2023年展望(その1)(「来年の予測」を投資家が信じてはいけない3つの理由、2023年の「ドル円相場シナリオ」はどうなるのか 知っておくべき円高、円安の両方向のリスク、2023年は混迷の「新時代」に突入、日本経済の命運握る卯年の“活路”) [経済政治動向]
今年も残すところ僅か1日、今日は、2023年展望(その1)(「来年の予測」を投資家が信じてはいけない3つの理由、2023年の「ドル円相場シナリオ」はどうなるのか 知っておくべき円高、円安の両方向のリスク、2023年は混迷の「新時代」に突入、日本経済の命運握る卯年の“活路”)を取上げよう。
先ずは、11月30日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏による「「来年の予測」を投資家が信じてはいけない3つの理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/313667
・『経済メディアによる「来年の経済・マーケット予測」特集の季節が近づいてきた。それを読んで資産運用に役立てようと思っている読者は、いったん冷静になって考え直す方がいい。予測を信じて投資してはいけない「三つの理由」があるからだ』、冒頭の記事でいきなり「2023年展望」に水をさすような内容で恐縮だが、事前のワクチンのつもりでお読み下さい。
・『年末の風物詩「予測特集号」は楽しい読み物だが… 12月が間近に迫ってきた。12月は、多くのメディアにとって来年の予測がテーマとなる季節だ。特に経済系の雑誌メディアでは、「来年の経済とマーケットはどうなるか?」を通常の号で何度も取り上げる。 さらに、それとは別に「○○○○年総予測/大予測」などと銘打った特集号が発売されることが多い。筆者の聞くところによると、この種の予測特集号は通常の号よりもはるかに発行部数が多く、かつよく売れるのだそうだ。 せっかくの「よく売れるコンテンツ」に水を差すのは申し訳ないのだが、投資家の皆さんにとっては、この種の特集の、特にマーケット予測には大いに注意が必要だ。正直なところ、筆者もその類いの原稿を書くことがあるので、「天に唾する」感を覚えぬでもないのだが、「予測特集」のマーケット予測を信じて投資しない方がいいことに気付いてほしい』、「予測特集号は通常の号よりもはるかに発行部数が多く、かつよく売れる」ようだが、「投資家の皆さんにとっては、この種の特集の、特にマーケット予測には大いに注意が必要だ」、どういうことだろう。
・『なぜだろうか? それは、大半の特集の予測記事の流れが、まず経済全体の景気やインフレ率、これらに対する経済政策、さらには業界ごとの事情などを予測した上で、株価や為替レートなど市場の変数を予想するような論理構成になっているからだ。) 「まず、背景となる経済を分析する。その上で、マーケットに関する予測を行う。これが普通の手順であり王道ではないか」と思われる読者が多いに違いない。確かに、「普通の手順」であることはその通りだ。しかし、「普通」であることと、その手段が「有効」であることとの間には大きな差があるのだ』、「「普通の手順」であることと、その手段が「有効」であることとの間には大きな差がある」、言われてみればその通りだ。
・『経済予測に基づく運用は困難 プロの世界では半ば常識に まずは世界および各国・地域の経済環境を予測して、株式にせよ為替レートにせよ、マーケットの予測につなげる。これが「自然な」流れだと普通の人は思うだろう。 正直に言うと、筆者自身がファンドマネージャーの仕事について数年たつくらいの頃までは(すなわち20代の大半は)、そのように思っていた。むしろ経済予測を強化することこそ運用を改善する王道だと思っていた。 そう思った理由は、運用に入門したての若手社員だった頃の筆者の強みが、経済の知識が豊富で議論に強いことだったからだろう。1985年のプラザ合意前後の円高や世界の金利低下を予測できていたように感じていたし、88年ごろには日本の資産価格が「バブル」の状態だという強い確信を持っていた。そしてこれらの知見は、筆者自身が担当する資金の運用に何がしか生かされていた。 自分をサンプルとして振り返って思うに、人は自分が力を入れている事柄を重要だと思いがちだ。それに2、3の成功事例が加わると、自分の仮説(=経済分析こそが運用に重要だ)をかなり強く信じてしまうものだ。何と素朴な。 しかし、経済を予測してアセットアロケーション(資産配分)を変更することによって運用パフォーマンスを改善しようとする「マーケットタイミング」を利用するアプローチは、大規模な年金資金の運用などプロの運用の世界では、うまくいかないことが業界内の半ば常識になっている。 例えば、公的年金も企業年金も、「基本ポートフォリオ」などと称するアセットアロケーションを、ほぼ変更せずにじっと維持し続ける運用方法を基本としている。マクロ経済の変化に合わせて配分を大きく変更するような運用はほとんど行われていない。 今回はその理由を詳しく説明しよう。 サンプルとしての自分に立ち返ると、筆者は10年、20年、30年と運用の世界を見続けているうちに、「経済予測で運用を改善する」ことは無理なのだと、実感を強化しながら認識するようになった。早い話が、その方針で大規模かつ長期的にうまくいっているプレーヤーが見当たらないのだ。 なお、個人として世界経済を論じることから運用方針を考えるばかばかしさを痛感した最初の経験は、勤めていた運用機関の上司(部長)が運用方針の会議で、ベルリンの壁崩壊についてとうとうと述べるのを聞いていた時だった。「経済予測が資産運用にとって重要だという考えは、単なる自己満足の補足材料なのではないか」と思った。そして、その思いは全く間違っていなかった』、「経済を予測してアセットアロケーション(資産配分)を変更することによって運用パフォーマンスを改善しようとする「マーケットタイミング」を利用するアプローチは、大規模な年金資金の運用などプロの運用の世界では、うまくいかないことが業界内の半ば常識になっている。 例えば、公的年金も企業年金も、「基本ポートフォリオ」などと称するアセットアロケーションを、ほぼ変更せずにじっと維持し続ける運用方法を基本としている」、「「経済予測が資産運用にとって重要だという考えは、単なる自己満足の補足材料なのではないか」と思った。そして、その思いは全く間違っていなかった」、「単なる自己満足の補足材料」とは手厳しい批判だ。
