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日中関係(その4)(習近平の国賓訪日を中止すべき4つの理由 魂胆は「天皇の政治利用」、新型肺炎から垣間見えた 対中・半導体ビジネスの危うさ「中国製造2025」にどう向き合うか、大国化した中国に日本はどう向き合うべきか 香港・国家安全法への対処が外交の試金石に) [外交]

日中関係については、2018年11月6日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その4)(習近平の国賓訪日を中止すべき4つの理由 魂胆は「天皇の政治利用」、新型肺炎から垣間見えた 対中・半導体ビジネスの危うさ「中国製造2025」にどう向き合うか、大国化した中国に日本はどう向き合うべきか 香港・国家安全法への対処が外交の試金石に)である。

先ずは、昨年11月22日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した国際関係アナリストの北野幸伯氏による「習近平の国賓訪日を中止すべき4つの理由、魂胆は「天皇の政治利用」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/221300
・『来春に予定されている習近平の「国賓訪日」に、反対の声が上がっている。佐藤正久前外務副大臣は11月11日、「香港問題」「邦人拘束問題」「尖閣問題」「日本食品の輸入規制問題」を挙げ、「4つのトゲを抜かないと国賓というわけにはいかない」と述べた。40人の自民党議員が参加する「日本の尊厳と国益を護る会」(代表幹事・青山繁晴参議院議員)も、同じ理由で反対を表明した。筆者も、習近平の国賓訪日に反対している。なぜなら、中国は天皇を政治利用した過去があるからだ』、当初は桜の咲く頃としていた「国賓訪日」は、新型コロナウィルス感染拡大により、年内は困難になったようだ。
・『米中戦争の最中に中国に接近する日本  筆者が習近平の国賓訪日に反対する理由は4つある。 1番目の理由は、中国への過度の接近が、同盟国である米国との関係を破壊するからだ。日本人はほとんど意識していないが、世界は2018年から「米中覇権戦争の時代」に突入している。トランプは2018年7月、8月、9月と、連続して中国製品への関税を引き上げた。これで、世界は「米中貿易戦争が始まった」と認識した。 そして、同年10月、ペンス大統領がハドソン研究所で行った「反中演説」後、「米中新冷戦」という用語が世界中で使われるようになった。 問題は日本政府の動きだ。安倍首相は2015年4月、米国における議会演説で、以下のように演説した。(太線筆者、以下同) <米国国民を代表する皆様。私たちの同盟を、「希望の同盟」と呼びましょう。米国と日本、力を合わせ、世界をもっとはるかに良い場所にしていこうではありませんか。希望の同盟――。一緒でなら、きっとできます。> 非常に感動的なスピーチで、結果、日米関係は劇的に改善された。しかし、今となっては、「口だけ」と批判されても仕方ない状況になっている。というのも、米国が中国に「宣戦布告」した直後から、日中関係は「劇的」といっていいほど改善されている。 戦争の最中に、同盟国が敵国に接近する行為を一般的に何というだろう?そう、「裏切り」である。日本は中国に急接近することで、同盟国米国を「裏切って」いるのだ。 それで、米国の日本への態度も変わり始めた。トランプは、大統領就任後封印していた「日米同盟破棄論」や「同盟不平等論」を、再び主張し始めている』、「米国が中国に「宣戦布告」した直後から、日中関係は「劇的」といっていいほど改善されている」、「中国」からすれば当然の行動だ。それにいい気になって、トランプを怒らせたのであれば、如何にもまずい。
・『人権侵害国家のトップと天皇陛下の談笑シーンは悪夢だ  10月22日に行われた天皇陛下の「即位礼正殿の儀」には、世界各国から国王、王妃、大統領、首相などが集結した。しかし、米国が派遣したのは「運輸長官」だった。 もともとペンス副大統領が出席する予定だったが、意図的に「格下」の大臣を送ってきたのだ。日本政府は、米国政府の「シグナル」に気がついて、中国への接近を止めなければならない。 2つ目の理由は、「ウイグル問題」だ。中国は昔から「人権侵害超大国」だった。しかし、米国はこれまで、この国の人権を問題視することはほとんどなかった。「チャイナマネー」が欲しかったからだろう。だが、「米中覇権戦争」が始まったので、中国の人権問題がクローズアップされるようになってきた。 その最たるものが「ウイグル問題」だ。具体的には、中国政府がウイグル人約100万人を強制収容所に拘束していること。これは、米国の対中「情報戦」に利用されているが、「事実」でもある。 <国連、中国政府がウイグル人100万人拘束と批判 BBC NEWS JAPAN 2018年09月11日 中国政府が新疆ウイグル自治区でウイグル人を約100万人、テロ取り締まりを「口実」に拘束していると、国連は懸念を強めている。国連人種差別撤廃委員会は8月末、最大100万人のウイグル人住民が刑事手続きのないまま、「再教育」を目的とした強制収容所に入れられているという指摘を報告した。 8月半ばにスイス・ジュネーブで開かれた同委員会の会合では、信頼できる報告をもとに中国政府が「ウイグル自治区を、大規模な収容キャンプのようにしてしまった」と委員たちが批判。> 日本政府は、21世紀の現在、中国でナチスドイツやスターリン時代のソ連のような人権侵害が行われていることを問題視すべきだ。 習近平が訪日する頃、この問題は、もっと盛り上がっているだろう。そして、天皇陛下が、100万人を拘束する国の独裁者と談笑する映像が、世界に配信される。「日本国の天皇は、独裁者と歓談している」と非難されることは容易に想像できる。そうなった時、天皇陛下にはもちろん何の非もない。非難されるべきは、会談を設定した日本政府だ』、「人権侵害国家のトップと天皇陛下の談笑シーンは悪夢だ」、その通りだ。
・『中国政府は昔から天皇を政治利用してきた  しかし、国際社会は、そのようには受け取らず、「天皇が自らの意思で独裁者と談笑している」と理解するだろう。なぜなら、外国人は普通、「天皇に政治的決定権は一切ない」という知識を持ち合わせていないからだ。 第3の理由は「香港問題」だ。習近平は11月4日、上海で、香港政府の林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官と会談した。彼は、「中国中央政府は林鄭氏に高度の信頼を寄せている。この暴動を止めること、そして秩序を回復することが、依然として香港で最も重要な任務だ」と述べ、彼女を激励した。 林鄭月娥は、国家主席から直々に「暴動を止めろ」「秩序を回復しろ」と言われ、「どんな手段を使ってもデモを鎮圧する」と決意したことだろう。 この会談後、香港警察はデモ隊鎮圧に実弾を使用するようになり、この原稿を書いている時点で2人の死者が出たと報じられている。習近平が訪日する頃、香港情勢はさらに悪化しているだろう。そして、力を使ってデモを弾圧する中国への風当たりは、さらに強くなっているはずだ。 そんな時期に、天皇陛下は「民主化デモを武力で弾圧する国のトップ」と会談させられる。日本政府は、国際社会がこれをどう受け取るか、熟考するべきだろう。 第4の理由は、中国政府が天皇陛下を政治利用するからだ。これは、にわかには信じがたい話かもしれないから、少し過去を振り返ってみる必要がある。 米中関係は、1970年代にニクソンと毛沢東が和解した後、ずっと良好だった。毛の後を継いだ鄧小平は、日本、米国から資金と技術を思う存分受け取り、中国経済を奇跡的成長に導いた。日米は、中国に「金と技術を無尽蔵に恵んでくれる存在」なので当然、日中、米中関係も良好だった。 しかし、1980年代末から1990年代初めにかけて、2つの理由で米中関係は悪化する。 1つ目の理由は1989年6月4日に起きた「天安門事件」。人民解放軍はこの日、デモを武力で鎮圧した。中国共産党は、犠牲者の数を319人としているが、英国政府は1万人以上としている。これで、中国は国際的に孤立した。 2つ目の理由は、1991年12月の「ソ連崩壊」。そもそも米国が中国と組んだのは、ソ連に対抗するためだった。しかし、その敵は、崩壊した。それで当然、「なぜ我々は、中国のような一党独裁国家と仲良くし続ける必要があるのか」という疑問が、米国内から出てきた』、今日の夕刊によれば、全人代常務委員会は「香港国家安全維持法案」を異例のスピードで可決。香港政府は毎年民主化を求めてデモが起きる香港返還記念日の7月1日にも施行する方針のようだ。
・『天皇訪中に助けられた後 日本を裏切った中国  さて、中国は、この苦境をどう克服したのか? ナイーブな日本政府に接近したのだ。江沢民は1992年4月に訪日し、天皇皇后両陛下(現上皇上皇后両陛下)を中国に招待した。そして1992年10月、天皇皇后両陛下が訪中された。 これを見た欧米諸国は、「日本は、中国市場を独占するつもりではないか」と焦りを感じるようになる。 中国の賃金水準は当時、日米欧の数十分の一であり、将来世界一の市場になることも確実視されていた。だから、欧米は、「金もうけと人権」の間で揺れていたのだ。 中国は、天皇陛下を政治利用することで、日米欧を分断させ、日本だけでなく欧米の態度を和らげることに成功した。 これは、筆者の想像ではない。1988年から10年間外交部長(外務大臣)を務めた銭其シンは、その回顧録の中で、天皇訪中が西側諸国による対中制裁の突破口であったことを明かしている。 話がここで終われば、「中国に一本取られた」程度だった。しかし、問題はここからだ。日本と天皇陛下に救われた江沢民は、恩をあだで返した。どういうことか? 中国政府は1994年、「愛国主義教育実施要綱」を制定。1995年から、徹底した「反日教育」を行うようになった。そして、中国は、世界における「反日プロパガンダ」を強化していく。アイリス・チャンの『ザ・レイプ・オブ・南京』が大ベストセラーになり、「南京大虐殺」が世界中で知られるようになったのは1997年のことだ。同年、江沢民は真珠湾を訪問し、日本の中国侵略と、真珠湾攻撃を非難した。 この動きは一体何だろうか?なぜ、日本に救われた江沢民は、「反日教育」「反日プロパガンダ」を強力に推進したのか?日本を「悪魔化」するためだろう。日本を悪魔化すると、米中関係はよくなる』、「中国は、天皇陛下を政治利用することで、日米欧を分断させ、日本だけでなく欧米の態度を和らげることに成功した」、しかし「日本と天皇陛下に救われた江沢民は、恩をあだで返した」、もう忘れかけていたが、今一度、思い返すべきだ。
・『クリントン政権の本音は「米中で日本を共同支配」  2度の世界大戦の前と戦中、米中関係(当時は中華民国だった)は、日本という「共通の敵」がいて良好だった。そして、1970年代から1980年代末までは、ソ連という「共通の敵」がいて、やはり良好だった。しかし、天安門事件とソ連崩壊後、中国が米国の主敵になる可能性が出てきた。 そこで中国は、「日本を米中共通の敵にしよう」と決意したのだ。 そして、中国の工作は成功した。クリントン時代の過酷な日本バッシングを覚えている人も多いだろう。この件に関連して、米国在住国際政治アナリスト伊藤貫氏の『中国の「核」が世界を制す』(PHP研究所)に驚きの話が紹介されている。 伊藤氏は1994年、当時米国防総省の日本部長だったポール・ジアラ氏と会った。ジアラ氏いわく、<「クリントン政権の対日政策の基礎は、日本封じ込め政策だ。> <クリントン政権のアジア政策は米中関係を最重要視するものであり、日米同盟は、日本に独立した外交、国防政策を行う能力を与えないことを主要な任務として運用されている。>(200ページ) 伊藤氏は、米国の政策について、以下のように結論づけている。 <米中両国は東アジア地域において、日本にだけは核を持たせず、日本が自主防衛できないように抑えつけておき、米中両国の利益になるように日本を共同支配すればよい」と考えている。>(113ページ) ここまでをまとめてみよう。 ・1989年、中国は天安門事件で国際的に孤立した。 ・中国は、ナイーブな日本政府に接近する。 ・1992年、天皇皇后両陛下(当時)が訪中された。 ・日本が中国市場を独占することを恐れた欧米は態度を軟化。中国の「天皇利用作戦」は成功した。 ・天皇陛下を利用して包囲網を突破した中国は、「日本悪魔化工作」を開始。 ・日本は、米中「共通の敵」にされてしまい、日米関係は悪化。 ・逆に米中関係は、大いに改善された』、「日本」は「米中」にいいようにやられたようだ。
・『ナイーブな政府が日本を滅ぼす  平成は、1989年1月8日に始まった。同年6月4日に「天安門事件」が起き、中国は世界的に孤立した。 令和は、30年後の2019年5月1日に始まった。中国は今、ウイグル問題、香港問題で孤立している。香港問題を語る際、しばしば「第二の天安門は起こるか?」といった表現が使われている。 30年前、中国は日本政府を操り、天皇陛下を政治利用することで危機を乗り越えた。そして30年後、中国は再び日本に接近し、天皇陛下を政治利用することで、危機を乗り越えようとしている。習近平が来春「国賓訪日」すれば、天皇陛下に「近い将来の訪中」を要請する可能性は極めて高い。天皇陛下は立場上、これを拒否できないだろう。 習近平の国賓訪日に続く天皇陛下の訪中で、日米の亀裂は、さらに深まる。日米同盟を破壊することで、中国は現在の危機を乗り越えるだけでなく、覇権に向かって大きく前進することになるだろう。 日本政府はどうすればいいのか?これは簡単で、平成の間違いを繰り返さないことだ。つまり、習近平の国賓訪日を断り、天皇陛下の訪中、つまり政治利用の可能性を事前に根絶する。口実は、何とでもなる。「邦人拘束問題、尖閣問題、ウイグル問題、香港問題などで、保守派議員の反発が激しい」と言えばいいだろう。 人も国家も間違いを犯す。しかし、優れた指導者は過去の間違いから学び、同じ過ちを2度と繰り返さない。日本政府は今、無意識のうちに30年前の過ちを繰り返そうとしている。安倍内閣が、過去の教訓から学び、賢明な判断を下すことを心から望む』、「国賓訪日」が、新型コロナウィルス感染拡大により、年内は困難になったのは、一安心だ。新型コロナウィルス感染拡大が思わぬ贈り物をもたらしたようだ。

次に、本年2月12日付け日経ビジネスオンラインが掲載した中部大学特任教授(元・経済産業省貿易管理部長)の細川昌彦氏による「新型肺炎から垣間見えた、対中・半導体ビジネスの危うさ「中国製造2025」にどう向き合うか」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00133/00029/?P=1
・『中国の新型肺炎の感染が拡大して、経済への深刻な影響が懸念されている。とりわけ発生源である中国・武漢市は自動車産業の一大集積地で、自動車業界のサプライチェーン(部品供給網)への大きな影響にメディアの関心も注がれている。中国での自動車生産への部品供給や中国からの自動車部品の輸入など、世界の自動車生産体制への広範な影響が懸念されるのは当然のことだ。 しかし、もう一つ忘れてはならないのが半導体産業だ。 半導体産業は「中国製造2025」の最重点産業で、2025年までに自給率7割を目標としている。武漢はその中核拠点と位置付けられ、海外技術を基に巨大工場の建設を進めている。台湾から大量の技術者を引き抜くなどして、中国半導体大手の紫光集団は中国メーカーとしては初めて3次元NAND型フラッシュメモリーの量産に乗り出した。 「中国製造2025」は単なる産業政策ではない。目的に「軍民融合」を掲げて、産業競争力のみならず軍事力の高度化も目指している。米国が強い懸念を有するゆえんだ。中国も海外からの警戒感を避けるために、最近は爪を隠して、この言葉に言及しない方針である。しかし実態は何ら変わっていない。 先日、武漢からチャーター便で日本人数百人が帰国した。そのうち約半数は自動車関連の従事者であったが、残りの大半は半導体関連の従事者だった。日本の半導体製造装置メーカーの技術者がそうした工場の建設とメンテナンスに関わっているのだ。もちろん中国市場を開拓するビジネスとして取り組むのは当然である。現時点でこのこと自体が問題になるものではない。 ただし、今後も同じだと考えていては危険だ。一層の注意を要する。現在、半導体産業がいわゆる“米中テクノ冷戦の主戦場”となっているからだ』、確かに「“米中テクノ冷戦」で流れ弾に当たらないよう細心の注意が必要だ。
・『米中テクノ冷戦の主戦場・半導体  先月、米中貿易交渉の第1段階の合意が署名されたが、こうしたトランプ大統領による関税合戦での取引は表層的なものだ。米議会を中心とする深層部分でのテクノ冷戦(技術覇権争い)はますます激しくなり、中国資本による米国企業への投資規制の強化に続いて、対中輸出管理も抜本的に強化しようとしている。その重要なターゲットの一つが半導体分野である。 半導体は軍事産業の生産基盤となる技術である「基盤技術」の代表格とみなされている。米国の国防権限法においても安全保障上中核的な産業分野として半導体産業が特記されたことは要注意だ。 一方、中国はそうした半導体産業を猛然と育成しようとしている。 2018年4月、中国通信機器大手のZTEが米国の制裁発動によって、米国のインテルとクアルコムなどから半導体の供給を受けられなくなって、主力事業の停止に追い込まれ悲鳴を上げた苦い経験から、中国は半導体の内製化に一層アクセルを踏んだ。 さらに同年10月、中国の国策半導体メーカー福建省晋華集成電路(JHICC)が米国の制裁発動によって半導体製造装置の輸出規制を受けて大打撃となったことに懲りたようだ。 2014年からの第1期には2兆円の基金で半導体チップに投資し、2019年10月に発表した第2期計画では3.2兆円の基金で半導体製造装置に投資する。こうした資金力を武器に技術と人材の取り込みを加速している。高度な半導体人材を抱える台湾からは3000人を超える技術者が流出して歯止めがかからないという。 今後も中長期で米中対立が続くことを前提に、中国は米国依存を脱却するために自前生産に躍起となっているのだ。 これに対して、米国が半導体製造に関する技術流出に警戒するのも当然だ。そしてその製造装置は日欧企業が主たるプレーヤーであることから、その協力が不可欠としている。 最近、半導体の性能を高める次世代装置(EUV露光装置)を独占的に供給しているオランダの装置メーカーASMLが中国政府系半導体メーカーSMICへの供給をストップしたのも米国の圧力があったからだといわれている。 また台湾の半導体大手TSMCに対して、米中それぞれが圧力をかけて米国生産、中国生産をさせようと綱引きが過熱しているのもその象徴的出来事だ。TSMCに部材供給している日本企業もその余波を受けるだろう』、「TSMC」は米国の圧力に屈して、「米国生産」を選択したようだ。
・『米国が志向する「部分的な分離」戦略  今、ワシントンでは「部分的な分離(Partial Disengagement)」がキーワードになっている。 米中対立の激化で、世界が米国圏と中国圏に「分断(デカップリング)」されるのではないかとの懸念が広がっている。しかし経済全般の「分断」はもはや不可能で非現実的だ。グローバルな相互依存の経済構造が既に出来上がっているからだ。他方で、安全保障上の対中懸念の現実を考えれば、むしろ安全保障の視点で機微な分野を特定して、部分的に中国を分離していく。それが米国の志向する「部分的な分離」戦略だ。 メディアは制裁関税の影響によるサプライチェーンの揺らぎにばかり注目しているようだ。しかし問題の本質はそこではない。 制裁関税の発動によるコスト増が中国から他のアジア諸国に生産拠点を移管する動きを招き、サプライチェーン再編の波が押し寄せているのは事実だ。こうした現状でどう経営判断するかはもちろん極めて重要である。しかしトランプ大統領による制裁関税は自然災害同様、予測不可能だ。新型肺炎によるサプライチェーンの分断もそうだ。自動車産業を中心に世界経済に深刻な影響を与えているが、これも予測困難だ。そうしたリスクに対して企業はコスト増でもリスク分散して柔軟に対応できるように手を打つしかない。 むしろ安全保障の観点での機微な分野での「部分的な分離」は着実に進展しつつある。しかも中長期的な視点でだ。 日本企業も安全保障のアンテナを高くして、社内の事業分野ごとに仕分けをする作業が必要だ。そして、こうした特定分野における技術の観点で、サプライチェーンの分断を経営リスクと捉える必要があるだろう』、同感だが、こうした感度が鈍い「日本企業」には、よほどの努力が必要だろう。
・『日本企業も要注意、米国主導の“新型の対中ココム”  米国は中国への技術流出を阻止すべく輸出管理の抜本的な強化をしようとしている。輸出管理改革法(ECRA)に基づき、中国を念頭に置いて規制対象範囲を拡大しようとしている。いわば“新型の対中ココム”ともいえるものだ(政府は対外的にこうした呼称を用いることを当然否定するだろうが)。そのうちの1つが、上述の「基盤技術」といわれるもので、半導体製造技術がその焦点になっている。 それと同時に、米国だけが独自に規制しても効果が限定されるため、同盟国との国際連携が必要とされている。日本にも同調が求められるのは明らかだ。そうなると日本企業の企業活動も多大の影響を受けることになる。 また、事実上の禁輸措置につながるエンティティ―・リストへの掲載が相次いでいる。この1年半の間だけでも有名なファーウェイ以外に監視カメラ、スーパーコンピューター、原発関連企業など200社近くがリストに追加されている。こうした企業にも米国は半導体を含む部材供給をストップする。 「買わない」、「使わない」から「売らない」、「造らせない」までに及んでいるのだ』、「「買わない」、「使わない」から「売らない」、「造らせない」までに及んでいる」、ずいぶん徹底しているようだ。
・『日本企業も“利敵行為”は許されない  ここで注意しなければならないのは、日本企業であってもこのエンティティー・リストへの掲載は決して無縁ではないということだ。日本から中国へ輸出する場合であっても米国からの部材などを25%以上組み込んだ場合に、米国の再輸出規制がかかることは大方の日本企業は理解しているが、問題はそれだけではない。 仮に「米中対立はビジネスチャンスだ」として「漁夫の利」を得ようとすれば、違法行為でなくても、米国からは利敵行為とみなされて制裁対象にもなり得るのだ。 日本企業は最低限、法律的なチェックはしているだろうが、それだけでは十分ではない。エンティティー・リスト掲載企業との取引は慎重にすべきであることを経営層は理解しておく必要がある。 米中両国とビジネスで付き合う日本企業にとって、機微な分野の見極めが重要になってくる。AI(人工知能)、量子技術、5G、ドローン、監視カメラのような特定分野については、米国の動きを踏まえた慎重な対応が必要だ。虎の尾を踏むわけにはいかないのは、1987年の東芝機械ココム違反事件を思い出せば明らかである。 日本企業もこうした安全保障の動きへのアンテナを高くしておかなければ、経営の根幹を揺るがしかねない。半導体関連はそうした機微な分野として特に要注意であることを、新型肺炎を巡る動きで思い起こさせられた』、「日本企業もこうした安全保障の動きへのアンテナを高くしておかなければ、経営の根幹を揺るがしかねない。半導体関連はそうした機微な分野として特に要注意」、説得力溢れた主張で、同感である。

第三に、6月20日付け東洋経済オンラインが掲載した東洋大学教授の薬師寺 克行氏による「大国化した中国に日本はどう向き合うべきか 香港・国家安全法への対処が外交の試金石に」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/357296
・『日本の外交にとって、中国を相手にすることほど複雑でやっかいなものはないだろう。 アメリカとの間には日米安保条約という強固な基盤があり、時に「対米追随外交」と批判されながら、アメリカに歩調を合わせることで安定した関係を維持してきた。 イギリスやフランス、ドイツなどヨーロッパ主要国との間にはそもそも国家関係を揺るがすような深刻な問題がない。一方で韓国や北朝鮮、ロシアのように、歴史問題や領土問題などをめぐって真正面から主張が対立している場合は、外交交渉そのものが成り立ちにくいため、自国の主張を繰り返していればいい』、「「大国化した中国に日本はどう向き合うべきか」、確かに悩ましい課題だ。
・『新たな対中外交戦略の時代に  しかし、日中関係はそれほど単純ではない。1972年の国交正常化以降、歴史問題をはじめ何らかの問題を抱えながらも、それなりに良好な関係を維持していかなければならない宿命にあった。 ところが今回、中国が打ち出した香港の国家安全法制定は、これまで両国が維持してきた日中関係を大きく変えてしまいそうな根本的な問題をはらんでいる。中国が大国化したことで日本が個別に中国に向き合って問題を解決できる時代は終わった。国際社会と連携した、新たな外交戦略が必要になったようだ。 国交正常化からの約半世紀を振り返ると、日中関係は劇的に変化してきた。正常化後は日本国内に日中友好ムードが高まり、日中関係は一気に改善した。1980年代には日本が歴史教科書問題や中曽根康弘首相の靖国神社公式参拝などの問題を引き起こし、中国でも1989年に天安門事件が起きた。 このころの日本のGDPは中国の約5倍、国民1人当たりの所得は約30倍で、経済力では中国を圧倒していた。安全保障の面でも自衛隊と在日米軍やアメリカ第7艦隊を合わせた軍事力は、中国の人民解放軍の力が及びもつかないものだった。 こうした状況もあって、日中間の問題に対して日本政府は寛大さを見せる余裕を持っていた。教科書問題では中国の要求を受け入れ、教科書の検定基準を見直した。中曽根首相の靖国神社参拝は中国への配慮から1年で終わった。天安門事件で中国が欧米諸国の批判を浴びて国際的に孤立すると、日本はいち早く円借款の凍結解除を打ち出すなど、関係改善に積極的に取り組んだ。 中国の姿勢も今とはまったく異なっていた。当時の最高指導者である鄧小平が打ち出したのは改革開放路線であり、西側の市場経済システムを積極的に取り入れて中国の経済発展を推し進めた。それを象徴するのが「韜光養晦」という言葉だった。 「才能を隠して、内に力を蓄える」というような意味であり、イデオロギーなどにこだわらず低姿勢で西側諸国に接し、その技術などを導入するという徹底したプラグマティズムだった。実際、1978年の訪日時、鄧小平は「これからは日本を見習わなくてはならない」という言葉を残している。現在の習近平体制の振る舞いとは対極にあった』、確かに「現在の習近平体制の振る舞い」には目に余るものがある。
・『「寛容の外交」から「原則重視の外交」へ  1990年代後半以降になると、経済力を増してきた中国の振舞いは徐々に変化してきた。日本の排他的経済水域(EEZ)内で中国の調査船による違法な海洋調査が頻繁に行われるようになった。海底資源探査や潜水艦の航路開拓などが目的とされており、日本政府はその都度、中国側に抗議を繰り返していた。 日本周辺での中国海軍の活動が活発化し始めたのも同じころだった。さらに、1995年と1996年には核実験を繰り返した。日中関係は次第にぎくしゃくし始め、日本政府の対応は「余裕と寛容」から「原理原則の重視」に転換していった。 2001年春、台湾の総統を退任した李登輝氏が病気治療を理由に訪日ビザを申請してきた。李登輝氏を台湾独立派とみなしていた中国政府は、李氏訪日を政治活動だとして日本政府にビザを発給しないよう強く求めてきた。 外務省は局長以上を集めた会議で対応を協議したが、驚くことに1人の局長を除き、すべての幹部がビザを発給すべきという意見だった。中国の主張には理がないというのである。森喜朗首相の退陣直前というタイミングだったが、首相官邸は外務省の判断も踏まえて最終的にビザ発給にゴーサインを出した。 森政権ではこのほかに歴史教科書問題が再び起きたが、中国の修正要求を日本政府は「内政問題である」として突っぱねた。1980年代とは様変わりの対応だった。 2010年、日本のGDPはついに中国に追い抜かれ、2019年は3倍にまで差が開いた。中国の軍事費も増え続け、今やアメリカに次いで世界第2位の軍事大国だ。その額は日本の5倍を超えている。習近平国家主席の登場で、鄧小平氏の「韜光養晦」は消え去り、代わりに打ち出されたのは「一帯一路」であり、「中華民族の偉大なる復興」である』、「「寛容の外交」から「原則重視の外交」へ」、力関係の変化を踏まえれば当然の選択だ。
・『多国間枠組みを生かした対中抑え込み  こうしたなか、日本では一時、対中強硬論がもてはやされたが、問題の解決に資することはなかった。日本政府が打ち出したのは、さまざまな国際機関やASEANをはじめとした地域の多国間の枠組みなどを動かし、中国を抑え込むとともに問題を解決していく戦略だった。 日本が前面に出て中国と向き合ったところで交渉進展は期待できない。そこで多くの国を関与させる手法にかじを切ったのだ。 中国が南シナ海の岩礁を埋め立てて領有権を主張するとともに軍事基地化していった問題では、中国に批判的な国に働きかけてこの問題をASEAN首脳会議などで取り上げさせた。中国に批判的なフィリピンが常設仲裁裁判所に仲裁を要請し、2011年に「中国の主張は国際法に反する」という判断が出された。この動きに日本政府も深く関与した。 さらに日米、インド、オーストラリアの4カ国が連携して、他のアジア諸国を巻き込んで地域的な連携の枠組みを作る「インド太平洋戦略」構想も日本がアメリカに働きかけたものだった。環太平洋パートナーシップ協定(TPP)締結で積極的役割を果たしたことも含め、いずれも中国を強く意識した戦略だった。 ぎらつかない手法での対中政策は、必ずしも十分な成果を上げたとは言い切れないが、中国問題はもはや日本一国で抱えきれる問題ではなくなった以上、やむをえない対応であろう。 そこで今回問題となるのは、香港の国家安全法だ。中国にとって香港の民主化運動は香港独立を目指すテロ行為でしかなく、封じ込めなければ台湾やウイグルなどへ飛び火しかねない。しかし、日本を含む欧米諸国からすれば、自由と民主主義という大原則が崩れてしまう本質的な問題である。 ここで日本政府はどう立ち回ろうとしているのだろうか。 6月18日未明、「香港に関するG7外相声明」が公表されたが、その内容は中国に対してかなり厳しい表現となっている。国家安全法について,「一国二制度の原則や香港の高度の自治を深刻に損なうおそれがある」と批判。さらに、「開かれた討議、利害関係者との協議、そして香港において保護される権利や自由の尊重が不可欠である」と強調したうえで、「中国政府がこの決定を再考するよう強く求める」と要求している』、「多国間枠組みを生かした対中抑え込み」、しか手はないようだ。
・『香港・国家安全法が問う根本問題  外相レベルとはいえ、G7各国が歩調を合わせ、中国の対応を明確に批判した意味は大きい。関係者によると、今回の声明の発表に関して日本政府は水面下でかなり積極的に動いたという。 香港問題は、単純化すれば「自由・民主主義体制」か「権威主義体制」かの選択の問題であり、国家の根本問題でもある。2020年秋に予定されている立法院選挙に向けて香港情勢は緊迫し、昨年同様の混乱は避けられないだろう。また11月の大統領選を控え、トランプ大統領の中国批判がエスカレートし、米中関係も緊張を高めそうだ。 そこで日本がどういう対応をするかは、これまでの領有権問題などとは比較にならない重みを持っている。そこであいまいな態度をとれば、国際社会での日本の存在感はなくなり、当の中国からも軽く見られるであろう。かといって単独で突出した中国批判を展開しても、反発を買うだけで成果を得ることは難しい。 外交には原理原則とともに、いかに問題を解決し、国益を実現するかというプラグマティズムも不可欠であり、両者のバランスをうまくとっていくプロの技が重要だ。 日本に今できることは、TPP構想やインド太平洋戦略構想を提起した時と同様、多くの国を巻き込んだ戦略的取り組みを実現させることであろう。例えば、外相レベルの共同声明に続き、次は香港問題にテーマを絞ったG7首脳によるテレビ会談を呼びかけ、中国にメッセージを発信するという手もある。 中国の姿勢はかたくなで、動きは早い。残された時間はあまりないようだ』、しかし、「中国」は「国家安全法」を前述のように異例のスピードで成立させてしまった。「残された」手はまだあるのだろうか。
タグ:香港・国家安全法が問う根本問題 香港の国家安全法 「インド太平洋戦略」構想 多国間枠組みを生かした対中抑え込み 「寛容の外交」から「原則重視の外交」へ 現在の習近平体制の振る舞いとは対極に 「才能を隠して、内に力を蓄える」 「韜光養晦」 鄧小平が打ち出したのは改革開放路線 新たな対中外交戦略の時代に 大国化した中国に日本はどう向き合うべきか 「大国化した中国に日本はどう向き合うべきか 香港・国家安全法への対処が外交の試金石に」 薬師寺 克行 東洋経済オンライン 日本企業もこうした安全保障の動きへのアンテナを高くしておかなければ、経営の根幹を揺るがしかねない。半導体関連はそうした機微な分野として特に要注意 日本企業も“利敵行為”は許されない 「買わない」、「使わない」から「売らない」、「造らせない」までに及んでいる 日本企業も要注意、米国主導の“新型の対中ココム 安全保障の視点で機微な分野を特定して、部分的に中国を分離していく。それが米国の志向する「部分的な分離」戦略 米中対立の激化で、世界が米国圏と中国圏に「分断(デカップリング)」されるのではないかとの懸念 米国が志向する「部分的な分離」戦略 米中テクノ冷戦の主戦場・半導体 半導体産業がいわゆる“米中テクノ冷戦の主戦場”となっている 「新型肺炎から垣間見えた、対中・半導体ビジネスの危うさ「中国製造2025」にどう向き合うか」 細川昌彦 日経ビジネスオンライン 新型コロナウィルス感染拡大が思わぬ贈り物 ナイーブな政府が日本を滅ぼす クリントン政権の本音は「米中で日本を共同支配」 日本と天皇陛下に救われた江沢民は、恩をあだで返した 「反日プロパガンダ」を強化 1994年、「愛国主義教育実施要綱」を制定。1995年から、徹底した「反日教育」を行うように 天皇訪中に助けられた後 日本を裏切った中国 香港政府は毎年民主化を求めてデモが起きる香港返還記念日の7月1日にも施行する方針 全人代常務委員会は「香港国家安全維持法案」を異例のスピードで可決 中国政府は昔から天皇を政治利用してきた 人権侵害国家のトップと天皇陛下の談笑シーンは悪夢だ 米国が中国に「宣戦布告」した直後から、日中関係は「劇的」といっていいほど改善されている 米中戦争の最中に中国に接近する日本 「国賓訪日」は、新型コロナウィルス感染拡大により、年内は困難になったようだ 「習近平の国賓訪日を中止すべき4つの理由、魂胆は「天皇の政治利用」」 北野幸伯 ダイヤモンド・オンライン (その4)(習近平の国賓訪日を中止すべき4つの理由 魂胆は「天皇の政治利用」、新型肺炎から垣間見えた 対中・半導体ビジネスの危うさ「中国製造2025」にどう向き合うか、大国化した中国に日本はどう向き合うべきか 香港・国家安全法への対処が外交の試金石に) 日中関係
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小池都知事問題(その2)(「東京アラート」は一体何だったのか? 新規感染者40人超えも 発令基準を見直しへ、『女帝 小池百合子』著者に聞く 小池都知事に賛同できない理由、卒業証書を公開しても疑惑を払拭できない小池都知事 エジプト軍事政権に握られた都知事の生殺与奪、都知事選 「都債増発で公約実現」の落とし穴 東京都が「財政再生団体」に転落してしまう?) [国内政治]

小池都知事問題については、6月8日に取上げた。今日は、(その2)(「東京アラート」は一体何だったのか? 新規感染者40人超えも 発令基準を見直しへ、『女帝 小池百合子』著者に聞く 小池都知事に賛同できない理由、卒業証書を公開しても疑惑を払拭できない小池都知事 エジプト軍事政権に握られた都知事の生殺与奪、都知事選 「都債増発で公約実現」の落とし穴 東京都が「財政再生団体」に転落してしまう?)である。

先ずは、6月16日付けYahooニュースがHUFFPOST記事を転載した「「東京アラート」は一体何だったのか? 新規感染者40人超えも、発令基準を見直しへ」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/3deb060e2a95b65282959a909bc2e40d22b54152?page=1
・『都内の新型コロナウイルスの新規感染者が増えている。6月15日の都内の新規感染者は48人にのぼり、2日連続で40人を上回った。 東京都がアラートを出すか判断する3つの主な指標のうち、(1)新規陽性者数(1日20人未満)と(2)週単位の陽性者増加率(1未満)で数値を上回ったことになる。 東京都は6月11日に感染拡大への警戒を呼び掛ける「東京アラート」を解除し、12日午前0時からは各施設への休業要請を最終段階となる「ステップ3」に移行した。19日には全面的に休業要請が解除される見通しだ。 小池百合子都知事は6月15日に配信した動画の中で、新規感染者の増加について「いわゆる『夜の街』関連の方の割合が多い」として、「大幅な増加ではあるが、感染経路が追えない人が増えているわけではない」と指摘した。 『夜の街』での感染者が増加した理由についても、新宿区が接待を伴う飲食店事業者と連携し、陽性者が出た店の従業員全員にPCR検査を促す取り組みを始めたことで無症状の感染者を捕捉できたと評価。 「濃厚接触者の定義を広く捉えて早期に感染者を見つけることで、むしろ市中感染の広がりを防ぐ効果がある」と語った』、新規感染者はその後も増加、昨日には60人、今日も58人と高水準だ。明らかに(1)、(2)の条件を上回っているにも拘らず、「東京アラート」は発動されないままだ。
・『「東京アラート」基準を緩和へ  感染第2波の到来に備え、東京都は6月15日に専門家を交えたワーキングチームを発足した。 初会合では、(1)感染症への組織対応力の強化、(2)検査体制の拡充、(3)医療提供体制の拡充ーーなど、感染拡大を抑制しながら経済活動との両立を図るための対策を話し合った。 都によると、検査や医療提供能力を拡充していく中で、「東京アラート」発動や休業再要請の判断材料となる「モニタリング指標」についても、基準を見直すべきではないかという提案があったという。 小池氏は動画の中で「今日は取り組みの前提となるモニタリングの今後のあり方について議論していただいた」と報告。 担当者によると、新宿区のような集団検査で捕捉した陽性者の捉え方などについて検討を進めるといい、基準が緩和される見通しとなる。都の公式サイトでは、6月15日時点の新規陽性者の人数が「28人」と、すでに集団検査による判明分(20人)をのぞいた数字が掲載されている。 小池知事は「議論の内容を踏まえ、感染状況の把握・分析、検査・医療体制の拡充など、感染症の全般にわたる多面的な検討を進める」と述べ、6月中にそれぞれの方針をまとめるとしている』、大阪の吉村知事の真似をしただけで、早くも「東京アラート」の見直しとは節操がない。
・『都知事選対策? 現場は「思いは同じ」  <都知事選とコロナ対策のスケジュール(太字は新型コロナ対策)> 6月2日  東京アラート発動  6月11日 東京アラート解除  6月12日 都知事選に出馬表明、ステップ3に移行  6月18日 都知事選告示  6月19日 休業要請の全面解除  6月中  モニタリング指標、検査体制、医療体制などの第2波対策の方針まとめ  7月5日  都知事選投開票  「東京アラート」が初めて出されたのは6月2日夜。「発令基準を上回っているのになぜ出ないのか」と疑問視する声が上がる中、新たに34人の感染者が判明し、発令された。  一方、解除まではわずか10日間。しかも、解除の翌日に都知事選への出馬表明というタイミングだった。新規感染者が増えている中でも、休業要請を告示日翌日に全面解除する方針も変わっていない。このことから、ネットでは都知事選対策ではないかと意義を疑問視する声もある。 ただ、担当者は「現場としてはスピード感を持って進めたいという思いは同じ。スケジュール的にはハードだが、医療体制が落ち着いている今のうちに今後の対策を進めたい」と語っている』、要は「都知事選」を控えての目立つためのパフォーマンスだけだったようだ。

