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暗号資産(仮想通貨)(その21)(ビットコインに触手を伸ばし始めたウォール街の巨人たち 機関投資家の参入相次ぐ、バイデンが暗号資産関連の大統領令に署名 ビットコインや先物ETFが急騰、暗号資産世界大手がリキッドグループを傘下に 巨大交換所「FTX」が日本上陸 同業買収のその先)

暗号資産(仮想通貨)については、昨年11月20日に取上げた。今日は、(その21)(ビットコインに触手を伸ばし始めたウォール街の巨人たち 機関投資家の参入相次ぐ、バイデンが暗号資産関連の大統領令に署名 ビットコインや先物ETFが急騰、暗号資産世界大手がリキッドグループを傘下に 巨大交換所「FTX」が日本上陸 同業買収のその先)である。

先ずは、本年1月20日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したクラーケン・ジャパン代表の千野剛司氏による「ビットコインに触手を伸ばし始めたウォール街の巨人たち、機関投資家の参入相次ぐ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/293679
・『2021年は、ビットコインの注目度が格段に上がった一年だった。日本ではさほど動きがないが、世界に目を向けてみると、ウォール街の大手金融機関や機関投資家が本腰を入れ始めたほか、エルサルバドルなどのように、国家がビットコインを保有する動きも見られるようになった。世界がビットコインに本気になる中、日本は動きが鈍いまま。世界の潮流に乗り遅れないようにする必要がある』、興味深そうだ。
・『世界に大きく遅れた日本の現状  2021年、米国ではウォール街の投資家やシリコンバレーを代表する企業が暗号資産市場に参入し、2兆ドル(約230兆円)超の規模となった暗号資産の果実を得ようと、本気で動き出しました。一方、2014年頃までには世界最大のビットコイン取引所が拠点を持ち、2017年の強気相場を牽引(けんいん)した日本は、2021年、世界の暗号資産トレンドから取り残されてしましました。 例えば、暗号資産の時価総額トップ10に現在、日本発のプロジェクトはありません(ビットコインの開発者が日本人であるという説もありますが、真相は分からないので置いておきます)。それどころか、日本の暗号資産取引所では、執筆時点で時価総額トップ10の暗号資産の半分の取り扱いすら始めていません。 また、2021年は暗号資産マーケットが世界的に堅調であったにもかかわらず、日本は盛り上がりに欠けました。日本暗号資産取引業協会(JVCEA)によりますと、データ取得が可能な2021年1月〜11月までの日本国内の現物の取引高は約34兆円。年後半にビットコインなどの価格が上がった2020年の1年間と比べると約3倍でした。これに対して、例えばクラーケンの現物の取引高は、同時期に約64兆円を記録し、2020年の年間取引高と比べても約5.6倍と大きく増えました。日本国内全体の取引高がクラーケン1社より低い上に、伸び率でも差をつけられているのです。 確かに、日本にはマウントゴックス事件やコインチェック事件など、巨額ハッキングが頻発したという不幸な歴史がありました。また、2017年のバブル時に登場した「億り人」による単なる金もうけといったイメージも加わり、世間的に暗号資産に対するイメージは悪いのが現状です。しかし、「そうも言っていられなくなった」のが昨年、世界から突きつけられた現実です。 暗号資産データ収集サイトCoinMarketCapによりますと、現在9000種類以上の暗号資産が存在します。その中でも、米国の機関投資家や大手企業がとりわけ注目しているのは、やはり時価総額が一番大きなビットコインです。現在約235兆円ある暗号資産市場全体の時価総額に占めるビットコインの割合は、減少傾向にありますが、40%近くあります。最近は、インフレ懸念が高まっていることもあり、金と似た特徴を持つビットコインには「インフレヘッジ」としての役割が期待されています。 本稿では、2021年に日本が沈黙していた間、米国の投資家と大手企業が暗号資産に対する目線をどのように変えたのかを解説します』、米国市場では、どのような変化があったのだろう。
・『動き出すウォール街の巨人たち  2021年は、米国を中心に機関投資家や大手企業による業界への参入が、一気に加速した年でした。以下は、機関投資家や大手企業の主な動きをまとめたものです。 ・ブラックロックが、ビットコイン投資を念頭においた二つのファンドを認可 ・モルガン・スタンレーが、ビットコインのファンドに対する富裕層の顧客のアクセスを許可 ・BNYメロンが、顧客の代わりにビットコインの保有・送金をするサービスを発表 ・ステート・ストリートが、デジタル資産向けの取引プラットフォームに必要なインフラを提供すると発表 ・金融サービス会社コーウェンが、ヘッジファンドなどに暗号資産のカストディサービス(投資家に代わって有価証券の保管・管理などを行うサービス)提供を計画していると発表 ・ヘッジファンドのPoint72が、暗号資産投資を検討していると発表 ・JPモルガンが、富裕層の顧客に対して暗号資産ファンドへのアクセスを許可 ・資産運用会社ニューバーガー・バーマンが、1億6400万ドルのコモディティ特化のミューチュアルファンドでビットコインとイーサリアムに間接的に投資できるように許可 ・資産運用会社フランクリン・テンプルトンが、ビットコインとイーサリアムのトレーダーを募集していると発表 ・ジョージ・ソロスのファミリーオフィスが、ビットコインに投資していたことが判明 ・JPモルガンが、富裕層の顧客向けにビットコインファンドを立ち上げ ・ハーバード大学、エール大学、ブラウン大学の基金が2020年以降でビットコインを購入していたことが判明 また、2021年、新たに暗号資産に興味を示し始めたウォール街の重鎮も複数いました。 例えば、ヘッジファンド運営会社ブリッジウォーター・アソシエーツの創業者レイ・ダリオはビットコインについて「大した発明だ」と発言し、ビットコイン投資によって法定通貨の価値減少を防ぐことを目指すファンドの立ち上げを検討していると明かしました。投資会社オークツリー・キャピタル・マネジメントの共同創業者ハワード・マークスは、以前はビットコインを本質的な価値がないと言って否定していましたが、最近になってこうした考えを改めました。 スカイブリッジ・キャピタル創業者アンソニー・スカラムッチは、ビットコインは債券や金を持つことと同じぐらい安全と発言し、チューダー・インベストメント創業者ポール・チューダー・ジョーンズはインフレヘッジとして金よりビットコインを好むと述べ、バリー・スターリヒトは「西半球の全ての政府が無制限にマネーを刷る」のでビットコインを保有していると話しました。 また、伝統的な金融企業や投資家の間では、暗号資産系の投資ファンドに直接投資する動きも見られ、暗号資産関連の投資を手がけるファンドの預かり資産(AUM)は急増。2021年1月の362億5000万ドルから、2021年10月には596億ドルまで増えました』、これだけ多くのプレイヤーが取り組みを本格化させたとは、市場は着実に厚みを増しているようだ。
・『上場企業のバランスシートにビットコインが登場  インフレヘッジや分散投資を目的として、米国を中心にバランスシートにビットコインを追加する上場企業も増えています。 2021年、上場企業の中で最もビットコインを購入したのは、ナスダックに上場するマイクロストラテジー社でした。1年間で5万BTCを購入し、上場企業が保有するビットコイン総額の6.5%を保有しています。 ビットコインを保有する上場企業を国別に見ると、米国が一番多く、カナダが続いており、北米企業の強さがみられます。 米国大手企業は、ビットコインをバランスシートに追加しただけではありません。例えば、マスターカードは加盟店向けに暗号資産支払いのサポートを行う計画を立て、Visaは米ドルと連動するステーブルコインUSDCで決済を行うという試験を発表しました。さらに、ペイパルは暗号資産による精算を導入、パランティア・テクノロジーズがビットコインを支払い手段として受け入れ、スクエア社は「ブロック」へと暗号資産風に社名を変更しました。 とりわけ、今年注目なのはブロックの動向でしょう。ブロックは、Twitter創業者のジャック・ドーシーが設立した会社です。そのジャック・ドーシーは、「人生においてビットコインほど重要なことは何もない」というほどビットコインに没頭しており、TwitterのCEOを辞めた後に、スクエア社のブロックへの社名変更を発表しました。今後、ビットコインを基盤とした分散型取引所(DEX)の立ち上げやマイニング事業、関連技術の開発を進めていくとみられています』、「Twitter創業者のジャック・ドーシー」氏が「人生においてビットコインほど重要なことは何もない」、とは凄い思い入れだ。
・『ビットコイン投資の利益を公共事業に  ビットコインに魅了されているのは投資家や企業だけではありません。国レベルでも、ビットコインの恩恵を受けようという動きが出てきています。 2021年、最も注目されたのは、中米エルサルバドルによるビットコインの法定通貨としての採用でしょう。エルサルバドルのブケレ大統領は、ビットコイン価格が下がるたびに押し目買いをして、国として保有するビットコインの保有量を増やしています。こうしたビットコイン投資のリターンは学校建設などを通じて国民に還元されています。 エルサルバドル以外にも、ウクライナやブルガリアなどビットコインを保有する国は存在しており、ビットコイン供給量の上限である2100万BTCの1.25%を占めています。 法定通貨が安定している先進国においては、国がビットコインを保有するというイメージができないかもしれません。しかし高いインフレに頭を悩ませる新興国は、ビットコインへの注目度が高いのです。2022年、ビットコインに頼らざるを得なくなる国が増えるかどうか、注目しています。 一方、米国政府のビットコインに対する姿勢は不透明ですが、米国ではマイアミとニューヨークという大都市で受け入れ体制が整い始めています』、「エルサルバドル」では、「ビットコイン価格が下がるたびに押し目買いをして、国として保有するビットコインの保有量を増やしています。こうしたビットコイン投資のリターンは学校建設などを通じて国民に還元されています」、リターンを「学校建設などを通じて国民に還元」とはいいことだ。
・『マイアミ  2020年12月 フランシス・スアレス市長が市の財務資産の1%をビットコインにすることを検討 2021年1月 スアレス市長が「マイアミ市を暗号資産イノベーションのハブ」にすると強調 2021年3月 スアレス市長がビットコインマイニング業者の積極的な誘致を検討 2021年8月 マイアミ市がインフラやイベントへの資金調達手段として独自暗号資産MiamiCoinを立ち上げ 2021年10月 市の職員へのビットコインでの給料支払いの許可を検討』、「市の職員へのビットコインでの給料支払いの許可を検討」とはいっても、「ビットコイン」は価格が不安定なだけにどういう価格で支払うかは、悩ましい問題だ。
・『ニューヨーク  2021年11月 ビットコインに友好的なエリック・アダムス候補がニューヨーク市長選で勝利 2021年11月 アダムス市長、市長として最初の3カ月の給与をビットコインで受け取ると宣言 2021年11月 アダムス市長、ニューヨーク市を暗号資産業界の中心にすると宣言 2021年11月 ニューヨークシティコイン(NYC Coin)が始動』、「ニューヨーク市長として最初の3カ月の給与をビットコインで受け取る」のは、自分のことなので問題ない。 
・『2022年1月3日、ビットコイン誕生から13年の月日がたちました。未成熟な業界であることは確かであり、詐欺行為やハッキングには常に気をつけなければいけません。ただ上記の通り、米国ではプロの投資家や大手企業、大都市が大きく暗号資産に対する見方を変えてきています。さらにエルサルバドルやウクライナ、ブルガリアのように、国家レベルでビットコインを保有する動きも出てきています。これ以上後れを取らないためにも、日本は長い眠りから目覚める必要があるでしょう』、「日本」は果たして「目覚める」だろうか。

次に、3月10日付けYahooニュースが転載したあたらしい経済「バイデンが暗号資産関連の大統領令に署名、ビットコインや先物ETFが急騰」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/d8bfe1675b8c118036be3c6f10da61a8656c4802
・『大統領令署名後にビットコイン急騰  ジョー・バイデン(Joe Biden)米大統領が、中央銀行デジタル通貨であるデジタルドル発行やその他の暗号資産(仮想通貨)問題の利点とリスクを評価するよう米政府機関に求める大統領令に9日署名した。これを受けビットコイン価格は急騰した。 この大統領令は、米国の金融システムにおける暗号資産の採用を拡大させる可能性があると考えられている。 バイデン大統領が署名した大統領令は、財務省、商務省、その他の主要機関に対して、「貨幣の未来」と「暗号資産が果たす役割」に関する報告書を作成するよう求めるものだ。 ウクライナ戦争により、制裁体制が整った昨今、不正金融に対抗し、金融の安定と国家安全保障へのリスクを防止するデジタル資産の規制枠組みを整備することが二重に求められている」と法律事務所フィッシャーブロイレス(FisherBroyles)のマネージングパートナーであるマイケル・ピアソン(Michael Pierson)氏は述べている。 ホワイトハウスは昨年、拡大するランサムウェアなどのサイバー犯罪の脅威に対処するため、大統領令を含む暗号資産市場の広範な監視を検討していると発表していた』、米国政府が漸く重い腰を上げたようだ。
・『日中の取引でビットコインは9.1%上昇の42,280ドルで、2月28日以来最大の上昇率になる。一方でイーサリアムは6.3%上昇の2,740ドルとなっており、これも今月最高の数字になりそうだ。 世界最大の暗号資産関連の取引商品のプロバイダー21Sharesの最高経営責任者兼共同創設者のハニー・ラシュワン(Hany Rashwan)氏は「21Sharesでは、投資家に暗号資産を紹介および公開する最善の方法は、安全で規制されたアプローチであると常に考えてきました」、「本日の出来事は、米国が今後何年にもわたってクリプト(暗号資産関連の総称)のリーダーとしての地位を確立するのに役立つでしょう」と述べている。 昨年末に規制当局の承認を得たビットコイン先物を追跡する米国の上場投資信託(ETF)も価格が上昇した。プロシェアーズ・ビットコイン・ストラテジー・ETF(ProShares Bitcoin Strategy ETF)とヴァルキリー・ビットコイン・ストラテジー・ETF(Valkyrie Bitcoin Strategy ETF)は取引が始まるとそれぞれ9.8%と10.2%急騰した。 また米国のマイニング業者の株価も上昇した。ライオットブロックチェーン(Riot Blockchain)は11.9%、マラソン・デジタル・ホールディングス(Marathon Digital Holdings)は14.6%急騰し、また暗号資産取引所コインベースグローバル(Coinbase Global Inc)の株価は9.4%上昇した。 ※この記事は「あたらしい経済」がロイターからライセンスを受けて編集加筆したものです』、「米国が今後何年にもわたってクリプト・・・のリーダーとしての地位を確立するのに役立つでしょう」、米国がこれまで静観していたのは、イノベーションが急速な市場に規制を持ち込むことで、イノベーションを阻害しないようにしていたためとみられているが、イノベーションも一服したと判断したのかも知れない。これで、相場や市場が息を吹き返したようだ。

第三に、3月17日付け東洋経済Plus「暗号資産世界大手がリキッドグループを傘下に 巨大交換所「FTX」が日本上陸、同業買収のその先」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/30079
・『暗号資産交換所の世界大手FTXが、日本の同業・リキッドグループを買収する。かつて不正流出も経験したリキッドは、新体制でどのように成長を目指すのか。 メジャーリーグで活躍する大谷翔平選手を「グローバル・アンバサダー」に起用したことで、日本の一般メディアでも取り上げられた海外の暗号資産交換所・FTX。バハマに本社を置き、取引高は全世界で五本の指に入る。アメリカの調査会社・CBインサイツによると、企業価値は320億ドル(約3.7兆円)に上る。 そんな成長期待の大きいユニコーンが、暗号資産交換所「Liquid by Quoine(リキッドバイコイン)」を日本やシンガポールで運営するリキッドグループを買収、日本市場に上陸する。3月末をメドに買収手続きを終えた後、サービス名も「FTXジャパン」に改める。なお、買収総額は公表していない。 リキッドグループの2021年9月時点での国内預かり資産は約220億円。預かり資産で国内1位・ビットフライヤーの4%にすぎないが、その動向は見逃せない。同社の栢森(かやもり)加里矢CEOに、買収されるに至った経緯を含めて話を聞いた(Qは聞き手の質問、Aは栢森氏の回答)』、興味深そうだ。
・『「救済型」の買収ではない  Q:FTXに買収されることになった経緯を教えてください。2021年8月の暗号資産不正流出を機に、FTXから1.2億ドルの融資を受けたことから今回の話に至ったのでしょうか。  A:不正流出が起きる前からFTXとは接点があった。FTXのサムさん(創業者でCEOのサム・バンクマン・フリード氏)とは、2019年に台湾で開かれたイベントの壇上で初めて顔をあわせた。 彼がFTXを創業した直後のことだったが、斬新でイノベーティブなプロダクトとサービスに加えて、リスクコントロールを切り口に交換所サービスを作っており、さすがだなと思った。 FTXでは、レバレッジ取引でロスカット(強制決済)が生じにくいように証拠金の算定(クロスマージン導入)を工夫したり、マーケットの急変動でシステムがダウンしないよう設計したりしている。 そのプロダクトを日本に持ってきたいと考え、不正流出が起こる前の2021年春くらいから業務提携の話をしていた。 Q:今回の買収は「救済型」ではないと。 A:不正流出を受けてFTXから融資を受け、そこから自然な流れで資本まで含めた話がスタートした。不正流出もあったので動きが加速した、というのが実情だ。 100%買収となったのは、中途半端はよくないと判断したため。グループに入るのであれば、「FTXジャパン」として衣替えし、プロダクトもいいものへと入れ替えていくことが重要。そのためにもリキッドグループ全体を買収してもらう形になった。 Q:栢森さんを含めて現経営陣はどうなるのでしょう? A:全員残る。それが条件だったわけではなく、FTXからお願いされた。 彼らが得意なのは、顧客にとっていいプロダクトの提供。一方でわれわれに求められているのは、法令や規制当局への対応、オペレーション周りだ。FTXとは補完関係にある。バイアウトとしては理想的な形となった。 Q:不正流出事件ではシンガポールのグループ会社で約9100万ドル(約104億円)の被害が発生。顧客は全額返金で損を被ることはありませんでしたが、流出した暗号資産を取り戻せるのでしょうか。 シンガポールや日本の警察当局、アメリカのFBIと連携し調査を継続中だ。流出した暗号資産はミキシングされる(取引データを複数混ぜ合わせる)などして、方々へ流れていくので回収は難しいだろう。 それもあってFTXから融資を受けた。それ以上はお話しできない状況だ。 Q:FTXにはどのような印象を持っていますか。 (栢森氏の略歴はリンク先参照) FTXは各国の法令を重視している。ライセンスが必要となる国では自ら取得したり、それを持つ企業を買収したりする。規制に対応していることが競合優位性になるというのがサムさんの考え。ぎりぎりの線でお金儲けをして、いろいろな国から警告を受けているオフショア系とは違う。 サムさんには、お金儲けではなく世の中をよくしていきたいとの思いがある。お金に執着しておらず、自分の財はすべて寄付に回すと言うような人だ』、「FTXでは、レバレッジ取引でロスカット(強制決済)が生じにくいように証拠金の算定(クロスマージン導入)を工夫したり、マーケットの急変動でシステムがダウンしないよう設計したりしている」、確かに「イノベーティブ」さでは優れているようだ。
・『日本は市場としてまだ黎明期  Q:FTXとは以前から業務提携などを考えていたとのことでした。リキッド単独で優れたプロダクトを開発することは難しかったのですか。 A:当社がサービスをスタートしたのは2014年。当時最高のマッチングエンジン(顧客の取引をつなぐ交換所システム)を入れていても、その後よりよい技術が生まれている。 また、日本では2018年に当社を含めて当時営業していた交換所が一斉に金融庁から業務改善命令を受けた。法令対応や内部管理体制の構築などにリソースを割くことになり、イノベーティブな取り組みが自然と少なくなってしまった。僕の頭の中も9割はガバナンス、コンプライアンス、管理体制の充実で占められた。 それに対して世界の暗号資産関連企業はイノベーション中心に動いているので、どうしても差が開く。その結果として、日本のコアな暗号資産ユーザーは海外へと流れた。 日本にいいプロダクトがあるなら、それらのユーザーは必ずしも海外のものを使いたいわけではないと、僕は思っている。世界トップのプロダクトを日本に持ってきたいと考えて、その相手としてFTXを第一候補としていた。不正流出がなくてもFTXと組んでいたと思う。 Q:FTXからは日本市場での利益目標など課されていますか。 A:売り上げや利益をいくら上げてくれといったKPI(重要業績評価指標)はない。日本は重要な市場なので、しっかり事業を拡大していこうというだけだ。 海外だと若者の何割かは最初に触れる金融商品が暗号資産になっている。それに比べると、日本は市場としてまだまだ黎明期。イノベーションもこれから起きる。まずは顧客本位になることが重要だ。 一般の人が暗号資産、仮想通貨と口にしたときに変な目で見られるようではいけない。かつてのように「なんか面白そうだね」と思われるようにしたい。 FTXがグローバルで展開しているサービスや取り扱っている暗号資産のうち、日本に持ってこられる数は(法令上の制約で)当面限定的になる。顧客の期待に応えられるよう、グローバルで伸びているものや支持されているものを少しずつだが着実に、日本の法令に対応しながらローンチしていきたい』、「法令対応や内部管理体制の構築などにリソースを割くことになり、イノベーティブな取り組みが自然と少なくなってしまった。僕の頭の中も9割はガバナンス、コンプライアンス、管理体制の充実で占められた」、「頭の中も9割」が守りにならざるを得なかったのでは、FTXによる合併は賢明な選択だ。「かつてのように「なんか面白そうだね」と思われるようにしたい」、「FTX]グループの一員としての今後に期待したい。
タグ:(その21)(ビットコインに触手を伸ばし始めたウォール街の巨人たち 機関投資家の参入相次ぐ、バイデンが暗号資産関連の大統領令に署名 ビットコインや先物ETFが急騰、暗号資産世界大手がリキッドグループを傘下に 巨大交換所「FTX」が日本上陸 同業買収のその先) 暗号資産(仮想通貨) ダイヤモンド・オンライン 千野剛司氏による「ビットコインに触手を伸ばし始めたウォール街の巨人たち、機関投資家の参入相次ぐ」 米国市場では、どのような変化があったのだろう。 これだけ多くのプレイヤーが取り組みを本格化させたとは、市場は着実に厚みを増しているようだ。 「Twitter創業者のジャック・ドーシー」氏が「人生においてビットコインほど重要なことは何もない」、とは凄い思い入れだ。 「エルサルバドル」では、「ビットコイン価格が下がるたびに押し目買いをして、国として保有するビットコインの保有量を増やしています。こうしたビットコイン投資のリターンは学校建設などを通じて国民に還元されています」、リターンを「学校建設などを通じて国民に還元」とはいいことだ。 「市の職員へのビットコインでの給料支払いの許可を検討」とはいっても、「ビットコイン」は価格が不安定なだけにどういう価格で支払うかは、悩ましい問題だ。 「ニューヨーク市長として最初の3カ月の給与をビットコインで受け取る」のは、自分のことなので問題ない。 「日本」は果たして「目覚める」だろうか。 yahooニュース あたらしい経済「バイデンが暗号資産関連の大統領令に署名、ビットコインや先物ETFが急騰」 米国政府が漸く重い腰を上げたようだ。 「米国が今後何年にもわたってクリプト・・・のリーダーとしての地位を確立するのに役立つでしょう」、米国がこれまで静観していたのは、イノベーションが急速な市場に規制を持ち込むことで、イノベーションを阻害しないようにしていたためとみられているが、イノベーションも一服したと判断したのかも知れない。これで、相場や市場が息を吹き返したようだ。 東洋経済Plus「暗号資産世界大手がリキッドグループを傘下に 巨大交換所「FTX」が日本上陸、同業買収のその先」 「FTXでは、レバレッジ取引でロスカット(強制決済)が生じにくいように証拠金の算定(クロスマージン導入)を工夫したり、マーケットの急変動でシステムがダウンしないよう設計したりしている」、確かに「イノベーティブ」さでは優れているようだ。 「法令対応や内部管理体制の構築などにリソースを割くことになり、イノベーティブな取り組みが自然と少なくなってしまった。僕の頭の中も9割はガバナンス、コンプライアンス、管理体制の充実で占められた」、「頭の中も9割」が守りにならざるを得なかったのでは、FTXによる合併は賢明な選択だ。「かつてのように「なんか面白そうだね」と思われるようにしたい」、「FTX]グループの一員としての今後に期待したい。
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メディア(その30)(大阪府と包括協定を結んだ「読売新聞」ナベツネの特権論、テレビ朝日社長の電撃辞任 現場介入を嫌ったスポーツ局の「クーデター」だった、創業以来最大の赤字:朝日新聞社で今、何が起きているのか) [メディア]

メディアについては、本年1月11日に取上げた。今日は、(その30)(大阪府と包括協定を結んだ「読売新聞」ナベツネの特権論、テレビ朝日社長の電撃辞任 現場介入を嫌ったスポーツ局の「クーデター」だった、創業以来最大の赤字:朝日新聞社で今、何が起きているのか)である。

先ずは、1月31日付け日刊ゲンダイが掲載した評論家の佐高信氏による「大阪府と包括協定を結んだ「読売新聞」ナベツネの特権論」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/300611
・『大阪府と連携して、いよいよ新聞であることをやめた読売新聞が同じく権力べったりの産経新聞を買収するのではないかという噂が流れているらしい。読売に身売りするわけだが、すでに政権に身を売っているのだから、驚くには及ばないのだろう。身を売った者同士の”結婚”である。 「新聞は昭和26年の日刊新聞紙法や、独禁法の特例としての再販制度や、公選法その他いくつかの法規で、その特権が守られています。それは、この国の民主主義を支える原(注:正しくは「言」)論の自由と独立を守るために与えられた特権であって、新聞は特定の人物の私有物であってはなりません。公私混同は許されません。そのことは、現在経営陣にいるわれわれも、鉄則として守られねばならないことです」 これは、何と、読売のドンのナベツネこと渡邉恒雄が2002年の販売店の総会で主張した特権論である。同年7月の『読売新聞社社報』に載っているが、あくまでも新聞であった場合の特権である。しかし、20年経った現在でも渡邉は読売が自分という「特定の人物の私有物」になっているとは考えられないだろう』、大阪府との連携協定については、下記の社告にあるように、「協定が読売新聞の取材活動や報道に影響を及ぼすことは一切なく」、としてはいるが、取材対象との連携協定締結には違和感がある。
https://www.yomiuri.co.jp/local/kansai/news/20211228-OYO1T50000/
「渡邉恒雄が2002年の販売店の総会で主張した特権論」は極めてまともな主張である。
・『内部から反乱を起こした清武英利と私の編著『メディアの破壊者 読売新聞』(七つ森書館)で清武はブラックジョークのようなこ渡邉発言を紹介しつつ、読売の現状を「情けない」と嘆いている。 一番おかしいのは、巨人軍の過去の契約金をめぐる内幕を暴露した2021年3月15日付『朝日新聞』の記事のネタ元が清武であると断定して訴えたことで、何と東京地裁はそれを認めてガサ入れまでおこなわれた。 これはまさに新聞として自殺行為だと言わなければならない。逆に『読売新聞』の記事について情報源を明らかにせよと言われたら、明らかにするということだからである。 大体、新聞は訴えられる側であっても、訴える側ではないだろう。言論で勝負できないから司法権力に助けを求める読売は、その時点で、もう新聞ではなかった。 読売は清武と関わりのあった社員を、清武叩きの尖兵に使って、彼の身辺を調査させた。 これでは定款に興信業とかを加えなければならない』、「巨人軍の過去の契約金をめぐる内幕を暴露した2021年3月15日付『朝日新聞』の記事のネタ元が清武であると断定して訴えたことで、何と東京地裁はそれを認めてガサ入れまでおこなわれた。 これはまさに新聞として自殺行為」、ここまで「読売」がやるとは心底驚かされた。
・『老害のナベツネの顔色をうかがっている意気地のない幹部や記者の背筋は、ドンが退場しても伸びることはない。ドンに抵抗できなかった者たちの背骨は曲がったままになってしまうからだ。 作家の志賀直哉が「老いらくの恋」と騒がれた川田順をモデルに書いた戯曲についての川田への手紙の中に痛烈な読売新聞評がある。 「私は半年程前から読売には一切書かぬといふ宣言をしてゐるので此度読売はあの作品で問題を作り上げようとするだろうと考へ、若しさういふ場合は読売或は読売の一部の記者に対し宣戦してもいいと考へてゐましたが、貴方のよく分った御返事で面倒な事もなく済み、ありがたく思ひました」 そして読売には「平地に波乱を起したがる赤新聞的下等さが濃厚にあります」と酷評している』、「志賀直哉」から「読売には「平地に波乱を起したがる赤新聞的下等さが濃厚にあります」と酷評」された体質は変わってないようだ。

次に、2月11日付けデイリー新潮「テレビ朝日社長の電撃辞任 現場介入を嫌ったスポーツ局の「クーデター」だった」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2022/02111131/?all=1&page=1
・『2月10日夕方に流れたテレビ朝日・亀山慶二社長(63)辞任の一報に、業界は騒然となった。同社は、亀山氏による「会社経費の私的流用」が社内調査で発覚したため、亀山氏自ら辞任を申し出たと文書で発表したが、背景には「亀山氏とスポーツ局との抜き差しならないない対立があった」とテレ朝関係者が明かす』、興味深そうだ。
・『側近中の側近  1週間くらい前から社員たちの間では、“社長がカネの私的流用で吊るし上げられている”と噂になっていたという。一方、「スポーツ局内で亀山社長に対する不満が沸点に達していた」(テレ朝関係者)。 いったい社内で何が起きていたのか。話の核心に入る前に、まずはテレビ朝日の権力構造について確認しておきたい。社員の多くが「うちは天皇制みたいなものです」と自虐的に語る。彼らが言う天皇とは、14年から会長の座にいる早河洋氏(78)のことだ。 「早河会長の権力は今なお絶大で、改編も人事もすべて牛耳っています。例えば、『報道ステーション』の大越健介キャスターの起用なども、早河会長が頷かない限り絶対に実現しません」(同) つまりは、今回の亀山社長更迭も、早河会長のご意向そのものなのである。一方、早河氏と亀山氏は「切っても切れない関係」と言われるくらいの間柄だった。 「営業・編成畑を歩んできた亀山さんは、うちがテレビ東京と同じくらい民放下位に沈んでいた頃、世界水泳やサッカーW杯などのスポーツ関係の独占放映権を次々と獲得して、視聴率向上に大きく貢献した功労者。その頃、役員として亀山さんの仕事をバックアップしていたのが早河さんです。それまで朝日新聞からの天下りポストだった社長職に早河さんが初めて生え抜きとして就任できたのも、亀山さんのおかげと言われています」(同)』、「朝日新聞からの天下りポストだった社長職に早河さんが初めて生え抜きとして就任できたのも、亀山さんのおかげと言われています、「亀山氏」の功績はよほど大きかったようだ。
・『泣いて馬謖を斬った  そんな信頼の置ける腹心を、なぜ早河氏は切らねばならなかったのだろうか。 「泣いて馬謖(ばしょく)を斬ったのでしょう。カネの問題というより、そのくらいスポーツ局の反乱が抑えきれなかったのです」(同) 亀山氏とスポーツ局の対立については、今回テレ朝が公表した文書の中でも触れられている。亀山氏は社長就任後もスポーツ局統括として、毎週、局内の幹部を招集して報告会を開いていたが、「合理的な理由もなくスポーツ局長をこの報告会に参加させないだけでなく、スポーツ局長との日常的な意思疎通も十分に行っていなかったため、スポーツ局内の指揮命令系統の混乱を招き、職場環境を悪化させた」とある。 「要は現場への介入が激しすぎたのです。スポーツ局が苛立っていたのは亀山さんだけでなく、亀山さん子飼いの編成部長。二人でスポーツ局長を飛ばして、キャスティングから演出までいちいち高圧的に口出ししてきたというのです。亀山さんたちからすれば、放映権は自分たちが広告代理店と組んで獲得してきたものという考えなんですが、現場からすれば、彼らは番組作りなど一切経験がないど素人。にもかかわらず細かい演出内容まで指示してきたので、現場側は“やっていられない”と不満が募るばかりでした」(同)』、どうみても「亀山」氏の分が悪そうだ。
・『ブーメラン  より両者の対立を深めたのが、昨年続いたスポーツ局員らによる不祥事だった。五輪閉会式後に、スポーツ局所属の社員らが、打ち上げパーティを行い、一人が大怪我を負った騒動から始まり、翌9月には、非売品の「ドラえもんピンバッジ」を同局所属の2人の社員が親族を通してメルカリで転売していたことも発覚。しまいに12月には、スポーツ局幹部と部下の不倫までもが文春砲によって暴かれた。 「局内の不倫までもが文春へ通報された背景には、局内ガバナンスがめちゃくちゃで、末端の不満が限界に達していたことがあるのです。にもかかわらず、一連の不祥事に亀山さんは、かなり強い姿勢でスポーツ局に徹底調査しろと迫った。それが、ブーメランのように自分の経費不正利用発覚につながってしまったのです。今回明かされた亀山さんの不正利用は、すべてスポーツイベント絡み。クーデターを目論むスポーツ局が、頑張って亀山さんの粗を探したのではないか。番組制作への介入についても、“パワハラ”だとスポーツ局員たく訴えかけたそうです」(同) 発表文によれば、亀山氏はスポーツイベントへの出席・営業活動のためと偽り、会社の費用で国内各地に出張し、業務との関連が認められない会食やゴルフの費用を会社経費として精算していたという。金額は約60万円。 「営業をバリバリやってきた亀山さんからすれば、60万円の私的流用と指摘されても、受け入れ難かったとは思います。ただ、早河さんとしては、もはや亀山さんを切らなければ収拾がつかないと判断したのでしょう」(同) かくして失脚した“天皇”の側近中の側近。今回の人事は、テレ朝の権力構造にどのような影響を及ぼすのだろうか』、「亀山氏はスポーツイベントへの出席・営業活動のためと偽り、会社の費用で国内各地に出張し、業務との関連が認められない会食やゴルフの費用を会社経費として精算していたという。金額は約60万円」、社長の不正支出という割には小粒で、本来は「業務」と見做されるものも混入している可能性もあるのではなかろうか。

