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北朝鮮問題(その20)(「金正恩死亡説」誤報も妹・与正氏が1120年ぶりに北朝鮮の女王になる日、韓国を「敵」呼ばわりし 報復を示唆した北朝鮮の真意、韓国文大統領の「親北政策大失敗」を象徴するケソン爆破 元駐韓大使が解説、ケソン南北連絡事務所爆破の“主役” 金与正氏の「本当の役割」) [世界情勢]

北朝鮮問題については、昨年5月30日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その20)(「金正恩死亡説」誤報も妹・与正氏が1120年ぶりに北朝鮮の女王になる日、韓国を「敵」呼ばわりし 報復を示唆した北朝鮮の真意、韓国文大統領の「親北政策大失敗」を象徴するケソン爆破 元駐韓大使が解説、ケソン南北連絡事務所爆破の“主役” 金与正氏の「本当の役割」)である。

先ずは、本年5月3日付けAERAdotが掲載した在ソウルジャーナリストの朴承珉氏による「「金正恩死亡説」誤報も妹・与正氏が1120年ぶりに北朝鮮の女王になる日」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/wa/2020050300017.html?page=1
・『北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長がついに姿を現した。 北朝鮮の国営朝鮮中央通信によると、平安南道・順川にある肥料工場の竣工式に5月1日、出席。金正恩氏が公の場で活動した映像がメディアで報じられたのは約3週間ぶり。その間、米国、韓国などで「心臓病手術の失敗で脳死説」「すでに死亡説」が飛び交っていたが、健在ぶりをアピールした。 「ソウルの脱北者の間では99%死亡とも言われていましたが、誤報だったようです。金正恩の姿が見えなかったのは、手術を受けていたのではなく、平壌でコロナウイルスが蔓延し、別荘に避難していたなどと憶測されています」(韓国ジャーナリスト) 金正恩氏が出席した竣工式には実妹で「後継者」と注目されている金与正氏も出席していた。 3月には韓国と米国に対する声明文を発信するなどしていた与正氏は、兄が不在の3週間の間、一段とメディアで存在感が増していた。 「金与正は朝鮮半島の歴史で1120年ぶり4人目の女王になれるのか」 朝鮮半島が『新羅』時代に真聖女王という女王が存在したが、それ以来となる金与正女王の誕生か、と韓国紙もその動静を報じていた。 まだ31歳とされる与正氏はどんな人物なのか。経歴ではっきりしているのは、1996年4月から2000年末まで兄の正恩とともにスイス・ベルンに留学していたことだ。バレエのレッスンを受けていたこと、アニメのイラストを描くことが趣味だったという。 「与正は正恩よりも4歳若く留学しているため、入学時に学力差が広がっておらず、成績は兄よりよかった。北朝鮮に戻って最高峰の金日成総合大学に入学したのは、07年ごろ。物理学を専攻した。そして11年12月、父・金正日の葬儀の場に姿を現したのが、与正の公の場のデビューでした」(北朝鮮ウオッチャー) 金正恩体制になると、最側近として与正氏は正恩氏のヘアスタイルから眼鏡のフレームまでコーディネートしているとされる。彼女の“外交デビュー”は2年前の18年2月、平昌五輪の開会式で、その美貌から「微笑み外交」と世界中から注目された』、「「与正は正恩よりも4歳若く留学しているため、入学時に学力差が広がっておらず、成績は兄よりよかった」、さもありなんだ。
・『北朝鮮当局が所属部署を発表していないものの、与正氏は現在、労働党組織指導部の第1副部長とされている。この部署は労働党と軍部、内閣、国家保衛省、人民保安省(警察)などの幹部の人事権を握っている権力が集中する最も重要な部署だ。金正日(キム・ジョンイル)総書記は、死亡する時まで組職指導部長を兼ねていたほどだ。 筆者が北朝鮮在住の国民に電話取材したところ、「金一族である与正氏の権力継承に対して違和感がほとんどない。金一族の権力世襲は当然」とも話す。 しかし、一方で北朝鮮には封建的な考え方がまだ強く残っており、労働党幹部や軍部幹部らが、女性である与正氏が指導者になることに対し、反発する恐れもあるという。 「幹部たちが将来的にクーデターを図る可能性を排除することはできないが、長い間『金王朝』体制に慣れているだけに、兄の金正恩のポストを与正が引き継ぐことは仕方ないと考える可能性が高い。金一族の中に与正ほどの人物はいないからね」(韓国政府関係者) しかし、金正恩氏には父、金正日総書記と母、高容姫夫人との間で生まれた実兄・正哲氏や李雪主夫人もいる。妹の与正氏への後継継承に納得するのだろうか。 「与正が後継に決まっても跡目争いはすぐには起きないだろう。まず長男の正哲はエリック・クラプトンの大ファンでギター演奏に夢中で、公には何の役職も持っていない。以前から政治向けではないとされ、父の金総書記は『彼は女の子みたい』と評価していたといわれる。次に李雪主夫人は、3人の子どもがいるが、いずれも10歳未満でまだ幼い。能力があり、それなりにカリスマ性を持つ与正に権力が移るのは自然な流れかもしれない」(同前) また、与正氏の夫が現在、国のトップである最高人民会議常任委員長である崔竜海副委員長の次男であることも後継レースで有利とされている。 「実質的にナンバー2の崔副委員長が義父ならば、与正が首脳として国の顔になり、崔副委員長は実質的権限を持って統治するツートップ体制になる可能性もある」(同前)) 金正恩氏が指導者になった当初、叔父の張成沢副委員長がナンバー2として実質的に統治したのと同じ支配図になるというワケだ。 「軍の最高権力機関である総政治局長を1年ほど経験した崔副委員長が軍部を掌握できるかによって、次の与正体制が安定するか、否か、決まる。軍部と対立すれば、クーデターのような権力闘争が起こる可能性もある」(北朝鮮ウオッチャー) ポスト金正恩で今後、注目すべき人物は、金与正氏よりも崔竜海副委員長かもしれない』、「与正氏の夫が現在、国のトップである最高人民会議常任委員長である崔竜海副委員長の次男」、結婚していたとは初めて知った。

次に、6月15日付けNewsweek日本版が掲載した新米国安全保障センター研究員のクリスティン・リー氏による「韓国を「敵」呼ばわりし、報復を示唆した北朝鮮の真意」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/06/post-93679.php
・『<北朝鮮による韓国批判は、目先の譲歩を引き出すための常套手段。挑発的態度に戻った背景には何があるのか。これまでも北朝鮮はある種の消耗戦を仕掛けていた> シンガポールで歴史的な米朝首脳会談が行われてから2年。ここにきて北朝鮮は、アメリカと韓国に対する忍耐が限界に近づいているという意思表示を始めた。 6月9日、北朝鮮は、南北の軍当局間のホットライン(直通電話)を含む、韓国との公式の通信連絡線を全て遮断。金正恩(キム・ジョンウン)体制は韓国を「敵」と位置付けた。 金は2019年の「新年の辞」でも警告を発していた──アメリカが圧力をかけ続ければ「朝鮮半島の平和と安定を実現するための新たな道」を模索せざるを得なくなる、と。 しかし、今回の韓国への挑発的行動は、北朝鮮が巧妙な新戦略に打って出たものではない。これまで有効だった古いやり方に戻っただけだ。 いま韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権を激しく批判し始めたのは、米韓両国から目先の譲歩を引き出すための定番の手法と言える。この動きの背景には、新型コロナウイルス感染症の影響で北朝鮮の経済が大打撃を被っているという事情がある。 北朝鮮政府は1月、新型コロナウイルスが持ち込まれるのを防ぐために、国境の封鎖などの強い措置を素早く講じた。最大の貿易相手国である中国との国境も閉ざされた。 これにより、北朝鮮の経済は壊滅的なダメージを受けている。中国税関当局の統計によると、1月と2月の中朝貿易総額は前年同期比で3割減。3月と4月はそれぞれ前年同月比で9割減との情報もある。北朝鮮にはコロナ感染者がまだ1人もいないというのが公式発表だが、実際には中朝国境地帯で感染者が増え始めているようだ。 このように、いま北朝鮮が苦境に陥っていることは事実だが、金体制はお得意の外交手法を用いることにより、厳しい環境の中でうまく立ち回ろうとしている。 2018年6月のシンガポールでの米朝首脳会談以降、北朝鮮はアメリカに対してある種の消耗戦を仕掛けてきた。発言を二転三転させ、一貫して曖昧な約束に終始することで、アメリカの外交上のスタミナを奪ってきたのだ。アメリカは、金の時間稼ぎ作戦に付き合わされてきた。 金とトランプ米大統領は、芝居がかった演出と大げさな言葉を好むという点でよく似ている。しかし、違いもある。北朝鮮は、核問題に関する話し合いをゆっくり進めたいと思っている。体制存続を図る上では、大規模で急速な変化を避けたいのだ。 北朝鮮が挑発的行動を取る根底にある動機は、資源、生存、安定への欲求だ。米韓両国の政府は、北朝鮮の挑発にどのように対処するかを判断する際、相手の派手な行動や仰々しい言葉ばかりに目を奪われず、真の意図を見極めることが重要になる』、「新型コロナウイルス・・・中国との国境も閉ざされた・・・北朝鮮の経済は壊滅的なダメージを受けている」、確かに相当苦しいので、目を韓国に逸らせる意味もあるのだろう。
・『これまで北朝鮮との関係においては、思い切った行動が功を奏してこなかった。 トランプ政権は、思い切って米朝首脳会談に突き進んだ。韓国の文政権は、朝鮮半島和平のために思い切った行動が必要だと訴え続けている。ところが、その間に、北朝鮮はひそかに、そして着々と、核戦力を整えてきたのである。 トランプ政権に求められるのは、同盟国である韓国との間に摩擦を生み出すことを避け、両国の足並みをそろえるよう努めることだ。 さもなければ、北朝鮮は米韓関係を揺さぶり、危機をつくり出すことによって、アメリカと韓国の一方、もしくは両方から譲歩を引き出そうとし続けるだろう』、同感である。

第三に、6月17日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元・在韓国特命全権大使の武藤正敏氏による「韓国文大統領の「親北政策大失敗」を象徴するケソン爆破、元駐韓大使が解説」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/240570
・『北朝鮮の軍事行動は既定路線か  6月16日午後、北朝鮮が開城(ケソン)にある南北共同連絡所を爆破した。 これは2018年の南北首脳会談の結果、南北融和の象徴として建てられたものであり、韓国の文在寅大統領が南北和平プロセスの代表的功績とするものだ。これを破壊するということは、韓国政府に対する打撃を最大化する目的があるとみるべきだろう。 連絡事務所の破壊は南北関係の清算を意味することを覚悟しなければならない。文政権の南北政策にとって大きな痛手である。 文大統領が北朝鮮の軍事行動を牽制するため直ちにすべきことは、米トランプ大統領との電話会談であり、米国が韓国の後ろに控えていることを北朝鮮に認識させること、また在韓米軍の駐留経費負担を増額させ、米韓の懸案だった本件を決着させることである。さらに挑発が続けば、合同演習の再開が必要である。ただ、親北政策を進めてきた文大統領に、その判断ができるか疑問である。 今回分かったことは、北朝鮮の軍事的挑発が決してブラフでないということだ。 今回の件に先立つ6月13日、北朝鮮は韓国を敵と規定したのに続き、軍事行動の可能性を示唆していた。金正恩・朝鮮労働党委員長の妹である金与正・党第一副部長は同日の談話で、「次回の敵対行動の行使権は我が軍総参謀部に与えるつもりだ」「我が軍隊も人民の怒りを和らげるために何かを決心して断行すると信じている」と述べていた。 この発言は対南事業を総括する立場の与正氏のものであり、軍総参謀部としては無視できないだろう。しかもこの談話が北朝鮮人民の多くが目にする「労働新聞」に掲載されたことから、単なる脅しとは考えにくい。与正氏は談話の中で、「対南報復計画は、我々内部の国論として固まった」と述べており、軍事的行動は既定路線になりつつあることを示唆していた。 与正氏は、北朝鮮軍がいつ行動に出るかを推察できるような発言はしなかったが、「南北共同連絡事務所が形もなく崩れる悲惨な光景を見ることになるだろう」と警告した後、「その次の我々の行動」として「総参謀部」に言及したことから、最初の行動は南北共同連絡事務所の破壊であるとの見方が既にあった。 与正氏は軍事行動をちらつかせるに当たって、韓国政府に向けて「脅迫用」だと勘違いするなとクギを刺していた。ただ、韓国の北朝鮮専門家の多くは「ビラは口実で、北朝鮮は最初から南北関係を破綻させ、朝鮮半島の緊張局面をつくり出そうという戦略的意図を持っている」と分析していた』、「連絡事務所の破壊は南北関係の清算を意味・・・文政権の南北政策にとって大きな痛手」、その通りだ。脱北者たちが「ビラ」を気球に乗せて北朝鮮に撒いた件は、「北」に恰好の「口実」を与えたもので、「韓国政府」の手痛い落ち度だ。本来は、スパイなどにより動向を監視しているべきだろう。
・『北朝鮮軍の選択肢は多様  金与正氏の言う「軍の行動」が何を意味するかは依然として明らかではないが、朝鮮中央通信は、軍総参謀部は非武装地帯に再度軍隊を送り、前線を要塞化して韓国に対する軍事的警戒を強める措置を取るよう、統一戦線部などから意見があったことを明らかにした。 ここで言う非武装化地帯とは、南西部の開城と南東部の金剛山一帯を指すとみられる。開城には03年、工業団地が造成される以前には複数の師団や砲兵旅団が配備されていた。そこに再び軍を駐留させる意図と分析されている。 この他、軍事境界線(MDL)への侵入や地雷敷設、銃撃に出てくる可能性がある。実際、朴槿恵大統領時代の15年8月、北朝鮮軍がひそかに非武装地帯(DMZ)に操作路を埋設したことがあった。その際、韓国軍が自走砲を使用したことから北朝鮮が譲歩し、対話を申し入れてきたことがあった。 また、西海(黄海)北方限界線(NLL)近くの海岸砲と艦砲を用いた射撃を再開したり、艦艇で北方限界線を越えるなどの挑発行動を取る可能性もある。あるいは、短距離ミサイルの発射実験を集中的に実施することも考えられる。長距離ミサイルや潜水艦発射型ミサイルの発射実験は、米国の報復を招く恐れがあり、北朝鮮としては第一の措置としては避けるのではないかと予想される。 しかし、もし北朝鮮軍が軍事行動を取ったとしても、親北政策を推進し、中国や北朝鮮などの「レッドチーム」入りを模索してきた文在寅政権が軍事的な対応を取るとは考えられない。また金与正氏の発言の唐突さから、北朝鮮も覚悟の度合いが図りかねず、場合によっては危険な状況を惹起するかもしれない(詳細は拙著「文在寅の謀略――すべて見抜いた」をご参照いただきたい)。 いずれにせよ、今後取るであろう北朝鮮の挑発行動は偶発的なものではなく、はっきりとした意図を持った行動であることを認識しておく必要がある』、韓国はただ手をこまねいているだけのように見え、何とも頼りない印象だ。
・『北朝鮮の強硬姿勢の背景には韓国への不満が鬱積  南北関係悪化の発端は、19年2月のハノイでの米朝首脳会談である。 金正恩委員長としては、文大統領と3回の首脳会談を行い、信頼を築いたと判断。文大統領の言葉を信じ、その助言を踏まえて「核・経済並進路線」から「経済建設の総力集中路線」に旋回した。 会談では、北西部寧辺施設の廃棄を決断し、交渉カードとしていたが、トランプ大統領はこれに満足せず、交渉を決裂させた。金正恩氏はベトナムまで勇んで行ったが、何一つ成果はなく帰国することになり、最高指導者としての国内での尊厳は大きく傷つけられた。 この「ハノイの屈辱」に象徴されるこれまでの韓国の米朝仲介失敗を、今度はしっかりと問題視するというのが北朝鮮の姿勢だろう。米朝協議に乗り出しても実益を得られなかった責任を韓国に転嫁し、体制を引き締めようとする意図も含まれているだろう。 一方で金与正・第一副部長の談話が出た13日、米トランプ大統領は米陸軍士官学校卒業式を訪れて、「遠い国の紛争解決は我々の義務ではない」と米国優先主義の立場を明らかにした。だが、それは必然だろう。トランプ政権は新型コロナ対策と全米各地に広がった反人種差別の対応を進めながら、11月の大統領選挙も戦わなくてはならない。北朝鮮の非核化交渉は後回しにせざるを得ない状況だ。 北朝鮮には、韓国は米国を説得できず、対北朝鮮制裁決議の離脱もしないという不満を募らせているだろう。北朝鮮は韓国で行われた4月の総選挙まで情勢を見守っていたが、文政権が総選挙で大勝利を収めても、姿勢が変わらないのを見て、今回のような強硬な政策を実行する決断に至ったと推察できる』、「これまでの韓国の米朝仲介失敗を、今度はしっかりと問題視するというのが北朝鮮の姿勢」、「文政権が総選挙で大勝利を収めても、姿勢が変わらないのを見て、今回のような強硬な政策を実行する決断に至った」、さすが鋭い分析だ。
・『北朝鮮の経済困難で住民の不満は最高潮に  北朝鮮経済の困窮度合いは日ごとに増している。 北朝鮮は、国際社会による経済制裁に苦しめられる中で、自力更生による経済立て直しを目指してきたが、遅々として進展していなかった。そうした中で発生したのが中国での新型コロナウイルス感染症の拡大である。 北朝鮮ではぜい弱な医療体制から、新型コロナ感染症が流行すれば、医療崩壊を防ぐことは困難である。そこで北朝鮮は新型コロナ対策として、まず中国との国境を閉鎖し、人とモノの往来を停止すること、そして感染の疑いのある者を隔離する措置を取った。この結果、北朝鮮の貿易の9割を占める中国との貿易は今年8割以上が停止してしまった。それは直ちに、北朝鮮における食料や生活必需品、生産物資の枯渇につながった。 北朝鮮では既に1000万人以上が食料不足に悩まされているといわれるが、今後さらに食料不足は深刻化するだろう。さらに悪いことに、今年秋の収穫は肥料や農薬の不足で激減する危険性がある。こうした事態は社会不安に直結する危険性がある。既に、北朝鮮国内では国民の不満が最高潮に達しているという報告がある』、「今年秋の収穫は肥料や農薬の不足で激減する危険性」、「韓国」はなぜ人道支援に乗り出さないのだろう。
・『北朝鮮住民の不満に有効に対処できない政府  北朝鮮では先月、新型コロナの感染防止と、農村支援等の邪魔にならないよう、市場の営業時間を短縮する措置を取った。だがこれによって市場の閉鎖が相次ぎ、安全員(警察官)が市場の商人を取り締まる過程で、抗議活動が起きたという。 北朝鮮で当局への抗議活動を行うことは命懸けである。以前は当局の取り締まりに従ってきた住民は、今では「どうやって食っていくのか」と反発するようになり、安全員などのわいろ要求や当局の定めた制度に対する不満を爆発させている。最近、当局は事態の深刻さに気付き、取り締まりを緩和せざるを得なくなっているという。 6月7日に行われた朝鮮労働党中央委員会第7期第13回政治局会議で、平壌市民の生活における問題を解決するための重要問題が討議された。 その背景にあるのは、1990年代後半の大飢饉「苦難の行軍」の時でさえ行われていた平壌市民に対する食料配給が、長期間にわたって止まっているという異常事態だ。市民はこれに強い不満を持ち、「第2の苦難の行軍ではないか」と口々に語っているそうだ。 デイリーNKジャパンの高英起編集長によれば、北朝鮮で最も豊かな平壌でさえ、配給の停止によって米と山菜を混ぜて炊いたもので飢えをしのいでいる状況だという。この苦境に平壌市当局が打ち出した対策が、「口減らし」という荒業である。市民を平壌市から追放したり、区域ごと平壌市から外したりしているというのだ。 生活苦は住民の不満を増大させ、最高指導者と現体制に対する不信につながる。こうした中、北朝鮮政府としては、体制を維持し内部結束を図るための措置が必要だった。北朝鮮住民にとって最も効果的なのが韓国に責任を転嫁し、韓国との緊張を高めることであったということだろう』、「北朝鮮政府としては・・・北朝鮮住民にとって最も効果的なのが韓国に責任を転嫁し、韓国との緊張を高めること」、大いにありそうなシナリオだ。
・『北朝鮮の怒りに対処できない韓国  6月4日、金与正氏が韓国の脱北者団体によるビラ散布に対し、散布者を批判するばかりでなく、「主人(韓国政府)の責任を追及すべき時になった」とし、「開城工業地区の完全撤去につながるか、ただうるさいだけの北南共同連絡事務所の閉鎖か、あるかないかの北南軍事合意の破棄になるか」として韓国政府の覚悟を求め、「ビラの散布を阻止する法律を作成せよ」と強硬に要求した。 これを受け韓国政府はビラ禁止法案の作成に取り掛かり、北朝鮮に追従する姿勢を鮮明にした。 しかし、これ以降も北朝鮮の強硬姿勢はエスカレートし、9日には南北間のすべての通信を遮断し、「対南事業を対敵事業に転換する」と表明した。 しかし、韓国政府は国家安保室(NSC)の招集もせず、青瓦台はコメントすら出さなかった。統一部も「南北間の通信ラインは意思疎通のため基本手段であり、南北間の合意に基づいて維持すべき」と述べるだけであった。 韓国の政府与党はビラの散布を問題とするだけであり、北朝鮮当局が対韓政策を転換したことに気付いていないかのように、原則論に終始した。 しかし、与正氏が13日の談話を通じ「軍事行動」まで示唆したことを受け、韓国のNSCは深夜になって初めて会合を開催した。その後、青瓦台と統一部、国防部は14日に一斉に北朝鮮に向け「南北軍事合意は順守すべきだ」との立場を表明した。ただし、北朝鮮の軍事行動に対する警告や、韓国を脅迫することへの糾弾などの明確なメッセージはなかった』、「韓国政府」の後手後手の対応には呆れる。
・『文政権の対北朝鮮政策は失敗  韓国の北朝鮮専門家の多くは、与正氏が軍総参謀部に軍事力の行使権を付与したことは、韓国への軍事行動を指示・承認したものと受け止めている。国防部はこれを受け「我が軍はいかなる状況にも備え、堅固な軍事態勢を維持している」と発表している。 これまで韓国軍は、南北軍事合意の破棄宣言や軍事通信ラインの遮断の威嚇には反応を示さなかったが、今回は事の重要性を認識したもののようである。 だが、文政権と与党の親北朝鮮派は現実を認めたくないようだ。「共に民主党」などの与党系議員173人は、6.15南北宣言20周年である15日、「朝鮮半島の終戦を促す決議案」を発議するという。決議案は、韓国・北朝鮮および米国・中国の早急な終戦宣言実行、法的拘束力を持つ平和協定締結協議の開始、米朝間非核化交渉の成果を促す内容を骨子としている。 文大統領は15日になり、やっと青瓦台の首席秘書官・補佐官会議で「南北が共に進まなければならない方向は明白だ。長期間の断絶や戦争の危機まで、厳しい状況を乗り越えてきた今の南北関係を止めてはならない」との一般論を述べたが、こうした厳しい状況に韓国がどう対処すべきかの道筋は示さなかった。 北朝鮮の対韓姿勢が転換したとの現実を受け止め、これに対処する準備をしておかないと、北朝鮮から実際に挑発行為があった時に右往左往するだけだろう。韓国・文政権はこれまで、北朝鮮に対する融和政策を取り、レッドチームにすり寄ることで北朝鮮を取り込もうとしてきたが、抜本的な政策転換が必要な時を迎えたといえる。それはすなわち、文政権の対北朝鮮政策の失敗を意味し、文政権にとっては大きな痛手となるだろう』、「総選挙」に勝利したので、「抜本的な政策転換」にはいいタイミングのようだが、一体、どうするのだろう。

第四に、6月18日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した朝日新聞編集委員の牧野愛博氏による「ケソン南北連絡事務所爆破の“主役”、金与正氏の「本当の役割」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/240648
・『激しい言葉で韓国批判 「ほほえみ外交」のイメージ一掃  北朝鮮と韓国の交流の象徴だった南北共同連絡事務所の爆破など、北朝鮮の今回の新たな挑発には、さまざまは背景が考えられる。 金正恩労働党委員長が進めてきた米国との非核化交渉の行き詰まりや経済制裁の長期化に加え、新型コロナウイルスの感染拡大で閉塞感が強まる国内の不満を外に向ける狙いや、米国との交渉や南北交流事業が一向に進なないことで、文在寅政権に見切りをつけたという見方もできる。 その一方で関心が集まるのは、一連の挑発行動の前面に出ているのが、金正恩委員長の実妹、金与正党第一副部長だったことだ。 激しい言葉で韓国をこき下ろし、連絡事務所を一気に爆破してしまう強硬ぶりは、これまでのイメージとは全く違うものだ。 与正氏の果たした役割は何だったのか。 16日に開城(ケソン)の共同連絡事務所が爆破された後も、南北では激しい応酬が続いている。 北朝鮮軍総参謀部報道官は、開城工業団地や金剛山観光地区などに軍を展開し、南北軍事境界線近くでの軍事演習を行うなどとした軍事行動計画を発表。 朝鮮中央通信は17日、事務所爆破が「第1次的な最初の段階の行動」だとし、韓国を脅しあげた。 金与正氏は、脱北者が5月末に金正恩氏を非難するビラ50万枚を風船につけて北朝鮮に送った際には、韓国に対して、「家の中の汚物(脱北者)を捨てて掃除するのが当然だ」「窮屈な弁解をする前にくずの茶番劇を阻止する法でもつくれ」などと激烈な表現で韓国政府を批判した。 17日も、南北対話を呼びかけた文韓国大統領の演説について「鉄面皮で図々しい詭弁だ」「嫌悪感を禁じ得ない」などと、こき下ろした。 文大統領のメンツを潰されて、さすがの韓国も怒った。大統領府は17日、金与正氏の談話について「非常に無礼な語調で蔑視した非常識な行動だ」とする論評を発表し、「我々もこれ以上黙っていない」「基本的な礼儀をわきまえろ」と非難した』、「金与正氏」の「激しい言葉」が「ほほえみ外交」のイメージ一掃」したのは確かだ。
・『韓国側も高い評価 「正反対」の行動の狙い  とりわけ金与正氏の韓国批判の激しい言葉は、これまでの人物像を一新するものだ。 与正氏は利発で礼儀正しい人物として知られる。初めて外交舞台に登場したといえる18年2月、平昌冬季五輪開会式に参加するために訪韓した際は、文大統領とにこやかに談笑する姿が「ほほえみ外交」として注目された。 形式的には団長は、金永南最高人民会議常任委員長(当時)だったが、与正氏は金氏を立てることも忘れなかった。会談では金氏を上座に着席させようとし、慎重な金氏をドギマギさせた。 当時、金与正氏の受け入れに当たった韓国政府当局者は「与正氏は公式日程以外の時間も、絶えず周囲に気を配っていた。話題も豊富で、相手をしらけさせない。頭の良さを感じた」と語っていた。 父親の金正日総書記が金与正氏に愛情を注いでいたのは有名な話だ。そして金総書記は、粗暴で反抗的な兄の正恩氏にむしろ手を焼いていたという。 2010年9月の労働党代表者会で正恩氏が公式に登場してからしばらく後、歌唱力を認められた女性が、金正日総書記の私的な席で歌を披露したことがあった。 この席には、金総書記と事実上の婚姻関係にあった金玉氏や正恩氏らが参加したが、金総書記は与正氏とばかり談笑し、正恩氏は端の方でつまらなそうにしていたという。 正恩氏を巡っては、女性をめぐる醜聞や酒席などでの「自分勝手な酒で、周囲に気を配らない」といった悪評がたびたび漏れてきたが、金与正氏にはそうした話もない。 母親の高英姫氏が乳がんの治療で渡仏した際には、与正氏は国連教育科学機関(ユネスコ)北朝鮮代表部員として偽名を使って渡航し、一心不乱に母親を看病したという話も喧伝されている。 現在も正恩委員長の実妹とはいえ、朝鮮労働党での序列はまだそれほど上位ではないし、肩書もまだ第1副部長だ。 そのような与正氏が今回の一連の挑発で、なぜ自らの性格とまるで正反対の行動を取っているのだろうか』、「父親の金正日総書記が金与正氏に愛情を注いでいたのは有名な話だ。そして金総書記は、粗暴で反抗的な兄の正恩氏にむしろ手を焼いていた」、大いにありそうな話だ。
・『「正恩体制」に閉塞感 制裁長期化やコロナ感染  ひとつは、北朝鮮にとって最高指導者への非難が最大のタブーとされている事情がある。 最高指導者の尊厳は命をかけて守らなければならない、というのが独裁国家である北朝鮮の掟だ。だが特に最近では、金正恩氏の権威は失墜しっぱなしだ。 米国との非核化交渉は進まず、国内では経済制裁の影響で外貨不足、物資不足が深刻になるばかりだ。正恩氏は、2019年2月にベトナム・ハノイで開かれた第2回米朝首脳会談の頃は、米国から制裁の一部緩和を引き出してみせると周囲に豪語していたが、あえなく失敗した。 米国はその後も北朝鮮を相手にせず、11月の米大統領選まで半年を切った。一時は非核化交渉で成果を上げることが再選につながると前のめりだったトランプ大統領も、北朝鮮問題への関心は薄れており、大統領選前の米朝関係の劇的な改善は絶望視されている。 追い打ちをかけたのが、新型コロナウイルス問題だ。 感染拡大を防ぐため中国との国境を封鎖したこともあって、北朝鮮内では物資不足、物価の上昇などに苦しむ声が広がっている。 金正恩氏は今月7日に開かれた党中央委員会政治局会議で、平壌市民の生活保障を約束せざるを得ない事態にまでなっている。すでに配給制度が崩壊し、市民に自力更生を求めてきた中で、極めて異例のことだ。 地方だけでなく、北朝鮮指導部を支える中核といえる平壌市でも、人々の党への不満が広がりつつあることを図らずも示したものだった。 そんな金正恩体制の閉塞感の中で、ロイヤルファミリーである金与正氏すらも動員せざるを得ない状況に陥っているとしても不思議ではない。 実際に、最近、与正氏の露出が増えていることは間違いない。 19年2月のハノイでの米朝首脳会談の失敗後、しばらく公の席から遠ざかっていたが、昨年末の党中央委員会総会で復活し、今年4月の党政治局会議で党政治局員候補に正式に返り咲いた。 これは、金正恩氏の健康状態が思わしくなく、業務分担を行う必要に迫られた面もありそうだ。 正恩氏は春以降、公開活動がほぼ20日に1回というペースに激減している。与正氏は党第1副部長として、党人事の前さばきなどをしているとみられている。 与正氏自身にも、最高指導者の権威を必死に守り抜かなければならないという思いがあるのだろう』、「金正恩氏の健康状態が思わしくなく、業務分担を行う必要に迫られた面もありそうだ。 正恩氏は春以降、公開活動がほぼ20日に1回というペースに激減」、なるほど。
・『「万一の事態」に備える役割 正恩氏と首脳外交を分担  また、健康に不安を抱える正恩氏のそばにいて、「万一の事態」に備える役割も果たしている。 最高指導者の健康状態は、北朝鮮にとって最高機密であり、おそらくその事実を知るのは主治医の他は金与正氏や夫人の李雪主氏ら、ごくわずかしかいないはずだ。 健康状態を把握し、どんな薬を服用しているのかを知っていなければ、正恩氏に「万が一の事態」が起きた時に対応できない。だから、正恩氏に寄り添っているとみられている。 そして、金与正氏は、北朝鮮にとっての韓国のように、自らが上に立ちたい相手に対応するときに便利な存在でもある。 金正日総書記の時代は、国家元首は金永南最高人民会議常任委員長だった。金永南氏は「歩く労働新聞」と西側諸国から揶揄されるほど、まじめで、命じられたこと以外は決して手を出さない人物だった。 金総書記は、軽い相手だと判断した場合は、例え国家元首であろうと、自身が顔を出すことはなく、金永南氏に相手をさせた。 今の金正恩委員長は、トランプ米大統領や習近平中国国家主席、プーチン・ロシア大統領くらいしか対等の相手として考えていない。 今後、文在寅政権が一生懸命、北朝鮮とコンタクトを取ろうとしても、巨額の経済支援といったよほどの対価が伴わない限り、金正恩氏が相手をすることはないだろう。 その代わりに与正氏が対韓国の新たな窓口となるということを今回、示したということではないか』、説得力溢れる解説だ。
・『後継者としては疑問符がつく異例の言動  ただ、存在感を高めたとはいえ、金与正氏が今後、正恩氏を継ぐ最高指導者の道を歩むことになるかどうかははっきりしない。 北朝鮮は、これまで米国や韓国などを非難し、今回のような下品な言葉を吐くときは、なるべく「下の人間」たちに押しつけてきた。 朝鮮中央通信や労働新聞などが、朴槿恵韓国大統領を「売春婦」、オバマ米大統領を「アフリカ原生林のサル」などとののしったときは、祖国平和統一委員会や個人の名前で論評してきた。 今回のように、建国の父である金日成国家主席とその子孫である「白頭血統」のロイヤルファミリーの一員が、こうした言葉を使うのは異例といえる。 北朝鮮の最高指導者やロイヤルファミリーは、国民の尊敬を集める存在でなければならない。 北朝鮮では金日成主席や金正日総書記らのお言葉集や伝記が無数に出版されているが、最高指導者の発言はすべて「ですます」調になっている。  また、ウソや論理の矛盾が含まれていては権威の失墜につながるため、内容は慎重に吟味されてきた。 金与正氏は、金正恩氏の数少ない肉親であり、有力な後継者だが、まだ後継者の地位が固まったわけではないといえる。 後継者として育てることが決まっていれば、「人民が敬愛する最高領導者」としてのカリスマを備えさせるため、こうした下品な言葉は使わせないだろう。 与正氏は5月1日にあった、平安南道の順川リン酸肥料工場竣工式でも、正恩氏のそばに付き添う一方、テープカットのハサミを正恩氏に差し出す仕事もしていた。これも後継者としてはあってはならない行動だ。 正恩氏が金正日総書記と一緒に現地視察を行っていた時は、随行団は金総書記を案内する一方、正恩氏の周囲に付き添う動きを示していた。 金与正氏はもちろん、実質的な北朝鮮ナンバー2ではあるが、あくまでも最高随行者という役割でしかない』、「後継者として育てることが決まっていれば、「人民が敬愛する最高領導者」としてのカリスマを備えさせるため、こうした下品な言葉は使わせないだろう」、「金与正氏はもちろん、実質的な北朝鮮ナンバー2ではあるが、あくまでも最高随行者という役割でしかない」、素晴らしい読みだ。
・『運命共同体の損得勘定で都合よく使われている可能性も  こうしたことを考えると、今回の一連の挑発行動で金与正氏の名前で行われている談話は、別の見方をすれば与正氏の人格を否定する行為だともいえる。 また、こうした行為は最高指導者の金正恩氏では見られないが、ロイヤルファミリーに及んだことは興味深い。 北朝鮮では長く、「抗日パルチザンとして祖国を解放した英雄」である金日成主席の威光が残っていた。金主席に比べてカリスマ性がない金正日総書記は、軍がすべてを優先する「先軍政治」を敷いた。 長い期間をかけて築いた党や軍、政府などの人脈を駆使して最高指導者のパワーを維持した。 当時の北朝鮮にとっては、金正日総書記の言葉は憲法よりも重く、党の会議や閣議など、単なるお飾りだった。 だが、準備期間もほとんどなく登場した金正恩氏には、カリスマ性も人脈も経験も不足している。2011年末の権力継承から10年近く経っても党や軍、政府の人事を繰り返しているのも、依然として権力掌握に不安を感じているからだろう。 当然、その不安を補うのが、30代から40代を中心とした金正恩氏の補佐陣だ。書記官室に所属し、その実数は30人程度だともいわれている。また、父や祖父の遺産を利用するため、崔竜海国務委員会第1副委員長ら抗日パルチザンの家系を大事にし、支持を取り付けている。 その結果、こうした人々が「利益共同体」となって、今の金正恩体制を支えている。 北朝鮮の市民は、こうした指導層を「同じ船に乗った人々」と呼ぶ。まさに運命共同体だ。 金与正氏の「人格」も、こうした運命共同体の損得勘定に従って、都合よく使い分けられている可能性がある。 だから、2018年2月に笑顔を振りまいた相手の文在寅大統領に、いきなり激烈な言葉を浴びせることもできるというわけだ。 しかし、こうした現象がさらに進むと、名実ともに独裁者だった北朝鮮の最高指導者は、徐々に利益集団の象徴という存在に変わっていくだろう。 金与正氏は案外、複雑な思いで、自分の名前で出される談話を眺めているのかもしれない』、「補佐陣だ。書記官室に所属し、その実数は30人程度・・・「利益共同体」となって、今の金正恩体制を支えている・・・金与正氏の「人格」も、こうした運命共同体の損得勘定に従って、都合よく使い分けられている可能性」、実権は「補佐陣」にあるような書きぶりだ。当否はともかく、大変参考になる見方だ。
タグ:金与正は朝鮮半島の歴史で1120年ぶり4人目の女王になれるのか AERAdot 朴承珉 北朝鮮問題 (その20)(「金正恩死亡説」誤報も妹・与正氏が1120年ぶりに北朝鮮の女王になる日、韓国を「敵」呼ばわりし 報復を示唆した北朝鮮の真意、韓国文大統領の「親北政策大失敗」を象徴するケソン爆破 元駐韓大使が解説、ケソン南北連絡事務所爆破の“主役” 金与正氏の「本当の役割」) 『新羅』時代に真聖女王という女王が存在 「「金正恩死亡説」誤報も妹・与正氏が1120年ぶりに北朝鮮の女王になる日」 金与正氏の「人格」も、こうした運命共同体の損得勘定に従って、都合よく使い分けられている可能性 「利益共同体」となって、今の金正恩体制を支えている 補佐陣だ。書記官室に所属し、その実数は30人程度 運命共同体の損得勘定で都合よく使われている可能性も 金与正氏はもちろん、実質的な北朝鮮ナンバー2ではあるが、あくまでも最高随行者という役割でしかない 後継者として育てることが決まっていれば、「人民が敬愛する最高領導者」としてのカリスマを備えさせるため、こうした下品な言葉は使わせないだろう 北朝鮮は、これまで米国や韓国などを非難し、今回のような下品な言葉を吐くときは、なるべく「下の人間」たちに押しつけてきた 後継者としては疑問符がつく異例の言動 「万一の事態」に備える役割 正恩氏と首脳外交を分担 金正恩氏の健康状態が思わしくなく、業務分担を行う必要に迫られた面もありそうだ。 正恩氏は春以降、公開活動がほぼ20日に1回というペースに激減 「正恩体制」に閉塞感 制裁長期化やコロナ感染 父親の金正日総書記が金与正氏に愛情を注いでいたのは有名な話だ。そして金総書記は、粗暴で反抗的な兄の正恩氏にむしろ手を焼いていた 韓国側も高い評価 「正反対」の行動の狙い 激しい言葉で韓国批判 「ほほえみ外交」のイメージ一掃 「ケソン南北連絡事務所爆破の“主役”、金与正氏の「本当の役割」」 牧野愛博 抜本的な政策転換が必要な時を迎えたといえる。それはすなわち、文政権の対北朝鮮政策の失敗を意味し、文政権にとっては大きな痛手となるだろう 文政権の対北朝鮮政策は失敗 北朝鮮の怒りに対処できない韓国 北朝鮮住民にとって最も効果的なのが韓国に責任を転嫁し、韓国との緊張を高めること 北朝鮮政府としては 北朝鮮住民の不満に有効に対処できない政府 人道支援 今年秋の収穫は肥料や農薬の不足で激減する危険性 北朝鮮の経済困難で住民の不満は最高潮に 文政権が総選挙で大勝利を収めても、姿勢が変わらないのを見て、今回のような強硬な政策を実行する決断に至った これまでの韓国の米朝仲介失敗を、今度はしっかりと問題視するというのが北朝鮮の姿勢 北朝鮮の強硬姿勢の背景には韓国への不満が鬱積 北朝鮮軍の選択肢は多様 文政権の南北政策にとって大きな痛手 連絡事務所の破壊は南北関係の清算を意味 北朝鮮の軍事行動は既定路線か 「韓国文大統領の「親北政策大失敗」を象徴するケソン爆破、元駐韓大使が解説」 武藤正敏 ダイヤモンド・オンライン トランプ政権に求められるのは、同盟国である韓国との間に摩擦を生み出すことを避け、両国の足並みをそろえるよう努めることだ。 さもなければ、北朝鮮は米韓関係を揺さぶり、危機をつくり出すことによって、アメリカと韓国の一方、もしくは両方から譲歩を引き出そうとし続けるだろう 北朝鮮の経済は壊滅的なダメージを受けている 中国との国境も閉ざされた 新型コロナウイルス 金正恩(キム・ジョンウン)体制は韓国を「敵」と位置付け 韓国との公式の通信連絡線を全て遮断 ここにきて北朝鮮は、アメリカと韓国に対する忍耐が限界に近づいているという意思表示を始めた 「韓国を「敵」呼ばわりし、報復を示唆した北朝鮮の真意」 クリスティン・リー Newsweek日本版 与正氏の夫が現在、国のトップである最高人民会議常任委員長である崔竜海副委員長の次男 与正は正恩よりも4歳若く留学しているため、入学時に学力差が広がっておらず、成績は兄よりよかった 1996年4月から2000年末まで兄の正恩とともにスイス・ベルンに留学
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日韓慰安婦問題(その5)(韓国の慰安婦支援団体が窮地 疑惑続出で崩壊寸前の現状を元駐韓大使が解説、元慰安婦に告発された支援団体は「腐敗しきっていた」 元慰安婦「私ではなく友の話」と暴露、《慰安婦団体内紛でついに死者》明るみに出た尹美香の「セコい財テク術」と「安倍批判記事」) [外交]

