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決済(その8)(決済はキャッシュレスから一気にカードレス時代 「デジタルの利便性」の裏に潜むリスクとの対峙、PayPal Japan、Paidy両トップに直撃① 後払いPaidy「上場目前」でM&Aに舵切った真因、後払いの古参ネットプロテクションズ新規上場 若者の「分割払い」傾倒にリスク 先駆社長の警鐘) [金融]

決済については、昨年5月31日に取上げた。今日は、(その8)(決済はキャッシュレスから一気にカードレス時代 「デジタルの利便性」の裏に潜むリスクとの対峙、PayPal Japan、Paidy両トップに直撃① 後払いPaidy「上場目前」でM&Aに舵切った真因、後払いの古参ネットプロテクションズ新規上場 若者の「分割払い」傾倒にリスク 先駆社長の警鐘)である。

先ずは、8月26日付け東洋経済オンラインが掲載した三菱UFJ銀行出身で 帝京大学経済学部教授・博士(経済学)の宿輪 純一氏による「決済はキャッシュレスから一気にカードレス時代 「デジタルの利便性」の裏に潜むリスクとの対峙」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/449199
・『スマホ決済の急速な拡大など、決済のキャッシュレス化が進んでいる。テクノロジーの進歩もあって、近い将来、キャッシュレスどころか顔認証などの生体認証で決済が行われるようになると言われるが、利便性を手放しで喜んでよいのだろうか。 『決済インフラ入門【2025年版】:スマホ決済、デジタル通貨から銀行の新リテール戦略、次なる改革まで』を上梓した宿輪純一氏が、決済の今後と課題について解説する』、興味深そうだ。
・『キャッシュレス決済の推進  近年、“決済”に注目が集まっている。日本では伝統的に“現金”決済が強く、2000年あたりでは全決済に占める“現金”決済の割合は約7割程度、それに次ぐ“クレジットカード”決済が約2割程度であった。これは当時、金融関係業務では銀行が力を持っており、銀行がクレジットカードを拡販していたことが一因とも考えられる。その後、“電子マネー”(前払い式支払い手段)や“デビットカード”も少しずつ増加していった。 決済は、銀行法によって「固有業務」として銀行に限る、というのがそれまでの一般的な考え方だった。しかし、2009年に「資金決済法」が制定され、銀行以外も決済を行えるようになるなど規制緩和が進められた。 金融(Finance)と技術(Technology)の合成語として“フィンテック”(Fin-Tech)という言葉が作られ、まさに金融機関以外の企業が“決済”業界に参入してきた。ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)もフィンテックに含まれる。ビットコインは当初は廉価な“送金”(決済)のために作られた金融商品であった。 さらに、経済産業省がキャッシュレス化の調査・検討を行い、その方針「キャッシュレス・ビジョン」を2018年に発表、日本でキャッシュレス化が政策として推進されることとなった。 現金以外の「キャッシュレス決済(支払い)手段」は、モノの購入とお金の受渡を意識しており、①電子マネー(前払い)、②デビットカード(同時払い)、③クレジットカード(後払い)の3つがある。この“モノ”の購入の推進があることに、金融庁ではなく、経済産業省が進める意義があり、これらの決済手段を拡大させていくことになる。 金融業界とフィンテック業界では、“言葉”も違う。例えば、金融業界ではお金の支払いにより商取引が終了することを“決済”というが、フィンテック業界ではモノを買うときにお金を払うことを“決済”といい、いわゆる送金は“支払い”という。 そのキャッシュレス決済であるが、その媒体は、最近こそ「スマホ(スマートフォン)決済」が伸びてきているが、決済手段でスマホ決済というものはない。QRコード決済というものもない。それらはあくまでも前述の3つの決済手段の媒体なのである。