタル社会を支える技術基盤になっており、エストニアでも公開鍵基盤が政府によって運営されている』、なるほど。
・『起源はソビエト支配時代の研究開発  人口132万人の小国エストニアが、最先端の「暗号アルゴリズム」を用いた「電子立国」を、どのようにして世界に先駆けて実現できたのか。その答えは、ソビエト支配時代の科学技術開発にさかのぼる。 もともと、エストニアの首都タリンには、1918年にタリン工科大学が設立され、電気工学などの学問が盛んであった。そのような人的基盤を元に、60年にサイバネティクス研究所が設立された。同研究所では、自動制御、プログラミング、アルゴリズム、ソフトウェア開発が行われ、70年代末には500人の研究者が在籍していた。 エストニアのコンピューター科学の父といわれるEnn Tõugu教授も、当時研究所の一員で、ソフトウェア工学を研究する研究室を78年に研究所内に開いている。このサイバネティクス研究所は、閉鎖的なソビエトの科学技術開発の中で、珍しく西側に交流の窓が開かれており、スウェーデンやフィンランドの研究者との交流を通じて、エストニアが最先端のコンピューター科学の技術力を保持する母体となった。このサイバネティクス研究所からは、暗号アルゴリズムを専門とするCybernetica社が民間企業として97年に独立し、政府と一体となってエストニアのX-Roadや認証技術の開発を担っている』、「サイバネティクス研究所は、閉鎖的なソビエトの科学技術開発の中で、珍しく西側に交流の窓が開かれており、スウェーデンやフィンランドの研究者との交流を通じて、エストニアが最先端のコンピューター科学の技術力を保持する母体となった」、こうした恵まれた基盤があったようだ。
・『安全保障が鍛える「電子立国」の技術  このエストニアの「電子立国」の基盤技術は、その後厳しい安全保障環境の中で鍛えられていくこととなる。30カ国が加盟する北大西洋条約機構(NATO)の中でも、国境を直にロシアと接しているのは、エストニアも含めわずか5カ国にすぎず、その中でもエストニア−ロシア国境が294キロと最も長い。エストニアはNATOの最前線に位置するが、それはサイバー空間でも同じである。 2007年4月、エストニア政府、議会、金融機関、メディアなどがDDoS(分散型サービス拒否)を用いた機能妨害型のサイバー攻撃に襲われ、市民生活に大きな影響が生じた。一国を標的とした世界初めての大規模なサイバー攻撃で、世界に衝撃が走った。 エストニア政府はこのサイバー攻撃の教訓から、X-Roadで交換される重要なデータについて、「データの完全性(データが改ざんされていないこと)」をブロックチェーン技術で担保する技術開発を、翌08年に着手した。現在、この技術が、医療、土地登記、企業登記、政府公告などで使われている』、「エストニア政府はこのサイバー攻撃の教訓から、X-Roadで交換される重要なデータについて、「データの完全性・・・」をブロックチェーン技術で担保する技術開発を、翌08年に着手した。現在、この技術が、医療、土地登記、企業登記、政府公告などで使われている」、「サイバー攻撃の教訓から」、「ブロックチェーン技術で担保する技術」で鉄壁の防護体制を築いたとは大したものだ。
・『領土が侵略されてもデータは守る  14年には、ロシアがウクライナを侵攻し、クリミア半島を奪取した。クリミア紛争では、サイバー戦と軍事侵攻が同時に行われ、「ハイブリッド戦」が注目されるようになった。これを受け、エストニア政府は、「電子立国」の究極の安全保障政策として、Data Embassy(データ大使館)構想を15年から実行に移している。) 先に述べたように、エストニアは歴史的に何度も大国の侵略に遭い、国土を蹂躙された経験を有している。そのため万が一、「物理的に領土が侵略されても、国民とその財産である国民のデータを守る覚悟」をもって、Data Embassy構想を進めている。 Data Embassyは、国外の第三国との間で、外交使節に関するウィーン条約第22条(使節団の公館は不可侵)の覚え書きを交換し、当該国に設置するサーバーにも公館不可侵の原則を適用してもらい、エストニア政府が保管する国民のデータのバックアップを、当該国のサーバー(Data Embassy)に保存するという構想である。 17年にルクセンブルグとの間で覚書が調印され、最初のData Embassyがルクセンブルク国内のデータセンターに設置された。その他にも、場所は明らかにされていないが、複数の国で同様のData Embassyが設置されている』、「Data Embassyは、国外の第三国との間で、外交使節に関するウィーン条約第22条・・・の覚え書きを交換し、当該国に設置するサーバーにも公館不可侵の原則を適用してもらい、エストニア政府が保管する国民のデータのバックアップを、当該国のサーバー(Data Embassy)に保存するという構想である。 17年にルクセンブルグとの間で覚書が調印され、最初のData Embassyがルクセンブルク国内のデータセンターに設置された」、「データ大使館」とは興味深い発想だ。
・『持つべき安全保障への覚悟  筆者がエストニアを訪問した際に、この構想についての「覚悟」を説明してくれたエストニア政府高官は、「攻めてくるのは隣の大きな熊(ロシア)ですよね?」という私の質問に対して、「明日にも宇宙人がやってくるかもしれないでしょ」といたずらっぽい目をして答えてくれた。 「どんなことがあっても、サイバー空間で国家を存続させる」と語る彼の口調からは、エストニアが置かれた安全保障環境の厳しさと、それに立ち向かって、国民の生命と財産を技術で守り抜くという真剣な覚悟が痛いほど伝わってきた。「電子立国」を成り立たせるために、そういった安全保障の覚悟があることをわれわれ日本人は真摯に受け止める必要がある。 『Wedge』2021年12月号で「日常から国家まで 今日はあなたが狙われる」を特集しております。 いまやすべての人間と国家が、サイバー攻撃の対象となっている。国境のないネット空間で、日々ハッカーたちが蠢き、さまざまな手で忍び寄る。その背後には誰がいるのか。彼らの狙いは何か。その影響はどこまで拡がるのか─。われわれが日々使うデバイスから、企業の情報・技術管理、そして国家の安全保障へ。すべてが繋がる便利な時代に、国を揺るがす脅威もまた、すべてに繋がっている。 特集はWedge Online Premiumにてご購入することができます』、「エストニアが置かれた安全保障環境の厳しさと、それに立ち向かって、国民の生命と財産を技術で守り抜くという真剣な覚悟」、我々も見習うべきだろう。

次に、昨年5月4日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの酒井真弓氏による「役所のDXはなぜ難しい?行政にはびこる「絶対間違えられない」の呪縛」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/302583
・『日本の役所には「自分たちは間違えてはいけない、間違わないために前例を踏襲する」という考えが浸透している。実際には日々テクノロジーの進化によって、より良いモノや手法が生まれているのに、「間違ったことをしてはいけない」という概念にとらわれすぎて、前例踏襲主義から抜け出せない。そんな行政を変える動きが、少しずつだが生まれている』、「前例踏襲主義から抜け出」そうとする動きが出てきたとは結構なことだ。
・『牧島かれんデジタル大臣が語った「無謬性神話からの脱却とアジャイル」とは  「無謬(むびゅう)性神話からの脱却」 牧島かれんデジタル大臣は、柔軟に政策の見直し・改善を行っていく「アジャイル型政策形成・評価の在り方に関するワーキンググループ」の立ち上げに際し、そう語った。 無謬とは、理論や判断に間違いがないこと。日本の政府や官僚組織には無意識のうちにこの無謬性神話にとりつかれている人が多い。自分たちは間違えてはいけない、間違わないために前例をきちんと守る……。 一方、アジャイルとは、「仕様や設計には変更がある」ということを前提に、最初から厳格な仕様を決めず、より良い姿を目指して臨機応変に形を変えていく開発スタイルだ。初めに仕様を決め、決められた工程を順に進めていくウォーターフォール型と比較して、市場環境やニーズの変化に柔軟に対応できるとして、取り入れる企業も増えている。 行政で働く人たちにも「本当はこうしたい」という思いがある。しかし、「間違ったことをしてはいけない」という概念にとらわれすぎて、前例踏襲主義から抜け出せない。リスクを取って変えたところで、失敗したら評価が下がる。時には建設的とは言えない批判に日常業務が圧迫されることもある。重要な決断が先延ばしにされ、新型コロナのような緊急事態での対応を遅らせる元凶は、無謬性を追い求めるがゆえの硬直した考え方にある。 時代の流れは速く、複雑性も増している。まずはスピード感を持って政策を投入し、EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング:証拠に基づく政策立案)に則って早い段階で見直し、改善を重ねていくこともできるのではないか。) 無謬性神話から脱却して、アジャイルで政策を形成し、評価するというのは非常に難しい。しかし牧島さんは、「コロナ禍でアジャイルのモデルケースができた」と語る。ワクチン接種記録システム(VRS)によって接種状況が可視化され、実際の数字と現場の声を掛け合わせ、柔軟に改善を図ることができたという。こうした動きは、霞が関のみならず、企業のDXにも一石を投じるもののように思う』、「「コロナ禍でアジャイルのモデルケースができた」と語る。ワクチン接種記録システム(VRS)によって接種状況が可視化され、実際の数字と現場の声を掛け合わせ、柔軟に改善を図ることができたという」、なるほど。
・『ある地方自治体の行政パーソンの胸の内  牧島さんの話に深く共感する人がいた。 民間企業から、ある地方自治体のIT担当者に転身したAさんは、一歩引いた目線で「間違いがないことは、行政パーソンが一番大事にしていること。理念に近い」と語る。一方で、IT担当者として何かを変えようとすると、その無謬性が足かせになることがあるという。Aさんは「中の人」になって初めて、行政パーソンが抱える苦しさを知ったという。 まず、着任して早々、Aさんは驚いた。仕事で使うパソコンから、直接インターネットに接続できなかったのだ』、「行政」だけでなく、銀行・証券でも「直接インターネットに接続でき」る端末は例外的だ。
・『自治体がインターネットにつながらなくなった理由  これは、2016年に始まった「三層の対策」(三層分離)に起因する。三層の対策とは、2015年、日本年金機構が不正アクセスを受け、個人情報の一部が流出した事件を機に、総務省の要請によって進められたセキュリティ強化策だ。自治体のネットワークを、通常業務で使用するLGWAN(総合行政ネットワーク)接続系、マイナンバーに関わる業務を行うための個人番号利用事務系、インターネット接続系の3つに分離し、セキュリティを高めるといったアプローチだ。 狙い通り、インシデント数は大幅に減少した。しかし、全国約1700の自治体のほとんどが、業務端末から直接インターネットに接続できなくなり、業務効率の低下につながってしまった。 2016年といえば、世間では若年層のスマホ保有率が8割を超え、クラウドも当たり前の時代にシフトしていた。そんな中、自治体はインターネットからある意味切り離され、情報収集したくても、手間がかかるようになってしまったのだ。 三層の対策は、2020年に総務省が見直しを表明したものの、各自治体に深く影響が残っている。今は、世界中で何十億人が使うアプリと、行政のアプリのUI/UXが同じ土俵で比べられてしまう時代だ。行政パーソンもそれをひしひしと感じている。しかし、多くの自治体は、直接インターネットに接続できないがゆえ、クラウドサービスの利用に制約がかかっている状態。UI/UXを改善する以前に、自分たちが優れたサービスを使って、「今どきのワークスタイルとはこういうものだ」と実感するのも難しいのが実情なのだ。 Aさんは、「インターネット接続の課題が改善されない限り、自治体のDXは進まない」と語る。いくら民間から新しい風を入れ、改善に動いても、技術的な制約によって早々に足止めをくらってしまう。これは、どの自治体にも共通する課題だ。それに、「インターネット」を他に置き換えれば、多くの企業で同じような現象が起きているのではないだろうか』、「多くの自治体は、直接インターネットに接続できないがゆえ、クラウドサービスの利用に制約がかかっている状態。UI/UXを改善する以前に、自分たちが優れたサービスを使って、「今どきのワークスタイルとはこういうものだ」と実感するのも難しいのが実情なのだ」、なるほど。
・『ミスをすることが、なぜこんなにも重いのか  AさんがIT担当者として初めに着手したのは、メールの誤送信対策として続けてきたPPAP(パスワード付き圧縮ファイル)と送信遅延の廃止だった。 次にAさんは、Bcc強制変換を廃止しようとした。Bcc強制変換とは、宛先に大量の外部宛てメールアドレスを指定した場合、強制的に「Bcc」(ブラインドカーボンコピー。複数の利用者宛にメールを同時送信する際、受取人以外の送信先メールアドレスを伏せること)に自動変換する機能のことだ。誤送信や個人情報漏えいを防ぐために導入している自治体は多いのだが、受信側は、返信の際に一つ一つメールアドレスを入れ直す必要があり、かなりの手間がかかっていた。 Aさんは、Bcc強制変換の廃止も受け入れられるだろうと思っていた。しかし、役所内からは「個人情報の保護を優先すべきだ」という声が上がった。自分たちの利便性向上よりも、セキュリティや個人情報保護を優先する背景には、「ミスによって市民からの信頼を失ってはならない」という責任感が垣間見えた。改革には、そこで働く人たちが大切にしてきたことへの共感やリスペクトが必要だ。Aさんにとってはこれが、行政パーソンが何を大事に業務に取り組んできたかを最初に実感した出来事だったという。 「民間企業として自治体と仕事をしてきたので、自治体の働き方、考え方についてそこそこ理解しているつもりでした。しかし、この一年で、何も分かっていなかったということがよく分かりました。本当のところは、中に入ってみないと分からないものですね」(Aさん)) 無謬性にとらわれているのは行政だけではない。Aさんは今、一部の業務がスマホでもできるよう準備を進めているのだが、業務時間中にスマホを見ていると、市民から「仕事中にスマホを触るとは何事だ」と電話が入ったという。 適切な時代認識を持たない一部の市民やメディアが本質からずれた批判をすることで、行政はさらに息苦しくなっていく。自分たちは間違えてはいけない。それが根底にあるからこそ真に受けて、変わることをやめてしまう』、「一部の市民やメディアが本質からずれた批判をすることで、行政はさらに息苦しくなっていく」、仮にそうした「本質からずれた批判」を受けたら、「行政」は遠慮せずに堂々と申し開きをすべきだ。
