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ビッグモーター(その1)(《「やってもーたー」と嗤っている場合でもない》BMを中心とする中古車と損保の問題はどう着地させるべきか、まさかの生き残り計画も…四面楚歌BMに数百億円貸している"メガバンク"が悶絶する大人の事情 生殺与奪の権を持つ三井住友 広島 三菱UFJ みずほ 中国は融資するのか、《ルールや方針が「BM化」》中古車販売業界第2位「ネクステージ」の不正を現役社員、元社員が続々告発!「BMよりエグい」「わざとタイヤをパンクさせて…」、BM買収に伊藤忠が意欲「最高年収5000万円」超高待遇社員はど [企業経営]

ビッグモーター(以下BM)については、ある程度、記事が出てきたので、取上げることにした。今日は、(その1)(《「やってもーたー」と嗤っている場合でもない》BMを中心とする中古車と損保の問題はどう着地させるべきか、まさかの生き残り計画も…四面楚歌BMに数百億円貸している"メガバンク"が悶絶する大人の事情 生殺与奪の権を持つ三井住友 広島 三菱UFJ みずほ 中国は融資するのか、《ルールや方針が「BM化」》中古車販売業界第2位「ネクステージ」の不正を現役社員、元社員が続々告発!「BMよりエグい」「わざとタイヤをパンクさせて…」、BM買収に伊藤忠が意欲「最高年収5000万円」超高待遇社員はどうなる?大損もあり得る5大リスクとは)である。

先ずは、本年7月28日付け文春オンライン「《「やってもーたー」と嗤っている場合でもない》BMを中心とする中古車と損保の問題はどう着地させるべきか」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/64656
・『街路樹も枯れる勢いで急成長した俺たちのBM社が、ついに公式の記者会見に追い込まれてしまいました。創業者で代表取締役社長であった兼重宏行さんが、一連の騒動の責任を取って辞任。新たに就任した経営者が国土交通省の聞き取り調査にようやく応じたという流れになったようです。 また損保大手3社のうち、出向者を出しBM社経由の大口保険獲得をしたと見られる損保ジャパンも金融庁に本件絡みで虚偽の報告をしていたことが判明したことで、こりゃもう業務改善命令ではなく業務停止命令待ったなしだよねという流れになっていますね。謹慎ではなく切腹でお願いします』、興味深そうだ。
・『中古車流通大手が民間車検制度を悪用することの影響  事件の経緯は、いままでさんざんBM社からの広告で潤ってきたマスコミが盛大に手のひら返しをしている実況生中継が行われておりますので、皆さん各自、その辺を見ておいていただければと存じます。 大変な大騒ぎになり収まる気配もないわけですけれども、それもそのはず、国民にとって自動車は文字通り移動の足であり、その中古車流通大手のBM社が事故車両に関して保険金の不正請求をしたり、民間車検制度を悪用したりすれば、自動車(モビリティ)行政の根幹の信頼が揺らぐことを意味します。騒いで騒ぎ足りないってことは本件については無いのかなとすら思います。ええじゃないか』、不祥事のオンパレードなので、「騒いで騒ぎ足りないってことは・・・無い」。
・『「遅刻で1000円」「殺すぞ」BM“地獄職場”  どんなに慎重で上手なドライバーでも車を運転していれば事故ることは確率的には必ず発生する以上、何事が起きても自身の支払い能力を超えて賠償しなければならなくなる危険を考えて損害保険の一種である自動車保険に入ることは各都道府県で義務化が進んでいます。最近では、チャリも自転車保険加入を義務付けする県も出るぐらい、事故に対する被害者への弁済・補償はマストの世界になってきています』、任意保険の付保も広がっている。
・『みんな癒着があったとは知らずに損保会社の入庫誘導に従っていた  ただ、万が一事故を起こした際に、自分の自動車も含めて発生する事故対応や損害の弁済・補償に対し、損害保険の事故査定はドライバーが誰であれプロに任せざるを得ません。そこへ、今回は事故評価をする保険会社から強く斡旋(入庫誘導)されるBM社の板金部門や工場・営業所と内々で癒着があれば、事故を起こした当人がそれが妥当な事故査定なのかは分からないことになります。 つまり、損保ジャパンなど損保会社とBM社など事業者との間には、そもそも明確な利益相反の関係があるはずなのです。うっかり多額の保険金を被保険者に払いたくない損保会社と、本来は職業倫理に基づいてシビアかつ公正に事故車の査定を行う、麗しいプロ同士の緊張感ある本番勝負があると信じるから、みんな癒着があったとは知らずに損保会社の入庫誘導に従っていたわけですよ。まさにプロの世界、秘密の花園、サンクチュアリ(聖域)であります。) しかし、何でお前らつるんでるのと言われれば、損保会社は新たな契約をBM社経由で獲得するために自社の事故案件では事故査定などをBM社で行うよう事故を起こした本人に強く要望し、その本人の車には「ここ壊れてたっス」とわざと傷をつけたりパンクさせたりするなどの鬼ヤバ査定を行い、さらにその本人に新たに「損保ジャパンの自動車保険どうスか」とお薦めするなどの癒着具合があったのだとするならば最悪です。事故を起こしたって、日々の生活をするのに車は必要ですから、どうせ車を使わないといけない契約者からすればしぶしぶでも従わざるを得ません。 こうなってしまうと、素人はただただシャブられる話ですよね』、「損保ジャパンなど損保会社とBM社など事業者との間には、そもそも明確な利益相反の関係があるはずなのです・・・麗しいプロ同士の緊張感ある本番勝負があると信じるから、みんな癒着があったとは知らずに損保会社の入庫誘導に従っていたわけですよ・・・損保会社は新たな契約をBM社経由で獲得するために自社の事故案件では事故査定などをBM社で行うよう事故を起こした本人に強く要望し、その本人の車には「ここ壊れてたっス」とわざと傷をつけたりパンクさせたりするなどの鬼ヤバ査定を行い、さらにその本人に新たに「損保ジャパンの自動車保険どうスか」とお薦めするなどの癒着具合があったのだとするならば最悪です」、なるほど。
・『過去に車検不正で行政処分を受けたことも  さらには、事故を起こしているわけですから、その本人は保険等級が上がってしまい、毎月の保険料は高額になってしまいます。美味しい商売になっておったわけですよ。そりゃ急成長もしますって。 実に踏んだり蹴ったりですが、そんなBM社は保険金の不正請求と並んで民間車検制度でも問題を起こしていました。全国各地に自動車整備士を多数抱えており、23年3月には熊本県で、同6月には栃木県で不正車検が行われていたことが発覚したのです。 BMなど自動車販売店における車検は、公道を走る車両の安全性を確保する目的で国が行うべき業務を民間企業が委託を請け代行するものであって、販売店には「指定工場」として、また自動車整備士には「自動車検査員」の資格が国から与えられています。今回の不正請求事件で大騒動になる前に、車検不正の舞台となったBM南宇都宮店は関東運輸局により、指定自動車整備事業指定取り消しの行政処分をしめやかに受けています。 これらは、自動車やバスなどを扱うモビリティ関連行政そのものの根幹を担う民間車検制度をも大きく揺るがす問題の入り口だったのであって、これらの監督官庁である国土交通省からすれば、まさに一丁目一番地、やるべき行政対応の本丸とも言える大事な分野で起きた大変な事態であると言えます』、「BM社は保険金の不正請求と並んで民間車検制度でも問題を起こしていました。全国各地に自動車整備士を多数抱えており、23年3月には熊本県で、同6月には栃木県で不正車検が行われていたことが発覚した・・・民間車検制度をも大きく揺るがす問題の入り口だったのであって、これらの監督官庁である国土交通省からすれば、まさに一丁目一番地、やるべき行政対応の本丸とも言える大事な分野で起きた大変な事態である」、なるほど。
・『他の会社でも類似の不正が芋づる式に発覚  そこへ、同じく便利な自動車には残念ながら付き物の事故対応において、前述の通り損害保険(自動車保険)においても完全な利益相反による癒着が発生し、国民の足である自動車が割と雑な感じで業界大手の食い物にされていたというのはかなりの衝撃となっておるわけです。 そればかりか、一連のBM問題が世間的に着火すると、BM社だけでなく、ほかの中古車販売大手でもほぼ類似の不正請求や書類偽造、さらには不正車検を懸念させる公益通報が急増。似たようなことはどこでもしているのよという中森明菜少女A状態となっております。ネタが古くて申し訳ございません。 言うなれば、中古車販売や民間車検、車両整備にいたるまで、かなり広範囲に、業界全体で、適法とは言えない方法で素人を食い物にする仕組みがあったのではないかと懸念される事態であると言えます。まあ、業界大手同士に資本関係があったり、不正も含めて仕事の仕方を覚えて独立する人もいたりで、儲けるノウハウは違法性含め共通なのも仕方がないのかもしれませんが、やられた側はたまったものではありませんね。) この記事を読んでいるあなた。そう、あなた、あなたが過去に「変だな」と思う車両整備や車検、保険取り扱いがあるようであれば、いますぐこちらの窓口に書式揃えて「変だったぞ」と通報してみてください。 指定自動車整備事業者における不正車検通報窓口のご案内https://www.mlit.go.jp/jidosha/fuseishaken_tsuho.html』、「一連のBM問題が世間的に着火すると、BM社だけでなく、ほかの中古車販売大手でもほぼ類似の不正請求や書類偽造、さらには不正車検を懸念させる公益通報が急増。似たようなことはどこでもしているのよという中森明菜少女A状態となっております」、なるほど。
・『通報窓口などからの不正取引の相談は5年間で4万件以上  あまりにも不正の種類や件数が多くてめまいがする状態なのですが、それもそのはず、BM社の悪しき業界慣行が産経新聞により報じられたのは2016年であり、しかもこれらの問題はその5年前の2011年からBM社内で行われていたと指摘されています。 折しも、BM社が2012年7店舗だったものが2016年には97店舗と急拡大している時期に行われていたものであることは間違いなく、中古車販売を本業とする上場企業も買収して拡大基調にありました。これらの猛烈なノルマ主義によって支えられた成長路線は、結果的に、ヤバいことでも除草剤散布でもなんでもやって、客を食い物にしないと達成できない目標を背負わされた現場によって実現されてきた面もあります。 そして、国会が開けば議員から質問も多数飛び出すでしょうが、国土交通省でもこれらの問題は一部把握されており、通報窓口などからの不正取引の相談は5年間で4万件以上にも上ると見られます(証拠が揃わず調査に着手できないなど、窓口が正式に受理できた件数は少数であるとも言われていますが)。言うなれば、10年以上前からBM社の適切とは言えない取引は業界の中でも知るところとなっていたが、なんとなく行政対応するべき機運が生まれずそのまま15年ぐらい経過しちゃった、ということになります。 国土交通省の人たちも「疑わしいけど確証はなく、いずれ爆発するものという認識はあった」ようなので、人事のたびに申し送りされる赤ひげ危機一発のようなものだったのでしょう』、「通報窓口などからの不正取引の相談は5年間で4万件以上にも上ると見られます(証拠が揃わず調査に着手できないなど、窓口が正式に受理できた件数は少数であるとも言われていますが)。言うなれば、10年以上前からBM社の適切とは言えない取引は業界の中でも知るところとなっていたが、なんとなく行政対応するべき機運が生まれずそのまま15年ぐらい経過しちゃった、ということになります」、とんでもない話だ。
・『23年1月に第三者委員会が設置されるが…  最初にBM社に関するタレコミなどから日本損害保険協会の知るところとなったのは2021年9月ごろからで、翌22年に損保ジャパン、東京海上日動、三井住友海上3社がおのおの抜き取り調査を実施した結果クロ判定。さすがにマズかろうということで、一斉にBM社への事故車両などの入庫誘導・紹介を停止しています。そりゃそうですね。 しかし、BM社が「(保険金の不正請求などの)疑いとなる事案は(担当した工場の)スキル不足や連携ミスによるもので、組織的な不正ではない」と回答し、それをうっかり信じた損保ジャパンが報告を受けた翌月22年7月には疑いは晴れたとばかりに入庫誘導を再開。あ、保険加入の件数を増やして売り上げが欲しかったんすね』、「BM社が「(保険金の不正請求などの)疑いとなる事案は(担当した工場の)スキル不足や連携ミスによるもので、組織的な不正ではない」と回答し、それをうっかり信じた損保ジャパンが報告を受けた翌月22年7月には疑いは晴れたとばかりに入庫誘導を再開」、「損保ジャパン」は保険契約欲しさに不正請求をまともに調べなかったようだ。
・『BM「調査報告書」その内容は? ・・・ただ、なにぶんBM社はBM社ですので、翌々月の9月には再び派手にやらかして工場長ら(当時)による会社ぐるみの組織的関与が告発され、これが発覚すると、損保ジャパンがまた入庫誘導を取りやめ。さすがにアカンやろということで、23年1月にBM社の中で第三者委員会が設置されるも、その報告書は一部が隠蔽された形でひっそりとBM社のサイトの中に掲載され、何事もなかったかのように騒ぎを黙殺し、スルーするタマホーム作戦に打って出ます』、「報告書は一部が隠蔽された形でひっそりとBM社のサイトの中に掲載され、何事もなかったかのように騒ぎを黙殺」、悪どいやり方だ。
・『どういう着地とするべき  不正請求問題にあたっては、東洋経済オンラインが22年8月から年末にかけて、BM社と損保ジャパンほかの問題について中村正毅さんが記事にしておりましたが、そこから約10か月かけて、ようやく代表取締役の辞任も含めた事後対応を軸とした記者会見と、国土交通省や金融庁からの怒られに発展することになります。 さらには、BM社が車両用部品や修繕において下請けで使っていた会社からの告発(下請法違反)や、本来取り扱う顧客の個人情報は自動車修理など特定業務を実施するためだけに使われるべきところ、不正に名簿屋などに売却されていた疑いなども取り沙汰され、内部通報制度に不備があったとの指摘も出たため、公正取引委員会や個人情報保護委員会、消費者庁マターの事案も出てきています。何というか、いまごろ出てきたオールスターな感じすらします。 もちろん、刑法詐欺罪での告訴が結成される被害弁護団から出されるとなれば、警察庁や法務省の話にもなり、本社のある六本木ヒルズに東京地検特捜部が段ボールもってやってくることもあり得ます。そのぐらい、熱量の高い事件となり大炎上前の焦げ臭さを強く感じます。 問題は、BM社に限って言うならば、本件はどう着地させるべきかになってきます』、「BM社が車両用部品や修繕において下請けで使っていた会社からの告発(下請法違反)や、本来取り扱う顧客の個人情報は自動車修理など特定業務を実施するためだけに使われるべきところ、不正に名簿屋などに売却されていた疑いなども取り沙汰され、内部通報制度に不備があったとの指摘も出たため、公正取引委員会や個人情報保護委員会、消費者庁マターの事案も出てきています。何というか、いまごろ出てきたオールスターな感じすらします」、なるほど。 
・『少なくとも、2011年から現在まで26万台以上の再検査と補償が必要に  かつて、大変な問題となった耐震偽装問題(2005年)では姉歯建築設計事務所とヒューザー社が断罪され、広く耐震偽装に関わったとされる一級建築士や建築事務所、建設会社の問題は不問とされ、その代わり、建築基準法が改正されて、実質的に問題に蓋がされましたが、こちらも建設と設計というプロが関わる仕事で起きた、利益優先の民間が適当にやった仕事の結果、業界全体が不信感に見舞われるという一件となりました。 この耐震偽装問題の根幹は、99年に建築確認申請制度において、建築設計における確認検査処分を民間確認検査機関に委譲できるようになったことです。これまで地方自治体に置かれた「建築主事」が携わる業務を、民間でもおこなえるように開放したため、本来なら疑われることがない前提で運用されていた 国土交通大臣認定の構造計算プログラムの改竄を行い、その改竄された計算結果で建築確認申請が承認されるという、民間委託あるあるが勃発した結果、4万棟以上とも言われる耐震偽装の疑いがある建築物があるのではないかと大きな騒動となったのです。) 同様に、今回のBM社の民間車検制度が実質的に悪用され、国土交通省が顔真っ赤になるのも当然です。また俺のお膝元で派手にやらかしやがって。車検なんてその辺で走ってる車全部が対象ですから、そこらじゅうで適当な感じで車検やっちったオンボロが走ってる可能性は否定できず、車検制度全体に対する不信感にならないように手当てをし、過去に遡及して、車検をやり直さなければならないかもしれません。 21年には車検制度の指定工場であったトヨタ系列の販売会社が不正車検を派手にやらかして、18年から21年までの違反行為の対象5,158台すべてが再検査の対象となったことを鑑みると、行政の公平性の観点から、BM社の不正車検が問題だとするならば少なくとも2011年から現在に至るまで年間26万台以上(もちろん廃車となった車両も含め)の再検査と補償が必要になります。 最後まで、BM社や創業家で当時経営者だった兼重宏行さん、宏一さん父子が今後民事刑事両面から責任を問われて最後まで再検査や補償を行うのかが見ものです。 やっちゃえ再検査。 これに関わった自動車整備士も、悪質なものは全員資格剥奪になってしまいます。大変なことだよねと思うんですが、そもそも車検できた車両を見てもいなかったレベルから意図的に部品を外すなどして不正に車検費用を請求したレベルまであらゆる犯罪のデパートになっていたことを考えれば、ケツ毛抜かれるまで追い込まれても仕方がないことなのかなと思います』、「21年には車検制度の指定工場であったトヨタ系列の販売会社が不正車検を派手にやらかして、18年から21年までの違反行為の対象5,158台すべてが再検査の対象となったことを鑑みると、行政の公平性の観点から、BM社の不正車検が問題だとするならば少なくとも2011年から現在に至るまで年間26万台以上(もちろん廃車となった車両も含め)の再検査と補償が必要になります」、大変だ。
・『今回一番損をしたのは…  さらに、損害保険の保険金の不正請求に関しては、過去の事例では武富士事件(99年)やグッドウィル事件(07年)、商工ファンド事件(14年)と同様に、事件発生からの営業停止処分、そこから会社更生法申請後に、被害者への補償を充分にすることなく大金を持った創業者が資産を逃避させ、民事裁判で長く争われるも逃げ切られるという事案も想起されます。単に長年の悪事を暴くというだけでは駄目で、これらの悪質な経営を行った立役者から、過去やらかした分の責任を取らせて私財を吐き出させるまでが遠足ですよとも言えるのです。 BM社についても、豪邸がどうだとか、豪邸に生えている樹木に除草剤を撒けなどと中傷の対象になってしまっていますが、個人的には組織的関与を認めないまま経営から退いた創業者が、業界の信頼だけでなく行政の有りようまでも崩壊させた責任を取らず、被害者とも言える被保険者・普通の国民への賠償責任もきちんと担うことなく逃げ切られないようにするためにどうするべきか、というのは、強く問われなければならないと思うのです。 日頃あれだけ検査業務で銀行マンを奔走させている金融庁なのだから、さぞかしきちんと指導してくださるのは間違いないだろうと思うのですが、同様に、今回組織的関与が無かった、経営陣も知らなかったとぬけぬけと公言した損保ジャパンの詰め腹もきっちり取らせる必要があるのではないでしょうか。客観的に見て、お前ら嘘ばっかりついとるやろ。 今回の不正請求に関しては、実際のところ一番損をしたのは損保ジャパンではなく、損保ジャパンに加入していて問題を起こしていない一般契約者ということになるからです。まともな契約者・被保険者が、行政の怠慢とも言える損保会社のやらかしの犠牲者となることに他ならず、鎌倉幕府の伝統に基づいて族滅の処分を下して欲しいと願うところです。) 中古車市場については、前述の通り今回のBM社だけでなく他の大手2社でも程度の差はあれ同じようなことを繰り返していた疑いは強くあります。今回の問題が非常に厄介なのは、起きている事件それもこれも、自動車業界全体が大変革の真っただ中にあるからです。 今後EV自動車が増えていき、車がすべてコネクテッドになっていく将来の日本の自動車移動(モビリティ)環境において、シェアライドからスマートシティまで「どのようにして、国民が安心して自動車に乗り、できる限り少ない事故で安全に、少ないエネルギー消費にしていくのか」という業界全体のグランドデザインをどう国土交通省が描くつもりなのかという長期的なビジョンが求められています。 ぶっちゃけ、中国製EVバスが大量に市中に走ったり、軽自動車がすべてガソリンから電池に置き換わり、自動運転技術が確立してすべての車がネットに繋がるぞといったとき、自動車業界、モビリティ行政はどうなるのか。依存する電力インフラからネットへの接続、自動車の所有に関する問題にいたるまで、さまざまな問題が予見不能な状態で議論が重ねられているのがいまです。 この自動車整備や車検制度もさることながら、耐用年数が過ぎたらゴミ同然となる電池を乗せたEVが無価値になって中古車市場に流れてくるところでどうやって環境整備をするつもりなのかという話になるわけですよ』、「組織的関与を認めないまま経営から退いた創業者が、業界の信頼だけでなく行政の有りようまでも崩壊させた責任を取らず、被害者とも言える被保険者・普通の国民への賠償責任もきちんと担うことなく逃げ切られないようにするためにどうするべきか、というのは、強く問われなければならないと思うのです・・・今回組織的関与が無かった、経営陣も知らなかったとぬけぬけと公言した損保ジャパンの詰め腹もきっちり取らせる必要があるのではないでしょうか・・・耐用年数が過ぎたらゴミ同然となる電池を乗せたEVが無価値になって中古車市場に流れてくるところでどうやって環境整備をするつもりなのかという話になるわけですよ」、その通りだ。
・『支持率回復のチャンスカード到来?  一昨年、日本自動車整備振興会連合会が提出した資料などを見ていても、たぶん過渡的な環境で法的整備や人材育成をどうしていきましょうかという手探りの状態ですので、BM事件を機に、政府主導でも国交省でも構わないのでどーんと未来を見せて欲しいんですよね。 これらの課題は、いま何故か静かですが本来ならば岸田文雄政権が中心となって捌かなければならない問題のはずです。 本件こそ、国民生活の基盤に関わる問題であることは間違いございませんので、支持率回復のチャンスカード到来という発想で、どうか前のめりで岸田文雄さんにはご対応賜りたいと願う次第です』、いまや岸田政権にはそんな余裕はなくなっており、残念ながら殆ど期待できない。

第三に、8月15日付けPRESIDENT Onlineが掲載した小宮コンサルタンツ会長CEOの小宮 一慶氏による「まさかの生き残り計画も…四面楚歌BMに数百億円貸している"メガバンク"が悶絶する大人の事情 生殺与奪の権を持つ三井住友、広島、三菱UFJ、みずほ、中国は融資するのか」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/72803
・『自動車保険の保険金を不正に水増し請求していたBM。経営コンサルタントの小宮一慶さんは「同社の純利益は年150億~200億円と推測されるが、今後の業績悪化は必至。命運を握っているのは3メガバンクを含む銀行団の融資動向だ」という――』、興味深そうだ。
・『四面楚歌のBMの現状  ビッグモーター(以下、BM)の問題が大きく取り上げられています。修理に預けられた車を故意に傷つけ保険金を多く請求するという詐欺的行為や、店舗前の歩道にある街路樹を枯らせるなど言語道断と言っていい行為を繰り返していたわけで、経営コンサルタントとしてももちろん許せる話ではありません。そして、世間の大きな関心のひとつは、この後、BMの命運はどうなるのかということでしょう。今回は、財務状況などを勘案しながら、今後を占っていきたいと思います。 BMは上場していないため、正確な財務状況は分かりません。ここで説明するのは、あくまでも新聞やテレビで報道されている内容がベースで、その報道内容も推測の域を出ないことをあらかじめご了承ください。 まず、売上高ですが、昨年度で5800億円程度といわれています。そのうちの大半が中古車の販売です。記者会見で兼重宏行社長(当時)が修理部門を「2%程度」という話をしていましたが、売り上げの大部分(9割程度)が中古車販売で、残りが修理や保険販売などと考えられます。 中古車販売の利益率は車によって大きな差があると考えられますが、競争の激しい業界でもあり、おおむね15%から20%前後であると見られます。粗利率がその程度だと仮定すると、ざっくり1000億円程度を全事業から得ていると考えられます。 一方の経費ですが、従業員が正社員5000人、非正規従業員が1000人の合計6000人と同社ホームページにはあります。給料は比較的高いと言われており、正社員の年収が平均800万円、非正規社員の年収が500万円と仮定すれば、450億円程度の人件費がかかっていることになります。 また、よく見かけたテレビCMなど広告宣伝費も膨大な額、おそらく年間で数百億円程度に達するはずです。他に、店の維持費や賃借料、店舗設備などの減価償却費などを考えると、あくまで推測ですが、全体で700億から800億円程度の経費がかかっており、営業利益で200億から300億円程度と推測できます。税金を30%程度と考えると、純利益でざっくり150億円から、200億円程度と考えられ、営業キャッシュフローも同程度だと推測できます。つまり、1年でそれくらいのキャッシュフローは通常の営業活動で稼いでいたということです』、売上は「1000億円程度を全事業から得ている」、「営業利益で200億から300億円程度と推測」、「純利益でざっくり150億円から、200億円程度と考えられ、営業キャッシュフローも同程度」、まずまずだ。
・『急拡大のため3メガバンクなどから数百億円借り入れ  BMは膨大な広告宣伝費を投じるとともに、店舗を急拡大することで業容を拡大していました。300店舗を超える店舗を擁しています。 店舗拡大には、土地の取得とともに、店舗建設の費用が必要となります。土地は賃借物件が多いと考えられますが、店舗は自前で立てる必要があります。また、拡大にともなう人件費の増加もあり、いずれにしても多額の資金が必要なことは言うまでもありません。 店舗展開で事業を拡張するビジネスモデルの場合には、店舗建設のためや中古車の在庫確保のために、先に資金が必要なことが多いのです。BMのホームページには、取引銀行として、三井住友、広島、三菱UFJ、みずほ、中国の各銀行名が取引銀行として記載されています。他にもあると記されています。通常は関係の深い順に記載することが多いので、これが融資順位に近いと考えられます。 山口県岩国市がスタートのBMですが、当初は地元の取引銀行で資金を賄っていたのが、業容拡大によりメガバンクなどと取引を拡大していったと考えられます。 融資残高を推測するのは難しいですが、3メガバンクを含むこれだけの銀行と取引があることを考えれば、数百億円規模の借り入れがあると考えて間違いはないでしょう。8月11日付けの日経朝刊では昨年9月末で600億円規模の借入れがあったとされています。 先にも述べましたが、店舗拡大をともなう業容の拡大を行う場合には、多額の設備投資資金が必要になるとともに、在庫の維持や人件費などの資金も必要となるため、数百億円規模の借り入れを今でも長短合わせてしていると推測できます。 つまり、のちに詳しく述べますが、同社の命運を握っているのは、各銀行の融資姿勢だと言えます』、「昨年9月末で600億円規模の借入れ」、「同社の命運を握っているのは、各銀行の融資姿勢」、なるほど。
・『生き残りをかけて中古車の買い取りに活路  評判の急激な悪化により、業績が大きく落ちていることは間違いありません。 具体的には、この状況でBMに修理や車検を出す人はいないでしょう。私の知り合いも、同社に車検に出したら、法外な費用を請求され、さんざん交渉しても一切それには応じず泣く泣く支払ったと言っていましたが、もともと評判が悪い同社に、今後修理や車検を持ち込む人はまずいないと考えられます。 さらに、損保各社も、深い関係を取りざたされている損保ジャパンはじめ、代理店契約の継続は難しいと考えられます。金融庁が調査に入っていますが、金融庁としてもある意味メンツがつぶされたわけですから、別に起こっている損保各社の談合問題も影響し、今後はBMと関わりを持たない方向で進むものと考えられます。 注目は、中古車の買い入れ、販売の事業です。このうち、この状況で中古車をBMから買う人も減少する、少なくとも当面は激減すると予想できます。さらに、中古車にローンをつけるリース会社も、BMとの関係を見直す動きが進んでおり、また、広告掲載も手控えの動きが出ていることともあいまって、中古車販売も当面は苦境に立たされることは間違いないでしょう。 中古車の買い取りはどうでしょうか。こちらも取り扱いは減ると考えられますが、ある程度はビジネスを維持できるかもしれません。買った後で値引かれるなどの苦情は出ているようですが、とにかく他社よりも数万円高い値段を提示すれば、車を売る人は一定数いると考えられます。 中古車市場はクレームの多い業界ですが、消費者からのクレームのうち約2割はビッグモーターに対するものだと言われています。違う見方をすれば、残りの8割は他社だということで、ある意味クレームが絶えないマーケットだと言えます。その点を考えれば、他社に持ち込んでも似たり寄ったりで、そうなると買い取り価格が大きな決定要素です。 この状況でBMは、生き残りをかけて中古車の買い取りに活路を見いだそうとするでしょう。その際には、買取り後の値引きなどクレームの極力回避とともに、他社より少し高い値段での買い取りを行う可能性もあり、そうであれば、業容は縮小するものの中古車買い取りの事業はある程度は継続できると考えます。 もちろん、買い取った中古車を自社店舗で売却することは難しくなっているので、オークションに出品することで売却を行うものと考えられます』、「他社より少し高い値段での買い取りを行う可能性もあり、そうであれば、業容は縮小するものの中古車買い取りの事業はある程度は継続できると考えます。 もちろん、買い取った中古車を自社店舗で売却することは難しくなっているので、オークションに出品することで売却を行う」、なるほど。
・『銀行の態度いかんで「生きるか死ぬか」が決まる  こうした状況の中で、利益、そしてキャッシュフローの確保ができるかというのが最大の焦点ですが、業容が大きく落ちている中での利益確保はかなり難しいと考えます。先に説明したように、中古車の買い取りおよびそのオークションへの販売である程度のビジネスはやれると思いますが、これまでのような利益確保は到底望むべくもありません。 また、従業員の給与のかなりの部分は歩合だったらしく、その引き留めのために、今後は給与の補塡ほてんを行うとBMは言っています。辞めた従業員が同社のことを非難することも多く、それを避けたい意味合いもあると考えられますが、これも資金負担がかかります。 こういう点を考えれば、今後、銀行が融資を継続するかが焦点です。金融庁の保険を担当する部門と銀行を担当する部門はもちろん違いますが、金融庁は各取引行のBMに対する融資姿勢を厳しくチェックする可能性もあります。ただ、銀行としてはビッグモーターが破綻した場合には、十分な担保も取れていないでしょうから大きな損失が出るという問題があります。 こうした状況でBMの命運は取引銀行の融資姿勢にかかっていると言えますが、BMにとっては簡単な話ではないことは容易に想像がつきます。 8月10日にBMは都内で取り引きのある銀行団と会合を開き、8月半ばに期限を迎える借入金90億円の借り換えを要請したものの、銀行団はこれに応じない方針を伝えたとの報道がありました。 これを受けて、「犯罪行為をしたことが濃厚な会社にお金を貸さないでほしい」「反社的企業は救済しない、という判断を下すべき」といった声も上がっています。銀行も難しい選択を迫られています』、「銀行としてはビッグモーターが破綻した場合には、十分な担保も取れていないでしょうから大きな損失が出るという問題があります。 こうした状況でBMの命運は取引銀行の融資姿勢にかかっている・・・8月10日にBMは都内で取り引きのある銀行団と会合を開き、8月半ばに期限を迎える借入金90億円の借り換えを要請したものの、銀行団はこれに応じない方針を伝えたとの報道がありました」、なるほど。
・『兼重親子が保有する住宅などの財産を担保にするか  こうした中、前社長と前副社長の兼重親子は、BMの経営から退きました。責任を取った形にはなっていますが、経営責任は法的には追及できないということです。兼重前社長が保有するビッグアセットという資産管理会社がBMの全株式を保有しており、議決権を確保したまま経営責任から逃れた形となっています。 ちろん、BM株の価値が落ちた場合には、かれらの資産価値は減りますが、それだけで終わりということになりかねません。現場で器物損壊などの刑法犯が大量に出る可能性があるにもかかわらずです。 銀行は、BMの資金繰りを助けるのに際して、ビッグアセットが保有する(つまり兼重親子が実質的に保有する)住宅などの財産を担保に入れることを要求するかもしれませんが、法的にはその義務はありません。 いずれにしても、今後の銀行のスタンスとBMの命運に注目です』、あとの記事にある「伊藤忠」がBMへのTOB検討」が最大の注目点だ。

第四に、9月6日付け文春オンライン「《ルールや方針が「BM化」》中古車販売業界第2位「ネクステージ」の不正を現役社員、元社員が続々告発!「BMよりエグい」「わざとタイヤをパンクさせて…」」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/65587
・『BMによる保険金の不正請求問題が明るみに出て、中古車販売業者に注目が集まる中、BMに次ぐ業界第2位「ネクステージ」でも同様の不正が横行している疑いがあることが「週刊文春」の取材でわかった。複数の現役社員、元社員が告発した。 ネクステージは中古車販売でBMに次ぐ業界第2位の大手企業だ。東証プライムに上場しており、売上高は2022年に4100億円を突破。この10年で10倍の成長を遂げている。車だけではなく、車両保険、タイヤ・ガラス保証、塗装など、さまざまな付帯サービスを販売している。 BM内で横行していた保険金の不正請求が大きな騒ぎになっていた先月、ネクステージは率先して社内調査を実施。「不正な案件は確認されなかった」と公表している。 ところが、同社の元社員はこう語る。 「不正がないなんてありえませんよ。なんならBMよりエグいことをしていましたから」 一体、どのような不正が行われているのか。代表的な事例の1つが“パンク不正”だ。現役の営業社員が明かす。 「保証サービスのひとつであるタイヤの無料交換はパンクしていることが条件。ですが中古車を買うとき、保証への加入を渋る客がいたら、保証を売るために『タイヤが古くなったら、パンクさせればいいんですよ』と客に“悪知恵”を吹き込む営業マンは非常に多かった。小さなことかもしれませんが、これは詐欺行為です」 タイヤを無料で交換する時でも整備の工賃代は別途かかり、それも売り上げとして計上できる。そのため、わざとタイヤをパンクさせたり、パンクしたように見せかける不正も横行していたという。 「太めのネジの頭だけを残してタイヤの上に載せれば、釘が刺さっているように見える。客には『パンクしていました』と写真を見せて報告し、新品のタイヤに交換する。これで工賃分数字が稼げる。無傷の古いタイヤは自分の懐に入れて、オークションで横流しするんです」』、「ネクステージは中古車販売でBMに次ぐ業界第2位の大手企業だ。東証プライムに上場しており、売上高は2022年に4100億円を突破。この10年で10倍の成長を遂げている。車だけではなく、車両保険、タイヤ・ガラス保証、塗装など、さまざまな付帯サービスを販売している・・・ネクステージは率先して社内調査を実施。「不正な案件は確認されなかった」と公表している。 ところが、同社の元社員はこう語る。 「不正がないなんてありえませんよ。なんならBMよりエグいことをしていましたから」 一体、どのような不正が行われているのか。代表的な事例の1つが“パンク不正”だ・・・タイヤが古くなったら、パンクさせればいいんですよ』と客に“悪知恵”を吹き込む営業マンは非常に多かった。小さなことかもしれませんが、これは詐欺行為・・・無傷の古いタイヤは自分の懐に入れて、オークションで横流しするんです」、BM同様に悪辣だ。
・『不正が蔓延する理由は「ビッグモーター化」?  ネクステージでも不正が蔓延する理由について、10年以上勤める別の社員は「当たり前ですよ」と呆れて笑う。 「今の社長の浜脇浩次さんはBMで常務取締役まで務めた後にウチにヘッドハンティングされた。浜脇さんが入ってきた2016年頃からルールや方針が『ビッグモーター化』していった。そして、数字が全てだというおかしな社風になっていったんです」 現社長の浜脇氏は1993年にBMに入社。子会社の取締役を歴任した後、2016年に副社長としてネクステージに迎え入れられた。「BM仕込み」の経営手法で同社の右肩上がりの成長を牽引し、2022年には社長に就任している。 「週刊文春」に寄せられた現役社員らによる不正の告発。ネクステージの広報にひとつひとつ事実関係の確認を求めたところ、公式サイトに質問とそれに対する回答の全文を公表した』、「「今の社長の浜脇浩次さんはBMで常務取締役まで務めた後にウチにヘッドハンティングされた」、これではBM同様になるのは当然だ。
・『ネクステージが公開した「週刊文春」の“質問状”  タイヤの交換については、「タイヤが古くなれば、パンクさせれば無料で新品に交換できます」というセールストークをしていたのは事実かという問いに対しては〈当該案件は(中略)当社内で把握しており、当時はこのようなセールストークを想定していなかったため、厳重注意のみで対応致しました〉〈以降は社内文書にて懲罰基準を明記、(中略)詐欺行為となる旨記載しております〉と回答した。 業界第2位のネクステージの内部で何が起こっているのか。 現在配信中の「週刊文春電子版」では、“パンク不正”に加え、社員の間で行われていた保険契約数の“売買”、不正の温床を作っている「あまりにきつい」ノルマ、元BM社員の評判と社内での言動、元BM社員が起こした“パワハラ騒動”など現役社員と元社員の告発を詳しく報じている』、問題はBMと同根のようだ。

