女性活躍(その21)(「驚愕の事実」すべての先進国で男子よりも女子の成績が高い科学的理由 「堅実性パーソナリティ」の性差か、河合 薫らのオンライン対談2題:Y染色体がどんどん減少 やがて「男」は消える運命?、 性転換は自然の摂理? Yが消えても男は男) [社会]
女性活躍については、3月30日に取上げた。今日は、(その21)(「驚愕の事実」すべての先進国で男子よりも女子の成績が高い科学的理由 「堅実性パーソナリティ」の性差か、河合 薫らのオンライン対談2題:Y染色体がどんどん減少 やがて「男」は消える運命?、 性転換は自然の摂理? Yが消えても男は男)である。
先ずは、7月30日付けPRESIDENT Onlineが掲載した作家の橘 玲氏による「「驚愕の事実」すべての先進国で男子よりも女子の成績が高い科学的理由 「堅実性パーソナリティ」の性差か」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/48263
・『最先端の科学では人間の脳=こころの謎が次々明らかになってきている。著書『スピリチュアルズ「わたし」の謎』(幻冬舎)でその全貌を紹介した作家の橘玲氏は「すべての先進国では男子よりも女子のほうが成績が高い。男女に知能の差はないので、成績の差が生まれるのは『堅実性パーソナリティ』の性差が影響していると考えられる」という──。※本稿は、橘玲『スピリチュアルズ「わたし」の謎』(幻冬舎)の一部を再編集したものです』、興味深そうだ。
・『歴史上の英雄には「多動力」タイプが多い イギリスの心理学者ダニエル・ネトルは、「今日では障害とされている注意欠陥・多動性障害(ADHD)こそが、かつては強さだったかもしれない」と述べる(※1)。 ADHDと診断される子どもは堅実性スコアがきわめて低く、男の子の発症率は女の子の5倍と明らかに性差がある。 これは、(男の役割とされた)旧石器時代の狩猟で、目の前の刺激に対して素早く反応した方が有利だったことの名残だと考えられている。事実、プロスポーツの世界ではADHDの若者が成功している例がいくつもある。 堅実性が低いと「衝動的」「不真面目」「いい加減」などネガティブなレッテルを貼られるが、つねに不利なわけではなく、異性から「ぶっ飛んでいて魅力的」と思われたり、革命家やアジテーター、あるいは芸術家として成功することもある。 歴史上の英雄には、現代ならADHDと診断されるであろう「多動力」タイプが多い。 このことは、そもそもADHDが「病気」ではないことを示している。それは人類が進化の大半を過ごしてきた(旧石器時代の)環境では、きわめて有利なパーソナリティだった。 それが「発達障害」とされるようになったのは、わたしたちが生きているのが、人類の進化が想定しないほど「とてつもなく安定した社会」だからだ。その結果、本来であれば「正常」なパーソナリティが「不適応」になってしまったのだ』、「ADHDの若者が成功している例がいくつもある」「革命家やアジテーター、あるいは芸術家として成功することもある」、「人類が進化の大半を過ごしてきた(旧石器時代の)環境では、きわめて有利なパーソナリティだった。 それが「発達障害」とされるようになったのは、わたしたちが生きているのが、人類の進化が想定しないほど「とてつもなく安定した社会」だからだ。その結果、本来であれば「正常」なパーソナリティが「不適応」になってしまったのだ」、「ADHD」への見方が変わった。
・『「女の方が男より真面目だ」といわれる理由 安定した現代社会では、「いま、ここの自分」より「いつか、あそこでの自分」に配慮できた方が有利なことは間違いない。とはいえ、堅実性スコアが高ければ高いほどいいというわけではない。 精神医学で強迫性パーソナリティ障害(OCPD)と呼ばれる症状は堅実性が極端に高く、全成人のおよそ2%がこの診断基準にあてはまる。 興味深いことに、OCPDと診断されるのは男性が女性の2倍で明らかな性差がある。特定のジャンルの商品を大量に入手し、完全なコレクションをつくることに人生を懸けたりする熱狂的コレクターも男に多い。 堅実性が極端に低いADHDは男が女の5倍で、堅実性が極端に高いOCPDは男が女の2倍ということは、堅実性の分布のばらつきが男の方が大きいことを示している。 その結果、(男が両極にばらついているのだから)堅実性の平均近くでは女の割合が高くなる。これが、「女の方が男より真面目だ」といわれる理由ではないだろうか(図表1)』、「(男が両極にばらついているのだから)堅実性の平均近くでは女の割合が高くなる。これが、「女の方が男より真面目だ」といわれる理由ではないだろうか」、見事な謎解きだ。
・『男の子が劣化していく アメリカにおいては、女子は小学校から大学まで、すべての学年で男子より成績がいい。 13歳と14歳の中学生で作文や読解が熟達レベルに達している男子は4分の1にも満たないが、女子は41%が作文で、34%が読解で達している。 2011年には男子生徒のSAT(大学進学適性試験)の成績は過去40年で最低だった。また、学校が渡す成績表の最低点の70%を男子生徒が占めていた。これはアメリカだけの現象ではなく、OECD(経済協力開発機構)の調査によると、先進国のすべてで男子は女子より成績が悪く、落第する生徒も多く、卒業試験の合格率も低い。 スウェーデン、イタリア、ニュージーランド、ポーランドといった国々では、PISAテスト(15歳を対象とした国際学習度到達調査)の読解力部門で女子が男子をはるかに上回り、1学年から1学年半も先を行っているという結果が出た。これでは同い年の男女を同じクラスで教えるのは困難だろう。 カナダとオーストラリアでは、すでに大卒者の60%が女性だ。イングランドでは大学の入学申込者は女子4人に対し男子は3人以下、ウェールズとスコットランドでは、女子の申し込みが男子より40%も上回り、恵まれない家庭ではこのギャップがよりいっそう大きくなっている』、ここまで世界的に男女差が明確出ているとは驚かされた。
・『知能が高いほど堅実性は低くなる 日本でも「女の子の方が男の子より優秀」と当たり前のようにいわれるが、男女の知能に(平均としては)差はない(男は論理・数学能力に優れ女は言語的知能が高いとか、知能のばらつきは女より男の方が大きいという研究はある)。 だとすればこれは、堅実性パーソナリティの性差が影響しているのではないだろうか。女の子の堅実性は平均付近に集まるのに対し、男の子は堅実性が高い方にも低い方にもばらついている。 その結果、堅実性が低い男子生徒が学校教育から脱落しはじめていると考えればこうした現象に説明がつく。 現代社会では、「賢くて真面目な子どもは成功する」と信じられている。これは間違いとはいえないが、奇妙なことに、知能と堅実性には(わずかに)ネガティブな関係があるらしい。知能が高いほど堅実性は低くなるというのだ。 これは常識に反するようだが、頭が切れるひとは前もって準備しなくてもうまくやれてしまうため、わざわざ手間暇をかけて訓練を積む必要がないと考えれば理解できるだろう。高すぎる知能は堅実性を引き下げる効果があるのかもしれない。 最後に「勤勉な日本人」と堅実性の関係だが、いまのところ人種別に堅実性スコアを比較した研究はないようだ。だが、ヒト集団で生得的なちがいがないとしても、日本人の堅実性のレベルが高く見える理由はシンプルに説明できる。 外向的なひとは欲望に向かう強力なエンジンをもっており、内向的な性格はエンジンの出力が弱い。これはアクセルを思いきり踏んでもスピードが上がらないのと同じだ。 大馬力のエンジンを制御するには強力なブレーキが必要だが、出力の弱いエンジンなら簡易なブレーキでもなんとかなる。内向的な(エンジンの馬力が小さい)日本人は、平均的なブレーキ(前頭葉の活動)でも堅実性スコアが高くなり、高い神経症傾向の影響もあって、電車の時間を1秒単位で管理するようになるのではないだろうか』、「女の子の堅実性は平均付近に集まるのに対し、男の子は堅実性が高い方にも低い方にもばらついている。 その結果、堅実性が低い男子生徒が学校教育から脱落しはじめている」、なるほど。「内向的な・・・日本人は、平均的なブレーキ(前頭葉の活動)でも堅実性スコアが高くなり、高い神経症傾向の影響もあって、電車の時間を1秒単位で管理するようになるのではないだろうか」、面白い診断だ。
次に、6月23日付け日経ビジネスオンラインが掲載した健康社会学者(Ph.D.)の河合 薫氏と、北海道大学大学院理学研究院教授の黒岩麻里氏によるオンライン対談「Y染色体がどんどん減少 やがて「男」は消える運命?」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00139/