そのため、ここでは、スマホ決済は“カード等”として3つの決済手段に内包することとする。 3つの決済手段は、その“カード等”を持っていることが、本人確認ともなり、(最近では暗証番号がなくてもある程度)対応が可能になる。紛失の場合には、カード会社への即時の連絡が義務づけられており、悪用されないようその機能を停止する。 その本人確認の基本はそのカード等を“保持”(保有)していることである。それが本人確認のベースとなる。もちろん、最近ではさまざまな取引のときに“写真付き”を求められるようにもなりつつあるが、まだそこまでは至っていない』、「本人確認の基本はそのカード等を“保持”(保有)していることである。」、なるほど。
・『認証技術の発展が決済を変える  近年、AI(人工知能)の一環として「生体認証」の発達が著しい。顔認証のほかにも、指紋・虹彩・声などの生体情報を使用して、正確に本人確認を行うものだ。顔認証自体が高度化し、空港の入口では、顔認証によって問題のある人の入場を防止し、安全度を高めている。最近の顔認証は、瞳の間、骨格等、化粧や変装では効き目がないレベルである。 本人確認ができることによって、企業でも、保安上の対応をはじめとして、金融取引なども可能となってきている。そして、さらには本人確認によって、クレジットカードのような、クラウド的に保管されている“個人の信用”に基づく取引が可能になる。すなわち「カードレス」で取引が可能になる。 さらに、最近では、日本でも東京駅近辺では、顔認証によって広域でさまざまなビルの入館管理が行われようとしている。「カードレス社会」の到来が実際に始まりつつある。これはこれで非常に手間が省け、便利になることは間違いない。しかし、さまざまな物事はプラスとマイナスの面を併せ持つものである。 このような「カードレス社会」すなわち「デジタル化された社会」では、例えば顔認証の本人確認が一般化し、個人の行動がデータの“中央管理機関”に収集されるというリスクがある。それはその中央管理機関がわれわれにとってネガティブな行動をしなければよいが、もしも、そうではないときにはプライバシーの問題になる。いわゆる〝デジタル化”の問題である。 歴史的に見ても、戦前のドイツなどは不法な手法によって、個人情報を収集し、社会的に個人の弾圧に使用した。そのような過去によって、欧州では個人情報の管理には非常に敏感な対応をしている。日本も基本的には欧州に近い対応をしている。) 顔認証による本人確認に近いものとして、中国が試行を進めるデジタル人民元がある。22年2月の冬季オリンピックまでに正式導入をしたいとして国を挙げて推進している。これは管理(統制)が厳しい中国であるからできるわけで、日本を始めとした“いわゆる先進国”では、一部の方々に誤解があるが、デジタル通貨はこのような個人情報の問題から導入は困難であるし、導入の予定はない。あくまでも“前向き”な分析・検討の段階にとどめている』、「「カードレス社会」すなわち「デジタル化された社会」では、例えば顔認証の本人確認が一般化し、個人の行動がデータの“中央管理機関”に収集されるというリスクがある。それはその中央管理機関がわれわれにとってネガティブな行動をしなければよいが、もしも、そうではないときにはプライバシーの問題になる。いわゆる〝デジタル化”の問題である」、「デジタル通貨はこのような個人情報の問題から導入は困難であるし、導入の予定はない。あくまでも“前向き”な分析・検討の段階にとどめている」、なるほど。
・『カードレス社会の利便性とリスク  「カードレス」社会においては、例えば金融取引にとって、取引の“開始”である「本人確認」は非常に大事な意味を持つ。とくに「生体認証」の本人確認は重要な役割を果たすとみられている。実際に導入が開始されている。小職が勤務した銀行でも、オフィスでは一部、約10年前でもすでに生体認証(指紋)が導入されていた。一般企業のオフィスの入館チェックの顔認証も同様である。 金融取引でもATMで指紋認証や静脈認証で本人確認が導入されている。ちなみに、日本人は指紋認証の登録には、警察における指紋登録を思い出すようで、抵抗感があるようである。しかし、世の中の進行は早い。