日韓慰安婦問題については、昨年8月7日に取上げた。今日は、(その5)(韓国の慰安婦支援団体が窮地 疑惑続出で崩壊寸前の現状を元駐韓大使が解説、元慰安婦に告発された支援団体は「腐敗しきっていた」 元慰安婦「私ではなく友の話」と暴露、《慰安婦団体内紛でついに死者》明るみに出た尹美香の「セコい財テク術」と「安倍批判記事」)である。

先ずは、5月22日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元・在韓国特命全権大使の武藤正敏氏による「韓国の慰安婦支援団体が窮地、疑惑続出で崩壊寸前の現状を元駐韓大使が解説」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/238086
・『与党はユン前理事長を切り 政権と正義連を守るのか  元慰安婦の支援団体である正義記憶連帯(以下“正義連”、韓国挺身隊問題対策協議会〈以下“挺対協”〉の後継団体)前理事長の尹美香(ユン・ミヒャン)氏をめぐる不正疑惑は、検察当局が正義連のソウルの事務所に家宅捜索に入るなど、新たな展開が見えてきた。 これまでユン前理事長をかばってきた政府与党も、不正疑惑が深刻化するにつれてユン前理事長に対して厳しい発言をし始めている。 政府与党はこれまで同様、政権内の不正疑惑は断固としてもみ消す姿勢であった。だが、今回は不正を告発したのが元慰安婦の中心的活動家、李容洙(イ・ヨンス)氏であるだけに、勝手が違うようだ。当初、ユン前理事長や正義連に批判的だったのは、保守系の野党とメディアであったが、最近では文在寅政権に近いハンギョレ新聞などもこの疑惑に関して積極的に取り上げるようになっていることも、もみ消しを難しくしている要因だろう。 これを受け、与党内の雰囲気も徐々に変わってきている。事態の推移を見極める必要があるが、正義連を守るためにはユン前理事長を犠牲にせざるを得ないのではないかという見方も出始めている』、「慰安婦支援団体」に超ド級の疑惑が発生とは面白くなってきた。
・『正義連とユン前理事長の態度の変化 イ・ヨンス氏の記者会見に注目  元慰安婦のイ・ヨンス氏の告発に対する正義連の反応はひどいものだった。 最初は「イ・ヨンスさんの記憶が歪曲(わいきょく)された」という人格を否定するようなもので、その後はさらに「大金のために態度を変えた」(ユン氏の夫)と侮辱。最終的には「保守勢力の謀略だ」と開き直った。 しかし、各種会計不正と公金流用疑惑が次々と明らかになると、正義連の反応に耳を貸す国民も少なくなっていった。中でも、最も疑惑が深まった契機が、安城(アンソン)の不動産購入疑惑である。この不動産は元慰安婦の憩いの場という位置付けでありながら、元慰安婦のためにほとんど利用されてこなかった。) そればかりか、挺対協とユン前理事長はこの物件を7億5000万ウォンで買い、1億ウオンの改装費をかけながら、イ・ヨンス氏の告発の翌日、購入価格を大幅に下回る4億2000万ウォンで売却した。 この不可解な不動産売買について、背後に何か隠さなければならないことがあるための隠蔽工作だとの見方が広がった。通常価格を大幅に上回る価格で購入し、売買を仲介した安城新聞代表だった李圭閔(イ・ギュミン)氏との間で裏取引が行われたのではないかとの疑惑へと発展している。 この不動産売買疑惑が発覚して以降、韓国世論の正義連、ユン前理事長に対する見方が大きく変わった。 世論の雰囲気を察知したのか、ユン前理事長の態度も変わってきた。 20日付のハンギョレ新聞では、元慰安婦のイ・ヨンス氏が同日、「(ユン前理事長が私のところに)来て膝をついて許しを乞うているが、いったい何の許しを乞うているのか私には分からなった」と述べたと報じている。 さらに、一部のメディアでは19日、ユン前理事長がイ・ヨンス氏と韓国大邱市(テグ)で面会し、「イ・ヨンスさんが涙を流してユン前理事長を許した」と報じた。だが、イ・ヨンス氏は「(ユン前理事長が)一度抱きしめてほしいというので、一度やってあげた」「そうしたら、年寄りで気持ちが弱くなっているせいか、涙が出てきた。ただそれだけだ」と述べ、ユン前理事長側の「イ・ヨンスさんがユン前理事長を許した」との説明を否定した。 イ・ヨンス氏は25日、記者会見の開催を予定しており、新たに正義連やユン前理事長についての疑惑が出てくるか注目されている』、「元慰安婦のイ・ヨンス氏」を「侮辱」しておきながら、偽の和解場面まで演出して利用するとは、悪どいやり方だ。
・『ユン前理事長に対し韓国政府も関与を始める  そもそも、正義連はイ・ヨンス氏が高齢のせいで記憶が歪曲されていると、イ・ヨンス氏の人格を否定した。そして、ユン前理事長は自分が曺国(チョ・グク)前法務部長官に対するバッシングのような仕打ちを受けていると、被害者のような態度をして開き直っていた。 しかし、ユン前理事長はマスコミの追及が厳しくなり、不正疑惑が広がってくるとイ・ヨンス氏を訪ねて許しを乞うている。 何も悪いことをしていないと開き直るのであれば、なぜ膝をついて許しを乞わなければならないのか。イ・ヨンス氏が「許した」とマスコミに公表しなければ、自分を守ることができないと考えたからではないのだろうか。 陳永(チン・ヨン)行政安全部長官は19日、国会行政安全員会に出席して、「正義連に22日までに証明資料を提出するよう要求した」「違法や不当な場合があれば妥当な措置を取りたい」と述べた。 韓国の法曹界では、告発内容が事実と確認されれば、寄付金・交付金の使用や会計不正に絡む横領容疑と、ソウル郊外の京畿道安城市にある建物の購入に絡む業務上背任行為の2つについて、法的に追及できるとみているようだ』、「京畿道安城市にある建物の購入」、は高値で購入・安値で売却というからには、裏に別の不正行為がある可能性もあろう。
・『ユン前理事長を守るべきなのか 見解が分かれる与党「共に民主党」  疑惑の深まりにもかかわらず、与党「共に民主党」の公式な立場は、依然として成り行きを見守り静観するというものだ。 20日時点でも、同党の姜勲植(カン・フンシク)首席報道官は会見で、「外部による会計監査と行政安全部などによる監査の結果を見て、総合的に判断した上で立場を明らかにする」と述べた。さらに記者団に対して、「(ユン前理事長)本人は、さまざまな方法で説明すべきことを説明すると承知している。事実関係が最も重要であり、それを中心に問題を処理する方針だ」と重ねて静観の姿勢を強調した。 党内では、疑惑について「論争や異論が多いわけではない」としながらも、「事案を重く、厳しく見ている」と述べた。 しかし、党内では危機感が芽生えている。 李洛淵(イ・ナギョン)前首相は「さまざまな問題意識を、責任ある党役員と意見交換した。具体的措置は議論されておらず、党で検討した後、決定するものとみられる」と述べた。 また、ある民主党議員は「先週末を前後して、憩いの場ペンション収益金論争、アパート購入資金論争などが新たに出てきたが、この2種類の疑惑だけはユン氏本人が必ずクリアしない限り、このままやり過ごすことは難しい」と述べた。それだけではなく、別の議員からは「党は、正義連はさておきユン氏個人の不正までカバーするつもりはない」と見放す発言も漏れてきている。 こうした事態を受け、党の最高委員の一人はハンギョレ新聞に対し、「非公開の最高委員会会議で今までの状況報告と最高委員の意見交換があるだろう」と述べ、この問題の収拾に本格的に乗り出す可能性を示唆した。 ただ、すぐに党員権を剥奪するつもりはないようだ。ユン前理事長の処遇決定のカギは、共に民主党の李海チャン代表が握っているというのが多くの関係者の見方である』、「ユン前理事長の処遇決定のカギは、共に民主党の李海チャン代表が握っている」、大統領ではなく、「党代表」に権限があるようだ。ただ、司法当局も「カギ」を「握っている」のではなかろうか。
・『野党は市民団体の構造問題と指摘 与党は市民運動否定を危惧  一方で、この疑惑は「個人の逸脱か、構造的問題か」という論争にも発展している。 共に民主党からは「一人運営体制から出てきた問題」(金鍾民〈キム・ジョンミン〉議員)という主張が出ているが、野党の未来統合党では「聖域化された市民団体の問題」との認識が強い。 実際に、共に民主党の盧雄来(ノ・ウンレ)議員はラジオインタビューで、「正義連の会計不正疑惑が、健全にしっかりとやっている市民社会活動まで根こそぎ否定されたり、蔑まれたりするような状況になってはいけない」と主張し、野党の主張を牽制。他方、野党の未来統合党などは「個人の逸脱やミスとしてだけ見るには難しい」「政府補助金や国民の寄付で維持されている他の市民団体に対しても、大きなビルを購入して資産が大きくなり、大企業でもないのに職員が非常に多い大規模な組織になったものがある」と指摘している。 元慰安婦については、多くの元慰安婦が共同で生活する「ナヌムの家」でも、巨額の後援金を元慰安婦に対して使わず、不動産や現金資産として保有し、今後は曹渓宗のホテル式老人療養院に使おうとしているとの内部告発がなされている。 噴出する告発を耳にすると、正義連関係の不祥事の原因がユン前理事長だけにあると片付けるのは無理があると言わざるを得ないだろう』、「元慰安婦が共同で生活する「ナヌムの家」でも、巨額の後援金を元慰安婦に対して使わず、不動産や現金資産として保有し、今後は曹渓宗のホテル式老人療養院に使おうとしている」、事実とすれば酷い話だ。「不祥事の原因がユン前理事長だけにあると片付けるのは無理がある」のは確かだ
・『文大統領の「被害者中心主義」は欺瞞? 相変わらず責任回避  では、文在寅大統領をはじめとした青瓦台は、この疑惑をどう捉えているのだろうか。 青瓦台は「今後の国政には関係がない」「ユン氏は共に民主党所属なので、立場を表明すべき事案ではない」として関与を避けている。別の青瓦台関係者は「この問題に(大統領と青瓦台を)引き込もうとしないでもらいたい」と、露骨に距離を置く姿勢を明確にしている。 韓国の歴代政権は元慰安婦の問題について迷走を繰り返してきた。それは慰安婦の問題を協議する相手がユン前理事長に一本化されていたため、ユン前理事長の意向を汲んで、しばしば立場を変更してきたからである。日本と非公式に了解した事項でも平気で無効化した。その最たるものが「(2015年の)日韓合意」である。 文大統領は「(2015年の)韓日合意で慰安婦問題は解決しない」として、合意の事実上の無効化を宣言し、「被害者中心主義」を強調した。18年1月に今回の告発をしたイ・ヨンス氏、ユン前理事長を青瓦台に招き、「過去の政権による合意は誤りだった。早期に後続措置を取りまとめてもらいたい」と発言した。 しかし、今に至るまで後続措置については未完のままである。そして今回イ・ヨンス氏が告発した正義連の不正疑惑の解決には、無関心で、解決に乗り出そうとしない。 今年初め、大韓弁護士協会は声明を出し、「政府は日本軍慰安婦問題の解決に積極的に取り組むべきだ」と主張していた。しかし、日本側が慰安婦問題について話し合いなどに応じる見込みは全くなく、元慰安婦に関する後続措置を一方的に述べた文政権に、新たな解決策などあるはずがない。日本との後続措置の交渉は糸口さえ見つけられないはずだ。 正義連をめぐる疑惑は、韓国の国内問題である。これまで歴代韓国政権が行ってきた、元慰安婦について何か問題が起こると矛先を日本に向けて補償や譲歩を引き出すという手法は通用しない。 文大統領が述べた「被害者主義」を貫くのであれば、正義連の疑惑に真摯に取り組み、元慰安婦が得るべき利益を回復するのが筋である。 イ・ヨンス氏は青瓦台の姿勢について何も述べていない。だが、これまでの青瓦台の無関心は責任回避のための行動だと責められて然るべきだ。イ・ヨンス氏含め元慰安婦たちが、これまで文政権の政治的宣伝に利用されたと批判されても不思議ではない。 イ・ヨンス氏が述べた、「だまされるだけだまされた、利用されるだけ利用された」というのは、ユン前理事長に対してだけでなく、文大統領にも当てはまるのではないか』、「だまされるだけだまされた、利用されるだけ利用された」、酷い話だ。「これまでの青瓦台の無関心は責任回避のための行動だと責められて然るべきだ」、その通りだろう。
・『正義連の問題は静観して終わるものではない  文政権に近いハンギョレ新聞は20日付の社説で、次のように戒めている。 「ユン当選者は今の事態が慰安婦の人権運動に対する韓国社会の信頼に直結する問題だという認識を持たねばならない。保守勢力とマスコミが悪意的に問題を歪曲し、政治的に利用していると反駁(はんばく)するだけで解決する問題ではない。(略)慰安婦の人権運動が満身創痍になっている事態を収拾できない。検察の捜査が始まった状況で、これ以上矢面に立つことを恐れてはならない」 正義連とユン前理事長に対する不正疑惑は、これまで元慰安婦の問題に真剣に取り組んできた多くの人々を落胆させている。本来であれば、文大統領自身が立ち上がって不正に取り組むべきだが、文大統領は拙著「文在寅の災厄」で述べたように、都合の悪い問題は避けて通るのが常であり、避け続けようとするだろう。 その場合、与党が対応しなければならないが、それは正義連そのものへの対応ではなくユン前理事長の党籍剥奪、国会議員の辞職という中途半端な処分で幕引きをするのではないだろうか。ユン前理事長を処分することで、正義連への問題波及を防ぎ、野党の未来統合党の構造的問題だという指摘をかわそうとするだろう。 元慰安婦問題は日韓間で解決された問題である。それを正義連、特にユン前理事長は解決されないように妨害してきた。正義連は、戦後の日本政府が行ってきた補償や取り組みについて元慰安婦や韓国世論に正しく伝えず、歪曲してきた。慰安婦問題がここまでこじれ、長期化した背景には、慰安婦問題の市民団体の窓口を挺対協ユン前理事長に一元化してきたことで、元慰安婦の本当の声が届かなくなっていたことが大きな要因である。 ユン前理事長が慰安婦問題の解決よりも、自身の利益を優先させてきたことが明白となった今、韓国国民は元慰安婦がこれまで伝えようとしてきた声に耳を傾け、そのために日韓の歴代政権がいかなる努力を払ってきたか、改めて考え直してほしい』、「慰安婦問題がここまでこじれ、長期化した背景には、慰安婦問題の市民団体の窓口を挺対協ユン前理事長に一元化してきたことで、元慰安婦の本当の声が届かなくなっていたことが大きな要因である」、これを機に「慰安婦問題」が解決に向かってほしいものだが、そうは問屋が卸さないだろう。

次に、6月5日付けプレジデント Digital「元慰安婦に告発された支援団体は「腐敗しきっていた」 元慰安婦「私ではなく友の話」と暴露」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/35946
・『元従軍慰安婦たちを長年支援し、日本のメディアとも共闘してきた韓国の団体が、当の元慰安婦によって不正を告発され、検察の捜査が入る事態に』、面白い展開になってきた。
・『「正体不明の中国人女性を、慰安婦役として“輸入”」  長年、日本軍の韓国人元従軍慰安婦への支援を行う中核となっていた団体を、当の元慰安婦の代表格と目されている李容沫(イ・ヨンス)氏(92歳)が告発、ソウル市内の団体事務所に韓国検察が家宅捜索に入る事態に発展している。 この団体は、「日本軍性奴隷問題解決のための正義記憶連帯」(正義連、旧挺対協)。「従軍慰安婦に対する日本政府の謝罪と賠償金」を求めて、ソウルの日本大使館前をはじめ世界各地で慰安婦像を建てるといった数々のキャンペーンの中心となってきた。 だが、5月7日、故郷の大邱で会見を開いた李氏は、約30年もの間ともに行ってきた正義連とその代表の尹美香(ユン・ミミャン)氏を、「騙されるだけ騙された」と痛烈に批判。韓国国内で大きな波紋を呼んでいる。 韓国の各媒体で報じられている李氏の告発の内容は、まさに「何でもあり」である。活動資金である学生たちの寄付について、「使途がわからない」「正義連前理事長の個人口座が、募金に使われていた」などと私的流用を伺わせたり、「正体不明の中国人女性を“輸入”して集会を維持している」「アメリカ人が怖がるように“性奴隷=sex slaveという言葉を使った」というデタラメ行為まで明らかにしてしまった。2015年に日本政府が10億円を拠出することで合意した日韓協定の際も、「10億円が入ることは尹代表しか知らなかった」としている』、「正義連前理事長の個人口座が、募金に使われていた」、「正体不明の中国人女性を“輸入”して集会を維持」、「アメリカ人が怖がるように“性奴隷=sex slaveという言葉を使った」、これまの活動がここまで「デタラメ」だったとは、驚かされた。
・『団体代表が住宅5戸をキャッシュで購入した  「反日」が国是ともいわれる韓国国内で、その批判がずっとタブー視されてきた正義連。尹氏は4月15日の韓国総選挙で与党「共に民主党」から出馬、初当選を果たしたばかりだ。得意の絶頂と思われた次の瞬間、皮肉にも「疑惑の総合商社」と化した状態だ。 聯合ニュース(5月21日付)によれば2012年に現代重工業から受領した10億ウォンを原資に保養施設を相場の3倍の7億5000万ウォンで購入し、近年、半額程度で売却。売買した尹氏の知人と尹氏本人らの背任容疑が捜査の対象だという。1995年から2017年にかけて、尹氏のファミリーがマンションなど住宅5戸をすべてキャッシュで購入した際の資金源も、野党議員に追及されている。 告発した李氏は、1993年に自らの体験を書籍にして出版、韓国国内でも著名な存在であり、2017年に訪韓したトランプ米大統領をハグした光景が報じられたことで、日本でも知られている。李氏の告発が本当なら、正義連は慰安婦という存在をダシにして長年金儲けを続けていたということになる。正義連にしてみれば、日韓関係がこじれて長引くほど“儲かる”わけだから、そもそも活動の動機に疑念を抱かれても仕方あるまい。 それどころか、前身の挺対協について、「日韓分断のために組織された」「日韓・韓米関係を破綻させ、大韓民国を『金氏朝鮮』(北朝鮮)と中国の手に委ねようとした」と断じ、そうなるに至る経緯の詳しい報道も出始めている(Japan‐in Deaph5月26日付『韓国激震、支援団体真の目的』)』、「正義連は慰安婦という存在をダシにして長年金儲けを続けていたということになる。正義連にしてみれば、日韓関係がこじれて長引くほど“儲かる”わけだから、そもそも活動の動機に疑念を抱かれても仕方あるまい」、同感だ。
・『「私は慰安婦ではなかった」  李氏の告発を受けて、正義連は税務申告のミスは認めたものの、「横領はいっさいない」と釈明。「李氏は年を取って記憶が変わった」などと主張した。尹氏本人も、フェイスブックに「李氏は1992年に、電話で蚊の鳴くような声で『私は慰安婦ではなかった。あれは友達の証言です』と証言したときのことを昨日のことのように覚えている」と書き込んだ(朝鮮日報5月8日付)。「李氏はニセモノ」とばかりに反撃するつもりで書きこんだのかもしれないが、オウンゴールに等しい行為に失笑する向きも少なくないようだ。 そもそも、なぜこの時期にこんな騒動が起きたのだろうか。日本国内では、2014年に朝日新聞が慰安婦問題についての一連の報道について誤報を認め、記事を取り消す謝罪会見を開いたが、2017年に発足した文在寅政権は慰安婦像の違法設置を進め、さらに日本側の怒りに油を注ぐかのように「徴用工」問題を蒸し返した。 4月の総選挙にも圧勝した後は、現政権はいわゆる「親日賛美禁止法」まで議会に通そうという勢い。日本からすれば、もう関わりたくないという「韓国疲れ」や、仮に関わっても、日韓間の通貨スワップも含めて、デメリットしか感じられないというのが一般通念のようだ』、「韓国疲れ」とは言い得て妙だ。
・『韓国国内で昨年から続出している「反日」とは逆の動き  ところがその一方、韓国の市井からその流れを引っ張り戻すような動きが昨年からいくつも持ち上がっている。昨年6月5日にはソウル市中心部で、「今日の集会は反日民族主義に公然と反対する史上初めての集会」として、慰安婦の少女の像の設置や韓国の差別主義的な反日活動に反対する集会が開かれた。 また同7月に韓国人教授が、韓国を「嘘つきの国」と断じ、日本統治下で虐げられたという韓国左派の通念とは正反対の事柄を列記した『反日種族主義 日韓危機の根源』を上梓し論議を呼んだ。日本でも翻訳されて(文藝春秋刊)、ベストセラーとなるなど、日韓双方で大きな話題となった。 同10月には文在寅大統領の退陣を求めて、ソウルで20万人! が夜を徹してのデモを行っているし、12月には韓国で製作された徴用工像のモデルが実は日本人であったとして、当の像の作者が名誉棄損の裁判を起こしている。こうした出来事が、日韓関係をよい方に向かわせる力となるのかはわからないが、その行方は日韓2国の関係だけでは見えてこない』、「昨年から続出している「反日」とは逆の動き」、初めて知ったが、勢いを増してほしいものだ。
・『日本・韓国は米中どちら側につくのか?  年初来の新型コロナウイルスの感染拡大と、それに乗じた香港に対する中国の強権発動を機に、米国と中国の対立がいっそう先鋭化している。これは貿易のカネ勘定の争いではなく、2つの超大国の覇権争いであり、民主主義国家とそうでない国との価値観の争いでもある。一時「外交の天才」と称されたという韓国・文在寅政権も、当然「どちら側」につくかの選択を余儀なくされよう。 世界各地で強権的な「コロナ外交」を展開する中国との「断絶宣言」を行ったトランプ米大統領は台湾にエールを送り、英国・イタリア・ドイツ・インド・オーストラリアなど8カ国が計100兆ドル(約1京1000兆円)超の損害賠償を求めるなど、対中包囲網が敷かれている。もっとも日本は、安倍首相がコロナ発生地として中国を名指しにはしたものの、今のところこの輪には加わらず、習近平を国賓として招く予定も消えていない。 韓国はどうだろう。そもそも2015年には中国・北京に赴いた朴槿恵大統領(当時)が習近平・中国国家主席、プーチン露大統領らと並んで「抗日戦争勝利・世界ファシズム戦争勝利70周年記念式典」の貴賓席に並んでいたが、文大統領も昨年のGSOMIAの一件でとうとう米国にも愛想をつかされ、日本に対しても、中国に近づきすぎることへの恐怖感と、日韓通貨スワップ協定の締結という本音は抱きつつも、昨年来の輸出規制措置や徴用工訴訟の件を蒸し返し、関係改善のそぶりを表立っては見せていない。 このままなら、韓国は日米との数十年来の縁を解消し、中国の勢力圏入りする可能性は大きい。日韓の関係はお互いの国民感情以前に、すでに米中関係に規定されているようだ。ここまでの流れは必然で、慰安婦問題をはじめとする日韓間の数々の衝突はそれを強力に後押しした格好だ。今回の告発騒動も、その動きに際してのハレーションに過ぎない可能性もある。 正義連と連動して日本政府批判を延々繰り返してきた日本国内の慰安婦支援団体や朝日新聞ほか主要メディアは、この一連の出来事をどうとらえているのだろうか。仮に「日本と韓国の離反」「韓国を北朝鮮・中国に差し出す」という正義連の目的が本当なら、長年にわたる宿願が達成され、「思惑通り」とほくそ笑んでいるのだろうか』、米中の対立が激化するなかで、「韓国」が「中国の勢力圏入りする」とすれば、韓国の半導体産業や自動車産業には大打撃だろう。日本としては、韓国財界と手を組んで、「中国の勢力圏入り」を阻止すべきだろう。

第三に、6月14日付け文春オンライン「《慰安婦団体内紛でついに死者》明るみに出た尹美香の「セコい財テク術」と「安倍批判記事」」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/38411
・『「私が死ぬところを撮影しようと待っているのか!」 6月8日午後、韓国ソウル市の汝矣島にある国会議員会館530号室でこんな怒声が響いた。 声の主は、今年4月の総選挙で初当選した韓国与党・共に民主党の尹美香(ユン・ミヒャン)議員(55)。慰安婦支援団体・正義記憶連帯(正義連)の前理事長だった彼女は、慰安婦問題とカネを巡る数々の疑惑で韓国メディアを騒がしている渦中の人物だ。 その前々日、6月6日の夜10時50分頃には、ソウル市麻浦区にある慰安婦休養施設のソン・ヨンミ所長(60)が自宅で死んでいるのが発見された。死因は縊死と見られている。 尹氏とソン氏は、長く行動をともにしてきた間柄だ。尹氏は、ソン氏の死の翌日、休養施設を訪れた後、検察の捜査とメディアの取材がソン氏を死に追いやったかのように非難する文を自身のフェイスブックに投稿。そして8日に登院すると、議員会館の事務室前に集まった取材記者たちに声を荒げたわけだ』、「慰安婦休養施設のソン・ヨンミ所長」が死んだのは初めて知ったが、責任感が強かったのだろう。
・『せせこましいスキャンダル  一連のスキャンダルが噴出したのは、今年5月7日から。元慰安婦女性・李容洙(イ・ヨンス)氏(91)が記者会見やインタビューを通じ、元慰安婦女性の処遇や不透明なカネの流れなどについて尹氏を公然と批判したのが発端だ。これにともなって正義連と尹氏のカネにまつわる疑惑がいくつも浮上し、尹議員は初登院の前から検察の調査を受けることになった。 正義連の前身・韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)が発足したのは1990年。やがて閣僚経験者や国会議員が名を連ねる有力な圧力団体に成長し、一民間組織でありながら日韓の慰安婦問題で絶大な影響力を振るうようになった。 2015年の慰安婦問題の日韓合意でも、韓国外交部(外務省に相当)が事前に協議内容を挺対協に漏らしていた疑惑がある。だがそうした大きな存在感の割に、疑惑の多くは尹氏の身内が絡んだせせこましい内容ばかりだった』、「せせこましいスキャンダル」とは言い得て妙だ。
・『取り沙汰される「カネをめぐる5大疑惑」  今回浮上した主な疑惑は5つ。1つめは、元慰安婦女性の憩いの場としてソウル郊外の安城市に用意された施設の転売問題だ。 挺対協はこの建物を2013年に相場の倍近い7億5000万ウォン(約6700万円)で買い入れた後、今年4月に4億2000万ウォン(約3750万円)で売却したという。韓国では不動産の転売で差益を稼ぐのが財テクの常道であり、団体に大損をさせた不自然な取引の真意が詮索されているわけだ。またこの施設の管理費名目で尹氏の父親に7580万ウォン(約680万円)支給していたことも、人々を呆れさせた。 2つめの疑惑は、正義連=挺対協に対する後援金などの振込先が尹氏個人の銀行口座だった問題だ。尹氏は「金額さえ合っていれば問題ないと思ったが、安易な行動だった」と謝罪。だが当然ながら私的流用の疑いは拭い切れていない』、高値購入、安値売却の裏には別の取引が隠されている可能性もありそうだ。
・『正義連のニュースレターを夫の会社に発注  残りの疑惑は、どれも尹氏の個人的な金銭問題だ。3つめは、尹氏夫妻が1995年から2013年まで、自宅や賃貸用と思われるセカンドハウスを現金で計7回も売買していた問題。尹氏は購入資金について辻褄の合わない説明をしてすぐ言葉を翻すなどしており、その出所に疑惑の目が向けられている。 今月5日にはまた、尹氏の義妹名義になっていた住宅も実質的な所有者が尹氏夫妻ではないかとの疑惑が提起された。  4つめは、尹氏の夫、キム・サムソク氏が絡んだ疑惑だ。キム氏は1994年に北のスパイ容疑=国家保安法違反で懲役4年の判決を受けた経歴の持ち主。後の再審請求を経て2018年に一部無罪が認められたが、「反国家団体と接触して工作資金を受け取った」点については有罪とされた。 キム氏はこの間の2005年にソウル近郊の水原市でローカル紙「水原市民新聞」を刊行、ウェブ版とともに運営を続けている。この「水原市民新聞」に対し、正義連はニュースレターの編集とデザインを発注し続けてきた。正義連は入札を経ていると主張するが、同団体への寄付金や政府の補助金が「水原市民新聞」を通して尹氏の身内に還流している構図は否めない。 いっぽうでキム氏の新聞は、身内の宣伝にも余念がないようだ。疑惑発覚後の今年5月12日にはウェブ版に「安倍が最も憎む国会議員、尹美香」と題した外部からの寄稿を掲載し、尹氏を「日本の軍国主義復活のための平和憲法改正に最も邪魔になる人物」と紹介して、妻の立場を擁護。また2016年2月には、ピアノをたしなむ娘のリサイタルの告知に紙幅を割いている。 2015年9月には挺対協の欧州キャンペーンを伝える記事で、読者に募金を呼びかけた。掲載された振込先は、上述の通り尹氏の個人口座だ。この問題については今年5月25日、韓国の市民団体が、尹氏の個人口座を振込先にして寄付金の私的流用に加担したのは問題だとして、ソウル西部地検に告発。同時にキム氏は実在しない「幽霊記者」の名義で作成した記事をポータルサイトに提供、その業務を妨害したなどの容疑でも告発を受けている』、「安倍が最も憎む国会議員、尹美香」には苦笑せざるを得ない。いずれにせよ、これらは「せせこましいスキャンダル」だ。
・『変転する娘のUCLA留学費用の説  最後は、娘の留学に関する疑惑だ。ピアノを学んでいる娘は2016年から米イリノイ大、2018年から米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)音大の2年課程に在学している。 韓国紙「毎日経済」によるとイリノイ大の学費は年間4万ドル(約430万円)、またUCLAでは2018年9月から今年3月までに8万5000ドル(約910万円)の学費を要したとされる。これに対して尹氏の夫キム氏の年収は、本人の申告を元に野党議員が算出したところによると約2500万ウォン(約223万円)だ。 生活費なども加えた高額な留学費用について、尹氏は当初「全額を奨学金で賄える大学を探した」と説明していた。 だがUCLAが留学生に全額奨学金を支給しないことが分かると、夫が再審で一部無罪を勝ち取った際の2億4000万ウォン(約2140万円)の賠償金を充てたと言葉を翻した。しかし前述の通りキム氏の再審の結果が出たのは2018年であり、2016年からそれまでの留学費用をどうしたかは説明されていない。 当の娘は、疑惑が浮上した後にSNS上での活動を中断。だが母親の尹氏が正式に国会議員の身分となるのを待っていたかのように、6月上旬に卒業記念写真を投稿して韓国メディアの注目を集めていた』、釈明のお粗末さには呆れ果てた。
・『ソン氏の死を巡っても渦巻く疑惑  死亡したソン氏について尹氏自身が綴ったところによると、2人が知り合ったのは2004年。慰安婦休養施設の担当者を探していた尹氏は月給80万ウォン(約7万1000円)しか提示しなかったが、ソン氏は誘いに応じた。2004年当時、韓国の大卒初任給は178万7000ウォン(約15万9000円)だ。ソン氏はそれから3カ月の間に3回も辞表を書いたが、尹氏は泣きながら引き止めたそうだ。 そのソン氏を巡っても今月12日、元慰安婦女性の口座を使ってマネーロンダリングしていたという疑いが報じられている。現地大手紙「朝鮮日報」によると疑惑を提起したのは、ソウル市麻浦区の慰安婦休養施設で暮らしていた元慰安婦女性の孫娘だ。孫娘がソン氏に電話して、祖母の口座から多額の現金を引き出したことを問いただしてほどなく、その死が知らされたという。同じく「国民日報」はまた、孫娘が問題の「背後にいるのは尹氏だろう」とコメントしたとも伝えている。 「朝鮮日報」は同じ日、ソン氏が最後に電話で話した相手が尹氏だと確認されたとも報じた。尹氏の秘書が「ソン氏がいる自宅に人の気配がない」と消防に通報したのは、最後の通話から約12時間後の夜10時33分のことだ。 ソン氏の死についても野党は追及の勢いを強めているが、真相が明らかになる日は来るのだろうか』、「消防に通報したのは、最後の通話から約12時間後」、極めて不自然だ。検察がこれらの疑惑を明らかにしてほしいものだが、「文」政権から横ヤリが入る可能性もありそうだ。いずれにしても、韓国が「慰安婦問題」を切り出し難くなったとすれば、結構なことだ。
タグ:「慰安婦休養施設のソン・ヨンミ所長」が自殺 「保守勢力の謀略だ」と開き直った 文大統領の「被害者中心主義」は欺瞞? 相変わらず責任回避 ユン前理事長を守るべきなのか 見解が分かれる与党「共に民主党」 2つめの疑惑は、正義連=挺対協に対する後援金などの振込先が尹氏個人の銀行口座だった問題 「大金のために態度を変えた」 安城市に用意された施設の転売問題 正義連 これまでの青瓦台の無関心は責任回避のための行動だと責められて然るべきだ (その5)(韓国の慰安婦支援団体が窮地 疑惑続出で崩壊寸前の現状を元駐韓大使が解説、元慰安婦に告発された支援団体は「腐敗しきっていた」 元慰安婦「私ではなく友の話」と暴露、《慰安婦団体内紛でついに死者》明るみに出た尹美香の「セコい財テク術」と「安倍批判記事」) 人格を否定するようなもの 元慰安婦の支援団体 中国の勢力圏入りする」とすれば、韓国の半導体産業や自動車産業には大打撃 与党はユン前理事長を切り 政権と正義連を守るのか 前理事長の尹美香 慰安婦問題がここまでこじれ、長期化した背景には、慰安婦問題の市民団体の窓口を挺対協ユン前理事長に一元化してきたことで、元慰安婦の本当の声が届かなくなっていたことが大きな要因である 「韓国の慰安婦支援団体が窮地、疑惑続出で崩壊寸前の現状を元駐韓大使が解説」 ユン前理事長に対し韓国政府も関与を始める 偽の和解場面まで演出して利用 日本・韓国は米中どちら側につくのか? 武藤正敏 韓国国内で昨年から続出している「反日」とは逆の動き 韓国疲れ 背後に何か隠さなければならないことがあるための隠蔽工作 「私は慰安婦ではなかった」 正義連は慰安婦という存在をダシにして長年金儲けを続けていたということになる。正義連にしてみれば、日韓関係がこじれて長引くほど“儲かる”わけだから、そもそも活動の動機に疑念を抱かれても仕方あるまい 取り沙汰される「カネをめぐる5大疑惑」 変転する娘のUCLA留学費用の説 日韓慰安婦問題 「《慰安婦団体内紛でついに死者》明るみに出た尹美香の「セコい財テク術」と「安倍批判記事」」 正義連の問題は静観して終わるものではない 団体代表が住宅5戸をキャッシュで購入した イ・ヨンスさんの記憶が歪曲 元慰安婦のイ・ヨンス氏の告発 アメリカ人が怖がるように“性奴隷=sex slaveという言葉を使った 安倍が最も憎む国会議員、尹美香 消防に通報したのは、最後の通話から約12時間後 正義連前理事長の個人口座が、募金に使われていた 7億5000万ウォンで買い、1億ウオンの改装費をかけながら だまされるだけだまされた、利用されるだけ利用された 文春オンライン せせこましいスキャンダル 不祥事の原因がユン前理事長だけにあると片付けるのは無理がある ソン氏の死を巡っても渦巻く疑惑 正義連とユン前理事長の態度の変化 イ・ヨンス氏の記者会見に注目 ダイヤモンド・オンライン 元慰安婦が共同で生活する「ナヌムの家」でも、巨額の後援金を元慰安婦に対して使わず、不動産や現金資産として保有し、今後は曹渓宗のホテル式老人療養院に使おうとしている 野党は市民団体の構造問題と指摘 与党は市民運動否定を危惧 ユン前理事長の処遇決定のカギは、共に民主党の李海チャン代表が握っている 購入価格を大幅に下回る4億2000万ウォンで売却 「元慰安婦に告発された支援団体は「腐敗しきっていた」 元慰安婦「私ではなく友の話」と暴露」 「正体不明の中国人女性を、慰安婦役として“輸入”」 つめは、尹氏の夫、キム・サムソク氏が絡んだ疑惑 3つめは、尹氏夫妻が1995年から2013年まで、自宅や賃貸用と思われるセカンドハウスを現金で計7回も売買していた問題 不動産購入疑惑 プレジデント Digital 不正疑惑は、検察当局が正義連のソウルの事務所に家宅捜索に入るなど、新たな展開 正義連のニュースレターを夫の会社に発注
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デジタル通貨(その1)(SWIFTと米国の金融覇権に挑戦するデジタル人民元、「デジタル円」議論の本格化が、日本にとって背水の陣である理由、新型コロナで中銀デジタル通貨開「最速ギア」 中銀関係者が認識) [金融]

今日は、デジタル通貨(その1)(SWIFTと米国の金融覇権に挑戦するデジタル人民元、「デジタル円」議論の本格化が、日本にとって背水の陣である理由、新型コロナで中銀デジタル通貨開「最速ギア」 中銀関係者が認識)を取上げよう。関連したものでは、リブラ(フェイスブックの暗号資産)を昨年7月26日に取上げた。

