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エネルギー(その13)(ガソリン価格200円目前でも…補助金は「やめ時」ではないか、JR3社の「水素車両」構想が水素自動車より現実的なワケ) [産業動向]

エネルギーについては、本年8月26日に取上げた。今日は、(その13)(ガソリン価格200円目前でも…補助金は「やめ時」ではないか、JR3社の「水素車両」構想が水素自動車より現実的なワケ)である。

先ずは、本年9月6日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家の山崎 元氏による「ガソリン価格200円目前でも…補助金は「やめ時」ではないか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/328744
・『ガソリン補助金の延長が、岸田政権らしい「ぐずぐず」の展開で決まった。しかし、合理的に考えれば、補助金はもう「やめ時」ではないか。その理由をお伝えする』、興味深そうだ。
・『いかにも岸田政権らしい補助金延長の「ぐずぐず」  ガソリン価格が上昇している。原油価格や円安の影響もあるが、政府の補助金が予定通り縮小されていることの影響が大きい。このままだと1リットル当たりで200円を超えてくる可能性がある。 補助金の縮小は「予定通り」であり、これに伴いガソリンの小売価格が上昇することは国民に周知されていたはずなのだが、ここにきて不満が高まっている。「対策」を求める声があり、岸田文雄首相は、9月で終了するはずだった補助金の年末までの延長を決め、さらに補助金をかさ上げすることにした。そして、今後、補助金はさらに延長される可能性が大きい。 自民党内では、国民がメリットを「実感できる」措置、効果が「目に見える」補助金を求める声が上がっていて、報道ベースでは、「低迷する内閣支持率を気にする」岸田政権という文脈の注釈が付く。 政治家が国民の支持を気にすることは必ずしも悪いことではないが、補助金を下げて、戻して、様子を見るという推移は、いかにも岸田政権らしい「ぐずぐず」の展開だ。政策として一貫性があまりにない。周囲の官僚たちは「混乱しているのは政治家さまで、われわれは振り回されています」と言いたいかもしれないが、両方まとめて無能なのではないか』、「岸田文雄首相は、9月で終了するはずだった補助金の年末までの延長を決め、さらに補助金をかさ上げすることにした。そして、今後、補助金はさらに延長される可能性が大きい。 自民党内では、国民がメリットを「実感できる」措置、効果が「目に見える」補助金を求める声が上がっていて、報道ベースでは、「低迷する内閣支持率を気にする」岸田政権という文脈の注釈が付く』、しかも国民民主党が「トリガー価格」に拘っているとはやれやれだ。
・『「超」複雑なガソリン価格とトリガー条項  ガソリン価格の仕組みは税金と補助金が絡んで複雑であり、政策論として複数の論点をはらんでいる。  元売り業者が、原油を輸入して精製し、保管・輸送してさらにマージンを乗せた元売り価格に、ガソリン税が乗るが、ガソリン税は本則の税率に加えて暫定的な特例税率が上乗せされている。それぞれが小売価格では1リットル当たり20円台後半の金額だ(現在本則28.7円、特例25.1円)。さらに、石油石炭税(2.8円)が加わって、これにガソリン小売業者のマージンが乗って小売価格が形成され、そこに消費税が掛け算されて追加された金額が、ガソリンスタンドでユーザーが目にするガソリン価格になる仕組みだ。 さらに、分かりにくく、補助金と並んで議論になっているのが、暫定税率=特例税率を巡る「トリガー条項」を巡る事情だ。暫定税率は、道路整備のために財源が必要だとして1970年代に導入されたものだが、2010年に道路整備は一段落したとしてこれが廃止された。ところが、同時に同額が特例税率として残って一般財源化された。 ただし、この時にガソリン価格が3カ月連続で160円を超えた場合には特例部分を減税する「トリガー条項」が導入された(発動後、価格が130円を3カ月連続して下回れば税率が元に戻るルールだ)。 ところが、このトリガー条項が11年の東日本大震災の復興財源の確保を理由に凍結されて現在に至っている』、「ガソリン価格が3カ月連続で160円を超えた場合には特例部分を減税する「トリガー条項」が導入された・・・ところが、このトリガー条項が11年の東日本大震災の復興財源の確保を理由に凍結されて現在に至っている」、なるほど。
・『新たな補助金制度を作るよりトリガー条項の凍結解除を検討せよ   制度の趣旨を素直に解釈すると、トリガー条項は、資源価格高騰などやむを得ない事情でガソリン価格が急激に上昇した場合に、これに対応しきれない業者や生活者を救済する激変緩和措置として設けられたものだろう。まさに今の状況がそれに当たるので、この凍結解除、すなわち自然な発動が求められるのではないかと思われるのだが、その気配は全くない。 新たな補助金制度を作るよりも、元々ある制度の趣旨を生かす方が自然だし、制度をシンプルに運用できる。しかし、政府の意向は、暫定税率=特例税率による税収は固定化して守りたいということであるらしい。 そもそも、お金に色は着いていないので、「○○による税収は、××に支出する特定の財源だ」という決め事に実質的な意味はない場合が多いはずだ。「××に対する支出」が一般財源からも支出されなければならない重要度の高いものなら、この支出に充当された税収の分だけ、一般財源に余裕ができるので、「○○の税収」は実質的に一般財源として流用されたのと同じだ。 「○○は××の特定財源だ」という呪文は、専ら「○○税」を創設するために、一定数いる知恵の回らない国民を納得させるための方便にすぎない。このことは、民主党政権時代に一部の政治家も含めて丸め込まれた「消費税は社会保障のための財源」との説明を思い出すとよく分かる。 ただし、税金が実現してしまうと、その金額分を特定の財源に充てたことにしなければならない建て付けは時に不便だ。道路整備が進んだときに暫定税率を特例税率にすり替えて一般財源化した際に、財政当局はうまくやったと思ったかもしれない。しかし、その際に付けたトリガー条項を凍結するに当たって震災の復興財源という別の方便が必要になり、今になってみるとその方便がまた古くなった。 トリガー条項の凍結解除は、もともと野党側(特に国民民主党)から出てきた話なので、自民党は乗りにくいかもしれないが、新たな補助金制度を作るよりは、同条項の凍結解除を先に検討すべきだろう』、「新たな補助金制度を作るよりは、同条項の凍結解除を先に検討すべきだろう」、その通りだ。
・『「価格への補助」はもうやめた方がいい  政府にやる気がないトリガー条項の凍結解除も含めて、現在および目下検討中の「ぐずぐず補助金」も、広い意味では、ガソリン価格を引き下げるための補助金の性質を持つ。そして、この補助の適切性には大いに疑問がある。 まず、資源配分の効率性と価格メカニズムの観点で考えると、原油をはじめとする諸コストが上昇して価格が上がっているのなら、消費者はまずガソリン使用の抑制を考えるべきだ。 世界的に資源価格が上がっている時に、資源の相対的な希少性が増しているのだと考えることは自然だ。 加えて、地球環境に対する配慮の観点から化石燃料の使用抑制がかねて求められていた。 つまり、ガソリンや電気料金の値上げに対して、国民はそれぞれの立場から、ガソリン消費の抑制や節電を考えることが経済合理的であり、近年の社会運動にも合致する方向性なのだ。補助金を使って価格をゆがめることは、経済政策として適切ではない。 とはいえ、ガソリンを多く使うビジネスで急には消費量を減らせない業者や、同じくガソリンの使用を減らすことが短期的には難しい生活困窮者がいるはずだ。彼らに対しては何らかの所得補助措置を考えるべきだろう。もちろん、所得の補助を受けた業者や生活者も、ガソリンの使用抑制に工夫すべきではある。そして、「急には対応できない」というユーザーのために、トリガー条項が存在していることは前述の通りだ』、「ガソリンや電気料金の値上げに対して、国民はそれぞれの立場から、ガソリン消費の抑制や節電を考えることが経済合理的であり、近年の社会運動にも合致する方向性なのだ。補助金を使って価格をゆがめることは、経済政策として適切ではない」、その通りだ。
・『金持ちの高級車のガソリン代を税金で補助する必要があるのか  高所得者・富裕層のガソリン代、電気代を補助しないで済むとするなら、困窮者向けの所得補助に必要な金額は、国民全体が使用するガソリン代、電気代の価格抑制に必要な補助金の額を大きく下回るはずだ。 また、言わずもがななことかもしれないが、価格抑制による補助の分配効果を考えると、富裕層が乗る高級車のガソリン代は低所得者が乗る車のガソリン代を大きく上回るだろうし、大邸宅と小ぶりなアパートの電気代は比較してみるまでもない。価格抑制で得るメリットは、絶対額で見て富裕層の方が大きいのだ。 もちろん、最終的に将来の税金で負担するにせよ、インフレを通じて間接的に負担するにせよ、補助金分の財源を誰が負担するかという問題を併せて考えないと、再分配の効果を確定して論じることはできない。ただ、直接の補助を考えるときに、価格に対する補助が相対的に、より富裕な者をより多く補助していることの分配論上の問題点も認識しておくべきだろう。 街に出ると、いかにもお金持ちが乗っていそうな高級車を目にすることがあろう。あの車のガソリン代を税金で補助する必要があるのか、と考えてみることは無益ではない。 経済的なロジックとしては、価格を抑えるために補助金を投入する政策はもうやめる方がいい』、「最終的に将来の税金で負担するにせよ、インフレを通じて間接的に負担するにせよ、補助金分の財源を誰が負担するかという問題を併せて考えないと、再分配の効果を確定して論じることはできない。ただ、直接の補助を考えるときに、価格に対する補助が相対的に、より富裕な者をより多く補助していることの分配論上の問題点も認識しておくべきだろう」、その通りだ。
・『不合理が実現する合理的な理由  筆者が考える、ガソリン価格に関わるあるべき政策の優先順位を大まかに言うと、 (1). ガソリン価格への補助をやめて、困窮者への所得補助を充実させる、 (2). (1)の早急な実現が不可能で激変緩和措置が必要な場合、トリガー条項の凍結解除を補助金よりも優先する、 というものだ。現実的には、まずトリガー条項の凍結解除からということになるだろう。シンプルでかつ合理的ではないだろうか。 しかし、筆者の案が実現しないと信じるに足る、残念で強力な現実が存在する。その根源は一人一票を大原則とする民主主義と個人の経済合理的判断だと言うと穏やかではないが、以下のような事情だ。 まず、困窮者の所得を補助する政策は困窮者とされた国民には直接メリットがあっても、多数のそうではない国民にとってメリットが見えにくい。多数の国民が、ガソリン価格の高騰を眺めつつガソリンの使用を抑制する工夫を考えなくてはならない現実に直面して、不満に思うだろう。 これに対して、補助金による価格抑制は、個々の効果は小さくても直接的なメリットを感じる国民の数が多い。政権支持率に効くのはこちらの方だろう。 また、困窮者の所得補助は一度仕組みを決めるとそれでガソリン価格も電気代もガス代も価格メカニズムに任せることができる効率の良さがあるが、この効率性は、政治家や官僚にとっては、個々の品目と関連する業界に対して政策を「やっている感」を醸し出す上ではむしろ邪魔になる。 ガソリン価格の上昇が生活者の不満と共に報じられて政府が右往左往することは、政府の当事者にとってはまんざら悪いことでもないのだ。 直接的で近視眼的な賛否を超えて合理的な状態を実現するためには、国民が政策の立案・実行を委託する政治家や官僚に良識と能力が必要だが、どうやらわれわれはそのような政治家や官僚の養成に不熱心だった。 「これが日本国民のレベルなのだ」と言われたら返す言葉がないが、目を背けたくなるような現実がそこにはある』、「困窮者の所得を補助する政策は困窮者とされた国民には直接メリットがあっても、多数のそうではない国民にとってメリットが見えにくい。多数の国民が、ガソリン価格の高騰を眺めつつガソリンの使用を抑制する工夫を考えなくてはならない現実に直面して、不満に思うだろう。 これに対して、補助金による価格抑制は、個々の効果は小さくても直接的なメリットを感じる国民の数が多い。政権支持率に効くのはこちらの方だろう。 また、困窮者の所得補助は一度仕組みを決めるとそれでガソリン価格も電気代もガス代も価格メカニズムに任せることができる効率の良さがあるが、この効率性は、政治家や官僚にとっては、個々の品目と関連する業界に対して政策を「やっている感」を醸し出す上ではむしろ邪魔になる。 ガソリン価格の上昇が生活者の不満と共に報じられて政府が右往左往することは、政府の当事者にとってはまんざら悪いことでもないのだ』、残念ながら民主主義の歪みという他ない。

次に、12月4日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した鉄道ジャーナリストの枝久保達也氏による「JR3社の「水素車両」構想が水素自動車より現実的なワケ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/333393
・『水素で走る燃料電池電気自動車(FCV)の普及は進んでいないが、鉄道ではいずれ「水素時代」が訪れるかもしれない。昨年から鶴見線・南武線でFC車両の走行試験を行っているJR東日本に続き、JR東海とJR西日本が構想を発表したのである。各社の取り組みと実現に向けた今後の計画とは』、興味深そうだ。
・『水素ステーションのネックは鉄道では問題にならない  子どものころ、未来の自動車は「水素」で動くようになると漠然と信じていた記憶がある。たぶん、自動車業界の最新動向を伝えるニュースでも見たのだろう。90年代初頭は大手自動車メーカーが燃料電池電気自動車(FCV)の開発を本格化した時代だった。 2000年代に入るとFCVのリース販売が限定的ながら始まり、2014年にトヨタが量産FCV「MIRAI」を、2016年にはホンダが「クラリティフューエルセル」を発売したが、それ以上の広がりは見えないのが実情だ。 充電時間と航続距離が課題のBEV(バッテリー式電気自動車)に対して、FCVの水素充填時間、航続距離はガソリン車と同等で、エンジン搭載車に近い感覚で利用できる利点がある。しかし、電気があればどこでも充電できるBEVですら普及が遅れている中で、水素ステーションなど専用インフラを必要とするFCVが主流になるのは難しいだろう。) 水素自動車が走り回る「未来」は実現しなさそうだが、もしかすると鉄道には「水素時代」が訪れるかもしれない。昨年から鶴見線・南武線でFC車両の走行試験を行っているJR東日本に続き、JR東海とJR西日本が相次いで将来構想を発表したのである。 鉄道の環境性能は自動車より格段に優れているが、カーボンニュートラルが叫ばれる中、非電化路線を走る気動車(ディーゼル車)の排気ガスを無視できなくなった。ディーゼルエンジンで発電してモーターで走行するハイブリッド車も登場しているが、いずれは内燃機関自体が使えなくなる。 そこで注目されるのが自動車と同様、バッテリー式の電車だ。JR東日本とJR九州は、電化区間は架線から集電して走行と充電を行い、非電化区間ではバッテリーの電力で走行する電車を実用化している。 しかし、航続距離と充電時間がネックなのも同様で、実用的な走行距離は30キロメートル程度、速度も出せない。現状では電化された本線から分岐する非電化の短距離支線に、本線からの直通電車を走らせるのが限度である。 少なくとも現在の技術水準では、非電化ローカル幹線で高速、長距離運転を行う気動車を置き換えることは困難であるため、ディーゼルエンジンと同等以上の走行性能を持ち、航続距離も長いFC車両に注目が集まった。 自動車におけるFCVのネックは、鉄道ではほとんど問題にならなくなる。どこへでも行ける自家用車とは異なり、鉄道は特定の区間をダイヤ通りに走るため、車庫に水素ステーションを設置すれば定期的に充填できるからだ(これはバスやトラックでも同様であり、政府は商用FCVの普及を目指し、インフラ整備を進めている』、「自動車におけるFCVのネックは、鉄道ではほとんど問題にならなくなる。どこへでも行ける自家用車とは異なり、鉄道は特定の区間をダイヤ通りに走るため、車庫に水素ステーションを設置すれば定期的に充填できるからだ(これはバスやトラックでも同様であり、政府は商用FCVの普及を目指し、インフラ整備を進めている)」、なるほど。
・『2030年の実用化を目指すJR東日本  JR東日本が開発したのが、FV-E991系電車「HYBARI」だ。屋根上に設置した水素タンクから床下の燃料電池に水素を供給し、電池に充電。直接的には電池でモーターを回す仕組みだ。搭載するFCスタックは、燃料電池バス「SORA」やMIRAIに使われているトヨタ製のものを流用している。 MIRAIは3本のタンクに計141リットル(充填圧力70MPa、以下同)の水素を搭載し、800キロ程度走行可能なので燃費は5.6km/L。一方、HYBARIは2両編成に20本のタンクを設置し、計1020リットルの水素で最大140キロ走行可能なので0.13km/Lとなる。) ちなみにSORAはタンク10本計600リットルで約200キロなので0.3km/Lだ。当然ながら車体が大きいほど燃費は悪くなるが、定員はMIRAIが5人、SORAが79人、HYBARIが約250人だ。相応の輸送需要があれば効率的だが、閑散区間ではMIRAIを走らせた方が経済的になってしまう。全ての気動車をFC車両で更新するにはまだまだコストの壁が高いと言わざるを得ない。 もうひとつの問題、水素供給体制については2022年5月、ENEOSと鉄道の脱炭素化に向けたCO2フリー水素利用拡大に関する連携協定を締結。2030年までにFC車両、FCバス・FCトラック、駅周辺施設へ、製造・貯蔵に二酸化炭素を排出しない「CO2フリー水素」を供給する定置式水素ステーションを開発する計画を発表した。 また京浜臨海部に整備予定のENEOS拠点から、JR東日本の自家発電所である川崎火力発電所へ水素を供給して水素混焼発電を行い、首都圏に供給する電車用電力の脱炭素化を進める計画だ。こうした条件から、JR東日本はまず川崎を拠点に水素利用拡大を進めることになる』、「FC車両、FCバス・FCトラック、駅周辺施設へ、製造・貯蔵に二酸化炭素を排出しない「CO2フリー水素」を供給する定置式水素ステーションを開発する計画を発表した。 また京浜臨海部に整備予定のENEOS拠点から、JR東日本の自家発電所である川崎火力発電所へ水素を供給して水素混焼発電を行い、首都圏に供給する電車用電力の脱炭素化を進める計画だ」、特定地域での連携は有効だろう。
・『JR西日本は関西電力などとインフラ整備構想で合意  JR西日本は今年4月、環境長期目標「JR西日本グループゼロカーボン2050」の達成に向けて鉄道資産を活用した水素利活用の検討を開始し、燃料電池列車の開発と将来的な気動車の置き換えを進めると発表した。 貨物駅などに総合水素ステーションを設置し、燃料電池列車やバス、トラック、乗用車に対する水素供給と、JR貨物による水素輸送の拠点として活用。自治体や企業と連携して、グリーンで持続可能な交通ネットワークを実現するとともに、JR西日本が水素の利用・供給・輸送に関与するプラットフォーマーになろうという意欲的なビジョンだ。 これを具体化したのが11月21日、「姫路エリアを起点とした水素輸送・利活用等に関する協業」について関西電力、JR貨物、NTT、パナソニックなどと基本合意したとの発表だ。 4月の発表は鉄道の脱炭素化を強調した内容だったが、今回はFC車両開発の具体化を待たず、関西電力が調達した水素を線路敷やNTTの通信用管路に設置したパイプラインで沿線に供給するインフラ整備構想での合意というのが興味深い。もっとも2030年代の社会実装を目指して今後「実現可能性を調査」するというから、見切り発車感は否めないが、構想の具体化に期待したい』、「関西電力が調達した水素を線路敷やNTTの通信用管路に設置したパイプラインで沿線に供給するインフラ整備構想での合意」、興味深い動きだ。
・『水素エンジンの開発に乗り出すJR東海  異なるアプローチで水素活用を検討しているのがJR東海だ。11月16日、既に開発を進めているFC車両に加え、水素を燃料とする「水素エンジン」の開発に着手すると発表したのだ。 水素エンジンといえば、トヨタが開発するガソリンエンジンをベースにした乗用車用のものが有名だが、こちらは既存のディーゼルエンジンを改造し、水素を燃料とする水素エンジンに置き換える「水素化コンバージョン」を手掛ける「i Labo株式会社」と共同で開発する。 二正面作戦の理由は、燃料電池と水素エンジンは出力やエネルギー効率など特性が異なるため、山間部を長距離走行するJR東海の非電化路線への適合性を検証するのが目的とのこと。2024年度以降、走行条件を再現可能な研究施設で水素エンジンの模擬走行試験を実施する計画だ。なお将来の水素供給体制はENEOSと協力する。 水素を脱炭素の有力な選択肢と考える政府は、水素の導入量を2040年までに現状の6倍に引き上げる目標を掲げるが、現状では水素の供給価格は既存燃料の最大12倍に達するという。いくら水素を活用する仕組みができてもコストが見合わなければショーケースで終わり、本格的な展開は不可能だ。 鉄道事業者はこれらの課題についてどう考えているのか、取材の結果は改めてお伝えしたい』、「JR東海」は「既存のディーゼルエンジンを改造し、水素を燃料とする水素エンジンに置き換える「水素化コンバージョン」を手掛ける「i Labo株式会社」と共同で開発する・・・現状では水素の供給価格は既存燃料の最大12倍に達するという。いくら水素を活用する仕組みができてもコストが見合わなければショーケースで終わり、本格的な展開は不可能だ。 鉄道事業者はこれらの課題についてどう考えているのか、取材の結果は改めてお伝えしたい」、続報が楽しみだ。
タグ:エネルギー (その13)(ガソリン価格200円目前でも…補助金は「やめ時」ではないか、JR3社の「水素車両」構想が水素自動車より現実的なワケ) ダイヤモンド・オンライン 山崎 元氏による「ガソリン価格200円目前でも…補助金は「やめ時」ではないか」 「岸田文雄首相は、9月で終了するはずだった補助金の年末までの延長を決め、さらに補助金をかさ上げすることにした。そして、今後、補助金はさらに延長される可能性が大きい。 自民党内では、国民がメリットを「実感できる」措置、効果が「目に見える」補助金を求める声が上がっていて、報道ベースでは、「低迷する内閣支持率を気にする」岸田政権という文脈の注釈が付く』、しかも国民民主党が「トリガー価格」に拘っているとはやれやれだ。 「ガソリン価格が3カ月連続で160円を超えた場合には特例部分を減税する「トリガー条項」が導入された・・・ところが、このトリガー条項が11年の東日本大震災の復興財源の確保を理由に凍結されて現在に至っている」、なるほど。 「新たな補助金制度を作るよりは、同条項の凍結解除を先に検討すべきだろう」、その通りだ。 「ガソリンや電気料金の値上げに対して、国民はそれぞれの立場から、ガソリン消費の抑制や節電を考えることが経済合理的であり、近年の社会運動にも合致する方向性なのだ。補助金を使って価格をゆがめることは、経済政策として適切ではない」、その通りだ。 「最終的に将来の税金で負担するにせよ、インフレを通じて間接的に負担するにせよ、補助金分の財源を誰が負担するかという問題を併せて考えないと、再分配の効果を確定して論じることはできない。ただ、直接の補助を考えるときに、価格に対する補助が相対的に、より富裕な者をより多く補助していることの分配論上の問題点も認識しておくべきだろう」、その通りだ。 「困窮者の所得を補助する政策は困窮者とされた国民には直接メリットがあっても、多数のそうではない国民にとってメリットが見えにくい。多数の国民が、ガソリン価格の高騰を眺めつつガソリンの使用を抑制する工夫を考えなくてはならない現実に直面して、不満に思うだろう。 これに対して、補助金による価格抑制は、個々の効果は小さくても直接的なメリットを感じる国民の数が多い。政権支持率に効くのはこちらの方だろう。 また、困窮者の所得補助は一度仕組みを決めるとそれでガソリン価格も電気代もガス代も価格メカニズムに任せることができる効率の良さがあるが、この効率性は、政治家や官僚にとっては、個々の品目と関連する業界に対して政策を「やっている感」を醸し出す上ではむしろ邪魔になる。 ガソリン価格の上昇が生活者の不満と共に報じられて政府が右往左往することは、政府の当事者にとってはまんざら悪いことでもないのだ』、残念ながら民主主義の歪みという他ない。 枝久保達也氏による「JR3社の「水素車両」構想が水素自動車より現実的なワケ」 「自動車におけるFCVのネックは、鉄道ではほとんど問題にならなくなる。どこへでも行ける自家用車とは異なり、鉄道は特定の区間をダイヤ通りに走るため、車庫に水素ステーションを設置すれば定期的に充填できるからだ(これはバスやトラックでも同様であり、政府は商用FCVの普及を目指し、インフラ整備を進めている)」、なるほど。 「FC車両、FCバス・FCトラック、駅周辺施設へ、製造・貯蔵に二酸化炭素を排出しない「CO2フリー水素」を供給する定置式水素ステーションを開発する計画を発表した。 また京浜臨海部に整備予定のENEOS拠点から、JR東日本の自家発電所である川崎火力発電所へ水素を供給して水素混焼発電を行い、首都圏に供給する電車用電力の脱炭素化を進める計画だ」、特定地域での連携は有効だろう。 「関西電力が調達した水素を線路敷やNTTの通信用管路に設置したパイプラインで沿線に供給するインフラ整備構想での合意」、興味深い動きだ。 「JR東海」は「既存のディーゼルエンジンを改造し、水素を燃料とする水素エンジンに置き換える「水素化コンバージョン」を手掛ける「i Labo株式会社」と共同で開発する・・・現状では水素の供給価格は既存燃料の最大12倍に達するという。いくら水素を活用する仕組みができてもコストが見合わなければショーケースで終わり、本格的な展開は不可能だ。 鉄道事業者はこれらの課題についてどう考えているのか、取材の結果は改めてお伝えしたい」、続報が楽しみだ。
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パンデミック(経済社会的視点)(その26)(感染症統括庁が発足も“医療再崩壊”防ぐには 日本版「ナイチンゲール病院」実現を、米国 中国で複数の感染症が大流行 日本は「コロナ後」にどう備えるか コロナ インフル RSV感染症の「トリプルデミック」はなぜ起きる?) [パンデミック]

パンデミック(経済社会的視点)については、本年5月24日に取上げた。今日は、(その26)(感染症統括庁が発足も“医療再崩壊”防ぐには 日本版「ナイチンゲール病院」実現を、米国 中国で複数の感染症が大流行 日本は「コロナ後」にどう備えるか コロナ インフル RSV感染症の「トリプルデミック」はなぜ起きる?)である。

先ずは、本年9月6日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した立命館大学政策科学部教授の上久保誠人氏による「感染症統括庁が発足も“医療再崩壊”防ぐには、日本版「ナイチンゲール病院」実現を」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/328658
・『「内閣感染症危機管理統括庁」が9月1日に発足した。新型コロナ対策の反省を踏まえて、政府による感染症対策を一元的に担うという。だが筆者はこうした改革を経ても、日本における医療体制の問題が改善されるかは微妙だと考える。では医療再崩壊を防ぐに当たって、日本は今後どうすべきなのか。英国の事例を参考に、大胆な説を提案したい』、興味深そうだ。
・『日本における「専門家」は臨機応変な対応が苦手だった?  日本における今後の感染症対策を担う「内閣感染症危機管理統括庁」が9月1日に発足した。それに伴い、「新型インフルエンザ等対策推進会議」のメンバーも刷新。同会議の議長を務めてきた尾身茂氏は退任した。 さらに、推進会議の下部組織に当たる「新型コロナウイルス感染症対策分科会」「基本的対処方針分科会」は廃止された。SNSなどには「尾身先生、お疲れ様でした」と尾身氏の労をねぎらう投稿も散見される。 だが筆者はどちらかというと、尾身氏に批判的な立場である。 というのも、2020年5月の分科会で、新型コロナ重症者病床増のために1兆円程度の財政資金を投入することが提起された際、尾身氏はその提案を退けてしまったという(※)。この例のように、疑問符が付く意思決定が散見されたためだ(本連載第277回)。 ※木村盛世(2021)『新型コロナ、本当のところどれだけ問題なのか』(飛鳥新社)を参照。 もちろん、それは尾身氏個人の問題だけではない。日本の審議会・諮問会議の制度そのものに問題があるといえる。 審議会・諮問会議の委員である専門家の役割は、官僚が立案する政策案に「お墨付き」を与えることだ。故に、学会等の推薦で大きな業績を上げた重鎮の学者が起用されてきた。 前述した分科会の前身に当たる審議会・諮問会議の「新型コロナウイルス感染症対策専門家会議」は20年2月14日に設置された。当時の委員は全12人で、学会の重鎮が並んだ。 だが当時、新型コロナは正体不明で、その特性が世界中の研究成果から次第に明らかになる状況だった(第243回)。日本の重鎮たちも、最初から「新型コロナの専門家」だったわけではない。 そのため仕方のない面もあるが、「お墨付き」以外にも臨機応変な対応が求められた結果、さまざまな対策が後手に回ることになったのは事実だ。 特に深刻だったのは、ワクチンの開発・接種の遅れだ。当初の日本はワクチン接種の開始がG7で最も遅く、接種率は「世界最低レベル」だった(第271回)』、「「お墨付き」以外にも臨機応変な対応が求められた結果、さまざまな対策が後手に回ることになったのは事実だ。 特に深刻だったのは、ワクチンの開発・接種の遅れだ。当初の日本はワクチン接種の開始がG7で最も遅く、接種率は「世界最低レベル」だった」、その通りだ。
・『英国やイスラエルと比較すると意思決定の遅さが目立つ  また、21年8~9月の東京オリンピック・パラリンピックは全試合が無観客となった。国民へのワクチン接種が一巡し、21年6月にサッカー「EURO2020」の決勝戦を有観客で開催した英国と対照的だった(第279回)。 ワクチン接種が遅れた原因としては、「自治体任せ」の接種体制が混乱を招いたことや、国内でのワクチン開発が進まなかったことが指摘されてきた。だが、より深刻な要因は、十分な量のワクチンを製薬会社から素早く調達するための交渉が遅れたことだ。 新型コロナのワクチン開発は20年1月以降、基礎研究の蓄積をベースとする形で、各国の研究機関や製薬会社によって一挙に加速した。 英国では20年4月、ボリス・ジョンソン首相(当時)が「ワクチン開発のためにできることはなんでもする」と決断。そこから約1年間で、英財務省は135億ポンド(約2兆400億円)の巨額資金をワクチン開発につぎ込んだ(ローラ・クンスバーグ『【解説】イギリス政府はパンデミックとどう闘ったか 1年間の舞台裏』BBC NEWS)。 20年6月頃には、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相など、世界の首脳が製薬会社とワクチン確保の直接交渉を開始していた。 だが、日本の専門家会議は「ワクチン開発には数年かかる」と安倍晋三首相(当時)に進言した。20年8月の記者会見で、尾身氏がワクチンについて「分からないことばかりと言ってもいいくらいだ」と発言する場面もあった。資金確保・交渉・情報収集の全てにおいて、日本は世界に後れを取っていたのだ。 そして、安倍氏からバトンタッチした菅義偉首相(当時)は業を煮やし、21年1月下旬にファイザーとの直接交渉に乗り出した。 その後、菅氏のリーダーシップの下で「1日100万回接種」という目標を掲げ、ワクチン接種率では欧米を追い上げて世界トップ水準を実現した(詳細はダイヤモンド・オンライン『菅前首相が明かす、ワクチン接種1日100万回をぶち上げた根拠と縦割り打破』参照)。 この菅氏の施策は英断だったといえる。だが、国産ワクチンはいまだに開発途上だ。先日、第一三共製のワクチンが薬事承認されたものの、中国で初めて新型コロナの存在が確認されてから3年半以上がたち、「5類」に移行した後での承認だ。遅きに失した感は否めない。 尾身氏らがワクチンについて素早く情報を収集し、世界最先端の動向を踏まえた上で政府に進言していたら、こうした事態は防げたのではないだろうか』、「尾身氏らがワクチンについて素早く情報を収集し、世界最先端の動向を踏まえた上で政府に進言していたら、こうした事態は防げたのではないだろうか」、その通りだ。
・『感染症統括庁は新たな感染症に対応できる?  「スタートダッシュの遅れ」はワクチン関連だけではない。感染拡大の最初期は、医療体制(特に重症病床の確保)に関する議論が不十分だった印象だ。 その結果、欧米と比べて病床数自体は多く、患者数は少ないのに、常に医療崩壊の危機に直面するという日本独特の問題に直面した(第264回)。 確かに時間がたつにつれ、分科会でも医療体制の整備や病床確保について議論されるようになった。軽症者は病院ではなく自宅やホテルでの療養を推奨する形に変わった。知事の権限も強化され、22年12月には感染症法のさらなる改正が成立した。 専門家とされる人たちは、自治体や病院の現場の声を聞きながら勉強を重ね、少しずつ医療体制を構築してきたのだと思われる。それ自体は評価できるが、やはり他の先進国と比べた「対応の遅さ」はどうしても気になった。 このような新型コロナ対策の反省を踏まえて設立されたのが、冒頭で述べた統括庁だ。統括庁は今後、政府の感染症対策の政策立案や調整を一元的に担う。トップの「内閣感染症危機管理監」には栗生(くりゅう)俊一官房副長官が就いた。 当初は38人の専従職員でスタートし、有事には100人規模まで増員できるという。有事の際の行動計画づくりや、訓練を担うのが職員たちの役割だ。筆者はこの専従職員のバックグラウンドを一人ずつ詳細に把握しているわけではないが、どのような専門性を持つ人材が採用されているかが重要だ。 ポイントは「縦割り」の打破だ。かつて新型コロナ対策に関わっていたのは、厚労省・健康局結核感染症課の医系技官と、厚生科学審議会・感染症部会に招集される専門家だった(第265回)。官僚組織は、いわゆる「縦割り行政」の縛りが厳しいため、他の疾病を管轄する部署は、新型コロナ対策にはあまり関与していなかったと考えられる。これも当時、医療体制の整備が遅れた一因ではないだろうか。そこで統括庁では、幅広い専門性を持つ人材が採用されて「縦割り」が打破されるかが重要になる。 この点について、統括庁の下の「新型インフルエンザ等対策推進会議」には、新たに15人が委員に任命された。要注目なのが、行政学などを専門とする早稲田大学政治経済学術院教授の稲継裕昭氏が委員に加わったことだ。 筆者はこれまで、新型コロナの有識者会議に政治・行政学者が入らないことを批判してきた。感染症対策の最終的な意思決定は、政治によって下される。だからこそ、その専門家が必要だと考えてきたのだ(第270回)。その意味で、稲継教授が委員に入ったことは一定の評価ができる』、「統括庁の下の「新型インフルエンザ等対策推進会議」には、新たに15人が委員に任命された。要注目なのが、行政学などを専門とする早稲田大学政治経済学術院教授の稲継裕昭氏が委員に加わったことだ。 筆者はこれまで、新型コロナの有識者会議に政治・行政学者が入らないことを批判してきた。感染症対策の最終的な意思決定は、政治によって下される。だからこそ、その専門家が必要だと考えてきたのだ・・・その意味で、稲継教授が委員に入ったことは一定の評価ができる」、なるほど。
・『医療再崩壊」を防ぐ秘策は「自衛隊野戦病院」の設置だ  人選から話がそれるが、25年に設立予定の「国立健康危機管理研究機構」(日本版CDC)にも期待が持てる。この組織は、国立感染症研究所と国立国際医療研究センターの合併によって創設される。 国立感染症研究所は米疾病対策センター(CDC)と、国際医療センターは英オックスフォード大学やウェルカム財団などと、それぞれ国際的なネットワークを持っている(第49回)。そうした強みを持つ両者が統合すれば、世界最先端の情報を得やすくなるだろう。もし今後、新たな感染症が広がったとしても、日本独自のワクチンや治療薬を開発可能になるかもしれない。 だが、一連の改革を経ても医療体制の問題が改善されるかは微妙なところだ。 政府の権限を強化し、平時から病院と協定を結んでいても、新たなパンデミックが発生した際は、相変わらず病床確保に時間がかかるのではないか。日本の医療体制は、英国など諸外国に比べて複雑すぎるのだ(第283回)。 では、日本は今後どうすべきなのか。 その答えの一つとして、かねて本連載では「自衛隊による大規模野戦病院」の設置を提案してきた(第283回)。自衛隊には、医官・看護官がそれぞれ約1000人ずつ在籍している。パンデミック時には彼・彼女らが出動し、感染症患者を収容する専用病院を臨時で設置するのだ。 この案は、英国軍の支援によって英国内に設置された、新型コロナ対策の野戦病院「ナイチンゲール病院」を参考にしたものだ(第282回)。英国軍は「コロナ支援部隊」を結成し、ナショナルヘルスサービス(NHS:国営の医療サービスを提供するシステム)を支援して、医療崩壊を防いだのだ。 もちろん日本でも、自衛隊中央病院がコロナ患者を受け入れたり、医官と看護官がワクチン接種に協力したりと、自衛隊による支援が行われてきた。こういった施策がさらに進歩すれば、病床が不足する事態を防げるはずだ。 医療崩壊を防ぐに当たって、既存の病院・クリニックの限られたリソースのやりくりでは限界がある。新たな強毒性の感染症に備える上では、現行の医療体制の「外側」に存在する自衛隊の医療人材・機材に頼れる仕組みを構築するのが合理的ではないか。 昨今は日英の安全保障関係が強化されており、英国の助言も受けられる状況にある。今回、改めて提案しておきたい』、「医療崩壊を防ぐに当たって、既存の病院・クリニックの限られたリソースのやりくりでは限界がある・・・自衛隊には、医官・看護官がそれぞれ約1000人ずつ在籍している。パンデミック時には彼・彼女らが出動し、感染症患者を収容する専用病院を臨時で設置するのだ。 この案は、英国軍の支援によって英国内に設置された、新型コロナ対策の野戦病院「ナイチンゲール病院」を参考にしたものだ」、いいアイデアだ。