・『健康社会学者の河合薫氏と北海道大学大学院理学研究院教授の黒岩麻里氏によるオンライン対談「やがて男はいなくなる? 消えゆくY染色体とおじさん社会」の第1回をお届けします。記事の最後のページでは対談動画をご覧いただけます(編集部)。※本記事は、対談の模様を編集してまとめたものです。 河合薫氏:今回の対談は「やがて男はいなくなる? 消えゆくY染色体とおじさん社会」という、少々刺激的なタイトルをつけさせていただいたのですが、そもそも「Y染色体がある=男性」という考え方自体が間違っている、という理解でよろしいんでしょうか。 黒岩麻里氏:その通りです。教科書的には、Y染色体を持つと必ず男性になるといわれているんですね。ところが、地球上の幅広い生物を見ると、染色体で性を決めているものもいれば、まったくそれとは関係ないものもいます。例えば、周りの環境だったり、温度だったり、自分と他者との関係だったりで性別が決まる、あるいは、いったん決まった性を変えちゃう生物もいっぱいいるんです。その仕組みの多様さというか、柔軟さがすごく面白くて研究しています』、「性」の決まり方は多用なようだ。
・『遺伝子数が40分の1に…… 河合:何かもう、いきなり聞きたいことだらけになってきました(笑)。実はこの対談を告知した際に、「河合薫はいつもジェンダーでの性差を言っているけれども、生物学者としたらジェンダー論なんてないんだろうな」といったコメントが読者から寄せられたのです。今のお話だと、環境によって性が決まるとしたら、生物の社会にもセックスとジェンダーの両方の性があるってことですよね? 黒岩:そうですね。ちょっと難しいんですね。ジェンダーとセックスはあくまでも分けて考えないといけないのですが、生物学的な性差はものすごく多様で、固定的なものはないんです。だからそういう多様さ、柔軟さ、あといいかげんさを見ると、そこからジェンダーを学ぶことはあります。 河合:なるほど。では、今のお話も含めて少しずつ理解を深めていきたいと思います。まずは私たちが学生のときに学ぶY染色体について教えていただきたいのですが、黒岩先生は「Y染色体は淘汰されていく」というお話を様々なメディアでなさっていますが、なぜ、XではなくYなんですか。しかも、なぜ淘汰されてしまうのでしょうか。 黒岩:実は、淘汰も進化の形の1つなんです。 河合:えっと……進化するために淘汰する? 黒岩:研究者の中には、退化という言葉を使う人もいます。いずれにせよ、進化っていいことばかりじゃないので、退化も淘汰もどちらも進化なんです。Y染色体の進化は、遺伝子(の数)をどんどんなくしていくことです。実際に男性が持っているYというのは、遺伝子がすでに50個ぐらいしか残ってないんです。 河合:50個では、少ないのですか? 黒岩:女性、つまりXXと比較すると、少ないです。Xには2000個以上の遺伝子があるといわれています。 河合:Yの40倍!! 黒岩:もともとYにも、2000個ぐらい遺伝子があったはずですが、もう50個ぐらいに、すごく小さく、少なくなっていて、今も(減少が)進行中です。いずれ遺伝子がなくなって、Y染色体自体がなくなるといわれています。 河合:ああ……やっぱりなくなってしまうのですか……。 黒岩:でも、これも偶然なんです。「Yだけが、そんなひどい目に遭って」と思う方もいらっしゃるでしょうが、本当に進化の偶然なんですよ。XとYという2つの違う染色体が生まれたとき、最初はその違いはすごく小さいもので、ほとんど同じ。ちょっと違うという程度でした。なので、Xの遺伝子が淘汰されていっても構わなかったんです。でも、たまたまちょっとしたきっかけで、Yが選ばれたということです。 河合:先生、すみません。ちょっと頭が混乱していて、すごく基本的な質問ですが、今のお話は人のお話でしょうか? (黒岩氏略歴はリンク先参照) 黒岩:はい、哺乳類すべてが、ほぼ同じXYを持っていますから、人もそうです。哺乳類のYはどんどん小さくなって、遺伝子が減ってきています。あと私たちのXやYとは違うのですが、同じ仕組みでXやYを持っている哺乳類以外の生物もいます。そういった生物の中には、やはりY染色体がちっちゃくなっちゃっているやつらもいるんですね。染色体が小さくなって、遺伝子が淘汰されていくという運命は、別に人、哺乳類に限らず、他の生物がたどっている場合もあります』、「哺乳類のYはどんどん小さくなって、遺伝子が減ってきています」、「染色体が小さくなって、遺伝子が淘汰されていくという運命は、別に人、哺乳類に限らず、他の生物がたどっている場合もあります」、そんなことが起きているとは・・・。
・『Yオリジナルで進化した遺伝子 河合:ということは、人の場合で考えると、今の私たちが生きている時代では、XとYというのが当然のようにあって、Yが性差を決めている。しかし、古代に遡ると、Xしか持ってなかった時代とか、Yの方が多かった時代とかもあったかもしれない? 黒岩:その辺のことは、かなりしっかり研究されています。哺乳類の祖先種が生まれたのが、3億年ぐらい前です。一方、今、私たちが持っているXYの原型ができたのが、1億7000万年前ぐらいといわれています。つまり、それ以前はXYが性を決めていたわけではなかったと、考えられています。 では、どうやって性を決めていたか、ってことになるんですけど、正直分からない。研究者によっては遺伝子や染色体ではなく、環境で決めていたんじゃないかという方もいらっしゃいます。ただし、化石では遺伝子や染色体を見ることができないので、あくまでも推測にすぎません。 河合:ということは、今、弱体化してる人のY染色体が、いったん淘汰されたあとに、何かの偶然で、またY染色体が復活する可能性もあるってことでしょうか? 黒岩:一応、人のY染色体をいろいろと研究した結果、復活した遺伝子はないんです。だから、復活する可能性は否定できませんが、減る一方とみるのがメジャーな見方だと思ってください。 河合:Y染色体は、先生は今いくつあるとおっしゃっていましたっけ。 黒岩:50種類ぐらい。 河合:Yは50種類。Xは2000種類。 黒岩:はい。2000以上ですね。 河合:2000種類以上。これ、言い方が難しいのですが、Xつまり、女性の方が強くなっているということですか。 黒岩:そういう見方もできます。Xに2000種類ぐらいあるとして、女性はXXだから4000種類ですよね。男性はXYだから2050種類じゃないですか。2000種類ぐらい遺伝子の数が違いますよね。だから、女性の方が有利なんだとおっしゃる方もいます。 でも、実はYにある50種類って、Yオリジナルで進化している遺伝子なんですよね。 河合:ほーっ! Yにしかないスペシャルな遺伝子! 黒岩:50種類の遺伝子は、Yにしかない。女性は持っていないってことです。一方、Xは1本だけど男性も持っているから、数は少ないけど種類としては同じものを持っていますよね。つまり、男性は50種類も女性にないものを持っていると考えたら……、男性の方にアドバンテージがあるってことになりませんか? 河合:確かに。何かに対して、ものすごい有利な気がします。 黒岩:そういう見方、考え方もできる、ということです。 河合:最近は、LGBTやトランスジェンダーが多様性の話の中で出てくるようになりましたが、XXとXYというほど男と女というのは単純ではなく、実際にはXXXYとか、XXXYYYとか、いろいろな形がありますよね? (河合薫氏の略歴はリンク先参照) 黒岩:X染色体やY染色体の本数が違う方がいらっしゃるということは、実はものすごく昔から知られていました。ただそういう方たちは、いわゆるマイノリティー、少数例だと思われていた。ところが、最近の研究でそういう方たちの割合は、もっと多いんじゃないかということが分かってきています。 ある研究報告だと、例えばXXYの方というのは500人から1000人のうち1人の割合だという報告があるのですが、検査しない限り分からないので、実際にはXXYだけど、一生気付かない人もいます。そうやって考えると、実はXXYの方はもっと多くて、6~7割いらっしゃるんじゃないかといわれています。 つまり単純に「XXは女性、XYは男性」という分け方はできないというのが、今の考え方です』、「実はXXYの方はもっと多くて、6~7割いらっしゃる・・・つまり単純に「XXは女性、XYは男性」という分け方はできないというのが、今の考え方です」、なるほど昔学校で習った知識は古くて使えないようだ。