先ずは、本年2月6日付けNRIが掲載した元日銀審議委員でエグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏による「SWIFTと米国の金融覇権に挑戦するデジタル人民元」を紹介しよう。
https://www.nri.com/jp/knowledge/blog/lst/2020/fis/kiuchi/0206
・『SWIFTを通じて米国が世界の資金の流れを握る  中国が発行を準備している中銀デジタル通貨、いわゆるデジタル人民元は、米国の通貨・金融分野での覇権に対する挑戦であり、そこに風穴を開けることを狙っている。一帯一路周辺国など中国との経済関係が比較的密接な国々との間の貿易取引を人民元建てへ置き換えていく、いわゆる人民元の国際化を前進させるために、デジタル人民元をその起爆剤とすることを中国は目指しているのではないか。 貿易などで人民元がより多く利用されるようになれば、国際決済通貨として圧倒的な影響力を持つドルの牙城を、いずれは崩していくことも可能になるかもしれない。ただし、人民元の国際化は、単なる国の威信をかけた目標にとどまらず、中国にとってはまさに死活問題でもあり、迅速に進めることが求められる。 国境を越えた資金決済の4割は、ドルで行われている。例えば、ロシア企業が中国企業から通信機器を購入し、ロシア企業が代金をルーブルで支払い、中国企業が代金を人民元で受取る場合でも、ルーブルと人民元が直接交換されるのではなくドルが仲介通貨となる、つまり「ルーブル[→]ドル[→]人民元」となることが多い。その方が、ルーブルと人民元を直接交換するよりも手数料が概して安くなる。 そのため、ロシア企業と中国企業の間の決済ではあるが、米銀がそれに関与する。さらに国際間ドル決済の大半に用いられるSWIFT(国際銀行間通信協会)も関与するのである。その結果、SWIFTあるいは米銀を通じて、世界の資金決済、世界の資金の流れの相当部分についての情報を、米国当局が握っているとされる。これは、米国との覇権争いを進める中国にとっては、非常に大きな脅威なのである』、「デジタル人民元は、米国の通貨・金融分野での覇権に対する挑戦であり、そこに風穴を開けることを狙っている」、確かに「中国」にとっては、「ドル」や「SWIFT」からの独立は死活問題だろう。
・『米国は経済・金融制裁にSWIFTを最大限活用  SWIFTとは、ベルギーに本部を置く銀行間の国際的な決済ネットワークである。 SWIFTには200以上の国や地域の金融機関1万1千社以上が参加しており、そのネットワークを経由しないと送金情報を伝えられず、国際送金ができない。決済額は1日あたりおよそ5兆~6兆ドル(約550兆~660兆円)に上るとされ、事実上の国際標準となっている。 中国を含め、米国と対立する多くの国々にとって大きな脅威であるのは、米国が経済制裁の実効性を高めるため、しばしばこのSWIFTを利用するということだ。例えば、米国の経済制裁の対象となった国で、企業が制裁逃れを図って海外企業と貿易を行おうとしても、その国の銀行がSWIFTのネットワークから外されれば、資金決済ができないため貿易は難しくなる。 また、米国によってSWIFTのネットワークから外され、SWIFTの利用をできなくされることを怖れて、米国の経済制裁対象国以外の国の企業や銀行も、経済制裁に協力せざるを得なくなり、それが米国の経済制裁の実効性を高めることを助けるという側面もある』、米国にとって「SWIFT」は大きな武器のようだ。
・『SWIFT自身が制裁を恐れ米国に協力  最近の米国による経済・金融制裁の例に、イランがある。イランは2012年にも米欧から経済・金融制裁を受けたが、その際にはイランの銀行はSWIFTから排除された。その後2015年7月に成立した、イランと6か国との間のイラン核合意では、イランが核開発を大幅に制限する見返りに、米欧が金融制裁や原油取引制限などの制裁を緩和することが決まった。 ところがトランプ政権は、2018年5月にイラン核合意から離脱し、イランへの経済制裁を再び強化していったのである。その後、ムニューシン米財務長官は、SWIFTに対して、イランの銀行を再び排除することを要求した。それは米国が、イランへの資金の抜け道を塞いで、ミサイル開発やテロ支援の資金を断つことで、イランへの経済制裁の効果を高める目的であった。 11月5日に、SWIFTは複数のイランの銀行を、SWIFTの国際送金網から遮断すると発表した。トランプ政権がイランに対する経済制裁を再発動したまさにその日のことだった。SWIFTは声明で、世界の金融システムの「安定性と統合性の利益を守る」ための措置とだけ説明したが、トランプ政権からの強い圧力に屈したことは、誰の目にも明らかだった。 SWIFTは、仮に米国政府の要請を拒んだ場合には、SWIFT自身が米国の制裁の対象となってしまうことを強く恐れている、と言われている。それほどまでに、米国はSWIFT、そして国際決済システムを牛耳っているのである』、「米国はSWIFT、そして国際決済システムを牛耳っている」、覇権の強力なツールのようだ。
・『デジタル人民元には米国からの支配を脱する狙い  仮に将来、中国が米国の経済制裁の対象となり、中国の銀行がSWIFTから外されるようなことがあれば、ドル建ての決済比率が高い中国の海外との貿易は成り立たなくなり、中国経済は壊滅的な打撃を受けることになるだろう。この点が、米国と覇権争いを繰り広げていく中で、中国の最大の弱点と言えるのではないか。 中国がデジタル人民元の発行を準備する背景にはこうした点があり、国際決済において、米国の支配から脱することが強く意図されている。デジタル人民元にはブロックチェーン技術が用いられることから、SWIFTの銀行国際送金ネットワークとは無縁の存在となるのである。 中国の貿易でデジタル人民元の利用が拡大していけば、資金の流れを米国に捕捉されるリスクが低下し、仮に米国から経済・金融制裁をかけられたとしても、その実効性を低下させることができる』、「中国がデジタル人民元の発行を準備する背景には・・・国際決済において、米国の支配から脱することが強く意図されている」、覇権国を目指す「中国」にとっては、必須のことなのだろう。
・『中国は独自の国際決済システムも構築  米国が牛耳る銀行国際送金のネットワークから脱するもう一つの手段が、中国による独自の銀行国際決済システムの構築である。2015年10月に中国は、人民元の国際決済システム、国際銀行間決済システム(CIPS)を導入した。ロシア、トルコなど米国が経済制裁の対象とした国々の銀行が、このCIPSに多く参加している。 日本経済新聞社の調査によると、2019年4月時点でCIPSへの参加は89か国・地域の865行に広がっていた。参加銀行数を国ごとに見ると、第1が日本、第2位がロシア、第3位が台湾だ。 CIPSの参加国には、一帯一路の参加国など、中国がインフラ事業や資源開発で影響力を強める国々の銀行も多く含まれている。マレーシアなどアジアの新興国に加えて、南アフリカ、ケニアなどアフリカの国の銀行も参加している。 一帯一路構想の中国関連事業では、依然として人民元決済の比率は小さい模様だが、将来的には一帯一路周辺国に「中国経済圏」は一段と拡大していく一方、そこでの取引に人民元が多く使用される、つまり「人民元圏」も拡大させていくことを中国は視野に入れているだろう。その際には、デジタル人民元と並んで、このCIPSが、同地域での国際決済の中核を担っていくのではないか』、「「人民元圏」も拡大させていくことを中国は視野に入れているだろう。その際には、デジタル人民元と並んで、このCIPSが、同地域での国際決済の中核を担っていく」、2015年から着々と準備を重ねていた戦略的行動のようだ。「人民元の国際銀行間決済システム(CIPS)」に参加している銀行は、下記の通り確かに日本の銀行が30行と最大だ。2位のロシアは23行のようだ。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44992330Y9A510C1MM8000/?n_cid=DSREA001
・『グロ―バル・デジタル通貨の拡大は米国の覇権を崩す  2018年にトランプ政権がイラン核合意から離脱し、イランへの経済制裁を強化するとともに、欧州など他国にも経済制裁強化を呼び掛けた際には、制裁緩和を含んだイラン核合意にとどまる欧州諸国は、欧州企業に対してイランとの貿易継続を促そうとした。しかし、米国によってSWIFTのネットワークから外されることを警戒する欧州の銀行や企業は、米国の制裁強化をしぶしぶ受け入れる動きを見せたのである。 その際には、中国と同様に、欧州諸国の政府の間でも、SWIFTとは異なる国際決済システムの構築を模索する動きが見られた。イランと欧州の中央銀行間に直接のリンクを創設してユーロを行き来させ、イランの国際決済を助ける案も議論された。またドイツの外相は、米国が牛耳るSWIFTに代わる、欧州版SWIFTを創設するという考えを示していた。 このように米国に敵対して金融制裁を受けるリスクがある国々や中国だけではなく、欧州諸国もまた、米国がSWIFTを利用して国際金融取引の情報をほぼ独占、また実効性の高い経済・金融制裁を他国に課している状況を問題視し始めているのである。 欧州中央銀行(ECB)が中銀デジタル通貨、いわゆるデジタル・ユーロの議論を始めた背景には、リブラやデジタル人民元への対抗ばかりでなく、米国の通貨覇権、そして国際決済での覇権を修正するという狙いもあるのではないか。 そして米国にとっては、リブラも中銀デジタル通貨も、米国の国際決済でのこうした覇権を揺るがし、ひいては安全保障上の戦略にも狂いを生じさせかねない大きな脅威なのである。米国が自ら中銀デジタル通貨、いわゆるデジタルドルを発行すれば、それが米国の国際決済での覇権を揺るがし、まさに自分の首を絞めてしまう可能性もあるだろう。 米国当局が頑なに中銀デジタル通貨の発行を否定する背景には、こうした点もあるはずだ』、「欧州中央銀行(ECB)が中銀デジタル通貨、いわゆるデジタル・ユーロの議論を始めた背景には、リブラやデジタル人民元への対抗ばかりでなく、米国の通貨覇権、そして国際決済での覇権を修正するという狙いもあるのではないか」、面白い展開になってきたようだ。

次に、6月5日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「「デジタル円」議論の本格化が、日本にとって背水の陣である理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/239342
・『「デジタル円協議会」が発足 結局、何がどう変わるのか  メガバンクやJR東日本などが、電子マネーやデジタル通貨の相互利用に関する協議会を発足させることになったそうです。デジタル通貨、すなわち日銀が将来的に発行する可能性がある「デジタル円」についても、議論がなされることになりそうですが、そもそもこのデジタル通貨とはいったいどのようなものでしょうか。 ひとことで言えば、これまで紙で発行されてきた1万円札などの紙幣をデジタル情報に置き換えるということです。そのことによって、どのような変化が期待できるのでしょうか。 日本人が日常生活を行っている中では、デジタル通貨といってもその効用がピンと来ないかもしれません。しかし、私たちの日常経済の大半は、デジタルでの通貨のやりとりで成立しています。給料は現金ではなく銀行口座に振り込まれるし、クレジットカードや電子マネーで普通に買い物もできます。 1年前に比べれば銀行のATMでおカネを引き出す回数が減ったという人も多いかもしれません。そうしたこととデジタル通貨は、いったい何が違うのでしょうか。 ここで気づくことは、通貨がデジタル化されているといっても、あくまで安心・安全なのは銀行に通貨がデジタルデータとして保管されている状態であるということです。私は、銀行のシステムを構築している大手IT企業との付き合いが長いので断言できますが、銀行に預けた預金のデジタルデータが改ざんされたり、消失したりすることはまず起こりません。 詳しい方は、南海トラフ地震や海外からの組織的なサイバー攻撃で、そのようなリスクが懸念されるのではないかとご指摘されるかもしれませんが、その規模の災害や攻撃でもメガバンクやゆうちょ銀行、ないしはシステムが共同化されている地銀や信用金庫なら、確実に顧客資産を守ることができます。 それこそ世界全面核戦争が起きるとか、人類すべてが死に絶えるパンデミックが起きるといったSF映画で観るような「地球最後の日」でも来ない限り、ほとんどの日本の銀行口座はデジタル的には大丈夫です。 一方で、デジタル化してもそれなりにリスクがあるのが電子マネーです。システム的にしっかりつくられているとはいえ、銀行口座に比べればサイバー犯罪も起きる可能性がある。その観点から電子マネーは、5万円ないしは2万円を上限として、それ以上のチャージができないようになっています』、「電子マネー」は手軽なだけ、セキュリティ上の問題があり、少額決済に限定されている。
・『デジタルマネーの常識に風穴を開けたビットコイン  ここまでの話が、10年くらい前までのデジタルマネーの常識です。その常識に風穴が空いたのが、2009年に運用が始まったビットコインの登場です。仮想通貨であるビットコインが優れていたのは、ブロックチェーン技術というそれまでとはまったく発想の異なるテクノロジーで、暗号資産を安全に手元に置いておくことが可能になったことです。 ビットコインが注目されたのは、安全性の高さに加えて、送金が安価で手軽だったことです。海外の知人にお金を送る際にも、銀行を使うよりずっと簡単です。ただ問題点としては、ビットコインの価格自体が相場で急激に上下するため、その意味で価値が安全ではないことです。 今日手元に持っている1万円分のビットコインが、1カ月後には5000円分になってしまうかもしれないと思うと、安心して資産をビットコインで保有することが難しいわけです。 そこでビットコインの技術を使いながら、一方でその価値が安定するような暗号通貨を発行しようという構想が誕生しました。それが、フェイスブックの開発する暗号通貨「リブラ」です。 日本ではイメージしづらいかもしれませんが、海外には銀行口座を持てない人が驚くほど多く存在しています。しかし、困窮者でもスマホは持つことができる。実際、途上国において困窮者がスマホでお金をせびってくる様子は、バックパッカーならよく目にする光景です。 このリブラの開発表明は、金融業界に衝撃を与えました。フェイスブックCEOのマーク・ザッカーバーグが構想を表明した直後のG20で、先進国が共同歩調を見せながらリブラを批判したくらいです。リブラが大きくなってしまうと、各国中央銀行の通貨発行権がおびやかされる危険性があるのです。 リブラは今年、正式に発行される予定ですが、実際に世界的に流通するようになったら、意外と円よりも便利かもしれません。なにしろ円は、銀行に預けておいてもほとんど金利などつきません。一方、クレジットカードで支払うと、お店の側が数%の決済手数料をとられます。お客の側は気づきませんが、その手数料の分、お店の側が商品やサービス全体の価格に上乗せしています。 リブラなら、そうした取引がずっと低い手数料で実現できるでしょうし、海外でもいちいち為替手数料を払わずにそのままリブラで買い物ができるようになれば、さらに便利になるでしょう』、「リブラは今年、正式に発行される予定」、これまで各国の当局が反対しているなかでは、発行しないと言明してきた筈なので、本当だろうかと疑問を拭えない。
・『リブラの脅威と欠点を睨み動き出した中央銀行  ただ、政府の観点からすると、通貨の発行権以外にもう1つ、リブラなどの仮想通貨には大きな問題点が存在します。それが通貨の匿名性です。 そもそもこの欠点は現金の欠点でもあるのですが、「今、それを持っている人がお金の所有者である」という紙幣の性格上、現金は違法取引やマネーロンダリングで使っても、その流れをトレースできないという特性があります。 そういったマネー犯罪の課題をクリアする最善の方法が、デジタル通貨を民間ではなく各国の中央銀行が発行するというアイデアです。その一例が冒頭でお話しした「デジタル円」というもので、おそらく2030年代には、世界はそのようなデジタル通貨の時代に突入するだろうと予測されるのです』、なるほど。
・『量子コンピュータとデジタル人民元の登場で待ったなしのデジタル円議論  ただ、デジタル円の発行には、1つどうしてもクリアできない技術的な問題が存在しています。これはビットコインについても同様にあてはまる問題でもあります。それは近い将来、開発に成功すると目されている量子コンピュータが誕生すると、暗号鍵が解読されてしまうという問題です。 対策としては、量子コンピュータでも解読できない新しい暗号鍵を使えばいいのですが、そうなるともう一方で、普通のコンピュータではブロックチェーンの情報を追えなくなる。世界に数台だけ量子コンピュータが存在する世界では、ブロックチェーン技術の暗号通貨は脆弱なのです。 そのため日銀も、簡単に「デジタル円」を発行することができません。しかしそうも言ってはいられない動きが存在する。それが「デジタル人民元」発行の動きです。 世界中の中央政府が躊躇している間に、中国がデジタル人民元を発行する動きがあるのですが、もしこれが誕生してしまうと、リブラよりもずっと早く、世界で最も多く使われる新しい世界通貨になる可能性があります。今、世界の基軸通貨になっているドルと違って、偽札を刷ることができないし、中国政府の高い監視技術によってマネーロンダリングの問題も回避できるようになるからです。 そうなってしまうと、世界の基軸通貨がドルから人民元に移ってしまう可能性があるのです。そこで、いずれアメリカも「デジタルドル」の導入を考えざるをえなくなるでしょうし、今はまだ難しいというデジタル円についても、今のうちに課題を洗い出しておく必要があります。 メガバンクやJR東日本によるデジタル通貨の協議会が、これからどのような議論をするのかはわかりませんが、この問題の背景には、そのような国際政治の事情が存在しています。だとすれば、重要なことはスピードです。この問題に限って言えば、フェイスブックと中国のスピードにどう追いついていけるのか。日本の対応が注目されます』、「世界に数台だけ量子コンピュータが存在する世界では、ブロックチェーン技術の暗号通貨は脆弱なのです」、これは参加者の数が少なくなると、不正を働く余地が生まれてしまうため。しかし、「量子コンピュータ」の問題は将来の問題として、当面は「デジタル人民元」への対抗を急ぐようだ。

第三に、6月12日付けロイター「新型コロナで中銀デジタル通貨開発「最速ギア」、中銀関係者が認識」を紹介しよう。
https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-britain-crypto-idJPKBN23I336
・『世界の中央銀行関係者は11日、新型コロナウイルス感染拡大を受け、現金を使わないキャッシュレス決済の利用が広まり、中央銀行デジタル通貨(CBDC)開発の加速化が促進されているとの認識を示した。 国際決済銀行(BIS)の「イノベーション・ハブ」局長のブノワ・クーレ氏は、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)とシンクタンクのCEPRが主催したイベントで、「紙幣や硬貨を通してウイルスに感染する証拠はほとんどないが、新型ウイルス感染症(COVID-19)の拡大により、われわれの生活のあらゆる面でこれまでに見られなかったデジタル化の実験が促されている」とし、「COVID-19の感染拡大は、CBDCの開発を最速ギアに入れた出来事として経済史に残るだろう」と述べた。 クーレ氏は欧州中央銀行(ECB)専務理事を務めた経験があり、現在はCBDCを開発する中銀のグループの共同取りまとめ役を務めている。同グループは10月に報告書を取りまとめる』、「新型コロナウイルス感染拡大」によって「中央銀行デジタル通貨(CBDC)開発の加速化が促進」、確かにそうした面もあるのだろう。「10月に報告書を取りまとめる」、どんなものになるのか楽しみだ。
タグ:米国はSWIFT、そして国際決済システムを牛耳っている 鈴木貴博 (その1)(SWIFTと米国の金融覇権に挑戦するデジタル人民元、「デジタル円」議論の本格化が、日本にとって背水の陣である理由、新型コロナで中銀デジタル通貨開「最速ギア」 中銀関係者が認識) 通貨の発行権以外にもう1つ、リブラなどの仮想通貨には大きな問題点が存在します。それが通貨の匿名性 マネー犯罪の課題をクリアする最善の方法が、デジタル通貨を民間ではなく各国の中央銀行が発行するというアイデア 10月に報告書を取りまとめる 中央銀行デジタル通貨(CBDC)開発の加速化が促進されているとの認識 新型コロナウイルス感染拡大 「新型コロナで中銀デジタル通貨開発「最速ギア」、中銀関係者が認識」 ロイター そうも言ってはいられない動きが存在する。それが「デジタル人民元」発行の動き 世界に数台だけ量子コンピュータが存在する世界では、ブロックチェーン技術の暗号通貨は脆弱 新しい暗号鍵 量子コンピュータが誕生すると、暗号鍵が解読されてしまう 量子コンピュータとデジタル人民元の登場で待ったなしのデジタル円議論 リブラの脅威と欠点を睨み動き出した中央銀行 リブラは今年、正式に発行される予定 世界の基軸通貨がドルから人民元に移ってしまう可能性 ジタル人民元には米国からの支配を脱する狙い NRI 木内登英 「SWIFTと米国の金融覇権に挑戦するデジタル人民元」 「人民元圏」も拡大させていくことを中国は視野に入れているだろう。その際には、デジタル人民元と並んで、このCIPSが、同地域での国際決済の中核を担っていく デジタル通貨 SWIFTを通じて米国が世界の資金の流れを握る デジタル人民元は、米国の通貨・金融分野での覇権に対する挑戦であり、そこに風穴を開けることを狙っている 米国は経済・金融制裁にSWIFTを最大限活用 ダイヤモンド・オンライン 「デジタル円協議会」が発足 結局、何がどう変わるのか 中国は独自の国際決済システムも構築 デジタルマネーの常識に風穴を開けたビットコイン 問題点としては、ビットコインの価格自体が相場で急激に上下するため、その意味で価値が安全ではないこと ビットコインの技術を使いながら、一方でその価値が安定するような暗号通貨を発行しようという構想が誕生しました。それが、フェイスブックの開発する暗号通貨「リブラ」 「「デジタル円」議論の本格化が、日本にとって背水の陣である理由」 欧州中央銀行(ECB)が中銀デジタル通貨、いわゆるデジタル・ユーロの議論を始めた背景には、リブラやデジタル人民元への対抗ばかりでなく、米国の通貨覇権、そして国際決済での覇権を修正するという狙いもあるのではないか 人民元の国際決済システム、国際銀行間決済システム(CIPS)を導入 参加銀行数を国ごとに見ると、第1が日本、第2位がロシア、 グロ―バル・デジタル通貨の拡大は米国の覇権を崩す SWIFT自身が制裁を恐れ米国に協力
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カジノ解禁(その10)(萩生田文科相に“カジノ汚染”問題噴出 コロナ禍の政権直撃、なぜサンズ社は日本カジノ市場を捨てたのか、見限られた日本のカジノ構想 世界一の業者が豹変した背景、米サンズ撤退の衝撃 日本のカジノ誘致は「詰んだ」の見解) [国内政治]

カジノ解禁については、1月31日に取上げた。今日は、(その10)(萩生田文科相に“カジノ汚染”問題噴出 コロナ禍の政権直撃、なぜサンズ社は日本カジノ市場を捨てたのか、見限られた日本のカジノ構想 世界一の業者が豹変した背景、米サンズ撤退の衝撃 日本のカジノ誘致は「詰んだ」の見解)である。

先ずは、3月6日付け日刊ゲンダイ「萩生田文科相に“カジノ汚染”問題噴出 コロナ禍の政権直撃」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/269993
・『安倍首相が突然の全国一斉休校をブチ上げ大混乱のさなか、教育行政を所管する萩生田文科相に「カジノ汚染」問題が噴出した。カジノ業者からの収賄罪で起訴された衆院議員の秋元司被告は「約2000万円もらっている『IR三羽烏』の議員がいる」と語ったというが、そのうちの「一羽」は萩生田氏なのか。 問題の震源地は、5日発売の週刊新潮だ。「萩生田光一大臣にカジノ汚染の証拠画像」と報道。2018年8月に妻と後援会事務局長夫妻と共にマカオを訪れ、香港のカジノ大手「ギャラクシー・エンターテインメント・グループ」が運営する統合型リゾート施設に赴いた。 同社日本法人のCOOと総支配人から異例の出迎えを受ける厚遇ぶりだったという。COOらが満面の笑みで萩生田氏らを案内する写真が掲載されている。 訪問時期は民間事業者のカジノ運営を可能にする「カジノ実施法」の成立直後。萩生田氏は当時、党幹事長代行で、超党派の「カジノ議連」の事務局長だった。ギャラクシーは現在も日本参入を狙っているとされ、秋元にカネを渡した中国のカジノ事業者とは段違いの大手だ。そんな相手から接遇された萩生田氏は「軽率」のそしりを免れない』、「「軽率」のそしりを免れない」どころの話ではなく、「萩生田氏」は「超党派の「カジノ議連」の事務局長」、であれば職務権限もあったとすれば、「接遇」や「政治献金」で贈収賄罪が成立する可能性もあるのではなかろうか。或は、国会議員の場合は職務権限はないと考えるべきなのだろうか、
・『規制緩和で事業者に“便宜”  実はこの“接待旅行”、1月から永田町でささやかれていた。新潮の報道とほぼ同じ内容が記された怪文書が乱舞。萩生田氏とカジノ事業者の親密関係は知る人ぞ知る話なのだ。 接待旅行の3カ月後、萩生田氏は日経新聞主催のカジノ関連イベントに講師として登壇。海外カジノ事業者4社の幹部も参加した。うち1社はギャラクシーで、副会長が基調講演を行った。 さらに、カジノ事業者に便宜を図った疑いまである。18年7月に成立したカジノ実施法は、運営事業者に立地自治体とのカジノ整備計画の作成と、計画の国交相認定を義務付けた。認定期間は「初回10年、その後5年ごとに更新」。更新期ごとに立地自治体の議会で事業内容のチェックを受ける。議会で「やっぱりカジノは不要」と議決されれば、事業が頓挫する恐れがあり、事業者にとって最大のリスクだ。この規制を萩生田氏が“緩和”した可能性があるのだ。 海外事業者も参加した昨年8月のカジノ関連イベントで、萩生田氏は「(更新手続きが)事業者の大きなリスクになっていることは我々も承知している」「(カジノ整備に向けた基本方針は)10年たった時に首長が代わったからといって『事業をただちにやめろ』ということはできないようになっている」と豪語。 萩生田氏の“ご意向”が働いたのか、同年9月公表の政府基本方針案には「(カジノ)事業は長期間にわたって安定的で継続的な実施の確保が必要」との文言が盛り込まれ、自治体の認定取り消し申請は「慎重な考慮が必要」とされた。 「萩生田氏は、米カジノ大手のアドバイザーの日本企業から政治資金パーティー券も買ってもらっています。カジノ利権は秋元氏以上の政権中枢が群がっているのではないか。いずれにせよ今回の一件は政権に大打撃。カジノに税金を使うなら、新型コロナ対策に回すべきと世論が傾く可能性がある。海外から客を呼び込みたいなら、カジノよりウイルス対策が先決なのは明白です」(ジャーナリストの横田一氏) いよいよ政権は追い込まれてきた』、「更新手続きが事業者の大きなリスクに」ならないような手当がされたようだ。

次に、5月14日付けYahooニュースが掲載した国際カジノ研究所・所長の木曽崇氏による「なぜサンズ社は日本カジノ市場を捨てたのか」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/byline/takashikiso/20200514-00178468/
・『さて、ラスベガスサンズ社の日本市場撤退表明から1日が明けました。本日のエントリは昨日の第一報の続きとなります。昨日のエントリを読んでない方は、以下リンク先から(省略、リンク先参照)。 私のところにも色んなメディアからコメントを求める連絡が入っておるところですが、改めて今日は「なぜサンズ社が日本カジノ市場を捨てたのか」に関して解説を致したいと思います』、専門家の見方とは興味深そうだ。
・『その1  このタイミングでサンズ社が日本撤退を発表したのは当然ながら、現在世界を覆い尽くしているコロナ禍の影響があります。日本国内でも同じ状況でありますが、レジャー観光産業はコロナ禍において最もダメージを受けている産業の中のひとつであり、カジノ産業も当然ながら例外ではありません。世界的に見ると最もコロナ禍からの回復が早かったマカオですが、カジノ営業自体は3月20日には既に再開しているものの観光客の戻りは遅く(周辺各国はまだ厳戒態勢が続いているので当たり前)、先月の域内総カジノ売上は対前年比で96.8%減という状態になっております。 サンズ社はマカオの他に米国、シンガポールの両国で統合型リゾートの展開をおこなっていますが、米国もシンガポールも未だ全カジノ施設が営業停止中の状態。両国では6月冒頭に向けた営業再開が検討をなされているものの、先行したマカオと同様に例え営業が再開したとしても直ぐに観光客が戻ってくるとも思えません。 この様な状況にあって、企業が行わなければならないことは手元にキャッシュを集めること。業界全体が、コロナ禍の影響がどれだけ続くのか判らない一種の「兵糧攻め」状態にありますから、とにかくまずは手元に「兵糧(現金)」を溜め込んで、今の状況をじっと耐え、乗り越きってゆける環境を作ることがまず求められるわけです。当然ながらその中で、将来に予定していた様々な投資計画の棚卸が必要であったからこそ、このタイミングでの「日本撤退」発表となったワケです』、「先月の域内総カジノ売上は対前年比で96.8%減」、惨憺たる環境悪化を踏まえれば、「「日本撤退」発表」は当然だろう。
・『その2  とはいえ、未来へ先行投資は企業成長の原資であり、この様なコロナ禍にあっても全ての計画が白紙にされるワケではありません。そこには数あるプロジェクトの相対評価と取捨選択があり、その取捨選択の中で「日本市場」が切り捨てられたという事になります。 現在のラスベガスサンズ社の状況を言いますと、実は同社は現在、統合型リゾートの展開を行っているシンガポール、マカオの両市場において、大きな追加投資を求められている状況にあります。シンガポール政府は、2022年から同国内の統合型リゾートに賦課するゲーミング税率を引き上げることを発表していますが、同国内の統合型リゾート業者は約3,700億円の追加投資を行なった場合、その増税に対して一定の減免措置を受けることが出来るとされています。このゲーミング税率引上げとその条件付き減免措置は、日本におけるカジノ合法化と統合型リゾートの創出を完全に念頭においた、シンガポール政府による国際投資誘因戦略の一環であるわけですが(詳細に関しては以前解説したのでコチラの記事を参照)、いずれにせよサンズ社としては既に統合型リゾートの展開を行っているシンガポールにおいて大規模な追加投資を迫られているワケです。 一方のマカオですが、実はサンズ社がマカオで保有しているライセンスの有効期限が迫って居まして、2022年にマカオ政庁によって行われるライセンス再入札で勝利をしなければ、同地域での統合型リゾート営業を維持できない状況にあります。当然ながらマカオ政庁はライセンスの再入札にあたって、応札企業側に相応の域内投資のコミットを求めてくるワケで、そこにも大きな資金需要が発生します。サンズ社としてはこの様に同期的に発生する複数の資金需要に対して、自らが持つ限りある資金調達能力をどの様に振り分けるのかに関して、まさに取捨選択を迫られているわけです』、「ラスベガスサンズ社・・・は現在、統合型リゾートの展開を行っているシンガポール、マカオの両市場において、大きな追加投資を求められている」、特に「シンガポール政府・・・ゲーミング税率引上げとその条件付き減免措置は、日本におけるカジノ合法化と統合型リゾートの創出を完全に念頭においた、シンガポール政府による国際投資誘因戦略の一環である」、「「日本市場」が切り捨てられた」、「シンガポール」にしてやられたようだ。 
・『その3  その様な状況下において、決定打となったのが先のエントリでも言及をした日本の投資環境の悪さです。日本は先進諸国の中では数少ないカジノがまだ存在しない新規市場であり、その中で最大3という限られた数の施設営業しか認められないという意味で、非常に有望視されてきた市場であったのは事実です。一方で、その従前の高い市場評価に影を落としたのが、2018年に成立したIR整備法です。IR整備法では、他国でいうところのライセンス期間にあたる「区域認定期間」を世界的に見ると異例の10年(しかも建設期間も含めて)という超短期に設定、その他にも数千億から一兆円に迫ると言われた民間大型開発を誘致するにあたっては、常識的には有り得ない様々な制度上の不都合を抱えた法律として成立しました(その詳細に関しては以下のリンク先資料を参照)。 先述の様に、今ラスベガスサンズ社はいつ終わるかも知れないコロナ禍の影響により手持ち資金を増やしてゆく必要に迫られる環境下で、同時に企業の持続的成長の為に必要となる多額の資本投下の準備を各国から迫られている状況にあるわけで、その中で制度設計上の不都合から相対的に投資効率が悪い日本市場からの戦略的離脱を行う判断をした。それが、同社による日本市場からの撤退宣言が今のタイミングで行われた理由であるわけです。 ラスベガスサンズ社の会長であるシェルドン・アデルソン氏は今回の撤退宣言にあたって「これまで日本市場参入の検討をしてきた中で様々な方々に出会え、良い関係を構築できたことに感謝しています。私たちは今後、日本以外での成長機会に注力する予定です。」とのコメントを同社のプレスリリースにて発表しています』、やむを得ない結果だ。

第三に、5月24日付け日刊ゲンダイが掲載した小林節慶応大名誉教授による「見限られた日本のカジノ構想 世界一の業者が豹変した背景」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/273581
・『5月13日、世界最大のカジノ業者、米国のラスベガス・サンズ(LVS)が日本のカジノ構想に参入する計画を撤回した。これは、カジノ計画に群がって利益を期待していた政治家、公務員、企業にとっては驚天動地であっただろう。 1月29日に横浜で開催された「統合型リゾート産業(カジノのこと)展」でLVSは、「1兆円以上の初期投資を持参し、地元企業と協力して横浜市に多大な利益をもたらす」と、文字通り「バラ色」の未来を語っていた。しかし、その豹変の背景は実は分かりやすい。 まず、世界的なコロナ禍で、「3密」のカジノは世界中で赤字に転落してしまった。しかしそれは、パンデミックが収まった後に黒字に復活できるし、莫大な資産を有するLVSがそれを待てないはずはない。LVSは日本撤退の理由として「日本のカジノ免許の期間は10年であるが、10年では初期投資の回収ができない」と語った、しかし、それは諸国で20年、30年の契約で事業を展開してきたLVSには初めから分かっていたことである。その上で、トランプ大統領と昵懇なLVSとしては、同大統領に従順な安倍首相の右腕の菅官房長官の地元である横浜なら、まず排他的な許可を得た後に期間を延長することなどたやすいと考えていたはずだ。 ところが、今回のコロナ禍対応の不手際で、トランプ政権も安倍政権も世論の支持を失いつつある。加えて、安倍首相と菅長官の対立も明らかになった。 そうなると、利にさとい米国ビジネスマンとしては、横浜(日本)から撤退することが最も安全な賢い選択になるのは明白である。 この機会に私たちは、カジノというその本質は犯罪である博打の上がりで市財政を支えようなどという不健全な発想自体を再考すべきである。カジノは、実は何ものをも生産せず、個人の全財産を一晩で巻き上げることもできるように工夫された、洗練された恐るべきシステムである。 私たち主権者・市民は、旧来の土木利権につながる箱物行政を断ち切り、改めて、日本にふさわしい清潔で穏やかな都市生活を守る地方自治を目指すべきではなかろうか』、やはり「トランプ政権も安倍政権も世論の支持を失いつつある」のが撤退につながったとは、こうした政治的案件にはつきものだ。「カジノは、実は何ものをも生産せず、個人の全財産を一晩で巻き上げることもできるように工夫された、洗練された恐るべきシステムである」、不健全なものが出来なくなったのは誠に結構なことだ。

第四に、5月29日付け日刊ゲンダイ「米サンズ撤退の衝撃 日本のカジノ誘致は「詰んだ」の見解」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/273829
・『5月12日、米国のカジノ大手ラスベガス・サンズ(ネバダ州ラスベガス)が日本へのカジノ進出断念を発表した。サンズのシェルドン・アデルソン会長はトランプ大統領の就任式のために500万ドルを寄付した人物。日本政府のIR(カジノを含む統合リゾート)推進もアデルソン会長から頼まれたトランプ大統領が安倍首相に要請したためと目されている。 ラスベガス・サンズは30年近くも日本進出を狙っており、最終的には神奈川県横浜市の山下埠頭に的を絞ったが、これを断念したインパクトは大きい。撤退理由として日本のIRライセンスが10年と短く、投資が回収できないためと報じられているが、実態はどうか。横浜へのカジノ・IR誘致に反対を続け、サンズの動向を注視してきた横浜港湾関係者は、サンズ撤退で日本のカジノ誘致自体が終わったと見ている。 「アデルソン自身がサンズのHPで公式に撤退を表明したわけですから、これで日本のカジノ誘致は終わったと分析しています。日本に投資をする余裕はもうないんです。もともとアデルソンからトランプ大統領、安倍首相という流れで筋道をつけ、トランプが攻撃している中国のカジノ業者『500.com』の関係者を狙い撃ちするように逮捕までしてきた。それなのにサンズが日本でカジノから手を引くとなれば、もはやIRをやる意味が米国、つまり米国商工会議所にはありません。サンズが抜けて、中国特別行政区(香港・マカオ)のメルコやマレーシアのゲンティンが日本でカジノを許されて漁夫の利を得るとなったら、トランプ大統領も怒るでしょう。ラスベガスのカジノ業者のために日本でIRをやることにしたわけですから」 アデルソンによる日本断念の発表は、5月14日に開かれた年次株主総会の直前だった。マカオ、シンガポール、ラスベガスでカジノを展開する同社の2020年1―3月四半期の純収益は前期比の約51%減、営業利益は93%減とズタボロ。そのような中、ラスベガスではカジノ従業員、料理や清掃を行う労働者たちの力が強く、サンズも従業員に給与を支払い続けている。 ラスベガスが所在するネバダ州では3月17日からカジノの営業を中止にした。6月に再開予定だが、カジノはこれまでどおりとはいかない。ネバダ州も健康と安全管理に慎重であり、従業員や客の生命安全のための感染防止が求められる。昨年9月に日本撤退を表明したシーザーズ・エンターテインメントも、スロットマシーンやカードゲームの設置距離、客の人数制限や見物客の禁止、チップやカードの消毒や交換など健康と安全のための措置をとることを発表。カジノビジネスは収益が下がる一方でコストはかかっていく』、トランプを巻き込んだ「日本のカジノ誘致」という壮大な政治ショウは終わったようだ。
・『富裕層は「オンライン」へ移行  前出の関係者は続ける。 「カジノに入り浸っていた富裕層はオンラインカジノ、オンラインギャンブルへ流出しています。その道がいったんついてしまうとカジノが復活しても、オンラインで十分だとなるでしょう。サンズ自体はゲーミング業者の中でもっとも優等生で、1、2カ月営業しなくても大丈夫なくらい現金を持っている。しかしコロナで株価も大幅に下落して自己資本も減少した。株価は持ち直してきていますが、金融界はカジノ業界に今後も融資して大丈夫かと不安になっている。サンズはここで優等生的に撤退したほうが金融機関から別の評価を引き出せます」 コロナ第2波の懸念やオンラインテクノロジーの急成長もあり、3密業種の典型であるカジノビジネスの先行きは見えない。イベントも然りで、あらゆる面から見てカジノIR業界に厳しい情勢だ。一方、横浜港運協会を主体につくられた横浜港ハーバーリゾート協会などでも山下埠頭再開発計画も考え直していきたいと考えるという。 「横浜の港運業界は幸い、“人を相手にしていない物流”ですので、今のところ前年比で12、13%減程度です。今後の景気後退にもよるでしょうが、物流はゼロにはならないしっかりとした仕事だとコロナで再認識しました。山下埠頭の再開発計画では協会は観光や国際展示場に走りましたが、山下埠頭の再開発はどういう方向性がいいのか抜本的に見直していきたい。ホテル建設や観光業をすすめるにしても3密、不要不急は避けなければならないし、国際展示場も3密の塊です。ショーケースをつくるなどの工夫が必要になるでしょう。この機会に国際展示場のリーダーシップをとっていきたい。そもそも鳥インフルなど5年に1回、感染症の問題は起きてきました。新型コロナはそのなかでもひどかったわけですが、そのたびに社会のルールも変わっている。それらを前提とし、未来を予測してきちんとしたものを示していきたい」(横浜港湾関係者) カジノIRの業者選定は来年の1月から7月とされる。いまが誘致の前のめりを修正できる好機というわけだが、日本は生かすことができるのか』、「カジノに入り浸っていた富裕層はオンラインカジノ、オンラインギャンブルへ流出しています」、「オンライン」が「カジノ」の世界にまで入り込んできたとは初めて知った、しかも「富裕層」が中心とは驚いた。「山下埠頭の再開発計画」はじっくり練り直すべきだろう。大阪では維新が「カジノ」に入れあげていただけに、流産のあとを埋めるものを探すのに苦労しそうだ。
タグ:カジノ解禁 日刊ゲンダイ 山下埠頭の再開発計画 (その10)(萩生田文科相に“カジノ汚染”問題噴出 コロナ禍の政権直撃、なぜサンズ社は日本カジノ市場を捨てたのか、見限られた日本のカジノ構想 世界一の業者が豹変した背景、米サンズ撤退の衝撃 日本のカジノ誘致は「詰んだ」の見解) 「萩生田文科相に“カジノ汚染”問題噴出 コロナ禍の政権直撃」 富裕層は「オンライン」へ移行 「米サンズ撤退の衝撃 日本のカジノ誘致は「詰んだ」の見解」 ジノは、実は何ものをも生産せず、個人の全財産を一晩で巻き上げることもできるように工夫された、洗練された恐るべきシステムである トランプ政権も安倍政権も世論の支持を失いつつある 「見限られた日本のカジノ構想 世界一の業者が豹変した背景」 小林節 相対的に投資効率が悪い日本市場からの戦略的離脱を行う判断 日本の投資環境の悪さ 「日本市場」が切り捨てられた ゲーミング税率引上げとその条件付き減免措置は、日本におけるカジノ合法化と統合型リゾートの創出を完全に念頭においた、シンガポール政府による国際投資誘因戦略の一環 シンガポール、マカオの両市場において、大きな追加投資を求められている 取捨選択の中で「日本市場」が切り捨てられた 先月の域内総カジノ売上は対前年比で96.8%減 サンズ社が日本撤退を発表したのは当然ながら、現在世界を覆い尽くしているコロナ禍の影響 「なぜサンズ社は日本カジノ市場を捨てたのか」 木曽崇 yahooニュース 規制緩和で事業者に“便宜” 職務権限 萩生田氏は当時、党幹事長代行で、超党派の「カジノ議連」の事務局長 妻と後援会事務局長夫妻と共にマカオを訪れ、香港のカジノ大手「ギャラクシー・エンターテインメント・グループ」が運営する統合型リゾート施設に赴いた。 同社日本法人のCOOと総支配人から異例の出迎えを受ける厚遇ぶり
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公文書管理(その6)(「黙っていればバレない」霞ケ関の官僚はなぜ「公文書破棄」に手を染めるのか=毎日新聞取材班、首相の決断が検証不能に…霞が関による隠ぺいの実態―毎日新聞取材班『公文書危機 闇に葬られた記録』本文抜粋、コロナ危機で再露呈…全日本人が知るべき「公文書管理のヤバい実態」 「歴史的緊急事態」なのに記録ナシ?) [国内政治]

公文書管理については、1月24日に取上げた。今日は、(その6)(「黙っていればバレない」霞ケ関の官僚はなぜ「公文書破棄」に手を染めるのか=毎日新聞取材班、首相の決断が検証不能に…霞が関による隠ぺいの実態―毎日新聞取材班『公文書危機 闇に葬られた記録』本文抜粋、コロナ危機で再露呈…全日本人が知るべき「公文書管理のヤバい実態」 「歴史的緊急事態」なのに記録ナシ?)である。

