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恋愛・結婚(その4)(40代50代の婚活がなかなかうまくいかないワケ 「子どもが欲しい」という気持ちが邪魔をする、「いい人がいたら」と言う独身者の大きな勘違い 30歳を過ぎると「自然な流れでの結婚」が難しい、「親が離婚した子」が大人になって思うあの頃 責める気持ちはない、SOSが届く場所にいて) [人生]

恋愛・結婚については、1月3日取上げた。今日は、(その4)(40代50代の婚活がなかなかうまくいかないワケ 「子どもが欲しい」という気持ちが邪魔をする、「いい人がいたら」と言う独身者の大きな勘違い 30歳を過ぎると「自然な流れでの結婚」が難しい、「親が離婚した子」が大人になって思うあの頃 責める気持ちはない、SOSが届く場所にいて)である。

先ずは、1月7日付け東洋経済オンラインが掲載した仲人・ライターの鎌田 れい氏による「40代50代の婚活がなかなかうまくいかないワケ 「子どもが欲しい」という気持ちが邪魔をする」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/399237
・『2020年は、40代、50代の男女が、例年に比べてより多く入会面談にやってきた。新型コロナウイルスが蔓延し、人と人との関わりを制限される生活となって、残された先の人生を考えてしまったのではないか。そして、急激に孤独を感じたのだろう。 仲人として、婚活現場に関わる筆者が、婚活者に焦点を当てて、苦労や成功体験をリアルな声と共にお届けしていく連載。今回は、「40代、50代の結婚と再婚」について、一緒に考えてみたい』、興味深そうだ。
・『41歳のときに焦って結婚を決めた理由  40代、50代の結婚と再婚は、当事者が子どもを授かりたいか否かでも、活動の仕方が大きく変わってくる。 40代前半の多くの女性が、「できることなら子どもを授かりたい」と願っている。有名タレントの40歳を越えてからの出産ニュースも聞くようになった昨今であるし、不妊治療の助成金も43歳未満までなら出るので、「最後のチャンスに懸けたい」と思うのは、至極当然のことだろう。 一方で男性は、40代、50代、また60代になっても、“わが子をこの手に抱きたい”と思っている人たちは多い。こちらもまた60歳を過ぎて父親になった有名タレントのニュースに触発されているのかもしれない。 出産を視野に入れている婚活者は、男女ともに1日も早い結婚を望んでいる。そんな中で、女性は“なるべく歳の近い男性”を希望し、男性は “できることなら30代、上は41、2歳くらいまで”と希望しているので、互いに求め合うベクトルがすれ違ってしまい、婚活を非常に難しくさせている。 一方で、もう子どもはいらない。残りの人生を一緒に歩いていくパートナーが欲しい、という婚活者は、ゆとりを持ってお相手選びをすることができる。ただ時間制限がないぶん相手選びの目を厳しくしてしまうこともあるし、期限が決められていないと活動する気持ちも緩くなる。 40代、50代の婚活者は増えてはいるものの、成婚に結びつく確率は非常に厳しいのが現状だ。 現在、私のところで婚活中の香代(仮名、40代後半)も、お見合いはできるものの、なかなか結婚相手に巡り合えないでいた。) 入会してきたのは、一部で緊急事態宣言が開けた5月の半ばだった。3月に入ってテレワークが増え、世の中の動きが止まった緊急事態宣言期間中に部屋で1人で過ごし、猛烈に寂しさを感じたという。香代は、再婚希望者だった。 「40代前半のときに、結婚相談所で知り合った年上の雅也(仮名)とお見合いですぐ結婚を決めたんです。2人とも子どもが欲しかったので、相談所を成婚退会後、すぐに入籍をしました」 ところが、一緒に暮らし始めてみると、あまりにも生活していく価値観が違っていた。 「元夫は2年前に、持ち家を購入していました。お付き合いをしているときに、2度ほど遊びに行ったことがあったのですが、どの部屋も物であふれ返っていました。 家具とか電化製品は最低限度のものしかないのに、部屋には雑誌や趣味の雑貨が驚くほどたくさんあって、キッチンには、買いだめしたラップ、アルミホイル、食器用洗剤、ティッシュがまるで倉庫のように積まれていました」 それだけではなかった。クローゼットに入りきらなかった服が部屋の壁にも掛けられ、階段の手すりにもスーツやコートがぶら下がっていた。また通販品が送られてくる段ボール箱も捨てずにとってあった。 「『どうしてこんなに物がたくさんがあるの?』と聞いたら、『買った物には、1つひとつに思い出があるからね』と言うんです。『通販の段ボールには思い出はないでしょう?』と言うと、『いつか使うかもしれないじゃない』と。 さらに、驚くほどたくさんあるラップや洗剤は、『どうせ使うものだから、安売りしているときに買っておくんだ』と平然とした顔で言うんです。ただこのときは、“男の一人暮らしだし、家は散らかっていても仕方がない。私が結婚後に片付ければいいや”くらいに思っていたんです」 香代は、整理整頓が得意なほうだったので、「私の手にかかれば、この家も見違えるくらいきれいになるだろう」と高をくくっていた。 何よりも、1日も早く結婚生活をスタートさせたかった。子どもを産むタイムリミットを知らせる時計が、頭の中でカチカチと鳴り響いていたからだ』、「出産を視野に入れている婚活者は、男女ともに1日も早い結婚を望んでいる。そんな中で、女性は“なるべく歳の近い男性”を希望し、男性は “できることなら30代、上は41、2歳くらいまで”と希望しているので、互いに求め合うベクトルがすれ違ってしまい、婚活を非常に難しくさせている」、「もう子どもはいらない。残りの人生を一緒に歩いていくパートナーが欲しい、という婚活者は、ゆとりを持ってお相手選びをすることができる。ただ・・・期限が決められていないと活動する気持ちも緩くなる。 40代、50代の婚活者は増えてはいるものの、成婚に結びつく確率は非常に厳しいのが現状だ」、いずれにしろ、簡単ではなさそうだ。
・『結婚して1年弱で離婚  「私はもともと荷物が少ないほうだし、あんなに物のあふれた家に行くのだから、必要最低限の物だけを持って、引っ越しました」 そして、“これぞ腕の見せ所”とばかりに、部屋の片付けを始めた。 「2人が休みの日に一緒に片付けをしたんですが、彼の古い洋服を捨てようとしたら、語気を荒らげて怒られました。『初めてもらったバイト代で買ったものなんだ。勝手に捨てるなよ!』と。結局部屋にある物は、ほとんど捨てられず、1部屋を物置部屋にして、そこに物を移動させるだけで終わりました」) 香代にとってはゴミに見えるものでも、雅也にとっては思い出が詰まった宝ものだったのだ。 さらに、一緒に生活を始めてみると、毎日のように通販で買った品物が届いた。それは、限定品のフィギュアだったり、タイムセールで買った服だったり小物だったりするのだが、品物だけでなく段ボールも捨てずにとっておくので、片付けたはずの部屋がたちまち物であふれ返っていった。 また一緒に生活してわかったことだが、雅也は自分のためにはお金を使うのだが、人のためにはお金を使おうとしなかった。 「生活費は、きれいに折半でした。結婚前は、外で食事をすると私の分も支払ってくれたのに、結婚してからは自分の分しか出さなくなりました。あるとき、2人で牛丼チェーン店に行ったら、自分の食券だけ買ってさっさと席に座り、それを店の人に出していました。 妻に350円の牛丼もごちそうできないのかと思ったので、『結婚前は、ごちそうしてくれたのにね』と嫌みっぽく言ったら、『ああ、仲人さんに婚活中は出すように言われていたから』と。それを聞いて心底あきれました」』、「“これぞ腕の見せ所”とばかりに、部屋の片付けを始めた」、「結局部屋にある物は、ほとんど捨てられず、1部屋を物置部屋にして、そこに物を移動させるだけで終わりました」、これほどまでにすれ違いが大きいのに、結婚して初めて気付いたというのもお粗末だ。
・『聞くに堪えかねるような悪口を言う夫  もう1つ結婚してわかった嫌な面があった。家でテレビを見ているときに、出演者をこきおろすのだ。 「〇〇も昔は、キャーキャー言われていた二枚目俳優だったけど、フケたよな?。おでこがかなり後退しちゃって、もうじーさんだな」 「ブヨブヨの裸をさらして、粉だらけになって金稼ぐお笑いタレントって、プライドがないのかね」 「国会議員が不倫?ふざけんな!この税金ドロボーが」 付き合っているときには、こんなふうに人を悪く言うような一面はなかったので、本当に意外だった。あるとき、聞くに堪えかねて香代が言った。 「どうしてそんなにテレビに出ている人たちを悪く言うの?」 すると、雅也は平然とした顔で言った。 「相手に聞こえているわけじゃないから、何言ったっていいじゃない。ネットに匿名で誹謗中傷を書いたりするのは悪質だと思うけど、自分ちでテレビに向かって言っても、誰に何の迷惑もかけてないだろう?」 「そばで聞いている私は、いい気持ちがしないよ」 「じゃあ、聞かなければいいじゃない」 「一緒にいたら、聞こえちゃうでしょ」 こんな会話をしているうちに、本当に虚しくなってきた、と言う。 子どもが欲しかったから、結婚を急いだ。しかし、子どもを作るためにはその行為をしなくてはならない。一緒に暮らすようになってから日に日に雅也に嫌悪感を覚え、一緒のベッドにも寝たくなくなり、夫婦関係はどんどん冷めていった。) 結婚当初は、“不妊治療をしてでもいいから、絶対に子どもが欲しい”と思っていたのが、“子どもは欲しいが、雅也の子どもは欲しくない”と思うようになり、離婚することを決めた。離婚を切り出し、ゴネられたらどうしようかと心配していたが、雅也も香代との生活にストレスを感じていたのだろう。すんなりと離婚に応じた。 結婚生活はわずか1年弱だった』、「“子どもは欲しいが、雅也の子どもは欲しくない”」、となれば「離婚」も当然だ。
・『入籍前に一緒に暮らすのも1つの方法  そこから、出会いもないままに年月が経ち、香代はもう子どもは授からないであろう年齢になっていた。私のところで婚活を始めるときに、こんなことを言っていた。 「焦ると人を見る目が曇ると思うんです。だから、今回は、“いいな”と思う人が現れたら、しっかりと人間性を見極めたいと思っています」 近年、40代、50代の登録は増えているので、お見合いはスムーズに組めた。まずは、最初の1カ月で5人ほどお見合いをしたが、“交際をしたい”と思う人は、なかなか現れなかった。 「相変わらず、婚活市場でお相手を選ぶのって厳しいですね。この間の方は、話をしている間、視線がチラチラと動いて、私のことをまったく見ませんでした。今日の方は、コロナに異常なほど神経質で、お見合い中もマスクを外さなかった。マスクを取ると顔の印象がガラリと変わることがあるじゃないですか。 コーヒーを頼まれたので、飲むときにマスクを外した顔が見られるかなと思っていたら、マスクを手でつまんで浮かせて、コーヒーをズズズーッと飲んでいました。思わず吹き出しそうになりましたが、必死で笑いをこらえましたよ。結局マスクを取った顔を一度も見ることはできませんでした」) そして、5回のお見合いを終えて、香代はこんな感想を漏らした。 「以前は、子どものタイムリミットがいつも頭にあったので、うまくいかないと失望したり、ストレスがたまったりしていたのですが、それがない今回は、精神的にとても楽です。あのマスクを外さずコーヒーを飲んだ人も、昔だったらイラッときたかもしれないけれど、今回は笑い飛ばせましたしね」 その後も、振ったり振られたりのお見合いを続けていたのだが、9月にお見合いをした利正(仮名、51歳)と仮交際に入り、2カ月の付き合いを経て、真剣交際に入り11月22日のいい夫婦の日にプロポーズをされた』、「焦ると人を見る目が曇ると思うんです。だから、今回は、“いいな”と思う人が現れたら、しっかりと人間性を見極めたいと思っています」、これで「2カ月の付き合いを経て・・・プロポーズをされた」、今回こそはうまくいくといいのだが・・・。
・『熟年結婚はますます盛んになるだろう  成婚退会のあいさつに来た香代が言った。 「彼は、ケチではないし、人のためにお金が使える人でした。物を買い込むタイプでもなかった。ただ一緒に生活してみないと、わからないことがたくさんある気がするんです。 相談所は、これで退会させていただきますけど、今回は焦って入籍をせずに、『1年くらいは婚約期間にしよう』と彼と話をしているんです。一緒に暮らしてみて、お互いに嫌なところは直していくし、2人で過ごす時間も大事にしながら、自分の時間や趣味の領域は侵さないように暮らしていければと思っています」 これぞ、大人が選択する結婚ではないか。熟年離婚も増えているが、今後は熟年結婚もますます盛んになっていくだろう。 平均寿命は年々延び、人生100年時代と言われている今日だ。自然災害に見舞われたり、コロナのような新型ウイルスが蔓延したり、予期せぬことがいつ起こるかわからない。そんなときに、1人より2人。人生を共に歩むパートナーが隣にいたら、心強いのではないだろうか』、要は「同棲」で相性をじっくり確かめようということらしい。

次に、2月19日付け東洋経済オンラインが掲載した仲人・ライターの鎌田 れい氏による「「いい人がいたら」と言う独身者の大きな勘違い 30歳を過ぎると「自然な流れでの結婚」が難しい」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/411582
・『「もう何年も婚活アプリや結婚相談所で婚活をしているのに、いまだ結婚できない」と言う人たちがいる。これは、なぜなのか? 仲人として婚活現場に関わっている筆者から見たら、そう言う人たちは、明らかにやり方を間違えている。結婚への近道は、“意中の相手に出会ったら、期間を区切って活動をすること”なのだ。なぜ、婚活に期間を区切ることが大切なのか、拙著『100日で結婚』から一部を編集してお届けする』、興味深そうだ。
・『脳内婚活をしていたら、結婚できない  独身で30代、40代、50代と歳を重ねている人たちに、「結婚には、興味がないんですか?」と聞くと、「いやいや、いい人がいたら結婚したいですよ」と大抵の人が答える。 「いい人がいたら」と答える独身者たちが望んでいるのは、“自然の出会い”での結婚だ。要は、学生時代の後輩、同級生、先輩、会社の同期や取引先の相手、趣味のサークルや習い事をしていたら、その仲間たちなど、自然な形で出会い、恋愛をし、その延長線上に結婚があれば理想的だと考えている。 こうした“自然な流れでの結婚”は、20代ならできる可能性が高い。なぜなら、結婚したいと思う独身者が、生活圏内にまだまだたくさんいるからだ。しかし、30歳を過ぎると、生活圏内の素敵な人たちはすでに結婚している。普段の生活を続けていながら、理想の結婚相手を探すのは非常に難しくなってくるのだ。 “いい人がいたら、結婚したい”と思っていた人たちの中には、そのことに気づいて、婚活を始める人たちもいる。そして、彼ら(彼女ら)の多くが、婚活を始めたら理想の相手に出会えて、すぐに結婚できると、最初は思っている。 ところが、婚活を始めてみると、これが一筋縄ではいかない。 先日、会員の佳子(仮名、40代)が、敬浩(仮名、40代)とお見合いし、交際に入った。ところが、その3週間後に、佳子から、こんな連絡が来た。 「お見合いしたときから、まだ一度もお会いできていません」 お見合いから交際に入ると、仲人を通じて連絡先の交換をし、まずは、男性が女性にファーストコールをする。その電話口で、敬浩は言ったそうだ。 「今、仕事が立て込んでいるので、また連絡します」 そこからパタリと連絡がなくなり、その3週間後にまた1本のメールが来た。 「親父が入院してしまい、休みの日は病院に行かないといけなくなりました。落ち着いたら、また連絡します」 結局、お見合い後に初めてのデートにたどり着けたのは、1カ月半後だった。そのときのことを佳子は、私にこう言った。 「仕事や病院の往復で忙しかったはずなのに、『一度観たいなと思っていた絵画が、期間限定で海外から来ていたので、先日美術館に行ってきたんですよ。本物はよかったな』って。そんな時間があるなら、デートもできましたよね。むしろ、『デートで、絵を観に行ってみませんか?』と、誘ってくださったらよかったのに」 この初めてのデートの直後、佳子は、敬浩に“交際終了”を出した。 敬浩のようなタイプは、婚活市場でよくお目にかかる。こうした人たちは、「自分はつねに結婚のことを考え、高いお金を払って結婚相談所に登録をして、お見合いを1カ月や2カ月に1回はしている、イコール、自分は婚活をしているからいつかは結婚できる」と考えている。 はたから見ればダラダラと婚活しているようにしか見えないのだが、本人の頭の中には、つねに“婚活”と言う言葉があるので、行動はしていないのに婚活をしているつもりになっている。私はこの状態を、 “脳内婚活”と呼んでいる。婚活市場でいくら“脳内婚活”を頑張っていても、永遠に結婚はできない』、「“脳内婚活”」とは言い得て妙だ。
・『期間を区切ることの大切さ  婚活をするときに、心に止めておかなくてはいけないことがある。 それは、“生活圏内の出会い”と“婚活の出会い”は、そもそも性質が違うということだ。生活圏内の出会いは、生活している場所に行くと相手がいて、顔を合わせていくうちに相手を好きになっている。「僕ら付き合おうか」となった時点で、 “好き”という気持ちが、十分に育っているのだ。 ところが、婚活の出会いというのは、相手のプロフィールや顔写真はわかっているが、人柄まではわかっていない。“この条件でこの容姿なら、結婚相手にいいかもしれない”と思って、申し込みをしたり、申し込みを受けたりする。そこで、1時間程度のお見合いをして、交際に入る。 そうした出会いだからこそ、最初に出会い、交際に入ったときが、一番テンションが高い状態なのだ。そのテンションをさらに上げていかなくてはいけないのに、会わないまま時間が経つと、どんどん下がっていく。まだ人間関係ができてないときに下がったテンションは、二度と上がることはない。 さらに言えば、情報過多のこの時代、“会えない時間は愛を育てる”のではなく、“会えない時間は愛を消す”だけだ。 敬浩に1カ月半会えなかった間に、佳子は、3つのお見合いをしていたし、その中の1人とは交際に入って、すでに2回のデートをしていた。 ネット婚活が主流である現代は、いくらでも新しい出会いを求めることができる。動ける人は、どんどん出会っていくし、デートを重ねていく。会う回数の多い相手の情報がどんどん脳に上書きされていき、一度お見合いしただけの人のことなど、あっという間に忘れ去られてしまう。 そういう意味でも、婚活市場で出会い、そこから結婚へと結びつけていきたいなら、期間を区切って素早く動き、相手の人柄を知り、“好き”と言う気持ちを積み立てていかなければならないのだ』、「婚活の出会いというのは、相手のプロフィールや顔写真はわかっているが、人柄まではわかっていない・・・そうした出会いだからこそ、最初に出会い、交際に入ったときが、一番テンションが高い状態なのだ。そのテンションをさらに上げていかなくてはいけないのに、会わないまま時間が経つと、どんどん下がっていく。まだ人間関係ができてないときに下がったテンションは、二度と上がることはない」、「“会えない時間は愛を育てる”のではなく、“会えない時間は愛を消す”だけだ」、たかをくくっていると、痛い目に合いそうだ。
・『なぜ期間を区切るのか  これは私がよく会員たちに言っていることだ。 「婚活は期間を区切ることが大切なんですよ。なぜなのか。ダイエットをしたり、体を鍛えたりするときのことを考えてみましょうね」 ただ、“痩せたい”“体を鍛えたい”と思っていても、体型は変わらない。目の前にあるおいしそうなものを見ると、痩せたい気持ちがあっても、ついつい食べてしまう。“次の食事は軽くすませよう”“明日の食事で調整しよう”と思うが、結局は次の食事も、明日の食事もいつもどおり食べてしまう。 あの有名なトレーニングジムのCMを思い出してほしい。トレーナーの指導のもと、期間を区切り、食事制限と筋トレをして、ブヨブヨだった体が見事に均整の取れた肉体美に生まれ変わる。期間を区切るからこそ、そこに組み込まれたプログラムを実施して、結果を出そうとするのだ。人は、ゴールを設定すると、ゴールが見えないときよりも何倍も自分を奮い立たせる力が湧くし、集中力を発揮する。 婚活も然りで、期間を区切りその間、どうしたら結婚までたどりつけるかをスケジューリングし、その期間は集中して、婚活をする。時には、プロ(仲人や婚活カウンセラー)の力を借りるのもいいだろう。もちろん、自分で動ける人たちは、婚活アプリや婚活パーティーなど、出会いの場にどんどん出向き、意中の相手に出会えたら、自分の中てどうしたら結婚まで辿り着けるかを、スケジューリングしていけばいい。 その期間は、仲人の経験則からいうと100日あれば十分だと考えている。 ただ、ここで忘れてはいけないのは、結婚に辿り着くことができるのは、相手の気持ちがそこにあってのことだ。相手の気持ちを置き去りにして、スケジュールを遂行しようとしたとたん、 すぐに“交際終了”が来るだろう。つねに相手の気持ちがどこにあるのか、それを確かめ、寄り添いながら進めていかないといけない。 また、ダイエットの場合、目標は達成したもののもとの生活に戻れば、あっという間にリバウンドしてしまうだろう。しかし、婚活はゴールが結婚なので、目標達成をした時点で、婚活期間に立てていたスケジュールは終了となり、婚活期間中のエネルギーは、もう使わなくていい。 さらに言うなら、恋する情熱がなだらかな愛に変わるのが結婚なので、あとは、落ち着いた気持ちで、相手に寄り添い、思いやり、日々を紡いでいけばいいのだ』、「人は、ゴールを設定すると、ゴールが見えないときよりも何倍も自分を奮い立たせる力が湧くし、集中力を発揮する。 婚活も然りで、期間を区切りその間、どうしたら結婚までたどりつけるかをスケジューリングし、その期間は集中して、婚活をする」、「結婚に辿り着くことができるのは、相手の気持ちがそこにあってのことだ。相手の気持ちを置き去りにして、スケジュールを遂行しようとしたとたん、 すぐに“交際終了”が来るだろう。つねに相手の気持ちがどこにあるのか、それを確かめ、寄り添いながら進めていかないといけない」、「恋する情熱がなだらかな愛に変わるのが結婚なので、あとは、落ち着いた気持ちで、相手に寄り添い、思いやり、日々を紡いでいけばいいのだ」、ここまで来れば申し分ないだろう。

第三に、1月12日付け東洋経済オンラインが掲載したライターの上條 まゆみ氏による「「親が離婚した子」が大人になって思うあの頃 責める気持ちはない、SOSが届く場所にいて」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/401852
・『2021年の新成人は124万人。「子ども」から「大人」へ一歩踏み出す成人の日、親の離婚を経験した子どもは、何を感じ、何を考えているのだろうか。 厚生労働省の統計によれば、2018年の1年間に親の離婚を経験した未成年子の数は約21万人に上り1960年に比べて、およそ3倍もの数字となっている。子どもの頃、親の離婚を経験した彼らは大人になった今、どのような思いでいるのか、彼らの声に耳を傾けてみたい。つい最近まで「子ども」だった20代前半の若者2人に話を聞いてみた』、「子ども」にどんな影響を与えるかは興味深い。
・『家庭から欠けた「父」というピース  酒井千春さん(仮名、20歳)は、都内の大学2年生。東京郊外の戸建てに、祖父母と母、兄と暮らしている。コロナ禍での大学生活は思い描いていたものと違ったが、制約があるなかでも、あれもこれも経験したいと向学心に燃える少女だ。千春さんの父親は、彼女が小学5年生のときに突然、家を出ていった。 「ある日学校から帰ったら、父の荷物が全部なくなっていて、びっくりしました」 千春さんの家は、母方の祖父が興した会社を家族で経営しており、父親はそこに入社していた。元は別世帯だったが、リーマンショックで経営が厳しくなったころから、祖父母の家に同居を始めた。ずっと仲のいい家族だったが、同居を始めてから少しずつ家庭内の空気が悪くなってきた、と千春さんは感じている。父親が出ていく数カ月前から、父は2階の部屋にこもりっきりで、リビングに降りてくることがなくなった。 「私は子どもだったから、よくわからなかったけど、もしかしたら父は祖父母との生活が窮屈で、不満がたまっていたのかもしれませんね」 祖父母の家は裕福で、母親は一度も働いたことがない箱入り娘。千春さんも、4つ年上の兄も小学校から私立に通っている。 「公立小学校に通っている子を見下すみたいなところのある家だったから、おおらかな父とは感性が合わなかったのかも……」 父親が出ていったことについて、子どもたちには何の説明もなかった。家庭から「父」というピースが欠けただけで、資産があるからか経済的に困ることもなく、生活はほとんど変わらなかった。 「父が出て行ってから1カ月後くらいに、兄の携帯に『駅前のカフェに何日の何時』ってメールが入って、兄と2人でチャリに乗ってそこへ行きました。何を話したかほとんど記憶にないけれど、帰り際に私が『もう会えないの?』って聞いたら、『千春には、お母さんもおじいちゃんもおばあちゃんも、お兄ちゃんもいるから大丈夫だよ』って言われて、それって会えないってことなんだと思って、悲しくて大号泣したことだけはよく覚えています」) 中学生で、思春期真っただ中にいた兄はその後、荒れた。暴れたり、ごはんも食べずに部屋に引きこもったり。その後、落ち着いたが、「兄には、千春はよくまっすぐ育ったね、って言われてます」。 父親がなぜ出ていったのか。どのように離婚に至ったのか。子ども心に、聞いてはいけないと感じていた。家の中で父親の話題が出ることはほとんどなかったが、母親から「養育費とか全然、払ってくれないんだよ」と言われたことがある。いやな気持ちになった。父親にも、そんなことをわざわざ伝える母親に対しても。 「お金に困っているわけじゃないから、別にいいんですけど、離れていても応援しているよ、という気持ちを示すのはやはりお金だと思うので、払ってくれていないのだとしたら悲しいな、と思います」 「会いたい」と口に出したことはない。母親からは「会いたいって言うのは、家族に対する裏切りだよ。おじいちゃん、おばあちゃんが悲しむよ」と言われているからということもある。父親は、祖父から引き継いだ会社をもって家を出た。祖父母や母が父を憎む気持ちは、よくわかる。でも、実は高校生のとき1回だけ父親の会社名をネットで調べ、書かれていた会社所在地まで見に行ったことがある。 「会社のあるビルの前まで行ったけど、もちろん中に入る勇気はなくて、ビルの前で2〜3時間、突っ立っていました」』、「父親は、祖父から引き継いだ会社をもって家を出た」、理解し難い表現だ。「母親からは「会いたいって言うのは、家族に対する裏切りだよ。おじいちゃん、おばあちゃんが悲しむよ」と言われている」、「母親」なりの牽制のようだ。
・『会うのは経済的、精神的にも自立した大人になってから  20歳を迎えた今、千春さんは親の離婚をこう受け止めている。 「父にも父の人生があるから、離婚をしたことを責める気持ちはまったくない、そこは父親の気持ちを尊重したい。でも、子どもがいるからには、何らかの形で責任をとってほしかった」 千春さんの記憶の中の父親は、明るくておおらかで、千春さんのことを全肯定してくれる優しい人だった。小学4年生で中学を受験すると決めたときも、千春の好きなようにしたらいいと背中を押してくれ、「千春にはどんな可能性もあるんだよ。何にだってなれるんだよ」と話してくれた。そんな父親のことが、千春さんは大好きだった。でも、今「会いたいか?」と聞かれると、少し微妙だ。決めているのは、今の家に世話になっている限り、自分から会いにいくことはしない、ということ。 「大学を卒業し、経済的にも精神的にも自立した大人になってから、『こんなに成長したよ』って会いに行こうかな、と思っています」 沖田涼さん(仮名、25歳)も小学生のとき、親の離婚を経験した。離婚の理由は知らない。「なぜ離婚したんだろ」。モヤモヤはずっと続いているが、たずねたことはないし、今さら聞くつもりもない。 「小学1年生やったかな。気づいたら、おとんがいなくなっていた」 その後、生活は激変した。涼さんと2歳年下の妹を食べさせるために、それまで専業主婦だった母親は、昼間はパート、夜もどこかで働き始めた。大人になったいま、母親が出かけていた時間帯から「夜は飲み屋で働いていたのだろう」とは思うが、とくに聞いたことはない。夕方から7時くらいまで学童保育に預けられ、夕食はいったん家に帰ってきた母親と一緒に食べられたものの、その後また母親は出かける。とにかくさみしかった記憶がある。 離婚から1年ほどして、母親は再婚した。夜も昼も母親がいない生活から開放されて、楽になるかと思いきや、それからのほうが大変だった。 「母親の再婚相手は、経済的な面倒はみてくれたけど、僕ら兄妹をかわいがってはくれなかった。とくに僕は男だったからか、理不尽なことでよく殴られた」 部活の帰りが遅いとか、そんな小さなことで「どつかれる」日々。反抗したくてたまらなかったが、母親や妹に暴力の矛先が向くのが怖くて、涼さんはじっと耐えていた。しかし、中学3年生になったある日、金属バットで殴られた。 「このままやったら、いつか殺されてしまう。そう思って、おとんに電話をかけました、『おとん、もう無理や、助けて』って」』、「再婚相手」から「金属バットで殴られた」のには何か理由があったのだろう。
・『身近な助けてくれる大人として浮かんだ「実の父親」  父親の連絡先は母親から聞いて知っていたが、連絡をしたのは初めて。母親の再婚相手が新しい父親として振る舞っていたから、実の父親に会うことは子ども心に遠慮していた。しかし、切羽詰まった状況のなかで、助けてくれる大人として思いついたのは、実の父親だった。 「おとんはすぐに来てくれて、母親の再婚相手と話してくれました。それからは、殴られることはなくなった」 その後、涼さんは高校に進学するが、「やんちゃが過ぎて」退学。家を出て、16歳から寮に住み込みで働き始めた。実の父親とは今でも時々、連絡を取り合い会っている。 「両親には、できればずっと一緒におってほしかった。どうしても無理なんやったら、月1回でもいいから定期的に会えるようにしてほしかった。そうしたらもっと早く、SOSが出せていたかなと思うことがあります」』、「実の父親」の連絡先を聞いていたことが救いになったようだ。「離婚」は「子ども」にはやはり深い心の傷を残すようだ。
タグ:恋愛・結婚 (その4)(40代50代の婚活がなかなかうまくいかないワケ 「子どもが欲しい」という気持ちが邪魔をする、「いい人がいたら」と言う独身者の大きな勘違い 30歳を過ぎると「自然な流れでの結婚」が難しい、「親が離婚した子」が大人になって思うあの頃 責める気持ちはない、SOSが届く場所にいて) 東洋経済オンライン 鎌田 れい 「40代50代の婚活がなかなかうまくいかないワケ 「子どもが欲しい」という気持ちが邪魔をする」 「40代、50代の結婚と再婚」について、一緒に考えてみたい』 「出産を視野に入れている婚活者は、男女ともに1日も早い結婚を望んでいる。そんな中で、女性は“なるべく歳の近い男性”を希望し、男性は “できることなら30代、上は41、2歳くらいまで”と希望しているので、互いに求め合うベクトルがすれ違ってしまい、婚活を非常に難しくさせている」 「もう子どもはいらない。残りの人生を一緒に歩いていくパートナーが欲しい、という婚活者は、ゆとりを持ってお相手選びをすることができる。ただ・・・期限が決められていないと活動する気持ちも緩くなる。 40代、50代の婚活者は増えてはいるものの、成婚に結びつく確率は非常に厳しいのが現状だ」、いずれにしろ、簡単ではなさそうだ。 「“これぞ腕の見せ所”とばかりに、部屋の片付けを始めた」、「結局部屋にある物は、ほとんど捨てられず、1部屋を物置部屋にして、そこに物を移動させるだけで終わりました」、これほどまでにすれ違いが大きいのに、結婚して初めて気付いたというのもお粗末だ 「“子どもは欲しいが、雅也の子どもは欲しくない”」、となれば「離婚」も当然だ。 「焦ると人を見る目が曇ると思うんです。だから、今回は、“いいな”と思う人が現れたら、しっかりと人間性を見極めたいと思っています」、これで「2カ月の付き合いを経て・・・プロポーズをされた」、今回こそはうまくいくといいのだが・・・ 要は「同棲」で相性をじっくり確かめようということらしい。 「「いい人がいたら」と言う独身者の大きな勘違い 30歳を過ぎると「自然な流れでの結婚」が難しい」 『100日で結婚』 「“脳内婚活”」とは言い得て妙だ。 「婚活の出会いというのは、相手のプロフィールや顔写真はわかっているが、人柄まではわかっていない・・・そうした出会いだからこそ、最初に出会い、交際に入ったときが、一番テンションが高い状態なのだ。そのテンションをさらに上げていかなくてはいけないのに、会わないまま時間が経つと、どんどん下がっていく。まだ人間関係ができてないときに下がったテンションは、二度と上がることはない」、「“会えない時間は愛を育てる”のではなく、“会えない時間は愛を消す”だけだ」、たかをくくっていると、痛い目に合いそうだ。 「人は、ゴールを設定すると、ゴールが見えないときよりも何倍も自分を奮い立たせる力が湧くし、集中力を発揮する。 婚活も然りで、期間を区切りその間、どうしたら結婚までたどりつけるかをスケジューリングし、その期間は集中して、婚活をする」、 「結婚に辿り着くことができるのは、相手の気持ちがそこにあってのことだ。相手の気持ちを置き去りにして、スケジュールを遂行しようとしたとたん、 すぐに“交際終了”が来るだろう。つねに相手の気持ちがどこにあるのか、それを確かめ、寄り添いながら進めていかないといけない」、 「恋する情熱がなだらかな愛に変わるのが結婚なので、あとは、落ち着いた気持ちで、相手に寄り添い、思いやり、日々を紡いでいけばいいのだ」、ここまで来れば申し分ないだろう。 上條 まゆみ 「「親が離婚した子」が大人になって思うあの頃 責める気持ちはない、SOSが届く場所にいて」 「子ども」にどんな影響を与えるかは興味深い。 「父親は、祖父から引き継いだ会社をもって家を出た」、理解し難い表現だ。「母親からは「会いたいって言うのは、家族に対する裏切りだよ。おじいちゃん、おばあちゃんが悲しむよ」と言われている」、「母親」なりの牽制のようだ。 「再婚相手」から「金属バットで殴られた」のには何か理由があったのだろう。 「実の父親」の連絡先を聞いていたことが救いになったようだ。「離婚」は「子ども」にはやはり深い心の傷を残すようだ。
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人生論(その8)(高校に行かなかった東大教授が語る「独学が続かない人」が抱える間違った思い込み 『独学大全』私はこう読んだ/東京大学・柳川範之教授(2)、「入居者の4割は年下」毎朝5時出勤を続ける86歳の老人ホーム施設長の生き方 「人並外れて勝ち気」だからこそ、脳がみるみるやる気を出し情熱的モチベーションが生まれる「3大習慣」) [人生]

人生論については、昨年12月22日に取上げた。今日は、(その8)(高校に行かなかった東大教授が語る「独学が続かない人」が抱える間違った思い込み 『独学大全』私はこう読んだ/東京大学・柳川範之教授(2)、「入居者の4割は年下」毎朝5時出勤を続ける86歳の老人ホーム施設長の生き方 「人並外れて勝ち気」だからこそ、脳がみるみるやる気を出し情熱的モチベーションが生まれる「3大習慣」)である。

