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関電 原発マネー還流(その2)(原発マネー還流問題 安倍政権 関電 原子力検察の関係は、関西電力<上>ガバナンス不全に陥った“関西財界の雄”の今後、関西電力<下>「関電の2.26事件」から変わらない経営体質、関電不祥事を機に原発は消滅の道をたどる 専門家に聞く 関電「金品授受問題」の本質) [国内政治]

関電 原発マネー還流については、10月15日に取上げた。今日は、(その2)(原発マネー還流問題 安倍政権 関電 原子力検察の関係は、関西電力<上>ガバナンス不全に陥った“関西財界の雄”の今後、関西電力<下>「関電の2.26事件」から変わらない経営体質、関電不祥事を機に原発は消滅の道をたどる 専門家に聞く 関電「金品授受問題」の本質)である。

先ずは、慶応義塾大学経済学部教授の金子勝氏が10月16日付け日刊ゲンダイに掲載した「原発マネー還流問題 安倍政権、関電、原子力検察の関係は」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/263290
・『原発マネー還流問題で、関西電力の八木誠会長ら役員7人が辞任する事態に至った。しかし、バナナの叩き売りのようなやり方にだまされてはいけない。 この問題で最も重要なのは、検察との距離感だ。目下、表舞台に出てきているのは、第1次安倍政権や麻生政権時代に東京電力の原発再稼働に協力姿勢を取ったり、村木厚子元厚労局長が巻き込まれた郵便不正事件で証拠改ざんに関わった検察関係者ばかり。岩根茂樹社長がひとり居残ったのは、“原子力検察”と癒着して第三者委員会を仕切り、隠蔽を図ろうとした疑いが強い。 福井県高浜町元助役(故人)から関電幹部に巨額の金品が渡った問題が発覚したきっかけは、元助役が顧問に就いていた建設会社「吉田開発」(高浜町)に金沢国税局の査察が入り、昨年6月に元助役宅で金品受領に関するメモが見つかったことだった』、検察と密着していれば、怖いものはないように見えるが・・・。
・『事態の沈静化に動いたのが、社内調査委員会の委員長を務めた小林敬弁護士。彼は麻生政権時の最高検公安部長で、郵便不正事件当時は大阪地検検事正の立場にあり、証拠改ざんのモミ消しを黙認した結果、懲戒処分を受けて退官した人物だ。「報道特集」(TBS系)は小林氏が調査委でモミ消しを図っていたと報じている。 こうした経緯で第三者委の委員長となったのが、但木敬一弁護士だ。但木氏は第1次安倍政権時の検事総長。当時、検察はGE技術者の暴露によって稼働中止になった福島原発を再稼働させるべく、慎重派だった福島県の佐藤栄佐久知事の実弟の不正を立件し、辞職に追い込んだ。その過程で政権の思惑通りに福島原発は再稼働。そして、安倍首相は06年末に「全電源喪失はあり得ない」と国会答弁し、地震対策を拒否して福島原発事故が起きた。 佐藤氏が収賄額ゼロで有罪となった事件を捜査したのが東京地検特捜部。郵便不正事件で証拠を改ざんした前田恒彦検事(懲戒免職)や森本宏検事(現特捜部長)だった』、元「最高検公安部長」、元「検事総長」、など検察有力OBのオンパレードだ。
・『特別背任が疑われる岩根社長が、原発と関わりがあったり、不正をはたらいた検察OBを集めた第三者委の「独立性」は極めて怪しい。関電に都合のいい調査が進められ、検察の忖度まで招きかねない。しかも、自民党の稲田朋美幹事長代行や前経産相の世耕弘成参院幹事長といった安倍側近が、元助役と関係が深い関電受注企業から献金を受けていた。証人喚問を含め、国会の場で徹底的に調査するほかない』、国会では、関電は第三者委が調査中を名目に逃げようとするだろうが、「社内調査委員会の委員長を務めた小林敬弁護士」も含めて、徹底追及すべきだ。

次に、ジャーナリストの有森隆氏が10月30日付け日刊ゲンダイに掲載した「関西電力<上>ガバナンス不全に陥った“関西財界の雄”の今後」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/263932
・『原子力発電所を推進する関西電力は純粋な民間企業というより、半官半民に近い鵺のような存在だ。政治との結びつきも強い。この関電が関西財界の雄として、ずっと経済・産業界を支配してきた。 筆者も新聞記者時代に関西で仕事をしたことがあるが、「関電の本当のことを書くのに勇気がいる」という地元のジャーナリストの声なき声を多く聞かされた。東京に比べて関西は閉鎖的で「関電に睨まれたら、おまんまの食いあげになる」(地元経済紙のベテラン記者)。こうした風潮の中で関電はやりたい放題、暴走を続けた』、もともと電力会社は、自由化前までは地域独占が認められ、コストも包括原価主義の名のもとに全て原価参入が認められてきたので、「政治との結びつき」は殊の外強い。
・『「関西電力『反原発町長』暗殺指令」(齊藤真著 宝島社 2011年刊行)が評判になっている。00年当時、反原発を打ち出していた福井県高浜町町長への暗殺計画があったことを暴露したノンフィクションだ。 関電幹部から暗殺を依頼された原発警備会社の元社長が告白する場面がある。警備に使う大型犬に噛み殺させるという驚天動地の内容である。町長自身も<ワシの喉笛を凶暴な犬に食いちぎらせたろという、話や>と狙われていたことを認めた。 高浜原発の「影の仕切人」を警備会社の元社長は「エムさん」と呼ぶ。 〈地元対策に長けた関電いうんは、最初から、その地元の実力者を抱き込んで、反対する奴なんかを封じ込めてしまうんですな。あとは、利権やなんやかんやあるでしょ?原発の町には。そういうんを、誰にも文句言わさんように、あらかじめ実力者の“エムさん”を通して、地元に配分させるようなことをするんですわ〉 加えて、〈「エムさん」を知らん奴はモグリや、と言われるような人物なんですわ〉と述べている。 この「エムさん」が関電の首脳陣に“原発マネー”を還流させたと疑われている高浜町の元助役・森山栄治(今年3月に90歳で死去)その人なのだ。 関電は今月9日、八木誠会長と岩根茂樹社長をはじめ役員ら7人が辞任すると発表した。幹部20人が元助役から多額の金品を受け取っていた問題の責任を取る。八木は同日付、岩根はこの問題に関する第三者委員会が年内に調査結果をまとめた段階で辞める』、「反原発を打ち出していた福井県高浜町町長への暗殺計画があった」、改めて原発問題の”闇”の深さを再認識させられた。
・『釈明にもならない言い訳  同2日に開いた会見で公表した報告書によって役員らが、現金、商品券、金貨(365枚)や背広仕立券(1着50万円相当、75着)など総額3億1845万円分の金品を受け取る一方、原発関連の工事情報を元助役側に流していた実態が明らかになった。現金だけで1億4501万円である。 ガバナンス(企業統治)の不全がもろに露呈したわけで、筆頭株主の大阪市や政府も厳しい対応を迫られた。 当初、関電は「贈賄側がブラック、収賄側はホワイト」という印象操作で逃げ切ろうとした。2日の会見で、岩根、八木が強調したのは、金品を提供した森山栄治のエキセントリックな性格だった。まるで被害者であるかのように振る舞い、「地元の有力者である森山氏の機嫌を損ねては原発の運転に支障が出かねないと思った」と釈明にもならない言い訳を繰り返した』、大阪市の松井市長が厳しそうな姿勢を示していたが、明らかにポーズだろう。
・『岩根は、経産省出身で首相補佐官・秘書官の今井尚哉と旧知の間柄だという。同会見で、「今井秘書官はエネ庁次長でしたので、その時には大飯原発再稼働でもお世話になった」と発言している。 関電の原子力部門トップだった森中郁雄副社長をはじめ、元助役の毒まんじゅうを食らった役員・執行役員が揃って抜けるため、原発の再稼働にも影響が出るとみられている。 首脳人事は社外取締役主導で決められることになる。同9日、「人事・報酬等諮問委員会」が開かれたが、八木、岩根は欠席。4人の社外取締役だけで議論し、臨時議長は小林哲也・近鉄グループホールディングス会長が務めた。ブレーキ役を果たせなかった社外取締役に期待するのは酷かもしれない。 後任の社長には、副社長執行役員で人財・安全推進室担当の森本孝、営業本部長の彌園豊一の名前が挙がる。森本は企画畑、彌園は営業畑出身だ。 関電と“影の仕切人”の元助役の関係は30年以上に及ぶ。電力会社と地元有力者との癒着、持ちつ持たれつの相互依存はコーポレートガバナンスと対極にある暗部だ。密室の地域対策のために元助役を関電は徹頭徹尾、利用してきた。“モンスター”をつくり出したのは関電自身である。=敬称略 =つづく』、「密室の地域対策のために元助役を関電は徹頭徹尾、利用してきた。“モンスター”をつくり出したのは関電自身である」、その通りだろう。

第三に、この続き、10月31日付け日刊ゲンダイ「関西電力<下>「関電の2.26事件」から変わらない経営体質」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/264007
・『会長の八木誠、社長の岩根茂樹に引導を渡したのは、社内でも電力業界でもない。「経産省、いや官邸だろう」(自民党の関係者)といわれている。岩根の辞任の時期が第三者委員会の調査報告書提出後となったのは、「報告書作成に目を光らせるため。勝手なことはさせないぞ」との官邸・経産省の意向でもある。世論の動向など全く関係ない。 関電関係者の参考人招致は終盤国会のカードとして残してある。岩根には参考人として出席してもらう必要がある。 関電に明日はあるのか。思い出されるのが「関電2・26事件」と呼ばれるクーデターだ。 1987年2月26日、定例取締役会で、関電のドンと呼ばれた代表取締役名誉会長の芦原義重と懐刀の副社長、内藤千百里が解任された。クーデターを仕掛けたのはドンの秘蔵っ子だった会長の小林庄一郎。 経営方針の違いといった上等なものではない。ドンの寵愛をめぐる子飼いたちの“三角関係”のもつれ。下世話な話になるが、痴話喧嘩の果ての下克上だった。 芦原が社長に就いた1959年の最初の秘書が小林庄一郎。芦原に引きたてられてスピード出世を遂げ、4人の先輩副社長を飛び越して、小林は5代目社長(在任77~85年)に大抜擢された。 ところが、キングメーカーの芦原は、娘婿の森井清二を6代目社長(同85~91年)に起用した。公益事業であるはずの関電を、ドンは私物化したのである。 会長に棚上げされた小林は面白くない。反・芦原の急先鋒となる。 これには別の見方がある。小林の真の狙いは会長の芦原を名誉会長に祭り上げることだったという。芦原の娘婿の森井を社長にすれば、芦原自身の名誉会長就任案に反対しにくくなるとの読みが働いた。おとなしい森井を社長に据えて、小林が実力会長として、関電の新しいドンを襲名するという筋書きだ』、こんな下らない「クーデター」騒ぎにうつつを抜かせたのも、規制の守られた電力会社故のことだろう。
・『芦原の次の秘書が内藤千百里。これまた、トントン拍子に副社長に昇進した。内藤の重要な任務は政界工作である。 芦原は他の電力会社に先駆け、いち早く原子力発電所を建設した。福井県の美浜(70年)、高浜(74年)、大飯(79年)の原発が次々に運転を開始。芦原の関電での歩みは原発と共にあった。 晩年、内藤(2018年1月に94歳で死去)は政界工作の内幕を語った。朝日新聞は「原発利権を追う」の連載記事として「関電の裏面史 内藤千百里・元副社長の独白」(14年7月28日付朝刊)を掲載した。 関西電力で政界工作を長年、担った内藤千百里・元副社長(91)が朝日新聞の取材に応じ、少なくとも72年から18年間、在任中の歴代首相7人に「盆暮れに1000万円ずつ献金してきた」と証言した。政界全体に配った資金は年間数億円に上ったという。(中略)内藤氏が献金したと証言した7人は、田中角栄、三木武夫、福田赳夫、大平正芳、鈴木善幸、中曽根康弘、竹下登の各元首相(中曽根氏以外は故人)〉』、この間で名前が出てこない首相は、在任期間が1,2か月と短かった伊東正義、宇野宗佑、さらに、内藤氏の任期切れ直前の海部俊樹の3人だけだ。要は、一部の例外を除き、ほぼ一貫して歴代首相に献金してきたようだ。
・『政界工作と同時に地元対策が不可欠だった。行政を押さえることができ、人材確保のためにいや応なく関係を持つことになる地元暴力団にも顔が利いた森山栄治(高浜町の助役)は、頼りがいのある存在だった。 関電の調査委員会が昨年9月にまとめた報告書は、「元助役と絶縁する『勇気』を、経営幹部が持ち合わせなかったことが問題の本質だ」と指弾した。経営体質は2・26事件の頃と全く変わっていないのではないかと疑われる。 しかも、経営陣は、この報告書を公表せず、闇から闇に葬り去った。 新製品を大ヒットさせた人が登用されるメーカーと全く違う。 業績評価を決めるトップに忠節を尽くす人だけが出世する「御殿女中の世界」(関電の元幹部)なのだ。これまでも、トップを誰にするかは、業績とは、ほぼ無関係に決まってきた。 第三者委員会(委員長・但木敬一=元検事総長)は発注のプロセスを解明できるかが焦点となる。金沢国税局が押収した関連資料を第三者委が入手することから始まる。 八木は、今回、関西経済連合会の副会長の椅子も返上した。25年の「大阪・関西万博」を控え、関電に対して「喪に服する期間をできるだけ短くしてもらいたい」との注文が早くもつく。「関電が金を出さなければ関西でビッグイベントは成り立たない」(関経連の副会長)からだ。 関電への強度の依存という悪しき慣習を打ち止めにする好機ではないのか。=敬称略)』、「関電が金を出さなければ関西でビッグイベントは成り立たない」のであれば、そんなビッグイベントなど返上すべきだ。

第四に、11月8日付け東洋経済オンラインが掲載した東京理科大学の橘川武郎教授へのインタビュー「関電不祥事を機に原発は消滅の道をたどる 専門家に聞く、関電「金品授受問題」の本質」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/312896
・『関西電力で原子力発電をめぐって多額の金品授受の実態が判明してから1カ月が経った。同社の八木誠会長が10月9日付で辞任するなど、役員の引責辞任に発展した。 これまでに判明した事実によれば、福井県高浜町の元助役で、原発工事の発注先企業の相談役や顧問などを務めていた森山栄治氏(故人)から、同社の原子力事業本部の担当役員らが多額の現金や商品券、仕立券付きスーツなどを長年にわたって受け取っていた。 それだけにとどまらず、岩根茂樹社長らトップも就任祝いなどの名目で金貨などを受領。これらの事実は、工事発注先企業への金沢国税局による税務調査(査察)によって発覚したが、「不適切ではあるが違法ではない」(岩根氏)などと判断して、9月下旬に事実関係が報道されるまで公にしてこなかった。 電力業界を揺るがすこの問題の影響はどこまで広がるのか。エネルギー政策や電力会社の経営に詳しい、東京理科大学大学院の橘川武郎教授にインタビューした(Qは聞き手の質問、Aは橘川氏の回答)。
・『取締役の善管注意義務違反の可能性も  Q:今回の不祥事の本質をどう捉えていますか。 A:コーポレートガバナンスの観点から見た場合、まったく弁解の余地がない。森山氏の影響力が大きく、いかに特殊な事情があったにせよ、森山氏の死去後の6月の株主総会においてすら事実を公表しなかったのは極めて問題だ。 関西電力の首脳は「法律違反には当たらない」などと述べているが、取締役の善管注意義務に違反しているのではないか。原子力の推進に影響が生じ、長期的に企業価値を下げる可能性があることは明らかだ。 Q:株主総会までに関電が自発的に明らかにしていたらどうなっていたでしょうか。 A:岩根社長が辞任に追い込まれる事態は避けられたかもしれない(注:岩根氏は第三者調査委員会の報告書受領を踏まえて辞任すると、10月9日に表明した)。受領したこと自体は問題だが、岩根氏が就任祝いとして受領した150万円相当の金品と、豊松秀己・元副社長ら原子力事業本部の幹部が受け取っていた1億円相当とでは意味合いが異なる。 自身を含めてきちんと事実関係を明らかにし、きちんと社内処分をしたうえでその内容を公表していれば、(経営陣の)総退陣というボロボロの姿にはならずに済んだかもしれない。岩根氏自身は短期政権で終わったかもしれないが、次の体制に引き継ぐ余裕は今よりあったかもしれない』、「取締役の善管注意義務」は会社法の規定なので、「立派な」法律違反だ。「法律違反には当たらない」との発言を、記者が関電に「忖度」して突っ込まなかったとすれば、情けない話だ。
・『Q:森山氏が金品を配った動機をどのようにみていますか。 A:電力会社は、「立地対策」としてさまざまな形で地元にお金を流してきた。これは関電に限らず、ほかの電力会社でも共通している。一方、今回の場合、なぜ電力会社の幹部に地元の関係者から金品が流れたかだ。 森山氏には、通常のルールでは40年で廃炉になる高浜1、2号機を存続させようという動機があったのではないか。40年を超えて稼働を続けるには、安全対策に多額の投資が必要になる。 一方、稼働延長は、既設の原発を閉鎖して建て替える「リプレース」と比べた場合、危険性の低下には限界がある。 関電にとってベストな選択は、高浜1、2号機の稼働延長ではなく、(高浜とは別の拠点である)福井県美浜町にリプレースとして4号機を建設する方法だったと思う。セカンドベストは、現在、存在している原発のリプレースをせずに、高浜1、2号機よりも出力が大きく、相対的に新しい大飯1、2号機の稼働期間を延長する方法だ。 これらの方策でもなく、年数のより古い高浜1、2号機の稼働延長を決断したことと、金品の受領にどのような関係があったのか。新たに設置された第三者調査委員会によって解明されるべきだ。 森山氏にとってみると、高浜1、2号機が稼働し続けることは、地元での仕事を増やすことになるとともに、自らの利権の維持につながる。反面、関電にとっては、経済合理性の観点から疑問がある』、関電が「経済合理性の観点から疑問がある」「高浜1、2号機の稼働延長」を選択した理由を、第三者委員会は究明すべきだ。
・『「ゲームチェンジャー」がいなくなった  Q:今回の不祥事が原子力政策に及ぼす影響は。 A:極めて大きく深刻だ。3月に私が原子力発電部門のトップを務めていた豊松氏(当時)に会った際、「今年中には絶対に美浜でのリプレースを明らかにしますよ」と断言した。今になって思えばどこまで本気の発言だったのか疑問もあるが、その豊松氏が株主総会を機に退任し、今回不祥事が発覚して処分された。 原発の新設やリプレースに首相官邸や経済産業省が及び腰であり続けている中で、それを言い出せるのは、原発事故で東京電力なき後の盟主ともいえる関電しかなかった。ところが、そうしたゲームチェンジャーの役割を担うはずの人たちが、豊松氏を含めて皆いなくなってしまった。このことは、原発の今後に計り知れない影響を及ぼす。 政府は2050年までに温室効果ガス排出量の8割削減の方針を掲げるとともに、原発を脱炭素化の有力な選択肢の一つだとしている。そのためには原子力の発電能力を維持しなければならない。目標の実現は古い原発を閉鎖するとともに、新しくて危険性が相対的に少ない原発へのリプレースなしでは不可能だ。 それが今回の不祥事によって困難になってしまった。このままでは稼働期間を終えた原発が消えていく一方でリプレースも進まず、原子力はやがて野垂れ死にするのではないか』、「「ゲームチェンジャー」がいなくなった」、「このままでは稼働期間を終えた原発が消えていく一方でリプレースも進まず、原子力はやがて野垂れ死にするのではないか」、反原発の立場の私にすれば、当然という他ない。それにしても、今回の関電「金品授受問題」は、原発推進派にとっては、深刻なダメージのようだ。
タグ:関電 原発マネー還流 「関電が金を出さなければ関西でビッグイベントは成り立たない」 政界工作を長年、担った内藤千百里・元副社長 第三者委の委員長となったのが、但木敬一弁護士だ。但木氏は第1次安倍政権時の検事総長 最高検公安部長 日刊ゲンダイ 「原発マネー還流問題 安倍政権、関電、原子力検察の関係は」 社内調査委員会の委員長を務めた小林敬弁護士 金子勝 関電に睨まれたら、おまんまの食いあげになる 「関西電力『反原発町長』暗殺指令」(齊藤真著 宝島社 原発と関わりがあったり、不正をはたらいた検察OBを集めた第三者委の「独立性」は極めて怪しい 有森隆 釈明にもならない言い訳 「関西電力<上>ガバナンス不全に陥った“関西財界の雄”の今後」 「関西電力<下>「関電の2.26事件」から変わらない経営体質」 岩根は、経産省出身で首相補佐官・秘書官の今井尚哉と旧知の間柄 「関電2・26事件」と呼ばれるクーデター (その2)(原発マネー還流問題 安倍政権 関電 原子力検察の関係は、関西電力<上>ガバナンス不全に陥った“関西財界の雄”の今後、関西電力<下>「関電の2.26事件」から変わらない経営体質、関電不祥事を機に原発は消滅の道をたどる 専門家に聞く 関電「金品授受問題」の本質) 在任中の歴代首相7人に「盆暮れに1000万円ずつ献金してきた」 このままでは稼働期間を終えた原発が消えていく一方でリプレースも進まず、原子力はやがて野垂れ死にするのではないか 岩根の辞任の時期が第三者委員会の調査報告書提出後となったのは、「報告書作成に目を光らせるため。勝手なことはさせないぞ」との官邸・経産省の意向でもある 取締役の善管注意義務違反の可能性も 芦原は他の電力会社に先駆け、いち早く原子力発電所を建設 クーデターを仕掛けたのはドンの秘蔵っ子だった会長の小林庄一郎 「ゲームチェンジャー」がいなくなった 1987年2月26日、定例取締役会で、関電のドンと呼ばれた代表取締役名誉会長の芦原義重と懐刀の副社長、内藤千百里が解任 ドンの寵愛をめぐる子飼いたちの“三角関係”のもつれ 森山氏にとってみると、高浜1、2号機が稼働し続けることは、地元での仕事を増やすことになるとともに、自らの利権の維持につながる。反面、関電にとっては、経済合理性の観点から疑問がある 「関電不祥事を機に原発は消滅の道をたどる 専門家に聞く、関電「金品授受問題」の本質」 橘川武郎 「不適切ではあるが違法ではない」 関電にとってベストな選択は、高浜1、2号機の稼働延長ではなく、(高浜とは別の拠点である)福井県美浜町にリプレースとして4号機を建設する方法 人材確保のためにいや応なく関係を持つことになる地元暴力団にも顔が利いた森山栄治(高浜町の助役)は、頼りがいのある存在 政界工作と同時に地元対策が不可欠だった 東洋経済オンライン 電力会社は、「立地対策」としてさまざまな形で地元にお金を流してきた。これは関電に限らず、ほかの電力会社でも共通している
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安倍政権の教育改革(その10)(英語民間試験 萩生田発言は問題外だが 実施先延ばしも問題外、背景に利権 不公平試験をゴリ押しした下村元文科相の大罪、英語民間試験が延期の今こそ訴えたい 最重視すべき「英語力」とは) [国内政治]

安倍政権の教育改革については、5月7日に取上げた。今日は、(その10)(英語民間試験 萩生田発言は問題外だが 実施先延ばしも問題外、背景に利権 不公平試験をゴリ押しした下村元文科相の大罪、英語民間試験が延期の今こそ訴えたい 最重視すべき「英語力」とは)である。

先ずは、在米作家の冷泉彰彦氏が10月31日付けNewsweek日本版に掲載した「英語民間試験、萩生田発言は問題外だが、実施先延ばしも問題外」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2019/10/post-1124_1.php
・『<日本の国際化を妨げ、経済停滞を招いた英語教育を「使える英語教育」へと変える――その改革にもう猶予はない> 大学受験の英語力判定において、2020年度から民間試験を導入する問題ですが、萩生田光一文科相の「身の丈に合った......」という発言が「炎上」する中で、野党や高校の現場などから「実施の延期」を主張する声が上がっています。 確かに、大学受験において高額の受験料が発生するというのは問題で、そのために「格差の世襲」が続くようでは、日本社会の活力はさらに衰退してしまうでしょう。一刻も早い是正が必要です。 具体的には、▼本命のくせに法外な(一回約2万5000円)受験料を取っているTOEFLなどの価格を強い行政指導で下げさせる。 ▼世帯年収に応じて受験料の減免を行う。 ▼地方など受験生の少ない場所での実施には補助金を出す。 といった緊急措置が必要だと思います。これは待ったなしで策を講じなければならないでしょう。ちなみに、大学出願に必要な学力検査の受験料の減免ということでは、アメリカの場合、4人家族の年間世帯年収が約4万7000ドル以下であれば減免が、3万3000ドル以下なら無償化の対象となっています。 どうして待ったなしなのか、それは実施の先送りは許されないからです。英語というのは、学界やビジネス界では事実上の世界共通語になっています。その一方で、日本の英語教育は、誤った文法メソッドや翻訳メソッドで、言語ではなく単なる暗号解読と暗記を多くの日本人に強いてきました。 その結果として、英語教育が無力感と劣等感を植え付けてきたのです。英語教育の遅れが国際化を妨害し、日本経済をここまでボロボロにしたのです。その英語教育を「使える英語教育」に変革する、この改革に猶予はありません。そのための入試改革は、すでに遅過ぎるぐらいであり、1年の延期も許されません』、この記事のあとの11月1日に萩生田文科相は、「実施の延期」に追い込まれた。「その英語教育を「使える英語教育」に変革する、この改革に猶予はありません。そのための入試改革は、すでに遅過ぎるぐらいであり、1年の延期も許されません」、その通りだが、反面、民間試験の導入が政治主導の密室で決められたため、多くの問題が未解決のままになっており、そこを受験生、高校教師、さらには与党の一部にも突かれたため延期されたのはある意味で当然だろう。
・『それにしても、アベノミクスの第三の矢が発動できずに、先進国から滑り落ちそうになっている政権に対抗するべき野党が、どうしてこうした改革に反対するのでしょうか? スマートシティ構想もそうで、何もしないで傍観していれば、中国やシンガポールがどんど5G(第五世代移動体通信)やそれを使った自動運転を実現する都市インフラの実験で先行し、日本の自動車産業や情報通信産業は研究開発も含めて一層の空洞化が進み、国内では雲散霧消してしまうかもしれないのです。 とにかく、自民党などのイデオロギー保守に対して、革新を名乗る野党が対抗していたという構図ははるか彼方の歴史となってしまい、今は野党イコール守旧派で抵抗勢力と構図が逆転してしまっています。 その理由は、支持層が高齢化しているからでしょう。人口が多かったために、翻訳本が経済的に成立する中で、日本語で世界の先端情報に触れることのできた過去世代は、「大学受験は公正なペーパー試験」が良いという過去の「常識」に囚われているからです。 メディアが煽る中で、与党でも先送り論が出ているのは同じ理由です。将来への投資であるべき教育を、無効となった過去の常識から出た感情論で政治利用する動きが与野党を包んでいるとも言えます。受験生の不安感情すら、その動きに利用されているようです。 入試が格差を助長してはダメです。同じように、改革の先送りも許されません。緊急措置として是正措置を行い、予定通り新制度を導入するべきです。それが文科相の辞任と引き換えになるとしても、やむを得ないでしょう』、問題点を抱えたまま、強行して大混乱を起こすよりはいいのではあるまいか。

次に、11月5日付け日刊ゲンダイ「背景に利権 不公平試験をゴリ押しした下村元文科相の大罪」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/264222
・『「文科省による制度設計の詰めの甘さが原因」(世耕弘成参院幹事長)、「混乱を招いた自体、文科省には大いに反省してもらわなければならない」(岸田文雄政調会長)――。英語民間試験の延期について、自民党内から文科省に責任を押し付ける声が噴出。だが、本当に責めを負うべきは、安倍首相のお友だちとして民間試験導入の“旗振り役”だった下村博文選対委員長だ。 民間試験導入は、安倍首相が2013年に設置した私的諮問機関「教育再生実行会議」で浮上した。14年12月には文科相の諮問機関「中央教育審議会」が大学入試で英語の4技能(読む・書く・聞く・話す)を評価することを提言。20年度の実施が持ち上がった経緯がある。 安倍首相の意向を受け、大学入試改革を主導した政治家こそ、12年12月から15年10月までの約2年10カ月もの長期にわたって、文科相を務めた下村氏である。 立憲民主党の枝野代表は4日、民間試験導入の経緯を巡り、国会で下村氏を追及すると表明。「なぜこんなおかしな制度を作ることになったのか」と疑義を呈し、「いきさつが一番、本質的な問題」「知る限り、一番の(導入の)原動力になったのは下村氏だ」などと意気込んだ』、最大の戦犯が「民間試験導入の“旗振り役”だった下村博文選対委員長」、彼の前職は塾経営者であることからみても、さもありなんだ。
・『背景に教育業界との癒着  下村氏はこの期に及んでも「パーフェクトを求めていたらやれない」と、民間試験導入にやる気マンマン。実現したい背景に透けて見えるのは、教育業界との利権だ。 民間試験を導入すれば、その対策として塾や予備校など教育関係の企業や団体も潤う。下村氏が支部長を務める自民党東京都第11選挙区支部は05~11年の7年間に教育関係の企業や団体から総額1289万円にも上る政治献金を受け取っていた。14~17年の4年間も、総額1160万円の献金を受けている。 要するに、民間試験導入を主導しつつ、教育関係者からどっさりカネをもらっていたのだ。民間試験の中止を求めている京都工芸繊維大の羽藤由美教授がこう言う。 「民間試験導入が決まった会議は非公開で、議事録も出てきません。議論の中で、導入を裏付けるエビデンスやデータを諮ったかは疑問です。政府が多くの専門家の反対の声に耳を貸さずに導入を強行しようとした背景に、教育業界と政治家との癒着があったとしても不思議ではありません。今回の混乱によって、政治主導のトップダウンによる教育政策の限界が露呈したと言えます」 混乱必至の政策をゴリ押しした下村氏の責任は重い』、野党やマスコミが今後、下村氏を追求するのに期待したい。