次に、6月18日付けダイヤモンド・オンライン「『女帝 小池百合子』著者に聞く、小池都知事に賛同できない理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/240531
・『7月5日投開票の東京都知事選に再選出馬を表明した小池百合子氏。その半生に迫った『女帝 小池百合子』(文藝春秋)が5月28日に発売され、15万部のベストセラーとなった(6月11日現在)。「これまでの女性たちの苦難の道の末に咲かせた花であるとして、受けとり、喜ぶことが、できない」――。小池氏についてこのように書いた、著者であるノンフィクション作家の石井妙子氏に話を聞いた』、興味深そうだ。
・『政治家を“演じている”小池氏に当初は興味なし カイロ時代の生真面目な同居人が抱えていた秘密(Qは聞き手の質問、Aは石井氏の回答)  Q:小池百合子氏についてこうした著書を書こうと考えたきっかけを教えてください。 A:最初は小池氏にはさほど関心がありませんでした。文藝春秋の編集者の方から執筆依頼があったのですが、小池氏は特に実現しようとしている政策もなく、いわば“空っぽ”。政治家というよりも、政治家を演じている人物だと考えていたので、本にはならないのではないかと思っていました。 小池氏が初当選した2016年の都知事選でも、彼女は情熱的な言葉を使って聴衆をあおっている割には、目が笑っていない。言葉と感情が比例しないというか、どこかひんやりしたものを感じ、それが気になりました。それでも、彼女について積極的に書きたいとは思いませんでした。 ただ、彼女がキャスターから政治家に転じ、東京都知事に上り詰めた平成という30年間を、小池氏という人物を通じて描けるのではないか。小池氏という政治家をここまで押し上げたのは、小池氏自身の罪なのか、この時代の私たちの罪なのか? そういう視点でなら本にできるという感じはしていました。 Q:月刊誌に小池氏の生い立ちを記す中で、エジプト・カイロ時代に小池氏と同居していた早川玲子(仮名)さんという女性から連絡を受け、彼女が保管していた膨大な記録や証言を取材することができたのですね。 A:早川さんはとても生真面目で優しい方です。小池氏よりも10歳ほど年上で、カイロに来た当時、20歳ほどだった小池氏にとっては姉のような存在でした。小池氏は1976年10月に当時のサダト・エジプト大統領夫人の訪日に同行し、日本に一時帰国した際、日本のメディアの取材を受けて、「日本人で2人目、女性では初めてカイロ大学を卒業した」と自己紹介しました。 小池氏は、エジプトに戻ってからそのように書かれた日本の新聞記事を早川さんにうれしそうに見せています。早川さんは当時を振り返り、「そんな嘘をついてはいけないと、小池氏にもっと注意を与えておけばよかった」と後悔の念を私に語ってくれました』、「政治家を“演じている”小池氏」、とは言い得て妙だ。
・『アラブ最高峰のカイロ大は留年も当たり前 腐敗、日本政府の援助を見据えた思惑も  早川さんはこうした小池氏とのカイロでのやり取りを、自身の母への相当量の手紙で克明に記しており、取材時にはそこから記憶を想起してもらって話を聞きました。小池氏が後半生に日本で大臣、そして東京都知事となったことに恐怖心を感じておられました。そんな小池氏の秘密を自分だけが知っているという不安に加え、エジプトは軍事独裁国家であり、小池氏とアラブ世界とのパイプを考えれば、命を狙われるリスクもゼロではないと考えていたからです。 ただ早川さんには、小池氏を憎いと思う気持ちはなく、経歴を詐称したことが憎いので、これを償ってほしいと考えていると話しておられましたね。 Q:早川さんの証言によると、カイロ時代の小池氏は遊びやアルバイトに熱心で、アラビア語の読み書きは超初歩レベルと、とても熱心に勉強をしていたふうではない。にもかかわらず日本ではカイロ大学“首席卒業”と自称してキャリアを積んできました。今年6月8日には在日エジプト大使館がカイロ大学長の声明として、小池氏がカイロ大を卒業したのは事実だとする声明を出しました。 そもそもカイロ大はアラブ世界の最高峰の大学であり、卒業するのは非常に難しい。4人に1人は卒業できないと当の小池氏自身が過去に語っています。アラビア語のネイティブでない日本人であれば、死に物狂いで勉強しても、留年を繰り返して何年もかけて卒業するのがやっとで、できない人もたくさんいます。まじめに勉強していなかった小池氏が首席で、4年で卒業できたとは考えられません。 小池氏は、父の勇二郎氏と、エジプトの副大統領などを務めたアブドゥル・カーデル・ハーテム氏とのコネによってカイロ大の2年生に編入できたようですが、進級できず落第し、卒業はできなかった。 ではなぜ、カイロ大があのような声明を出したのか。エジプト社会は腐敗が多く、いわばその人の社会的地位に合わせて恩恵が受けられる国です。またエジプト政府は日本から多額のODA(政府開発援助)を受けており、日本政府や小池氏とのパイプを政府も重視していることでしょう。現在の小池氏の地位や権力を考えれば、カイロ大は小池氏が卒業生であることをむしろ利用したい、という思惑があるのではないでしょうか』、「コネによってカイロ大の2年生に編入できたようですが、進級できず落第し、卒業はできなかった」が、「カイロ大は小池氏が卒業生であることをむしろ利用したい」、というのが真相なのだろう。
・『莫大な借金、顔のあざに苦しんだ少女時代の小池氏 “下”に落ちる恐怖が過度な上昇志向を形成  Q:著書では小池氏の学歴詐称疑惑に限らず、幼少時代から今に至るまでの彼女の振る舞いを、徹底した関係者への取材によって明らかにしています。特にカイロに渡る前の兵庫県芦屋市時代、顔のあざに悩んだり、父親の勇二郎氏の事業や政治活動の失敗で莫大な借金を抱えたりするなど、彼女の経験には同情を覚えます。 小池氏の実家は芦屋市にありましたが、高級住宅街のイメージから連想されるような裕福な家庭ではありませんでした。経済的に不安定な幼少時代からの環境は、社会の上へ上へと常にはい上がらないと、下に落ちてしまうという恐怖感を彼女に植え付けたことでしょう。組織の上層部にいる有力者とだけつながって世渡りをするという小池氏の手法は、父親譲りといえます。 また勇二郎氏の見栄もあって、地元の名門女子高である甲南女子中学・高校に通いましたが、周囲は本当の富裕層の子女たち。劣等感を抱いたことで、いつか強者になって人を見下したい、だから権力が必要だと考えるようになったのだと思います。今の彼女に権力があるからこそカイロ大の声明が出るわけですからね。 Q:カイロから帰国後はテレビの世界で活躍。やがて新党ブームに乗って日本新党の参議院議員となり、衆議院にくら替えして、その後は自民党へ。2003年には小泉純一郎内閣で環境大臣として入閣を果たします。「クールビズ」を流行させるなど環境大臣の経験は、やたらと「エコ」をアピールする彼女の大きな売りになっています。しかし当時、水俣病患者やアスベスト被害者に対して実に冷酷な対応をしていますね。 水俣病関西訴訟で04年に最高裁判所が国の責任を認めましたが、環境大臣として認定基準の見直しには踏み込みませんでした。05年にはアスベストの被害が明らかになりましたが、尾辻秀久厚生労働大臣(当時)と異なって真摯に解決策を示さず、被害者団体とのやり取りでは強い怒りを買いました。 これには二つの面があると思います。一つには、自民党の保守政治家として、「女性政治家だから社会的弱者に優しい」と周囲の男性政治家や世間から見られることを避けたかったのではないか。イギリスのサッチャー元首相が、弱者切り捨てともいわれる市場原理主義的な経済政策を導入したり、フォークランド戦争を始めたりするなど、女性であるがゆえにそう見られまいと“女性らしくない”政策に傾いたのと似ています。 当時、女性議員は旧社会党出身者が多く、小池氏は土井たか子氏にとても批判的でした。こうした女性議員たちと自身を差別化する意図もあったのでしょう』、「経済的に不安定な幼少時代からの環境は、社会の上へ上へと常にはい上がらないと、下に落ちてしまうという恐怖感を彼女に植え付けたことでしょう。組織の上層部にいる有力者とだけつながって世渡りをするという小池氏の手法は、父親譲り」、「環境大臣・・・当時、水俣病患者やアスベスト被害者に対して実に冷酷な対応」、利用できる機会は最大限利用するが、そうでないものには冷淡なようだ。
・『助けを求める人々を足蹴にしたくなる心理 “芦屋令嬢”を演出しても出てしまう地金  二つ目は、彼女自身が苦労してはい上がる人生を歩んできたため、立場の弱い人から頼られると、手を差し伸べるよりも、むしろ足蹴にしたくなるのではないか。芥川龍之介の小説「蜘蛛の糸」のように、下から糸につかまろうとする人を振り払おうとする心理に駆られるのではないでしょうか。 Q:阪神・淡路大震災の被災者の訪問を受けた際に、指にマニキュアを塗りながら応対し「塗り終わったから帰ってくれます?」と言い放つエピソードも出てきます。私も小池氏本人に16年11月にインタビューした際、iPadを操作しながら目を合わせることなく生返事を続けられたことがあるので、こうした言動は十分に想像できます。小池氏のそんな一面はあまりメディアで取り上げられませんね。 小池氏はテレビカメラが回っているなど公の場所と、そうでない場所での振る舞いが大きく違います。北朝鮮による拉致被害者の家族の記者会見に付き添った際など、自分がいかにも良心がある人物であるかのように振る舞うことはとても上手です。 記者会見でも「○○と存じます」などと丁寧さをやたら強調した言葉遣いをします。“芦屋令嬢”的なイメージを意識しているのでしょう。しかし、いざ自分に不利な質問が出ると、手元の資料を束ねて机にたたきつけてバンバン音を立てるなど、途端に豹変する。“地金”が出てしまうのです。 小池氏の周辺を取材して感じたのは、本人は学ぶ力、思考力が乏しいのに、複雑な物事をさも十分に理解しているように自分を見せる力だけは抜群に高いことです。多くの人々は小池氏のそうした虚像だけを見ているわけで、それが怖い。 小池氏が07年にわずか55日間、防衛大臣を務めた際の事務次官だった守屋武昌氏は、私の取材に「小池氏は防衛政策を理解していないのに、記者会見では、さも中身を理解しているように話す。鋭い質問には論点をそらした上で、さも堂々と答えていた。中身を学んでくれればとレクチャーの時間を取ろうとしても、雑誌のグラビア撮影やテレビの取材を優先するので時間を取れなかった」と話していました。 Q:とりわけ防衛大臣ともなれば、それは極めて危険ですね』、「テレビカメラが回っているなど公の場所と、そうでない場所での振る舞いが大きく違います」、さすがニュースキャスター上がりだ。「防衛政策を理解していないのに、記者会見では、さも中身を理解しているように話す。鋭い質問には論点をそらした上で、さも堂々と答えていた・・・レクチャーの時間を取ろうとしても、雑誌のグラビア撮影やテレビの取材を優先するので時間を取れなかった」、「防衛大臣」としては確かに「危険」だ。
・『新型コロナの危機下でけん玉、かるた、こんまり… 不幸な少女時代が生み出す、すぐにバレる嘘  また小池さんは、いわゆる“マスコミ受け”する言葉や施策を打ち出すことにかけても天才的です。3月以降、新型コロナウイルスでの対応で医療の現場が危機的な状況下にあっても、彼女が記者会見で紹介したのは、「コロナかるた」、けん玉、そして近藤麻理恵さんの片づけ動画でした。派手な柄のマスクを話題にしようとするなど、すぐに目くらましをする。 早川さんに言わせれば、例えばカイロ大学卒業の件でも、小池氏には嘘をついているつもりはない。目の前の相手が振り向いてくれるよう、相手の喜ぶことを口にしてしまう性格だというのです。カイロ大“首席卒業”も、当時の日本人男性記者が喜んで記事にしてくれると考え話を作ってしまったのでしょう。今もマスコミに対して同じことをやっている。 一方で、小池氏の嘘はすぐにバレるような甘いものが多い。カイロ滞在時をつづった著書『振り袖、ピラミッドを登る』でも、1年留年しているのに4年で卒業したと書いたことなど、調べればすぐに矛盾に気づくようなエピソードがたくさん出てきます。 そういう意味では、彼女はカイロにいたころから今まで何も変わっていない。彼女自身の特異なキャラクターよりも、そんな彼女をここまで押し上げた社会の在り方こそ問題ではないかと思います。環境大臣時代に水俣病やアスベストが問題化していた時期であるのに、小池氏がぶち上げたのはクールビズでした。公害問題で地道な成果を上げることよりも、マスコミや社会はクールビズに飛びついてしまったわけです。これは私たち社会の責任でもあります。 都庁で行われる小池氏の記者会見を動画でよく見ますが、彼女のくだらない冗談に、前の方に座っている民放キー局の女性記者たちが、大げさに受けたり、うんうん、うんうんと必死でうなずいて見せている。私は密かに「うなずき娘」と呼んでいるのですが(笑)、記者たちが権力者に迎合しすぎています。 小池氏に気に入られたいという気持ちはわからなくはありません。でも、若くても大手メディアの記者には、特権的な立場が与えられているのですから、自らの役割を自覚して、もっと毅然としていてほしいです。そもそも環境大臣時代の彼女の振る舞いをメディアが詰め切れていれば、今ごろ東京都知事にはなっていなかったかもしれません』、「小池劇場」と名付けて持ち上げたメディアの責任も重大だ。
・『調べるほど女性代表には見えなくなった小池氏 踏みつけられた女性にこそ見出した尊敬の念  Q:著書の終盤で石井さんは「(小池氏を)これまでの女性たちの苦難の道の末に咲かせた花であるとして、受けとり、喜ぶことが、できない」と書いています。 A:今回の著書は小池氏の“批判本”と呼ばれますが、私はむしろ、小池氏を生み出したこの社会の流れ、在り様にこそ関心がありました。 そもそも私は、もっと女性の政治家が増えるべきだと思っていますし、決定権を持つべき立場に就く女性が増えれば、世の中をいい方向に変えることができると考えています。その趣旨からいえば、常に女性初といわれてさまざまなポジションに就いてきた小池氏を理屈の上では応援すべきなのですが…。でも私にはどうしても、彼女を女性の代表として見ることができないのです。 小池氏について調べれば調べるほど、彼女を女性たちの苦難の歴史の果てに咲いた花、成果であるとして見ることができなくなりました。 小池氏は、私がこれまで評伝で取り上げてきたどの女性たちとも違います。今回の取材でも、私は尊敬したくなる素敵な女性たちとたくさん出会うことができました。カイロで小池氏と同居していた早川さんがそうですし、「中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会」副会長の古川和子さん、築地市場の移転に反対していた「築地女将さん会」の方々などです。市井にはこんなにも優れた女性たちがいるのだと感激しました。でも、そうした女性たちが小池氏によって踏みつけられていったわけです。 一方で、自分のことしか考えていない小池氏という人間が、ひたすら階段を上って「女性初」として社会の称賛を浴びていく。どうして彼女に出世の階段を上らせてしまったのか。社会を見渡せば“ミニ百合子”のような女性はたくさんいます。そのような人が出世してしまうという社会でいいのか。地道に努力している女性が踏みつけられていいのか、考えさせられました。 とはいえ、小池氏を現在の地位から引きずりおろしたいと考えて作品を書いたわけではありません。しかし、早川さんら、これが女性のすごさだと思わせてくれるような市井の女性たちに出会い、その正義感に触れ、小池氏よりも、そうした女性たちに私の心情が傾いたことは事実です。 歴代内閣における女性閣僚の多くがそうですが、どうしても男性側がピックアップして選ぶ。彼女たちは高い地位にいる男性によって選ばれた女性であって、女性たちの塊の中から上へと押し上げられた人材ではありません。 男性側も、女だから大臣にはしてやるが、総理大臣なんてとんでもないというのが前提で、女性閣僚はあくまでもアクセサリーのような存在です。また最近の女性政治家を見ていると、有能で素敵な私を見てほしいという、自分の虚栄心を満足させたいという思いから政界進出するタイプが多いように見えます。 小池氏を、ドイツのアンゲラ・メルケル首相、台湾の蔡英文総統と同列に並べ、コロナ対策で成功したのは女性リーダーだったと論じた記事も目にしましたが、果たしてそうでしょうか。日本では残念ながら女性側の人材の裾野の小ささもあり、メルケル氏や蔡氏のような、能力があって実務ができ、真摯な言葉で人を感動させることができる女性リーダーがなかなか出てきません。日本でも早く出てきてほしいと思います』、「彼女たちは高い地位にいる男性によって選ばれた女性であって、女性たちの塊の中から上へと押し上げられた人材ではありません」、その通りだが、後者は少なくとも政治の世界では出現しそうもないようだ。

第三に、6月18日付けJBPressが掲載した作家の黒木 亮氏による「卒業証書を公開しても疑惑を払拭できない小池都知事 エジプト軍事政権に握られた都知事の生殺与奪」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/60947
・『小池百合子東京都知事が15日、カイロ大学の卒業証書と卒業証明書の現物を記者会見で公開した。その際、「(卒業証書類などを)何度も公開してきた」と述べたが、これはいつもの詭弁である。小池氏は28年前に国会議員になったが、関係者が検証できる形で公開したのはこれが初めてだ。 12日の都知事選への出馬表明の会見では、「卒業云々についてはですね、すでに何度も私自身が、カイロ大学が認めているということを申し上げて参りました。今日も一部のメディアで、原本そのもの、かつて公表しておりますので、それを載せて掲載しているところがございました。あのう、すでに公表もしているということでございますので、必要な条件、要件等々を検討しながら進めていきたいと思っております」と答え、公開に後ろ向きだった。小池氏は、都議会でも再三にわたって公開を拒否してきたが、ここに来て急遽公開したのは、このままでは乗り切れないと思ったのだろう。 長期にわたって公開を拒んできたのは、正規のルートで卒業していないので、自分が持っている卒業証書類が本物かどうか、自信が持てなかったからだと筆者は推測している。正規のルートで堂々と卒業したという自信があるなら、すでに50回でも100回でも公開してきたはずだ。筆者が記事などで「卒業証書のほうは、要件をいくつか欠いており、さらに疑わしい。裏面も見る必要がある」などと指摘してきたので、”お友達”のカイロ大学日本語学科長に相談しながら、これなら何とか乗り切れると思って公開に踏み切ったのではないか』、「黒木氏」は6月8日付けのブログでも紹介しているが、鋭く論理的な指摘はさすがである。
・『異なるロゴ  では、今回公開した卒業証書類はどんなものだったのか? 最初に指摘したいのは、小池氏が今回公開した卒業証書が本物であるなら、自著『振り袖、ピラミッドを登る』(1982年)の扉に使われた卒業証書は偽物ということになる。両者のロゴが明らかに違っているからだ(文春オンライン「小池百合子都知事のカイロ大学「卒業証書」画像を徹底検証する」https://bunshun.jp/articles/-/7792)。 石井妙子氏は『女帝 小池百合子』の中で、小池氏は、タレント時代に手に入れた卒業証書は作りが杜撰だったため、本の扉では、アラブの民族衣装姿の自分の写真とコラージュして隠し、その後、今回公開した卒業証書を手に入れたのではないかと推測している。 今回公開された卒業証書は、1978年11月に作成されたと書かれているが、エジプト外務省の認証もなく、収入印紙も貼られていないため、本当にその頃作成されたものか確認のしようがなく、石井氏の推測を否定できない。 エジプトの国立大学の卒業証書が海外で有効なものとして通用するためには、エジプト外務省の認証が必要である。下の画像は、(小池氏が卒業したと称している)1976年のカイロ大学文学部の卒業証書の下部である。左の四角の中の黒っぽい文字は「48213番の最終署名が真正なものであることを証する」というエジプト外務省のスタンプで、担当職員のサインと日付がある。外務省の認証の日付、貼られている印紙の種類や額などから、この卒業証書が当時作成されたことが確認できる。しかし、小池氏の卒業証書にはこれらがない。 また小池氏の卒業証書のアミード(学部長か学生部長)のサインが、この年度の卒業証書のアミードのサインと異なっている点も、小池氏の卒業証書が本当に1978年11月に作成されたものかどうか疑問を抱かせる(学長のサインは同じだが、これはスタンプだと思われる)。 さらに卒業年が1976年となっているが、『振り袖、ピラミッドを登る』の中で、「1年目に落第した」と明記しており、それなら卒業は早くても1977年以降でなくてはならないのは、すでに指摘したとおりだ。 『振り袖、ピラミッドを登る』の偽造私文書行使の公訴時効は過ぎているが、どういうことなのか、上記の点を含め、是非小池氏に説明を聞いてみたい。 卒業証明書のほうは、左下のスタンプの鷲のマークと上部にある「カイロ大学」という文字は読めるが、スタンプの下部にある部署名が判読不能である。またそれにくっ付くようにして逆さに押されているスタンプは「クッリーヤ(学部)」の文字は読めるが、何学部かは判読不能である。この点は、2人のエジプト人に見せたが、やはり「読めない」との回答だった。小池氏に関わる敬称・動詞・形容詞・人称代名詞がすべて男性形で書かれているのは従来から指摘している通りだ。学部長のサインもこの年度の文学部の卒業証明書にあるサインと異なっている。これらについても、小池氏は説明する必要があるだろう。 さらに卒業したことをより積極的に証明できるはずの成績表をいまだに公開していないのも不思議である。 小池氏は、清水の舞台から飛び降りる気持ちで卒業証書類を公開したようだが、それらの真贋や有効性にはなお数多くの疑問が残る』、確かに「疑問」点だらけのようだ。
・『学業実体の有無という別の問題  従来から、小池氏の学歴詐称疑惑には2つの問題があることを指摘してきた。1つは偽造私文書行使の疑いで、これは前記の通り時効とは言え、『振り袖、ピラミッドを登る』の扉に使用した卒業証書は特にその疑いが強い。 2つの目の問題は、公職選挙法の虚偽事項公表罪の疑いだ。いくらカイロ大学が卒業を認め、卒業証書類を持っていたとしても、学業の実体がなければ、学歴とは認められない。エジプトではカネやコネでいくらでも学位や卒業証書類を手に入れられる。小池氏は父親をつうじて、ハーテム副首相とのコネも持っていた。 この点に関しては『女帝 小池百合子』に、小池氏はカイロ大学を卒業していないという、カイロ時代の同居人女性の証言が59ページにわたって詳述されている。論旨は一貫しており、物的証拠もある。小池氏はこれに対し、反論も釈明もしていない。 また、(1)あったはずの卒論をなかったと言う嘘、(2)「首席で卒業した」「トップの成績と言われた」、「1年目で落第したが4年で卒業した」、「1971年(存在しない)カイロ・アメリカ大学・東洋学科入学(翌年終了)」、「何度も卒業証書を公開した」(都議会答弁)、「卒業証書類を、複数のアラブの専門家が判読し、本物と認めた」(同)等々、卒業や証書に関する多くの嘘、(3)「とてもよい面会」を「とても美味しい面会」と言い間違える「お使い」レベルのアラビア語、などを考慮すれば、学業実体があったと信じるのは困難である。 小池氏はこれらの疑問点に関して、ダンマリを決め込んでいる。都知事選に出馬するなら、物的証拠にもとづき、自らの口で説明すべきだろう。ダンマリを決め込んでいる限り、疑惑が晴れることはない。今回、卒業証書類を公開したが、小池氏がやっていることは「卒業証書も卒業証明書もある。カイロ大学も卒業を認めている」というこれまでの態度と何も変わっていない。頑なに説明を回避しようする姿勢は異様である』、「いくらカイロ大学が卒業を認め、卒業証書類を持っていたとしても、学業の実体がなければ、学歴とは認められない」、その通りだ。
・『エジプトの軍事政権に政治生命を握られた小池氏  カイロ大学は、6月8日に突如、小池氏の卒業を認める声明を出した。これをどう解釈すべきかは「偽造私文書行使で刑事告発までされた小池都知事」に書いた通りだ。(参考記事)偽造私文書行使で刑事告発までされた小池都知事 https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/60873  カイロ大学の声明には2つの嘘が含まれており、端的に言うと、脆弱な自国経済を支えるODA獲得を至上命題とするエジプト政府の意向に沿うためのものだ。文面やタイミングから考えて、これは小池氏のアリバイ工作であると筆者は考えている。 前都知事の舛添要一氏は、一連のツイッターで次のように指摘している。 「(カイロ大は卒業証書や卒業に至る経過、成績表は公開しておらず)先進国の大学なら、全ての記録を保管し公表できる。声明など出すこと自体が政治的で胡散臭い。日本からの援助を期待する外国政府まで使う。立候補前の政治工作だろう」 「私はパリ大学とジュネーブ大学に籍を置いたが、大学が声明まで出してそれを追認することはない。出すなら声明ではなく当時のデータだ。データ抜きなら政治的都合で何とでも言える。エジプトという専制国家ならではの腐敗の極みだ。証拠も出さずに○○が卒業生だと声明を出す先進国の大学は絶対にない」 「かつて小池都知事から私が聞いたのはカイロ大学『首席卒業は、学生が一人しかいなかったから』という話だ。私は、外国人学生専用のコースかと思った(私が留学したフランスでは外国人専用の博士号コースがあった)が、『学生一人』すら嘘だったようだ」(筆者注・当時のカイロ大学文学部社会学科には約150人が在籍していた) また池田信夫氏(経済学者、アゴラ研究所代表取締役所長)はJBpressの「小池百合子氏とカイロ大学の深い闇」で、この問題を取り上げ、見解を述べている。「一卒業生について大学が声明を出すのは異常であり、先進国では考えられない」「むしろこれで明らかになったのは、小池氏の学歴を証明する証拠はカイロ大学に存在しないということだ。卒業生名簿に小池氏の名前があれば、こんな声明を出す必要はなく、そのコピーを出せばいい。卒業証書を発行した記録を出してもいい」「エジプト大使館が都議会の日程を把握しているはずがないので、これは小池氏が自民党の(小池氏に卒業証書類の提出を求める)決議案を封じるためにエジプト大使館に頼んだものと思われるが、政府の声明はそう簡単に出せるものではない。大使館がそれに応じたのはなぜだろうか。(中略)その理由は、逆にカイロ大学が『あの卒業証書は大学の発行したものではない』と認めたらどうなるかを考えればわかる。その瞬間に小池氏の選挙違反が決まり、当選無効になる。小池氏の学歴を証明するものはカイロ大学の声明以外に何もないので、彼女の運命はエジプト政府に握られているのだ」 (参考記事)小池百合子氏とカイロ大学の深い闇https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/60888  またカイロ大学文学部で学んだ経験があり、『カイロ大学“闘争と平和”の混沌』という著書もあるジャーナリストの浅川芳裕氏はJBpressの「カイロ大『小池氏は卒業生』声明の正しい読み解き方」で、次のように指摘している。「(小池氏が)カイロ大学を掌握する権力者に頼み込み、入学した行為が尋常ではないのは確かです。カイロ大学の声明でわざわざ『正規の手続き』と強調している点、また大学の公式サイトではなく、大使館という外交ルートを通じて声明を発表している点も尋常ではありません」「(エジプトの政府系新聞アハラーム紙の)記事を深読みすれば、都知事にまで出世した小池氏に対し、彼女を育てたハーテム氏、つまりはエジプト軍閥国家への恩を忘れるなよ(さもなければ真相をばらすぞ)、という脅迫じみたメッセージと解釈することも可能です」「学歴詐称の疑惑の先にある、真の問題は、今回の声明への見返りが何かということです。小池氏はこれまでハーテム人脈の権力構造により、特別待遇を受けてきた。その恩に加え、小池氏は、学歴詐称疑惑の渦中で迎える都知事選の直前、エジプトの軍閥から助け舟を出された格好です。(中略)これは、日本の国益にとって、より本質的な問題といえます」(参考記事)カイロ大「小池氏は卒業生」声明の正しい読み解き方 https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/60884)  元週刊朝日編集長の山口一臣氏も、ツイートで懸念を表明している。「エジプトに限らず、アメリカやヨーロッパ各国はもちろん、中国や北朝鮮、ロシアといった国を含めて外国政府が言うことを疑いなく信じることは危険です。中国は尖閣諸島は中国古来の領土と言ってますが、信じますか? ロシアは、北朝鮮は、韓国は……。日本だって国益のためにウソくらいつきますよ」「最大の問題は(小池氏が)外国政府の強い支配下にあるということでしょう。カイロ大学に声明を出してもらったことで、以後、彼女の生殺与奪権は軍閥独裁のエジプト政府が握りました。目先の批判をかわすために、国を売ったのと同然です」』、「先進国の大学なら、全ての記録を保管し公表できる。声明など出すこと自体が政治的で胡散臭い。日本からの援助を期待する外国政府まで使う。立候補前の政治工作だろう」、との「舛添要一氏」の指摘は正論だ。「最大の問題は(小池氏が)外国政府の強い支配下にあるということでしょう。カイロ大学に声明を出してもらったことで、以後、彼女の生殺与奪権は軍閥独裁のエジプト政府が握りました。目先の批判をかわすために、国を売ったのと同然です」、との「山口一臣氏」の指摘は極めて重大な告発だ。
・『なぜ小池氏の学歴詐称疑惑が問題なのか?  小池氏の学歴詐称問題に関し、なぜ学歴ばかりを追及するのか、他にもっと大事なことがあるではないかという声も聞く。それはもっともで、筆者自身も、政治家の能力と学歴はあまり関係がないと思っている。しかし、学歴詐称は犯罪であり、看過ごしてよい問題ではない。日本に限らず、それが原因で辞任した政治家や政府高官も少なくない。ところが日本のメディアは、アラビア語ができ、エジプト事情に詳しい人材が少なく、元々政治権力に立ち向かう姿勢にも乏しい。そのため、本件が重大な問題であるにもかかわらず、きちんとした報道がなされていない。一方、欧米では、嘘は厳しく断罪され、小池氏のようなケースをメディアが見過ごすことはあり得ない。 筆者は、アラビア語を学び、エジプトの大学(カイロ・アメリカン大学というカイロ大学とはまったく別の米系の私立大学)を卒業した者の責務として、疑惑解明に取り組むことにした。英国に住んでいるので、エジプトまでのフライトは5時間ほどという地の利もある。 小池氏が都知事に相応しいかどうかは、4年間の都政の実績の評価、公約の達成度合い、人間性など、色々な面を検討して判断されるべきであるのは当然だ。しかし、それらは筆者でなくてもできることなので、他の人々にしっかりやってもらいたいと思っている。筆者の本業は小説執筆で、こうしたことに割ける時間は限られている。そのため学歴詐称疑惑に絞って調査・執筆をしている。 ただ、2年間にわたる本件の調査を通じて見えてきた小池氏の人間像は、石井妙子氏が『女帝 小池百合子』にあますところなく書いたとおり、政治家としての適性を著しく欠いているように思われる』、全く同感である。「2年間にわたる本件の調査」とは頭が下がる。

第四に、6月29日付け東洋経済オンラインが掲載した慶應義塾大学 経済学部教授の土居 丈朗氏による「都知事選、「都債増発で公約実現」の落とし穴 東京都が「財政再生団体」に転落してしまう?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/359133
・『7月5日に投開票される東京都知事選では、都政のあり方をめぐり論戦が繰り広げられている。その中で、東京都の借金である都債も1つの焦点となっている。 新型コロナウイルス対策として、東京都は緊急事態措置を発して多くの業種や施設に休業要請を行った。要請に応じた事業者などには協力金を給付し、重症患者を受け入れるべく病床の確保など医療提供体制を拡充した』、小池知事は気前のいいことを言っているが、「東京都」のフトコロ具合も気になるところだ。
・『都債の増発余地はあるのか  東京都は、2020年度に入って1兆円を超える予算を増額して、コロナ対策のために支出できるようにした。ただ、その財源の工面は容易ではなく、東京都が積み立てていた財政調整基金を取り崩して捻出し、その残高は約9350億円から493億円まで大幅に減少した。今後、2020年度の税収が予算の見込みより減少すれば、都債の追加発行は不可避となる。 都知事選では、新規の施策のため15兆円もの都債増発が必要な公約を掲げている候補者もいる。こんな状況で、東京都は都債を増発できるのだろうか。 都知事の意思決定次第では、意外と増発できる可能性がある。地方自治体が地方債を発行するには、地方債協議制度に則った手続きを取らなければならない。都道府県と政令指定都市は総務大臣、市区町村は都道府県知事の同意を得なければならないが、2016年度以降、一定基準以上に財政状況がよい(実質公債費比率が18%未満の)自治体は、民間金融機関から借りる形で地方債を発行する場合に限り、届出だけで地方債を発行できるようになった。 ただ、一定基準以上に財政状況がよい自治体でも、国(財政投融資)からお金を借りる場合には、届出でなく同意が必要で、同意が得られれば、民間金融機関から借りるより長期・低利で借りられる。 東京都は、実質公債費比率(標準的な状態で経常的に得られる税収に対する実質的な公債費の割合)は近年1.5%前後で、都債の大半を民間金融機関から借りている。しかも、その大半を市場で公募する形で発行している。したがって、国から同意を得なければ都債が発行できないという立場ではない。 財政投融資は民間金融機関より長期・低利な上、将来の元利返済を国が地方交付税で面倒を見てくれる恩典まで付いている。 しかし、東京都は1954年度の制度創設以来、地方交付税(厳密にいうとそのうちの普通交付税)を一度も国から受け取っていない。地方交付税の分配額の計算上、税収が多い自治体には普通交付税が配られないからであり、そんな恩典があっても東京都には何のメリットもない。 極言すれば、国の同意なく、東京都は独自に都債を発行できる。そして、これまでの都債発行の実績を見て、民間金融機関も安心して都の起債に応じている』、「財政調整基金を取り崩して捻出し、その残高は約9350億円から493億円まで大幅に減少」、ずいぶん思い切って取り崩したものだ。「国の同意なく、東京都は独自に都債を発行できる」、メリットを享受してきたようだ。
・『赤字地方債の発行は「例外中の例外」  ただ、東京都も発行した都債の使途は限定されている。地方財政法第5条は、地方債発行で得た財源の使途を限定している。簡単にいえば、国の建設国債と似て、公共事業等に充てなければならない。地方債の使途は、国債より厳格である。 国は建設国債だけでは財源が不足するため、公共事業等に充てる金額を上回る国債を増発するために、赤字国債を発行している。しかし、赤字地方債の発行は例外中の例外だ。過疎部の事業や地方交付税が予定ほど受け取れなかった場合などに限られる。 赤字地方債の代名詞となっている臨時財政対策債は、地方交付税が配られる自治体だけが発行でき、東京都は発行できない。税収が見込みより減った場合には「減収補填債」という赤字地方債が発行できるが、それはあくまでも減収を埋め合わせるもので、それを新規施策に充てることはできない。 それでも「抜け道」はある。それは、地方債充当率という考え方に基づく。地方債充当率とは、地方債の使途となる対象事業ごとに、その事業費の何%まで地方債発行で得た収入を充ててよいかをあらかじめ総務省が示したものだ。それは建設国債の考え方と異なる。 建設国債は、国の公共事業費相当額までなら満額を発行できる。しかし、地方債は対象事業でも地方債充当率で定められた比率までしか発行できない。 しかし、東京都の一般会計(2020年度当初予算)で、歳出総額に対する都債収入の割合は2.8%である。ちなみに、公共事業費に相当する投資的経費は歳出総額の14.3%である。対象事業について75%~90%ほどある地方債充当率からして、対象事業で都債を増発できる余地がまだあるといえる。現都政は都債発行を抑制しようとしており、地方債充当率に達するまで目いっぱい都債を発行していないというわけだ。 となると、地方債の使途として認められている対象事業に充てる名目で都債を発行しつつ、当初その事業に充てようとしていた税財源を付け替えて、給付金など地方債の使途として認められない新規事業の財源に回せば、都債を追加発行して新規事業を事実上実施できることになる』、なるほど上手い手だ。
・『都債増発に立ちはだかる壁  だが、都債増発に立ちはだかる壁がある。1つは民間金融機関である。前述の通り、都債の大半は民間金融機関が引き受けている。しかもその多くは公募発行である。 公募発行は、定期的に定まった金額をコンスタントに発行することで、安定的な起債が可能となる。巨額の都債を突然増発して、民間金融機関に都債の消化を無理に押し付けるわけにはいかない。消化が滞れば、これまで築き上げてきた証券市場での銘柄と安定的に起債できるという地位を失ってしまう。増発するとしても、民間金融機関が納得できるような形で起債しないといけない。 さらに、都議会である。都債を増発するにせよ、予算案は都議会での議決を要する。新しい都知事も、都議会の意向を無視できない。都議会で過半数の賛成を得なければ、都政は運営できない。 しかし、国と違って地方自治体の首長の権限は強い。そこが、議院内閣制ではなく二元代表制であることの特徴の1つだろう。予算や条例について、知事は「専決処分」を行うことができる。専決処分とは、議会の議決を経なければならない案件について、地方自治法の規定に基づき、議会が議決する前に首長が処理することである。予算や条例について、緊急を要するなど条件を満たせば、議会の議決がなくても決済できるのだ。 小池百合子都知事も、新型コロナウイルス感染症対策として2020年度補正予算や感染症対策条例などを専決処分している。もちろん、多くの自治体でも専決処分はしばしば用いられている。 過去に専決処分を乱用した首長がいたこともあって、事後的に議会に承認を経ることになっている。条例や予算に関する専決処分は、議会で不承認とされた場合には、首長は必要と認める措置を講じるとともに議会に報告することが義務づけられた。それでも、その専決処分が違法でなければ、議会で不承認となっても効力は失われない。 つまり、都知事は都債を大量に増発する予算案を都議会が否決しそうなら専決処分をし、民間金融機関に消化を協力してもらえば、新規施策が実行できるということになる。ちなみに、小池都知事の専決処分はほどなく都議会で承認されている』、「都知事」の権限はやはり大きいようだ。
・『「財政再生団体」転落の可能性  このように考えると、都知事は何でも可能なように見える。だが、5~10年後に都債を償還するときに落とし穴が待ち受けている。都債といえども償還期限は5~10年。民間金融機関もそれより長い満期には付き合えない。償還期限が到来すると、完済しないまでも相当程度を返済するため、償還の財源が必要になる。その額が兆円単位となると、東京都は「財政再生団体」に転落するかもしれない。 東京都の一般会計は、2020年度当初予算で歳出総額が7.4兆円、税収が5.4兆円。地方財政健全化法に基づき、実質赤字比率が約8.5%を超えると、都道府県は財政再生団体、つまり北海道夕張市と同じ状態になる。 実質赤字額が約3000億円を超えると、東京都は財政再生団体に転落する。リーマンショックが起きた2008年度に5.3兆円あった税収が2009年度には4.3兆円へ、たった1年で1兆円も減るような東京都の税収構造である。兆円単位の借金返済を強いられる年に、税収減に直面すればひとたまりもない。 財政再生団体になれば、予算などについて国の指図を受けなければならず、独自の行政サービスはほぼ不可能になる。その前に、実質赤字比率が2.5%を超えると、都債は総務相の許可を受けなければ発行できなくなる。 今の東京都の健全財政路線は、1998年度に実質赤字が1000億円に達し、財政再建団体(当時)に転落しかけたため、それを避けようとする努力から始まった。任期が4年の都知事が、償還期限が5年を超える都債を大量に発行して、その返済時にはその座にいないようなことにならないよう、議論が必要だろう』、「たった1年で1兆円も減るような東京都の税収構造」、法人税の比重が大きいので、不安定にならざるを得ない。「兆円単位の借金返済を強いられる年に、税収減に直面すればひとたまりもない」、確かに盤石ではないようだ。「1998年度」は青島幸男知事の末期で、ありそうな話だ。
タグ:ダイヤモンド・オンライン 赤字地方債の発行は「例外中の例外」 国の同意なく、東京都は独自に都債を発行できる 「『女帝 小池百合子』著者に聞く、小池都知事に賛同できない理由」 『女帝 小池百合子』(文藝春秋) 石井妙子 政治家を“演じている”小池氏に当初は興味なし カイロ時代の生真面目な同居人が抱えていた秘密 先進国の大学なら、全ての記録を保管し公表できる。声明など出すこと自体が政治的で胡散臭い。日本からの援助を期待する外国政府まで使う。立候補前の政治工作だろう 最大の問題は(小池氏が)外国政府の強い支配下にあるということでしょう。カイロ大学に声明を出してもらったことで、以後、彼女の生殺与奪権は軍閥独裁のエジプト政府が握りました。目先の批判をかわすために、国を売ったのと同然です なぜ小池氏の学歴詐称疑惑が問題なのか? 東洋経済オンライン 土居 丈朗 「都知事選、「都債増発で公約実現」の落とし穴 東京都が「財政再生団体」に転落してしまう?」 都債増発に立ちはだかる壁 都債の増発余地はあるのか 財政調整基金を取り崩して捻出し、その残高は約9350億円から493億円まで大幅に減少 民間金融機関が納得できるような形で起債しないといけない 「財政再生団体」転落の可能性 たった1年で1兆円も減るような東京都の税収構造 兆円単位の借金返済を強いられる年に、税収減に直面すればひとたまりもない 小池都知事問題 (その2)(「東京アラート」は一体何だったのか? 新規感染者40人超えも 発令基準を見直しへ、『女帝 小池百合子』著者に聞く 小池都知事に賛同できない理由、卒業証書を公開しても疑惑を払拭できない小池都知事 エジプト軍事政権に握られた都知事の生殺与奪、都知事選 「都債増発で公約実現」の落とし穴 東京都が「財政再生団体」に転落してしまう?) アラブ最高峰のカイロ大は留年も当たり前 腐敗、日本政府の援助を見据えた思惑も コネによってカイロ大の2年生に編入できたようですが、進級できず落第し、卒業はできなかった カイロ大は小池氏が卒業生であることをむしろ利用したい 莫大な借金、顔のあざに苦しんだ少女時代の小池氏 “下”に落ちる恐怖が過度な上昇志向を形成 「クールビズ」を流行 yahooニュース HUFFPOST 経済的に不安定な幼少時代からの環境は、社会の上へ上へと常にはい上がらないと、下に落ちてしまうという恐怖感を彼女に植え付けたことでしょう。組織の上層部にいる有力者とだけつながって世渡りをするという小池氏の手法は、父親譲り 環境大臣 当時、水俣病患者やアスベスト被害者に対して実に冷酷な対応 「「東京アラート」は一体何だったのか? 新規感染者40人超えも、発令基準を見直しへ」 「東京アラート」基準を緩和へ 異なるロゴ 学業実体の有無という別の問題 いくらカイロ大学が卒業を認め、卒業証書類を持っていたとしても、学業の実体がなければ、学歴とは認められない エジプトの軍事政権に政治生命を握られた小池氏 助けを求める人々を足蹴にしたくなる心理 “芦屋令嬢”を演出しても出てしまう地金 「卒業証書を公開しても疑惑を払拭できない小池都知事 エジプト軍事政権に握られた都知事の生殺与奪」 防衛政策を理解していないのに、記者会見では、さも中身を理解しているように話す。鋭い質問には論点をそらした上で、さも堂々と答えていた レクチャーの時間を取ろうとしても、雑誌のグラビア撮影やテレビの取材を優先するので時間を取れなかった 新型コロナの危機下でけん玉、かるた、こんまり… 調べるほど女性代表には見えなくなった小池氏 踏みつけられた女性にこそ見出した尊敬の念 彼女たちは高い地位にいる男性によって選ばれた女性であって、女性たちの塊の中から上へと押し上げられた人材ではありません JBPRESS 黒木 亮 大阪の吉村知事の真似をしただけで、早くも「東京アラート」の見直しとは節操がない 都知事選対策? 現場は「思いは同じ」
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人権(その3)(実は世界中で行われていた「強制不妊」〜弱者に優しい福祉国家でも…、《東大特任准教授ヘイト炎上》「30代アカデミック男性はなぜイキるのか」、「偏見や差別」はなぜ生まれる 社会心理学の観点から読み解く、小田嶋氏:「日本人感」って何なんだろう) [社会]

人権については、昨年3月20日に取上げた。久しぶりの今日は、(その3)(実は世界中で行われていた「強制不妊」〜弱者に優しい福祉国家でも…、《東大特任准教授ヘイト炎上》「30代アカデミック男性はなぜイキるのか」、「偏見や差別」はなぜ生まれる 社会心理学の観点から読み解く、小田嶋氏:「日本人感」って何なんだろう)である。

