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半導体産業(その9)(日本の半導体産業を復活させるには何が必要か――太田泰彦(日本経済新聞編集委員)【佐藤優の頂上対決】、日本の「次世代半導体連合」に台湾が必要不可欠な理由、岸田政権・日本政府が主導して「半導体会社」を設立したが…「戦略不在」でまったく「成功を期待できない」ワケ) [イノベーション]

半導体産業については、8月25日に取上げた。今日は、(その9)(日本の半導体産業を復活させるには何が必要か――太田泰彦(日本経済新聞編集委員)【佐藤優の頂上対決】、日本の「次世代半導体連合」に台湾が必要不可欠な理由、岸田政権・日本政府が主導して「半導体会社」を設立したが…「戦略不在」でまったく「成功を期待できない」ワケ)である。

先ずは、11月22日付けデイリー新潮「日本の半導体産業を復活させるには何が必要か――太田泰彦(日本経済新聞編集委員)【佐藤優の頂上対決】」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2022/11220555/?all=1
・『国家の安全保障を左右する戦略物資としてますます重みを増す半導体。このサプライチェーンをめぐって各国で激しい駆け引きが行われている。かつて日本は半導体大国だった。それがなぜこうまで凋落してしまったのか。そして今後、復活の可能性はあるのか。半導体産業を知悉するジャーナリストの提言』、「半導体産業を知悉するジャーナリストの提言」とは興味深そうだ。 
・『佐藤 ここ数年、半導体は常に経済ニュースの主役です。コロナや米中デカップリング(分離)でサプライチェーンが分断され、深刻な半導体不足が生じて家電製品や自動車の生産ラインが止まりました。ただ、この物資の実態は極めてわかりにくい。その全体像を理解するのに、太田さんの『2030半導体の地政学』は格好のテキストでした。 太田 ありがとうございます。おっしゃる通りで、半導体はあらゆる電気製品に組み込まれており、サプライチェーンはグローバルに広がって複雑です。その上、いまや国家の安全保障を左右する戦略物資となり、半導体を制する者が世界を制すという状況になっています。 佐藤 まずはこの半導体がどこでどう作られているのか、そこからお話しいただきたいと思います。 太田 半導体チップが製品として世に送り出されるまでには、千近くの工程があります。大雑把にまとめると、半導体にどのように仕事をさせるかを考える人、設計する人、実際に作る人がいます。それらが別々の地域、会社で行われています。 佐藤 国を跨いでもいる。 太田 はい。最上流にいるのが、電子回路の基本パターンやデジタル信号を処理する仕様を考え、ライセンスの形で供与する会社です。「IPベンダー」とも呼ばれますが、一番有名なのはイギリスのアームです。 佐藤 2016年に孫正義さんのソフトバンクが買収した会社ですね。 太田 そうです。次に基本設計を買って組み合わせて自社のチップの図面を描く人たちがいます。アメリカならクアルコム、エヌビディアなどの会社で、中国ならファーウェイ傘下のハイシリコンがそうです。またアメリカのインテルやAMDのようにアームとは異なる自前の仕様を採っている会社もあります。 佐藤 はっきり分けられない会社もある。 太田 ただ、これらの企業の多くはファブ(工場)を持たず、「ファブレス」と呼ばれています。 佐藤 つまり頭脳ですね。工場ではなく、オフィスで仕事をしている。 太田 製造を請け負うのは、「ファウンドリー」と呼ばれる企業です。アメリカのグローバルファウンドリーズや韓国のサムスン電子などがありますが、台湾の台湾積体電路製造(TSMC)の一人勝ち状態です。技術力も規模も圧倒的で、世界の60%近いシェアを占めています。 佐藤 世界中でTSMCの工場を誘致していますね。アメリカではアリゾナ州に工場を造ることになりましたが、日本も国を挙げて誘致し、熊本に造ることが決まりました。 太田 製造だけ請け負うというと下請け企業のように見えますが、設計メーカーの方がTSMCに依存しているのが実態です。というのも半導体の仕様が非常に高度になり、設計はできても、製造・量産することが極めて難しくなっているからです。 佐藤 回路にはナノ(10億分の1)単位で描線が引かれるといいますね。 太田 5ナノ~3ナノで量産できるのはTSMCとサムスン電子の2社で、2ナノまで微細化を進めているのはTSMCだけです。 佐藤 このTSMCはいつできた会社なのですか。 太田 1987年です。そもそも設計と製造を分離させたファウンドリーは、TSMCの創業者・張忠謀が発展させてきたビジネスモデルです。アメリカ企業にしてみれば、工場を建てて設備投資すれば1兆円単位でカネがかかりますから、自分で持ちたくはない。安く作ってくれるところがあれば、任せたいわけです。 佐藤 両者の思惑が一致した。 太田 自由貿易と市場原理の一つの均衡点として生まれたモデルといえます。これらを地域で見ていくと、IPベンダーはイギリス、ファブレスはアメリカのシリコンバレー、そしてファウンドリーは台湾、韓国の東アジアと、大西洋も太平洋も跨ぐ形で、広大で複雑なサプライチェーンが広がっています』、「ファウンドリー」は、「製造だけ請け負うというと下請け企業のように見えますが、設計メーカーの方がTSMCに依存しているのが実態です。というのも半導体の仕様が非常に高度になり、設計はできても、製造・量産することが極めて難しくなっているからです」、「2ナノまで微細化を進めているのはTSMCだけ」、「ファウンドリー」はすごい力を持ったものだ。