第三に、立命館大学政策科学部教授の上久保誠人氏が11月5日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「英語民間試験が延期の今こそ訴えたい、最重視すべき「英語力」とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/219400
・『英語の民間試験の実施が延期に「身の丈発言」が原因であるのは自明の理  萩生田光一文部科学大臣は、大学入学共通テストに導入される英語の民間試験について、来年度からの実施を延期すると明らかにした。試験の仕組みを抜本的に見直し、5年後の2024年度からの実施に向けて検討するという考えを示した。 萩生田文科相は、英語の民間試験導入の制度全体に不備があると認め、延期して課題を検証し、全ての受験生が平等に受験できる環境をつくるために改善すべき点を明らかにするとしている。しかし、これまで「英語の民間試験導入は予定通り2020年度から実施する」と繰り返し発言してきた文科相が急に方針を変えたのは、自身のいわゆる「身の丈発言」が批判を浴びたためであるのは言うまでもない』、もともと政治主導で問題点を抱えたまま決定した民間試験が、大臣の失言という政治的要因で延期になったのは当然だろう。
・『萩生田文科相の失言は想定内 「失言→謝罪→政策の撤回」に驚きはない  「身の丈発言」とは、10月24日のBSフジの番組で、英語民間試験における「不公平感」を問われた萩生田文科相が、「それを言ったら『あいつ予備校通っていてずるいよな』というのと同じ」「裕福な家庭の子が回数受けてウォーミングアップできるみたいなことがもしかしたらあるのかもしれない」「自分の身の丈に合わせて、2回をきちんと選んで勝負して頑張ってもらえれば」などと答えたものだ。これが、「教育の不平等を容認するのか」と猛批判されて、萩生田文科相は謝罪と発言の撤回に追い込まれていた。 この連載では、安倍晋三政権の内閣改造・党役員人事を評価した際、萩生田文科相の言動は厳しい批判を浴びることになるだろうと指摘していたので、今回の失言から謝罪、政策そのものの撤回という流れには、まったく驚きはない(本連載第221回)。 むしろ、心配なのは、萩生田文科相に批判が集中することで、彼の人格・政治家としての資質に問題が矮小化されて、「大学共通テストへの英語の民間試験導入」が含む、より大きな問題が置き去りにされてしまうことだ』、確かに「より大きな問題」を今後、解きほぐしていく必要があるだろう。
・『問題の本質は文部科学大臣ポストの人選 保守派か元スポーツ選手ばかり  何よりも問題なのは、文部科学大臣という閣僚ポストに、これまで誰が起用されてきたかということだ。12年12月の第2次安倍政権発足以降、文科相には、「保守派」か「元スポーツ選手」が起用されてきた。安倍政権にとって、教育とは「道徳」か「根性論」「精神論」という認識なのだろう。そもそも、大臣にならなくても、自民党の文教族にはそういう系統の方々がズラリとならんでいる。 また、安倍政権が選ぶ教育行政に関わる「有識者」にも、自らの経験論を延々と語る方が少なくない。だから、柔道をやってきた方が有識者になれば「柔道」が学校で必修になるし、たまたまヒップホップをやってきた方が有識者になると「ヒップホップ・ダンス」が必修になる。日本の教育行政では、「道徳」「根性論」「精神論」に「経験論」が横行し、そこには、どのような教育が子どもの成長に効果があるのか、科学的で合理的な検証を行おうとする姿勢が薄い。 要するに、教育行政を科学的・合理的な観点から検証できる政治家がいないことが、そもそもの問題ではないだろうか。もう一歩踏み込んでいえば、この際「文科省分離論」を考えてもいいのかもしれない。「保守派」「元スポーツ選手」に科学・学問が理解できているとは思えないからだ。 毎年のように日本人がノーベル賞を受賞することに沸く一方で、日本の科学研究力の低下が懸念されている。あえて言えば、それは科学・学問の価値を理解できない政治家・官僚などによる「予算分捕り」など「権力闘争」の結果ではないか。 日本の科学行政を正常化させるには、文科省から再び「科学技術庁」を分離して首相官邸に置く。大臣には民間から学者などの専門家を起用する。予算を巡る政争に巻き込まれないようにするために、大臣を中心に専門的に科学技術予算を立案し、官邸主導で「聖域化」して予算を確保する。これくらいの大胆な改革を断行しないと、今後は、科学研究において中国などの後塵を拝することになるのは間違いない。 今回の問題について、萩生田文科相の資質問題を出発点にするならば、「文科相に必要な資質とは何か」「文科省解体も含めた教育・科学行政のあり方」を抜本的に考える契機とすべきである』、「安倍政権にとって、教育とは「道徳」か「根性論」「精神論」という認識なのだろう」、「日本の教育行政では、「道徳」「根性論」「精神論」に「経験論」が横行し、そこには、どのような教育が子どもの成長に効果があるのか、科学的で合理的な検証を行おうとする姿勢が薄い」、完全に同意できる。
・『総合的な学力を問う入試に対応できるのは文系では旧帝大、東京六大学と関関同立くらい  次に、「大学入学共通テストに導入される英語の民間試験」の問題点を考えてみたい。まず、この連載では20年度に導入される「大学共通テスト」そのものを批判したことがある(第146回)。大事なことなので、それを端的にまとめるところから議論を始めたい。 「大学共通テスト」では、国立大で国語を基本に80字以内の短文形式と、より字数が多い形式の計2種類の記述式問題を課すことになっている。記述式問題を導入する「新テスト」は、思考力や表現力などを測るのが狙いである。 具体的には、現在「国語」「数学」「英語」といった教科ごとの出題から、新たに「合教科」「科目型」「総合型」という問題の出題に変更する。例えば、理科の問題に文章読解や英文読解が入ったり、社会の問題で数式を使って解かないといけなかったり、あらゆる強化の知識を総動員させて思考する、総合的な学力が問われる問題である。これは、既に公立中高一貫校の入試で実施されている「適性検査型」に近い問題であると考えられる。 筆者は、日本の学生に思考力、表現力を身に付けさせるために、「記述式」など総合力を問う試験を実施する方向性自体は間違っていないと思う。ただし、センター試験の後継として「大学共通テスト」でそれを行うのは、問題が大きいと考える』、「公立中高一貫校」が大学入試でも有利になってしまうとすれば、問題だろう。
・『総合力を問う試験に対応するためには、現在の穴埋め問題に対応するためさまざまな知識を記憶し、正確な計算ができるようにドリルを繰り返すよりも、より膨大な量の勉強が必要になる。 それは、公立中高一貫校の「適性検査型入試」に対応した塾のカリキュラムを確認すると分かる。小学生に対して、「国語」「算数」「理科」「社会」だけではなく、「政治」「経済」「歴史」「科学」「生物」「地理」など、専門性の高い分野の膨大な知識を叩き込み、どんな総合的な問題がきても対応できるように指導している。一方で、記述式の問題で一発勝負の受験となると、出題されるものは膨大な勉強の100分の1にもならない。ほとんどの勉強は無駄になるという理不尽さがある。 さらに問題なのは、この試験が「センター試験の後継試験」であることだ。つまり全ての学生に「一律に」同じ試験を課すことである。大学教員としての経験と実感から、歯に衣着せずに言わせてもらえば、記述式問題を含む総合的な学力を問う入試を実施したとき、まともに対応できるのは、文系で言えば国立は旧帝大7大学、私立は東京六大学と関関同立プラスアルファくらいだ。他の大学では、多くの答案は空白か、ほとんど採点不能な回答ばかりということになり、入試の1次試験として成立しなくなるだろう。 はっきり言えば、全ての学生に一律に思考力、表現力を身に付けさせることなど無理なのだ。それにもかかわらず、無理やり「センター試験」の後継として一発勝負の記述式を含む総合試験を課すことになると、おそらく対応できない学生側をどうするかという問題が噴出する。そして、記述式だが誰でも答えることが可能な出題をするようにと、圧力がかかるようになる。 最終的には、いつもの日本のように「悪平等主義」がまん延し、思考力、表現力を育てるという趣旨は吹き飛ぶだろう。それこそ、かつて「ゆとり教育」で「円周率は3」にしたような、小学生でも答えられるような記述式問題が作成されてしまうことになるのではないか。 常々思うのは、どうして日本という国は、「一律に全てが横並びで行う」ことが好きなのだろう。それが、さまざまな制度の運用を非常に息苦しくしていることに、そろそろ気付いてはどうかということだ』、「総合力を問う試験に対応するためには・・・より膨大な量の勉強が必要になる」。とは意外だ。「総合的な学力を問う入試を実施したとき、まともに対応できるのは、文系で言えば国立は旧帝大7大学、私立は東京六大学と関関同立プラスアルファくらいだ。他の大学では、多くの答案は空白か、ほとんど採点不能な回答ばかりということになり、入試の1次試験として成立しなくなるだろう」、「無理やり「センター試験」の後継として一発勝負の記述式を含む総合試験を課すことになると・・・記述式だが誰でも答えることが可能な出題をするようにと、圧力がかかるようになる。最終的には、いつもの日本のように「悪平等主義」がまん延し、思考力、表現力を育てるという趣旨は吹き飛ぶだろう」、「総合的な学力を問う入試」も難しいようだ。
・『大学が求める人材に最も必要な資質とは英語4技能の中の「読む力」  「大学入学共通テストに導入される英語の民間試験」の問題に戻りたい。既にさまざまな議論が行われているが、その焦点は「教育の平等性」だ。だが、筆者が指摘したいのは「大学は英会話を学ぶ場所ではない」ということであり「大学入試は国民が英語を話せるようになるために行われるのではない」ということだ。 グローバル社会に対応するために、「読む」「聞く」「書く」「話す」の英語の4技能を身に付けた国民を育成することが必要ということに異存はない。ただ、それは大学入試でやることではなく、大学教育でやることでもない。 大学入試は、突き詰めれば「大学が必要とする人材を獲得する手段」だ。その人材とは、「専門的な学問を身に付けて、社会に貢献できる資質のある人」である。 専門的な学問を身に付けるために基本的に必要な資質とは、端的にいえば「専門書」や「学術論文」を読めることだ。特に、多くの学問分野の標準語は英語であることから、「英語の専門書・論文」を読みこなすことが重要になる。だから、歴史的に振り返れば、日本に近代的な大学が創設されて、入試制度が作られたとき、英語の試験では「読む力」が重要視されたのだ。 このそもそもの歴史を考えずに、「日本人は話す力が弱いから」という理由で、安易に「読む」ことよりも「話す」ことを重視する方向に切り替えるのは、日本の大学における学問のレベルを引き下げる愚挙である。 繰り返すが英語の4技能を身に付けること自体は重要だと思う。だが、それは大学の外で個人的にやってくれということだ。政府が奨励して、語学学校に通う費用を補助してもいい。しかし、それは大学が必要とする人材にも、大学の目的自体にも、実は関係がないのだ。 従来通り、それぞれの大学が必要とする英語力のレベル・内容を設定して、独自の入試問題をつくればいい。東京大学や京都大学など、世界トップレベルを目指す大学は、非常に難解な記述式の読み書き中心の英語試験を課せばいい。現在でも2次試験はそうなっている。一方、中堅の大学は、その大学が必要とするレベルの試験を設定して実施すればいいのである』、「英語の4技能を身に付けること自体は重要だと思う。だが、それは大学の外で個人的にやってくれということだ・・・それは大学が必要とする人材にも、大学の目的自体にも、実は関係がないのだ」、その通りなのかも知れない。
・『海外の大学教員が一様に指摘するのが「日本からの留学生の学力低下」  筆者は、母校である英ウォーリック大学の恩師など海外の大学教員と話す機会があるが、彼らが一様に指摘するのが、「日本からの留学生の学力低下」である。かつて、筆者が留学した2000年代前半は、大学で最もハードワークし、好成績を収めるのは日本からの留学生というのが「お決まり事」だったように思う(第70回)。 企業・官庁から派遣された人物がハードワーカーで優秀な成績だったのは言うまでもない。それ以外でも、京都大学の合格を辞退して英国に来た学部生が、学年トップクラスの成績を収めていたし、早稲田大学や慶應義塾大学、同志社大学などから1年間の交換留学でやって来た学生も、授業に必死に食らい付いていた。ある学生は、交換留学のときの指導教官に推薦状をもらい、日本の大学を卒業後、米国の大学院に進み、現在は国際機関で働いている。 だが、現在はそうではないらしい。頑張っているのは中国からの留学生で、日本からの留学生は授業や課題についていけないケースが増えているという。理由は「話す力」が弱いからではない。それは、自分たちの時代でも、苦労はした。だが、2~3ヵ月もすれば次第に克服できるものだった。日本からの留学生がついていけないのは、むしろ「読む力」がないからなのだ。 自分たちの時代は、いわゆる「受験英語」のおかげで、ある程度「読む力」を持っていた。筆者の経験では、「読む力」があれば、ハードワークによって会話は3ヵ月もすればキャッチアップできる。一方、「読む力」がないままで留学すれば、多少「話す力」があってもほぼ無意味になる。各授業で与えられるリーディングリストの本・論文を読めなければ、大学の授業についていけないからだ。 筆者は、短期留学に行く学生がいると、「いっぱい本を読んできなさい」と、よくアドバイスする。学生は「いろんな人とコミュニケーションしなさい」と言われると思っているので戸惑いの表情を浮かべる。そこで補足説明をするのだが「英語で読めるようになると、君が扱える情報量は100倍に広がる。それは、社会に出たときに、すごい武器になるし、他の人と差をつけることができるスキルになる」と伝えると、学生は納得する。今の学生は「スキル」という言葉が好きだからだ。 要するに、英語の4技能重視は、事実上の「読む力」軽視であり、日本の若者の「専門的に使える英語力」が低くなり、国際社会での日本の競争力を低下させるという逆説的な結果を引き起こしている可能性がある。 今回の問題が、英語教育というものを「国民の多くが英語を話せるようになること」と「ビジネス・学問・政治経済の国際交渉で使える専門的な英語を必要な人が身に付けること」を明確に分けて、何をすればいいのかを本質的に議論をするきっかけとなることを願ってやまない』、「日本からの留学生がついていけないのは、むしろ「読む力」がないからなのだ」、「読む力」は確かに重要だ。しかし、日本からの留学生がついていけないの、ハングリー精神がなくなったことも影響しているのではなかろうか。いずれにしろ、通説とは異なる上久保氏独自の考え方は大いに参考になった。
タグ:海外の大学教員が一様に指摘するのが「日本からの留学生の学力低下」 大学が求める人材に最も必要な資質とは英語4技能の中の「読む力」 無理やり「センター試験」の後継として一発勝負の記述式を含む総合試験を課すことになると、おそらく対応できない学生側をどうするかという問題が噴出する。そして、記述式だが誰でも答えることが可能な出題をするようにと、圧力がかかるようになる。 最終的には、いつもの日本のように「悪平等主義」がまん延し、思考力、表現力を育てるという趣旨は吹き飛ぶだろう 全ての学生に一律に思考力、表現力を身に付けさせることなど無理なのだ 他の大学では、多くの答案は空白か、ほとんど採点不能な回答ばかりということになり、入試の1次試験として成立しなくなるだろう 総合力を問う試験に対応するためには、現在の穴埋め問題に対応するためさまざまな知識を記憶し、正確な計算ができるようにドリルを繰り返すよりも、より膨大な量の勉強が必要 既に公立中高一貫校の入試で実施されている「適性検査型」に近い問題 教科ごとの出題から、新たに「合教科」「科目型」「総合型」という問題の出題に変更 「大学共通テスト」 総合的な学力を問う入試に対応できるのは文系では旧帝大、東京六大学と関関同立くらい 日本の教育行政では、「道徳」「根性論」「精神論」に「経験論」が横行し、そこには、どのような教育が子どもの成長に効果があるのか、科学的で合理的な検証を行おうとする姿勢が薄い 安倍政権にとって、教育とは「道徳」か「根性論」「精神論」という認識なのだろう 問題の本質は文部科学大臣ポストの人選 保守派か元スポーツ選手ばかり 萩生田文科相の失言は想定内 萩生田光一文部科学大臣 英語の民間試験の実施が延期に「身の丈発言」が原因であるのは自明の理 「英語民間試験が延期の今こそ訴えたい、最重視すべき「英語力」とは」 ダイヤモンド・オンライン 上久保誠人 民間試験導入が決まった会議は非公開で、議事録も出てきません。議論の中で、導入を裏付けるエビデンスやデータを諮ったかは疑問です。政府が多くの専門家の反対の声に耳を貸さずに導入を強行しようとした背景に、教育業界と政治家との癒着があったとしても不思議ではありません 民間試験導入を主導しつつ、教育関係者からどっさりカネをもらっていた 背景に教育業界との癒着 安倍首相の意向を受け、大学入試改革を主導した政治家こそ、12年12月から15年10月までの約2年10カ月もの長期にわたって、文科相を務めた下村氏 民間試験導入は、安倍首相が2013年に設置した私的諮問機関「教育再生実行会議」で浮上 「背景に利権 不公平試験をゴリ押しした下村元文科相の大罪」 日刊ゲンダイ 英語教育の遅れが国際化を妨害し、日本経済をここまでボロボロにしたのです。その英語教育を「使える英語教育」に変革する、この改革に猶予はありません 大学受験において高額の受験料が発生するというのは問題で、そのために「格差の世襲」が続くようでは、日本社会の活力はさらに衰退してしまうでしょう。一刻も早い是正が必要 日本の国際化を妨げ、経済停滞を招いた英語教育を「使える英語教育」へと変える――その改革にもう猶予はない 「英語民間試験、萩生田発言は問題外だが、実施先延ばしも問題外」 Newsweek日本版 冷泉彰彦 (その10)(英語民間試験 萩生田発言は問題外だが 実施先延ばしも問題外、背景に利権 不公平試験をゴリ押しした下村元文科相の大罪、英語民間試験が延期の今こそ訴えたい 最重視すべき「英語力」とは) 安倍政権の教育改革
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安倍内閣の問題閣僚等(その10)(“黒い交際”閣僚をスルー 大メディアのご都合主義と二枚舌、法務相も辞任 止まらぬ安倍政権「辞任ドミノ」 閣僚連続辞任で政局の節目変わるきっかけに、小田嶋氏:セコくなった大臣の首取り) [国内政治]

安倍内閣の問題閣僚等については、5月21日に取上げた。今日は、(その10)(“黒い交際”閣僚をスルー 大メディアのご都合主義と二枚舌、法務相も辞任 止まらぬ安倍政権「辞任ドミノ」 閣僚連続辞任で政局の節目変わるきっかけに、小田嶋氏:セコくなった大臣の首取り)である。

先ずは、9月22日付け日刊ゲンダイ「“黒い交際”閣僚をスルー 大メディアのご都合主義と二枚舌」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/262182
・『もっと大騒ぎするべきじゃないのか――。初入閣した武田良太国家公安委員長(51)と竹本直一IT担当相(78)、元暴力団関係者との“黒い交際”のことである。 11日の組閣直後、武田氏の政治資金管理団体が、元山口組系暴力団組員とされる人物からパーティー代として70万円を受け取っていたことや、竹本氏が元暴力団幹部との写真撮影に応じていたことを週刊誌が報じた。ところが、二階幹事長は「週刊誌に何か書かれたからといって物事がどうこうするわけではない」と言い放ち、問題視しない考えを示した。 だが、これはどう考えてもオカシイ。現職大臣が暴力団と近しい関係にあるのではないか、と指摘されているのも同然だからだ。大体、吉本興業の芸人による闇営業問題が発覚した際、当時の閣僚はこう口をそろえていた。 <一般論として反社会的勢力と付き合うことは厳に慎むべきだ>(世耕弘成元経産相) <文化の健全な振興の観点からもガバナンス(企業統治)、コンプライアンス(法令順守)は極めて重要だ>(柴山昌彦元文科相) <一国民としてすっきりしない>(片山さつき元地方創生相) <吉本興業はクールジャパンのコンテンツ制作者として非常に有力な企業の一つであり、法令順守の徹底や説明責任を期待せざるを得ない>(平井卓也元科技相) 閣僚や自民党幹部が吉本問題でガバナンスやコンプライアンスの重要性を強調していたにもかかわらず、大臣に就いた武田氏や竹本氏が反社との“黒い交際”については知らん顔なんて許されるはずがない。ところが、大新聞・テレビもスルーしたままだから、呆れてしまう。 吉本芸人の星田英利(旧芸名ほっしゃん。)も自身のツイッター上でこう書いた。 <これを問題にしないのだったら、吉本の芸人さんとの違いは? あれもOKってことなんだね?誰か教えて。> この国の大新聞・テレビが二枚舌なのは今に始まったことじゃないが、こんなご都合主義じゃあ、悪辣閣僚がのさばるのもムリはない』、マスコミの安倍政権への忖度もここまでくると、呆れ果てる。

次に、政治ジャーナリストの泉 宏氏が11月1日付け東洋経済オンラインに掲載した「法務相も辞任、止まらぬ安倍政権「辞任ドミノ」 閣僚連続辞任で政局の節目変わるきっかけに」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/311889
・『10月31日の朝、河井克行法相(56)=衆院広島3区=が首相官邸で安倍晋三首相に辞表を提出、受理された。 9月11日の第4次安倍再改造内閣の発足からわずか1カ月半で、経済産業相に引き続いて主要閣僚が辞任した。経済産業相と法務相の辞任は、危機管理を優先した安倍首相による閣僚更迭というのが実態だ。複数の辞任予備軍と目される閣僚も存在しており、「辞任ドミノ」の様相が強まることで、安倍首相の今後の政権運営への不安も広がり始めている』、史上最長政権の気の緩みが出たようだ。
・『第2次安倍政権での閣僚辞任は10人に  河井氏の辞任は、7月の参院選で、妻の案里氏(46)=参院広島選挙区=が運動員に法定額を上回る日当を支払ったという公選法違反疑惑などを週刊文春が報じたことを受けたものだ。報道と同時のスピード辞任について河井氏は、自身や妻の関与は否定したうえで「疑義が生じたこと自体、法の番人として国民の信頼に耐えうるものではない」と、法相という立場からの辞任であることを強調した。 現内閣では、菅原一秀経産相(当時)の公設秘書が選挙区の支援者の葬儀で、菅原氏の代理として香典を手渡した場面が写真付きで報じられ、25日に辞任に追い込まれたばかり。安倍首相は「閣僚に任命したのは私で、責任を痛感している」として国民に陳謝したが、与党内では「(辞任した2人は)どちらも前からさまざまな疑惑が噂された人物で、事前の身体検査が甘かった証拠だ」(閣僚経験者)との批判や不満が広がっている。 2012年末の第2次安倍政権発足以降、辞任した閣僚は河井氏で10人目。発足から2年弱は閣僚が固定していたこともあって辞任した閣僚はいなかったが、内閣改造で顔触れを一新した2014年10月に、小渕優子経産相と松島みどり法相の2人の女性閣僚が辞任した。その後も西川公也農水相(2015年2月)、甘利明経産相(2016年1月)、今村雅弘復興担当相(2017年4月)、稲田朋美防衛相(2017年7月)、江崎鉄磨沖縄・北方担当相(2018年2月)、桜田義孝五輪担当相(2019年4月)が辞任した。 辞任の理由は、今回のような「政治とカネ」絡みから、失言、暴言までさまざまだが、辞任した閣僚の多くは起用前の段階で党内などから「閣僚にして大丈夫なのか」と不安視されていた人物だった。もちろん、歴代政権でも閣僚辞任は少なくなかったが、11月20日で史上最長政権となる安倍政権での頻繁な辞任騒ぎは「すでに季節の風物詩化している」(自民長老)と揶揄される始末だ』、「頻繁な辞任騒ぎは」「すでに季節の風物詩化している」とは言い得て妙だ。
・『どのケースでも安倍首相は「任命責任は私に」と陳謝してきたが、組閣・改造人事のたびに同じことが繰り返されている。与党内には「首相は自分の責任と言いながら、きちんとけじめをつけたことがない。内閣の高支持率にあぐらをかいている」(公明党幹部)との首相批判も広がる。自民党反主流派からは「こんな状況が続けば、次の選挙で必ず国民からしっぺ返しを受ける」(石破派幹部)との声も漏れてくる。 今回の連続辞任について、自民党内では「政権内の権力闘争にも影響を与える」(閣僚経験者)との見方が広がる。菅原、河井両氏は無派閥だが、どちらも菅義偉官房長官の側近で知られる。とくに河井氏は外交担当の首相補佐官や党総裁外交特別補佐官として、日米外交での首相の密使役も務めるなど、首相の懐刀としても活動してきた』、「「任命責任は私に」と陳謝」するだけで済めばこんな簡単なことはない。具体的な責任の取り方を説明すべきだろう。
・『菅氏の求心力低下は不可避に  さらに、法相辞任の原因となった河井案里氏は、参院広島選挙区での出馬を「菅氏が強引に押し進めた」とされる。同区で自民2人目となる案里氏の出馬で落選の憂き目を見た溝手顕正元参院議員会長は、ポスト安倍の有力候補とされる岸田文雄政調会長が率いる岸田派の重鎮で、同派からは「菅氏の露骨な岸田氏いじめ」(幹部)との不満が渦巻いていた。 このため、今回の菅氏側近の連続辞任については与党内でも「菅氏の政権内での影響力や求心力の低下は避けられない」(公明党幹部)との見方が広がる。また、岸田派内では「司法の捜査で河井案里氏の陣営の公選法違反が事実とされれば、連座制による議員辞職もありうる」(若手)として、それに伴う参院補選での溝手氏復活への期待も膨らむ。 河井氏は辞表提出後、「(疑惑は)私も妻もあずかり知らないこと。私としては法令にのっとった選挙をしていると信じている」と語ったが、週刊文春の記事は「案里氏の陣営が選挙カーから名前を連呼する運動員13人に、公選法で定められた上限額1万5千円の倍額の3万円を報酬として支払った」と極めて具体的だ。 河井氏が直ちに辞任したことも踏まえれば、「司法当局の捜査は当然」(司法関係者)とされうるだけに、「閣僚辞任で済む話ではない」(立憲民主党幹部)との見方も広がる。 さらに、首相の最側近とされる萩生田光一文部科学相のいわゆる「身の丈」発言も、「閣僚辞任まで発展しかねない」(自民幹部)との声もあがる。 2021年1月に始まる大学入学共通テストで導入される英語の民間試験に関して、萩生田氏は民放テレビ番組で「身の丈に合わせて頑張ってもらえれば」などと発言し、発言を撤回・陳謝したばかりだ。学生の親の収入格差や受験をめぐる地域格差による不公平を容認する発言とも受け取れるだけに、野党側は「発言は言語道断で、撤回ではすまない」(立憲民主党幹部)として閣僚辞任を迫っている。 河井氏の辞表を受理した首相は、すぐさま森雅子元少子化担当相を後任に決めた。菅原氏辞任の際も直ちに後任を決めており、首相サイドは「即断即決の対応は、政権への打撃を最小限にとどめるため」(側近)と解説する。しかし、主要野党は河井氏辞任を受けて「もはや、内閣総辞職に値する異常事態」(国民民主党幹部)との認識で一致し、31日に予定されていた国会審議もすべて先送りとなった』、安倍首相本人は、「菅氏の政権内での影響力や求心力の低下」で内心ニンマリしているとの話もあるようだ。
・『相次ぐ閣僚辞任で「12月総選挙説」は消滅か  今国会で政府が最優先課題とする日米新貿易協定の承認について、政府は会期内成立を確定させるために11月6日の衆院通過を目指しているが、連続辞任劇の影響で今後の国会審議が大幅に停滞する可能性がある。さらに、首相が今国会での審議を強く求める衆参両院の憲法審査会での憲法改正論議も、野党側は「もはや、今国会で本格論議に入る状況ではない」(立憲民主党幹部)と徹底抗戦の構えを強めている。 今国会は、菅原氏の経産相辞任までは「与党の思惑通り、順調に進んできた」(自民国対)だけに、与党内には動揺と不安も広がる。野党側への脅しともなっていた11月20日解散・12月15日選挙説も、「もはや、そんな雰囲気はまったくなくなった」(自民国対)と消滅し、統一会派を組んだ立憲民主、国民民主両党などは「安倍政権を徹底的に追い詰める絶好のチャンス」と結束を強めている。 もちろん、これまでの閣僚辞任劇のほとんどが「野党やマスコミが騒いでも、一過性に終わってきた」(自民幹部)のも事実だ。内閣支持率は一時的には下がっても、騒動が収まると5割前後の高支持率に戻ることを繰り返してきた。それだけに今回も「11月にも天皇即位に伴う皇室行事があるので何とか乗り切れるはず」(官邸筋)と楽観視する向きもある。しかし、党内では「安倍政権にとっては、まさにオウンゴールの連続で、史上最長政権を祝うような状況ではなくなった」(岸田派幹部)との危機感も少なくない。 河井氏辞任について首相は31日午前、疲れを隠せない表情で「菅原氏に引き続いて河井氏が辞職する結果となったことについて、厳しいご批判があることは真摯(しんし)に受け止めなければならない。内閣として、また首相として、より一層身を引き締めて行政の責任を果たしていきたいと決意している」と頭を下げた。また、菅官房長官も同日午前の記者会見で「厳しい批判をきちんと受け止める必要がある」と表情を引き締めた。 今回の連続辞任劇は「安倍・菅ラインでのお友達人事の破綻」(自民長老)ともみられるだけに、「政局の潮目が変わるきっかけ」(同)となる可能性も否定できない』、是非とも「政局の潮目が」変わってのしいものだ。

第三に、コラムニストの小田嶋 隆氏が11月8日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「セコくなった大臣の首取り」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00116/00043/?P=1
・『吉本興業と京都市が仕組んだと言われているステマのお話はその後どうなったのだろうと思っている読者はいないだろうか。 私はそう思った。だから、各方面の報道をチェックしていた。ところが、11月に入ってからこっち、ふっつりと続報が途絶えている。どうやらこのニュースはこのまま黙殺されるカタチでフェードアウトする流れに入ったようだ。つまり、吉本ステマ案件は、報道的には、すでに風化過程に組み込まれているわけだ。 なので、蒸し返すことにする。 私が、あえてこのさしたる大事件にも見えない吉本ステマ騒動にこだわっているのは、この事件に限らず、最近、メディアが報道案件を取り上げる時の扱い方に納得できない気持ちを抱いているからだ。 思うに、21世紀の不況下の報道メディア各社は、ニュースバリューの大きさや事件の重要性よりも、取材のやりやすさや、視聴率の高さを重視する方向にシフトしている。だからこそ、ふだんから付き合いの深い関係先のスキャンダルを暴き立てることよりは、世に言う「文春砲」の後追いで安易に記事を作ることを選択して恥じない。私の目にはどうしてもそんなふうに見える。 本題に入る前にこっちの話をしておこう。あるいは、こっち(メディアの報道姿勢のうさんくささ)の方が本来の本題であるのかもしれないので。 つい2日ほど前、財務省のいわゆる「森友文書」について、新しい展開があった。 「森友学園」をめぐる国有地の売却問題で、情報公開請求に対して、財務省が「不開示」としていた行政文書およそ5600ページをテレビ東京が入手したというこのニュースそのものは、見事なスクープだと思う。 リンク先の記事によれば、新たに公開された応接録や交渉記録は、日付や一部の担当者の名前を除いて、多くが黒塗りにされていたということなのだが、黒塗りでもなんでも、実物の「森友文書」を入手したこと自体が重要な成果だ。 財務省は、文書の特定の部分を黒塗りにすることで、情報の漏洩を防ぎ切ったつもりでいるのかもしれない。しかし、すべてが彼らの思惑通りに展開するわけではない。というのも、文書の表面を覆い尽くしている黒い色のインクそれ自体が、財務省の隠蔽体質をなによりも雄弁に物語ってしまっているからだ。このことを証明したのは、ひとえにテレビ東京の手柄だ。今後、どの部分が黒塗りにされ、どの部分がそのまま開示されていたのかを子細に分析すれば、いまわかっていること以上の何かが浮かび上がる可能性もある。 気になるのは、「森友問題」という、ほんの1年ほど前には日本中のメディアにとって最大級の鉱脈だったはずの事案から、新たなネタを掘り出してきたのが、よりにもよってテレビ東京だったという事実だ。 しかも、テレビ東京の自前のニュースコーナーやウェブサイト以外の大手メディアは、いまのところこのスクープを記事化していない。まさか黙殺するはずはないので、いずれ後追いで報道するとは思うのだが、どっちにしても、立ち上がりの反応が鈍すぎる。いったい彼らは、去年まであんなにやかましく声を張り上げていた森友案件について、どういう落とし前をつけるつもりでいるのだろうか』、「報道メディア各社は、ニュースバリューの大きさや事件の重要性よりも、取材のやりやすさや、視聴率の高さを重視する方向にシフトしている」、同感だ。テレビ東京が「実物の「森友文書」を入手した」、初めて知ったが、まだ番組での紹介などはまだのようだ。
・『テレビ東京の取材力をあなどるわけではないのだが、同局の報道部隊が、予算的にも人員的にも、他の在京テレビキー局や全国紙各社と比べて貧弱であることは、誰もが知る事実だ。その、大手報道各社の陣容と比べれば、何分の一にも満たない予算と人員でやりくりしているテレビ東京が、ほかの日本中の大手メディアを差し置いて、トンビが油揚げをさらうカタチでスクープ記事をモノにした今回のなりゆきは、メジャーな報道各社が、森友関連の話題を追いかけ回すことを事実上断念していたことを意味しているのではなかろうか。それどころか、大手メディアが、政権に「忖度」して、取材を手控えていた可能性だってまったくないとは言い切れない。 いずれにせよ、昨今の報道各社の腰砕けっぷりを見るに、大手メディアがいわゆる「モリカケ」問題に関して、すでに戦意喪失の状態に陥っている可能性は否定できない。1980年代の歌舞伎町には、胸ぐらをつかんでスゴんでみせるところまではやっても、本気でケンカをする根性ははじめから持っていないチキンな酔っぱらい学生が群れ集まっていたものだが、現在の報道各社で役員用の椅子に座っているメンバーの中には、その歌舞伎町人種の成れの果てが少なからぬ割合で含まれているはずだと、偏見だと思う人もあるだろうが、私個人は、そう思い込んでいる。彼らは虚勢を張るのが上手なだけで、実際には何もできない。そういう人間を私は、たくさん見てきた。 菅原一秀前経産相と、河井克行前法相を相次いで辞任に追い込んだ最近のできごとについても、私は政治報道にたずさわる記者諸君の手柄だとは思っていない。 あれは、そもそもが資質に欠ける人間を閣僚に抜擢した現政権による自爆案件に過ぎない。そうでなくても、文春砲の波及効果以上のものではない。 ついでに申せばだが、私個人は、メロンだの香典だのの件といい、ウグイス嬢に支払った報酬の件といい、本質的には些末な話題だと思っている。本来なら、大臣の首を引き換えにするような事件ではない。 もちろん、建前論からすれば、2万円ぽっちの香典ではあっても政治資金規正法に違反する支出である以上大臣として批判されるのは当然なのだろうし、ウグイス嬢に支払った金額がたったの3万円であっても、それが法で定められた上限を上回っているのであれば、形式上は、同じく政治資金規正法の基準に照らして厳しく罰せられるべきだというお話にはなる。小さいことをゆるがせにしていては法が法である意味が失われてしまう。それはよくわかっている。 でも、それでもなお、「たかが3万円の話だよね」。 ということは、王道の庶民感覚として、この際、声を大にして呼ばわっておくべきだ。 なぜというに、たかだか3万円だかのカネをばら撒いたことで大臣の首を飛ばしにかかった今回のメディアの仕事ぶりが、本当のところ、一般の日本人の真摯な共感を呼び寄せるとは思えないからだ。 「ほら、アサヒさんたちがまた重箱の隅をつついてるぜ」「まったくシュウトメ根性にペンを持たせたみたいな記者集団だな」と、そう思う読者がいても不思議ではない。 「っていうか、あの人らはメロンだの鯛だので票が買えるみたいな前提で記事を書いてるみたいだけど、それって、根本的な次元で選挙民をバカにしてないか?」と、そう感じるのがむしろ当たり前な庶民でさえある。 私自身は、少なくとも、「メロンがどうしたとか、ウグイス嬢がどうしたとか、まったくどこのチクリ屋に国政を私物化されて大喜びしてるんだか」くらいには思っている』、「メジャーな報道各社が、森友関連の話題を追いかけ回すことを事実上断念していたことを意味しているのではなかろうか。それどころか、大手メディアが、政権に「忖度」して、取材を手控えていた可能性だってまったくないとは言い切れない」、情けない話だ。「菅原一秀前経産相と、河井克行前法相を相次いで辞任に追い込んだ最近のできごとについても・・・あれは、そもそもが資質に欠ける人間を閣僚に抜擢した現政権による自爆案件に過ぎない。そうでなくても、文春砲の波及効果以上のものではない」、その通りだ。
・『今回の二つの事例をよけて考えても、この10年ほど、大臣が辞職に追い込まれるお話が、どんどんセコくなっている傾向は明らかだ。そして、この傾向は、政治不信よりも、むしろ報道不信を招いている。そう思わなければならない。 しかも、セコい事件で尻尾を出した大臣がたちまちのうちに職を追われている一方で、より深刻な腐敗に連なっているかに見える面々は、コトがコトだけに(つまり、ヤマがデカ過ぎて動かぬ証拠を見つけることがそれだけ難しいから)まんまと逃げおおせている。 安倍政権で辞任した大臣の顔と辞任理由を並べてみると、団扇に線香に宝塚のチケットにメロンに香典にウグイス嬢のバイト代てなことになる。どれもこれもいくらなんでも案件としてちっぽけ過ぎる。 メディアならびに野党が、こんなゴミみたいなミスをあげつらって大臣を辞職に追い込んだことを、自分たちの得点だと思い込んでいるのだとしたら、これは相当におめでたいと申し上げなければならない。 実際、野党が支持されない理由の一つに、彼らがあげつらっている政権側の欠点が、あまりにもくだらないということがあると思う。くだらない欠点を露呈している政権側もたしかにどうしようもない人たちではあるわけだが、では、そのくだらない欠点を大真面目に指摘して何かを成し遂げたつもりになっている野党を、いったい誰が支持したいと思うだろうか。少なくとも私は、メロンを配るのがルール違反なのだとして、そんなバカなことを追及して喜んでいる政治家に国政を委ねたいとは思わない。 線香だの団扇だのメロンだのに関する失策で、政権側があっさりと非を認めて大臣の首を差し出すのは、それらが、形式上申し開きの不可能な事例であるということもあるが、それ以上に、差し出す首が、実のところトカゲの尻尾に過ぎないからだ。つまり、彼らにしてみれば、どうということもない罪だからこそ簡単に認めることができるというそれだけの話ではないか。 さらに驚くのは、メディアの中の人たちが、これらの政治資金規正法がらみの些細な逸脱(選挙中に怪しいカネを配布したり、選挙区の住民に曖昧な物品を配ってまわったりしたみたいなお話)と、国政を歪める重大な疑獄事件に発展しかねない贈収賄を疑わせる資金の出入り(関西電力からの地方政治国政を含む各方面への政治献金や、甘利明元経済再生相、下村博文元文科相の資金疑惑などなど)を、「政治とカネ」というおよそ粗雑なタグで一括処理し、しかも、前者を手柄顔でつつきまわしている一方で、より重大かつ深刻な資金疑惑である後者に関しては、わりとあっさりと尻尾を巻いて追及をあきらめてしまっていることだ。 報道された結果をこっち側から見ている当方のような立場の者からすると、「あんたたちって、もしかして、追及しやすいネタだけ追いかけ回してないか?」  と言いたくなる。 そりゃたしかに、菅原氏にしても河井氏にしても、到底大臣の器にかなう人物だとは思わない。蹴り出されて当然だとも思う。ざまあみろとさえ思っている』、「メディアの中の人たちが、これらの政治資金規正法がらみの些細な逸脱・・・と、国政を歪める重大な疑獄事件に発展しかねない贈収賄を疑わせる資金の出入り(関西電力からの地方政治国政を含む各方面への政治献金や、甘利明元経済再生相、下村博文元文科相の資金疑惑などなど)を、「政治とカネ」というおよそ粗雑なタグで一括処理し、しかも、前者を手柄顔でつつきまわしている一方で、より重大かつ深刻な資金疑惑である後者に関しては、わりとあっさりと尻尾を巻いて追及をあきらめてしまっていることだ」、メディアは弱い者いじめより、本物の悪に立ち向かってほしいものだ。
・『とはいえ、それはそれとして、文春がほじくり出してきたケアレスミス(というよりも「脇の甘さ」案件ですよ。せいぜいが)みたいな失策をネタにした後追いに血道を上げている記者たちが、その一方で、あれほど明々白々たる証拠が転がっているように見えた甘利明氏の金銭授受疑惑や、本人が「いずれ説明する」と明言していながら、いまだに一言たりとも説明していない下村博文氏の政治資金疑惑について、取材に行っている形跡さえ見えていないのはいったいどういうわけなのかと思わないわけにはいかない。 記者は、政治資金規正法というシンプルな法律にかかりやすいカタチで違反している政治家の事例(政治家の側がカネをばら撒いたお話)については、実にシンプルかつ率直な追及記事を書く。政治家の側としても、この種の案件に関しては、申し開きができない。証拠が挙がっている以上、事実を認めるほかにどうしようもない。 で、結果として、大臣は辞職に追い込まれる。 一方、同じ「政治とカネ」の話でも、政治家の側がカネを受け取った事案については、シンプルな記事は書けない。事実を証明するためには多方面に取材したうえで、動かぬ証拠をつかむことが必要になるわけだが、当然、カネを受け取る政治家は簡単に証拠を残すことはしないし、政治家にカネを渡す側の人間も万全の煙幕を張っている。また、政治家にしても政治家にはたらきかけていた人々にしても、捜査当局によって「クロ」の認定が出るまでは、決して金銭の受け取りを認めない。なぜなら、政治家がカネを受け取ることは、政治家がカネをばらまくことに比べて、より重大かつ深刻な犯罪を示唆しているからで、場合によっては政権そのものがひっくり返る話だからだ。 この話は、なんだか、警察にとって、交通量の少ない道路での駐車違反の摘発が、効率的かつ手軽な点数稼ぎである一方で、悪質煽り運転者の逮捕が危険で手間がかかるわりに成果の上がりにくい仕事である事情に似ている。 摘発される側にしてみれば、駐車違反のような比較的軽微な違法行為が厳しく摘発されている半面、危険な煽り運転のような明らかに人命にかかわる違法行為が見逃されたまま放置されている現状に腹が立つばかり、ということになる。 吉本の事案にも、一応触れておこう。 最初にこのニュースを伝えたNHKのサイトは、《京都市が、市の取り組みをPRするため人気漫才コンビにツイッターで情報発信をしてもらう対価として100万円を支払う契約を吉本興業と結んでいたにもかかわらず、漫才コンビのツイートの中に広告と明示していなかったことが分かりました。―略―》と、特段に「ステルス・マーケティング」「ステマ」という言葉は使っていない。 とはいえ、ネット上では、このテの手法は特別に嫌われることになっている』、「この話は、なんだか、警察にとって、交通量の少ない道路での駐車違反の摘発が、効率的かつ手軽な点数稼ぎである一方で、悪質煽り運転者の逮捕が危険で手間がかかるわりに成果の上がりにくい仕事である事情に似ている」、絶妙な比喩だ。
・『2件のツイートで100万円の報酬というその破格さも話題になった。で、たちまち「癒着やんか」「えげつな」という感じの声が殺到して、ネット界隈は大変な騒ぎになった。  ところが、10月30日に吉本興業が当該のツイートが《「ステルスマーケティング(ステマ)」に該当しないとする見解をまとめたことが30日、関係者への取材でわかった。》という不思議なニュースが共同通信から配信されると、それっきりほぼ続報は途絶える。 「え? どうしてステマじゃないって断言できるわけ?」「関係者って誰?」「見解をまとめたって、その見解をどこに配ったんだ?」と、誰もが疑問に思う点を吉本興業に対してぶつけにいった記者がいたのかいなかったのか、とにかく、どうしてあのツイートがステマに該当しないのかを説明する記事は、以後どこからも出てきていない。 このあたりの対応は、菅官房長官が「批判は当たらない」と言うばかりで、どうして批判には当たらないかの理由や事情をまるで説明していないにもかかわらず、 「官房長官は、どういう理由で批判が当たらないとおっしゃるのでしょうか」と問いただす記者が一人も現れない官邸の記者会見の様子とそっくりだ。 吉本興業に追加取材をかけることさえできない記者が、どうして森友事件の続報をまとめるべく財務省なり官邸なりに突っ込むことができるだろうか(いやできない)。ちなみにこれは反語という語法で、不可能な疑問文を掲げておいてそれを自分で否定してみせる東アジアに特有ないじけたレトリックだ。 反語で締めくくるのは後味が悪い。 「いやできる」と力強く反論してくる記者が現れてくれるとうれしい』、共同通信が流した「吉本興業が当該のツイートが《「ステルスマーケティング(ステマ)」に該当しないとする見解をまとめた」は、全くニュースの形をなしていない。こんなのを流すとは、共同通信も落ちたものだ。「「官房長官は、どういう理由で批判が当たらないとおっしゃるのでしょうか」と問いただす記者が一人も現れない官邸の記者会見の様子とそっくりだ」、東京新聞の勇ましい女性記者は発言を封じられてしまったのだろうか。現在のメディアの姿勢は本当に情けないが、安倍政権の基盤が揺らぎ出せば変わる、とはかなくはあるが、期待したい。
タグ:警察にとって、交通量の少ない道路での駐車違反の摘発が、効率的かつ手軽な点数稼ぎである一方で、悪質煽り運転者の逮捕が危険で手間がかかるわりに成果の上がりにくい仕事である事情に似ている 吉本興業が当該のツイートが《「ステルスマーケティング(ステマ)」に該当しないとする見解をまとめたことが30日、関係者への取材でわかった。》という不思議なニュースが共同通信から配信 小田嶋 隆 「“黒い交際”閣僚をスルー 大メディアのご都合主義と二枚舌」 メジャーな報道各社が、森友関連の話題を追いかけ回すことを事実上断念していたことを意味しているのではなかろうか。それどころか、大手メディアが、政権に「忖度」して、取材を手控えていた可能性だってまったくないとは言い切れない 「森友文書」 より深刻な腐敗に連なっているかに見える面々は、コトがコトだけに(つまり、ヤマがデカ過ぎて動かぬ証拠を見つけることがそれだけ難しいから)まんまと逃げおおせている 閣僚や自民党幹部が吉本問題でガバナンスやコンプライアンスの重要性を強調していたにもかかわらず、大臣に就いた武田氏や竹本氏が反社との“黒い交際”については知らん顔なんて許されるはずがない ふだんから付き合いの深い関係先のスキャンダルを暴き立てることよりは、世に言う「文春砲」の後追いで安易に記事を作ることを選択して恥じない 報道メディア各社は、ニュースバリューの大きさや事件の重要性よりも、取材のやりやすさや、視聴率の高さを重視する方向にシフトしている 竹本直一IT担当相 行政文書およそ5600ページをテレビ東京が入手 尻尾を巻いて追及をあきらめてしまっている メディアの中の人たちが、これらの政治資金規正法がらみの些細な逸脱(選挙中に怪しいカネを配布したり、選挙区の住民に曖昧な物品を配ってまわったりしたみたいなお話)と、国政を歪める重大な疑獄事件に発展しかねない贈収賄を疑わせる資金の出入り(関西電力からの地方政治国政を含む各方面への政治献金や、甘利明元経済再生相、下村博文元文科相の資金疑惑などなど)を、「政治とカネ」というおよそ粗雑なタグで一括処理し、しかも、前者を手柄顔でつつきまわしている一方で、より重大かつ深刻な資金疑惑である後者に関しては、わりとあっさりと 吉本興業と京都市が仕組んだと言われているステマ 「セコくなった大臣の首取り」 菅官房長官が「批判は当たらない」と言うばかりで、どうして批判には当たらないかの理由や事情をまるで説明していないにもかかわらず、 「官房長官は、どういう理由で批判が当たらないとおっしゃるのでしょうか」と問いただす記者が一人も現れない官邸の記者会見の様子とそっくりだ 安倍首相は「任命責任は私に」と陳謝 日刊ゲンダイ 甘利明氏の金銭授受疑惑 「辞任ドミノ」の様相が強まることで、安倍首相の今後の政権運営への不安も広がり始めている 第2次安倍政権での閣僚辞任は10人に 相次ぐ閣僚辞任で「12月総選挙説」は消滅か (その10)(“黒い交際”閣僚をスルー 大メディアのご都合主義と二枚舌、法務相も辞任 止まらぬ安倍政権「辞任ドミノ」 閣僚連続辞任で政局の節目変わるきっかけに、小田嶋氏:セコくなった大臣の首取り) そもそもが資質に欠ける人間を閣僚に抜擢した現政権による自爆案件に過ぎない。そうでなくても、文春砲の波及効果以上のものではない 「法務相も辞任、止まらぬ安倍政権「辞任ドミノ」 閣僚連続辞任で政局の節目変わるきっかけに」 東洋経済オンライン 菅原一秀前経産相と、河井克行前法相を相次いで辞任 泉 宏 下村博文氏の政治資金疑惑 武田良太国家公安委員長 河井克行法相 このニュースはこのまま黙殺されるカタチでフェードアウトする流れに入ったようだ 日経ビジネスオンライン 元暴力団関係者との“黒い交際” 菅氏の求心力低下は不可避に 安倍内閣の問題閣僚等
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中南米(その1)(一触即発のベネズエラ 「独裁vs民主化」の図式に翻弄される悲惨、「南米の優等生」チリで非常事態宣言 治安悪化の背景にある経済問題) [世界情勢]