先ずは、本年2月3日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した東大教授の柳川範之氏による「高校に行かなかった東大教授が語る「独学が続かない人」が抱える間違った思い込み 『独学大全』私はこう読んだ/東京大学・柳川範之教授(2)」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/261463
・『『独学大全──絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』が、14万部を突破。分厚い788ページ、価格は税込3000円超、著者は正体を明かしていない「読書猿」……発売直後は多くの書店で完売が続出するという、異例づくしのヒットとなった。なぜ、本書はこれほど多くの人をひきつけているのか。この本を推してくれたキーパーソンへのインタビューで、その裏側に迫る。 今回インタビューしたのは、東京大学経済学部の柳川範之教授。東大教授への道を独学で切り拓いたことで知られる柳川教授は、「学生から大人まで使える」と、本書を高く評価している。今回は、特に現役の学生と大人に向けて、本書の活用法を語ってもらった(Qは聞き手の質問、Aは柳川範之教授の回答)。 第1回:高校に行かなかった東大教授が語る「偏差値が高い人ほど、独学でつまずく」本質的な理由』、「東大教授への道を独学で切り拓いた」、とはまさに『独学大全』にふさわしい経歴だ。
・『独学を続けるコツは「高望みをしない」こと  Q:『独学大全』には、独学で一番大事なことは「続けること」だというメッセージがあります。柳川先生は、独学を続けるモチベーションをどのように保っていたのですか? A:僕の場合、独学を続けるコツは「半分諦める」ことでした。つまり、自分の意思に対して、あまり高望みをしない。 最初はきちっと計画を立てるのですが、大抵は計画通りにいきません。でも、そこで投げ出してしまうのではなく、「しょうがないな」と思いながら、もう1回計画を立て直す。それの繰り返しです。そのたびに、目標設定を少しずつ下げていくわけです。 言ってしまえば、挫折するのは大前提。それを受け入れる一方で、諦めないことが大事だと思います。 Q:「挫折が前提」という考え方は、読書猿さんとも一致しますね。一方で、柳川先生の「目標設定を下げる」というアプローチはユニークです。具体的にはどのように下げるのですか。 A:例えば、テキストを1週間に30ページ進めようと思っていたとしますよね。でも、実際に進んだのは5ページだけ、みたいな(笑)。 ここで、次の週の目標設定をどうするかとなったときに、翌週も30ページを目標にしては、同じ結果になってしまう。とはいえ、怠けた結果である5ページをそのまま目標にしてはまずいという思いもある。実現値をそのまま目標にしてはいけないという程度には、理性があるんです。 そこで、次の週は15ページにしようとか、それでも長すぎたということになれば、翌週は10ページにしよう……みたいな感じです。常に「自分ができることよりちょっと上」の目標を探りながら進めていく。 よく、独学でやってきたと話すと「意志力が強いんですね」と言われるのですが、自分ではまったくそうは思っていません。むしろ、自分の意志力がそれほど強くないという認識があるので、その前提でできることを考えるのです。 結局のところ、鋼のような意志力を持っている人などそういません。なのに、誰もが「強い意志力を持っていない自分はダメな人間なのではないか」と考えている。その思い込みを一度外してみることが、独学継続の第一歩なのではないでしょうか』、「自分の意志力がそれほど強くないという認識があるので、その前提でできることを考えるのです」、というのは興味深い考え方だ。
・『独学に「向いてない人」はいない  Q:独学に、向き不向きはあると思いますか? A:独学って、本当は誰にでもできるものだと思うんですよ。 でも、勉強にしても仕事にしても、「与えられた課題だけこなす」という型にはまってしまった人は、その型からなかなか抜け出せない。ずっと同じ手の動かし方や、首の動かし方しかしていないと、本当はもっと自由な動きができたはずなのに、体が凝り固まって一方向にしか動かせなくなってしまう……そんなイメージです。 しかし本来、与えられた勉強「しか」できない人などいないはず。子どもは誰でも、「なんで?」といろいろなことを聞くし、新しいことを知れば喜びます。「僕は与えられたものしか吸収したくない」なんて言う幼稚園児が存在するとは思えません。 なのに、長じてそうなってしまうのは、大人が子どもの好奇心を押し殺し、「これを覚えなさい」と無理やり型にはめてきた結果です。東大生も例外ではありませんが、受験勉強を勝ち抜いてきた人ほど、とにかく与えられたことをやる、正解だけを探すという習慣が身についてしまっている傾向があります。 しかし今、その壁を乗り越えるべき時代がいよいよ到来していると感じます。 近年、働き方改革の影響で、ビジネスパーソンには自由になる時間が増えました。コロナ禍の中で加速したリモート化の動きも、この流れを後押ししています。学生たちもまた、コロナによってサークル活動やアルバイトなどの活動を制限され、多くの時間を手にすることになりました。 そんな中で、手にした時間を持て余している人は少なくありません。 この時間を利用して、与えられた課題をこなすので精一杯だった状態から脱し、自ら新しいことにチャレンジできるかどうか。そこが「未来」の分かれ目なのではないでしょうか。独学の発想は、そんな局面でも大きな武器になるはずです。 柳川範之(やながわ・のりゆき) 東京大学大学院 経済学研究科 教授 1963年生まれ。高校には行かずブラジルで過ごし、独学で大検合格後、シンガポールにて慶應義塾大学経済学部通信教育課程入学。88年同課程卒業。93年東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士(東京大学)。東京大学大学院経済学研究科助教授などを経て、2011年より現職』、「受験勉強を勝ち抜いてきた人ほど、とにかく与えられたことをやる、正解だけを探すという習慣が身についてしまっている傾向があります。 しかし今、その壁を乗り越えるべき時代がいよいよ到来していると感じます」、同感である。
・『一生使えて今日から役立つ! 3つの工夫  【工夫①】「無知くんと親父さんの対話」でざっくり概要をつかめる 本書は独学者の手元に置かれ、悩んだときに必要な箇所(技法)を読めるつくりになっています。さらに「ざっと読んで概要を把握したい」「独学の結果を早く出したい」という方向けに、章の冒頭には「無知くんと親父さんの対話」がついています。これを15章分読むだけで、一番大事なポイントは読了できます。 【工夫②】「なぜ学ぶのか」「何を学ぶのか」「どう学ぶのか」を3部構成で完全網羅 既に勉強の目的が決まっている人は「Howどう学ぶのか」を扱った第3部から。自分が知りたいこと、分野を調べたいなら「What 何を学ぶのか」を扱った第2部から。そして、そもそも「Whyなぜ学ばなければならないのか」に立ち返るときは第1部から。あなたのゴールに合わせて深堀りできるつくりになっています。 【工夫③】あらゆる独学の土台になる「国語」「英語」「数学」の学び方も掲載 独学をする上で3つの言語「国語」「英語」「数学」(本書では、数学も言語のひとつと捉えています)がわかると、自分が扱える本や論文、ネットの情報などの幅がいっきに広がります。第4部では、この3つを学ぶときに大切な「骨法」と、「ある独学者」のケーススタディを掲載。1~55の技法をどう使えばよいかがわかります』、「3つの工夫」はよく練られている印象だ。特に、「あらゆる独学の土台になる「国語」「英語」「数学」の学び方も掲載」、とはかゆいところに手が届くようにした「工夫」だ。

次に、4月29日付けPRESIDENT Onlineが掲載したノンフィクションライターの山田 清機氏による「「入居者の4割は年下」毎朝5時出勤を続ける86歳の老人ホーム施設長の生き方 「人並外れて勝ち気」だからこそ」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/45184
・『86歳でフルタイムの老人ホーム施設長を務めている人がいる。東京都江戸川区にある特別養護老人ホーム「アゼリー江戸川」の磯野正さんだ。施設の入居者の約4割は、磯野さんより年下だ。磯野さんの気力、体力はどこから沸いてくるのか。連載ルポ「最年長社員」、第14回は「特別養護老人ホーム施設長」――』、全く超人的な人物のようだが、もう少し詳しく知ってみたいものだ。
・『毎朝5時から「ピアノ・書道・英語学習」  物言えぬ父母を見舞いしアゼリーに 誰が弾くのかショパンの調べ 東京都江戸川区にある特別養護老人ホーム、アゼリー江戸川。ある利用者の家族から届いた葉書に、こんな短歌が記されていた。 「ショパンの調べ」は、館内放送で流していたものではない。施設長の磯野正が、実際にピアノを弾いていたのだ。それだけなら特別驚くべきことではないが、なんと磯野は御年86歳なのである。 アゼリー江戸川の全入居者85人の平均年齢は87.5歳、うち33人が85歳以下だから、入居者の約4割は磯野よりも“若い”ことになる。 「私は毎朝5時にはホームに来まして、約2時間、ピアノと書道と英語の勉強をしています。経営学の本などもよく読みますね。コロナ禍の前は、入所者全員に朝の挨拶をして、握手をして回っていたんですよ」 小柄でいかにも好々爺こうこうや然とした雰囲気の磯野だが、淡々と語る内容のすべてが、一般的な高齢者のイメージから逸脱している。この“スーパー高齢者”はいかにして誕生し、いかにして気力、体力を維持しているのか? その秘密は、意外なところにあった』、「私は毎朝5時にはホームに来まして、約2時間、ピアノと書道と英語の勉強をしています。経営学の本などもよく読みますね」、「5時」出勤はともかく、いまだに「約2時間」も「勉強」をしているとは、大したものだ。
・『「負けるなんて考えたこともなかったから、悔しくて悔しくて」  磯野は昭和10年、千葉県夷隅いすみ郡の農家に生まれている。7人兄弟の下から二番目。小さい頃から田植や麦踏などの農作業を手伝った。 小学校1年生の12月に太平洋戦争が始まり、5年生の夏に終戦を迎えた。 「1年生の時に先生が『戦争が始まったよ』と言いまして、田舎でしたが空襲があると授業が終わりになって家に帰ったりしました。飛行機の機関銃で撃たれるから、並んで帰っちゃダメだよなんて言われましてね」 敗戦時の感想が、興味深い。 「日本が負けるなんて考えたこともなかったから、悔しくて悔しくて、もう一回戦争が始まらないかと思ったほどでした」 昭和32年に千葉大学を卒業して、小学校の教諭になった。初任校は浦安市立浦安小学校。団塊の世代が小学生だった時代である。 「私は優しい先生だったと思いますよ。昼夜問わず子供にのめり込んでいましたからね」 浦安小には10年勤めたが父母からの信頼が厚く、近年まで父母の同窓会が行われていたというからよほど人気があったのだろう』、「近年まで父母の同窓会が行われていたというからよほど人気があった」、すごい人間力だ。
・『トラブル解決の秘訣は「徹底して言い分を聞く」こと  いくつかの小学校で教諭を務め、教育委員会で社会教育課長(PTA、家庭教育、青年活動を指導する)などを経験した後、教頭、校長と順調に管理職の階段を上っていった。 教頭時代は苦労が多かったというが、苦労の代表は保護者への対応だった。 「たとえば、学校で何かトラブルがあって保護者の方に来ていただくと、『私はわが子の言葉を信じます。だから、この子は悪くない』なんておっしゃる方がいるんですね」 子供の言葉の真偽を吟味することなく、一方的に「わが子が正しい」と主張をする。あるいは偶然に起きた事故の責任を、一方的に学校に押し付けてくる保護者もいた。こうした不条理に、磯野はどのように対応したのだろうか。 「徹底的に言い分を聞きました。あなたが間違っているなんて言うと喧嘩になってしまうから、おかしなことを言ってると思っても、ひたすら耳を傾ける。そうやって、自分から気づいてくれるのを待つしかないんです」 子供同士のトラブルからは、自分も真偽の判断を過ちかねないことを学んだ。 「○○さんに意地悪されましたなんて、よく子供が言いつけに来るでしょう。人間って不思議なもので、最初に言ってきた方の味方をしてしまうんです。ところが双方の話をよくよく聞いてみると、言いつけに来た子の方が先に手を出していたというケースが多いんですね。ですから問題解決には、徹底して話を聞くという姿勢がとても大切なんです」』、「おかしなことを言ってると思っても、ひたすら耳を傾ける。そうやって、自分から気づいてくれるのを待つしかないんです」、「問題解決には、徹底して話を聞くという姿勢がとても大切なんです」、いずれも我慢強くないと出来ないことだ。
・『相手が子供でも高齢者でも、仕事の喜びは変わらない  60歳で定年を迎えた磯野は浦安市立美浜南幼稚園(現:美浜南認定こども園)の園長に着任し、64歳のとき、一年の任期を残してアゼリーグループのなぎさ幼稚園に、やはり園長として転籍している。 「私は子供の頃から農作業をしていましたから、根性があると言いますか、疲れないんですね。教員の頃は徹夜仕事でも何でもやりましたよ。とにかく子供と一緒にいるのが楽しいんで、アゼリーの話を引き受けたんです」 ところが磯野は、1999年、アゼリー江戸川に施設長として異動するのである。子供に囲まれた世界から、程度の差こそあれ介護を必要とする高齢者に囲まれた世界への異動。理事長から請われてとは言うものの、意欲を殺がれそうな気がするが……。 「私は教育委員会時代に社会教育をやっていましたから、この施設に来ても違和感はまったくありませんでした。人間は何歳になっても自分というものを持っていて、高齢者だって、なんとか元気でいようという意欲を持っているんです。それを引き出してあげられた時には、子供の力を伸ばしてあげた時と同じ喜びがあるんですよ」』、「子供に囲まれた世界から・・・介護を必要とする高齢者に囲まれた世界への異動」、「この施設に来ても違和感はまったくありませんでした。人間は何歳になっても自分というものを持っていて、高齢者だって、なんとか元気でいようという意欲を持っているんです。それを引き出してあげられた時には、子供の力を伸ばしてあげた時と同じ喜びがあるんですよ」、極めて柔軟性に富んだ珍しい人物だ。
・『「夜間にひとりでトイレに行く」入所者の望み  たとえば、足が悪くて歩行が不自由な入所者がいる。ひとりで歩くのは危険だから、トイレに行くときは呼び出しブザーを押す約束だ。ところが夜間に、ひとりでトイレに向かってしまう。認知症の症状のようにも思える行為だが、磯野の視点は別にある。 「歩けないけど、自分で行きたい、人に頼りたくないんですよ。その気持ちを見抜いて、怪我のないように手助けしながら自力でトイレに行かせてあげる。そうすると喜んでくれるわけです。そうやって利用者の元気づけをできた職員にも、喜びがあるわけです」 相手の言葉にひたすら耳を傾けると、真実が見えてくる。それは相手が子供だろうと高齢者だろうと変わらない。そして、相手が心から望むことを支援し、その望みの成就を共有できた時、支援される側にもする側にも喜びがもたらされる。 磯野はアゼリー江戸川の利用者ばかりでなく、100人をこえる職員にとっても、いまだに「先生」なのである』、「歩けないけど、自分で行きたい、人に頼りたくないんですよ。その気持ちを見抜いて、怪我のないように手助けしながら自力でトイレに行かせてあげる。そうすると喜んでくれるわけです。そうやって利用者の元気づけをできた職員にも、喜びがあるわけです」、「磯野はアゼリー江戸川の利用者ばかりでなく、100人をこえる職員にとっても、いまだに「先生」なのである」、確かにその通りだ。
・『「人に負けると泣くほどの勝気なんです」  それにしても86歳という年齢で、毎朝5時に出勤してフルタイムで働き続けるバイタリティーは、いったいどこから来るのだろうか? 磯野は昨年もピアノの発表会に参加してショパンを披露しているばかりでなく、書道の腕前もプロ級で、昨年は浦安市の市美展に応募して最優秀の「市長賞」を獲得している。英語はさすがに単語を忘れることが多くなったが、NHKの基礎英語のCDを毎朝繰り返して聞いているという。 「実は私、おとなしそうに見えると思いますけど、とても勝ち気なんです。もうね、人に負けると泣くほどの勝気なんですよ」 磯野がちょっぴり不敵な表情を浮かべた。 勝ち気を象徴する子供時代のエピソードがあるという。小学校から4人の児童がリレーの選手に選ばれ夷隅郡の大会に参加することになったが、磯野は当初5番手だった。 「どうしても選手になりたくて、放課後に私だけ学校に残って、ハチマキをして走る練習をしたんです。そしたら最終的に選手になれたんです。夷隅郡の大会では20校の中で優勝しました。私は背が低かったけれど、ずっと大きな選手を抜いたんですよ」』、「ピアノの発表会に参加してショパンを披露」、「ショパン」が弾けるのであればかなり上手い方だ。「人に負けると泣くほどの勝気なんですよ」、「勝気」さが、「ピアノ」の腕前にも影響しているのだろう。
・『「オンチはあんただ」今でも忘れられない一言  負けん気の強さは、趣味のジャンルにも影響していた。磯野は大学からピアノを弾き始めたが、それには深い理由があったのだ。 「小学校4年生のとき音楽の時間に歌を歌っていると、先生が『やっぱりそうだ。オンチはあんただ』と言うんですよ。もう顔を上げられないほど沈んでしまって、こんなことに負けてたまるかって思ってね」 それが、長じてピアノを弾くことに繋がったというのだが……。 「だって、ピアノなら声を出して歌わなくていいじゃない」 小4の時の屈辱を、大学生になってからリベンジするという執念がすごい。 絵画に関する思い出は、さらに切ない。 「やはり小4の時ですが、私、花の絵を描いたんです。綺麗な花が倒れちゃいけないと思ったから、茎を木みたいに太く描いた。そうしたら先生が、『何よこれ、木じゃないの』って言うわけ。このひと言で、絵を描くのがすっかり嫌いになってしまったんです」』、「「だって、ピアノなら声を出して歌わなくていいじゃない」 小4の時の屈辱を、大学生になってからリベンジするという執念がすごい」、その通りだ。
・『決めたことをやらないと、自分が許せない  アゼリーでは利用者や近隣住民を対象に「ここからプラザ」という活動を行っている。磯野はプラザで書道を教えているが、参加者の書をけなすことは絶対にしない。 「特に、書道、絵画、音楽や芸能的なものでは、絶対にけなしてはいけない。褒めて褒めて育てなければいけないんです」 この強い信念の背後に「花の木」の悔しい思い出があることは、言うまでもない。 「私はね、一度やると決めたことをやらないと、自分が許せないんです。だから朝の巡回もピアノの練習も、一度やると決めたら絶対にやる。継続の秘訣は一日何時間なんて決めないで、5分でもいいからとにかくやり始めること。一度やり始めてしまえば、一時間でも二時間でも平気でやれるんですよ」 人並外れて勝ち気であるがゆえに、人一倍傷ついた経験を持ち、その記憶をバネに86歳の現在も自分を磨き続ける磯野。いったいいつまで働き続けるつもりだろうか? 「目が悪くなってきたので、自動車免許は来年で終わりにしようと思っていますが、体の方は何をやっても疲れないのでね(笑)」 進退の判断は、経営者に委ねるそうだ』、「人一倍傷ついた経験を持ち、その記憶をバネに86歳の現在も自分を磨き続ける磯野」、充実した張りのある毎日、「進退の判断は、経営者に委ねるそうだ」、これならまだ続けられそうだ。

第三に、5月16日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した:スタンフォード大学・オンラインハイスクール校長の星 友啓氏による「脳がみるみるやる気を出し情熱的モチベーションが生まれる「3大習慣」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/267867
・『スタンフォード大学・オンラインハイスクールはオンラインにもかかわらず、全米トップ10の常連で、2020年は全米の大学進学校1位となった。世界最高峰の中1から高3の天才児、計900人(30ヵ国)がリアルタイムのオンラインセミナーで学んでいる。 そのトップがオンライン教育の世界的リーダーでもある星友啓校長だ。 全米トップ校の白熱授業を再現。予測不可能な時代に、シリコンバレーの中心でエリートたちが密かに学ぶ最高の生存戦略を初公開した、星校長の処女作『スタンフォード式生き抜く力』が話題となり、ロングセラーとなっている。 ベストセラー作家で“日本一のマーケッター(マーケティングの世界的権威・ECHO賞国際審査員)”と評された神田昌典氏が「現代版『武士道』というべき本。新しい時代に必要な教育が日本人によって示されたと記憶される本になる」と言った本とは一体なにか。今回のテーマは「モチベーション」。スタンフォードにいる著者を直撃した。(これまでの人気連載はこちら)』、「「現代版『武士道』というべき本」、言い得て妙だ。
・『ローチェスター大学から生まれた「自己決定理論」  やる気、情熱、モチベーション。 これらは、一体、どこから湧いてくるのか? アメリカニューヨーク州には、コダックやゼロックスなどの有名企業が生まれた5大湖の一つ、オンタリオ湖に面する学際都市「ローチェスター」があります。 そこにあるのがローチェスター大学。 日本ではあまりなじみがないかもしれませんが、コロンビアやコーネルに並んでアメリカ屈指のリサーチ大学として知られています。 このローチェスター大学から生まれた「自己決定理論」は、21世期の心理学のメジャートレンドの一つをつくり上げました。 それによると、モチベーションは私たち人間の心の3大欲求から生まれます』、「ローチェスター大学から生まれた「自己決定理論」は、21世期の心理学のメジャートレンドの一つをつくり上げました」、なるほど。
・『「つながり」がモチベーションを生む  まず一つ目が「つながり」(relatedness)。 誰かのために何かをしたり、他の人とのコミュニケーションをしたり、コラボをしたりする機会が、私たちのモチベーションにつながります。 実際、他の人とコミュニケーションをしたり、コラボをしたりすると、脳の報酬系が活性化することがわかっています*1。 人とのつながりは脳に気持ちいいのです。 逆に言えば、脳は根本的につながりを欲するようにできています。 私たちのモチベーションの源の一つは「つながり」なのです』、「脳は根本的につながりを欲するようにできています」、よく出来た仕組みだ。
・『「有能感」とドーパミン  もう一つの心の3大欲求が「有能感」(competence)。 難しい問題が「解けた!」、パズルが「できた!」、知らないことが「わかった!」。 「つながり」同様、私たちの脳が新しい知識やスキルを学ぶとき、ドーパミンが分泌されて、報酬系が活性化します*2。 「できた!という感覚」は脳にとって非常に気持ちがいいのです』、「「できた!という感覚」は脳にとって非常に気持ちがいいのです」、「ドーパミンが分泌」されれば、「非常に気持ちが」よくなるのも当然だ。
・『「自発性」  さあ、「つながり」「できる感」ときて、3つ目は何でしょう? 無理やりやらされてはモチベーションが上がらない。 自分自身が望んでやっている。自分の意思を感じることができる。 自分の心の底から湧いてくる思いに、自分として主体的にやっている。 自分の自発性を感じることができる。 これが心の3大欲求の最後、「自発性」(autonomy)です。 「自分からやっている」「自分の意思でやっている」という感覚を欲するのは、人間の根本欲求なのです。 これも「つながり感」や「できる感」同様、脳科学的な基礎づけがされつつあります*3。 自分から進んでやっていると感じられるのが、私たちのモチベーションの根底にあるのです。 自己決定理論によると、「つながり」「有能感」「自発性」が高まるような環境を整えたり、それらを意識をすることで、モチベーションが高まったり、維持されたりします。 まわりの人と協力できたり、人のためになるプロジェクト。 自分が達成したとか、できるようになったと思える瞬間。 そして、やらされているのではなく、自分で自分のやるべきことをコントロールできている。 この3つの視点から、現在の自分の目標やモチベーションと向き合い直してみることは、脳の仕組みにかなった心の習慣なのです』、「「つながり」「有能感」「自発性」が高まるような環境を整えたり、それらを意識をすることで、モチベーションが高まったり、維持されたりします」、「脳の仕組み」がここまでよく出来ているとは、改めて驚かされた。
タグ:人生論 (その8)(高校に行かなかった東大教授が語る「独学が続かない人」が抱える間違った思い込み 『独学大全』私はこう読んだ/東京大学・柳川範之教授(2)、「入居者の4割は年下」毎朝5時出勤を続ける86歳の老人ホーム施設長の生き方 「人並外れて勝ち気」だからこそ、脳がみるみるやる気を出し情熱的モチベーションが生まれる「3大習慣」) ダイヤモンド・オンライン 柳川範之 「高校に行かなかった東大教授が語る「独学が続かない人」が抱える間違った思い込み 『独学大全』私はこう読んだ/東京大学・柳川範之教授(2)」 「東大教授への道を独学で切り拓いた」、とはまさに『独学大全』にふさわしい経歴だ。 「自分の意志力がそれほど強くないという認識があるので、その前提でできることを考えるのです」、というのは興味深い考え方だ。 「受験勉強を勝ち抜いてきた人ほど、とにかく与えられたことをやる、正解だけを探すという習慣が身についてしまっている傾向があります。 しかし今、その壁を乗り越えるべき時代がいよいよ到来していると感じます」、同感である。 一生使えて今日から役立つ! 3つの工夫 【工夫①】「無知くんと親父さんの対話」でざっくり概要をつかめる 【工夫②】「なぜ学ぶのか」「何を学ぶのか」「どう学ぶのか」を3部構成で完全網羅 工夫③】あらゆる独学の土台になる「国語」「英語」「数学」の学び方も掲載 「3つの工夫」はよく練られている印象だ。特に、「あらゆる独学の土台になる「国語」「英語」「数学」の学び方も掲載」、とはかゆいところに手が届くようにした「工夫」だ。 PRESIDENT ONLINE 山田 清機 「「入居者の4割は年下」毎朝5時出勤を続ける86歳の老人ホーム施設長の生き方 「人並外れて勝ち気」だからこそ」 特別養護老人ホーム「アゼリー江戸川」の磯野正さん 全く超人的な人物のようだが、もう少し詳しく知ってみたいものだ。 「私は毎朝5時にはホームに来まして、約2時間、ピアノと書道と英語の勉強をしています。経営学の本などもよく読みますね」、「5時」出勤はともかく、いまだに「約2時間」も「勉強」をしているとは、大したものだ。 「近年まで父母の同窓会が行われていたというからよほど人気があった」、すごい人間力だ。 「おかしなことを言ってると思っても、ひたすら耳を傾ける。そうやって、自分から気づいてくれるのを待つしかないんです」、「問題解決には、徹底して話を聞くという姿勢がとても大切なんです」、いずれも我慢強くないと出来ないことだ。 「子供に囲まれた世界から・・・介護を必要とする高齢者に囲まれた世界への異動」 「この施設に来ても違和感はまったくありませんでした。人間は何歳になっても自分というものを持っていて、高齢者だって、なんとか元気でいようという意欲を持っているんです。それを引き出してあげられた時には、子供の力を伸ばしてあげた時と同じ喜びがあるんですよ」、極めて柔軟性に富んだ珍しい人物だ。 「歩けないけど、自分で行きたい、人に頼りたくないんですよ。その気持ちを見抜いて、怪我のないように手助けしながら自力でトイレに行かせてあげる。そうすると喜んでくれるわけです。そうやって利用者の元気づけをできた職員にも、喜びがあるわけです」、「磯野はアゼリー江戸川の利用者ばかりでなく、100人をこえる職員にとっても、いまだに「先生」なのである」、確かにその通りだ。 「ピアノの発表会に参加してショパンを披露」、「ショパン」が弾けるのであればかなり上手い方だ。 「人に負けると泣くほどの勝気なんですよ」、「勝気」さが、「ピアノ」の腕前にも影響しているのだろう。 「「だって、ピアノなら声を出して歌わなくていいじゃない」 小4の時の屈辱を、大学生になってからリベンジするという執念がすごい」、その通りだ。 「人一倍傷ついた経験を持ち、その記憶をバネに86歳の現在も自分を磨き続ける磯野」、充実した張りのある毎日、「進退の判断は、経営者に委ねるそうだ」、これならまだ続けられそうだ。 星 友啓 「脳がみるみるやる気を出し情熱的モチベーションが生まれる「3大習慣」」 スタンフォード大学・オンラインハイスクール 「「現代版『武士道』というべき本」、言い得て妙だ。 「ローチェスター大学から生まれた「自己決定理論」は、21世期の心理学のメジャートレンドの一つをつくり上げました」、なるほど。 「脳は根本的につながりを欲するようにできています」、よく出来た仕組みだ。 「「できた!という感覚」は脳にとって非常に気持ちがいいのです」、「ドーパミンが分泌」されれば、「非常に気持ちが」よくなるのも当然だ。 「「つながり」「有能感」「自発性」が高まるような環境を整えたり、それらを意識をすることで、モチベーションが高まったり、維持されたりします」、「脳の仕組み」がここまでよく出来ているとは、改めて驚かされた。
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ベーシックインカム(その3)(「一億総生活保護」化!?ベーシックインカム導入で危惧される未来とは、日本には「ベーシック・インカム」より「ベーシック・サービス」政策が必要かもしれない、盛り上がる「ベーシック・インカム」政策 その「大きな落とし穴」に気づいていますか?) [経済政策]

ベーシックインカムについては、2月17日に取上げた。今日は、(その3)(「一億総生活保護」化!?ベーシックインカム導入で危惧される未来とは、日本には「ベーシック・インカム」より「ベーシック・サービス」政策が必要かもしれない、盛り上がる「ベーシック・インカム」政策 その「大きな落とし穴」に気づいていますか?)である。

先ずは、3月7日付けダイヤモンド・オンラインが転載したAERAdot.「「一億総生活保護」化!?ベーシックインカム導入で危惧される未来とは」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dot/2021022500028.html?page=1
・『いま、貧困や経済格差の問題を解決する方法として、国が全国民に一律で必要最低限の生活費を給付する「ベーシックインカム」が注目されています。その実現可能性は、どのくらいあるのでしょうか? 『いまこそ「社会主義」』(朝日新聞出版)の共著者である的場昭弘さんと、『武器としての「資本論」』(東洋経済新報社)の著者である白井聡さんに聞きました。(※本記事は、朝日カルチャーセンター主催で2020年11月に行われた対談講座「マルクスとプルードンから考える未来」の内容の一部を加筆・編集したものです。Qは聞き手の質問)』、興味深そうだ。
・『ベーシックインカムは、企業のためのもの?  Q:ベーシックインカム論は、労働者が資本から自由になる道でしょうか? それとも、国民が国家に取り込まれる道でしょうか? 的場:ベーシックインカムというのは、もともとは資本主義的な発想の中から出てきた概念です。資本主義経済では、消費者にたくさん消費してもらわないと、企業活動を継続することができません。つまり、消費者である国民の所得の保障を国家がすることで、企業活動が滞りなく行えるようにしましょうというのが、ベーシックインカム論の背景にあるもともとの考え方です。 一つの近未来として、企業活動がどんどん自動化されていって、いわばロボット化して、多くの労働者が働かなくてもよくなった状況を考えてみましょう。そうすると、仕事を失った労働者は賃金をもらうことができませんから、積極的な消費が行われなくなります。そこで、消費を行ってもらうための方策のひとつとして、ベーシックインカムが出てきます。 このベーシックインカムの実現を考えるにあたってポイントになるのは、国家が国民にあまねくお金を配るための原資をどうやってつくるか、ということです。企業活動が滞りなく行えるようにするという目的に照らせば、企業に税金をかけるというのが合理的となります。その税金を原資にして、国家が労働者にお金を与えて、消費してもらうということです。 ベーシックインカムを受給するとは、いわば、そうやって消費のために動かされていく世界に生きるということです。そもそも、ベーシックインカムという考え方のおおもとには、労働者が自らの労働権をしっかり行使して、その対価として得られるべき所得を得て生きていくという発想がありません。本当にそれでいいのかという、難しい問題を考えなくてはなりません。 政治家の中にはベーシックインカム論を立ち上げようとする人たちもいますが、いまひとつ説明しきれない理由は、いったい誰が何のためにベーシックインカムをやろうとするのかということが明確にされていないからではないでしょうか』、「ベーシックインカムという考え方のおおもとには、労働者が自らの労働権をしっかり行使して、その対価として得られるべき所得を得て生きていくという発想がありません」、これは問題含みだ。
・『ベーシックインカムは、人間を不幸にする?  白井:質問された方も2つの可能性があると思っておられるようですが、私も基本的にはその2つの可能性があるだろうと思います。 ですが、少なくとも、現時点で仮にベーシックインカムが導入されるとするならば、たぶん精神的にネガティブな影響が広がる結果にしかならないじゃないかなという気がします。いうなれば、国民一億総生活保護者化するっていう感じになっちゃうのではないかと。 生活保護という制度に関してはさまざまな問題というのが指摘をされていますが、私がここで問題にしたいのは、不正受給が起きるかもしれないなどといったことではありません。ベーシックインカムは、それをもらいながら暮らすことで、「何もしなくていいんだろう。医療費タダだしな。あー、なんて安楽で、充実もしているな。本当にこれが最高の生き方だ」と思える人がどれほどいるのだろうかという、根本的な問題をはらんでいると思います。 たぶん、そんな人はほぼいないと思うんです。それが、人間のある種、社会的本能ということなのではないかと思います。 ベーシックインカムをもらうとは、いわば、「自分が社会に対して何も与えることができていない」と思いながら、社会から一方的に受け取っているという状態です。もちろん実際には、本人が気付いていないだけで、何かしら社会に与えているのかもしれません。でもとにかく、「与えていない」と思わされる状態で、一方的に給付を受けるという状況が、人間はすごく不愉快、不本意なことなんだろうと思います。だから心がすさみやすいという問題を抱えているのではないでしょうか。) 労働は、人間という存在にとって極めて本質的なものであり、人間らしくあるための条件でもあると思います。生活保護受給者が陥っている精神的苦境はこれが満たされないことに端を発している。ベーシックインカムとして労働をしないでお金だけもらえるとなると、こうした生活保護受給者の精神的苦境が全国民的に広がっていくっていうことが起きるんじゃないのかなということを、私は危惧しています。 的場:結局、労働は、所得とは関係なく存在しているものでもあるということですね。労働は、人間と人間をつなぐものでもある。つまり、労働を抜きにしたら人間関係がなくなるということが言えると思います。 それに、国家からお金を受け取るということは、まあ、国家によってまさに飼いならされてしまうという危険性をはらんでいるとも言えます。ベーシックインカムは、すごくおもしろいアイデアだと思います。ただ、実施するには、さまざまな工夫が必要であるということは間違いないですね』、「「自分が社会に対して何も与えることができていない」と思いながら、社会から一方的に受け取っているという状態です」、「生活保護受給者の精神的苦境が全国民的に広がっていくっていうことが起きるんじゃないのかなということを、私は危惧しています」、「実施するには、さまざまな工夫が必要であるということは間違いない」、決してバラ色の政策ではないようだ。