次に、12月14日付けJBPressが転載した新潮社フォーサイト「米国、中国で複数の感染症が大流行、日本は「コロナ後」にどう備えるか コロナ、インフル、RSV感染症の「トリプルデミック」はなぜ起きる?」を紹介しよう。筆者は「医療ガバナンス研究所」理事長の上昌広氏である。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/78355
・『昨冬のアメリカでの「トリプルデミック」、現在の中国での呼吸器疾患の増加は、コロナ規制解除後の集団免疫の低下が大きく影響している。高齢化国家・日本も今冬、感染症流行の危険性があるのだが、危機意識は低い。 中国で小児を中心に呼吸器疾患が増加している。国内メディアは11月23日、世界保健機関(WHO)が中国当局に詳細な情報の提供を求めたことを報じた。28日、『東洋経済オンライン』は、「中国で急増の『呼吸器疾患』に広がる大きな懸念 情報提供を要請するも、中国には隠蔽の前歴」という『ニューヨーク・タイムズ』の記事を紹介した。この中で、「中国当局は今回、未知の病原体についての懸念を公に認めておらず、WHOの声明にも公には応じていない」と、中国政府の姿勢を批判し、未知の病原体の蔓延の可能性について言及している。 この件については、私もマスコミから数件の取材を受けたが、未知の病原体にメディア側の関心があるのは明らかだった。読者・視聴者の関心をひくと考えているのだろう。 だが、この論調はピントがずれている。もっとしっかり議論し、準備しなければ、今冬、日本では多くの命が失われかねない。コロナパンデミックの収束にあたり、我々は何に留意すべきか、本稿で論じたい』、震源地となりやすい「中国」には「隠蔽の前歴」があるというのは困ったことだ。
・『RSV感染症は乳幼児と高齢者にリスク  意外かもしれないが、現在、中国で起こっていることは、昨冬の米国でも報告されている。米国各地で、新型コロナ、インフルエンザ、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染症が流行し、病院は重症化した小児や高齢者で占拠されたのだ。このことは「トリプルデミック」と呼ばれ、米国メディアで大きく報じられた。 コロナとインフルを知らない人はいないだろう。RSVについては若干の説明を加えたい。 RSVは、コロナやインフルと同じく、上気道に感染する風邪ウイルスで、例年初冬に流行する。重症度は低く、健康な若年世代なら、感染しても軽い風邪ですむ。問題は乳幼児と高齢者だ。肺炎を起こし亡くなることもある。 乳幼児での感染については、すでに多くの臨床研究が発表されて、その実態が明らかになっている。国立感染症研究所によれば、RSVは乳幼児における肺炎の約50%、細気管支炎の50~90%を占める。69%の乳児が生後最初の1年間でRSVに罹患し、そのうちの3分の1が肺炎など下気道疾患を起こす。致死率は1~3%との報告もある。乳幼児にとって、最も怖い感染症の一つと言っていい。) RSVは何度か感染を繰り返すことで免疫を獲得し、免疫不全などの基礎疾患がなければ、現役世代で重症化することはない。だが、高齢者についてはこうした知見をあてはめられない。乳幼児と違い、この世代での感染の実態はあまりわかっていないからだ。 高齢化が進む先進国で、昨冬の米国同様、少なからぬ高齢者がRSVで命を落としているのは確実なようだ。日本については、最近、グラクソ・スミスクラインの研究チームが感染状況を推計した。この推計によれば、毎年約6万2600人の高齢者が入院し、約4500人が亡くなっているという』、「RSVは何度か感染を繰り返すことで免疫を獲得し、免疫不全などの基礎疾患がなければ、現役世代で重症化することはない。だが、高齢者についてはこうした知見をあてはめられない。乳幼児と違い、この世代での感染の実態はあまりわかっていないからだ。 高齢化が進む先進国で、昨冬の米国同様、少なからぬ高齢者がRSVで命を落としているのは確実なようだ。日本については、最近、グラクソ・スミスクラインの研究チームが感染状況を推計した。この推計によれば、毎年約6万2600人の高齢者が入院し、約4500人が亡くなっているという」、なるほど。
・『コロナ規制の解除が感染症の大流行を生む  昨冬の米国のトリプルデミックを考えるにあたって注目すべきは、コロナ流行が始まるとインフルもRSVも流行様式が一変したことだ。RSVの場合、2020年には全く流行せず、2021年には夏場に再流行した。そして、昨冬の大流行となった。 実は、この状況は日本も同じだ。2020年は流行せず、2021年は6~7月、2022年は7~8月、今年は5~6月に流行している。今冬、どうなるかはわからない。 なぜこうなったのかについては、まだ結論が出ていないが、コロナパンデミック下での感染対策の強化や市民生活の抑制が、流行に歯止めをかけたことが考えられる。ただこの間、集団免疫は低下するため、社会活動を再開した段階で、様々な感染症が大流行するのではなかろうか。 本コラムは新潮社の会員制国際情報サイト「新潮社フォーサイト」の提供記事です。フォーサイトの会員登録はこちら 現在、中国ではインフルエンザやマイコプラズマなど、複数の感染症が大流行していると報告されている。いずれも冬季に流行する呼吸器感染症だ。こうした流行の状況は、昨冬の米国に相通じるものがある。世界で最も早くコロナ規制を緩和した米国は、様々な感染症が再流行するのが早く、中国がその後を追っているのも頷ける。 このあたり、英『ネイチャー』誌は冷静だ。11月27日に配信したニュースで、以下のように報じている。 「中国の子供たちの間で肺炎などの呼吸器疾患が急増しているのは、冬によく見られる感染症の結果であり、新たな病原体によるものではない。世界保健機関は、同国で急性呼吸器感染症が典型的な『冬の急増』に見舞われていると報告している。疫学者らは、コロナパンデミックが始まって以来、中国では規制が解除されて初めての冬であることを考慮すると、この急増は予想されると述べている」』、「英『ネイチャー』誌」の「冷静な」分析通りであれば、心配すう必要はないことになる。
・『高齢化国・日本に必要な対策  昨冬の米国、今冬の中国のような事態が世界各地で起こっても不思議ではない。世界各地で対策が進んでいる。 例えば米国は5月、グラクソ・スミスクラインやファイザーが開発した高齢者向けRSVワクチンを承認した。第三相臨床試験では、両者とも肺炎など重症合併症の発症を8割以上予防したという。米国政府は今冬、コロナ、インフルに加え、RSVワクチンの接種を呼び掛けている。 日本はどうだろうか。危機意識が低いと言わざるを得ない。9月、我が国もRSVワクチンを承認したが、今冬に集団接種を始める予定はない。 日本は世界で最も高齢化が進んでいる国だ。高齢化率約30%の国がパンデミックを経験したのは人類史上初だ。 コロナ禍の日本では、これまで世界が経験しなかった様々なことが起こった。その代表が、コロナによる死亡は少なかった一方、その約5倍の高齢者が老衰や誤嚥性肺炎などで死亡したことだ。この結果、日本は、コロナ禍で最も人口減少が進んだ先進国となった。この分析は、高齢化が進んだ国では感染対策だけでなく、高齢者の持病対策や健康増進対策が必要であることを意味する。 日本の超過死亡については、昨年3月、米ワシントン大学の研究チームが、国際比較の一環として英『ランセット』誌に発表した。発表同日に『ネイチャー』誌もニュースとして報じたが、国内のマスコミはどこも報じなかったし、厚労省や周囲の専門家も、この事実に触れなかった。なぜ、最も重要な科学的事実を彼らが無視しているのだろうか。 コロナパンデミックは収束を迎えつつある。どうやら、この間に様々な感染症に対する免疫が失われて、世界が正常化するために、様々な感染症が大流行しそうだ。世界史上、最も高齢化が進んだ日本は、どうすればこの問題を克服できるのだろうか。現在、中国で起こっていることは決して人ごとではない。我々は世界から学ばねばならない』、「日本は」「コロナによる死亡は少なかった一方、その約5倍の高齢者が老衰や誤嚥性肺炎などで死亡したことだ。この結果、日本は、コロナ禍で最も人口減少が進んだ先進国となった。この分析は、高齢化が進んだ国では感染対策だけでなく、高齢者の持病対策や健康増進対策が必要であることを意味する」、同感である。
タグ:上久保誠人氏による「感染症統括庁が発足も“医療再崩壊”防ぐには、日本版「ナイチンゲール病院」実現を」 ダイヤモンド・オンライン (その26)(感染症統括庁が発足も“医療再崩壊”防ぐには 日本版「ナイチンゲール病院」実現を、米国 中国で複数の感染症が大流行 日本は「コロナ後」にどう備えるか コロナ インフル RSV感染症の「トリプルデミック」はなぜ起きる?) パンデミック(経済社会的視点) 「尾身氏らがワクチンについて素早く情報を収集し、世界最先端の動向を踏まえた上で政府に進言していたら、こうした事態は防げたのではないだろうか」、その通りだ。 「統括庁の下の「新型インフルエンザ等対策推進会議」には、新たに15人が委員に任命された。要注目なのが、行政学などを専門とする早稲田大学政治経済学術院教授の稲継裕昭氏が委員に加わったことだ。 筆者はこれまで、新型コロナの有識者会議に政治・行政学者が入らないことを批判してきた。感染症対策の最終的な意思決定は、政治によって下される。だからこそ、その専門家が必要だと考えてきたのだ ・・・その意味で、稲継教授が委員に入ったことは一定の評価ができる」、なるほど。 「医療崩壊を防ぐに当たって、既存の病院・クリニックの限られたリソースのやりくりでは限界がある・・・自衛隊には、医官・看護官がそれぞれ約1000人ずつ在籍している。パンデミック時には彼・彼女らが出動し、感染症患者を収容する専用病院を臨時で設置するのだ。 この案は、英国軍の支援によって英国内に設置された、新型コロナ対策の野戦病院「ナイチンゲール病院」を参考にしたものだ」、いいアイデアだ。 JBPRESS 新潮社フォーサイト「米国、中国で複数の感染症が大流行、日本は「コロナ後」にどう備えるか コロナ、インフル、RSV感染症の「トリプルデミック」はなぜ起きる?」 上昌広氏 震源地となりやすい「中国」には「隠蔽の前歴」があるというのは困ったことだ。 「RSVは何度か感染を繰り返すことで免疫を獲得し、免疫不全などの基礎疾患がなければ、現役世代で重症化することはない。だが、高齢者についてはこうした知見をあてはめられない。乳幼児と違い、この世代での感染の実態はあまりわかっていないからだ。 高齢化が進む先進国で、昨冬の米国同様、少なからぬ高齢者がRSVで命を落としているのは確実なようだ。日本については、最近、グラクソ・スミスクラインの研究チームが感染状況を推計した。 この推計によれば、毎年約6万2600人の高齢者が入院し、約4500人が亡くなっているという」、なるほど。 「英『ネイチャー』誌」の「冷静な」分析通りであれば、心配すう必要はないことになる。 「日本は」「コロナによる死亡は少なかった一方、その約5倍の高齢者が老衰や誤嚥性肺炎などで死亡したことだ。この結果、日本は、コロナ禍で最も人口減少が進んだ先進国となった。この分析は、高齢化が進んだ国では感染対策だけでなく、高齢者の持病対策や健康増進対策が必要であることを意味する」、同感である。
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金融関連の詐欺的事件(その14)(不動産会社の「許せない手口」の実態…お金に困った高齢者への殺し文句に要注意、スルガ銀 「膠着2年半」アパマン融資の視界不良 揺れる、もう1つの「かぼちゃの馬車」問題) [金融]

金融関連の詐欺的事件については、本年5月6日に取上げた。今日は、(その14)(不動産会社の「許せない手口」の実態…お金に困った高齢者への殺し文句に要注意、スルガ銀 「膠着2年半」アパマン融資の視界不良 揺れる、もう1つの「かぼちゃの馬車」問題)である。

先ずは、本年9月1日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したスタイルアクト(株)代表取締役/不動産コンサルタントの沖有人氏による「不動産会社の「許せない手口」の実態…お金に困った高齢者への殺し文句に要注意」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/328428
・『持ち家を売って資金を得た後、そのまま賃貸契約を結んで住み続けられる「リースバック」。この不動産取引は高齢者などから需要があるようだが、契約者は下手をすれば自宅を失うリスクがある。不動産事業者が設定する買い取り金額は相場より安く、家賃は高くなりがちだからだ。筆者が「許せない」と感じる取引の問題点を詳しく解説する』、最近はテレビでも「リースバック」を派手に宣伝しているが、「買い取り金額は相場より安く、家賃は高くなりがちだ」なので、確かに「契約者は下手をすれば自宅を失うリスクがある」、なるほど。
・『親のすみかが奪われる!? リースバックに潜む大損リスク  生まれ育った実家や、両親のすみかを失っている人が急増中だ。広告で見ることも増えている「リースバック」という不動産取引が原因で、国土交通省や国民生活センターが注意喚起を行っている。 お盆は過ぎたが、もしこれから実家に帰る機会があれば、このリースバックには気を付けるよう親に話しておいた方がいい。 リースバックとは、自宅(持ち家)を不動産事業者に売却して資金を得た一般消費者が、賃貸契約を結んで同じ物件に住み続けられる仕組みだ。高齢者などから需要があり、最近は戸建て住宅のリースバックを手掛ける不動産事業者が増えている。 だが、この手法で得られる売却代金は、一般的な取引よりも大幅に安いことが多い。それどころか、賃貸契約後の家賃は相場よりも高くなりがちだ。ビジネスそのものは現行法では問題ないのかもしれないが、筆者はこれらを「法外」な水準だと思っている。 それでもお金に困っている高齢者は、自宅を売却して老後資金を手に入れられるだけでなく、そこに「住み続けられる」という殺し文句で相場を知らずに契約してしまう。 契約者は自分名義ではなくなった家に、昨日までと同様に住み続けることができるが、その裏側では大損するリスクがある。最悪の場合はホームレスになってしまう。 というのも、リースバックを手掛ける不動産事業者にとって、期待利回り(年率)はなんと約7~12%ある。買い取り価格の最大12%程度の金額を、家賃収入として毎年受け取ることができるのだ。 だが契約者側にとってみれば、仮に相場通りの金額で自宅を売却できても、その資金は約8~14年でなくなってしまう。そして、これはあくまで理論上の数値だ。実際に手に入る資金は相場以下になるので、もっと短い期間で底を突くと考えた方がいい。  この実態を考えると、リースバックを使わずに自宅を持っていた方が得である。すでに仕事を引退し、年金生活をしている高齢者はなおさらだ。安易に手を出した結果、再び資金繰りに苦慮して家賃を支払えなくなり、数年後に家を失う事態に発展するかもしれない。) そんなことをするくらいなら、別の資金繰りの方法はいくらでもある。 リースバックを使わず、通常の手続きで持ち家を売却して、他の賃貸物件に引っ越すのだ。一般的な戸建て賃貸の利回りは5%なので、家賃はリースバックよりも安い。最大で半額程度に抑えられる。 他にもやり方はある。リバースモーゲージという、自宅を担保に入れてお金を借りる方法だ。金利は3%ほどである。そして、リバースモーゲージ型住宅ローンの返済は、契約者が亡くなった後に物件を売却する形で行われる。要は、死ぬまで安心して住み続けられるのだ。 いずれも、リースバックと比較したら、はるかにリーズナブルな方法となる』、「リースバックを手掛ける不動産事業者にとって、期待利回り(年率)はなんと約7~12%ある。買い取り価格の最大12%程度の金額を、家賃収入として毎年受け取ることができるのだ。 だが契約者側にとってみれば、仮に相場通りの金額で自宅を売却できても、その資金は約8~14年でなくなってしまう。そして、これはあくまで理論上の数値だ。実際に手に入る資金は相場以下になるので、もっと短い期間で底を突くと考えた方がいい・・・他にもやり方はある。リバースモーゲージという、自宅を担保に入れてお金を借りる方法だ。金利は3%ほどである・・・返済は、契約者が亡くなった後に物件を売却する形で行われる。要は、死ぬまで安心して住み続けられるのだ。 いずれも、リースバックと比較したら、はるかにリーズナブルな方法となる」、なるほど。
・『「強引に勧誘された」…自宅売却を巡るトラブル続出  こうした方法を知らない一般消費者に向けて、リースバック事業を積極推進している不動産事業者はかなり儲かる。そして、リースバックに応じた人は後悔するケースが多い。 (不動産会社の「許せない手口」の実態…お金に困った高齢者への殺し文句に要注意 の図はリンク先参照) その証拠に、全国の消費生活センターなどには、自宅の売却について下記のような相談が寄せられているという。 ・自宅を売却し、家賃を払ってそのまま自宅に住み続けることができると言われ契約したが、解約したい ・強引に勧誘され、安価で自宅を売却する契約をしてしまった ・解約したいと申し出たら違約金を請求された リースバックだけでなく他の住宅売却トラブルも含めたデータだが、国民生活センターには60歳以上の一般消費者から年間600件を超える相談が寄せられる年もあるそうだ。泣き寝入りしている人もいるはずなので、契約者はその数倍はいるものと想定される。 相談者全体に占める70歳以上の割合は、2016年には36.2%だったのに対し、20年には52.3%まで増えている。住宅売却トラブルに悩まされる人の高齢化も進んでいるようだ。 さらに恐ろしいことに、不動産事業者に持ち家を売却した場合、契約のクーリングオフはできない。高齢者の生活に悪影響が生じかねないため、国民生活センターは注意喚起や関係機関(国土交通省、全国宅地建物取引業協会連合会など)への要望を行っているという』、「国民生活センターには60歳以上の一般消費者から年間600件を超える相談が寄せられる年もあるそうだ。泣き寝入りしている人もいるはずなので、契約者はその数倍はいるものと想定される。 相談者全体に占める70歳以上の割合は、2016年には36.2%だったのに対し、20年には52.3%まで増えている・・・不動産事業者に持ち家を売却した場合、契約のクーリングオフはできない」、なるほど。
・『筆者はリースバックを人道的にどうかと思う  なお、不動産取引の勧誘で、「しつこい、長時間、迷惑、脅迫、強引、うそ」などを含む説明は宅地建物取引業法で禁止されている。こうした勧誘を受けた場合は、「免許行政庁に連絡します」と言うと、たいていの営業担当者は引き下がる。宅地建物取引業法違反で行政処分が行われるからだ。 法改正によってこの規制が設けられた結果、不動産事業者は高属性(信用度が高く融資しやすい)の会社員に投資用不動産を売ることがかなり難しくなった。それまでは、会社に勧誘の電話をかける手段が横行していたが、法的に撃退できるようになったからだ。 だが上記の相談内容を見る限り、リースバックは営業担当者の撃退方法を知らない高齢者がターゲットになっている印象だ。こうした勧誘や、法外な価格・家賃の設定に関して、筆者は人道的にどうかと思う。 そして皮肉なことに、リースバック事業を展開している会社には、上場企業のグループ会社・子会社・関連会社などが含まれている。親会社が上場しているということは、それなりの社会的信用はあるはずだが、消費者の利益よりも「業績を伸ばして株主を満足させること」を最優先に考えているのだろう。  最後に、あらためて問題を整理しておく。持ち家の売却後も「賃貸」という形で住み続けられるリースバック契約は、一見すると自宅という資産を有効活用する手段のように思える。引っ越しの必要もなく、売却代金を得ることで資金繰りも一時的に良くなるからだ。 しかし実は、その価格設定や契約内容は、かなり消費者にとって不利になっている。最悪の場合、契約者が大損するだけでなく自宅を失うこともあり得る』、「あらためて問題を整理しておく。持ち家の売却後も「賃貸」という形で住み続けられるリースバック契約は、一見すると自宅という資産を有効活用する手段のように思える。引っ越しの必要もなく、売却代金を得ることで資金繰りも一時的に良くなるからだ。 しかし実は、その価格設定や契約内容は、かなり消費者にとって不利になっている。最悪の場合、契約者が大損するだけでなく自宅を失うこともあり得る」、なるほど。
・『両親の「自宅喪失」を防ぐ有効な方法は?  これを止める有効な方法は「親子間の会話」だと筆者は考える。振り込め詐欺と同様、身内の注意喚起があれば防げる可能性が高い。帰省が難しいならば、電話をかけて「リースバックという、下手をすれば大損する不動産取引があって、問題になっているから気を付けて」と言うだけでもいい。 それでも心配なら、実家を共有名義にするのもいいだろう。子どもの持ち分が少しでもあれば、子どもの同意がないと売却できなくなる。贈与税を取られるのが癪(しゃく)だという場合は、ほんの一部だけを買い取って、司法書士に登記してもらえればいい。 こんなコラムを書かなければならないのは、不動産業界にいる者として大変申し訳なく思う。だが筆者は、自社の利益のために消費者に不当な契約を課し、時として自宅を取り上げる事業者を許す気はないということを、ここに記しておく』、「これを止める有効な方法は「親子間の会話・・・それでも心配なら、実家を共有名義にするのもいいだろう。子どもの持ち分が少しでもあれば、子どもの同意がないと売却できなくなる。贈与税を取られるのが癪(しゃく)だという場合は、ほんの一部だけを買い取って、司法書士に登記してもらえればいい」、これで安心だ。

次に、12月13日付け東洋経済オンライン「スルガ銀、「膠着2年半」アパマン融資の視界不良 揺れる、もう1つの「かぼちゃの馬車」問題」を紹介しよう。
・『「シェアハウス以外の投資用不動産向け融資についての当社対応状況」。11月22日、スルガ銀行がこんな表題のプレスリリースを公表した。シェアハウス以外の投資用不動産、とは1棟アパート・マンション(アパマン)を指す。 今年4月以降、スルガ銀はアパマンオーナーが結成した弁護団との交渉状況を開示しており、今回が2度目の公表となる。 弁護団側は計864物件のアパマン融資について、「書類改ざんなどの不正行為によって、オーナーが高値づかみをさせられた」と主張。元本カットを求めて、スルガ銀と交渉を続けている。 2018年の発覚以来、投資用不動産をめぐる不正融資に揺れてきたスルガ銀。2022年にシェアハウス「かぼちゃの馬車」の問題が終局した一方、いまだ懸案となっているのがアパマン融資だ。スルガ銀は早期解決に向け落としどころを探るも、弁護団との溝はなかなか埋まらない』、「2022年にシェアハウス「かぼちゃの馬車」の問題が終局した一方、いまだ懸案となっているのがアパマン融資だ・・・弁護団との溝はなかなか埋まらない」、なるほど。
・『シェアハウスよりも問題が長期化  41回――。アパマンオーナーの弁護団が発足した2021年5月から2023年11月末までの間に、スルガ銀と弁護団との間で行われた交渉回数だ。2年半が経過しても協議は平行線をたどっている。 シェアハウスのケースでは、交渉開始から解決までに2年を要した。シェアハウスオーナーが弁護団を結成したのは2018年3月。以後スルガ銀と50回以上もの折衝を重ねた末、2020年3月にオーナー257人とスルガ銀との間で和解が成立した。 残るオーナーとも翌2021年、2022年に和解にこぎつけ、スルガ銀は一連のシェアハウス問題から解放された。 シェアハウスが全面解決に至った背景には、2つの要因がある。1つはシェアハウスの特殊性が、スルガ銀に譲歩の余地を与えたことだ。 シェアハウスは投資用不動産としてのマーケットが未成熟ゆえ、行内でも審査ノウハウが確立していなかった。不動産業者が画策した非現実的な収益計画を見抜けず、オーナーに高値づかみをさせてしまった。 行員による不正行為の有無は脇に置き、あくまで審査不備の責任を取る形式を裁判所の調停委員が認定し、スルガ銀は和解に応じた。) もう1つは代物弁済に似た、「奇策」とも言えるスキームが機能したことだ。スルガ銀がシェアハウス向けの貸出債権を投資家に売却し、オーナーは投資家にシェアハウスを差し出すことで、銀行・オーナー間の債権および債務を帳消しにした。 幸いシェアハウスの多くは首都圏の好立地にあり、入札には複数の投資家が参加。最終的にアメリカ投資ファンド「ローンスター」が落札し、現在は賃貸住宅として運用している(詳細は2022年4月10日配信記事:「かぼちゃの馬車」再生狙う米投資ファンドの勝算)。 シェアハウスでは早期解決の決め手となった2つの要因が、アパマンでは通用しない。 成熟したアパマン市場では審査の不備に原因を求められないうえ、「案件ごとに事情は異なるため、(シェアハウスのような)一律の解決はできない」(スルガ銀)。 代物弁済スキームも、地方物件の多いアパマンでは投資家が名乗りを上げる見込みは薄い』、「シェアハウスが全面解決に至った背景には、2つの要因がある。1つはシェアハウスの特殊性が、スルガ銀に譲歩の余地を与えたことだ。 シェアハウスは投資用不動産としてのマーケットが未成熟ゆえ、行内でも審査ノウハウが確立していなかった。不動産業者が画策した非現実的な収益計画を見抜けず、オーナーに高値づかみをさせてしまった。 行員による不正行為の有無は脇に置き、あくまで審査不備の責任を取る形式を裁判所の調停委員が認定し、スルガ銀は和解に応じた・・・もう1つは代物弁済に似た、「奇策」とも言えるスキームが機能したことだ。スルガ銀がシェアハウス向けの貸出債権を投資家に売却し、オーナーは投資家にシェアハウスを差し出すことで、銀行・オーナー間の債権および債務を帳消しにした。 幸いシェアハウスの多くは首都圏の好立地にあり、入札には複数の投資家が参加。最終的にアメリカ投資ファンド「ローンスター」が落札し、現在は賃貸住宅として運用している・・・ェアハウスでは早期解決の決め手となった2つの要因が、アパマンでは通用しない。 成熟したアパマン市場では審査の不備に原因を求められないうえ、「案件ごとに事情は異なるため、(シェアハウスのような)一律の解決はできない」、なるほど。
・『早期解決フレームワークで打開を図る  膠着状態に陥る中、スルガ銀は2022年5月に「早期解決フレームワーク」なる解決策を弁護団に提案する。アパマン融資を案件ごとに以下の3つの基準に当てはめ、適合すればスルガ銀が解決金を支払う内容だ。 条件付きながら解決金を支払う試案によって、アパマン問題は前進するかに見えた。だが、弁護団の態度を軟化させるには至っていない。基準の適合要件が厳しく、ほとんどの案件がふるい落とされたためだ。 弁護団が試験的に24物件を提示し、スルガ銀に基準適用を求めたところ、まず第1段階で16物件が弾かれ、さらに第2段階で6物件が除外された。最終的に解決金の支払い対象となったのは2物件のみで、スルガ銀から提示された解決金も、弁護団が納得する水準ではなかった。) 「高値づかみ」の有無を判断する第1段階では、レントロール(家賃明細表)が重視された。物件価格は家賃収入から逆算して決まるため、レントロールの数字が実際に入居者が支払う家賃よりも水増しされていると、オーナーは不当に高い価格で物件を購入させられたことを意味する。 だが、関係者によれば、単にレントロールが実際の家賃から水増しされただけでは要件には足りず、2割程度の大幅な乖離がなければ高値づかみとは認められなかったという。 第2段階においても、不正行為が確認されただけでなく、行員の関与を裏付ける証拠が必要な点がネックとなっている。早期解決フレームワークは現状、宙に浮いた状態だ。 手詰まり感が漂う中、スルガ銀は交渉の枠外に活路を見出そうとしている。交渉の決着を待たずして、オーナーにアパマンの売却を促すことだ。 スルガ銀によれば、2022年9月から2023年9月までの1年間で64物件が売却によってオーナーの手から離れたことで、弁護団が受任する案件からも外れた。昨今の不動産市況の高騰が、もっけの幸いとなった』、「スルガ銀は2022年5月に「早期解決フレームワーク」なる解決策を弁護団に提案する。アパマン融資を案件ごとに以下の3つの基準に当てはめ、適合すればスルガ銀が解決金を支払う内容だ。 条件付きながら解決金を支払う試案によって、アパマン問題は前進するかに見えた。だが、弁護団の態度を軟化させるには至っていない。基準の適合要件が厳しく、ほとんどの案件がふるい落とされたためだ・・・弁護団が試験的に24物件を提示し、スルガ銀に基準適用を求めたところ、まず第1段階で16物件が弾かれ、さらに第2段階で6物件が除外された。最終的に解決金の支払い対象となったのは2物件のみで、スルガ銀から提示された解決金も、弁護団が納得する水準ではなかった・・・単にレントロールが実際の家賃から水増しされただけでは要件には足りず、2割程度の大幅な乖離がなければ高値づかみとは認められなかったという。 第2段階においても、不正行為が確認されただけでなく、行員の関与を裏付ける証拠が必要な点がネックとなっている。早期解決フレームワークは現状、宙に浮いた状態だ。 手詰まり感が漂う中、スルガ銀は交渉の枠外に活路を見出そうとしている。交渉の決着を待たずして、オーナーにアパマンの売却を促すことだ。 スルガ銀によれば、2022年9月から2023年9月までの1年間で64物件が売却によってオーナーの手から離れたことで、弁護団が受任する案件からも外れた。昨今の不動産市況の高騰が、もっけの幸いとなった」、なるほど。
・『業務改善命令はいまだに解除されていない  実はスルガ銀にとって、シェアハウスないしアパマン問題は財務面での重荷でなくなりつつある。 前者は代物弁済スキームによって、バランスシート上からはほぼ消えた。後者も弁護団が受任するアパマンは引当金や担保などでほぼ100%保全し、2022年からは弁護団が受任していない物件についても、延滞を重ねている場合には予防的引き当てを進めている。 ピーク時に1300億円を突破した実質与信費用は、2025年度以降は年間30億円程度で平準化する見通しだ。 それでも、金融庁が2018年10月にスルガ銀に発した業務改善命令はいまだ解除されていない。 命令の中で金融庁は、「シェアハウス向け融資及びその他投資用不動産融資に関して、金利引き下げ、返済条件見直し、金融ADR等を活用した元本の一部カットなど、個々の債務者に対して適切な対応を行うための態勢の確立」を求めている。 アパマン問題が解決しない限り、投資用不動産にまつわるガバナンス体制が刷新されたとはみなされない。 「アパマン問題の解決は重要な経営課題。1日でも早い解決を希望している」。11月に開催された決算説明会において、スルガ銀の加藤広亮社長はこう述べた。だが、有言実行に向けた打開策は見つかっていない』、「シェアハウスないしアパマン問題は財務面での重荷でなくなりつつある。 前者は代物弁済スキームによって、バランスシート上からはほぼ消えた。後者も弁護団が受任するアパマンは引当金や担保などでほぼ100%保全し、2022年からは弁護団が受任していない物件についても、延滞を重ねている場合には予防的引き当てを進めている。 ピーク時に1300億円を突破した実質与信費用は、2025年度以降は年間30億円程度で平準化する見通しだ。 それでも、金融庁が2018年10月にスルガ銀に発した業務改善命令はいまだ解除されていない。 命令の中で金融庁は、「シェアハウス向け融資及びその他投資用不動産融資に関して、金利引き下げ、返済条件見直し、金融ADR等を活用した元本の一部カットなど、個々の債務者に対して適切な対応を行うための態勢の確立」を求めている。 アパマン問題が解決しない限り、投資用不動産にまつわるガバナンス体制が刷新されたとはみなされない。 「アパマン問題の解決は重要な経営課題。1日でも早い解決を希望している」。11月に開催された決算説明会において、スルガ銀の加藤広亮社長はこう述べた。だが、有言実行に向けた打開策は見つかっていない』、「代物弁済スキームによって、バランスシート上からはほぼ消えた。後者も弁護団が受任するアパマンは引当金や担保などでほぼ100%保全し、2022年からは弁護団が受任していない物件についても、延滞を重ねている場合には予防的引き当てを進めている」、しかし、引当などを積んだだけで、「バランスシート」には残っている。不良債権問題の時と同様に、これをオフバランス化する必要があるのだろう。
タグ:金融関連の詐欺的事件 (その14)(不動産会社の「許せない手口」の実態…お金に困った高齢者への殺し文句に要注意、スルガ銀 「膠着2年半」アパマン融資の視界不良 揺れる、もう1つの「かぼちゃの馬車」問題) ダイヤモンド・オンライン 沖有人氏による「不動産会社の「許せない手口」の実態…お金に困った高齢者への殺し文句に要注意」 最近はテレビでも「リースバック」を派手に宣伝しているが、「買い取り金額は相場より安く、家賃は高くなりがちだ」なので、確かに「契約者は下手をすれば自宅を失うリスクがある」、なるほど。 「リースバックを手掛ける不動産事業者にとって、期待利回り(年率)はなんと約7~12%ある。買い取り価格の最大12%程度の金額を、家賃収入として毎年受け取ることができるのだ。 だが契約者側にとってみれば、仮に相場通りの金額で自宅を売却できても、その資金は約8~14年でなくなってしまう。そして、これはあくまで理論上の数値だ。実際に手に入る資金は相場以下になるので、もっと短い期間で底を突くと考えた方がいい・・・ 他にもやり方はある。リバースモーゲージという、自宅を担保に入れてお金を借りる方法だ。金利は3%ほどである・・・返済は、契約者が亡くなった後に物件を売却する形で行われる。要は、死ぬまで安心して住み続けられるのだ。 いずれも、リースバックと比較したら、はるかにリーズナブルな方法となる」、なるほど。 「国民生活センターには60歳以上の一般消費者から年間600件を超える相談が寄せられる年もあるそうだ。泣き寝入りしている人もいるはずなので、契約者はその数倍はいるものと想定される。 相談者全体に占める70歳以上の割合は、2016年には36.2%だったのに対し、20年には52.3%まで増えている・・・不動産事業者に持ち家を売却した場合、契約のクーリングオフはできない」、なるほど。 「あらためて問題を整理しておく。持ち家の売却後も「賃貸」という形で住み続けられるリースバック契約は、一見すると自宅という資産を有効活用する手段のように思える。引っ越しの必要もなく、売却代金を得ることで資金繰りも一時的に良くなるからだ。 しかし実は、その価格設定や契約内容は、かなり消費者にとって不利になっている。最悪の場合、契約者が大損するだけでなく自宅を失うこともあり得る」、なるほど。 「これを止める有効な方法は「親子間の会話・・・それでも心配なら、実家を共有名義にするのもいいだろう。子どもの持ち分が少しでもあれば、子どもの同意がないと売却できなくなる。贈与税を取られるのが癪(しゃく)だという場合は、ほんの一部だけを買い取って、司法書士に登記してもらえればいい」、これで安心だ。 東洋経済オンライン「スルガ銀、「膠着2年半」アパマン融資の視界不良 揺れる、もう1つの「かぼちゃの馬車」問題」 「2022年にシェアハウス「かぼちゃの馬車」の問題が終局した一方、いまだ懸案となっているのがアパマン融資だ・・・弁護団との溝はなかなか埋まらない」、なるほど。 「シェアハウスが全面解決に至った背景には、2つの要因がある。1つはシェアハウスの特殊性が、スルガ銀に譲歩の余地を与えたことだ。 シェアハウスは投資用不動産としてのマーケットが未成熟ゆえ、行内でも審査ノウハウが確立していなかった。不動産業者が画策した非現実的な収益計画を見抜けず、オーナーに高値づかみをさせてしまった。 行員による不正行為の有無は脇に置き、あくまで審査不備の責任を取る形式を裁判所の調停委員が認定し、スルガ銀は和解に応じた・・・ もう1つは代物弁済に似た、「奇策」とも言えるスキームが機能したことだ。スルガ銀がシェアハウス向けの貸出債権を投資家に売却し、オーナーは投資家にシェアハウスを差し出すことで、銀行・オーナー間の債権および債務を帳消しにした。 幸いシェアハウスの多くは首都圏の好立地にあり、入札には複数の投資家が参加。最終的にアメリカ投資ファンド「ローンスター」が落札し、現在は賃貸住宅として運用している・・・ェアハウスでは早期解決の決め手となった2つの要因が、アパマンでは通用しない。 成熟したアパマン市場では審査の不備に原因を求められないうえ、「案件ごとに事情は異なるため、(シェアハウスのような)一律の解決はできない」、なるほど。 「スルガ銀は2022年5月に「早期解決フレームワーク」なる解決策を弁護団に提案する。アパマン融資を案件ごとに以下の3つの基準に当てはめ、適合すればスルガ銀が解決金を支払う内容だ。 条件付きながら解決金を支払う試案によって、アパマン問題は前進するかに見えた。だが、弁護団の態度を軟化させるには至っていない。基準の適合要件が厳しく、ほとんどの案件がふるい落とされたためだ・・・弁護団が試験的に24物件を提示し、スルガ銀に基準適用を求めたところ、まず第1段階で16物件が弾かれ、さらに第2段階で6物件が除外された。 最終的に解決金の支払い対象となったのは2物件のみで、スルガ銀から提示された解決金も、弁護団が納得する水準ではなかった・・・単にレントロールが実際の家賃から水増しされただけでは要件には足りず、2割程度の大幅な乖離がなければ高値づかみとは認められなかったという。 第2段階においても、不正行為が確認されただけでなく、行員の関与を裏付ける証拠が必要な点がネックとなっている。早期解決フレームワークは現状、宙に浮いた状態だ。 手詰まり感が漂う中、スルガ銀は交渉の枠外に活路を見出そうとしている。交渉の決着を待たずして、オーナーにアパマンの売却を促すことだ。 スルガ銀によれば、2022年9月から2023年9月までの1年間で64物件が売却によってオーナーの手から離れたことで、弁護団が受任する案件からも外れた。昨今の不動産市況の高騰が、もっけの幸いとなった」、なるほど。 「シェアハウスないしアパマン問題は財務面での重荷でなくなりつつある。 前者は代物弁済スキームによって、バランスシート上からはほぼ消えた。後者も弁護団が受任するアパマンは引当金や担保などでほぼ100%保全し、2022年からは弁護団が受任していない物件についても、延滞を重ねている場合には予防的引き当てを進めている。 ピーク時に1300億円を突破した実質与信費用は、2025年度以降は年間30億円程度で平準化する見通しだ。 それでも、金融庁が2018年10月にスルガ銀に発した業務改善命令はいまだ解除されていない。 命令の中で金融庁は、「シェアハウス向け融資及びその他投資用不動産融資に関して、金利引き下げ、返済条件見直し、金融ADR等を活用した元本の一部カットなど、個々の債務者に対して適切な対応を行うための態勢の確立」を求めている。 アパマン問題が解決しない限り、投資用不動産にまつわるガバナンス体制が刷新されたとはみなされない。 「アパマン問題の解決は重要な経営課題。1日でも早い解決を希望している」。11月に開催された決算説明会において、スルガ銀の加藤広亮社長はこう述べた。だが、有言実行に向けた打開策は見つかっていな い』、「代物弁済スキームによって、バランスシート上からはほぼ消えた。後者も弁護団が受任するアパマンは引当金や担保などでほぼ100%保全し、2022年からは弁護団が受任していない物件についても、延滞を重ねている場合には予防的引き当てを進めている」、しかし、引当などを積んだだけで、「バランスシート」には残っている。不良債権問題の時と同様に、これをオフバランス化する必要があるのだろう。
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香港(その8)(香港社会は今... 世界で報じられた民主化デモのその後、民主活動家・周庭氏亡命に香港行政トップが怒りを爆発させた3つの理由 東アジア「深層取材ノート」(第215回)、日本好きな「民主の女神」周庭さんが亡命できない スパイ天国・日本の残念な現状 勝丸円覚「インテリジェンス通信」第3回) [世界情勢]

香港については、2021年10月19日に取上げた。久しぶりの今日は、(その8)(香港社会は今... 世界で報じられた民主化デモのその後、民主活動家・周庭氏亡命に香港行政トップが怒りを爆発させた3つの理由 東アジア「深層取材ノート」(第215回)、日本好きな「民主の女神」周庭さんが亡命できない スパイ天国・日本の残念な現状 勝丸円覚「インテリジェンス通信」第3回)である。

先ずは、昨年5月6日付けNewsweek日本版が掲載したライターの西谷 格氏による「香港社会は今... 世界で報じられた民主化デモのその後」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/05/post-98630.php
・『<2019年6月から大規模なデモが続き、市民と香港政府の対立は激化した。今は表面的には落ち着きを取り戻したように見える> 香港では2019年6月から半年以上にわたって大規模なデモが続き、世界で連日報じられた。 そもそもの発端は、香港にいる犯罪者を中国本土に送ることが可能になる「逃亡犯条例改正案」に対する市民の反発だ。市民と香港政府の対立は激化し、双方の暴力行為がエスカレートした。 2020年に入るとコロナ禍によって集会が禁じられ、6月には反政府運動などを禁じる「国家安全維持法」が中国政府主導で強権的に施行される。言論の自由への制限が強まり、中国共産党を否定していた新聞は廃刊に追い込まれた。 そこまではニュースで見聞きした人も少なくないだろうが、その後の香港社会はどうなっているのか。 実態は、この状況にやむを得ず慣れ始め、表面的には落ち着きを取り戻したように見える。 香港民意研究所の世論調査に「一国二制度を信じる」と答えた人は、27%(2020年2月)から45.8%(2022年2月)まで回復。治安の悪化や経済的損失による疲弊や諦念が背景にある。 6月末には林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官が退任する。5月8日に行われる次期選挙では、デモ鎮圧で香港警察を指揮した李家超(ジョン・リー)が中国の強い後押しを受けて当選確実に。 自由への締め付けがさらに強まると懸念されているが、もう以前ほどの反発は起こらないかもしれない』、新長官の「李家超」氏については、次の記事を参照されたいが、ますます中国本土の支配が強まっているようだ。