今日は、中南米(その1)(一触即発のベネズエラ 「独裁vs民主化」の図式に翻弄される悲惨、「南米の優等生」チリで非常事態宣言 治安悪化の背景にある経済問題)を取上げよう。

先ずは、デモクラシータイムス同人・元朝日新聞編集委員の山田厚史氏が3月1日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「一触即発のベネズエラ、「独裁vs民主化」の図式に翻弄される悲惨」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/195555
・『ベネズエラに緊張が走っている。 コロンビア国境に集められた「緊急援助物資」の搬入を巡り、マドゥロ政権と反政府勢力が一触即発の状況だ。 「暫定大統領」を宣言したフアン・グアイド国会議長をいち早く支持したトランプ政権は、軍などに反政府勢力側につくように呼びかけ、米国メディアも「人道支援を独裁政権が阻んでいる」と伝える。 「独裁vs民主化」の分かりやすい対立の図式には既視感がある。イラクやリビア、シリア、アフガニスタンなどがそうだった。 独裁、非人道的と決めつけられた政権に対して、「倒されて当然」という世論作りが行われ、他国の軍事介入が正当化されてきた。 不都合な政権は武力で破壊する力を持つ国の代表は米国だ。だが介入の後に残るのは、終わりなき内戦と悲惨な暮らし。 ベネズエラはその瀬戸際にある』、まだ、米国は介入に踏み切ってないが、どうなるのだろう。
・『「暫定大統領」の承認で世界が二分 米国は「武力介入」示唆  二期目に入ったマドゥロ大統領の退陣を求め、グアイド国会議長が「暫定大統領」就任を宣言したのが、今年1月。以来、政権と反政府勢力の対立が激化するばかりだ。 1月23日、首都カラカスで大規模な反政府集会が開かれ、「大統領選挙は無効だ」と気勢をあげた。集会に彗星のごとく現れたのが35歳のグアイド氏だった。 「野党を排除した選挙で選ばれたマドゥロ大統領には正当性がない」と、自分が「暫定大統領」と名乗りを上げた。 ベネズエラでは、大統領不在の時、国会議長が暫定大統領に就く、という規定が憲法にある。 2015年の総選挙で勝利した野党は議員数で上位4党が輪番制で議長を出している。グアイド氏の党は4番目の小党だが昨年12月、国民議会議長になった。 だがそれまでは、ベネズエラでも庶民になじみのない政治家だった。 反政府集会の直前にペンス副大統領から電話で指名された、と現地では伝えられている。いわば米国が選んだ「持ち駒」である。 グアイド議長は「祖国を解放するため、あらゆる選択肢が用意されている」とツイッターで述べた。 「あらゆる選択肢」という言葉は、トランプ大統領が1月に、「グアイド大統領」を承認、し、「武力介入」の可能性を示唆した時、使った言葉だ。 「暫定大統領」を、その後、カナダやEUなどの先進国、近隣国が承認。日本も2月20日、支持を表明した。 米国はベネズエラの国営石油会社に対して米国内の資産を凍結するなどの経済制裁を実施し、マドゥロ大統領へ退陣の圧力をかけ続ける。 一方で、中国、ロシアなどは内政干渉を禁じる国連憲章を守るとしてマドゥロ政権を擁護し、世界が二分された状況だ』、本来であれば、マドゥロ大統領は「グアイド大統領」を国家反逆罪などで逮捕できる筈だが、米国を恐れて何もできないのだろう。
・『「喉に刺さったとげ」抜きたい米国 「反米政権」の転覆を狙う?  米国でベネズエラ問題を担当するのは、共和党右派を代表するペンス副大統領と、安全保障担当のボルトン大統領補佐官だ。 ボルトン氏は「ベネズエラに5000人派兵」と書かれた文書を、これ見よがしに抱えて記者団の前に現れ、「ベネズエラ軍最高司令部よ、今こそ国民の側につくべき時だ」と訴えた。 ボルトン氏はハノイでの米朝協議に備え、2月23日から韓国を訪問する予定だった。急きょ取りやめベネズエラ情勢に集中すると外電は伝えた。 ペンス副大統領も25日、コロンビアの首都ボコダで、グアイド氏と会った。 中南米は、「米国の裏庭」とされ、多くの国は米国と政治的にも経済的にも深く結びついてきた。そうした地域で、「反米」を掲げるマドゥロ政権は、米国は「喉に刺さったとげ」である。 トランプ政権は、ベネズエラを転覆する千載一遇のチャンスと見ているからだろう。 だが政治が混迷するなか、ベネズエラは猛烈なインフレが人々の暮らしを破壊し、1日に約5000人が国境を越えコロンビアやエクアドルに流出しているといわれている。 グアイド議長は国際社会に人道支援を要請。米軍の輸送機がコロンビアに大量の援助物資を輸送し、国境を開くことを求めている。 これに対し、ベネズエラ政府は「人道上の問題はない」と主張、国境を開けば米国の軍事介入を招く、と警戒する。 「人道の危機」には、様々な見方がある。 2017年11月、ベネズエラを調査した国連人権部門の独立専門家アルフレッド・デ・サヤス弁護士は「不満や物不足はあるがベネズエラの状況は人道危機に当らない」と結論づけた。 その後、インフレは勢いを増しているが、食糧などは配給券が配られており、戦火にさらされたシリアやイラクなどの状況とは全く違う。 見方が分かれるなかで、米軍が「人道支援」を名目に、ベネズエラ国内に“侵攻”する可能性はないのか』、ボルトン氏は失脚したが、原因は不明だ。「国連人権部門の独立専門家」が「人道危機に当らない」としているのでは、「米軍が「人道支援」を名目に、ベネズエラ国内に“侵攻”する」のは無理がありそうだ。
・『過去にはCIAが反チャベスクーデターを画策  米国には“前科”がある。 カリブ海を挟んでフロリダ半島の対岸にあるベネズエラは、サウジアラビアをも上回る世界最大の石油埋蔵量を誇る南米の産油国。長く親米政権が続き民主主義も定着していた。 だが一方で、貧富の差は激しく、裕福な暮らしをする白人層とヒスパニックなどの下層に分断され、石油の恩恵は多くの人には届かなかった。 1999年、貧しい人々を背に政権を取ったのが、チャベス前大統領である。 スペイン系、先住民、黒人の血を引き、陸軍士官学校で頭角を現した「青年将校」。一度はクーデターに失敗し投獄されたが、合法的政治運動に転じ1999年の大統領選挙で勝利した。 医療無料化、農地解放、価格統制など貧困層に手厚い政策を推進した。南米に左翼政権が広がることを恐れた米国の干渉が始まる。 2002年、CIAの支援を受けた軍がチャベス大統領を監禁。財界人のペドロ・カルモナ氏を暫定大統領に立てた。 怒った貧困層が大規模なデモを展開し、情勢不利と見た軍が寝返り、チャベスは解放された。カルモナ氏は亡命しクーデターは2日で終息した。 CIAはチャベス政権発足直後からクーデター工作を始めていたことが分かった。その後も暗殺計画が発覚するなど、米国との緊張関係が続いてきた。 米国の干渉を受けながら、チャベス政権が社会主義的政策を遂行できたのはオイルマネーがあったからだ。豊富な石油収入がが貧者に手厚い分配を可能にした。 一方で、取り分が減る大企業や富裕層は反発、海外からの投資は鈍化。国内の供給体制は、脆弱になっていった。 経済が暗転する引き金になったのが、原油価格の急落だった』、「過去にはCIAが反チャベスクーデターを画策」し失敗した前科があるのでは、直接的介入の壁はますます高そうだ。
・『経済制裁は罪なき人を襲う「焦土作戦」  石油収入で得た外貨で工業品や生活物資を輸入する経済は、原油安をもろに受け国際収支が悪化した。 通貨ボリバルは下落、輸入品の価格は上昇し人々の暮らしを直撃した。 石油企業を国有化し、要職を軍関係者に与えた内政が災いした。市況がいい時は素人経営でもしのげるが、悪化すると経営判断が追いつかない。原油生産は落ち込み、経済を委縮させた。 2013年にチャベス大統領が死去、副大統領から後継についたマドゥロ氏は、石油一本足経済の弱点をもろに受けた。 米国との対立で外資導入は進まない。原油の値下がりで資金不足に陥った。 救いの手を差し伸べたのが中国だった。南米への影響力拡大を目指す習近平国家主席はベネズエラを橋頭保に見立てた。マドゥロ政権は中国マネーに頼り対外債務が急拡大した。 一方で、ロシアもこの間、「反米政権」にずっと経済支援を続けてきた。 脆弱なベネズエラ経済がマヒする決定打となったのが、米国による経済制裁だ。 2015年から米国は、ベネズエラ要人が米国に持つ資産の凍結を開始。マドゥロ大統領の全ての資産まで凍結された。 17年8月にはベネズエラ政府や国営石油会社が発行する株や債券の購入を禁止。資本市場から締め出した。 金融制裁が追い打ちをかける。貿易の資金決済が制限され、日用品や医薬品の代金が支払えず、輸入が止まるという事態が起きている。糖尿病薬のインスリンやマラリア治療薬などが入手できない。 貿易はドル決済がほとんどだが、米国の銀行が決済しないためベネズエラは「兵糧攻め」にあっているに等しい。 「子どもに薬を」などと人道支援を訴える記事が日本の新聞に載るが、医薬品不足の根っこには米国による経済制裁があることを忘れてはいけない。 資金不足を補うためベネズエラは、中央銀行の輪転機をフル回転させ景気を好転させようとした。その結果が、とんでもないハイパーインフレだ。 アベノミクスと似た通貨の増発だが、モノがあふれる日本と違い、経済制裁で物資の供給が足らないところで通貨が大量発行されたから、たちまち物価急騰にに火がついた。 国際通貨基金(IMF)は、昨年7月、「ベネズエラの物価上昇率は年率100万%になるだろう」と推計した。トイレットペーパーを買うのにレンガ3つ分ほどの札束が必要になる天文学的なインフレが起きている。 石油に頼り切った脆弱な経済や経済運営に不手際があったにせよ、事態を深刻化させたのは、他でもない経済制裁という「兵糧攻め」である。 そしてその影響をもろに受けたのはチャベス大統領を熱狂的に支持した下層の人々だ。 命と直結する食料品や医薬品の不足がマドゥロ政権への不信となって現れた。 今のベネズエラはの状況は、米国にとって首尾上々だろうが、これは「焦土作戦」ではないか。 気に入らない為政者を引きずり下ろすため、罪のない人たちの生活を破壊し、難民が生ずるような状況を作り出している。 むしろ米国のやっていることの方が、「人道に反する行為」だと思うが、一方で米国は支援物資を届けるからと、国境を開くよう要求している』、米国は直接の介入の代わりに、「焦土作戦」で経済を混乱させているようだ。
・『強国の介入で残るのは内戦の泥沼と悲惨な暮らし  大国が「大義」を掲げて他国に侵攻したり、影響力を強めようとしたりした例は、歴史上、枚挙にいとまがない。最近のイラクやアフガニスタン、シリアなどもそうだ。 ブッシュ政権時代、「9・11同時多発テロ」事件(2001年)を首謀したアルカイダのビン・ラーディン氏の引き渡しなどを求めて、米軍がアフガニスタンを制圧した後、首都カブールでカルザイ大統領を取材したことがある。 大統領邸を警護するのは海兵隊で、周囲は全て米軍で固められ、その中にポツンと大統領がいた。 好感の持てる人物だったが、亡命アフガニスタン人の中から、米国が選んだのはこういう人か、と納得した。見栄えがよく、好感度の高い外向けの役者である。 ベネズエラで、無名のグアイド氏に正当性を付与するには「独裁者と戦う民主化のヒーロー」に仕立てるのがいい、ということなのだろう。 ウォール・ストリート・ジャーナルが「新しい民主的リーダー」とたたえるなど、米国の主要メディアも政権と足並みをそろえ、軍事介入の露払いをするかのような論調だ。 中南米は、巨大な覇権国家の風圧にさらされ、多くの国は“隷属”を強いられてきた。歯向かえば、「非民主的」の烙印を押され、政権転覆や経済封鎖にさらされる。 逆らって得はなく、かろうじてキューバ、ニカラグア、ベネズエラが抵抗を続けている。ベネズエラが倒れれば、ドミノ倒しも起きかねない。 しかも強国が介入したの後に残るのは、終わりなき内戦と悲惨な暮らしだということも、歴史が教えている』、米国は「焦土作戦」の他にも、ベネズエラ軍部にも働きかけているのだろうが、果たしてどうなるのだろう。

次に、10月25日付けYahooニュースが転載したダイヤモンド・オンライン記事、第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミストの西濵 徹氏による「「南米の優等生」チリで非常事態宣言、治安悪化の背景にある経済問題」を紹介しよう。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191025-00218383-diamond-int&p=1
・『地下鉄料金引き下げ(注:正しくは、引き上げ)が学生デモ起こす 暴徒化で放火も  南米のチリでは、10月に入って以降に首都サンティアゴで学生デモが発生して一部が暴徒化した結果、ピニェラ政権がサンティアゴ周辺に非常事態宣言を発令する異常事態となっている。 昨年来の国際金融市場の動揺などに伴い通貨ペソ相場が下落し、輸入物価への押し上げ圧力が強まったことで燃料価格への上昇圧力が強まるなか、政府が財政悪化に歯止めを掛けるべく地下鉄料金を引き上げたのが学生デモのきっかけである。 同国ではここ数年、景気減速に伴う歳入減などの影響も重なり、財政赤字の拡大傾向に拍車がかかっている。輸出低迷などを受けて経常赤字も拡大し、「双子の赤字」に直面している。ピニェラ政権にとっては経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)の改善が喫緊の課題となっていた。 その後、学生を中心とするデモ活動のほか、大勢で一斉に無賃乗車を決行するといった状況が1週間以上にわたって繰り広げられてきた。一部のデモ隊が過激化する様相を見せ、サンティアゴでは地下鉄の駅やバスなどの公共交通機関のほか、さまざまな建物や警察署、スーパーマーケットなどに放火する動きが出た。死者が発生する事態にまで発展し、最終的に治安当局が鎮圧に乗り出す格好となった』、「南米の優等生」チリで非常事態宣言」、とは南米はどこも大変なようだ。
・『1人あたりGDPは比較的高いが、銅依存の経済体質変わらず  その結果、ピニェラ大統領は現地時間の今月18日に非常事態宣言を発令したほか、翌19日には地下鉄料金の値上げ凍結を発表するなど、政策の見直しを余儀なくされている。 なお、同国では1973年に発生した軍事クーデターを経て誕生したピノチェト政権下で約20年にわたって軍事独裁政権が敷かれた後、1990年に民政移管されたため、多くの国民に当時の記憶が残るなか、軍部による強硬策が採られたのは極めて異例と捉えられている。 なお、チリは1人当たりGDP(国内総生産)が昨年時点で1万5829ドルと中南米諸国のなかでは比較的高い。2010年には中南米諸国のなかでメキシコ(1994年)に次いで、いわゆる「先進国クラブ」とも称されるOECD(経済開発協力機構)に加盟するなど、域内でも政治および経済の両面で比較的安定しているとされる。 ただし、同国の人口は1905万人(今年8月時点)と中南米諸国のなかでは小さく、経済構造的には輸出のGDPに占める比率が約3割と輸出依存度が相対的に高い。さらに、財輸出に占める銅の割合はかつてに比べて低下しているものの、依然として半分近くを占めるなど「モノカルチャー」的な側面がある』、チリでは、自由選挙で成立した左派のアジェンデ政権を米国主導で軍部が1973年にクーデターで倒し、多くの左派活動家が殺害され、軍事政権が1989年まで続いた悲惨な歴史がある(Wikipedia)。今回の「非常事態宣言」はあくまで緊急避難的なものなのだろう。
・『輸出の頭打ちで急速に鈍化する経済成長率  結果的に世界経済の動向に影響を受けやすい上、近年は銅の世界有数の需要国である中国の景気動向に大きく左右される傾向にある。昨年の経済成長率は前年比プラス4.02%と5年ぶりに4%を上回る伸びに加速したものの、今年前半の経済成長率は同プラス1.76%と急速に勢いを失っている。足下の輸出が頭打ちの様相を強めて、前年を下回る伸びで推移していることが影響している。 他方、チリはOECD諸国のなかでは最もジニ係数が高いなど社会・経済的な格差が大きい。近年の生活費や教育費などの高騰の動きを受けて格差が一段と拡大する傾向が強まっており、低所得者層を中心に不満が高まる動きもみられた。 こうしたなか、足下のインフレ率は9月時点で前年比プラス2.11%と中銀が定めるインフレ目標(3プラスマイナス1%)の下限近傍で推移しており、一見すると落ち着いた状況が続いている』、「格差が一段と拡大する傾向が強まっており、低所得者層を中心に不満が高まる動きもみられた」、なるほど。
・『首都サンティアゴから地方都市に拡散するデモ  しかし、上述のように国民の間には広く不満が鬱積する状況が続いてきたなか、政府による地下鉄料金の引き上げ決定という緊縮策の実施が国民感情の「爆発」につながった可能性は高い。 なお、年明け以降の中南米諸国においては、今月にエクアドルでモレノ政権による公共料金の引き上げに反対する国民が暴徒化して一時非常事態宣言が発令された。アルゼンチンではマクリ政権による政策運営を批判する国民が散発的にデモを繰り広げる状況が続いている。 ブラジルでもボウソナロ政権による教育予算削減に反対する学生および教職員が大規模な抗議デモを展開するなど、政府主導による緊縮策をきっかけに国民が不満を爆発させる動きが見られる。 このように、中南米諸国では地域の社会に「液状化」的な動きが広がりを見せるなか、チリの首都サンティアゴでは11月にAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会議が、12月にはCOP25(国連気候変動枠組条約第25回締約国会議)の開催が控えている。ピニェラ政権としては早期の事態収拾により国際的なダメージを最小化することを狙ったと考えられる。 ただし、デモの動きは首都サンティアゴから地方都市にも広がりを見せており、政府内では他の都市での非常事態宣言を発令する可能性が示唆されるなど、事態収拾が図られるかは予断を許さない状況にある』、APEC首脳会議は、治安悪化から中止になったようだ。南米での政治不安の広がりは本当に不気味だ
・『不十分な外貨準備 対外的ショックに対する耐性は高くない  しばしば「南米の優等生」とも称されることが少なくないチリだが、外貨準備高は9月末時点で389億ドルである一方、8月末時点における短期対外債務残高が227億ドルと外貨準備高の6割弱の水準に達するなど、対外的なショックに対する耐性は必ずしも高くない。 事実、IMF(国際通貨基金)が輸出やマネーサプライ、短期対外債務残高、その他債務残高などを元に算出するARA(外貨準備高の適正水準:Assessing Reserve Adequacy)対比で、外貨準備高は適正とされる「100~150%」の水準に満たない。対外的に脆弱と判断できる。 足元では、米中貿易摩擦など世界経済を取り巻く環境に不透明感が高まるなか、国際金融市場も動揺しやすい状況が続いている。ピニェラ政権にとっては早期に事態収拾を図ることができるか否か、正念場に立っているといえる』、軍政に戻ることなく、事態を収拾してほしいものだ。
タグ:ダイヤモンド・オンライン (その1)(一触即発のベネズエラ 「独裁vs民主化」の図式に翻弄される悲惨、「南米の優等生」チリで非常事態宣言 治安悪化の背景にある経済問題) 不十分な外貨準備 対外的ショックに対する耐性は高くない 首都サンティアゴから地方都市に拡散するデモ 輸出の頭打ちで急速に鈍化する経済成長率 1人あたりGDPは比較的高いが、銅依存の経済体質変わらず 財政赤字の拡大傾向に拍車がかかっている。輸出低迷などを受けて経常赤字も拡大し、「双子の赤字」に直面 中南米 サンティアゴ周辺に非常事態宣言を発令 学生デモが発生して一部が暴徒化 「「南米の優等生」チリで非常事態宣言、治安悪化の背景にある経済問題」 西濵 徹 yahooニュース 強国の介入で残るのは内戦の泥沼と悲惨な暮らし 経済制裁は罪なき人を襲う「焦土作戦」 過去にはCIAが反チャベスクーデターを画策 「喉に刺さったとげ」抜きたい米国 「反米政権」の転覆を狙う? 中国、ロシアなどは内政干渉を禁じる国連憲章を守るとしてマドゥロ政権を擁護し、世界が二分 「暫定大統領」を、その後、カナダやEUなどの先進国、近隣国が承認。日本も2月20日、支持を表明 「暫定大統領」の承認で世界が二分 米国は「武力介入」示唆 「暫定大統領」を宣言したフアン・グアイド国会議長をいち早く支持したトランプ政権は、軍などに反政府勢力側につくように呼びかけ、米国メディアも「人道支援を独裁政権が阻んでいる」と伝える コロンビア国境に集められた「緊急援助物資」の搬入を巡り、マドゥロ政権と反政府勢力が一触即発の状況 「一触即発のベネズエラ、「独裁vs民主化」の図式に翻弄される悲惨」 山田厚史
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日本型経営・組織の問題点(その8)(仏教国・スリランカ大統領が嘆いた「精神性」なき経済大国ニッポン、サムソン覇権を許した日本大企業の真の"戦犯" "失われた30年"日本企業の失敗本質、チームワーク至上主義の誤解と「ONE TEAM」の奥義) [経済政治動向]

日本型経営・組織の問題点については、8月18日に取上げた。今日は、(その8)(仏教国・スリランカ大統領が嘆いた「精神性」なき経済大国ニッポン、サムソン覇権を許した日本大企業の真の"戦犯" "失われた30年"日本企業の失敗本質、チームワーク至上主義の誤解と「ONE TEAM」の奥義)である。

先ずは、東京工業大学教授・リベラルアーツ研究教育院長の上田紀行氏が9月10日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「仏教国・スリランカ大統領が嘆いた「精神性」なき経済大国ニッポン」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/214248
・『相次ぐ企業の偽装事件、ストレスで心身を病む会社員、続く役人の文書改竄・不適切調査、そして長すぎる老後への不安――。なぜ、こんな世の中になってしまったのか。スリランカで「悪魔祓い」のフィールドワークをおこない、「癒し」の観点を早くから提示し、日本仏教の再生に向けた運動にも取り組む上田紀行・東京工業大学教授・リベラルアーツ研究教育院長は、いまの日本人には、したたかに「立て直していく力」が乏しいと言う。日本は何を捨て去ってしまったのか? 上田教授の著書『立て直す力』(中公新書ラクレ)から、悩みを消し去り幸福に生きるためのヒントをお伝えする』、「悩みを消し去り幸福に生きるためのヒント」とは興味深そうだ。
・『今の日本を覆う失敗を語れない雰囲気  満員電車を前にして、時折立ち尽くしてしまうことはないでしょうか。 通勤時間帯で、しかも人身事故でダイヤが乱れて、いつもより混雑しているときがあります。 人が引きちぎられるようにして降りてきて、人があたかもモノのような形で押し込まれていくさまを見ていると、立ち尽くしてしまうのです。残された隙間に突進していく力が湧いてこない。 それはおそらく、社会状況が変わってしまったからだと思うのです。昭和の頃は、ギューギュー詰めになった車内にからだを預けて、ともかく乗ってしまえば、からだはキツいかもしれないけれど、終着駅にはそれなりの幸せが待っていると思えた。 経済は右肩上がりだったし、終身雇用制度が維持されている会社も多かった。給与のベースアップも多少なりともあった。少なくとも、昭和から平成の最初の頃までは、漠然とした安心感があったわけです。多くの人がそういう感覚だったので、一体感のようなものがあったような気もします。「経済神話」「企業信仰」というものに守られている心強さもありました。 しかしバブル経済が崩壊し、リーマンショックという大波を受ける中で時代状況は変わりました。多くの企業に導入された成果主義は一層研ぎ澄まされ、ハードルの高いノルマがのしかかり、達成できないと厳しい上司から説教されたり、ネジを巻かれたりする。目標未達の月が続くと、いつ肩をたたかれるかと、針のむしろの状態が続くことになる。 生きづらい社会になっていったのです』、確かにその通りだ。
・『人間はとても壊れやすい いつの時代もこぼれ落ちる人はいる  寛容な社会であれば、まだ精神的に何とか持ちこたえられるのですが、飲みながら愚痴をこぼせた日常は、古き良き時代の趣きさえあります。 お能をみると、妖怪になって夜な夜な旅人を襲うような化け物がでてきます。ところがその化け物たちはみんな不幸な境遇で傷ついた人間の変化なのです。そしてそのこころの内を旅の僧が聞いてやると、妖怪は天上に昇っていきます。誰でも突然不幸な境遇となることがあり、傷ついて妖怪となってしまう。そういうものがこころなのであって、常にピンピンしているものではありません。 時代が変わったとしても、人間のこころが強靭になるわけではありません。傷つきやすい、フラジャイルなものです。 高度経済成長の時代、経済神話、企業信仰があった時代、身分は企業という“御本尊”に守られていたので、会社に依存していればさほど問題はありませんでした。「安心」や「信頼」は、ある意味タダのようなもの、空気のようなものだと思い込んでいました。気がつかないうちに、競争からこぼれ落ちた人へのセーフティネットを、あの時代に捨て去ってしまったのです。 そのセーフティネットの1つが宗教なのです。 そのことを痛感した、印象深いエピソードを紹介したいと思います』、「競争からこぼれ落ちた人へのセーフティネットを、あの時代に捨て去ってしまったのです。 そのセーフティネットの1つが宗教なのです。 スリランカで11年間大統領として君臨したジャヤワルダナ氏の逸話です。彼はまだ大蔵大臣だった1951年、サンフランシスコ講和会議にスリランカ代表として出席しました。 この会議では、第2次世界大戦後の領土問題や日本への賠償請求などについて話し合われました。日本に痛めつけられた国々からは、日本への厳しい意見が相次ぎました。「多額の賠償金を日本に求めるべきだ」「日本の自由を奪ってしまえばいい」というムードが漂っていました』、「サンフランシスコ講和会議にスリランカ代表として出席」、日本擁護をしたというのは覚えているが、詳細は忘れたので、以下をみてみたい。
・『日本の印象をがらりと変えたジャヤワルダナ大統領の演説  そんな中、「私たちは日本に対する賠償請求権を放棄する。ぜひ日本には寛大な措置をお願いする」と演説したのがジャヤワルダナだったのです。少し長くなりますが、以下、引用します。 「憎悪は憎悪によって止むことはなく、慈悲によって止む」というブッダの言葉を私たちも信じます。これはビルマ(現ミャンマー)、ラオス、カンボジア、シャム(現タイ)、インドネシア、セイロン(現スリランカ)を通じて中国、日本にまで広まって、共通の文化と遺産をわれわれは受け継いできました。 この会議に出席するために途中、日本を訪問しました。その際に私が見いだしたように、この共通の文化はいまだに存在しているのであります。そして、日本の指導者たち、すなわち民間人のみならず、諸大臣から、また寺院の僧侶から、私は一般の日本人はいまだにあの偉大な平和の教師の影響を受けており、さらにそれに従おうと欲しているという印象を得たのであります。われわれは彼らにその機会を与えなければいけません」(『次世代に伝えたい日本人のこころ』) あまりに感動的な演説であったため、各国の日本に対する雰囲気はずいぶん変わったと言われています。そして注目すべきは、ジャヤワルダナが、日本の指導者を含め、民間人、諸大臣、一般の人までもが、平和の教えを説くブッダの影響を受け、それに従おうとしている、とみていたことです。 なぜ彼はそう思ったのでしょう。ジャヤワルダナが、先の講和会議に出席するためサンフランシスコへ向かう際、日本に立ち寄り、ある人物と会っていたのが明らかになっています。 当時、スリランカからサンフランシスコへの直行便はなく、日本を経由した際に鎌倉に立ち寄りました。会ったのは、禅をアメリカに広めた仏教思想家、鈴木大拙です。大拙と話して感動した話を、1979年に日本を再訪した際、天皇陛下の前で語っています』、「「憎悪は憎悪によって止むことはなく、慈悲によって止む」というブッダの言葉を私たちも信じます」、さすがブッダだけあって、いいことを言ったものだ。
・『鈴木大拙との面会が転機に 日本とスリランカを結んだ仏教の絆  1951年当時の日本は、東京の半分ほどが破壊され、まだ戦争の惨禍に苦しんでいる状況でした。彼はそんな日本にあるいくつかの寺を訪問し、仏教指導者と面会しますが、なかでも大拙との邂逅は印象深かったそうです。ジャヤワルダナは次のように続けます。 「私は鈴木教授に、日本の方が信仰している大乗仏教と、私たちが信仰している小乗仏教はどう違うのかを尋ねました。すると教授はこう言いました。なぜあなたは違いを強調しようとするのでしょうか。それよりも、私たちはどちらも仏法僧(仏道における三宝、仏=ご本尊、法=経典、僧=仏道を歩む人)を護持することで共通しており、無常、苦、無我を悟るための八正道(涅槃に至るための八つの修行方法)を信奉しているではありませんか。私は日本の仏教徒とスリランカの仏教徒を結びつける強い絆があることを感じました」(同書) ジャヤワルダナは鈴木大拙や日本の僧侶たちに会って感動し、日本に流れている仏教の伝統を絶対に消してはいけない、われわれは仲間なのだと思い、日本を助けようということを説かれました。 しかし日本は、その後大きく変化していきます。 高度経済成長を遂げ、終身雇用制度を採る企業の数が増え、社員が安心して働ける環境が整うと、宗教になど頼る必要はなくなったと思ったのでしょう。仏教を捨て、単一化を推し進めていきました。 そのことをジャヤワルダナは、鋭く察知します。1968年に彼が日本を再訪したときのこと。大阪の万国博覧会を2年後に控えた当時の日本には、立派なビルや商業施設ができ、繁栄を遂げていました。それを目の当たりにした彼は驚きます。 17年前と同じように、彼は再び日本の僧侶たちに会います。それはジャヤワルダナたっての願いだったようです。各宗派のトップの僧侶が集められたのですが、ジャヤワルダナがいくら仏教的な話をしても、僧侶たちの反応は芳しくありません。宗教性を感じられず、彼はひどく落胆したと言います。経済的な繁栄の中で、仏教教団にも戦後すぐの緊迫感が失われていったのです。 そのことを1979年の宮中晩餐会でジャヤワルダナは次のように語っています。 「私が1968年に再び日本を訪れたとき、あなた方は以前と変わって物質的にとても繁栄していました。今日では日本国民は奇跡の復活を遂げ、国は富み、経済的には世界をリードする国のひとつとなりました。 しかし、私たちが知っているように、それだけが文明ではありません。私たちの周りにある、人によって建てられた偉大な建造物がひとかけらもなく消え去ったとしても、私たちがちょうど28年前に、サンフランシスコにおける演説で引用したブッダの言葉は、人々に記憶されていることでしょう。 ほかのあらゆる国々と同様に、日本においても壮大な権力がその必然的な終わりを迎えたとしても、あなた方の寺院から広まった理想や、あなた方の僧侶が実践した瞑想と敬虔な言葉は記憶され、そして、来たるべき世代の人類の型をつくっていくことでしょう」(同書)』、「鈴木大拙との面会が転機に 日本とスリランカを結んだ仏教の絆」、「ジャヤワルダナ」氏に強い印象を与えた「鈴木大拙」氏はさすがだ。しかし、1968年の再訪時に、「各宗派のトップの僧侶が集められたのですが、ジャヤワルダナがいくら仏教的な話をしても、僧侶たちの反応は芳しくありません。宗教性を感じられず、彼はひどく落胆したと言います」、高度成長が日本の「僧侶たち」から「宗教性」を失わせたのであれば、残念なことだ。
・『経済至上主義による単一化で崩れてしまった日本の「複線社会」  これはものすごい皮肉です。「日本がこんなに発展したのは喜ばしい。しかしあのときの鈴木大拙の言葉ははたして活かされているのか。自分を感動させ、サンフランシスコ講和会議で一大演説をさせた、日本の深い精神性はどうなってしまったのか?」というわけです。 当時はすでに日本人は海外から「エコノミック・アニマル」と呼ばれるようになっていました。1970年代、80年代の経済成長、そしてバブルに至る道を思い返してみれば、そこには明らかに経済至上主義による社会の単一化がありました。 ジャヤワルダナのエピソードをたどっても、やはり日本にも、昭和20年代前半には、複線の社会(経済人としての線、徳を積んで人間的な成長を人生において求める宗教人としての線)があったことがわかります。しかしその後、経済成長とともに、宗教を手放していったのです。 日本では、宗教や精神性がもっと身近にあったし、こころの中心にもあったのです。 しかしそれが失われたように一見見える現代においても、その複線社会を甦らせるのに遅すぎることはありません。ぼくは、日本人はいまこそ宗教に向かい合うべきときだと思います』、「経済至上主義による単一化で崩れてしまった日本の「複線社会」、というのは問題だが、無宗教の私には、「日本人はいまこそ宗教に向かい合うべきときだと思います」には違和感がある。経済VS宗教、以外にももっと軸があるような気がする。