第三に、2月16日付けnippon.com「創業以来最大の赤字:朝日新聞社で今、何が起きているのか」を紹介しよう。
・『インターネットの普及で紙媒体の衰退が著しい。中でも新聞業界の苦境は深刻だ。業界の雄として長年君臨してきた朝日新聞社とて例外ではない。2020年度決算では創業以来最大となる大赤字を記録、早期退職者の応募には数多くの社員が応じるなど、かつてない激震が築地本社を襲っている。一体、朝日新聞社の中で何が起きているのか。同社OBがその内幕を明かす』、興味深そうだ。
・『デジタル化の波に乗り遅れた朝日  朝日新聞社に「エー・ダッシュ(A’)」という社内報がある。季刊で発行される60ページほどの冊子だ。新規事業の説明や職場の話題などが紹介されている。2021年の夏号は、新聞の電子版など同社が力を入れるデジタル事業の特集を組んでいるが、時代の波に翻弄(ほんろう)される大手プリントメディアの苦悩や窮状が紙背からじわりとにじみ出す内容になっている。 社内報の冒頭は、新社長が21年6月の株主総会に報告した20年度決算や個別の事業報告についての詳報。同決算は、創業以来最大の458億8700万円の大赤字を出して業界の注目を浴びた。だが総会は議案をすべて可決し無事終了したとある。続いて、「紙の新聞発行だけに頼らない持続可能な会社」に生まれ変わるため、デジタル事業部門をどのように強化するのか、各セクションの担当者が詳しく解説する特集へとつながっていく。 デジタル化の波に乗り遅れた朝日新聞が巻き返しに躍起なのは、社員なら誰もが知っている。それよりも多くの社員の目を引いたのは、社内報の末尾に載っている退職者のひと言コーナーだろう。ふだんは2ページほどなのに、この号は8ページもある。退職した社員たちの顔写真と短いコメントがずらりと並ぶ。数えてみると79人もいた。各人が在職時の思い出や後輩へのメッセージなどを短く書き寄せているが、退職理由は全員「選択定年」。異様なほどのその人数の多さが、まさに社内で進行しつつある危機の大きさを如実に物語る。 社内報の発刊以来、志半ばで社を去る人たちがこれだけたくさん一度にあいさつ文を寄せることはなかった。「大赤字、デジタル化、大量退職」。同じ社内報に収容された3つの話題は、今の朝日新聞が直面する厳しい現実をくっきりと浮き彫りにしている。 実は筆者もこの79人のうちの1人に入っている。長期的な発行部数の低落と大赤字で苦境に陥った朝日新聞は、21年1月、選択定年という名目で希望退職者の募集を始めた。期限は2カ月後の同年3月半ばまで。45歳以上の社員が対象で、目標は「100人以上」と経営部門は説明していた。約4000人の社員のうち、23年度末までに300人以上を削減する予定という。経営部門の幹部は社内向けに何度かオンラインで説明会を開き、具体的な退職金の上積みや退職後の再就職先の斡旋(あっせん)などの条件を提示しつつ、繰り返し早期退職を促した』、「デジタル化の波に乗約4000人の社員のうち、23年度末までに300人以上を削減する予定り遅れ」、「20年度決算」「は、創業以来最大の458億8700万円の大赤字」、というのであれば、「約4000人の社員のうち、23年度末までに300人以上を削減する予定」、というのもやむを得ないだろう。
・『早期退職を選択した社員は100人近い?  筆者が早期退職したのは21年5月末。記者を38年続けた末に、体を壊して激務に耐える自信がなくなったことが主な理由だ。第1回目となるこのたびの早期退職募集に、どのくらい社員が応募したのか。気になっていた矢先だったので、社内報で知った顔ぶれに軽いショックを受けた。79人の多くは編集部門。かつて一緒に仕事をした論説委員が何人かおり、紙面を署名記事で飾ってきたベテラン記者も大勢いた。社内報への寄稿を避けた社員も含めると、辞めたのは100人近いかもしれない。経営が傾かなければ、みんな定年まで勤め上げて円満退職したのではと考えるとやりきれない。 なぜ社員を減らさなければならないのか? 経営部門がオンライン説明会で強調していたのは、おおむね次のような理由だった。≪発行部数の低減とそれに連動する広告収入の落ち込みに歯止めがかからない。新聞社としての経営を維持できず、人事給与制度改革などの構造改革は一刻の猶予もない。何とか聞き入れてほしい≫  ボーナスの4割カット、給与の1割削減、各種手当の廃止、福利厚生の縮小……。経営トップが次々と繰り出す厳しい通告に労働組合は抵抗したものの、ストライキを打つこともなく押し切られた。職場では、特ダネ競争に欠かせない「夜討ち朝駆け」のためのハイヤー使用が一部例外を除いて禁じられ、編集作業を手伝ってくれた多数のアルバイト学生が社内から消えた。出張手当が大幅に削られ、文房具の使用にまで注文が付くようになった。そうした変化の末にやってきたのが、早期退職者の大量募集だ。 とりわけ緊縮経営の打撃が大きいのが、全国紙たるゆえんである、きめ細かい地方取材網が大幅に縮小されたことだ。朝日新聞は47都道府県に漏れなく総局をおき、それぞれ地方版と呼ぶ紙面を作っている。ところが、昨年春から総局の下にある各地の支局を廃止したり、地方記者を削減したりして、47あった総局機能を18のブロックへと集約した。たとえば東北地方であれば青森、岩手、秋田を同じブロックに統合するといった具合に。新人記者の採用数も減り、地方記者の高齢化が進み、1人あたりの業務や負担は格段に増したという。 日ごろからコンテンツ力やブランド力の高さを内外に誇ってきた新聞社だからこそ、本来なら、本体の新聞発行事業を立て直し、さらに読まれる新聞をめざすべきではないか。ところが、そんな理想論が通用しないほど事態は深刻だった。創刊142年目にして朝日は新聞社の屋台骨とも言える「ひと」のリストラに踏み切り、経営失敗の責任を取って前任の社長が退いた』、「「ひと」のリストラに踏み切り」、のが余りに遅すぎたようだ。
・『凋落著しい新聞業界  確かに数字で見る新聞業界の凋落(ちょうらく)ぶりは目を覆いたくなるほどだ。日本新聞協会によると、新聞(一般紙)全体の発行部数は1990年代半ばの約5300万部をピークに年々下がり、21年末には約3000万部にまで落ち込んだ。20年ちょっとで、およそ2000万部が減った計算になる。筆者が途中入社で朝日新聞に入った1990年、同社は公称800万部以上と喧伝していた。 潮流は大きく変わった。朝日新聞の部数は2015年に700万部近くに、18年には600万部を割り込んだ。下落ペースは対前年比で、中堅地方紙の総発行部数に匹敵する40万部前後にも及ぶ。その後もつるべ落としのように、21年9月には500万部を割って468万部となった。 こうした急速な読者離れに伴って、朝日の業績もすさまじい勢いで悪化した。ここ10年間の売上高の推移を有価証券報告書で見てみた。最も高かったのは12年3月期の4762億円(年度決算ベース、連結売上高)。ところが10年後の21年3月期は2938億円と、およそ4割も減っている。連結売上高が4000億円台を維持していたのは16年まで。20年3月期の3536億円から翌21年3月期には2938億円へと、1年で一気に600億円も売上高が激減した。この急激な落ち込みは、おそらく長期的な読者離れに加え、コロナ禍の拡大が災いしたのではと推測できるが、こうした数字の激変ぶりを見て、ようやく筆者は勤め先の深刻な困窮が理解できるようになった。 むろん、じり貧は朝日だけの問題ではない。他の全国紙も地方紙も等しく同じ問題を抱えて苦しんでいる。規模は違えども、どの新聞社でも賃下げや早期退職が横行している。電波媒体のテレビ各局も似たような試練にさらされている。なぜ既存メディアは時代の変化に適応できなかったのか。指摘されている要因は、スマホの普及と既存メディアのネット環境への乗り遅れだ』、「スマホの普及」は時代の流れだとしても、「既存メディアのネット環境への乗り遅れ」は大きな問題だ。
・『スマホの普及と軌を一にする部数減  筆者は2010年代に入ってスマホが若者を中心に普及し始めると、通勤電車内で新聞を読む乗客の姿がみるみると減っていったのを鮮明に覚えている。総務省の統計によると、16年には20代、30代の若者の90%がスマホを持っていたと報告されている。朝日新聞が「asahi.com(アサヒ・コム)《現・デジタル朝日》」を開設し、インターネットでニュース速報などを流し始めたのは1995年。以来、自前のウェブサイトを通じて無料でニュースを配信してきた。 ところが購読者数が減少するのと反対に、ウェブのページビューは急増することに。それを知ってようやくニュースの有料サービスを並行して始めたものの、ネット利用者の間にはすでに「ニュースはタダ」という先入観が根付いてしまっていた。かくしてスマホで「タダのニュース」を見る読者が爆発的に拡大し、新聞離れに拍車をかける要因になった。 加えて、新聞各社はそれぞれ自前のネットサイトだけでニュースを配信し、新聞業界が一体となって独自のポータルサイトを創設することができなかった。あるいは試みたものの失敗した。これも敗因の一つに挙げられよう。その結果、記事にひもづく広告を巨大ニュースプラットホームの「Yahoo!ニュース」などのニュースポータルに奪われてしまい、ネットニュースの配信からほとんど収益を得ることができなくなって現在に至る。このあたりの事情や経緯は、ノンフィクション作家下山進氏の著書『2050年のメディア』(文藝春秋)に詳しい。 日本の紙媒体がデジタルシフトを始めたのは1990年代後半。まず日経新聞が有料の電子新聞に取り組み始め、それを朝日新聞など他紙が追った。しかしダントツで成功しているニューヨークタイムズなど米国メディアに比べると出遅れ感が強く、コンテンツも見劣りすると専門家らは指摘する。デジタル化を収益の向上につなげるためには、やはり読者がお金を払ってでも読みたいと思う優れたコンテンツを作る仕組みが必要になる。少なくとも日経電子版は収益化に成功しているが、他社は多くの資源を投資している割に成功していないのが実情だ』、「ニューヨークタイムズなど米国メディアに比べると出遅れ感が強く、コンテンツも見劣りすると専門家らは指摘」、もう少し具体的な分析が欲しいところだ。
・『窮余の一策は購読料の値上げ  かくして朝日新聞は窮余の一策として21年7月、27年ぶりに購読料の値上げに踏み切った。1カ月前の同6月に紙面に載った社告では、インターネットの普及で新聞事業が圧迫を受けていること、製作コストが増していることなどを挙げ、「ネット上にフェイクニュースが飛び交う今、新聞の役割は増している」と理解を求めた。しかし景気低迷のさなかの唐突な値上げを読者がどうとらえたかは、いずれ購読者数の変化で明らかになるだろう。 値上げによって、収益の下落は一時的に収まった。21年11月末に発表した21年度9月中間連結決算は、売上高が前年同期比で下がったものの、営業利益は値上げのおかげもあって31億円の黒字に転じた(前年同期は約93億の赤字)。しかし、社内では「現在の減紙率でいけば黒字が続くのは長くて2、3年」とささやかれている。いずれにせよ大胆な経営改革を敢行することなしにこの難局を乗り切ることはできない。 ▽デジタルシフトの成否(朝日新聞は目下、デジタルシフトに起死回生の望みを託し業績回復に躍起になっている。モデルは、デジタル版の飛躍的な伸びで成功を収めたニューヨークタイムズ(NYT)など米国の先行組のメディアだ。実はリーマンショックのあおりで、10年前のNYTは事業継続が危ぶまれるほどの苦境にあった。最初に取った対応は社員のリストラだった。2009年から12年にかけて編集部門の100人以上が希望退職で職場を去った。人件費が占める割合の大きなメディア経営ではやむを得ない選択だったのかもしれない。 だが根本的に窮地を救ったのは、最高経営責任者(CEO)による大胆な変革だった。英国BBC放送会長から同紙CEOに転じたマーク・トンプソン氏は、徹底したデジタル化の陣頭指揮を取りデジタル部門に多額の経営資源を集中させた。トランプ政権やコロナ危機、セクハラ問題など社会の関心が高いテーマを、優秀な記者たちが次々と調査報道の手法で掘り下げ、読み応えのあるコンテンツに仕立てて発信。着実に購読者を増やし、有料版の読者数は昨年、1000万を突破し業績のV字回復へとつながった。 朝日は同じ道をたどれるか。今のところ、人減らしに加え、デジタル化も順調とは言えないようだ。社内にはバーティカルメディアと呼ばれる領域を絞った無料ニュースが乱立し、肝心の有料コンテンツが埋没しているように見える。 「質の高い報道」と「安定した経営」は互いに矛盾するものではない。米国でも日本でも、プリントメディアが生き残るカギが「有料デジタル版をどうしたらとってもらえるか」(下山進著『2050年のジャーナリスト』毎日新聞出版)にあるのは間違いない。有料であっても読者が飛び付きたくなるような報道とは何か。とことん考え抜いて結論を出せるかどうかに朝日新聞社の再生はかかっている』、デジタル化で成功したニューヨークタイムズなどの事例を徹底的に研究することから始めるべきだろう。
タグ:デイリー新潮「テレビ朝日社長の電撃辞任 現場介入を嫌ったスポーツ局の「クーデター」だった」 「志賀直哉」から「読売には「平地に波乱を起したがる赤新聞的下等さが濃厚にあります」と酷評」された体質は変わってないようだ。 「巨人軍の過去の契約金をめぐる内幕を暴露した2021年3月15日付『朝日新聞』の記事のネタ元が清武であると断定して訴えたことで、何と東京地裁はそれを認めてガサ入れまでおこなわれた。 これはまさに新聞として自殺行為」、ここまで「読売」がやるとは心底驚かされた。 「渡邉恒雄が2002年の販売店の総会で主張した特権論」は極めてまともな主張である。 大阪府との連携協定については、下記の社告にあるように、「協定が読売新聞の取材活動や報道に影響を及ぼすことは一切なく」、としてはいるが、取材対象との連携協定締結には違和感がある。 https://www.yomiuri.co.jp/local/kansai/news/20211228-OYO1T50000/ 佐高信氏による「大阪府と包括協定を結んだ「読売新聞」ナベツネの特権論」 日刊ゲンダイ メディア (その30)(大阪府と包括協定を結んだ「読売新聞」ナベツネの特権論、テレビ朝日社長の電撃辞任 現場介入を嫌ったスポーツ局の「クーデター」だった、創業以来最大の赤字:朝日新聞社で今、何が起きているのか) 「朝日新聞からの天下りポストだった社長職に早河さんが初めて生え抜きとして就任できたのも、亀山さんのおかげと言われています、「亀山氏」の功績はよほど大きかったようだ。 どうみても「亀山」氏の分が悪そうだ。 「亀山氏はスポーツイベントへの出席・営業活動のためと偽り、会社の費用で国内各地に出張し、業務との関連が認められない会食やゴルフの費用を会社経費として精算していたという。金額は約60万円」、社長の不正支出という割には小粒で、本来は「業務」と見做されるものも混入している可能性もあるのではなかろうか。 nippon.com「創業以来最大の赤字:朝日新聞社で今、何が起きているのか」 「デジタル化の波に乗約4000人の社員のうち、23年度末までに300人以上を削減する予定り遅れ」、「20年度決算」「は、創業以来最大の458億8700万円の大赤字」、というのであれば、「約4000人の社員のうち、23年度末までに300人以上を削減する予定」、というのもやむを得ないだろう。 「「ひと」のリストラに踏み切り」、のが余りに遅すぎたようだ。 「スマホの普及」は時代の流れだとしても、「既存メディアのネット環境への乗り遅れ」は大きな問題だ 「ニューヨークタイムズなど米国メディアに比べると出遅れ感が強く、コンテンツも見劣りすると専門家らは指摘」、もう少し具体的な分析が欲しいところだ。 デジタル化で成功したニューヨークタイムズなどの事例を徹底的に研究することから始めるべきだろう。
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政府財政問題(その7)(日本の問題をはき違えている「財務省」の大きな罪、政界で高まるMMT待望論 自民党内で二派に分裂する財政問題、年金受給者への「臨時給付金5000円案」に隠された、政府の甘くて怖い罠) [経済政策]

政府財政問題については、本年1月12日に取上げた。今日は、(その7)(日本の問題をはき違えている「財務省」の大きな罪、政界で高まるMMT待望論 自民党内で二派に分裂する財政問題、年金受給者への「臨時給付金5000円案」に隠された、政府の甘くて怖い罠)である。

先ずは、1月11日付け東洋経済オンラインが掲載した 東洋経済 特約記者(在ニューヨーク)のリチャード・カッツ 氏による「日本の問題をはき違えている「財務省」の大きな罪」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/500817
・『日本の財政赤字は「氷山に向かうタイタニック号」のようなものだという矢野康治財務事務次官の発言で唯一新鮮だったのは、選挙で選ばれた政府の政策を、水面下での会話ではなく、影響力のある『文藝春秋』誌上で厳しく批判したことだ。 約半世紀前、1978年から財務省は政府が抜本的な歳出削減と増税をしない限り「日本は崩壊ししかねない」と、首相を脅し続けて自分たちのいいなりにしようとしてきた。最近は国債市場の暴落を”ネタ”にしている。財務官僚たちは影で、首相を次々と「犠牲」にすることで消費増税を繰り返せると影でジョークを言っているほどだ』、「財務官僚たち」の思い上がった姿勢には腹が立つ。
・『かたくなに主張を改めようとしなかった  仮に財務省の警告が正しければ、それは国益のためだったと言えるだろう。しかし現実には、財務省は何度も間違ってきたし、かたくなに主張を改めようとしなかった。公平のために言うと、確かに財務省の見解は多くの高名なエコノミストの間でも共有されている。2012年にはエコノミスト2人が、財政緊縮策を実施しなければ、2020年から2023年までの間に国債の暴落が起こると予測していた。 1990年代半ば、財務省は橋本龍太郎首相を説得して消費税を3%から5%に引き上げさせた。引き上げ幅は健全な経済状態では問題にならないほど小さかったが、不良債権の肥大化により日本の体力が低下しているというアメリカ政府の指摘が無視されていた。 案の定、1997年4月の増税により、日本経済は深刻な不況に陥り、銀行危機はさらに拡大し、不況はさらに深刻化した。1998年3月、ロバート・ルービン財務長官が宮沢喜一蔵相との私的な会談で3%への引き下げを求めたところ、加藤紘一自民党幹事長が怒りを露わにした。「消費税導入のためにどれだけの首相が犠牲になったか……この発言は非常に不愉快だ」。 その数カ月後、参議院選挙で自民党が予想外の敗北を喫し、橋本首相は辞任せざるをえなくなり、犠牲者に名を連ねた。財務省もまた、予算と銀行債務に関する失敗で罰せられた。野党が参議院を制していたため、政府は野党の銀行救済への同意を得るために、銀行問題に関する財務省の介入を廃止することを黙認しなければならなかったのである。 そして、2010年には菅直人首相率いる民主党政権が誕生した。民主党政権を揺るぎないものにするには、夏の参議院選挙に勝てばよかった。しかし、財務省は菅首相に対し、消費税の再増税を実施しなければ、当時のヨーロッパのような債務危機に陥る可能性があると説得していた。 実際には、ヨーロッパで資本逃避に見舞われたのは、国内の政府債務と多額の対外債務を併せ持つ「双子の赤字」の国だけだった。日本のように、国内債務は多いが対外債務は少なく、むしろ黒字の国には、危機は訪れなかったのである。 それにもかかわらず、財務省の脅し文句に乗せられて、菅首相は増税を選挙の目玉にしてしまった。これでは民主党が負けるのも無理はない。そして2012年、衆議院選挙の数カ月前に、菅氏の民主党の後継者は、2015年までに消費税を10%に倍増させる法律を可決した。 当然のことながら、民主党は大敗し、自民党が政権に返り咲いたのである。2014年の第1段階の増税後に経済が落ち込むと、安倍晋三首相は財務省に反抗して第2段階の増税を数年遅らせた』、「1998年3月、ロバート・ルービン財務長官が宮沢喜一蔵相との私的な会談で3%への引き下げを求めたところ、加藤紘一自民党幹事長が怒りを露わにした」、初めて知ったが、「ルービン」の方が日本経済を的確に分析していたようだ。「財務省の脅し文句に乗せられて、菅首相は増税を選挙の目玉にしてしまった。これでは民主党が負けるのも無理はない」、「菅首相」の増税派への突然の変心には驚かされると同時に、失望した。
・『元首相以外の財務省の「犠牲者」  財務省の間違ったアドバイスによる他の犠牲者は、日本国債の価格暴落に何度も賭けて、何度も大きな損失を出した投資家たちである。大損をする投資は「ウィドウ・メーカー」と呼ばれるが、日本国債の暴落に"賭ける"ことは、この時代の最大のウィドウ・メーカーの1つである。 景気後退を避けるために繰り返される財政出動に経済が過度に依存するようになると、財務省は思うような財政緊縮ができなくなった。それでも、多くの人が思っている以上に歳出削減は特に高齢者にとって厳しいものだった。 財務省は、今のままでは高齢化が進むにつれ、社会保障費や医療費などの支出がGDPに占める割合が大きくなっていくと主張している。しかし、数字のうえではそうではない。高齢者への支出はたしかに増加し、2013年には対GDP比12.5%でピークに達した。だがその後、これは横ばいになり、2019年には12.4%になっている。) これはどのようにして起こったのか。プリンストン大学経済学部のマーク・バンバ教授と、コロンビア大学経済学部のデビッド・ワインスタイン教授による指摘どおり、高齢者の数が増えたにもかかわらず、財務省は高齢者1人当たりの支出を大幅に削減することを推し進めた。結果、高齢者1人当たりの社会保障費は、1996年のピーク時には192万円だったのが、2019年には149万円と約20%減少している。 【追記:13時52分】初出時に翻訳上の間違いがあったため、表記の通り訂正いたします。 医療費はどうか。1999年のピーク時には高齢者1人当たり52万円だったのが、2019年には44万円とこちらも、15%削減された。 これらの削減は、65歳以上の1人暮らしの女性の貧困率が50%近くにまで上昇した理由の1つだ。また、2018年には、主に3000円相当の万引きの疑いで4万5000人の高齢者が逮捕されており(1989年は7000人だった)、多くは収監されないが、刑務所に入る人の3分の1以上は60歳以上が占めている(1960年には全体の5%だった)。多くは1年ほど刑務所で過ごした後、解放されるが、その後同じ罪で再び刑務所に戻る。刑務所には温かいご飯、ベッド、医療があって、仲間がいるからだ』、「2018年には、主に3000円相当の万引きの疑いで4万5000人の高齢者が逮捕されており(1989年は7000人だった)・・・刑務所に入る人の3分の1以上は60歳以上が占めている(1960年には全体の5%だった)」、「高齢者」の収監者増加は深刻だ。
・『教育や保育への支出が削減される  こうした削減が続くと、GDPに占める高齢者向け支出の割合が実際には減少する可能性がある。それは、高齢者の増加が横ばいになっているからだ。 1994年から2019年にかけて、高齢者の数は1760万人から3550万人へと倍増している。が、公式予測では、今後は非常に緩やかなペースで増加する見通しで、2030年には3720万人にとどまり、2043年には3940万人でピークに達した後、再び減少に転じるという。さらに、バンバ教授とワインスタイン教授が指摘するように、高齢者の増加は若年層の大幅な減少によって相殺され、これは教育や保育への支出減につながる。 だが、こうした事実があってもなお、財務省は同じ主張を繰り返している。財務省は2021年度版『日本の財政関係資料』の中で、IMFの調査結果を援用しているが、その内容は次のようなものだった。 「マクロ財政見通しに高齢化に伴う歳出増を織り込み、継続的に評価することは重要。スタッフによるシナリオは、高齢化に伴う歳出増を賄うためには、消費税率を段階的に2030年までに15%、2050年までに20%に引き上げる必要があると示唆(OECD平均の19%と比較して)。(中略)年金、医療、介護支出の主たる変化がなければ、財政の持続可能性は手の届かないものであり続ける可能性」) こうした状況に対し、財務省はシンプルで、一見もっともらしい答えを出している。肥大化を続ける債務残高(対GDP比)を見よ。これが永遠に続くはずがない。強力な対策を講じなければ、ある日突然、投資家が一斉に日本国債を売却するのは避けられないだろう、と。 問題は、財務省が言及しているのは「総」債務残高であり、確かに1990年にはGDPの70%だったものが、2020年には237%にまで増加している(主に日本国債)。しかし、この数字には、ある政府機関が別の政府機関に対して負っている債務が含まれているため、意味がない。日本銀行のような政府機関が日本国債を捨てる兆しもない。 重要なのは「純」債務残高、つまり民間投資家に対して負っている債務であり、2013年に黒田東彦氏が日銀総裁に就任して以来、実際には縮小している。デフレ対策の名目で、日銀は日本国債を大量に購入した。 デフレ脱却の音頭のもと、日銀は国債の約半分、GDPの94%に相当する額を購入した。これは、2012年から18%の増加だ。一方で、個人投資家などを中心とする日銀以外の者が保有する日本国債は、2012年にはGDPの145%だったのが、現在は103%にまで落ち込んでいる。 加えて、国債危機の真の引き金となるのは、債務残高そのものではない。政府が利子を払えなくなったときに起こるのだ。日本にはそのような問題はない。2021年には、日銀がマイナス金利政策を実施したため、利払いはGDPのわずか0.4%にまで減少した。個人投資家への負債額と利払い額の両方が今よりはるかに大きかったときには日本は危機に陥らなかったのに、なぜ今になって危機に陥るというのか』、それは「日銀」が国債購入の形で膨大な財政ファイナンスをしているからだ。それが続く限りは大丈夫だが・・・。
・『「低金利は永遠に続かない」は本当か  財務省の答えはこうだ。低金利は永遠には続かない。危機が訪れるのは、必然的に金利が上昇したときである、と。これももっともらしく聞こえるが、日本の過去に即していない。日銀は自由にインフレを起こせないことを証明したが、これまで四半世紀以上にわたって行ってきたように、超低金利を維持することはできる。 日本は世界から借金する必要がないので、金利をコントロールすることができる。はたして、日銀は、必要に応じて市中に資金を流し続ける代わりに、わざわざ金融の大混乱を招くだろうか?) もちろん、日本の慢性的な赤字は悪影響を及ぼす。しかし、その所産は日本国債の暴落ではなく、経済のゆっくりとした腐食が続くことである。診断が違えば、処方箋も大きく異なってくる。 第1に、財政赤字そのものは日本経済の不調の原因ではなく、むしろ民間需要の弱さを示す症状である。そのため、第一に優先すべきは、実質賃金の低迷や企業の資金繰りなど、需要低迷の根本原因を解決することだ。 第2に、課税ベースを拡大するために、税や支出などの政策の足並みを成長とそろえる必要がある。国によっては消費税課税が適切だが、日本はそのような国ではない。なぜなら、ただでさえ弱い消費者の需要をさらに弱めてしまうからだ。 ほかにより適した税目がある。支出面では、河川敷を舗装したり、ゾンビ企業に信用保証を提供したりすることは、成長を阻害するだけでなく、税金が無駄遣いされるだけだと国民にあらゆる増税に対する不信感を抱かせる』、「日銀は自由にインフレを起こせないことを証明したが、これまで四半世紀以上にわたって行ってきたように、超低金利を維持することはできる」、国債利回りは海外の影響も受けるので、日銀は最後の手段として購入価格を指定する「指値オペ」という異常な手段で管理するようになった。
・『超金利が長引く意味  最後に、慢性的な赤字は、日銀に超低金利政策を維持するよう、さらなる圧力をかける。今は必要があるが、際限なく長引かせれば経済基盤を弱体化させる。例えば現在、銀行融資の36%が0.5%未満、17%が0.25%未満の金利である。このような無視できるほどわずかな金利が、ゾンビ企業の事業を継続し、他の健全な企業に打撃を与え、結果としてGDP成長率の足を引っ張ることになるのだ。 かつて、高齢者における収入の大部分は預金金利が占めていた。今は違う。1000万円を1~2年の定期預金に預けると、利息はわずか1000円で、チェーン店でカプチーノを2杯飲むのがやっとだ。退職者の家計支出の40%が貯蓄の取り崩しによるものだというのもうなずける。多くの人は、寿命を迎える前に貯金を使い果たしてしまうだろう。 成長率の向上だけで政府債務の対GDP比が安定するわけではないが、問題ははるかに管理しやすくなる。一方で、構造改革を伴わない増税や歳出削減は、成長を妨げることになるだけた』、欧米の長短金利が上昇、これを日本では日銀が強引にゼロに抑えようとしても、長期金利の抑制には苦労する筈だ。

次に、3月12日付け日刊ゲンダイが掲載した金融ジャーナリストの小林佳樹氏による「政界で高まるMMT待望論 自民党内で二派に分裂する財政問題」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/302420
・『岸田文雄首相は昨年10月の参院本会議で、日銀保有国債の一部永久国債化や教育国債の発行について、安定財源や財政の信認確保の観点から「慎重に検討する必要がある」と距離を置いた発言を行った。国民民主党の大塚耕平氏の質問に答えたもので、同党は日銀保有国債の一部永久国債化や教育国債の発行を公約としている。 永久国債化は名称の通り、国債を永久に償還せずに利払いのみにとどめるもので、天文学的な残高に達した日本国債の値崩れを回避しつつ発行を続けられる有効な方策との見方がある。しかし、その一方で「国債を無制限に発行するための禁じ手」(市場関係者)と批判する声は根強い。 そうした国債を無制限に発行しても大丈夫だとする理論の基本になっているのがMMT(現代貨幣理論)だ。そのMMT待望論がいま、政界で急速に高まっている。) MMTは「自国通貨を発行している国では財政赤字を拡大しても、インフレを招かない限りいくらでも発行でき、デフォルトは起きない」という考え方で、安倍晋三元首相や高市早苗政調会長らが参加する自民党の「財政政策検討本部」はその急先鋒だ。本部長には西田昌司参議院議員が就いている』、「MMT」については、前回、1月12日付けブログで詳細に取上げた。
・『分裂する自民  一方で自民党内には額賀福志郎氏が本部長を務める「財政健全化推進本部」も立ち上がっている。「財政健全化推進本部のバックには国債の際限なき発行に危機感を強める財務省がいる。次期財務次官と目されている茶谷栄治主計局長が自民党の有力議員に働きかけて設置してもらったと聞いている」(中央官庁幹部)という。設立会合には、岸田首相も駆け付けている。自民党内には2つの財政問題に対する検討会が併存しているわけだ。) 自民党内で二派に分かれた財政問題だが、財政健全化路線を堅持したい財務省と、自民党有力議員を中心に高まるMMT待望論がどういった折り合いをつけるのか。 いずれにしてもコロナ禍で大盤振る舞いした財政の穴埋めをはじめ、危機的な状況に立たされている日本の財政赤字への対応は避けて通れない問題だ』、「MMT派」には、「安倍晋三元首相や高市早苗政調会長ら」がいるだけに強力だが、「財政健全化派」には「財務省」、「岸田首相」も支援するなど、これに劣らず強力だ。