・『日本はなぜ衰退したか  藤 その中で、いま日本はどんな位置にあるのですか。 太田 半導体を作るには、当然、材料が必要ですし、半導体に特化した製造装置が要ります。この分野は日本が強い。回路を載せるシリコンウエハーなら信越化学工業とSUMCOが世界で大きなシェアを占めていますし、製造装置では東京エレクトロンなどが有名です。 佐藤 日本の半導体産業はかつてメモリが非常に強く、製造機器は露光機なども大きなシェアを占めていました。それが衰退してしまったのは、どこに原因があったのでしょうか。 太田 三つあると思います。一つは1980年代の日米半導体摩擦で、不平等条約に近い不利な協定を結ばされてしまったことです。アメリカは当時から半導体が国家安全保障に関わる戦略物資だと考えていたので、業界を必死に守ろうとしました。これに対し、日本は「安くていいものを作ればいい」くらいにナイーブに考えていたんですね。これで時間を失ってしまった。 佐藤 ここぞ、という時には、アメリカは国家のすごみを出します。 太田 それからやはり政策の失敗も大きい。半導体産業はアップダウンが激しく、苦しい時もあるのですが、それでも投資すべき局面があります。そこは政府が後押ししなければならない。 佐藤 支援が適切な時期に適切な規模でなされなかったのですね。 太田 三つ目は、日本では半導体を総合電機メーカーが作っていたことです。日立も東芝も、重電から家電まで扱い、さらに半導体も作っていました。私はこれが衰退の最大の要因だと思います。 佐藤 確かに総合電機メーカーの事業は幅広く、家庭用洗濯機から原子炉まで作っています。 太田 彼らの主力事業である重電では、電力会社や鉄道会社などの需要を5年先、10年先まで見ながら設備投資をしていきますね。 佐藤 計画経済に近い。 太田 その通りです。でも半導体は、儲かったり儲からなかったり、振幅が大きいシリコンサイクルに振り回されます。すると、総合電機メーカーの中の部門としては浮いてしまう。結果として事業を続けられなくなった。 佐藤 つまりリストラの対象となる。 太田 総合電機メーカーという形態である以上、致し方ないことかもしれないですが、それが日本の半導体産業の悲劇だったと思います。 佐藤 日本でもファウンドリーを作ろうとしたことはあるのですか。 太田 1990年代末に台湾のある企業と総合電機メーカーが組んで始めようとしています。でも数年でやめてしまったんですよ』、「日本では半導体を総合電機メーカーが作っていたことです。日立も東芝も、重電から家電まで扱い、さらに半導体も作っていました。私はこれが衰退の最大の要因」、「振幅が大きいシリコンサイクルに振り回されます。すると、総合電機メーカーの中の部門としては浮いてしまう」、なるほど。
・『半導体と中国人  佐藤 米中のデカップリングで、いまこうした半導体のサプライチェーンが再編されつつあります。 太田 アメリカは、まずトランプ前大統領がファーウェイに制裁を科しました。それをバイデン政権も引き継いでいる。 佐藤 米中間はもちろん、台湾と中国のサプライチェーンも切断しました。 太田 ただすべてではないんですよ。ワシントンでは政府・議会・軍で形成される国防コミュニティーと企業が、常にせめぎ合っています。彼らは、この技術はダメだけども、ここまでは輸出できるとはっきり線を引く。その線は動くこともありますが、決められた範囲内ならほぼ自由に輸出できる。 佐藤 ビジネスを続けている。 太田 先端技術でデカップリングが進んでも、完全に分離するのは難しいでしょう。価値観としてのグローバリズムは終わりましたが、現象としてのグローバリゼーションは止まらない。その中で、多くの日本企業はアメリカが引いた線の一歩も二歩も手前の製品まで輸出しないようにしました。米中対立の実像がよくわかっていないんですよ。 佐藤 忖度ですね。何か言われると嫌だから、自主規制してしまった。それに官僚たちは本性として規制が大好きですから。 太田 安倍政権時代の日韓のけんかでは、日本政府が徴用工問題で韓国の文在寅政権に対抗する形で、韓国への化学素材の輸出管理を厳格化する措置を取りました。半導体のエッチングガスやシリコンの洗浄剤に使われるフッ化水素、有機ELの材料であるフッ化ポリイミド、半導体の基板に塗る感光剤のフォトレジストの3品目です。これによって韓国は悲鳴を上げましたが、同時に輸出を止められた日本の会社も激怒した。 佐藤 国から商売相手を切られたわけですからね。 太田 この時に、政府は輸出規制が強い武器であると確信したのだと思います。そして企業側はサプライチェーンが国家によって簡単に断ち切られるリスクを考慮しなければならなくなった。 佐藤 この対談にご登場いただいたパソコンメーカー・VAIOの山野正樹社長は、1~2ドルの安い半導体が中国から入ってこなくて困った、とお話しされていました。だからデカップリングでも、最先端で高価なものだけが重要なのではない。 太田 そこが大事なところで、どうしても最先端の技術競争に目が行きますが、1ドルのチップだって、欠けたら製品は完成しません。 佐藤 ご著作の中でバイデン大統領の言葉が紹介されていましたね。「釘が1本足りないため、馬の蹄鉄が駄目になった」と。 太田 あれはマザーグースからの引用で、その後は馬が走れず、騎士が乗れず、戦ができないので王国は滅びたと続きます。釘は最先端の部品とは限らない。そうしたチョークポイント(物事の進行を左右する部分)をどれだけ握れるかが、これから国家にとっての眼目になると思います。 佐藤 それをきちんと把握しなければならない。 太田 実はいま中国が10ナノにも届かない一般的な半導体に莫大な設備投資をしています。