暗号資産(仮想通貨)(その24)(仮想通貨は「大混乱」へ…「FTXの破綻」が世界の投資家たちに与える驚くべき「負のインパクト」、FTX破綻で窮地に立つ「暗号資産ビジネス」の憂鬱 日本の暗号資産業界は逆風を切り抜けられるか、東証スタンダード上場 大手仮想通貨取引所のトップが、台湾で指名手配されていた・・・) [金融]
暗号資産(仮想通貨)については、9月8日に取上げた。今日は(その24)(仮想通貨は「大混乱」へ…「FTXの破綻」が世界の投資家たちに与える驚くべき「負のインパクト」、FTX破綻で窮地に立つ「暗号資産ビジネス」の憂鬱 日本の暗号資産業界は逆風を切り抜けられるか、東証スタンダード上場 大手仮想通貨取引所のトップが、台湾で指名手配されていた・・・)である。
先ずは、11月21日付け現代ビジネスが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁 昭夫氏による「仮想通貨は「大混乱」へ…「FTXの破綻」が世界の投資家たちに与える驚くべき「負のインパクト」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/102432?imp=0
・『天才経営者 バンクマン-フリード 11月11日、大手暗号資産(仮想通貨)交換業者、米FTXトレーディングが“チャプター11(連邦破産法11条、わが国の民事再生法に相当)”を申請した。 かつて、天才経営者と謳われた、FTX創業者であるサム・バンクマン-フリード氏の名声は凋落し、その経営手腕には多くの疑問符が付くことになった。 米国の著名経済学者であるJ.K.ガルブレイスは、バブル崩壊の前に天才が表れると指摘した。 バンクマン-フリード氏はその一人といえるかもしれない。 2020年3月中旬以降、同氏が生み出した暗号資産の一つである、“FTXトークン=FTT”は見る見るうちに上昇していった。 それと同時に、バンクマン-フリード氏は政治への影響を強めた。 また、同氏は社会全体のベネフィットのために事業を運営するとの考えを唱えた。 そうした同氏の姿勢は多くの共感を呼んだ。 世界的なカネ余りが続くとの楽観の高まりもあり、FTXの価値上昇によって強い期待が盛り上がった。 問題は、バンクマン-フリード氏の経営が、FTTという仮想通貨の価値急騰に依存したことだ。 暗号資産の業界では、FTXのように過剰な楽観に依拠してバランスシートを膨らませた企業が多い。 それは、後から見ると“砂上の楼閣”だったことが分かる。 FTX破たんをきっかけに、経営が行き詰まる関連企業は増えるだろう』、「同氏が生み出した暗号資産の一つである、“FTXトークン=FTT”は見る見るうちに上昇」、「バンクマン-フリード氏は政治への影響を強めた。 また、同氏は社会全体のベネフィットのために事業を運営するとの考えを唱えた。 そうした同氏の姿勢は多くの共感を呼んだ。 世界的なカネ余りが続くとの楽観の高まりもあり、FTXの価値上昇によって強い期待が盛り上がった。 問題は、バンクマン-フリード氏の経営が、FTTという仮想通貨の価値急騰に依存したことだ」、なるほど。
・『FTT高騰の背景 FTX創業者のバンクマン-フリード氏は、一時、“天才経営者”、“フィンテック業界の救世主”などと称された。 同氏は、世界的な仮想通貨の熱狂ブームに乗り、著名人を広告に用いるなどして仮想通貨の権威、スターとしての地位を確立した。 我先に、同氏の経営手腕から利得を手に入れようとする投資ファンドや企業などが急増した。 そこには、あたかも神話のような強い成長への期待があった。 それを支えたのが、バンクマン-フリード氏が作った“FTT”の仕組みだった。 FTTとは、仮想通貨の一つだ。 FTT保有者はその価値の上昇だけでなく、FTX利用手数料の割引や、FTTを担保にしてレバレッジをかけた取引を行うことができた。 2019年に香港でFTXは創業された。 その後、香港当局は仮想通貨取引規制を強化した。 2021年、バンクマン-フリード氏はバハマに拠点を移しFTXのビジネスを急拡大させた。 世界的な金融緩和の継続期待と利用者の急増によって、FTTは急騰した。 FTXの業績も拡大した。 FTTを担保に同氏はFTXから自身が所有するアラメダ・リサーチに融資し、投資ビジネスを強化した。 政治献金も積極的に行い、社会全体に、より効率的に付加価値を提供する姿勢を鮮明にした。 それは、FTXの急成長によって社会が変わるというような強烈な期待を多くの人に与えた。) さらにMLB、NBA、NFLのスタープレイヤーとも長期のパートナーシップを結んだ。 わずか1年ほどの間にバンクマン-フリード氏の評価は大きく高まり、“2021年の仮想通貨業界で最も影響ある人物”と呼ばれた。 また、29歳の時点で資産285億ドルを達成したといわれるマーク・ザッカーバーグを上回る富を同氏が手に入れると目されるなど、時代の寵児としてもてはやされた』、「FTTとは、仮想通貨の一つだ。 FTT保有者はその価値の上昇だけでなく、FTX利用手数料の割引や、FTTを担保にしてレバレッジをかけた取引を行うことができた」、「世界的な仮想通貨の熱狂ブームに乗り、著名人を広告に用いるなどして仮想通貨の権威、スターとしての地位を確立した。 我先に、同氏の経営手腕から利得を手に入れようとする投資ファンドや企業などが急増した」、なにやらバブリーな雰囲気も濃厚だ。
