労働(その4)(ウーバー配達員の「労働者性」認定 労組と運営なぜ揉めた?内幕を徹底解説、退職代行サービス急増で「違法リスク」懸念大 事業者選びの注意点とは) [社会]
労働については、2020年5月31日に取り上げた。今日は、(その4)(ウーバー配達員の「労働者性」認定 労組と運営なぜ揉めた?内幕を徹底解説、退職代行サービス急増で「違法リスク」懸念大 事業者選びの注意点とは)である。
先ずは、本年12月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した人事ジャーナリストの溝上憲文氏による「ウーバー配達員の「労働者性」認定、労組と運営なぜ揉めた?内幕を徹底解説」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/314103
・『東京都労働委員会が、ウーバーイーツの配達員を「労働者」として認める判断を下した。いわゆる「ギグワーカー」が労働者として認定されるのは日本初だが、そもそも、なぜ配達員の労働組合「ウーバーイーツユニオン」と運営会社の間で対立が深まり、都労委が争議解決の仲介に入ったのか。ユニオンが不満を抱えていたポイントと、配達員の「労働者性」が認められた要因を詳しく解説する』、「配達員の「労働者性」が認められた要因」とは興味深そうだ。
・『ウーバーイーツ配達員は「労働者」 都労委が日本初の認定のワケ ウーバーイーツの配達員は労働者か、それとも個人事業主か。 東京都労働委員会(以下、都労委)は11月25日、ウーバーイーツの配達員を労働組合法上の「労働者」として認める判断を下した。都労委が、ネット上で単発の仕事を請け負う「ギグワーカー」を労働者と認定するのは日本で初めてだ。 都労委をはじめとする労働委員会は、労働組合と使用者(会社)の紛争解決を支援する組織だ。今回、都労委が冒頭の判断を下したきっかけも、両者の紛争だ。 ウーバーイーツの配達員でつくる労働組合「ウーバーイーツユニオン」は、過去に処遇改善に向けた団体交渉を申し入れてきたが、ウーバーイーツの運営会社(以下、ウーバー)は拒否してきた。 ウーバー側はこの際、配達員は「個人事業主」であって、自分たちが雇った労働者ではないという理由で拒否していた。 議論が平行線をたどったため、ユニオンは2020年3月、都労委に不当労働行為の救済を申し立てた。都労委はそれ以降、関係者を招いた証人尋問を行ってきたが、争点となっていたのは「配達員が、団体交渉に応じるべき労働組合法上の労働者であるかどうか」という点だった。 その結果、都労委は配達員を労働者として認めたわけだが、そもそも、なぜユニオンはウーバーに対して団体交渉を求めたのか』、「労働組合法上の」「組合」として「交渉権」を求めた。
・『ウーバーイーツ労組が不満を持っていたポイントとは? 昨年の11月末~12月に行われた都労委の証人尋問で明らかになった、ユニオンが不満を持っていたポイントは、以下の4点だ。 (1) ウーバーの対応の不誠実さ (2) 事故時の補償の脆弱(ぜいじゃく)さ (3) 就業中止などのリスクの予測不可能性 (4) 配達員が受け取る料金体系の不明確さ 各項目を詳しく説明していこう。 (1)は、配達員と飲食店、利用者の間にはさまざまなトラブルも発生するが、ウーバー側はそれらの解決に真摯(しんし)に取り組まなかったということだ。 その実態について、証人尋問に呼ばれた配達員は「飲食店に到着し、(店員に)声をかけたらいきなり『うるせぇ!黙って待っていろよ』と一喝され、さらに『お前客じゃないだろ、ウーバーだろ』と言われた。そんな言い方はないだろうと思って(ウーバーイーツの)サポートセンターに連絡したら『上に報告する』と言っていたが、その後何の連絡もないし、たぶん飲食店の暴言も注意していないだろう」と証言している。 配達員の主張は「利用者、飲食店、配達員は対等な関係ではなく、ウーバーは配達員を保護してくれない」というもので、トラブルに誠実に対応することを求めてきた。 (2)は、配達員に事故リスクがつきまとうにもかかわらず、ケガをしたときの休業補償が手薄いということだ。 事故の補償に関しては、ウーバーは事業開始3年目の2019年10月に民間の損害保険会社と提携し、配達員の傷害見舞金制度を設けた。 その後、制度を拡充し、医療費用の上限を50万円としたほか、1日7500円の見舞金を上限60日支給するなどの補償を設けた。 しかし、2カ月以上の休業は補償されないなど、一般的な労働者の労災補償に比べると見劣りする。 また、現在の制度では、補償の対象となるのは「配達中」(on-trip)に起こした事故に限定されている。 ユニオンはこの補償の対象範囲を、配達リクエストを待っているときや飲食店に行く途中など、アプリをオンラインにしている状態(off-trip)に拡大することを求めてきた。見舞金などの金額や、期間の改善も併せて要求している。 (3)は、アカウントの停止や、配達員の間で“干される”と呼ばれている、一定期間の配達を制限するペナルティーの存在と、その根拠を開示してほしいということだ。 配達員はアカウントを停止されると、事実上就業不能になる。配達員が飲食店からパワハラなどのいじめを受けても、結局泣き寝入りせざるを得ない背景には、アカウント停止などのペナルティーが存在するからだという。 ただし、ウーバー側はこの点について真っ向から否定した。 証人となったウーバーのシステム担当者は「配達員の応答率の良さや、拒否する確率の高さ、低さに関係なく、エリア内にいればリクエスト(仕事のオファー)が送信される。グローバルなプロダクト設定になっており、どの配達員であってもリクエストが送信され、条件に良い、悪いというものはない。配達員が自分で受けるかどうかを決めるだけだ」と言っている。 だが、配達の報酬がどうやって決まっているのかが不透明だという(4)の不満も大きい。 配達員の報酬は、「基本配送料」と「インセンティブ」で構成される。 前者の「基本配送料」は、店舗で配達員が商品を預かったときに発生する「受け取り料金」、利用者に商品を届けたときの「受け渡し料金」、店舗から利用者宅までの「距離料金」の3つの合計金額から、ウーバーの取り分であるサービス手数料を引いたものを指す。 後者の「インセンティブ」は、需要が多いエリアや時間帯に配達した場合、追加で支払われるものを指す。 かつて、これらの報酬体系は内訳が明示されていた。 だが、2021年5月以降に報酬体系が変更され、事前に「予想配達料金」として仮の金額が提示されるが、確定した報酬金額は配達後にしか分からない形になった。ユニオンはこの仕組みの実態が分からず、半ばブラックボックス化していると主張してきた。 こうした4点の不満や処遇改善を訴えて団体交渉を申し入れたのだが、前述したようにウーバーが拒否し、都労委の申し立てに至ったのだ』、これまで「ウーバー」は。「配達員」を事実上の従業員としながら、雇用主としての義務を一切無視してきた。
