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ホテル(その3)(買収合戦の果てに「ハゲタカ」に食い尽くされた「ユニゾ」がたどる末路 債務不履行の危機も、「30泊36万円」超高級ホテル暮らしは定着するか 都内の名門老舗ホテルが長期滞在プランで勝負、「安さ」の裏にある過酷な労働実態 スーパーホテル 名ばかり「支配人」の悲惨) [産業動向]

ホテルについては、昨年5月28日に取上げた。今日は、(その3)(買収合戦の果てに「ハゲタカ」に食い尽くされた「ユニゾ」がたどる末路 債務不履行の危機も、「30泊36万円」超高級ホテル暮らしは定着するか 都内の名門老舗ホテルが長期滞在プランで勝負、「安さ」の裏にある過酷な労働実態 スーパーホテル 名ばかり「支配人」の悲惨)である。

先ずは、本年3月4日付けデイリー新潮「買収合戦の果てに「ハゲタカ」に食い尽くされた「ユニゾ」がたどる末路 債務不履行の危機も」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2021/07021040/?all=1
・『ホワイトナイトの裏切り  元東証1部上場のみずほ系不動産会社「ユニゾHD(ホールディングス)」の経営環境は、2年前、旅行大手代理店「エイチ・アイ・エス」から仕掛けられた敵対的TOB(株式公開買い付け)を機に一変した。対抗策として、外資ファンドと組んで従業員による自社買収(EBO)を実施したものの、事態が好転することはなかった。 「ユニゾHD」が敵対的買収の標的にされたのは2019年7月。HISが発行済み株式の45%取得を目論み、TOBを実施。ユニゾは、友好的な買収者「ホワイトナイト」として米投資ファンド「フォートレス・インベストメントG(グループ)」に白羽の矢を立てた。 防衛は成功したかに見えたが、フォートレスの裏切りに遭い、さらには世界最大級の米投資ファンド「ブラックストーンG」から狙われる。そこに、「悪魔の囁き」がもたらされた。 米投資ファンド「ローン・スターG」が国内上場企業で初のEBOを提案してきたのだ。EBOとは、従業員が自身の勤務する企業を買収するというもの。ローン・スターの役回りは買収資金を用立てることだった』、この件の詳細は、このブログの昨年5月28日に紹介した。
・『ジャンク債の扱い  ユニゾ関係者によると、「ユニゾの“中興の祖”と呼ばれる小崎哲資前社長が主導し、ローン・スターの提案に乗りました。400人弱の社員のうち73人が出資し、EBOの受け皿“チトセア投資”が設立された。昨年4月、チトセア投資はローン・スターからの1510億円の借り入れと優先株の割り当てによる550億円の計2060億円を調達し、それを元手に最終的には買い付け価格を1株6000円にまで引き上げ、EBOを成立させたのです」 結果、ユニゾは非公開化で独立を保てたものの、EBOの資金を捻出するために、次々と「虎の子」を手放さざるを得ず、優良資産は安く買い叩かれ、集客力の低いホテルなどが売れ残った。昨年12月、日本格付研究所によるユニゾ債の格付けは、投資不適格、いわゆるジャンク債の扱いの「BBプラス」へと引き下げられている。 EBO成立後も、ユニゾ倒産を織り込んだマネーゲームに勝算ありと見込んだ別の外資ファンドから狙われている。ハゲタカによる買収を防ぐために戦った結果、倒産がちらつく状態に陥ってしまったのだ。 「週刊新潮」2021年3月4日号「MONEY」欄の有料版では、ユニゾがハゲタカファンドに食い尽くされる経緯を詳報する』、無理をした「EBO」は後始末が大変なようだ。

次に、3月12日付け東洋経済オンライン「「30泊36万円」超高級ホテル暮らしは定着するか 都内の名門老舗ホテルが長期滞在プランで勝負」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/416068
・『緊急事態宣言の延長とともにGoToトラベル事業の再開も遠のき、ホテル業界の受難が続いている。 帝国データバンクの調査では、2020年の宿泊業の倒産は127件と、過去3番目の水準だ。 同社東京支社の丸山昌吾情報取材課長は、「取引先が代金支払いの延期に応じて延命しているところも多い。国の助成金の先行きをみて事業を続けるか、様子を見ている経営者がかなりいる」と話し、旅館・ホテル業界はこれから倒産ラッシュを迎えそうだ』、興味深そうだ。