次に、4月6日付け現代ビジネスが掲載した慶應義塾大学教授の井手 英策氏、 拓殖大学教授の関 良基氏,、ジャーナリストの佐々木 実氏による座談会「日本には「ベーシック・インカム」より「ベーシック・サービス」政策が必要かもしれない」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/81799?imp=0
・『コロナ禍で経済的な困窮が目立つなか「ベーシック・インカム」導入に関する議論が盛んになっている。しかし、このラディカルな政策には落とし穴があるのではないか。さらに、じつは「ベーシック・インカム」ではなく「ベーシック・サービス」のほうが効果的に人々を救うことができるのではないか——経済をめぐる一大トピックを、慶應義塾大学教授の井手英策氏、拓殖大学教授の関良基氏、ジャーナリストの佐々木実氏が語った』、興味深そうだ。
・『盛り上がるベーシック・インカムの議論  佐々木 コロナ禍で困窮世帯が増え、経済的な格差はより一層広がっています。今秋にはデジタル庁が創設されますが、ポスト・コロナを展望するうえでは、劇的に進むデジタル化、AI化の影響も見逃せません。将来消滅する仕事のリストがメディアで報じられたりもしていますが、社会のセーフティネットをどう再構築するかが差し迫った課題となっています。そんななか、「ベーシック・インカム」導入の議論がにわかに起きました。コロナ対策でひとり10万円が給付されましたが、こうした形のすべての人への現金給付を恒久化する制度がベーシック・インカムです。意外なことに火付け役は、菅義偉首相のブレインでもある竹中平蔵氏でした。 のちほどのべるように、彼の案は福祉制度全体の抜本的見直しが条件で私は懸念をもっているのですが、一方で、現金給付政策とは異なり、生きていくうえで必要不可欠なサービスを無償化しようという考え方があります。医療や教育、介護などのサービスを無償化する「ベーシック・サービス」という政策を提唱しているのが財政学者の井手英策教授です。 「現金の給付」か「サービスの無償給付」か。対照的な制度が浮上しているわけですが、じつは、これは市場経済のとらえ方の違いでもあり、引いては目指す社会の違いにもなってきます。「ベーシック・サービス」に私が注目するのは、その政策理念が宇沢弘文(1928‐2014)の提唱した「社会的共通資本」に通じるからでもあります。そこで、宇沢教授の教えを受けた関良基教授にも参加いただき議論したいのですが、まずは井手先生から「ベーシック・サービス」について解説していただけますか』、「「現金の給付」か「サービスの無償給付」か。対照的な制度が浮上」、「「ベーシック・サービス」に私が注目するのは、その政策理念が宇沢弘文・・・の提唱した「社会的共通資本」に通じるからでもあります」、なるほど。
・『井手 そもそもは、1976年に国際労働機関が水や衣食住、医療など人間の基本的なニーズを「ベーシックニーズ」としてまとめ、これらを提供することで貧困問題を解決する戦略を主張し始めました。「どこまでが人間に必要なニーズなのか」が問題になるわけですが、「ベーシックニーズ」の範囲はかなり広かった。 そこで僕は議論を現実的に前に進めるためにも、「人々の生き死に」に直結するサービスだけに限定して「ベーシック・サービス」と呼び、それを無償化する政策を提案したわけです。僕が考えている無償化すべきサービスとは、具体的には医療、教育、子育て、介護、障碍者福祉です。 関 ベーシック・サービスはまぎれもなく社会的共通資本の考え方に通じます。宇沢先生が提唱した社会的共通資本とは、人々が豊かな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を安定的に維持することを可能にするような自然環境や社会的装置のことです。 具体的には、大気、森林、河川、水、土壌などの「自然環境」、道路や交通機関、上下水道、電力・ガスなどの「社会的インフラストラクチャー」、教育や医療、司法、金融などの「制度資本」の3つの要素を社会的共通資本としています。 宇沢先生は、「市場経済は社会的共通資本の土台のうえで営まれている」という視点に立ち、社会的共通資本は市場原理のみにゆだねてはならない、と主張しました。そもそも社会的共通資本という概念を提唱した理由は、すべての人が市民としての基本的権利を享受できる制度をつくるためでもありました。 医療、教育、子育て、介護、障碍者福祉に限定されているとはいえ、井手先生が唱えるベーシック・サービスは社会的共通資本の重要な領域であり、これらを無償化する政策は社会的共通資本の理念とも合致しているとおもいます。 井手 いみじくも宇沢先生がおっしゃっていたように、社会的共通資本は一つの基準だけで切り取れるものではなく、それぞれの国の歴史的・社会的・文化的な状況で決まるわけですね。ですから、なにが社会的共通資本、あるいはベーシック・サービスかは、民主主義社会では議論して決めることであり、はじめから答えがあるわけではありません。) 関 宇沢先生は、すべての社会的共通資本を無償で提供すべきと言っていたわけでもありません。たとえば、公共交通機関の運賃や公営住宅の家賃を安くしたり、水道事業にしても民営化ではなく、政府が補填することで公営を維持しながら料金を安くするなどして、社会的共通資本とみなされるサービスを幅広く安価に提供するやり方もかんがえられるでしょう。 2005年に宇沢先生といっしょにドイツを訪れ、シュタットベルケという公営企業を視察したことがありました。水道、電気、ガス、エネルギーなどをすべて提供する公社です。再生エネルギー事業で利益を上げ、その収益でほかの事業の赤字を補填したりするビジネスモデルで、要するに、個別事業ごとの独立採算ではなく、事業すべてを社会的共通資本とみなして総合的な観点から経営されている。いまドイツでは、自治体ごとに設立されたシュタットベルケが伸びています。 視察したとき、宇沢先生はとても感動された様子で、ドイツとくらべると日本は地獄だね、とおっしゃっていました。宇沢先生は、完全無償化とは主張していませんでした。シュタットベルケのようなやり方なども参考にして、より広い範囲の社会的共通資本を安く安定的に提供していく方向もあるのではないでしょうか。 井手 水や食料などを含めたすべての社会的共通資本の負担を軽減させていくのは、ひとつの方向性としてありえます。フランスやスウェーデンのような「大きな政府」を目指すならできるでしょうから、国民の議論を経て、日本の社会的共通資本をそう定義するのであれば、それでいいとおもいます。シュタットベルケもいい方法なんですが、日本の風土になじむか、という問題はありますね。 僕自身は「大きな政府」にまで踏み込むのではなく、まず一歩手前で、OECDの平均的な租税負担率で実現できるところにゴールを置いています。そうすると、無償化するサービスは当然限定されます。つけくわえれば、財つまりモノを全国民に提供するのは社会主義の発想ですよね。僕は財ではなくサービスに限定することで、社会主義とは別のゴールを設定しています』、「ベーシック・サービスはまぎれもなく社会的共通資本の考え方に通じます」、「宇沢先生は、すべての社会的共通資本を無償で提供すべきと言っていたわけでもありません。たとえば、公共交通機関の運賃や公営住宅の家賃を安くしたり、水道事業にしても民営化ではなく、政府が補填することで公営を維持しながら料金を安くするなどして、社会的共通資本とみなされるサービスを幅広く安価に提供するやり方もかんがえられるでしょう」、なるほど。
・『ベーシック・インカムと福祉制度の廃止  佐々木 そもそもなぜサービス無償化の議論が出てくるかというと、格差問題が深刻化して事実上、人としての基本的な権利を享受できない人がすでにたくさん存在しているからですね。憲法は第25条で「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と規定していますが、有名無実化しているといっていいような現状がある。 コロナ危機に加え、デジタル資本主義の進展で将来に仕事が消失するリスクを考えると、事態はより深刻になることが見込まれるから、制度の抜本的な再構築を迫られているわけですね。 ところで、ベーシック・サービスとは対照的な政策にベーシック・インカムがあります。むしろ、コロナ禍で注目されているのはこちらでしょう。ひとり10万円が給付され、実際に「現金給付」を国民的に体験したことも大きい。 話題となる契機は、政策形成に影響力をもつ経済学者の竹中平蔵氏が言及したことです。『エコノミスト』2020年7月21日号のインタビューでは、「月5万円」のベーシック・インカムを提案しています。のちに「月7万円」に修正しますが、より重要なのは財源に関する竹中氏の次の発言です。 「元になるのは(米経済学者)ミルトン・フリードマンの「負の所得税」の考え方だ。一定の所得がある人は税金を払い、それ以下の場合現金を支給する。また、BI(ベーシック・インカム)を導入することで、生活保護が不要となり、年金も要らなくなる。それらを財源とすることで、大きな財政負担なしに制度を作れる」 つまり、生活保護や基礎年金などの福祉制度を廃止することが前提なわけです。竹中氏自身がのべているように、新自由主義の教祖的存在ミルトン・フリードマンが提唱した考えに基づいています。重層的な福祉経済制度を解体し、最低所得層への現金給付に一本化していく狙いがあります。 このタイプを「竹中=フリードマン型BI」と呼ぶなら、同様の主張をしている人はほかにもいます。日銀の審議委員も務めたエコノミストの原田泰氏は『ベーシック・インカム』(中公新書・2015年)で竹中氏とほぼ同じ主張をしている。というか、竹中氏が「月5万円」をのちに「月7万円」に改めたのは原田氏の試算にならったからのようです。 言いたいことは、ベーシック・インカムが政策として議論される際、竹中=フリードマン型が有力候補になる可能性が高いということ。福祉制度を簡素化して財政再建に取り組みやすくする狙いもあるのではないでしょうか。) 関 じつは今から50年ほども前、宇沢先生は『自動車の社会的費用』(岩波新書・1974年)のなかで、すでにフリードマン型の現金給付、佐々木さん言うところの竹中=フリードマン型BIを批判していたんですよ。 市場化を徹底してすべての公共サービスを民営化したうえで、最低所得に満たず生活できない人たちには現金を給付するのが、フリードマンの「負の所得税」の考えです。宇沢先生は非常に批判的でした。 なぜかというと、フリードマンの考え方を推し進めると、インフレによる社会的不安定性を招く原因になるからです。水や食料、教育、医療など生活に必要な財やサービスは「需要の価格弾力性が低い」という特徴があります。たとえば、病気になれば治療費が高くても治療は受けなければなりません。水や食料なども多少値段が高くても生きていくために買わざるを得ないから、生活に必要な財やサービスは価格が高騰しやすい。 宇沢先生が懸念していたことが、今世紀になってから広範に起きています。世界中で水道の民営化が進んだ結果、水道料金の値上がりがひどくなり、私が昔住んでいたフィリピンのマニラなどでは民営化で料金が一気に5倍になるということもありました。 このように生活必需品の高騰が起これば、定額を給付するベーシック・インカムはセーフティネットとして機能しません。低所得者はいずれ生活できなくなりますから。 宇沢先生の理論的な考察によると、給付額を増やしてもさらに必需品が値上がりして、インフレのスパイラルは止まらなくなる。だからこそ、フリードマン型の現金給付を批判して、生活必需性の高い財やサービスは民営化せず、社会的共通資本として公的に管理して価格を抑え、誰もがアクセスできるようにすべきと主張したわけです。) 井手 宇沢先生が『自動車の社会的費用』を出版される少し前、マニュエル・カステルという都市社会学者が「集合的消費」という概念を発表しています。この内容がまさに社会的共通資本なんですよ。オイルショック危機の時代、正しい分配が行われず宇沢先生が怒り狂っているとき、見も知らぬ海外の学者がまったく同じような主張をしていたわけです。 危機の時代になると、「共通のもの」あるいは「集合的なもの」を人間は志向する。革命が起きた時代のマルクスもそうだし、大恐慌時代に登場したケインズやシュンペーターもそうだけど、危機を迎えると「みんなにとって必要なもの」への関心が高まるのです。 関 現在のコロナ危機もそうですが、社会が危機的状況に陥ると、相互扶助なしでは生きていけなくなるからですね。 井手 問題は、支えあう仕組みをどのように制度化するか。ところが、2008年のリーマンショック後、本来であれば「何がみんなにとって必要なのか」を民主主義的に議論すべきときに、「金を配れば喜ぶ」といわんばかりに、札束で顔を引っぱたくような政策が実行されました。麻生太郎政権のもとで実施された定額給付金です。 全員に1万2000円(65歳以上と18歳以下は2万円)が配られましたが、こんなバラマキ政策で人間の命と自由が保障されたと考える人などひとりもいなかったでしょう。かつての宇沢先生たちの主張を思い起こせば、驚くべき議論の質的劣化が起きていますよ。 【後編】「「ベーシック・インカム」政策の「大きな落とし穴」に気づいていますか?」』、「危機を迎えると「みんなにとって必要なもの」への関心が高まるのです・・・現在のコロナ危機もそうですが、社会が危機的状況に陥ると、相互扶助なしでは生きていけなくなるからですね」、「本来であれば「何がみんなにとって必要なのか」を民主主義的に議論すべきときに、「金を配れば喜ぶ」といわんばかりに、札束で顔を引っぱたくような政策が実行されました。麻生太郎政権のもとで実施された定額給付金です」、「驚くべき議論の質的劣化が起きていますよ」、その通りだ。

第三に、この続きを、4月6日付け現代ビジネス「盛り上がる「ベーシック・インカム」政策、その「大きな落とし穴」に気づいていますか?」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/81855?imp=0
・『コロナ禍で経済的な困窮が目立つなか「ベーシック・インカム」導入に関する議論が盛んになっている。しかし、このラディカルな政策には落とし穴があるのではないか。さらに、じつは「ベーシック・インカム」ではなく「ベーシック・サービス」のほうが効果的に人々を救うことができるのではないか——経済をめぐる一大トピックを、慶應義塾大学教授の井手英策氏、拓殖大学教授の関良基氏、ジャーナリストの佐々木実氏が語った』、前編に続いて興味深そうだ。
・『ベーシック・サービスの優れた点  佐々木 井手先生に改めてうかがいたいのですが、福祉制度としてベーシック・サービスとベーシック・インカムを比べたとき、そもそもどのような違いがあるのでしょうか。 井手 どちらにも共通して優れているのは「ベーシック」な点。つまり、すべての人に給付するという普遍主義ですね。特定の低所得者層や働けない人にだけ給付する選別主義的な政策には問題があるからです。貧しい人にだけ給付した途端、中・高所得層は負担者になってしまい、社会は分断される。 生活保護が特徴的ですけども、低所得層の中でも給付を受け取れる人と受け取れない人が出てきます。「人を選ぶ」と社会を引き裂く作用が働いてしまうのです。みんなに配れば所得に関係なく全員が受益者になり、救済される人・されない人の区別がなくなる。ですから、「ベーシック」は「社会的な効率性がある」といえます。 そのうえで、ベーシック・インカムとベーシック・サービスには大きな違いがある。もっとも大きな違いは実現性です。 コロナ禍の10万円給付では予算が総額13兆円かかりました。保育園と幼稚園を一年間無償化するために9000億円が必要でしたから、その約15年分です。大学の無償化には2兆〜3兆円必要ですが、これで学生1人当たりの平均学費の100万円をなくすことができる。 じつは13兆円もあれば、ほとんどのベーシック・サービスは無償化できたんですよ。医療費負担が3割から2割になり、大学、介護、障碍者福祉はタダにできた。それだけじゃありません。おまけに、これは現金ですが、失業者に5万円、低所得層に家賃補助で2万円、毎月払うこともできた。ポイントは、サービス給付は現金給付とは比べ物にならないくらい安上がりということ。 どうしてかというと、サービスは必要な人しか使いませんから。幼稚園が無償化されても、佐々木さんが幼稚園に入りなおしたりはしないでしょう。一方、ベーシック・インカムはみんなにまんべんなく配るから巨額にならざるをえない。 かりに生活保護と同水準のベーシック・インカムを給付すると、ひとり月額12万円なので年間144万円。必要な予算は180兆円になります。コロナ前の国家予算の1.8倍もの予算が必要な政策を毎年続けられますか? 予算を抑えようとすれば、ほかの社会保障制度の多くを廃止して現金給付に一本化する、新自由主義的なベーシック・インカムに向かうしかありません。) 佐々木 竹中=フリードマン型のベーシック・インカムを取り上げたのも、予算の制約を考慮すると、その方向に向かう可能性が高いと考えたからでした。 井手 現実の問題として、ベーシック・インカムで現金を配ったからといって必ずサービスにアクセスできるとは限りません。子どもの分の給付金を親に渡したら、借金の返済にまわしてしまうかもしれない。おまけに、福祉制度が縮小されて医療費が全額自己負担にでもなれば、病気になったときのお金を事前に使いこんだことになる。でも社会は助けてくれません。お金はもう渡したんだから。つまりは、究極の自己責任社会ですよ』、「ベーシック・サービスとベーシック・インカム・・・どちらにも共通して優れているのは「ベーシック」な点。つまり、すべての人に給付するという普遍主義ですね。特定の低所得者層や働けない人にだけ給付する選別主義的な政策には問題があるからです。貧しい人にだけ給付した途端、中・高所得層は負担者になってしまい、社会は分断される」、「サービス給付は現金給付とは比べ物にならないくらい安上がりということ。 どうしてかというと、サービスは必要な人しか使いませんから」、「竹中=フリードマン型のベーシック・インカムを取り上げたのも、予算の制約を考慮すると、その方向に向かう可能性が高いと考えたからでした」、その通りだ。
・『莫大な予算をどう捻出する?  佐々木 ベーシック・インカムに比べて安上がりということはわかりましたが、それでも医療、教育、子育て、介護、障碍者福祉の費用を政府が負担するとなると、莫大な予算が必要です。井手先生は『幸福の増税論』(岩波新書・2018年)で試算されていますね。政策提言の柱は、消費税の税率を19%まで引き上げればベーシック・サービスは実現できるというものでした。 関 医療、教育、子育て、介護、障碍者福祉のサービスを無償化するという、井手先生の考えには基本的に賛成です。そのうえでお聞きするのですが、「消費税増税ありき」ではかえって反対する国民が多くなるのではないでしょうか。 トマ・ピケティが『21世紀の資本』で明らかにしたように、資本収益率が経済成長率を上回ると必ず格差が生じる。現在の日本では、所得が1億円を超えると逆に税の負担率が下がっています。なぜかというと、株式の売却益や配当金への税率が20%止まりだからです。金融所得への課税は税率を40%あるいは50%にまで引き上げてもいいのではと考えていますが、まずこうした不公平な税制を改めてから消費税の議論に移るべきではないでしょうか。そうでないと国民の納得が得られないようにおもいます。 井手 少し現状の認識が違いますね。前回の衆議院選挙と参議院選挙で圧勝した候補者たちは、じつは「消費増税」を主張していました。「減税」「増税凍結」を主張した人たちは惨敗しているんですよ。国民は取られることだけでなく、税収を何にどう使うかにも関心をもっているということです。 ベーシック・サービスが消費税の増税を抜きに考えられない理由は単純で、消費税は税率を1%上げると2.8兆円の税収増になります。富裕層の所得税を1%上げても1400億円にしかなりません。かりに法人税をベーシック・サービスの財源にするなら30%以上の増税が必要ですが、現実的ではありませんよね』、「所得が1億円を超えると逆に税の負担率が下がっています。なぜかというと、株式の売却益や配当金への税率が20%止まりだからです。金融所得への課税は税率を40%あるいは50%にまで引き上げてもいいのではと考えていますが、まずこうした不公平な税制を改めてから消費税の議論に移るべき」、「ベーシック・サービスが消費税の増税を抜きに考えられない」、その通りだ。
・『井手 関先生がおっしゃるように金融所得への課税を40%まで上げても、得られる税収は消費税1%分にもなりません。『幸福の増税論』では「本書が示唆するのは、消費税の増税と富裕層への課税をパッケージ化し、負担と受益のバランスのとれた税制改正によって『くらしの自己負担が減った』という『成功体験』をし、次の増税につなげていくという戦略である」と述べました。 金融所得の税率を上げることに反対ではありません。むしろ賛成です。ですが、ベーシック・サービスを実現するには同時に消費税を上げることがどうしても必要です。そうでなければ、富裕層叩きにはなっても、結局、今苦しんでいる人を見殺しにすることになるからです。 関 私が言いたかったのは、格差を助長する制度を改めなければ、問題の根源である格差の拡大は収まらないということです。そのためには、金融所得への課税を強化して、資本収益率を経済成長率より低くしなければなりません。 そういう意味で、議論の順序として、消費増税より金融所得への課税と法人税の引き上げが先ではないかと。世界的な潮流をみても、タックスヘイブンを回避するためにOECDで共通の最低法人税率を15%に設定しようという動きがありますよね。個人的には25%まで上げてもいいと考えていますが。 井手 繰り返しになりますが、金融所得税や法人税を引き上げることに反対ではありません。ただ、消費税の前に、とこだわる理由はわかりません。消費税を使って、豊富な税収を思い切って使う。それが、本当に困っている人たちの暮らしを楽にする近道だと申し上げています。 関 もう少し言わせていただくと、現在の地球レベルでの課題は格差問題と気候変動です。私の専門は環境政策ですが、これから環境税が非常に重要な役割を果たすと考えています。消費税は一律に引き上げるのではなく、環境への負荷に応じて税率に差をつける税のあり方はどうでしょうか。) 井手 環境税のような政策課税は社会的に望ましくない行為を減らすことが目的なので、究極的には「税収0円」がベストな状態。人間の暮らしの基礎を支えるべき財政が減っていく財源に頼っていいかという問題は原理的にはあると思います。もっとも、ヨーロッパで議論されているような「スマート付加価値税」、つまりお金持ちが買うような高額な嗜好品に高い税率をかける消費税は考えられますから、環境への負荷の大きい消費に税をかけるという発想はありだと思います』、「格差を助長する制度を改めなければ、問題の根源である格差の拡大は収まらないということです。そのためには、金融所得への課税を強化して、資本収益率を経済成長率より低くしなければなりません。 そういう意味で、議論の順序として、消費増税より金融所得への課税と法人税の引き上げが先ではないか」、同感である。
・『「格差はいけない」とはどういう意味か  佐々木 井手先生はコロナ禍が起きる前からベーシック・サービスを提唱されていますよね。著作や発言からは切迫感が伝わってくる。「すぐにでも政策に反映させたい」という思いが強いから、給付するサービスを戦略的に限定し、消費税増税をあえて前面に出しているのではという印象を持っているのですが。 井手 僕は貧乏な家に育って、母がスナックをやりながら大学まで出してもらいました。大学3年生のとき、授業料免除申請が通らなくて、母に謝ったことがある。あの時、「消費税は上がるけど、そのかわり大学はタダになるよ」と言われていたら、母は泣いて喜んだはず。そういう体験が切迫感につながっているのだろうとおもいます。お金持ちにまず税を、というのは、本当にしんどい人の目線じゃない。 ベーシック・サービスが実現して、子どもの学費や医療費、介護費のような将来への不安がなくなれば、世帯年収が300万円でも安心して暮らすことができるんです。こうした政策を訴えるのは、結局、「格差がいけない」という言葉の「意味」を考えるからなんです。 新古典派経済学では失業者の労働の価値はゼロです。宇沢先生はそこにメスを入れ、「なぜその人は失業したのか、その意味を考えなさい」と問いました。そこに宇沢経済学の本質があると思う。 格差がダメだというとき、では、なぜダメなのか、その意味を考えないと。格差は必ず発生しますよ。結局、受け入れられる格差とダメな格差の線引きが重要。「サービスにアクセスできない人たちは生きていけない」、そんな人たちを生む格差がダメな格差の本質です。だからこそ、ベーシック・サービスを提唱しているのです』、「「サービスにアクセスできない人たちは生きていけない」、そんな人たちを生む格差がダメな格差の本質です。だからこそ、ベーシック・サービスを提唱しているのです」、同感である。 
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東京オリンピック(五輪)(その19)(「国民の命が"賭け"の対象に」もし五輪中に感染爆発が起きれば日本は壊滅する 政府の「身勝手な決定」の巨大リスク、「天皇陛下 五輪で感染拡大懸念」 歴史的なメッセージはなぜ出されたのか?、《仏メディア痛烈批判》「日本人の気持ちを想像すべき」各国が東京オリンピック開催に反対する本当の理由 ヨーロッパのオリンピック報道、日本を自滅させる「東京五輪が無観客では示しがつかない」という自意識過剰) [国内政治]

東京オリンピック(五輪)については、6月18日に取上げた。開会が迫った今日は、(その19)(「国民の命が"賭け"の対象に」もし五輪中に感染爆発が起きれば日本は壊滅する 政府の「身勝手な決定」の巨大リスク、「天皇陛下 五輪で感染拡大懸念」 歴史的なメッセージはなぜ出されたのか?、《仏メディア痛烈批判》「日本人の気持ちを想像すべき」各国が東京オリンピック開催に反対する本当の理由 ヨーロッパのオリンピック報道、日本を自滅させる「東京五輪が無観客では示しがつかない」という自意識過剰)である。

先ずは、6月23日付けPRESIDENT Onlineが掲載した経済ジャーナリストの磯山 友幸氏による「「国民の命が"賭け"の対象に」もし五輪中に感染爆発が起きれば日本は壊滅する 政府の「身勝手な決定」の巨大リスク」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/47221
・『83%が「感染が拡大する不安を感じる」  案の定、東京オリンピックの「有観客開催」が決まった。6月21日に開いた組織委員会と政府、東京都、IOC(国際オリンピック委員会)、IPC(国際パラリンピック委員会)の「5者会談」で、会場の収容定員の50%以内で、1万人を上限とすることを原則に観客を入れて開催することを決めた。 新型コロナウイルス感染者の再拡大が懸念される中で、前日の6月20日をもって沖縄を除く9都道府県の緊急事態宣言を解除。さらにそれに先立つ16日には、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置を解除した場合に、大型スポーツイベントの収容上限を1万人とすることを決めていた。その段階では「オリンピックとは関係ない」としていたが、結局、すべては「オリンピックありき」で落とし所が準備されていたことが明らかになった。 政府分科会の尾身茂会長らが出した「無観客が望ましい」とする提言や、世論調査などの声も無視された。6月19~20日に実施された朝日新聞の世論調査では、オリンピックを開催する場合、「観客なしで行うべきだ」が53%と、「観客数を制限して行うべきだ」の42%を上回っていた。開催することで、新型コロナの「感染が拡大する不安を感じますか」という問いには83%が「感じる」(「感じない」は14%)と答えていた。 菅義偉首相は「安全・安心な大会を実現する」と繰り返してきたが、毎日新聞の調査(6月19日実施)での「安全、安心な形で開催できると思うか」という問いには、64%が「できるとは思わない」と答え、「できると思う」の20%を大きく上回った』、政府はかたくなに開催の姿勢を堅持している。
・『エビデンスを示さずに有観客開催を決めた これほどまでに国民の間に不安が広がり、中止を求める声も一定数いる中で、なぜ「有観客開催」に踏み切ったのか。結局、最後まで菅首相はその「根拠」いわば「エビデンス」を示すことなく、ムードで押し切った。なぜ、中止にできないのか、無観客ではいけないのか、結局、国民に率直に語りかけることはしなかった。 「世論は気まぐれなので、オリンピックが始まれば、皆開催して良かったという意見に変わりますよ」と自民党のベテラン議員はつぶやく。「そこに菅さんは賭けたのでしょう」 「賭け」とはどういうことか。6月に入って新型コロナワクチンの接種が一気に加速した。遅々として進まなかった自治体任せをやめ、自衛隊を使った大規模接種だけでなく職域接種にも乗り出した』、「世論は気まぐれなので、オリンピックが始まれば、皆開催して良かったという意見に変わりますよ」との壮大な「賭け」が行われているようだ。政治が「賭け」に走るようでは世も末だ。
・『「ゲームチェンジャー」としてのワクチン  6月18日現在、医療従事者で2回目の接種を終えた人は432万人。1回目を終えた人は549万人に達した。当初医療従事者は480万人とみられていたから、ほぼ接種は完了しつつあるということだろう。医療従事者を除く高齢者などの接種も、1回目を終えた人は6月20日時点で1694万人に達した。人口に占める1回目の接種割合は両者を合わせると17.6%に達している。オリンピック開催までには接種率は大幅に上昇することが期待できる。 ワクチン接種が進めば、感染者数はもとより、重症化する人の数が大幅に減少するとみられている。仮に多少、新規感染者が増えたとしても、重症患者が減れば医療機関の病床占有率は上がらず、医療の逼迫は避けられる。再び緊急事態宣言を出す事態に陥ることを回避できるわけだ。菅首相が口にするようにワクチンが「ゲームチェンジャー」になるとみているのだ。 実際、ワクチン接種が進んだことで、悪化していた菅内閣への支持率も底打ちの気配が出ている。前述の朝日新聞の調査では、「ワクチン接種に関する政府の取り組み」の評価について、「大いに評価する」とした人は6%と1カ月前の5%とほぼ変わらなかったが、「ある程度評価する」とした人は42%から54%に増加。「あまり評価しない」とした人は39%から30%に、「まったく評価しない」とした人は13%から8%に減少した。この傾向は他の世論調査にも共通しており、まさに負け試合を挽回させる「ゲームチェンジャー」の役割を果たしている』、しかし、「ワクチン接種」については、早くも供給量の天井にぶつかり、混乱を招いている。
・『新規感染者数に増加の兆しが出てきた  しかし、「無観客」に比べて「有観客」で開催した場合の感染リスクが高くなることは自明だ。組織員会は観客に会場に来て観戦だけして帰路飲食などをしないように求める「直行直帰」を求めるガイドラインをまとめているが、スポンサーとの関係で会場での飲酒を解禁するという話が早速流れた。会場の1万人という上限も、大会関係者やスポンサーの招待者は含まれず別枠だという話のようだ。これでは専門家が懸念するように1日数万人から数十万人の人流増加が起きるのはほぼ確実な情勢だ。 東京では6月に入ると、緊急事態宣言が発出されているにもかかわらず人流の増加が顕著になった。その「結果」が感染者数にも表れ始めている。6月12日の土曜日、都内で確認された新規感染者は467人と前の週の土曜日に比べて31人増加した。新規感染者数が前週の同じ曜日を上回ったのは30日ぶりのことだった。その後、前週の同じ曜日の感染者数を上回る日が出始め、16日からは3日連続、20日からも連続で上回る日が続いた。明らかに新規感染者数の減少傾向にストップがかかり、増加の兆しが出てきた、そんな時に緊急事態宣言の解除と、オリンピックの有観客開催を決めたのである』、「東京」の「緊急事態宣言」は8月22日まで延長された。
・『なし崩しで有観客開催に突き進むとみられる  多くの専門家が感染の再爆発を懸念する。この傾向が続くと、7月23日のオリンピック開会式の頃には1日あたりの新規感染者が1000人を再度突破するという専門家の試算も出ている。5者協議では、7月11日までの予定であるまん延防止等重点措置が12日以降も適用されたり、再度、緊急事態宣言が出された場合には、「無観客も含めた対応を基本とする」との方針も確認された。 逆に言えば、11日で重点措置さえ外してしまえば、有観客開催は止まらないということだ。措置を継続するか宣言を再発出するかどうかは、「新規感染者が1000人を超えた場合」といった明確な数値ではなく、政治的な判断の余地が残る。 つまり、なし崩しで有観客での開催に突き進むとみていて間違いないだろう。11日で重点措置が解除されれば、飲食店などの営業時間も一気に延びる。オリンピックは開催していて時短要請や酒類提供の規制を求めるのは無理がある。飲食店の我慢も限界に達している』、現在行われている5者協議では、「東京」の「緊急事態宣言」「延長」により、1都3県開催分では「無観客」となった。
・『最悪のシナリオは開会式直前の感染爆発  最悪のシナリオは、開会式の直前である7月20日あたりから感染爆発が深刻になるケースだ。政府も組織委員会もブレーキを踏むのに躊躇し、そのまま突き進まざるを得ないだろう。大会期間中にまん延防止等重点措置を再度出したとしても、飲食店への規制は難しく、要請したとしても受け入れる店がどれだけ出るか分からない。政府の「身勝手な決定の結果」だという認識が広がれば、誰も政府の言うことを聞かなくなる。 ここで、ワクチンがどの程度きくかがポイントになる。菅首相の「賭け」通り、重傷者が増えなければ、人流が増加しても感染者が増えても、医療は逼迫しない。だが、今後感染拡大が懸念される変異型インド株(デルタ株)にワクチンがどの程度有効かは未知数だ。 イギリスではワクチン接種が進んでいるにもかかわらず、6月に入ってデルタ株が急拡大、ロックダウンの延長を決めた。人口の6割が1回目のワクチン接種を終えているにもかかわらず、感染拡大しているのだ。最悪の場合、オリンピック関連の人流増加によってデルタ株が日本でも広がり、感染拡大に歯止めがかからなくなる可能性がある。さらにオリンピック期間中ということで緊急事態宣言の発出が遅れれば、経済活動のブレーキを踏むのも遅れることになりかねない』、なるほど。
・『ロックダウンになれば、日本経済は壊滅的なマイナス成長に直面  その代償はこれまでの緊急事態宣言時よりも大きくなるだろう。感染拡大を止めるために、日本でもロックダウンすることになりかねない。そうなれば、経済への影響は深刻だ。日本のGDP成長率は2021年1~3月期に再びマイナスに転落した。米国などがプラス成長を続けているのと対照的で、ワクチン接種の遅れが影を落とした。3回目の緊急事態宣言の影響で、4~6月期もマイナスが続く可能性がある。 オリンピックでプラス成長が期待されたものの、海外からの観客がゼロになったうえ、国内も1万人上限となったことで、経済効果は予想を大きく下回り、限定的になる。むしろその後にロックダウンがやってきたとしたら、日本経済は壊滅的なマイナス成長に直面することになるだろう。そうなれば、非正規雇用を中心に人員整理が本格化するだけではなく、航空業界や旅行業界、百貨店、外食産業といった企業で、経営に行き詰まるところが出てくることになりかねない。 菅首相の「賭け」が当たれば、オリンピックもパラリンピックも無事終了。ワクチンの効果から感染者が減少。水際対策の徹底もありデルタ株は日本では流行せずに済む。菅内閣の支持率も好転し、秋に行われる総選挙でも自民党が勝利、菅内閣が継続する。首相はそんなシナリオを描いているのだろう。果たして、これから3カ月、日本はどうなっていくのか。日本の将来を大きく左右する分岐点になりそうだ』、「菅首相の「賭け」」はどうも外れに終わる可能性が高くなったようだ。

次に、6月25日付けAERAdot「「天皇陛下、五輪で感染拡大懸念」 歴史的なメッセージはなぜ出されたのか?」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dot/2021062500013.html?page=1
・『東京オリンピック・パラリンピック開催まで1カ月を切った。このタイミングで宮内庁長官は、なぜメッセージを出したのか。 「オリンピックをめぐる情勢につきまして、天皇陛下は現下の新型コロナウイルス感染症の感染状況を、大変ご心配されておられます」 6月24日、宮内庁の西村泰彦長官は定例会見で、約1カ月後に迫った東京五輪について、天皇陛下が新型コロナの感染拡大を心配していることを明らかにした。さらに、こうも続けた。 「国民の間に不安の声がある中で、ご自身が名誉総裁をお務めになるオリンピック・パラリンピックの開催が感染拡大につながらないか、ご懸念されているご心配であると拝察しています」 その場にいた記者は、長官に対して慎重に、こう念押しをしている。 「これは陛下のお気持ちと受け止めて間違いないのか」 長官は、「陛下から直接そういうお言葉を聞いたことない。そこは誤解ないように」、と釘を刺しつつも、「陛下はそうお考えではないかと、私は思っています」とはっきりと言い切っているのだ。拝察という言葉を使いながらも、お気持ちを代弁していると明言したに等しい発言だった。 「実質的な、令和の天皇のメッセージであると私は感じました」 そう話すのは、皇室制度に詳しい小田部雄次・静岡福祉大学名誉教授だ。 「令和皇室で、政治的判断に関わる主体的な言葉が国民に伝わったのは、初めてといっていい。陛下は国民にメッセージを発するタイミングを慎重に見極めていたのだと思います」 宮内庁は、内閣総理大臣の所轄の機関で、内閣府の外局組織という位置づけにある。組織として、五輪開催のかじ取りをする政府と対立する姿勢は示しづらいのが実情だ。 しかし、開催を1カ月後にひかえたいま、コロナ禍での五輪に対する国民の心は揺れ、「五輪分断」ともいえる状況になりつつある。 五輪開催反対を唱えるデモは、日本オリンピック委員会(JOC)のビルの前や都庁前などで、連日続いている。かといえば、すぐそばで賛成派のデモがおこなれわれていたという報道も。弁護士の宇都宮健児氏を発起人とする五輪開催中止の署名は42万人を超え、ツイッター上でも五輪に反対するツイートは、10万を越えたと報じられた』、加藤官房長官は「宮内庁長官自身の考え方」と切り捨てたが、天皇が自分の考えを述べられないことをいいことに、言いたい放題だ。
・『東京都医師会の尾崎治夫会長は有観客開催に突き進む状況に、「理解不可能」とコメントを出しているし、医療従事者からも疑問の声が噴出している。仏国のルモンド紙は、東京のデモなどを紹介して、「日本人の3分の2が延期か中止を求めている」「五輪は日本列島を分断している」と書き立てる始末だ。 そんな中、各競技の代表選考会は着々と進み、準備をしてきたアスリートを応援したいという気持ちが国民の中にあるのも事実だ。 皇室を長く見てきた人物は、現状をこう分析する。 「政府と民意が衝突し、国論は割れたままだ。中立であるべき天皇が、東京五輪の名誉総裁として、開催宣言に立たされることになる」 さらに皇族方は、競技会場で観戦することになる。天皇が開催を宣言し、皇族が集まった五輪で、多数の国民やアスリートらに感染が広がったとなれば、関わった皇室も無傷ではすまないだろう。 「ましてや両陛下は、政府の分科会の尾身茂会長から新型コロナの感染状況などについて2度にわたり、じっくりと説明を受けています。学者としての顔を持つ陛下は、医学者たちの見解は重視なさると思います。また諸外国との交流もあるので、海外が五輪に寄せる懸念も耳に入ってきているでしょう。天皇陛下は、どれほど危機的な状況であるかを、よくご存じのはずです。ご自身の懸念を表明しておく責任も感じたと思います」(前出の小田部さん) このような背景があっての、宮内庁長官の会見での発言。表向きは長官が天皇陛下のお考えを「拝察」という形をとってはいるが、陛下への事前の報告と許可を得ないまま宮内庁長官が、勝手に発言することはない。前出の人物は、皇室は五輪に対するスタンスを明確にしたかったのでは、と話す。 「長官と陛下の間では、どのようにメッセージを発するかについて、やり取りはあったはずです。宮内庁としては五輪がはじまる前に、『皇室は、五輪と距離をおいている』というメッセージを、明確に発信したのでしょう」) 小田部さんも、天皇陛下は自分の本意を歴史に残しておきたかったのだろう、と感じた。 「政治への影響を及ぼさなよう言葉を選びながらも、安心して開催される確信もないというギリギリの言葉を選んだのだろうと思います。ある意味、責任逃れとも受け取られかねないメッセージでしたが、中止へのメッセージは政治への介入となる。一方で、五輪で感染が爆発的な感染が生じるかもしれない、という懸念もある。天皇としての考えを記録に、歴史に残したかったのだろうと思います」 コロナ禍で、令和の皇室はリモート公務が主体になった。国民にとって皇室は、どこか遠い存在になりつつあった。しかし、この長官を通じたメッセージは、令和の皇室の輪郭を浮かび上がらせたようにも思える』、政府側は「長官」の言葉に秘められた「天皇」の気持ちを忖度する気はさらさらないようだ。

第三に、7月3日付けPresident Onlineが転載した文春オンライン「《仏メディア痛烈批判》「日本人の気持ちを想像すべき」各国が東京オリンピック開催に反対する本当の理由 ヨーロッパのオリンピック報道」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/47221
・『2021年6月17日、菅義偉首相は東京オリンピック・パラリンピックの開催を公式に表明した。しかしウガンダの代表団から新型コロナウイルスの陽性者が出たこともあり、大会開催によって爆発的にウイルスが感染拡大するのではないかと不安視する声もある。6月18日には、尾身会長ら日本の感染症の専門家が「無観客での開催が望ましい」と提言してもいる。 “開催宣言”の直前、同月13日にはイギリスで開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)で、菅首相は「全首脳から大変力強い支持をいただいた。改めて主催国の総理大臣として心強く思う」などと記者団に語っている。各国からの支持を追い風にして、開催を断行する形となったわけだ。 しかし、果たして各国の一般市民もオリンピック開催を支持しているのだろうか。アメリカのメディア「The Washington Post」が、IOCのバッハ会長を「ぼったくり男爵」と呼び話題を呼んだことは記憶に新しいが、各国の“本音”はどこにあるにのだろうか。今回はヨーロッパ諸国のメディアが報じた記事を中心に探ってみた』、興味深そうだ。
・『「開催は本当に正当化されるか?」と問う、英メディア  たとえば、イギリスのメディア「The Guardian」は、4月12日に公開された社説で、東京オリンピックを中止することによるアスリートと経済への影響の甚大さに理解を示した一方、《(人々の)生命を危機に晒す今大会の開催は本当に正当化されるかを日本政府とI O Cは問わねばならない》と批判を展開している。 《オリンピック開催まで100日を切る中、大会を「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として実現する」という(菅首相の)約束は、楽観的どころかまったく間違っているようにも見える》 《オリンピック大会直前に、施設の建設が間に合わない、チケットの売れ行きが不調であるなどの問題が発生するのはお決まりだが、感染症が蔓延する中で開催を予定している今回の大会はレベルが違う》 《大会を開催するのであれば、感染拡大を食い止めるためのルールを確実に施行する必要がある》』、「大会を開催するのであれば、感染拡大を食い止めるためのルールを確実に施行する必要がある」、正論だ。
・『英メディア「日本政府は日本人の声に耳を傾けない」  同紙は5月24日に「オリンピック開催の中止を求めている数多くの日本人の声に、日本政府は耳を傾けないだろう」と題したオピニオン記事も掲載した。《他のG7諸国に比べると日本の新型コロナウイルス感染状況は悲惨ではない》にも関わらず、《日本国民がこの「成果」を政治家の手腕の結果と結びつけていない》と指摘。その原因として、日本政府の国民に対する不透明なコミュニケーションと、大きな危機に直面した時に責任を負う気概があるリーダーの不在を挙げている。 そしてこの2つの問題点が、オリパラ開催を強行しようとする政府と、感染拡大を懸念する日本国民の溝を生んでいると分析しているのだ』、「日本政府の国民に対する不透明なコミュニケーションと、大きな危機に直面した時に責任を負う気概があるリーダーの不在を挙げている」、極めて的確な分析だ。
・『ドイツ語圏への声明「日本に来ないでください」  ドイツの大衆メディア「Frankfurter Rundschau」は4月19日、日本国内で開催に反対する人々がいると紹介。4月2日に社会哲学者の三島憲一氏や政治学者の三浦まり氏などの日本の知識人20名が、ドイツ語圏の人々に対し、関係する各メディアに「日本に来ないでください」という声明を送付したことを取り上げている。 この声明には《スポーツで実績を積んできた国の1つが東京オリンピックへの参加を辞退すれば、各国に連鎖反応を引き起こすことができ、結果的に今回のオリンピックは中止せざるを得なくなるだろう》と記載されているという。 日本国外に大会へのボイコットを呼びかけることでオリンピックの開催を中止させようとする動きは、IOCや日本政府にとってはプレッシャーになるのではないかと分析されてもいた』、「日本の知識人20名が・・・「日本に来ないでください」という声明を送付」、初めて知った。
・『「中止は絶対にない」スペインメディアが断言  一方で、スペインのメディア「El Mundo」は、4月14日の記事で、《オリンピックが中止されることは絶対にないだろう》と断言。その理由については《聖火リレーは既に始まり、大会期間中に使用される建物は建設済みだ。東京オリンピックの210億ユーロ分の予算は既に確定され、テレビ局やスポンサーはすでにキャンペーンを開始している》からだと述べている。 しかしながら、こんな予測も付け加えている。 《大会が中止になるのは、日本政府が感染症の新たな「波」に直面してパニックを起こした場合のみだろう》 また、G7諸国と比較すると日本の新型コロナウイルス感染状況は酷くないものの、ワクチン接種速度が非常に遅い日本の現状を踏まえ、東京オリンピックの開催能力を疑問視したものもある』、なるほど。 
・『「ワクチン普及に大きな遅れを取った理由」とは  フランスのメディア「Le Figaro」は、世界第3位の経済大国であるにも関わらず、日本が他のG7およびOECD諸国と比較してワクチン普及に大きな遅れを取った理由を《(日本国内で根強い)ワクチンへの疑念や(承認に至るまでの)官僚的なシステムが絡んでいる》のではないかという専門家の声を紹介している。 このようにヨーロッパメディアには、オリパラ開催に否定的な内容が多かった。しかしあくまでもワクチン接種が進まない日本の現状や、「オリンピックを断行しようとする日本政府やIOC」と「それに反対する日本国民や公衆衛生の専門家」の“バトル”を客観的に報じるところで留まっていた。 しかしいよいよオリパラ開催が迫ってきた6月23日、大会開催に強烈な“否”を突き付ける記事が報じられた』、どういうことなのだろう。
・『「オリンピックは道徳的なスキャンダル」と痛烈批判  報じたのはフランスのメディア「Libération」。《私たちの声明は、IOCの暴走を止めることを目的としている》と、痛烈な批判を展開しているのだ。 一部を要約して、本記事をご紹介する。 〈《手遅れになる前に、この大会の中止を求めている東京や日本の人々の声に耳を傾けなければならない。日本国民の6割から8割が大会の開催に反対し、大会の安全確保のために動員される医療関係者からも反対の声が上がっている。東京オリンピックは、日本の医療システムを弱体化させることになるからだ。 IOCは、恥ずかしげもなく、若くて健康的な世界中のオリンピック選手への優先的なワクチン接種を検討している。これは日本やフランスをはじめとした、大会参加国の道徳的なスキャンダルなのではないのだろうか。強い者を守ること、そして一般人の観客をスタジアムに入れることなく、広告収入を守るためにテレビ放映を行うことがオリンピック精神なのだろうか。公衆衛生や人命の価値は、コカ・コーラ社の広告の価値よりも低いのだろうか。東京オリンピックは、オリンピック精神とオリンピックの構造の「真実」を明らかにした。 東京大会の開催中止を求め、専門家やスポーツ選手らが世界各地で声を上げ始めている。80%の日本人が反対しても大会が中止にならないのであれば、世界中の連帯が必要だ。特に、フランスは次の夏季オリンピックの開催国として重要な役割を担っている。パリ大会が感染症の中で開催されたとしたら? 感染症が蔓延する中でオリンピックを迎える日本人の気持ちを想像すべきなのではないのだろうか。私たちは、IOCにオリンピックの開催に関して自由な権限を与えることを拒否する。 惨事を避けるためにも、世界的な感染症の流行の中で予定される東京オリンピック開催を再考すべきだろう》〉未決定事項が多い今大会に対する世界中のメディアの目は厳しい。2021年7月、コロナ禍のなかでの東京オリンピック・パラリンピック開催は、どのような結末を迎えるのだろうか』、次期開催国の「Libération」が「IOCの暴走」に対する「痛烈な批判」をしているのは、興味深い。