次に、筑波大学名誉教授の河合 忠彦氏が10月30日付けPRESIDENT Onlineに掲載した「サムソン覇権を許した日本大企業の真の"戦犯" "失われた30年"日本企業の失敗本質」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/30027
・『「失われた30年」で、日本企業は敗北したのか?  日本経済にとって、平成時代は「失われた30年」でした。1989(平成元)年の日本の1人当たり名目GDPは世界第4位でしたが、2018(平成30)年には第26位に後退。この間の増加率は約58%で、同期間に約174%も増加したアメリカに比べ、率直に言って見劣りするものでした。 その要因は複合的ですが、目につくのは日本の大企業の没落です。89年には世界の企業の時価総額ランキング上位50社の中に、日本企業は32社ありました。それが18年、ランキング入りしていたのはトヨタ自動車の1社だけです。 そのひとつの象徴が、日本のエレクトロニクス産業の敗北でした。私の考える「敗北」とは、事業の赤字が続くこと、ないしは事業を縮小・撤退することです。スマホで負け、有機ELで負け、GAFAには及びもつかない。5G技術にしても、蚊帳の外です。 こうした現状が生じたのは、1990年代から2010年ごろにかけての薄型テレビ戦争で、日本メーカーが敗れてお金がなくなったことに起因します。結果、薄型テレビに続くスマホや有機ELなどの次世代製品の開発で後れをとり、GAFAのようなプラットフォームビジネスや、5Gのようなさらに次世代のテクノロジー競争にも置き去りにされてしまいました』、確かに電機業界の「敗北」ぶりは目を覆いたくなるほどだ。
・『「失敗の本質」を分析・把握し、克服する  日本経済が再び輝きを取り戻すためには、各企業が薄型テレビ戦争における「失敗の本質」を分析・把握し、克服する必要があります。一言で言えばそれは、トップ・マネジメント層の戦略の失敗(とりわけ、環境の変化に適切に対応する「ダイナミック戦略」の失敗)と、経営者の選任等におけるコーポレート・ガバナンスの欠如です。 まず、前者の失敗について説明しましょう。薄型テレビにおける日本企業の戦略の失敗は、大きく2つのカテゴリーに分けられます。1つは、最初はうまくいっていたのに、環境変化に伴う戦略の転換に失敗したパターンで、シャープとパナソニックがそれにあたります。もう1つは最初から苦労し、その後も傷が深くなるばかりだったパターンで、ソニー、東芝、日立製作所、パイオニアが該当します。 シャープは液晶の開拓者であり、当初は技術的に業界の先端を走っていました。一方で企業規模は比較的小さく、大量生産のための設備投資を機動的に行えるほどの体力はありません。そこで同社は技術力による差別化を戦略の核に置き、「亀山モデル」に象徴されるような大画面化や画質の向上に邁進しました。当初のうちはうまくいきましたが、他社もだんだん技術的にキャッチアップし、結局は価格競争に巻き込まれることを避けられませんでした。 パナソニックは液晶技術で後れを取っていたため、大型画面では液晶より有利とされていたプラズマディスプレイに経営資源を集中し、大規模生産でコストダウンを行って勝負に出ました。ところが、シャープをはじめとする液晶メーカーが徐々に大画面化に成功したため、消費電力や価格競争力で勝る液晶との競合が始まってしまいます。 そして両社に共通するのが、薄型テレビ市場がまさに飽和しつつあったタイミングで、それまでの戦略を転換すべく、大規模な工場を造ってしまったことです。その投資が重荷になっていたところに、08年のリーマン・ショック、さらに12年の家電エコポイント終了による需要減が起きたことで、より「負け」の傷を深くしました。 この2社以外の企業は、参入戦略の誤りや技術的な出遅れ、過去の成功体験や自社の技術力への過信、市場環境の変化に合わせた戦略転換の失敗などから、終始勝ち目の薄い戦いを強いられ続けました。そしてすべての日本の薄型テレビメーカーに共通することとして、先任社長が後継社長を選任した結果、前社長の影響力が残り続けるというコーポレート・ガバナンス上の問題が、戦略の適切な転換を妨げたことも指摘せざるをえません。「赤字続きだが前社長からのプロジェクトだから継続せざるをえない」といった案件が、どれだけ日本のメーカーの体力を削いできたことでしょうか』、「「失敗の本質」を・・・一言で言えばそれは、トップ・マネジメント層の戦略の失敗・・・と、経営者の選任等におけるコーポレート・ガバナンスの欠如です」、その通りだろう。
・『サムスンが覇権を握った理由  一方で、日本企業が苦闘する中、薄型テレビ戦争で覇権を握ったのが韓国のサムスンでした。サムスンは当初、シャープのように技術的に先行していたわけではなく、薄型テレビへの参入時は生産能力の増強による低価格戦略を基本としていました。では、何がその後の明暗を分けたのでしょうか。 液晶技術の進歩によって、業界全体が価格競争に巻き込まれ、先進国の需要がほぼ飽和しつつあった、という市場環境はサムスンにとっても共通でした。しかし、日本企業が低価格戦略(パナソニック)か技術による差別化戦略(シャープ)のいずれかに固執し、機動的な戦略転換に失敗したのに対し、サムスンはデザインやマーケティングによる差別化を含めた、柔軟な競争戦略を行いました。欧州市場で大ヒットしたワイングラス形シルエットの製品や、省エネをうたうLEDバックライト(技術的には比較的単純で、コストも大してかかりません)の製品などを開発し、市場で勝利したのです。 日本企業が無謀な設備拡大に走ったのに対して、ソニーと合弁でパネル生産会社を設立し、新興国市場向けの中型画面製品の需要拡大に合わせ、あえて最先端でない(ただし生産効率が高くて設備投資も安くすむ)生産設備の拡充を行うなど、パネル戦略の転換についても柔軟でした。日本とせいぜいアメリカ市場ばかりを見ていた日本企業に対し、サムスンが中国や南アジア、ブラジルなどを含む、よりグローバルな市場をとらえて戦略を立案していたことも一因でしょう。 この差が何から生まれるかといえば、やはりマネジメント層の戦略立案能力が、日本企業に比べてきわめて高かったからだと言わざるをえません。技術畑出身の経営者が多く、戦略の話をしたら上司に叱られたという話を日本メーカーの方から聞いたことがあります。一方、サムスンにはMBA取得者らによる「参謀本部」のようなものがあり、戦略立案とその遂行能力は日本企業の比ではありません。サムスンが日本企業との合弁や日本人技術者のヘッドハンティングを通じて、日本メーカーの技術を相当に吸収したのは事実です。しかし、薄型テレビ市場でシェアトップに押し上げたのは、最終的には経営戦略の優位性にあったと私は考えます』、「技術畑出身の経営者が多く、戦略の話をしたら上司に叱られたという話を日本メーカーの方から聞いたことがあります」、事実であれば救いようがない。「サムスンにはMBA取得者らによる「参謀本部」のようなものがあり、戦略立案とその遂行能力は日本企業の比ではありません」、彼我の差は極めて大きそうだ。
・『モノとプラットフォームを組み合わせて戦略  今後、日本のメーカーが再び輝きを取り戻すためには、これまで苦手としてきた企業戦略の部分、具体的には市場環境の変化に柔軟に対応する「ダイナミック戦略」の強化が不可欠です。競争戦略理論の古典であるポーター理論では、コストリーダーシップ戦略と差別化戦略は二律背反とされていますが、その両方を柔軟に組み合わせることは可能です。安くて品質がよく、ブランディングも巧みなユニクロは、その好例でしょう。また、GAFAのようにモノではなくプラットフォームベースで戦略をつくっていく、あるいはモノとプラットフォームを組み合わせて戦略を立てる方向もあるはずです。 そのためには、サムスンのように戦略立案に特化した参謀本部をつくるのも1つの手です。また、コーポレート・ガバナンスを強化して、前社長の戦略が惰性で継続されるような状況を防ぐことも必要でしょう。少なくとも中堅レベル以上の社員が競争戦略を理解するような土壌ができれば、そうした社員に見られている経営陣の緊張感も変わり、日本企業の戦略力は大きく向上していくはずです』、このほかにも日本企業が「カイゼン」という逐次的改革を重視し過ぎ、「競争戦略」を軽視してきた咎が出ているようだ。一刻も早く競争力を取り戻してほしいものだ。

第三に、健康社会学者(Ph.D.)の河合 薫氏が10月29日付け日経ビジネスオンラインに掲載した「チームワーク至上主義の誤解と「ONE TEAM」の奥義」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00046/?P=1
・『ワールドカップ ラグビー日本代表はカッコよかった。鍛え抜かれた強靭(きょうじん)な肉体と自分たちを信じる力。本当にカッコよかった。「どこの国籍だかわからないヤツらばかりで、応援する気がしない」「見た目がね…」とディスっていた人も、きっと感動したはず(参考 「世界最低レベルの外国人受け入れ寛容度、ニッポンの末路」)。 しょっぱなから個人的な話になってしまうけど、父がラグビーを大学時代にやっていたので子供のときからゲーム観戦に連れていかれたり、私の母校が花園にも出場するラグビーの強豪校だったたりしたのでワールドカップは最初から見る気満々だったけど、ここまでのめり込むとは……自分でも驚いている。 録画したゲームを繰り返し見ても飽きないし、スコットランド戦の後半20分を見るたびに勇気がでる。よし、頑張ろう! まだまだできる!とやる気スイッチが押されるのだ。 いかなるスポーツの祭典も私たちに感動と勇気をくれるものだが、なぜ、ここまで日本代表に魅了されてしまうのか?』、河合氏がもともと「ラグビー」と縁があったとは初めて知った。
・『ラグビー日本代表に理想の信頼関係を見た  私は「ONE TEAM」「信頼」という、私たちの内部に組み込まれた人類の原点を彼らが具体的に見せてくれたからだと考えている。 メンバーが一丸となり、それぞれのメンバーすべてがMAXの力を発揮して活躍し、互いに信頼し合っているのを肌で感じ、たとえスーパースターになれなくとも、自分もあんな風にMAXの力を発揮したい。皆、ああいうチームのメンバーになりたい。そう願ったのではあるまいか。 状況が厳しければ厳しいほど、誰もが自分ができることを探し、互いが依存しあいながらも、それぞれが自立して動く。少々大げさな解釈になってしまうけど、そういった人類の歴史は私たちの深部に刷り込まれていて、日本代表の勇姿が「その部分」を刺激したのだ。 昨今の競争社会では「個の確立」だの「自立」だのという言葉ばかりが飛び交うけれど、人類は他者と協働することで生き残ってきた。社会的人間である人間にとって、唯一無二の「個」などファンタジー。「個」と「依存」を対極に取って捉えるのではなく、共存させることで真のチームは成立する。 会社=COMPANY(カンパニー)はそのために存在し、個と個のつながりを育むのが、会社での“時間”であり“空間”である。 “The whole is greater than the sum of its parts.(直訳:全体は部分の総和に勝る)”というアリストテレスの名言は、まさに人間の本質なのだ。 というわけで今回は「チームと信頼」についてあれこれ考えてみようと思う』、「人類は他者と協働することで生き残ってきた。社会的人間である人間にとって、唯一無二の「個」などファンタジー。「個」と「依存」を対極に取って捉えるのではなく、共存させることで真のチームは成立する」、その通りだろう。「全体は部分の総和に勝る」、が「アリストテレスの名言」だったというのは初めて知ったが、噛みしめがいがある言葉だ。
・『チームワークやチーム力が、社会学や組織心理学で礼賛されるようになったのは1970年代後半以降とされている。 その火つけ役の一つが、日本のサラリーマンだ。 敗戦国でありながら、次々と「メイド・イン・ジャパン」の技を創出。世界の人々を驚かせた日本企業はどんどん成長し、日本は経済大国の一つになった。 それまでは研究者の関心はもっぱら個人主義、独立志向が高い米国だった。ところが、欧米のストレス研究者たちは「なぜ、日本のサラリーマンはあんなに元気なのか? なぜ、あんな技を次々と生み出しているのか?」と日本企業への関心を高めた。 その一人が日本企業を支える“経営の三種の神器”として、「終身雇用、年功制、社内組合」を挙げた米国の経営学者ジェームズ・C・アベグレンだ。終身雇用や年功制は、今では諸悪の根源のごとく言われているけど、実はこれらがすべての人間に宿る「たくましさ」を引き出す経営手法だとしたのである。 アベグレン博士が日本型経営のプラス面を世界に発信した背景には、人をコストと考え、レイオフを当たり前のように行っていた競争第一主義の米国企業に「本当にそれでいいのか? もっと人の強みを引き出す経営手法があるのではないか?」と警鐘を鳴らすことが目的だったとされている』、「チームワークやチーム力が、社会学や組織心理学で礼賛されるようになったのは1970年代後半以降とされている。 その火つけ役の一つが、日本のサラリーマンだ」、「日本企業を支える“経営の三種の神器”として、「終身雇用、年功制、社内組合」を挙げた米国の経営学者ジェームズ・C・アベグレンだ。終身雇用や年功制は、今では諸悪の根源のごとく言われているけど、実はこれらがすべての人間に宿る「たくましさ」を引き出す経営手法だとした」、確かに思い出した。
・『米国流雇用の見直しから始まったチームワーク研究  いずれにせよ「終身雇用」のもともとの言葉は「Lifetime Commitment」。終身雇用から受けるイメージとは、ちょっとばかり異なる。「雇用」だとパワーが圧倒的に雇う側に委ねられている感じだが、「Lifetime commitment」だと「あなたの人生に関わらせてね」といった優しいニュアンスがある。 つまるところ、アベグレンは「企業」の本質は単なる市場労働の場ではなく、社会組織であり、リソースであり、そこで働く人たちが安全に暮らせるようにすることが最大の目的だと説いたのである。 もっとも米国ではそれからも働く人を非人格化した経営手法を続ける企業が後を絶たなかったわけだが、確実に「チームワーク」に着目する研究者は増えた。社会学や政治学などの分野で研究されていたソーシャル・キャピタル(社会関係資本)という概念が、企業経営で注目されるようになったのもその延長線上にある。 企業のソーシャル・キャピタルの重要性を説いたドン・コーエンとローレンス・プルサックによる「IN GOOD COMPANY」(邦題『人と人の「つながり」に投資する企業』)は日本の大部屋主義や給湯室など、日本企業にかつて存在した「人がつながる空間」に言及し、さらには来るべきSNS社会での働き方にまで思慮を巡らせた名著だ。 そういったチームワーク礼賛主義の流れの中で、「人はチームワークが苦手」という、これまた「確かに!」と多くの人がうなずく論説を打ち出したのが、チームワーク研究の第一人者の一人、リチャード・ハックマン博士である。 ハックマン博士いわく「ただ単にチームのこだわりだけではチーム力は発揮できない。メンバーたちのポテンシャルを生かすことができない」と。「世間ではチームをめぐる問題の原因と結果の順序を逆にとらえている」と指摘した』、どういうことなのだろう。
・『目標共有と達成感がチームを進化させる  具体例として挙げたのが、交響楽団を対象にした調査だ。 ハックマン博士いわく、個々がチームに多少の不満を抱えているオーケストラの演奏の方が、メンバー全員が満足しきっているオーケストラのパフォーマンスよりも優れていることが分かった。チームメンバーたちが「最高の結果を残したい」という目標を共有できていると、「もっと自分にできることはないか?」とおのおのが努力する。その結果として、いい演奏ができた時に「このチームのメンバーでよかった」と満足感が得られ、さらに「チーム力」は進化していたのである。 もちろんその前提条件として、リーダーが「チームづくり」にこだわり、絶対的な方向性を示すことが必要不可欠。リーダーは「チームとしていい結果を出すこと」にこだわり続ける必要があり、その熱がメンバーに伝わったときに初めて、個々人が自分に足りないこと、自分がやるべきことに向き合うことができる。 それはまさにラグビー日本代表を率いたジェイミー・ジョセフHCが掲げた「ONE TEAM」であり、「ベスト8進出」という日本代表の目標だった。リーダーの一貫した揺るぎない姿勢は、チームの価値観とルールになる。 同時に、チームメンバー全員に「自分が参加している」という感覚を持たせることもリーダーの大切な仕事だ。 ワールドカップ日本代表チームのロッカールームには、ジェイミーHC(ヘッドコーチ)からのメッセージが、メンバー一人ひとりのロッカーに張られていた。おそらく彼は彼がHCに就任してからも常に、リーダーとして、個々のメンバーと向き合い「アナタは必要な存在だ」というメッセージを送り続けたのではないだろうか。 とはいえ、メンバーが増えれば増えるほど、リーダーの思いは届きづらくなるという側面もある。人が「一人の人」と日常的に向きあえるのはせいぜい10人。最適な人数は6人という調査結果もある。 日本代表はその点もクリアしているのが、これまたすごい。 報道されているとおり、リーチ・マイケル主将を筆頭に、プロップの稲垣啓太選手、ナンバーエイトの姫野和樹選手、フランカーのピーター・ラブスカフニ選手、スクラムハーフの田中史朗選手、スタンドオフ田村優選手、ウイングの松島幸太朗選手らに、リーダーとしてチームのかじ取りを任せた。 そして、それぞれのリーダーのもと、少人数のミーティングを繰り返し行い、メンバー一人ひとりが発言し、現状の問題点や今後の課題を話し合うことで、「ONE TEAM」という価値観を浸透させていったのだ』、オーケストラでは「チームメンバーたちが「最高の結果を残したい」という目標を共有できていると、「もっと自分にできることはないか?」とおのおのが努力する。その結果として、いい演奏ができた時に「このチームのメンバーでよかった」と満足感が得られ、さらに「チーム力」は進化していた」、ラグビー日本代表は、「それぞれのリーダーのもと、少人数のミーティングを繰り返し行い、メンバー一人ひとりが発言し、現状の問題点や今後の課題を話し合うことで、「ONE TEAM」という価値観を浸透させていったのだ」、ここでラグビーに結び付けた筆力はさすがだ。
・『「もの言える空気」は上から下へと伝わる  自分の意見を聞いてくれる「人」がいるからこそ人は発言する。「こんなこと言っちゃいけないんじゃないか」という心配をしなくてもいい「空気」があるからこそ、人は言いづらいことや失敗を言うことができる。 そういった空気が生まれるのはリーダーがメンバーをリスペクトするからであり、そのリスペクトをその下の小グループのリーダーが肌で感じることで、小グループのメンバーにもリスペクトが生まれる。上から下、下から横に「いい空気」が伝染し、初めてチーム全体の空気感が出来上がっていくのである。) 10年ほど前になるが、清宮克幸氏(現日本ラグビーフットボール協会副会長)をインタビューさせていただいたことがあった。 数々の金字塔を打ち立ててきた清宮氏だが、そのきっかけは早稲田からサントリーに入り、キャプテン失格になったことだと話してくれた。 清宮氏はサントリーに入社後、「こんな練習をやっていたら日本一なんかなれない。俺にキャプテンをやらせろ!」と25歳のときにキャプテンに就任する。 ところが出る試合出る試合負けばかり。27歳までキャプテンをやり続けたが一度も勝てなかった。で、キャプテンをやめた翌年、全国社会人ラグビーでサントリーは優勝する。 「やっと俺が間違っていた、俺に足りないものがあったと受け入れられました。結局、『俺が俺が』ってとにかく独りよがりだった。なんでも自分でできると過信していたんです。チームは組織。組織が機能するチームにしないとダメ。自分でできることは限界があることに気づいたんです」(清宮氏)。 どんなにリーダーが優秀でも、リーダーシップを発揮するにはフォロワーであるメンバーたちの力が不可欠。チームにはチームワークを発揮させる仕組みが必要であり、チームの力はリーダーの価値観がクモの巣のようにチームに張り巡らされ、クモの巣から誰一人として漏れない組織がつくられて発揮できる』、清宮氏がこんな挫折を経験していたとは初めて知った。
・『真の競争力は個々が信頼されるチームから生まれる  どんなに能力があろうとも、周囲と「いい関係」がない限り、その能力が生かされることはない。 人から信頼されている、愛されている、見守られている、認められていると認識できたとき初めて、人は安心して目の前の難題に全力で取り組むことができる。自らの行動に責任を持ち、自分の力を極限まで引き出す胆力が育まれる。 ラグビー日本代表はそんな人の本質を教えてくれたのだ。 そういえば、かの松下幸之助氏は、「和の精神とは、人と対立することを避けて、表面的に仲良くやっていくという意味での和ではありません。私たちが考える和の精神とは、まず皆が自由に正直に話し合い、お互いの意見や価値観に違いがあることを認め、その違いを尊重したうえで、共通の目標のために協力し合うという、相違や対立の存在を前提とする和なのです」と説いたが、これも真のチーム力の言葉ではないか。 最後に……。今回の日本代表の躍進をさらに理解するためにオススメの映画を2つ。「ブライトンミラクル」と「インビクタス」。映画界の回し者ではありませんが、学びが多い映画なのでこの機会にぜひ』、松下幸之助氏の「和の精神」もなかなか含蓄のある言葉だ。
タグ:『立て直す力』 “経営の三種の神器”として、「終身雇用、年功制、社内組合」を挙げた米国の経営学者ジェームズ・C・アベグレン 「仏教国・スリランカ大統領が嘆いた「精神性」なき経済大国ニッポン」 ソーシャル・キャピタル 真の競争力は個々が信頼されるチームから生まれる 「もの言える空気」は上から下へと伝わる 目標共有と達成感がチームを進化させる 悩みを消し去り幸福に生きるためのヒント 「人はチームワークが苦手」 チームワークやチーム力が、社会学や組織心理学で礼賛されるようになったのは1970年代後半以降とされている。 その火つけ役の一つが、日本のサラリーマン 人類は他者と協働することで生き残ってきた。社会的人間である人間にとって、唯一無二の「個」などファンタジー。「個」と「依存」を対極に取って捉えるのではなく、共存させることで真のチームは成立する 全体は部分の総和に勝る)”というアリストテレスの名言は、まさに人間の本質 ラグビー日本代表に理想の信頼関係を見た 「チームワーク至上主義の誤解と「ONE TEAM」の奥義」 日経ビジネスオンライン 河合 薫 モノとプラットフォームを組み合わせて戦略 サムスンにはMBA取得者らによる「参謀本部」のようなものがあり、戦略立案とその遂行能力は日本企業の比ではありません 技術畑出身の経営者が多く、戦略の話をしたら上司に叱られたという話を日本メーカーの方から聞いた サムスンはデザインやマーケティングによる差別化を含めた、柔軟な競争戦略を行いました 日本企業が低価格戦略(パナソニック)か技術による差別化戦略(シャープ)のいずれかに固執し、機動的な戦略転換に失敗 サムスンが覇権を握った理由 トップ・マネジメント層の戦略の失敗(とりわけ、環境の変化に適切に対応する「ダイナミック戦略」の失敗)と、経営者の選任等におけるコーポレート・ガバナンスの欠如です 「失敗の本質」を分析・把握し、克服する 日本のエレクトロニクス産業の敗北 89年には世界の企業の時価総額ランキング上位50社の中に、日本企業は32社ありました。それが18年、ランキング入りしていたのはトヨタ自動車の1社だけ 「失われた30年」で、日本企業は敗北したのか? サムソン覇権を許した日本大企業の真の"戦犯" "失われた30年"日本企業の失敗本質」 PRESIDENT ONLINE 河合 忠彦 それが失われたように一見見える現代においても、その複線社会を甦らせるのに遅すぎることはありません。ぼくは、日本人はいまこそ宗教に向かい合うべきときだと思います 経済至上主義による単一化で崩れてしまった日本の「複線社会」 各宗派のトップの僧侶が集められたのですが、ジャヤワルダナがいくら仏教的な話をしても、僧侶たちの反応は芳しくありません。宗教性を感じられず、彼はひどく落胆したと言います 1968年の再訪時 鈴木大拙との面会が転機に 日本とスリランカを結んだ仏教の絆 会ったのは、禅をアメリカに広めた仏教思想家、鈴木大拙 日本を経由した際に鎌倉に立ち寄りました 日本の指導者たち、すなわち民間人のみならず、諸大臣から、また寺院の僧侶から、私は一般の日本人はいまだにあの偉大な平和の教師の影響を受けており、さらにそれに従おうと欲しているという印象を得たのであります。われわれは彼らにその機会を与えなければいけません 「憎悪は憎悪によって止むことはなく、慈悲によって止む」というブッダの言葉を私たちも信じます 「私たちは日本に対する賠償請求権を放棄する。ぜひ日本には寛大な措置をお願いする」 日本の印象をがらりと変えたジャヤワルダナ大統領の演説 サンフランシスコ講和会議 11年間大統領として君臨したジャヤワルダナ氏 スリランカ 気がつかないうちに、競争からこぼれ落ちた人へのセーフティネットを、あの時代に捨て去ってしまったのです。 そのセーフティネットの1つが宗教なのです 傷つきやすい、フラジャイルなものです 化け物たちはみんな不幸な境遇で傷ついた人間の変化なのです お能 人間はとても壊れやすい いつの時代もこぼれ落ちる人はいる 米国流雇用の見直しから始まったチームワーク研究 成果主義は一層研ぎ澄まされ、ハードルの高いノルマがのしかかり、達成できないと厳しい上司から説教されたり、ネジを巻かれたりする。目標未達の月が続くと、いつ肩をたたかれるかと、針のむしろの状態が続くことになる。 生きづらい社会になっていった バブル経済が崩壊し、リーマンショックという大波 「経済神話」「企業信仰」というものに守られている心強さも 昭和から平成の最初の頃までは、漠然とした安心感があった 今の日本を覆う失敗を語れない雰囲気 ダイヤモンド・オンライン 上田紀行 (その8)(仏教国・スリランカ大統領が嘆いた「精神性」なき経済大国ニッポン、サムソン覇権を許した日本大企業の真の"戦犯" "失われた30年"日本企業の失敗本質、チームワーク至上主義の誤解と「ONE TEAM」の奥義) 終身雇用や年功制は、今では諸悪の根源のごとく言われているけど、実はこれらがすべての人間に宿る「たくましさ」を引き出す経営手法だとした ハックマン博士いわく「ただ単にチームのこだわりだけではチーム力は発揮できない。メンバーたちのポテンシャルを生かすことができない」と。「世間ではチームをめぐる問題の原因と結果の順序を逆にとらえている」と指摘した 日本型経営・組織の問題点
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災害(その9)(東京の江東5区 台風19号では見送られた250万人の広域避難、武蔵小杉の「高級タワマン」で起きた悲劇…その全貌が見えてきた あの日、何が起きたか、浸水リスクが高い「鉄道車両基地」は多数ある より綿密な減災計画の策定が必要だ) [社会]

昨日に続いて、災害(その9)(東京の江東5区 台風19号では見送られた250万人の広域避難、武蔵小杉の「高級タワマン」で起きた悲劇…その全貌が見えてきた あの日、何が起きたか、浸水リスクが高い「鉄道車両基地」は多数ある より綿密な減災計画の策定が必要だ)を取上げよう。

先ずは、在米作家の冷泉彰彦氏が10月28日付けNewsweek日本版に掲載した「東京の江東5区、台風19号では見送られた250万人の広域避難」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2019/10/19250_1.php
・『<今後の豪雨災害の頻発を見越して、実際に広域避難が機能するためのPRや訓練が必要> 今月12日に関東に上陸した台風19号の際に、東京都東部の低地帯にある江東5区。つまり墨田、江東、足立、葛飾、江戸川の各区は、都の西部や他県などへの「広域避難」を一時検討していたことが分かった、と24日に時事通信(電子版)が報道しています。 この記事ではさらに、検討はされたものの、「首都圏の在来線全ての運休が決まったため住民への呼び掛けや勧告は見送った」と説明されていました。2018年8月に、この5区で構成する協議会は広域避難の計画を策定しました。具体的には「台風の中心気圧が930ヘクトパスカル以下」「荒川流域での3日間の積算雨量予測が500ミリ超」を目安として、この基準を超えた場合は広域避難の呼びかけをすることとされていたそうです。 今回はどうだったのかというと、台風上陸の72時間前の9日に「検討に着手」されて、上陸当日12日の朝には前年に決めた基準の「500ミリ」を超える雨量の予報が出たそうです。このため広域避難の呼びかけがされる可能性があったのですが、実際は計画運休の発表に加えて、予報が避難勧告基準の600ミリ超を下回る予報だったので、広域避難は見送られたとされています。 これは大変なニュースです。5つ大きな疑問があります。次の台風接近や大規模な豪雨の発生までに、こうした疑問を解いておく必要があります。なぜならば、温暖化がドンドン進む中で、今回の15号+19号+21号のような台風被災は、より深刻な形で繰り返されるということは想定しておかなければならないからです。 1つ目は、結果的に今回は荒川と江戸川の氾濫は発生しなかったし、また江東5区における内水氾濫も起きませんでした。その原因をしっかり検証しておくことが必要です。「500ミリ」という基準を決めておいて、その場合は広域避難の呼びかけをすると決めながら、結局できなかった中で結果的に「洪水にはならなかった」という事実が重なると、人間の心理は「500ミリなら大丈夫」という安易な判断に流れがちです。その判断が大きな禍根を残すことのないように、検証が必要と思います。 2つ目は、江東5区における降雨量だけで決めていいのかという問題です。利根川水系には、今回機能したと言われる八ッ場(やんば)ダムなど多くのダムで治水がされていますし、俗に言う「地下宮殿」などの洪水調整施設が機能しています。ですが、それでも想定を上回る降雨が上流で起きた場合は、利根川の支流である江戸川にしても、それとは別の河川ながら流域の重なる荒川についても、氾濫リスクがあるわけです。江東5区としては、内水氾濫だけでなく、そうした外水氾濫も想定して、その上で広域避難の検討をしているはずです。また東京湾の高潮被害の可能性も想定するべきです』、「前年に決めた基準の「500ミリ」」と「避難勧告基準の600ミリ超」、どちらが正しいのだろうか。「江東5区における降雨量だけで決めていいのかという問題です」とあるが、避難計画では「「荒川流域での3日間の積算雨量予測が500ミリ超」を目安」となっているので、問題はなさそうに思える。
・『3つ目はタイミングです。250万人の広域避難を想定するのであれば、そしてその場合に、公的交通機関を利用した避難になるのであれば、次のようなタイムラインを想定する必要があると思います。(台風上陸もしくは豪雨発生想定時刻から逆算して) ▼24時間前......避難完了、危険箇所への立ち入り禁止措置開始、公的交通機関順次ストップ。 ▼48時間前......避難ピーク、公的交通機関は臨時ダイヤに。 ▼72時間前......避難指示、公的交通機関の計画運休具体化。 交通事業者も行政も、「72時間前なんて無理」と言うかもしれませんが、どう考えても250万人を安全に誘導するにはこのぐらいの時間が必要です。ということは、「空振り覚悟」で行政も、交通機関もこの72時間前というタイムラインで進めると宣言をして、社会的な合意を作っておかなければなりません』、確かに計画運休は避難する住民のことも考慮すべきだろう。
・『4つ目は避難訓練です。できれば住民も全員参加で、とにかく行政と交通機関が協力して、避難訓練をしていくことは大切です。イザという時に、機能しなくなっては大変だからですし、また避難訓練をしておけば「広域避難」についての格好のPRになるからです。 5番目は、仮に江東5区について、万が一の場合は広域避難が発令されるという理解が徹底されるようになったとします。その場合に、「そんなに危険なエリアなら」と投資や購入の動きが鈍って、この5区の不動産価値が下がるようなことは望まれません。 このため、広域避難により人命を守り、また万が一の広域水害発生時には、それに耐えられるようにインフラも整備されており、またソフト面も充実していて、スピード復興が可能になっているということをPRして、また宣伝に違わぬ中身を実現させておくことで、不動産価値の下落を防ぐことが必要です。 いずれにしても、江東5区の広域避難というのは、大変にスケールの大きな問題です。万が一に備えて機能するようにしておかなければなりません。他にもあるかもしれませんが、この5点の論点について闊達な議論が行われることが必要でしょう』、「不動産価値の下落」防止策は、確かに必要だろうが、時間がかかるものが多く、即効性尾には乏しそうだ。となると、「広域避難」への住民の協力が覚束なくなる懸念もありそうだ。