次に、本年12月7日付けJBPressが掲載したジャーナリストの近藤 大介氏による「民主活動家・周庭氏亡命に香港行政トップが怒りを爆発させた3つの理由 東アジア「深層取材ノート」(第215回)」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/78304#goog_rewarded
・『「私は現在、カナダのトロントに滞在しています。もう永遠に、香港には戻らないと決めました……」 12月3日、香港の民主活動グループ「香港衆志」で副事務局長を務めた周庭(Agnes Chow)氏(27歳)が、SNSで衝撃の「亡命宣言」を行った。その後、日本メディアなどのインタビューにも答え、香港の民主が大きく後退している現状を訴えたことから、世界的な話題を呼んでいる。 「恩を仇で返された。全力を挙げ逃亡犯をひっ捕らえる」 当の香港も、激震している。5日には、ついに香港トップの李家超行政長官が、「周庭問題」に言及。激しい怒りをぶちまけた。 「香港政府は全力を挙げて、国家の安全に危害を及ぼすいかなる逃亡犯をもひっ捕らえる。周庭は、外国もしくは境外の勢力と結託し、国家の安全に危害を与えた容疑で拘束された。そのような保護措置を放棄し、逃亡した人物に対して、警察は必然的に、全力でひっ捕らえる。 いかなる逃亡犯も、いますぐ自首することだ。そうでなければ終身、逃亡犯であり続け、終身追われる身となるだろう。 一部の逃亡犯は、誠実さを装い、言い訳をつけて同情をでっちあげ、自己を光り輝くよう見せようとしている。まったくもって恥ずべき行為だ。 香港警察は、本件で寛大な処置を試した。だが恩を仇で返されたのだ。最も失望しているのは、寛大な処置を担当した者たちだろう。香港警察は今回の経験を総括し、法規を有効にし、国家の安全の維持・保護を確保していく。そして糸を引いている外部勢力には、打撃を与えていく」) 前任の林鄭月娥行政長官が、5年間の任期中に、特定の香港人を名指しして、ここまで強烈に非難したのを、見たことがなかった。昨年7月1日に就任した李家超行政長官も、これまでは努めて、平静な行政運営を心掛けていたように見受けられる。 それがなぜ今回、ここまで怒りに満ちた発言をしたのか? そこには、3つの理由が背景として考えられる』、「李家超行政長官」が「ここまで怒りに満ちた発言をした」、「背景」をみてみよう。
・『「香港のプーチン」のメンツ丸潰れ  第一に、自身の警察官僚としてのメンツを潰されたことだ。 李家超行政長官は1957年12月、香港に生まれた。大卒のエリートではなく、1977年に19歳で香港警察に入った叩き上げだ。香港警察では長く諜報畑を歩き、1998年には800kgもの爆薬保管庫を摘発するなど、諜報員として実績を積んだ。まさに、ウラジーミル・プーチン露大統領の経歴と重なり、「香港のプーチン」との異名を取るゆえんである。 諜報員としての実績を評価され、2003年にはロンドンの王室防衛学院で研修を受けた。その後もトントン拍子で出世を重ね、2017年6月、初の叩き上げの諜報員出身者として、保安局長に就任した。この辺りから、習近平主席の目に留まっていく。 保安局長時代は、2019年6月に始まった大規模な民主派デモを取り締まった。この時、デモの中心にいた一人が、周庭氏だった。) 李保安局長は香港警察の指揮官として、デモ隊との「攻防戦」で、計6000人以上もの香港市民を拘束し、計1万発以上の催涙弾を撃ちまくった。周庭氏も逮捕、投獄され、最終的に2021年6月に出所した』、「李家超行政長官」は「「香港のプーチン」との異名」を取った、「保安局長」時代には、「香港警察の指揮官として、デモ隊との「攻防戦」で、計6000人以上もの香港市民を拘束し、計1万発以上の催涙弾を撃ちまくった。周庭氏も逮捕、投獄され、最終的に2021年6月に出所した」、なるほど。
・『「香港の守護神」と目されているのに  李局長は、民主派グループにとっては「悪の権化」だが、「中南海」(北京政府)にとっては「香港の守護神」と映った。二度と大規模デモを起こさせないため、2020年6月に、悪名高い香港国家安全維持法を制定したが、この新法制定に尽力したのも、李家超局長だった。 こうした「実績」により、習近平主席の「お墨付き」を経て、昨年7月1日に、他に誰も立候補者が出ない「異様な選挙」を経て、第6代行政長官に就任したのだ。就任式及び香港返還25周年祝賀会に参加するため、北京から訪れた習近平主席に対して、李新行政長官が平身低頭する姿が印象的だった。 このように警察官僚としての「民主化弾圧」が認められてトップに立ったという自負が、周庭氏の「カナダ亡命」によって打ち砕かれたのである』、「このように警察官僚としての「民主化弾圧」が認められてトップに立ったという自負が、周庭氏の「カナダ亡命」によって打ち砕かれたのである」、怒りはさぞかし激しそうだ。
・『すでにイエローカードを食らっている李家超氏  第二に、李行政長官が、ボスである習近平主席の怒りを恐れているということだ。 前述のような経緯で香港トップに上り詰めた李家超行政長官が見ているのは、750万香港市民というより、「中南海」の習近平主席である。習主席の覚えめでたくありたいと、常に考えているはずだ。いったん習主席の「寵愛」がなくなれば、外相だろうが国防相だろうが失脚するのは、周知の通りだ。 特に、ある香港人の話によると、李行政長官は習主席に対して、次のような「前科」があるという。 「昨年11月、タイのバンコクでAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議が開かれた際、李家超長官は、あろうことか習近平主席と会談した際に、新型コロナウイルスを移してしまったという噂が立った。李長官自身も、香港に戻って陽性反応が出て隔離された。それで翌12月に改めて北京を訪問し、習主席に直接詫びたと聞いた」 この証言がもし事実であれば、すでにこの時点で李長官は「イエローカード」である。それが「民主運動の首謀者」の一人がカナダに亡命し、「反習近平政権運動」でも展開すれば、これはもう「レッドカード」というわけだ』、「タイのバンコクでAPEC・・・首脳会議が開かれた際、李家超長官は、あろうことか習近平主席と会談した際に、新型コロナウイルスを移してしまったという噂が立った・・・この証言がもし事実であれば、すでにこの時点で李長官は「イエローカード」である。それが「民主運動の首謀者」の一人がカナダに亡命し、「反習近平政権運動」でも展開すれば、これはもう「レッドカード」というわけだ」、なるほど。
・『台湾にどう波及するか  第三の理由は、台湾問題だ。これは先日、台湾問題の専門家である吉村剛史・元産経新聞台北支局長から受けた指摘だ。吉村氏は、次のような見解を示した。 「1月13日に行われる台湾総統選挙まで、あと1カ月あまり。4年前の総統選挙に最も影響を与えたのは、香港情勢だった。香港政府と中国政府が香港の民主化運動を徹底的に弾圧したため、多くの台湾人が『台湾が香港の二の舞になるのはゴメンだ』として、中国に厳しい態度を取る蔡英文総統に投票したのだ。 同様に、今回もまた、台湾総統選挙の直前に、周庭さんが亡命した。当然ながら、台湾人も敏感に反応しており、総統選挙に一定の影響を与えるだろう。すなわち、与党・民進党の頼清徳候補(副総統・民進党主席)に有利に働くということだ」 周庭氏の今後の動向に注目したい』、「周庭さん亡命」には台湾人も敏感に反応しており、総統選挙に一定の影響を与えるだろう。すなわ円鏡ち、与党・民進党の頼清徳候補(副総統・民進党主席)に有利に働くということだ」、「総統選挙」動向に注目したい。

第三に、12月15日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したセキュリティコンサルタントの勝丸円覚氏による「日本好きな「民主の女神」周庭さんが亡命できない、スパイ天国・日本の残念な現状 勝丸円覚「インテリジェンス通信」第3回」を紹介しよう。
・『2020年に香港で逮捕され、カナダで亡命を表明した「民主の女神」こと周庭さん。メディアのインタビューに日本語で受け答えし、日本の音楽やアニメが好きだという彼女はなぜ日本を選ばなかったのか。元公安でセキュリティコンサルタントの勝丸円覚さんに「亡命先としての日本の現状」を解説してもらった。さらに、いまカナダにいる周庭さんが中国共産党から身の安全を守る方法をアドバイスしてもらった』、「周庭さん」は「亡命先としての日本」を冷静に見ていたからこそ、「いまカナダにいる」のだろう。
・『周庭さんが大好きな日本に亡命しなかった理由  周庭さんはカナダに事実上亡命して一生帰らないと宣言しました。亡命先としてカナダがふさわしいかどうかを説明します。 確かに言えることは、日本よりはカナダの方が亡命に向いているだろうということです。日本は亡命する国としてあまりふさわしくありません。まずは、日本に亡命しない方がいい理由を説明します。 一番の理由は、日本は亡命を積極的には受け入れない国だからです。亡命する人はもともと住んでいた国を何らかの理由で追われてきている人ですから、受け入れる側にも外交上のリスクがあります。ましてや周庭さんの場合は、中国を相手にすることになりますから、日本も摩擦を産みたくないと弱腰になってしまうでしょう。これは過去の事例から見てもそうです。移住するならまだしも、亡命となるとそもそも受け入れてもらえない可能性があります。 また、設備の面でも日本はカナダのように十分なものを提供できません。通常、亡命者を受け入れる際は、セーフハウスという安全が確保された住居と警備を提供する必要があります。これまで積極的に亡命を受け入れてこなかった日本には、そうした施設や警備を提供するノウハウ、過去の蓄積がほとんどありません。仮に日本が周庭さんを受け入れたとしても、安全が確保される保証はカナダより低くなります。 カナダはこれまでも多数の亡命者を受け入れてきているので、設備や警備の面では日本より優れていると言えます。今後、周庭さんにセーフハウスが提供される可能性が非常に高いです。 日本と比較した時のカナダの優位性については、説明した通りです。では、カナダが最も安全な国かと言うとそうではありません。たとえば、隣国のアメリカであれば、CIAやFBIがいるので、周庭さんを中国共産党から守るという目的であれば、アメリカの方がより優れていると言えます。) ではなぜアメリカを選ばなかったのでしょうか。カナダのほうが国籍やビザが取りやすかったのではないかと推測します。また、カナダは国籍ロンダリングでよく使われる国の一つです。国籍ロンダリングとは、主にアメリカ国籍などを取得する際にまずカナダ国籍を取得するというもので、中国のスパイの協力者などもよく使う手段です。 というわけで、より安全な国はあるものの、最初に亡命する国としてカナダは優れていて、少なくとも日本に来るよりは安全を確保しやすいということができます』、「亡命する人はもともと住んでいた国を何らかの理由で追われてきている人ですから、受け入れる側にも外交上のリスクがあります。ましてや周庭さんの場合は、中国を相手にすることになりますから、日本も摩擦を産みたくないと弱腰になってしまうでしょう。これは過去の事例から見てもそうです。移住するならまだしも、亡命となるとそもそも受け入れてもらえない可能性があります。 また、設備の面でも日本はカナダのように十分なものを提供できません。通常、亡命者を受け入れる際は、セーフハウスという安全が確保された住居と警備を提供する必要があります。これまで積極的に亡命を受け入れてこなかった日本には、そうした施設や警備を提供するノウハウ、過去の蓄積がほとんどありません」、なるほど。
・『中国政府から逃げる方法は「逃げないこと」?  カナダにも中国共産党の息がかかった人間は数多くいます。周庭さんに何らかの危害が加えられ、場合によっては不当に圧力をかけられるというようなケースも考えられます。彼女に身を守るためのアドバイスをするとすれば、自分の行動予定表を把握してくれる人を作ることを勧めます。おそらくカナダ政府が買って出ると思いますが。 さらに、活動を完全に隠すのではなく、オープンにする方が望ましいでしょう。なぜなら姿を隠してしまうことで、陰で危害が加えられる可能性もあるからです。通信社やメディアを使うのも一つの手ですが、SNSや個人メディアなどより手軽な手段で活動を発信し続けた方がいいでしょう。そうすることで、何かあったときに異変が公になるスピードが早まり、深刻な危害が加えられる可能性も少なくなります。 以前、アステラス製薬の社員が中国警察に身柄拘束されるという事件がありましたが、そのようなケースでも躊躇することなくすぐにメディアに情報を渡した方がいいです。なぜなら、中国政府は体裁をすごく気にするので、外国人を身柄拘束したことを公にすることで、闇から闇に葬り去れなくなるのです。したがって、周庭さんには、常に表に出続けるということを意識して欲しいです』、「活動を完全に隠すのではなく、オープンにする方が望ましいでしょう。なぜなら姿を隠してしまうことで、陰で危害が加えられる可能性もあるからです。通信社やメディアを使うのも一つの手ですが、SNSや個人メディアなどより手軽な手段で活動を発信し続けた方がいいでしょう。そうすることで、何かあったときに異変が公になるスピードが早まり、深刻な危害が加えられる可能性も少なくなります」、なるほど。
・『町中華やクリーニング店も? 日本にある中国の諜報網  周庭さんが亡命したカナダにも、そして我々が暮らす日本にも中国のスパイは数多くいます。中国は各国にいる留学生やビジネスパーソンを後から協力者としてリクルートします。各国の中国大使館は、その国にいる中国人の膨大なデータベースを持っていて、その中から協力者に適した人間を洗い出します。そして、在日中国大使館にも10名程度いるとされるスパイマスターと呼ばれるプロのスパイが、リクルーターを使って該当者を協力者としてスカウトする仕組みです。 スパイではない一般人をスパイ活動の協力者にしていくので、中国の諜報網は現地当局もすべてを把握することは難しい。 さらに、密告制度のようなものがあって、スパイの協力者たちは情報の質に応じて報酬を受け取ることができます。実際、公安時代に町中華やクリーニング店がその窓口になっていることを突き止めたことがあります。 京都大学名誉教授の中西輝政氏によると、オーストラリアには中国スパイとその協力者が数万人いたといいます。単純に人口比だけで考えれば、日本にはその5倍いてもおかしくない。オーストラリアの規模が5万人だとすると、25万規模の中国のスパイとその関係者がいても不思議ではありません。 こうした町中華などが情報を捕捉する投網式の諜報にだけでなく、加えて中国はピンポイントでピンポイントで諜報を仕掛ける方法があります。最近だと研究機関「産業技術総合研究所」に所属していた中国籍の研究者が、研究データを中国企業に流出させた事件がありました。そのときは、日本にいる中国人の膨大なデータベースの中から、「長くその会社で働いているこの人物がよさそうだ」などと狙いを定めて、情報を提供させる方法を取ることもあります。 各国にいる中国スパイの協力者が狙っているのは、企業機密や中国人に関する情報だけではありません。実は、日本人もターゲットにされる可能性があります。 たとえば、秋葉原に中国の警察の出先機関とされる「海外派出所」があったことが話題になりました。最優先の監視対象は中国人ですが、日本人でも中国のオウム真理教と言われる「法輪功の信者」とかウイグル弾圧に反対する中国人を支援している日本人なども監視されています。 このように皆さんの生活圏にも中国のスパイとその息がかかった協力者は潜んでいます。一般人の皆さんは直接危害を加えられることはありませんが、彼らの活動は日本にとって大きな損失をもたらしています。また、周庭さんのような特別な立場になると監視の目は一段と厳しくなるのは明らか。実際に香港政府トップが「自ら出頭しない限り、生涯にわたって追跡されることになる」と脅迫しています。世界のメディアは彼女の発信に継続して注目していかなければなりません。それが彼女を守ることにもつながります』、「各国の中国大使館は、その国にいる中国人の膨大なデータベースを持っていて、その中から協力者に適した人間を洗い出します。そして、在日中国大使館にも10名程度いるとされるスパイマスターと呼ばれるプロのスパイが、リクルーターを使って該当者を協力者としてスカウトする仕組みです。 スパイではない一般人をスパイ活動の協力者にしていくので、中国の諜報網は現地当局もすべてを把握することは難しい。 さらに、密告制度のようなものがあって、スパイの協力者たちは情報の質に応じて報酬を受け取ることができます。実際、公安時代に町中華やクリーニング店がその窓口になっていることを突き止めたことがあります、なるほど。「周庭さん」については、「香港政府トップが「自ら出頭しない限り、生涯にわたって追跡されることになる」と脅迫しています。世界のメディアは彼女の発信に継続して注目していかなければなりません。それが彼女を守ることにもつながります」、同感である。
タグ:JBPRESS 新長官の「李家超」氏については、次の記事を参照されたいが、ますます中国本土の支配が強まっているようだ。 西谷 格氏による「香港社会は今... 世界で報じられた民主化デモのその後」 Newsweek日本版 (その8)(香港社会は今... 世界で報じられた民主化デモのその後、民主活動家・周庭氏亡命に香港行政トップが怒りを爆発させた3つの理由 東アジア「深層取材ノート」(第215回)、日本好きな「民主の女神」周庭さんが亡命できない スパイ天国・日本の残念な現状 勝丸円覚「インテリジェンス通信」第3回) 香港 近藤 大介氏による「民主活動家・周庭氏亡命に香港行政トップが怒りを爆発させた3つの理由 東アジア「深層取材ノート」(第215回)」 「李家超行政長官」が「ここまで怒りに満ちた発言をした」、「背景」をみてみよう。 「李家超行政長官」は「「香港のプーチン」との異名」を取った、「保安局長」時代には、「香港警察の指揮官として、デモ隊との「攻防戦」で、計6000人以上もの香港市民を拘束し、計1万発以上の催涙弾を撃ちまくった。周庭氏も逮捕、投獄され、最終的に2021年6月に出所した」、なるほど。 「このように警察官僚としての「民主化弾圧」が認められてトップに立ったという自負が、周庭氏の「カナダ亡命」によって打ち砕かれたのである」、怒りはさぞかし激しそうだ。 「タイのバンコクでAPEC・・・首脳会議が開かれた際、李家超長官は、あろうことか習近平主席と会談した際に、新型コロナウイルスを移してしまったという噂が立った・・・この証言がもし事実であれば、すでにこの時点で李長官は「イエローカード」である。それが「民主運動の首謀者」の一人がカナダに亡命し、「反習近平政権運動」でも展開すれば、これはもう「レッドカード」というわけだ」、なるほど。 「周庭さん亡命」には台湾人も敏感に反応しており、総統選挙に一定の影響を与えるだろう。すなわ円鏡ち、与党・民進党の頼清徳候補(副総統・民進党主席)に有利に働くということだ」、「総統選挙」動向に注目したい。 ダイヤモンド・オンライン 勝丸円覚氏による「日本好きな「民主の女神」周庭さんが亡命できない、スパイ天国・日本の残念な現状 勝丸円覚「インテリジェンス通信」第3回」 「周庭さん」は「亡命先としての日本」を冷静に見ていたからこそ、「いまカナダにいる」のだろう。 「亡命する人はもともと住んでいた国を何らかの理由で追われてきている人ですから、受け入れる側にも外交上のリスクがあります。ましてや周庭さんの場合は、中国を相手にすることになりますから、日本も摩擦を産みたくないと弱腰になってしまうでしょう。これは過去の事例から見てもそうです。移住するならまだしも、亡命となるとそもそも受け入れてもらえない可能性があります。 また、設備の面でも日本はカナダのように十分なものを提供できません。通常、亡命者を受け入れる際は、セーフハウスという安全が確保された住居と警備を提供する必要があります。これまで積極的に亡命を受け入れてこなかった日本には、そうした施設や警備を提供するノウハウ、過去の蓄積がほとんどありません」、なるほど。 「活動を完全に隠すのではなく、オープンにする方が望ましいでしょう。なぜなら姿を隠してしまうことで、陰で危害が加えられる可能性もあるからです。通信社やメディアを使うのも一つの手ですが、SNSや個人メディアなどより手軽な手段で活動を発信し続けた方がいいでしょう。そうすることで、何かあったときに異変が公になるスピードが早まり、深刻な危害が加えられる可能性も少なくなります」、なるほど。 「各国の中国大使館は、その国にいる中国人の膨大なデータベースを持っていて、その中から協力者に適した人間を洗い出します。そして、在日中国大使館にも10名程度いるとされるスパイマスターと呼ばれるプロのスパイが、リクルーターを使って該当者を協力者としてスカウトする仕組みです。 スパイではない一般人をスパイ活動の協力者にしていくので、中国の諜報網は現地当局もすべてを把握することは難しい。 さらに、密告制度のようなものがあって、スパイの協力者たちは情報の質に応じて報酬を受け取ることができます。実際、公安時代に町中華やクリーニング店がその窓口になっていることを突き止めたことがあります、なるほど。「周庭さん」については、「香港政府トップが「自ら出頭しない限り、生涯にわたって追跡されることになる」と脅迫しています。世界のメディアは彼女の発信に継続して注目していかなければなりません。それが彼女を守ることにもつながります」、同感である。
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大阪万博(その3)(「大阪万博、中止でええやん」という人はわかっていない…目先の経済効果よりはるかに重大な"日本への影響" 成否を握るのは"国"ではなく"民間企業"である、吉村府知事の威勢どこへ? 大阪万博宣伝「チャンス」連発から一転 “ダンマリ”にしれっと変節、万博はオワコン?BTSまで出して誘致失敗の韓国 さぞ悔しがっているかと思いきや…) [国内政治]

大阪万博については、本年12月2日に取上げたばかりだが、今日は、(その3)(「大阪万博、中止でええやん」という人はわかっていない…目先の経済効果よりはるかに重大な"日本への影響" 成否を握るのは"国"ではなく"民間企業"である、吉村府知事の威勢どこへ? 大阪万博宣伝「チャンス」連発から一転 “ダンマリ”にしれっと変節、万博はオワコン?BTSまで出して誘致失敗の韓国 さぞ悔しがっているかと思いきや…)である。

先ずは、本年11月28日付けPRESIDENT Onlineが掲載した経済ジャーナリストの磯山 友幸氏による「「大阪万博、中止でええやん」という人はわかっていない…目先の経済効果よりはるかに重大な"日本への影響" 成否を握るのは"国"ではなく"民間企業"である」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/76127
・『万博は「一時の経済対策」と同じなのだろうか:2025年に大阪で予定されている日本国際博覧会(大阪・関西万博)。物価上昇のあおりで建設費が最大2350億円も増額することになり、批判の声が上がっている。 「国民に負担をより強いてまで、開催にこだわるのはなぜなのか」(朝日新聞)、「大阪万博、中止でええやん」(東京新聞)といった声すらあがる。さらにパビリオンなどの工事の遅れが深刻化しており、「やりたくても間に合わないのではないか」と危惧する声も聞かれる。いったい万博はどうなるのか、そして万博は日本に何をもたらすことになるのだろうか。 想定来場者数2820万人、経済波及効果は2兆円――。大阪湾にある夢洲ゆめしまで2025年4月13日から10月13日まで開かれる大阪2度目の万博は、その経済効果が繰り返し強調されている。逆に開催に疑問符を投げかける向きは、経済効果は見込めないとか、税金をムダに投じるだけだと言う。いずれも損得勘定が先に立っているわけだ。万博は一時の経済対策と同じなのだろうか』、「想定来場者数2820万人、経済波及効果は2兆円」との試算は大いに疑わしい。 
・『万博誘致の影の立役者は作家の故・堺屋太一氏  2025年の大阪・関西万博誘致の影の立役者は、作家の故・堺屋太一氏である。1970年の大阪万博をプロデュースし、成功に導いたことで知られるが、その堺屋氏がもう一度、大阪で万博を開くことを強く主張した。 誘致構想は2014年に大阪維新の会が打ち出した。堺屋氏は大阪府や大阪市を牛耳る「大阪維新の会」のブレーンとして、橋下徹氏や松井一郎氏らに大きな影響を与えた。一方で、安倍晋三政権の内閣官房参与として、安倍首相のブレーンも務めた。大阪と国の両方に影響力を持っていたのだ。当然、万博誘致に国を動かす役回りも担った。 ではなぜ、堺屋氏は1970年に続いて再度、万博を誘致することにこだわったのだろうか。決して短期的な経済効果を狙っていたわけではない。 堺屋氏は万博開催を見ることなく2019年2月17日に亡くなった。それを悼んで婦人画報が直後に、2017年4月号に載った堺屋氏の記事をネット上に再掲載した。題して「大阪よ、再び日本の中心たれ」というものだ。 その記事の中で堺屋は1970年の万博についてこう述べている。 「大阪(万博)のコンセプトは『規格大量生産型の近代社会』でした。だからあの万国博の時から自動車やカラーテレビを世界に輸出して、日本は大発展しました」』、「大阪(万博)のコンセプトは『規格大量生産型の近代社会』でした。だからあの万国博の時から自動車やカラーテレビを世界に輸出して、日本は大発展しました」、前回の万博については、その通りだ。
・『官僚システムを壊した「楽しい日本」を目指す  大量消費社会の完成形とその先にある未来を1970年の大阪万博は象徴していたというわけだ。 では、2025年に誘致を狙った万博はどうなのか。大阪・関西万博についても記事の中で述べている。ちなみに堺屋は万博終了後に会場である夢洲にIR(統合型リゾート)を誘致し、万博のレガシーとすることを掲げていた。 「特に情報発信機能を創ることです。マスコミはカジノ中毒ばかり心配していますが、IRではショービジネスの拠点となる劇場や国際会議場・展示施設、ホテルや商業施設などが80%以上と決まっています。国内外からの観光客を呼び込め、高い経済効果と文化創造効果が見込まれるとともに、高度のプロデュースと演出力を育てられます。もともと文化創造が得意な大阪こそIRを積極的に主導すべきです」 そのうえで「楽しい日本」を創造することこそ、日本が再成長する道だとしているのだ。 堺屋氏の逝去に当たって『日経ビジネス』が再掲した記事には、その「楽しい日本」の意味がより具体的に語られている。 記事の中で堺屋氏は、日本が目指すべきは「3度目の日本」だと語っている。軍人と官僚が専制した「明治日本」が「1度目の日本」。「2度目の日本」は「戦後日本」で、規格大量生産で、官僚主導の日本だった。そして次に日本がやらなければならないのは、この官僚システムを壊すことだと語っている。 「官僚制度ではなしに、本当の主権在民を実現する『楽しい日本』です」』、「次に日本がやらなければならないのは、この官僚システムを壊すことだと語っている。 「官僚制度ではなしに、本当の主権在民を実現する『楽しい日本』です」、理念としては分かるが、それを具体的なイメージとして如何に示すかは、極めて難しい。
・『「大阪の誇りを取り戻すことは、日本にとって有益になる」  堺屋氏は自らも官僚として社会人をスタートしたにもかかわらず、官僚制度を強烈に批判していた。筆者も何度も直接話を伺ったが、それは首尾一貫していた。その背景には、大きな歴史的な枠組みの変化があるという強い信念があったように思う。「2度目の日本」は官僚主導体制で成功を収めたが、それが限界に来たのがバブルの形成と崩壊。次の時代の「3度目の日本」に官僚制度は邪魔だというわけだ。 だからこそ、堺屋氏は大阪にこだわったのだ。 婦人画報の原稿の後半にはこうある。 「東京と違い、大阪は官僚統制を受けてきませんでした。民によって街づくりがなされ、民の文化を醸成してきたのです。万博構想のある2025年を契機に、大阪という都市を日本だけでなく世界でどう位置付けるか。自主独立の文化をもう一度生み出し、大阪の誇りを取り戻すことは、日本にとって有益になる。今こそ発想を大転換し、再び日本の中心たる大阪を目指そうではありませんか」 万博は大阪が自主独立することで「3度目の日本」の扉を開く契機になるということだろう』、理念としては立派だが、きれいごとに過ぎず、予算のオーバー、運営の執行管理などで政府に頼らざるを得ないのが現実である。
・『1970年の万博には、小学校を休んで東京から出かけた  1970年に小学生だった筆者は学校を休んで平日に父親と大阪・吹田の万博に東京から出かけた。小学校の担任も、それは良い経験になると賛成してくれた。日本全体がそんな雰囲気だった。だから、国民の6割に相当する6422万人もの入場者を集めたのだろう。会場は未来を予感させる別世界に感じられ、企業のパビリオンの展示に目を輝かせた。そこに「夢」や日本企業の未来を感じたものだ。 今、四半世紀続いたデフレと低成長の影響もあって、社会が「夢」や「未来」を思い描けなくなっている。それを可視化する場が万博だと考えれば、堺屋氏の思いが見えてくる。 日本財団がこのほど17歳から19歳の男女1000人に行った意識調査によると、大阪・関西万博について68.1%が「賛成」と答え、「反対」は6.6%にとどまったという。若者が万博開催に好意的なのは、日本社会をあげた大きなイベントがほとんどなかったこともあるだろう。東京オリンピック・パラリンピックも結局、無観客開催となり、国を挙げての祭典としては精彩を欠いた』、「社会が「夢」や「未来」を思い描けなくなっている。それを可視化する場が万博だと考えれば・・・」、「社会」が「思い描けない」のに、「万博」なら「可視化」できるというのは飛躍が過ぎる。
・『試されるのは「国」ではなく「民間」の底力だ  問題は大阪・関西万博が「夢」を描き、「未来」を示す祭典になれるかどうか。そのためには、「国」ではなく、民間の底力が試される。 パナソニックホールディングスはこのほど、万博の前売り券15万枚以上を購入する方針を打ち出した。すでに関西電力がグループで20万枚、JR西日本も20万枚を購入する方針を示している。関西財界を挙げて万博を成功させられるかが問われている。万博の華とも言える企業パビリオンで、いったいどんな夢や未来を示すことができるのか。そこで多くの若者や子どもたちが未来に夢を抱くことができれば、日本再生のエネルギーが生まれてくるに違いない。 一方、万が一にも中止や延期になれば、それは日本の没落を象徴することになってしまう。そんな屈辱を味わうわけにはいかない。 新型コロナが明けて、人の移動が大きく増えている。円安もあり、日本を訪れる訪日外国人も急増している。そうでなくても関西圏は外国人を引きつける魅力ある観光スポット、買い物スポットに恵まれている。万博を訪れる外国人に、日本企業の未来を示せるかどうかも、今後の日本経済の行方に大きな影響を与えるだろう。新しい日本企業の姿を感じさせることができれば、日本の未来への投資は増えるに違いないが、失望をさせてしまったら、金輪際日本に資金は集まらず経済は後退し続けることになるだろう。万博の成否は日本の未来を左右するターニングポイントになるに違いない』、「万が一にも中止や延期になれば、それは日本の没落を象徴することになってしまう。そんな屈辱を味わうわけにはいかない」、大げさ過ぎる。「日本の未来」を示すのは、他にも多くの手段がある。恥をかくのは、推進しようとした維新勢力程度ではなかろうか。

次に、12月8日付け日刊ゲンダイ「吉村府知事の威勢どこへ? 大阪万博宣伝「チャンス」連発から一転、“ダンマリ”にしれっと変節」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/333080
・『「(万博は)日本こそ最大のチャンス」「経済効果についても積極的に発信していきたい」──。2025年大阪・関西万博について、先月20日の会見で意気込みを語っていた大阪府の吉村知事。チャンス連呼の威勢の良さはどこへやら。増え続ける費用など問題続出で万博への風当たりが強まる中、最近はすっかりトーンダウンだ。 吉村知事は自身のX(旧ツイッター)や会見で「万博はチャンス」「経済効果は2.4兆円」と繰り返してきた。 ところが、先月18日に〈世界160ヶ国が結集する日本こそが最大のチャンス〉と自身のXに投稿して以来、現在まで日本のチャンスに触れたのは一度きり。 〈万博開催…18歳の7割が賛成 「経済効果」「文化発信の好機」〉(同21日)との投稿を最後に、万博の経済効果に関する発信もパタリとやんだ。 「積極的に発信していきたい」と表明してから、わずか2週間で“ダンマリ”。5日の会見は今までと明らかに様子が違っていた。 万博の費用や会場建設の遅れなどの課題に自ら触れ、「そういった報道がほとんどですから、どんだけ機運醸成しても一気にかき消されますんで」とマスコミへの嫌みを込めて指摘。「課題をひとつひとつ乗り越えることが機運醸成につながると思っています」と珍しくまっとうな意見を述べたのだ。 課題山積の中で機運醸成は難しいと諦めたのか、行き過ぎた宣伝への反省なのか。「チャンス吉村」から一転、万博アピールに必死な姿勢は鳴りを潜めている』、「「積極的に発信していきたい」と表明してから、わずか2週間で“ダンマリ”。5日の会見は今までと明らかに様子が違っていた。 万博の費用や会場建設の遅れなどの課題に自ら触れ、「そういった報道がほとんどですから、どんだけ機運醸成しても一気にかき消されますんで」とマスコミへの嫌みを込めて指摘。「課題をひとつひとつ乗り越えることが機運醸成につながると思っています」と珍しくまっとうな意見を述べたのだ」、なるほど。
・『今度は「学費無償化」をアピール  ジャーナリストの横田一氏がこう言う。 大屋根(リング)の巨額費用などを巡る批判が相次ぐ一方、吉村さんは万博協会副会長でありながら『身を切る改革』に後ろ向き。政治決断ができる立場なのに、コスト削減に向けた具体策すら出せていません。リングにはクギを使わない『貫工法』を使っていると喧伝していますが、実際はボルトや金属プレートを使った『伝統工法もどき』です。万博について口を開けば批判されるからか、最近の吉村さんは、東京都が高校授業料の実質無償化を打ち出したニュースに便乗。大阪の取り組みを引き合いに『高校授業料の無償化を全国でやるべきだ』と気炎を上げています」 7日発売の週刊文春には、吉村知事の“親密企業”が万博関連事業を次々に受注していると報じられている。 もはや2025年大阪・関西万博の機運醸成は雲散霧消。吉村知事の変わり身は、「ノーチャンス」を認めたに等しい』、「吉村さんは万博協会副会長でありながら『身を切る改革』に後ろ向き。政治決断ができる立場なのに、コスト削減に向けた具体策すら出せていません・・・吉村知事の“親密企業”が万博関連事業を次々に受注・・・東京都が高校授業料の実質無償化を打ち出したニュースに便乗。大阪の取り組みを引き合いに『高校授業料の無償化を全国でやるべきだ』と気炎を上げています」、無責任な関心のシフトを許してはならない。「政治決断ができる立場」を活かして、「コスト削減に向けた具体策」を打ち出すべきだ。在阪マスコミは厳しい姿勢で臨むばきだ。

第三に、12月12日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した韓国在住ライターの田中美蘭氏による「万博はオワコン?BTSまで出して誘致失敗の韓国、さぞ悔しがっているかと思いきや…」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/335182
・『2025年開催の大阪・関西万博をめぐり、日本では工期の遅れや予算オーバーなどネガティブな声が多く上がっている。一方、先日、2030年の万博開催地が決定した。釜山は最終候補に残っていたが、敗退。韓国は政府・自治体・企業が一丸となって大規模な誘致キャンペーンに注力していたので、釜山市民はさぞかし落ち込んでいると思いきや、意外な反応が起きている』、興味深そうだ。
・『釜山市、万博誘致に全力を注いだもののリヤドに大敗  11月28日、2030年の国際博覧会(万博)の開催地が決定した。博覧会国際事務局(BIE)の総会がパリで開かれ、釜山(韓国)、リヤド(サウジアラビア)、ローマ(イタリア)の3都市が最終候補として名乗りを上げていた。釜山市はプレゼンテーションと投票の場で手応えを感じていたようだが、投票された165票の内訳は、リヤド119票、釜山29票、ローマ17票。結果はリヤドの圧勝で、釜山市の夢は潰えた。この予想外の敗退に、韓国国内ではさまざまな意見が飛び交っている。 万博誘致活動の中で特に印象的だったのは、昨年10月に釜山で行われたBTSのコンサートだろう。万博誘致をPRすると同時に、BTSの兵役前最後のコンサートともなっており、国内外のファンが無料で招待され、日本でも大きな注目を集めた。釜山市は1年4カ月にわたり、公共交通機関で万博誘致をテーマにしたラッピングバスを走らせたり、街中に誘致関連のディスプレイを設置したり、「イカゲーム」で知られる俳優イ・ジョンジェを含む多くの芸能人を起用したりと、国内外向けに熱心なPRを行っていた。) 開催地決定当日には、プレゼンテーションの様子をYouTubeで生配信し、主要テレビ局では特別番組も組まれたが、初回の投票でリヤドが圧倒的な票数を獲得し、釜山は敗北。この結果には、関係者から失望の声が上がり、韓国内の報道でも大きく取り上げられた』、「釜山市、万博誘致に全力を注いだもののリヤドに大敗」、「リヤドに大敗」したので、あきらめがつき易いともいえよう。
・『当の釜山市民の反応は?  しかし、釜山市民の間では、この結果に対する反応は意外に冷静だった。「落選は残念だが、現実的に考えたら妥当かもしれない」という声が多いのだ。 釜山は韓国第2の都市でありながら、人口減少が進み、ソウルとの経済格差も拡大している。若者たちは進学や就職の機会を求めてソウルや首都圏に移住する傾向が強い。万博の誘致と開催は、これらの問題を解決し、釜山市の活性化の起爆剤になることを多くの市民が期待していた。しかし、万博開催に伴う再開発やインフラ整備の問題が、開催が決まったとしても解決できるのかという不安も根強かった。 加えて、2025年の万博が大阪で開催されることを考慮すると、釜山市が選ばれる可能性は低いという見方もあった。オリンピックやワールドカップの開催地選定においても、連続して同一地域から都市が選出されることは稀(まれ)であり、この点からも釜山市が選出される難しさは、ある程度予想されていたともいえる』、「釜山市民の間では、この結果に対する反応は意外に冷静だった。「落選は残念だが、現実的に考えたら妥当かもしれない」という声が多いのだ」、大人らしい反応だ。
・『釜山市の課題~空港拡張と交通基盤整備  釜山市は現在、空港の拡張や交通基盤の整備、再開発など、多くの課題を抱えている。金海(キメ)国際空港は欧米やオセアニアへの長距離便がなく、仁川国際空港を経由する必要がある。一方、アジア路線は集中しており、コロナ禍後の出入国規制の緩和や日本ブームの影響で、金海空港は利用者数に対して設備や人員が追いついていない状況である。加徳島(カドクド)に新空港建設の計画があるものの、2035年開港予定を2029年に前倒しする提案には懸念や疑問が寄せられていた。 観光客の増加に伴う交通渋滞の慢性化や、万博会場として使用予定だった釜山港の再開発など、課題は山積していた。韓国は一般に中長期的な計画の立案と進行に課題があり、過去にはさまざまな問題やトラブルが発生している。例えば、前述のBTSコンサートは、当初郊外での開催が計画されていたが、交通と安全性の懸念から、最終的にサッカーW杯で使用された競技場で行われた。また、今年8月に開かれた第25回世界ジャンボリー(ボーイスカウト・ガールスカウトの祭典)では、猛暑対策の不備や、開催地の自治体による予算の不正使用などが問題となった。) 政府・自治体・企業が一丸となって取り組んだ万博誘致活動で、韓流エンターテインメントを前面に出した釜山市は一定の評価を得たが、具体的な計画案や過去の事例による不安材料も多かったと思われる。同じく今回落選したローマも、少子高齢化や若者の失業率上昇など共通する問題を抱えている。サウジアラビアの経済力を考慮すると、リヤドに敗れたことは仕方ないとも言える』、「釜山市は現在、空港の拡張や交通基盤の整備、再開発など、多くの課題を抱えている」、なかでは、「サウジアラビアの経済力を考慮すると、リヤドに敗れたことは仕方ないとも言える」、その通りだ。
・『万博はもう時代に合わない?  日本でも来年の大阪万博を巡り、工事遅延や予算オーバー、撤退国の発生などの問題があり、開催中止を求める声も上がっている。韓国でも大阪万博の問題は報道されており、釜山が万博を開催していた場合、同様の問題に直面する可能性があった。「万博はもう時代に合わないのでは」など、万博開催の価値や意義に疑問を持つ声が韓国でも出ている。 万博やオリンピックなど、国際イベントの誘致には、利権が絡んだり、金や政治の問題に発展したりといった醜聞が珍しくない。これらの国際イベントがもたらす経済効果について、「国民や市民に恩恵があるとは言い難い」「メリットよりデメリットのほうが大きい」という意見も出ている。 今回の釜山市の敗北について、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は「力が及ばず申し訳ない」と国民に向けて謝罪の談話を発表し、左派系野党や一部メディアはこれを政権批判の材料としている。しかし、釜山市民の反応は冷めたもので、実は国民も万博にそれほど期待していなかったふしがある。今回の万博誘致失敗は、韓国における今後の国際イベント誘致の方向性を見直す、いい転機になるかもしれない』、「釜山市民の反応は冷めたもので、実は国民も万博にそれほど期待していなかったふしがある。今回の万博誘致失敗は、韓国における今後の国際イベント誘致の方向性を見直す、いい転機になるかもしれない」、大人らしい反応で、日本人よりも進んでいるのかも知れない。
タグ:大阪万博 (その3)(「大阪万博、中止でええやん」という人はわかっていない…目先の経済効果よりはるかに重大な"日本への影響" 成否を握るのは"国"ではなく"民間企業"である、吉村府知事の威勢どこへ? 大阪万博宣伝「チャンス」連発から一転 “ダンマリ”にしれっと変節、万博はオワコン?BTSまで出して誘致失敗の韓国 さぞ悔しがっているかと思いきや…) PRESIDENT ONLINE 磯山 友幸氏による「「大阪万博、中止でええやん」という人はわかっていない…目先の経済効果よりはるかに重大な"日本への影響" 成否を握るのは"国"ではなく"民間企業"である」 「想定来場者数2820万人、経済波及効果は2兆円」との試算は大いに疑わしい。 「大阪(万博)のコンセプトは『規格大量生産型の近代社会』でした。だからあの万国博の時から自動車やカラーテレビを世界に輸出して、日本は大発展しました」、前回の万博については、その通りだ。 「次に日本がやらなければならないのは、この官僚システムを壊すことだと語っている。 「官僚制度ではなしに、本当の主権在民を実現する『楽しい日本』です」、理念としては分かるが、それを具体的なイメージとして如何に示すかは、極めて難しい。 理念としては立派だが、きれいごとに過ぎず、予算のオーバー、運営の執行管理などで政府に頼らざるを得ないのが現実である。 「社会が「夢」や「未来」を思い描けなくなっている。それを可視化する場が万博だと考えれば・・・」、「社会」が「思い描けない」のに、「万博」なら「可視化」できるというのは飛躍が過ぎる。 「万が一にも中止や延期になれば、それは日本の没落を象徴することになってしまう。そんな屈辱を味わうわけにはいかない」、大げさ過ぎる。「日本の未来」を示すのは、他にも多くの手段がある。恥をかくのは、推進しようとした維新勢力程度ではなかろうか。 日刊ゲンダイ「吉村府知事の威勢どこへ? 大阪万博宣伝「チャンス」連発から一転、“ダンマリ”にしれっと変節」 「「積極的に発信していきたい」と表明してから、わずか2週間で“ダンマリ”。5日の会見は今までと明らかに様子が違っていた。 万博の費用や会場建設の遅れなどの課題に自ら触れ、「そういった報道がほとんどですから、どんだけ機運醸成しても一気にかき消されますんで」とマスコミへの嫌みを込めて指摘。「課題をひとつひとつ乗り越えることが機運醸成につながると思っています」と珍しくまっとうな意見を述べたのだ」、なるほど。 「吉村さんは万博協会副会長でありながら『身を切る改革』に後ろ向き。政治決断ができる立場なのに、コスト削減に向けた具体策すら出せていません・・・吉村知事の“親密企業”が万博関連事業を次々に受注・・・東京都が高校授業料の実質無償化を打ち出したニュースに便乗。大阪の取り組みを引き合いに『高校授業料の無償化を全国でやるべきだ』と気炎を上げています」、無責任な関心のシフトを許してはならない。 「政治決断ができる立場」を活かして、「コスト削減に向けた具体策」を打ち出すべきだ。在阪マスコミは厳しい姿勢で臨むばきだ。 ダイヤモンド・オンライン 田中美蘭氏による「万博はオワコン?BTSまで出して誘致失敗の韓国、さぞ悔しがっているかと思いきや…」 「釜山市、万博誘致に全力を注いだもののリヤドに大敗」、「リヤドに大敗」したので、あきらめがつき易いともいえよう。 「釜山市民の間では、この結果に対する反応は意外に冷静だった。「落選は残念だが、現実的に考えたら妥当かもしれない」という声が多いのだ」、大人らしい反応だ。 「釜山市は現在、空港の拡張や交通基盤の整備、再開発など、多くの課題を抱えている」、なかでは、「サウジアラビアの経済力を考慮すると、リヤドに敗れたことは仕方ないとも言える」、その通りだ。 「釜山市民の反応は冷めたもので、実は国民も万博にそれほど期待していなかったふしがある。今回の万博誘致失敗は、韓国における今後の国際イベント誘致の方向性を見直す、いい転機になるかもしれない」、大人らしい反応で、日本人よりも進んでいるのかも知れない。
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キシダノミクス(その8)(池田大作氏ヨイショで炎上!旧統一教会をつぶす岸田首相は「創価学会」につぶされる、「日韓トンネル建設を推進」岸田文雄首相の後援会長は「統一教会」関連団体の議長《旧統一教会系トップと面会報道》、官邸記者団が追及しない「岸田首相の論理破綻」…岸田政権に突き刺さるブーメランと安倍派の「逆襲」) [国内政治]