第三に、3月18日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「年金受給者への「臨時給付金5000円案」に隠された、政府の甘くて怖い罠」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/299419
・『年金受給者への臨時給付金の思惑は 「選挙前の人気取り」とは言い切れない  2022年3月15日、自民・公明の与党幹部は約4000万人の年金受給者らを対象に臨時給付金を配る案をまとめ、岸田文雄首相に実施を提言しました。一人あたり5000円の給付案が浮上しているといいます。 新型コロナの影響で、我が国全体の賃金が低下しました。公的年金の支給額は賃金と連動して下がるために、22年度は引き下げが決まっています。5000円はそれを補うための支援策ですが、生活に困っているのは賃金をもらう現役世代の労働者も同じはずです。 今年6月には参議院選挙が公示される中で、高齢者全員に給付金をばらまくのは露骨な選挙対策だという批判も上がっています。確かに、年代別に与党の支持率を確認すると、50〜60代と比べて70代は若干高いので一見、そう見えるのはその通りなのですが、実はこの話、それだけの単純な話ではありません。ちょっと怖い話です。 “朝三暮四(ちょうさんぼし)”という言葉をご存じでしょうか。中国の春秋戦国時代、諸子百家の一人「列士」が伝える寓話(ぐうわ)です。ちなみに、この話のように人をサルにたとえるのは現在のコンプライアンス上はいささか問題があるのですが、ここは故事成語の語源ということでご容赦いただきたい。それはこういう話です。 宋に狙公(そこう)という人がおりました。彼は近所のサルにエサとしてドングリを与えていたのですが、だんだん生活が困窮してきたため、エサの数を減らすことを決めました。 サルたちに「ドングリを与えるのを、朝に三つ夕方に四つへ減らそうと思う」と伝えると、サルたちは立ち上がって怒ります。そこで考えた狙公は、「それではドングリを、朝に四つ夕方に三つ与えるとしよう」と伝えると、サルたちは喜んだという寓話です。 これが“朝三暮四”です。結局総数で見ると同じ七つなのに、「朝に四つもらえる」というような目先の利益にだまされる人間の愚かさを戒めた寓話です。実は、この“朝三暮四”、行動経済学的にはなぜか意外と有効であることが知られています』、「今年6月には参議院選挙が公示される中で、高齢者全員に給付金をばらまくのは露骨な選挙対策だという批判」、「この“朝三暮四”、行動経済学的にはなぜか意外と有効であることが知られています」、どういうことなのだろう。
・『身近に潜む「朝三暮四」の甘いワナ 行動経済学でも説明がつく  身内で最近こんなことがありました。高齢の家族が、携帯電話の料金を見直してほしいというのです。以前聞いていた話では月3500円ぐらいのプランだと言っていたのですが、実際に見てみたら毎月5800円払っています。 それで一緒に販売店に行って、格安プランの携帯会社に転入することにしました。帰り道に、 「ずいぶん安くなったねえ。月990円だなんて」と喜んでいるので、 「違うよ。初年度はそうだけど、来年からは毎月2090円だからね」 と教えておきました。同じ説明を聞いていても最初に説明してもらった初年度割引の数字しか頭に入っていなかったようです。 以前のプランもどうやら初年度3500円、2年目が4500円で3年目以降が5800円になる契約で、高くなった携帯料金をもう何年も支払っていた。まさに“朝三暮四”の仕組みなのですが、初年度割引に消費者は弱いのです』、「初年度割引に消費者は弱いのです」、確かにその通りだ。
・『ガソリン価格高騰による家計圧迫も政府の「朝三暮四」と関連あり  政府の政策にも、このような“朝三暮四”の仕組みがあります。今、ガソリン価格の高騰で話題になっている「トリガー条項凍結」もその一つです。 もともとガソリン税には、原油価格が高騰したときにはガソリン税の上乗せ分を取らないというトリガー条項が存在していました。これを、東日本大震災をきっかけに凍結したのが「トリガー条項凍結」です。 当時決めた仕組みは、こういうことです。 「震災復旧・復興のために、これからたくさんお金を使います。その代わりの財源として、将来ガソリン代が上がったときに取らない予定だったガソリン税は取りますからね」 国会でそう決めたところ、当時の国民は喜んで賛成したのです。ところが、コロナ禍やウクライナ情勢の影響で原油高が進んでもガソリン税を支払わなければならなくなった。つまり、今になってガソリン代が下がらないことがと、立ち上がって怒り出すわけです。 そして、ここからが怖い話なのですが、国民が受け取る年金にも“朝三暮四”の仕組みがインストールされています』、「国民が受け取る年金にも“朝三暮四”の仕組みがインストールされています」、どういうことだろう。
・日本の年金制度にインストールされている“朝三暮四”の怖い仕組みとは  それが、年金の「マクロ経済スライド条項」というものです。 年金の受給額は、賃金が下がると連動して減少します。これが冒頭にお話ししたことで、コロナ禍で賃金が下がっていることを踏まえて、2022年度は2年連続で年金受給額は下がることが決まっています。 ところが、年金の「マクロ経済スライド条項」ではインフレ時は物価が上がっても、受給額は物価と同じように上がるわけではないことが決められています。これを「スライド調整率」といいます。 つまり、仮に物価が2%上がったとしても、年金受給額が同様に2%上がることはない。年金受給額は、物価の上昇率(2%)から、「スライド調整率」を差し引いた分しか上がらないことが法律で決まっているのです。 もともとこの条項は、将来インフレになったときに社会保障財政が破綻しないように決められました。これまでは、日本経済はデフレが続いていたので問題になることはありませんでした。ところが、2023年はインフレが進み、年金受給額に対して、いよいよこの「スライド調整率」が発動されそうなのです。 なにしろ生産者物価指数は、昨年12月、今年の1月と2カ月続けて約8%も上昇しています。小麦、トウモロコシの国際価格上昇で、パスタやパン、サラダオイルなど食料品の値上げラッシュが予定されています。原油価格が上昇し、ガソリンだけでなくプラスチック製品の価格も高くなっているのに加えて、足元では1ドル=118円と大幅な円安が進行しています。海外から輸入した商品で成り立つのが我が国の経済ですから、今年の消費者物価指数は大幅なインフレになることが確定的です。 物価が上昇することで、年金生活者は今年後半ぐらいから生活が苦しくなるでしょう。来年度になると、ようやくそこから年金受給額が引き上げられるのですが、「その引き上げ幅は、物価上昇よりも低い」と決められている。つまり、“朝三暮四”でいう“暮四”が“暮三”に減ることが既に法律で決められているのですが、多くの年金受給者はそれを知りません。 そこで、冒頭のニュースです。年金受給者の生活が困窮するといけないので選挙前に5000円を支給すべきだと言う政策が浮上した。これはあえてざっくり言うのであれば、「“朝三”を“朝四”に増やそう」という政策提言です。 有権者はこの政策に対して喜んで選挙に臨むのでしょうか、それとも怒りに立ち上がって選挙に臨むのでしょうか? 行動経済学によれば人類はだいたい前者だといわれていますが、日本人はどうでしょう』、やはり「行動経済学」の勝利になるのではなかろうか。
タグ:政府財政問題 (その7)(日本の問題をはき違えている「財務省」の大きな罪、政界で高まるMMT待望論 自民党内で二派に分裂する財政問題、年金受給者への「臨時給付金5000円案」に隠された、政府の甘くて怖い罠) 東洋経済オンライン リチャード・カッツ 氏による「日本の問題をはき違えている「財務省」の大きな罪」 「財務官僚たち」の思い上がった姿勢には腹が立つ。 「1998年3月、ロバート・ルービン財務長官が宮沢喜一蔵相との私的な会談で3%への引き下げを求めたところ、加藤紘一自民党幹事長が怒りを露わにした」、初めて知ったが、「ルービン」の方が日本経済を的確に分析していたようだ。 「財務省の脅し文句に乗せられて、菅首相は増税を選挙の目玉にしてしまった。これでは民主党が負けるのも無理はない」、「菅首相」の増税派への突然の変心には驚かされると同時に、失望した。 「2018年には、主に3000円相当の万引きの疑いで4万5000人の高齢者が逮捕されており(1989年は7000人だった)・・・刑務所に入る人の3分の1以上は60歳以上が占めている(1960年には全体の5%だった)」、「高齢者」の収監者増加は深刻だ。 それは「日銀」が国債購入の形で膨大な財政ファイナンスをしているからだ。それが続く限りは大丈夫だが・・・。 「日銀は自由にインフレを起こせないことを証明したが、これまで四半世紀以上にわたって行ってきたように、超低金利を維持することはできる」、国債利回りは海外の影響も受けるので、日銀は最後の手段として購入価格を指定する「指値オペ」という異常な手段で管理するようになった。 欧米の長短金利が上昇、これを日本では日銀が強引にゼロに抑えようとしても、長期金利の抑制には苦労する筈だ。 日刊ゲンダイ 小林佳樹氏による「政界で高まるMMT待望論 自民党内で二派に分裂する財政問題」 「MMT」については、前回、1月12日付けブログで詳細に取上げた。 「MMT派」には、「安倍晋三元首相や高市早苗政調会長ら」がいるだけに強力だが、「財政健全化派」には「財務省」、「岸田首相」も支援するなど、これに劣らず強力だ。 ダイヤモンド・オンライン 鈴木貴博氏による「年金受給者への「臨時給付金5000円案」に隠された、政府の甘くて怖い罠」 「今年6月には参議院選挙が公示される中で、高齢者全員に給付金をばらまくのは露骨な選挙対策だという批判」、「この“朝三暮四”、行動経済学的にはなぜか意外と有効であることが知られています」、どういうことなのだろう。 「初年度割引に消費者は弱いのです」、確かにその通りだ。 「国民が受け取る年金にも“朝三暮四”の仕組みがインストールされています」、どういうことだろう。 やはり「行動経済学」の勝利になるのではなかろうか。
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働き方改革(その37)(「竹中平蔵氏のせいなのか」ボーナスも退職金もダダ下がり…正社員の待遇悪化"真の黒幕" 良くも悪くもトヨタ自動車の影響大、ジョブ型雇用になれば 社員は「3つの階級」に分断される、日本企業の給与が安い原因は 昔ながらの日本型雇用にあり) [経済政策]

働き方改革については、2月5日に取上げた。今日は、(その37)(「竹中平蔵氏のせいなのか」ボーナスも退職金もダダ下がり…正社員の待遇悪化"真の黒幕" 良くも悪くもトヨタ自動車の影響大、ジョブ型雇用になれば 社員は「3つの階級」に分断される、日本企業の給与が安い原因は 昔ながらの日本型雇用にあり)である。

先ずは、2月16日付けPRESIDENT Onlineが掲載した人事ジャーナリストの溝上 憲文氏による「「竹中平蔵氏のせいなのか」ボーナスも退職金もダダ下がり…正社員の待遇悪化"真の黒幕" 良くも悪くもトヨタ自動車の影響大」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/54703
・『正社員の待遇が悪化の一途だ。なぜ“特権”が消えつつあるのか。人事ジャーナリストの溝上憲文さんは「元凶はバブル経済崩壊後の経済不況で多くの経営者が社員を“人材(財)”ではなく“コスト”と見なしたこと。会社が生き残るためになりふり構わず社員や人件費の削減に踏みきった」という――』、興味深そうだ。
・『正社員の既得権を剝ぎ取ったのは竹中平蔵氏なのか  正社員の待遇が悪化の一途をたどっている。 前回(※)の記事では正社員の特権ともいえる扶養手当、住宅手当などの諸手当がなくなりつつあることに触れた。 ※「正社員の特権がどんどん消えていく」扶養手当、住宅手当…諸手当が“全廃止”される日  正社員の特権はそれだけではない。過去にはさまざまな特権があったが、今では風前のともしびの状態にある。 ところで、そうした正社員の既得権を剝ぎ取ったのは元経済財政政策担当大臣の竹中平蔵氏(慶應義塾大学名誉教授)であるといった意見がネット上で飛び交っている。筆者の前出記事に対してもそのようなコメントがあった。 確かに竹中氏は「日本の正社員は世界一守られている」という主旨の発言をしている。正社員を既得権益者と指弾し、解雇規制緩和論者としても知られるが、実際のところはどうなのか。 そもそも正社員の特権とは何か。非正社員にはなく、正社員の特権ともいえるのは諸手当以外にも次のようなものがある。 ① 終身雇用(60歳定年までの雇用保障) ② 年功的賃金(年齢給、定期昇給等) ③ ボーナス(給与の5カ月分相当) ④ 交際費 ⑤ 退職金 正社員になればこうした待遇を受けられることで誰もが後顧の憂いなく仕事に邁進することができた時代もあった。ところが時代の流れととともに徐々に剝がれ落ちていった。 なぜそうなってしまったのか、そしていつから始まり、その源流は誰(どこ)にあるのかを探ってみたい』、幅広い角度から探る意味は大きい。
・『終身雇用・年功賃金は消え、賞与も退職金もダダ下がり…減給の30年史  1980年代後半からサラリーマンの現場を取材してきたが、①終身雇用という仕組みが揺らぎ始めたのはバブル経済崩壊以降だ。とくに現在のリストラの常套手段である「希望退職者募集」が本格的に始まったのもこの頃だ。経済の停滞や経営環境の深刻化に伴い、企業は固定費の削減を収益改善策の緊急避難的な手段としてリストラを実行する。 その源流は1993年のパイオニアの解雇だ。対象となったのは35人の中高年管理職。当時の松本誠也社長直々に社員を社長室に呼んで個別に面談し、涙ながらに会社の苦境を伝え、引導を渡すというやり方を取った。今から見れば牧歌的な雰囲気すら漂うが、当時は事実上の指名解雇であるとしてマスコミの指弾を浴びた。 その結果、以降は労務に長けた人事担当者が辞めてほしい社員と水面下で接触し、退職勧奨して辞めさせる手法が主流になる。 とはいえ、こうしたやり方では数百人、1000人単位の大量の人員削減は難しい。そこで登場したのが退職金の割増しを条件に全社的にオープンに「希望退職者」を募集する方法だった。 ただし、それは表向きで、実際は退職勧奨によって辞めてほしい社員に応募を勧め、残ってほしい社員を慰留するものであり、パイオニア以降の個別の退職勧奨を隠蔽いんぺいする手法に変わりはなかった。 そして1990年代後半から2000年初頭にかけて大量の希望退職者募集によるリストラが吹き荒れる。それを後押ししたのが株主優先主義の風潮である。企業のROE(株主資本利益率)重視の傾向が強まり、リストラすれば市場が評価し、株価が上がるという現象が発生し、経営者にリストラの免罪符を与えた。 大手化学メーカーの人事担当者は経営内部の雰囲気についてこう語っていた。 「自社の株価や株主対策をどうするかということに役員たちは腐心している。財務体質を強化しないと格付けが下がるとか、きちんとした姿勢を見せないと市場は評価しないという点を社員に強調し、説得材料にしている。たとえば特別損失で何千人削減すれば、どれだけ削減効果が見込めるかといった計算をするようになっている」 そうした風潮に対して90年代後半にトヨタ自動車の奥田碩会長が「従業員の雇用を守れない経営者は腹を切れ」と発言。経営者の姿勢に釘を刺したが、リストラが恒常化していく。この頃から終身雇用の崩壊が叫ばれるようになった。 では、②年功的賃金はどうやって崩れたのか』、「奥田碩」氏の発言も「リストラが恒常化」していく流れを止めることはできなかったようだ。
・『サラリーマン正社員の待遇は良くも悪くも“トヨタ自動車の影響大”  給与が上がらなくなった起点は1997年だ。実質賃金は1997年をピークに長期低落傾向にあり、97年を100とした個別賃金指数は2020年も95にとどまっている。当時、何が起きたのか。リストラと並んで実施されたのはあの手この手の賃金抑制策である。そのターゲットとなったのが年功的賃金だった。 短期的には賃金カットが相次ぎ、当時“賃金リストラ”と呼ばれた。そして中・長期の方策として打ち出されたのが年齢給や定期昇給など年功賃金に代わる成果主義賃金や年俸制だった。そうした動きに拍車をかける元凶となったのが、くしくも前出のトヨタ自動車会長の奥田碩氏だった。トヨタは2002年3月期決算の連結決算で過去最高の経常利益1兆円だったが、同社の春闘での賃上げ回答は「ベアゼロ」だった。 当時、日本経団連会長だった奥田氏は賃上げについて「高コスト体質の是正を図るうえで、ベアはなくてもよい。業績がよければ一時金で報いればよい」との見解を発表している。ベア=ベースアップとは、定期昇給以外の賃金の上乗せであり、なくなると過去の先輩の給与より実質給与は目減りする。定昇がない企業は据え置きとなる。 「ベアはなくてもよい」との発言に対し、当時、大手電機メーカーの人事担当執行役員は「春闘の賃上げのリーダーであるトヨタが史上最高益を出しながら、ベアゼロに踏み切ったことで、無理して賃上げする必要もないという安心感を他の企業にも与えた」と語っていた。 奥田発言はその後も経団連の方針として受け継がれていくことになる。 そして中期的な賃金抑制策である成果主義賃金は、従来の年齢給や、社員の潜在的能力に付与する「能力給」を剝ぎ取っていく。仕事の成果で支払う成果給と単に年齢の積み重ねによって支払う年齢給は矛盾するからである。同時にこの頃から成果とは無縁の扶養手当や住宅手当などの諸手当を廃止する企業が出始めた。 また、日産自動車の再建役としてフランスから”コストカッター”の異名を持つカルロス・ゴーンCEOが来日。学歴重視の年功序列型賃金制度の典型的企業だった日産に完全年俸制を導入したことで話題を呼び、他の企業の給与制度改革を後押しした。 さらにキヤノンは2001年に現在のジョブ型の原型ともいえる賃金制度を導入し、諸手当だけではなく、定期昇給制度廃止も打ち出した。他の企業で、定昇抑制や廃止の動きも加速した。 ただし、成果主義ブームといっても、何をもって成果するのかという定義や評価基準の不明確さが露呈。評価する上司のやり方の稚拙さもあいまって現場が混乱し、相次いで成果主義の修正が発生し、当時は“成果主義”の失敗と呼ばれた。それでも「能力給」は残ったが、一度廃止した年齢給や定昇が復活することは少なかった』、「奥田」氏は「リストラ」では労働者寄りの発言をしたが、「ベア」では正反対の立場を取った。「春闘の賃上げのリーダーであるトヨタが史上最高益を出しながら、ベアゼロに踏み切ったことで、無理して賃上げする必要もないという安心感を他の企業にも与えた」。
・『住宅ローンや教育ローンのボーナス払いが許されなくなった  実はこの頃に③のボーナスの考え方も大きく変わった。以前はボーナスといえば給与の5カ月分が相場であり、サラリーマンの年収は月給の17カ月分と言われた。外国人がボーナスを「13カ月目の給与」と呼ぶほど固定されていた。ところが、前出の奥田氏の「業績がよければ一時金で報いればよい」という発言に象徴されるように、ボーナスが部門業績や会社業績に左右される不安定な存在になっていく。 その典型が鉄鋼業界の労使で締結した会社の業績でボーナスが変動する「業績連動型賞与」だった。電機業界など他の業界にも広まるようになり、多くのサラリーマンにとってはボーナスを当てにした住宅ローンや教育ローンを組むことが許されなくなった。 実はこうした給与・ボーナス改革は目先の業績不振を回避するだけではなく、すでに今日に至る社員の高齢化も視野に入っていた。2002年から始まった「いざなぎ超え」と呼ばれる景気回復期に賃金制度を改革した大手エンジニアリング会社の人事部長はこう語っていた。 「社員は高齢化していくので、年功賃金制度の下では確実に人件費が増えていく。まずは年功賃金をなくし、ボーナスも業績に連動した形にすれば、将来的に人件費を抑えることができる。社員や労働組合には言えないが、賃金制度設計段階で5年後に1割、10年後に2割の人件費削減効果があることを経営トップに報告し、了承を得たうえで導入している」 賃金制度改革によって人件費が削られていけば、当然、給与が上がるはずもない。また給与以前に④の交際費・接待費は真っ先に削られ、現在でもかつてのように飲み食いに使える交際費は復活していない。 食品会社の人事部長は昔の交際費についてこう振り返る。 「かつての交際費は目的外利用の社内消費が相当の比率を占めていた。部下をちょっと高い店に飲みに連れて行き、翌朝、社員から『部長、昨日はありがとうございました』とお礼を言われたものだが、部長自身も会社のカネでただ酒を飲んでいた。今は交際費が減って、部下との打ち上げも割り勘に上乗せする程度で管理職としてのうま味も威厳もなくなった」 交際費を自由に使えることがなくなって久しく、今では少ない交際費をどう使えばよいのかおカネの使い方も知らない管理職もいるという』、「ボーナスが部門業績や会社業績に左右される不安定な存在になっていく」、これにより「住宅ローンや教育ローンのボーナス払い」が出来なくなった変化も大きい。
・『竹中平蔵氏は非正規社員を増やす手助けをしたのか  そして今、正社員の最後の砦とされる退職金の廃止も現実味を帯びている。そもそも退職金制度は社員を長期に囲い込む目的でつくられたもの。勤続年数が長い人ほど金額も増える仕組みであり、終身雇用と一対をなしていた。 しかし、その終身雇用が揺らぎ、会社も必ずしも定年までいてもらいたいと思わなくなれば、制度の根拠を失う。2000年前後から、ついに⑤の退職金の減額に踏み切る企業が続出した。 厚生労働省の定年退職時退職金の調査(就労条件総合調査)によると、2003年の退職金は2499万円(大学卒)だったが、08年に2280万円、12年に1911万円と年々下がり続けている。 大手広告業の人事部長はこう語る。 「2008年のリーマンショック後の役員会議で退職金制度の廃止が議論になったことがある。一時は廃止して、今まで会社が積み立てた分を毎月の給与に上乗せしたほうが社員も喜ぶのではないかという意見が優勢になった。しかし顧問弁護士がそんなことをして社員から訴えられたら責任は持てないと反対され、結果的に退職金を減額することになった。しかし今でも社内では廃止論がくすぶっている」 正社員の特権がなぜ消えつつあるのか。 その元凶はマクロ的にはバブル経済崩壊後の経済不況で多くの経営者が社員を「人材(財)」ではなく「コスト」と見なすようになったことだ。 そして会社が生き残るために社員や人件費の削減に踏み込み、正社員の待遇を少しずつ削っていったのである。 ちなみに冒頭の竹中氏は小泉純一郎政権下の閣僚の一人として製造業の派遣労働を認める規制緩和も担ったとされる。 正社員の特権を剝奪するというより、非正規社員を増やす手助けをしたといえるかもしれないが、実は非正規を増大させた元凶は日経連(現経団連)にある。 日経連が1995年に提唱した「新時代の『日本的経営』」で非正規社員の活用を提唱して以来、正社員を人件費の安い非正規に置き換える動きが急速に拡大した。 小泉政権もそれを援護すべく労働者派遣法の対象業務を次々と拡大し、1999年には原則自由化に踏み切り、03年には製造業派遣を解禁した経緯がある。 竹中氏に責任があるとすれば、正社員の特権の剝奪ではなく、非正規社員の増大とそれに伴う格差の発生ということになるだろう』、「非正規社員の増大」をもたらした「規制緩和」の罪は深い。

次に、2月17日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した弁護士の植田 統氏による「ジョブ型雇用になれば、社員は「3つの階級」に分断される」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/295911
・『日本の昔ながらの雇用制度は崩壊し、アメリカ型のジョブ型雇用がついに日本でも始まる。弁護士で国際経営コンサルタントの植田統氏の新著『2040年「仕事とキャリア」年表』からの抜粋で、日本でも今後浸透していくであろうジョブ型雇用とはどういったシステムかを解説していく。今回は、アメリカで採用されているジョブ型雇用の実際の仕組みについて』、興味深そうだ。
・『ついに日本でも始まるアメリカの「ジョブ型雇用」とは?  今後の日本を占ううえで、大きな指針となるのが、アメリカの「ジョブ型雇用」です。アメリカでは、日本のように新卒一括採用はありません。通年で、ポストに空きがあれば、一般公募か社内公募によって労働者を採用します。 ジョブ型雇用で重視されるのは、雇用主が請け負ってほしいジョブに見合うだけの「経験、スキル」です。 企業から不要と見なされれば容赦なく解雇されるため、労働者は自分の力でキャリアを形成することが求められます。「転職は当たり前」の世界です。 能力がある人は、転職を繰り返して、給与やスキルをどんどん上げていきます。 「富める者」と「富めない者」の差が明確になる雇用制度、それがジョブ型雇用と言えるかもしれません。) では、アメリカのジョブ型雇用とはどういう制度であるのか、そして、それを支える社会の仕組みはどのようになっているのかを見ていきたいと思います。 今後の「仕事とキャリア」を考えるうえで、大いに参考になるに違いありません』、「「富める者」と「富めない者」の差が明確になる雇用制度」、格差がますます大きくなるとは困ったことだ。
・『ジョブ型雇用では社員は「3つの階級」に分けられる  アメリカの「ジョブ型雇用」の説明をしていく前に、まず、アメリカの雇用がどのような構造になっているかを見ていきましょう。 アメリカの雇用は、ピラミッド型の3層構造でできています。 一番上は、上級職員です。経営、企画、管理等の職につき、二番目に位置する中級職員に命令を下す人たちです。アメリカでは、上級職員は「エグゼンプト」と呼ばれています。 彼らが行なう仕事は、時間を掛ければ成果が出るというものではないので、労働時間で管理されることはなく、残業代も出ません。彼らの給与は月給制や年俸制で、雇用契約を結ぶ時に、上司と上級職員が交渉して決まることになります。 アメリカでは、事務系ならMBA、技術系なら工学修士の肩書を持った人が応募資格を持つ職位となっています。 この上級職員レベルの人達は、将来の幹部候補生たちです。上昇志向が強く、大変よく働きます。 彼らは、数年おきに多様な職務を経験しながら昇進していきます。財務部門の幹部候補生なら、本社で会計業務をやり、次は税務を学んで、最後に海外法人のCFO(最高財務責任者)もやって、本社に戻ってきてマネジャーやダイレクターのレベルに昇進していくというイメージです。) ある程度分野は限られていますが、後で述べる中級職員や現場労働者のように、会計業務の入力作業だけとかのジョブに縛りつけられているものではありません。いろいろな部署を経験するのですから、ジェネラリストに近いところがあります。 上級職員は、会社から高いパフォーマンスが求められます。彼らはその要求を満たすために昼夜を問わず必死で働き、うまく行かなければ、あるいは、自分の思うように出世できなければ、サッサと転職していくというイメージです。 私もアメリカのコンサルティング会社に勤めていましたが、同僚のアメリカ人は、深夜まで必死に働いていました。早くマネジャーになりたい、早くパートナー(役員)になりたいという強い願望を持っていました。しかし、いくら働いても、エグゼンプトですから、残業代は出ません。 上級職員は、自らの創意工夫で仕事を進めていきますので、会社に対する貢献度に大きな差が出てきます。査定においても、大きな差がついてきます』、「日本の社員」は入社時点では、皆が建前上平等だが、どのような職務につくのかは会社任せ、何が期待されているかも不明確である。 「残業代」は出ても、申告は自主規制の枠内に納めるよう期待されている。
・『中級職員、ブルーカラーは査定も少なく仕事も定型的  二番目が、中級職員です。アメリカでは、「ノンエグゼンプト」と言われており、事務職員や中級技術者等の実務的な職務を行なう人々を指します。 彼らは、3層目の現場労働者とは違い、肉体労働をすることはないのですが、上級職員から命じられた定型的な職務をこなします。給与は残業代込の月給制が多く、命じられた仕事を済ませて定時に退社するのが普通です。 決まりきった仕事を黙々とこなしているので、査定で大きな差をつけられることはありません。 学歴的には、かつては2年制カレッジや専門学校の卒業生が多かったのですが、近時では4年制大学卒業生が増えてきています。 三番目がブルーカラー労働者です。彼らは、時間制で働き、給与は、その担当するジョブによって決まっている日給や週給をもらいます。アメリカ映画を見ていると、工場労働者がペイデイと言われる給与が支払われる日を楽しみにしているシーンが出てきますが、それがまさにこのことです。 義務教育卒、高校卒の者が多く、中級職員への昇進のチャンスは限られています。時間制で働いていますので、残業をすれば残業代が時間単位で支払われます。しかし、中級職員同様、査定で大きな差をつけられることはありません』、「中級職員、ブルーカラー」は「日本」より楽そうだ。
・『中級職員が同じ社内で上級職員に上がるのは難しい  アメリカでは、こうした3層構造がハッキリとあるお陰で、各レベルの職務がかなりの程度標準化しています。 たとえば、製薬会社に勤める財務専門の上級職員は、自動車や菓子を製造する会社の財務ポストに転職していけます。中級職員であっても同じで、他社の中級職員の同じようなポストに転職していくことは容易です。 しかし、中級職員が同じ会社の中で上級職員に上がるのは容易ではありません。 私の経験してきたことを振り返ってみると、欧米の企業の人とビジネスをしていると、中級職員の中で夜間MBAコースに通っているという人、大学を出た後に中級職員として2、3年勤務した後に退職して大学院に通い直す人に出くわすことがありました。これは職位の高いポジションを手に入れるために、上級職員へのパスポートである学歴を手に入れるためのものでした。 こうしたピラミッド型の3層構造が、雇用の基本形であり、欧米では、今もそれが残っています。日本のように、上級職員と中級職員の垣根が消えてしまった世界とは違っています』、「日本」で「上級職員と中級職員の垣根が消えてしまった」ように見え、全社員が平等との幻想があるが、実際にはエリートと非エリートの格差は大きいのが実情である。欧米のように、初めから「上級職員」と「中級職員」、「現場労働者」を明確に分け、役割も明確化していく方がスッキリすると思う。無論、現場発の改善などがやり難くなるというデメリットもあるが、それは工夫次第で乗り越えることも可能だ。