第五に、12月8日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「BM買収に伊藤忠が意欲「最高年収5000万円」超高待遇社員はどうなる?大損もあり得る5大リスクとは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/335169
・『伊藤忠の岡藤会長が、「BM買収」に前向きなコメントをしたことが話題です。しかし、BMの買収には伊藤忠が大損を引き起こすかもしれない「5大リスク」があります。さらに「最高年収5000万円」の超高待遇社員にも変化が訪れるかもしれません』、興味深そうだ。
・『伊藤忠のBM買収は「5大リスク」を伴うもの  12月5日、伊藤忠商事の岡藤正広会長がメディアの前でBM買収について前向きなコメントを話したことが話題になっています。 「中古車市場のナンバーワン」「(BMの)5500人の人たちの雇用も守ってあげたいという気持ちもある」「リスクはあるがやりたい」といった言葉です。しかしその一方で、「買収のリスクもある」とも語っています。 BMについては、伊藤忠と子会社の伊藤忠エネクス、投資ファンドのJWPの3社が資産査定を行っていて、来年春までには何らかの判断が下る予定です。 会長が前向きだからといって買収の判断になるかどうかはわかりませんが、一般論としてあれだけの悪評判を広めてしまった会社を買収することで、伊藤忠が大損をすることはないのでしょうか?  実は、伊藤忠のBM買収には大損を招きかねない「5大リスク」があるのです』、「伊藤忠」は中国の政府系企業CITICと深い関係があるので、中国経済低迷の影響も受ける筈だが、そんなことはものともせずに、BMに色気を示すとは、さすが大商社だ。
・『伊藤忠が最初に直面するのは「訴訟問題」  5大リスクとは、(1)訴訟問題、(2)事業継続リスク、(3)レピュテーションリスク、(4)人と風土の問題、そして(5)買収価格です。それぞれ順番に検討していきたいと思います。 まずは、(1)の訴訟問題から。 これは、買収条件の問題です。ビッグモーターの創業家が訴訟問題も一緒に引き受けない限りは売却しないスタンスにあるのです。 伊藤忠が乗り出す前も、ガリバーとオリックスが買収を検討したのですが、買収条件が合わずに断念しました。その際には事業だけ、つまり営業権と人員、店舗・工場などの資産のみを買い取り、損害賠償の支払いなどの簿外債務の整理は既存のBMに残したままにする営業譲渡方式を求めたのですが、それが通らなかったというのが断念の理由です。 買収する側としては営業権だけ手に入れば都合がいいためそのような条件を提示したのですが、創業家としては破産リスクを抱えたくないわけです。 伊藤忠が「訴訟問題を引き受ける」という条件までのむかどうかが、注目点です。ただこの事件、アメリカなら訴訟リスクがどれだけ膨らむかわからないぐらいの事件ですが、日本国内の事件なので賠償額は過去の事例などからある程度概算できます。 さらに、伊藤忠の強力な弁護士軍団が相手になるとなれば、多少なりとも後ろ暗い気持ちのある損保ジャパンがきちんとは訴えづらくなるなど減額要素もありえます。 そう考えると、訴訟の問題はむしろ大幅な減額の交渉材料として考えてもよいのかもしれません。 仮に伊藤忠がこの条件をのみ、買収を成功させたとしましょう。すると、(2)の事業継続と(3)のレピュテーションリスクも一緒に抱えることになります。 この二つの点で誤算が生まれた場合、今回の買収で伊藤忠が大損をする可能性が高まります』、「伊藤忠が乗り出す前も、ガリバーとオリックスが買収を検討したのですが、買収条件が合わずに断念しました。その際には事業だけ、つまり営業権と人員、店舗・工場などの資産のみを買い取り、損害賠償の支払いなどの簿外債務の整理は既存のBMに残したままにする営業譲渡方式を求めたのですが、それが通らなかったというのが断念の理由です」、「ガリバーとオリックスが買収を検討したのですが、買収条件が合わずに断念」とは初めて知った。「仮に伊藤忠がこの条件をのみ、買収を成功させたとしましょう。すると、(2)の事業継続と(3)のレピュテーションリスクも一緒に抱えることになります。 この二つの点で誤算が生まれた場合、今回の買収で伊藤忠が大損をする可能性が高まります」、なるほど。
・『「事業継続」を成功させるスキームを再建する必要も  あくまで頭の体操として、こんなスキームを考えてみましょう。伊藤忠がBMを買い取り、そのまま営業権だけを伊藤忠エネクスに売却したらどうなるでしょう。 これはジャニーズ問題のときと同じで、BMは訴訟や賠償を担当する会社として存続させ、営業権を譲渡された伊藤忠エネクスが中古車販売事業を担当する会社になるというスキームです。 店舗の看板はすべて「伊藤忠」に書き換えて営業を再開したら、中古車市場のシェアナンバーワンとしてのビジネスをその日から開始できるのではないかという考え方がベースになるのですが、もしそこに落とし穴があったとしたら…? BMは金融庁から保険代理店の資格を剥奪されていますし、国交省から34の整備工場に事業停止の行政処分が下されています。伊藤忠としては「営業権は買い取ったが別の会社だ」という主張が通らなければ、そもそも事業が再開できない可能性があるわけです。 ですから、国や損保各社と再建計画についてすり合わせをしておく必要があり、その感触次第ではゴーサインというわけにはいかないかもしれません』、「BMは金融庁から保険代理店の資格を剥奪されていますし、国交省から34の整備工場に事業停止の行政処分が下されています。伊藤忠としては「営業権は買い取ったが別の会社だ」という主張が通らなければ、そもそも事業が再開できない可能性があるわけです。 ですから、国や損保各社と再建計画についてすり合わせをしておく必要があり、その感触次第ではゴーサインというわけにはいかないかもしれません」、なるほど。
・『中身が変わったことを世間に示せなければ巨額の損失が生まれる大失敗に  仮にそれらの処分は伊藤忠の買収後に解消されるめどがたったとしても、顧客から見た評判を回復できるかどうかが、3番目のレピュテーションリスクでの課題です。 「あれは結局のところBMだろう」 と言われて顧客が戻ってこなければ、手に入れた人員、店舗・工場などがすべて負の資産へと形を変えてしまいます。 つまり、ただ看板を書き換えただけではなく、伊藤忠の買収によって中身も変わったことを世間に知らしめることができなければ、巨額の損失が生まれてしまうことになりかねないということです。 このレピュテーションリスクを回避するために重要なことは「変わった」ことを象徴する変化を起こすこと、そのわかりやすい例が著名なプロ経営者を招聘(しょうへい)することです。 伊藤忠では過去に、傘下のファミリーマートの経営を、元ファーストリテイリング副社長だったプロ経営者の澤田貴司氏に託したことがあります。それと同じぐらいのビッグネームを見つけてこなければ、BMの悪評判を覆すのは難しいかもしれません』、「「あれは結局のところBMだろう」 と言われて顧客が戻ってこなければ、手に入れた人員、店舗・工場などがすべて負の資産へと形を変えてしまいます。 つまり、ただ看板を書き換えただけではなく、伊藤忠の買収によって中身も変わったことを世間に知らしめることができなければ、巨額の損失が生まれてしまうことになりかねないということです。 このレピュテーションリスクを回避するために重要なことは「変わった」ことを象徴する変化を起こすこと、そのわかりやすい例が著名なプロ経営者を招聘することです」、なるほど。
・『平均年収1100万円、最高5000万円「超高待遇」社員たちをどうするか?  そして伊藤忠にとって4番目の問題が、人と風土の問題です。BM事件のニュースで多くの人を驚かせたことが、社員の平均年収が1100万円、最高年収が5000万円と、今の日本経済の中では異常ともいえる高水準だったことです。 社員がまじめに頑張って業界首位の業績を上げた結果の高報酬であれば何の問題もないのですが、事実としては不正を行った結果の高業績や、パワハラを行ったことで昇進した人たちがいたわけで、そのような社員が全体でどれだけいるのかが外部からは計り知れないという問題があります。 それが幹部社員なのか、一般の社員なのかわかりませんが、新会社に移行させてはいけない人材も買収の過程で一部を伊藤忠は抱えることになる。ここを切り離すことができるかどうかが、新会社の課題です。 ここを失敗すると、新会社も風土としては不正やパワハラが横行する組織になってしまい、いかにカリスマプロ経営者を起用としたとしても、事業を崩壊させてしまう結果になりかねません。 このように3番目のレピュテーションリスクと4番目の人や風土の問題は表裏の問題で、ここを解決できる自信がなければ伊藤忠は買収に進むべきではないという判断を下すことになるでしょう』、「不正を行った結果の高業績や、パワハラを行ったことで昇進した人たちがいたわけで、そのような社員が全体でどれだけいるのかが外部からは計り知れないという問題があります・・・新会社に移行させてはいけない人材も買収の過程で一部を伊藤忠は抱えることになる。ここを切り離すことができるかどうかが、新会社の課題です。 ここを失敗すると、新会社も風土としては不正やパワハラが横行する組織になってしまい、いかにカリスマプロ経営者を起用としたとしても、事業を崩壊させてしまう結果になりかねません」、確かにその通りだ。
・『買収価格の折り合いをいかにつけるかが最大の関門  そして5番目の問題ですが、これだけ問題が多い、言い換えると難易度が高いM&A(企業の合併・買収)案件ですから、買収価格はある程度低く抑えなければ経済的に採算が合わない可能性があります。 この買収案件は、すべてがうまくいけば伊藤忠商事がモビリティー事業の川上であるガソリンなどのエネルギー事業から、川下の自動車販売へと進出するチャンスとなります。同時に最初から業界最大規模の営業資産を手に入れて、結果としてモビリティー事業のバリューチェーンを一気に拡大できる可能性のある案件です。成功すれば当然、大きなリターンがあります。 一方で、もし問題がクリアできなければ伊藤忠は今後長期間にわたって負の資産と向き合って、だらだらと損失を垂れ流し続けることになる。そのリスクを勘案すれば、買収価格は企業価値よりもかなり低く抑える必要があるはずです。 そのためには創業家側の苦境を測ったうえで、売りたくなるタイミングを見極める作戦が必要かもしれません。 オリックスが直面したように、ビッグモーターの創業家側には「売らない」という切り札があります。さらに「BMの事業自体には、伊藤忠以外の候補にとってもそれを欲しいという魅力がある」ことも創業家は知っているのです。 このように五つの問題を整理してみると、伊藤忠にとってはこの買収案件、容易ならざる案件になりそうです。 とはいえこのままで進んでいけば、BMの企業価値は徐々に失われていくことも確かな話。どこかで折り合いがつくのかどうか、ディール(取引)はこの先数カ月かけて出口を模索することになりそうです』、「BMの創業家側には「売らない」という切り札があります。さらに「BMの事業自体には、伊藤忠以外の候補にとってもそれを欲しいという魅力がある」ことも創業家は知っているのです。 このように五つの問題を整理してみると、伊藤忠にとってはこの買収案件、容易ならざる案件になりそうです。 とはいえこのままで進んでいけば、BMの企業価値は徐々に失われていくことも確かな話。どこかで折り合いがつくのかどうか、ディール(取引)はこの先数カ月かけて出口を模索することになりそうです」、確かに「この先数カ月かけて出口を模索」が要注目だ。
タグ:文春オンライン「《「やってもーたー」と嗤っている場合でもない》BMを中心とする中古車と損保の問題はどう着地させるべきか」 (その1)(《「やってもーたー」と嗤っている場合でもない》BMを中心とする中古車と損保の問題はどう着地させるべきか、まさかの生き残り計画も…四面楚歌BMに数百億円貸している"メガバンク"が悶絶する大人の事情 生殺与奪の権を持つ三井住友 広島 三菱UFJ みずほ 中国は融資するのか、《ルールや方針が「BM化」》中古車販売業界第2位「ネクステージ」の不正を現役社員、元社員が続々告発!「BMよりエグい」「わざとタイヤをパンクさせて…」、BM買収に伊藤忠が意欲「最高年収5000万円」超高待遇社員はど ビッグモーター 不祥事のオンパレードなので、「騒いで騒ぎ足りないってことは・・・無い」。 任意保険の付保も広がっている。 「損保ジャパンなど損保会社とBM社など事業者との間には、そもそも明確な利益相反の関係があるはずなのです・・・麗しいプロ同士の緊張感ある本番勝負があると信じるから、みんな癒着があったとは知らずに損保会社の入庫誘導に従っていたわけですよ・・・ 損保会社は新たな契約をBM社経由で獲得するために自社の事故案件では事故査定などをBM社で行うよう事故を起こした本人に強く要望し、その本人の車には「ここ壊れてたっス」とわざと傷をつけたりパンクさせたりするなどの鬼ヤバ査定を行い、さらにその本人に新たに「損保ジャパンの自動車保険どうスか」とお薦めするなどの癒着具合があったのだとするならば最悪です」、なるほど。 「BM社は保険金の不正請求と並んで民間車検制度でも問題を起こしていました。全国各地に自動車整備士を多数抱えており、23年3月には熊本県で、同6月には栃木県で不正車検が行われていたことが発覚した・・・民間車検制度をも大きく揺るがす問題の入り口だったのであって、これらの監督官庁である国土交通省からすれば、まさに一丁目一番地、やるべき行政対応の本丸とも言える大事な分野で起きた大変な事態である」、なるほど。 「一連のBM問題が世間的に着火すると、BM社だけでなく、ほかの中古車販売大手でもほぼ類似の不正請求や書類偽造、さらには不正車検を懸念させる公益通報が急増。似たようなことはどこでもしているのよという中森明菜少女A状態となっております」、なるほど。 「通報窓口などからの不正取引の相談は5年間で4万件以上にも上ると見られます(証拠が揃わず調査に着手できないなど、窓口が正式に受理できた件数は少数であるとも言われていますが)。言うなれば、10年以上前からBM社の適切とは言えない取引は業界の中でも知るところとなっていたが、なんとなく行政対応するべき機運が生まれずそのまま15年ぐらい経過しちゃった、ということになります」、とんでもない話だ。 「BM社が「(保険金の不正請求などの)疑いとなる事案は(担当した工場の)スキル不足や連携ミスによるもので、組織的な不正ではない」と回答し、それをうっかり信じた損保ジャパンが報告を受けた翌月22年7月には疑いは晴れたとばかりに入庫誘導を再開」、「損保ジャパン」は保険契約欲しさに不正請求をまともに調べなかったようだ。 「報告書は一部が隠蔽された形でひっそりとBM社のサイトの中に掲載され、何事もなかったかのように騒ぎを黙殺」、悪どいやり方だ。 「BM社が車両用部品や修繕において下請けで使っていた会社からの告発(下請法違反)や、本来取り扱う顧客の個人情報は自動車修理など特定業務を実施するためだけに使われるべきところ、不正に名簿屋などに売却されていた疑いなども取り沙汰され、内部通報制度に不備があったとの指摘も出たため、公正取引委員会や個人情報保護委員会、消費者庁マターの事案も出てきています。何というか、いまごろ出てきたオールスターな感じすらします」、なるほど。 「21年には車検制度の指定工場であったトヨタ系列の販売会社が不正車検を派手にやらかして、18年から21年までの違反行為の対象5,158台すべてが再検査の対象となったことを鑑みると、行政の公平性の観点から、BM社の不正車検が問題だとするならば少なくとも2011年から現在に至るまで年間26万台以上(もちろん廃車となった車両も含め)の再検査と補償が必要になります」、大変だ。 「組織的関与を認めないまま経営から退いた創業者が、業界の信頼だけでなく行政の有りようまでも崩壊させた責任を取らず、被害者とも言える被保険者・普通の国民への賠償責任もきちんと担うことなく逃げ切られないようにするためにどうするべきか、というのは、強く問われなければならないと思うのです・・・今回組織的関与が無かった、経営陣も知らなかったとぬけぬけと公言した損保ジャパンの詰め腹もきっちり取らせる必要があるのではないでしょうか・・・ 耐用年数が過ぎたらゴミ同然となる電池を乗せたEVが無価値になって中古車市場に流れてくるところでどうやって環境整備をするつもりなのかという話になるわけですよ」、その通りだ。 いまや岸田政権にはそんな余裕はなくなっており、残念ながら殆ど期待できない。 PRESIDENT ONLINE 小宮 一慶氏による「まさかの生き残り計画も…四面楚歌BMに数百億円貸している"メガバンク"が悶絶する大人の事情 生殺与奪の権を持つ三井住友、広島、三菱UFJ、みずほ、中国は融資するのか」 売上は「1000億円程度を全事業から得ている」、「営業利益で200億から300億円程度と推測」、「純利益でざっくり150億円から、200億円程度と考えられ、営業キャッシュフローも同程度」、まずまずだ。 「昨年9月末で600億円規模の借入れ」、「同社の命運を握っているのは、各銀行の融資姿勢」、なるほど。 「他社より少し高い値段での買い取りを行う可能性もあり、そうであれば、業容は縮小するものの中古車買い取りの事業はある程度は継続できると考えます。 もちろん、買い取った中古車を自社店舗で売却することは難しくなっているので、オークションに出品することで売却を行う」、なるほど。 「銀行としてはビッグモーターが破綻した場合には、十分な担保も取れていないでしょうから大きな損失が出るという問題があります。 こうした状況でBMの命運は取引銀行の融資姿勢にかかっている・・・8月10日にBMは都内で取り引きのある銀行団と会合を開き、8月半ばに期限を迎える借入金90億円の借り換えを要請したものの、銀行団はこれに応じない方針を伝えたとの報道がありました」、なるほど。 あとの記事にある「伊藤忠」がBMへのTOB検討」が最大の注目点だ。 文春オンライン「《ルールや方針が「BM化」》中古車販売業界第2位「ネクステージ」の不正を現役社員、元社員が続々告発!「BMよりエグい」「わざとタイヤをパンクさせて…」」 「ネクステージは中古車販売でBMに次ぐ業界第2位の大手企業だ。東証プライムに上場しており、売上高は2022年に4100億円を突破。この10年で10倍の成長を遂げている。車だけではなく、車両保険、タイヤ・ガラス保証、塗装など、さまざまな付帯サービスを販売している・・・ネクステージは率先して社内調査を実施。「不正な案件は確認されなかった」と公表している。 ところが、同社の元社員はこう語る。 「不正がないなんてありえませんよ。なんならBMよりエグいことをしていましたから」 一体、どのような不正が行われているのか。代表的な事例の1つが“パンク不正”だ・・・タイヤが古くなったら、パンクさせればいいんですよ』と客に“悪知恵”を吹き込む営業マンは非常に多かった。小さなことかもしれませんが、これは詐欺行為・・・無傷の古いタイヤは自分の懐に入れて、オークションで横流しするんです」、BM同様に悪辣だ。 「「今の社長の浜脇浩次さんはBMで常務取締役まで務めた後にウチにヘッドハンティングされた」、これではBM同様になるのは当然だ。 問題はBMと同根のようだ。 ダイヤモンド・オンライン 鈴木貴博氏による「BM買収に伊藤忠が意欲「最高年収5000万円」超高待遇社員はどうなる?大損もあり得る5大リスクとは」 「伊藤忠」は中国の政府系企業CITICと深い関係があるので、中国経済低迷の影響も受ける筈だが、そんなことはものともせずに、BMに色気を示すとは、さすが大商社だ。 「伊藤忠が乗り出す前も、ガリバーとオリックスが買収を検討したのですが、買収条件が合わずに断念しました。その際には事業だけ、つまり営業権と人員、店舗・工場などの資産のみを買い取り、損害賠償の支払いなどの簿外債務の整理は既存のBMに残したままにする営業譲渡方式を求めたのですが、それが通らなかったというのが断念の理由です」、 「ガリバーとオリックスが買収を検討したのですが、買収条件が合わずに断念」とは初めて知った。「仮に伊藤忠がこの条件をのみ、買収を成功させたとしましょう。すると、(2)の事業継続と(3)のレピュテーションリスクも一緒に抱えることになります。 この二つの点で誤算が生まれた場合、今回の買収で伊藤忠が大損をする可能性が高まります」、なるほど。 「BMは金融庁から保険代理店の資格を剥奪されていますし、国交省から34の整備工場に事業停止の行政処分が下されています。伊藤忠としては「営業権は買い取ったが別の会社だ」という主張が通らなければ、そもそも事業が再開できない可能性があるわけです。 ですから、国や損保各社と再建計画についてすり合わせをしておく必要があり、その感触次第ではゴーサインというわけにはいかないかもしれません」、なるほど。 「「あれは結局のところBMだろう」 と言われて顧客が戻ってこなければ、手に入れた人員、店舗・工場などがすべて負の資産へと形を変えてしまいます。 つまり、ただ看板を書き換えただけではなく、伊藤忠の買収によって中身も変わったことを世間に知らしめることができなければ、巨額の損失が生まれてしまうことになりかねないということです。 このレピュテーションリスクを回避するために重要なことは「変わった」ことを象徴する変化を起こすこと、そのわかりやすい例が著名なプロ経営者を招聘することです」、なるほど。 「不正を行った結果の高業績や、パワハラを行ったことで昇進した人たちがいたわけで、そのような社員が全体でどれだけいるのかが外部からは計り知れないという問題があります・・・新会社に移行させてはいけない人材も買収の過程で一部を伊藤忠は抱えることになる。ここを切り離すことができるかどうかが、新会社の課題です。 ここを失敗すると、新会社も風土としては不正やパワハラが横行する組織になってしまい、いかにカリスマプロ経営者を起用としたとしても、事業を崩壊させてしまう結果になりかねません」、確かにその通りだ。 「BMの創業家側には「売らない」という切り札があります。さらに「BMの事業自体には、伊藤忠以外の候補にとってもそれを欲しいという魅力がある」ことも創業家は知っているのです。 このように五つの問題を整理してみると、伊藤忠にとってはこの買収案件、容易ならざる案件になりそうです。 とはいえこのままで進んでいけば、BMの企業価値は徐々に失われていくことも確かな話。どこかで折り合いがつくのかどうか、ディール(取引)はこの先数カ月かけて出口を模索することになりそうです」、確かに「この先数カ月かけて出口を模索」が要注目
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SNS(ソーシャルメディア)(その13)(【Xの嫌な感じの正体】イーロン・マスクがツイッター改名に執着する「本当の理由」、マスク氏とザッカーバーグ氏の決闘は「素手」ではなく「真剣」でやるべき…決闘の専門家がそう勧める理由 決闘とは見世物ではなく もっと厳粛で神聖なもの、広告主が相次ぎ出稿停止「X」は何がヤバいのか もはやXを使うこと自体が逆宣伝?) [メディア]

SNS(ソーシャルメディア)については、本年7月25日に取上げた。今日は、(その13)(【Xの嫌な感じの正体】イーロン・マスクがツイッター改名に執着する「本当の理由」、マスク氏とザッカーバーグ氏の決闘は「素手」ではなく「真剣」でやるべき…決闘の専門家がそう勧める理由 決闘とは見世物ではなく もっと厳粛で神聖なもの、広告主が相次ぎ出稿停止「X」は何がヤバいのか もはやXを使うこと自体が逆宣伝?)である。

先ずは、7月26日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストのジミー・ソニ氏と、同、 櫻井祐子氏による「【Xの嫌な感じの正体】イーロン・マスクがツイッター改名に執着する「本当の理由」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/326631
・イーロン・マスクがオーナーになったツイッターはその名称を廃止し「X社」となり、おなじみの青い鳥も「Xロゴ」に変更された。マスクのこの「X」への異様な執着はなんなのか。 マスクやピーター・ティールなどシリコンバレーの重要人物に徹底的に取材し、伝説的ベンチャー、ペイパル誕生の驚くべきストーリーを明らかにした全米ベストセラー『創始者たち──イーロン・マスク、ピーター・ティールと世界一のリスクテイカーたちの薄氷の伝説』(ジミー・ソニ著、櫻井祐子訳、ダイヤモンド社)を読むと、マスクのXへの偏執的なこだわりとその理由がわかる。 「ページを繰る手が止まらない」「あっという間に読んでしまった」と話題が広がる波乱万丈の『創始者たち』から、一部を特別に掲載する。 【Xの嫌な感じの正体】イーロン・マスクがツイッター改名に執着する「本当の理由」 前にもまったく同じ騒動を起こしていた((編集部注)時は2000年、イーロン・マスクの会社「X.com」と、ピーター・ティールの会社「コンフィニティ」とが合併して、のちに「ペイパル」となる伝説的ベンチャーが誕生した。 しかし、合併会社のCEOとなったマスクは、ツイッターにおいてと同様、「X」の名前に異様なこだわりを見せ、社内は大混乱となる。この様子はまさに最近どこかで見たことのある光景だ。 (マスクのX.comと、ティールのコンフィニティの間では)合併時から「社名」の火種がくすぶっていた。 ユーザーがブラウザに「www.PayPal.com」のURLを入力すると自動的に「www.X.com」のサイトに飛ばすことを決めたのは、新CEOのイーロン・マスクだったが、(ペイパルのブランドを育ててきた)多くのコンフィニティ出身者が不満に思っていた。 数字を見れば、どちらが優位かは明らかだった。2000年7月時点でペイパルの総決済件数は数百万件、これに対しX.comは数十万件だった。ユーザーはペイパルのブランドに群がり、イーベイでの出品やメールの末尾にペイパルのリンクを貼っていた。自動誘導の決定は、苦労して得たペイパルの信用を損なうリスクがあると、彼らは案じた。 マスクはペイパルを単体で呼ぶことをやめ、「X-ペイパル」に改称し、X.comの全サービスの前に「X」をつける──「X-ペイパル」「X-ファイナンス」など──と宣言した。 「ニッチな決済システムで満足するなら、ペイパルはいい名前だ。でも世界の金融システムの支配をめざすなら、Xの名前でなければだめだ。ペイパルは機能の一つに過ぎず、会社そのものではないんだから」とマスクは言った。彼にとって社名をペイパルにするのは、「アップルが社名をマックにするようなもの」だった』、「世界の金融システムの支配をめざすなら、Xの名前でなければだめだ。ペイパルは機能の一つに過ぎず、会社そのものではないんだから」とマスクは言った。彼にとって社名をペイパルにするのは、「アップルが社名をマックにするようなもの」だった」、なるほど。
・『なぜ「X」にこだわるのか?  (編集部注)マスクのこの「X」へのこだわりは、「X.com」の社名を考案した経緯を説いた同書からの抜粋記事「イーロン・マスクが考えた『一番カッコいいURL』の名前とは?」の中でも下記のとおり描写されている。 マスクはまだプロダクトもないうちにその会社の名前を決めた。X.com(Xドットコム)だ。マスクはこれが「ネット上で最もクールなURL」だと信じて疑わなかった。 マスクにとってX.comは斬新で、興味をそそり、すべての銀行・投資サービスが共存する場所という会社の精神をすっかり表現できるほど自由な名前だった。宝の地図の「X」が財宝のありかを示すように、X.comはネット上の富が集まる場所を示していた。 それにこのURLは、当時は世界に3つしかなかった希少な1文字ドメインのうちの1つなのだと、マスクは語っている(残る2つはq.comとz.com)。 マスクがこの名前をほしがったのには、実際的な理由もあった。 世界はまもなく携帯端末──はがき大のキーボード付きポケット型コンピュータ──であふれるだろう、とマスクは考えていた。そしてその世界では、X.comという短いURLは理想的だ。親指を数回タップして入力するだけで、あらゆる金融商品にアクセスできるのだから』、「マスクはまだプロダクトもないうちにその会社の名前を決めた。X.com(Xドットコム)だ。マスクはこれが「ネット上で最もクールなURL」だと信じて疑わなかった。 マスクにとってX.comは斬新で、興味をそそり、すべての銀行・投資サービスが共存する場所という会社の精神をすっかり表現できるほど自由な名前だった。宝の地図の「X」が財宝のありかを示すように、X.comはネット上の富が集まる場所を示していた」、なるほど。
・『「Xなんて、アダルトサイトみたい」  (編集部注)しかし、合併会社の社員たちはまったく納得していなかった。 その夏、問題は山場を迎えた。グループインタビューを用いた市場調査で、「X.com」より「ペイパル」という名前のほうが好感度が高いことがはっきりしたのだ。調査を主導した社員のヴィヴィアン・ゴーは、「『X』みたいな名前のサイトは信用できないとか、アダルトサイトみたいと言われ続けた」と言う。 ゴーはユーザー調査に限界があることも理解していた。「昔は『アップル』でさえおかしな名前だと思われていたわけだから」。だが彼女はユーザーの懸念を直接耳にした。「口を揃えて『この名前は信用できない。得体の知れない感じがする』とほぼ同じ言葉で言われ続けたら、そうかなと思わざるを得ない」 お堅い会計事務所のKPMGからX.comに転職したリーナ・フィッシャーは、怪しげな社名のせいで、自分やほかの社員が「気味の悪いメールをたくさん」受け取ったと言う。「うちのプロダクトといえば、ペイパルでしょう? ペイパルこそ、会社の目的を説明するのにふさわしい名前だとずっと思っていた」 他方、エイミー・ロウ・クレメントがX.comに入社したのは、その壮大なビジョンに魅力を感じたからだ。「Xが核で、その名の下にすべてのプロダクトを束ねようとしていた」と彼女は言う。 だが会社の成長の突破口を開いたのは、メールを利用した単純な決済方法(ペイパル)だった。「ペイパルのほうが成長が速かった。その一因は、X.comのアカウントは銀行口座で、運営にかかるコストも時間も膨大だったからよ。結局、銀行口座の顧客に収益性の高いほかの金融商品をすばやく売り込む見込みがないことがわかって、X.comのプラットフォームを運営する意味がなくなっていった」 マスクは名称変更は必要だと譲らず、市場調査をないがしろにして反感を買った。「ペイパル」派は、マスクがユーザーの好みより、私見をもとに意思決定を下そうとしていると感じた。 (編集部注)マスクはすでに20年以上前から、いまとまったく同じ行動を取っていたのだ。 結果、彼は誰もの不興を買い、クーデターが勃発、自らがつくったX.comのCEOの座から追放されることとなる。マスクの去ったX.comは無事に「ペイパル」に改名、いまや世界中にその名を轟かせている。 一方、マスクはその十数年後、X.comのURLをペイパルから買い戻している。 その際、「いったいそのURLで何をするのか」という声に、当時はまだ、いちヘヴィユーザーに過ぎなかったツイッターでこう返している。 「X.comの買い戻しを許してくれてありがとう、ペイパル! いまのところ何の計画もないが、僕にとってはとても思い入れがあるものだ」(『創始者たち』より) いまでは「X.com」とURLに打ち込むと、ツイッターのサイトに転送される。 X.comを追放されてからもSpaceXをつくるなど、一貫して「X」にこだわり続けてきたマスク。ツイッター買収も「宝のありかであるXに、ネット上のあらゆる富を集める」という20年来のビジョンに向かう一里塚だったようだ。はたして今回は、その遠大な野望の実現に近づくことができるのだろうか。 (本原稿は、ジミー・ソニ著『創始者たち──イーロン・マスク、ピーター・ティールと世界一のリスクテイカーたちの薄氷の伝説』からの抜粋です) 【Xの嫌な感じの正体】イーロン・マスクがツイッター改名に執着する「本当の理由」 『創始者たち』とは? 1999年、若き異端児イーロン・マスクが始めた会社X.comと、天才ピーター・ティールの会社コンフィニティは、数奇にも、シリコンバレーのとある建物で隣り合って入居していた。個性の強い精鋭集団は激しい衝突を繰り返すが、やがてペイパルという一つの会社に融合する』、「「市場調査で、「X.com」より「ペイパル」という名前のほうが好感度が高いことがはっきりしたのだ。調査を主導した社員のヴィヴィアン・ゴーは、「『X』みたいな名前のサイトは信用できないとか、アダルトサイトみたいと言われ続けた」と言う。 ゴーはユーザー調査に限界があることも理解していた。「昔は『アップル』でさえおかしな名前だと思われていたわけだから」。だが彼女はユーザーの懸念を直接耳にした。「口を揃えて『この名前は信用できない。得体の知れない感じがする』とほぼ同じ言葉で言われ続けたら、そうかなと思わざるを得ない」・・・イーロン・マスクが始めた会社X.comと、天才ピーター・ティールの会社コンフィニティは、数奇にも、シリコンバレーのとある建物で隣り合って入居していた。個性の強い精鋭集団は激しい衝突を繰り返すが、やがてペイパルという一つの会社に融合する」、なるほど。
・小さな会社から世界的CEOが続出した謎  その小さな会社を始めた「無名の若者たち」は、やがてシリコンバレーを席巻していく。 イーロン・マスク(スペースX創業、テスラ、ツイッターCEO)、ピーター・ティール(投資家)、マックス・レヴチン(スライド、アファーム創業)、リード・ホフマン(リンクトイン創業)、チャド・ハーリー(ユーチューブ創業)、ジェレミー・ストップルマン(イェルプ創業)、デイヴィッド・サックス(ヤマー創業)、プレマル・シャー(キヴァ創業)など、次々とシリコンバレーの大物を生んだ「全米史上最凶企業」ペイパルの驚くべき物語とは? 波乱に次ぐ波乱の展開で、朝日新聞(稲泉連氏評)、日本経済新聞(湯川抗氏評)、週刊東洋経済(塩野誠氏評)他、絶賛続々! 「ページを繰る手が止まらない」「面白すぎて本を閉じれない」とSNSでも話題沸騰! 読書界興奮の書。 【Xの嫌な感じの正体】イーロン・マスクがツイッター改名に執着する「本当の理由」 『創始者たち――イーロン・マスク、ピーター・ティールと世界一のリスクテイカーたちの薄氷の伝説』 ジミー・ソニ著、櫻井祐子訳 INTRODUCTION シリコンバレーの謎 第1部 大胆不敵(紹介は省略)』、「その小さな会社を始めた「無名の若者たち」は、やがてシリコンバレーを席巻していく。 イーロン・マスク・・・、ピーター・ティール(投資家)、マックス・レヴチン(スライド、アファーム創業)、リード・ホフマン(リンクトイン創業)、チャド・ハーリー(ユーチューブ創業)・・・」、さすが「シリコンバレー」だけあって、錚々たる顔ぶれだ。

次に、9月8日付けPRESIDENT Onlineが掲載した京都外国語大学外国語学部 教授の菅野 瑞治也氏による「マスク氏とザッカーバーグ氏の決闘は「素手」ではなく「真剣」でやるべき…決闘の専門家がそう勧める理由 決闘とは見世物ではなく、もっと厳粛で神聖なもの」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/73529
・『いずれも億万長者であるイーロン・マスク氏とマーク・ザッカーバーグ氏との「決闘」が注目を集めている。イタリア政府も開催を示唆するなど、ただのジョークではなさそうだ。京都外国語大学の菅野瑞治也教授は「二人には、総合格闘技による『ケージマッチ』=『決闘ショー』ではなく、真剣を用いたメンズーアのような決闘を真剣に提唱したい」という――』、興味深そうだ。
・『世界的な大富豪同士の「決闘」  米起業家イーロン・マスク(Elon Musk)氏と、米交流サイト大手メタ(Meta)のマーク・ザッカーバーグ(Mark Zuckerberg)CEOという世界的な二人の大富豪が本当に「決闘」する(かもしれない)ということで、ネットを中心に大きな話題になっている。 メタ社が、マスク氏自身が所有するX(旧Twitter)に対抗する新たなSNS「Threads」のサービスを開始したことで、両氏の対立が深まり、この「決闘」騒動は、マスク氏が「金網マッチ(ケージマッチ=囲いの中で行う格闘技)」で戦おうとザッカーバーグ氏に挑発したことから始まった。 当初はジョークかと思われたが、両氏とも戦いの準備はできているとし、お互い対戦日を提案するなどしてきたが、8月イタリア政府も同国での開催に正式に同意し、「決闘」はにわかに現実味を帯びてきた。 マスク氏(52歳)は、身長約188cm、体重約85kg、一方、ザッカーバーグ氏(39歳)は、身長約170cm、体重約70kg。体格では、マスク氏が圧倒的に有利に見えるが、ザッカーバーグ氏は39歳と若く、しかも、今年のとある柔術の大会で見事優勝している。それに負けじと、マスク氏も柔術のトレーニングを本格的に開始したと言われている。 我々日本人にとって、「決闘」はあまり馴染みがなく、イメージが湧きづらいかもしれない。しかし、ヨーロッパにおいては、「決闘」は古代から続く歴史と伝統のあるものである』、「当初はジョークかと思われたが、両氏とも戦いの準備はできているとし、お互い対戦日を提案するなどしてきたが、8月イタリア政府も同国での開催に正式に同意し、「決闘」はにわかに現実味を帯びてきた」、なるほど。
・『歴史と伝統のあるヨーロッパの「決闘」  中世のヨーロッパでは、殺人、姦通などの事件でことの真偽がはっきりしない場合、最終的な「神の裁き」として、争いの当事者またはその代理人が一対一で決闘をして、その結果に従って紛争に決着をつけるという裁判が行われていた。 これを「決闘裁判」と呼ぶが、歴史は古代ゲルマン人の時代まで遡る。一種の「神判」であり、その根底には、真実を主張している者に神は必ず味方するという考え方があった。しかし、時の経過とともに、「神判」は徐々に衰退し、14~5世紀には、「決闘裁判」も歴史舞台から姿を消し去る。 これ以降の近世のヨーロッパにおいては、名誉をめぐる争いごとなどを解決する目的で、当事者同士の合意のもと、予め了解し合った一定のルールに基づいて行う一対一の「決闘(duel)」(=果し合い)が激増していく。「決闘による無条件の名誉回復」という表現がよく使われたが、これは、何らかの理由で名誉を汚された者が、侮辱した方に決闘を挑み、侮辱した方(決闘を挑まれた方)が、その決闘の挑戦を受けるという権利と義務のことである。 侮辱を受けた者が決闘を申し入れないことや、決闘を申し込まれた者がこれを受諾しないことは、最大の不名誉とされていたので、決闘は頻繁に行われた。名誉を汚され、侮辱を受けた者は、その相手と命を懸けて決闘することによって、自分の名誉を挽回・回復し、すべてを清算することができた。 戦争との大きな違いは、関係のない者まで巻き込むことなく、当事者二人だけで争いごとを解決したわけであり、「決闘」はまさに、人類が考え出した最も賢明な紛争解決手段とも言えよう』、「中世のヨーロッパでは、殺人、姦通などの事件でことの真偽がはっきりしない場合、最終的な「神の裁き」として、争いの当事者またはその代理人が一対一で決闘をして、その結果に従って紛争に決着をつけるという裁判が行われていた。 これを「決闘裁判」と呼ぶが、歴史は古代ゲルマン人の時代まで遡る。一種の「神判」であり、その根底には、真実を主張している者に神は必ず味方するという考え方があった。しかし、時の経過とともに、「神判」は徐々に衰退し、14~5世紀には、「決闘裁判」も歴史舞台から姿を消し去る。 これ以降の近世のヨーロッパにおいては、名誉をめぐる争いごとなどを解決する目的で、当事者同士の合意のもと、予め了解し合った一定のルールに基づいて行う一対一の「決闘(duel)」・・・が激増していく・・・侮辱を受けた者が決闘を申し入れないことや、決闘を申し込まれた者がこれを受諾しないことは、最大の不名誉とされていたので、決闘は頻繁に行われた。名誉を汚され、侮辱を受けた者は、その相手と命を懸けて決闘することによって、自分の名誉を挽回・回復し、すべてを清算することができた。 戦争との大きな違いは、関係のない者まで巻き込むことなく、当事者二人だけで争いごとを解決したわけであり、「決闘」はまさに、人類が考え出した最も賢明な紛争解決手段とも言えよう」、なるほど。
・『筆者も経験した真剣を用いた「決闘」  決闘と言えば、アメリカの西部劇のようなピストルを用いてズドーンというシーンを思い浮かべる方も多いと思うが、決闘のための武器は、古代から中世、そして、近世に至るまで長らく「剣」が使用されていたわけであり、ピストルが決闘の武器として主流となったのは、ようやく18世紀中頃以降である。 19世紀後半になると、「決闘」は衰退の一途を辿っていくが、驚くべきことに、今日においても、「メンズーア(Mensur)」と呼ばれる真剣を用いた「決闘」の慣習がドイツ語圏(主にドイツとオーストリア)の一部の学生の間で連綿と受け継がれている。実は、私も留学時代にこのメンズーアを二度経験しており、筆者の頭と顔には、多少薄くなったが、その時に負った刀傷が今でもくっきりと残っている。 メンズーアの詳細について、拙著『実録 ドイツで決闘した日本人』(集英社新書)から一部をご紹介しよう。 メンズーアにおいては、刃渡り約90cm、柄(握り)が約15cmの鋭利な真剣を用いて、お互いの顔と頭を正面から斬り合うのである。頸けい動脈は勿論のこと、全身に防具をつけるため、今では死ぬことはまずない。しかし、鋭利な刃物で顔や頭を斬られることを一瞬でも考えると、その恐怖心はハンパではない。剣を交わし始めてから、しばらく、私の脚の震えが止まらなかったことを今でも鮮明に覚えている。 日本の剣道は両手で竹刀を握るが、メンズーアにおいては、片手だけで剣を持って戦う。両者の間には、剣の長さの分、つまり、約1メートルの距離しかない。そして、フェンシングのような「突き」は禁じられているが、剣の動きが1秒以上静止すると即刻失格となるので、自ずとすごいスピードで交互に斬り合うことになる。1ラウンドは僅か6~7秒、これを25~30ラウンド行うが、ほとんどの場合、15ラウンド目あたりまでにどちらかが負傷し、ドクターストップがかかり終了する。 そして、メンズーアにおいて特徴的なことは、剣道やボクシングのように動き回ったり、敵の攻撃をかわすために、上体と頭や顔を前後左右に動かすことが一切禁じられているという点である。両者は、至近距離で直立して対峙たいじして斬り合い、足を動かしたり、後ずさりしたり、顔を少しでものけぞらせたりすれば、「臆病で卑怯な態度をとること(ムッケン)」と見做され、即刻失格となる。 細かなルールが定められているという点で、確かにメンズーアはスポーツ的要素が強い。しかし、スポーツと呼べない理由は、勝敗がないという点と、殺傷能力のある真剣を用いる点にある。換言すれば、この「ムッケン」さえなければ、たとえどちらか一方が斬られたとしても、その決闘は有効なものとして認められ、その者は勇者として称えられるのである。メンズーアは、男としての真価を試される一つの厳しい試練であり、ヨーロッパに伝統的な騎士道精神に基づいた勇気を証明するための独特な儀式なのだ』、「今日においても、「メンズーア(Mensur)」と呼ばれる真剣を用いた「決闘」の慣習がドイツ語圏(主にドイツとオーストリア)の一部の学生の間で連綿と受け継がれている。実は、私も留学時代にこのメンズーアを二度経験しており、筆者の頭と顔には、多少薄くなったが、その時に負った刀傷が今でもくっきりと残っている」、筆者が「決闘」を「二度経験」したとは驚かされた。
・『伝統的な「決闘の本質」とは全く相いれない  ここまで簡単に振り返ってきたヨーロッパにおける「決闘」の歴史を鑑みれば、マスク氏とザッカーバーグ氏の「決闘」も、SNSサービスをめぐる両者の対立に一区切りをつける「決闘裁判」あるいは、近世の剣やピストルを用いた「決闘」のような意味合いがあるのかもしれない。 しかし、気になる点がいくつかある。両氏による総合格闘技は、「大規模なチャリティーイベント」として、マスク氏のXと、ザッカーバーグ氏のメタによって管理され、両方のシステムを経由して生中継される予定になっている。これは、まさに「決闘ショー」であり、ヨーロッパで伝統的に行われてきた決闘の本質とは全く相いれないものである。 植民地時代当初のアメリカは、ピューリタン的理念がすべての社会的モラルの規範であり、当然のことながら決闘に対して否定的な国であった。ところが、1776年に13州がイギリスからの独立を宣言したあたりから、ヨーロッパにおける社会的流行現象が急速にアメリカ社会に流れ込んできた。決闘作法もまた然りである』、「マスク氏とザッカーバーグ氏の「決闘」も・・・「大規模なチャリティーイベント」として、マスク氏のXと、ザッカーバーグ氏のメタによって管理され、両方のシステムを経由して生中継される予定になっている。これは、まさに「決闘ショー」であり、ヨーロッパで伝統的に行われてきた決闘の本質とは全く相いれないものである・・・1776年に13州がイギリスからの独立を宣言したあたりから、ヨーロッパにおける社会的流行現象が急速にアメリカ社会に流れ込んできた。決闘作法もまた然りである」、なるほど。
・『ヨーロッパの決闘の前提である「名誉」とは何か  1804年7月11日に合衆国副大統領アーロン・バーと合衆国建国の父の一人であるアレクサンダー・ハミルトンとの間で行われた有名な決闘は、元来、ヨーロッパの貴族階級の間で生まれた「名誉」を賭けた決闘と軌を一にするものであった。 その一方で、アメリカで広まったのは、開拓と自衛というファクターに基づいた、「名誉」を前提としない、その場の成り行きで喧嘩をし、ピストルでの決闘に発展するという、いわゆる、アメリカン・スタイルの決闘である。ペンシルベニア州では、娯楽の延長線上にある「決闘ショー」が一時流行したほどである。 それに対して、ヨーロッパの決闘には、あくまでも「名誉が著しく汚される」という事実が前提としてあった。「自己の名誉を深く傷つけられた」と感じた者が、侮辱した相手に決闘を申し入れ、決闘を要求された相手も必ずこれに応じるという暗黙の了解があった。そして、ここでいう「名誉」は、我々が日頃使っている「意地」とか「プライド」とかという軽い意味ではなく、人間としての「尊厳」、自分が生きていくうえで「これだけは譲れない」という本質的な部分と言い換えてもいいかもしれない』、「アメリカで広まったのは、開拓と自衛というファクターに基づいた、「名誉」を前提としない、その場の成り行きで喧嘩をし、ピストルでの決闘に発展するという、いわゆる、アメリカン・スタイルの決闘である。ペンシルベニア州では、娯楽の延長線上にある「決闘ショー」が一時流行したほどである。 それに対して、ヨーロッパの決闘には、あくまでも「名誉が著しく汚される」という事実が前提としてあった・・・「名誉」は、我々が日頃使っている「意地」とか「プライド」とかという軽い意味ではなく、人間としての「尊厳」、自分が生きていくうえで「これだけは譲れない」という本質的な部分と言い換えてもいいかもしれない」、なるほど。
・『「決闘」=「高貴なる野蛮」は厳粛で神聖なもの  真剣やピストルを用いた「決闘」は、絶えず「死」と隣り合わせである。それ故、これまで決闘で命を落とした多くの著名人も、そして、名もなき男たちも、そのほとんどが決闘を前にして遺言状を残してきた。決闘の場には、介添人や立会人などの関係者が居合わせるものの、決闘は、基本的には二人だけで行う究極的な清算手段である。マスク氏とザッカーバーグ氏にそこまでの覚悟があるのだろうか。 決闘は、復讐ふくしゅうのための手段ではなく、和解のための一つの媒体である。復讐はそれ自体、決闘の本質からかけ離れたものである。決闘においては、侮辱を受けた者も、侮辱を与えた者も全く対等であり、両者とも等しく、自分の命を失ったり、重傷を負ったりする危険に晒されている。このようなカタルシス的状況において、憎悪、敵意、復讐といったネガティブな感情が芽生える余地はもはやない。 このように、どう考えても、マスク氏とザッカーバーグ氏の「決闘」は、本物の決闘の本質からは逸脱したものに思えてならないが、SNSなどを通じて情報が錯綜さくそうする現代において、人間の生きる原点が何なのかを考えるきっかけを与えてくれているように思う。 私なりの結論を言うと、二人には、総合格闘技による「ケージマッチ」=「決闘ショー」ではなく、先ほど簡単に説明させていただいた、ドイツ語圏では合法化されているメンズーアのような真剣を用いた決闘を非公開で行うことを、真剣に提唱したい。ヨーロッパで連綿と受け継がれてきた「決闘」=「高貴なる野蛮」は、見世物ではなく、もっと厳粛で神聖なものだからだ』、「マスク氏とザッカーバーグ氏の「決闘」は・・・総合格闘技による「ケージマッチ」=「決闘ショー」ではなく・・・ドイツ語圏では合法化されているメンズーアのような真剣を用いた決闘を非公開で行うことを、真剣に提唱したい。ヨーロッパで連綿と受け継がれてきた「決闘」=「高貴なる野蛮」は、見世物ではなく、もっと厳粛で神聖なものだからだ」、「二人」がそんな真剣勝負をするつもりはないのであれば、世の中を騒がすのもいい加減にしてほしいものだ。