キシダノミクスについては、本年7月30日に取上げた。今日は、(その8)(池田大作氏ヨイショで炎上!旧統一教会をつぶす岸田首相は「創価学会」につぶされる、「日韓トンネル建設を推進」岸田文雄首相の後援会長は「統一教会」関連団体の議長《旧統一教会系トップと面会報道》、官邸記者団が追及しない「岸田首相の論理破綻」…岸田政権に突き刺さるブーメランと安倍派の「逆襲」)である。

先ずは、本年11月23日付けダイモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「池田大作氏ヨイショで炎上!旧統一教会をつぶす岸田首相は「創価学会」につぶされる」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/332845
・『創価学会は岸田政権の「アキレス腱」  「国内外で、平和、文化、教育の推進などに尽力し、重要な役割を果たされ、歴史に大きな足跡を残されました」――。 新興宗教「創価学会」の池田大作名誉会長が亡くなったことを受けて、岸田文雄首相がSNSに投稿をした哀悼コメントが「政教分離はどこいった?」と炎上している。 ただ、個人的には、岸田首相が旧統一教会を「社会的に問題が指摘される」ことを理由に政治決断で解散命令請求を下した時点から、創価学会との関係で炎上することはわかりきっていた。「いよいよ“終わり”のはじまりだなあ」くらいの感想しかない。 なぜわかりきっていたか。ちょっと長いが、その理由を一言で言ってしまうとこうなる。 「自民党は、さまざまな宗教団体の支援を取り付けて、“政教分離”をなあなあにすることで大きくなってきた政党なので、どこかの宗教を切り捨てればそのロジックがそのまま特大ブーメランになって突き刺さる」 手前みそで恐縮だが、筆者は1年以上前から以下のような記事で、岸田政権にとって「創価学会」がアキレス腱になると予想してきた。 《創価学会へ統一教会批判が飛び火!それでも被害者救済法が「骨抜き」にされそうな訳》(22年11月10日) 今、旧統一教会が指摘されている高額献金や宗教2世などの問題は、創価学会をはじめ、あらゆる宗教団体にあてはまる普遍的な問題だ。うそだと思うなら、「創価学会 被害者 高額献金」などでググってみればいい。旧統一教会の「被害者」と同じく、「人生をめちゃくちゃにされた」と訴える被害者が出てくるはずだ。 つまり、政治が旧統一教会との関係を清算するのなら、同じく「被害」を訴える人が存在している創価学会との関係も清算しなくては、筋が通らないのだ』、「政治が旧統一教会との関係を清算するのなら、同じく「被害」を訴える人が存在している創価学会との関係も清算しなくては、筋が通らないのだ」、その通りだ。。
・『解散命令請求で「バンドラの箱」を開けてしまった  関係を見直さなければいけないのは、創価学会だけではない。 「自民党と旧統一教会の蜜月関係が問題だ!」と怒っている人たちはあまりご存じないだろうが、自民党に選挙応援をしている宗教団体など日本中に山ほどある。党内の保守系議員は、日本全国の神道系の宗教団体からなる「神道政治連盟」や「日本会議」の支持を受ける。他にも仏教系団体や、ローカル新興宗教に応援されている議員もいる。そして、ここが大事なポイントだが、そういう宗教団体の中には、元信者や信者のその家族が「だまされた」と訴えている「社会的に問題が指摘されている団体」もある。 これらの宗教団体は、ちゃんと政策に影響を与えている。 例えば、政府与党が選択的夫婦別姓に消極的だったり、LGBT法案を「骨抜き」にしたのは、神道系団体がこれに反対をしていることが影響している。ネットやSNSの陰謀論者の間では、すべて旧統一教会の仕業ということになっているのだが、団体の多さ、すなわち選挙や政治への影響力からいってありえない。旧統一教会の政治団体は、無数にある自民党支持の保守系政治団体の中の「ワン・オブ・ゼム」に過ぎないのだ。 ということは、旧統一教会と同じようなことを主張して、同じように蜜月関係で、同じように自民党議員が会合に参加したりする神道系の宗教団体についても、マスコミは「宗教汚染」「ズブズブ」とメスを入れなくてはダブルスタンダードになってしまう。 旧統一教会を「政教分離に反する」と切り捨てるということは、政府や自民党は創価学会や神社本庁ともしっかりと距離を置かなければいけない。それができなければ、「二枚舌メガネ」などと叩かれて炎上するのも当然なのだ。 そんな「宗教ブーメラン」にさらに破壊力をもたせてしまったのが、「解散命令請求」だ。『解散命令請求背景に岸田首相の強い意志 選挙もにらむ』(産経ニュース10月13日)という報道からもわかるように、岸田首相にとってこれは「カルトをこらしめて国民の溜飲を下げて支持率V字回復」という狙いがあった。 しかし、それは目先の利益しか見ておらず、中長期的には岸田政権どころか自民党まで崩壊させてしまう「バンドラの箱」を開けてしまったと言わざるを得ない。解散命令請求時、この政治決断の問題点を指摘した箇所を再掲しよう。 《理屈上はあらゆる新興宗教をターゲットにできる。反政府運動にも利用できる。自民と連立を組む公明党の支持母体・創価学会の被害を訴える「元信者」をたくさん集めて民事訴訟を起こして、政府に迫れば連立も解消させられる。「社会的に問題がある団体」とは関係を断つと岸田首相が宣言している以上、自民党は「問題」を指摘された団体はすべて切らなくてはいけない》(10月12日)』、「『解散命令請求背景に岸田首相の強い意志 選挙もにらむ』・・・という報道からもわかるように、岸田首相にとってこれは「カルトをこらしめて国民の溜飲を下げて支持率V字回復」という狙い・・・それは目先の利益しか見ておらず、中長期的には岸田政権どころか自民党まで崩壊させてしまう「バンドラの箱」を開けてしまった」、「目先の利益」に囚われて、「中長期的には」ダメージとなる「「バンドラの箱」を開けてしまった」、とは岸田首相の判断ミスだ。
・『創価学会との蜜月関係にも厳しくなった民衆の目  これまで説明してきたように、自民党の議員はそれぞれの選挙区で、さまざまな宗教団体の支援を受けている。その中には“被害者のいる宗教団体”もある。そういうところの信者が、選挙ボランティアをしてくれるし、名簿づくりを手伝ってくれたりもする。だから、自民党議員としては、ギブ・アンド・テイクでそれらの宗教団体の会合があれば顔を出す。頼まれたらスピーチもするし、教祖やら幹部との記念写真もたくさん撮影する。 それが政治の世界では「常識」だったが、これからはすべて「アウト」になる。そして、ここが大事なポイントだが、野党や反政府運動をする人々はそこを戦略的につけば、自民党をガタガタに崩壊させることができるということだ。 今、旧統一教会の「被害」を訴えている人々の話が大体20年、30年前の話だということからもわかるように、宗教というものは、「信仰を失った人々」にとって長く憎悪と敵意の対象になる。それは裏を返せば、元信者や家族に水を向ければ、「○○教の被害者」などいくらでも見つけることができるということだ。そういう「被害者」をまとめて民事訴訟を起こせば、ほとんどの宗教団体は「社会的に問題を指摘される団体」にできる。 そして、もし筆者が反自民の人間なら、このスキームで狙うのは、やはりもっとも自民党と蜜月である「創価学会」だ。 ご存じのように、この宗教団体の信者は、自民党と連立を組んでいるので、大臣や政務三役になっている。しかも、政策に影響力がある。岸田政権でも公約になかった「18歳以下を対象にした10万円バラまき」が強行されたのは、公明党、つまりは創価学会からの強い要望を受けたからだ。そんな政権のコントロール力を公明党側も隠さない。 《公明党は「小さな声を聴く力」を生かし、子育て支援やバリアフリーを大きく拡充させてきました。また、経済再生にも成果を上げています。近年の国政選挙を見ても、掲げた公約を着実に実現しています。参院選では、各党が公約を掲げて支援を訴えていますが、日本を前へ進めることができるのは公明党です》(公明党ホームぺージより) 「日本を前に進める」というのは内政だけではない』、「宗教というものは、「信仰を失った人々」にとって長く憎悪と敵意の対象になる。それは裏を返せば、元信者や家族に水を向ければ、「○○教の被害者」などいくらでも見つけることができるということだ。そういう「被害者」をまとめて民事訴訟を起こせば、ほとんどの宗教団体は「社会的に問題を指摘される団体」にできる。 そして、もし筆者が反自民の人間なら、このスキームで狙うのは、やはりもっとも自民党と蜜月である「創価学会」だ。 ご存じのように、この宗教団体の信者は、自民党と連立を組んでいるので、大臣や政務三役になっている。しかも、政策に影響力がある」、なるほど。
・『旧統一教会より創価学会の方がよほど問題では?  山口那津男代表は22日、中国の北京を訪問して、岸田文雄首相からの親書を携えて習近平国家主席ら要人との会談を打診している。日本産の水産物の輸入停止措置を解除するよう求めるという。日本政府は「親中」で知られる創価学会のコネクションに依存して、中国外交をしているのだ。 ここまで世話になっているならば、その献身に対して自民党が創価学会へ何かしらの「見返り」を用意しているのではないかと考えるのも当然だ。 この1年半ほどマスコミは「旧統一教会が政教分離に反する」と大騒ぎをしていたが、創価学会の方がよほど問題のような気がする。 ジャーナリストの櫻井よしこ氏がフジテレビの報道番組で「旧統一教会は6万票から8万票ですよ、創価学会は600万票から800万票ですよ」と述べていたが、旧統一教会と創価学会では集票力も資金力も雲泥の差だということは、政治を取材してる人間ならば「常識」だ。 旧統一教会が「創価学会に比べて大したことのない影響力」だということは政策を見てもわかる。旧統一教会を母体とする反共団体「国際勝共和連合」が掲げている政策も「憲法改正」や「選択的夫婦別姓反対」「LGBT法案反対」など他の神道系政治団体の政策と丸かぶりだ。旧統一教会の教祖・文鮮明氏が提唱していた「日韓トンネル」(日本と韓国を海底トンネルで繋ぐ構想)を安倍政権が成長戦略に入れたとかの事実があれば、「日本を裏で支配するカルト」という主張にも納得だが、そういう話もない。 また、安倍元首相とズブズブだったおかげで、やりたい放題の悪事ができたとか主張をするような人もいるが、事実は逆で、安倍政権は2018年に消費者契約法を改正して、「霊感商法」のような詐欺商法にひっかかっても、お金を取り戻せるような法整備をした。ストーリーがあまりに「雑」なのだ。 このように、選挙的にも政策的にもそれほど大きな影響力があったと思えない旧統一教会が「巨悪」として解散命令請求をされている中で、櫻井氏の言葉を借りれば、100倍の集票力があり、中国の国家主席ともパイプのある創価学会と自民党との蜜月関係を「政教分離に反さない」というのはさすがに無理があるのではないか』、「それほど大きな影響力があったと思えない旧統一教会が「巨悪」として解散命令請求をされている中で、櫻井氏の言葉を借りれば、100倍の集票力があり、中国の国家主席ともパイプのある創価学会と自民党との蜜月関係を「政教分離に反さない」というのはさすがに無理があるのではないか」、その通りだ。
・『その場しのぎの「二枚舌」は炎上する  事実、歴史をひも解けば自民党は「公明党」の存在そのものを政教分離に反すると認めていなかった。 1995年のオウム真理教による地下鉄サリン事件を受けて、「カルト宗教問題」が大きな社会テーマになり、翌96年に自民党が「宗教問題ワーキングチーム」を立ち上げて、「宗教法人基本法案」の骨子をまとめた。 『自民党が検討している「宗教法人基本法案」(仮称)の骨格が四日までに固まった。宗教団体の政治活動の「政教分離」に関する憲法二〇条の政府解釈を見直し、宗教団体の政党創設を禁じたほか、靖国神社への首相、閣僚の公式参拝も事実上、禁止している。また、「信者の脱会の自由」や「霊感商法の禁止」などの規定を盛り込んでいるのが特徴だ』(読売新聞1996年1月5日) これを聞くと、驚くだろう。実はこの時代、自民党は社会党、新党さきがけと連立を組んでいた。公明党は分裂して、その一部は小沢一郎氏率いる新進党と手を組んでいた。要するに自民の「敵」だったのだ。 だから、この時期の国会では亀井静香氏や島村宜伸氏らが、今の旧統一教会への批判がかわいく思えるほどの創価学会バッシングを展開した。亀井氏にいたっては、池田大作名誉会長から公明党に指示があるのかなどを確認するため、池田氏の国会招致を請求。学会員の皆さんから「仏敵」などと憎まれていたのだ。 そんな自民党の「宗教団体の政党創設禁止」という案はほどなくして闇に消えた。先ほども述べたように、自民党は当時からもあまたの宗教団体から支持を受けており、その方面からクレームが入ったからだ。 そして、もう二度とこのような法案が自民党から出ることはなくなった。公明党と連立を組んだからだ。 何が言いたいのかというと、自民党と宗教団体との関係における「政教分離の解釈」なんて、こんな程度だということだ。宗教によって自分たちが「損」しそうになれば、容赦なく切り捨てるし、「得」になればズブズブの共生者となってヨイショもすれば祝電も送る。 ただ、そういう節操のないことをしていると「因果応報」ではないが、自分自身も必ず同じようなひどい目に遭うだろう。 旧統一教会という特定の宗教団体にすべての「罪」を押し付けてその場しのぎで延命できても、これまで宗教団体と同じようなズブズブの関係を続けてきたのだ。その「二枚舌」はいつか白日のもとにさらされて大炎上する。 「人を呪わば穴ふたつ」ではないが、「宗教をつぶした政治家は、宗教によってつぶされていく」ということかもしれない』、「自民党と宗教団体との関係における「政教分離の解釈」なんて、こんな程度だということだ。宗教によって自分たちが「損」しそうになれば、容赦なく切り捨てるし、「得」になればズブズブの共生者となってヨイショもすれば祝電も送る。 ただ、そういう節操のないことをしていると「因果応報」ではないが、自分自身も必ず同じようなひどい目に遭うだろう。 旧統一教会という特定の宗教団体にすべての「罪」を押し付けてその場しのぎで延命できても、これまで宗教団体と同じようなズブズブの関係を続けてきたのだ。その「二枚舌」はいつか白日のもとにさらされて大炎上する」、同感である。

次に、12月5日付け文春オンラインが掲載した「「日韓トンネル建設を推進」岸田文雄首相の後援会長は「統一教会」関連団体の議長《旧統一教会系トップと面会報道》」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/67429
・『岸田文雄首相が自民党政調会長だった2019年10月、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の友好団体のトップと自民党本部で面会していたことを、朝日新聞が複数関係者の証言とともに報じた。 実は「週刊文春」は、昨年8月、岸田首相の後援会長を務める人物が「統一教会」関連団体の議長に就任していたことを報じていた。以下、当時のスクープ速報を再公開する(初公開:2022年8月23日、年齢・肩書きは当時のまま)。 統一教会(現・世界平和統一家庭連合)との関係性を踏まえ、内閣改造に踏み切った岸田文雄首相(65)。自身の後援会長が、統一教会の関連団体で議長を務めていることが「週刊文春」の取材でわかった。首相はこれまで「私個人は教団と関係はない」としていた。
・『岸田首相の後援会長とは  岸田首相は8月10日の記者会見で、内閣改造にあたり、「国民の疑念を払拭するため、閣僚に対し、当該団体との関係を点検し、その結果を踏まえて厳正に見直すことを言明し、それを了解した者のみを任命した」などと述べていた。 「野田聖子地方創生相をはじめ、統一教会との関係性が指摘された7人の閣僚を退任させました。ただ、以降も教団との関わりがあった閣僚や副大臣の存在が相次いで判明しています」(政治部デスク) 岸田首相の後援会長とは、崇城大学(熊本市)の中山峰男学長。2020年7月31日に発足した「熊本岸田会」会長を務めている。 地方での知名度不足が課題だった岸田氏にとって、総裁選で勝利するには、党員票の掘り起こしは急務だった。中でも熊本は重点県だったという。岸田派議員を複数抱える一方、弱点でもある保守層が強い地域だからだ。中山氏は後援会長として、党員票集めに奔走していたという。) 「2021年9月の総裁選では、後援会結成の成果が現れました。全国的に党員票をリードしていたのは、“人気者”の河野太郎氏でしたが、熊本では岸田氏が6109票に対し、河野氏は6012票。97票差ながら、岸田氏が上回ったのです。両者の一騎打ちとなった決選投票では、熊本の貴重な『1票』が岸田氏に投じられました。結果、自民党総裁選に就任し、首相の椅子に座ることになりました」(同前)』、「2021年9月の総裁選では、後援会結成の成果が現れました。全国的に党員票をリードしていたのは、“人気者”の河野太郎氏でしたが、熊本では岸田氏が6109票に対し、河野氏は6012票。97票差ながら、岸田氏が上回ったのです。両者の一騎打ちとなった決選投票では、熊本の貴重な『1票』が岸田氏に投じられました。結果、自民党総裁選に就任し、首相の椅子に座ることになりました」、「熊本」が重要なキャスティングボードを握っていたとは初めて知った。
・『2016年には韓鶴子総裁が来日 日韓トンネルを視察  一方、中山氏は2011年から、「日韓トンネル推進熊本県民会議」の議長を務めていた。 日韓トンネル構想とは、統一教会の教祖・文鮮明氏が提唱したプロジェクト。統一世界実現のため、日本と韓国をトンネルで結ぶという壮大な計画だ。全長は200キロで、総工費は10兆円に及ぶとされる。 実際、佐賀県唐津市では1986年に調査斜坑が起工された。ただ、現在までに500メートル程度の長さのトンネルが掘られたに過ぎない。 「それでも、2009年には『一般財団法人国際ハイウェイ財団』が設立され、徳野英治氏ら教団の会長経験者が評議員として名を連ねてきた。2016年には韓鶴子総裁が来日し、トンネルを視察するなどしています」(社会部記者)』、「日韓トンネル構想とは、統一教会の教祖・文鮮明氏が提唱したプロジェクト。統一世界実現のため、日本と韓国をトンネルで結ぶという壮大な計画だ。全長は200キロで、総工費は10兆円に及ぶとされる。 実際、佐賀県唐津市では1986年に調査斜坑が起工された。ただ、現在までに500メートル程度の長さのトンネルが掘られたに過ぎない。 「それでも、2009年には『一般財団法人国際ハイウェイ財団』が設立され、徳野英治氏ら教団の会長経験者が評議員として名を連ねてきた。2016年には韓鶴子総裁が来日し、トンネルを視察」、「一般財団法人国際ハイウェイ財団」は実態があるのだろうか。
・『熊本岸田会も最初はお断りしていた  県政関係者が言う。 「統一教会の教義は、エバ国の日本がアダム国の韓国に対し、悔い改めなければいけないというもので、“反日”的な面が色濃い。ただ、その教義とは裏腹に、日韓トンネルは表向き、日韓友好を掲げてきました。関係者には政治と近い面々も多い。中山氏はこうした政界人脈を通じ、岸田氏の党員票獲得に動いてきたと見られます) 中山氏に話を聞いた。 「日韓トンネルは発起人に入っている市議に会長(議長)になってほしいと言われ、引き受けた。私が出ているのは、年に一度の総会くらい。韓国では日韓トンネルをやっているのは、旧統一教会系と聞いたことがあります。だけど、熊本でそういう人が関わっている印象は全くありません。 熊本岸田会も最初はお断りしていたけど、どうしてもということで引き受けた。岸田さんと最初に会ったのは、2019年12月。話も聞いてくれる好人物と思った。こっちは、総裁選で岸田さんに入れてくれる党員を増やそうという目的で。目標は達成できましたね」』、「「日韓トンネルは発起人に入っている市議に会長(議長)になってほしいと言われ、引き受けた。私が出ているのは、年に一度の総会くらい。韓国では日韓トンネルをやっているのは、旧統一教会系と聞いたことがあります。だけど、熊本でそういう人が関わっている印象は全くありません。 熊本岸田会も最初はお断りしていたけど、どうしてもということで引き受けた。岸田さんと最初に会ったのは、2019年12月。話も聞いてくれる好人物と思った。こっちは、総裁選で岸田さんに入れてくれる党員を増やそうという目的で。目標は達成できましたね」、なるほど。
・『自らと統一教会については「関係はない」としてきたが…  岸田首相に事実関係の確認を求めたところ、以下のように回答した。 「ご質問の会議(日韓トンネル推進熊本県民会議)については存じ上げませんし、同会議がご指摘のような関係があること(統一教会の関連団体であること)について知りません。関係について会長に確認したところ、会長もご存じないようでした」 そして、「週刊文春」の取材では、地元広島で選対責任者を務める県議や、強力に推して広島県から国会議員に当選させ岸田派入りさせた前県議も、統一教会の関係団体と親密な関係があることがわかった。 岸田首相は、閣僚に対し、統一教会との関係を厳正に見直し、関係を断つよう求めた。一方、自らと統一教会については「関係はない」としてきた。ただ今回、岸田首相自身も統一教会と関係の深い人物が、後援会長や選対責任者など岸田氏の政治活動を支える中枢幹部だったことが判明したことで、どのような説明を行うのか、注目される。 「週刊文春 電子版」では、岸田首相と中山氏との詳しい関係や日韓トンネル構想の実態のほか、岸田首相の選対責任者が統一教会系団体の議長を務めている問題、萩生田光一政調会長を支援してきた文鮮明氏の親戚、教団との関係性を否定する秋葉賢也復興相が登場していた教団系新聞など、岸田政権と統一教会の関係を徹底検証している』、「今回、岸田首相自身も統一教会と関係の深い人物が、後援会長や選対責任者など岸田氏の政治活動を支える中枢幹部だったことが判明したことで、どのような説明を行うのか、注目される」、ただ、現在は安倍派での自民党のパーティ券裏金問題が火を噴き、統一教会問題の優先度は下がったので、当面、塩漬けだ。

第三に、12月15日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの長谷川 幸洋氏による「官邸記者団が追及しない「岸田首相の論理破綻」…岸田政権に突き刺さるブーメランと安倍派の「逆襲」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/120796?imp=0
・『総理の座にしがみつく「支離滅裂」  自民党のパーティ券裏金問題で、岸田文雄首相は14日、安倍派の閣僚4人と副大臣5人を更迭した。だが、岸田派にもパーティ券収入の過少記載問題が浮上している。同じ疑惑で大臣を更迭しながら、自分は総理の座にしがみつくのであれば「支離滅裂」と言わざるをえない。 まず、一連の経過を確認しよう。 岸田首相の人事断行方針は、11日には報じられていた。この時点では、政務官を含めて、安倍派を政府の役職から一掃する方針と伝えられた。その後、NHKが12日、岸田派のパーティ券収入過少記載疑惑を報じた。 首相は13日、首相官邸で開いた記者会見で「(政治)改革は、これから確認される事実に基づいて明らかにしていく」と語った。一方で「国政に遅滞を来すことがないように」という理由を挙げて「速やかに人事を行う」と宣言し、翌14日に更迭人事を断行した、という展開である。 当初は6人の政務官も含めて更迭する方針と報じられたが、直前になって変わり、政務官は1人を除いて留任になった。 以上をどうみるか。 そもそも「疑惑の事実関係が明らかでない段階で、マスコミ報道だけに基づいて、閣僚を4人も更迭する」という決定自体が異例だ。マスコミが報じたら、本人が認めず、捜査当局が本格的に動き出していなくても、大臣のクビを切る、という前例を作ってしまった。 これには、東京地検特捜部も驚いたのではないか。「オレたちがこれから調べる、と言っているのに、総理は、もうクビを切ってしまったのか」と唖然としているかもしれない。それとも、特捜部は内々に官邸に捜査情報を伝えていたのだろうか。そうだとしたら、それはそれで大問題である』、「そもそも「疑惑の事実関係が明らかでない段階で、マスコミ報道だけに基づいて、閣僚を4人も更迭する」という決定自体が異例だ。マスコミが報じたら、本人が認めず、捜査当局が本格的に動き出していなくても、大臣のクビを切る、という前例を作ってしまった。 これには、東京地検特捜部も驚いたのではないか」、急ぐ様子はまさに異常だった。これまで、アクションが遅いので有名だったのに、今回は違ったようだ。
・『政治の重大局面で重要なのは…  それはさておき、問題は岸田首相本人である。岸田派も疑惑が報じられたのだから、首相は自分自身も更迭しなければ、話の辻褄が合わない。つまり、内閣総辞職だ。私は「岸田首相は潔く、自ら総理を辞すべきだ」と思う。いわば、これは「自分が撒いたタネ」なのだ。 辞めた閣僚のうち、宮下一郎農相は明確に裏金受領を否定している。宮下氏は辞表提出後、記者団に「私の政治資金は法に則って、適正に処理されているが、総合的に判断した」と無念そうに語った。 もしも、同氏がシロだったとすれば、岸田首相はシロの閣僚も更迭しながら、自分自身に関わる疑惑は不問に付して、首相の職に居残っている形になる。派閥の資金であっても、つい最近まで、自分が領袖だったのだから、言い訳にはならない。 これでは「国民の信頼回復に向けて党の先頭に立って闘っていく」(首相発言)どころか「自分だけが必死に逃げ回っている」ようなものではないか。こういう展開になったのも「疑惑が明らかでないのに、大臣のクビを切る」という無茶な決定をしたからだ。 政治は重大局面を迎えたときほど「道理=物事の道筋」が重要になる。 筋道が通らない話は結局、破綻する。今回で言えば「疑惑が指摘された大臣は辞めてもらう」のであれば、同じロジックを自分にも適用しなければならない。そうしないなら、首相の対応はその場しのぎで、まったく道理がない話になる。岸田首相は、政治で一番大切な道理をわきまえていないのである。 岸田首相は、かねて「国家観も使命感もなく、やりたいのは人事だけ」と言われてきた。突然のスキャンダルに動揺するあまり、政治の道理も手順にも頭が回らず「人事を一新すれば、しのげる」と思い込んでしまった。その挙げ句、自分に火の粉を招いている。 まさに自爆としか言いようがないが、おそらく、いまでも首相は、そういう事態と認識していないのではないか。少しでも認識する力があれば、これほど、お粗末な話にはならない。助言する側近もいなかったのだろう。 首相の記者会見を聞いていて、もう1つ、呆れたのは、「首相の論理破綻」は明らかなのに、誰1人として、その点を追及した記者がいなかった点である。わずかに「人事の後で閣僚に疑惑が出た場合、どう責任をとるのか」という質問が出た程度だ』、「岸田派も疑惑が報じられたのだから、首相は自分自身も更迭しなければ、話の辻褄が合わない。つまり、内閣総辞職だ。私は「岸田首相は潔く、自ら総理を辞すべきだ」と思う。いわば、これは「自分が撒いたタネ」なのだ・・・これでは「国民の信頼回復に向けて党の先頭に立って闘っていく」(首相発言)どころか「自分だけが必死に逃げ回っている」ようなものではないか。こういう展開になったのも「疑惑が明らかでないのに、大臣のクビを切る」という無茶な決定をしたからだ。 政治は重大局面を迎えたときほど「道理=物事の道筋」が重要になる。 筋道が通らない話は結局、破綻する。今回で言えば「疑惑が指摘された大臣は辞めてもらう」のであれば、同じロジックを自分にも適用しなければならない。そうしないなら、首相の対応はその場しのぎで、まったく道理がない話になる・・・首相の記者会見を聞いていて、もう1つ、呆れたのは、「首相の論理破綻」は明らかなのに、誰1人として、その点を追及した記者がいなかった点である」、なるほど。
・『政権が生き延びるのが難しい「3つの理由」  岸田首相は、うろたえた様子で「そうした懸念が生じないように、諸課題にどう対応していくのか、そのための体制はどうあるべきか、を真剣に追求していく」と答えた。まるで答えになっていなかったが、記者団から2の矢、3の矢の質問はなかった。こんな官邸記者団だから「権力のポチ」と言われるのだ。 岸田政権は、このまま生き延びられるだろうか。 私は、3つの理由で「難しい」とみる。 事件の展開は予断を許さず、政治資金規正法違反で済むのか、それとも脱税事件にまで発展するのか、も見通せない。だが、いまや問題は法律的な次元をはるかに超えてしまった。国民は「政治家だけが裏金で甘い汁を吸っている」実態に怒りをたぎらせている。 物価高で数十円単位で節約している普通の国民から見れば、百万、千万単位はもちろん、数十万円単位の裏金だって許せない。そこへ「信頼回復のために、火の玉となって自民党の先頭に立つ」などというシラジラしい首相の言葉が、火に油を注いでいる。この国民の怒りが、1番目の理由だ。 次に、指摘した首相の論理破綻がある。疑惑だけで大臣のクビを切った以上、更迭のロジックは必ず、ブーメランになって首相に戻ってくる。派閥のカネだったとしても、首相は今回の問題が起きるまで、派閥トップの座を降りなかった。自分だけが居残って「信頼回復」などできるわけがない。 安倍派閣僚の更迭によって、政権基盤も大きく揺らいでしまった。 安倍派の萩生田光一自民党政調会長は安倍派パージに先んじて、自ら辞任の意向を表明した。「こんな総理にクビを切られるくらいなら、こちらから三行半を突きつけてやる」という話だろう。怒り狂った安倍派が今後、「岸田降ろし」の急先鋒に回るのは確実だ。これが、3つ目の理由である』、「物価高で数十円単位で節約している普通の国民から見れば、百万、千万単位はもちろん、数十万円単位の裏金だって許せない。そこへ「信頼回復のために、火の玉となって自民党の先頭に立つ」などというシラジラしい首相の言葉が、火に油を注いでいる。この国民の怒りが、1番目の理由だ・・・疑惑だけで大臣のクビを切った以上、更迭のロジックは必ず、ブーメランになって首相に戻ってくる。派閥のカネだったとしても、首相は今回の問題が起きるまで、派閥トップの座を降りなかった。自分だけが居残って「信頼回復」などできるわけがない・・・怒り狂った安倍派が今後、「岸田降ろし」の急先鋒に回るのは確実だ。これが、3つ目の理由である」、なるほど。
・『「岸田憎し」で団結  一部には「安倍派は崩壊」などという観測も出ているが、私は、逆ではないか、と思う。絶対的なトップの不在が派閥の求心力を弱めているのはたしかだが、今回のパージで安倍派全体に「岸田憎し」の思いが強まって、かえって団結していく可能性が高い。自民党内権力闘争のロジックで言えば、「敵は岸田派」なのだ。 新しい官房長官に親中派で知られた林芳正元外相を充てたのも、求心力を高める効果がある。このままでは「岸田政権が親中路線に一段と傾斜し、日本の国がおかしくなる」という思いは、多くの自民党内保守派に共通している。 岸田首相は結局、政策は霞が関任せ、政局運営は道理知らず、人事もトンチンカンで、とても1国の総理が務まるような人物ではなかった。 世界はウクライナとイスラエルで戦争が続き、戦後最大の大激動を迎えている。このままでは、日本は危うい。内閣支持率の急落に加えて、この有様では、とても衆院解散などできない。岸田首相は内閣総辞職すべきである。 ーーーーー 12月11日に公開したYouTube番組「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」は、高橋さんと2人で「安倍派パージで得するのは誰か」を議論しました。 12日には、同じく「ポスト岸田は誰か」を2人で議論しました。 13日には、私の1人語りで「会見も人事も支離滅裂な岸田首相」を解説しました。 いずれも、ぜひご覧ください。ーーーーー』、「岸田首相は結局、政策は霞が関任せ、政局運営は道理知らず、人事もトンチンカンで、とても1国の総理が務まるような人物ではなかった。 世界はウクライナとイスラエルで戦争が続き、戦後最大の大激動を迎えている。このままでは、日本は危うい。内閣支持率の急落に加えて、この有様では、とても衆院解散などできない。岸田首相は内閣総辞職すべきである」、強く同意する。
タグ:キシダノミクス (その8)(池田大作氏ヨイショで炎上!旧統一教会をつぶす岸田首相は「創価学会」につぶされる、「日韓トンネル建設を推進」岸田文雄首相の後援会長は「統一教会」関連団体の議長《旧統一教会系トップと面会報道》、官邸記者団が追及しない「岸田首相の論理破綻」…岸田政権に突き刺さるブーメランと安倍派の「逆襲」) ダイモンド・オンライン 窪田順生氏による「池田大作氏ヨイショで炎上!旧統一教会をつぶす岸田首相は「創価学会」につぶされる」 「政治が旧統一教会との関係を清算するのなら、同じく「被害」を訴える人が存在している創価学会との関係も清算しなくては、筋が通らないのだ」、その通りだ。。 「『解散命令請求背景に岸田首相の強い意志 選挙もにらむ』・・・という報道からもわかるように、岸田首相にとってこれは「カルトをこらしめて国民の溜飲を下げて支持率V字回復」という狙い・・・それは目先の利益しか見ておらず、中長期的には岸田政権どころか自民党まで崩壊させてしまう「バンドラの箱」を開けてしまった」、「目先の利益」に囚われて、「中長期的には」ダメージとなる「「バンドラの箱」を開けてしまった」、とは岸田首相の判断ミスだ。 「宗教というものは、「信仰を失った人々」にとって長く憎悪と敵意の対象になる。それは裏を返せば、元信者や家族に水を向ければ、「○○教の被害者」などいくらでも見つけることができるということだ。そういう「被害者」をまとめて民事訴訟を起こせば、ほとんどの宗教団体は「社会的に問題を指摘される団体」にできる。 そして、もし筆者が反自民の人間なら、このスキームで狙うのは、やはりもっとも自民党と蜜月である「創価学会」だ。 ご存じのように、この宗教団体の信者は、自民党と連立を組んでいるので、大臣や政務三役になっている。しかも、政策に影響力がある」、なるほど。 「それほど大きな影響力があったと思えない旧統一教会が「巨悪」として解散命令請求をされている中で、櫻井氏の言葉を借りれば、100倍の集票力があり、中国の国家主席ともパイプのある創価学会と自民党との蜜月関係を「政教分離に反さない」というのはさすがに無理があるのではないか」、その通りだ。 「自民党と宗教団体との関係における「政教分離の解釈」なんて、こんな程度だということだ。宗教によって自分たちが「損」しそうになれば、容赦なく切り捨てるし、「得」になればズブズブの共生者となってヨイショもすれば祝電も送る。 ただ、そういう節操のないことをしていると「因果応報」ではないが、自分自身も必ず同じようなひどい目に遭うだろう。 旧統一教会という特定の宗教団体にすべての「罪」を押し付けてその場しのぎで延命できても、これまで宗教団体と同じようなズブズブの関係を続けてきたのだ。その「二枚舌」はいつか白日のもとにさらされて大炎上する」、同感である。 文春オンラインが掲載した「「日韓トンネル建設を推進」岸田文雄首相の後援会長は「統一教会」関連団体の議長《旧統一教会系トップと面会報道》」 「2021年9月の総裁選では、後援会結成の成果が現れました。全国的に党員票をリードしていたのは、“人気者”の河野太郎氏でしたが、熊本では岸田氏が6109票に対し、河野氏は6012票。97票差ながら、岸田氏が上回ったのです。両者の一騎打ちとなった決選投票では、熊本の貴重な『1票』が岸田氏に投じられました。結果、自民党総裁選に就任し、首相の椅子に座ることになりました」、「熊本」が重要なキャスティングボードを握っていたとは初めて知った。 「日韓トンネル構想とは、統一教会の教祖・文鮮明氏が提唱したプロジェクト。統一世界実現のため、日本と韓国をトンネルで結ぶという壮大な計画だ。全長は200キロで、総工費は10兆円に及ぶとされる。 実際、佐賀県唐津市では1986年に調査斜坑が起工された。ただ、現在までに500メートル程度の長さのトンネルが掘られたに過ぎない。 「それでも、2009年には『一般財団法人国際ハイウェイ財団』が設立され、徳野英治氏ら教団の会長経験者が評議員として名を連ねてきた。 2016年には韓鶴子総裁が来日し、トンネルを視察」、「一般財団法人国際ハイウェイ財団」は実態があるのだろうか。 「「日韓トンネルは発起人に入っている市議に会長(議長)になってほしいと言われ、引き受けた。私が出ているのは、年に一度の総会くらい。韓国では日韓トンネルをやっているのは、旧統一教会系と聞いたことがあります。だけど、熊本でそういう人が関わっている印象は全くありません。 熊本岸田会も最初はお断りしていたけど、どうしてもということで引き受けた。岸田さんと最初に会ったのは、2019年12月。話も聞いてくれる好人物と思った。こっちは、総裁選で岸田さんに入れてくれる党員を増やそうという目的で。目標は達成できましたね」、 なるほど。 「今回、岸田首相自身も統一教会と関係の深い人物が、後援会長や選対責任者など岸田氏の政治活動を支える中枢幹部だったことが判明したことで、どのような説明を行うのか、注目される」、ただ、現在は安倍派での自民党のパーティ券裏金問題が火を噴き、統一教会問題の優先度は下がったので、当面、塩漬けだ。 現代ビジネス 長谷川 幸洋氏による「官邸記者団が追及しない「岸田首相の論理破綻」…岸田政権に突き刺さるブーメランと安倍派の「逆襲」」 「そもそも「疑惑の事実関係が明らかでない段階で、マスコミ報道だけに基づいて、閣僚を4人も更迭する」という決定自体が異例だ。マスコミが報じたら、本人が認めず、捜査当局が本格的に動き出していなくても、大臣のクビを切る、という前例を作ってしまった。 これには、東京地検特捜部も驚いたのではないか」、急ぐ様子はまさに異常だった。これまで、アクションが遅いので有名だったのに、今回は違ったようだ。 「岸田派も疑惑が報じられたのだから、首相は自分自身も更迭しなければ、話の辻褄が合わない。つまり、内閣総辞職だ。私は「岸田首相は潔く、自ら総理を辞すべきだ」と思う。いわば、これは「自分が撒いたタネ」なのだ・・・これでは「国民の信頼回復に向けて党の先頭に立って闘っていく」(首相発言)どころか「自分だけが必死に逃げ回っている」ようなものではないか。 こういう展開になったのも「疑惑が明らかでないのに、大臣のクビを切る」という無茶な決定をしたからだ。 政治は重大局面を迎えたときほど「道理=物事の道筋」が重要になる。 筋道が通らない話は結局、破綻する。今回で言えば「疑惑が指摘された大臣は辞めてもらう」のであれば、同じロジックを自分にも適用しなければならない。そうしないなら、首相の対応はその場しのぎで、まったく道理がない話になる・・・首相の記者会見を聞いていて、もう1つ、呆れたのは、「首相の論理破綻」は明らかなのに、誰1人として、その点を追及した記者がいなか った点である」、なるほど。 「物価高で数十円単位で節約している普通の国民から見れば、百万、千万単位はもちろん、数十万円単位の裏金だって許せない。そこへ「信頼回復のために、火の玉となって自民党の先頭に立つ」などというシラジラしい首相の言葉が、火に油を注いでいる。この国民の怒りが、1番目の理由だ・・・疑惑だけで大臣のクビを切った以上、更迭のロジックは必ず、ブーメランになって首相に戻ってくる。派閥のカネだったとしても、首相は今回の問題が起きるまで、派閥トップの座を降りなかった。自分だけが居残って「信頼回復」などできるわけがない ・・怒り狂った安倍派が今後、「岸田降ろし」の急先鋒に回るのは確実だ。これが、3つ目の理由である」、なるほど。 「岸田首相は結局、政策は霞が関任せ、政局運営は道理知らず、人事もトンチンカンで、とても1国の総理が務まるような人物ではなかった。 世界はウクライナとイスラエルで戦争が続き、戦後最大の大激動を迎えている。このままでは、日本は危うい。内閣支持率の急落に加えて、この有様では、とても衆院解散などできない。岸田首相は内閣総辞職すべきである」、強く同意する。
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倒産・経営破綻(その2)(一目散に逃げ出した社長に怒り…帝国データバンク調査員が見た 衝撃の倒産現場、経済活動が正常化でも増える倒産 飲食業は「過去最多」の可能性 背景に何があるのか、給食が突然ストップ…高校6校 提供業者へ違約金を請求 広島、「世紀の大粉飾」「巨額詐欺事件だ」銀行関係者が憤る倒産企業の実名) [企業経営]