・『経済予測自体が実は「難事」である 経済予測で運用方針を決めることがうまくいかない大きな理由の一つは、経済予測自体が難しいからだ。 運用業界には、「予測は難しい。特に、将来のことに関しては」という、かつてのニューヨーク・ヤンキースの名捕手ヨギ・ベラ(味わい深い名言を吐くタイプの人物だったらしい)によるものとされる言葉が伝えられている。人を喰った印象を与える言葉だが、その通り、経済に関する予測は大変難しい。 世間に多くの職業エコノミストがいて、さらに経済学者がいるにもかかわらず、経済予測はなかなか当たらないし、特に肝心な局面で当たらない。 例えば、昨今のインフレに関して、少なくとも2021年の初頭くらいの段階で米連邦準備制度理事会(FRB)は「物価上昇は、一時的に2%をはっきり超えるかもしれないが一時的なものだ」と考えていた。おそらくは、世界のエネルギー・資源の価格に対する需給の読みを誤ったことに加えて、コロナ対策の財政支出の影響を過小評価したのだろう、などと事後的に評することはできる。ただ、そうだとしても、こと米国の景気や物価を調査する上では最高レベルの人材と情報(近い将来の金融政策まで予測できる「インサイダー」だ)を持ち合わせているはずのFRBでさえ、一番肝心の局面で物価予測が当たらなかった。 専門家の予測力の貧しさに関しては、世界的な金融危機についてエリザベス女王にご進講した超一流の経済学者たちが、「ところで、皆さんたちはこのようなことになると、誰も予測できなかったのですか」と問われて絶句したというエピソードなども有名だ。 より小さな研究所、金融機関・運用会社の調査部門、さらには市井の経済研究家が卑下する必要は少しもないが、彼らも、資産運用に有効なレベルで経済予測を行うことには成功していないように見える。 率直に認めようではないか。経済予測は難しいのだ』、「世間に多くの職業エコノミストがいて、さらに経済学者がいるにもかかわらず、経済予測はなかなか当たらないし、特に肝心な局面で当たらない」、残念ながらその通りだ。
・『経済変数とマーケット変数の「関係」が不安定 前言を翻すようで恐縮だが、経済は「全く予測できないわけではない」。国内総生産(GDP)や鉱工業生産指数、あるいは雇用などについて、われわれは将来の予想数字を持っているし、それが現実から極端に離れているわけでもない。だから、つい当てにしてしまうという意味で、「ある程度当たる予測」にはかえって厄介な面がある。 しかし資産運用との関係で言うと、経済の変数と、マーケットの変数(例えば株式の期待リターン)との間の「関係」が不安定であることが、経済予測からマーケット予測を構成し、その上で運用戦略を考えようとするアプローチへの障害になっている。 なぜ両者の関係が不安定なのかに関しては、複数の理由が考えられる。 例えば、GDPに代表される景気に関する来年の数字を「当てる」ことができても、来年の株式のリターンの予測に役立てることができるかは大いに疑問だ。 一つには、株式のリターンに影響する要素がGDPや景気以外にもあるからだろうか。だが、われわれには多変量を解析する手段があるはずだ。 しかし、複数の変数と株式のリターンとの関係が分析できても、例えば、現在の株価に将来の予想情報がどの程度「織り込まれているか」という別の問題がある。これについての「程度」が安定しないと、経済変数の将来予測からマーケット関係の変数を予想することは難しい。 また、仮に経済変数とマーケット変数との間の関係がある程度分かったとすると、この情報に対して市場参加者の行動が変化してしまうので、「将来のリターン」の予測は再び困難になってしまう。 このように、マーケットの仕組みを考えると、経済予測から始めて市場のリターンを予想しようとするアプローチは、複数の関節が緩くて制御の効かないマジックハンドで離れた場所にある物を取ろうとするくらいの難事であることが想像できる。実際にエコノミストは、ゲームセンターのUFOキャッチャーほどにも役に立たない。 エコノミストの側は悔しいから次のように言う。 「他の条件を一定とすると、○○が××なら、株価は△△になってもおかしくない」等々。しかし、現実の世の中では「他の条件」はじっとしていない。 かくして、誰も傷つかないし、しかし誰も役に立たない、独特の均衡状態が生まれる』、「仮に経済変数とマーケット変数との間の関係がある程度分かったとすると、この情報に対して市場参加者の行動が変化してしまうので、「将来のリターン」の予測は再び困難になってしまう」、その通りだ。
・『「他人の予測を把握する」こともほぼ不可能なくらい難しい もう一点、経済予測から市場予測を構成するアプローチの有用性を損なうファクターを指摘しておこう。 それは、「他のプレイヤー(市場参加者)の予想」を把握することが難しいからだ。 仮に、それなりに正しい経済予測ができて、経済変数とマーケット変数との間の相関関係についてそこそこに有効と思える推定ができたとしよう。 次の問題は、市場に参加する他のプレイヤーがどのような予測を持っているかだ。 運用者にとって理想的なのは、他のプレイヤーが当面「誤った予測」を持っていて、しばらくした後に「間違いに気付いて、後追いしてくれる」状況だ。しかし、普通、世の中はなかなかそこまで幸運にはできていない。 そこで、自分の予想の価値を把握するために、他の市場参加者の予想をぜひ知りたいと思うのだが、これがほとんど不可能なくらい難しい。 いわゆるコンセンサス調査のようなデータは世間にある。市場参加者はこれを見て自分の予想の世間的な位置を知ろうとするのだが、それは、他の参加者もやっていることだ。そして、それで他の参加者の本音の予測が分かるわけではない。 かくして、多くの困難を乗り越えて、正しい経済予想と経済変数とマーケット変数の関係の推定とにたまたまたどり着けたとしても、自分の予想の相対的な位置や価値を正しく知ることが難しい。そして、そもそも元の予想が合っているのかどうかに自信がないのだ。脳みそが冷静でさえあれば、市場参加者は「経済予測から運用戦略を作るのは無理だ」と気が付くことになる』、「脳みそが冷静でさえあれば、市場参加者は「経済予測から運用戦略を作るのは無理だ」と気が付くことになる」、なるほど。