・『フリーランスの個人事業主が「労働者」として認められたワケ ところで、フリーランスの個人事業主が、なぜ法律上の「労働者」として認められるのかと疑問に持つ人も少なくないだろう。 労働者の定義は法律によって異なる。 労働条件の最低基準を定めた労働基準法では、労働者の範囲は「使用従属性」の有無などによって判断される。つまり、「指揮監督下の労働」という労務提供の形態や、「賃金支払い」という報酬の労務対償性の有無などによって、労働者であるか否かが判断される。 一方、憲法で保障された「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」の三権の具体的保障としての団体交渉の助成を目的とする「労働組合法」では、労働者の範囲が労基法よりも幅広い。 労働組合法3条では労働者を「職業の種類を問わず、賃金、給料、その他これに準じる収入によって生活する者」と定義している。 つまり、特定の使用者に雇われていない失業者も含まれるほか、必ずしも雇用契約を結んでいない請負・独立事業者なども保護の対象にするというのが立法趣旨であり、そのように運用されてきた経緯がある』、「憲法で保障された「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」の三権の具体的保障としての団体交渉の助成を目的とする「労働組合法」では、労働者の範囲が労基法よりも幅広い」、当然のことだ。
・『労働者性を判断する上で基準となったポイントは? そして今回、都労委は労働組合法に基づき、配達員は「労働者」であると“満額回答”で認定し、ウーバーに団体交渉に応じるよう命令した。 労働者性を判断する上で、重要な基準となったポイントは、(1)事業組織への組み入れ、(2)契約内容の一方的・定型的決定、(3)報酬の労務対価性、(4)顕著な事業者性――の4点だ。 事業組織への組み入れとは、配達員がビジネスにとって不可欠な労働力として確保されているか、を判断する。組み入れがあれば「労働者性がある」とみなされる。 ウーバーはインセンティブを設けて配達の需要が多い場所・時間帯に配達員を誘導している。また、配達員は個人名ではなく「ウーバーイーツ」を名乗って注文者や飲食店を訪問している。これらのことなどから、都労委は「事業組織への組み入れ」はあると判断した。 ちなみにウーバーの配達員は全国で13万人以上とされるが、都労委によれば、ウーバーの業務で生計を立てている人は約2000人。配達業務を「本業」とする人は全体の25%を占めるという。そのため、都労委は「専属性」も強いと判断している。 (2)契約内容の一方的・定型的決定とは、仕事や報酬の内容をウーバーが一方的に決め、定型的な契約書式かどうかを判断する。配達員に交渉の余地がなければ労働者とみなされる。 この点について、配達員が締結している「ウーバーサービス契約」はウーバーが用意した定型的様式であり、契約内容を配達員が個別に交渉して決定することはできない。 また、配送料の変更を要請する権利が書かれた条項はあるが、実際には交渉の余地がなく、アプリにはウーバーが決定する金額以外の選択肢は表示されない。個別に交渉できる仕様にもなっていない。これらのことから、都労委は「契約内容の一方的・定型的決定」があると判断した。 (3)報酬の労務対価性とは、業務量や時間に応じて配達員に支払われる報酬が、労働を提供した対価であるかどうか、である。労務対価性があれば労働者とみなされる。 ウーバーは時間帯や場所、配達回数の達成などのインセンティブによる追加報酬を出しているが、これは「配達員が自ら提供した労務への対価」としての性格を持つと都労委は判断した。 (4)顕著な事業者性とは、自己の才覚で利得する機会を有し、自らリスクを引き受けて事業を行う者であるか、どうかを判断する。 事業者性があれば労働者ではないが、ウーバーは注文者や飲食店と不必要な接触を禁止しており、配達員は自らの才覚で利得する機会がない(個人の裁量による営業活動はできない)。また、配送事業の損益はウーバーが負担しているので、自らの業務にリスクを負っているとはいえない。 したがって配達員は顕著な事業者性は持っていない、と都労委は判断した。 以上、4つの判断軸すべてにおいて配達員は労働者と認定されたが、これでウーバーの配達員の処遇が改善されるわけではない。あくまで労働組合として交渉する権利(会社は交渉に応じる義務)を得たにすぎない』、「あくまで労働組合として交渉する権利(会社は交渉に応じる義務)を得たにすぎない」、その通りだ。