先ずは、昨年5月6日付け現代ビジネスが掲載した立命館大学教授の美馬 達哉氏による「実は世界中で行われていた「強制不妊」〜弱者に優しい福祉国家でも…不妊が忌避される時代をどう考えるか」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/64409
・『強制不妊の「救済法」成立  2019年4月24日、旧「優生保護法(1948〜96)」の下での障害者らに対して行われた強制的な不妊(男女の生殖の能力を奪うための外科手術や放射線照射)に対する「おわび」と一時金320万円の支給を行うと定めた救済法が可決成立した。 強制不妊は法的には「優生手術」と呼ばれていたもので、その目的は「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止するとともに、母性の生命健康を保護すること」と書かれている。 これは20世紀初頭に、「日本民族」の遺伝的な質を改善するためには、遺伝病と決めつけられた精神・身体・知的障害者に子孫を残させないようにすることが必要だとする「優生学」の考え方から生まれたものだ1。 この意味での優生学は現在では科学として否定されている。 マスメディアでも、本人の意志を無視し、時には麻酔を使ったり(盲腸の手術と)騙したりしてまで強制的に生殖能力を奪った日本政府の過去の行為は許されない、という論調一色だ。 だが、ここで振り返ってみる必要があるのは、なぜそんな常識的に考えて非道なことが1996年まで(実際の手術は1992年まで)合法的に行われ続けてきたのか?という点だ。 強制不妊に関わった行政職員も医師もわざわざ障害者を苦しめようと思っていたり、不妊手術で喜びを得るサディストだったりしたわけではない。 むしろ、法律に従った福祉の業務の一つとしてこなしていたはずだ。 じっさい、1970年代までは「人権意識」の高いはずの欧米先進諸国でも、障害者に対して強制不妊や事実上の強制的な不妊が行われていた。 つまり、障害者に対する強制不妊を国が責任を持って行うことは、20世紀のかなりの期間、ある種のグローバル・スタンダードだったのだ。 1 そもそも障害の多くは単一の遺伝子だけで定まっているものではない。また、仮に遺伝子と関連した障害であった場合でも、そうした遺伝子の突然変異は自然に生じることがあり、その遺伝子があっても発症していない人もいる(劣性(潜性)遺伝の場合)ため、障害者の生殖能力を不能にすることは、その障害の根絶にはつながらない』、「一時金320万円の支給」とは「強制不妊」への補償としては少ない気もするが一歩前進ではある。
・『「国民優生法」の時代  「優生保護法」の前身は戦時中の「国民優生法(1940年)」だった。 この法律は、優生学の立場から障害者に対する強制不妊や妊娠した場合の中絶を政策として推し進めるために、厚生省(当時)によって1937年から提案されていた。 だが、戦時中には「産めよ、殖やせよ」と出産が奨励されていたため、いかなる理由であれ不妊手術や中絶手術を法的に認めること自体に強い批判が議会で浴びせられ、最終的には中絶の規制が中心の法律となったという。 そのため、「国民優生法」での強制不妊は実際には500件程度だった。 強制不妊が積極的に行われたのは、民主化されたはずの戦後1948年にできた「優生保護法」以降である(確認されるだけでも16000件程度と言われる)。 戦後は、植民地の喪失による多数の引き揚げ者の存在や兵士の復員によるベビーブームなどのため、過剰人口が問題視されており、人口政策の中で強制不妊や中絶は受け入れられやすかったのだろう。 そして、優生学は非科学的でしかも障害者差別だとの批判が1970年代から存在したにもかかわらず、1996年まで「優生保護法」は漫然と存在していた』、「1996年まで「優生保護法」は漫然と存在」、とはいかにも日本の厚労省らしい不作為の罪だ。
・『世界の強制不妊  日本の優生政策の直接のモデルはナチスドイツの「遺伝病子孫予防法(1933年)」だったとされる。 ただし、こうした立法は第二次世界大戦での枢軸側のファシズム国家だけに特有なものではなかった。 同じ20世紀前半に、障害者に対する強制不妊の法律は、米国、カナダ、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドなどで成立していた。 優生学的な立法の最初は米国インディアナ州の「不妊法(1907年)」であり、1920年代には米国の多くの州で障害者に対する強制不妊が立法化されていた。 そして、強制不妊にもっとも野心的だったのは、最初の不妊法を1909年に制定したカリフォルニア州で、ナチスドイツの「遺伝病子孫予防法」のモデルともなった。 米国の最高裁判所が、1927年に州法に基づいた強制不妊を合憲とみとめた有名な判決(バック対ベル判決)では、次のように述べられている(S・トロンブレイ、藤田真利子訳『優生思想の歴史』明石書店、139頁)。 欠陥を持った子孫が罪を犯しそれを処刑したり、自らの痴愚のために餓死するのを手をこまねいて待つよりも、明らかに不適な人間が同類を増やすのを社会は防ぐことができる。強制ワクチン接種と同じ原則が、卵管切除の場合にもあてはまる。 いま読み直すとひどく差別的で驚くが、当時はこれが社会改良のための進歩的で人間的な手法(しかも低コスト)だったのだ。 しかも、こうした優生学はイデオロギーとはあまり関係なく、第二次世界大戦で連合国の中心となった米国と枢軸国の中心となったドイツの両方が推し進めている。 優生学は(当時の)「科学」に基づいた政策として、どちらかというとリベラルないし左翼側に支持されていた。 とくに注目すべきは社会民主主義だった北欧諸国(ノルウェー、スウェーデン、フィンランド)でも、先進的な福祉政策とセットで1970年代まで障害者に対する強制不妊が積極的に行われていたことだ。 ちなみに、ナチスドイツは敗戦までに40万件以上の強制不妊を行っていたとされ、戦後の旧西ドイツ政府は被害者に補償を行っている(1980年に一時金、1987年からは年金)』、「強制不妊にもっとも野心的だったのは、最初の不妊法を1909年に制定したカリフォルニア州で、ナチスドイツの「遺伝病子孫予防法」のモデルともなった」、「優生学は(当時の)「科学」に基づいた政策として、どちらかというとリベラルないし左翼側に支持されていた」、「社会民主主義だった北欧諸国(ノルウェー、スウェーデン、フィンランド)でも、先進的な福祉政策とセットで1970年代まで障害者に対する強制不妊が積極的に行われていた」などの事実は初めて知った。
・『スウェーデンでのスキャンダル  強制不妊の被害者への補償の問題が国際的に大きく取り上げられたのは1997年、福祉先進国として知られるスウェーデンで、1935〜1975年に行われていた強制不妊(およそ6万人)を告発する記事が新聞報道されたことをきっかけとしている。 このとき、とくに問題となったのは、強制不妊の「強制」の中身だ。 つまり、法律として強制になっているかどうかではなく、本人の同意がある場合でも実質的に強制だったかどうかが問われたのだ。 具体的にいえば、次のような脅しが政府職員から障害者に対して行われていたという。 貧困者やマイノリティに対して、不妊手術に同意する申請書を書かないなら、手当や住居を取り上げる、と脅す。 シングルマザー女性に対して、申請書を書かなければ親権を取り上げて子どもと引き離す、と脅す。 中絶希望する女性に対して、申請書を書かなければ中絶を許さない、と脅す。 障害者や子どもという弱者に「優しい」はずの福祉国家が、「親となる資格がない」と判断された人びとに対して、事実上の不妊を強制していたことがスキャンダルとなったのだ。 強制不妊に対するスウェーデンの国としての対応は素早く、1999年には補償と謝罪を行っている』、「スウェーデン」では「脅しが政府職員から障害者に対して行われていた」のであれば、確かに「実質的に強制だった」。
・『リプロダクティブ・ヘルス/ライツ  日本での「優生保護法」改正には外圧の影響が大きかった。 1994年にカイロで行われた国際人口・開発会議で、リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(すべてのカップルと個人が性と生殖に関して自ら決定する権利を持つという考え方)が打ち出された頃から、「優生保護法」の時代錯誤に対する批判は国際的に高まったからだ。 その結果、1996年には「不良な子孫の出生防止」という優生学的な条項を削除した「母性保護法」に改訂された。 だが、その際には「当時は合法的な措置だった」との理由から強制不妊の被害者への補償や謝罪は議論されず、その後、補償や法的救済を求める国連人権委員会からの勧告(1998年)があっても日本政府は動かなかった。 事態が動いたのは2018年、宮城県の60代女性が国家賠償訴訟を起こしてからだ。 さまざまな問題を積み残してはいるが、それなりのスピード感で2019年には「救済法」が成立したのが現状である。 「強制不妊16000件」という数字の記録ではなく、一人の人間が苦しみの経験を語る生々しい記憶こそが、人びとの共感を呼び、社会を動かしたのだ』、「国連人権委員会からの勧告(1998年)があっても日本政府は動かなかった」が、「事態が動いたのは2018年、宮城県の60代女性が国家賠償訴訟を起こしてから」、厚労省はやはり尻に火がつくまでは動かないようだ。
・『不妊が忌避される時代  だが、社会学者の習性かもしれないが、私は、2010年代の日本で強制不妊を悪と見なす風潮が高まったところに若干の気持ち悪さを感じている。 もちろん、優生学による強制不妊に対して弁護すべき点は皆無だ。 だが、強制不妊がネガティブに見られる時代とは、(不妊を含めて)子どもを産まないことがネガティブに見られる時代と一致するように思えるのだ。 子どものない夫婦が白眼視された戦時中、優生学的な強制不妊や中絶は(戦後に比べて)あまり行われていなかったことはすでに指摘した。 2010年代の日本では、国民全体での「産めよ、殖やせよ」は否定されているが、個々人のレベルで、不妊はカップルや個人の努力で克服すべき病気としてネガティブにとらえられている。 じっさい、不妊症の治療として体外受精で生まれた子どもは18人に1人となり、(主に女性が)妊娠に向けて体調管理に気をつける「妊活」という言葉も市民権を得ている。 生殖技術=生殖補助医療の存在によって自分と遺伝的につながった子どもを持ちたいという欲望が増強され、妊活や不妊治療への努力が奨励される時代だからこそ、不妊を強制された被害者に共感が集まっているのではないだろうか。 さらに、障害者に対する強制不妊が否定されると同時に、出生前診断が一般的になり、体外受精では障害児が生まれないように細心の注意が払われている時代が現代であることを思うと、なんとも複雑な気分になってしまうのだ』、「社会学者」らしい鋭い指摘だ。

次に、12月7日付け文春オンラインが掲載した文筆家の古谷 経衡氏による「《東大特任准教授ヘイト炎上》「30代アカデミック男性はなぜイキるのか」」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/17518
・『〈弊社 Daisy では中国人は採用しません〉〈中国人のパフォーマンス低いので営利企業じゃ使えないっすね〉 AI開発などを行う「Daisy」代表で、東京大学大学院情報学環・学際情報学府の特任准教授・大澤昇平氏(31)が自身のTwitterに投稿した内容に、人種差別だという批判が殺到している。24日には東大も「書き込みは大変遺憾」とする見解を発表、28日には対応措置を検討する調査委員会を設置する騒動になっている。 なぜ若手研究者として活躍している彼はこのような投稿をしたのか。そこから見えてくるものは何か。テレビ・ラジオなど多方面で活躍する文筆家で、『「意識高い系」の研究』(文春新書)の著者、古谷経衡氏(37)が紐解いた。 東京大学“特任”准教授・大澤昇平の「中国人は採用しない」等のツイッター発言が、「最高学府」東京大学の公式謝罪に至り、大澤の寄付講座のスポンサーが全社降板を発表するなど、事態は拡大の様相を見せている。 私が所謂「大澤騒動」を俯瞰してみるに、大澤の一連のヘイト発言は典型的なネット右翼そのものである。大澤が30代前半であることを考えると、もはやアラフィフがその主力を占めるネット右翼の中では、かなり若手であるという第一印象を持った。 今どきの30代前半で、ここまで露骨なヘイト発言を実名と役職を公開して開陳する人物というのも珍しい。ネット右翼界隈での左翼の通称である「パヨク」という言葉を躊躇なく使用するところをみると、“ネット右翼偏差値”は50くらい。つまりどこにでもいる平均的なネット右翼像そのものなのだ。 ただし、大澤が凡庸なネット右翼と決定的に違うのは、ナルシシズムに満ちた選民意識が見え隠れするところである。自らを「上級国民」と呼称し、自分を批判する者を「下級国民のパヨク」と呼ぶ。このような大澤のナルシシズム・選民意識的差別思想はどこから生まれたのか』、「東京大学“特任”准教授・大澤昇平」が「どこにでもいる平均的なネット右翼像そのもの」だが、「ナルシシズムに満ちた選民意識が見え隠れする」、とはさすが「ネット右翼」に詳しい「古谷氏」ならではの鋭い指摘だ。
・『〈異例の飛び級昇進を実現、31歳にして准教授となった〉  手掛かりになるのは、大澤の唯一の著作、2019年9月に刊行したばかりの『AI救国論』(新潮新書)である。 本書は、福島高専(高等専門学校)から筑波大学に編入した大澤の「自分自慢」のナルシシズムで全編の約1/3が占められている。さらに大澤は、自身が「最年少の東京大学准教授」であることを何度も書き、なぜに自分がこのような名誉ある地位を手に入れたか、についての自慢が続く。 〈簡単に自己紹介をしよう。私は東京大学の准教授。(略)その後、学内での熾烈な出世争いを勝ち抜き、大学としては異例の飛び級昇進を実現、31歳にして准教授となった〉(11頁) 〈たとえば、優秀な若手を評価する言葉に「若いのに優秀」という文言がある(私もこれまで何度も言われてきた)〉(19頁) 大澤は本文中で、おそらく意図的に「特任准教授」という自らの正式な役職を「准教授」と置き換えて使用している(ただし批判を恐れてか、ごく一部「特任准教授」という正式名称が登場する)。「東京大学准教授」と「東京大学特任准教授」では、ソ連軍のT-34とイタリア軍の豆戦車ぐらい意味合いが違うが、大澤はおそらく意図的に自分が「東大准教授」であることを繰り返して、権威付けに利用している。 本書には分かりにくい文章が多く、支離滅裂さは際立っている。後半に登場する一文を引用しよう。 〈原理的に、自律分散型システムは、単一障害点を持たないため安定的に長期運用され寿命が長い点と、自由競争がプレイヤーの進化を促進するという点から、持続的にイノベーションを産むことを可能にしている〉(54頁) この一文を読んでこれが何を意味するのか分かる人は、行間を読む能力が高すぎるか、妄想家のどちらかだ。私はこれに似た言葉遣いをする人間を咄嗟に思い出した。東京都の小池百合子知事である。 ダイバーシティ、アウフヘーベン、ワイズ・スペンディング……。小池は、横文字を多用することによって、中身のない話をさも何か権威的な話をしている様にみせる。いわば「意識高い系」の典型だ。私の考える「意識高い系」を構成する要素は、「実際には何も中身がないが、必要以上に自己を過大に評価して他人に喧伝する」こと。このように大澤は、「意識高い系」と「ネット右翼」が合体した存在である。 私の知る範囲では、この2つの特性を併せ持つ人は少ない。いわば異形の存在である。なぜなら「意識高い系」は、漠然と多幸的で抽象的な横文字や世界観を好むので、具体的な国名や民族を指して憎悪感情を露わにする「ネット右翼」とは正反対の考え方を持つのが一般的だからだ』、「「東京大学准教授」と「東京大学特任准教授」では、ソ連軍のT-34とイタリア軍の豆戦車ぐらい意味合いが違う」、面白い比喩だ。「「意識高い系」と「ネット右翼」が合体した存在」とは確かに「異形の存在」だ。大澤氏は東大で博士号を取ったようだ。なお、東大は本年1月15日付けでヘイトスピーチ投稿で懲戒免職処分とした(Wikipedia)。
・『さらに大澤は、強烈な市場原理主義を信奉している。それはどういうことか。次の一文が象徴的だろう。 〈今生き残っている生物は生存競争というゲームを勝ち抜いた生物であり、脳の仕組みは生存競争を戦い抜くのに適した構造をしているということ、こうしたルールは、市場と企業との関係でも同様であるということである。(略)自然というのは弱肉強食なので、勝った生物だけが生き残るようにできている。生き残れるかどうかは、環境の変化にいかに合理的に適応できるかに大きく依存する〉(12頁) これが冒頭の、大澤による「中国人は採用しない=市場の中で非効率な労働者は差別されて当然」という発想の根幹にあると私は踏んだ。ただ、この「生存競争」という考え方は巷にあふれる「ダーウィンの進化論」の誤った解釈そのままだ。 ダーウィンが言ったのは、生物の競争による淘汰ではなく適者生存による「棲み分け」であった。そして、このダーウィンの進化論を同じように誤解釈し、人間社会にあてはめた「社会ダーウィニズム」(社会的な競争の結果の脱落の肯定)を政策として実行したのはナチスのユダヤ人迫害政策である。 断っておくが私は、大澤をナチスと同列だと言っているわけではない。ただ、大澤の本を読むと、この「社会ダーウィニズム」的な世界観を日本社会に広げるべきだと説得されているようにすら読めるのだ』、大澤氏はどうも一知半解なまま割り切って考えるくせのようだ。
・『〈歴史は雑学だと思って切り捨てたんだわ〉  大澤がこのような極端な考え方に至ったのは、人文科学分野での基礎的知識の欠如にあるように思えてならない。たとえば、次のような部分だ。 〈かつてドイツやロシアが社会主義国だった頃〉(55頁)〈日本も敗戦後に資本主義に移行し、高度成長期を迎えている〉(55頁) ドイツが社会主義国であったことは歴史上ない。東ドイツのことを言っているのかと思ったが、どうも大澤は文脈からするに、ナチス(国家社会主義ドイツ労働者党)の字面だけをみてナチスドイツが社会主義国家だったと思っているようだ。草葉の陰でムッソリーニが泣いているぞ。 当然、日本が敗戦後資本主義に移行した、という事実も存在しない。日本の資本主義がどこから開始されたかは、近世中期とも殖産時代とも見解が分かれるが、少なくとも敗戦後ではない。渋沢栄一もビックリの嘘が堂々と書かれている。本書の校閲には、もうちょっとしっかりして欲しい。 実際に彼のTwitterでは、基礎教養を軽視した発言が目に付く。 〈歴史は雑学だと思って切り捨てたんだわ。ごめんな。〉〈そんな雑学学んでどうすんの?アタック25でも出るの?〉(ともに11月23日)』、「歴史は雑学だと思って切り捨てた」にも拘らず、誤った歴史観で発言するとは、信じ難い。. 
・『差別ツイートは〈AIが適応し過ぎた結果である「過学習」〉  30代のアカデミック(本当にアカデミックかどうかは兎も角)な世界には、大澤のように“イキる”(意気がる)男性がしばしば現れる。「特任准教授」という肩書を振り回して、「目立ちたい、チヤホヤされたい」と公言して、テレビやネット空間で中身の無い無教養なナルシシズムを全開にしている者も散見される。彼らは、往々にして、やはり大澤と同じように炎上していく。 格好の悪さや洗練されていない部分を排除する彼らは、自らの都合の悪い部分から目を背け、そして、努力せずにして承認欲求を満たそうとする。無教養・反知性主義を肯定し、己の「無知」を平然と開き直る。だが、いかに相対的に他者に優越しているかを自分からことさらに喧伝する人間の心理とは、強烈なコンプレックスを苗床とした一種の心理的防御反応の結果に他ならない。それはえてして、読者や視聴者に見透かされる。大澤の世界観の根底にも、何かしらの埋めがたいコンプレックスがあったのだろう。 大澤は12月1日、自身のTwitterに英語で「Apology」(謝罪)と題した投稿を行った。そこには、今回の言動を陳謝するとともに、次のように今回の発言の背景を説明している。 〈一連のツイートの中で当職が言及した、特定国籍の人々の能力に関する当社の判断は、限られたデータにAIが適応し過ぎた結果である「過学習」によるものです。〉 都合の悪いことが起こると、「AIの過学習」とAIのせいにする。あれ、AIは救国の道程ではなかったのだろうか? 支離滅裂な謝罪の雑文に、見るべきところは何も無い。(文中敬称略)』、「無教養・反知性主義を肯定し、己の「無知」を平然と開き直る」、「都合の悪いことが起こると、「AIの過学習」とAIのせいにする」、こんなトンデモ人物を一時的にせよ「特任准教授」としていた東大にも大きな責任がありそうだ。

第三に、本年5月8日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した東洋大学社会学部教授の北村英哉氏による「「偏見や差別」はなぜ生まれる、社会心理学の観点から読み解く」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/236219
・『社会的カテゴリー(性別、人種、年齢、出身地、職業など)によって、生じてしまう「偏見・差別」。してはいけないことだとわかっていながらも、なかなかなくならないのも事実だ。なぜ偏見や差別が生じてしまうのか、どうすればなくすことができるのか。東洋大学社会学部教授で、編著『偏見や差別はなぜ起こる?』(ちとせプレス)がある北村英哉氏に詳しい話を聞いた』、興味深そうだ。
・『社会集団から生まれる偏見や差別  偏見や差別をゼロにするのは難しいが、社会全体で取り組めば減らすことはできるはず 人間が営む生活において、あらゆる状況や場面で偏見や差別が生まれているといっても過言ではない。 たとえば、心の中で偏見だとは思いながらも、「女性のほうが家事や育児に向いている」「男性のほうがリーダーシップがある」といった固定観念(ステレオタイプ)を持つ人は案外多いのではないだろうか。 『偏見や差別はなぜ起こる?』(ちとせプレス)によると、社会心理学ではステレオタイプ、偏見、差別は、それぞれに定義があるという。 まずステレオタイプとは「ある集団に属する人々に対して、特定の性格や資質をみんなが持っているように見えたり、信じたりする認知的な傾向」、偏見は「そのステレオタイプに好感、憧憬、嫌悪、軽蔑といった感情を伴ったもの」。そして差別は「ステレオタイプや偏見を根拠に接近・回避などの行動として現れたもの」としている。 また、一般に社会心理学では、一個人の先入観ではなく、なんらかの社会集団、社会的カテゴリーから生じる偏見や差別を対象にしている。偏見や差別については、これらの区別を前提にして考えなければならないのだ』、なるほど。
・『敵を見下すことで自己肯定感を高めるのが本  それでは、なぜ人間社会において、偏見や差別が起きてしまうのだろうか。北村氏はこう説明する。 「簡潔に言うと、『人には自分が有利になりたい、偉くなりたい』という心理があるからです。心理学用語では『自尊心』、今のはやり言葉だと『自己肯定感』とも言い換えられます。たとえば、自己肯定感が低い人が、違うタイプの人をけなして、自分のほうが上だと思うことで、相対的に自己肯定感を補うのが一般的なケースといえます」 社会心理学では、人は味方と敵を分ける心理が働き、自分にとって大切な味方を「内集団」、それ以外の敵を「外集団」と区別するのが基本的な考え方とされる。 外国人差別はこの典型的なパターン。特にヘイトスピーチの対象となりがちな在日韓国人や中国人は、日本人にとって身近な存在だからこそ敵だと判別されやすく、偏見や差別が頻発するのだ。 偏見や差別にさらされる対象は、LGBTや障害者などのようにマイノリティー側であることが多い。日本のマイノリティー差別の問題について、北村氏は以下のように指摘する。 「日本は諸外国と比べても、自分たちが社会の中で『普通』の存在だと考えることで安心感を得る人が多い傾向があります。障害者問題、性的マイノリティー問題、民族差別の問題においても、偏見や差別を持つ側がマジョリティーであることに安堵感を抱き、日々の生活を送っています」 民主主義国の日本では、原理的にあらゆる意見が多数決によって決められることが多く、少数者の意見が黙殺されやすいのも確かだ。 とはいえ、それでは少数派が常に負け続けることになり、人権的な価値が侵害され、不公正な社会になります。そのような社会にしないためにも、マイノリティーへの配慮が必須なのです」』、「原理的にあらゆる意見が多数決によって決められることが多く、少数者の意見が黙殺されやすいのも確かだ。 とはいえ、それでは少数派が常に負け続けることになり、人権的な価値が侵害され、不公正な社会になります。そのような社会にしないためにも、マイノリティーへの配慮が必須なのです」、その通りだろう。
・『マイノリティーへの理解が必要不可欠  偏見や差別が生じてしまうのは仕方のないことであり、決してゼロになることはないと考える人のほうが多数派かもしれない。しかし、北村氏は社会全体で真剣に取り組めば、それほど難しいことではないと語る。 「現実問題として、偏見や差別をゼロにすることは難しいかもしれませんが、少なくとも努力次第で極力減らすことはできるはずです。そのためには、マイノリティーの人への理解を深めることが重要。たとえば、義務教育の段階で、障害者施設を訪問するなど、障害者と触れることで知ることが何よりも大切です。ただ、接触仮説といって、理解が深まることでますます嫌悪感を抱くケースも少なくありませんが、そこは教師の力量によって感情を変えることもできなくはないと思っています」 個人的な感情はどうしようもできないと考える人も多いかもしれない。ただ、それを仕方がないことだと社会が認めてはいけない。感情を法律で罰することはできないが、モラルが低いとはいえるだろう。 日本社会も徐々に偏見や差別がいけないことだという認識が深まりつつあるようにも思えるが、現実ではまだまだマイノリティーへの理解は足りていない。差別根絶のためには、まず知識を得ることが最初の一歩のようである』、正論ではあるが、一般論過ぎて、残念ながら実践的な処方箋とは程遠いようだ。

第四に、6月19日付け日経ビジネスオンラインが掲載したコラムニストの小田嶋 隆氏による「「日本人感」って何なんだろう」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00116/00075/?P=1
・『Netflixの『13th -憲法修正第13条-』というドキュメンタリーを見た。 現在、この映画は、Netflixの契約者以外にもYou Tube経由で無料公開されている。 お時間のある向きは、ぜひリンク先をクリックの上、視聴してみてほしい。 世界中の様々な場所に、BLM(Black Lives Matter)のスローガンを掲げたデモが波及している中で、Netflixが、2016年に制作・公開されたこのオリジナル作品を、いまこの時期に無料で公開したことの意味は小さくない。 世界の裏側の島国でステイホームしている私たちとしても、せめて映画を見て考える程度のことはしておこうではありませんか。 ただ、視聴に先立ってあらかじめ覚悟しておかなければならないのは、1時間40分ほどの上映時間いっぱい、間断なく表示される大量の字幕を、ひたすらに読み続けることだったりする。この作業は、字幕に慣れていない向きには、相当に負担の大きい仕事になる。 私自身、途中で休憩を入れることで、ようやく最後まで見ることができたことを告白しておく。なんと申し上げて良いのやら、45分ほどのところで一度休みを取らないと、集中力が続かなかったのですね。 面白くなかったからではない。 今年見たドキュメンタリーフィルムの中では間違いなくベストだったと申し上げて良い。 とはいえ、評価は評価として、視聴の間、集中力を保ち続けることは、私にとって、とりわけハードなノルマだった。 理由は、中身が詰まりすぎていて、視聴するこっちのアタマがオーバーフローしてしまうからだ。それほど情報量が多いということだ。大学の授業でも、こんなに濃密な講義は珍しいはずだ。 上映が始まると、大学の先生や、歴史研究者、ジャーナリスト、政治家といった各分野の専門家たちのマシンガントークが延々と繰り返されることになる。その闊達なしゃべりの合間を縫うようにして、合衆国建国以来の黒人(←当稿では、『13th』の字幕にならって、アフリカ系アメリカ人を「黒人」という言葉で表記することにします。「黒人」と呼んだ方が、広い意味での歴史的な存在としての彼らを大づかみにとらえられるはずだと考えるからです)の苦難の歴史を伝えるショートフィルムや写真が挿入される構成になっている。 視聴者は、ひたすらに字幕を読み続けなければならない。なので、見終わった直後の感覚は、むしろ一冊の分厚い書籍を読了した感じに近い。私の場合、画面がブラックアウトした後は、疲労のため、しばらくの間、何も手につかなかった。 視聴する時間を作れない人のために、ざっと内容を紹介しておく。 『13th』というタイトルは、「合衆国憲法修正第13条」を指している。タイトルにあえて憲法の条文を持ってきたのは、合衆国人民の隷属からの自由を謳った「合衆国憲法修正第13条」の中にある「ただし犯罪者(criminal)はその限りにあらず」という例外規定が、黒人の抑圧を正当化するキーになっているという見立てを、映画制作者たちが共有しているからだ。 じっさい、作品の中で米国の歴史や現状について語るインタビュイーたちが、繰り返し訴えている通り、この「憲法第13条の抜け穴」は、黒人を永遠に「奴隷」の地位に縛りつけておくための、いわば「切り札」として機能している』、「憲法第13条の抜け穴」は、黒人を永遠に「奴隷」の地位に縛りつけておくための、いわば「切り札」として機能している」、とは初めて知った。
・『13条が切り札になった経緯は、以下の通りだ。 1.南北戦争終結当時、400万人の解放奴隷をかかえた南部の経済は破綻状態にあった。 2.その南部諸州の経済を立て直すべく、囚人(主に黒人)労働が利用されたわけなのだが、その囚人を確保するために、最初の刑務所ブームが起こった。 3.奴隷解放直後には、徘徊や放浪といった微罪で大量の黒人が投獄された。この時、修正13条の例外規定が盛大に利用され、以来、この規定は黒人を投獄しその労働力を利用するための魔法の杖となる。刑務所に収監された黒人たちの労働力は、鉄道の敷設や南部のインフラ整備にあてられた。 4.そんな中、1915年に制作・公開された映画史に残る初期の“傑作”長編『國民の創生(The Birth of a Nation)』は、白人観客の潜在意識の中に黒人を「犯罪者、強姦者」のイメージで刻印する上で大きな役割を果たした。 5.1960年代に公民権法が成立すると、南部から大量の黒人が北部、西部に移動し、全米各地で犯罪率が上昇した。政治家たちは、犯罪増加の原因を「黒人に自由を与えたからだ」として、政治的に利用した。 6.以来、麻薬戦争、不法移民排除などを理由に、有色人種コミュニティーを摘発すべく、各種の法律が順次厳格化され、裁判制度の不備や量刑の長期化などの影響もあって、次なる刑務所ブームが起こる。 7.1970年代には30万人に過ぎなかった刑務所収容者の数は、2010年代には230万人に膨れ上がる。これは、世界でも最も高水準の数で、世界全体の受刑者のうちの4人に1人が米国人という計算になる。 8.1980年代以降、刑務所、移民収容施設が民営化され、それらの産業は莫大な利益を生み出すようになる。 9.さらに刑務所関連経済は、増え続ける囚人労働を搾取することで「産獄複合体(Prison Industrial Complex)」と呼ばれる怪物を形成するに至る。 10.産獄複合体は、政治的ロビー団体を組織し、議会に対しても甚大な影響力を発揮するようになる。のみならず彼らは、アメリカのシステムそのものに組み込まれている。 ごらんの通り、なんとも壮大かつ辛辣な見立てだ。 私は、これまでアメリカ合衆国の歴史について、自分なりにその概要を把握しているつもりでいたのだが、この作品を見て、その自信を、根本的な次元で打ち砕かれてしまった。 というよりも、自分の歴史観に自信を抱いていたこと自体が、不見識だったということなのだろう。 私は、白人の目で見た歴史を要領良く暗記しているだけの、通りすがりの外国人だった。白人のアタマで考え、白人の手によって記されたアメリカの歴史を読んで、それを合衆国の歴史だと思い込んでいたわけだ。 黒人の立場から見れば、当然、もうひとつの別の歴史が立ち上がる。その、黒人の側から観察し、考え、分析し、描写した歴史を、これまで、私は知らなかった。というよりも、歴史にオルタナティブな側面があるということ、あるいは、正統とされている歴史の裏側に、別の視点から見たまったく別の歴史が存在し得るという、考えてみれば当たり前の現実を、私は、うかつにも見落としていたのである』、私も自分が知っていた「合衆国の歴史」の浅さを改めて痛感させられた。
・『このことは、私が、これまで生きてきた長い間、音楽とスポーツの世界で活躍する黒人に敬意を抱いている自分を、ものわかりの良い、フェアで、偏見に毒されていない素敵にリベラルな人間だと考えていたこと自体、どうにも浅薄な態度だったということでもある。 反省せねばならない。 もちろん『13th』の中で展開されていた主張だけが正しい歴史認識であり、その見方と相容れない歴史観のすべてが間違っているということではない。 とはいえ、アタマからすべてを鵜呑みにしないまでも、合衆国の歴史に私たち日本人が気づいていない角度から光を当ててみせた、この見事なドキュメンタリー映画を見ることの価値は依然として大きい。 世界を吹き荒れているBLMの背景を理解するためにも、読者諸兄姉にはぜひ視聴をおすすめしたい。 さて、人種・民族や国籍をもとにした差別構造は、世界中のあらゆる場所に遍在している。 今回は、一例として、モデル/俳優の水原希子さんが発信したツイートをターゲットとして押し寄せているどうにも低次元なクソリプを眺めながら、うちの国に特有なみっともなくみみっちい差別について考えてみたい。 発端は、「水原希子は、日本人感出すのやめてほしい」という趣旨の一般人のツイートだった。 当該のツイートが既に削除されている(投稿者が削除したと思われる)こともあるので、その内容についてここであえて詳しく追及することはしない。 ここでは、元ツイートが、民族的には米韓のハーフであり国籍としては米国籍である水原希子さんが、日本人っぽい名前で芸能活動をしていることを非難する内容であったことをお知らせするのみにとどめる。 このツイートに対して、水原さんは16日に 《私がいつ日本人感出しましたか?日本国籍じゃなかったら何か問題ありますか?29年間、日本で育って、日本で教育を受けてきました。何が問題なのか全く分かりません。》 という引用RTを発信した(引用元のtwは、現時点では既に削除済み)。 これが、このたびの炎上のきっかけだった。 なお一連の経緯は以下のリンク先で記事になっている。 ちなみに申し上げればだが、水原希子さんが発信した引用RTにぶらさがっているリプライにひと通り目を通せば、21世紀の日本における差別的言辞の典型例を、過不足なく観察することができる。その意味で、これは通読するに値するスレッドだと思う』、「水原さん」を巡る騒動は初めて知ったが、「水原さん」を「非難」する輩は心の狭い連中のようだ。
・『もっとも、うんざりしたりショックを受けたりして、途中で読むのをやめた人も少なくないはずだ。 どうか、びっくりして自分たちの国に絶望しないでほしい。 寄せられているクソリプは、この国の、ひとつの現実ではある。 とはいえ、それだけが日本のすべてではない。 私たちの国は、クソリプを投げる人々を大量に含む中で運営されている。 でも、それを読んでうんざりしているあなたのような人がいる限り、希望を捨てるべきではない。そう思って、なんとかやり過ごそうではありませんか。 思うに、「日本人感」という言葉が醸している「日本国籍を持っていない人間が、あたかも日本人であるかのように振る舞うことはやめてほしい」という要求のあり方自体が、明らかに差別的であることに、この言葉を持ち出した本人が気づいていないところが、どうにも痛々しい。 仮に「日本人感」といったようなものがあるのだとして、それは日本国籍保有者の特権ではないはずだ。民族的に純血な日本民族(←これだって、何代かさかのぼれば誰も確かなことは言えなくなる)にだけ許されている民族的に固有な表現形式でもない。日本の社会の中で育ち、日本語を駆使する日常を送っている人間であれば、誰であれ醸し出している、「雰囲気」に過ぎない。 ついでに申せば「日本人感」なるものは、特定の個人が意識的に「出す」ものではない。むしろ、特定の誰かを見てほかの誰かが「感じ取る」要素であるはずで、だとすれば、そんな曖昧模糊としたものを材料に他人を非難したり断罪したりすることは、差別そのものではないか。 水原希子さんは、引用したツイートでもわかる通り、自分の考えをはっきりと表明する人物で、その点でわが国の平均的な芸能人とは一線を画している。 そして、彼女のような「はっきりとものを言う女性」は、その発言内容の如何にかかわらず、必ずや(注:「あ」が抜けている)るタイプの人々から攻撃されることになっている。 それほど、うちの国の社会は風通しがよろしくない。 上でご紹介したツイートをきっかけに、彼女の発言が、続々と発掘されて、次々に炎上している。 《水原希子さん、最高では…?》これは、水原希子さんのファンとおぼしきアカウントが、「最も美しい顔ランキング2020」というサイトが、知らないうちに自分をノミネートしていたことを知った水原希子さんが、そのサイトの取り扱いと、他人の容貌を勝手にランク付けして評価する「ルッキズム」全般に対して苦言を呈する旨の発言をしたことを賞賛するツイートなのだが、これに対して 《ルックスでお金を稼ぐ仕事の人がこれいうのは流石におかしいのではないか》という言い方で、元のツイートを引用した投稿がまたRTを稼ぐことになる。 と、かねて「ルッキズム批判」への批判やフェミニズム言説の揚げ足をとることに熱心だった論客が、この炎上に乗っかる形で自説を開陳しはじめたりして、事態はさらに混沌としている。 なんとバカな展開ではあるまいか。 かように、わが国では、黒人vs白人、有色人種orWASPといった、わかりやすい対立軸が見えにくい半面、在日外国人、混血、二重国籍、被差別部落、先住民、女性、犯罪被害者といった一見しただけでは判別しにくい少数者や弱者への隠微な差別を繰り返すことで、差別趣味の人々の需要を満たしている』、「わが国では・・・わかりやすい対立軸が見えにくい半面、在日外国人、混血、二重国籍、被差別部落、先住民、女性、犯罪被害者といった一見しただけでは判別しにくい少数者や弱者への隠微な差別を繰り返すことで、差別趣味の人々の需要を満たしている」、さすが鋭い指摘だ。
・『冒頭で紹介した『13th』によれば、アメリカでは、人口の6.5%に過ぎない黒人が、刑務所の収容人数の中の40%を占めているのだそうだ。 別の計算では、アメリカの黒人男性が一生の間に刑務所に収監される確率は、30%以上で、つまり、黒人男性のうちの3人に1人が、生涯のうちに一度は受刑者としての生活を経験することになっている。この割合は、白人男性の17人に1人という数字と比べてあまりにも高い。 日本には黒人差別がない、ということを声高に主張している人たちがいる。 彼らの言明は事実とは異なっている。 当連載でも取り上げたことがある通り、うちの国には、大坂なおみさんを漫才のネタにして「漂白剤が必要だ」と言ってのけた芸人が実在している。 これを差別と言わずに済ますことは不可能だ。 ただ、アメリカに比べて、うちの国には黒人が少ない。 だから、黒人に対する差別を目の当たりにする機会を、日本に住んでいる私たちは、あまり多く持っていないという、それだけの話だ。 その代わりにと言ってはナンだが、在日コリアンや二重国籍者に対する差別はこの国のあらゆる場所で日常的に繰り返されている。 『13th』を視聴して、目が開かれたのは、差別が、単なる「心の問題」「お気持ちの問題」ではなくて、それに加担する人々の利益問題でもあれば、差別を内包する社会のシステムの問題でもあるという視点だった。 単に無知であるがゆえに差別に加担してしまっている人間がたくさんいることもまた一面の事実ではあるものの、差別構造はそれほど無邪気なばかりのものではない。 一方には、差別に苦しむ人々の不利益を前提に成立しているシステムが稼働しており、差別被害があることによって利益を得ている人々が差別の固定化のために意図的な努力を払っていることもまた厳然たる事実だ。 日本とアメリカでは、差別の現れ方に大きな違いがあるように見える。 でも、本当のところ、大差はない。 あの人たちがやらかしている差別と、われわれの中で育ちつつある差別は、区別も差別もできないほどそっくりだと、少なくとも私はそう思っている』、「『13th』を視聴して、目が開かれたのは、差別が、単なる「心の問題」「お気持ちの問題」ではなくて、それに加担する人々の利益問題でもあれば、差別を内包する社会のシステムの問題でもあるという視点だった」、「日本とアメリカでは、差別の現れ方に大きな違いがあるように見える。 でも、本当のところ、大差はない。 あの人たちがやらかしている差別と、われわれの中で育ちつつある差別は、区別も差別もできないほどそっくりだ」、改めて「差別」の問題を深く考えさせられた秀逸なコラムだ。
タグ:東京大学大学院情報学環・学際情報学府の特任准教授・大澤昇平氏 貧困者やマイノリティに対して、不妊手術に同意する申請書を書かないなら、手当や住居を取り上げる、と脅す 優生保護法 人文科学分野での基礎的知識の欠如 「Daisy」代表 日本は諸外国と比べても、自分たちが社会の中で『普通』の存在だと考えることで安心感を得る人が多い傾向があります。障害者問題、性的マイノリティー問題、民族差別の問題においても、偏見や差別を持つ側がマジョリティーであることに安堵感を抱き、日々の生活を送っています 歴史は雑学だと思って切り捨てたんだわ ダイヤモンド・オンライン 『偏見や差別はなぜ起こる?』(ちとせプレス) 社会ダーウィニズム ダーウィンが言ったのは、生物の競争による淘汰ではなく適者生存による「棲み分け」であった 敵を見下すことで自己肯定感を高めるのが本 大澤の一連のヘイト発言は典型的なネット右翼そのもの 〈弊社 Daisy では中国人は採用しません〉〈中国人のパフォーマンス低いので営利企業じゃ使えないっすね〉 《東大特任准教授ヘイト炎上》「30代アカデミック男性はなぜイキるのか」 北欧諸国(ノルウェー、スウェーデン、フィンランド)でも、先進的な福祉政策とセットで1970年代まで障害者に対する強制不妊が積極的に行われていた 優生学は(当時の)「科学」に基づいた政策として、どちらかというとリベラルないし左翼側に支持されていた 強制不妊にもっとも野心的だったのは、最初の不妊法を1909年に制定したカリフォルニア州で、ナチスドイツの「遺伝病子孫予防法」のモデルともなった 世界の強制不妊 1996年まで「優生保護法」は漫然と存在 強制不妊が積極的に行われたのは、民主化されたはずの戦後1948年にできた「優生保護法」以降である(確認されるだけでも16000件程度 戦時中には「産めよ、殖やせよ」と出産が奨励されていたため、いかなる理由であれ不妊手術や中絶手術を法的に認めること自体に強い批判が議会で浴びせられ、最終的には中絶の規制が中心の法律となった 「国民優生法」の時代 大澤が凡庸なネット右翼と決定的に違うのは、ナルシシズムに満ちた選民意識が見え隠れするところ スウェーデンでのスキャンダル 日本とアメリカでは、差別の現れ方に大きな違いがあるように見える。 でも、本当のところ、大差はない。 あの人たちがやらかしている差別と、われわれの中で育ちつつある差別は、区別も差別もできないほどそっくりだ 社会集団から生まれる偏見や差別 障害者に対する強制不妊を国が責任を持って行うことは、20世紀のかなりの期間、ある種のグローバル・スタンダードだった 憲法第13条の抜け穴」は、黒人を永遠に「奴隷」の地位に縛りつけておくための、いわば「切り札」として機能している 『13th -憲法修正第13条-』 「「日本人感」って何なんだろう」 どこにでもいる平均的なネット右翼像そのもの 今どきの30代前半で、ここまで露骨なヘイト発言を実名と役職を公開して開陳する人物というのも珍しい 「ダーウィンの進化論」の誤った解釈そのまま 強烈な市場原理主義を信奉 異形の存在 「実は世界中で行われていた「強制不妊」〜弱者に優しい福祉国家でも…不妊が忌避される時代をどう考えるか」 古谷 経衡 文春オンライン 大澤は、「意識高い系」と「ネット右翼」が合体した存在 「意識高い系」を構成する要素は、「実際には何も中身がないが、必要以上に自己を過大に評価して他人に喧伝する」こと 「東京大学准教授」と「東京大学特任准教授」では、ソ連軍のT-34とイタリア軍の豆戦車ぐらい意味合いが違う 障害者に対する強制不妊が否定されると同時に、出生前診断が一般的になり、体外受精では障害児が生まれないように細心の注意が払われている時代が現代である 小田嶋 隆 日本人っぽい名前で芸能活動をしていることを非難する内容 米韓のハーフであり国籍としては米国籍である水原希子 日経ビジネスオンライン 美馬 達哉 現代ビジネス (その3)(実は世界中で行われていた「強制不妊」〜弱者に優しい福祉国家でも…、《東大特任准教授ヘイト炎上》「30代アカデミック男性はなぜイキるのか」、「偏見や差別」はなぜ生まれる 社会心理学の観点から読み解く、小田嶋氏:「日本人感」って何なんだろう) 都合の悪いことが起こると、「AIの過学習」とAIのせいにする 不妊が忌避される時代 「「偏見や差別」はなぜ生まれる、社会心理学の観点から読み解く」 事態が動いたのは2018年、宮城県の60代女性が国家賠償訴訟を起こしてからだ 補償や法的救済を求める国連人権委員会からの勧告(1998年)があっても日本政府は動かなかった 『13th』を視聴して、目が開かれたのは、差別が、単なる「心の問題」「お気持ちの問題」ではなくて、それに加担する人々の利益問題でもあれば、差別を内包する社会のシステムの問題でもあるという視点だった 北村英哉 これは20世紀初頭に、「日本民族」の遺伝的な質を改善するためには、遺伝病と決めつけられた精神・身体・知的障害者に子孫を残させないようにすることが必要だとする「優生学」の考え方から生まれたもの 自らの都合の悪い部分から目を背け、そして、努力せずにして承認欲求を満たそうとする 差別ツイートは〈AIが適応し過ぎた結果である「過学習」 「水原希子は、日本人感出すのやめてほしい」 マイノリティーへの理解が必要不可欠 外国人差別はこの典型的なパターン 人権 脅しが政府職員から障害者に対して行われていた リプロダクティブ・ヘルス/ライツ 人は味方と敵を分ける心理が働き、自分にとって大切な味方を「内集団」、それ以外の敵を「外集団」と区別するのが基本的な考え方 強制不妊の「救済法」成立 無教養・反知性主義を肯定し、己の「無知」を平然と開き直る わが国では、黒人vs白人、有色人種orWASPといった、わかりやすい対立軸が見えにくい半面、在日外国人、混血、二重国籍、被差別部落、先住民、女性、犯罪被害者といった一見しただけでは判別しにくい少数者や弱者への隠微な差別を繰り返すことで、差別趣味の人々の需要を満たしている 『AI救国論』(新潮新書) 水原希子さんが発信したツイートをターゲットとして押し寄せているどうにも低次元なクソリプ それでは少数派が常に負け続けることになり、人権的な価値が侵害され、不公正な社会になります。そのような社会にしないためにも、マイノリティーへの配慮が必須なのです 異例の飛び級昇進を実現、31歳にして准教授となった
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暗号資産(仮想通貨)(その15)(「仮想通貨価値と解決すべき問題」イングランド銀経済学者が研究報告書、仮想通貨取引大手バイナンス 英国で今夏に取引所立ち上げへ ポンドとユーロで売買、ビットコインは本当に電力の無駄遣いで環境にも悪いのか?ビットコインのエネルギー問題に関する大きな誤解、サマーズ元米財務長官が語る「仮想通貨の発展」が期待される分野、SBI 日本初の「暗号資産ファンド」を立ち上げ) [金融]