・『売買手数料は「重い!」 当たらない予測ならなおさら 経済予測から運用戦略を考えることに関しては、以上のような「困難」があるわけなのだが、これらに加えて現実の資産運用では、アセットアロケーションを調整するために手数料や市場に与えるインパクトなどから生じる「売買コスト」の存在が重大だ。 売買コストは、それ自体がたとえ小さいとしても「確実なマイナスの影響要素」だ。努力の結果生み出した予測だとしても「平均的には無価値な判断」に対してこれを割り当てることは合理的ではない。 ここで述べたような諸々の事情は、兆円単位の資産を運用する機関投資家にとっても、数百万円レベルのお金を運用する個人投資家にとっても、基本的には同じだ。 以上のような訳で、読者は、これから数多出るだろう「2023年の大予測特集」の記事を読んで、これを実際の運用に生かそうとしているなら、いったん冷静になって考え直す方がいい。 筆者が思うに、読者は、こうした予測特集の内容を、投資の参考にするために読むのではなく、分析者のアイデアを楽しむエンターテインメントとして読むべきだ。大切なお金の運用とは切り離して考えた方がいい。 付け加えると、そのように割り切った「大人の読者」が読んでくれるなら、記事を書く側ももっと腕の振るいようがあるのではないだろうか。 「予想(ヨソウ)」は反対方向から「ウソヨ」と読むくらいがちょうどいいのだ』、「現実の資産運用では、アセットアロケーションを調整するために手数料や市場に与えるインパクトなどから生じる「売買コスト」の存在が重大だ。 売買コストは、それ自体がたとえ小さいとしても「確実なマイナスの影響要素」だ。努力の結果生み出した予測だとしても「平均的には無価値な判断」に対してこれを割り当てることは合理的ではない」、「読者は、こうした予測特集の内容を、投資の参考にするために読むのではなく、分析者のアイデアを楽しむエンターテインメントとして読むべきだ」、「「予想(ヨソウ)」は反対方向から「ウソヨ」と読むくらいがちょうどいいのだ」、最後の部分は山崎氏のユーモアのセンスはまだまだ健在のようだ。
次に、12月18日付け東洋経済オンラインが掲載したみずほ銀行 チーフマーケット・エコノミストの唐鎌 大輔氏による「2023年の「ドル円相場シナリオ」はどうなるのか 知っておくべき円高、円安の両方向のリスク」を:2022年も残すところあと半月になった。2023年のドル円相場はどうなるのか。筆者の考えるメインシナリオやリスクシナリオを示してみよう。 年明け以降のドル円相場は、1~3月期まではFRB(アメリカ連邦準備制度理事会)の利上げ幅や利上げ停止がテーマとして注目される中、アメリカ金利低下とドル安に応じた円高が促されやすいと考えている。この辺りは多くの市場参加者が共有する問題意識ではないかと思われる。 この際、下値目途は2022年の値幅の半値戻しである1ドル=130円前後をイメージしている。なぜ半値しか戻らないのかと言えば、筆者は今般の円安を「ドル全面高」と「円全面安」が併発した結果だと考えているからだ。 ドル全面高はFRBのハト派転換(pivot)とともに修正される余地があるにしても、史上最大の貿易赤字などを背景に歪んだ円全面安の部分は解消されないだろう。直感的にも巨大な貿易赤字を擁する世界で唯一のマイナス金利採用国の通貨が買われ続けるというイメージは湧きにくい。 では、2023年4~6月期以降はどうなるか。金融市場ではそのまま円高傾向が続き、2022年初頭の水準(1ドル=112~113円付近)に戻るという意見が多いように見受けられる。だが、筆者はそう思っていない。 これは上述した日本の金利・需給環境も加味した結論だが、それだけではない。金融市場のコンセンサスどおりの展開となれば、おそらく2023年4~6月期以降はFRBの利上げ停止を確認することになる。しかし、「次の一手」としての利下げが現実的に市場予想の範囲に入ってくるのは2023年中の話ではないだろう。 とすると、金融市場には当面、FRBの大きな政策変更を予想しないで済む穏当な時間帯が生まれる可能性がある。象徴的にはボラティリティ低下とともに株高という地合いに至る可能性がある。利下げをするわけではないので日本から見た内外金利差も相応に高止まりする公算が大きい。これは対ドルだけではなく、対クロス円通貨に対しても同様のことがいえる』、12月21日付けで日銀は異次元緩和を微修正した。長期金利の上限を0.5%に、円も131円台に上昇。
・『2023年終盤に1ドル=140円台に戻る? 「十分な金利差」と「低いボラティリティ」はキャリー取引が行われるための2大条件である。2022年中は日米金利差が円売りの材料として注目されたが、本当の意味で円安を駆動するとしたら2023年のほうが好ましい環境に思える。「円だけマイナス金利」という状況下、貿易赤字大国の通貨が上昇一辺倒という軌道を辿るのは非常に難しく説明に窮する。2023年10~12月期には再び1ドル=140円台を主戦場とするような地合いに至るのではないか。) 以上はメインシナリオだが、そうならないリスクも当然ある。リスクは上下双方向に拡がっており、それぞれ複数考えられるが、主だったものを1つずつ挙げておきたい』、「リスクは上下双方向に拡がっており、それぞれ複数考えられるが、主だったものを1つずつ挙げておきたい」、なるほど。
・『アメリカ利上げは本当に1~3月期に止まるのか まず、筆者の想定以上に円安がいきすぎるリスクだが、これはFRBの利上げ継続である。アメリカのインフレ率がピークアウトしていることはもはや自明であるとしても、多くの市場参加者が抱く「1~3月期中に利上げが停止する」という前提がそこまで確実なものなのか。 足元では、FRBが2%のインフレ目標で参照する個人消費支出(PCE)デフレーターはダラス地区連銀が試算するトリム平均指数(変動が非常に大きな異常値を除外して求める平均)で見ても前年比+4.7%程度、食料・エネルギーを除くコアベースでは+5%超、総合ベースでは+6%超である。PCEデフレーターが安定的に+2%程度になるという状況にまで、エネルギー情勢が年初3カ月間で収束するだろうか。 現状、利上げの終点と目される政策金利水準(以下ターミナルレート)のコンセンサスは4.75~5.25%というレンジにあるが、例えば「6月以降は四半期に1度、+25bp」というペースで利上げが継続する可能性もある。そうなった場合、ターミナルレートは6%に接近するだろう。 パウエルFRB議長は1年前(2021年11月末)、「インフレは一時的」という認識を急遽撤回し、市場に大きなショックを与えた経緯がある。当時の翻意に比べれば、利上げが1~3月期で停止せずに緩やかなペースで持続するという展開はさほど不自然ではない。メインシナリオではないが、円安方向のリスクシナリオとしては検討する価値がある。) 片や、筆者の想定とは逆方向に円高がいきすぎるリスクもある。これも複数考えられるが、やはり新体制への移行に伴う日本銀行のタカ派転換がその筆頭であろう。可能性としては上記の円安リスクよりは低いと思われるが、念頭に入れたいシナリオではある。 市場が抱く新体制へのイメージは「現状より緩和姿勢が強まることはない」程度であり、新総裁の候補者が複数名挙がっているものの、どの候補者になればどういった政策修正に至るのかというコンセンサスはない』、「市場が抱く新体制へのイメージは「現状より緩和姿勢が強まることはない」程度」、その通りだ。