倒産・経営破綻については、昨年5月24日に取上げた。今日は、(その2)(一目散に逃げ出した社長に怒り…帝国データバンク調査員が見た 衝撃の倒産現場、経済活動が正常化でも増える倒産 飲食業は「過去最多」の可能性 背景に何があるのか、給食が突然ストップ…高校6校 提供業者へ違約金を請求 広島、「世紀の大粉飾」「巨額詐欺事件だ」銀行関係者が憤る倒産企業の実名)である。

先ずは、昨年7月12日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した帝国データバンク情報部の藤坂 亘氏による「一目散に逃げ出した社長に怒り…帝国データバンク調査員が見た、衝撃の倒産現場」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/325775
・『2022年度の倒産件数は3年ぶりの増加となった。倒産企業は企業規模もさまざまだが、それぞれに「企業の最期」という非日常のドラマがある。倒産現場ではどのようなことが起きているのか。そのリアルな実態として、2つの事例を紹介する』、興味深そうだ。
・『業界環境が悪化する中でゼロゼロ融資も断られたO社  2022年度は全国で6799件の倒産が発生し、倒産件数は3年ぶりの増加となった。コロナ禍で落ち込んだ業績や、その間に抱えた債務、昨今のエネルギー価格高騰、物価高、円安など、企業を取り巻く環境はめまぐるしく変化しており、今までのビジネスモデルでは対応できない企業も数多く出てきている。 企業倒産の増減は、景気を表す一つの経済指標として捉えられることが多い。そのこと自体は経済全体を見通すために必要なことだろう。しかし、倒産したそれぞれの企業には多くの人が関わり、多くの人生が詰まっていることも忘れてはならない事実だ。 帝国データバンクの情報記者は、企業倒産を取材する過程で、その人間模様を目の当たりにすることがある。1年に6799件発生する倒産のうちの一つでしかなく、負債も決して大きくない企業であっても、そこには「企業の最期」という非日常のドラマがある。 これが倒産現場のリアルだ。 以下、一つ目として紹介するのが、新聞の折り込みチラシを扱っていたO社の事例である。 大阪メトロ中央線の長田駅の改札を抜けると、既に午後7時を回っていた。駅前のショッピングセンターの横を通り過ぎると広がる紙文具団地。人けもなく、だだっ広い上に、トラックの往来でひどくひずんだ道路が続く。「関係先に倒産の通知が届いているようだ」という問い合わせがあったその会社は、そんな企業団地を抜けた先にあった。 受任通知が出ているなら張り紙があるはずと考えていたが、会社に到着するとシャッターが開いていた。前には1台のハイエースが止まっている。予想外の展開に、一度会社の前を通り過ぎ、念のため、問い合わせ元に社名と状況を再確認する。万が一にも間違いは許されない。間違いのないことを確認し、意を決して会社へ向かった。 ガランとした倉庫内には、パイプ椅子に腰掛け、携帯を見つめる男性が一人。取材に来た経緯を説明すると、取締役を名乗るその男性は小さくうなずき、倒産の事実を認めた。そして、倒産に至った経緯を訥々(とつとつ)と話し始めた。 「新聞の発行部数も減ったし、ネット広告が普及したし、折り込みチラシが少なくなったからなぁ。そんなときにコロナ。うちはパチンコ店や不動産関係のチラシが多かったから。コロナの感染が拡大した当初、『パチンコ店などが感染源』って相当たたかれたましたよね? だからチラシ広告を出すパチンコ店なんてどこもありませんよ」 新聞折り込みチラシを扱っていた同社は、業界環境の悪化とコロナ禍での急激な受注減に苦しめられていた。 「ゼロゼロ融資は受けたんですか?」 「二度、申し込みました。そして二度、断られました。『融資を受けられなければ、うちは倒産します』と言っても駄目でした」 取締役は口惜しそうな様子で続ける。 「でも、政治家による違法な融資仲介がニュースになってましたよね。不正をした企業は生き残っていいんですか。うちだってそうすれば良かったんですかね」 私は言葉に詰まった。「ゾンビ企業を救った」「甘い審査」「金融モラルハザードを生んだ」といった、ゼロゼロ融資に対する世間の追及。だが、どんな企業でも融資を受けられたかのような前提に立った批判も、融資を受けられなかった企業を目の前にすると、あっけなく崩れ落ちるだろう。 「実は弁護士には『絶対にシャッターを開けないように』と念を押されてたんです……。でも、最後の片付けですから(シャッターを開けていました)。これも何かの偶然ですね。世間に現実を伝えてください」 取締役との立ち話は30分以上に及んだ。O社を出たときは既に午後8時を回っていた。 一層寂しさが増した企業団地。開かれたシャッターは、救いの手から零れ落ちてしまったこの企業の「生きた証を遺したい」という取締役の思いを表しているようだった』、「新聞折り込みチラシを扱っていた同社は、業界環境の悪化とコロナ禍での急激な受注減に苦しめられていた・・・ゼロゼロ融資は・・・二度、申し込みました。そして二度、断られました」、「ゼロゼロ融資」を断られるほどなので、余程業況が厳しかったのでろう。
・『債権者が事務所に来るや社長が逃げ出したM社  私は倒産の問い合わせのあった運送会社のM社へ向かった。県道を曲がると異様な光景が目に入った。稼働せず、敷地内に停められたままの多数のトラックと、会社を囲うように停められた多数の乗用車だ。 会社の敷地には背の高い男性が一人。声をかけたが、彼は無言でプレハブの2階を指さした。私は事務所1階の自己破産を告げる張り紙を確認し、急な階段を静かに上った。 「はい」 香水とタバコのにおいが混じった事務所に入るなり、書類一式を渡された。解雇通知書だ。 「従業員じゃないです。帝国データバンクです。社長はいらっしゃいますか?」 10人ほどの視線が一気に集まり、事務所は静まり返る。 「自分ですけど、なんですか?」。奥でしゃがむ男性が答えた。 「張り紙を見ました。少しお話……」 「帝国さんに話すことなんかありません」 社長は私の言葉を遮り、吐き捨てるようにそう言った。 現場で取材を拒否されることはよくあることだ。ただ、会社の前にいるトラックドライバーたちの不満げな表情と、ある一台のトラック(詳しくは後述)に違和感を覚え、現場に残って取材を続けることにした。 しばらくすると、乗用車が二台、目の前に止まった。降りてきたのは、いかにもベテランドライバーという感じのいかつい男性2人。しかし、こういう人たちこそ話が通じるというのが世の常。予想通り、世間話をしているうちに心を開いてくれた。 「社長と何人かの役員待遇の社員は良い生活しているのに、おれらは給料すら払われてないんだよ」 「いつからですか……。トラブルとかありました?」 給与未払いの情報は、既に数カ月前からつかんでいたが、あえて聞かずにはいられなかった。) 「最初は、(取材時の約5カ月前となる)6月に集められて、『数%カット』と言われた。確かあのとき、トラックの事故があった後かな。幹線道路をふさいで大変だった。あそこにあるぐちゃぐちゃの、それ」 そう言って指さす先には、窓ガラスが割れ、左フロントから荷台側面がひしゃげたトラックが、痛々しい姿のまま放置されていた。私が違和感を覚えたトラックだ。 「でも、ずっと前からひどかった。社長が代わってから。大口のお客さんもあきれてた。社長に意見できた唯一のベテラン社員も辞めてしまったしな」 帰り際、社長と役員であろう男性が事務所から出てきたので、しばらく様子をうかがっていた。そこに、白色の営業車に乗ったスーツ姿の男性が訪ねてきた。おそらく債権者だ。彼が事務所へ向かうのを見るや、社長らは急いで車に乗り込み、逃げるように会社を去っていった。 その瞬間、私は怒りが込み上げた。 これまで、数多くの倒産現場で経営者を見てきた。全ての取引先に謝罪して回っていた社長、私財をなげうって従業員を守った社長、そこには最後まで責任を全うしようとした経営者の姿があった。その人たちに比べて……。 その後も何人かの従業員が訪ねてきたが、社長がいないことに皆困った様子で会社を後にした。その中には、3カ月前に入社したばかりという20代の男性もいた。 M社の事務所から最寄り駅までの約1.5キロメートル。帰り道、取材に応じてくれた従業員らの顔が浮かぶ。従業員の人生を背負う覚悟のない経営者の下で働くのは不幸だ。そんなことを考えているうちに、大通りに出た。突然解雇通知書を受け取ったドライバーたちは、どんな思いで家路に就くのだろうか。 こうした一つ一つの倒産が積み上がり、年間の倒産件数が算出される。景気動向、技術革新、業界環境の変化、法律の規制といった外部環境と照らし合わせて分析される倒産件数の増減。しかし、倒産する全ての企業が、そんな一般論で語られるようなことだけが原因で倒産するわけではない。 関係者もしくは現場でしかわからないそれぞれの企業の内部環境こそが、本当の倒産要因といっても過言ではないだろう。今まで見届けてきた数々の企業と従業員のためにも、それぞれの倒産を机上の空論で片付けるべきではない。倒産は現場で起きているのだから』、「運送会社のM社・・・社長と何人かの役員待遇の社員は良い生活しているのに、おれらは給料すら払われてないんだよ・・・取材時の約5カ月前となる)6月に集められて、『数%カット』と言われた。確かあのとき、トラックの事故があった後かな。幹線道路をふさいで大変だった。あそこにあるぐちゃぐちゃの、それ・・・でも、ずっと前からひどかった。社長が代わってから。大口のお客さんもあきれてた。社長に意見できた唯一のベテラン社員も辞めてしまったしな」、確かに酷そうだ。

次に、本年8月1日付けAERAdot.が掲載した経済ジャーナリストの大西洋平氏による「経済活動が正常化でも増える倒産、飲食業は「過去最多」の可能性、背景に何があるのか」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/articles/-/197438?page=1
・『ようやくコロナ禍を抜け出し、経済活動も正常化したというムードが強まっている。ところが、足元では経営に行き詰まって力尽きる企業が急増中だ。AERA 2023年8月7日号の記事を紹介する。 東京商工リサーチによれば、今年上半期(1~6月)における全国の企業倒産件数(負債額1千万円以上)は、2年連続で前年同期を超えたという。 上半期の数としては、2020年の同期以来3年ぶりに4千件を突破し、前年同期比で32%の増加となった。 負債総額については、昨年上半期に大手自動車部品メーカーの大型倒産があったため、前年同期比で約45%減に。ただ、負債100億円以上が8件、1億円以上5億円未満が824件、5億円以上10億円未満が115件と、中堅規模の企業倒産が目立った。 東京商工リサーチ情報本部の坂田芳博さんはこう説明する。 「株式を上場する大手企業の間では、好業績のところが増えています。一方、中小・零細企業の業績回復は遅れ気味です。コロナ禍で実施された支援策の効果が時間の経過とともに薄れ、すでに昨春ごろから倒産件数の増勢が強まりつつありました」 同調査では産業別の倒産件数にもスポットを当てているが、10分類のすべてが前年同期を上回っていた。これは1998年上半期以来、25年ぶりのことだという。ちなみに、当時は大手金融機関が次々と経営破綻し、日本は深刻な金融危機に見舞われていた。 地域別の倒産件数に目を向けても、けっして予断を許さない情勢にあると言えそうだ。 同調査では全国を9地区に分類しているが、そのすべてにおいて前年同期を上回っていた。こちらは、ITバブルが崩壊した2000年上半期以来(23年ぶり)の現象とか。無論、突出しているのは企業数自体が多い関東や近畿だが、コロナ感染は全国に広がっただけに、地方企業の多くも苦しい情勢のようだ』、「上半期の数としては、2020年の同期以来3年ぶりに4千件を突破し、前年同期比で32%の増加となった・・・東京商工リサーチ情報本部の坂田芳博さんはこう説明する。 「株式を上場する大手企業の間では、好業績のところが増えています。一方、中小・零細企業の業績回復は遅れ気味です。コロナ禍で実施された支援策の効果が時間の経過とともに薄れ、すでに昨春ごろから倒産件数の増勢が強まりつつありました」、「コロナ禍で実施された支援策の効果が時間の経過とともに薄れた」のが大きな原因のようだ。
・『飲食業が特に深刻  10分類中で最も倒産が多かったのは「サービス業他」の1351件(前年同期比36%増)で、全体の33.4%を占めていた。それに次ぐのが建設業の785件(同36.2%増)で、資材価格の高騰が経営の足を引っ張った一因と見られている。) サービス業の中でも、特に深刻なのは飲食業だ。今年上半期における倒産件数(負債1千万円以上)は424件で、前年同期比78.9%もの大幅増となった。上半期ベースで見ると、過去30年間における最多記録を更新。今後も同じようなペースで推移すると、8月にも昨年年間倒産件数(522件)を突破する可能性が考えられる。 「コロナ禍で飲食業は、休業・時短協力金や各種支援金などの手厚い支援に支えられてきました。しかし、売り上げが十分に戻りきらない状態で支援策が終了したうえ、物価高で光熱費や仕入れコストが急騰して追い打ちをかけました。さらにせっかく客足が戻ってきても十分な人手を確保できず、機会損失が発生しているケースも少なくないものと思われます」(坂田さん)』、「売り上げが十分に戻りきらない状態で支援策が終了したうえ、物価高で光熱費や仕入れコストが急騰して追い打ちをかけました。さらにせっかく客足が戻ってきても十分な人手を確保できず、機会損失が発生しているケースも少なくないものと思われます」、なるほど。
・『ゼロゼロ融資も影響  コロナ禍初年となった2020年、緊急事態宣言などのあおりで飲食業の倒産が急増したことは広く知られている。 東京商工リサーチの調べでは、年間件数が過去最多となる842件に上ったという。2021年以降は様々な支援策によって抑制されてきたが、そういった後ろ盾がなくなって再び悪化している。 坂田さんによれば、今回の調査で皮肉な結果が浮き彫りになったという。コロナ禍における営業自粛に伴い、やむなく人員削減を実施したすべての飲食店が人手不足に陥っていたのだ。慌てて確保しようとする動きが活発化すれば、おのずと人件費には上昇圧力がかかる。 しかも、タイミングが悪いことに「ゼロゼロ融資」の返済も始まった。 「ゼロゼロ融資」とは、コロナ禍で売り上げが激減した企業や個人事業主を対象に行われた実質無利子・無担保の貸し出しだ。今年上半期にコロナ関連で倒産に陥った飲食業は288件で、前年同期比104.2%増まで膨らんでいる。そのうち、「ゼロゼロ融資」を利用後に倒産したのは52件。延々と返済が続くだけに、今後は「ゼロゼロ融資」に起因する倒産がさらに増えていくのは必至だろう。 「コロナ禍以前から融資を受けていたケースも考えられますし、そうなると返済の原資を工面するのは大変でしょう。年間を通じた飲食業の倒産件数は、過去最多記録を更新する可能性があります」(坂田さん)』、「コロナ禍における営業自粛に伴い、やむなく人員削減を実施したすべての飲食店が人手不足に陥っていたのだ。慌てて確保しようとする動きが活発化すれば、おのずと人件費には上昇圧力がかかる。 しかも、タイミングが悪いことに「ゼロゼロ融資」の返済も始まった。 「ゼロゼロ融資」とは、コロナ禍で売り上げが激減した企業や個人事業主を対象に行われた実質無利子・無担保の貸し出しだ。今年上半期にコロナ関連で倒産に陥った飲食業は288件で、前年同期比104.2%増まで膨らんでいる。そのうち、「ゼロゼロ融資」を利用後に倒産したのは52件。延々と返済が続くだけに、今後は「ゼロゼロ融資」に起因する倒産がさらに増えていくのは必至だろう』、「飲食業」の業況は厳しそうだ。

第三に、9月8日付けYahooニュースが転載した広島ホームテレビ「給食が突然ストップ…高校6校 提供業者へ違約金を請求 広島」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/44460600ba9ce2e6f6e2a22f59a996c8784688df
・『高校の寮などで食事の提供が止まっている問題で、影響を受けている6つの高校が違約金を請求したことが分かりました。 三次高校など県内7つの高校がホーユーに給食業務を委託しており、その中の6校は2025年3月末までの契約でしたが6日、この契約を解除しています。 県教育委員会によりますと契約書には「履行期間中に業務を完了できない場合、違約金を支払わなければならない」という旨の記載があるため、契約解除にあたり会社側に数百万円の違約金を請求したということです。会社側には再来週までに支払いを求めています。 また県教育委員会などは、早急に寮での食事を再開できるよう随意契約もふくめて調整を進めているということです』、続報がないので、詳細は不明だが、「県内7つの高校がホーユーに給食業務を委託」、するからには、「ホーユー」の事業基盤や財務基盤はそれなりに強固な筈だが、「履行期間中に業務を完了できない」事態に陥った原因は何なのだろう。再発防止のためにも、掘り下げた分析が必要だと思う。

第四に、12月12日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した帝国データバンク情報統括部情報編集課長の阿部成伸氏による「「世紀の大粉飾」「巨額詐欺事件だ」銀行関係者が憤る倒産企業の実名」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/335283
・『帝国データバンクが12月8日に発表した2023年11月の全国企業倒産(負債1000万円以上の法的整理が対象)は773件、負債総額は881億5000万円となった。件数は2022年5月以降19カ月連続で前年同月を上回り、今年1月~11月の累計件数は7691件で前年同期(5784件)を33.0%上回っている。このままのペースで推移すると、2023年(通年)の倒産件数は約8500件となる見通しだ。今回は倒産取材から見えてくる近時の倒産の特徴を解説するとともに、今年下半期で最も印象的だった倒産を一つ選んで振り返る』、興味深そうだ。
・『足元で増えている「三つの倒産」  倒産件数推移の年別推移を見ても分かる通り、コロナ関連融資(ゼロゼロ融資)をはじめとする中小企業支援策によって倒産が抑制されていた2021年、2022年とは大きく状況が変わり、2023年は倒産が急増。その数はコロナ前の水準に戻っていることが分かる。 (図_全国企業倒産の件数推移(2014年~2023年)はリンク先参照) 東京23区の企業倒産の取材を行う帝国データバンク情報統括部には、毎日のようにさまざまな業種の企業から「月末の入金がない」「電話がつながらない」といった取引先の照会が寄せられ、12人の取材記者が現地確認や情報収集で飛び回っている。 そうした取材の報告や金融機関の審査担当者へのヒアリングをまとめると、近時の倒産について大きな特徴が三つ見えてくる』、なるほど。
・(1)ゼロゼロ融資返済倒産  一つ目はコロナ関連融資(ゼロゼロ融資)の返済開始に伴う倒産の増加だ。2020年に始まったゼロゼロ融資は、同年5月~7月頃に集中的に実行され、1回目の毎月返済を最長で5年後に設定できる「据置期間」が設けられた。この据置期間については、同融資を受けた企業の6割程度が3年未満、2割超が「3年」で設定したとみられる。 「3年」という長い期間で設定した企業が一定数あった背景としては、ゼロゼロ融資が「当初3年間無利息」であったことや当時の業況が極めて厳しい企業が多かったことが挙げられる。 「3年もたてば、今より良くなっているだろう…」。当時、そうした気持ちで融資を申し込んだが、その後の原材料・電気代高騰や為替変動の影響を受けるなどして、結局、業況は変わらないままの企業は少なくなく、「返済が始まれば限界だ…」と返済開始のタイミングで事業継続を断念する経営者が増えている』、「「3年もたてば、今より良くなっているだろう…」。当時、そうした気持ちで融資を申し込んだが、その後の原材料・電気代高騰や為替変動の影響を受けるなどして、結局、業況は変わらないままの企業は少なくなく、「返済が始まれば限界だ…」と返済開始のタイミングで事業継続を断念する経営者が増えている」、なんのことはなくただ3年延長しただけだ。
・『(2)公租公課滞納倒産  二つ目は消費税や固定資産税などの各種税金や厚生年金保険、健康保険などの社会保険料の納付ができない、または滞納が続いたことで会社の資産(預金口座や土地など)を差し押さえられて事業継続が困難となる、公租公課滞納倒産の増加だ。 2023年の公租公課倒産は11月までに111件確認され、2022年(通年で74件)、2021年(同52件)を大きく上回っている。 公租公課のうち、企業にとって特に負担が大きい社会保険料については、コロナ禍で最長3年の納付猶予措置が設けられたが、企業活動が正常化に向かうなかで特例措置は順次縮小される一方、2022年度の年金事務所による厚生年金保険料などの差し押さえ件数は、前年度の4倍となる2万7784事業所にまで増加した。 こうした現状を踏まえると、公租公課滞納倒産は今後さらに増加していく可能性が高い。 各種税金や社会保険料の納付は、社会保障制度を維持・継続させるために企業が公平に負う義務であり、滞納などに伴う差し押さえで倒産が増えていることについて、年金事務所等の責めに帰すことはできない。見方を変えれば、淘汰されるべき企業が淘汰され、健全な経済成長を促すための変化ととらえることもできるだろう』、確かに「淘汰されるべき企業が淘汰され、健全な経済成長を促すための変化」と捉えられる。
・『(3)粉飾倒産  三つ目は粉飾倒産の増加だ。これについては、民間、政府系を問わず金融機関の審査担当者が口をそろえる。 コロナ禍では各金融機関は中小企業向けのゼロゼロ融資の受け付け・実行や既存融資のリスケジュール対応などに追われ、融資先の情報収集や定点管理に手が回らず、粉飾決算が発見されにくい状況が続いていた。しかし、アフターコロナで支援策がなくなり、自主再生フェーズに入ってくると、自力での事業継続が困難となる企業が出始める。その過程で粉飾決算が表面化している。 その現状について都内・民間金融機関の担当者は「倒産前に粉飾が発覚するケースと倒産後に粉飾が発覚するパターンがある。前者の場合、経営悪化に伴う再建計画作成の過程で決算書の矛盾点が指摘され、結果として予定していた計画・支援が実現せず、倒産に至るケースが多い」と話す』、「倒産前に粉飾が発覚するケース」では、「経営悪化に伴う再建計画作成の過程で決算書の矛盾点が指摘され、結果として予定していた計画・支援が実現せず、倒産に至るケースが多い」、結果的には傷がつかずに済むようだ。
・『今年7月に発生した「世紀の大粉飾」倒産  2023年7月~11月に発生した全国企業倒産は、計3685件。そのなかにはパチンコホール大手の「ガイア」や突如、事業を停止して社会問題にもなった学校給食事業の「ホーユー」なども含まれ、12月に入ると1年4カ月ぶりに上場企業(プロルート丸光・東証スタンダード)の倒産も発生した。そうしたなかでも筆者にとって下半期で最もインパクトが大きかったのは「世紀の大粉飾」の果てに倒産した堀正工業だ。 優良企業とみられてきた昭和8年創業のベアリング商社・堀正工業(株)(東京都品川区)が倒産したのは今年7月。同月24日に東京地裁へ自己破産を申請し、同日破産手続き開始決定を受けた。そして同時に発覚した大粉飾は、銀行や審査業界に極めて大きな衝撃を与えた。 筆者は2000年以降、倒産を取材する記者として、さまざまな粉飾事例を見てきたが、これほどまでに会社の説明(書類)と実態が乖離(かいり)し、数多くの銀行が巻き込まれたケースを見たことがない。それが「世紀の大粉飾」とも言われるゆえんだ。 堀正工業に融資していた各銀行は、融資取引銀行の総数について、自行を含めて5行と説明を受けていたが、実際はその10倍以上の54行から融資を受けていた。 また、銀行借り入れの総額について各銀行は40億~50億円程度(各行で異なる)と認識していたが、実際は約347億円(2022年9月時点)。2022年9月期の年売上高は68億600万円、当期純利益は4億7700万円と公表していたが、実際の年売上高は45億1600万円、当期純利益は3億4200万円の赤字だった。 「単なる粉飾ではなく、巨額詐欺事件だ」(銀行関係者)と憤るのも当然だ。 粉飾決算は遅くとも、現社長の堀雅晴氏が社長に就任した2003年頃からはじまったとされる。かつて利益が出ていないことを理由に銀行から融資を断られた経験から、融資を受けるためには利益が出ていることが必須であると考えたことがきっかけだった。以後、堀社長などによって長年にわたり粉飾決算は続けられ、取引先や銀行をだまし続けた。 破産申立書に添付された会社資産の実態を示す清算貸借対照表に計上された現金・預貯金の合計はわずか6億7500万円。これまで受けてきた数百億円規模の融資金は何に使われどこに消えたのか。 また、申立書には取引金融機関が増大していった理由について「堀雅晴個人への貸付け、堀雅晴が100%株主ないしは大株主である会社への貸付け等のため」などと記載され、怪しさ満載だ。 11月27日に開催された財産状況報告集会では、これまで明かされることのなかった資金の流れの説明もあったとされ、堀社長への責任追及や事件化へ向けた銀行の動きなどが注目されている』、「各銀行は、融資取引銀行の総数について、自行を含めて5行と説明を受けていたが、実際はその10倍以上の54行から融資を受けていた。 また、銀行借り入れの総額について各銀行は40億~50億円程度(各行で異なる)と認識していたが、実際は約347億円(2022年9月時点)。2022年9月期の年売上高は68億600万円、当期純利益は4億7700万円と公表していたが、実際の年売上高は45億1600万円、当期純利益は3億4200万円の赤字だった。 「単なる粉飾ではなく、巨額詐欺事件だ」(銀行関係者)と憤るのも当然だ。 粉飾決算は遅くとも、現社長の堀雅晴氏が社長に就任した2003年頃からはじまったとされる・・・清算貸借対照表に計上された現金・預貯金の合計はわずか6億7500万円。これまで受けてきた数百億円規模の融資金は何に使われどこに消えたのか」、確かに桁外れの「粉飾」だ。こんな巨額の「粉飾」であれば、経理部長の「粉飾」維持のための経理操作は膨大な負担になっていただろう。
タグ:倒産・経営破綻 (その2)(一目散に逃げ出した社長に怒り…帝国データバンク調査員が見た 衝撃の倒産現場、経済活動が正常化でも増える倒産 飲食業は「過去最多」の可能性 背景に何があるのか、給食が突然ストップ…高校6校 提供業者へ違約金を請求 広島、「世紀の大粉飾」「巨額詐欺事件だ」銀行関係者が憤る倒産企業の実名) ダイヤモンド・オンライン 藤坂 亘氏による「一目散に逃げ出した社長に怒り…帝国データバンク調査員が見た、衝撃の倒産現場」 「新聞折り込みチラシを扱っていた同社は、業界環境の悪化とコロナ禍での急激な受注減に苦しめられていた・・・ゼロゼロ融資は・・・二度、申し込みました。そして二度、断られました」、「ゼロゼロ融資」を断られるほどなので、余程業況が厳しかったのでろう。 「運送会社のM社・・・社長と何人かの役員待遇の社員は良い生活しているのに、おれらは給料すら払われてないんだよ・・・取材時の約5カ月前となる)6月に集められて、『数%カット』と言われた。確かあのとき、トラックの事故があった後かな。幹線道路をふさいで大変だった。あそこにあるぐちゃぐちゃの、それ・・・でも、ずっと前からひどかった。 社長が代わってから。大口のお客さんもあきれてた。社長に意見できた唯一のベテラン社員も辞めてしまったしな」、確かに酷そうだ。 AERAdot. 大西洋平氏による「経済活動が正常化でも増える倒産、飲食業は「過去最多」の可能性、背景に何があるのか」 「上半期の数としては、2020年の同期以来3年ぶりに4千件を突破し、前年同期比で32%の増加となった・・・東京商工リサーチ情報本部の坂田芳博さんはこう説明する。 「株式を上場する大手企業の間では、好業績のところが増えています。一方、中小・零細企業の業績回復は遅れ気味です。コロナ禍で実施された支援策の効果が時間の経過とともに薄れ、すでに昨春ごろから倒産件数の増勢が強まりつつありました」、 「コロナ禍で実施された支援策の効果が時間の経過とともに薄れた」のが大きな原因のようだ。 「売り上げが十分に戻りきらない状態で支援策が終了したうえ、物価高で光熱費や仕入れコストが急騰して追い打ちをかけました。さらにせっかく客足が戻ってきても十分な人手を確保できず、機会損失が発生しているケースも少なくないものと思われます」、なるほど。 「飲食業」の業況は厳しそうだ。 yahooニュース 広島ホームテレビ「給食が突然ストップ…高校6校 提供業者へ違約金を請求 広島」 続報がないので、詳細は不明だが、「県内7つの高校がホーユーに給食業務を委託」、するからには、「ホーユー」の事業基盤や財務基盤はそれなりに強固な筈だが、「履行期間中に業務を完了できない」事態に陥った原因は何なのだろう。再発防止のためにも、掘り下げた分析が必要だと思う。 阿部成伸氏による「「世紀の大粉飾」「巨額詐欺事件だ」銀行関係者が憤る倒産企業の実名」 (1)ゼロゼロ融資返済倒産 「「3年もたてば、今より良くなっているだろう…」。当時、そうした気持ちで融資を申し込んだが、その後の原材料・電気代高騰や為替変動の影響を受けるなどして、結局、業況は変わらないままの企業は少なくなく、「返済が始まれば限界だ…」と返済開始のタイミングで事業継続を断念する経営者が増えている」、なんのことはなくただ3年延長しただけだ。 (2)公租公課滞納倒産 確かに「淘汰されるべき企業が淘汰され、健全な経済成長を促すための変化」と捉えられる。 (3)粉飾倒産 「倒産前に粉飾が発覚するケース」では、「経営悪化に伴う再建計画作成の過程で決算書の矛盾点が指摘され、結果として予定していた計画・支援が実現せず、倒産に至るケースが多い」、結果的には傷がつかずに済むようだ。 「各銀行は、融資取引銀行の総数について、自行を含めて5行と説明を受けていたが、実際はその10倍以上の54行から融資を受けていた。 また、銀行借り入れの総額について各銀行は40億~50億円程度(各行で異なる)と認識していたが、実際は約347億円(2022年9月時点)。2022年9月期の年売上高は68億600万円、当期純利益は4億7700万円と公表していたが、実際の年売上高は45億1600万円、当期純利益は3億4200万円の赤字だった。
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介護(その8)(母 グループホームで2度目の“独り立ち”、「家に帰る」という認知症の入居者 スタッフはどう導くのか、介護人材「離職超過」で初の減少 サービス確保に介護保険料引き上げはやむを得ない) [社会]

介護については、2021年11月2日に取上げた。久しぶりの今日は、(その8)(母 グループホームで2度目の“独り立ち”、「家に帰る」という認知症の入居者 スタッフはどう導くのか、介護人材「離職超過」で初の減少 サービス確保に介護保険料引き上げはやむを得ない)である。