・『役所の変革こそ一筋縄ではいかない  行政を取材すると、「役所の変革こそ一筋縄ではいかない」という声を聞く。何かを変えようとすれば、受け継いだ政策をまずは「是」とするのが役人のイロハだと、役人としての資質を問われることになる。 冒頭の答弁で、牧島かれんデジタル大臣は、「企業の常識が霞が関の常識になっていない」と指摘した。「まずはデジタル庁が無謬性にとらわれず、新たなショーケースとなり、他の省庁にも展開しやすくしていきたい」という。 適切な時代認識とともに、世の中の当たり前を霞が関の当たり前に。そして、自治体の当たり前に。今がその分水嶺だ』、「「まずはデジタル庁が無謬性にとらわれず、新たなショーケースとなり・・・」とあるが、現実にはマイナンバーカ-ド問題で、てんやわんやでそれどころではなさそうだ。

第三に、昨年5月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの酒井真弓氏による「役所に残る「メールよりFAX」信仰、時代錯誤な住民の行政批判もDXの壁に」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/302975
・『日本のDXが進まないと言われて久しいが、一般企業以上に進んでいないのが行政のDXだ。行政のDXを妨げる要因はどこにあるのか。「役所は遅れている」と批判する前に、自治体を取り巻く閉塞感の正体と、私たち住民ができることを考えてみたい』、興味深そうだ。
・『90年代のパソコン環境のままで、時が止まっている  前回、『役所のDXはなぜ難しい?行政にはびこる「絶対間違えられない」の呪縛』では、実例を踏まえ、行政のDXを妨げる要因に触れた。まずは、なぜ多くの自治体が、いまだに電話やFAX、紙をベースに業務を進めているのか考えてみたい。 1995年、Windows 95によってパソコン画面に色や絵が表示されるようになり、1996年にはInternet ExplorerやOutlook Expressが登場し、今に続くコミュニケーションの基礎ができあがった。自治体のIT環境やベースとなる考え方は、ほとんどこの時点で止まっている。この時期に決められたルール、導入した機器やソフトウエアが脈々と受け継がれているのだ。 市や町では、パソコンが1人1台支給されていないケースもある。支給されていたとしても、すぐにフリーズしてしまうような古いパソコンを大切に使い続けていたりする。ウェブ会議用のカメラが付いていないことも多く、ウェブ会議ツールのライセンスが部署ごとにしか発行されていなかったりもする。自治体とのウェブ会議では一つの画面に何人か収まっていることがあるのだが、そういう理由かもしれない。) 加えて、前回も紹介したインターネット接続の課題だ。2016年に総務省の要請で始まったセキュリティー強化策「三層の対策」により、全国約1700ほとんどの自治体が、業務で使うパソコンから直接インターネットに接続できなくなった。一般企業では考えられないことだが、行政のDXを考える上では念頭に置くべき制約だ。 三層の対策は、2020年に総務省から見直しが表明されているものの、現場では尾を引いている。過度なセキュリティー対策に加え、「インターネットは危険なもの」という認識から迷信も根強く残る。一部の自治体で「メールよりFAXのほうが安全」と言われるのもその一つだ』、「FAX」信仰の強さには、「メールよりFAXのほうが安全」との「迷信」が影響しているとは、やれやれだ。
・『自治体のDXを妨げる4つの要因  一方で、自治体で働く人の多くが、私生活ではデジタルに慣れ親しんでいる。ギャップを知っているからこそ、庁内のパソコンを積極的に使おうとは思わない。すぐにフリーズするから最低限の機能を残して停止するし、会議は紙の資料で進んでいく。税金を使っている以上は最低限のスペックでというが、最低限のスペックとは時代とともに変化するものだ。民間企業の「普通」を享受することは、決してぜいたくではない。 自治体のDXを妨げる要因をかなり抽象化すると、大きく以下の4つに分けられそうだ。 (1)前時代的なIT環境(予算や政策との兼ね合いもある) (2)失敗を恐れる文化(4の原因となる場合もある) (3)年功序列・終身雇用(長い下積みや人材流動性の低さ) (4)意思決定と事業推進の遅さ(3による中間管理職層の厚さもその理由) これらは互いに影響し合っている。いくら(2)(3)(4)の改善に動いても、インターネット接続の課題を解決しない限り、技術的制約によって足止めをくらってしまう。民間から優秀なIT人材を採用しても、実力を発揮する以前の問題で去っていくということが起こり得るのだ』、「いくら(2)(3)(4)の改善に動いても、インターネット接続の課題を解決しない限り、技術的制約によって足止めをくらってしまう」、つまり(1)の問題が大きいようだ。
・『安易な行政批判やクレームがもたらすもの  既存のやり方を否定することが改善につながるかというと、そうではない。「間違ったことをして信頼を失ってはいけない」というコンテクストに背を向けて、失敗を恐れる文化を頭ごなしに批判したり、アジャイルを訴えたりしても、平行線をたどるのは目に見えている。 また、前回の記事では、Aさんが、スマホでも一部の業務が進められるよう準備を始めたところ、市民から「仕事中にスマホを触るとは何事だ」とクレームが入ったというエピソードを紹介した。 行政のDXが進まない原因は、適切な時代認識を持たない一部の住民やメディアにもある。民間企業なら無視できることも、行政では難しい。自己流の正義を振りかざす人たちは、自分たちの声で進化が止まってしまう可能性を考えたことがあるだろうか。どうか仕事の邪魔をしないであげてほしい。 実は地方公共団体の職員数は、1994年をピークに大幅に削減されている。これには地方財政の健全化、定員や給与の適正化、民間委託の推進などが関係しているが、今後は、なり手の減少によって行政サービスの維持すら厳しくなる自治体も出てくるだろう。業務効率化は急務だ。 事実、多くの自治体が人材確保に苦労している。「なりたい職業ランキング」では常に上位、人気の職業という印象の公務員だが、近年、定員割れや内定辞退が相次いでいる。北海道庁では、2017年から2年連続で内定辞退率が6割を超えて話題となった。コロナ禍で志願者は微増しているものの、一時的である可能性は高い。 さらに定着率を高めるには、働く人たちの満足度を高める必要がある。昨今、一部の民間企業では、従業員満足度の向上が生産性を高めるとして、EX(Employee Experience)の改善に取り組んでいる。行政には、地域や住民に貢献したいと志して入った人が多いだろう。だが、人を幸せにする前に、役所で働く人たち自身が幸せであってほしい。ただの「やりがい搾取」ではなく、働く環境や評価、待遇など、後回しにしてきた多くのことを見直す時期にさしかかっているのだ』、「働く環境や評価、待遇など、後回しにしてきた多くのことを見直す時期にさしかかっているのだ」、その通りだ。
・『役所から見て、住民は「顧客」なのか?  行政で働く人は、住民を「顧客」と表現することがある。これは、行政サービスをより良くするために必要な心がけかもしれない。だが、筆者はスマートシティーを取材して「それって本当はちょっと違うのかも」と思った。 スマートシティーを推進する静岡県浜松市は、「アジャイル型の街づくり」を掲げ、トライ&エラーを繰り返すことで変化に強い街づくりを進めている。担当者は、「まずはベータ版でPoC(概念実証)を回し、市民の皆さんの反応を見て改善していきたい」と語ってくれた。 はっとした。スマートシティーとはコミュニティーであって、住民がサービスを享受するだけのお客様では成立しないのだ。自治体も同じだ。私たち住民の理解と協力なしに、行政のDXは成し遂げられない』、「自治体も同じだ。私たち住民の理解と協力なしに、行政のDXは成し遂げられない」、その通りだ。
・『必要なのは住民と自治体の共創、自治体自身がもっと発信すべき  国内でも、住民と自治体の共創が少しずつ始まっている。代表的なのが、市民が協力して主体的に行政サービスの課題を解決していく「Civic Tech」だ。 行政側では、経済産業省の「PoliPoli Gov」や、デジタル庁の「アイデアボックス」、香川県高松市の「たかまつアイデアFACTORY」など、住民の声を可視化する取り組みが始まっている。重要なのは、意見募集にとどまらず、改善に向けた対応、結果や展望も含め、行政側の活動も可視化されることだ。こうした動きが見えないと、住民が主体性を保ち続けるのは難しい。 何より自治体は、自分たちを取り巻く課題を自ら発信してほしい。本当の共創は、住民が課題を知るところから始まる。批判を恐れて言えないとか、「自治体ってこういうものだから」と諦めてしまっている部分もあると思う。それでも、自治体は何に苦しみ、本当はどうしたいのか教えてほしい。そうでなければ、味方になってくれる人を振り向かせることすらできないのだから』、「何より自治体は、自分たちを取り巻く課題を自ら発信してほしい。本当の共創は、住民が課題を知るところから始まる。批判を恐れて言えないとか、「自治体ってこういうものだから」と諦めてしまっている部分もあると思う。それでも、自治体は何に苦しみ、本当はどうしたいのか教えてほしい。そうでなければ、味方になってくれる人を振り向かせることすらできないのだから」、同感である。
タグ:大澤 淳氏による「デジタル人材必読 電子立国エストニアはこれだけすごい 安全保障によって鍛えられた歴史」 「行政サービスの99%はオンラインで提供され、24時間365日利用可能である」、これは便利だ。 「モバイル・パーキング」は確かに便利そうだ。 Wedge Online (その6)(デジタル人材必読 電子立国エストニアはこれだけすごい 安全保障によって鍛えられた歴史、役所のDXはなぜ難しい?行政にはびこる「絶対間違えられない」の呪縛、役所に残る「メールよりFAX」信仰 時代錯誤な住民の行政批判もDXの壁に) 電子政府 普段縁がない「エストニア」とは興味深そうだ。 「eIDは、プラステック製のIDカード専用の読取り装置か携帯電話のSIM・・・経由でも利用が可能」、なるほど。 「エストニアのX-Roadは、20年前からゼロトラストの思想で設計されている」、ずいぶん先進的だったようだ。 「サイバネティクス研究所は、閉鎖的なソビエトの科学技術開発の中で、珍しく西側に交流の窓が開かれており、スウェーデンやフィンランドの研究者との交流を通じて、エストニアが最先端のコンピューター科学の技術力を保持する母体となった」、こうした恵まれた基盤があったようだ。 「エストニア政府はこのサイバー攻撃の教訓から、X-Roadで交換される重要なデータについて、「データの完全性・・・」をブロックチェーン技術で担保する技術開発を、翌08年に着手した。現在、この技術が、医療、土地登記、企業登記、政府公告などで使われている」、「サイバー攻撃の教訓から」、「ブロックチェーン技術で担保する技術」で鉄壁の防護体制を築いたとは大したものだ。 「Data Embassyは、国外の第三国との間で、外交使節に関するウィーン条約第22条・・・の覚え書きを交換し、当該国に設置するサーバーにも公館不可侵の原則を適用してもらい、エストニア政府が保管する国民のデータのバックアップを、当該国のサーバー(Data Embassy)に保存するという構想である。 17年にルクセンブルグとの間で覚書が調印され、最初のData Embassyがルクセンブルク国内のデータセンターに設置された」、「データ大使館」とは興味深い発想だ。 「エストニアが置かれた安全保障環境の厳しさと、それに立ち向かって、国民の生命と財産を技術で守り抜くという真剣な覚悟」、我々も見習うべきだろう。 ダイヤモンド・オンライン 酒井真弓氏による「役所のDXはなぜ難しい?行政にはびこる「絶対間違えられない」の呪縛」 「前例踏襲主義から抜け出」そうとする動きが出てきたとは結構なことだ。 「「コロナ禍でアジャイルのモデルケースができた」と語る。ワクチン接種記録システム(VRS)によって接種状況が可視化され、実際の数字と現場の声を掛け合わせ、柔軟に改善を図ることができたという」、なるほど。 「行政」だけでなく、銀行・証券でも「直接インターネットに接続でき」る端末は例外的だ。 「多くの自治体は、直接インターネットに接続できないがゆえ、クラウドサービスの利用に制約がかかっている状態。UI/UXを改善する以前に、自分たちが優れたサービスを使って、「今どきのワークスタイルとはこういうものだ」と実感するのも難しいのが実情なのだ」、なるほど。 「一部の市民やメディアが本質からずれた批判をすることで、行政はさらに息苦しくなっていく」、仮にそうした「本質からずれた批判」を受けたら、「行政」は遠慮せずに堂々と申し開きをすべきだ。 「「まずはデジタル庁が無謬性にとらわれず、新たなショーケースとなり・・・」とあるが、現実にはマイナンバーカ-ド問題で、てんやわんやでそれどころではなさそうだ。 酒井真弓氏による「役所に残る「メールよりFAX」信仰、時代錯誤な住民の行政批判もDXの壁に」 「FAX」信仰の強さには、「メールよりFAXのほうが安全」との「迷信」が影響しているとは、やれやれだ。 「いくら(2)(3)(4)の改善に動いても、インターネット接続の課題を解決しない限り、技術的制約によって足止めをくらってしまう」、つまり(1)の問題が大きいようだ。 「働く環境や評価、待遇など、後回しにしてきた多くのことを見直す時期にさしかかっているのだ」、その通りだ。 「自治体も同じだ。私たち住民の理解と協力なしに、行政のDXは成し遂げられない」、その通りだ。 「何より自治体は、自分たちを取り巻く課題を自ら発信してほしい。本当の共創は、住民が課題を知るところから始まる。批判を恐れて言えないとか、「自治体ってこういうものだから」と諦めてしまっている部分もあると思う。それでも、自治体は何に苦しみ、本当はどうしたいのか教えてほしい。そうでなければ、味方になってくれる人を振り向かせることすらできないのだから」、同感である。