暗号資産(仮想通貨)については、昨年12月25日に取上げた。今日は、(その15)(「仮想通貨価値と解決すべき問題」イングランド銀経済学者が研究報告書、仮想通貨取引大手バイナンス 英国で今夏に取引所立ち上げへ ポンドとユーロで売買、ビットコインは本当に電力の無駄遣いで環境にも悪いのか?ビットコインのエネルギー問題に関する大きな誤解、サマーズ元米財務長官が語る「仮想通貨の発展」が期待される分野、SBI 日本初の「暗号資産ファンド」を立ち上げ)である。

先ずは、本年2月18日付けCOINPOST「「仮想通貨価値と解決すべき問題」イングランド銀経済学者が研究報告書」を紹介しよう。
https://coinpost.jp/?p=133367
・『投機行為が及ぶ危害  UKの中央銀行「イングランド銀行」のシニア経済学者Peter Zimmerman氏が、支払い手段としての仮想通貨と市場投機行為の関係性を指摘する最新の研究報告書を公開した。 報告書によると、ブロックチェーンのトランザクション処理能力には上限があるため、投機行為による高頻度のネットワーク利用はその処理能力の低下に繋がっている。 仮に、仮想通貨の価値が支払いによる利用率が基準となっていると仮定すれば、オンチェーンのトランザクション渋滞は送金コストを高め、有用性を損なう事に繋がるため、結果として価値を落とす事に繋がる。 投資的需要が実利用を阻害することは、最終的にその銘柄の価値にマイナスの影響をもたらし、そして価値の低下は仮想通貨の普及を妨げることに繋がってしまうと、Zimmerman氏は指摘する。 解決策として、投機活動をデリバティブ商品やライトニングネットワークなどのレイヤー2ソリューション、カストディアンの清算プロセスなどへの移行が進むことで、仮想通貨は伝統アセットに近い価値に近く可能性があると提案した。 一方で、イーサリアム上で発行するICO通貨などが支払い目的の通貨に留まらず、ユーティリティとしての機能面も持ち合わせている通貨もあり、このような解決策が全ての通貨に当てはまる訳ではないと説明している。 具体的に価値を損なっている例として挙げられたのは、イーサリアムの事例。 イーサリアム上で稼働するdAppsは、ETHの価値を高める重要なプロダクトである一方で、ETHの投機的需要に伴うネットワークの混雑状況が、問題化していると指摘した。 dAppsゲームのCryptoKittiesは高い人気を博したが、投機・投資的需要によって当時のイーサリアムネットワークにスケーラビリティの問題が生じたと事例を挙げた。 留意すべき点として、イングランド銀行の研究員は自分の見解を自由に述べることができるため、Zimmerman氏の報告書が同銀の立場を必ずしも代弁していないことだ』、「投資的需要が実利用を阻害することは、最終的にその銘柄の価値にマイナスの影響をもたらし、そして価値の低下は仮想通貨の普及を妨げることに繋がってしまう」、鋭い指摘だ。ただ、「投機行為による高頻度のネットワーク利用」、といっても、仮想通貨取引ではマイニングに一定の時間がかかるため、株式取引のような1/1000秒単位の高頻度取引は無理なようだ。

次に、6月18日付けNewsweek日本版がロイター記事を転載した「仮想通貨取引大手バイナンス、英国で今夏に取引所立ち上げへ ポンドとユーロで売買」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2020/06/post-93716.php
・『暗号資産(仮想通貨)取引所運営大手のバイナンスは17日、英国で今夏に暗号資産取引所を立ち上げると発表した。 機関投資家と個人投資家の両方が、ポンドとユーロで仮想通貨を売買できるようになるとした。英金融行動監視機構(FCA)の規制対象となる。 最大65のデジタル資産を取引可能にする方向で検討が進められている。 フィデリティが機関投資家800社を対象に実施した最近の調査によると、全体の8割近くがデジタル資産を魅力的と感じており、3分の1以上が実際に投資している。 バイナンスによると、新たな英取引所は英国の即時決済システム「ファスター・ペイメント」と単一ユーロ決済圏(SEPA)を通じ、銀行からの直接送金により売買費用の預け入れと引き出しを可能にする。 バイナンスUKのディレクター、ティーナ・ベイカー・テイラー氏は「英国のデジタル資産市場への関心と参加率が高まっている」と指摘し、「仮想通貨サービスが成熟し、発展するのに伴い、リスク選好の度合いが異なる幅広い層の参加を促すために投資オプションを増やしている」と説明した』、「機関投資家800社を対象に実施した最近の調査によると、全体の8割近くがデジタル資産を魅力的と感じており、3分の1以上が実際に投資」、他の既存の取引所を利用したのだろうが、実際の投資もかなり進んでいるようだ。

第三に、6月26日付けHEDGE GUIDEが掲載した在独・放送大学情報コース在籍リサーチャーの渡邉草太氏による「ビットコインは本当に電力の無駄遣いで環境にも悪いのか?ビットコインのエネルギー問題に関する大きな誤解」を紹介しよう。
https://hedge.guide/feature/btc-mining-is-going-to-sustainable-bc202006.html
・『今回は、ビットコインマイニングがもたらす環境負荷について、渡邉草太氏(@souta_watatata)が解説したコラムを公開します。 目次 ビットコインマイニングの消費電力とシェア ビットコインマイニングは電力の無駄遣いという誤解 マイニング電力における再生可能エネルギーが占める割合 最後に「ビットコインは電力を無駄遣いしていて環境に悪い」というのは、ビットコインに対する最も典型的な批判といえます。しかし、一見もっともそうに思えるこの指摘は、実際どこまで説得力があるのでしょうか。 本記事では、ビットコインマイニングに関するデータや調査研究を元に、ビットコインのエネルギー消費問題に関する誤解を解いていきます』、意欲的な分析だ。
・『ビットコインマイニングの消費電力とシェア  本題に入る前に、ビットコインマイニングの現状を消費電力量及び地理分布などのデータを元に見ていきましょう。 ビットコインはよく一定規模の国家と同程度の電力を消費していると言われます。ケンブリッジ大学のオルタナティブ金融センターのデータによれば、ビットコインの年間電力消費は55.33Twh(テラワット時)と推計されており、この消費量は実際にイスラエルやバングラデシュなどの国家以上です。 ちなみにEnerdataによれば、世界第一の電力消費国である中国は年間6167Twhを消費しています。それに続いて2位の米国が3971Twh、3位のインドが1243Twh、4位の日本は1020Twhです。 下図2つは、同じくケンブリッジ大学のオルタナティブ金融センターが公開しているビットコインマイニングマップ及び国別シェアチャートです(リンク先参照)。一つ目のマップでは、マイナーが世界中に満遍なく分布していることが分かります。 しかし以下の二つ目のチャートをご覧ください。実はマイニング市場のシェア約65%を中国一つで占有しているのです。 中国でマイニングが盛んな理由は、圧倒的なコスト(マシン価格、人件費、電気代)の低さにあります。中国の電気代は日本の3分の1というデータもあるほどです』、「ビットコインの年間電力消費は55.33Twh(テラワット時)と推計されており、この消費量は実際にイスラエルやバングラデシュなどの国家以上」、総量ではやはりかなり消費しているようだ。
・『ビットコインマイニングは電力の無駄遣いという誤解  冒頭で紹介したような、「ビットコインは莫大な電力を無駄遣いしている」や「ビットコインは環境に悪い」といった言説は、必ずしも正しくありません。なぜなら、廃棄予定となっている余剰電力を用いたマイニングや、化石燃料を利用しないマイニングなども存在しているからです。 中国の四川省は、ビットコインマイニングで有名な地域で、中国のマイニング市場のシェア約10%(新疆ウイグル自治区の50%に次いで2番目)を占めています。理由は四川省が豊富な水源に恵まれており、低価格の電力を供給する大量の水力発電ダムがあるためです。 これらのダムは、中国政府が20年前に開始した大規模なダム建築プロジェクトにより設置されたものです。しかし実は現在、過剰建設が問題となっています。四川省では、省全体に必要な量の2倍以上の電力がこれらのダムから生み出されており、結果的に発電された電力の約半分が廃棄されるという問題が起きているのです。 四川省で行われているビットコインマイニングのほとんどは、この廃棄されるはずの電力を使用しています。したがって、電力を無駄にするどころか廃棄分を削減しているのです。電力源も水力なので環境にダメージを与えことすらありません。 「他の地域や外国に電力を送れるのでは?」と疑問に思う方もいるかもしれません。しかし電力は、伝送距離が長いほど減少するエネルギーなのです。実際、世界全体で生産された電力の8%は伝送中に失われていると言われています。加えて、送電網の設置にもそれ相応のコストがかかります。 もちろん中国国内の全てのマイニングが水力発電によって行われているのではありません。しかし、発電といっても様々な方法があり、一概にビットコインマイニングが化石燃料に依存している訳ではないと気づくことが大切です』、「四川省」の余剰電力を使うのであれば、「環境にダメージを与えことすらありません」、というのは確かだ。
・『マイニング電力における再生可能エネルギーが占める割合  さて、では世界中のマイニングの中で、一体どの程度が再生可能エネルギーを元にして行われているのでしょうか。これに関して直近で最も注目されているのは、2019年6月にCoinSharesが表明した「ビットコインマイニングの74.1%は再生可能エネルギーを電力源としている」という研究結果でしょう。 Coinsharesは、レポート内で「中国を中心とした世界中のマイニングファームは、化石燃料と再生可能エネルギー両方を利用してマイニングを行っている。再生可能エネルギーとしては、水力発電や風力発電、太陽光発電などが挙げられる」と述べています。 仮に上記の結果が正しいとすれば驚きですが、この算出結果に対してはある程度懐疑的にならざるを得ません。なぜなら他にも異なる算出結果を出している研究がいくつか存在しているからです。例えば、2018年のケンブリッジ大学による調査では、ビットコインマイニングに占める再生可能エネルギーの利用率は28%だと推定されています。 研究ごとにデータに大幅な違いが見られるのは、いくつかの理由があります。まず一つ目はデータ採集の対象となるマイニングファームのカバー範囲や計算方法です。残念ながら、現時点では完全なマイナーデータ及び標準化された測定方法は存在していないのだと考えられます。 そして二つ目は、時期や気候変化の影響による再生可能エネルギーの価格変動です。四川省の例でいえば、当然雨季は水が豊富なため電力価格は下がりますが、乾季はその逆になります。その際、マイナー達は補助として化石燃料を用いたり、マイニング機器を別の地域に移して別の電力源を用いるケースもあるのです。 以上を踏まえると、測定方法や調査を実施したタイミングによって、算出結果に大幅な違いが見られるのも無理はないと考えられます。 ただし、マイニングファームが化石燃料と再生可能エネルギーを併用しているという点では、どの研究でも意見は一致しています。ケンブリッジ大学の調査によれば、複数のエネルギーを電力源とするマイナーのうち、60%がメインあるいは補助として再生可能エネルギーを利用しているといいます。 右の円グラフ:化石燃料と再生可能エネルギーを併用しているマイニングファームの割合(緑)(リンク先参照)』、確かに「再生可能エネルギー」は季節による変動が大きいので、「測定方法や調査を実施したタイミングによって、算出結果に大幅な違いが見られるのも無理はない」のは確かなようだ。
・『最後に ビットコインマイニングの環境的な負の側面は広く認知されており、もはや業界では常識として捉えられているようにも思えます。しかし、電力ロスを有効活用するような事例や、環境に優しい方法が存在するという事実をもっと考慮する必要があるでしょう。 直近の事例では、ソーラーパネルを搭載したLightning Networkノードのような事例が登場していたりと、着々とポジティブな変化は始まっています。 ビットコインマイニングの消費電力は年々上昇しており、益々再生可能エネルギー活用の必要性が増してきています。今後、化石燃料を用いた電力への依存度を下げ、環境面でよりクリーンなイメージを広めていくことができれば、普及スピードも上昇するかもしれません』、「再生可能エネルギー活用」がさらに進んで欲しいものだ。

第四に、6月26日付けCOINPOST「サマーズ元米財務長官が語る「仮想通貨の発展」が期待される分野」を紹介しよう。
https://coinpost.jp/?p=162669
・『サマーズ元米財務長官インタビュー  米クリントン政権で財務長官、その後オバマ政権で国家経済会議議長を務めたローレンス・サマーズ氏は、25日に公開された仮想通貨金融大手Circle社のYouTube番組「the Money Movement」で、マクロ経済の視点からデジタル通貨に対する考えを語った。 Circle社CEOのJeremy Allaire氏による40分間のインタビューで、サマーズ氏はデジタル通貨に対する自身の立場に関して「ビットコイン伝道者と、伝統主義者の中間に位置する」と形容し、仮想通貨議論を支える三通りの主張について、それぞれに対する考え方を述べた』、「サマーズ氏」の見解とは興味深そうだ。
・『仮想通貨議論の「三つの柱」  サマーズ氏によると、歴史的に仮想通貨やビットコイン支持の論拠となっているのは、次の三つの考え方だという。 まず、政府が現行の通貨政策に失敗し、法定通貨の価値が下落するという議論:金融危機に対処するための量的緩和がハイパーインフレに繋がり、金(ゴールド)のような資産への投資熱が高まる。しかし、様々な問題があるため、インターンネットで適切な形で交換可能な「ゴールド」が非常に価値のあるものとなるという主張。 この主張に対し、サマーズ氏はインフレにより、人々が希少な資産へ投資する需要が生じる可能性は認めるが、これが既存の通貨システムの崩壊につながるとは考えられず、仮想通貨を牽引していく要因だとは思えないと述べた。 サマーズ氏は新型コロナウィルスの蔓延に伴う世界的な経済危機において、アメリカ政府の対応を高く評価しており、連邦政府が大規模で大胆な経済支援策を実行していなかったら、市場は崩壊していただろうと述べている。そして、政府が金融システムを支援する限りは、銀行の取り付け騒ぎなどは起こらないだろうと、政府および現行のシステムに対する信頼を表明している』、元「財務長官」らしいオーソドックスな見方だ。
・『プライバシーは重要ではない?  第二の議論として、「リバタリアンの楽園」としての仮想通貨論、つまり金融プライバシーと自由という基本的権利を守るための仮想通貨という主張があるが、サマーズ氏はプライバシーの向上には反対の立場をとっている。欧州中央銀行と協力し「ビン・ラーディン」とのニックネームで呼ばれた500ユーロ札を廃止したことに触れ、「政府は、脱税者やマネロン実行犯、プライバシー信奉者や狂信者が暗号技術を使い、プライバシーを現状以上に高めることは許可しないだろう。」と述べた。 政府は金融の匿名性を促進すべきではないとの立場を取るサマーズ氏は、「規制、汚職、脱税の懸念に関するものであれば、政府は徐々に、より制限されたプライバシーを望み、最終的に政府は望むものを手に入れるだろう。」と主張した』、「政府は金融の匿名性を促進すべきではないとの立場」、大賛成だ。
・『仮想通貨が有望な分野  仮想通貨を支持する第三の議論は金融の「摩擦解消」としての役割であり、この領域こそが仮想通貨の発展が見込める分野だとサマーズ氏は言う。 サマーズ氏は、海外送金、クレジットカードやATMの手数料を例にとり、決済自体と決済のための労力という両面において、過剰な摩擦が生じていると指摘。 決済の中間事業者の「欲」だけでなく、相互信頼に関連した様々な問題や困難から、このような摩擦が発生していると述べた。 そして、仮想通貨コミュニティが大きく関与し、貢献しているのは、「互いに信頼していない人々のグループが、共にビジネスを行うことを可能にする」制度的なイノベーションであり、根本的ななものだとして、それこそが大きな未来につながるだろうと強調した』、さすが「サマーズ氏」だけあって、全く同感である。

第五に、6月27日付けCOINPOST「SBI、日本初の「暗号資産ファンド」を立ち上げ」を紹介しよう。
https://coinpost.jp/?p=162804
・『SBIホールディングスは26日の経営近況報告会で、国内初の「暗号資産ファンド」を立ち上げることを明らかにした。 出資者が事業者に対して出資を行い、事業者が出した利益を出資者に対して分配する契約である匿名組合の形式で、個人投資家向けに2020年夏頃から募集開始を予定する。 株、債券等の伝統的資産との相関性が低い「暗号資産(仮想通貨)」は分散投資の効果を高めるのが狙いだ。販売はSBI証券やSBIマネープラザを通じて行う。 投資先銘柄としては、ビットコイン(BTC)、イーサリアム(ETH)、XRP(注)の名前を挙がっている。具体的な組入比率は、SBI傘下のモーニングスターのアドバイスで判断するようだが、資料ではXRPがその半分ほどを占めることが表示されている。 SBIホールディングスの北尾吉孝CEOは暗号資産ファンドについて、以下のように語っている。XRPやビットコイン、イーサリアムを入れる。確実に機関投資家の金融商品として位置付けられるようになってきている。世の中全てのことが、アナログからデジタルへと移行しており、これは時代の流れ。金融商品に移っていく。エチオピアの事例を見てみると、ビットコインは一番使用されている。現地通貨以上に利用されている。エチオピアの通貨であると、いつ資金が戻ってくるか心配する必要がある』、「国内初の「暗号資産ファンド」を立ち上げる」、とはSBIらしい積極的姿勢だ。
(注)XRP:リップル、国際送金ソリューションで、アメリカに本拠地を置くリップル社が開発・運営(COINPOST)。
・『SBI VCトレードも事業拡大を予定  また、仮想通貨交換業を営むSBI VCトレードも2020年5月での改正資金決済法等の施行を機に、事業の拡大を予定する。 まずはスマートフォンアプリを6月までに予定。スケジュールにはCFD(注)サービスの提供も入る。 SBI VC Tradeは18年6月にSBIバーチャル・カレンシーズのサービスを開始、19年7月に取引所機能を提供する「VCTRADE Pro」の開始。今年の5月末には、初の新規口座キャンペーンを行い、対象者にXRP(リップル)配布を行なっている。(過去に、取引額や保有額に応じたものなど既存顧客向けのものはある) 口座開設については、スマートフォンで口座開設が完結できる「オンライン本人確認(eKYC)」を4月末に開始して、体制を整えてきた』、取扱う仮想通貨は、XRP(リップル),BTC(ビットコイン)、ETH(イーサリアム)、の3種類のようだ。今後の展開を注目したい。
(注)CFD:“Contract For Difference”の略で、「差金決済取引」(岡三オンライン証券)
タグ:ビットコインマイニングは電力の無駄遣いという誤解 英国の即時決済システム「ファスター・ペイメント」と単一ユーロ決済圏(SEPA)を通じ、銀行からの直接送金により売買費用の預け入れと引き出しを可能にする 英金融行動監視機構(FCA)の規制対象 HEDGE GUIDE 渡邉草太 「ビットコインは本当に電力の無駄遣いで環境にも悪いのか?ビットコインのエネルギー問題に関する大きな誤解」 ロイター 「仮想通貨取引大手バイナンス、英国で今夏に取引所立ち上げへ ポンドとユーロで売買」 暗号資産(仮想通貨)取引所運営大手のバイナンス 英国で今夏に暗号資産取引所を立ち上げる ビットコインの年間電力消費は55.33Twh(テラワット時)と推計されており、この消費量は実際にイスラエルやバングラデシュなどの国家以上 政府が現行の通貨政策に失敗し、法定通貨の価値が下落するという議論 金融の「摩擦解消」としての役割 決済自体と決済のための労力 マイニング市場のシェア約65%を中国一つで占有 仮想通貨議論の「三つの柱」 サマーズ元米財務長官インタビュー 国内初の「暗号資産ファンド」を立ち上げる 電力ロスを有効活用するような事例や、環境に優しい方法が存在するという事実をもっと考慮する必要がある マイニング電力における再生可能エネルギーが占める割合 「イングランド銀行」のシニア経済学者Peter Zimmerman氏 四川省では、省全体に必要な量の2倍以上の電力がこれらのダムから生み出されており、結果的に発電された電力の約半分が廃棄されるという問題が起きている 「測定方法や調査を実施したタイミングによって、算出結果に大幅な違いが見られるのも無理はない」 電力を無駄にするどころか廃棄分を削減 四川省は、ビットコインマイニングで有名な地域で、中国のマイニング市場のシェア約10%(新疆ウイグル自治区の50%に次いで2番目 「再生可能エネルギー」は季節による変動が大きい 政府は金融の匿名性を促進すべきではないとの立場 仮想通貨が有望な分野 仮想通貨交換業 「SBI、日本初の「暗号資産ファンド」を立ち上げ」 「サマーズ元米財務長官が語る「仮想通貨の発展」が期待される分野」 SBI VCトレードも事業拡大を予定 プライバシーは重要ではない? 政府が金融システムを支援する限りは、銀行の取り付け騒ぎなどは起こらないだろうと、政府および現行のシステムに対する信頼を表明 投資的需要が実利用を阻害することは、最終的にその銘柄の価値にマイナスの影響をもたらし、そして価値の低下は仮想通貨の普及を妨げることに繋がってしまう 投機行為が及ぶ危害 (その15)(「仮想通貨価値と解決すべき問題」イングランド銀経済学者が研究報告書、仮想通貨取引大手バイナンス 英国で今夏に取引所立ち上げへ ポンドとユーロで売買、ビットコインは本当に電力の無駄遣いで環境にも悪いのか?ビットコインのエネルギー問題に関する大きな誤解、サマーズ元米財務長官が語る「仮想通貨の発展」が期待される分野、SBI 日本初の「暗号資産ファンド」を立ち上げ) Newsweek日本版 暗号資産 ビットコインマイニングの消費電力とシェア 仮想通貨 「「仮想通貨価値と解決すべき問題」イングランド銀経済学者が研究報告書」 COINPOST 機関投資家800社を対象に実施した最近の調査によると、全体の8割近くがデジタル資産を魅力的と感じており、3分の1以上が実際に投資している
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パンデミック(経済社会的視点)(その2)(元経産省職員が解説「霞が関が"丸投げ委託"を続ける根本原因」 なぜ電通との取引を優先するのか、安倍政権に激震 河井夫妻逮捕を上回る「給付金スキャンダル」の破壊力、コロナ対応を「感染症の専門家」にしか聞かない日本人の総バカ化 情報の偏りが何も見えていない) [国内政治]

昨日に続いて、パンデミック(経済社会的視点)(その2)(元経産省職員が解説「霞が関が"丸投げ委託"を続ける根本原因」 なぜ電通との取引を優先するのか、安倍政権に激震 河井夫妻逮捕を上回る「給付金スキャンダル」の破壊力、コロナ対応を「感染症の専門家」にしか聞かない日本人の総バカ化 情報の偏りが何も見えていない)を取上げよう。

先ずは、6月15日付けPRESIDENT Onlineが掲載したいちよし経済研究所シニアアナリストの高辻 成彦氏による「元経産省職員が解説「霞が関が"丸投げ委託"を続ける根本原因」 なぜ電通との取引を優先するのか」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/36229
・『中小企業などに最大200万円を支給する「持続化給付金」の事業をめぐり、外部委託を繰り返す仕組みが国会で問題視されている。元経済産業省職員の高辻成彦氏は「委託事業は補助金制度と異なり、委託先を担当の職員が自由に決められる。担当者は委託先を客観的に選ぶべきだが、以前から親密だったことが報じられており、問題がある」という――』、「高辻氏」は「経産省」勤務経験があるだけに、解説するにはもってこいの人物のようだ。
・『委託先との親密さを疑われても否定できない制度的要因  6月11日発売の週刊文春は、持続化給付金事務事業を担当する中小企業庁の前田泰宏長官が2017年、アメリカで開いたパーティーに、この事業の委託先であるサービスデザイン推進協議会の業務執行理事を務める平川健司氏(当時・電通社員)が出席していたと報じた。 前田長官は当時、大臣官房審議官という幹部の立場にあった。米テキサス州で開かれた企業関連のイベントに参加し、近くのアパートを借りて平川氏らとパーティーを開いたという。前田長官は11日、参院予算員会に出席して事実関係を認めた。 持続化給付金事務事業をめぐっては、事業者に対する入札前のヒアリングを行った点にも批判が集まっている。入札前の経済産業省担当者と、入札関係者との面談時間は、サービスデザイン推進協議会は3回で3時間に対して、デロイトトーマツフィナンシャルアドバイザリー合同会社は1回で1時間だったことも報じられた。 経済産業省のルールでは、事前接触の際は各社に同等の時間を提供するよう求めているが、徹底されていなかった。 こうした報道が出れば、委託先との親密さが疑われ、国民の不信を招くのは避けられない。しかし、問題の根源は、委託事業の実施にチェック機能が働いていないことにあり、今後は外部有識者によるチェックが可能な体制を整備していく必要がある』、「デロイト」が「1回」というのは一応入札の形を整えるための当て馬だろう。「米テキサス州で開かれた企業関連のイベントに参加」というのも、「前田氏」と「平川氏」が事前に示し合わせて参加したのだろう。
・『経済産業省には「委託」の選択肢しか無かった  そもそも何故、持続化給付金事務事業は委託事業だったのか。国の事業には大きく分けて、①直轄事業、②独立行政法人が実施、③地方自治体が実施、④補助金事業、⑤委託事業の5つのやり方がある。しかし、経済産業省は⑤委託事業という選択しかできなかった事情があると筆者はみている。 第1は、国が直轄で事業を扱うケースである。持続化給付金事務事業の場合、中小企業庁が自ら行うか、地方局である各経済産業局が行うやり方である。しかし、日本全国の売上減少の中小企業が対象になり得る。5月1日と2日に申請された件数だけでも約28万7000件もあり、人員上の制約からとても捌ききれない。 第2は、独立行政法人が実施するケースである。具体的には、中小企業基盤整備機構が行うやり方である。しかし、中小企業基盤整備機構自身が、中小企業経営力強化支援ファンドの立ち上げなど、新型コロナウイルス対策の事業を別途扱う事情から、難しかったとみられる。 第3は、地方自治体が国の事業を実施するケースである。国が本来、果たすべき役割の事業を地方自治体が担うものである。例えば、中小企業が国の保証付き融資を受けられるセーフティネット保証の認定事務は、市区町村の商工担当課が実施している』、「経済産業省には「委託」の選択肢しか無かった」、その通りなのだろう。 
・『委託事業は官僚の裁量の余地が大きい  今回の場合、市区町村ではセーフティネット保証の認定急増が予想されたことに加え、定額給付金の支給作業が新たに加わったため、持続化給付金事務事業を依頼することは不可能だったとみられる。 第4は、補助金事業である。これは、国自身が窓口になるケースと、地方自治体も折半するケースとがあるが、そもそも、支給対象者である中小企業に補助すべき事業が存在しないので、制度としてそぐわない。 上記の4つのやり方は、いずれも持続化給付金事務事業の委託には不適切、あるいはなじまないものだったことがお分かりいただけただろう。そして、経済産業省に残された選択は、第5、委託事業ということになる。 委託事業の場合、委託先と契約を結べば良いだけである。入札方式と随意契約方式とがあるが、随意契約方式は、特定の先と契約できることから批判の的になりやすいため、入札方式を選んだと思われる。 しかし、入札方式でも批判を浴びているのは、これまでの報道の通りである。委託金額769億円という金額の大きさと、その後の電通への再委託が749億円と、受託先が事業を一部しか行っていないためである。再委託に関する制約はなく、経済産業省側に大きな裁量があったことがこの問題の背景にあると言える』、「再委託に関する制約はなく」、というのは問題だ。
・『協議会を持続させるための委託  また、サービスデザイン推進協議会の実績作りが必要だった可能性がある。委託事業の場合、単年度で事業が終わってしまう。ある年度に委託事業があったとしても、翌年度に同じ事業が実施されるかどうかは不明なのである。事業が終わってしまうと、委託先は、新たな仕事を確保する必要がある。協議会を起ち上げた以上、協議会自体を持続化させる必要があるのである。 サービスデザイン推進協議会は、設立以降、経済産業省の事業を立て続けに受託している。過去の受託実績が豊富な組織であれば不自然ではないが、設立年の浅い組織が受託できるのは、経済産業省側の何らかの意図が働いていた可能性がある』、そもそも「サービスデザイン推進協議会」を設立させる段階で、「経済産業省側」から「受託」継続について何らかの口約束があった筈だ。
・『サービスデザイン推進協議会の過去の受託実績  また、新型コロナウイルス対応のために過去最大級の景気対策が必要だったことが、結果的にこの委託事業の設立を容易にしてしまった可能性がある。景気対策の金額を増やすために、新規事業を作らなければならなかった、ということである。新規事業を立ち上げて実施すれば、景気対策に取り組んでいる姿勢をアピールしやすい』、「持続化給付金事業」、自体も「電通」側から売り込みがあった可能性がある。
・『「丸投げ」「再委託」を防ぐための処方箋  こうした不透明な委託事業をなくし、国民に理解を得られるためにはどうすべきか。経済産業省はすでに「外部有識者による検査実施」を打ち出し、透明性をアピールしている。通常は担当者レベルで実施するものであることから異例の対応である。 しかし、サービスデザイン推進協議会の業務執行理事と中小企業庁長官の関係性が週刊文春で報じられており、これだけでは国民の疑念を晴らすのは難しいだろう。 今後、最も起こり得る事態は「中小企業庁長官の辞任」である。そもそも6月末から7月頭にかけては例年、幹部クラスの人事異動の時期である。通常の人事異動として処理してしまえば、話をうやむやに済ますことができてしまうだろう。 いずれの選択肢も不十分な対応であり、国民の理解は得られそうにない。筆者は、委託事業の根本的な問題解決こそ先行して行うべきと考えている。聡明な読者がお気づきの通り、委託事業の取り扱いに全く制限がかかっていないことが最大の原因である。そこにメスを入れなければ、この問題は再び繰り返されることになる』、同感である。
・『各省庁は「再委託制限の統一ルール」を急げ  これは経済産業省だけの問題ではない。中央省庁をみても、制限のない省庁が多いため、最終的には、国全体で再委託制限の統一ルールを設ける必要があるだろう。これにより、資金使途がある程度は制限できるようになるだろう。 また、委託事業のこまめな報告制度の導入も必要だろう。理由としては、委託先が何をやっているかを国がチェックできるように制度化しないと、経済産業省側では実態を把握できないためである。 どの委託事業でも基本的に国から随時、報告は求めているが、今回のケースでは、経産省側が委託の実態を把握したのは支給開始から1カ月後だったようである。申請件数、支払い件数、未処理件数を集計させて週次で報告させて、公表するなどの対応が必要だろう。これにより、報告が遅い委託先には、委託費を支給しないなどの対応も可能になる』、「国全体で再委託制限の統一ルールを設ける」、「委託事業のこまめな報告制度の導入」、などが必要なのは当然だ。
・『「外部有識者による審査会制度の義務化」は欠かせない  補助金制度の場合、補助金等適正化法が適用され、どの企業を採択するかは、審査基準を設けて外部有識者による審査会を開き、採択される。審査基準は補助金制度の担当者で原案を作るが、審査会では担当者は事務局に過ぎないため、担当部署の恣意的な判断は入りにくい。 しかし、委託事業の場合には、外部の有識者による審査会を開く必要はない。民間の契約と基本的には同じだからである。入札方式の場合、基準は示す必要はあるものの、どこを採択するかは行政上層部の意向が働きやすい。特定の上層部の恣意的判断を避けるには、委託事業についても、外部の有識者による審査会制度を義務化すれば、恣意的な判断はある程度は防止できるのではないか。 これまで述べてきたように、委託事業の問題は持続化給付金事務事業だけでの問題ではなく、経済産業省だけの問題でもない。中央省庁全体の問題である。再委託制限の統一ルールが存在しない現状からは、先ずは中央政府自身が主導して統一ルールを制定することが必要となろう。また、委託先の選定についても、外部有識者による審査会制度の義務化を中央省庁の統一ルールとして導入することが重要と筆者は考える』、実務経験に基づいた実効性のある提言で、全面的に賛成だ。

