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医療問題(その35)(東大医学部卒・和田秀樹「私が偏差値の高い子に東大医学部をお勧めしないこれだけの理由」 灘→東大理Ⅲだからこそ言える、うつ病3題:うつの再発を繰り返す人は「双極性II型障害」かも…、うつの本当の原因は発達障害だった そんなケースが増えています、うつの本当の原因は発達障害だった そんなケースが増えています) [生活]

医療問題については、1月28日に取上げた。今日は、(その35)(東大医学部卒・和田秀樹「私が偏差値の高い子に東大医学部をお勧めしないこれだけの理由」 灘→東大理Ⅲだからこそ言える、うつ病3題:うつの再発を繰り返す人は「双極性II型障害」かも…、うつの本当の原因は発達障害だった そんなケースが増えています、うつの本当の原因は発達障害だった そんなケースが増えています)である。

先ずは、1月21日付けPRESIDENT Onlineが掲載した国際医療福祉大学大学院教授の和田 秀樹氏による「東大医学部卒・和田秀樹「私が偏差値の高い子に東大医学部をお勧めしないこれだけの理由」 灘→東大理Ⅲだからこそ言える」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/53975?page=1
・『「医者になれないなら人を殺して、罪悪感を背負って切腹しようと思った」。1月15日、大学入学共通テスト初日に、高校2年生が受験生ら3人を刺傷し、逮捕された。精神科医の和田秀樹さんは「受験生の中には『絶対、東大』『絶対、医学部』といった、かくあるべし思考に陥って、それができないと『ダメな人間だ』と自分を責める人がいる。実際には他の選択肢もあり、むしろそのほうが社会的地位や収入が高いケースもあることを知ってほしい」という――』、興味深そうだ。
・『今、日本には「死にたい」と思っている人が約40万人いる  大学入学共通テストの初日である1月15日に、試験会場・東京大学の前の歩道で高校2年生が受験生を含む3人を突然切り付けて、殺人未遂容疑で逮捕された。 私は精神科医であり、受験指導にも関わる仕事をしているためか、メディアから取材依頼の電話が殺到したが、ほとんど断らせていただいた。なぜなら、この少年が「東大を目指していた。医者になれないなら人を殺して、罪悪感を背負って切腹しようと思った」と供述している、と報じられたからだ。 これが事実なら、「拡大自殺」を考えていたことになる。拡大自殺とは、騒ぎを起こして多数の人間を殺し、死刑になることで自殺しようとする行為である。 自殺報道は大々的にやるほど、かえって自殺が増えることは統計学的にも確認されている。そのためWHO(世界保健機関)はたびたびメディア関係者に自殺報道のガイドラインを出している。厚生労働省もそれを基に「自殺対策を推進するためにメディア関係者に知ってもらいたい基礎知識」をHP上に掲示。その中でやっていけないこととして「自殺の報道記事を目立つように配置しないこと。また報道を過度に繰り返さないこと」「自殺に用いた手段について明確に表現しないこと」などと書かれている。 その厚労省の掲示によれば、以前、ウィーンの地下鉄で自殺が頻発したが、その報道をやめたとたん地下鉄の自殺死亡率が75%低下し、さらにウィーン全体の自殺死亡率が20%低下した、とある。 2021年10月末の京王線ジョーカー事件(※1)や、12月の大阪の心療内科クリニック放火事件(※2)など、拡大自殺と思われる事件が続いている。自殺の手段として拡大自殺が知られてしまうと、それをまねする人が出ることで、本人の命だけでなく、巻き添えになる人の命まで危険にさらされる。 ※1 電車内でナイフを用いて乗客17人に重軽傷を負わせ、油をまいて火を放った男が殺人未遂容疑で逮捕された。※2 北区曽根崎新地のビルに入るクリニックが放火され、巻き込まれた25人が死亡、1人が重体。 そういう意味で、この事件はあまりセンセーショナルに報じられてほしくなかったのだ。 読者の皆さんは、世の中に「死にたい」と思う人はどれくらいいると思うだろうか。一般的に人口の3%程度がうつ病と推測されている。すると日本中に380万人程度のうつ病患者がいることになる。そのうち、少なくとも10%程度に希死念慮が生じるとされるから、現時点で死にたいと思っている人は40万人くらいいることになる。 そういう人にとって、自殺報道は強い刺激になり、自殺に踏み切るきっかけになる。やり方を知るとまねをする人が出てしまう。だから危険なのだ。 ただ、私があえて今回この事件を取り上げようと思ったのは、受験生の中に、うつ病や自殺につながる思考パターンを持っている人が多いように映ったからだ。どれだけ役に立てるかわからないが、その思考パターンを和らげるのに役立てばと思って寄稿することにした』、「拡大自殺」に関しては。「自殺報道は大々的にやるほど、かえって自殺が増えることは統計学的にも確認されている」、「2021年10月末の京王線ジョーカー事件(※1)や、12月の大阪の心療内科クリニック放火事件(※2)など、拡大自殺と思われる事件が続いている」、マスコミが興味本位で報道するのは、なるべく控えるべきだろう。
・『「医学部でないとダメ」「東大でないとダメ」という思考  「医学部でないといけない」「東大でないといけない」……一部の成績優秀層にはこうした思考パターンに陥る人がいる。 これは認知療法という心の治療法の治療対象のひとつである「かくあるべし」思考だ。この思考パターンの人は物事に対して「かくあるべし」と考えがちで、思うとおりにならないと、「自分はダメな人間だ」というレッテル貼りをしたり、ひどい場合は生きている価値がないと思ったりしてしまう。 そういう場合に、私が専門とする精神科の認知療法では、ほかにも道があることを提示していく。ほかの可能性が考えられるようになれば、うつ病も緩和されていく可能性がある。あるいは、常日頃かくあるべし、この道しかないと思っている人に、ほかの生き方もある、ほかのやり方もあると思えるようになれば、うつ病や自殺の予防になる。 受験生の中に「医学部でないといけない」「東大でないといけない」といった狭い思考になっている人がいたら、どうか「ほかの道・生き方」があることを知ってほしい(これは、東大や医学部に限らず、今冬に名門校を受験する小学生や中学生にも言える)。 私自身、灘高校にいた頃、勉強のやり方を工夫することで成績が上がったこともあって、「医学部に行くなら、東大理Ⅲしかない」と思っていた。それしか頭になかった。ただ、現実に東大理Ⅲに入学し、医学部に進学し、そこを卒業したからこそ、この考え方は間違いだったと断言できる。 出身大学についてあまりネガティブなことを言いたくないが、東大医学部には組織的な問題を抱えている。医学部なら東大だ、と思い込んで受験し合格した人は卒業した後、今度は東大医学部内で偉くなろうとするかもしれない。でも、それはやめたほうがいい』、「現実に東大理Ⅲに入学し、医学部に進学し、そこを卒業したからこそ、この考え方は間違いだったと断言できる」、「東大医学部には組織的な問題を抱えている」、なるほど。