・『打開策として打ち出したアパート事業(東京・九段下のホテルグランドパレスが6月末で営業を終了したり、藤田観光が大阪市内の老舗宴会場「太閤園」を売却したりするなど、名門企業にもリストラの嵐が吹き始めている。 ホテル御三家の一角、帝国ホテルの2020年4~12月期の売上高は、前年同期比61.6%減の166億円にとどまり、86億円の最終赤字(前年同期30億の黒字)に陥った。宿泊客の50%を占めるインバウンド客が蒸発し、残りの国内も法人客が振るわない。「足元の稼働率は10%ほど。従業員も雇用調整助成金を受けながら適宜休業させている」(帝国ホテルの照井修吾広報課長)という惨状だ。 その帝国ホテルが苦境の打開策として打ち出したのが、「サービスアパートメント」サービスだ。3月15日から始まる同サービスは「30泊36万円」。1泊あたり1万2000円で帝国ホテルに宿泊できる計算で、帝国ホテルはサービス開始に合わせて3つのフロアで一部の部屋を改修し、洗濯機や電子レンジを自由に利用できる共用スペースを設ける。 駐車場は無料で、宿泊期間中、定額でルームサービス(30泊プランで6万円)やシャツなどのランドリーサービス(同3万円)が受けられる。2月1日から予約を開始したところ、わずか数時間で全99室が完売した。 同サービスのきっかけは2020年5月に定保英弥社長が社員に一斉送信した「緊急メール」だった。 「難局を乗り越えるため、皆さんのアイデアを募りたい」 社長の呼びかけに、社員から約5600件の提案が寄せられ、その中に長期滞在プランやサテライトオフィスのアイデアがあった。 ただし、帝国ホテル側はホテル事業以上に注目されることに困惑気味で、「料金はホテルとすれば安いかもしれないが、これはあくまでもアパートメント事業。(シャンプーや歯ブラシなどの)アメニティの交換はないし、シーツの交換も3日に1回。われわれが普段提供しているホテルのサービスと比べられても困る」と照井課長は強調する』、ホテルのブランドイメージを維持できるのだろうか。
・『新しいライフスタイル「ホテリビング」  実際、価格設定の参考にしたのは、同業の長期滞在プランではなく、不動産業者の家具付きレジデンス=サービスアパートメントだった。帝国ホテルの新サービスは旅館業法上の「宿泊」ではあっても、ホテルで暮らす「ホテリビング(ホテル・リビング)」という新しい業態。新しいライフスタイルを世の中に投じる意味があるのだという。 「当然、料金設定を含め、アパートメント事業を始めることで、ブランドイメージ悪化の議論はあったが、38年前にホテルに隣接する複合ビルでオフィスビル賃貸事業を始めたときもたくさんの批判を受けた。いまはその不動産賃貸が経営を底支えしている。バイキング形式も帝国ホテルから全国に広がったが、サービスアパートメントも事業の柱として定着させたい」と照井氏は話す。 他の老舗ホテルも帝国ホテルに追随している。ホテルニューオータニは朝昼夕3食付きの「新・スーパーTOKYOCATION」を30泊75万円でリニューアル販売。京王プラザも30泊21万円で朝食付きの「”暮らす”@the HOTEL」を始めた。 ただ、都内のあるホテル関係者は「ホテルが不動産業の発想に近づいている。背に腹は代えられないが、GoToトラベルの影響に加えてアパートメント事業のような価格に引きずられ、コロナ後も単価が容易に戻ってこない可能性もある」と危機感を吐露する。 一方、「われわれは徹底的にホテルにこだわる」というのは、首相官邸そばに立つ名門ホテル「ザ・キャピトルホテル東急」だ。北大路魯山人ゆかりの星岡茶寮跡地に建つ同ホテルは政治家とのゆかりも深く、レストラン「ORIGAMI」は首相動静に毎日のように登場することで知られている。 同ホテルは3年前に東急ホテルズから同ホテル総支配人に就任した末吉孝弘氏のもと、海外のラグジュアリー層を取り込むべく、フォーブズ・トラベルガイドの星獲得を目指した。 末吉氏は「ホテル業の真価は床面積を効率よく売ることだけではない。外資系に負けない価格帯できちんとしたサービスをすれば満足してもらえる。自信を持って行こうということで、権威あるホテルガイドの星を取るというわかりやすい目標を掲げた」と語る』、「隣接する複合ビルでオフィスビル賃貸事業・・・が経営を底支えしている。バイキング形式も帝国ホテルから全国に広がった」、イノベーティブな歴史もあるようだ。「バイキング形式」の元祖だったとは初めて知った。