第三に、12月7日付け東洋経済オンラインがThe New York Timesを転載した「広告主が相次ぎ出稿停止「X」は何がヤバいのか もはやXを使うこと自体が逆宣伝?」を紹介しよう。
・『かつてツイッターとして知られていたソーシャルメディア企業「X」のオーナー、イーロン・マスクから口汚くののしられ、広告を出すなと言われたことを受け、複数の広告主は11月30日、Xへの出稿を近く再開する予定はないと語った』、「マスク」氏が「広告主」に対して「広告を出すな」と言ったとは、思い上がりもいいところだ。
・『広告価値よりもデカい風評リスク  少なくとも6社の広告代理店が、クライアント企業からXへの広告出稿に断固として反対されていると話す一方、ほかの広告代理店はXに広告を一切出さないよう広告主に助言したと話した。 マスクの発言によって、ここ数週間にわたり広告主がXに対して行ってきた一時的な出稿停止の一部は永久凍結に変わる可能性が高いと、これらの代理店は付け加えた。 マーケティングコンサルティング会社AJLアドバイザリーの創業者で最高経営責任者(CEO)のルー・パスカリスは、広告主はXに「戻ってこないだろう」と話した。「このプラットフォームを再び使うことによる風評リスクを相殺できるほどの広告価値はないからだ」 マスクは昨年にツイッターを買収して以降、繰り返し広告主を批判し、広告主の離反を招いてきた。Xのコンテンツモデレーション(悪質投稿の監視・削除)のルールを緩めるというマスクの計画に懸念を抱き、広告出稿を停止した広告主に対し、「核熱反応のように社名をさらして恥をかかせる」と脅したこともある。) マスクが反ユダヤ主義陰謀論の投稿に賛同し、Xでは親ナチスの投稿と一緒に広告が表示されるケースがあると研究者らが注意を呼びかけたことを受けて、ここ数週間で広告出稿をやめた広告主は200社を超える。売り上げの大半を広告から得ているXは、ブランド各社が身を引いたことで、年末までに最大で7500万ドルの広告収入を失う危険にさらされている。 状況は11月29日、ニューヨークで開催されたニューヨーク・タイムズ主催の「ディールブック・サミット」で、マスクが広告主をあおる発言をしたことで一段と悪化した。 同イベントのインタビューで、マスクは反ユダヤ主義的な投稿について謝罪し、これまで自身が行ったものの中で「最も愚かな投稿の1つ」だったと述べる一方、広告主が自分を「脅そう」としているとも語り、サミットに同席していたウォルト・ディズニー・カンパニーのCEOボブ・アイガーを名指しした。 そしてマスクは「広告を出すな」と、下品なののしり言葉を何度も使って、自らの言い分を強調した。 その数時間後、XのCEOリンダ・ヤッカリーノは被害の軽減に努めていた。ヤッカリーノはXへの投稿で、反ユダヤ主義的な投稿を支持したことに対するマスクの謝罪に注目点をずらし、Xに戻ってくるよう広告主に訴えた』、「ニューヨーク・タイムズ主催の「ディールブック・サミット」で、マスクが広告主をあおる発言をしたことで一段と悪化した。 同イベントのインタビューで、マスクは反ユダヤ主義的な投稿について謝罪し、これまで自身が行ったものの中で「最も愚かな投稿の1つ」だったと述べる一方、広告主が自分を「脅そう」としているとも語り、サミットに同席していたウォルト・ディズニー・カンパニーのCEOボブ・アイガーを名指しした。 そしてマスクは「広告を出すな」と、下品なののしり言葉を何度も使って、自らの言い分を強調した。 その数時間後、XのCEOリンダ・ヤッカリーノは被害の軽減に努めていた。ヤッカリーノはXへの投稿で、反ユダヤ主義的な投稿を支持したことに対するマスクの謝罪に注目点をずらし、Xに戻ってくるよう広告主に訴えた」、「XのCEOリンダ・ヤッカリーノは被害の軽減に努めていた」、マスク氏の尻拭いも大変なようだ。
・『広告主にまったく響かない「Xの大義」  「Xは、一部の人々が不快と思う『情報の独立性』を可能にしている」とヤッカリーノは書いた。「Xの立ち位置は、言論の自由と普通の人々が交わるユニークで素晴らしい交差点だ。Xのコミュニティーは強力であり、皆さんを歓迎する」。 Xの広報担当者はコメントの求めに応じなかった。 マーケティング・メディア・コンサルティング会社イービクイティで最高戦略責任者を務めるルーベン・シュルールスは、ヤッカリーノは言論の自由に関するXの見解をブランド各社に支持してもらおうとしているようだが、広告主がXの目標を後押しする可能性は低いと話した。 「まったく共感を呼んでいない」。シュルールスは、広告出稿の一時停止は「広告出稿の打ち切りに変わりつつある」ようだと付け加えた。Xの経営陣もしくはオーナーの変更がなければ、広告主が出稿再開を検討する可能性は低いと言う。) ほかのマーケティング会社はブランド各社に対し、Xを完全に捨てるよう勧めている。コンサルティング会社アビドス・メディアを経営し、ヘルスケア業界などで最大5000万ドルのメディア予算を持つクライアントを抱えるメディア・プランニング界のベテラン、トム・ヘスポスは11月30日、クライアントに対し、Xへの広告出稿だけでなく、投稿自体もやめるべきだという勧告を初めて正式に行ったと述べた。 ヘスポスは「良心があるなら」、マスクがXで行ってきたことに「加担し続けるようクライアントに勧めることはできない」と語った。 Xに多額の広告費を投じてきたが、最近出稿をやめた企業には、アップル、ディズニー、IBMなどがある。ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)やニューヨーク・タイムズのスポーツサイト「ジ・アスレチック」などは出稿を続けている。 29日のディールブックのイベントで、マスクは広告主のボイコットが長期化すれば、Xがつぶれる可能性があることを認める反面、Xが倒産すれば、世の中は私ではなく、広告主を責めるだろうと語った。 「私は決して迎合しない」とマスクは言った』、「マスクは広告主のボイコットが長期化すれば、Xがつぶれる可能性があることを認める反面、Xが倒産すれば、世の中は私ではなく、広告主を責めるだろうと語った。 「私は決して迎合しない」とマスクは言った」、「Xが倒産すれば、世の中は私ではなく、広告主を責めるだろう」、何と思い上がった発言だろう。
・『マスクは「広告主にとって危険なパートナー」  マーケティング管理コンサルティング会社マーサー・アイランド・グループの創業者スティーブ・ボーラーは、広告主の懸念を一顧だにしないマスクは、広告主から危険なパートナーとみなされるようになったと指摘する。 マスクの「コメントは、X、広告主との付き合い方、さらには広告主の考えを気にかけているのかどうかといったことについて、とてつもない不透明感があることを示している」と、年間1000万ドル〜5億ドルの広告予算を持つクライアントと仕事をするボーラーは語った。 「これは人としての問題でもある。ビジネスには大勢の人が関わっており、誰もが敬意を払われ、尊厳を持って扱われたいと思っている」とボーラーは付け加えた』、「広告主の懸念を一顧だにしないマスクは、広告主から危険なパートナーとみなされるようになったと指摘する。 マスクの「コメントは、X、広告主との付き合い方、さらには広告主の考えを気にかけているのかどうかといったことについて、とてつもない不透明感があることを示している」、それにしても、「マスク」氏はいつまで反「広告主」的な姿勢を続けるのだろう。
タグ:SNS(ソーシャルメディア) (その13)(【Xの嫌な感じの正体】イーロン・マスクがツイッター改名に執着する「本当の理由」、マスク氏とザッカーバーグ氏の決闘は「素手」ではなく「真剣」でやるべき…決闘の専門家がそう勧める理由 決闘とは見世物ではなく もっと厳粛で神聖なもの、広告主が相次ぎ出稿停止「X」は何がヤバいのか もはやXを使うこと自体が逆宣伝?) ダイヤモンド・オンライン ジミー・ソニ 櫻井祐子 「【Xの嫌な感じの正体】イーロン・マスクがツイッター改名に執着する「本当の理由」」 マスクのこの「X」への異様な執着 『創始者たち──イーロン・マスク、ピーター・ティールと世界一のリスクテイカーたちの薄氷の伝説』(ジミー・ソニ著、櫻井祐子訳、ダイヤモンド社) 合併会社のCEOとなったマスクは、ツイッターにおいてと同様、「X」の名前に異様なこだわりを見せ、社内は大混乱となる ペイパルの総決済件数は数百万件、これに対しX.comは数十万件だった。ユーザーはペイパルのブランドに群がり、イーベイでの出品やメールの末尾にペイパルのリンクを貼っていた 「世界の金融システムの支配をめざすなら、Xの名前でなければだめだ。ペイパルは機能の一つに過ぎず、会社そのものではないんだから」とマスクは言った。彼にとって社名をペイパルにするのは、「アップルが社名をマックにするようなもの」だった」、なるほど。 「マスクはまだプロダクトもないうちにその会社の名前を決めた。X.com(Xドットコム)だ。マスクはこれが「ネット上で最もクールなURL」だと信じて疑わなかった。 マスクにとってX.comは斬新で、興味をそそり、すべての銀行・投資サービスが共存する場所という会社の精神をすっかり表現できるほど自由な名前だった。宝の地図の「X」が財宝のありかを示すように、X.comはネット上の富が集まる場所を示していた」、なるほど。 市場調査で、「X.com」より「ペイパル」という名前のほうが好感度が高いことがはっきりしたのだ。調査を主導した社員のヴィヴィアン・ゴーは、「『X』みたいな名前のサイトは信用できないとか、アダルトサイトみたいと言われ続けた」と言う。 「「市場調査で、「X.com」より「ペイパル」という名前のほうが好感度が高いことがはっきりしたのだ。調査を主導した社員のヴィヴィアン・ゴーは、「『X』みたいな名前のサイトは信用できないとか、アダルトサイトみたいと言われ続けた」と言う。 ゴーはユーザー調査に限界があることも理解していた。 「昔は『アップル』でさえおかしな名前だと思われていたわけだから」。だが彼女はユーザーの懸念を直接耳にした。「口を揃えて『この名前は信用できない。得体の知れない感じがする』とほぼ同じ言葉で言われ続けたら、そうかなと思わざるを得ない」・・・イーロン・マスクが始めた会社X.comと、天才ピーター・ティールの会社コンフィニティは、数奇にも、シリコンバレーのとある建物で隣り合って入居していた。 個性の強い精鋭集団は激しい衝突を繰り返すが、やがてペイパルという一つの会社に融合する」、なるほど。 「その小さな会社を始めた「無名の若者たち」は、やがてシリコンバレーを席巻していく。 イーロン・マスク・・・、ピーター・ティール(投資家)、マックス・レヴチン(スライド、アファーム創業)、リード・ホフマン(リンクトイン創業)、チャド・ハーリー(ユーチューブ創業)・・・」、さすが「シリコンバレー」だけあって、錚々たる顔ぶれだ。 PRESIDENT ONLINE 菅野 瑞治也氏による「マスク氏とザッカーバーグ氏の決闘は「素手」ではなく「真剣」でやるべき…決闘の専門家がそう勧める理由 決闘とは見世物ではなく、もっと厳粛で神聖なもの」 「当初はジョークかと思われたが、両氏とも戦いの準備はできているとし、お互い対戦日を提案するなどしてきたが、8月イタリア政府も同国での開催に正式に同意し、「決闘」はにわかに現実味を帯びてきた」、なるほど。 「中世のヨーロッパでは、殺人、姦通などの事件でことの真偽がはっきりしない場合、最終的な「神の裁き」として、争いの当事者またはその代理人が一対一で決闘をして、その結果に従って紛争に決着をつけるという裁判が行われていた。 これを「決闘裁判」と呼ぶが、歴史は古代ゲルマン人の時代まで遡る。一種の「神判」であり、その根底には、真実を主張している者に神は必ず味方するという考え方があった。 しかし、時の経過とともに、「神判」は徐々に衰退し、14~5世紀には、「決闘裁判」も歴史舞台から姿を消し去る。 これ以降の近世のヨーロッパにおいては、名誉をめぐる争いごとなどを解決する目的で、当事者同士の合意のもと、予め了解し合った一定のルールに基づいて行う一対一の「決闘(duel)」・・・が激増していく・・・侮辱を受けた者が決闘を申し入れないことや、決闘を申し込まれた者がこれを受諾しないことは、最大の不名誉とされていたので、決闘は頻繁に行われた。 名誉を汚され、侮辱を受けた者は、その相手と命を懸けて決闘することによって、自分の名誉を挽回・回復し、すべてを清算することができた。 戦争との大きな違いは、関係のない者まで巻き込むことなく、当事者二人だけで争いごとを解決したわけであり、「決闘」はまさに、人類が考え出した最も賢明な紛争解決手段とも言えよう」、なるほど。 「今日においても、「メンズーア(Mensur)」と呼ばれる真剣を用いた「決闘」の慣習がドイツ語圏(主にドイツとオーストリア)の一部の学生の間で連綿と受け継がれている。実は、私も留学時代にこのメンズーアを二度経験しており、筆者の頭と顔には、多少薄くなったが、その時に負った刀傷が今でもくっきりと残っている」、筆者が「決闘」を「二度経験」したとは驚かされた。 「マスク氏とザッカーバーグ氏の「決闘」も・・・「大規模なチャリティーイベント」として、マスク氏のXと、ザッカーバーグ氏のメタによって管理され、両方のシステムを経由して生中継される予定になっている。これは、まさに「決闘ショー」であり、ヨーロッパで伝統的に行われてきた決闘の本質とは全く相いれないものである・・・ 1776年に13州がイギリスからの独立を宣言したあたりから、ヨーロッパにおける社会的流行現象が急速にアメリカ社会に流れ込んできた。決闘作法もまた然りである」、なるほど。 「アメリカで広まったのは、開拓と自衛というファクターに基づいた、「名誉」を前提としない、その場の成り行きで喧嘩をし、ピストルでの決闘に発展するという、いわゆる、アメリカン・スタイルの決闘である。ペンシルベニア州では、娯楽の延長線上にある「決闘ショー」が一時流行したほどである。 それに対して、ヨーロッパの決闘には、あくまでも「名誉が著しく汚される」という事実が前提としてあった・・・「名誉」は、我々が日頃使っている「意地」とか「プライド」とかという軽い意味ではなく、人間としての「尊厳」、自分が生きていくうえで 「これだけは譲れない」という本質的な部分と言い換えてもいいかもしれない」、なるほど。 「マスク氏とザッカーバーグ氏の「決闘」は・・・総合格闘技による「ケージマッチ」=「決闘ショー」ではなく・・・ドイツ語圏では合法化されているメンズーアのような真剣を用いた決闘を非公開で行うことを、真剣に提唱したい。ヨーロッパで連綿と受け継がれてきた「決闘」=「高貴なる野蛮」は、見世物ではなく、もっと厳粛で神聖なものだからだ」、 「二人」がそんな真剣勝負をするつもりはないのであれば、世の中を騒がすのもいい加減にしてほしいものだ。 東洋経済オンライン The New York Times 「広告主が相次ぎ出稿停止「X」は何がヤバいのか もはやXを使うこと自体が逆宣伝?」 「マスク」氏が「広告主」に対して「広告を出すな」と言ったとは、思い上がりもいいところだ。 「ニューヨーク・タイムズ主催の「ディールブック・サミット」で、マスクが広告主をあおる発言をしたことで一段と悪化した。 同イベントのインタビューで、マスクは反ユダヤ主義的な投稿について謝罪し、これまで自身が行ったものの中で「最も愚かな投稿の1つ」だったと述べる一方、広告主が自分を「脅そう」としているとも語り、サミットに同席していたウォルト・ディズニー・カンパニーのCEOボブ・アイガーを名指しした。 そしてマスクは「広告を出すな」と、下品なののしり言葉を何度も使って、自らの言い分を強調した。 その数時間後、XのCEOリンダ・ヤッカリーノは被害の軽減に努めていた。ヤッカリーノはXへの投稿で、反ユダヤ主義的な投稿を支持したことに対するマスクの謝罪に注目点をずらし、Xに戻ってくるよう広告主に訴えた」、「XのCEOリンダ・ヤッカリーノは被害の軽減に努めていた」、マスク氏の尻拭いも大変なようだ。 「マスクは広告主のボイコットが長期化すれば、Xがつぶれる可能性があることを認める反面、Xが倒産すれば、世の中は私ではなく、広告主を責めるだろうと語った。 「私は決して迎合しない」とマスクは言った」、「Xが倒産すれば、世の中は私ではなく、広告主を責めるだろう」、何と思い上がった発言だろう。 「広告主の懸念を一顧だにしないマスクは、広告主から危険なパートナーとみなされるようになったと指摘する。 マスクの「コメントは、X、広告主との付き合い方、さらには広告主の考えを気にかけているのかどうかといったことについて、とてつもない不透明感があることを示している」、それにしても、「マスク」氏はいつまで反「広告主」的な姿勢を続けるのだろう。
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イスラエル・パレスチナ(その1)(イスラエルの歴史学者が語る「ハマス奇襲」の本質 ユヴァル・ノア・ハラリ氏「ポピュリズムの代償だ」、、もはや「わざと戦争を長引かせて」政治生命の維持に固執するしかない ネタニヤフとその代償、イスラエルを止められない国々が持ち出す夢物語 30年前に合意した「二国家解決案」は理想に変質、ネタニヤフ政権とハマスの「蜜月」…次々と明らかになった「衝撃的な事実」 政権交代は時間の問題に、「ホロコースト」の過去を持つドイツで いま再び「反ユダヤ」感情が上昇か...事件発生数が急増) [世界情勢]

今日は、イスラエル・パレスチナ(その1)(イスラエルの歴史学者が語る「ハマス奇襲」の本質 ユヴァル・ノア・ハラリ氏「ポピュリズムの代償だ」、もはや「わざと戦争を長引かせて」政治生命の維持に固執するしかない ネタニヤフとその代償、イスラエルを止められない国々が持ち出す夢物語 30年前に合意した「二国家解決案」は理想に変質、ネタニヤフ政権とハマスの「蜜月」…次々と明らかになった「衝撃的な事実」 政権交代は時間の問題に、「ホロコースト」の過去を持つドイツで いま再び「反ユダヤ」感情が上昇か...事件発生数が急増)を取上げよう。

先ずは、本年10月14日付け東洋経済オンラインが掲載した歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリ氏による「イスラエルの歴史学者が語る「ハマス奇襲」の本質 ユヴァル・ノア・ハラリ氏「ポピュリズムの代償だ」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/708392
・『パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織「ハマス」は10月7日、イスラエルへの大規模な奇襲攻撃を仕掛けた。イスラエルも応酬し、双方の死者は2000人を超えている。この衝突の背景に何があるのか。『サピエンス全史』著者でイスラエルの歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリ氏(ヘブライ大学教授)の寄稿文を掲載する』、興味深そうだ。
・『「ホロコースト」を引き合いに出す事態  イスラエルの人々は今、自らが見舞われたばかりの出来事を必死に理解しようとしている。私たちはまず、今回の惨事を1973年のヨム・キプール戦争(第4次中東戦争)と比べてみた。50年前、エジプト軍とシリア軍が奇襲攻撃を仕掛け、イスラエルを立て続けに打ち負かしたが、その後、イスラエル国防軍が態勢を立て直して主導権を奪い返し、形勢を逆転させた。 だが今度の出来事は、いくつものキブツや集落で起こった大虐殺の恐ろしいニュースや画像が続々と届くにつれ、ヨム・キプール戦争とは似ても似つかないものであることに私たちは気づいた。新聞やSNSや家庭で、人々はユダヤ民族にとって最悪の時代を引き合いに出している。例えば、ホロコーストでナチスのアインザッツグルッペン(移動虐殺部隊)が村落を包囲してユダヤ人を殺害したときや、ロシア帝国でユダヤ人の大虐殺が行なわれたときのことだ。 私自身も、ベエリとクファル・アザのキブツに親族や友人がおり、ぞっとするような話を多く耳にしてきた。ハマスはこの2つのキブツを何時間も完全に掌握していた。テロリストたちは家を一軒一軒回り、組織的に家族を皆殺しにしたり、子供の目の前で親を殺したり、赤ん坊や老婆さえも人質に取ったりした。生き延びた人々は恐怖におののきながら、戸棚の中や地下室に身を隠し、軍や警察に電話をして助けを求めたが、多くの場合、救助隊が到着したときにはすでに手後れだった。) 私の99歳になる伯父と、その妻で89歳の伯母は、ベエリのキブツに住んでいる。そこがハマスの手に落ちて間もなく、まったく連絡がつかなくなった。2人は、何十人ものテロリストが暴れ回り、人々を惨殺している間、ずっと自宅で息を潜めていたそうだ。やがて私のもとに、2人が助かったという連絡があった。だが、多くの知人が人生で最悪の知らせを受け取った。 伯父夫妻はともに、たくましいユダヤ人だ。第1次世界大戦と第2次世界大戦の大戦間に東ヨーロッパで生まれ、ホロコーストですでに1つの世界を失っている。私たちは、身を守る術(すべ)のないユダヤ人たちが、ナチスの魔手を逃れるために戸棚の中や地下室に身を隠したが、誰も助けに来てくれなかったという話を聞いて育った。イスラエルは、このようなことが二度と起こらないようにするために建国された。 それにもかかわらず、なぜ今回の惨劇は起こったのか? イスラエルという国は、どうして道を見失ってしまったのか?』、「ハマスはこの2つのキブツを何時間も完全に掌握していた。テロリストたちは家を一軒一軒回り、組織的に家族を皆殺しにしたり、子供の目の前で親を殺したり、赤ん坊や老婆さえも人質に取ったりした。生き延びた人々は恐怖におののきながら、戸棚の中や地下室に身を隠し、軍や警察に電話をして助けを求めたが、多くの場合、救助隊が到着したときにはすでに手後れだった・・・イスラエルは、このようなことが二度と起こらないようにするために建国された。 それにもかかわらず、なぜ今回の惨劇は起こったのか? イスラエルという国は、どうして道を見失ってしまったのか?」、なるほど。
・『イスラエルの機能不全の真の原因は「ポピュリズム」  ある意味で、イスラエルの人々は長年の思い上がりの代償を払っているといえる。歴代の政権と多くの一般国民が、私たちはパレスティナ人よりもはるかに強い、彼らはあっさり無視できる、と感じていた。イスラエルがパレスティナ人との和解の試みを放棄し、何十年にもわたって数百万のパレスティナ人を占領下に置いてきたことは、厳しく非難されるべきだ。 破壊された建物の外にいるパレスチナ人住民。 だからといって、イスラム原理主義組織ハマスによる残虐行為は正当化できない。そもそもハマスは、イスラエルと平和条約を締結する可能性を容認したためしがなく、オスロ合意に基づく和平の進展を、ありとあらゆる手を使って妨げてきた。平和を望む者なら誰もが、ハマスを糾弾し、制裁を課し、人質全員の即時解放と、ハマスの完全な武装解除を要求しなくてはならない。 さらに、イスラエルにどれほどの責任を帰すことにしようと、それでこの国の機能不全を説明することはできない。歴史は道徳の物語ではない。イスラエルの機能不全の真の原因は、この国の不道徳とされているものではなく、ポピュリズム(大衆迎合主義)だ。何年にもわたって、イスラエルはポピュリズムの強権的指導者ベンヤミン・ネタニヤフが支配してきた。彼はPRの天才だが、首相としては無能だ。何度となく自分の個人的利益を国益に優先し、国民の内紛を誘うことでキャリアを築いてきた。能力や適性よりも自分への忠誠に基づいて人々を要職に就け、成功はすべて自分の手柄にする一方、失敗の責任はいっさい取らず、真実を語ることも耳にすることも軽んじているように見える。) ネタニヤフが2022年12月に樹立した連立政権は、最低であり最悪だ。それは、救世主メシア信仰の狂信者たちと厚顔無恥な日和見(ひよりみ)主義者たちの同盟であり、彼らは、治安状況の悪化をはじめ、イスラエルが抱える問題の数々を顧みず、際限なく権力を我が物にすることしか眼中になかった。その目標を達成しようと、極端な対立を招くような政策を採用し、その政策に反対する国家機関にまつわる言語道断の陰謀論を広め、国に忠誠を尽くすエリートたちに、「ディープステート(闇の政府)」の売国奴というレッテルを貼った。 政府は、外部からの脅威が高まっているさなかに、政策がイスラエルを危険にさらし、抑止力を損なっていると、自国の治安部隊や無数の専門家から繰り返し警告されていた。それにもかかわらず、イスラエル国防軍の参謀総長が、政府の政策が及ぼす治安上の影響についてネタニヤフに警告するために会見を求めると、ネタニヤフは会うことを拒んだ。それでもヨアヴ・ガラント国防相が警鐘を鳴らすと、ネタニヤフは彼の更迭を決めた。その後それを撤回せざるをえなくなったが、それは民衆が激しい怒りを爆発させたからにすぎない。ネタニヤフがそのような行動を長年取り続けたせいで、イスラエルが惨禍に見舞われる状況を招いたのだ。 イスラエルや、イスラエル=パレスティナ紛争をどう考えていようと、ポピュリズムがイスラエルという国家を蝕(むしば)んだことを、世界中の他の民主主義国家は教訓として受け止めるべきだ』、「イスラエルの人々は長年の思い上がりの代償を払っているといえる。歴代の政権と多くの一般国民が、私たちはパレスティナ人よりもはるかに強い、彼らはあっさり無視できる、と感じていた。イスラエルがパレスティナ人との和解の試みを放棄し、何十年にもわたって数百万のパレスティナ人を占領下に置いてきたことは、厳しく非難されるべきだ。 
・『依然として破局を防ぐことができる  イスラエルは、自らが破局を迎えることを依然として防ぐことができる。イスラエルは、ハマスをはじめ、多くの敵たちに対して今なお軍事面で圧倒的な優位に立っている。ユダヤ民族の長い苦しみの歴史の記憶が、今、国民を奮い立たせている。イスラエル国防軍その他の国家機関は、当初の衝撃から立ち直りつつある。市民社会は、かつてないような形で立ち上がり、政府の機能障害が残した多くの隙間を埋めている。市民は長蛇の列を成して献血し、交戦地帯からの避難民を自宅に喜んで受け入れ、食物や衣料、その他の必需品を寄付している。 助けが必要な今このとき、私たちは世界中の友人たちにも支援を呼びかけている。これまでのイスラエルの振る舞いには、とがめるべきことが多々ある。過去を変えることはできないが、ハマスに勝利した暁には、イスラエルの人々は現政権に責任を取らせるだけではなく、ポピュリズムの陰謀論やメシア信仰の幻想も捨て去り、そして、国内には民主主義を、国外には平和を、というイスラエル建国の理想を実現するために、誠実な努力をすることが願われてやまない。 (ユヴァル・ノア・ハラリ氏の略歴はリンク先参照)』、「平和を望む者なら誰もが、ハマスを糾弾し、制裁を課し、人質全員の即時解放と、ハマスの完全な武装解除を要求しなくてはならない。 さらに、イスラエルにどれほどの責任を帰すことにしようと、それでこの国の機能不全を説明することはできない。歴史は道徳の物語ではない。イスラエルの機能不全の真の原因は、この国の不道徳とされているものではなく、ポピュリズム(大衆迎合主義)だ。何年にもわたって、イスラエルはポピュリズムの強権的指導者ベンヤミン・ネタニヤフが支配してきた。彼はPRの天才だが、首相としては無能だ。何度となく自分の個人的利益を国益に優先し、国民の内紛を誘うことでキャリアを築いてきた。能力や適性よりも自分への忠誠に基づいて人々を要職に就け、成功はすべて自分の手柄にする一方、失敗の責任はいっさい取らず、真実を語ることも耳にすることも軽んじているように見える。) ネタニヤフが2022年12月に樹立した連立政権は、最低であり最悪だ。それは、救世主メシア信仰の狂信者たちと厚顔無恥な日和見(ひよりみ)主義者たちの同盟であり、彼らは、治安状況の悪化をはじめ、イスラエルが抱える問題の数々を顧みず、際限なく権力を我が物にすることしか眼中になかった。その目標を達成しようと、極端な対立を招くような政策を採用し、その政策に反対する国家機関にまつわる言語道断の陰謀論を広め、国に忠誠を尽くすエリートたちに、「ディープステート(闇の政府)」の売国奴というレッテルを貼った」、どうも筆者の「ネタニヤフ首相」に対するの評価はさんざんのようだ。

次に、12月7日付け東洋経済オンラインが掲載した東洋大学教授の薬師寺 克行氏による「イスラエルを止められない国々が持ち出す夢物語 30年前に合意した「二国家解決案」は理想に変質」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/719481
・『イスラエル軍によるガザ攻撃が再開され、状況の悪化がさらに深刻になっているイスラエル・ハマス紛争は、収束の道がまったく見えない状況が続いている。 そんな中、主要国の間で「イスラエルとパレスチナ国家が平和共存する」という「二国家解決案」が活発に議論され始めた。激しい戦闘のさなかに、互いに相手を国家として認めるという現実離れした夢物語のような話がなぜ今、国際社会で取り上げられているのか』、興味深そうだ。
・『パレスチナと認め合った30年前の「オスロ合意」  二国家解決案の歴史は古く、最初は1947年、独立を求めるユダヤ人とパレスチナ人の緊張が高まる中、国連が総会でこの地域を2つの国家に分割する案を採択した。 パレスチナは領土の半分以上を奪われる案だったために当然、反対したが、ユダヤ人はこの案を受け入れて翌年、イスラエルの独立を宣言した。ユダヤ人とパレスチナ人の緊張はここから一気に高まってしまった。 世界的に注目されたのは1993年の「オスロ合意」だった。 この合意でパレスチナ側を代表するパレスチナ解放機構(PLO)はイスラエルを国家として認め、イスラエルもガザとヨルダン川西岸にパレスチナ暫定自治政府を置くことを認めた。同時にイスラエル軍が占領地から撤退することも盛り込まれた。明文化されなかったものの、パレスチナ人が将来独立国家を手にすることが期待できる内容だった。) 当時、イスラエルがPLOをテロ組織と非難する一方で、PLOはイスラエルを国家と認めず激しく対立していた。にもかかわらず両者はノルウェーの首都、オスロを舞台に水面下で極秘の接触、交渉をしていたのだ。 残念ながらオスロ合意の描いた平和への道筋はわずか2年後、和平推進の中心人物だったイスラエルのラビン首相が暗殺されたためにあっけなく頓挫してしまった。 以後、イスラエルは和平に積極的だった労働党が国民の支持を失い、代わりにパレスチナに対する強硬論を掲げる右派が台頭してきた。現在のネタニヤフ首相もその勢力の一人で、極右政党や宗教政党と組んだ連立政権はイスラエル史上最も右派の政権と言われている』、「1993年の「オスロ合意」・・・でパレスチナ側を代表するパレスチナ解放機構(PLO)はイスラエルを国家として認め、イスラエルもガザとヨルダン川西岸にパレスチナ暫定自治政府を置くことを認めた。同時にイスラエル軍が占領地から撤退することも盛り込まれた。明文化されなかったものの、パレスチナ人が将来独立国家を手にすることが期待できる内容だった。) 当時、イスラエルがPLOをテロ組織と非難する一方で、PLOはイスラエルを国家と認めず激しく対立していた。にもかかわらず両者はノルウェーの首都、オスロを舞台に水面下で極秘の接触、交渉をしていたのだ。 残念ながらオスロ合意の描いた平和への道筋はわずか2年後、和平推進の中心人物だったイスラエルのラビン首相が暗殺されたためにあっけなく頓挫・・・以後、イスラエルは和平に積極的だった労働党が国民の支持を失い、代わりにパレスチナに対する強硬論を掲げる右派が台頭してきた。現在のネタニヤフ首相もその勢力の一人で、極右政党や宗教政党と組んだ連立政権はイスラエル史上最も右派の政権」、なるほど。
・『ガザの非人道的状況を国際社会は放置できない  一方のパレスチナ側はヨルダン川西岸とガザ地区が分裂し、ガザはイスラエルの存在を否定するハマスが支配し、イスラエルに対する攻撃やテロを続けている。オスロ合意にかかわったPLOのアラファト議長も死去し彼を引き継ぐ有力な指導者は登場していない。 イスラエルとパレスチナの間で和平の動きは完全に消えてしまい、国際社会も次第にパレスチナ問題に対する関心を失っていった。そればかりか同じ民族でパレスチナを支持していたアラブ諸国からは、イスラエルとの国交を樹立する国も相次ぎ、パレスチナ側は孤立感を深めていた。 そうした空気が今回のハマスのイスラエル攻撃で一変した。イスラエル軍による攻撃によって生まれたガザの非人道的状況を国際社会は放置できなくなった。かといってイスラエルやハマスの攻撃を止める手立てもない。 そこで浮上してきたのが「二国家解決案」である。) アメリカのバイデン大統領はネタニヤフ首相に繰り返し「二国家解決案が唯一の答えだ」と主張している。EU(欧州連合)のボレル外交安全保障上級代表をはじめ英仏など欧州の主要国首脳も相次いで二国家案の支持を表明している。 11月末には、スペインで開かれたアラブ・EU外相会合で、参加国は二国家解決案が必要という意見で一致した。さらに国連安保理の議論では、インドネシアやロシア、ガーナなども二国家解決案への支持を表明した。 多くの国が二国家解決論を唱えたからといって武力攻撃が止まるわけではない。にもかかわらずなぜ今、セピア色を帯びたような二国家解決案を持ち出したのだろうか』、「イスラエル軍による攻撃によって生まれたガザの非人道的状況を国際社会は放置できなくなった。かといってイスラエルやハマスの攻撃を止める手立てもない。 そこで浮上してきたのが「二国家解決案」である。) アメリカのバイデン大統領はネタニヤフ首相に繰り返し「二国家解決案が唯一の答えだ」と主張している。EU(欧州連合)のボレル外交安全保障上級代表をはじめ英仏など欧州の主要国首脳も相次いで二国家案の支持を表明している」、なるほど。
・『イスラエルに対して手を打てない国際社会  最大の理由は、イスラエルの攻撃がガザ市民の危機的状況を生み出していることに対し、国際社会はなにかメッセージを出さざるをえないためだろう。どの国の指導者もネタニヤフ首相の軍事行動やハマスの攻撃を止めることができない。また歴史的経緯もあって欧米など多くの国はイスラエルをあからさまに非難することもできない。 そんな中でイスラエルもパレスチナも一度は合意した二国家解決案は、一見説得力を持っているように見える便利な方策なのだ。 残念なことにオスロ合意から30年たち、パレスチナ問題をめぐる状況は大きく変化しており、仮に現在の紛争が停戦にこぎつけたとしても二国家解決案は簡単に実現しそうにはない。 オスロ合意を実現したイスラエルのラビン首相は、1991年の湾岸戦争時にイランがイスラエルにミサイルを発射し若者が逃げ惑う状況を見て、「紛争は自分たちの代に終わらせなければならない」と強く思ったという。和平実現に対する強い意志と情熱を持ったラビン首相がPLOのアラファト議長を説得したことで合意することができた。 それに対し現在のネタニヤフ首相は「パレスチナ国家樹立を阻止できるのは自分だけだ」などと公言している正反対の政治家だ。) そもそも二国家解決案は双方が互いに相手の存在を認めることが前提となる。しかし、イスラエルの現政権は、自国の安全のためにガザとヨルダン川西岸の占領や支配の強化、さらには一部の併合さえ主張している。これでは当事者が話し合いのテーブルにつくことさえ難しい。 またイスラエル政府はヨルダン川西岸でのユダヤ人による入植を積極的に進めている。現在、70万人以上が入植し、約60%の土地は事実上、イスラエルが支配している。その結果、パレスチナ人のエリアは飛び地でわずかに点在しているだけになっている』、「イスラエルの現政権は、自国の安全のためにガザとヨルダン川西岸の占領や支配の強化、さらには一部の併合さえ主張している。これでは当事者が話し合いのテーブルにつくことさえ難しい。 またイスラエル政府はヨルダン川西岸でのユダヤ人による入植を積極的に進めている。現在、70万人以上が入植し、約60%の土地は事実上、イスラエルが支配している。その結果、パレスチナ人のエリアは飛び地でわずかに点在しているだけになっている」、「ヨルダン川西岸・・・70万人以上が入植し、約60%の土地は事実上、イスラエルが支配」、そんなに支配が進んでいたとは初めて知った。
・『新たな対立を生むのか、入植の現状を追認するのか  仮にオスロ合意と同じようにヨルダン川西岸全域をパレスチナ国家にするとなれば、入植した70万人のユダヤ人は出ていくことになるのか。それは新たな対立を生むだけだ。だからと言って現状追認でパレスチナ人が住む飛び地だけを新しい国家とすれば、それはもはや国家としての体をなさない。 つまり入植地拡大が事実上、ヨルダン川西岸のパレスチナ国家樹立を不可能にしているのである。 またパレスチナ国家を作るとしても、現在のパレスチナ側にまともな統治主体がないことも大きな問題だ。 今回の紛争でガザ地区の統治を担っていたハマスは壊滅状態となるだろう。イスラエルは少なくともハマスによる統治は認めない。しかし、ハマスに代わる組織は想像すらできない。一方、ヨルダン川西岸を統治する立場にある暫定自治政府は、汚職と腐敗でほとんど当事者能力を失った状態にある。 統治主体なき国家はありえない。パレスチナ国家を作るためには、気の遠くなるような準備が必要になる。) さらにパレスチナ難民の扱いもある。近隣諸国にのがれているパレスチナ難民は現在、500万人をこえるといわれている。パレスチナ国家が独立すれば難民が戻ってくるのか。現在の人口をはるかに上回る難民の帰還は現実的ではない。 新たな国の安全保障はどうするのか。パレスチナ国家が独自に軍隊を持つことはイスラエルにとっては脅威そのものであり、簡単に認めることはできないだろう。 経済の面では、破壊し尽くされたガザの復興をはじめ、独自の産業も資本もないパレスチナ国家が自立できるまで、国際社会が膨大な支援を求められる。 そもそも国際社会はパレスチナ国家建設のための協力体制を構築できるのだろうか。ウクライナ戦争などで顕在化した欧米と中露の対立は、国連を機能不全に陥らせている。パレスチナ問題で欧米と中露が簡単に歩調を合わせることは想像しにくい』、「近隣諸国にのがれているパレスチナ難民は現在、500万人をこえるといわれている。パレスチナ国家が独立すれば難民が戻ってくるのか。現在の人口をはるかに上回る難民の帰還は現実的ではない。 新たな国の安全保障はどうするのか。パレスチナ国家が独自に軍隊を持つことはイスラエルにとっては脅威そのものであり、簡単に認めることはできないだろう」、「「近隣諸国にのがれているパレスチナ難民は現在、500万人をこえる」とはその扱いも重要だ。「経済の面では、破壊し尽くされたガザの復興をはじめ、独自の産業も資本もないパレスチナ国家が自立できるまで、国際社会が膨大な支援を求められる。 そもそも国際社会はパレスチナ国家建設のための協力体制を構築できるのだろうか・・・欧米と中露の対立は、国連を機能不全に陥らせている。パレスチナ問題で欧米と中露が簡単に歩調を合わせることは想像しにくい」、なるほど。
・『ガザばかりでなくヨルダン川西岸でも目立つ弾圧  かつては現実的な解決策だった二国家解決案は、30年の時を経ていまや手の届かない「理想」に変質してしまったのである。にもかかわらず多くの国がこの案を持ち出すのは、建設的な姿勢を見せるための方便としか見えない。 ガザでは連日、多くの犠牲者が出ているが、同時にあまり注目されていないがヨルダン川西岸でもイスラエル軍や入植者によるパレスチナ人への弾圧が目立っている。相互不信、憎悪の極限状態にある両者に任せても状況は改善されず、永遠にテロと武力攻撃が続くだけだ。だからと言って妙案があるわけではない。 紛争をイスラエルとハマスの問題に封じ込めないで、深刻な国際問題と認識し、国連など国際機関や主要国が連携して本気で取り組む段階にきている。主要国は二国家解決案などという夢物語でお茶を濁すのではなく、とにかくイスラエルに圧力をかけて戦闘を止めることから始めるべきであろう』、「主要国は二国家解決案などという夢物語でお茶を濁すのではなく、とにかくイスラエルに圧力をかけて戦闘を止めることから始めるべきであろう」、同感である。

第三に、12月8日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの長谷川 幸洋氏による「ネタニヤフ政権とハマスの「蜜月」…次々と明らかになった「衝撃的な事実」 政権交代は時間の問題に」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/120433?imp=0
・『テロ攻撃を1年以上前から把握  イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ政権は、イスラム過激派ハマスのテロ攻撃計画を1年以上も前から把握していたにもかかわらず、テロを防げなかった。ハマスを事実上、支援していた政権が、軍の情報と警告を無視したからだ。いったい、何が起きていたのか。 ネタニヤフ政権が「テロ計画を知っていた」という衝撃的な事実は、イスラエルの有力紙ハアレツが11月24日に報じた。それによれば、イスラエル軍は数年前に最初の兆候を入手し「1年以上前には、完全な攻撃計画が明らかになっていた」という。 ニューヨーク・タイムズは6日後の30日、攻撃計画の全容を報じた。同紙が入手した「ジェリコの壁」と呼ばれる文書によれば、ロケット砲による砲撃から始まり、ドローンで監視塔のカメラや自動機関銃を破壊、パラグライダーやオートバイ、徒歩で住民や兵士を殺害していく計画だった。 これは10月7日に実際に起きたテロと、ほとんど同じである。 文書は、イスラエル軍の規模や配置、通信連絡基点の場所も正確に記していた。イスラエル軍から機密情報が流出していた可能性も浮上している。イスラエルが、どうやって攻撃計画の文書を入手したか、も不明だ。双方のスパイが暗躍していたのかもしれない。 ハアレツやニューヨーク・タイムズが報じた背景には、ネタニヤフ政権に打撃になる内部告発が相次いでいた事情がある。 最初は、11月20日にハアレツが報じた女性兵士たちの告発だった。ガザ国境近くの監視塔で、ガザ内部の状況を監視カメラで警戒する女性偵察兵たちは、数カ月前から「異変」に気づいていた』、「ネタニヤフ政権は、イスラム過激派ハマスのテロ攻撃計画を1年以上も前から把握していたにもかかわらず、テロを防げなかった。ハマスを事実上、支援していた政権が、軍の情報と警告を無視したからだ」、思いがけないニュースだ。
・『軍事情報機関研究部門の責任者が暴露  男たちが監視塔や戦車の模型をドローンで攻撃したり、国境フェンスまで走って何分かかるか、ストップウオッチで測っていた。戦車の兵隊を拘束するリハーサルもしていた。また、高級車に乗ってやってきた覆面姿のハマス高官と思しき男たちが、現場で何かを相談している様子も目撃された。 彼女たちは上層部に異変を報告したが、無視されてしまった。 それだけではない。軍はテロ前夜、国境を守る特殊部隊を増強したが、最前線にいる彼女たちには、それを連絡しなかった。結果的に、彼女たちは無防備のまま、テロに遭遇し、数十人が殺されたり、誘拐されたりしてしまった。彼女たちは、そんな一部始終を匿名でハアレツに暴露したのである。 記事は反響を呼んだ。 米メディア、ポリティカ欧州版は翌21日、ハアレツの記事を引用する形で、女性偵察兵たちの告発を報じた。イスラエルの軍事情報機関研究部門の責任者であるアミット・サール准将は、実名でハアレツの取材に応じて「自分はネタニヤフ首相にイランやイスラム過激派ヒズボラ、ハマスが攻撃してくる可能性を警告していた」と暴露した。 彼は、ネタニヤフ政権が当時、進めていた大掛かりな司法改革が、ハマスにとって攻撃の絶好のチャンスであり「パーフェクト・ストーム(完全な嵐)になる」と警告していた。最高裁の機能を弱める司法改革案は、イスラエルの国論を2分し、大規模な反対デモが連日、繰り広げられていた。それが「敵の攻撃を招く」とみたのだ。 11月24日には、敵の軍事ドクトリンを分析する専門部隊、8200部隊の下士官も、内部告発に加わった。彼女はハアレツに匿名で「自分はハマスの意図を警告する報告書を3通書いた」と訴えた。こうした流れのなかで、冒頭に紹介した「イスラエルは1年以上前から、ハマスの攻撃を知っていた」という特ダネが出てきたのだ。これも内部告発に基づく情報とみていいだろう。 ネタニヤフ政権は、なぜ現場から上がっていた情報を無視したのか。 攻撃計画を報じたニューヨーク・タイムズは「当局が『ハマスには実行する能力がなく、計画は希望的なものだ』とみて退けていた」と報じている。 だが、本当の理由はそれだけではない』、「ネタニヤフ政権が当時、進めていた大掛かりな司法改革が、ハマスにとって攻撃の絶好のチャンスであり「パーフェクト・ストーム(完全な嵐)になる」と警告していた。最高裁の機能を弱める司法改革案は、イスラエルの国論を2分し、大規模な反対デモが連日、繰り広げられていた。それが「敵の攻撃を招く」とみたのだ・・・ネタニヤフ政権は、なぜ現場から上がっていた情報を無視したのか。 攻撃計画を報じたニューヨーク・タイムズは「当局が『ハマスには実行する能力がなく、計画は希望的なものだ』とみて退けていた」と報じている。 だが、本当の理由はそれだけではない」、「本当の理由」は何なのだろう。
・『ハマスを支援していたネタニヤフ政権  ネタニヤフ政権は事実上、ハマスを支援していたのである。それは、テロ攻撃の前から指摘されていた。たとえば、ニューヨーク・タイムズの著名コラムニスト、トーマス・フリードマン氏は2021年5月16日のコラムで、こう書いている。 〈ハマスとビビ(注・ネタニヤフの愛称)は会話していない。会話する必要がない。彼らはお互いが権力の座にとどまるために、必要としているものを理解しており、意識的であれ、無意識であれ、彼らはそれを相手に提供しようとしている〉 〈過去12年間、ビビは「ハマスを維持する一方、パレスチナ自治政府(PA)を弱体化して分断する」という使命を抱いていた。そうすれば、米国の議会で「私は平和を愛している。だが、あちら側には相手がいない。パレスチナ人は弱体化して分裂している」と言えるからだ〉 〈ハマスにも「ネタニヤフを権力の座にとどめる」という使命があった。そうすれば、ハマスとイランにいる支持者たちは、欧州やリベラルな大学のキャンパス、メディア、民主党などにいる脳天気な支持者たちに向かって「問題はハマスではない。酷いイスラエルのネタニヤフ政権なのだ」と言えるのだ〉 つまり、ネタニヤフ政権は「ハマスとPLO=パレスチナ自治政府の分断統治」によって、イスラエル国家の安泰を目指していたのである。 こうした分析は、いまや広く世界で共有されている。歴史家のアダム・ラズ氏は10月20日、ハアレツ紙上でこう指摘した。 〈2009年に政権に復帰して以来、ネタニヤフの手法は一貫して、ガザのハマスを強化する一方、パレスチナ自治政府を弱体化するというものだった。彼はハマス体制を終わらせる、いかなる外交的、軍事的試みにも抵抗してきた〉 〈彼が2019年4月に「我々はハマスへの抑止力を回復した。主要な供給源を断ち切った」と宣言したのは、真っ赤な嘘だ〉 〈彼はパレスチナ人の受刑者を解放し、カタールがハマスに現金を提供するのを容認し、建設資材はじめ、さまざまな物資をガザが輸入するのを認めた。それらは、テロに使われた。パレスチナ人がイスラエルで働く労働許可証も増やした。これが、テロリズムの蔓延とネタニヤフ支配の共存につながったのだ〉』、「ハマスとビビ(注・ネタニヤフの愛称)は会話していない。会話する必要がない。彼らはお互いが権力の座にとどまるために、必要としているものを理解しており、意識的であれ、無意識であれ、彼らはそれを相手に提供しようとしている〉 〈過去12年間、ビビは「ハマスを維持する一方、パレスチナ自治政府(PA)を弱体化して分断する」という使命を抱いていた。そうすれば、米国の議会で「私は平和を愛している。だが、あちら側には相手がいない。パレスチナ人は弱体化して分裂している」と言えるからだ〉 〈ハマスにも「ネタニヤフを権力の座にとどめる」という使命があった。そうすれば、ハマスとイランにいる支持者たちは、欧州やリベラルな大学のキャンパス、メディア、民主党などにいる脳天気な支持者たちに向かって「問題はハマスではない。酷いイスラエルのネタニヤフ政権なのだ」と言えるのだ」、なるほど。
・『退場のときが近づく  10月20日付の英ガーディアンは、ネタニヤフ氏が2019年3月、自ら率いる右派政党リクードの会合で、ハマス支援を呼びかけた有名な言葉を紹介している。彼は、こう演説していた。 〈パレスチナ国家の誕生を阻止したいと望むものは、誰でもハマスの強化とハマスへの現金供給を支援しなければならない。これは、ガザのパレスチナ人をヨルダン川西岸のパレスチナ人から孤立させる、我々の戦略の一部なのだ〉 政権内部からも、ネタニヤフ政権とハマスの蜜月を裏付ける実名証言が出た。先に触れた11月21日付のポリティコは、イスラエル国防情報部の責任者マイケル・ミルシュタイン氏の発言を紹介している。 〈偵察兵たちの話は「ハマスは革命運動から次第に穏健になって、もっと現実的な組織に変わっている」というストーリーにそぐわなかった。ハマスを飼い慣らすことが統治であり、彼女たちの警告はそれに合わなかったのだ。だが、それは希望的観測だった〉
ネタニヤフ政権は、どうなるのか。 政権のスポークスパーソンはニューヨーク・タイムズ報道後の12月1日、米CNNで「10月7日の大虐殺は、我々の側の失敗だ。何が起きていたのか、徹底的に検証する。それ以外に選択肢はない」と語った。防諜機関シンベットの責任者であるロネン・バー氏も「責任は私にある」と認めている。 世論調査では、ニューヨーク・タイムズの報道前から、政権与党の支持率が急落している。11月26日付の米ワシントン・ポストは「ネタニヤフとハマスはお互いに依存し合ってきた。両者は、ともに退場するときが近づいている」と書いた。政権交代は時間の問題だろう。 12月6日に配信したYouTube番組「長谷川幸洋と高橋洋一のNEWSチャンネル」は、私の1人語りで「自民党の政治資金問題」について解説しました。 7日には「カナダに出国した香港の周庭は安全か」を、同じく1人語りで配信しました。 8日には、ニコ生番組「長谷川幸洋Tonight」で、イスラエル情勢などについて解説します』、「ネタニヤフ政権は、どうなるのか。 政権のスポークスパーソンはニューヨーク・タイムズ報道後の12月1日、米CNNで「10月7日の大虐殺は、我々の側の失敗だ。何が起きていたのか、徹底的に検証する。それ以外に選択肢はない」と語った。防諜機関シンベットの責任者であるロネン・バー氏も「責任は私にある」と認めている。 世論調査では、ニューヨーク・タイムズの報道前から、政権与党の支持率が急落している。11月26日付の米ワシントン・ポストは「ネタニヤフとハマスはお互いに依存し合ってきた。両者は、ともに退場するときが近づいている」と書いた。政権交代は時間の問題だろう」、「ネタニヤフとハマス」の馴れ合い終了後は、どうなるのだろう。