第四に、7月8日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「日本を自滅させる「東京五輪が無観客では示しがつかない」という自意識過剰」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/276137
・『東京五輪だけが「聖域」扱いされる違和感  「オリパラってやっぱりサイコー!」「パンケーキ首相、反対派の声に屈することなく開催してくれてありがとう!」 そんな「オリンピック大成功」からの解散総選挙で勝利、そして自民党総裁選も無投票再選…という菅義偉首相が描いていた「続投シナリオ」がここにきて狂ってしまった。 まず、東京都に「リバウンド」の兆しが見えてきた。報道によれば、4回目の緊急事態宣言が発出する方針だという。ただ、それ以上に菅政権にとって大打撃なのは、先週末の東京都議会議選で、自民党が事実上の「惨敗」をしてしまったことだろう。 負けた理由はさまざまあるが、東京五輪に結びつける声も少なくない。慌てふためいた政府は、これまで頑なに「有観客」にこだわってきたのに、急に国民に媚びるように「無観客」を匂わせ始めた。 この「平和の祭典」とやらは、中国共産党の記念式典や、北朝鮮の軍事パレードと同じ性格の、「政権の支持率アップを目指す政治イベント」に過ぎなかった、という事実をあらためて浮き彫りにした形だ。 という話をすると、「開催に向けて一致団結をしなくてはいけない大事の時に、おかしな言いがかりをつけるな!この反日左翼め」と激昂される方もいるかもしれない。 というのも、安倍晋三前首相の月刊誌『Hanada』での発言があったからだ。安倍氏は、東京五輪に反対しているのは、野党や朝日新聞など、「一部から反日的ではないかと批判されている人たち」であって、「極めて政治的な意図」だと指摘した。これに対して「よく言ってくれた!」と拍手喝采している方もかなりいらっしゃるのだ。 断っておくが、筆者には特に政治的なイデオロギーはない。しかし、「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」など各地で大規模イベントが中止に追い込まれている中で、東京五輪だけが「聖域」扱いされることには違和感しかない。 「アスリートは4年に一度に人生のすべてを懸けている」というが、アーティストも役者も人生のすべてを懸けてステージに臨んでいる。もっと言えば、五輪のために我慢を強いられている飲食業の人たちも、一世一代の夢を懸けて自分の店を経営しているのだ。 「五輪優遇」というと、それはIOCガー、経済的損失ガー、ともっともらしい言い訳を並べる人もいる。しかし、政府の成長戦略会議のメンバーでもあるデービッド・アトキンソン氏は、「朝日新聞」(6月22日)のインタビューで「五輪の経済効果や、中止した場合の損失が、1兆円だろうが5兆円だろうが、大した影響はありません」と述べている。たかだか1カ月弱のスポーツイベントで得られる経済効果など、日本のGDP全体の中で微々たるものだ。「五輪ができないと日本はおしまいだ」みたいな終末論が叫ばれる理由がわからない。 そのような「違和感」の中で特に筆者がモヤモヤしてしまうのは、「無観客だと世界に示しがつかない」というものだ』、「安倍晋三前首相」の「東京五輪に反対しているのは、野党や朝日新聞など、「一部から反日的ではないかと批判されている人たち」であって、「極めて政治的な意図」」、には根からの右派的主張に改めて驚かされた。
・『世界はそこまで五輪に興味がない  「示しがつかない」とはどういうことか。 世界ではワクチン接種が進んで、スポーツイベントなどは観客を入れてノーマスクで大盛り上がりをしている。にもかかわらず、オリパラで観客席がガランとしていたら、全世界に日本のコロナ対策が進んでいないということが発信されてしまう。これは「恥」なので、観客を入れろというのだ。 ただ、これはちょっと自意識過剰ではないか。日本人はやたらと「世界」という言葉を使って、外国人からどう見られるのかと気にするが、実はそこまで世界は五輪に関心がないからだ。自国開催の日本や周辺の韓国、中国くらいが大騒ぎをする「ローカルイベント」と言ってもいい。 一般社団法人中央調査社が2019年11~12月に、アメリカ・イギリス・フランス・中国・韓国・タイの各国で約1000名を対象にした調査を見てみよう。「東京2020」について知っていたのは、韓国(91.6%)、中国(80.6%)がダントツに多い。欧米ではフランスで69.2%、イギリスで64.6%とまずまずだが、テレビ中継のために灼熱の五輪になっている…はずのアメリカでもなんと55.6%程度、親日国タイにいたっては41.9%と半数にも満たない。 19年末といえば、まだコロナ禍も始まっていないので、日本のマスコミは「いよいよ今年はオリンピックイヤー!」などと盛り上がっていた。が、そういう報道を自国で目にした国は、やはり韓国(77.1%)、中国(66.4%)くらいで、フランス・イギリス・タイ・アメリカでは30~40%台にとどまっている。 なぜ報道されないのか、というとそこまで人々の興味がないからだ』、「観客席がガランとしていたら、全世界に日本のコロナ対策が進んでいないということが発信されてしまう。これは「恥」なので、観客を入れろというのだ」、あり得る話だ。
・『若者の五輪離れが欧米で進行、欧米主導のイベントなのになぜ?  前回のリオデジャネイロ五輪の際からアメリカでは、Z世代と呼ばわる若者を中心に「五輪離れ」が進行している。 「2016年の世論調査では、51%が五輪中継を熱心に見るつもりはないと答え、開催国を知っている回答者も半分以下だった」(ニューズウィーク5月30日) こういった傾向は開催国であれ変わらない。2012年のロンドン五輪の際、グローバル調査を行うイプソスが世界24カ国で「五輪に興味があるか」と調査をしたところ、開催国のイギリスでは50%以下だった。ちなみに、ここでも中国(82%)、韓国(78%)は関心が高かった。 IOCなどを見てもわかるように、欧米主導で進めているはずのオリンピック運動で、なぜこんな矛盾した動きが起きてしまうのか。その謎を考える上で、ひとつの参考になるのが、劇作家・演出家の鴻上尚史氏の著書『不安を楽しめ!~ドン・キホーテのピアス16~』(扶桑社、2013年)だ。 本の中では、鴻上氏が司会をしているNHK BS1の『cool japan』という番組で、アメリカ、ヨーロッパ、オセアニア、南米、アジアなどさまざまな地域からきた8人の外国人に「あなたの国で五輪はどれくらい話題になっている?」と質問をした際の反応が紹介されていた。注目すべきはそこでほぼ全員が、「たいして話題にならない」「ニュースで見るくらいで、メダルを取ってもそんなに大騒ぎにならない」と回答した点だ。 メダルの数が気になると回答したのはアジアから来た人だけで、ほぼ全員が口を揃えてこのように述べたという。 「だって、知らない選手を見て面白い?サッカーだったら、応援している選手がいて、よく知っていて、だから興奮するじゃないか。でも、オリンピックって、どんなに高く跳んだり、遠くに投げても、知らない人だからさ。あんまり盛り上がらないんだよね」(同書) 日本だったら、「人生のすべてを懸けているアスリートに失礼だ!謝罪しろ!」などと集中砲火を浴びそうな発言だが、海外では極めてノーマルな考え方のようだ。世界では、スポーツとはあくまで「個人」が織りなすエンターテインメントという位置付けなのだ。 「個人」のパフォーマンスに熱狂して、「個人」の努力に感動して、「個人」の成功が尊敬される。もちろん、団体のスポーツの場合はチームワークが称賛されることもあるが、それ以前にアスリート個人にフォーカスが当たる。 だから、サッカーやアメフトのように自国で人気の高いスター選手が出場しないオリンピックは、「へえ、やってたんだ」くらいのシラけた反応になってしまう』、「世界では、スポーツとはあくまで「個人」が織りなすエンターテインメントという位置付けなのだ」、なるほど。
・『スポーツに「国家・民族」を重ねてしまうアジア人 菅総理の発言にもその傾向が色濃く…  しかし、日本をはじめ、中国、韓国などの一部アジア諸国や、ロシア、北朝鮮などはちょっと違って、スポーツに「国家・民族」を重ねるカルチャーが強い。五輪前には名前を知らないアスリートでも、観戦したことのないマイナーな競技でも、メダルを取ればまるで戦争に勝ったかのように、国をあげて大騒ぎをしたり、ロシアのように、メダルを取るために国家ぐるみでアスリートにドーピングをさせる。「五輪は選手間の競争であり、国家間の競争ではない」と定めた五輪憲章をガン無視して、「ガンバレ、日本!」などとメダルの数で勝った負けたと大騒ぎをするのだ。 こういう国では、アスリート個人の手柄を、国家や民族の手柄にすり替えて、国家の文化水準や団結力、民族的優劣へと強引に飛躍して結びつける傾向が強い。 「日本人はそんなことはしてないぞ!」というお叱りが飛んできそうだ。 確かに、若い世代でそういう人は少数派かもしれないが、ある世代、特に前回、東京五輪を経験した世代の多くはスポーツに「国家・民族」を重ねてしまう。その代表が、僕らのリーダー・ガースーだ。) 6日夜、日本代表の壮行会にビデオメッセージを寄せた菅首相は「がんばれ、ニッポン!」とガッツポーズを見せて、前回1964年の東京五輪で、「東洋の魔女」と呼ばれた日本の女子バレーボールチームが金メダルを獲得したことに言及して、このように述べた。 「日本人がメダルを取るたびに、日本は世界と戦えるんだということを強く感じた」 先ほど紹介したように、世界の多くの国は、自国の選手がメダルを取っても「へえ、知らない選手だけど、頑張っているんだな」というリアクションのようだ。頑張って、良いパフォーマンスをしたのは、あくまでアスリートなので、個人へ尊敬の念が生まれる。 しかし、16歳だった菅少年はそう思わなかった。女子バレー選手個人の手柄を、「日本」と「日本人」の手柄にすり替えて、「日本も世界と戦える」とナショナリズムへ結びつけてしまっているのだ。 というと、何やら菅首相を批判しているように感じるかもしれないが、そういうつもりは毛頭ない。菅首相だけではなく、当時の日本のほとんどの子どもたちがそう思ったはずだ。なぜかというと、彼らの親も政治やマスコミによって、「スポーツ=日本人の優秀さを示すもの」という洗脳を受けてきたからだ』、「「スポーツ=日本人の優秀さを示すもの」という洗脳」、嫌悪感を持つが、そうした人が相当いることも事実だ。
・『「わが国民の心臓が世界中で一番強い」から金メダルが獲れた!?  例えば、菅首相の父、和三郎氏が18歳くらいの頃、「読売新聞」にはこんな見出しが大きく掲載されている。 「諸君喜べ 日本人の心臓は強い強い、世界一 オリムピツクに勝つも道理 統計が語る新事実」(読売新聞、1936年10月30日) 記事では、当時の「国民体力考査委員会」が日本人の死亡原因を調査したところ、心臓と癌が原因で亡くなった人が1万人につき7人以下で、フランスの15.3人、アメリカ、イギリス、イタリアの8人などと比べても少ないことを紹介している。それをこの年にあったベルリンオリンピックでアジアの国として初めてマラソンで金メダルを獲得したことや、競泳の前畑秀子などが4つの金メダルを獲得したことに結びつけて、こう大喜びしているのだ。 「わかり易い話が過ぐるベルリンオリンピツク大会で欧米の選手に比べてはるかに体格弱小のわが選手が堂々水上およびマラソンの覇権を握つて全世界を驚嘆させたが、これは実にわが国民の心臓が世界中で一番強いためであることがこの調査によつて立証されたのである」(同上) メダルを獲得したのはアスリート個人の能力・努力によるものなのに、それをなぜか「日本人の優位性」へと結びつけてしまっているのだ。ちなみに、この時、マラソンで金メダルを取ったのは、孫基禎。日本オリンピックミュージアムでは「日本人メダリスト」として紹介されているが、韓国人だ。 現代の日本人からすれば、ドン引きするような話だが、ここまで調子に乗ってしまったのは外国人からヨイショされたことも大きい。もっともベタ褒めしてくれたのがナチスドイツだ。 ベルリン五輪後、日本人選手の活躍に感激したナチスの法学博士が、わざわざ来日して日本の強さの秘密を研究するとして、こんなリップサービスをした。 「オリムピツクにおける日本選手の態度の紳士的なのにはただ感激している。大和魂とナチス魂とは何処か共通している所がある」(読売新聞、1936年9月17日) こういう「洗脳」を80年以上前から繰り返し受けてきた日本人にとって、五輪とはもはやスポーツイベントというより、国家の威信を世界に示すイベント、つまりは「戦争」に近いものとなっている。 「戦争」は基本、国民は全員参加で、最前線で戦う兵士のため、銃後の人間は「贅沢は敵」「欲しがりません勝つまでは」にならなくてはいけない。メダルという「戦果」を得るために命を懸けるアスリートのためなら、飲食店が潰れようが、バイトやパートの方たちが「経済死」しようがお構いなしというのも、五輪が国家の命運をかけた「戦争」だからなのだ。 戦争だから、一度始めてしまったら、もう誰にも止められない。大平洋戦争のように、いきつくところまでいくしかない。つまり、五輪はやめる・やめないという段階はとっくに過ぎて、一億総玉砕という段階なのだ。 ここまできたら、我々も腹をくくって、ナチスも認めた大和魂で、世界に日本人のすごさを見せつけるしかない。狂っていると思う方もいるだろう。筆者もそう思うが、これが「日本」なのだと割り切っていくしかないのではないか』、「こういう「洗脳」を80年以上前から繰り返し受けてきた日本人にとって、五輪とはもはやスポーツイベントというより、国家の威信を世界に示すイベント、つまりは「戦争」に近いものとなっている」、「これが「日本」なのだと割り切っていくしかないのではないか」、私はやはり「割り切」れず、腹を立て続けることだろう。
タグ:東京オリンピック (五輪) (その19)(「国民の命が"賭け"の対象に」もし五輪中に感染爆発が起きれば日本は壊滅する 政府の「身勝手な決定」の巨大リスク、「天皇陛下 五輪で感染拡大懸念」 歴史的なメッセージはなぜ出されたのか?、《仏メディア痛烈批判》「日本人の気持ちを想像すべき」各国が東京オリンピック開催に反対する本当の理由 ヨーロッパのオリンピック報道、日本を自滅させる「東京五輪が無観客では示しがつかない」という自意識過剰) PRESIDENT ONLINE 磯山 友幸 「「国民の命が"賭け"の対象に」もし五輪中に感染爆発が起きれば日本は壊滅する 政府の「身勝手な決定」の巨大リスク」 政府はかたくなに開催の姿勢を堅持している。 「世論は気まぐれなので、オリンピックが始まれば、皆開催して良かったという意見に変わりますよ」との壮大な「賭け」が行われているようだ。政治が「賭け」に走るようでは世も末だ。 しかし、「ワクチン接種」については、早くも供給量の天井にぶつかり、混乱を招いている。 「東京」の「緊急事態宣言」は8月22日まで延長された。 現在行われている5者協議では、「東京」の「緊急事態宣言」「延長」により、東京都開催分では「無観客」となった 「菅首相の「賭け」」はどうも外れに終わる可能性が高くなったようだ。 AERAdot 「天皇陛下、五輪で感染拡大懸念」 歴史的なメッセージはなぜ出されたのか?」 加藤官房長官は「宮内庁長官自身の考え方」と切り捨てたが、天皇が自分の考えを述べられないことをいいことに、言いたい放題だ。 政府側は「長官」の言葉に秘められた「天皇」の気持ちを忖度する気はさらさらないようだ。 文春オンライン 「《仏メディア痛烈批判》「日本人の気持ちを想像すべき」各国が東京オリンピック開催に反対する本当の理由 ヨーロッパのオリンピック報道」 「大会を開催するのであれば、感染拡大を食い止めるためのルールを確実に施行する必要がある」、正論だ。 「日本政府の国民に対する不透明なコミュニケーションと、大きな危機に直面した時に責任を負う気概があるリーダーの不在を挙げている」、極めて的確な分析だ。 「日本の知識人20名が・・・「日本に来ないでください」という声明を送付」、初めて知った。 「オリンピックは道徳的なスキャンダル」と痛烈批判 次期開催国の「Libération」が「IOCの暴走」に対する「痛烈な批判」をしているのは、興味深い。 ダイヤモンド・オンライン 窪田順生 「日本を自滅させる「東京五輪が無観客では示しがつかない」という自意識過剰」 「安倍晋三前首相」の「東京五輪に反対しているのは、野党や朝日新聞など、「一部から反日的ではないかと批判されている人たち」であって、「極めて政治的な意図」」、には根からの右派的主張に改めて驚かされた。 「観客席がガランとしていたら、全世界に日本のコロナ対策が進んでいないということが発信されてしまう。これは「恥」なので、観客を入れろというのだ」、あり得る話だ。 「世界では、スポーツとはあくまで「個人」が織りなすエンターテインメントという位置付けなのだ」、なるほど 「「スポーツ=日本人の優秀さを示すもの」という洗脳」、嫌悪感を持つが、そうした人が相当いることも事実だ。 「こういう「洗脳」を80年以上前から繰り返し受けてきた日本人にとって、五輪とはもはやスポーツイベントというより、国家の威信を世界に示すイベント、つまりは「戦争」に近いものとなっている」、「これが「日本」なのだと割り切っていくしかないのではないか」、私はやはり「割り切」れず、腹を立て続けることだろう。
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携帯・スマホ(その6)(転職社員がデータ漏洩… ソフトバンクが楽天モバイル提訴で「10億円請求」の不可解、楽天グループ<上>中国大手テンセントの出資が政治問題化、楽天グループ<下>携帯電話基地局の先行投資で大赤字) [産業動向]

携帯・スマホについては、5月23日に取上げた。今日は、(その6)(転職社員がデータ漏洩… ソフトバンクが楽天モバイル提訴で「10億円請求」の不可解、楽天グループ<上>中国大手テンセントの出資が政治問題化、楽天グループ<下>携帯電話基地局の先行投資で大赤字)である。

先ずは、6月1日付けデイリー新潮「転職社員がデータ漏洩… ソフトバンクが楽天モバイル提訴で「10億円請求」の不可解」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2021/06011103/?all=1&page=1
・『ソフトバンク(以下=SB)が産声を上げたのは1981年9月、博多駅を南に6キロ下った雑餉隈(ざっしょのくま)というレトロな商店街の一角だったという。先月の決算発表会で、当時の事務所近くの踏み切りの写真を紹介しながら、孫正義会長(63)はしみじみと原風景を振り返ってみせた。 以来40年──。目下、孫会長率いるSBは絶頂期を迎えていると言って差し支えなかろう。2021年3月期の純利益は4兆9900億円に達し、これは3年前にトヨタ自動車が記録した2兆4939億円を抜き、国内企業のレコードである。孫会長自身、もはや立志伝中の人物というレベルを超えた成功者となり、発言力も日本の政治家を遥かに凌いでいる。5月22日にTwitterで「今、国民の8割以上が延期か中止を希望しているオリンピック。誰が何の権利で強行するのだろうか」と呟いたことが、各紙の紙面を賑わせたことからも明らかだ。 だが、古来より「好事魔多し」という。 「順風満帆に見えるSBにアキレス腱があるとすれば、ライバル企業、楽天モバイルとの裁判ではないでしょうか」 と話すのは、大手紙の警視庁担当記者である。 「5月6日、SBが楽天モバイルを相手に、10億円の損害賠償の訴訟を起こしたことがニュースになりました。SBから楽天モバイルに転職し逮捕された40代の技術者による、データの不正持ち出し事件の関連です。SB側は1000億円の損害賠償請求権があると主張し、そのうちの10億円分の支払いを求めています。しかし実のところ、本当にそんな巨額の被害があったのかというと、少しハッタリが過ぎるというのが、現在の警視庁当局の見立てなのです」 簡単に事件を振り返っておくと、2019年12月いっぱいでSBを退職した携帯電話基地局設置の技術者が、楽天モバイルに入社したのは翌年1月。彼は退職する前、業務で使用していた複数のデータを自分の私的なGメールに送付し、退職後にもSBのサーバーにアクセスしていた。 これに気づいたSBは調査を行い警視庁に告訴。その結果、2020年8月、楽天モバイルなどに家宅捜索が行われ、技術者のPCが押収された。驚いた楽天モバイルは、社内サーバーに残っていた技術者のファイル数千点を、警視庁とSBに開示したという。その中には確かに、彼がSBから持ち出したNTTの光ファイバーの位置データや電柱情報が含まれていたのである。警視庁担当記者が続ける。 「しかし困ったことに、そのデータには特別の価値がないことがわかってきました。具体的に言うと、光ファイバーの位置情報というのは、携帯電話会社であればNTTから無料で提供を受けることができるデータ。もう一つの電柱位置に関しても、NTT東日本分が100万円、西日本分が100万円、2つを合わせても200万円程度の価値に過ぎません。また、どちらのデータについても、すでに楽天モバイルが正規ルートで入手していたため、特に組織として必要としていなかったことが判明したのです」 そもそも楽天モバイルの直属の上司は、この技術者がSBのデータを持っていたことも寝耳に水。当初は組織ぐるみの悪質な産業スパイ事件ではないかと意気込んでいた、SBや警視庁の目論見は大きく外れてしまったのだという』、「SB側は1000億円の損害賠償請求権があると主張し、そのうちの10億円分の支払いを求めています。しかし実のところ、本当にそんな巨額の被害があったのかというと、少しハッタリが過ぎるというのが、現在の警視庁当局の見立て」、「光ファイバーの位置情報というのは、携帯電話会社であればNTTから無料で提供を受けることができるデータ。もう一つの電柱位置に関しても、NTT東日本分が100万円、西日本分が100万円、2つを合わせても200万円程度の価値に過ぎません。また、どちらのデータについても、すでに楽天モバイルが正規ルートで入手していたため、特に組織として必要としていなかったことが判明」、とすれば、「SB側」の提訴の狙いは何なのだろう。
・『役に立たないデータ  見込み違いだったことは、被疑者の逮捕後の取り扱いからも透けて見える。 問題の技術者は、家宅捜索から5カ月後の今年1月12日に逮捕され、23日後の2月4日に保釈されている。 「警察に逮捕された被疑者は2日後に送検されます。そして検察の聴取を1日受け、その翌日から通常は10日間のサイクルを2回勾留されて起訴になります。つまり合計23日の間、勾留される計算。その後、立場が被疑者から被告人に代わり、罪が重い場合や証拠隠滅の恐れがあるケースでは、被告人勾留となって表に出られませんが、今回はすんなりと保釈されています。もし10億円を盗んだ泥棒だったら、こんなに簡単に釈放されませんよね」(同) つまり、転職した技術者が不正にSBのデータを持ち出した事実は間違いなかったものの、どうやら実態として大きな被害があったとは見なされなかったわけだ。 携帯電話の事情に詳しい業界誌記者が解説する。 「どこの電柱にSBのアンテナが設置されているのかという情報を、楽天が欲しがったのではないかとも疑われたのですが、専門家に聞くと、それはないだろうという返事でした。というのも、SBと楽天では割り当てられた周波数が全く別。わかりやすく言えば、SBの電波のほうが届きやすい。だからアンテナ設置のメソッドを真似しても意味がないそうなのです」 価値もなく、意味もなく、ただただ厄介なデータを知らずに持ち込まれたとすれば、楽天は貰い事故と泣くしかない。捜査関係者が言う。 「なぜそんな役にも立たないデータを持ち出したのかが疑問ですが、被疑者はこんな大事になるとは思わず、ほんの軽い気持ちだったようです。彼は川崎の高校を卒業した後、コーヒーメーカーや郵便局、通信工事会社などに勤めた後、2004年ごろ、ソフトバンクに入社しました。コンピューターの専門家でもなく、現場でスキルを身に着けたタイプ。だからデータを取った時も、自分が普段使っているGメールアドレスに送っているくらいで、隠そうという意図もなかったようです」 軽率な行動が予想もしない災いを招いてしまう典型パターンだが、そんなお粗末な内情がSBと楽天、警視庁という三者の間で共有された矢先、10億円訴訟のニュースが飛び出し、警視庁も楽天も腰を抜かしたのである。 裁判所担当デスクも驚いたという。 「実は楽天モバイル側とSBは東京地裁の仲介により、3月半ばに和解の審尋調書を作成しています。これはSBが楽天に対し、取られたデータの利用停止を求める仮処分命令申立てを行ったことに対応した和解です。今後お互いに誹謗中傷、名誉棄損、業務妨害に当たる言動を行わないという一項目が入っていて、一般的には手打ちが行われたと見なされていました。不思議なのは、1000億円の請求権があるのに10億円を請求するという訴訟の手法で、これは極めて珍しい。おそらく、裁判を起こす時の申立手数料が、請求額1000億円の場合は1億602万円掛かるのに比べ、10億円の場合は302万円で済むという現実的な費用が関係しているのでしょうが……」 だが、本当に実質的な損害が生じていなかったとすれば、10億円訴訟の見通しはSBにとって決して明るいものではない。先制攻撃を仕掛けたはいいが、法廷の場で楽天モバイルから反撃を受け、損害を実証できなければ、被害者の顔をして法外な請求を行うボッタクリ企業の汚名を着せられかねない』、「SBと楽天では割り当てられた周波数が全く別。わかりやすく言えば、SBの電波のほうが届きやすい。だからアンテナ設置のメソッドを真似しても意味がないそうなのです」、「000億円の請求権があるのに10億円を請求するという訴訟の手法で、これは極めて珍しい。おそらく、裁判を起こす時の申立手数料が、請求額1000億円の場合は1億602万円掛かるのに比べ、10億円の場合は302万円で済むという現実的な費用が関係しているのでしょうが……」、「SB」側のやり方も酷くケチ臭い。大きく手を振り上げた割には、ネズミ1匹で終わる可能性もありそうだ。

次に、6月2日付け日刊ゲンダイが掲載したジャーナリストの有森隆氏による「楽天グループ<上>中国大手テンセントの出資が政治問題化」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/289945
・『三木谷浩史会長兼社長の起死回生の大勝負は成功するのだろうか? 4月1日、社名を楽天グループに変更。第三者割当増資で2423億円を調達した。 内訳は日本郵政が1500億円、中国ネット大手の騰訊控股(テンセント)グループが657億円、米小売り最大手ウォルマート・ストアーズが166億円を出資。ほかに、三木谷氏の息子や娘たちの資産管理会社・三木谷興産とスピリットが合わせて100億円を拠出した。日本郵政が楽天の発行済み株式の8・3%を保有する第4位の大株主、テンセントが同3・65%で第5位になった』、なりふり構わず資本調達した感じだ。
・『「経済安保」の観点から  テンセントの出資が「経済安保」の観点から楽天を揺るがす問題に発展した。菅義偉首相が渡米し、バイデン大統領との首脳会談を間近に控えており、首相官邸で開いた会議で「米政府の対応」がホットな議題となった。 トランプ前大統領は今年1月、テンセントのアプリに関し、米国内の取引を禁じようと考え、大統領令に署名した。民間技術が軍事転用される恐れがある中国への情報漏洩を防止するのが目的で、「安全保障上の措置」と強調した。 政権が交代しても米国のテンセントへの厳しい評価は変わっていない。官邸がテンセントの出資を懸念した理由もここにあった。 菅首相とバイデン大統領が初めて臨んだ4月16日の首脳会談で、日米の経済安保協力は主要議題となった。安全性の高い第5世代移動通信ネットワーク「5G」の推進や、半導体など重要物資の供給網(サプライチェーン)構築での協力の拡大で合意した。 バイデン政権は安全保障や経済を巡って対立する中国の覇権を警戒し、安全保障上、特に重要な製品のサプライチェーンの脱中国依存を目指している。 日米首脳会談の4日後の4月20日、共同通信が「日米、楽天を共同監視 中国への情報流出を警戒」と報じた。〈テンセントの子会社が3月末に楽天の大株主となったことを踏まえ、日米の顧客情報がテンセントを通じて中国当局に筒抜けになる事態を警戒。日本政府が外為法に基づいて楽天から定期的に聞き取り調査を行い、米当局と内容を共有することで中国への情報流出リスクに連携して対処する〉という内容だった。 米欧は相次いで中国企業による投資規制を強化したが、日本は出遅れていた。「日本が中国への技術輸出の抜け穴になっている」との批判を招きかねない。そこで経済産業省が中心になって19年末に外為法を改正した。 改正外為法では、外国の投資家が指定業種の上場企業の株式を取得する際に、事前届け出が必要な基準値を従来の10%から1%に引き下げた。国の安全を損なう恐れが大きい業種を武器製造、原子力、電力、通信に絞り込んだ。携帯電話事業の楽天は、この対象に入る。 ただし、「非公開の技術情報にアクセスしない」「自ら役員に就任しない」などの条件を満たした場合には、事前届け出を免除する制度を導入した。テンセント子会社の出資は1%を上回るが、テンセントは事前届け出をしていない。楽天は「テンセントは純投資で、免除ルールをクリアしていると認識していた」とした。 楽天がどう説明しようと、テンセントの楽天への出資は経済安全保障上のテーマに浮上したのである。 この事態に三木谷会長兼社長はいら立ちを隠さない。4月30日、楽天モバイルがiPhoneを扱うことになった記者会見の場で「基本的にはエクイティー(株式)出資で、取締役の派遣などもない。何をそんなに大騒ぎしているのか全く意味が分からない」と反論した。「(テンセント子会社は)米テスラなどにも投資している一種のベンチャーキャピタルだ」とも述べた。) 三木谷氏が実態をきちんと把握していないことを露呈したような発言と受け取られた。 「テスラはEV(電気自動車)屋だろ。楽天は情報通信会社。通信は国の安全を左右するインフラを担っているという社会的責任について理解が不足している」(自民党の商工族議員) “裸の王様”の三木谷氏に、きちんと情報を伝える政府関係者も側近もいないということなのだろうか? 三木谷氏は5月14日に放送された米CNNテレビのインタビューで〈新型コロナウイルスの世界的流行が収まらない中で東京五輪の開催は「自殺行為だ」と〉菅首相を間接的に批判した。〈日本政府の新型コロナ対応について「10点満点で2点」〉と辛口の採点をした。 「コロナ敗戦」を追及することで「かつては“盟友”といわれた菅首相に、しっぺ返しをした」(永田町筋)との指摘も出た。=つづく』、「「テスラはEV(電気自動車)屋だろ。楽天は情報通信会社。通信は国の安全を左右するインフラを担っているという社会的責任について理解が不足している」、との批判はその通りだ。「「コロナ敗戦」を追及することで「かつては“盟友”といわれた菅首相に、しっぺ返しをした」(永田町筋)との指摘」、本当は「菅首相に、しっぺ返し」するほどの余裕はない筈だ。

第三に、この続き、6月3日付け日刊ゲンダイ「楽天グループ<下>携帯電話基地局の先行投資で大赤字」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/290000
・『三木谷浩史会長兼社長は2017年12月、「第4の携帯キャリアー」宣言をした。業界関係者は、これには度肝を抜かれた。NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの大手3社が設備投資を終えている4Gに今さら参入しても太刀打ちできないことが分かっていたからだ。 既存大手の3社寡占に業を煮やした安倍晋三政権の菅義偉官房長官は、三木谷氏を“変革者”に見立て、「料金引き下げの急先鋒になれ」と促した。菅氏は18年8月、「携帯電話料金は4割下げられる」と爆弾発言。「(19年10月の楽天の参入によって)通信料金は様変わりするだろう」と語っていた。 ところが第4のキャリアーとして参入するはずだった楽天モバイルが、基地局の整備の遅れで、いきなりつまずいた。 20年4月、楽天はようやく携帯電話事業に参入した。だが、携帯電話業界を取り巻く環境は急変していた。菅氏が値下げカードとしてまず切ったのは、国策会社NTTによるNTTドコモの完全子会社化だった。 昨年9月、菅政権の誕生とともに、NTTドコモは携帯電話料金の値下げ策を打ち出した。これにKDDI、ソフトバンクも追随。“官製値下げ”が実現した』、「楽天モバイルが、基地局の整備の遅れで」、「つまずいた」以上、「NTTドコモ」を中心とした「“官製値下げ”」、で対応せざるを得なかったのだろう。
・『ユーザー集めたら高値で売却、との憶測も  三木谷氏にしてみれば、「2階に上がってハシゴを外された」心境だったろう。これで携帯電話事業から撤退するかと思いきや、「4位にとどまるつもりはない。圧倒的な地位を築く」とオンライン会見で攻めの姿勢を強調した。基地局を整備するため、大規模な第三者割当増資を敢行。日本郵政や中国ネット大手のテンセントの子会社など計5社を引受先に2423億円を調達した。 楽天モバイルの4Gと5Gの基地局整備に充当する。 さらに、データ1ギガバイトまで無料。「ユーザーを集めるだけ集め、(楽天モバイルを)高値で売却するのでは」(携帯電話業界の首脳)などという、うがった見方が浮上したほどだった。 三木谷氏は日本全国に郵便局網を持つ日本郵政との提携の可能性に懸けたのか? 2万4000局ある郵便局の屋上に携帯電話の基地局を設置できれば、基地局の立地難は一気に解消する。郵便局に特設ブースを設け、オンラインで楽天ケータイを取り扱うというアイデアを披露した。 楽天モバイルの実店舗は全国に600店しかない。大手3社は2000店舗を超えており楽天の3倍以上だ。「三木谷流の起死回生策」(前出の業界首脳)と呼ばれた。 実質的な国有会社といえる日本郵政(政府の出資比率は56.8%。財務大臣名義)が、楽天モバイルの基地局整備のために巨額の投資をすることが許されるのか。日本郵政の楽天との提携のメリットは何なのか。「そもそも、郵政は国内での新規投資は考えていなかったはずだ」(日本郵政の元役員)。楽天主導の数々の構想に疑問が噴出した。 永田町には「菅政権による、かたちを変えた楽天救済策」(自民党の通信族議員)といった指摘もある。 19年12月期決算から基地局などへの先行投資が急激に膨らんでいる。20年12月期連結決算(国際会計基準)の純損失は1141億円。21年1~3月期も251億円の赤字のままだ。最終赤字は3四半期連続である。 21年夏までに自社回線による人口カバー率を96%と、5年前倒しする計画で4Gと5Gの基地局投資は合計1兆円になる。既に4000億円強を投じたが、今後、5000億~6000億円が必要になる。 楽天カードが順調で金融事業が稼ぎ頭となっている。金融事業を本体から切り出して新規株式公開(IPO)するかもしれない。 いずれにしても、この難局を切り抜けるウルトラCはなさそうだ』、「菅政権による、かたちを変えた楽天救済策」、うがった見方だが、案外、いいところを突いているかも知れない。「この難局を切り抜けるウルトラCはなさそうだ」、さて「楽天」は如何に「難局を切り抜ける」のだろうか、大いに見物だ。
タグ:・スマホ デイリー新潮 (その6)(転職社員がデータ漏洩… ソフトバンクが楽天モバイル提訴で「10億円請求」の不可解、楽天グループ<上>中国大手テンセントの出資が政治問題化、楽天グループ<下>携帯電話基地局の先行投資で大赤字) 携帯 「転職社員がデータ漏洩… ソフトバンクが楽天モバイル提訴で「10億円請求」の不可解」 「SB側は1000億円の損害賠償請求権があると主張し、そのうちの10億円分の支払いを求めています。しかし実のところ、本当にそんな巨額の被害があったのかというと、少しハッタリが過ぎるというのが、現在の警視庁当局の見立て」、 「光ファイバーの位置情報というのは、携帯電話会社であればNTTから無料で提供を受けることができるデータ。もう一つの電柱位置に関しても、NTT東日本分が100万円、西日本分が100万円、2つを合わせても200万円程度の価値に過ぎません。また、どちらのデータについても、すでに楽天モバイルが正規ルートで入手していたため、特に組織として必要としていなかったことが判明」、とすれば、「SB側」の提訴の狙いは何なのだろう。 「SBと楽天では割り当てられた周波数が全く別。わかりやすく言えば、SBの電波のほうが届きやすい。だからアンテナ設置のメソッドを真似しても意味がないそうなのです」、 「000億円の請求権があるのに10億円を請求するという訴訟の手法で、これは極めて珍しい。おそらく、裁判を起こす時の申立手数料が、請求額1000億円の場合は1億602万円掛かるのに比べ、10億円の場合は302万円で済むという現実的な費用が関係しているのでしょうが……」、「SB」側のやり方も酷くケチ臭い。大きく手を振り上げた割には、ネズミ1匹で終わる可能性もありそうだ。 日刊ゲンダイ 有森隆 「楽天グループ<上>中国大手テンセントの出資が政治問題化」 なりふり構わず資本調達した感じだ。 「「テスラはEV(電気自動車)屋だろ。楽天は情報通信会社。通信は国の安全を左右するインフラを担っているという社会的責任について理解が不足している」、との批判はその通りだ。 「「コロナ敗戦」を追及することで「かつては“盟友”といわれた菅首相に、しっぺ返しをした」(永田町筋)との指摘」、本当は「菅首相に、しっぺ返し」するほどの余裕はない筈だ。 「楽天グループ<下>携帯電話基地局の先行投資で大赤字」 「楽天モバイルが、基地局の整備の遅れで」、「つまずいた」以上、「NTTドコモ」を中心とした「“官製値下げ”」、で対応せざるを得なかったのだろう。 「菅政権による、かたちを変えた楽天救済策」、うがった見方だが、案外、いいところを突いているかも知れない。 「この難局を切り抜けるウルトラCはなさそうだ」、さて「楽天」は如何に「難局を切り抜ける」のだろうか、大いに見物だ。
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自動車(一般)(その5)(自工会豊田会長「3度目の警告」 岐路に立つエンジン、コロナ禍で露呈「トヨタ生産方式」の決定的な弱点 利益を出すために無駄を省きすぎた末路、「トヨタが車を売らなくなる日」が目前に迫る意味 脱・製販分離で中古車を新車ラインに流す妙技) [産業動向]