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投資(商品販売・手法)(その3)(商業用不動産ファンドが「次の危機」の震源地に?空室率上昇と利上げで警戒感、金融庁が問題視、「投資家のコスト」が増える背景 投資信託を取り巻く課題をレポートで指摘、社長の7割が「親会社出身」、運用成績が業界平均を下回ってもクビにならず… 日本の資産運用業が「草食系」である理由とは、セゾン投信の「積立王子」こと中野晴啓会長退任の裏にスルガ銀行あり) [金融]

投資(商品販売・手法)については、昨年6月3日に取上げた。今日は、(その3)(商業用不動産ファンドが「次の危機」の震源地に?空室率上昇と利上げで警戒感、金融庁が問題視、「投資家のコスト」が増える背景 投資信託を取り巻く課題をレポートで指摘、社長の7割が「親会社出身」、運用成績が業界平均を下回ってもクビにならず… 日本の資産運用業が「草食系」である理由とは、セゾン投信の「積立王子」こと中野晴啓会長退任の裏にスルガ銀行あり)である。

先ずは、本年4月18日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「商業用不動産ファンドが「次の危機」の震源地に?空室率上昇と利上げで警戒感」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/321432
・『最近、資金運用に行き詰まる投資ファンドが増えている。コロナ禍を経た「働き方の変化」で、オフィスビルの空室率が上昇していることが関係している。加えて金利が一時上昇したこともあり、商業用不動産の価値下落によって顧客への資金返還が難しくなるファンドが出ているのだ。金融専門家の中には、次の危機の震源地として「商業用不動産などに投資するファンド」への警戒を強めている向きがある。 2023年3月、欧州では金融大手のクレディ・スイスが経営危機に陥り、同じく金融大手のUBSに救済買収された。また、米国では中堅銀行の破綻が立て続けに複数件発生した。4月中旬現在、世界の金融市場はひとまず落ち着きを取り戻している。ただ、危機的な状況がすべて去ったと判断するのはやや尚早だろう。米国の中堅銀行の経営不安はまだくすぶっている。加えて、一部の大手ファンドが厳しい状況に追い込まれつつあるとの見方もある。 それは、新型コロナウイルス感染拡大による「働き方の変化」で、オフィスビルの空室率が上昇していることが関係している。加えて金利が一時上昇したこともあり、商業用不動産の価値下落によって顧客への資金返還が難しくなるファンドが出ているのだ。金融専門家の中には、次の危機の震源地として「商業用不動産などに投資するファンド」への警戒を強めている向きがある。 もう一つ懸念されるのは、投資家の間で「年央から米FRB(連邦準備制度理事会)が利下げを行う」との期待が出ていることだ。一連の銀行破綻で景気後退の懸念が高まり、「FRBは物価より景気の下支えを優先する」との見方だ。しかし、冷静に考えると、世界的にインフレは高止まりしている。短期的に、FRBやECB(欧州中央銀行)の金融政策が緩和に転じるとは考えづらい。 今後の資産価格の展開次第では、一部の投資ファンドが過剰なリスクを抱え、業況が悪化する可能性がある。それが現実のものになると、世界的に金融システムの不安定感を高める要因になるだろう』、「金融専門家の中には、次の危機の震源地として「商業用不動産などに投資するファンド」への警戒を強めている向きがある」、「今後の資産価格の展開次第では、一部の投資ファンドが過剰なリスクを抱え、業況が悪化する可能性がある。それが現実のものになると、世界的に金融システムの不安定感を高める要因になるだろう」、なるほど。
・『厳しい状況に向かう一部の投資ファンドとは  最近、資産価値の下落や、それに伴う市場流動性の低下などによって、資金運用に行き詰まる投資ファンドが増えている。資産分類(アセット・クラス)の中でも、オフィスビルなど「商業用不動産」を対象にした一部の大手ファンドの苦境が鮮明だ。 現在、米国では、資産運用大手の商業用不動産ファンドが焦点となっている。22年11月頃から、投資家の解約請求が急速に増えたようだ。一方、ファンド側は運営を維持するため解約を制限した。「自分の投資が解約できなくなる」との不安から、投資家は連鎖反応のように解約請求に走ったとみられる。その結果、23年3月まで5カ月連続で、当該ファンドの返金は制限された。 また、3月、フィンランドの商業用不動産を裏付けに発行された証券化商品が「デフォルト」と判定された。類似の事例が世界で増えている。 リーマンショック後、多くのファンド勢にとって商業用不動産の重要性は高まった。特に、投資銀行などと異なり、ファンド運営会社に対する規制は相対的に緩い環境が続いた。投資銀行にとって、ファンド向けの貸し出しは高い利益を生むため、重要性が増した。 また、GAFA (Google、Apple、Facebook〈現Meta〉、Amazon)などIT先端企業の急成長、さらにはスタートアップ企業やシェアオフィスの利用が急速に増えた。データセンターの建設も急増した。そうした需要の増加に支えられ、商業用不動産市場は成長した。 低金利環境が続くとの見方を背景に、より高い利得が期待できる商業用不動産に資金を振り向ける投資ファンドは増えた。3月に破綻した米シグネチャー銀行、救済された米ファースト・リパブリック銀行に関しても、IT企業のオフィスが入る不動産向けの融資を積み増した。しかし不動産価格の下落によって、そうした状況が急速に悪化している』、「リーマンショック後、多くのファンド勢にとって商業用不動産の重要性は高まった。特に、投資銀行などと異なり、ファンド運営会社に対する規制は相対的に緩い環境が続いた。投資銀行にとって、ファンド向けの貸し出しは高い利益を生むため、重要性が増した」、「IT先端企業の急成長、さらにはスタートアップ企業やシェアオフィスの利用が急速に増えた。データセンターの建設も急増した。そうした需要の増加に支えられ、商業用不動産市場は成長した」、なるほど。
・『資金運用行き詰まり「3つの要因」  資金運用に行き詰まるファンドが急増している要因として、大きく3つ指摘できる。まず、米欧でオフィスの空室率が上昇している。テレワークや在宅勤務が増加し、かつてのように毎日オフィスに通勤する必要性が低下した。加えて、米国や中国ではリーマンショック後の景気回復をけん引したIT先端企業の業績が悪化し、リストラが進んでいることもオフィス需要を低下させている。 次に、不動産の価値そのものも下落している。22年3月以降、米国ではインフレ鎮静のためにFRBが利上げを進めた。世界的に金利は上昇したことで、長期的に不動産が生み出すと期待される価値は押し下げられる。そのため、米国やユーロ圏では商業用不動産の市況が悪化している。中国やシンガポールでも、商業用不動産の価格下押し圧力が高まっている。 さらに、多くの投資ファンドは、多額の借り入れによる運用を行ってきた。例えば不動産に1億円を投資し、10%のリターンが得られるとする。その場合の利益は1000万円だが、自己資金1億円に加えて10億円を借り入れ、10%のリターンが得られた場合には、計11億円の10%、1億1000万円の利益が手元に残る。それを狙って、多くのファンドが借り入れによってレバレッジをかけた。 しかし、米欧の中央銀行が政策金利を引き上げるにつれ、資金借り入れコストは増える。加えて、商業用不動産などの価値が下落してもいる。ファンドからの資金流出も増える。 一方、商業用不動産の流動性は低い。こうして、資金の調達(短期)と運用(長期)のミスマッチが深刻化し、資金運用に行き詰まるファンドが急速に増えているのだ』、「米欧の中央銀行が政策金利を引き上げるにつれ、資金借り入れコストは増える。加えて、商業用不動産などの価値が下落してもいる。ファンドからの資金流出も増える。 一方、商業用不動産の流動性は低い。こうして、資金の調達(短期)と運用(長期)のミスマッチが深刻化し、資金運用に行き詰まるファンドが急速に増えている」、なるほど。
・『「危機の火種」は依然残っている  金利上昇によって資産価値が下落し、投資ファンドが苦境に陥る――こうした事態は、過去も繰り返されてきた。リーマンショック以前、証券化商品に投資を行うファンドが急増した。多くが短期で資金を借り入れ、満期償還までの期間が長い資産に資金を投じた。金融市場が安定している間は、さほど大きな問題は起きない。 しかし、07年の年初以降、米国の住宅価格下落が鮮明化し、同年8月には「パリバショック」(仏金融大手BNPパリバ傘下の投資ファンドの運用行き詰まり)も発生した。世界的に、「売るから下がる、下がるから売る」といった負の連鎖が鮮明となり、金融市場は混乱した。その結果としてリーマンショックが発生した。 商業用不動産ファンドが一斉に苦境に追い込まれ、世界経済と金融市場が大きく混乱するリスクは、23年4月上旬の時点ではそれほど高くはない。しかしながら、危機の火種が残る中、世界的にインフレは高止まりしている。一例としてサウジアラビアの追加減産により、原油価格にも押し上げ圧力がかかりやすくなった。 インフレ懸念が残る中で、FRBやECBなど中銀が短期間で金融緩和に動くことは難しいだろう。むしろ米国では政策金利の高止まりが続く可能性が高い。それに伴い、景気後退の懸念が高まり、貸倒引当金の積み増しによって業績が悪化する金融機関が増える可能性がある。 そうした状況下、米国をはじめ商業用不動産市場の下落が鮮明化し、多くの投資ファンドが厳しい状況に追い込まれる可能性は否定できない。4月3日、ECBは「商業用不動産ファンドの増加は、ユーロ圏における潜在的な金融システムの不安定性を高める恐れがある」との懸念を表明した。 米欧の金融機関に対する不安は取り敢えず後退したかにみえる。ただ、商業用不動産などの投資ファンドが、今後の金融危機の火種になるリスクは頭に入れておいた方がよいだろう』、「米国をはじめ商業用不動産市場の下落が鮮明化し、多くの投資ファンドが厳しい状況に追い込まれる可能性は否定できない」、「商業用不動産などの投資ファンドが、今後の金融危機の火種になるリスクは頭に入れておいた方がよいだろう」、その通りだ。

次に、5月9日付け東洋経済オンラインが掲載した金融ジャーナリストの川辺 和将氏による「金融庁が問題視、「投資家のコスト」が増える背景 投資信託を取り巻く課題をレポートで指摘」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/670248
・『証券会社などの投資信託の管理システムを、一部事業者が寡占化していることが、投資家のコスト負担につながっている――。 金融庁は今年4月、投資信託の現状について課題を整理した、「資産運用業高度化プログレスレポート2023」において、冒頭のような問題認識を提示した。 システム会社間の競争がない状況では金融機関側のコストが押し上げられ、その負担は最終的に一般利用者に転嫁されかねない。金融庁が直接の管轄ではないシステム領域の課題に踏み込んだ背景には、政府が打ち出したNISA拡充策をめぐって証券界や銀行界で渦巻く不満がある』、「投資信託の現状」について、「システム会社間の競争がない状況では金融機関側のコストが押し上げられ、その負担は最終的に一般利用者に転嫁されかねない」、確かにその通りだろう。
・『シェア7割を占める  投信システムの寡占化とは、どういうことか。 投信業界はおおざっぱにみると、個々の商品のメーカーにあたる運用会社と、銀行や証券会社などの販売会社で構成される。運用会社と販売会社は日々、投信の運用状況などに関する膨大な量のデータを「公開販売ネットワーク」と呼ばれる仕組みを通じてやりとりする。さらにこの公販ネットワークは、基準価額(投信を売買する際の価格)を算出する「計理システム」という別の仕組みとつながっている。 この計理システムにおいて、金融庁調査では残高、件数ベースでトップの事業者のシェアが約7割を占める(下図参照)。ベンダーごとの仕様の違いのせいで、異なる会社のシステムをつなぐには追加的な手数料を求められるケースが多く、結果的に公販ネットワークでも寡占状態が広がっているとみられる。(※外部配信先では図表などの画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)) 当局内には、「システムのコストは結果的に、投資家への負担増加につながり、『貯蓄から投資へ』の流れを阻害する要因となりかねない」(金融庁職員)という懸念がある。 レポートは、各種システムにおける寡占化の結果として事業者間の競争が働かず、それが金融機関側のコスト高の原因になっていると指摘。投資信託協会に対し、システムの仕様統一などを通じた寡占状況の解消を促している。 公表資料では事業者の社名こそ伏せられているものの、投信まわりの各種システムの分野では野村総合研究所(NRI)など証券会社系の存在感が強いことで知られる』、「計理システムにおいて・・・トップの事業者のシェアが約7割を占める」、「システムにおける寡占化」は顕著なようだ。