・『性染色体をコロコロ乗り換え 河合:そうやって考えていくと、男だの女だのと二分して、男性差別や女性差別をしてる人間って、何か残念ですよね。すごくレベルの低いことを、人間はやっているんじゃないかって、悲しくなります。 黒岩:本当に、その通りです。 河合:あの……、実は私、最近ちょっとY染色体が出てきたんじゃないかなと、思うことがあるのですが(笑)。 黒岩:調べてみますか(笑)。 河合:そういうことってあるんですか? 実は、隠れていたY染色体が出てきたとか、気が付かなかったのが出てきたとか、あるいはX染色体がY染色体に変化しちゃったとか? そういうのが、一人の人間に起こり得るですか? 黒岩:調べてみないと、本当に自分がどの染色体を持っているかなんて、正直分からないんですよ。 河合:よくひげが生えてくるおばさんがいますよね。あ、私は生えてませんが(笑)、年を重ねてくると、自分の中での性別がどっちに行っているんだか分からなくなるようなことがあるんですよね。そういう「アンタ変だよ!」と言われそうな、私の妙な感覚も、生物学的な視点に立てば当たり前のことかもしれないということですよね。 黒岩:当たり前です。性別という言葉は、やっぱり本当は語弊があるんです。生物学的に考えると、別ではない。つながっているんです。男性、女性、雌雄ってつながっていて、どの辺の位置にあるか、というのは人によってそれぞれです。男側、女側に二分できるものじゃないんですよ。 それは遺伝子の働き方もそうだし、あとひげとか体毛とかってホルモンの影響も大きいんですよね。そういうホルモンの働きも、一生涯のうちで大きく変わるので、ずっとこのタイプと決められないと思いますね。 河合:ちょっと違う話になりますけど、今先生がおっしゃったことって健康社会学でも似たような考え方をするんです。健康と不健康というのはコインの表裏ではなくて、1本の連続帯上にあるという考え方です。元気になる力があれば、どんどん健康になっていくし、逆にストレスとなるようなマイナスの力に引っ張られると健康破綻に向かいます。どちらに向かうかは、環境の影響をものすごく受けます。 黒岩:なるほど、確かにどの位置にいるかで、健康状態は変わりますよね。 河合:哺乳類以外では、XとYはどうなっているのですか? つまり、やはり男と女の連続体の両端に、何があるのかなぁ、と。 黒岩:魚のある種ではYでオスを決めるんですが、別の種は全然別の染色体でオスを決めていたり、Yを簡単に捨てたりするんですよね。性染色体を、コロコロ乗り換えたりすることもあります。 河合:乗り換え? しかも、コロコロ? うわぁ……興味津々です!(次回へ続きます)』、「性別という言葉は、やっぱり本当は語弊があるんです。生物学的に考えると、別ではない。つながっているんです。男性、女性、雌雄ってつながっていて、どの辺の位置にあるか、というのは人によってそれぞれです。男側、女側に二分できるものじゃないんですよ」、「魚のある種ではYでオスを決めるんですが、別の種は全然別の染色体でオスを決めていたり、Yを簡単に捨てたりするんですよね。性染色体を、コロコロ乗り換えたりすることもあります」、生物の世界は奥が深いようだ。
第三に、この続きを、6月30日付け日経ビジネスオンラインのオンライン対談「性転換は自然の摂理? Yが消えても男は男」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00141/
・『健康社会学者の河合薫氏と北海道大学大学院理学研究院教授の黒岩麻里氏によるオンライン対談「やがて男はいなくなる? 消えゆくY染色体とおじさん社会」の第3回をお届けします。記事の最後のページでは対談動画をご覧いただけます(編集部)。※本記事は、対談の模様を編集してまとめたものです。 河合薫氏:環境によって、性が入れ替わる生物がいるというのは、本当なんですか? 黒岩麻里氏:はい。性を途中で変える生物。性転換と呼ぶんですけれども、一番よく知られているのは魚類です。相手と自分の体の大きさを比べて、自分のほうが体が大きいとメスになる生き物がいます。 河合:体が大きいとメス、ですか。なんか逆のような……』、なお、対談の2回目は有料だったので、紹介は省略、これは第三回目である。
・『体が小さいうちはオスでもメスでもない 黒岩:はい。メスです。カクレクマノミという、アニメ映画の主人公になった魚をご存じですか? 河合:ディズニーの『ファインディング・ニモ』ですね? とてもきれいな魚ですよね。 黒岩:カクレクマノミは集団で暮らすのですが、1番体が大きい個体がメスなんです。2番目に大きいのがオスで、それ以外は一応オスなんですけど、体が成熟しないので、オスでもメスでもないというか、繁殖に参加していません。 河合:へえ。繁殖に参加しないで何をしているんですか。ちょっとお魚さんには失礼な質問ですが。 黒岩:一緒にいることが仕事です。共同生活をしているんです。 河合:そっか! 共同生活をすることによって、天敵から身を守る。繁殖のサポートをする役割ってことでしょうか。 黒岩:そういうことです。体が小さいうちに卵を産んじゃうとちょっとしか生めないので、体が大きくなってから産んだほうが効率的です。なので、小さいうちはみんなで暮らして天敵から身を守ります。それで餌をたくさん食べて大きくなってからが勝負です。 そして例えば、1番大きいメスが死んじゃったら、2番目だったオスがメスに昇格というか、性転換します。すると3番目に大きく育っている魚がオスになるという具合です。 河合:性をコロコロ変えるって、羨ましいというか不思議ですね。 黒岩:それがきっと合っているんでしょうね、クマノミには。 (黒岩麻里氏の略歴はリンク先参照)) 河合:私もコロコロ変えたいです。私は自分の中では、男とか女だとか意識したこともないし、周りに壁をつくったつもりはないんですけれど、(文章の)書き手の性別によって(読者への)伝わり方が変わることって現実にあるのですよね。社会全体を考えても、みんながハッピーになれる形って、時代によって変わるように思います。女性がリーダーになる時代があってもいいし、男性がリーダーになる時代があってもいい。 黒岩:固定観念をとにかく捨て去って考えてみるって大切ですよね。そもそも性差の研究って、平均値の比較に過ぎません。例えば、平均身長は男性のほうが女性より高い。世界中のどの民族も、どの国も必ずそうなっています。これはY染色体に性を決める遺伝子があって、そのためだといわれています。 でも、あくまでも平均値なわけです。男性の平均身長よりも背が高い女性だって当然いるし、女性の平均身長よりも背が低い男性だって当然いますよ。おのおのの個体を見れば、全然違うわけです』、「カクレクマノミは・・・1番体が大きい個体がメスなんです。2番目に大きいのがオスで、それ以外は一応オスなんですけど、体が成熟しないので、オスでもメスでもないというか、繁殖に参加していません」、アリやハチも、確か幼虫時代の食べ物で、女王、オス、働き手に分かれると記憶している。
・『男性はいなくならない! 河合:おそらく誰もが人それぞれ、いろいろな人がいるって頭では分かっていると思うんです。でも、一人ひとりで考えるより、属性でグループ化して、平均で考えたほうが楽。女は~、男は~、だけじゃなく、上司は~、部下は~、若者は~、年寄りは~、なんていうのも本当はおかしい。ある意味で、人間のずるいところなのかなぁ、と思うことがあります。 黒岩:そうやって楽ちんをしているから、つらい人も出てくるわけですよね。特に、LGBT(性的少数者)の人たちなんかは、まさしくもう、その固定観念にはめられて、つらい思いをされていると思うんですよね。 河合:私もLGBTなどの問題は、さまざまなメディアで取り上げるのですが、最近は、興味すら抱かない人が増えているように感じます。そもそも性的マイノリティーという言葉がおかしいし、プライベートな問題で仕事に一切関係ないことなのに、採用に影響したり、LGBTと分かった途端、パワハラをされてしまったり。カクレクマノミの賢さを人間も見習ったほうがいいですよね。 黒岩:はい、もっと人間は柔軟に考える必要があると思います。一貫して私がお話ししていることって、柔軟性なんです。生物の性って、とにかく多様で柔軟なものなんですよね。遺伝子の進化もいろいろな形があります。進化をしていく中で選択を繰り返し、少しずつ方向が定まっていくのが進化の蓄積なんです。 なので、どう転ぶかも、どうなっていくのかも分からない。実際の生物は小難しいことは何も考えちゃいないんですよね。 河合:人はとってもとっても小難しい。 