次に、10月28日付け現代ビジネス「武蔵小杉の「高級タワマン」で起きた悲劇…その全貌が見えてきた あの日、何が起きたか」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/68039
・『つい2週間前まで、誰もが憧れる高級タワマンだった。停電、断水、果てはマンション前に悪臭を放つ汚泥が溜まった。なぜこんな事態になったのか。発売中の『週刊現代』では、「人気の街」を襲った悲劇を徹底検証する』、確かに「検証」の価値がありそうだ。
・『駅前が川のようになった  「台風19号が上陸した10月12日の夜から停電してしまい、すぐにトイレも使えなくなりました。台風が通過した後、毎日朝5時すぎから業者がクレーンなどの重機を使って復旧作業をしています。 各部屋の電気は徐々に使えるようになってきましたが、完全ではなく、共用部の電気は消えたまま。何より個々の部屋のトイレはまだ復旧していないのです」 そう話すのは、47階建ての高級タワーマンション「パークシティ武蔵小杉ステーションフォレストタワー」(以下、パークシティ武蔵小杉)に住む40代の女性だ。住民向けに携帯トイレが配布されたというが、使用している人は少ないようだ。 この女性が続ける。 「トイレが使えないこともあり、住民の中には近くのホテルや知り合いの家に泊まっている人たちも多いようです。 夜になっても明かりが点かない部屋が多いのは、まだ停電している部屋があるのと、そういった理由で不在の部屋があるためです(左頁写真)。タワマンに住んで、まさか台風でこんな事態になるなんて、想像していませんでした」 甚大な被害を及ぼした台風19号の上陸から2週間が経った。各地で大きな爪痕を残したが、中でも注目を浴びたのが川崎市武蔵小杉である。 武蔵小杉といえば、「SUUMO 住みたい街ランキング2019」でも、関東9位にランクインするなど、「住みたい街」ランキングの常連として知られている。街の中心にはJR南武線、東急東横線の駅があり、少し離れた場所にはJR横須賀線も走っている。 「グランツリー武蔵小杉」といった大型複合施設なども多く、共働きの高所得夫婦やファミリー層から高い支持を得ている。 そんな人気の街の中心に建っているタワマンが、冒頭のパークシティ武蔵小杉である。高さは約160m、'08年に完成した。 「武蔵小杉の各駅から、ちょうど徒歩2~3分ほどの場所に建っているという最高の立地です。外観や内装も高級感がありますが、その割に周囲の物件と比べて桁外れに高額というわけではないので、人気が高い。 10階~30階あたりの中層階だと、3LDKで約7000万円~9000万円が相場でしょう。 部屋数643戸という大型マンションですが、人気物件で、空きは少ない。『武蔵小杉ナンバーワンタワマン』と呼ぶ人もいます」(地元不動産業者) この高級タワマン周辺で異変が起き始めたのは、10月12日の深夜のこと。台風19号による暴風と大雨が猛威を振るうなか、突然街のあちこちから水があふれ出したのだ。 JR南武線、東急東横線の武蔵小杉駅の南側のエリアでは、大人の膝上ほどの高さまで水が流れ込み、一帯は冠水した。 冠水した水が暴風で東へ西へと流される様子は、まるで突然街中に大きな川が現れたようだったという。さらなる本当の悲劇は台風通過後にやってきた。 「台風翌日の13日のお昼頃には、水はずいぶん引きました。しかし、冠水したバスロータリーの辺りには大量の泥が溜まったままでした。周囲には汚泥の匂いが漂っていて、マスクをして歩く人の姿もありました」(川崎市市民自治財団事務局長の田澤彰氏))』、「パークシティ武蔵小杉」は「武蔵小杉の各駅から、ちょうど徒歩2~3分ほどの場所に建っているという最高の立地」、ということであれば、「10階~30階あたりの中層階だと、3LDKで約7000万円~9000万円が相場」というのも頷ける。
・『「分流式」か「合流式」か  普段から大混雑で知られるJR武蔵小杉駅の横須賀線ホームでは、水没した影響で一部の改札が使えなくなり、券売機やエスカレーター、エレベーターなどが故障した。駅から南へ徒歩8分ほどの場所にあるマンションの住民が話す。 「台風後すぐに停電してしまい、まだ復旧していません。ウチのマンションの1階にあるコンビニや銀行のATMも電気設備がやられてしまったようで、営業再開の目処は立っていないのです」 中でも特に甚大な被害を受けたのが、冒頭のタワマン、パークシティ武蔵小杉だった。地下3階にある電気設備が浸水し、完全に故障してしまった。 その結果、停電し、照明、エレベーターも停止。最上階の47階に住んでいる住民は、悲惨なことに、外出するためには一段一段、階段で上り下りするしかなくなってしまった。 トイレが使用できなくなったのは、配電盤が壊れてポンプで水を汲み上げられなくなったからだ。便意を催すたびに47階から1階まで階段を上り下りする―。そんな地獄を、高級タワマンの住民は味わうことになったのだ。 さらに、マンションの前には汚水を含んだ泥が大量に溜まり、悪臭を放った。一連の様子はテレビやネットを通じて全国に広まり、高級タワマンのイメージはガタガタに崩れることとなった。 今回の台風19号では、各地で堤防の決壊や越水(河川の水が堤防を越えてあふれること)が起きた。しかし、武蔵小杉駅は、一番近い多摩川の堤防でさえ1㎞弱もの距離がある。そして、その堤防付近では、決壊も越水も起きていない。 それなのに、なぜか武蔵小杉の中でもタワマンが林立する、駅の南側のエリアに浸水被害が集中した。 どうしてこのような事態になったのか。発生直後は不明だった多くのことが、2週間が経ち、徐々に明らかになってきた。水災害に詳しい神戸大学の大石哲教授が解説する。 「川崎市はエリアによって『分流式』と『合流式』という2種類の下水処理方式を採用しています。 分流式は汚水を下水処理場へ、雨水は川や海に直接放流する。合流式は、汚水と雨水の両方を一緒に下水処理場に送るのですが、雨が大量に降った場合は、ほとんどすべてを河川に放流するのです」 新設される下水管は分流式が主流で、国土交通省も分流式を推奨している。合流式は主に古い街などに、そのまま残っていることが多い方式だという。大石氏が続ける。 「実は武蔵小杉は、駅より北側のエリアは分流式、今回被害のあった駅より南側のエリアは合流式と、別の方式を採用しているのです。 南側のエリアでは、汚水と、台風で降った大雨を下水管から多摩川に放流しようとしたわけですが、その多摩川自体の水位が非常に高くなってしまっていた。 それで、下水管から河川の水が逆流し、汚水や雨水と一緒になって武蔵小杉の街にあふれたのだと考えられます」』、「パークシティ武蔵小杉・・・地下3階にある電気設備が浸水し、完全に故障してしまった」、地下に電気設備を設置するのはやむを得ないとしても、防水設備がなかったからだろう。
・『地下の電気設備がやられた  排水管から雨水が逆流し、市街地などに水があふれる現象は「内水氾濫」と呼ばれている。一方、河川の水は「外水」と呼ばれ、これが配水管から逆流して市街地に流れ込む現象を「外水氾濫」と呼ぶ。今回はこの内水氾濫と外水氾濫が同時に起こった。 「多摩川はいわゆる『天井川』といって、川床の高さのほうが、街の地面よりも高い位置にある河川です。水位が高くなれば、川につながっている排水管の水門を閉じる必要があった。 川崎市は今回のような規模の台風に慣れていなかったのか、内水氾濫を恐れ、水門を閉じなかったのです。 しかし、今回のように大量の雨が降って河川の水量が多くなると、河川水の逆流によって被害は大きくなります。水門を閉じなかった選択は、適切だったとはいい難いでしょう」(大石氏) タワマンが立ち並ぶ駅の南側のエリアには、地形的な弱点もあった。武蔵小杉の地元不動産会社「ケイアイ」の代表取締役・金子勇氏が語る。 「今回被害のあったタワマンがあるエリアは、かつて工場などが建っていましたが、地元では『昔、あの辺りは沼だった』と言われています。一帯が周囲より低い土地であることは間違いありません」 こうして、逆流した汚水、大量の雨水がこのタワマン地帯に流れ込んだというわけだ。 そしてこの水がパークシティ武蔵小杉の地下にある電気設備に襲いかかった。地域防災に詳しい、東北大学災害科学国際研究所の佐藤健教授が語る。 「電気設備や受水槽のような設備は、基本的に地下室などに納めてしまうのが一般的です。 限られた空間を有効に使いたいため、地上部分は住戸や商業施設で占められてしまう。そのような弱点が今回、武蔵小杉のタワーマンションで露呈してしまったのです」 『生きのびるマンション』などの著書がある、ノンフィクション作家の山岡淳一郎氏もこう話す。 「現在の建築基準法の単体規定(建物自体についての規定のこと)では、地震に対しては対策を義務付けていますが、浸水に対しては何か基準があるわけではありません。 そのため、地下の電気設備などには必ずしも浸水対策が施されているわけではないのです。 今回被害に遭った武蔵小杉のタワマンも停電対策として自家発電装置を備えていたようですが、浸水対策は講じられておらず、結果的に使えなくなってしまった」 たとえば、建築基準法では高さ60m超の建物を建てる場合、60m以下の建物に比べて、1・25倍の風速に耐えられる構造にすることなどを義務付けている。 しかし、水害対策の基準は存在しない。そのため、今回のような事態が起きてしまうのである。 被害を受けたパークシティ武蔵小杉の住民たちの口は重い。本誌はこのタワマンに出入りする住民に声をかけたが、一様に「話すことはない」といった反応だった。 なぜか? 彼らにとって今回のトラブルは生活難だけにとどまらない、一大事だからだ。住宅ジャーナリストの榊淳司氏が語る。 「今回被害を受けたタワマンは、不動産業界で言う『事故物件』になってしまったのです。武蔵小杉は近年人気が急上昇したエリアで、『ムサコマダム』という言葉も生まれました。 しかし、徐々に人気に陰りも見えはじめていたのです。というのも、2年ほど前に、武蔵小杉駅が大変混雑するため、朝の通勤ラッシュ時などは駅の改札を抜けるのに30分以上かかるといった事態が報道されました。 そこからじわじわと敬遠する人が増えていた。今回の事態は、その傾向にさらに拍車をかけるのではないでしょうか」 今回の一件で全国的に名が知られてしまったパークシティ武蔵小杉も値崩れ必至だ。 人気エリアだから簡単には値崩れしない―そう考え、投資目的も含めて購入した人も多いパークシティ武蔵小杉の住民は、今回の事態の深刻さを誰よりもよくわかっているはずだ』、「川崎市は今回のような規模の台風に慣れていなかったのか、内水氾濫を恐れ、水門を閉じなかったのです」、といのも問題だが、水門を閉じたとしても被害はでたのではなかろうか。「水害対策の基準は存在しない」のは問題だが、規制によらず重要な電気設備には、自発的に「浸水対策」を施しておくのがディベロッパーの責務だ。『昔、あの辺りは沼だった』危険な地域にも拘らず、規制がなかったので、何もせず、「自家発電装置」まで駄目にしてしまったというのは罪が深い。
・『地価が3割も下落  「仮に台風前に1億円で売っていた部屋が、急に9000万円になるといったことはないでしょう。しかし、これまで1億円で売りに出したら、2ヵ月で売れていた部屋が、半年~1年かかるという感じになる。 売れにくくなる、貸しにくくなるわけです。そうすると、売り急ぐ人は相場よりも低い価格で売りに出すようになるでしょう。そうして下落バイアスがかかってくるのです。 東日本大震災の時に、新浦安と海浜幕張の街で液状化現象が起きました。その直後はマンションなど不動産の価格に影響はありませんでしたが、2~3年かけてズルズルと下がりました。 海浜幕張などは3割以上価格が下落した物件もありました。同様の事態が武蔵小杉でも起きる可能性はあります」(榊氏) 住宅地に向いているとはいい難い場所を、古い下水システムが残ったまま、「人気の街」というイメージをつけて売りに出す。そうして今回のような悲劇を生んでしまった。 程度の差こそあれ、同様の事態は他の地域、他のマンションでも十分起こり得る。前出・佐藤氏が語る。 「武蔵小杉で起きた停電、断水はタワマンだけで起きる問題ではありません。これを教訓として、デベロッパーを始めとして、業界で対策を講じる動きとなるでしょう。 ただ、そこに任せるだけではなく、居住者自身が電気設備や給水設備がどうなっているかなどを事前に把握しておくのも重要だと思います」 武蔵小杉の事例は決して他人事ではない。そう胸に刻みたい』、浸水リスクを度外視したデベロッパーの責任は重大だ。

第三に、フリーライター、地形散歩ライターの内田 宗治氏が10月29日付け東洋経済オンラインに掲載した「浸水リスクが高い「鉄道車両基地」は多数ある より綿密な減災計画の策定が必要だ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/311010
・『記録的大雨に襲われた場合、浸水が想定されている車両基地は、実は全国に数多い。台風19号で北陸新幹線車両が水没した長野新幹線車両センターの光景は、至る所で起きかねないのである。 東京の場合、台風19号では荒川堤防が大規模決壊とならず何とか持ちこたえてくれたが、最悪の場合、5m以上の浸水となる車両基地(地下車両基地の地表)も都内にある。3m未満の浸水となる車両基地はさらに数多い。車両がほぼ水没する深さの浸水である。 まずは新幹線を見てみよう。都内には、新幹線の車両基地が2カ所ある。東海道新幹線の大井車両基地(品川区八潮)と、東北・上越新幹線の基地である東京新幹線車両センター(北区東田端)である。この2カ所は、記録的大雨となった場合、浸水が想定されている。 各自治体が公表するハザードマップでは、この2つの新幹線基地は、最大規模の浸水想定で0.5m未満。車両基地内全面的ではなく、部分的に浸水する想定である。この程度ならば幸いにして浅いと言い切ることはできない。災害は想定外のことも起こりうる。「これより深い浸水となる可能性もまったくゼロではない」、といった主旨の注釈も付けられている』、「北陸新幹線車両が水没した長野新幹線車両センターの光景」は見るも無残だが、他にも同様のリスクを抱えたところが多いというのは驚きだ。
・『長野でもかさ上げはしたが・・・  全国の新幹線車両基地を見てみると、最大規模の浸水の場合5m未満となる車両基地が2カ所ある。東海道新幹線などの鳥飼車両基地(JR東海、大阪府摂津市)と、東北新幹線などの新幹線総合車両センター(JR東日本、宮城県利府町)である。 このほか、全国の新幹線基地では、同じく3m未満が8か所、0.5m未満が4カ所もある。 北陸新幹線車両が水没した長野新幹線車両センターの浸水想定(事前のもの)は、長野市のハザードマップによればなんと10~20mだった。こうした地に数mかさ上げして、車両基地が造られていた。 同車両センターが建設された時代では、ここまで深い浸水は想定されていなかったという。その後、想定外をなくそう、ということで見直され、「1000年に1回程度の降雨」を想定した上記の浸水想定となっている。) 地形を眺めると、いずれも共通した特徴がある。 大阪府の鳥飼車両基地の場合、近くを淀川が流れ、車両基地に寄り添うようにして安威川が流れている。川に囲まれた立地であるばかりでなく、1945年の空中写真を見ると、現在の車両基地は、旧安威川らしきものが蛇行する川の中となっている。そこが後に水大田となり、整地して車両基地となった。 宮城県の新幹線総合車両センターは、砂押川が車両基地を横切り、すぐ下流で名古曽川と合流している。周囲は水田が広がり、川中島のような立地である。 長野新幹線車両センターも千曲川と浅川に挟まれた低地に造られている。 東京新幹線車両センターも、北には隅田川が流れ、明治時代の地図を見ると、一体は水田、さらに大昔は隅田川の氾濫原だった所である。 車両基地は、まるで川の近く、湿地を選んで立地させているように感じてしまう。車両基地には、広く平らな土地が必要である。ただでさえ平地が少ない日本の国土で、広く平らで洪水の危険も少ない土地は、もともと開発の手が進み、人家が密集していたりする。後から車両基地を作るとすれば、取り残されていた湿地や水田をかさ上げし整地して作るしかなかったと考えられる』、「後から車両基地を作るとすれば、取り残されていた湿地や水田をかさ上げし整地して作るしかなかったと考えられる」、やむを得ない面がありそうだ。
・『大井に洪水の心配はないが・・・  もう1つの方法が、海岸の埋め立て地への建設である。前述の東海道新幹線の大井車両基地や東京メトロ有楽町線の新木場検車区などがそれにあたる。 大井車両基地の場合、東海道新幹線の車窓からは見えないのであまり知られていないが、東京モノレール大井競馬場前駅より約800m海側、首都高湾岸線よりさらに海側の場所に広がっている。東京駅から見て品川駅近くの地点で本線と分かれ、引き込み線によってこの車両基地へとつながっている。 大井車両基地の場合、海や運河に囲まれた人工島なので、洪水の心配はない。東京都建設局による高潮ハザードマップでも、高潮はやってこない想定だ。それでも0.5m浸水するのは、いわゆる内水氾濫、降った雨が排水しきれなくなるためだろう。排水ポンプの増強などいくつかの対策が考えられる。) 都内23区内で洪水、高潮で浸水が想定されている車両基地が十数か所ある(各自治体のハザードマップによる)。多くが東京下町に集中している。被害が甚大となるのは、万一荒川が決壊した場合で、その場合、最悪で23区の3分の1が浸水してしまう。 東京メトロ、都営地下鉄の車両基地では、中野(方南町)検車区の例(神田川など)を除けば、いずれも荒川の氾濫及び東京湾の高潮による被害想定だ』、「大井車両基地」は「人工島なので、洪水の心配はない。東京都建設局による高潮ハザードマップでも、高潮はやってこない想定」、とあるが、津波リスクはあるのではなかろうか。「都内23区内で洪水、高潮で浸水が想定されている車両基地が十数か所ある」、恐ろしい話だ。
・『地下に車両基地を造った例も  比較的初期に造られたものや、都心からやや離れている車両基地は地上にあり、近年建設のものは地下に設置したものが多い。 地上に広がるものでは、日比谷線千住検車区(3m未満)は、すぐ隣を隅田川が流れる。同地は大正時代くらいまでは沼田だった。目測では周囲の低い所より2m程度かさ上げして造られている。 高島平駅東方にある三田線志村車両検修場(5m未満)は、北側には荒川が流れていて、1970年頃までは水田で、一帯は都内有数の米蔵といわれていた。 地下のものでは、南北線王子検車区(5~10m)は隅田川に隣接している。神谷堀公園の下に立地するが、ここは大正時代くらいまで、水運のために造られた堀だった。そこを埋め立てた場所である。 新宿線大島車両検修場(5m未満)は、東京下町でも有数の地盤沈下の地で、周囲の標高はマイナス2.5m。東大島駅北側にあり、旧中川に隣接している。車両検修場の地上部分が大島小松川公園となり、公園は人工地盤として標高約5mある。) 東京の地下鉄は、車両基地に限らず、いわゆるゼロメートル地帯を行く区間が多くある。いずれにせよ、以前の記事「豪雨の『水没リスク』、都内地下駅の対策は?」(2018年8月29日付)で述べたように、地表が浸水した場合、防水扉や止水板などで地下への浸水を完全に防げるかが重要となる』、確かに浸水防止には十二分な対策が必要だろう。
・『綿密な減災計画が必要  JRの車両基地(東京23区の例)では、荒川ほか最寄の河川、高潮による被害想定となっている。 東北本線や高崎線などの車両が所属する尾久車両センターの浸水が、荒川が氾濫することにより3m未満と深い。南側には、東北・上越新幹線の東京新幹線車両センターがあり、こちらは0.5m未満なのだが、この違いは標高差によるようだ。 田町―品川間に広がる東京総合車両センター田町センターも1m未満の浸水想定である。こちらは洪水のほか近くの東京湾からの高潮も想定されている。 私鉄は、23区内に車両基地が少なく、下町にある京成電鉄高砂検車区が、高潮での3m未満(洪水では1m未満)だった。 台風襲来などでの荒川氾濫が危惧される場合、数日前から交通機関や行政が事前に取る行動として「荒川タイムライン」が検討されている。それには、水没のおそれのある車両の避難なども含まれる。 そのためには、より前倒しの計画運休なども必要となろう。その間に車両を浸水のおそれのない所に移動させるのである。場合によっては、計画運休したもののさほどの暴風雨とならず、計画運休が空振り、となる事例も出てくるかもしれない。だが今回の長野車両センターでの新幹線車両水没を機に、計画運休の社会的理解、関係機関でのより綿密な減災計画の策定が望まれる』、「長野新幹線車両センター」が「車両の避難など」もせず、水没したのは、信じられない職務怠慢だ。マニュアルにないというのは言い訳にはならない。あれだけ、マスコミが事前に警戒を呼びかけていたのだから、常識的な判断力さえあれば、対応可能だった筈だ。「綿密な減災計画が必要」というのは、正論だが、計画がなくても車両の避難などを自主的に判断することが、求められるのではなかろうか。
タグ:5つ大きな疑問 首都圏の在来線全ての運休が決まったため住民への呼び掛けや勧告は見送った 現代ビジネス 4つ目は避難訓練 都の西部や他県などへの「広域避難」を一時検討していた 「空振り覚悟」で行政も、交通機関もこの72時間前というタイムラインで進めると宣言をして、社会的な合意を作っておかなければなりません 災害 今回被害を受けたタワマンは、不動産業界で言う『事故物件』になってしまった 今後の豪雨災害の頻発を見越して、実際に広域避難が機能するためのPRや訓練が必要 2年ほど前に、武蔵小杉駅が大変混雑するため、朝の通勤ラッシュ時などは駅の改札を抜けるのに30分以上かかるといった事態が報道されました。 そこからじわじわと敬遠する人が増えていた。今回の事態は、その傾向にさらに拍車をかける パークシティ武蔵小杉 「トイレが使えないこともあり、住民の中には近くのホテルや知り合いの家に泊まっている人たちも多いようです 現在の建築基準法の単体規定(建物自体についての規定のこと)では、地震に対しては対策を義務付けていますが、浸水に対しては何か基準があるわけではありません 「住みたい街」ランキングの常連 武蔵小杉 3LDKで約7000万円~9000万円が相場 武蔵小杉の各駅から、ちょうど徒歩2~3分ほどの場所に建っているという最高の立地 (その9)(東京の江東5区 台風19号では見送られた250万人の広域避難、武蔵小杉の「高級タワマン」で起きた悲劇…その全貌が見えてきた あの日、何が起きたか、浸水リスクが高い「鉄道車両基地」は多数ある より綿密な減災計画の策定が必要だ) 『昔、あの辺りは沼だった』 地下の電気設備がやられた 「武蔵小杉の「高級タワマン」で起きた悲劇…その全貌が見えてきた あの日、何が起きたか」 3つ目はタイミングです 地下3階にある電気設備が浸水し、完全に故障してしまった 5番目は、仮に江東5区について、万が一の場合は広域避難が発令されるという理解が徹底されるようになったとします。その場合に、「そんなに危険なエリアなら」と投資や購入の動きが鈍って、この5区の不動産価値が下がるようなことは望まれません Newsweek日本版 「東京の江東5区、台風19号では見送られた250万人の広域避難」 冷泉彰彦 計画運休の社会的理解、関係機関でのより綿密な減災計画の策定が望まれる 地下に車両基地を造った例も 大井に洪水の心配はないが・・ 下水管から河川の水が逆流し、汚水や雨水と一緒になって武蔵小杉の街にあふれた 川崎市は今回のような規模の台風に慣れていなかったのか、内水氾濫を恐れ、水門を閉じなかった 長野でもかさ上げはしたが・・・ 長野新幹線車両センターの光景は、至る所で起きかねない 「浸水リスクが高い「鉄道車両基地」は多数ある より綿密な減災計画の策定が必要だ」 東洋経済オンライン 内田 宗治 海浜幕張などは3割以上価格が下落した物件もありました 地価が3割も下落 武蔵小杉は、駅より北側のエリアは分流式、今回被害のあった駅より南側のエリアは合流式と、別の方式を採用 トイレが使用できなくなったのは、配電盤が壊れてポンプで水を汲み上げられなくなったからだ。便意を催すたびに47階から1階まで階段を上り下りする 「分流式」か「合流式」か 2つ目は、江東5区における降雨量だけで決めていいのかという問題 1つ目は、結果的に今回は荒川と江戸川の氾濫は発生しなかったし、また江東5区における内水氾濫も起きませんでした。その原因をしっかり検証しておくことが必要 江東5区
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災害(その8)(ホームレス避難所追い返し問題を安倍総理に言及され台東区が謝罪、同時多発 河川氾濫の衝撃 ~緊急報告・台風19号~、コンクリートだけでは人命は守れない、西島和氏「八ツ場ダムが利根川を守ったというのは誤解」) [社会]

災害については、9月23日に取上げた。今日は、(その8)(ホームレス避難所追い返し問題を安倍総理に言及され台東区が謝罪、同時多発 河川氾濫の衝撃 ~緊急報告・台風19号~、コンクリートだけでは人命は守れない、西島和氏「八ツ場ダムが利根川を守ったというのは誤解」)である。

先ずは、10月15日付けAERAdot「ホームレス避難所追い返し問題を安倍総理に言及され台東区が謝罪〈週刊朝日〉」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/wa/2019101500097.html?page=1
・『大きな被害をもたらした台風19号が接近するなか、東京都台東区が、自主避難所を訪れたホームレスとみられる人を受け入れなかった問題で、同区は15日謝罪コメントを発表した。 当初は、「ホームレスらへの対応は今後の検討課題」などとして、明確な謝罪をしていなかった。批判が高まり、国会でも問題が取り上げられる中、謝罪に追い込まれた格好だ。 同区は15日午後5時過ぎ、ホームページに次のような服部征夫区長のコメントを出した。 「この度の台風19号の際に、避難所での路上生活者の方に対する対応が不十分であり、避難できなかった方がおられた事につきましては、大変申し訳ありませんでした。また、この件につきまして区民の皆様へ大変ご心配をおかけいたしました。台東区では今回の事例を真摯に受け止め、庁内において検討組織を立ち上げました。関係機関等とも連携し、災害時に全ての方を援助する方策について検討し、対応を図ってまいります」 危機・災害対策課の担当者は取材に対し、これまで2人としていた受け入れ拒否者が3人だったことを明らかにした。13日にはこの問題の報道が相次いでいたのに、コメント発表が15日夕方になったことについては、「確認作業もあって対応に時間がかかった」としている。 この問題は15日の国会でも議論された。国民民主党の森裕子参院議員の質問に対し、安倍晋三首相は次のように答弁した。 「各避難所では、避難した全ての被災者を適切に受け入れることが望ましい。ご指摘の事例は自治体に事実関係を確認し、適切に対処したい」 ホームレスを含め、その自治体の住民以外も幅広く受け入れるという原則を、政府として確認したものだ。 ホームレスとみられる人が風雨が強まるなか避難所に来たのに、職員に追い返されるというショッキングな問題。ほかの複数の自治体関係者は、「避難所に来た人は誰でも受け入れる。ホームレスの方を拒否するというのは考えられない」と口をそろえる。世田谷区のように、ホームレスらに事前に避難を呼びかけた自治体もある』、ホームレス3人の「自主避難所」受け入れ拒否したとは、自治体にあるまじき行為だ。安倍首相のコメントは妥当だろう。
・『台東区は12日に自主避難所の小学校を訪れたホームレスとみられる3人について、「住民向けの避難所であり区外の人は利用できない」などとして断っていた。支援団体が区に抗議したが、対応は変わらなかった。避難所の担当者レベルではなく、区の災害対策本部のトップレベルの判断で拒否したことが、今回の問題の深刻さを示している。 台東区では東京都の施設である「東京文化会館」(上野公園内)も、区の要請によって外国人観光客ら向けに開放された。都によると、住所にかかわらず受け入れているので、ホームレスらを拒否することはなかったと主張している。 同会館を巡っては、軒先で雨宿りをしていたホームレスとみられる人が移動を求められたとの指摘もある。これについて都は、次のように説明している。 「開放の準備をする段階で、入り口付近にいた人に、『設置中なのでご協力ください』と職員がアナウンスしたことはあった。認識の違いがあったのかもしれないが、ホームレスの方を排除するつもりはまったくない」 今回の台風では、都内で過去最大級の計画運休が実施された。駅や商業施設などが12日の早い段階で閉鎖され、ホームレスらにとっては雨風をしのげる場所が少なかった。台東区の上野や浅草周辺では、ビルの入り口などでうずくまり、風雨に耐える人の姿が見られた。 今回の問題を教訓に、同様の事例が起きないよう、各自治体では対応が求められる。ある自治体関係者は、「地域住民以外は避難所に入れないで欲しいと訴える人もいる」と明かす。地域住民以外も余裕を持って受け入れられるよう体制を整備し、住民の理解を得ることが課題となりそうだ』、「地域住民以外は避難所に入れないで欲しいと訴える人もいる」、これは、お互いの助け合いの精神を捨て去った地域エゴだ。外国人も増加したなかで、お互いの助け合いの精神を大切にしないと、日本は世界からつまはじきされるだろう。

次に、10月15日付けNHKクローズアップ現代+「同時多発 河川氾濫の衝撃 ~緊急報告・台風19号~」を紹介しよう。
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4341/index.html
・『関東甲信越や東北の広範囲を襲った台風19号。15日午後10時の時点で堤防の決壊は52河川73か所、水が堤防を乗り越える越水はのべ231河川にのぼり、同時多発的に氾濫が起きる異常な事態となった。各地では、雨のピークと決壊のタイミングにズレがあったことなどが浮かび上がってきている。各地の氾濫はなぜ起こり、これほど被害が拡大したのか。そして、なぜ記録的な豪雨が発生したのか、緊急報告する』、興味深そうだ。
・『広範囲で同時多発…“過去にない”災害はなぜ?  台風19号で、何が起きたのか・・・甚大な被害をもたらした、今回の台風。網の目のように広がる河川が、各地で同時多発的に氾濫を起こしました。 堤防が決壊した長野県千曲川。水が堤防を乗り越える「越水」が発生。斜面の土をえぐり取り、堤防は破壊されたとみられています。 専門家「どんどん堤防の土が削れていって、決壊に至った。」 暴風域の直径が、最大650kmに及んだ台風19号。 専門家が注目したのは「ピンホールアイ」と呼ばれる台風の小さな目。これが強力な力をもたらしたとみています。 そして、大都市・東京でも今回、大規模氾濫のリスクが高かったことも明らかになってきました・・・広範囲にわたって、深刻な水害をもたらした台風19号。その緊急報告です』、千曲川までが決壊したのには驚かされた。
・『水位上昇“タイムラグ”で起きた決壊  ・・・千曲川の決壊は、どのように起きたのか。信州大学の吉谷純一教授が注目したのは、その流域圏の広さでした。 信州大学工学部 吉谷純一教授「ここに降った雨が全部、この河川に集まってくる。」 栗原:このエリアに集まった雨が全部入ってくる? 千曲川の流域圏です。面積は栃木県とほぼ同じ大きさ。このエリアに降った雨は支流をたどり、千曲川へと流れ込みます。 台風接近時の支流の増水を示すデータ。濃い紫ほど、危険水位に近づいていることを表しています。千曲川を取り囲む毛細血管のような支流が、上流から次々と危険水位に達し、本流の千曲川へと流れ込んでいく様子が分かります。 そして、13日午前1時ごろ、ついに千曲川から水があふれ出し、決壊へとつながったのです。 さらに、見過ごしてはならないのは、雨のピークと水位の上昇の“タイムラグ”だと指摘します。 信州大学工学部 吉谷純一教授「千曲川の上流で、強い雨が降っている。強い雨域が停滞している。」 千曲川と降水量の推移です。12日から、上流部では激しい雨が降り続いていたことが分かります。 上流の雨水が長野市に到達するのは、およそ9時間後だといいます。 信州大学工学部 吉谷純一教授「自分の近くを流れている川の水位が、ずっと遠くに降った雨だという実感がない。もう雨がやんだので、これで洪水が終わったと勘違いする人がいる。」 翌日、台風は通り過ぎ、長野市でも晴れ間が広がりました。このとき、千曲川では水があふれ出していましたが、避難所から自宅に戻った人が複数いたことが分かりました。その1人、堀米信一さんです。 堀米信一さん「朝は、今日よりも晴れていた。終わったと思った、完全に。(台風が)過ぎて、これで、うちは被害なくてよかったなと思った。」 自宅は、千曲川からおよそ1.5km。前日のうちに避難をしていましたが、朝6時半ごろ、家へ戻りました。すでに千曲川で決壊が起きていたことは知らず、天候もよかったため、大丈夫だと考えたのです。 しかし、自宅に着いてまもなく、堀米さんは突然、滝が流れるような異様な水の音を聞きました。慌てて外へ出ると…。すぐ近くを流れる支流が、千曲川から押し寄せた水であふれ出していたのです。 堀米信一さん「一面に滝のように(水が)流れ落ちていた。コンクリートの上からこぼれていた。見ているうちに、この辺、水が流れ始めて、あふれてきた。」 同じ時刻。やはり、避難所から自宅へ戻った岡野春男さん。逃げるまもなく、家の中に濁流が流れ込んできたといいます。かろうじて2階に逃げましたが、浸水で取り残されてしまいました。 岡野春男さん「自分の判断が、結果的には間違った。完全に100%安全まで、絶対帰ってはだめ。1%でも心配事、危険度があったら、絶対帰ってはだめ」、千曲川の「流域圏の広さ」故に、「水位上昇“タイムラグ”」があることは分かっていた筈で、警報で注意しなかったとすれば人災だ。
・『“ピンホールアイ”で強力になった台風  今回、広い範囲に大雨を降らせた台風19号。暴風域の直径は最大650km。なぜ、これほど巨大で強力になったのでしょうか。慶應義塾大学の宮本佳明さんは、その原因が台風の発生直後にあったと考えています。注目したのは、台風の目の大きさです。 慶応義塾大学 宮本佳明博士「今回(発生初期)は、非常に小さい目の大きさだったので、まれにみるスピードで、急激に発達したという特徴があります。」 発生して3日後の台風を見ると、小さな目があります。「ピンホールアイ」と呼ばれています。これほど、はっきり見えることは極めて珍しいと、世界の研究者が驚いたほどです。ピンホールアイでは、エネルギーが限られた面積に集中するため、強い上昇気流の渦が発生。それが、周囲の水蒸気を取り込み、短期間で急激に発達するのです。 その後、台風19号はほとんど衰えずに日本に接近。その勢力を支えたのが、高い海水温でした。日本沿岸の海水温は、平年より2度高い、27度。この高い海水温は、深さ50mにまで達していました。このため、台風に水蒸気が盛んに供給されたのです。 宮本さんは、地球温暖化の影響で、今後こうした台風の発生が増えると考えています。 慶応義塾大学 宮本佳明博士「いまの環境では、珍しいレベルの台風ではないと思いますので、今後また、同じレベルの台風がやってきてもおかしくない」、やはり「地球温暖化」の影響は深刻なようだ。
・『決壊はなぜ?“越水”と“地形”が関係  信州大学の吉谷さん。今日、千曲川の氾濫の原因を探る、現地調査を行いました。70mにわたって、堤防の決壊が起こった現場です。 越水が発生すると、堤防に何が起きるのか。 9年前の国の実験です。堤防を乗り越えた水は滝のように流れ落ち、斜面の土を外側からえぐり取っていきます。実験開始から1時間で決壊。ひとたび越水が起こると、いとも簡単に堤防が破壊されるのです。 越水はどんな場所で起こりやすいのか。調査現場で、吉谷さんが注目したのが川の形でした。決壊した地点をよく見ると、緩やかに曲がっています。大量の水が曲がったところで、一時的に滞留。行き場を失い、越水したとみられます。 こうした越水を起こしやすい場所はほかにもあり、広く警戒が必要だといいます。 信州大学工学部 吉谷純一教授「堤防が出来たから安全だと思わないこと。災害には上限はないと、よく言いますけれど、将来も確実に起こります」』、「堤防が出来たから安全だと思わないこと」、その通りだろう。
・『堤防決壊 被災地はいま?(省略)』
・『同時多発 河川氾濫の衝撃  武田:現時点で、決壊が確認されているのは、52の河川で73か所。さらに、堤防を越えて水があふれ出す、越水などによる氾濫は、延べ231の河川に上っています。 水が引き始めたことで、改めて深刻な実態が分かってきました。福島県や宮城県の浸水地域では今日になって、犠牲になった人が相次いで見つかっています。 取材にあたっている藤島記者に聞きます。藤島さん、これだけ広い範囲に深刻な被害が広がる台風、まさに経験がないという思いを禁じえないんですが、担当して何に一番衝撃を受けていますか。 藤島記者:まず、1級河川と呼ばれる規模の大きな川で、同時多発的に氾濫や決壊が起きたということです。取材をしていましても、長年、河川行政に携わる国土交通省の幹部などは、今回はいつもと違うというようなことを口をそろえて言っていました。こうした、相次ぐ決壊や氾濫によって被害が非常に広い範囲で起きた、広域災害であるということも、今回の特徴だと思います。 武田:千曲川で起きたようなことが、各地の川でも起きていました。こちらをご覧ください。これは利根川の水位の変化です。縦軸が水位。横軸は左から右へ、上流から下流を表しています。台風が接近してきた12日の昼ごろから、まず上流の水位が上がり始めます。しかし、日付が変わり、台風が通過したあと、中流から下流の水位が高くなり、その状態が昨日まで続きました。 この分析を行った、河川工学が専門の二瓶さん。避難行動にも影響を与えた、このタイムラグの恐ろしさを改めて思い知ったのですが。 ゲスト 二瓶泰雄さん(東京理科大学教授) 二瓶さん:山で降った雨が、その川の中に入り込んで、起こった洪水が、上流から中流、中流から下流へと時間差をもって伝わっていきます。その時間差というのは、大きい河川ほど長くて、利根川とか信濃川のような大きい河川では、半日から1時間ほどの時間差が起きます。そのため、たとえ雨がやんでも、大きい河川のそばにお住まいの方は、洪水に対する警戒を緩めることがないようにしてもらいたいと思います。 武田:しかも、その下流域では高い水位が長時間続くという現象もありました。それが越水、決壊につながっていくわけですね。 二瓶さん:多くの河川で洪水氾濫が起こったわけですが、基本的に川の水位が高い状態が長い間続いたということが、あれだけの広域の氾濫を引き起こしたのではないかと思いますね。 武田:もう1つ、こちらをご覧ください。これは二瓶さんが、さまざまな資料をもとに集計した、「決壊した河川の数」なんですが、2000年からの10年間では、年平均3河川だったのが、それ以降は、年9河川に増えているんですね。二瓶さん、やはりこれは、気象の現象が激しくなっていることを物語っているんでしょうか。 二瓶さん:気象庁のデータによりますと、1時間の短時間の雨量とか、数日の雨量が長期的に見ると、増えているというデータもあります。そのため、雨の降り方が変わっているわけですが、その影響が洪水のときの川の水位の増加、近年増加している傾向が見えていまして。結果として、このような洪水氾濫が全国各地で増えてきているのかなと思います。 武田:この間に、治水対策も進んでいると思うんですが。 二瓶さん:もちろん、治水対策自体は着実に進めてはいると思いますが、その治水対策のスピードを上回るような、雨の降り方の変化の現れではないかなと思います。 武田:各地に大量の雨を降らせた今回の台風。被害は河川の氾濫だけにとどまりませんでした』、「利根川とか信濃川のような大きい河川では、半日から1時間ほどの時間差が起きます。そのため、たとえ雨がやんでも、大きい河川のそばにお住まいの方は、洪水に対する警戒を緩めることがないようにしてもらいたい」、というのは警報に反映させるべきで、住民に要求するのは酷だろう。
・『各地で“バックウォーター”か…何が起きたのか  東京や神奈川など、大都市圏を流れる多摩川。世田谷区で氾濫し、浸水被害が広がりました。 一方、対岸の川崎市では…。マンションの1階部分にいた男性が犠牲になりました・・・マンションの近くを流れているのは多摩川の支流、平瀬川。通常、平瀬川は多摩川に合流し、流れ込みます。しかし当時、多摩川は大量に降り続いた雨で、水位が上昇していました。そのため、平瀬川は流れ込むことができなくなり、あふれてしまったとみられます。これは「バックウォーター」と呼ばれる現象です。 さらに、川崎市では都市ならではの思わぬ被害も発生していました。 中原区のマンション1階で暮らす榎本稔さんです。12日午後7時3分、ベランダから水があふれた瞬間の映像です。このときは、それほど深刻に受け止めず、キッチンペーパーで水を抑えていました。ところがその後、水の勢いは増し、腰の辺りまで達しました。 榎本稔さん「水が入らないように、一生懸命やっていたけど、結局、間に合わなくなってきて、一気に入ってきた。」 榎本さんの自宅があるのは、川から500mの場所。自治体の調査で、この付近では川の氾濫は確認されませんでした。 なぜ、浸水は発生したのか。通常、雨水などは下水を通り、川に排水されます。しかし、川が増水し、排水機能が追いつかないと、マンホールなどから水があふれ出します。都市特有の「内水氾濫」という現象が発生していたとみられています。 川の氾濫がなくても、至る所で浸水する危険があるのです』、「内水氾濫」・・・「川の氾濫がなくても、至る所で浸水する危険があるのです」、都市ならではの現象だ。
・『あわや荒川も…あらわになったリスク  流域に980万人が暮らす、大河川・荒川でも、氾濫寸前の危機が迫っていたことが分かってきました。 今日、荒川の現地調査に訪れた二瓶泰雄さん。想像を超えて、水位が高まっていた痕跡を見つけました。 東京理科大学 二瓶泰雄教授「橋脚に草が乗っていますが、あの辺りまで洪水が来た。かなりの水害を起こす可能性があった。」 荒川の水位の変化を示したグラフです。上昇を続け、13日の午前2時に氾濫危険水位の12.6mを超えました。 取材班「雨風が強くなり、川がうねってきました。白波が立っています。」 127の支流がある荒川水系。下流に向かって、支流が次々と流れ込むため、危険な状況が長時間にわたって続いていました。 東京理科大学 二瓶泰雄教授「(大雨で)危険にさらされている状態が、1日2日続いていた。非常に、どうなることかと思っていました。どこで氾濫が起こっても不思議ではない。」 強い危機感を募らせていた、荒川周辺の住民たち。避難の難しさに直面していたことが分かってきました。 江戸川区で地域防災を担っている関口孟利さん。避難勧告が出されると、すぐ小学校に避難。避難所開設の準備にあたりました。 江戸川区 東松一丁目町会 会長 関口孟利さん「これが(避難所の)松江小学校です。」 避難所に集まったのは、およそ1500人。想定していた人数は1000人ほどだったため、ほぼ満員状態。これ以上、人が来たら、受け入れは難しかったといいます。 江戸川区 東松一丁目町会 会長 関口孟利さん「(住民が使用した)毛布ですね。数はもう、最後は足りないです。ひとりで1枚というわけにはいかないので、1人分を3人で使ってくださいという形で渡した」・・・大規模な人口を抱える都市部で、どう避難をすればよいのか。このあと、詳しく見ていきます』、荒川が危機的状況になったが、なんとか持ちこたえたのは不幸中の幸いだ。
・『あらわになったリスク 何が必要か  武田:大都市圏を流れる荒川も、氾濫危険水位まで達していたわけですが、現場を取材した藤島さんは、どんな危機感を持ちましたか。 藤島記者:この東京を流れる荒川でも、氾濫の危険性が迫っていたことに驚きました。なぜかといいますと、荒川が氾濫をしますと、大規模な避難が必要になるからです。荒川の沿岸では、東京の5つの区だけで、およそ250万人の住民の方がいます。ところが、国の想定では、避難所はおよそ20万人分しかないんです。圧倒的に足りないんです。残る200万人以上の方は、離れた自治体に避難をするか、マンションなどであれば、上の階にとどまるという厳しい選択を迫られることになっています。地域として、どのように住民の命を守っていくのかというのは、速やかに解決しなければならない課題だと思います。 武田:二瓶さんも一緒に現地を歩いたそうですが、今回の事態はどうご覧になりましたか。 二瓶さん:荒川などでは、これまでダムや調整池などさまざまな河川改修がなされておりまして、そのおかげで、今ギリギリのところで氾濫を食い止めることができたのかなと思っています。ただ、台風の雨の降り方が、もう少し長かったり強かったりすると、それが最後の一押しになって、氾濫を起こす危険性はあったのかなと思います。 武田:そうすると、どういうふうに命を守っていけばいいのか。どう考えればいいんでしょうか。 二瓶さん:これまでも河川整備は続けているわけですが、それを加速させて、より治水レベルの水準を上げていくというのはもちろんなんですけど、それでも限界があります。そのため、水害に対する備えを、みずからしっかり準備していただくことが必要なのかなと思います。 武田:一人一人が備えることが大切ということですね。これまでになく広範囲にわたる今回の災害ですが、藤島さん、避難生活、そして後片付けも、非常に長期化することも考えられますね。今、どんな支援が必要なんでしょうか。 藤島記者:まだ被害の全容も分からないほどの広域な災害ですので、支援をしっかりと行き届かせることが、まずは大事だと思います。 そのうえで差し迫った危機としては、避難生活中に亡くなってしまう、災害関連死の問題です。重要なことは、被災された方が、できるだけふだんの生活に近いような環境を整えるということです。具体的には、食事、水分補給をしっかり取れるようにすること、それから、生活環境の改善ですね。車中泊されている方もいるかと思いますが、時折、体を動かしたりだとか、あとは、寒くなる時期ですので、暖かい状況を作ってあげるというのが大事だと思います。それから心のケアです。大切な方を亡くされて、心にも傷を負っていらっしゃる方もいるかと思いますから、しっかりとケアをしていただくことが大事だと思います。ふだんの生活に近づけるのがとにかく大事ですので、国とか自治体は、そのために積極的な支援を行ってほしいと思います。 武田:家の状況も見に行けないという中で、本当に厳しい状況にあると思います。なんとか、ここを切り抜けてほしいと思いますね。 二瓶さんは、これだけの規模の被害で、どう復旧していくかも大きな課題になると思いますが、どうお考えでしょうか。 二瓶さん:通常の堤防の決壊した場所の復旧ですと、2週間程度で終わるわけですけれども、今回、これだけ広範囲の被災を受けていますので、復旧に非常に時間がかかる可能性が考えられます。そのため、これまでにないような、さまざまな形の支援をした復旧活動が必要なのかなと思います。また、まだ10月ですので、大雨とか台風がくる場合もあるかなと思います。今後の雨に備えて、洪水の警戒を緩めないでいただきたいと思います。 武田:これも本当に大変な中で、さらに警戒をお願いするというのも厳しいとは思うんですけれども、まだまだ気を抜かないでいかなければならないということですね。 二瓶さん:今週末も雨の予報がなされていますので、本当に大変だと思いますが緩めないでいただきたいです』、「一人一人が備えることが大切」、そ正論だが、災害時の警報などの広報体制も見直すべきだろう。