先ずは、5月15日付けサンデー毎日・エコノミスト「「黙っていればバレない」霞ケ関の官僚はなぜ「公文書破棄」に手を染めるのか=毎日新聞取材班」を紹介しよう。
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20200513/se1/00m/020/004000d
・『少なすぎるPCR検査、遅すぎる10万円の一律給付、必要性の乏しい布マスクの配布―― 安倍政権はコロナ対策で不可解な対応を繰り返している。 一方、国民の関心がコロナに集中するさなかに、検察幹部の人事に介入できる法案を成立させようともしている。 安倍政権はなぜこれほどの好き勝手ができるのか。 答えは簡単だ。誰がいつ、どんな理由でものごとを決めたのかを記した公文書を官僚たちが残さないからだ。 つまり、どんな決定を下しても永遠に検証されることがないのだ。 「森友・加計学園」「桜を見る会」に見られるように、安倍政権の下で公文書がかつてないほど軽んじられている。 そして、民主主義をあざ笑うかのように、秘密主義が強まっている――』、公文書管理法は、「行政が適正かつ効率的に 運営されるようにするとともに、国及び独立行政法人等の有する諸活動を現在及び将来の国民に説明する責務が全うされるようにすることを目的として制定」(内閣府HP)、されているが、「安部政権」ほど同法をないがしろにする政権も珍しい。
・『闇に消える官僚メール  「公文書の問題で、おもしろい話? ああ、そういえば、最近、霞が関の官僚の間でベタ打ちメールの報告が増えてるね。これはいずれ問題になるかもしれない」 国家公務員が使う公用電子メールの問題をはじめて知ったのは、2017年の春、旧知の文科省の官僚Aとかわしたこんなやりとりからだった。 ベタ打ちメールがどんなメールなのかわたしは知らなかった。 「普通のメールですよ。記者だってメールの画面に文書をそのまま書いて同僚に送るでしょ。画面にベタベタ打ち込むからベタ打ちメール」 それがどうして問題になるのだろうか。 「わからない? 飲み会の連絡とかどうでもいいメールも多いんだけど、大事なことも書かれるようになっているからね」 たとえば? 「言いづらいけど、政治家とのやりとりとか」 つまり、それが公文書にされていない。 「5年ぐらい前までは、公用パソコンで報告書をつくったら、紙にして上司に回していた。それがいつの間にか『報告書は電子メールに添付して回せばいいですよね』となり、今では『添付文書もわざわざつくる必要はないですよね』となっている。ベタ打ちして送信したら、それでおしまい。特に若い職員はメール世代だし、上司から『そんなの聞いてないぞ』と言われるのが嫌だから、証拠が残るメールのほうがいいみたいだね」』、「公用パソコンで報告書をつくったら、紙にして上司に回していた。それがいつの間にか『報告書は電子メールに添付して回せばいいですよね』となり、今では『添付文書もわざわざつくる必要はないですよね』となっている。ベタ打ちして送信したら、それでおしまい」、「報告書」が「ベタ打ちメール」に代わった経緯が分かり易い。
・『それから数週間たった17年6月15日、文科省が1通の公用メールを公表した。安倍首相の親友が理事長を務める学校法人「加計学園」をめぐる問題の調査で見つかったものだった。 学園は愛媛県今治市での獣医学部開設を目指していたが、実現には今治市が国家戦略特区に選ばれる必要があった。公表されたメールは、特区担当の内閣府から、大学担当の文科省に送信されたもので、特区の選定条件が修正されたと書かれていた。この修正により、今治市に決定する流れができる。 「内々に共有します」という書き出しで始まるメールにはこう記されていた。 「(修正の)指示は(内閣府の)藤原審議官曰く、官邸の萩生田副長官からあったようです」 萩生田光一官房副長官のことで、安倍首相の側近中の側近。そもそも、文科省の調査は、学園の計画の早期実現が「総理のご意向」と書かれた文書が同省から流出したのがきっかけだった。この‶萩生田メール″の存在によって、学園と手を組んで特区を申請した今治市が優遇されたのではないかという見方がさらに強まることになる。 「あれがまさに問題のベタ打ちメール。今の報告書のほぼすべてがこういうふうにメールに直接書かれているわけ。どうせ、課長補佐あたりが、事実を隠ぺいしたら許さないぞという勢いで出したんだよ。普通、あんなのは表に出さないから。勇気あるねえ」 Aの場合、国会議員のことが書かれたメールをどうしているのだろう。 「個人用のフォルダーに保存している。仮にだよ、わたしが個人的に保管しているこの手のメールがだれかに特定されて、情報公開請求されたとする。でも、『もう消したからありません』とウソをつくよ。絶対にバレないから。個人的に保管しているメールは強制捜査でもない限り、調べられることはない。黙っていればわからない」 萩生田氏の「指示だ」と書かれていたメールは、加計学園問題が注目されなければ、闇に葬られた可能性が高かった。そういうことなのだろうか。 「当然でしょう。だいたいメールが公文書になると思っている公務員なんていない。わたしもそうだから。メールは膨大にある。どういうメールが公文書に当たるのかルールで決めてもらわないと、正直言って選びようがない。それに、上司に『さっき送ったメール、公文書にしておきます』って言ったら、『お前、大丈夫か』って変な目で見られちゃう」 「極端にいえば、メールなんて電話で話すのと同じだから。文書じゃない。官僚はみんなそんなふうに思っている」 <毎日新聞連載「公文書クライシス」の書籍化『公文書危機 闇に葬られた記録』(毎日新聞取材班著、毎日新聞出版刊、6月2日発売予定)より、一部を抜粋>』、「極端にいえば、メールなんて電話で話すのと同じだから。文書じゃない。官僚はみんなそんなふうに思っている」、なるほど「メール」がこれほどカジュアルになっているなかでは、「公文書」の定義や扱いはなかなか難しい問題だ。

次に、5月29日付けYahooニュースが転載した「ALL REVIEWS:首相の決断が検証不能に…霞が関による隠ぺいの実態―毎日新聞取材班『公文書危機 闇に葬られた記録』本文抜粋」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/7f22d718bf110b7576e4a35a1090f0272205e656
・『「森友・加計学園」「桜を見る会」「検事長の定年延長」――安倍政権による権力の乱用が指摘されたこれらの問題に共通しているのは、検証に必要な記録が十分に残されていない点だ。首相官邸や中央省庁の内部では、なくてはならない記録がどのように隠ぺいされ、闇に葬られていくのか。本書は、これまで知られていなかったその手口と実態について、首相経験者ら元政府高官や20人近い現役官僚らへのインタビュー、情報公開制度を駆使した「調査報道」の手法によって明らかにするものである。 本書のもとになった毎日新聞のキャンペーン報道「公文書クライシス」は2019年末、優れたジャーナリズム活動を顕彰する早稲田大学の第19回「石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞」を受賞している。 ご紹介するのは、本書の第八章「官僚の本音」からの抜粋である』、興味深そうだ。
・『官僚の本音  わたしたちは、新聞の首相動静にもたびたび名前が出る、ある省庁の次官級幹部に面会のアポイントを入れた。 1週間後。霞が関にそびえるビルの上層階に向かった。広い個室に通され、名刺をわたして来意を告げると、幹部は困ったような顔をした。 そこで、この幹部が首相と重要案件で面談した際の「打ち合わせ記録」がつくられていない事実を伝え、証拠となる資料をテーブルの上にすべらせた。 しばらく沈黙が続いたあと、「オフレコが条件だ」と言って、わたしたちの質問に答え始めた(Qは聞き手の質問、Aは次官級幹部の回答)。 Q:首相と面談した際の「打ち合わせ記録」をつくっていない理由は。 A:「打ち合わせ記録をつくるかどうかは、人によると思うが、そもそも、あまりつくるという発想がない」 Q:発想がない? A:「議事録をとっておくような正式な会議であればつくるでしょう。それ以前の報告や打ち合わせを、いちいちという言葉はややあれですが、記録をつくって公文書としてとっておくという話にはならないのではないか」 Q:公文書管理法やガイドラインでは記録を残すことになっている。 A:「そういうルールができたのは、ここ10年ぐらいでしょ。若い職員はわからないが、わたしの若いころからの慣習からすると、そういうものを残しておくという発想がない。最後に決まったものがあればいいんじゃない」 Q:公文書管理法やガイドラインにしたがえば、最後に決まったことが書かれた記録だけでなく、政策立案の過程を検証できる記録を残さなくてはならない。 A:「政策の過程はものすごく、毎日のように変わる。ポイント、ポイントでとっておけばいい話。固まったところさえ残っていればいい。過程のなかで総理などといろいろやりとりはあるかもしれないが、それを公文書として残しておく発想は正直いってないね」[書き手]毎日新聞取材班・大場弘行)』、「過程のなかで総理などといろいろやりとりはあるかもしれないが、それを公文書として残しておく発想は正直いってないね」、案が「毎日のように変わる」としても、変更後の案や変更の理由などのメモは作っている筈で、それを「公文書として残して」おけばいい筈だ。「次官級幹部」の言い分は、単なる手抜きを正当化しようとする言い訳に過ぎない。

第三に、6月6日付け現代ビジネスが掲載したNPO法人情報公開クリアリングハウス理事長の三木 由希子氏による「コロナ危機で再露呈…全日本人が知るべき「公文書管理のヤバい実態」 「歴史的緊急事態」なのに記録ナシ?」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/73026
・『政府も専門家会議も明らかに間違っている  新型コロナウイルス感染症専門家会議の議事録(発言者名と発言内容のわかるもの)が、共同通信の情報公開請求に対して不存在となり、問題になっている。 専門家会議は議事概要のみ公表しており、議事録が作成されていないことは過去にも報道され、国会で質疑もされてきたが、政府は議事録を作成しないことに問題がないと、繰り返し説明してきた。 そして、5月29日に行われた専門家会議の記者会見では、議事録の作成については、「基本的には政府の決めること」(脇田隆字座長、尾身茂副座長)と他人事のような回答をしていた。 政府の説明も専門家会議の認識も、明らかに制度的に間違っている。 筆者が理事長を務める情報公開クリアリングハウスでは、3月13日付で要望書を発表し、関係行政機関に送付してすでに問題点などを指摘し、改善を求めているが、この間、一向に是正されないし、特に政府は誤った不適法な認識を平然と繰り返し述べてきた。 この誤った認識は、新型コロナ対策本部会議前に開催されている、首相のもとに関係閣僚、各省庁幹部が集まる「連絡会議」の記録作成問題でも、繰り返されている。 改めて、何が間違っているのか整理しておきたい』、国民生活に重大な影響を与える「会議」なのに、「議事録」が「不存在」とは腹が立った。
・『「歴史的緊急事態」なのに…  議論の混乱と制度の曲解は、政府が新型コロナ対策を行政文書管理ガイドラインに定める「歴史的緊急事態」に指定したことから始まっている。 「歴史的緊急事態」とは、「国家・社会として記録を共有すべき歴史的に重要な政策事項であって、社会的影響が大きく政府全体として対応し、その教訓が将来に生かされるようなもののうち、国民の生命、身体、財産に大規模かつ重大な被害が生じ、または生じるおそれがある緊急事態」とされている。このような事態に対応する会議等については、特に記録の作成義務がガイドラインに定められている。 これは、東日本大震災と福島第一原発事故に対する政府対応会議の一部が、議事概要のみで議事録を作成していなかったことの反省から、緊急事態での記録作成に関するガイドライン改正が2012年に行われて設けられたものだ。 歴史的緊急事態対応の会議について、ガイドラインは二つの類型で記録の作成を定めている。 一つは、「政策の決定又は了解を行う会議等」だ。これについては、議事の記録(開催日時、開催場所、出席者、議題、発言者及び発言者名を記録したもの、以下「議事録」とする)の作成と、配布資料等の保存を求めている。 もう一つが「政策の決定又は了解を行わない会議等」だ。行政機関の対応を円滑に行うため、政府全体として情報交換を行う会議等とされ、活動期間、活動場所、チームの構成員、活動の進捗状況や確認事項などを記録した文書や配布資料などを保存することが求められる。 この「政策の決定又は了解を行う会議等」に、専門家会議や連絡会議は当たらないので議事録の作成は必要ないと繰り返し政府は説明している。これに対して、決定・了解を行う会議に該当するという主張を繰り返す意見も散見されるところだ。 しかし、専門家会議や連絡会議の議事録や記録の作成義務は、歴史的緊急事態か否かは実のところまったく関係なく、常に作成が義務付けられている。それを、歴史的緊急事態に当たるので、議事録等の作成の義務がないと政府は一貫して説明しているのだ。 どういうことかというと、「歴史的緊急事態」と指定することによって、特に重大な事態に関する記録になるので、通常の文書の作成義務や行政文書の保存義務に上乗せして、その義務の範囲を拡大することをガイドラインは目的としている。あくまでも、通常の義務に上乗せした義務を定めているのだ』、「緊急事態での記録作成に関するガイドライン改正」は民主党の野田政権時代だ。よもや憎き民主党政権が決めたガイドラインなので無視しているというのではあるまい。「歴史的緊急事態に当たるので、議事録等の作成の義務がないと政府は一貫して説明している」、こんな説明にもならない屁理屈がまかり通るとは、野党議員やマスコミは何をしているのだろう。
・『出席者が誰かがわかればよい?  そこで、通常の文書の作成義務の範囲が何かが問題になるのだが、それは明確だ。 ガイドラインは、審議会等や懇談会等について議事録の作成を義務付けている。この「懇談会等」に専門家会議が該当する。そのため、歴史的緊急事態か否かはまったく関係なく、専門家会議を開催する以上は、発言者名と発言内容を記録した議事録を作成しなければならない義務を政府は負っている。 そして、専門家会議が「懇談会等」に該当することは、事務局である内閣官房自身がすでに認めている(2020年5月14日中日新聞朝刊「専門家会議議事録作らず」)。しかし、記事によると、内閣官房は取材に対し、「誰が何を言ったかなどの発言者と発言内容を紐づけることまで求めていない」と回答したという。また、6月1日の記者会見で菅内閣官房長官も同様のことを述べている。 要は、議事録に記載すべき発言内容と発言者名とは、誰の発言かを記録するのではなく、出席者が誰かがわかればよいという解釈をしているようである。そのため、内閣官房の説明だと、現在公表されている専門家会議の議事概要が、ガイドラインの定める議事録に該当すると主張しているようだ。 これは、ガイドラインの曲解にほかならない。ガイドラインは議事録として、発言者名と発言内容とは別に出席者を記録することも求めているからだ。出席者と発言者名をわけて書いているのだから、出席者名だけが記載されている議事概要は、議事録には当たらないことは明らかだ。 内閣官房の解釈は、自己都合で恣意的に曲解している。専門家会議の議事録をここまでルールを曲解して正当化しようとする姿勢には、内閣官房の新型コロナ対策そのものが自己都合でどうにでも曲解できるような進め方をしているのではないかという疑問を持たざるを得ない。 そして大変奇妙なのが、この曲解した解釈論は6月1日の菅官房長官会見まで開陳されなかったということだ。それまで繰り返し主張してきたのが、専門家会議が政策決定・了解を行う会議ではないので議事録作成義務がなく、ガイドラインに沿って適切に対応しているという認識だ。 これだと、議事録の作成が義務づけられている会議である専門家会議について、歴史的緊急事態に当たるとその義務がなくなってしまう。 その理由が、政策決定・了解を行わない会議だからということになるので、歴史的緊急事態と指定したことによって、政府は文書の作成義務の範囲が狭まる解釈を行い、それを実行き(正しくは「し」)たことになるのだ。 繰り返しになるが、あくまでも歴史的緊急事態への指定は、通常の文書の作成義務等に上乗せして、通常は作成が義務付けられていない記録の作成を求める趣旨であって、通常から義務付けられていることをしなくてよい、というものではない。かなり本末転倒な状況になっている』、「歴史的緊急事態」だから「議事録作成」の手間を省くというのならともかく、「歴史的緊急事態と指定したことによって、政府は文書の作成義務の範囲が狭まる解釈を行い」との政府側の主張は、全く論理破綻しているのに、平然としているとは信じられない。マスコミや野党が追及すべきだ。
・『「連絡会議」の記録作成問題  同じような事態は、いわゆる「連絡会議」の記録作成問題でも見られる。 2月27日の新型コロナ対策本部会議で突如決まった小中高校の一斉休校要請が、いったいどういう経緯で決まったのかという問題から、本部会議前に首相のもとに関係閣僚、各省庁幹部が集まって「連絡会議」が行われていることが明らかになった。 本部会議は頻繁に開催されているが、開催時間は1回あたり10~15分程度。実質的なことを話し合うほどの時間はないので、具体的な議論や方針の検討は「連絡会議」で行われているとみられることから、この記録の作成が問題になった。 連絡会議問題に対する野党からの追及を受けて、政府はガイドラインに定める歴史的緊急事態に新型コロナ対策が指定されるに至ったのだが、ここでもそれによって話が歪んでいくことになる。 モリカケ日報問題を受け、2017年12月に行政文書管理ガイドラインが改正されたのだが、そこには連絡会議の記録作成義務に該当するものが含まれている。それが、「打ち合わせ等の記録」の作成だ。 これは、加計学園問題で、内閣府と文科省、内閣府と自治体の間の打ち合わせの記録などが、特に内閣府で作成されていなかった問題を受けたもので、政策の立案や事業の実施方針に影響を与える打ち合わせ等については、記録を作成することが義務づけられた。 常識的に考えれば、「連絡会議」は首相以下関係閣僚、各省庁幹部が集まって打ち合わせ等を行っているのだから、政策の立案や事業実施の方針に影響を与えるものに他ならない。 連絡会議を行った際には、どのような情報が確認されているのか、どのような指示があったのか、どのような方針が確認されているのかなどは、少なくとも打ち合わせ等記録として残されていなければならない。 これは、歴史的緊急事態に該当するか否かとはまったく関係のなく、常に行わなければならないものだ』、全く同感である。
・『政府はどんなこともできてしまう  しかし、「連絡会議」問題に対して、政府は過去にさかのぼってこれから記録を作ると3月に入って国会で答弁し、また会見等で説明してきた。 これは、モリカケ日報問題を受けてガイドラインを改正し、公文書管理の徹底を図ったとする政府、特に官邸が、そもそもガイドラインの求める記録の作成をしていなかったと明らかにしたにほかならない。 ここで議論されるべきは、本来、打ち合わせ等記録は、議事録のような発言者名と発言内容まで記録するまで常に求めるものではないので、歴史的緊急事態と指定したことで、通常の範囲を超えて「連絡会議」の記録をどの程度の内容で作成するかなのだ。 ところが、菅官房長官は記者会見で、連絡会議は「先に『歴史的緊急事態』に指定されたことで義務付けられる議事録作成の対象には含まれない」(2020年3月11日付時事通信「新型コロナ連絡会議、議事録作成の対象外 菅官房長官『報告の場』」)と述べている。 連絡会議について誰が何を言ったのかなどの記録の作成は必要ないということだ。むしろ、歴史的緊急事態に指定したことで、通常は作成しなくてよい連絡会議の記録を作成することにしたかのような認識を政府は示している。 結局のところ、歴史的緊急事態という言葉がバズワード化して、政府はその範囲のみで自らの文書作成義務などについて説明して論点を矮小化し、政治もマスメディアもその範囲で政府を批判する。 そのことによって、政府に専門家会議などの議事録等を作成しないことの理由を与えてきてしまった状況から、全く抜け出せていない。 かえって、歴史的緊急事態に指定したことで、政策決定・了解を行う会議のみ議事録作成が必要であるという政府の認識は、公文書管理法のもとで義務付けられる文書の作成義務の範囲を切り下げ、記録を作成しなくてもよい言い訳に使われている。 こんなことが許されるなら、政府の公文書管理はかなり恣意的かつご都合主義的な解釈で、どんなこともできるということになってしまうだろう』、「歴史的緊急事態という言葉がバズワード化して、政府はその範囲のみで自らの文書作成義務などについて説明して論点を矮小化し、政治もマスメディアもその範囲で政府を批判する」、「専門家会議などの議事録等」と同じだ。これを受け入れている「マスメディア」も情けない。
・『事実関係すら確認できない  また、専門家会議の議事録作成問題は、別の観点から考える必要がある。 5月29日に西村大臣は記者会会見で、「自由かっ達な議論をしてもらうことが大事」であるので、発言者を特定しない議事概要を残すことを第1回専門家会議で説明し、了解を得た」と述べている。 5月29日夜には専門家会議による記者会見が行われ、議事録の作成についても質問され、脇田隆字座長、尾身茂副座長ともに、議事録の作成については「政府の方でお決めいただくこと」という認識を繰り返し述べた。また、脇田座長は「議事録に関しては本当にどちらでも私は構わないという立場」とも述べている。 この発言も実のところ、大変無責任極まりないのだ。なぜなら、「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の開催について」(2020年2月14日新型コロナウイルス感染症対策本部会議決定)には、「前各項に定めるもののほか、専門家会議の運営に関する事項その他必要な事項は、座長が定める」とあるからだ。 「前各号」の中には、会議運営や議事録の作成などについての定めがないので、会議の記録をどのように作成をするのかは、公文書管理法やガイドラインをふまえて「座長が定める」ことになる。「第1回会議で了解をいただいている」ことが、座長以下構成員により決定した会議運営に関するルールということに形式的にはなるのだ。 しかし、第1回専門家会議の議事概要にはそのこと自体が記録されていない。そのため、第1回会議でそのような説明が行われたのかも確認ができず、構成員の了解を得た事実も確認できないし、第2回以降の配布資料の中に、会議運営に関する内部の定めの資料もない。 事実関係すら確認できないような状態になっている上、座長が会議運営について必要なことを定めるのだから、政府の問題としている時点で自らの責任を放棄していることにもなる。 もちろん、専門家会議のような有識者会議では、たいがい、会議の運営方法については各行政機関の事務方が案を用意し、多くの場合有識者はそれに対して特に意見もなくその通りに事実上従っている。 しかし、本来は、専門家会議をはじめ有識者会議は、事務方の協力を得つつも、政府から独立的に専門的知見をもとに議論し、政策形成や提言などを行うものだ。 その会議の運営について、発言者名を特定されるような記録が残されると、自由かった達に意見が言えなくなるか否かは、政府が決めることではなく、そこに参加をしている有識者の間の合意をもとめることが筋だ。 「本部決定」が会議の運営については、座長が決めるとしているのは、こうした建前によっている。会議の運営については、政府の問題ではなく専門家会議の問題であり判断であることをよく自覚して判断してほしい。 少なくとも、議事録の作成についてどのような了解や説明があったことすら確認できない議事概要しか作成されていないことを、専門家会議としてどう評価しているのかは、明らかにすべきだろう』、「「第1回会議で了解をいただいている」ことが、座長以下構成員により決定した会議運営に関するルールということに形式的にはなるのだ。 しかし、第1回専門家会議の議事概要にはそのこと自体が記録されていない」、「座長」発言も含め、恐るべき無責任体制だ。記者会見では、偉そうにしているが、実態はこれほど酷い無責任体制とは、取材するマスコミも突っ込むべきだ。大本営発表の二の舞を繰り返すべきではない
・『過去の公文書問題から何を学んだのか  また、専門家会議については公式会議の議事録係に作成されるようになったとしても、おそらくのちに経緯の検証ができないことは避けがたいと思われる。 専門家会議の開催日はほぼ、見解や提言の公表と記者会見日と一致している。その日のうちに記者会見するには、専門家会議で見解や提言を作成するための議論をしたのでは間に合わないからだ。 そうすると、専門家会議の議事録が作成・公開されたとしても、なぜこのような見解・提言になったのか、どのようなデータや資料を基に検討等を行ったのかなどは検証できないだろう。 事実、専門家会議の構成員も繰り返し、頻繁に非公式の意見交換等を行っていると発言している。もちろん、非公式の意見交換等を行ってはならないということではないが、公式会議が、専門会議としてのアウトプットを実質的に作り上げてく場として機能していないと、関係する記録による検証性はかなり乏しいことになるだろう。 こうした二重構造状態を、当然という理解でいるなら、専門家会議はそれまでということになる。言い換えると、政府において専門家の果たしてきているある意味不透明な役割が、専門家への尊重や尊敬を損なってきたことを繰り返すことになるだろう。 新型コロナ対策で示す政府の公文書管理に関する認識は、単に記録を作成するか否かという問題ではなく、政府として果たすべき義務や責任について、ご都合主義的かつ恣意的に解釈して自分の正当性を主張する、という政府の基本姿勢を示しているに他ならない。 2018年6月5日、公文書管理に関する数々の不祥事を受け、全閣僚が出席して開催された「行政文書の管理のあり方等に関する閣僚会議」の場で、安倍首相は、公文書に関するコンプライアンス意識の改革を促す実効性のある取組みの推進を指示した。いったい何をコンプライアンス意識としたのか。それが問われている』、説得力溢れた主張で、全く同感である。
タグ:安倍政権はなぜこれほどの好き勝手ができるのか。 答えは簡単だ。誰がいつ、どんな理由でものごとを決めたのかを記した公文書を官僚たちが残さないからだ 「「黙っていればバレない」霞ケ関の官僚はなぜ「公文書破棄」に手を染めるのか=毎日新聞取材班」 サンデー毎日・エコノミスト (その6)(「黙っていればバレない」霞ケ関の官僚はなぜ「公文書破棄」に手を染めるのか=毎日新聞取材班、首相の決断が検証不能に…霞が関による隠ぺいの実態―毎日新聞取材班『公文書危機 闇に葬られた記録』本文抜粋、コロナ危機で再露呈…全日本人が知るべき「公文書管理のヤバい実態」 「歴史的緊急事態」なのに記録ナシ?) 過去の公文書問題から何を学んだのか 「行政文書の管理のあり方等に関する閣僚会議」の場で、安倍首相は、公文書に関するコンプライアンス意識の改革を促す実効性のある取組みの推進を指示 闇に消える官僚メール 公文書管理 特区担当の内閣府から、大学担当の文科省に送信されたもので、特区の選定条件が修正されたと書かれていた。この修正により、今治市に決定する流れができる 次官級幹部 「コロナ危機で再露呈…全日本人が知るべき「公文書管理のヤバい実態」 「歴史的緊急事態」なのに記録ナシ?」 「歴史的緊急事態」なのに… 公文書管理法 連絡会議を行った際には、どのような情報が確認されているのか、どのような指示があったのか、どのような方針が確認されているのかなどは、少なくとも打ち合わせ等記録として残されていなければならない。 これは、歴史的緊急事態に該当するか否かとはまったく関係のなく、常に行わなければならないものだ 「第1回会議で了解をいただいている」ことが、座長以下構成員により決定した会議運営に関するルールということに形式的にはなるのだ。 しかし、第1回専門家会議の議事概要にはそのこと自体が記録されていない 歴史的緊急事態という言葉がバズワード化して、政府はその範囲のみで自らの文書作成義務などについて説明して論点を矮小化し、政治もマスメディアもその範囲で政府を批判する 歴史的緊急事態と指定したことによって、政府は文書の作成義務の範囲が狭まる解釈を行い 出席者が誰かがわかればよい? 政府はどんなこともできてしまう 本部会議前に首相のもとに関係閣僚、各省庁幹部が集まって「連絡会議」が行われている 事実関係すら確認できない 歴史的緊急事態に当たるので、議事録等の作成の義務がないと政府は一貫して説明している 緊急事態での記録作成に関するガイドライン改正 政府も専門家会議も明らかに間違っている 三木 由希子 現代ビジネス 過程のなかで総理などといろいろやりとりはあるかもしれないが、それを公文書として残しておく発想は正直いってないね 官僚の本音 第八章「官僚の本音」からの抜粋 毎日新聞のキャンペーン報道「公文書クライシス」 「ALL REVIEWS:首相の決断が検証不能に…霞が関による隠ぺいの実態―毎日新聞取材班『公文書危機 闇に葬られた記録』本文抜粋」 yahooニュース 極端にいえば、メールなんて電話で話すのと同じだから。文書じゃない。官僚はみんなそんなふうに思っている 上司に『さっき送ったメール、公文書にしておきます』って言ったら、『お前、大丈夫か』って変な目で見られちゃう だいたいメールが公文書になると思っている公務員なんていない 仮にだよ、わたしが個人的に保管しているこの手のメールがだれかに特定されて、情報公開請求されたとする。でも、『もう消したからありません』とウソをつくよ。絶対にバレないから ‶萩生田メール 文科省の調査は、学園の計画の早期実現が「総理のご意向」と書かれた文書が同省から流出したのがきっかけ 文科省が1通の公用メールを公表 特に若い職員はメール世代だし、上司から『そんなの聞いてないぞ』と言われるのが嫌だから、証拠が残るメールのほうがいいみたいだね 5年ぐらい前までは、公用パソコンで報告書をつくったら、紙にして上司に回していた。それがいつの間にか『報告書は電子メールに添付して回せばいいですよね』となり、今では『添付文書もわざわざつくる必要はないですよね』となっている。ベタ打ちして送信したら、それでおしまい 最近、霞が関の官僚の間でベタ打ちメールの報告が増えてる 「連絡会議」の記録作成問題 どんな決定を下しても永遠に検証されることがないのだ
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フェイスブック問題(その3)(FB幹部 「トランプはデジタル広告で大統領選に勝利」と発言、トランプの投稿に警告表示を付けたツイッターをフェイスブックも支持?、フェイスブック「社員の反乱」に苦慮するザッカーバーグ、フェイスブック 怒る社員に「人種間の平等」約束 トランプ米大統領の投稿「放置」で不満噴出) [メディア]

フェイスブック問題については、昨年3月4日に取上げたままだった。今日は、(その3)(FB幹部 「トランプはデジタル広告で大統領選に勝利」と発言、トランプの投稿に警告表示を付けたツイッターをフェイスブックも支持?、フェイスブック「社員の反乱」に苦慮するザッカーバーグ、フェイスブック 怒る社員に「人種間の平等」約束 トランプ米大統領の投稿「放置」で不満噴出)である。

先ずは、本年1月11日付けForbes「FB幹部、「トランプはデジタル広告で大統領選に勝利」と発言」を紹介しよう。
https://forbesjapan.com/articles/detail/31684
・『フェイスブック幹部のアンドリュー・ボスワースは1月7日、社内向けの掲示板で「ドナルド・トランプが2016年の米国大統領選挙で勝利を収めたのは、彼のフェイスブックの広告戦略が正しかったからだ」と発言した。 また、今年の大統領選挙でフェイスブックの社員がトランプの再選を阻止するような行為をしてはならないと述べた。その後、ニューヨーク・タイムズ(NYT)が彼の発言を引用した記事を掲載したのを受けて、彼は自身の発言の意図を改めてフェイスブック上で公開した。 ボスワースは、フェイスブックはトランプが大統領に選出されたことに関し、一定の責任があると述べた。しかし、トランプが勝利したのは民主党が主張するように、フェイスブックの不手際が原因ではないという。 「ドナルド・トランプを勝たせた責任がフェイスブックにあるかと問われれば、答はイエスだ。しかし、彼が勝ったのはロシアによる情報操作や、ケンブリッジ・アナリティカの問題があったからではない。彼が大統領に選出されたのは、どの候補よりも優れたデジタル広告戦略をとったからだ」と彼は述べた。 彼はさらに、フェイスブックの社員がトランプの再選を阻止するため、広告のルールを変更するような誘惑に惑わされてはならないと続けた。意見の違いや、悪趣味だという理由から、フェイスブックのリーチを制限してはならないというのが、ボスワースの見解だ。 彼の話は広範囲に及び、フェイスブックを砂糖に例えつつ、「節度ある利用」が大事であるとした。ケンブリッジ・アナリティカ問題に関しては、「彼らはガマの油を売りつけるようないかがわしい商売人だった。自社のツールの能力を誇大宣伝していたが、実際にはほとんど効果をあげていなかった」と述べた。 ボスワースは自身がリベラル派であり、フェイスブックの力でトランプの再選を阻止したい思いにかられることもあると述べた。しかし、ボスワースは「ロード・オブ・ザ・リング」の逸話を引用しつつ、「そのような行為は絶対に避けなければならないし、もしも実行すれば恐ろしい結果につながる」と続けた。 フェイスブックは民主党、共和党の両陣営から世論に与える巨大過ぎる影響力を理由に、非難を浴びている。左派は同社がフェイクニュースや陰謀論を放置した結果、トランプを有利にしたと主張する。一方で、保守側はフェイスブックが右よりの意見を排除していると不満を述べている』、「ボスワースは自身がリベラル派であり、フェイスブックの力でトランプの再選を阻止したい思いにかられることもあると述べた。しかし・・・「そのような行為は絶対に避けなければならないし、もしも実行すれば恐ろしい結果につながる」、驚くほどの居直りだ。「彼が大統領に選出されたのは、どの候補よりも優れたデジタル広告戦略をとったからだ」、意味不明だ。

次に、5月29日付けNewsweek日本版「トランプの投稿に警告表示を付けたツイッターをフェイスブックも支持?」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/05/post-93540.php
・『<ソーシャルメディア上での虚偽情報や誹謗中傷はどこまで許されるのか。ツイッターがトランプの怪しげなツイートに警告表示をつけたのに怒ったトランプは、ソーシャルメディアを規制する大統領令に署名したが> ツイッターがドナルド・トランプ大統領の虚偽ツイートに「警告表示」を付けた問題で、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は5月28日、テレビに出演してソーシャルネットワーク上での言論の自由について考えを語り、同社のポリシーに違反した者は、たとえ政治家でもその投稿を削除すると述べた。 「私たちは、何が真実で何が誤りかを判定する立場にはないが、だからといって政治家であれ誰であれ、好きなことを言っていいことにはならない」と彼は主張した。 ザッカーバーグは、フェイスブックのポリシーは「人々にできる限り発言の機会を提供する」ことだと説明。だがその発言に、人に害を及ぼす内容や暴力を引き起こす内容、嘘の情報などが含まれていた場合には、「その発言者が誰であれ、投稿内容を削除する」と述べた。 彼は削除対象とする投稿の例として、「実際には違うのに、ある病気の治療に特定のものが有効だと証明されたと主張する投稿」を挙げた。フェイスブックは3月に、人々の健康に悪影響を及ぼすニセ情報の拡散を防ぐためとしてブラジルのジャイル・ボルソナロ大統領の投稿を削除している。ボルソナロは投稿した動画の中で、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)の治療には、抗マラリア薬のヒドロキシクロロキンが効くと主張した。治療薬として期待されているが、深刻な副作用の報告もある薬だ。「守るべき一線はあり、今後もそれは守っていく」とザッカーバーグは説明した』、「ボルソナロ大統領の投稿を削除」したのは当然の責務だ。
・『トランプの投稿へのツイッター対応を批判  だがザッカーバーグは今週早くに、逆のことも言っていた。ツイッターがドナルド・トランプ米大統領の事実関係が疑わしい投稿に事実確認(ファクトチェック)を促す注記を表示したことを批判した。トランプは5月26日の投稿の中で、カリフォルニア州が新型コロナウイルスの感染回避のため、11月の大統領選では郵送による投票を認めると発表したことについて、「郵便投票は不正選挙を招く」と主張していた。 ツイッターはトランプのこのツイートに、郵便投票が不正につながる証拠はない、と説明するページへのリンクを貼った。 ツイッターのジャック・ドーシーCEOは、大統領のツイートについて事実確認の注意喚起を行った自社の対応を擁護。27日にツイッター上に発表した声明で、「私たちは今後も、世界中で行われる選挙についての不正確な情報を指摘していくつもりだ。私たちが間違いを犯した場合には、それを認めて謝罪する」と述べた。 ドーシーはさらにこう続けた。「私たちは『真実の裁定者』になるつもりはない。私たちが目指しているのは、矛盾する発言を指摘し、論争の対象となっている情報を示し、人々が自分で判断できるようにすることだ。私たちが事実確認を促した理由がユーザーにはっきりと分かるように、私たちの透明性を高めることは、非常に重要だ」 ザッカーバーグは28日にFOXニュースのインタビューに応じ、この中で今回のツイッターの対応について「間違った判断だと思うか」と問われると、「フェイスブックは人々のオンライン上での発言が真実であるかどうかを判断する裁定者になるべきではないと強く信じている」発言。ツイッターの対応を暗に批判し、こう続けた。「一般に、民間企業がそうしたことを行うべきではないと思う。特にプラットフォーム企業は、そのような立場を取るべきではない」 フェイスブックは2016年の大統領選の際に、ニュースサイトを装ったユーザーが誤った情報を拡散してトランプの勝利に「貢献した」ことなどをはじめ、データの取り扱いが不適切だったとしばしば批判を受けた。この問題は2018年、連邦議会で2度の公聴会が開かれる事態に発展し、ザッカーバーグも召喚されて、フェイクニュースの拡散とロシアの組織による政治広告の掲載について証言を行った。 トランプやその他のユーザーが虚偽情報を拡散するのを放置している、という批判はツイッターにも付きまとう。最近では、ジョー・スカボロー下院議員(現在はMSNBCの番組司会者)のスタッフだったローリー・クラウスティスが19年前に事務所で死亡したことについて、トランプは今週、彼女の死にスカボローが関与していたとツイートした。ローリーの夫ティモシーは、亡き妻を政治利用されたとして、ツイッターにこのツイートの削除を求めたが、応じなかった。 トランプは、ツイッターが郵便投票に関する自らの投稿に事実確認を促す注記をつけたことに強く反発。28日午後、同社をはじめとするソーシャルメディア企業の保護を弱める内容の大統領令に電光石火で署名した。最も、ソーシャルメディア上の虚偽情報の責任をプラットフォーム企業に帰するとすれば、トランプ自身の大量のツイートの多くも削除対象になりかねないが』、「ツイッターがドナルド・トランプ米大統領の事実関係が疑わしい投稿に事実確認・・・を促す注記を表示した」、のは立派な姿勢だ。これを批判する「フェイスブック」の姿勢にはやはり問題がありそうだ。

第三に、6月4日付けForbes「フェイスブック「社員の反乱」に苦慮するザッカーバーグ」を紹介しよう。
https://forbesjapan.com/articles/detail/34926
・『フェイスブックCEOのマーク・ザッカーバーグは6月2日、オンラインで開催した85分間の社内ミーティングで、彼の判断でドナルド・トランプの投稿を放置したことが、ジョージ・フロイドの殺害に抗議する人々の暴力的デモを引き起こし、会社の評価を損ねたことを認めた。 フェイスブックの社員らは、同社がトランプの人種的偏見に満ちた投稿を放置したことに、怒りを噴出させている。トランプはその投稿で、「略奪が始まれば、銃撃が始まる」と警告していた。 ザッカーバーグは2日の社内ミーティングで、今後は7つのポイントにもとづき社員らの懸念に対処していくと述べた。そこには社内の意思決定についての情報共有を進めることや、より幅広い意見を取り入れること、悪趣味なコンテンツへのラベルづけを検討することなどが盛り込まれていた。 ニュースサイトThe VergeのCasey Newton記者によるとザッカーバーグは、トランプの投稿を放置したことが、同社に「高い授業料」を支払わせることなったと述べたという。 ザッカーバーグはまた、今後も暴動が続くようであれば、フェイスブックが一時的にコンテンツポリシーを見直し、新型コロナウイルスに関する誤情報が問題化した際と同様の措置を講じる可能性についても言及した。 しかし、Newtonの取材に応じた従業員らは、ザッカーバーグが社員からの反発を恐れていることが、彼の表情や口ぶりから見てとれたと話した。「彼が本当の事を話していると思う社員は一人もいない」と従業員の一人は述べている。 ザッカーバーグは今回の社内ミーティングに先立ち、投稿を放置するという決定が正しかったと話し、この決定は自社のポリシーに違反していないと述べていた。 複数の幹部クラスの社員が、フェイスブックの上層部の決定を公然と非難し、多くの社員がツイッターでザッカーバーグに対する反発を表明した。 ザッカーバーグは社員らに次のように語った。「私は、自身の考えとプラットフォームの原則を分けて考える必要があることを認識していた。そこから導いた決定が、多くの人々を怒らせ、メディアの批判を浴びることになることも分かっていた」』、「ザッカーバーグは・・・彼の判断でドナルド・トランプの投稿を放置したことが、ジョージ・フロイドの殺害に抗議する人々の暴力的デモを引き起こし、会社の評価を損ねたことを認めた」、「85分間の社内ミーティング」で社員たちから責められてやむなく認めたのだろう。「複数の幹部クラスの社員が、フェイスブックの上層部の決定を公然と非難し、多くの社員がツイッターでザッカーバーグに対する反発を表明」、これでは殆ど反乱だ。
・『「トランプから電話を受けた」と告白  フェイスブックでは6月1日に多くの社員が仮想ストライキ(社員の多くが在宅勤務のため、こう呼ばれている)を行ったが、その翌日には一人のエンジニアが会社の方針を公然と批判し、辞職した。 ザッカーバーグは2日の社内ミーティングで、彼が投稿を放置する決断を下した後、トランプから電話を受けたことを明らかにした。彼はその電話で大統領に対し、投稿の内容に失望したことを伝えたという。 トランプによる投稿は、フェイスブックが16年前に創業して以来で最大の試練をザッカーバーグに与えている。社員らによる反乱は、前例を見ない事態を引き起こし、ザッカーバーグと社員らの間の亀裂を広げている。 フェイスブックはこれまで比較的、統合のとれた社内体制を維持してきており、2016年の大統領選挙後の混乱の際にも、社内から反発の声があがることは無かった。 ザッカーバーグは「SNSが世論の審判役になってはならない」という主張を繰り返しており、5月28日のFOXニュースのインタビューでは、ツイッターがドナルド・トランプの投稿に「根拠がない」とフラグ立てを行ったことを非難し、「フェイスブックは、人々のオンライン上での発言が真実であるかどうかを判断する裁定者になるべきではない」と発言していた』、「仮想ストライキ」とは、いかにもコロナ時代らしい試みだ。「トランプ」にとっては、「ツィッター」と違って「フェイスブック」は頼りになる存在だからこそ、電話したのだろう。しかし、「トランプによる投稿は、フェイスブックが16年前に創業して以来で最大の試練をザッカーバーグに与えている。社員らによる反乱は、前例を見ない事態を引き起こし、ザッカーバーグと社員らの間の亀裂を広げている」、代償は大きかったようだ。今後の対応を注視したい。