・『仕方がないと黙認された過去  システム分野の寡占状態については過去にも水面下、何度か金融庁内で議題に上っていた。ある事情通の金融庁関係者によれば、森信親元長官の時代にもシステムの寡占化について正式に問題提起すべきという声が上がったものの、「それが彼らの商売なら仕方ない」と幹部からの意見で頓挫した経緯があるという。 別の関係者によれば中島淳一・現金融庁長官は就任後、「こういう市況で一部システム会社の業績だけが好調というのは違和感がある」と周囲に話した。制度上は直接的な監督の権限をもたないはずの金融庁が、このタイミングでなぜシステム分野の寡占化という問題に足を踏み入れたのか。) その背景のひとつに、2024年1月に予定されているNISA制度の刷新がある。 NISA拡充は、岸田政権が昨年11月の資産所得倍増プランで掲げた看板施策だ。ただ、実際のNISAの買い付けは手数料水準の低いインデックス型投信に集中しがちで金融機関側にとって“うまみ”は小さく、システム整備の負担増に対する不満が根強い。 「結局、NISAで口座が増えるのは一部のネット証券だけ。ほとんどの証券会社にとっては割に合わない負け戦だ」(有力証券会社)、「金融庁が制度改正に動くたびに改修で儲かるシステム業界は、当局とグルではないのかと疑いたくなる」(地銀)といった恨み節が聞こえる。 一方、システム会社側からは「金融分野は特に高い安全性が求められるため、コストの削減幅には限度がある」(システム会社幹部)という意見も聞こえる』、「実際のNISAの買い付けは手数料水準の低いインデックス型投信に集中しがちで金融機関側にとって“うまみ”は小さく、システム整備の負担増に対する不満が根強い。 「結局、NISAで口座が増えるのは一部のネット証券だけ。ほとんどの証券会社にとっては割に合わない負け戦だ」(有力証券会社)、「金融庁が制度改正に動くたびに改修で儲かるシステム業界は、当局とグルではないのかと疑いたくなる」(地銀)といった恨み節が聞こえる」、なるほど。
・『システム業界をスケープゴートに?  NISA口座倍増という政府目標に向けた取り組みに事業者間の温度差も目立つ中、金融庁は足元、現行一般NISA枠の機能を引き継ぐ「成長投資枠」の対象商品選定をめぐって業界側との折衝に苦戦している。システム業界をスケープゴートとして槍玉に挙げた今回のレポートには、資産運用業界全体の“ガス抜き”的な狙いも透ける。 単に金融機関のコスト削減にとどまることなく、一般利用者である国民の利益追求につながる改革を実現できるかどうか、金融庁の調整力が問われている』、「システム業界をスケープゴートとして槍玉に挙げた」のはともかく、「一般利用者である国民の利益追求につな」げてほしいものだ。

第三に、6月4日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したニコンやMUFGのCFOの徳成旨亮氏による「社長の7割が「親会社出身」、運用成績が業界平均を下回ってもクビにならず… 日本の資産運用業が「草食系」である理由とは」を紹介しよう。
・『毎年平均100名近い海外機関投資家と面談しているニコン現CFOの徳成旨亮氏によると、海外機関投資家との面談で、頻繁に「君たち(日本経済・日本企業・日本人)には『アニマルスピリッツ』はないのか?」と問い質されてきた、という。 海外投資家は、日本の社会や企業経営を、血気が衰え、数値的期待値を最重視しリスクに怯えている状態にあると見ている。結果、日経平均は1989年の最高値を未だ更新できておらず、水準を切り上げ続けている欧米株と比べて魅力がないと言われても仕方がない状況だ。 この現状を打破するにはどうしたらいいか? 徳成氏は、「CFO思考」が「鍵」になるという。 朝倉祐介氏(アニマルスピリッツ代表パートナー)や堀内勉氏(元森ビルCFO)が絶賛する6/7発売の新刊『CFO思考』では、日本経済・日本企業・日本人が「血気と活力」を取り戻し、着実に成長への道に回帰する秘策が述べられている。本書から、一部を特別に公開する』、「海外機関投資家との面談で、頻繁に「君たち・・・には『アニマルスピリッツ』はないのか?」と問い質されてきた」、「海外投資家は、日本の社会や企業経営を、血気が衰え、数値的期待値を最重視しリスクに怯えている状態にあると見ている」、いずれも的確な指摘だ。
・『日本の上場企業すべてを買収できる資金力を持つ世界最大の資産運用会社とは  私は三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の役員として、さまざまな国際的な金融のフォーラムや会議などに参加してきましたが、「会議の中心」が10年単位で変わってきたという印象を持っています。 すなわち、2000年より前は商業銀行が中心的立場にいました。米国ではシティバンクやJPモルガン・チェース、英国ではバークレイズやHSBCなど商業銀行の経営者が会議で基調講演をしたり、パネルディスカッションにも登壇したりしていました。 2000年前後からはM&Aなどの投資銀行ビジネスが花形となり、投資銀行(インベストメントバンク。日本で言えば証券会社)が金融界で主要な立場を占めるようになってきました。ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、リーマン・ブラザーズといった金融機関の発言力が大きくなっていったのです。 そして、世界は2008年、日本ではリーマンショックと呼ばれる世界金融危機を迎え、商業銀行や投資銀行は大きく傷つきました。 その後の世界経済の回復と世界的な株高局面で、金融機関の序列はがらりと変わりました。すなわち、これまでの銀行、投資銀行に代わって、資産運用会社が金融界の中心的役割を担うようになってきているのです。 資産運用会社の雄である米国のブラックロックがその代表選手であり、同社CEOのラリー・フィンク氏が金融業界で最もその発言の影響力がある人物と目されるようになりました。 グローバルな会議、たとえば毎年1月下旬にスイスのリゾート地で開かれるダボス会議では、「ラリーが何を言うか」に、金融界、さらには経済界の注目が集まるようになっています。 米国ブラックロックの運用資産残高は8.6兆ドル(約1118兆円)。世界最大のアセットマネジメント会社です[*1]。 東証の時価総額が5兆ドル、上海証取と香港証取を足した中国上場企業の時価総額が11兆ドル、GAFAに代表されるテック企業が多数上場しているNASDAQの時価総額が18兆ドル[*2]。ブラックロック1社で、日本企業のすべて、または中国企業の約8割、あるいはNASDAQ上場企業の半分近くの株を買えるわけですから、その巨大さと影響力がおわかりいただけるかと思います』、「これまでの銀行、投資銀行に代わって、資産運用会社が金融界の中心的役割を担うようになってきている」、「米国ブラックロックの運用資産残高は8.6兆ドル(約1118兆円)・・・1社で、日本企業のすべて、または中国企業の約8割、あるいはNASDAQ上場企業の半分近くの株を買えるわけですから、その巨大さと影響力がおわかりいただけるかと思います」、全く凄い規模だ。
・『資産運用業が金融界で覇権を握るのは歴史の必然  銀行から投資銀行、そして資産運用会社へという金融界の覇権の移行は、歴史の必然である、と私は考えています。すなわち、資本主義が高度に発展・進展すると、金融資本主義に進み、そこでは富の蓄積が行われ、最も効率的な利益創出である資産運用が行われるようになります。 ピケティ氏の「r>g」という不等式において、「r」を受け取ることができるのは投資のリスクを取っているファミリーオフィス、ソブリンウエルスファンド、年金基金、大学基金などのアセットオーナーです。そして、セームボートマネー(注)やプロフィットシェアリングの形で(欧米の)資産運用会社もその「r」の成長の恩恵に与ることができる立場にいます。 同じ金融機関でも、経済成長「g」を裏で支える銀行業は金利という定額の収入しかなく、それを超える上振れメリット(アップサイド)を享受することはできません。 また、証券会社は、企業の成長率「g」が株式や債券という有価証券に形を変えていくプロセスには株式増資や債券発行の引き受けという形で関与しますが、その株式や債券が生み出すリターン「r」を受け取る立場にはありません。 実は、資産運用業が金融機関の序列の最上位にいる状況は欧米先進国だけに限りません。 中国や中東の諸国も早くから「r>g」の不等式に気づき、ソブリンウエルスファンドという名の国営の資産運用会社を立ち上げ、最優秀の人材をここに投入して国富を増やしてきました。 たとえば、シンガポールの国家予算の4分の1は、同国のソブリンウエルスファンドの1社であるGICによる運用収益で賄われている状況です。つまり、シンガポールでは政府そのものがアセットオーナーとなって、「r」のメリットを享受し、国家予算を厚くしています。その結果、シンガポール国民も「r」の恩恵に与っている、と表現することもできます。 このように、欧米先進国や一部中進国においては、「r>g」という「ピケティの不等式」のメリットを貪欲に追求するアセットオーナーやそのおこぼれに与ろうとするアセットマネージャーがおり、各企業はこうした機関投資家から選ばれようと成長戦略を磨き、ROE(自己資本利益率)などの資本効率を高める努力をしています。 これが、金融資本主義が発展した社会の姿です』、「ソブリンウエルスファンド」の意味がより深く理解できた。
(注)セームボート(出資):不動産投資法人(リート)の資産運用会社のスポンサー(資産運用会社の大株主)が当該投資法人の投資口を購入・保有することを言います。セイムボート出資は、不動産投資法人の投資主、資産運用会社、スポンサーの利害を一致させる取り組みの一つです。投資口価格が下落して投資主が損をすれば、スポンサーも損をする仕組みです。セイムボート出資は不動産投資法人、資産運用会社、スポンサーの利害を一致させることで、投資家の信頼の獲得にも資する(投信資料館)。
・『日本の資産運用業界は平均並みのリターンでよしとする「草食系」がほとんど  一方、日本の機関投資家の行動様式や業界構造はほかの先進国とは異なる状況にあります。 すなわち、金主であるアセットオーナーは多様性が乏しく年金性資金が主流です。また、資産運用会社もTOPIXなどベンチマークに追随する運用が多く、どこも似たり寄ったりで特徴がありません。 まず、金主から見てみると、日本における最大のアセットオーナーは年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)という政府系機関です。GPIFは日本国民の国民年金や厚生年金を管理・運用する世界最大の年金基金です。その他、共済年金や各企業の年金などが日本における主な資金の出し手です。年金基金に匹敵する1000億円以上を運用するファミリーオフィスや大学基金などはほとんどありません。 日本の年金性資金のアセットオーナーは、リスク許容度が小さく、いわば「安全運転」の運用をアセットマネージャーに指示します。 すなわち、運用対象資産は流動性のある株式や債券などが中心で、不動産やPE(プライベート・エクイティ)など低流動性の資産への投資は限定的です。たとえば、GPIFの運用対象資産は、「伝統的4資産」と呼ばれる「国内株式」「海外株式」「国内債券」「海外債券」の4つであり、これらに25%ずつ投資する基本的ポートフォリオを組んでいます。 GPIFに代表される公的年金および企業年金の運用では、TOPIXやS&P500といったベンチマークよりも高い運用利回りを求めるアクティブ運用の割合が年々減少し、市場平均並みのリターンでよしとする草食系のインデックス運用(パッシブ運用)の割合が年々増加しています。 また、資産運用会社サイドも、欧米のようなセームボートマネーやプロフィットシェアリング方式の運用を採用している会社は少なく、AUM(アセット・アンダー・マネジメント。運用残高)に一定の料率をかけた金額を運用報酬として受領する、という手数料体系が一般的です。 この方式に従えば、ある運用機関の運用成績が業界平均を下回っても、相場自体が堅調で資産の時価が増えれば、得られる手数料も増えることになります。 セームボートマネーやプロフィットシェアリングがない以上、同業他社と同じような運用成績をあげておけば、AUMを削られることもなく、業界標準並みの報酬を得られます。つまり、アップサイドもないかわりにダウンサイドリスクも限定的です。 日本では、資産運用会社のファンドマネージャーがクビになるといった例はきわめて稀です。この点で、運用成績が振るわなければ市場から淘汰される欧米のファンドマネージャーとは大きく異なります。 もっと言えば、日本の運用機関で資産運用をしている大多数が「サラリー・ファンドマネージャー」であり、毎月、定額の給料を得ながら運用し、運用が上手くいっても失敗してもボーナスが若干上下する程度という報酬体系のなかで働いています。 また、日本では資本主義の歴史の違いや資本市場の厚みの違いから、欧米では主流の独立系資産運用会社は少数派です。その多くは銀行や証券会社などの子会社であり、経営者も資産運用の経験のない人物が天下りで派遣されるケースも見られます。 2023年4月に金融庁が公表した「資産運用高度化プログレスレポート2023」によれば、海外の大手資産運用会社の経営トップの約6割は20年以上の運用経験があり、内部昇格者が半分であるのに対し、日本では4割弱が運用経験3年未満で、さらに約7割が親会社などのグループ会社の出身者です[*3]。 このレポートでは、こうした人事は「顧客の最善の利益や資産運用会社としての成長よりも、グループ内の人事上の処遇を重視しているのではないかと一般に受け止められるおそれがある」と指摘しています。また、欧米の資産運用会社では、誰が責任を持ってファンドや投資信託を運用しているのかがわかるようにファンドマネージャーの個人名が開示されていますが、日本では運用担当者の氏名開示が進んでおらず、ファンドの本数に占める開示割合は、世界各国の中でも最低水準だと指摘しています。 このように、日本の資産運用業界は、資金の出し手や金主も、運用者やファンドマネージャーも双方が安定志向の「草食系」なのです』、「海外の大手資産運用会社の経営トップの約6割は20年以上の運用経験があり、内部昇格者が半分であるのに対し、日本では4割弱が運用経験3年未満で、さらに約7割が親会社などのグループ会社の出身者です。 このレポートでは、こうした人事は「顧客の最善の利益や資産運用会社としての成長よりも、グループ内の人事上の処遇を重視しているのではないかと一般に受け止められるおそれがある」、「日本の資産運用業界は、資金の出し手や金主も、運用者やファンドマネージャーも双方が安定志向の「草食系」なのです」、皆が「草食系」とはやれやれだ。