先ずは、昨年4月21日付け日経ビジネスオンラインが掲載したノンフィクション作家の松浦 晋也氏による「母、グループホームで2度目の“独り立ち”」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00444/042000002/
・『2017年3月、「『事実を認めない』から始まった私の介護敗戦」から連載を開始した、松浦晋也さんの「介護生活敗戦記」は、科学ジャーナリストとして自らを見る冷徹な視点から、介護を通した母親との壮絶な体験を、ペーソスあふれる文章で描き、絶大な支持をいただきました。コメント欄に胸を打つ投稿が相次いだのも記憶に残るところです。 この連載は『母さん、ごめん。 50代独身男の介護奮闘記』として単行本・電子書籍となり、介護関連の本としては異例の支持を集めました。22年1月には集英社文庫に収録されております(こちら。文庫版にはジェーン・スーさんとの対談が追加されています)。 そして5年後。前回の最後は、松浦さんのお母様がグループホームに入ったところでしたが、今回はそこから今日まで起こったさまざまな出来事が語られます。 介護施設に入居したことで、母親の介護は終わったのでしょうか。 入居後にお母様、そして松浦さんを待っていたのはどんなことなのか。 ぜひじっくりとお読みください』、興味深そうだ。
・『グループホームというところ  母が暮らすことになったグループホームという老人施設――これがどのようなところなのか、おそらく介護を経験したことのない方は、ほぼ間違いなく知らないだろう。そもそも身近に要介護の老人がいなければ、「老人ホーム」という曖昧な言葉が持つ一般的なイメージ以上の知識は、生活の中に入ってこない。なんとなく老人がまとめて集められて、一斉に並んで食事しているぐらいのことしか思い浮かばないのではなかろうか。 今、日本の介護制度では、法的な裏付けを持つ、それぞれに特化した役割を持つ複数種類の施設が、機能を補完し合いながら、老人福祉を担っている。そのうちの一つが、認知症になった人が入居する「グループホーム」である。 グループホームの法的な正式名称は「認知症対応型共同生活介護」だが、一般的には「認知症高齢者グループホーム」となるだろうか(この他に児童福祉法や障害者総合支援法が規定する、子どもや障害者を対象としたグループホームがある)。 その名の通り、加齢で認知症を発症した人が共同生活を営む施設だ。2000年4月に介護保険法が施行されて、現在の介護保険制度がスタートしたのと同時に始まった介護形態である。 その特徴は、地域密着型であることと、小規模であることだ。 地域密着型というのは、「その地域に居住する人のみを受け入れる」ということだ。施設の立地する市区町村に住民票がある者のみが入居資格を持つ。その他、医師から認知症の診断を受け、「要支援2」ないし「要介護1~5」の認定を受けていること、ホームで対応できない疾病がないこと、65歳以上であること、という条件が付く。基本的に、「認知症以外は健康な高齢者」のための施設というわけだ。 もう一つ、入居に当たっては「集団生活を営むのに支障がない」という条件があり、これは入居審査時にホーム側が判断することになっている。 小規模、というのは文字通り規模が小さいということだ。入居者がなるべくアットホームな環境で過ごせるようにするためである。グループホームの規模は「ユニット」という単位で規定されている。1ユニットは入居者5~9人で、1つの施設は2ユニットが上限となる。 入居者は基本的に個室を持つ。個室の基準は、私物収納スペースに配慮した上で床面積7.43平方メートル以上となっている。四畳半が7.28平方メートルなので、つまりは押し入れ付き四畳半と思えばいい。施設によっては夫婦など向けに2人部屋を備えるところもある。 前の連載を終えてから、私は介護関係者との対談の仕事が増えたのだが、その中で会った一人が「グループホームへの入居というのは、成人して独り立ちした時に似ています」と説明していた。確かに、形としては「親元を離れて、賄い付き四畳半の下宿に入居する」というのと似ている。 ※「介護生活敗戦記」、単行本、文庫本として『母さん、ごめん。』が刊行中 スタッフの配置については、昼間は入居者3人につき1人、夜間は夜勤が1ユニットにつき1人という基準がある。が、実際問題として国は度々基準を変更しており、また人手不足ということもあって、どのグループホームも基準を満たす介護体制を組むのにかなりの苦労をしているようだ』、「老人福祉を担っている。そのうちの一つが、認知症になった人が入居する「グループホーム・・・この他に児童福祉法や障害者総合支援法が規定する、子どもや障害者を対象としたグループホームがある・・・現在の介護保険制度がスタートしたのと同時に始まった介護形態・・・その特徴は、地域密着型であることと、小規模であることだ・・・医師から認知症の診断を受け、「要支援2」ないし「要介護1~5」の認定を受けていること、ホームで対応できない疾病がないこと、65歳以上であること、という条件・・・規模は「ユニット」という単位で規定されている。1ユニットは入居者5~9人で、1つの施設は2ユニットが上限となる。 入居者は基本的に個室を持つ。個室の基準は、私物収納スペースに配慮した上で床面積7.43平方メートル以上となっている。四畳半が7.28平方メートルなので、つまりは押し入れ付き四畳半と思えばいい。施設によっては夫婦など向けに2人部屋を備えるところもある」、なるほど。
・『ここからは、母の入居したグループホームの話となる。 私の母が入居したグループホームは、設置基準の上限である2ユニット18人が入居する規模だった。最初から18人規模のグループホームとして使用する前提で建築された建屋を使用している。入居に当たって見学したグループホームの中には、既存の建物を改装したところもあった。そういうところは、ユニット数や1ユニットの人数が少ないこともあるようだ。 建物は入り口を中心に東と西のユニットに分かれている。母は西ユニットの入居だ。それぞれのユニットは共有スペースのダイニング兼用リビングが中心にあり、それを取り囲むようにして各居住者の個室が配置されている。床は段差のないバリアフリーで、汚した場合に備えて全面防水。これだけでも一般家庭とは段違いだ。もちろん風呂とトイレは介護に対応した設備を備えている。 スタッフ数は時によって1人増えたり減ったりはあったが、基本的に1ユニット9人の18人体制を維持している。入居者1人につき1人だ。1ユニット9人の内訳は、介護計画を作成し、管理するケアマネジャーが1人に、そのユニットのリーダーが1人、介護スタッフが7人である。 その他に看護師が1人いて、入居者の体調管理を行っている。また、毎週1回かかりつけ医が回診して、投薬や専門医に掛かるべきかなどの指示をする』、「母の入居したグループホーム」は「基本的に1ユニット9人の18人体制を維持している。入居者1人につき1人だ。1ユニット9人の内訳は、介護計画を作成し、管理するケアマネジャーが1人に、そのユニットのリーダーが1人、介護スタッフが7人である」。
・『どう考えても重労働  入居者1人にスタッフ1人という体制は、家庭で自分が母を介護していたときと同じリソース配分だ。が、1人に1人と、9人に9人では、全く状況が異なる。9人に9人なら、負荷が増えた時に分担することができる。1人に1人なら、何かあれば破綻するしかないが、9人に9人なら協力して乗り切ることができる。しかもその9人は、素人ではなく、きちんと介護の教育を受けたプロだ。 最初は「なるほど、手厚いものだ」と感心した。 が、せっせと通って、スタッフの方とも話をするうちに、これは「大変な仕事だ」と考えを改めざるを得なかった。 まず、9人が常時9人に張り付いているわけではない。スタッフもそれぞれに家庭の事情があって「この曜日なら働ける」というような条件付きで働いていたりもする。実際問題として昼間は早出と遅出の2シフト、さらに夜勤が入るとなると、これは「昼間は3人につき1人、夜勤は1ユニット1人」という基準を満たしてシフトを組むのには、かなりの苦労があるだろう。 特に1人で9人の介護を担当しなくてはならない夜勤は、はっきりと重労働であろう。入居者は寝ているとはいえ、必要に応じてトイレを手伝い、時には体の利かない入居者のリハビリパンツの交換を行い、粗相があれば掃除もしなくてはならないのだ。) 入居前に複数のグループホームを見学したことで、グループホームという施設の運営にはかなりホーム長の個性が強く出るものだと気が付いた。母の入居にあたっては、ホーム長を務めていたKさんの個性が、束縛を嫌う母に合いそうだという判断がかなり大きく影響した。 Kホーム長は、だいぶ私よりも若く、丸顔で癖のあるもじゃもじゃの髪を伸ばして後ろでポニーテールに縛っていた。私の第一印象はといえば「50年前に新宿駅前でフォークゲリラとかいってギター弾いて歌っていそうだ」という、思えば大変失礼なものだった。 彼の運営方針は、「あまり束縛しない」だった。それぞれの入居者はそれぞれの事情を抱えているのだから、なるべく寄り添うようにする。「あれをしろ、これをしろ」と言わないし、やりたいということはなるべく手伝う。 例えば、新しい入居者が放浪癖のある人だったことがある。 ホームはドアにカギが掛かる構造になっているので、物理的に外に出さないようにするのは簡単だ。が、Kホーム長は、そうはしなかった。 その入居者が玄関まで出てくると「○○さん、外に行きたいの?」と話しかける。そして頭ごなしに叱ったり、止めたりするのではなく「でも今日は天気が悪いですよ。外に出るならもう少し天気の良い日にしませんか」と引き留める。 どうしても行きたがる場合は、手の空いているスタッフが一緒に近所まで散歩をする。そのうちに本人が疲れてくると、「疲れましたかね。戻ってお茶でも飲みましょうか。そろそろおやつの時間ですよ」と話しかけて、帰ってくる――体力があってどこまでも歩いてしまうような入居者ではなかったからできたのだろうが、このような柔らかい態度で接するということを基本としていた』、「物理的に外に出さないようにするのは簡単だ。が、Kホーム長は、そうはしなかった。 その入居者が玄関まで出てくると「○○さん、外に行きたいの?」と話しかける。そして頭ごなしに叱ったり、止めたりするのではなく「でも今日は天気が悪いですよ。外に出るならもう少し天気の良い日にしませんか」と引き留める。 どうしても行きたがる場合は、手の空いているスタッフが一緒に近所まで散歩をする。そのうちに本人が疲れてくると、「疲れましたかね。戻ってお茶でも飲みましょうか。そろそろおやつの時間ですよ」と話しかけて、帰ってくる」、なかなかよく出来た「ホーム長」だ。
・『靴を持っていってしまう入居者  あるいは、すぐに靴を自分の部屋に持っていってしまう入居者の方がいた。私のような訪問者も玄関に置いていた自分の靴を、何度も持っていかれてしまったのだが、それも決して止めない。靴を自室に持ち帰り、そのまま本人が忘れてしまったタイミングでそっと元に戻しておく。その上で、私のような“被害者”に、そっと事情を説明するのだ。 「すみませんね、あの方は、若い時は市民ランナーとしてかなりのところまで走り込んでいて、いくつものマラソンを走ってきたんだそうですよ。だから靴にはものすごくこだわりがあるんです。靴、元に戻しておきましたから」というように。 ホームには、かなり広い庭がある。Kホーム長はそこに家庭菜園を作って野菜を栽培していた。「できる入居者の方には、声をかけて手伝ってもらうんですよ。そうすることで体を動かすことにもなりますし、いくらかでも“自分が他の人にとって役立っている”という実感を持ってもらえればと思っているんですけどね」ということだった。 同じ庭には時々近所の保育園の保育士さんと子どもたちがやってきて、遊んでいく。きちんと話を聞いたわけではないが、そのように取り計らったのもKホーム長らしかった。 それだけではなかった。ホーム長の居室は、建物の玄関のすぐ横にあるのだが、そこにはいつも10円駄菓子が常備されているのである。Kホーム長と話をしていると、時折、小学生ぐらいの子どもがやってきて、「くださーい」と声を張り上げる。するとKホーム長は出て行って、駄菓子と10円玉を交換するのだ。) 「近所の子たちに“いつ来てもいいよ、お菓子あるよ”って言ってあるんです。もちろん入居の方にすれば、子どもがちょろちょろ来るとうれしいというのはあると思うんですよね。ひょっとしたら『うるさい来るな』なのかもしれませんけれど」とKホーム長は言った。「それとは別にね、子どもの側にしても、こういうおじいさん、おばあさんが同じ社会にいるんだ、ということを少しでも知っておくことは、決して悪いことじゃないと思うんですよ」 この話を聞いた時に、私は「これは母のために、良いグループホームを選ぶことができたのかもしれない」と思ったのだった。 Kホーム長、そしてスタッフの皆さんに大変申し訳ないことではあるが、母が入居した当初の自分の懸念は、「スタッフによる虐待行為があったらどうしよう」というものだった。 この懸念は何よりも自分の体験に基づくものだった。いくら自分の母であっても、2年半の自宅での介護はつらく、苦しく、精神的に強いストレスを感じるものだった。自分は母に手を上げたことが、グループホーム入居のきっかけになったというのは前回の連載で書いた通りだ。 私は、このことがグループホームのスタッフにも言えるのではないかと恐れていた。いかに仕事として入居者と関わるとしても、そこには強いストレスがあるのではないか。時には耐え難い感情に襲われるのではないか、と考えたのだ。 同時に、この考えには、母が入居する半年前、2016年7月に起きた相模原障害者施設殺傷事件も影を落としていた。知的障害者福祉施設のスタッフが入所者19人を殺害、26人に重軽傷を負わせた衝撃的な事件は社会に大きな衝撃を与え、母が入居した2017年1月時点もメディアに続報が出る状態だった。 全くもって「自分がやったことを棚に上げて、何を心配しているのか」なのだが、私は真剣に対策を考えた』、「母が入居した当初の自分の懸念は、「スタッフによる虐待行為があったらどうしよう」というものだった。 この懸念は何よりも自分の体験に基づくものだった。いくら自分の母であっても、2年半の自宅での介護はつらく、苦しく、精神的に強いストレスを感じるものだった。自分は母に手を上げたことが、グループホーム入居のきっかけになったというのは前回の連載で書いた通りだ」、なるほど。
・スタッフとの信頼関係からすべては始まる  たどり着いた結論は、「とにかくスタッフに話しかける。スタッフと話をする。話をすることで、自分という人間を分かってもらう」というものだった。 話をすれば、スタッフに私という人物が印象付けられる。そのスタッフが何か母に関連して耐えられないストレスを感じ、思わず手を上げそうになったその瞬間、私の顔を思い出してくれるなら、それは抑止力として機能するのではないか、と考えたのである。 幸い、話の種はある。母そのものだ。グループホームでの母の状態を知りたければ、スタッフと話をするしかない。母自身から聞くこともできる。が、意地やら遠慮が働くし、何より認知症で記憶が続かない母の話は、要領を得ないことも多い。 というわけで、私はホームに赴くごとに、スタッフと積極的に話をするように努めた。母との面会と同じぐらいの時間を、スタッフとの会話に使うようにした。 話してみれば、スタッフの皆さんは“普通の人たち”だった。それぞれに生活があり家族があり、生活の楽しみがあり、人生の目標があり、希望を持って生きていた。認知症高齢者グループホームで働くというのは、特別なことではないのだ――そう私は知った。それはこの社会に数多く存在する職のうちの一つなのだ。 そしてこの後、私は母の住む西ユニットで働く9人のスタッフの中でも、ケアマネジャーのYさんと、スタッフリーダーであるOさんの2人に、ずいぶんとお世話になることになるのである。(つづく)』、「スタッフと話をする。話をすることで、自分という人間を分かってもらう」というものだった。 話をすれば、スタッフに私という人物が印象付けられる。そのスタッフが何か母に関連して耐えられないストレスを感じ、思わず手を上げそうになったその瞬間、私の顔を思い出してくれるなら、それは抑止力として機能するのではないか、と考えたのである・・・話してみれば、スタッフの皆さんは“普通の人たち”だった。それぞれに生活があり家族があり、生活の楽しみがあり、人生の目標があり、希望を持って生きていた。認知症高齢者グループホームで働くというのは、特別なことではないのだ――そう私は知った。それはこの社会に数多く存在する職のうちの一つなのだ」、なるほど。

次に、この続きを5月26日付け日経ビジネスオンラインが掲載したノンフィクション作家の松浦 晋也氏による「「家に帰る」という認知症の入居者、スタッフはどう導くのか」を紹介しよう。
・『2017年3月、「『事実を認めない』から始まった私の介護敗戦」から連載を開始した、松浦晋也さんの「介護生活敗戦記」は、科学ジャーナリストとして自らを見る冷徹な視点から、介護を通した母親との壮絶な体験を、ペーソスあふれる文章で描き、絶大な支持をいただきました。コメント欄に胸を打つ投稿が相次いだのも記憶に残るところです。 この連載は『母さん、ごめん。 50代独身男の介護奮闘記』として単行本・電子書籍となり、介護関連の本としては異例の支持を集めました。22年1月には集英社文庫に収録されております(こちら。文庫版にはジェーン・スーさんとの対談が追加されています)。 そして5年後。前回の最後は、松浦さんのお母様がグループホームに入ったところでしたが、今回はそこから今日まで起こったさまざまな出来事が語られます。 介護施設に入居したことで、母親の介護は終わったのでしょうか。 入居後にお母様、そして松浦さんを待っていたのはどんなことなのか。 ぜひじっくりとお読みください』、興味深そうだ。
・『母のいるグループホームは「看取り(みとり)」に対応している。つまり、入居者がグループホームで最期を迎えることを想定して体制を組んでいる。 グループホームは「健康に問題がない認知症の人」の入る施設だ。このため看取りは、特に悪いところのない老衰による最期を意味する。明らかに病気による衰弱が始まった場合は、医療行為が必要となるので病院に入院することになる。 看取りに対する対応は、グループホームによって色々違うのだそうだ。看取りに対応していないグループホームもあって、その場合は、看取り対応の施設や、病院あるいはホスピスなどに送り出す。 老衰の場合、だいたいの場合は食事が食べられなくなり、体重が落ちていくことで、「ああ、この人は寿命だ」と分かるのだという。「体格にもよるのですけれど、お母様程度の体格の女性の場合は体重40kgがひとつの目安です。これを切ると危険水域です」とは、Kグループホーム長の言である。母のいるグループホームでは、最後の数日については家族の寝泊まりにも対応する。 老人ばかりが入居するグループホームは、けっこうな頻度で入居者が入れ替わる。病気で退居する人との入れ替わりや、老衰死で空いた部屋に新たな入居者が入る。前回の訪問ではリビングで介助を受けながら健啖な食欲を発揮していた人が、次の訪問ではもういない、というようなことが起きる。事情を聞くと「急に食べなくなって、3日で亡くなられました」ということだったりする』、「看取りは、特に悪いところのない老衰による最期を意味する。明らかに病気による衰弱が始まった場合は、医療行為が必要となるので病院に入院することになる・・・老衰の場合、だいたいの場合は食事が食べられなくなり、体重が落ちていくことで、「ああ、この人は寿命だ」と分かるのだという。「体格にもよるのですけれど、お母様程度の体格の女性の場合は体重40kgがひとつの目安です。これを切ると危険水域です」とは、Kグループホーム長の言である。母のいるグループホームでは、最後の数日については家族の寝泊まりにも対応する」、「老衰による最期」は理想的な「最期」だ。
・『不安がもたらす症状が突然顔を出す  ホームのリビングは天井が高く、内装は明るく、日差しもきれいに入ってくる。それでも、入居者が入れ替わることで、否応なしに「ここは人が死に至るまでの最後の時間を過ごす場所だ」ということを意識させられる。 新しく入居した方の認知症の症状は、前の方とはまったく異なるのが普通だ。母の見舞いと共に、それらの入居している人々と話し、観察していくことで、自分は、認知症という病気が非常に多様であることを実感した。認知症にはいくつもの原因があり、症状の現れ方は多様であると頭では知っていたが、実地に体験すると、その多様さは予想以上だった。 と同時に、その根底には共通して「不安と安心」があることが見えてきた。 母の入居当初、最初に話をするようになったのは、主に症状が軽い方だった。ご存じの通り、介護保険制度では、介護を受ける人を7段階に区分し、段階に応じた手当を行う仕組みになっている。家事や身支度などの日常生活に他者の支援が必要になり、助けないと次の「要介護」に進行する可能性がある状態を「要支援」、症状が進行して日常生活の動作に常時介護が必要になった状態を「要介護」と定義し、それぞれ「要支援1」「要支援2」、「要介護1」から「要介護5」と7段階に区分しているのだ。 グループホームへは「要支援2」から入居できる。だから「要支援2」や「要介護1」の比較的認知症の症状が軽い人もいる。 こういう方たちは、ちょっと見たところでは普通の人と変わらない。日常的な会話はできるし、私が家の老犬「ロンロン」を連れていくと、「かわいい!」と歓声を上げて集まってきて、代わる代わるだっこしたりする。 ところが、まったくの健常ではないことが、ふとした拍子に分かるのだ。) 犬を連れて帰ろうとすると、おばあさんの一人が「あー、楽しかった。じゃあ私も帰ろうかしら」といって立ち上がったりするのである。自分がグループホームに入居しているということの自覚がないのだ。 それまで普通に話をしていた人が、急におかしなことを言うのにはぎくりとする。日常に突如として裂け目が発生して、なにか見てはならない荒涼とした風景が垣間見える気分になる。 そんなときスタッフは決して、「いいえ、あなたは今ここに住んでいるんですよ」といった、諫めるようなことは言わない。「そうですか。もう少ししたらお茶とお菓子を出すつもりだったんですよ」とか、「今日は晩ご飯も食べていきませんか」というように、相手の意識を「帰る」というところから引き離すようにして注意をそらす。すると「あら、悪いわ」とか言いながら、おばあさんは再度腰を下ろし、話をしているうちに帰ろうとしていたことを忘れるのである。 「帰る」ということは、認知症の方には、わりと一般的な観念なのだと、私は知った。では、なぜ帰ろうとするのか?』、「助けないと次の「要介護」に進行する可能性がある状態を「要支援」、症状が進行して日常生活の動作に常時介護が必要になった状態を「要介護」と定義し、それぞれ「要支援1」「要支援2」、「要介護1」から「要介護5」と7段階に区分しているのだ。 グループホームへは「要支援2」から入居できる。だから「要支援2」や「要介護1」の比較的認知症の症状が軽い人もいる」、なるほど。
・『「泊まっていってください」  入居者の中に、大変活発にお話をするおばあさんがいた。歩行や座る、立つといった動作は一般人と変わりなく、スタッフに呼ばれればさっさと食事の支度に参加し、そつなく会話を交わす。はて、この方はどこが認知症なのだろうと思っていたある日、たまたま事情があってホームを就寝時刻になってから訪問することになった。 就寝時にケアすべきことは多い。入居者に歯を磨かせ、寝間着に着替えさせ、夜中に何回も起きてこなくても済むようにトイレに行かせる。もちろん一人では着替えができない人はいるし、トイレもままならない人もいるから、ケアはけっこうな重労働だ。そんな仕事をこなすスタッフの方と、合間を縫うようにして母の状態について情報を交換する。一段落ついたな、と思った頃、その活発なおばあさんが起きてきた。おや、さきほど「おやすみなさい」と言って就寝したはずではないか、と不審に思う間もなく、「ねえ、なぜ私ここにいるのかしら。もう夜も遅いし家に帰らなくちゃ」と言う。 えっ、と驚く私。まったく驚く様子もないスタッフリーダーのOさん。Oさんは、「大丈夫ですよ。今日は遅いのでちゃんとベッドを用意しました。泊まっていってくださいな。ご家族にも連絡しておきましたから」と柔らかく話しかける。「でも悪いわ。泊まるんならお金払わなくちゃ」とおばあさんが言うと、「もう頂戴してますから払わなくてもいいんですよ」と返す。「……そう、そうなんだ。じゃあお世話になるわ。おやすみなさい」と自室に戻っていくおばあさん』、「大変活発にお話をするおばあさん」でも、「さきほど「おやすみなさい」と言って就寝したはずではないか、と不審に思う間もなく、「ねえ、なぜ私ここにいるのかしら。もう夜も遅いし家に帰らなくちゃ」と言う」ような人がいるとは驚いた。「スタッフリーダー」の対応がさすがだ。
・『「帰りたい」のは「不安」だから  が、それで終わりではなかった。少しするとまたひょこひょことリビングに出てきて「なぜ私ここにいるのかしら」と同じことを言う。Oさんも同じ話を繰り返し、おばあさんは納得して部屋に戻り、そしてまた出てきて「ねえ、なぜここにいるのかしら」……。 これを何回繰り返したか。おばあさんが出てこなくなると、Oさんは少しほっとした表情を見せた。「あの方は、夜になると不安になるんですよ。それで毎晩就寝前になると、なぜここにいるんだろう、と起きてくるんです」 このとき、私は理解した。「帰る」のは「不安」だからだ。「不安だから自分のよく知っている、安心できるところに帰りたい」のだ、と。2年半、母を介護していて気が付かなかったのか、と言われれば、「すいません、気が付きませんでした」と言うしかない。 ともかく私は、グループホームで母以外の認知症の方と接することで、やっとこさ認知症の根底に「不安」があることに気が付いた。 不安の根源には、認知機能の劣化がある。本人の主観からは「周りの世界が自分の知らない形に変化してしまう」と見えるのだろう。だから怖いし不安になる。だから安心できる場所に帰りたくなる。 認知症の方の症状は多様だ。それぞれ固有の認知症の現れ方を抱えている。と、同時にその奥底には共通して、「不安」と、不安からの脱出手段としての「帰る」が渦巻いているのである。 もう少し認知症が進行したか、と思える人になると、異常行動が現れるようになる。それは以前も書いた徘徊だったり、靴を自室に持っていったりしてしまうといったものだ。 が、徘徊ひとつとっても、「入居前に住んでいた家に帰ろうとしての徘徊」「もうなくなってしまっている故郷に帰ろうとしての徘徊」「若い頃からの生活習慣として身に付いた散歩の表れとしての徘徊」と、本人の内面における位置付けは様々だ。しかもどこかに帰ろうとしての徘徊には、一緒に住んでいた今は亡き配偶者とか両親や兄弟に会いたいという、切ない心の動きがあったりする』、「「帰る」のは「不安」だからだ。「不安だから自分のよく知っている、安心できるところに帰りたい」のだ、と・・・不安の根源には、認知機能の劣化がある。本人の主観からは「周りの世界が自分の知らない形に変化してしまう」と見えるのだろう。だから怖いし不安になる。だから安心できる場所に帰りたくなる」、なるほど。
・『他人の部屋のものをすっと持っていく人  グループホームのスタッフは、そういうひとつひとつの事情に対応して、接し方を工夫し、異常行動が出ないようにもっていこうとする。それは、「入居者が安心して過ごせるようにする」ということでもある。Kホーム長は、私との会話の中で「僕らからどんなに変に思える行動にも、本人の内面ではきちんと筋の通った理由があるんです」とよく言っていた。どんなに不可解な行動でも、理由を理解した上で不安を無くす方向で接していけば、徐々にでも収まっていくというわけだ。 それは本当にプロの対人技術を必要とする、大変な仕事だと思う。いちど、母の居室で母と話をしていると、突然知らないおばあさんが部屋に入ってきたことがあった。何も言わずにそのまま母の化粧品のひとつをすっと手に取って出ていってしまった。こっちはびっくりして、何もすることはできなかった。 すぐにケアマネのYさんが来て、「ごめんなさい!」と言う。「入居したばかりの方なんですが、他の人の部屋に入ってものを持ってっちゃうんです。多分しばらく続くと思いますけれど、持っていったものは私たちが責任を持って戻しておきますから、許してください」 ホームの介護を受けているこちらとしては、許すも許さないもなく、とにかくこの状況を受け止めるしかない。) その後しばらくして、このおばあさんはものを持ち去ることをしなくなった。おそらくご本人の内面では、なにか理由があってものを持っていっていたのだろう。ものを持っていくという行為が何らかの機序で不安を解消していたのだろう。スタッフが理由を探り、理解し、寄り添うことで、異常行動は止まったのだろう。 さらに認知症が進み、脳の別の部位の萎縮が進行すると、今度は妄想が出てきたりする。表れとしては精神の病に近い。私が遭遇した例では、なぜかテレビに映るアナウンサーの女性に対して、執拗に「このバカ女! バカ女!」と罵声を投げかけるおばあさんがいた。 こうなると、かかりつけの医師の判断で精神科の投薬を受けることになる。時折、老人施設について「精神科の薬でおとなしくさせて、結果一日中ぼおっとなってしまって、認知症が進行する」というような批判を聞くことがある。が、私がグループホームで体験した限りにおいては、精神的・情緒的な病態が出てきた場合には、精神系の投薬はやむを得ない、むしろ必要なものと考える。罵声ぐらいならまだしも、暴れてスタッフがけがをするということもあり得るのだから。後述するが、母もまた症状の進行とともに妄想が出て、スタッフにけがをさせてしまうということが起きた』、「精神的・情緒的な病態が出てきた場合には、精神系の投薬はやむを得ない、むしろ必要なものと考える。罵声ぐらいならまだしも、暴れてスタッフがけがをするということもあり得るのだから」、その通りだ。
・『スタッフの助けとなる「家族が書く書類」  精神的な問題が出ている場合にも、スタッフの側は「この人の内面では何が起きているのか、なにが不安なのか。なにか本人としては合理的な道筋をたどった結果、このような症状が出ているのではないか。とするなら、どのように接すれば、穏やかに過ごせるようになるか」と考え、実際にそのように接する。繰り返すが、プロの仕事という他ない。 スタッフと入居者との会話の基本となっているのが、入居時に家族が書く書類だ。母がこのグループホームに入居するにあたって書いた書類の中には、母の性格、生育歴に履歴、趣味などを書く欄があった。「なるべく詳細に記入してください。それをとっかかりにして私たちはお母様と会話しますから」と言われたのだが、実際にホームにお世話になって、会話のきっかけが大変重要であることを痛感した。 ひとこと話をすれば、次のひとことにつなげることができる。つなげることができれば、さらに会話を重ねて、相互の信頼関係を構築することができる。信頼関係ができれば、対話の中で入居者の内側に渦巻く不安を解消していくことが可能になる。 ただ、それも時代につれて、色々難しい要素が入ってくるようだ。ある日、私はKホーム長が難しい顔をして、考え込んでいるところに行き合わせた。 「どうしたんですか」という質問に、ホーム長曰く「今度入居する方の書類を読んでいるのですが、この方、スキューバ・ダイビングが趣味だったんだそうですよ」。 それの何が問題なのか分からない私に向かって、Kさんは続けた。 「我々スタッフの中にスキューバダイビングの経験者はいないんです。一体どうやって話を合わせていけばいいんでしょうか』、「我々スタッフの中にスキューバダイビングの経験者はいない」のは当然で、話を合わせる工夫を別途考えていくほかなさそうだ。

第三に、本年12月7日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏による「介護人材「離職超過」で初の減少、サービス確保に介護保険料引き上げはやむを得ない」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/335076
・『賃上げしても介護人材が減少 離職者が新規就業者を6.3万人上回る  厚生労働省は高所得者の介護保険料を引き上げる案をまとめた。2024年度から実施する予定だ。この背景には、介護人材を確保できないという深刻な事情がある。 厚生労働省の分析によると、22年には介護分野からの離職者が入職者を約6万3000人上回り、就労者が前年より1.6%減少した。離職超過は初めての現象だ。 岸田文雄政権は21年に介護職員の月収を平均9000円上げたが、他の業種で賃上げが行なわれたために、転職者が増えたと見られる。 高齢者数の増加で要介護者数は40年には今より45%増えて、1000万人に迫ると予測されている。厚生労働省は、40年度には280万人の介護職員の確保が必要と試算するが、これでは足りなくなる可能性が高そうだ。 介護サービスや介護人材確保のため介護職員の賃金を引き上げる必要があり、介護保険料引き上げはやむを得ないだろう。だが負担増を国民に納得してもらうにはやるべきことがある』、興味深そうだ。
・『介護従事者の有効求人倍率3.96 訪問介護のヘルパーは15.53倍  介護サービスの人手不足は深刻だ。有効求人倍率を業種別に見ると、一般事務従事者が0.35なのに対して、介護サービス従事者は3.96と極めて高い値になっている(注1)。 訪問介護に関してはさらに深刻だ。厚労省の資料によれば、訪問介護を提供するヘルパーの有効求人倍率は2022年度で15.53だ(注2)。ヘルパー不足がいかに深刻な状況かがよく分かる。 それだけでなく、ヘルパーの年齢も問題だ。平均年齢は54.4歳。しかも65歳以上のヘルパーの割合が24.4%になる。腰痛等によってリタイアする可能性は極めて高い。 ヘルパーが不足し、デイサービスなど必要な在宅介護サービスを受けるのが難しくなっている地域もある』、「ヘルパーの年齢も問題だ。平均年齢は54.4歳。しかも65歳以上のヘルパーの割合が24.4%になる。腰痛等によってリタイアする可能性は極めて高い。 ヘルパーが不足し、デイサービスなど必要な在宅介護サービスを受けるのが難しくなっている地域もある」、「ヘルパー」まで高齢化しているのでは困ったことだ。
・『2040年には要介護者数1000万人に 現在より45%増加の予測  要介護・要支援認定者数は介護保険制度が発足した2000年には218万人だった。それが03年に336万人、13年に564万人と増加し、15年度には600万人を突破した。そして22年3月には690万人になった。 第1号被保険者(65歳以上)もこの間に増加したので、当然のことだ言えよう。 今後も高齢者数は増えるので、要介護者数は40年には1000万人に迫ると予測されている(注3)。つまり、現在よりも約45%も増加する』、コメントは次の次の段落で。
・『280万人の介護職員確保見込むが それでも不足する可能性  介護職員の数も要介護者の増加とともに増えるだろう。2019年度で介護職員は全国に約211万人いた。厚生労働省の試算では、40年度には、約280万人の介護職員を確保する必要があると推計されている。これは19年度から32.7%の増加だ(注4)。 だが前述のように要介護者数は、668万人から1000万人へと45%も増えるのだから、ずいぶん控えめな見積もりのように思える。実際にはこれでは足りなくなる可能性の方が大きいのではないだろうか? なお、「2040年を見据えた社会保障の将来見通し(議論の素材)」では、介護分野の従業者数(これは介護職員より範囲が広い)は、20年度の334万人から40年度の505万人へと51.5%増加すると推計されている(注5)』、コメントは次の段落で。
・『介護人材増やすには賃金引き上げ必要 介護保険料、40年には月額9000円  こうした人手不足が懸念される状況でロボットの導入などによるサービスのやり方の効率化は必要だ。しかし基本的には、この分野の職員が増えることしか対処の方法はありえない。そして、そのための基本的な方策は賃金を引き上げることだ。 現在、利用者負担は原則1割(一部の高所得者は2割、3割負担)だ。それ以外は介護保険から支払われる。保険給付は税と介護保険料で賄われている。したがって職員の給与を引き上げるには、介護保険料を引き上げる必要がある。 自己負担を除いた介護給付費の総額も2020年度に10兆円を超えた。21年度には10.4兆円と、制度がスタートした2000年度比で3倍超に増えた。介護費用の総額も13.3兆円(22年度予算ベース)で約3.7倍になった。この費用をまかなうために保険料も大幅に増えてきた。 65歳以上の保険料(基準額の全国平均)は、2000年度には月額2911円だったが、いまは月額6014円だ。40年には月額約9000円になる見通しだ。 こうした背景で厚生労働省は、65歳以上の介護保険料に関して24年度からの引き上げを検討しており、所得が多い高齢者の負担は増加する。対象は1300万人で高齢者人口の35%を占める。一方、世帯全員が住民税非課税である低所得者の保険料を引き下げる方針だという』、「介護人材増やすには賃金引き上げ必要」だが、介護も機械をもっと大胆に取り入れて省力化していく必要もある。
・『保険料引き上げだけでなく 金融所得総合課税で負担公平化が必要  これは将来のサービス確保のために必要な引き上げなのだから、多くの人の理解を得られるだろう。 少子化対策のために健康保険料に上乗せするとか、リスキリングのために雇用保険料の一部を使うというようなことも提案されているが、そのような目的外の負担増ではなく、将来の介護を確実にするための負担だからだ。 ただ、単に負担を増加させるだけでなく、利用者負担率も見直す必要があるだろう。さらに効率化による介護費用の抑制も必要だ。 そして重要なのは、介護保険制度以外の例えば税制などの改革を関連させることだ。) その一つは介護保険料の算定のもととなる「所得」の範囲の適正化だ。 現状では、「所得」という場合に、金融資産からの所得は(分離課税を選択した場合には)除外されてしまう。だから所得の種類によって不公平が生じる。こうした不公平をなくすために金融資産所得の総合課税化が不可欠の課題だ。 これは、介護保険料に限った問題ではないが、今後、高齢化の進展に伴ってさまざまな公的負担の引き上げが不可欠となるので重要なことだ』、「金融資産所得の総合課税化」も必要だ。
・『労働力の移動を促進すべき 雇用調整助成金拡充は“逆行”  分野間の労働力移動を促進させる取り組みも重要だ。現状では、そうした労働移動が十分にできていない。 それだけでなく、労働者の企業間、産業間移動を妨げる政策が行われる。その典型がコロナ禍での営業自粛や休業の増加に対応するために、雇用調整助成金の特例措置が拡充されたことだ。このため、雇用調整助成金の支給金額は5兆円を突破するという巨額なものになった。 産業構造が変わるとは、古くなった産業が縮小し成長する産業がそれに変わるということだ。だから、いつまでも同じ会社で働き続けるのは不可能だ。就業者は、古くなった企業から新しい企業に移動しなければならない。それを円滑に実現できるような制度が必要だ。ところが、雇用調整助成金は企業から企業への移動を妨げるように作用した。まるで逆の政策をしたとしか思えない。 大きな経済ショックが生じたときに、1年未満程度の短期間でこの助成金制度が活用される分にはショックに伴う摩擦を軽減する働きがあるだろう。しかし、2年も3年も続くというのでは弊害のほうがずっと大きくなる。 雇用調整助成金が雇用を支え、社会不安が高まるのを抑えた効果があるのは間違いない。しかし、以上のような弊害があることもまた間違いないことだ。介護人材を確保するにはこうした労働力移動を妨げることになっている制度なども変えていく必要がある。 (注1)厚生労働省「一般職業紹介状況(令和5年9月分)について」 (注2)社会保障審議会 介護給付費分科会(第220回)資料1(令和5年7月24日) (注3)経済産業省 商務・サービスグループ「新しい健康社会の実現」、「4. 介護における課題と対応」(2023年3月) (注4)厚生労働省「8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」 (注5)内閣官房・内閣府・財務省・厚生労働省「2040年を見据えた社会保障の将来見通し(議論の素材)-概要-」(平成30年5月21日)』、「雇用調整助成金」はあくまで緊急時のセーフティネットで、恒常化することは弊害が大きい。これらを含めて「労働力移動を妨げることになっている制度なども変えていく必要がある」。
タグ:介護 (その8)(母 グループホームで2度目の“独り立ち”、「家に帰る」という認知症の入居者 スタッフはどう導くのか、介護人材「離職超過」で初の減少 サービス確保に介護保険料引き上げはやむを得ない) 日経ビジネスオンライン 松浦 晋也氏による「母、グループホームで2度目の“独り立ち”」 「介護生活敗戦記」 「老人福祉を担っている。そのうちの一つが、認知症になった人が入居する「グループホーム・・・この他に児童福祉法や障害者総合支援法が規定する、子どもや障害者を対象としたグループホームがある・・・現在の介護保険制度がスタートしたのと同時に始まった介護形態・・・その特徴は、地域密着型であることと、小規模であることだ・・・医師から認知症の診断を受け、「要支援2」ないし「要介護1~5」の認定を受けていること、ホームで対応できない疾病がないこと、65歳以上であること、という条件・・・ 規模は「ユニット」という単位で規定されている。1ユニットは入居者5~9人で、1つの施設は2ユニットが上限となる。 入居者は基本的に個室を持つ。個室の基準は、私物収納スペースに配慮した上で床面積7.43平方メートル以上となっている。四畳半が7.28平方メートルなので、つまりは押し入れ付き四畳半と思えばいい。施設によっては夫婦など向けに2人部屋を備えるところもある」、なるほど。 「母の入居したグループホーム」は「基本的に1ユニット9人の18人体制を維持している。入居者1人につき1人だ。1ユニット9人の内訳は、介護計画を作成し、管理するケアマネジャーが1人に、そのユニットのリーダーが1人、介護スタッフが7人である」 「物理的に外に出さないようにするのは簡単だ。が、Kホーム長は、そうはしなかった。 その入居者が玄関まで出てくると「○○さん、外に行きたいの?」と話しかける。そして頭ごなしに叱ったり、止めたりするのではなく「でも今日は天気が悪いですよ。外に出るならもう少し天気の良い日にしませんか」と引き留める。 どうしても行きたがる場合は、手の空いているスタッフが一緒に近所まで散歩をする。そのうちに本人が疲れてくると、「疲れましたかね。戻ってお茶でも飲みましょうか。そろそろおやつの時間ですよ」と話しかけて、帰ってくる」、な かなかよく出来た「ホーム長」だ。 「母が入居した当初の自分の懸念は、「スタッフによる虐待行為があったらどうしよう」というものだった。 この懸念は何よりも自分の体験に基づくものだった。いくら自分の母であっても、2年半の自宅での介護はつらく、苦しく、精神的に強いストレスを感じるものだった。自分は母に手を上げたことが、グループホーム入居のきっかけになったというのは前回の連載で書いた通りだ」、なるほど。 「スタッフと話をする。話をすることで、自分という人間を分かってもらう」というものだった。 話をすれば、スタッフに私という人物が印象付けられる。そのスタッフが何か母に関連して耐えられないストレスを感じ、思わず手を上げそうになったその瞬間、私の顔を思い出してくれるなら、それは抑止力として機能するのではないか、と考えたのである・・・話してみれば、スタッフの皆さんは“普通の人たち”だった。それぞれに生活があり家族があり、生活の楽しみがあり、人生の目標があり、希望を持って生きていた。認知症高齢者グループホームで働く というのは、特別なことではないのだ――そう私は知った。それはこの社会に数多く存在する職のうちの一つなのだ」、なるほど。 松浦 晋也氏による「「家に帰る」という認知症の入居者、スタッフはどう導くのか」 「看取りは、特に悪いところのない老衰による最期を意味する。明らかに病気による衰弱が始まった場合は、医療行為が必要となるので病院に入院することになる・・・老衰の場合、だいたいの場合は食事が食べられなくなり、体重が落ちていくことで、「ああ、この人は寿命だ」と分かるのだという。「体格にもよるのですけれど、お母様程度の体格の女性の場合は体重40kgがひとつの目安です。これを切ると危険水域です」とは、Kグループホーム長の言である。 母のいるグループホームでは、最後の数日については家族の寝泊まりにも対応する」、「老衰による最期」は理想的な「最期」だ。 「助けないと次の「要介護」に進行する可能性がある状態を「要支援」、症状が進行して日常生活の動作に常時介護が必要になった状態を「要介護」と定義し、それぞれ「要支援1」「要支援2」、「要介護1」から「要介護5」と7段階に区分しているのだ。 グループホームへは「要支援2」から入居できる。だから「要支援2」や「要介護1」の比較的認知症の症状が軽い人もいる」、なるほど。 「大変活発にお話をするおばあさん」でも、「さきほど「おやすみなさい」と言って就寝したはずではないか、と不審に思う間もなく、「ねえ、なぜ私ここにいるのかしら。もう夜も遅いし家に帰らなくちゃ」と言う」ような人がいるとは驚いた。「スタッフリーダー」の対応がさすがだ。 「「帰る」のは「不安」だからだ。「不安だから自分のよく知っている、安心できるところに帰りたい」のだ、と・・・不安の根源には、認知機能の劣化がある。本人の主観からは「周りの世界が自分の知らない形に変化してしまう」と見えるのだろう。だから怖いし不安になる。だから安心できる場所に帰りたくなる」、なるほど。 「精神的・情緒的な病態が出てきた場合には、精神系の投薬はやむを得ない、むしろ必要なものと考える。罵声ぐらいならまだしも、暴れてスタッフがけがをするということもあり得るのだから」、その通りだ。 「我々スタッフの中にスキューバダイビングの経験者はいない」のは当然で、話を合わせる工夫を別途考えていくほかなさそうだ。 ダイヤモンド・オンライン 野口悠紀雄氏による「介護人材「離職超過」で初の減少、サービス確保に介護保険料引き上げはやむを得ない」 「ヘルパー」まで高齢化しているのでは困ったことだ。 「介護人材増やすには賃金引き上げ必要」だが、介護も機械をもっと大胆に取り入れて省力化していく必要もある。 「雇用調整助成金」はあくまで緊急時のセーフティネットで、恒常化することは弊害が大きい。これらを含めて「労働力移動を妨げることになっている制度なども変えていく必要がある」。
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喫煙問題(その3)(たばこが原因の「3大疾患」 平均余命10年短縮や手足切断も、「タバコが健康に悪いなんて 誰でも知っている」養老孟司がそれでも禁煙しないワケ) [社会]

喫煙問題については、2017年11月28日に取上げた。久しぶりの今日は、(その3)(たばこが原因の「3大疾患」 平均余命10年短縮や手足切断も、「タバコが健康に悪いなんて 誰でも知っている」養老孟司がそれでも禁煙しないワケ)である。なお、タイトルから「受動」は外した。
 