第三に、この続きを、3月10日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した弁護士の植田 統氏による「日本企業の給与が安い原因は、昔ながらの日本型雇用にあり」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/298246
・『日本の昔ながらの雇用制度は崩壊し、アメリカ型のジョブ型雇用がついに日本でも始まる。弁護士で国際経営コンサルタントの植田統氏の新著『2040年「仕事とキャリア」年表』からの抜粋で、日本でも今後浸透していくであろうジョブ型雇用について解説していく。今回は、欧米とは異なる日本企業のメンバーシップ型雇用が日本人の給与をいかに安く抑えているか、その理由について』、興味深そうだ。
・『専門性が育たないような人事を行う日本企業  メンバーシップ型雇用とは、企業の「メンバー」となりうる人物を雇い、一旦「メンバー」の資格を得た人を大事にするシステムです。欧米が「はじめに職務、ジョブありき」なら、日本は「はじめに人ありき」の仕組みであるということができます。 ですから、日本企業の採用は欧米のような欠員補充のための専門スキルを持った人の中途採用がメインではありません。企業における採用は、「メンバー」として迎え入れるにふさわしい地頭の良さと潜在能力の高さを持った新卒学生を中心としています。 彼らは特定のスキルを持っているわけではないので、OJTで時間をかけて育てていく必要があります。4月に一括で採用し、同期入社全員を一括で研修し、企業のメンバーとしてイロハをたたきこみます。なかには6ヵ月とか1年を研修に割いている企業もあります。 さらに、入社してからは、定期人事異動があり、様々な職務を経験し、ジェネラリストとして育てられていきます。専門性が育たないように人事が行なわれます。 これが、○○会社の○○部長に、「あなたは何ができるのですか」と転職エージェントが聞くと、「部長ならできるのですが」という笑い話が生まれる原因です』、「定期人事異動があり、様々な職務を経験し、ジェネラリストとして育てられていきます。専門性が育たないように人事が行なわれます」、無論、例外的に専門性をそだてるところもある。
・『職務の成果ではなくメンバーとしての協調性で評価  こうした人事慣行が、オフィス・レイアウト、給与や人事評価に反映されています。未経験の職務に配置される人は、個室やコンパートメントに入れられてしまうと、何もわからず何もできない状態に陥ってしまうので、オフィスのレイアウトは大部屋形式となります。 給与についても、職務による給与を与えることはできません。どんなに優秀な人でも、人事異動があった直後はずぶの素人で仕事がうまくできないのですから、職務の成果で評価することはできないのです。 会社内での経験値が重視され、「メンバー」として経験年数が同じ同期入社社員には、基本同じような給与が支払われます。昇進、昇給も年次とともに徐々に上がっていくということになります。 それでも、数年すると同期の間でも人事評価で差がついていくことになりますが、それはどの程度会社のために頑張っているかで判定されます。そして、その頑張りは、どれぐらいの時間を会社にコミットメントしているのか、他の会社の「メンバー」と協調して仕事を進めているのかなどの会社のメンバーらしさで判断されています。 職務の成果ではありません。これが、長時間労働(必ずしも労働しているわけではないので長時間会社内滞在というべきだと思いますが)と忖度文化を生んでいるのです。 最近では、重要性が落ちてきているものと思いますが、出身大学による評価の差も残っています。「あの人は東京大学出身だから仕事ができる」というものです。 人事評価が社内の頑張りという極めて定性的なものですので、「東大出」という学歴のハロー効果(目立つ特徴に引きずられて、人物の評価がゆがめられること)が、入社後何年かたっても人事評価に影響を与え続けます』、「頑張りは、どれぐらいの時間を会社にコミットメントしているのか、他の会社の「メンバー」と協調して仕事を進めているのかなどの会社のメンバーらしさで判断されています」、「これが、長時間労働・・・と忖度文化を生んでいるのです」、日本的な非効率さを生んでいる重要な要素だ。
・『専門スキルよりも多くの部署を経験した人が有利  メンバーシップ雇用の会社では、元々専門スキルを重視しているわけではなく、他部署の人と調整して波風立てずに話をまとめていくことが評価されています。それには、多くの部署を経験し、多くの人と一緒に仕事をしてきたキャリアの長い人が有利になります。 この結果、生まれたのが「年功序列」です。会社内での経験を積めば積むほど、地位も給与も上がっていくという制度です。 ですから、高校卒の社員の5年目の給与が、大学卒の社員の1年目となり、大学卒の社員の3年目の給与が、修士号取得者の1年目の給与となっています。 もちろん、その後の昇進のスピードは、学歴によって違ってきますが、入社時には、こうして年功に基づく給与設定が行なわれています。 年代別の賃金を調べてみると、賃金は50歳前後でほぼピークに達し、その後下がっていく傾向にあります。 これは、日本企業における賃金が、年功序列という枠組みの中で、生活給という点を重視したため、子どもの教育費がピークに達する50歳前後に賃金が高くなるように設計されたからです。 そして、退社は年齢で決められています。) 今日でも60歳定年制を取る企業がほとんどですが、同期社員が、多少の遅れはあっても、ほぼ同じように昇進昇格を繰り返していき、最後は取締役や執行役員に選ばれた者を除き、一斉に60歳で退職させられています』、「メンバーシップ雇用の会社では、元々専門スキルを重視しているわけではなく、他部署の人と調整して波風立てずに話をまとめていくことが評価されています。それには、多くの部署を経験し、多くの人と一緒に仕事をしてきたキャリアの長い人が有利になります。 この結果、生まれたのが「年功序列」です」、「生活給という点を重視したため、子どもの教育費がピークに達する50歳前後に賃金が高くなるように設計されたから」、なるほど、一定の合理性があるようだ。
・『日本企業の給与が安いのは転職できる専門スキルがないから  ここまで見てくれば、なぜ日本企業の給与が安いかは、明らかです。 そこで働く労働者に専門的スキルがないからです。 専門的スキルがなければ転職も難しいので、今いる会社にい続けるしかありません。社員は、会社から出ていくことができず、給与が上がらなくても我慢せざるを得ないのです。 それでも、転職を試みる人がいますが、よほど特殊なスキル、経験を持っていない限り、移った先の会社で冷遇されます。なぜかと言えば、それは、転職した人が前の会社で15年選手であっても、転職した会社では1年選手ですから、下手をすると、1年選手と同じように扱われてしまうからです。 メンバーシップ雇用の世界では、何といっても、その会社での社歴が重要です。社歴が長ければ、社内のいろいろな人と人脈があるから、多少の無理が言えます。定期異動でいろいろな部署を経験しているので、仕事を進める時に、どこの部署の誰に話を通したら、スムーズに行くのかを知っています。 転職してきた1年選手には、こうした能力が欠如しているのです。 そのうえ、日本企業から日本企業に移っても、給与は上がりません。どこの会社も年功序列賃金を取っているのですから、15年選手が転職すると、転職先の会社の15年選手のテーブルに入れられるからです。 転職先の会社の年功序列賃金体系が、転職前の会社の賃金体系を大幅に上回っていれば話は別ですが、そうでない限り、給与はあまり変わらないのです』、「日本企業の給与が安いのは転職できる専門スキルがないから」、確かにその通りなのかも知れない。
・『専門スキルで評価されるには外資系に転職するしかない  転職では、有名会社から無名会社へと移っていくことのほうが多いのですから、現実には、転職をすると給与は下がっていくというケースのほうが多くなります。 唯一の例外は、オーナー企業への転職です。オーナー企業なら、オーナーが気に入れば、どんなに高い給与でも支払えるので、それが可能となるのです。 しかし、入ってみればわかるのですが、周りの人と比べて、倍の給与をもらっていれば、猛烈な嫉妬の対象になります。何か仕事を進めようとしても、周りの人に協力してもらえません。 そのうえ、オーナーは気まぐれですから、オーナーの機嫌を損ねれば、あっという間に降格になったり、最悪の場合、クビになります。 これが現実ですから、日本企業間を転職して成功できる人は非常に限られます。 ですから、私は転職の相談を受けた時には、外資系に行くことを勧めます。なぜ外資系かと言えば、そこでは社内人脈は重要でなく、本人が持った専門スキルが評価されるからです。また、日本のオーナー企業と違い、実力主義の人事制度が会社の中に整備されていますので、突然降格やクビということはありません。 外資系企業なら転職者を受け入れる時には、その企業の本国で行なわれているように、前職プラス10~20%の報酬を提示してくれます。自分の専門スキルが活かせる、給与も上がるとなれば、外資系に行くしかないでしょう』、「オーナー企業」には特有のリスクがあるので、「専門スキルで評価されるには外資系に転職するしかない」、同感である。
タグ:働き方改革 (その37)(「竹中平蔵氏のせいなのか」ボーナスも退職金もダダ下がり…正社員の待遇悪化"真の黒幕" 良くも悪くもトヨタ自動車の影響大、ジョブ型雇用になれば 社員は「3つの階級」に分断される、日本企業の給与が安い原因は 昔ながらの日本型雇用にあり) PRESIDENT ONLINE 溝上 憲文氏による「「竹中平蔵氏のせいなのか」ボーナスも退職金もダダ下がり…正社員の待遇悪化"真の黒幕" 良くも悪くもトヨタ自動車の影響大」 幅広い角度から探る意味は大きい。 「奥田碩」氏の発言も「リストラが恒常化」していく流れを止めることはできなかったようだ。 「奥田」氏は「リストラ」では労働者寄りの発言をしたが、「ベア」では正反対の立場を取った。「春闘の賃上げのリーダーであるトヨタが史上最高益を出しながら、ベアゼロに踏み切ったことで、無理して賃上げする必要もないという安心感を他の企業にも与えた」。 「ボーナスが部門業績や会社業績に左右される不安定な存在になっていく」、これにより「住宅ローンや教育ローンのボーナス払い」が出来なくなった変化も大きい。 「非正規社員の増大」をもたらした「規制緩和」の罪は深い。 ダイヤモンド・オンライン 植田 統氏による「ジョブ型雇用になれば、社員は「3つの階級」に分断される」 「「富める者」と「富めない者」の差が明確になる雇用制度」、格差がますます大きくなるとは困ったことだ。 「日本の社員」は入社時点では、皆が建前上平等だが、どのような職務につくのかは会社任せ、何が期待されているかも不明確である。 「残業代」は出ても、申告は自主規制の枠内に納めるよう期待されている。 「中級職員、ブルーカラー」は「日本」より楽そうだ。 「日本」で「上級職員と中級職員の垣根が消えてしまった」ように見え、全社員が平等との幻想があるが、実際にはエリートと非エリートの格差は大きいのが実情である。欧米のように、初めから「上級職員」と「中級職員」、「現場労働者」を明確に分け、役割も明確化していく方がスッキリすると思う。無論、現場発の改善などがやり難くなるというデメリットもあるが、それは工夫次第で乗り越えることも可能だ。 植田 統氏による「日本企業の給与が安い原因は、昔ながらの日本型雇用にあり」 「定期人事異動があり、様々な職務を経験し、ジェネラリストとして育てられていきます。専門性が育たないように人事が行なわれます」、無論、例外的に専門性をそだてるところもある。 「頑張りは、どれぐらいの時間を会社にコミットメントしているのか、他の会社の「メンバー」と協調して仕事を進めているのかなどの会社のメンバーらしさで判断されています」、「これが、長時間労働・・・と忖度文化を生んでいるのです」、日本的な非効率さを生んでいる重要な要素だ。 「メンバーシップ雇用の会社では、元々専門スキルを重視しているわけではなく、他部署の人と調整して波風立てずに話をまとめていくことが評価されています。それには、多くの部署を経験し、多くの人と一緒に仕事をしてきたキャリアの長い人が有利になります。 この結果、生まれたのが「年功序列」です」、「生活給という点を重視したため、子どもの教育費がピークに達する50歳前後に賃金が高くなるように設計されたから」、なるほど、一定の合理性があるようだ。 「日本企業の給与が安いのは転職できる専門スキルがないから」、確かにその通りなのかも知れない。 「オーナー企業」には特有のリスクがあるので、「専門スキルで評価されるには外資系に転職するしかない」、同感である。
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カジノ解禁(その12)(大阪カジノ 維新「セコセコ行政」でも土壌対策費790億円の経緯は不明、【スクープ】大阪カジノの土壌対策 オリックスら「ディズニーランドが理想」と公費負担を要望、大阪カジノ・事業会社撤退条項にはらむ大リスク 国も大阪も取らぬ狸の皮算用にならないか) [国内政治]

カジノ解禁については、昨年10月10日に取上げた。今日は、(その12)(大阪カジノ 維新「セコセコ行政」でも土壌対策費790億円の経緯は不明、【スクープ】大阪カジノの土壌対策 オリックスら「ディズニーランドが理想」と公費負担を要望、大阪カジノ・事業会社撤退条項にはらむ大リスク 国も大阪も取らぬ狸の皮算用にならないか)である。

先ずは、本年2月8日付けダイヤモンド・オンライン「大阪カジノ、維新「セコセコ行政」でも土壌対策費790億円の経緯は不明」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/295555
・『「公費負担はない」と説明されてきた大阪維新の会の看板政策である、カジノを含むIR計画。だが、土壌汚染や液状化対策に大阪市が790億円を投じることが昨年末に公表された。金額決定の経緯が明らかになると期待された議事概要の黒塗り部分がこのほど開示されたが、依然として不明なままだ』、興味深そうだ。
・『松井市長の指示で黒塗りを開示 市幹部が苦しい胸の内を吐露  土壌汚染や液状化への対策に巨額の負担が生じることとなった大阪湾の埋め立て地「夢洲」でのカジノを含むIR(統合型リゾート)計画。大阪市議会議員からの要求により、松井一郎市長や幹部による2021年2月12日の会議の議事概要が提出されたが、肝心の内容がすべて黒塗りだった(『大阪カジノで市負担の土壌対策費790億円が、WTCの二の舞になりそうな理由』参照)。その後、松井市長の指示で2月3日に市ホームページで黒塗り部分が公開された。 議事概要には、新型コロナウイルスの感染拡大で計画の大幅変更を余儀なくされた市幹部の苦しい胸の内が率直に吐露されていた。 IRを運営する民間事業者の募集は19年12月に始まり、米国のカジノ大手MGMリゾーツ・インターナショナルの日本法人とオリックスの2社による企業連合が唯一応募した。 その後に夢洲の土壌汚染への対策が必要だと判明し、市は応募要項を修正して21年3月に再度実施。同9月にMGMオリックス連合に決まった。 21年末には、土壌汚染対策などの費用として約790億円を市が負担すると新たに判明し、計画の収益性が懸念されている。 議事概要によると、大阪市の坂本篤則IR推進局長はこの会議で、コロナ禍の影響をとつとつと語っている。) 「新型コロナウイルス感染症の影響でMICEについては非常に大きな影響を受けている。ビジネスモデルについて今後どうなっていくのか、そのあたりが現在の時点では明確になっていない」 「特に昨年夏以降、徐々にMICEが再開されているが、第2波、第3波が続く中で多くが中止となったり、延期を余儀なくされている状況がある」 MICEとは、Meeting、Incentive Travel、Convention、Exhibition/Eventの頭文字を使った造語で、国際会議を開催できる巨大な会議場や展示施設を指す。 高橋徹副市長はこの会議で「IRの中核施設はMICEである。世界最高水準のオールインワンMICE拠点を形成することで世界から人を呼び寄せて、日本経済の成長につなげていく、そこで大事になるのが、MICEである」と強調した。 ところがIR推進局から会議で示されたのは、MICEのうち展示施設の整備面積を開業時に10万平方メートル以上とするのではなく、開業時は2万平方メートル、開業後15年以内に6万平方メートル、そして35年の事業期間内に10万平方メートル以上の計画を立てるという「段階整備」に変更することであり、その方針自体は会議後すぐに公表された』、「IRの中核施設はMICEである。世界最高水準のオールインワンMICE拠点を形成することで世界から人を呼び寄せて、日本経済の成長につなげていく、そこで大事になるのが、MICEである」、と大きく出た割に、「MICEのうち展示施設の整備面積を開業時に10万平方メートル以上とするのではなく、開業時は2万平方メートル、開業後15年以内に6万平方メートル、そして35年の事業期間内に10万平方メートル以上の計画を立てるという「段階整備」に変更」、これでは「開業時」はなんとも寂しい印象を与えるリスクもあるのではなかろうか。
・『「部分開業」報道を嫌がるも「世界から人呼ぶ」展示場は開業時に不発  ただ、公表前の2月11日に日本経済新聞電子版がこれを「20年代後半に部分開業」と報じたのがよほど気に障ったのか、坂本局長は2万平方メートルの展示場という国の基準を満たして開業することを理由に「いわゆる大阪IRを目指す最終形に向けて、第2期、第3期というような形で成長させていくものと思っている」と強調。高橋副市長からの「部分開業には当たらないということでよいか」との念押しに「その通りである」と答えている。 言い方はどうあれ、国の基準を大幅に上回る10万平方メートル以上の展示施設を設けることで、高橋副市長の言う「世界から人を呼び寄せて、日本経済の成長につなげていく」という構想が、20年代後半の開業時には実現しないことが、この会議ではっきりした。 では、開業後に段階整備を進めていくことにどれだけの合理性があるのだろうか。 そもそも日本にはMICEに相当する大規模展示施設が少なく、11万平方メートルを超える東京ビッグサイトをしのぐ展示場は海外に多い。そのためコロナ前は、インバウンド需要のさらなる取り込みのため、カジノと一体となった巨大なMICE施設の誘致に横浜市や大阪府市などが名乗りを上げた。 たが坂本IR推進局長も認めているように、コロナ禍で展示場ビジネスは大幅な制限を受けた。さらに、フェイスブックを運営する米国のIT大手メタは、仮想空間でのアバター同士による交流を可能にする「メタバース」に注力していくとしている。 仮想空間でも人間の五感が限りなくリアルに近い形で再現されれば、展示や交流といった概念が今後、根本的に覆されることになる。坂本局長もこの会議で「オンラインと現実のリアルをミックスしたようなハイブリッド型といわれているMICEが増加傾向にあると聞いている」と語っており、その兆候は明らかだ。) 見方を変えれば、展示施設の面積を10万平方メートルから2万平方メートルに縮小し、修正後の募集要項には「段階整備」の時期の見直しも書き込んだため、無用の巨大なハコモノ建設を回避できたともいえる。ただし上物がどうあれ、「土壌」には当初公表していなかった莫大な費用が投じられることに変わりはない。 この会議では、昨年末に公表されて批判を浴びた、市による夢洲の土壌対策費790億円の負担についてもやりとりがあるが、当時はその金額の規模は不明だったようだ』、確かに{MICE」の当初の規模縮小で、「土壌対策費790億円」が目立つ形となった。
・『「鉛筆1本無駄にしない」維新の政策で埋め立て地に790億円、リターンは根拠不明  高橋副市長が土壌汚染対策を挙げて「負担の程度は何か想定しているのか」と尋ねたのに対し、坂本IR推進局長は「具体的な内容については事業者の提案になる」とした上で、「提案の内容を見て、残土の量であるとか、時期であるとか、処理の方法をどのようにしていくのかなどを踏まえた上でということになるので、現在のところ想定している負担については、未確定であるが、可能性はあると考えている」と回答した。 要するに、IR推進局はこの時点で、費用は事業者の提案次第と説明していたということだ。高橋副市長はその場で「市の負担が軽微になるようしっかりと調整してもらいたい」と求めた。 そして昨年末になって、土壌汚染対策費が790億円と突然公表された上、今年1月には地下鉄中央線の延伸費用に追加で96億円、さらに2月に入ってからは、IR予定地と隣り合う25年の万博会場跡地の土壌対策費に788億円が必要だと判明した。 大阪府市を率いる大阪維新の会のキャッチフレーズは「身を切る改革」だ。松井市長が16年の街頭演説で「みなさんの税金をお預かりして役所の中で使うときは、セコく、セコく、細かく。鉛筆1本、紙1枚、無駄にしない」「大阪府、大阪市では、両面コピー、鉛筆も短く短くなるまで絶対使う」と「大阪流セコセコ行政運営術」の意義を語ったように、これまで職員給与や事業の削減を成果に誇り、選挙戦で訴えてきた。 その半面、夢洲には、上物の計画を縮小して当初の「成長戦略」の変更を強いられたにもかかわらず、土壌対策には大盤振る舞いで、「軽微」とは到底いえない金額を投じようとしている。松井市長はIRによる財政的なリターンを強調するが、大阪府市が事業者から年間に得るとはじいた1030億円は、コロナ収束を見込んだ楽観的な数字である。 そもそも松井市長や大阪府の吉村洋文知事はこれまで、一連の計画に「公費負担はない」と説明してきたが、土壌対策の負担が明らかになってから「IRの『施設』に公費は使わない」といった主張にすり替えており、朝日新聞は2月5日付社説で「およそ通用しない言い訳だ」と突き放した。 そして重要なのは、夢洲の土壌対策費の規模について、坂本IR推進局長が21年2月の段階で、事業者からの提案によると語ってから、年末に790億円という金額が公表されるまでの間に、市と事業者側との間でどのようなやりとりがあったのか、黒塗りが解除されても、何一つ明らかになっていないことである。 松井市長は1月27日の記者会見で「大勢のお客さんが集まるので、安全で安心して楽しめる土地にしてくださいというのが事業者からの要望。それを受けて判断した」と語った。だが、一般的に湾岸の埋め立て地の地盤に問題が起きやすいことは土木工事の世界では常識であり、巨額の対策コストが「想定外だった」との市側の説明は通らないだろう。 市IR推進局は取材に対し、2月10日開会の市議会定例会に合わせて黒塗りだった文書を開示したとしているが、議論の材料としてはあまりに不十分だ』、「般的に湾岸の埋め立て地の地盤に問題が起きやすいことは土木工事の世界では常識であり、巨額の対策コストが「想定外だった」との市側の説明は通らないだろう」、その通りだ。

次に、3月3日付けダイヤモンド・オンライン「【スクープ】大阪カジノの土壌対策、オリックスら「ディズニーランドが理想」と公費負担を要望」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/297990
・『土壌対策への公費負担790億円をめぐって批判が広がる、大阪府市のカジノを含むIR(統合型リゾート)計画。事業者に唯一応募したオリックスなど2社の企業連合が、東京ディズニーランド、ディズニーシーが自己負担で行ったのと同様の液状化対策を大阪市が公費で行うよう要望していたことが、市への情報公開請求で判明した』、余りにも虫のいい要求には驚かされた。
・『土壌汚染対策の公費負担には応じるも液状化対策費には反発した市の港湾局  カジノを含むIR(統合型リゾート)施設の整備を進める大阪市が、大阪湾内の埋め立て地「夢洲」の土壌汚染や液状化への対策の費用として790億円を負担すると昨年末に表明してから、批判の声が広がっている。 ダイヤモンド編集部が市に情報公開請求して入手したこれまでの市役所内での会議資料によると、事業者に応募した日米の企業連合が「東京ディズニーランドの液状化対策が理想」などと要望していたことが分かった。 IR計画に唯一応募した事業者は、米国のカジノ大手MGMリゾーツ・インターナショナルの日本法人とオリックスの2社による企業連合。2021年1月の市の会議で、港湾地区の管理を担う大阪港湾局が示した資料によると、夢洲の土中で見つかった汚染物質について、事業者側が「風評被害が出ないかが大きな懸念」「(土中の汚染物質の)含有量基準が『みなし不適合』となることで、舗装・覆土等が必須となり工事費用に影響」などと主張した。 「みなし不適合」とは、土壌汚染物質の有無を調査していない土地でも、汚染が見つかった土地と同じ土砂で埋め立てられた場合、同様の汚染があるとみなすということ。今回は地下鉄中央線延伸工事現場で汚染物質が見つかったため、IR予定地にも同様の汚染があると判断した。 市側は「対応案」として、風評被害については説明を尽くすとする半面、「(みなし不適合の)土壌汚染に伴う追加費用については、事業者と協議の上、大阪市が妥当と認める金額を負担する方向で調整する」としていた。大阪港湾局は土壌汚染対策については当初から、財政負担やむなしと考えていた節がうかがえる。 しかし同局は、液状化現象の対策への負担については反発した』、「同局は、液状化現象の対策への負担については反発した』、何か理由があるのだろう。
・『東京ディズニーランドは自己負担で液状化対策を行った  液状化現象とは、埋め立て地など水分の多い不安定な土地で地震が起きた場合、土中の水分が地上に噴出する現象だ。11年の東日本大震災の際、千葉県浦安市などの住宅街で、道路が広範囲で陥没したり、建物が傾いたりといった被害が発生した。 だが、同市にある東京ディズニーランドやディズニーシー内の敷地はこうした被害が起きなかった。 ディズニーランドなどでは、施設の建設時に「サンドコンパクション工法」と呼ばれる対策が取られた。水分の多い土の中に柱状に固めた砂を入れ、上から押し固めて地盤の水分などを抜き取るというものだ。 大阪IR計画に話を戻すと、21年6月8日の市の会議資料には、MGMオリックス連合から市に対する「事業者意見」として、「東京ディズニーランドの液状化対策が理想」と記載されていた(下写真)。(大阪市資料1はリンク先参照) しかし東京ディズニーランドでは、埋め立てた土地を分譲した千葉県によると、液状化対策工事は運営会社のオリエンタルランドが自ら費用を負担していた。 しかしMGMオリックス連合は、東京ディズニーランドでは事業者自らの負担で行ったサンドコンパクション工法による工事が「理想」であり、これを市の負担で行うよう主張したのである。 事業者については当初、カジノ運営大手のゲンティン・シンガポール(シンガポール)とギャラクシー・エンターテインメント・グループ(香港)も応募するとみられていたが、実際には応募せず、20年2月に応募したのはMGMオリックス連合の1者だけだった。 その後、土壌汚染については21年1月に市が事業者に説明。液状化対策については20年1月~12月に事業者が行ったボーリング調査でリスクが判明したとして市が対策を求められた。こうした経緯から、市は事業者を再度募集。MGMオリックス連合の1者が応募し、21年9月に決まった。 土壌対策費計790億円の内訳は、土壌汚染対策費が360億円、液状化対策費が410億円、地中埋設物の撤去費が20億円。市はこれまで市有地の売却や賃貸の際、こうした費用を公費負担しないのが原則だった。 だが、松井市長が最高実力者として君臨し、吉村洋文大阪府知事が代表を務める大阪維新の会は、カジノを含むIRを看板政策に掲げている。どうしてもIRを実現したい維新や大阪市側が、事業者に足元を見られ、負担を強いられたとの見方がもっぱらだ。 なお大阪港湾局は21年6月29日の会議で、液状化対策工事について、造成当時の基準に従って埋め立てられた土地であれば、建築基準法上、土地を造成した市の責任は問えないと主張。前述の東京ディズニーランドや、横浜市の湾岸エリアでも、土地所有者が実施した例はないと訴えた。 その上で、「夢洲におけるIR事業の実現という“政策的な観点”から負担するという整理が必要」と、要するに政治判断を求めた。 この会議で松井市長は「土地所有者としての“責任”は免れない」と明言。公費負担の方針が決まった。 オリックスの広報担当者は「東京ディズニーランドと同様の対策を必ずしてくださいということではないが、土地の取引では所有者が対策をすることが一般的だ」と話した。 なおこの費用については、大阪港湾局が所管する特別会計の港営事業会計で負担し、収支が悪化した場合は一般会計からの繰り入れで救済することとなった』、「市はこれまで市有地の売却や賃貸の際、こうした費用(土壌汚染対策費、液状化対策費など)を公費負担しないのが原則だった」、「どうしてもIRを実現したい維新や大阪市側が、事業者に足元を見られ、負担を強いられたとの見方がもっぱらだ」、情けない話だ「オリックスらの」たかり体質も問題だ。
・『夢洲造成事業は2076年度まで資金不足 カジノ粗利の過半は日本人の「賭け損」  21年12月に大阪港湾局が市大規模事業リスク管理会議で示した資料によると、夢洲の土壌対策費を800億円とした場合、夢洲の土地造成事業の累積資金残高は2029年度から減少傾向となり、53年度にマイナス1120億円に落ち込む。プラスに転じるのは76年度と、今から実に55年後だ(下図参照)。 (大阪市資料2:土壌対策費を800億円と見た場合の夢洲土地造成事業の収支の試算 はリンク先参照) 舞洲や咲洲などを合わせた大阪市の港湾埋め立て事業全体で見ればプラスを維持する見通しとはいえ、29年度に543億円に達するが、41年度には89億円に落ち込む。 特別会計とはいえ、市民の財産である公営事業会計の負担は大きいが、松井市長はしばしば、IRには十分なリターンがあると主張してきた。 大阪府市の計画では、カジノによって得られる粗利、すなわち賭け金の総額から顧客に払い戻される金額との差は、年間4900億円。その15%に当たる740億円と入場料収入320億円の合計1060億円を府市で折半する。 粗利4900億円のうち、国内客からは2700億円、外国人客からは2200億円を想定。つまり、日本人客がカジノで賭けて、負けたお金が粗利の55%を占める前提なのである。 さらに大阪市は、カジノと共にIR施設として夢洲に設置されるMICE(会議場や展示施設)について「世界最高水準のオールインワンMICE拠点を形成することで世界から人を呼び寄せて、日本経済の成長につなげていく」(高橋徹副市長)ことを目指していたにもかかわらず、新型コロナウイルスの感染拡大により、その面積は当初計画の10万平方メートルから2万平方メートルに大幅縮小して「部分開業」となる。 「増税よりカジノ。収益の一部は教育、福祉、医療に回す。隣の兵庫県知事が反対しても無視。わい雑なものは全部大阪が引き受ける」――。10年10月、大阪維新の会の“チャーターメンバー”である当時の橋下徹大阪府知事は、大阪にカジノを誘致する意義をこう語った。 だが結局、「世界から人を呼び寄せ」るはずのMICEの面積が大幅減となった上に、カジノの収入の過半を、日本人客が“すった”お金に依存する。松井市長の強調する「リターン」の実態がこれでは、一体何のための790億円の公費負担なのかと疑問を呼ぶのは当然だ。 そして大阪市は2月15日、オリックスら企業連合と基本協定書を締結。その中に、契約の解除条件として「新型コロナウイルス感染症:国内外の観光需要の回復の見込み等」の文言が入った。コロナ禍が収束しなければ、MGMオリックス側が契約解除できるのだ。 コロナ禍だけでなく、ロシアのウクライナ侵攻で多くの航空機がロシア領空を飛べなくなるなど、「国内外の観光需要の回復の見込み等」を期待することは困難だ。もしコロナやウクライナ危機が早期に収束しても、今後中長期的に、絶えず同様のリスクにさらされることは避けられない。 松井市長はウクライナ危機について2月28日、日本の非核三原則を「昭和の価値観」などと表現し「米国の原子力潜水艦をリースしてもらうというような議論もすべきだ」などと持論を語ったが、まずはIR計画への影響について検証し、説明すべきだ』、「オリックスら企業連合と基本協定書を締結」、府・市は足元を見られて、「企業連合」の言い値で、「国内外の観光需要の回復の見込み等」で「MGMオリックス側が契約解除できる」ような不平等な条項を飲まされたようだ。