・『係争が長引けばあと数年はかかる可能性も しかもウーバー側は、都労委の決定に不服であれば中央労働委員会に再審査の申し立てができる。仮に中労委が申し立てを棄却しても、今度は地裁、高裁、最高裁まで争うこともでき、そうなれば決着するまで、あと数年はかかる可能性もある。 紛争が長引けば長引くほど、配達員は労働環境が改善されないまま働かねばならない。ウーバー側も「違法状態」を続けることになり、世間からの風当たりが強くなる。すなわち、双方が痛みを伴うことになる。 また、ユニオンは必ずしも、前述した労基法上の労働者になることを望んでいるわけではない。ウーバー側が配達員の労働者性を正式に認めると、労務管理を強化する可能性があることから、配達員の中には「自分のペースで働ける自由さを失いたくない」という声もある。 ユニオンが何より望んでいるのは、ウーバー側との団体交渉のテーブルにつき、報酬の決め方の明確化や事故時の補償の改善などについて話し合うことだ。 最後に、ギグワーカーの保護についての、日本の「出遅れ」についても触れておきたい。 ヨーロッパでは労働者性の有無に関係なく、就業中の事故に対する労災保険の適用や、失業時の補償などのセーフティーネットの整備が進みつつある。 また、ヨーロッパでは国が保険料を支払う場合もある。地域は異なるが、韓国も同様だ。スウェーデンのようにフリーランスも失業給付が受けられる国もある。 ギグワーカーを通常の労働者と違う「第3の労働者」と定義し、有給休暇や最低賃金を保障する国もある。 一方の日本では、昨年に自転車配達員の労災保険の「特別加入」が認められたが、自腹で保険料を支払わなくてはいけない。 ウーバーイーツのような料理宅配員は、コロナ禍の中で需要が拡大し、他社も含めると全国で約30万人に増えたといわれる。料理宅配以外のギグワーカーも増えている。にもかかわらず、保護する体制は不十分なのだ。 今回の都労委の判断を契機に、政府はギグワーカーのセーフティーネットの構築を急ぐべきだろう』、「ウーバー側が配達員の労働者性を正式に認めると、労務管理を強化する可能性があることから、配達員の中には「自分のペースで働ける自由さを失いたくない」という声もある。 ユニオンが何より望んでいるのは、ウーバー側との団体交渉のテーブルにつき、報酬の決め方の明確化や事故時の補償の改善などについて話し合うことだ」、「今回の都労委の判断を契機に、政府はギグワーカーのセーフティーネットの構築を急ぐべきだろう」、その通りだ。
次に、12月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した弁護士(東京駅前総合法律事務所)の井上裕貴氏による「退職代行サービス急増で「違法リスク」懸念大、事業者選びの注意点とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/314174
・『ブラック職場を辞めようとしたら懲戒解雇と賃金不払いの圧力 都内の中小メーカーで働くAさん(30代男性)は勤続10年の中堅社員だが、毎日終電まで残業が続き、体力・気力ともに限界にあった。 Aさんの職場は、休みは週1日、9日連続勤務も当たり前の、いわゆるブラック企業。 やむなく上司に「退職を検討している」と伝えたところ、ねぎらわれるどころか「そんなことをすれば懲戒解雇扱いにする」と、圧力をかけられる始末。さらに「懲戒解雇が前提なのだから、未払いの給与の支払い義務もない」と冷たく言われた。 落胆したAさんは会社を辞める決意をしたものの、退職届を出せば、会社と対立することは避けられない。また、会社に対する許せない気持ちもあった。超過勤務を労働基準法違反として告発したい、未払い給与を支払ってもらいたいとして、筆者の事務所に相談をしてきた。 筆者はAさんの会社の担当者に対し、会社として懲戒解雇を行うメリットがないことを伝え、Aさんが退職意思を示している以上、機械的に退職日を決めるよう伝えた。また、未払い給与を支払わないことは会社側にとって労基署に駆け込まれるなどのリスクが大きいので控えたほうがよいと伝えた。) 幸い、企業側がこちらからの申し入れを受け入れたため、Aさんは無事に退職することができた。 なお、即時解雇してくる会社に対しては、解雇予告手当(従業員に対して解雇日の30日以上前に、解雇予告せずに解雇を行う場合、支払いが義務付けられている手当のこと)を請求することもある。もっとも、そもそも解雇の有効性が疑問視される事案も多いため、このようなケースはそう多くはない。また、未払い給与については警告書を送るなどの対応も行っている。 こうしたことを行うには法律的な知識が必要であり、退職希望者が自分だけで対応するのは難しい』、「Aさんの会社」は文字通りの「ブラック企業」だ。「弁護士」が入ったことで、違法な「懲戒解雇」などをあきらめ、「Aさんは無事に退職することができた」のは何よりだ。
・『退職代行サービスが急増している理由 2010年代後半以降、「退職代行サービス」を行う事業者が増加している。 「退職代行サービス」とは、一言で言うと、労働者本人ではなく第三者がその労働者の代わりに職場に退職の意思を伝えるサービスである。 2017~18年頃よりメディア等で取り上げられることが多くなり、2022年現在では100社以上の退職代行業者が存在すると思われる。 なぜ退職代行サービスのニーズが増加しているのか。 その理由の一つは、昨今の人材不足にある。 例えば、職場を辞めようとすると「次の人が見つかるまで働いてほしい」「あなたに辞められたら職場が回らなくなる」等と圧力をかけられたり、部下の退職が上司の直接の評価に響く・部署に最低人数枠が決められているためその確保という会社側の都合により引き留められる、などといった問題が見受けられる。 他にも、パワハラなどにより職場に退職の意思を伝えることが困難、離職票など必要書類を用意してくれないなどといった理由で退職したくても言い出せない、というケースも存在する。 本来、退職自体は退職の意思表示を職場に行えば足りるものだが、このような理由から退職するという行為のハードルが上がってきている。 そこで、第三者が職場に退職の意思表示を伝え退職を完結させるという退職代行サービスのニーズが高まっていると思われる』、「本来、退職自体は退職の意思表示を職場に行えば足りるものだが、このような理由から退職するという行為のハードルが上がってきている。 そこで、第三者が職場に退職の意思表示を伝え退職を完結させるという退職代行サービスのニーズが高まっている」、なるほど。