黒岩:男はこうだ女はこうだ、それが当たり前だと思っている人は、本当にまだまだたくさんいらっしゃいます。でも、私たちも本来はそうあるべきです。なので、生物が持つ多様性とか柔軟性を、とにかく知ってもらいたいんです。 遺伝子進化ってそういうものじゃないんだよとか、性というのはそういうものじゃないんだよ、もっと多様なものなんだよということを、できるだけ私の研究を通して知ってもらいたいと思っています。 河合:今回の対談のタイトルは、かなり「男だの女だの」と限定してしまいましたが……。 黒岩:実は、こういうタイトルってキャッチーなので、私もよく使うんです。ただ、私の研究の結論としては、男性はいなくならないというのが結論なんですね。 河合:そこ、そこです! 男性はいなくならないってことは、Y染色体も? 黒岩:Y染色体はなくなると思います。 河合:本当になくなっちゃうんですか? 黒岩:はい。なくなると思います。 河合:Y染色体はなくなるけど、男性はいなくならない? しつこくてすみません。でも、大切なところなので。 黒岩:はい。Y染色体はいつか消えるけれど、男性はいなくならないというのが、私の研究成果というか結論です。それをもっと発信していけたらいいなとは思っています。 河合:えっと、ってことは、Y染色体がなくなって、今の男性が困ることってないんですか。 黒岩:今の男性が困ることはないと思います。なくなるのは将来の男性なので。その男性たちはY染色体がなくなっても、ちゃんと男性として生まれてこられる仕組みを獲得するだろうと、私は自分の研究から想像しているので、困ることはないと思います。 (河合薫氏の略歴はリンク先参照) 河合:それはもっと具体的にいうと、生殖の仕組み自体は、Y染色体がなくなっても変わらないというような理解でよろしいんでしょうか。 黒岩:そうですね。生殖の今ある基本的な仕組みというのは、おそらく変わらない。つまり、今は、Y染色体が関わっている部分を、別の遺伝子が肩代わりするというか、代わりにやってあげることで、いくらでもまかなえるように進化できると考えています。なので、今の男性としての役割とか仕組みというのは、ちゃんと引き継げるだろうと思っています』、「Y染色体はいつか消えるけれど、男性はいなくならない」、「Y染色体がなくなっても、ちゃんと男性として生まれてこられる仕組みを獲得するだろう」、なるほど。
・『男が多く生まれる理由は… 河合:じゃあ、たまたま自分は君と遺伝子が一緒だけど、何か俺はこんなの出ちゃったよとか、私はこんなふうになっちゃったわよ、みたいな、そういった社会になるかもしれないということですよね? 極論を言ってしまえば。というか、私、変なこと言ってますかね? 黒岩:どうでしょうね。それは分からないけど(笑)。 河合:要するに、Y染色体だってそのうち消えちゃうんだから、絶対的なものは何もなくて、もっと柔軟に変えられる社会になっていけばいいし、そういうふうな考えを一人ひとりが持ったほうが、実は自分も、他の人もハッピーに生きられるってことですよね。繰り返しになりますが。 黒岩:そう思います。先日、テレビで私が紹介させていただいたのですが、男の子を産んだ母親がY染色体を持つことになるケースもあるんですよ。 河合:出産が影響するということですか? 黒岩:XYの男の子の赤ちゃんを妊娠したときに、何らかの原因で、その赤ちゃんの細胞が女性の体の中に移動する場合があるんです。母親はXXで生まれているはずで、XXの細胞しかないはずなのに、出産を経験した後、体の細胞を調べるとXYの細胞が含まれているということが最近の報告で分かってきています。 河合:出産の話題でいいますと、男性のほうがたくさん生まれているというのは本当なんですか? まさか消えゆくY染色体が関係しているとか、あるいは男性のほうが生き物として弱いからたくさん生まれてくるとか? 黒岩:これは分からないんですね。私もすごく興味を持って調べたんですが、結論としては分からないというのが正直なところです。実際に日本において出生時に、0歳児の性比を見ると、男の子が1.1に対して、女の子が1ぐらいの割合とか、正確には、(男の子が)1.07とか1.05とか年によって若干変動があるんですけど、必ず男の子のほうがたくさん生まれるんですよね。 河合:社会環境が影響しているとか? あくまでも印象論ですが、テレビ業界に勤めている人の子供は女の子が多いといった、都市伝説めいたものもあったんですよね。 黒岩:そのあたりは私には分からないのですが、社会的な影響の可能性がいわれていたこともあります。例えば、男の子を望む人が多いので、出産のときに選択をして男の子を産んでいるのではないか、とか。 でも、長年のデータを見ると、男の子のほうがやっぱり生物学的にも多く生まれているようでして。じゃあ、何でなの? と考えたときに、論理的に説明できる答えが一切見つからないんですよね。 河合:染色体の影響があるとか? 黒岩:それも分かりません。Y染色体が小さいからY染色体を持っている精子のほうが軽くなるだろうとか、Y染色体を持った精子のほうが優先的に受精するから男の子が多いんじゃないかという説もあるにはありました。でも、他の哺乳類もY染色体は小さいので、それならオスのほうが多く生まれてくるはずです。ところが、そういったデータは全くないんです。人間以外は、性比のデータをちゃんと調べているわけじゃないので。散々調べたけど分かりませんでした。不思議な現象なんです。 河合:先生、そろそろお時間が迫ってきましたので、この対談を読んでくださっている読者、おそらく圧倒的に男性が多いと思いますが、先生のほうからメッセージをお願いできますでしょうか。Y染色体がなくなるのは、やはりちょっと切ない気もしますし……。 黒岩:そうですね。私、Y染色体がいつか消えてなくなってしまうというちょっと一般の方にはショッキングなメッセージ性を持った研究をしているんですけれども、実は染色体進化の分野では染色体が消えたり、新しく生まれたりって、実は普通にあることなんですよね。当たり前のことで、進化の1つです。 ただ、これが人の場合、Yは男性にとってとても大事なので、男性がいなくなっちゃうかもみたいなことにつながって、すごくショックを受ける人も多いんです。 ただ、Yがなくなっても男性がいなくなるわけではないですし、そういう単純なものではないので、そこだけは知ってほしいです。最後にお伝えします。 河合:はい。ということですので。どうかご安心を! というのも変ですね(笑)。本当にいろいろなお話をどうもありがとうございました。勉強になりました。 黒岩:はい、こちらこそありがとうございました』、「Y染色体がなくなる」「染色体進化の分野では染色体が消えたり、新しく生まれたりって、実は普通にあることなんですよね。当たり前のことで、進化の1つです」、「Yがなくなっても男性がいなくなるわけではない」、何がYの代わりになるのだろう。いずれにしろ、男と女の性差も、柔軟に考えるべきもののようだ。
先ずは、7月30日付けPRESIDENT Onlineが掲載した作家の橘 玲氏による「「驚愕の事実」すべての先進国で男子よりも女子の成績が高い科学的理由 「堅実性パーソナリティ」の性差か」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/48263
・『最先端の科学では人間の脳=こころの謎が次々明らかになってきている。著書『スピリチュアルズ「わたし」の謎』(幻冬舎)でその全貌を紹介した作家の橘玲氏は「すべての先進国では男子よりも女子のほうが成績が高い。男女に知能の差はないので、成績の差が生まれるのは『堅実性パーソナリティ』の性差が影響していると考えられる」という──。※本稿は、橘玲『スピリチュアルズ「わたし」の謎』(幻冬舎)の一部を再編集したものです』、興味深そうだ。
