異次元緩和政策(その43)(円安構造の固定化であきらかになる金融政策の不都合な真実、日銀が金融緩和策を変更すると一体どうなるのか 一歩間違えば円大暴落だけでは済まない事態に、経済学者・野口悠紀雄の提言「早く金利を上げて、円安を止めなさい」 「安売り依存」から脱却せよ) [経済政策]
異次元緩和政策については、7月15日に取上げた。今日は、(その43)(円安構造の固定化であきらかになる金融政策の不都合な真実、日銀が金融緩和策を変更すると一体どうなるのか 一歩間違えば円大暴落だけでは済まない事態に、経済学者・野口悠紀雄の提言「早く金利を上げて、円安を止めなさい」 「安売り依存」から脱却せよ)である。
先ずは、8月6日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した翁邦雄氏による「【翁邦雄・元日本銀行金融研究所所長に聞く】円安構造の固定化であきらかになる金融政策の不都合な真実」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/307556
・『「円安がGDPを押し上げ、日本全体にプラスに働く」というのは本当か? 為替レートの変動によって、その受益者と被害者はどの程度入れ替わっているのだろうか。元日本銀行金融研究所所長で、『金利と経済――高まるリスクと残された処方箋』などの著書もある翁邦雄氏が、長期的に為替レートの推移をみて受益者と被害者を分析した』、興味深そうだ。
・『「受益は輸出企業へ・損失は消費者へ」という円安構造の固定化 前回、円安の恩恵を受ける輸出企業と、輸入物価上昇によって被害を受ける内需依存型企業や消費者等とについて、その利益と損失を試算した。紹介した数値化は、大胆な単純化の仮定に拠っている。円ドルレートの輸出入金額への影響に限っても、実際には、輸出のドル建て契約比率は5割程度、輸入については7割程度だから、円ドルレートの変動をそのまま反映するわけではない。 そもそも為替レートは円高化したり円安化したりするものだろうから、やや長い目で見れば、受益者と被害者は入れ替わりうるはずである。かつて円高が問題視された時期もあったわけだから、最近の円安の損得だけを議論すべきでない、という意見もあるだろう。 そこで、少し視点を変えて長期的な為替レートの推移を眺めてみよう。 実質実効為替レートの推移(日銀統計) 上図は、1980年以降の円ドルレートと実質実効為替レートの推移をグラフ化したものである。実質実効為替レート(青線)は、物価上昇率の差を調整した為替レート(実質為替レート)を貿易相手国・地域のウェイトで調整(実効化)して加重平均した指標である。 多くの貿易相手国は、日本に比べると物価・賃金が上がっているので、為替レートが円高に変化しなければ円の購買力は低下する。また、貿易ウェイトの高まった国の通貨に対する円の減価が相対的に大きければ、実効的な円安化が起きていることなる。 こうした点から、実質実効為替レートは円ドルレートよりも円の購買力の変化をよりよくあらわしている。前回紹介した日銀の展望レポートにおける「円安が10%進めば実質国内総生産(GDP)を年間で0.8%ほど押し上げる」という計量分析結果で使われている為替レートも、円ドルレートではなく実質実効為替レートである。 このグラフをみると、実質実効為替レートは1990年代央以降、振れを伴いつつも驚くほど長期間、円安方向へ動き続けてきたことがわかる。リーマンショック後に円高を懸念する声が強まった時期でさえ揺り戻しはそれほど大きくなく、円安トレンドの足踏み程度にとどまっている』、「実質実効為替レートは1990年代央以降、振れを伴いつつも驚くほど長期間、円安方向へ動き続けてきたことがわかる。リーマンショック後に円高を懸念する声が強まった時期でさえ揺り戻しはそれほど大きくなく、円安トレンドの足踏み程度にとどまっている」、「実質実効為替レートは1990年代央以降、・・・驚くほど長期間、円安方向へ動き続けてきた」、とは漸く思い出した。
・『受益者と被害者の固定化 こうしてみると、円安がGDPを押し上げ日本全体にプラスである、という日銀のロジックが国民の実感と乖離し、特に消費者に支持されにくい理由の一端は、こうした受益者・被害者の固定化にもあるだろう。円安の負担だけが強く実感される消費者が、円安誘導を続ける超金融緩和政策の公正さへ漠然とした不信を強めていてもおかしくないからだ。 2022年6月6日のきさらぎ会(注:共同通信の加盟社、主要民間企業、公共団体の部長級以上を会員とする研究会)の講演の「おわりに」の部分で黒田総裁は次のように述べた。 「現在のイールドカーブ・コントロールを柱とする強力な金融緩和を粘り強く続けていくことで、経済活動をしっかりとサポートすることが最優先課題です。日本銀行は、海外の中央銀行と異なり、経済の安定か、物価の安定か、というトレードオフに直面していないため、金融面から総需要を刺激し続けることが十分に可能です」 確かに、日本の状況と欧米の置かれている状況とは異なる。しかし、上記のように日本の金融政策は実は深刻な分配上のトレードオフを抱えている。景気刺激効果をもち実質GDPを押し上げるという意味でプラス効果をもつという円安が、輸出企業に与える大きな利益と、消費者・内需企業の大きな損失である。 異次元緩和はこのトレードオフを無視したまま、円安政策を一貫して追求してきた。それにもかかわらず「円安によって収益が改善した企業が、設備投資を増加させたり、賃金を引き上げたりすることによって、経済全体として所得から支出への前向きの循環が強まっていく」いった動きはみられなかった。 むろん、為替レートは金融政策だけで決まるものではない。だが、金融政策は為替レートへの影響に限らず、金利経由でも分配に大きな影響を与える。しかし、中央銀行は金融政策の分配面への大きな影響という不都合な真実から極力、目を逸らしてきた。身動きが取れなくなりかねないからだ。 中央銀行がそれを気にしていなかったわけではない。ただ、かつては、金融政策は安定化政策であり、景気循環を均すために金利や為替レートは変動させている、受益者は入れかわるはずだから長い目で見てほしい、という、弁解は可能だっただろう。 しかし、今は、そうは言いにくい。きさらぎ会の講演における黒田総裁の「消費者が値上げを受け入れている」という発言が大きな反発を受けたのも、あまりに長期間、不利益が固定化された消費者等の「金融政策の不都合な真実」に対する鬱積した不満がその底流にあるのではないだろうか』、「黒田総裁の「消費者が値上げを受け入れている」という発言が大きな反発を受けたのも、あまりに長期間、不利益が固定化された消費者等の「金融政策の不都合な真実」に対する鬱積した不満がその底流にあるのではないだろうか」、同感である。
次に、10月29日付け東洋経済オンラインが掲載した大蔵省出身で慶應義塾大学大学院准教授 の小幡 績氏による「日銀が金融緩和策を変更すると一体どうなるのか 一歩間違えば円大暴落だけでは済まない事態に」を紹介しよう。
・『:慶應義塾大学の准教授である小幡績氏は、今回の原稿のテーマについて「やっぱり日本銀行の金融政策にしようか、それとも財務省の為替介入にしようか、いや、政府の経済政策という名のバラマキ政策でいくか」、あれこれ迷っていた。 迷いすぎているうちに、いつの間にか自宅の書斎(通称「洞窟」)で寝入ってしまっていた……。以下は、どうやら夢の中で見た光景のようだ』、行動経済学者の「小幡」氏の見解とは興味深そうだ。