・『退職代行会社における弁護士法違反のリスク しかし一方で退職代行サービスについては問題点も指摘されている。具体的には退職代行サービスを専門的に行っているいわゆる「退職代行会社」の存在が、弁護士法違反なのではないかという問題だ。 弁護士法72条では、弁護士または弁護士法人以外は「その他の法律事務」を行ってはいけないと定められている。 「その他の法律事務」とは、「法律上の効果を発生、変更する事項の処理や、保全、明確化する事項の処理(東京地方裁判所平成29年2月20日判決・東京地方裁判所平成29年(ワ)第299号参照)」のことで、簡単に言うと、「退職」の意思表示を本人に代わり会社に伝えるという行為は「労働契約の終了」という法律上の効果を発生させるものなので、退職代行という行為は「その他の法律事務」に該当するのではないかということだ。 現状では、この問題の判例・裁判例は存在しないため、あくまで筆者の個人的な見解になるが、筆者は「弁護士または弁護士法人以外の個人や退職代行会社が業として行う退職代行は、確たる判例・裁判例は存在しないものの、弁護士法72条違反の可能性が極めて高い」と考えている。 例えば、ネット情報の削除代行業者が、サイト運営者にネット記事削除を求めることは、弁護士法72条に違反するため、削除代行業者と利用者との間の契約が無効であるとの裁判例が存在する。 よく退職代行会社のホームページに、「『代理人』ではなく『使者』であるため、弁護士法72条に違反していません」と記載していることがあるが、上記の裁判例を見ると、裁判所は「代理」か「使者」かという点には着目しておらず、「法律事務」という法律上の効果を発生、変更する事項の処理や、保全、明確化する事項の処理に当たるかどうかを端的に判断しているので、「『本人がこう言っているのを伝えているだけ』と全て『使者』の形式さえとれば弁護士法72条に違反しない」という理解は大変危険といえる。 また、退職代行会社のホームページで「非弁行為(弁護士でない者が、報酬を得る目的で、弁護士にのみ認められている行為をすること)となるため会社(勤務先)との交渉はいたしません」との記載を目にすることがあるが、「退職」という行為そのものが「労働契約の終了」という法律上の効果を発生させるものなので、「その他の法律事務」に該当すると筆者は考えている。 中には「顧問弁護士の指導を受けているので安心です」という退職代行会社もあるようだが、その顧問弁護士がこれまで述べてきたような弁護士法や裁判例について知らない可能性もある。 現状、退職代行サービスの弁護士法違反に関する判例・裁判例は存在しないとはいえ、弁護士および弁護士法人以外の退職代行会社については、弁護士法違反で担当者が逮捕されるリスクが存在するということに注意が必要だ』、「現状、退職代行サービスの弁護士法違反に関する判例・裁判例は存在しないとはいえ、弁護士および弁護士法人以外の退職代行会社については、弁護士法違反で担当者が逮捕されるリスクが存在するということに注意が必要だ」、なるほど。
・退職代行サービス利用時の具体的な流れと注意点 最後に、退職代行サービスの詳細と利用時の注意点について指摘したい。 まず、退職代行サービスの具体的な内容についてだが、筆者の法律事務所では次のような流れで行っている。 弊所への依頼はLINEのみで行っている。LINEで問い合わせを受けたら、弁護士との面談日程を調整し、その後、入金確認ができたら、弁護士と面談を行う。 面談では、まず本人確認を徹底している。このサービスは第三者になりすますことで悪用ができてしまうからだ。 その上で、職場に弁護士から連絡を行う日程等の打ち合わせ、退職理由についての確認、退職の意思が固いことの確認を行う。 面談でよくある相談としては、有給休暇の消化、退職日がいつになるか、損害賠償リスクがあるのか、というものが挙げられる。 有給休暇については、就業規則に定めがないとしても、法令で定められている日数を労働者に職場が与えなければならない。 退職日については、案件の内容に応じて弁護士が職場と交渉を行う。 損害賠償リスクについてはもちろん案件にもよるが、弊所ではこれまで一度も職場から労働者に損害賠償請求をされたケースはない。そうならないように面談の際にサービス利用者と綿密な打ち合わせをしているからだと思われる。 その後、弁護士からお客様の勤務先へ退職を行うという連絡を行う。もちろんサービス利用者から会社に退職の意向を伝える必要はない。 その後、引き継ぎや離職票発行、保険証返却、退職金や有給休暇の消化などもろもろの手続きを弁護士と勤務先で確認を行い、退職完了となる。 最近では、無免許の退職代行会社に依頼を行った結果、退職代行会社が職場に連絡を行わず無断欠勤扱いになった、有給休暇の消化ができなかった、退職金が減額になったなどのトラブルについての話をサービス利用者からよく聞くが、このようなトラブルを避けるため、筆者としては弁護士資格というしっかりとした国家資格を有する弁護士のいる法律事務所に相談することを強くおすすめしたい』、「トラブルを避けるため、筆者としては弁護士資格というしっかりとした国家資格を有する弁護士のいる法律事務所に相談することを強くおすすめしたい」、確かに「トラブル」回避は「法律事務所」選択では重要なようだ。
先ずは、本年12月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した人事ジャーナリストの溝上憲文氏による「ウーバー配達員の「労働者性」認定、労組と運営なぜ揉めた?内幕を徹底解説」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/314103
・『東京都労働委員会が、ウーバーイーツの配達員を「労働者」として認める判断を下した。いわゆる「ギグワーカー」が労働者として認定されるのは日本初だが、そもそも、なぜ配達員の労働組合「ウーバーイーツユニオン」と運営会社の間で対立が深まり、都労委が争議解決の仲介に入ったのか。ユニオンが不満を抱えていたポイントと、配達員の「労働者性」が認められた要因を詳しく解説する』、「配達員の「労働者性」が認められた要因」とは興味深そうだ。