・『悲願のホテル部門「5つ星」を取得  これまで接客向上やスイートルームの改装、客室家具の入れ替えなどを行ってきた。冷蔵庫に置く水の品質やペットボトルのデザインにもこだわり、宿泊客が清掃を依頼する際ドアノブにかける札には間伐材を導入した。レストランのストローも1本50円の木製のものに変えた。こうした積み重ねで2017年には3万円程度だった平均客室単価は5万円程度に上昇した。 同ガイドの5つ星ホテルは、マンダリンオリエンタル東京やパレスホテル東京など国内に10あるが、900項目にのぼる覆面調査を経た2020年9月、悲願のフォーブズ・トラベルガイド「ホテル部門」の5つ星(ファイブスター)を取得した。 ただ、いまはコロナ禍の真っただ中。キャピトル東急の宿泊客の75%を占める外国人客が一気に蒸発し、GoTo中断もあって足元の稼働率は10%台。閑古鳥の鳴く惨状は都内の他のホテルとまったく変わらない。それでもロックバンド、クイーンの名曲「The show must go on」(ショーを止めるわけにはいかない)の言葉をバックヤードに掲げ、従業員を鼓舞しながら売店とバー以外は開業させているという。 「コロナ禍でもホテルを愛用してくれるお客さんがいる。そうしたお客さんにコロナを理由にサービスを断ったり、レストランを閉めたりすることはできない。休業して助成金や協力金をもらうほうが効率的だが、けっして閉めてはいけないホテルがある」(末吉氏) キャピトル東急は2月末、ビジネスパースン向けに、スイートルーム(104.7平方メートル)の長期滞在プランを打ち出した。ジムやプールも無料で使えるが、料金は30泊210万円など。愛犬を連れて宿泊ができる部屋も用意し、多様な国内富裕層の需要に応える取り組みも始めたところだ。 かつてない不況に見舞われたホテル業界。「正解」の見えない暗中模索が続くが、その歩みを止めないホテルが結局、生き残ることになる』、高級ホテルの生き残り策も大変なようだ。

第三に、7月30日付け東洋経済Plus「「安さ」の裏にある過酷な労働実態 スーパーホテル、名ばかり「支配人」の悲惨」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/27642
・『柔軟な働き方の代表例である個人請負。 無権利状態であるがゆえに予期せぬ事態に追い込まれる人たちがいる。 1泊5000円前後、無料の朝食と温泉付き――。 そう聞けば、ピンとくるビジネスパーソンもいるだろう。全国に166店舗を展開するビジネスホテルチェーン「スーパーホテル」(本社:大阪市西区)だ。客にとってはリーズナブルなこのホテル。しかし、そこで働く店舗責任者の支配人のほとんどは、どれだけ長時間働いても残業代はいっさいもらえない。 2020年3月、新型コロナウイルスの感染拡大がいよいよ深刻になってきた頃だ。1年前なら外国人観光客であふれていた上野駅近くのビジネスホテル街は、閑散としていた。「スーパーホテルJR上野入谷口店」で住み込みで働く副支配人の渡邉亜佐美さんは、5人の男性たちに囲まれていた。 突然ホテルに入ってきた男性らは、制止を振り切ってフロントの受付や予約システムなど店舗業務を掌握し、ホテルを占拠。渡邉さんはフロントの奥にある居住スペースに追いやられた。恐怖を感じた渡邉さんと支配人のAさんは、荷物も持たず着の身着のままホテルを出て行かざるを得なかった。 実はこの男性らは、スーパーホテルの副社長と社員だった。いったい何が起きたのか』、どういうことなのだろう。