・『岸田政権はアベノミクスと距離を取る? 12月13日に木原誠二官房副長官がブルームバーグとのインタビューで大規模金融緩和を正当化する政府・日銀による共同声明の修正に関し「新たな合意を結ぶ可能性はあるものの、現在の合意内容と異なるものになるかどうかはわからない」と語っている。言質は取らせていないが、ここは「修正は考えていない」と回答すべきだったように思えた。やはりアベノミクスとは距離を取る政策運営が志向されるのではないか。 具体策として想定されるものに関しては、引き締めの度合いが弱い順にフォワードガイダンスの修正、イールドカーブコントロール(YCC)における変幅拡大、YCCにおける操作年限の短期化、YCC廃止、利上げ(マイナス金利解除)などが考えられる。 このうち「新体制移行とともに利上げ」というような展開はほとんど想定されていない話と言える。2013年4月、黒田総裁が就任後初の会合で量的・質的金融緩和を決定し強烈なリフレ思想を煽った記憶を辿れば、その逆の展開が2023年4月に起きることはないのか。注目したい点である。 もちろん、保守的な岸田文雄政権の意向も相応に影響するであろうことを踏まえれば、日銀が家計部門にも大きな影響をもたらす利上げという決断に踏み切れる可能性は低い。また、リフレ思想を持たない(≒タカ派色の強い)市場参加者として注目される新任の高田創審議委員も日経新聞(12月10日)に掲載されたインタビューで、「(YCC解除に関して)残念ながらそういう局面になっていない」と述べている。 もちろん、現行体制と新体制では情報発信の意味も異なるだろうが、少なくとも現状の政策委員会の中では利上げを主張するような空気はまったく感じられないのが実情だろう。しかし、積極的な円買い材料に乏しいと言われる状況下、「日銀の利上げ」という為替市場参加者のほとんどが想定していない展開はリスクシナリオから外すべきではない、非常に重要な論点であるように思われる』、「「日銀の利上げ」という為替市場参加者のほとんどが想定していない展開はリスクシナリオから外すべきではない、非常に重要な論点であるように思われる」、その通りだ。
第三に、12月19日付けダイヤモンド・オンライン「2023年は混迷の「新時代」に突入、日本経済の命運握る卯年の“活路”」を紹介しよう。
https://dw.diamond.ne.jp/articles/-/29881
・『『週刊ダイヤモンド』12月24日・12月31日新年合併特大号の第一特集は「2023 総予測」だ。過去1年を総括し、翌年のゆくえを見通すという、年末年始の恒例企画だが、2022年は国内外ともに近年類を見ない大波乱の1年となった。来る23年はどうなるのか?経済はもちろん政治、社会、文化まで特集を通じて「総予測」する』、興味深そうだ。
・『混迷の時代に突入する2023年 日本と世界の“活路”を探る 来る2023年。景気と株価はどうなる?円安とインフレは続くのか?金利上昇や不動産暴落は起きるのか?そして、歴史に刻まれる出来事が相次いだ22年を経て、日本と世界はどうなってしまうのか――。 年末年始におけるメディアの定番企画が翌年の「予測」だ。経済メディアにおいては、新たな1年の経済や企業の予測に各媒体が総力を挙げるのが恒例となっている。 『週刊ダイヤモンド』では年末年始の超特大特集「総予測」がそれだ。今回も企業トップやアナリスト、学者ほか多数の専門家を直撃し、23年の見通しや注目キーワードなどを徹底分析した。 今特集を俯瞰して浮かび上がるのは、23年の日本と世界が、これまでの“前提”が崩れた混迷の「新時代」に突入するということだ。ことの発端は22年に起きた、100年先の日本史、世界史の教科書にも記されるだろう国内外における二つの歴史的事件にある』、それは、「ロシアによるウクライナ侵攻」、「安倍晋三元首相銃撃事件」、である。
・『岸田政権はダッチロール状態 統一地方選と日銀総裁人事が焦点 まず国外では、2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻だ。片や国内の方は、7月8日の安倍晋三元首相銃撃事件がそれである。 前者は、21年から続いていた世界的なインフレのアクセルを踏み込み、目下のエネルギー価格や食料価格の高騰を招いている。 資源高騰は無論のこと、とりわけ米国におけるインフレは日本経済に甚大な影響を及ぼす。目下の日米金利差に起因する超円安の命運は、米国のインフレ対策──、利上げ動向に懸かっているからだ。 問題は経済面にとどまらない。戦況の泥沼化によって、周知のようにロシアによる核兵器使用という第二次大戦以降、最悪の事態さえ懸念されている。 ところが、この世界情勢の混迷に対し、日本の岸田政権はまさにダッチロール状態だ。 安倍氏暗殺でクローズアップされたのが、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自由民主党の“蜜月”関係だ。いわゆる「旧統一教会被害者救済法」が自民党と公明党など賛成多数で22年12月に成立したが、遅きに失した感は否めない。23年4月の統一地方選挙を岸田首相が乗り越えられるかどうかが、今後の政局を占う一つの焦点となる。 安倍氏の急逝は、政治のみならず金融政策のかじ取り役、日本銀行のトップ人事にも影響を与えそうだ。22年12月現在、23年4月に任期満了を迎える黒田東彦総裁の後任者選びが最終局面にある。「リフレ派」の黒田氏が、アベノミクスの目玉として官邸主導で送り込まれてから10年。安倍氏不在の今、現在の政策を踏襲する新総裁が誕生するのかに注目が集まっている。 こうした国内外の経営環境の激変を踏まえ、各産業、企業業績は23年どうなるのか。本特集では、ダイヤモンド編集部記者による日本企業「八大テーマ」座談会や、数多の日本を代表する企業トップや専門家への直撃インタビューなど徹底取材で明らかにする。 混迷の「新時代」が到来する中、卯年に倣って“跳躍”できるのか──。特集を通じて日本と世界の“活路”を探る』、「23年4月に任期満了を迎える黒田東彦総裁の後任者選びが最終局面にある。「リフレ派」の黒田氏が、アベノミクスの目玉として官邸主導で送り込まれてから10年。安倍氏不在の今、現在の政策を踏襲する新総裁が誕生するのかに注目」、「特集を通じて日本と世界の“活路”を探る」、なるほど。
・『「生前贈与」がダメになる前に得できる! 超豪華付録「駆け込み贈与・相続術カレンダー」つき(『週刊ダイヤモンド』12月24日・12月31日新年合併特大号の第一特集は「2023 総予測」です。 ページ数は、なんと物理的限界ギリギリの264ページ!295人の人物の名前が登場し、ダイヤモンド編集部の総力と多数の超一流の専門家の英知を結集させ、経済の先行きを徹底的に予測。株価、為替、企業業績のみならず、国際関係、政治、社会、文化、スポーツまで抜かりなく完全網羅しました。 さらに今回は、万人が無関係ではいられない“タイムリー”な豪華付録つきです。 相続税の節税術の王道だった生前贈与がもうすぐ事実上の禁じ手になることを踏まえて、人気税理士たちの監修の下に作成した「駆け込み贈与・相続術カレンダー」です。12カ月で後悔しない贈与と相続のやり方が学べること請け合いです。 家族が集う年末年始という絶好の機会に、贈与・相続を話し合いにお役立てください!』、「家族が集う年末年始という絶好の機会に、贈与・相続を話し合いにお役立てください!」、実にタイムリーな企画だ。