先ずは、2018年5月31日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した北青山Dクリニック院長の阿保義久氏による「たばこが原因の「3大疾患」、平均余命10年短縮や手足切断も」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/171299
・『5月31日は「世界禁煙デー」。日本では、5月31日から6月6日までが禁煙週間となっている。近年、喫煙による健康への被害が立証されるとともに喫煙者は減少しつつあるが、それでも喫煙をやめられない人は少なくない。では、喫煙を止めないことは、体にどれほど重大な疾患をもたらす可能性があるのか。今回はたばこが原因になっている「3大疾患」に着目して、北青山Dクリニック院長・阿保義久医師が解説する』、興味深そうだ。
・『外科医はヘビースモーカー?  皆さんの健康管理をつかさどるべき医師が「ヘビースモーカー」というのは、けしからん話だと思われる方が多いかもしれません。私は大学卒業後、自身の専門科として外科を専攻しましたが、多くの外科医師が喫煙常習者であることに当初、違和感を覚えました。 ご存じのように外科は手術を担当する科です。私が所属した外科の医局は、当時、胃がん、食道がん、大腸がん、肝臓がん、膵臓がん、乳がんなど、主たるがんの手術と、血管の手術を担当していました。 早朝のカンファレンスでは、手術予定患者さんの検査や治療方針に関して毎回真剣なディスカッションが交わされる中、カンファレンス室はいつもたばこの煙で充満されていました。各臓器チームのリーダー格の医師たちは決まってヘビースモーカーでした。 また、大学の医局を一時離れて都市部の機能病院で連日手術を担当することになった時も、手術の合間の休憩室では先輩外科医のほとんどがたばこを吸っていました。がんや大血管の手術という大きなプレッシャーを日々受けながら診療を担当する外科医は、そのストレス解消のためにたばこは手放せないのだろう、と当時は妙に納得していたものです。 言うまでもなく、たばこが、がんや血管病の発症リスクを大きくすることはどの医師も重々承知しており、日常診療で患者さんには禁煙を説いているのに自らは日常的に喫煙しているという、矛盾に満ちた状況でした』、「多くの外科医師が喫煙常習者であることに当初、違和感を覚えました・・・早朝のカンファレンスでは、手術予定患者さんの検査や治療方針に関して毎回真剣なディスカッションが交わされる中、カンファレンス室はいつもたばこの煙で充満されていました」、かつて「外科医はヘビースモーカー」だったという事実には驚かされた。
・『ヘビースモーカーの医師たちが一斉に禁煙をはじめた理由は?  ところが、いつの間にか、大学病院はもちろん、市中病院においても、カンファレンスルームはおろか公共の場で喫煙ができるスペースはあっという間になくなってしまいました。あのヘビースモーカーだった医師たちも、右にならうように皆一切たばこを吸わなくなっていました。その理由として、国際的に禁煙が求められる風潮にあったことも挙げられるでしょうが、何よりも、喫煙があらゆる医学的観点において、重大な健康被害を生むことを示す科学的論拠が日に日に耳に入ってくるようになったことが大きいと言えます。) 喫煙が健康上、プラスになる点を無理に探しても一つも見つかりません。脳を活性化させる、イライラを止める、という側面がたばこにはあると言われますが、そのためにたばこを続けていると、認知症や精神疾患の発症が大幅に増えてしまうという客観的事実が次々と示されるようになりました。 そして、何よりも、喫煙者の周囲の人が吸うはめになる副流煙が健康を著しく害することが示されるようになったことも、医師の喫煙を止める大きな理由であったでしょう。喫煙者自らが吸う主流煙よりも、周囲の人が吸いこむ副流煙の方が、ニコチン・タール・一酸化炭素などの有害物質が3~4倍多いということが示されたのです。 喫煙により自分だけが体調を崩すのであれば、医者の不養生で片付けられるかもしれませんが、人の病を治し健康を管理する医師が、自ら周囲の方の健康被害を作り出しているとしたら、それは職業上の背信行為でもあります。受動喫煙による弊害が広く認知されるようになったことで、医師の禁煙が一斉に進んだと考えられます』、「喫煙者自らが吸う主流煙よりも、周囲の人が吸いこむ副流煙の方が、ニコチン・タール・一酸化炭素などの有害物質が3~4倍多いということが示された・・・受動喫煙による弊害が広く認知されるようになったことで、医師の禁煙が一斉に進んだ」、なるほど。
・『たばこの毒性、受動喫煙による病気は深刻 副流煙の方が主流煙よりも毒性物質の量が多い  たばこの煙には200種類上の有害物質が含まれ、発がん性物質は50種類以上にも及びます。有害物質として有名なのは、ニコチン、タール、一酸化炭素で、それぞれ、血圧を上げ、発がん性があり、血液中の酸素の運搬能を低下させます。その他にも、アセトン、ヒ素、トルエン、カドミウムなどの有害物質が含まれます。ニコチンはご存じのように依存症が強く、禁断症状の強さや離脱の難しさは麻薬以上とも考えられています。 先に述べた受動喫煙の被害は、本来はたばこを吸いたくない、吸う必要のない人が、自分勝手に吸っている人の何倍もの有害物質を取ってしまうことで引き起こされます。妊婦さんや乳幼児などたばこの害に対して脆弱な人たちが犠牲になりやすいことも問題視されます。 受動喫煙により吸うはめになる副流煙により、大人が被る重篤な疾患は、脳卒中・心筋梗塞・肺がん・慢性閉塞性呼吸障害・早産・低体重児出産など、子どもが被るのは、肺炎・喘息・中耳炎・乳幼児突然死症候群など軽視できないものばかりです。 繰り返しますが、主流煙よりも副流煙の方が毒性物質の量が極めて多く、たばこを吸っている人は、自分が被る健康被害の何倍ものダメージを周囲の人に与えていることになります。 さて、ここからは、そんなたばこが発症に強く関与する代表的な疾患を見ていきましょう』、「受動喫煙により吸うはめになる副流煙により、大人が被る重篤な疾患は、脳卒中・心筋梗塞・肺がん・慢性閉塞性呼吸障害・早産・低体重児出産など、子どもが被るのは、肺炎・喘息・中耳炎・乳幼児突然死症候群など軽視できないものばかりです。 繰り返しますが、主流煙よりも副流煙の方が毒性物質の量が極めて多く、たばこを吸っている人は、自分が被る健康被害の何倍ものダメージを周囲の人に与えていることになります」、なるほど。
・『平均余命が5~10年も縮む喫煙者の2割が発症の「慢性閉塞性肺疾患」  口から吸いこまれた有害物質だらけのたばこの煙は、気道を通ってまず肺に到達します。なので、たばこの害が肺で多く発生することは容易に想像できます。たばこにより気道や肺の防御機能が弱まるので、細菌やウイルスの侵入を防ぐことができず、肺炎が発生しやすくなります。気管・気管支への炎症も誘発することから、気管支喘息の発症も増えます。 たばこによる肺への弊害は多々ありますが、ここではたばこの煙が最大の原因となる重篤な肺疾患の一つ、「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」について触れたいと思います。これは、慢性気管支炎や、肺気腫といった慢性炎症性疾患の総称です。 喫煙者の20%程度が発症すると言われ、炎症の持続により咳や痰が絶え間なく発生し呼吸困難に陥ることがしばしばあります。たばこなどの有害物質が肺胞という空気を取り込む袋状の構造物を破壊すると、酸素の取り込みや二酸化炭素の排泄ができなくなり、体全体に様々な不調症状が表れます。そして、COPDを発症すると、どんなに治療をしても元に戻ることはありません。 COPDになると平均余命が5~10年短くなることがわかっています。ただし、寿命が縮まる以上にCOPDに陥った方が悲惨なのは、COPDを発症したのに喫煙を続けると症状が急激に悪化していき、一気に重症化してしまうことがあります。そうなると四六時中呼吸苦を感じるようになります。 生きるために人は呼吸を止めることはできません。呼吸が止まるということは死を意味します。溺れたときのように息ができなくなる苦しさがどんなに辛いか想像に難くないでしょう。COPDは、少し歩いただけで息切れや溺れた時のような呼吸苦を感じ、重症化すると安静にしていても酸素吸入しないと苦しくて我慢できない状態に陥ります。吐くのも吸うのもつらくなり、窒息しているような状態が常に続くことになります。 どんなに激しい痛みよりも、窒息するほどの呼吸苦は、人にとっては拷問です。たばこをずっと吸い続けているとCOPDに陥る可能性は高まるばかりです。COPDは発症すると治りません。重症化すると、まさに生き地獄の日々を過ごすことになるのです』、「たばこによる肺への弊害は多々ありますが、ここではたばこの煙が最大の原因となる重篤な肺疾患の一つ、「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」について触れたい・・・これは、慢性気管支炎や、肺気腫といった慢性炎症性疾患の総称です。 喫煙者の20%程度が発症すると言われ、炎症の持続により咳や痰が絶え間なく発生し呼吸困難に陥ることがしばしばあります。たばこなどの有害物質が肺胞という空気を取り込む袋状の構造物を破壊すると、酸素の取り込みや二酸化炭素の排泄ができなくなり、体全体に様々な不調症状が表れます。そして、COPDを発症すると、どんなに治療をしても元に戻ることはありません。 COPDになると平均余命が5~10年短くなることがわかっています。ただし、寿命が縮まる以上にCOPDに陥った方が悲惨なのは、COPDを発症したのに喫煙を続けると症状が急激に悪化していき、一気に重症化してしまうことがあります」、私もCOPDを発症し、禁煙に踏み切った。
・『手足の冷えから始まり、痛みから壊死へ 血管の病気「バージャー病」では手足の切断も  たばこは動脈硬化の危険因子であることはよく知られています。「動脈硬化」が進むと心筋梗塞や脳卒中の発症に繋がることも皆さんご存じでしょう。心筋梗塞や脳卒中の発症リスクに関して喫煙者と非喫煙者を比べると、圧倒的に喫煙者の方が発症リスクの高いことが疫学的に示されています。 例えば、非喫煙者に対して喫煙者は、心筋梗塞の発症リスクが男性は約4倍、女性は約3倍になります。毎日20本以上たばこを吸うと、脳卒中による死亡リスクは、男性では2.2倍、女性は約4倍にもなります。しかし、喫煙者であっても10年以上禁煙すれば、これらのリスクはほぼ非喫煙者と同等になることもわかっています。 さて、血管の病気の中で特にたばこに関連する疾患として「バージャー病」があります。バージャー病という疾患名は皆さんあまり聞き慣れないと思いますが、最近の調査では全国で約1万人の患者さんがいると推計されています。男女比は9対1と圧倒的に男性に多く、発症年齢は40歳代が中心で青壮年層に多く発症します。動脈硬化症と同様に血流を悪化させますが、動脈硬化に比べるとより末梢の細い動脈の血行を傷害します。背景に慢性の血管炎があり、その発症には喫煙が密接に関係していると言われています。 バージャー病の症状は、手足の冷え、しびれ、色調の悪化に始まって、進行すると痛みによる歩行障害が発生するようになり、しまいには安静時にも手足が激しく傷むようになり皮膚が崩れて潰瘍や壊死を来すことがあります。動脈だけでなく手足の静脈にも痛みを発症することもある難治性の疾患です。 治療の基本は、禁煙です。治療として高圧酸素療法や交感神経節切除手術の他に、昨今は遺伝子治療なども行われるようになってきましたが、コントロールが困難なことが多く、壊死が進行すると手足の指の切断やさらには四肢の切断が必要になることがあります。 禁煙ができずにだらだらしているうちに徐々に病状が進展して、手足を失うことになる怖い病気です。ただし、早期に禁煙を厳守して適切な治療を施せば重症化を防ぐことができ、発症前の仕事や日常生活への復帰が可能です』、「血管の病気の中で特にたばこに関連する疾患として「バージャー病」があります・・・最近の調査では全国で約1万人の患者さんがいると推計されています。男女比は9対1と圧倒的に男性に多く、発症年齢は40歳代が中心で青壮年層に多く発症します。動脈硬化症と同様に血流を悪化させますが、動脈硬化に比べるとより末梢の細い動脈の血行を傷害します。背景に慢性の血管炎があり、その発症には喫煙が密接に関係していると言われています。 バージャー病の症状は、手足の冷え、しびれ、色調の悪化に始まって、進行すると痛みによる歩行障害が発生するようになり、しまいには安静時にも手足が激しく傷むようになり皮膚が崩れて潰瘍や壊死を来すことがあります」、恐ろしい症状だ。
・『「がん」の発症リスクも喫煙でアップ 難治がんの「膵臓がん」対策は禁煙こそ近道に  非喫煙者に比べて喫煙者は、全ての「がん」の発症率が大きいという報告をしばしば目にします。たばこを吸っている人がなりやすいがんとして、科学的に明らかなものだと、厚労省が発表したものは以下のがんです。  鼻腔・副鼻腔がん、口腔・咽頭がん、喉頭がん、食道がん、肺がん、胃がん、肝臓がん、膵臓がん、膀胱がん、子宮頸がん 他にも、大腸がん、乳がんも、たばこにより発症リスクが相当に大きくなることがわかっています。 がんは早期発見により根治が可能なものが増えてきました。しかし、早期発見が難しく、一旦発症すると進行が速いがんは「難治がん」と呼ばれ、現代医療においてもコントロールすることが困難です。その難治がんの代表的なものが「膵臓がん」です。 早期発見できたとしても5年生存率は40%程度、多くは進行がんで発見されるため、平均5年生存率は20%以下という非常に悩ましい疾患です。予防こそが膵臓がんの発症をコントロールする極めて大切な方法と言えます。極めて厄介ながんの代表格である膵臓がんを予防するための方法として、「禁煙すること」は大いに意味があるでしょう』、「たばこを吸っている人がなりやすいがんとして・・・鼻腔・副鼻腔がん、口腔・咽頭がん、喉頭がん、食道がん、肺がん、胃がん、肝臓がん、膵臓がん、膀胱がん、子宮頸がん 他にも、大腸がん、乳がんも、たばこにより発症リスクが相当に大きくなることがわかっています」、なるほど。
・『現代医療をもってしてもたばこによる病気は治せない  以上、たばこによって引き起こされる代表的な病気を見てきました。取り上げた疾患以外にも、たばこは、骨粗鬆症、糖尿病、甲状腺疾患、うつ病など様々な疾患の原因になります。脳を覚醒させるためにたばこを吸っていたら認知症が進んだ、精神的不安を取り除くための喫煙がうつ病を発症し、さらなる喫煙によりうつ症状が悪化するという悪循環に陥ってしまった、などのことを改めて考えると、喫煙はやはり「百害あって一利なし」とうことになるでしょう。 愛煙家が注目しているという、電子たばこや加熱式たばこは、従来のたばこに比べて健康被害が小さいと期待の声が上がっていますが、それも喫煙ありきの立場からのもので、科学的な論拠は乏しいものです。また、その発生する微粒子が健康被害を生むリスクも危ぶまれています。 たばこが医学的に体に悪いと知っていながら、ヘビースモーカーだった医師たちがきっぱりと禁煙した理由を改めて思い起こしましょう。たばこを吸うことは、自身にとっても毒ですが、被害を受けるいわれのない周囲の非喫煙者や家族、自分の大切な方々に毒を盛るようなものです。昨今は分煙化が図られているとは言え、周囲に全く害がないとは言えません。ぜひ、周囲の家族の健康のためにも、禁煙に取り組んでいただきたいと思います』、「取り上げた疾患以外にも、たばこは、骨粗鬆症、糖尿病、甲状腺疾患、うつ病など様々な疾患の原因になります。脳を覚醒させるためにたばこを吸っていたら認知症が進んだ、精神的不安を取り除くための喫煙がうつ病を発症し、さらなる喫煙によりうつ症状が悪化するという悪循環に陥ってしまった、などのことを改めて考えると、喫煙はやはり「百害あって一利なし」とうことになるでしょう・・・たばこを吸うことは、自身にとっても毒ですが、被害を受けるいわれのない周囲の非喫煙者や家族、自分の大切な方々に毒を盛るようなものです。昨今は分煙化が図られているとは言え、周囲に全く害がないとは言えません。ぜひ、周囲の家族の健康のためにも、禁煙に取り組んでいただきたいと思います」、なるほど。

次に、本年12月8日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した医学博士・解剖学者の養老孟司氏と、東京大学大学院医学系研究科特任教授の中川恵一氏による「「タバコが健康に悪いなんて、誰でも知っている」養老孟司がそれでも禁煙しないワケ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/330511
・『2020年6月に無痛性の心筋梗塞が見つかり、2週間の入院生活を送った養老氏。教え子であり心筋梗塞を見つけた中川恵一医師とタッグを組み、病院や医療と絶妙な距離感を取りながら、老いや病気、死生観、地震や災害、健康法について縦横無尽に綴る。本稿は養老孟司、中川恵一『養老先生、再び病院へ行く』(エクスナレッジ)の一部を抜粋・編集したものです』、興味深そうだ。
・『寝耳に水だった心筋梗塞での入院生活  「がんになったらどうしますか?」と聞かれることがありますが、なったらなったでしょうがないと思っています。85歳ですから、今からがんが見つかったとしても、何も治療をする気はありません。 調べればがんが見つかるのかしれません。でも今まで一度もがん検診を受けたことがないので、あるかないかもわかりません。 2020年に東大病院に行ったのは、具合がとても悪かったからです。それまでに体重が15kgぐらい減っていたので、こんなにやせたのなら、がんがどこかにあるかもしれないと思っていました。しかしCTなどの検査の結果、がんは見つかりませんでした。 逆に、がんではなくて心筋梗塞だったのは寝耳に水でした。医学生の頃、心筋梗塞を起こす人は、割合はっきりとした性格的な特徴があると教わりましたが、それによると、僕は心筋梗塞のリスクが高い性格ではありません。だから自分は心筋梗塞にならないと勝手に決めてつけていました。 僕は小学校1年生のときにも東大病院に入院しています。 東大病院の小児科に入院していたのは、おそらく昭和20(1945)年ではないかと思います。山の手大空襲(1945年5月25日)があって、病室のガラスがビリビリ揺れたり、患者さんがみんな地下に避難したのを覚えています。 なぜ東大病院に入院することになったのかというと、2歳のときの鼠径ヘルニアがきっかけです。鼠径ヘルニアは腸が本来の位置から下腹部にはみ出す症状です。はみ出した部位がゆるければいいのですが、狭くなっていると腸が戻らなくなります。するとはみ出た腸が血行不良を起こして壊死します。そこで、外来で緊急手術をしてもらいました。 そのときの手術の傷を縫う糸に、ばい菌がついていたのでしょう。5~6年かけて大きく膿んでしまったので、また東大病院で手術することになりました。大きな階段教室の真ん中に手術台があって、まわりを医学生さんが見学している中での手術です。子どもですから、ギャーギャー叫んでいたみたいです。 当時は、エーテル麻酔が主流でしたが、エーテルでは軽すぎたのか、執刀医が「クロロホルム」と叫んだのを覚えています。 クロロホルムも麻酔薬です。後に医学部に入って勉強してわかったことですが、クロロホルム麻酔は1000人に1人くらいの確率で死ぬそうです。幸い死なずに、その手術も終わりました。) それで終わったと思ったら、まだ終わりではありませんでした。細菌性のアレルギーを起こして、朝起きると目やにが出るようになったのです。眼科の先生に診てもらったら、このまま放っておくと、いずれまつげも全部なくなると言われ、母が心配していたのを覚えています。 そのときに行われた治療が、今でいうところの脱感作療法で、アレルギーの原因菌の抗原を注射して、それを少しずつ増やしていくことで、過敏な反応を減らしていきます。その注射薬をつくっていたのが、当時の伝染病研究所(現在の東京大学医科学研究所)でした。 注射薬は1日しかもたないので、看護師さんが毎日、伝染病研究所まで取りに行って注射してくれました。そんなこともありましたので、東大病院には昔も今もずいぶんお世話になっているんです。 だから東大には足を向けて寝られないはずですが、できれば行きたくない場所でもあります。ありがたいというのと同時に、嫌だという気持ちが同居しているのです。 僕もいちおう医者の修行をしましたが、お医者さんになる気はありませんでした。患者さんを診るのが苦手だったのです。 その理由は患者さんが勝手に死んでしまうからです。一生懸命診ても、患者さんが亡くなることがあります。 例えば交通事故でかつぎ込まれた患者さんがいて、多量の出血がありました。インターンだった僕も、あちこちの出血しているところを押さえる手伝いをしました。最初のうち、どこが問題なのかわからずに手術していたので6時間くらいかかりました。最後は問題がわかって手術は終わり、傷をきれいに縫合しました。 ところが、その段階で患者さんは亡くなってしまいました。患者さんを助けるための6時間がまったくの無駄になってしまったわけです』、「具合がとても悪かったからです。それまでに体重が15kgぐらい減っていたので、こんなにやせたのなら、がんがどこかにあるかもしれないと思っていました。しかしCTなどの検査の結果、がんは見つかりませんでした。 逆に、がんではなくて心筋梗塞だったのは寝耳に水でした。医学生の頃、心筋梗塞を起こす人は、割合はっきりとした性格的な特徴があると教わりましたが、それによると、僕は心筋梗塞のリスクが高い性格ではありません。だから自分は心筋梗塞にならないと勝手に決めてつけていました」、養老先生でも自己診断は当てにならないようだ。「お医者さんになる気はありませんでした。患者さんを診るのが苦手だったのです。 その理由は患者さんが勝手に死んでしまうからです。一生懸命診ても、患者さんが亡くなることがあります。 例えば交通事故でかつぎ込まれた患者さんがいて、多量の出血がありました。インターンだった僕も、あちこちの出血しているところを押さえる手伝いをしました。最初のうち、どこが問題なのかわからずに手術していたので6時間くらいかかりました。最後は問題がわかって手術は終わり、傷をきれいに縫合しました。 ところが、その段階で患者さんは亡くなってしまいました。患者さんを助けるための6時間がまったくの無駄になってしまったわけです」、「「お医者さんになる気はありませんでした。患者さんを診るのが苦手だったのです。 その理由は患者さんが勝手に死んでしまうからです。一生懸命診ても、患者さんが亡くなることがあります。 例えば交通事故でかつぎ込まれた患者さんがいて、多量の出血がありました・・・手術していたので6時間くらいかかりました。最後は問題がわかって手術は終わり、傷をきれいに縫合しました。 ところが、その段階で患者さんは亡くなってしまいました」、「6時間」もの大手術に耐えられなかったのかも知れない。確かに「患者さんが勝手に死んでしまう」ケースだ。
・『年寄りががんの予防をする意味がわからない  2022年4月12日の診察では、大腸ポリープを取るか取らないかについて尋ねられました。2年前に「取らない」と言っていたのに、また尋ねるんです。東大病院の先生方は取る気満々だと、中川さん(編集部注/東大病院の中川恵一教授)から聞きました。 この大腸ポリープを放置していると、がん化するから取るべきだと言っているのですが、もちろん取る気はありません。 大腸ポリープがあることになったのは、心筋梗塞で入院して半ば強制的に大腸まで調べられたからです。入院患者に拒否権はありません。俎板の鯉、「さあ、殺せ!」という心境になっていますから、やるより他に手がないのです。) そもそも大腸ポリープなんて、内視鏡で調べなければ存在しません。調べた人が取ると言っているだけだから、僕はそんなの知りませんよと答えるだけです。 胃にも胃がんのリスクを高めるピロリ菌というやつがいて、除菌治療を勧められましたが、これも「除菌しない」と言っています。 大腸がんにしろ、胃がんにしろ、年寄りががんの予防する意味がわかりません。がんは年をとるほど増えるので、僕くらいの年齢ならがんが2つや3つあっても不思議ではありません。いったい、がんで死ななかったら、僕は何で死んだらいいのでしょう。心筋梗塞の治療をして、コロナのワクチンも打っています。死ぬ病気といったら、がんか肺炎くらいなのに、これでは簡単に死ねないですね』、「大腸がんにしろ、胃がんにしろ、年寄りががんの予防する意味がわかりません。がんは年をとるほど増えるので、僕くらいの年齢ならがんが2つや3つあっても不思議ではありません。いったい、がんで死ななかったら、僕は何で死んだらいいのでしょう。心筋梗塞の治療をして、コロナのワクチンも打っています。死ぬ病気といったら、がんか肺炎くらいなのに、これでは簡単に死ねないですね」、さすがにすごい覚悟なので、主治医も手を焼いたことだろう。
・『タバコは健康に悪いがメリットもたくさんある  東大病院の先生たちからは、タバコについても聞かれました。入院していたときは、もちろん吸っていません。病院内で吸ったら強制退院させられると聞いていましたし、病院では言われたとおりにしていたので、キッパリと禁煙しました。 退院してからも、しばらく禁煙していましたが、ときどき吸うようになって、今に至っています。 2月8日の再診では、少し吸っているけど家では吸っていないとか、テキトーに答えていましたが、基本的に吸いたいときは一服しています。 僕の肺のCT画像には肺気腫が認められています。肺気腫がひどくなると、酸素ボンベを引きずりながら生活しないといけなくなりますが、今のところ坂道を上るのも問題ありませんし、歩くと気持ちがよいくらいです。ですから肺はそんなに壊れていないと思っています。 70代のときですが、ブータンに行ったときも平気でした。ブータンの空港は標高2500メートルぐらいで、空気が薄いのですが、息苦しくはありませんでした。 健康のため禁煙したほうがよいと言われます。しかし、これは『愛煙家通信』に以前書いたことでもありますが、タバコが健康に悪いことなど、昔から誰でも知っています。僕が大学に入学した60年以上も前の話ですが、通学途中でばったり出会った同級生から「昨日タバコを吸って朝起きたら、口の中に嫌な味がまだ残っている。こんなもの健康にいいわけがない。俺はやめるから、お前もやめろ」と言われたことがあります。 つまり、タバコは60年以上も前から「健康に悪い」「お前もやめろ」と言われ続けているのです。にもかかわらず、多くの人が吸い続けているのは、タバコに何らかのメリットがあるからでしょう。) タバコは健康に悪いかもしれないけれど、メリットもたくさんあると思っています。例えば、人間は1日の3分の1は眠らないと生きていけませんが、眠っているときに脳に溜まった無秩序を清算してスッキリさせていると考えられています。タバコを一服するのは睡眠と同じで、無秩序を少しだけ清算しているのかもしれません。 意識は秩序活動なので、意識活動にともなってエントロピーが増大し、その分、無秩序が生み出されます。だから、タバコをやめても別の方法で無秩序を清算しなければならないのです。つまり、今までタバコを吸って無秩序を清算していた人は、タバコをやめるだけではスッキリできないということです。 ちなみに中川さんによると、タバコをやめて発がんリスクが吸わない人と同じになるまでに、20~25年かかるそうです。今からやめて20年としても、僕は105歳ですから、今から禁煙する意味はほとんどないでしょう』、「僕の肺のCT画像には肺気腫が認められています。肺気腫がひどくなると、酸素ボンベを引きずりながら生活しないといけなくなりますが、今のところ坂道を上るのも問題ありませんし、歩くと気持ちがよいくらいです。ですから肺はそんなに壊れていないと思っています。 70代のときですが、ブータンに行ったときも平気でした。ブータンの空港は標高2500メートルぐらいで、空気が薄いのですが、息苦しくはありませんでした」、「ブータンの空港・・・空気が薄いのですが、息苦しくはありませんでした」、「70代」の時とはいえ大したものだ。「タバコをやめて発がんリスクが吸わない人と同じになるまでに、20~25年かかるそうです」、私の場合でも禁煙する意味は余りなかったことになる。
・『確実に来るであろう南海トラフ大地震  僕は病院に行って、最後に会計をするときにいつも思います。いったい自分以外の人にどれだけ医療費の負担をかけているのかということを。 里見清一(ペンネーム、本名は國頭英夫で日本赤十字社医療センター化学療法科部長)さんが、SATOMI臨床研究プロジェクトというのをやっていて、臨床研究を後押しする活動を行っています。医療にムダなお金をかけないよう合理化するための研究です。計算上、医療費がこのまま増え続けると、国民皆保険制度は続かないことが明らかになったわけです。 こういう問題をどう解決するか、この国ではあまり考えていません。国家の大きなプランとして考えていかないといずれ立ちゆかなくなってしまうでしょう。 エネルギー問題も同じです。持続可能性を考えたら、一番の問題がエネルギーであることは間違いありません。 日本人は予定調和で、それにはよいところもあるのですが、次の大きな自然災害が来てから、医療費やエネルギーについて考えるのではもう間に合いません。 2038年に来るといわれている南海トラフ大地震は、僕は確実に来ると思っています。地震学者で京都大学元総長の尾池和夫さんが『2038年南海トラフの巨大地震』という本を書いているから、かなり信憑性が高いと思っています。 それまでにもう20年ありません。そのときに自力で復旧できる経済力が日本にあるのか疑問に思います。) 地震で広い国土がボコボコになって、それを復旧させるときに誰がお金を出すのか。もっと具体的に言うと、家が潰れたら誰がお金を出して家を建て直してくれるのか。それを国全体で考えると、インフラが壊れたら、まずそれを整備することから始めないといけないのです。 それに復旧するまでは食料を輸入しなければならなくなるかもしれません。とにかく、とてつもないお金がかかります。国際金融資本家とか中国とかに国土を身売りするという話になるかもしれません。そのときは否が応でも来ると僕は思っています』、「南海トラフ大地震」が起これば、「とてつもないお金がかかります。国際金融資本家とか中国とかに国土を身売りするという話になるかもしれません」、「国土を身売りする」とは所有権付きで譲渡する、或いは「その国土から生み出されるキャッシュフローを譲渡することになるが、いずれにしろ、法律面の手当を含め、大変な事態だ。
・『情報化社会だからこそ読むべきは鴨長明『方丈記』  最近、『方丈記』がよく読まれているそうです。今のような時代には作者の鴨長明の生き方が、しっくりくるような気がします。 僕も多くの人に読んでもらいたいと思って、『漫画方丈記 日本最古の災害文学』の解説も書きました。 僕が若い頃『方丈記』に興味をもったきっかけは、堀田善衛の『方丈記私記』でした。都の大火の描写が東京大空襲と重なるという趣旨でしたが、数百年前の話と自分の知る時代がピッタリくるものかと思って原典を読んでみると、文献の乏しい鎌倉時代なのに記述がとても具体的です。 よく覚えているのが、飢饉の際、隆暁法印という偉いお坊さんが供養のために死体の額に「阿」の字を書いて数えていったら、都の東半分だけで4万2300あまりもあったと言うのです。 僕は解剖をやっていたから、死体には慣れていますが、そこまで都が死屍累々なのを見たら、人生ってなんだろうと考えざるを得ないだろうなと感じました。 『方丈記』の書き出しの「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」は、多くの人に知られていると思います。これに近い時代に書かれたと言われている『平家物語』の始まりは「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」で、同じ感慨を記しています。どちらの文章もすべてのものは移り変わり、とどまることはないと述べています。 一方で、現代は情報化社会といわれ、「変わらない」ものに満ちあふれています。情報とは「変わらない」もののことで、ネットに書かれた文章は、誰かが消さない限り、いつまでも変わらずに残っています。 情報化社会は変わらないものをよしとして、それを優先します。そして情報は絶えず交換可能なので「新しくなった」と思うだけで、情報そのものはいつもとどまったまま変化することはありません。この世界には、鴨長明が入る余地はないのです。だからこそ、改めて読んでほしいと思います』、「現代は情報化社会といわれ、「変わらない」ものに満ちあふれています。情報とは「変わらない」もののことで、ネットに書かれた文章は、誰かが消さない限り、いつまでも変わらずに残っています。 情報化社会は変わらないものをよしとして、それを優先します。そして情報は絶えず交換可能なので「新しくなった」と思うだけで、情報そのものはいつもとどまったまま変化することはありません。この世界には、鴨長明が入る余地はないのです。同感である。
タグ:(その3)(たばこが原因の「3大疾患」 平均余命10年短縮や手足切断も、「タバコが健康に悪いなんて 誰でも知っている」養老孟司がそれでも禁煙しないワケ) 喫煙問題 ダイヤモンド・オンライン 阿保義久氏による「たばこが原因の「3大疾患」、平均余命10年短縮や手足切断も」 「多くの外科医師が喫煙常習者であることに当初、違和感を覚えました・・・早朝のカンファレンスでは、手術予定患者さんの検査や治療方針に関して毎回真剣なディスカッションが交わされる中、カンファレンス室はいつもたばこの煙で充満されていました」、かつて「外科医はヘビースモーカー」だったという事実には驚かされた。 「喫煙者自らが吸う主流煙よりも、周囲の人が吸いこむ副流煙の方が、ニコチン・タール・一酸化炭素などの有害物質が3~4倍多いということが示された・・・受動喫煙による弊害が広く認知されるようになったことで、医師の禁煙が一斉に進んだ」、なるほど。 「受動喫煙により吸うはめになる副流煙により、大人が被る重篤な疾患は、脳卒中・心筋梗塞・肺がん・慢性閉塞性呼吸障害・早産・低体重児出産など、子どもが被るのは、肺炎・喘息・中耳炎・乳幼児突然死症候群など軽視できないものばかりです。 繰り返しますが、主流煙よりも副流煙の方が毒性物質の量が極めて多く、たばこを吸っている人は、自分が被る健康被害の何倍ものダメージを周囲の人に与えていることになります」、なるほど。 「たばこによる肺への弊害は多々ありますが、ここではたばこの煙が最大の原因となる重篤な肺疾患の一つ、「COPD(慢性閉塞性肺疾患)」について触れたい・・・これは、慢性気管支炎や、肺気腫といった慢性炎症性疾患の総称です。 喫煙者の20%程度が発症すると言われ、炎症の持続により咳や痰が絶え間なく発生し呼吸困難に陥ることがしばしばあります。たばこなどの有害物質が肺胞という空気を取り込む袋状の構造物を破壊すると、酸素の取り込みや二酸化炭素の排泄ができなくなり、体全体に様々な不調症状が表れます。そして、COPDを発症 すると、どんなに治療をしても元に戻ることはありません。 COPDになると平均余命が5~10年短くなることがわかっています。ただし、寿命が縮まる以上にCOPDに陥った方が悲惨なのは、COPDを発症したのに喫煙を続けると症状が急激に悪化していき、一気に重症化してしまうことがあります」、私もCOPDを発症し、禁煙に踏み切った。 「血管の病気の中で特にたばこに関連する疾患として「バージャー病」があります・・・最近の調査では全国で約1万人の患者さんがいると推計されています。男女比は9対1と圧倒的に男性に多く、発症年齢は40歳代が中心で青壮年層に多く発症します。動脈硬化症と同様に血流を悪化させますが、動脈硬化に比べるとより末梢の細い動脈の血行を傷害します。背景に慢性の血管炎があり、その発症には喫煙が密接に関係していると言われています。 バージャー病の症状は、手足の冷え、しびれ、色調の悪化に始まって、進行すると痛みによる歩行障害が発生するようになり、しまいには安静時にも手足が激しく傷むようになり皮膚が崩れて潰瘍や壊死を来すことがあります」、恐ろしい症状だ。 「たばこを吸っている人がなりやすいがんとして・・・鼻腔・副鼻腔がん、口腔・咽頭がん、喉頭がん、食道がん、肺がん、胃がん、肝臓がん、膵臓がん、膀胱がん、子宮頸がん 他にも、大腸がん、乳がんも、たばこにより発症リスクが相当に大きくなることがわかっています」、なるほど。 「取り上げた疾患以外にも、たばこは、骨粗鬆症、糖尿病、甲状腺疾患、うつ病など様々な疾患の原因になります。脳を覚醒させるためにたばこを吸っていたら認知症が進んだ、精神的不安を取り除くための喫煙がうつ病を発症し、さらなる喫煙によりうつ症状が悪化するという悪循環に陥ってしまった、などのことを改めて考えると、喫煙はやはり「百害あって一利なし」とうことになるでしょう・・・ たばこを吸うことは、自身にとっても毒ですが、被害を受けるいわれのない周囲の非喫煙者や家族、自分の大切な方々に毒を盛るようなものです。昨今は分煙化が図られているとは言え、周囲に全く害がないとは言えません。ぜひ、周囲の家族の健康のためにも、禁煙に取り組んでいただきたいと思います」、なるほど。 養老孟司氏 中川恵一氏による「「タバコが健康に悪いなんて、誰でも知っている」養老孟司がそれでも禁煙しないワケ」 養老孟司、中川恵一『養老先生、再び病院へ行く』(エクスナレッジ) 「具合がとても悪かったからです。それまでに体重が15kgぐらい減っていたので、こんなにやせたのなら、がんがどこかにあるかもしれないと思っていました。しかしCTなどの検査の結果、がんは見つかりませんでした。 逆に、がんではなくて心筋梗塞だったのは寝耳に水でした。医学生の頃、心筋梗塞を起こす人は、割合はっきりとした性格的な特徴があると教わりましたが、それによると、僕は心筋梗塞のリスクが高い性格ではありません。だから自分は心筋梗塞にならないと勝手に決めてつけていました」、 養老先生でも自己診断は当てにならないようだ。「お医者さんになる気はありませんでした。患者さんを診るのが苦手だったのです。 その理由は患者さんが勝手に死んでしまうからです。一生懸命診ても、患者さんが亡くなることがあります。 例えば交通事故でかつぎ込まれた患者さんがいて、多量の出血がありました。インターンだった僕も、あちこちの出血しているところを押さえる手伝いをしました。 最後は問題がわかって手術は終わり、傷をきれいに縫合しました。 ところが、その段階で患者さんは亡くなってしまいました。患者さんを助けるための6時間がまったくの無駄になってしまったわけです」、「「お医者さんになる気はありませんでした。患者さんを診るのが苦手だったのです。 その理由は患者さんが勝手に死んでしまうからです。一生懸命診ても、患者さんが亡くなることがあります。 例えば交通事故でかつぎ込まれた患者さんがいて、多量の出血がありました・・・手術していたので6時間くらいかかりました。最後は問題がわかって手術は終わり、傷をきれいに縫合しました。 ところが、その段階で患者さんは亡くなってしまいました」、「6時間」もの大手術に耐えられなかったのかも知れない。確かに「患者さんが勝手に死んでしまう」ケースだ。 「大腸がんにしろ、胃がんにしろ、年寄りががんの予防する意味がわかりません。がんは年をとるほど増えるので、僕くらいの年齢ならがんが2つや3つあっても不思議ではありません。いったい、がんで死ななかったら、僕は何で死んだらいいのでしょう。心筋梗塞の治療をして、コロナのワクチンも打っています。死ぬ病気といったら、がんか肺炎くらいなのに、これでは簡単に死ねないですね」、さすがにすごい覚悟なので、主治医も手を焼いたことだろう。 「僕の肺のCT画像には肺気腫が認められています。肺気腫がひどくなると、酸素ボンベを引きずりながら生活しないといけなくなりますが、今のところ坂道を上るのも問題ありませんし、歩くと気持ちがよいくらいです。ですから肺はそんなに壊れていないと思っています。 70代のときですが、ブータンに行ったときも平気でした。ブータンの空港は標高2500メートルぐらいで、空気が薄いのですが、息苦しくはありませんでした」、 「ブータンの空港・・・空気が薄いのですが、息苦しくはありませんでした」、「70代」の時とはいえ大したものだ。「タバコをやめて発がんリスクが吸わない人と同じになるまでに、20~25年かかるそうです」、私の場合でも禁煙する意味は余りなかったことになる。 「南海トラフ大地震」が起これば、「とてつもないお金がかかります。国際金融資本家とか中国とかに国土を身売りするという話になるかもしれません」、「国土を身売りする」とは所有権付きで譲渡する、或いは「その国土から生み出されるキャッシュフローを譲渡することになるが、いずれにしろ、法律面の手当を含め、大変な事態だ。 「現代は情報化社会といわれ、「変わらない」ものに満ちあふれています。情報とは「変わらない」もののことで、ネットに書かれた文章は、誰かが消さない限り、いつまでも変わらずに残っています。 情報化社会は変わらないものをよしとして、それを優先します。そして情報は絶えず交換可能なので「新しくなった」と思うだけで、情報そのものはいつもとどまったまま変化することはありません。この世界には、鴨長明が入る余地はないのです。同感である。
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日本の政治情勢(その69)(東京地検特捜部が忖度なしの「自民党潰し」に動いた…パー券キックバックで常態化した「裏ガネづくり」に本格メス、「ポスト岸田」が「自民党キックバック大崩壊」で浮上…誰だ誰だ 裏を引くのは結局「霞が関」なのか、【安倍派】裏金疑惑の根底にある資金基盤の弱さ モリカケ、五輪汚職から旧統一教会問題まで 裏の「票と金」に頼る黒歴史、岸田首相の人事刷新は難航確実 安倍派の政務三役15人クビ切り画策も 後任打診にNO続出か) [国内政治]