今やスマホの本人確認として普通に生体認証が使われている。このように顔認証などの生体認証に抵抗感がなくなっていくことが、すなわち「カードレス社会」の必要条件である。 しかし顔認証などの生体認証などで金融取引ができる「カードレス社会」もいいことばかりではない。生体認証とはそもそも“変えられない”その人に唯一無二の身体的特徴のことである。 これが何であれ、生体認証が犯罪者に一度盗まれると、大変困る事態になる。顔にしても、指紋にしても変えられないからである。逆に、この生体認証のベースとなるAIシステムの管理こそ厳格に行わなければならない。これは本人確認に限らず、ほかのデジタル化された情報でもいえることである。 次に来る「カードレス社会」では、生体認証に基づく本人確認がその根幹をなすため、クレジットカードをはじめとしたあらゆるカード等を持たなくてよくなる一方で、リスクも生じることになる。そもそも〝デジタル化”とはそういうものであるが、利便性とリスクは表裏一体なのである』、「生体認証が犯罪者に一度盗まれると、大変困る事態になる。顔にしても、指紋にしても変えられないからである」、確かに「利便性とリスクは表裏一体」、なので、私は現段階では「生体認証」に反対である。

次に、12月28日付け東洋経済Plus「PayPal Japan、Paidy両トップに直撃① 後払いPaidy「上場目前」でM&Aに舵切った真因」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/29291
・『日本の金融業界をどよめかせた「巨額買収」は、いかにして実現したのか。ペイディとペイパルジャパン、両トップを直撃した。 2021年9月、日本のベンチャー業界で最大級のM&Aが飛び出した。アメリカの決済大手ペイパルホールディングスが、「BNPL」ともいわれる後払い決済サービスを手がけるPaidy(ペイディ)を約3000億円で買収すると発表した。 ペイディは、電話番号とメールアドレスを入力するだけでEC(ネット通販)サイトなどで決済ができるサービスを提供。クレジットカードのような審査ナシで利用できる(詳細は12月27日配信記事:3000億円買収で号砲!「後払い」新市場の大混戦)。 2021年3月末に約130億円を調達し、すでにユニコーン(企業価値が10億ドル以上のベンチャー)となっていたペイディ。突然のM&Aに日本の金融業界はどよめいた。巨額買収に至った背景について、ペイディの杉江陸社長とペイパル日本事業統括責任者のピーター・ケネバン氏に話を聞いた(Qは聞き手の質問)』、興味深そうだ。
・『「IPO最優先」で考えていたが  Q:ペイディは直前まで上場準備もしていたとのことですが、今回、買収という形で着地した背景には何があったのですか。 ペイディ 杉江陸社長:発表したのは9月8日の午前11時だったが、実際に(ペイパル側とM&Aの)サイニング(契約)をしたのが当日の朝の4時半。実はその日の昼に東京証券取引所に出向き、(上場承認前の)面接を受ける予定で、10月半ばにはIPO(新規上場)するという流れだった。つまり、ギリギリまで上場とM&Aを同時並行で検討していた。 ペイパル側から買収のLOI(Letter of Intent=意向表明書)をもらったのが、契約をした日の6週間前で、これはサプライズだった。そもそも6週間で契約に辿りつけるかは不透明だった。 M&AにしてもIPOにしても、成長資金を調達する手段であることは変わらない。だからどちらがより成長に資するかを内部で議論し、ペイパル側の意図も確認しながら、IPO最優先で話を進めていた。ただ発表直前の9月6日の取締役会で初めて、M&Aで行くかもしれないという話をした。 もともと9月7日の23時59分までに契約しなければIPOする、われわれはそのプランを変えるつもりはないという話をしていた。関係者に大変なご迷惑をおかけする形にはなったが、そういう経緯だ。 Q:最後の最後に急転換することになったと。何が決め手に? 杉江氏:(ペイパルの傘下に入っても)経営のオートノミー、自律性が担保できる。そして既存の株主に迷惑をかけない形でできる。