先ずは、11月30日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏による「「来年の予測」を投資家が信じてはいけない3つの理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/313667
・『経済メディアによる「来年の経済・マーケット予測」特集の季節が近づいてきた。それを読んで資産運用に役立てようと思っている読者は、いったん冷静になって考え直す方がいい。予測を信じて投資してはいけない「三つの理由」があるからだ』、冒頭の記事でいきなり「2023年展望」に水をさすような内容で恐縮だが、事前のワクチンのつもりでお読み下さい。
・『年末の風物詩「予測特集号」は楽しい読み物だが… 12月が間近に迫ってきた。12月は、多くのメディアにとって来年の予測がテーマとなる季節だ。特に経済系の雑誌メディアでは、「来年の経済とマーケットはどうなるか?」を通常の号で何度も取り上げる。 さらに、それとは別に「○○○○年総予測/大予測」などと銘打った特集号が発売されることが多い。筆者の聞くところによると、この種の予測特集号は通常の号よりもはるかに発行部数が多く、かつよく売れるのだそうだ。 せっかくの「よく売れるコンテンツ」に水を差すのは申し訳ないのだが、投資家の皆さんにとっては、この種の特集の、特にマーケット予測には大いに注意が必要だ。正直なところ、筆者もその類いの原稿を書くことがあるので、「天に唾する」感を覚えぬでもないのだが、「予測特集」のマーケット予測を信じて投資しない方がいいことに気付いてほしい』、「予測特集号は通常の号よりもはるかに発行部数が多く、かつよく売れる」ようだが、「投資家の皆さんにとっては、この種の特集の、特にマーケット予測には大いに注意が必要だ」、どういうことだろう。
・『なぜだろうか? それは、大半の特集の予測記事の流れが、まず経済全体の景気やインフレ率、これらに対する経済政策、さらには業界ごとの事情などを予測した上で、株価や為替レートなど市場の変数を予想するような論理構成になっているからだ。) 「まず、背景となる経済を分析する。その上で、マーケットに関する予測を行う。これが普通の手順であり王道ではないか」と思われる読者が多いに違いない。確かに、「普通の手順」であることはその通りだ。しかし、「普通」であることと、その手段が「有効」であることとの間には大きな差があるのだ』、「「普通の手順」であることと、その手段が「有効」であることとの間には大きな差がある」、言われてみればその通りだ。
・『経済予測に基づく運用は困難 プロの世界では半ば常識に まずは世界および各国・地域の経済環境を予測して、株式にせよ為替レートにせよ、マーケットの予測につなげる。これが「自然な」流れだと普通の人は思うだろう。 正直に言うと、筆者自身がファンドマネージャーの仕事について数年たつくらいの頃までは(すなわち20代の大半は)、そのように思っていた。むしろ経済予測を強化することこそ運用を改善する王道だと思っていた。 そう思った理由は、運用に入門したての若手社員だった頃の筆者の強みが、経済の知識が豊富で議論に強いことだったからだろう。1985年のプラザ合意前後の円高や世界の金利低下を予測できていたように感じていたし、88年ごろには日本の資産価格が「バブル」の状態だという強い確信を持っていた。そしてこれらの知見は、筆者自身が担当する資金の運用に何がしか生かされていた。 自分をサンプルとして振り返って思うに、人は自分が力を入れている事柄を重要だと思いがちだ。それに2、3の成功事例が加わると、自分の仮説(=経済分析こそが運用に重要だ)をかなり強く信じてしまうものだ。何と素朴な。 しかし、経済を予測してアセットアロケーション(資産配分)を変更することによって運用パフォーマンスを改善しようとする「マーケットタイミング」を利用するアプローチは、大規模な年金資金の運用などプロの運用の世界では、うまくいかないことが業界内の半ば常識になっている。 例えば、公的年金も企業年金も、「基本ポートフォリオ」などと称するアセットアロケーションを、ほぼ変更せずにじっと維持し続ける運用方法を基本としている。マクロ経済の変化に合わせて配分を大きく変更するような運用はほとんど行われていない。 今回はその理由を詳しく説明しよう。 サンプルとしての自分に立ち返ると、筆者は10年、20年、30年と運用の世界を見続けているうちに、「経済予測で運用を改善する」ことは無理なのだと、実感を強化しながら認識するようになった。早い話が、その方針で大規模かつ長期的にうまくいっているプレーヤーが見当たらないのだ。 なお、個人として世界経済を論じることから運用方針を考えるばかばかしさを痛感した最初の経験は、勤めていた運用機関の上司(部長)が運用方針の会議で、ベルリンの壁崩壊についてとうとうと述べるのを聞いていた時だった。「経済予測が資産運用にとって重要だという考えは、単なる自己満足の補足材料なのではないか」と思った。そして、その思いは全く間違っていなかった』、「経済を予測してアセットアロケーション(資産配分)を変更することによって運用パフォーマンスを改善しようとする「マーケットタイミング」を利用するアプローチは、大規模な年金資金の運用などプロの運用の世界では、うまくいかないことが業界内の半ば常識になっている。 例えば、公的年金も企業年金も、「基本ポートフォリオ」などと称するアセットアロケーションを、ほぼ変更せずにじっと維持し続ける運用方法を基本としている」、「「経済予測が資産運用にとって重要だという考えは、単なる自己満足の補足材料なのではないか」と思った。そして、その思いは全く間違っていなかった」、「単なる自己満足の補足材料」とは手厳しい批判だ。