第四に、12月8日付けNewsweek日本版「「ホロコースト」の過去を持つドイツで、いま再び「反ユダヤ」感情が上昇か...事件発生数が急増」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2023/12/post-103169.php
・『<イスラエル軍とハマスの戦闘が始まってから、悪夢の歴史を持つドイツで「反ユダヤ」的な事件が頻発するように。過激な事件も起きている> イスラム組織ハマスによるイスラエルへの奇襲と、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの報復攻撃を受けて、ホロコーストの過去を持つドイツが揺れている。 政府は全面的なイスラエル支持を表明しているが、国内では反ユダヤ主義的な事件が急増。反ユダヤ主義調査情報センター(RIAS)によれば、衝突が始まった10月7日から11月9日にかけて、ドイツで起きた反ユダヤ主義的事件は994件。1日平均29件に達し、昨年同時期の320%増となっている。 その多くは攻撃的な言動などのレベルにとどまるが、ベルリンのシナゴーグ(ユダヤ教会堂)に火炎瓶が投げ付けられるなど一部で過激な事件も発生している。 +994件(10月7日から11月9日にかけてドイツ国内で発生した反ユダヤ主義的事件の件数) +29件(事件の1日当たりの平均件数) +320%増(昨年同時期との比較)』、「ドイツ」は「イスラエル」に贖罪の念を抱いている筈だが、「イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの報復攻撃」の余りの酷さで、「反ユダヤ主義的な事件が急増」せざるを得なくなったようだ。 
タグ:「ドイツ」は「イスラエル」に贖罪の念を抱いている筈だが、「イスラエルによるパレスチナ自治区ガザへの報復攻撃」の余りの酷さで、「反ユダヤ主義的な事件が急増」せざるを得なくなったようだ。 Newsweek日本版「「ホロコースト」の過去を持つドイツで、いま再び「反ユダヤ」感情が上昇か...事件発生数が急増」 いている」と書いた。政権交代は時間の問題だろう」、「ネタニヤフとハマス」の馴れ合い終了後は、どうなるのだろう。 「ネタニヤフ政権は、どうなるのか。 政権のスポークスパーソンはニューヨーク・タイムズ報道後の12月1日、米CNNで「10月7日の大虐殺は、我々の側の失敗だ。何が起きていたのか、徹底的に検証する。それ以外に選択肢はない」と語った。防諜機関シンベットの責任者であるロネン・バー氏も「責任は私にある」と認めている。 世論調査では、ニューヨーク・タイムズの報道前から、政権与党の支持率が急落している。11月26日付の米ワシントン・ポストは「ネタニヤフとハマスはお互いに依存し合ってきた。両者は、ともに退場するときが近づ そうすれば、米国の議会で「私は平和を愛している。だが、あちら側には相手がいない。パレスチナ人は弱体化して分裂している」と言えるからだ〉 〈ハマスにも「ネタニヤフを権力の座にとどめる」という使命があった。そうすれば、ハマスとイランにいる支持者たちは、欧州やリベラルな大学のキャンパス、メディア、民主党などにいる脳天気な支持者たちに向かって「問題はハマスではない。酷いイスラエルのネタニヤフ政権なのだ」と言えるのだ」、なるほど。 「ハマスとビビ(注・ネタニヤフの愛称)は会話していない。会話する必要がない。彼らはお互いが権力の座にとどまるために、必要としているものを理解しており、意識的であれ、無意識であれ、彼らはそれを相手に提供しようとしている〉 〈過去12年間、ビビは「ハマスを維持する一方、パレスチナ自治政府(PA)を弱体化して分断する」という使命を抱いていた。 ネタニヤフ政権は、なぜ現場から上がっていた情報を無視したのか。 攻撃計画を報じたニューヨーク・タイムズは「当局が『ハマスには実行する能力がなく、計画は希望的なものだ』とみて退けていた」と報じている。 だが、本当の理由はそれだけではない」、「本当の理由」は何なのだろう。 「ネタニヤフ政権が当時、進めていた大掛かりな司法改革が、ハマスにとって攻撃の絶好のチャンスであり「パーフェクト・ストーム(完全な嵐)になる」と警告していた。最高裁の機能を弱める司法改革案は、イスラエルの国論を2分し、大規模な反対デモが連日、繰り広げられていた。それが「敵の攻撃を招く」とみたのだ・・・ 「ネタニヤフ政権は、イスラム過激派ハマスのテロ攻撃計画を1年以上も前から把握していたにもかかわらず、テロを防げなかった。ハマスを事実上、支援していた政権が、軍の情報と警告を無視したからだ」、思いがけないニュースだ。 長谷川 幸洋氏による「ネタニヤフ政権とハマスの「蜜月」…次々と明らかになった「衝撃的な事実」 政権交代は時間の問題に」 現代ビジネス 「主要国は二国家解決案などという夢物語でお茶を濁すのではなく、とにかくイスラエルに圧力をかけて戦闘を止めることから始めるべきであろう」、同感である。 「「近隣諸国にのがれているパレスチナ難民は現在、500万人をこえる」とはその扱いも重要だ。「経済の面では、破壊し尽くされたガザの復興をはじめ、独自の産業も資本もないパレスチナ国家が自立できるまで、国際社会が膨大な支援を求められる。 そもそも国際社会はパレスチナ国家建設のための協力体制を構築できるのだろうか・・・欧米と中露の対立は、国連を機能不全に陥らせている。パレスチナ問題で欧米と中露が簡単に歩調を合わせることは想像しにくい」、なるほど。 「近隣諸国にのがれているパレスチナ難民は現在、500万人をこえるといわれている。パレスチナ国家が独立すれば難民が戻ってくるのか。現在の人口をはるかに上回る難民の帰還は現実的ではない。 新たな国の安全保障はどうするのか。パレスチナ国家が独自に軍隊を持つことはイスラエルにとっては脅威そのものであり、簡単に認めることはできないだろう」、 「ヨルダン川西岸・・・70万人以上が入植し、約60%の土地は事実上、イスラエルが支配」、そんなに支配が進んでいたとは初めて知った。 「イスラエルの現政権は、自国の安全のためにガザとヨルダン川西岸の占領や支配の強化、さらには一部の併合さえ主張している。これでは当事者が話し合いのテーブルにつくことさえ難しい。 またイスラエル政府はヨルダン川西岸でのユダヤ人による入植を積極的に進めている。現在、70万人以上が入植し、約60%の土地は事実上、イスラエルが支配している。その結果、パレスチナ人のエリアは飛び地でわずかに点在しているだけになっている」、 「イスラエル軍による攻撃によって生まれたガザの非人道的状況を国際社会は放置できなくなった。かといってイスラエルやハマスの攻撃を止める手立てもない。 そこで浮上してきたのが「二国家解決案」である。) アメリカのバイデン大統領はネタニヤフ首相に繰り返し「二国家解決案が唯一の答えだ」と主張している。EU(欧州連合)のボレル外交安全保障上級代表をはじめ英仏など欧州の主要国首脳も相次いで二国家案の支持を表明している」、なるほど。 宗教政党と組んだ連立政権はイスラエル史上最も右派の政権」、なるほど。 当時、イスラエルがPLOをテロ組織と非難する一方で、PLOはイスラエルを国家と認めず激しく対立していた。にもかかわらず両者はノルウェーの首都、オスロを舞台に水面下で極秘の接触、交渉をしていたのだ。 残念ながらオスロ合意の描いた平和への道筋はわずか2年後、和平推進の中心人物だったイスラエルのラビン首相が暗殺されたためにあっけなく頓挫・・・以後、イスラエルは和平に積極的だった労働党が国民の支持を失い、代わりにパレスチナに対する強硬論を掲げる右派が台頭してきた。現在のネタニヤフ首相もその勢力の一人で、極右政党や 「1993年の「オスロ合意」・・・でパレスチナ側を代表するパレスチナ解放機構(PLO)はイスラエルを国家として認め、イスラエルもガザとヨルダン川西岸にパレスチナ暫定自治政府を置くことを認めた。同時にイスラエル軍が占領地から撤退することも盛り込まれた。明文化されなかったものの、パレスチナ人が将来独立国家を手にすることが期待できる内容だった。 薬師寺 克行氏による「イスラエルを止められない国々が持ち出す夢物語 30年前に合意した「二国家解決案」は理想に変質」 恥な日和見(ひよりみ)主義者たちの同盟であり、彼らは、治安状況の悪化をはじめ、イスラエルが抱える問題の数々を顧みず、際限なく権力を我が物にすることしか眼中になかった。その目標を達成しようと、極端な対立を招くような政策を採用し、その政策に反対する国家機関にまつわる言語道断の陰謀論を広め、国に忠誠を尽くすエリートたちに、「ディープステート(闇の政府)」の売国奴というレッテルを貼った」、どうも筆者の「ネタニヤフ首相」に対するの評価はさんざんのようだ。 何年にもわたって、イスラエルはポピュリズムの強権的指導者ベンヤミン・ネタニヤフが支配してきた。彼はPRの天才だが、首相としては無能だ。何度となく自分の個人的利益を国益に優先し、国民の内紛を誘うことでキャリアを築いてきた。能力や適性よりも自分への忠誠に基づいて人々を要職に就け、成功はすべて自分の手柄にする一方、失敗の責任はいっさい取らず、真実を語ることも耳にすることも軽んじているように見える。) ネタニヤフが2022年12月に樹立した連立政権は、最低であり最悪だ。それは、救世主メシア信仰の狂信者たちと厚顔無 「平和を望む者なら誰もが、ハマスを糾弾し、制裁を課し、人質全員の即時解放と、ハマスの完全な武装解除を要求しなくてはならない。 さらに、イスラエルにどれほどの責任を帰すことにしようと、それでこの国の機能不全を説明することはできない。歴史は道徳の物語ではない。イスラエルの機能不全の真の原因は、この国の不道徳とされているものではなく、ポピュリズム(大衆迎合主義)だ。 「イスラエルの人々は長年の思い上がりの代償を払っているといえる。歴代の政権と多くの一般国民が、私たちはパレスティナ人よりもはるかに強い、彼らはあっさり無視できる、と感じていた。イスラエルがパレスティナ人との和解の試みを放棄し、何十年にもわたって数百万のパレスティナ人を占領下に置いてきたことは、厳しく非難されるべきだ。 ・・・イスラエルは、このようなことが二度と起こらないようにするために建国された。 それにもかかわらず、なぜ今回の惨劇は起こったのか? イスラエルという国は、どうして道を見失ってしまったのか?」、なるほど。 「ハマスはこの2つのキブツを何時間も完全に掌握していた。テロリストたちは家を一軒一軒回り、組織的に家族を皆殺しにしたり、子供の目の前で親を殺したり、赤ん坊や老婆さえも人質に取ったりした。生き延びた人々は恐怖におののきながら、戸棚の中や地下室に身を隠し、軍や警察に電話をして助けを求めたが、多くの場合、救助隊が到着したときにはすでに手後れだった ユヴァル・ノア・ハラリ氏による「イスラエルの歴史学者が語る「ハマス奇襲」の本質 ユヴァル・ノア・ハラリ氏「ポピュリズムの代償だ」」 東洋経済オンライン (その1)(イスラエルの歴史学者が語る「ハマス奇襲」の本質 ユヴァル・ノア・ハラリ氏「ポピュリズムの代償だ」、、もはや「わざと戦争を長引かせて」政治生命の維持に固執するしかない ネタニヤフとその代償、イスラエルを止められない国々が持ち出す夢物語 30年前に合意した「二国家解決案」は理想に変質、ネタニヤフ政権とハマスの「蜜月」…次々と明らかになった「衝撃的な事実」 政権交代は時間の問題に、「ホロコースト」の過去を持つドイツで いま再び「反ユダヤ」感情が上昇か...事件発生数が急増) イスラエル・パレスチナ
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東芝問題(その44)(「東芝劇場」ついに終幕への全“迷走劇” 名門企業を凋落に至らしめた「戦犯」とは、「東芝」バラバラ解体ショーで終幕か 「戦犯」に翻弄され非上場化を選んだ名門企業の今後、泥沼にハマった東芝は何をしくじったのか…大前研一「復活は厳しいが活路が残っている理由」 日本を代表する企業の大失敗から何を学ぶか、東芝の「失敗の本質」とは?上場廃止後の再建タイムリミットは3~5年か) [企業経営]

東芝問題については、昨年6月13日に取上げた。今日は、(その44)(「東芝劇場」ついに終幕への全“迷走劇” 名門企業を凋落に至らしめた「戦犯」とは、「東芝」バラバラ解体ショーで終幕か 「戦犯」に翻弄され非上場化を選んだ名門企業の今後、泥沼にハマった東芝は何をしくじったのか…大前研一「復活は厳しいが活路が残っている理由」 日本を代表する企業の大失敗から何を学ぶか、東芝の「失敗の本質」とは?上場廃止後の再建タイムリミットは3~5年か)である。

先ずは、本年8月3日付けデイリー新潮「「東芝劇場」ついに終幕への全“迷走劇” 名門企業を凋落に至らしめた「戦犯」とは」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/08031040/?all=1
・『超掘り出し物  「東芝」の創業は1875年。日本初の電信設備メーカーとして設立された名門企業が、遂に株式市場から撤退せざるを得なくなった。国内投資ファンドの「日本産業パートナーズ(JIP)」による買収提案を受け入れ、非上場化する道を選んだのだ。2015年の不正会計事件以来、混乱続きだった「東芝劇場」終幕までの舞台裏を紹介する。 JIP陣営によるTOB(株式公開買い付け)は1株4620円。M&Aアナリストによると、TOBの成立は既定路線だという。 「買収総額はおよそ2兆円。そのうち、4000億円超が“アクティビスト”の手に渡る。東芝の第三者割当増資を引き受けたとき、アクティビストの取得価格は1株2628円(後の株式併合を加味した値)。TOB価格との差が1992円という超掘り出し物だったわけです」 結果として、9.90%を保有する筆頭株主のアクティビスト「エフィッシモ・キャピタル・マネジメント」は850億円もの利益を手にする算段だ。 「22年6月、東芝の株価は最高値の5938円をつけました。それに比べれば、TOB価格は22%も割安。英投資ファンド“CVCキャピタル・パートナーズ”を皮切りに、米投資ファンドなどが次々と東芝の買収に名乗りを上げた。しかし、いずれも不発でした。アクティビストは出資者から一刻も早いキャッシュアウトを迫られ、最後に残ったJIPのTOBには応じるはずです」』、「「買収総額はおよそ2兆円。そのうち、4000億円超が“アクティビスト”の手に渡る。東芝の第三者割当増資を引き受けたとき、アクティビストの取得価格は1株2628円(後の株式併合を加味した値)。TOB価格との差が1992円という超掘り出し物だったわけです」 結果として、9.90%を保有する筆頭株主のアクティビスト「エフィッシモ・キャピタル・マネジメント」は850億円もの利益を手にする算段だ」、なるほど。
・『経産省主導  では、結局、東芝凋落の「戦犯」は誰なのか。 東芝は不正会計事件に続き、米原子力子会社「ウェスチングハウス」の経営破綻で1兆2400億円を超える巨額赤字を計上。17年12月、6000億円に上る第三者割当増資を実施し、その代償として60社ものアクティビストを含む投資ファンドを引き入れる結果に。だが21年1月、東芝が債務超過で降格した東証二部(当時)から一部へと返り咲くと、投資ファンドの多くは利益確定のうえ、株主名簿から消えていった。 「それでも、東芝からなおも搾り取れると踏んだエフィッシモなどは居座り続け、経営陣との対立を深めました。防衛関連や原発事業を手掛ける東芝は、いわば“国策企業”。ゆえに、経産省主導のもと、アクティビスト退治の切り札が送り込まれた。その人物が、三井住友銀行元副頭取でCVCキャピタル日本法人の会長を務めていた車谷暢昭元社長でした」(つづく)』、「経産省主導のもと、アクティビスト退治の切り札が送り込まれた。その人物が、三井住友銀行元副頭取でCVCキャピタル日本法人の会長を務めていた車谷暢昭元社長でした」、ただ、「車谷」氏の起用は結果的には失敗だったようだ。

次にこの続きを、8月10日付けデイリー新潮「「東芝」バラバラ解体ショーで終幕か 「戦犯」に翻弄され非上場化を選んだ名門企業の今後」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2023/08101040/?all=1
・『アクティビスト退治の切り札  迷走の果てに終幕を迎える「東芝劇場」。その一部始終は、「戦犯」の存在抜きには語れない。なにより、第一の戦犯は経産省である。M&Aアナリストが前回(「週刊新潮」2023年8月3日号「MONEY」欄)からの解説を続ける。 「経産省の水野弘道参与(当時)が“米ハーバード大学基金”に圧力をかけ、2020年7月開催の株主総会における議決権行使を見送らせました。クビのかかった車谷暢昭元社長への助太刀が目的でした。経産省は組織ぐるみでアクティビスト対策に介入していたわけです」 だがそれは、東芝のコーポレートガバナンス不全をあからさまにし、逆にアクティビストにつけ入る隙を与える結果となった。 続く、第二の戦犯は車谷元社長。車谷元社長は経産省からアクティビスト退治の切り札として送り込まれたはずが、公私混同が問題視され、アクティビスト対策にも失敗。より一層対決姿勢を深める結果を招いた。 車谷元社長は、窮余の一策として英投資ファンド「CVCキャピタル・パートナーズ」による東芝のTOB(株式公開買い付け)を打ち出した。非上場化によって、対立するアクティビストとの決着を図ろうとしたのだ。 「とはいえ、利己主義的に東芝を“身売り”する姿勢は批判を浴び、結局、事実上のクビに。反面、車谷元社長の奸計は、東芝が“売り物”であることを世間に知らしめた。以後、アクティビストが要求する株主還元策の第一候補は非上場化に傾きました」』、「第一の戦犯は経産省である。M&Aアナリストが前回・・・」、からの解説を続ける。 「経産省の水野弘道参与(当時)が“米ハーバード大学基金”に圧力をかけ、2020年7月開催の株主総会における議決権行使を見送らせました。クビのかかった車谷暢昭元社長への助太刀が目的でした。経産省は組織ぐるみでアクティビスト対策に介入していたわけです」、 だがそれは、東芝のコーポレートガバナンス不全をあからさまにし、逆にアクティビストにつけ入る隙を与える結果となった」、「経産省は組織ぐるみでアクティビスト対策に介入していた」とは政府系機関とは思えないような露骨なやり方だ。
・『会社分割案  その流れに抗うための策が「会社分割案」だった。この案は、東芝の法務部と経営企画部のGM(ゼネラルマネジャー)二人が中心となって編み出された。発電事業と半導体事業の新会社2社を設立し、東芝本体はフラッシュメモリー製造の「キオクシア」などの株式を保有する会社として存続させる。そのうえで、既存株主に新会社2社の株式を割り当て、2年後をメドに上場させる計画を立てた。 当時、東芝の株価は4500円前後。3社合算で6000円台に膨れ上がらせることで、アクティビストを黙らせるという狙いがあった。 この会社分割案をめぐり東芝をさらなる混乱に陥れたアクティビストこそ、第三の戦犯である。 「週刊新潮」2023年8月10日号「MONEY」欄の有料版では、次々と登場する戦犯に翻弄され続けた東芝の内情と今後の展望を詳報する』、「この会社分割案をめぐり東芝をさらなる混乱に陥れたアクティビストこそ、第三の戦犯である」、なるほど。

第三に、11月17日付けプレジデント 2023年12月1日号にビジネス・ブレークスルー大学学長の大前 研一氏が掲載した「泥沼にハマった東芝は何をしくじったのか…大前研一「復活は厳しいが活路が残っている理由」 日本を代表する企業の大失敗から何を学ぶか」を紹介しよう。
・『東芝の舵取りを誤った3人の「迷」経営者  東芝は9月21日、投資ファンドの日本産業パートナーズなどを中心とした国内連合によるTOB(株式公開買い付け)が成立したことを発表した。11月22日の臨時株主総会を経て、12月20日に非上場化される予定だ。日本を代表する電機メーカーの凋落は、多角化に走った日本企業を考察する絶好のケーススタディになるだろう。 東芝の混迷が表面化したきっかけは、2015年に発覚した不正会計問題だ。混乱の最中、06年に買収した原子力発電プラントメーカー、米ウェスチングハウスが巨額の損失を出してしまい、17年に経営破綻。東芝も17年3月期に9656億円の最終赤字を計上した。 このときは増資で上場廃止を免れたものの、こんどは株主となったアクティビスト(物言う株主)と再建方針を巡って対立。今回、TOBで非上場化するのも経営へのアクティビストの影響力を排除するためだった。TOB成立でようやく東芝は再建に向けて動き出せるが、8年に及ぶ混乱の代償は大きく、ライバルの日立製作所に大きく水をあけられてしまった。 なぜ東芝は業績不振に陥ったのか。原因を事業構造や経営環境に求める向きもあるが、東芝に関しては人の問題が大きい。経営者がまともなら、このような大惨事には至らなかった。 東芝に混乱をもたらした責任者の筆頭は、1996年に社長に就任した西室泰三氏である。日米経済摩擦が激しかった87年に発生した、東芝機械製の工作機械が第三国経由でソビエト連邦に渡ったことを巡る「東芝機械ココム違反事件」で、西室氏は頭角を現した。事件後にアメリカで巻き起こった東芝バッシングの火消しで、駐在歴が長く、英語が堪能な西室氏が活躍したのだ。 西室氏は経営の本流ではなかったものの、ココム違反事件での対応が評価されて社長になった。西室氏は権力の維持に熱心で、社長就任後は実力のある後継候補を次々に閑職かんしょくへ追いやった。かわりに言いなりになる人間を重用し、社長退任後も院政を敷き、その体制が不正会計発覚まで続いた。 西室氏の言いなりの筆頭が、2代後の社長を務めた西田厚聰あつとし氏だ。東芝はかつての名社長、土光敏夫氏が会社を率いて以来、その母校である東京工業大学閥が強い。しかし、西田氏は東京大学出身で、イラン現地法東芝はかつての名社長、土光敏夫氏が会社を率いて以来、その母校である東京工業大学閥が強い。しかし、西田氏は東京大学出身で、イラン現地人に入社した傍流だ。しかし本流でないことが、西室院政にとっては都合がよかった。 西田氏はパソコン事業部の部長時代にラップトップPCを開発した男として知られ、本人もそれを売り文句にしていた。ただ、真相は違う』、「東芝に混乱をもたらした責任者の筆頭は、1996年に社長に就任した西室泰三氏である・・・「東芝機械ココム違反事件」で、西室氏は頭角を現した。事件後にアメリカで巻き起こった東芝バッシングの火消しで、駐在歴が長く、英語が堪能な西室氏が活躍したのだ。 西室氏は経営の本流ではなかったものの、ココム違反事件での対応が評価されて社長になった。西室氏は権力の維持に熱心で、社長就任後は実力のある後継候補を次々に閑職かんしょくへ追いやった。かわりに言いなりになる人間を重用し、社長退任後も院政を敷き、その体制が不正会計発覚まで続いた。 西室氏の言いなりの筆頭が、2代後の社長を務めた西田厚聰あつとし氏だ。東芝はかつての名社長、土光敏夫氏が会社を率いて以来、その母校である東京工業大学閥が強い。しかし、西田氏は東京大学出身で、イラン現地法東芝はかつての名社長、土光敏夫氏が会社を率いて以来、その母校である東京工業大学閥が強い。しかし、西田氏は東京大学出身で、イラン現地人に入社した傍流だ。しかし本流でないことが、西室院政にとっては都合がよかった。 西田氏はパソコン事業部の部長時代にラップトップPCを開発した男として知られ、本人もそれを売り文句にしていた。ただ、真相は違う」、なるほど。
・『マッキンゼーのプレゼンを後ろで聞いていた東芝社員  85年、私がいたマッキンゼーに東芝から「アメリカでIBMに勝てない。パソコンのマーケティングを手伝ってほしい」と依頼がきた。私はマッキンゼーのロサンゼルス事務所に話を振ったが、向こうのチームがリサーチ後に出した結論は「勝ち目がないからやめたほうがいい」。これに西田氏は激怒し、マッキンゼーに契約打ち切りを通告。 そのプレゼンに参加していた私は、東芝の強みである液晶と小型化を活かしたPCを開発すれば対IBMで勝機があると、慌てて説明を付け加えた。 当時、PCはデスクトップが標準。コンパックが販売していたポータブルPCは重厚で携帯性が悪く、私はトランスポータブルと呼んでいた。私の提案は、手のひらや膝(lap)の上(top)に置ける「ラップトップ(laptop)」を開発してはどうかというもの。クビになるのを避けるため、プレゼン中に私がその場で思いついたコンセプトだ。 しかし、私が提案をしたところで西田氏の怒りは収まらず、結局マッキンゼーは追い出されてしまった。しかしその1年後、プレゼンを後ろで聞いていた東芝社員が、私のところへやってきて「大前さんのいうラップトップをつくってみました。これで合っていますか」と試作品を見せにきた。これがのちに「ダイナブック」ブランドで世界を席巻することになる、ラップトップPCの第1号である。 西田氏はそうした経緯に触れず、長らくラップトップPCを自分の手柄のように吹聴していたが、さすがに気が引けたのか。死の直前に受けたインタビューの内容が『テヘランからきた男』(小学館)で語られているが、ラップトップPCが私のアイデアだったことを白状している。余談が長くなったが、つまり西田氏は自分の経歴を平気で脚色して生きていけるタイプの人なのだ。 西田氏の後任が、原子力畑で育った佐々木則夫氏。東芝は白熱灯の時代から米GEとのつながりが深く、GEが開発した沸騰水型原子炉(BWR)の製造をしていた。ほかには加水圧型原子炉(PWR)があるが、そちらは三菱重工業がウェスチングハウスと技術提携して運用していた。ウェスチングハウスを手に入れれば、巨艦三菱重工に一矢報いることができる。佐々木氏はそう考え、英国核燃料会社からウェスチングハウスの原子力部門を買収した。 ところが、デューデリジェンスが甘かった。ウェスチングハウスの子会社ストーン・アンド・ウェブスターが受注工事で大幅な損失を出しており、買収した東芝も煽あおりを食らった。これが、17年にウェスチングハウスが経営破綻へと至る端緒なのだ。 おそらく佐々木氏はウェスチングハウス買収の失敗を隠そうとしたのだろう。会長になっていた西田氏はそれを暴こうとして、内ゲバが始まった。 トップ2人が醜みにくく応酬する状況は、東芝にとって最悪である。しかし、新設した「名誉顧問」に退いて院政を敷く西室氏には好都合で、高みの見物を決め込んでいた。危急存亡の状況で経営の舵取りをするべき3人が、会社の将来そっちのけで権力闘争した結果、東芝は急速に凋落していったのだ』、「85年、私がいたマッキンゼーに東芝から「アメリカでIBMに勝てない。パソコンのマーケティングを手伝ってほしい」と依頼がきた。私はマッキンゼーのロサンゼルス事務所に話を振ったが、向こうのチームがリサーチ後に出した結論は「勝ち目がないからやめたほうがいい」。これに西田氏は激怒し、マッキンゼーに契約打ち切りを通告。 そのプレゼンに参加していた私は、東芝の強みである液晶と小型化を活かしたPCを開発すれば対IBMで勝機があると、慌てて説明を付け加えた。 当時、PCはデスクトップが標準。コンパックが販売していたポータブルPCは重厚で携帯性が悪く、私はトランスポータブルと呼んでいた。私の提案は、手のひらや膝(lap)の上(top)に置ける「ラップトップ(laptop)」を開発してはどうかというもの。クビになるのを避けるため、プレゼン中に私がその場で思いついたコンセプトだ。 しかし、私が提案をしたところで西田氏の怒りは収まらず、結局マッキンゼーは追い出されてしまった。しかしその1年後、プレゼンを後ろで聞いていた東芝社員が、私のところへやってきて「大前さんのいうラップトップをつくってみました。これで合っていますか」と試作品を見せにきた。これがのちに「ダイナブック」ブランドで世界を席巻することになる、ラップトップPCの第1号である。 西田氏はそうした経緯に触れず、長らくラップトップPCを自分の手柄のように吹聴していたが、さすがに気が引けたのか。死の直前に受けたインタビュー・・・でラップトップPCが私のアイデアだったことを白状している」、なるほど。
・『復活の鍵を握るのは東芝伝統の「闇開発」  東芝の失敗から学ぶべきもう一つの教訓は、業績不振に陥った後、投資銀行に相談してはいけないということだ。 投資銀行は、M&Aの成功報酬で取引金額の一定割合を手数料として取る。大きな取引ほど儲かるので、高く売れる事業、つまり儲かる事業の売却に積極的になる。 不正会計が発覚した当時、東芝でもっとも将来性があったのは、東芝メディカルシステムズの医療機器事業だった。世界の医療機器市場はGE、独シーメンス、蘭フィリップスの3強で寡占しているのだが、東芝メディカルは超音波や画像診断機器などの分野で3強に比肩していた。しかし、そんな虎の子の子会社を、16年3月にキヤノンへ売却してしまった。同年6月には、東芝ブランドを長らく支えていた白物家電事業を手放した。分社化していた東芝ライフスタイルの株式を、中国の美的集団に譲渡したのだ。このときはテレビなどの映像機器事業を残したが、それも18年に中国のハイセンスに売ってしまった。 厳しい競争環境下にある家電事業の売却はまだ理解できるが、世界的競争力を有していた半導体メモリの子会社、東芝メモリの売却はナンセンス過ぎる。 18年6月に東芝は、米投資ファンドのベインキャピタルと韓国半導体メーカーSKハイニックスが出資するSPC、そして東芝(再出資)、HOYAからなる日米韓連合に東芝メモリを売却。キオクシアとして再出発した。半導体事業は、売却当時の18年3月期で東芝の営業利益の約9割を稼いでいたのだが、まさに大黒柱を手放したことになる。そのキオクシアは米ウエスタンデジタルとの統合を目指しているものの、SKハイニックスの反対に遭って交渉が白紙化するなど、難しい立場に置かれてしまっている。 投資銀行は、残った事業で顧客企業がどうやってメシを食べていくのかということまで考えない。自身が儲けるために、一番「おいしい」ところから売っていく。東芝が上場廃止するまでの流れは、経営不振に陥った日本の大企業が投資銀行に相談したときによく起きるパターンそのままだった。 東芝が凋落した原因は人にあったが、業績悪化後になかなか復活できないのは、投資銀行に相談したせいである。多角化経営をする日本企業は、これを他山の石とすべきだろう。 さて、東芝の将来はどうか。東芝は現在黒字転換しているが、業績は相変わらずパッとしない。残った事業の中にも、エレベーターや防衛関連など強いものがないわけではない。ただ、エレベーターは競争が厳しく、防衛関連は安定して稼げるものの利益率は低い。 期待したいのは、東芝伝統の「闇開発」だ。かつての東芝は、いい意味でいい加減な会社だった。誰から指示されるでもなく、エンジニアが新しい技術製品を開発するのだ。西田氏に取り込まれたラップトップPCも社員が勝手に開発したものだったし、半導体のフラッシュメモリも舛岡ますおか富士雄氏が自由に研究して発明した産物だ。日本語ワープロのJW-10も、森健一氏らによる“密造酒”だ。東芝の発明する力は混乱の中でも引き継がれていて、量子コンピュータの暗号通信で本質的な技術の特許を取ったりしているし、今でも英ケンブリッジ大学近くの研究所では革新的な研究が続けられている。 ただ、新しい技術が実用化されるのは先の話。それまでは残された事業で地道に稼ぐしかない。困難な再建になるだろうが、東芝が持っている強みを活かして立ち直ってほしいものだ』、「東芝の失敗から学ぶべきもう一つの教訓は、業績不振に陥った後、投資銀行に相談してはいけないということだ。 投資銀行は、M&Aの成功報酬で取引金額の一定割合を手数料として取る。大きな取引ほど儲かるので、高く売れる事業、つまり儲かる事業の売却に積極的になる。 不正会計が発覚した当時、東芝でもっとも将来性があったのは、東芝メディカルシステムズの医療機器事業だった。世界の医療機器市場はGE、独シーメンス、蘭フィリップスの3強で寡占しているのだが、東芝メディカルは超音波や画像診断機器などの分野で3強に比肩していた。しかし、そんな虎の子の子会社を、16年3月にキヤノンへ売却してしまった・・・東芝ブランドを長らく支えていた白物家電事業を手放した。分社化していた東芝ライフスタイルの株式を、中国の美的集団に譲渡したのだ。このときはテレビなどの映像機器事業を残したが、それも18年に中国のハイセンスに売ってしまった・・・世界的競争力を有していた半導体メモリの子会社、東芝メモリの売却はナンセンス過ぎる。 18年6月に東芝は、米投資ファンドのベインキャピタルと韓国半導体メーカーSKハイニックスが出資するSPC、そして東芝(再出資)、HOYAからなる日米韓連合に東芝メモリを売却。キオクシアとして再出発した。半導体事業は、売却当時の18年3月期で東芝の営業利益の約9割を稼いでいたのだが、まさに大黒柱を手放したことになる。そのキオクシアは米ウエスタンデジタルとの統合を目指しているものの、SKハイニックスの反対に遭って交渉が白紙化するなど、難しい立場に置かれてしまっている・・・期待したいのは、東芝伝統の「闇開発」だ。かつての東芝は、いい意味でいい加減な会社だった。誰から指示されるでもなく、エンジニアが新しい技術製品を開発するのだ。西田氏に取り込まれたラップトップPCも社員が勝手に開発したものだったし、半導体のフラッシュメモリも舛岡ますおか富士雄氏が自由に研究して発明した産物だ。日本語ワープロのJW-10も、森健一氏らによる“密造酒”だ。東芝の発明する力は混乱の中でも引き継がれていて、量子コンピュータの暗号通信で本質的な技術の特許を取ったりしているし、今でも英ケンブリッジ大学近くの研究所では革新的な研究が続けられている。 ただ、新しい技術が実用化されるのは先の話。それまでは残された事業で地道に稼ぐしかない。困難な再建になるだろうが、東芝が持っている強みを活かして立ち直ってほしいものだ」、まだ「闇開発」のような美風が残っているようであれば、大いに活用してほしい。