数年後には間違いなく過剰供給になる。鉄鋼がそうだったように、中国の過剰供給で値段がグンと下がりますから、日本の半導体産業が一気に掃討される可能性だってあります。最先端の領域だけでなく、ボリュームゾーンにも目を配っていかねばなりません。 佐藤 デカップリングでないところでも、危機が生じるのですね。 太田 私は産業を三つの階層から見るべきだと考えています。国家と企業と個人です。国家には安全保障の責務があり、各国の政府は国を守るためにゲームを繰り広げる。一方、企業は利潤を追求して、国境を越えてビジネスを展開します。そして個人は、国家や企業の価値観は関係なく、自分の人生を一番大切にする。 佐藤 それはそうです。 太田 日米半導体摩擦後に、日本のエリート技術者たちが数多く中国や韓国の企業にリクルートされ、技術流出が問題になりましたね。給料を2倍、3倍出すと言われて海を渡った人も多い。でも彼らを「国賊」とか「裏切り者」と言うのは間違っています。2倍3倍の給料が払えなかった企業の経営と、企業が稼げる仕組みを作れなかった政策が悪いのであって、彼らではない。 佐藤 その人たちにそれだけのマーケットバリューがあったということですからね。ただ一方で、イスラエルでは、シリコンバレーに行けば10倍の年収になる人も、国にとどまります。ユダヤ人国家を存続させるには、能力がある者は自国にいるべきだと考えているからです。それはロシアのシリコンバレーといわれるゼレノグラードでも同じです。 太田 なるほど。そうした国では、国家と企業、個人の距離感が違うのでしょうね。 佐藤 国家と個人が非常に近い。その点でイスラエルとロシアは似ていて、共通の感覚があります。だから、イスラエルはアメリカの最重要同盟国なのに、ロシアに経済制裁を行っていません。 太田 かつて日本人も、国や企業との距離が近かったですね。私は1990年代にアメリカに留学しましたが、駐在員や留学生たちはいつも「私の会社では」とか「私の国では」という話し方をしていました。 佐藤 その逆が中国人ですね。 太田 彼らは自分の幸せ、家族の存続を第一に考えますね。また現実主義者で、どこにでも移っていきます。 佐藤 国籍を変えることに抵抗がない。どこの国民になっても自分たちの宗族でまとまりますし、中国人の意識を持ち続けている。 太田 半導体を取材して感じたのは、その中国人、華人たちの活躍ぶりです。シリコンバレーのデジタル企業には、トップ層でマネジメントを担っている華人が多いんです。TSMCの張忠謀もマサチューセッツ工科大学を出て、アメリカの半導体企業テキサスインスツルメンツの幹部でした。彼らはあらゆるところにいる。華人の視点から見ていかないと、半導体はわからないと思うに至りました。ですから次は華人についてもっと研究したいと思っているんです。 佐藤 それは重要な視点です。国家ではないのに、国家のような様相を呈す集団ですね。ユダヤ人に近いかもしれない。 太田 そうですね。ただ彼らの取材は難しいんです。なかなかそのコミュニティーに入っていけませんから』、「中国人」、「彼らは自分の幸せ、家族の存続を第一に考えますね。また現実主義者で、どこにでも移っていきます。 佐藤 国籍を変えることに抵抗がない。どこの国民になっても自分たちの宗族でまとまりますし、中国人の意識を持ち続けている。 太田 半導体を取材して感じたのは、その中国人、華人たちの活躍ぶりです。シリコンバレーのデジタル企業には、トップ層でマネジメントを担っている華人が多いんです。TSMCの張忠謀もマサチューセッツ工科大学を出て、アメリカの半導体企業テキサスインスツルメンツの幹部でした。彼らはあらゆるところにいる。華人の視点から見ていかないと、半導体はわからないと思うに至りました」、その通りだ。
・『エンジニアに敬意を  佐藤 ご著作には、半導体の重要地域として、アルメニアが出てきました。このアルメニア人も国外にいる数の方が多い。その一部は武器商人として知られています。 太田 アルメニアには、アメリカのシノプシスという会社の開発拠点があります。半導体設計の自動支援システムを提供する会社は世界に3社しかなく、その最大手です。アルメニアはロシアと緊密な関係がありますから、ウクライナ侵攻でどうなっているのかと思ったら、シノプシスは以前と変わらず首都エレバンで人を募集していました。 佐藤 ここに注目されたのは慧眼だと思いました。 太田 デジタル技術から見た地政学上の重要地域の一つはASEANで、もう一つはコーカサスだと思っています。アルメニアは人口300万人弱の小国でありながら、IT分野の雇用者数は1万7千人に及ぶと聞きます。アメリカからは他にも、計測・制御ソフトのナショナルインスツルメンツやマイクロソフト、ネットワーク機器最大手のシスコなどが進出しました。 佐藤 もうサプライチェーンの一角を占めているわけですね。アルメニアは、ロシアはもちろん、イランとの関係も極めて深い。戦略上、注目すべき地域です。 太田 アルメニアは資源がないため、デジタル産業で国を興そうとしたんですね。その時、まだ半導体産業が輝いていた時代の日本人エンジニアが現地に行って教えているんですよ。 佐藤 それが基礎になっている。逆に日本は存在感がなくなってしまったわけです。日本はこれからどうすればいいとお考えですか。 太田 私はシンガポール駐在時代、ファーウェイの本社がある中国・深センに通ったんです。この都市の中心にある華強北という一区画には、畳1~2畳ほどの電子部品店が詰まったビルが林立していて、その熱気の中から新しい発想が次々と生み出されてくる。華強北でよく日本の若者にも会いましたが、もう日本にはこんな場所はないと言うんですね。