第四に、6月9日付けJBPressが掲載したニューズフロント フェローの小久保 重信氏による「フェイスブック、怒る社員に「人種間の平等」約束 トランプ米大統領の投稿「放置」で不満噴出」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/60841
・『社員から猛反発を受けている米フェイスブックは方針撤回を余儀なくされるようだ。マーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は6月5日、社員宛のメモで、同社のサービスに投稿されるコンテンツに対する規制を見直すと表明した。 国家による武力行使や、市民による暴動、暴力絡みの衝突が起きている地域の投稿について、規制方針を再検討するという』、前の記事でも紹介した通りだ。
・『ツイッターとスナップ、トランプ大統領のコンテンツを制限  ことの発端は、米ミネアポリスで白人警官に取り押さえられた黒人男性が死亡した事件。これを受け、大規模な抗議デモが全米各地に広がった。これに対し、トランプ米大統領はフェイスブックへの投稿で抗議デモへの参加者を「悪党」と呼び、「略奪が始まれば、銃撃も始まる」と警告した。 大統領はツイッターにも同じ内容の投稿をしたが、米ツイッターはこれに「暴力の賛美に関するツイッターのルールに違反しています」と注記をつけたうえで、利用者が「表示」をクリックしなければ閲覧できないようにし、コメントなしのリツイートや「いいね」、返信を禁止した。 また、写真・動画共有アプリ「スナップチャット」を運営する米スナップもトランプ大統領のコンテンツを制限する方針を決めた。スナップチャットには著名人の投稿などを特集・推奨する「ディスカバー」があるが、CNBCによると、スナップはここで大統領のコンテンツを取り上げないことにした。同社は声明で「人種間の暴力や人種的不公平を扇動する発言をディスカバーで表示することはできない」と述べたという。 その一方で、フェイスブックは大統領の投稿を容認した。現在も閲覧できる状態にしている。この「放置」に同社社員の不満が噴出。6月1日、在宅勤務中の社員数百人がストライキを起こしたと、米ウォールストリート・ジャーナルなどが報じた。社員らはザッカーバーグCEOをツイッターへの投稿などで非難した』、「ツイッター」が「注記をつけたうえで、利用者が「表示」をクリックしなければ閲覧できないようにし、コメントなしのリツイートや「いいね」、返信を禁止した」、予想以上に厳格な措置だ。
・『ザッカーバーグCEO「SNSは真偽の審判者になるべきではない」  ザッカーバーグ氏はかねて、トランプ大統領などの政治家の発言は、同社がその是非を判断すべきでないという方針を示していた。5月28日、ツイッターが大統領の投稿に注記をつけたことについてCNBCの番組に意見を求められた同氏は「SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の運営企業は真偽の審判者になるべきではない」と表明。「政治的な発言は民主主義社会において最も慎重に扱うべきものの1つ。政治家のメッセージは皆が見られるようにすべき」と述べた』、「ツイッター」CEOは、「「私たちは『真実の裁定者』になるつもりはない。私たちが目指しているのは、矛盾する発言を指摘し、論争の対象となっている情報を示し、人々が自分で判断できるようにすることだ。私たちが事実確認を促した理由がユーザーにはっきりと分かるように、私たちの透明性を高めることは、非常に重要だ」としているのに、「ザッカーバーグCEO」が「SNSは真偽の審判者になるべきではない」としたのは、明らかな論点ずらしだ。
・『規制の再検討約束も慎重に進める考え  しかし、フェイスブックはこの方針の見直しを検討する。前述した社員宛のメモで同氏は、「人種間の平等のために闘う」とし、規制を再検討し、導入すべき修正案がないかどうか確かめると、述べた。サービスの改善に向けた取り組みを進めることも明らかにした。 フェイスブックの方針はこれまで、「掲載を続ける」もしくは「削除する」の二者択一だった。これについても検討し、ツイッターが取った「注記」措置のような代替手段の導入が可能かどうか協議するとした。 その一方で、同氏は「一般的にこの方法はリスクをはらむ」とも指摘。「規則に違反していないコンテンツであっても、もし我々が好ましくないと勝手に判断すれば、そのように論説してしまう恐れがある」とし、慎重に進めていく考えも示している』、「フェイスブック」の今後の対応が大いに注目される。
タグ:トランプの投稿へのツイッター対応を批判 ザッカーバーグCEO「SNSは真偽の審判者になるべきではない」 「トランプの投稿に警告表示を付けたツイッターをフェイスブックも支持?」 オンラインで開催した85分間の社内ミーティング 「トランプから電話を受けた」と告白 スナップチャット Newsweek日本版 ボルソナロ大統領の投稿を削除 慎重に進めていく考えも ツイッターが取った「注記」措置のような代替手段の導入が可能かどうか協議 規制の再検討約束も慎重に進める考え 米ツイッターはこれに「暴力の賛美に関するツイッターのルールに違反しています」と注記をつけたうえで、利用者が「表示」をクリックしなければ閲覧できないようにし、コメントなしのリツイートや「いいね」、返信を禁止した 小久保 重信 JBPRESS トランプによる投稿は、フェイスブックが16年前に創業して以来で最大の試練をザッカーバーグに与えている。社員らによる反乱は、前例を見ない事態を引き起こし、ザッカーバーグと社員らの間の亀裂を広げている 仮想ストライキ 複数の幹部クラスの社員が、フェイスブックの上層部の決定を公然と非難し、多くの社員がツイッターでザッカーバーグに対する反発を表明 今後も暴動が続くようであれば、フェイスブックが一時的にコンテンツポリシーを見直し、新型コロナウイルスに関する誤情報が問題化した際と同様の措置を講じる可能性についても言及 トランプの投稿を放置したことが、同社に「高い授業料」を支払わせることなった 彼の判断でドナルド・トランプの投稿を放置したことが、ジョージ・フロイドの殺害に抗議する人々の暴力的デモを引き起こし、会社の評価を損ねたことを認めた 「フェイスブック「社員の反乱」に苦慮するザッカーバーグ」 「私たちは『真実の裁定者』になるつもりはない。私たちが目指しているのは、矛盾する発言を指摘し、論争の対象となっている情報を示し、人々が自分で判断できるようにすることだ。私たちが事実確認を促した理由がユーザーにはっきりと分かるように、私たちの透明性を高めることは、非常に重要だ ドーシーCEO ツイッターとスナップ、トランプ大統領のコンテンツを制限 「ドナルド・トランプが2016年の米国大統領選挙で勝利を収めたのは、彼のフェイスブックの広告戦略が正しかったからだ」 「フェイスブック、怒る社員に「人種間の平等」約束 トランプ米大統領の投稿「放置」で不満噴出」 Forbes (その3)(FB幹部 「トランプはデジタル広告で大統領選に勝利」と発言、トランプの投稿に警告表示を付けたツイッターをフェイスブックも支持?、フェイスブック「社員の反乱」に苦慮するザッカーバーグ、フェイスブック 怒る社員に「人種間の平等」約束 トランプ米大統領の投稿「放置」で不満噴出) フェイスブック幹部のアンドリュー・ボスワース 「FB幹部、「トランプはデジタル広告で大統領選に勝利」と発言」 フェイスブック問題
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ソニーの経営問題(その7)(ソニーが自動車業界から人を続々引き抜く理由 10年後を見据える「仕込み作業」の実態、ソニーがコロナ禍でも強さを見せる理由 元副会長に聞く「創業精神への回帰」 盛田・井深を間近に見てきた元副会長が語る、ソニーが金融事業を完全子会社化 真の狙いは「脱エレキ」の加速) [企業経営]

ソニーの経営問題については、2016年6月16日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その7)(ソニーが自動車業界から人を続々引き抜く理由 10年後を見据える「仕込み作業」の実態、ソニーがコロナ禍でも強さを見せる理由 元副会長に聞く「創業精神への回帰」 盛田・井深を間近に見てきた元副会長が語る、ソニーが金融事業を完全子会社化 真の狙いは「脱エレキ」の加速)である。

先ずは、昨年7月1日付け東洋経済オンライン「ソニーが自動車業界から人を続々引き抜く理由 10年後を見据える「仕込み作業」の実態」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/289791
・『ソニーが今、完成車メーカーやティア1(自動車部品の1次下請け)など、自動車業界からの人材採用に力を入れている。「たとえばホンダのような大手自動車メーカーであったら、大人数のプロジェクトで歯車の1つであっても、ソニーに行けば自分が牽引できる立場になり、研究開発環境もよい。そこで普通の半導体メーカーには行かない完成車メーカーの人材も、ソニーならと転職を決めている」(ソニー関係者)。 彼らを引き寄せているのが、半導体子会社のソニーセミコンダクターソリューションズだ。 「これから事業参入しようという新しい部署なので、何事にも意欲的に、自分で考えて行動できるようなポジティブな方を歓迎します」――。 こんな触れ込みで、ソニーのホームページの中途採用の欄には半導体関連の求人が複数掲載されている。募集している職種は、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転車向けセンサーのソフトウェアエンジニア、自動車の安全規格に準拠した開発体制を構築するための品質担当エンジニアなど。なぜ自動車業界の人材が必要なのか』、「自動車業界」の「自動運転」分野の技術者には、「ソニー」は確かに有力な転職先だろう。
・『次の成長軸の一つが車載半導体  7月1日発売の『週刊東洋経済』は、「ソニーに学べ!」を特集した。2008~2014年度の7年間で6度の最終赤字に陥り、一度は「もう終わった会社」の烙印を押されたソニーだが、今や高収益企業に変貌している。足元はゲーム事業の収益拡大などで好調ながら、中長期での成長軸が見えないという指摘もある。そこで2018年に社長に就任した吉田憲一郎社長は、2018~20年度までの中期経営計画の期間を「仕込み期間」と位置づけ、高い業績目標は設けずに次の成長軸作りを優先している。 その1つが、この車載半導体である。ソニーは、光を電子信号に変える撮像素子、CMOSイメージセンサーの世界シェア5割を握る。現在は売上高の8割が、アメリカのアップルや中国ファーウェイなどに向けたスマートフォンのカメラ用だが、市場は「2022年頃には頭打ちになると見られる」(IHSマークイットの李根秀主席アナリスト)。 そこで、この技術を用いて、自動運転車の「目」として周辺環境の認知に用いる車載センシングの事業化を進めている。2020年代半ばには市場が本格的に立ち上がるといわれる自動運転市場にあわせ、「人の命に関わることはやらない」という創業以来の不文律を破り、これまでほぼ手がけたことがなかった車載市場を狙う。そもそも半導体事業自体、車載向けに限らないものの、2020年度入社の技術系新卒の4割をここに振り分けるという力の入れようだ。) 2015年から専門部署が発足したという新しい事業であるため、ソニーの車載センサーのシェアは5%ほどとまだ低いが、品質面では夜間や逆光下などでも高画質の映像を撮影できる点で評価は高い。5割超のシェアを占めるアメリカのオン・セミコンダクターから「当社の最大のライバルはソニー」(同社副社長のデビッド・ソモ氏)と恐れられる存在だ。ソニーはすでにトヨタの高級車レクサス「LS」や、普及価格帯のクラウン、カローラ向けなどをデンソーに出荷しているほか、独ボッシュなどとも取引が始まっている。 ただ、ティア1以上のセンサーの技術を持つソニーも、自動車業界特有の、すりあわせ型開発や、温度や振動への耐性など、厳しい品質水準への対応は十分ではない。だからこそノウハウを吸収すべく、自動車業界出身の人材の獲得が必要なのだ』、「「人の命に関わることはやらない」という創業以来の不文律を破り」、初めて知ったが、分野を選んで慎重に進出するのであればやむを得ないだろう。
・『ルネサスの車載半導体トップが電撃移籍  昨年9月には、ルネサスエレクトロニクス(注)で車載半導体部門トップだった大村隆司氏が同社退社直後にソニーに移籍するという電撃人事もあった。ソニーでの役職は、半導体事業トップの清水照士に次ぐナンバー2、常務補佐(現半導体子会社副社長)だ。この移籍は、「大村氏がルネサスを辞めることがわかって数日での出来事。しかも、この引き抜きを知っていたのは、吉田社長、清水氏、(JPモルガン出身で半導体事業の財務企画を務める)染宮秀樹氏くらい。ソニーが車載向けにかける本気度が伝わってくる」(人材業界関係者)。 大村氏に引っ張られる形で、ルネサスで車載事業のCTO(最高技術責任者)室技師長を務め、大村氏の信頼が厚い板垣克彦氏もソニーへ移籍。彼らが持つ自動車業界の人脈を使って、マネジメント層の移籍も増えている。 半導体事業部門には、7月1日に「システムソリューション事業部」という新部署もできた。半導体事業において実質的に経営戦略のトップを務める、前出の染宮氏が事業部長に就き、これまでスマホ向け、車載向けなどに分散していたソリューション領域の企画開発を統合、センサーにAIを実装することで、収集したデータを活用するなど、一部品の販売に留まらない展開を目論んでいる。 同部署では「車の『目』だけでなく、現在、アメリカのエヌビディアなどが手がける自動運転車において、人間の「脳」のような推論機能を担う部分へ入るための準備も着々と進めている」(ソニー関係者)という。大規模な事業買収こそない半導体事業だが、中途採用で新しい血を入れることで、着実に新領域への進出を進めているのだ。 人材獲得に力を入れるのは、中途採用だけではない。今年ソニーは、新入社員の給与体系を改定し、AI開発ができるエンジニアなど一部の優秀な人材を中心に、1年目の年収を最高で730万円と、従来から3割程度引き上げることにした。従来は、入社2年目の7月までは人事評価で一律に「等級なし」をつけていたところを、1年目の7月段階で、主任、上級担当者に与えられる全5等級のうち、上から2番目の「4」の等級をつけることが可能になる。 採用コンサルタントの谷出正直氏はソニーのこの動きについて「現在、AIなどのデータサイエンス領域は国際的に見て圧倒的な売り手市場。日本国内でも高度な専門性やスキルを身につけた一部の学生は、大学卒業後、アメリカのグーグルなど海外IT企業にそのまま就職することも増えている。こうした層に振り向いてもらいたいというのがソニーの狙いだろう。もっとも、いきなり年収2000万円台も夢ではない米国IT企業に比べると給与格差はまだ大きい」と分析する。 グローバル採用も強化する。コンピュータサイエンスのトップ校である、アメリカのカーネギーメロン大学やインド工科大学、中国の北京大学、清華大学などに狙いを定め「今後ソニーが技術的な競争力を維持するうえで、GAFAなども含めた国際的な人材獲得競争に対して危機感をもって対応していきたい」(ソニー)』、「ルネサス」から車載半導体トップを含め多数が「移籍」、「AI開発ができるエンジニアなど一部の優秀な人材を中心に、1年目の年収を最高で730万円と、従来から3割程度引き上げる」、などソニーのてこ入れは本物だ。
(注)ルネサスエレクトロニクス:三菱電機、日立製作所の半導体部門が統合、その後、NECエレクトロニクスが合流してできた大手半導体メーカー。
・『採用した人材は研究開発にも振り向け  将来に向けた「仕込み」を重視するという現在の経営姿勢を明確に反映しているのは、事業に必ずしも直結しないR&D(研究開発)領域での新卒採用を強化していること。2020年度入社の新卒採用では、R&D人材の数を前年度と比べて2割増やす予定だとしている。 2018年7月に立ち上げ、中長期的な技術開発を担うR&Dセンターでは、エンジニアが自由に実機まで開発できる環境も整えた。「こうした『雇用特区』的な取り組みは最近ほかの大手家電メーカーなども始めている。5~10年後における事業の柱を作っていくためには、多くの企業が導入すべき取り組みだ」と、リクルートキャリアHR統括編集長の藤井薫氏は指摘する。ソニーで人事部門を担当する安部和志執行役常務は2月に行われた採用戦略説明会の場で、「自分の専門分野に限らず、さまざまなことに好奇心を持つやんちゃなエンジニアが欲しい」と語った。 競争力のある領域で優秀な人材をどれほど獲得できるか。10年後のソニーが成長し続けられるかどうかは、ここにかかっている』、「さまざまなことに好奇心を持つやんちゃなエンジニア」がどれだけ育つか注目したい。

次に、本年5月25日付けダイヤモンド・オンライン「ソニーがコロナ禍でも強さを見せる理由、元副会長に聞く「創業精神への回帰」 盛田・井深を間近に見てきた元副会長が語る」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/238002
・『コロナ禍であらゆる日本企業が難局を迎える中、ソニーの動きが力強い。金融子会社の株式公開買い付け(TOB)、AI搭載半導体の発表、新型ゲーム機・プレイステーション5の開発……。その相次ぐ布石の根底にあるのは、創業精神への回帰だ。吉田憲一郎社長は19日の経営方針説明会の冒頭で、「ファウンダーである盛田昭夫からの学びに、長期視点に基づく経営がある。新型コロナウイルスが世界を変えたいま、改めてその重要性を感じている」と語った。ソニーの精神とは何なのか?創業者を間近に見てきたソニー元副会長の森尾稔氏に聞いた』、「吉田憲一郎社長」はCFO出身の実務家なので、求心力を得る狙いもあって、「創業精神への回帰」を打ち出したのだろう。
・『「企業経営はマラソンだ」 盛田昭夫氏はそう言った  しばらく前、高木一郎君(ソニー専務、エレクトロニクス事業を担当)とお酒を飲みました。「テレビってずっと赤字だっただろう。最近やっと、利益が出るようになってよかったね」って僕が言ったら、高木君は「森尾さん、8年や9年の赤字ぐらいで諦めてどうするんですか」と返してくるんです。さらには、「サントリーのビール事業は46年間も赤字でした。それでもサントリーが諦めなかったから、今ここにプレミアムモルツがあるのですよ」と。ソニーの人からビールの話を聞かされるとは思わなかったけれどね(笑)(Qは聞き手の質問、A」は森尾氏の回答)。 Q:今の企業経営には短期的な成果が求められがちです。創業から5年で上場し、時価総額はユニコーン(約1000億円)で……といった具合に。株主が求めるし、社会も求めてしまう。でも実はもっと長い目線で経営すべき? A:(略歴はリンク先参照)僕はそうだと思います。そういうふうに僕らは育った、と言ったほうがいいかな。盛田さん(共同創業者の盛田昭夫氏)は常々、「企業経営はマラソンだ」と言っていました。隣の選手を気にして走っているようではいかん、自分のペースで走ればいい、と。だから四半期ごとの決算開示なんて、本当はやめたほうがいい。僕個人はそう思っています。株主には情報が必要ではありますから、もっと簡略な開示内容にすればよいと思っています。 Q:マラソン経営をするなら、経営者にはこらえ性が必要になりそうです。 A:そうそう。偉い人ほど短気な人が多いものですからね。 ただ、僕は、井深さん(共同創業者の井深大氏)や盛田さんの怒った顔を見たことがありません。井深さんの面白い話を1つしましょう。僕はずっと、開発部門にいたでしょう。部門では次に何を開発するかという事業計画をつくる会議が毎年あるのですが、その会議をしていると、井深さんがふらっと入って来る。そしてじっと20分ぐらい話を聞いて、ふらっと出ていくのです。その時に言い残していくのですよ。「君らがみんなで相談してあれかこれか、なんて言ったところで、イノベーションは起こせないよ」って』、「井深」氏の言葉は含蓄がある。
・『「全員の意見が一致するものはやってもしょうがない」  Q:みんなで相談するのがだめなら、どうしたらいいのでしょうか。 A:井深さんは「みんなが一致するようなテーマをやってもしょうがない」と言っているんです。井深さん自身、この考えに徹していました。 その最たるものが、撮像素子半導体だと思います。岩間さん(岩間和夫氏、1976年~82年の社長)がCCD(電荷結合素子)撮像素子を手掛けたのが元々ですが、実は井深さん自身は、CCDをやることに反対だった。しかし岩間さんは「社長の道楽としてやらせてもらいます」と貫いて、それを井深さんも盛田さんも許した。普通だったら、創業者が反対したらなかなかできませんよね。これがソニーのいいところだったと思います。 その岩間さん自身ですら、CCDの開発に苦戦していた1970年代には、「20世紀中には元を取れない(投資回収できない)と思う」と言っていました。それでも長期的にやっていくために、社長の道楽という言葉を使ったんですね。しかし結果として、今世紀中どころか80年代のうちに、ビデオカメラに搭載されて稼ぐようになりました。 Q:そして21世紀の今、CCDの流れを組んだCMOS(相補型金属酸化膜半導体)がソニーの稼ぎ頭となっています。 A:これはソニーの撮像素子技術の「S字カーブ」がまだ成立しているということだと思います。S字カーブってご存じですか? 縦軸が性能や価値、横軸が時間と考えてください。どんな技術も開発当初はなかなか性能が上がらなくて、ある時点からドーッと進歩するものです。それがS字の急カーブの局面です。ところがある時点で進歩は飽和状態を迎え、そこから後は開発当初と同様、目覚ましい進歩というのが難しくなる。技術による差別化が難しくなって、生産規模やコストの低さの競争に突入します。 たとえば液晶パネルだと、日本はコストが高いから、中国のような低コストかつ大規模生産ができる国にはなかなかかなわない。こういう局面になる前に、今の技術から下りて、次世代技術のS字に乗り移らないといけない。でも、次の技術が本当に可能性があるのかどうか分からないし、今ある技術のほうが性能が出るもんだから、乗り移るのはなかなか判断できないものです』、「井深さん自身は、CCDをやることに反対だった」、「しかし岩間さんは「社長の道楽としてやらせてもらいます」と貫いて、それを井深さんも盛田さんも許した」、初めて知った。「CCDの流れを組んだCMOS(相補型金属酸化膜半導体)がソニーの稼ぎ頭」、とは本当に分からないものだが、「井深さんも盛田さんも許した」というのはソニーの懐の深さなのだろう。
・『やる意味があるかどうか経営理念で決まる  ソニーの撮像素子については、いまだに技術の差別化ができているのだと思います。S字がものすごく長いのです。 ソニーしか作れないわけではなくて、最近だと韓国サムスン電子が1億画素を超える撮像素子を作ったそうです。原理で言うと、画素数が増えると解像度が上がる代わりに、感度が下がるというトレードオフの関係があります。 ところがソニーのCMOSは裏面照射のような技術で、競合企業と同じ画素数でもソニーの方が感度がいい、という他社にない特徴を出せている。これがソニーであれどこであれ、みんな同じトレードオフのルールに縛られるのなら、後は規模やコストの競争だけ。それではソニーがやる意味はありません。 Q:やる意味があるかどうか、というのは、ソニーの経営ではよく議論されたことですか。 A:ソニーがやって特徴を出せるのかどうか、ということですが、やる意味があるのかどうかの判断は最終的には、企業理念に基づくものです。そして理念は、すべての企業の経営において、非常に重要なものです。 ソニーで言うと井深さんが設立趣意書で、「技術者の技能を発揮する自由闊達な理想工場の建設」だとか「最先端の技術で文化の向上に資すること」を企業理念としました。 この設立趣意書は創業当時(46年制定)のもので、古くなるとみんな読まなくなるので、盛田さんが80年代に「ソニー・スピリッツ」としてまとめ直した。新しい技術を使って、これまでにないものを創って世の中に貢献するといった内容です。そして今の経営陣は、パーパス(存在意義、「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」としている)とバリュー(価値観、夢と好奇心・多様性・高潔さと誠実さ・持続可能性の4つを定めている)という言葉で経営理念を定めています。 Q:経営理念こそが重要だと指摘する経営者は他にもいます。たとえばコマツの坂根正弘元会長(現在は顧問)は、自身がもっとも会社に貢献したこととして、コマツウェイを明文化したことを挙げていました。利益を出す、株価を上げるといった数値目標に比べ、どこかきれいごとに聞こえなくもありませんが、実はとても重要? A:重要ですよ。なぜか分かりますか? 例えばソニーの場合、事業本部長のような立場になるとかなりの権限を与えられます。上に相談はしますが、経営トップはいちいち細かいことは判断しない。だから自分で考えなきゃいけない。自分で考えるとき基本になるのが、経営理念です。 近年はいろんな会社が、コーポレートガバナンス・コード(2015年6月に上場企業に適用)には経営理念を作るべきだと書いてあるから作ろう、と言って作るようになりました。でも作った後は実際には神棚に飾っておいたまま、みたいな状況も少なくありません。それじゃだめで、経営陣から社員まで、上から下まで一気通貫で共有している価値観にならないといけません。 その意味ではソニーでは、世の中に対する技術による貢献と、従業員に対して働きがいのある職場を提供するという2点が、時代を越えて経営の大きな目標と位置づけられ続けています』、「ソニーでは、世の中に対する技術による貢献と、従業員に対して働きがいのある職場を提供するという2点が、時代を越えて経営の大きな目標と位置づけられ続けています」、さすが「ソニー」だ。
・『そんなのできっこない! 絵に描いた餅プロジェクト  Q:昨年、旭化成フェローの吉野彰氏がリチウムイオン電池の技術でノーベル化学賞を受賞しました。受賞直後の編集部によるインタビューの中で、電池技術の開発が進んだ要因の一つとして「ソニーに森尾さんがいたから」と言及していました。 A:吉野さんは確か89年ぐらいに、ソニーに「共同開発をしましょう」と言ってこられた。うちはリチウムイオン電池については、西美緒さんという技術者が中心になって取り組んでいたから、共同開発はお断りしたんです。でも「性能の評価だけでもしてもらえませんか」とおっしゃるので、それはお受けしました。ユーザーの視点で、いろんな条件で性能を試しましたね。 89年は、パスポートサイズのハンディカムが大ヒットした年です。私はこの事業の開発技術部長だったのですが、ヒット後の最大の課題が「次のヒット商品をどう作るか」でした。通常の商品設計は1年ごとにするものですが、1年サイクルでは思い切ったものは生まれません。 Q:当時のソニーの勢いなら、目先を少し変えたぐらいでも製品は売れたでしょうね。 A:売れたと思いますよ。でも他社も同じことをやるから、圧倒するものはできない。だから新しい技術を盛り込んだ、画期的な製品を3年ぐらいかけてやろうと考えました。EMプロジェクトというのを立ち上げて、軽くて強力なリチウムイオン電池や非球面レンズといった技術を搭載しようと。電池は重要だったんです。 Q:EMってどういう意味ですか。 A:本当は何かの略で、エクストリームなんとか……。ところが現場の連中が「そんなこと実現できっこない、絵に描いた餅だ」と言ったものだから、「絵に描いた餅プロジェクト」って呼ばれました。 Q:なぜ飛び抜けたものをやろうと考えたのですか。会社がそう求めたのですか。 A:いやいや。ある部下が僕にそう進言したの。星飛雄馬(『巨人の星』の主人公)はいざというとき、隠し球で相手の三振を取ると言って、「森尾さん、僕らも絶対に隠し球がなきゃいけませんよ。毎年みんなと同じような競争をしていちゃだめだ」と言う。そして僕もそのとおりだと思った。 なぜなら、ターゲット設定こそが重要だからです。ターゲットを設定してしまうと、それ以上のものはできません。上司が低いターゲットを与えると、本来ならもっと能力を発揮できる部下も、ターゲットを上回るものをやらなくなる。それはもったいないし、部下という人材に対しても失礼。やる気の芽を摘んでしまいます。だからできるだけ背伸びをしたターゲットが必要なんです』、「EMプロジェクト」には微笑んでしまった。「ターゲットを設定してしまうと、それ以上のものはできません・・・できるだけ背伸びをしたターゲットが必要なんです」、さすが超優良企業だ。
・『台数や利益よりも若いファンを作ることが大事  Q:森尾さんがソニーの経営に関わっていた時代に比べ、今のソニーは厳しい企業間競争にさらされ、技術の差別化も難しくなっています。 A:僕らの時代より、今の経営者は難しいと思います。その点でひとつ言えるのは、僕らの世代の「最大の貢献」が何だったか、ということです。 ソニー最大のヒット商品としてウォークマンを指して、何億台も売れて利益を生み出した、と言う人があります。しかし本当に大事なのは、ウォークマンによって若い世代のソニーファンが生まれたことです。中学生なんかが競って、ウォークマンを買いたいと思ってくれたでしょう? その人たちは大きくなってからも、ファンで居続けてくれました。 今のソニーは、かつてとはビジネス構成が大きく変わっています。ゲームソフトだったり、映画だったり音楽だったり。こういった事業で今の経営陣が力を入れているのは、リカーリング・ビジネス。つまり、製品を売っておしまいではなく、お客さんとずっと続くつながりを大切にしています。僕は、これはすごくいいことだと思います。 ソニーというブランドには、若いファンを引きつけられるビジネスが常に必要です。ゲームのような若い世代が関心を持つ事業は、絶対に続けないといけない。現役の後輩たちと会うと、よくそういう話をしています』、「ゲーム」については馬鹿にしていたが、「若い世代が関心を持つ事業は、絶対に続けないといけない」、納得させられた。

第三に、5月28日付けダイヤモンド・オンライン「ソニーが金融事業を完全子会社化、真の狙いは「脱エレキ」の加速」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/238607
・『コロナショックをものともせず、ソニーが攻め続けている。来春63年ぶりに商号を変更し、ソニーグループとなる。また金融持ち株会社を完全子会社化する。業績堅調なソニーは電機業界で勝ち続けられるのか』、「商号」や組織変更の狙いは何なのだろう。
・『新生ソニーへ3つの組織変更 すでに現れていた予兆  「ファウンダーの盛田からの学びの一つに、『長期視点に基づく経営』があります。新型コロナウイルスが世界を変えた今、私は改めてその重要性を感じています」 5月19日に開かれた、ソニーの吉田憲一郎社長兼CEO(最高経営責任者)による経営方針説明会。冒頭に創業者の一人、盛田昭夫氏を持ち出す辺りが、吉田社長の生真面目さ、あるいは強かさの表れなのだろう。 吉田社長が長期視点に基づく経営感覚から導いたという、この日のビッグニュースは3点あった。 1点目に、グループ本社機能とエレクトロニクス(家電)事業の間接機能が混在していた「ソニー」を再定義。ソニーの社名を2021年4月から「ソニーグループ」に変更し、ソニーグループは本社機能に特化した組織にする。1946年創業の東京通信工業を58年にソニーと改称して以来、実に63年ぶりの社名変更となる。 2点目に、ソニーの商号は祖業のエレキ事業が継承する。吉田社長は「創業以来、ソニーというブランドを築き上げてきた主役」「ソニーの商号を受け継ぎ、価値向上を目指す」とエレキ事業を持ち上げて説明した。 3点目として金融持ち株会社の「ソニーフィナンシャルホールディングス(HD)」(持ち株比率65%)を完全子会社化する。吉田社長はコロナ危機で地政学リスクが高まる中、日本に安定した事業基盤を持つ会社の取り込みは、「経営の安定につながる」と説明。少数株主に帰属する利益として流出していた配当を取り込み、さらに税務上のメリットもあり、連結で年400~500億円の純利益増が見込めるという。 すでに組織変更の予兆はあった。 今春、エレキ事業を束ねる中間持ち株会社「ソニーエレクトロニクス」を設立。表向きの理由は「事業間の一体運営をさらに推進する」などと発表されたが、これまでも事業内連携は強めており、敢えて新組織を作ることに説得力がなかった。だが、今回ソニーを継承する受け皿としての位置付けが示され、外部から見ればようやく合点がいった。 他にも、ソニー関係者によると、ゲーム子会社の「ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)」に出向中だったソニー社員たちが今春、SIEへ転籍したという。この関係者は意図を測りかねていたが、「ソニー本体の先行整理」という意味合いがあったとすれば納得がいく。 ソニーの歴史と照らし合わせると、おもしろいのはやはり、エレキ事業がソニーの商号を継承することだ。 これまでの流れはむしろ逆で、ソニーからエレキ事業を外出ししていた。テレビ部門など次々と分社化を進め、各部門の経営責任を明確にした。パソコン(バイオ)、バッテリーなどは部門ごと売却した。 そんな厳しさはあっても、前社長兼CEOの平井一夫時代は、「エレキ復活」を掲げていた。ウォークマンなど輝かしいエレキ全盛時代の復興を望む、ソニーOBやソニーファンからの根強い声もあったからだろう。 吉田社長に代わってからは、たとえ看板倒れであったとしてもエレキ偏重の発言は少なく、今回の組織改編に当たっても、「多様性は経営の安定性」などと、グループ経営の重要性が強調された。 エレキ事業にソニーの“のれん”は譲って、祖業のプライドは傷つけない。されど本社からは切り分けて、グループの一事業としてこれまで以上に冷徹にコントロールする。今回の組織改編からはそんなソニーの意思が垣間見える。 奇しくもコロナショックにより事業別で最大のダメージを受けそうなのはエレキ事業だ。ソニーは21年3月期の営業利益で、20年3月期比50%以上減という悲惨な予想を立てている。吉田社長は経営方針説明会で「環境変化に応じた体質の強化にも取り組んで参ります」と意味深な説明をしており、リストラの四文字がちらつく』、「エレキ事業にソニーの“のれん”は譲って、祖業のプライドは傷つけない。されど本社からは切り分けて、グループの一事業としてこれまで以上に冷徹にコントロールする。今回の組織改編からはそんなソニーの意思が垣間見える。 奇しくもコロナショックにより事業別で最大のダメージを受けそうなのはエレキ事業だ・・・リストラの四文字がちらつく」、なるほど高度な戦略だ。
・『金融の完全子会社化の是非 米GEはリーマンで大痛手  前述のように、ソニーは金融持ち株会社のソニーフィナンシャルHD(傘下にソニー生命、ソニー損保、ソニー銀行)を完全子会社化する方針を示した。ゲーム事業、半導体事業、エレキ事業と肩を並べ、バランスよく利益貢献させるイメージだ。 吉田社長は、「コア事業であるからこそ、ここ数年で複数回にわたり持ち分比率を引き上げた」と説明した。だが、2代前のCEO、ハワード・ストリンガー時代は非コア事業と位置付けられ、だからこそ07年に上場子会社となった経緯がある。ソニーフィナンシャルHDにしてみれば一連の扱いはソニーの“ご都合主義”以外の何物でもないだろう。 それはさておき、金融事業への注力で思い起こされるのは米GE(ゼネラル・エレクトリック)の失敗だ。 周知の通り、GEは08年のリーマンショックで、当時収益の柱になっていた金融事業が大ダメージを受け、その後、「メーカー回帰」に向かった。 ソニーフィナンシャルHDの主力事業は個人向けの生命保険(ソニー生命)であり、中小企業向け融資やクレジットカードが主力だったGEの金融事業とはかなり異なるのは確かだ。金融事業とソニーが持つテクノロジーとのシナジーなど、吉田社長の説明にも一定の説得力はある。 ただし、GEは金融事業の大ダメージから大構造改革を進め、数年後には創業以来続いた家電事業を売却した。 「多様性による経営の安定性」を強調する吉田社長によもやそのようなことはないだろうが、メーカーが金融事業に深入りすると足下をすくわれることを、歴史は教えている』、「金融事業」といっても、「ソニーフィナンシャルHDの主力事業は個人向けの生命保険(ソニー生命)」であれば、リスクは小さく、「GE」の二の舞は避けられるのではなかろうか。
タグ:自動車業界からの人材採用に力を入れている 「ソニーが金融事業を完全子会社化、真の狙いは「脱エレキ」の加速」 (その7)(ソニーが自動車業界から人を続々引き抜く理由 10年後を見据える「仕込み作業」の実態、ソニーがコロナ禍でも強さを見せる理由 元副会長に聞く「創業精神への回帰」 盛田・井深を間近に見てきた元副会長が語る、ソニーが金融事業を完全子会社化 真の狙いは「脱エレキ」の加速) ソニーの商号は祖業のエレキ事業が継承 ソニーの経営問題 ソニーでは、世の中に対する技術による貢献と、従業員に対して働きがいのある職場を提供するという2点が、時代を越えて経営の大きな目標と位置づけられ続けています 「企業経営はマラソンだ」 盛田昭夫氏はそう言った 「全員の意見が一致するものはやってもしょうがない」 「GE」の二の舞は避けられるのではなかろうか しかし岩間さんは「社長の道楽としてやらせてもらいます」と貫いて、それを井深さんも盛田さんも許した 新生ソニーへ3つの組織変更 すでに現れていた予兆 「人の命に関わることはやらない」という創業以来の不文律を破り 台数や利益よりも若いファンを作ることが大事 ダイヤモンド・オンライン ソニーフィナンシャルHDの主力事業は個人向けの生命保険(ソニー生命) さまざまなことに好奇心を持つやんちゃなエンジニア ターゲット設定こそが重要だからです。ターゲットを設定してしまうと、それ以上のものはできません 金融の完全子会社化の是非 米GEはリーマンで大痛手 そんなのできっこない! 絵に描いた餅プロジェクト 「君らがみんなで相談してあれかこれか、なんて言ったところで、イノベーションは起こせないよ」 リストラの四文字がちらつく 創業精神への回帰 やる意味があるかどうか経営理念で決まる CCDの流れを組んだCMOS(相補型金属酸化膜半導体)がソニーの稼ぎ頭 採用した人材は研究開発にも振り向け 「ソニーがコロナ禍でも強さを見せる理由、元副会長に聞く「創業精神への回帰」 盛田・井深を間近に見てきた元副会長が語る」 できるだけ背伸びをしたターゲットが必要なんです エレキ事業にソニーの“のれん”は譲って、祖業のプライドは傷つけない。されど本社からは切り分けて、グループの一事業としてこれまで以上に冷徹にコントロールする。今回の組織改編からはそんなソニーの意思が垣間見える。 奇しくもコロナショックにより事業別で最大のダメージを受けそうなのはエレキ事業 金融持ち株会社の「ソニーフィナンシャルホールディングス(HD)」(持ち株比率65%)を完全子会社化 「ソニーが自動車業界から人を続々引き抜く理由 10年後を見据える「仕込み作業」の実態」 AI開発ができるエンジニアなど一部の優秀な人材を中心に、1年目の年収を最高で730万円と、従来から3割程度引き上げる 東洋経済オンライン 井深さん ソニーの社名を2021年4月から「ソニーグループ」に変更し、ソニーグループは本社機能に特化した組織にする ルネサスの車載半導体トップが電撃移籍 井深さん自身は、CCDをやることに反対だった ソニーというブランドには、若いファンを引きつけられるビジネスが常に必要です。ゲームのような若い世代が関心を持つ事業は、絶対に続けないといけない 次の成長軸の一つが車載半導体
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ドイツ(その3)(旧東独中心に過熱する極右・ネオナチの暴力、ドイツ憲法の番人が危うくするEUの一体性 EUの司法判断を無視する動きが広がるおそれ、ドイツが「消費税率3%下げ」に踏み切る意味 歳出削減を徹底 単なる景気対策ではない) [世界情勢]

ドイツについては、2018年1月30日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その3)(旧東独中心に過熱する極右・ネオナチの暴力、ドイツ憲法の番人が危うくするEUの一体性 EUの司法判断を無視する動きが広がるおそれ、ドイツが「消費税率3%下げ」に踏み切る意味 歳出削減を徹底 単なる景気対策ではない)である。