第四に、12月4日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「東芝の「失敗の本質」とは?上場廃止後の再建タイムリミットは3~5年か」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/334875
・『東芝は12月20日に株式上場を廃止する予定だ。かつてわが国を代表する超名門企業だった東芝は、確かに世界トップレベルの製造技術を持っていた。しかしなぜ、自力での事業運営に行き詰まったのだろうか。そして今後の東芝は、どのように再建するのだろうか』、興味深そうだ。
・『東芝が12月20日に上場廃止へ  11月22日、東芝は臨時の株主総会を開き、株式非公開化に向けた株式併合などの議案が承認された。賛成割合は96.81%だった。12月20日に東京証券取引所への株式上場が廃止される予定だ。投資ファンドである日本産業パートナーズ(JIP)、出資した20を超える企業の下、東芝は本格的に再建を目指すことになる。 かつてわが国を代表する超名門企業だった東芝。なぜ、自力での事業運営に行き詰まったのだろうか。東芝は確かに、世界トップレベルの製造技術を持っていた。また、世界で初めてノート(ラップトップ)型のパソコンを開発した実績もある。 いろいろな出来事を突き詰めると結局、東芝の経営陣は、大切な経営資源(ヒト・モノ・カネ)を有効に生かすことができなかった。収益獲得を過度に重視した結果、無理を重ね、ついには不正会計にまで手を染めた。それでも東芝は上場維持にこだわり、第三者割当増資を実施した。その後、物言う株主(アクティビスト・ファンド)に翻弄(ほんろう)され続けた。 今後の東芝は、どのように再建するのだろうか。まずは、収益の柱を見つけることが重要だ。経営資源を、人工知能、脱炭素、半導体など成長期待の高い分野に再配分することも不可欠だ。成長戦略の実行が遅れれば、投資ファンドであるJIPと東芝経営陣の間に不協和音が生じ、再び経営が迷走することも懸念される』、「まずは、収益の柱を見つけることが重要だ。経営資源を、人工知能、脱炭素、半導体など成長期待の高い分野に再配分することも不可欠だ。成長戦略の実行が遅れれば、投資ファンドであるJIPと東芝経営陣の間に不協和音が生じ、再び経営が迷走することも懸念される」、なるほど。
・『超名門企業が陥った経営の失敗  企業経営とは本来、社会、経済の変化を機敏に察知し、より高い成長が期待できる分野にヒト・モノ・カネのリソースを再配分し、より長期的な収益を増やすことが求められる。そのために利害関係者である株主、従業員、地域社会、取引先などとの調整を絶え間なく行う必要がある。 いつからか東芝の経営者は、そうした役割を十分に発揮することができなかった。高い製造技術、優秀な人材、豊富な資金があっても、経営の失敗が続くと企業は立ち行かなくなる。 1875年(明治8年)の創業以来、東芝は重電・家電分野で多くの新しい製品を発表した。自社での研究開発、海外企業との提携などを通して製造技術を磨き、社会の厚生を高める。対価として収益を得る――。そうしたビジネスの基本姿勢により、東芝は魅力的な商品を生み出した。 象徴的な商品は、ノートパソコンだ。1985年、東芝は欧州市場で「T1100」を発売した。当時はNEC「98」シリーズなどのデスクトップ型パソコンが主流だったが、東芝は、中長期的に情報通信分野ではデータ処理速度の向上が加速し、モバイル型のデバイス需要が高まると考え、先手を打ったのだ。そうして、94~2000年まで東芝の「ダイナブック」はノートパソコン市場で世界トップシェアを手に入れた。 東芝は、新しい記憶媒体であるNAND型フラッシュメモリーの開発も進めた。NAND型のフラッシュメモリーは、スマホのデータ記憶装置として世界中で需要が急拡大した。また、パソコンの記憶装置として用いられている、ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)に関しても東芝の貢献は大きい。 1990年代に米国でIT革命が起きて以降、世界のデジタル化は加速している。そうした時代の到来を、東芝はかなり早い段階から予見していたといえるだろう』、「「ダイナブック」はノートパソコン市場で世界トップシェアを手に入れた」、「NAND型のフラッシュメモリーは、スマホのデータ記憶装置として世界中で需要が急拡大」。「ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)に関しても東芝の貢献は大きい」、当時は最先端を走っていた。
・『業態の転換を自ら拒んだ東芝  デジタル時代の到来を、かなり早い段階から予見していた面もあった東芝。ところが、経営陣は重電・家電の両分野で、過去の発想に固執した。ある意味、業態の転換を拒んだといっても過言ではないだろう。 そして、2015年に発覚した不正会計問題は、その後の同社の運命を決定付ける一大不祥事となった。東芝は、事業環境の変化に対応するよりも、ノートパソコンなど既存事業の収益を過剰に追求したのだ。不正会計問題をきっかけに東芝の企業イメージは悪化し、顧客離れが加速、業績は低迷した。さらにとどめを刺したのが16年、米原子力大手ウエスチングハウス(2006年に約6000億円で買収)の損失発生だ。東芝は債務超過に陥った。 結果論にはなるが、東芝は、不正会計問題やウエスチングハウスに起因する1.4兆円の損失発生のタイミングで、一連の経営の失敗を認めるべきだった。総合電機メーカーとしてのビジネスモデルの限界を理解し、社会インフラや半導体、医療、量子コンピューティングなど中長期的な成長の可能性が高い分野に経営資源を再配分すべきだった。 当時の東芝は、抜本的な事業構造の改革よりも、上場維持にこだわった。17年には第三者割当増資を実施し、海外ファンドなどから6000億円を調達した。公募ではなく、第三者割当増資になったのは、多くの投資家が東芝の先行きを不安視したからだろう。 第三者割当増資により上場は維持できたものの、その後、経営の混乱に拍車がかかった。医療機器や半導体事業の売却などによって収益は減少し、リストラによって組織体制も縮小均衡に向かった。一方、出資に応じたファンドは株主への価値還元(自社株買いや増配)を要求した。業績が悪化する中での自社株買い資金の捻出は、追加的に経営体力をそいだ。 こうして東芝は事実上、アクティビスト・ファンドに翻弄された。分社化など生き残りをかけた改革案の実行も遅れた。最終的に東芝の事業運営は行き詰まった』、「経営陣は重電・家電の両分野で、過去の発想に固執した。ある意味、業態の転換を拒んだといっても過言ではないだろう。 そして、2015年に発覚した不正会計問題は、その後の同社の運命を決定付ける一大不祥事となった。東芝は、事業環境の変化に対応するよりも、ノートパソコンなど既存事業の収益を過剰に追求したのだ。不正会計問題をきっかけに東芝の企業イメージは悪化し、顧客離れが加速、業績は低迷した。さらにとどめを刺したのが16年、米原子力大手ウエスチングハウス(2006年に約6000億円で買収)の損失発生だ。東芝は債務超過に陥った。 結果論にはなるが、東芝は、不正会計問題やウエスチングハウスに起因する1.4兆円の損失発生のタイミングで、一連の経営の失敗を認めるべきだった。総合電機メーカーとしてのビジネスモデルの限界を理解し、社会インフラや半導体、医療、量子コンピューティングなど中長期的な成長の可能性が高い分野に経営資源を再配分すべきだった」、その通りだ。
・『再建に不可欠な新たな収益の柱  これから東芝は、上場廃止によって不特定多数の株主の目にさらされることがなくなり、経営陣は多様な利害を調整しやすくなる。事業運営のスピードも高まるだろう。経営陣は、非上場化のベネフィットを最大限に活用し、安定的に収益を獲得できる事業体制を確立することが求められる。 直近の経営状況は、既存の事業領域の中でも相対的にエネルギー、インフラ事業の収益が安定している。さらに事業運営の効率性を高め、収益率を引き上げる必要がある。また、コスト削減のため再度リストラを実施する可能性は高い。その上で、経営陣は成長期待の高い分野へヒト・モノ・カネを再配分することになる。 改革を加速することで、経営陣は再建を主導するJIPなどの期待に応えなければならない。JIPは、3~5年程度で東芝を再上場させることを念頭に置いているようだ。投資ファンドのビジネスモデル上、JIPは資金の提供者に期待される利得を提供する必要があるからだ。 東芝の成長戦略の実行に時間がかかり収益力の回復が遅れると、JIPとの関係も不安定化する恐れがある。もし、そんなことが起きれば20を超える出資企業の足並みは乱れ、東芝の業績回復も難しくなるだろう。 近視眼的に既存分野での収益拡大を過剰に追求した結果、業績が悪化し経営体力を失った東芝。本来、経営の基本的な役割は、成長期待の高い分野に経営資源を再配分し、高付加価値なモノやサービスを創出する体制を強化することだ。経営が失敗すると、どれほどの名門企業も破綻は免れない。東芝の失敗は、日本経済にとって重要な教訓になるはずだ』、「経営の基本的な役割は、成長期待の高い分野に経営資源を再配分し、高付加価値なモノやサービスを創出する体制を強化することだ。経営が失敗すると、どれほどの名門企業も破綻は免れない。東芝の失敗は、日本経済にとって重要な教訓になるはずだ」、同感である。 
タグ:東芝問題 (その44)(「東芝劇場」ついに終幕への全“迷走劇” 名門企業を凋落に至らしめた「戦犯」とは、「東芝」バラバラ解体ショーで終幕か 「戦犯」に翻弄され非上場化を選んだ名門企業の今後、泥沼にハマった東芝は何をしくじったのか…大前研一「復活は厳しいが活路が残っている理由」 日本を代表する企業の大失敗から何を学ぶか、東芝の「失敗の本質」とは?上場廃止後の再建タイムリミットは3~5年か) デイリー新潮「「東芝劇場」ついに終幕への全“迷走劇” 名門企業を凋落に至らしめた「戦犯」とは」 「「買収総額はおよそ2兆円。そのうち、4000億円超が“アクティビスト”の手に渡る。東芝の第三者割当増資を引き受けたとき、アクティビストの取得価格は1株2628円(後の株式併合を加味した値)。TOB価格との差が1992円という超掘り出し物だったわけです」 結果として、9.90%を保有する筆頭株主のアクティビスト「エフィッシモ・キャピタル・マネジメント」は850億円もの利益を手にする算段だ」、なるほど。 「経産省主導のもと、アクティビスト退治の切り札が送り込まれた。その人物が、三井住友銀行元副頭取でCVCキャピタル日本法人の会長を務めていた車谷暢昭元社長でした」、ただ、「車谷」氏の起用は結果的には失敗だったようだ。 デイリー新潮「「東芝」バラバラ解体ショーで終幕か 「戦犯」に翻弄され非上場化を選んだ名門企業の今後」 「第一の戦犯は経産省である。M&Aアナリストが前回・・・」、からの解説を続ける。 「経産省の水野弘道参与(当時)が“米ハーバード大学基金”に圧力をかけ、2020年7月開催の株主総会における議決権行使を見送らせました。クビのかかった車谷暢昭元社長への助太刀が目的でした。経産省は組織ぐるみでアクティビスト対策に介入していたわけです」 だがそれは、東芝のコーポレートガバナンス不全をあからさまにし、逆にアクティビストにつけ入る隙を与える結果となった」、「経産省は組織ぐるみでアクティビスト対策に介入していた」とは政府系機関とは思えないような露骨なやり方だ。 「この会社分割案をめぐり東芝をさらなる混乱に陥れたアクティビストこそ、第三の戦犯である」、なるほど。 プレジデント 2023年12月1日号 大前 研一氏が掲載した「泥沼にハマった東芝は何をしくじったのか…大前研一「復活は厳しいが活路が残っている理由」 日本を代表する企業の大失敗から何を学ぶか」 「東芝に混乱をもたらした責任者の筆頭は、1996年に社長に就任した西室泰三氏である・・・「東芝機械ココム違反事件」で、西室氏は頭角を現した。事件後にアメリカで巻き起こった東芝バッシングの火消しで、駐在歴が長く、英語が堪能な西室氏が活躍したのだ。 西室氏は経営の本流ではなかったものの、ココム違反事件での対応が評価されて社長になった。西室氏は権力の維持に熱心で、社長就任後は実力のある後継候補を次々に閑職かんしょくへ追いやった。 かわりに言いなりになる人間を重用し、社長退任後も院政を敷き、その体制が不正会計発覚まで続いた。 西室氏の言いなりの筆頭が、2代後の社長を務めた西田厚聰あつとし氏だ。東芝はかつての名社長、土光敏夫氏が会社を率いて以来、その母校である東京工業大学閥が強い。しかし、西田氏は東京大学出身で、イラン現地法東芝はかつての名社長、土光敏夫氏が会社を率いて以来、その母校である東京工業大学閥が強い。 しかし、西田氏は東京大学出身で、イラン現地人に入社した傍流だ。しかし本流でないことが、西室院政にとっては都合がよかった。 西田氏はパソコン事業部の部長時代にラップトップPCを開発した男として知られ、本人もそれを売り文句にしていた。ただ、真相は違う」、なるほど。 「85年、私がいたマッキンゼーに東芝から「アメリカでIBMに勝てない。パソコンのマーケティングを手伝ってほしい」と依頼がきた。私はマッキンゼーのロサンゼルス事務所に話を振ったが、向こうのチームがリサーチ後に出した結論は「勝ち目がないからやめたほうがいい」。これに西田氏は激怒し、マッキンゼーに契約打ち切りを通告。 そのプレゼンに参加していた私は、東芝の強みである液晶と小型化を活かしたPCを開発すれば対IBMで勝機があると、慌てて説明を付け加えた。 当時、PCはデスクトップが標準。コンパックが販売していたポータブルPCは重厚で携帯性が悪く、私はトランスポータブルと呼んでいた。私の提案は、手のひらや膝(lap)の上(top)に置ける「ラップトップ(laptop)」を開発してはどうかというもの。クビになるのを避けるため、プレゼン中に私がその場で思いついたコンセプトだ。 しかし、私が提案をしたところで西田氏の怒りは収まらず、結局マッキンゼーは追い出されてしまった。しかしその1年後、プレゼンを後ろで聞いていた東芝社員が、私のところへやってきて「大前さんのいう ラップトップをつくってみました。これで合っていますか」と試作品を見せにきた。これがのちに「ダイナブック」ブランドで世界を席巻することになる、ラップトップPCの第1号である。 西田氏はそうした経緯に触れず、長らくラップトップPCを自分の手柄のように吹聴していたが、さすがに気が引けたのか。死の直前に受けたインタビュー・・・でラップトップPCが私のアイデアだったことを白状している」、なるほど。 「東芝の失敗から学ぶべきもう一つの教訓は、業績不振に陥った後、投資銀行に相談してはいけないということだ。 投資銀行は、M&Aの成功報酬で取引金額の一定割合を手数料として取る。大きな取引ほど儲かるので、高く売れる事業、つまり儲かる事業の売却に積極的になる。 不正会計が発覚した当時、東芝でもっとも将来性があったのは、東芝メディカルシステムズの医療機器事業だった。世界の医療機器市場はGE、独シーメンス、蘭フィリップスの3強で寡占しているのだが、東芝メディカルは超音波や画像診断機器などの分野で3強に比肩していた。 しかし、そんな虎の子の子会社を、16年3月にキヤノンへ売却してしまった・・・東芝ブランドを長らく支えていた白物家電事業を手放した。分社化していた東芝ライフスタイルの株式を、中国の美的集団に譲渡したのだ。このときはテレビなどの映像機器事業を残したが、それも18年に中国のハイセンスに売ってしまった・・・世界的競争力を有していた半導体メモリの子会社、東芝メモリの売却はナンセンス過ぎる。 18年6月に東芝は、米投資ファンドのベインキャピタルと韓国半導体メーカーSKハイニックスが出資するSPC、そして東芝(再出資)、HOYAからなる日米韓連合に東芝メモリを売却。キオクシアとして再出発した。半導体事業は、売却当時の18年3月期で東芝の営業利益の約9割を稼いでいたのだが、まさに大黒柱を手放したことになる。そのキオクシアは米ウエスタンデジタルとの統合を目指しているものの、SKハイニックスの反対に遭って交渉が白紙化するなど、難しい立場に置かれてしまっている・・・ 期待したいのは、東芝伝統の「闇開発」だ。かつての東芝は、いい意味でいい加減な会社だった。誰から指示されるでもなく、エンジニアが新しい技術製品を開発するのだ。西田氏に取り込まれたラップトップPCも社員が勝手に開発したものだったし、半導体のフラッシュメモリも舛岡ますおか富士雄氏が自由に研究して発明した産物だ。日本語ワープロのJW-10も、森健一氏らによる“密造酒”だ。東芝の発明する力は混乱の中でも引き継がれていて、量子コンピュータの暗号通信で本質的な技術の特許を取ったりしているし、今でも英ケンブリッジ大学近く の研究所では革新的な研究が続けられている。 ただ、新しい技術が実用化されるのは先の話。それまでは残された事業で地道に稼ぐしかない。困難な再建になるだろうが、東芝が持っている強みを活かして立ち直ってほしいものだ」、まだ「闇開発」のような美風が残っているようであれば、大いに活用してほしい。 ダイヤモンド・オンライン 真壁昭夫氏による「東芝の「失敗の本質」とは?上場廃止後の再建タイムリミットは3~5年か」 「まずは、収益の柱を見つけることが重要だ。経営資源を、人工知能、脱炭素、半導体など成長期待の高い分野に再配分することも不可欠だ。成長戦略の実行が遅れれば、投資ファンドであるJIPと東芝経営陣の間に不協和音が生じ、再び経営が迷走することも懸念される」、なるほど。 「「ダイナブック」はノートパソコン市場で世界トップシェアを手に入れた」、「NAND型のフラッシュメモリーは、スマホのデータ記憶装置として世界中で需要が急拡大」。「ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)に関しても東芝の貢献は大きい」、当時は最先端を走っていた。 「経営陣は重電・家電の両分野で、過去の発想に固執した。ある意味、業態の転換を拒んだといっても過言ではないだろう。 そして、2015年に発覚した不正会計問題は、その後の同社の運命を決定付ける一大不祥事となった。東芝は、事業環境の変化に対応するよりも、ノートパソコンなど既存事業の収益を過剰に追求したのだ。不正会計問題をきっかけに東芝の企業イメージは悪化し、顧客離れが加速、業績は低迷した。 結果論にはなるが、東芝は、不正会計問題やウエスチングハウスに起因する1.4兆円の損失発生のタイミングで、一連の経営の失敗を認めるべきだった。総合電機メーカーとしてのビジネスモデルの限界を理解し、社会インフラや半導体、医療、量子コンピューティングなど中長期的な成長の可能性が高い分野に経営資源を再配分すべきだった」、その通りだ。 「経営の基本的な役割は、成長期待の高い分野に経営資源を再配分し、高付加価値なモノやサービスを創出する体制を強化することだ。経営が失敗すると、どれほどの名門企業も破綻は免れない。東芝の失敗は、日本経済にとって重要な教訓になるはずだ」、同感である。
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シェアリングエコノミー(その5)(世界中で労働紛争を巻き起こす「ウーバー」 破壊的モデルの行く末、ライドシェアの安全性は「解決済み」本当に重要なのは“既得権益”の問題だ) [経済政治動向]

シェアリングエコノミーについては、2021年7月30日に取上げた。久しぶりの今日は、(その5)(世界中で労働紛争を巻き起こす「ウーバー」 破壊的モデルの行く末、ライドシェアの安全性は「解決済み」本当に重要なのは“既得権益”の問題だ)である。

先ずは、昨年1月31日付け弁護士ドットコム「世界中で労働紛争を巻き起こす「ウーバー」、破壊的モデルの行く末」を紹介しよう。
https://www.bengo4.com/c_18/n_14055/
・『タクシーではなく、一般のドライバーが自家用車で乗客を運ぶ「ライドシェア」や、空いた時間に自転車で手軽にできるフードデリバリーなど、米ウーバー・テクノロジーズが始めたプラットフォームビジネスは、世界中に大きな広がりを見せている。 ウーバーは、従来型の消費者向けビジネス(B2C)ではなく、余ったリソースを需要とつなぐピア・ツー・ピア(P2P)の考え方を打ち出し、ネット上ではなく、現実世界でサービスを積極展開することにより、各国のタクシー業界などに破壊的インパクトをもたらしてきた。 破壊的インパクトは、既存の業界に対してだけではなく、労働法制に対しても同様だ。各国で、ウーバーのプラットフォーム上で単発で働く「ギグワーカー」たちが「労働者」なのか、「個人事業主」なのか、という紛争が起きている。 ウーバー発祥の国であるアメリカのプラットフォーム労働に詳しい労働法研究者の藤木貴史氏(帝京大学法学部助教)は、「ギグワーカーが組織に雇われている『被用者』と完全に同等に扱われるかどうかの議論こそあるものの、労働法を拡張して、何らかの保護をしようというのが世界の潮流になっている」と語る。詳しく聞いた。Qは聞き手の質問、Aは回答)』、「余ったリソースを需要とつなぐピア・ツー・ピア(P2P)の考え方を打ち出し、ネット上ではなく、現実世界でサービスを積極展開することにより、各国のタクシー業界などに破壊的インパクトをもたらしてきた。 破壊的インパクトは、既存の業界に対してだけではなく、労働法制に対しても同様だ。各国で、ウーバーのプラットフォーム上で単発で働く「ギグワーカー」たちが「労働者」なのか、「個人事業主」なのか、という紛争が起きている。 ウーバー発祥の国であるアメリカのプラットフォーム労働に詳しい労働法研究者の藤木貴史氏・・・は、「ギグワーカーが組織に雇われている『被用者』と完全に同等に扱われるかどうかの議論こそあるものの、労働法を拡張して、何らかの保護をしようというのが世界の潮流になっている」と語る」、なるほど。 
・『アメリカやEUで何が起きているのか  Q:アメリカでは、ギグワーカーの法的位置付けをめぐって、紛争がたくさん起きていますが、どのように捉えればいいのでしょうか。 A:完全に係争中で、結論らしい結論は出ていません。連邦レベルの最高裁判決が出ると、国として大きく動きますが、高裁レベルの判断すらはっきりとは示されていません。また、各州の裁判所でも判断が揺れています。 Q:アメリカは州単位で法律が異なり、ウーバーが本社を置くカリフォルニア州では、2020年1月に、ギグワーカーも原則被用者として、失業保険や最低賃金などで保護する州法「AB5」(Assembly bill5)が施行される一方、同年11月の住民投票で、ウーバーの運転手や料理宅配などを保護の対象から除外する住民投票が成立し、さらに、2021年8月に、カリフォルニア州の裁判所がこの住民投票が州憲法に違反すると判断するなど、混乱が続いていますが、何が起きているのでしょうか。 この「AB5」というのは、簡単に言えば、役務を提供する個人を被用者と推定する法律です。それを否定するためには、以下の点について、事業者側が立証する必要があります。 (A)個人が管理監督から自由であること (B)個人の提供する役務が、使用者の通常の事業の外にあること (C)個人が、独立性の確立した仕事に従事していること このABCを満たしていることが求められるため、ABCテストと呼ばれています。つまり、このテストのもとでは、被用者と認められやすくなるのですね。 プラットフォーマーの側はこれを嫌がり、多くの資金を投入して、AB5を否定する住民投票の実施を働きかけた、という構図です。住民投票を否定した判決も、法政策的な観点からの判断というより、形式に不備があるという技術的な理由からの判断のようですので、今後の司法の動向は不透明ですね。 司法では判断が揺れていますが、立法レベルでは、ABCテストが他の州でも広がる傾向にあります。もちろん例外もあり、テネシー州やテキサス州など共和党優勢の州では、逆に自営業者と推定しよう、という法律が成立してもいます。 また、アメリカ全体で(連邦レベルで)考えると、共和党のトランプ政権の時には、独立契約者を広く認めようという動きでしたが、民主党のバイデン政権になってから、方向転換をしています。民主党政権が続けば、被用者性をより認める方向にいくでしょう。 UberのYouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/watch?v=M_wN2dLoE3Q)より Q:EUでも、欧州委員会が2021年12月、ギグワーカーを雇用関係にあると法的に推定するプラットフォーム労働指令案を提案しました。アメリカと似た傾向だということでしょうか。 A:そうですね。方向性としては似ています。EUの指令については、直接に国内法となるものではありませんが、実現すれば、国内法化する義務が加盟国に課されます』、「アメリカでは・・・完全に係争中で、結論らしい結論は出ていません・・・共和党のトランプ政権の時には、独立契約者を広く認めようという動きでしたが、民主党のバイデン政権になってから、方向転換をしています。民主党政権が続けば、被用者性をより認める方向にいくでしょう」。なるほど。
・『日本のウーバーイーツ配達員はどう位置付けられるか  Q:日本でも、ウーバーイーツの配達員でつくるウーバーイーツユニオンが、運営会社に団体交渉を不当に拒否されたとして、東京都労働委員会に救済を申し立てています。ユニオンが、労働組合法上の労働者であるかどうかが注目されていますが、どう考えますか。 A:日本の労働法では「指揮監督」を非常に重視する傾向があって、労働基準法については、労働者として認められにくいと考えられています。ただ、学説では、指揮監督にこだわる必要はないという主張もあります。 一方で、労働組合法については、もう少し広くとらえられるものであり、事業組織への組み入れ、労働条件の一方的・定型的決定、報酬の労務対価性の3点を中心に判断されます。 これだけでは判断できない場合の補完的要素として、業務の依頼に応ずべき関係にあるかとか、緩やかな意味での指揮監督の有無、事業者といえるかどうか、なども加味されます。 Q:労働組合法上の労働者と認められる可能性はあるのでしょうか。 A:当然、個別の証拠によって判断は変わるのでしょうが、今のウーバーイーツの仕組みから考えると、ウーバーイーツは食品配達プラットフォームとして、飲食店から注文者に食品を配達するということをやっていて、それ以外の事業はしていないように思います。 ウーバーは自らの事業を営んでいると評価されますので、そこで働いている人たちは当然、事業組織に組み入れられていると考えざるをえません。そして、報酬の条件も一方的に変更されるようですし、報酬は、配達という労務の対価といえるでしょう。 労働組合法上の労働者性を認めないという結論はナンセンスではないでしょうか。学術的な議論の場でも、そのように考える人が多いように思います。 ウーバーイーツユニオン(2021年5月の記者会見) Q:ウーバー側は、飲食店と配達員と注文者を単にマッチングするだけのプラットフォームだと言っていますが、そういう言い分は通らないのでしょうか。 アメリカでもそういう反論はありますが、そうであれば、プラットフォームの使い方について、コントロールを及ぼしていることについて、説明がつかないと思います。 Q:確かに、配達員はウーバーから提示された仕事を受けるか受けないかの選択はできますが、どんな注文を提示するのか、料金がいくらなのかはウーバー側が決めていますね。 仕事の中身や条件に一切タッチしないのであれば話は別ですが、プラットフォーム側がコントロールを及ぼしている限りは、組織の中に組み入れられているということになります。 配達員がWoltなど、他のサービスと併用していたとしても同じことです。別の組織にも組み入れられているということになるだけです。 Q:ただ、ギグワーカーの皆が保護を求めているわけではないのではないでしょうか。 A:「俺たちは労働者じゃないんだから、ユニオン作るなんてダセーよな」という考え方は、日本だけでなく、アメリカでもあります。アメリカン・ドリームへの憧れが強いことが一つの原因のようです。 しかし、ダサかったとしても、最低限の保護は必要です。また、ダサいと思う人が悪い、という話でもありません。企業に雇われるという働き方の負の面が、そういう忌避感を生じさせてしまっていることについても、向き合う必要があるんでしょうね』、「日本の労働法では「指揮監督」を非常に重視する傾向があって、労働基準法については、労働者として認められにくいと考えられています。ただ、学説では、指揮監督にこだわる必要はないという主張もあります。 一方で、労働組合法については、もう少し広くとらえられるものであり、事業組織への組み入れ、労働条件の一方的・定型的決定、報酬の労務対価性の3点を中心に判断されます。 これだけでは判断できない場合の補完的要素として、業務の依頼に応ずべき関係にあるかとか、緩やかな意味での指揮監督の有無、事業者といえるかどうか、なども加味されます・・・今のウーバーイーツの仕組みから考えると、ウーバーイーツは食品配達プラットフォームとして、飲食店から注文者に食品を配達するということをやっていて、それ以外の事業はしていないように思います。 ウーバーは自らの事業を営んでいると評価されますので、そこで働いている人たちは当然、事業組織に組み入れられていると考えざるをえません。そして、報酬の条件も一方的に変更されるようですし、報酬は、配達という労務の対価といえるでしょう。 労働組合法上の労働者性を認めないという結論はナンセンスではないでしょうか・・・「俺たちは労働者じゃないんだから、ユニオン作るなんてダセーよな」という考え方は、日本だけでなく、アメリカでもあります。アメリカン・ドリームへの憧れが強いことが一つの原因のようです。 しかし、ダサかったとしても、最低限の保護は必要です。また、ダサいと思う人が悪い、という話でもありません。企業に雇われるという働き方の負の面が、そういう忌避感を生じさせてしまっていることについても、向き合う必要があるんでしょうね」、なるほど。
・『被用者でも個人事業主でもない「第3カテゴリー」は必要か  Q:イギリスでは、雇用関係にある「被用者」と、個人事業主の「自営業者」の中間的な存在として、被用者よりも保護の範囲が限定された「労働者」というカテゴリーがあり、最高裁の判断として、ウーバーの運転手が「労働者」と認められました。日本でも、このような中間的カテゴリーを作るべきでしょうか。 アメリカも日本と同様に、被用者か自営業者か、という判断しかありません。一方で、イギリスやドイツのように、被用者類似の第三カテゴリーをもうけている国もあります。 ただ、被用者か自営業者であれば、その線引きは1つですが、第三カテゴリーを作った場合、線引きが2つに増えてしまいます。その基準がはっきりしない限り、どれにあたるかわかりにくいですし、これまで被用者として保護されていた人たちが、第三カテゴリーに分類されてしまうリスクもあります。 私は、第三カテゴリーを作るのではなく、あくまで被用者としての保護を広く及ぼすべきだと考えます。自営業者にも労災保険の必要性が検討されているように、被用者だけでなく、働く人全員に与えられるべき保護もあるからです。労働法の条項を整理して、目的ごとに、どこまで適用するのかを考えた方が生産的です』、「イギリスでは、雇用関係にある「被用者」と、個人事業主の「自営業者」の中間的な存在として、被用者よりも保護の範囲が限定された「労働者」というカテゴリーがあり、最高裁の判断として、ウーバーの運転手が「労働者」と認められました・・・私は、第三カテゴリーを作るのではなく、あくまで被用者としての保護を広く及ぼすべきだと考えます。自営業者にも労災保険の必要性が検討されているように、被用者だけでなく、働く人全員に与えられるべき保護もあるからです。労働法の条項を整理して、目的ごとに、どこまで適用するのかを考えた方が生産的です」、なるほど。
・『ウーバー紛争の先にある、新たな法的問題  Q:今はウーバーのようなプラットフォームが目立っていますが、今後、どのようなプラットフォームに注目していますか。 プラットフォーム労働については、ウーバー型とは異なるクラウドソーシング型というものが存在します。ウーバーのように、一つのビジネスに特化するのではなく、プラットフォーム上で多種多様なタイプの業務がやり取りされるものです。 日本では、ランサーズやクラウドワークスのようなサービスを想像するとわかりやすいでしょう。単純な業務だけではなく、専門的な業務も含みます。 そこでは、利用者、労務提供者、プラットフォームの三角関係をどう考えるのか、ということが課題になります。プラットフォームがマネジメント機能を担っていたり、プラットフォーム自体が仕事を受注して、再委託するケースもあります。 ウーバー型のような自営業者の被用者性をめぐる争いは過去にもたくさん起きていて、その都度、被用者性の拡張で対応してきた話ですので、法理論的にはさほど難しいものではありません。 一方、クラウドソーシング型については、三者間での労働をどう捉えるのか。例えば、労災が起きた時の責任を誰がもつのか、社会保険料は誰が払うのかなど、複雑な検討課題があります。使用者が負うべき責任をどのように割り振るかですとか、労働組合を含めた集団的な合意形成の仕組みも、考え直す必要がでてくるでしょう。これからの話ですね』、「ウーバー紛争の先にある、新たな法的問題・・・プラットフォーム労働については、ウーバー型とは異なるクラウドソーシング型というものが存在します。ウーバーのように、一つのビジネスに特化するのではなく、プラットフォーム上で多種多様なタイプの業務がやり取りされるものです。 日本では、ランサーズやクラウドワークスのようなサービスを想像するとわかりやすいでしょう。単純な業務だけではなく、専門的な業務も含みます。 そこでは、利用者、労務提供者、プラットフォームの三角関係をどう考えるのか、ということが課題になります。プラットフォームがマネジメント機能を担っていたり、プラットフォーム自体が仕事を受注して、再委託するケースもあります。 ウーバー型のような自営業者の被用者性をめぐる争いは過去にもたくさん起きていて、その都度、被用者性の拡張で対応してきた話ですので、法理論的にはさほど難しいものではありません・・・一方、クラウドソーシング型については、三者間での労働をどう捉えるのか。例えば、労災が起きた時の責任を誰がもつのか、社会保険料は誰が払うのかなど、複雑な検討課題があります。使用者が負うべき責任をどのように割り振るかですとか、労働組合を含めた集団的な合意形成の仕組みも、考え直す必要がでてくるでしょう。これからの話ですね」、確かに将来的には様々なサービス形態が出現してくる可能性がある。「クラウドソーシング型については、三者間での労働をどう捉えるのか。例えば、労災が起きた時の責任を誰がもつのか、社会保険料は誰が払うのかなど、複雑な検討課題があります。使用者が負うべき責任をどのように割り振るかですとか、労働組合を含めた集団的な合意形成の仕組みも、考え直す必要がでてくるでしょう。これからの話ですね」、いずれにしても、一生懸命働いたのに、「労災」保険が認められないような不利益が生じないよう注視していく必要がある。

次に、本年9月10日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「ライドシェアの安全性は「解決済み」本当に重要なのは“既得権益”の問題だ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/328850
・『ライドシェア解禁を巡る議論をよく目にします。私は、長期的な視野で解禁の方向に動いた方が良いと考えます。「ある視点」で考えれば、皆が得する未来を描くことができるからです』、「皆が得する未来を描くことができる」とはどういうことなのだろう。
・『ライドシェアを巡る議論は平行線をたどっている  菅義偉前首相が講演で「ライドシェア」の解禁に向け議論すべきだと発言して以降、日本でもにわかにライドシェア導入議論が始まっています。同じ神奈川県の小泉進次郎氏や河野太郎氏もライドシェアに積極的な発言をしている一方で、自民党のタクシー・ハイヤー議員連盟は導入論に慎重な意見を表明しています。 テレビの報道番組でも何度かこの問題は取り上げられました。私もふたつの番組で業界の代表者と消費者が激しく討論する様子を拝見しましたが、議論は常に平行線になるようです。 消費者の側から見ればそもそもタクシーが捕まらないエリアや時間帯が存在することや、道順がうまく伝わらないことや、近距離だと露骨に嫌な顔をされるなど、タクシーに対する一定の不満が存在します。そういった消費者の中で、アメリカに出かけてライドシェアを体験して、ライドシェアの方がサービスがいいと感じているわけです。 急増するインバウンド客はタクシー不足の原因でもありますが、彼らも言葉が伝わりにくい日本のタクシーよりもライドシェアがいいという意見は根強くあります。 一方で、業界の側は素人が運転手をするライドシェアの危険性を主張します。タクシー会社は法律や国の指導に沿って、2種免許を取得した従業員にさらに研修や管理を行うことで乗客の安全を確保してきました。コストをかけ投資をしているのに、その投資をしなくてもいいライドシェアとの競争は安全性が保たれず不公平だというわけです。 平行線をたどるこの議論がかみ合うためには、+αで新しい視点が必要だと私は考えているのですが、その話の前に両者の議論を確認しておきましょう』、興味深そうだ。
・『「ドライバーの安全性」は議論の争点にはならない  タクシー業界の主張する安全性の問題は、実はライドシェア大国のアメリカでは解決されています。タクシー会社が採用や教育、管理で安全を確保する一方で、ライドシェアはユーザーの評価によってドライバーを淘汰させます。 「そんなことを言っても、淘汰される前の運転の荒いドライバーに当たった人はどうなるんだ」 と反論されるかもしれません。 これを言うと野暮かもしれませんが、タクシーの運転も結構荒いと私は思います。 よく交差点で手を挙げた乗客を乗り降りさせているタクシーがいて、急停車したタクシーに後続車が追突しそうになりヒヤリとしたり、交差点が詰まってしまったりしています。ああいった乗り降りに関する違反運転が多いのは、目視した限りで一般のドライバーよりも圧倒的に教育を受けたタクシーの方が多いようです』、「乗り降りに関する違反運転が多いのは、目視した限りで一般のドライバーよりも圧倒的に教育を受けたタクシーの方が多いようです」、その通りだ。
・『タクシー業界の既得権益も尊重する必要がある  一方で、ライドシェア解禁を願う消費者の側の論調にも問題があります。 ライドシェア解禁に反対するタクシー業界の既得権益をもう少し尊重すべきです。あまり認識されていないかもしれませんが、経済学では既得権益をとても重要なことだと教えます。なぜなら既得権益が守られない社会では誰も投資をしなくなるからです。 タクシー業界は本当はそれを主張したいのです。これまで国のルールで莫大な投資をしてきたのに、ライドシェアを解禁したらその投資が回収できない。これは実は正当な主張なのですが、それが世論に通りにくいから安全性の問題に議論をすり替えざるをえないのです。 とはいえ訪日外国人の増加、タクシー運転手の人手不足、過疎化地域などで移動難民の増加など、国内の状況的にはライドシェア解禁の必要性は高まっています。 2010年代にアメリカでウーバーがサービスを提供して以降、わが国でも何度も議論が行われてきたわけですが、アメリカ型のライドシェアは日本では極めて限定的な条件下以外では解禁されていません。 業界ではタクシーが不足するたびにタクシーの供給量を増やして消費者の不満を解消してきたわけですが、この計画経済的な仕組みには根本的な欠陥があって、タクシー会社にとっての経済的なラインを想定すれば台数は必ずピーク需要よりも少なめになりますし、採算に乗らないエリアは切り捨てられます。 ではこのライドシェア解禁議論はどうすれば前に進むのでしょうか。私は今の議論に加えるべきは「時間軸」だと捉えています』、「タクシー業界は・・・これまで国のルールで莫大な投資をしてきたのに、ライドシェアを解禁したらその投資が回収できない。 これは実は正当な主張なのですが、それが世論に通りにくいから安全性の問題に議論をすり替えざるをえないのです・・・訪日外国人の増加、タクシー運転手の人手不足、過疎化地域などで移動難民の増加など、国内の状況的にはライドシェア解禁の必要性は高まっています・・・業界ではタクシーが不足するたびにタクシーの供給量を増やして消費者の不満を解消してきたわけですが、この計画経済的な仕組みには根本的な欠陥があって、タクシー会社にとっての経済的なラインを想定すれば台数は必ずピーク需要よりも少なめになりますし、採算に乗らないエリアは切り捨てられます。 ではこのライドシェア解禁議論はどうすれば前に進むのでしょうか。私は今の議論に加えるべきは「時間軸」だと捉えています」、「時間軸」とはどういうことなのだろう。
・『もしも「5年後にライドシェアを解禁する」なら? 皆が得をするために必要なのは「時間軸」   あくまで仮の想定ではありますが、たとえば、「5年後の2028年に東京都ではライドシェアを解禁する」と決めたとしたらどうでしょうか。 競争を公平にするために、 「その場合、人を乗せて運転する営業車のドライバーに対しては、2年後の2025年からタクシー会社の研修があれば2種免許を不要とする」 そしてさらに、 「タクシー会社は2025年からライドシェア営業も実験的に先行して行うことができる」 といった形の時間軸を加えた解決案が出現したらどうなるのかを考えてみましょう。 仮案とはいえ、このような時間軸のロードマップがあるとタクシー会社側は新しい投資戦略を作ることができます。人材の採用については2年後以降、今よりも難易度がひとつ下がります。ちなみに2種免許を廃止できないのであればライドシェア解禁は無理だと私は思っていますが、ここは異論がある方もいらっしゃるかもしれません。話を続けさせていただきます。 時間軸を設けることによる一番の優位性は、タクシー会社のアプリがウーバーなどの海外アプリに対抗する時間ができることです。仮に今使われているタクシーアプリにアメリカのライドシェアサービスと同じ機能が実装されたとします。 その上で2025年から3年間は、消費者はライドシェアにはタクシーアプリが使えるようになるわけです。たとえばクリスマスの深夜、六本木でどうしてもタクシーが捕まらない場合、タクシーアプリのライドシェア機能で価格を見て「六本木―新宿8000円で」と通常よりも価格を高めにすることでタクシーを捕まえられるかもしれません。 逆にタクシーが空いている時間帯には普段より安くライドシェアタクシーを呼ぶこともできるようにします。この実験期間が3年間あれば、タクシー業界も将来ライドシェアに移行した場合の価格戦略を立てやすくなります。何より日本のライドシェアでは日本のタクシー会社のアプリがデファクトとして先に登録ユーザーを集めることができるのは、競争優位になるでしょう。 私はライドシェア推進派の皆様には、反対派のタクシー業界と対話をするために、こういった既得権益を含めた移行計画を提示すべきだと思います。 あとここは議論が分かれるところだと思いますが、私はライドシェアの本格解禁後(この仮の時間軸では2028年以降)にはライドシェアのドライバーに免許のようなものを新たに与える制度を作る必要はないと考えています。それは最近解禁された電動キックボードの免許議論にも通じる考え方です。 電動キックボードが法改正で無免許でも運転できるようになった結果、交通ルールを守らないユーザーが社会問題になっています。日本人の発想だと講習をきちんと受けさせるべきだと言いますが、それでは警察の外郭団体のブルシットジョブ(余計な仕事)を増やします。 アメリカ人の発想なら違反で捕まった人は次からキックボードを借りられなくすればいい。こういった自然に悪い運転をする人が淘汰されていく仕組みをアメリカのライドシェアは持っています。加えて、万が一事故が起きた時に無保険でも救済されるよう、ライドシェアのプラットフォーム側が保険制度を完備することも必要です。 こういった施策によって、研修よりも淘汰によって安全が保たれる仕組み作りが大切だと私は考えます』、「「タクシー会社は2025年からライドシェア営業も実験的に先行して行うことができる」 といった形の時間軸を加えた解決案が出現したらどうなるのかを考えてみましょう。 仮案とはいえ、このような時間軸のロードマップがあるとタクシー会社側は新しい投資戦略を作ることができます。人材の採用については2年後以降、今よりも難易度がひとつ下がります。ちなみに2種免許を廃止できないのであればライドシェア解禁は無理だと私は思っていますが、ここは異論がある方もいらっしゃるかもしれません。話を続けさせていただきます。 時間軸を設けることによる一番の優位性は、タクシー会社のアプリがウーバーなどの海外アプリに対抗する時間ができることです。仮に今使われているタクシーアプリにアメリカのライドシェアサービスと同じ機能が実装されたとします。 その上で2025年から3年間は、消費者はライドシェアにはタクシーアプリが使えるようになるわけです。たとえばクリスマスの深夜、六本木でどうしてもタクシーが捕まらない場合、タクシーアプリのライドシェア機能で価格を見て「六本木―新宿8000円で」と通常よりも価格を高めにすることでタクシーを捕まえられるかもしれません。 逆にタクシーが空いている時間帯には普段より安くライドシェアタクシーを呼ぶこともできるようにします。この実験期間が3年間あれば、タクシー業界も将来ライドシェアに移行した場合の価格戦略を立てやすくなります。何より日本のライドシェアでは日本のタクシー会社のアプリがデファクトとして先に登録ユーザーを集めることができるのは、競争優位になるでしょう」、この「時間軸」の考え方は有効そうだ。「自然に悪い運転をする人が淘汰されていく仕組みをアメリカのライドシェアは持っています。加えて、万が一事故が起きた時に無保険でも救済されるよう、ライドシェアのプラットフォーム側が保険制度を完備することも必要です。 こういった施策によって、研修よりも淘汰によって安全が保たれる仕組み作りが大切だと私は考えます」、同感である。
・『アメリカでは「無人タクシー」が解禁 このままでは世界に置いていかれる可能性も  さて私はライドシェア解禁に向けて実はタクシー業界も行政も早めに動いた方がいいと考えています。というのもこの問題、5年後には新たな問題が加わるからです。 実は昨年、アメリカのサンフランシスコでは無人タクシーが解禁されました。アルファベットの子会社のウェイモと、GMが出資するクルーズがそれぞれサンフランシスコで営業を始めています。日本ではあまり報道されていないこのニュースですが、その意味することは極めて画期的です。 というのもアメリカのサンフランシスコ市は交通環境においては日本の大都市と酷似しているのです。 それは住宅地が入り組んでいたり、道が狭かったり、歩行者が多かったりということなのですが、その環境でアメリカでは自動タクシーの営業サービスが始まっている。ということは世界中でそう遠くない未来に、ロボタクシーが一般的なサービスになっていくはずです。 そうやって世界中でモビリティビジネスが先進的に進化し、そのことによって私たちの移動がもっと自由になり、結果として経済が発展する流れが始まります。 世界がそう変わって、日本だけがまだライドシェア解禁するかどうかで議論が膠着(こうちゃく)している未来は少し問題がありますよね。 そういった意味からも、私はライドシェア解禁議論は長期的には解禁される方向で議論を進めた方がいいと思っています。 そのために時間軸で考えようという今回のアイデア、反論もあろうかと思いますが、日本経済の未来を考えたひとつの提言だとお考えください』、「昨年、アメリカのサンフランシスコでは無人タクシーが解禁されました。アルファベットの子会社のウェイモと、GMが出資するクルーズがそれぞれサンフランシスコで営業を始めています。日本ではあまり報道されていないこのニュースですが、その意味することは極めて画期的です。 というのもアメリカのサンフランシスコ市は交通環境においては日本の大都市と酷似しているのです。 それは住宅地が入り組んでいたり、道が狭かったり、歩行者が多かったりということなのですが、その環境でアメリカでは自動タクシーの営業サービスが始まっている。ということは世界中でそう遠くない未来に、ロボタクシーが一般的なサービスになっていくはずです・・・世界中でそう遠くない未来に、ロボタクシーが一般的なサービスになっていくはずです・・・私はライドシェア解禁議論は長期的には解禁される方向で議論を進めた方がいいと思っています。 そのために時間軸で考えようという今回のアイデア、反論もあろうかと思いますが、日本経済の未来を考えたひとつの提言だとお考えください」、「時間軸で考え」ることがこれだけの重要な意味を持っているとは、新たな発見である。
タグ:各国で、ウーバーのプラットフォーム上で単発で働く「ギグワーカー」たちが「労働者」なのか、「個人事業主」なのか、という紛争が起きている。 ウーバー発祥の国であるアメリカのプラットフォーム労働に詳しい労働法研究者の藤木貴史氏・・・は、「ギグワーカーが組織に雇われている『被用者』と完全に同等に扱われるかどうかの議論こそあるものの、労働法を拡張して、何らかの保護をしようというのが世界の潮流になっている」と語る」、なるほど。 「余ったリソースを需要とつなぐピア・ツー・ピア(P2P)の考え方を打ち出し、ネット上ではなく、現実世界でサービスを積極展開することにより、各国のタクシー業界などに破壊的インパクトをもたらしてきた。 破壊的インパクトは、既存の業界に対してだけではなく、労働法制に対しても同様だ。 弁護士ドットコム「世界中で労働紛争を巻き起こす「ウーバー」、破壊的モデルの行く末」 シェアリングエコノミー (その5)(世界中で労働紛争を巻き起こす「ウーバー」 破壊的モデルの行く末、ライドシェアの安全性は「解決済み」本当に重要なのは“既得権益”の問題だ) 「アメリカでは・・・完全に係争中で、結論らしい結論は出ていません・・・共和党のトランプ政権の時には、独立契約者を広く認めようという動きでしたが、民主党のバイデン政権になってから、方向転換をしています。民主党政権が続けば、被用者性をより認める方向にいくでしょう」。なるほど。 「日本の労働法では「指揮監督」を非常に重視する傾向があって、労働基準法については、労働者として認められにくいと考えられています。ただ、学説では、指揮監督にこだわる必要はないという主張もあります。 一方で、労働組合法については、もう少し広くとらえられるものであり、事業組織への組み入れ、労働条件の一方的・定型的決定、報酬の労務対価性の3点を中心に判断されます。 これだけでは判断できない場合の補完的要素として、業務の依頼に応ずべき関係にあるかとか、緩やかな意味での指揮監督の有無、事業者といえるかどうか、なども加 味されます・・・今のウーバーイーツの仕組みから考えると、ウーバーイーツは食品配達プラットフォームとして、飲食店から注文者に食品を配達するということをやっていて、それ以外の事業はしていないように思います。 ウーバーは自らの事業を営んでいると評価されますので、そこで働いている人たちは当然、事業組織に組み入れられていると考えざるをえません。そして、報酬の条件も一方的に変更されるようですし、報酬は、配達という労務の対価といえるでしょう。 労働組合法上の労働者性を認めないという結論はナンセンスではないでしょうか・・ ・「俺たちは労働者じゃないんだから、ユニオン作るなんてダセーよな」という考え方は、日本だけでなく、アメリカでもあります。アメリカン・ドリームへの憧れが強いことが一つの原因のようです。 しかし、ダサかったとしても、最低限の保護は必要です。また、ダサいと思う人が悪い、という話でもありません。企業に雇われるという働き方の負の面が、そういう忌避感を生じさせてしまっていることについても、向き合う必要があるんでしょうね」、なるほど。 「イギリスでは、雇用関係にある「被用者」と、個人事業主の「自営業者」の中間的な存在として、被用者よりも保護の範囲が限定された「労働者」というカテゴリーがあり、最高裁の判断として、ウーバーの運転手が「労働者」と認められました・・・私は、第三カテゴリーを作るのではなく、あくまで被用者としての保護を広く及ぼすべきだと考えます。自営業者にも労災保険の必要性が検討されているように、被用者だけでなく、働く人全員に与えられるべき保護もあるからです。労働法の条項を整理して、目的ごとに、どこまで適用するのかを考えた方が生産 的です」、なるほど。 「ウーバー紛争の先にある、新たな法的問題・・・プラットフォーム労働については、ウーバー型とは異なるクラウドソーシング型というものが存在します。ウーバーのように、一つのビジネスに特化するのではなく、プラットフォーム上で多種多様なタイプの業務がやり取りされるものです。 日本では、ランサーズやクラウドワークスのようなサービスを想像するとわかりやすいでしょう。単純な業務だけではなく、専門的な業務も含みます。 そこでは、利用者、労務提供者、プラットフォームの三角関係をどう考えるのか、ということが課題になります。プラットフォームがマネジメント機能を担っていたり、プラットフォーム自体が仕事を受注して、再委託するケースもあります。 ウーバー型のような自営業者の被用者性をめぐる争いは過去にもたくさん起きていて、その都度、被用者性の拡張で対応してきた話ですので、法理論的にはさほど難しいものではありません・・・一方、クラウドソーシング型については、三者間での労働をどう捉えるのか。例えば、労災が起きた時の責任を誰がもつのか、 社会保険料は誰が払うのかなど、複雑な検討課題があります。使用者が負うべき責任をどのように割り振るかですとか、労働組合を含めた集団的な合意形成の仕組みも、考え直す必要がでてくるでしょう。これからの話ですね」、確かに将来的には様々なサービス形態が出現してくる可能性がある。「クラウドソーシング型については、三者間での労働をどう捉えるのか。例えば、労災が起きた時の責任を誰がもつのか、社会保険料は誰が払うのかなど、複雑な検討課題があります。使用者が負うべき責任をどのように割り振るかですとか、労働組合を含めた集団的な 合意形成の仕組みも、考え直す必要がでてくるでしょう。これからの話ですね」、いずれにしても、一生懸命働いたのに、「労災」保険が認められないような不利益が生じないよう注視していく必要がある。 ダイヤモンド・オンライン 鈴木貴博氏による「ライドシェアの安全性は「解決済み」本当に重要なのは“既得権益”の問題だ」 「皆が得する未来を描くことができる」とはどういうことなのだろう。 「乗り降りに関する違反運転が多いのは、目視した限りで一般のドライバーよりも圧倒的に教育を受けたタクシーの方が多いようです」、その通りだ。 「タクシー業界は・・・これまで国のルールで莫大な投資をしてきたのに、ライドシェアを解禁したらその投資が回収できない。 これは実は正当な主張なのですが、それが世論に通りにくいから安全性の問題に議論をすり替えざるをえないのです・・・訪日外国人の増加、タクシー運転手の人手不足、過疎化地域などで移動難民の増加など、国内の状況的にはライドシェア解禁の必要性は高まっています・・・業界ではタクシーが不足するたびにタクシーの供給量を増やして消費者の不満を解消してきたわけですが、この計画経済的な仕組みには根本的な欠陥があっ て、タクシー会社にとっての経済的なラインを想定すれば台数は必ずピーク需要よりも少なめになりますし、採算に乗らないエリアは切り捨てられます。 ではこのライドシェア解禁議論はどうすれば前に進むのでしょうか。私は今の議論に加えるべきは「時間軸」だと捉えています」、「時間軸」とはどういうことなのだろう。 「「タクシー会社は2025年からライドシェア営業も実験的に先行して行うことができる」 といった形の時間軸を加えた解決案が出現したらどうなるのかを考えてみましょう。 仮案とはいえ、このような時間軸のロードマップがあるとタクシー会社側は新しい投資戦略を作ることができます。人材の採用については2年後以降、今よりも難易度がひとつ下がります。 ちなみに2種免許を廃止できないのであればライドシェア解禁は無理だと私は思っていますが、ここは異論がある方もいらっしゃるかもしれません。話を続けさせていただきます。 時間軸を設けることによる一番の優位性は、タクシー会社のアプリがウーバーなどの海外アプリに対抗する時間ができることです。仮に今使われているタクシーアプリにアメリカのライドシェアサービスと同じ機能が実装されたとします。 その上で2025年から3年間は、消費者はライドシェアにはタクシーアプリが使えるようになるわけです。たとえばクリスマスの深夜、六本木 でどうしてもタクシーが捕まらない場合、タクシーアプリのライドシェア機能で価格を見て「六本木―新宿8000円で」と通常よりも価格を高めにすることでタクシーを捕まえられるかもしれません。 逆にタクシーが空いている時間帯には普段より安くライドシェアタクシーを呼ぶこともできるようにします。この実験期間が3年間あれば、タクシー業界も将来ライドシェアに移行した場合の価格戦略を立てやすくなります。何より日本のライドシェアでは日本のタクシー会社のアプリがデファクトとして先に登録ユーザーを集めることができるのは、競争優位に なるでしょう」、この「時間軸」の考え方は有効そうだ。「自然に悪い運転をする人が淘汰されていく仕組みをアメリカのライドシェアは持っています。加えて、万が一事故が起きた時に無保険でも救済されるよう、ライドシェアのプラットフォーム側が保険制度を完備することも必要です。 こういった施策によって、研修よりも淘汰によって安全が保たれる仕組み作りが大切だと私は考えます」、同感である。 「昨年、アメリカのサンフランシスコでは無人タクシーが解禁されました。アルファベットの子会社のウェイモと、GMが出資するクルーズがそれぞれサンフランシスコで営業を始めています。日本ではあまり報道されていないこのニュースですが、その意味することは極めて画期的です。 というのもアメリカのサンフランシスコ市は交通環境においては日本の大都市と酷似しているのです。 それは住宅地が入り組んでいたり、道が狭かったり、歩行者が多かったりということなのですが、その環境でアメリカでは自動タクシーの営業サービスが始まっている。ということは世界中でそう遠くない未来に、ロボタクシーが一般的なサービスになっていくはずです・・・世界中でそう遠くない未来に、ロボタクシーが一般的なサービスになっていくはずです・・・私はライドシェア解禁議論は長期的には解禁される方向で議論を進めた方がいいと思っています。 そのために時間軸で考えようという今回のアイデア、反論もあろうかと思いますが、日本経済の未来を考えたひとつの提言だとお考えください」、「時間軸で考え」ることがこれだけの重要な意味を持っているとは、新たな発見である。
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本日は更新を休むので、明日にご期待を!