・『なぜ、東大医学部はノーベル賞受賞者を出せないのか  理Ⅲ=東大医学部は昔も今も受験界の最高峰であり、最難関である。しかし、ノーベル賞学者を一人も輩出していない。世の中に知られた研究成果や業績にも乏しいと言わざるをえない。 なぜか。それは、上が威張りすぎているからだ。 同じ東大でもノーベル賞学者を数多く輩出する物理学科(理学部)では、教授のことを「先生」と呼んではいけないそうで「さん」で呼び合うそうだ。研究者が対等でないと、自由な研究ができないという考えがあるからだという。 東大医学部内には教授を頂点とする絶対的ヒエラルキーがある。だから、威張っている教授に対してご機嫌伺いするのは、部下なら当然のことだ。 私の結婚式でスピーチをしてくれた高校時代の親友がいる。彼も東大医学部に合格した。ある時、私は執筆した原稿の中で、高齢者の患者へ薬の使い過ぎではないかと彼が所属する医局の教授の批判をした。すると彼は自分の結婚式に私を呼ばなかった。以来、同窓会の案内くらいしか連絡がないような状態となっている。彼は教授のお気に入りであったせいか、現在、東大医学部教授になっている。正直にいえば、研究者としての業績が特に優れているとは思えず、その地位をなぜ手にできたかわからない。 そのくらい教授に気を使わないといけない医局が多い(もちろん、そうでない教授もいると信じているが)。今どき、そんな「白い巨塔」のような閉塞的な組織が何か成果を残せるはずがない。部下は、私生活も自由でないし、研究も自由にできるとは思えない』、「今どき、そんな「白い巨塔」のような閉塞的な組織が何か成果を残せるはずがない。部下は、私生活も自由でないし、研究も自由にできるとは思えない」、今どき「「白い巨塔」のような閉塞的な組織」が存在していること自体が驚きだ。
・『東大医学部は臨床の腕を磨くのに適した環境ではない  臨床の腕を磨くにも東大医学部は決して適した環境ではない。教授になるのは、大した研究業績もないものの、論文の数だけは多い人であり、天皇陛下の手術の際も問題になったように臨床の腕のいい人が教授になることはめったにない。 残念ながら医者というのは、師に恵まれないとあまり臨床の腕は上がらない。 私が老年精神医学の分野でそれなりに自信をもてるのは、浴風会病院(東京都杉並区)という高齢者専門の総合病院で故竹中星郎先生という老年精神医学の第一人者のもとで学ぶことができたからだ。 2004年に導入された臨床研修制度も東大医学部卒の価値を下げた。この制度により、どこの大学医学部を出ていても、好きな研修先(病院)が選べる。東大を出ていないと研修できない病院などなくなったのだ。 希望した病院の研修医の応募が多い場合、選抜の試験が行われる。この際、大学在学中の成績が重視されるので、東大より偏差値の低い大学で優等生のほうが、東大の劣等生より、希望した研修先に入りやすいとされる。 ということで、東大医学部は現状、研究も冴えない、臨床の腕も大して磨かれないダメ組織という側面が強い。しかも、医学部では「金儲けに走るのは恥」といった古い価値観「を植え付けられるので、大病院の経営者になったり、起業したりしてリッチになろうとする人も少ない。 医学部を希望する受験生に対して、東大を勧める気になれない。だから、私も自らが主宰する通信教育や進学塾で、医学部受験希望者に対しては無理せずに実力に見合う大学に入ったほうがいいと指導している(たまに、親のブランド志向がひどくて、指導に従わないで1年を無駄にする人もいる)』、「東大医学部は現状、研究も冴えない、臨床の腕も大して磨かれないダメ組織という側面が強い」、「医学部を希望する受験生に対して、東大を勧める気になれない。だから、私も自らが主宰する通信教育や進学塾で、医学部受験希望者に対しては無理せずに実力に見合う大学に入ったほうがいいと指導している」、なるほど。
・『「医学部人気」が沸騰中だが、医師の未来は明るくない  近年沸騰している受験生の間の「医学部人気」そのものにも私は疑問を感じている。 とくに首都圏以外の地方では、成績優秀な生徒が医学部を志向する傾向が強まっている。例えば、鹿児島のラ・サール高校は1985年に117人の東大合格者数を誇ったが、2021年は33人。しかし国立大学医学部合格者数は毎年80人から90人のレベルへ上昇した。私が卒業した灘校でも国公立大学の医学部の合格者数は増え、2021年で63人に達した。 地方では、成績のいい子は東大(文系含む)に行くより、国公立大医学部を選択する流れができつつある。その背景にあるものは何か。 東京に住んでいると、いわゆる六本木ヒルズ族には東大出身者が多いことを知ることになり、東大卒業後の成功モデルを実感できる。だが、地方にいると、東大に行くよりも、地元の国公立大の医学部を出て医者になるほうが安定的に高収入を得られるイメージが強い。最近のように政治家に逆らえず、不祥事が続く官僚の姿が報じられることが続くと、なおのこと東大への憧れは低下する。 頭のいい高校生はどうか視野を広く持ってほしい。進路は医学部でなくてもいいはずなのだ。医師より社会的地位が高く、安定して稼げる職種に就くことも十分に可能なのだ』、「地方にいると、東大に行くよりも、地元の国公立大の医学部を出て医者になるほうが安定的に高収入を得られるイメージが強い」、「頭のいい高校生はどうか視野を広く持ってほしい。進路は医学部でなくてもいいはずなのだ。医師より社会的地位が高く、安定して稼げる職種に就くことも十分に可能なのだ」、その通りだ。