・『男女ペアで住み込み、24時間働き詰め  この騒動から溯ること2年。2018年4月、渡邉さんとAさんは求人サイトで見つけたスーパーホテルの「ベンチャー支配人・副支配人」に応募した。現在も募集されている求人内容は、こうだ。 応募の条件は、夫婦やカップルなど「男女ペア」であること。男女2人でホテルの支配人・副支配人業務を委託され、その報酬として4年間で4650万円以上が支払われる。4年間勤めあげれば、起業や独立の資金として3000万円ほどの貯金ができるという触れ込みだ。2人が応募したのも、自らの事業の立ち上げに必要な資金を貯めるためだった。 「スーパードリームプロジェクト」と称される求人募集(インターネット上の求人広告より) 2人は89日間に及ぶ研修を受けた後、報酬2人合わせて1100万円で1年間の業務委託契約を締結した。業務委託契約書では、開業届を出して支配人が個人事業主となること、勤務先のホテルに住民票を移すことが義務付けられていた。 こうして2人は「個人事業主」として、JR上野入谷口店(69部屋)で働き始めた。だが、過酷な労働環境に苦しむことになる。 支配人の業務内容は、フロント業務から売上管理、客室の点検、朝食の準備まで、ホテルの業務全般で、勤務は長時間に及んだ。支配人であるAさんの勤務時間は毎日13時から翌朝5時半まで、副支配人の渡邉さんは同じく朝5時半から21時まで。会社の業務要項では、消防管理のため2人以上を常駐させることが義務づけられているため、実質、24時間いることが求められることになる。 それ以外の時間は、フロントの奥にある居住スペースで仮眠をとる。居住スペースといっても、防犯カメラの映像や電話機が設置された狭い宿直室だ。寝ている間も、夜間のチェックインや問い合わせで起こされることもある。 さらに、ホテルを365日、年中無休で営業する契約であるため、働き始めてから1日も休めなかった。病気や妊娠などで支配人らが休む場合は、本社から代行要員が派遣される制度がある。しかし、この代行には1日1人に付き3万円と本社からの交通費を支配人らが支払う必要があった。 仮に女性が妊娠して1カ月間休む場合、100万円以上の出費となる。そのため、実質的に支配人らが長期で休むことは難しい』、これでは「名ばかり「支配人」で、奴隷労働だ」。こんな脱法措置が認められるのだろうか。
・『「最低賃金」も守られない  まるで休暇が取れない勤務体制は、通常の企業なら労働基準法違反に当たる働かせ方だ。だが、業務委託契約では労働基準法などの労働法全般が適用されない。労働者であれば守られるはずの最低賃金や解雇の規制はない。年金や健康保険も自己負担だ。一方それは会社側にとっては、社会保険料や時間外手当の負担が生じないことになる。 実際、支配人らへの報酬は最低賃金にも満たない。東京都の最低賃金である1013円で、2人を24時間常駐させた場合の人件費を試算すると、年間約1904万円が必要になる。一方、2人に支払われた1年間の報酬額は1170万円だった。 しかもその報酬には、アルバイト従業員に支払う人件費も含まれている。毎月分割で支払われる報酬から人件費を支払うと、「手元に残るお金はほとんどなく、貯金どころではなかった」とAさんは言う。 こうした個人事業主による業務委託店舗は、同社の採用サイトによるとスーパーホテル全店舗(2021年3月末で166)の75%を占める。一方、社員が運営する直営店は5%。直営店では6、7人の社員が勤務し、業務委託店舗より手厚い人員体制がとられている。 業務委託店舗について、スーパーホテルの採用サイトには次のようにうたわれている。 「ホテル業界では直営店舗かFC(フランチャイズ)店舗の展開がセオリーとされています。この業界の常識に一石を投じる形で、個人事業主に全ての運営を委ねるベンチャー支配人制度は生まれました」 ホテル業界で珍しい業務委託店舗は、不動産業を手がけていた創業者である現会長がつくったものだ。会長の著書『1泊4980円のスーパーホテルがなぜ「顧客満足度」日本一になれたのか?』(アスコム、2013年発行)には、業務委託店舗の仕組みできた経緯が記されている。 「これは、私が不動産事業でシングルマンションを手がけていたとき、管理人に住み込んでもらったことがヒントになっています」 さらに同制度については、こうつづられている。 「支配人も副支配人もスーパーホテルに住み込みで勤務するのが規則ですし、二四時間体制で四年間を過ごします。当然、同じ居室で暮らすわけですから、夫婦のほうがなにかと都合がいいのは当たり前です」 こうした同社独自の制度で、1996年に1号店を出店してから順調に店舗を増やし続けた。2021年は166店舗まで拡大。コロナ流行下で直近1年の売り上げは減少したもの、前年までは20年間増収を続けた』、「東京都の最低賃金である1013円で、2人を24時間常駐させた場合の人件費を試算すると、年間約1904万円が必要になる。一方、2人に支払われた1年間の報酬額は1170万円だった。 しかもその報酬には、アルバイト従業員に支払う人件費も含まれている」、「報酬」は徹底的に安いようだ。こうした店舗がすでに「166店舗まで拡大」とは驚かされた。