第三に、3月8日付け東洋経済オンラインが掲載した近畿大学教授の柴田 直治氏による「大阪カジノ・事業会社撤退条項にはらむ大リスク 国も大阪も取らぬ狸の皮算用にならないか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/536805
・『カジノを含む統合型リゾート(IR)整備計画を国に提出する期限(2022年4月28日)を前に、誘致をめざす各自治体で採算や資金繰りへの不安が膨らんでいる。和歌山、長崎両県は3月初旬の段階でなお資金調達について議会や住民に十分な説明ができず、先行きに暗雲が垂れ込める。 そのような中、誘致活動では先頭を走る大阪は、アメリカのカジノ大手MGMリゾーツ・インターナショナルとオリックスが中心となってつくった事業会社と大阪府、大阪市の3者で2月16日、整備計画を発表した』、「和歌山、長崎両県」も名のりだけは挙げていたようだ。
・『事業会社の撤退に関する条項  それによると、初期投資1兆0800億円、経済波及効果1兆5800億円(建設時)、1兆1400億円(運営)で、年間売り上げは5200億円(うちカジノ分4200億円)。大阪府・市は毎年740億円の納付金を受け取るほか、入場料収入320億円も得られ、120億円の税収も入る。構想段階と変わらぬバラ色の夢が完成予想図とともに描かれていたが、同時に発表された3者による基本協定の概要版には、これまで明らかになっていなかった重要な規定が記載されていた。 「基本協定の解除」の項目で、事業者は国から正式に認定を得た30日後に、協定を解除するかどうかを判断することができ、解除の場合、さらにその後の60日以内に通知すればよいとされていた。MGM、オリックスに加え大企業が出資する事業会社が設立され、計画も発表しているのだから、事業は当然完成し実施されるだろうと筆者は考えていたが、どうもそうとは限らないらしい。 解除の是非を検討する条件として、税務上の取り扱い、カジノ管理委員会規則、国際競争力、国際標準の確保 、土地・土壌に関する大阪市における適切な措置の実施等に加えて新型コロナウイルス感染症、国内外の観光需要の回復の見込みなどを挙げている。つまり日本政府が今後決めるルールや大阪府・市の対応に不満だったり、コロナ禍で「鎖国」状況が続いていたり、見込みほど観光客が呼び込めないなどと判断したりすれば、事業会社は「降りる」ことができるという話だ。 これを読んで、2つの残像が私の脳裏に浮かんだ。1つは、かつて訪れたベトナム南部バリア・ブンタウ省の海岸の風景だ。 商都ホーチミンから車で2時間余り走ると、南シナ海に面した旧漁村に巨大なホテルとゴルフコースが忽然と現れる。同国初の本格的カジノホテル「グランド・ホーチャム・ストリップ」(現インターコンチネンタル・グランド・ホーチャム)。大阪IRの主軸であるMGMが約10年前、カナダの企業と組んでオープンさせる予定だったが、MGMは2013年の開業前にマネジメント契約を解除した。リゾートはそれでもなんとか開業にこぎつけたものの、コロナ禍もあり客足はさほど伸びていないという。 MGMが解除したのは、ベトナム政府が国民のカジノ入場を認めないというルールを変えなかったからだと伝えられている。外国人客だけでは十分な収益が見込めないと判断し、あっさりと手を引いた。 【2022年3月14日12時00分 追記】記事初出時、MGMはベトナムのカジノホテルを投資したとしていましたが、投資ではなくマネジメント契約であったため、上記のように修正しました』、なるほど。
・『よみがえる大阪・りんくうタウンの悪夢  もう1つ、大阪IRの完成予想図を見てよみがえるのは、関西国際空港対岸の埋め立て地「りんくうタウン」のトラウマだ。 空港開港前の1988年に大阪府が商業用地の分譲希望を募ったところ、日本中の大手企業がこぞって超高層ビルの建設計画を打ち上げ、模型や予想図を発表した。競争率は6倍を超え、新聞社で大阪府庁担当記者だった私は、この埋め立て地を「現代の宝島」と書いた。 しかし結末は無残なものだった。大阪府が各企業と契約を交わす前にバブルが崩壊。日参していた企業の担当者は府庁に寄りつかなくなり、ほとんどの企業が撤退した。玄関口に立つりんくうゲートタワービルは、日本で3番目の高さを誇るもののバランスが悪い。ツインタワーでデザインされたのに、テナントが集まらず1棟しか建設されなかったためだ。建設した府の第3セクターは破綻した。 その後、造成地の土地代を大幅に値下げし、定期借地方式を取り入れるなどして30年かけて漸く完売した。しかし収支は1000億円を超える赤字となる見込みだ。 大規模な開発案件に名乗りを上げても、採算が合わないと判断すれば企業は撤退する。自治体や国がこれにからむと、場合によっては地域住民や国民の負担となる。大阪IRはどうか。) 野党や多くの市民団体はこれまで主に、賭博のあがりで経営を支える倫理面やギャンブル依存症などの問題を指摘して反対・慎重論を唱えてきた。ところが2021年12月に大阪市が、建設予定地の土壌対策費として790億円を負担すると発表して以降、財源や資金、経済効果などに以前にも増して注目が集まることになった。 松井一郎市長はこれまで「事業者がお金を払って建ててくれる。市は家賃をもらうだけ」と話していた。大阪市が埋め立て地を取引した際、土壌改良費を負担した例は過去にない。こうした発言や前例との整合性について、市議会でも質問や批判が相次いだ。 IR事業者は市との定期借地契約に基づき毎年25億円の賃料を払う。35年間の契約期間満了まで払い続ければ計875億円となるが、途中撤退なら市の土壌対策費が賃料を上回ることにもなりかねない』、「りんくうタウン」、では「1988年に大阪府が商業用地の分譲希望を募ったところ、日本中の大手企業がこぞって超高層ビルの建設計画を打ち上げ、模型や予想図を発表した。競争率は6倍を超え」た。「しかし結末は無残なものだった。大阪府が各企業と契約を交わす前にバブルが崩壊・・・ほとんどの企業が撤退」「玄関口に立つりんくうゲートタワービルは、日本で3番目の高さを誇るもののバランスが悪い。ツインタワーでデザインされたのに、テナントが集まらず1棟しか建設されなかったためだ。建設した府の第3セクターは破綻」、思い出した。
・『情報公開請求しても黒塗りばかり  それでは経済効果や府市の実入りはどうか。れいわ新選組の大石あきこ衆議院議員が経済効果の元データについて大阪市IR推進局に情報公開請求したところ、ほとんど黒塗りで返ってきた。となればチェックのしようもないのだが、どの数字も相当な大風呂敷と感じる。 そもそも計画が掲げる4200億円の売り上げを達成しているカジノは、世界を見渡してもマカオのベネチアン、ギャラクシーなどごく少数だ。府市がことあるごとに先行例として取り上げるシンガポールのカジノも単体では届いたことのない数字だ。「まず無理」とみる専門家もいる。 カジノで売り上げの大きな部分を占めるのは、大金を常に賭ける「ハイローラー」の法外な支出だ。世界一の賭博の街マカオでは「ジャンケット」と呼ばれる接待業者が主に中国人の大金持ちを連れてきて特別な待遇で遊ばせることで多くの売り上げを稼いできた。客が賭場で使った金の一部をコミッションとして受け取る。客への一時貸し付け、資金回収など一筋縄ではいかない裏方業務を担う。 ところが「共同富裕」をうたう中国・習近平政権の意向で、2021年以降、マカオ政府がジャンケットの規制に乗り出し、マカオのカジノ収益は大きく落ち込んだ。 大阪はどうするのか。府市の当局者に聞いてみようと、2022年2月に予定されていた説明会に参加登録したが、コロナを理由に一方的に中止された。代わりにメールで質問を受け付けるというので聞いてみた。すると以下の答えが返ってきた。 「いわゆるジャンケットが行っている行為について(略)日本においては、免許を受けたカジノ事業者以外がカジノ行為を行うこと、カジノ施設内でカジノ事業者以外が貸し付けを行うこと、カジノ事業者が顧客以外への貸し付けを行うことはすべて禁止されています」 ジャンケットの主な機能を否定しており、排除方針を明確にしている。とすればハイローラーを呼び込む特別な手立てはなく、一般大衆を主な顧客としてするということだろう』、「日本」では、「ジャンケットの主な機能を否定しており、排除方針を明確にしている。とすればハイローラーを呼び込む特別な手立てはなく、一般大衆を主な顧客としてするということだろう」、大丈夫なのだろうか。
・『入場料6000円で通う人がいるか  MGMが撤退したベトナムと違い、日本では邦人もカジノに入ることができる。ただし6000円の入場料が必要だ。単にギャンブルをするなら競輪競馬ボートレースとよりどりみどり、事実上の賭場であるパチンコ屋がどこの駅前にもある日本で、JR大阪駅から15㎞以上離れたカジノにわざわざ入場料を払って足しげく通う人がどれだけいるか。 外国人観光客にしても、京都、奈良、大阪・道頓堀の観光を目当てに来た人がわざわざ足を延ばすか、疑問である。 外国為替法上、100万円以上を海外から持ち込む場合、申告が必要である。カジノに絡む税制や外為法を含めた法改正はこれからだが、そもそも大きな金基本協定では事業者側の都合で撤退した場合、6億5000万円の違約金が定められている。違約金を設定しなかった「りんくうタウン」に比べればマシとはいえ、土壌改良だけで790億円をつぎ込むことを考えれば、スズメの涙である。 府市は、契約解除となった際は「事業継承又は再公募等によりIR事業の継続が図られるよう努力」するとしている。しかし今回、公募に応じたのはMGM・オリックス連合だけだった。競争相手がないから土壌改良費についても業者側の言い分をのまざるを得なかったのではないかとの推測も成り立つ。 筆者は「大阪IR誘致、政府の『ソロバン勘定』」は正しいか」で、IR誘致の収支について疑問を呈した。ソロバンは3つある。1つは業者の、もう1つは地域(自治体)の、そして国全体のソロバンだ』、それぞれの「ソロバン」はどうなのだろう。「入場料6000円で通う人がいるか」には苦笑いを禁じ得なかった。
・『国も大阪も怪しくなるソロバン勘定  業者や立地自治体が儲かったとしても、原資は客が賭博ですった金だ。カジノの入場者の7割は日本人とされ、儲けの多くは海外の業者に流れる。国民財産の海外流出だ。さらに政府はカジノ管理委員会なる組織を新たに立ち上げ、開業もしていないのに2021年度だけで10億円を超す予算を計上している。 国全体としてみれば、とても帳尻があわないのではないかと指摘したが、大阪市が土壌改良に巨費をつぎ込むならば、地域のソロバン勘定も怪しくなる。そのうえ、儲からないと業者がソロバンをはじけば、法律や制度ができてもIRが存在しないという珍妙な事態もあり得る。いったんできたとしても撤退すれば、各地に夢をばらまき、一部で借金を残したリゾート法の二の舞だ。 3つのソロバンすべての帳尻があわそうとするならば、外国人客に莫大な賭け金をつぎ込んでもらわねばならない。外国人といっても過半は中国人を想定しているだろう。その中国政府が今後、賭博への締め付けをさらに強めることはあっても緩めるとは考えづらい。海外やオンラインでギャンブルをする中国人への締め付けも強くなりそうだ。 いずれにしろ中国共産党の出方次第で成否が左右される国策事業は、岸田文雄政権肝いりの「経済安保」の観点からも見直しが必要ではないだろうか』、「3つのソロバンすべての帳尻があわそうとするならば、外国人客に莫大な賭け金をつぎ込んでもらわねばならない。外国人といっても過半は中国人を想定」、「その中国政府が今後、賭博への締め付けをさらに強めることはあっても緩めるとは考えづらい。海外やオンラインでギャンブルをする中国人への締め付けも強くなりそうだ」、「中国共産党の出方次第で成否が左右される国策事業は、岸田文雄政権肝いりの「経済安保」の観点からも見直しが必要」、皮肉っぽいが、同感である。 
タグ:ダイヤモンド・オンライン「大阪カジノ、維新「セコセコ行政」でも土壌対策費790億円の経緯は不明」 カジノ解禁 (その12)(大阪カジノ 維新「セコセコ行政」でも土壌対策費790億円の経緯は不明、【スクープ】大阪カジノの土壌対策 オリックスら「ディズニーランドが理想」と公費負担を要望、大阪カジノ・事業会社撤退条項にはらむ大リスク 国も大阪も取らぬ狸の皮算用にならないか) 「IRの中核施設はMICEである。世界最高水準のオールインワンMICE拠点を形成することで世界から人を呼び寄せて、日本経済の成長につなげていく、そこで大事になるのが、MICEである」、と大きく出た割に、「MICEのうち展示施設の整備面積を開業時に10万平方メートル以上とするのではなく、開業時は2万平方メートル、開業後15年以内に6万平方メートル、そして35年の事業期間内に10万平方メートル以上の計画を立てるという「段階整備」に変更」、これでは「開業時」はなんとも寂しい印象を与えるリスクもあるのではなかろう 確かに{MICE」の当初の規模縮小で、「土壌対策費790億円」が目立つ形となった。 「般的に湾岸の埋め立て地の地盤に問題が起きやすいことは土木工事の世界では常識であり、巨額の対策コストが「想定外だった」との市側の説明は通らないだろう」、その通りだ。 ダイヤモンド・オンライン「【スクープ】大阪カジノの土壌対策、オリックスら「ディズニーランドが理想」と公費負担を要望」 余りにも虫のいい要求には驚かされた。 何か理由があるのだろう。 「市はこれまで市有地の売却や賃貸の際、こうした費用(土壌汚染対策費、液状化対策費など)を公費負担しないのが原則だった」、「どうしてもIRを実現したい維新や大阪市側が、事業者に足元を見られ、負担を強いられたとの見方がもっぱらだ」、情けない話だ「オリックスらの」たかり体質も問題だ。 「オリックスら企業連合と基本協定書を締結」、府・市は足元を見られて、「企業連合」の言い値で、「国内外の観光需要の回復の見込み等」で「MGMオリックス側が契約解除できる」ような不平等な条項を飲まされたようだ。 東洋経済オンライン 柴田 直治氏による「大阪カジノ・事業会社撤退条項にはらむ大リスク 国も大阪も取らぬ狸の皮算用にならないか」 「和歌山、長崎両県」も名のりだけは挙げていたようだ。 「りんくうタウン」、では「1988年に大阪府が商業用地の分譲希望を募ったところ、日本中の大手企業がこぞって超高層ビルの建設計画を打ち上げ、模型や予想図を発表した。競争率は6倍を超え」た。「しかし結末は無残なものだった。大阪府が各企業と契約を交わす前にバブルが崩壊・・・ほとんどの企業が撤退」「玄関口に立つりんくうゲートタワービルは、日本で3番目の高さを誇るもののバランスが悪い。ツインタワーでデザインされたのに、テナントが集まらず1棟しか建設されなかったためだ。建設した府の第3セクターは破綻」、思い出した。 「日本」では、「ジャンケットの主な機能を否定しており、排除方針を明確にしている。とすればハイローラーを呼び込む特別な手立てはなく、一般大衆を主な顧客としてするということだろう」、大丈夫なのだろうか。 それぞれの「ソロバン」はどうなのだろう。 「入場料6000円で通う人がいるか」には苦笑いを禁じ得なかった。 「3つのソロバンすべての帳尻があわそうとするならば、外国人客に莫大な賭け金をつぎ込んでもらわねばならない。外国人といっても過半は中国人を想定」、「その中国政府が今後、賭博への締め付けをさらに強めることはあっても緩めるとは考えづらい。海外やオンラインでギャンブルをする中国人への締め付けも強くなりそうだ」、「中国共産党の出方次第で成否が左右される国策事業は、岸田文雄政権肝いりの「経済安保」の観点からも見直しが必要」、皮肉っぽいが、同感である。
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教育(その27)(東大刺傷事件 東大医学部卒の精神科医・和田秀樹氏が語る「医学部志望の苦しみ」〈dot.〉、フィギュア記事でよく見る(N高東京)って何? 東大合格者も輩出する2万人高校の秘密) [社会]

教育については、昨年10月28日に取上げた。今日は、(その27)(東大刺傷事件 東大医学部卒の精神科医・和田秀樹氏が語る「医学部志望の苦しみ」〈dot.〉、フィギュア記事でよく見る(N高東京)って何? 東大合格者も輩出する2万人高校の秘密)である。

先ずは、本年1月19日付けAERAdot「東大刺傷事件 東大医学部卒の精神科医・和田秀樹氏が語る「医学部志望の苦しみ」〈dot.〉」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dot/2022011900044.html?page=1
・『15日に大学入学共通テストの会場である東京大学農学部の正門前で起きた刺傷事件は、世間に衝撃をもたらした。殺人未遂容疑で逮捕された名古屋市内の私立高校2年生の少年(17)は、東大医学部志望だったと言われている。 少年は警察の取り調べに対して、「医者になるために東大を目指して勉強を続けていたが、1年くらい前から成績が上がらず、自信をなくしていた」「東大を受験する予定だったが、勉強しろとの圧力が強く勉強が嫌だった」などと供述しているとされる。なぜ少年はこれほど追い詰められてしまったのか。医学部志望特有の苦しみやプレッシャーについて、東大医学部出身で精神科医の和田秀樹氏に聞いた。 逮捕された男子高校生は 愛知県内でもトップレベルの進学校に通う2年生。灘高校出身で数多くの受験テクニック本の著書もある和田氏は、超進学校の雰囲気をこう振り返る。 「私の高校でも、医学部を志望する人の多くは(医学部にあたる)東大理科III類(以下、理III)を目標にしていて、最低でも京大医学部といった雰囲気がありました。灘、開成、筑駒といった超進学校では、医学部を目指すなら東大理IIIに行くべきだという刷り込みがあって、そうではないと成功したとは言えないような風潮がある。ですが、いざ医者になってみると、医学部ほど大学名が役に立たない分野はないと感じることは多いですよ」 しかし、進学校の医学部志望の生徒の間では、偏差値第一主義の考え方が根強く残っているという。偏差値順に上から受けていくようなスタイルは、塾による刷り込みも影響しているのではないかとみる。 「偏差値第一主義の傾向は、特に理IIIを多数輩出している塾に顕著です。こうした塾では昔よりも生徒や保護者が、学校より塾の言うことを聞くようになっていると感じます。ですが本来、医者になるのなら特定の大学にこだわるほうがおかしい。私が受験指導をしているときは、志望校と併せて他の医学部との併願を勧めています。ですが愛知県はもともと国公立志向が強く、より偏差値の高い国立の医学部を目指すことがゴールだと思っている子は少なくない。プレッシャーは大きいと思います」 今回事件を起こした少年は、1年後に受験を控えた2年生だ。まだ時間はあるようにも思えるが、「面談で東大は無理という話になって心が折れた」と供述しているように、当人としては自身の成績に絶望していたようだ』、受験競争もくるところまで来たようだ。
・『受験界にはびこる「根性主義」  「中高一貫校では、高2までに高3の勉強を終える学校が多く、高2あたりで一気に勉強内容が難しくなります。そのため、早い段階で行き詰まりやすい。おそらく、この男子生徒はものすごく頑張って努力するタイプで、猛勉強してきたのだと思います。ですが、成績が上がらないまま努力しても、たいていは(悩みの)解決にはつながりません。やり方を変えないまま猛勉強を続けても、どうしても限界があるからです。そんな時、(成績が伸びないのは)地頭やセンスの問題だと思い込んでしまい、『俺はバカなのだ』と自己否定につながってしまう」 和田氏自身、行き詰まった時は受験テクニックで乗り越えた。その後、受験テクニックに関する数々の著書を世に送り出してきたが、最近はかつてと比べるとテクニック本が売れなくなったという。 「テクニックを変えれば受かるかもと思ってくれる受験生がすごく少なくなったと感じます。2005年のテレビドラマ『ドラゴン桜』(1期)の放送時には東大受験ブームが起きましたが、昨年に『ドラゴン桜2』が放送された際には全くと言っていいほど東大受験ブームが起きていないのが象徴的です。今の子たちは、行き詰まったときにテクニックではなく根性で乗り越えようとしてしまう傾向があると感じます。ですが、的外れな努力ではダメ。成績が上がらないのなら、根性よりもやり方を変えたほうがいいという発想がないといけません。今は本やインターネットで受験テクニックの情報がたくさん出ているので、地頭が悪い、センスがないと嘆く前に、別の方法を試すだけ試してほしい」 スポーツなどでは根性論では勝てないことがわかって科学的なアプローチをするようになったものの、受験の分野ではいまだに根性論の考え方が根付いているという。根性論が浸透している限り、精神的に音をあげてしまう学生は後を絶たない』、「今の子たちは、行き詰まったときにテクニックではなく根性で乗り越えようとしてしまう傾向があると感じます。ですが、的外れな努力ではダメ。成績が上がらないのなら、根性よりもやり方を変えたほうがいいという発想がないといけません」、その通りだろう。
・『医者の仕事に大学名はほとんど無関係  「学校や塾も旧態依然としたやり方で指導していては、結果的に子供の自尊感情を傷つけてしまうと思います。努力で勉強を乗り切ろうとさせず、勉強への向き合い方を教えてあげたり、実際の医者の世界について教えてあげたりするなど、広い視野を与えるようなアドバイスが重要だと思います」 そして、改めて「医者ほど大学名が役に立たない分野はない」と強調する。和田氏によると、医療分野における学歴主義からの脱却の転換点となったのは、2004年の「臨床研修制度の必修化」だという。制度の導入前は、東大病院をはじめとする複数の名門病院では、東大卒業生以外が研修医として入るのは難しい状況だった。だが、必修化以降は大学名ではなく、大学の成績が重要視されるようになったのだという。 「結果的に、希望の病院で研修をするためには、偏差値の低い大学のほうが(相対的な成績が高くなり)、かえって有利になることもある。東大理IIIに入れる実力があったとしても、あえて下の大学に行ったほうが得をする可能性もあるのです。その後の病院の出世や大学教授へのなりやすさも、必ずしも偏差値の通りになっていない。ほかの学部なら官僚になりやすい、会社で出世しやすいといったように学歴が有利に働く状況も多少はあると思いますが、医学部の場合は、たとえば東北大や慶応大と比べても、東大出身者が医者として出世できるとは言えません。ある意味で、東大の中では医学部が一番割に合わないと思います」 先を見通す広い視野を持っていれば、人生に絶望することも、過度のプレッシャーを感じることもなかったのではないか。 「ほとんどの医学部受験生たちは入学後の事情を知らず、少しでも偏差値の高い大学に入りたい。保護者も同じで、医者の世界を知らないまま学校名にこだわっている親は多いと思います。理IIIを輩出するような塾では毎日5時間もかかるような膨大な量の宿題が出されることもあり、受験生には世の中のことを知るための時間がない。実際、東大医学部に入る学生たちの多くは、世の中のことを知らないまま勉強をしてきた人が多いと感じます。だからこそ、受験生にはその狭い視野を広げる大人の存在が必要なのです」 事件を起こした少年にそうした大人の存在がなかったのだとすれば、残念に思えてならない』、「ほかの学部なら官僚になりやすい、会社で出世しやすいといったように学歴が有利に働く状況も多少はあると思いますが、医学部の場合は、たとえば東北大や慶応大と比べても、東大出身者が医者として出世できるとは言えません。ある意味で、東大の中では医学部が一番割に合わないと思います」、受験界は、実績作りのため高偏差値学生には「理III」を薦め続けるのだろうが、「受験生」もそろそろ現実に目覚めるべきだろう。

次に、2月12日付けTHE ANSWER「フィギュア記事でよく見る(N高東京)って何? 東大合格者も輩出する2万人高校の秘密」を紹介しよう。
https://the-ans.jp/column/219217/3/
・『昨年度は東大合格者4人を輩出、生徒数は開校1年目から13倍以上に  開校5年目の昨年度は東大合格者4人(現役3人)が出た。京大、一橋大、東京工大などの難関国公立のほか、早慶は計31人(現役26人)。 「さまざまな生徒を受け入れ、それぞれに目標があるなら、進学したい生徒は進学が実現できる学校じゃないと、本物じゃない。残念ながら、まだ大学実績で評価される世の中。ここからは逃げられない」。予備校の第一線の講師を招き、好きなだけ学べる独自の学習アプリ「N予備校」を作った。「うちで勉強したい生徒は“落ちこぼれ”ではなく“浮きこぼれ”。どんどん学びたい生徒が、どんどん先に進んでいける環境を作っていった」と明かす。 「N高はそこまでするの?」。世間がそう思うほど社会的評価を上げていくことで、進学しない生徒も「僕はそういう学校に通っているんだ」と自信につながる。「堂々と『N高等学校に通っている』と言ってもらいたい」との想いこそが、それぞれの生徒の未来にこうも寄り添う理由である。 開校6年で生徒数は1年目から13倍以上となる2万人超え。図らずも「オンライン」という単語が身近になった世の中。これからはどんな道を歩むのか。奥平校長は「オンライン上での高等学校再現をより追求していきたい」と“ネット高校”としての未来を描く。 「今年4月からVRを作った学び方も始めました。もっとオンライン上でこんなこともできるのかということを世の中に示していきたい。それが学校として一つの目標ですし、いろんな生徒に対応できるコンテンツ、そして卒業後の目標達成につながる手助けをまだまだ作り上げないといけない」 大きな使命を持ち、成長を遂げるN高。では、なぜフィギュアスケート選手を受け入れ、彼らを支援するのか。その裏にある想いとは――。(13日掲載の後編に続く)』、「開校6年で生徒数は1年目から13倍以上となる2万人超え」、とは大したものだ。「オンライン」をいち早く取り入れたのも強みになり得る。なお、「後編」はPR臭が強いので紹介は省略。
『■学校法人角川ドワンゴ学園 N高等学校  沖縄・うるま市伊計島に本校がある私立通信制高校。2016年に開設し、生徒数はS高等学校とあわせて20,603人(2021年9月現在)。全国に19のキャンパスを持つ。1800人以上の部員がいるeスポーツと美術部のほか、起業部、投資部、政治部などユニークな部活もある。通学コースには特進クラスもあり、2020年度は東大合格4人(うち現役3人)。東京パラリンピック閉会式でオープニングの映像・音楽制作を担当し、パフォーマンスに参加したSASUKEさんのほか、eスポーツ選手、棋士、アイドルなど多彩な在校生・出身者がいる。スポーツ界ではフィギュアスケート・川畑和愛、紀平梨花、テニス・望月慎太郎ら』、「通信制高校」でも「全国に19のキャンパス」、「通学コースには特進クラスもあり、2020年度は東大合格4人(うち現役3人)」、「eスポーツ選手、棋士、アイドルなど多彩な在校生・出身者がいる」、「スポーツ界ではフィギュアスケート・川畑和愛、紀平梨花、テニス・望月慎太郎ら」、なかなかバライエティに富んだ人材を集めたようだが、それが一般の生徒に与える影響は、「N高」の名声だけで、顔も会わせない以上、限定的だろう。ただ、今後の活動には注目したい。
タグ:教育 (その27)(東大刺傷事件 東大医学部卒の精神科医・和田秀樹氏が語る「医学部志望の苦しみ」〈dot.〉、フィギュア記事でよく見る(N高東京)って何? 東大合格者も輩出する2万人高校の秘密) AERAdot「東大刺傷事件 東大医学部卒の精神科医・和田秀樹氏が語る「医学部志望の苦しみ」〈dot.〉」 受験競争もくるところまで来たようだ。 「今の子たちは、行き詰まったときにテクニックではなく根性で乗り越えようとしてしまう傾向があると感じます。ですが、的外れな努力ではダメ。成績が上がらないのなら、根性よりもやり方を変えたほうがいいという発想がないといけません」、その通りだろう。 「ほかの学部なら官僚になりやすい、会社で出世しやすいといったように学歴が有利に働く状況も多少はあると思いますが、医学部の場合は、たとえば東北大や慶応大と比べても、東大出身者が医者として出世できるとは言えません。ある意味で、東大の中では医学部が一番割に合わないと思います」、受験界は、実績作りのため高偏差値学生には「理III」を薦め続けるのだろうが、「受験生」もそろそろ現実に目覚めるべきだろう。 THE ANSWER「フィギュア記事でよく見る(N高東京)って何? 東大合格者も輩出する2万人高校の秘密」 開校6年で生徒数は1年目から13倍以上となる2万人超え」、とは大したものだ。「オンライン」をいち早く取り入れたのも強みになり得る。なお、「後編」はPR臭が強いので紹介は省略。
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恋愛・結婚(その5)(「もう夫はいらない 邪魔されず生きたい」夫を断捨離する妻のリアル、「結婚する男女の激減」が招く日本の恐るべき末路 2020年の婚姻数は戦後最少の52万5490組) [社会]

恋愛・結婚については、昨年7月11日に取上げた。今日は、(その5)(「もう夫はいらない 邪魔されず生きたい」夫を断捨離する妻のリアル、「結婚する男女の激減」が招く日本の恐るべき末路 2020年の婚姻数は戦後最少の52万5490組)である。

先ずは、昨年8月6日付けAERAdot「「もう夫はいらない。邪魔されず生きたい」夫を断捨離する妻のリアル」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/wa/2021080400031.html?page=1
・『23年にわたる結婚生活を解消した鈴木保奈美(54)と石橋貴明(59)、結婚16年で離婚した篠原涼子(47)と市村正親(72)。この2組は、いわゆる“略奪婚”から“おしどり夫婦”と呼ばれるようになり、最後は離婚を選択。いずれも妻側が「結婚」という枠から脱出したように見えることなど共通点は多いとフリーライターの亀山早苗氏は指摘する。 【前編/鈴木・石橋、篠原・市村の離婚も妻の“断捨離”? 悔いなくリセットする妻】より続く 【写真】三度の不倫報道でも芸能界を「干されなかった」有名女優はこの人 家庭から巣立つ妻、非のない夫も直面する「令和のリアル」について亀山氏が取材した。 鈴木・石橋、篠原・市村の2組を見るだけでも、結婚や夫婦のあり方が変わってきたことがわかる。3組に1組は離婚する現代。芸能界の夫婦関係は、世間のそれの縮図でもあるからだ。 「下の子が高校を卒業したら離婚しようとずっと思っていました」 昨年冬に離婚したハルコさん(仮名、52歳)は晴れ晴れとした表情でそう語った。28歳のときに、4歳年上の社内の先輩と結婚。ふたりの女の子をもうけた後、再就職したが、夫とはいつまでたっても「先輩・後輩」の感覚が抜けなかったという。 「今思えば、モラハラみたいなこともありました。再就職したときは『家庭に支障のないように』と言われましたが、そもそも夫の収入だけでは将来、子どもたちの学費などが不安だったから仕事をしていくしかなかったんです。でも夫はそのあたりは理解せず、家事育児もほとんどやってくれなかった。今でいうワンオペ状態。大変でしたね。子どもが大きくなったら離婚も視野に入れたいとずっと思っていました」 日常生活では工夫して節約し、貯金を増やした。そして長女が大学4年生、下の娘が専門学校に入学した昨年春、離婚を決意したのだ。 「正直言って、もう夫はいらない。そう思いました。娘たちが巣立っていき、自分の残りの人生を考えたとき、夫がいるメリットは何もなかった」 家事ひとつできない夫。老後を考えたら、確かに妻にメリットはない。「冷たい」と言われるのは承知の上だった。 「それでも私は私の人生を、誰にも邪魔されずに生きていきたかった。だって休日に出かけようとすると、『何時に帰ってくる?』『オレの昼飯は? 夕飯は?』と聞いてくるんですよ。大人なら『自分の食事くらい自分でなんとかしなさいよ』と言いたいところだけど、そこが先輩・後輩の悪い習慣で、つい昼食を用意し、夕飯までには帰ってきてしまう。私は夫にとって飯炊き女でしかないのかとため息ばかりついていました。娘たちから『いいかげんにお父さんを甘やかすのはやめたほうがいい』と言われていたけど、『女はこうあるべき』に私もとらわれていたんでしょうね」 なかなか離婚を承諾しなかった夫だったが、決意を固めたハルコさんに揺らぎはなかった。春に離婚を宣告。最後には夫が折れ、家を母娘に明け渡して出ていった。現在は会社の社員寮に住んでいるようだ。ただ、離婚後は結婚時よりも交流があるという。 「不思議なもので、夫と妻という立場でなくなったら私も気が楽になり、言いたいことが言えるようになったんです。元夫とは時々、外でランチをしたりするし、娘たちも会っているみたい。私は娘たちと暮らしていますが、女3人、それぞれ勝手に生活しているという感じです。夫と離婚すると同時に、娘たちとも親子というより、ひとりの人間同士として接するようになっています」 母娘にありがちな妙な葛藤もなくなった。ハルコさんは妻とともに“母”という重い役割も手放せたのかもしれない。母娘の関係に新たな風が吹き込んできたのだろう』、「夫」は「現在は会社の社員寮に住んでいるようだ」、一時的とはいえ、「社員寮」では噂の種となり、さぞかし居心地が悪いだろう。
・『仲よし夫婦でも「独身」への憧れ  相手に不満がなくても離婚を選択するケースもある。 「うちは本当に仲のいい夫婦だったんです。子どもたちにからかわれるくらい」 結婚25年にして離婚したのは、ユウコさん(仮名、53歳)だ。夫は学生時代からつきあっていた同い年で、就職3年目で結婚したという。27歳で長女を、29歳で長男を出産。共働きで協力しながら家事も子育てもがんばってきた。) 「ささいなことで口げんかはしても、決定的ないさかいにはならなかった。つきあいが長いからお互いに言ってはいけないことを言わない暗黙のルールができていたんでしょうね。子どもたちが小さいころは家族4人であちこち出かけて楽しい思い出ばかりです」 それなのに、なぜ? 結婚25年を迎えたとき、夫が彼女に尋ねてきた。「記念日に何かほしいものはある?」と。 そのときふと、『自由がほしい』と口から言葉が飛び出したんです。長男が成人になって、ようやく肩の荷が下りた時期だったし、私自身が更年期真っただ中で、若いころを思い返して独身時代にもっといろいろなことをしたかったという後悔もあった。そんな思いが口をついて出たんでしょうね」 これに対して、「きみは自由だよ。ひとりで旅行したければすればいいし、やりたいことがあればやればいい」と夫。だが、ユウコさんはそう言われること自体が「うっとうしかった」。 「私、男性は夫しか知らないんです。恋愛は夫だけ。それでいいと思っていたけど更年期を迎えて、もっと独身生活を楽しめばよかったという気持ちが強くなっていた。夫が嫌になったわけじゃないんです。だけど息子が成人になったのを機に、家族という枠組みから離れたくなった」 当時、実家でひとり暮らしをしていた実父の認知症が進み、彼女は迷わず父を介護施設に預けることにした。そのとき夫が「ずいぶんドライだな。オレにはできない」と言ったこともひっかかっていた。 「私は私なりに葛藤したから、ああ、夫はしょせん他人なんだなと感じたんです。施設に入れて介護はプロに任せ、頻繁に面会に行ったほうが父も私も幸せだと信じて出した結論だったのに……」 それでも、自分がドライに冷静に考えられるからこそ、家庭と仕事を両立できていることも感じていた。 「これからは仕事だけに没頭したい。たったひとりでがんばってみたい。結婚しているから、男性とふたりだけで食事をしたりお酒を飲みに行ったりすることも極力、控えていたんです。よく考えればどこか夫に遠慮しているところがあった。だからこそうまくいっていたんでしょうけど。結局、25年間、心の中には少しずつ澱(おり)のようなものがたまっていったんでしょうね」』、なるほど。
・『妻からのサイン気づけずに離婚  夫の反対を押し切り、離婚届を置いて家を出たのが3年前。ユウコさんは現在、会社初の女性役員となった。 老後も何となく一緒に暮らしていきたい夫と、新たなチャレンジをしたい妻との間では、温度差が大きい。 定年退職したその日に、5歳年下の妻から離婚をつきつけられたジュンイチさん(仮名、62歳)は、まさに「青天の霹靂(へきれき)だった」と言う。 「結婚して30年、ごく普通の夫婦だと思っていました。暴力をふるったこともないし、借金をつくったこともない。浮気は皆無とはいいませんが、飲んだ勢いで一度きりという関係です。離婚されるようなことは何もしていない。妻にそう言ったら、『何もしていないから離婚なのよ』と静かに言われました。あのときの妻は迫力があった」 妊娠、出産、そして年子のふたりを抱えて悪戦苦闘の育児……。妻は昔のことを持ち出した。折に触れて自分は助けてほしいとサインを出してきたのに、あなたは無視した、と。 「言ってくれれば何でもしたのに。当時、妻の母が近所に住んでいて助けてくれていたので、なまじ私が手を出さないほうがいいと思っていた。ちゃんと言葉にすればよかったじゃないかと言ったら、『言われなくても私がどんなに大変だったかわかるはずでしょ』って。不用意な私の発言も覚えていて責められました。後半生を一緒に生きていくのは無理だと。しかたなく離婚届を書きました」 その2年後、57歳になった妻は10歳年下の男性と再婚した。 「長年一緒にいるからこそ、年をとってから夫婦のありがたみがわかったり味わいが出てきたりするものだと私は信じていました。でも妻はそう思っていなかった。常に新しいことにチャレンジするのが好きだった。その集大成が、私との離婚、若い男との再婚だったのかもしれません」 個人差はあるものの、熟年になって新たなチャレンジを好む女性は少なくない。逆に、これまで築いてきた家庭がずっと続くものだと疑わず、習慣や惰性に流され、保守的になるのは男性。 ひとりの人生を歩き出す女性たちは身勝手なのか、それとも正直に生きられる時代が来たと思うべきなのだろうか』、「夫の反対を押し切り、離婚届を置いて家を出たのが3年前。ユウコさんは現在、会社初の女性役員となった。 老後も何となく一緒に暮らしていきたい夫と、新たなチャレンジをしたい妻との間では、温度差が大きい」、これでは水と油だ。「定年退職したその日に、5歳年下の妻から離婚をつきつけられた」、「まさに「青天の霹靂」」、事前に予感を感じていなかったとしたら、よほど鈍感なのだろう。「熟年になって新たなチャレンジを好む女性は少なくない。逆に、これまで築いてきた家庭がずっと続くものだと疑わず、習慣や惰性に流され、保守的になるのは男性」、ポイ捨てされないよう気をつけよう。