・『医師国家試験合格者は毎年9000人、いずれ医師余りになる  ここ数年、医学部ではない理系の研究者が昔と比べ物にならないくらい高収入を得る道が開かれているのに、そういう情報が地方に届かないのかもしれない。それを危惧した母校・灘校では、各方面で成功した卒業生が在校生に講演する会を定期的に行っているという。 私はこの20年以上にわたって一橋大学で医療経済学を教えているが、医者の将来が明るいものと思っていない。 医療費のほとんどが保険診療で賄われているため、政策的に「伸び」が抑えられている。それにもかかわらず、医師国家試験合格者は毎年9000人もいる。さらに今後、AI(人工知能)が進歩すると、いずれ医師は負かされるケースも出てくる。現在、多くの医師は患者への問診より、検査データや画像データを重視した診察をしている。そうなると診断能力や治療方針を決める能力においてAIに到底勝てないのだ。 先ほど東大医学部の閉塞性を指摘したが、ほかの医学部も似たり寄ったりだ。例えば、教授会での選挙で決まる精神科の教授で、私のように精神療法を専門とする医師が選ばれている大学は現在ひとつもないのはそのいい例だ。医療の中で「心の問題」が軽んじられているのだ。 これはとりもなおさず、医学部在学中の6年間に心にまつわる講義がほとんどない(精神科の講義でも神経伝達物質など脳にまつわる授業がほとんどになる)ことを意味する。 今回のコロナ禍でも、感染症学者が“自粛一辺倒”の方針を出すのに対して、大学の医学部から「これではうつ病が増える」とか、「高齢者の歩行機能や認知機能が落ちるリスクが高い」とかいった反論の声はほぼ皆無だった。 歯科医業界では勤務医が低賃金化し、開業医もその多くが経営に四苦八苦している。同じような道を、医師が歩む可能性がある。収入面でも医学部の未来は明るくなく、自由もなく、世界的研究の夢もない。これなら医学部を除いた、最先端の理系研究者になったほうがはるかにいろいろな面で有望なのではないか。 受験生のうつ状態の予防の観点から、私は声を大にして言いたい。 医学部に行かなければいけない、というのは幻想である。 ほかにもはるかに有望な道がいくらでもある。 医学部志望者(とくに東大を筆頭とした名門国立大学の医学部志望者)がもし勉強でいきづまっていると感じるなら、チャンスだとさえ言える。視野を広く持ち、自分の進路を考えてみてほしい』、「収入面でも医学部の未来は明るくなく、自由もなく、世界的研究の夢もない。これなら医学部を除いた、最先端の理系研究者になったほうがはるかにいろいろな面で有望なのではないか」、同感である。

次に、2月24日付け日経ビジネスオンラインが掲載した精神科医・産業医/メディカルケア大手町院 五十嵐 良雄氏による「#2 うつの再発を繰り返す人は「双極性II型障害」かも…」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/plus/00032/020800002/
・『近年、復職者が休職を繰り返す場合に、一見、うつ病のように見える同じようなうつ症状はあるけれど、その裏に別の病気(背景疾患)が隠れているケースが非常に増えています。うつ症状の背景疾患で特に多いのが「双極性II型障害」と「発達障害」です。 そこで、連載第2回の今回は「双極性II型障害」についてお伝えします』、興味深そうだ。
・『正しく診断することが難しい「双極性II型障害」  「うつの症状」があるために「うつ病」と診断されてしまうけれども、実はその後ろに「双極性II型障害」が隠れているという場合、最大の難関となるのが、その患者を双極性II型障害であると正しく診断すること。というのも、この病気は診断がとても難しいからです。 まずは、その特徴について説明していきましょう。 双極性障害はかつて「躁(そう)・うつ病」と呼ばれていた病気で、(1)気分が高揚して活動が活発になる「躁状態」と、(2)憂うつな気分が続く「うつ状態」が交互にやってくる病気です。(1)と(2)を繰り返すわけです。 現在では、両極端な症状が起こるという意味で「双極性障害」とも呼ばれます。 双極性障害にはI型(いちがた)とII型(にがた)の2つのタイプがあります。 双極性I型障害は、躁状態の時の程度が激しく、明らかにいき過ぎた行動があるため、周囲も気づきやすいという特徴があります。I型の場合は治療のために入院が必要ですが、症状が分かりやすいため診断は容易です』、「双極性障害」とはかって「躁うつ病」と呼ばれたもののようだ。
・『軽く短い躁状態が特徴の双極性II型障害  問題は、双極性II型障害です。 こちらは、長いうつの症状が続いている間に、ごく短い期間、軽い躁(そう)状態があり、その後は再び、うつの症状が続くという病気です。 躁状態がごく軽度で、I型のように激しい症状がなく、その期間も数日間程度とごく短いため、本人や周囲も「最近少し調子が良すぎる」程度にしか感じません。 それが病気(=双極性II型障害)による軽い躁状態であるとは本人も周囲も気づかない。ここが厄介なところです。 そして軽躁状態の後には多くは、うつ状態が現れ、このうつ状態は長く続きます。そのため、うつ病と診断されてしまい、「双極性II型障害」と正しく診断されないまま、それがずっと続いてしまうことが問題なのです。 この双極性II型障害は、5年間で9割が再発するというデータもあるほど、再発率が高い病気でもあります』、「5年間で9割が再発する」、再発率の高さには驚かされた。