・『使い切った電池を入れ替えるよう  業務委託契約書の規定によると、売り上げ下がれば契約を解除される可能性があったため、Aさんと渡邉さんは1日も休まず営業を続けた。その結果、高い稼働率を維持してきた。しかし、ついに体が悲鳴を上げた。 勤務開始から1年を過ぎたころ、Aさんは過労で動悸や息切れを起こすようになった。耳鳴りと頭痛が3カ月間続き、2020年1月には勤務中に倒れ、救急車で病院に運ばれた。それでも、数時間後には仕事に復帰したという。渡邉さんも、1日2時間ほどの睡眠しか取れない日々が続いていた。 「最後の勤務日は5分も立っていられなかった」とAさんは振り返る。 「寝ていてもいつ起こされるかわからず、目を閉じていても、寝ているのか起きているのかわからない状態だった。お酒がないと寝つけないようになり、睡眠導入剤も飲んでいた。熟睡すると死ぬのではないかと不安だった」 心身ともに限界を感じるようなった2人は、個人で加入できる労働組合「首都圏青年ユニオン」に加入。2020年1月に、就労環境の改善を求めて会社側に団体交渉の申し入れをした。こうした最中の同年3月、冒頭のとおり、複数の男性社員が押しかけ、2人はホテルを出ていかざるをえなくなった。 その後2人には、業務委託契約を解除するという旨の通知が会社から届いた。この頃、コロナの流行により同ホテルでは、外国人宿泊客が激減。だが、会社側は支配人らの業務の怠慢によって客室の稼働率が低下したことを契約解除の理由に挙げている。 2人は、仕事と住まいの両方を同時に失った。副支配人の渡邉さんは話す。 「無理な働き方を強いられるため、ほかの店舗でもつぶれる人がいて1~2年で新しい支配人に入れ替わる。まるで使い切った電池を新品に入れ替えるように感じた」 Aさんらは2020年5月、スーパーホテルに対して解雇の無効や未払い残業代の支払いを求める訴訟を起こした。 裁判の最大の争点は、支配人Aさんや渡邉さんの労働実態が、労働基準法上の「労働者」に当たるかどうかだ。労働者であるかは契約形式のみではなく、その働き方の実態で判断される。厚生労働省が示す「労働者」の基準は、使用者の指揮監督下で拘束されて労働を提供し、その労務の対償を支払われる者とされる。 2人は会社の指示のもと、ほぼ24時間拘束されていた。膨大なマニュアルによって業務を規定され、ホテル運営の裁量権はほぼない。よって、本来時間や場所を制約されず、自らの裁量で働けるはずの業務委託には当たらない。働き方の実態は労働者のため、使用者は不当な解雇はできず、残業代を支払う必要がある。これがAさんらの主張だ。 対して、スーパーホテル側は「名実ともに業務委託である」(裁判の答弁書)と全面的に否定している。男性社員が押しかけたことに関しては、業務補助を行おうとしたが、2人が業務を放棄して会社に損害を与えたと主張。提訴したときに記者会見を開いて会社を批判したことが名誉毀損行為に当たるとして、損害賠償を求めて反訴している』、「2人は会社の指示のもと、ほぼ24時間拘束されていた。膨大なマニュアルによって業務を規定され、ホテル運営の裁量権はほぼない。よって、本来時間や場所を制約されず、自らの裁量で働けるはずの業務委託には当たらない。働き方の実態は労働者のため、使用者は不当な解雇はできず、残業代を支払う必要がある」、2人の主張は説得的だ。
・『フランチャイズとは別物  東洋経済の取材に対して、スーパーホテル側は「係争中のため対応は見送る」と回答した。 裁判所に提出された書面によると、時間や場所の拘束性について「ホテルに住民票を異動するように求めているが、個人事業主として税法上の便宜を図ることが目的で、ホテルの居住スペースに拘束する趣旨はない」、「業務をアルバイトに自由に割り振ることができる」と反論している。 ただ、アルバイトを雇っても、責任者である支配人らが長時間ホテルを空けることはできない。さらに、前述したような最低賃金に満たない報酬からアルバイトの人件費を賄わなければならない状態だった。 スーパーホテルはこうも主張している。