・『混乱の懸念高まる仮想通貨業界 未来永劫、神話のような成長が続くことは難しい。 昨年11月以降、仮想通貨市場全体に下落圧力がかかり始めた。 それによって裏付けのない資産であるFTTでバランスシートを膨らませたFTXとアラメダの資金繰りは急速に悪化した。 事業運営体制の悪化をバンクマン-フリード氏は察知できなかったと述べている。 見方を変えると、同氏は社会の公器としての成長よりも、規制をかいくぐり、自らの富を増やことに執着してしまったのではないか。 一時はバイナンスによるFTX救済合併も目指されたが、最終的に見送られた。 11月11日にFTXは“チャプター11”を申請した。 FTXの債権者数は100万人を超えるとの見方もある。 それ以降、次は自分が窮地に陥るかもしれないと、先行きを不安視し、仮想通貨を手放す投資家は急増している。 連鎖反応のように、顧客資金の引き出しを停止する仮想通貨交換業者も増えはじめた。) 今後の仮想通貨市場では、売るから下がる、下がるから売るという弱気心理の伝染が、さらに鮮明化するだろう。 資金繰りがひっ迫し、経営破たんに陥るブローカーの増加が懸念される。 それに加えて、規制強化も急務だ。 特に、仮想通貨を担保にした融資の実態把握は急を要する。 交換業者による顧客資金の管理体制の確認、改善指示なども急がなければならない。 状況によっては、米国などの金融システムに相応のストレスがかかる恐れもある。 今すぐそうした展開が現実のものになるとは考えづらいが、仮想通貨業者の破たんによって投資ファンドなどが損失をこうむり、局所的に金融システムが不安定化する可能性は排除できない。 FTX経営破たんの負のインパクトの深刻化が懸念される』、「仮想通貨業者の破たんによって投資ファンドなどが損失をこうむり、局所的に金融システムが不安定化する可能性は排除できない。 FTX経営破たんの負のインパクトの深刻化が懸念される」、やはり影響は深刻なようだ。
次に、11月27日付け東洋経済オンライン「FTX破綻で窮地に立つ「暗号資産ビジネス」の憂鬱 日本の暗号資産業界は逆風を切り抜けられるか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/635558
・『アメリカの暗号資産交換業大手・FTXトレーディングが経営破綻してから、およそ2週間。その衝撃は冷めることなく、日本の投資家や業界関係者の動揺は収まらない。 「預け入れていた資産はおよそ300万ドル(4.2億円)相当。アメリカで適用が申請された連邦破産法11条(チャプター11)の行方次第で全額戻らないかもしれず、とても心配だ」。ツイッターアカウント名「ヨーロピアン」で活動する日本在住の30代男性は不安げにそう話す。 FTXトレーディングは、2022年3月に日本の交換業者を買収し、4月からFTXジャパンに社名変更した。この男性はそれまでFTXトレーディングの口座で取引を行っていたが、社名変更のタイミングで口座がFTXジャパンに移ったという。FTXジャパンの口座はシステムのトラブルで、現在出金できない状況が続いている。 日本の交換業者は金融庁の定めで預かり資産の分別管理が求められている。FTXジャパンも法令に則り、暗号資産はオンライン接続しないコールドウォレット、法定通貨は日本の信託口座において分別管理を行っていると会社は説明する。FTXジャパンが11月21日時点で保有する、円ドルを合わせた法定通貨の預かり資産は60.74億円、及び別の現預金が約178億円あるという(2022年9月末の純資産は100億円)』、「円ドルを合わせた法定通貨の預かり資産は60.74億円」、これは本社勘定とは「分別管理」され、保護されると考えてよいのだろうか。
・『日本の金融庁が示したFTX破綻に対する見解 チャプター11の申請書類にはFTXグループの債務整理の対象として日本法人が含まれており、FTXジャパンが保有する資産がそれに充てられる可能性はゼロではない。FTXトレーディングの新しいCEOに就任し、エネルギー取引会社エンロンの破綻処理を監督したジョン・レイ氏は11月19日、チャプター11の手続きの中で「子会社の売却や資本再編といった戦略的な取引が今後の優先事項だ」とコメントしている。 ただし、日本の金融庁の担当者によれば、「会社の資産と個人の資産管理はまったく別。FTXジャパンのコールドウォレットに預けられている暗号資産と法定通貨の預かり資産は、日本法の下で問題なく戻ってくる」という。そのうえで「資産の引き出しをした後も暗号資産の取引を続けたいという利用者もいるだろうし、事業の継続性という意味では優良な売却先が見つかることが望ましい」と話す。 アメリカを拠点に預かり資産は一時期2兆円を超えていたFTXトレーディング。瞬く間に破綻に至った裏にはいったい何が起きていたのか。 FTXはグループ全体で130を超える関係会社を持つ巨大組織だ。その頂点に立つのが30歳のサム・バンクマン・フリード氏。チャプター11の申請書類によると、グループのカテゴリーは大きく4つに分かれる。サム氏はそのいずれにも個人で過半の出資を行っている。) 中でも関係性が深いのが、交換業のFTXトレーディングとアービトラージ(裁定取引)やマーケットメイキング(相場の値付け)など、クオンツ投資と呼ばれる手法を暗号資産に特化して行っているアラメダ・リサーチだ。この2社の関係が、グループ崩壊のきっかけとなった。 発端は、アラメダのバランスシート(貸借対照表)だった。11月上旬、現地専門メディアが、同社の資産の4割超が「FTXトークン(FTT)」と呼ばれるFTXトレーディングが発行する自社トークンであると報じた。FTTを担保にアラメダは、FTXトレーディングから100億ドルを借り入れていたこともその後明らかになった。FTXトレーディングがアラメダに融資した資金は顧客から預かり資産の流用だったとされる』、「アラメダのバランスシート」で「資産の4割超が「FTXトークン(FTT)」と呼ばれるFTXトレーディングが発行する自社トークン」、とは確かに不健全だ。