・『うつ病と双極性II型障害の治療方法・薬は全く違う  そしてさらに悩ましいのは、うつ病と双極性II型障害では治療方法が全く違うという点です。 うつ病では、うつの症状を改善させるための治療を行い、抗うつ剤を用いますが、双極性II型障害では、躁とうつの波をコントロールする治療が必要となり、その時には抗うつ薬ではなく気分安定薬を用います。 つまり、正しい診断ができていなければ、当然、正しい薬は処方されておらず、治療が適切に行われていないことになります。さらに厄介なことには、双極性障害の患者が抗うつ薬を使っていると、気分の波がかえって大きくなることも多いのです。 実際、双極性II型障害の患者に対して、「この人はうつ病だ」と誤った診断を行った主治医が、抗うつ剤をずっと出し続けているというようなことは非常に多い。最悪の場合、症状を悪化させてしまうこともあります。 双極性II型障害を診断するには「現在、軽躁状態である、あるいは過去に軽躁状態があった」ことを確認する必要があります。 しかし、躁状態が短期間で軽度なため、短い診察時間内に主治医が気づくことは、まずできません。 主治医が双極性II型障害と分からないまま、気づかないまま、うつの症状が改善した段階で「復職可」という診断書を書いている場合があるわけです。 復職先の産業医も、本当の病気に気づくのは難しい。そのため、復職後、いずれ軽躁状態が現れ、その後、再びうつ状態がやってくるという病相を繰り返し、患者は何度も休職することになります』、「双極性障害の患者が抗うつ薬を使っていると、気分の波がかえって大きくなることも多いのです」、正確な診断が鍵のようだ。「復職後、いずれ軽躁状態が現れ、その後、再びうつ状態がやってくるという病相を繰り返し、患者は何度も休職することになります」、「患者」には不幸なことだ。
・『再発を繰り返す場合、一度、疑ってみてほしい  ここで人事関係者の皆さんにお伝えしたいのは、「ひょっとすると?」という視点を持ってほしいということです。 うつの症状の裏側に、こうした別の病気が隠れている可能性があることを知っていただき、再発・再休職を繰り返す人に対しては特に、疑ってみていただきたい。 なぜなら誰かが「背後に、別の病気があるのでは?」という疑いを持たない限り、背景疾患は見つけられないからです。 疑って初めて、双極性かどうかを調べる検査をしたり、過去に躁状態があったかどうかなどの情報を集めて、ようやく正しい診断にこぎつけられます。 医師よりもその人と接する時間が長い周囲の人や人事担当者が疑ってみること、本人の軽躁状態を把握することが、正しく病気を診断する助けになるのです。 軽躁かも? と疑ってみるべき変化のポイントは次のようなものです。 ■こんな変化に気づいたら、軽躁状態かもしれないと疑ってみてください。「軽躁状態がある」「あった」ことを確認できると、双極性II型障害という診断につながります。 【いつもより】・声が大きい ・言葉の数が多い ・話が長い/話の内容が大風呂敷 ・話し続ける ・やたらと明るい ・動きが速い ・話しかける相手が多い ・メール数が多い
・電話をかける回数が多い  ・活動が活発だ  ・人の話を聞かない  ・予定外の行動が多い  ・お金をたくさん使う  ・イライラしていることが多い  ・短睡眠時間でも活動できている  ・怒りっぽい など  ごく短期間であってもこのような変化が見られたら、その時期が双極性II型の軽い躁(そう)状態である可能性があります。 休職を2度、3度、あるいはそれ以上、繰り返している場合は、双極性II型障害である可能性が高い。疑われる場合には、本人からだけでなく、上司や周りの社員、同僚から情報をもらうこともポイントになります。 そして疑いがある場合は、検査機器を導入している医療機関で検査を受け、病気の鑑別をやり直してもらうよう、本人や主治医に働きかけることをお勧めします。 さらにご本人に対しては、患者の教育のためにリワークプログラムを実施している医療機関に転院することを勧めてほしいと、私は考えています。その理由については後述するとして、まず、鑑別に有効な検査機器についてお話しします』、「疑って初めて、双極性かどうかを調べる検査をしたり、過去に躁状態があったかどうかなどの情報を集めて、ようやく正しい診断にこぎつけられます。 医師よりもその人と接する時間が長い周囲の人や人事担当者が疑ってみること、本人の軽躁状態を把握することが、正しく病気を診断する助けになるのです」、なるほど。
・『脳の血流量の計測で可能な補助鑑別「光トポグラフィ」検査  病気の鑑別診断の補助材料として役立つ検査機器は「光トポグラフィ検査」です。 これは、患者の頭に小さな端子を付け、ディスプレー上に表示される文字を読んでもらうなど、脳を働かせている間の、脳の血流の変化を測定する装置です。血流の変化のパターンによってうつの症状が「うつ病パターン」「双極性障害パターン」「統合失調症パターン」「健常パターン」のいずれかであるかが分かります。このパターンは健康な状態の人にも出ますので、この検査だけで病気を診断できるわけではなく、あくまでも補助診断としての検査です。ただし、その人の病気へのなりやすさを表しているのではないかとも考えられており、医師が詳細に患者さんに話を聞いていくと正確な診断ができますし、薬の選択も合理的にできるのです。 メディカルケア虎ノ門では2014年から導入し、鑑別診断の補助材料として成果を上げています。休職を繰り返している患者が多い当院では、実に8割の人が「双極性II型障害」の可能性があるという結果が出ています。 とはいえ、この検査は導入コストが高いことがネックとなり、現在、限られた医療機関でしか受けられない点が課題です。 光トポグラフィ検査は、頭に小さな端子を当て、ディスプレー上の文字を読んだあと、「あ」で始まるものの名前を思いつくまま言い続けるといった課題を行い、その間の脳の血流量(ヘモグロビン濃度)の変化を測定してグラフ化することで病気の特徴を見分けるというもの。血流量の波形変化パターンが病気によってそれぞれ違うことから、鑑別診断の補助材料として用いられています』、「「光トポグラフィ」検査」は、「導入コストが高いことがネックとなり、現在、限られた医療機関でしか受けられない点が課題です」、なるほど。
・『「治す」のではなく「付き合っていく」  「双極性II型障害の場合は、患者の教育のためにリワークプログラムのある病院に転院させるとよい」とお伝えしました。 なぜ、患者に教育が必要なのでしょうか。 実は、双極性II型障害は、うつ病のように「病気を治す」のではなく、「自分の気分の波を知り、コントロールする」という方法を学び、上手に付き合っていく病気だからです。 軽躁の波が来た時に、気分が上がり過ぎないように自分で仕事や生活での活動量を抑えて、日々の気分を安定させるようにします。 例えば、「外出する予定を取りやめる」「身体を休めるようにする」など、自分で活動量を減らし、躁状態の時の気分を上がらないように抑えることが、次に来るかもしれないうつの波を抑えることにつながります。 軽躁状態があっても、その後でうつが現れなければコントロールできているということになります。この病気は上手にコントロールしながら付き合っていく病気なのです。 だからこそ、早期に、双極性II型障害であると診断されて、本人が自覚し、リワークプログラムで病気との付き合い方を学んで、それを実践できるようにすることが大切です。 リワークプログラムの中には双極性II型障害の人向けの特別なプログラムはありませんが、同じ病気の仲間がいることで、この病気と付き合う方法を互いにシェアしたり、学び合うことができることが、患者さんにとってとても重要だと考えています。 次回は、うつの症状の背景にある別の病気、「発達障害」についてお話しします』、「この病気は上手にコントロールしながら付き合っていく病気なのです」、まるでウィズコロナの考え方に近いようだ。