・『日銀は2023年も不自然な金融緩和を継続? この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています)。記事の一覧はこちら
2023年4月、日銀の総裁に就任した灰色太郎氏は、金融政策決定会合で政策変更を行うべきかどうか迷っていた。 日銀は金融政策の柱の1つとして、イールドカーブコントロール(YCC、長短金利操作)を2016年から導入していた。これは短期金利をマイナスにするだけでなく、10年物国債の金利水準を0%程度にしようと目標を定め、国債買い入れを行う政策である。これによって、短期から長期まで、金利全体の動きをコントロールするのが目的だ。 この政策は2023年の今も継続しており、その金利目標水準も0%程度でまったく変わっていなかった。乖離許容幅については、0.1%だったのを2021年3月に0.25%に変更した。 だが、乖離許容幅といいながら、実質的には長期金利国債10年物利回りを0.25%にくぎ付けにするために、連続指し値オペというものを2021年3月に導入し、2022年4月末からは毎日行うこととした。この連続指し値オペはすでに1年近く行われていたため、10年物国債の取引はほぼ消滅し、国債市場は仮死状態といわれていた。 この異常な力任せの緩和を継続していたため、円は極端に安い水準となっていた。それでも、アメリカの中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)の強烈な利上げは2023年1月に一段落し、短期金利は4.75%で横ばいとなっていた。 一方、欧州はロシア・ウクライナ情勢が膠着したままであることもあり、インフレが止まらず、ECB(欧州中央銀行)は利上げを継続していた。この結果、ユーロは上昇し、一時は1ユーロ=1ドルを割り込んだユーロドル相場は、1ユーロ=1.15ドルの水準まで回復していた。 そのほかの国の通貨も、極端なドル高の反動でおおむね戻していた。しかし、円だけは戻りが極めて弱く、1ドル=140円前後で推移していた。ただし、変動は激しかった。なぜなら、金融政策決定会合のたびごとに「日銀総裁交代前に政策変更か」という市場の仕掛けが行われたからだった。 財務省はその都度為替介入を行ったが、この乱高下を利用して、トレーダーたちは細かく稼いでいた。いわば、介入を誘い、それをネタに小銭を稼いでいたのだ。世界で、為替はほとんど注目されなくなった中で、日本円だけがトレーダーのおもちゃにされていた。) このような状況の中で、発足した日銀の新執行部は内部でもめていた。「とにかく市場で波乱を起こさないように現状維持で行こう」という薔薇色桃子新副総裁と、「国債市場の仮死状態をこのまま続ければ本当に国債市場は死んでしまう」と懸念する赤色勇新副総裁と、意見が激しく対立していた』、「財務省はその都度為替介入を行ったが、この乱高下を利用して、トレーダーたちは細かく稼いでいた。いわば、介入を誘い、それをネタに小銭を稼いでいたのだ」、「トレーダー」にとっては正常な業務の一環だ。
・『金利ターゲットは0.25%、指値オペは0.5%に? 灰色総裁は、強硬に政策変更を主張する赤色副総裁に尋ねた。「では、君はいったいどんな具体案があるというのか?」 「ここは、YCCを結局は終了しなくてはいけません」 「それでは、奴らは、われわれを攻撃してくるだろう!どうするんだ!」 「いずれにせよ、YCCはやめないといけません。そのときはいずれ攻撃を受けます。もうすでに国債市場の歪みは拡大していますが、遅らせれば遅らせるほど、ひどくなってしまいます」 「いきなりYCCを止めたらどうなると思っているだ!ただじゃすまないぞ!」 「もちろんです。いきなりはやめません」 「は?なんだ。やめないのか。じゃあ、どうするんだ?」 「ターゲットをゼロ程度から、0.25%に引き上げます。乖離許容幅は0.25%のままです。そこで、指し値オペは0.5%にします」 「それじゃあ、利上げじゃないか!メディアがついに『日銀利上げ、市場圧力に屈した』と書き立てて、俺は記者会見で攻め立てられるぞ!」 「仕方ありません。いきなりYCCを終了すれば、10年物の金利がどこまで上がるか、まったく予測できません。市場も同じです。乱高下で大混乱します。0.25%ターゲット、指し値0.5%のほうが、はるかにましです」 「甘い!それじゃ、次の利上げを狙って、市場は国債を売り浴びせてくるぞ。それこそ大混乱だ」 「そこで、その次の会合で、また0.25%引き上げます」 灰色総裁は気色ばんだ。 「それでは、追い込まれっぱなしじゃないか」 「はい」 「はい、じゃないだろ!」 「その次の会合で、0.75%ターゲットとし、乖離許容幅0.25%とすると上限は1%となりますが、ここでは、指し値オペを0.9%にして、とことん買い支えます」 「どういう意味があるんだ?」) 「もうこれで利上げは終わり、というメッセージです。1%は死守するラインで、それを突破されないように、その前にも死守ラインを設け、とことん頑張るんです」 「それで?」 「やつらが攻撃をあきらめるまで0.9%で買い続けます。彼らは1%までは後退するだろうと攻撃すると思いますが、そこで0.9%とことん買い続ければ、彼らも弾が尽きます。そうすれば、0.9%で無風になります。そこで、YCCをやめると発表するのです」 「そうすると?」 「ここで、もしもう一度攻めてくれば、再度0.9%で守ります。しかし、彼らは弾が尽きているので、補充しても迫力はないはずです。つまり、YCCをやめるタイミングの前に、彼らを疲弊させておくのです。それにより、YCCをやめた直後の戦いでは、勝ちやすくなります。彼らが力尽きた直後に、YCCをやめるんです」 「なるほど。うまくいきそうだな」 「いえ、やってみないとわかりません」 「おい!勧めておいて、なんだそれは!俺を罠にかけるのか!そんな不確実なことができるか!」 「勝負はやってみないとわかりません。時の運です」 「お前な……。お前はクビだ!」 「総裁は副総裁をクビにはできません」 「なに!!いつのまにそんな反抗的に……。わかった。もう帰りたまえ」 「はい」 灰色総裁はつぶやいた。 「あいつめ。なんてやつだ。しかし、あいつの言うのも一理あるな。このままずっと何もしないわけにもいかない。世界の金利市場の実勢を鑑みれば、日本国債の金利上昇もやむをえまい。しかし、かといって利上げはできない。う―――ん……」』、「YCCをやめるタイミングの前に、彼らを疲弊させておくのです。それにより、YCCをやめた直後の戦いでは、勝ちやすくなります」、確かにその通りなのかも知れない。