次に、6月22日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した朝日新聞経済部記者の内藤尚志氏による「安倍政権に激震、河井夫妻逮捕を上回る「給付金スキャンダル」の破壊力」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/241055
・『首相“直撃”の相次ぐ不祥事 揺らぐ政権基盤  「桜を見る会」や「検察人事」で揺れた安倍政権だが、現職国会議員の「河井克行・案里夫妻の逮捕」という不祥事にまたもや見舞われた。 側近だった克行議員を法相に任命したのは安倍晋三首相だったし、公職選挙法違反(買収)の容疑がかけられている案里議員の参院選出馬を強引に進めたのも首相と菅官房長官だった。 政権直撃のスキャンダルが相次ぐ中で、とりわけ致命傷になりそうなのが、新型コロナウイルス対策の給付金をめぐる“税金横流し”の疑惑だ。 過去、「森友・加計問題」などの不祥事が起きると、経済や雇用の好況をアピールすることで支持率回復につなげ求心力を維持してきたが、“給付金スキャンダル”はアベノミクスのど真ん中を直撃したものだからだ』、「“給付金スキャンダル”はアベノミクスのど真ん中を直撃」、同感だ。
・『持続化給付金の委託で「中抜き」や横流しの疑惑  問題になっているのは、売り上げが急減した中小企業などに最大200万円を出す「持続化給付金」。コロナ禍を受けた緊急経済対策の柱の1つだが、申請受け付けや審査といった手続き業務はまとめて民間に委託している。 それを769億円で受注したのは、一般社団法人サービスデザイン推進協議会(サ推協)だった。 ところが、業務の大半は749億円で広告大手の電通に再委託されていたのだ。さらに電通からも業務が子会社5社に割り振られ、人材派遣大手のパソナや、ITサービス大手のトランスコスモスなどにも外注されていた。 サ推協は2016年、電通、パソナ、トランスコスモスの3社でつくった団体だ。 電通やパソナがじかに請け負わず、団体や子会社を挟むのは、なぜなのか。再委託や外注のたびにお金が「中抜き」されているのではないのか。 サ推協は法律で定められた決算公告を一度もしていなかった。 先週までの国会は、この問題で大荒れだった。 なぜ政府は、このような団体に巨額の公的業務をまかせたのか。769億円の出どころは、国民が納めた税金だ。本来ならもっと安い価格でできるはずなのに、税金がムダづかいされているのではないのか。一部の企業に横流しされているのではないか――。 予算委員会で、野党側はこぞって政府を攻め立てた。 立憲民主党の枝野幸男代表は「電通ダミー法人とでもいうような法人による丸投げ、中抜きという疑惑」だと断じ、同党の蓮舫氏も「こんな団体に大切な税金を渡して、適正ですか」と迫った。 国民民主党の玉木雄一郎代表は「四重塔、五重塔ぐらいになっている。国のチェックがいき届きにくくなる」と指摘し、何回もの再委託や外注を厳しく批判した。 これに対し、安倍首相は、あとで精査して実際にかかった費用だけを渡す「清算払い」のため、税金のムダづかいは起きないと反論した。769億円はあくまで見込みで、このまま払うか決まっていないというわけだ。 さらに「中抜きという、それも言葉づかいとしてどうなのか」とも反発した』、「安倍首相」の反論は、形式論に過ぎず、野党の「批判」には何ら答えていない。
・『再委託や外注の不透明 全容を把握できていない経産省  だが、質疑や経産省の担当職員からのヒアリングで、驚くべき事実が浮かんできた。 どの作業にどんな企業がかかわっているのかといった業務の全容を、担当する経済産業省が把握できていなかったのだ。 野党議員が調べた外注先の企業名について、梶山弘志経産相は「初めて聞いた」と答えるしかなかった。 「何次下請けまであるのか」「委託先との契約書を出してほしい」と、経産省の担当者に求めても、明確な答えはないままだった。 手続き業務には、申請の受け付けや書類のチェックによる審査、問い合わせへの対応、お金の振り込みなど、多くの作業がある。どこの作業をどの企業が請け負っているのかもわかっていない役所が、それぞれの作業でムダに税金が使われていないかを精査できるのか。そんな疑念が、かえって深まった。 野党側が色めき立つのも無理はない。この問題は「税金のムダづかい」にとどまらず、安倍政権の暗部を象徴するスキャンダルへと発展しつつある。 政権に及ぼすダメージは「桜を見る会」や「検察人事」「河井夫妻逮捕」よりはるかに大きい』、「どの作業にどんな企業がかかわっているのかといった業務の全容を、担当する経済産業省が把握できていなかった」、確かに驚くべきことだ。安部内閣を支える中心になった「経済産業省」の驕りが出たのだろうか。
・『コロナ対策でも「お友達重視」「談合まがい」の入札  その理由は主に2つある。 1つは、安倍政権の特質でもある「お友達優遇」が色濃く出ている点だ。 経産省は、委託先を決める際に入札をしている。参加を検討したのは、サ推協のほか、世界的なコンサルティング会社のデロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリーと、まだ名前が明らかになっていない1社。 サ推協が競り勝ったわけだが、入札前に経産省はサ推協の関係者と3回も面談していて、その場に電通と電通子会社の社員も同席していた。経産省はほかの2社とも入札前に接触していたものの、それぞれ面談は1回しただけだった。 「出来レースだ。談合まがいじゃないか」(立憲民主党の大串博志氏)との野党側の追及に、経産省は反証できないでいる。入札は形だけで、初めからサ推協にやらせると決めていたのではという疑いが拭えないのだ。 電通は選挙で自民党のポスターを手がけるなど、もともと同党に太いパイプを持つ。 安倍首相夫人の昭恵さんは、電通に勤務した経験がある。また、サ推協の設立にかかわったパソナグループの会長を務めるのは、安倍首相が官房副長官や長官として支えた小泉政権で経済閣僚を務めた竹中平蔵氏だ。 サ推協から電通と電通子会社を介して業務を割り振られたイベント会社のテー・オー・ダブリューも、首相補佐官と内閣広報官をしている経産省の長谷川栄一氏を顧問に迎えていた時期がある。 長谷川氏は第1次安倍政権で内閣広報官を務めるなど、古くからの首相側近として知られている。 政権と近しい企業が、おいしい仕事を優先的に割り当てられ、うまい汁を吸っているのではないか。コロナ禍のもとで収入が減ったり営業自粛を強いられたりしてきた多くの人たちにはそう映り、強い批判を招く結果になったといえる。 安倍政権の「お友達優遇」は、森友・加計学園をめぐる疑惑以来、与党内も含めて批判をされてきた。 だが、モリカケ問題は、国有地売却や獣医学部開設など個別案件をめぐるものだったのに対し、給付金スキャンダルは安倍政権の経済政策の在り方への不信感を抱かせるものだ』、「コロナ対策でも「お友達重視」「談合まがい」の入札」、とは安部政権も落ちるところまで落ちたようだ。
・『事業者に届かない給付 原因の解明進まず、倒産や失業  政権にとってより痛手なのは、もう1つの理由のほうだろう。 それは「業務の目詰まり」である。持続化給付金を申請してもなかなか入金されず、そのせいで事業をあきらめたり失業したりする人たちが続出している。 給付金は5月1日から申請できるようになった。オンラインでの手続きが原則で、経産省は入金までの目安を「2週間」と公表している。 安倍首相は5月4日、緊急事態宣言の延長を受けて開いた記者会見の冒頭で「最速で8月に入金する」と言い間違えて、慌てて会見中に「5月8日」と自ら訂正して「スピード感を持った支援」を強調してみせた。 ところが、申請から2週間どころか1カ月たってもお金が届かないケースが相次いだ。 経産省によると、5月1~11日の申請者のうち約5万人が、1カ月後も入金されていなかったという。新型コロナウイルスの感染を調べるPCR検査や、「アベノマスク」の全世帯配布でも見られた目詰まりが、ここでも起きたのだ。 深刻なのは、どの作業で何によって目詰まりしているのかを、政府が申請者に対してきちんと説明できていないことだ。 大阪市内で飲食店を営む60歳代の女性は、5月初旬に申請を済ませた。だが2週間が過ぎても入金はなく、5月末になって「持続化給付金事務局」から突然に電子メールが届いた。 「軽微な不備について事務局において修正を行っております」とあった。 何が不備なのかは書いていない。こちらの申請の仕方が悪かったのか、それとも事務局側のミスやシステムの不具合なのか。そして入金はいつごろになりそうなのか。 いろいろ聞きたかったのに、問い合わせ先の電話番号はなく、メールには「ご返信いただいても回答はいたしかねます」とある。 「生活がかかっているのに、まるでひとごとだ」と女性は憤る。 コロナ禍の経済対策では、厚生労働省が担当する雇用調整助成金でも目詰まりが起きているが、原因はほぼ見えている。 厚労省は申請時の書類の多さや記入の難しさを認めて、簡略化に踏み切った。オンライン申請システムで起きた不具合については、委託先の富士通側による開発ミスの可能性が高い。 ところが、持続化給付金では、こうした原因の解明が一向に進まない。 業務の再委託や外注がくり返され、電通や電通子会社の先にも多くの企業が連なっているからだ。 企業間の情報共有のハードルは高く、責任の所在もあいまいになりがちで、経産省はどこで何が起きているかを把握できないでいる。そのため改善策もとりづらく、入金の遅れがなかなか解消されない。 5月上旬に申請した人たちの多くは、政府のいう「2週間」を信じ、家賃などの支払いが集中する月末までにお金がもらえると想定していたはずだ。 それなのに入金はなく、廃業や閉店を決めた人もいたとみられる。地域で長く愛されてきた零細企業や老舗がいま、次々と姿を消しつつある』、「業務の目詰まり」が起こっても、「業務の再委託や外注がくり返され、電通や電通子会社の先にも多くの企業が連なっている」なかでは、「経産省はどこで何が起きているかを把握できないでいる。そのため改善策もとりづらく、入金の遅れがなかなか解消されない」、深刻な状況だ。
・『「安全網」整備後回しのツケ アベノミクスの欠陥を象徴  安倍政権がこれまで数々のスキャンダルを乗りこえられたのは、アベノミクスがまがりなりにも「結果」を出していたからだ。 安倍氏が首相に返り咲いた2012年末から7年間で、表向き、失業率は大きく改善した。折から円高局面の転換が始まっていたことに加えて異次元の金融緩和策で円安・株高が加速、大手輸出企業を中心に企業業績は復調し、多くの雇用が生まれた。 安倍首相はその成果を、選挙の応援演説などでたびたび誇ってきた。 グローバル経済のもとでは、先進国の雇用は不安定化する。国民の関心は雇用にあり、支持率にも直結すると、政治家として感じとっていたのだろう。 大方の予想を覆して米国民がトランプ氏を大統領に選び、英国民がEU離脱を決めたのも、背景には雇用危機があった。 コロナ禍に直面しても、安倍首相は雇用に強いこだわりを見せてきた。会見でも、「事業と雇用を守り抜く」などとくり返し発言している。 しかしいま急速に進むのは、仕事の蒸発と雇用の悪化だ。 派遣社員などの非正規雇用が次々と切り捨てられ、中小企業では倒産や解雇が広がるが、給付金の遅れに象徴されるように政府の対策は後手に回っている。 アベノミクスは大企業を支えることで経済を成長させ、仕事と雇用を増やす政策だった。それにとらわれ、経済が悪くなったときの安全網づくりを後回しにしてきたツケが、一気に出始めている。 近しい企業への政策の丸投げで目詰まりが起こり、結局は仕事と雇用が失われていく。持続化給付金の顛末は、アベノミクスの「失敗」を象徴しているかのようだ』、「持続化給付金の顛末は、アベノミクスの「失敗」を象徴しているかのようだ」、言い得て妙だ。
・『うみを出し切れるのか 「Go To キャンペーン」でも同じ疑惑  疑惑が払しょくされていないにもかかわらず、政府・与党は国会を17日に閉じた。国会を延長すれば、野党に追及され、国民の不信感がいっそう強まって支持率低下に歯止めが利かなくなるという思惑もあったのだろう。 だが、持続化給付金をめぐる議論は収まるどころか、むしろ縦横に広がりつつある。 「縦」でいえば、サ推協が過去にも経産省から計14件、約1600億円分もの業務を受注し、多くを電通に再委託していたことが発覚した。そこでも税金のムダづかいがなかったか調査を求める動きが出ている。 「横」では、同じコロナ対策で掲げられた消費喚起策「Go To キャンペーン」の事務局業務についても3000億円超で丸ごと民間委託することに疑問の声が出て、政府は業務の分割を決めた。 そして持続化給付金そのものへの疑念も、さらに深まりつつある。経産省側の責任者である前田泰宏・中小企業庁長官と、電通出身のサ推協幹部がもともと知り合いだったことが判明。経産省と電通の「癒着」や、電通側による下請けへの「圧力」も疑われ始めている。 危機感を強めた梶山経産相は、審査を担う要員を増やすなどして業務の目詰まりの解消を急ぐとともに、委託・外注先での業務の行われ方や経費の是非について今月中にも「中間検査」すると表明した。 外部の専門家に協力してもらい、税金のムダづかいや横流しがないかも調べるという。 だがアリバイづくりのための小手先だけの検査なら、国民の批判はかえって強まり政権の命取りになるだろう。支持率に敏感な安倍首相とその側近たちなら、それはよくわかっているはずだ。 政権が自らの失政に向き合い、うみを出し切れるのか。国民はそこを注視している』、「疑惑が払しょくされていないにもかかわらず、政府・与党は国会を17日に閉じた」、補正予算を通してしまった野党もお粗末だ。「Go To キャンペーン」とは、旅行会社などが提供する交通と宿泊がセットになった旅行商品が対象で、代金の半分相当を、宿泊旅行では1人1泊当たり2万円を上限、日帰り旅行では1万円を上限に支援するもの。官公庁では予算1.3兆円で、8月の早いうちからスタートさせたいようだ(トラベルWatch)。しかし、「8月の早いうちからスタートさせ」るためには、そろそろ、基本的な骨格が固まっている必要があるが、こんな泥縄で果たして間に合うのだろうか。
https://travel.watch.impress.co.jp/docs/news/1260658.html

第三に、6月19日付けPRESIDENT Onlineが掲載した国際医療福祉大学大学院教授の和田 秀樹氏による「コロナ対応を「感染症の専門家」にしか聞かない日本人の総バカ化 情報の偏りが何も見えていない」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/36337
・『新型コロナウイルスの対応を巡り、政府は「専門家会議」の見解をたびたび利用してきた。しかし、それでよかったのだろうか。精神科医の和田秀樹氏は「安倍晋三首相を含む政府首脳は、偏った意見だけを採り入れるという思考停止に陥っている。これこそが私がずっと主張している『バカ化』という現象だ」という――』、『バカ化』とはどういうことだろう。
・『「バカ化」している安倍政権にコロナ第2波対策を任せられるのか  私は本連載で新型コロナウイルス感染拡大の対応をする政府を批判してきた。なぜなら、安倍晋三首相を含む政府首脳が、感染症の専門家の話ばかりに耳を傾け、半ば言いなりになっている印象を受けたからだ。 彼らが国民に要請した「ステイホーム」政策を立案する上で、感染症以外の専門家や医師の意見を求めることはなかった。私は、精神医学的なことや免疫学的な悪影響をほとんど考えない「とにかく家から出るな」という対策がいちばん正しい解決法とは思えなかった。 自宅に閉じこもり続けることによって引き起こされる、うつ病やアルコール依存、またロコモティブシンドローム(その後の寝たきり状態を含む)などのリスクや、経済への影響などを最小限に抑える方法を準備するため、感染症以外の専門家の声を聞くべきだった。それが私の考えだ。 だが、私は私の考えのみが正しくて、感染症学者や政府の言うことが間違っていると言いたいわけではない。そうではなく、いろいろな角度から情報を集めるための材料を国民に提供すべきだと思ったのだ』、「自宅に閉じこもり続けることによって引き起こされる、うつ病やアルコール依存、またロコモティブシンドローム・・・などのリスクや、経済への影響などを最小限に抑える方法を準備するため、感染症以外の専門家の声を聞くべきだった」、同感だ。政府は、専門家会議を廃止して、政府内に様々な専門家を集めた会議に再編成する意向のようだ。
・『「異なった視点による複数の見解を総合的に判断」こそ重要  コロナとは別の話だが、「異なった視点による複数の見解を総合的に判断して結論を出すことの重要性」を感じさせる案件が5月末にあった。 5月28日、全国で130店舗以上を展開するビジネスホテルチェーン「スーパーホテル」の支配人・副支配人だった男女が、記者会見を開き、未払いの残業代など計約6200万円を求め、東京地裁に提訴したことを報告した。 これを受けて、「『24H労働、手取り月10万円』住み込みの“名ばかり支配人”、スーパーホテルを提訴」(弁護士ドットコム)といった記事も出たため、多くの人々が同ホテルを批判している。 業務委託契約で働いている支配人と副支配人の主な訴えは、自分たちは厳しいマニュアルで縛られ、実質24時間労働であり、ホテル従業員のアルバイトに払う金を差し引くと手取り月10万円程度でしかなく、ホテルに未払いの残業代を払え、という内容だ。契約解除の無効も求めている。 同ホテルは、顧客満足度を扱う調査会社J.D.パワーの「ホテル宿泊客満足度調査」の1泊9000円未満の部門で5年連続「宿泊客満足度1位」になっている。 たまたま私の親族が同ホテルで働いていたので、聞いてみた。すると、ホテル側は、この男女に対してアルバイトの人件費などを含めて毎月約130万円を支払っていたが、ほとんどバイトなどを雇った形跡がなく、きちんと仕事をしないのでホテルの稼働率がとても低かった、ということだった』、「弁護士ドットコム」は私もたまに引用するが、「一方だけの見解」を報じることもあるとは驚いた。今後の引用は気を付けよう。
・『「一方だけの見解」を報じることが冤罪を引き起こすこともある  私は、身内から聞いたこの話をそのまま信じるつもりはない。だが、この件を報道した記事には、いささか違和感を覚える。前出の弁護士ドットコムの記事には、ホテル側の「訴状が届いていないので、現段階ではコメントを差し控えさせていただきます」(5月29日時点)というコメントも掲載されている。 しかし、こうしたトラブルは双方に言い分があり、裁判ともなれば、裁判官がそれらの見解を詳細に検証したのち判決を出すものだ。よって、会見を開いた「片方の意見だけ」を記事にするのはいかがなものかと感じたわけだ。 刑事事件も同じだ。なんらかの事件で犯人が逮捕されたら、テレビや新聞は警察からの情報をもとにそれを報じる。警察は、自分たちが捕まえた容疑者を犯人と信じ、裁判でも勝ちたいと思うから、当然、自分たちに有利な情報しか流さないだろう。実は、この人が無罪かもしれないというような証拠がみつかったとしても、それをマスコミに伝えるとは思えない。それは決して好ましいことではないだろう。なぜなら、容疑者や被告が真犯人であるかのような報じられ方をすると、一般人である裁判員などに予断を与える可能性もあるからだ。 つまり、こうした「一方だけの見解」を報じることが冤罪を引き起こすこともある』、確かに「警察」などのリーク記事も目に余る。
・『名経営者は「情報の偏り」を回避するための行動をとった  「賢い人をバカにしてしまうことがある」というのが本連載の一貫したテーマだが、私のみるところ「情報の偏り」によって、本来賢い人がそれ以外の選択肢や考えを思いつかなくなってしまうケースは少なくない。 そうした偏りを防止するため「名経営者」と言われる人は、周りにイエスマンばかりを集めるのでなく、悪い情報をきちんと伝えてくれる人を置いている。 例えば、ヤマト運輸の中興の祖である小倉昌男氏は、悪い情報は労働組合に集まるからと、あえて経営陣にとってうっとうしい存在である労組を大切にしたという。 「ミスター円」と言われた榊原英資財務官は現役時代の1991年から2001年までの10年間で為替の売買益で1兆円、評価益や金利差を合わせると9兆円の利益を出したと言われるが、彼の情報収集法も情報の偏りを避けるものだ。彼は渡米するたびに、もっとも楽観的なエコノミストと、もっとも悲観的なエコノミストと会っていたという。そうすることでたとえば円相場の振れ幅がわかるからだ。 このように情報というものは集められる限り、多方向から集めたほうが、判断の精度が上がるはずだ。賢い人でも偏った情報しかもっていなければ正しい判断はできない』、同感である。
・『日本のテレビ局も「バカ」化している  がんになって手術を受ける際に、セカンドオピニオンを受ける人が増えているのはなぜだろうか。これは、いくら主治医が名医でも、一人だけの情報で判断するのが危険だと考えるからだろう。 私ならセカンドオピニオンどころかサードオピニオンやフォースオピニオンを求めたいくらいだ。複数の医師が勧めるやり方のほうがより信頼できると考えやすいからだ。 「ワンオピニオン」のみを信じた結果が吉と出ればそれでいいが、問題は結果が悪かった時だ。主治医の言いなりになって手術を受けたのか。それとも自分なりに多方面から意見を求めた上で受けたのか。それにより、後悔の度合いは違うはずだ』、ただ、医学的知識がない素人にとっては、余り多くの「オピニオン」を聞くと、迷ってしまうので、「セカンドオピニオン」程度に留めておく方がいいような気もする。
・『警察やお上の発表をそのまま垂れ流すメディアの危険性  話をコロナ騒動に戻そう。 冒頭で触れた、コロナ対策で感染症専門家に大きく依存する政府の姿勢が変化しないのは、メディアの報道の仕方にも問題があると私は考えている。 日本のメディア(特にテレビ局)は意見が似ていて、どれも同じように見える。それは視聴者の思考停止化を促し、バカ化させる要因にもなりうる。 現在、地上波の在京民放キー局は東京MXを含めてもたった6局だ。 アメリカは保守的なFOXのようなチャンネルもあれば、政権批判が当たり前になっているCNNのようなチャンネルもある。局によって見解が全く異なる。視聴者は多様な言論から自分の嗜好で選ぶこともでき、同じニュースに対して、いくつかの局の言説を比較することもできる。「言論の自由がない」と日本人が批判する中国でも30局くらいから選べる。 それらに比べると、明らかに日本のテレビ局は画一的な報道スタンスと言わざるを得ない。 「記者クラブ」制度もあいまって、警察やお上の発表をそのまま垂れ流し、正しい情報のように国民に思わせることは極めて危険だ。そうした環境だからこそ、今回のコロナ禍において「ステイホーム」以外の対策を訴えた局がなかったのではないか。 新規感染者が出続け、第2波がやってくると言われている中、コロナへの対応をどうすべきか、今後も国民が悩む場面は多いに違いない。その際は、「偏った意見」ではなく、なるべくいろいろな情報に接するべきだということだけは申し添えておきたい』、全く同感である。「警察やお上の発表をそのまま垂れ流し、正しい情報のように国民に思わせることは極めて危険だ。そうした環境だからこそ、今回のコロナ禍において「ステイホーム」以外の対策を訴えた局がなかったのではないか」、これはメディアの記者が責任を回避するサラリーマン化したためなのだろう。
タグ:協議会を持続させるための委託 「丸投げ」「再委託」を防ぐための処方箋 委託事業の取り扱いに全く制限がかかっていないことが最大の原因である。そこにメスを入れなければ、この問題は再び繰り返されることになる ③地方自治体が実施 ⑤委託事業 「中小企業庁長官の辞任」 委託事業は官僚の裁量の余地が大きい 「安倍政権に激震、河井夫妻逮捕を上回る「給付金スキャンダル」の破壊力」 ④補助金事業 ダイヤモンド・オンライン “給付金スキャンダル”はアベノミクスのど真ん中を直撃 持続化給付金の委託で「中抜き」や横流しの疑惑 首相“直撃”の相次ぐ不祥事 揺らぐ政権基盤 各省庁は「再委託制限の統一ルール」を急げ 警察やお上の発表をそのまま垂れ流すメディアの危険性 日本のテレビ局も「バカ」化している 名経営者は「情報の偏り」を回避するための行動をとった 「一方だけの見解」を報じることが冤罪を引き起こすこともある 「異なった視点による複数の見解を総合的に判断」こそ重要 自宅に閉じこもり続けることによって引き起こされる、うつ病やアルコール依存、またロコモティブシンドローム・・・などのリスクや、経済への影響などを最小限に抑える方法を準備するため、感染症以外の専門家の声を聞くべきだった 「バカ化」している安倍政権にコロナ第2波対策を任せられるのか 和田 秀樹 旅行会社などが提供する交通と宿泊がセットになった旅行商品が対象で、代金の半分相当を、宿泊旅行では1人1泊当たり2万円を上限、日帰り旅行では1万円を上限に支援 安全網」整備後回しのツケ アベノミクスの欠陥を象徴 持続化給付金の顛末は、アベノミクスの「失敗」を象徴しているかのようだ 経産省はどこで何が起きているかを把握できないでいる。そのため改善策もとりづらく、入金の遅れがなかなか解消されない 業務の目詰まり 業務の再委託や外注がくり返され、電通や電通子会社の先にも多くの企業が連なっている どの作業にどんな企業がかかわっているのかといった業務の全容を、担当する経済産業省が把握できていなかった サ推協は2016年、電通、パソナ、トランスコスモスの3社でつくった団体 サービスデザイン推進協議会の過去の受託実績 ②独立行政法人が実施 問題の根源は、委託事業の実施にチェック機能が働いていないことにあり 委託先との親密さを疑われても否定できない制度的要因 高辻 成彦 PRESIDENT ONLINE (経済社会的視点) コロナ対策でも「お友達重視」「談合まがい」の入札 「外部有識者による審査会制度の義務化」は欠かせない 「持続化給付金」 「コロナ対応を「感染症の専門家」にしか聞かない日本人の総バカ化 情報の偏りが何も見えていない」 経済産業省には「委託」の選択肢しか無かった パンデミック (その2)(元経産省職員が解説「霞が関が"丸投げ委託"を続ける根本原因」 なぜ電通との取引を優先するのか、安倍政権に激震 河井夫妻逮捕を上回る「給付金スキャンダル」の破壊力、コロナ対応を「感染症の専門家」にしか聞かない日本人の総バカ化 情報の偏りが何も見えていない) ①直轄事業 「外部有識者による検査実施」 サービスデザイン推進協議会 8月の早いうちからスタート うみを出し切れるのか 「Go To キャンペーン」でも同じ疑惑 「元経産省職員が解説「霞が関が"丸投げ委託"を続ける根本原因」 なぜ電通との取引を優先するのか」 再委託や外注の不透明 全容を把握できていない経産省 内藤尚志 事業者に届かない給付 原因の解明進まず、倒産や失業
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パンデミック(経済社会的視点)(その1)(コロナよりも恐ろしく私たちが回避すべきもの 魔女狩りや全体主義を蔓延させてはならない、日本に今度こそ「本当に深刻な危機」が来る理由 コロナ危機で何が「デフォルト化」されたのか、中国の「全人類への犯罪」にイタリアで激怒の声 注目の政治家、サルビーニ氏が中国のコロナ隠しを猛批判) [国内政治]

今日は、パンデミック(経済社会的視点)(その1)(コロナよりも恐ろしく私たちが回避すべきもの 魔女狩りや全体主義を蔓延させてはならない、日本に今度こそ「本当に深刻な危機」が来る理由 コロナ危機で何が「デフォルト化」されたのか、中国の「全人類への犯罪」にイタリアで激怒の声 注目の政治家、サルビーニ氏が中国のコロナ隠しを猛批判)を取上げよう。

先ずは、5月26日付け東洋経済オンラインが掲載した東洋経済 解説部コラムニストの大崎 明子氏による「コロナよりも恐ろしく私たちが回避すべきもの 魔女狩りや全体主義を蔓延させてはならない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/352607
・『緊急事態宣言がようやく全国的に解除となった。こうした中、気になるのはコロナ禍を恐れるあまり、政府方針に従わない人を誹謗し中傷する「自粛警察」が跋扈するなど、正常な人間同士の社会的関係が失われていることだ。 こうした自粛警察が跋扈する理由は、日本国民の多くが新型コロナウイルスへの恐怖感を募らせているからだろう。 日本は新型コロナにかかわる人口対比の死者数がアメリカや欧州諸国に比べて圧倒的に少ない。ところがこの間、ネット上には「ロックダウンをしていない日本は危ない」「PCR検査が不十分な日本はもう終わった」などという記事があふれた。日本よりもずっと人口対比の死者数を多く出している国の対策と比較して「日本はダメだ」という記事のオンパレードだ。 最近のメディアと読者、国家との関係には危ういものを感じる。国に対してコロナ対策が緩すぎるとして、ロックダウンを求めたり、PCR検査を国民全員に行って陽性者の「隔離」をせよと提案したり、国民を監視する海外の政策を推奨したりすることだ。 権力の乱用を防ぐための政府批判はもちろん活発に行うべきだ。たとえば、税金の無駄遣いと思えるアベノマスク、政権寄りの検察官の定年延長を可能にする検察庁法改正案への批判などだ。しかし、政府に対し極端な私権制限を要請するメディアや一部の学者たちと、それに同調する人々の動きには賛成できず、危険なことだと考えている』、「自粛警察」の跋扈、「政府に対し極端な私権制限を要請するメディアや一部の学者たちと、それに同調する人々の動き」、などは確かに危険な兆候だ。
・『国家総動員法と同じ論理  重要なのは患者の治療であるのに、なぜか検査が国民の一大テーマになってしまったのは、テレビの影響力が大きいようだ。コメンテーターがコロナ危機を戦争に例えて、旧日本軍と同様に負けるなどと叫んでいるが、こうした煽動こそ危険だ。太平洋戦争前夜にマスコミが積極的に国民の不安と不満を醸成していった状況に似ている。 「マスコミに煽られ、いったん燃え上がってしまうと熱狂そのものが権威を持ちはじめ、不動のもののように人々を引っ張ってゆき、流してきました」(半藤一利著『昭和史』平凡社)。 煽動の甲斐あってか、一部の経済学者たちが国民全員を対象に新型コロナに感染しているかどうかのPCR検査を行って、「陽性であれば隔離・治療へ」「継続的な陰性は社会活動・経済活動へ」との提言を出している。内容を読むと、個人の意思や選択権などないか、あっても簡単に従わせることができるという傲慢な前提が置かれている。国家規模のGDP(国内総生産)の維持が重視され、国家経済のために「国家総動員法」と同じ発想で出している提案なのだ。 「隔離」は私権制限の最たるものだ。日本でも結核患者やハンセン病患者に対する国家の強制隔離が基本的人権を侵害してきたことは恥ずべき歴史の一部だ。そうした歴史への配慮もない提案は驚きである。 新型コロナは未知のウイルスであり、その性質などは現在解明が進められている。そのため、「専門家」とされる人々の間でもその説明や対策などで意見が一致しない。日本がなぜ感染者を抑え込めているのかもはっきりしないのは確かだ。明らかなデマやフェイクニュースは論外だが、厚生労働省の発表やNHKの報道であっても、事後的に正しかったといえるかどうかはわからない。 こうしたもどかしい状況下では、メディアの報道も勢い大げさなものになりがちだ。そして、メディアが新型コロナの脅威を報道すればするほど人々の恐れも必要以上に拡大していく。そうした中で、人々は政府に対し魔法の杖のようにコロナの感染拡大を止めてくれる手段を望んでしまう。しかし、魔法の杖はなく、極端な解決策ほど大きな副作用や大きな落とし穴が待ち受けているものだ』、「テレビ:が危機感を煽っているのも、確かに戦前を想起させる危険な兆候だ。「一部の経済学者たち」の「提言」は、「国家規模のGDPの維持が重視され、国家経済のために「国家総動員法」と同じ発想で出している」、とは驚くほかない。
・『管理国家への誘惑を断ち切る必要  「9.11」後のアメリカで、人々の監視を強化する米国愛国者法の成立や対イラク戦争に国民を駆り立てていったものとして、マイケル・ムーア氏の映画『華氏911』ではメディアによる「恐怖と消費の大宣伝」の存在が指摘されている。コロナ危機でもそうした動機の存在を注意深く疑ったほうがいい。 韓国や中国など海外で実施されている厳格な新型コロナ感染症対策の裏側では、個人の自由やプライバシーが侵害されていることも冷静に考えるべきだ。私たちは本当にかの国のような管理国家を望むのか。いわゆる「自粛警察」がはびこる今の日本にそうした予兆を感じないだろうか。 すでに、新型コロナで家族を亡くした人がそのことを親しい友人にも言えないという不自由な国になってしまっている。普通の葬儀も出せない状況だ(参考記事『新型コロナでも「普通の葬儀ができるはずだ」』)。また、感染者が家族にいるということも、子どものいじめなどを恐れて友人に相談できないのだという。そうした怖い状況の中から、「陽性者は隔離」という発想は出てきた。 新型コロナを恐れるあまり魔女狩りや全体主義をはびこらせてはならない。日本のように同調圧力の強い社会では、そうしたことが自殺に結び付きやすい。新型コロナによる死者は少ないが、新型コロナにまつわるいじめで自殺者が増えた、というようなことになりかねない』、全く同感である。
・『自由な議論に基づく寛容な社会の維持を  あえていうが、安倍政権に強力なリーダーシップなど求めない。求めるのは情報開示である。新型コロナウイルス感染症専門家会議のどのような議論を経て対策が決められたのか、開示が不十分な点は気になる。一方で、専門家会議が「新しい生活様式」といった大仰な言葉で、日常生活の各場面に及ぶ指導を列挙するのは行きすぎだ。 専門家会議の議事録をどんどん公開し、それを受けて、個々人が必要だと思う感染防止策を実施し、経済活動の再開の仕方を工夫していくというのが民主主義下のコロナ対策の望ましい姿である。 そして、ほかの人の判断の自由も尊重するべきだ。「自粛警察のターゲットにならないように注意しよう」というアドバイスも散見されるが、それは本来順序が逆だ。意見の異なる人への嫌がらせやいじめは、それをする人のほうが戒められるべきだ』、「専門家会議」は議事録が作成されてないとして問題になったが、政府との役割分担が曖昧になったとして、一旦、解散して、政府内の会議になるようだ。いずれにしても、「情報開示」はきっちりやってもらいたいものだ。

次に、5月30日付け東洋経済オンラインが掲載した財務省出身で慶應義塾大学大学院准教授の小幡 績氏による「日本に今度こそ「本当に深刻な危機」が来る理由 コロナ危機で何が「デフォルト化」されたのか」の6頁目までを紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/353639
・『この「持ち回り連載」を受け持っているわれわれ3人(山崎元氏、吉崎達彦氏、筆者)は「仲が良い」と思われているようだが、実はそうでもない。何より、経済、市場、社会に対する見方が大きく異なっている。 5月23日配信の記事「日本が『コロナ第2波』で最も脆弱になる懸念」で吉崎氏は、「日本で新型コロナの死亡者が極めて少ないのは奇跡ではなく、ただの謎として日本在住の欧米人に捉えられている」、というエピソードを紹介していた。 日本の対策は行き当たりばったりで、先進技術も使っていない。人々は自粛だけで、散歩も外出も自由といえば自由であり、杜撰である。それにもかかわらず、新型コロナウイルスの感染はさほど拡大せずに、世界最小レベルの被害で乗り切りつつある。それが謎なのだ、と。そして、逆に第2波のリスクはむしろ日本では高いかもしれないのに、人々は誤った自信を持ち対策を怠って、喉元過ぎて熱さを忘れた頃にひどいことになるかもしれない、と』、「吉崎氏」の見解は代表的意見の1つだ。
・『なぜ日本の被害は「少なかった」のか  しかし、私に言わせれば、今回のものは謎でもなんでもない。真実は単純で「日本にはコロナ危機はもともとなかった」のだ。 「なかった」はさすがに言い過ぎかもしれないが、もともと相対的には深刻ではなかったのだ。アジアはおおむねすべての国で欧米よりも被害が少ない。確かに欧州経由の、変異して強力になったウイルスは猛威を振るったかもしれない。だが、アジアの中国発のウイルスはそれに比べれば、被害は総じてそれほどでもなかった。 日本で3月中旬以降、感染が急に広がったのは、3月21日の連休で気が緩んだからではない。欧州から帰ってきた旅行者などが欧州型のウイルスを広めたからだろう。そして、欧米では死者の数が恐ろしいほど増えたが、それらの多くは、高齢者施設の院内感染だった。 例えば、フランスでは約40%が施設のもので、それは施設には、マスクも消毒薬の備えも薄かった。アジアに比べればそういう習慣があるとは言いがたく、面会などをし続けたことによって被害が広がった。高齢者に死亡者が多い一つの理由は、施設の院内感染の死者数が多いからだ。 また、よく報道されているように、ニューヨークでは、どちらかと言えば、貧しい人々の地域で感染が深刻である。また、シンガポールで第2波があったのも、外国人労働者の衛生環境が悪すぎたからだ。 アメリカでは、貧困層を中心に医療アクセスが限定的であったことも重症化を促進した。重症患者があふれたことで、それで医療崩壊が加速した側面がある。欧米も、富裕層や著名人の死亡者は、高齢者などを除けばおおむね限定的だ。ボリス・ジョンソン首相などは重症化したが、彼は十分な医療アクセスがあったので、助かっている。 結局、日本では相対的に深刻度が低く、言ってみれば「ほとんどの人が好きなときに好きな病院に行ける」ことがむしろ問題であり、制限をかけることに必死だったわけだ。 また、貧困層の衛生状態の差は、天と地に近いほど差があり、基本的な生活条件が「相対的にまし」であることが大きく寄与した。さらに、高齢者が多い諸施設での対策も、欧米よりは徹底していた。たとえば、私の母が入居している施設は、数年前からインフルエンザ対策で、冬の時期は面会が全面禁止だった。またできる期間もマスク、手指消毒は徹底させられていた。 このように専門家でもない私が、新型コロナの総括をするのは問題である。だが、欧米人が欧米で失敗して、日本が成功すると「それはただの謎だ」、と言い放つよりはましであろう』、「ましであ」ることは確かだ。
・『「真の危機」はこれからやって来る  さて、問題は経済である。 「大きな危機」とまでは言えなかったはずの感染症の危機に対して、経済対策は大盤振る舞いだ。「前代未聞」「リーマンショック越え」の大規模財政出動をしたことにより、財政危機になる。それが真の危機で、これからそれがやってくる。だから「危機に備えろ」、ということになる。 前述の、コロナの深刻度合いに関しては意見が分かれるだろう。だが、明瞭なのは、経済危機としては、瞬間風速だけは前代未聞だったが、トータルの規模では「普通の不況レベルの危機」だ。それに対して、経済対策は前代未聞の規模となる。だから、バランスが悪い、ということは間違いがない。これで財政破綻するかどうかも意見が分かれるだろうが、私は確実に財政破綻すると思う。理由は、前代未聞の感染症はまた必ず、しかも繰り返しやってくるからである。 「100年に1度の危機は10年に1度来る」、とリーマンショックのときにラリー・サマーズ元財務長官は言ったが、人類最大の危機は、21世紀に何度もやってくると私は言いたい。 コロナショックに対して、「人類最大の危機」といった人がいたが、それは明らかな間違いである。人類にとっては、感染症の危機はもっとも恒常的な危機で、最大の、最頻の危機である。 それはともかく、「21世紀は感染症の世紀だ」と、多くの人が以前から指摘していた(マイクロソフトの共同創業者であるビル・ゲイツ氏が言っていたということは、感染症の専門家の間ではコンセンサスだったということだ)。これは驚きでもなんでもない。感染症は繰り返しやってくる。実際、サーズ、マーズ、新型インフルエンザ、エボラと私が覚えているメジャーなものだけでも21世紀にすでに4つある』、「100年に1度の危機は10年に1度来る」、「21世紀は感染症の世紀だ」などは、言い得て妙だ。。
・『また「前代未聞の経済対策」が繰り返されるのか  少なくとも、同じ程度の感染症の危機はすぐに必ずやってくる。そうするとどうなるか。 感染症対策は進んでいるから、少しはましな医療が提供されるだろう。だが、経済対策は同じことを繰り返すだろう。つまり、前代未聞の経済対策は、毎回発動されるということである。 アメリカは今回追加を含めれば総額600兆円を超えるといわれる対策を打った。日本も、5月27日に第2次補正予算が閣議決定され、「真水」の議論はあるものの、第1次補正とあわせれば総額は234兆円だ。歳出ベースでもリーマンショック時を上回る60兆円を超える財政支出がなされ、それのすべてが国債でまかなわれる。安倍晋三首相が言うように、日本においては、空前絶後であることは間違いがない(絶後かどうかはわからないが)。日本に「実は危機はなかった」にもかかわらず、である。 何度も言うが、感染症の危機としては今回よりも大きな危機は必ずやってくるだろう。そして、人々は補償を求める。言い方は悪いが、有り体に言えば、人々のため、社会のために自粛、休業を要請しても「金をくれなきゃ休業、自粛してやんない」、というのがデフォルト(標準的な設定)として今回確立してしまった。 次の感染症のとき、首相、官邸はどうするか。支持率の低下を防止するために、先回りして、その危機の大きさを確かめる前に、感染症が広まった瞬間に金をばら撒くことになるだろう。間違いなく、そうしているうちに財政は破綻する。だから、今回の危機はコロナ危機ではなく、経済危機でもなく、財政危機が最も深刻な日本社会へのリスクなのである。 では、本来はどのような経済対策を打つべきか。ここでは、あまり長くなってもいけないので、詳細は改めて議論することにして、要点だけ述べよう。 前提として、コロナ危機はとりあえず去った。残っているのは、不安だけである。安全ではなく安心のために大規模なばら撒きが行われた。需要が萎縮するとすれば、不安によるもの、および、観光や夜の飲食などを中心に、冷静に考えると不急であるだけでなく不要であると人々が気づいたものは、不安が解消されても(必ず人々は忘れる)、需要は回復しない。しかし、真に必要な、人々が熱望する、観光や夜の飲食は続くであろう。 アメリカでは中小企業だけでなく、大企業の倒産が相次いだ。高級百貨店のニーマン・マーカス、中堅商業施設のJ.C.ペニー、アパレル中堅のJ.クルー。そして、レンタカーのハーツ。シェールオイル、ガス関連企業の破綻も相次いだ。日本ではアパレルのレナウンがいまのところ大型倒産の代表格であろうか』、「財政危機が最も深刻な日本社会へのリスク」というのは、日銀の異次元緩和により覆い隠されている。しかし、長期金利が上昇し始めると、「財政危機」が一気に顕在化すると思う。
・『「家賃補償政策の本質」とは何か?  これらの倒産企業の共通点は何か。いずれも、コロナ危機の前から、経営が行き詰まっていたところである。構造変化や経営の失敗で回復の見込みがかなり薄かったところへ、コロナがとどめを刺した。もともと価値を失っていた企業、ビジネスモデルなので、破たん前の救済や買収は起きにくかったのである。中小企業を含むすべての企業も同じことが言える。もともと、あまり調子が良くなかったところから倒産に追い込まれていくのが大半である。 コロナ危機の最中は、資金繰り倒産を防ぐことが最大の課題であった。 いまや危機は去った。これで需要が出ない、売り上げが立たないとすると、それは構造的な問題であり、現金を給付して支えることは逆効果である。廃業または倒産する企業を支えることになる。 そのような企業、ビジネスモデルは存在価値がないのであるから、構造転換支援、あるいは転業支援をするべきである。そして、守るべきは、人間である。したがって、失業保険は充実させるが、休業補償に類することは、いまや打ち切るべきである。もっとも無駄なのは、いまさらの家賃補填である。しかも600万円までと多額である。この家賃補償の政策は行うべきではない。 理由は簡単だ。これは中小企業支援、テナント支援、お店の支援ではなく、ビルオーナー支援、地主支援に他ならないからである。まともな地主、オーナーはこの休業期間、家賃を免除している。例えば最大手の一角である三井不動産は、「ららぽーと」などの家賃は減免するなどしている。利益は減り、それが一つの理由で株価が下がった。しかし、大手としては妥当な行動である。テナントあっての不動産ビジネスであるから、長年の重要な顧客は守る必要がある。 新しい平常になっても、オーナーとしては価値のあるテナントは大切にするはずである。資金繰り支援を金融機関にしてもらうのは必要だが、家賃については、オーナーが交渉に応じるはずだ。応じないのであれば、そのオーナーはだめなオーナーか、テナントがもともとうまくいっていないから価値のあるテナントではないということだ。あるいは家賃の値上げを長期間拒んで破格の家賃で居座っていたか。そうしたケースもあるだろう。 いずれにしても新陳代謝を進める意味でも、家賃補助はするべきでない。守るべきは、それで仕事を失った働き手の支援であり、彼らには失業保険などを手厚く給付すればよい』、「廃業または倒産する企業」には「構造転換支援、あるいは転業支援をするべき」、「守るべきは、人間である」、同感だ。
・『「不安」をどうすればいいのか?  一方、マクロ的な需要刺激策も不必要だ。需要は、我慢していたのだから、これが噴出してくる。「ペントアップデマンド」と呼ばれているが、名前はともかく、自粛で我慢していた需要が出てくるので、需要はむしろ短期的にはあまるほど出てくる。 結局のところ、日本を振り回したのは、不安である。 不安が、存在しない危機を人類最大の危機に発展させ、必要のない、バラ撒きを実現させたのである。そして、この不安には根拠がない。だから、バラ撒きで一時的にほっとするが、すぐにまた不安になる。「1回きりの10万円では足りるはずがない!この先どうなるかわからない。毎月10万円は必要だ!」などと言われる始末である。10万円配って、支持率が下がってしまうのだから「ばら撒き政策」もまったく無意味になってしまった。 さらに、この不安は実体経済にも直接影響を与えている。不安が残り、不必要に移動や支出を怖がる場合、需要が戻らない。では、どうしたらよいか。 これに対しては、根拠がない不安であるから、理屈で対策を取っても意味がない。それにもかかわらず、コロナ前には、世の中でもっとも合理的だと思われていたエコノミストたち(合理的過ぎて現実の人々の気持ちがわかっていないと非難されていた)が、得体の知れない不安を真正面から受け止めようとして、「日本自爆政策」とも呼べるような提案をしている。 彼らは、コロナ前には「財政緊縮論者」として批判を浴びていたはずだ。だが、人々の不安を払拭するために、全国民あるいはそれに近い大量のPCR検査を繰り返し行い、人々を安心させて、経済活動に復帰させようと提案している。アメリカのハーバード大学などがそのようなことを提言したから、この受け売りというだけなのかもしれないが、彼らは真剣だ。毎年数兆円の支出と、実施に際して非常な困難を伴ってでもやるべきだ、と主張している。 私は「コロナでおかしくなってしまったのか」と言いたい。PCR検査の結果が今日陰性でも、明日に陽性になるかもしれないのだ。だから、闇雲な検査はまさに百害あって一利なしに等しいのである。「では抗体検査を」、というが、これも賛否両論で、今回のコロナは抗体があっても大丈夫とは言い切れない。大量の国民全員の検査を行って、得られるものは、誤った安心である。目先の不安は解消されるかもしれない。ただ、それだけのために、毎年数兆円支出するという提案をするのである』、「エコノミストたち」の「提案」に対しては、「「コロナでおかしくなってしまったのか」と言いたい」、その通りだ。
・『真の感染症危機が到来し、日本が財政破綻する懸念  この提案の最大の欠点は何か。検査をするのは、陰性なら安心ということで、不安を解消することのはずだ。だが、陰性で安心して活動していたら、発症して陽性になった、という例が出ている。「それは確率論だから、それが出てもかまわない。出たら隔離すればよい」、と全数検査提案側は言う。だが、国民の側はそうではない。陰性なら安心ということに金と時間と手間を払っているのに、これで発症して、他人にも感染したらまさにそれこそパニックである。かえってパニックは大きくなる。これこそが、原発事故でも日本を襲った、ゼロリスク神話、ゼロリスク追求癖の罠である。 したがって、日本には間違いなく今後、再び、いや真の感染症危機がやってくる(それが吉崎氏のいう「第2波」であろうが、別の新型ウイルスであろうが)。そのとき日本がパニックになり、感染症危機がどこまで深まるかは、そのときの対応、あるいは準備次第である。だが、少なくとも財政は確実に破綻するのである。 よって、吉崎氏に言わせれば、「なんだ、論理は違うが、結論はほぼ一緒だね」、と言うことになるのかもしれない・・・』、「ゼロリスク神話、ゼロリスク追求癖の罠」、とは確かに日本人が陥り易い悪弊だ。「財政は確実に破綻する」、前述のように私には異論がある。