秋葉原はいまやメイドとアニメの街ですから。 佐藤 私は小学生の頃、部品のジャンクショップで真空管やコンデンサーを買いラジオを組み立てていました。3球のラジオを作りましたね。 太田 私もやりました。真空管は、1球、2球と呼び、トランジスタになると1石、2石となる。 佐藤 あれは楽しかった。ワクワクしながら作っていました。 太田 私もそうです。モノ作りに熱量があったんですね。同じものを華強北には感じました。でもいまの日本にはそれがない。 佐藤 私もそう感じます。 太田 だからいま必要なのは、モノを作る人、エンジニアがいろいろなことを、生き生きと面白がってやれるようにすることだと思うのです。それにはエンジニアに対する社会の敬意が必要です。 佐藤 日本では「理系」と十把一絡げにして、狭い世界に閉じ込めてしまうところがありますからね。 太田 同時にエンジニアの方々には、もっと自分の経済価値に目覚めてほしいんですよ。先日、日本の素材サプライヤーを訪ねたんです。世界中でこの会社しかできない金属加工技術を持っていて、インテルやTSMC、サムスンが毎日のように「こっちに回せ」と言ってくる。そんなに需要があれば値段が上がるはずなのですが、むしろ値切られている。 佐藤 どうしてですか。 太田 商慣習だそうです。お客さんを大切にするとおっしゃっていましたが、どうにも腑に落ちない。なぜだろうと考えていて「あっ」と気がついたんです、彼らは幸せなのだと。すごいものを作り、きちんと納期までに仕上げ、それで満足し、喜びを感じているのではないか。それは美しい話ですが、同時にもったいない、とも思いました。 佐藤 非常に日本的ですね。そこに経済合理性を取り入れた方が、持続可能性にもつながるでしょう。 太田 そうですね。日本には優れたエンジニアたちがいます。彼ら、彼女らの価値を正しく認める舞台を作っていかなければいけない。エンジニアが夢を抱けなければ、日本の未来は明るくならないと思いますね。 太田氏の略歴はリンク先参照)』、「そんなに需要があれば値段が上がるはずなのですが、むしろ値切られている・・・商慣習だそうです。お客さんを大切にするとおっしゃっていましたが、どうにも腑に落ちない。なぜだろうと考えていて「あっ」と気がついたんです、彼らは幸せなのだと。すごいものを作り、きちんと納期までに仕上げ、それで満足し、喜びを感じているのではないか。それは美しい話ですが、同時にもったいない、とも思いました。 佐藤 非常に日本的ですね。そこに経済合理性を取り入れた方が、持続可能性にもつながるでしょう。 太田 そうですね。日本には優れたエンジニアたちがいます。彼ら、彼女らの価値を正しく認める舞台を作っていかなければいけない。エンジニアが夢を抱けなければ、日本の未来は明るくならないと思いますね』、「日本」の「エンジニア」は、「すごいものを作り、きちんと納期までに仕上げ、それで満足し、喜びを感じているのではないか。それは美しい話ですが、同時にもったいない」、同感である。

次に、11月25日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した早稲田大学大学院経営管理研究科教授の長内 厚氏による「日本の「次世代半導体連合」に台湾が必要不可欠な理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/313421
・『「ビヨンド2ナノ」に向けたラピダス設立に感じる課題  ビヨンド2ナノ(回路幅が2ナノクラスの次世代半導体)に向けて、台湾への半導体投資というプランBが必要なのではないか。 先日、トヨタ自動車やNTTなどが立ち上げたラピダス(Rapidus)は、国産半導体復興を目指した共同出資企業だ。ただ、ラピダスは規模を追わずに小規模で最先端半導体の開発をするという。しかし、技術開発は固定費であるし、半導体製造は巨大な装置産業であって、規模の経済性が重要な産業だ。どちらも大量に生産し、販売した方が、次の投資がしやすくなる。 とかく日本人は「いたずらに規模を追わず、技術で勝負する」「金儲けだけが目的ではない」ということを言いがちだが、経営学的に見れば、こんな危うい発言はない。言い換えれば、「入ってくるお金や資源は少ないが、日本人は優秀なので気合いで頑張れる」といった精神論にしか聞こえない。 20世紀のような、変動費の要素が大きいエレクトロニクス製品などの開発においては、数を追わない製品差別化戦略は可能であったと思う。しかし、様々なエレクトロニクス産業の製品がデジタル化し、ソフトウエアと半導体で構成されるようになると、固定費の要素が大半になるので、数を一番多く作ったところが総取りになるような競争が多く見られる。 MIT流の技術経営の考え方に、イノベーションとは新たな価値を産み出す価値創造のプロセスと、産み出した価値からしっかり収益を獲得する価値獲得のプロセスからなる、という考え方がある。価値創造は専ら開発の仕事であるが、価値獲得には製造、標準化、マーケティング、販売、PRなど様々な手段で自社の収益化に結びつけるあの手この手のアイデアが必要となる。日本は価値創造が得意だが、価値獲得が苦手な企業があまりに多い。 液晶パネル、太陽光パネル、NAND型フラッシュメモリ、最近でいえば日本のノーベル賞受賞技術であるリチウムイオン電池など、日本が価値創造に大きく貢献をしながら、価値獲得はよりビジネスの上手い諸外国企業に獲られているという状況が続いている。  これまでも、一度日本が失った市場を取り戻すべく、日の丸連合を作ったケースは多々あった。エルピーダメモリやジャパンディスプレイなど、いずれも規模を追わない日の丸連合で失敗をしている。