・『【著者からのメッセージ】 私は国内外あわせて毎年平均100名前後の機関投資家の方々と、直接もしくはネット経由で面談し、自社の株式への投資をお願いしてきました。これら多くのグローバル投資家から、私が繰り返し言われてきた言葉があります。それは、 「君たち(日本経済・日本企業・日本人)には『アニマルスピリッツ』はないのか?」 というフレーズです。 経済学者のジョン・メイナード・ケインズによれば、アニマルスピリッツとは、「実現したいことに対する非合理的なまでの期待と熱意」を意味します。海外の投資家たちは、日本の社会全体や企業経営から血気と活力が衰えている、つまり「アニマルスピリッツ」が日本経済から失われていると見ているのです。 この現状を覆すにはどうすればよいか? それが本書のテーマです。その答えは「CFO思考」にあると私は考えています。 「CFO(Chief Financial Officer、最高財務責任者)」と聞くと、数字のプロであり経理や資金調達に責任を負っている「経理・財務担当役員」が思い浮かぶ方も多いと思います。 しかし、欧米で「CFO」といえば、CEO(最高経営責任者)、COO(最高執行責任者)とともに3名で経営の意思決定を行う「Cスイート」の一角を占める重要職です。CFOは、投資家をはじめとする社外の多くのステークホルダー(利害関係者)に対しては、会社を代表してエンゲージメント(深いつながりを持った対話)を行い、社内に対しては、ROE(自己資本利益率)に代表される投資家の期待・資本の論理や、ESG投資家や地域社会など、異なるステークホルダーの要望を社員にもわかるように翻訳して伝え、その期待を踏まえた経営戦略を立て、それを実践するよう組織に影響を与え行動を促す、という役割を担っています。 そして、「アニマルスピリッツ」をCEOなどほかの経営陣と共有し、「数値をベースにした冷静な判断力」を持って考え、企業としての夢の実現に向け行動する、いわば企業成長のエンジンの役割を果たしています。 本書では、従来の日本の経理・財務担当役員に多く見られる「CFOは企業価値保全を第一義にすべきだ」という考え方を「金庫番思考」、「CFOは冷徹な計算と非合理的なまでの熱意を併せ持ち、企業成長のエンジンとなるべき」という考え方を「CFO思考」と呼びます。「『CFO思考』こそが、企業のパーパス(存在意義・目的)を実現させる」。これが本書の結論です。 本書でお話する内容には、企業経営に関するテーマが多く含まれています。同時に、現在、各企業において、経理、予算、財務、税務、IR、サステナビリティ・ESG、DX・ITといった分野で働くビジネスパーソン、もしくはそのような分野に興味がある方々も意識して書き下ろしました。皆さんが担当しておられるこれらの業務において、どのように「CFO思考」を発揮すればよいのかをご紹介しています。 こうした実務に携わっておられる皆さんには、グローバルで活躍できる人材として、将来日本企業と日本経済の成長のエンジンになっていただきたいと考えています。 CFOという仕事の魅力と楽しさが、一人でも多くの読者の皆さんに伝われば、それに勝る喜びはありません』、「従来の日本の経理・財務担当役員に多く見られる「CFOは企業価値保全を第一義にすべきだ」という考え方を「金庫番思考」、「CFOは冷徹な計算と非合理的なまでの熱意を併せ持ち、企業成長のエンジンとなるべき」という考え方を「CFO思考」」、「CFO思考」が広がってほしいものだ。

第四に、6月10日付け日刊ゲンダイが掲載した金融ジャーナリストの小林佳樹氏による「セゾン投信の「積立王子」こと中野晴啓会長退任の裏にスルガ銀行あり」を紹介しよう。
・『セゾン投信は5月31日の取締役会で、6月1日付で創業者の中野晴啓会長の退任を決めた。中野氏は、親会社のクレディセゾンのドン・林野宏会長と経営の路線を巡り対立したとされ、「不本意な退任だ」(中野氏)との言葉を残し会社を去る。 中野氏は東京都出身で、1987年に明治大学商学部を卒業し、クレディセゾンに入社。同グループの金融子会社で資金運用業務を担当、2006年にセゾン投信を設立し社長に就任した。2014年には日本郵便の資本参加を受け入れ、2017年からゆうちょダイレクトへの商品提供を開始している。「中野氏は金融庁の金融審議会『市場ワーキング・グループ』の中核メンバーで、投資信託協会副会長も務めている。投信業界のカリスマの一人だ」(市場関係者)とされる。 投資哲学は、積み立て投資を長期的に続けることによる資産形成の素晴らしさを主張しており、「積立王子」と称される。長期投資の普及を目指し、日本全国でセミナー活動を精力的に展開している。また、2010年には、コモンズ投信会長の渋沢健、レオス・キャピタルワークスCIO(最高運用責任者)の藤野英人と「草食投資隊」を結成し、話題を集めた。) セゾン投信の運用資産残高は6000億円超で口座保有者は15万人を超える。自社で投資信託商品を設定・運用し、インターネットなどを通じて購入手数料のかからないノーロード型、信託報酬の低い投資信託として販売している。 そのカリスマ退任に業界では激震が走っている。 「中野氏は今の積み立て投資ブームをつくった立役者の一人。セゾングループ内で何度も反対に遭いながらセゾン投信を設立、自ら伝道師となって休日も全国を駆け巡り、積み立て・世界分散投資の意を若い投資家に説き続けてきた。販路をやみくもに広げず、投資家との顔の見える関係にこだわったことが成長のエンジン。中野会長だからこそセゾンでの積み立てを続けてきた個人投資家も多く、大きな落胆と資金流出にもつながりかねない」(市場関係者)というのだ。 中野氏退任の背景にはグループの販売戦略の転換も指摘されている。 「クレディセゾンによるスルガ銀行の持ち分法適用会社化の動きと関係しているのでしょう。セゾングループのドン・林野氏にしてみればセゾン投信は総合金融グループ化のための重要なエンティティーであり、スルガ銀を通じた窓口販売で預かり資産を一挙に増やしたいと考えている」(別の市場関係者)という』、「中野氏は今の積み立て投資ブームをつくった立役者の一人。セゾングループ内で何度も反対に遭いながらセゾン投信を設立、自ら伝道師となって休日も全国を駆け巡り、積み立て・世界分散投資の意を若い投資家に説き続けてきた。販路をやみくもに広げず、投資家との顔の見える関係にこだわったことが成長のエンジン。中野会長だからこそセゾンでの積み立てを続けてきた個人投資家も多く、大きな落胆と資金流出にもつながりかねない」、「資金流出」といっても、中野氏が独自の「投信」を立ち上げた訳でもないので、流出規模は知れているだろう。ただ、「ファン」心理は合理的に動くとは限らないだけに、不確定要素も大きいようだ。
・『顧客離れの懸念も  だが、セゾン投信の顧客はほぼイコール積立王子ファンであり、中野氏の退任で顧客離れも懸念される。また、セゾン投信の株主はクレディセゾン(所有比率60%)と日本郵便(同40%)。日本郵便がどう判断するかも注目点だ』、「ファン」心理については、上述と同様なので、不確定要素も大きいとみておくべきだろう。
タグ:ダイヤモンド・オンライン 「投資信託の現状」について、「システム会社間の競争がない状況では金融機関側のコストが押し上げられ、その負担は最終的に一般利用者に転嫁されかねない」、確かにその通りだろう。 投資(商品販売・手法) 「リーマンショック後、多くのファンド勢にとって商業用不動産の重要性は高まった。特に、投資銀行などと異なり、ファンド運営会社に対する規制は相対的に緩い環境が続いた。投資銀行にとって、ファンド向けの貸し出しは高い利益を生むため、重要性が増した」、「IT先端企業の急成長、さらにはスタートアップ企業やシェアオフィスの利用が急速に増えた。データセンターの建設も急増した。そうした需要の増加に支えられ、商業用不動産市場は成長した」、なるほど。 (その3)(商業用不動産ファンドが「次の危機」の震源地に?空室率上昇と利上げで警戒感、金融庁が問題視、「投資家のコスト」が増える背景 投資信託を取り巻く課題をレポートで指摘、社長の7割が「親会社出身」、運用成績が業界平均を下回ってもクビにならず… 日本の資産運用業が「草食系」である理由とは、セゾン投信の「積立王子」こと中野晴啓会長退任の裏にスルガ銀行あり) 東洋経済オンライン 「米国をはじめ商業用不動産市場の下落が鮮明化し、多くの投資ファンドが厳しい状況に追い込まれる可能性は否定できない」、「商業用不動産などの投資ファンドが、今後の金融危機の火種になるリスクは頭に入れておいた方がよいだろう」、その通りだ。 「米欧の中央銀行が政策金利を引き上げるにつれ、資金借り入れコストは増える。加えて、商業用不動産などの価値が下落してもいる。ファンドからの資金流出も増える。 一方、商業用不動産の流動性は低い。こうして、資金の調達(短期)と運用(長期)のミスマッチが深刻化し、資金運用に行き詰まるファンドが急速に増えている」、なるほど。 「金融専門家の中には、次の危機の震源地として「商業用不動産などに投資するファンド」への警戒を強めている向きがある」、「今後の資産価格の展開次第では、一部の投資ファンドが過剰なリスクを抱え、業況が悪化する可能性がある。それが現実のものになると、世界的に金融システムの不安定感を高める要因になるだろう」、なるほど。 真壁昭夫氏による「商業用不動産ファンドが「次の危機」の震源地に?空室率上昇と利上げで警戒感」 川辺 和将氏による「金融庁が問題視、「投資家のコスト」が増える背景 投資信託を取り巻く課題をレポートで指摘」 「計理システムにおいて・・・トップの事業者のシェアが約7割を占める」、「システムにおける寡占化」は顕著なようだ。 「実際のNISAの買い付けは手数料水準の低いインデックス型投信に集中しがちで金融機関側にとって“うまみ”は小さく、システム整備の負担増に対する不満が根強い。 「結局、NISAで口座が増えるのは一部のネット証券だけ。ほとんどの証券会社にとっては割に合わない負け戦だ」(有力証券会社)、 「金融庁が制度改正に動くたびに改修で儲かるシステム業界は、当局とグルではないのかと疑いたくなる」(地銀)といった恨み節が聞こえる」、なるほど。 「システム業界をスケープゴートとして槍玉に挙げた」のはともかく、「一般利用者である国民の利益追求につな」げてほしいものだ。 徳成旨亮氏 「社長の7割が「親会社出身」、運用成績が業界平均を下回ってもクビにならず… 日本の資産運用業が「草食系」である理由とは」 「海外機関投資家との面談で、頻繁に「君たち・・・には『アニマルスピリッツ』はないのか?」と問い質されてきた」、「海外投資家は、日本の社会や企業経営を、血気が衰え、数値的期待値を最重視しリスクに怯えている状態にあると見ている」、いずれも的確な指摘だ。 「これまでの銀行、投資銀行に代わって、資産運用会社が金融界の中心的役割を担うようになってきている」、「米国ブラックロックの運用資産残高は8.6兆ドル(約1118兆円)・・・1社で、日本企業のすべて、または中国企業の約8割、あるいはNASDAQ上場企業の半分近くの株を買えるわけですから、その巨大さと影響力がおわかりいただけるかと思います」、全く凄い規模だ。 「ソブリンウエルスファンド」の意味がより深く理解できた。 (注)セームボート(出資):不動産投資法人(リート)の資産運用会社のスポンサー(資産運用会社の大株主)が当該投資法人の投資口を購入・保有することを言います。セイムボート出資は、不動産投資法人の投資主、資産運用会社、スポンサーの利害を一致させる取り組みの一つです。投資口価格が下落して投資主が損をすれば、スポンサーも損をする仕組みです。セイムボート出資は不動産投資法人、資産運用会社、スポンサーの利害を一致させることで、投資家の信頼の獲得にも資する(投信資料館)。 「海外の大手資産運用会社の経営トップの約6割は20年以上の運用経験があり、内部昇格者が半分であるのに対し、日本では4割弱が運用経験3年未満で、さらに約7割が親会社などのグループ会社の出身者です。 このレポートでは、こうした人事は「顧客の最善の利益や資産運用会社としての成長よりも、グループ内の人事上の処遇を重視しているのではないかと一般に受け止められるおそれがある」、 「日本の資産運用業界は、資金の出し手や金主も、運用者やファンドマネージャーも双方が安定志向の「草食系」なのです」、皆が「草食系」とはやれやれだ。 「従来の日本の経理・財務担当役員に多く見られる「CFOは企業価値保全を第一義にすべきだ」という考え方を「金庫番思考」、「CFOは冷徹な計算と非合理的なまでの熱意を併せ持ち、企業成長のエンジンとなるべき」という考え方を「CFO思考」」、「CFO思考」が広がってほしいものだ。 日刊ゲンダイ 小林佳樹氏による「セゾン投信の「積立王子」こと中野晴啓会長退任の裏にスルガ銀行あり」 「中野氏は今の積み立て投資ブームをつくった立役者の一人。セゾングループ内で何度も反対に遭いながらセゾン投信を設立、自ら伝道師となって休日も全国を駆け巡り、積み立て・世界分散投資の意を若い投資家に説き続けてきた。販路をやみくもに広げず、投資家との顔の見える関係にこだわったことが成長のエンジン。中野会長だからこそセゾンでの積み立てを続けてきた個人投資家も多く、大きな落胆と資金流出にもつながりかねない」、 「資金流出」といっても、中野氏が独自の「投信」を立ち上げた訳でもないので、流出規模は知れているだろう。ただ、「ファン」心理は合理的に動くとは限らないだけに、不確定要素も大きいようだ。 「ファン」心理については、上述と同様なので、不確定要素も大きいとみておくべきだろう。
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中国経済(その17)(「高学歴層が増える中国」が迎えうる"意外な未来" "現代最高の知性"が予言する「新しい全体主義」、中国は人口減による衰退論に猛反発 本当は他国に触れられたくない“縮みの現実”とは、中国でなぜ「巨大な赤ちゃん」が増えているのか?炎上が相次ぐ異常なワガママぶりの背景、中国経済を見限り「日本株」にマネーを投下する海外投資家が増えている理由) [世界経済]