日本の政治情勢については、11月30日に取上げたばかりだが、事態が急進展している今日は、(その69)(東京地検特捜部が忖度なしの「自民党潰し」に動いた…パー券キックバックで常態化した「裏ガネづくり」に本格メス、「ポスト岸田」が「自民党キックバック大崩壊」で浮上…誰だ誰だ 裏を引くのは結局「霞が関」なのか、【安倍派】裏金疑惑の根底にある資金基盤の弱さ モリカケ、五輪汚職から旧統一教会問題まで 裏の「票と金」に頼る黒歴史、岸田首相の人事刷新は難航確実 安倍派の政務三役15人クビ切り画策も 後任打診にNO続出か)である。

先ずは、12月7日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの伊藤 博敏氏による「東京地検特捜部が忖度なしの「自民党潰し」に動いた…パー券キックバックで常態化した「裏ガネづくり」に本格メス」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/120350?imp=0
・『常態化した裏ガネづくり  東京地検特捜部が自民党に、猛禽のように襲いかかっている。 臨時国会が閉会する12月13日以降は、派閥パーティー券の裏金疑惑で各派閥の会計責任者、会長・事務総長経験者、キックバックを受け取った所属議員、パーティー券を購入した側の政治団体幹部などの事情聴取が、いよいよ本格化する。 疑惑の中心は最大派閥の安倍派だ。所属議員に当選回数やポストに応じてパーティー券販売のノルマを与え、ノルマを超過した議員に対してはその分をキックバック。派閥も議員側も報告書に記載していないので完全な裏ガネだ。判明しているだけで10人以上が裏ガネに関与し5年間(18~22年)でその総額が1億円以上という。 悪質さに軽重はあるものの、既に二階派の不記載も判明しており、特捜部の捜査は5派閥全てを視野に入れたものになる。 そもそも摘発のきっかけは、5派閥が18~21年の収支報告書にパーティー券収入を約4000万円少なく記載していたとして昨年11月に『しんぶん赤旗』日曜版がスクープし、それを受けて調査した神戸学院大学の上脇博之教授による告発だった。 受理した特捜部の捜査によって、「常態化した裏ガネ作り」が判明。無申告の脱税事件でもあり過少記載から局面は変わった。 自民党に対する23年分の政党交付金は約159億円。国民にそれだけの負担をさせながら、なおも派閥ぐるみで裏ガネを捻出する自民党政治とは何なのか――。 検察は全国から応援検事を集めて捜査する体制を固めており、安倍派を中心に全派閥を捜査。証拠と供述によっては未公開株が政界を浸食したリクルート事件なみの展開となる可能性がある。それだけ自民党政治家は政治資金規正法をなめていた』、「判明しているだけで10人以上が裏ガネに関与し5年間(18~22年)でその総額が1億円以上という。 悪質さに軽重はあるものの、既に二階派の不記載も判明しており、特捜部の捜査は5派閥全てを視野に入れたものになる」、なるほど。
・『検事総長人事介入問題との関係  端緒を開いた上脇氏は、政治資金問題に粘り強く取り組んでおり、02年に市民団体「政治資金オンブズマン」を立ち上げて以降、これまでに100件を超える告発を行った。政治資金絡みの不正はそれだけ常態化していたわけだが、それを受けた特捜捜査が今回、深みを持つに至ったのは、別の事件が関係しているからだ。 「官邸vs検察」といわれた安倍晋三政権下における検事総長人事介入問題である。奇しくも、その余波ともいえる公判が12月1日、行われて当時、事務方トップの法務省事務次官でその後、仙台高検検事長を務めた辻裕教氏が法廷に立った。 この裁判の原告となったのも上脇氏で、20年に東京高検検事長だった黒川弘務氏の定年を半年間延長することを決めた閣議決定をめぐり、国が「法解釈を変更した関連文書を開示しないのは違法だ」として訴えた。 こうした行政文書の不開示決定取消訴訟において「天皇の認証官」である高検検事長が出廷するのは前代未聞。徳地淳裁判長ですら「辻さんというかなり上の方より実際の実務、実情を知る人が適切じゃないですか」といったほど。だが国は、「証人尋問の必要性はありません」と拒否し、その結果、大阪地裁は「辻尋問」を決めた。 この一連の過程に、検察が自民党派閥政治を壊しかねない捜査に踏み切った遠因がある。まず振り返るべきは、検事総長人事への官邸の介入がどのような形で行われたである。 14年の内閣法改正で国家公務員幹部人事を一元的に管理する内閣人事局が設置され、安倍政権の政治主導が確立した。それが官僚の政権への過剰な忖度を生んだが、唯一、人事に介入させなかったのが検察だ。 安倍官邸は東京高検検事長に就くまでに、法務省官房長、法務省事務次官と「政界窓口」を7年半もの長きにわたって務め、「官邸の代理人」と呼ばれた黒川氏を次期検事総長に就けようとした。ところが検事長定年は63歳で、黒川氏を検事総長にするには、これまで検察官には適用されなかった国家公務員の規定を適用し、20年2月に63歳を迎える黒川氏の定年を延長しなければならなかった』、「まず振り返るべきは、検事総長人事への官邸の介入がどのような形で行われたである。 14年の内閣法改正で国家公務員幹部人事を一元的に管理する内閣人事局が設置され、安倍政権の政治主導が確立した。それが官僚の政権への過剰な忖度を生んだが、唯一、人事に介入させなかったのが検察だ。 安倍官邸は東京高検検事長に就くまでに、法務省官房長、法務省事務次官と「政界窓口」を7年半もの長きにわたって務め、「官邸の代理人」と呼ばれた黒川氏を次期検事総長に就けようとした。ところが検事長定年は63歳で、黒川氏を検事総長にするには、これまで検察官には適用されなかった国家公務員の規定を適用し、20年2月に63歳を迎える黒川氏の定年を延長しなければならなかった」、思い出した。
・『「官邸の代弁者」をさらしものに  その後、黒川氏は知り合いの記者らと賭け麻雀をしていたことが発覚して検事長を辞職した。その結果、人事介入はなかったが、上脇氏は「法解釈を変更した経緯」にこだわった。 だが、出廷した辻氏は、「定年延長は黒川氏のために行ったわけではない」「文書決裁は特になかった」と、「官邸主導による解釈変更での黒川氏の定年延長」という見方を否定した。ただ、徳地裁判長も納得しなかったようで、最後にこう質問した。 「第三者的に観ると、2月8日の黒川氏の定年に合わせるように急いだと見えなくもない」 だが、辻氏はこう繰り返した。 「特定の検察官の定年延長を目的にしたわけではありません」 検察は大阪地裁の反応から実務者を出さなければ辻尋問が行われるのを承知していた。そういう意味で辻氏を「さらしもの」にした。辻氏は証人尋問が決まった直後、高検検事長を辞めて弁護士となった。 一時は検事総長候補だった辻氏だが、国家公務員法の規定の適用といった“裏技”で黒川氏の定年延長を画策するなど、OBを含む検察総体から「官邸の代弁者」と見なされた。それが“失脚”の原因である』、「「特定の検察官の定年延長を目的にしたわけではありません」 検察は大阪地裁の反応から実務者を出さなければ辻尋問が行われるのを承知していた。そういう意味で辻氏を「さらしもの」にした。辻氏は証人尋問が決まった直後、高検検事長を辞めて弁護士となった。 一時は検事総長候補だった辻氏だが、国家公務員法の規定の適用といった“裏技”で黒川氏の定年延長を画策するなど、OBを含む検察総体から「官邸の代弁者」と見なされた。それが“失脚”の原因である」、なるほど。
・『もはや忖度する幹部はいない  官邸は当時、黒川人事を正当化するように政府の裁量で検察首脳の定年を延長できる規定を盛り込んだ検察庁法改正案を上程していた。これに検察OBらが反発、次のような意見書を政府に提出した。 <今回の法改正は、検察の人事に政治権力が介入することを正当化し、政権の意に添わない検察の動きを封じ込め、検察の力を削ぐことを意図していると考えられる> 世論も法改正に反発、「#検察庁法改正案に抗議します」というツイッターには、小泉今日子ら著名人を含めて1日で700万件もの投稿があった。マスメディアも反対の論陣を張るなか、官邸は検察庁法改正案の成立見送りを決めた。 ただ、安倍氏には一連の騒動を経ても、「検察人事」への不満は残ったままだった。ベストセラーとなった『安倍晋三回顧録』(中央公論新社)には、検察OBらの人事介入批判について次のような苦言を呈している。 <検察OBは、政治が我々の領域に入ってくるな、と言いたかったんでしょ。役所のOBはどこも、人事は自分たちで決める、とはき違えていますから。そもそもトップの検事総長や最高検の次長検事、全国8カ所の高検検事長の任命権は、内閣が持っています> こうした対立構図を安倍派と検察は抱えており、官邸配慮の黒川、辻の両氏を検察は排除した。そこに飛び込んできたのが、派閥のパーティー券収入をごまかしていたという「上脇告発」であり、安倍派ぐるみで行なわれていた「裏ガネ作り」である。 もはや政権に忖度するような検察幹部はいないし、穏便に済ませる必要もない。むしろ国民感情のうえでも、自民党ぐるみで行なっていたパーティー券利用の裏ガネ作りは徹底解明すべき事案となった』、「こうした対立構図を安倍派と検察は抱えており、官邸配慮の黒川、辻の両氏を検察は排除した。そこに飛び込んできたのが、派閥のパーティー券収入をごまかしていたという「上脇告発」であり、安倍派ぐるみで行なわれていた「裏ガネ作り」である。 もはや政権に忖度するような検察幹部はいないし、穏便に済ませる必要もない。むしろ国民感情のうえでも、自民党ぐるみで行なっていたパーティー券利用の裏ガネ作りは徹底解明すべき事案となった」、今回の「パーティー券利用の裏ガネ作り」は「検察」にとって、「徹底解明すべき事案となった」、そんな因縁があったとは驚いた。
・『全ての環境が整った  むろん検察が安倍派を返り討ちにした、というレベルの話ではない。今年1月、特捜部は政治資金パーティーの収入を虚偽記入していたとして、薗浦賢太郎元衆議院議員を政治資金規正法違反罪で略式起訴した。 虚偽記入の総額は自由民主党千葉県第5選挙区支部と薗浦元代議士の政治団体を合わせて約5000万円。こうした捜査を通じて、「パーティー券の闇」の認識は検察に蓄積されていた。 またパーティー券を大量に捌くことによって政界に食い込む政商の問題も指摘されており、こちらの水面下の捜査も進んでいる。 今回検察は、政界圧力のない捜査環境、熟練の技を持つ上脇氏の告発、裏ガネ作りに疑問を感じない自民党代議士の感覚麻痺、政治資金パーティーの摘発に練度を上げた特捜捜査など、全ての環境が整ったところで自民党派閥政治に襲いかかったのである』、「今回検察は、政界圧力のない捜査環境、熟練の技を持つ上脇氏の告発・・・政治資金パーティーの摘発に練度を上げた特捜捜査など、全ての環境が整ったところで自民党派閥政治に襲いかかったのである」、検察捜査のインパクトが極めて強い理由が理解できた。

次に、12月11日付け現代ビジネスが掲載した大蔵省出身で嘉悦大学教授の髙橋 洋一氏による「「ポスト岸田」が「自民党キックバック大崩壊」で浮上…誰だ誰だ、裏を引くのは結局「霞が関」なのか」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/120577?imp=0
・『「キックバック」の背景にあるもの  自民党政権を揺るがす事態が起きているーー。 12月13日、臨時国会閉会後、東京地検特捜部による政治資金規正法の捜査が本格化するとみられている。政局に与える影響は計り知れない。 当初、自民党5派閥のパーティー券問題について、自民党の5派閥の政治団体が政治資金パーティーの収入について2018~21年分の政治資金収支報告書に計約4000万円分を過少記載したとする告発状を受け、東京地検特捜部が各派閥の担当者から任意で事情を聴いているという程度だった。 しかし、12月になると、政治資金パーティー収入について議員へのキックバックが裏金化していた疑いがあるとして、東京地検特捜部が捜査を進めていると報じられている。 これまでの経緯は、先週12月4日付け本コラム「事実上の「キックバック」まで…自民党「政治資金パーティー問題」が勃発した「そもそもの理由」をご覧いただきたい。今回は、その政治的な背景について、考えたい。 この問題は、11月13日付け本コラム「岸田首相、打つ手なし…!財務省の「ハシゴ外し」で支持率回復どころか「党内分裂」へ」に遡ってみないと全体像が見えてこない。 岸田首相が「増税メガネ」と呼ばれて所得税減税を謳い出し、岸田首相に「自我」が芽生えたために、財務省がハシゴ外しを目論んだというストーリーについて触れている。なお、減税を言い出したのは、党内では安倍派であるので、岸田首相に「自我をつけた」のは安倍派と財務省には見えただろう。 岸田首相は宏池会のプリンスだった。宏池会は、池田勇人元首相が創始者で、その次に大平正芳元首相、鈴木善幸元首相、宮沢喜一元首相と迸出した名門派閥だ。池田氏、大平氏、宮沢氏は元大蔵官僚であり、宏池会と財務省の関係は深い。岸田首相も、宮沢家と姻戚関係にあり、二人の妹さんの旦那は大蔵官僚だ。 したがって、宏池会の系譜としての「血筋」はいい』、「岸田首相は宏池会のプリンスだった。宏池会は、池田勇人元首相が創始者で、その次に大平正芳元首相、鈴木善幸元首相、宮沢喜一元首相と迸出した名門派閥だ。池田氏、大平氏、宮沢氏は元大蔵官僚であり、宏池会と財務省の関係は深い。岸田首相も、宮沢家と姻戚関係にあり、二人の妹さんの旦那は大蔵官僚だ。 したがって、宏池会の系譜としての「血筋」はいい」、その通りだ。
・『大蔵官僚だった筆者が思っていたこと  「増税メガネ」と言われたからとはいえ、首相が減税を言い出したのは、国民経済から見ればもまっとうであるが、財務省ファミリーとしては考えられないことだ。 財務省ファミリーならば、国民は「短期的な快楽」のために減税を求めるが、それは浪費であり、今の厳しい財政状況を考えると将来のためにならない、と真顔で語る。 かつて財務省ファミリーの一員だった筆者も、大蔵省入省当初はそう思っていた。 内心本当かと思っていたが、今から30年ほど前に、当時の財政投融資批判など大蔵省への批判に対抗するために、どうしても国の財政状況を正確に言うために国のバランスシートを作らざるを得なくなった。 その当時、それができるのは筆者に限られていたので、バランスシートを作ったら、それまで大蔵省が主張していた借金が大きいから財政危機という話はウソで資産があるので危機ではないことがわかった。 17年前に退官するまでは、対外的には黙っていたが、小泉政権と第一安倍政権では、きちんとしたバランスシート分析では財政危機でないといい、それに基づく政策(埋蔵金の発掘・活用など)も政府内で実現してきた。 本コラムでも、2015年12月28日付け「「日本の借金1000兆円」はやっぱりウソでした~それどころか…」や2018年10月15日付け「IMFが公表した日本の財政「衝撃レポート」の中身を分析する それでも消費増税は必要ですか」をご覧いただきたい。 筆者の「高橋洋一チャンネル」は、登録者数104万人(2023年12月現在)であり、この話題を何度も取り上げているので、流石に筆者の周りでは「常識化」しつつある。) ▽官僚機構の中にある力学(また、政治家の中にもこれまで財務省の言う財政危機を信用してきたが、そうでないと思い始める人も多くなった。例えば、故安倍晋三首相はその一人だ。 元財務次官の矢野康治氏が、月刊文藝春秋2021年11月号で書いた財政論については、故安倍元首相は、月刊WiLL2021年12月号において会計論などで強烈に批判している。また、かの安倍晋三回顧録の中でも、同旨の批判をしている。 ここで書かれているように、100兆円コロナ対策でもそのための増税がないのは、正しいバランスシート論に基づくものだ。 率直にいえば、岸田首相が、安倍派からの提言でもあった減税を言い出さなければ、まだ財務省は岸田首相のハシゴを外さずに、それなりの政権支持率も維持できただろう。 ここにきて、検察も岸田政権の落ち目を見て動き出したのが「パーティー券騒動」だ。それが、安倍派の狙い撃ちになっているので、自民党内力学から言えば、岸田派には余裕でもある。野党が弱いので、所詮自民党内力学で政治が動いているとみれば、岸田派、麻生派、茂木派も、実質的には余裕だ。 財務省としても、安倍・菅政権で煮え湯を飲まされ続けたので、検察の安倍派叩きは悪くない。 もちろん、こうした大掛かりの政局は、官僚機構だけで仕掛けられるものでない。財務省のバックには、麻生派がいる。 麻生派としては、財務省や検察が安倍派、二階派を叩くのは好都合だ。また、大宏池会構想があるので、岸田首相を下ろしても大宏池会の中、例えば麻生派から首相が出ればいい、と思っている。これが、官僚機構の背景にある「自民都内派閥力学」だ』、「当時の財政投融資批判など大蔵省への批判に対抗するために、どうしても国の財政状況を正確に言うために国のバランスシートを作らざるを得なくなった。 その当時、それができるのは筆者に限られていたので、バランスシートを作ったら、それまで大蔵省が主張していた借金が大きいから財政危機という話はウソで資産があるので危機ではないことがわかった。 17年前に退官するまでは、対外的には黙っていたが、小泉政権と第一安倍政権では、きちんとしたバランスシート分析では財政危機でないといい、それに基づく政策(埋蔵金の発掘・活用など)も政府内で実現してきた・・・財務省としても、安倍・菅政権で煮え湯を飲まされ続けたので、検察の安倍派叩きは悪くない。 もちろん、こうした大掛かりの政局は、官僚機構だけで仕掛けられるものでない。財務省のバックには、麻生派がいる。 麻生派としては、財務省や検察が安倍派、二階派を叩くのは好都合だ。また、大宏池会構想があるので、岸田首相を下ろしても大宏池会の中、例えば麻生派から首相が出ればいい、と思っている。これが、官僚機構の背景にある「自民都内派閥力学」だ」、「大宏池会構想があるので、岸田首相を下ろしても大宏池会の中、例えば麻生派から首相が出ればいい、と思っている」、なるほど。
・『マスコミの後押しで  これを政策論から見れば、財務省としても麻生派から、減税をしない首相が出ればいいだろう。時折、鈴木俊一財務相がポスト岸田で浮上するのは、財務省の野望でもあろう。鈴木財務相は、麻生派であるが、宏池会の鈴木善幸氏の息子であり、麻生太郎氏の義弟でもあるので、財務省としてはベストだろう。 自民党内派閥力学、財務省や検察の官僚機構の動きだけで十分だが、それを後押しするのが、反安倍のマスコミだ。安倍・菅の長期政権で、反アベのマスコミは出番がなかったが、ここにきてついに出番と意気込んでいる。 こうした動きの結果、岸田おろしになっても、大宏池会の中での政権回し、安倍派排除という形の政局に動くだろう。松野官房長官(安倍派)は既に交代が決定的で、その後任には加藤勝信(茂木派)、田村憲久(岸田派)らの名前が出ている。萩生田光一政調会長(安倍派)、西村康稔経産大臣(安倍派)の交代もありえる。 ただ、岸田政権は既にレームダック化しており、早ければ来年度政府予算を決定する年内、遅くとも来年度予算成立か来春の渡米までしかもたないだろう。 安倍派もこのまま排除されるだけなのか、激しい抵抗が水面下で行われるのではないか』、「岸田政権は既にレームダック化しており、早ければ来年度政府予算を決定する年内、遅くとも来年度予算成立か来春の渡米までしかもたないだろう。 安倍派もこのまま排除されるだけなのか、激しい抵抗が水面下で行われるのではないか」、さすが「髙橋 洋一氏」らしい説得力に富んだ鋭い分析だ。

第三に、12月12日付けNEWSポストセブン「【安倍派】裏金疑惑の根底にある資金基盤の弱さ モリカケ、五輪汚職から旧統一教会問題まで、裏の「票と金」に頼る黒歴史」を紹介しよう。
https://www.news-postseven.com/archives/20231212_1926607.html?DETAIL
・『自民党の最大派閥「清和政策研究会(安倍派)」の裏金疑惑は、“令和のリクルート事件”と呼ばれて政権を揺るがしている。安倍派がこうして“裏金”に頼らなければならなかったのには訳がある。それは派閥の歴史を紐解いていくとわかる。保守傍流で業界団体などの利権を他派閥に奪われていた安倍派が編み出した“集金システム”の全貌とは──』、興味深そうだ。
・『最大派閥にもかかわらず弱い“集金力”  安倍派の裏金疑惑の捜査はいよいよ所属議員に及び、東京地検特捜部が秘書たちの事情聴取を開始すると、派内にはパニックが広がっている。同派中堅議員の秘書が焦った口調でこうぶちまけた。 「はっきり言って、うちは派閥から資金の面倒を見てもらっていない。毎年、上納する金のほうが多いくらいですよ」 所属議員99人を抱え、自民党最大派閥として権勢をほしいままにしてきた安倍派だが、実は、集金力は弱い。 派閥が盆暮れに議員に配る「氷代」「モチ代」と呼ばれる活動資金の金額を比べるとよくわかる。 各派の政治資金収支報告書(令和4年度)によると、5大派閥のうち茂木派、岸田派、麻生派、二階派は盆と暮れに約100万円ずつ、合計約200万円をほとんどの所属議員に配っているが、安倍派は約50万円ずつの合計約100万円。他派の半分なのだ。 「派閥に納める会費は若手議員が年60万円、大臣経験者は120万円。さらに当選回数によってパーティー券の販売ノルマが若手は50枚(100万円)、ベテランになると100枚(200万円)などと決まっていて、売れなくてもその分の代金を上納しなければならない。会費とノルマで若手でも160万円を派閥に納めるから、盆暮れに合計100万円もらっても赤字になる」(同前)』、「所属議員99人を抱え、自民党最大派閥として権勢をほしいままにしてきた安倍派だが、実は、集金力は弱い。 派閥が盆暮れに議員に配る「氷代」「モチ代」と呼ばれる活動資金の金額を比べるとよくわかる。 各派の政治資金収支報告書(令和4年度)によると、5大派閥のうち茂木派、岸田派、麻生派、二階派は盆と暮れに約100万円ずつ、合計約200万円をほとんどの所属議員に配っているが、安倍派は約50万円ずつの合計約100万円。他派の半分なのだ」、「安倍派」の「集金力は弱い」とは初めて知った。
・『“隙間”の業界が資金源  派閥の領袖は多くの議員を養うことで力を持つ。そのためにカネとポストの面倒を見る。どの派閥も、大臣を経験して資金力がついた幹部からは資金を上納させ、議員に配る仕組みをとってきた。 だが、安倍派は伝統的に自民党の主要派閥の中で資金基盤が弱く、議員を養うために無理をしてきたのだという。そのことが今回の裏金問題につながっている。 安倍派の歴史に詳しい政治ジャーナリスト・野上忠興氏が指摘する。 自民党で保守本流と呼ばれる宏池会(岸田派)は官僚出身議員が多く、伝統的に財界主流をスポンサーにしてきた。田中派の流れを汲む平成研(茂木派)は多くの族議員を抱え、建設業界、医師会、歯科医師会、農業団体、特定郵便局長会といった業界団体に強かった。 しかし、傍流だった清和会(安倍派)は有力な資金源と集票マシンを保守本流派閥に押さえられて手を出せなかった。影響力があった業界は文教関係と運輸業界ぐらい。そこで新興企業など“隙間”の業界に資金源を求めたわけです。その一方で旧統一教会(世界平和統一家庭連合)との結びつきを強めることで弱い集票力をカバーしてきた」) 安倍長期政権下でも懐事情はあまり変わらなかった。 「安倍政権時代に多くの業界の陳情窓口となっていたのはもっぱら二階俊博・元幹事長だった。安倍派は最大派閥にはなったものの、多くは資金基盤の弱い安倍チルドレン。幹部にも業界を仕切れるような実力者はほとんどいない。近年の安倍派がらみのスキャンダルを見ても、森友学園問題、加計学園問題、五輪汚職など、安倍派が伝統的に影響力を持っていた文教・スポーツ関係が目立つ。他の業界には資金パイプが広がっていないのでしょう。 そのうえ、安倍派では派閥の人数が増えたから100人もの議員にモチ代、氷代を他派並みの200万円配るだけで2億円の資金がいる。だからなりふり構わぬカネ集めをする必要があったのではないか」(野上氏)』、「宏池会(岸田派)は官僚出身議員が多く、伝統的に財界主流をスポンサーにしてきた。田中派の流れを汲む平成研(茂木派)は多くの族議員を抱え、建設業界、医師会、歯科医師会、農業団体、特定郵便局長会といった業界団体に強かった。 しかし、傍流だった清和会(安倍派)は有力な資金源と集票マシンを保守本流派閥に押さえられて手を出せなかった。影響力があった業界は文教関係と運輸業界ぐらい・・・安倍派では派閥の人数が増えたから100人もの議員にモチ代、氷代を他派並みの200万円配るだけで2億円の資金がいる。だからなりふり構わぬカネ集めをする必要があったのではないか」、確かに説得力がある。
・『「秘密後援会」の手口  その過程で編み出されたのがキックバックという手法だとみられている。所属議員にノルマを課して派閥のパーティー券を売らせ、ノルマを超えた分の代金は議員に“裏金”として戻す。 パーティー券のキックバックの仕組みは他の派閥にもあるとされるが、安倍派の裏金の金額が突出しているのは、最大派閥で資金力のない若手議員を多く抱えているという事情があった。そのため、議員たちに「パー券販売」を競わせることで派閥資金を太らせるしかなかったのだ。 前出の安倍派中堅議員の秘書が言う。 「要するに領袖や幹部たちでは派閥を資金的に支えきれないから、氷代、モチ代は自分で稼げというわけです。いまや派閥は議員の互助会。それでも、ノルマを達成しないと、人事でいいポストをもらえないからパー券を売るしかない。営業力のある幹部たちは、ノルマ以上を売ってキックバックを稼ごうとする。最大派閥の実態は歩合制の『パー券営業マン』の集団になった」 こうした“裏金づくり”のスキームの原型を辿ると、本誌・週刊ポストが2006年に報じた安倍晋三・元首相の秘密後援会「安晋会」の手口に行き着く。 安晋会は2003年、有力なベンチャー企業経営者などを集めて盛大な安倍氏の幹事長就任パーティーなどを開催していた団体で、その一部を安倍氏に“キックバック”していたとされる。ところが、安倍氏の関連政治団体として届けられておらず、本来は政治資金パーティーを開催できない任意団体だった。) 安晋会代表幹事の会社経営者S氏が別に設立した政治団体から安倍氏の資金管理団体「晋和会」への寄附が、キックバックの一部だったとされるが、S氏の政治団体は1度も政治資金収支報告書を提出していなかった。 安晋会が集めたパーティー券収入は幹事長就任パーティーだけで少なくとも1000万円以上とみられていたが、どこに流れたか不明なまま完全に闇に消えた。 政界の裏金づくりの闇は深い。 その全貌を解明するには、検察は過去5年分だけではなく、さらに遡って捜査を進めなければ見えてこないはずだ。 ※週刊ポスト2023年12月22日号』、「政界の裏金づくりの闇は深い。 その全貌を解明するには、検察は過去5年分だけではなく、さらに遡って捜査を進めなければ見えてこないはずだ」、国会が閉会された後は「検察」はスピード感をもって、捜査し、酷いケースでは起訴すべきだろう。

第四に、12月12日付け日刊ゲンダイ「岸田首相の人事刷新は難航確実 安倍派の政務三役15人クビ切り画策も、後任打診にNO続出か」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/333261
・『15人の穴を埋められるのか。はたして、まともにメンバーを集められるのか──。 自民党最大派閥・安倍派の政治資金パーティー裏金疑惑を巡り、岸田首相が安倍派所属の閣僚、副大臣、政務官計15人を全員交代させる方向で調整に入った。一斉にクビを切られる安倍派内では、どよめきが広がっている。 「総理は本気で15人全員を交代させる気なのか。少なくとも、総務大臣の鈴木淳司さんは『キックバックを受けていない』と明言している。なのに、なぜ切るのか。皆、怒っていますよ。これでは、安倍派というだけで白い目で見られてしまう。総理は、安倍派99人を敵に回したも同然です」(安倍派関係者) 岸田首相は国会が閉会した後の13日にも人事を行うとみられている。しかし、15人もクビを切って、短期間でマトモな後任を用意できるのか。ロクに“身体検査”をせずに改造すれば、またぞろ「辞任ドミノ」に発展しかねない。 実際、ロクでもない議員まで重要閣僚候補として名前が挙がっている。菅内閣で官房長官を務めた加藤勝信衆院議員、田村憲久元厚労相、小泉進次郎元環境相の3人に加え、コロナ禍に官邸で昼食会を開いて批判を浴びた坂井学元官房副長官まで、官房長官への起用が囁かれている。浜田前防衛相と梶山幹事長代行の名前も浮上している。 「今回、安倍派が派閥ぐるみで裏金づくりに手を染めていたことで『派閥政治』への批判が高まっています。だから、総理周辺は政治資金パーティーとは無縁の無派閥議員を中心に起用すべきと考えているようです」(官邸事情通)』、「岸田首相が安倍派所属の閣僚、副大臣、政務官計15人を全員交代させる方向で調整に入った・・・15人もクビを切って、短期間でマトモな後任を用意できるのか。ロクに“身体検査”をせずに改造すれば、またぞろ「辞任ドミノ」に発展しかねない」、なるほど。
・『「打診が来ないことを願うしかない」  しかし、ただでさえ内閣支持率がボロボロで、岸田内閣は“泥舟”状態。政務三役や党幹部に手を挙げる無派閥議員がいるのか。ある無派閥議員はこう言う。 「この状況で大臣を引き受けるのはリスクが大き過ぎる。正直言って、やりたかないですよ。あれこれ、マスコミに身辺を洗われるだろうし、内閣総辞職で短命大臣に終わる可能性もある。無派閥議員は70人以上もいるわけですから、とりあえず自分に打診が来ないことを強く願うしかありませんね。それに、無派閥の中には総理の“政敵”である菅前首相に近い議員も多い。菅さんに相談して『入閣はやめとけ』と言われたら、打診を断る議員もいるでしょう。結局、総理は15人のクビを切ると言いながら、軒並み断られて、何人かは留任させることになるんじゃないですかね」 このままでは、岸田首相は立ち往生しかねない。身内の岸田派で固めるしかなくなる可能性がある。 「岸田派からは、小野寺元防衛相や根本元復興相の名前が挙がっている。ただ、国民にとって目新しさはないでしょう」(官邸事情通=前出) 支持率回復など夢のまた夢だ』、「ある無派閥議員はこう言う。 「この状況で大臣を引き受けるのはリスクが大き過ぎる。正直言って、やりたかないですよ。あれこれ、マスコミに身辺を洗われるだろうし、内閣総辞職で短命大臣に終わる可能性もある。無派閥議員は70人以上もいるわけですから、とりあえず自分に打診が来ないことを強く願うしかありませんね」、泥船にはあえて乗ろうとしない議員も多いようで、やはり岸田政権は末期症状のようだ。 
タグ:「まず振り返るべきは、検事総長人事への官邸の介入がどのような形で行われたである。 14年の内閣法改正で国家公務員幹部人事を一元的に管理する内閣人事局が設置され、安倍政権の政治主導が確立した。それが官僚の政権への過剰な忖度を生んだが、唯一、人事に介入させなかったのが検察だ。 「判明しているだけで10人以上が裏ガネに関与し5年間(18~22年)でその総額が1億円以上という。 悪質さに軽重はあるものの、既に二階派の不記載も判明しており、特捜部の捜査は5派閥全てを視野に入れたものになる」、なるほど。 伊藤 博敏氏による「東京地検特捜部が忖度なしの「自民党潰し」に動いた…パー券キックバックで常態化した「裏ガネづくり」に本格メス」 現代ビジネス (その69)(東京地検特捜部が忖度なしの「自民党潰し」に動いた…パー券キックバックで常態化した「裏ガネづくり」に本格メス、「ポスト岸田」が「自民党キックバック大崩壊」で浮上…誰だ誰だ 裏を引くのは結局「霞が関」なのか、【安倍派】裏金疑惑の根底にある資金基盤の弱さ モリカケ、五輪汚職から旧統一教会問題まで 裏の「票と金」に頼る黒歴史、岸田首相の人事刷新は難航確実 安倍派の政務三役15人クビ切り画策も 後任打診にNO続出か) 日本の政治情勢 「今回検察は、政界圧力のない捜査環境、熟練の技を持つ上脇氏の告発・・・政治資金パーティーの摘発に練度を上げた特捜捜査など、全ての環境が整ったところで自民党派閥政治に襲いかかったのである」、検察捜査のインパクトが極めて強い理由が理解できた。 もはや政権に忖度するような検察幹部はいないし、穏便に済ませる必要もない。むしろ国民感情のうえでも、自民党ぐるみで行なっていたパーティー券利用の裏ガネ作りは徹底解明すべき事案となった」、今回の「パーティー券利用の裏ガネ作り」は「検察」にとって、「徹底解明すべき事案となった」、そんな因縁があったとは驚いた。 「こうした対立構図を安倍派と検察は抱えており、官邸配慮の黒川、辻の両氏を検察は排除した。そこに飛び込んできたのが、派閥のパーティー券収入をごまかしていたという「上脇告発」であり、安倍派ぐるみで行なわれていた「裏ガネ作り」である。 「「特定の検察官の定年延長を目的にしたわけではありません」 検察は大阪地裁の反応から実務者を出さなければ辻尋問が行われるのを承知していた。そういう意味で辻氏を「さらしもの」にした。辻氏は証人尋問が決まった直後、高検検事長を辞めて弁護士となった。 一時は検事総長候補だった辻氏だが、国家公務員法の規定の適用といった“裏技”で黒川氏の定年延長を画策するなど、OBを含む検察総体から「官邸の代弁者」と見なされた。それが“失脚”の原因である」、なるほど。 安倍官邸は東京高検検事長に就くまでに、法務省官房長、法務省事務次官と「政界窓口」を7年半もの長きにわたって務め、「官邸の代理人」と呼ばれた黒川氏を次期検事総長に就けようとした。ところが検事長定年は63歳で、黒川氏を検事総長にするには、これまで検察官には適用されなかった国家公務員の規定を適用し、20年2月に63歳を迎える黒川氏の定年を延長しなければならなかった」、思い出した。 髙橋 洋一氏による「「ポスト岸田」が「自民党キックバック大崩壊」で浮上…誰だ誰だ、裏を引くのは結局「霞が関」なのか」 「岸田首相は宏池会のプリンスだった。宏池会は、池田勇人元首相が創始者で、その次に大平正芳元首相、鈴木善幸元首相、宮沢喜一元首相と迸出した名門派閥だ。池田氏、大平氏、宮沢氏は元大蔵官僚であり、宏池会と財務省の関係は深い。岸田首相も、宮沢家と姻戚関係にあり、二人の妹さんの旦那は大蔵官僚だ。 したがって、宏池会の系譜としての「血筋」はいい」、その通りだ。 「当時の財政投融資批判など大蔵省への批判に対抗するために、どうしても国の財政状況を正確に言うために国のバランスシートを作らざるを得なくなった。 その当時、それができるのは筆者に限られていたので、バランスシートを作ったら、それまで大蔵省が主張していた借金が大きいから財政危機という話はウソで資産があるので危機ではないことがわかった。 17年前に退官するまでは、対外的には黙っていたが、小泉政権と第一安倍政権では、きちんとしたバランスシート分析では財政危機でないといい、それに基づく政策(埋蔵金の発掘・活用など)も政府内で実現してきた・・・財務省としても、安倍・菅政権で煮え湯を飲まされ続けたので、検察の安倍派叩きは悪くない。 もちろん、こうした大掛かりの政局は、官僚機構だけで仕掛けられるものでない。財務省のバックには、麻生派がいる。 麻生派としては、財務省や検察が安倍派、二階派を叩くのは好都合だ。 また、大宏池会構想があるので、岸田首相を下ろしても大宏池会の中、例えば麻生派から首相が出ればいい、と思っている。これが、官僚機構の背景にある「自民都内派閥力学」だ」、「大宏池会構想があるので、岸田首相を下ろしても大宏池会の中、例えば麻生派から首相が出ればいい、と思っている」、なるほど。 「岸田政権は既にレームダック化しており、早ければ来年度政府予算を決定する年内、遅くとも来年度予算成立か来春の渡米までしかもたないだろう。 安倍派もこのまま排除されるだけなのか、激しい抵抗が水面下で行われるのではないか」、さすが「髙橋 洋一氏」らしい説得力に富んだ鋭い分析だ。 NEWSポストセブン「【安倍派】裏金疑惑の根底にある資金基盤の弱さ モリカケ、五輪汚職から旧統一教会問題まで、裏の「票と金」に頼る黒歴史」 「所属議員99人を抱え、自民党最大派閥として権勢をほしいままにしてきた安倍派だが、実は、集金力は弱い。 派閥が盆暮れに議員に配る「氷代」「モチ代」と呼ばれる活動資金の金額を比べるとよくわかる。 各派の政治資金収支報告書(令和4年度)によると、5大派閥のうち茂木派、岸田派、麻生派、二階派は盆と暮れに約100万円ずつ、合計約200万円をほとんどの所属議員に配っているが、安倍派は約50万円ずつの合計約100万円。他派の半分なのだ」、「安倍派」の「集金力は弱い」とは初めて知った。 「宏池会(岸田派)は官僚出身議員が多く、伝統的に財界主流をスポンサーにしてきた。田中派の流れを汲む平成研(茂木派)は多くの族議員を抱え、建設業界、医師会、歯科医師会、農業団体、特定郵便局長会といった業界団体に強かった。 しかし、傍流だった清和会(安倍派)は有力な資金源と集票マシンを保守本流派閥に押さえられて手を出せなかった。影響力があった業界は文教関係と運輸業界ぐらい・・・安倍派では派閥の人数が増えたから100人もの議員にモチ代、氷代を他派並みの200万円配るだけで2億円の資金がいる。だからなりふり構わぬ カネ集めをする必要があったのではないか」、確かに説得力がある。 「政界の裏金づくりの闇は深い。 その全貌を解明するには、検察は過去5年分だけではなく、さらに遡って捜査を進めなければ見えてこないはずだ」、国会が閉会された後は「検察」はスピード感をもって、捜査し、酷いケースでは起訴すべきだろう。 日刊ゲンダイ「岸田首相の人事刷新は難航確実 安倍派の政務三役15人クビ切り画策も、後任打診にNO続出か」 「岸田首相が安倍派所属の閣僚、副大臣、政務官計15人を全員交代させる方向で調整に入った・・・15人もクビを切って、短期間でマトモな後任を用意できるのか。ロクに“身体検査”をせずに改造すれば、またぞろ「辞任ドミノ」に発展しかねない」、なるほど。 「ある無派閥議員はこう言う。 「この状況で大臣を引き受けるのはリスクが大き過ぎる。正直言って、やりたかないですよ。あれこれ、マスコミに身辺を洗われるだろうし、内閣総辞職で短命大臣に終わる可能性もある。無派閥議員は70人以上もいるわけですから、とりあえず自分に打診が来ないことを強く願うしかありませんね」、泥船にはあえて乗ろうとしない議員も多いようで、やはり岸田政権は末期症状のようだ。
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