この2つがわかったことがカギとなった。 M&AとIPOのどちらが長いビジネスの生命の中で勝ち続けられるか。IPOはやはり自由度が高い。特定の人にオーナーシップ(支配権)を渡すわけではなく、株主の負託を受けて、自分たち自身で意思決定できるところがよい。 一方でM&Aは私たちに(経営を)任せてくれるという保証があればよい。さらに買ってもらえる相手のケイパビリティ(能力)にも頼れる。サービスのラインナップや開発のためのリソース、そしてお金。このお金が最たるものだが、IPOとはまた違った形で得られる。 ブランドがもたらす安心感もある。IPOでも得られるものではあるが、世界のメガテック企業から支援を受けられるという安心感は消費者にとっても、加盟店にとってもよいと思う。 どちらも似たようなメリットはあるが、ペイパルが私たちに期待していることを理解し、ある程度日本で自由にできるという確証を得られたのが大きい。 (杉江氏の略歴はリンク先参照) Q:どのようにしてペイディの自由度を担保することになったのですか。 杉江氏:ペイパルと共同で日本市場を開拓していくうえで、「7つのプリンシプル」を定めた。その第1文が「ゼロタッチ、ロータッチ」。要するに「われわれのやり方に口を出さないで」ということ。ロータッチは、「(経営に)触ってもいいけど、そこそこにしてくれ」という意味だ。 ペイパルでは初めてのことだが、われわれのエンジニアはペイパルのためではなく、ペイディのためだけに採用されていて、それは今後も続く。日本以外のペイパルのビジネスにリソースを提供することはない。今後も法人として独立しているし、経営の優先順位はすべて自分たちで決める。 私たちは大企業のような安定成長ではなくて、まだまだリスクを取って成長していきたい。それをペイパルが承諾してくれるのであれば、ある意味IPO以上に自由なんです。上場していると、株主に迷惑をかけすぎる経営ができない。ある種プライベートのお金を調達することで、より速いスピードで成長できるということでM&Aに決めた。 彼らは日本市場を非常に重視していて、アメリカ以外で本気で攻める初めての市場と位置づけた。その最初のステップとしてペイディの買収があった。そしてペイディのチームに日本の戦略を任せたいと思っている。ふんだんなリソースを持つペイパルからの、これは強烈なメッセージだった』、「私たちは大企業のような安定成長ではなくて、まだまだリスクを取って成長していきたい。それをペイパルが承諾してくれるのであれば、ある意味IPO以上に自由なんです。上場していると、株主に迷惑をかけすぎる経営ができない。ある種プライベートのお金を調達することで、より速いスピードで成長できるということでM&Aに決めた」、幸運な選択だ。
・『EC化率低い日本には「伸びしろ」  Q:ペイパルが日本に注力することになった背景は。 ペイパル日本事業統括責任者 ピーター・ケネバン氏:ペイパルはすでに10年間日本でビジネスをしている。会社自体は創業から20年でフィンテックの中では老舗。会員や加盟店の基盤も世界最大だ。一方で日本は、越境ECで一定の地位を築いたものの、(通常のECなどの決済で使う)ウォレットはアカウント数が430万で、増えてはいるが大きな存在ではない。 ペイパルにとっての次の成長市場はどこかと考えたときに、一昨年あたりから日本が浮上した。日本のEC市場は世界で3番目の規模だが、小売りのEC化の比率が低く伸びしろがある。 現地の規制や商習慣もある中では、自力の成長だけでなくM&Aも活用すべきだろうという方針を決めた。私は今年4月に(コンサル大手の)マッキンゼー・アンド・カンパニーから転じてペイパルの日本代表に着任したが、それまでのM&Aの経験を買われた。ペイディがまさにその第一歩となった。 (Peter Kenevan氏の略歴はリンク先参照) Q:これまでユーザー数をほかの地域ほど伸ばせてこなかった要因は。 ケネバン氏:これまでも日本に合ったサービスを作ってきたつもりだ。例えば銀行口座からペイパルのウォレットに直接チャージできる機能は早くから持っていた。ただ当然、日本だけでなくいろいろな市場のニーズに応えなければならない。グループの中にはトレードオフもあるので、ペイディほど早くローカル市場に対応できたかというとそうではない。 苦労する時代はあった。そのため日本は市場規模は大きいものの、ペイパルのビジネスはそれほど大きくなかった。 銀行口座との連携機能はサービス自体悪くなく、もっと広がると思っている。ここはペイディと協力できる大きな点なので、より多くの銀行と連携して使いやすくできるよう、ペイディも含めて改めて開発に取り組んでいる』、さすが、コンサル出身の社長だけあって、視野が広い。