次に、2月2日付け東洋経済オンラインが掲載した経営コンサルタントの日沖 健氏による「「結婚する男女の激減」が招く日本の恐るべき末路 2020年の婚姻数は戦後最少の52万5490組」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/505870
・『いま、日本の婚姻数(結婚するカップルの数)が激減しています。2020年の婚姻数は戦後最少の52万5490組でした。そして、2021年はさらに最少を更新する可能性があります。 コロナ禍の現在、婚姻数の減少はさほど世間に注目されていません。しかし、婚姻数が減ると出生数が減り、総人口の減少をもたらします。長期的には、経済・社会を大きく変える重大な出来事です。 今回は、結婚数の現状と将来の動向、その影響について考えてみましょう』、興味深そうだ。
・『2021年の婚姻数は史上最少をさらに更新か  まず、婚姻数が現状どう推移しているかを確認します。2020年の婚姻数は52万5490組で、前年59万9007組から12.3%も減少しました。 減少の理由を厚生労働省の担当者は、「改元に伴う令和婚の反動や、新型コロナウイルス感染拡大の影響でカップルが結婚を先延ばしした可能性が考えられる」と説明しています。2019年の婚姻数は、令和婚で7年ぶりに前年比で増加していました。 2021年初めには、コロナが終息するという想定で58万組まで回復するという見通しがありました(リクルートブライダル総研、4月公表)。しかし、コロナが想定外に長引き、1~8月の婚姻数は34万1111組に留まっています(厚生労働省「人口動態統計月報」)。 秋以降の直近の状況について、婚礼関連サービスを提供するスフィア(名古屋市)の岩本直美社長は、次のように指摘しています。 「コロナが長引いて、『さすがにもう待っていられない』ということで、10月以降、延期していた結婚式に踏み切るケースや籍だけ入れるケースが増えています。ただ、地域によって回復に大きな差があります。東海4県で言うと、名古屋など愛知県の都市部ではかなり回復していますが、岐阜・三重・静岡の郡部ではまだまだ結婚式がはばかられるようで、戻りが鈍い印象です」 つまり、1~8月の実績と直近の状況を見ると、2021年は2020年の史上最少をさらに下回る可能性があります 【2022年2月2日17時40分追記】上記説明の正確性を期すために初出時から一部表現を見直しました。) 問題は、この先どうなるかです。壊滅的な事態にもかかわらず婚姻数の減少があまり話題にならないのは、厚生労働省が2020年の減少を特殊事情によると説明している通り、「コロナによる一時的な現象で、コロナが終息すれば戻るでしょ」という認識だと思われます。 しかし、この認識は間違っており、婚姻数の減少はむしろこれからが本番です。まず、婚姻数は長期的に減少傾向にあります。2000年に79.8万組、2010年70.0万組、2020年52.5万組と減り続け、1970年の102.9万組から半世紀でほぼ半減しています。独身志向が高まっていることやそもそも少子化で結婚適齢期の人口が減っていることなどが原因です』、「厚労省」の認識は甘過ぎるようだ。
・『出会いの機会もコロナで激減  そして、この2年間のコロナに対応した生活様式の変化が、減少トレンドに追い打ちをかけています。結婚するには、まず男女の出会いが必要ですが、コロナ対策のイベント中止やテレワークの普及で、出会いの機会が激減しています。 結婚に至るには、出会うだけでなく、カップルになる必要がありますが、マスクで顔が見えない相手のことを好きになるでしょうか。飲食や旅行を制限されて愛が深まるでしょうか。将来の収入を見通せない状況で「結婚しよう!」という気になるでしょうか。 男女が出会ってから結婚するまでの平均交際期間は、4.34年(国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向基本調査」)です。コロナが終息した直後の年は50万組台を回復するかもしれませんが、2019年までに出会っていたカップルの結婚がピークアウトし、コロナ時代になって出会ったカップルの結婚が主流になると、2025年以降、婚姻数は再び激減します。 長期的には、コロナ終息後にどこまで元の生活様式に戻るかが焦点です。多くの企業でテレワークが定着していることから、完全に元通りになることはないでしょう。これらを総合すると、2030年頃には40万組を下回ることになりそうです) 日本では、生まれてくる子どもに占める非嫡出子の割合は2.3%に過ぎません。したがって、婚姻数の減少は出生数の減少、人口の減少に直結します。 仮に年40万組が結婚し、1.3人の子どもを産むとすると、出生数は平均で年52万人です。コロナ前の2019年の出生数が21世紀以降で最少の86万5239人にとどまり、「86万ショック」と騒がれましたが、これをはるかに下回る超少子化です。そして、子どもを産むカップルが減っていくので、状況はさらに悪化し続けます。
 ▽人口減で「韓国消滅」のリスクも(という話をすると、「結婚するかどうか、子どもを産むかどうかは、個人の自由」という反発があります。また、少子化による人口減少については、経済の専門家からも「生産性を高めれば問題ない」といった意見が聞かれます。 こうした意見は一理あるものの、少子化の影響を甘く見過ぎているのではないでしょうか。 少子化で生産年齢人口が減るのに高齢者の数は2042年まで増え続けるので、社会保障(医療・年金)の負担が現役世代に重くのしかかります。人口が減っても国の借金は減らないので、将来の増税懸念が消費を抑制し、経済成長率を下押しし続けます。 そもそも、今後も人口が減り続けて、日本という国を維持できるのか、という究極の大問題があります。人口減少と国家の存亡というと、いま話題になっているのは中国と韓国。とくに韓国は、合計特殊出生率が0.84(2020年)まで急低下し、「人口減少で22世紀に地球上から最初に消滅するのは韓国」(国連人口部、オックスフォード人口問題研究所など)というのが定説になっています。 しかし、日本でも合計特殊出生率が2005年の1.26を底に持ち直していたのが、直近の5年間は連続で低下しており、再び明確な低下トレンドになっています。このまま婚姻数の減少=少子化を放置すると、世界で最初かどうかはともかく、22世紀のどこかで日本は消滅します。 婚姻数の減少を「コロナの一過性の現象」の一言で片付けたり、少子化を「韓国よりはマシ」と溜飲を下げるのは、日本の将来にとってあまりにも危険なのです』、「婚姻数の減少を「コロナの一過性の現象」の一言で片付けたり、少子化を「韓国よりはマシ」と溜飲を下げるのは、日本の将来にとってあまりにも危険なのです」、その通りだが、抜本的な対策が必要になる。それが何かは別途、稿を改めて論じたい。
タグ:(その5)(「もう夫はいらない 邪魔されず生きたい」夫を断捨離する妻のリアル、「結婚する男女の激減」が招く日本の恐るべき末路 2020年の婚姻数は戦後最少の52万5490組) 「婚姻数の減少を「コロナの一過性の現象」の一言で片付けたり、少子化を「韓国よりはマシ」と溜飲を下げるのは、日本の将来にとってあまりにも危険なのです」、その通りだが、抜本的な対策が必要になる。それが何かは別途、稿を改めて論じたい。 「厚労省」の認識は甘過ぎるようだ。 日沖 健氏による「「結婚する男女の激減」が招く日本の恐るべき末路 2020年の婚姻数は戦後最少の52万5490組」 東洋経済オンライン 「夫の反対を押し切り、離婚届を置いて家を出たのが3年前。ユウコさんは現在、会社初の女性役員となった。 老後も何となく一緒に暮らしていきたい夫と、新たなチャレンジをしたい妻との間では、温度差が大きい」、これでは水と油だ。「定年退職したその日に、5歳年下の妻から離婚をつきつけられた」、「まさに「青天の霹靂」」、事前に予感を感じていなかったとしたら、よほど鈍感なのだろう。「熟年になって新たなチャレンジを好む女性は少なくない。逆に、これまで築いてきた家庭がずっと続くものだと疑わず、習慣や惰性に流され、保守的になる 「夫」は「現在は会社の社員寮に住んでいるようだ」、一時的とはいえ、「社員寮」では噂の種となり、さぞかし居心地が悪いだろう。 AERAdot「「もう夫はいらない。邪魔されず生きたい」夫を断捨離する妻のリアル」 恋愛・結婚
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株式・為替相場(その14)(インフレ対処でなぜ利上げ・円高を望む?「根性論的勘違い」の自殺行為だ、「日経平均2万円割れの懸念」が無謀ではない理由 株価下落の理由は「ウクライナ」だけではない、混乱の金融市場「想定すべき次のシナリオ」の中身 経済アナリストが語るウクライナ危機の影響) [金融]

株式・為替相場については、昨年12月7日に取上げた。今日は、(その14)(インフレ対処でなぜ利上げ・円高を望む?「根性論的勘違い」の自殺行為だ、「日経平均2万円割れの懸念」が無謀ではない理由 株価下落の理由は「ウクライナ」だけではない、混乱の金融市場「想定すべき次のシナリオ」の中身 経済アナリストが語るウクライナ危機の影響)である。

先ずは、本年2月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏による「インフレ対処でなぜ利上げ・円高を望む?「根性論的勘違い」の自殺行為だ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/295676
・『日本にもインフレがやって来ている。心配なのは、日本銀行が金融政策を利上げに転じ、円高になることを望む声があることだ。円高に耐えて構造改革せよという「根性論的勘違い」ではないかと思うし、自殺行為だ。日本のインフレ対処にはもっと別にやるべきことがある』、「円高論」を「「根性論的勘違い」ではないかと思うし、自殺行為だ」、とは手厳しい。
・『何十年かぶりにインフレ到来? 環境コストを払い始めている  どうやら何十年かぶりにインフレがやって来るらしい。 昨年12月末時点で、日本の消費者物価指数は前年同月比0.5%の上昇に過ぎないが、企業物価指数は同8.5%も上昇している。主な原因は、対前年同月比で41.9%にも及ぶ輸入物価の上昇で、原油をはじめとするエネルギー価格の上昇と円安の効果が大きい。 エネルギー価格の上昇は、環境問題を意識して化石燃料採掘に対する投資が抑制されることから生じており、今後も「高止まり」する可能性が大きい。世界的な課題として、化石燃料の使用を抑制したいわけなので、燃料価格が上昇することは環境問題への対応としては、目的にかなっている。 われわれは、エネルギー価格の上昇を通じて環境のコストを払い始めているのだと考えることもできる。) 値上がりの範囲はエネルギーにとどまらず、鉄鉱石や銅などの工業原材料、さらには穀物など食料品にも及んでいる。 経済全体を大まかに見ると、企業はコストの上昇を価格に転嫁できておらず、利益の圧迫を受けた状態にある』、「企業はコストの上昇を価格に転嫁できておらず、利益の圧迫を受けた状態にある」、その通りだ。
・『原料などの値上がりコストを払う 「貧乏になりながらのインフレ」  企業側の対策は、各種の合理化によるコスト削減と、製品価格の引き上げだ。ところが、前者は賃金の抑制要因で間接的に需要を圧迫する要因であるし、後者に関しては価格引き上げに厳しい消費者の目線と競合他社との腹の探り合いで、なかなか進まない。 もっとも、経験則的には、「川上」の物価上昇は、半年くらい遅れて「川下」に波及する。昨年春の携帯電話の料金引き下げの影響が今後消えることもあり、消費者物価にもインフレは到来するだろう。 うまい棒が10円から12円に値上げされたり、すき家の牛丼並盛りが昨年12月に値上げされたりしたように、既に値上げが始まった商品もある。 政府と日本銀行は10年近く「2%」のインフレ率の達成を目指してきた。しかし今回のインフレは、好景気で賃金と物価が両方上がるような、「経済の好循環」と共存する望ましいインフレにはほど遠い。 久しぶりのインフレなので、数十年前の高校の政治経済の教科書にあったインフレの分類を思い出そう。経済の需要が活発で起こるディマンドプル・インフレではなく、原料などのコスト高が原因で起こるコストプッシュ・インフレということになる。 輸入を急に減らすことができない財の値上がりによるコストを払いながらの物価上昇だから、国全体としては貧乏になりながらのインフレだ』、「コストプッシュ・インフレ」で、「国全体としては貧乏になりながらのインフレだ」、その通りだ。
・『米国のインフレは大問題に 消費者物価は昨年末に7.0%上昇  米国では、既にインフレが大きな問題になっている。消費者物価は、昨年末には対前年同月比で7.0%もの上昇となっている。 米連邦準備制度理事会(FRB)は、物価の安定と雇用の最大化の二つの目的を持つが、失業率は3.9%と、目処とされる4%を下回っている。そのため、インフレ対策に政策の重点を置くことができる。 FRBのジェローム・パウエル議長は新しい任期を得たので、今は資本市場に少々のショックが起きるリスクを取ってでも、利上げに及んでバランスシートの縮小を推進できる状況にある。 米国のインフレは、資源価格の上昇に加えて、人手不足がもたらす賃金上昇、新型コロナウイルス対策の金融緩和と財政拡張が効き過ぎたことに伴う需要超過といった複数の原因で起こっていると考えられる。需要の抑制につながる利上げを行うことは一定程度合理的だろう。 ただし、供給の制約がある中で、金融の引き締めによって物価を抑制できるところまで需要を供給に合わせて縮小しようとすると、需要を殺し過ぎてしまう懸念がある。また、それ以前に資本市場で「ショック」が起こる可能性を考えなければならない。 投資家としては、米国の株価が心配な展開が続くので、しばらく「気持ちの悪い時間」を過ごすことになる。リスクが過大になっている向きはポートフォリオを調整する方がいいだろう。ただし、「売って、株価の値下がりをかわして」、「下値で投資し直す」という操作はプロでもうまくはいきにくい。 「高値から2〜3割の下落で、回復まで2年程度かかる調整はよくあることだ」というくらいに達観して静観するのがよかろう)  投資家としての「楽しみ」は、資産価格の下落やFRBのバランシート調整に伴う債券市場の混乱で、大型の倒産や金融機関の経営不安などの「ショック」が起こった場合に訪れる。一つは、株価が急落した局面で追加投資できるチャンスが生じること。もう一つは、その後に予想される金融政策の緩和方向への転換で利益が生じる可能性が大きいことだ。 「10年ぶり」クラスのチャンスが生じる可能性は「あるかもしれない」』、「投資家としての「楽しみ」は、資産価格の下落やFRBのバランシート調整に伴う債券市場の混乱で、大型の倒産や金融機関の経営不安などの「ショック」が起こった場合に訪れる」、確かに「ショック」が起きれば、「金融政策の緩和方向への転換」、で「利益が生じる可能性が大きいこと」、なるほど。
・『日本の望ましいインフレ対策は? 利上げ・円高路線は「根性論的勘違い」  「日本にも来るインフレ」で心配なのは、端的に言って日銀が金融政策を利上げに転じて、円高を望む声があることだ。実質金利を上げると円高にはなるだろうが、それで何を望むのか。 かつて日本経済が、オイルショックのコスト高や円高に耐えて成長した頃の成功体験への郷愁があるのかもしれない。しかし、円高かつ実質金利高の環境の方が高付加価値な製品に重点を置く経済構造への転換ができると思うのは、一種の「根性論的勘違い」ではないだろうか。 「企業を円安で甘やかすのは良くない。円高の環境に耐え得るように、企業を鍛え直すべきだ」とでも考えているのだろうか。 企業経営者の目線で考えてみよう。 原材料価格などコストが上昇している。円高になると、これはいくらか緩和されるかもしれないが、製品の国際競争力が落ちるので利益は増えない。加えて実質金利の上昇は、設備投資に対しても研究開発投資に対しても抑制要因だ。 もうかっていて実質金利が低い方が、前向きなビジネスへの投資は行いやすいはずだ。 加えて、日本が今後経験するはずのインフレには、ディマンドプル・インフレ的な要素が乏しい。一時的なコストプッシュ・インフレの影響の後に、実質金利を上げて需要を殺し、再びデフレに戻るのではまずい。) ここで心底心配なのは「岸田リスク」だ。岸田文雄首相は、どうやらアベノミクス路線を修正したいと考えているらしい。 ここで、理由は何であれ、物価上昇率目標の「2%」が達成された場合、これを奇貨として日銀の政策を転換しようとするのではないか。巡り合わせの悪いことに、来春は日銀の正副総裁が任期を迎える。 岸田首相が金融引き締めと財政再建の路線にかじを切った場合、日本の没落はますます深刻なものとなるだろう。一時のインフレが、中期的な経済停滞を生む結果になるのなら憂鬱だ。 金融引き締めで一時的に円高になるなら、子ども世代には海外移住を本気で考えさせるべきかもしれない』、「金融引き締め」でコスト・プッシュ要因が緩和される筈だ。「財政再建」までする必要はない。
・『インフレには財政拡張か減税によるセーフティーネット拡充で対処せよ  今後、コロナの影響から十分回復していない日本経済に、消費者物価が上昇するにもかかわらず、賃上げがこれに追いつかない状況が生じる可能性が大きい。経済全体が窮乏化するしわ寄せが、経済的弱者に回って来そうだ。 円高にして購買力を増す政策は、公務員や連合が対象とするような大企業の正社員のように、給与と雇用が安定している人にはいいかもしれない。しかし、経済全体には停滞要因となるし、雇用が不安定で賃金交渉力が乏しい非正規労働者などの経済状況を悪化させる可能性がある。 インフレによる家計の購買力の低下に対しては、財政的な拡張ないし減税によるセーフティーネットの強化で応えるべきだろう。 例えば、一時金ではなく、「毎月」継続的に入る1万円の給付金を全国民に支給するとしよう。約15兆円の財源が必要だが、これは当初は国債で賄えばいいし、後には富裕層に増税して「再分配」の効果を得たらよい。 毎月の給付金の事務コストが高いというのであれば、基礎年金を全額財政で負担するといい。保険料徴収等の事務コストが大きく減るし、特に低所得な現役世代にとって重い年金保険料を軽減して、「直ちに」手取り所得を増やすことができる。もちろん、将来の無年金者を減らす効果もある(より重要な効果は、手取り所得の増加と、負担の変化を通じて起こる再分配だ)。 工夫の余地はいくらでもある。今後迎えるインフレにあって必要なのは、円高に耐えて構造改革せよという根性論的「厳しさ」ではなく、困っている国民を広く助ける「優しさ」ではなかろうか』、「困っている国民を広く助ける「優しさ」」が必要であることは論ずまでもないが、「円高」のコスト引き下げ効果を無視すべきではない。「円高に耐えて構造改革せよという根性論的「厳しさ」」、は単なる言いがかりに近い。

次に、3月13日付け東洋経済オンラインが掲載した慶應義塾大学大学院准教授の小幡 績氏による「「日経平均2万円割れの懸念」が無謀ではない理由 株価下落の理由は「ウクライナ」だけではない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/538416
・『個人的見解だが、結論から言うと、日経平均株価は2万円割れの可能性まであるだろう。 この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています)。 これを今言うのは、とても危険だ。 原稿執筆時点(3月10日)では、9日のアメリカ株式市場は大幅上昇、10日の日経平均株価も一時は約1000円高となったからだ。 世界は、リスクオフからの反動で、一気にリスクオンに傾いたことが背景で、この動きは広範かつ持続しそうにみえる』、興味深そうだ。
・『「日経平均のさらなる下落」を予想するのは無謀?  原油価格の指標であるWTI先物価格は一気に15ドル前後も下落し、1バレル=105ドル前後に。金もプラチナも小麦もすべての資源、農産物先物が一時大幅下落した。 きっかけは、UAE(アラブ首長国連邦)が大幅増産を行うなどと表明したことだ。おそらく、これまで一気に買いポジションを膨らませていた投機筋が投げ売ったということだろう。 リスクオフの流れに乗った投資筋がすべての市場で手仕舞ったということが理由で、株式もその一環にすぎない。さらに株式に限っては、個人投資家がアメリカの株式市場でも下げ局面で買い続けていた流れが、ここで加速したということもあるだろう。 市場は「ウクライナの最悪期はこれからだが、株式市場の最悪期は去った。今度こそ、市場は停戦後を先取りしている」とはやしそうだ。 そんなタイミングで「まだまだ下がる」、しかも「日経平均2万円割れ」など、誰も想定していない可能性に言及するなんて、阿呆以外の何者でもない。しかし私は、下落の継続・拡大を予想する。競馬予想が外れすぎて、外れ慣れているから、外れても気にしないから、ではない。「下がる確実な理由」があるのだ。 それは、株価が下げてきたのは2つの理由があったにもかかわらず、人々も市場も1つの要因で頭がいっぱいになってしまい、もう1つの理由を忘れてしまっているからだ。) この2つの理由とは、前者はウクライナであり、後者はアメリカの利上げである。すなわち、後者のアメリカの利上げによる下落の部分は忘れられているが、実際に利上げが始まり、またそのペースが以前危惧されたように速いペースになれば、株価はもう一度暴落する。そして、実際に利上げは早いペースで行われ、なおかつ、それでもインフレは止まらない、と私は予測するからだ』、「後者のアメリカの利上げによる下落の部分は忘れられているが、実際に利上げが始まり、またそのペースが以前危惧されたように速いペースになれば、株価はもう一度暴落する」、不都合なことはすぐ「忘れられる」ようだ。
・『株価が一直線に下落しなかった3つの理由  みな忘れているが、株式市場はロシアのウクライナ侵攻が始まる前から下落基調が始まっていた。投資家たちは、アメリカの中央銀行であるFED(連邦準備制度)の一挙手一投足に振り回され、そして最後には利上げがついに始まることにおびえていた。そして、その利上げ時期が大幅に前倒されることが見込まれるようになり、実行が目の前に迫ってきたところだったのだ。 そこへ、ロシアがウクライナ侵攻した。もちろん、株式市場はウクライナリスクで暴落した。しかし意外なことに、直ちに切り返すなど乱高下が続いた。一直線の下落にならなかったのだ。なぜか? その理由は3つあった。 第1の理由は、投資家たちがロシアの意思を理解できていなかったからだ。つまり、その結果、侵攻は脅しにすぎないと思っていたし、侵攻が始まってからも、すぐにロシアが落としどころへ向けて動くと思っていた。 投資家たちは「ロシアが戦争を始めても得などない。だから侵攻は合理的でない。したがって脅しにすぎない」――。そう考えたからだ。 この誤りの背後にあるのは、投資家たちの思考の限界だ。自分の枠組み、思考回路でしか、物事を見ることができない。したがって、つねに起こる誤りのパターンといえる。 むしろ、素人には普通のこと(私をはじめ多くの素人の見方は、ロシアは帝国、プーチンは皇帝だから、何が何でもウクライナに侵攻するというもの)が彼らには見えないわけだ。) 実際の投資家の反応を振り返ってみると、以下のようであった。 「ロシアがウクライナに侵攻する」とアメリカの当局が警告したにもかかわらず、多くの専門家、評論家たちは「合理的でない」として脅しにすぎない、あるいはアメリカが不安をあおっている、と斜に構え、侵攻リスクを株価にほとんど織り込まなかった。しかし現実には、侵攻は起きた。 次に、侵攻が始まると「侵攻はすぐに終わる」「キエフはすぐ陥落する」、あるいは「ロシアも長期化を望まないから、すぐに引いて交渉に入る」などと市場関係者は解説した。株価が大きく下がっても、連続して下がり続けず、ある程度、戻した。市場はすでに収束後を織り込んでいると解説して、この反発上昇を自慢した』、「投資家たちの思考の限界だ。自分の枠組み、思考回路でしか、物事を見ることができない。したがって、つねに起こる誤りのパターンといえる」、その通りだ。
・『「自分たちの願望」を正当化した投資家たち  しかし実際には、侵攻は長期化し、戦闘は泥沼化した。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はとことん攻め続ける意思ははっきりしているのは、誰の目にも明らかだった。 だが、投資家たちは違った。アリバイ作りのような停戦交渉が行われるたびに、収束を期待し、株価は戻した。 しかし、毎回、交渉は成果がないどころか、そもそも「交渉する意味があるのか」と誰もが思うような、ウクライナには到底受け入れられない無理な主張をロシアは続けるだけだった。交渉が失敗に終わるたびに、株価は下落した。 このプロセスを振り返ってわかることは、投資家たちは自分たちの願望でしかロシアのウクライナ侵攻を見ていなかった、ということだ。事実ではなく、願望を正当化して、他人にも押し付けようとする。これが投資家たちが誤った理由の第2であり、これもまた、投資家たちの悪いクセ、お決まりのパターンの1つだ。 彼らの願望を市場価格に実現させようとする、その厚かましさは今回とくにひどかった。ウクライナ侵攻で原油価格が暴騰したこと、および世界的な景気減速懸念により、FEDの利上げが遠のく、あるいはペースが緩やかになると期待して、むしろ株式市場にはプラスの面もある、とまで言ってのけたのだ。 プーチン大統領よりも狂っているのは彼らだ。ありえない。願望を押し通すにもほどがあるだろう。 ウクライナ侵攻は金融引き締めが遠のき、株式市場にプラスという解釈は自分勝手なだけではなく、根本的に間違っていることが問題だ。これが、株式市場が反発した第3の理由だが、投資家の致命的な「構造的誤ちパターン」でもある。 つまり、願望を強引に市場に押し付け続けたあまり、それが願望だか事実だか、自分たちでもわからなくなってしまったのだ。確信犯的に相場に願望を吹聴して、素人にそれが事実と信じ込ませていたのが、最後にはその確信犯的なウソに自分たちがだまされるようになってしまったのだ。 ウクライナ危機があっても、中央銀行は金融引き締めを止めない。それどころか、利上げは加速する。なぜなら、誰でもわかるように、というか現実に起きているように、インフレが加速しているからだ』、「アリバイ作りのような停戦交渉が行われるたびに、収束を期待し、株価は戻した・・・交渉が失敗に終わるたびに、株価は下落」、「投資家たちは自分たちの願望でしかロシアのウクライナ侵攻を見ていなかった、ということだ。事実ではなく、願望を正当化して、他人にも押し付けようとする。これが投資家たちが誤った理由の第2であり、これもまた、投資家たちの悪いクセ、お決まりのパターンの1つだ」、「確信犯的に相場に願望を吹聴して、素人にそれが事実と信じ込ませていたのが、最後にはその確信犯的なウソに自分たちがだまされるようになってしまったのだ。 ウクライナ危機があっても、中央銀行は金融引き締めを止めない。それどころか、利上げは加速」、「最後にはその確信犯的なウソに自分たちがだまされるようになってしまった」には思わず微笑んでしまった。
・『オイルショック時よりもインフレは複雑で手ごわい  原油、天然ガスだけでなく、ありとあらゆる資源は高騰し、世界的な物流チェーンが止まるから、ロシア資源とは直接は無関係でも、すべての原材料の入手コストが上がる。物流効率も悪くなるからコストも上がる。 インフレは、資源価格の高騰分は当然反映されて加速するだけでなく、資源と無関係に、すべてのコストが上昇し、コストプッシュインフレは加速するのだ。買いだめも企業ベースでも消費者ベースでも起きるだろう。オイルショックの再来だ。 これは素人の目には明らかである。しかし、それでも専門家たちは抵抗を続ける。「スタグフレーションは起きない」「オイルショックのときは違う」などと言い張る。 その最後の根拠は「あのときはもともと不況で、失業率も高かった。今回は景気がよく、失業率も歴史的最低水準だ。だから、まったく違う。不況にならないから、スタグフレーションにはならない」と素人たちを説得しようとする。 ありえない。不況の深刻さはもちろん、オイルショック時よりは軽いだろう。しかし、根本はインフレーションである。もともと好景気、コロナで人材不足、賃金上昇が加速しているところに、インフレ要因がさらに重なったのだから、オイルショック時よりもインフレはより複雑で手ごわいということだ。 だから、利上げをしてもインフレは収まらない。そして、利上げをすれば景気は悪化する。だから、不況の程度はオイルショック時よりも軽いが、より手ごわい複雑なインフレである、種類の異なるスタグフレーションが起きるだけだ。) さらに大きな問題は、これまで世界中の中央銀行が、歴史的にはありえない大規模な金融緩和を行ってきたことであり、それに世界が慣れてしまっているということだ。だから、金融引き締めに慣れていた1980年とは異なる。 スタグフレーション、ロシアによるウクライナ侵攻は株式市場に大きなダメージを与えるが、それに加え、何よりも金融引き締めショックが異常な金融緩和による壮大なバブル崩壊に与える影響は、金融緩和が史上最大なのだから、崩壊も史上最大級の可能性がある。 そして、この金融引き締めとインフレの長期継続による株価暴落リスクを、市場は忘れている。忘れたふりをしているうちに、本当に忘れてしまっている』、「何よりも金融引き締めショックが異常な金融緩和による壮大なバブル崩壊に与える影響は、金融緩和が史上最大なのだから、崩壊も史上最大級の可能性がある。 そして、この金融引き締めとインフレの長期継続による株価暴落リスクを、市場は忘れている。忘れたふりをしているうちに、本当に忘れてしまっている」、「市場」の健忘症も困ったものだ。 
・『3月のFOMCが0.25%の利上げになっても結局は暴落へ  まず、3月16日のFOMC(連邦公開市場委員会)の声明文公表で、利上げがウクライナ前の懸念どおり、0.5%の利上げになれば、株価は利上げショックで大暴落となるだろう。 一方、利上げ幅が0.25%にとどまれば、やはり利上げペースは弱まったと願望が実現した(ようにみえる)ことに安堵し、株価は大幅上昇するだろう。しかしそれは、その先の利上げによる暴落を準備する上昇にすぎない。ロシアが侵攻を止めたのちに、利上げペースが加速し、そこで暴落することになるだろう。 そして、ロシアが侵攻を止めても、ロシアが行き詰まって、停戦が実現したとしても、すぐに制裁を解くわけにはいかず、プーチン大統領が消えるまでは続けることになる。実際にはプーチンは簡単には消えないから、制裁は市場の願望からかけ離れて長期化するだろう。 したがって、その先の株価反発の材料もないという事実に、最後は、投資家たちも屈服せざるをえず、株価は低迷を続けることになるだろう。この流れの中で、日経平均は2万円を割ることがあってもまったく不思議ではないのである。(本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)』、「ロシアが侵攻を止めたのちに、利上げペースが加速し、そこで暴落することになるだろう。 そして、ロシアが侵攻を止めても、ロシアが行き詰まって、停戦が実現したとしても、すぐに制裁を解くわけにはいかず、プーチン大統領が消えるまでは続けることになる。実際にはプーチンは簡単には消えないから、制裁は市場の願望からかけ離れて長期化するだろう。 したがって、その先の株価反発の材料もないという事実に、最後は、投資家たちも屈服せざるをえず、株価は低迷を続けることになるだろう。この流れの中で、日経平均は2万円を割ることがあってもまったく不思議ではない」、説得力ある見方だ。