自動車(一般)については、2月1日に取上げた。今日は、(その5)(自工会豊田会長「3度目の警告」 岐路に立つエンジン、コロナ禍で露呈「トヨタ生産方式」の決定的な弱点 利益を出すために無駄を省きすぎた末路、「トヨタが車を売らなくなる日」が目前に迫る意味 脱・製販分離で中古車を新車ラインに流す妙技)である。

先ずは、4月27日付け日経ビジネスオンライン「自工会豊田会長「3度目の警告」 岐路に立つエンジン」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00109/042700084/
・『「私たちの目指すゴールはカーボンニュートラル(炭素中立)なのであって、その道筋は1つではない。脱炭素の出口を狭めないでほしい」 4月22日、日本自動車工業会(自工会)の豊田章男会長(トヨタ自動車社長)は定例会見に臨み、ガソリン車廃止に傾く国の政策に異議を唱えた。会見時間をほぼ丸々使い切って脱炭素政策に警告を発するのは、昨年12月以来、3度目のことだ(関連記事:「100万人が雇用失う」自工会・豊田会長、再エネ遅れに危機感)。 菅義偉内閣は昨年10月、日本が2050年までに炭素中立を実現する目標を宣言。昨年12月にその工程表である「グリーン成長戦略」で、30年代半ばまでに乗用車の新車販売でガソリン車をゼロにすることを掲げた。 自工会は炭素中立に全力で協力すると表明済みだが、そのための方法が日本の自動車産業の競争力を削(そ)ぐものであってはならないというのが豊田会長の主張だ。約3万点あるガソリン車の部品のうち、1万点は内燃機関に関連するとされ、「ガソリン車を禁止すればその雇用が失われる。噴射技術など日本が培ってきた強みも失われてしまう」と訴えた』、「自工会」「会長」としては当然の主張だ。
・『「e-fuel」で内燃機関延命  そこで提言したのがバイオマス(生物資源)燃料や水素などから作る液体燃料「e-fuel」の普及だ。ガソリンから切り替えれば内燃機関からの二酸化炭素(CO2)排出量を大幅に減らせるという。 全国に約7800万台ある保有車のほとんどがハイブリッド車(HV)を含めエンジン駆動であり、自動車の長寿命化も進んでいる。そうした車両からのCO2排出削減のためにも燃料の脱炭素化が重要だとした。政策が電動車普及一辺倒になってしまえばそのチャンスを見過ごすとの問題提起だ。 ただし、e-fuelは既存の燃料に比べて高コストで現状は大量供給も難しい。化石燃料の改質で水素を作るとCO2が出るため、再生可能エネルギーやCCS(CO2の回収・貯留)技術を利用する必要があり、量産のハードルは高い。 そんな中、驚きのニュースが舞い込んだ。内燃機関の技術を磨いて国内自動車大手の最後発からのし上がったホンダが、ガソリン車を手放す覚悟を決めたのだ。40年までに世界の新車販売を全て電気自動車(EV)と燃料電池車(FCV)にする目標を発表した(関連記事:ホンダ、40年に新車を全てEV・FCVに「高い目標こそ奮い立つ」)。) 世界では内燃機関への包囲網が広がっている。米ワシントン州議会は4月15日、乗用車の新車の販売・登録を、30年以降は動力が電気モーターのみの車両に限る法案を可決した。 トヨタもEVの市場投入のギアを一段引き上げた。19日に開幕した上海国際自動車ショーで、SUBARUと開発した新EVシリーズ「TOYOTA bZ」を発表。従来は4車種だったEVを25年までに15車種へと大きく広げる。 菅首相は22日、30年度に日本の温暖化ガス排出量を13年度比で46%削減すると表明。従来目標の同26%減から大幅に引き上げた。ただし、19年度実績は同14%減にとどまる。「英断だが、残り10年でどうやって積み上げるのか」と有識者も首をかしげるほど高い目標の下、主要排出源である自動車の産業界はあらゆる手を尽くさなければならない状況に追い込まれている。 「自動車産業を脱炭素政策のペースメーカーにしてほしい」。豊田会長は会見でそう繰り返した。気候変動を巡る国際情勢や市場の急激な変化に自動車産業の裾野が取り残されており、基幹産業のピラミッドが崩壊すれば日本経済が危機に陥ると警告する。 欧・米・中の自動車メーカーに加え、米アップルや中国・華為技術(ファーウェイ)などの新規参入組がEVで攻勢をかける。国境を越えて新旧勢が入り乱れる「100年に1度の大変革」の中、盟主トヨタは「全方位」の戦いに突き進む。CO2排出量の削減に貢献してきたHVを支える自社や部品メーカーの付加価値や雇用を守りつつ、炭素中立に向けた構造転換も急がなくてはならない。豊田会長の焦燥はしばらく続きそうだ』、確かに「残り10年で」「32%削減」するのは困難そうだ。「米アップルや中国・華為技術(ファーウェイ)などの新規参入組がEVで攻勢」、「100年に1度の大変革」をどう乗り切っていくのか、大いに注目される。

次に、6月9日付け東洋経済オンラインが転載したThe New York Times「コロナ禍で露呈「トヨタ生産方式」の決定的な弱点 利益を出すために無駄を省きすぎた末路」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/433160
・『現代世界の成り立ちを語るとき、産業効率に飛躍的な進歩をもたらした大先生としてトヨタ自動車の名前は外せない。この日本の自動車メーカーは、部品を必要なときに必要なだけ工場に届けることで在庫を極限までそぎ落とす「ジャスト・イン・タイム(JIT)」生産方式の先駆者だ。 半世紀以上にわたり、このアプローチは世界中の企業を魅了してきた。その影響力は自動車業界の枠をはるかに超える。ファッション、食品加工、製薬など、さまざまな業種の企業が機動性を保つためにJITを取り入れ、市場の変化への対応とコスト削減を両立させてきた』、確かに「JIT」は数少ない日本発の経営管理手法だ。
・『本家本元の自動車業界が「ガス欠」  ところがコロナ禍による経済の混乱で、在庫を持たない経営のメリットに疑念が生じている。「一部の業界はJITを徹底するあまり混乱に打たれ弱くなったのではないか」との懸念にあらためて火がついたのだ。パンデミックが工場の操業を妨げ、世界の物流を混乱に陥れたことで、世界各国は電子機器から木材、衣料品に至る広範な物不足に悩まされている。 激しく揺れ動く世界経済にJITは追いつけていない。 JITへの過度な依存は、同生産方式を生み出した自動車業界に最も顕著に表れている。自動車メーカーは、主にアジアで生産されている半導体不足に苦しめられている。半導体は自動車生産に欠かすことのできない重要部品だ。その半導体が十分に手に入らなくなったことから、自動車の組立ラインはインド、アメリカ、ブラジルなど、さまざまな地域で停止を余儀なくされている。 物不足が広範囲にわたって持続している現状から見えてくるのは、いかにJITの発想が商業活動を支配するようになったか、だ。ナイキなどのアパレルブランドが小売店に対し店頭在庫を積み増しさせるのに苦労しているのは、ある意味でJITの影響だ。建設会社が塗料やシーリング材の調達に難儀する一因もJITにある。パンデミックの初期段階では個人用保護具が悲惨なまでに不足し、最前線で働く医療従事者が半ば「丸腰」となったが、こうした事態を招いた主因もJITにあった。 JITはビジネス界においては、まさに革命といっても過言ではない。在庫をスリムに保つことで、大手小売店は売り場スペースを一段と有効活用し、さらに幅広い種類の商品を陳列できるようになった。無駄のないリーンな生産方式のおかげで、企業はコストの大幅削減と同時に新製品への迅速な切り替えが可能となった。 こうした強みは企業に付加価値をもたらし、イノベーションを促し、商売を加速させた。それゆえコロナ危機が沈静化した後も、JITが長期にわたって力を持ち続けるのは間違いない。JITによって浮かせたコストで企業は配当や自社株買いを行い、株主に報いてもきた』、「JIT」は物が潤沢に溢れ、必要であれば直ちに入手できる環境を前提にしていたが、この前提が成立しなくなったようだ。
・『利益拡大に前のめりすぎた?  それでも、今回の物不足をきっかけに、次のような疑問が浮かび上がっている。「一部企業は在庫削減による利益拡大に前のめりとなりすぎたのではないか、そのせいで想定できた事態への備えを怠る結果となったのではないか」という疑問だ。 マサチューセッツ大学の経済学者ウィリアム・ラゾニックは「必要な投資が行われなかった」と話す。 世界経済を襲う物不足は、もちろん在庫の引き締めだけに起因するわけではない。新型コロナウイルスの感染拡大で港湾労働者やトラック運転手が以前のように働けなくなり、アジアの工場で生産され、北アメリカやヨーロッパに海上輸送される製品の荷下ろしや流通が滞った。 製材所の操業もパンデミックで停滞し、木材不足からアメリカの住宅建設が進まなくなった。メキシコ湾の石油化学工場が大寒波で停止したことも、主要製品の供給不足につながった。 こうした状況がとりわけ痛手となった企業には、コロナ危機となる以前から、そぎ落とした在庫で切り盛りしていたところが少なくない。 さらに、多くの企業はJITの徹底と同時に、中国、インドといった低賃金国のサプライヤー(調達先)への依存度を深め、国際輸送の混乱が直撃する構図となっていた。今年3月にはスエズ運河で大型コンテナ船が座礁し、ヨーロッパとアジアを結ぶ主要な水路が封鎖される事態となったが、このように歯車がちょっと狂っただけで被害が増幅するメカニズムだ。 「人々は(無駄を徹底して削る)この種のリーン思考を取り入れ、それをサプライチェーンに適用したが、これは低コストで信頼性の高い輸送が利用できることが大前提になっていた」とハーバード・ビジネス・スクール(HBS)で国際貿易を専門とするウィリー・C・シーは語る。「そして、このシステムはいくつかのショックに見舞われている」。 ペンシルベニア州コンショホッケンでは、アンドリュー・ロマノが文字どおり船の到着を待ちわびていた。 ロマノは全世界から化学製品を調達し、塗料やインクなどを製造する工場に販売するバンホーン・メッツ・アンド・カンパニーの販売担当バイスプレジデントだが、同社は建材メーカーに販売する特殊用途の樹脂を十分に確保できていなかった。 その樹脂を供給しているアメリカのサプライヤーも、中国の石油化学工場から、ある素材が調達できずにいた。 ロマノの得意先である塗料メーカーは、完成品の出荷に必要な金属缶が十分に手に入らないことから、化学薬品の発注を手控えていた。「すべてが連鎖している。もうしっちゃかめっちゃかだ」とロマノは言う。 もっとも、JITとグローバルなサプライチェーン(供給網)に過度に依存するリスクはコロナ禍となる前からすでに明らかになっていた。専門家らはその帰結について何十年と警鐘を鳴らし続けてきた。 例えば、1999年に台湾を揺るがした地震では、半導体工場がストップした。2011年に日本に甚大な被害を及ぼした地震と津波でも、工場の停止や物流の停滞から自動車部品や半導体が足りなくなった。さらに同年にタイで発生した洪水でも、コンピューターに使うハードディスクドライブ(HDD)の生産が急落した。 こうした災害が起こるたびに、「企業は在庫を積み増し、サプライヤーを多様化する必要がある」との議論がかまびすしくなった』、「多くの企業はJITの徹底と同時に、中国、インドといった低賃金国のサプライヤー(調達先)への依存度を深め、国際輸送の混乱が直撃する構図となっていた」、「こうした災害が起こるたびに、「企業は在庫を積み増し、サプライヤーを多様化する必要がある」との議論がかまびすしくなった」、その結果はどうだったのだろう。
・『それでも企業はリスク承知で突き進む  しかし、多国籍企業はこうした事態となっても、それまでの手法を改めることなく突き進んだ。 これまでJITを売り込んできたコンサルタントは現在、「サプライチェーン・レジリエンス」の伝道者となっている。サプライチェーン・レジリエンスとは、強靱で復元力の強い調達網を意味する近頃はやりのバズワードだ。 結局のところ、JITはこれまで企業に利益をもたらし続けてきた。こうした単純な理由から、企業のJIT依存は今後も続いていくに違いない。 「まさに『企業が経営の重要な判断基準として低コストの追求をやめるのかどうか』という点が問題になっているわけだが、企業行動が変わるとも思えない」とHBSのシーは話す。「消費者は危機的な状況にでもならない限り、レジリエンスにお金を払ったりはしないものだ」』、「多国籍企業はこうした事態となっても、それまでの手法を改めることなく突き進んだ」、「結局のところ、JITはこれまで企業に利益をもたらし続けてきた。こうした単純な理由から、企業のJIT依存は今後も続いていくに違いない」、なるほど。

第三に、6月20日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリストの桃田 健史氏による「「トヨタが車を売らなくなる日」が目前に迫る意味 脱・製販分離で中古車を新車ラインに流す妙技」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/435166
・『ついにトヨタが、クルマの商流を根本的に変える大仕事に着手する。新車から中古車、そして廃棄されるまでの“クルマの一生”をメーカーが管理する資産運用体制が、今後トヨタを筆頭に本格化しそうだ。 具体的にどのようなことなのか、直近のトヨタの正式発表事項から紹介する。 2021年6月7日、“トヨタとKINTO、「人に寄り添って進化するクルマ」に挑戦~GRヤリス “モリゾウセレクション”をKINTO限定で取扱い開始~”というオンラインでの記者発表があった。 KINTOはトヨタが2019年2月に始めた、いわゆるサブスク(サブスクリプションモデル)で、保険や税金を含んだ定額の月額料金で新車を販売する、これまでの“売り切り型”とは異なる新車販売の手法だ。 また、「GRヤリス」は世界ラリー選手権(WRC)に参戦するラリー競技車から技術的なフィードバックを受けた少量生産のハイパフォーマンスカーで、“モリゾウ”は豊田章男社長が車両開発ドライバーやレーサーとして活動するときの愛称である』、「クルマの商流を根本的に変える大仕事に着手」、どういうことだろう。
・『クルマも「ソフトウェアアップデート」の時代へ この発表で注目されるのは、クルマのソフトウェアを顧客の運転特性に応じてアップデートすること。専門の「GRガレージ」で、担当者がユーザーと協議しながら話を進めるというメニューだ。 この話は、レースやサーキット走行といったクルマ好きに向けたサービスだけにとどまらず、「(将来的には)安心安全を実現するため多様なモデルでの展開を視野に入れている」(トヨタ幹部)という。 クルマに関連したデータ管理については、2010年代から自動車業界とIT・通信業界の間で、コネクテッドカーという領域で議論が進んできた。 一般的に、スマホなどパーソナル通信機器が1~2年で新型化するのに対して、クルマのフルモデルチェンジは6年前後で、車歴でみれば10年を超える。そのため、自動車メーカーとしてハードウェアのアップデートは難しくても、ソフトウェアを最新化することで最新サービスを顧客に提供できるという仕組みだ。 こうしたクルマのソフトウェアアップデートには、「新車売り切り型よりKINTOのほうが相性がよい」とトヨタは見る。KINTOでのクルマの所有権は、トヨタ直系のサービス提供企業である株式会社KINTOに帰属している。) 顧客に対して個人情報保護を明確にしたうえで、新車を売り切り型にしないほうが、市場に出回るクルマの情報を自社でコントロールしやすいからだ。 さらに、この記者発表の中で、新車または中古車として市場に出回ったクルマの内外装のカスタマイズについても、KINTOとしてさらなる検討を行う旨の発言があった。これは、2020年1月から実験的に始めた、中古車版「KINTO ONE」の応用との印象を持った』、「こうしたクルマのソフトウェアアップデートには、「新車売り切り型よりKINTOのほうが相性がよい」、その通りだ。
・『中古車を新車製造ラインに流す、重大な意味  前述の会見の4日後、トヨタの製造部門の統括者による“未来を拓く大切なものづくり”というオンライン会見があった。 この中で、「KINTOで取り扱う中古車をリノベーションし、ワクワクするような車に仕立て直して提供することにトライする」、また「中古とは思えない質感、あるいは他にはない外観や内装の提供など、お客様にとって自分だけの1台をお届けすると同時に、循環型社会にも貢献していきたい」という、自動車メーカーとしてこれまで経験のない領域へ本気で踏み込む姿勢を明らかにした。 記者との質疑応答では、トヨタ側は中古車リノベーションをする場所について販売店、または新車の「最終組立工場内にサブラインを設置する可能性がある」と説明した。 新車の製造ラインに“中古車が出戻ってくる”ことは、メルセデス・ベンツやマツダなどが“旧車レストア“として新車とは別工場で対応する事例はあるが、新車製造ラインとして見ればこれまでの自動車産業界の商流では“ありえない話”であり、販売店にとしては“極めて重大な事案”として捉えている。 なぜならば、自動車商流の根源である“製販分離の終焉”につながりかねないからだ。 改めて商流として自動車産業を見てみると、自動車メーカーは自動車部品メーカーに対して部品の開発や生産を依頼し、またボディの原料である鋼板などを仕入れ、最終組立工場でボディ(板金)、溶接、塗装、組み立て、検査という製造ラインを通じて新車を製造。新車は最終組立工場から出荷され、国内や海外の新車正規販売店で卸売り販売される。 新車正規販売店は、日本の場合、マツダやスバルなどメーカーが直接資本を投じる形式が多いメーカーもあるが、近年は地場企業が主体の傾向が強まっている。トヨタの場合、東京中心部を管轄する「トヨタモビリティ東京」がトヨタの直接資本である。そのほか、海外では各メーカーとも、地場企業による販売店経営が主流だ。 さて、日本のトヨタ大手ディーラー経営者が「トヨタの顧客は我々販売店だ」と言い切るように、メーカーは文字通り製造専業社であり、その販売部門は正規販売店向けの卸売り事業にとどまる。 顧客が新車購入する際に対面するのは、あくまでも販売店であり、メーカー直接ではない。中には販売店と顧客情報を共通するシステムを有するメーカーもあるが、基本的に顧客情報は販売店に帰属する場合が多いのが実情だ。筆者が自動車メーカー各社幹部らと定常的な意見交換をする中で、そのように解釈している。 このように新車の製造と卸売り・小売りとの間には大きな壁があり、一般的に“製販分離“と呼ばれる。この常識が、前述のKINTO新事業によって崩れる可能性が出てきたのだ。 繰り返して説明するが、KINTOでも新たな取り組みはメーカーが新車を製造した後、メーカー直属企業が資産として新車を保有し、経年劣化した後はリノベーションした中古車として再びサブスク化するという商流サイクルの創出だ。そして、商流の中でのデータ管理を定常的に行う。 こうした新しい商流により計画的な生産体制も可能となり、結果的に生産台数は減少傾向に転じる可能性があるが、メーカーが販売サービスに直接関与することで、メーカーが関わる事業はトータルで拡大し収益性も高まる。さらに、LCA(ライフサイクルアセスメント)の観点でのCO2排出量の管理もしやすくなるという利点がある。 そうなると、困るのは新車正規販売店だ。販売店の事業形態は販売・修理業からサービスプロバイダーへの転換といわれて久しいが、多くの販売店は、いまだに旧態依然とした業態から脱却するための明確な方向性は示すことができていない』、「新車の製造ラインに“中古車が出戻ってくる”ことは、メルセデス・ベンツやマツダなどが“旧車レストア“として新車とは別工場で対応する事例はあるが、新車製造ラインとして見ればこれまでの自動車産業界の商流では“ありえない話”であり、販売店にとしては“極めて重大な事案”として捉えている。 なぜならば、自動車商流の根源である“製販分離の終焉”につながりかねないからだ」、確かに革命的な変化だ。「困るのは新車正規販売店だ。販売店の事業形態は販売・修理業からサービスプロバイダーへの転換といわれて久しいが、多くの販売店は、いまだに旧態依然とした業態から脱却するための明確な方向性は示すことができていない」、その通りだろう。
・『販売は「オンライン」が当たり前に  さらに、販売店にとっては“EVシフトにおけるオンライン販売”という大きな時代の変化にも直面している。 例えば、ボルボは2030年までにグローバルで全モデルをEV化するとし、日本市場では2021年秋発売予定のEVの「C40 Recharge」を完全オンライン販売とし、販売店はそのサポート役にまわると発表した。 また、日産は2021年6月4日にEVの日本仕様「アリア limited」予約販売開始を発表した際、アリアにおいてもオンライン販売を積極的に展開することを示唆している。 EVは駆動用バッテリーの経年劣化の管理や充電インフラとのマッチングなど、データ管理の重要性が高い面もあり、オンラインによるサブスク販売との相性がいいと考えられる。 コネクテッド技術の開発とEVシフトによって、自動車産業の製販分離の解消が数年以内に一気に進むのかもしれない。今後の業界動向を注視していきたい』、「自動車産業の製販分離の解消が数年以内に一気に進むのかもしれない」、「今後の業界動向」が大きな注目点だ。
タグ:自動車 (一般) (その5)(自工会豊田会長「3度目の警告」 岐路に立つエンジン、コロナ禍で露呈「トヨタ生産方式」の決定的な弱点 利益を出すために無駄を省きすぎた末路、「トヨタが車を売らなくなる日」が目前に迫る意味 脱・製販分離で中古車を新車ラインに流す妙技) 「自工会」「会長」としては当然の主張だ。 日経ビジネスオンライン 「自工会豊田会長「3度目の警告」 岐路に立つエンジン」 確かに「残り10年で」「32%削減」するのは困難そうだ。「米アップルや中国・華為技術(ファーウェイ)などの新規参入組がEVで攻勢」、「100年に1度の大変革」をどう乗り切っていくのか、大いに注目される。 The New York Times 東洋経済オンライン 「コロナ禍で露呈「トヨタ生産方式」の決定的な弱点 利益を出すために無駄を省きすぎた末路」 確かに「JIT」は数少ない日本発の経営管理手法だ。 「JIT」は物が潤沢に溢れ、必要であれば直ちに入手できる環境を前提にしていたが、この前提が成立しなくなったようだ。 「多くの企業はJITの徹底と同時に、中国、インドといった低賃金国のサプライヤー(調達先)への依存度を深め、国際輸送の混乱が直撃する構図となっていた」、「こうした災害が起こるたびに、「企業は在庫を積み増し、サプライヤーを多様化する必要がある」との議論がかまびすしくなった」、その結果はどうだったのだろう。 「多国籍企業はこうした事態となっても、それまでの手法を改めることなく突き進んだ」、「結局のところ、JITはこれまで企業に利益をもたらし続けてきた。こうした単純な理由から、企業のJIT依存は今後も続いていくに違いない」、なるほど。 桃田 健史 「「トヨタが車を売らなくなる日」が目前に迫る意味 脱・製販分離で中古車を新車ラインに流す妙技」 「クルマの商流を根本的に変える大仕事に着手」、どういうことだろう。 「こうしたクルマのソフトウェアアップデートには、「新車売り切り型よりKINTOのほうが相性がよい」、その通りだ。 「新車の製造ラインに“中古車が出戻ってくる”ことは、メルセデス・ベンツやマツダなどが“旧車レストア“として新車とは別工場で対応する事例はあるが、新車製造ラインとして見ればこれまでの自動車産業界の商流では“ありえない話”であり、販売店にとしては“極めて重大な事案”として捉えている。 なぜならば、自動車商流の根源である“製販分離の終焉”につながりかねないからだ」、確かに革命的な変化だ。「困るのは新車正規販売店だ。販売店の事業形態は販売・修理業からサービスプロバイダーへの転換といわれて久しいが、多くの販売店は、 「自動車産業の製販分離の解消が数年以内に一気に進むのかもしれない」、「今後の業界動向」が大いに注目される。 「今後の業界動向」が大きな注目点だ。
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資本市場(その6)(SPACブーム 投資家を待ち受ける6つのリスク、コロナ禍の“カネ余り” マネーの最前線で何が?) [金融]

資本市場については、4月8日に取上げた。今日は、(その6)(SPACブーム 投資家を待ち受ける6つのリスク、コロナ禍の“カネ余り” マネーの最前線で何が?)である。

先ずは、5月15日付けロイターが掲載したK2インテグリティーのシニア・マネジング・ディレクターの リサ・シルバーマン氏による「コラム:SPACブーム、投資家を待ち受ける6つのリスク」を紹介しよう。
https://jp.reuters.com/article/breakingviews-spac-risks-idJPKBN2CV0H4
・『特別買収目的会社(SPAC、注)が一世を風びしている。調査会社SPACリサーチによると、SPACの上場による第1・四半期の調達額は834億ドルと既に昨年全体を上回り、従来型の新規株式公開(IPO)のほぼ3倍に達した。女子テニスのセリーナ・ウィリアムズや全米プロバスケットボール(NBA)のステフィン・カリー、大手ヘッジファンドのパーシング・スクエアなど、そうそうたる面々がスポンサーに名を連ねるSPACは、またたく間にウォール街用語の仲間入りを果たした。
(注)特別買収目的会社:特定の事業を有さず、未公開会社・事業の買収を目的に設立される企業。事業を持たない、いわば「空箱」の状態で株式公開により調達した資金で企業買収を行い、被買収会社と統合、買収後は被買収企業の名前で取引される。日本ではまだ認められてないが、ベンチャー企業の成長支援策として導入が検討中(Wikipedia)
 しかしSPACは監督や監視が欠如しているため不正が起きる恐れがあり、投資家にとってはリスクが大きい。米証券取引委員会(SEC)は警鐘を鳴らしている。しかしSPAC市場の長期的な持続性は、リスク管理の包括的な枠組みと明確な規制上のガイドラインを作ることにより、管理と安全性を高められるかどうかに掛かってくる。SPACを通じて上場する企業を、従来型IPOを通じて上場する企業と同様に厳しく審査する仕組みを確保しなければならない。これらが実現するまでSPAC投資家は6つの主要なリスクに直面する』、「リスク管理の包括的な枠組みと明確な規制上のガイドライン」で「管理と安全性を高め」るのはそれほど簡単ではない。
・『<不十分な資産査定>  通常のIPOでは、上場する企業に対して包括的な資産査定(デューデリジェンス)が規定通りに行われる。しかし資産査定には時間が掛かる。SPACの場合、創設者(スポンサー)は一般的に買収先を見つけるのに2年の期限が設けられている。このため資産査定はしばしば見て見ぬふりをされる。従来型のIPOでは不合格になるような経歴を持つ経営幹部や取締役会メンバーが入っていることがある。そしてスポンサーは、上場に適さない企業を拙速に買収する可能性がある』、「資産査定はしばしば見て見ぬふりをされる」のでは問題だ。
・『<不正確な財務報告書>  資産査定では財務報告書の不備が見つかることが多々ある。SPACによる上場は期間が切迫しているので、マネジャーの多くは企業の安定性に目を向けるより、素早く取引しやすい企業を見つけることに注力する。 標的となる企業はほぼすべて未公開企業であるため、過去の財務報告書は公開企業の基準を満たしていない。従来型のIPOと異なり、SECがこうした財務報告書を審査するのは買収後だ。従来型のIPOではSECが厳しい審査を行う』、確かに問題ではある。
・『<虚偽記載と脱漏>  SPACを通じて上場する未公開企業は経営についての審査も甘いため、当局への提出書類に虚偽記載が紛れ込んだり、投資家の見通しに影響しかねない重要な脱漏が発生したりする可能性がある。「将来予想に関する記述」という免責文言が入っているのはざらだ。買収する側の企業が既に上場しているため、こうした記述は最近まで従来型IPOの届け出書類と同様の審査を受けていなかった』、「SPAC」は「上場している」とはいえ、通常の上場企業のような「審査」は受けてない。
・『<経営実績の不在>  上場を目指す企業は普通、成熟度を示す指標を満たしている。例えば売上高が1億ドル(かそれ以上)、実績が証明された経営陣、厳格に記録を保持する管理体制、財務健全化のための不良資産売却などだ。しかし買収の標的を見つけるための競争に追われるSPACは、それほど成熟していない段階の企業を狙うことが多い。 そのため一般投資家がリスクの高い、未成熟な企業に資金を投じてしまう恐れがある。米金融取引業規制機構(FINRA)は、SPACは上場手続きが速いため、長期的に存続可能な事業ではなく、一時の隆盛で終わりそうな「ホットな」セクターや事業モデルを引き付けている可能性があると指摘した』、「FINRA」の警告はその通りだ。
・『<経営管理の不備>  買収の標的となる企業は審査が甘く、未成熟であるため、経営管理が不十分な可能性がある。財務や会計の担当者の経験が浅ければ、有効な情報開示手続きや財務報告の管理を確立し、維持できない恐れがある。過失により不正確な財務報告や不正な支払い、さらにはサイバー絡みの不正行為すら起きるかもしれない』、これも大いに懸念されるところだ。
・『<利益相反>  SPACには利益相反の恐れが付きまとう。スポンサー、オフィサー、ディレクターはいずれもSPACのためだけには働かず、SPACの事業と競合する他の組織・団体に対して受託義務を負っているかもしれない。SPACの当初からの投資家は、買収標的企業と利害が対立する立場に身を置く戦略で利益を得るかもしれない。標的企業と合併し、買収手続きを完了する「de-SPAC」はアドバイザーやスポンサーに頼る部分が大きいが、こうした人々には良い案件を手がけるよりも、どんな企業であれ案件をまとめる方向に動くインセンティブがある。 スポンサーはSPACの普通株をかなり割安に取得しているため、株主を踏みつけにして利益を得るかもしれない。FINRAは「引受業者とSPACのスポンサーは、SPACの買収標的とする可能性のある企業について重要な非公開情報を握り、そうした情報に基づいて取引を行う可能性がある」と警告を発している』、これは「SPAC投資家」の「6つの主要なリスク」のなかでも、深刻なものだ。よくぞこんないい加減な商品に投資するものだ。