第三に、在米作家の冷泉彰彦氏が10月17日付けNewsweek日本版に掲載した「コンクリートだけでは人命は守れない」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2019/10/post-1121_1.php
・『<ハードとソフトの両面を向上させなければ防災という目的は達成できない> 台風19号のもたらした猛烈な降雨量に対して、例えば、八ッ場(やんば)ダムが水量を貯めたことで氾濫防止に役立ったとか、利根川水系の貯水池「地下宮殿」が機能することで、荒川の氾濫が防止されたという見方があります。 こうした見方の延長で、例えば2000年代に提唱された「コンクリートから人へ」とか「脱ダム政策」と言った主張が完全に否定されたとか、とにかく巨大台風に備えて主要河川の治水には徹底的に注力すべきだといった意見が出ているようです。 この議論ですが、「コンクリートか人か」という二者択一ではないと思います。今回の災害を契機として、確かに国土のインフラ整備が急務だということは、言えると思います。ですが、全面的にコンクリートに走るだけでは防災にはならないのです。 例えば、2018年7月に発生した「平成30年7月豪雨」でダム放流に伴う河川増水で、結果的に多くの犠牲者を出した愛媛県の肱川(ひじかわ)流域では、国と県による「肱川緊急治水対策」がスタートしています。ここでは堤防整備や河道掘削、樹木伐採、ダムの容量拡大、あるいは新設ダムの稼働といったハード面だけでなく、関係機関の連携によるソフト面での対策も盛り込まれています。 つまり、ハードの整備は車の車輪の一方であり、同時に人によるコミュニケーションやマネジメントといったソフトの面も充実させていかねばならないということです。 具体的には、この肱川の場合は、 「洪水浸水想定区域図、危険水位の設定」「危機管理型水位計、河川監視カメラの設置」「ダム放流情報の配信システム整備」といった対策が盛り込まれています。今回の台風19号では、各地のダム操作や放流情報の通達においては、現場における必死の努力が功を奏した結果、前年のこの肱川のような「緊急放流による犠牲者発生」という事態は避けられたようです。 ですが、風雨が峠を越して大雨特別情報が解除された後に、河川増水による氾濫等で犠牲者が出たケースは相当数に上るようです。何とも胸の潰れる話ですが、こうした問題についても、この肱川の緊急対策におけるソフト面での対策は参考になると考えられます』、「ハードの整備は車の車輪の一方であり、同時に人によるコミュニケーションやマネジメントといったソフトの面も充実させていかねばならない」、その通りだ。
・『もう一つ気がかりなのは、ダムへの流入土砂の問題です。基本的にダムの設計においては、長い年月をかけて土砂が流入することは見越して作られています。また、仮に土砂を排出する場合は、基本的には水とともに下流へ流すわけですが、それも下流における土砂の不足を補う効果を計算して行うのが通常です。 そうなのですが、例えば豪雨の場合で、上流で土砂災害が多く発生するケースなどは、急速に土砂が流入してしまい、ダムが本来持っている洪水調節機能が著しく低下することもあります。例えば、昨年、2018年7月に肱川の氾濫と前後して発生した広島県呉市の野呂川の氾濫においては、野呂川ダムが土砂の流入で容量不足となっていたのです。 今回の台風19号では、経験したことのないような豪雨が各地で降っており、その結果として多くのダムに土砂が流入している可能性があります。例えば、八ッ場ダムの場合は試験的に運用していた中で水位が非常に低く、偶然にも今回の豪雨による降水を受け止める容量があったわけですが、もしかしたら今回の台風によって多くの土砂が流入しており、次の災害の際には事前放流をしても必要な容量が確保できない危険もあるわけです。 そう考えると、土砂の浚渫(しゅんせつ)など、ダムへの流入土砂についてメンテナンスを行い、ダム本来の機能を回復させておくことは必要です。おそらく、今回の台風19号では、東日本の多くのダムには相当量の土砂が流入していると考えられます。ということは、そのメンテナンスには相当の費用と労力を投入しなくてはならないでしょう。 いずれにしても、「コンクリート」つまりハードの整備だけでは、防災という目的は達成できません。コミュニケーションの体制作りや、メンテナンスなどソフト面が揃って初めて、ハードウェアが所定の性能を発揮することを考えると、ハードかソフトかという二者択一の議論は全く意味を成さないと言えるでしょう』、説得力溢れた主張で、全面的に同意したい。

第四に、治水問題や福島原発事故の避難者訴訟の弁護団弁護士の西島和氏が10月28日付け日刊ゲンダイのインタビューに応じた「西島和氏「八ツ場ダムが利根川を守ったというのは誤解」」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/263717
・『大型台風が次々に日本列島を襲い、甚大な水害をもたらしている。一方、巨大ダムやスーパー堤防があったから被害を食い止められたという自民党政治礼賛の声がネットで飛び交っている。果たしてそれは事実なのか。河川公共事業の住民訴訟に取り組んできた専門家に話を聞いた(Qは聞き手の質問、Aは西島氏の回答)』、興味深そうだ。
・『Q:台風19号は記録的な大雨を降らせましたが、八ツ場ダムがギリギリまで貯水した画像がネットで拡散され、おかげで利根川の氾濫を防げたという意見もあります。これは事実なのでしょうか。 A:誤解です。八ツ場ダムがなくても、利根川の河道で流せる程度の降雨量でした。治水というと、ダムを連想する人が多いと思いますが、基本は堤防や河道掘削などの河道整備です。雨がどこにどれだけ降っても、一定量を流せる河道整備が進められてきたことにより、利根川では氾濫が起きませんでした。これに対し、ダムの効果は不確実で、限定的です。降雨が「想定した場所」「想定した規模・降り方」で発生し、かつ、放流のタイミングを誤らないという場合に河川への流入量を減らせるにすぎないのです。 Q:八ツ場ダムが本格稼働していなかったことも背景にありましたね。 A:今回ラッキーだったのは、八ツ場ダムが試験湛水中だったため貯水量が少なく、本来より多くの水を貯めることができたことです。 Q:もし八ツ場ダムが本格稼働していて今回のような雨量になったらどうなっていたのでしょうか。 A:危なかったと思います。ダムは無限に水を貯めることができるわけではありません。ダムが貯められる以上の降水が発生した場合、ダムはダム自体の決壊を防ぐために緊急放流を行うことがあります。それで失敗したのが昨年の西日本豪雨で大規模な浸水被害を引き起こした愛媛県の野村ダムです。緊急放流をしたため肱川が氾濫し死者を出しました。今回もいくつか緊急放流をしたり、準備をしていたダムがあります。ダムの限界には注意する必要があります』、「治水というと、ダムを連想する人が多いと思いますが、基本は堤防や河道掘削などの河道整備です」、「ダムの効果は不確実で、限定的です」、こうした見方は、八ツ場ダム建設を中止した民主党政権への批判が一部に出てきたなかで、貴重だ。西島氏は外語大出身の弁護士と変わった経歴の持ち主のようだ。
・『Q:八ツ場ダムの住民訴訟の弁護団に加わっていましたが、どのようなきっかけでしょうか。 A:八ツ場ダムは治水と利水という相反する目的をもつ多目的ダムです。東京都は約500億円の利水負担金で新たな水源を得ようとしていました。しかし東京は人口は増えていますが、水需要は頭打ちで減少傾向ですから、負担金支出は違法だという訴訟を住民が起こしたのです。弁護団に加わるきっかけは「岸辺のアルバム」で知られる多摩川水害訴訟を手がけた高橋利明弁護士のお話を聞いて、ダムのイメージが変わりショックを受けたことです。 Q:訴訟は敗訴しました。 A:裁判所は八ツ場ダムが治水で役に立つ可能性が皆無ではないなどと判断しました。 Q:秋田県・雄物川の成瀬ダム訴訟もされていましたね。 A:緑にかこまれた美しい沢もある自然豊かな場所に造る計画で、農家の方などが子や孫に自然を残したいと起こされた訴訟です。成瀬ダムは最上流にあり、流域面積の1%の集水面積しかなく、治水効果がきわめて限定的です。堤防整備が相当遅れている状況で利水負担金約200億円を支出してダムを造ってもらうメリットは秋田県にはありません。しかし、裁判所は、治水に役に立つ可能性はゼロではないし、利水負担金は支出しない民意が明らかではないから公金支出は違法ではないとしました。 Q:「可能性はゼロではない」と繰り返す裁判所の理屈は暴論ですね。 A:住民訴訟を死文化させる判決でした。ダム優先は国策ですので、裁判所も逆らえないのかと。ふつうの事件は、「負けて納得はできないが、理解はできる」ということが多いのですが、ダム訴訟は納得はできないし、理解もできません。国土交通省OBの宮本博司さんも、成瀬ダムの建設予定地を見て、これは官僚が造りたいダムではなくて、政治案件ではないかと指摘していました。 Q:宮本さんとは。 A:岡山県・苫田ダム工事事務所長や長良川河口堰建設所長として、ダム建設を「推進」されてきた方です。反対住民と真摯にコミュニケーションする中で、国交省が「勝手に」決める治水から、みんなで考える治水を目指し、河川法改正を主導されました。近畿地方整備局淀川河川事務所長時代には「淀川水系流域委員会」を設置し、住民参加を実践する計画策定の実現を目指しましたが、国交省本省の「巻き返し」にあい、淀川水系流域委員会は休止、間もなく宮本さんは国交省を退職されました。宮本さんの目指された人命最優先の開かれた治水を実現していかなければなりません』、「住民参加を実践する計画策定の実現を目指しました」、立派な国交省の官僚がいたことに驚かされた。
・『自治体が国のお金で再開発できるのがスーパー堤防  Q:堤防の斜面をなだらかにして堤防の上に住宅を建てる江戸川スーパー堤防の差し止め訴訟もされていましたね。 A:スーパー堤防は、時間とコストがべらぼうにかかり、実現可能性のないものです。完成時期は「不明」、コストは江戸川の22キロだけで1兆円とも試算されています。治水計画としては破綻していますが、自治体が国のお金で再開発できるという「メリット」があります。江戸川区の場合は100%国負担でした。ちなみに、通常の堤防より高いと誤解されていますが、高さは同じですから、水が乗り越えてくる状況は変わらずスーパーでもない。千葉県市川市妙典のスーパー堤防は川と堤防の間に線路が走っていて、会計検査院からは完成していないと国交省は怒られています』、スーパー堤防の「コストは江戸川の22キロだけで1兆円とも試算」、というのでは夢物語だ。「自治体が国のお金で再開発できるという「メリット」」、自治体が痛みなしに出来るのであれば、モラルハザードを引き起こすだけだ。「千葉県市川市妙典のスーパー堤防」は京成電鉄の線路が堤防より低いところにあり、スーパー堤防が機能を果たしていないので、「会計検査院」の指摘は当然だ。
・『「ダム優先」「人命軽視」の国策で堤防整備は後回し  Q:デタラメですね。 A:盛り土をともなう再開発で立ち退きが必要になりますから、計画が進まないのです。北小岩では強引に進めて「まちこわし」になりました。 Q:ところで国交省の堤防は土を盛ることしかしないのですか。 A:今回の長野県・千曲川も洪水が土の堤防を越水し破壊したことによる決壊だといわれています。堤防を越えると水が反対側に落ちて、滝つぼができるように土の堤防を削って決壊させるのです。ですので、国交省がかつて研究してきたアーマー・レビー工法(注)のような堤防強化が必要なのですが、今の国交省は河川管理施設等構造令の土堤原則だからと土を積むだけです。 Q:堤防に矢板(鋼板)を入れるのもダメですか。 A:矢板やセメントなど異物を入れてはいけないそうです。土堤原則には例外もあり、場所によっては堤防強化されている例もあるのですが、決壊を防ぐには原則と例外を逆にすべきです。理解に苦しみます』、(注)アーマー・レビー工法とは、堤防裏面の法面を遮水シートと連接ブロックで保護して、越水による洗堀を防ぐ。コストは1メートル当たり100万円以下の安価な工法。しかし、国交渉はダム事業推進の障害になるとして、普及にストップをかけたようだ(togetter、10月30日より)。どうも、国交省はダム事業推進やスーパー堤防といったカネのかかるやり方を優先しているようだ。とんでもない役所だ。公明党の大臣は何をしているのだろう。
・『国土強靭化は“やってる感”のスローガン  Q:安倍政権は国土強靱化を掲げていますが、水害対策は強靱化されましたか。 A:国土強靱化は“やっている感”を出すためだけのスローガンです。公共事業批判を封じ込めたいのでしょうが、事業の中身は問わず規模を大きくするだけでは問題は解決しません。“忖度道路”(安倍・麻生道路と呼ばれる下関北九州道路)など民主党政権時代にできなかったような事業も復活させる一方で、堤防決壊を回避するための本当に必要な対策は後回しにされています。 Q:河川水害はどうしたら防げるのでしょう。 A:水害を100%防ぐことはできませんが、氾濫しても人命が失われることのないよう、越水しても決壊しない堤防を整備していくことです。日本全国の堤防は土を盛っただけの“土まんじゅう”で、安全度も低いところが多いんです。2015年の豪雨で利根川水系の鬼怒川が決壊し、死者が出ました。当時の堤防は10年に1度くらいの雨で氾濫する状況でしたが、堤防を強化して氾濫だけで済んでいれば、あれほど深刻な被害にならなかった可能性があります。数時間の越水に耐えられる堤防を造って、少なくとも短時間に大量の水があふれないようにすることです。 Q:今後はどのような活動をされていきますか。 A:安全度が低い堤防などの整備を後回しにして、ダム整備を優先するのは人命軽視だと成瀬ダム訴訟でも主張してきました。広範囲で大規模な災害が起こる気候危機の一方で、災害対策の予算・人手は限られており、整備の順番はとても大事なんです。国交省にいる志のある人などを後押しして、住民の命を最優先で守る治水への方針転換を実現したいと思います。ただその前に現政権が代わらないと無理だとつくづく思います』、説得力溢れた主張で、その通りだ。「越水しても決壊しない堤防を整備していく」とはアーマー・レビー工法のことだろう。筆者には「国交省にいる志のある人などを後押し」、するなどの活動を期待したい。
タグ:決壊はなぜ?“越水”と“地形”が関係 “ピンホールアイ”で強力になった台風 「ピンホールアイ」と呼ばれる台風の小さな目 広範囲で同時多発…“過去にない”災害はなぜ? 「同時多発 河川氾濫の衝撃 ~緊急報告・台風19号~」 NHKクローズアップ現代+ お互いの助け合いの精神 世田谷区のように、ホームレスらに事前に避難を呼びかけた自治体もある 安倍晋三首相は次のように答弁した。 「各避難所では、避難した全ての被災者を適切に受け入れることが望ましい。ご指摘の事例は自治体に事実関係を確認し、適切に対処したい」 「ホームレス避難所追い返し問題を安倍総理に言及され台東区が謝罪〈週刊朝日〉」 AERAdot 越水しても決壊しない堤防を整備 災害 国交省にいる志のある人などを後押しして、住民の命を最優先で守る治水への方針転換を実現したい ダムの効果は不確実で、限定的です Newsweek日本版 「コンクリートだけでは人命は守れない」 ダムへの流入土砂の問題 (その8)(ホームレス避難所追い返し問題を安倍総理に言及され台東区が謝罪、同時多発 河川氾濫の衝撃 ~緊急報告・台風19号~、コンクリートだけでは人命は守れない、西島和氏「八ツ場ダムが利根川を守ったというのは誤解」) 西島和 コストは江戸川の22キロだけで1兆円とも試算 八ツ場ダムがなくても、利根川の河道で流せる程度の降雨量でした 国土強靭化は“やってる感”のスローガン アーマー・レビー工法 「ダム優先」「人命軽視」の国策で堤防整備は後回し 京成電鉄の線路が堤防より低いところにあり、スーパー堤防が機能を果たしていない 千葉県市川市妙典のスーパー堤防 自治体が国のお金で再開発できるという「メリット」 自治体が国のお金で再開発できるのがスーパー堤防 「西島和氏「八ツ場ダムが利根川を守ったというのは誤解」」 治水というと、ダムを連想する人が多いと思いますが、基本は堤防や河道掘削などの河道整備です 日刊ゲンダイ 、ハードの整備は車の車輪の一方であり、同時に人によるコミュニケーションやマネジメントといったソフトの面も充実させていかねばならない ハードとソフトの両面を向上させなければ防災という目的は達成できない 冷泉彰彦 あわや荒川も…あらわになったリスク あらわになったリスク 何が必要か 各地で“バックウォーター”か…何が起きたのか 同時多発 河川氾濫の衝撃
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冤罪(その2)(虐待か冤罪かを見極める 臨床法医学の「恐い」現状、「史上最悪の殺人教師」は“でっちあげ”だった! なぜ戦慄の冤罪劇が生まれたのか、驚愕の真相は――、「無罪」ほぼ確実な滋賀の呼吸器外し事件 女心につけ込んだ刑事のでっちあげか) [社会]

冤罪については、2017年7月30日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その2)(虐待か冤罪かを見極める 臨床法医学の「恐い」現状、「史上最悪の殺人教師」は“でっちあげ”だった! なぜ戦慄の冤罪劇が生まれたのか、驚愕の真相は――、「無罪」ほぼ確実な滋賀の呼吸器外し事件 女心につけ込んだ刑事のでっちあげか)である。

先ずは、医療ジャーナリストの木原洋美氏が2018年5月17日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「虐待か冤罪かを見極める、臨床法医学の「恐い」現状」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/170190
・『法医学といえば、遺体の解剖を行って死因を決定する学問だと思う人も多い。しかし実際には、法律に関しての医学的諸問題を広く扱うもので、医学的に公正に判断を行うための学問であり、対象には生きている人間も含まれる。臨床法医学の現状について取材してみた』、「対象には」死者だけでなく、「生きている人間も含まれる」とは意外だ。
・『「死人に口無し」だが 話せないのは死人だけではない  千葉大学附属法医学教育研究センターの医師、本村あゆみさんが診察するのは、ご遺体だ。警察や海上保安庁等から依頼を受け、異状死体(確実に診断された内因性疾患で死亡したことが明らかである死体以外の、全ての死体)を解剖し、死因を究明する。 「もちろん、死因を明らかにしても、そのご本人に対して、してあげられることは何もありません。でも、原因を究明することで、次に似たような状況の人が救命救急に搬送されたとき、より適切な治療が行えて、命を救うことができるかもしれません。私は、亡くなられた方の死因を究明した結果を、生きている人や社会に還元していく医学だと思っています」 本村さんには忘れられないご遺体がある。 「数年前になりますが、無理心中で、お母さんにマンションの高層階から突き落とされて亡くなったお子さんのご遺体を解剖したことがありました(医学的な死因とは別に)。『なぜ、この子たちは殺されなければならなかったのだろう。こうなる前に、できることがあるはずだ』と思いました。このような経験から、当教室では小児科の臨床医などと協力して、心中や虐待死が起きる前に察知して、保護するような活動をしています」 昔から「死人に口無し」というが、世間には死者以外にも、自分の身に起きたことを訴えられない人がいる。幼子や認知症を患った高齢者などだ。法医なら、そういう人たちの言葉にできないピンチを察知し、手を差し伸べることができる』、「世間には死者以外にも、自分の身に起きたことを訴えられない人がいる。幼子や認知症を患った高齢者などだ。法医なら、そういう人たちの言葉にできないピンチを察知し、手を差し伸べることができる」、なるほどと思わされるが、もう少し具体的に知りたい。
・『臨床医はケガを治す 法医学は原因を判断する  2014年、同センターが立ち上げた「臨床法医学」部門は、“生きている人間”も扱う法医学だ。 大学内に臨床法医学を専門にした研究・教育部門ができたのは全国初。海外、特に欧州などでは、このような臨床法医学は、確立された一つの分野として認識されているが、日本においては、実務的にも学問的にも、まとまった体系をなしていないのが現状だ。センター長の岩瀬博太郎教授は説明する。 「例えば虐待を受けた可能性があるお子さんについて、実際に虐待を受けたのかどうかをケガの状態から判断し、保護に結びつけたり、診察記録をもとにセカンドオピニオンを提供したりします。千葉大病院の小児科医とも連携し、ネグレクト(育児放棄)による虫歯や栄養不足の見逃し防止などにも対応するほか、実際に診察することもあります。 今のところ、児童相談所の依頼による虐待対応がメインにはなっていますが、それプラス、千葉地検や警察から持ち込まれる傷害事件の鑑定にもあたっています。傷害事件の被害者でも、うそをつく人もいます。殴られてもいないのに殴られたという人もいるので、客観的な証拠保全をしておく必要があるのです」 生きている人間のケガや健康状態を診るのなら、法医でなくともよいと思われがちだが。 「臨床医はケガを治すのが仕事ですが、解剖を通じて死者から学ぶ法医は、人体に傷ができた原因を探ることに慣れている。そこは大きな違いです」』、「「臨床法医学」部門は、“生きている人間”も扱う法医学」、「臨床医はケガを治す 法医学は原因を判断する」、「児童相談所の依頼による虐待対応がメインにはなっていますが、それプラス、千葉地検や警察から持ち込まれる傷害事件の鑑定にもあたっています」、存在意義が漸く理解できた。重要な機能なのに千葉大学にしかないのでは、冤罪を生む温床になりかねないようだ、
・『冤罪のリスクが高い揺さぶられっ子症候群  こんなニュースに、覚えはないだろうか。 休日。育児に不慣れな夫に赤ちゃんを任せて妻が買い物に出かけ、帰宅したら、赤ちゃんがぐったりしていた。慌てて救急車を呼び、病院に搬送したが赤ちゃんは死亡。脳の損傷を示す“三徴候”が見られたことから、「揺さぶられっ子症候群」と診断した医師は警察に通報。乳児を虐待死させた疑いで夫は逮捕。「泣きやまないので、何度か強く揺さぶった」と話している。 岩瀬教授によると、近年、子どもの虐待をめぐるケガで「揺さぶられっ子症候群」が注目されているという。 正式には「乳幼児揺さぶられ症候群」。頭を前後や左右に大きく揺さぶられることによって脳が損傷され、頭蓋内に出血が起こる。この出血が原因となって言語障害や学習障害、歩行困難などの後遺症が残る可能性があり、最悪の場合死に至るケースもある。 人間の脳は頭蓋骨に収まっているが、脳の下には硬膜という膜があり、その下に脳がある。脳と硬膜の間には血管があり、脳と硬膜の間にズレが生じると血管が破綻し硬膜下出血が発生する。赤ちゃんの場合、大人に比べ脳が非常にやわらかいのだが、そうした子どもの頭を激しく揺さぶったらどうなるか。想像してみてほしい。 乳幼児が救急搬送されてきた際「網膜出血」「硬膜下出血」「脳損傷を示唆する何らかの症状」という「三徴候」が診られた場合、医師は「強い揺さぶりで虐待を受けた」と診断し、警察に通報することが増えてきた。 「しかしこの数年間の研究では、網膜出血と硬膜下血腫があったとしても、必ずしも、強く揺さぶられたとは限らない。ちょっと転んだだけでも出血が起きている例があることが分っています。 臨床医には特有の正義感があり、目の前にいる患者さんのためになろうとして、客観性を見失ってしまうケースがあるように思います。それは実は、非常に危険なことで、冤罪を作ってしまう可能性がある。 実際、虐待していないのに逮捕され、有罪にされているケースも起きているようです」』、「虐待していないのに逮捕され、有罪にされているケースも起きている」、恐ろしいことだ。「虐待」に世論はヒステリックな反応をするが、警察・検察までが冷静さを失って冤罪を生んでいるとすれば、困ったことだ。
・『むろん、親は否定していても、かなり虐待が疑わしい場合もある。 「児相(児童相談所)から『虐待が疑われるが、決めかねている』との理由で持ち込まれた案件でした。最初に診察した小児科医のカルテには、『急性硬膜下血腫』と記載されており、頭を強く打ったとみられましたが、体にあざはなく、親は虐待を否定していました。 レントゲンとCTを見るとと腕の骨が折れており、肋骨の骨折が治った形跡も見つかりました。そこで乳児はかなり以前から暴行を受けていたのではと診断し、保護するよう促しました」 冤罪を防ぐのと虐待死を防ぐのと、臨床法医学には2つの役割があり、その診断は、臨床医には難しい。 「虐待死を防ぐためには、硬膜下血腫があるだけでも疑って、お子さんを保護することは大事です。しかし同じ調子で、親を責めて刑事責任まで問うと冤罪だらけになる可能性がある。そこは思い込みを排除して、謙虚に、科学的に、見極めていかなければなりません。目の前の患者さんのためだけでは務まらない」』、「臨床法医学」の重要性をさらに再認識した。
・『交通事故の相手が鞭打ち症 安易な診断で刑事罰の危機  子どもの虐待死も冤罪も、あってはならないとは思っても、「正直、他人事でしかない」人もいるに違いない。ならば、次のような場面ではどうだろう。 「例えば交通事故があったとします。通常、臨床医は、自分の診断が関係者の人生にどのような影響を及ぼすかなんて、あまり考えません。 交通事故で追突されたという患者さんが来ると、『むち打ち損傷』などと診断し、コルセットを与えて、『1ヵ月ぐらい通ってください』と言うことがありますが、追突したとされる相手は、下手すると、『自動車運転過失傷害』という罪になる。安易な診断は、無実の人に罪をかぶせることになるのに、その辺のことはあまり考慮されていない。 実際、追突事故によるむち打ち症のほとんどが、もしかしたら、実在していないのではないかという説もあるほどです」 ヨーロッパでは、患者の訴える症状が、本当にその事故によるものなのか、本当に首に異常があるのかどうかなど、事故の内容や程度に鑑みて、法医が診断するという。) 「そうしないとちょっとした事故でも、いつ自分が加害者にされて、刑事罰を受けるか、恐い状況があります。私のところにも、気の毒な依頼が舞い込みます。 ただ車がかすっただけの事故で、最初は相手も痛いともなんとも言っていなかったのに、示談がこじれて1ヵ月くらいたったあたりで急に首が痛いと訴えだし、整形外科にかかってむち打ち症の診断書を出してきた。 自動車運転過失致傷で略式起訴されたため、『そんなバカな』と反論したら正式に起訴され、有罪にされてしまった、何とかしてほしいとか。ひどい話です」 事故が起きてからだいぶ日数がたった後で、障害が起きてきた…という話はよく聞くが、それが本当に、その事故に起因するものなのかどうかは、ケガを治すのが専門の臨床医には難しそうだ。さらに、首や腰の痛みは心因的な要因によるものも多いので、考慮するべきだろう。 「臨床医は、加害者にされる相手のことは考えず、自分の患者さんの訴えだけを聞いて診断してしまいがちです。日本でも今後、交通事故や傷害事件に関する訴訟は増えていくでしょう。ケガの原因を究明する、臨床法医学の必要性はこれからますます高まっていくと思います」 子どもの虐待に加え、高齢社会のなかで、今後は老人虐待の案件も増えてくるはず。 ところが、日本全国で、臨床法医学の分野に臨床医も交え組織だって取り組んでいるところは、今のところ千葉大の法医学教育研究センター1ヵ所だけ。それよりも何より、法医学者の数自体、全国に140人程度(2018年4月現在)しかいないことをご存じだろうか。 これは相当恐ろしいことなのだ』、確かにその通りだが、日本で「臨床法医学」が軽視されてきた経緯も知りたいところだ。

次に、2018年12月11日付けデイリー新潮「「史上最悪の殺人教師」は“でっちあげ”だった! なぜ戦慄の冤罪劇が生まれたのか、驚愕の真相は――」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2018/12110650/?all=1
・『「日本は島国で純粋な血だったのに、だんだん外国人が入り穢れた血が混ざってきた」「血の穢(けが)れている人間は生きている価値がない。早く死ね、自分で死ね」――。 2003年に福岡市で起こった「教師によるいじめ事件」を覚えているだろうか。一人の男性教諭が、アメリカ人を先祖にもつとされる男児に対し、人種差別や体罰などのいじめを行ったという事件である。教師は「史上最悪の殺人教師」と呼ばれ、マスメディアも扇情的に報道した。福岡市教育委員会は全国で初めて教師によるいじめを認め、男性教諭を懲戒処分。男児の両親は、福岡市と教諭個人を被告とし、民事訴訟を起こした。だがこの事件、実はクレーマーの親による「でっちあげ」、つまり冤罪だったのである。 「史上最悪の殺人教師」は覚えていても、これが冤罪だったことまで知っている方は少ないのではないか。裁判が進むにつれ、男児や男児の親側の証言に信憑性が薄いことが明るみになる。2008年に結審した裁判では、原告の証言はほとんど認められず、2013年には福岡市人事委員会が教諭の懲戒処分を取り消す裁決をした。 なぜこのような冤罪劇が起こってしまったのか。ノンフィクションライターの福田ますみさんは独自にこの事件を追った。著書『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』には、冤罪が引き起こされるまでの戦慄の経緯が記されている。(以下、同書を参照、引用)』、両親による「民事訴訟」で、逆に真相が明らかになり、「教諭の懲戒処分を取り消す裁決をした」から良かったが、さもなければ不当な「冤罪」のままで葬り去られるところだった。
・『きっかけは家庭訪問だった。母親との雑談の中で男児の曾祖父がアメリカ人という話になり、男性教諭は「アメリカの方と血が混ざっているから、(男児は)ハーフ的な顔立ちをしているんですね。目や鼻がはっきりしているんですね」と返す。母親は「3世代目ですから特徴が出ているんでしょうね」と応える。ごく普通の会話として、そのやりとりは行われた。 だがその後、事態は一変する。男児の両親が学校にやってきて、家庭訪問の時に男性教諭が男児のことを「血が穢れている」と言って傷つけたと抗議してきたのだ。また、学校内での体罰や言葉の暴力なども同時に訴えてきた。全く身に覚えがない男性教諭はそれを否定するが、学校側は保護者の言うことを鵜呑みにし、全く聞く耳を持たない。なぜ男児の両親はありもしない話をでっちあげるのか。その理由は分からないが、学校側の強い圧力もあり、男性教諭は身に覚えのない「いじめ」について認め、両親に謝罪してしまうのだった。 それでも、騒ぎは収まらなかった。マスコミがこのことを「史上最悪の殺人教師」としてセンセーショナルに報じ始めたのだ。そこから男性教諭の人生は転がり落ちるように進む。担任交代、停職6カ月、そして裁判へ――。しかし、その裁判は意外な展開を迎えるのだ。 詳しくは同書に譲るが、男性教諭の「いじめ」によってPTSDになったという男児を詳しく検査したところ症状が見られず、母親の証言の中でのみPTSD症状が存在しているという疑いがもたれ始める。また一番注目を集めていた「血が穢れている」発言の発端となった「男児の曾祖父がアメリカ人」という親の言葉自体が虚偽だと発覚する。 なぜ男児の両親はありもしない話で男性教諭を追い詰めようとしたのか。なぜ学校側は、男性教諭の話をろくに聞かずに処分を下したのか。男性教諭はなぜやってもいないことを謝ってしまったのか。それは現代の教育現場が抱える複雑な問題を浮き彫りにしているようにも思える。 福田さんは同書の中で「教諭に降りかかった災難は決して他人(ひと)ごとではない。“子供という聖域”を盾に理不尽な要求をする保護者が増え、それとともに、教師がますます物を言えなくなる状況が続けば、容易に第2、第3の被害者があらわれても不思議はない」と語る。 また、マスメディアの誤報がこの冤罪を過熱させた大きな原因のひとつだが、福田さんはその流れに乗らず、真相に迫ることが出来た理由を以下のように明かす。 「私が、この事件の真相に少しでも肉迫することができたとすれば、男性教諭に長時間話を聞けたことが大きい。さらに、それに先立つ聞き込みによって、既存の報道から受けた先入観を払拭(ふっしょく)し、ニュートラルな気持ちで取材に臨めたことも幸いした。この幸運がなければ、私もまた、男性教諭を体罰教師と決めつけた記事を書いていたかもしれない。その差はほんの紙一重だ」(同書より) 「殺人教師」のレッテルを貼られ、それでも冤罪と戦い続けた男性教諭は、2013年の懲戒処分取り消しの判決について「この10年間私は、筆舌に尽くせない苦しみを味わってきました。今回やっと私の言い分を全面的に認めてもらい、ようやく溜飲が下がる思いです」(同書より)と言う。 福田さんはこの冤罪事件について以下のように語り、同書を締めくくっている。 「公平性を欠いたずさんで理不尽な懲戒処分が、一人の善良な教師の教師生命、いや、その人生さえもめちゃくちゃにしようとしていたことを、関係者はどの程度の深刻さで受け止めているだろうか。判定はあらためて、この事件が『でっちあげ』以外にあり得ないことを証明している」、モンスターペアレントの典型例だが、マスコミや学校、教育委員会も深く反省すべきだろう。