・『ウーバーイーツ配達員は「労働者」 都労委が日本初の認定のワケ ウーバーイーツの配達員は労働者か、それとも個人事業主か。 東京都労働委員会(以下、都労委)は11月25日、ウーバーイーツの配達員を労働組合法上の「労働者」として認める判断を下した。都労委が、ネット上で単発の仕事を請け負う「ギグワーカー」を労働者と認定するのは日本で初めてだ。 都労委をはじめとする労働委員会は、労働組合と使用者(会社)の紛争解決を支援する組織だ。今回、都労委が冒頭の判断を下したきっかけも、両者の紛争だ。 ウーバーイーツの配達員でつくる労働組合「ウーバーイーツユニオン」は、過去に処遇改善に向けた団体交渉を申し入れてきたが、ウーバーイーツの運営会社(以下、ウーバー)は拒否してきた。 ウーバー側はこの際、配達員は「個人事業主」であって、自分たちが雇った労働者ではないという理由で拒否していた。 議論が平行線をたどったため、ユニオンは2020年3月、都労委に不当労働行為の救済を申し立てた。都労委はそれ以降、関係者を招いた証人尋問を行ってきたが、争点となっていたのは「配達員が、団体交渉に応じるべき労働組合法上の労働者であるかどうか」という点だった。 その結果、都労委は配達員を労働者として認めたわけだが、そもそも、なぜユニオンはウーバーに対して団体交渉を求めたのか』、「労働組合法上の」「組合」として「交渉権」を求めた。
・『ウーバーイーツ労組が不満を持っていたポイントとは? 昨年の11月末~12月に行われた都労委の証人尋問で明らかになった、ユニオンが不満を持っていたポイントは、以下の4点だ。 (1) ウーバーの対応の不誠実さ (2) 事故時の補償の脆弱(ぜいじゃく)さ (3) 就業中止などのリスクの予測不可能性 (4) 配達員が受け取る料金体系の不明確さ 各項目を詳しく説明していこう。 (1)は、配達員と飲食店、利用者の間にはさまざまなトラブルも発生するが、ウーバー側はそれらの解決に真摯(しんし)に取り組まなかったということだ。 その実態について、証人尋問に呼ばれた配達員は「飲食店に到着し、(店員に)声をかけたらいきなり『うるせぇ!黙って待っていろよ』と一喝され、さらに『お前客じゃないだろ、ウーバーだろ』と言われた。そんな言い方はないだろうと思って(ウーバーイーツの)サポートセンターに連絡したら『上に報告する』と言っていたが、その後何の連絡もないし、たぶん飲食店の暴言も注意していないだろう」と証言している。 配達員の主張は「利用者、飲食店、配達員は対等な関係ではなく、ウーバーは配達員を保護してくれない」というもので、トラブルに誠実に対応することを求めてきた。 (2)は、配達員に事故リスクがつきまとうにもかかわらず、ケガをしたときの休業補償が手薄いということだ。 事故の補償に関しては、ウーバーは事業開始3年目の2019年10月に民間の損害保険会社と提携し、配達員の傷害見舞金制度を設けた。 その後、制度を拡充し、医療費用の上限を50万円としたほか、1日7500円の見舞金を上限60日支給するなどの補償を設けた。 しかし、2カ月以上の休業は補償されないなど、一般的な労働者の労災補償に比べると見劣りする。 また、現在の制度では、補償の対象となるのは「配達中」(on-trip)に起こした事故に限定されている。 ユニオンはこの補償の対象範囲を、配達リクエストを待っているときや飲食店に行く途中など、アプリをオンラインにしている状態(off-trip)に拡大することを求めてきた。見舞金などの金額や、期間の改善も併せて要求している。 (3)は、アカウントの停止や、配達員の間で“干される”と呼ばれている、一定期間の配達を制限するペナルティーの存在と、その根拠を開示してほしいということだ。 配達員はアカウントを停止されると、事実上就業不能になる。配達員が飲食店からパワハラなどのいじめを受けても、結局泣き寝入りせざるを得ない背景には、アカウント停止などのペナルティーが存在するからだという。 ただし、ウーバー側はこの点について真っ向から否定した。 証人となったウーバーのシステム担当者は「配達員の応答率の良さや、拒否する確率の高さ、低さに関係なく、エリア内にいればリクエスト(仕事のオファー)が送信される。グローバルなプロダクト設定になっており、どの配達員であってもリクエストが送信され、条件に良い、悪いというものはない。配達員が自分で受けるかどうかを決めるだけだ」と言っている。 だが、配達の報酬がどうやって決まっているのかが不透明だという(4)の不満も大きい。 配達員の報酬は、「基本配送料」と「インセンティブ」で構成される。 前者の「基本配送料」は、店舗で配達員が商品を預かったときに発生する「受け取り料金」、利用者に商品を届けたときの「受け渡し料金」、店舗から利用者宅までの「距離料金」の3つの合計金額から、ウーバーの取り分であるサービス手数料を引いたものを指す。 後者の「インセンティブ」は、需要が多いエリアや時間帯に配達した場合、追加で支払われるものを指す。 かつて、これらの報酬体系は内訳が明示されていた。 だが、2021年5月以降に報酬体系が変更され、事前に「予想配達料金」として仮の金額が提示されるが、確定した報酬金額は配達後にしか分からない形になった。ユニオンはこの仕組みの実態が分からず、半ばブラックボックス化していると主張してきた。 こうした4点の不満や処遇改善を訴えて団体交渉を申し入れたのだが、前述したようにウーバーが拒否し、都労委の申し立てに至ったのだ』、これまで「ウーバー」は。「配達員」を事実上の従業員としながら、雇用主としての義務を一切無視してきた。