先ずは、昨年11月21日付け日経ビジネスオンラインが掲載した在独ジャーナリストの熊谷 徹氏による「旧東独中心に過熱する極右・ネオナチの暴力」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00023/112000113/?P=1
・『旧東ドイツでは、旧西ドイツよりも右派ポピュリズムが高まりを見せている。旧東ドイツでは右翼政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の人気が旧西ドイツよりも高い。2017年の連邦議会選挙、今年の欧州議会選挙ともに、AfDは旧東ドイツで20%を超える得票率を記録した。これは旧西ドイツでの同党の得票率の2倍を超える。 AfDは2017年の連邦議会選挙で第3党となり、約100人の議員を送り込んだ。これは旧東ドイツの有権者の強力な支持なしには不可能だった。ドイツの全ての州議会に議席を持っている』、いまや「AfD」は無視できない大きな勢力になったようだ。
・『旧東ドイツでの右派ポピュリズムの高まり  今年9~10月にザクセン州、ブランデンブルク州、チューリンゲン州で実施された州議会選挙でも、AfDは得票率を前回の選挙に比べて2~3倍に増やし、これらの3州で第2党になった。キリスト教民主同盟(CDU)やドイツ社会民主党(社民党、SPD)の得票率は、どの州でも大幅に減った。バイエルン州トゥッツィング政治教養センターのウルズラ・ミュンヒ所長は、「AfDは旧東ドイツで地域政党として定着するだろう。AfDの躍進は、一時的な現象ではない」と指摘する。 AfD幹部の発言には、排外主義、人種差別主義、反ユダヤ主義、ナチスの犯罪の矮小(わいしょう)化などの傾向がはっきりと表れている。彼らは、第2次世界大戦後の西ドイツ政府・社会の歴史認識や常識を修正しようとしているのだ。つまりこの国の時計の針を戻そうとする過激政党だ。 例えば11月13日には、連邦議会・法務委員会のシュテファン・ブラントナー委員長(AfD所属)が、委員たちの投票によって更迭された。同氏は、ドイツのある歌手が連邦功労十字章を授与されたことについて、「この歌手はAfDを批判したために国から勲章をもらえた。まるでユダへの報酬だ」とツイッターに書き込んだ。 新約聖書によると、「イスカリオテのユダ」はユダヤ人で、キリストの12使徒の1人だった。彼はキリストを裏切って群衆と祭司長たちに引き渡した。ユダはその報酬として銀貨を受け取ったが、キリストが磔刑(たっけい)に処せられると聞くと、銀貨を神殿に投げ込んで自殺した。このエピソードを基にして、反ユダヤ主義者はしばしば「キリストを裏切って殺したのはユダヤ人だ」と非難する。 ブラントナーの発言については、政界・言論界から「反ユダヤ主義の表れ」という強い批判が上がった。議会の法務委員長が委員の投票によって更迭されたのは、この国の歴史で初めてのことだ。筆者の知人の連邦議会議員(キリスト教社会同盟=CSU所属)は、「ブラントナーは、『私にはユダヤ人を非難する自由もないのか』と不満を述べていた。AfDはファシストの集まりだ」と語っている。AfDの連邦議会進出が、この国の政治をいかに混乱させているかを如実に表す出来事だ。 奇妙なことにAfDのガウラント党首、ワイデル院内総務、チューリンゲン州のヘッケ支部長、ブランデンブルク州のカルビッツ支部長はいずれも東ドイツ人ではなく、旧西ドイツの出身だ。 それでも多くの旧東ドイツ人がAfDに票を投じるのは、戦後ドイツのタブーを破る政党を支持することによって、現体制への不満を表現するためだ。つまり有権者にとって、AfDが抗議政党であることが重要なのであり、指導者が東の出身であるかどうかは二の次なのだ。いわんや多くの支援者たちは、AfD党員の一部が「ネオナチに近い思想を抱いている」として連邦憲法擁護庁に監視されていることも、気にしていない。ちなみに同庁は、連邦内務省傘下の情報機関で、国内で活動するテロリストやスパイなどの過激勢力の監視を任務としている』、「多くの旧東ドイツ人がAfDに票を投じるのは、戦後ドイツのタブーを破る政党を支持することによって、現体制への不満を表現するためだ。つまり有権者にとって、AfDが抗議政党であることが重要なのであり、指導者が東の出身であるかどうかは二の次」、欲求不満のはけ口になっているようだ。
・『極右の暴力が東を中心にエスカレート  もう1つ統一後のドイツに暗い影を落としているのが、極右による暴力事件やヘイトクライムの増加だ。その傾向は特に旧東ドイツで顕著だ。 1990年以降に極右の暴力が増えた背景には、東西間の移動が以前よりも容易になったため、ルーマニアやブルガリアなど東欧からの亡命申請者が増えたという事実がある。極右勢力は亡命申請者の増加を理由に、排外的なムードをあおり立てた。 社会主義時代の東ドイツにも極右勢力がいたが、国家保安省(シュタージ)の取り締まりが厳しかったため、暴力事件は少なかった。だが1990年に社会主義政権とシュタージが消滅し、警察力が一時的に弱まったため、それまで抑えられていた過激なナショナリズムが解き放たれた。 統一後に、外国人を狙った極右の暴力が最初にエスカレートしたのは、旧東ドイツだった。1991年にザクセン州のホイエルスヴェルダで、約500人の極右勢力がベトナムやモザンビークからの出稼ぎ労働者が住んでいた宿舎を取り囲み、投石した。1992年にはメクレンブルク・フォアポンメルン州ロストクで、亡命申請者の登録施設をネオナチが襲撃し、放火した。近くに住んでいた市民は、ネオナチが火炎瓶を建物に投げ込むと、拍手喝采した。 2011年には、旧東ドイツの極右勢力による連続テロ事件が明るみに出た。チューリンゲン州を地盤とする「国家社会主義地下組織(NSU)」というグループが、ミュンヘンやハンブルクなどでトルコ人、ギリシャ人、ドイツ人警察官など10人を2000年からの7年間に殺害していたことが判明した。3人の旧東ドイツ人は、銀行強盗や外国人を狙った爆弾テロも繰り返し、被害者を揶揄(やゆ)するDVDも制作していた。 極右による暴力犯罪の件数は2015年の難民危機以降、再び増える傾向にある。連邦内務省によると、外国人を狙った極右の犯罪(暴力だけではなく誹謗=ひぼう=中傷なども含む)は、2014~16年に129%増加した。そのうち暴力犯罪は、133%増えている。外国人に対するインターネット上の誹謗中傷などのヘイトクライムも、2014年からの1年間で176%増えた』、「社会主義政権とシュタージが消滅し、警察力が一時的に弱まったため、それまで抑えられていた過激なナショナリズムが解き放たれた。 統一後に、外国人を狙った極右の暴力が最初にエスカレートしたのは、旧東ドイツだった」、ドイツ統一の皮肉な裏面のようだ。
・『反ユダヤ主義の再燃  特に気になるのは、旧東ドイツを中心に反ユダヤ主義が再び強まる傾向を見せていることだ。 ベルリンなどでは、数年前からキパと呼ばれる丸いかぶり物を付けていたユダヤ人が唾を吐きかけられたり、罵倒されたりする事件が起きている。2018年4月には、ベルリンでキパを被って歩いていた21歳のイスラエル人が、若者にベルトで殴られた。2019年11月には、19歳のユダヤ人学生が、旧西ドイツのフライブルクのスポーツ・ジムの更衣室で、見知らぬ男から「薄汚いユダヤ人め」と罵られた。男は、学生がかぶっていたキパを奪い取って唾を吐きかけ、ゴミ箱に投げ捨てた。周りにいたドイツ人たちは、誰も男を制止しなかった。 このためドイツ・ユダヤ人評議会は、ユダヤ人に対して公共の場所でキパをかぶらないよう勧告している。筆者がドイツに来た29年前には、想像もできなかったほどに治安が悪化している。 昨年8月にザクセン州のケムニッツで起きた暴動では、極右勢力が外国人を路上で追いかけ回し、ユダヤ人が経営するレストランに投石した。 今年10月には散弾銃や爆薬で武装した極右テロリストが、ザクセン・アンハルト州ハレのユダヤ人礼拝施設(シナゴーグ)で多数の市民の殺害を図ったが、扉の錠を破ることができず侵入に失敗。代わりに通行人ら2人を射殺した。犯人の旧東ドイツ人は、ネット上にホロコースト(ナチスによるユダヤ人虐殺)が実際に起きたことを否定する声明を発表し、「今回の攻撃でユダヤ人を1人でも殺せれば成功だ」と語っていた。 戦後ドイツで極右が多数のユダヤ人の殺害を図った事件は、例がない。この国では、極右によるテロが、イスラム過激派によるテロ並みに高い危険性を帯びてきたと言っても、過言ではない。 これまでネオナチの暴力は、主にトルコ人やシリア人などイスラム教徒に対して向けられていた。その矛先がユダヤ人に向けられ始めたことは、極右の暴力の質が大きく変化したことを意味する。第2次世界大戦から74年たって、ユダヤ人が身の安全を心配しなくてはならない時代が再びやってきた。 欧州では近年、フランスを中心に反ユダヤ主義が高まっており、イスラエルに移住したり、万一の事態に備えてイスラエルにアパートを買ったりする市民が現れている。かつての加害国であり、ナチスを批判する歴史教育に戦後力を入れてきたドイツで、今日のような事態が発生するとは、統一前には想像もできなかったことである。 ドイツの大手メディア企業アクセル・シュプリンガーのマティアス・デップナーCEO(最高経営責任者)は、「私はドイツ人がナチス時代の犯罪から何かを学んだと考えていた。人間性が、狂気に対して勝ったと言いたかった。しかし、今の私はそう言えない。反ユダヤ主義は克服されていない。むしろ逆である」と述べ、現在のドイツの状況を強く批判している。 ドイツのユダヤ人向け新聞「ユーディッシェ・アルゲマイネ」は、2018年12月にEU基本権保護局(FRA)が行ったアンケート結果を公表した。FRAによると、ドイツに住むユダヤ人の44%が、「この国がユダヤ人にとって安全だと感じられないので、他の国への移住を時々考えることがある」と答えた。 欧州の反ユダヤ主義は、中東情勢ともリンクしている。11月にイスラエル国防軍がガザ地区のアパートを攻撃し、テロ民兵組織「イスラム聖戦機構」 の指揮官と妻を殺害した。これに対する報復として、パレスチナ側が約400発のミサイルをイスラエルに向けて発射したため、イスラエル側はガザ地区を空爆し、11月16日までに非戦闘員を含む35人が死亡している。欧州諸国では、イスラエルが取る対パレスチナ政策への批判が根強い。ガザ紛争のエスカレートとともに、ドイツなどで反ユダヤ主義がさらに高まる恐れもある。 極右の暴力は旧西ドイツにも広がり、悪質化する傾向を見せている。今年6月2日にはヘッセン州カッセルのリュブケ区長(CDU所属)が、極右テロリストによって自宅で射殺された。リュブケ氏は、アンゲラ・メルケル首相の難民政策を支持していたために、極右から敵視されており、ネット上の「殺人リスト」に住所を公開されていた。第2次世界大戦後に、政治家が極右によって暗殺されたのは初めてだ。他にも緑の党の政治家や、難民支援に積極的な地方自治体の関係者らが極右から殺人予告を受けている。 ドイツの政治家らは、「AfDは2015年の難民危機以降、ソーシャルメディアを通じて、排外的なメッセージを流し続けた。この言葉の暴力が、実際の暴力を助長している」と指摘する。これに対しAfDは、「極右の暴力がエスカレートするのは、我々の主張とは無関係だ」と反論している』、「これまでネオナチの暴力は、主にトルコ人やシリア人などイスラム教徒に対して向けられていた。その矛先がユダヤ人に向けられ始めたことは、極右の暴力の質が大きく変化したことを意味する。第2次世界大戦から74年たって、ユダヤ人が身の安全を心配しなくてはならない時代が再びやってきた」、「AfDは2015年の難民危機以降、ソーシャルメディアを通じて、排外的なメッセージを流し続けた。この言葉の暴力が、実際の暴力を助長している」、深刻な事態になってきたようだ。
・『「新たな壁を崩せ」  多くの政治家たちは、今日のドイツの状況を深刻に受け止めている。今年11月9日にベルリンで行われた壁崩壊に関する記念式典で、フランク=ヴァルター・シュタインマイヤー大統領 は「我々は、ドイツに新しい壁を築いてしまった。それは、不満と怒り、疎外と憎しみの壁だ。この壁は目に見えないが、ドイツを今も分断している。新たな壁を打ち崩せるのは、私たちだけだ。手をこまねいていないで、この壁を打ち崩そう」と聴衆に訴えた。彼の言葉には、ベルリンの壁崩壊という歴史の輝かしい1ページに、東西間のアイデンティティーの亀裂が暗い影を落としていることがはっきり表れている。 メルケル首相はドイツの新聞が最近行ったインタビューの中で「私は以前、東西間の違いがもっと早く消滅すると考えていた。しかし今では、統一が完遂されるまでには50年もしくはそれ以上かかると考えている」という悲観的な見方を明らかにしている。 コール政権、そして多くの西ドイツ人たちは天文学的な額の資金を注ぎ込んで、生活水準さえ引き上げれば東西間のアイデンティティーも平準化されると考えた。しかしその考えは、甘かった。人はパンのみにて生くるものにあらず。西側は、旧東ドイツ人たちがいかに急激な変化を体験し、困難な適応を強いられ、心の傷を負ったかについて十分に配慮しなかった。効率を最優先し、感情への配慮を二の次にするのは、ドイツ人の国民性の1つでもある。つまり金についてばかり語り、心の統一をおろそかにしたことが、今日のアイデンティティーの亀裂につながった。旧西ドイツ人たちは、今ようやくそのことに気づきつつある』、「多くの西ドイツ人たちは天文学的な額の資金を注ぎ込んで、生活水準さえ引き上げれば東西間のアイデンティティーも平準化されると考えた。しかしその考えは、甘かった。人はパンのみにて生くるものにあらず。西側は、旧東ドイツ人たちがいかに急激な変化を体験し、困難な適応を強いられ、心の傷を負ったかについて十分に配慮しなかった。効率を最優先し、感情への配慮を二の次にするのは、ドイツ人の国民性の1つでもある。つまり金についてばかり語り、心の統一をおろそかにしたことが、今日のアイデンティティーの亀裂につながった」、「心の統一」とはなかなか難しい問題だ。 
・『ドイツ経済・独り勝ちの時代の終わり?  経済の分野でも、ドイツの前途には注意信号がともっている。第2四半期のGDP成長率は、マイナス0.2%だった。マイナスのGDP成長率が2四半期連続とならなければ、景気後退(リセッション)とは定義されない。第3四半期のGDP成長率は、プラス0.1%だった。このためドイツのメディアは「ドイツはかろうじてリセッションを避けられた」と報じた。だが経済学者や投資アナリストの間では、「米中間、米欧間の貿易摩擦の影響で、この国の景気が大きく冷え込んでいることは間違いない」という意見が有力だ。 IFO経済研究所が発表する景況指数も、今年10月には前年同期(102.6)から約8ポイント下がって94.6となった。ドイツ機械工業連盟(VDMA)によると、今年1~8月の機械メーカーの受注額は前年同期比で9%減った。 一部の自動車メーカーでは、すでに昨年から業績が悪化し始めていた。BMWでは昨年の当期利益が前年比で16.9%減、ダイムラーでは同22%減となった。このため、両社とも配当の減額に追い込まれた。BMWが配当を減らしたのは、10年ぶりのことである。同社の減益傾向は今年も続いており、8月1日の発表によると、2019年上半期の当期利益は前年同期に比べて約半分に減った。 このあおりを受けて、多くの自動車部品メーカーが従業員を削減する計画を発表している。中国の自動車市場で販売台数が減少傾向を見せていることも、ドイツ企業にとっては大きな不安の種だ。 ドイツ政府は昨秋、2019年のGDP成長率を1.5%と予想していたが、今年夏には0.5%に引き下げた。国際通貨基金(IMF)の世界経済見通しによると、これはイタリア(0.0%)に次いでユーロ圏で2番目に低い成長率だ。ユーロ圏平均(1.2%)の半分にも満たない。ドイツでは「この国は再び欧州の病人になるのか?」という声すら出ている。 ドイツ人たちは2020年、東西統一から30年というもう1つの歴史的な区切りを迎える。だが彼らは、伝統的な二大政党の弱体化、アイデンティティーの亀裂、極右による暴力のエスカレート、景気の冷え込み、製造業・金融サービス業の変革の遅れ、米中に大きく水をあけられたデジタル化など様々な難題に取り組まなくてはならない。このため2020年の記念式典でも、祝賀気分はささやかなものにとどまるだろう。シャンパンに酔いしれている暇はない』、5月8日の記念式典は、コロナ危機を反映して、参列者のない式典だったようだ。もともと、これだけ多くの課題を抱えていては、「祝賀」どころではないのだろう。

次に、本年2月19日付け東洋経済オンラインが掲載した第一生命経済研究所主席エコノミストの田中 理氏による「ドイツ憲法の番人が危うくするEUの一体性 EUの司法判断を無視する動きが広がるおそれ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/350191
・『5日にドイツの憲法裁判所がECB(欧州中央銀行)の国債購入策を違憲とする判決を出して、波紋が広がっている。 判決では国債購入策によって達成されるべき目的とそのために取られる手段とが釣り合っているか(法律用語で「比例性原則」という)の検討が不十分であるとし、ECBに対して3カ月以内に検証と説明を求めている。期限内に適切な説明がない場合、ドイツ連邦銀行(ECB傘下のドイツ中央銀行)が国債購入プログラムへの参加を取り止め、これまで購入したドイツ国債を売却することを命じている。 2015年3月に金融政策の一環で開始されたECBの国債購入策については、財政救済を禁じたEU(欧州連合)条約に抵触するとして、ドイツの法学者などが違憲審査を提起した。ドイツ憲法裁判所は2017年7月に条約違反のおそれがあるとして、欧州司法裁判所に法的見解(予備判決)を求めた。しかし、欧州司法裁判所は2018年12月にドイツ憲法裁判所の判断を退け、ECBの国債購入策が金融政策上の権限を逸脱せず財政救済にも相当しないとする法的判断を下していた』、「ドイツ憲法裁判所」と「欧州司法裁判所」の対立とは、興味深い展開だ。
・『EUとドイツの司法が正面衝突  EU法を解釈する権限は欧州司法裁判所に帰属する。予備判決で示されたEU法の解釈は既判力を有し、照会を求めたEU加盟国の裁判所だけでなく、すべての加盟国の裁判所を拘束する。ところが今回、ドイツ憲法裁判所は欧州司法裁判所の法解釈に疑問を呈し、越権行為に基づく予備判決は無効とし、ECBの国債購入策の一部を違憲とした。 欧州委員会のフォンデアライエン委員長は10日、EU法の統一的な運営が損なわれるおそれがあるとして、今回のドイツ憲法裁判所の決定に強い懸念を表明した。ドイツに対するEU法の侵害手続きを開始することも含め、法的手段を検討していることを示唆した。 今回のドイツ憲法裁判所の判決は、ECBの金融政策運営ばかりかEUの司法制度や一体性を脅かしかねない。今後3カ月以内に国債購入策が物価安定目標を達成するうえで不適切でないことをECBが証明しない限り、ドイツ憲法裁判所はドイツ連邦銀行(連銀)に国債購入の停止を命令する。ドイツの国内機関であるドイツ連銀はその決定に拘束される。 ドイツ国債はECBが購入する国債の約4分の1を占める。ドイツ連銀が購入を停止した場合も、ECBの資産買い入れ規模が必ずしも小さくなるわけではない。ドイツ以外の加盟国中央銀行がドイツ国債を代わりに購入し続け、ドイツ連銀が売却する同国債も購入するといった対応が可能だ。 また、欧州を直撃するコロナ危機対応でのECBの中心的な政策ツールは、今回問題となっている国債購入策(PSPP)ではなく、3月に新たに開始した時限的な国債購入策(パンデミック緊急購入プログラム、PEPP)だ。PEPPは今回の法的判断の対象には含まれていない。危機対応の強化が必要となった場合、PEPPの総額7500億ユーロの枠(8日時点で1529億ユーロを利用)を増額したり、ひとまず年内となっている期間を延長したりする判断を妨げるものではない。 だが、感染終息後のユーロ圏経済の回復には長期間にわたって緩和的な金融環境を維持する必要がある。景気低迷が長期化し、中期的な物価安定が脅かされる場合、追加利下げ余地の乏しいECBは、資産買い入れのさらなる強化で対応することになろう。 ドラギ前総裁の下、ECBが昨年9月に金融緩和策を強化した際、複数の理事会メンバーから異例の反対意見が噴出した。後を継いだラガルド総裁は、理事会内の不協和音の解消を目指し、政策決定の透明化や意思疎通の改善を掲げて就任した。 ECBの金融政策決定は、正副総裁と理事、輪番制で投票権を持つ加盟国中銀総裁の多数決で決まるが、最大出資国のドイツが合法性を疑問視する中での資産買い入れ強化のハードルは高い。ドイツがECBの重要な政策への参加を拒む事態となれば、ECBの金融政策運営の実効性やユーロ圏の一体性が疑問視されかねない』、「欧州委員会のフォンデアライエン委員長は・・・ドイツに対するEU法の侵害手続きを開始することも含め、法的手段を検討していることを示唆」、ドイツ出身の「委員長」としても苦しいところだろう。
・『反EU的な東欧の国々を勢いづかせる  今回のドイツ憲法裁判所の決定による波紋はそれだけにとどまらない。EUでは近年、ハンガリーやポーランドの旧東欧諸国を率いるナショナリズム政党が、EUが決めた難民の受け入れ分担を拒否し、自国の司法、メディア、教育機関、非政府組織(NGO)への介入を強める事例が目立つ。ハンガリー議会は最近、コロナ危機対応の一環で政府の権限を無期限で強化する緊急法案を可決した。 EUは両国のこうした行為がEUの基本価値違反に当たると糾弾し、EU条約第7条に基づく制裁手続きの開始や、基本価値違反を繰り返す加盟国に対するEU予算の配分を見直すことなどを検討している。両国政府はEUの国内政策への干渉を批判し、制裁決定に従わない意向を示唆するなど、対決姿勢を強めている。 第7条に基づく制裁手続きは、問題国を除く全加盟国の一致がある場合に、重大かつ持続的な基本価値違反があることを決定する。最終的にはEU加盟国としての権利(例えば政策決定時の投票権など)が停止される。だが、ポーランドへの制裁発動にはハンガリーが反対し、ハンガリーへの制裁発動にはポーランドが反対するため、EUは両国に対して有効な法的対抗手段が取れずにいる。 ドイツ憲法裁判所が欧州司法裁判所の法解釈に公然と異を唱えた今回の判決は、EUに懐疑的な政権が率いるハンガリーやポーランドが欧州司法裁判所の決定を無視するうえで格好の口実を与える。欧州司法裁判所は先月、ポーランド政府に対して同国の裁判所判事の選出方法が司法の独立性を脅かす懸念があるとして是正命令を出したばかりだ。近くハンガリー政府の難民政策がEU法に違反するかの判決も言い渡す予定だ』、「ポーランドへの制裁発動にはハンガリーが反対し、ハンガリーへの制裁発動にはポーランドが反対するため、EUは両国に対して有効な法的対抗手段が取れずにいる」、「制裁」が一国だけを想定した手続きになっているためだろう。二国もいたので、機能しなくなったようだ。
・『EUは難しい立場に追い込まれた  EUは難しい立場に置かれている。ドイツ憲法裁判所の独自見解を容認すればEUの法体系の安定性を危険にさらすばかりか、東西欧州間の対立を助長しかねない。ハンガリーやポーランドは自国ばかりが槍玉に上がり、ドイツが特別扱いされる二重規範を攻撃材料にするだろう。欧州委員会のフォンデアライエン委員長がドイツの閣僚出身であることも、批判の的となる。 だが、ドイツに対してEU法の侵害手続きを開始すれば、ドイツ政府がドイツ憲法裁判所の決定に対して責任を負い、ドイツ国内の権力分立という別の問題に直面することになる。ドイツ基本法(憲法)の番人であるドイツ憲法裁判所の下した法的判断に、ドイツ政府が介入することが果たして認められるのだろうか。司法の独立性を脅かす干渉との批判を招き、欧州司法裁判所やEUに対するドイツ国民の不信感を招く可能性がある。 今回のドイツ憲法裁判所の決定は、さまざまな形でEUの屋台骨を揺るがしかねないリスクを内包しているのだ』、誠に悩ましい問題を「EU」と「ドイツ」は抱え込んだもので、今後の展開が楽しみだ。

第三に、6月8日付け東洋経済オンラインが掲載した慶應義塾大学 経済学部教授の土居 丈朗氏による「ドイツが「消費税率3%下げ」に踏み切る意味 歳出削減を徹底、単なる景気対策ではない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/354869
・『ドイツのメルケル政権は6月3日、日本の消費税に相当する付加価値税の税率を7月から12月末までの半年間、引き下げると発表した。これは、2020年と2021年に実施する総額1300億ユーロ(約16兆円)の景気対策の一環だ。 消費減税は、標準税率を19%から16%に引き下げ、軽減税率を7%から5%に引き下げる。減税規模は200億ユーロ(約2.5兆円)で、新型コロナウイルスの感染拡大前の付加価値税収の1割弱に相当する。今後、この内容を閣議決定し、連邦議会に提出する』、興味深そうだ。
・『健全財政路線を捨てたわけではない  メルケル政権は、どうして消費減税に踏み切ったのか。当然のことながら、政治的経緯や世論動向などが背景にある。 それを公共経済学の観点から分析すると、消費減税は均衡財政主義を放棄したのではなく、将来の増税を避けるために財政黒字を維持してきて、その黒字の余力を使って消費減税で還元しようとしていることがわかる。 メルケル政権は、2005年11月から今日まで続く長期政権である。公共経済学の観点からメルケル政権の財政運営の特徴を説明すると、歳出削減を軸とした健全財政路線である。 メルケル首相が党首を務めてきたキリスト教民主同盟(CDU)は中道右派政党で、今日の財政赤字は将来の増税をもたらすことを強く意識している。メルケル政権の財政運営も、それが基本となっているといってよい。それに対し、CDUのライバルである社会民主党(SPD)は中道左派政党として拮抗している。 メルケル政権は発足してすぐの2007年に、当時17%だった付加価値税率を19%に引き上げた。これもあって、2007年にはドイツ全体(一般政府)で財政収支が黒字になり、前のシュレーダー首相率いるSPD政権で続いていた財政赤字を解消した。 その後、リーマンショックに端を発した世界金融危機が起きて景気が後退した。2009年には実質経済成長率がマイナス5.6%を記録した(以下、経済財政統計はOECD資料による)。 それでも、メルケル政権は消費減税をしなかった。この頃、ドイツ全体の財政収支(対GDP)は2009年にマイナス3.1%、2010年にはマイナス4.4%と赤字に陥った。これにより、政府債務残高の累積に対処すべきとの機運が高まり、2009年6月には、財政収支均衡原則を盛り込む基本法(憲法)の改正が行われた。この原則は、連邦政府および州政府の予算は、原則として公債発行なしに均衡させなければならない、とするものである。 リーマンショック直後に実質経済成長率が大きく落ち込んでも、ドイツは付加価値税を増税したまま税率を下げなかった。その直前に財政赤字が続いて政府債務残高が累増していたのが、当時のドイツ財政だった』、「財政収支均衡原則を盛り込む基本法(憲法)の改正」とは、思い切ったことをしたものだ。
・『失業給付抑制や年金支給開始年齢を引き上げ  財政収支均衡原則が盛り込まれた基本法の下、メルケル政権は財政改革に着手した。 歳出面では、長期失業者に対する失業給付の抑制、長期失業者に対する年金保険料支払いへの補助の廃止、子供を持つ親に対する手当の給付抑制、2012年以降に年金支給開始年齢の65歳から67歳への段階的引き上げ、公的医療給付の財源である連邦補助に法定上限を設けた総額管理、4万人規模の連邦国防軍兵士削減を含む防衛費の抑制、各省の裁量的経費の抑制といった策を実施した。 メルケル政権下では、社会保障支出の伸び率は名目経済成長率を下回っている。医療費は、診断群分類(DRG)と呼ばれる患者分類に応じて医療費を定額払いにする制度の下、定額払いを徹底して医療費を削減してきた。 日本でも、DRGに相当するとされる診療群分類包括評価(DPC)があるが、これは定額払いと出来高払いの混合で、出来高払い部分で医療費が膨張する恐れがある。入院医療にはDRGが適用されたが、外来医療では「家庭医中心医療」を掲げ、最初は登録した家庭医に診てもらい、その判断に従って専門的な医療を受ける仕組みを推進した。家庭医を含む開業医は地域ごと、診療科ごとに定員制をとっており、開業医の制限を徹底している。 他方、メルケル首相やCDU幹部らは、付加価値税率のさらなる引き上げには否定的だった。徹底した歳出削減に軸を置いて財政赤字を削減しつつ、付加価値税率を19%に維持し続けた。 こうした財政改革により、ドイツ全体の財政収支は2012年以降、黒字に転じ、8年連続で黒字を続けた。その単純合計は約2220億ユーロ(約27.3兆円)にのぼる。ドイツ全体の政府債務残高は、2014年末の2兆5043億ユーロ(約308兆円)から2019年末には2兆3509億ユーロ(約289兆円)へと1534億ユーロも減らしていた。日本のように、政府債務残高が減らなくても、政府債務残高対GDP比が低下していればよいという、悠長な国とは次元が違う。 ここには、ドイツが政府債務を自国通貨建てでは負えない(ユーロ建てで負うが、ユーロの発行権は欧州中央銀行が持つ)という発想は一切ない。あるのは、財政黒字によって将来の増税が避けられるという論理である。 お金に色はついていないものの、8年連続の財政黒字の単純合計約2220億ユーロのうち、1534億ユーロを政府債務残高の削減に充てたとみれば、財政収支の黒字のうち約7割を政府債務残高の削減に充ててきたと言える』、「財政収支の黒字のうち約7割を政府債務残高の削減に充ててきた」、並大抵のことではない偉業だ。
・『債務残高削減は将来の増税回避につながる  政府債務残高の削減は、将来の増税を避けることにつながる。ただ、現世代への恩恵はどうか。今の第4次メルケル政権内でも、財政黒字の還元策をめぐりコロナ前から意見が割れていた。第4次メルケル内閣はSPDも連立与党であり、CDUは法人税や所得税の減税を求める一方、SPDは公共投資拡大を主張していた。 ここにも、メルケル首相やCDUの志向が表れている。財政黒字の還元として、メルケル首相やCDUは、政府規模がより大きくなることを避けることに腐心している。前掲の財政改革で社会保障を含む歳出削減を徹底したことと共通している。 そうした前提のうえに、今般のドイツの消費減税がある。CDUは、コロナ前には法人税や所得税の減税を財政黒字の還元策として打ち出していた。さらに、日本ではあまり報じられていないが、コロナショック対策として、付加価値税率をめぐる議論は既にあった。連邦議会では、レストラン等の外食への軽減税率適用(ドイツでは外食は標準税率)について審議が継続している。 ドイツの消費減税は、財政収支が黒字になるほど税収を多く得ていたから減税するという話である。ただでさえ財政赤字なのに減税してもっと財政赤字を膨らますという話とは次元が違いすぎる。加えて、ドイツでは、歳出削減を徹底した後で減税するという話である。医療費を含む歳出削減を批判しつつ、減税に賛成するという辻褄の合わない話ではない。 ドイツの消費減税の真の狙いは、経緯をきちんと踏まえて理解する必要がある』、日本とは余りに状況が違う。日本では、財務省でさえ、本当のところは自分たちの権限縮小につながる「歳出削減」には後ろ向きのようだ。せっかく、消費増税をしても、景気対策の名目で、歳出増加をする。歳入・歳出が大きくなって自分たちの権限拡大が図れればいいようだ。やれやれ・・・。
タグ:失業給付抑制や年金支給開始年齢を引き上げ 極右の暴力が東を中心にエスカレート (その3)(旧東独中心に過熱する極右・ネオナチの暴力、ドイツ憲法の番人が危うくするEUの一体性 EUの司法判断を無視する動きが広がるおそれ、ドイツが「消費税率3%下げ」に踏み切る意味 歳出削減を徹底 単なる景気対策ではない) 多くの旧東ドイツ人がAfDに票を投じるのは、戦後ドイツのタブーを破る政党を支持することによって、現体制への不満を表現するためだ。つまり有権者にとって、AfDが抗議政党であることが重要なのであり、指導者が東の出身であるかどうかは二の次 ドイツ 財政収支均衡原則を盛り込む基本法(憲法)の改正 旧東ドイツでの右派ポピュリズムの高まり ドイツのための選択肢(AfD) 「旧東独中心に過熱する極右・ネオナチの暴力」 健全財政路線を捨てたわけではない 消費減税は、標準税率を19%から16%に引き下げ、軽減税率を7%から5%に引き下げる。減税規模は200億ユーロ(約2.5兆円) 熊谷 徹 日経ビジネスオンライン 「ドイツが「消費税率3%下げ」に踏み切る意味 歳出削減を徹底、単なる景気対策ではない」 土居 丈朗 EUは難しい立場に追い込まれた 反EU的な東欧の国々を勢いづかせる ドイツに対するEU法の侵害手続きを開始することも含め、法的手段を検討していることを示唆 欧州委員会のフォンデアライエン委員長 EUとドイツの司法が正面衝突 ドイツの憲法裁判所がECB(欧州中央銀行)の国債購入策を違憲とする判決 「ドイツ憲法の番人が危うくするEUの一体性 EUの司法判断を無視する動きが広がるおそれ」 田中 理 東洋経済オンライン ドイツ経済・独り勝ちの時代の終わり? 多くの西ドイツ人たちは天文学的な額の資金を注ぎ込んで、生活水準さえ引き上げれば東西間のアイデンティティーも平準化されると考えた。しかしその考えは、甘かった。人はパンのみにて生くるものにあらず。西側は、旧東ドイツ人たちがいかに急激な変化を体験し、困難な適応を強いられ、心の傷を負ったかについて十分に配慮しなかった。効率を最優先し、感情への配慮を二の次にするのは、ドイツ人の国民性の1つでもある。つまり金についてばかり語り、心の統一をおろそかにしたことが、今日のアイデンティティーの亀裂につながった 新たな壁を崩せ 債務残高削減は将来の増税回避につながる AfDは2015年の難民危機以降、ソーシャルメディアを通じて、排外的なメッセージを流し続けた。この言葉の暴力が、実際の暴力を助長している 財政収支の黒字のうち約7割を政府債務残高の削減に充ててきた これまでネオナチの暴力は、主にトルコ人やシリア人などイスラム教徒に対して向けられていた。その矛先がユダヤ人に向けられ始めたことは、極右の暴力の質が大きく変化したことを意味する。第2次世界大戦から74年たって、ユダヤ人が身の安全を心配しなくてはならない時代が再びやってきた
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メディア(その22)(黒川前検事長の賭け麻雀問題で浮き彫りにされる“事件報道の危うさ”、文春流「政界スキャンダル」の追っかけ方 首相官邸からの圧力も!、文春砲と新聞社 決定的な違いは「ニュース感覚」 業界内の「特ダネ」競争から抜け出せない新聞社の体質、小田嶋氏:死ぬこと以外かすりキス?) [メディア]

メディアについは、4月20日に取上げた。今日は、(その22)(黒川前検事長の賭け麻雀問題で浮き彫りにされる“事件報道の危うさ”、文春流「政界スキャンダル」の追っかけ方 首相官邸からの圧力も!、文春砲と新聞社 決定的な違いは「ニュース感覚」 業界内の「特ダネ」競争から抜け出せない新聞社の体質、小田嶋氏:死ぬこと以外かすりキス?)である。

先ずは、5月24日付けデイリー新潮が掲載したライター、エディターの高堀冬彦氏による「黒川前検事長の賭け麻雀問題で浮き彫りにされる“事件報道の危うさ”」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2020/05240600/?all=1&page=1
・『東京高検の黒川弘務検事長(63)が、産経新聞社会部次長と同記者、さらに元検察担当記者の朝日新聞経営企画室社員の3人と、緊急事態宣言下の2020年5月1日、同13日に賭け麻雀をしていた問題は、新聞の事件報道の危うさを浮き彫りにした。検察と新聞の間に緊張感がなくなると、被告にとって不利な報道ばかりになりかねない。両者がタッグを組んだら、白いものでも黒にできてしまう。 「事件が起こると、新聞は警察と検察の情報に基づいて記事を書きます。裁判を始めてみると、新聞に書いてあることと事実が違うことが少なくありません」(元東京高裁総括判事の木谷明弁護士) 欧米先進国の事件報道と日本の新聞のそれは基本的に違う。欧米先進国の事件報道は事実を追求しようとするが、日本の新聞の場合、基本的には検察や警察から得た情報をいち早く書くことが正しいとされている。検察と警察が間違っていたら、お終いであり、古くから冤罪の温床になっている。 「後にオウム真理教の犯行と分かった1994年の松本サリン事件の場合、当初は無実の人に疑いの目が向けられました。一市民がサリンなんて作れるはずがないのに、警察情報に基づき、マスコミが一斉にその人を犯人扱いしたためでした」(木谷明弁護士) 検察や警察から得た情報をいち早く書くことが正しいとされているため、記者たちは検察関係者に食い込もうとする。「検察の捜査は間違っている」などと書く記者はまずいない。 裁判官が厳正中立な立場で公正な判決を下してくれればいいのだが……。「新聞が犯人扱いし、日本中が有罪だと思い込むと、その被告に無罪を言い渡せなくなる裁判官も中にはいます」(木谷明弁護士) 逆に言うと、検察側は新聞を利用すれば、都合のいいストーリーを世に流布できる。 2010年、英フィナンシャル・タイムズは「日本の検察は、リークしてメディアを利用している」と批判した。米ニューヨーク・タイムズも同時期、「日本の検察とメディアはいわば相互依存性」と指弾した』、「英フィナンシャル・タイムズ」や「米ニューヨーク・タイムズ」が10年前から指摘していたことを、この記事で漸く思い出した。
・『それから10年。残念ながら海外有力2紙の報道の正当性が認められてしまった。朝日新聞の報道によると、黒川氏と産経2人、朝日1人の計4人は、この4年間に月2、3回程度の頻度で麻雀卓を囲み、集まった時に翌月の日程も決めていたという。 これほど親密に付き合い、頻繁に会いながら、仕事の話は一切していないと言うのは無理がある。産経という会社が黒川氏の帰宅のためにハイヤーを用意したのも仕事の一環と考えたからに違いない。万一、仕事抜きで黒川氏と記者が麻雀を繰り返し、ハイヤーを使っていたら、そのほうが問題だろう。また、記者側が黒川氏や検察の批判をしていたら、この関係は維持できないはずだ。 1997年の東電OL殺人事件の場合、新聞は被告となったネパール人男性が「黒」だと印象付けるような記事を書き連ねた。 男性の初公判の記事を振り返る(朝日新聞1997年10月14日付夕刊)。「東京都渋谷区のアパートで今年3月、東京電力の女性社員(当時39)を殺して所持金を奪ったとして、強盗殺人の罪に問われたネパール国籍の■■被告(30、記事では実名)に対する初公判が14日、東京地裁(大渕敏和裁判長)で開かれた。罪状認否で■■被告は、『私はいかなる女性も殺していないし、お金も取っていない』と起訴事実を否認し、無罪を主張した。 検察側は冒頭陳述で、■■被告が事件当日、昨年12月に知り合った被害者の女性と偶然に出会い、現場のアパートで性的関係をもった後に現金を奪おうとして抵抗され、殺害に至ったと述べた。さらに、事件当時は、被告が一つしかない現場の部屋のかぎを持っていたが、同居人らにかぎを持っていないように口裏合わせをさせて証拠隠滅したことを明らかにした」。 注目の事件だったにもかかわらず、逮捕から初公判まで、朝日の記者が自分で事件を検証した下りは見当たらない。記事の大半を、検察と警察の情報に基づいて書いているように見える。 当時は東京高裁判事だった木谷弁護士はこう振り返る。「勤務先から犯行現場まで行くのは時間的に難しかった。ぎりぎりでした。その上、ネパール人男性の定期券が、彼の土地勘のない巣鴨で発見されていましたが、その理由が最後まで解明できませんでした」(木谷弁護士) 不自然な逮捕・起訴だったのだ。記者が自分で検証していたら、記事は違った内容になったのではないか。 結局、この裁判は一審無罪に。控訴審は木谷弁護士とは違う裁判官によって有罪(無期懲役)、最高裁は上告を棄却した。一審無罪後に東京地裁(大渕敏和裁判長)と東京高裁(木谷明裁判長)は男性を引き続き拘置することを認めなかったものの、東京高裁の別の判事(高木俊夫裁判長)が職権で拘置することを決めてしまい、法曹界で物議を醸した。 だが、のちに遺体から検出された体液と男性のDNAを比較したところ、不一致という結果が出る。横浜刑務所に収監されていた男性の再審請求を東京高裁が認め、再審開始が決定。2012年、男性は無罪が確定した。 再審無罪確定後、朝日新聞はこう書いている。「捜査段階から弁護を務めた神山啓史弁護士は会見で力を込めた。『捜査機関には犯人との思い込みがあった。まだ意識は変わっておらず、今後も冤罪が起きる危険性はある』」(2012年10月30日朝刊) その思い込みを、夜討ち朝駆けや麻雀の場で得て、記事化しているのが新聞なのではないか? 「新聞は、容疑者や被告を真っ黒のように書きますが、無罪になると一転、『警察や検察は何をしている』と書き立てます。変わり身が早い」(木谷弁護士) 新聞や通信社と共に記者クラブに入っているテレビも体質はほぼ一緒だが、過去には日本テレビが警察と検察の捜査を根底から覆す、超弩級のスクープを放っている。 「足利事件」(1990年)で無期懲役が確定し、服役していた男性の、DNA鑑定の問題点を繰り返し指摘し、再審の原動力になった(2010年無罪確定)。これは欧米先進国型の報道のお手本だった。検察と警察に頼っていたら、できない』、「欧米先進国型の報道」が「足利事件」での「日本テレビ」だけ(有名な事件では)とは情けない。この他に、民主党幹事長だった小沢一郎氏と秘書に対し、政治資金規正法の虚偽記載罪で捜査、この間特捜部から垂れ流されるリーク記事で有罪がほのめかされたが、起訴され有罪になったのは秘書のみで、小沢氏は嫌疑不十分で不起訴処分となったが、政治的影響力を大きく失った事件は有名である。
・『記者クラブを見直すべき  では、まず何をあらためるべきかというと、社会部記者の中ではエリートとされる、司法記者のクラブ制度ではないか。 「司法記者クラブでは、検察にとって都合の悪いことを書いた記者には、情報が取れない仕組みになっていると聞きました。司法記者クラブという制度はなくせないものでしょうか」(木谷弁護士) どの記者クラブも相似形であるものの、クラブという仕組みはまず取材対象にとって好都合。加盟する新聞・通信・テレビの報道をある程度、操れるので、世論が作りやすいからだ。 逆らう記者がいたら、特落ち(その社にだけ情報を流さない)などの手で痛めつけられる。それを笑顔で許すデスクはまずいない。繰り返す記者は、ほぼ間違いなく異動を余儀なくされる。結果、取材対象は目障りな記者を難なく排除できるわけだ。 記者側にとってもクラブは便利。雑誌などクラブに加盟しないメディアは取材対象から資料をもらうのすら一苦労だが、クラブに加盟していれば資料の手配はもちろん、取材のコーディネートまでしてもらえる。省庁内などに快適なクラブ室も用意してくれる。賃料が発生するものの、ほんの形ばかりだ。前述のニューヨーク・タイムズの記事のとおり、「相互依存性」ではあるまいか。 2017年、ジャーナリストの伊藤詩織氏(31)にレイプ被害を与えたとして、ジャーナリスト・TBS出身の山口敬之氏(54)に準強姦容疑の逮捕状が出ながら、当時の警視庁刑事部長・中村格氏=現警察庁次長=が執行取り消しを指示していた問題が発覚した際、当初はどの新聞も報じなかった。やはり検察と警察の嫌がる記事は書きにくいのか? 伊藤氏の件は海外メディアのほうが早く反応した。 安倍晋三首相(65)を始め、政治家ベッタリの記者もいるのは御存じのとおり。厚労省など各省庁と昵懇で、まるで応援団のような存在の記者もいる。 新型コロナ禍に見舞われ、日本のさまざまなウイークポイントが浮き彫りになっている。これを奇貨とし、海外に類を見ない記者クラブ制度も見直すべきではないか?』、「政治家ベッタリの記者もいる」、「まるで応援団のような存在の記者もいる」、これでは権力の監視など本来の役割放棄も甚だしい。