・『経済予測自体が実は「難事」である 経済予測で運用方針を決めることがうまくいかない大きな理由の一つは、経済予測自体が難しいからだ。 運用業界には、「予測は難しい。特に、将来のことに関しては」という、かつてのニューヨーク・ヤンキースの名捕手ヨギ・ベラ(味わい深い名言を吐くタイプの人物だったらしい)によるものとされる言葉が伝えられている。人を喰った印象を与える言葉だが、その通り、経済に関する予測は大変難しい。 世間に多くの職業エコノミストがいて、さらに経済学者がいるにもかかわらず、経済予測はなかなか当たらないし、特に肝心な局面で当たらない。 例えば、昨今のインフレに関して、少なくとも2021年の初頭くらいの段階で米連邦準備制度理事会(FRB)は「物価上昇は、一時的に2%をはっきり超えるかもしれないが一時的なものだ」と考えていた。おそらくは、世界のエネルギー・資源の価格に対する需給の読みを誤ったことに加えて、コロナ対策の財政支出の影響を過小評価したのだろう、などと事後的に評することはできる。ただ、そうだとしても、こと米国の景気や物価を調査する上では最高レベルの人材と情報(近い将来の金融政策まで予測できる「インサイダー」だ)を持ち合わせているはずのFRBでさえ、一番肝心の局面で物価予測が当たらなかった。 専門家の予測力の貧しさに関しては、世界的な金融危機についてエリザベス女王にご進講した超一流の経済学者たちが、「ところで、皆さんたちはこのようなことになると、誰も予測できなかったのですか」と問われて絶句したというエピソードなども有名だ。 より小さな研究所、金融機関・運用会社の調査部門、さらには市井の経済研究家が卑下する必要は少しもないが、彼らも、資産運用に有効なレベルで経済予測を行うことには成功していないように見える。 率直に認めようではないか。経済予測は難しいのだ』、「世間に多くの職業エコノミストがいて、さらに経済学者がいるにもかかわらず、経済予測はなかなか当たらないし、特に肝心な局面で当たらない」、残念ながらその通りだ。
・『経済変数とマーケット変数の「関係」が不安定 前言を翻すようで恐縮だが、経済は「全く予測できないわけではない」。国内総生産(GDP)や鉱工業生産指数、あるいは雇用などについて、われわれは将来の予想数字を持っているし、それが現実から極端に離れているわけでもない。だから、つい当てにしてしまうという意味で、「ある程度当たる予測」にはかえって厄介な面がある。 しかし資産運用との関係で言うと、経済の変数と、マーケットの変数(例えば株式の期待リターン)との間の「関係」が不安定であることが、経済予測からマーケット予測を構成し、その上で運用戦略を考えようとするアプローチへの障害になっている。 なぜ両者の関係が不安定なのかに関しては、複数の理由が考えられる。 例えば、GDPに代表される景気に関する来年の数字を「当てる」ことができても、来年の株式のリターンの予測に役立てることができるかは大いに疑問だ。 一つには、株式のリターンに影響する要素がGDPや景気以外にもあるからだろうか。だが、われわれには多変量を解析する手段があるはずだ。 しかし、複数の変数と株式のリターンとの関係が分析できても、例えば、現在の株価に将来の予想情報がどの程度「織り込まれているか」という別の問題がある。これについての「程度」が安定しないと、経済変数の将来予測からマーケット関係の変数を予想することは難しい。 また、仮に経済変数とマーケット変数との間の関係がある程度分かったとすると、この情報に対して市場参加者の行動が変化してしまうので、「将来のリターン」の予測は再び困難になってしまう。 このように、マーケットの仕組みを考えると、経済予測から始めて市場のリターンを予想しようとするアプローチは、複数の関節が緩くて制御の効かないマジックハンドで離れた場所にある物を取ろうとするくらいの難事であることが想像できる。実際にエコノミストは、ゲームセンターのUFOキャッチャーほどにも役に立たない。 エコノミストの側は悔しいから次のように言う。 「他の条件を一定とすると、○○が××なら、株価は△△になってもおかしくない」等々。しかし、現実の世の中では「他の条件」はじっとしていない。 かくして、誰も傷つかないし、しかし誰も役に立たない、独特の均衡状態が生まれる』、「仮に経済変数とマーケット変数との間の関係がある程度分かったとすると、この情報に対して市場参加者の行動が変化してしまうので、「将来のリターン」の予測は再び困難になってしまう」、その通りだ。
・『「他人の予測を把握する」こともほぼ不可能なくらい難しい もう一点、経済予測から市場予測を構成するアプローチの有用性を損なうファクターを指摘しておこう。 それは、「他のプレイヤー(市場参加者)の予想」を把握することが難しいからだ。 仮に、それなりに正しい経済予測ができて、経済変数とマーケット変数との間の相関関係についてそこそこに有効と思える推定ができたとしよう。 次の問題は、市場に参加する他のプレイヤーがどのような予測を持っているかだ。 運用者にとって理想的なのは、他のプレイヤーが当面「誤った予測」を持っていて、しばらくした後に「間違いに気付いて、後追いしてくれる」状況だ。しかし、普通、世の中はなかなかそこまで幸運にはできていない。 そこで、自分の予想の価値を把握するために、他の市場参加者の予想をぜひ知りたいと思うのだが、これがほとんど不可能なくらい難しい。 いわゆるコンセンサス調査のようなデータは世間にある。市場参加者はこれを見て自分の予想の世間的な位置を知ろうとするのだが、それは、他の参加者もやっていることだ。そして、それで他の参加者の本音の予測が分かるわけではない。 かくして、多くの困難を乗り越えて、正しい経済予想と経済変数とマーケット変数の関係の推定とにたまたまたどり着けたとしても、自分の予想の相対的な位置や価値を正しく知ることが難しい。そして、そもそも元の予想が合っているのかどうかに自信がないのだ。脳みそが冷静でさえあれば、市場参加者は「経済予測から運用戦略を作るのは無理だ」と気が付くことになる』、「脳みそが冷静でさえあれば、市場参加者は「経済予測から運用戦略を作るのは無理だ」と気が付くことになる」、なるほど。
・『売買手数料は「重い!」 当たらない予測ならなおさら 経済予測から運用戦略を考えることに関しては、以上のような「困難」があるわけなのだが、これらに加えて現実の資産運用では、アセットアロケーションを調整するために手数料や市場に与えるインパクトなどから生じる「売買コスト」の存在が重大だ。 売買コストは、それ自体がたとえ小さいとしても「確実なマイナスの影響要素」だ。努力の結果生み出した予測だとしても「平均的には無価値な判断」に対してこれを割り当てることは合理的ではない。 ここで述べたような諸々の事情は、兆円単位の資産を運用する機関投資家にとっても、数百万円レベルのお金を運用する個人投資家にとっても、基本的には同じだ。 以上のような訳で、読者は、これから数多出るだろう「2023年の大予測特集」の記事を読んで、これを実際の運用に生かそうとしているなら、いったん冷静になって考え直す方がいい。 筆者が思うに、読者は、こうした予測特集の内容を、投資の参考にするために読むのではなく、分析者のアイデアを楽しむエンターテインメントとして読むべきだ。大切なお金の運用とは切り離して考えた方がいい。 付け加えると、そのように割り切った「大人の読者」が読んでくれるなら、記事を書く側ももっと腕の振るいようがあるのではないだろうか。 「予想(ヨソウ)」は反対方向から「ウソヨ」と読むくらいがちょうどいいのだ』、「現実の資産運用では、アセットアロケーションを調整するために手数料や市場に与えるインパクトなどから生じる「売買コスト」の存在が重大だ。 売買コストは、それ自体がたとえ小さいとしても「確実なマイナスの影響要素」だ。努力の結果生み出した予測だとしても「平均的には無価値な判断」に対してこれを割り当てることは合理的ではない」、「読者は、こうした予測特集の内容を、投資の参考にするために読むのではなく、分析者のアイデアを楽しむエンターテインメントとして読むべきだ」、「「予想(ヨソウ)」は反対方向から「ウソヨ」と読むくらいがちょうどいいのだ」、最後の部分は山崎氏のユーモアのセンスはまだまだ健在のようだ。