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デジタルトランスフォーメーション(DX)(その3)(『DXレポート』に見る日本のDXの現在地 理想の組織と人材はどこにあるのか? 「DXレポート2」から2年〜目指すべき“デジタル産業への変革”とは(3)、なぜヤフーはLINEを作れなかったのか…元ヤフー社長が訴えたい「変わらないこと」の本当の恐ろしさ 日本が「デジタル後進国」と揶揄される根本原因) [イノベーション]

デジタルトランスフォーメーション(DX)については、昨年5月15日に取上げた。今日は、(その3)(『DXレポート』に見る日本のDXの現在地 理想の組織と人材はどこにあるのか? 「DXレポート2」から2年〜目指すべき“デジタル産業への変革”とは(3)、なぜヤフーはLINEを作れなかったのか…元ヤフー社長が訴えたい「変わらないこと」の本当の恐ろしさ 日本が「デジタル後進国」と揶揄される根本原因)である。

先ずは、本年6月15日付けダイヤモンド・オンライン「『DXレポート』に見る日本のDXの現在地、理想の組織と人材はどこにあるのか? 「DXレポート2」から2年〜目指すべき“デジタル産業への変革”とは(3)」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/324499
・『経済産業省が2018年に公表した「DXレポート」と、その続編である「DXレポート2」、追補版の「DXレポート2.1」「2.2」。各レポートが示す、DX人材や組織の目指すべきあり方を読み解く。また、アンケートやDX白書などのデータやAIなどの最新技術情報から、日本のDXの現在地を探る。 社会全体でデジタル化が進む中、企業もデータとデジタル技術を駆使したデジタルトランスフォーメーション(DX)によって、新たな価値を産み出すことが求められている。本シリーズの始めに「歴代『DXレポート』を改めて読み解く。なぜ緊急かつ重要なのか?なぜ誤解が生まれるのか?」では、経済産業省が公表した『DXレポート』(初代レポート)、『DXレポート2』を読み解きながら、デジタル変革による競争力強化の前に立ちはだかる課題を確認した。 また前稿「『DXレポート』が示したベンダーと企業との新しい関係性とは?」では、レポート2で触れられた従来の委託・受託による開発やユーザーとベンダーとの新しい関係、レポート2の追補版にあたる『DXレポート2.1』と『DXレポート2.2』で定義された、デジタル社会の実現に必要となる機能を社会にもたらす「デジタル産業」について、詳しく見ていった。 本稿ではまず、レポート2で触れられた、ジョブ型人事制度の拡大とDX人材の確保について、目指すべきあり方を考察。さらに読者アンケートや『DX白書2023』などのデータから日本のDXの現在地を探る』、「本稿ではまず、レポート2で触れられた、ジョブ型人事制度の拡大とDX人材の確保について、目指すべきあり方を考察。さらに読者アンケートや『DX白書2023』などのデータから日本のDXの現在地を探る」、なるほど。
・『DX人材採用では求める人物像を明確に設定して周知すべし  DX推進のための組織のあり方やDX人材の確保について、各レポートはどう触れているのか。初代レポートは経営層のDXへのコミットが薄い点や、事業部門と情報システム部門との連携不足を課題として挙げていた。DX推進がベンダー頼りで、従来システムの運用・保守ができる人材が枯渇していることに関連して、一般企業がエンジニアの確保と教育が困難だという点も、初代レポートでは問題としている。 企業の経営陣はDX推進にあたり、どう動くべきか。レポート2.2では、デジタル産業への変革に向けたアクションを企業へ提示している。具体的には「デジタルを省力化・効率化ではなく、収益向上に活用する」「DX推進にあたって、経営者がビジョン・戦略だけでなく『行動指針』を示す」「個社単独ではなく、経営者自らの価値観を外部へ発信し、同じ価値観を持つ同志を集めて互いに変革を推進する、新たな関係を構築する」の3点である。) DX人材を確保する方法は、外部からの採用と内部での育成の2通りが考えられる。採用するなら、どんな人をどう採用すればよいのだろうか。大事なのは、自社のDX人材がどのような人物であるべきか、明確にしておくことだ。 レポート2にはDXを推進する理想の人材として、「構想力を持ち、明確なビジョンを描き、自ら組織をけん引し、実行することができるような人材が求められる」とある。またDX推進において、「企業が市場に対して提案する価値を現実のITシステムへと落とし込む技術者の役割が極めて重要である」としている。 求める人材を設定したら、これを周知することも大切だ。情報処理推進機構(IPA)が2023年3月に公開した『DX白書2023』によれば、DX人材像を周知していない企業が8割以上を占め、そもそも求める人材像を設定していない企業も4割に上る。同白書によれば、DX人材の不足は量的にも質的にも進む傾向にある。求人市場でのアピールだけでなく、社員などのコネクションを生かした「リファラル採用」などにより、獲得の手段を広げる必要もあるだろう』、「DX人材像を周知していない企業が8割以上を占め、そもそも求める人材像を設定していない企業も4割に上る」、少なくとも「求める人材像」は設定しておくべきだ。
・『内部人材の育成ではOJTも大切 アジャイル開発の実践も効果あり  レポート2は「技術者のスキルの陳腐化は、DXの足かせとなることもある」とも指摘し、内部の人材の継続的な育成支援も重視する。「常に新しい技術に敏感になり、学び続けるマインドセットを持つことができるよう、専門性を評価する仕組みや、リカレント学習(生涯にわたる学習)の仕組みを導入すべき」と述べるほか、「副業・兼業を行いやすくし、人材流動や、社員が多様な価値観と触れる環境を整えることも重要」としている。 『いちばんやさしいDXの教本』著者の亀田重幸氏は、「研修も大事だが、実地で学ぶことが大切」と筆者の取材に対し、語っている(『DXはなぜやるべきか?どうして躓くのか?「基本のき」を専門家がやさしく解説』)。ヘッドハンティングなどで外部から専門性の高い人材を積極的に採用すると同時に、内部でも若手がさまざまな業務で経験を積んでスキルを広げていくことで、DXを進められる人材が育つという。 また初代レポートは「アジャイル開発の実践そのものが人材育成になる」と述べている。ユーザー企業の人材は開発手法を学ぶことができ、ベンダー企業の人材は開発を通じて業務への知見を得られるという点で、DX人材の育成に有効だという。) 求める人材の設定を明確にすること、これを周知することは、ジョブ型人事制度を活用して社外の優秀な人を取り入れることや、社内でリスキリングなどによりDXを実行できる人材を育てることにもつながる。レポート2では「ジョブ型雇用の考え方は、特に、DXを進めるに際して、社外を含めた多様な人材が参画してコラボレーションするようなビジネス環境として重要なものになる」「まずはジョブ(仕事の範囲、役割、責任)を明確にし、そのうえでさらに成果の評価基準を定めることから始めることが現実的である」と指摘する』、「「まずはジョブ(仕事の範囲、役割、責任)を明確にし、そのうえでさらに成果の評価基準を定めることから始めることが現実的である」、その通りだ。
・『DXで成果が出ている企業は約2割 中小企業や地方で取り組みに遅れ  2018年の初代レポート公開以降、日本企業のDXはどの程度進んでいるのか。ダイヤモンド・オンラインの会員を対象にした2022年10月のアンケートでは、「デジタイゼーション」「デジタライゼーション」までは進んでいると回答した人が合計で62.06%と、全体の約3分の2近くに達している。しかしDX段階にあると答えた人の割合は16.08%にとどまる。 『DX白書2023』の結果でも、デジタイゼーションに相当する「アナログ・物理データのデジタル化」やデジタライゼーションに相当する「業務の効率化による生産性の向上」で成果が出ている企業の割合は、米国との差がなくなっている。しかしDXにあたる「新規製品・サービスの創出」「顧客起点の価値創出によるビジネスモデルの根本的な変革」では、成果が出ている割合は20%台。米国の約70%とは大きく差が出ている。 『DXレポート』に見る日本のDXの現在地、理想の組織と人材はどこにあるのか? *集計対象は、DX取り組みの成果において「成果が出ている」と回答した企業 出典:IPA『DX白書2023』 国内のDX取り組み状況について、もう少し詳しく白書を見ていこう。総務省の調査では企業規模別のDX取り組み状況は、大企業の4割強に対して、中小企業では1割強と少なかった。IPAの調査でも、売り上げ規模が大きくなるほど取り組みの割合が高い傾向が現れている。従業員20人以下の中小企業では予算の確保が、21人以上の中小企業では、人材や企業文化・風土がDX取り組みの妨げとなっている。 また、東京23区では4割近くの企業でDXへの取り組みが進められているが、都市規模が小さくなるにつれてその割合が低くなる傾向もある。地方ではDXへの期待が業務効率化(80.4%)、生産性向上(69.6%)に向けられ、商圏拡大は5.4%にとどまる。 一方、東京都では商圏拡大に期待するという回答が21.3%にのぼり、大きな開きがある。「テクノロジーによって、資本や地域の別なく価値創造に参画できる」というデジタル産業の理想からは、かけ離れた実態がそこには見られる』、「DXにあたる「新規製品・サービスの創出」「顧客起点の価値創出によるビジネスモデルの根本的な変革」では、成果が出ている割合は20%台。米国の約70%とは大きく差が出ている」、大差でやはり問題だ。
・『DXによる成果評価の頻度の低さが目立つ日本企業  白書を見ていくと「ITに見識のある役員の割合」「部門協調」「予算確保」「成果評価の頻度」などの面で、日本企業のDX取り組みには課題があると考えられる。特に、取り組みの成果を評価する頻度の低さは気になるところだ。これでは仮にDXに取り組み始めても、「やってみたけれども、うまくいっているかどうかは分からない」「どう改善すればいいか分からない」という企業も多いのではないだろうか。 『DXレポート』に見る日本のDXの現在地、理想の組織と人材はどこにあるのか? 出典:IPA『DX白書2023』 また、すでにレガシーシステムの置き換えが進む米国と比べて、日本では半分以上残っているという企業が41.2%にもなる。「2025年の崖」が叫ばれ、DX=レガシーシステムの刷新と誤解されたほどだったにもかかわらず、である。 とはいえ、DXに取り組んでいない企業では「レガシーシステムが自社にどの程度残っているのか」すら把握していない企業が40.8%も残っている。DXへ取り組むことが、レガシーシステムの把握・刷新へのきっかけとなっていることはうかがえる。 『DXレポート』に見る日本のDXの現在地、理想の組織と人材はどこにあるのか? 出典:IPA『DX白書2023』 システム開発の手法と技術については、SaaS、IaaS、PaaSなどのクラウドサービス活用は進みつつある。しかし新しい開発手法や技術の活用度合いは、米国と比べて低く、従来の手法から脱却できていない企業が多いようだ。 『DXレポート』に見る日本のDXの現在地、理想の組織と人材はどこにあるのか? 出典:IPA『DX白書2023』 『DXレポート』に見る日本のDXの現在地、理想の組織と人材はどこにあるのか? 出典:IPA『DX白書2023』 データ利活用は進みつつあるが、全社で取り組む割合が日本では低く、取り組む予定がない企業の割合も約20%ある。また、利活用による効果を測定していない企業も5割前後と多い。 『DXレポート』に見る日本のDXの現在地、理想の組織と人材はどこにあるのか? 出典:IPA『DX白書2023』 日本ではデータの利活用がデータ整備やマスターデータ管理などの基礎段階にある企業が多い。データ整備・管理・流通においては人材、システム、文化といったさまざまな領域で課題があるため、効果が出るまでに至っていないのではないかと白書では分析している』、「システム開発の手法と技術については、SaaS、IaaS、PaaSなどのクラウドサービス活用は進みつつある。しかし新しい開発手法や技術の活用度合いは、米国と比べて低く、従来の手法から脱却できていない企業が多いようだ」、なるほど。
・『『DX白書2023』を確認 最新技術のDXへの活用は?  最新技術はどの程度、DXに活用されているのか。「第3次ブーム」が到来したと言われるAIと、IoT・デジタルツイン(現実の建造物などを仮想空間に再現する技術)について、DX白書2023に導入・活用状況のレポートがあるので確認してみよう。 まずAI導入の現状について。DX白書2023によれば日本のAI導入率は22.2%で、米国の40.4%との差はまだ大きい。さらに、AIの導入目的には大きな違いがある。米国では「集客効果の向上」「新製品の創出」「新サービスの創出」の割合が高いのに対し、日本では「生産性向上」「ヒューマンエラーの低減、撲滅」「品質向上」の割合が高い。顧客価値の向上など、DXを目的としたAI活用が進む米国に対し、日本では効率化を主眼としたデジタライゼーションの域にとどまっているのが現状だ。 『DXレポート』に見る日本のDXの現在地、理想の組織と人材はどこにあるのか? 出典:IPA『DX白書2023』 AI導入において、日本では導入・運用費用のほか、AIへの理解が自社で不足していることや、AI人材の不足、導入事例の不足、導入効果への不安が課題として大きいようだ。 IoT技術についても、導入が進む米国(48.4%)に比べて日本(23.3%)は取り組みに遅れが見られる。デジタルツインの構築・活用については、そもそも「構築・活用していない」という回答が日本では58.0%と高く、さまざまな領域で活用が進みつつある米国との差が大きい。 『DXレポート』に見る日本のDXの現在地、理想の組織と人材はどこにあるのか? 出典:IPA『DX白書2023』 IoT導入においても、予算不足、IoTに関する自社の理解不足、人材不足などが日本企業における課題として挙げられている』、「AIの導入目的には大きな違いがある。米国では「集客効果の向上」「新製品の創出」「新サービスの創出」の割合が高いのに対し、日本では「生産性向上」「ヒューマンエラーの低減、撲滅」「品質向上」の割合が高い。顧客価値の向上など、DXを目的としたAI活用が進む米国に対し、日本では効率化を主眼としたデジタライゼーションの域にとどまっているのが現状だ」、「AIの導入目的」の米国に比べた遅れは深刻で、まだまだのようだ。
・『効率化から価値創造へ踏み出し 成果測定による仮説検証を  最初のDXレポート公開から5年目の今も変わらない、効率化中心の投資については、レポート2.2も指摘するところである。DX推進に対して投入される経営資源がサービスの創造・革新といった価値向上に向かっていないことは、危惧すべき点である。 また白書が示すように、投資による成果がどの程度現れているのか、仮説検証に至るための効果測定が多くの企業で行われていないことも問題だ。「変わらなければ」というかけ声だけでは真のDX実践にはほど遠い。デジタライゼーションが徐々に進んでいることは評価に値するが、「企業がデジタルで変わること」は顧客に与える価値をさらに生み出したり増やしたりするための手段であって、目的ではないことには留意すべきだ。 DXの実践にあたっては、2020年11月に経済産業省が取りまとめ、2022年9月に改訂された「デジタルガバナンス・コード」も参照するといいだろう。デジタルガバナンス・コードは、デジタル技術による社会変革を踏まえた経営ビジョンの策定・公表といった経営者に求められる対応をまとめたものだ。 デジタルガバナンス・コードを実践したい中堅・中小企業等に向けては「中堅・中小企業等向け『デジタルガバナンス・コード』実践の手引き」も用意されている。この手引きはDX実践のために必要な手法や技術に対する理解不足、人材不足、事例不足などの課題に対する回答の1つとして、中堅・中小企業においては特に有益ではないかと思う。 手引きにはDXの意義をはじめ、実現のための4つのプロセス、成功のポイントのほか、全国のDX実践企業の取り組み例・事例も11件掲載されている。末尾にある「DXセレクション2022」選定企業の経営者からのメッセージも力強い。規模の大小にかかわらず、DXに取り組んでいる、あるいはこれから取り組みたいという企業の経営者や推進担当者にとっては大きなヒントになるのではないだろうか』、「DX推進に対して投入される経営資源がサービスの創造・革新といった価値向上に向かっていないことは、危惧すべき点である。 また白書が示すように、投資による成果がどの程度現れているのか、仮説検証に至るための効果測定が多くの企業で行われていないことも問題だ・・・2020年11月に経済産業省が取りまとめ、2022年9月に改訂された「デジタルガバナンス・コード」も参照するといいだろう。デジタルガバナンス・コードは、デジタル技術による社会変革を踏まえた経営ビジョンの策定・公表といった経営者に求められる対応をまとめたものだ。 デジタルガバナンス・コードを実践したい中堅・中小企業等に向けては「中堅・中小企業等向け『デジタルガバナンス・コード』実践の手引き」も用意されている」、興味がある方は参考にされたい。

次に、9月12日付けPRESIDENT Onlineが掲載したZホールディングス会長の川邊 健太郎氏による「なぜヤフーはLINEを作れなかったのか…元ヤフー社長が訴えたい「変わらないこと」の本当の恐ろしさ 日本が「デジタル後進国」と揶揄される根本原因」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/73565
・『【連載#私の失敗談 第8回】どんな人にも失敗はある。ヤフーやLINE、PayPayなどの企業を傘下に抱えるZホールディングス(ZHD)会長の川邊健太郎さんは「Yahoo!メッセンジャーがあったにもかかわらず、スマホ時代に対応できなかった。変わらないことがヤフーの致命的な失敗の一つになった。それは『デジタル後進国』と呼ばれる日本にも当てはまる」という――』、興味深そうだ。
・『必要な失敗を経験した人から成功に近づいていく  私自身の失敗は嫌というほどあります。そもそも、経営者が「失敗」から得ていく教訓には大きく2つあると思っています。 何か新たなチャレンジのために行動していくうえで、失敗というのは付きものでしょう。むしろ、失敗がなければ、うまくいくようにもならないのではないかと思っています。ですから、一つの結論として現在の私が思うのは、必要な失敗を経験した人から成功に近づいていくということです。「失敗」という名目の、いわば貯金が貯まっていって、とくに大きな成功の機会は訪れる。 もう一つ、必要な失敗をすることによって、リスクに対する捉え方が非常に敏感になったり、現実的になったりしていくことがその人をアグレッシブに鍛えるという結果になるのではないでしょうか。 事業家として当然、未知のチャレンジをしていくわけですが、それは、失敗を恐れてチャレンジすることに消極的になるのではなくて、むしろ、失敗のリスクの伴うチャレンジをどんどんしていくことで成功に近づいていくのだろうと、ふだんから考えています。 それは、さまざまな失敗を積み重ねることによって、致命傷には至らないようにリスクコントロールができるようになっていくととらえています』、「必要な失敗を経験した人から成功に近づいていくということです。「失敗」という名目の、いわば貯金が貯まっていって、とくに大きな成功の機会は訪れる。 もう一つ、必要な失敗をすることによって、リスクに対する捉え方が非常に敏感になったり、現実的になったりしていくことがその人をアグレッシブに鍛えるという結果になるのではないでしょうか」、「「失敗」という名目の、いわば貯金が貯まっていって、とくに大きな成功の機会は訪れる」、とは言い得て妙だ。
・『「電脳隊」時代の後悔  私自身の歩みは、学生のときからの起業家時代とYahoo! JAPANの経営者時代に大別できます。 まず、起業家時代については、先日、自分のツイッターで私が学生時代に設立したITベンチャーの「電脳隊」という会社の回顧録を書いたところです。そのまとめとして、パートナーシップを結ぶときは順番を間違えないことが大事になると強調しています。これは、逆にいうと、順番を間違えて失敗した私自身の実体験に基づいているからです。 最初はパソコンのインターネット事業を展開して、かなり早い時期からサービスのモバイル化にシフトしました。当時のモバイルインターネット事業で、われわれのように独自の開発ツールを作って売る会社にとっては、最大手の通信キャリアと組むことがすごく重要だったんです。 当時のわれわれは、その最大手と組もうとせず、ほかのところへ行ってしまった。その結果、競合キャリアの回し者と見なされ、最大手となかなか組むことができませんでした。最後の最後で、そのことが非常に大きな重い経営課題となって、会社を売却するところに至ったという痛烈で超大きな失敗体験です』、「当時のわれわれは、その最大手と組もうとせず、ほかのところへ行ってしまった。その結果、競合キャリアの回し者と見なされ、最大手となかなか組むことができませんでした。最後の最後で、そのことが非常に大きな重い経営課題となって、会社を売却するところに至ったという痛烈で超大きな失敗体験」、組む相手を間違うと簡単には是正できないようだ。
・『過信と知識不足で「組める相手と組めなかった」  いまから考えれば、われわれが開発したオリジナリティーの高い技術を持っている状況であるなら、最大手のキャリアとも全然組み得たと思います。 しかし、他のキャリアとも同時並行で組んでいけるだろうと見立てていた。敏感さが足りなかったのでしょう。むしろ、その通信キャリア同士で実は強烈な競争にしのぎを削っていて、われわれが同時並行でつきあえるような状況ではすでになかったんです。最大手と手を組めたはずなのに組まなかったという致命的な教訓になりました。 複数の通信キャリアと手を組めるだろうと思っていた過信、そしてキャリアの競争環境の激しさを理解していなかった知識不足です』、「複数の通信キャリアと手を組めるだろうと思っていた過信、そしてキャリアの競争環境の激しさを理解していなかった知識不足です」、「致命的な教訓」の原因は身近なようだ。
・『技術だけでは成功できない…手を組む相手を見極める重要性  それは、いまでもわれわれの経営方針に通じています。たとえば、たまたま声をかけてきてくれたところとパートナーシップを結ぶ交渉を始めたときでも、途中で立ち止まって、「いま話し合っているところが最大手といえるのか」と必ず確認するようになった。 あるいは、「最大手とも交渉しなくていいのか」というように、手痛い経験があるからこそ、ものすごく大きな教訓になっています。いわば、その瞬間でのスクリーンショットのシェアのことといいかえられますから、見極めるのはそう難しいことではありません。大事なのは、それを冷静に考慮に入れるかどうか、ということです。 必要な失敗をした事業こそ成功していくし、失敗が深ければ深いほど大成功につながっていくとも実感しています』、「たまたま声をかけてきてくれたところとパートナーシップを結ぶ交渉を始めたときでも、途中で立ち止まって、「いま話し合っているところが最大手といえるのか」と必ず確認するようになった。 あるいは、「最大手とも交渉しなくていいのか」というように、手痛い経験があるからこそ、ものすごく大きな教訓になっています・・・必要な失敗をした事業こそ成功していくし、失敗が深ければ深いほど大成功につながっていくとも実感しています」、なるほど。
・『「Yahoo! BB」の経験と「PayPay」の成功  冒頭に申し上げたとおり、必要な失敗をしたほうから成功していくし、失敗が深ければ深いほど大成功につながっていく。2000年代前半、ADSLサービス「Yahoo! BB」を普及させるために、駅前や家電量販店でモデム機器を大々的に無料で配ったとき様々な混乱が起きたことも、後になって振り返れば貴重な経験でした。 たくさんの体験を積み重ねてきたからこそ、たとえばスマートフォン決済サービス「PayPay」を急成長させることができたという感覚があります。Yahoo! BBの経験なくして、PayPay普及の一発勝負でうまくいったかどうかはわかりません。何か新しいものを普及させるときのやり方がもたらす成功と失敗の結果というのは、本当に表裏一体だと痛感します。 ahoo! BBのADSLにしても、すぐに光ファイバーによるインターネット通信に取って代わられていったりと、事業の将来と最終的な成否はわかりません。その瞬間でのスクリーンショットによる判断と申し上げたとおりです。ただし、いろいろな経験がPayPayには生きているのはたしかです。 さらに、QRコード決済という意味では、たしかにキャッシュレス化を一気に広めたと思います。すぐ隣を見れば、強敵もたくさんいますから、PayPayの成功に安住せず、日々精進というところです』、「QRコード決済という意味では、たしかにキャッシュレス化を一気に広めたと思います。すぐ隣を見れば、強敵もたくさんいますから、PayPayの成功に安住せず、日々精進というところです」、周囲を見渡して、自己満足せず、「日々精進」することが重要なようだ。
・『「Yahoo!メッセンジャー」が「LINE」に負けたワケ  ヤフーを主語にして私が語るならば、PC全盛の時代から「Yahoo!メッセンジャー」というサービスがあったわけです。韓国で当時、はやり始めた「カカオトーク」のようなメッセンジングサービスとして「LINE」が登場し、あっという間に現在のように圧倒的なシェアを持つに至りました。 プロダクトとしては以前からあったのにもかかわらず、スマートフォン時代に、Yahoo!メッセンジャーをいまのLINEのような一強の存在に、ヤフーはしようと思えばできたはずなのに、見立ての甘さ、発想の誤りから、そのようにできず、2014年3月にサービスを終了しました。ヤフーの致命的な失敗の一つですね。 しかし、次の段階では、LINEと経営統合(2021年3月)するという、まったく違う方法で挽回することができました。 最大手とパートナーシップを結ぶ状況になった際、さらに、「その最良の相手が将来も最大手であるのかどうかはわからない」というテーマは別途ありまして、応用編の話です。相手とわれわれの将来は、現時点のスクリーンショットを見るのとは違って、見立てるのが不可能といっていいくらい、めちゃくちゃ難しいことです。手を結ぶと決めた相手を信じるしかない、という次元の世界になってくると思います。 Q:読書家として知られる川邊氏は、大きな影響を受けた一冊として、《偉大な企業は、すべてを正しく行うがゆえに失敗する――》という有名な一節で知られ、ハーバード・ビジネス・スクール教授などを歴任した著名な経営学者・故クレイトン・クリステンセンの世界的なベストセラー『イノベーションのジレンマ』を挙げる。話題は、昨今のマイナンバーカードをめぐるさまざまなトラブル、DXの遅れが指摘される日本社会の問題を、やさしく解きほぐすように広がった―― ▽なぜ日本は「デジタル後進国」と言われるようになったのか(ここまで申し上げてきたように、たとえばYahoo!メッセンジャーのケースがわかりやすいでしょう。PC上のメッセージングサービスとしてユーザーからの支持もシェアも非常に高かったのに、LINEのように、PCユーザーには振り向かず、スマホに特化したメッセージングサービスに一挙に覆されることになりました。 典型的なイノベーション・ジレンマに、われわれは陥っていたんです。「そうなるかもしれないことをわかっていたのに、なぜ、やらなかったのか」という自問自答を繰り返すことになりました。 DXが日本では後れているという一般論についても、問題をもう少しきちんと分解して考えたほうがいいと思います。日本の社会全体が、あるいは民間のサービス全体がDXで後れているということは、そんなに心配するレベルではありません。アメリカのGAFAMは世界で先端的なサービスを、みんなが活用していますし、われわれだって一所懸命にやっていますから。) 日本全体が遅れているのではなくて、行政や行政にまつわる分野。たとえば、医療や公共交通などの特定のジャンルで著しく遅れているという、自己認識が大事になると思います。なぜ遅れているのかというと、ひとえに、新しいものを容易に受け入れないような土壌があるのではないかと思います。 技術革新(イノベーション)ではなく、“勤勉革命”で何とかしようとしすぎているのではないでしょうか』、「(日本が)なぜ遅れているのかというと、ひとえに、新しいものを容易に受け入れないような土壌があるのではないかと思います。 技術革新(イノベーション)ではなく、“勤勉革命”で何とかしようとしすぎているのではないでしょうか」、「技術革新・・・ではなく、“勤勉革命”で何とかしようとしすぎている」というのは的確な診断だ。
・『「政府が悪い」と言うだけでは何も解決しない  技術でもっと生産性を上げることができるはずなのに、「技術革新は自分の仕事を奪うものだ」という思い込みにとらわれている人が少なからずいるからかもしれません。とくに、1台のタクシーを複数組の乗客が乗り合いで利用するライドシェアがいっこうに進んでいないことを目にするたび、働く人の根性でやろうとか、勤勉精神で何とかしようという風潮を感じます。怠けている人はいない、しかしがんばり方を間違っているのではないでしょうか。 あえて挙げるなら、競争環境がないのは一つの特徴といえるでしょうか。われわれがGAFAMと戦うとすれば、技術を用いて生産性を上げたり、付加価値を高めたりしなければ、顧客に選んでいただけません。しかし、行政にかかわる事業というのは独占状態ですね。1つの行政区には1つの区役所しかありませんし、公共交通も基本的には地域ごとに許認可事業で寡占状態のままです。医療・病院の業界にも競争原理が一応は導入されていますが、自由化というにはほど遠い。 競争がない、というのは、やはり大きな問題ではないでしょうか。単に行政が悪いというロジックで片づけるのではなく、競争原理がないという問題点こそ見ていく必要があるのではないか。競争原理が働かない結果、がんばり方を間違えるという悪循環に陥っているように思えます』、「競争原理が働かない結果、がんばり方を間違えるという悪循環に陥っているように思えます」、興味深い診断だ。
・『技術の力で日本を変えるしかない  物流業界が直面している「2024年問題」(※)は、わかりやすい変化のきっかけになると思います。 ※働き方改革関連法によって2024年4月1日以降、自動車運転業務の年間時間外労働時間の上限が960時間に制限されることによって発生する問題の総称。 物流や移動にかかわる仕事に従事してきた人たちに依存してきた勤勉頼り一辺倒では、もはや駄目、ということになったわけですよね。「ちゃんと休みましょう」という世の中に変わり、働く人たちの勤勉だけでは人手は確保できず、社会生活が成り立たなくなる。それでようやく技術で解決するしかない、という流れになってきた。 もっと早く勤勉至上主義から技術革新へとシフトできていれば、トラックや公共交通の自動運転化は、より促進されたでしょう。それでも、2024年に問題が表出するまで追い込まれ、新しい方法でしか解決できないとなった結果、日本は技術革新を起こして前に進んでいくしかありません。) いままたインバウンドによる観光客であふれかえる日本でいっこうに進まないライドシェアについても、私はツイッターで発信しつづけてきました。 ただし、ライドシェアを推進したとしても、ドライバーの絶対数を必要とするのですから、それは過渡期的なことでしかありません。 公共交通は、とくに都市部より地方で、すでに深刻な問題になっている。それくらい切迫しています。よりAI化、自動化、無人化をどんどん進めていくしかないでしょう。このままわれわれ日本の最大の失敗に陥るのか、すんでのところで技術によって革新をもたらすのか、その瀬戸際に立っているのではないでしょうか』、「公共交通は、とくに都市部より地方で、すでに深刻な問題になっている。それくらい切迫しています。よりAI化、自動化、無人化をどんどん進めていくしかないでしょう。このままわれわれ日本の最大の失敗に陥るのか、すんでのところで技術によって革新をもたらすのか、その瀬戸際に立っているのではないでしょうか」、その通りだ。
・『規制は「悪」なのか  Q:自身のツイッターなどをはじめ、メディアで機会あるごとに、ライドシェア促進について提言するほか、批判を受けるのを覚悟したうえでの発言とわかるように、日本のDXを急加速させるためには、永田町や霞が関がしきりに強調する「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化」なるスローガンを取り下げるべきなのではないかと踏み込んできた。行政の規制にがんじがらめになっていると自他の声やまぬ日本の、横並びでゆでガエル状態になっている現在に、痛烈なる一石を投じた格好である。東京・渋谷の生まれ育ちながら、房総半島の南端である千葉・館山に移住したと公表し、都心でのハードワークとプライベートなスローライフを両立する日々を送りつつ、自らの被験者の視点も育んでいる―― 少子化、人口減に高齢化、さらに生産年齢人口も急激に減っていく中、定年退職をした高齢者に働いていただくなど社会の担い手を無理やり増やしてきたわけですけれども、それもいずれ限界が訪れる。たくさんの課題が生まれて、それを解決できない古い規制があるのでなくしましょう、という考え方もあります。 反対に、発展の著しい生成AI技術は可能性と同時に権利も保護しなければならない。ビッグデータの活用にはプライバシーや倫理上の問題も伴います。規制を強化する必要も考えられなくてはなりません。 いまの問題としては、新しい事象が起きているのに、昔の規制をそのままにしているために何かができなかったり、あるいは何かを試みるときにその規制が著しい障害になったりしているのであれば、状況に応じて変えなければならないでしょう、ということです。 都会から離れて住む者として実感する例でいえば、公共交通のドライバーが圧倒的に足りないのに、規制が変わらないのはおかしい、ということでしょうか。規制に限ったことではありませんが、変えるとは、取っ払うこともあれば、むしろ強化することも必要になるという認識を持っています。
・『日本を本当の「優しい国」にするために  変えるということに、反対はつきものでしょう。ただし、規制をそのまま維持するのが「優しい」ことに必ずなるとは、私は考えていません。新しい状況に対して困っている人がいるのなら、それを解決するのが本当の優しさだと思うからです。 規制を緩和することによって、一部の人が既得権から外れ、冷たくされたと恨みを抱くかもしれませんけれども、新しい状況に対して困っている多くの人を救うのなら、それが「優しい」と思います。 国内で約25万人といわれるタクシー運転手がさらに減っている。その何十倍、何百倍もの「移動難民」と呼ばれる人たちが救われ、助かるために、最大多数の最大幸福という観点で、どのようにするのがいいのか。議論の余地は、そう多くはないことでしょう。 日本のパスポート取得率は人口の2割を切っていますから、海外旅行の経験のない人がとても多い。インバウンドの盛んないまの日本では、海外の観光客が炎天下でタクシーが拾えずに汗だくで路上に立ち尽くしている光景が珍しくなくて、多くの日本人は海外旅行というのはそれが当たり前のものと思う人が少なくなくなっています。 しかし、世界ではシェアリング・エコノミーというイノベーションが起きて、タクシーなどに乗りたいときに乗れないということはなくなっている国が多くあります。規制を取っ払うと同時にイノベーションを起こして、困っている多くの人たちに優しくすべきなのではないでしょうか。 2023年10月に、ヤフーとLINEが一つの会社に統合して、「LINEヤフー」として新たなスタートを切ります。みなさんにとって、より便利なものをスピード感をもって、もっともっと出していきます』、「行政の規制にがんじがらめになっていると自他の声やまぬ日本の、横並びでゆでガエル状態になっている現在に、痛烈なる一石を投じた格好である・・・規制を緩和することによって、一部の人が既得権から外れ、冷たくされたと恨みを抱くかもしれませんけれども、新しい状況に対して困っている多くの人を救うのなら、それが「優しい」と思います・・・2023年10月に、ヤフーとLINEが一つの会社に統合して、「LINEヤフー」として新たなスタートを切ります。みなさんにとって、より便利なものをスピード感をもって、もっともっと出していきます」、「LINEヤフー」の新サービスが楽しみだ。
タグ:(その3)(『DXレポート』に見る日本のDXの現在地 理想の組織と人材はどこにあるのか? 「DXレポート2」から2年〜目指すべき“デジタル産業への変革”とは(3)、なぜヤフーはLINEを作れなかったのか…元ヤフー社長が訴えたい「変わらないこと」の本当の恐ろしさ 日本が「デジタル後進国」と揶揄される根本原因) デジタルトランスフォーメーション(DX) イヤモンド・オンライン「『DXレポート』に見る日本のDXの現在地、理想の組織と人材はどこにあるのか? 「DXレポート2」から2年〜目指すべき“デジタル産業への変革”とは(3)」 「本稿ではまず、レポート2で触れられた、ジョブ型人事制度の拡大とDX人材の確保について、目指すべきあり方を考察。さらに読者アンケートや『DX白書2023』などのデータから日本のDXの現在地を探る」、なるほど。 「DX人材像を周知していない企業が8割以上を占め、そもそも求める人材像を設定していない企業も4割に上る」、少なくとも「求める人材像」は設定しておくべきだ。 「「まずはジョブ(仕事の範囲、役割、責任)を明確にし、そのうえでさらに成果の評価基準を定めることから始めることが現実的である」、その通りだ。 「DXにあたる「新規製品・サービスの創出」「顧客起点の価値創出によるビジネスモデルの根本的な変革」では、成果が出ている割合は20%台。米国の約70%とは大きく差が出ている」、大差でやはり問題だ。 「システム開発の手法と技術については、SaaS、IaaS、PaaSなどのクラウドサービス活用は進みつつある。しかし新しい開発手法や技術の活用度合いは、米国と比べて低く、従来の手法から脱却できていない企業が多いようだ」、なるほど。 「AIの導入目的には大きな違いがある。米国では「集客効果の向上」「新製品の創出」「新サービスの創出」の割合が高いのに対し、日本では「生産性向上」「ヒューマンエラーの低減、撲滅」「品質向上」の割合が高い。顧客価値の向上など、DXを目的としたAI活用が進む米国に対し、日本では効率化を主眼としたデジタライゼーションの域にとどまっているのが現状だ」、「AIの導入目的」の米国に比べた遅れは深刻で、まだまだのようだ。 「DX推進に対して投入される経営資源がサービスの創造・革新といった価値向上に向かっていないことは、危惧すべき点である。 また白書が示すように、投資による成果がどの程度現れているのか、仮説検証に至るための効果測定が多くの企業で行われていないことも問題だ・・・2020年11月に経済産業省が取りまとめ、2022年9月に改訂された「デジタルガバナンス・コード」も参照するといいだろう。 デジタルガバナンス・コードは、デジタル技術による社会変革を踏まえた経営ビジョンの策定・公表といった経営者に求められる対応をまとめたものだ。 デジタルガバナンス・コードを実践したい中堅・中小企業等に向けては「中堅・中小企業等向け『デジタルガバナンス・コード』実践の手引き」も用意されている」、興味がある方は参考にされたい。 PRESIDENT ONLINE 川邊 健太郎氏による「なぜヤフーはLINEを作れなかったのか…元ヤフー社長が訴えたい「変わらないこと」の本当の恐ろしさ 日本が「デジタル後進国」と揶揄される根本原因」 「必要な失敗を経験した人から成功に近づいていくということです。「失敗」という名目の、いわば貯金が貯まっていって、とくに大きな成功の機会は訪れる。 もう一つ、必要な失敗をすることによって、リスクに対する捉え方が非常に敏感になったり、現実的になったりしていくことがその人をアグレッシブに鍛えるという結果になるのではないでしょうか」、「「失敗」という名目の、いわば貯金が貯まっていって、とくに大きな成功の機会は訪れる」、とは言い得て妙だ。 「当時のわれわれは、その最大手と組もうとせず、ほかのところへ行ってしまった。その結果、競合キャリアの回し者と見なされ、最大手となかなか組むことができませんでした。最後の最後で、そのことが非常に大きな重い経営課題となって、会社を売却するところに至ったという痛烈で超大きな失敗体験」、組む相手を間違うと簡単には是正できないようだ。 「複数の通信キャリアと手を組めるだろうと思っていた過信、そしてキャリアの競争環境の激しさを理解していなかった知識不足です」、「致命的な教訓」の原因は身近なようだ。 「たまたま声をかけてきてくれたところとパートナーシップを結ぶ交渉を始めたときでも、途中で立ち止まって、「いま話し合っているところが最大手といえるのか」と必ず確認するようになった。 あるいは、「最大手とも交渉しなくていいのか」というように、手痛い経験があるからこそ、ものすごく大きな教訓になっています・・・必要な失敗をした事業こそ成功していくし、失敗が深ければ深いほど大成功につながっていくとも実感しています」、なるほど。 「QRコード決済という意味では、たしかにキャッシュレス化を一気に広めたと思います。すぐ隣を見れば、強敵もたくさんいますから、PayPayの成功に安住せず、日々精進というところです」、周囲を見渡して、自己満足せず、「日々精進」することが重要なようだ。 「(日本が)なぜ遅れているのかというと、ひとえに、新しいものを容易に受け入れないような土壌があるのではないかと思います。 技術革新(イノベーション)ではなく、“勤勉革命”で何とかしようとしすぎているのではないでしょうか」、「技術革新・・・ではなく、“勤勉革命”で何とかしようとしすぎている」というのは的確な診断だ。 「競争原理が働かない結果、がんばり方を間違えるという悪循環に陥っているように思えます」、興味深い診断だ。 「公共交通は、とくに都市部より地方で、すでに深刻な問題になっている。それくらい切迫しています。よりAI化、自動化、無人化をどんどん進めていくしかないでしょう。このままわれわれ日本の最大の失敗に陥るのか、すんでのところで技術によって革新をもたらすのか、その瀬戸際に立っているのではないでしょうか」、その通りだ。 「行政の規制にがんじがらめになっていると自他の声やまぬ日本の、横並びでゆでガエル状態になっている現在に、痛烈なる一石を投じた格好である・・・規制を緩和することによって、一部の人が既得権から外れ、冷たくされたと恨みを抱くかもしれませんけれども、新しい状況に対して困っている多くの人を救うのなら、それが「優しい」と思います・・・2023年10月に、ヤフーとLINEが一つの会社に統合して、「LINEヤフー」として新たなスタートを切ります。みなさんにとって、より便利なものをスピード感をもって、もっともっと出していき
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ハラスメント(その23)(「ジャニー氏は1万円を渡して…」ジャニーズ性加害問題 もし今の法律で裁かれていたら?、海外記者がジャニ会見で感じた日本の「ヤバさ」 「悪いおじいちゃん」のために開かれた家族会議のような奇妙さ、楽天・安楽智大「クビ」待ったなし! 暴行、パワハラ、タカリだけじゃない問題児ぶり) [社会]

ハラスメントについては、本年8月16日に取上げた。今日は、(その23)(「ジャニー氏は1万円を渡して…」ジャニーズ性加害問題 もし今の法律で裁かれていたら?、海外記者がジャニ会見で感じた日本の「ヤバさ」 「悪いおじいちゃん」のために開かれた家族会議のような奇妙さ、楽天・安楽智大「クビ」待ったなし! 暴行、パワハラ、タカリだけじゃない問題児ぶり)である。