次に、5月27日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した元週刊文春・月刊文芸春秋編集長で岐阜女子大学副学長の木俣正剛氏による「文春流「政界スキャンダル」の追っかけ方、首相官邸からの圧力も!」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/238420
・『文芸春秋に入社して2018年に退社するまで40年間。『週刊文春』『文芸春秋』編集長を務め、週刊誌報道の一線に身を置いてきた筆者が語る「あの事件の舞台裏」。週刊誌の真骨頂ともいえる政治家スキャンダルを追う記者やカメラマンの、スパイ映画さながらの取材手法を紹介する』、興味深そうだ。
・『文春記者の張り込みのイロハとは?  文春記者はターゲットを徹底的にマークします。 週刊誌の本来の役目の1つは政治家の醜聞です。芸能人のスキャンダルと同等に見る人もいるでしょうが、本来、政治家は「自ら手を挙げて立候補した者」であり、「最大限にプライバシーも明かす」のが納税者である我々への義務ですから、これこそ、週刊誌の本来の仕事だと思います。 芸能人はともかくとして、政治家の場合、相当に防御も堅く、追及には手間がかかります。過去に、週刊文春で愛人問題を追及した自民党元幹事長をどうやって突き止めたか、その詳細を明らかにしましょう。 元幹事長が昔、文春に書かれた地元の愛人(愛人を議員宿舎に連れ込んでいたと報道された)を東京に連れてきたという情報を得たのが、取材の最初のきっかけです。 不思議な電話が私宛てにかかってきました。 「昔、元幹事長の愛人問題を文春で書いたでしょう。また復活しているんです。その証拠に議員宿舎の表札の側にある蛍光灯の電気を必ず消しています。前回、女性を連れ込んだときに写真を撮られて、写真に宿舎の表札が映り込み、『名前がはっきりわかったのには参った』と言っているんです」 こんな具体性のある証言はまずありません。すぐにチームを作ります。こういう場合、まず2人で組んで張り込みを行います。 議員が東京の生活拠点にしている議員宿舎の出口近くを車で張り込むのですが、刑事ドラマのように簡単には尾行できません。 張り込んでいると、議員の妙な行動がわかります。夜中に議員宿舎の駐車場を徒歩でぐるぐる回りだすのです。多分、尾行を警戒しているのでしょう。何度も回って周囲を確かめると、裏口から出ていきます。この段階で、最初の張り込みは終わりです。 次回は、裏口から出てくる道に人を2人か3人用意します。 同じ人間が尾行するとわかるので、数百メートルで交代し、またその先数百メートルで別の人間に。これを繰り返して、議員宿舎近くのマンションに議員が入るのを確認しました。 議員宿舎の駐車場を徒歩で歩き回るのも奇妙な行動ですが、編集部員とすれ違ったとき、封筒で顔を隠したのも不自然です。有名政治家は、基本的に顔を見せたがるものですから』、「政治家」には政敵も多いので、こうしたタレコミもあるのだろう。
・『尾行、撮影のリアル 窮地のカメラマンは叫んだ!  さて、マンションは確認しました。しかし、住人の誰が愛人なのかを突き止める必要があります。 このマンションの中に、元幹事長の地元の有名料亭が所有する部屋がありました。どうもそこに出入りしているようなのですが、名前は確認できません。ならばと、朝、出てくるところを調べます。 朝、出てきた彼女は、モノレールに乗って羽田空港に向かい、地元に帰りました。実は、モノレールにも、飛行機にも文春の記者が複数乗っていました。彼女は、国内線のプレミアクラスに座って帰宅したのですが、実は2人がけの席の隣は文春記者。うしろにも文春記者が2人…。たまたま、その席しか空いていなかったということが理由ですが、フランス文学を静かに読む女性であるといった情報は入手できます。 もちろん、私たちは、そこでインタビューなどしません。一体彼女はどこの誰なのか、確認するため、飛行機を降りた後も追いかけるだけです。 こんな作業を経て、女性の身元が確認できました。もちろん、元幹事長の身内というわけではありません。 次は撮影です。しかし、2人の居場所が特定できたとしても、そう簡単には撮影はできないのです。名誉棄損裁判では、たとえば、マンションの敷地内で撮影したことがわかれば不法侵入した場所で撮影したとして、「文春は不法行為をして撮影した」と認定され、判決が先方に有利になることがあります。 かといって、公道で待ち伏せしての撮影は、相手に察知される可能性があります。 朝、何時頃に出てくるか、何度も行動パターンを確認してから、その時間にカメラマンが出動します。マンションの敷地近くになると、案の定、守衛さんが出てきて、「敷地内に入らないでください」。 カメラマンはそのとき、叫びました。 「私は昆虫カメラマンです。今、とても貴重な蝶々が飛んでいます。だから静かに!」』、機転が利いた「カメラマン」で、さすが文春だけある。
・『掲載するか否かの決定打は「証言」にあり  ひるむ守衛さんを差し置いて、カップルを連写撮影して一気に逃げる。いわゆる「証拠写真」は大変な努力が必要なのです。 撮影してから、政治家からの圧力はあるのか。実はドラマのように、記者には政治家からの圧力がかかります。料亭に招かれて、何とか穏便にという政治家に、お茶1杯も飲まずに帰ってきたケースもあれば、ホテルで仲介者を名乗る人物と話し合うことにしていたら、部屋にコワイ顔のヤクザさんが顔を出したこともありました。首相官邸から、何とかならないのか、という電話があったこともあります。 正直、そういう圧力は現場の記者を怒らせるだけですから無意味です。 しかし、取材する側も悩むことがあります。政治家が公費を使って愛人を囲うのは、正しいこととはいえません。ましてや、それが不倫であれば問題です。ただし、愛人関係とは、実は証明が難しいことなのです。たとえ、男女がベッドに入っていた写真があったからといって、2人が否定している限り、完全なる証拠とはいえません。 総理に一番近い男と言われた人気政治家とニュースキャスターの不倫を記事にしたことがありました。何度も密会の写真は撮影しています。2人がホテルに入って出てきた写真も撮りました。それでも、本人たちは「打ち合わせをしていた」と言い訳する可能性は大です。 結局、記事にするか否か。本当に確証を持てるのは、証言になります。この場合も、ニュースソースに確認することになりました(Qは聞き手の質問、Qは「ニュースソース」の回答)。 Q:密会写真は撮影したが、本当に男女関係にあるとあなたは確信しているのか? A:「出発する前にかばんの中を見ると避妊具が入っていましたが、帰った後はありませんでした」(リアルすぎる表現でした) Q:あなたが、そこまでのリスクを冒して証言するのはなぜですか? A:「私は彼が総理になるべき人物だと思っています。この程度のスキャンダルでつぶれるなら、その程度の男。しかし、この女性は切らないと総理になったときに困ります」 ここまでの証言だからこそ、記事にできました。 冒頭の元幹事長、尾行の詳細を書いた政治家についてはその後、情報提供者は別の愛人女性と元幹事長が裸でベッドに横たわっているナマナマしい写真を提供したいと言い出しました。ホンモノかどうかを確かめるため、撮影したホテルの同じ部屋を予約し、同じ角度で撮影して、同様の画像になるかを確かめました。 権力と対峙するにはそこまで必要なのです』、「「私は彼が総理になるべき人物だと思っています。この程度のスキャンダルでつぶれるなら、その程度の男。しかし、この女性は切らないと総理になったときに困ります」、と答えた「ニュースソース」もなかなかの政治家のようだ。やはり「文春砲」を飛ばすには、並外れた取材努力が必要なようだ。

第三に、6月4日付けJBPressが新潮社フォーサイト記事を転載した毎日新聞社の外信部・政治部記者出身で立命館大学国際関係学部教授の白戸圭一氏による「文春砲と新聞社、決定的な違いは「ニュース感覚」 業界内の「特ダネ」競争から抜け出せない新聞社の体質」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/60744
・『検察官の定年延長問題の渦中にいた黒川弘務・東京高検検事長(5月22日付で辞職)の「賭け麻雀」報道は、新型コロナウイルスで自粛生活を強いられている国民の間に猛烈な反発を巻き起こした。同時に多くの人が、麻雀のメンツが『産経新聞』と『朝日新聞』のベテラン社員(1人は編集部門を離れて管理職)だった事実に呆れ、大手新聞社と権力の「癒着」を改めて見せつけられた気分になっただろう。 筆者は、今回の一件によって、日本の新聞社が長年、正面から向き合ってこなかった問題が改めて浮き彫りになったように感じている。 それは「ニュースとは何か」という、ジャーナリズムの根幹に関わる問題である』、白戸氏は外信畑なので、客観的に書き易いのだろう。
・『「取材」か「暇つぶし」とは思っていたが  今回の問題をスクープしたのは『週刊文春』である。同誌編集部は、多くの国民が営業自粛や失業によって経済的に困窮している最中に、政権中枢に近い検察ナンバー2が「3密」状態で違法性のある賭け事に興じている事実を掴み、「これはニュースだ」と判断したから記事化したのだろう。 その反対に、新聞記者たちは「黒川氏が賭け麻雀に興じている」という事実を知っていたどころか、自らも一緒に雀卓を囲み、同氏が帰宅するためのハイヤーも用意していたと報じられている。 つまり、彼らはこの状況で黒川氏と雀卓を囲む行為を「取材」か「暇つぶし」のどちらかだとは自覚していただろうが、「ニュース」になってしまう行為とは想像もしなかったのだろう。 だから「私は今日、渦中の検察ナンバー2と3密状態で雀卓を囲み、ハイヤーも提供した」などという新聞記事が彼ら自身の手で書かれることはなく、代わりに週刊誌が書いたのである。 要するに、今回の問題では、「文春砲」と言われるスクープ連発の週刊誌のニュース感覚と、大手新聞社のニュース感覚の決定的な違いが見えた。そして、国民の多くは週刊文春とニュース感覚を共有していたから賭け麻雀に怒った。 反対に、大新聞の社会部畑の記者のニュース感覚は、多数の国民のニュース感覚とは合致していなかった、ということである』、「スクープ連発の週刊誌のニュース感覚と、大手新聞社のニュース感覚の決定的な違い」、とは面白い切り口だ。
・『捜査当局者に食い込むこと自体は重要  では一体、この新聞記者たちにとっての「ニュース」とは何だったのだろうか。 彼らが黒川氏と雀卓を囲んだのは、検察の最高幹部と人間関係を築けば事件に関する「特ダネ」を教えてもらえる可能性が高いからかもしれない。 あるいは、今回問題となった麻雀は単なる遊びだったとしても、かつての取材を通じて既に個人的な人間関係が構築されており、ともに遊ぶことを通じて関係を維持していけば、いつか後輩の検察担当記者たちが「特ダネ」を取るのに役立つと考えていたのかもしれない。 または、自社を除く全社に捜査情報を一斉にリーク(非公式な情報漏洩)される「特オチ」を防ぐための保険だったのかもしれない。 そのいずれにしても、捜査当局者との密接な関係を重視していたことは間違いないだろう。 こうした心理状態で働く新聞記者たちを嗤い、批判するのは容易い。取材という行為の難しさや複雑さを経験したことのない人の中には、しばしば記者が捜査当局者と接触すること自体を「日本メディア特有の問題」のように非難する人がいる。 だが、捜査当局者に食い込むこと自体は重要な取材手法であり、報道の自由がある国ならば世界中どこでも行われている。検察や警察など捜査機関の不正や冤罪を暴く際であっても、内部の協力者は必要だ』、「新聞記者」ならではの深い見方だ。
・『要求される「特ダネ」とはなんなのか  筆者も若い頃の数年間、九州の2つの県で警察取材(サツマワリ)を担当していた。 何かの事件について県警本部に取材に出向いても、「捜査中」のひと言で追い返されてしまう。夜間や休日に警察官の自宅をひそかに訪れ、個人的な関係を築かなければ、「特ダネ」は入ってこない。 だから盆も正月も返上し、深夜0時、1時まで住宅街で「ネタ元」の警察官の帰宅を待っていた。麻雀は嫌いなのでやらなかったが、親しくなった警察官とは時々酒を飲み、一緒に日帰り温泉に行ったり、パチンコに行ったりしたことも少なくなかった。 しかし当時、警察組織に食い込むことに血道を上げながら、どうしても拭えない1つの疑問があった。自分が日常的に上司から要求されている「特ダネ」とは、本当に「特ダネ」と言えるのか、という疑問である。 日本の新聞社内で記者に要求されてきた事件に関する「特ダネ」の典型は、「検察、○○の事件で今日、容疑者を逮捕へ」「逮捕された容疑者が××と供述していることが分かった」といった、捜査情報の先行報道である。 逮捕の事実はいずれ正式発表される事柄であり、容疑者の供述内容は公判が始まれば明らかになることである。 だが、そうした捜査の動きを少しでも早く察知することに、日本の新聞社は想像を絶するほどの膨大なエネルギーを注いできた』、「「特ダネ」の典型は」、「捜査情報の先行報道である」、読者が求めているというより、新聞社の自己満足のようだ。
・『人事がからむから捜査情報を重視せざるを得ない  20年以上昔の私が地方の警察官を相手にやっていた「取材」も、黒川氏と麻雀に興じた東京社会部のエリート司法記者がやっている「取材」も、こうした捜査情報の先行報道を「特ダネ」として追求している点は同じだ。 そして、それは「捜査当局が独占している情報(逮捕の事実、供述内容など)こそがニュースである」という感覚に無意識のうちに支えられている。 こうした捜査情報至上主義とも言えるニュース感覚に疑問を感じる記者も新聞社内には多く存在するが、なかなか組織の主流にはならない。捜査情報を重視するニュース感覚は新聞社内の人事システムと固く結びついており、社内出世コースを歩んだ人々の間で概ね継承されてきたからである。捜査情報至上主義に批判的な幹部もいたが、大勢ではない。 「警視庁か東京地検特捜部の取材キャップの経験者しか東京の社会部長になれない」「大阪府警キャップを務めた記者でなければ、大きな事件の取材を指揮できないので、大阪の社会部長にはなれない」といった、ある種の不文律は根強く残っている。 このような組織文化の下では、現場の記者は「希望のポストで働きたいなら、捜査当局に食い込み、特ダネを取ってこい。それができたらお前の希望を聞いてやる」という強い心理的圧力を受けながら働くことになる。 その逆に、世間の注目を浴びている事件で「○○今日逮捕へ」を同業他社にすっぱ抜かれ続けた記者は、しばしば閑職に左遷されたり、社内の希望部署への配属が叶わないといった事実上のペナルティーを受けたりすることがある。 記者にしてみれば、人事を人質に取られた形なので、捜査情報を崇め奉るニュース感覚に疑問を感じながらも、捜査情報の先行報道に邁進することになる。 だから日本では、捜査が冤罪の方向に進んだ場合、新聞社は冤罪に苦しむ人の味方ではなく、捜査当局発のリークを拡散し、冤罪を助長する役割をしばしば果たしてしまうのである』、「捜査情報を重視するニュース感覚は新聞社内の人事システムと固く結びついており、社内出世コースを歩んだ人々の間で概ね継承されてきたからである。捜査情報至上主義に批判的な幹部もいたが、大勢ではない」、「日本では、捜査が冤罪の方向に進んだ場合、新聞社は冤罪に苦しむ人の味方ではなく、捜査当局発のリークを拡散し、冤罪を助長する役割をしばしば果たしてしまう」、よく理解できた。
・『「権力の道具になる危険がある」  ジャーナリズム先進国の米国で2001年に出版された『The Elements of Journalism』(邦題『ジャーナリズムの原則』日本経済評論社)は、「ジャーナリズムとは何か」を考える書籍として国際的に高い評価を得ている。 同書の中で、著者のビル・コヴァッチとトム・ローゼンスティールは、調査報道には3つのタイプがあると指摘している。 第1は「本来の形の調査報道」。これは、記者がそれまで市民には知られていなかった新事実を暴露する報道である。今回の賭け麻雀を報じた『週刊文春』の報道は、一般の国民が知らない新事実を独自に調べて暴露したものであり、あえて分類すれば、このタイプに属すると言えるかもしれない。 第2は「解釈型の調査報道」。これは、特定の問題や概念を注意深く分析することによって、その問題についての市民の理解を深めたり、新しいものの見方を提示したりする報道である。例えば、新型コロナの感染拡大という事実を知らない市民はいない。だが、「日本の対策の強みと弱み」という問題を考えるには、世界各国の事例を集め、虚実を鑑別し、事実を分析し、多数の専門家に取材して分析結果を再構成する、膨大な作業が必要だ。1人の市民がこれを完遂するのは困難だが、時間と資金とノウハウのある新聞社であれば、その気になればできるではないか──ということである。 そして第3に、同書が皮肉を込めて挙げているのが「調査報道」ではなく「調査に関する報道」という報道スタイルである。これは、公的機関が既に進めている捜査・調査の内容をリークに基づいて報道することを指す。捜査当局の動向把握を最優先する日本の事件報道は、まさにこれだ。 「報道機関は権力に対する監視役ではなく、その道具になる危険がある」という同書の指摘はその通りというほかない。 サツマワリ記者だった若いころ、上司や先輩に向かって「こんな業界内競争ばかりでいいんですか」と疑問を口にし、散々叱られたことがある。彼らの大半はその後、部長か局長か役員になった。 あれからおよそ20年。「変わらないんだなあ」というのが賭け麻雀スキャンダルに接した筆者の率直な感想である』、「「調査に関する報道」という報道スタイル・・・捜査当局の動向把握を最優先する日本の事件報道は、まさにこれだ。 「報道機関は権力に対する監視役ではなく、その道具になる危険がある」という同書の指摘はその通りというほかない」、同感だ。さすが外信畑の記者らしいクールな記事で、先の分類では、「第2は「解釈型の調査報道」」に属するようだ。

第四に、5月22日付け日経ビジネスオンラインが掲載したコラムニストの小田嶋 隆氏による「死ぬこと以外かすりキス?」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00116/00071/
・『なんと、黒川弘務東京高検検事長が辞意を表明した。 2020年に入ってからというもの、毎日のようにびっくりすることばかりが続いていて、何かに驚く感受性自体が、たとえば去年の今頃に比べて、50%ほど鈍化した気がしているのだが、それでも今回のこのニュースには仰天した。 黒川氏は、5月21日発売の「週刊文春」誌がスクープしている新聞記者との賭け麻雀の事実関係を認めて、辞意を漏らしたもののようだ。 してみると、3日前(18日)に政府が検察庁法の改正案の今国会での可決成立を断念した理由も、安倍総理が説明していた「国民の皆様のご理解なくして前に進めて行くことはできない」という筋立ての話ではなかったことになる。 「ネット世論が政治を動かした」というわたくしども野良ネット民の受け止め方も、こうなってみると、ぬか喜びというのか、勘違いだった可能性が高い。 政府が法改正を断念した理由は、あらためて考えるに、黒川氏失脚の可能性が18日の段階で政権中枢に伝わっていた(週刊文春の記者が黒川氏に直接取材を持ちかけたのが17日だったと伝えられている)からなのだろう。そう考えた方がのみこみやすい。つまり、政府には、法改正を強行せねばならない理由がなくなったわけだ。というのも、総理周辺が検察庁法の改正を急いだのは、閣議決定で半ば脱法的に留任していた状態の黒川氏の定年延長を事後的に正当化(あるいは「合法化」)することと、もうひとつは黒川氏を検事総長に就任させるための道筋を作ることが彼らの急務だったからだ。 法改正の理由(あるいは「ターゲット」)であった黒川氏その人が、職にとどまることのかなわぬ人間になってしまった以上、法案は、根底から無効化することになる。目的の人間を目的のポストに導くことができない法律は、すなわち法案を起草した人間たちにとって、ものの役に立たない空文だからだ。 なんと。 これは、おそらく関係者の誰もがまるで予測していなかった結末だ。 少なくとも私は、ひとっかけらも想像すらしていなかった。 後知恵で個人的な空想を開陳すればだが、もしかしたら、当の黒川氏だけは、自分の近未来を半ば予知していたのかもしれない。 つまり、今回のストーリーが進行している中で 「オレがこの一蓮托生のがんじがらめのレールから脱線するためには、それこそ懲戒免職相当の何かをやらかすほかに方法がないのかもしれないな」と、どこかの時点で、黒川氏は、自分の行く末を自らの意思において選択する唯一の方法として、危険牌を切りに行ったのかもしれないということだ。 ……というこのお話は、もちろん私が面白がって考えているアナザーストーリーにすぎない。この筋立てで考えると、黒川氏の役柄に人間的な苦悩が付け加えられる分だけドラマとしての深みが増す気がする……ということで、こんな与太話に信憑性があると考えているわけではない。 真相は、依然として、まるでわからない。 独自取材の事実をつかんでいるわけでもない私が、これ以上、報道済みの記事をネタに空想を書き並べたところでさしたる意味はない。 なので、この件についてはこれ以上書かない。事実関係が明らかになって、事件の背景がよりはっきりしてから、あらためて触れる機会があるかもしれないが、どっちにしても、それまではおあずけだ。 ここから先は、話題を変えて、私が個人的に注目している案件について、個人的に考えている内容を書き起こすことにする。 これも黒川氏の案件と同じく「文春砲」が明らかにしたスキャンダルだ。 前にもちょっと書いた気がしているのだが、私は、この「文春砲」という言い方に、ずっと反発を感じている。いち雑誌の編集部が自ら名乗る名称として、いくらなんでも生意気だと思うからだ。僭称というのか、夜郎自大に見える。 しかし、この何年かのなりゆきを見て、私は、彼らが「文春砲」を名乗ることは、もはや誰にも阻止できないことを悟るに至った。 私の負けだ。あなたたちは、「文春砲」なる調子ぶっこいた名前を名乗るに足る仕事をしている。 実際、週刊文春の編集部は、この国の政治経済社会芸術ノンセクションのあらゆる分野において、めざましい実績を積み重ね続けている。日本の事件報道のおよそ半分は週刊文春一誌が動かしていると言っても過言ではないかもしれない。おかげで、20世紀の報道をリードしていた新聞各紙ならびにテレビ各局は、文春砲のおこぼれで拾い食いをしているていたらくだ』、「黒川氏だけは・・・今回のストーリーが進行している中で 「オレがこの一蓮托生のがんじがらめのレールから脱線するためには、それこそ懲戒免職相当の何かをやらかすほかに方法がないのかもしれないな」と、どこかの時点で、黒川氏は、自分の行く末を自らの意思において選択する唯一の方法として、危険牌を切りに行ったのかもしれない」、との「アナザーストーリー」を、我が女房がいち早く指摘していたので、当否はともかく女性の直感の鋭さに驚かされた。
・『文春に関しては、そんなわけで、あっぱれと申し上げるほかにないのだが、その一方で、文春以外のメディアが、どうしてこれほどまでに弱体化してしまったのかについて、思いを馳せずにおれない。 そして、その答えのひとつが、これまた文春砲の記事の行間に書いてあったりする。なんという運命のめぐりあわせだろうか。既存メディアはもはや文春砲の標的であるのみならず、火薬供給源にその身を落としているのだ。 新聞が御用告知機関に成り下がり、テレビが馬鹿慰安箱に転落したのは、これはもはや時代の必然というのか自業自得以外のナニモノでもないわけなのだが、私が個人的に残念に思っているのは、自分自身がその周縁で糊口をしのいでいる出版の世界が、全体としてゆっくりと死滅しつつあることだ。 今回の文春砲は、そのわれらが出版業界の醜態を撃ち抜いている。私は自分の心臓を撃ち抜かれたような苦い痛みをおぼえながら、当該の記事を読んだ。 記事は、文春オンラインに掲載されている。ネット上から閲覧することができる。ぜひ一読してみた上で、当稿に戻ってきてほしい。 詳細はリンク先の記事の本文に譲るが、要するに大手出版社の社員編集者が、女性フリーライターにセクハラを仕掛けたあげくに、ボツにした原稿料を踏み倒したというお話だ。 ここまでのところで 「なるほど、よくある話だ」 と思ったあなたは、業界の現状をよく知っている事情通なのだろう。 しかしながら、この話を「よくある話」として聞き流してしまえる人間は、世間の常識から考えれば、非常識な人物でもある。 別の言い方をすれば、わたくしどもが暮らしているこの出版業界という場所は、世間のあたりまえな常識とは別の、狂ったスタンダードがまかり通っている、狂った世界だということだ。 私が、世間的にはずっと大きいニュースである黒川検事長の辞任問題よりも、この小さな出版界で起こったちっぽけで異様でケチくさくてみっともない下品な箕輪厚介氏の話題を今回のテーマに選んだのは、箕輪セクハラ案件の扱いが「あまりにも小さい」と思ったからだ。もう少し丁寧な言い方で説明すれば、文春砲以外のメディアがこの事件を扱う態度が、あまりにもお座なりだったからこそ、私は、自分が微力ながら力を尽くして原稿を書かなければいけないと決意した次第なのである。 当初、私の頭の中にあったのは、「ナインティナイン」の岡村隆史氏が、つい先日、女性蔑視発言で四方八方から盛大に叩かれていた事件との比較だ。 岡村氏の事件についてあらためて説明する行数はないので、各自ごめんどうでも検索してください。 とにかく、私が思ったのは、岡村氏の発言が、どれほど不適切かつ無神経かつ不穏当かつ不潔であったのだとしても、あれは、直接のフィジカルな被害者のいない、言葉の問題にすぎなかったということだ。 一方、箕輪氏の今回のセクハラ案件は、言葉の上の問題ではない。概念上の不具合でもない。生身の肉体を持った実在の女性に向けて発動された具体的な行動としてのセクハラ行為だ。犯罪として直接に立件可能な性被害としてはギリギリ未遂に終わっているものの、企図は明確だ。繰り返し明示的に被害者たる女性ライターを脅かした事件でもある。証拠も揃っているとみられる。 とすれば、どちらが悪質であるのかは明白ではないか。 しかしながら、世間の扱いは逆だ。 岡村氏の事件は、発言の直後から複数の新聞紙上で記事化され、様々な回路を通じて盛大に報道された。しかも、生放送のラジオ番組を通じて、本人が公式に謝罪したにもかかわらず、いまだにSNS上での組織的なバッシングが続いている。番組の降板運動も沈静化していない。 一方、箕輪氏のケースは、徐々に黙殺されようとしている。 なにより、箕輪氏は、文春オンラインがこの件の記事を配信(5月16日)した3日後(同19日)のテレビ番組(「スッキリ」NTV系)に、リモート出演の形ではあるものの火曜日のレギュラーコメンテーターとして生出演している。 刑事司法の世界において「疑わしきは罰せず」という原則が重視されているのは承知している。しかし、テレビの出演者に関しては、これまで、慣例として、司法の判決を待つことなく、なんであれスキャンダルが報じられれば、その時点で出演を見合わせるのが不文律になっているはずだ。 とすれば、あれほど衝撃的な内容の記事が出て、判断に費やすことのできる日数が3日もあったのに、それでもテレビ局側が出演を容認したことは、普通に考えて、テレビ局側が、当該の事件を 「不問に付した」と考えて差し支えなかろう。つまり、「スッキリ」は、 「箕輪さんは言いがかりをつけられているだけで、無実です」ということを、全国の視聴者に向けて告知したに等しいわけだ。 本人が生放送のテレビ番組に顔出しで生出演したことも、 「自分は濡れ衣を着せられていますが、視聴者の皆様に対して後ろめたく思うところはまったくございません」と宣言したのと同じ意味を持っている。 この点も見逃せない』、「既存メディアはもはや文春砲の標的であるのみならず、火薬供給源にその身を落としているのだ。 新聞が御用告知機関に成り下がり、テレビが馬鹿慰安箱に転落・・・私が個人的に残念に思っているのは、自分自身がその周縁で糊口をしのいでいる出版の世界が、全体としてゆっくりと死滅しつつあることだ。 今回の文春砲は、そのわれらが出版業界の醜態を撃ち抜いている」、なかでも「新聞が御用告知機関に成り下がり、テレビが馬鹿慰安箱に転落」は傑作だ。
・『つまり、あわせて考えると、日本テレビならびに幻冬舎および箕輪氏は、このたびの週刊文春の報道について、 「この件はおしまいです」「箕輪は大丈夫です」という態度で臨んだわけで、今後、メジャーなマスコミのスタンダードは、この態度を踏まえた上で動きはじめるということだ。 こんなバカなことが許されて良いのだろうか。 「スッキリ」が放送された当日、私は 《タイムラインに流れている情報では、箕輪厚介氏が今朝の「スッキリ」にリモート出演していたらしいのだが、マジか? そういう基準なのか? おまえらどこまで身内大事なんだ? 自分たちがそんなふうでどうして安倍さんを批判できるんだ?》2020年5月19日午前9:57 《幻冬舎箕輪厚介氏のセクハラ&原稿料踏み倒し案件を、どうやらテレビは追いかけていない。もしかして編集者と記者とディレクターとレポーターは、「相互非取材協定」でも締結しちゃってるわけなのか? 「お互い殺傷力のある武器を持った者同士、穏便にやりましょうや」ってか?》2020年5月19日午前9:33 というツイートを投稿しているのだが、おそらく、この事件は、裁判所に持ち込まれて明らかな結果が出ない限り、うやむやにされて終わるはずだ。それほど、社員編集者を守る業界の力は大きい。 念のために付言しておけば、岡村氏が盛大に叩かれている一方で、箕輪氏がなんとなく免罪される理由の最も大きな部分は、両者の知名度の違いにある。 誰もが知る有名人である岡村氏を叩くことは、視聴率やページビューを稼ぐ材料になる。不快に思っている人間がたくさんいる一方で、擁護したいと考えているファンも少なくない。とすれば、岡村氏の話題を扱うことは、どっちにしても人々の注目を集める。記事としては巨大なページビューが期待できる。 一方、箕輪氏は、しょせんローカル有名人にすぎない。 「箕輪って誰だ?」と思う人間が、50%を超える状況下で、そんなマイナー著名人のスキャンダルを扱ったところで、部数もページビューも視聴率も期待できない。 大筋は、まあ、そういうことだ。 ただ、私は、メディア業界の人間たちが、同じメディア企業の社員にあたる人間のスキャンダルに対して及び腰になる構造は、明らかに存在しているというふうに考えている。それほど、社員編集者の地位は高く、メディア企業従事者同士の互助会の力は強烈なものなのだ。彼らは互いを責めない。当然だ。なぜなら、明日は我が身だからだ。 以下、その社員編集者たちへの思いを、一介のライターの立場から発信した5月17日の一連のツイートをご紹介する。 《表舞台に出たがる編集者と六方を踏む黒子はろくなもんじゃないってじっちゃんが言ってた。》2020年5月17日午前9:15 《大手出版社の社員編集者の中には著者をアシストするのではなく、ライターを「見つけ出し」て「育て」ている気分の人間が含まれている。でもって、自分が「人事権」と「企画権」を持ったプロデューサーであり、鵜飼の鵜匠でありオーケストラのコンダクターでありレストランのシェフだと思っている》2020年5月17日午前9:24 《ってことはつまりアレか? 書き手は皿の上のジャガイモで、あんたらが腕をふるって味をつけて熱を通さないと食えない代物だってことか?》2020年5月17日午前9:26 《実際のところ、うちの国はフリーランスで何かを作っている末端の個人より、その作品のマネタイズを担当する会社の社員のほうが優遇される(あるいは「より高い社会的地位を保証される」)社会なので、大手出版社の編集者というのは「准文化人」くらいな枠組みに編入されるのだね。》2020年5月17日午前9:32 《「メディアはメッセージだ」と、マクルーハンだかがフカした(←オレは読んでない)お話が、「水道管は水より偉いんだぞ」てな話に変換されて、勘違いした編集者だのディレクターだのプロデューサーだのが肩で風を切って歩くようになったのが1970~90年代のメディア業界の空気だったわけで……》2020年5月17日午前9:51 《で、21世紀にはいると業界がまるごと沈没しはじめたんでメディアもメッセージもひとっからげにおわらいぐさになっています。現場からは以上です。》2020年5月17午前9:52)』、「メディア業界の人間たちが、同じメディア企業の社員にあたる人間のスキャンダルに対して及び腰になる構造は、明らかに存在しているというふうに考えている。それほど、社員編集者の地位は高く、メディア企業従事者同士の互助会の力は強烈なものなのだ。彼らは互いを責めない。当然だ。なぜなら、明日は我が身だからだ」、大いにあり得る話だ。
・『長い引用になってしまった。 本来なら、ツイートの内容をあらためて記事のためのひとつながりの文章として書き起こすのがライターとして誠実な仕事ぶりなのだろうが、もはや私は、その作業をこなすだけの根気を持っていない。というのも、このテーマについて書くことは、私を限りなく疲弊させるからだ。 だからこそ、勇気をもって週刊文春の編集部に告発の記事を持ち込んだA子さんには最大限の敬意と称賛を表明したい。この告発が、彼女をどれほど疲弊させているのかは、想像するに余りあることだ。私は彼女を尊敬する。彼女の行動は、単に彼女が自分自身を守るために役立つだけではない。出版業界の狂った常識を世に知らしめるために、彼女が今回明らかにした経緯は、大きな意味を持っている。 同じようななりゆきで原稿料を踏み倒されたライターの話は、常に業界に流れている。私もいくつか聞いたことがある。セクハラも、日常茶飯事と言って良い。まさか、などと驚いてはいけない。出版業界は、古い体質を強く残した封建的で大時代な、愚かな業界だ。その古さは、出版という仕事を昔からあるカタチのまま現代に引き継ぐために不可欠な部分もあるのだが、それはそれとして、いつも大きな弊害をもたらしている。 彼女の告発を「チクり」「密告」「タレコミ」「言いつけ口」「売名行為」と評する輩が、今後、大量に現れるはずだが、どうか気にしないでほしい。 彼らは、出版業界における社員編集者の横暴と思い上がり(具体的には踏み倒しとセクハラと文化人ヅラ)を裏から支えてきた権力の尖兵にすぎない。 ライターは本当にひどい目に遭っている。 特に、21世紀に入ってから、業界関係者のすべてが貧窮化する中で、末端に位置するライターの地位と収入と自由度と再就職可能性は、極限まで縮小しつつある。 私自身の話をすれば、私は、1980年代にデビューした幸運なライターだった。私以外にも業界が膨張過程にあった状況下で参入した当時の書き手には、下積みの苦労を経験しないままデビューした幸運な書き手が少なくない。 というのも、雑誌が次々と創刊され、書籍の売り上げが年々増大しつつあった上昇局面の中の書き手は、さしたる実績がなくても仕事を見つけることができたからだ。 であるから、最初の雑誌に連載を持った時点では、私は、ほとんどまったく実績を持っていないブラブラ者の失業者にすぎなかった。たまたま雑誌を創刊した編集長とその周辺のメンバーが、同じゲームセンターに通う遊び仲間だったからという縁で、いきなり連載枠を与えられたカタチだ。 はじめての単著も、交通事故みたいな調子で書いたものだ。 さる銀行の電算室でパソコン(当時は「マイコン」と呼ばれていましたね)の入門書をいくつか書いていた人物に、とあるライブハウスの楽屋で、アマチュアロックバンドの対バンのメンバーとして紹介された時、 「キミ、大学出てぶらぶらしてるんならコンピュータの本書かない?」 「え? オレ、そんなもの知りませんよ」 「知らないから入門書が書けるんじゃないか(笑)」と、おおよそ、そういういいかげんななりゆきで、この道に入ったわけだ。 何を言いたいのかというと、私のような50歳を超えたライターは、21世紀の若いライターさんたちが味わっている苦境を本当には知らないということで、だから、不況下の出版業界で苦しんでいる若いライターは、先輩を敬う必要なんかないぞということだ。 ライターにとって何が一番むずかしいかというと、実績を持たない素人の立場から脱して、最初に活字の原稿を書くためのきっかけをつかむことだ。 つまり、書くことそのものよりも、デビューのための入り口を見つけることの方が死活的に重要だということだ。このことはまた、多くのライター志望者にとって、デビューすることが最大の障壁になっていることを意味してもいる。 そこのところさえなんとかクリアすれば、あとは、実績を少しずつ積み上げながら、自分の世界を少しずつでも、広げて行くことができる。 この事態を逆方向から観察すると、ライター志望者もしくは、駆け出しのライターの目から見て、大手出版社の社員編集者は、生殺与奪の権をすべて備え持った神の如き存在に見えているということでもある。 特段に威張り散らすまでもなく、編集者は編集者だというだけで、若いライターにとっては、すでにして全能の神なのである。 私は、その最初の苦労を経験していない。 いきなり、コネと顔なじみの力だけで、しかるべき「座席」におさまった至極ラッキーな参入者だった。 ついでに申せばライターの「実力」と言われているものの半分以上は、その「座席」の力だったりする。 ここのところの話は、ちょっとわかりにくいかもしれない』、「私は、その最初の苦労を経験していない。 いきなり、コネと顔なじみの力だけで、しかるべき「座席」におさまった至極ラッキーな参入者だった」、普通は「最初の苦労」を針小棒大に語る人が多いが、小田嶋氏は例外的に「ラッキーな参入者だった」、ようだ。
・『テレビタレントの例を引くと、ずっと直感的にわかりやすくなると思うので、以下、芸能人の「実力」の話をする。 芸能人の「実力」は、そのほとんどすべてを「知名度」に負っている。で、その「知名度」の源泉となるのは、メディアへの露出度で、メディアへの露出量を担保するのは、そのタレントの「実力」ということになっている。 ん? この話はいわゆる「ニワトリとタマゴ」じゃないかと思ったあなたは正しい。 1.知名度があるからみんなが知っている 2.みんなが知っているから愛される 3.愛されるからタレントとしての実力が認められる 4.タレントとしての実力があるから出演のオファーが来る 1に戻る つまり、最初に誰かのおまけでも何でも良いからテレビに出て顔を売れば、その顔を売ったという実績が自分の商品価値になるということだ。 ライターも実は似たようなものだ。商業誌に連載を持っているからといって、そのライターがとびっきりに文章の上手な書き手であるわけでもなければ、人並みはずれて頭が良いわけでもない。正直なところを述べれば、一流の雑誌に書いているライターの中にも、取りえのない書き手はいくらでもいる。 それでも、一度業界に「座席」を占めたライターが仕事を失わないのは、業界の編集者たちが「◯◯誌に書いている」という実績を重視する中で、「実力」と称されるものが仮定されているからだ。 行列のできるラーメン屋の構造と同じだ。誰もが行列のケツにつきたがる。そういうくだらない話だ。 そんなわけで、キャスティング権を握っているテレビのプロデューサーや、編集権を手の内に持つ雑誌の編集者は、言ってみれば、タレントやライターの「実力」を自在に生産・配布する利権そのものなのである。 長い原稿になってしまった。 本当は書きたいことは、まだまだこの3倍くらいある。 別の機会に書くことになるかもしれない。 体力が戻ったら、あらためて取り組んでみたい。 当面の結論として、私はとりあえず、出版社の未来には絶望している。 絶望というより、うんざりしている。 出版エージェントだとか、オンラインサロンだとか、ユーチューブのチャンネルだとか、箕輪氏の周辺には、出版という古くさい業態を、新しいマネタイズのチャンネルとして再定義せんとするニヤニヤ顔の野心家たちが群れ集まっている。その様子に、私は強烈な嫌悪感をおぼえている。 出版業界の古さには良い面と悪い面がある。 出版業界の新しい試みにも期待できる面と明らかにうさんくさい面の二通りの印象を抱いている。 報道が本当ならば、箕輪氏は、出版業界の古い体質が容易にぬぐいきれずにいる醜さと、出版をアップデートしようと新しい人々が共通してその身のうちに備えている薄汚さを併せ持ったクズの中のクズだと思っている。 A子さんと箕輪氏の間に何があったのかは、この先、文春砲の第2弾になるのか、あるいは裁判という経路を通じて明らかになるのかはわからないが、いずれ、天下の知るところとなるはずだ。 この原稿では、事実関係の細かいところを追うことはあえてしなかったが、ともあれ、私は、天才編集者を名乗る人間が、一方では、出版のマネタイズを近代化する方法を提案しているように見せかけながら、他方では、およそ前近代的な奴隷出版の手口でライターを使役していたことが、今回の事件の本質だと思っている。 長い原稿になってしまった。 私はとても疲弊している』、「一度業界に「座席」を占めたライターが仕事を失わないのは、業界の編集者たちが「◯◯誌に書いている」という実績を重視する中で、「実力」と称されるものが仮定されているからだ」、そんなものなのだろう。「天才編集者を名乗る人間が、一方では、出版のマネタイズを近代化する方法を提案しているように見せかけながら、他方では、およそ前近代的な奴隷出版の手口でライターを使役していたことが、今回の事件の本質だと思っている」、私はこの記事を読むまでは「箕輪氏」を全く知らなかった。今後も知りたいとは思えない人物のようだ。
タグ:第1は「本来の形の調査報道」。これは、記者がそれまで市民には知られていなかった新事実を暴露する報道 調査報道には3つのタイプ ビル・コヴァッチとトム・ローゼンスティール 『ジャーナリズムの原則』日本経済評論社 「権力の道具になる危険がある」 日本では、捜査が冤罪の方向に進んだ場合、新聞社は冤罪に苦しむ人の味方ではなく、捜査当局発のリークを拡散し、冤罪を助長する役割をしばしば果たしてしまう 捜査情報を重視するニュース感覚は新聞社内の人事システムと固く結びついており、社内出世コースを歩んだ人々の間で概ね継承されてきたからである。捜査情報至上主義に批判的な幹部もいたが、大勢ではない 人事がからむから捜査情報を重視せざるを得ない 新聞社の自己満足 捜査情報の先行報道 「特ダネ」の典型は 要求される「特ダネ」とはなんなのか 「特オチ」を防ぐ 「特ダネ」 捜査当局者に食い込むこと自体は重要 今回の問題では、「文春砲」と言われるスクープ連発の週刊誌のニュース感覚と、大手新聞社のニュース感覚の決定的な違いが見えた 「取材」か「暇つぶし」とは思っていたが 「文春砲と新聞社、決定的な違いは「ニュース感覚」 業界内の「特ダネ」競争から抜け出せない新聞社の体質」 白戸圭一 新潮社フォーサイト 第3に、同書が皮肉を込めて挙げているのが「調査報道」ではなく「調査に関する報道」という報道スタイルである。これは、公的機関が既に進めている捜査・調査の内容をリークに基づいて報道することを指す。捜査当局の動向把握を最優先する日本の事件報道は、まさにこれだ JBPRESS 私は彼が総理になるべき人物だと思っています。この程度のスキャンダルでつぶれるなら、その程度の男。しかし、この女性は切らないと総理になったときに困ります 掲載するか否かの決定打は「証言」にあり 守衛さんが出てきて、「敷地内に入らないでください」。 カメラマンはそのとき、叫びました。 「私は昆虫カメラマンです。今、とても貴重な蝶々が飛んでいます。だから静かに! 尾行、撮影のリアル 窮地のカメラマンは叫んだ! 文春記者の張り込みのイロハとは? 「文春流「政界スキャンダル」の追っかけ方、首相官邸からの圧力も!」 木俣正剛 ダイヤモンド・オンライン まるで応援団のような存在の記者もいる 第2は「解釈型の調査報道」 政治家ベッタリの記者もいる ジャーナリスト・TBS出身の山口敬之 伊藤詩織氏 記者クラブを見直すべき 小沢一郎 警察と検察の捜査を根底から覆す、超弩級のスクープを放っている 日本テレビ 「足利事件」 捜査機関には犯人との思い込みがあった。まだ意識は変わっておらず、今後も冤罪が起きる危険性はある 東電OL殺人事件 英フィナンシャル・タイムズは「日本の検察は、リークしてメディアを利用している」と批判した。米ニューヨーク・タイムズも同時期、「日本の検察とメディアはいわば相互依存性」と指弾した 「黒川前検事長の賭け麻雀問題で浮き彫りにされる“事件報道の危うさ”」 高堀冬彦 デイリー新潮 (その22)(黒川前検事長の賭け麻雀問題で浮き彫りにされる“事件報道の危うさ”、文春流「政界スキャンダル」の追っかけ方 首相官邸からの圧力も!、文春砲と新聞社 決定的な違いは「ニュース感覚」 業界内の「特ダネ」競争から抜け出せない新聞社の体質、小田嶋氏:死ぬこと以外かすりキス?) メディア 天才編集者を名乗る人間が、一方では、出版のマネタイズを近代化する方法を提案しているように見せかけながら、他方では、およそ前近代的な奴隷出版の手口でライターを使役していたことが、今回の事件の本質だと思っている 私は、その最初の苦労を経験していない。 いきなり、コネと顔なじみの力だけで、しかるべき「座席」におさまった至極ラッキーな参入者だった 「ナインティナイン」の岡村隆史 社員編集者の地位は高く、メディア企業従事者同士の互助会の力は強烈なものなのだ。彼らは互いを責めない。当然だ。なぜなら、明日は我が身だからだ 既存メディアはもはや文春砲の標的であるのみならず、火薬供給源にその身を落としているのだ。 日経ビジネスオンライン 箕輪氏のケースは、徐々に黙殺されようとしている 箕輪セクハラ案件の扱いが「あまりにも小さい」 新聞が御用告知機関に成り下がり、テレビが馬鹿慰安箱に転落したのは、これはもはや時代の必然というのか自業自得以外のナニモノでもないわけなのだが、私が個人的に残念に思っているのは、自分自身がその周縁で糊口をしのいでいる出版の世界が、全体としてゆっくりと死滅しつつあることだ アナザーストーリー 「オレがこの一蓮托生のがんじがらめのレールから脱線するためには、それこそ懲戒免職相当の何かをやらかすほかに方法がないのかもしれないな」と、どこかの時点で、黒川氏は、自分の行く末を自らの意思において選択する唯一の方法として、危険牌を切りに行ったのかもしれないということだ 当の黒川氏だけは、自分の近未来を半ば予知していたのかもしれない ディア業界の人間たちが、同じメディア企業の社員にあたる人間のスキャンダルに対して及び腰になる構造は、明らかに存在 小田嶋 隆 「死ぬこと以外かすりキス?」
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働き方改革(その27)(テレワークでも常に社員を「監視」したがる上司…日本企業のヤバい実態 テクノロジーで「昭和」が復活する絶望、「テレビ会議だと結論が出ない!」対面での妥協をEUは模索、「俺の時代は終わった」新型コロナで揺れる管理職たち) [企業経営]