ラピダスもこれらの失敗は意識しているのか、「日米連携による新会社は日の丸連合ではない」としているが、IBMも苦戦する半導体産業において、台湾や韓国の勢いにどれだけ対抗できるのであろうか。 そもそも規模の経済性を無視して、小規模で最先端ということが可能なのだろうか。最先端のことをやるには開発費がかかる、一方で、数を追って莫大な既存事業の利益を上げている会社と、細々と小規模な売り上げを立てている会社のどちらがその先の投資に有利かは、火を見るよりも明らかだ。 ただし、ここでいう規模というのはIDM(自社で設計、製造、販売まで手がけるメーカー)による少品種大量生産を意味するわけではない。ファウンドリービジネスでは、多品種少量生産をひとつのファウンドリーで集約して大量生産のメリットを活かすことができるので、ファウンドリーが半導体ビジネスの主流になった。ファウンドリーの多品種少量はあくまで大量生産の規模の経済性を最大限活かしているケースだ』、「液晶パネル、太陽光パネル、NAND型フラッシュメモリ、最近でいえば日本のノーベル賞受賞技術であるリチウムイオン電池など、日本が価値創造に大きく貢献をしながら、価値獲得はよりビジネスの上手い諸外国企業に獲られているという状況が続いている」、その通りだ。
・『半導体製造装置の優位性に不安材料も  もうひとつの不安材料は、製造設備だ。今でも半導体の部材や製造設備で日本には優位性のある分野が多いが、半導体製造に必要な露光装置に関していえば、かつて日本のキヤノンなどがアメリカのキャスパーから近接露光方式で優位を勝ち取ったのに対して、近年ではオランダのASMLがより高性能なEUVリソグラフィ露光装置で日本のニコンやキヤノンよりも優位に立っている。 現時点でASMLの露光装置なくして、ビヨンド2ナノの製造は不可能であろう。ASMLが新世代露光装置を独占している状況は、米国にとって必ずしも好ましいことではない。ASMLが中国に露光装置を輸出するのを禁止するよう、米国政府がオランダ政府に圧力をかけたほどであり、より与しやすい日本がこの分野で優位に立つことは米国の利益にもかなう。とはいえ、政府の思惑通りに企業の競争力が高まるわけでもない。) だからといって、日本がこの分野を簡単に諦めてしまっていいということではないだろう。26ナノプロセスの汎用性の高い技術については、熊本に台湾TSMCを誘致したように、日本はすでに日の丸連合にこだわらない半導体施策を進めている。 にもかかわらず、日本が最先端半導体の開発に乗り出すのは、半導体技術が安全保障に直結しているということもあるだろう。ウクライナでの紛争において民間のドローンが活躍しているように、民生用技術と軍事技術の垣根が低くなっている今日、AIやIoT技術に必須となる最先端半導体の国産化は、経済だけでなく安全保障上も重要になるだろう。とはいえ、国際競争力がつかなければ絵に描いた餅に過ぎない』、「日本が最先端半導体の開発に乗り出すのは、半導体技術が安全保障に直結しているということもあるだろう。ウクライナでの紛争において民間のドローンが活躍しているように、民生用技術と軍事技術の垣根が低くなっている今日、AIやIoT技術に必須となる最先端半導体の国産化は、経済だけでなく安全保障上も重要になるだろう」、その通りだ。
・『日本が台湾に学ぶべきビジネスでの「価値獲得」  冒頭で述べた台湾との連携というのも、簡単な話ではない。ラピダスの小池淳義社長は、日立製作所と台湾第2位の半導体ファウンドリー・UMCとの合弁でファウンドリーの立ち上げを目指したトレセンティにおいて量産を指揮したが、それでも上手くいかなかった。その要因は様々指摘されているが、日本は台湾と組むときに、台湾の生産能力だけを活用しようとしているからではないか。 日本が台湾から学ぶべきは、いかに制約条件が大きい中でビジネスの構想力によって課題を突破し、収益化に結びつけるかというビジネスの能力であろう。日本は価値創造が得意であるが、台湾が得意なのは価値獲得である。台湾を単に日本の製造手段として見ていると、台湾を過小評価することになる。台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業がシャープを再建したり、熊本の汎用性の高い半導体事業にTSMCを誘致したりと、台湾の価値獲得の能力を活かす日台アライアンスの事例も増えてきている。 また、政策としての海外との連携という点では、日本は台湾と公式の外交関係がなく、日本の政府機関は、出先の民間組織として日本台湾交流協会を通じた外交政策を行っている。各省庁がひとつの出先機関に集中しているのは台湾だけであり、交流協会というひとつの組織で関係省庁が連携をとりやすい環境ができているのも、日台アライアンスを進める上でのメリットだ。) さらにいえば、近年の良好な日台関係も両者のアライアンスを後押しするだろう。米中対立や、ロシアのウクライナ侵攻、3期目に入る中国習近平政権と、東アジアの安全保障に緊張状態をもたらすイベントが多い中で、日本と台湾は同じ脅威に接しており、両者の連携はますます重要になってくるといえる。 また、台湾には日本が必要とする産業も多く、台湾企業への投資は国際的に見ても極めて利回りが良いが、これだけ日台関係が良好で経済的な結びつきもあるのに、日本から台湾企業への投資はほとんど行われていない。台湾側が望んでいないかといえばそうではなく、むしろ「なぜ日本はもっと台湾企業に投資をしないのか」という声が、台湾の財界からは聞こえてくる』、「日本は価値創造が得意であるが、台湾が得意なのは価値獲得である。台湾を単に日本の製造手段として見ていると、台湾を過小評価することになる」、その通りだ。「日本から台湾企業への投資はほとんど行われていない」、「中国政府」に遠慮しているためだろう。