先ずは、本年9月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したフリーライターの鎌田和歌氏による「「ジャニー氏は1万円を渡して…」ジャニーズ性加害問題、もし今の法律で裁かれていたら?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/328852
・『ジャニーズ事務所の性加害問題について「外部専門家による再発防止特別チーム」が「調査報告書」を発表したのは2023年8月末。この中で、故・ジャニー喜多川氏による長年にわたる性虐待の実態が、被害者からの証言の形で記されていた。しかし、いわゆる「男性も性被害者」として認める法改正がなされたのは17年になってからのことだ。法改正が遅れたことによる影響を改めて振り返ってみたい』、興味深そうだ。
・『衝撃的な「ヒアリング結果」  「調査報告書」では、ジャニー氏による性加害は1950年代から2010年代半ばまで続いていたものであり、被害に遭った少年が多数いることが認定された。 また、その原因は4つ「ジャニー氏の性嗜好異常」「メリー氏による放置と隠蔽」「ジャニーズ事務所の不作為」「被害の潜在化を招いた関係性における権力構造」と指摘されている。 ジャニー氏の個人による問題と、隠蔽した組織の問題の両方があり、さらにその背景には「マスメディアの沈黙」「業界の問題」があったという指摘を、マスコミや業界関係者は重く受け止めなければならないだろう。被害の一端を知りながら、あるいは薄々勘づいていながら、ほぼ全ての人が何も行動を起こさなかったのだ。 調査報告書の中で、特に読む人に衝撃を与えたのが、性加害についての「ヒアリング結果」だろう。この中では具体的にどのような被害があったのかについて、匿名の証言が列挙されている。 「ジャニー氏は1万円を渡してきたので、これは売春のようだと思った」「私が被害を受けている間、周囲のジャニーズJr.たちは見て見ぬふりをしていた」といった証言が悲痛である。 性犯罪については、近年大きな変化があった。23年7月、性犯罪に関する刑法が改正され「不同意性交等罪」や「性交同意年齢の引き上げ」があったことが大きく報道されている。 ただ、今回のポイントは「男性が性被害にあった場合」への対処の遅れに注目したい』、「性犯罪については、近年大きな変化があった。23年7月、性犯罪に関する刑法が改正され「不同意性交等罪」や「性交同意年齢の引き上げ」があったことが大きく報道されている。 ただ、今回のポイントは「男性が性被害にあった場合」への対処の遅れに注目したい」、なるほど。
・『「強姦罪」から名称変更された意味  男性の性被害に関して言えば、6年前の17年の時点で大きな改正があった。 それは、従来の「強姦罪・凖強姦罪」が「強制性交等罪・凖強制性交等罪」に名称変更されたという点だ。ネット上で「罪名を変更しても厳罰化しなければ意味がない」というコメントを見かけたことがあるが、これは単なる名称変更ではない。 それまでの刑法では、暴行や脅迫を用いて膣性交(女性器への男性器の挿入)を行うことを「強姦罪」としていたが、改正後は膣性交だけではなく、口腔性交と肛門性交の強要が同等に裁かれることとなったからだ。この改正が「男性も被害者に」と報道されたのは、このためである。また、「強姦」は「女性を姦淫する」という意味であるため、名称が変更され、やや違和感のある罪名となったのである(23年の改正で、不同意性交等罪に改められた)。 2017年以前は、口腔性交や肛門性交の強要は「強制わいせつ罪」であり、懲役6月~10年の罪だったため、男性に対する性犯罪は女性に対する性犯罪よりも「軽く」捉えられていたと言える。 そんな状況だったのが、17年の改正で「強制性交等罪(旧強姦罪)」の量刑が、懲役3年以上から懲役5年以上に引き上げられることで、厳罰化が進んだのである』、「17年の改正で「強制性交等罪(旧強姦罪)」の量刑が、懲役3年以上から懲役5年以上に引き上げられることで、厳罰化が進んだ」、「厳罰化」は望ましい』、「「強姦罪・凖強姦罪」が「強制性交等罪・凖強制性交等罪」に名称変更された・・・それまでの刑法では、暴行や脅迫を用いて膣性交・・・を行うことを「強姦罪」としていたが、改正後は膣性交だけではなく、口腔性交と肛門性交の強要が同等に裁かれることとなったからだ。この改正が「男性も被害者に」と報道されたのは、このためである」、なるほど。
・『男児複数人への性加害、懲役20年のケースも  「調査報告書」を見ると、口腔性交をされたという証言は多く、中には肛門性交をされたという証言もある。これらは、現在の基準であれば懲役5年以上の「不同意性交等罪(17年7月~23年7月12日までは強制性交等罪)」となる。 22年の裁判で、男児に対する性的暴行で逮捕された元ベビーシッターの男に対して懲役20年が言い渡された。この事件の被害児童は20人、強制性交等罪での立件が22件、強制わいせつ罪が14件と報道されている。 仮定の話に意味はないが、現在の基準で故・ジャニー喜多川氏が裁かれていたとすれば、相当重い懲役となったはずである。 しかし、ジャニー氏の存命中にこの問題が発覚していてもどうであったか……。故・ジャニー喜多川氏の加害行為は、わかっている範囲で1950年代から2010年代半ばという。17年の法改正より前の被害については、口腔性交・肛門性交の強要は「強制わいせつ罪」だった。 もちろん、そもそも被害申告できなかった人が多いので刑事事件になった可能性は低いが、それでも法改正がもっと早く行われていれば、「男性の性被害」に関する意識の変化はそれだけ早かったかもしれない』、「故・ジャニー喜多川氏の加害行為は、わかっている範囲で1950年代から2010年代半ばという。17年の法改正より前の被害については、口腔性交・肛門性交の強要は「強制わいせつ罪」だった。 もちろん、そもそも被害申告できなかった人が多いので刑事事件になった可能性は低いが、それでも法改正がもっと早く行われていれば、「男性の性被害」に関する意識の変化はそれだけ早かったかもしれない」、その通りだろう。
・『13~15歳の被害が多いのはなぜか  また、もう一つのポイントは性交同意年齢だろう。 調査報告書を見ると、被害に遭った年齢は10代前半に集中している。「13~14歳時」「14~15歳時」「中学1年頃」「中学2年頃」といった証言が多い。 23年の刑法改正まで、日本の性交同意年齢は男女関係なく13歳だった(法改正後は16歳に引き上げ)。 13歳未満の者に対しては、性的行為をした時点でアウトだが、13歳に達していた場合、「暴行・脅迫」が用いられたどうかが問われていた(23年の改正前刑法)。 「調査報告書」の中では、ジャニー氏が性的行為に及んだ際に明確な暴行や脅迫があったとは記されていない。だからといって、彼の行為が「同意のある性行為」だったと考える人は、今やほぼいないだろうが、これらについて「被害」を立証することは、当時の法律や認識では難易度が高かっただろう。「嫌ならなぜ抵抗しなかったのか」「男の子なのだから逃げようと思えば逃げられたはずだ」と言われてしまったであろうことは容易に想像できる。 23年の法改正では性的同意年齢が16歳に引き上げられ、「経済的または社会的関係上の地位に基づく影響力によって不利益を憂慮させること」も、「不同意性交等罪」を成り立たせる事由の一つとされた。 この条件が当時もあったのであれば、ジャニー氏による加害行為は訴えやすかったはずだ』、「23年の法改正では性的同意年齢が16歳に引き上げられ、「経済的または社会的関係上の地位に基づく影響力によって不利益を憂慮させること」も、「不同意性交等罪」を成り立たせる事由の一つとされた。 この条件が当時もあったのであれば、ジャニー氏による加害行為は訴えやすかったはずだ」、その通りだ。
・『時効の問題  23年の改正では、性犯罪の時効についても変更があった。 不同意性交等罪(改正前は強制性交等罪・凖強制性交等罪)は10年から15年、不同意わいせつ罪(改正前は強制わいせつ罪)は7年から12年に時効が引き上げられた。ただし改正以前に行われた行為については、時効はそれぞれ10年、7年のままである。※ただし改正以前の事件でも改正までに時効を迎えていなければ、改正後の時効が適用される。 口腔性交と肛門性交の強要が強制性交にあたるようになったのが2017年だが、強制性交等罪にあたる被害については、そもそも2017年の法改正以降しか問うことができないということだ(それ以前の口腔性交、肛門性交の強要は強制わいせつ罪なので、さかのぼれるのは2016年までだ)。 ジャニー喜多川氏は19年に亡くなっているが、死去の直前まで加害行為があったとすれば、被疑者死亡ながら時効を迎えていない被害もあるのだろう。「ジャニーズ性加害問題当事者の会」は9月4日の会見で刑事告発を行う考えを明らかにしているが、告発を行う人がいるのであれば、この期間(時効が過ぎていない期間)での被害なのではないか。 性被害は被害申告までに時間がかかる場合が多く、特に子どもの頃の被害は被害に気づくまでにも時間がかかるといわれる。23年の法改正では、未成年の被害は、成人を迎えるまで時効がストップされることになったが、それでも、最大で33歳までに被害を申告しなければ時効となる。 今回、被害を打ち明けた当事者の人々の中には、40~50代以上も多い。これをどう考えるかは、今後社会に向けても問われることとなりそうだ。 【追記】27段落目:※ただし改正以前の事件でも改正までに時効を迎えていなければ、改正後の時効が適用される (2023年9月27日9:50 ダイヤモンド編集部)』、「性被害は被害申告までに時間がかかる場合が多く、特に子どもの頃の被害は被害に気づくまでにも時間がかかるといわれる。23年の法改正では、未成年の被害は、成人を迎えるまで時効がストップされることになったが、それでも、最大で33歳までに被害を申告しなければ時効となる」、なるほど。

次に、9月9日付け東洋経済オンライン「海外記者がジャニ会見で感じた日本の「ヤバさ」、「悪いおじいちゃん」のために開かれた家族会議のような奇妙さ」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/700654
・『9月7日に開かれたジャニーズ事務所の劇的な会見は、私が日本で経験したジャーナリスト人生の中で最も奇妙な体験の1つだった。 ジャニーズ事務所は、これ以上ないほど積極的に報道陣を迎え入れた。日本人、外国人、主要メディア、フリーランスのジャーナリストなど、誰でも参加できた。しかも、会見は14時から4時間以上続いた。何十台ものカメラやビデオカメラが彼らを見守った。どんな質問もタブーではなかった。報道陣が望めば、何日でも続いただろう』、「劇的な会見は、私が日本で経験したジャーナリスト人生の中で最も奇妙な体験の1つだった。ジャニーズ事務所は、これ以上ないほど積極的に報道陣を迎え入れた。日本人、外国人、主要メディア、フリーランスのジャーナリストなど、誰でも参加できた。しかも、会見は14時から4時間以上続いた」、なるほど。
・『「家族会議」のような奇妙な会見  しかし、長引けば長引くほど、私たちが知ることは少なくなっていった。すべての瞬間が妙に空虚だった。まるで家族会議が開かれ、そこにいる人が皆で一緒に癒やされようとしているようにさえ感じられた。 ジャニー喜多川の何十年にも及ぶ少年への性的加害が認められたにもかかわらず、会場全体がジャニーズ事務所の存続を望んでいるような雰囲気さえあった。 おそらく会見会場にいる誰もが、自ら調査をしなかったことを恥ずかしく思っていただろう。ジャニーズ事務所はそのトップであったジャニー喜多川が、何百人もの少年に性的加害をしながらジャーナリストからファンまでをその巨大な軌道に取り込み、劣化させ、見て見ぬ振りをさせることに見事に成功してきた。) 会見では、ジャニー喜多川は、その旧態依然とした振る舞いが長い時を経てようやく露呈した、孤独で卑劣な「おじいちゃん」として描かれたが、はたしてそうだろうか? 会見直前、私は日刊ゲンダイデジタルに掲載された記事に目を引かれた。そこには、2005年に発売された元ジャニーズJr.の山崎正人氏が、木山将吾のペンネームで書いた『Smapへーそして、すべてのジャニーズタレントへ』が紹介され、ジャニーズの東山紀之新社長が後輩たちにしていた振る舞いが書かれていた。 「彼はマージャンだけではなく、人のパンツを脱がすことが大好きだった。僕も何度もヒガシに背後からパンツを引きずり下ろされ、イタズラされたことがある。そして、パンツを脱いだままよろける姿でいる僕に、ヒガシは『こっちへ来い!』と命令しながら、無理やりに僕の手を引いて、マージャン卓のある部屋まで引き摺っていくのだ」 記事によると、連れていかれた先ではジャニー喜多川が待っており、時折、性器を触られることもあったという。 もし木山の主張が事実でないなら、東山は木山を名誉毀損で訴えるべきだ。記者会見で筆者を含めて複数の記者がこの点について尋ねると、東山の答えはどんどんと変わっていった。 筆者が最初に尋ねたときは「中身は読んでいないが、事実ではないと思う」としていたが、別の記者が同様の質問をすると、「したかもしれないし、していないかもしれない。よく思い出せない」という趣旨の発言をした。だが、こんなシーンを忘れることができるだろうか』、「東山紀之新社長が後輩たちにしていた振る舞いが書かれていた。 「彼はマージャンだけではなく、人のパンツを脱がすことが大好きだった。僕も何度もヒガシに背後からパンツを引きずり下ろされ、イタズラされたことがある。そして、パンツを脱いだままよろける姿でいる僕に、ヒガシは『こっちへ来い!』と命令しながら、無理やりに僕の手を引いて、マージャン卓のある部屋まで引き摺っていくのだ」 記事によると、連れていかれた先ではジャニー喜多川が待っており、時折、性器を触られることもあったという」、「東山紀之新社長」までが事実上の加害者の1人だったとは驚いた。
・『アルコール依存症の治療をバーテンダーに任せるよう  私は彼自身に個人的な不満はないが、ジャニー喜多川の「お気に入りの息子」である彼にジャニーズ事務所の更生を担当させるのは、バーテンダーにアルコール依存症対策プログラムを担当させるようなものだ。 東山はジャニーズ事務所の再生にもっとも不向きな人物である。彼に任せることは、性的加害、そしてその隠蔽を可能にした「喜多川システム」の共犯者たちに庇護を与えることになりかねない。) 日本の刑法では、酒気帯び運転をした場合、助手席の同乗者にも運転させた責任がある。バーテンダーには酒を提供した責任がある。 同じ理屈が、ジャニー喜多川の捕食行為を何十年も野放しにしてきた東山や藤島ジュリー景子前社長、その他の側近メンバーにも当てはまらないだろうか?真実は、ジャニー喜多川1人で罪を犯すことはできなかった、ということだ。彼が捕食することを可能にしていた環境があり、彼の悪癖を“助ける”者たちがいた可能性もある。 ジャニーズのタレントたちにも責任の一端はないのだろうか。彼らが有名であるほど、大人であるほどその責任は重い。多くは「知らなかった」というが、正確には「知らないふりをしてきた」というべきだろう。東山は、その最たる例なのではないか。 そして、彼らが見て見ぬ振りをし、真実から目を背け続けたことで、真実を知る機会を奪われた多くの少年たちが、彼らのようなスターになることを夢見てジャニーズに集まってきたのだ』、「東山はジャニーズ事務所の再生にもっとも不向きな人物である。彼に任せることは、性的加害、そしてその隠蔽を可能にした「喜多川システム」の共犯者たちに庇護を与えることになりかねない・・・ジャニーズのタレントたちにも責任の一端はないのだろうか。彼らが有名であるほど、大人であるほどその責任は重い。多くは「知らなかった」というが、正確には「知らないふりをしてきた」というべきだろう。東山は、その最たる例なのではないか。 そして、彼らが見て見ぬ振りをし、真実から目を背け続けたことで、真実を知る機会を奪われた多くの少年たちが、彼らのようなスターになることを夢見てジャニーズに集まってきたのだ」、なるほど。
・『外圧がなければ放置されたままだった  秘密によって集団が引き裂かれる物語では、しばしば部外者がその秘密を暴露する。今回はBBCのジャーナリストだ。 モンスターになる前のジャニー喜多川は、たんに心に問題を抱えた人間だったのかもしれない。 彼のそうした問題が早い段階で見抜かれ、有罪判決や治療によって、キャリアの早い段階から正しい方向に戻っていたなら、その素晴らしい才能を善のためだけの力として発揮できたかもしれない。 だが結局、彼は何十年も自分の好きに振る舞うことが許されていた。日本のメディアは、なぜ自分たちは一部の人々にはとんでもなく小さなネタで嫌がらせをする一方で、大きなネタは眠らせておくのか疑問に思うべきだ。) ジャニー喜多川が何百人もの人間を自由破壊できる一方で、不倫した俳優が事務所から契約を解除されたり、マスコミから執拗な取材を受けたりするのはなぜか。経済的、社会的衰退のために、海外への日本に関する報道が減少し、日本にポジティブな影響を与えてきた「外圧」が減っている今、日本のメディアはこのことを自ら真剣に考えるべきだ』、「日本のメディアは、なぜ自分たちは一部の人々にはとんでもなく小さなネタで嫌がらせをする一方で、大きなネタは眠らせておくのか疑問に思うべきだ・・・ジャニー喜多川が何百人もの人間を自由破壊できる一方で、不倫した俳優が事務所から契約を解除されたり、マスコミから執拗な取材を受けたりするのはなぜか」、確かに「日本のメディア」の姿勢は歪んでいる。
・『「ジャニーズ問題」はすべての日本人の問題だ  ジャニーズの物語はすべての人に影響を与えるものであり、それは今やすべての人の責任である。社会にとってこれほど悪質な実績を持つ企業と関係を続けるかどうかは、スポンサー企業の判断に委ねられている。スポンサー企業は、ジャニーズ事務所や、同事務所を支援した企業との関係を完全に断ち切るべきである。 より責任が重いのはテレビ局だ。テレビ局の中には、早々にジャニーズ事務所所属タレントの番組出演について変更する予定がない旨を表明した局もあるが、開いた口が塞がらない。 テレビ局は、ジャニーズと組むことで社会的責任を回避するのをやめるべきだ。テレビ朝日はこれからも『#裸の少年』を放送するつもりなのだろうか。大手テレビ局が、こんなタイトルの番組を放送するのは普通なのだろうか?テレビ朝日のウェブサイトにある「ESG(環境・社会・ガバナンス)の取り組み」が何と空々しいことか。 テレビ各局は、「未来志向」の声明を出しているが、本当にそれだけですますつもりなのだろうか。最低でも第三者委員会を立ち上げ、ジャニー喜多川の性加害について、いつ認識し、それがなぜ報道に至らなかったのか、いつ、誰による圧力や働きかけがあったのかについて、詳らかにすることこそ、メディアとしての責任だろう。 ジャニー喜多川は、残念ながらこの世で最後の異常性癖者ではない。何の検証もしないで、また彼のような人物が現れたとき、メディアはいったいどうやって再発防止を図るつもりなのだろうか』、「テレビ各局は、「未来志向」の声明を出しているが、本当にそれだけですますつもりなのだろうか。最低でも第三者委員会を立ち上げ、ジャニー喜多川の性加害について、いつ認識し、それがなぜ報道に至らなかったのか、いつ、誰による圧力や働きかけがあったのかについて、詳らかにすることこそ、メディアとしての責任だろう」、同感である。

第三に、11月27日付け日刊ゲンダイ「楽天・安楽智大「クビ」待ったなし! 暴行、パワハラ、タカリだけじゃない問題児ぶり」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/sports/332546
・『救いようがないとはこのことだ。楽天の安楽智大(27)が複数の同僚選手から暴力行為などのパワハラ被害を訴えられた件である。 関係者によると、安楽は後輩選手に対して恒常的にパワハラ行為を働いていた。すでに楽天を退団した選手は、2021年の春季キャンプ中に平手で頭部付近を殴られ、むち打ち症状に。試合前にロッカールームで「倒立しろ」と命令され、パンツごとズボンを脱がされた挙げ句、イチモツに靴下をかぶせられたと訴える選手もいる。 パワハラ疑惑を認めて謝罪した球団は安楽に自宅待機を命じるとともに、25日に予定されていた契約更改を無期限延期に。仙台の地元マスコミ関係者は、「先輩選手からは礼儀正しいと評判だった。かねて派手な夜遊びは懸念されていましたが……」と、こう続ける』、「安楽は後輩選手に対して恒常的にパワハラ行為を働いていた・・・試合前にロッカールームで「倒立しろ」と命令され、パンツごとズボンを脱がされた挙げ句、イチモツに靴下をかぶせられたと訴える選手もいる。 パワハラ疑惑を認めて謝罪した球団は安楽に自宅待機を命じるとともに、25日に予定されていた契約更改を無期限延期に」、「パワハラ」というより運動部のノリでやったようだ。それも「パワハラ」であることは間違いないが・・・。
・『後輩足蹴動画が拡散  「ネット上では、選手同士の記念撮影の際、安楽らしき人物が後列から前例にいた選手を足蹴にする画像、動画が拡散している。後輩を小突いたり蹴とばしたりするのは日常茶飯事。強引に食事に誘ったり、合コンのセッティングを強要するなどコキ使うことも。一部報道では10人程度の同僚選手がパワハラを告発したとありますが、ある選手に言わせると、安楽は粘着質で一度キレると見境がなくなるといいます。食事の誘いを断ると、『散々、世話してやったのに』と言わんばかりに逆上され、夜中にもかかわらず、執拗に嫌がらせの電話やメールをされた。バカ、アホと散々暴言を吐かれ、ノイローゼ気味になった選手もいます」』、「安楽は粘着質で一度キレると見境がなくなるといいます。食事の誘いを断ると、『散々、世話してやったのに』と言わんばかりに逆上され、夜中にもかかわらず、執拗に嫌がらせの電話やメールをされた。バカ、アホと散々暴言を吐かれ、ノイローゼ気味になった選手もいます」、悪質だ。
・『中田翔や山川穂高よりタチが悪い  スポニチによると、ある選手は「罰金」と称してお金を要求されることがあったと告白。そのメールのやりとりを保存しているという。 「このままいけば11月末が締め切りの保留者名簿から外れ、“クビ”になる可能性もある」とは、前出のマスコミ関係者。 「世間がコンプライアンスに厳しい目を向ける時代に、暴力と日常的なパワハラも明らかになった。21年は中田翔が同僚選手への暴行で無期限謹慎(後に巨人へ無償トレード)、今年は西武の山川穂高が女性問題でこちらも無期限の公式戦出場停止処分を受けた。安楽がやったことは、中田や山川よりもタチが悪いと見る向きもある」 古株の評論家が言う。 「昔は酒の一気飲みを強要されるのは序の口。かつてパのある投手は納会の余興として人前で先輩投手に素っ裸にさせられ、体中がアザだらけになるほどベルトでムチ打たれた。警察沙汰になるようなことも球団が内々でもみ消してきたから大した問題にはならなかっただけのことです。暴力、パワハラの類いは減りつつあるものの、そもそもプロ野球界は不祥事に対して甘い。女性問題に絡み、ヤクザに1億円を支払うような人物が監督を務めるくらいですから」』、「安楽がやったことは、中田や山川よりもタチが悪いと見る向きもある」 古株の評論家が言う」、なるほど。
・『高校時代の「カメムシ事件」  不祥事が多いのはアマ球界も同じ。高校野球では部員の飲酒、喫煙に加え、指導者による体罰や部員同士の暴力沙汰は枚挙にいとまがない。日本学生野球協会はこの2カ月だけでも16件の処分を決定。10月には部内のイジメが発覚した宮崎・小林西に3カ月の対外試合禁止を言い渡している。 「西日本のある私立高では、監督が試合で守備のミスをした選手に至近距離から強烈なノックを打って前歯を折ったそうです。アマ球界はいまだ勝利至上主義が根強く、小学生のリトルリーグからパワハラ気質の指導者が跋扈している。そういう環境で育った選手が勝てば何をやっても許されると勘違いするのも当然です。アマ時代の過度な上下関係をそのまま持ち込む安楽のような人間がいても不思議ではありません」(スポーツライター) そういえば安楽は、済美高(愛媛)3年時に部内での恒常的な暴力とイジメが発覚。1年間の対外試合禁止処分が言い渡されている。上級生が下級生にカメムシを食べさせたり、灯油を飲ませようとするなど、悪質極まりない行為は大きな批判を集めた。 安楽本人はこの件に関わっていないとされたが、1位指名を検討していた一部球団は「プロ入り後にその問題が蒸し返されて、加害者のひとりとして名前が出るようなことになったら困る」などとして、指名回避をしたとされる。 仮に楽天をクビになっても救いの手を差し伸べる球団があるのか……』、「安楽は、済美高(愛媛)3年時に部内での恒常的な暴力とイジメが発覚。1年間の対外試合禁止処分が言い渡されている。上級生が下級生にカメムシを食べさせたり、灯油を飲ませようとするなど、悪質極まりない行為は大きな批判を集めた・・・仮に楽天をクビになっても救いの手を差し伸べる球団があるのか……」、昔からハラスメントで有名だったようだ。きちんと指導してくれる人がいなかったのだろうか。
タグ:「23年の法改正では性的同意年齢が16歳に引き上げられ、「経済的または社会的関係上の地位に基づく影響力によって不利益を憂慮させること」も、「不同意性交等罪」を成り立たせる事由の一つとされた。 この条件が当時もあったのであれば、ジャニー氏による加害行為は訴えやすかったはずだ」、その通りだ。 「故・ジャニー喜多川氏の加害行為は、わかっている範囲で1950年代から2010年代半ばという。17年の法改正より前の被害については、口腔性交・肛門性交の強要は「強制わいせつ罪」だった。 もちろん、そもそも被害申告できなかった人が多いので刑事事件になった可能性は低いが、それでも法改正がもっと早く行われていれば、「男性の性被害」に関する意識の変化はそれだけ早かったかもしれない」、その通りだろう。 「17年の改正で「強制性交等罪(旧強姦罪)」の量刑が、懲役3年以上から懲役5年以上に引き上げられることで、厳罰化が進んだ」、「厳罰化」は望ましい』、「「強姦罪・凖強姦罪」が「強制性交等罪・凖強制性交等罪」に名称変更された・・・それまでの刑法では、暴行や脅迫を用いて膣性交・・・を行うことを「強姦罪」としていたが、改正後は膣性交だけではなく、口腔性交と肛門性交の強要が同等に裁かれることとなったからだ。この改正が「男性も被害者に」と報道されたのは、このためである」、なるほど。 「性犯罪については、近年大きな変化があった。23年7月、性犯罪に関する刑法が改正され「不同意性交等罪」や「性交同意年齢の引き上げ」があったことが大きく報道されている。 ただ、今回のポイントは「男性が性被害にあった場合」への対処の遅れに注目したい」、なるほど。 鎌田和歌氏による「「ジャニー氏は1万円を渡して…」ジャニーズ性加害問題、もし今の法律で裁かれていたら?」 ダイヤモンド・オンライン ハラスメント (その23)(「ジャニー氏は1万円を渡して…」ジャニーズ性加害問題 もし今の法律で裁かれていたら?、海外記者がジャニ会見で感じた日本の「ヤバさ」 「悪いおじいちゃん」のために開かれた家族会議のような奇妙さ、楽天・安楽智大「クビ」待ったなし! 暴行、パワハラ、タカリだけじゃない問題児ぶり) 「性被害は被害申告までに時間がかかる場合が多く、特に子どもの頃の被害は被害に気づくまでにも時間がかかるといわれる。23年の法改正では、未成年の被害は、成人を迎えるまで時効がストップされることになったが、それでも、最大で33歳までに被害を申告しなければ時効となる」、なるほど。 東洋経済オンライン「海外記者がジャニ会見で感じた日本の「ヤバさ」、「悪いおじいちゃん」のために開かれた家族会議のような奇妙さ」 「劇的な会見は、私が日本で経験したジャーナリスト人生の中で最も奇妙な体験の1つだった。ジャニーズ事務所は、これ以上ないほど積極的に報道陣を迎え入れた。日本人、外国人、主要メディア、フリーランスのジャーナリストなど、誰でも参加できた。しかも、会見は14時から4時間以上続いた」、なるほど。 「東山紀之新社長が後輩たちにしていた振る舞いが書かれていた。 「彼はマージャンだけではなく、人のパンツを脱がすことが大好きだった。僕も何度もヒガシに背後からパンツを引きずり下ろされ、イタズラされたことがある。そして、パンツを脱いだままよろける姿でいる僕に、ヒガシは『こっちへ来い!』と命令しながら、無理やりに僕の手を引いて、マージャン卓のある部屋まで引き摺っていくのだ」 記事によると、連れていかれた先ではジャニー喜多川が待っており、時折、性器を触られることもあったという」、「東山紀之新社長」までが事実上の加 害者の1人だったとは驚いた。 「東山はジャニーズ事務所の再生にもっとも不向きな人物である。彼に任せることは、性的加害、そしてその隠蔽を可能にした「喜多川システム」の共犯者たちに庇護を与えることになりかねない・・・ジャニーズのタレントたちにも責任の一端はないのだろうか。彼らが有名であるほど、大人であるほどその責任は重い。多くは「知らなかった」というが、正確には「知らないふりをしてきた」というべきだろう。東山は、その最たる例なのではないか。 そして、彼らが見て見ぬ振りをし、真実から目を背け続けたことで、真実を知る機会を奪われた多くの少年たちが、彼らのようなスターになることを夢見てジャニーズに集まってきたのだ」、なるほど。 「日本のメディアは、なぜ自分たちは一部の人々にはとんでもなく小さなネタで嫌がらせをする一方で、大きなネタは眠らせておくのか疑問に思うべきだ・・・ジャニー喜多川が何百人もの人間を自由破壊できる一方で、不倫した俳優が事務所から契約を解除されたり、マスコミから執拗な取材を受けたりするのはなぜか」、確かに「日本のメディア」の姿勢は歪んでいる。 「テレビ各局は、「未来志向」の声明を出しているが、本当にそれだけですますつもりなのだろうか。最低でも第三者委員会を立ち上げ、ジャニー喜多川の性加害について、いつ認識し、それがなぜ報道に至らなかったのか、いつ、誰による圧力や働きかけがあったのかについて、詳らかにすることこそ、メディアとしての責任だろう」、同感である。 日刊ゲンダイ「楽天・安楽智大「クビ」待ったなし! 暴行、パワハラ、タカリだけじゃない問題児ぶり」 「安楽は後輩選手に対して恒常的にパワハラ行為を働いていた・・・試合前にロッカールームで「倒立しろ」と命令され、パンツごとズボンを脱がされた挙げ句、イチモツに靴下をかぶせられたと訴える選手もいる。 パワハラ疑惑を認めて謝罪した球団は安楽に自宅待機を命じるとともに、25日に予定されていた契約更改を無期限延期に」、「パワハラ」というより運動部のノリでやったようだ。 「安楽は粘着質で一度キレると見境がなくなるといいます。食事の誘いを断ると、『散々、世話してやったのに』と言わんばかりに逆上され、夜中にもかかわらず、執拗に嫌がらせの電話やメールをされた。バカ、アホと散々暴言を吐かれ、ノイローゼ気味になった選手もいます」、悪質だ。 「安楽がやったことは、中田や山川よりもタチが悪いと見る向きもある」 古株の評論家が言う」、なるほど。 「安楽は、済美高(愛媛)3年時に部内での恒常的な暴力とイジメが発覚。1年間の対外試合禁止処分が言い渡されている。上級生が下級生にカメムシを食べさせたり、灯油を飲ませようとするなど、悪質極まりない行為は大きな批判を集めた・・・仮に楽天をクビになっても救いの手を差し伸べる球団があるのか……」、昔からハラスメントで有名だったようだ。きちんと指導してくれる人がいなかったのだろうか。
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人工知能(AI)(その16)(医療に「進出」するChatGPT 医師の仕事をAIがすることになるのか、解任騒動が示した「オープンAIとMSの相互依存」 スピードを支えるのは人員と「サーバー」だが…、お家騒動であらわ「OpenAI」が抱える矛盾の正体 突然のトップ解任の裏に倫理と営利めぐる葛藤) [イノベーション]

人工知能(AI)については、本年8月10日に取上げた。今日は、(その16)(医療に「進出」するChatGPT 医師の仕事をAIがすることになるのか、解任騒動が示した「オープンAIとMSの相互依存」 スピードを支えるのは人員と「サーバー」だが…、お家騒動であらわ「OpenAI」が抱える矛盾の正体 突然のトップ解任の裏に倫理と営利めぐる葛藤)である。

先ずは、本年9月1日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した一橋大学名誉教授の野口悠紀雄氏による「医療に「進出」するChatGPT、医師の仕事をAIがすることになるのか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/328424
・『「緊急度自己判定」でのChatGPTの能力は高い  ChatGPTなどの大規模言語モデル(LLM)が医療の分野で活用され、人間の医師が担ってきた仕事のかなりの部分をAIがとって代わるという見方がある。 医療での利用としてはまず、医療機関での書類整理などの事務効率化があるが、それだけでなく、医療行為そのものに対する利用が考えられている。その第1は、「セルフ・トリアージ」(一般市民が自分の健康の緊急度を自ら判断すること)だ。 現在では、これは主としてウェブの情報を頼りに行われている。しかし、正確度に疑問があるし、個人個人の事情に即した情報が得られるわけでもない。高齢化の進展に伴って、セルフ・トリアージの必要性は増える。事実、週刊誌には高齢者の健康に関する記事が満載だ。また書籍も多数刊行されている。 さらに、保険会社などが電話で健康相談サービスを提供している。セコムのサービスもあるし、ファストドクターというスタートアップも登場した。もし医学的な質問に対して、大規模言語モデルが専門医レベルの回答をできるなら、事態は大きく変わるだろう。 これについては、さまざまな調査が行なわれており、検証成果はかなり有望な結果を示している(注1)。) ChatGPTが米国の医師資格試験で合格ラインの結果を示したとの報告もあるし、医師による回答よりChatGPTの回答が好まれるとの調査もある』、「もし医学的な質問に対して、大規模言語モデルが専門医レベルの回答をできるなら、事態は大きく変わるだろう。 これについては、さまざまな調査が行なわれており、検証成果はかなり有望な結果を示している」、なるほど。
・『患者の状況に共感示す点などは人間より優れているとの評価も  医学界の有名専門誌「JAMA」に掲載された論文は、医師とChatGPTを比較すると、医学的アドバイスの品質と共感の両面で、ChatGPTが生成した回答が高く評価されていると指摘している。 とりわけ、次の諸点でChatGPTが優れているという。 +患者の状況に共感を示す +患者個人の背景に興味を持ち、個人的な関係を構築しようとする +歯科、医師、看護師、薬剤師などの資格試験の点数が高い  大規模言語モデルの臨床的有効性や診断支援の可能性を高く見積もる意見が多い。大規模言語モデルが臨床実装され、医療を強力に支援するようになる可能性は非常に高い。 特に、スクリーニングや初期診断、治療方針策定、フォローアップ、セカンドオピニオン、患者および医療者教育などは激変する可能性がある』、「大規模言語モデルの臨床的有効性や診断支援の可能性を高く見積もる意見が多い。大規模言語モデルが臨床実装され、医療を強力に支援するようになる可能性は非常に高い。 特に、スクリーニングや初期診断、治療方針策定、フォローアップ、セカンドオピニオン、患者および医療者教育などは激変する可能性がある」、なるほど。
・『医療に特化したLLMも開発 医師国家試験で高い“正答率”  以上で紹介したのは、ChatGPTそのものだが、これに改良を加え医療に特化した大規模言語モデルを開発する動きもある。 グーグル研究所は、医療領域特化の大規模言語モデルMed-PaLMを発表した。アメリカ医師国家試験で、平均点である60%を大きく上回る85%の正解率を示したという(注2)。 臨床家が時間をかけて示す答えと比べると、かなり近いところに来たようだ。ただ臨床家の方が勝っているとも言われる。 日本でも開発が進んでいる。ファストドクターとAI開発スタートアップのオルツが共同開発した大規模言語モデルだ。2022年度の医師国家試験の問題で合格基準を上回る82%の正答率を達成したという。) 中国の研究者らが開発した「ChatCAD」は、レントゲン画像を分かりやすく説明する。画像を見ながら詳しく聞くこともできる。人間より優れているとの評価もある。 日本では、これから人口高齢化がさらに進展し、医師不足は深刻な問題になるだろう。信頼性のある医療用大規模言語モデルの開発は、日本の場合にとくに必要度が高い課題だ』、「日本では、これから人口高齢化がさらに進展し、医師不足は深刻な問題になるだろう。信頼性のある医療用大規模言語モデルの開発は、日本の場合にとくに必要度が高い課題だ」、なるほど。
・『重要な判断を伴うケースやプライバシー保護などで慎重論も  こうして医学関係者の多くが、大規模言語モデルに対して高い期待を寄せている。これは私には意外だった。慎重論が多いと思っていたからだ。 もちろん、医療関係者の全てが大規模言語モデルの利用に積極的であるわけではない。慎重論や消極的な意見が多いことも事実だ。ニューズウィーク・ジャパンの記事は、そうした意見を紹介している(注3) それによると、明らかな誤りやバイアスなど、精度の不安定性に懸念が表明されている。だから、現時点では重要な判断が伴うケースで、専門家のレビューなく出力結果を利用することは難しいとされる。 またプライバシー、倫理、法的制約と規制などについても、解決すべき課題が多くある。治療や研究に取り入れることには、守秘義務や患者の同意、治療の質、信頼性や格差に関する倫理的懸念が伴う。むやみな使用は予想外の結果につながりかねない。 また、ChatGPTに送られた身元特定可能な患者情報は、将来利用される情報の一部になる。だから機密性の高い情報が第三者に漏洩しやすくなる』、「明らかな誤りやバイアスなど、精度の不安定性に懸念が表明されている。だから、現時点では重要な判断が伴うケースで、専門家のレビューなく出力結果を利用することは難しいとされる。 またプライバシー、倫理、法的制約と規制などについても、解決すべき課題が多くある。治療や研究に取り入れることには、守秘義務や患者の同意、治療の質、信頼性や格差に関する倫理的懸念が伴う。むやみな使用は予想外の結果につながりかねない」、なるほど。
・『健康に関する利用はさまざまな微妙な問題含む  私自身はこれまで自分の健康問題に関してChatGPTに質問をしたことはない。ChatGPTが誤った答え(ハルシネーション)を出す危険があるからだ。仮にその問題が克服されたとしても、なおかつ問題は残る。これは上述した医学関係者らの懸念とは異なるものだ。) 第一に、自分の状況を正しくChatGPTに伝えられるかどうか、自信がない。 医師と面談する場合には、医師が様々な質問をし、それに答える。しかしChatGPTの場合には、そのような質問がない。質問自体を私が考えなければならない。電話の健康相談サービスでも、通常は先方が質問してくれる。ChatGPTとの会話は、人間との会話とは異なるものなのだ。 また、ChatGPTは、安全側に偏った回答をするはずだ。少しでも疑問があれば、「医師の診断を受けた方がよい」と答える可能性高い。自分では大丈夫だと思っているときにそうしたアドバイスを受けると、かえって不安になってしまう。 こうしたことがあり、上述した医師国家試験での正答率などの調査結果を知ったいまとなっても、なかなか健康問題の質問をする気にならない。 かと言って、週刊誌にある「多少血圧が高くても気にする必要はない」というような記事も乱暴すぎると思う。健康に関わる問題は、さまざまな微妙な要素を持っており判断が難しい。この問題に関する研究調査がさらに進められることが求められる。 注1 岡本将輝「医療における大規模言語モデルの価値」(時事メディカル、2023年6月8日) 注2 「完璧な医療・医学チャットボットを目指して」(オール・アバウト・サイエンス・ジャパン,2023年7月14日) 注3 ニューズウィーク・ジャパン(2023年4月9日)』、「また、ChatGPTは、安全側に偏った回答をするはずだ。少しでも疑問があれば、「医師の診断を受けた方がよい」と答える可能性高い。自分では大丈夫だと思っているときにそうしたアドバイスを受けると、かえって不安になってしまう・・・健康に関わる問題は、さまざまな微妙な要素を持っており判断が難しい。この問題に関する研究調査がさらに進められることが求められる」、同感である。

次に、11月26日付け東洋経済オンラインが掲載したフリージャーナリストの西田 宗千佳氏による「解任騒動が示した「オープンAIとMSの相互依存」 スピードを支えるのは人員と「サーバー」だが…」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/717269
・『これらの背景には2つの要素がある。 1つは優秀な人員を多数抱えており、研究と開発までの距離が近いこと。 OpenAIの社員数は約770名とされているが、世界的な注目を集める企業としては「まだ」コンパクトであり、ほとんどが研究開発に従事していると思われる。 今回の騒動では社員のほとんどにあたる700名以上が、アルトマン氏らの復帰を求める署名にサインしており、求心力の強さは明白だ。社員の一斉離反もしくは作業停滞が起きれば、OpenAIには大きな打撃になっただろう』、「社員のほとんどにあたる700名以上が、アルトマン氏らの復帰を求める署名にサインしており、求心力の強さは明白だ」、取締役会の「アルトマン氏」解任決議に対して、「700名以上が、アルトマン氏らの復帰を求める署名にサイン」、とは。「アルトマン氏」には心強い支援だ。
・『支えるのは「人員」と「サーバー」だが…  もう1つは「サーバー」だ。 LLMの学習には高速なサーバーが必須だ。特にGPTシリーズのように規模の大きなLLMの場合には、現在ならばNVIDIA製の高速なGPUを数千台単位で用意する必要がある。 LLMの規模は「パラメータ数」で表されるが、一般論として、パラメータ数が大きい、規模の大きなLLMほど賢いものになりやすい。一方でパラメータ数が大きなLLMは、開発のための「学習」にも、日常的に使うために必要な「推論」にも、高速な演算が必要になり、GPUを使った大規模なサーバーが必須になっていく。 GPT-4は正確なパラメータ数が公開されていないので必要なサーバー量やその電力消費も不明だが、GPT-3については1750億パラメータとされており、1回の学習には1時間あたり約1300メガワットの電力を必要とする。これはほぼ、原発1基分(毎時約1000メガワット)に相当する。 GPUは取り合いの状況であり、サーバーを用意するだけでも大変な状況だ。それを運用できる電力と保守の能力を持った設備を持つ企業は限られている。 例えばソフトバンクは3500億パラメータ規模のLLMを作るためのデータセンター構築に約200億円を投じている。 一方でNTTはソフトバンクやOpenAIとは異なり、自社開発のLLM「tsuzumi」を用途限定・日本語特化でコンパクトなものにした。パラメータ数を70億規模に抑えることで、学習にかかる機材コストをGPT-3の25分の1に圧縮している。) いかに巨大な設備を持つか、もしくは戦略的に小さな設備向けのLLMで戦うかが重要になってきているわけだが、OpenAIは汎用人工知能(AGI)を目指してどんどんLLMの規模を拡大する方向性にある。だから、パートナーとともにサーバーを動かし続けなければならない。 逆に言えば、「人員がいて」「サーバー設備が用意できる」状態なら、OpenAIと戦うことは不可能ではない。グーグルやMetaはその条件を十分に満たしている。OpenAIが持っている優位性も、他社が持ち得ないものではない、ということだ。 活動が滞ると、その分すぐに他社が追いついてくる』、「「人員がいて」「サーバー設備が用意できる」状態なら、OpenAIと戦うことは不可能ではない。グーグルやMetaはその条件を十分に満たしている。OpenAIが持っている優位性も、他社が持ち得ないものではない、ということだ」、なるほど。
・『マイクロソフトは「共依存」をいつまで維持するのか  OpenAIはサーバーをマイクロソフトに依存している。マイクロソフトはOpenAIに対する最大の出資者だが、逆に言えば、世界トップクラスのクラウドインフラ事業者であるマイクロソフトの力を借りなければ、ChatGPTを含むOpenAIの快進撃も実現できなかっただろう。 マイクロソフトはOpenAIに依存したサービス施策を矢継ぎ早に提供しているが、一方インフラ面でOpenAIはマイクロソフトに依存している。 海外の報道によれば、マイクロソフトがアルトマン氏らの離脱を知ったのは、11月17日の発表直前であるという。 両輪が揃っていないと今の快進撃は実現できないわけだが、その片方が止まりそうになったのを突然知ったマイクロソフトの驚きは想像以上であっただろう。 マイクロソフトのサティア・ナデラCEOはすぐに交渉し、「アルトマン氏らがマイクロソフトに入る」とコメントを発表したが、どのような体制で、どのような組織体を構成するのかといった詳細は公表されなかった。なによりもまず「両社のコンビネーションは安泰です」とアピールする必要があったからだろう。 今回の騒動では、OpenAIへの発言力をマイクロソフトが強化し、漁夫の利を得たようにも見える。だが、同社が取締役会に関係者を送り込めたわけでもなく、両社の関係や体制に変化はない。 今後も体制を維持するなら、OpenAIのガバナンス強化は必須だ。一方で、マイクロソフトとして「OpenAI以外の選択肢」、例えば自社でLLMを開発していく道もなくはない。すでに小規模なLLMは研究しているが、今後はどうなるのだろうか』、「今回の騒動では、OpenAIへの発言力をマイクロソフトが強化し、漁夫の利を得たようにも見える。だが、同社が取締役会に関係者を送り込めたわけでもなく、両社の関係や体制に変化はない。 今後も体制を維持するなら、OpenAIのガバナンス強化は必須だ。一方で、マイクロソフトとして「OpenAI以外の選択肢」、例えば自社でLLMを開発していく道もなくはない」、今後の展開が大いに注目される。