・『フリーランスの個人事業主が「労働者」として認められたワケ ところで、フリーランスの個人事業主が、なぜ法律上の「労働者」として認められるのかと疑問に持つ人も少なくないだろう。 労働者の定義は法律によって異なる。 労働条件の最低基準を定めた労働基準法では、労働者の範囲は「使用従属性」の有無などによって判断される。つまり、「指揮監督下の労働」という労務提供の形態や、「賃金支払い」という報酬の労務対償性の有無などによって、労働者であるか否かが判断される。 一方、憲法で保障された「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」の三権の具体的保障としての団体交渉の助成を目的とする「労働組合法」では、労働者の範囲が労基法よりも幅広い。 労働組合法3条では労働者を「職業の種類を問わず、賃金、給料、その他これに準じる収入によって生活する者」と定義している。 つまり、特定の使用者に雇われていない失業者も含まれるほか、必ずしも雇用契約を結んでいない請負・独立事業者なども保護の対象にするというのが立法趣旨であり、そのように運用されてきた経緯がある』、「憲法で保障された「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」の三権の具体的保障としての団体交渉の助成を目的とする「労働組合法」では、労働者の範囲が労基法よりも幅広い」、当然のことだ。
・『労働者性を判断する上で基準となったポイントは? そして今回、都労委は労働組合法に基づき、配達員は「労働者」であると“満額回答”で認定し、ウーバーに団体交渉に応じるよう命令した。 労働者性を判断する上で、重要な基準となったポイントは、(1)事業組織への組み入れ、(2)契約内容の一方的・定型的決定、(3)報酬の労務対価性、(4)顕著な事業者性――の4点だ。 事業組織への組み入れとは、配達員がビジネスにとって不可欠な労働力として確保されているか、を判断する。組み入れがあれば「労働者性がある」とみなされる。 ウーバーはインセンティブを設けて配達の需要が多い場所・時間帯に配達員を誘導している。また、配達員は個人名ではなく「ウーバーイーツ」を名乗って注文者や飲食店を訪問している。これらのことなどから、都労委は「事業組織への組み入れ」はあると判断した。 ちなみにウーバーの配達員は全国で13万人以上とされるが、都労委によれば、ウーバーの業務で生計を立てている人は約2000人。配達業務を「本業」とする人は全体の25%を占めるという。そのため、都労委は「専属性」も強いと判断している。 (2)契約内容の一方的・定型的決定とは、仕事や報酬の内容をウーバーが一方的に決め、定型的な契約書式かどうかを判断する。配達員に交渉の余地がなければ労働者とみなされる。 この点について、配達員が締結している「ウーバーサービス契約」はウーバーが用意した定型的様式であり、契約内容を配達員が個別に交渉して決定することはできない。 また、配送料の変更を要請する権利が書かれた条項はあるが、実際には交渉の余地がなく、アプリにはウーバーが決定する金額以外の選択肢は表示されない。個別に交渉できる仕様にもなっていない。これらのことから、都労委は「契約内容の一方的・定型的決定」があると判断した。 (3)報酬の労務対価性とは、業務量や時間に応じて配達員に支払われる報酬が、労働を提供した対価であるかどうか、である。労務対価性があれば労働者とみなされる。 ウーバーは時間帯や場所、配達回数の達成などのインセンティブによる追加報酬を出しているが、これは「配達員が自ら提供した労務への対価」としての性格を持つと都労委は判断した。 (4)顕著な事業者性とは、自己の才覚で利得する機会を有し、自らリスクを引き受けて事業を行う者であるか、どうかを判断する。 事業者性があれば労働者ではないが、ウーバーは注文者や飲食店と不必要な接触を禁止しており、配達員は自らの才覚で利得する機会がない(個人の裁量による営業活動はできない)。また、配送事業の損益はウーバーが負担しているので、自らの業務にリスクを負っているとはいえない。 したがって配達員は顕著な事業者性は持っていない、と都労委は判断した。 以上、4つの判断軸すべてにおいて配達員は労働者と認定されたが、これでウーバーの配達員の処遇が改善されるわけではない。あくまで労働組合として交渉する権利(会社は交渉に応じる義務)を得たにすぎない』、「あくまで労働組合として交渉する権利(会社は交渉に応じる義務)を得たにすぎない」、その通りだ。
・『係争が長引けばあと数年はかかる可能性も しかもウーバー側は、都労委の決定に不服であれば中央労働委員会に再審査の申し立てができる。仮に中労委が申し立てを棄却しても、今度は地裁、高裁、最高裁まで争うこともでき、そうなれば決着するまで、あと数年はかかる可能性もある。 紛争が長引けば長引くほど、配達員は労働環境が改善されないまま働かねばならない。ウーバー側も「違法状態」を続けることになり、世間からの風当たりが強くなる。すなわち、双方が痛みを伴うことになる。 また、ユニオンは必ずしも、前述した労基法上の労働者になることを望んでいるわけではない。ウーバー側が配達員の労働者性を正式に認めると、労務管理を強化する可能性があることから、配達員の中には「自分のペースで働ける自由さを失いたくない」という声もある。 ユニオンが何より望んでいるのは、ウーバー側との団体交渉のテーブルにつき、報酬の決め方の明確化や事故時の補償の改善などについて話し合うことだ。 最後に、ギグワーカーの保護についての、日本の「出遅れ」についても触れておきたい。 ヨーロッパでは労働者性の有無に関係なく、就業中の事故に対する労災保険の適用や、失業時の補償などのセーフティーネットの整備が進みつつある。 また、ヨーロッパでは国が保険料を支払う場合もある。地域は異なるが、韓国も同様だ。スウェーデンのようにフリーランスも失業給付が受けられる国もある。 ギグワーカーを通常の労働者と違う「第3の労働者」と定義し、有給休暇や最低賃金を保障する国もある。 一方の日本では、昨年に自転車配達員の労災保険の「特別加入」が認められたが、自腹で保険料を支払わなくてはいけない。 ウーバーイーツのような料理宅配員は、コロナ禍の中で需要が拡大し、他社も含めると全国で約30万人に増えたといわれる。料理宅配以外のギグワーカーも増えている。にもかかわらず、保護する体制は不十分なのだ。 今回の都労委の判断を契機に、政府はギグワーカーのセーフティーネットの構築を急ぐべきだろう』、「ウーバー側が配達員の労働者性を正式に認めると、労務管理を強化する可能性があることから、配達員の中には「自分のペースで働ける自由さを失いたくない」という声もある。 ユニオンが何より望んでいるのは、ウーバー側との団体交渉のテーブルにつき、報酬の決め方の明確化や事故時の補償の改善などについて話し合うことだ」、「今回の都労委の判断を契機に、政府はギグワーカーのセーフティーネットの構築を急ぐべきだろう」、その通りだ。