第三に、6月3日付けJBPressが掲載した産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授の古森 義久氏による「中国の「全人類への犯罪」にイタリアで激怒の声 注目の政治家、サルビーニ氏が中国のコロナ隠しを猛批判」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/60765
・『「中国政府の新型コロナウイルスの隠蔽工作は全人類に対する犯罪だ」イタリアの有力政治家によるこんな激しい糾弾の言葉が、欧米メディアで繰り返し報じられるようになった。 中国の習近平政権が当初、新型コロナウイルスの感染拡大を隠し、感染の状況などについて虚偽の情報を流していたことに対しては米国でも多方面から非難が浴びせられている。だが、「全人類への犯罪」という激しい表現はなかなか見当たらない。なぜこれほど厳しく中国を糾弾しているのか』、興味深そうだ。
・『中国は「全人類に対する罪を犯した」  この言葉を発したのは、イタリアの前副首相で右派有力政党「同盟」の党首(書記長)、マッテオ・サルビーニ氏である。サルビーニ氏はイタリア議会などで次のように発言した。 「もし中国政府がコロナウイルスの感染について早くから知っていて、あえてそのことを公に知らせなかったとすれば、全人類に対する罪を犯したことになる」 「もし」という条件をつけてはいるが、中国政府がコロナウイルスの武漢での拡散を隠したことは周知の事実である。つまりサルビーニ氏は「全人類に対する罪を犯した」として明確に中国を攻撃しているのだ。 4月から5月にかけ、サルビーニ氏は数回、同じ趣旨の中国非難を繰り返した。議会で次のように述べたことも報道されている。 「中国は新型コロナウイルスのパンデミックを隠蔽することによって全人類への罪を犯した」』、「サルビーニ氏」の「中国」批判は確かに激烈だ。
・『中国への接近策をとってきたイタリア  サルビーニ氏は47歳のイタリア議会上院議員で、現在イタリア政界で最も注目を集める政治家の1人である。欧州議会議員を3期務めたあと、右派政党「同盟」を率いて2018年の総選挙で第三党となり、連立政権の副首相兼内相に就任した。2019年9月には内閣を離れたが、その後も活発な政治活動を展開してきた。 ジュセッペ・コンテ首相が率いる連立政権は中国への接近策をとってきたが、サルビーニ氏は中国への接近を一貫して批判してきた。イタリアが中国の「一帯一路」構想に参加して、中国から技術者や学生、移民などを多数受け入れてきたことに対しても、サルビーニ氏の「同盟」は批判的だった。 新型コロナウイルスがイタリアで爆発的に感染拡大する直前の1月下旬、中国に帰って「春節」を過ごしたイタリア在住の中国人がイタリアに戻ってきた。「同盟」は、イタリアでの感染拡大を防ぐ水際対策として彼らの検査を行い、隔離することを提案した。だがイタリア政府はその種の規制を一切行わなかった。 その後、イタリアで悲劇的な感染爆発が起こり、全国民の封鎖状態が長く続いた。6月頭時点で、感染者は累計23万3000人を超えて世界第9位、死者は3万3000人を超え、世界第3位を記録している。 だからこそ、元々、中国への接近に批判的だったサルビーニ氏が激しい言葉で中国政府を糾弾するのはもっともだと言える。しかしそれでも中国政府に浴びせる「全人類への犯罪」という表現は過激である。 米国や欧州の主要メディアは サルビーニ氏の発言を「中国への激しい怒り」の実例として報道するようになった。米国の有力新聞ワシントン・ポストは、4月中旬の「中国に対して怒っているのはトランプ大統領だけではない」という見出しの記事で、サルビーニ発言を詳しく紹介していた。ヨーロッパでも、イタリアのメディアに加えてイギリスやフランスの新聞、テレビなどがその発言を伝えている。 ヨーロッパ諸国のなかでこれまで中国に対して最も友好的な政策をとってきたイタリアでこうした激しい中国糾弾の言葉が発せられ、広く報じられるという現実は、今後の国際社会で中国が置かれる厳しい状況を予測させるともいえそうだ』、「1月下旬、中国に帰って「春節」を過ごしたイタリア在住の中国人がイタリアに戻ってきた。「同盟」は、イタリアでの感染拡大を防ぐ水際対策として彼らの検査を行い、隔離することを提案した。だがイタリア政府はその種の規制を一切行わなかった」、「サルビーニ氏」の「提案」を無視した「イタリア政府」の責任も大きそうだ。
明日は、持続化給付金などの政策対応を取上げる予定である。
タグ:「同盟」は、イタリアでの感染拡大を防ぐ水際対策として彼らの検査を行い、隔離することを提案した。だがイタリア政府はその種の規制を一切行わなかった 1月下旬、中国に帰って「春節」を過ごしたイタリア在住の中国人がイタリアに戻ってきた コンテ首相が率いる連立政権は中国への接近策をとってきたが、サルビーニ氏は中国への接近を一貫して批判 中国への接近策をとってきたイタリア 全人類に対する罪を犯したことになる 右派有力政党「同盟」の党首(書記長)、マッテオ・サルビーニ氏 「中国の「全人類への犯罪」にイタリアで激怒の声 注目の政治家、サルビーニ氏が中国のコロナ隠しを猛批判」 古森 義久 JBPRESS ゼロリスク神話、ゼロリスク追求癖の罠」 真の感染症危機が到来し、日本が財政破綻する懸念 「不安」をどうすればいいのか? 守るべきは、人間である」 「家賃補償政策の本質」とは何か? 日銀の異次元緩和により覆い隠されている。しかし、長期金利が上昇し始めると、「財政危機」が一気に顕在化する 「財政危機が最も深刻な日本社会へのリスク」 また「前代未聞の経済対策」が繰り返されるのか 「21世紀は感染症の世紀だ」 「100年に1度の危機は10年に1度来る」 「大きな危機」とまでは言えなかったはずの感染症の危機に対して、経済対策は大盤振る舞い 「真の危機」はこれからやって来る なぜ日本の被害は「少なかった」のか 「日本に今度こそ「本当に深刻な危機」が来る理由 コロナ危機で何が「デフォルト化」されたのか」 小幡 績 自由な議論に基づく寛容な社会の維持を 管理国家への誘惑を断ち切る必要 国家規模のGDPの維持が重視され、国家経済のために「国家総動員法」と同じ発想で出している」 一部の経済学者たち」の「提言」 国家総動員法と同じ論理 政府に対し極端な私権制限を要請するメディアや一部の学者たちと、それに同調する人々の動き 「自粛警察」が跋扈 「コロナよりも恐ろしく私たちが回避すべきもの 魔女狩りや全体主義を蔓延させてはならない」 大崎 明子 東洋経済オンライン (その1)(コロナよりも恐ろしく私たちが回避すべきもの 魔女狩りや全体主義を蔓延させてはならない、日本に今度こそ「本当に深刻な危機」が来る理由 コロナ危機で何が「デフォルト化」されたのか、中国の「全人類への犯罪」にイタリアで激怒の声 注目の政治家、サルビーニ氏が中国のコロナ隠しを猛批判) (経済社会的視点) パンデミック
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パンデミック(医学的視点)(その14)(いまだに新型コロナ検査が脆弱な日本 「抑え込み成功」は運が良かっただけ?、なぜ日本の新型コロナ死者数は少ないのか?」山中伸弥が橋下徹に語った“ファクターXの存在”、日本のコロナ致死率の低さを巡る「集団免疫新説」が政治的破壊力を持つ理由、スウェーデンの新型コロナ感染者数が1日最多に 死亡率も世界屈指) [国内政治]

今日まで更新を休むとしていたが、更新することにした。パンデミックについては、5月21日に取上げた。この問題の広がりを考慮し、医学的視点と、経済社会的視点に分けることにした。今日は、(医学的視点)(その14)(いまだに新型コロナ検査が脆弱な日本 「抑え込み成功」は運が良かっただけ?、なぜ日本の新型コロナ死者数は少ないのか?」山中伸弥が橋下徹に語った“ファクターXの存在”、日本のコロナ致死率の低さを巡る「集団免疫新説」が政治的破壊力を持つ理由、スウェーデンの新型コロナ感染者数が1日最多に 死亡率も世界屈指)である。

先ずは、5月29日付けNewsweek日本版がロイター記事を転載した「いまだに新型コロナ検査が脆弱な日本 「抑え込み成功」は運が良かっただけ?」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/05/oecd3736_1.php
・『4月初めに発熱で寝込んだ三段目力士の勝武士さんは、新型コロナウイルスのPCR検査をなかなか受けることができなかった。師匠は保健所に電話をかけ続けたものの、ずっと話し中でつながらなかった。 そのころ東京都内の病院は、急増する新型コロナ患者で一杯だった。受け入れ先は4日間見つからず、日本相撲協会によると、ようやく入院できたのは血痰混じりの咳が出るようになっていた4月8日だった。そして5月13日、勝武士さんは28歳の若さで亡くなった。 感染拡大を封じ込めるには広範な検査が欠かせない──多くの専門家がそう警鐘を鳴らす中で起きた勝武士さんの死は、日本の検査数の少なさ、保健所に依存する検査体制に対して議論を呼んだ。 日本は5月25日に緊急事態宣言をすべて解除し、経済活動を再開し始めた。そのパンデミック対応は、「不可思議な成功」と称えられている。全世界で死者が30万人を超えるなかで、日本は感染者数1万6000人、うち死者は約800人にとどまっている。 だが同時に、人口1000人当たりの日本の検査数は、経済協力開発機構(OECD)加盟国37国のなかでメキシコに次いで2番目に少ない。 英オックスフォード大学のデータによると、5月20日時点で日本が実施した検査件数は人口1000人当たり3.4件。イタリアの52.5件、米国の39件に比べ、はるかに少ない。韓国では人口1000人あたり15件検査をしている。 ロイターは公衆衛生の当局者、医師、専門家など10人以上に取材。彼らの多くは、検査体制の拡充の遅れが日本の感染実態を覆い隠しており、再び感染が拡大した場合に国民が脆弱な立場に置かれかねないと懸念を示した。 厚労省の既得権益や官僚主義が保健所の検査を停滞させ、民間機関による検査を許可するのに時間がかかりすぎたとの批判も聞かれた。 沖縄県浦添市にある群星沖縄臨床研修センターの徳田安春センター長は、「確かに発表されている感染者数、死亡者数は少ない。ただそれは、検査が抑制された中での数なので、かなりの漏れがある」と言う。 日本政府が設置した専門家会議の尾身茂副座長も衆議院予算委員会で、「(実際の感染者が)10倍か15倍か、20倍かというのは誰にも分からない」と語った。専門家会議は政府に対し、軽症者も含めた検査体制の拡充を急ぐよう求めてきた。 厚労省によると、保健所の負担を軽減するため民間検査機関の活用を増やしているという。 「PCR検査を必要な時に、必要な人にやるべきだというスタンスは最初から一貫していた。ずっと、検査キャパシティを拡充してきている」と、厚生労働省結核感染症課の加藤拓馬課長補佐は語る』、「日本」の「パンデミック対応は、「不可思議な成功」、「日本が実施した検査件数は人口1000人当たり3.4件。イタリアの52.5件、米国の39件に比べ、はるかに少ない」、「厚労省の既得権益や官僚主義が保健所の検査を停滞させ、民間機関による検査を許可するのに時間がかかりすぎたとの批判も聞かれた」、同感である。
・『検査は「十分ではない」  日本における新型コロナ対応の最前線となってきた保健所は、1990年代から数が半減している。一方、韓国は過去の感染症の経験を踏まえて公衆衛生体制を強化してきた。長時間の勤務と殺到する電話に苦しみつつ、日本の保健所は民間によるPCR検査を認めるよう政府に要望してきた。 日本政府は1日最大2万2000件のPCR検査能力があるとしているが、1日に行われている検査はその3分の1にも満たない約6000件だ。厚労省によると、その約75%は保健所や公的機関で実施されている。 全国保健所長会は5月6日付の書簡で加藤勝信厚労相に対し、検査方針を全面的に見直すよう求めた。そこには「現在、新型コロナウイルス感染症におけるPCR検査について、検査数の不足や検査目的の混乱が生じています」と書かれている。 一部の地方自治体は4月、地元の医師会の協力を得て、保健所を介さず検査を受けられるPCR検査センターの運用を開始した』、「全国保健所長会」が「加藤勝信厚労相に対し、検査方針を全面的に見直すよう求めた」、とは初めて知った。
・『成果は出ていると厚労省  保健所の能力が限界を超える一方で、大学からは研究所の活用を申し出る声がある。 ノーベル生理学・医学賞を受賞した京都大学の山中伸弥教授は5月6日、動画配信サイトで安倍晋三首相と対談し、「大学などの研究所の力をうまく利用すればPCR能力は10万ぐらいいける可能性がある」と語った。 厚労省は山中教授の提案を歓迎する一方、さらなる検討が必要だとしている。 「非常時だから協力しようという話で、ありがたい。私たちのニーズと現場のオファーをよくマッチングして、協力いただけるのであれば、どんどん協力していただきたい」と、厚労省の迫井正深審議官は語る。 検査件数の少なさを問題視する専門家や研究者の中には、厚労省の医系技官が情報を掌握するため、民間機関と協力したがらないと指摘する声もある。 厚労省の官僚は保健所を通じて質の高いデータを集めたがっていると、キングス・カレッジ・ロンドンの教授で、世界保健機関(WHO)事務局長上級顧問の渋谷健司氏は言う。 厚労省は、医系技官が意図的に検査数を抑えているという見方を否定。これまでの手法は成果を上げているとの認識を示す。 医師が必要と判断した場合、PCR検査を実施することは重要だと、迫井審議官は言う。その上で、検査を受けやすくするため、3月から保険適用の対象になった点を指摘する。 「件数を伸ばしてゆくフレキシビリティに欠けるという点は分らなくもないが、行政で施策において検査結果を活用するという点では、今の形をやってゆくことが当面必要ではないかと考えている」と、迫井審議官は言う。 しかし、こうしたやり方を危惧する専門家もいる。 「(感染者数が欧米より少ないのは)政策が良かったというよりは、運が良かったと取ったほうが安全だと思う」と、群星沖縄臨床研修センターの徳田センター長は話す』、「厚労省」の言い分はどうみても言い訳以外の何物でもない。やはり、「厚労省の医系技官が情報を掌握するため、民間機関と協力したがらないと指摘する声も」、との指摘の方が正鵠だろう。

次に、6月15日付け文春オンライン「なぜ日本の新型コロナ死者数は少ないのか?」山中伸弥が橋下徹に語った“ファクターXの存在”――文藝春秋特選記事」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/38416
・『「ファクターX」とは耳慣れない言葉だが、ノーベル賞受賞者の山中伸弥氏(京都大学iPS細胞研究所所長)は、ファクターXこそ、今後の日本人と新型コロナウイルスとの闘いの行方を左右する重要な要素だという。 「僕が今とても気になっているのは、日本の感染拡大が欧米に比べて緩やかなのは、絶対に何か理由があるはずだということです。何が理由なのかはわからないのですけれど、僕は仮に『ファクターX』と呼んでいます」(山中氏)』、何故なのだろう。
・『「ファクターX」をいかに解明するか?  日本は海外主要国と比較してPCR検査数が少ないため、感染者数を正確に比較するのは難しいが、死者数に関していえば、5月半ばの時点で700人超。アメリカの8万人超、英国の3万人超と比べると文字通りケタ違いに少ない。 「ファクターX」の解明のため、山中氏が重視しているのは、ウイルスに対する抗体(ウイルスに反応して毒素を中和する物質)を持っているかを調べる「抗体検査」だ。 厚労省は6月から、東京・大阪・宮城の3カ所で1万人規模の大規模な検査を開始すると発表したばかりだが、山中氏と元大阪府知事の橋下徹氏が、科学者と政治家それぞれの観点から、新型コロナウイルスとの闘い方について語りあった対談(「文藝春秋」6月号)でも、この抗体検査のことが話題になった』、興味深そうだ。
・『抗体検査で「大事なのは国産でやること」  山中 僕は、PCR検査に加えて、抗体検査が重要だと考えています。実際にどの層の人が、どれくらいの割合で抗体を持っているのかがわかれば、ファクターXが見えてくる可能性もありますから。 橋下 抗体検査にはどのようなメリットがあるのでしょうか。 山中 抗体検査は、ワクチンや治療薬の開発よりはるかに早くできます。コストも安い。大事なのは国産でやることで、これを外国産に頼ってしまうと、後手後手で質の悪いものを使わされてしまう恐れがあります。国産で品質管理をしっかりして検査キットを作らないといけません。これはPCR検査キットも同じで、変異した後のウイルスまでちゃんと検出しているかわからないという話も出ています』、「大事なのは国産でやること」とは当初は「山中教授」らしからぬ発言と思ったが、その理由が理解できた。
・『院内感染対策にも使える  橋下 感染が広まっていない状況で抗体検査をやっても意味がないけれど、現在の東京や大阪であれば、社会がウイルスに対してどれだけ強くなっているかを見る指標の一つにもなるということですよね。 山中 そうです。抗体検査の意義をもう一つ挙げるなら、院内感染対策にも活用できます。今の日本は市中の感染爆発よりも、院内感染による医療崩壊のほうが心配な状況で、ベッドや医療機器が足りていても、医療関係者の数が足りなくなってしまう恐れが出てきました。(中略) そういう大変な現場で頑張っている医師や看護師の抗体の有無がわかれば、抗体を持っている人だけに現場に入ってもらうこともできる。現段階でも、医療従事者はかなりの方が感染している可能性があると考えています・・・』、これは文芸春秋を売るためのPR記事なので、殆ど何も分からないが、第三の記事ではある程度の骨格が紹介されている。

第三に、6月2日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した立命館大学政策科学部教授の上久保誠人氏による「日本のコロナ致死率の低さを巡る「集団免疫新説」が政治的破壊力を持つ理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/238988
・『ノーベル賞受賞者である京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥所長は、日本の新型コロナウイルス感染拡大が欧米に比べて緩やかな理由があるはずだとして、それを仮に「ファクターX」と呼んでいる。山中氏がその候補の1つとして言及したのが、京都大学大学院の上久保靖彦特定教授と吉備国際大学の高橋淳教授の研究成果だ。ウイルスには最低でも3つの型があり、それぞれの特性や感染経路によって国ごとの感染者数や致死率の違いを説明しようという「新説」だ。実は、この新説はすさまじい政治的破壊力を秘めている。その理由を解説しよう』、「すさまじい政治的破壊力」とは面白そうだ。
・『安倍首相が誇った「日本モデル」 しかし世界は「日本の謎」と評価  安倍晋三政権は、5月25日に「緊急事態宣言」を全国で解除した。安倍首相は記者会見で「まさに『日本モデル』の力を示した」と力強く述べた。 また、「日本の感染症への対応は世界において卓越した模範であると、(アントニオ・)グテーレス国連事務総長が評価してくれた」「日本は、人口当たりの感染者数や死亡者数を、G7、主要先進国の中でも圧倒的に少なく抑え込むことができている。私たちの取り組みは確実に成果を挙げており、世界の期待と注目を集めている」と自信満々に述べて、日本の新型コロナウイルス対策の成功を誇った。 しかし、安倍政権の支持率は低調だ。毎日新聞の最新世論調査で支持率27%、不支持率64%と報じられるなど、過去最低の水準に低迷している。検察庁法改正案が国民の厳しい批判を浴びたとはいえ、支持率低下の要因はそれだけではない。安倍政権の新型コロナウイルス対策に対する国民からの評価は高くない。 「全校一斉休校」や「アベノマスク」の決断が、専門家の助言に基づかない首相の独断だったことに対する不信感(本連載第237回)が募った。また、専門家が政府の「司令塔」のような振る舞いで持論をメディアやSNSで次々と発表し、国民がそれに従って行動自粛を続けていることに対する違和感が広がった。そして、外出や営業の自粛によって倒産や破算の危機に陥った事業者や個人の不満が高まった。 加えて、「Too Little, Too Late (少なすぎる、遅すぎる)」そのもので、国民を失望させた個人の現金給付や企業への休業補償や、新型コロナウイルス対策とはまったく関係のない無駄なバラマキが多数含まれた「緊急経済対策」への批判も広がった(第239回)。 肝心の新型コロナウイルス対策そのものも、世界の標準的な対策とは異なる独特なもので、世界最先端の研究の知見を専門家会議がフォローできていないと批判がある。また、PCR検査の実施を拡大すべきか、抑制すべきかの論争はいまだに続いている(第242回)。 海外からも日本の新型コロナ対策は決して高く評価されているとはいえない。さまざまな海外メディアが、「最悪な対応しかできなかったのに、感染者・死者数が欧米諸国と比べて圧倒的に少なく抑え込まれている」ことを「日本の不可解な謎」として報じているのだ(朝日新聞5月26日付『「不可解な謎」 欧米メディアが驚く、日本のコロナ対策』)』、「安倍首相」のいつもの「自画自賛」は、聞くだけで腹が立つ。
・『コロナ対策は「日本モデル」ではなく都合のいい部分だけ自賛の「安倍モデル」  安倍首相が、日本の新型コロナウイルス対策を「日本モデル」と自画自賛したことは、国民と世界をあ然とさせたが、筆者には別に驚きはない。安倍政権のいつもの姿だからだ。 安倍首相は選挙のたびに、安全保障や原子力発電問題など、国論が二分されるような争点を隠してきた。そして、選挙に勝利すると、そういう問題を含め「私の政権のすべてが国民から信認された」と言い放ち、強引に「首相がやりたい政策」を進めてきた(第94回)。 「アベノミクス」や社会保障政策でも、都合のいい数字だけを取り上げて、その成果を誇った(第163回)。一方、都合の悪い結果は、すべて「民主党政権時代」に押し付けて、民主党政権を「悪夢」と罵倒してきた。 要するに、都合のいい部分だけを取り上げて自画自賛し、都合の悪い事実は無視するか、他者に押し付ける。新型コロナウイルス対策も、まったく同じなのだ。これを「日本モデル」と言われるのはさすがに日本国民として困ってしまう。安倍首相には申し訳ないが、「安倍モデル」と呼ぶことにさせていただきたい』、「コロナ対策は「日本モデル」ではなく都合のいい部分だけ自賛の「安倍モデル」」とは誠に言い得て妙だ。
・『「日本の謎」を解く鍵の候補として山中伸弥教授が言及した研究成果  しかし、「日本の不可解な謎」はまじめに解く必要があるだろう。根拠がなく、都合のいい自画自賛である「安倍モデル」では、今後襲来が懸念される新型コロナウイルス感染症の「第二波」「第三波」に対して、企業や学校、そして国民一人一人は不安が募るばかり。しっかりと備えることができないからだ。 「日本の不可解な謎」については、さまざまな説が登場し、百家争鳴状態となっている。まず、政府の専門家会議は、「クラスター対策」に対する批判に反論している。クラスター対策を通してウイルス伝播の特徴を早期につかみ、国民への注意喚起や対策につなげられたことで、日本の死亡者数や重症者数を欧米諸国と比べて低く抑えることができたと強調しているのだ(『「日本はなぜ死亡者数が少ないか」専門家会議が挙げたいくつかの要因』)。だが、前回指摘したように専門家会議は、そもそも「クラスター対策」を専門的に検証する能力がない人たちの集まりだ(第242回・P4)。 また、「BCGワクチン」が感染後の重症化を防いでいるという見方がある。日本では義務化されているBCG接種が、重症者・死亡者の多い欧米諸国では行われていないことに注目している(朝日新聞4月15日付『BCGワクチン、コロナ死亡率と相関性?学会は非推奨』)。国民皆保険による医療アクセスの良さなど、日常における医療体制・公衆衛生体制のレベルの高さを挙げる意見もある(日医on-line 『日本外国特派員協会で新型コロナウイルス感染症に関する日医の取り組み等を説明 横倉会長』)。 その他にも、「家の中で靴を脱ぐ」「手洗いを頻繁に行う」「毎日入浴する」という日本人の生活習慣が、新型コロナウイルスの蔓延を防いだという声もある(NEWSポストセブン『日本人の習慣がコロナ感染回避か、靴脱ぐ・電車で無口ほか』)。 そして、日本社会独特の「同調圧力」の強さを理由に挙げる人もいる。日本の「コロナ特別措置法」は、欧米のような「命令」も「罰則」もなく、ロックダウン(都市封鎖)もない。「緊急事態宣言」における「外出自粛」と「休業要請」という強制力のないものであった。これは、海外から緩すぎると批判されたが、いわゆる「世間の目」という同調圧力が強い日本では十分であった。これが功を奏して、感染の拡大が防がれたというのだ(佐藤直樹『コロナ禍で浮き彫り、同調圧力と相互監視の「世間」を生きる日本人 企業名が晒され、感染者が差別される…』)。 しかし、これらの諸説は実感としては分からないでもないが、新型コロナウイルスの重症者・死亡者が抑制されたこととの因果関係は、明確に証明できないものである。 ノーベル賞受賞者である京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥所長は、日本の感染拡大が欧米に比べて緩やかな理由があるはずだとして、それを仮に「ファクターX」と呼んでいる。そして、このファクターXを見つけることこそ、今後の日本人と新型コロナウイルスとの闘いの行方を左右すると指摘している(『山中伸弥×橋下徹 日本人が持つ、新型ウイルスに負けない「ファクターX」とは?』文藝春秋digital)。 その山中氏が、「現段階では根拠はまだ薄いです」という指摘こそするものの、「ファクターX」の候補の1つとして前述の対談記事で言及した新説がある。京都大学大学院の上久保靖彦特定教授と吉備国際大学の高橋淳教授の研究成果である。本稿は、この研究を取り上げる。既に、一部のメディアが報道しているが、研究の一部を切り取って報じているために、まだ研究の全体像が広く知られていない。筆者は、論文を精読し、できるだけ正確に論文の内容を伝えたい』、医学的な「論文を精読」したとは大したものだ。
・『コロナ感染による国ごとの致死率の差をウイルスの「3つの型」で読み解く新説  上久保靖彦氏らの研究(Yasuhiko Kamikubo, Atsushi Takahashi, “Paradoxical dynamics of SARS-CoV-2 by herd immunity and antibody-dependent enhancement” )は、なぜ日本の死亡率が低いのか、なぜ国ごとに重症度や致死率が違うのかを明らかにしようとしている。まず、2019年12月に中国・武漢市で発生した新型コロナウイルスには「S型」「K型」「G型」の最低3つの型があることを発見した。これらの型は、伝染性と病原性が異なるため、それぞれの国でどの型がどの程度流行したかによって、国ごとの感染の広がりや重症度、死者数が異なることになったという。 上久保氏らは、新型コロナウイルスとインフルエンザの競合による「ウイルス干渉」を数値化したrisk scoreの分布を分析した。そして、日本のインフルエンザの流行曲線に起こる変化から新型コロナウイルスの日本への到来を確認した。また、ウイルスの変異と世界への蔓延を検証。さらに、新型コロナウイルス感染症の致死率を予測する方程式を作成した。これは、仮説が述べられているのではなく、以下のように検証がなされているものである。 上久保氏らによる具体的な研究成果は、以下の通りである(なお、新型コロナウイルスの感染拡大と変異は「GSAID:“Genomic epidemioloGy of hCoV-19”」で確認できる)。さきがけとして日本に到来したS型(Sakigake)は、無症候性の多い弱毒ウイルスで、インフルエンザに対する干渉は弱く、19年12月23日の週にインフルエンザ流行曲線にわずかな偏向を残したにとどまった。 次に、S型から変異したK型(Kakeru)は、無症候性~軽症のウイルス。中国で蔓延し、日本に到来してインフルエンザ流行曲線が大きく欠ける結果を20年1月13日に起こした。 続いて、ウイルスは武漢においてさらに変異して武漢G型(typeG、Global)となり、重度の肺炎を起こすため1月23日に武漢は閉鎖された。また、中国・上海で変異したG型(欧米G型)は、まずイタリアに広がり、その後欧州全体と米国で大流行した。一方、G型は日本にも到来したが、死亡者数が欧米諸国より2桁少ないレベルにとどまった。 なぜ、G型ウイルスによる日本の死亡者数は欧米と比べて少なかったのか。上久保氏らはその理由として、日本政府が3月9日まで入国制限の対象地域を武漢に限っていたことを指摘する。19年11月から20年2月28日の間の中国から日本への入国人数は、184万人と推定されている。特に武漢では、閉鎖のアナウンスがなされる直前に500万人もが流出し、武漢から成田への直通便で9000人も日本に入国したという武漢市長の報告がある。その結果、S型とK型の日本への流入・蔓延が続いていた。 そして、多くの日本人の間にS型・K型の集団免疫が成立した。具体的には、K型の侵入に対して、体内のTリンパ球が反応して獲得する「細胞性免疫」がG型への罹患を防ぐため、日本人の死亡者が少なくなったと主張する。また、日本と同じく中国人の大量流入があった韓国や台湾、香港、シンガポールなどでも同様の集団免疫獲得があったことで、死亡者が少なくなったと推測される。) 一方、米国やイタリアなど欧米諸国は、ウイルスの到来を水際で防ごうと2月1日より中国からの渡航を全面的に禁止した。これによって、K型の流入は大きく制限されることになった。また、2月1日以前に広がっていたS型はすでにかなり蔓延していたが、S型の「細胞性免疫」は、G型の感染を予防する能力に乏しかった。 S型への抗体には「抗体依存性感染増強(ADE)」効果がある。それは、以前感染したウイルスに対して成立した免疫が、次に感染したウイルスの重症化を引き起こすことである。これは、同じコロナウイルスのSARSで起こった現象である。上久保氏らは、致死率を計算する方程式をつくり、G型に感染した際に致死率を上げてしまうのは、S型に感染した履歴であることを明らかにした。 具体的には、ADEが起こるとウイルスの増殖が盛んになり、患者のウイルス排泄量が増える。すなわち「スーパースプレッダー」になる。さらに、大量に増えたウイルスに対して過剰な免疫反応が起こると、ウイルスのみならず身体の組織を攻撃し、重度の呼吸不全や多臓器不全等を引き起こすため、死に至ってしまうということだった。 要するに、「S型への抗体によるADE」と「K型への細胞性免疫による感染予防が起こらなかったこと」の組み合わせによって、欧米諸国ではG型感染の重症化が起こり、致死率が上がってしまったということだ。 上久保氏らは、ADEが重症化の原因と分かったことから、今後どんな患者に重症化のリスクがあるかが推定できると主張する。具体的には、妊婦、妊婦から抗体を受け取る新生児、免疫系の発達が未熟な幼児、そして免疫系が衰えた高齢者である。また、集団免疫を獲得する機会を得られなかった病院内で感染リスクが高く、「院内感染」対策が最重要であるとも指摘する』、「S型への抗体には「抗体依存性感染増強(ADE)」効果」、とは恐ろしいことだ。
・『「集団免疫」の獲得と第二波の有無について重要な指摘  上久保氏らは新型コロナウイルスに関して、国民が強い関心を寄せる2つのことに対して重要な指摘をしている。 まず「集団免疫」の獲得についてであり、特に、全世界的に検討がなされている「免疫パスポート」について重要な問題点を述べている。 K型への細胞性免疫が成立した場合、後に続くG型ウイルスの感染が予防される。すなわちG型ウイルスの感染が成立しないのだ。言い換えれば、「感染が成立しないからこそ、G型ウイルスに対する抗体が産生されにくい」ということだ。 これは逆に言えば、G型に対する抗体の有無を検査する際に、K型への細胞性免疫獲得の有無を検証しなければならないことを示唆している。しかし、現在はほとんど細胞性免疫が獲得されているかどうかの検証がなされていないという。 また、無症候性が高率である新型コロナウイルスにおいては、誰が感染しているのか、誰が感染していないのか分からない。明らかに感染している重症患者を想定して検査のカットオフ値(陽性と陰性の境となる値)が設定された抗体キットである場合、無症候性の患者の抗体値が重症例より比較的低いとすると、陰性に出てしまうことは想像に難くない。 要するに、検査は白黒はっきりつくものと考えがちだが、実はそうではないということだ。そのため、抗体検査が陰性を示すことで、免疫を獲得していないという間違った解釈が行われる可能性があるという。 そして、国民が強い関心を寄せるもう1つのことは、「第二波が来るのか来ないか」ではないだろうか。上久保氏らは、細胞性免疫は時間とともに減弱する可能性があり、それによって第二波の大きさが決まってくると指摘する。その免疫を維持するためには、適度にウイルスに曝露して免疫を維持するという「ブースター効果」が必要だという。 上久保氏らは、今回開発したウイルス感染を利用した検出ツールや致死率を計算する方程式が、ウイルス感染拡大の理解を助け、どう行動したらよいかを示すと主張する。新興感染症やバイオテロを早期に検出し、社会への影響を予測することで、効果的な治療アプローチと効果的な集団免疫獲得のための地域政策を導くのに役立つと主張するのである』、この目的のためには「抗体キット」の「検査のカットオフ値」の設定を変える必要がありそうだ。
・『上久保氏らの新説が正しいとすれば「政治的な破壊力」はすさまじい  筆者は、上久保氏らの新しい学説が正しいかどうか評価することはできない。医学者ではないからだ。一方、政治学者としてみると非常に興味深いものであると感じる。仮にこの学説が正しいとすれば、その「政治的な破壊力」はすさまじいものになると思うからだ。 まず、新型コロナ対策として「ロックダウン(都市封鎖)」は効果がないと主張している点が興味深い。特に、「中国からの入国制限」をしなかったことが、むしろ日本人のK型の集団免疫獲得につながり、G型の感染拡大、重症者・死亡者の増加を防いだという指摘は「強烈」といえる。「中国からの入国禁止」を強く訴えていた「保守層」の主張を否定してしまう(第234回・P4)からだ。 また、政府による強硬な都市封鎖という政策の成功を訴え、「権威主義体制」の優位性を誇る中国の主張をも葬ってしまう(第236回)。 さらに、安倍政権を批判する「左派勢力」に多い、「PCR検査を拡充せよ」との主張も破壊されることになる。彼らがその主張の根拠とする、「大量のPCR検査による感染者の徹底した隔離・治療とITによる感染経路の追跡」という韓国の成功が完全に否定される。 韓国の新型コロナウイルス対策は確かに成功している。しかし、それは単に日本同様に中国人の大量流入によるK型の集団免疫を獲得ということになるからだ。文在寅大統領が世界にアピールする「韓国モデル」というものは、実はなかったということになってしまう(武藤正敏『「コロナ後」の韓国、文在寅がまたまた「日韓対立」を過熱させそうなワケ 韓国に波紋を広げる「元慰安婦の告発」』現代ビジネス)。) 加えて、「8割おじさん」こと西浦博・北海道大学教授らが考案した「クラスター対策」は、日本の重症者・死者数が少なかったこととは実質的に関係がなかったことになる。また、西浦氏が安倍政権の「司令塔」のように振る舞って訴えた、「死者41万人超」は、そもそも起こるわけがなかったことだということにもなる。 そして、西浦氏がSNSを使って「三密(密閉、密集、密接)の回避」「人の接触を8割減らす」という国民の意識を変える啓蒙活動を続けたことは、悪いことではないのだろうが、新型コロナウイルスの重傷者・死亡者の抑制とは、実は関係がなかったということにもなるのだ。 新たに政府の諮問委員会に加わった、東京財団政策研究所の小林慶一郎研究主幹ら経済の専門家の発言も同様だ。「経済の停滞を避けるには、財政拡張政策を継続すると同時に、大規模な検査を実施できる能力を確立し、陽性者を隔離して陰性者の不安感を払しょくすることが不可欠である」という主張も、素人の思い付きのレベルで、根拠のないものとして消えていくことになる(第242回・P7)。 そうなると、そもそも「緊急事態宣言」の発動は必要だったのか、という疑問がわいてくる。また、「全校一斉休校」の決断やその度重なる延長は正しい判断なのか、さまざまな業種に休業を要請し、経済に多大な損壊を負わせたことは正しかったのか、という論点も当然浮上するだろう。さらに、夏の高校野球などイベントの中止などは、果たして妥当な判断だったのか、という疑問にもつながっていく。 もしも、これらの判断が科学的根拠に基づかないものだと明らかになったら、国民はやり場のない怒りをどこに持っていけばいいのだろうか。 上久保氏は、がん研究の専門家のようだ。ただし、研究代表者を務めた科学研究助成金の研究課題「革新的免疫スイッチ法による新規腫瘍免疫制御戦略の構築」などのように、免疫学も専門分野の1つとしている。それが今回の研究のベースであるのだろう。ただ、国立感染症研究所を中心とする感染症の学会とは関係がないようだ。あえて言えば、この研究は閉鎖的な学会の秩序を破壊する可能性がありそうだ。 前回も主張したことだが、新型コロナウイルス対策の立案は、多様な学説を持つ専門家が政策立案に参画して、学説の間での「競争」によって政策案が磨かれ、政府の選択肢も増えるようにする仕組みを持つことが重要だ。学会に従順な専門家だけではだめなのだ(第242回・P4)。 あくまで、上久保氏らの学説が正しければ、という仮定ではあるが、これほどまでに全方位の「通説」を論理的に破壊し、「政治的な衝撃」を与える「ファクターX」候補は、今のところ他にはみられない。今後の動向を注視していきたい。 訂正 記事初出時より以下のように表現を改めました。 29段落目:抗体依存性免疫増強(ADE)→抗体依存性感染増強(ADE)(2020年6月3日18:27 ダイヤモンド編集部)』、「全方位の「通説」を論理的に破壊し、「政治的な衝撃」を与える」だけに、「ファクターX」の解明が進展することを大いに期待したい。

第四に、6月15日付けNewsweek日本版「スウェーデンの新型コロナ感染者数が1日最多に、死亡率も世界屈指」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/06/1-157.php
・『<当局は、5月末からの感染者急増は検査の規模を拡大したからだというが、今や経済再開に踏み出す欧州諸国のお荷物に?> スウェーデン政府の公衆衛生局は6月11日、1日あたりの新型コロナウイルス感染確認者数が過去最高の1474人になったと明らかにした。これまで最も多かった4日の記録をほんの数日で塗り替えた。 スウェーデンでは3月下旬以降、当局者の弁を借りれば「徐々に」感染が広がっていたが、5月末から増加の勢いは増している。公衆衛生局のデータによれば、感染者数は14日の時点で5万人を超え、死者数も4874人に達している。 公衆衛生局の感染症担当者は11日の記者会見で、感染者数の増加は全国規模で検査を拡大した結果だと述べた。検査対象には軽症者も含まれる。 「これまでも(感染者数は)緩やかに増えていたが、検査を増やした影響は明らかになりつつあると思われる」とこの担当者は述べたとロイターは伝えている。 感染者数が増加している一方で、コロナによる死者と重症患者の1日あたりの増加数は4月をピークに減少している。それでも死亡率は世界でも有数の高さだ。ジョンズ・ホプキンス大学のデータによれば、感染者の10%が死亡する計算だという。 同じ欧州でも先んじて感染拡大に見舞われたイタリアやイギリスといった国々と異なり、スウェーデンで感染者数が大幅に増加したのは最近になってからだ。当局はこれまで、ロックダウン(罰則付き外出制限)を行わず、軽症者や、感染者と濃厚接触したと思われる人に自主的な隔離を呼びかけるにとどめてきた』、「スウェーデン」は集団免疫を獲得させるため、あえて行動面の規制は行わないという、いわば社会実験を行ってきたので注目されたが、結果は拙かったのだろうか。
・『政府の疫学専門家は対応の不備を認めた  周辺諸国は感染防止のために取ってきたさまざまな規制の緩和に動き出すとともに、第2波の早期の到来を防ぎつつ経済活動を再始動させるため、入国禁止措置をどの国から解除していくべきか検討を始めている。そんな中、幅広い隔離政策を採らなかったスウェーデンは欧州諸国の指導者たちから非難を浴びている。 3日にスウェーデン政府の疫学専門家アンデシュ・テグネルは地元ラジオ局の取材に応じ、政府のコロナ対応に問題があったことを認めた。もっとも彼は、公式な記者会見では政府の戦略は正しかったという立場を崩していない。 このインタビューでテグネルは「もし、今と同じだけの知識を手に同じ病気と遭遇したとしたら、スウェーデンと他の国々の中間の対策を取っただろうと思う」と答えたとロイターは伝えている。 本誌の取材に公衆衛生局は電子メールで回答し、最近の感染者数の増加は一般住民を対象とした検査が拡大した結果だとの見解を繰り返した。 「異なる国同士の統計データを比べるのは難しい。感染者の検出数には、例えばどのくらい検査が行われたかといったさまざまな要素がからんでいる」と、公衆衛生局の広報担当者は述べた。 「増加は軽症者に対する検査が増えたためだ。公衆衛生局は現時点で新たな対策は考えていない」』、集団免疫戦略は、第三の「上久保靖彦氏」らの研究ではどう評価されるのだろう。
タグ:パンデミック 検査のカットオフ値 院内感染対策にも使える 国産で品質管理をしっかりして検査キットを作らないといけません。これはPCR検査キットも同じで、変異した後のウイルスまでちゃんと検出しているかわからない 抗体検査で「大事なのは国産でやること」 「日本のコロナ致死率の低さを巡る「集団免疫新説」が政治的破壊力を持つ理由」 上久保誠人 ダイヤモンド・オンライン コロナ対策は「日本モデル」ではなく都合のいい部分だけ自賛の「安倍モデル」 「日本の謎」を解く鍵の候補として山中伸弥教授が言及した研究成果 安倍首相が誇った「日本モデル」 しかし世界は「日本の謎」と評価 高橋淳教授 コロナ感染による国ごとの致死率の差をウイルスの「3つの型」で読み解く新説 上久保靖彦特定教授 「細胞性免疫」がG型への罹患を防ぐため、日本人の死亡者が少なくなったと主張する 多くの日本人の間にS型・K型の集団免疫が成立 新型コロナウイルスには「S型」「K型」「G型」の最低3つの型がある 国や台湾、香港、シンガポールなどでも同様の集団免疫獲得があった K型の流入は大きく制限されることになった。また、2月1日以前に広がっていたS型はすでにかなり蔓延していたが、S型の「細胞性免疫」は、G型の感染を予防する能力に乏しかった。 S型への抗体には「抗体依存性感染増強(ADE)」効果がある 米国やイタリアなど欧米諸国は 抗体キット 免疫を維持するためには、適度にウイルスに曝露して免疫を維持するという「ブースター効果」が必要 集団免疫」の獲得と第二波の有無について重要な指摘 「スウェーデンの新型コロナ感染者数が1日最多に、死亡率も世界屈指」 上久保氏らの新説が正しいとすれば「政治的な破壊力」はすさまじい 当局は、5月末からの感染者急増は検査の規模を拡大したからだというが、今や経済再開に踏み出す欧州諸国のお荷物に? 政府の疫学専門家は対応の不備を認めた 集団免疫を獲得 (その14)(いまだに新型コロナ検査が脆弱な日本 「抑え込み成功」は運が良かっただけ?、なぜ日本の新型コロナ死者数は少ないのか?」山中伸弥が橋下徹に語った“ファクターXの存在”、日本のコロナ致死率の低さを巡る「集団免疫新説」が政治的破壊力を持つ理由、スウェーデンの新型コロナ感染者数が1日最多に 死亡率も世界屈指) (医学的視点) Newsweek日本版 「いまだに新型コロナ検査が脆弱な日本 「抑え込み成功」は運が良かっただけ?」 ロイター 厚労省の既得権益や官僚主義が保健所の検査を停滞させ、民間機関による検査を許可するのに時間がかかりすぎたとの批判も聞かれた 「日本が実施した検査件数は人口1000人当たり3.4件。イタリアの52.5件、米国の39件に比べ、はるかに少ない」 「パンデミック対応は、「不可思議な成功」 厚労省の医系技官が情報を掌握するため、民間機関と協力したがらないと指摘する声も 成果は出ていると厚労省 検査は「十分ではない」 「なぜ日本の新型コロナ死者数は少ないのか?」山中伸弥が橋下徹に語った“ファクターXの存在”――文藝春秋特選記事」 文春オンライン 山中伸弥氏 ファクターXこそ、今後の日本人と新型コロナウイルスとの闘いの行方を左右する重要な要素 「ファクターX」をいかに解明するか?
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本日から24日まで更新を休むので、25日にご期待を!