次に、6月17日付けNHKクローズアップ現代+「コロナ禍の“カネ余り” マネーの最前線で何が?」を紹介しよう。
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4559/index.html
・『コロナ対策として各国が大規模な金融・財政政策を打ち出した結果、世界的な“カネ余り”が生じている。コロナによって厳しい暮らしを余儀なくされる人々がいる一方、富裕層はカネ余りによる株高などの恩恵を受け、資産をさらに増やす傾向が顕著に。富裕層や個人投資家は、このカネ余りの時代に何を考え、どんな行動を取っているのか。富裕層一族の資産管理を手がける「ファミリーオフィス」の知られざる実態などを取材し、世界のマネーをめぐって今何が起きているのかを明らかにしていく。 出演者 沼田優子さん (明治大学特任教授) 井上 裕貴 (アナウンサー) 、 保里 小百合 (アナウンサー)』、興味深そうだ。
・『コロナ禍の"カネ余り" マネーの最前線で何が?  井上:コロナ禍で苦境に直面する人がいる一方で、投資の盛り上がり。一見、この矛盾するような動き、実は密接に関わっています。 保里:経営に苦しむ、企業や商店。そして、厳しい暮らしを強いられる人々を金融面で支えようと、日本、アメリカ、そしてヨーロッパの中央銀行が行ったのが、大規模な金融緩和でした。 井上:市場に大量の資金を供給するため、国債などの資産を大量に購入。その結果、資産規模は合わせて2,600兆円に達し、史上空前の規模に膨れ上がっているのです。 保里:日経平均株価は、ことし2月には30年6か月ぶりに3万円を上回るなど、資産価格は上昇を続けてきました。 井上:ただ、実体経済がコロナ克服に苦しむ中で、この金融緩和、金融システムの安定には一定の効果があった一方で、金融市場だけが活況を呈するという、いびつな構造を生み出しているのです。 保里:マネーの最前線。まずは、ベールに包まれた富裕層の資産形成の現場にカメラが入りました』、「富裕層の資産形成の現場」では何が起きているのだろう。
・『コロナ禍の"カネ余り" 潜入!超富裕層の資産運用の現場  コロナ禍で資産を増やしている、世界の超富裕層。そのために活用しているのが、ファミリーオフィスです。アフリカ屈指の大富豪・ダンジュマ一族が、その実態を正しく知ってほしいと、拠点を置くロンドンで取材に応じてくれました。 TYダンジュマ・ファミリー・オフィス ハナトゥ・ジェントルズCOO「こちらは、私たちが数年前に買ったホテルです。隣には宮殿やすばらしい庭園があり、たくさんのイベントが開催されます」 40歳でナイジェリア陸軍を退役し、海運会社や石油探査会社で、ばく大な財産を築いたダンジュマ氏。その総資産は、1,000億円を超えるともいわれています。 ダンジュマ氏がファミリーオフィスを設立したのは、2009年。会計士として名をはせていたフォスター氏を起用し、意見を聞きながら資産の運用を行っています。 ハナトゥ・ジェントルズCOO「案件の進捗はどうですか?」 TYダンジュマ・ファミリー・オフィス サイモン・フォスターCEO「とても順調です」 このファミリーオフィスでは、一族の資産を増やすため、株式投資だけでなく、不動産や未上場企業への投資、さらに相続や税金の対策も手がけています。 コロナ禍で観光客が減り、ホテル事業の収益こそ目標に届かなかったものの、株式投資を中心に成績は上々。この1年も順調に資産を増やすことができたといいます。 
サイモン・フォスターCEO「(コロナ禍でも)私たちはいい成績を出すことができました。投資先を分散し、迅速に軌道修正しながら意思決定をすることができました。従来型の金融機関では、こうした仕組みを作ることは困難だと思います。私たちはコロナの嵐をうまく乗り切りました。ファミリーオフィスの強さを証明できたと思います」 一族がファミリーオフィスという形態を選んだ理由の1つが、投資先やその金額を自分たちの意思だけで自由に決められることです。投資銀行やヘッジファンドなどの金融機関には、どの投資先に、どの程度の資金を投じているかを明確に開示することが義務づけられています。 しかし、ファミリーオフィスは自分たちの資産のみを扱うため、その規制の対象から外されています。 ハナトゥ・ジェントルズCOO「世界全体が厳しい大変な時期ですが、私たちのファミリーオフィスは幸いにもビジネスを維持することができました。複数の専門家に頼むよりファミリーオフィスに集約する方が、自分たちにとっては良い方法です。他の形よりも優れた仕組みであることは明確です」 今、世界では、およそ1万のファミリーオフィスが存在するとされ、その資産運用総額は600兆円を超えるといわれています。 世界のファミリーオフィスに対して助言などを行っている、キース・ジョンストン氏です。金融緩和を背景とした株高が続く中、一部にリスクを冒し、高いリターンを求めるファミリーオフィスが登場していると指摘します。 SFOアライアンス キース・ジョンストンCEO「数百年前から続くファミリーオフィスの資産運用は、かなり保守的です。一方、一部の若くて積極的な富裕層はわずかなリターンでは満足せず、より大胆に運営しようとしています。ファミリーオフィスは独特な市場です。すばらしいことも、愚かなこともできてしまうのです」』、「アフリカ屈指の大富豪・ダンジュマ一族」、「40歳でナイジェリア陸軍を退役し、海運会社や石油探査会社で、ばく大な財産を築いた」、きっと「陸軍」時代に強力な人脈を築いたのだろう。「世界では、およそ1万のファミリーオフィスが存在するとされ、その資産運用総額は600兆円を超えるといわれています」、ずいぶん沢山あるのに驚かされた。
・『コロナ禍の"カネ余り" ファミリーオフィスが"破綻"何が?  ベールに包まれてきた、ファミリーオフィス。3月末。その実態を知らしめる出来事が起きました。「アルケゴスショック」です。ウォール街で財をなした、ビル・フアン氏が運営するファミリーオフィスアルケゴスが、保有する株式の大幅な下落を受け、事実上破綻に追い込まれました。 アルケゴスショックは、なぜ起きたのか。ビル・フアン氏と30年来の友人関係にある、ジョン・ベイ氏から証言を得ることができました。 ビル・フアン氏をよく知る 米調査会社代表 ジョン・ベイ氏「今回のアルケゴスショックは、ファミリーオフィスだったからこそ起きました。ファミリーオフィスは一族の資産のみを扱っていて、規制当局の監視の目を逃れて運営できるからです」 大手ファンドで資産の拡大に成功し、頭角を現したフアン氏。2012年、インサイダー容疑で処分を受け、市場から退場しました。しかし、翌2013年、処分の対象外であるファミリーオフィスという形態でウォール街に復帰。わずか数年で、1兆円を超える資産を運用するまでに成長しました。特定の銘柄に大量の資金を投じるフアン氏の強気なスタイルが、今回は裏目に出たのではないかとベイ氏は見ています。 ジョン・ベイ氏「彼は強い信念をもって投資をしています。自分が投資したい会社を見つけたら、あえて危険を冒すのです。自分が選んだ株は5年間、目を閉じていても勝ち組になると信じています。買った株を翌週に売るようなことは決してしないのです」 今回、アルケゴスの事実上の破綻によって、もう一つそれまで知られてこなかったことが明らかになりました。世界の投資銀行がアルケゴスと取り引きを行っており、巨額損失を出すことになったのです。 一体なぜ、投資銀行はハイリスクな投資を貫くアルケゴスと取り引きしていたのか。金融工学者のジョン・ソウ氏は、近年の金融緩和の影響で、膨大な資金の投資先を巡り、投資銀行間の競争が激化。高い手数料収益が見込めるアルケゴスに、投資が集中したのだと分析しています。 金融工学者 ジョン・ソウ氏「この量的緩和によって投資銀行は、伝統的な手法から離れたくなる衝動に駆られました。いくつかの銀行はアルケゴスの取引を仲介し、攻撃的な投資に手を染めたのです」 ジョン・ベイ氏「これがウォールストリートです。投資銀行にとってアルケゴスは、大きな利息や手数料を生み出す最高の顧客だったに違いありません。このような事態になるまでは、まさにけだものの本質です」 今回3,100億円余りの損失を被ったとされる、野村ホールディングスの関係者が語ったメモ。そこからは、手数料を追い求めていた内情がうかがえます。 野村HD 関係者が語ったメモ「純粋に高い手数料が頂ける。ポジションの全容を把握せずに、フィー(手数料)だけを魅力につきあっていたのがミスだった」 投資銀行はアルケゴスに対して、巨額の資金を融通。これにより、アルケゴスは自己資金をはるかに上回る規模の取り引きを行っていたとされています。 しかし、こうした構造自体、ファミリーオフィスには開示義務がないため、誰も気付くことができなかったのです。 野村HD 関係者が語ったメモ「アルケゴスの大量保有株の実態を知らずにつきあっていたことが根本的な問題で、それを反省するしかないというのは、社内ではコンセンサスになっている。でも、実態を知らないという部分については、知ることができないという方が正しいという認識に立っている」 ジョン・ソウ氏「ファミリーオフィスの取り引きは慣行として、多くを秘密にして進めることが許されていました。例えばファミリーオフィスと取り引きを行うヘッジファンドのマネージャーは、どのくらいの資産を保有しているのか尋ねることができません。そんなことは、聞いてはいけないルールなのです。第二のアルケゴスショックは必ずおきます。いつかはわかりませんが、今回が最後になるということはありえません」 規制の網の目をかいくぐる形で起きた、アルケゴスショック。経済政策に詳しいクリストファー・スマート氏は、長年放置されてきた規制を今こそ見直すべきときだと指摘しています。 ベアリングス・インヴェストメント クリストファー・スマート代表「アルケゴスショックの教訓は、すべてが順調で、市場に流動性があるときでも株価が急落する可能性を見逃してはならないということです。順調なタイミングでこそ、厳格なチェックを行う必要があります。市場が熱狂の時期になる傾向があるからです。規制当局が厳格に行動し、投資家自身も誠実な行動を取っているか、数字上で確認し、目を凝らす必要があるのです」』、「「純粋に高い手数料が頂ける。ポジションの全容を把握せずに、フィー(手数料)だけを魅力につきあっていたのがミスだった」 投資銀行はアルケゴスに対して、巨額の資金を融通。これにより、アルケゴスは自己資金をはるかに上回る規模の取り引きを行っていた」、「ファミリーオフィスと取り引きを行うヘッジファンドのマネージャーは、どのくらいの資産を保有しているのか尋ねることができません。そんなことは、聞いてはいけないルールなのです。第二のアルケゴスショックは必ずおきます」、「巨額の資金を融通」していても、「どのくらいの資産を保有しているのか尋ねることができません」、こんなにまで「ファミリーオフィス」の立場が強いとは驚きだ。
・『コロナ禍の"カネ余り" ファミリーオフィスと投資銀行  井上:ファミリーオフィス、日米の金融機関の経営に詳しい、沼田優子さんと考えていきます。沼田さん、よろしくお願いします。 保里:沼田さん、富裕層の資産管理を専属で行うというファミリーオフィスですが、改めてどんなものなのでしょうか。 沼田優子さん (明治大学 特任教授)沼田さん:もともとは、これは代々続くお金持ちの資産を守ったり、継承したりするというものです。ただ、過去20年、様相が変わってきています。まず、ファミリーオフィスの数は増えています。これは富裕層のタイプが変わったからだと考えています。といいますのは、米国版の長者番付というのがあるのですが、上位400人を見てみると7割がセルフ・メイド(自分の代で財をなした富裕層)と言われています。なので、相続した資産を継承する従来型のファミリーオフィスに対して、自分の代で資産を築いた方々の資産を守るファミリーオフィスが出てきているということです。 保里:その特徴としては、どんなことが言えますか。 沼田さん:守る一方ではなくなっていると言っていいのではないかと思います。なので、現役の経営者層がいらっしゃるという場合も多いので、資産は守るだけではなくて増やすということもありますし、社会的な活動に積極的に使う。そのためにファミリーオフィスを使っているというのもあると思います。 保里:攻めの姿勢でもあるわけですね。 井上:その変容ですが、投資銀行についてもお伺いしたいのですが、今回ファミリーオフィスとも深い関わりがあるということが明らかになりました。 この投資銀行というのは、もともとは有価証券の発行を手伝ったり、売買注文を受けたりして、その手数料をもらうビジネスでした。しかし、近年は自分の資金を使って投資をしたり、お金や有価証券を貸したりするビジネスに移行してきているということです。 沼田さん、どうしてこの投資銀行も変容してきているのでしょうか。 沼田さん:ひと言で言えば、投資銀行のビジネスモデルが変わったということではないかと思います。もともとは手数料ビジネスだったのですが、それでは収益が得られなくなりましたので、手数料をもらうかわりに自分のお金を使うビジネスに転じていったということなのではないかと思います。自分のお金を投資する、自分のお金を融通する、ということでやっていきますので、うまくいけばいいのですが、うまくいかなかったときは巨額の損失になるということです。 井上:その点ですが、ファミリーオフィスというのは情報開示義務がないということで、そこにリスクがあるわけじゃないですか。そこになぜ、投資銀行はそれを承知で投資をするわけなのでしょうか。 沼田さん:手数料だけのビジネスは立ち行かないと。これは、われわれはプレーンバニラというふうに言うのですが、シンプルな取り引きだけだと収益が出ないので、手数料と自己資本を使ったようなビジネスというのをパッケージにしていく。そのようなビジネスをやってくれるのがファミリーオフィスだったり、ヘッジファンドだったりというところなんだと思います。 井上:投資銀行は、ほかのところがどういうことをやっているか分からないわけですよね。 沼田さん:もちろん個別にはリスク管理はしますが、ファミリーオフィスの場合は開示義務がありませんので、全体で何が起きていたのかが分からなかったというところなんです。 井上:それが巨額損失につながったということなんですね。 保里:なかなか透明性がなくて、巨額の損失というところでいうと、リーマンショックを想起してしまうところがあるのですが、そうしたおそれもあるのでしょうか。 沼田さん:アルケゴスの件に関しては、これは連鎖反応はなかったと考えていいのではないかと思います。実際、損失を被らなかった投資銀行もあります。 保里:こうした中で、例えばアメリカが何らかの規制をかけていく。そうした見方もありますか。 沼田さん:バイデン政権はトランプ政権に比べると、ウォール街に対して規制をしたいということが言われています。けれども、ただ規制というのはブレーキにもなりかねません。特に経済回復をしたいときになりますと、ブレーキをいつ踏むかというのは難しいのではないかと思います。 保里:そうすると、直近でやるということは考えにくいということでしょうか。 沼田さん:優先課題は、ほかにもあるというとこではないでしょうか。 井上:さて、この現在の大規模な金融緩和ですが、焦点は、これがいつまで続くかというところです。注目するのは、アメリカの動きになります。 17日の未明まで開かれていた金融政策を決める会合では、FRBのパウエル議長が量的緩和の規模を縮小する対応について、今後の会合で具体的な議論に入る方針を明らかにしました。 こうなってくると、マネーの流れが変わるのか。どう変わるのかというところなのですが、投資家たちは今後の見通しについて揺れています』、確かに「FRBの」「量的緩和の規模を縮小」は大きな注目点だ。
・『"カネ余り"と個人投資家 金融緩和いつまで?今後は?  都内の会社員・伊豆川太一さん(24)。ことし3月、人生で初めて投資に乗り出しました。貯金を取り崩して60万円を投じたのは、ビットコインなどの暗号資産です。 伊豆川太一さん「今、私が持っているコイン(暗号資産)の日本円換算の価値といった形で」 新型コロナでも仕事の給料が減らず、自宅にいる時間が増えたことが投資を始めたきっかけでした。 伊豆川太一さん「コロナで経済が回らないとか、不況になっている時ほど挑戦というか、何かほかのものに手を出したりとか、今はそういう時なのかなと感じる」 世界的なカネ余りを背景に、ビットコインの価格は急騰。ことし4月には、1年前の7倍ほどの高値を付けました。しかし、先月からは価格が急落。乱高下が続いています。 伊豆川さんは現在、20万円ほどの含み損を抱えていますが、長期的には価格は上昇していくと期待しています。 伊豆川太一さん「ポジティブに、実際まだ始めて3か月といったところなので、投資することはリスクがつきものだと思って、ある程度覚悟は持って始めたので、あまり動揺していないのと、長期的に見たい」 一方、株式市場の投資家の中には、先行きを懸念する声も出始めています。日本株を中心に投資を行っている、神野研さん。この1年余りで、1,000万円の資金を10倍以上に増やしました。 神野研さん「今まで感じたことのない資金が来たなとは思いましたね。めちゃくちゃ勝ちやすかったと思います。パンって上がったものを買えば、わりと続いて上がることが多かったので」 ところがことしに入り、世界中でワクチンの接種が進み、コロナ収束への明るい見通しが出始めると状況が一変。金融緩和縮小への警戒などから、保有する新興企業の株価が下落し始めているのです。投資家仲間に相談に行くと、今後は慎重さが必要だという意見でした。 神野研さん「ことしは全然勝てないというか、大きな流れが去年に比べてなくなったので」 村上直樹さん「ダメな時は、すっと引くというのは今の流れなんかなと思うんよね」 神野研さん「コロナ後みたいな感じで、好調に上がっていく相場じゃなくなるんじゃないかなと。かなり難しい相場になっていくと思います」 金融市場は、一体どこに向かうのか。エコノミストの木内登英(たかひで)さんが注目しているのが、アメリカの金融当局の動きです。中央銀行に当たるFRBが、市場の悪い反応を恐れず、金融緩和を縮小できるかが中長期的には重要だと指摘します。 野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト 木内登英さん「FRBアメリカ中央銀行の金融緩和は、相当突出していたと思います。金融市場が若干調整することがあっても、必要な正常化策を進めていけるかどうか。ここが重要になってくる。それがうまくいくのであれば、小さな調整で終わるかもしれません。でもそれをしなければ、どこかでやっぱり積み上がったものが崩れてしまうという形での大きな金融危機につながる可能性というのはあるんだと思います」』、「木内」氏は元日本銀行の審議委員だったので、金融政策はお手のものだ。
・『今後のマネーの動きと変化に対する心構え  保里:今回のカネ余り。実は、私たちの年金運用などにも恩恵があったということです。公的年金は、2019年度末から、運用益が28兆円増加。そして企業年金は、プラス13.3%の運用利回りでした。 沼田さん、一般の私たちにとっても無縁ではないということですね。 沼田さん:その通りです。年金というのは皆さんにとって自分事ですので、そういう意味では2020年は誰もが恩恵を受けたといっていいのではないかと思います。 井上:改めてですが、今後マネーの動きがどう変わっていくのかということなのですが、大きくは2つのシナリオが考えられます。 エコノミストの木内さんは、緩和の縮小がスムーズに行って小さな調整で終わって、そうすると実体経済の回復とともに成長軌道に乗れるという左側のソフトランディング。そして右側は、緩和縮小がうまくいかず、ひずみがたまって大きな調整が起きるハードランディング。 これがまた金融危機につながったりというシナリオなのですが、沼田さんはどう見ていらっしゃいますか。 沼田さん:木内さんがおっしゃるように、やはり株価上昇というのはいつまでも続くわけではないというところなのではないかと思います。先ほど規制のお話をしましたけど、これは相当、防波堤にはなっていると思いますが、そうは言っても制度疲労も起きるかもしれないというところではないでしょうか。また、先ほど木内さんがおっしゃっていたとおり、金融緩和というのはどう着地させるかというのがかなり難しいのではないかと思います。となりますと、やはり規制、それから緩和。両方の調整というところの手腕が、これから当局というのは問われるのではないでしょうか。 井上:やはり、リスクマネー、抜け道がどうしてもまた皆さん考え出すようになってくると、規制の強化だけに頼らない、例えば金融当局、こういったどういう役割が出てくると思いますか。 沼田さん:当局としては、ソフトランディングできるようにというところなのでしょうけど、それだけに頼らず、われわれも何も起こらないというのではなくて、備えをしておくというのが必要なのではないでしょうか。 井上:これは待てば待つほど、大きな調整が後にやってくるということですよね。 沼田さん:そうだと思います。なので、早目に備えておいていいのではないでしょうか。 保里:そういう意味では、この動きに対して私たちは、一体どういった心構えで見ていけばいいのでしょうか。 沼田さん:心構えというところでは、米国政府が1つ提唱していることがあります。これは、金融の健全な状態を維持するということです。とすれば、私たちの健康管理と金融の健康管理、実は同じなのではないでしょうか。ポイントとしては2つあると思っています。 1つは、コントロールできることとできないこと。これを切り分けて、コントロールできることはなるべくしっかりコントロールしていくと。コントロールできることが増えれば、それだけ安心も増えていくというところなのではないかと思います。 保里:なかなか不透明な時代だからこそ、透明なものを増やしていくということですね。 沼田さん:その通りです。ただその一方で、やはりショックは来るかもしれないというふうに心構えをしておくことは重要なのだと思います。余裕があるときにバッファを作っておくというだけでも、だいぶ違うのではないでしょうか。 保里:リスクヘッジという意味では、どんなことを具体的にはできそうでしょうか。 沼田さん:伸びしろというのは大変なことになってしまったらもう作れないので、余裕があるときに伸びしろを蓄えておくというところになるのでしょうか。 井上:また今後ですけれども、今後の焦点は、必要な正常化策、どう進めていけるかということになってくると思うのですが、どういったところがポイントになってくると思いますか。 沼田さん:ポイントとしましては、誰もが株式市場に頼らないで、自分事として考えるということになるのではないでしょうか。 保里:今回改めてそう感じましたけれど、そのリスクヘッジという意味でも資産もそうですし、さまざまなリスクヘッジがありますね。 沼田さん:そういう意味では、資産分散というのもあるのですが、時間分散というのもあるのではないでしょうか。というのは、株式市場がいいときだけ投資するのではなくて、悪いときも持続的に投資するというところだと思います。 井上:不透明な時代ですけれども、今後、マネーの行方というのも注視していきたいと思います。沼田さん、きょうは本当にありがとうございました』、「資産分散というのもあるのですが、時間分散というのもあるのではないでしょうか。というのは、株式市場がいいときだけ投資するのではなくて、悪いときも持続的に投資するというところだと思います」、同感である。 
タグ:資本市場 (その6)(SPACブーム 投資家を待ち受ける6つのリスク、コロナ禍の“カネ余り” マネーの最前線で何が?) ロイター リサ・シルバーマン 「コラム:SPACブーム、投資家を待ち受ける6つのリスク」 (注)特別買収目的会社:特定の事業を有さず、未公開会社・事業の買収を目的に設立される企業。事業を持たない、いわば「空箱」の状態で株式公開により調達した資金で企業買収を行い、被買収会社と統合、買収後は被買収企業の名前で取引される。日本ではまだ認められてないが、ベンチャー企業の成長支援策として導入が検討中(Wikipedia) 「リスク管理の包括的な枠組みと明確な規制上のガイドライン」で「管理と安全性を高め」るのはそれほど簡単ではない。 「資産査定はしばしば見て見ぬふりをされる」のでは問題だ。 <不正確な財務報告書> 、確かに問題ではある。 「SPAC」は「上場している」とはいえ、通常の上場企業のような「審査」は受けてない。 <虚偽記載と脱漏> <経営実績の不在> 「FINRA」の警告はその通りだ。 <経営管理の不備> これも大いに懸念されるところだ。 <利益相反> これは「SPAC投資家」の「6つの主要なリスク」のなかでも、深刻なものだ。よくぞこんないい加減な商品に投資するものだ。 NHKクローズアップ現代+ 「コロナ禍の“カネ余り” マネーの最前線で何が?」 コロナ禍の"カネ余り" マネーの最前線で何が? 「富裕層の資産形成の現場」では何が起きているのだろう。 コロナ禍の"カネ余り" 潜入!超富裕層の資産運用の現場 「アフリカ屈指の大富豪・ダンジュマ一族」、「40歳でナイジェリア陸軍を退役し、海運会社や石油探査会社で、ばく大な財産を築いた」、きっと「陸軍」時代に強力な人脈を築いたのだろう。 「世界では、およそ1万のファミリーオフィスが存在するとされ、その資産運用総額は600兆円を超えるといわれています」、ずいぶん沢山あるのに驚かされた。 「「純粋に高い手数料が頂ける。ポジションの全容を把握せずに、フィー(手数料)だけを魅力につきあっていたのがミスだった」 投資銀行はアルケゴスに対して、巨額の資金を融通。これにより、アルケゴスは自己資金をはるかに上回る規模の取り引きを行っていた」、「ファミリーオフィスと取り引きを行うヘッジファンドのマネージャーは、どのくらいの資産を保有しているのか尋ねることができません。そんなことは、聞いてはいけないルールなのです。第二のアルケゴスショックは必ずおきます」 「巨額の資金を融通」していても、「どのくらいの資産を保有しているのか尋ねることができません」、こんなにまで「ファミリーオフィス」の立場が強いとは驚きだ。 確かに「FRBの」「量的緩和の規模を縮小」は大きな注目点だ。 「木内」氏は元日本銀行の審議委員だったので、金融政策はお手のものだ。 「資産分散というのもあるのですが、時間分散というのもあるのではないでしょうか。というのは、株式市場がいいときだけ投資するのではなくて、悪いときも持続的に投資するというところだと思います」、同感である。
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公務員制度(その5)(優秀な官僚が消えていく…今すぐ国会議員の意識改革が必要だ! 国民に犠牲を強いる前に自分を改めよ、なぜ日本の官僚は政治家に「忖度」するのか?世界でも特異な制度の問題、逮捕相次ぐ霞が関にマスコミが大甘な理由 「諸悪の根源は菅首相」という欺瞞) [国内政治]

公務員制度については、昨年9月5日に取上げた。今日は、(その5)(優秀な官僚が消えていく…今すぐ国会議員の意識改革が必要だ! 国民に犠牲を強いる前に自分を改めよ、なぜ日本の官僚は政治家に「忖度」するのか?世界でも特異な制度の問題、逮捕相次ぐ霞が関にマスコミが大甘な理由 「諸悪の根源は菅首相」という欺瞞)である。

先ずは、本年1月31日付け現代ビジネスが掲載した大蔵省出身で早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問 一橋大学名誉教授の野口 悠紀雄氏による「優秀な官僚が消えていく…今すぐ国会議員の意識改革が必要だ! 国民に犠牲を強いる前に自分を改めよ」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/79725?imp=0
・『国会の質問取りが、いまだに旧態依然たる対面・口頭でなされている。これが官僚の深夜勤務の温床になっているとかねてから指摘されていたが、コロナ下では、在宅勤務の妨げになっている。3密回避ができないので、感染拡大の点からも問題だ。 技術的には簡単に実行できることが導入されないのは、国会議員の意識が古いままだからだ。民間企業に在宅勤務や時短を要請するなら、まず国会議員の意識改革が必要だ』、その通りだ。
・『対面質問取りがあるため在宅勤務ができない  霞ヶ関の若手官僚が国会答弁の作業で疲弊していると報道されている。 質問取りを電話かメール、あるいはビデオ会議で済ませればよいのに、議員会館まで出向いて、対面で聞いてこなければならない。これがあるために、中央官庁は在宅勤務への切り替えができない。 政府が「在宅勤務で出勤者7割減」と民間企業に要請しているのに、中央官庁と政治家の間では、旧態依然たる世界が続いているのだ。 批判を受けて、1月21日の衆院議院運営委員会理事会で、官僚による国会議員への「質問取り」について、対面形式をできる限り自粛するとの合意がなされた。 しかし、「できる限り」であり、「当面の期間」となっている。これで抜本的な改革になるのだろうか? 内閣府が20年12月に実施した調査では、公務員のテレワーク実施率は14.5%で、他の業種も含めた全体平均の21.5%を大幅に下回った。 コンサルティング会社のワーク・ライフバランス社が、国家公務員480人を対象に行なった調査では、「議員への説明はオンラインに移行せず対面のままだった」との回答が83%を占めた。(「コロナ禍における政府・省庁の働き方に関する実態調査)。 長時間にわたり、対面で、3密に該当する環境での説明が求められた。マスクを外させられたケースもあったという』、「「議員への説明はオンラインに移行せず対面のままだった」との回答が83%を占めた」、「議員」にしてみれば、これまで通りの、対面での説明の方が分かり易いので、当然なのだろう。
・『「国会の質問取り」とは?  「国会の質問取り」といっても、多くの人はあまりよく知らないことだと思うので、説明しておこう。 国会の委員会における質疑は、その場でのやり取りで丁々発止の議論が行われていると考えている人が多いと思う。しかし、実際にはそうではない。質問も、それに対する答弁も、あらかじめ準備されたものなのだ。それをただ読み上げているに過ぎない。 質問は、前日の昼頃までに担当官庁に通告する必要がある。それを見て、官僚が答弁書を作成し、答弁者である大臣に渡す。 実際には、若手官僚が議員会館までいって質問を聞いてくる。そして、それに対する答弁を準備をする。まず担当の省庁が答弁を作成する。予算措置と絡んでいる場合には、財務省がチェックする。 こうしたプロセスの是非も問題なのだが、ここではやり方を問題としよう』、「質問」の「事前通告」により、答弁案を作成する側や答弁する側は大いに楽になった筈だ。
・『私も経験した「質問待機で深夜勤務」  「質問取り」は、深夜勤務の元凶であるとして、数年前から問題視されるようになった。 質問通告は前日の昼頃までとなっているのだが、実際には、夜遅くになってしまうことが多い。官庁では、その間、待機している。そして、深夜からの作業が必要になってしまうのだ。 これがいかに辛いことか、私にはよく分かる。なぜなら50年前、私は大蔵省(現在の財務省)主計局調査課で課長補佐をしており、その仕事をさせられていたからだ。 質問が来るのが10時過ぎだ。他省庁宛の質問の場合、各省庁がまず答弁を用意し、それができた後で、主計局の各係にチェックしてもらう。調整が終わるのは、深夜の2時、3時になってしまう。 超勤時間が月に300時間を超えてしまうこともあった。ピーク時には、家に帰れなくなる。時々家に戻ると、翌朝出勤する時に、子供たちから「お父さんまた来てね」と言われた。これは、創作ではない。実際にあったことだ。 その頃に比べて、役人の相対的地位は低下している。だから、若手官僚にとって事態が悪化していることは、容易に想像できる』、「時々家に戻ると、翌朝出勤する時に、子供たちから「お父さんまた来てね」と言われた」、まるで笑い話だ。
・『ビデオ会議など別世界の日本の政治家  深夜勤務の問題は、「通告は前日昼まで」というルールが無視されていることから生じるものだ。この問題は、いまでも残っている。 コロナ下では、それに加えて、「対面」という問題が生じた。これが、冒頭で述べたことだ。「対面・口頭」という方式は昔から続いているものだが、コロナ下では、これが「感染拡大」という問題を引き起こすことになった。 しかし半面で、昔は利用できなかった情報技術が利用できるようになっている。メールは随分前から使えるようになっているし、いまでは、ビデオ会議によって対面に近いことができる。そうした手段を使えば、対面回避は簡単にできる。情報漏洩が問題というなら、そうした問題が生じない回線を用意すればよい。 それにもかかわらず、一向にそれを使おうとしないのだ。前回の緊急事態宣言下でも、議員への対応をオンラインで済ませたことは、一度もないといわれる。当然予想されることではあるが、メールでのやりとりを嫌う議員も多いそうだ。 こうして、議員との面会待ちのため、事務所の廊下に若手官僚が列を成す風景が続く。これでは、3密回避もできない』、「メールでのやりとりを嫌う議員も多い」、「対面・口頭」という「昔から続いている」方式にこだわる議員が多いようだ。
・『民間に犠牲を強いる前に自分たちの意識改革を  前回の緊急事態宣言で、営業自粛が要請された。今回の緊急事態宣言下では、飲食店に時短要請をする。人と人との接触を少しでも少なくするためにそうせざるをえないのだが、民間事業者の生活の基本である営業に制約を加えようというのだ。 そうした犠牲を強いようというのだから、政治家は、自らの行動も見直すべきだ。 上で述べたように、問題は、技術的な点にあるのではない。実際、民間企業では、ビデオ会議は、ごく普通の日常事になった。企業活動だけではない。幼稚園児でさえ、設定さえなされてあれば、ビデオ会議など 軽々とこなしている。しかも、オンライン化は、営業時間短縮のように犠牲を強いることではない。 本来は、関係者すべてにとって望ましいことだ。 必要なのは、意識を変えるだけのことである。コロナ下で、多くの人々が対面からリモートへと意識を切り替えた。本来であれば人々に模範を示すべき国会議員が、もっとも遅れている。信じられないほど遅れているといわざるをえない。 それができないで、民間企業に「在宅勤務で出勤者数7割削減」といっても、全く説得力がない。 菅内閣は、「デジタル化」を標榜するのであれば、まず国会質問とりのデジタル化を実現すべきではないか? それだけではない。本来は、議会活動そのもののデジタル化が考えられるべきだ。イギリス議会や欧州議会では、オンライン議会が採用された。そして、オンライン審議や遠隔投票が行なわれている。 それは、万一議員の間に感染が広がった場合においても、なおかつ議会活動を止めないための安全策であり、最悪の事態に備えるという意味で必要な措置だ。 日本でも、地方議会が委員会や本会議をオンライン化できるよう、国に対して法改正を求めている。 デジタル化は、行政手続きの印鑑廃止で終わりになってしまってはならない』、「コロナ下で、多くの人々が対面からリモートへと意識を切り替えた。本来であれば人々に模範を示すべき国会議員が、もっとも遅れている。信じられないほど遅れているといわざるをえない。 それができないで、民間企業に「在宅勤務で出勤者数7割削減」といっても、全く説得力がない」、その通りだ。
・『優秀な人材が集まらなくなる  内閣人事局の調査によると、20年10~11月に、国家公務員の正規勤務時間外の在庁時間は、20代総合職で3割、30代で15%程度が、月80時間を超えた。 こうした状況下で、若手官僚の退職が増えている。19年度には、自己都合を理由とした20代の国家公務員総合職の退職者が87人いた。6年前に比べると4倍の増加だ。危機的な状況だといわれる。 官僚の問題は、なかなか世の中の人々の共感を得にくい。しかし、有能な人間が集まらなくなるのは、由々しき問題だ。 彼らの勤務環境の改善は、日本の社会を少しでもよくするために、不可欠なことだ』、同感である。

次に、4月6日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した立命館大学政策科学部教授の上久保誠人氏による「なぜ日本の官僚は政治家に「忖度」するのか?世界でも特異な制度の問題」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/267573
・『このところ、さまざまな不祥事が取りざたされている霞が関だが、官僚が自民党政権に「忖度」しているせいだといわれている。忖度の理由は、首相官邸が官僚組織の人事権を掌握しているからだ…という声もあるが、人事権の掌握自体は、世界的に見ても珍しいことではない。日本の問題はもっと根深い。日本だけが「忖度」する官僚になったのはなぜなのか』、興味深そうだ。
・『日本の政治と官僚の「忖度」関係は、世界的にも特殊  霞が関の官僚の不祥事が続いている。首相官邸が、官僚組織の人事権を強力に掌握したことで、官僚が政治に「忖度」するようになりモラルが低下したという。若手官僚の大量離職や、官僚志望の学生の激減など、霞が関では人材難もささやかれるようになった。 だが、世界的に見て、首相官邸や大統領府が官僚組織の人事権を掌握すること自体は、珍しいことではない(第183回)。 しかし、それらの国で官僚の政治への「忖度」が問題になることはない。 ということは、つまり、首相官邸が強力な人事権を持つこと自体が問題なのではない。それが、官僚の「忖度」を生むのは、何か別の要因があるのだと考えられる。 日本の政治と官僚の関係が、世界的に見て「特殊」である理由の一つは、「自民党長期政権」にある。1955年に自民党が政権の座に就いてから66年のうち、政権から離れたのは、細川護熙・羽田孜の非自民政権と民主党政権の合計4年2カ月だけである。 この長期政権が、世界と比較してみても、特異な政治的関係を作り上げた』、「自民党長期政権」が「世界と比較してみても、特異な政治的関係を作り上げた」、なるほど。
・『自民党と霞が関が一体化 中学高校のつながり、年功序列の出世…  政権交代がほとんどないことで、自民党と霞が関の間は、制度的に一体化した。 省庁は、法案を作成すると、まず自民党政調会部会にそれを持ち込む。部会はそれを審査し、自民党を訪れるさまざまな業界と族議員が「利害の調整」をする「与党事前審査」が行われる。法案は、部会で修正された後に、内閣で「閣議決定」されて、国会に提出される。この流れは、世界の議会制民主主義国で、日本だけの独特な制度である。 さらに、人事制度でも二者はつながっている。例えば、官僚は、省庁別に採用されて、年功序列・終身雇用の「日本型雇用制度」でキャリアを形成していく。 一方、自民党も長期政権の間に、当選2、3回目で政務官、5回目程度で副大臣、7、8回で初入閣、その後主要閣僚・党役員を歴任していくといった、当選回数を基準とした「年功序列」の人事制度を確立させている。この制度の下で、自民党の族議員と官僚はともに出世していく「同士」の関係性を持つのだ。 また、自民党に世襲議員が多いことが、官僚との個人的な関係性をより濃密なものにする。世襲議員は、選挙区が地方でも東京の中学・高校を卒業している人が多い。例えば、橋本龍太郎氏、福田康夫氏、谷垣禎一氏、与謝野馨氏らは麻布高校出身、岸田文雄氏は開成高校出身だ。一方、霞が関の側も、麻布高校、開成高校、筑波大附属駒場高校など、東京の中高一貫校の出身者が多い。 彼らには、中学・高校の先輩後輩というより深い関係がある。例えば、開成高校出身者は、国会議員と官僚の総勢約600人で「永霞会(永田町・霞が関開成会)」を結成している。このような、自民党と霞が関の業務を超えて一体化した関係性が、官僚の不祥事の背景にある』、「政権交代がほとんどないことで、自民党と霞が関の間は、制度的に一体化した」、「当選回数を基準とした「年功序列」の人事制度を確立させている。この制度の下で、自民党の族議員と官僚はともに出世していく「同士」の関係性を持つのだ。 また、自民党に世襲議員が多いことが、官僚との個人的な関係性をより濃密なものにする」、「自民党と霞が関の業務を超えて一体化した関係性が、官僚の不祥事の背景にある」、なるほど。
・『同じ議院内閣制の英国では「同窓会」禁止 官僚はどの政党とも一定の距離を保つ  しかし、同じ議院内閣制を採用している英国では、このような関係性が生じない制度的仕掛けがある。英国政治は「交代可能な独裁」と呼ばれ、(第72回・p5)、首相に強力な権限が付与されているが、政権運営・政策を失敗したら、国民によって選挙で交代させられる。 政権交代が頻繁に起こるので、官僚は特定の政党と業務を超えた深い関係を結ぼうとしない。政権交代の時に、前政権との関係性を責められて、左遷させられてしまうからだ。リスク回避のために、英国の官僚は特定の政党・政治家と深い関係を結ぼうとしないのだ。 そもそも、官僚が同じ役所の大臣、副大臣、政務官以外の政治家と接触することを禁止する法律がある。政治家、官僚ともにオックスフォード大、ケンブリッジ大などの出身者が多いのだが、「同窓会」自体が禁止されている。 さらに、「ダグラス・ヒューム・ルール」と呼ばれる、総選挙の前に省庁が野党に政権構想をヒアリングして、政権交代が起きた後に、スムーズに政策転換できるように準備をする慣行がある(第37回・p3)。このように、英国では官僚組織がどの政党からも一定の距離を保ち、中立の立場であるよう制度的な工夫があるのだ』、「官僚が同じ役所の大臣、副大臣、政務官以外の政治家と接触することを禁止する法律がある」、「「同窓会」自体が禁止」、「政権交代が起きた後に、スムーズに政策転換できるように準備をする慣行」、なかなかいい慣行だ。
・『「日本型雇用制度」が問題の根源? 他国では起き得ない忖度  次に、新卒一括採用、年功序列・終身雇用の「日本型雇用制度」が、官僚の「忖度」を生んでいるという問題がある(第183回)。 要するに、官僚の「忖度」は、「日本型雇用制度」で、首相の機嫌を害して左遷されてしまうと、二度と出世コースに戻れないために起こるということだ。日本の場合、それが退官後の第二の人生である「天下り」にまで影響するので、深刻である。 一方、これは米国、英国など欧米のみならず、アジア諸国などの官僚組織でも起き得ないのだ。官僚組織が年功序列・終身雇用を採用していないからだ。 中国や東南アジアなどの官僚組織から、私の勤務校に派遣されている留学生に聞くと、日本の「国家公務員総合職」に相当する資格はあるが、官僚はさまざまな省庁を移籍しながら、キャリアアップしていくのだという。日本の年功序列・終身雇用は世界的に極めて特殊な制度なのである。 年功序列・終身雇用がなければ、キャリアアップのために、政治家や官僚組織の上司に「忖度」する必要はない。官僚は業績のみで判断されるので、移籍すれば、キャリアとしては問題ない。 また、英国などでは、人事は「公募」で行われるのが一般的だ。組織内で内部昇格をさせたい場合でも、外部に「公募」し、外部と内部の人材を公平に評価する。内部昇格させる場合、能力、業績的に妥当だと結果を「公開」するのだ。上司と部下の「特別な関係」で昇格することを防ぐ制度的な仕掛けがある』、「上司と部下の「特別な関係」で昇格することを防ぐ制度的な仕掛け」、これも学ぶべきいい仕組みだ。
・『国家公務員総合職試験合格の有効期限をなくして、官僚の流動化を!  従って、日本で官僚の「忖度」をなくす一つの方策として、「日本型雇用」の慣行の改革が考えられる。 もちろん、日本社会に定着し、国民の支持もいまだに高いこの制度をいきなり廃止するのは現実的ではない。中途採用のポジションを増やし、民間企業などとの人材交流を活発化させることだろう。 そこで、私は国家公務員総合職試験合格の有効期限を、現行の3年から「無期限」に変える改革を提案したい。 例えば、国家公務員総合職に合格しながら、省庁訪問で採用されなかった人材が毎年相当数いる。彼らは民間企業などに就職し、3年後には資格が消滅する。 実は、私のゼミでは3年連続4人の学生が国家公務員総合職に合格したが、1人も省庁訪問で採用されなかった。知人である官僚に聞くと、一般論として答えてくれたのが、「東大、京大、早慶などでないと、採用するには上司に対して書類で3倍、口頭で10倍の説明が必要だ」ということだった。 霞が関に採用される東大生は減少しているが、いまだに他大学から採用されるのは狭き門だ。しかし、一方で若手官僚の離職者が増えているという。国家公務員総合職の資格を一度は得ながら、3年後に資格が消滅している人材が民間に多数いるのは、もったいないではないか。 そもそも国家公務員総合職の資格に有効期限があるのは、新卒一括採用、年功序列、終身雇用を前提としているからだ。中途採用を増やして優秀な人材を確保するには、多くの有資格者がいるほうがいい。 逆にいえば、資格に有効期限があって有資格者が少ないために、中途のキャリア官僚が採用できず、柔軟な官僚組織の編成ができないという悪循環になっている。中途採用を目指す人にとっても、キャリアで採用されないなら魅力がない。 過去に国家公務員総合職試験に合格した人の資格を復活させて、新規の合格者とともに終身の資格とする。そして、政策課題に合わせて省庁の編成を柔軟に行い、彼らを採用する。官僚は、政策立案の「業績」を引っ提げて、さまざまな省庁や民間企業を渡り歩き、キャリアアップを目指す。これが、官僚の政治への「忖度」をなくすために、必要な改革ではないだろうか』、「国家公務員総合職試験合格の有効期限をなくして」、にはデメリットも多そうで、違和感を感じる。