・『自社トークンの価値が急落 FTTのような自社トークンは、いわば交換所にとっては「打ち出の小槌」といえる。法定通貨や国債などを担保にしたステーブルコインのように価値を裏付ける資産は不要で、発行の上限はあるものの設計次第では無限にすることもできるといわれる。 大谷翔平選手の広告塔起用などFTXトレーディングによる派手なマーケティングなどによってFTTの価値は上昇し、2022年4月時点の価格は1FTT当たり50ドルまであった。しかし、アラメダの脆弱な財務体質が明らかになったことで、交換所最大手のバイナンスが自社で保有するFTTを売却すると発表。野放図な貸し借りも暴かれたことにより、FTT価格は急落し、足元は1ドル台にまで落ち込んでいる。 融資元であるFTXトレーディングにもその影響は及び、一時は取り付け騒ぎのような事態が発生。同社は出金機能の停止措置に踏み切り、FTXジャパンも親会社の方針に従い出金を停止した。一方でFTXジャパンは、利用者からの財産の受け入れや利用者との暗号資産取引を継続していたため、11月10日に関東財務局から行政処分を受けている。 その翌日11日にFTXトレーディングはチャプター11の適用を申請。22日に、裁判所で初の法廷審問が開かれている。) 国内の交換所・SBI VCトレードでトレーディング部門を統括する久場健太郎取締役は、「FTXトレーディングのサービスは投資家がロスカットする際に(売買が成立する)約定レートがほかの交換所に比べて格段によかった。マーケットメイカーであるアラメダの流動性が豊富にあるからで、当時はさすがだと思っていたが、今から思えばアラメダの財務はFTTに依存しており、砂上の楼閣だったといえる」と話す』、「FTT価格は」、「4月時点の価格は・・・50ドル」だったのが、「急落し、足元は1ドル台にまで落ち込んでいる」、これでは担保にしていたら、大変だ。
・『暗号資産の相場が上向く兆しはある アメリカを震源地とする今回の騒動、国内の暗号資産ビジネスには、どのような影響が及ぶのか。 日本の暗号資産交換業は2018年1月のコインチェックによる大規模な顧客資産の流出を受けて、厳しい規制を課されてきた。 2019年の法改正では交換業者に対し、顧客から預かる暗号資産全量の上限5%を除き、コールドウォレットで管理することを義務づけ、常時オンラインに接続されているホットウォレットで管理する顧客の暗号資産は、別途それに見合う弁済原資を保持することが義務づけられた。 メルカリの完全子会社で暗号資産交換業を営むメルコインの青柳直樹CEOは「暗号資産交換業に対する規制は、自己資本の蓄積などを含め、日本が世界で最も厳しいものになっている。FTXの破綻により、今後世界的に暗号資産への規制が強まることが予想される中で、逆に日本の規制は利用者に対して安心材料になるだろう」とみる。 現在の価格は約200万円前半と1年前と比べ3分の1に下がった代表的な暗号資産ビットコインの相場も上向く兆しはあるという。 同じく交換業を運営するビットバンクの長谷川友哉マーケット・アナリストは、「アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)が利上げペースを緩めるという観測があり、その前提でみれば来春には相場が回復してもおかしくない。経営破綻はFTXのガバナンス不全という同社固有の問題があったからで、ブロックチェーンにより信頼のコストが下げられるという暗号資産の価値は失われていない」と指摘する。) 一方で、「FTXショック」は暗号資産の規制改革には逆風となりそうだ。 暗号資産やトークンを使った「ウェブ3」と呼ばれる次世代のウェブビジネスを推進するために、業界関係者や一部の政治家が取り組んできたのが、税制改革だった。具体的には、ウェブ3を手がける企業がトークンを保有するだけで、その含み益に対して法人税が課される状況を解消することなどを目指している。 これらのロビイング活動についてマネーフォワードでパブリックアフェアーズ室長を務める瀧俊雄執行役員は、「ウェブ3の推進派は、イノベーションを意識したバイデン大統領の大統領令をよりどころに税負担の緩和を求めてきた。だが、サム氏が民主党の大口献金者だったこともあり、共和党の攻撃材料となる可能性が高い。日本では個人の暗号資産取引を申告分離課税することなども求めているが、アメリカの政策は思うように進まないとなると、日本の推進派がよりどころを失うことで税制改革が遅れるおそれがある」と分析する』、「「ウェブ3の推進派は、イノベーションを意識したバイデン大統領の大統領令をよりどころに税負担の緩和を求めてきた。だが、サム氏が民主党の大口献金者だったこともあり、共和党の攻撃材料となる可能性が高い」、共和党が下院を制した現在では、「税制改革」はますます難航するだろう。
・『暗号資産ビジネスは逆風を跳ね返せるか ウェブ3をめぐっては、11月8日にNTTドコモがアクセンチュアなどと組み、新会社を設立すると発表。ウェブ3の分野に対し、向こう5~6年以内に最大6000億円の投資を行うとしている。暗号資産の交換やトークン発行といった共通基盤を提供するという。 ほかにも野村ホールディングスがスイスで暗号資産関連のベンチャーキャピタルを設立したり、電通がグループ横断の支援組織「web3 club」を発足したりするなど、日本の大企業も暗号資産を意識したビジネスを始めようとしている。 FTXの唐突な破綻でマイナスイメージが強まりかねない中、暗号資産業界はビジネスの拡大でそうした懸念を払拭できるのか。先んじて規制強化が行われた日本として、何ができるかが問われている』、「日本」では「ウェブ3」への動きが出てきたが、「FTXの唐突な破綻でマイナスイメージが強まりかねない中、暗号資産業界はビジネスの拡大でそうした懸念を払拭できるのか。先んじて規制強化が行われた日本として、何ができるかが問われている」、その通りだろう。
第三に、11月30日付け文春オンライン「東証スタンダード上場 大手仮想通貨取引所のトップが、台湾で指名手配されていた・・・」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/59059
・『世界業界第2位の仮想通貨取引所だったFTXの経営破綻が、暗号資産業界への信頼を大きく揺るがしている。そんななか、日本国内では、さらに不信感が高まりそうな事実が明らかになった。国内大手の取引所を運営する企業のトップが、海外の警察当局から指名手配中であることが判明したのだ』、悪い時には、悪いことが重なるものだ。