・『単なる連携ではなく台湾の技術や能力を吸収せよ  現在はもっと積極的に台湾との連携を深める好機であり、半導体はその最も有望な候補と言えるだろう。ラピダスもまだその設立が発表されたばかりで、量産に向けてどのような体制を築くのかは不明なところもある。今発表されている米国企業との連携だけで進むということもあるのかもしれない。 しかし、最先端のプロセスでリードする台湾の半導体産業を巻き込むという意味でも、また日本が得意ではない価値獲得の領域でいかに戦略的に立ち回るべきかという意味でも、日本は台湾との関係をもう一度考えてもよいのではないだろうか。 そのときは、単なる業務提携ではなく、日本から台湾の有望な企業への投資を増やし、台湾の技術やビジネスの能力を日本のものにしていくということも、重要ではないだろうか』、「単なる業務提携ではなく、日本から台湾の有望な企業への投資を増やし、台湾の技術やビジネスの能力を日本のものにしていくということも、重要ではないだろうか」、その通りだが、中国本土との関係が悪化しないよう巧みに立ち回る必要がある。

第三に、12月21日付け現代ビジネスが掲載した経済評論家の加谷 珪一氏による「岸田政権・日本政府が主導して「半導体会社」を設立したが…「戦略不在」でまったく「成功を期待できない」ワケ」を紹介しよう』、興味深そうだ。
https://gendai.media/articles/-/103634?imp=0
・『中国の脅威が増大し、半導体確保のリスクが高まってきたことから、政府は国策半導体企業ラピダスの設立に乗り出した。だが日本は最先端半導体の製造技術において、他国より10年以上遅れており、一足飛びに世界トップを目指す方針には疑問の声も出ている。日本は90年代以降、半導体分野で完膚なきまでに敗北したが、すべての原因は「戦略の不在」である』、「日本は90年代以降、半導体分野で完膚なきまでに敗北したが、すべての原因は「戦略の不在」である」、その通りだ。
・『じつは「海外頼み」  ラピダスは、トヨタ自動車やNTTなど国内企業8社が出資し、次世代半導体の国産化を目指す国策企業である。同社が目指しているのは2ナノメートル(もしくはそれ以下)という最先端の製造プロセスだが、この技術を確立できる見通しが立っているのは、現時点では米インテル、台湾TSMC、韓国サムスンの3社だけである。 日本は現時点において、最先端の製造プロセス技術を持っておらず、2ナノの製造プロセスを実用化するためには、長い時間をかけて研究開発を行うか、他国から技術導入するしかない。 政府は基礎技術の開発を目指し、次世代半導体の研究開発拠点となる「技術研究組合最先端半導体技術センター(LSTC)」を設立することも併せて発表している。 LSTCには、多くの研究所や大学が名を連ねているが、日本は長年、最先端半導体の製造分野から遠ざかっており、LSTC単体で技術を確立することは困難と言われる。LSTCは米IBMなど各国の研究機関と連携することが大前提の組織と考えてよいだろう。製造装置についても同様である。 日本メーカーは、2ナノメートルの半導体を製造できる装置を持っておらず、こちらも欧州メーカーから装置を導入する必要がある。基礎技術については米国から、製造装置については欧州から支援を受けるという形であり、自国による生産基盤の確立とは言い難い。) 資金面でも見通しが立っているわけではない。 2ナノメートルの量産体制を確立するためには、最低でも5兆円程度の先行投資が必要となり、上記3社はこの水準の巨額投資を行う方針を明らかにしている。だがラピダスについては、資金のメドが立っているとはいえず、政府も明確に全面支援するとは表明していない。 半導体産業というのは、巨額の先行投資が必要であると同時に、技術が陳腐化するスピードが速く、経営戦略的には極めてやっかいな分野である。十分な成果を上げるためには、完璧な戦略と資金の裏付けが必要であり、これは簡単なことではない。 最先端半導体の分野では圧倒的なナンバーワンである台湾TSMCは、今でこそ、圧倒的な地位を築いているが、同社がここまでの地位に上り詰めるまでには、想像を絶する苦労があった。ラピダスを成功させるためには、TSMCかそれ以上の取り組みが必要となるが、果たしてその覚悟が日本政府や産業界にあるのかは疑問である』、「ラピダスを成功させるためには、TSMCかそれ以上の取り組みが必要となるが、果たしてその覚悟が日本政府や産業界にあるのかは疑問である」、その通りだ。
・『日本の半導体産業の「戦略のミス」  台湾TSMCは半導体のファウンドリ(受託生産)分野のナンバーワン企業である。今でこそ半導体というのは、国際分業が当たり前であり、設計に特化する企業(ファブレス)と製造に特化する企業(ファウンドリ)に分かれ、それぞれが当該分野に特化している(インテルのような企業は例外で、設計から量産まですべて自前で完結できる)。 だが、TSMCが創業した1990年前後、こうした国際分業体制は確立されていなかった。80年代までは日本の半導体産業は圧倒的な競争力を持っており、メモリー(一時記憶を行う半導体)分野のシェアは8割を突破していた。当時の半導体は主に大型コンピュータ用の高価な製品だったが、ここに到来したのが全世界的なIT革命(パソコンの普及)である。パソコンの登場でコンピュータの価格は最終的に数十分の1になり、搭載する部品についても価格破壊が発生した。) パソコンの驚異的な普及は誰の目にも明らかだったにもかかわらず、日本勢は大型コンピュータ用のメモリーにこだわり続け、最終的にはほぼすべてのシェアを失ってしまった。