第三に、7月1日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「逮捕相次ぐ霞が関にマスコミが大甘な理由、「諸悪の根源は菅首相」という欺瞞」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/275460
・『官僚たちの悪事続々! 「これも政治のせいだ」というマスコミのイメージ戦略  五輪だ、ワクチンだ、と大騒ぎのドサクサに紛れて、官僚たちのダイナミックな悪事が次々と明らかになっている。 4月に発覚した国会内の女子トイレ盗撮事件で、経済産業省の職員が犯行を認めたという報道があった。この報道と同じタイミングで、やはり経産省のキャリア官僚2人が逮捕。こちらはペーパーカンパニーを設立して、コロナ禍で苦しむ中小企業を支援するためにつくられた家賃支援給付金を悪用して、約550万円をだまし取ったという。 実は同じようなことが昨年12月、国立印刷局でも起きている。職員4人がやはり給付金詐欺で逮捕・書類送検されたのだ。 詐欺の世界では、こういうパクリの手口はゴキブリと同じだと言われる。つまり、1件摘発されたらそれは「氷山の一角」に過ぎず、既に世の中では同様の手口の詐欺が無数に行われているというわけだ。まだ発覚していないだけで、給付金詐欺という「おいしい副業」に手を染める役人はまだウジャウジャいる可能性が高い。 また、「氷山の一角」といえば思い浮かぶのが、総務幹部官僚らによる高額接待問題や、鶏卵大手企業の会長による農林水産事務次官や幹部への接待などの「違法行為」も記憶に新しい。 今のところどちらも便宜を図った事実はなかったという調査結果になっているが、「学習能力」の高さでここまでのし上がってきた高級官僚が、目に見えてわかるような「ベタな便宜」を図っているわけがない。 実際、総務省の高額接待では、幹部職員は文春が音声データを出してくるまで、「衛星放送事業について話をした記憶がない」などすっとぼけていたし、東北新社からの接待が発覚した際には「ほかに規程違反の接待などはない」などと説明したが、後にNTTからもちゃっかり接待を受けていたことがバレている。息を吐くように嘘をつく、とはまさにこのことだ。 しかし、マスコミはなぜかこのような官僚の「違法行為」に対して大甘で、真相を追及しようというポーズさえ見せない。なぜかというと、マスコミで働く人々の頭の中には、「官僚=国のために働く善良な人」「政治家=官僚をアゴで使って悪事を働く人」というイメージが半ば常識のように刷り込まれているからだ。 つまり、官僚の違法行為や不祥事が続発しても、それは官僚が悪いのではなく、真面目な人々に道を踏み外させてしまう政治が悪いというのだ』、「マスコミ」が「官僚の「違法行為」に対して大甘」なのは、確かに不思議だ。
・『「官僚=ガースー恐怖政治に虐げられた被害者」は真実か?  それを象徴するのが先日、某報道番組にコメンテーターとして出演されていた著名ジャーナリストの方のコメントだ。司会から経産省職員の給付金詐欺についてコメントを求められて、こんな感じのことをおっしゃっていた。 「最近の官僚の質が落ちてきていますね。これはやはり政治、特に官邸との距離という問題があってですね」 ご存じのように、日本では長く霞が関官僚が政治を動かしていた。落選や政変でコロコロとキーマンが変わっていく政治家を「軽い神輿」として担ぎながら、政省令を根拠に許認可や予算配分に絶大な影響力を行使し、さながらフィクサーのよう政界を裏から支配してきたのが、高級官僚だった。 そんな官僚たちのユートピアをぶっ壊したのが、ガースーこと菅義偉首相だ。 官房長官時代、霞が関の力の根源である「人事権」を掌握した菅氏は、逆らう者をサクサクと更迭するという恐怖政治で、官僚の影響力を徹底的に排除したのだ。この官邸主導への政治改革は、これまで省益のためにガチガチに守られた岩盤規制に、政治主導で穴が空けられていくという効果があった反面、官僚が官邸の顔色をうかがってヘコヘコするようになったという副作用もあった。 そういう官僚のサラリーマン化は、国をより良くしようと志をもって官僚になった若手などのモチベーションを著しく低下させ「長い物には巻かれろ」「バレなきゃ甘い汁を吸えばいい」などのモラルハザードにつながり、それが官僚の「質」の低下を招いた。……というのが、この近年、官僚の不正・不祥事が起きるたびにマスコミが繰り返してふれまわってきた「ストーリー」であり、このジャーナリスト氏もそれを踏襲しているというわけだ。 ただ、個人的にはこの「ストーリー」はかなり盛った話だと感じてしまう。「官僚=政治に虐げられた被害者」という方向へ導きたくてしょうがないというプロパガンダの臭いがぷんぷんと漂ってくるのだ』、「ストーリー」には私は無批判に受け入れてしまったが、どういう部分が「盛った話」なのだろう。
・『官僚たちの「虚偽答弁」は常習!? 90年代の大蔵省時代もモラルに欠けていた  歴史を振り返れば、戦前から官僚の違法行為など定期的に発生している。贈収賄はもちろん、文書偽造、詐欺、痴漢などあらゆる犯罪をやってきた「前科」がある。厳しい言い方をさせていただくと、「質」が落ちたも何も、「質」が高かった時代などないのだ。 しかも、安倍・菅政権の恐怖政治のせいでモラルが壊れたみたいにやたらと被害者ヅラをするが、官邸主導への政治改革以前のはるか昔からモラルを欠いたことをやってきている。 わかりやすいのが、森友学園問題の国有地売却をめぐる財務省の文書改ざん問題の時に注目を集めた「虚偽答弁」だろう。 マスコミが匂わしていた「ストーリー」はこうだ。佐川宣寿元理財局長(当時)などが国会で虚偽答弁をしたり、文書の改ざんを近畿財務局に命じたりしたのは、安倍首相からそのような命令があったからであって、このような前代未聞の事態が起きたのは、「強すぎる官邸」への恐怖心から、財務省幹部たちのモラルがことごとくぶっ壊れてしまったからだ――というのだ。 ただ、これはかなり無理筋な話である。財務省ではかねて誰に命じられるわけでもなく、ただただ自分たちの保身のためだけに、「虚偽答弁」をしていたからだ。 1991年6月、証券会社が大口顧客に対して総額約2164億円の損失補填を行っていたことが明らかになり、国会では大蔵省がどういう指導を行っていたのだと厳しい質問が浴びせられた。そこで大蔵省の担当者は、準大手の証券会社の補てんについて、このように答弁をした。  「90年3月末までに自主的に報告をしていたのは6社」 顔色一つ変えない典型的な「官僚答弁」だったが、実はこれはデタラメだった。本当のところこの6社のうちの1社が報告したのは4月11日、もう1社も4月に入ってから数回に分けて報告をしていたのだ。なぜこんなしょうもない嘘をついたのかというと、大蔵省が定めた報告の期限が3月末だったからだ。4月にずれ込んでいると公文書に残せば、大蔵省の証券会社行政はぬるいとナメられてしまう。要するに、メンツのためだ(本連載バックナンバー『大蔵省時代にも前科あり、「忖度と改ざん」は財務省伝統の悪癖だ』参照)。 バカバカしいと思うだろうが、もっとバカバカしいのはこの「虚偽答弁」がデタラメだとバレないように、事実の方をねじ曲げて、「虚偽答弁」を「正しい答弁」にしてしまおう、という稚拙な隠蔽工作に走ったことだ。 「大蔵省はことし七月上旬に、この報告日時を同じ昨年の三月三十日付だったこととし、記者会見をする場合も三月中だったと説明するように指導していた」(日本経済新聞1991年10月2日)この指導に従うということは、証券会社は大蔵省に報告をしたという文書などの日付もすべて書き直さないといけない。つまりは、大蔵省という組織は、自分たちの虚偽答弁を誤魔化すため、監督企業に「改ざん」まで命じていたのだ。 繰り返しになるが、これは別に首相や有力政治家から命じられたり、忖度をしたりしてやったわけではない。あくまで大蔵省という組織のメンツ、ガバナンスを守るために自分たちで進んで手を染めた「違法行為」だ』、「自分たちの虚偽答弁を誤魔化すため、監督企業に「改ざん」まで命じていた」、初めて知ったが、確かに「監督企業」まで巻き込むとは、悪質この上ない。
・『組織の不正カルチャー、モラルの低さは上司から部下へ引き継がれる  そこで想像していただきたい。このような虚偽答弁・改ざんを当たり前のようにやっていた組織が、国会で虚偽答弁をしたり、近畿財務局の職員に文書改ざんを命じていたのだ。安倍首相への忖度があったのは間違いないだろうが、なんでもかんでも「政治が悪い」で片付けることに違和感はないか。少なくとも、1年以上もマスコミをあげて大騒ぎをするのなら、政権批判を繰り返すだけではなく、大蔵省時代から続く不正カルチャーにもメスを入れるべきではないか。 「そんな30年も前の不正が関係しているわけないだろ」と怒る人もいらっしゃるかもしれないが、三菱電機の検査不正が35年続いていたことがわかったという先日の報道や、神戸製鋼のデータ不正が40年以上前から続いていたという事実からもわかるように、組織の不正カルチャーは30年くらい平気で継承されるものなのだ。 上司から部下へ、その部下がさらに新入社員へという感じで、組織のカルチャーや独自のノウハウが継承されていくように、「表向きはダメってことになっているけど、実際はこれくらいのことはうちの会社じゃみんなやっているよ」なんて感じで、モラルの低さも後世へと引き継がれていく。中央省庁のようにプロパーが圧倒的に多く、人材の新陳代謝がほとんどない閉鎖的な組織であればなおさらだ』、「組織の不正カルチャーは30年くらい平気で継承されるものなのだ」、その通りだ。
・『マスコミにとって政治家よりも官僚の方が大事な情報源  さて、このような話を聞くとおそらく皆さんは、「そのような官僚組織の問題があるのなら、マスコミが問題視しているはずだ」と思うだろうが、実はマスコミにはそれができない構造的な問題がある。 霞が関の役人というのは、マスコミにとって継続的に情報をいただく「取引先」だからだ。 「週刊文春」などを見ていただければわかりやすいが、基本的にスクープとは「リーク」である。内部の人間からの情報提供を受けて取材で裏をとってそれを報道するというのが一般的な流れで、これは文春の後追いばかりしているマスコミも変わらない。 では、マスコミにとって「リーク」とは何かというと基本的には官僚からのリークだ。よくマスコミの社長たちが首相などと会食をしているので政治とベタベタだと言われるが、政治家は落選したらただの人。一方、官僚は身分保証されたまま霞が関で30年以上も暗躍できる。マスコミをメーカーとすると、官僚ほど信頼のおけるサプライヤーはいないのだ。 そのような意味では、実はこの国の報道というのは、マスコミと一部の高級官僚が手を携えてつくってきた「官製ジャーナリズム」ともいえるのだ。 これにはもちろん、いいこともあった。政治リーダーが暴走をすると、官僚からマスコミにリークがバンバン流れて、スムーズに政権を潰すなんてこともできた。「官製ジャーナリズム」がうまく機能していた時代も確かにあったのだ。 しかし、今はどちらかというと、その癒着が悪い方向へ流れてしまっている。なぜかというと、マスコミも官僚も「既得権益」でメシを食っているからだ。そんな両者が手を結んでもロクなことにならないのは言うまでもない。口ではイノベーションだ、改革だ、と調子のいいことを叫ぶが、今の日本社会が変わってしまったら、これまでのような「上級国民」の座から引きずり下ろされてしまうツートップが、実はマスコミと官僚だ。 それは彼らの「働き方」を見れば明らかだ。企業には偉そうにああだこうだとご高説を垂れるが、役所ではいまだにファックスやハンコを使っているように、自分たちはほとんどデジタル化は進んでない。 マスコミも同様だ。河野太郎行革大臣に揶揄されたように、この時代に、深夜の記者会見を催して、囲み取材だ、夜討ち朝駆けだと昭和と変わらぬことを続けている。さまざまな企業がオープンイノベーションだと技術や知識を共有する中で、「記者クラブ以外は出ていけ」などとフリー記者を追い出しているのも、いつの時代だよとあきれてしまう。 われわれ庶民はどうしても何か問題が起きると「政治が悪い」と叫んでしまいがちだが、実は政治を盾にして、自分たちへの批判をかわし続けている「知能犯」がいる。その醜悪な現実にそろそろ国民は気づくべきだ』、「政治家は落選したらただの人。一方、官僚は身分保証されたまま霞が関で30年以上も暗躍できる。マスコミをメーカーとすると、官僚ほど信頼のおけるサプライヤーはいないのだ」、「実はこの国の報道というのは、マスコミと一部の高級官僚が手を携えてつくってきた「官製ジャーナリズム」ともいえるのだ」、「「官製ジャーナリズム」がうまく機能していた時代も確かにあったのだ。 しかし、今はどちらかというと、その癒着が悪い方向へ流れてしまっている。なぜかというと、マスコミも官僚も「既得権益」でメシを食っているからだ」、「今の日本社会が変わってしまったら、これまでのような「上級国民」の座から引きずり下ろされてしまうツートップが、実はマスコミと官僚だ」、「さまざまな企業がオープンイノベーションだと技術や知識を共有する中で、「記者クラブ以外は出ていけ」などとフリー記者を追い出しているのも、いつの時代だよとあきれてしまう。 われわれ庶民はどうしても何か問題が起きると「政治が悪い」と叫んでしまいがちだが、実は政治を盾にして、自分たちへの批判をかわし続けている「知能犯」がいる」、説得力溢れた強烈な「マスコミ」批判で、同感である。
タグ:現代ビジネス (その5)(優秀な官僚が消えていく…今すぐ国会議員の意識改革が必要だ! 国民に犠牲を強いる前に自分を改めよ、なぜ日本の官僚は政治家に「忖度」するのか?世界でも特異な制度の問題、逮捕相次ぐ霞が関にマスコミが大甘な理由 「諸悪の根源は菅首相」という欺瞞) 「逮捕相次ぐ霞が関にマスコミが大甘な理由、「諸悪の根源は菅首相」という欺瞞」 窪田順生 公務員制度 「コロナ下で、多くの人々が対面からリモートへと意識を切り替えた。本来であれば人々に模範を示すべき国会議員が、もっとも遅れている。信じられないほど遅れているといわざるをえない。 それができないで、民間企業に「在宅勤務で出勤者数7割削減」といっても、全く説得力がない」、その通りだ。 「政治家は落選したらただの人。一方、官僚は身分保証されたまま霞が関で30年以上も暗躍できる。マスコミをメーカーとすると、官僚ほど信頼のおけるサプライヤーはいないのだ」、「実はこの国の報道というのは、マスコミと一部の高級官僚が手を携えてつくってきた「官製ジャーナリズム」ともいえるのだ」、「「官製ジャーナリズム」がうまく機能していた時代も確かにあったのだ。 しかし、今はどちらかというと、その癒着が悪い方向へ流れてしまっている。なぜかというと、マスコミも官僚も「既得権益」でメシを食っているからだ」、「今の日本社 「国家公務員総合職試験合格の有効期限をなくして」、にはデメリットも多そうで、違和感を感じる。 「「議員への説明はオンラインに移行せず対面のままだった」との回答が83%を占めた」、「議員」にしてみれば、これまで通りの、対面での説明の方が分かり易いので、当然なのだろう。 「メールでのやりとりを嫌う議員も多い」、「対面・口頭」という「昔から続いている」方式にこだわる議員が多いようだ。 「マスコミ」が「官僚の「違法行為」に対して大甘」なのは、確かに不思議だ。 「上司と部下の「特別な関係」で昇格することを防ぐ制度的な仕掛け」、これも学ぶべきいい仕組みだ。 「官僚が同じ役所の大臣、副大臣、政務官以外の政治家と接触することを禁止する法律がある」、「「同窓会」自体が禁止」、「政権交代が起きた後に、スムーズに政策転換できるように準備をする慣行」、なかなかいい慣行だ。 「優秀な官僚が消えていく…今すぐ国会議員の意識改革が必要だ! 国民に犠牲を強いる前に自分を改めよ」 「政権交代がほとんどないことで、自民党と霞が関の間は、制度的に一体化した」、「当選回数を基準とした「年功序列」の人事制度を確立させている。この制度の下で、自民党の族議員と官僚はともに出世していく「同士」の関係性を持つのだ。 また、自民党に世襲議員が多いことが、官僚との個人的な関係性をより濃密なものにする」、「自民党と霞が関の業務を超えて一体化した関係性が、官僚の不祥事の背景にある」、なるほど。 「自民党長期政権」が「世界と比較してみても、特異な政治的関係を作り上げた」、なるほど。 「組織の不正カルチャーは30年くらい平気で継承されるものなのだ」、その通りだ。 野口 悠紀雄 「時々家に戻ると、翌朝出勤する時に、子供たちから「お父さんまた来てね」と言われた」、まるで笑い話だ。 「自分たちの虚偽答弁を誤魔化すため、監督企業に「改ざん」まで命じていた」、初めて知ったが、確かに「監督企業」まで巻き込むとは、悪質この上ない。 「なぜ日本の官僚は政治家に「忖度」するのか?世界でも特異な制度の問題」 「ストーリー」には私は無批判に受け入れてしまったが、どういう部分が「盛った話」なのだろう。 上久保誠人 官僚の問題は、なかなか世の中の人々の共感を得にくい。しかし、有能な人間が集まらなくなるのは、由々しき問題だ。 彼らの勤務環境の改善は、日本の社会を少しでもよくするために、不可欠なことだ ダイヤモンド・オンライン 「質問」の「事前通告」により、答弁案を作成する側や答弁する側は大いに楽になった筈だ。
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メディア(その28)(「メディアの偏った報道」解消に挑む阪大教授の志 データで浮かび上がる日本の国際報道の問題点、日本経済新聞で2003年に起きた社長解任クーデター、マスコミ「記者クラブ」の信じがたい閉鎖性…米出身ジャーナリストが見たもの だから、似たようなニュースばかり) [メディア]

メディアについては、5月13日に取上げた。今日は、(その28)(「メディアの偏った報道」解消に挑む阪大教授の志 データで浮かび上がる日本の国際報道の問題点、日本経済新聞で2003年に起きた社長解任クーデター、マスコミ「記者クラブ」の信じがたい閉鎖性…米出身ジャーナリストが見たもの だから、似たようなニュースばかり)である。

先ずは、5月23日付け東洋経済オンラインが掲載した「誰も知らない世界を 誰もが知る世界に」を掲げる取材記者グループFrontline Pressによる「「メディアの偏った報道」解消に挑む阪大教授の志 データで浮かび上がる日本の国際報道の問題点」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/428939
・『グローバル化が一段と進んだ現在、海外のニュースも縦横に日本に届くようになり、日本人の国際理解も格段に増した……のだろうか? アメリカで起きた主な出来事はニュースで知っているだろう。イギリスやフランス、ドイツといった西欧での出来事も、少しは知っているかもしれない。では、アフリカの出来事は? 南米は? 私たちが普段見聞きしているニュースは、アメリカを中心とする一部の国に偏っている――。そうした構造をデータで検証する研究と活動を大阪大学大学院国際公共政策研究科のヴァージル・ホーキンス教授(47)が続けている。「ニッポンのすごい研究者」は今回、「報道されない世界」の解消に取り組むホーキンス教授を訪ねた(Qは聞き手の質問、Aはホーキンス教授の回答)』、興味深そうだ。
・『最初は通訳になりたいと思っていた  Q:研究者になるまで、どんな道をたどってきたのでしょうか。 A:僕は「国」というものが嫌いだから、(出身国は)絶対に書かないで。出身地を問われたら、僕はいつも「無所属です」「赤ちゃんだったので覚えてないけど、病院で生まれたと聞いています」などと答えているんです。人間ファーストでいきたいんですね。 高校のとき、歴史に興味を持ち、最初は通訳になりたいと思いました。 現代史の授業で冷戦を勉強し、夏休みの宿題が「新聞を切り抜いて冷戦に関するスクラップを作りなさい」だった。その記事の中で、ソ連のゴルバチョフとアメリカのブッシュが大笑いしている写真を見たんです。その両人の間に通訳が入っている。核兵器いっぱい持つこの2人を仲良く笑わせる通訳はすごいなあ、と。英語しかできなかったので、なにか外国語を学ばなければと思い、日本に来ました。 大阪大学大学院で、国際紛争や国連安保理の研究を手掛け、メディアの研究もやって博士号を取りました。研究者になる前は、特定非営利活動法人「AMDA」(本部・岡山)の職員でした。保健医療や貧困削減、開発系の仕事です。 カンボジアで約2年、ザンビアで約3年。いろんな世界を見ることができましたし、現場感覚を磨くことができましたが、壁も感じたんですね。) 当時は、コンゴ民主共和国で保険医療系のプロジェクトに取り組みたかった。どう考えても、そのプロジェクトのニーズは高い。調査で何度か現地入りもしました。 ところが、当たり前のことですが、資金が集まらないと、プロジェクトはできないわけです。 そのときにすごく思ったんですよ。誰も知らない状態で、資金が集まるわけがないだろう、と。政策を変えるためにも「現実を知る」ことがすごく大事だろう、と。それが、アフリカで現場を見て湧き上がった実感ですね。 僕自身がNGOに関わって現場に戻ることはないでしょう。その代わりに人の意識を変えたい。そのための仕事、研究を続けたいと考えています。 Q:研究の世界に入り、どんなテーマを手掛けてきたのでしょうか。 A:武力紛争とアフリカと報道。研究テーマはこの3つです。NGOでの経験をきっかけにして、「アフリカの紛争はなぜ報道されないのか」という疑問がありました。 私からすれば、明らかに報道は偏っている。日本で交通事故が起きれば、けが人1人だと報道されなくても、けが人が10人だと報道されるよね? しかし、アフリカで起こった紛争はそうじゃない。(犠牲者が何人になっても)報道されない』、「報道」の「偏り」をもたらしているのは、ニュース・バリューであって、「偏り」そのものには問題ないのではなかろうか。
・『コンゴの紛争は犠牲者が540万人いるのに報道されず  いちばん印象に残っているのは、コンゴ民主共和国の紛争(内戦)です。540万人という犠牲者数は、死者でいえば、朝鮮戦争以、世界最多でしょう。ベトナム戦争よりも多い。はっきり言えば、その死者数も確かではありません。 そもそも、あの紛争は2008年までしか犠牲者を数えていない。その後も紛争はずっと続いているから、実際は朝鮮戦争より多く、ひょっとしたら第2次世界大戦以来の死者数を出しているかもしれません。 そうした紛争に対し、報道はどうだったか。周りの8カ国ぐらいを巻き込んだ「紛争」でありながら、日本のメディアは「コンゴ内戦」という言い方を続けました。「アフリカの第1次世界大戦」と呼ばれるほどだったのに、ほとんど報道すらされなかった。 日本だけではありません。研究を続けるうちにアフリカに関する報道だけでなく、世界全体について、そして、紛争だけでなく、あらゆる事象についても、同じ傾向があることがわかってきました。 日本の国際報道では、いったい、どんな偏りが生じているのか。報道されない世界とは、どのようなものなのか。それを検証するために、ホーキンス教授は「伝わっていない世界」の情報を分析し、伝えるメディア・プロジェクト「グローバル・ニュース・ビュー(Global News View:GNV)」を立ち上げた。2016年のことである。プロジェクトには、研究室の学生や大学院生らが多数関わっている。 GNVでは、読売、朝日、毎日の3紙(いずれも東京本社版の朝刊)やデータベースを材料としてほぼすべての国際ニュースをピックアップする。トピックごとに分類したり、記事の分量や扱いを細かに調べたり。報道の内容についても「ネガティブ」「ポジティブ」「中立」という3つの指標で色分けする。そうしたデータをもとにして、報道された地域、その量や傾向を分析し、国際報道の現状を浮き彫りにする試みだ。 その結果、逆に「報道されていない地域」が浮き彫りになる。日本にニュースが届かない国々では、実際にどんなニュースが流れているのか。GNVはそうした報道についても現地のニュースサイトをチェックするほか、英語資料も分析。その国について英語で書かれたものをピックアップして学生に送り、それを学生がわかりやすい形に変えて公表している。 Q:GNVでの活動や研究を通して、ホーキンス先生は「日本の国際報道には2つの問題点がある」と主張しています。具体的には、どういうことなのでしょうか。 A:量が乏しすぎる。そして、中身が偏りすぎている。この2点です。もちろん、外国の国際報道にも同様の傾向はあります。測り方の問題があるので簡単に比較はできないですが、アメリカのテレビ報道では国際ニュースが15~20%くらいです。日本の新聞は、ニュース全体の10%前後ですね。 これとは別に、以前、私が手掛けた調査では、欧米の国際報道でアフリカのニュースが占める割合は6~9%でした。これに対し、日本の新聞では2~3%です。 日本の国際報道は量が乏しく、そのうえで地域的な偏りが激しい。とはいえ。欧米の国際報道も決してモデルにすべきようなものではありません』、「コンゴの紛争は犠牲者が540万人いるのに報道されず」、も日本にとってのニュース・バリューが小さいためではなかろうか。「日本の国際報道は量が乏しく、そのうえで地域的な偏りが激しい」、その通りだ。「GNV」では下記のように、ニュースは更新されているが、年間を通じた分析は2015-2017までのようだ。
https://globalnewsview.org/
・『ナショナリズムと自国中心主義の影響が大きい  日本の国際報道が偏りすぎている原因については、ナショナリズムと自国中心主義の影響が大きいと言えます。例えば、事故やテロがあれば、日本のメディアは「被害者に日本人がいるか」「その出来事と日本人にはどんな関わりがあるのか」といった点にばかり、まず目を向けます。 その次に来るのは、欧米メディアの目線です。日本の国際報道は、欧米メディアの報道を追いかけている。したがって、アメリカが着目するニュースに日本も着目します。アフリカの出来事を報道するにしても、しばしば、ニューヨークやワシントンから「アフリカのこの問題について、アメリカ当局はこういう見解を示している」といった伝え方をしています。 そのほかにも問題点はあります。まず低所得国と高所得国の間で生じている価値観の差。これは非常に大きい。要するに、貧困国であればあるほど、報道されません。これは鉄則です。 データを分析すると、報道されるかどうかの分かれ目はまだある。人種的な問題もその1つでしょう。まずは日本人かどうか、その次は白人かどうか。この差は本当に大きい。肌の色だけではありません。黒人であっても、アメリカに住んでいる黒人はまだ注目されます。だから、ブラック・ライブズ・マター運動は日本でも注目されました。 では、アフリカの黒人は? コンゴ民主共和国の紛争がそうだったように、アフリカでは多くの黒人が亡くなっても注目されません。 日本で報道された2016年の「国別報道量」。全国紙3紙の文字数をもとにGNVが作成した。水色が濃い国ほど報道量が多い。ブラジルに色が付いているのは、この年に開かれたリオデジャネイロ五輪の影響と思われる(出所:GNVのホームページ)』、日本との関係の深いほどその国への関心も深まる筈だ。
・『国内の報道ですら、存在が脅かされている  G7を構成する日本のような国で、国際報道の少なさは世界のためにならず、回り回って日本のためにもならない、とホーキンス教授は強調する。地理的な状況から、国際報道にある程度の偏りが生じることは当然としても、「日本人か日本人以外か」「先進国か後進国か」といった程度の判断でニュースが選択されているとしたら、日本の国際化などまったくおぼつかない。 Q:この現状をどう変えたらいいでしょうか。方法は見えていますか。 A:すごく難しい質問です。そして今後はますます、解決が難しくなっていくでしょう。残念ながら、この場での具体的な提言は無理ですね。報道のビジネスモデル自体が崩れているからです。 同時に若者のニュース離れです。SNSが発達する以前から、ネットの世界では「ニュースはタダで見るものだ」という考えが社会に定着してしまい、報道のビジネスモデルは崩れていきました。国際報道どころか、普通の真面目な国内のストレートニュースですら消えていっているじゃないですか。日本の真面目な政治的な報道でさえ、存在が脅かされているじゃないですか。 そんな状態では、国際報道どころではないでしょう。そして、そうした環境下でグローバル化に拍車がかかっているわけです。国際ニュースの量的な乏しさ、質的・地理的な偏りは、本当はますます日本の重要課題になっているはずなんですが・……。 Q:GNVの成果と課題について教えてください。 A:どうやって、少しでも多くの人に見てもらうか。それが大きな課題ですね。もう1つは、複雑さを大切にしていく、ということです。シンプルに、わかりやすく、ひと言で何かを言い表せば、「なるほど」と思う人はいるでしょう。池上彰さんのように。 しかし、国際社会で起きている出来事は、そんなに単純ではありません。GNVの編集原則の1つは「複雑さを犠牲にせずに分かりやすく書く」ということです。難しさや複雑さを犠牲にしたら意味がありません。それどころか、事実と違うものが認識されてしまう可能性があります。 GNVのニュースサイトで扱う記事は、人に知られていないものです。すでに知られているニュースは取り上げません。だから、アメリカなどに関する記事は書きません。中国や朝鮮半島に関する記事も出ていません。 その代わり、日本ではまったく知られていないニュースを出します。例えば、エチオピアでは2018年4月に政権交代があり、アビー首相が就任しました。アビー政権は国内で政治犯釈放などを断行して大改革を進める一方、隣国のエリトリアと和平合意も結んだ。それについて、GNVは2018年9月に記事を出しました』、「日本の真面目な政治的な報道でさえ、存在が脅かされているじゃないですか。 そんな状態では、国際報道どころではないでしょう」、その通りだ。
・『GNVが不要になるのがいちばんいい  私たちは毎年、「潜んだ世界の重大ニューストップ10」というのも作っているんですね。注目されていないけど、これこそが大事だというニュース。エチオピアの政権交代はその意味で大ニュースでした。 実際、アビー首相は1年後にノーベル平和賞を取り、日本でもようやくエチオピアの改革に目が向きました。アゼルバイジャンとアルメニアの紛争もそう。昨年、紛争が再発しましたが、その3年前の時点でGNVは両国の緊張が増していることを伝えました 今は必要とは思えなくても、いつか必要になる。そういうニュースは必ずあります。だから、ニュースの空白をつくらず、報道されないことを報道することが重要になってくる。メディアの偏りを解消することは、すごく難しい。 本当は、GNVが不要になるのがいちばんいい。要するに、読売新聞とか、朝日新聞とか、NHKとか、大メディアがきちんと、本当の意味での世界を報道すればいいわけです。われわれの仕事は、それまでの穴埋めです』、「潜んだ世界の重大ニューストップ10」は検索しても表示されなかった。「GNV」の取り組み自体は結構なことだ。

次に、6月16日付け日刊ゲンダイが掲載した評論家の佐高信氏による「日本経済新聞で2003年に起きた社長解任クーデター」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/290387
・『「株式会社・日本」の”社内報”と私がヤユする日本経済新聞社で、社長解任クーデターという反逆の狼煙があがったのは2003年だった。日本新聞協会賞を受賞した敏腕記者で現役の部長だった大塚将司が内部告発をしたのである。日経はオーナーがいなくて、株は社員やOBが持っている。大塚は社員株主として、子会社の不正経理問題や社長の鶴田卓彦の女性スキャンダルを指弾する文書を社員らに送付し、鶴田の取締役解任決議を求める議案を提出した。 すると鶴田は大塚を名誉毀損で東京地検に告訴し、株主総会の直前に一方的に懲戒解雇したのである。 それに対して大塚は鶴田らを相手どり、子会社の不正経理により生じた損失分の94億円を日経に賠償するよう求める株主代表訴訟と、自身の解雇無効確認訴訟を東京地裁に起こすことで対抗する。 その株主総会では鶴田の解任案は否決され、鶴田は代表権のある会長から相談役となって院政を敷いた。 雑誌『創』は2004年の1、2月合併号で、日経OBを対象に実施したアンケート結果を載せている。そこには痛憤の直言が並ぶ。 同誌編集長の篠田博之は「ジャーナリズムとはいわば他人に対して土足で踏み込むことをなりわいとした職業である。それが自分のこととなると、不都合なことを覆い隠そうとするのでは、読者の信頼は得られるはずもない。自らを厳しく検証し、自浄作用を発揮してこそ、ジャーナリズムは他社を追及する権利を担保し得るのだと思う」と指摘しているが、その通りだろう。 大塚が「鶴田解任」の株主提案をしたことについては、71%のOBが「意義ある提起だ」とし、鶴田前会長の辞任は「表面的な糊塗策で何の解決にもなっていない」という答えが55%、「鶴田体制を支えてきた役員は総退陣すべき」という声も48%で半数近かった。この体質は現在も改まってはいない。(敬称略)、「ジャーナリズムとはいわば他人に対して土足で踏み込むことをなりわいとした職業である。それが自分のこととなると、不都合なことを覆い隠そうとするのでは、読者の信頼は得られるはずもない。自らを厳しく検証し、自浄作用を発揮してこそ、ジャーナリズムは他社を追及する権利を担保し得るのだと思う」、至言である。なお、日経との法廷闘争では、不当な懲戒解雇撤回に成功。日本経済研究センター研究開発部主任研究員に復帰、その後、退職(Wikipedia)