第三に、事件ジャーナリストの戸田一法氏が本年10月31日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「「無罪」ほぼ確実な滋賀の呼吸器外し事件、女心につけ込んだ刑事のでっちあげか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/218818
・『滋賀県東近江市の湖東記念病院で人工呼吸器を外して患者の男性(当時72)を殺害したとして、殺人罪で懲役12年が確定し、服役後に再審開始が決定した元看護助手西山美香さん(39)の再審公判で、検察側は新たな証拠を提示しない方針が明らかになった。事実上の“敗北宣言”で無罪がほぼ確実になった。一方で検察側は求刑放棄や無罪論告はせず、曖昧な姿勢を貫いており、関係者から疑問や批判の声も上がっている』、この事件も当初、捜査当局側情報をマスコミはタレ流し、西山美香さんは極悪人に仕立てられていた。
・『検察側の手詰まり  「事実上の有罪立証断念だが、趣旨が曖昧で分かりにくい。はっきりと無罪を認めるべきだ」 23日、記者会見した西山さんの井戸謙一弁護団長は語気を強めた。検察側が、再審公判で新証拠による立証をしないと書面で通告してきたという。 弁護団によると、検察側は従来の証拠に基づき有罪主張そのものは取り下げないが、弁護側の無罪主張には積極的に反論しないというスタンスらしい。 また検察側は確定判決で有罪の決め手となった「呼吸器のチューブを外して殺害した」という自白調書を再審公判で証拠として維持するかは、裁判所の判断に委ねるとした。 何とも煮え切らない検察側の姿勢だが、本年度内の再審公判開始や即日結審を希望し、弁護団の証拠請求にも同意する方針だという。 どういうことか分かりやすく言うと、検察側は「間違っていたとは認めないが、裁判所が『無罪』というなら、それに従ってあげますよ。それでいいでしょ」「面倒くさいことはさっさと終わらせたい」ということだ。 当時、事件を担当した検察官は身内であるし、積極的に不手際を指摘したくない気持ちは理解できないでもない。 そして、昨今は検察のレベルとモラルが低下しているのはいうまでもないことだが、公判をゲームか何かと勘違いし、人の人生などどうでもいいと考えるエリートらしいリアクションでもある。 井戸弁護団長は検察側の姿勢に「積極的に有罪を立証する証拠はないが、はっきり無罪といえる証拠もないのだろう」と検察側が手詰まりになったと推測した。 記者会見した西山さんは「裁判が早く終わるのはうれしい」と喜びを語った一方、公判が1回だけの可能性が濃厚になったことに「検察側に直接聞きたかったこともあるが、それができないのは残念」と心境を吐露した』、「検察側の姿勢」は、自らの誤りは認めたくないのだろうが、無責任の極みだ。
・『女性の心につけ込んだ刑事  確定判決によると、看護助手だった西山さんは2003年5月、巡回中に男性患者の人工呼吸器を外し、殺害したとされる。 任意捜査の段階で自白したが、公判では一貫して無罪を主張。07年に懲役12年の判決が確定し、10年に大津地裁に第1次再審請求。地裁、高裁、最高裁ともに再審は認めなかった。 17年8月に服役を終え、同年12月、大阪高裁が再審開始を決定し、風向きが変わる。今年3月、最高裁が検察側の特別抗告を棄却し、再審開始が確定。この時点では、検察側は有罪主張を表明していた。 この事件は「自白」が証拠の決め手とされたが、実はデタラメでいい加減な調書が作成されていた。 本審では、大津地裁から最高裁まで一貫して自白調書の信用性や任意性を認定し、男性患者の死因を「酸素供給が途絶えたことによる心停止」として有罪としたが、大阪高裁の再審開始決定では確定審の医師の鑑定で、カリウムイオンの血中濃度から「致死性の不整脈」による自然死の可能性があるとされた。 実は、西山さんの「供述調書」が問題なのだが、でっちあげた警察側は仕方ないにしても、検察も、裁判所も見抜けなかったのはあまりにお粗末だった。 実は西山さんの自白は二転三転しており、検察側が証拠として示す調書と、公判での西山さんの供述がちぐはぐだったとされる。 大阪高裁の再審開始決定でも「自白はめまぐるしい変遷があり、体験に基づく供述ではない疑いがある」と疑問視。取り調べた刑事に好意を抱いた末に迎合し、虚偽の自白をした可能性があり「信用性は高くない」と結論付けた。 最高裁の決定も、裁判官3人全員一致で高裁決定を支持し、再審開始が確定した』、裁判で無罪を主張しても、「自白調書」さえあれば、安易に有罪判決を下した裁判所の姿勢は特に問題だ。
・『好意につけ込んだ刑事  今回の事件で問題となったのは、この取り調べを担当した男性刑事の存在と、でっちあげられたストーリーだ。 弁護団によると、西山さんから自供を引き出したのは、威圧感ある怖さと優しさを使い分ける巧妙な刑事のトークだった。 当時30代だった男性刑事は呼吸器が外れたことを知らせるアラームが鳴ったかどうか執拗(しつよう)に尋ね「なめたまねしたら痛い目に遭うで」。机を蹴り、睨(にら)みつけた。 アラームが鳴ったと認めると別人のように優しくなり、親身に話を聞いてくれた。近所でも「優秀」といわれた兄と比べられ、コンプレックスもあった。「うん、うん」と自分の話を聞いてくれる刑事に、好意を抱いてしまった。 「逃げるな。否認したら裁判官の心証が悪くなる」「弁護士は信用するな」 刑事の言葉を信じた西山さん。公判での「やっていない」という訴えは、判事の耳に届かなかった。 服役後、西山さんは精神科医に「人に迎合しやすい傾向があり、軽度の知的障害と発達障害がある」と診断されていた。 実は捜査や公判の段階で、検察や裁判所が「違和感」に気付く局面はあった。 アラームが同僚に気付かれないよう1分間数え、消音ボタンを押したという供述調書だ。 弁護団によると、西山さんは「私は20秒しか数えられない。1分数えたとは言っていない」と主張。大阪高裁決定もこの供述調書について「誘導された疑いがある」と指摘していた。 この事件を巡っては、弁護団が「違法な捜査があった。自白に至った経緯を明らかにしたい」として捜査段階の供述調書など約350点の証拠を新たに開示請求した。 おそらく、見るに堪えないお粗末で杜撰(ずさん)な調書が披露されるだろう。 早ければ年内にも「無罪」が言い渡されるが、西山さんが謳歌(おうか)すべきだった20~30代の青春は戻らない。 その原因を作った警察や検察、各裁判所の関係者は誰も謝罪せず、責任を問われることもない』、「軽度の知的障害と発達障害がある」西山さんを騙して「自白調書」をでっち上げた警察官の責任は重大だ。しかし、それが問われることはないとすれば、日本の司法の闇の1つになるだろう。
タグ:冤罪 (その2)(虐待か冤罪かを見極める 臨床法医学の「恐い」現状、「史上最悪の殺人教師」は“でっちあげ”だった! なぜ戦慄の冤罪劇が生まれたのか、驚愕の真相は――、「無罪」ほぼ確実な滋賀の呼吸器外し事件 女心につけ込んだ刑事のでっちあげか) 軽度の知的障害と発達障害がある 「「無罪」ほぼ確実な滋賀の呼吸器外し事件、女心につけ込んだ刑事のでっちあげか」 早ければ年内にも「無罪」が言い渡されるが、西山さんが謳歌(おうか)すべきだった20~30代の青春は戻らない その原因を作った警察や検察、各裁判所の関係者は誰も謝罪せず、責任を問われることもない 冤罪を防ぐのと虐待死を防ぐのと、臨床法医学には2つの役割があり、その診断は、臨床医には難しい 07年に懲役12年の判決が確定 教諭の懲戒処分を取り消す裁決をした 検察側の手詰まり 検察側は「間違っていたとは認めないが、裁判所が『無罪』というなら、それに従ってあげますよ。それでいいでしょ」「面倒くさいことはさっさと終わらせたい」ということだ 千葉大の法医学教育研究センター1ヵ所だけ。それよりも何より、法医学者の数自体、全国に140人程度(2018年4月現在)しかいない 海外、特に欧州などでは、このような臨床法医学は、確立された一つの分野として認識 民事訴訟を起こした。だがこの事件、実はクレーマーの親による「でっちあげ」、つまり冤罪だった 亡くなられた方の死因を究明した結果を、生きている人や社会に還元していく医学 デイリー新潮 『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』 滋賀県東近江市の湖東記念病院 世間には死者以外にも、自分の身に起きたことを訴えられない人がいる。幼子や認知症を患った高齢者などだ。法医なら、そういう人たちの言葉にできないピンチを察知し、手を差し伸べることができる アラームが鳴ったと認めると別人のように優しくなり、親身に話を聞いてくれた。近所でも「優秀」といわれた兄と比べられ、コンプレックスもあった。「うん、うん」と自分の話を聞いてくれる刑事に、好意を抱いてしまった 冤罪のリスクが高い揺さぶられっ子症候群 取り調べた刑事に好意を抱いた末に迎合し、虚偽の自白をした可能性があり「信用性は高くない」と結論付けた 公平性を欠いたずさんで理不尽な懲戒処分が、一人の善良な教師の教師生命、いや、その人生さえもめちゃくちゃにしようとしていたことを、関係者はどの程度の深刻さで受け止めているだろうか。判定はあらためて、この事件が『でっちあげ』以外にあり得ないことを証明している 小児科の臨床医などと協力して、心中や虐待死が起きる前に察知して、保護するような活動をしています 2003年に福岡市で起こった「教師によるいじめ事件」 女性の心につけ込んだ刑事 好意につけ込んだ刑事 ダイヤモンド・オンライン 木原洋美 対象には生きている人間も含まれる 17年8月に服役を終え、同年12月、大阪高裁が再審開始を決定 「「史上最悪の殺人教師」は“でっちあげ”だった! なぜ戦慄の冤罪劇が生まれたのか、驚愕の真相は――」 児童相談所の依頼による虐待対応がメイン 臨床医はケガを治す 法医学は原因を判断する この数年間の研究では、網膜出血と硬膜下血腫があったとしても、必ずしも、強く揺さぶられたとは限らない。ちょっと転んだだけでも出血が起きている例があることが分っています 臨床医はケガを治すのが仕事ですが、解剖を通じて死者から学ぶ法医は、人体に傷ができた原因を探ることに慣れている。そこは大きな違いです 医師、本村あゆみさん 再審開始決定では確定審の医師の鑑定で、カリウムイオンの血中濃度から「致死性の不整脈」による自然死の可能性があるとされた 「自白」が証拠の決め手とされたが、実はデタラメでいい加減な調書が作成されていた 臨床医には特有の正義感があり、目の前にいる患者さんのためになろうとして、客観性を見失ってしまうケースがあるように思います。それは実は、非常に危険なことで、冤罪を作ってしまう可能性がある 任意捜査の段階で自白したが、公判では一貫して無罪を主張 マスコミがこのことを「史上最悪の殺人教師」としてセンセーショナルに報じ始めた 大学内に臨床法医学を専門にした研究・教育部門ができたのは全国初 交通事故の相手が鞭打ち症 安易な診断で刑事罰の危機 「死人に口無し」だが 話せないのは死人だけではない 一人の男性教諭が、アメリカ人を先祖にもつとされる男児に対し、人種差別や体罰などのいじめを行ったという事件 千葉大学附属法医学教育研究センター 大阪高裁の再審開始決定 「逃げるな。否認したら裁判官の心証が悪くなる」「弁護士は信用するな」 モンスターペアレント 患者の男性(当時72)を殺害したとして、殺人罪で懲役12年が確定し、服役後に再審開始が決定した元看護助手西山美香さん(39)の再審公判で、検察側は新たな証拠を提示しない方針 戸田一法 法医学 「虐待か冤罪かを見極める、臨床法医学の「恐い」現状」 千葉地検や警察から持ち込まれる傷害事件の鑑定にもあたっています
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子育て(その2)(うつぬけ精神科医が見た「子どもの不調」の背景 「家」を子どもの"ホーム"にする大切な考え方、「普通の家庭の子」の精神が追い詰められるワケ 7年間 うつを経験した医師が語る実際、日本の子どもは「世界一寝不足」 キレたり暴れたりする原因に?) [生活]

子育てについては、6月21日に取上げた。今日は、(その2)(うつぬけ精神科医が見た「子どもの不調」の背景 「家」を子どもの"ホーム"にする大切な考え方、「普通の家庭の子」の精神が追い詰められるワケ 7年間 うつを経験した医師が語る実際、日本の子どもは「世界一寝不足」 キレたり暴れたりする原因に?)である。

先ずは、自ら7年間うつを患っていた経験を持つこころのクリニック 院長の宮島 賢也氏が2月16日付け東洋経済オンラインに掲載した「うつぬけ精神科医が見た「子どもの不調」の背景 「家」を子どもの"ホーム"にする大切な考え方」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/265515
・『今、「心の不調」を抱える小中学生が増えているという。大人の視点では、その世代の子どもと精神疾患はあまり結びつかない印象もあるが、インターネットやSNSの普及もあり、最近の子どもたちは、対人関係など「大人と同じストレス」を受けやすい世の中を生きているのだ。 この記事は、小中学生を取り巻く現在の生活環境をふまえつつ、新刊『うつぬけ精神科医が教える 心が折れない子を育てる親の習慣』を著した精神科医・宮島賢也医師に、子どものメンタルをサポートするために「親はまず何をすべきなのか」を教えていただく。宮島氏自身、かつて7年間うつを患っていた経験を持つ』、「自身、かつて7年間うつを患っていた経験」、大いに参考になりそうだ。
・『今、元気のない子どもが増えている現実  子どもの不登校、引きこもりが年々増加しています。文科省の調査(2017年)によると、不登校の子どもは小学生が3万5032人(1000人当たり5.4人)、中学生が10万8999人(同32.5人)でした。また、2017年度に自ら命を絶った児童生徒(高校生含む)は250人で、これは過去30年で最多です。 それと同時に、子どもの「心の不調」も増えています。小中学生の世代に精神疾患がある事実はあまり知られていないかもしれませんが、うつ病や不安障害などは小学生から見られ、10代後半になるとさらに増加しているのです。 私のクリニックにも、小学生のお子さんを連れた親御さんが訪れますし、大人の患者さんに「初めて精神科を受診したのは?」と聞くと、「小学校の頃」と答える方もいます』、「うつ病や不安障害などは小学生から見られ、10代後半になるとさらに増加している」、そんな若い時から発症しているとは、驚かされた。
・『実は、こんなことをお伝えしている私自身、かつて7年間もうつを患った当人です。私がうつになったのは研修医時代ですが、そのきっかけは、日々の激務に加え、「自分は医師としてふさわしくないのでは?」「診断を間違ったらどうしよう」などと不安にさいなまれたからだと、その当時は思っていました。 でも今になって思えば、その“根本”は少年期にありました。この記事をお読みになっている方の参考になるかもしれないので、まずは私の当時に触れておきたいと思います。 私が小さい頃、両親はしょっちゅうケンカをしていました。母は大学卒業後に英語教師となり、私を妊娠したあと仕事を辞めていました。父は外資系のエリートサラリーマンです。父は仕事で多忙でしたから、母の関心はやがて子どもの私に集中するようになりました。 私は小4から塾に通い、多いときで週6日。日曜ごとに試験の成績が発表されるのですが、いい成績をとらないと母がいい顔をしない。それを気にした私はカンニングをしたりもしましたが、そんなことをしても気持ちよくありません。そして、だんだんそんな自分が嫌になっていき、「何のために勉強しているのか」疑問を抱くようになりました。 それでも、「1校だけ」と受けた中高一貫の難関校・開成中学に合格します。入学後はラグビー部に入りましたが、実力は伸びず、やがて部活を辞め、家でゲームにはまりました。でも、家にいると母が怒るばかりで、まったく心が休まりません。 学校の試験には詰め込み暗記で臨んでいました。でも、高校になると実力テストではガクンと成績が下がります。そうなると学校もつまらなくなり、家でも落ちつかない毎日。家にいたくなくてバイトをしたり、髪を伸ばしたり、ピアスの穴を開けたりもしました。あるとき母に「勉強しなさい!」と包丁を持って追いかけられたことも。私は「大学なんて行くもんか」と、酒やたばこにも手を出し、まさに自暴自棄でした。 その後、ある女医さんに憧れたことをきっかけに、「医者なら価値のない自分でも人の役に立てるかも」と思い立ち、運よく1浪後に防衛医大に受かりましたが、私の少年時代は不安定極まりない日々だったのです』、うつになった「“根本”は少年期にありました」、そんなに長いタイムラグがあることに、改めて驚かされた。「開成中学に合格・・・高校になると実力テストではガクンと成績が下がります。そうなると学校もつまらなくなり、家でも落ちつかない毎日・・・母に「勉強しなさい!」と包丁を持って追いかけられたことも」、絵に描いたようなエリートの卵も、悪循環にはまると大変なようだ。「ある女医さんに憧れたことをきっかけに、「医者なら価値のない自分でも人の役に立てるかも」と思い立ち、運よく1浪後に防衛医大に受かりました」、ひょんなきっかけで立ち直ったものだ。
・『子どものメンタルを守る「親の考え方」  「今、心の不調を抱える子どもが増えている」とお伝えしましたが、その背景には、実はそうなる根本原因といえる「親子関係」が大きく関わっています。 先述のとおり、私自身子どもの頃、親子関係に苦しんだ一人です。当時、いい成績と学歴、地位ある職業に価値を見出していた親に育てられた私は、結局、親が望んだような仕事に就いたともいえますが、医者になってからも自分に自信が持てず、「自己肯定感の低い人間」になってしまったのです。 この記事を読んでいただいている方には、お子さんのことで今まさに悩んでいる方もおられるでしょう。そこでここでは、現在心の不調を抱えている、あるいは最近いつもと様子が違う子どもに対する「親の接し方」についてお伝えしておきます』、「医者になってからも自分に自信が持てず、「自己肯定感の低い人間」になってしまった」、親の接し方は難しいものだ。
・『学校から帰ってきて子どもの顔を見ると、なぜか元気がない。親なら誰しも気になるはずです。こんなとき、いったいどんな声がけをすればいいのでしょうか。 「どうしたの?」と聞くのはいいのですが、畳みかけるように「何かあった?」などと問い詰めるのはやめましょう。少しでも何か話をしてくれたら、まずは聞いてみること。たとえ何も話してくれなくても、「それもあり」と受け入れます。 小学校高学年以上になると、まったく返事をしてくれないこともあるでしょうが、そこで「何か言いなさい」などとは決して言わないでください。学校で何かあったのかもしれないし、子どもの心の中で何か思うことがあるのかもしれない。いずれにせよ、外で何か「居心地が悪いこと」があったのです。 そうであるにもかかわらず、家で親に問い詰められたら、その家自体、居心地が悪くなってしまいます。少なくとも、家だけは安心で安全で、子どもにとって「居心地のいい快適な場所」であることがまずは重要なのです。 「家が快適な場所だと、学校に行かなくなったり、引きこもりになったりしませんか?」。親御さんからこんなふうに聞かれることもあります』、「家で親に問い詰められたら、その家自体、居心地が悪くなってしまいます。少なくとも、家だけは安心で安全で、子どもにとって「居心地のいい快適な場所」であることがまずは重要なのです」、私もこんなことは知らずに、「問い詰め」たこともあったが、幸い悪影響は出なかったようだ。
・『“学校はオマケ”と思う親のスタンス  でも、家すら安心な場所でなくなったら、子どもは完全に居場所を失い、それがひいては自殺につながることさえあるのです。もしお子さんから「いじめられた」など何らかの返事が得られた場合も、まずは子どもが“どこにいたいのか”を第一に考えましょう。 私がここでぜひ親御さんにお伝えしたいのは、「学校に行っても行かなくてもいい」というスタンスを親御さん自身がとれるかどうかということ。もっと言えば“学校はオマケ”とすら思えるかどうかです。 これを言うと驚く親御さんも多いのですが、「学校には行かなくてはいけない」では、お子さんも親御さんも追い詰められてしまいます。でも、それとは逆のスタンスで構えていれば、お子さんへの声がけや問いかけがだいぶ変わってくるはずです。 まずは、「外で何かあった」子どもが家にいたければ家にいてもらう。「学校に行きなさい!」と追い立てるスタンスをやめ、「家」を子どもにとって本当の意味での“ホーム”にする。シンプルですが、これが、子どもの元気を取り戻し、彼らのメンタルを守っていくための“最初の一歩”になると私は考えています』、「家すら安心な場所でなくなったら、子どもは完全に居場所を失い、それがひいては自殺につながることさえあるのです」、確かにその通りだろう。しかし、「“学校はオマケ”と思う親のスタンス」は言うは易く、実行するのは難しそうだ。

次に、この続きを、2月28日付け東洋経済オンライン「「普通の家庭の子」の精神が追い詰められるワケ 7年間、うつを経験した医師が語る実際」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/267965
・『最近、小中学生の間で、うつなど「心の不調」が増えているようだ。ネットやSNSの普及による情報化が進んで、対人関係に代表される「大人と同じストレス」に遭遇しやすい世の中になったことに、その一因があるとも考えられている。 この記事では、今の小中学生を取り巻く生活環境をふまえながら、新刊『うつぬけ精神科医が教える 心が折れない子を育てる親の習慣』を著した精神科医・宮島賢也氏に、子どもの心を守るために「親はどう行動すべきなのか」を教えていただく。この宮島医師自身、かつて7年間うつを患っていたという経験を持つ』、「親はどう行動すべきなのか」もずいぶん難しそうだが、どんなことだろう。
・『「ごく普通の家庭」で育っているのに…  「うちは子どもに愛情を注いで育ててきたつもりだ」「自分で言うのもなんだけど、わが家はいい家庭だと思う」。お子さんのことで悩みながらも、このように考える親御さんは少なくありません。 では、虐待があるわけでもない、夫婦ゲンカが絶えないわけでもない、いわゆる「ごく普通の家庭」で愛されて育ったお子さんでも、「心が折れてしまう」ことがあります。いったいなぜでしょうか。 「母原(ぼげん)病」という言葉があります。これは、母親の育児が原因で、子どもの病気や問題を引き起こしてしまうことを言います。もちろん、お母さん方を責めるつもりはありませんが、子どもを愛しているのは事実でも、子どもを「囲ってしまう」ような愛し方に問題があるのです。 これは知り合いから聞いた話ですが、客船に乗っていた際、日本人の親と外国人の親の、子どもへの接し方の違いに驚いたと言います。 日本人の親は、子どもが船上で遊んでいると、危ないところに行かないようつねにそばにいる。一方、外国人の親は、子どもを自由に遊ばせ、本当に危ないときにだけ、さっと駆けつけるのだそうです。 私は、子育てもこれに近いと思っています。本当に危険なときは当然守るべきですが、危ない目や嫌な目に遭わないようにいつも先回りしたり、問題が起きたときに親のほうで解決したりすると、「生きる力が弱い子」にもなりかねません』、「母原病」、「子どもを「囲ってしまう」ような愛し方に問題があるのです」、なるほどありそうな話だ。
・『痛い思いや失敗を経験して、人は「生きる力」を育んでいきます。例えば、公園で子ども同士が遊んでいてケンカをしても、最近はすぐ親が介入してしまいます。 おもちゃを取った取られたという程度のことでも、すぐに親が「謝りなさい」と言ったり、「だめでしょ!」と注意したりする。なかには子どもに代わって謝ってしまう親御さんも。もちろん、事の状況次第で解決策も変わるでしょうが、親の過度な介入は、子どもの「心の成長」の機会を奪うことになります。 では、本当に親御さんの育て方に問題があるのかというと、そうではありません。実は「親御さん自身の育てられ方」に問題の根源があったりするのです。 クリニックで親御さんに話を聞くと、ご自身が「親に愛されていなかった」という方が多いと私は感じています。愛されていなかったといっても、虐待や放任などだけではなく、親に育てられていくなかでそう思い込んでいった、というものです。 例えば「母はいつも兄ばかりかわいがっていた」とか「父はいつも怒ってばかりいた」というようなこともそうでしょう。一言でいうと、親御さん自身も忘れている「過去の記憶」が、自分自身の子育てに影響しているのです。 過去の記憶は、コミュニケーションにおける1つのパターンになっていきます。無意識に自分が親にされていた接し方を繰り返していることもあれば、逆に、親にされたことが嫌だったから、自分は子どもに同じことをしたくないと思っている場合もあります。 でも、どちらのパターンも親御さんが自分の親から影響されていることに変わりはなく、過去の記憶が蓄積した結果です。親を反面教師にしている場合も、親にされたことをひっくり返しているだけ。一見、愛にあふれているような子どもへの接し方も、実は、親御さん自身の「過去の記憶」の影響を受けているのです』、「親の過度な介入は、子どもの「心の成長」の機会を奪うことになります」、確かにその通りだろう。「本当に親御さんの育て方に問題があるのかというと、そうではありません。実は「親御さん自身の育てられ方」に問題の根源があったりするのです」、一世代に亘って影響するというのには本当に驚かされた。
・『子どもを追い詰める「ダブルお母さん」  ところで最近、「2人のお母さん」がいるご家庭が目につくようになりました。これまでは、「教育ママ」という言葉もあるとおり、子どもの塾や受験について調べたり、勉強に干渉したりといった、いわゆる「教育熱心」なのは母親がメインだったと思います。 私自身、母親が教育熱心すぎて、子どもの頃に苦しんだ経験があるのでよくわかるのですが、最近は「教育熱心な父親」も増えてきました。それが「ダブルお母さん」現象です。家の中に口うるさいお母さんが2人いる、そんな状態です。 子どもが家にいるとき、母親だけでなく父親もあれこれ干渉してくるとなると、子どもは家での居場所を失っていきます。) 家に帰りたくないお父さん「フラリーマン」も最近話題になっていますが、フラリーマンは、家に居場所がなくても職場や外に居場所があります。でも、子どもは家にも外にも居場所はなく、心が満たされない状態が続きます。 「ダブルお母さん」がいるご家庭は、両親が子どもによく接している分、周囲からは「いい家庭」に見えることもあります。それどころか、親御さんも「わが家はいい家庭」だと思っている。でも、肝心な「子どもの心」は置き去りです』、「最近は「教育熱心な父親」も増えてきました。それが「ダブルお母さん」現象です。家の中に口うるさいお母さんが2人いる、そんな状態です・・・子どもは家での居場所を失っていきます・・・親御さんも「わが家はいい家庭」だと思っている。でも、肝心な「子どもの心」は置き去りです」、確かに「子ども」にしたら、やり切れない状態だろう。
・『子どもは親の「言葉以外の部分」を察している  「過保護」の親とその娘をユニークに描いた『過保護のカホコ』というテレビドラマがありましたが、親の過保護が「過干渉」までいくと、子どもの決定権はほとんどなくなってしまいます。 親が先回りしてなんでも決めてしまう。あるいは、それしか選択できないような提案をしている場合も。「こうしなさい」とは言わなくても、「こうしたほうがいいよね」「そっちがいいんじゃない?」と提案しているようでいて、結果的には子どもに選択の余地がない状態にさせていることがあるのです。 もちろん、「親の言うことを聞いてよかった」というお子さんもいますが、なかには自分の気持ちを押し殺し、ため込んでしまうお子さんもいます。でも、たまったものは、いつか爆発します。自分自身で爆発する子もいれば、ため込んだまま大人になり、自分自身の子育てのとき、そのお子さんのトラブルとなって爆発する場合もあります。 子どもは言葉以上に、親の言葉以外の部分を感じ取っています。「私はなんでも子どもに決めさせている」と言う親御さんもいますが、「自分で決めていいんだよ」と子どもに言いながら、目つきや雰囲気で「選択肢はこっちしかない状態」にしていることもあるのです。 言葉に出さなくても、子どもは敏感に「こっちを選んでほしいんだろうな」という親の思いを読み取ります。親が想像する以上に、子どもは親の気持ちを察しているのです。 親子の関係は、短く見積もっても10~15年はあります。その間、子どもは親の背中を見て育っていく。ですから、口では言わないことも無意識のうちに感じ取りますし、すべて子どもの「潜在意識」の中に入っていきます。 子どもが何歳であっても、過度な干渉はおすすめしません。小さい頃から干渉しすぎると、一見しつけはうまくいくかもしれませんが、親の顔色をうかがう子どもになってしまいます。どんなに小さな子どもでも、何もわからない人として扱うのではなく、生きる力を持っている1人の人として、自分の人生を自分で決めていくためのサポートをしていくことが大切だと私は思います』、「結果的には子どもに選択の余地がない状態にさせていることがあるのです・・・たまったものは、いつか爆発します。自分自身で爆発する子もいれば、ため込んだまま大人になり、自分自身の子育てのとき、そのお子さんのトラブルとなって爆発する場合もあります」、「小さい頃から干渉しすぎると、一見しつけはうまくいくかもしれませんが、親の顔色をうかがう子どもになってしまいます。どんなに小さな子どもでも、何もわからない人として扱うのではなく、生きる力を持っている1人の人として、自分の人生を自分で決めていくためのサポートをしていくことが大切だと私は思います」、本当に親子関係は難しいものだ。筆者の宮島医師は自らはアドバイス通りに出来ているのだろうか。