日本勢が敗れたのは、すべて市場動向を見誤った戦略ミスであり、この事実は覆しようがない。いくら技術はすばらしいが商売で負けたと言い訳しても、ビジネスには勝ち負けしかないというのが現実だ。 実際、半導体以外の業界では、日本電産のようにパソコンの驚異的な普及という現実を見据え、パソコンに搭載するハードディスク用モーターに特化して大成功した企業もある。日本電産が世界企業に成長できたのは、世界的なIT革命という市場の流れを的確にとらえたからであり、すべては経営者(創業者の永守重信氏)の戦略性によるものだ。 パソコンの普及による産業構造の変化は、半導体業界にも及ぶことになり、米国では設計に特化するファブレス企業が活発になってきた。こうした状況を受けて製造に特化する企業として設立されたのがTSMCである』、「日本勢が敗れたのは、すべて市場動向を見誤った戦略ミスであり、この事実は覆しようがない。いくら技術はすばらしいが商売で負けたと言い訳しても、ビジネスには勝ち負けしかないというのが現実だ」、その通りだ。
・『台湾の驚くべき半導体戦略  TSMCが設立されたのは1987年だが、同社は半導体の製造を下請けとして受託する小さな新興メーカーに過ぎなかった。筆者はかつてジャーナリストをしていたが、1990年代の初頭、設立間もないTSMCに取材に行った数少ない日本人記者の一人である。 TSMCは台北郊外の新竹にあるサイエンスパークに巨大な生産ラインを構えており、今の新竹はさながら東洋のシリコンバレーといった状況になっている。だが当時の新竹にはTSMCの本社工場がポツンとあるだけだった。新竹は風が強いことで知られ、米粉(ビーフン)が名産だが、殺風景な場所という強烈な印象が残っている。 当時、TSMCが世界をリードする半導体企業になるとは業界の誰もが考えていなかったし、そもそもファウンドリという業態もうまく機能するのか疑問視する声が多かった(単なる下請けなので儲からないという見解が圧倒的に多かった)。そうした中で、無謀ともいえるチャレンジを行っているTSMCに興味が湧き、わざわざ取材に行ったのだが、TSMC幹部が筆者に語った戦略は驚くべきものだった。 同社は当時の段階から、IT業界が完璧な水平分業に体制にシフトし、半導体分野においてもファウンドリが業界の中核になるという見通しを描いていた。加えて、単なる下請け企業に陥らないよう、顧客となる半導体設計企業の業務を徹底的に分析し、彼らが必要とする機能をあらかじめモジュール化して提供する体制を整えるなど、今で言うところのソリューション型ビジネス(問題解決型)を実現する明確な戦略を立案していたのだ。 台湾の凄味は、精神論を排除した冷徹な合理主義と、一方で無謀ともいえる計画を政府が全面的に後押しし、巨額の資金と人材を支援するというリスクテイクの感覚が見事に同居している点だろう。日本の産業界や政府にこうした気概はなく、前例踏襲に終始した結果、半導体産業は壊滅的な状況まで追い込まれてしまった』、「台湾の凄味は、精神論を排除した冷徹な合理主義と、一方で無謀ともいえる計画を政府が全面的に後押しし、巨額の資金と人材を支援するというリスクテイクの感覚が見事に同居している点だろう。日本の産業界や政府にこうした気概はなく、前例踏襲に終始した結果、半導体産業は壊滅的な状況まで追い込まれてしまった」、日台は好対照だ。
・『もっと現実的な対策が必要  TSMCの事例を見ても分かるように、半導体業界において後発企業が大きな実績を上げるためには、極めて高い先見性と想像を超える努力、莫大な資金が必要となる。 日本はこうした生き馬の目を抜く半導体業界において敗北し、10年以上の技術力の差を付けられた状態にある。次の世代が2ナノメートルの製造プロセスが主流になることは誰もが知る事実であり、その技術を確立できる見通しがあり、かつ十分な資金を用意出来る立場にあるのは、冒頭にも述べたようにTSMC、インテル、サムスンの3社だけである。) 後発となった日本が3社に追い付くためには、彼らの何倍も資金を投入して物量で勝負するか、もしくはゲームのルールを自ら変えるゲームチェンジャーになるしかない。 ラピダスはあくまで後発として先行企業に挑むというモデルなので、市場そのものをひっくり返すことを目論んでいるわけではない。だが、ラピダスが後発企業として、先行3社に追い付くための具体的な方策は見えていないのが現実だ。 ラピダスの最大の問題点は、なぜ国策企業を設立するのかという基本戦略が曖昧なことである。 一連のプロジェクトには、中国の台湾侵攻など、地政学的リスクに対処するという意味合いもある。もし経済安全保障が目的であれば、日本にはニーズがない最先端プロセスの半導体を量産するよりも(日本には高度なAIを開発できる企業がないので、最先端半導体を購入する企業が存在していない)、家電や自動車など、具体的ニーズがある汎用的な半導体の国内生産体制を強化した方が圧倒的に効果が高い。 政府は、TSMCに補助金を出し、熊本県に工場を誘致することに成功した。同様に、米国の半導体大手マイクロンテクノロジーにも補助金を出し、広島県の工場での生産体制強化を実現している。 中国の脅威は現実問題であり、台湾有事となれば、国内で半導体が枯渇する可能性は十分にある。一般的な半導体の国内生産体制を確立することも立派な国家戦略である。政府はもっと地に足の着いた戦略を描く必要があるだろう』、「もし経済安全保障が目的であれば、日本にはニーズがない最先端プロセスの半導体を量産するよりも(日本には高度なAIを開発できる企業がないので、最先端半導体を購入する企業が存在していない)、家電や自動車など、具体的ニーズがある汎用的な半導体の国内生産体制を強化した方が圧倒的に効果が高い」、「台湾有事となれば、国内で半導体が枯渇する可能性は十分にある。一般的な半導体の国内生産体制を確立することも立派な国家戦略である。政府はもっと地に足の着いた戦略を描く必要があるだろう」、同感である。