・『指し値オペを0.5%にした日銀、利回りは瞬時に0.75% その3日後の政策決定会合後の記者会見で、灰色総裁は政策変更を発表した。それは、乖離許容幅を±0.25%から±0.5%に拡大する、というものだった。連続指し値オペは継続するが、0.5%で無制限に買い入れる、というものだった。 国債市場は直ちに反応し、利回り0.5%まで上昇したが、その後、海外先物市場ではそこで止まらず、あっという間に0.75%まで上昇した。次の乖離許容幅の拡大を織り込んだものだった。) 国内メディアも、灰色総裁を一斉に攻撃した。 「総裁、これは利上げですか、利上げではないんですか?どっちなんですか!」 「利上げではありません。強力な緩和を継続し、わが国の物価動向は……、景気も……」 「なぜ指し値の利回りが切り上がったんですか?利上げを利上げでないと言い逃れしているだけじゃないですか!」 「いえ、そんなことはありません……」 「では、なんなんですか!」 別の記者も攻撃した。 「国債利回りが0.5%を突破して、海外市場では0.75%までいったんですよ!見透かされてますよ!」 さらに別の記者もかさにかかって、非難する。 「国債だけではなく、円も売り浴びせられてますよ!本来利回りが上昇したら、円高になるはずでしょ!債券安、為替安、日本売りです!それも、総裁の政策変更のせいです!」 「いえ、ですから……うっ……」 「総裁、総裁!大丈夫ですかっ?」 灰色総裁は不眠と疲労、そしてもちろん心労で記者会見の場で倒れてしまい、緊急入院となった。幸い、命に別状はなかったが、絶対安静となり、医者は公務に復帰するのは1カ月以上かかるとのコメントだった。 慌てた官邸は日銀と緊急に話し合い、臨時の措置として薔薇色桃子副総裁を総裁代行とすることを決定した』、「灰色総裁は不眠と疲労、そしてもちろん心労で記者会見の場で倒れてしまい、緊急入院となった」、こんなことになったら「円は大暴落」必至だ。
・『薔薇色総裁代行は事態を悪化させ、円は大暴落 薔薇色総裁代行は翌日、臨時政策決定会合を開くこととした。この混乱を収束させるためということだった。 臨時政策決定会合では、政策は元に戻されることとなった。つまり、10年物0%程度、乖離許容幅0.25%で、連続指し値オペは無制限で0.25%となったのである。 しかし、この政策の後戻りは、当然、事態をさらに悪化させてしまった。国債市場では売りが殺到し、買い入れ対象の国債はすべて日銀が保有する結果となり、オペの意味がなくなった。そして、海外の先物市場では金利がさらに急騰した。 そして、円が大暴落し始めた。アメリカの利上げペースが緩和され、ドルの全面高局面が終了し、ドル円も落ち着き、水準を切り下げていたが、灰色総裁の乖離許容幅拡大で、円安が再度進み始めてしまったところだった。それが、一瞬で大暴落となってしまった。これで、日本国中がパニックとなった。 しかし、最も悪い影響は国債の新発市場で起きた。誰も、国債の入札に応じなくなったのである。長期国債だけでなく、短期国債でも、どんな期間の国債でも、入札がすべて不調となった。日銀の政策の先行きが不透明すぎて、短期金利に対してまで、国内市場ですら疑心暗鬼になってしまい、国債市場は全面的に死んでしまった。 財務省だけでなく、官邸も、いや国全体が、薔薇色総裁代行を攻撃した。 薔薇色総裁代行はこれに耐え切れず、総裁代行だけでなく、職そのものを辞任し、行方がわからなくなってしまった。周辺からは、海外に渡航し、欧州のある国でひっそり過ごしているというウワサがどこからともなく聞こえてきた。 ついに、灰色総裁に強硬論を唱えていた赤色副総裁の出番となった。彼は、かつて、といってもこの間10日も経っていないが、灰色総裁に打診した持論の金融政策を実施した。 しかし、時すでに遅しだった。この大混乱のあとに至っては、まっとうな政策だろうが何であろうが、日銀の動きは全面否定された。国会ではなんと日銀解体論が吹き荒れ、これはさらに円の暴落をもたらした。 いよいよ、日本沈没か……。新聞でもテレビでも、この見出しが躍ったが、人々は目を背けるように、この話題に触れないようになった。テレビはこの問題を扱うと消されてしまうため、ワイドショーでは他愛もない芸能人のスキャンダル特集を流すスタイルに戻ってしまった。 そして、目をつぶる日本国民のこの状態こそが、日本を本当に沈没させる理由だった。破綻の日は刻々と近づいてきた……』、「政策の後戻りは、当然、事態をさらに悪化させてしまった」、「円が大暴落」、「誰も、国債の入札に応じなくなったのである。長期国債だけでなく、短期国債でも、どんな期間の国債でも、入札がすべて不調となった。日銀の政策の先行きが不透明すぎて、短期金利に対してまで、国内市場ですら疑心暗鬼になってしまい、国債市場は全面的に死んでしまった」、あり得そうな恐ろしいシナリオだ。
・『灰色総裁も、薔薇色・赤色副総裁も幻だった? 青色静氏は目を覚ました。「ああ、ひどい夢だったな。疲れているのかな」 青色氏は、翌日の日銀総裁就任を控え、疲労と寝不足から、自宅の風呂につかりながら、寝てしまったようだった。 「日本も俺もおぼれ死ぬわけにはいかない。やはり淡々と金融政策は非常事態の政策から、普通の緩和に戻さなければいけないな。市場に攻撃されても、メディアに攻撃されても、正しい政策を地味に淡々とかつ不屈の精神でやりきらないといけない」 再度、決意を固めた。) 青色新総裁は、最初に政策決定会合でYCCのターゲットを0.25%上げた。指し値オペは0.5%で行ったが、連日はやめ、不意打ちに変更した。そして、無制限ではなく、大規模でない買い入れ額に設定した。売りが殺到しても、売り手は全額を売り切れるわけでなく、割り当てとなったために、空売りにはリスクが伴うようになった。 一方、日銀の買い入れは、限定された金額の指し値オペと、通常の買い入れ額を指定したオペを併用し、かつ不意打ち戦略を取った。市場の混乱、ある程度の乱高下は受け入れつつも、ともかく投機的取引に対するリスクを高めて、投機家を追い出すことを最優先にした。 さらに青色総裁は、官邸、財務省とも「あうんの呼吸」で買い入れを行った。 ドル円相場は、ドルの金利上昇一服により落ち着いていたが、日本国債市場の乱高下により、また円安へ向かい、為替市場も激しく乱高下し始めた。 これを抑えるために、財務省は円買い介入を行った。しかし、これは2022年秋の介入とは異なり、日銀の政策変更または国債買い入れと連動していた。 日銀が利上げを発表した直後に、円買い介入を大規模に行い、円はそのたびに大幅に上昇し、乱高下しつつも円は値上がりしていった。また、日銀が買い入れオペを通告した直後にも、小規模の介入を行った』、「市場の混乱、ある程度の乱高下は受け入れつつも、ともかく投機的取引に対するリスクを高めて、投機家を追い出すことを最優先にした。 さらに青色総裁は、官邸、財務省とも「あうんの呼吸」で買い入れを行った。 ドル円相場は、ドルの金利上昇一服により落ち着いていたが、日本国債市場の乱高下により、また円安へ向かい、為替市場も激しく乱高下し始めた。 これを抑えるために、財務省は円買い介入を行った。しかし、これは2022年秋の介入とは異なり、日銀の政策変更または国債買い入れと連動していた」、誠に巧みだ。