・『歴史上の英雄には「多動力」タイプが多い イギリスの心理学者ダニエル・ネトルは、「今日では障害とされている注意欠陥・多動性障害(ADHD)こそが、かつては強さだったかもしれない」と述べる(※1)。 ADHDと診断される子どもは堅実性スコアがきわめて低く、男の子の発症率は女の子の5倍と明らかに性差がある。 これは、(男の役割とされた)旧石器時代の狩猟で、目の前の刺激に対して素早く反応した方が有利だったことの名残だと考えられている。事実、プロスポーツの世界ではADHDの若者が成功している例がいくつもある。 堅実性が低いと「衝動的」「不真面目」「いい加減」などネガティブなレッテルを貼られるが、つねに不利なわけではなく、異性から「ぶっ飛んでいて魅力的」と思われたり、革命家やアジテーター、あるいは芸術家として成功することもある。 歴史上の英雄には、現代ならADHDと診断されるであろう「多動力」タイプが多い。 このことは、そもそもADHDが「病気」ではないことを示している。それは人類が進化の大半を過ごしてきた(旧石器時代の)環境では、きわめて有利なパーソナリティだった。 それが「発達障害」とされるようになったのは、わたしたちが生きているのが、人類の進化が想定しないほど「とてつもなく安定した社会」だからだ。その結果、本来であれば「正常」なパーソナリティが「不適応」になってしまったのだ』、「ADHDの若者が成功している例がいくつもある」「革命家やアジテーター、あるいは芸術家として成功することもある」、「人類が進化の大半を過ごしてきた(旧石器時代の)環境では、きわめて有利なパーソナリティだった。 それが「発達障害」とされるようになったのは、わたしたちが生きているのが、人類の進化が想定しないほど「とてつもなく安定した社会」だからだ。その結果、本来であれば「正常」なパーソナリティが「不適応」になってしまったのだ」、「ADHD」への見方が変わった。
・『「女の方が男より真面目だ」といわれる理由 安定した現代社会では、「いま、ここの自分」より「いつか、あそこでの自分」に配慮できた方が有利なことは間違いない。とはいえ、堅実性スコアが高ければ高いほどいいというわけではない。 精神医学で強迫性パーソナリティ障害(OCPD)と呼ばれる症状は堅実性が極端に高く、全成人のおよそ2%がこの診断基準にあてはまる。 興味深いことに、OCPDと診断されるのは男性が女性の2倍で明らかな性差がある。特定のジャンルの商品を大量に入手し、完全なコレクションをつくることに人生を懸けたりする熱狂的コレクターも男に多い。 堅実性が極端に低いADHDは男が女の5倍で、堅実性が極端に高いOCPDは男が女の2倍ということは、堅実性の分布のばらつきが男の方が大きいことを示している。 その結果、(男が両極にばらついているのだから)堅実性の平均近くでは女の割合が高くなる。これが、「女の方が男より真面目だ」といわれる理由ではないだろうか(図表1)』、「(男が両極にばらついているのだから)堅実性の平均近くでは女の割合が高くなる。これが、「女の方が男より真面目だ」といわれる理由ではないだろうか」、見事な謎解きだ。
・『男の子が劣化していく アメリカにおいては、女子は小学校から大学まで、すべての学年で男子より成績がいい。 13歳と14歳の中学生で作文や読解が熟達レベルに達している男子は4分の1にも満たないが、女子は41%が作文で、34%が読解で達している。 2011年には男子生徒のSAT(大学進学適性試験)の成績は過去40年で最低だった。また、学校が渡す成績表の最低点の70%を男子生徒が占めていた。これはアメリカだけの現象ではなく、OECD(経済協力開発機構)の調査によると、先進国のすべてで男子は女子より成績が悪く、落第する生徒も多く、卒業試験の合格率も低い。 スウェーデン、イタリア、ニュージーランド、ポーランドといった国々では、PISAテスト(15歳を対象とした国際学習度到達調査)の読解力部門で女子が男子をはるかに上回り、1学年から1学年半も先を行っているという結果が出た。これでは同い年の男女を同じクラスで教えるのは困難だろう。 カナダとオーストラリアでは、すでに大卒者の60%が女性だ。イングランドでは大学の入学申込者は女子4人に対し男子は3人以下、ウェールズとスコットランドでは、女子の申し込みが男子より40%も上回り、恵まれない家庭ではこのギャップがよりいっそう大きくなっている』、ここまで世界的に男女差が明確出ているとは驚かされた。
・『知能が高いほど堅実性は低くなる 日本でも「女の子の方が男の子より優秀」と当たり前のようにいわれるが、男女の知能に(平均としては)差はない(男は論理・数学能力に優れ女は言語的知能が高いとか、知能のばらつきは女より男の方が大きいという研究はある)。 だとすればこれは、堅実性パーソナリティの性差が影響しているのではないだろうか。女の子の堅実性は平均付近に集まるのに対し、男の子は堅実性が高い方にも低い方にもばらついている。 その結果、堅実性が低い男子生徒が学校教育から脱落しはじめていると考えればこうした現象に説明がつく。 現代社会では、「賢くて真面目な子どもは成功する」と信じられている。これは間違いとはいえないが、奇妙なことに、知能と堅実性には(わずかに)ネガティブな関係があるらしい。知能が高いほど堅実性は低くなるというのだ。 これは常識に反するようだが、頭が切れるひとは前もって準備しなくてもうまくやれてしまうため、わざわざ手間暇をかけて訓練を積む必要がないと考えれば理解できるだろう。高すぎる知能は堅実性を引き下げる効果があるのかもしれない。 最後に「勤勉な日本人」と堅実性の関係だが、いまのところ人種別に堅実性スコアを比較した研究はないようだ。だが、ヒト集団で生得的なちがいがないとしても、日本人の堅実性のレベルが高く見える理由はシンプルに説明できる。 外向的なひとは欲望に向かう強力なエンジンをもっており、内向的な性格はエンジンの出力が弱い。これはアクセルを思いきり踏んでもスピードが上がらないのと同じだ。 大馬力のエンジンを制御するには強力なブレーキが必要だが、出力の弱いエンジンなら簡易なブレーキでもなんとかなる。内向的な(エンジンの馬力が小さい)日本人は、平均的なブレーキ(前頭葉の活動)でも堅実性スコアが高くなり、高い神経症傾向の影響もあって、電車の時間を1秒単位で管理するようになるのではないだろうか』、「女の子の堅実性は平均付近に集まるのに対し、男の子は堅実性が高い方にも低い方にもばらついている。 その結果、堅実性が低い男子生徒が学校教育から脱落しはじめている」、なるほど。「内向的な・・・日本人は、平均的なブレーキ(前頭葉の活動)でも堅実性スコアが高くなり、高い神経症傾向の影響もあって、電車の時間を1秒単位で管理するようになるのではないだろうか」、面白い診断だ。
次に、6月23日付け日経ビジネスオンラインが掲載した健康社会学者(Ph.D.)の河合 薫氏と、北海道大学大学院理学研究院教授の黒岩麻里氏によるオンライン対談「Y染色体がどんどん減少 やがて「男」は消える運命?」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00139/
・『健康社会学者の河合薫氏と北海道大学大学院理学研究院教授の黒岩麻里氏によるオンライン対談「やがて男はいなくなる? 消えゆくY染色体とおじさん社会」の第1回をお届けします。記事の最後のページでは対談動画をご覧いただけます(編集部)。※本記事は、対談の模様を編集してまとめたものです。 河合薫氏:今回の対談は「やがて男はいなくなる? 消えゆくY染色体とおじさん社会」という、少々刺激的なタイトルをつけさせていただいたのですが、そもそも「Y染色体がある=男性」という考え方自体が間違っている、という理解でよろしいんでしょうか。 黒岩麻里氏:その通りです。教科書的には、Y染色体を持つと必ず男性になるといわれているんですね。ところが、地球上の幅広い生物を見ると、染色体で性を決めているものもいれば、まったくそれとは関係ないものもいます。例えば、周りの環境だったり、温度だったり、自分と他者との関係だったりで性別が決まる、あるいは、いったん決まった性を変えちゃう生物もいっぱいいるんです。その仕組みの多様さというか、柔軟さがすごく面白くて研究しています』、「性」の決まり方は多用なようだ。