タグ:デイリー新潮「日本の半導体産業を復活させるには何が必要か――太田泰彦(日本経済新聞編集委員)【佐藤優の頂上対決】」 (その9)(日本の半導体産業を復活させるには何が必要か――太田泰彦(日本経済新聞編集委員)【佐藤優の頂上対決】、日本の「次世代半導体連合」に台湾が必要不可欠な理由、岸田政権・日本政府が主導して「半導体会社」を設立したが…「戦略不在」でまったく「成功を期待できない」ワケ) 半導体産業 「半導体産業を知悉するジャーナリストの提言」とは興味深そうだ。 「ファウンドリー」は、「製造だけ請け負うというと下請け企業のように見えますが、設計メーカーの方がTSMCに依存しているのが実態です。というのも半導体の仕様が非常に高度になり、設計はできても、製造・量産することが極めて難しくなっているからです」、「2ナノまで微細化を進めているのはTSMCだけ」、「ファウンドリー」はすごい力を持ったものだ。 「日本では半導体を総合電機メーカーが作っていたことです。日立も東芝も、重電から家電まで扱い、さらに半導体も作っていました。私はこれが衰退の最大の要因」、「振幅が大きいシリコンサイクルに振り回されます。すると、総合電機メーカーの中の部門としては浮いてしまう」、なるほど。 「中国人」、「彼らは自分の幸せ、家族の存続を第一に考えますね。また現実主義者で、どこにでも移っていきます。 佐藤 国籍を変えることに抵抗がない。どこの国民になっても自分たちの宗族でまとまりますし、中国人の意識を持ち続けている。 太田 半導体を取材して感じたのは、その中国人、華人たちの活躍ぶりです。シリコンバレーのデジタル企業には、トップ層でマネジメントを担っている華人が多いんです 。TSMCの張忠謀もマサチューセッツ工科大学を出て、アメリカの半導体企業テキサスインスツルメンツの幹部でした。彼らはあらゆるところにいる。華人の視点から見ていかないと、半導体はわからないと思うに至りました」、その通りだ。 「日本」の「エンジニア」は、「すごいものを作り、きちんと納期までに仕上げ、それで満足し、喜びを感じているのではないか。それは美しい話ですが、同時にもったいない」、同感である。 ダイヤモンド・オンライン 長内 厚氏による「日本の「次世代半導体連合」に台湾が必要不可欠な理由」 「液晶パネル、太陽光パネル、NAND型フラッシュメモリ、最近でいえば日本のノーベル賞受賞技術であるリチウムイオン電池など、日本が価値創造に大きく貢献をしながら、価値獲得はよりビジネスの上手い諸外国企業に獲られているという状況が続いている」、その通りだ。 「日本が最先端半導体の開発に乗り出すのは、半導体技術が安全保障に直結しているということもあるだろう。ウクライナでの紛争において民間のドローンが活躍しているように、民生用技術と軍事技術の垣根が低くなっている今日、AIやIoT技術に必須となる最先端半導体の国産化は、経済だけでなく安全保障上も重要になるだろう」、その通りだ。 「日本は価値創造が得意であるが、台湾が得意なのは価値獲得である。台湾を単に日本の製造手段として見ていると、台湾を過小評価することになる」、その通りだ。「日本から台湾企業への投資はほとんど行われていない」、「中国政府」に遠慮しているためだろう。 「単なる業務提携ではなく、日本から台湾の有望な企業への投資を増やし、台湾の技術やビジネスの能力を日本のものにしていくということも、重要ではないだろうか」、その通りだが、中国本土との関係が悪化しないよう巧みに立ち回る必要がある。 現代ビジネス 加谷 珪一氏による「岸田政権・日本政府が主導して「半導体会社」を設立したが…「戦略不在」でまったく「成功を期待できない」ワケ」 「日本は90年代以降、半導体分野で完膚なきまでに敗北したが、すべての原因は「戦略の不在」である」、その通りだ。 「ラピダスを成功させるためには、TSMCかそれ以上の取り組みが必要となるが、果たしてその覚悟が日本政府や産業界にあるのかは疑問である」、その通りだ。 「日本勢が敗れたのは、すべて市場動向を見誤った戦略ミスであり、この事実は覆しようがない。いくら技術はすばらしいが商売で負けたと言い訳しても、ビジネスには勝ち負けしかないというのが現実だ」、その通りだ。 「台湾の凄味は、精神論を排除した冷徹な合理主義と、一方で無謀ともいえる計画を政府が全面的に後押しし、巨額の資金と人材を支援するというリスクテイクの感覚が見事に同居している点だろう。日本の産業界や政府にこうした気概はなく、前例踏襲に終始した結果、半導体産業は壊滅的な状況まで追い込まれてしまった」、日台は好対照だ。 「もし経済安全保障が目的であれば、日本にはニーズがない最先端プロセスの半導体を量産するよりも(日本には高度なAIを開発できる企業がないので、最先端半導体を購入する企業が存在していない)、家電や自動車など、具体的ニーズがある汎用的な半導体の国内生産体制を強化した方が圧倒的に効果が高い」、 「台湾有事となれば、国内で半導体が枯渇する可能性は十分にある。一般的な半導体の国内生産体制を確立することも立派な国家戦略である。政府はもっと地に足の着いた戦略を描く必要があるだろう」、同感である。
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