・『青色総裁は官邸・財務省と危機を乗り切った…… この結果、市場では、日銀の買い入れオペごとに介入期待が高まり、円は上昇していった。買い入れ額が小さくとも、介入額が小さくとも、相乗効果とアナウンス効果、投機家の深読み効果で、買い入れ、介入の効果は倍増した。 青色氏の評判は、利上げ当初は賛否両論だったが、次第にメディアも称賛するようになり、青色氏は中央銀行総裁として、世論も市場も支配し始めた。これこそが中央銀行総裁として重要なことだった。黒田東彦氏の就任当時と政策の方向は異なっていたが、支配という意味では似たような状況だった。 だが、青色氏は「その先」を考えていた。いずれ、世界は大不況になる。そのときにこそ、本当の日本経済の危機がやってくる。そのときに、金融政策、中央銀行への信頼が十分にある状態にしておかなければならない。自分の名声に酔うどころか、さらに気を引き締めていたのであった……。 小幡氏は、ここで目を覚ました。 はたして、これは悪い夢だったのか、それともいい夢だったのか。正夢だったのか。それともありえない理想を夢見ただけだったのか。青色氏のような人はどこにいるのだろうか……。 いずれにせよ、忘れないうちに、この夢を利用して原稿を書いてしまおう。小幡氏は、ヘッドフォンから流れてくる、ジョルジュ・エネスクのバッハ無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第1番を聴きながら、筆を進めたのであった……。 (本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)』、「青色氏は「その先」を考えていた。いずれ、世界は大不況になる。そのときにこそ、本当の日本経済の危機がやってくる。そのときに、金融政策、中央銀行への信頼が十分にある状態にしておかなければならない。自分の名声に酔うどころか、さらに気を引き締めていたのであった……」、確かに理想的な金融政策運営だ。
第三に、11月10日付け現代ビジネス「経済学者・野口悠紀雄の提言「早く金利を上げて、円安を止めなさい」 「安売り依存」から脱却せよ」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/101906?imp=0
・『自信なさげにボソボソ喋るメガネの男、キシダに国を任せていて大丈夫なのか? 世界は、日本の総理に厳しい目を向けている。いったいどうすれば日本は復活できるのか、国内外の7人の「知の巨人」に聞いた。3人目は経済学者・野口悠紀雄氏だ』、興味深そうだ。
・『ブレーキとアクセルを同時に踏む日銀 いま岸田総理がやるべきことはただ一つ、「円安を止めること」です。 それなのに、政府は「総合経済対策」で誤魔化そうとしています。この対策の柱は高騰するガソリンや電気、ガスに対し補助金を出すという内容で、一見、暮らしが楽になると思われるかもしれません。 しかし結局は円安による価格高騰を見えなくして、問題を覆い隠しているだけなのです。 円安の原因は、「日本とアメリカの金利に差があること」です。今年3月以降アメリカが金利を上げているのに、日本は金利を上げていない。 その結果、金利が高いドルを買って円を売る動きが生まれ、円安になる。この日米の「金利差」を解消しない限り、円安は止まりません。 ところが日銀は、金利を上げようとはしない。それどころか、為替介入という円安の「ブレーキ」と同時に、金利抑制策という「アクセル」を踏むという不可解な状態を続けています』、確かに「為替介入という円安の「ブレーキ」と同時に、金利抑制策という「アクセル」を踏むという不可解な状態を続けています」、大きな矛盾だ。
・『「リスキリング」では解決できない いったいなぜ金利を上げないのか。それは大企業をはじめ、円安によって利益を受けている人々がいるからです。特に製造業は、輸入する原材料費は価格に上乗せして国民に転嫁することで円安の恩恵を受けている。 しかしその陰で、円安で増大したコストを価格転嫁できない中小企業が苦しんでいる現実があるのです。 そもそもこの流れが始まったのは、2000年代はじめでした。中国が工業化し、日本の製品は価格競争にさらされるようになりました。そこで政府が取った戦略が、「円安誘導」だったのです。 しかしこの時期、本当に必要だったのは他の国が追いつけない新しい技術を作ることでした。実際、アメリカやアイルランド、韓国、台湾などは、ITに対応した技術の開発に成功し、いまも世界のトップを走っています。 一方、日本は円安による「安売り戦略」に依存し続け、総じて企業の力が弱くなった。 岸田総理が言う「リスキリング」(新しい知識や技術を学ぶこと)も重要ですが、これだけで解決できるほど根は浅くない。企業が大学院などの高等教育をもっと高く評価し、研究・開発に力を入れなければ、日本企業が強くなることはできません。 金利を上げて円安を止める。そして円安依存してきた企業の開発力を高めていく。日本再生の道はこれしかありません。 「知の巨人」シリーズ 1ポール・クルーグマンが激白「日本経済を復活させるには、定年を廃止せよ」 2昭和史を見つめてきた作家・保阪正康が岸田総理を斬る「宏池会の系譜に学ばぬ首相に失望した」 4「賃金を上げて、非正規雇用を見直せ」ジャーナリストのビル・エモットが考える「日本再生への道」』、「2000年代はじめでした。中国が工業化し、日本の製品は価格競争にさらされるようになりました。そこで政府が取った戦略が、「円安誘導」だったのです。 しかしこの時期、本当に必要だったのは他の国が追いつけない新しい技術を作ることでした。実際、アメリカやアイルランド、韓国、台湾などは、ITに対応した技術の開発に成功し、いまも世界のトップを走っています。 一方、日本は円安による「安売り戦略」に依存し続け、総じて企業の力が弱くなった」、「金利を上げて円安を止める。そして円安依存してきた企業の開発力を高めていく。日本再生の道はこれしかありません」、同感である。
先ずは、8月6日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した翁邦雄氏による「【翁邦雄・元日本銀行金融研究所所長に聞く】円安構造の固定化であきらかになる金融政策の不都合な真実」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/307556
・『「円安がGDPを押し上げ、日本全体にプラスに働く」というのは本当か? 為替レートの変動によって、その受益者と被害者はどの程度入れ替わっているのだろうか。元日本銀行金融研究所所長で、『金利と経済――高まるリスクと残された処方箋』などの著書もある翁邦雄氏が、長期的に為替レートの推移をみて受益者と被害者を分析した』、興味深そうだ。