第三に、ジャーナリストの岡田幹治氏が10月27日付けダイヤモンド・オンラインに掲載した「日本の子どもは「世界一寝不足」、キレたり暴れたりする原因に?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/218154
・『日本の子どもの睡眠時間は世界一短く、睡眠不足が子どもの発達と成長を妨げ、キレたり暴れたりする一因にもなっている。 社会の夜型化が進み、夫婦の共働きが普通になって、大人の睡眠時間も先進国では最も短い。 そんな事態を改善しようと、「産学連携」による斬新な取り組みをする自治体も出てきた』、確かに深刻な問題だ。
・『中学生で平均睡眠7時間 肥満や精神不安定の一因に  世界17ヵ国・地域で「0~3歳児の総睡眠時間」を調べたデータ(Mindellらの研究論文、2010年発表)によると、日本は11時間37分で最も短く、最長のニュージーランドの13時間19分より1時間42分も短い。 この傾向は子どもが成長しても変わらない。 思春期の若者(中学生)の睡眠時間の国際比較では、日本は平均7時間台で、米国より約30分、欧州諸国より約1時間30分も短い。 睡眠に関する研究や教育で著名なNPO・全米睡眠財団は子どもの睡眠時間について、3~5歳は10~13時間、小学生は9~11時間、中高生は8~10時間を推奨している。 これと比べても日本の子どもの睡眠不足は明らかだ。 睡眠不足が子どもの発達や成長の妨げになることは科学的に明らかになっている。 睡眠が短くなると、夜間の睡眠中に大量に分泌される「メラトニン」「セロトニン」「成長ホルモン」などの分泌が乱れるからだ。 メラトニンは、日々の生活リズムを調節する機能をもつホルモンで、不足すると良質な睡眠がとれなくなり、規則正しい生活リズムができない。このホルモンは抗酸化作用など、身体を守る作用もある。 またセロトニンは、脳の機能を高め、感情をコントロールする神経伝達物質であり、不足すれば、脳の発達の遅れや睡眠障害の原因になる。キレたり暴れたり、うつ状態になったりすることもある。 成長ホルモンは、骨や体をつくり、免疫力を高めて病気になりにくくする。脂肪を分解する作用もあるので、不足すると肥満になりがちだ。 睡眠不足で規則正しい生活リズムが乱れた子どもは、身体と脳の発達が遅れ、精神が不安定になる可能性が大きいのだ』、夜遅くまで勉強して「睡眠不足」になっているとすれば、非効率なことこの上ない。
・『大人の睡眠時間も先進国で一番短い  日本の子どもの睡眠不足はいくつもの事情が重なって起きている。 まず日本社会の夜型化が進み、共働きが普通になって、両親の睡眠時間が短くなったから、その影響を受ける。 経済協力開発機構(OECD)が調べた「15~64歳の睡眠時間」によると、日本は一日平均7時間22分と加盟国で最も短く、加盟国平均の8時間25分より1時間も短かった。 厚生労働省の「国民健康・栄養調査」(2017年)では、20歳以上の平均睡眠時間は6時間未満が約4割もいて、「睡眠で十分な休養がとれていない」と答える人が増え続けている。 子どもの睡眠不足をもたらす第二の事情は、子どもの生活が塾や習い事や部活動などで、幼いころから予定がびっしり詰まっていることだ。 しかも最近は、スマートフォン(スマホ)やSNS(LINE・ツイッター・インスタグラム)、ゲームなど、子どもを夜更かしに誘う要因が増えた。 保護者が睡眠の重要さを知らず、無関心であることも大きい。 子どもたちの現状を心配した文部科学省は2006年度から「早寝早起き朝ごはん運動」を推進している。 子どものすこやかな成長には、適切な運動・調和のとれた食事・十分な休養と睡眠が大切だとの考えのもとに、各地の自治体や学校が啓発活動をしている』、「保護者が睡眠の重要さを知らず、無関心であることも大きい」、もっとマスコミなどでもPRすべきだろう。「文部科学省は2006年度から「早寝早起き朝ごはん運動」を推進している」、いい試みではあるが、効果の報道を殆ど見かけないので、余り効果がなかったのだろう。
・『スマホや夜のコンビニ 利用多いほど睡眠短い  自治体の取り組みで注目されているのが、「子育て世帯が住み続けたいと思う街」をめざしている大阪市淀川区の「子どもの睡眠習慣改善支援事業」だ。 「ヨド川区の子どもは夜ネル、よくネル!」から4文字をとって「ヨドネル」と呼んでいる。 きっかけは、榊正文・前区長が、子どもの生活習慣の乱れと睡眠の関わりを取り上げたテレビ番組を見たことだ。保護者らとの会議で、区内の子どもの睡眠習慣も乱れていることを知り、「不規則な生活の改善が、学力アップにもつながっていくのではないかと考えた」 取り組みの特徴は、科学的根拠を明らかにしてまず保護者の意識を変えようとした点にある。 具体的には大阪市立大学と連携し、水野敬・同大学大学院医学研究科特任准教授の指導を受けた。 水野特任准教授は抗疲労研究が専門の脳研究者で、同大学健康科学イノベーションセンター副所長を務めている。 まず実施したのは、区内の小学4年~中学2年生の合計約5300人を対象にした詳細なアンケートだ。2016年と17年の各6~7月の2回行われた。 その結果、次のようなことが明らかになった。 回答した児童生徒の約4割が「疲れている」「とても疲れている」と回答し、約1割は疲れが3ヵ月以上続く「慢性疲労」だった。 疲れを感じている子どもほど睡眠時間が短いことも分かった。 「とても疲れている」と答えた子どもは「全く疲れていない」子どもに比べ、平日の平均睡眠時間が1時間も短かった。 疲れが強いほど、「注意制御力」が低く、注意制御力が高いほど授業の理解度が高いことも分かった。 注意制御力とは、2つ以上のことに同時に注意を向けたり、多くのものから1つの目的物をすばやく見つけたりする力のことで、大人になって最も大切な能力だ。 就寝時刻を遅くする要因として、スマホ、テレビや動画、SNS、夜のコンビニの4つを選んで調べたところ、これらの利用時間が長く、利用頻度が多いほど、睡眠時間が短いことも分かった。 たとえばスマホを「5時間以上」利用する子どもは、「全く使わない」子どもより睡眠時間が1時間半も短かった。 また、家族と一緒に夕食を食べたり、よくほめられたりする子どもほど、睡眠時間が長かった』、「平均睡眠時間」が短くなると、疲れやすくなり、大人になって最も大切な能力である「注意制御力」が低くなるというのは、初めて知った。「睡眠」が如何に重要なものかを再認識させられた。「大阪市淀川区の「子どもの睡眠習慣改善支援事業」」はなかなかいい取り組みのようだ。
・『「夜9時以降は“既読スルー”」「すいみんのオキテ」作り  区はこうした結果を分かりやすく解説した「淀川すいみん白書」を発行・配布するとともに、動画「すいみんドクターKのすいみん講座」をつくってYouTubeで公開した。保護者らを対象にした結果報告会も開いた。 同時に、睡眠習慣を改めるのに役立つ「小道具」をいくつも作成した。 たとえばこうだ。 年代別の「すいみんのオキテ」を記したちらし。「オキテ」には、「小学2年生は夜9時までに寝る」「中学1・2年生はゲーム機・携帯電話・スマホに夜10時以降はさわらない」といったものがある。 ▽家庭や学校で「すいみんルール」を定める際のひな型。 たとえば小学生は「夜9時以降は保護者がスマホを預かる」というルールを家庭でつくる。 中学生なら「夜9以降はLINEも既読スルーで(返信しない)」と生徒会で決めるといった例を挙げている。 市内の小中学校はこれらを使って睡眠習慣づくりを進めるわけだ。 このほかにも、生活のリズムが乱れがちな夏休みなどの長期休暇中、毎晩9時に区の公式アカウントLINE@から約5000の登録アカウントに向け、オリジナルキャラクターの「がんこおやじ夢さん」が「はよ寝んかい」と呼びかける取り組みをしていたこともある。 効果は短期間では現れない。16年と17年の調査結果を比べると、小学4~6年生の平日の睡眠時間は4分延びたが、中学1~2年生は逆に3分短くなった。 疲れも小学生は軽減されたが、中学生は増加した。 ただ、「勉強をがんばったとき、家の人はほめてくれるか」という問いに「いつも」「だいたい」と答えた子どもの割合は、小中学生とも増加した。 家族にほめられる子どもほど睡眠時間が長いことを知った保護者が、積極的にほめるようになった結果と考えられる。 淀川区の担当者は、「息長く続けたい」としており、今年3月には区と大阪市立大学に老舗寝具メーカー・西川株式会社を加えた3者の連携協定を結んだ。 良質の睡眠をとるための環境(温度・湿度・香り・寝具など)や子どもたちの行動(1日の過ごし方)について、「望ましいあり方」を例示したいという。そうした面での研究実績がある西川の協力を得たいとしている』、「小学4~6年生の平日の睡眠時間は4分延びたが、中学1~2年生は逆に3分短くなった。 疲れも小学生は軽減されたが、中学生は増加した」、やはり効果が表れるには時間もかかるようだ。 「保護者が、積極的にほめるようになった」のは好ましい結果だろう。こうした動きがもっと広がってほしいものだ。なお、「すいみんドクターKのすいみん講座」は、下記URL
https://www.city.osaka.lg.jp/yodogawa/page/0000394929.html
タグ:子育て 「母原(ぼげん)病」 ダイヤモンド・オンライン 「日本の子どもは「世界一寝不足」、キレたり暴れたりする原因に?」 岡田幹治 中学生で平均睡眠7時間 肥満や精神不安定の一因に 睡眠が短くなると、夜間の睡眠中に大量に分泌される「メラトニン」「セロトニン」「成長ホルモン」などの分泌が乱れる 睡眠不足で規則正しい生活リズムが乱れた子どもは、身体と脳の発達が遅れ、精神が不安定になる可能性が大きい 母親の育児が原因で、子どもの病気や問題を引き起こしてしまう 親の過度な介入は、子どもの「心の成長」の機会を奪うことになります 子どもを「囲ってしまう」ような愛し方に問題がある 「ごく普通の家庭」で育っているのに… 東洋経済オンライン (その2)(うつぬけ精神科医が見た「子どもの不調」の背景 「家」を子どもの"ホーム"にする大切な考え方、「普通の家庭の子」の精神が追い詰められるワケ 7年間 うつを経験した医師が語る実際、日本の子どもは「世界一寝不足」 キレたり暴れたりする原因に?) 宮島 賢也 「うつぬけ精神科医が見た「子どもの不調」の背景 「家」を子どもの"ホーム"にする大切な考え方」 『うつぬけ精神科医が教える 心が折れない子を育てる親の習慣』 “学校はオマケ”と思う親のスタンス 医者になってからも自分に自信が持てず、「自己肯定感の低い人間」になってしまった 日本は11時間37分で最も短く、最長のニュージーランドの13時間19分より1時間42分も短い 、家で親に問い詰められたら、その家自体、居心地が悪くなってしまいます。少なくとも、家だけは安心で安全で、子どもにとって「居心地のいい快適な場所」であることがまずは重要なのです 思春期の若者(中学生)の睡眠時間の国際比較では、日本は平均7時間台で、米国より約30分、欧州諸国より約1時間30分も短い 家すら安心な場所でなくなったら、子どもは完全に居場所を失い、それがひいては自殺につながることさえあるのです 「「普通の家庭の子」の精神が追い詰められるワケ 7年間、うつを経験した医師が語る実際」 子どもを追い詰める「ダブルお母さん」 実は「親御さん自身の育てられ方」に問題の根源があったりするのです 親御さん自身も忘れている「過去の記憶」が、自分自身の子育てに影響 親御さんに話を聞くと、ご自身が「親に愛されていなかった」という方が多いと私は感じています 小さい頃から干渉しすぎると、一見しつけはうまくいくかもしれませんが、親の顔色をうかがう子どもになってしまいます。どんなに小さな子どもでも、何もわからない人として扱うのではなく、生きる力を持っている1人の人として、自分の人生を自分で決めていくためのサポートをしていくことが大切だと私は思います なかには自分の気持ちを押し殺し、ため込んでしまうお子さんもいます。でも、たまったものは、いつか爆発します。自分自身で爆発する子もいれば、ため込んだまま大人になり、自分自身の子育てのとき、そのお子さんのトラブルとなって爆発する場合もあります 子どもは親の「言葉以外の部分」を察している 「教育熱心な父親」 子どもは家にも外にも居場所はなく、心が満たされない状態が続きます スマホや夜のコンビニ 利用多いほど睡眠短い 大人の睡眠時間も先進国で一番短い 文部科学省は2006年度から「早寝早起き朝ごはん運動」を推進 保護者が睡眠の重要さを知らず、無関心であることも大きい 子どもの生活が塾や習い事や部活動などで、幼いころから予定がびっしり詰まっていることだ 疲れが強いほど、「注意制御力」が低く、注意制御力が高いほど授業の理解度が高いことも分かった 大阪市淀川区の「子どもの睡眠習慣改善支援事業」 「とても疲れている」と答えた子どもは「全く疲れていない」子どもに比べ、平日の平均睡眠時間が1時間も短かった 大阪市立大学と連携 注意制御力とは、2つ以上のことに同時に注意を向けたり、多くのものから1つの目的物をすばやく見つけたりする力のことで、大人になって最も大切な能力だ 「すいみんのオキテ」 「夜9時以降は“既読スルー”」「すいみんのオキテ」作り 「小学2年生は夜9時までに寝る」 中学1・2年生はゲーム機・携帯電話・スマホに夜10時以降はさわらない」 家族にほめられる子どもほど睡眠時間が長いことを知った保護者が、積極的にほめるようになった結果 「すいみんドクターKのすいみん講座」 開成中学に合格 今、元気のない子どもが増えている現実 小中学生の世代に精神疾患がある事実はあまり知られていないかもしれませんが、うつ病や不安障害などは小学生から見られ、10代後半になるとさらに増加 その“根本”は少年期にありました 私自身、かつて7年間もうつを患った 母に「勉強しなさい!」と包丁を持って追いかけられたことも 高校になると実力テストではガクンと成績が下がります。そうなると学校もつまらなくなり、家でも落ちつかない毎日。家にいたくなくてバイトをしたり、髪を伸ばしたり、ピアスの穴を開けたりもしました ある女医さんに憧れたことをきっかけに、「医者なら価値のない自分でも人の役に立てるかも」と思い立ち、運よく1浪後に防衛医大に受かりました 子どものメンタルを守る「親の考え方」
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アベノミクス(その32)(日本人の給料がほとんど上がらない5つの要因 90年代以降の平均上昇額はわずか7万円程度、アベノミクスと原子力政策における「失敗の本質」、「失われた10年」を「30年」に拡大させた戦後の無責任体制、ついに景気悪化を認めた内閣府 消費増税後に「春から不況だった」と示唆するズルさ=斎藤満) [経済政策]

アベノミクスについては、2月16日に取上げた。今日は、(その32)(日本人の給料がほとんど上がらない5つの要因 90年代以降の平均上昇額はわずか7万円程度、アベノミクスと原子力政策における「失敗の本質」、「失われた10年」を「30年」に拡大させた戦後の無責任体制、ついに景気悪化を認めた内閣府 消費増税後に「春から不況だった」と示唆するズルさ=斎藤満)である。

先ずは、経済ジャーナリストの岩崎 博充氏が3月2日付け東洋経済オンラインに掲載した「日本人の給料がほとんど上がらない5つの要因 90年代以降の平均上昇額はわずか7万円程度」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/267883
・『厚生労働省の「毎月勤労統計調査」に対する不正調査の問題が、相変わらず国会で審議されている。問題の本質は、官僚が統計を操作してでも「賃金上昇」を演出しなければならなかったことだ。 なぜ、日本の賃金は上昇しないのか。周知のように、1990年代以降の日本の賃金はほとんど上昇してこなかった。バブル崩壊による景気後退の影響があったとはいえ、欧米の先進国と比較して日本の賃金が低迷を続けていることは明らかだ。その原因はどこにあるのか』、興味深そうだ。
・『27年間で上昇した年収はわずか7万円?  実際に、日本の賃金上昇の推移を見てみると、平成の30年間で上昇した賃金はわずかしかない。国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、1990年の平均給与は425万2000円(1年勤続者、以下同)。1990年以降、平均給与はしばらく上昇するのだが、1997年の467万3000円をピークに下がり始める。 その後、ずるずると下がり続けて、2017年は432万2000円となる。1990年からの27年間で、上昇した平均給与はわずか7万円ということになる。 実際に、日本の実質賃金の下げは国際比較をしてみるとよくわかる。1997年=100とした場合の「実質賃金指数」で見た場合、次のようなデータになる(2016年現在、OECDのデータを基に全労連作成)。 ・スウェーデン……138.4 ・オーストラリア…… 131.8 ・フランス……126.4 ・イギリス(製造業)……125.3 ・デンマーク……123.4 ・ドイツ……116.3 ・アメリカ……115.3 ・日本……89.7 1997年から2016年までの19年間で、先進7カ国のアメリカやドイツでも1割以上上昇しているにもかかわらず、日本は1割以上も下落している。 安倍政権は、史上最長の好景気によって有効求人倍率を大幅にアップさせ、新規雇用者数も増加させたと胸をはるが、それが本当であれば、実質賃金の下落は説明できない』、日本だけ「実質賃金」がこれほどまでに下落しているとは、アベノミクスの不都合な真実だ。
・『「労働組合」の弱体化と「非正規雇用」の増加?  日本の賃金が上昇しない原因については、さまざまなシンクタンクやエコノミストが分析しているが、大きく分けて5つの段階に分けて考えればわかりやすいかもしれない。次の通りだ。 ①労働組合の弱体化 ②非正規雇用者の増加 ③少子高齢化の影響 ④内部留保を貯め込んで賃金を上げない経営者 ⑤規制緩和の遅れがもたらした賃金低迷 順に見ていこう。 <①労働組合の弱体化>  日本はバブル崩壊によって1990年代以降、景気後退を余儀なくされた。欧米のように、景気低迷に対しては人員カットで対応するのではなく、雇用を維持しながらも賃金で調整する、という方法がとられた。 労働組合も、クビにされるよりも給料を下げることに同意し、ここで日本特有の労使関係ができあがったといっていい。 周知のように、アメリカでは景気が悪くなれば20年勤続の従業員であろうと、即座に人員をカットする。欧州もアメリカほどではないが、必要とあれば労働組合も整理解雇を認めるというスタンスだ。日産自動車を救ったカルロス・ゴーン元会長が、コストカッターとして数多くの従業員のクビを切ったように、日本とは違って欧米諸国は「問題を先送りにしない」という姿勢を持っている。 要するに、日本の労働組合は自分たちの組合員を守るために、戦う牙をなくし、会社側=経営陣に忖度し、会社側の要望を聞き入れる体質になってしまった側面が否定できない。 こうした背景には、労働組合の構造的な問題があるといわれている。日本の労働組合は、企業ごとに組合が設立されている合「企業内組」が一般的であり、欧州などの「産業別労働組合」とは異なる。企業内組合の場合、どうしても経営陣との交渉の中できちんとした行動を起こせないという構造的な弱点がある。業績が悪化すれば、素直にベースアップの減額にも応じてしまうのだ』、「企業内組合」のマイナス面が如実に表れたようだ。
・『<②非正規雇用者の増加>  小泉政権時代に行われた「労働者派遣法の改正」によって、日本の雇用形態は大きな変革を迫られた。企業は賃金の低い非正規雇用者を雇いやすくなった。実質賃金低迷の原因の1つとして、見逃すことはできない。 これには人件費を削減して、業績悪化から企業を守った面はある。しかし、今となっては日本企業があの時期にもっと海外にきちんと進出していれば、日本企業はもっと成長できた可能性はあるし、グローバルな企業に成長していたかもしれない。 携帯電話などの製造拠点は部品のみになり、日本の製造業のシンボル的な存在だった家電業界も、東芝やシャープは海外企業に買収され、シェアは海外企業に奪われてしまった』、「非正規雇用者の増加」が「実質賃金低迷の原因の1つ」、というのはその通りだが、「家電業界も、東芝やシャープは海外企業に買収され、シェアは海外企業に奪われてしまった」、にまで結びつけるのは無理がある。
・『少子高齢化、低賃金で放置されたパートタイマー  <③少子高齢化の影響>  日本の少子高齢化の影響は、重大であり、未来に大きな後悔を残すかもしれない。 内閣府がまとめた「データで見るアベノミクス」(平成31年1月25日)は、成果を大きくアピールしている。例えば、雇用環境の成果として次のような項目が列記されている。 ●完全失業率……4.3%(2012年12月)→2.5%(2018年11月)、25年ぶりの低い水準 ●有効求人倍率……0.83倍(同)→1.63倍(同)、1974年1月ぶりの高水準 ●正社員の有効求人倍率……0.50倍(同)→1.13倍(同)、データ収集以来初の1倍 ●就業者数……6271万人(2012年)→6522万人(2017年)251万人増、5年連続で増加 さらに、「所得環境」も大きく改善されたとしている。 ●名目雇用者報酬……252.7兆円(2012年10-12月期)→282.7兆円(2018年7-9月期)30兆円増 ●賃金改定でベースアップを行った企業の割合(一般職)……12.1%(2012年)→29.8%(2018年)。2.5倍、春闘の賃上げ率は5年連続で今世紀に入って最高水準 ●最低賃金(加重平均額)……749円(2012年度)→874円(2018年度)125円増 ●パート時給(前年比)……0.6%(2012年)→2.4%(2017年)1.8%上昇、9年ぶりの高い伸び 安倍首相と菅官房長官の力が最も強い内閣府がまとめたものだが、マイナス材料はほぼひとつもない「アベノミクス礼賛」のレポートだ。実際に、プラスにならない実質賃金や目標に達していない消費者物価指数はスルーしている。 新規雇用者数の伸びは、人口減少に対応するために非正規雇用や女性のパートタイマー従業員を増やした結果であり、完全失業率の低下や有効求人倍率の上昇は人手不足の表れといっていい。 外国人労働者を受け入れる枠を拡大したことで、政府もすでに人手不足が深刻であることは認めている。さらに、近年の特徴として挙げられるのが、かつては60歳もしくは65歳でリタイアしていた高齢者が、ここにきて60歳で低賃金の雇用者に格下げされ、本来なら65歳で完全リタイアだった高齢者が、格安の賃金でいまだに働き続けている、という現実がある。 とりわけ、自営業や中小企業の従業員だった人は、低賃金のまま働き続けることを余儀なくされている。ここでもまた実質賃金の伸びは抑えられてしまう』、「データで見るアベノミクス」は安倍政権に都合がいい部分だけをつまみ食いしたもので、作成した「内閣府」には良心のかけらもないようだ。
・『経営者や行政の怠慢が招く賃金低下?  <④内部留保を貯め込んで賃金を上げない経営者>  人手不足といわれる業界は、サービス業など生産性が低迷している業界に多い。例えば、コンビニ業界で24時間営業の見直しが進められているが、粗利益の6割も取るような高いロイヤルティーは、従業員の低賃金や人手不足問題の要因であろう。 競争が激化しているコンビニ業界にとって、ロイヤルティーの引き下げは難しい課題だが、日本の少子高齢化の流れから見て、いずれは人手不足で改革を迫られる可能性はある。 バブル崩壊以前は、社員こそ最大の資源、という具合に会社も賃上げに積極的だった。優秀な人間は、一生をかけてでも育て上げていく、というのが日本企業の大きな特徴だった。それが、バブル崩壊以後は雇用さえ確保しておけば、賃上げなんていう贅沢は言わせない、という雰囲気に変わってきた。 そうして労働組合が弱体化したのをいいことに、企業は内部留保を貯め込んだ。貯めた内部留保で、人口減が予想される日本を飛び出して、新たなビジネスを求めて海外に進出すればよかったが、そうしなかった企業も多い。 いまや日本の内部留保は2017年度の法人企業統計によると、企業が持つ利益剰余金は446兆4844億円(金融業、保険業を除く)に達しており、金融、保険業を含めれば507兆4454億円となり、初めて500兆円の大台を超えている。1年分のGDPに匹敵する余剰金だ』、安倍政権の法人税引下げは、設備投資に向かうよりも利益剰余金積み増しに流れたようだ。
・『<⑤規制緩和の遅れがもたらした賃金低迷>  通信や交通エネルギーなどの公共料金分野は、規制緩和の遅れで現在も新規参入を阻害し価格の抑制や引き下げが遅れてしまった。価格が上がらなかったことで顧客満足度が増し、製品やサービスの価格が低く抑えられたまま日本経済は推移している。 そのツケが、従業員の賃金の上昇を抑えてきたといっていい。スーパーやコンビニ、スマホ(通信)、宅配便、外食産業といった業種では、価格が低く抑えられてきたために、賃金がいつまでたっても上昇しない。 企業経営者や行政の怠慢によって、適正な価格競争が起こらなかった結果といえる。 私たちの生活に根付いているスーパーやコンビニ、スマホ、宅配便、外食産業といったサービスは、極めて便利で安価なサービスなのだが、その背景にあるのが低賃金で働く従業員でありパートタイマーというわけだ。 以上、ざっと日本の賃金が上昇しない原因を考えてきたが、日本国民は極めて素直で、従順な民族だから、政府が一定の方向性を示すと素直に従う習慣がある。キャッシュレスもここにきて一気に拡大することでもわかる。 実質賃金が上昇しない背景には、過去の雇用政策や法改正が大きな影響を与えている。賃金より雇用という大きな流れの中で、我慢し続けている国民がいるわけだ。日本の景気回復は、まだまだ道半ばといえる』、確かに日本国民の「我慢」強さは美徳ではあるが、マクロ的には日本経済の低迷をもたらしているようだ。

次に、ジャーナリストの高野孟氏が4月18日付け日刊ゲンダイに掲載した「アベノミクスと原子力政策における「失敗の本質」」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/252083
・『アベノミクスがなぜ失敗に終わったのかを考える上で、原真人の近著「日本銀行『失敗の本質』」(小学館新書)は示唆に富んでいる。書名から分かるとおり、太平洋戦争における軍部の失敗とアベノミクスにおける黒田日銀の失敗とを並べて、奇襲・転機・強行・誤算・泥沼・終局という迷走の揚げ句に破滅に転がり込んでいく軌跡がピッタリと重なり合っていることを指摘していて、納得させられる。 原に言わせれば、「短期決戦」は力のない者が強力な相手に挑む時に取る戦術で、だから緒戦のワンチャンスに賭け、イチかバチかの真珠湾奇襲攻撃に出た。しかし、それで戦争の帰趨を決められず、長期戦となって次第に形勢を悪化させ敗戦に至った。日銀も「2年で物価上昇2%達成」という期間限定の奇襲作戦に打って出たが、賭けに失敗し、ズルズルと6回も期限を延期してなお目標を達成できず、ついに6年目に至って目標を立てるのをやめて「長期戦化」を宣言した。目標設定そのものが間違っていたとは死んでも言いたくないので、無期延期するしかないわけだが、これでは破綻した時の国民生活へのダメージは余計に酷いことになるに決まっている』、「太平洋戦争における軍部の失敗とアベノミクスにおける黒田日銀の失敗とを並べて、奇襲・転機・強行・誤算・泥沼・終局という迷走の揚げ句に破滅に転がり込んでいく軌跡がピッタリと重なり合っていることを指摘」、まさにピッタリだ。
・『同じことを「持たざる国の精神主義」という言い方で論じているのは、片山杜秀著「平成精神史」(幻冬舎新書)である。領土・資源・人口・工業力・科学力などトータルな国力で見劣りする日本は、日露戦争までは「やる気」に頼って何とか勝ったが、第1次大戦以降、物量の多寡で勝敗が決するようになるともうダメで、「なるべく速戦即決で全面長期戦争にならないように、奇襲による短期決戦を考え」たがる。ところがそれも行き詰まると、精神力信仰が合理的判断を狂わせ、体当たり攻撃で長期戦にも勝てるという壮絶な思想にのめり込んでいく。片山はこれをアベノミクスではなく、原子力政策とその福島原発事故による破局と重ね合わせ、「日本は背伸びをして世界に冠たる国となり、無理して転んだときの怪我の度合いも世界に冠たるものだということの証明」と断じている。 戦略不在ゆえにその場限りの奇襲や短期決戦に頼り、それで失敗しても絶対に非を認めないで何とか言い抜けてごまかし続けるという刹那主義。その史上最悪の見本が安倍政治である』、「戦略不在ゆえにその場限りの奇襲や短期決戦に頼り、それで失敗しても絶対に非を認めないで何とか言い抜けてごまかし続けるという刹那主義。その史上最悪の見本が安倍政治である」、その通りだが、それを許している野党やマスコミの姿勢にも問題がありそうだ。

第三に、慶応義塾大学経済学部教授の金子勝氏が4月24日付け日刊ゲンダイに掲載した「「失われた10年」を「30年」に拡大させた戦後の無責任体制」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/252507
・『自民党の萩生田光一幹事長代行が先週、6月の日銀短観次第で10月の消費増税を先送りし、「信を問う」解散・総選挙を示唆した。2016年の伊勢志摩サミットで、安倍首相は「世界経済はリーマン・ショック前に似ている」と発言し、国際的な批判を浴びながら2度目の増税延期を決めた。萩生田発言の通りになれば、6月短観の発表は参院選直前で、アベノミクスの失敗批判をかわせるタイミングだ。どこか、「狼がきた」と始終嘘をつき、最後は狼に食べられてしまうイソップ物語に似ている。いま必要なのはアベノミクスの失敗を認めることだ。 先週上梓した拙著「平成経済 衰退の本質」(岩波新書)でこの間の経済衰退の本質について分析したが、アベノミクスは「失われた30年」をもたらした失敗経済政策の集大成にすぎない。 衰退の原因に戦後の無責任体制があるのは明らかだ。90年代のバブル崩壊後、経営責任を曖昧にして抜本的な不良債権処理を怠った。財政拡大と金融緩和でごまかし続け、97年の金融危機に帰結した。その後も財政赤字は拡大する一方だが、GDPは横ばい。平均所得や家計消費は低下し、非正規雇用が急増。生産年齢人口(15~64歳)も97年をピークに減少に転じた。原発事故でも同じ無責任が繰り返された。結局、日本は「失われた30年」になった』、「アベノミクスは「失われた30年」をもたらした失敗経済政策の集大成にすぎない。 衰退の原因に戦後の無責任体制があるのは明らかだ」、その通りなのだろう。
・『実際、スパコン、半導体、液晶、エネルギー、バイオ医薬品、太陽光発電、リチウムイオン電池……と、日本の産業衰退がひどくなっている。世界的な技術革新や産業の大転換期に、財政・金融政策でごまかすだけで、日本を「ゆでガエル」にしてしまったからだ。この根本的な間違いを正さない限り、消費増税を先送りしても財政赤字を拡大させるだけで、経済衰退は止まらない。 自民党は戦争責任を免罪してくれた米国に頼れば何とかなるという思考停止に陥っている。その無責任体質は、不良債権問題でも原発事故でも責任を棚上げし、産業構造の転換を進めず、先端産業での置いてけぼりを招いた。だが、緩やかに滅んでいけるほど、世の中はのどかではない。やがて大きな痛みとショックに見舞われるのは必定だ。いち早い政策転換が必要である』、「大きな痛みとショック」、としては、円の暴落、国債利回りの急騰、財政破綻、或は、既に発生している銀行の利ザヤ縮小による経営悪化、などだろう。なかでも、恐ろしいのは、国民が政治家よりはるかに信任を寄せている日銀が信任を失うことだ。最悪の場合、預金凍結などの強硬手段が登場する可能性もある。当面、量的緩和は「出口」に向かうどころか、欧米中央銀行の金融緩和を受けて、さらなる緩和の強化に向かおうとしている。もう正常化に向かう「出口」は、到達不可能なところへ行ってしまったようだ。

第四に、元東海東京証券チーフエコノミストを経て独立した斎藤満氏が10月10日付けMONEY VOICEに掲載した「ついに景気悪化を認めた内閣府、消費増税後に「春から不況だった」と示唆するズルさ=斎藤満」を紹介しよう。
https://www.mag2.com/p/money/786870
・『内閣府は7日、8月の景気動向指数の結果を公表。基調判断は再び「悪化」となり、すでに景気後退に陥っている可能性を示唆しました。その中での消費増税です。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)※本記事は有料メルマガ『マンさんの経済あらかると』2019年10月9日の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ』、景気の基調判断をどう見ているのだろう。
・『「緩やかな回復」はどこへ行った?増税前から景気は後退局面へ… ○景気動向指数はまた“悪化”  内閣府は7日午後、8月の「景気動向指数」の結果を公表しました。 これによると、景気「先行CI」(2015年平均=100)は91.7と、前月から2ポイント低下、3か月移動平均は14か月連続、7か月移動平均は15か月連続の低下となりました。 そして景気判断の基準となる「一致CI」は99.3で、前月から0.4ポイント低下、3か月移動平均は3か月連続、7か月移動平均は10か月連続の低下となりました。 この結果、景気動向指数が示す基調判断は再び「悪化」となり、景気はここまでにすでに「後退」に陥っている可能性を示唆しました。 この指標、春先に一旦「悪化」となったのですが、その後、生産の一時的な反発もあって「下げ止まり」となっていました。しかし、指標が改定され、いま見直すと、一致CIは「下げ止まり」の条件を満たしておらず、「悪化」が続いていたことが分かりました。 これは日本の景気がこの春までにすでに「景気後退」に入っていた可能性を示し、それが今なお続いていることになります。 政府は景気動向指数の落ち込み幅が小さいとして、景気後退ではないと言いたいようです。 しかし、景気先行指数は2017年11月の102.9から足元の91.7に11.2ポイント低下し、一致CIも2017年12月の105.3から今年8月の99.3まで6ポイント低下しています。 前回の景気後退となった2012年3月から2012年11月の間では、一致CIは97.1から91.2に5.9ポイントの低下となっていました。 現在の一致CIの低下幅はこれを上回ります。前回が民主党政権だったから「景気後退」と認定し、現在は自公の安倍政権だから「後退」ではない、というのであれば、あまりに恣意的すぎます。 景気悪化の主役は輸出の不振で、これが生産や投資の一部に波及していますが、その中でGDP(国内総生産)の半分以上を占める個人消費にも負担となる消費税の引き上げを強行しました。 景気認識とともに、消費税の影響についても政府の認識に甘さが伺えます』、「指標が改定され、いま見直すと、一致CIは「下げ止まり」の条件を満たしておらず、「悪化」が続いていたことが分かりました」、経済指標は後日、改定され、全く別の姿になってしまうことがあるので、厄介だ。「前回が民主党政権だったから「景気後退」と認定し、現在は自公の安倍政権だから「後退」ではない、というのであれば、あまりに恣意的すぎます」、客観的であるべき景気判断までが、「忖度」で歪められるのは問題だ。
・『○消費増税、最後に駆け込み  西村経済再生大臣は8日、「一部の家電で9月に駆け込みが見られたものの、全体でみると前回に比べると駆け込みは大きくない。消費税引き上げ後の食料品、日用品の売り上げは1−6日の間で前年比1.1%減で、前回引き上げ時の19%減に比べて影響が小さい」と述べました。 しかし、駆け込みは当初少なかったとしても、消費税引き上げ間際、特に9月最後の週末には結構、家族総出の買い出しも見られました。 大手百貨店の売り上げは9月に宝飾品や高額品を中心に2桁の増加となったと言い、スーパーでも最後の週末にはビールなどの酒類やトイレット・ペーパーなど、カートいっぱいに詰め込んで買う姿が見られました。 家電などは買い替えサイクルの影響もありますが、需要・購買力の面から駆け込みができなかった面があります。 そもそも食料品については軽減税率が適用されたので、この面では駆け込みも反落もありません。半面、日用品についてはできる範囲で最後に駆け込んだと見られます。 所得と置き場所の制約のなかで、できる範囲の「抵抗」は見せたようです』、「消費増税」の駆け込みが実際にどの程度あったのか、今後発表される指標を見るのが楽しみだ。
・『○ポイント還元に混乱  政府が消費税対策として胸を張るポイント還元については、随所で混乱が見られます。 そもそも、街を歩いても「5%ポイント還元」の赤いポスターを張ってあるお店があまりありません。 なんでも、全国200万の中小店舗のうち、ポイント還元を実施している店は50万店にすぎず、今申請中のお店を入れても80万店にすぎないと言います。 その中で、赤いポスターを張ってあるスーパーで買い物をしてみたのですが、キャッシュレスの支払い手段はクレジット・カードだけで、スマホ決済もパスモなども使えません。 そのクレジットも、VISAやマスターが使えず、間もなくJCBが使えるようになるといっていましたが、ほとんどの人が現金決済をしていました。唯一使えると言われたクレジット・カードで支払いましたが、明細にはどこにも5%のポイントの表示がありません。カスタマーサービスの人に聞いてみても、初めての試みで、どのように還元されるのかわからないと困惑気味でした。 カードの請求書が来た時によく見てみないと、本当に還元されるのかわかりません』、ポイント還元政策は、本当に複雑なので、実際の効果のほどがどうだったのか、今後、検証してほしいものだ。
・『○値引きと便乗値上げ  イートインと持ち帰りで税率を区別したり、同じ店の中に複数の税率の商品があってレジが対応できない店もあります。 中には手書きのレシートを用意して却って手間暇がかかるケースや、複数税率に対応できないとして、8%一本にして実質値下げで店が負担するケースも少なくありません。NHKの受信料も消費税は8%のままで、実質2%の値下げとなります。 その反面、消費税率の引き上げに伴う「便乗値上げ」も見られます。 ある公営図書館に併設されるレストランでは、先月まで税込み750円だったランチが800円になり、680円のメニューが720円に上がりました。他のメニューも同様に値上がりしていますが、どう見ても消費税の引き上げ分2%を大幅に超えた値上げです。 10月になってさすがに客足は鈍っています』、これも「検証」が必要だろう。
・『○最悪の環境で消費増税  今回の消費税引き上げ、実施のタイミングもやり方も多くの問題を露呈しています。 政府は「緩やかな景気回復」といっても、内閣府の景気動向指数が今年の春以降、「景気後退」の可能性を警告する中で決断し、実行してしまいました。 タイミングとしては最悪の時期で、輸出の弱さに個人消費まで落ち込めば、「緩やかな回復」は通用しなくなります。 しかも、消費税の影響を緩和したいとは言え、複雑にしてしまったため、企業のコスト負担を高め、それでも対応が間に合わなくて混乱するケースが見られます。 さらに消費者の間にもキャッシュレス決済に抵抗のない人・手段を持つ人と、セキュリティの不安からスマホ決済に躊躇して現金払いで高くつく人、家も車も買う予定がなく「減税」と無縁な人など、負担の度合いは人さまざまで、不公平感も伴います。 目立った事前の「駆け込み」的な消費の盛り上がりは見られなくても、精一杯駆け込んだ可能性も否定できません。 その場合、10月以降の消費が低迷し、景気の悪化が進む可能性がありますが、その時に、政府は何と抗弁し、どんな手を打つのでしょうか。 また一部の「お友達」への利益誘導型景気対策を打つのでしょうか・・・』、やはり「駆け込み」の反動減は出てこざるを得ず、「景気の悪化が進む」だろう。政府は財政支出拡大を図ろうとするだろうが、景気が本格的に落ち込む時には、焼け石に水だろう。
タグ:東洋経済オンライン ②非正規雇用者の増加 MONEY VOICE 世界的な技術革新や産業の大転換期に、財政・金融政策でごまかすだけで、日本を「ゆでガエル」にしてしまったからだ 内閣府がまとめた「データで見るアベノミクス」 ①労働組合の弱体化 実際、スパコン、半導体、液晶、エネルギー、バイオ医薬品、太陽光発電、リチウムイオン電池……と、日本の産業衰退がひどくなっている 衰退の原因に戦後の無責任体制があるのは明らかだ 実質賃金低迷の原因の1つ 景気動向指数はまた“悪化” ④内部留保を貯め込んで賃金を上げない経営者 「労働組合」の弱体化と「非正規雇用」の増加? 経営者や行政の怠慢が招く賃金低下? 「日本人の給料がほとんど上がらない5つの要因 90年代以降の平均上昇額はわずか7万円程度」 日本の実質賃金 1990年からの27年間で、上昇した平均給与はわずか7万円 民間給与実態統計調査」 斎藤満 ③少子高齢化の影響 金子勝 「緩やかな回復」はどこへ行った?増税前から景気は後退局面へ 高野孟 最悪の環境で消費増税 太平洋戦争における軍部の失敗とアベノミクスにおける黒田日銀の失敗とを並べて、奇襲・転機・強行・誤算・泥沼・終局という迷走の揚げ句に破滅に転がり込んでいく軌跡がピッタリと重なり合っていることを指摘 1997年から2016年までの19年間で、先進7カ国のアメリカやドイツでも1割以上上昇しているにもかかわらず、日本は1割以上も下落 値引きと便乗値上げ アベノミクスは「失われた30年」をもたらした失敗経済政策の集大成にすぎない 「企業内組」 ⑤規制緩和の遅れがもたらした賃金低迷 戦略不在ゆえにその場限りの奇襲や短期決戦に頼り、それで失敗しても絶対に非を認めないで何とか言い抜けてごまかし続けるという刹那主義。その史上最悪の見本が安倍政治である ポイント還元に混乱 新規雇用者数の伸びは、人口減少に対応するために非正規雇用や女性のパートタイマー従業員を増やした結果であり、完全失業率の低下や有効求人倍率の上昇は人手不足の表れ 27年間で上昇した年収はわずか7万円 「ついに景気悪化を認めた内閣府、消費増税後に「春から不況だった」と示唆するズルさ=斎藤満」 岩崎 博充 (その32)(日本人の給料がほとんど上がらない5つの要因 90年代以降の平均上昇額はわずか7万円程度、アベノミクスと原子力政策における「失敗の本質」、「失われた10年」を「30年」に拡大させた戦後の無責任体制、ついに景気悪化を認めた内閣府 消費増税後に「春から不況だった」と示唆するズルさ=斎藤満) アベノミクス 原真人の近著「日本銀行『失敗の本質』」 緩やかに滅んでいけるほど、世の中はのどかではない。やがて大きな痛みとショックに見舞われるのは必定だ。いち早い政策転換が必要である 消費増税、最後に駆け込み 「「失われた10年」を「30年」に拡大させた戦後の無責任体制」 日刊ゲンダイ 「平成経済 衰退の本質」 前回が民主党政権だったから「景気後退」と認定し、現在は自公の安倍政権だから「後退」ではない、というのであれば、あまりに恣意的すぎます 1997年=100とした場合の「実質賃金指数」 「アベノミクスと原子力政策における「失敗の本質」」 日本の景気がこの春までにすでに「景気後退」に入っていた可能性を示し、それが今なお続いていることになります 少子高齢化、低賃金で放置されたパートタイマー 「なるべく速戦即決で全面長期戦争にならないように、奇襲による短期決戦を考え」たがる。ところがそれも行き詰まると、精神力信仰が合理的判断を狂わせ、体当たり攻撃で長期戦にも勝てるという壮絶な思想にのめり込んでいく 日銀も「2年で物価上昇2%達成」という期間限定の奇襲作戦に打って出たが、賭けに失敗し、ズルズルと6回も期限を延期してなお目標を達成できず、ついに6年目に至って目標を立てるのをやめて「長期戦化」を宣言 片山杜秀著「平成精神史」 これをアベノミクスではなく、原子力政策とその福島原発事故による破局と重ね合わせ、「日本は背伸びをして世界に冠たる国となり、無理して転んだときの怪我の度合いも世界に冠たるものだということの証明」
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