働き方改革については、5月15日に取上げた。今日は、(その27)(テレワークでも常に社員を「監視」したがる上司…日本企業のヤバい実態 テクノロジーで「昭和」が復活する絶望、「テレビ会議だと結論が出ない!」対面での妥協をEUは模索、「俺の時代は終わった」新型コロナで揺れる管理職たち)である。

先ずは、5月27日付け現代ビジネスが掲載した経済評論家の加谷 珪一氏による「テレワークでも常に社員を「監視」したがる上司…日本企業のヤバい実態 テクノロジーで「昭和」が復活する絶望」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/72864
・『コロナ危機によって一部の企業はテレワークに移行したが、社員がパソコンの前に座っているのか上司が監視したり、オンラインで会議や飲み会を行った際に、上司が家庭の事情にまで介入するという事態が頻発した。テレワークは働き方改革を実現する有力な手段のひとつであり、コロナ危機によって多くの会社がテレワークを実現したことは、日本の会社組織を変える大きなきっかけとなるはずだった。 言うまでもないことだが、テレワークというのは、従来の社内習慣を家庭内に延長するためのツールではない。物事の本質を的確に捉えなければ、テレワークのメリットを享受できないどころが逆効果になってしまう』、興味深そうだ。
・『テレビ会議がマウンティングの場に  テレワークを実施した場合、一定の頻度でオンライン会議が開かれることになる。当然、画面には背景が映り込むことになるが、場合によっては自宅の様子がある程度、相手にも分かる。一部の社員は「よくそんな家に住めるね」などと、ここぞとばかりにマウンティングに走っているという。異性の上司から、部屋の様子をもっと見せるよう要求されたというケースもSNSで散見された。 会議をしていなくてもずっとオンラインにするよう求められるなど、事実上、上司による監視も行われており、一部の企業では社員がパソコンの前にいるのかチェックできるソフトウェアの導入も検討しているという。 テレワークに移行したにもかかわらず、こうした行為に走ってしまうのは、全員が同じ場所で顔を合わせ、濃密な人間関係を構築するという従来型ムラ社会の習慣から脱却できていないからである。だが、物理的に場所が離れている以上、オフィスという空間を共有している時とまったく同じ環境にはならない。 場を共有するという、従来型価値観から抜け出せないままテレワークを実施すれば、弊害の方が多くなり、緊急事態宣言の解除をきっかけにすべてを元の状態に戻そうとする動きを招きかねない。こうした事態を回避するためには、テレワークが持つ本質的な意味について再確認しておく必要があるだろう。 テレワークの実践は、今回のコロナ危機よりも前から推奨されていたことだが、その前提となっていたのは、先ほども述べたように「働き方改革」である。 働き方改革というのは単に残業時間を減らすための措置ではない。業務のムダを見直し、生産性を向上させることで、収益を落とさずに労働時間を削減することが真の目的である。業務のムダの中には、社員全員が夜遅くまで残業しているのをいいことに、各人の仕事の範囲や責任の所在を曖昧にしてきたという慣習も含まれている。 個人の責任を明確にし、合理的に仕事を進めることに意味があり、これが実現できて初めてテレワークや時差出勤といった措置が可能となる』、「一部の企業では社員がパソコンの前にいるのかチェックできるソフトウェアの導入も検討している」、未だに全く「テレワークのことを理解してない企業もあることに、改めて驚かされた。
・『テレワークと働き方改革はセットになっている  つまり、多様性の発揮やテレワークというのは、働き方改革とセットになっており、単体では機能しないものである。その証拠に、今回のコロナ危機でスムーズにテレワークに移行できた企業の多くは、コロナ危機の前から働き方改革が進んでおり、社員が互いに顔を合わせなくても業務を進められる体制ができあがっていた。 こうした改革を進められなかった企業が、形だけテレワークを導入すると冒頭で示したようなケースが多発してしまう。社員がパソコンの前に座っているのか監視するというのは、成果ではなく、同じ空間を共有した時間でしか社員を評価できないという現状を如実に物語っている。 全社員が遅くまで会社に残っていると、各人がいつまでにどの作業を終えたのかというタスク管理は曖昧になる。結果として社員の評価基準は成果ではなく、何時間残業したのか、皆と同じ時間を共有したのか、という部分に絞られてしまう。 ある企業では、マクロを駆使してエクセルの作業を合理化し、いつも定時前に仕事を終えていた優秀な派遣社員を評価できず、「暇そうにしている」という理由で派遣を継続しなかったという。入力や計算の作業に時間がかかり、残業を繰り返していた生産性の低い社員を有能と見なし、生産性の高い社員を解雇するという喜劇のような話だが、この話を本当に笑える企業はどのくらいあるだろうか。 はからずも今回のコロナ危機は、テレワークへの移行を通じて、働き方改革の達成レベルを可視化する結果となってしまったようだ』、「テレワークと働き方改革はセットになっている」、その通りだ。「マクロを駆使してエクセルの作業を合理化し、いつも定時前に仕事を終えていた優秀な派遣社員を評価できず、「暇そうにしている」という理由で派遣を継続しなかった」、ここまで見る目のない企業では、働きがいもないだろう。
・『テクノロジーの進歩で昭和が復活するという絶望  働き方改革が実現できていない組織では、仕事が終わってオンライン飲み会に移行しても、やはり、従来と同じカルチャーが貫徹されてしまう。 オンライン飲み会とは、テレビ会議システムを使って、それぞれの自宅でお酒を用意して、飲み会を行うというものである。実際にお店に行かなくてもよいので、感染防止になるのはもちろんのこと、ムダに体力を使わず、退出も自由というのが本来のメリットであった。 ところが、従来型カルチャーの組織がオンライン飲み会を実施すると、飲食店での飲み会よりもさらにひどい状況になる。お店での飲み会であれば、あくまでお店での会話だけが話題の対象となるが、オンラインの場合、冒頭で紹介したケースのように自宅の状況も「いじり」の対象になる。 家が整理できていないといった話から始まり、上司のくだらない説教が続き、挙げ句の果てには結婚などプライベートな部分にまで干渉する。昭和の時代には社員の私生活に過度に干渉する上司は珍しくなかったが、いくら日本の企業組織が前近代的とは言え、平成以降はこうした風潮はかなり後退したかに見えた。だがコロナをきっかけとした業務のIT化によって、昭和的な風習が復活したのだとすると、まさに絶望的としかいいようがない』、「コロナをきっかけとした業務のIT化によって、昭和的な風習が復活」、こんな事例まであるとは心底驚かされた。
・『マネジメントの原理原則に立ち返ることが重要  繰り返しになるが、本来、企業の業務というのは、リーダーがメンバーに対してタスクを与え、いつまでに何を成果として提出するのか管理することで回っていく。あうんの呼吸で業務を進める従来型の手法はある意味でマネジメントの放棄であるといってもよい。 こうした近代的組織の基礎がしっかり出来ていれば、テレワークへの移行や、時差出勤も容易に実現できる。実際、ITがここまで普及するずっと前から、グローバルに展開する優良企業では、既存の通信手段を使って、遠隔での業務をこなしてきた。 ITは以前から行われている遠隔での業務をより便利にする効果を持つだけであり、IT化によって業務の本質が変わったわけではない。逆に言えば、業務の分担と責任の明確化という基本が出来ていなければ、どれだけテクノロジーが発達しても、遠隔での業務には移行できないだろう。 今年の冬には再び感染が拡大すると予想する専門家は多く、テレワークを業務の一部として位置付けられなければ長期的な業績にも影響する。テレワークへの移行は、働き方改革と不可分であるという原理原則について再確認する必要があるだろう』、全く同感である。

次に、6月9日付け日経ビジネスオンラインが掲載したみずほ証券チーフMエコノミストの上野 泰也氏による「「テレビ会議だと結論が出ない!」対面での妥協をEUは模索」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00122/00074/?P=1
・『政府が「新しい生活様式」を促していることもあり、会社員などが働くスタイルとして、在宅勤務(テレワーク)が定着する方向である。会社側からすれば、高い賃借料を支払っているオフィススペースを徐々に減らすことが可能になるし、地方出張が減ればその関連の経費も少なくて済む。 もっとも、各人への通勤費支給を定期券代のままとするかどうかは、やや難しい問題ではある。一方、働く側からすれば、会社への行き帰りの通勤時間がなくなるので、その時間の有効活用が可能になる。自宅にいることで、自分のペースで落ち着いて仕事ができるから効率が上がるという人もいるだろう。 とはいえ、仲間どうしがふだんなかなか対面しない分、会社組織の一体感が薄れるのではという懸念もあろう。 通信インフラの問題もある。サーバーへの負荷が過大になることでパソコンの反応速度が落ちると、作業効率は格段に低下する。小型カメラの映像などで姿を確認できない場合、仕事をせずに、どこかに行ってしまっている可能性もある。街中でよくみかけるウーバーなど、自転車による外食配達サービス。配っている人の中には、会社に無断で昼間に副業している人もいるのではないかと、筆者はにらんでいる』、「ウーバーなど」はよく見かけるようになったが、「会社に無断で昼間に副業している人もいるのではないか」、その通りなのかも知れない。
・『腹の探り合いができない  そうした中で、論点を1つ提供しているのが、オンラインによる映像と音声の伝達を用いた会議方式、いわゆるテレビ会議の善しあしである。 限られたスペースしか画面に映らないのでワイシャツの下は実は短パンの男性がいるとか、米国ではパソコンの小型カメラへ下向きに顔を映すと二重あごに映りやすいことが問題になっており、整形手術をする、テープを貼ってあごの肉を持ち上げる(!)といったさまざまな対処がなされているという記事が米経済紙ウォール・ストリート・ジャーナルに掲載されたとか、話題はいろいろある。 ここでは、テレビ会議方式のおそらく最大の難点と考えられる、会議の部屋をちょっと離れての参加者どうしの腹の探り合いといったテクニックが使えないデメリットを、欧州の実例から考えてみたい。欧州の場合は「プレーヤーの数が多すぎる」という難点が初めからあり、意見がなかなかまとまらないことがよくあるのだが、テレビ会議という方式の問題点もまた、このところの経緯から浮き彫りになっているように思う。 EU(欧州連合)によるヨーロッパの経済統合は、共通通貨ユーロの流通・ECB(欧州中央銀行)による単一の金融政策運営が通貨統合に参加した国では確立する一方で、各国の主権問題(ポピュリスト政党は自国の独自性・権利を主張しがちである)などから財政の面では統合がなかなか進まないという、バランスが悪い状態のままである。 ギリシャやスペインなどが中心になった欧州の債務危機は、そうしたユーロ圏の弱点を直撃した出来事だった。そして今度は新型コロナウイルスという、知られていなかった新しい「敵」が現れており、ユーロ圏の結束力の強さが再び試されている。だが、新型コロナウイルス感染拡大に起因する経済的な悪影響に結束して対処する方策を話し合うはずのEU・ユーロ圏の会議が難航し、結論を先送りする場面が目立っている。 3月26日にテレビ会議方式で開催されたEU首脳会議は、新型コロナウイルス感染封じ込め策の解除に向けた「出口戦略」や経済再建計画の策定に着手するといった基本線では一致した。だが、最大の焦点になっていた各国の財政へのEU共通の支援策に関しては合意できず、結論を先送り。2週間以内に具体案をまとめるよう財務相らに指示するにとどまった。 イタリアやスペインなど9カ国が、「コロナ債」と呼ばれるユーロ圏共同債の発行によって安定した資金調達をすべきだと主張した。これに対し、南欧諸国の財政規律のさらなる緩みを招きかねず、健全財政を守ってきたことに由来する自国の低金利での資金調達メリットも失いかねないと警戒する「北」のオランダやドイツなどが反対姿勢をとった。ESM(欧州安定メカニズム)の与信枠活用でも対立があり、利用の際の条件の厳格化を求めるオランダが妥協を拒んだ』、一時は南北に分裂する瀬戸際だったようだ。
・『テレビ会議を続けるうちに……  上記を受けて、ユーロ圏財務相会合が、4月7日にテレビ会議方式で開催された。ちなみに議長のセンテーノ氏は「南」に属するポルトガルの財務相である。7日午後に始まったこの会議は翌8日の朝まで延々16時間も続けられた。だが、このマラソン協議でも上記の対立点は解消されず、いったん水入り。9日に再協議することになった。 そして9日に、やはりテレビ会議形式で開かれたユーロ圏財務相会合は、総額5400億ユーロ(約64兆円)の経済対策で合意にこぎつけた。最大2400億ユーロ相当のESMの与信枠活用、中小企業などへの融資に公的保証を付与する2000億ユーロ規模の資金繰り支援策、そして1000億ユーロ規模の基金を創設しての雇用維持策が柱である。 もっとも、危機対応の財源として「コロナ債」を発行するかどうかについての対立は、この会議でも解消されず、首脳レベルで結論を出すことになった。根本的対立点について、今度は各国首脳にボールが投げ返された形である。 4月23日、EUはテレビ会議方式で首脳会議を開催した。だが、ここでも「コロナ債」問題を軸とする対立は解消されなかった。コロナウイルスに由来する経済的悪影響が甚大なイタリアなどを支援するために基金を創設し、EUの次期中期予算(2021~27年)と組み合わせて対応する方向では一致したものの、基金の規模や財源など具体案の検討は欧州委員会に委ねられることになった。この時点では、具体案は5月6日までに提示されると報じられていたが、実際にはそうはならなかった。 だが5月19日になり、画期的な動きがあった。フランスのマクロン大統領とドイツのメルケル首相がテレビ会議で話し合った末、5000億ユーロ規模の復興基金の創設案を打ち出したのである。共通の債券をEUが発行して資金を調達する。国別の分配額(返済の必要がない補助金の供与となる)は、必要に応じて、すなわちコロナウイルスがもたらした損害の大きさに応じてイタリアなどに多く支払われる方向で決まる。 だが、返済額はEUの中期予算の枠内で固定されている負担割合に応じたものになる。要するに、「南」が必要な額を「北」が払ってあげることが十分可能なスキームである。 そうしたことには否定的だったドイツの姿勢がここにきて変化したことを、市場は驚きをもって受け止め、そして歓迎した。EUの多くの国がこの案に賛成した』、最後は「フランスのマクロン大統領とドイツのメルケル首相がテレビ会議で話し合った」ので一応は解決の方向が示せたのだろう。
・『「倹約4カ国」の離反  しかし、「倹約4カ国(frugal four)」と呼ばれるオランダ、オーストリア、スウェーデン、デンマークは、補助金の供与ではなく融資の形で基金は活用すべきだとして、反対を表明した。その後、フィンランドが6月4日になって欧州委員会の現行案を拒否する方針を打ち出し、これら4カ国に加わった。 新型コロナウイルスによる危機で経済がひどく疲弊した「南」のイタリアやスペインなどを円滑に支援するためには、妥協点はできるだけ早く見つけるのが望ましい。そうした中で、テレビ会議方式ではなく「対面型」の普通の会議形式で話し合う必要があるのではないかという声がEU内で出てきていると、5月25日(現地時間)にロイター通信が報じた』、「妥協点はできるだけ早く見つけるのが望ましい」、「テレビ会議方式ではなく「対面型」の普通の会議形式で話し合う必要があるのではないか」、その通りだろう。
・『「テレビ会議方式で合意が得られると考える人は誰もいない」  この報道によると、共通予算および復興基金について協議するため、テレビ会議方式ではなく実際に顔を合わせての首脳会議を、EUが向こう数週間のうちに開催する可能性があると、外交筋や当局筋が明らかにした。 EU内では、激しい論議が予想される予算協議をテレビ会議方式で実施するのは難しいとの見方が出ているほか、通訳などの問題も指摘されており、「予算案と復興基金を巡っては、実際に顔を合わせての会議を開催しないと合意できない。テレビ会議方式で合意が得られると考える人は今のところ誰もいない」とまで、EUの外交官は述べたという。 5月27日に欧州委員会は、独仏による提案と「倹約4カ国」案の双方を包含する形で、7500億ユーロ(約89兆円)規模の復興基金創設案を提示した。5000億ユーロの補助金供与と2500億ユーロの融資が内訳である。EUが共通の債券を発行して財源を調達する。全会一致の原則があるので、EUの全加盟国の賛成が得られなければ、この案は実行に移されない。 ミシェルEU大統領は同日、この基金案を6月19日に開催される定例のEU首脳会議で検討する方針を表明した。この首脳会議が対面方式になるというアナウンスは本稿執筆時点ではまだないのだが、果たしてどのような結果になるだろうか。 日本が絡んだ事例も、最後に1つだけ紹介しておきたい。3月16日に初めてテレビ会議方式で行われたG7サミット(主要7カ国首脳会議)である。 このサミットについて日本政府関係者は、2国間の首脳会談や夕食会などが開催されないため「首脳どうしが趣味などで意気投合し、個人的な信頼関係を深める良い機会が失われた」と残念がったという。 また、テレビ会議が約50分間と短かったため、「直接会って、時間をかけて話すのとは内容が全然違う」と外務省幹部は振り返っていたという(3月19日付時事通信)。踏み込んだ議論がさっぱりできなかったというわけである。 コロナ後の「新常態」ではオンラインでの会議が徐々に主流になるだろうという見方が一般的であり、筆者もそのように見ている。だが、微妙な問題で国どうしが妥協点を模索する際などの、相手の表情などもうかがいながらのバックルームでの探り合いや駆け引きといった交渉上のテクニックは、対面方式でなければ用いるのはなかなか難しいだろう。 会議の性質や難易度に応じて会議を開く方式を使い分け、必要に応じて対面での会議も設定するというのが、結局は落としどころになるように思われる』、「会議の性質や難易度に応じて会議を開く方式を使い分け、必要に応じて対面での会議も設定する」、微妙な問題についての大人の対応のようだ。

第三に、6月9日付け日経ビジネスオンラインが掲載した健康社会学者(Ph.D.)の河合 薫氏による「「俺の時代は終わった」新型コロナで揺れる管理職たち」を紹介しよう。
・『「何なんですかね、この感覚。今のうち早期退職した方がいいのかなぁって。管理職とか……よく分からなくなってしまって。私みたいな人、結構、いるんじゃないですか?」 こうボヤくのは某大手企業に勤める50代の男性管理職だ。彼も、新型コロナ感染拡大防止策で広まった“新しい働き方”に戸惑う管理職の1人だ。「も」だの「1人」だのとしているのは、似たような話を、同じような立場の人たちが、口にしていたからにほかならない。 「俺って、なんだっけ?」というぼやけた感情と、「次に行くべし」という前向きな感情と、少々言葉は悪いが「カネの損得」とで、「この先ど~しよっかなぁ」と身の振り方を、管理職たちが考え始めた。 というわけで、とにもかくにも「悩める管理職」代表として、彼の至極曖昧な胸の内からお聞きください』、確かに「新型コロナ感染拡大防止策で広まった“新しい働き方”に戸惑う管理職」、は多そうだ。
・『テレワーク自体は歓迎しているが……  「テレワークもZoom会議も、別に反対してるわけじゃないんです。むしろどんどんやった方がいい。家で仕事した方がはかどることもある。その半面、在宅勤務を続ける中、たまに会社に来ると、不思議と開放感があって効率が上がる。いっそのこと週休3日にしてもいいんじゃないか、と思ってるくらいです。 まぁ、これはあくまでも個人的な意見で、会社的には取りあえず『基本は出社』の方向です。流れ的にはテレワークが増えてくるんだろうけど、周りの会社の動向を見てるんでしょうね。日本人らしいですよ。 ただね、こういう話をすると、メディアってすぐに『おじさんたちが出社派で、若い人は在宅派』って世代間の意識の違いにしがちでしょ? あれって、ちょっと待て!って感じなんですよ。若い人の中にも、テレワーク反対派、結構います。 書斎もない、通信費もかかる、家にいると家事を手伝わされる、奥さんに怒られる(笑)。妙なもんですよね。コロナ前には散々『テレワークさせろ!』って言ってたのに、いざやってみると、『在宅だと効率が下がる』だのなんだの言って、会社に来たがるんですからね。 あ、いやね、問題はそこじゃない。……私自身です。 私には、部下が50人ほどいます。 部下を育てるのって、結構面白くてね。新しい仕事やちょっと難しい仕事を任せると、思いも寄らないやり方でチャンレジするなど、だんだんと成長するのが楽しかった。 いつも頭の片隅に仕事のことがありました。部下をどう采配しようかと考えたり、自分もプレイングマネジャーなので結果を出さなきゃならなかったり。仕事の問題は尽きません。ぐっすり眠れる日なんてあんまりなかった」 「ところが今回のコロナで、テレワークとかZoom会議やるうちに、部下とか上司とか、管理職とか、なんだったのかなぁと思うようになってしまったんです。何なんですかね、この感覚。 当然、今までの評価方法ではテレワークにはまらないので、完全な成果主義にならざるを得ないでしょう。そうなれば、部下自身に自ら動いてもらわないと困る。今までのように周りがサポートして、どうという話じゃなくなるわけです」 「一方で、管理職も、今までとは違う形になるでしょう。 本来なら、そこに自分も率先して加わっていくべきなのかもしれません。 でも、もういいな、と。自分たちの出る幕じゃないのかなぁ、と思っちゃうわけですよ。 意識の高い人たちは、『いくつになっても学び続けなきゃダメだ』と言いますよね。その通りなんです。でもね、学ぶ努力にも、動機が必要ですよね? その動機が湧いてこない。会社の中でどうなるとか、もうどうでもよくて、会社の外でどう生きるかに自分の意識が移ってることに気がついちゃったんです。 おそらく会社の状況からいって、希望退職を募ると思います。なので、会社が払えるうちに早期退職した方がいいのかなぁと思い始めています。ただね、これも悩ましくて。息子がまだ大学生なので、正直、踏ん切りがつかない。なんかこの年になると、機動力ってホント落ちますね。私みたいな人、結構、いるんじゃないですかね?」 ……さて、いかがだろうか』、「自分たちの出る幕じゃないのかなぁ」、「学ぶ努力にも、動機が必要ですよね? その動機が湧いてこない。会社の中でどうなるとか、もうどうでもよくて、会社の外でどう生きるかに自分の意識が移ってることに気がついちゃったんです」、「管理職」の正直な気持ちは理解できる。
・『新しい働き方になじめない管理職も  「何を甘えたこと言ってんだ!」だの、「何が言いたいんだ、コイツは?」だの、「50過ぎてこれって、どうよ?」だのと、あきれている人もいるかもしれない。だが、これって、ごくごく普通の感覚。実に人間らしい。少なくとも私には「自分たちの出る幕じゃないのかなぁ」という気持ち、とてもとてもよく分かる。 例えば、新型コロナ感染拡大の防止策では、地方自治体の知事が発するコメント力、判断力、行動力が完全に見える化したが、圧倒的に若い知事の方が柔軟だった。説得力があった。しかも、市民と近い。一方で、申し訳ないけど、「あの~、その歯切れの悪さは~何のしがらみから~~」と。いや、これ以上やぼなことを言うのは、やめておこう。 いずれにせよ、この2カ月の変化のスピードは、生身の人間が耐えることができる限界を完全に超えている。わけが分からなくなって当たり前だ。そして、これ以上はこの速さについていくのは無理だ!となったとき、人は止まる。運転してるときと同じだ。いったんブレーキを踏んで、側道に寄る。自分が壊れないために、だ。で、ものすごいスピードで通り過ぎていく車を、ただただ見つめ、「もう、いいかな」と戦線離脱するのだ。 そして、おそらくこの男性が指摘する通り、確実にテレワークは「新しい働き方」として定着する。「横並び意識」が強い日本社会だ。「○○社はテレワークを始めた」だの「△△団体はみなやっている」といった状況になれば、重たい腰を上げる会社が雨後のたけのこのように出てくるにちがいない。 となれば、テレワークや在宅勤務によって、間違いなく求められる能力や評価方法も大きく変わる。「会社に来る」ことで評価されていた時代は終わり、“Face to Face”で物を売るスタイルは過去の遺物となり、人の機微をつかむコミュニケーションよりSNSなどを使った無駄のない発信のうまさが求められるようになる。 当然、上司と部下の関係も大きく変わるだろう。 Zoomなどを使ったWeb会議が主流になれば、相手の顔をじかに見ずに発言することが可能なので、今まで遠慮していた部下たちが、意見を主張するようになるかもしれない。“上司の顔色”も分からないから、「いいね、それ!」などと、同様の意見を持つ人たちが一斉に声を上げ、上司の圧が全くかからない方向に議論も進んでいくことだろう。 一方で、アナログ世代は、ただでさえデジタル世代に気後れしているので、「違うんだよなぁ」と心の中で思っても、流す。というか、流れていく。“Face to Face”より圧倒的に受け取る情報量が少ないぶんストッパーが利かず、そのときの“空気”がよどむことなく流れていってしまうのだ。 「忖度(そんたく)する人」も消える。今までなら会議が終わった後に、「課長、あれってやっぱり難しいですよね」などと寄り添ってくれる人がいたけど、モニター越しにはいない。今までなら、こっそりと「ちょっとキミ、あれはどうかなあ……」などと呼び止めることもできたけど、それもできない。部下が画面から「退出」すれば、ジ・エンドだ。 ふむ。実に健全だ。妙な上司部下関係が消え、正論が横行する。 が、その健全さがあだとなることもあるだろうし、正論が横行するコミュニティーでは、「自分の立ち位置」が微妙になったりもする。 だいたい会社で見えていた景色(=部下たちがいる)と、パソコン越しに見える景色が違いすぎるのだ。スーツを着て、満員電車に揺られて、駅ナカで立ち食いそばを食べて、出社して、部下が報告やら相談やらを言ってくるという、今まで自分を形づくっていたさまざまなモノや行動が、この2カ月で変わってしまったのだ』、「今まで自分を形づくっていたさまざまなモノや行動が、この2カ月で変わってしまった」、変化についていく気を失ってしまう「管理職」も出てくるだろう。
・『働き方の変化は早期退職を加速させるか  しかも、すでに報じられているように、40代、50代をターゲットにした希望退職攻撃が加速する気配が出てきたので、「俺も……」という気持ちになっても不思議じゃない。 東京商工リサーチは、2020年1~5月に上場企業33社が早期・希望退職を募集したと発表。これは前年同期の約2倍の数字で、19年の年間の件数(35社)に迫るという。 昨年来、“流行”していた「もうかっているうちに、切っちまえ!」型から、「もう、無理!」型へ。「黒字リストラ」から、「赤字リストラ」が今後は増えてくるのは、容易に想像できる。今回の新型コロナを機に「人が関わる仕事」を減らす動きも加速するだろうから、企業側が退職希望者を募る人数も増えていくにちがいない。 となれば、件の男性が言う通り、今のうちに辞めた方が得だ。上乗せされる退職金も多いかもしれないし。 ちなみに、2000年以降で早期・希望退職の人数が最も多かったのはITバブルの崩壊が影響した02年(約4万人)、リーマン・ショック後の09年は2万人超。また、同リサーチによると新型コロナによる倒産は、6月1日までに約200社に達し、20年に1万社が倒産、5万社が休廃業や解散になると見込んでいるという。 個人的には「こんなときこそ人員削減じゃない、新たな戦略を立てるべきだ!」と思うが、今回のテーマからずれるので、それはまたの機会に取り上げる。 話を元に戻す。結局、今回取り上げた男性のように、「管理職」という立場に疑念を抱いてしまう原因は、そもそも「管理職」というポジションの曖昧さにある。 テレワークが始まってから、あちこちで「監視型の管理職は終わり」だの「名ばかり管理職は要らない」だのと、管理職への批判が相次いでいるが、それって違うでしょ、と。 ヒラ社員と役員とをつなぐ、出世の階段の途中に、「管理職」という摩訶不思議な存在を組み込み、実際は、管理職=マネジャーになる教育も、裁量権も、人事権も与えていない。いったい、どこがマネジャーなのか? しかも、日本型組織では、裁量権が拡大すればするほど、「決める自由を自ら放棄する」という意味不明の行動が起きがちだ。 ヒラのときは、従順なことは「言われたことしかできない」と批判されるが、課長や部長になると、その従順さこそが評価される。いわゆる忖度(そんたく)だ。裁量権が広がれば広がるほど、「上の言う通りにすることが有能」と見なされるなんて、まったくもってわけが分からないが、上の意図とは異なるカタチで裁量権を使うことは「自分たちの掟(おきて)」への反逆であり、「階層社会を崩壊」させる行為だとされてしまうのだ』、「管理職」のおかれたジレンマを的確に指摘している。「働き方の変化は早期退職を加速させる」のは確かだろう。
・『大きな時代の転換点に企業は投資すべきだ  それにしょせん、数値目標なんてものは、経営サイドが勝手に割り振った「数字」でしかない。なので、たとえ数値目標を達成できなくても、定性と定量による分析を使い分けて、メンバーがどこまで自己肯定できるかをマネジメントするのがマネジャーの仕事だ。 必要とあらば、新しい人を採用、報酬などを決める権利もあってしかるべき。が、その能力も欠けているし、決定権も持たされていない。 日本では「プレイングマネジャー」が当たり前になっているが、私が知る限り、欧米企業にプレイングマネジャーは基本的にいない。また、日本ではいろいろな部署の管理職を経験して上にいくことがあるが、例えば米国の場合、それぞれ専門知識がある人しか雇わないので、部署をまたいで異動することはほぼない。部門によっては、専門外の人がマネジャーになることもあるが、その場合、関係性は「上下」ではない。管理職はプロのマネジャーとして、現場のスタッフは現場を知るプロとして、それぞれ必要な知識と経験を融合させ、互いに尊重しあう。 これらを実行するために、企業はマネジャーが必要なリソースに自由にアクセスする権利を与えなければならない。 ところが、多くの日本企業では「上」の承諾がないとそれが許されない。「名ばかり管理職」ならぬ、「名ばかりマネジャー」。つまり、「監視型の管理職は終わり」「名ばかり管理職は要らない」のではなく、企業は、管理職=マネジャーが、真のマネジャー(マネジメントする人)となるための投資をする必要があるのではないか。 そう、投資だ。長期的な目線でカネと時間を投資する。やるなら今だ!混沌としているときこそ「人」への投資が必要なのだ。 さもなければ、「会社」という組織自体が持たなくなってしまう、と私は思う。 では、最後に「この先どうしようかなぁ~」と、身の振り方を考え始めた管理職の方へ。 大抵、人に話したり、意見を求めたり、相談したりするときは、胸の内は決まっている。 人の意見を聞いた方がリスクが軽減すると思い込んでいるだけなので、とっとと、心が引かれる方向に進んだ方がいい。私はこれまで何人もの「次に踏み出した人」を見てきたけど、いばらの道を歩きながらも、みなイキイキとしていた。 人は自分で選びたいのだ。そして、自分で選ぶと腹が決まる。開き直り、と言い換えてもいい。 「迷っていたら、GO!」です』、「企業は、管理職=マネジャーが、真のマネジャー(マネジメントする人)となるための投資をする必要があるのではないか」、正論だが、現実にはそのような余裕のある企業は少なそうだ。
タグ:(その27)(テレワークでも常に社員を「監視」したがる上司…日本企業のヤバい実態 テクノロジーで「昭和」が復活する絶望、「テレビ会議だと結論が出ない!」対面での妥協をEUは模索、「俺の時代は終わった」新型コロナで揺れる管理職たち) 現代ビジネス テレワークと働き方改革はセットになっている 「テレワークでも常に社員を「監視」したがる上司…日本企業のヤバい実態 テクノロジーで「昭和」が復活する絶望」 コロナをきっかけとした業務のIT化によって、昭和的な風習が復活したのだとすると、まさに絶望的としかいいようがない 加谷 珪一 マネジメントの原理原則に立ち返ることが重要 テレビ会議を続けるうちに… テレビ会議がマウンティングの場に 一部の企業では社員がパソコンの前にいるのかチェックできるソフトウェアの導入も検討している テクノロジーの進歩で昭和が復活するという絶望 ウーバーなど 日経ビジネスオンライン 上野 泰也 「「テレビ会議だと結論が出ない!」対面での妥協をEUは模索」 会社に無断で昼間に副業している人もいるのではないか テレビ会議 腹の探り合いができない テレビ会議方式のおそらく最大の難点と考えられる、会議の部屋をちょっと離れての参加者どうしの腹の探り合いといったテクニックが使えないデメリット テレビ会議方式で合意が得られると考える人は誰もいない 「倹約4カ国」の離反 会議の性質や難易度に応じて会議を開く方式を使い分け、必要に応じて対面での会議も設定する 河合 薫 「「俺の時代は終わった」新型コロナで揺れる管理職たち」 新型コロナ感染拡大防止策で広まった“新しい働き方”に戸惑う管理職 テレワーク自体は歓迎しているが…… 自分たちの出る幕じゃないのかなぁ 新しい働き方になじめない管理職も 学ぶ努力にも、動機が必要ですよね? その動機が湧いてこない。会社の中でどうなるとか、もうどうでもよくて、会社の外でどう生きるかに自分の意識が移ってることに気がついちゃったんです 今まで自分を形づくっていたさまざまなモノや行動が、この2カ月で変わってしまった 働き方の変化は早期退職を加速させるか 大きな時代の転換点に企業は投資すべきだ 企業は、管理職=マネジャーが、真のマネジャー(マネジメントする人)となるための投資をする必要があるのではないか 働き方改革
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