・『「受益は輸出企業へ・損失は消費者へ」という円安構造の固定化 前回、円安の恩恵を受ける輸出企業と、輸入物価上昇によって被害を受ける内需依存型企業や消費者等とについて、その利益と損失を試算した。紹介した数値化は、大胆な単純化の仮定に拠っている。円ドルレートの輸出入金額への影響に限っても、実際には、輸出のドル建て契約比率は5割程度、輸入については7割程度だから、円ドルレートの変動をそのまま反映するわけではない。 そもそも為替レートは円高化したり円安化したりするものだろうから、やや長い目で見れば、受益者と被害者は入れ替わりうるはずである。かつて円高が問題視された時期もあったわけだから、最近の円安の損得だけを議論すべきでない、という意見もあるだろう。 そこで、少し視点を変えて長期的な為替レートの推移を眺めてみよう。 実質実効為替レートの推移(日銀統計) 上図は、1980年以降の円ドルレートと実質実効為替レートの推移をグラフ化したものである。実質実効為替レート(青線)は、物価上昇率の差を調整した為替レート(実質為替レート)を貿易相手国・地域のウェイトで調整(実効化)して加重平均した指標である。 多くの貿易相手国は、日本に比べると物価・賃金が上がっているので、為替レートが円高に変化しなければ円の購買力は低下する。また、貿易ウェイトの高まった国の通貨に対する円の減価が相対的に大きければ、実効的な円安化が起きていることなる。 こうした点から、実質実効為替レートは円ドルレートよりも円の購買力の変化をよりよくあらわしている。前回紹介した日銀の展望レポートにおける「円安が10%進めば実質国内総生産(GDP)を年間で0.8%ほど押し上げる」という計量分析結果で使われている為替レートも、円ドルレートではなく実質実効為替レートである。 このグラフをみると、実質実効為替レートは1990年代央以降、振れを伴いつつも驚くほど長期間、円安方向へ動き続けてきたことがわかる。リーマンショック後に円高を懸念する声が強まった時期でさえ揺り戻しはそれほど大きくなく、円安トレンドの足踏み程度にとどまっている』、「実質実効為替レートは1990年代央以降、振れを伴いつつも驚くほど長期間、円安方向へ動き続けてきたことがわかる。リーマンショック後に円高を懸念する声が強まった時期でさえ揺り戻しはそれほど大きくなく、円安トレンドの足踏み程度にとどまっている」、「実質実効為替レートは1990年代央以降、・・・驚くほど長期間、円安方向へ動き続けてきた」、とは漸く思い出した。
・『受益者と被害者の固定化 こうしてみると、円安がGDPを押し上げ日本全体にプラスである、という日銀のロジックが国民の実感と乖離し、特に消費者に支持されにくい理由の一端は、こうした受益者・被害者の固定化にもあるだろう。円安の負担だけが強く実感される消費者が、円安誘導を続ける超金融緩和政策の公正さへ漠然とした不信を強めていてもおかしくないからだ。 2022年6月6日のきさらぎ会(注:共同通信の加盟社、主要民間企業、公共団体の部長級以上を会員とする研究会)の講演の「おわりに」の部分で黒田総裁は次のように述べた。 「現在のイールドカーブ・コントロールを柱とする強力な金融緩和を粘り強く続けていくことで、経済活動をしっかりとサポートすることが最優先課題です。日本銀行は、海外の中央銀行と異なり、経済の安定か、物価の安定か、というトレードオフに直面していないため、金融面から総需要を刺激し続けることが十分に可能です」 確かに、日本の状況と欧米の置かれている状況とは異なる。しかし、上記のように日本の金融政策は実は深刻な分配上のトレードオフを抱えている。景気刺激効果をもち実質GDPを押し上げるという意味でプラス効果をもつという円安が、輸出企業に与える大きな利益と、消費者・内需企業の大きな損失である。 異次元緩和はこのトレードオフを無視したまま、円安政策を一貫して追求してきた。それにもかかわらず「円安によって収益が改善した企業が、設備投資を増加させたり、賃金を引き上げたりすることによって、経済全体として所得から支出への前向きの循環が強まっていく」いった動きはみられなかった。 むろん、為替レートは金融政策だけで決まるものではない。だが、金融政策は為替レートへの影響に限らず、金利経由でも分配に大きな影響を与える。しかし、中央銀行は金融政策の分配面への大きな影響という不都合な真実から極力、目を逸らしてきた。身動きが取れなくなりかねないからだ。 中央銀行がそれを気にしていなかったわけではない。ただ、かつては、金融政策は安定化政策であり、景気循環を均すために金利や為替レートは変動させている、受益者は入れかわるはずだから長い目で見てほしい、という、弁解は可能だっただろう。 しかし、今は、そうは言いにくい。きさらぎ会の講演における黒田総裁の「消費者が値上げを受け入れている」という発言が大きな反発を受けたのも、あまりに長期間、不利益が固定化された消費者等の「金融政策の不都合な真実」に対する鬱積した不満がその底流にあるのではないだろうか』、「黒田総裁の「消費者が値上げを受け入れている」という発言が大きな反発を受けたのも、あまりに長期間、不利益が固定化された消費者等の「金融政策の不都合な真実」に対する鬱積した不満がその底流にあるのではないだろうか」、同感である。
次に、10月29日付け東洋経済オンラインが掲載した大蔵省出身で慶應義塾大学大学院准教授 の小幡 績氏による「日銀が金融緩和策を変更すると一体どうなるのか 一歩間違えば円大暴落だけでは済まない事態に」を紹介しよう。
・『:慶應義塾大学の准教授である小幡績氏は、今回の原稿のテーマについて「やっぱり日本銀行の金融政策にしようか、それとも財務省の為替介入にしようか、いや、政府の経済政策という名のバラマキ政策でいくか」、あれこれ迷っていた。 迷いすぎているうちに、いつの間にか自宅の書斎(通称「洞窟」)で寝入ってしまっていた……。以下は、どうやら夢の中で見た光景のようだ』、行動経済学者の「小幡」氏の見解とは興味深そうだ。
・『日銀は2023年も不自然な金融緩和を継続? この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています)。記事の一覧はこちら
2023年4月、日銀の総裁に就任した灰色太郎氏は、金融政策決定会合で政策変更を行うべきかどうか迷っていた。 日銀は金融政策の柱の1つとして、イールドカーブコントロール(YCC、長短金利操作)を2016年から導入していた。これは短期金利をマイナスにするだけでなく、10年物国債の金利水準を0%程度にしようと目標を定め、国債買い入れを行う政策である。これによって、短期から長期まで、金利全体の動きをコントロールするのが目的だ。 この政策は2023年の今も継続しており、その金利目標水準も0%程度でまったく変わっていなかった。乖離許容幅については、0.1%だったのを2021年3月に0.25%に変更した。 だが、乖離許容幅といいながら、実質的には長期金利国債10年物利回りを0.25%にくぎ付けにするために、連続指し値オペというものを2021年3月に導入し、2022年4月末からは毎日行うこととした。この連続指し値オペはすでに1年近く行われていたため、10年物国債の取引はほぼ消滅し、国債市場は仮死状態といわれていた。 この異常な力任せの緩和を継続していたため、円は極端に安い水準となっていた。それでも、アメリカの中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)の強烈な利上げは2023年1月に一段落し、短期金利は4.75%で横ばいとなっていた。 一方、欧州はロシア・ウクライナ情勢が膠着したままであることもあり、インフレが止まらず、ECB(欧州中央銀行)は利上げを継続していた。この結果、ユーロは上昇し、一時は1ユーロ=1ドルを割り込んだユーロドル相場は、1ユーロ=1.15ドルの水準まで回復していた。 そのほかの国の通貨も、極端なドル高の反動でおおむね戻していた。しかし、円だけは戻りが極めて弱く、1ドル=140円前後で推移していた。ただし、変動は激しかった。なぜなら、金融政策決定会合のたびごとに「日銀総裁交代前に政策変更か」という市場の仕掛けが行われたからだった。 財務省はその都度為替介入を行ったが、この乱高下を利用して、トレーダーたちは細かく稼いでいた。いわば、介入を誘い、それをネタに小銭を稼いでいたのだ。世界で、為替はほとんど注目されなくなった中で、日本円だけがトレーダーのおもちゃにされていた。) このような状況の中で、発足した日銀の新執行部は内部でもめていた。「とにかく市場で波乱を起こさないように現状維持で行こう」という薔薇色桃子新副総裁と、「国債市場の仮死状態をこのまま続ければ本当に国債市場は死んでしまう」と懸念する赤色勇新副総裁と、意見が激しく対立していた』、「財務省はその都度為替介入を行ったが、この乱高下を利用して、トレーダーたちは細かく稼いでいた。いわば、介入を誘い、それをネタに小銭を稼いでいたのだ」、「トレーダー」にとっては正常な業務の一環だ。