・『遺伝子数が40分の1に…… 河合:何かもう、いきなり聞きたいことだらけになってきました(笑)。実はこの対談を告知した際に、「河合薫はいつもジェンダーでの性差を言っているけれども、生物学者としたらジェンダー論なんてないんだろうな」といったコメントが読者から寄せられたのです。今のお話だと、環境によって性が決まるとしたら、生物の社会にもセックスとジェンダーの両方の性があるってことですよね? 黒岩:そうですね。ちょっと難しいんですね。ジェンダーとセックスはあくまでも分けて考えないといけないのですが、生物学的な性差はものすごく多様で、固定的なものはないんです。だからそういう多様さ、柔軟さ、あといいかげんさを見ると、そこからジェンダーを学ぶことはあります。 河合:なるほど。では、今のお話も含めて少しずつ理解を深めていきたいと思います。まずは私たちが学生のときに学ぶY染色体について教えていただきたいのですが、黒岩先生は「Y染色体は淘汰されていく」というお話を様々なメディアでなさっていますが、なぜ、XではなくYなんですか。しかも、なぜ淘汰されてしまうのでしょうか。 黒岩:実は、淘汰も進化の形の1つなんです。 河合:えっと……進化するために淘汰する? 黒岩:研究者の中には、退化という言葉を使う人もいます。いずれにせよ、進化っていいことばかりじゃないので、退化も淘汰もどちらも進化なんです。Y染色体の進化は、遺伝子(の数)をどんどんなくしていくことです。実際に男性が持っているYというのは、遺伝子がすでに50個ぐらいしか残ってないんです。 河合:50個では、少ないのですか? 黒岩:女性、つまりXXと比較すると、少ないです。Xには2000個以上の遺伝子があるといわれています。 河合:Yの40倍!! 黒岩:もともとYにも、2000個ぐらい遺伝子があったはずですが、もう50個ぐらいに、すごく小さく、少なくなっていて、今も(減少が)進行中です。いずれ遺伝子がなくなって、Y染色体自体がなくなるといわれています。 河合:ああ……やっぱりなくなってしまうのですか……。 黒岩:でも、これも偶然なんです。「Yだけが、そんなひどい目に遭って」と思う方もいらっしゃるでしょうが、本当に進化の偶然なんですよ。XとYという2つの違う染色体が生まれたとき、最初はその違いはすごく小さいもので、ほとんど同じ。ちょっと違うという程度でした。なので、Xの遺伝子が淘汰されていっても構わなかったんです。でも、たまたまちょっとしたきっかけで、Yが選ばれたということです。 河合:先生、すみません。ちょっと頭が混乱していて、すごく基本的な質問ですが、今のお話は人のお話でしょうか? (黒岩氏略歴はリンク先参照) 黒岩:はい、哺乳類すべてが、ほぼ同じXYを持っていますから、人もそうです。哺乳類のYはどんどん小さくなって、遺伝子が減ってきています。あと私たちのXやYとは違うのですが、同じ仕組みでXやYを持っている哺乳類以外の生物もいます。そういった生物の中には、やはりY染色体がちっちゃくなっちゃっているやつらもいるんですね。染色体が小さくなって、遺伝子が淘汰されていくという運命は、別に人、哺乳類に限らず、他の生物がたどっている場合もあります』、「哺乳類のYはどんどん小さくなって、遺伝子が減ってきています」、「染色体が小さくなって、遺伝子が淘汰されていくという運命は、別に人、哺乳類に限らず、他の生物がたどっている場合もあります」、そんなことが起きているとは・・・。
・『Yオリジナルで進化した遺伝子 河合:ということは、人の場合で考えると、今の私たちが生きている時代では、XとYというのが当然のようにあって、Yが性差を決めている。しかし、古代に遡ると、Xしか持ってなかった時代とか、Yの方が多かった時代とかもあったかもしれない? 黒岩:その辺のことは、かなりしっかり研究されています。哺乳類の祖先種が生まれたのが、3億年ぐらい前です。一方、今、私たちが持っているXYの原型ができたのが、1億7000万年前ぐらいといわれています。つまり、それ以前はXYが性を決めていたわけではなかったと、考えられています。 では、どうやって性を決めていたか、ってことになるんですけど、正直分からない。研究者によっては遺伝子や染色体ではなく、環境で決めていたんじゃないかという方もいらっしゃいます。ただし、化石では遺伝子や染色体を見ることができないので、あくまでも推測にすぎません。 河合:ということは、今、弱体化してる人のY染色体が、いったん淘汰されたあとに、何かの偶然で、またY染色体が復活する可能性もあるってことでしょうか? 黒岩:一応、人のY染色体をいろいろと研究した結果、復活した遺伝子はないんです。だから、復活する可能性は否定できませんが、減る一方とみるのがメジャーな見方だと思ってください。 河合:Y染色体は、先生は今いくつあるとおっしゃっていましたっけ。 黒岩:50種類ぐらい。 河合:Yは50種類。Xは2000種類。 黒岩:はい。2000以上ですね。 河合:2000種類以上。これ、言い方が難しいのですが、Xつまり、女性の方が強くなっているということですか。 黒岩:そういう見方もできます。Xに2000種類ぐらいあるとして、女性はXXだから4000種類ですよね。男性はXYだから2050種類じゃないですか。2000種類ぐらい遺伝子の数が違いますよね。だから、女性の方が有利なんだとおっしゃる方もいます。 でも、実はYにある50種類って、Yオリジナルで進化している遺伝子なんですよね。 河合:ほーっ! Yにしかないスペシャルな遺伝子! 黒岩:50種類の遺伝子は、Yにしかない。女性は持っていないってことです。一方、Xは1本だけど男性も持っているから、数は少ないけど種類としては同じものを持っていますよね。つまり、男性は50種類も女性にないものを持っていると考えたら……、男性の方にアドバンテージがあるってことになりませんか? 河合:確かに。何かに対して、ものすごい有利な気がします。 黒岩:そういう見方、考え方もできる、ということです。 河合:最近は、LGBTやトランスジェンダーが多様性の話の中で出てくるようになりましたが、XXとXYというほど男と女というのは単純ではなく、実際にはXXXYとか、XXXYYYとか、いろいろな形がありますよね? (河合薫氏の略歴はリンク先参照) 黒岩:X染色体やY染色体の本数が違う方がいらっしゃるということは、実はものすごく昔から知られていました。ただそういう方たちは、いわゆるマイノリティー、少数例だと思われていた。ところが、最近の研究でそういう方たちの割合は、もっと多いんじゃないかということが分かってきています。 ある研究報告だと、例えばXXYの方というのは500人から1000人のうち1人の割合だという報告があるのですが、検査しない限り分からないので、実際にはXXYだけど、一生気付かない人もいます。そうやって考えると、実はXXYの方はもっと多くて、6~7割いらっしゃるんじゃないかといわれています。 つまり単純に「XXは女性、XYは男性」という分け方はできないというのが、今の考え方です』、「実はXXYの方はもっと多くて、6~7割いらっしゃる・・・つまり単純に「XXは女性、XYは男性」という分け方はできないというのが、今の考え方です」、なるほど昔学校で習った知識は古くて使えないようだ。
・『性染色体をコロコロ乗り換え 河合:そうやって考えていくと、男だの女だのと二分して、男性差別や女性差別をしてる人間って、何か残念ですよね。すごくレベルの低いことを、人間はやっているんじゃないかって、悲しくなります。 黒岩:本当に、その通りです。 河合:あの……、実は私、最近ちょっとY染色体が出てきたんじゃないかなと、思うことがあるのですが(笑)。 黒岩:調べてみますか(笑)。 河合:そういうことってあるんですか? 実は、隠れていたY染色体が出てきたとか、気が付かなかったのが出てきたとか、あるいはX染色体がY染色体に変化しちゃったとか? そういうのが、一人の人間に起こり得るですか? 黒岩:調べてみないと、本当に自分がどの染色体を持っているかなんて、正直分からないんですよ。 河合:よくひげが生えてくるおばさんがいますよね。あ、私は生えてませんが(笑)、年を重ねてくると、自分の中での性別がどっちに行っているんだか分からなくなるようなことがあるんですよね。そういう「アンタ変だよ!」と言われそうな、私の妙な感覚も、生物学的な視点に立てば当たり前のことかもしれないということですよね。 黒岩:当たり前です。性別という言葉は、やっぱり本当は語弊があるんです。生物学的に考えると、別ではない。つながっているんです。男性、女性、雌雄ってつながっていて、どの辺の位置にあるか、というのは人によってそれぞれです。男側、女側に二分できるものじゃないんですよ。 それは遺伝子の働き方もそうだし、あとひげとか体毛とかってホルモンの影響も大きいんですよね。そういうホルモンの働きも、一生涯のうちで大きく変わるので、ずっとこのタイプと決められないと思いますね。 河合:ちょっと違う話になりますけど、今先生がおっしゃったことって健康社会学でも似たような考え方をするんです。健康と不健康というのはコインの表裏ではなくて、1本の連続帯上にあるという考え方です。元気になる力があれば、どんどん健康になっていくし、逆にストレスとなるようなマイナスの力に引っ張られると健康破綻に向かいます。どちらに向かうかは、環境の影響をものすごく受けます。 黒岩:なるほど、確かにどの位置にいるかで、健康状態は変わりますよね。 河合:哺乳類以外では、XとYはどうなっているのですか? つまり、やはり男と女の連続体の両端に、何があるのかなぁ、と。 黒岩:魚のある種ではYでオスを決めるんですが、別の種は全然別の染色体でオスを決めていたり、Yを簡単に捨てたりするんですよね。性染色体を、コロコロ乗り換えたりすることもあります。 河合:乗り換え? しかも、コロコロ? うわぁ……興味津々です!(次回へ続きます)』、「性別という言葉は、やっぱり本当は語弊があるんです。生物学的に考えると、別ではない。つながっているんです。男性、女性、雌雄ってつながっていて、どの辺の位置にあるか、というのは人によってそれぞれです。男側、女側に二分できるものじゃないんですよ」、「魚のある種ではYでオスを決めるんですが、別の種は全然別の染色体でオスを決めていたり、Yを簡単に捨てたりするんですよね。性染色体を、コロコロ乗り換えたりすることもあります」、生物の世界は奥が深いようだ。