第三に、この続きを、3月1日付け日経ビジネスオンラインが掲載した精神科医・産業医/メディカルケア大手町院長の五十嵐 良雄氏による「#3 うつの本当の原因は発達障害だった そんなケースが増えています」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/plus/00032/020800003/
・『場の空気が読めない。人とコミュニケーションがうまくとれない。不注意によるミスや忘れ物が多い。カッとしやすい……。 こうした特徴を持つ発達障害は一定の割合で存在し、本来、子供の頃から表れて周囲に気づかれているものです。しかし、それが軽度であったために子供時代には本人も周囲も気づかないまま成長し、会社に入ってから対人関係で悩み、その結果、うつ症状が表れて休職するというケースが近年、増えています。今回はうつ病の裏に隠れている「大人の発達障害」について、その対処法を紹介します』、興味深そうだ。
・『原因は職場環境ではなく、本人の障害  「大人の発達障害」は、大人になるまでの長い間、周囲に気づかれなかったほど、障害の程度は軽く、傾向は低いのが特徴です。 しかしながら、会社組織の中で業務を行うようになると、それまでは無意識に避けてこられたような場面にも、直面して取り組まなくてはならなくなり、苦手な場面が増えることから、憂うつになるなど、うつの症状が出るようになります。 例えば、新入社員になってすぐ、上司との関係がうまくいかずに適応障害として休職する場合もあれば、経験を積んでチームリーダーになった途端、部下の個々の状況や気持ちに配慮することができず、悩んでうつの症状が出て休職する場合もあります。 一見、職場の環境に影響されて、うつになったように見えるものの、実は、その背景には周囲とうまくコミュニケーションがとれない、周りの空気を読むのが苦手といった、発達障害が隠れているというケースです。原因は職場環境ではありません。 それゆえ、薬物治療などでうつの症状から回復したとしても、背景にある発達障害に気づけないままだと、復職後にまた同じような場面でストレスを感じてうつを再発することになり、負のスパイラルに陥りかねません。 前回ご紹介した双極性II型障害と同様に、うつ症状の背景にある、本当の原因、大人の発達障害に早期に気づいて対応することが大切なのです』、「「大人の発達障害」は、大人になるまでの長い間、周囲に気づかれなかったほど、障害の程度は軽く、傾向は低いのが特徴です。 しかしながら、会社組織の中で業務を行うようになると、それまでは無意識に避けてこられたような場面にも、直面して取り組まなくてはならなくなり、苦手な場面が増えることから、憂うつになるなど、うつの症状が出るようになります」、「薬物治療などでうつの症状から回復したとしても、背景にある発達障害に気づけないままだと、復職後にまた同じような場面でストレスを感じてうつを再発することになり、負のスパイラルに陥りかねません」、やはり正しい診断がカギのようだ。
・『“大人”は、2つの傾向を併せ持つ場合が多い  大人の発達障害は「自閉症スペクトラム障害(ASD)」と、「注意欠陥・多動性障害(ADHD)」の2つに、大きく分けられます。 それぞれの特徴は以下の通りです。 ●自閉症スペクトラム障害(ASD)の主な特徴(草食系、おとなしい。表情が少ない。場の空気が読めず、例えば、突発的に妙なことを言う。人とコミュニケーションがうまくとれない。物事にこだわるので、興味が偏っている。これからのことを予測して予定を立てるのが苦手。他者の気持ちを想像したり、視点に立って考えることが苦手。集中力は高いが、他のところに全く注意がいかない。視覚、聴覚などの感覚が過敏。) ●注意欠陥・多動性障害(ADHD)の主な特徴(幼い時に目立った落ち着きのなさ(多動)は目立たたなくなっているものの、時に表れ、常に動き回ったり、せわしないことがある。思い立ったことをすぐにやりたくなる。不注意によるミスや忘れ物が小さい頃より多い。2つのことを同時に行うのは苦手。注意が集中せず、部屋が片づけられない。親しみやすいところがあるが、カッとしやすい。) このように、大きくとらえれば2つに分かれますが、大人になるまで気づかれないほど軽度の人たちは、この両方の傾向を持っていることが多いのが特徴です。 そのため、無理にどちらかに当てはめようとせず、両方の傾向を持っているという前提に立って「どちらの傾向が目立つか」と考えることが大切です』、「大人の発達障害は・・・「ASD」と・・・「ADHD」の2つに、大きく分けられる」が、「2つの傾向を併せ持つ場合が多い」、なるほど。
・『二次障害として双極性障害になることも  また、発達障害があることで、その二次障害として、うつの症状が出るだけでなく、双極性II型障害になることもあります。このことは国内外の論文で報告されるようになってきています。 つまり、「うつの症状が表れてうつ病だと思ったら、実は軽度の躁状態があって双極性II型障害だと分かり、さらに、それらの背景には実は発達障害があった」というような状況もある、ということです。 大事なことは、人事担当者が「こういう場合もある」ということを知っておくことです。知っていれば「ああ、そういうケースなんだな」と分かる。あるいは「もしかしたら?」と気づくことができます』、「うつの症状が表れてうつ病だと思ったら、実は軽度の躁状態があって双極性II型障害だと分かり、さらに、それらの背景には実は発達障害があった」というような状況もある」、ここまで原因が遡って判明するには、時間もかかりそうだ。