次に、12月18日付け東洋経済オンラインが掲載したみずほ銀行 チーフマーケット・エコノミストの唐鎌 大輔氏による「2023年の「ドル円相場シナリオ」はどうなるのか 知っておくべき円高、円安の両方向のリスク」を:2022年も残すところあと半月になった。2023年のドル円相場はどうなるのか。筆者の考えるメインシナリオやリスクシナリオを示してみよう。 年明け以降のドル円相場は、1~3月期まではFRB(アメリカ連邦準備制度理事会)の利上げ幅や利上げ停止がテーマとして注目される中、アメリカ金利低下とドル安に応じた円高が促されやすいと考えている。この辺りは多くの市場参加者が共有する問題意識ではないかと思われる。 この際、下値目途は2022年の値幅の半値戻しである1ドル=130円前後をイメージしている。なぜ半値しか戻らないのかと言えば、筆者は今般の円安を「ドル全面高」と「円全面安」が併発した結果だと考えているからだ。 ドル全面高はFRBのハト派転換(pivot)とともに修正される余地があるにしても、史上最大の貿易赤字などを背景に歪んだ円全面安の部分は解消されないだろう。直感的にも巨大な貿易赤字を擁する世界で唯一のマイナス金利採用国の通貨が買われ続けるというイメージは湧きにくい。 では、2023年4~6月期以降はどうなるか。金融市場ではそのまま円高傾向が続き、2022年初頭の水準(1ドル=112~113円付近)に戻るという意見が多いように見受けられる。だが、筆者はそう思っていない。 これは上述した日本の金利・需給環境も加味した結論だが、それだけではない。金融市場のコンセンサスどおりの展開となれば、おそらく2023年4~6月期以降はFRBの利上げ停止を確認することになる。しかし、「次の一手」としての利下げが現実的に市場予想の範囲に入ってくるのは2023年中の話ではないだろう。 とすると、金融市場には当面、FRBの大きな政策変更を予想しないで済む穏当な時間帯が生まれる可能性がある。象徴的にはボラティリティ低下とともに株高という地合いに至る可能性がある。利下げをするわけではないので日本から見た内外金利差も相応に高止まりする公算が大きい。これは対ドルだけではなく、対クロス円通貨に対しても同様のことがいえる』、12月21日付けで日銀は異次元緩和を微修正した。長期金利の上限を0.5%に、円も131円台に上昇。
・『2023年終盤に1ドル=140円台に戻る? 「十分な金利差」と「低いボラティリティ」はキャリー取引が行われるための2大条件である。2022年中は日米金利差が円売りの材料として注目されたが、本当の意味で円安を駆動するとしたら2023年のほうが好ましい環境に思える。「円だけマイナス金利」という状況下、貿易赤字大国の通貨が上昇一辺倒という軌道を辿るのは非常に難しく説明に窮する。2023年10~12月期には再び1ドル=140円台を主戦場とするような地合いに至るのではないか。) 以上はメインシナリオだが、そうならないリスクも当然ある。リスクは上下双方向に拡がっており、それぞれ複数考えられるが、主だったものを1つずつ挙げておきたい』、「リスクは上下双方向に拡がっており、それぞれ複数考えられるが、主だったものを1つずつ挙げておきたい」、なるほど。
・『アメリカ利上げは本当に1~3月期に止まるのか まず、筆者の想定以上に円安がいきすぎるリスクだが、これはFRBの利上げ継続である。アメリカのインフレ率がピークアウトしていることはもはや自明であるとしても、多くの市場参加者が抱く「1~3月期中に利上げが停止する」という前提がそこまで確実なものなのか。 足元では、FRBが2%のインフレ目標で参照する個人消費支出(PCE)デフレーターはダラス地区連銀が試算するトリム平均指数(変動が非常に大きな異常値を除外して求める平均)で見ても前年比+4.7%程度、食料・エネルギーを除くコアベースでは+5%超、総合ベースでは+6%超である。PCEデフレーターが安定的に+2%程度になるという状況にまで、エネルギー情勢が年初3カ月間で収束するだろうか。 現状、利上げの終点と目される政策金利水準(以下ターミナルレート)のコンセンサスは4.75~5.25%というレンジにあるが、例えば「6月以降は四半期に1度、+25bp」というペースで利上げが継続する可能性もある。そうなった場合、ターミナルレートは6%に接近するだろう。 パウエルFRB議長は1年前(2021年11月末)、「インフレは一時的」という認識を急遽撤回し、市場に大きなショックを与えた経緯がある。当時の翻意に比べれば、利上げが1~3月期で停止せずに緩やかなペースで持続するという展開はさほど不自然ではない。メインシナリオではないが、円安方向のリスクシナリオとしては検討する価値がある。) 片や、筆者の想定とは逆方向に円高がいきすぎるリスクもある。これも複数考えられるが、やはり新体制への移行に伴う日本銀行のタカ派転換がその筆頭であろう。可能性としては上記の円安リスクよりは低いと思われるが、念頭に入れたいシナリオではある。 市場が抱く新体制へのイメージは「現状より緩和姿勢が強まることはない」程度であり、新総裁の候補者が複数名挙がっているものの、どの候補者になればどういった政策修正に至るのかというコンセンサスはない』、「市場が抱く新体制へのイメージは「現状より緩和姿勢が強まることはない」程度」、その通りだ。