第三に、この続きを、6月30日付け日経ビジネスオンラインのオンライン対談「性転換は自然の摂理? Yが消えても男は男」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00141/
・『健康社会学者の河合薫氏と北海道大学大学院理学研究院教授の黒岩麻里氏によるオンライン対談「やがて男はいなくなる? 消えゆくY染色体とおじさん社会」の第3回をお届けします。記事の最後のページでは対談動画をご覧いただけます(編集部)。※本記事は、対談の模様を編集してまとめたものです。 河合薫氏:環境によって、性が入れ替わる生物がいるというのは、本当なんですか? 黒岩麻里氏:はい。性を途中で変える生物。性転換と呼ぶんですけれども、一番よく知られているのは魚類です。相手と自分の体の大きさを比べて、自分のほうが体が大きいとメスになる生き物がいます。 河合:体が大きいとメス、ですか。なんか逆のような……』、なお、対談の2回目は有料だったので、紹介は省略、これは第三回目である。
・『体が小さいうちはオスでもメスでもない 黒岩:はい。メスです。カクレクマノミという、アニメ映画の主人公になった魚をご存じですか? 河合:ディズニーの『ファインディング・ニモ』ですね? とてもきれいな魚ですよね。 黒岩:カクレクマノミは集団で暮らすのですが、1番体が大きい個体がメスなんです。2番目に大きいのがオスで、それ以外は一応オスなんですけど、体が成熟しないので、オスでもメスでもないというか、繁殖に参加していません。 河合:へえ。繁殖に参加しないで何をしているんですか。ちょっとお魚さんには失礼な質問ですが。 黒岩:一緒にいることが仕事です。共同生活をしているんです。 河合:そっか! 共同生活をすることによって、天敵から身を守る。繁殖のサポートをする役割ってことでしょうか。 黒岩:そういうことです。体が小さいうちに卵を産んじゃうとちょっとしか生めないので、体が大きくなってから産んだほうが効率的です。なので、小さいうちはみんなで暮らして天敵から身を守ります。それで餌をたくさん食べて大きくなってからが勝負です。 そして例えば、1番大きいメスが死んじゃったら、2番目だったオスがメスに昇格というか、性転換します。すると3番目に大きく育っている魚がオスになるという具合です。 河合:性をコロコロ変えるって、羨ましいというか不思議ですね。 黒岩:それがきっと合っているんでしょうね、クマノミには。 (黒岩麻里氏の略歴はリンク先参照)) 河合:私もコロコロ変えたいです。私は自分の中では、男とか女だとか意識したこともないし、周りに壁をつくったつもりはないんですけれど、(文章の)書き手の性別によって(読者への)伝わり方が変わることって現実にあるのですよね。社会全体を考えても、みんながハッピーになれる形って、時代によって変わるように思います。女性がリーダーになる時代があってもいいし、男性がリーダーになる時代があってもいい。 黒岩:固定観念をとにかく捨て去って考えてみるって大切ですよね。そもそも性差の研究って、平均値の比較に過ぎません。例えば、平均身長は男性のほうが女性より高い。世界中のどの民族も、どの国も必ずそうなっています。これはY染色体に性を決める遺伝子があって、そのためだといわれています。 でも、あくまでも平均値なわけです。男性の平均身長よりも背が高い女性だって当然いるし、女性の平均身長よりも背が低い男性だって当然いますよ。おのおのの個体を見れば、全然違うわけです』、「カクレクマノミは・・・1番体が大きい個体がメスなんです。2番目に大きいのがオスで、それ以外は一応オスなんですけど、体が成熟しないので、オスでもメスでもないというか、繁殖に参加していません」、アリやハチも、確か幼虫時代の食べ物で、女王、オス、働き手に分かれると記憶している。
・『男性はいなくならない! 河合:おそらく誰もが人それぞれ、いろいろな人がいるって頭では分かっていると思うんです。でも、一人ひとりで考えるより、属性でグループ化して、平均で考えたほうが楽。女は~、男は~、だけじゃなく、上司は~、部下は~、若者は~、年寄りは~、なんていうのも本当はおかしい。ある意味で、人間のずるいところなのかなぁ、と思うことがあります。 黒岩:そうやって楽ちんをしているから、つらい人も出てくるわけですよね。特に、LGBT(性的少数者)の人たちなんかは、まさしくもう、その固定観念にはめられて、つらい思いをされていると思うんですよね。 河合:私もLGBTなどの問題は、さまざまなメディアで取り上げるのですが、最近は、興味すら抱かない人が増えているように感じます。そもそも性的マイノリティーという言葉がおかしいし、プライベートな問題で仕事に一切関係ないことなのに、採用に影響したり、LGBTと分かった途端、パワハラをされてしまったり。カクレクマノミの賢さを人間も見習ったほうがいいですよね。 黒岩:はい、もっと人間は柔軟に考える必要があると思います。一貫して私がお話ししていることって、柔軟性なんです。生物の性って、とにかく多様で柔軟なものなんですよね。遺伝子の進化もいろいろな形があります。進化をしていく中で選択を繰り返し、少しずつ方向が定まっていくのが進化の蓄積なんです。 なので、どう転ぶかも、どうなっていくのかも分からない。実際の生物は小難しいことは何も考えちゃいないんですよね。 河合:人はとってもとっても小難しい。 黒岩:男はこうだ女はこうだ、それが当たり前だと思っている人は、本当にまだまだたくさんいらっしゃいます。でも、私たちも本来はそうあるべきです。なので、生物が持つ多様性とか柔軟性を、とにかく知ってもらいたいんです。 遺伝子進化ってそういうものじゃないんだよとか、性というのはそういうものじゃないんだよ、もっと多様なものなんだよということを、できるだけ私の研究を通して知ってもらいたいと思っています。 河合:今回の対談のタイトルは、かなり「男だの女だの」と限定してしまいましたが……。 黒岩:実は、こういうタイトルってキャッチーなので、私もよく使うんです。ただ、私の研究の結論としては、男性はいなくならないというのが結論なんですね。 河合:そこ、そこです! 男性はいなくならないってことは、Y染色体も? 黒岩:Y染色体はなくなると思います。 河合:本当になくなっちゃうんですか? 黒岩:はい。なくなると思います。 河合:Y染色体はなくなるけど、男性はいなくならない? しつこくてすみません。でも、大切なところなので。 黒岩:はい。Y染色体はいつか消えるけれど、男性はいなくならないというのが、私の研究成果というか結論です。それをもっと発信していけたらいいなとは思っています。 河合:えっと、ってことは、Y染色体がなくなって、今の男性が困ることってないんですか。 黒岩:今の男性が困ることはないと思います。なくなるのは将来の男性なので。その男性たちはY染色体がなくなっても、ちゃんと男性として生まれてこられる仕組みを獲得するだろうと、私は自分の研究から想像しているので、困ることはないと思います。 (河合薫氏の略歴はリンク先参照) 河合:それはもっと具体的にいうと、生殖の仕組み自体は、Y染色体がなくなっても変わらないというような理解でよろしいんでしょうか。 黒岩:そうですね。生殖の今ある基本的な仕組みというのは、おそらく変わらない。つまり、今は、Y染色体が関わっている部分を、別の遺伝子が肩代わりするというか、代わりにやってあげることで、いくらでもまかなえるように進化できると考えています。なので、今の男性としての役割とか仕組みというのは、ちゃんと引き継げるだろうと思っています』、「Y染色体はいつか消えるけれど、男性はいなくならない」、「Y染色体がなくなっても、ちゃんと男性として生まれてこられる仕組みを獲得するだろう」、なるほど。