第三に、11月29日付け東洋経済オンライン「お家騒動であらわ「OpenAI」が抱える矛盾の正体 突然のトップ解任の裏に倫理と営利めぐる葛藤」を紹介しよう。
・『OpenAIは2015年12月、アルトマン氏らによって非営利団体として設立された。組織の目標として当時、「金銭的なリターンを得る必要性に制約されることなく、人類全体に最も利益をもたらす可能性の高い方法で、デジタルインテリジェンスを発展させること」と定めている。 AIは業務の効率化などに活用できる一方、フェイクニュースの蔓延や雇用への短期的影響などリスクを伴う。倫理と安全性が求められるAIの領域において、OpenAIは資本的な利益よりも人類の利益を優先する、非営利の研究開発機関として組織されていた。 設立時には、10億ドルの寄付を目標に設定。総額約1.3億ドルの寄付を受け、組織の運営や、ディープラーニング、AIアライメント(AIが人間の価値観、目標、意図に沿って行動するようにすること)の研究などに使用された』、「アルトマン氏らによって非営利団体として設立された。組織の目標として当時、「金銭的なリターンを得る必要性に制約されることなく、人類全体に最も利益をもたらす可能性の高い方法で、デジタルインテリジェンスを発展させること」と定めている。 AIは業務の効率化などに活用できる一方、フェイクニュースの蔓延や雇用への短期的影響などリスクを伴う。倫理と安全性が求められるAIの領域において、OpenAIは資本的な利益よりも人類の利益を優先する、非営利の研究開発機関として組織されていた」、なるほど。
・『数年で「ハイブリッド」組織へと転換  しかし2019年3月に、その組織形態を大きく変えることとなる。OpenAI本体の傘下に、一定条件がついた営利企業のOpenAI LPを設立したのだ。この形態では出資する投資家や従業員は上限付きのリターンを得ることができる一方、一定以上の利益に関しては、非営利組織であるOpenAIに還元される』、「OpenAI本体の傘下に、一定条件がついた営利企業のOpenAI LPを設立したのだ。この形態では出資する投資家や従業員は上限付きのリターンを得ることができる一方、一定以上の利益に関しては、非営利組織であるOpenAIに還元される」、なるほど。
・『OpenAIの組織構造  営利と非営利のハイブリッドな組織に見直した背景について、OpenAIは「アルゴリズムの革新に加え、多くの計算能力を使うことになったことで、OpenAIを始めるときに計画していたよりもはるかに速くスケールすることを決めた」ためと説明していた。 他のIT企業もAI事業に本腰を入れる中、業界をリードするポジションであり続けるには、大規模なクラウドやAIスーパーコンピューターの構築、さらには優秀な人材の確保が欠かせない。そのためには数年間で数十億ドルの投資が必要となり、企業からの出資などを受けられるよう組織形態を変えたわけだ。 実際、そのわずか数カ月後にはマイクロソフトとパートナーシップを締結し、同社が10億ドルの出資を行うと発表。 マイクロソフトは2023年1月にも、複数年にわたって OpenAI に数十億ドル規模の投資を行う方針を発表し、マイクロソフトのAzureは、OpenAI の独占的なクラウドプロバイダーとなった。) 一方、営利企業の設立後も、OpenAI全体の組織の“最上位”に位置づけられてきたのが、6人の役員で構成する理事会だ。2023年6月時点で、OpenAIはその組織構造について主に次のような特徴を挙げている。 「理事会は非営利団体に変わりなく、安全なAGI(汎用人工知能)の促進という義務を果たす必要があり、営利企業もこの使命に従う必要がある」「理事会の過半数は独立性を保っており、社外取締役はOpenAIの株式を保有していない。またCEOのサム・アルトマン氏も直接は株を保有していない」「AGIができたかどうかの決定権は理事会にある」 つまり、OpenAIはあくまで非営利団体として発足した当初の目的を堅持し、それを実現するために理事会の権限を強くしているということだ。 こうした構図から、今回のクーデターのような解任ができたことや、OpenAI Globalに巨額を出資するマイクロソフトですらアルトマン氏の解任を事前に知らなかったことが理解できるだろう』、「「理事会は非営利団体に変わりなく、安全なAGI(汎用人工知能)の促進という義務を果たす必要があり、営利企業もこの使命に従う必要がある」「理事会の過半数は独立性を保っており、社外取締役はOpenAIの株式を保有していない。またCEOのサム・アルトマン氏も直接は株を保有していない」「AGIができたかどうかの決定権は理事会にある」 つまり、OpenAIはあくまで非営利団体として発足した当初の目的を堅持し、それを実現するために理事会の権限を強くしているということだ。 こうした構図から、今回のクーデターのような解任ができたことや、OpenAI Globalに巨額を出資するマイクロソフトですらアルトマン氏の解任を事前に知らなかったことが理解できるだろう」、「社外取締役」が暴走し易い構造があったようだ。
・『理事会メンバー刷新後に残る懸念  解任を決めた当時の理事会は、創業メンバーであるアルトマン氏、ブロックマン氏、イリヤ・サツキバー氏のほか、社外理事3人で構成。2018年から参画しているQuora代表のアダム・ディアンジェロ氏、シンクタンクのランド研究所のターシャ・マッコーリー氏、そして2021年から参画しているジョージタウン大学安全保障・新技術センター戦略担当ディレクターのヘレン・トナー氏だ。 AI政策とグローバルAI戦略研究を専門とするトナー氏の参画時、OpenAIはリリースで「この就任は、テクノロジーの安全かつ責任ある展開に対する私たちの献身を前進させるもの」と記載しており、非営利組織らしくAIの安全性を重視した登用と受け取れる。 アルトマン氏の解任には、サツキバー氏と社外理事の計4人が賛成したとみられている。直近でもアルトマン氏は画像生成や音声合成などテキスト以外のAPIの公開や、開発者が独自のGPTを作成、販売できるマーケットプレースの開発を推し進めていた。ビジネス路線を突き進む同氏との間に生じた軋轢が、解任へとつながった可能性は高い。 一連の騒動を受け、理事会メンバーは抜本的に見直される予定で、元セールスフォース共同CEOのブレット・テイラー氏らの就任が決まっている。アルトマン氏の全面支援を行ったマイクロソフトの関与が強まることも想定される。 理事会の刷新で表向きは一件落着だが、営利色が強まれば、AIの安全性をいかに担保するかというジレンマはいっそう深まる。 世界を騒がせたお家騒動は、AIの開発とビジネス競争をどう両立させるかという根本的な問いを改めて投げかけている』、「アルトマン氏は画像生成や音声合成などテキスト以外のAPIの公開や、開発者が独自のGPTを作成、販売できるマーケットプレースの開発を推し進めていた。ビジネス路線を突き進む同氏との間に生じた軋轢が、解任へとつながった可能性は高い・・・アルトマン氏の全面支援を行ったマイクロソフトの関与が強まることも想定される。 理事会の刷新で表向きは一件落着だが、営利色が強まれば、AIの安全性をいかに担保するかというジレンマはいっそう深まる。 世界を騒がせたお家騒動は、AIの開発とビジネス競争をどう両立させるかという根本的な問いを改めて投げかけている」、「営利色が強まれば、AIの安全性をいかに担保するかというジレンマはいっそう深まる」、難しいものだ。
タグ:人工知能(AI) (その16)(医療に「進出」するChatGPT 医師の仕事をAIがすることになるのか、解任騒動が示した「オープンAIとMSの相互依存」 スピードを支えるのは人員と「サーバー」だが…、お家騒動であらわ「OpenAI」が抱える矛盾の正体 突然のトップ解任の裏に倫理と営利めぐる葛藤) ダイヤモンド・オンライン 野口悠紀雄氏による「医療に「進出」するChatGPT、医師の仕事をAIがすることになるのか」 「もし医学的な質問に対して、大規模言語モデルが専門医レベルの回答をできるなら、事態は大きく変わるだろう。 これについては、さまざまな調査が行なわれており、検証成果はかなり有望な結果を示している」、なるほど。 「大規模言語モデルの臨床的有効性や診断支援の可能性を高く見積もる意見が多い。大規模言語モデルが臨床実装され、医療を強力に支援するようになる可能性は非常に高い。 特に、スクリーニングや初期診断、治療方針策定、フォローアップ、セカンドオピニオン、患者および医療者教育などは激変する可能性がある」、なるほど。 「日本では、これから人口高齢化がさらに進展し、医師不足は深刻な問題になるだろう。信頼性のある医療用大規模言語モデルの開発は、日本の場合にとくに必要度が高い課題だ」、なるほど。 「明らかな誤りやバイアスなど、精度の不安定性に懸念が表明されている。だから、現時点では重要な判断が伴うケースで、専門家のレビューなく出力結果を利用することは難しいとされる。 またプライバシー、倫理、法的制約と規制などについても、解決すべき課題が多くある。治療や研究に取り入れることには、守秘義務や患者の同意、治療の質、信頼性や格差に関する倫理的懸念が伴う。むやみな使用は予想外の結果につながりかねない」、なるほど。 「また、ChatGPTは、安全側に偏った回答をするはずだ。少しでも疑問があれば、「医師の診断を受けた方がよい」と答える可能性高い。自分では大丈夫だと思っているときにそうしたアドバイスを受けると、かえって不安になってしまう・・・健康に関わる問題は、さまざまな微妙な要素を持っており判断が難しい。この問題に関する研究調査がさらに進められることが求められる」、同感である。 東洋経済オンライン 西田 宗千佳氏による「解任騒動が示した「オープンAIとMSの相互依存」 スピードを支えるのは人員と「サーバー」だが…」 「社員のほとんどにあたる700名以上が、アルトマン氏らの復帰を求める署名にサインしており、求心力の強さは明白だ」、取締役会の「アルトマン氏」解任決議に対して、「700名以上が、アルトマン氏らの復帰を求める署名にサイン」、とは。「アルトマン氏」には心強い支援だ。 「「人員がいて」「サーバー設備が用意できる」状態なら、OpenAIと戦うことは不可能ではない。グーグルやMetaはその条件を十分に満たしている。OpenAIが持っている優位性も、他社が持ち得ないものではない、ということだ」、なるほど。 「今回の騒動では、OpenAIへの発言力をマイクロソフトが強化し、漁夫の利を得たようにも見える。だが、同社が取締役会に関係者を送り込めたわけでもなく、両社の関係や体制に変化はない。 今後も体制を維持するなら、OpenAIのガバナンス強化は必須だ。一方で、マイクロソフトとして「OpenAI以外の選択肢」、例えば自社でLLMを開発していく道もなくはない」、今後の展開が大いに注目される。 東洋経済オンライン「お家騒動であらわ「OpenAI」が抱える矛盾の正体 突然のトップ解任の裏に倫理と営利めぐる葛藤」 「アルトマン氏らによって非営利団体として設立された。組織の目標として当時、「金銭的なリターンを得る必要性に制約されることなく、人類全体に最も利益をもたらす可能性の高い方法で、デジタルインテリジェンスを発展させること」と定めている。 AIは業務の効率化などに活用できる一方、フェイクニュースの蔓延や雇用への短期的影響などリスクを伴う。倫理と安全性が求められるAIの領域において、OpenAIは資本的な利益よりも人類の利益を優先する、非営利の研究開発機関として組織されていた」、なるほど。 「OpenAI本体の傘下に、一定条件がついた営利企業のOpenAI LPを設立したのだ。この形態では出資する投資家や従業員は上限付きのリターンを得ることができる一方、一定以上の利益に関しては、非営利組織であるOpenAIに還元される」、なるほど。 「「理事会は非営利団体に変わりなく、安全なAGI(汎用人工知能)の促進という義務を果たす必要があり、営利企業もこの使命に従う必要がある」「理事会の過半数は独立性を保っており、社外取締役はOpenAIの株式を保有していない。またCEOのサム・アルトマン氏も直接は株を保有していない」「AGIができたかどうかの決定権は理事会にある」 つまり、OpenAIはあくまで非営利団体として発足した当初の目的を堅持し、それを実現するために理事会の権限を強くしているということだ。 こうした構図から、今回のクーデターのような解任ができたことや、OpenAI Globalに巨額を出資するマイクロソフトですらアルトマン氏の解任を事前に知らなかったことが理解できるだろう」、「社外取締役」が暴走し易い構造があったようだ。 「アルトマン氏は画像生成や音声合成などテキスト以外のAPIの公開や、開発者が独自のGPTを作成、販売できるマーケットプレースの開発を推し進めていた。ビジネス路線を突き進む同氏との間に生じた軋轢が、解任へとつながった可能性は高い・・・アルトマン氏の全面支援を行ったマイクロソフトの関与が強まることも想定される。 理事会の刷新で表向きは一件落着だが、営利色が強まれば、AIの安全性をいかに担保するかというジレンマはいっそう深まる。 世界を騒がせたお家騒動は、AIの開発とビジネス競争をどう両立させるかという根本的な問いを改めて投げかけている」、「営利色が強まれば、AIの安全性をいかに担保するかというジレンマはいっそう深まる」、難しいものだ。
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大阪万博(その2)(大阪万博「請け負えばやけどする」ゼネコンの本音 万博の華「海外パビリオン」の工事遅れが超深刻、大阪万博で膨らむ国庫負担…新たに837億円判明で会場建設費と合わせて1600億円超のムダ遣い、維新馬場代表「万博は絶対やめない」の二枚舌 国会では“貴重な血税1円も無駄にしない”何度も発言、参加国から不満も「大阪万博」で見えた日本の問題 日本には万博を開催する余裕はすでにない) [国内政治]

大阪万博については、2018年11月30日に取上げた。久しぶりの今日は、(その2)(大阪万博「請け負えばやけどする」ゼネコンの本音 万博の華「海外パビリオン」の工事遅れが超深刻、大阪万博で膨らむ国庫負担…新たに837億円判明で会場建設費と合わせて1600億円超のムダ遣い、維新馬場代表「万博は絶対やめない」の二枚舌 国会では“貴重な血税1円も無駄にしない”何度も発言、参加国から不満も「大阪万博」で見えた日本の問題 日本には万博を開催する余裕はすでにない)である。

先ずは、本年9月5日付け東洋経済オンライン「大阪万博「請け負えばやけどする」ゼネコンの本音 万博の華「海外パビリオン」の工事遅れが超深刻」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/699259
・『「お盆休み前(の忙しいタイミング)なのに、無理矢理、説明会に参加させられた」。中堅ゼネコンの幹部はため息をつく。 この幹部の言う説明会とは、日本国際博覧会協会(万博協会)が建設業者向けに開いた会合のことだ。2025年4月に開催予定の「2025年日本国際博覧会」(大阪・関西万博)は、海外参加国のパビリオンの建設が大幅に遅れている。 この状況を受けて、運営主体の万博協会は8月7日、大阪府咲洲庁舎(大阪市住之江区)の2階にあるホールで、建設への協力を呼びかけようと説明会を実施した』、「万博協会」が「大阪府咲洲庁舎」で「建設への協力を呼びかけようと説明会を実施」、なるほど。
・『「やけど程度では済まない」と吐き捨てる関係者も  会場には、100社を超える建設業者が詰めかけた。当日、万博協会は「参加国の準備状況やパビリオン建設に関する情報提供を行った」(中堅ゼネコンの幹部)という。 だが、海外パビリオンに対するゼネコン関係者の見方は冷ややかだ。 「儲からないであろう仕事に、社員や職人をつっこむわけにはいかない」(準大手ゼネコンの首脳)。「万博の海外パビリオン工事については、ゼネコンはどこもやりたがっていない」(ゼネコン各社と取引のある建設テックの社長)。 中には、「万博の工事には手を出さない方がいい。やけど程度では済まない」(中堅ゼネコンのベテラン社員)と吐き捨てる関係者もいる。ゼネコン業界では、海外パビリオンの工事について、もはや「総スカン」と言っても過言ではない状況なのだ。) 各国の技術や文化を紹介する展示施設で、万博の華となる「海外パビリオン」については、工事の進捗遅れが深刻だ。 大阪・関西万博には、これまでに153の国と地域が参加を表明している。この中で、参加国が自ら費用を負担して自由に設計・建設するパビリオン「タイプA」について、「基本計画書」(設計図や工程表をまとめたもの)を大阪市に提出したのは韓国、チェコ、モナコなど4カ国しかない(9月4日現在)。ゼネコンとの工事契約締結後に大阪市から得る「仮設建築物許可」に至っては、本申請が一件もない。 パビリオンの建物本体の工事は2024年7月までに終え、2025年1月までに内装など展示関係の工事を完了することが目安とされていた。だが、このままでは、多くの海外パビリオンは、開催までに竣工が間に合わなくなる』、「会場には、100社を超える建設業者が詰めかけた」、しかし、「海外パビリオンに対するゼネコン関係者の見方は冷ややかだ。 「儲からないであろう仕事に、社員や職人をつっこむわけにはいかない」・・・「万博の海外パビリオン工事については、ゼネコンはどこもやりたがっていない」・・・中には、「万博の工事には手を出さない方がいい。やけど程度では済まない」・・・確かに「冷ややか」だ。
・『簡易パビリオン「タイプX」への関心も薄い  状況を打破すべく、万博協会は協会側が長方形の箱型の建物を建てて引き渡す簡易なパビリオン「タイプX」を参加国に提案。しかし、8月末の申請締め切りの時点で、タイプXに関心を示したのは5カ国だけだった。万博協会は「この後2週間をメドに、参加国などに再度、意向の確認をしていきたい」とする。 運営主体側の焦りは相当なものがある。8月3日には、経済産業省の大臣官房商務・サービス審議官から国土交通省へ、「海外パビリオン建設に関する建設業界への協力要請」を通達。そして、国交省から建設業界の主要団体に対して、8月3日と8月9日に協力要請の書簡を送っている。 8月9日の書簡には、「政府としては、万博を『予定通り開催する』という強い意思で臨んでおります。建設業界の皆様におかれましても、同じ想いの元で、ご協力をいただきたいと存じます」と記述されている。) ゼネコン各社はなぜ、海外パビリオンの工事を請け負いたがらないのか。それは資材高と労務費の高騰が影響している。 業界団体である日本建設業連合会(日建連)によると、2023年7月の鋼材や生コンクリートなどの建設資材の物価は2021年1月と比較して、26%上昇している。また建設業の現場で働く人の賃金(公共工事設計労務単価)は2020年度に比べて、足元では9%以上引き上げられている。 「九州などの地域で工場の建設ラッシュがあり、職人さんの人工(にんく・人件費のこと)が信じられないほど上がっている」(中堅ゼネコンのベテラン社員)。 現場監督者や職人などの人員不足も問題だ。「マンパワーが足りない。国内の建築工事は相当な数が積み上がっていて、いまは案件を絞って受注している。受注済みの工事を消化しないといけない状況で、ほかの工事をお願いされても断っている」(スーパーゼネコンの幹部)』、「「九州などの地域で工場の建設ラッシュがあり、職人さんの人工・・・が信じられないほど上がっている」、確かにタイミング的には最悪のようだ。
・『「協会にプロジェクトをまとめる力がない」  建設業では2024年4月から罰則付きの時間外労働の上限規制が適用される「2024年問題」により、ただでさえ人員確保が困難な状況だ。政府は、万博関連工事についてはこの残業規制の対象外とすることを検討していると報じられている。 だが、これについて準大手ゼネコンの首脳は、「あってはならないことだ。『万博工事だけ、無制限に働け』なんて指示することは、社内にも社外向けにも説明できない」と語るなど、ゼネコン業界全体から反発を食らっている。 そもそも海外パビリオン工事の問題がこじれている背景として、万博協会の姿勢を問題視するゼネコン関係者は多い。前出とは別のスーパーゼネコンの幹部は、「ここまで遅々として進まないのは、協会にプロジェクトをまとめる力がないことが大きな要因」と憤る。) 大阪・関西万博では、ゼネコン業界が万博協会側に、再三にわたって積極的な関与を依頼してきた。例えば、3年前の2020年春には、日建連の関西支社幹部が万博協会に、タイプAの発注の仕方について業界の意向を伝えた。 発注側の外国政府と国内のゼネコン各社が直接交渉することに、多くの会員が心配していた。どこの国の言葉でやりとりするのか。工事に日本の約款が適用されるのか。スーパーゼネコンならば交渉能力があるが、それ以外のゼネコン(準大手や中堅ゼネコン)は政府が間に入ってくれないと、交渉をうまくまとめられない」(日建連の山本徳治事務総長)。 2022年8月には、日建連が会員の不安の声をとりまとめて、万博協会に伝達した。「外国政府のパビリオンは工期が厳しくなると危惧されるので、『万博協会の積極的な関与をお願いします』と依頼した。残業規制も始まるため、それを踏まえた工期の確保も要望した」(山本事務総長)』、「「ここまで遅々として進まないのは、協会にプロジェクトをまとめる力がないことが大きな要因」と憤る」、「万博」はこれまでの実施例などのノウハウがある筈だが、一体、どうしたのだろう。
・『「1日も早く図面をほしい」  しかし、ゼネコン業界の意向を万博協会がまともに受け止めたのかどうかは疑わしく、今年7月に入ってからも、工事はほぼ進捗していなかった。「図面をもらってから着工まで資材の準備などに時間がかかるので、精度の高い設計図面を1日も早く出していただきたい」。同月に行われた日建連の定例会見で、宮本洋一会長は工事が遅延することへの懸念を率直に語った。 山本事務総長は、次のように指摘する。「(万博協会は)スケジュール管理ができていないことが明確だ。とくに、タイプAのスケジュール管理がうまくいっていない」。 この先、仮に工事契約が進んだとしても、建設工事が順調に進捗するとは限らない。 大阪・関西万博の会場となる夢洲(ゆめしま・大阪市此花区)は大阪湾の人工島であり、インフラ問題が工事の足かせとなるからだ。トラックなど車両での夢洲へのアクセスは、同じく人工島である舞洲(まいしま)とを結ぶ「夢舞大橋」と、咲洲(さきしま)とを結ぶ「夢咲トンネル」の2ルートしかない。工事が進捗し、資材を運ぶ車両の運搬量が増えれば、大きな混乱を招く懸念がある。 夢洲では、電気、ガス、水道などのインフラ整備も進んでいるとは言いがたい。現在は、関係各社が発電設備を持ち込んで、仮設の電力設備で対応している。ゼネコン関係者の間では、「日本中の発電機がすべて、夢洲に集められている」といった冗談がささやかれているほどだ。大阪市は目下、夢洲内の工事を一括管理する事業調整会議を設置し、工程管理や運行ルートの調整を行っている』、「トラックなど車両での夢洲へのアクセスは、同じく人工島である舞洲(まいしま)とを結ぶ「夢舞大橋」と、咲洲(さきしま)とを結ぶ「夢咲トンネル」の2ルートしかない。工事が進捗し、資材を運ぶ車両の運搬量が増えれば、大きな混乱を招く懸念がある」、「トラック」輸送のボトルネックが生じる懸念がある。
・『突貫工事で事故や品質問題が起きれば大問題  大阪・関西万博が計画通りに開催できるのか、待ったなしの状況と言えよう。工事の進捗が遅れ、突貫での工事となると、事故や品質問題などのトラブルが起きかねない。「しわ寄せがゼネコン業界に回ってくるのであれば、本当に勘弁してほしい」(スーパーゼネコンの幹部)。 万博協会はここにきて、タイプXへの切り替え提案のほかに、協会が代わりに工事を発注する建設代行や、外国語対応が可能な窓口の設置など、複数の支援策を打ち出した。参加国とゼネコンの間を取り持って、工事の遅れを取り戻せるか。迅速な対応が求められる』、「協会」は、「参加国とゼネコンの間を取り持って、工事の遅れを取り戻」す積極的な役割を果たすべきだ。

次に、11月28日付け日刊ゲンダイ「大阪万博で膨らむ国庫負担…新たに837億円判明で会場建設費と合わせて1600億円超のムダ遣い」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/332602
・『「さらなる増額を認めるつもりはない」──。当初計画から約2倍に膨れ上がった大阪・関西万博の会場建設費をめぐり、岸田首相は国会でそう断言していた。ところが、27日の参院予算委員会で新たな国費負担が判明。物議を醸している。 実は、最大2350億円に上る会場建設費に、日本政府が出展する「日本館」の費用は含まれていない。会場建設費は国と大阪府・市、経済界が3分の1ずつ負担することになっているが、日本館は全て国費で賄われる』、「最大2350億円に上る会場建設費に、日本政府が出展する「日本館」の費用は含まれていない。会場建設費は国と大阪府・市、経済界が3分の1ずつ負担することになっているが、日本館は全て国費で賄われる」、なるほど。
・『日本パビリオンに最大360億円  予算委で立憲民主党の辻元議員が日本館の費用について追及すると、西村経産相は「(日本館にかかる)仕上げ、運営、解体の予算をプラスアルファで計上しなければならないと思っていますが、総額として360億円には抑えたい」と表明。会場建設費とは別に最大360億円の国費負担を明らかにした。 万博会場の目玉となる外周2キロの大屋根(リング)でさえ、費用は約350億円である。日本館の展示はさぞ立派かと思いきや、ウリは「日本古来の循環型経済」だ。 西村氏は予算委で「(日本は古来)例えば生ごみをリサイクルし、肥料やエネルギーとして利用してきた」などと説明。「循環型の日本文化も紹介しながら、最新のバイオマスのエネルギー技術やCO2のリサイクル技術などを紹介していく」と意義を強調したが、イマイチ目新しさに欠ける』、「西村氏は」、「「循環型の日本文化も紹介しながら、最新のバイオマスのエネルギー技術やCO2のリサイクル技術などを紹介していく」と意義を強調したが、イマイチ目新しさに欠ける」、なるほど。
・『税金を「お預かりしている」感覚が欠如  岸田氏は国費負担について「合理化の努力を続ける」と繰り返したものの、国費負担は「日本館建設のための費用」のほか、「途上国の出展支援のための費用」に240億円、「会場内の安全確保の万全を期するための費用」に199億円、「全国的な機運醸成」に38億円。しめて837億円に上る。もちろん、会場建設費の2350億円とは別の支出だ。 国費負担は会場建設費もあわせると、計1622億円に膨らむ。経済評論家の斎藤満氏がこう言う。 「本来、政府は国民生活の向上のために所得を再分配し、市場の失敗を補填する役割を担っていますが、いまの政府・与党には国民の税金を『お預かりしている』という感覚が欠如しています。時代錯誤の万博に多額の国費を投入して、日本経済の成長にどれほどのインパクトがあるのか。国民が求めていないのに強引に進めるとは、権力乱用以外の何物でもありません。負担を強いられる国民からしてみれば、こんな乱暴な話はない。内閣支持率が落ちて当然です」 いくら立派なパビリオンを建てても、万博閉幕後は更地に戻る。政府のムダ遣いこそ、国民生活を脅かす要因だ』、「国民が求めていないのに強引に進めるとは、権力乱用以外の何物でもありません。負担を強いられる国民からしてみれば、こんな乱暴な話はない。内閣支持率が落ちて当然です」、その通りだ。

第三に、11月28日付け日刊ゲンダイ「維新馬場代表「万博は絶対やめない」の二枚舌 国会では“貴重な血税1円も無駄にしない”何度も発言」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/332650
・『「万博は絶対にやめません。国としてのイベントなので、やめると日本が世界から信用を失ってしまう」 26日、お笑い芸人・千原ジュニア(49)がMCを務める「ABEMA的ニュースショー」に生出演し、こう断言していたのが、日本維新の会の馬場伸幸代表(58)だった。 番組では、会場建設費が当初見込みの1250億円から約1.9倍の2350億円に膨れ上がり、会場のシンボルとして設置される「木製の大屋根(リング)」の建築費350億円をめぐって批判の声が続出している「2025年大阪・関西万博」の是非がテーマとなった。 賛否を巡って様々な声が放送された後、馬場氏はこう言い放って「強行開催」を訴えていたわけだが、直後から、SNS上では《何が何でもやめない。一度始めたら止まらない無駄な公共事業の典型》《地方博とはいえ都市博を中止しても日本の信用は変わらなかった》《誰のカネだと思っているの。税金だよ。1円でも無駄にしてほしくない》などと異論の声が相次いだ』、「日本維新の会の馬場伸幸代表」は「万博は絶対にやめません。国としてのイベントなので、やめると日本が世界から信用を失ってしまう」と「断言していた」、「やめると日本が世界から信用を失ってしまう」はいささかオーバーだが、「馬場」氏がここまで入れ込んでいたとは驚きだ。
・『貴重な血税を1円の無駄もなく効率的に使用すべし、と言っていた馬場氏  《税金は1円でも無駄にしてほしくない》――。当然のことだが、実は馬場氏もかつて同じ思いを抱いていたようだ。 2014年2月18日の衆院本会議。馬場氏はこの年の4月から引き上げられる消費税増税に不安感を募らせているとし、こう言っていた。 「言うまでもなく、税金は、全国民が、額に汗し、身を削り、納めているものであります。したがって、国は、その貴重な血税を、1円の無駄もなく、かつ効率的に使用し、その税制は、できるだけ簡素に、かつ、出と入りがわかりやすいことが重要であります」 さらに2021年1月21日の衆院本会議では、国会に設置されている特別委員会について、「何のための特別委員会の制度なのでしょうか。多くの国民が家計のやりくりに苦労されているとき、特別委員長には委員会の開催状況にかかわらず1日6000円の手当が支払われ、委員長は、寝ていても月に約18万円を手にする上、専用の公用車や部屋、職員も用意されています。これを無駄と言わずして何と言うのでしょうか」とかみついていたのだ。 1日6000円の手当にも「無駄」と異を唱えていた馬場氏。自身の言葉通り、国民が額に汗をかき、身を削って納めている税金が投じられる万博の会場建設費がどんどん膨らんでいる今の現状には何も思わないのだろうか。 《維新は身を切る改革も結局はうそだった。ご都合主義と言うのか、いわゆる二枚舌》 《馬場氏は木製リングのリユースなんて言っていたが、自分のカネで何とかして》 ネット上は怒りと呆れる声が目立つ』、「維新」の馬脚がそろそろ現われてきたようだ。

第四に、11月30日付け東洋経済オンラインが掲載した『フランス・ジャポン・エコー』編集長、仏フィガロ東京特派員のレジス・アルノー氏による「参加国から不満も「大阪万博」で見えた日本の問題 日本には万博を開催する余裕はすでにない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/717946
・『2025年4月に開幕する大阪万博に暗雲が立ち込めている。11月半ばにはメキシコとエストニアが撤退したと日本政府が表明したほか、万博の建設費は膨らみ続け、建設費が当初に比べて最大500億円増えることが判明。パビリオンの建設をめぐっては参加国からも不満の声が噴出し始めている』、興味深そうだ。
・『ヨーロッパの倉庫より高い  1平方メートルあたり80万円――。これが大阪万博の「タイプX」パビリオンの現在の価格だと、あるプロジェクト関係者は言う。タイプXはパビリオン建設の業者を見つけられず、予算にも限りがある参加国へ万博主催者側が提案したものだ。建設は博覧会協会が代理で行う。 ところが、これが新たな紛争の火種となっている。1平方メートルあたり80万円というタイプXは、期間限定の建物にもかかわらず、ヨーロッパの基本的な倉庫よりも10倍も高いのだ。 ターナー&タウンゼントの建設価格表によれば、タイプXパビリオンの建設費は、リゾートホテルや高級車のショールームよりも高く、東京の総合病院の2倍もする。「主催者は参加希望国を助けるのではなく、金をむしり取ろうとしているのか?」とある万博関係者は話す。 2018年11月23日、大阪が2025年万博の開催を決めたとき、日本人は素朴にプロモーションのチャンスだと考えた。大阪万博を支援する企業は、世界的な評判が高まることを期待して熱狂的に参加した。 だが、実際には大阪は2つの下位候補(ロシアのエカテリンブルグとアゼルバイジャンのバクー)に勝っただけのことだった。この3都市の経済的な重みを考えれば、トヨタがスケートボードと自転車に勝ったようなものだ。 スマートフォンであらゆる発見がワンタッチでできる時代、ほとんどの大都市は万博にもう存在意義がないと考えている。経済的にも、万博における二酸化炭素排出量的にも、日本には主催する余裕などないのだ。万博は、大阪で初めて万博が開催された1970年に若かった人々にとっての「夢よもう一度」でしかない。 一方で、「最近の建築家は、社会や地球にとって持続可能で意味のあるものを作りたがっている」と日本の建築家ユニット、アトリエ・ワンの塚本由晴氏は語る』、「大阪が2025年万博の開催を決めたとき、日本人は素朴にプロモーションのチャンスだと考えた。大阪万博を支援する企業は、世界的な評判が高まることを期待して熱狂的に参加した。 だが、実際には大阪は2つの下位候補(ロシアのエカテリンブルグとアゼルバイジャンのバクー)に勝っただけのことだった」、対抗馬がそんな弱体だったとは初めて知った。「タイプXパビリオンの建設費は、リゾートホテルや高級車のショールームよりも高く、東京の総合病院の2倍もする」、そんなに法外に高値だとは驚かされた。
・『前進がなかった国際参加者会議  大阪万博は輝きを放つ機会ではなく、最悪の日本のショーケースと化し始めている。これは日本を世界に示す場であるが、最終的には好意よりも恨みを買う結果になるかもしれない。企業にとっては、イメージアップどころかイメージダウンに終わるかもしれない。 11月14日と15日の2日間、大阪で行われた国際参加者会議(IPM)の後、日本と参加国の当局は、物事が順調に進んでいると主張した。だが、海外のプロジェクト・マネジャーたちは不満と怒りをあらわにしている。「この2日間、IPMはわれわれの最も深刻な問題である請負業者の確保と経費の抑制に取り組まなかった」とある関係者は嘆く。 大阪万博はすでに、あるべき姿の影を潜めている。約56のパビリオンは当初すべて各国が直接担当する「タイプA」になるはずだったが、コストと時間の制約から、最大25のパビリオンは主催者が提供する「タイプX」となる。 「これらのパビリオンは、オリジナリティのショーケースであるべき万博の精神を裏切る空っぽの箱でしかない」とあるプロジェクトマネジャーは言う。) 海外の参加国は、日本の官僚主義の非効率さに唖然とする。「建設許可を取るのに3カ月も4カ月もかかる。迅速に進める方法がとにかく必要だ」と、プロジェクト管理会社SPIの創設者であるディートマー・カウシュティッツ氏は話す。 さらに別のプロジェクトマネジャーも、「建設が認可されるには4つの許可が必要だが、すべて日本語で当局からの助けは何もない。その過程で多くの国が迷子になった」と語る』、「11月14日と15日の2日間、大阪で行われた国際参加者会議(IPM)の後、日本と参加国の当局は、物事が順調に進んでいると主張した。だが、海外のプロジェクト・マネジャーたちは不満と怒りをあらわにしている。「この2日間、IPMはわれわれの最も深刻な問題である請負業者の確保と経費の抑制に取り組まなかった」とある関係者は嘆く・・・別のプロジェクトマネジャーも、「建設が認可されるには4つの許可が必要だが、すべて日本語で当局からの助けは何もない。その過程で多くの国が迷子になった」と語る」、なるほど。
・『「日本は例外に対応するのが苦手」 「日本人は計画が決まれば非常に正確で信頼できるが、例外的なケースに対応するのは苦手だ」と語るのは、建設プロジェクトマネジメントLC&PartnersのCEO兼創業パートナーで、現在いくつかのパビリオンプロジェクトに携わっているロレンツォ・キャンデルパーガー氏だ。 「問題は、万博が例外の集まりにすぎないということだ。どの国も独自の規制や手続きを持ち、何か新しいものを見せたいと考えている。万博にはオリジナリティがつきものだから、参加国は開催都市が自国のルールの例外を受け入れてくれることを期待している。しかし、日本はそれに消極的だ。とはいえ、建設が始まれば、日本がいかに超効率的であるかを示すことになるとは思う」) 参加国は日本の建設会社の消極的な姿勢にも驚いている。建設会社は大阪万博を受け入れ、自分たちの技術を世界にアピールするものだと思っていた。しかし、大手ゼネコンは万博を真剣に捉えていないように見える。 何十年も続くビジネスチャンスに満ちたシンプルな建物を日本のクライアントに提供できるのに、なぜ外国のクライアントのために一時的で難しい建物を作らないといけないのか、と考えているのだ』、「「問題は、万博が例外の集まりにすぎないということだ。どの国も独自の規制や手続きを持ち、何か新しいものを見せたいと考えている。万博にはオリジナリティがつきものだから、参加国は開催都市が自国のルールの例外を受け入れてくれることを期待している。しかし、日本はそれに消極的だ。とはいえ、建設が始まれば、日本がいかに超効率的であるかを示すことになるとは思う」、「参加国は日本の建設会社の消極的な姿勢にも驚いている。建設会社は大阪万博を受け入れ、自分たちの技術を世界にアピールするものだと思っていた。しかし、大手ゼネコンは万博を真剣に捉えていないように見える」、なるほど。
・『参加国側にも問題が?  海外勢の要望に応えるのは、参加国の傲慢さによってより難しくなっている、と日本のゼネコン幹部は言う。同氏は30以上のパビリオンの提案を断ったと言う。どこの担当者も真剣さがなかったという。 「3年前、私は彼らに期限を守るよう明確なスケジュールを提示したが、彼らは聞く耳を持たなかった。今はもう時間がない」。ゼネコン大林組、竹中工務店、清水建設は、タイプXパビリオンの調達支援にのみ参加する予定だという。 万博は在日外資系企業の間でも不評で、駐在員は本社の参加要請を拒否している。「世界的にコストが上がっているし、超円安だ。こんなものに用はない」とあるフランスの高級ブランドのトップは言う。 大阪万博はすでに、2005年に愛知で開催された「愛・地球博」との比較に苦しんでいる。愛知万博は「ローカル」な博覧会で、来場者の95%が日本人で、全体の53%が東海地方から訪れていた。それでも、主催者側は市民社会を巻き込むことに苦心し、日本人に万博へのコミットメントを感じさせた。) 「愛知万博は公園で開催され、テーマは環境だった。国家、企業、NGOが賛同した。今回は産業界が主導権を握っている。もちろん、産業界は重要だが、市民は蚊帳の外になってしまっている」とアトリエ・ワンの塚本氏も指摘する』、「「愛知万博は公園で開催され、テーマは環境だった。国家、企業、NGOが賛同した。今回は産業界が主導権を握っている・・・市民は蚊帳の外になってしまっている」、「市民は蚊帳の外になってしまっている」というのは確かに懸念材料だ。
・『経費が膨らんでいることへの「言い訳」  万博の主催者は状況を隠そうと必死だ。メキシコとエストニアが万博からの撤退したのが明らかになると、自見英子万博担当相は5カ国が参加したと反論した。デンマーク、フィンランド、ノルウェー、アイスランド、スウェーデンで、これらの国々は単独ではなく、共同で北欧パビリオンを出す予定だ。 経費が膨らんでいることに対して、韓国・梨泰院(イテウォン)の群衆圧死事故や、安倍元首相への攻撃を引き合いに出して、「安全保障」が追加費用の理由だと主張する政府も胡散臭い。 これらは万博とどう関係があるのだろうか?開幕500日前、費用はすでに2倍近くに膨れ上がり、日本の納税者全員に飛び火している。参加国や企業にとっては、これは逆宣伝になりかねない。 その他にも問題が山積している。参加者のためのホテルの部屋不足、万博のためのスタッフ不足、夢洲への輸送の難しさ……。外国人コンサルタントこうはっきり言う。「大阪万博は、妻に隈研吾の家を約束した夫が、口座に100万円しかないことに気づき、妻に言うのをためらっているようなものだ」。 ベテランのロビイストも同意見だ。「日本は戦争に負けるとわかっていながら真珠湾を爆撃した。勝つためではなく、ベストを尽くすためだった。今回も同様のことが起きている。止めるべきだとわかっていても、誰も中止の責任を取る勇気がない』、「「日本は戦争に負けるとわかっていながら真珠湾を爆撃した。勝つためではなく、ベストを尽くすためだった。今回も同様のことが起きている。止めるべきだとわかっていても、誰も中止の責任を取る勇気がない」、このまま無責任に実施に向け突っ込んでいくよりも、いまからでも中止を決断すべきだ。
タグ:東洋経済オンライン「大阪万博「請け負えばやけどする」ゼネコンの本音 万博の華「海外パビリオン」の工事遅れが超深刻」 (その2)(大阪万博「請け負えばやけどする」ゼネコンの本音 万博の華「海外パビリオン」の工事遅れが超深刻、大阪万博で膨らむ国庫負担…新たに837億円判明で会場建設費と合わせて1600億円超のムダ遣い、維新馬場代表「万博は絶対やめない」の二枚舌 国会では“貴重な血税1円も無駄にしない”何度も発言、参加国から不満も「大阪万博」で見えた日本の問題 日本には万博を開催する余裕はすでにない) 大阪万博 「万博協会」が「大阪府咲洲庁舎」で「建設への協力を呼びかけようと説明会を実施」、なるほど。 「会場には、100社を超える建設業者が詰めかけた」、しかし、「海外パビリオンに対するゼネコン関係者の見方は冷ややかだ。 「儲からないであろう仕事に、社員や職人をつっこむわけにはいかない」・・・「万博の海外パビリオン工事については、ゼネコンはどこもやりたがっていない」・・・中には、「万博の工事には手を出さない方がいい。やけど程度では済まない」・・・確かに「冷ややか」だ。 「「九州などの地域で工場の建設ラッシュがあり、職人さんの人工・・・が信じられないほど上がっている」、確かにタイミング的には最悪のようだ。 「「ここまで遅々として進まないのは、協会にプロジェクトをまとめる力がないことが大きな要因」と憤る」、「万博」はこれまでの実施例などのノウハウがある筈だが、一体、どうしたのだろう。 「トラックなど車両での夢洲へのアクセスは、同じく人工島である舞洲(まいしま)とを結ぶ「夢舞大橋」と、咲洲(さきしま)とを結ぶ「夢咲トンネル」の2ルートしかない。工事が進捗し、資材を運ぶ車両の運搬量が増えれば、大きな混乱を招く懸念がある」、「トラック」輸送のボトルネックが生じる懸念がある。 「協会」は、「参加国とゼネコンの間を取り持って、工事の遅れを取り戻」す積極的な役割を果たすべきだ。 日刊ゲンダイ「大阪万博で膨らむ国庫負担…新たに837億円判明で会場建設費と合わせて1600億円超のムダ遣い」 「最大2350億円に上る会場建設費に、日本政府が出展する「日本館」の費用は含まれていない。会場建設費は国と大阪府・市、経済界が3分の1ずつ負担することになっているが、日本館は全て国費で賄われる」、なるほど。 「西村氏は」、「「循環型の日本文化も紹介しながら、最新のバイオマスのエネルギー技術やCO2のリサイクル技術などを紹介していく」と意義を強調したが、イマイチ目新しさに欠ける」、なるほど。 「国民が求めていないのに強引に進めるとは、権力乱用以外の何物でもありません。負担を強いられる国民からしてみれば、こんな乱暴な話はない。内閣支持率が落ちて当然です」、その通りだ。 日刊ゲンダイ「維新馬場代表「万博は絶対やめない」の二枚舌 国会では“貴重な血税1円も無駄にしない”何度も発言」 「日本維新の会の馬場伸幸代表」は「万博は絶対にやめません。国としてのイベントなので、やめると日本が世界から信用を失ってしまう」と「断言していた」、「やめると日本が世界から信用を失ってしまう」はいささかオーバーだが、「馬場」氏がここまで入れ込んでいたとは驚きだ。 「維新」の馬脚がそろそろ現われてきたようだ。 東洋経済オンライン レジス・アルノー氏による「参加国から不満も「大阪万博」で見えた日本の問題 日本には万博を開催する余裕はすでにない」 「大阪が2025年万博の開催を決めたとき、日本人は素朴にプロモーションのチャンスだと考えた。大阪万博を支援する企業は、世界的な評判が高まることを期待して熱狂的に参加した。 だが、実際には大阪は2つの下位候補(ロシアのエカテリンブルグとアゼルバイジャンのバクー)に勝っただけのことだった」、対抗馬がそんな弱体だったとは初めて知った。 「タイプXパビリオンの建設費は、リゾートホテルや高級車のショールームよりも高く、東京の総合病院の2倍もする」、そんなに法外に高値だとは驚かされた。 「11月14日と15日の2日間、大阪で行われた国際参加者会議(IPM)の後、日本と参加国の当局は、物事が順調に進んでいると主張した。だが、海外のプロジェクト・マネジャーたちは不満と怒りをあらわにしている。「この2日間、IPMはわれわれの最も深刻な問題である請負業者の確保と経費の抑制に取り組まなかった」とある関係者は嘆く・・・ 別のプロジェクトマネジャーも、「建設が認可されるには4つの許可が必要だが、すべて日本語で当局からの助けは何もない。その過程で多くの国が迷子になった」と語る」、なるほど。 「「問題は、万博が例外の集まりにすぎないということだ。どの国も独自の規制や手続きを持ち、何か新しいものを見せたいと考えている。万博にはオリジナリティがつきものだから、参加国は開催都市が自国のルールの例外を受け入れてくれることを期待している。しかし、日本はそれに消極的だ。とはいえ、建設が始まれば、日本がいかに超効率的であるかを示すことになるとは思う」、 「参加国は日本の建設会社の消極的な姿勢にも驚いている。建設会社は大阪万博を受け入れ、自分たちの技術を世界にアピールするものだと思っていた。しかし、大手ゼネコンは万博を真剣に捉えていないように見える」、なるほど。 「「愛知万博は公園で開催され、テーマは環境だった。国家、企業、NGOが賛同した。今回は産業界が主導権を握っている・・・市民は蚊帳の外になってしまっている」、「市民は蚊帳の外になってしまっている」というのは確かに懸念材料だ。 「「日本は戦争に負けるとわかっていながら真珠湾を爆撃した。勝つためではなく、ベストを尽くすためだった。今回も同様のことが起きている。止めるべきだとわかっていても、誰も中止の責任を取る勇気がない」、このまま無責任に実施に向け突っ込んでいくよりも、いまからでも中止を決断すべきだ。
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