・『人格的な異常ではなく、一定の割合で存在する  発達障害については、周囲の理解にまだまだ温度差があり、「その人の性格のせいだ」「やる気がないからだ」と人格的な問題ととらえられがちですが、全くそうではありません。 文部科学省の行った学童を対象とした調査からは、発達障害は全学童の5~6%ほどはいるとされ、本人はとても悩んでいます。できること・できないこと、得意なこと・不得意なことがあるのです。 会社側の対応は大変だろうと思いますが、発達障害的な要素は、程度の差があるだけで、実は誰もが多かれ少なかれ持っているものだととらえます。そう考えなければ、人材として力になりません。 発達障害の人は、不得意なところもありますが、逆に「人よりも得意なこと」もあります。だから、得意なことをしてもらいながら、不得意なことをどう乗り越えてもらうかと、とらえていくことが大切です』、「発達障害の人は、不得意なところもありますが、逆に「人よりも得意なこと」もあります。だから、得意なことをしてもらいながら、不得意なことをどう乗り越えてもらうかと、とらえていくことが大切です」、その通りだろう。
・『まずは本人側の困りごと、職場側の困りごとを整理  ここからは対応についてお伝えしていきましょう。 社員のうつ症状の背景に「発達障害がある」と分かった場合は、まず、本人側の困りごとと、職場側の困りごとを整理することです。それは共通していることもあれば、共通していないこともあります。 そして、本人に「自分の得意なこと、不得意なこと」をハッキリ、自分で知ってもらうことが大事です。なぜなら、それは周囲には分からないことだからです。とはいえ、自分で自分の得意・不得意を認識することも簡単なことではありません。 メディカルケア虎ノ門の「リワークプログラム」でのプログラムでは、発達障害の人向けのものもあります。 そこではまず、発達障害についての書籍や論文を読んで、病気についての理解を深めてもらい、自分の特性や特徴がどのように表れるのかに気づいてもらいます。そして、仕事の場面での自分の強み、弱み、職場での困りごとについて理由を分析して、対処法を検討します。 本人がどういうことが得意で、どういうことが不得意なのかが分かれば、今度は周囲が「得意なことをいかに仕事で生かしてもらうか、不得意なところをどうするか」という対応を検討することができます』、それが出来れば、「本人」「周囲」ともハッピーだ。
・『視覚情報には強いが、音声情報には弱い  脳では、視覚的な情報と音声情報の処理は脳の別々の場所で行われます。一般的に発達障害の人では視覚情報は強く、聴覚情報が弱いことが知られています。 例えば、会社での業務は主に視覚情報と聴覚情報を元に行っています。視覚情報の代表は書類です。聴覚情報の代表は電話や会議ですね。発達障害の人は視覚情報(=書類)には強いけれど、聴覚情報(=電話や会議)には弱いという特徴があります。 だから、会議などで話が進んで「はい、では●さんは××を担当してください、▲さんは◇◇をお願いします」と、仕事の分担が告げられたとしても、発達障害の人は自分が何をやったらいいのか理解するのが苦手です。メモを取っているようでも、耳で聞いた情報を整理するのは得意ではないので、本人は十分理解できていません。 一方で、彼らは視覚情報の情報処理能力はとても高い。だから、文書で指示されれば、自分でそれを読み解いてアウトプットをしっかり出せます。このため、大人の発達障害の人には業務指示は視覚情報で出すというのが原則です。 とはいえ、すべての指示を文書で出し、会議や電話への対応を一切させないというのも現実的ではありません。ここでお伝えしたいのは、考え方の原則としては「彼らが得意な方法で、得意な業務をやってもらうのがいい」ということです』、「発達障害の人は視覚情報(=書類)には強いけれど、聴覚情報(=電話や会議)には弱いという特徴があります」、「考え方の原則としては「彼らが得意な方法で、得意な業務をやってもらうのがいい」」、なるほど。
・『ジョブコーチの支援を活用しましょう  「本人の困りごとと、会社側の困りごと」が完全に一致している場合は、その困りごとに対して対策をとればいいのですが、一致しない場合もあります。職場が困っていることを本人が気付いていない、分かっていないというケースです。 本人が分かっていないことを直すのは難しいため、まずは本人に職場の状況を分からせなければなりません。そういう時に助けになるのがジョブコーチ(=職場適応援助者)です。 ジョブコーチは障害者が企業などに就労する際に、円滑に職場に適応できるよう、その人がどういう仕事に適しているか、どういう職場環境なら働きやすいかといった、障害特性を踏まえた直接的、専門的な助言などの支援を、一定期間、障害者と企業の双方に行う援助者で、独立行政法人「高齢・障害・求職者雇用支援機構」または厚生労働大臣が実施する専門の養成研修を受けています。 具体的には、障害者に対して、「あなたは、こういうことが苦手なんですね」と、まず本人に苦手な内容を認識させ、次に「それはこういう風にすれば、解決できますよ」と指導、助言します。これによって業務遂行力や職場内のコミュニケーション能力を向上させ、また健康管理や生活リズムを整える支援を行います』、「ジョブコーチ」なる「指導・助言」、「業務遂行力や職場内のコミュニケーション能力を向上」、「健康管理や生活リズムを整える支援」、の仕組みはいいことだ。
・『障害特性を踏まえ、仕事の教え方なども助言  企業に対しては「この人にはこういう特性があるため、今の職場では、難しいでしょう。こういう能力がありますから、その能力を生かせる職場に変えてはどうでしょう?」といった雇用管理についての助言や提案を行います。その結果、配置転換などにつながることもあり、会社への貢献にもつながります。 また、ジョブコーチは本人と企業だけでなく、本人の家族や、職場の同僚・上司にも障害者との関わり方、指導方法について具体的なノウハウを助言してくれます。 ジョブコーチには3つのタイプがあります。 【1】地域障害者職業センター所属のジョブコーチが一定期間、事業所に出向いて支援を行う配置型ジョブコーチ。 【2】障害者の就労支援を行う社会福祉法人などに所属するジョブコーチが一定期間、事業所に出向いて支援を行う訪問型ジョブコーチ。 【3】障害者を雇用する企業の従業員がジョブコーチ養成研修を受けて、自社で雇用する障害者の支援を行う企業在籍型ジョブコーチ。 ジョブコーチ支援については、本人からの許可が必要ですので、会社だけの要望では利用できません。その点の注意が必要ですが、詳しくは各地域の障害者職業センターに問い合わせてみてください』、なかなか良い制度のようだ。