・『見てきた中で「最優秀のチーム」  Q:ペイディにはもともと投資部門のペイパル・ベンチャーズから出資していました。そこからM&Aにつなげたいという意図があった? ケネバン氏:投資したすべての企業を買収してグループに巻き込みたいわけではないが、戦略的に期待できる、興味がある先に投資している。なので当然、2019年のペイディへの投資は(M&Aの)1つのきっかけになっている。 (M&Aの)候補を絞る中で、ペイディのビジネスモデルや経営陣の力、商品力がわれわれの戦略とも噛み合っていると感じた。やはり投資してからの付き合いが2年ほどあったので、最終的な意思決定は速かった。 BNPLがこの先重要な存在になるのは間違いない。ペイパルとして自前でやっている地域はあるが、ペイディは日本に合った無利息の分割払いを提供している。毎月の支払いはコンビニでも行える。クレジットカード情報をECサイトに登録したくない人のニーズもとらえ、日本の状況にうまく合わせている。 さらにペイディには、グローバルな経営陣のチームもある。日本をよく理解した外国人が何人もいて、海外経験豊富な日本人もいる。双方をうまく融合している非常にまれな会社だと思う。マッキンゼー時代から25年くらい大手企業からベンチャーまでいろいろな経営陣を見てきたが、最優秀のチームだと思う。 インタビュー後編:日本の「借金嫌い」文化を変革!Paidy社長の企図』、「ペイディにはもともと投資部門のペイパル・ベンチャーズから出資していました」、「戦略的に期待できる、興味がある先に投資している。なので当然、2019年のペイディへの投資は(M&Aの)1つのきっかけになっている」、「ペイディには、グローバルな経営陣のチームもある。日本をよく理解した外国人が何人もいて、海外経験豊富な日本人もいる。双方をうまく融合している非常にまれな会社だと思う。マッキンゼー時代から25年くらい大手企業からベンチャーまでいろいろな経営陣を見てきたが、最優秀のチームだと思う」、ここまで褒められるとはよほどのことだ。

第三に、12月30日付け東洋経済Plus「後払いの古参ネットプロテクションズ新規上場 若者の「分割払い」傾倒にリスク、先駆社長の警鐘」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/29299
・『2021年12月に上場したネットプロテクションズHD。今後の成長戦略や、他社と若干異なる「分割払い」機能への考え方を柴田社長に聞いた。 国内ベンチャーのPaidy(ペイディ)がアメリカの決済大手ペイパルに3000億円で買収されるなど、激戦模様のBNPL(後払い決済)市場(詳細は12月27日配信の記事:3000億円買収で号砲!「後払い」新市場の大混戦)。ここで2002年から日本で展開する古参企業が、ネットプロテクションズホールディングスだ。 同社の「NP後払い」は年間利用者数が1580万人、加盟店数は7万弱、年間取扱高が3400億円超と、後払い事業者としては国内最大手だ。2017年からは毎月の支払いを月1回にまとめられる後払いアプリ「atone(アトネ)」も展開。ただ、ペイディやメルペイのように分割払いは提供していない。 ネットプロテクションズHDは2021年12月15日に東証1部に上場したばかり。資金を得た今、群雄割拠の市場でどのような成長を目指すのか。分割払いに踏み込むのか。同社の柴田紳社長に話を聞いた(Qは聞き手の質問、Aは柴田社長の回答)』、興味深そうだ。