・『不正流出事件を端緒に、台湾で刑事事件へ発展 「俺たちのビッグボス ビットポイント~♪」 耳に残る軽快なテーマソングとともに、北海道日本ハムファイターズ監督の新庄剛志氏が出演するのは、株式会社ビットポイントジャパン(以下BPジャパン)のテレビCMである。 しかし、同社には消せない過去がある。2019年7月には、顧客が保有する30億円超(当時のレート)の仮想通貨が不正流出する不祥事を起こしているのだ。ただ、この不正流出に対しては、被害を受けた顧客に対する全額補償の方針を早々と打ち出し、一定の解決を見た。とはいえ、それは日本国内に限った話である。 BPジャパンが、仮想通貨取引所としてサービスを提供していた台湾では、この不正流出事件を端緒に刑事事件へと発展し、当時の同社社長、小田玄紀氏が指名手配されているのだ』、「BPジャパンが、仮想通貨取引所としてサービスを提供していた台湾では、この不正流出事件を端緒に刑事事件へと発展し、当時の同社社長、小田玄紀氏が指名手配されている」、信じ難いような事件だ。
・『指名手配書には、容疑として「詐欺等」と記されて 筆者が入手した、地方裁判所に相当する台湾台北地方法院が今年4月22日に発行した指名手配書には、小田氏の名前や生年月日とともに、容疑として「詐欺等」と記されている。 1980年生まれの小田氏は、東大法学部在学中に興した事業を売却して得た資金を元手に、その後はベンチャーキャピタリストとして活動。2011年からは、経営不振に陥っていた株式会社リミックスポイント(以下リミックス社)の経営に参画するとその手腕が認められ、現在は東証スタンダード市場に上場する同社の代表取締役社長CEOを務めている。 また、リミックス社がのちにBPジャパンとなる株式会社ビットポイントを ・虚偽の清算書を作成し、業務提携していたビットポイント台湾(以下、BP台湾)から15億7500万円相当を不当に利得した、詐欺および財務諸表の虚偽記載の疑い ・自己不当利得を意図し、取得した約6億3000万円を清算表に記載しなかった、業務上横領および財務諸表虚偽記載の疑い ・顧客3人の口座残高の計16万米ドル相当の仮想通貨を引き出し不能としたうえで返還を拒んで不当利得した、詐欺および業務上横領の疑い (筆者が入手した台湾地方法院による指名手配書 はリンク先参照)』、「BPジャパン」は何故、このような不祥事を起こしたのだろう。
・『協業関係に亀裂が走ったきっかけ しかし、これだけでは、指名手配に至るまでの経緯は見えてこない。そこで、指名手配書にも被害者として名前が挙がっているBP台湾にも取材を行った。 「2018年、弊社はBPジャパンとの提携の元にサービスを開始しました。弊社が担当するのはフロントデスク業務のみ。集客やログイン画面の運営は弊社が担当していましたが、それより先の取引システムの運営から顧客の個人情報や口座残高の管理はすべてBPジャパンが行うという、いわゆるホワイトラベルです。弊社はBPジャパンに毎月100万円のブランドフィーを支払い、台湾の顧客が支払った取引手数料を、両者で分け合うという契約でした」(BP台湾法務担当者) そんな両者の協業関係に亀裂が走ったのが、2019年7月の不正流出事件だ。 「台湾の顧客も同様に被害を受け、結果的に2億5000万円相当の不正流出が確認されました。これについては、当時BPジャパンの代表取締役社長だった小田氏は当初、補償する姿勢を見せていました」(同前)』、「両者の協業関係に亀裂が走ったのが、2019年7月の不正流出事件」、「台湾の顧客も同様に被害を受け、結果的に2億5000万円相当の不正流出が確認」、「当時BPジャパンの代表取締役社長だった小田氏は当初、補償する姿勢を見せていました」、どういう事情の変更があったのだろうか。
・『清算表に反映されていない5億3000万円が行方不明 ところが、被害の全容把握のために、BP台湾側が顧客の過去の取引データを調査したところ、その何倍もの金額がどこかに消えていることが判明したという。 「もっとも大きいのは送金の未反映です。弊社は業務開始以来、顧客の口座への入金分など、約41億2000万円相当をBPジャパンに送金しているのですが、両社間の資金のやり取りを記録した清算表には計35億9000万円しか反映されておらず、5億3000万円ほどが行方不明となっているのです。同様の矛盾は、両社の帳簿を比べた際に散見されます。 ほかにも、スプレッド(買値と売値の差)の計算が間違っていたり、一つの約定IDに複数の取引が存在していたりと、不審な点がいくつも見つかりました」(同前)』、「清算表に反映されていない5億3000万円が行方不明」、送金や受取の記録をチェックすれば、判明する筈だ。「スプレッド」「計算」の「間違い」など「不審な点」も個々にチェックすれば、判明するのではなかろうか。
・『不正流出の被害を受けた顧客ら3名も刑事告訴 そこでBP台湾は、不正流出による顧客の被害額に加え、こうした不正や誤りによる損害額を合計した約10億2400万円の弁済をBPジャパン側に要求したという。しかし……。 「小田氏が当初、対応する姿勢を見せていた不正流出に対する補償も含め、BPジャパンはまったく弁済に応じませんでした。2019年8月に東京地裁に民事訴訟を提起し、現在も公判が続いています。 その一方で2020年には、不正流出の被害を受けた顧客ら3名ともに、小田氏個人を台湾の警察当局に刑事告訴しました。その後、警察の捜査の結果、嫌疑十分ということで、小田氏には逮捕状が出されました。ところが小田氏は台湾に不在であるため、4月までに指名手配となったようです」(同前) 筆者は、BPジャパンの親会社で、現在も小田氏が代表取締役CEOを務めるリミックス社に、小田氏が上場企業のトップとして適任なのか、見解を質した。しかし、期日までに回答は得られなかった。 これまで自著やインタビューで、「逃げない経営」を自身の信条として繰り返し語ってきた小田氏。ならば今、自らの法的責任からも、逃げずに向き合うべきではないだろうか』、「リミックス社」は11月30日付けで「一部報道の件について」として以下のプレスリリースをした