・『金利ターゲットは0.25%、指値オペは0.5%に? 灰色総裁は、強硬に政策変更を主張する赤色副総裁に尋ねた。「では、君はいったいどんな具体案があるというのか?」 「ここは、YCCを結局は終了しなくてはいけません」 「それでは、奴らは、われわれを攻撃してくるだろう!どうするんだ!」 「いずれにせよ、YCCはやめないといけません。そのときはいずれ攻撃を受けます。もうすでに国債市場の歪みは拡大していますが、遅らせれば遅らせるほど、ひどくなってしまいます」 「いきなりYCCを止めたらどうなると思っているだ!ただじゃすまないぞ!」 「もちろんです。いきなりはやめません」 「は?なんだ。やめないのか。じゃあ、どうするんだ?」 「ターゲットをゼロ程度から、0.25%に引き上げます。乖離許容幅は0.25%のままです。そこで、指し値オペは0.5%にします」 「それじゃあ、利上げじゃないか!メディアがついに『日銀利上げ、市場圧力に屈した』と書き立てて、俺は記者会見で攻め立てられるぞ!」 「仕方ありません。いきなりYCCを終了すれば、10年物の金利がどこまで上がるか、まったく予測できません。市場も同じです。乱高下で大混乱します。0.25%ターゲット、指し値0.5%のほうが、はるかにましです」 「甘い!それじゃ、次の利上げを狙って、市場は国債を売り浴びせてくるぞ。それこそ大混乱だ」 「そこで、その次の会合で、また0.25%引き上げます」 灰色総裁は気色ばんだ。 「それでは、追い込まれっぱなしじゃないか」 「はい」 「はい、じゃないだろ!」 「その次の会合で、0.75%ターゲットとし、乖離許容幅0.25%とすると上限は1%となりますが、ここでは、指し値オペを0.9%にして、とことん買い支えます」 「どういう意味があるんだ?」) 「もうこれで利上げは終わり、というメッセージです。1%は死守するラインで、それを突破されないように、その前にも死守ラインを設け、とことん頑張るんです」 「それで?」 「やつらが攻撃をあきらめるまで0.9%で買い続けます。彼らは1%までは後退するだろうと攻撃すると思いますが、そこで0.9%とことん買い続ければ、彼らも弾が尽きます。そうすれば、0.9%で無風になります。そこで、YCCをやめると発表するのです」 「そうすると?」 「ここで、もしもう一度攻めてくれば、再度0.9%で守ります。しかし、彼らは弾が尽きているので、補充しても迫力はないはずです。つまり、YCCをやめるタイミングの前に、彼らを疲弊させておくのです。それにより、YCCをやめた直後の戦いでは、勝ちやすくなります。彼らが力尽きた直後に、YCCをやめるんです」 「なるほど。うまくいきそうだな」 「いえ、やってみないとわかりません」 「おい!勧めておいて、なんだそれは!俺を罠にかけるのか!そんな不確実なことができるか!」 「勝負はやってみないとわかりません。時の運です」 「お前な……。お前はクビだ!」 「総裁は副総裁をクビにはできません」 「なに!!いつのまにそんな反抗的に……。わかった。もう帰りたまえ」 「はい」 灰色総裁はつぶやいた。 「あいつめ。なんてやつだ。しかし、あいつの言うのも一理あるな。このままずっと何もしないわけにもいかない。世界の金利市場の実勢を鑑みれば、日本国債の金利上昇もやむをえまい。しかし、かといって利上げはできない。う―――ん……」』、「YCCをやめるタイミングの前に、彼らを疲弊させておくのです。それにより、YCCをやめた直後の戦いでは、勝ちやすくなります」、確かにその通りなのかも知れない。
・『指し値オペを0.5%にした日銀、利回りは瞬時に0.75% その3日後の政策決定会合後の記者会見で、灰色総裁は政策変更を発表した。それは、乖離許容幅を±0.25%から±0.5%に拡大する、というものだった。連続指し値オペは継続するが、0.5%で無制限に買い入れる、というものだった。 国債市場は直ちに反応し、利回り0.5%まで上昇したが、その後、海外先物市場ではそこで止まらず、あっという間に0.75%まで上昇した。次の乖離許容幅の拡大を織り込んだものだった。) 国内メディアも、灰色総裁を一斉に攻撃した。 「総裁、これは利上げですか、利上げではないんですか?どっちなんですか!」 「利上げではありません。強力な緩和を継続し、わが国の物価動向は……、景気も……」 「なぜ指し値の利回りが切り上がったんですか?利上げを利上げでないと言い逃れしているだけじゃないですか!」 「いえ、そんなことはありません……」 「では、なんなんですか!」 別の記者も攻撃した。 「国債利回りが0.5%を突破して、海外市場では0.75%までいったんですよ!見透かされてますよ!」 さらに別の記者もかさにかかって、非難する。 「国債だけではなく、円も売り浴びせられてますよ!本来利回りが上昇したら、円高になるはずでしょ!債券安、為替安、日本売りです!それも、総裁の政策変更のせいです!」 「いえ、ですから……うっ……」 「総裁、総裁!大丈夫ですかっ?」 灰色総裁は不眠と疲労、そしてもちろん心労で記者会見の場で倒れてしまい、緊急入院となった。幸い、命に別状はなかったが、絶対安静となり、医者は公務に復帰するのは1カ月以上かかるとのコメントだった。 慌てた官邸は日銀と緊急に話し合い、臨時の措置として薔薇色桃子副総裁を総裁代行とすることを決定した』、「灰色総裁は不眠と疲労、そしてもちろん心労で記者会見の場で倒れてしまい、緊急入院となった」、こんなことになったら「円は大暴落」必至だ。