・『未払い率は世界的にみても低い  Q:競合がひしめく状況を、古参の立場としてどう見ていますか。 A:言われているほど、競合している実感はない。従来の利用シーンはB to Cの物販EC(ネット通販)がメインだったが、デジタルサービスやテレビ通販、実店舗での決済にも使えるようにしたり、最近ではB to B(企業間)の後払いも広げている。 競合とぶつかるのは、B to CのECだけ。しかもペイディにせよ、メルペイにせよ、競合するとしても若年層くらいだ。NP後払いの取扱高上位100加盟店で、ペイディと併用されているケースは皆無。肌感覚としてまだ競合としては見ていない。 若年層向けのECでも、必ずペイディが入っているという感覚はない。彼らの取り扱いはアマゾンで伸びていると聞く。しかも初回20%還元などのキャンペーンを狙ったクレジットカードユーザーが流れているようだ。 Q:競合と比べた際の強みは。 A:与信の精度だ。(ユーザーがECなどで決済しようとしたときの)与信の通過率は97%を超えるのに対し、未払い率は0.6%以下。世界的に見てもかなりよい数字だと思う。 要因は3つ。まず(後払いサービス提供企業としての)歴史がいちばん長く、規模も最大なので、圧倒的にデータ量が多いこと。2つめに、決済するユーザーの8~9割がリピーターでリスクが低いこと。3つめが、(システムだけでなく)人間による目視審査もやっていることだ。 自前の目視審査部隊があるのは当社だけ。そこで発見した詐欺行為などもシステムに反映して改善すし続けている。 Q:審査においてはどういう部分が重要なのでしょう。 A:例えば1人のユーザーが住所を少しずつ変えて1時間に5回決済していると怪しいと判断しうる。入力ミスで1回間違うことはあるかもしれないが、それだけの回数となると不信感が高まる。 (決済サービスとして)一定の規模が出てくると、詐欺の標的にもなる。それを止めようとすると、少しでも怪しいと思われる決済をすべて止めたくなる。 ただ与信通過率を下げすぎると、加盟店としては本来売り上げが立つはずだったものが消えてしまう。何も悪さをしていないのに審査が通らなかったお客さんを怒らせてしまう可能性もある。決済会社としていちばんやってはいけないことだ。バランスは難しいが、それを哲学として20年間やってきた。 ▽スマホとクレカと相性が悪い(Q:そもそも20年前から後払いを提供している理由は。 A:当初の課題意識は明快だ。当時はカタログ通販が盛んで、銀行振り込みによる前払いが多かった。だがお金を払ったのに商品が届かない詐欺が社会問題化して、商品が届いた後に支払うサービスの価値があると考えた。 実は当時から通販の決済の6割は、各社が独自に提供している後払いが占めていた。とくに(通販をよく使う)女性の間では普通の支払い手段だった。それがネットに移ってきたということだ。 Q:近年後払いの利用が増えているのは、クレジットカード情報をECサイトに入力したくないという背景もあるようです。 当社の調査でも、ユーザーのうち7割はクレカを保有している。持っているけど使っていないというケースは少なくない。 最近ではスマホで買い物をする人が多いが、そもそもスマホとクレカは相性が悪い。電車に乗っているときなどは、財布からカードを取り出して、番号などを入力しづらい。 Q:NP後払いは加盟店数が7万弱に達しています。 A:当社のユーザーの75%は女性で、中でも30~50代が多い。そういう人が好むアパレル、化粧品、健康食品といったサイトでは当社の決済シェアが高く、重点的に営業している。 男性はECにおいてクレカ利用を好むことが明確にわかっている。逆に女性はそれを好まない比率が高い。ショップに営業する際も、「御社の商材では後払いの利用率がこれくらいになりますよ」というシミュレーションを伝える。 (柴田氏の略歴はリンク先参照) Q:今後ユーザー層を広げるためのカギは? A:カードを使い慣れている層を後払いに移行させるのはハードルが高い。そうなると狙い目は若年層になる。だから「アトネ」を広げている。2021年9月時点のユーザー数は490万まで伸びてきた。 若年世代にとってはアトネのようなデジタルで使いやすいものが重要になる。加盟店はまだまだ少ないので、ここから全力で開拓する。