https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS08938/5eee573d/b7d4/423a/824a/bbfcff3301a2/140120221130573320.pdf。
どちらが正しいのかは直ちには分かりかねるが、「リミックス社」の言い分はやや苦しいような印象を受けた。
先ずは、11月21日付け現代ビジネスが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁 昭夫氏による「仮想通貨は「大混乱」へ…「FTXの破綻」が世界の投資家たちに与える驚くべき「負のインパクト」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/102432?imp=0
・『天才経営者 バンクマン-フリード 11月11日、大手暗号資産(仮想通貨)交換業者、米FTXトレーディングが“チャプター11(連邦破産法11条、わが国の民事再生法に相当)”を申請した。 かつて、天才経営者と謳われた、FTX創業者であるサム・バンクマン-フリード氏の名声は凋落し、その経営手腕には多くの疑問符が付くことになった。 米国の著名経済学者であるJ.K.ガルブレイスは、バブル崩壊の前に天才が表れると指摘した。 バンクマン-フリード氏はその一人といえるかもしれない。 2020年3月中旬以降、同氏が生み出した暗号資産の一つである、“FTXトークン=FTT”は見る見るうちに上昇していった。 それと同時に、バンクマン-フリード氏は政治への影響を強めた。 また、同氏は社会全体のベネフィットのために事業を運営するとの考えを唱えた。 そうした同氏の姿勢は多くの共感を呼んだ。 世界的なカネ余りが続くとの楽観の高まりもあり、FTXの価値上昇によって強い期待が盛り上がった。 問題は、バンクマン-フリード氏の経営が、FTTという仮想通貨の価値急騰に依存したことだ。 暗号資産の業界では、FTXのように過剰な楽観に依拠してバランスシートを膨らませた企業が多い。 それは、後から見ると“砂上の楼閣”だったことが分かる。 FTX破たんをきっかけに、経営が行き詰まる関連企業は増えるだろう』、「同氏が生み出した暗号資産の一つである、“FTXトークン=FTT”は見る見るうちに上昇」、「バンクマン-フリード氏は政治への影響を強めた。 また、同氏は社会全体のベネフィットのために事業を運営するとの考えを唱えた。 そうした同氏の姿勢は多くの共感を呼んだ。 世界的なカネ余りが続くとの楽観の高まりもあり、FTXの価値上昇によって強い期待が盛り上がった。 問題は、バンクマン-フリード氏の経営が、FTTという仮想通貨の価値急騰に依存したことだ」、なるほど。
・『FTT高騰の背景 FTX創業者のバンクマン-フリード氏は、一時、“天才経営者”、“フィンテック業界の救世主”などと称された。 同氏は、世界的な仮想通貨の熱狂ブームに乗り、著名人を広告に用いるなどして仮想通貨の権威、スターとしての地位を確立した。 我先に、同氏の経営手腕から利得を手に入れようとする投資ファンドや企業などが急増した。 そこには、あたかも神話のような強い成長への期待があった。 それを支えたのが、バンクマン-フリード氏が作った“FTT”の仕組みだった。 FTTとは、仮想通貨の一つだ。 FTT保有者はその価値の上昇だけでなく、FTX利用手数料の割引や、FTTを担保にしてレバレッジをかけた取引を行うことができた。 2019年に香港でFTXは創業された。 その後、香港当局は仮想通貨取引規制を強化した。 2021年、バンクマン-フリード氏はバハマに拠点を移しFTXのビジネスを急拡大させた。 世界的な金融緩和の継続期待と利用者の急増によって、FTTは急騰した。 FTXの業績も拡大した。 FTTを担保に同氏はFTXから自身が所有するアラメダ・リサーチに融資し、投資ビジネスを強化した。 政治献金も積極的に行い、社会全体に、より効率的に付加価値を提供する姿勢を鮮明にした。 それは、FTXの急成長によって社会が変わるというような強烈な期待を多くの人に与えた。) さらにMLB、NBA、NFLのスタープレイヤーとも長期のパートナーシップを結んだ。 わずか1年ほどの間にバンクマン-フリード氏の評価は大きく高まり、“2021年の仮想通貨業界で最も影響ある人物”と呼ばれた。 また、29歳の時点で資産285億ドルを達成したといわれるマーク・ザッカーバーグを上回る富を同氏が手に入れると目されるなど、時代の寵児としてもてはやされた』、「FTTとは、仮想通貨の一つだ。 FTT保有者はその価値の上昇だけでなく、FTX利用手数料の割引や、FTTを担保にしてレバレッジをかけた取引を行うことができた」、「世界的な仮想通貨の熱狂ブームに乗り、著名人を広告に用いるなどして仮想通貨の権威、スターとしての地位を確立した。 我先に、同氏の経営手腕から利得を手に入れようとする投資ファンドや企業などが急増した」、なにやらバブリーな雰囲気も濃厚だ。
・『混乱の懸念高まる仮想通貨業界 未来永劫、神話のような成長が続くことは難しい。 昨年11月以降、仮想通貨市場全体に下落圧力がかかり始めた。 それによって裏付けのない資産であるFTTでバランスシートを膨らませたFTXとアラメダの資金繰りは急速に悪化した。 事業運営体制の悪化をバンクマン-フリード氏は察知できなかったと述べている。 見方を変えると、同氏は社会の公器としての成長よりも、規制をかいくぐり、自らの富を増やことに執着してしまったのではないか。 一時はバイナンスによるFTX救済合併も目指されたが、最終的に見送られた。 11月11日にFTXは“チャプター11”を申請した。 FTXの債権者数は100万人を超えるとの見方もある。 それ以降、次は自分が窮地に陥るかもしれないと、先行きを不安視し、仮想通貨を手放す投資家は急増している。 連鎖反応のように、顧客資金の引き出しを停止する仮想通貨交換業者も増えはじめた。) 