中国経済については、本年3月19日に取上げた。今日は、(その17)(「高学歴層が増える中国」が迎えうる"意外な未来" "現代最高の知性"が予言する「新しい全体主義」、中国は人口減による衰退論に猛反発 本当は他国に触れられたくない“縮みの現実”とは、中国でなぜ「巨大な赤ちゃん」が増えているのか?炎上が相次ぐ異常なワガママぶりの背景、中国経済を見限り「日本株」にマネーを投下する海外投資家が増えている理由)である。

先ずは、本年4月4日付け東洋経済オンラインが掲載した歴史家・文化人類学者・人口学者のエマニュエル・トッド氏による「「高学歴層が増える中国」が迎えうる"意外な未来" "現代最高の知性"が予言する「新しい全体主義」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/660407
・『「世界最高の知性」の一人と言われるエマニュエル・トッド氏。「ソ連崩壊」から「金融危機」まで数々の歴史的出来事を予言してきた彼が、パンデミックにおける中国のあり方をどう分析したのか?『2035年の世界地図──失われる民主主義 破裂する資本主義』に収録されたトッド氏の新たな予言を特別に公開する(Qは聞き手の質問)』、興味深そうだ。
・『「新しい種類の全体主義」の可能性  Q:パンデミックの危機は、特に先進国において、分断を加速させるような形で民主主義の危機をもたらしている。そうお考えのあなたに、中国についてもお伺いしたいと思います。 エマニュエル・トッド:(Q:パンデミックへの対処において、中国共産党による事実上の独裁である権威主義体制が民主主義より優れている、という中国の主張についてどう思われますか?) 私たちが見てきたのは、新しい種類の全体主義システムの可能性です。 中国という国家、つまり共産党や警察部門、主語をどう表現すべきかは迷ってしまいますが、たしかに彼らはロックダウンなどの実行に成功しました。ある意味、信じられないことです。 興味深いのは、ロシアで起きたことは、中国と正反対だったことです。どちらも権威主義の伝統を持っていますが、コロナに関する限り、ロシア政府は国民をまったく制御できませんでした。) 教育の動きについてお話ししたとき、私は先進国社会における一種の普遍的モデルに言及しました。識字能力があまねく社会で共有された後、高等教育が広がり、階層化し、そして社会を断片化するという諸段階です。 これはすべての国に当てはまりますね。しかし、考慮しなければならない要素がもう1つあります。 すべての先進国の制度を寡頭制的とも表現できる、ということです。さまざまな種類の民主主義があるのと同様、今やさまざまな種類の寡頭制があります』、「ロシアで起きたことは、中国と正反対だったことです。どちらも権威主義の伝統を持っていますが、コロナに関する限り、ロシア政府は国民をまったく制御できませんでした」、「コロナに関する限り、ロシア政府は国民をまったく制御」する気がなかった方が適切な気がする。
・『「家族制度」から見た日本と中国  私の研究テーマでもある「家族制度の重要性」、永続的な家族の価値の重要性といったことに関係しています。 つまり、組織化された社会で続く家族の価値であり、それは伝統的な農民家族が消失した後も存続するのです。中国の家族、伝統的な中国の農民の家族は、権威主義的であり、非常に強い父親がいますが、同時に兄弟間で平等に相続するというルールを持つ平等主義でもあります。それは強い父系でした。女性に比べて、男性を非常に重視します。 一方で、日本の伝統的な家族制度は直系家族制と呼ばれ、伝統的に長男の相続でした。中国ほどではないが、権威主義的でした。これは社会人類学者が常に指摘することですが、中国の家族よりも権威的ではないものの非平等主義です。日本の家庭では、兄弟は同じ価値ではありません。 これは両国の社会の権威主義的傾向を説明するとともに、中国が権威主義的で平等主義的な共産主義を生み出したという事実と、日本が移行に際して階層社会を生み出したことを説明できます。 日本は近代工業社会やポスト工業社会に、より容易に適応しました。 今、中国にあるのは、国民を制御するための最新の技巧です。顔認証があり、インターネットがあり、最先端のあらゆるツールがあります。しかし同時に、中国には、権威主義的および平等主義的な家族の価値が存続していて、彼らの社会的価値にもつながっています。) 中国について考えるとき、中国が経済的に成功したせいで、中国は極めて同質的であると考えるかもしれません。また、中国は完璧な権威主義システム、または世界で最も権威主義的なシステムとも表現されるでしょう。しかし、中国の指導者たちはそう見ていません』、「今、中国にあるのは、国民を制御するための最新の技巧です。顔認証があり、インターネットがあり、最先端のあらゆるツールがあります。しかし同時に、中国には、権威主義的および平等主義的な家族の価値が存続していて、彼らの社会的価値にもつながっています」、なるほど。
・『権威主義的な中国で人々が決起する?  彼らは中国が強い平等主義の価値観に基づいて、共産主義革命を起こしたことを覚えています。これらの平等主義的な価値観がまだそこにあることを知っています。 中国の社会には公正を求める要素があります。中国の指導者たちは常に、人々の決起の可能性を考慮に入れておかなければなりません。 これは、中国を統治することが非常に厳しい理由の1つだと思います。それは内向きのもろさがあります。 もう1つ、付け加えておきましょう。中国はすでに、人口の中に相当数の高学歴層がいるということです。この状況は西洋のどこにおいても、伝統的イデオロギーの解体をもたらしました。多くの人は知らないでしょうが、私は高等教育を受けた人々が人口のうちの25%を占めたことが、ソ連で共産主義が崩壊した本当の理由だと考えています。 私は1988年のデータを持っています。当時のソ連の国勢調査によると、高等教育を受けた者の割合が25%に達していました。そして、1990年にシステムが崩壊したのです。 中国は、今のところまだこの水準(25%)には達していませんが、中国の将来について考えると、政治的バランスと民主主義の将来という観点から相反する2つの力があると思います。 一方には、中国の文化と革命の伝統として、平等主義の要素があります。もう一方で、高等教育を受けた人々が増えています。中産階級と呼ばれる層です。この階層の比率が、共産主義崩壊直前のソ連と同じ水準に達しようとしているのです』、「中国の社会には公正を求める要素があります。中国の指導者たちは常に、人々の決起の可能性を考慮に入れておかなければなりません。 これは、中国を統治することが非常に厳しい理由の1つだと思います」、「一方には、中国の文化と革命の伝統として、平等主義の要素があります。もう一方で、高等教育を受けた人々が増えています。中産階級と呼ばれる層です。この階層の比率が、共産主義崩壊直前のソ連と同じ水準に達しようとしているのです」、「中国」でも「中産階級」が25%、と「共産主義崩壊直前のソ連と同じ水準に達しようとしている」、「「中国」で「中産階級」が25%」になったとしても、「共産主義崩壊直前のソ連」のようなことにはならないのではなかろうか。

次に、5月1日付けデイリー新潮が掲載した経済産業研究所コンサルティングフェローの藤和彦氏による「中国は人口減による衰退論に猛反発 本当は他国に触れられたくない“縮みの現実”とは」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/05011118/?all=1
・『足元の最大の不安材料はデフレ懸念  国連経済社会局は4月24日、「インドの人口が4月末までに中国を追い抜き、世界最多となる」との予測を発表した。今後の見通しについても「インドで数十年にわたり人口が増加し続けるのに対し、中国は今世紀末までに10億人を割り込む」としている。 国連の予測は19日に国連人口基金が公表したデータに基づく客観的なものだ。だが、中国政府は「西側メディアが中国を中傷するため、人口減少による中国衰退論を意図的に喧伝している」と猛反発している。 中国の今年第1四半期の経済成長率は前年比4.5%増となり、昨年第4四半期の2.9%増から加速した。これを受けて、米国の大手金融機関は中国の経済成長率を相次いで上方修正しており、国際通貨基金(IMF)も「中国はインドともに今年の世界経済を牽引する」と予測している。 「ゼロ・コロナ政策を解除した中国の景気は回復する」との見方が出ているのにもかかわらず、なぜ中国政府は「衰退論」に過剰反応しているのだろうか。 中国経済にとって足元の最大の不安材料はデフレ懸念だ。成長率が上振れしているのにもかかわらず、物価の下落傾向が強まっている。 不動産バブルの崩壊により、で生産者物価指数(PPI)は昨年後半以降、マイナスの状態が続いている。消費者物価指数(CPI)も3月、前年比0.7%増にまで低下している。 中国政府は「デフレは起きていない」と主張しているが、専門家は「中国経済の深い部分にまでデフレ圧力が浸透している」と分析している(4月19日付ロイター)』、「専門家は「中国経済の深い部分にまでデフレ圧力が浸透している」と分析」、これは深刻だ。
・『若者のキャリア・パスにも「縮み」の現象が  デフレとは「物価が持続的に下落している現象」であり、日本語では「経済収縮」と訳される。平たく言えば「経済が持続的に縮んでいく」ことだが、中国経済は至るところで「縮み」傾向が目立つようになっている。 この傾向が最も顕著なのは個人消費だ。日本を始め先進国の国内総生産に占める個人消費の割合は5割を超えるが、中国の比率は4割に満たない。このことは中国経済が抱える構造的な弱点とされてきたが、足元の状況はむしろ悪化している感がある。 不動産バブルの崩壊がもたらす資産デフレが悪影響を与えており、中国の家計は将来のリスクに備えて貯蓄を大幅に増やしている。中国の家計貯蓄は昨年、17兆8000億元増と過去最大の伸びを示した。今年第1四半期にさらに9兆9000億元増加し、増加幅は2021年通年の伸びに匹敵する。 この大きく膨らんだ貯蓄を消費などに振り向けるため、中国政府は銀行に対して預金金利をさらに引き下げるよう指示しているが、成果が上がるとは思えない。3月の失業率は16歳から24歳までが19.6%と記録的な水準に達しており、雇用不安が続く状況で中国人の貯蓄志向が変わるとは思えないからだ。 中国の若者のキャリア・パスに「縮み」の現象が生じていることも気になるところだ。 高学歴の若者たちが高給取りの仕事を捨て、低賃金の肉体労働の仕事に転職して慎ましく生きていくという選択を取り始めている(「クーリエ・ジャポン」4月20日配信記事)。若者がキャリア・ダウンを志向するのは「ラットレース(ハードワークをしても豊かになれない状態)は意味がない」との認識が広まっているからだという。 「縮み」傾向の下、中国の海外旅行者の数もピーク時の水準を大きく下回っており(「ロイター」4月19日配信記事)、中国人観光客の増加による日本のインバウンド需要の拡大は期待外れに終わってしまうのかもしれない』、「若者がキャリア・ダウンを志向するのは「ラットレース(ハードワークをしても豊かになれない状態)は意味がない」との認識が広まっているからだという」、「「若者がキャリア・ダウンを志向する」とは由々しいことだ。
・『足かせは中国を巡る地政学リスク  中国経済を牽引していた輸出も「縮み」始めている。 予想に反し、中国の3月の輸出は増加に転じた。6カ月ぶりのことだが、「コロナ以前の水準にまで回復することは難しい」との予測が一般的だ。 その要因の1つとして、中国の人件費上昇がある。これを受けて、製造業の生産拠点が東南アジアに多く移転した。 今年4月、中国最大の貿易見本市である広州交易会が4年ぶりに開催されたが、出展した中国の輸出企業は環境の激変ぶりを痛感しており、今後、輸出部門で大幅なリストラが実施されるのは必至の情勢だ。 中国経済の成長に貢献してきた海外からの投資マネーも縮んでいる。 習近平国家主席を筆頭に中国の当局者らが異口同音に中国経済の復活を宣言し、規制強化で招いたダメージの修復に取り組んでいるが、中国ハイテク企業からの投資の引き揚げが止まらない(「Bloomberg」4月14日配信記事)。 足かせとなっているのは中国を巡る地政学リスクだ。外国勢の資金引き揚げが進み、中国株の下落が続いている。 「Bloomberg」の記事はモルガン・チェースの調査を引用し、投資家が「最も撤退する可能性が高い新興国」として挙げたのは中国だったとしている。中国経済は回復しつつあっても、「投資家の頭に浮かぶのは米中関係や台湾問題」だからだ。 中国の科学技術分野の論文発表数は米国に次いで世界第2位となり、「科学技術大国」のイメージが強まっているが、実態は違うようだ。 研究の不正が横行し、中国の研究者たちが「偽造論文」を世界中にまき散らしている実態が明らかになっており(「クーリエ・ジャポン」4月23日配信記事)、「科学技術大国」中国に対する期待も今後、大きく縮むことになるだろう。 このように、中国経済の縮み(衰退)は深刻だ。中国政府が声高に衰退論を否定するのは、このことを誰よりもよく知っているからではないだろうか』、「研究の不正が横行し、中国の研究者たちが「偽造論文」を世界中にまき散らしている実態が明らかになっており・・・「科学技術大国」中国に対する期待も今後、大きく縮むことになるだろう」、「中国政府が声高に衰退論を否定するのは、「中国経済の縮みは深刻」であることを、「誰よりもよく知っているからではないだろうか」、「中国経済」は想定以上に「深刻」なようだ。 

第三に、6月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したフリージャーナリストの中島 恵氏による「中国でなぜ「巨大な赤ちゃん」が増えているのか?炎上が相次ぐ異常なワガママぶりの背景」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/324172
・『交通機関で泣く子ども、学校に猛抗議するモンスターペアレント……日本でもよくある話だが、中国ではこれが思いがけない方向に展開して大騒動になることが珍しくない。日本人の目から見て、信じられないほど“わがままな大人”が多いためだ。なぜ中国では、公共の場でも気にせずわがままな振る舞いをする大人が増えているのか? 親子関係の問題も含め、改めて検証する』、興味深そうだ。