第三に、3月14日付け東洋経済オンライン「混乱の金融市場「想定すべき次のシナリオ」の中身 経済アナリストが語るウクライナ危機の影響」を紹介しよう。
・『ウクライナ危機をきっかけに市場が混乱している。原油価格の指標であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート、先物)は一時、約14年ぶりの高値圏となる1バレル130ドル超を記録。穀物や鉱物も上がるなど、ウクライナ危機が世界の資源価格高騰を招いている。原料高が景気を冷やすとの見方から、日経平均株価は3月8日に2万5000円を割り込んだ。 3月15~16日にはFOMC(アメリカ連邦公開市場委員会)でFRB(アメリカ連邦準備制度理事会)が0.25%の利上げに踏み切る見通し。金利の上昇は株価への逆風とされ、さらなる株価の下げに市場は身構える。 そこで『週刊東洋経済』3月14日発売号は「株の崩落 次の一手」を特集。『会社四季報』2022年2集春号(3月18日発売予定)の業績予想を先取りしたランキングや米国株ランキング、アナリスト・ストラテジストらによる日米株価予想、急落局面に耐える投資術、波乱相場の売り時・買い時の見分け方といった銘柄選びと投資法を徹底解説した。 では、今後の市場の行方はどうなるか。世界のマネーの動向に詳しい、経済アナリストの豊島逸夫氏に市場シナリオについて聞いた』、興味深そうだ。
・『ロシア国債のデフォルトリスクを注視  最悪のリスクシナリオについて検討が必要な状況になりつつある。 3月4日午前、ロシア軍がウクライナの原子力発電所を砲撃したという報道が飛び込んできた。深夜のアメリカ・ニューヨークの金融市場も一時騒然となった。 砲撃報道の前日、アメリカの格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスがロシア国債を格下げしていた。投機的水準への大幅な格下げで、デフォルト(債務不履行)の懸念が高まった直後だった。 ロシア国債のデフォルトのリスクを注視しなければならない。ロシアはブリンクマンシップ(瀬戸際戦術)を取っている。アメリカなど西側諸国が、ロシア国債のデフォルトをあえて放置するような姿勢を見せれば、ロシアは報復として核を一段とちらつかせるのではないか。 今後、ウクライナの国内核施設への砲撃や占拠を拡大すれば、NATO(北大西洋条約機構)との緊張感が高まり、新冷戦も本格化する。 アメリカやNATOが本格的にレーダーや核兵器の照準をロシアに合わせるようなことが話し合われ、核戦争の脅威が現実味を帯びるような事態になれば、金融市場も大きく揺らぎ、株価は大暴落する。 もう1つの心配は中国の出方だ。今のところ中国は、どっちつかずの状態にある。 私は中国の銀行のアドバイザリーを7年間務めた経験による人脈で、日々中国から情報を入手しているが、彼らも読み切れていない。だが、全国人民代表大会(全人代)終了後の最新情報では、さまざまな分野で中国とロシアの協調路線をにじませていくようだ。 中国とロシアは、アメリカの通貨覇権に対する挑戦をあからさまに示している。ロシアは2014年のクリミア危機以降、外貨準備を増やしてきた。 金の保有量はすでに2000トン以上になったので、昨年からは中国の人民元を増やし、中国に歩み寄っている。中国は、苦渋の決断ながら、ロシアと組んでアメリカを敵にする、ということになるとみている』、「西側諸国が、ロシア国債のデフォルトをあえて放置するような姿勢を見せれば、ロシアは報復として核を一段とちらつかせるのではないか」、「放置」せざるを得ないのに、「核を一段とちらつかせる」、とは物騒だ。
・『新冷戦時代に突入なら日本への投資は新興国レベルに  こうした最悪のリスクシナリオが進んだとき、日本はどうなるか。アジアの決済通貨は人民元への傾斜を強めるだろう。 日本円はローカルな通貨となり、円安が一段と進むことになる。通貨の力は、結局は国力によって決まる。これまで日本はアメリカの後ろ盾があったので世界の投資家から資金を集めることができた。 もし新冷戦時代に突入して、日本がスルーされ頭越しに事態が進行すれば、日本への投資は新興国への投資と変わらないぐらいのリスクになるだろう。 ここまでの話は、可能性は低いが、起こらないとは言えないテールリスクとして考えていること。メインシナリオとして考えているのは、もう少しマイルドなものだ。 まず、戦争というリスクのピークは数週間以内に来るのではないか。 地政学的リスクによる資産価格の変動は一時的で長続きはしないというのが、市場関係者が一般的な原則として理解していること。テールリスクのようなことが現実にならなければ、戦争が長期化しても、金融市場へのインパクトは逓減し、さらに陳腐化を速めよう。 ロシアへは確かに強い経済制裁がなされている。ロシアの中央銀行とアメリカの金融機関とのドル取引禁止という措置に踏み込んだのは驚きだった。しかし、ロシア経済は韓国と同程度の規模。世界のGDP(国内総生産)に占める比率は約2%にとどまる。 ロシア制裁がリーマンショックのようなシステミックリスク拡散につながるとは考えにくい。もちろん欧州経済、とくにドイツへの影響は大きいだろうが、アメリカ経済への打撃はさほど大きくないと考えられる』、「もし新冷戦時代に突入して、日本がスルーされ頭越しに事態が進行すれば、日本への投資は新興国への投資と変わらないぐらいのリスクになるだろう」、寂しいことだ。
・『次の最大の関心事はFRB議長がどう動くか  そうなるとマーケットの次の最大の関心事は、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長がどう動くか、だ。3月15~16日のFOMC(米連邦公開市場委員会)後、利上げ回数は徐々に明らかになるだろう。 市場の関心は、FRBの資産圧縮の開始時期、縮小される保有債券の種類と量に移っていく。9兆ドル近くに膨らんだFRBの資産は、夏ぐらいから年末にかけて1兆~1.5兆ドルぐらい減らすとみている。 FRBの基本姿勢は、MBS(住宅ローン担保証券)をまず減らし、国債中心のポートフォリオにすること。短期債は再投資せず自然減で減らせる。しかし、長期債売却は債券市場への影響も強く、市場の混乱を起こさずに資産圧縮を進めることは容易ではない。パウエル議長の真価が問われる。 ウクライナ戦争がエスカレートする中で、アメリカの金融政策は超緩和から引き締めへ歴史的な転換をする。今週は、後世の歴史に残る1ページになりそうだ』、「長期債売却は債券市場への影響も強く、市場の混乱を起こさずに資産圧縮を進めることは容易ではない」、とはいえ、「債券市場」は元来、長期的な見方で「資産圧縮」の影響を冷静に織り込んで形成されるので、「混乱」がそれほどひどくならない可能性もあるのではなかろうか。
タグ:「円高論」を「「根性論的勘違い」ではないかと思うし、自殺行為だ」、とは手厳しい。 山崎 元氏による「インフレ対処でなぜ利上げ・円高を望む?「根性論的勘違い」の自殺行為だ」 ダイヤモンド・オンライン 「長期債売却は債券市場への影響も強く、市場の混乱を起こさずに資産圧縮を進めることは容易ではない」、とはいえ、「債券市場」は元来、長期的な見方で「資産圧縮」の影響を冷静に織り込んで形成されるので、「混乱」がそれほどひどくならない可能性もあるのではなかろうか。 「もし新冷戦時代に突入して、日本がスルーされ頭越しに事態が進行すれば、日本への投資は新興国への投資と変わらないぐらいのリスクになるだろう」、寂しいことだ。 「西側諸国が、ロシア国債のデフォルトをあえて放置するような姿勢を見せれば、ロシアは報復として核を一段とちらつかせるのではないか」、「放置」せざるを得ないのに、「核を一段とちらつかせる」、とは物騒だ。 東洋経済オンライン「混乱の金融市場「想定すべき次のシナリオ」の中身 経済アナリストが語るウクライナ危機の影響」 「ロシアが侵攻を止めたのちに、利上げペースが加速し、そこで暴落することになるだろう。 そして、ロシアが侵攻を止めても、ロシアが行き詰まって、停戦が実現したとしても、すぐに制裁を解くわけにはいかず、プーチン大統領が消えるまでは続けることになる。実際にはプーチンは簡単には消えないから、制裁は市場の願望からかけ離れて長期化するだろう。 したがって、その先の株価反発の材料もないという事実に、最後は、投資家たちも屈服せざるをえず、株価は低迷を続けることになるだろう。この流れの中で、日経平均は2万円を割ることがあって 「何よりも金融引き締めショックが異常な金融緩和による壮大なバブル崩壊に与える影響は、金融緩和が史上最大なのだから、崩壊も史上最大級の可能性がある。 そして、この金融引き締めとインフレの長期継続による株価暴落リスクを、市場は忘れている。忘れたふりをしているうちに、本当に忘れてしまっている」、「市場」の健忘症も困ったものだ。 「アリバイ作りのような停戦交渉が行われるたびに、収束を期待し、株価は戻した・・・交渉が失敗に終わるたびに、株価は下落」、「投資家たちは自分たちの願望でしかロシアのウクライナ侵攻を見ていなかった、ということだ。事実ではなく、願望を正当化して、他人にも押し付けようとする。これが投資家たちが誤った理由の第2であり、これもまた、投資家たちの悪いクセ、お決まりのパターンの1つだ」、「確信犯的に相場に願望を吹聴して、素人にそれが事実と信じ込ませていたのが、最後にはその確信犯的なウソに自分たちがだまされるようになってし 「投資家たちの思考の限界だ。自分の枠組み、思考回路でしか、物事を見ることができない。したがって、つねに起こる誤りのパターンといえる」、その通りだ。 「後者のアメリカの利上げによる下落の部分は忘れられているが、実際に利上げが始まり、またそのペースが以前危惧されたように速いペースになれば、株価はもう一度暴落する」、不都合なことはすぐ「忘れられる」ようだ。 小幡 績氏による「「日経平均2万円割れの懸念」が無謀ではない理由 株価下落の理由は「ウクライナ」だけではない」 東洋経済オンライン 「困っている国民を広く助ける「優しさ」」が必要であることは論ずまでもないが、「円高」のコスト引き下げ効果を無視すべきではない。「円高に耐えて構造改革せよという根性論的「厳しさ」」、は単なる言いがかりに近い。 「金融引き締め」でコスト・プッシュ要因が緩和される筈だ。「財政再建」までする必要はない。 「投資家としての「楽しみ」は、資産価格の下落やFRBのバランシート調整に伴う債券市場の混乱で、大型の倒産や金融機関の経営不安などの「ショック」が起こった場合に訪れる」、確かに「ショック」が起きれば、「金融政策の緩和方向への転換」、で「利益が生じる可能性が大きいこと」、なるほど。 「コストプッシュ・インフレ」で、「国全体としては貧乏になりながらのインフレだ」、その通りだ。 「企業はコストの上昇を価格に転嫁できておらず、利益の圧迫を受けた状態にある」、その通りだ。 (その14)(インフレ対処でなぜ利上げ・円高を望む?「根性論的勘違い」の自殺行為だ、「日経平均2万円割れの懸念」が無謀ではない理由 株価下落の理由は「ウクライナ」だけではない、混乱の金融市場「想定すべき次のシナリオ」の中身 経済アナリストが語るウクライナ危機の影響) 株式・為替相場
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GoTo問題(その3)(天下の愚策「GoTo代替事業」が招く感染急増の最悪シナリオ、HIS(上)GoToトラベル不正受給のキーマンは元社長だった、HIS(下)モンゴルのハーン銀行を子会社に持つ澤田HDを売却、ネット旅行社で浮上 HIS事件との共通点も散見 相次ぐ「GoTo不正」で浮き彫りとなった深すぎる闇) [パンデミック]

GoTo問題については、一昨年12月20日に取上げたままだった。今日は、(その3)(天下の愚策「GoTo代替事業」が招く感染急増の最悪シナリオ、HIS(上)GoToトラベル不正受給のキーマンは元社長だった、HIS(下)モンゴルのハーン銀行を子会社に持つ澤田HDを売却、ネット旅行社で浮上 HIS事件との共通点も散見 相次ぐ「GoTo不正」で浮き彫りとなった深すぎる闇)を取上げよう。

先ずは、昨年3月31日付け日刊ゲンダイ「天下の愚策「GoTo代替事業」が招く感染急増の最悪シナリオ」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/287209
・『再び、天下の愚策を繰り返すのか――。全国で停止中のGoToトラベルに替わる国の支援事業が、4月1日からスタートする。新型コロナウイルスの感染再拡大が勢いを増す中、人の移動を促すアクセルを踏んだら何が起きるのか――。正気の沙汰とは思えない。 国の支援事業は、GoToトラベル再開までの間、5月末まで実施される。県境をまたがない「県内旅行」を独自に観光支援している自治体に対し、国が1人当たり最大7000円を支援する。今年度のGoToトラベル予算が、まだ約1兆2000億円も残っていて、そのうち約3000億円を充てる』、「GoToトラベル」の再開は見送られたが、代わりに地域観光事業支援がスタート。
・『4月1日スタート 全国32道県が対象  もちろん、感染が拡大している自治体には認められないが、それでも感染状況のハードルは低く、「ステージ2」(感染漸増)以下の自治体なら対象となる。厚労省の発表(26日時点)によると、32道県が病床や陽性者数など「ステージ2」の6指標をすべてクリアしている。47都道府県の7割近くがその気になれば国から観光支援を受けられるのである。これから気候がよくなることもあり、7000円の支援を受けられるなら、旅行に行こうという人も多いはずだ。もし、各地で県内旅行が盛り上がったら、どうなるのか』、現実にはそこまでの「盛り上がり」はなかった。
・『驚異の第4波…グーグル予測  宮城では2月に入り、1日の感染者数が1ケタになる日もあり、2月23日からGoToイートを再開したら、人口当たりの感染者数が全国最多となるなど感染爆発を招いた。独自の緊急事態宣言を発令する事態となり、今も深刻な状況が続いている。 GoTo代替事業を強行すれば、各地で宮城の二の舞いになりかねない。西武学園医学技術専門学校東京校校長の中原英臣氏(感染症学)が言う。 「県内に限っても旅行を後押しするのは危険です。ステージ2は感染者が少ないとはいえ、漸増です。検査を受けていない無症状の陽性者もいる。せっかく、漸増で踏んばっていたのに、人の移動が盛んになれば、ステージ3(感染急増)に向かうリスクは高い。第4波は変異株が主流になり、第3波をはるかに超える恐れもある。大きな波が押し寄せようとしている時に、自治体に“ニンジン”をぶら下げて、感染リスクの高い事業を国が支援するのは理解に苦しみます」』、なるほど。
・『1日の新規陽性者1万4000人超  各地で急激なリバウンドが広がっている。今後、第4波が第3波を上回るとの観測もある。 グーグル予測(29日時点)によると、3月27日~4月23日の28日間の全国の新規感染者数は計14万1704人。4月7日には、1日に3000人、14日には5000人を突破する。18日には8000人を超え、第3波のピーク7949人(1月8日)を上回る。23日には1万4480人まで膨れ上がると見込んでいる。足元の2000人程度から約7倍である。 このタイミングでの観光支援はどう考えても、むちゃだ。予算が余っているなら、医療支援に回せばいいのに、菅政権はGoTo予算の消化に固執しているのだから、どうかしている。 あちこちで感染爆発が起きてもおかしくない』、岸田内閣になっても、「GoToトラベル」再開は塩漬け状態だ。

次に、2月2日付け日刊ゲンダイが掲載した経済ジャーナリストの有森隆氏による「HIS(上)GoToトラベル不正受給のキーマンは元社長だった」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/300756
・『旅行大手エイチ・アイ・エス(HIS)は2021年12月28日、子会社2社による政府の観光支援事業「GoToトラベル」の給付金不正受給問題を受け、管理監督責任を怠ったとして創業者の澤田秀雄会長兼社長ら取締役3人の減俸を発表した。 澤田は月額報酬を3カ月間75%減額し、子会社の取締役を兼務する中森達也専務、織田正幸常務は同50%減とした。 子会社2社のうち、悪質性が高いと認定したミキ・ツーリスト(東京・港区)の檀原徹典社長は解任。ジャパンホリデートラベル(大阪市)については不正受給をしたものの故意ではなかったと判断。呉煜康社長は取締役に降格となった。 観光庁が同日に発表した調査結果によると、ミキ社とジャパン社はホテル運営会社JHAT(ジェイハット、東京・港区)と合計7億9900万円の給付を申請し、うち3億1600万円を受給していた。地域共通クーポンも3社合計で3億4200万円分の発行を受け、3億3100万円分が使われていた。 観光庁は給付金と地域共通クーポンの不正使用分の返還を求める。今後、再開される予定の「GoToトラベル」に関して3社の参加を停止した。 斉藤鉄夫国土交通相は同日の会見で、HISを厳重注意したと明らかにし、「刑事告訴を視野に入れる」とした。給付金不正受給問題は刑事事件に発展することになる。 HIS子会社のGoTo不正受給をスクープしたのはTBS「news23」の「調査報道23時」(12月9日)の一連の報道。「仕掛け人は元HIS社長でJHATの平林朗社長だ」と報じた』、驚くべき事件で、HISが舞台になった点では、「澤田会長」の責任も重大だ。
・『かつては澤田会長の側近  TBSの報道を受け、HISは顧問弁護士らでつくる調査委員会を立ち上げ、同24日、調査報告書を公表した。会見で、「かつてHIS社長だった平林朗が不正に関わっていたのか」と問われた澤田は「むかついている。なんでそんなことをしたのか」と憤りをあらわにしたと伝わっている。 平林は澤田の最側近だった人物だ。澤田は世界50カ国を旅し、その体験をもとに、帰国後、若者向けの個人旅行の格安旅行券の販売を始めた。 平林もフリーターの海外放浪者だった。旅行ガイドのアルバイトをしながら米国、中南米を放浪。帰国後の1993年9月、アルバイトとしてHISに入社。翌94年、正社員となり、インドネシア・バリ島に開設する支店を実質的に立ち上げた。 その働きぶりが澤田の目に留まり、34歳で2000人のスタッフを擁する関東営業本部長代理に就任。08年4月、40歳の若さで社長に大抜擢された。 会長だった澤田は長崎県佐世保市の大型リゾート施設、ハウステンボスの再建を引き受けハウステンボス内に定住した。 澤田は16年11月、HISの社長に復帰した。平林は代表権のない副会長にタナ上げされた。誰が見ても降格人事だった。) トップの座から引きずり降ろされた平林は、面白かろうはずがない。17年10月末、“一身上の都合”でHIS副会長を退任。同じタイミングで、取締役の高木潔も去った。高木はハウステンボスの専務取締役として、テーマパークの復活を牽引した立役者だ。 平林は18年6月、訪日観光客を対象としたホテルを運営するJHATを立ち上げる。社長は平林、副社長にはHISを同時に辞めた高木が就いた。国内外の金融・小売・旅行会社が出資した。 「MONday(マンデー)」の名称のホテルを全国展開する。東京オリンピック・パラリンピックが開催される20年までに東京都心と京都市で計8施設を開く計画だったが、新型コロナウイルスの感染拡大が平林のもくろみをご破算にした。訪日外国人旅行者向けのホテルと外国人労働者を対象としたアパートメントホテルが2本立てのビジネスモデルは成り立たなくなった。) 資金繰りに窮した揚げ句、架空の宿泊プランをデッチ上げ、GoTo不正受給に走ったとされる。 澤田は12月24日の記者会見で、平林との現在の関係について、「私がハウステンボスの社長をしていた時にHISの社長を任せたが、私がHISに戻った時に外れてもらった。それ以降、話し合いをしたことも取引も一切ない」と突き放した。「当たり前だが、今後はJHATと取引は一切しないし、関連会社にもさせない」と言い切った。 GoTo不正受給の問題だけが、澤田をこれほど苛立たせていたわけではない。=敬称略)』、「澤田は・・・私がハウステンボスの社長をしていた時にHISの社長を任せたが、私がHISに戻った時に外れてもらった。それ以降、話し合いをしたことも取引も一切ない」、社長を外して以降は、「話し合い」も「一切ない」というのは、どう考えても不自然過ぎて、苦し紛れのウソの可能性がある。

第三に、続きを、2月3日付け日刊ゲンダイが掲載した経済ジャーナリストの有森隆氏による「HIS(下)モンゴルのハーン銀行を子会社に持つ澤田HDを売却」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/300814
・『エイチ・アイ・エス(HIS)の創業者、澤田秀雄は“コロナ増資”資金を捻出するために、自分の名前を冠した上場企業を売却した。 モンゴル・ハーン銀行を子会社に持つジャスダック上場の澤田ホールディングスは21年12月14日、臨時株主総会を開き、新体制への移行を決めた。社名を22年1月1日付でHSホールディングス(HD)に変更した。 筆頭株主だった会長の澤田秀雄と社長の上原悦人ら全役員が退任し、新社長には投資会社メタキャピタル(東京・港区)が送り込んだ日本興業銀行(現・みずほ銀行)出身の原田泰成が就任した。 澤田は99年、協立証券(現・エイチ・エス証券)を買収し、金融証券事業に参入。03年、国際入札によってモンゴルのハーン銀行をわずか8億円で買収した。ハーン銀行は首都ウランバートルから遊牧民が暮らす地方まで、モンゴル全土に店舗網を広げ、個人・中小企業などのリテール分野ではモンゴル最大の銀行といわれ、澤田HDの連結売上高の85%、営業利益の90%を稼ぎ出している(21年3月期)。 勢いに乗り、12年、ロシアのソリッド銀行を持ち分法適用会社に。17年、キルギスのキルギスコメルツ銀行を子会社にした。 今回、澤田HDを買収したメタキャピタルは、元ソニー会長の出井伸之が取締役会議長、元財務省理財局次長の小手川大助らが取締役に名を連ねる投資ファンドだ。メタ社は20年2月20日、澤田HDに対しTOB(株式公開買い付け)を実施。208億円を投じ、50.1%を取得して子会社にする計画だった。 澤田と資産管理会社が持ち株会社を全て売り渡せば123億円が手に入る。これがHISの増資を引き受ける原資になるはずだった。だが、TOBは21年7月16日に不成立となるまで343日に及ぶ異例の長期戦となった。モンゴル中央銀行が支配株主の異動について事前の承認を与えない状況が続いたためだ。 ところが事態は急展開する。TOB不成立後、モンゴル中央銀行から事前承認が得られた。メタ社は澤田ら3者との相対取引で株式を取得した。 その結果、21年11月1日付で筆頭株主が異動した。メタ社(名義はウプシロン投資事業)が32.01%を保有する筆頭株主となった。一方、澤田の保有比率は26.81%から12.58%に低下し、第3位の株主に後退した。臨時総会を経て経営陣が入れ替わる素地が出来上がったわけだ。 HSHDの新たなオーナーは社外取締役に就いた服部純市。投資会社メタ社に個人で260億円を拠出している。これが澤田HD買収の“軍資金”となった。 服部純市は世界的時計ブランド・セイコーホールディングスの本家の御曹司。将来のセイコーグループの総帥と目されていた。 ところが、06年11月、グループの製造部門を担うセイコーインスツル(SII)の臨時取締役会で会長の服部純市が解任された。本家の御曹司を追放するクーデターとして話題になった。その彼がHSHDのオーナーとして株式市場のひのき舞台に返り咲いた』、「服部純市」氏も今回の登場人物の派手さに華を添えたようだ。
・『コロナ増資の資金を捻出  HISはコロナ禍で、主力の海外旅行が壊滅的な打撃を受けた。資金難に陥り、“コロナ増資”に走る。20年10月の第三者割当増資は香港のファンドが引き受け、新株予約権を澤田会長兼社長が引き受ける形で222億円を調達した。 さらに21年11月から年末にかけ3回にわけて第三者割当増資を行い、アジア系投資ファンドが資金を出し、新株予約権は澤田に割り当て、最大215億円を調達した。 21年10月期の連結決算は売上高が20年10月期比72%減の1185億円、最終損益は500億円の赤字(20年10月期は250億円の赤字)だった。最終赤字は2期連続で赤字幅は過去最大だ。新型コロナによる渡航制限や水際対策が強化されたため海外旅行の取り扱いが大幅に減った。不正受給は売上高で20億円、最終損益は3億9500万円のマイナスに作用した。 オミクロン株の第6波が襲い、海外旅行の回復のメドは立たない。子会社2社によるGoToトラベルの給付金不正受給事件が追い打ちをかける。 HISは1月18日、「子会社の役員選びにHISがより積極的に関与する」などとする6項目の再発防止策をまとめ観光庁に提出した。澤田秀雄は断崖絶壁に立たされた。=敬称略』、「澤田秀雄は断崖絶壁に立たされた」、同感である。

第四に、3月9日付け東洋経済Plus「ネット旅行社で浮上、HIS事件との共通点も散見 相次ぐ「GoTo不正」で浮き彫りとなった深すぎる闇」を紹介しよう。
・『調査報告書から不正の経緯を読み解くと、あまたの問題点が浮かび上がった。 旅行業界を揺るがす「Go Toトラベル不正問題」。その闇の深さが浮き彫りとなった。 旅行大手エイチ・アイ・エス(HIS)の子会社に続き、2月にGo To トラベルの不適切な申請が判明したネット専業の旅行会社・旅工房。同社は3月2日、西村あさひ法律事務所の高橋宏達弁護士を委員長とする第三者委員会の調査報告書を公表した。 旅工房は個人客に向けてパッケージ旅行を企画・販売し、航空券やホテル宿泊などの旅行商品を販売している。売り上げの大半が海外旅行で、ネットを駆使しつつも、コンシェルジュによるサービスを併用するのが特徴だ。顧客は30~40代の女性が中心となっている』、第3の記事のHIS子会社以外にも、不正事件が発生したようだ。
・『最大で4億円の損失が発生  調査委員会は焦点となった旅行商品について、不泊が多かったことなどから、給付金の対象とすることが不適切とされる可能性があると結論付けた。旅工房は今回の件で、仕入れ先に対して計上している債務が3億1370万円。地域共通クーポンについてもGo To トラベル事務局から9362万円分の返還を求められる可能性があり、最大で4億円超の損失が発生する可能性がある。 また、旅工房については積極的に不適切な催行に関与したわけではなく、Go To トラベルの仕組みから不当な利益を得ようとする取引先に利用された可能性を指摘した。調査報告書から不正の経緯を読み解くと、渦中の旅行商品を取り巻く奇妙な状況やHISグループの問題との関連性、Go To トラベル全体の課題など、あまたの問題点が浮かび上がった。 事の発端は2020年10月、ホテル運営会社JHATの社長で旅工房の社外取締役だった平林朗氏が、ゴルフの場でIT導入補助金の活用支援などを行うB社の社長を旅工房の高山泰仁会長兼社長に紹介したことだ。平林氏は2016年までHISの社長を務め、HISグループにGo Toを利用した不正な取引を持ち掛けたとされる人物でもある。 B社が旅工房に提案したのは、eラーニングでSNSの活用やECサイトの販売ノウハウなどを学ぶ、求職者向けの宿泊付き研修プラン。料金は1人1泊4万円で、2020年11月下旬から2021年1月末までの研修だ。取引をまとめたのは、旅工房の前澤弘基取締役。商品はWebシステム開発などのコンサルティングを行うA社が購入し、その窓口をB社が担当した。 B社は同時にJHAT、HISグループの旅行会社・ジャパンホリデートラベル(以下ジャパンホリデー)とも類似のスキームについて協議しており、参加者の募集も始めていた。これはHISグループの問題における、取引の1つとみられている。 旅工房に提案したプランと合わせると、旅行商品の参加者は2000人を超える。11月、旅工房の常勤取締役の会議でこの点について質問が投げかけられた。この人数を募集できるのか、応募者は実際に宿泊するのかというものだ。これに対し、B社は旅工房の商品に参加する560人のリストを送付。560人は一般人で、本人確認書類も提出する形で申し込みされており、架空ではなかった。 国内旅行の手配ノウハウに乏しい旅工房は、ホテル客室の手配をジャパンホリデーに依頼。11月20日から順次、研修がスタートした』、「560人は一般人で、本人確認書類も提出する形で申し込みされており、架空ではなかった」、その面では問題はなさそうだ。
・『提案者と購入者、研修提供者が同一か  ところが、チェックインの人数が予定よりも少ない。ジャパンホリデーは翌21日、旅工房に状況を確認するように連絡。旅工房もB社に、参加者への連絡を要請した。購入者のA社も3度にわたり参加者にチェックインを促すメールを送信したが、結局、560人中297人が宿泊せず、予定されていた全2万0240泊中1万1078泊が利用されなかった。 A社にとって今回の研修は、育成した人材の派遣・就職によって利益を得るモデル。代金はA社が全額負担し、参加者は無償だった。そのうえ、研修形態は自宅でも受講可能なeラーニングだ。当時はコロナの感染者が急増し、Go To事業への批判が集まっていたこともあり、宿泊をやめた者が多かったようだ。 観光需要を喚起するGo Toの趣旨と異なり、商品自体も研修がメインだった。旅行代金4万円の内訳は、ホテル代が3000円、研修が3万3000円、旅工房の手数料が4000円。Go Toの割引(1万4000円)を差し引くと、実質2万6000円で3万3000円の研修が受けられてしまう。 今回のスキームが呆れるほど悪質なのは、商品を提案したB社、購入したA社、研修を提供したD社が同一または一体だった可能性が高い点だ。つまり、この事業者が購入者として2万6000円を支出しつつ、研修提供者として3万3000円(ホテル代と旅工房の手数料を除く)を得る。「旅行者1人1泊につき7000円の利益を得られるように思える構造となっていた」(調査報告書)のである。 調査委員会から「積極的に関与した可能性は認められない」とされた旅工房にも問題は多い。地域共通クーポンを宿泊者ではなくホテル側に渡し、ホテルがリネン・清掃代として計上(具体的な使途は不明)されていたことがわかった。クーポンは地域の振興が目的で、利用者が宿泊した地域で使うもの。ホテルのリネン代に充てるなど前代未聞だ。これを決めたのは前澤取締役と平林氏だった。 HISグループの問題とも深く関係している。旅工房にジャパンホリデーを紹介したのはB社だ。B社は前述のように、HISグループの問題における取引を行った会社だ。観光庁・Go To トラベル事務局もHISグループの問題と旅工房の事例を1つの問題として調査している。 「共通するスキームが使われているのが事実。進捗を伝えることはできないが、捜査機関と十分に連携して調査している。できるだけ早く刑事告訴したい」(観光庁)』、「研修形態は自宅でも受講可能なeラーニング」、なのに宿泊させるのは不自然だ。「呆れるほど悪質なのは、商品を提案したB社、購入したA社、研修を提供したD社が同一または一体だった可能性が高い点だ。つまり、この事業者が購入者として2万6000円を支出しつつ、研修提供者として3万3000円(ホテル代と旅工房の手数料を除く)を得る。「旅行者1人1泊につき7000円の利益を得られるように思える構造となっていた」、酷い話だ。
・『Go To復活へ再発防止できるか  調査委員会は事業者を問わず、Go To全体の運用実態にも疑問を投げかけている。利用者が割引やクーポンを受けていながら宿泊せず、給付金の返還を請求されていない例は「むしろ多数存在していたと推測される」(調査報告書)。宿泊するつもりがなく旅行商品を購入し、今回の研修に当たる付帯サービスのみ提供を受けた例も「相当数存在したと考えられる」(同)としているのだ。 観光庁はこうした報告書の指摘に対し、「不泊が対象外というのは一貫してきた。不適切な事案を放置しているように言われるのは心外。審査は事細かくやっている」と反論している。 Go To事務局側も事業者への説明やサポートが不十分で、対象商品の明確化が遅れた側面はある。だが、観光需要の喚起という趣旨から逸脱した例が多く存在したとすれば大問題だろう。Go To再開には、全容解明と同時に再発防止策が打たれ、旅行業界に対する不信が払拭されることが必須条件だ』、「宿泊するつもりがなく旅行商品を購入し、今回の研修に当たる付帯サービスのみ提供を受けた例も「相当数存在したと考えられる」、「GoToトラベル」に伴う問題の多くは、制度設計のいい加減さがある。「GoToトラベル」を復活するには、制度の再設計が必要だが、私は「GoToトラベル」復活そのものに反対である。余った予算は大蔵省に戻すべきだ。
タグ:「560人は一般人で、本人確認書類も提出する形で申し込みされており、架空ではなかった」、その面では問題はなさそうだ。 (その3)(天下の愚策「GoTo代替事業」が招く感染急増の最悪シナリオ、HIS(上)GoToトラベル不正受給のキーマンは元社長だった、HIS(下)モンゴルのハーン銀行を子会社に持つ澤田HDを売却、ネット旅行社で浮上 HIS事件との共通点も散見 相次ぐ「GoTo不正」で浮き彫りとなった深すぎる闇) 第3の記事のHIS子会社以外にも、不正事件が発生したようだ。 GoTo問題 有森隆氏による「HIS(上)GoToトラベル不正受給のキーマンは元社長だった」 「GoToトラベル」の再開は見送られたが、代わりに地域観光事業支援がスタート。 「研修形態は自宅でも受講可能なeラーニング」、なのに宿泊させるのは不自然だ。 現実にはそこまでの「盛り上がり」はなかった。 「澤田秀雄は断崖絶壁に立たされた」、同感である。 東洋経済Plus「ネット旅行社で浮上、HIS事件との共通点も散見 相次ぐ「GoTo不正」で浮き彫りとなった深すぎる闇」 日刊ゲンダイ 岸田内閣になっても、「GoToトラベル」再開は塩漬け状態だ。 「服部純市」氏も今回の登場人物の派手さに華を添えたようだ。 有森隆氏による「HIS(下)モンゴルのハーン銀行を子会社に持つ澤田HDを売却」 「澤田は・・・私がハウステンボスの社長をしていた時にHISの社長を任せたが、私がHISに戻った時に外れてもらった。それ以降、話し合いをしたことも取引も一切ない」、社長を外して以降は、「話し合い」も「一切ない」というのは、どう考えても不自然過ぎて、苦し紛れのウソの可能性がある。 「呆れるほど悪質なのは、商品を提案したB社、購入したA社、研修を提供したD社が同一または一体だった可能性が高い点だ。つまり、この事業者が購入者として2万6000円を支出しつつ、研修提供者として3万3000円(ホテル代と旅工房の手数料を除く)を得る。「旅行者1人1泊につき7000円の利益を得られるように思える構造となっていた」、酷い話だ。 「宿泊するつもりがなく旅行商品を購入し、今回の研修に当たる付帯サービスのみ提供を受けた例も「相当数存在したと考えられる」、「GoToトラベル」に伴う問題の多くは、制度設計のいい加減さがある。「GoToトラベル」を復活するには、制度の再設計が必要だが、私は「GoToトラベル」復活そのものに反対である。余った予算は大蔵省に戻すべきだ。 驚くべき事件で、HISが舞台になった点では、「澤田会長」の責任も重大だ。 日刊ゲンダイ「天下の愚策「GoTo代替事業」が招く感染急増の最悪シナリオ」
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就活(就職活動)(その9)(失礼な面接官に反撃!ネットでバズったエンジニアが気づかない中途採用の現実、使い勝手がいいだけの「高学歴体育会系」は就活で重視されない? 新卒一括採用の変化、「体育会系は就職に強い」神話の崩壊で 変わる就活の最新事情とは) [社会]