使える店が増えれば、ユーザーも自動的に増える。 未払い率が高めに出やすい若年層向けのショップは、これまで積極的に取ってこなかった。ただアトネの利用には(住所も含めた)会員登録が必要になるので、与信力を高めやすい。 物販のECだけでなく、デジタルサービスでの決済もこれから間違いなく伸びる。例えば電子コミックサイトでは、すでに数社にアトネが導入されている。翌月一括請求なので、サブスクリプションサービスの決済をまとめたいという需要も取り込める。 アトネはポイントも貯まるので、還元策を実施すれば送客もしやすい』、「カードを使い慣れている層を後払いに移行させるのはハードルが高い。そうなると狙い目は若年層になる。だから「アトネ」を広げている。2021年9月時点のユーザー数は490万まで伸びてきた」、なるほど。
・『分割払いに潜む「信用リスク」  Q:ペイディやメルペイは分割払いのサービスを押し出しています。ここに参入する考えはないですか。 A:当社でも研究はしている。台湾ではすでに分割払いサービスを提供しており、仕組みやビジネスモデルはわかっている。 ただ日本で若年層向けにやるべきかは、社内でも意見が分かれる。投資家と話していても、「やったほうがいいよね」という声もあれば、「金融リテラシーが低い人に提供しても需要を先食いするにすぎない」という声もある。 Q:需要の先食い、とは? A:要はお金が貯まってから買うべきような高額商品を、先に買うにすぎないということ。それによって若い人の債務が重くなってしまう可能性がある。海外ではすでにBNPL事業者に対する規制論が出ているが、日本でも法規制の動向を見極める必要がある。 使われたらそれでいいのかというと、判断が難しい。若い人たちが、きちんと返せるとわかって使うのか、買いたいものがあるというだけで使ってしまうのか。自分の若い頃を振り返っても、大学生に“計画的に”と言っても難しい。 信用情報機関への登録は1回の後払いだけでは必要ないが、(割賦販売法の規定で)分割払いでは必要になる。もし返済が滞ればクレジットカードを作れなくなるなどのデメリットが出てくる。信用が必要以上に傷つくリスクがある。 それを理解しないままに、ほしい商品を目の前にして分割払いに走ってしまってよいのか。取扱高を伸ばしたいからと事業者側が強く推進するのは、社会的に価値のあることなのか。 Q:加盟店側から「分割払いを提供してほしい」との要望はあるのですか。 A:当社への要望としてはほとんど聞いたことがない。10万円を超えるような商品は、30~50代の人だと従来から使っている(クレカなどの)分割払いがある。もともと返せるあてがあるから』、「分割払いでは」、「もし返済が滞ればクレジットカードを作れなくなるなどのデメリットが出てくる。信用が必要以上に傷つくリスクがある。 それを理解しないままに、ほしい商品を目の前にして分割払いに走ってしまってよいのか」、珍しく顧客目線に立って慎重だ。
・『JCBと提携、クレカと後払いは共存する  Q:クレカのローンに審査の手間や利用時の手数料がかかるのも、理由があってのことだと。 A:そうなんですよ。だからこそクレカには一定の制限がある。ちゃんと返せる人に使ってほしいということ。 海外でBNPLの分割払いのニーズが高まっているのは、そもそもクレカの審査が厳しすぎたり、金利が高かったりして、従来のサービスが使いにくかったから。日本はその前提が異なるため、(若年層向けの分割払いの)市場があると判断してよいのかは、ちょっと悩ましい。 Q:クレカと競合する存在でありながら、2021年2月にはクレカ業界大手のジェーシービー(JCB)と資本提携し、約60億円を調達しました。 A:提携の目的は明確で、ECだけでなく、企業間も含めて幅広い分野で後払いを提供したい。JCBが抱えている多数の加盟店をご紹介いただく。現時点では海外と異なり、クレカと後払いは共存している。 JCBとしてはこれまでカードしか提供できなかったが、後払いサービスメニューも持つことでショップに貢献できる。JCB側の紹介には手数料を払っており、薄くても新たな収益源になるのであれば全然ありだということで合意に至った。 ほかのクレカ会社からも(提携に関する)話は来ている。BNPLが流行りそうだという風潮があるので、各社ともどこかと組みたいのだろうなと』、「クレカと後払いは共存している。 JCBとしてはこれまでカードしか提供できなかったが、後払いサービスメニューも持つことでショップに貢献できる」、消費者にとっても支払い方法の選択肢が増えるのはいいことだ。 