・『薔薇色総裁代行は事態を悪化させ、円は大暴落 薔薇色総裁代行は翌日、臨時政策決定会合を開くこととした。この混乱を収束させるためということだった。 臨時政策決定会合では、政策は元に戻されることとなった。つまり、10年物0%程度、乖離許容幅0.25%で、連続指し値オペは無制限で0.25%となったのである。 しかし、この政策の後戻りは、当然、事態をさらに悪化させてしまった。国債市場では売りが殺到し、買い入れ対象の国債はすべて日銀が保有する結果となり、オペの意味がなくなった。そして、海外の先物市場では金利がさらに急騰した。 そして、円が大暴落し始めた。アメリカの利上げペースが緩和され、ドルの全面高局面が終了し、ドル円も落ち着き、水準を切り下げていたが、灰色総裁の乖離許容幅拡大で、円安が再度進み始めてしまったところだった。それが、一瞬で大暴落となってしまった。これで、日本国中がパニックとなった。 しかし、最も悪い影響は国債の新発市場で起きた。誰も、国債の入札に応じなくなったのである。長期国債だけでなく、短期国債でも、どんな期間の国債でも、入札がすべて不調となった。日銀の政策の先行きが不透明すぎて、短期金利に対してまで、国内市場ですら疑心暗鬼になってしまい、国債市場は全面的に死んでしまった。 財務省だけでなく、官邸も、いや国全体が、薔薇色総裁代行を攻撃した。 薔薇色総裁代行はこれに耐え切れず、総裁代行だけでなく、職そのものを辞任し、行方がわからなくなってしまった。周辺からは、海外に渡航し、欧州のある国でひっそり過ごしているというウワサがどこからともなく聞こえてきた。 ついに、灰色総裁に強硬論を唱えていた赤色副総裁の出番となった。彼は、かつて、といってもこの間10日も経っていないが、灰色総裁に打診した持論の金融政策を実施した。 しかし、時すでに遅しだった。この大混乱のあとに至っては、まっとうな政策だろうが何であろうが、日銀の動きは全面否定された。国会ではなんと日銀解体論が吹き荒れ、これはさらに円の暴落をもたらした。 いよいよ、日本沈没か……。新聞でもテレビでも、この見出しが躍ったが、人々は目を背けるように、この話題に触れないようになった。テレビはこの問題を扱うと消されてしまうため、ワイドショーでは他愛もない芸能人のスキャンダル特集を流すスタイルに戻ってしまった。 そして、目をつぶる日本国民のこの状態こそが、日本を本当に沈没させる理由だった。破綻の日は刻々と近づいてきた……』、「政策の後戻りは、当然、事態をさらに悪化させてしまった」、「円が大暴落」、「誰も、国債の入札に応じなくなったのである。長期国債だけでなく、短期国債でも、どんな期間の国債でも、入札がすべて不調となった。日銀の政策の先行きが不透明すぎて、短期金利に対してまで、国内市場ですら疑心暗鬼になってしまい、国債市場は全面的に死んでしまった」、あり得そうな恐ろしいシナリオだ。
・『灰色総裁も、薔薇色・赤色副総裁も幻だった? 青色静氏は目を覚ました。「ああ、ひどい夢だったな。疲れているのかな」 青色氏は、翌日の日銀総裁就任を控え、疲労と寝不足から、自宅の風呂につかりながら、寝てしまったようだった。 「日本も俺もおぼれ死ぬわけにはいかない。やはり淡々と金融政策は非常事態の政策から、普通の緩和に戻さなければいけないな。市場に攻撃されても、メディアに攻撃されても、正しい政策を地味に淡々とかつ不屈の精神でやりきらないといけない」 再度、決意を固めた。) 青色新総裁は、最初に政策決定会合でYCCのターゲットを0.25%上げた。指し値オペは0.5%で行ったが、連日はやめ、不意打ちに変更した。そして、無制限ではなく、大規模でない買い入れ額に設定した。売りが殺到しても、売り手は全額を売り切れるわけでなく、割り当てとなったために、空売りにはリスクが伴うようになった。 一方、日銀の買い入れは、限定された金額の指し値オペと、通常の買い入れ額を指定したオペを併用し、かつ不意打ち戦略を取った。市場の混乱、ある程度の乱高下は受け入れつつも、ともかく投機的取引に対するリスクを高めて、投機家を追い出すことを最優先にした。 さらに青色総裁は、官邸、財務省とも「あうんの呼吸」で買い入れを行った。 ドル円相場は、ドルの金利上昇一服により落ち着いていたが、日本国債市場の乱高下により、また円安へ向かい、為替市場も激しく乱高下し始めた。 これを抑えるために、財務省は円買い介入を行った。しかし、これは2022年秋の介入とは異なり、日銀の政策変更または国債買い入れと連動していた。 日銀が利上げを発表した直後に、円買い介入を大規模に行い、円はそのたびに大幅に上昇し、乱高下しつつも円は値上がりしていった。また、日銀が買い入れオペを通告した直後にも、小規模の介入を行った』、「市場の混乱、ある程度の乱高下は受け入れつつも、ともかく投機的取引に対するリスクを高めて、投機家を追い出すことを最優先にした。 さらに青色総裁は、官邸、財務省とも「あうんの呼吸」で買い入れを行った。 ドル円相場は、ドルの金利上昇一服により落ち着いていたが、日本国債市場の乱高下により、また円安へ向かい、為替市場も激しく乱高下し始めた。 これを抑えるために、財務省は円買い介入を行った。しかし、これは2022年秋の介入とは異なり、日銀の政策変更または国債買い入れと連動していた」、誠に巧みだ。
・『青色総裁は官邸・財務省と危機を乗り切った…… この結果、市場では、日銀の買い入れオペごとに介入期待が高まり、円は上昇していった。買い入れ額が小さくとも、介入額が小さくとも、相乗効果とアナウンス効果、投機家の深読み効果で、買い入れ、介入の効果は倍増した。 青色氏の評判は、利上げ当初は賛否両論だったが、次第にメディアも称賛するようになり、青色氏は中央銀行総裁として、世論も市場も支配し始めた。これこそが中央銀行総裁として重要なことだった。黒田東彦氏の就任当時と政策の方向は異なっていたが、支配という意味では似たような状況だった。 だが、青色氏は「その先」を考えていた。いずれ、世界は大不況になる。そのときにこそ、本当の日本経済の危機がやってくる。そのときに、金融政策、中央銀行への信頼が十分にある状態にしておかなければならない。自分の名声に酔うどころか、さらに気を引き締めていたのであった……。 小幡氏は、ここで目を覚ました。 はたして、これは悪い夢だったのか、それともいい夢だったのか。正夢だったのか。それともありえない理想を夢見ただけだったのか。青色氏のような人はどこにいるのだろうか……。 いずれにせよ、忘れないうちに、この夢を利用して原稿を書いてしまおう。小幡氏は、ヘッドフォンから流れてくる、ジョルジュ・エネスクのバッハ無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第1番を聴きながら、筆を進めたのであった……。 (本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)』、「青色氏は「その先」を考えていた。いずれ、世界は大不況になる。そのときにこそ、本当の日本経済の危機がやってくる。そのときに、金融政策、中央銀行への信頼が十分にある状態にしておかなければならない。自分の名声に酔うどころか、さらに気を引き締めていたのであった……」、確かに理想的な金融政策運営だ。
第三に、11月10日付け現代ビジネス「経済学者・野口悠紀雄の提言「早く金利を上げて、円安を止めなさい」 「安売り依存」から脱却せよ」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/101906?imp=0
・『自信なさげにボソボソ喋るメガネの男、キシダに国を任せていて大丈夫なのか? 世界は、日本の総理に厳しい目を向けている。いったいどうすれば日本は復活できるのか、国内外の7人の「知の巨人」に聞いた。3人目は経済学者・野口悠紀雄氏だ』、興味深そうだ。