今後の仮想通貨市場では、売るから下がる、下がるから売るという弱気心理の伝染が、さらに鮮明化するだろう。 資金繰りがひっ迫し、経営破たんに陥るブローカーの増加が懸念される。 それに加えて、規制強化も急務だ。 特に、仮想通貨を担保にした融資の実態把握は急を要する。 交換業者による顧客資金の管理体制の確認、改善指示なども急がなければならない。 状況によっては、米国などの金融システムに相応のストレスがかかる恐れもある。 今すぐそうした展開が現実のものになるとは考えづらいが、仮想通貨業者の破たんによって投資ファンドなどが損失をこうむり、局所的に金融システムが不安定化する可能性は排除できない。 FTX経営破たんの負のインパクトの深刻化が懸念される』、「仮想通貨業者の破たんによって投資ファンドなどが損失をこうむり、局所的に金融システムが不安定化する可能性は排除できない。 FTX経営破たんの負のインパクトの深刻化が懸念される」、やはり影響は深刻なようだ。
次に、11月27日付け東洋経済オンライン「FTX破綻で窮地に立つ「暗号資産ビジネス」の憂鬱 日本の暗号資産業界は逆風を切り抜けられるか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/635558
・『アメリカの暗号資産交換業大手・FTXトレーディングが経営破綻してから、およそ2週間。その衝撃は冷めることなく、日本の投資家や業界関係者の動揺は収まらない。 「預け入れていた資産はおよそ300万ドル(4.2億円)相当。アメリカで適用が申請された連邦破産法11条(チャプター11)の行方次第で全額戻らないかもしれず、とても心配だ」。ツイッターアカウント名「ヨーロピアン」で活動する日本在住の30代男性は不安げにそう話す。 FTXトレーディングは、2022年3月に日本の交換業者を買収し、4月からFTXジャパンに社名変更した。この男性はそれまでFTXトレーディングの口座で取引を行っていたが、社名変更のタイミングで口座がFTXジャパンに移ったという。FTXジャパンの口座はシステムのトラブルで、現在出金できない状況が続いている。 日本の交換業者は金融庁の定めで預かり資産の分別管理が求められている。FTXジャパンも法令に則り、暗号資産はオンライン接続しないコールドウォレット、法定通貨は日本の信託口座において分別管理を行っていると会社は説明する。FTXジャパンが11月21日時点で保有する、円ドルを合わせた法定通貨の預かり資産は60.74億円、及び別の現預金が約178億円あるという(2022年9月末の純資産は100億円)』、「円ドルを合わせた法定通貨の預かり資産は60.74億円」、これは本社勘定とは「分別管理」され、保護されると考えてよいのだろうか。
・『日本の金融庁が示したFTX破綻に対する見解 チャプター11の申請書類にはFTXグループの債務整理の対象として日本法人が含まれており、FTXジャパンが保有する資産がそれに充てられる可能性はゼロではない。FTXトレーディングの新しいCEOに就任し、エネルギー取引会社エンロンの破綻処理を監督したジョン・レイ氏は11月19日、チャプター11の手続きの中で「子会社の売却や資本再編といった戦略的な取引が今後の優先事項だ」とコメントしている。 ただし、日本の金融庁の担当者によれば、「会社の資産と個人の資産管理はまったく別。FTXジャパンのコールドウォレットに預けられている暗号資産と法定通貨の預かり資産は、日本法の下で問題なく戻ってくる」という。そのうえで「資産の引き出しをした後も暗号資産の取引を続けたいという利用者もいるだろうし、事業の継続性という意味では優良な売却先が見つかることが望ましい」と話す。 アメリカを拠点に預かり資産は一時期2兆円を超えていたFTXトレーディング。瞬く間に破綻に至った裏にはいったい何が起きていたのか。 FTXはグループ全体で130を超える関係会社を持つ巨大組織だ。その頂点に立つのが30歳のサム・バンクマン・フリード氏。チャプター11の申請書類によると、グループのカテゴリーは大きく4つに分かれる。サム氏はそのいずれにも個人で過半の出資を行っている。) 中でも関係性が深いのが、交換業のFTXトレーディングとアービトラージ(裁定取引)やマーケットメイキング(相場の値付け)など、クオンツ投資と呼ばれる手法を暗号資産に特化して行っているアラメダ・リサーチだ。この2社の関係が、グループ崩壊のきっかけとなった。 発端は、アラメダのバランスシート(貸借対照表)だった。11月上旬、現地専門メディアが、同社の資産の4割超が「FTXトークン(FTT)」と呼ばれるFTXトレーディングが発行する自社トークンであると報じた。FTTを担保にアラメダは、FTXトレーディングから100億ドルを借り入れていたこともその後明らかになった。FTXトレーディングがアラメダに融資した資金は顧客から預かり資産の流用だったとされる』、「アラメダのバランスシート」で「資産の4割超が「FTXトークン(FTT)」と呼ばれるFTXトレーディングが発行する自社トークン」、とは確かに不健全だ。
・『自社トークンの価値が急落 FTTのような自社トークンは、いわば交換所にとっては「打ち出の小槌」といえる。法定通貨や国債などを担保にしたステーブルコインのように価値を裏付ける資産は不要で、発行の上限はあるものの設計次第では無限にすることもできるといわれる。 大谷翔平選手の広告塔起用などFTXトレーディングによる派手なマーケティングなどによってFTTの価値は上昇し、2022年4月時点の価格は1FTT当たり50ドルまであった。しかし、アラメダの脆弱な財務体質が明らかになったことで、交換所最大手のバイナンスが自社で保有するFTTを売却すると発表。野放図な貸し借りも暴かれたことにより、FTT価格は急落し、足元は1ドル台にまで落ち込んでいる。 融資元であるFTXトレーディングにもその影響は及び、一時は取り付け騒ぎのような事態が発生。同社は出金機能の停止措置に踏み切り、FTXジャパンも親会社の方針に従い出金を停止した。一方でFTXジャパンは、利用者からの財産の受け入れや利用者との暗号資産取引を継続していたため、11月10日に関東財務局から行政処分を受けている。 その翌日11日にFTXトレーディングはチャプター11の適用を申請。22日に、裁判所で初の法廷審問が開かれている。) 国内の交換所・SBI VCトレードでトレーディング部門を統括する久場健太郎取締役は、「FTXトレーディングのサービスは投資家がロスカットする際に(売買が成立する)約定レートがほかの交換所に比べて格段によかった。マーケットメイカーであるアラメダの流動性が豊富にあるからで、当時はさすがだと思っていたが、今から思えばアラメダの財務はFTTに依存しており、砂上の楼閣だったといえる」と話す』、「FTT価格は」、「4月時点の価格は・・・50ドル」だったのが、「急落し、足元は1ドル台にまで落ち込んでいる」、これでは担保にしていたら、大変だ。