次に、12月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した弁護士(東京駅前総合法律事務所)の井上裕貴氏による「退職代行サービス急増で「違法リスク」懸念大、事業者選びの注意点とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/314174
・『ブラック職場を辞めようとしたら懲戒解雇と賃金不払いの圧力 都内の中小メーカーで働くAさん(30代男性)は勤続10年の中堅社員だが、毎日終電まで残業が続き、体力・気力ともに限界にあった。 Aさんの職場は、休みは週1日、9日連続勤務も当たり前の、いわゆるブラック企業。 やむなく上司に「退職を検討している」と伝えたところ、ねぎらわれるどころか「そんなことをすれば懲戒解雇扱いにする」と、圧力をかけられる始末。さらに「懲戒解雇が前提なのだから、未払いの給与の支払い義務もない」と冷たく言われた。 落胆したAさんは会社を辞める決意をしたものの、退職届を出せば、会社と対立することは避けられない。また、会社に対する許せない気持ちもあった。超過勤務を労働基準法違反として告発したい、未払い給与を支払ってもらいたいとして、筆者の事務所に相談をしてきた。 筆者はAさんの会社の担当者に対し、会社として懲戒解雇を行うメリットがないことを伝え、Aさんが退職意思を示している以上、機械的に退職日を決めるよう伝えた。また、未払い給与を支払わないことは会社側にとって労基署に駆け込まれるなどのリスクが大きいので控えたほうがよいと伝えた。) 幸い、企業側がこちらからの申し入れを受け入れたため、Aさんは無事に退職することができた。 なお、即時解雇してくる会社に対しては、解雇予告手当(従業員に対して解雇日の30日以上前に、解雇予告せずに解雇を行う場合、支払いが義務付けられている手当のこと)を請求することもある。もっとも、そもそも解雇の有効性が疑問視される事案も多いため、このようなケースはそう多くはない。また、未払い給与については警告書を送るなどの対応も行っている。 こうしたことを行うには法律的な知識が必要であり、退職希望者が自分だけで対応するのは難しい』、「Aさんの会社」は文字通りの「ブラック企業」だ。「弁護士」が入ったことで、違法な「懲戒解雇」などをあきらめ、「Aさんは無事に退職することができた」のは何よりだ。
・『退職代行サービスが急増している理由 2010年代後半以降、「退職代行サービス」を行う事業者が増加している。 「退職代行サービス」とは、一言で言うと、労働者本人ではなく第三者がその労働者の代わりに職場に退職の意思を伝えるサービスである。 2017~18年頃よりメディア等で取り上げられることが多くなり、2022年現在では100社以上の退職代行業者が存在すると思われる。 なぜ退職代行サービスのニーズが増加しているのか。 その理由の一つは、昨今の人材不足にある。 例えば、職場を辞めようとすると「次の人が見つかるまで働いてほしい」「あなたに辞められたら職場が回らなくなる」等と圧力をかけられたり、部下の退職が上司の直接の評価に響く・部署に最低人数枠が決められているためその確保という会社側の都合により引き留められる、などといった問題が見受けられる。 他にも、パワハラなどにより職場に退職の意思を伝えることが困難、離職票など必要書類を用意してくれないなどといった理由で退職したくても言い出せない、というケースも存在する。 本来、退職自体は退職の意思表示を職場に行えば足りるものだが、このような理由から退職するという行為のハードルが上がってきている。 そこで、第三者が職場に退職の意思表示を伝え退職を完結させるという退職代行サービスのニーズが高まっていると思われる』、「本来、退職自体は退職の意思表示を職場に行えば足りるものだが、このような理由から退職するという行為のハードルが上がってきている。 そこで、第三者が職場に退職の意思表示を伝え退職を完結させるという退職代行サービスのニーズが高まっている」、なるほど。
・『退職代行会社における弁護士法違反のリスク しかし一方で退職代行サービスについては問題点も指摘されている。具体的には退職代行サービスを専門的に行っているいわゆる「退職代行会社」の存在が、弁護士法違反なのではないかという問題だ。 弁護士法72条では、弁護士または弁護士法人以外は「その他の法律事務」を行ってはいけないと定められている。 「その他の法律事務」とは、「法律上の効果を発生、変更する事項の処理や、保全、明確化する事項の処理(東京地方裁判所平成29年2月20日判決・東京地方裁判所平成29年(ワ)第299号参照)」のことで、簡単に言うと、「退職」の意思表示を本人に代わり会社に伝えるという行為は「労働契約の終了」という法律上の効果を発生させるものなので、退職代行という行為は「その他の法律事務」に該当するのではないかということだ。 現状では、この問題の判例・裁判例は存在しないため、あくまで筆者の個人的な見解になるが、筆者は「弁護士または弁護士法人以外の個人や退職代行会社が業として行う退職代行は、確たる判例・裁判例は存在しないものの、弁護士法72条違反の可能性が極めて高い」と考えている。 例えば、ネット情報の削除代行業者が、サイト運営者にネット記事削除を求めることは、弁護士法72条に違反するため、削除代行業者と利用者との間の契約が無効であるとの裁判例が存在する。 よく退職代行会社のホームページに、「『代理人』ではなく『使者』であるため、弁護士法72条に違反していません」と記載していることがあるが、上記の裁判例を見ると、裁判所は「代理」か「使者」かという点には着目しておらず、「法律事務」という法律上の効果を発生、変更する事項の処理や、保全、明確化する事項の処理に当たるかどうかを端的に判断しているので、「『本人がこう言っているのを伝えているだけ』と全て『使者』の形式さえとれば弁護士法72条に違反しない」という理解は大変危険といえる。 