・『観光地や交通機関で「わがままな大人」が騒動を起こす  今年、中国のゴールデンウイークはコロナ禍前の水準に戻り、のべ2億7400万人が移動した。しかし、観光客でごった返す各地には、「わがままな子ども」だけでなく、「わがままな大人」が続出。SNSで炎上する事案が多発した。 4月下旬、中国の高速鉄道(日本の新幹線に相当)の車内で、2人の女性が激しい口論を繰り広げた。最初にケンカを売った女性は、後部座席の赤ちゃんの泣き声で自分の眠りが邪魔されたと言って、赤ちゃんの母親を大声で怒鳴り、母親もそれに応戦。口論する様子は数十分にわたって車内に響き渡り、乗務員が仲裁に入ってようやく収まった。 このときの動画がSNSに投稿されると、「公共の場で母親は子どもをおとなしくさせるべきだ」という意見と、「大人なら寛容になるべきだ」という意見が対立。炎上する騒ぎとなった。) 日本でも電車内で赤ちゃんが泣くことは珍しくないが、赤ちゃんが泣いていることに文句を言う大人はめったにいないし、それがきっかけで口論が始まることもほぼない。だが、中国では、赤ちゃんに限らず、ささいなことがきっかけで、公共の場で大ゲンカが起きることはよくある。 電車内で起きたことなら、自分が他の車両に“避難”すれば済むことだが、これが飛行機だとそうもいかない。たとえば、前の座席の人が突然背もたれを大きく倒す、後ろの座席の人が前の座席の上に足を乗せる、機内中に響き渡るほどの大音量で音楽を流す人がいる、といったトラブルはよく起こる。そのたびに騒動になり、多くの人々は、ごく一部の人の犠牲となる』、「中国では、赤ちゃんに限らず、ささいなことがきっかけで、公共の場で大ゲンカが起きることはよくある」、我慢することをせず、要求するだけの姿勢では、「公共の場で大ゲンカが起きることはよくある」、困ったことだ。
・『「動画を撮ってSNSにアップ→炎上」が事態を厄介に  さらにここ数年、問題を厄介にさせているのは、誰かがすぐにその場で動画を撮影し、SNSに投稿してしまうことだ。中国では他の問題もそうだが、SNS上で賛否両論が巻き起こると、次第に本題を外れて、別の話題へと発展し、元ネタが何だったかわからなくなるほどの大ゲンカがSNS上で勃発する。そうした「第二次戦争」「代理SNS戦争」ともいえるような状態が近年激しくなっており、日本のメディアでもしばしば取り上げられるようになった。 そもそもなぜ中国では、公共の場で、そこまでわがままな振る舞いをする人が多いのか。 考えられるのは、やはり1979年末から始まり、30年以上も続いた一人っ子政策の影響だろう。子どもは1人と政府に決められ、子どもを溺愛する親が増えた。中には我が子に何でも買い与え、「小皇帝」という別名の通り、勉強以外、すべてのことを子どもの代わりにやってあげるという親もいる。同政策の実施後に生まれた世代の最年長は40歳を超えており、年齢的にはすでに立派な大人だが、自由奔放に育てられた結果、すべてにおいて自己中心的で、自分の思い通りにならないと癇癪(かんしゃく)を起こす、我慢ができない、悪態をつく、という人が増えた。 中国で2018~2019年頃に流行語となった言葉に「巨嬰症(ジュ―インジェン)」がある。「巨大な赤ちゃん病」、つまり、赤ちゃんのまま大人になった人を指す言葉だ。本当の病名ではなく、そのような状態になることをいう』、「1979年末から始まり、30年以上も続いた一人っ子政策の影響だろう。子どもは1人と政府に決められ、子どもを溺愛する親が増えた。中には我が子に何でも買い与え、「小皇帝」という別名の通り、勉強以外、すべてのことを子どもの代わりにやってあげるという親もいる。同政策の実施後に生まれた世代の最年長は40歳を超えており、年齢的にはすでに立派な大人だが、自由奔放に育てられた結果、すべてにおいて自己中心的で、自分の思い通りにならないと癇癪(かんしゃく)を起こす、我慢ができない、悪態をつく、という人が増えた」、「一人っ子政策」がこんな悪影響を及ぼしているとは驚かされた。「巨大な赤ちゃん病」とは言い得て妙だ。
・『「巨大赤ちゃん病」な大人の子どもは「熊孩子」  中国メディア「人民網」にも、「大人になっても精神年齢が赤ん坊のままな人。自己中心的でルールを守らず、予想外の事態が起きると情緒をコントロールできなくなり、幼児のような方法で抗議する。たとえば、泣いたりわめいたりして、他人に譲歩させ、自分の目的を果たす」とその説明が書かれているほどだ。 4月末、まさに、この説明に当てはまる事案が起きた。上海ディズニーランドで、ある男性が禁煙エリアでたばこを吸ったが、そのことをスタッフに注意されたことに逆ギレし、スタッフともみ合いになった男性は園内を逃走。挙げ句の果ては、開き直って「大の字」になって地面に寝そべった。そのことが大きく報道され、SNSにも投稿された。 ただ暴れるだけなら周囲もあきれて離れていくだけだが、問題は精神的な面でも未熟で、「巨嬰症」と思われる幼稚な言動を取る人が少なくないことである。会社内でもルールを守らなかったり、陰湿な手口で同僚や取引先をおとしめたりすることだ。一見するとわからないことも多く、立派なキャリアを歩むエリート層の中にも「巨嬰症」の人は潜んでいる。 また、そうした「子どものような大人」の子どもなのか、親がまったくしつけをしていないと思われる「熊孩子」(ションハイズ=熊のように落ち着きのない子ども)問題も起きている。 これも「巨嬰症」と同じく2018~2019年頃に流行した言葉で、関連して「熊家長」(ションジアチャン=熊のような子どもを注意せず、逆に、注意した他人に食ってかかるような親)という問題も起きた。「熊家長」は学校の教師にも理不尽な要求などをすることから、日本のモンスターペアレントのように表現され、社会問題にもなっている』、「上海ディズニーランドで、ある男性が禁煙エリアでたばこを吸ったが、そのことをスタッフに注意されたことに逆ギレし、スタッフともみ合いになった男性は園内を逃走。挙げ句の果ては、開き直って「大の字」になって地面に寝そべった。そのことが大きく報道され、SNSにも投稿された。 ただ暴れるだけなら周囲もあきれて離れていくだけだが、問題は精神的な面でも未熟で、「巨嬰症」と思われる幼稚な言動を取る人が少なくないことである」、「親がまったくしつけをしていないと思われる「熊孩子」」、「「熊家長」(ションジアチャン=熊のような子どもを注意せず、逆に、注意した他人に食ってかかるような親)」、問題児や親にも様々あるようだ。
・『日本とはレベルが違う「祖父母に預けっぱなし」事情  自分自身が親からしつけや家庭教育を受けていないため、自分の子どもをしつけられないのは当然といえば当然だが、そういう人が増えた背景には、考えられる要因がいくつかある。 その一つは両親が共働きで、子どもを自身の手で育てていないことがある。むろん、日本でも、共働き家庭で、子どもをしっかりしつけている親はいくらでもおり、共働きが直接の原因というわけではない。中国の都市部の場合、問題は、祖父母に育児のほとんどを任せっきりにしてしまう人がいることだ。 日本では、昼間は祖父母や保育施設に子どもを預けても、毎日夕方や夜には引き取り、夜は一緒に過ごすことが一般的だろう。だが中国では、近所に住む祖父母に平日ずっと(つまり週5日間)預けっぱなしということも珍しくない。祖父母と同居している場合は毎晩子どもと顔を合わせるが、「こちらはフルタイムで働いていて忙しいのだから、しつけも家事も祖父母の仕事」とばかりに、一切何もしない親も多い。祖父母を「無料のお手伝いさん」と思っている人もいるくらいだ。) また、祖父母に子どもを預けている安心感からか、退勤時間後に真っすぐ自宅に戻らず、遊びに行ってしまう親もいる。もちろん、幼い子どもがいるから夜遊びに行ってはいけないという意味ではない。それぞれの家庭によって事情は異なり、ケース・バイ・ケースだが、中国の場合、その頻度は日本よりもかなり多い。 農村の場合は、また違った事情がある。農村から都市部に出稼ぎに行く「農民工」の多くが、子どもを農村にいる祖父母に預けていく。出稼ぎは労働時間が長く、子どもを預けるところもなく、お金もないため、やむにやまれぬことなのだが、いったん出稼ぎに行けば、帰省できるのは年に1~2回だけだ。春節や国慶節などの大型連休のみで、それ以外は電話などで話す程度になり、親子のコミュニケーションは非常に少なくなる。 こうした子どもは「留守児童」と呼ばれ、自殺や精神不安の要因となっている。しつけや家庭教育は祖父母の役目となるが、祖父母は年を取っている上、自分の子ではないため、また「親と離れている孫がかわいそう」という気持ちもあって、子どもに甘くなってしまいがちだ』、「出稼ぎは労働時間が長く、子どもを預けるところもなく、お金もないため、やむにやまれぬことなのだが、いったん出稼ぎに行けば、帰省できるのは年に1~2回だけだ。春節や国慶節などの大型連休のみで、それ以外は電話などで話す程度になり、親子のコミュニケーションは非常に少なくなる。 こうした子どもは「留守児童」と呼ばれ、自殺や精神不安の要因となっている。しつけや家庭教育は祖父母の役目となるが、祖父母は年を取っている上、自分の子ではないため、また「親と離れている孫がかわいそう」という気持ちもあって、子どもに甘くなってしまいがちだ」、やむを得ないようだ。
・『中国政府から“しつけに関する法律”が出された  もちろん、祖父母に立派に育てられた子どもも大勢いることは言うまでもない。だが、都市部でも、農村部でも、さまざまな事情によって、子どもをしつけられない親、そして、しつけられたことがない子ども、というのが、かなり大勢いることは確かだ。そうした親子2世代、あるいは3世代にわたる問題の結果、「巨嬰症」や「熊孩子」があちこちに出現し、社会を乱す要因になっていると考えられる。しかも、前述の通り、それがいちいちSNSに投稿される時代になったことにより、さらに別の社会問題を引き起こしている。 2021年、中国政府はしつけに関する法律「家庭教育促進法」を制定した。中国政府は、保護者が子どもの成績を重視するあまり、家庭で適切なしつけが行われていないことなどを問題視。法律に「高齢者や幼児を大切にし、勤勉節約に努めること、部屋の片づけを他人任せにしないこと」などを明記した。この法律に対し、家庭でのしつけにまで政府が介入するのか、といった意見もあったが、つまり、こういった法律が出るくらい、しつけや家庭教育の問題が社会全体で大きくなっており、政府にとって頭の痛い問題であることを表しているといえる』、「2021年、中国政府はしつけに関する法律「家庭教育促進法」を制定した。中国政府は、保護者が子どもの成績を重視するあまり、家庭で適切なしつけが行われていないことなどを問題視。法律に「高齢者や幼児を大切にし、勤勉節約に努めること、部屋の片づけを他人任せにしないこと」などを明記した」、「こういった法律が出るくらい、しつけや家庭教育の問題が社会全体で大きくなっており、政府にとって頭の痛い問題であることを表しているといえる」、法律まで出したとは問題が深刻なようだ。

第四に、7月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「中国経済を見限り「日本株」にマネーを投下する海外投資家が増えている理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/325908
・『最近は、中国経済を見限る投資家も増えているようだ。米ドルに対する人民元の下落は明らか。株式市場も、上海、深セン、香港ともに弱含み傾向だ。そうした状況下、中国株を売り、その資金を日本株に振り向ける海外投資家が増えている。背景にある中国経済のメカニズムを振り返るとともに、米国の金融政策が中国経済を下押しする可能性についても考察する』、興味深そうだ。
・『逆回転し始めた中国の高度経済成長のメカニズム  6月30日、中国国家統計局は、6月の購買担当者景況感指数(PMI、50を境に景気の拡大と減速を示す)を発表した。それによると、製造業の指数は49.0で、3カ月連続で50を下回った。一方、非製造業の飲食、宿泊、交通などサービス業の指数は、前月から低下し53.2だった。中国経済の停滞懸念は高まっている。 中国では過去、景気の先行き懸念が高まると、共産党政権は積極的な経済対策を実行してきた。その政策が、中国経済の高成長を支えてきたといえる。特に重要だったのが不動産投資だ。不動産価格が上昇する期待を背景に、不動産に対する投資は増え、国全体の景気を下支えした。地方政府の土地使用権の収入は増え、それを原資として刺激策を実施し経済成長率を押し上げることができた。 ところが今、かつての高成長のメカニズムが逆回転し始めている。不動産市況は悪化し、地方政府の歳入は減少。そのため、大規模な景気対策を打ち出すことが難しい。共産党政権による政権を維持するための指導部人事も、先行きを不透明にする要因になっている。そうした状況をかんがみた国内外の投資家が中国経済に見切りをつけ、わが国などに資金を振り向ける動きが目立ち始めてもいる』、「かつての高成長のメカニズムが逆回転し始めている。不動産市況は悪化し、地方政府の歳入は減少。そのため、大規模な景気対策を打ち出すことが難しい。共産党政権による政権を維持するための指導部人事も、先行きを不透明にする要因になっている。そうした状況をかんがみた国内外の投資家が中国経済に見切りをつけ、わが国などに資金を振り向ける動きが目立ち始めてもいる」、「不動産市況は悪化し、地方政府の歳入は減少。そのため、大規模な景気対策を打ち出すことが難しい」、「かつての高成長のメカニズムが逆回転し始めている」のは確かなようだ。