就活(就職活動)については、昨年9月21日に取上げた。今日は、(その9)(失礼な面接官に反撃!ネットでバズったエンジニアが気づかない中途採用の現実、使い勝手がいいだけの「高学歴体育会系」は就活で重視されない? 新卒一括採用の変化、「体育会系は就職に強い」神話の崩壊で 変わる就活の最新事情とは)である。

先ずは、昨年11月26日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した百年コンサルティング代表の鈴木貴博氏による「失礼な面接官に反撃!ネットでバズったエンジニアが気づかない中途採用の現実」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/288688
・『中途採用の面接でのエピソードが話題  少し前に転職ニュースサイト(キャリコネニュース)で、中途採用の面接に関する記事がバズっていました。 大学院卒のエンジニアが転職活動の際、自分のバックグラウンドが生きる別の企業に応募したときに中途採用面接でとんでもない面接官に遭遇したという体験談です。 その面接官は開発部署から来た人間で、あいさつも自己紹介もなしにドカっと座ると、履歴書を見たうえで「早い話が素人で、この業界について何も分かっていない」応募者だと決めつけて、横柄な態度で面接を始めたというのです。 あまりに失礼だったことから、このエンジニアは、その面接官に対してピシャリと言い返してその場を去り、人事部に対して丁寧に応募辞退を伝えたという内容でした。 記事の中ではその的確で小気味のいい反論が読者の爽快感をうながすとともに、その面接官のような古いタイプの技術者がいる会社は、自ら若い研究者の活躍を妨げる会社なのだと分析しているようでした。 記事としてはおもしろくまとまっているエピソードなのですが、「やられたらやり返せ」とでも言うべき、この小気味いい反撃に成功した彼がひょっとすると気づかなかったことがあるかもしれません』、野次馬的には「面接官」がその後、どうなったのかに興味がある。
・『IT企業経営者が明かした、中途採用で最も重視するもの  エンジニアの彼とは異なる視点から面接を見ると、「気づかなかった可能性」について考えられるでしょう。それは、こんな話です。現在ではコンプラに抵触する可能性もある話なので、具体的な企業名は匿名で記事を書かせてください。 私がずいぶん前にお世話になったIT企業のオーナー経営者が教えてくれた話です。 彼の会社はグローバルに急成長した日本企業で、おそらく当時は日本で幹部クラスの中途採用人数が最も多い企業の一つだったと思います。さらに優秀な人材をヘッドハントして成功していると、外部から高く評価されていました。 その社長があるとき、採用の秘密について教えてくれました。 彼が有名企業からの転職希望者を採用するかしないかの最終判断をする際に、最も重視するのは、地頭の良さや業界知識など、いわゆるビジネスパーソンとしての優秀さではなく「打たれ強さ」だと話してくれました。 確かに、外部から見ても、その会社で戦力となるためには一般企業よりもストレス耐性が必要な環境であることは間違いなかったと思います。市場環境的には超がつく成長市場ではあるのですが、競争は厳しく、業績目標も高い。さらに事業セグメントによっては行政とのかかわりが強いのですが、そこではかなり理不尽な横やりが入ってくることもあります。しかもオーナー社長自身の個性が強く、控えめに表現してもパワハラ気味な方でした。 そのオーナー社長がおっしゃるには、彼に手厳しく言い込められたぐらいで萎縮する人材だと社内的にも対外的にも勝ち残っていけないというのです。 こんな背景があったことから当時、この会社の採用面接では圧迫面接を行っていました』、「圧迫面接」とは何だろう。
・『エリートビジネスパーソンに求められていた理想像  圧迫面接とは、90年頃にアメリカで発明された面接手法と言われており、私が知る限り、20年前ぐらいが使われるブームとしてはピークだったと思います。主に大企業の幹部面接のプロセスの途中で、高圧的でとても理不尽な態度を取る幹部が面接官として登場するというものです。 面接官は役割として、不機嫌で否定的な面接官を演じます。候補者にわざと意地悪な質問をしたり、威圧的に反論をしたりとマウンティングを繰り返します。実は面接官としての彼が見ているポイントは、そのような場面に直面した際に、感情的にならずに冷静に対応する態度が取れるかどうかです。ここでマイナスに評価されるのは感情的に反論する場合や、面接官に対して不快感を表す場合、ないしは逆に萎縮して黙り込んでしまう場合です。 大前提として、アメリカでは典型的なエリートビジネスパーソン像というものがあります。例えば、手ごわい取引先に対してタフネゴシエーターとして粘り強く交渉ができたり、如才なく立ち回り、あざやかに場の空気を変えてみせたりといったスーパーマンのような活躍を見せる人材が経営幹部層に登用されます。そういった人材なら、まず間違いなく圧迫面接を満点でクリアできる……。 私に秘密を話してくれたIT企業のオーナー社長も、以上のような情報から自社でも圧迫面接を取り入れたのだと思います。 なお、このIT企業の場合、圧迫面接の面接官に頻繁に起用される幹部がいらっしゃいました。その方は、本当はおちゃめでユーモアの利いた方なのですが、一見強面に見える外見を活用して嫌なタイプの面接官を演じるのがとても上手でした。ちなみに採用決定後は、圧迫面接をした相手と一席設け、ネタばらしをしたうえで仲直りをするのが彼のルーティーンでした』、「圧迫面接とは、90年頃にアメリカで発明された面接手法」、「高圧的でとても理不尽な態度を取る幹部が面接官として登場」、「面接官は役割として、不機嫌で否定的な面接官を演じます。候補者にわざと意地悪な質問をしたり、威圧的に反論をしたりとマウンティングを繰り返します。実は面接官としての彼が見ているポイントは、そのような場面に直面した際に、感情的にならずに冷静に対応する態度が取れるかどうかです」、「圧迫面接の面接官に頻繁に起用される幹部」の場合、「採用決定後は、圧迫面接をした相手と一席設け、ネタばらしをしたうえで仲直りをするのが彼のルーティーンでした」、そうでもしないと同じ会社内では気まずくなるだろう。
・『圧迫面接は時代遅れになっているものの、必要なケースも  現在、この圧迫面接は日本では以前と比べればかなり下火になってきたようです。転職志望者の間でその企業に対する悪評が広まるというデメリットが大きいという理由もそのひとつです。また「圧迫面接というものが存在する」ということを転職志望者が知ることになり、対策マニュアルまで作られるようになったというのもすたれた別の理由です。 さらに圧迫面接の使い方を間違える企業が、問題になったこともあります。 採用プロセスで圧迫を与えることがはやっているという点だけを切り取って、中途ではなく新卒採用のプログラムで、面接官が自己流で圧迫面接をするような例が典型です。私からみればビジネスパーソンとしての場数が少ない学生に、圧迫下で冷静でいられるかどうかを評価することにあまり意味があるとは思えません。そもそも態度の悪い面接官が圧迫面接という言葉を、自分を正当化するために使ったりする例も出てきて問題になったりもしました。 要するに、20年前と比べると圧迫面接はいろいろな観点からやや時代遅れになってきているのです。 とはいえ、入社後の実際の職場では、立場が優位にある取引相手からの圧力を冷静にいなしていく能力が必要とされるケースは少なからずあります。私見ですが、特に新規事業で役所や偉い大学の先生たちを巻き込んで社会常識を変えていくような局面では、圧迫への対抗力は重要です。 20年前に大企業がよくやっていたような圧迫面接は、今や場合によってはパワハラとして裁判所に提訴される可能性があるという時代です。そのため、企業側の対応も進化していて、法律的にはパワハラにならない範囲内での圧迫を試すなどといったことは行われている場合もあります』、「20年前と比べると圧迫面接はいろいろな観点からやや時代遅れになってきている」、「入社後の実際の職場では、立場が優位にある取引相手からの圧力を冷静にいなしていく能力が必要とされるケースは少なからずあります」、「法律的にはパワハラにならない範囲内での圧迫を試すなどといったことは行われている場合もあります」、なるほど。
・『冒頭のエンジニアの面接の見方を変えると、評価は様変わり  冒頭で紹介した「とんでもない面接官に遭遇した」というエピソードですが、遭遇した面接官は確かにただの態度の悪い中年管理職だったのかもしれません。しかしひょっとすると、採用候補者の適性をチェックするための演技だった可能性も半々ぐらいであるかもしれないケースだと私は思いました。 中途入社したら自分の上司となるかもしれない面接官で、あいさつも自己紹介もなしに履歴書に目を落として「早い話が素人で、この業界について何も分かってない」と挑発する…。冒頭の記事では、応募者のエンジニアはその会社に入社しない意思を固め、面接官にピシャリとやって、人事担当者に丁寧にお断りの連絡を入れています。 もしこれが単なる嫌な中年管理職面接官ではなく、意図があって設計された面接プログラムだったとしたら?  「職場に嫌な人がいるだけで一緒には仕事ができない社員」や「取引先の理不尽な要求に暴発してより事態を悪化させる社員」を雇わないために用意された踏み絵だったとしたら? その場合には冒頭のエピソードの見え方は変わってきます。 私が30年以上携わってきたコンサルティングの現場では、コンサルタントのことを「早い話が素人で、この業界について何も分かっていない」と挑発するクライアント企業幹部と何回も遭遇します。冷静にそういった相手とコミュニケーションを重ねながら粘り強く信頼を勝ち得て、関係を変えていくスキルがコンサルタントには求められます。 結局のところ当事者ではないので、冒頭のエピソードの裏にあった真実は想像するしかありません。しかし世の中にはこういった裏事情があるものだということも、ビジネスパーソンとして知っておいて損はないと私は思います』、「コンサルティングの現場では、コンサルタントのことを「早い話が素人で、この業界について何も分かっていない」と挑発するクライアント企業幹部と何回も遭遇します。冷静にそういった相手とコミュニケーションを重ねながら粘り強く信頼を勝ち得て、関係を変えていくスキルがコンサルタントには求められます」、「コンサルタント」に限らず、「ビジネスパーソン」でも一流の人物にとっては求められているといえよう。

次に、1月24日付け弁護士ドットコム「使い勝手がいいだけの「高学歴体育会系」は就活で重視されない? 新卒一括採用の変化」を紹介しよう。
https://www.bengo4.com/c_5/n_13974/
・『経団連が1月18日に発表した春闘方針「経営労働政策特別委員会報告」で、日本型雇用システムの見直しに向けた視点の一つとして、採用方法の多様化が盛り込まれた。 報告書では、従来の新卒一括採用について、計画的で安定的な採用や、自社に適した人材育成などでメリットがあるとする一方で、新卒時以外の入社機会が限られてしまうことや、中小企業やスタートアップ企業による人材獲得や、起業に失敗した人の再チャレンジを阻害している可能性などをデメリットとして挙げている。 そのうえで、新卒一括による採用割合を見直し、通年採用や中途・経験者採用の導入・拡大をさらに進めていくことだ有効だとしている。 これまで何度も、新卒一括採用の見直しが叫ばれてきたが、今後、どうなっていくのか。採用の問題に詳しい碇邦生・大分大学経済学部講師に聞いた(Qは聞き手の質問、Aは碇邦生氏の回答)、興味深そうだ。
・『採用の時期から、採用のあり方をめぐる議論へ  Q:新卒一括採用については、賛否両論ありますが、どう捉えればいいのでしょうか。 A:様々な立場の人の思惑が絡んでいて、全体像を語れる人はほとんどいません。例えば学問分野でも、経済学、政治学、法学、社会学と多岐にわたります。さらに、企業、大学、学生のどこの立場で考えるのかによっても視点が異なります。 国単位で考えても、経団連は企業の視点で、経産省も企業の競争力を高める方向性ですが、厚労省は雇用を守りたいということで一枚岩ではありません。 Q:そのような利害関係の複雑さによって、議論が膠着状態に陥ってきた面があるのでしょうか。 A:それはありますね。しかし、5年くらい前から、新卒一括採用を変えようとする側の思惑が多様化して、議論に変化が見られます。それまでの議論は、大学生がどの時期に就活をするのかという「時期問題」に終始していました。 一番初めに変えようと言い始めたのが、バブル崩壊後の1990年前半で、多くのIT企業が生まれた2000年代の議論も同じでした。企業は時期に関係なく高学歴の学生を青田買いしたいと考えましたが、経団連が倫理憲章を作って規制し、学校側も学生生活の確保のために賛同しました。 現在は、グローバル化が進んで日本独自の新卒一括採用を不便に感じる企業が出てきました。職種を絞り込んだジョブ型雇用や通年採用に舵を切る必要が出てきたのです。グローバル企業だけではなく、育成に余裕のない企業も同様です。 そして、これまで以上に学生の専門性を見るようにもなりました。例えば、法学部の学生やロースクール出身者であれば、法務部や知財管理に配属した方が人材育成のコストが下げられる、といった考え方です。学校の勉強と仕事をリンクさせる方向に変わってきたのはこの10年くらいです』、「現在は、グローバル化が進んで日本独自の新卒一括採用を不便に感じる企業が出てきました」、「学校の勉強と仕事をリンクさせる方向に変わってきたのはこの10年くらいです」、なるほど。
・『採用のあり方は一様ではなく、モザイクに  Q:そうは言っても、大企業が、大学時代の学びではなく、高学歴の体育会系で、「何でもやります」「協調性があります」という学生をポテンシャル重視で採用する流れも残っているのではないでしょうか。 A:今までは、高学歴体育会系を好んで採用していると言われてきた商社でも、そのような学生を落とすようになってきたという話を関係者から聞いたことがあります。 同じ大学でも起業していたり、世界に目を向けたりしている学生の方が欲しいそうです。使い勝手はいいけれども、純粋無垢なので育ててもらうのが前提といった学生は、高学歴であっても、時代の流れを読む力が無さすぎると捉えられるということですね。 しかし、当然企業によって違いがあります。育成することが前提で、気合と根性があれば良いという企業もあります。そういう意味では、採用のあり方は一様ではなく、モザイクになっています』、「今までは、高学歴体育会系を好んで採用していると言われてきた商社でも、そのような学生を落とすようになってきた」、「採用のあり方は一様ではなく、モザイクになっています」、多様化してきたのは好ましいことだ。
・『新卒一括採用はボリュームゾーンの学生たちを救ってきた  Q:ここまでは企業側の視点でしたが、学生は新卒一括採用が続くことを望んでいるのでしょうか。学生の能力を「上」「中」「下」に分類した時に、就職後の企業内教育に期待できるということで、「中」や「下」の学生にとってのメリットが大きかったように思います。 日本の学校教育が、ボリュームゾーンである「中」に対してのケアが厚いのと同様に、新卒一括採用も、その層を中心に救っている面があります。 一方で、「上」の学生への支援はあまりありません。「中」や「下」の学生と同じルールじゃないと就職できないのが現状です。見えないガラスの天井にぶつかってやる気を無くすケースも結構あります。 ですから、フランスのカードル制(注)のように、上位層を別区分にして、とことん働いて出世していく層と、そこそこ働いて楽しい人生を謳歌するけれども、出世はしない層とに分けるべきだという意見もあります』、棲み分けは過度な競争を避ける上で有効だが、果たして同質性の高い日本に馴染むかは疑問だ。
(注)カードル制:上層ホワイトカラーはカードルと呼ばれる。グランドゼコールを中心とする教育システムのなかから生み出される(葉山 滉、「フランスの経済エリート―カードル階層の雇用システム」、日本評論社)。
・『「大学は職業訓練校になるべき」論の問題点  Q:次は大学側の視点の話なのですが、文系を中心に、大学の学問と仕事の内容は今もあまりリンクしていません。スキルを重視した採用に変わっていくのであれば、大学は職業訓練校のようになるべきでしょうか。 A:学生に仕事に直結したことを教えたいのなら、アメリカのように教育と研究を分ける必要があります。 研究を担う人たちを分けないと基礎研究が死んで、研究テーマも狭まってしまいます。例えば紫式部を研究するような、直接世の中の役には立たない学問がなくなってしまうのは困ります。 しかし今のところ、日本の大学は職業訓練校になることの踏ん切りがついていません。日本のジョブ型雇用がアメリカのように積極的にならない理由でもあります。 Q:それはなぜでしょうか。 A:日本の大学が研究も教育もしているのは、日本が貧乏で予算がないからです。人件費も抑えて、教員数も減らして、できるだけお金をかけずに少人数でやりましょうという方向になっています。 このような現状を打開しようと、日本電産の永守重信氏のように自分で大学を作ることで教育改革に乗り出す実業家も出てきています。世界的にも、このような実業家や企業が大学を作る事例は少なくありません。教育改革の方向性の1つとしてあるでしょう。 日本は30年以上、経済全体も企業も元気がありません。予算の問題がずっとつきまとって何も変わらないままでいると、新卒採用も含めて化石化してしまいます。まずは日本国内が元気にならないと始まりません。だから世界で戦える企業をもっと増やさないといけません。 Q:まずは企業が変わらないといけないということでしょうか。 A:変えようと思ったら企業はいくらでも変えられるんですよ。ソフトバンクも楽天も新卒一括採用のルールに縛られずに独自の施策を打ち出しています。大事なのは新しいことに挑戦している企業の足を引っ張らないことです。だから新卒一括採用をする企業としない企業のどちらもあっていいんです。 「日本的」新卒一括採用を変化させるには「日本的」を無くさなくてはいけません。新卒採用は多様なやり方があって良いんです。企業が戦っているフィールドに応じて、やり方を変えればいいだけです』、「変えようと思ったら企業はいくらでも変えられるんですよ。ソフトバンクも楽天も新卒一括採用のルールに縛られずに独自の施策を打ち出しています。大事なのは新しいことに挑戦している企業の足を引っ張らないことです」、その通りだ。
・『部分的でいいので、「出る杭」を伸ばす仕組みに  Q:採用とキャリア形成の多様化が求められているということでしょうか。 A:システムで全部変えるにはお金が足りません。ですから、そのお金を稼ぐ手段は「出る杭」の人たちをどれだけ支援して成功させるかが重要なんです。例えば前澤友作さんのように、宇宙に行ってしまうほど成功する人たちですね。 そのためには自分が所属しているコミュニティの中で、上に行きたい人とそうじゃない人が自分で選択できる、キャリアの多様化が必要なのです。 しかし、いま上手くやっているところまで無理に変える必要はありません。部分的に「出る杭」を伸ばせば良いんです。成功は一握りの人が手にするものだと歴史的にも物理学的にも立証されています。 そのような人たちを定期的に出して、周りの人たちを引っ張り上げてもらうという仕組みを作らなくてはいけません。新卒採用も、「出る杭」を受け止められるように改善していくべきでしょう。( 碇邦生氏の略歴はリンク先参照)』、「前澤友作」氏は、高校卒業後、米国に半年間遊学、バンド活動の傍ら、CDやレコードの輸入販売を始め、インターネット上のセレクトショップを集積した「ZOZOTOWN」を新たに開設(Wikipedia)という経歴の通り、「出る杭」そのものである。スタートアップには、「出る杭」を邪魔するものは基本的にはない筈だ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%89%8D%E6%BE%A4%E5%8F%8B%E4%BD%9C

第三に、2月21日付けダイヤモンド・オンライン「「体育会系は就職に強い」神話の崩壊で、変わる就活の最新事情とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/295035
・『就職に強いとされる体育会系学生。学生はもちろん、企業の担当者にも「採用するなら体育会系」と考える人は多いかもしれない。しかし、雇用や働き方が激変する現代において“体育会系神話”はまだ機能するのか。神話ができた過程や展望について『就職と体育会系神話』(青弓社)の著者であり京都先端科学大学健康医療学部准教授の束原文郎氏に聞いた』、興味深そうだ。
・『アメフトが支えた体育会系神話の最盛期  「体育会系は就職に強い」という認識は多くの人が、なんとなく持っているだろう。しかし、それはどのような過程を経て、われわれに刷り込まれてきたのか。束原氏は次のように話す。 「体育会系学生が就職において望ましい資質を備えている、という神話は大正から昭和初期には確立していました。当時の大学進学率は約1~3%で、そのなかでも運動部に所属している学生は多く見積もっても1割程度。該当人口の0.1%ほどしかいない彼らは、知力も体力も兼ね備えたスーパーエリートだったのです。また、当時の公衆衛生的な観点からも、身体の健康が重視され、体育会系の学生はその基準にもっとも合致していたわけです」 強壮で健康な身体をスポーツで育み、また部内で社交性や折衝能力を鍛えた体育会系学生は最良の人材イメージであると戦前では認識されていたのだ。) 逆に文系(特に文学部)でスポーツを嫌う学生は「病弱で左翼的過激思想に耽溺(たんでき)している」と見なされ、企業側からは忌避されていた。 「こうして、体育会系神話は成立していきましたが、それが最盛期を迎えるのは1980年代末から1990年代初頭とみています。その頃には進学率が大幅に向上し、大卒者のエリート性は低減しましたが、企業スポーツ文化の隆盛やリクルーター制度により、バブル崩壊頃まで体育会系学生は就職に有利でした」 例えば当時、新しい企業スポーツとしてアメリカンフットボールが注目され、次々とチームが創設された。当時のアメフトは野球やサッカーに比べ、まだマイナースポーツであり、国公立大や名だたる優良私学にしか強いチームがなかった。その中で、特にリクルートなどでは、高偏差値大学出身者の確保と企業スポーツ強化の観点から、アメフト部の新卒者を意図的に集めていたという』、「体育会系学生が就職において望ましい資質を備えている、という神話は大正から昭和初期には確立」、「当時の大学進学率は約1~3%で、該当人口の0.1%ほどしかいない彼らは、知力も体力も兼ね備えたスーパーエリートだった」、「体育会系神話」、「が最盛期を迎えるのは1980年代末から1990年代初頭」、「その頃には進学率が大幅に向上し、大卒者のエリート性は低減しましたが、企業スポーツ文化の隆盛やリクルーター制度により、バブル崩壊頃まで体育会系学生は就職に有利」、なるほど。
・『体育会系学生で広がる大学格差  ただ、バブル崩壊から現在にかけて、その神話は変容していると束原氏は述べる。すべての体育会系学生が有利というわけではなく、「エリート体育会系とノンエリート体育会系に分化し、格差が生じている」というのだ。 「2000年前後から急速に18歳人口の減少が始まったことで、それまで新増設を繰り返し、キャパシティを拡大していた国内の私立大学の多くは経営難に陥り、2010年代に入ると実に40%の大学が定員割れを起こすようになりました。特に中堅以下の私学では、その傾向が顕著でした。経営に窮した中小私立大学は学力が不足している学生をスポーツ推薦制度によって入学させ、なんとかして定員を確保しようと努めるようになったのです。拙著ではこの状況について、たしかに全体の学生アスリート人口は増加したが、今まで通り優良人材とみなされる『伝統的で威信が高い(高偏差値)大学出身のエリート体育会系学生』と『中堅以下大学のノンエリート体育会系学生』に分化したのだ、と指摘しました」 エリート体育会系は「今でも若干就職に有利」だという。その背景にあるのが、日本の特殊な雇用慣行だ。 欧米では働き手の職務内容をあらかじめ明確に定めて雇用する「ジョブ型雇用」が一般的であるのに対し、日本企業では今でも新卒を一括採用して入社後に仕事を割り当てる「メンバーシップ型雇用」が主流だ。 そのため、企業が採用時に求めるのは、どんな環境でも対応できる人材である。 「どの部署に配属しても適応できる人材を求める企業にとっての評価ポイントは『地頭の良さ』『地道に継続して学習する能力』『要領の良さ』などです。新卒一括採用の慣行の中では,採用側は限られたスケジュールの中で情報不足のまま採否を決めなければならず、何度も面接を繰り返して人物や適性を見極めるという地道な作業の代わりに、『高偏差値大学(地頭がありそう)』や『体育会系(継続する力、根性がありそう)』といったある種の“シグナル”を選考に利用してしまう。結果的に高偏差値大学の体育会系=エリート体育会系が有利な状況、つまり優良大学からの方が人気企業に就職しやすい状況が続いているという印象があります。一方のノンエリート体育会系は大学にとって財務上の安定に寄与し、大学スポーツが新たな展開をむかえる(競技横断型大学スポーツ協会UNIVASの設立など)改革のきっかけにはなりましたが、就職に際して大企業社員のイスまでは用意されなかった、ということになります」 メンバーシップ型かつ新卒一括採用の場合、企業は早期にメンバーを囲い込む必要に迫られる。そうした際に、エリート体育会系はわかりやすい指標となるのだろう』、「何度も面接を繰り返して人物や適性を見極めるという地道な作業の代わりに、『高偏差値大学(地頭がありそう)』や『体育会系(継続する力、根性がありそう)』といったある種の“シグナル”を選考に利用してしまう。結果的に高偏差値大学の体育会系=エリート体育会系が有利な状況・・・が続いている」、「メンバーシップ型かつ新卒一括採用の場合、企業は早期にメンバーを囲い込む必要に迫られる。そうした際に、エリート体育会系はわかりやすい指標となるのだろう」、なるほど。
・『新卒採用で人気が高い新興スポーツの経験者  近年では日本企業でも、ジョブ型雇用を導入する企業も増えつつある。富士通やNTTなどではすでに管理職にジョブ型雇用を適用しており、1月10日には日立製作所も全社員に適用する方針を出した。 このような雇用の変化は、既存の体育会系神話にどのような影響をもたらすのだろうか。 「神話のさらなる変化を期待したいです。現在の所属(学歴)に頼るメンバーシップ型では、採用時に大学ランクが先行しがちで、アスリートとしての経験や学業面の成績などが適切に評価されていません。GPA(学業評価)の重視に加え、大学のランクを問わず、アスリートとしての実力(ある対象に情熱を傾け、熟達する力)やマネジメント能力などがもっと評価されるようになればいいと思います」 本格的なジョブ型導入は全国的にはまだなされてはいないが、近年でも体育会系の就職に変化が起きているという。) 「これまで比較的有利だったのは、男性アスリートでした。しかし、2021年3月卒のデータでは、体育会系学生の中で人気企業への内定獲得率が男女で逆転し、女性アスリートのほうが評価され始めています。実際、女性アスリートのほうがGPA(学業成績)は高い傾向にあります。近年のさまざまな変化によって性別に対する企業側のバイアスが解け、男性的なイメージが強い体育会系の就職でも変化が起きていることは歓迎すべきです。また、統計的にはレギュラーの学生ではなく、サブメンバーの方が人気企業からの内定獲得率が高いと出ます。レギュラーにはスポーツ推薦が多く含まれ、結果として学業がおろそかになりがちな学生アスリートが人気企業に進みづらくなっているものと危惧されます」 レギュラーメンバーよりサブメンバーのほうが明らかにGPAの成績が高いと束原氏は指摘する。大学名やレギュラーという肩書ではなく、学業面などが評価されるようになってきているのだ。 「レギュラーメンバーよりも、サブメンバーのほうが良い企業に入社するのは皮肉な気もしますが、現実的にプロアスリートなどになれなければ、大学スポーツで花咲いても生きていくのは難しいということです。それが野球やサッカーなどのメジャースポーツであってもです。もっと言えば『俺は監督や先輩から推薦してもらって就職できる』というメンタリティの学生は非常に厳しい。だからこそ、キャリアを見据えて学業や英語、ITスキルを身に付ける生き方をしないといけないし、われわれ大学側もそのような場所と制度を作らなければなりません。また、高校までの指導者や顧問も、このようなことを念頭に指導したり、進路相談にのってあげたりしてほしいですね」 そんななかで現在ではラクロスなど新興スポーツに取り組んでいた学生の評価の高さが目立っているという。 「ラクロスなど日本の大学スポーツの文脈で比較的新しいマイナースポーツでは、練習場所もなければ指導者も少ない。その中で学生自身がいかに試行錯誤したかがクラブの強化やアスリートの成長にとっては重要になり、そうした試行錯誤によって獲得された何かが採用担当者の目に留まる可能性を高めるのかもしれません。実際に、直近の調査でもラクロス経験者は男女ともに人気企業からの内定獲得率が学生アスリート平均を有意に上回っています。戦略的に、そのような新興スポーツを大学で始めるのもよいかもしれません」 時代の潮流がめまぐるしく変化する中、体育会系神話にも良い変化がもたらされることを期待したい』、「体育会系学生の中で人気企業への内定獲得率が男女で逆転し、女性アスリートのほうが評価され始めています。実際、女性アスリートのほうがGPA(学業成績)は高い傾向にあります」、「ラクロスなど日本の大学スポーツの文脈で比較的新しいマイナースポーツでは、練習場所もなければ指導者も少ない。その中で学生自身がいかに試行錯誤したかがクラブの強化やアスリートの成長にとっては重要になり、そうした試行錯誤によって獲得された何かが採用担当者の目に留まる可能性を高めるのかもしれません。実際に、直近の調査でもラクロス経験者は男女ともに人気企業からの内定獲得率が学生アスリート平均を有意に上回っています」、まではいいとしても、「戦略的に、そのような新興スポーツを大学で始めるのもよいかもしれません」、と二匹目のドジョウ狙いをしても、あてが外れる可能性がある。
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