・『暗号資産の相場が上向く兆しはある アメリカを震源地とする今回の騒動、国内の暗号資産ビジネスには、どのような影響が及ぶのか。 日本の暗号資産交換業は2018年1月のコインチェックによる大規模な顧客資産の流出を受けて、厳しい規制を課されてきた。 2019年の法改正では交換業者に対し、顧客から預かる暗号資産全量の上限5%を除き、コールドウォレットで管理することを義務づけ、常時オンラインに接続されているホットウォレットで管理する顧客の暗号資産は、別途それに見合う弁済原資を保持することが義務づけられた。 メルカリの完全子会社で暗号資産交換業を営むメルコインの青柳直樹CEOは「暗号資産交換業に対する規制は、自己資本の蓄積などを含め、日本が世界で最も厳しいものになっている。FTXの破綻により、今後世界的に暗号資産への規制が強まることが予想される中で、逆に日本の規制は利用者に対して安心材料になるだろう」とみる。 現在の価格は約200万円前半と1年前と比べ3分の1に下がった代表的な暗号資産ビットコインの相場も上向く兆しはあるという。 同じく交換業を運営するビットバンクの長谷川友哉マーケット・アナリストは、「アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)が利上げペースを緩めるという観測があり、その前提でみれば来春には相場が回復してもおかしくない。経営破綻はFTXのガバナンス不全という同社固有の問題があったからで、ブロックチェーンにより信頼のコストが下げられるという暗号資産の価値は失われていない」と指摘する。) 一方で、「FTXショック」は暗号資産の規制改革には逆風となりそうだ。 暗号資産やトークンを使った「ウェブ3」と呼ばれる次世代のウェブビジネスを推進するために、業界関係者や一部の政治家が取り組んできたのが、税制改革だった。具体的には、ウェブ3を手がける企業がトークンを保有するだけで、その含み益に対して法人税が課される状況を解消することなどを目指している。 これらのロビイング活動についてマネーフォワードでパブリックアフェアーズ室長を務める瀧俊雄執行役員は、「ウェブ3の推進派は、イノベーションを意識したバイデン大統領の大統領令をよりどころに税負担の緩和を求めてきた。だが、サム氏が民主党の大口献金者だったこともあり、共和党の攻撃材料となる可能性が高い。日本では個人の暗号資産取引を申告分離課税することなども求めているが、アメリカの政策は思うように進まないとなると、日本の推進派がよりどころを失うことで税制改革が遅れるおそれがある」と分析する』、「「ウェブ3の推進派は、イノベーションを意識したバイデン大統領の大統領令をよりどころに税負担の緩和を求めてきた。だが、サム氏が民主党の大口献金者だったこともあり、共和党の攻撃材料となる可能性が高い」、共和党が下院を制した現在では、「税制改革」はますます難航するだろう。
・『暗号資産ビジネスは逆風を跳ね返せるか ウェブ3をめぐっては、11月8日にNTTドコモがアクセンチュアなどと組み、新会社を設立すると発表。ウェブ3の分野に対し、向こう5~6年以内に最大6000億円の投資を行うとしている。暗号資産の交換やトークン発行といった共通基盤を提供するという。 ほかにも野村ホールディングスがスイスで暗号資産関連のベンチャーキャピタルを設立したり、電通がグループ横断の支援組織「web3 club」を発足したりするなど、日本の大企業も暗号資産を意識したビジネスを始めようとしている。 FTXの唐突な破綻でマイナスイメージが強まりかねない中、暗号資産業界はビジネスの拡大でそうした懸念を払拭できるのか。先んじて規制強化が行われた日本として、何ができるかが問われている』、「日本」では「ウェブ3」への動きが出てきたが、「FTXの唐突な破綻でマイナスイメージが強まりかねない中、暗号資産業界はビジネスの拡大でそうした懸念を払拭できるのか。先んじて規制強化が行われた日本として、何ができるかが問われている」、その通りだろう。
第三に、11月30日付け文春オンライン「東証スタンダード上場 大手仮想通貨取引所のトップが、台湾で指名手配されていた・・・」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/59059
・『世界業界第2位の仮想通貨取引所だったFTXの経営破綻が、暗号資産業界への信頼を大きく揺るがしている。そんななか、日本国内では、さらに不信感が高まりそうな事実が明らかになった。国内大手の取引所を運営する企業のトップが、海外の警察当局から指名手配中であることが判明したのだ』、悪い時には、悪いことが重なるものだ。