・『歯止めがかからない不動産市況の低迷  これまで、中国では地方政府が不動産デベロッパーなどに土地を売却し、その資金を固定資産投資などの景気対策に再配分して高い成長を実現してきた。マンション建設の増加は、企業の設備投資や生産、雇用も押し上げた。しかし、このメカニズムが限界を迎えている。 リーマンショック後、中国では、不動産価格が上昇した。2011年から20年頃まで新築住宅販売価格はほぼ倍に上昇した。内陸部での住宅供給増加など、共産党政権は不動産の建設(投資)を増やした。世界的な超低金利環境もあり、「住宅価格は上昇し続ける」といった“神話”により、強い成長期待が醸成された。 投機熱の高まりを背景に、地方政府の土地使用権譲渡収入は増えた。それを元手に、地方政府はインフラ投資や産業補助金政策を強化した。その結果、コロナショックが発生するまで、中国経済は6%台を上回る高い成長を実現した。習近平政権は、主に住宅購入者向けの規制を強化し、バブルの膨張、景気の過熱をコントロールして高成長を続けようとした。 しかし、コロナ禍の発生と、20年8月の不動産融資規制(三つのレッドライン)の実施により、不動産市況は急激に冷え込んだ。23年1月にゼロコロナ政策が終了した後、住宅価格が下げ止まるかに見える局面もあったが、価格上昇の勢いは弱い。年初来、不動産投資は減少基調である。 土地の使用権譲渡収入は、地方政府の歳入の3割程度を占める。不動産市況悪化によって歳入は減少し、ゼロコロナのための検査費用負担もあって、地方財政は悪化している。地方政府傘下の金融会社である、融資平台(LGFV)の債務問題に対する懸念も高まっている。インフラ投資などの対策を打とうにも、財源不足から思い切った対策は打ち出しにくい』、「土地の使用権譲渡収入は、地方政府の歳入の3割程度を占める。不動産市況悪化によって歳入は減少し、ゼロコロナのための検査費用負担もあって、地方財政は悪化している。地方政府傘下の金融会社である、土地の使用権譲渡収入は、地方政府の歳入の3割程度を占める。不動産市況悪化によって歳入は減少し、ゼロコロナのための検査費用負担もあって、地方財政は悪化している。地方政府傘下の金融会社である、融資平台(LGFV)の債務問題に対する懸念も高まっている。土地の使用権譲渡収入は、地方政府の歳入の3割程度を占める。不動産市況悪化によって歳入は減少し、ゼロコロナのための検査費用負担もあって、地方財政は悪化している。地方政府傘下の金融会社である、融資平台(LGFV)の債務問題に対する懸念も高まっている』、「融資平台」「の債務問題に対する懸念も高まっている」のであれば、深刻だ。
・『経済よりも政権基盤維持が優先の習政権  最近、景気を下支えするため共産党政権が金融緩和を強化した。習政権は、銀行に融資を増やすよう要請を強めた。にもかかわらず、融資は伸びていない。中小企業を中心に資金繰りは逼迫(ひっぱく)し、その裏返しとして若年層を中心に、失業率が過去最高に上昇している。 その状況を根本的に克服するためには、習政権は不動産関連の不良債権の処理を本格的に進める必要がある。一時的に失業者や倒産企業を増やすことにはなるが、中・長期的な経済成長と社会の安定には避けて通れないバランスシート調整だ。それはバブル崩壊後のわが国経済からの教訓でもある。 ただ、最近の共産党政権の人事を見る限り、習政権が経済回復に必要な政策を着実に実行するとは思えない。習国家主席は、経済テクノクラート(技術官僚)として、半導体分野などでの米中対立時の交渉にあたった劉鶴副首相を退任させた。一方、上海のゼロコロナ政策を徹底した側近の李強氏を首相に指名している。 6月27日、李強氏は経済対策を強化する考えを強調したが、具体策には触れなかった。不動産市況の悪化が想定を上回るため、具体策を示すことができなかったとの見方もある。 また、たとえ具体策が示されたとしても、既視感のある策の強化に過ぎなかっただろうとの見方が多い。例えば、高速鉄道や高速道路の延伸などのインフラ投資、内陸部での電気自動車(EV)普及策だ。それでは、本格的な経済回復を期待することは難しいだろう。 中国のインフラ投資は、全般的には過剰になっているとみられる。国有企業である中国国家鉄路集団の22年最終赤字は、前年から拡大した。利払い費用も回収できないほど、インフラ投資プロジェクトの採算は悪化していることがうかがわれる。 現行の景気対策の効果は、一時的なものにとどまるだろう。不良債権問題の深刻さもさらに増すはずだ。それに伴い、銀行の貸し出し態度は厳格化し、中小企業を中心に資金繰りが逼迫。雇用、所得環境も悪化するだろう。財政破綻のリスクが高まる地方政府も増えることが懸念される』、「習国家主席は、経済テクノクラート・・・として、半導体分野などでの米中対立時の交渉にあたった劉鶴副首相を退任させた。一方、上海のゼロコロナ政策を徹底した側近の李強氏を首相に指名」、「経済」軽視はボディブローのように経済を悪化させる可能性が強い。
・『中国株を売った資金を日本株に振り向ける海外投資家  最近は、中国経済を見限る投資家も増えているようだ。外国為替市場では、米ドルに対する人民元の下落が鮮明となっている。6月27日、中国人民銀行はオフショア市場で人民元買い・米ドル売りの介入を実施したもようだ。 株式市場に目を向けると、22年以降、上海、深センともに本土の株価は多少の上下はあるものの、弱含み傾向だ。香港株式市場も同様である。対照的に、5月以降、主要先進国の株価は勢い良く上昇した。AI(人工知能)関連企業への成長期待や、依然として緩和的な金融環境などの影響は大きい。 そうした状況下、1990年代以降、あまり観察されなかった変化も起きた。上海や深センなどの市場で中国株を売り、その資金を日本株に振り向ける海外投資家が増えているのだ。90年代のバブル崩壊を機に、日本株を売る投資家は増えた(ジャパンパッシング)。日本株を売った投資家は、「世界の工場」として成長する中国に一部の資金を振り向けてきた。 現状、中国の不動産市況は大方の予想よりも低迷している。習政権は、民間企業の成長促進よりも、思想教育などをより重視しているように見える。台湾問題などの地政学リスクや生産年齢人口の減少は、グローバル企業が中国から生産拠点をシフトする要因になっている。いずれも、持続的な景気の回復を阻害するだろう。 一方、わが国が地政学リスクの上昇に直面するリスクは、米国との関係を基礎に、今のところ抑えられている。円安進行の影響で海外投資家からすると日本株には割安感がある。半導体分野において、わが国が産業政策を修正し始めたことも、日本株への資金流入を支えている。 米国の金融政策の動向も、中国経済を下押ししそうだ。米国の物価は2%を上回る状況が続いている。米FRBの金融引き締めは長引くだろう。米中の金利差が拡大し、中国から資金が流出する勢いは強くなる可能性が高い。 あるいは、いずれ米国株が下落し、中国株に売り圧力が波及する恐れもある。当面、チャイナリスクの削減に動く主要投資家は増えることになりそうだ』、「当面、チャイナリスクの削減に動く主要投資家は増えることになりそうだ」、同感である。
タグ:「出稼ぎは労働時間が長く、子どもを預けるところもなく、お金もないため、やむにやまれぬことなのだが、いったん出稼ぎに行けば、帰省できるのは年に1~2回だけだ。春節や国慶節などの大型連休のみで、それ以外は電話などで話す程度になり、親子のコミュニケーションは非常に少なくなる。 ただ暴れるだけなら周囲もあきれて離れていくだけだが、問題は精神的な面でも未熟で、「巨嬰症」と思われる幼稚な言動を取る人が少なくないことである」、「親がまったくしつけをしていないと思われる「熊孩子」」、「「熊家長」(ションジアチャン=熊のような子どもを注意せず、逆に、注意した他人に食ってかかるような親)」、問題児や親にも様々あるようだ。 「上海ディズニーランドで、ある男性が禁煙エリアでたばこを吸ったが、そのことをスタッフに注意されたことに逆ギレし、スタッフともみ合いになった男性は園内を逃走。挙げ句の果ては、開き直って「大の字」になって地面に寝そべった。そのことが大きく報道され、SNSにも投稿された。 (その17)(「高学歴層が増える中国」が迎えうる"意外な未来" "現代最高の知性"が予言する「新しい全体主義」、中国は人口減による衰退論に猛反発 本当は他国に触れられたくない“縮みの現実”とは、中国でなぜ「巨大な赤ちゃん」が増えているのか?炎上が相次ぐ異常なワガママぶりの背景、中国経済を見限り「日本株」にマネーを投下する海外投資家が増えている理由) 中国経済 「一人っ子政策」がこんな悪影響を及ぼしているとは驚かされた。「巨大な赤ちゃん病」とは言い得て妙だ。 「1979年末から始まり、30年以上も続いた一人っ子政策の影響だろう。子どもは1人と政府に決められ、子どもを溺愛する親が増えた。中には我が子に何でも買い与え、「小皇帝」という別名の通り、勉強以外、すべてのことを子どもの代わりにやってあげるという親もいる。同政策の実施後に生まれた世代の最年長は40歳を超えており、年齢的にはすでに立派な大人だが、自由奔放に育てられた結果、すべてにおいて自己中心的で、自分の思い通りにならないと癇癪(かんしゃく)を起こす、我慢ができない、悪態をつく、という人が増えた」、 「中国では、赤ちゃんに限らず、ささいなことがきっかけで、公共の場で大ゲンカが起きることはよくある」、我慢することをせず、要求するだけの姿勢では、「公共の場で大ゲンカが起きることはよくある」、困ったことだ。 中島 恵氏による「中国でなぜ「巨大な赤ちゃん」が増えているのか?炎上が相次ぐ異常なワガママぶりの背景」 ダイヤモンド・オンライン 「中国政府が声高に衰退論を否定するのは、「中国経済の縮みは深刻」であることを、「誰よりもよく知っているからではないだろうか」、「中国経済」は想定以上に「深刻」なようだ。 「研究の不正が横行し、中国の研究者たちが「偽造論文」を世界中にまき散らしている実態が明らかになっており・・・「科学技術大国」中国に対する期待も今後、大きく縮むことになるだろう」、 「若者がキャリア・ダウンを志向するのは「ラットレース(ハードワークをしても豊かになれない状態)は意味がない」との認識が広まっているからだという」、「「若者がキャリア・ダウンを志向する」とは由々しいことだ。 「専門家は「中国経済の深い部分にまでデフレ圧力が浸透している」と分析」、これは深刻だ。 藤和彦氏による「中国は人口減による衰退論に猛反発 本当は他国に触れられたくない“縮みの現実”とは」 デイリー新潮 「一方には、中国の文化と革命の伝統として、平等主義の要素があります。もう一方で、高等教育を受けた人々が増えています。中産階級と呼ばれる層です。この階層の比率が、共産主義崩壊直前のソ連と同じ水準に達しようとしているのです」、「中国」でも「中産階級」が25%、と「共産主義崩壊直前のソ連と同じ水準に達しようとしている」、「「中国」で「中産階級」が25%」になったとしても、「共産主義崩壊直前のソ連」のようなことにはならないのではなかろうか。 「中国の社会には公正を求める要素があります。中国の指導者たちは常に、人々の決起の可能性を考慮に入れておかなければなりません。 これは、中国を統治することが非常に厳しい理由の1つだと思います」、 「今、中国にあるのは、国民を制御するための最新の技巧です。顔認証があり、インターネットがあり、最先端のあらゆるツールがあります。しかし同時に、中国には、権威主義的および平等主義的な家族の価値が存続していて、彼らの社会的価値にもつながっています」、なるほど。 「ロシアで起きたことは、中国と正反対だったことです。どちらも権威主義の伝統を持っていますが、コロナに関する限り、ロシア政府は国民をまったく制御できませんでした」、「コロナに関する限り、ロシア政府は国民をまったく制御」する気がなかった方が適切な気がする。 『2035年の世界地図──失われる民主主義 破裂する資本主義』 エマニュエル・トッド氏による「「高学歴層が増える中国」が迎えうる"意外な未来" "現代最高の知性"が予言する「新しい全体主義」」 東洋経済オンライン 「こういった法律が出るくらい、しつけや家庭教育の問題が社会全体で大きくなっており、政府にとって頭の痛い問題であることを表しているといえる」、法律まで出したとは問題が深刻なようだ。 「2021年、中国政府はしつけに関する法律「家庭教育促進法」を制定した。中国政府は、保護者が子どもの成績を重視するあまり、家庭で適切なしつけが行われていないことなどを問題視。法律に「高齢者や幼児を大切にし、勤勉節約に努めること、部屋の片づけを他人任せにしないこと」などを明記した」、 こうした子どもは「留守児童」と呼ばれ、自殺や精神不安の要因となっている。しつけや家庭教育は祖父母の役目となるが、祖父母は年を取っている上、自分の子ではないため、また「親と離れている孫がかわいそう」という気持ちもあって、子どもに甘くなってしまいがちだ」、やむを得ないようだ。 真壁昭夫氏による「中国経済を見限り「日本株」にマネーを投下する海外投資家が増えている理由」 「かつての高成長のメカニズムが逆回転し始めている。不動産市況は悪化し、地方政府の歳入は減少。そのため、大規模な景気対策を打ち出すことが難しい。共産党政権による政権を維持するための指導部人事も、先行きを不透明にする要因になっている。そうした状況をかんがみた国内外の投資家が中国経済に見切りをつけ、わが国などに資金を振り向ける動きが目立ち始めてもいる」、 「不動産市況は悪化し、地方政府の歳入は減少。そのため、大規模な景気対策を打ち出すことが難しい」、「かつての高成長のメカニズムが逆回転し始めている」のは確かなようだ。 「土地の使用権譲渡収入は、地方政府の歳入の3割程度を占める。不動産市況悪化によって歳入は減少し、ゼロコロナのための検査費用負担もあって、地方財政は悪化している。地方政府傘下の金融会社である、土地の使用権譲渡収入は、地方政府の歳入の3割程度を占める。不動産市況悪化によって歳入は減少し、ゼロコロナのための検査費用負担もあって、地方財政は悪化している。地方政府傘下の金融会社である、融資平台(LGFV)の債務問題に対する懸念も高まっている。 土地の使用権譲渡収入は、地方政府の歳入の3割程度を占める。不動産市況悪化によって歳入は減少し、ゼロコロナのための検査費用負担もあって、地方財政は悪化している。地方政府傘下の金融会社である、融資平台(LGFV)の債務問題に対する懸念も高まっている』、「融資平台」「の債務問題に対する懸念も高まっている」のであれば、深刻だ。 「習国家主席は、経済テクノクラート・・・として、半導体分野などでの米中対立時の交渉にあたった劉鶴副首相を退任させた。一方、上海のゼロコロナ政策を徹底した側近の李強氏を首相に指名」、「経済」軽視はボディブローのように経済を悪化させる可能性が強い。 「当面、チャイナリスクの削減に動く主要投資家は増えることになりそうだ」、同感である。
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