・『ブレーキとアクセルを同時に踏む日銀 いま岸田総理がやるべきことはただ一つ、「円安を止めること」です。 それなのに、政府は「総合経済対策」で誤魔化そうとしています。この対策の柱は高騰するガソリンや電気、ガスに対し補助金を出すという内容で、一見、暮らしが楽になると思われるかもしれません。 しかし結局は円安による価格高騰を見えなくして、問題を覆い隠しているだけなのです。 円安の原因は、「日本とアメリカの金利に差があること」です。今年3月以降アメリカが金利を上げているのに、日本は金利を上げていない。 その結果、金利が高いドルを買って円を売る動きが生まれ、円安になる。この日米の「金利差」を解消しない限り、円安は止まりません。 ところが日銀は、金利を上げようとはしない。それどころか、為替介入という円安の「ブレーキ」と同時に、金利抑制策という「アクセル」を踏むという不可解な状態を続けています』、確かに「為替介入という円安の「ブレーキ」と同時に、金利抑制策という「アクセル」を踏むという不可解な状態を続けています」、大きな矛盾だ。
・『「リスキリング」では解決できない いったいなぜ金利を上げないのか。それは大企業をはじめ、円安によって利益を受けている人々がいるからです。特に製造業は、輸入する原材料費は価格に上乗せして国民に転嫁することで円安の恩恵を受けている。 しかしその陰で、円安で増大したコストを価格転嫁できない中小企業が苦しんでいる現実があるのです。 そもそもこの流れが始まったのは、2000年代はじめでした。中国が工業化し、日本の製品は価格競争にさらされるようになりました。そこで政府が取った戦略が、「円安誘導」だったのです。 しかしこの時期、本当に必要だったのは他の国が追いつけない新しい技術を作ることでした。実際、アメリカやアイルランド、韓国、台湾などは、ITに対応した技術の開発に成功し、いまも世界のトップを走っています。 一方、日本は円安による「安売り戦略」に依存し続け、総じて企業の力が弱くなった。 岸田総理が言う「リスキリング」(新しい知識や技術を学ぶこと)も重要ですが、これだけで解決できるほど根は浅くない。企業が大学院などの高等教育をもっと高く評価し、研究・開発に力を入れなければ、日本企業が強くなることはできません。 金利を上げて円安を止める。そして円安依存してきた企業の開発力を高めていく。日本再生の道はこれしかありません。 「知の巨人」シリーズ 1ポール・クルーグマンが激白「日本経済を復活させるには、定年を廃止せよ」 2昭和史を見つめてきた作家・保阪正康が岸田総理を斬る「宏池会の系譜に学ばぬ首相に失望した」 4「賃金を上げて、非正規雇用を見直せ」ジャーナリストのビル・エモットが考える「日本再生への道」』、「2000年代はじめでした。中国が工業化し、日本の製品は価格競争にさらされるようになりました。そこで政府が取った戦略が、「円安誘導」だったのです。 しかしこの時期、本当に必要だったのは他の国が追いつけない新しい技術を作ることでした。実際、アメリカやアイルランド、韓国、台湾などは、ITに対応した技術の開発に成功し、いまも世界のトップを走っています。 一方、日本は円安による「安売り戦略」に依存し続け、総じて企業の力が弱くなった」、「金利を上げて円安を止める。そして円安依存してきた企業の開発力を高めていく。日本再生の道はこれしかありません」、同感である。
タグ:異次元緩和政策 (その43)(円安構造の固定化であきらかになる金融政策の不都合な真実、日銀が金融緩和策を変更すると一体どうなるのか 一歩間違えば円大暴落だけでは済まない事態に、経済学者・野口悠紀雄の提言「早く金利を上げて、円安を止めなさい」 「安売り依存」から脱却せよ) ダイヤモンド・オンライン 翁邦雄氏による「【翁邦雄・元日本銀行金融研究所所長に聞く】円安構造の固定化であきらかになる金融政策の不都合な真実」 『金利と経済――高まるリスクと残された処方箋』 「実質実効為替レートは1990年代央以降、振れを伴いつつも驚くほど長期間、円安方向へ動き続けてきたことがわかる。リーマンショック後に円高を懸念する声が強まった時期でさえ揺り戻しはそれほど大きくなく、円安トレンドの足踏み程度にとどまっている」、「実質実効為替レートは1990年代央以降、・・・驚くほど長期間、円安方向へ動き続けてきた」、とは漸く思い出した。 「黒田総裁の「消費者が値上げを受け入れている」という発言が大きな反発を受けたのも、あまりに長期間、不利益が固定化された消費者等の「金融政策の不都合な真実」に対する鬱積した不満がその底流にあるのではないだろうか」、同感である。 東洋経済オンライン 小幡 績氏による「日銀が金融緩和策を変更すると一体どうなるのか 一歩間違えば円大暴落だけでは済まない事態に」 行動経済学者の「小幡」氏の見解とは興味深そうだ。 「財務省はその都度為替介入を行ったが、この乱高下を利用して、トレーダーたちは細かく稼いでいた。いわば、介入を誘い、それをネタに小銭を稼いでいたのだ」、「トレーダー」にとっては正常な業務の一環だ。 「YCCをやめるタイミングの前に、彼らを疲弊させておくのです。それにより、YCCをやめた直後の戦いでは、勝ちやすくなります」、確かにその通りなのかも知れない。 「灰色総裁は不眠と疲労、そしてもちろん心労で記者会見の場で倒れてしまい、緊急入院となった」、こんなことになったら「円は大暴落」必至だ。 「政策の後戻りは、当然、事態をさらに悪化させてしまった」、「円が大暴落」、「誰も、国債の入札に応じなくなったのである。長期国債だけでなく、短期国債でも、どんな期間の国債でも、入札がすべて不調となった。日銀の政策の先行きが不透明すぎて、短期金利に対してまで、国内市場ですら疑心暗鬼になってしまい、国債市場は全面的に死んでしまった」、あり得そうな恐ろしいシナリオだ。 「市場の混乱、ある程度の乱高下は受け入れつつも、ともかく投機的取引に対するリスクを高めて、投機家を追い出すことを最優先にした。 さらに青色総裁は、官邸、財務省とも「あうんの呼吸」で買い入れを行った。 ドル円相場は、ドルの金利上昇一服により落ち着いていたが、日本国債市場の乱高下により、また円安へ向かい、為替市場も激しく乱高下し始めた。 これを抑えるために、財務省は円買い介入を行った。しかし、これは2022年秋の介入とは異なり、日銀の政策変更または国債買い入れと連動していた」、誠に巧みだ。 「青色氏は「その先」を考えていた。いずれ、世界は大不況になる。そのときにこそ、本当の日本経済の危機がやってくる。そのときに、金融政策、中央銀行への信頼が十分にある状態にしておかなければならない。自分の名声に酔うどころか、さらに気を引き締めていたのであった……」、確かに理想的な金融政策運営だ。 現代ビジネス「経済学者・野口悠紀雄の提言「早く金利を上げて、円安を止めなさい」 「安売り依存」から脱却せよ」 確かに「為替介入という円安の「ブレーキ」と同時に、金利抑制策という「アクセル」を踏むという不可解な状態を続けています」、大きな矛盾だ。 「2000年代はじめでした。中国が工業化し、日本の製品は価格競争にさらされるようになりました。そこで政府が取った戦略が、「円安誘導」だったのです。 しかしこの時期、本当に必要だったのは他の国が追いつけない新しい技術を作ることでした。実際、アメリカやアイルランド、韓国、台湾などは、ITに対応した技術の開発に成功し、いまも世界のトップを走っています。 一方、日本は円安による「安売り戦略」に依存し続け、総じて企業の力が弱くなった」、「金利を上げて円安を止める。そして円安依存してきた企業の開発力を高めていく。日本再生の道はこれしかありません」、同感である。