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トランプ大統領(その46)(黒人抗議デモに「軍の出動」 分断煽るトランプ再選戦略のあまりの危険、「他国に厳しく自国に甘い」人権軽視大国アメリカよ 今こそ変わるとき、トランプ再選にとどめ刺せなかったボルトン暴露本 「何をいまさら」「カネ儲けか」と米国民は冷ややか) [世界情勢]

トランプ大統領については、6月6日に取上げた。今日は、(その46)(黒人抗議デモに「軍の出動」 分断煽るトランプ再選戦略のあまりの危険、「他国に厳しく自国に甘い」人権軽視大国アメリカよ 今こそ変わるとき、トランプ再選にとどめ刺せなかったボルトン暴露本 「何をいまさら」「カネ儲けか」と米国民は冷ややか)である。

先ずは、6月14日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した軍事ジャーナリストの田岡俊次氏による「黒人抗議デモに「軍の出動」、分断煽るトランプ再選戦略のあまりの危険」を紹介しよう。
・『マティス大将の痛烈批判「団結させようとしない初めての大統領」  1857年に創刊された「アトランティック」誌は米国でおそらく最も権威のある月刊評論誌だ。前国防長官ジェームス・N・マティス退役海兵大将(69)が、トランプ大統領を「米国民を団結させようとせず、その素振りすらしない初めての大統領だ」と同誌で批判した寄稿が大きな反響を呼んでいる。 5月25日にミネソタ州ミネアポリスで白人警察官が黒人を倒して首を圧迫して死亡させた事件をきっかけに全米に拡がった抗議行動に対し「軍の出動」を語ったトランプ大統領の対応を激しく非難した。 これが6月3日の同誌電子版で広く伝わり、世界を驚かせた。 マティス大将の声明を要約すれば、(1)「『法の下での平等な正義』を抗議者たちが正当に要求している。健全な要求であり我々全員が支持できるものだ」 (2)「私は軍に入ったとき、憲法を支持し守り抜くことを宣誓した。兵士たちが国民の憲法上の権利を侵害することを命じられるなど夢にも思わなかった」 (3)「私たちに必要なのは共通の目的の下で団結することだ。ドナルド・トランプ氏は私の生涯で、米国民を団結させようとせず、その素振りすらしない初めての大統領だ」 (4)「彼は逆に我々を分断しようとする。我々がいま目にしているのは彼の3年間の意図的努力の結果だ」 (5)「ラファイエット広場(ホワイトハウス前の公園)で見たような権力の乱用よりも良いやり方があることを我々は知っている。我々の憲法をあざ笑う政府の人間は拒絶し、その責任を取らせなければならない」 などなどの極めて強烈な内容と言辞だ。 特にトランプ大統領が「略奪が始まれば、射撃が始まる」などと唱え、軍を出動させて抗議活動を制圧しようとする姿勢は、国民を分断するものとして怒りをあらわにしている』、「マティス大将の痛烈批判」は、私もニュースで知り、批判の激しさに驚いた。
・『「抗議制圧に軍を使うのは支持しない」エスパー国防長官も一線画す  米国には大統領・連邦政府の指揮下にあり、「現役」の軍である連邦軍のほかに、通常は州知事の指揮下で治安維持や災害支援にあたりながら、戦時体制になると大統領の指揮下に入る連邦軍の予備役部隊にあたる州兵がある。 陸軍州兵は33万3800人、空軍州兵は10万6700人もいるが、月に1回、週末に集まって訓練し、年に1回2週間合宿する程度だ。参加者には日当が出るが、若干余裕がある人々の社交クラブ的色彩がある。 よほどの緊急事態には米国政府が予備役兵力として動員できることにはなっているが、今回の抗議デモに対して、トランプ大統領は、州知事たちに州兵を治安維持に投入することを求め、「知事がそれを避けるなら私が命令する」と言っている。 マティス大将の批判に対してトランプ大統領はマティス氏を「世界一過大評価されている将軍だ」と、反撃した。 だがマティス氏はもともとトランプ氏が2016年12月に国防長官に指名した人物だ。 当時、マティス氏は2013年に退役後3年しかたっておらず、国家安全保障法では軍人は退役から7年間は国防長官になれないと定められているため、国防長官就任は難しかった。 それをトランプ氏が米上院に特例として承認させ、2017年1月に就任させた。無理をしてまで任命したのだから「過大評価」だとすれば、その責任はトランプ氏自身にある。 マティス氏は、1991年の湾岸戦争では中佐で海兵大隊長、2001年に始まったアフガニスタン攻撃では准将で第1海兵旅団長、2003年からのイラク戦争では少将で第1海兵師団長として猛将ぶりを発揮した。 だがこうした戦闘の際にも、民間人になるべく被害が及ばないよう部下に注意したといわれる。 オバマ大統領は2010年8月、マティス氏を中東担当の中央軍司令官に任命したが、イランの核開発を制限するために、米、露、中、英、仏、独の6カ国がイランと合意した「イラン核合意」にマティス氏は反対し、そのため2013年3月に中央軍司令官を解任され、退役した。 トランプ大統領は「イラン核合意」は、イランが将来、核兵器を開発することを許す結果になる、と反対していたから、マティス大将を無理やり国防長官にした。 だが2018年12月、マティス氏はトランプ政権がシリアからの米軍撤退を表明したことに反対して辞表を出し、2月末に辞職することを表明した。 トランプ大統領はそれに怒り1月1日付で国防長官を解任した。辞職を繰り上げるとはトランプ氏らしい無礼な行動だ。 今回、マティス大将が「トランプ氏は国民の分断に意図的に努力している」などと口を極めて非難したのはそれに対する報復だという見方も米国メディアでは報じられている。 だが軍を出動させることに異論を唱えたのは、マティス氏だけではない。 マーク・T・エスパー現国防長官(56)も、6月3日の記者会見で、「私は現役の軍を抗議活動制圧のために使うことを支持しない」と述べ、軍の出動を語って抗議行動をひるませようとするトランプ氏と一線を画す構えを見せた。 ただトランプ氏はそれには反論しておらず、更迭されていない。 エスパー氏は陸軍士官学校を卒業し空挺部隊の将校となり、軍から派遣されてハーバード大学の大学院に入って修士となり、2007年に中佐で除隊した。 軍需企業レイセオンでロビイストとして活動、政府交渉担当副社長となり、2017年に陸軍長官、2019年7月に国防長官となった。 敏腕のロビイストらしく、軍の投入については「現役」の連邦軍の出動に慎重だが、州兵の投入には反対しておらず抗議活動側にも、トランプ大統領にも憎まれない巧みな発言をしている様子だ』、「エスパー氏」は、「抗議活動側にも、トランプ大統領にも憎まれない巧みな発言」とは、さすが「敏腕のロビイスト」の面目躍如だ。トランプ大統領も軍の撤退を命じたようだ。
・『イラク戦争の長期化 警鐘鳴らしたシンセキ大将  軍の高官と大統領など政権中枢が対立するのは珍しいことではない。 クーデターを起こした軍人が政権を握っている国は、今でもエジプト、タイなど結構、多い。 第2次世界大戦中のドイツでは国防軍の将校グループが1944年7月にアドルフ・ヒトラーを爆殺しようとして失敗した。 またフランス領だったアルジェリアの独立を認めようとしたドゴール大統領(元帥)は右翼将校たちから何度も命を狙われた。日本の2・26事件などの背後にも軍の将官がいた形跡がある。 さすがに米国ではクーデターは起きていないが、情勢判断などで意見の対立が起こるのは不可避だ。 近年の例としては、イラク戦争直前の2003年2月、米陸軍参謀総長エリック・シンセキ大将(日系3世)が、米議会上院軍事委員会で「イラクを攻撃するなら数十万人の兵力を数年間は駐留させる必要が生じる」と述べ、ラムズフェルド国防長官やブッシュ(息子)大統領の「数万人で数週間で片付く」との楽観論と正面衝突した。 参謀総長は2期務めるのが慣例だったが、シンセキ大将はその年の6月、1期だけで退役となった。 その後任に擬された将軍たちは、正論を述べて退役させられた参謀総長の後釜に座ることを次々と拒否し、戦争中に陸軍のトップが2カ月不在という異常事態が生じた。 その後のイラク戦争の長期化は、シンセキ大将の見通しの正しさを証明した。米国の記者たちがハワイに引退した同大将を訪ねて水を向けても「後輩が懸命に努力しているからね」と批判を慎み、軍人らしい節度を示した。 その後、オバマ政権になると、シンセキ氏は閣僚級の退役軍人庁長官に任じられた。 将軍と大統領との対立で、シンセキ大将と対照的な例は、ダグラス・マッカーサー元帥だ。 朝鮮戦争勃発当時の1950年6月、マッカーサー元帥は「北朝鮮軍が韓国に侵攻する準備を整えている」との韓国軍の情報を無視して奇襲され、米・韓軍は釜山近くまで追い詰められた。 制海権は米海軍が握っていたから米軍は、仁川に上陸して北朝鮮軍の側面を突き潰走させソウルを解放、追撃を続けた。中国は「米軍が北進するなら介入せざるを得ない」と表明していたが、マッカーサー元帥はそれを虚勢と見て朝鮮半島の北端、鴨緑江に迫った。 米・韓軍はいくつもの谷間に沿って分散して北進するのに対し、中国軍は夜間行軍で尾根伝いに南下したから、米・韓軍は包囲網に入り込む形になった。 戦闘になると米・韓軍は寸断されて大混乱し、ソウルの南約60キロまで約400キロも退却する歴史的敗走となった。 これに狼狽したマッカーサーは中国本土の爆撃、海上封鎖、台湾に逃れていた蒋介石軍の中国本土進攻支援を主張し、全面戦争化に反対するトルーマン大統領と対立した。 マッカーサーは野党(共和党)議員に書簡を出したり、新聞社のインタビューに応じたりして、「政府が手を縛っているから勝てない」と自分の状況判断の誤りによる責任を政府に転嫁しようとして、1951年4月に解任された』、「正論を述べて退役させられた」「米陸軍参謀総長エリック・シンセキ大将」の「後任に擬された将軍たちは・・・参謀総長の後釜に座ることを次々と拒否し、戦争中に陸軍のトップが2カ月不在という異常事態が生じた」、さすが骨がある軍人も多いようだ。「マッカーサーは・・・自分の状況判断の誤りによる責任を政府に転嫁しようとして、1951年4月に解任された」、彼がそこまで卑怯だったとは初めて知った。
・『軍人の方が政治家より慎重だった例も多い  後任のマシュー・B・リッジウェイ大将が冷静で米軍を立て直したから、米・韓軍はソウルを奪回し、何とか引き分けの形で停戦となった。 リッジウェイ大将はその後米陸軍参謀総長となったが、フランスが負けて撤退した後のベトナムに米国が介入するのに反対、大統領のドゥワイト・D・アイゼンハワー元帥と対立して、1955年に退役した。シンセキ大将と似た名将だ。 政治家が軍を統制する「シビリアン・コントロール」は、軍人の暴走を防ぐ効果がある場合もあるが、政治家が国民感情に迎合して強硬な対外姿勢で人気を得ようとし、優秀な将軍が戦争に慎重だったという例も少なくない』、「シビリアン・コントロール」も一筋縄ではいかないようだ。
・『コロナでの初動の失敗 中国、WHOを「敵」に  トランプ大統領はマッカーサーを崇拝しているが、責任転嫁の癖があることでは2人は似ている。 新型コロナウイルス問題では、武漢の衛生当局が昨年12月31日「原因不明の肺炎が27例発生、うち重症7例を確認」と、WHO(世界保健機関)に通報、日本の厚生労働省も受信していた。 台湾はただちに厳重な防疫態勢を取り、感染者は443人、死者7人で食い止めた。 当然、米国にもこの情報が入っていたはずだが、米国が「14日以内に中国に渡航歴のある外国人の入国を禁止」と発表したのは2月2日で、対象は外国人に限られていた。 中国は1月20日に人から人へ伝染することを確認、23日に武漢市を閉鎖した。 米国では21日に最初の感染者が出ていたが、トランプ氏は24日のツイッターで「中国は多大の努力をしている。米国は中国の努力と透明性に深く感謝している。すべてうまく行くだろう。米国民を代表し、特に習国家主席に感謝したい」と述べていた。 コロナ問題を対岸の火事視して楽観論を唱えていたトランプ氏は、米国で感染者、死者が激増する事態に直面して狼狽し「中国が隠蔽したからこうなった」「WHOが中国寄りだからだ」などと、責任を中国などに転嫁しようとしている。 中国への損害賠償要求を口にし、WHOから脱退するなど、その言動はマッカーサー元帥が朝鮮での大敗はトルーマン政権の責任と言ったのとよく似ている』、「トランプ」が1月「24日のツイッターで「中国・・・の努力と透明性に深く感謝している・・・習国家主席に感謝したい」、と言っていたとは初めて知った。流動的な情勢のなかでの「ツイッター」の多用は、やはり問題がありそうだ。
・『「政治上の正しさ」と差別感情が交錯する世論  新型コロナウイルスで米国ではすでに約190万人の感染者、約11万人の死者が出て、失業者は4000万人に達する。 この大惨事のさなか、白人警官が黒人を死なせた事件に対する抗議デモが全国に広がり、トランプ氏はそれに対し軍を投入して制圧するような発言で火に油を注いだから、台風と地震が同時に来たような難局に陥った。 ワシントン・ポスト紙が5月31日に発表した世論調査ではトランプ氏支持は43%、民主党の大統領候補のバイデン氏支持は53%。2カ月前の調査では2%の差だったのが10%差になった。 ロイター通信の調査では抗議デモに対するトランプ氏の対応を支持する人は33%、不支持は56%と大差がある。 一方、ニューズ・ウィーク誌が6月3日公表した米調査会社「モーニング・コンサルタント」の調査では、「警察とともに軍隊を動員する」ことに賛成が58%、反対は30%だ。軍の投入について共和党支持者の77%が賛成しているだけでなく、民主党支持者の48%も賛成し、無党派層の52%が賛成だ。 米国の人口の62.2%を占める白人には、「人種差別は良くない」「警察官の扱いは乱暴だ」との“Political Correctness”(政治上の正しさ)の理念と“White Supremacy”(白人至上主義)の潜在的感情が交錯している人々が少なくないようだ。 「建て前」と「本音」の差から生じる「隠れトランプ派」の存在が世論調査にも表れている』、「警察とともに軍隊を動員する」ことへの「賛成」が多く、「隠れトランプ派」が存在感を示しているのには驚かされた。
・『治安への不安あおり「隠れトランプ」の支持狙う  米国では3月に新型コロナウイルス感染者が増加し、死者も出始めると銃弾を買う人が店に殺到し、銃の売り上げは3月だけで約200万丁、とニューヨーク・タイムズ紙は報じた。 米国では私有の銃がすでに3億丁以上、乳幼児まで含めて1人に1丁あるし、銃を持つ人は弾も少しは持っているはずだが、新型コロナ感染症が流行するとさらに銃と弾薬が売れるというのは不可解な現象だ。 米国では「社会の混乱が起きるのでは」と考えられる状況が生じると、すぐに暴動、略奪、強盗などに備えなくては、と銃砲店に向かうほど恐怖感が潜在しているのだろう。 トランプ氏にとっては、治安に対する国民の不安が高まれば、暴徒制圧に尽力する政権に人気が集まり、大統領選を前に「隠れトランプ」が増えることが期待できる。 国民が敵と味方に分裂すれば「岩盤支持層」は一層強化されるから、マティス大将が「トランプ氏は意図的に国民を分断しようと努力してきた」と言うのも一理はある。 トランプ大統領は国内の新たな「敵」を求めて米国の“Antifa”(反ファシズム)と称される集団をテロ組織に指定するとツイッターで述べた。 だがアンティファは本部や全国的組織を持たず、トランプ大統領就任後、勢い付いた右翼集団の人種差別的集会などを妨害しようとする各地の小集団の総称で、全国の一連の抗議行動に参加している者もいる。 時には右翼グループなどと乱闘になることもあるが、法的にも「テロ組織」として取り締まりの対象にはしにくいもののようだ。 一方、白人至上主義を唱える右翼集団が警察を非難する抗議デモに便乗し、略奪や破壊活動をして、「黒人暴動」に対する恐怖感をあおることもある。 6月3日にはラスベガスの抗議デモに火炎ビンを持ってまぎれこみ、暴力行為をあおっていた極右集団「ブーガルー」のメンバー3人がFBI(連邦捜査局)の反テロリスト隊に逮捕された』、「白人至上主義を唱える右翼集団が警察を非難する抗議デモに便乗し、略奪や破壊活動をして、「黒人暴動」に対する恐怖感をあおることもある」、大いにあり得る話だ。
・『銃社会で対立あおる危険な政治スタイル  米国では銃器の入手が容易だから、人種差別復活や反イスラム、反ユダヤなどを唱える右翼集団が戦闘訓練をしているともいわれる。もしそうした集団がデモ隊にまじって、警官隊や州兵に発砲、警官や州兵が応戦すれば人種戦争を誘発することも可能だ。「ブーガルー」は日ごろ自動小銃を携帯して闊歩するようだ。 2017年10月にラスベガスで起きた乱射事件ではホテルの窓から射撃した1人の男が58人を殺し、546人を負傷させたが、彼は23丁の銃を持ち込んでいた。うち12丁は自動小銃を機関銃と同様に連射可能にする市販の部品を買って改造し、1100発以上を発射していた。 米国で2009年からの10年間に起きた過激派による殺人事件の死者427人のうち、極右によるものが73%、イスラム系によるものが23%、極左によるものが3%(中公新書『白人ナショナリズム』渡辺靖著)とされる。 米国では年間約4万人が銃で死に、うち約2万人は自殺、8000人は暴発、誤射などの事故、1万2000人は犯罪の被害者だと報じられる。 こうした国で、銃器規制に反対しつつ、国民の分断、対立をあおるような政治家は実に危険千万な人物と言うしかない』、「米国で2009年からの10年間に起きた過激派による殺人事件の死者427人のうち、極右によるものが73%」、やはり「極右」には問題がありそうだ。「こうした国で、銃器規制に反対しつつ、国民の分断、対立をあおるような政治家は実に危険千万な人物と言うしかない」、同感である。

次に、6月16日付けNewsweek日本版が掲載したカリフォルニア大学アーバイン校法学部教授・国連人権理事会から任命された「表現の自由」に関する特別報告者のデービッド・ケイ氏による「「他国に厳しく自国に甘い」人権軽視大国アメリカよ、今こそ変わるとき」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/06/post-93692_1.php
・『<「Black Lives Matter」をスローガンとする抗議デモが求めるのは、他国の人権侵害にはうるさいが国内の人種差別を放置してきたこの国の「例外」が終わること> アメリカは建国以来、自らを「丘の上の光り輝く町」になぞらえてきた。自由と解放の精神に満ち、他の国の模範となる国という意味合いだ。 アメリカ史に照らせば、全くの神話でしかない。とりわけ今は、それがよく分かる。 黒人を死に至らしめても罪に問われないケースがなくならず、国民生活のあらゆる場面で構造的な人種差別がはびこる現状。「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命を軽んじるな)」をスローガンとするデモ隊を全米で警官隊や州兵が暴力で制圧している事実。どれも、アメリカを特別視するこの神話がいかに空虚であるかを改めて示している。 それでも多くの人が、アメリカは模範的で特別な国家だという「アメリカ例外主義」を受け入れている。「光り輝く町」が神話的な例えにすぎないと考える人々までも、アメリカは人権擁護について世界で積極的な役割を果たしてきたと主張しかねない。 確かにアメリカには、第2次大戦後の世界的な人権制度の樹立に貢献し、人権の尊重を究極の目的とする国連憲章の交渉を主導した実績がある。 1948年に世界人権宣言が起草されたとき、国連人権委員会の委員長を務めていたのは、元ファーストレディーのエレノア・ルーズベルトだった。人権擁護政策は少なくともジミー・カーター政権の頃からアメリカ外交の重要課題とされるようになり、多くの大統領が(一貫性を欠いていたにせよ)その追求に力を注いできた。 それでもアメリカの政策で追求される「人権」とは、あくまで他国民が侵害しているものであり、米政府が国内で守るべきものとして受け取られることはほとんどない。アメリカは他国が少数派を弾圧したりデモ隊に暴力を振るったときには、人権関連の法律を持ち出して非難する。しかし同じ基準が自国に当てはめられると、アメリカはいら立ちをあらわにする』、ダブル・スタンダードの典型だ。「アメリカは建国以来、自らを「丘の上の光り輝く町」になぞらえてきた」、初めて知った。なお、「デービッド・ケイ氏」は日本の言論の自由度が低いと国連に報告している。
・『自国にだけは甘い理由  対外的には美しい言葉を並べ立て、時に指導力を示すことはあっても、アメリカは国内では人権問題を軽視してきた。他国に条約や国際的な責務を守るよう要求していながら、自国では同じことを実行していなかった。 外交政策の柱にするほど人権問題を重視するのに、なぜ米政府は自らにその基準を当てはめないのか。答えは簡単だ。歴史を見れば分かる。米社会に根差す人種差別と白人至上主義が、人権擁護の取り組みを阻んできたのだ。 現代の人権擁護運動が始まった当初、南部の人種隔離主義者とその支持者は、アメリカが国連の人権制度に関与することに反対した。国連の人権機関が権限を持つことで、アメリカの構造的な人種差別を終わらせろと圧力をかけてくることを懸念したのだ。そのためアメリカがいくつかの人権条約を批准すると、連邦上院は法制化の手続きを経ない限り、条約を国内の法廷には適用しないよう要求した。 以後数十年にわたり、アメリカは人権擁護に抵抗してきた。国際的な人権法はいつも曖昧で政治色が強いため、各国政府が一様に施行するのは無理だという主張も聞こえた。 右派に至っては、人権条約はグローバルなエリート層がアメリカの主権侵害を狙ったものだと批判した。2006年に国連で採択された障害者権利条約の批准に、右派が反対した理由もこれだった。 アメリカが他国に厳しく自国に甘いのは、人権法に関してだけではない。国際刑事裁判所(ICC)を設立するための条約(ローマ規程)の批准を渋るのも、国際司法裁判所(ICJ)で国家間の争いに決着をつけることに抵抗するのも、同じ理由からだ。 アメリカでは、人種差別が人権問題に取り組む際の足かせとなった。一方でこの姿勢は、人権問題は「内政問題」だとして外部の介入に抵抗する世界中の暴君を勢いづかせてもきた。 いま全米に広がる抗議デモは、黒人に対する警察の暴力について誠実な対応を要求し、警察活動や教育をはじめとする全ての社会・統治構造での人種差別を終わらせるよう求めている。この訴えを、法律や政策、実務の具体的な変化につなげなくてはならない。 ただし、言葉にするだけでは不十分だ。アメリカの法律と訴訟手段は黒人の命を脅かし、不公正で不正義な社会を生んできた。 現行の制度では虐待が行われても、連邦法ではその多くの責任を事実上追及できない。警察官が市民を殺しても、免責特権で守られる。自警団員が殺人に及んでも、「スタンド・ユア・グラウンド法(正当防衛法)」によって免責される。大統領も弁護士も拷問を承認する国で、国民は罪を省みる必要がなかった』、「アメリカの法律と訴訟手段は黒人の命を脅かし、不公正で不正義な社会を生んできた。 現行の制度では虐待が行われても、連邦法ではその多くの責任を事実上追及できない。警察官が市民を殺しても、免責特権で守られる。自警団員が殺人に及んでも・・・免責される」、「大統領も弁護士も拷問を承認する国で、国民は罪を省みる必要がなかった」、手厳しい批判だ。
・『変化の必要性と可能性  人権法は、人種差別と免責特権を可能にする社会的基盤を解体する上で重要な役割を果たせる。現在のデモは、自国の人権問題を直視し、制度の改革を監視・強化し、市民が享受するあらゆる権利を保護するアメリカの長期的な取り組みにつながるはずだ。 それは差別を受けない権利であり、虐待と無法状態が是正される権利だ。反対意見の表明や表現の自由に関わる権利も、法の適正手続きが認められる権利も、経済的権利を保障される権利も全てを含む。 第1にアメリカは、常設の人権委員会を設置すべきだ。この委員会は人権に関する世界基準を確実に満たすため、あらゆる法律を独立した立場から評価できる。こうした委員会であれば、市、州、連邦レベルで必要な条例や法律の改正に提言し、全米で人権政策とそれに伴う教育を提案・促進できるだろう。 この委員会は、今のデモの後に実施されるべき法改正が確実に行われるよう監視できる。全国規模の委員会は地方レベルで同様の機関のネットワークをつくり、全ての公的機関に人権を守らせることもできるだろう。 多くの民主国家には既に人権機関が設置されているが、権限や実績、独立性の程度はさまざまだ。フランスでは最近、独立機関である全国人権諮問委員会がヘイトスピーチ関連法案について、検閲につながる恐れがあるとして批判したが、議会は可決に踏み切った。あるいはメキシコなどのように、人権侵害に関する訴えを個々に審査・判断する機関も多いはずだ。 第2に米議会は、国際条約を批准したなら、それに対応する国内法の制定を推進すべきだ。特に履行すべきなのは「人種差別撤廃条約」と「市民的および政治的権利に関する国際規約」だ(「拷問等禁止条約」には既に着手している)。これによって国内の裁判所は、条約を基にした訴えを審議できるようになる。市民は警察に権利を侵害されても、国際法に基づいて救済手段を求める権利を手にする。 第3にアメリカは、これまで拒否してきた条約の批准を全て実行すべきだ。特に女性差別に対する権利や、子供、移民、障害者の権利に関する国際条約だ。これらの大半は国内法にも沿っている。批准していないのは怠慢でしかない。 第4に、アメリカ人は市民権と政治的権利については冗舌に語るが、労働や賃金、医療、教育の基本的権利について国内外で共通するビジョンには言葉を濁す。アメリカは「経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約」も批准し、腐敗や富の集中、国内外の既得権層がもたらす不公平や貧困、非人道的な対応を防ぐ政策を打ち出すべきだ。 最後に、アメリカは人権問題に関与することで初めて、人権に関して本当に世界的な発言権を得られるようになる。ドナルド・トランプ大統領は稚拙な考えによって、国連人権理事会から離脱した。人権について独自の社会基盤を構築するなら人権理事会に復帰し、世界中の人々の人権を擁護する建設的な役割を果たすべきだ。根深い権威主義や、中国などが推進する反人権思想に抗議の声を上げるべきだ。 「ブラック・ライブズ・マター」を叫ぶデモ参加者は、アメリカが「丘の上の光り輝く町」に生まれ変わる必要性と可能性を示している。それは政府が市民のために働く国であり、法に反して人の命を踏みにじった者には相応の責任を負わせる国であり、人種差別を根絶して平等を促進する国だ。そのためには、アメリカの人権政策に内在していた差別的要素を取り除くことに取り組むべきだろう。 これらを実現するには法と政策を変えなくてはならない。その動きは、人権が支え、維持してくれる』、「アメリカ」の「人権問題」の根深さを一応理解できた気がする。

第三に、6月19日付けJBPressが掲載した在米ジャーナリストの高濱 賛氏による「トランプ再選にとどめ刺せなかったボルトン暴露本 「何をいまさら」「カネ儲けか」と米国民は冷ややか」を紹介しよう。(注や英文は省略)
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/60979
・『「再選のため大豆、小麦を買ってくれ」  6月23日に発売予定だったジョン・ボルトン前大統領補佐官(国家安全保障担当)のドナルド・トランプ政権暴露本の内容が17日、事前に漏れた。 ボルトン氏は、本の中で、トランプ大統領が中国の習近平国家主席に2020年秋の大統領選で再選できるように援護してくれるように要請していた新事実を明らかにした。 具体的には米国の農民が生産する大豆や小麦をもっと買ってくれというものだ。農民票は再選には極めて重要だと習近平氏に切々と説いていた。 トランプ氏が習近平主席に頼み込んだ時期は、2019年6月20日。 場所は日本国内の大阪のホテル。主要20か国・地域首脳会議(G20サミット)の会場、インテックス大阪(大阪国際見本市会場)だった。 ボルトン氏はこの会談に同席していた。その模様を生々しく記している。 「習近平主席は、トランプ大統領に向かってこう切り出した。『米国内には中国との新たな冷戦を始めようとする政治家たちがいる』」 「トランプ氏は即座に習近平氏が民主党の連中を指していると感じ取った」 「トランプ氏は習近平氏の発言に同意するかのように、民主党の中には中国に対して戦闘意識を抱いている者がいると応じた」 「そしてトランプ氏は、話題を2020年の大統領選に変えて、中国の経済力が2020年の米大統領選にいかに影響を及ぼすかをほのめかしながら、自分が選挙で勝つことを確かなものにできるように援護してほしいと述べた」 「トランプ氏は(大統領選に勝つには)農民票が極めて重要だ。もし中国が米国産の大豆や小麦をもっと買ってくれれば、自分の選挙には大いに助かると強調した」 (これに対して習近平主席が何と答えたかについての記述はない。また、その見返りにトランプ氏が習近平氏に何をするかについての記述もない)) 当時の報道によると、トランプ氏は新たに準備した3000億ドル分の追加関税「第4弾」の発動や中国通信大手「ファーウェイ」への輸出制限の緩和などをカードに知的財産権侵害などのアジェンダで習近平主席に譲歩を迫ったとされる。 これに対して習近平主席は、鉱物資源レアアースの輸出管理強化を交渉材料にすべての追加関税の取り消しを求めたとされる。 だが、ボルトン氏によれば、差しの会談ではトランプ氏は終始一貫、再選のことしか頭になく、米国憲法違反の疑いを持たれるような外国首脳への選挙応援を習近平氏にまで働きかけていたのだ。 その手法は、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領に政敵ジョー・バイデン前副大統領の息子のウクライナでの経済活動について捜査するよう要請した一件とあまりにも似通った話ではある』、依頼したのが「2019年6月20日、場所は日本国内の大阪のホテル・・・G20サミットの会場」、だったとは、米中貿易戦争が本格化する前のようだ。「差しの会談ではトランプ氏は終始一貫、再選のことしか頭になく、米国憲法違反の疑いを持たれるような外国首脳への選挙応援を習近平氏にまで働きかけていた」、いかにも「トランプ」らしいやり方だ。
・『日本といえば「真珠湾」のトランプ氏  ボルトン本について6月18日夜のCNNなどは大々的に報じている。だがこれがトランプ氏の再選の可能性にとどめを刺したかと断定するには至っていない。 新型コロナウイルス禍への対応をはじめ白人警官による黒人男性殺害事件を発端に燃え上がった「ブラック・ライブズ・マター」(黒人の命も大切だ)抗議デモや警察改革などでももたつきが目立つ。 支持率でもジョー・バイデン前副大統領に大きく水をあけられている。 こうしたもろもろのネガティブ要因でトランプ再選にはすでに赤信号が点滅し始めている。 そこにボルトン爆弾が炸裂した。ネガティブ要因がまた一つ増えたには違いないのだが、ボルトン爆弾一発で再選が吹っ飛んだというわけではなさそうだ。 ボルトン本に出てくるのは、むろんトランプ氏と習近平氏とのやりとりだけではない。日本に関する記述もある。 2018年、フロリダ州のトランプ氏の別荘、マー・ア・ラゴで行われた日米首脳会談の時のことのようだ。 「少人数での会合の冒頭、両国の政府高官が日米同盟や貿易について非公式なやりとりをしていた時のことだ。すでにトランプ氏は着席していた」 「米高官の一人が日本ほど重要な同盟国は西太平洋にはないと大統領に話かけるや、トランプ氏は苛立ちを露わにし、旧日本軍による真珠湾攻撃の話をし出した」 「遅れて安倍晋三首相がやって来るや、トランプ氏は話すのをやめた」 安倍首相との親密な関係を謳歌するかのように振舞ってきたトランプ氏だが、日本といえば直ちに「真珠湾奇襲」を連想する思考回路はそう簡単には治りそうにない。一生変わらないのではないだろうか』、「安倍首相との親密な関係を謳歌するかのように振舞ってきたトランプ氏だが、日本といえば直ちに「真珠湾奇襲」を連想する思考回路はそう簡単には治りそうにない」、日本に対する根強い不信感が根底にあるとは興味深い。
・『ボルトン氏が明かすトランプ大統領の言動は以下のようなものだった。 一、トランプ氏は米中間の懸案となっていた通信機器大手「ファーウェイ」(華為)をめぐる安全保障上の重要性については軽視していた。ただ「ファーウェイ」問題を米中貿易交渉での一つの取引材料として考えていたに過ぎない。 一、トランプ氏は習近平氏に面と向かって「あなたは300年の歴史の中で最も偉大な中国指導者だ」と褒めた。トランプ氏は権威主義的な指導者が好きだった。トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領がお気に入りの一人だった。 一、トランプ氏は香港の民主化運動や中国政府のウイグル族抑圧政策などについては「関わりたくない」と側近に言っていた。「米国にも人権問題はある」というのがその理由だった。 一、トランプ氏は米中、米台関係については「これは中国」「これは台湾」と使い分ければ問題はないという考えだった。まさに「抜け目のない詐欺師」(Sharpies)だった。 一、トランプ氏が在任中に下す決定のうち、大統領選での再選と無関係な事案を探すのは極めて難しい。 一、トランプ氏の外交的無知さには驚かざる得なかった。トランプ氏は英国が核武装国だとは知らなかったし、フィンランドはロシアの一部だと信じていた。 一、大阪での米中首脳会談ではウイグル族問題が出たが、習近平氏が反政府的動きをするウイグル族を収容する施設を建設中であることを説明した。これに対しトランプ氏は「収容所建設は続けるべきだ。あなたのやっていることは正しい」と指摘した、2017年の訪中の際にも同趣旨の発言をしていたことと大統領側近から聞いている』、「習近平氏に面と向かって「あなたは300年の歴史の中で最も偉大な中国指導者だ」と褒めた。トランプ氏は権威主義的な指導者が好きだった」、「トランプ氏は英国が核武装国だとは知らなかったし、フィンランドはロシアの一部だと信じていた」、などは特に面白い。
・『証言を避けたボルトンは愛国者にあらず  米メディア、世論の反応は複雑だ。 よくぞ思い切って内幕を暴露したとボルトン氏を評価する向きもあれば、カネ儲け目当て(印税は300万ドルと言われている)の「いかさま右翼」と手厳しい批判をする向きもある。 いずれにしても「証文の出し遅れ」に世間の目は厳しい。 「トランプ氏は再選のためには国益も何も考えない。外交でも国家安全保障よりも自分の私利私欲を優先している」 ボルトン氏が声を荒げても、米国民の大半はそれほど驚いてはいない。 トランプ氏はそういう大統領だと先刻承知なのだ。それを批判することすらあきらめ気味になっている。 トランプ氏が公私の分別がつかないことも、米国憲法の精神などについて全く頓着していないことも、耳にタコができるほど聞かされてきたからだ。 暴露本ということで、ボルトン氏は本の中でトランプ氏の無知無能ぶりに開いた口が塞がらないことをそれとなく書いている。 だが、トランプ氏が正常でないことはこれまで、側で仕えてきたレックス・テラーソン元国務長官、ジョン・ケリー元首席補佐官、元顧問弁護士のジョン・ダウド氏が異口同音に言っていることは、これまでに出た内幕本に出ている。 元政府高官たちは「どうしようもない軽愚者」(Fucking moron)、「酷い嘘つき」(Fucking liar)、「まぬけ」(Idiot)と言いたい放題だった。 この点についても米国民の大半は聞き飽きている。トランプ大統領が自らを「非常に安定した天才」(A Very Stable Genius)と自画自賛しているのをせせら笑っている。 自分の国の政治情勢を踏み台にしてまで自分の再選を考え、再選のためならたとえ相手が独裁政権であろうと、取引(ディール)しようとするトランプ氏。 そうした政治に対しては米国は一度、罰そうとした。米議会でのロシアゲート疑惑、ウクライナゲート疑惑追及だった。 民主党は下院は弾劾にまで追い込み、共和党が多数を占める上院で挫折した。 その民主党がボルトン氏が明かした新たな中国疑惑を材料にことを構えるのか――。 党内にはボルトン氏を議会に呼んで証言を求めるべきだとの声も出ているが、どうも勢いがない。大統領選(そして上下両院議員選)を5か月後に控え、各議員ともそれどころではないというのが実情だ。 下院情報委員会の委員長としてトランプ氏を弾劾にまで追い込んだアダム・シェフ下院議員(民主、カリフォルリア州選出)はボルトン氏について一言。 「ボルトン氏は立派な作家かもしれないが、愛国者ではない」 同委員会がさんざんボルトン氏を証人として召喚したが、トランプ大統領の「拒否権」の前にボルトン証言は実現しなかった。 同氏は上院での証言は受諾したが、共和党が証言をブロックした) シェフ氏としては、「何をいまさら」といった心境だろう。 一方、共和党はどうか。議会における「最強のトランプ弁護人」と言われているジム・ジョーダン下院議員(オハイオ州選出)はボルトン氏についてこう批判した。 「あの男は元々腹に一物ある人物。常に自分の利己的な目的を抱いてきた」 トランプ氏再選委員会の顧問を務めるジェイソン・ミラー氏はボルトン氏を一刀両断にした。 「ボルトン氏は本をできるだけ多く売ることしか考えていない。外交に精通した保守派の重鎮とか言われているが、国家安全保障よりも本を売ることにしか興味がないようだ」』、「シェフ氏としては、「何をいまさら」といった心境だろう」、しかし、下院の委員会に呼ぶ価値は依然としてあるのではなかろうか。
・『7月のメアリー・トランプ暴露本に要注意  トランプ・習近平関係について北京の米大使館に勤務したこともある元外交官のD氏は、筆者がコメントを求めると、こうメールしてきた。 「トランプのクールエイド(飲料水)を飲まない者(トランプ氏はクールエイドを愛飲している。そこからトランプ氏を骨の髄まで支持するハードコアではない米国民を指す)は一切関心を示さないと思う」 「ここに出てくる新事実とやらも米国民の大半は知っているからだ」 「一つだけ言えることはトランプという人物は言っていることとやっていることが一致しないこと。ついさっきまで言っていたことを180度転換しても平気だということ」 「日本の安倍晋三首相はトランプ氏に最も近い指導者とされているらしいが、ボルトン本を読んでトランプがどんな男が少し学んだ方がいいと思う。もっとも、こんなことは百も承知で面従腹背に徹しているのかもしれないが・・・」 「いずれにせよ、トランプ氏とボルトン氏には共通項がある。2人とも自分が誰よりも頭が良くて、強くて、断固とした決定ができると錯覚していることだ」 ボルトン本が再選に与える影響力について数人の識者に聞いてみた。 答えは「あまりない」だった。 「すでにトランプ再選が危ぶまれているネガティブ要因がありすぎる。今頃出たボルトン本にそれほどインパクトがあるとは思えない」というのがその理由だ。 大学で政治学を教えるB氏はさらに続けてこう答えてくれた。 「ボルトン本よりももっとインパクトがあるのは、7月に出るトランプ大統領の姪っ子、メアリー・トランプさんの暴露本ではないか」 この本については別稿でご紹介する』、「心理学者のメアリー・トランプさんが来月、大統領と過ごした過去や家族関係の内幕をつまびらかにする暴露本を出版」(テレ東NEWS)、「心理学者」による私生活の暴露とは、「インパクト」がありそうだ。記事になり次第、紹介したい。
・なお、本日付けのロイターは、「ボルトン氏暴露本、抜粋報道受け差し止めは「後の祭り」と米判事」として、連邦地裁の判事が、公聴会で、著書の抜粋がメディアに掲載されたことなどを受け、「後の祭りだ」と指摘したようだ。
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韓国(文在寅大統領)(その4)(コロナで株上げた文大統領 経済低迷放置と対日横暴政策を元駐韓大使が解説、韓国で巨大クラスターが続々発生の悲劇…「文在寅が威張るたびに感染爆発」 「世界に誇るK防疫」が一転した、韓国を敵視する北朝鮮に「文在寅大統領はどう動く」) [世界情勢]