・『岸田政権はアベノミクスと距離を取る? 12月13日に木原誠二官房副長官がブルームバーグとのインタビューで大規模金融緩和を正当化する政府・日銀による共同声明の修正に関し「新たな合意を結ぶ可能性はあるものの、現在の合意内容と異なるものになるかどうかはわからない」と語っている。言質は取らせていないが、ここは「修正は考えていない」と回答すべきだったように思えた。やはりアベノミクスとは距離を取る政策運営が志向されるのではないか。 具体策として想定されるものに関しては、引き締めの度合いが弱い順にフォワードガイダンスの修正、イールドカーブコントロール(YCC)における変幅拡大、YCCにおける操作年限の短期化、YCC廃止、利上げ(マイナス金利解除)などが考えられる。 このうち「新体制移行とともに利上げ」というような展開はほとんど想定されていない話と言える。2013年4月、黒田総裁が就任後初の会合で量的・質的金融緩和を決定し強烈なリフレ思想を煽った記憶を辿れば、その逆の展開が2023年4月に起きることはないのか。注目したい点である。 もちろん、保守的な岸田文雄政権の意向も相応に影響するであろうことを踏まえれば、日銀が家計部門にも大きな影響をもたらす利上げという決断に踏み切れる可能性は低い。また、リフレ思想を持たない(≒タカ派色の強い)市場参加者として注目される新任の高田創審議委員も日経新聞(12月10日)に掲載されたインタビューで、「(YCC解除に関して)残念ながらそういう局面になっていない」と述べている。 もちろん、現行体制と新体制では情報発信の意味も異なるだろうが、少なくとも現状の政策委員会の中では利上げを主張するような空気はまったく感じられないのが実情だろう。しかし、積極的な円買い材料に乏しいと言われる状況下、「日銀の利上げ」という為替市場参加者のほとんどが想定していない展開はリスクシナリオから外すべきではない、非常に重要な論点であるように思われる』、「「日銀の利上げ」という為替市場参加者のほとんどが想定していない展開はリスクシナリオから外すべきではない、非常に重要な論点であるように思われる」、その通りだ。
第三に、12月19日付けダイヤモンド・オンライン「2023年は混迷の「新時代」に突入、日本経済の命運握る卯年の“活路”」を紹介しよう。
https://dw.diamond.ne.jp/articles/-/29881
・『『週刊ダイヤモンド』12月24日・12月31日新年合併特大号の第一特集は「2023 総予測」だ。過去1年を総括し、翌年のゆくえを見通すという、年末年始の恒例企画だが、2022年は国内外ともに近年類を見ない大波乱の1年となった。来る23年はどうなるのか?経済はもちろん政治、社会、文化まで特集を通じて「総予測」する』、興味深そうだ。
・『混迷の時代に突入する2023年 日本と世界の“活路”を探る 来る2023年。景気と株価はどうなる?円安とインフレは続くのか?金利上昇や不動産暴落は起きるのか?そして、歴史に刻まれる出来事が相次いだ22年を経て、日本と世界はどうなってしまうのか――。 年末年始におけるメディアの定番企画が翌年の「予測」だ。経済メディアにおいては、新たな1年の経済や企業の予測に各媒体が総力を挙げるのが恒例となっている。 『週刊ダイヤモンド』では年末年始の超特大特集「総予測」がそれだ。今回も企業トップやアナリスト、学者ほか多数の専門家を直撃し、23年の見通しや注目キーワードなどを徹底分析した。 今特集を俯瞰して浮かび上がるのは、23年の日本と世界が、これまでの“前提”が崩れた混迷の「新時代」に突入するということだ。ことの発端は22年に起きた、100年先の日本史、世界史の教科書にも記されるだろう国内外における二つの歴史的事件にある』、それは、「ロシアによるウクライナ侵攻」、「安倍晋三元首相銃撃事件」、である。
・『岸田政権はダッチロール状態 統一地方選と日銀総裁人事が焦点 まず国外では、2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻だ。片や国内の方は、7月8日の安倍晋三元首相銃撃事件がそれである。 前者は、21年から続いていた世界的なインフレのアクセルを踏み込み、目下のエネルギー価格や食料価格の高騰を招いている。 資源高騰は無論のこと、とりわけ米国におけるインフレは日本経済に甚大な影響を及ぼす。目下の日米金利差に起因する超円安の命運は、米国のインフレ対策──、利上げ動向に懸かっているからだ。 問題は経済面にとどまらない。戦況の泥沼化によって、周知のようにロシアによる核兵器使用という第二次大戦以降、最悪の事態さえ懸念されている。 ところが、この世界情勢の混迷に対し、日本の岸田政権はまさにダッチロール状態だ。 安倍氏暗殺でクローズアップされたのが、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自由民主党の“蜜月”関係だ。いわゆる「旧統一教会被害者救済法」が自民党と公明党など賛成多数で22年12月に成立したが、遅きに失した感は否めない。23年4月の統一地方選挙を岸田首相が乗り越えられるかどうかが、今後の政局を占う一つの焦点となる。 安倍氏の急逝は、政治のみならず金融政策のかじ取り役、日本銀行のトップ人事にも影響を与えそうだ。22年12月現在、23年4月に任期満了を迎える黒田東彦総裁の後任者選びが最終局面にある。「リフレ派」の黒田氏が、アベノミクスの目玉として官邸主導で送り込まれてから10年。安倍氏不在の今、現在の政策を踏襲する新総裁が誕生するのかに注目が集まっている。 こうした国内外の経営環境の激変を踏まえ、各産業、企業業績は23年どうなるのか。本特集では、ダイヤモンド編集部記者による日本企業「八大テーマ」座談会や、数多の日本を代表する企業トップや専門家への直撃インタビューなど徹底取材で明らかにする。 混迷の「新時代」が到来する中、卯年に倣って“跳躍”できるのか──。特集を通じて日本と世界の“活路”を探る』、「23年4月に任期満了を迎える黒田東彦総裁の後任者選びが最終局面にある。「リフレ派」の黒田氏が、アベノミクスの目玉として官邸主導で送り込まれてから10年。安倍氏不在の今、現在の政策を踏襲する新総裁が誕生するのかに注目」、「特集を通じて日本と世界の“活路”を探る」、なるほど。
・『「生前贈与」がダメになる前に得できる! 超豪華付録「駆け込み贈与・相続術カレンダー」つき(『週刊ダイヤモンド』12月24日・12月31日新年合併特大号の第一特集は「2023 総予測」です。 ページ数は、なんと物理的限界ギリギリの264ページ!295人の人物の名前が登場し、ダイヤモンド編集部の総力と多数の超一流の専門家の英知を結集させ、経済の先行きを徹底的に予測。株価、為替、企業業績のみならず、国際関係、政治、社会、文化、スポーツまで抜かりなく完全網羅しました。 さらに今回は、万人が無関係ではいられない“タイムリー”な豪華付録つきです。 相続税の節税術の王道だった生前贈与がもうすぐ事実上の禁じ手になることを踏まえて、人気税理士たちの監修の下に作成した「駆け込み贈与・相続術カレンダー」です。12カ月で後悔しない贈与と相続のやり方が学べること請け合いです。 家族が集う年末年始という絶好の機会に、贈与・相続を話し合いにお役立てください!』、「家族が集う年末年始という絶好の機会に、贈与・相続を話し合いにお役立てください!」、実にタイムリーな企画だ。