タグ:「クレカと後払いは共存している。 JCBとしてはこれまでカードしか提供できなかったが、後払いサービスメニューも持つことでショップに貢献できる」、消費者にとっても支払い方法の選択肢が増えるのはいいことだ。 「PayPal Japan、Paidy両トップに直撃① 後払いPaidy「上場目前」でM&Aに舵切った真因」 東洋経済Plus 「「カードレス社会」すなわち「デジタル化された社会」では、例えば顔認証の本人確認が一般化し、個人の行動がデータの“中央管理機関”に収集されるというリスクがある。それはその中央管理機関がわれわれにとってネガティブな行動をしなければよいが、もしも、そうではないときにはプライバシーの問題になる。いわゆる〝デジタル化”の問題である」、 「本人確認の基本はそのカード等を“保持”(保有)していることである。」、なるほど。 『決済インフラ入門【2025年版】:スマホ決済、デジタル通貨から銀行の新リテール戦略、次なる改革まで』 「決済はキャッシュレスから一気にカードレス時代 「デジタルの利便性」の裏に潜むリスクとの対峙」 宿輪 純一 東洋経済オンライン (その8)(決済はキャッシュレスから一気にカードレス時代 「デジタルの利便性」の裏に潜むリスクとの対峙、PayPal Japan、Paidy両トップに直撃① 後払いPaidy「上場目前」でM&Aに舵切った真因、後払いの古参ネットプロテクションズ新規上場 若者の「分割払い」傾倒にリスク 先駆社長の警鐘) 「分割払いでは」、「もし返済が滞ればクレジットカードを作れなくなるなどのデメリットが出てくる。信用が必要以上に傷つくリスクがある。 それを理解しないままに、ほしい商品を目の前にして分割払いに走ってしまってよいのか」、珍しく顧客目線に立って慎重だ。 「カードを使い慣れている層を後払いに移行させるのはハードルが高い。そうなると狙い目は若年層になる。だから「アトネ」を広げている。2021年9月時点のユーザー数は490万まで伸びてきた」、なるほど。 東洋経済Plus「後払いの古参ネットプロテクションズ新規上場 若者の「分割払い」傾倒にリスク、先駆社長の警鐘」 「ペイディには、グローバルな経営陣のチームもある。日本をよく理解した外国人が何人もいて、海外経験豊富な日本人もいる。双方をうまく融合している非常にまれな会社だと思う。マッキンゼー時代から25年くらい大手企業からベンチャーまでいろいろな経営陣を見てきたが、最優秀のチームだと思う」、ここまで褒められるとはよほどのことだ。 「ペイディにはもともと投資部門のペイパル・ベンチャーズから出資していました」、「戦略的に期待できる、興味がある先に投資している。なので当然、2019年のペイディへの投資は(M&Aの)1つのきっかけになっている」、 さすが、コンサル出身の社長だけあって、視野が広い。 「生体認証が犯罪者に一度盗まれると、大変困る事態になる。顔にしても、指紋にしても変えられないからである」、確かに「利便性とリスクは表裏一体」、なので、私は現段階では「生体認証」に反対である。 「私たちは大企業のような安定成長ではなくて、まだまだリスクを取って成長していきたい。それをペイパルが承諾してくれるのであれば、ある意味IPO以上に自由なんです。上場していると、株主に迷惑をかけすぎる経営ができない。ある種プライベートのお金を調達することで、より速いスピードで成長できるということでM&Aに決めた」、幸運な選択だ。 「デジタル通貨はこのような個人情報の問題から導入は困難であるし、導入の予定はない。あくまでも“前向き”な分析・検討の段階にとどめている」、なるほど。 決済
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