第三に、6月15日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストのマーティン・ファクラー氏による「マスコミ「記者クラブ」の信じがたい閉鎖性…米出身ジャーナリストが見たもの  だから、似たようなニュースばかり」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/84006?imp=0
・『アメリカ出身のジャーナリスト、マーティン・ファクラー氏の新刊『日本人の愛国』は、外国人の目から見た日本の「愛国」について論じている。そんな氏の視線は、同質な大手マスコミ記者が集まる「記者クラブ」にも向けられている。同書から、筆者が上皇のパラオ訪問時に感じた記者クラブの閉鎖性について、一部編集のうえ紹介したい』、興味深そうだ。
・『天皇夫妻のパラオ訪問に同行  ペリリュー島への行程はとても厳しいものだった。そもそもペリリュー島には、2人と宮内庁職員などの随員を含めた一行を乗せる旅客機が離着陸できる飛行場がない。 宮内庁が立てた計画は、パラオ国際空港があるバベルダオブ島からコロール島まで橋をわたり陸路で移動。パラオ主催の歓迎レセプションおよび晩餐会の後にパラオ国際空港へ戻り、海上保安庁のヘリコプターで同庁の巡視船あきつしまへ移動して宿泊。翌日に再びヘリコプターでペリリュー島へわたるというものだった。 安全面が考慮され、コロール市内のホテルではなく巡視船内の宿泊となった。急傾斜の階段が少なくない船内には急きょ手すりなどが設けられたが、快適とはいえない環境だった。 明仁天皇は2003年に前立腺がんの、12年には狭心症の冠動脈バイパス手術を受けていた。80 歳を超えた体にかかる負担を懸念する声もあったが、計画は実行された。ペリリュー島への訪問を強く望んでいたことが伝わってくる。 おりしも15年4月29日に、安倍首相がアメリカ連邦議会で日本の内閣総理大臣として初めて演説することが決まっていた。ペリリュー島とワシントンとで、日本の2人の指導者は、70年を迎えていた戦争をどう語るか。そして、戦後の未曾有の変化に直面している日本や日本国民に、どのようなビジョンの国家像を訴えるのか。 特に戦場だったペリリュー島での明仁天皇の様子を紙面でアメリカ国民に伝えることは意義のあることだと思い、当時、ニューヨーク・タイムズ紙の東京支局で働いていた私は、天皇・皇后のパラオ訪問の同行取材を宮内庁へ申し入れた』、「安全面が考慮され、コロール市内のホテルではなく巡視船内の宿泊となった」、「前立腺がんの・・・狭心症の冠動脈バイパス手術を受けていた。80 歳を超えた体にかかる負担を懸念する声もあったが、計画は実行」、「天皇」の「訪問を強く望」む姿勢には頭が下がる。
・『記者クラブから締め出しを食らう  宮内庁は私の取材申請を快諾してくれた。しかし、別の問題が発生した。宮内記者会の存在だ。少し余談めいているが記しておきたい。 当時、パラオの空の玄関口、パラオ国際空港へは、成田空港からデルタ航空が週2便を就航させていた。フライト時間は約4時間半。宮内記者会に所属する大手メディアの記者たちは、チャーター便で行ったが、私はパラオに長く滞在したかったので、デルタ航空の普通の便を使い、空港からはレンタカーを借りて、コロールまで移動した。 ホテルは、宮内記者会に所属するメディアと同じだったから、そのあとは一緒に移動できると考えていた。 ところが私には、コロールからペリリュー島まで移動する船の乗船許可が出なかった。宮内記者会が手配した船だから、という理由だ。記者会に所属していない私と週刊誌、月刊誌の記者は乗れなかった。経費面を負担すると提案しても、状況は変わらなかった。 日本から遠く離れた場所でも発揮される縄張り意識に笑うしかなかったが、想定していた事態でもあった。これまでに何度も、日本の記者クラブ特有の閉鎖的な体質に、辟易とさせられてきたからだ。 ほんの一例を示そう。ウォール・ストリート・ジャーナル東京支局の特派員として、日本銀行を担当していたときのことだ。就任したばかりの日本銀行の福井俊彦総裁の記者会見への出席をめぐってひと悶着あった。 日本銀行の広報部へ申請すると、「私どもではなく、記者クラブの許可を取ってください」と言われた。当時の幹事社だった日本経済新聞の担当記者に連絡を入れると、記者クラブ加盟社ではないという理由で断られた。 食い下がった私に対して、「福井総裁へ質問をしないのならばOK」と条件をつけられ、閉口するしかなかった。質疑応答に加わることなく、ただ傍聴しているだけの記者会見にいったい、何の意味があるのだろう。日本銀行の広報に再び問い合わせたが状況は変わらず、結局、私は記者会見への出席を諦めた。 外国人記者だけではなく、日本人の雑誌やネットメディア、小さい地方紙、フリーランスなどの記者たちはみな経験していることである。ただ、私の取材手法は日本のメディアでは主流の権力者からの情報を元にしたものではなく、調査報道が基本だ。記者クラブから締め出されても特に困ることもなかった。 念のために言うと、アメリカにも記者クラブのようなものは存在する。一番似ている組織は、大統領を取材するホワイトハウス記者協会。1914年に設立され、記者会見室の席順も演台に向かって一列目は左からNBC、FOXニュース、CBSニュース、AP通信、ABCニュース、ロイター、CNNの記者が座ることがあらかじめ決められている。 とはいえ、ホワイトハウスの広報官にすべてコントロールされるようになったメディアは、批判的な視線を向けられ「バブルに入っている」と揶揄される。 バブルとは空間を意味していて、ひとつの空間のなかでテレビ局は同じ内容のニュースを報じ、通信社や新聞社は同じニュアンスの記事を書く。メディアのアイデンティティも何も存在しない状態は、残念ながら視聴者や読者に価値を届けられない。 同様のバブルが日本の宮内記者会内にも存在していた。そして、記者たちはそのバブルをそのままパラオに持ってきた。そのバブルに入っていなかった私は、宮内記者会の船に乗るのを拒否され、自分で漁船をチャーターしてペリリュー島へ向かわざるを得なかった。 この費用は日本円で1日5万円ほどだった。週刊誌の記者が同行したいと希望してきたので費用を折半した。月刊誌の記者は独自の取材を行うという理由で別行動だった。 このとき宮内記者会の記者たちはわずか1泊2日で帰国した。しかし、その後も私はパラオに残り、今度は1人で漁船をチャーターしてペリリュー島へもう一度わたった。島内に今なお残る戦争の爪痕を自分の目で見たいと思ったのだ』、「私には、コロールからペリリュー島まで移動する船の乗船許可が出なかった。宮内記者会が手配した船だから、という理由だ。記者会に所属していない私と週刊誌、月刊誌の記者は乗れなかった・・・日本から遠く離れた場所でも発揮される縄張り意識に笑うしかなかった」、海外でまで「記者会」の論理を振り回すとは恐れ入る。「ホワイトハウスの広報官にすべてコントロールされるようになったメディアは、批判的な視線を向けられ「バブルに入っている」と揶揄される」、「バブルとは空間を意味していて、ひとつの空間のなかでテレビ局は同じ内容のニュースを報じ、通信社や新聞社は同じニュアンスの記事を書く。メディアのアイデンティティも何も存在しない状態は、残念ながら視聴者や読者に価値を届けられない」、日本の記者クラブと同じようだ。
・『忘れられていた南の島での激戦  話を戻そう。コロールから南方にあるペリリュー島への所要時間は船で1時間ほど。緑豊かな無人島の合間に紺碧の浅瀬が広がるロックアイランドと呼ばれるエリアを進む。世界遺産にも登録されている美しい風景の中に突然、墜落した零戦のプロペラ部分が海面から姿を現した。その光景の落差には感じ入るものがあった。 ペリリュー島へ到着した明仁天皇と美智子皇后が最初に向かった、島の最南端にある西太平洋戦没者の碑へ急いだ。赤道直下にあるペリリュー島の気温は、4月なのに30度を超えていただろうか。ぬぐってもぬぐっても汗がにじみ出てくる。 白いワイシャツ姿の明仁天皇、白いスーツ姿の美智子皇后を乗せたヘリコプターは、旧帝国陸軍が作った滑走路の上に着陸。用意されていたバスで島内を移動し、パラオ共和国とともに太平洋戦争の戦地となったミクロネシア連邦、マーシャル諸島共和国の大統領夫妻とともに西太平洋戦没者の碑を訪れた。 日本政府によって1985年に建立された西太平洋戦没者の碑は、日本列島がある方角を向いている。白い菊の花を供花台に供え、深くこうべを垂れた二人は、美しい海をはさんで10キロ先に浮かぶアンガウル島へも拝礼した。 人口わずか170人ほどの小島でも日本軍とアメリカ軍が戦火をまじえ、日本側で1200人、アメリカ側で260人の戦没者を出していた。 ペリリュー島の戦いに関する資料は、実は日本国内にほとんど存在しておらず、いつしか「忘れられた島」と呼ばれるようになった。 西太平洋戦没者の碑があるペリリュー平和公園には、ペリリュー島の戦いから生還した土田喜代一さんをはじめとする元日本兵や戦没者の遺族ら、多くの関係者も訪れていた。2018年に98歳で死去した土田さんは戦いの終結後もアメリカ軍へ抗戦し、終戦後の1947年4月まで島内の洞窟に潜伏し続けた経験をもっていた。 パラオ訪問に先立って、土田さんを含めた生還兵は皇居に招かれ、懇談していた。ペリリュー島で再会した美智子皇后から「お参りさせていただきました」と、明仁天皇からは「どうぞ元気でね」とお言葉をかけられた土田さんは、そのときの思いをこんな言葉で表した。 「今回の訪問で、ペリリュー島とはこういう戦いの島であったということが、世の中に知られたことが私たちには非常にうれしい」 2人が訪れたことで、歴史に埋もれていた感のあるペリリュー島は図らずも日本人が広く知る場所となった。 上皇夫妻がパラオを訪問した同月、安倍前首相はアメリカ連邦議会で演説を行った。しかしそこで示された姿勢は、筆者がパラオ訪問で感じたものとまったく対照的だったという。はたして、日本人にとって「愛国」とはどのような態度を指すのか? 新刊『日本人と愛国』は全国の書店、ネット書店にて好評発売中!』、「土田さんは戦いの終結後もアメリカ軍へ抗戦し、終戦後の1947年4月まで島内の洞窟に潜伏し続けた経験」、フィリピンの小野田少尉の「ペリリュー島」版のようだ。「2人が訪れたことで、歴史に埋もれていた感のあるペリリュー島は図らずも日本人が広く知る場所となった」、大いに意義ある訪問だった。 
タグ:「ジャーナリズムとはいわば他人に対して土足で踏み込むことをなりわいとした職業である。それが自分のこととなると、不都合なことを覆い隠そうとするのでは、読者の信頼は得られるはずもない。自らを厳しく検証し、自浄作用を発揮してこそ、ジャーナリズムは他社を追及する権利を担保し得るのだと思う」、至言である 「私には、コロールからペリリュー島まで移動する船の乗船許可が出なかった。宮内記者会が手配した船だから、という理由だ。記者会に所属していない私と週刊誌、月刊誌の記者は乗れなかった・・・日本から遠く離れた場所でも発揮される縄張り意識に笑うしかなかった」、海外でまで「記者会」の論理を振り回すとは恐れ入る。 「「メディアの偏った報道」解消に挑む阪大教授の志 データで浮かび上がる日本の国際報道の問題点」 「日本経済新聞で2003年に起きた社長解任クーデター」 「日本の真面目な政治的な報道でさえ、存在が脅かされているじゃないですか。 そんな状態では、国際報道どころではないでしょう」、その通りだ。 佐高信 マーティン・ファクラー 日刊ゲンダイ 日本との関係の深いほどその国への関心も深まる筈だ。 なお、日経との法廷闘争では、不当な懲戒解雇撤回に成功。日本経済研究センター研究開発部主任研究員に復帰、その後、退職(Wikipedia) 「2人が訪れたことで、歴史に埋もれていた感のあるペリリュー島は図らずも日本人が広く知る場所となった」、大いに意義ある訪問だった。 「報道」の「偏り」をもたらしているのは、ニュース・バリューであって、「偏り」そのものには問題ないのではなかろうか。 Frontline Press メディア 「GNV」では下記のように、ニュースは更新されているが、年間を通じた分析は2015-2017までのようだ。 https://globalnewsview.org/ 「土田さんは戦いの終結後もアメリカ軍へ抗戦し、終戦後の1947年4月まで島内の洞窟に潜伏し続けた経験」、フィリピンの小野田少尉の「ペリリュー島」版のようだ。 現代ビジネス 東洋経済オンライン 「マスコミ「記者クラブ」の信じがたい閉鎖性…米出身ジャーナリストが見たもの  だから、似たようなニュースばかり」 (その28)(「メディアの偏った報道」解消に挑む阪大教授の志 データで浮かび上がる日本の国際報道の問題点、日本経済新聞で2003年に起きた社長解任クーデター、マスコミ「記者クラブ」の信じがたい閉鎖性…米出身ジャーナリストが見たもの だから、似たようなニュースばかり) 「潜んだ世界の重大ニューストップ10」は検索しても表示されなかった。「GNV」の取り組み自体は結構なことだ。 「安全面が考慮され、コロール市内のホテルではなく巡視船内の宿泊となった」、「前立腺がんの・・・狭心症の冠動脈バイパス手術を受けていた。80 歳を超えた体にかかる負担を懸念する声もあったが、計画は実行」、「天皇」の「訪問を強く望」む姿勢には頭が下がる。 「コンゴの紛争は犠牲者が540万人いるのに報道されず」、も日本にとってのニュース・バリューが小さいためではなかろうか。「日本の国際報道は量が乏しく、そのうえで地域的な偏りが激しい」、その通りだ 「ホワイトハウスの広報官にすべてコントロールされるようになったメディアは、批判的な視線を向けられ「バブルに入っている」と揶揄される」、「バブルとは空間を意味していて、ひとつの空間のなかでテレビ局は同じ内容のニュースを報じ、通信社や新聞社は同じニュアンスの記事を書く。メディアのアイデンティティも何も存在しない状態は、残念ながら視聴者や読者に価値を届けられない」、日本の記者クラブと同じようだ。
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小池都知事問題(その6)(グローバルダイニングの東京都提訴が 「小池劇場」の幕を開けかねないワケ、女帝・小池百合子知事の都民ファが都議選で大惨敗の危機 自民 立憲が躍進【世論調査入手】、小池都知事が不在の「東京都議選」…公明党が大後悔し 共産党が高笑いしている理由 応援演説恒例の「第一声」がなかった、小池都知事「二股檄文」自民への配慮アリアリ 都ファ候補は事実上の“絶縁状”に落胆) [国内政治]

小池都知事問題については、3月17日に取上げた。東京都議会議員投票日を2日後に控えた今日は、(その6)(グローバルダイニングの東京都提訴が 「小池劇場」の幕を開けかねないワケ、女帝・小池百合子知事の都民ファが都議選で大惨敗の危機 自民 立憲が躍進【世論調査入手】、小池都知事が不在の「東京都議選」…公明党が大後悔し 共産党が高笑いしている理由 応援演説恒例の「第一声」がなかった、小池都知事「二股檄文」自民への配慮アリアリ 都ファ候補は事実上の“絶縁状”に落胆)である。

先ずは、3月25日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「グローバルダイニングの東京都提訴が、「小池劇場」の幕を開けかねないワケ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/266452
・『グローバルダイニングが都を提訴 反旗を翻す飲食店が続出か  「欲しがりません、勝つまでは」と言わんばかりに、お国のためにただひたすら自己犠牲と我慢を強いられてきた飲食店から、怒りと不満の声が上がっている。 《「いじめとしか」「脅迫だ」店名公表に罰則…飲食店悲鳴》(朝日新聞1月7日) この1年、飲食店は新規感染者が増えるたびに「容疑者」扱いされてきたが、ここにきていよいよ「罪人」扱いされるようになってきたからだ。 罪人が増えれば当然、「見せしめ」にされる者も現れる。日本の行政内部には伝統的に、「罪人は犯罪抑止のために晒し者にしてOK」という暗黙のルールがある。 たとえば、今は警察に逮捕・勾留された容疑者が取調べで検察へ送られる際、ブルーシートなどでその姿が隠されているが、昭和の時代はマスコミの前でも普通に手錠・腰縄姿で歩かせ、護送車に乗せていた。記者たちはこのストロークをつかって容疑者の姿を撮ってもいいという、紳士協定があったのだ。 これは、当時は人権意識が低かったというだけの話ではない。江戸時代の「市中引き回しの上打首獄門」の流れを汲むカルチャーで、警察組織としても、罪人をマスコミを使って「晒し者」にすることで、犯罪抑止につなげたいという狙いがあった。 事実、筆者も20年以上前、ある大きな事件で、どこのメディアにも顔がまったく出ていない犯罪者の「ガン首」(顔写真)を、警察幹部からこっそり頂戴して世間に公表したことがある。なぜこの人がそんな情報漏洩をしたのかというと、「こんな事件が二度と起きないよう、犯人の姿をしっかり公表すべきだ」という義憤からだ。 そんな江戸時代から脈々と続く日本の行政の「見せしめカルチャー」が、令和の時代もまったく健在だということを示しているのが、東京都によるグローバルダイニングへの時短命令である。 時短要請の呼びかけをしているものの、それに従わないということで、27店舗が時短命令を下されたわけだが、なんとそのうちの26店舗がグローバルダイニング系列だったのだ。 都内で要請に従わない飲食店は2000軒以上あると言われているにもかかわらず、ここまで露骨に同社が狙われたのは、「カフェ ラ ボエム」「モンスーンカフェ」「権八」など若者にも人気の店舗を多く運営していることもあるだろうが、「抑止」という狙いがあることは明白だ』、「江戸時代から脈々と続く日本の行政の「見せしめカルチャー」が、令和の時代もまったく健在だということを示しているのが、東京都によるグローバルダイニングへの時短命令」、とは言い得て妙だ。
・『長谷川社長の過去の言動に見る「狙い撃ち」された伏線とは  この処分に対して「狙い撃ちにされた」と主張した同社の長谷川耕造社長は、東京都と小池百合子都知事を提訴したことで一躍「時の人」となったが、実はその前から一部ではその言動が注目されていた。 政府の緊急事態宣言が発出された1月7日、「時短営業せず平常通り」とする公式見解をホームページに出し、政府・自治体のコロナ対策を痛烈に批判していたからだ。 「医療崩壊、本当なのか疑問に思っています。冬にウイルス感染症は増えるのは自然の摂理。これに対して(パニックを起こして)、医療崩壊とおっしゃっている国や自治体の関係者、感染症専門家の方々は何の準備もしていなかった?死者数は米国などの約40分の1しかいないのに、なぜ医療崩壊?」 実はこれは、日本医師会から億を超える献金と選挙協力をもらっている自民党と、同じく東京都医師会と良好な関係を築いている小池氏にとって、最も触れてほしくない話なのだ。 このような「医師会ファースト」のコロナ対策への批判を公然と行い、時短営業にも従わないグローバルダイニングをこのまま野放しにしたらどうなるかというと、他の飲食店に示しがつかない。「なんだ、政府も東京都も大したことないな」と公権力がナメられると、長谷川氏と同じような動きをする飲食店経営者が増えてしまう恐れがある。 これを防ぐには「罪人」として吊るし上げて黙らせるしかないというのは、容易に想像できよう。 実際、グローバルダイニングに東京都から届けられた命令書には、「緊急事態措置に応じない旨を強く発信するなど、他の飲食店の20時以降の営業継続を誘発するおそれがある」という一文があったという。 戦時中、街中で「竹槍なんかで勝てるわけねーだろ」とか「戦地からの噂じゃどこも日本軍はボロ負けだってよ」なんて演説をしようものなら、たちまち特高警察に連行され、凄まじい拷問を受け、家族や友人も非国民として石を投げられたものだが、それの「マイルド版」が令和日本でも絶賛継続中ということなのだ』、「「医師会ファースト」のコロナ対策への批判を公然と行い、時短営業にも従わないグローバルダイニングをこのまま野放しにしたらどうなるかというと、他の飲食店に示しがつかない」、「これを防ぐには「罪人」として吊るし上げて黙らせるしかない」、なるほど。
・『小池都知事にとってダメージはどれほど大きいか  という話をすると、「こんな公平性に欠けた罰則の運用をしていたら、小池氏の政治生命に関わるのではないか」という印象を抱く方も多いだろう。実際、この件に関する報道で登場する有識者の中にも、裁判での判決はさておき、政治家・小池百合子にとってはダメージになるという見通しを持っている人が多い。 ただ、筆者の考えはまったく逆だ。グローバルダイニングと長谷川社長には大変気の毒な話なのだが、今回の「見せしめ」批判が、現行のコロナ対策の方針転換につながることは難しい。むしろ、6月25日に告示される都議選前に仕掛けられる「小池劇場」に利用され、小池氏のリーダーシップを示す材料にされてしまうのではないかとみている。 具体的に言うと、都民の命と健康を守るため、世論の反対を恐れずにコロナ対策を断行する小池氏を引きずり降ろそうとする「抵抗勢力」にされてしまい、結果として「コロナ対策で政府よりもリーダーシップを発揮する東京都知事」を輝かせる引き立て役にされてしまうのだ。 なぜそのように思うのかというと、過去の実績による。これまで小池百合子という政治家は、「健康」「命」を守るという大義名分のもとで「飲食店イジメ」を正当化することにより、その政治力を拡大してきたという、動かし難い事実があるのだ。 支持者の方から「小池氏を批判したいからって、ワケのわからない誹謗中傷をするな」と怒られそうだが、実は小池氏が都内の飲食店と敵対したことは、これが初めてではない』、「都民の命と健康を守るため、世論の反対を恐れずにコロナ対策を断行する小池氏を引きずり降ろそうとする「抵抗勢力」にされてしまい、結果として「コロナ対策で政府よりもリーダーシップを発揮する東京都知事」を輝かせる引き立て役にされてしまうのだ」、鋭い指摘でその通りだろう。
・『受動喫煙防止条例で小池氏を支えた勢力の正体  勘のいい方はお気づきだろう。そう、小池氏がマニフェストの1つとして掲げ、2018年6月に制定された「東京都受動喫煙防止条例」だ。 「老人福祉施設、運動施設、ホテル、事務所、船舶、鉄道、従業員がいる飲食店など、多数の者が利用する施設等は原則屋内禁煙とします」(広報東京都平成30年8月号)とうたうこの条例が、愛煙家の天国だった居酒屋などから大不評だったことは、今さら説明の必要はないだろう。 条例制定前には、東京都生活衛生同業組合連合会など、飲食関連団体の会員約200名が、都庁のある新宿区に集結して、「小池知事はわれわれを見捨てるな!」とシュプレヒコールを挙げ、制定前も施行前も以下のような批判が叫ばれていた。 《飲食業界が東京都の受動喫煙防止条例に悲鳴「禁煙か従業員解雇かの選択を迫るなんてあり得ない!」》(デイリーニュースオンライン2018年6月19日) 《20年4月の「受動喫煙防止条例」施行に飲食店経営者が悲鳴》(日刊ゲンダイ2019年5月15日) しかし、小池氏はこの飲食店からの悲鳴をスルーした。「殺す気か」「いじめだ」とどれだけ罵られてもこの条例を進めた。「そんなもん、飲食店の全面禁煙は世界でも常識なんだから当然だろ」という、嫌煙家の皆さんからの声が聞こえてきそうだ。もちろん、小池氏がそのような政治的信念のもとで、受動喫煙対策を進めたという考えを否定するつもりは毛頭ない。 ただ、一方で「選挙戦略」という側面もあったのではないか。つまり、「飲食店を敵に回しても、それと引き換えに非喫煙者やファミリー層など有権者や医療関係者から強い支持を得られる」という確信があったからこそ、ここまで露骨に飲食店を冷遇できたのではないかということだ。 実際、受動喫煙防止条例制定をマニュフェストに掲げた2017年7月の都議選で、小池氏が率いた都民ファーストの会は、追加公認も含めて55議席を獲得、公明党とともに過半数を占め、自民党は議席を半分に減らすなど歴史的な大惨敗を喫した。 このオセロのような鮮やかな権力交代劇を後ろで支えたのが、実は東京都医師会だったということは、あまり知られていない。 日本医師会は、かねてから受動喫煙防止を強く訴えていたが、自民党東京都連は後ろ向きだった。支持者の中には飲食店も多くいるし、何よりも自民党内には、タバコ農家や販売業者などタバコ関連業界を支持基盤とする、いわゆる「タバコ族」も多く存在していたからだ。では、その弱点を突いて、野党が受動喫煙防止を掲げられるかというとそうでもない。旧民主党勢力はJT労組の影響を色濃く受けるからだ。 つまり、これまで既存政党は、大人の事情で受動喫煙対策を声に大にして主張できなかったのだ。その「空いた席」に颯爽と現れたのが、小池氏率いる都民ファーストの会である。日本医師会にとって、小池氏は長く待ちわびた「医師会ファースト」の政治家だったのだ。 このあたりは、2017年5月にダイヤモンド・オンラインに掲載した『小池都知事が仕掛ける「たばこ戦争」の裏にあるしたたかな戦略』という記事で詳細を述べているので、興味のある方はぜひ読んでいただきたい』、「「選挙戦略」という側面・・・「飲食店を敵に回しても、それと引き換えに非喫煙者やファミリー層など有権者や医療関係者から強い支持を得られる」という確信があったからこそ、ここまで露骨に飲食店を冷遇できたのではないか」、「既存政党は、大人の事情で受動喫煙対策を声に大にして主張できなかったのだ。その「空いた席」に颯爽と現れたのが、小池氏率いる都民ファーストの会である。日本医師会にとって、小池氏は長く待ちびた「医師会ファースト」の政治家だったのだ」、見事な解説である。
・『「飲食店イジメ」で勢力を拡大 今回の都議選で勝利の再現を狙うか  さて、ここまでお話をすれば、小池氏が「健康」「命」を守るため、「飲食店イジメ」を推進することでその政治力を拡大してきたと述べたのが、事実無根の誹謗中傷などではないことが、ご理解いただけたのではないか。 前回の都議選で、小池氏は飲食業界やタバコ業界を敵に回したが、「タバコの害から健康や命を守りたい有権者」と東京都医師会からの力強い支持を得て、見事に大勝した。 今回の都議選でも、この勝利の法則は使えるはずだ。つまり、飲食業界や外食を楽しみたい人たちを敵に回しても、「コロナから健康や命を守りたい有権者」と東京都医師会からの力強い支持を得れば、4年前の圧勝を「再現」することができるのだ』、こういった「小池氏」の皮算用は果たして実現するのだろうか。
・『みんなが踊らされながら「小池劇場」の幕が上がる  そのような「小池劇場」の理想的なシナリオを考えていくと、実は今回のグローバルダイニングへの「露骨な狙い撃ち」にも、何か意味があるような気がしてしまう。 森喜朗氏の差別発言後、小池氏が絶妙なタイミングで4者会談を欠席すると表明したことを受け、橋下徹氏が、「あの振る舞いは政治家としては本当にピカイチ」と称賛したように、小池氏が本当に恐ろしいのは、世論の動向を瞬時に察知して、政治家としての自身の評価につながるポジショニングができることなのだ。 そこで奇妙なのは、そんな抜群の政治センスを誇る小池氏が、大事な都議選の直前にグローバルダイニングをここまで露骨に狙い撃ちするのか、ということだ。嫌がらせや批判を封じ込めるにしても、「27店舗中26店舗」は明らかにやりすぎだ。世間に対して、「私はグローバルダイニングにケンカを売っています」と高らかさに宣言しているようなものである。 だからこそ、長谷川社長は売られた喧嘩を買ったわけだが、そのアクションは結局、「小池百合子」というリーダーに人々の注目を集めている。 「コロナ対策でリーダーシップを発揮していない」と叩かれる菅首相よりはるかにスポットライトが当たっている。飲食店に時短を徹底させるその姿は、コロナが怖くてたまらないという人たちの目に、「小池氏はかなり頼もしいリーダーだ」と映るはずだ。 つまり、グローバルダイニングへの「露骨な狙い撃ち」によって、確かに小池氏は「敵」を増やしたが、一方で「コロナから健康や命を守りたい有権者」のハートをがっちりと掴むことに成功した側面もあるのだ。 支持率急落の菅政権の解散戦略にも影響を与えるほど、恐れられている「小池劇場」。我々観客が気づかないだけで、実はすでにその幕は上がっているのかもしれない』、今回の「小池劇場」は体調悪化など、必ずしも思い通りにはならないのかも知れない。

次に、6月20日付けAERAdot「女帝・小池百合子知事の都民ファが都議選で大惨敗の危機 自民、立憲が躍進【世論調査入手】」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dot/photoarticle/2021061900019.html?page=1
・『これから政局の焦点は6月25日告示、7月4日に投開票される東京都議会議員選挙、23日に開幕する東京五輪・パラリンピックに移る。都議選は秋にも行われる衆院解散・総選挙の前哨戦とされるだけに「関ケ原の合戦」と各党の鼻息は荒い。自民党が先週末、東京都内の全選挙区で行った世論調査データをAERAdot.編集部は独自入手した。 (【世論調査データ】東京都議会選挙で各党が獲得する議席予測はリンク先参照) その結果によると、前回は55議席を獲得して圧勝した小池百合子・東京都知事が率いる都民ファーストの会(以下は都民ファ)が、今回は6~19議席と厳しい予測となっていた。前回は23議席とかつてない惨敗となった自民党は今回、48~55議席という予測で勢いを盛り返している。前回は都民ファ、今回は自民党と組む公明党は14~23議席と横ばい。野党の立憲民主党は前回の8議席から今回は20~26議席まで躍進しそうだ。共産党も18議席から今回は17~23議席と伸びるという予測となっている。 「ここまで減るとは。絶望的な数字ですね…」こう真っ青な顔で話すのは、都民ファの現職都議だ。前回は小池旋風で自民党候補を次々に破った都民ファの候補たちだが、今回は与党として逆風を受けることになった。 前回の選挙後、都知事という立場から小池氏は都民ファの「特別顧問」と一歩、引いたような肩書きになった。また、都議選では対立しても、小池氏は都政運営では政権与党の自民党との関係修復を図った。 小池氏のダブルスタンダードなどに反発し、都民ファで“内紛“が勃発。「ファーストペンギン」といわれた上田令子都議、音喜多駿前都議ら数人が相次いで離党した。 「都民ファといえば、小池氏の党というイメージ。しかし、肝心の小池氏が今回は全面にでないということで、候補者たちは自分の名前で戦わねばならない。前回のように小池氏が応援に入ってくれると勝負になるが、今回は応援はないと聞いている。非常に厳しい選挙になる」(前出・都議)』、「世論調査」結果では、「都民ファ」は見る影もないほどの惨敗のようだ
・『都知事の任期がまだ3年ある小池氏。かねてから国政復帰も噂される中で、自民党の二階俊博幹事長とも最近、頻繁に連絡を取り合っているという。その一方で東京都は新型コロナウイルス対策、7月23日から開催する東京五輪・パラリンピックという大きな問題に直面している。 「小池氏にしてみれば、コロナ禍の五輪開催で大変な中、『都議選まで構ってられない』とぼやいている。都議選の話をすると、機嫌が悪くなりますね。一期は経験したんだから、しっかり自分でやりなさいと所属の都議らに言っているそうです。しかし、小池氏の風だけで当選した都議ばかりですから、半分以上は淘汰されるでしょう」(小池氏と近い自民党幹部) 国政復帰が囁かれる小池氏。都議選惨敗となれば、政治生命の危機に直面する可能性が大だという。前出の自民党幹部が言う。 「小池氏が二階幹事長とコンタクトを頻繁にとっている理由の一つは、都議会対策でもある。都民ファが負けても、自民党と組めるように根回しをしているようだ。五輪後に解散総選挙が行われれば、小池氏は都知事を辞めて、国政復帰すると読んでいます。自民党に再入党するのか、都民ファをベースに戦うのか、維新などと組むのか、まだわかりません。しかし、都議選で都民ファが惨敗すると、国政復帰の道が絶たれるだろう。都知事の任期満了が政治の花道になる。しかし、彼女は自民党総裁、首相の座をまだ、諦めていないはず。カメレオンのように突然、豹変する小池氏ですから、油断なりません」 政界の一寸先は闇のようだ』、「「小池氏にしてみれば、・・・『都議選まで構ってられない』とぼやいている。都議選の話をすると、機嫌が悪くなりますね」、ずいぶん無責任な話だ。「都議選で都民ファが惨敗すると、国政復帰の道が絶たれるだろう。都知事の任期満了が政治の花道になる。しかし、彼女は自民党総裁、首相の座をまだ、諦めていないはず」、どんな「豹変」を示すのだろうか。

第三に、6月27日付け現代ビジネスが掲載した政治ジャーナリストの安積 明子氏による「小池都知事が不在の「東京都議選」…公明党が大後悔し、共産党が高笑いしている理由 応援演説恒例の「第一声」がなかった」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/84556?imp=0
・『いよいよ東京都議選が6月25日に始まった。42選挙区127議席を巡って271名が立候補し、9日間の戦いの火ぶたが切られた。 今回の都議選は10月21日に任期満了を迎える衆議院選挙を占う前哨戦と位置づけられるが、注目すべきはそれだけではない。都知事選直前に入院した小池百合子都知事の影響力はどうなるか。下馬評では「自民党躍進」、「都民ファーストの会の凋落」などが話題になっているが、本当にそうなるのかが興味深い。 また躍進すると言われる共産党や、「1963年に都政に進出して以来、最大の危機にある」と言われている公明党にも注視したい』、なるほど。
・『お決まりの“つかみ”がなかった…  さて初日の6月25日は、10時から西新宿で行われた日本共産党の街宣、12時から目黒区・自由が丘で行われた公明党の街宣を取材した。国政であれ地方選挙であれ、共産党はいつも第一声を新宿で上げるため、定点観測にはもってこいだ。 公明党の場合、苦戦区については公明新聞がひときわ強調して報じるが、今回の都議選では北多摩3区、目黒区、中野区、豊島区が該当。実際に選挙戦初日、山口那津男代表はこれら4つの選挙区に応援に入った。) 「今日からいよいよ都議会議員選挙がこの自由が丘駅頭で、斉藤泰宏、目黒区は斉藤泰宏、公明党の大事な大事な実力派であります。斉藤泰宏をはじめ、23名の候補を擁立いたしました。なにとぞ皆さまのお力で目黒、斉藤泰宏を勝たせていただけますよう、宜しくお願い申し上げます」 80名ほど集まった駅前ロータリーに、山口代表の声が響く。山口代表といえば、「なっちゃんです!」の“つかみ”で演説し、集まった支持者たちを熱狂させることで有名だ。 前回の都議選では、国領駅前で“最後の訴え”を行った。山口代表は「国領駅頭のみなさん、こんばんは!」と応援で陽に焼けた顔をほころばせ、左手を挙げて「なっちゃんです!」と大きくアピールした。昨年の「大阪都構想」の是非を問う住民投票でも大阪維新の会の応援に駆け付け、「大阪のみなさん、こんにちは!なっちゃんです」と有権者に笑顔を向けていた。 しかし今回はそれがない。うっかりと忘れてたのなら、余裕がないということだ。あるいはそれを封印しなくてはならないほど、厳しい選挙だということかもしれない』、「それを封印しなくてはならないほど、厳しい選挙だ」、の可能性の方が高いのではなかろうか。
・『都民ファーストとの決裂  そもそも公明党にとって、前回の都議選が楽勝すぎたのだ。2016年7月の都知事選では自民党が擁立した増田寛也氏を応援した公明党だったが、小池知事が当選した後は都議会で与党に転じている。当時の小池知事は人気絶頂で、2017年2月には千代田区長選では多選と高齢を批判された石川雅己区長(当時)を圧勝させ、5回目の当選に導いた。 都議会公明党はそのような小池知事と連携すべく、同年年3月に都民ファーストの会と選挙協力を約束し、政策協定をも締結。これにより同年年7月の都議選では小池知事の積極的な応援を得て、都議会公明党は擁立した23名全員が当選を果たした。この公明党完勝に対する小池知事の寄与は非常に大きい。 しかし同年10月に小池知事が希望の党を結党し、国政との「二足のわらじ」を履こうとした頃から、公明党は小池知事に疑念を抱き始め、連携を解消するに至っている。都議会公明党それ以降、小池都政とは「是々非々」というスタンスをとるが、11月14日に都内ホテルで都民ファーストの会が最初に開いたパーティーには公明党の議員はひとりも姿を見せなかった。 もっともこれを「都議会公明党の突然の変心」あるいは「裏切り」と解すべきではない。そもそも両者は最初から、長く付き合えるはずがなかったのだ。 都議会公明党の東村邦浩幹事長は3月28日の公明新聞で、議会運営などについて両党の幹事長同志で合意しても、都民ファーストの会の内部でなし崩しにされてきたこと、さらに都民ファーストの会は8人もの離党者を出し、会派としてまとまりがないことなどを述べ立てているが、要するに「都民ファーストの会は政党としての体をなしていない」と断言しているに等しい。) そもそも“小池百合子”自身が劇薬なのだ。服用した当初は抜群の効果を感じても、じわじわと後遺症に悩まされることになる。そういう意味で公明党は、前回の都議選で手を出してはならないものを使ってしまったということになる』、「そもそも“小池百合子”自身が劇薬なのだ。服用した当初は抜群の効果を感じても、じわじわと後遺症に悩まされることになる」、言い得て妙だ。
・『共産党が躍進する可能性  3月に政策協定を結んだ自民党にしても、選挙区で競合するために全面的に頼ることができない。たとえば定数3の目黒区は、もともと旧民主系の勢力が強い地盤である上に、自民党は2名の元職を擁立している。 にもかかわらず自民党と選挙協力している関係上、思い切った自民党批判はできない。賛否が分かれる東京オリンピックパラリンピック開催の是非も重要な争点であるが、国政では与党でいる以上、それを封印せざるを得ない。 一方で今回の都議選をまたとないチャンスと受け止めているのが共産党だ。前回の都議選で都民ファーストの会が獲得した票の多くがもし小池知事に愛想を尽かし、菅義偉首相にうんざりするなら、共産党の議席増は夢ではない。しかも共産党は2013年の都議選で8議席から17議席に倍増させ、2017年には19議席を獲得した。国政においても、共産党の協力なくして野党が躍進できないという自負がある。 コロナ禍にうんざりしている有権者にとっては、安定性を求めて自民党に入れるか、思い切った変化を求めるかという選択になるだろうが、それを上手く乗り切れる者こそ、都議選の勝利者に違いない』、「都議選の勝利者」は誰になるのだろう。

第四に、7月1日付け日刊ゲンダイ「小池都知事「二股檄文」自民への配慮アリアリ、都ファ候補は事実上の“絶縁状”に落胆」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/291331
・『やっぱり見捨てる気か。過労で22日から入院していた小池都知事が30日、ようやく退院。当面テレワークで公務をこなす予定で、都議選中の“女帝不在”は続きそうだ。応援を求める「都民ファーストの会」を本気で助ける意思も見えず、自民に配慮した「二股檄文」に、“子分”たちは落胆している。 〈肝心な時にご心配かけて申し訳ありません 都民が見ています! 都民がついています! ゴールめざしてがんばりましょう〉 30日、こんなメッセージが達筆な文字で記された文書が都ファの候補らに送られてきた。文頭には候補者名が記載され、文末に〈小池百合子〉と署名がある。 尾島紘平候補(練馬区)は、文書の写真と共に〈小池知事から直筆の檄文が届きました〉〈『小池知事は都民ファーストの会を見捨てて逃げた』というデマが流されていますが、それは敵陣営の戦略であり願望です〉と自身のツイッターに投稿した。 確かに、小池都知事の文書は一見、応援メッセージに見えなくもない。だが、いくら読んでも「必勝」や「当選」「勝利」といった選挙ではお決まりのパワーワードが見当たらない。日刊ゲンダイは、別の都ファ候補に送られた文書を入手したが、文頭の候補者名以外は、一言一句、尾島氏宛てと変わりナシ。文字の形までピタリと一致しているから、小池都知事は直筆文のコピーを各候補に送ったようだ。 「いかにもアリバイ的に送られてきた感じがします。この檄文送付をもって『応援は終了』かもしれません……。だとしたら、われわれの多くは討ち死に必至です」(前出の都ファ候補)』、「応援を求める「都民ファーストの会」を本気で助ける意思も見えず、自民に配慮した「二股檄文」に、“子分”たちは落胆している」、.「『小池知事は都民ファーストの会を見捨てて逃げた』というデマが流されています」、デマではなかったようだ。
・『にじむ自民への配慮  さらに都ファ内部をザワつかせているのが、小池都知事が退院した際に公表したコメントだ。前半で〈心よりお詫び申し上げます〉と、公務から離れたことを謝罪し、後半で都議選に言及。〈都政の諸課題が山積する中、改革を続け、伝統を守る皆様に、エールを送ります〉と特定の政党名を挙げず、中途半端な言い回しに終始した。ある都ファ関係者がため息交じりに言う。 「コメントを読む限り、知事がエールを送る対象は『改革を続ける人』と『伝統を守る人』の2つに分けたと受け取れる。『改革を続ける人』は、私たちのことでしょうが、『伝統を守る人』は、保守政党の自民を指すのは明らか。4年前の都議選で“ブラックボックス”とこき下ろした自民に今回は配慮しているわけです。コメントも檄文も言い回しがスゴく微妙ですね……」 要するに、小池都知事は都ファと自民双方にいい顔をしたいだけ。“二股交際”も同然だ。理由もハッキリしている。 「小池知事は都議選前に、自民の二階幹事長と〈都ファを応援しない〉〈応援するなら自公も平等に〉という“密約”を交わしたとされる。そのウワサ通り、都ファだけに肩入れするわけにはいかず、“密約”を破るわけにもいかないように映ります。二階幹事長を怒らせれば、国政進出の可能性は消え、自民が敵に回り、都政運営も困難になる。配慮が必要な立場なのでしょう」(官邸事情通) 半端な檄文をもって応援は「打ち止め」。都ファに対する事実上の「離縁状」だとしたら、生みの親の女帝はあまりにも無慈悲だ』、「小池都知事は都ファと自民双方にいい顔をしたいだけ。“二股交際”も同然」、「半端な檄文をもって応援は「打ち止め」。都ファに対する事実上の「離縁状」だとしたら、生みの親の女帝はあまりにも無慈悲だ」、同感である。4日の選挙結果はどう出るのだろうか。
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