第四に、この続きを、3月23日付け日経ビジネスオンラインが掲載した精神科医・産業医/メディカルケア大手町院長の五十嵐 良雄氏による「#2 うつ病の最強の敵、それはストレス! 自覚する前に毎日予防しよう」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/plus/00034/030900002/
・『うつ最大の敵は「ストレス」 発散ではなく、予防するアクションを  前回、うつの症状は自分を取り巻く「環境」と「自分」との間で、何らかのストレスを感じることから起こるものだとお伝えしました。どういう環境が自分にとって苦手なのか。そういう環境に置かれたら、どう対処すればいいのか。この対策を準備することが再休職防止につながります。 今回はさらに一歩踏み込んで、具体的な仕事の場面でのストレス対策について取り上げます。 これまで、私はうつになった多くの患者を診てきました。うつを引き起こす要因は大きく分けて2つあります。それは、「環境の要因」と「自分の要因」です。環境の要因とは外の環境によるストレスであり、これをどう受け取るかが自分の要因です。 ストレスを感じた時の自分の受け止め方や、対処方法に課題がある場合が「自分の要因」ですが、それ以前に、まず、どういう種類のストレスによって、自分がうつの症状を引き起こしたのか。どういう種類のストレスに自分は弱いのかを把握しておくことが大事です。 もともと、ストレス(=stress)とは工学の概念であり、チカラが加わるとモノが歪む現象のことで、ストレスを与える外力をストレッサーといいます。ひと口にストレスといっても、日常生活ではいろいろな外的圧力があり、実は、悪い影響を与えるものばかりではありません。適度なストレスが良い状況を生むこともあります。 例えば、「○○の資格試験に合格したい」といった目標もストレスの一つですが、目標があることで「頑張ろう」という意欲が生まれることもあります。 大事なのは「自分に悪い影響を与え、うつ症状表出の原因となったのはどういうストレスなのか?」を明らかにすることです。 ここで一つ、図表をご紹介しましょう。これは仕事のストレスによって、うつの症状などの健康問題が発生する過程を示しています。2015年に厚生労働省が導入した「ストレスチェック制度」の大元になった、米国労働安全保健研究所の「職業性ストレスモデル」を改変したものです。 ストレス反応には仕事以外の要因も関わっている  (職業性ストレスモデルはリンク先参照) 仕事のストレス以外に、さまざまな要因が加わってストレス反応や健康問題が現れる。(1)の個々の説明は別表を参照 図内の番号順に左から右へ見てきいます。 (1)は「仕事のストレス要因」です。仕事上でストレスを感じる13個の要因が列記されています。個々の要因についてはこの後、「仕事のストレス要因・具体的な内容」表で示しますが、まず知っておいていただきたいのは、(1)の仕事のストレス要因だけで(5)のストレス反応が起きるわけではないことです』、「職業性ストレスモデル」はなかなかよく出来ている印象だ。
・『仕事と家庭、両方にストレスがあると危険  (1)仕事のストレス要因に、(2)個人の状況や性格などの要因、(3)家庭や家族からの要求という要因が加わると、(5)「ストレス反応」が現れ、さらに進むと(6)疾病を発症します。 つまり仕事と家庭の両方でストレスを受ける状況だと、心理的、また生理的にもストレス反応が起こりやすく、疾病につながりやすいと言えます。 反対に、仕事と家庭のどちらか一方にストレス要因があっても、もう一方には無い、あるいは軽微であれば、症状の表出にはつながりにくいのです。 仕事の場面での具体的なストレス要因を列記したものが次の表です。あなたならどの状況にストレスを感じるかチェックしてみてください。どういう状況が苦手なのか。自分自身の特徴を知ることができます。(仕事のストレス要因の表はリンク先参照) 前出の図にある「(1)仕事のストレス要因」13項目の具体的な内容を示している。あなたはこの13項目のうち何に「最も苦手、最も耐えがたい」と感じますか?  いかがですか? 「こういう状況に最もストレスを感じる」、「こんな環境での仕事が一番苦手」といった自分の特徴に気づくきっかけになるのではないでしょうか。 大切なのは「何をストレスに感じるかは、人によって違う」ことです。 Aさんは「仕事量が多いこと」に強いストレスに感じるけれど、Bさんは「役割があいまいで、自分の権限がハッキリしていない」ことがつらい。Cさんはこの両方にストレスは感じるものの、その感じ方はごく弱く、一方で「職場内のメンバー間で意見の違いや衝突が多い」ことには非常に強いストレスを感じるという具合です。 あなたが職場で「イヤだ」「つらい」とストレスに感じることを、皆が同じように感じるわけではありません。その人の状況や、物事の考え方などによって、受け止め方が違ってくるからです。 メディカルケア虎ノ門のリワークプログラムでは、この13の項目一つひとつについて、どの程度ストレスを感じるかを点数化し、その程度の強弱を確認します。そして、自分が最も強くストレスを感じる状況を把握し、プログラムに参加するほかのメンバーとディスカッションして、理解を深めていきます。 ある参加者は「自分が最も強くストレスに感じることを、ほかのメンバーがそれほどストレスに感じていない」と知って、とても驚き、だからこそ、その対策を自分で準備する必要性を強く実感したと話していました』、「仕事と家庭の両方でストレスを受ける状況だと、心理的、また生理的にもストレス反応が起こりやすく、疾病につながりやすいと言えます。 反対に、仕事と家庭のどちらか一方にストレス要因があっても、もう一方には無い、あるいは軽微であれば、症状の表出にはつながりにくいのです」、「家庭」がそんなに重要な役割を果たしているとは初めて知った。