支配人らの業務委託契約を「フランチャイズ契約と同視すべき」として、フランチャイズの事業主と同じだとする。 しかし、コンビニエンスストアなどが行うフランチャイズ契約は、会社が加盟店に対して商標などの権利を付与し、その対価として加盟店の事業主が売上の一部などの金銭を支払うしくみだ。売上は事業主の収入となる。 それに対し、スーパーホテルの業務委託店舗は金銭の流れが逆だ。会社側が支配人に一定の報酬を支払い、売上は会社に入る。会社側の評価による報奨金はあるものの、いくら売上を増やしても支配人らの収入増にはならない。 一方、稼働率の低下やスーパーホテルが定める評価基準を下回ると、契約解除の可能性がある。さらに、支配人側から中途解約をすれば、会社は毎月報酬から天引きしていた保証金を没収し、損害賠償請求ができる。こうした会社側に有利な内容が、Aさんらの業務委託契約書には記されていた。 Aさんらが契約書を目にしたのは、ホテルでの長期研修の終盤だった。応募時に受けた説明とは異なる内容だったが、すでに自宅や家財道具を引き払っていたため、後戻りはできなかったという。 「業務委託契約には規制をかける法律がない。不平等な契約で、使用者の都合のいい方法で労働者を使える。これを放置すれば、労働法に守られない『働かせ放題』が広がる可能性がある」。首都圏青年ユニオンの原田仁希委員長は、こう指摘する。 現在、裁判は継続中だ。2021年5月、同ユニオンは東京都労働委員会に、スーパーホテルが団体交渉に応じず、強制的にAさんらを職場から追い出したことに対して、不当労働行為の救済を求める申し立てを行った。 「私たちが声を上げたことを機に、今まで被害を受けた人が声上げられるといい」と渡邉さん。 実態は雇用契約の労働者と同様にもかかわらず、業務委託契約を結ぶ、名ばかりの「個人事業主」はあらゆる業種に広がっている。無法地帯はこのまま放置されるのか。この裁判の行方が、1つの試金石となる』、「名ばかりの「個人事業主」はあらゆる業種に広がっている」、「無法地帯」をこのまま放置してはならない。
タグ:ホテル (その3)(買収合戦の果てに「ハゲタカ」に食い尽くされた「ユニゾ」がたどる末路 債務不履行の危機も、「30泊36万円」超高級ホテル暮らしは定着するか 都内の名門老舗ホテルが長期滞在プランで勝負、「安さ」の裏にある過酷な労働実態 スーパーホテル 名ばかり「支配人」の悲惨) デイリー新潮 「買収合戦の果てに「ハゲタカ」に食い尽くされた「ユニゾ」がたどる末路 債務不履行の危機も」 この件の詳細は、このブログの昨年5月28日に紹介した。 無理をした「EBO」は後始末が大変なようだ。 東洋経済オンライン 「「30泊36万円」超高級ホテル暮らしは定着するか 都内の名門老舗ホテルが長期滞在プランで勝負」 ホテルのブランドイメージを維持できるのだろうか。 「隣接する複合ビルでオフィスビル賃貸事業・・・が経営を底支えしている。バイキング形式も帝国ホテルから全国に広がった」、イノベーティブな歴史もあるようだ。「バイキング形式」の元祖だったとは初めて知った。 高級ホテルの生き残り策も大変なようだ。 東洋経済Plus 「「安さ」の裏にある過酷な労働実態 スーパーホテル、名ばかり「支配人」の悲惨」 どういうことなのだろう。 これでは「名ばかり「支配人」で、奴隷労働だ」。こんな脱法措置が認められるのだろうか。 「東京都の最低賃金である1013円で、2人を24時間常駐させた場合の人件費を試算すると、年間約1904万円が必要になる。一方、2人に支払われた1年間の報酬額は1170万円だった。 しかもその報酬には、アルバイト従業員に支払う人件費も含まれている」、「報酬」は徹底的に安いようだ。こうした店舗がすでに「166店舗まで拡大」とは驚かされた。 「2人は会社の指示のもと、ほぼ24時間拘束されていた。膨大なマニュアルによって業務を規定され、ホテル運営の裁量権はほぼない。よって、本来時間や場所を制約されず、自らの裁量で働けるはずの業務委託には当たらない。働き方の実態は労働者のため、使用者は不当な解雇はできず、残業代を支払う必要がある」、2人の主張は説得的だ。 「名ばかりの「個人事業主」はあらゆる業種に広がっている」、「無法地帯」をこのまま放置してはならない。
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