・『不正流出事件を端緒に、台湾で刑事事件へ発展 「俺たちのビッグボス ビットポイント~♪」 耳に残る軽快なテーマソングとともに、北海道日本ハムファイターズ監督の新庄剛志氏が出演するのは、株式会社ビットポイントジャパン(以下BPジャパン)のテレビCMである。 しかし、同社には消せない過去がある。2019年7月には、顧客が保有する30億円超(当時のレート)の仮想通貨が不正流出する不祥事を起こしているのだ。ただ、この不正流出に対しては、被害を受けた顧客に対する全額補償の方針を早々と打ち出し、一定の解決を見た。とはいえ、それは日本国内に限った話である。 BPジャパンが、仮想通貨取引所としてサービスを提供していた台湾では、この不正流出事件を端緒に刑事事件へと発展し、当時の同社社長、小田玄紀氏が指名手配されているのだ』、「BPジャパンが、仮想通貨取引所としてサービスを提供していた台湾では、この不正流出事件を端緒に刑事事件へと発展し、当時の同社社長、小田玄紀氏が指名手配されている」、信じ難いような事件だ。
・『指名手配書には、容疑として「詐欺等」と記されて 筆者が入手した、地方裁判所に相当する台湾台北地方法院が今年4月22日に発行した指名手配書には、小田氏の名前や生年月日とともに、容疑として「詐欺等」と記されている。 1980年生まれの小田氏は、東大法学部在学中に興した事業を売却して得た資金を元手に、その後はベンチャーキャピタリストとして活動。2011年からは、経営不振に陥っていた株式会社リミックスポイント(以下リミックス社)の経営に参画するとその手腕が認められ、現在は東証スタンダード市場に上場する同社の代表取締役社長CEOを務めている。 また、リミックス社がのちにBPジャパンとなる株式会社ビットポイントを ・虚偽の清算書を作成し、業務提携していたビットポイント台湾(以下、BP台湾)から15億7500万円相当を不当に利得した、詐欺および財務諸表の虚偽記載の疑い ・自己不当利得を意図し、取得した約6億3000万円を清算表に記載しなかった、業務上横領および財務諸表虚偽記載の疑い ・顧客3人の口座残高の計16万米ドル相当の仮想通貨を引き出し不能としたうえで返還を拒んで不当利得した、詐欺および業務上横領の疑い (筆者が入手した台湾地方法院による指名手配書 はリンク先参照)』、「BPジャパン」は何故、このような不祥事を起こしたのだろう。
・『協業関係に亀裂が走ったきっかけ しかし、これだけでは、指名手配に至るまでの経緯は見えてこない。そこで、指名手配書にも被害者として名前が挙がっているBP台湾にも取材を行った。 「2018年、弊社はBPジャパンとの提携の元にサービスを開始しました。弊社が担当するのはフロントデスク業務のみ。集客やログイン画面の運営は弊社が担当していましたが、それより先の取引システムの運営から顧客の個人情報や口座残高の管理はすべてBPジャパンが行うという、いわゆるホワイトラベルです。弊社はBPジャパンに毎月100万円のブランドフィーを支払い、台湾の顧客が支払った取引手数料を、両者で分け合うという契約でした」(BP台湾法務担当者) そんな両者の協業関係に亀裂が走ったのが、2019年7月の不正流出事件だ。 「台湾の顧客も同様に被害を受け、結果的に2億5000万円相当の不正流出が確認されました。これについては、当時BPジャパンの代表取締役社長だった小田氏は当初、補償する姿勢を見せていました」(同前)』、「両者の協業関係に亀裂が走ったのが、2019年7月の不正流出事件」、「台湾の顧客も同様に被害を受け、結果的に2億5000万円相当の不正流出が確認」、「当時BPジャパンの代表取締役社長だった小田氏は当初、補償する姿勢を見せていました」、どういう事情の変更があったのだろうか。
・『清算表に反映されていない5億3000万円が行方不明 ところが、被害の全容把握のために、BP台湾側が顧客の過去の取引データを調査したところ、その何倍もの金額がどこかに消えていることが判明したという。 「もっとも大きいのは送金の未反映です。弊社は業務開始以来、顧客の口座への入金分など、約41億2000万円相当をBPジャパンに送金しているのですが、両社間の資金のやり取りを記録した清算表には計35億9000万円しか反映されておらず、5億3000万円ほどが行方不明となっているのです。同様の矛盾は、両社の帳簿を比べた際に散見されます。 ほかにも、スプレッド(買値と売値の差)の計算が間違っていたり、一つの約定IDに複数の取引が存在していたりと、不審な点がいくつも見つかりました」(同前)』、「清算表に反映されていない5億3000万円が行方不明」、送金や受取の記録をチェックすれば、判明する筈だ。「スプレッド」「計算」の「間違い」など「不審な点」も個々にチェックすれば、判明するのではなかろうか。
・『不正流出の被害を受けた顧客ら3名も刑事告訴 そこでBP台湾は、不正流出による顧客の被害額に加え、こうした不正や誤りによる損害額を合計した約10億2400万円の弁済をBPジャパン側に要求したという。しかし……。 「小田氏が当初、対応する姿勢を見せていた不正流出に対する補償も含め、BPジャパンはまったく弁済に応じませんでした。2019年8月に東京地裁に民事訴訟を提起し、現在も公判が続いています。 その一方で2020年には、不正流出の被害を受けた顧客ら3名ともに、小田氏個人を台湾の警察当局に刑事告訴しました。その後、警察の捜査の結果、嫌疑十分ということで、小田氏には逮捕状が出されました。ところが小田氏は台湾に不在であるため、4月までに指名手配となったようです」(同前) 筆者は、BPジャパンの親会社で、現在も小田氏が代表取締役CEOを務めるリミックス社に、小田氏が上場企業のトップとして適任なのか、見解を質した。しかし、期日までに回答は得られなかった。 これまで自著やインタビューで、「逃げない経営」を自身の信条として繰り返し語ってきた小田氏。ならば今、自らの法的責任からも、逃げずに向き合うべきではないだろうか』、「リミックス社」は11月30日付けで「一部報道の件について」として以下のプレスリリースをした
https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS08938/5eee573d/b7d4/423a/824a/bbfcff3301a2/140120221130573320.pdf。
どちらが正しいのかは直ちには分かりかねるが、「リミックス社」の言い分はやや苦しいような印象を受けた。