また、退職代行会社のホームページで「非弁行為(弁護士でない者が、報酬を得る目的で、弁護士にのみ認められている行為をすること)となるため会社(勤務先)との交渉はいたしません」との記載を目にすることがあるが、「退職」という行為そのものが「労働契約の終了」という法律上の効果を発生させるものなので、「その他の法律事務」に該当すると筆者は考えている。 中には「顧問弁護士の指導を受けているので安心です」という退職代行会社もあるようだが、その顧問弁護士がこれまで述べてきたような弁護士法や裁判例について知らない可能性もある。 現状、退職代行サービスの弁護士法違反に関する判例・裁判例は存在しないとはいえ、弁護士および弁護士法人以外の退職代行会社については、弁護士法違反で担当者が逮捕されるリスクが存在するということに注意が必要だ』、「現状、退職代行サービスの弁護士法違反に関する判例・裁判例は存在しないとはいえ、弁護士および弁護士法人以外の退職代行会社については、弁護士法違反で担当者が逮捕されるリスクが存在するということに注意が必要だ」、なるほど。
・退職代行サービス利用時の具体的な流れと注意点 最後に、退職代行サービスの詳細と利用時の注意点について指摘したい。 まず、退職代行サービスの具体的な内容についてだが、筆者の法律事務所では次のような流れで行っている。 弊所への依頼はLINEのみで行っている。LINEで問い合わせを受けたら、弁護士との面談日程を調整し、その後、入金確認ができたら、弁護士と面談を行う。 面談では、まず本人確認を徹底している。このサービスは第三者になりすますことで悪用ができてしまうからだ。 その上で、職場に弁護士から連絡を行う日程等の打ち合わせ、退職理由についての確認、退職の意思が固いことの確認を行う。 面談でよくある相談としては、有給休暇の消化、退職日がいつになるか、損害賠償リスクがあるのか、というものが挙げられる。 有給休暇については、就業規則に定めがないとしても、法令で定められている日数を労働者に職場が与えなければならない。 退職日については、案件の内容に応じて弁護士が職場と交渉を行う。 損害賠償リスクについてはもちろん案件にもよるが、弊所ではこれまで一度も職場から労働者に損害賠償請求をされたケースはない。そうならないように面談の際にサービス利用者と綿密な打ち合わせをしているからだと思われる。 その後、弁護士からお客様の勤務先へ退職を行うという連絡を行う。もちろんサービス利用者から会社に退職の意向を伝える必要はない。 その後、引き継ぎや離職票発行、保険証返却、退職金や有給休暇の消化などもろもろの手続きを弁護士と勤務先で確認を行い、退職完了となる。 最近では、無免許の退職代行会社に依頼を行った結果、退職代行会社が職場に連絡を行わず無断欠勤扱いになった、有給休暇の消化ができなかった、退職金が減額になったなどのトラブルについての話をサービス利用者からよく聞くが、このようなトラブルを避けるため、筆者としては弁護士資格というしっかりとした国家資格を有する弁護士のいる法律事務所に相談することを強くおすすめしたい』、「トラブルを避けるため、筆者としては弁護士資格というしっかりとした国家資格を有する弁護士のいる法律事務所に相談することを強くおすすめしたい」、確かに「トラブル」回避は「法律事務所」選択では重要なようだ。
タグ:これまで「ウーバー」は。「配達員」を事実上の従業員としながら、雇用主としての義務を一切無視してきた。 「労働組合法上の」「組合」として「交渉権」を求めた。 「配達員の「労働者性」が認められた要因」とは興味深そうだ。 溝上憲文氏による「ウーバー配達員の「労働者性」認定、労組と運営なぜ揉めた?内幕を徹底解説」 ダイヤモンド・オンライン 労働 (その4)(ウーバー配達員の「労働者性」認定 労組と運営なぜ揉めた?内幕を徹底解説、退職代行サービス急増で「違法リスク」懸念大 事業者選びの注意点とは) 「憲法で保障された「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」の三権の具体的保障としての団体交渉の助成を目的とする「労働組合法」では、労働者の範囲が労基法よりも幅広い」、当然のことだ。 「あくまで労働組合として交渉する権利(会社は交渉に応じる義務)を得たにすぎない」、その通りだ。 「ウーバー側が配達員の労働者性を正式に認めると、労務管理を強化する可能性があることから、配達員の中には「自分のペースで働ける自由さを失いたくない」という声もある。 ユニオンが何より望んでいるのは、ウーバー側との団体交渉のテーブルにつき、報酬の決め方の明確化や事故時の補償の改善などについて話し合うことだ」、「今回の都労委の判断を契機に、政府はギグワーカーのセーフティーネットの構築を急ぐべきだろう」、その通りだ。 井上裕貴氏による「退職代行サービス急増で「違法リスク」懸念大、事業者選びの注意点とは」 「Aさんの会社」は文字通りの「ブラック企業」だ。「弁護士」が入ったことで、違法な「懲戒解雇」などをあきらめ、「Aさんは無事に退職することができた」のは何よりだ。 「本来、退職自体は退職の意思表示を職場に行えば足りるものだが、このような理由から退職するという行為のハードルが上がってきている。 そこで、第三者が職場に退職の意思表示を伝え退職を完結させるという退職代行サービスのニーズが高まっている」、なるほど。 「現状、退職代行サービスの弁護士法違反に関する判例・裁判例は存在しないとはいえ、弁護士および弁護士法人以外の退職代行会社については、弁護士法違反で担当者が逮捕されるリスクが存在するということに注意が必要だ」、なるほど。 「トラブルを避けるため、筆者としては弁護士資格というしっかりとした国家資格を有する弁護士のいる法律事務所に相談することを強くおすすめしたい」、確かに「トラブル」回避は「法律事務所」選択では重要なようだ。