・『男が多く生まれる理由は… 河合:じゃあ、たまたま自分は君と遺伝子が一緒だけど、何か俺はこんなの出ちゃったよとか、私はこんなふうになっちゃったわよ、みたいな、そういった社会になるかもしれないということですよね? 極論を言ってしまえば。というか、私、変なこと言ってますかね? 黒岩:どうでしょうね。それは分からないけど(笑)。 河合:要するに、Y染色体だってそのうち消えちゃうんだから、絶対的なものは何もなくて、もっと柔軟に変えられる社会になっていけばいいし、そういうふうな考えを一人ひとりが持ったほうが、実は自分も、他の人もハッピーに生きられるってことですよね。繰り返しになりますが。 黒岩:そう思います。先日、テレビで私が紹介させていただいたのですが、男の子を産んだ母親がY染色体を持つことになるケースもあるんですよ。 河合:出産が影響するということですか? 黒岩:XYの男の子の赤ちゃんを妊娠したときに、何らかの原因で、その赤ちゃんの細胞が女性の体の中に移動する場合があるんです。母親はXXで生まれているはずで、XXの細胞しかないはずなのに、出産を経験した後、体の細胞を調べるとXYの細胞が含まれているということが最近の報告で分かってきています。 河合:出産の話題でいいますと、男性のほうがたくさん生まれているというのは本当なんですか? まさか消えゆくY染色体が関係しているとか、あるいは男性のほうが生き物として弱いからたくさん生まれてくるとか? 黒岩:これは分からないんですね。私もすごく興味を持って調べたんですが、結論としては分からないというのが正直なところです。実際に日本において出生時に、0歳児の性比を見ると、男の子が1.1に対して、女の子が1ぐらいの割合とか、正確には、(男の子が)1.07とか1.05とか年によって若干変動があるんですけど、必ず男の子のほうがたくさん生まれるんですよね。 河合:社会環境が影響しているとか? あくまでも印象論ですが、テレビ業界に勤めている人の子供は女の子が多いといった、都市伝説めいたものもあったんですよね。 黒岩:そのあたりは私には分からないのですが、社会的な影響の可能性がいわれていたこともあります。例えば、男の子を望む人が多いので、出産のときに選択をして男の子を産んでいるのではないか、とか。 でも、長年のデータを見ると、男の子のほうがやっぱり生物学的にも多く生まれているようでして。じゃあ、何でなの? と考えたときに、論理的に説明できる答えが一切見つからないんですよね。 河合:染色体の影響があるとか? 黒岩:それも分かりません。Y染色体が小さいからY染色体を持っている精子のほうが軽くなるだろうとか、Y染色体を持った精子のほうが優先的に受精するから男の子が多いんじゃないかという説もあるにはありました。でも、他の哺乳類もY染色体は小さいので、それならオスのほうが多く生まれてくるはずです。ところが、そういったデータは全くないんです。人間以外は、性比のデータをちゃんと調べているわけじゃないので。散々調べたけど分かりませんでした。不思議な現象なんです。 河合:先生、そろそろお時間が迫ってきましたので、この対談を読んでくださっている読者、おそらく圧倒的に男性が多いと思いますが、先生のほうからメッセージをお願いできますでしょうか。Y染色体がなくなるのは、やはりちょっと切ない気もしますし……。 黒岩:そうですね。私、Y染色体がいつか消えてなくなってしまうというちょっと一般の方にはショッキングなメッセージ性を持った研究をしているんですけれども、実は染色体進化の分野では染色体が消えたり、新しく生まれたりって、実は普通にあることなんですよね。当たり前のことで、進化の1つです。 ただ、これが人の場合、Yは男性にとってとても大事なので、男性がいなくなっちゃうかもみたいなことにつながって、すごくショックを受ける人も多いんです。 ただ、Yがなくなっても男性がいなくなるわけではないですし、そういう単純なものではないので、そこだけは知ってほしいです。最後にお伝えします。 河合:はい。ということですので。どうかご安心を! というのも変ですね(笑)。本当にいろいろなお話をどうもありがとうございました。勉強になりました。 黒岩:はい、こちらこそありがとうございました』、「Y染色体がなくなる」「染色体進化の分野では染色体が消えたり、新しく生まれたりって、実は普通にあることなんですよね。当たり前のことで、進化の1つです」、「Yがなくなっても男性がいなくなるわけではない」、何がYの代わりになるのだろう。いずれにしろ、男と女の性差も、柔軟に考えるべきもののようだ。
タグ:「「驚愕の事実」すべての先進国で男子よりも女子の成績が高い科学的理由 「堅実性パーソナリティ」の性差か」 『スピリチュアルズ「わたし」の謎』(幻冬舎) 橘 玲 (その21)(「驚愕の事実」すべての先進国で男子よりも女子の成績が高い科学的理由 「堅実性パーソナリティ」の性差か、河合 薫らのオンライン対談2題:Y染色体がどんどん減少 やがて「男」は消える運命?、 性転換は自然の摂理? Yが消えても男は男) 女性活躍 PRESIDENT ONLINE 「ADHDの若者が成功している例がいくつもある」「革命家やアジテーター、あるいは芸術家として成功することもある」、「人類が進化の大半を過ごしてきた(旧石器時代の)環境では、きわめて有利なパーソナリティだった。 それが「発達障害」とされるようになったのは、わたしたちが生きているのが、人類の進化が想定しないほど「とてつもなく安定した社会」だからだ。その結果、本来であれば「正常」なパーソナリティが「不適応」になってしまったのだ」、「ADHD」への見方が変わった。 「(男が両極にばらついているのだから)堅実性の平均近くでは女の割合が高くなる。これが、「女の方が男より真面目だ」といわれる理由ではないだろうか」、見事な謎解きだ。 ここまで世界的に男女差が明確出ているとは驚かされた。 「女の子の堅実性は平均付近に集まるのに対し、男の子は堅実性が高い方にも低い方にもばらついている。 その結果、堅実性が低い男子生徒が学校教育から脱落しはじめている」、なるほど。「内向的な・・・日本人は、平均的なブレーキ(前頭葉の活動)でも堅実性スコアが高くなり、高い神経症傾向の影響もあって、電車の時間を1秒単位で管理するようになるのではないだろうか」、面白い診断だ。 日経ビジネスオンライン 河合 薫 黒岩麻里 オンライン対談「Y染色体がどんどん減少 やがて「男」は消える運命?」 「性」の決まり方は多用なようだ。 「哺乳類のYはどんどん小さくなって、遺伝子が減ってきています」、「染色体が小さくなって、遺伝子が淘汰されていくという運命は、別に人、哺乳類に限らず、他の生物がたどっている場合もあります」、そんなことが起きているとは・・・。 「実はXXYの方はもっと多くて、6~7割いらっしゃる・・・つまり単純に「XXは女性、XYは男性」という分け方はできないというのが、今の考え方です」、なるほど昔学校で習った知識は古くて使えないようだ。 「性別という言葉は、やっぱり本当は語弊があるんです。生物学的に考えると、別ではない。つながっているんです。男性、女性、雌雄ってつながっていて、どの辺の位置にあるか、というのは人によってそれぞれです。男側、女側に二分できるものじゃないんですよ」、「魚のある種ではYでオスを決めるんですが、別の種は全然別の染色体でオスを決めていたり、Yを簡単に捨てたりするんですよね。性染色体を、コロコロ乗り換えたりすることもあります」、生物の世界は奥が深いようだ。 「性転換は自然の摂理? Yが消えても男は男」 なお、対談の2回目は有料だったので、紹介は省略、これは第三回目である。 「カクレクマノミは・・・1番体が大きい個体がメスなんです。2番目に大きいのがオスで、それ以外は一応オスなんですけど、体が成熟しないので、オスでもメスでもないというか、繁殖に参加していません」、アリやハチも、確か幼虫時代の食べ物で、女王、オス、働き手に分かれると記憶している。 「Y染色体はいつか消えるけれど、男性はいなくならない」、「Y染色体がなくなっても、ちゃんと男性として生まれてこられる仕組みを獲得するだろう」、なるほど。 「Y染色体がなくなる」「染色体進化の分野では染色体が消えたり、新しく生まれたりって、実は普通にあることなんですよね。当たり前のことで、進化の1つです」、「Yがなくなっても男性がいなくなるわけではない」、何がYの代わりになるのだろう。いずれにしろ、男と女の性差も、柔軟に考えるべきもののようだ。