韓国(文在寅大統領)については、昨年10月20日に取上げた。今日は、(その4)(コロナで株上げた文大統領 経済低迷放置と対日横暴政策を元駐韓大使が解説、韓国で巨大クラスターが続々発生の悲劇…「文在寅が威張るたびに感染爆発」 「世界に誇るK防疫」が一転した、韓国を敵視する北朝鮮に「文在寅大統領はどう動く」)である。

先ずは、本年6月8日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元・在韓国特命全権大使の武藤正敏氏による「コロナで株上げた文大統領、経済低迷放置と対日横暴政策を元駐韓大使が解説」を紹介しよう。
・『総選挙の勝利で文政権はやりたい放題  韓国文在寅政権率いる与党「共に民主党」は、4月15日に投開票された国会議員総選挙で300議席中177議席を獲得して大勝利を収めた。 韓国では与野党で対決する法案を国会で通すためには、60%以上の賛成票を獲得する必要がある。これまで与党は60%を押さえることができていなかったので、文政権は国会に足を引っ張られてきた。しかし、新たに招集する国会では、与党系の少数政党を加えれば、与党である革新陣営の求める法案を可決することが可能となる。 文政権与党の勝利には2つの要因がある。 一つは、新型コロナウイルス感染症の拡大を一時的に封じ込め支持が高まったことで、これまでの文政権の強引で危険な体質を露わにせずに済み、かつ内政、経済、外交の失敗への審判を仰がずに済んだこと・・・もう一つは、保守系政党がまとまらず、結束が弱いままの状態で選挙を迎えたことである。 このように“無風”ともいえる選挙で勝利できたことによって、文大統領はこれまでの2年間で噴出した不祥事や失政について反省することなく、より一層、左派長期政権の夢に向かって突き進んでいくだろう。 文政権はこれまで、行政と司法で最後の砦となっていた検察を無力化することで、絶対的な権力を確立し、言論まで抑え込んできた。ここにきて立法も支配下に置くことに成功し、独裁的な権力基盤を確立した。 文政権に残された任期は2年半である。韓国では独裁政権であっても5年の任期は延長できない。これまでの歴代政権は、任期終盤が近づいてくると、レームダックとなることが多かった。その意味で権力がピークとなった今が、文政権の目指す政策遂行の最も良い機会である。 そうした状況下で、文政権がいかに対応しようとしているのか検証してみたい』、「新型コロナウイルス感染症の拡大を一時的に封じ込め」については、次の記事にあるように、その後再び感染が拡大しつつある。また、昨日取上げたように北朝鮮との関係が最近悪化した。総選挙で「大勝利」したので、「レームダック」とならずに、「権力がピークとなった」のは、日本から見ると困ったことだ。
・『韓国経済は危機的状況  韓国銀行は5月28日、利下げに踏み切った。新型コロナによって世界経済の低迷が続いており、輸出依存度の高い韓国経済のファンダメンタルズは急速に悪化している。それに加え、米中対立の板挟みに喘いでいる。そうした状況下、韓国経済は消費・投資・輸出・雇用のいずれの面でも深刻な状況となっている。 特に文政権にとって深刻なのが若年層の失業率の高止まりである。労組が賃上げを求め続けた結果、企業の新卒学生の採用意欲が落ち込み、就業機会自体が減少しているのだ。 そこに新型コロナや米中の対立で、韓国の輸出は急減してしまった。しかし、文政権の対応は、財政出動を通じて資金をばらまくだけであり、経済回復へのビジョンは見えない。 韓国の世論調査会社、リアルメーターによれば、一時70%を超えた文政権支持率も足元では60%を割り込んだ。若者を中心に失業への不安から、為政者への批判は徐々に増していくだろう。 もちろん経済状況が苦しいのは韓国だけではない。日本や欧米も同様である。しかし、韓国経済は輸出依存度が高いだけに、他国よりもより深刻な打撃を受ける可能性があるということだ』、経済が悪化する前に「総選挙」で勝利したのはラッキーだったようだ。
・『財閥たたきは韓国経済の困難を一層深める  このような時、韓国経済を救えるのは輸出型財閥企業である。 李明博(イ・ミョンバク)元大統領もリーマンショック後、財閥系企業の活力を最大限活用し、OECD諸国の中でいち早く国内経済を回復させた。財閥企業は韓国にとって極めて重要な存在なのだが、文政権は反財閥を鮮明にしている。 文政権は就任当初から、財閥経営への発言力を高めたいと動いてきた。そのため、財閥企業で労働組合を活動させ、それを通じて影響力を発揮しようと画策してきたのだ。 一番の標的となったのが韓国最大の財閥、サムスングループ(注:「で」が抜けている)ある。サムスンでは創業以来伝統的に「無労組経営」を行ってきた。だが昨年12月、サムスングループの経営幹部2人が「労働組合および労働関係調整法」違反の罪で実刑判決を受けたことから、グループ内の労組結成が認められた。この背後に、文政権の暗躍があったことは想像に難くない。 そんなサムスンに対して、文政権はさらなる圧力の行使に出た。 ソウル地検は4日、15年のグループ傘下2社の合併と、グループの事実上のオーナーである李在鎔(イ・ジェヨン)副会長の、グループ経営権継承をめぐる不正疑惑に絡み、李氏と元サムスンの最高幹部2名の逮捕状を請求した。李氏らには資本市場法違反(不正取引及び相場操作)、株式会社の外部監察に関する法律違反の容疑が適用されている。 サムスン側はこれに強い遺憾の意を示し、国民の視点で捜査継続や起訴の可否などを審議してもらうため、検察捜査審議会の招集を求めている。 このような動きは、政権と財閥の対立を一層先鋭化させ、新型コロナからの経済回復に一層の足かせとなっていくであろう』、「サムスン」と「政権」の司法上の対立がどうなるかは当面の注目点だ。
・『韓国経済の弱点は金融  韓国の通貨ウォンは国際通貨ではなく、このことが韓国の銀行のドル調達に不利な立場を強いてきた。このため、故盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の時代から、ソウルを「北東アジアの金融ハブ」にしようと取り組んできた。 しかし、文政権はこうした努力を台無しにしている。ソウルは英調査機関が公表している金融センターの国際的競争力の指標である「国際金融センター指数」で、08年の53位から15年には6位まで順位を上げていた。しかし、文大統領が就任してから順位は再び低下し昨年は36位、今年は33位と、「北東アジアの金融ハブ」という夢は遠ざかるばかりである。 折しも中国が香港国家保安法を制定し、香港の「一国二制度」を事実上反故にしようとする動きに対して、米国を中心に批判が高まって対立が深まり、米ニューヨーク、英ロンドンと並ぶ世界3大金融センターの一角である香港の地位が大きく揺らいでいる。どこが香港に取って代わるかに関心が集まっており、シンガポールや上海、東京などが争っているが、ソウルは候補にすら上がっていない。 それだけ、文政権になってからの韓国経済の世界経済における位置づけが低くなっているということだろう。JPモルガンやバークレイズ、UBSなどの外資系投資銀行が相次いで韓国から撤退したことも、そうした事情を反映している。韓国で事業を継続している外資系金融機関も従業員数や事業規模を縮小しているところが多い。 韓国のウォン安が進むとウォン投げ売りのリスクが高まる。新型コロナによるウォン安進行の際には、米連邦準備制度理事会(FRB)が通貨スワップに応じたことから事なきを得たが、次にウォン安が進行した時に、文政権は対応する術を持っているのだろうか』、「「国際金融センター指数」で・・・15年には6位まで順位を上げていた。しかし、文大統領が就任してから順位は再び低下し昨年は36位、今年は33位」、「外資系投資銀行が相次いで韓国から撤退」、というのであれば、「「北東アジアの金融ハブ」という夢は遠ざかるばかり」、同感だ。「新型コロナによるウォン安進行の際には、米連邦準備制度理事会(FRB)が通貨スワップに応じたことから事なきを得た」、初めて知ったが、綱渡りのようだ。
・『コロナ封じ込めの成果を外交に生かしていない  文政権の政策について最初の2年間の国際的評価は低かった。しかし、欧米が苦しむ中、新型コロナを封じ込めたことで、その評価が著しく高まっている。5月にオンラインで行われたWHO総会では、テドロス事務局長から要請されて文大統領が基調演説を行った。 また、9月に行われるG7サミットではロシアとオーストラリア、インドの首脳とともに招待された。韓国国内では、これは李明博元大統領時代にG20のメンバーとなったことを超える功績であり、国格を高めるものだと歓迎する論調が目立っている。韓国は常に日本を意識しているので、日本と同格になったと自尊心をくすぐられたのであろう。 しかし、韓国がこうした国際舞台で先進国としての役割を果たせる準備ができているかが問題である。 これまでの韓国の外交といえば、北朝鮮との関係で国際社会の中でいかに立ち回るかを考えるのが主たるものだった。 韓国はいまだに北朝鮮に対し、卑屈に対応するだけで、一言でも北朝鮮が反発すればすぐに折れるという姿勢を繰り返している。つい先日も、金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党第一副部長が、韓国の脱北者団体が北朝鮮に向けて飛ばしている体制非難のビラを問題視し、南北軍事合意の破棄に言及したところ、青瓦台はすぐに「ビラは百害無益な行動」であり、「安全保障に危害をもたらす行為には断固対応する」と、北朝鮮におもねるような声明を発表した。 国際社会は北朝鮮への対応で核ミサイル開発をいかに阻止するかを最重要視しているが、文政権はその足並みを乱しているだけではなく、対北朝鮮外交の本質を見失っている。 G7サミットに、米国が中国周辺の4カ国を招待した意図は明白である。中国も「中国包囲網の形成」だと反発している。韓国は米中の狭間でどう動くつもりだろうか。米国が中国のファーウェイ製品の使用自粛を求めたとき、文政権は対応せず、右往左往するだけであった。「G7+4」の場で韓国の外交の実力が見えるだろう』、「G7サミットに、米国が中国周辺の4カ国を招待した意図は明白である。中国も「中国包囲網の形成」だと反発している」、韓国は米中の狭間で、どうするのだろう。
・『日韓関係は最悪の状況に突き進んでいる  文政権の外交でもっとも極端なのが日本に対する政策である。産業資源通商部は5月12日、月末を期限として日本に輸出規制の撤回を迫った。 韓国としては、輸出管理の人員と組織を充実させるなどの体制整備を図ったという自負があったのだろう。しかし、実際の運用面で懸念が晴れなかったことから、日本は韓国側の要望に応じなかった。 すると韓国はWTOへの再提訴を行った他、昨年米国も巻き込んで大騒ぎになった軍事情報包括保護協定(GSOMIA)終了もちらつかせた。 ただ、WTOに提訴しても最終審査までには2年以上必要とされ、上級委員会も機能を停止していることから、提訴の実効性は乏しい。また、GSOMIA終了は米国が強く反対していることから、直ちに実行は難しいだろう。 そこで、韓国は次の手段に踏み切った。それが元徴用工に関連する日本企業の資産の現金化の手続きをさらに進めるための裁判所の公示通達である。これは裁判所に掲示するか官報に公告することで、裁判を進めることを可能とする制度である。 これは行政府ではなく裁判所の動きであるが、輸出規制で日本が譲歩しなかったことを受けて突然出てきたことから、大統領の意向を反映していることは間違いないだろう。 日本政府は、日本企業の資産の現金化は国際法違反の状態を一層悪化させるものであるとして報復を匂わせているが、文政権はそれでも現金化が最も効果的な手段だと勘違いしているのだろう。現金化が行われれば、双方の報復の連鎖によって日韓関係は最悪な状況に陥るだろう。文政権の、相手国の意向を無視して強引な政策で自己主張するという悪弊は、依然として治らぬままである』、その通りだ。
・『革新系の不正は断固庇う文政権  内政面では元挺対協代表、前正義連理事長で、「共に市民党」から比例代表で当選した尹美香(ユン・ミヒャン)議員についての不正疑惑が噴出している。 元慰安婦への寄付金を慰安婦のために使わず個人的に流用したこと、政府補助金を適正に申告せず着服したこと、資金の受け皿として個人名義の口座を使ったこと、元慰安婦の憩いの場として購入した不動産購入をめぐる不透明な資金の流れや、娘を米国へ音楽留学させた費用を不正に捻出した疑惑など、枚挙にいとまがない。 当初これを批判していたのが保守系の政党とメディアであったことから、ユン氏への批判は親日派が慰安婦問題を風化させるための策動だとして、市民団体を動員して批判の矛先を変えようとした。しかし、疑惑が深まるにつれ、与党の中にもユン氏が説明責任を果たすべきとの声が高まっている。 それでも、与党幹部は事態の推移を見守る姿勢であり、与党関係者には緘口令を敷いてユン氏批判を封じ込めている。さらに文大統領は、これは与党の問題であるとして、事件から距離を置いている。 これまでも文政権は、政権幹部のスキャンダルが出るたびにもみ消してきた。今回の流れも同様だろう。しかし今回違うのは、これを告発したのが「被害者中心主義」の主役である元慰安婦であることだ。 ユン氏の疑惑が出たことから、韓国では市民団体への寄付金が減少しているという。文大統領はかつて市民活動に身を投じていた。そんな文大統領が重視してきた市民活動が資金難に陥ろうとしている時に、曺国(チョ・グク)前法務部長官のスキャンダルをもみ消したようないい加減な対応でいいのだろうか。 文政権は市民団体からも支持を得て、政権を奪取した。今回のスキャンダルが、文大統領の「終わりの始まり」として記憶される可能性もあるだろう』、「元慰安婦」団体の「不正疑惑」については、2日前にこのブログで取上げた。「今回のスキャンダルが、文大統領の「終わりの始まり」として記憶される可能性もあるだろう」、そうなってほしいものだ。

次に、6月10日付けプレジデント Digital「韓国で巨大クラスターが続々発生の悲劇…「文在寅が威張るたびに感染爆発」 「世界に誇るK防疫」が一転した」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/36102
・『新型コロナの大規模なクラスターが相次いで発生、時計が逆回転したような韓国に何が起きているのか?』、興味深そうだ。
・『「密」への警戒感もまったく薄れて…  「K防疫」とは韓国が自ら施行した新型コロナ対策の呼び名だ。感染者の移動経路などの情報を公開、PCR検査を徹底して行ったため、4月中旬には新規の感染者が10人前後まで減少、5月6日に外出自粛要請を解除した翌7日には、K防疫、Kバイオなどを目玉に、「ポスト・コロナ」時代の新産業戦略を提示。新型コロナの被害が大きかった主力事業を、新産業として再編するとした。 総選挙にも圧勝し、男を上げた格好の文在寅大統領は同10日、「我々は防疫において世界をリードする国になった。K防疫は世界の標準となった」と内外に誇らしげにアピールした。 しかし実は、ソウル市内の繁華街、梨泰院(イテオン)で集団感染が8日に確認されており、同9日にすべての遊興施設に営業停止命令が下され、再び規制を強化していたのだった。同11日までに79人の感染者が確認された。人々が一斉に街に出てあふれかえり、「密」への警戒感もまったく薄れてしまったという。防疫当局は従来の新型コロナとの違いを、「伝播する速度が極めて早い」と警戒しているという』、「「我々は防疫において世界をリードする国になった。K防疫は世界の標準となった」と内外に誇らしげにアピールした」、「集団感染が8日に確認されて」いるにも拘らず、なんとも厚かましい主張だ。
・『「伝搬の速度がきわめて速い」と警鐘  連鎖は続く。同26日には京畿道富川(キョンギド・プチョン)市のECサイト、クーパン物流センターで60人が感染、臨時閉鎖に追いやられ、さらにソウル松坡区(ソンバク)のマーケット・カーリー物流センターでも感染者が発生した。ここでの感染者の中には、1600人あまりが勤務するコールセンター職員も含まれていた。このため、各所に勤務する4000人以上の人々が自宅隔離に追いやられたという。韓国政府は28日、ソウル市など首都圏を中心に6月14日をリミットとする外出・イベントの自粛を呼び掛けた。 このうえウイルスの遺伝子が大きく変異していれば、これまで行っていた対策を無にしかねない。防疫当局は遺伝子じたいの変化は確認されていないものの、「伝搬の速度がきわめて速い」という警鐘を鳴らしている』、「伝搬の速度がきわめて速い」のが第2波の特徴だとすれば恐ろしいことだ。
・『「日本は紙と鉛筆と電話で感染者を追う」と酷評  そもそも韓国内での本格的な感染拡大の発端は、今年2月16日、大邸市でキリスト教系の新興宗教団体「新天地イエス証しの幕屋聖殿」の大規模な礼拝で2000人超の感染爆発が起きたことだったが、文大統領はその3日前の13日にも、韓国産業の6大グループの経営トップと経済界のコロナ対応を協議する場で、「防疫管理はある程度安定的な段階に入ったようだ」「コロナ19は遠からず終息するだろう」と言い切ってしまっていた。 大見得を切ると、実態が逆に動く。一国のリーダーとしては、かなりみっともない姿を晒したことになる。しかし、ワイドショーを始めとする日本の国内メディアの“韓国を見習って、PCR検査を増やせ”と主張する「韓国推し」は壮観ですらあった。たとえば、4月23日付ニューズウィーク日本版では、「なぜ必死で韓国を見習わないのか」「100%真似すべき」と主張。紙と鉛筆と電話で感染者の経路を追う日本の保健所のやり方を「戦車に竹やりで向かう以上の戦い」「ロケットに弓で対抗」とこき下ろした。 しかしこの第2波発生を受けて、韓国主要紙は「日本が韓国を羨ましがる時間はそんなに長くなかった」「日本の各メディアの記事の論調から読者の反応までもが一瞬にして変わった」と、日本国内での受け止め方の変化を表現している(5月23日付朝鮮日報、イ・テドン東京特派員)』、「ニューズウィーク日本版」での「日本の保健所のやり方」の「酷評」は、残念ながらある程度当たっていることも事実だ。
・『自画自賛「“伝授してほしい”と全世界から要請が殺到」  “感染再発”の経緯を少し詳しく見てみよう。この第2波の中核となってしまったソウル市内のゲイクラブでは、270人のクラスターが発生。入店の際に義務付けられていた名前と連絡先など個人情報の記入も、約5000人分のうち2000人は虚偽。感染防止には初動が大きくものをいうが、追跡ができないために初動が遅れてしまい、7次感染まで拡大させてしまった。 富川市の物流センター内の飲食店では、「100人余りの勤労者が肩が触れ合う距離で座って食事を取り、仕切りも最初の患者が発.した後で設置された」(聯合ニュース)。休憩室や喫煙室などにはマスク未着用者も多数。「アルバイトなど日雇い労働者が多く、『体調不良の場合は3~4日休む』という規則が事実上無きに等しかったという指摘がなされている。 韓国の国内メディアが一転、叩きの標的としているK防疫だが、第2波が来る寸前までは、「全世界から国内新型コロナ対応経験を伝授してほしいという要請が殺到した」ため、その伝授のために何と約2時間のウェブセミナーまで開いていた(中央日報)。毛嫌いせずに、少し詳しく見ておくべきだろう』、「国内新型コロナ対応経験・・・の伝授のために何と約2時間のウェブセミナーまで開いていた」、厚かましいが、ある意味ではたくましいPR精神だ。
・『動線の公開で、感染者の身元がバレた  K防疫とは、いかなる手法なのか。日本が取った手法とは異質であることがすでに報じられているが、感染経路をたどる際、個々人の携帯電話の位置情報、防犯カメラの映像、クラスターが起きた現場付近のクレジットカードの決済記録などを当局が把握、警察官を多数動員して追跡する。日本から見ると、法制度上の問題に加えて、プライバシーを度外視したにわかには受け入れ難い手法に見える。 感染拡大初期には、ショッピングモールを訪れた感染者が時間帯別にどの売り場を訪れたのかなどの動線が地方自治体のSNSに掲載されていたという(その後、予防に必要な情報に限る等々の様々な制約がついた)。2015年に、日本では感染者ゼロだった中東呼吸症候群(MERS)の感染拡大を経験した韓国国民だからこそ、プライバシー論争を経て仕方なく受け入れた手法といえよう。 MERS感染の際は、中東を歴訪し感染した最初の韓国人患者が発症から隔離までに10日かかり、その間に4カ所の医療機関で受診。多数の医療従事者や患者らに接触することになり、2次感染、3次感染を含めて計186例、1万6693名が隔離対象となっている(国立感染症研究所HPより)。 もっとも、第2波を受けて、プライバシー論争が再燃。身元がバレる被害も出ており、富川市のフェイスブックには感染者の動線の公開範囲を糾弾する書き込みが多くみられる(中央日報)。基本的な手法は不変と思われるが、この先どう手を加えるのかにも興味は尽きない』、「MERS感染の際は・・・2次感染、3次感染を含めて計186例、1万6693名が隔離対象」、この経験の有無は日本との大きな違いだ。
・『第2波は「突然の意識障害など重症となる患者が増えた」  我が国に目を転じると、緊急事態宣言が解除され、手のひらを返した海外メディアの賞賛が相次いでいる新型コロナ対応だが、そうそう喜んでも言っていられない。 人口100万人あたりの死者数は、理由はわからないが日韓始め東アジア諸国は欧米と比べて格段に低い水準にある。欧米メディアが不思議がるポイントである。ただ、5月12日を境に日本は韓国を上回り、その後はほぼ横ばいの韓国と比べてわずかに上向きなのは少々気になる。 福岡・北九州市の病院・介護施設や小学校で集団感染が相次いでいる件は、政府担当者だけでなく日本中の個々人が注視しておく必要がある。北九州市立八幡病院の伊藤重彦院長は、「北九州での第1波と第2波では感染者の症状に違いがあり、第2波の特徴として突然の意識障害に陥るなど重症となる患者が増え、医療従事者が感染する率が高かった」という(NHK)。 第2波を不用意に拡大させて、経済活動を再度ストップさせるわけにはいかない。政府にはバランスの取れた差配を、企業や個々人は引き続き慎重な行動が求められる』、東京でも感染者発生数が再び増加しつつある。「第2波は「突然の意識障害など重症となる患者が増えた」のであれば、大いに気を付けるべきだろう。

第三に、6月18日付け日経ビジネスオンライン「韓国を敵視する北朝鮮に「文在寅大統領はどう動く」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00147/061600004/?P=1
・『テレビ東京アナウンサー・角谷暁子と日経ビジネス編集委員・山川龍雄が、世間を騒がせている時事問題をゲストに直撃する動画のシリーズ。第3回のテーマは、北朝鮮が韓国に圧力「文在寅(ムン・ジェイン)大統領の思惑は?」。ここへきて韓国を敵呼ばわりし、報復を始めた北朝鮮。西野純也・慶応義塾大学教授は「それでも文大統領は忍耐強い。融和路線は変わらない」と指摘。今後は、総選挙で圧勝した政治基盤を背景に、南北融和路線を不可逆にするための「法改正を進めるだろう」と見る。ただ、北朝鮮の視線の先にはアメリカがあり、文政権は蚊帳の外に置かれている。肝心のトランプ大統領はコロナ対応と選挙で頭が一杯で北朝鮮に関心を寄せない。当分の間、⽂⼤統領の⽚思いは続き、「南北関係の局⾯が⼤きく動くとすれば、11⽉の⽶⼤統領選後」と予想する』、興味深そうだ。
・『角谷暁子(日経プラス10サタデー・キャスター、以下、角谷):さあ、始まりました。「カドが立つほど伺います」。略して「カド立つ」です。 このコンテンツは毎週土曜朝9時30分から7チャンネル、BSテレ東で放送している「日経プラス10サタデー ニュースの疑問」という番組内でお伝えしきれなかったことを配信でお伝えしていこうというものです。山川さんにも引き続き参加していただきます。 今回のテーマは、北朝鮮が韓国に圧力「文在寅大統領の思惑は?」 山川龍雄(日経プラス10サタデー・メインキャスター、以下、山川):不謹慎なたとえかもしれませんが、文大統領の北朝鮮に対する姿勢は、何度、断られても求愛し続ける「101回目のプロポーズ」のようにも見えますね(笑)。いつか成就するのか? 角谷:その行方が気になるところです。お話を伺うのは、慶応義塾大学教授の西野純也さんです。よろしくお願いします。 西野純也氏(慶応義塾大学教授、以下、西野氏):よろしくお願いします。 角谷:今日も疑問を絵にしました。1つ目はこちら。 韓国に対する態度を硬化させている北朝鮮ですが、まず経緯を確認しましょう。 まず韓国にいる脱北者団体が5月31日、ソウル近郊で北朝鮮体制を非難する50万枚のビラをつるした大型風船を北朝鮮に向けて飛ばしました。韓国メディアによると、ビラには「新たな戦略核兵器で衝撃的行動をするという偽善者金正恩(キム・ジョンウン)!」と記されていたそうです。 山川:1ドル紙幣なども入っていたようで、かなり⾦正恩委員長を侮辱する内容ですね。 角谷:これに対して、金正恩委員長の妹である金与正(キム・ヨジョン)氏が、脱北者たちの行為を「くずたちの茶番劇」と非難する談話を発表。そして、南北当局間の通信手段を6月9日に遮断しました。 さらに、開城(ケソン)工業団地の撤去や、南北軍事合意の破棄などの対抗措置もちらつかせています。(注:その後、6⽉16⽇には、開城にある南北共同連絡事務所を破壊。同17日には北朝鮮の国営メディアが、韓国との国境近くに軍を展開すると報じた) 一方の韓国は北朝鮮からの非難を受けて、ビラ散布禁止の法案整備に動いています。 山川:ここにきて、正恩氏に代わって妹の与正氏が前面に立って、韓国への圧力を主導しているのも気になりますね。 角谷:ビラの散布自体は繰り返されてきたことです。にもかかわらず、北朝鮮はなぜこれほど怒っているのでしょう。そしてなぜ、このタイミングで圧力を強めているのでしょうか』、「北朝鮮」については、昨日のこのブログでも取上げた。「ビラの散布自体は繰り返されてきたこと」なのに、「北朝鮮はなぜこれほど怒っているのでしょう」、知りたいところだ。
・『失望している相手はトランプ大統領  西野氏:怒っているとも言えるし、失望しているとも言えます。失望している相手は、文大統領であり、その先にはアメリカのトランプ大統領がいます。 北朝鮮からすれば、2年前の6月12日にシンガポールで約束したことをトランプ大統領は守ってくれていない。文大統領は2018年4月の板門店宣言や、同年9月の平壌共同宣言で約束したことをほごにしている。その失望や怒りが最近の強いメッセージとなって表れているのです。 とりわけ与正氏のメッセージの中には、金剛山観光の廃止や開城工業団地の撤廃など、文政権が再開したいと言ってきた事業が含まれています。そこには文政権は「口ばかりで、行動が伴わない。本当に実行する気があるのか」というメッセージが込められているように感じます。 角谷:与正氏はかなり強い言葉を使っていますが、このあたりは従来に比べても、強い態度に出ているように見えますか。 西野氏: そうですね。今後さらに緊張が⾼まる懸念があります。昨年からミサイルや⻑距離ロケット砲の開発にまい進してきたわけですが、その完成のお披露⽬みたいなことをする可能性もあるでしょう。 ただ他方、北朝鮮の得意技である、いわゆる瀬戸際戦術のようにも見えます。これまでも緊張を高めておいて、突如、局面転換を図ることはありました。前言を撤回するのは、北朝鮮の得意のパターンですから。 角谷:文大統領は強い態度には出ないと思っている? 西野氏:そうですね。敵と罵っても文政権は大目に見てくれると北朝鮮は分かっています。 山川:文政権はビラ散布などを禁じるための法整備を進めるなど、関係維持のために即座に対応していますね。ただ世論は賛否が分かれていて、表現の自由に反するものだと文政権を批判する声もあります。 西野氏:そうですね。文政権としては、板門店宣言などで、北朝鮮に対して誹謗(ひぼう)中傷を行わないことを約束してきたわけですから、それに沿った形でビラ散布を禁止しようとしているわけです。 韓国の世論としても、南北交流を強引に進めるとなれば反発も出てきますが、緊張をしっかり管理するという趣旨であれば、大きな反対は出ないと思います。) 山川:今回の北朝鮮の動きには、新型コロナウイルスの問題が関係していますか。北朝鮮政府は1月、感染を防ぐために、中国との国境沿いの封鎖などの措置を素早く講じました。 北朝鮮の貿易額の9割以上は中国が占めています。ただでさえ、国連の制裁で貿易が先細っている中、今年は頼みの綱である中国との貿易も激減。4月は対中国の貿易額が前年同月比でおよそ9割減ったというデータがあります。こうした国内の困窮ぶりが、韓国に対する一層の強い圧力につながったとは考えられませんか。 西野氏:それはあるでしょう。とはいえ、韓国から目先の支援を引き出そうという思惑だけで動いているとは思いません。北朝鮮はもっと長期的な考えで動いているはずです。 2019年12月に開かれた朝鮮労働党中央委員会総会で、金正恩委員長は国連の制裁は当分続くとし、長期戦の覚悟を示しました。苦しい状況であっても、韓国から小出しの援助をもらうのではなく、アメリカとの関係に備えることに主眼を置いています。 そして、そのために必要なのは、中国からの下支えです。不幸にもコロナの問題が出てしまい、中国との貿易関係が弱くなっている。そこを立て直したいという思いは強いと思います。 角谷:2つ目の疑問です。 山川:文大統領の政治信条が南北統一であることは分かりますが、それにしてもこれほど冷たくされている相手に対し、ずっと低姿勢で臨むのは大変なことです。その真意を知りたいですね。 角谷:はい。それに4月に実施された韓国総選挙において、文大統領が率いる与党「共に民主党」は180議席を獲得して圧勝しました。 韓国では過半数議席を確保しているだけでは、法案を思い通りに通すことができませんが、定数の5分の3である180議席を上回れば、与党単独あるいは進歩陣営だけで法案を迅速に審議することができます。 そして政治基盤を固めた文大統領は、1990年に制定された南北交流協力法の改正を進めようとしています。そこには、北朝鮮と交流する際の手続きの簡素化などが含まれており、国連の制裁に抵触するのではないかと、警戒する向きもあります。 こうした動きを見ても、文大統領は北朝鮮に対してラブコールを送り続けているように見えますね』、「失望している相手は、文大統領であり、その先にはアメリカのトランプ大統領」、「文政権は「口ばかりで、行動が伴わない。本当に実行する気があるのか」というメッセージが込められている」、よく理解できた。「文大統領は北朝鮮に対してラブコールを送り続けているように見えます」、これは「南北共同連絡事務所を破壊」で考え直すのだろうか。
・『分断緩和が安全保障策  西野氏:そうですね。まず国会の状況から説明しておくと、選挙で180議席を獲得しましたが、その後、離党者が出て現在は180に若干足りません。ただ、文政権に比較的近い政党の協力を得れば180議席を獲得できるので、国内の基盤が強くなったのは間違いないでしょう。 とはいえ、法案を通すにはそれなりの時間がかかるので、今すぐに大きく転換するつもりはないと見ています。あくまでも時間をかけて進める構えでしょう。 かねて文大統領が率いる進歩勢力は南北関係の改善が必要であり、それこそが韓国の安全保障に資するという考えを持っています。これは韓国の保守勢力とは異なる考えで、野党側は北朝鮮の軍事的な脅威に備えるためには、在韓米軍に駐留してもらうことが重要だと考えています。 これに対して進歩側は、そもそも分断状況が根本原因であり、その緊張を緩和するためなら在韓米軍の規模を調整することもあり得るという考えなのです。 とりわけ李明博、朴槿恵(パク・クネ)両氏の保守政権下で南北の緊張関係が高まり、戦争になるのではないかというところまでいきました。それを踏まえて、文政権は何としても南北関係を改善したい、さらに統一に向け、まずは南北の経済共同体を作りたいという、強い信念の下に動いているのです。 山川:文大統領の信念は分かりますが、それにしても、これだけ相手に罵倒され、裏切られても、ラブコールを送り続けられるものなのでしょうか。 西野氏:そこは文大統領の持つ忍耐強さだと言わざるを得ませんね。 北朝鮮は特に昨年から、聞くに耐え難いような言葉で韓国を誹謗中傷しています。韓国の国民やメディアも怒っています。にもかかわらず、文大統領が忍耐強く臨んでいるのは、ある意味、驚くべきことです。 他方で北朝鮮に足元を見透かされてしまっている面もあります。私個人としては、もう少し戦略、戦術を考え直す必要があるのではないかと考えています。 角谷:このまま北朝鮮に対する緩和を強引に進めていくと、国連安保理決議の違反にもなりかねないのでは。 西野氏:これまで文政権は、国連決議に違反しない形で南北交流を進めようとしてきました。しかし、それには限界があります。何よりも北朝鮮がそれに応じてくれない。 これまでの3年間を踏まえ、残りの2年間はもう少し南北交流のアクセルを踏むべきだという声が、文政権内には強くあります。政権を支持する勢力からも昨夏くらいから強く出ています。今回の選挙の勝利を踏まえ、より積極的に進めようとするかもしれません。 ただ問題なのは、北朝鮮がそれを好意的に受け取ってくれないことです。先ほど申し上げた通り、北朝鮮は南北よりもアメリカや中国との関係を重視していますから。 角谷:韓国の国民の中には、北朝鮮の態度に反感を持っている人もいると思います。文大統領はそうした世論をどう捉えているのでしょうか。 西野氏:国民が北朝鮮による誹謗中傷を怒っているのは間違いありません。ただ、今に始まった話ではないので、多くの人は慣れているのでしょう。 角谷:それでは最後の質問です。 既に話がそこに及んでいる気もしますが、改めて南北統一の行方はどうなるのでしょうか。まず2019年8月の光復節での文大統領の発言を振り返っておきましょう。 2032年にソウルと平壌でオリンピックを共同開催し、2045年にワンコリアとして統一するという時間軸を示しました。また、朝鮮半島が統一したら経済規模は世界6位になるとも強調しました。 山川:南北統一に関する世論調査をみると、「統一が必要」という人は2年前に比べて落ちてはいますが、それでも69%の人が支持しています。特に年配の人は、離散家族もいるので、統一への思いが強いということでしょうか。 西野氏:そうですね。大義としての統一を捨てられない人は今でも多いです。ただ質問の仕方を変えて、「今すぐ統一が必要か」「どれくらい先に統一が必要か」と聞くと、違った答えが返ってくるでしょう。多くの人は「今すぐは無理だし、望んでいない」と回答するはずです。 国民の公約数的な意見は、朝鮮半島で軍事的な緊張が高まらなければそれで十分というものです。 それ以上先、つまり⽂政権が考えているような南北経済交流を進め、韓国のおカネが北朝鮮に渡るような状況は歓迎していません。それよりもまず足元の韓国経済の回復に力を注いでほしいというのが一般的な考えだと思います。) 山川:文大統領の残りの任期は2年。2045年までは遠すぎます。だとすれば、実現の可能性としては、統一の足掛かりを自分の代で築きたいというのが本音でしょうか。 西野氏:45年というのは1945年の分断からちょうど100年の節目だから、キリのいい数字として出したのにすぎないと思います。実際のところは、文政権の5年間で南北経済共同体の設置までいきたいというのが当初からの計画です。ただ現実的にはそれすら難しい状況になっています。 おそらく文大統領としては次も自分の後継政権が続くと仮定し、その基盤を作っておきたいのでしょう。そのために南北交流協力法の改正や、板門店宣言の国会承認などを進めたいと思っています。たとえ保守政権に代わったとしても文政権の合意をひっくり返せないようにしたいのです。 山川:ただ、韓国は政権が代わったら何でもありなので、法改正でピン止めできるかどうか、難しいところもありますね。 西野氏:そうですね。ただ、これまでは法で固定化することすらできなかったわけですから、一定の効果があると考えているのでしょう。 文大統領の個人的な思いとしては、2007年10月に当時、側近として支えていた盧武鉉大統領が2回目の南北首脳会談を実現させたわけですが、その直後に李明博政権が誕生し、全てがひっくり返ったことが記憶に強く残っているはずです。 盧政権がやったことを全て中断させ、白紙化させたわけですから。そんな苦い経験があるので、今度はそうならないようにしたいという気持ちが強いのだと想像します。 角谷:世界の首脳の状況を見ると、残りの任期が短い人が多く、選挙で基盤を固めた文大統領は比較的動きやすい位置にいるようにも見えますね。 山川:そうですね。トランプ大統領はコロナの問題と大統領選挙で頭の中は一杯でしょう。安倍総理は来年9月で任期が切れますし、最近はコロナ対応などが原因で⽀持率が落ちてきています。 そう考えると、基盤を固め、任期まで2年の任期を残している文大統領は、強い立場にあるように見えます。他国からあまりけん制されず、突っ走れるようにも思えますね』、「文大統領が忍耐強く臨んでいるのは、ある意味、驚くべきことです。 他方で北朝鮮に足元を見透かされてしまっている面もあります」、「盧政権がやったことを全て中断させ、白紙化させたわけですから。そんな苦い経験があるので、今度はそうならないようにしたいという気持ちが強い」、なるほど多少は理解できた気がする。「基盤を固め、任期まで2年の任期を残している文大統領は、強い立場にあるように見えます。他国からあまりけん制されず、突っ走れるようにも思えますね」、「北朝鮮」との関係改善のお手並み拝見だ。
・『来夏までに動きがある可能性も  西野氏:文大統領は南北関係を進めたいでしょうが、国民の一番の期待は経済であり、直近でいえば、司法改革もあります。 やりたいことがあまりにも多すぎて、南北関係を進めることができるかどうかは正直、疑問です。しかも来年に入ると、韓国は大統領選挙モードに入るので、文政権が強い政治基盤を利用できるのは、実質的には残り1年なのです。 角谷:北朝鮮が韓国に対してより一層強い態度を取っているのも、こうした状況を見透かしてのことなのでしょうか。 西野氏:繰り返しになりますが、北朝鮮からすれば南北よりもアメリカとの関係なんです。その意味では、11月の大統領選挙の結果が、一番の関心事。 そう考えると、仮に南北関係の局面が⼤きく展開するとなると、11⽉の⼤統領選挙が終わってから、来夏くらいまでだと予想します。 山川:なるほど。もちろん大統領選で誰が勝つかにもよりますね。 角谷:西野さん、どうもありがとうございました。(注:この記事の一部は、BSテレ東「日経プラス10サタデー ニュースの疑問」の番組放送中のコメントなどを入れて、加筆修正しています)』、「文政権が強い政治基盤を利用できるのは、実質的には残り1年なのです」、「仮に南北関係の局面が⼤きく展開するとなると、11⽉の⼤統領選挙が終わってから、来夏くらいまでだ」、この期間は、トランプが再選されない可能性も出てきたなかで、大いに注目されるようだ。
タグ:文在寅大統領 韓国 新型コロナによるウォン安進行の際には、米連邦準備制度理事会(FRB)が通貨スワップに応じたことから事なきを得た 仮に南北関係の局面が⼤きく展開するとなると、11⽉の⼤統領選挙が終わってから、来夏くらいまでだ 文政権が強い政治基盤を利用できるのは、実質的には残り1年なのです 来夏までに動きがある可能性も 革新系の不正は断固庇う文政権 今回のスキャンダルが、文大統領の「終わりの始まり」として記憶される可能性もあるだろう 自画自賛「“伝授してほしい”と全世界から要請が殺到」 基盤を固め、任期まで2年の任期を残している文大統領は、強い立場にあるように見えます。他国からあまりけん制されず、突っ走れるようにも思えますね 盧政権がやったことを全て中断させ、白紙化させたわけですから。そんな苦い経験があるので、今度はそうならないようにしたいという気持ちが強い G7サミットに、米国が中国周辺の4カ国を招待した意図は明白である。中国も「中国包囲網の形成」だと反発している 元慰安婦への寄付金を慰安婦のために使わず個人的に流用 文大統領が忍耐強く臨んでいるのは、ある意味、驚くべきことです。 他方で北朝鮮に足元を見透かされてしまっている面もあります 国内新型コロナ対応経験 分断緩和が安全保障策 文大統領は北朝鮮に対してラブコールを送り続けているように見えます コロナ封じ込めの成果を外交に生かしていない 文政権は「口ばかりで、行動が伴わない。本当に実行する気があるのか」というメッセージが込められている 日韓関係は最悪の状況に突き進んでいる G7+4 失望している相手は、文大統領であり、その先にはアメリカのトランプ大統領がいます ビラの散布自体は繰り返されてきたこと 「日本は紙と鉛筆と電話で感染者を追う」と酷評 「北東アジアの金融ハブ」という夢は遠ざかるばかり 「国際金融センター指数」 15年には6位まで順位を上げていた。しかし、文大統領が就任してから順位は再び低下し昨年は36位、今年は33位 ニューズウィーク日本版 西野純也 山川龍雄 角谷暁子 韓国経済の弱点は金融 「サムスン」と「政権」の司法上の対立 財閥たたきは韓国経済の困難を一層深める 「韓国を敵視する北朝鮮に「文在寅大統領はどう動く」 韓国経済は危機的状況 プレジデント Digital 日経ビジネスオンライン 第2波は「突然の意識障害など重症となる患者が増えた 感染経路をたどる際、個々人の携帯電話の位置情報、防犯カメラの映像、クラスターが起きた現場付近のクレジットカードの決済記録などを当局が把握、警察官を多数動員して追跡 K防疫 動線の公開で、感染者の身元がバレた ダイヤモンド・オンライン 「伝搬の速度がきわめて速い」と警鐘 外資系投資銀行が相次いで韓国から撤退 「我々は防疫において世界をリードする国になった。K防疫は世界の標準となった」と内外に誇らしげにアピールした 総選挙の勝利で文政権はやりたい放題 「密」への警戒感もまったく薄れて… 「コロナで株上げた文大統領、経済低迷放置と対日横暴政策を元駐韓大使が解説」 「韓国で巨大クラスターが続々発生の悲劇…「文在寅が威張るたびに感染爆発」 「世界に誇るK防疫」が一転した」 武藤正敏 の伝授のために何と約2時間のウェブセミナーまで開いていた (その4)(コロナで株上げた文大統領 経済低迷放置と対日横暴政策を元駐韓大使が解説、韓国で巨大クラスターが続々発生の悲劇…「文在寅が威張るたびに感染爆発」 「世界に誇るK防疫」が一転した、韓国を敵視する北朝鮮に「文在寅大統領はどう動く」)
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