・『上司や同僚、家族のサポートはあるか?  さて、最初の図に戻りましょう。 (1)仕事でストレスを感じながら、(2)個人的な要因や(3)仕事外の要因でもストレスがある状況では、(5)のストレス反応が起こりやすく、やがて(6)の疾病発症となりかねません。 そこで、注目すべき大事な要因が(4)の緩衝要因です。 ここでは「上司や同僚、家族からのアドバイスなどの社会的な支援」を緩衝要因と呼び、仕事や仕事以外のストレスによって心理的・生理的なストレス反応が生じることを防ぐ役割を持つことを表しています。 つまり、仮に仕事上でストレスがあっても、上司や同僚、家族からの助言や支援、何らかのサポートを得られれば、心理的、身体的なストレス反応や健康問題を防ぐことができる可能性を表しているのです。 ただし、待っているだけで自分自身は何もしないのでは、周囲のサポートを得られない場合もあるでしょう。ストレスの負担が大きくなる前に、信頼できる相手に相談するなど、自分から支援を求めることも大切です。 逆に、この「上司や同僚、家族からの社会的支援」を得られない状況(=緩衝要因が足りない)が続いていると、ちょっとした仕事や個人の要因で、心理的、身体的ストレス反応の出現につながりやすいと言えます』、「ストレスの負担が大きくなる前に、信頼できる相手に相談するなど、自分から支援を求めることも大切です」、確かに「待っているだけで自分自身は何もしないのでは、周囲のサポートを得られない場合もあるでしょう」。
・『「ストレス対処法・100選」を持とう!  次に、メディカルケア虎ノ門のリワークプログラムの、すぐに取り組める具体的なストレス対策方法を紹介します。名付けて「ストレス対処法・100選」です。 100個も?と驚くかもしれませんが、対策のバリエーションは少ないよりも多い方が良いでしょう。「この手がダメならあの手」と、あらかじめたくさんの備えがあれば、より安心です。 さて、皆さんは100個、挙げられますか? コツは、具体的に書き出すことです。例えば、 ・「外出する」ではなく「お気に入りのカフェでコーヒーを飲む」、 ・「笑う」ではなく「YouTubeでお笑い芸人の動画を見る」、 ・「身体を動かす」は「駅前のスポーツジムで筋トレをする」 という具合に、誰が読んでも同じことを再現できるよう具体的に書き出します。 抽象的に100個を挙げるのは難しくとも、具体的な行動にしていけば、同じ「身体を動かす」アクションでも、「寝る前に腹筋100回」「自宅周辺を30分ランニング」というようにバリエーションを増やすことができます。 バリエーションがあれば、疲れてヤル気が出ない時でも、その場でできる対処法を見つけやすくなるメリットが生まれます。 何より、ストレスを早期発見し早期対処する。そして実は、ストレスを蓄積する前に予防するという発想が有効です。 ストレス対策というとなぜか、たまったストレスを「解消する」「発散する」方向ばかりが考えられがちですが、そうではなく「ああ、何だかストレスがたまってきたな」と自分が実感する前に、普段の生活の中で先に挙げた100個の対処法をどんどん実行しましょう。) 仕事が原因で生じたストレスは、同じ仕事をしている限り、自分の時間の中でしか解消できません。 仕事をしていて自然にストレスが解消されるのであれば、その仕事を続けていればよいですが、それはありえません。つまり自分の時間を有効に自分のために使うことを考えればよいのです。 一番分かりやすい例は運動です。他人のために運動をする人などいません。運動をしている時間はその人の時間で、その結果はすべてその人に戻ります。すべての人は1日24時間の中で生きています。その時間をどう使うかが大事なのです。 「強い疲労感などのストレス反応が起きてから」「ストレスが溜まっていると感じてから」ではなく、1日に3回、食事するのと同じように、一定のリズムで対処法を毎日実行する。その日のストレスはその日のうちに解消する。 その芽が小さなうちにしっかり摘む。早期発見、早期対処、毎日の予防が有効です』、「「ストレス対処法・100選」を持とう!」とはいいアイデアだ。私はストレスのない生活を送っているので、必要ないが、現役時代に持っていればよかったと若干残念に思う。
タグ:医療問題 (その35)(東大医学部卒・和田秀樹「私が偏差値の高い子に東大医学部をお勧めしないこれだけの理由」 灘→東大理Ⅲだからこそ言える、うつ病3題:うつの再発を繰り返す人は「双極性II型障害」かも…、うつの本当の原因は発達障害だった そんなケースが増えています、うつの本当の原因は発達障害だった そんなケースが増えています) PRESIDENT ONLINE 和田 秀樹氏による「東大医学部卒・和田秀樹「私が偏差値の高い子に東大医学部をお勧めしないこれだけの理由」 灘→東大理Ⅲだからこそ言える」 「拡大自殺」に関しては。「自殺報道は大々的にやるほど、かえって自殺が増えることは統計学的にも確認されている」、「2021年10月末の京王線ジョーカー事件(※1)や、12月の大阪の心療内科クリニック放火事件(※2)など、拡大自殺と思われる事件が続いている」、マスコミが興味本位で報道するのは、なるべく控えるべきだろう。 「現実に東大理Ⅲに入学し、医学部に進学し、そこを卒業したからこそ、この考え方は間違いだったと断言できる」、「東大医学部には組織的な問題を抱えている」、なるほど。 「今どき、そんな「白い巨塔」のような閉塞的な組織が何か成果を残せるはずがない。部下は、私生活も自由でないし、研究も自由にできるとは思えない」、今どき「「白い巨塔」のような閉塞的な組織」が存在していること自体が驚きだ。 「東大医学部は現状、研究も冴えない、臨床の腕も大して磨かれないダメ組織という側面が強い」、「医学部を希望する受験生に対して、東大を勧める気になれない。だから、私も自らが主宰する通信教育や進学塾で、医学部受験希望者に対しては無理せずに実力に見合う大学に入ったほうがいいと指導している」、なるほど。 「地方にいると、東大に行くよりも、地元の国公立大の医学部を出て医者になるほうが安定的に高収入を得られるイメージが強い」、「頭のいい高校生はどうか視野を広く持ってほしい。進路は医学部でなくてもいいはずなのだ。医師より社会的地位が高く、安定して稼げる職種に就くことも十分に可能なのだ」、その通りだ。 「収入面でも医学部の未来は明るくなく、自由もなく、世界的研究の夢もない。これなら医学部を除いた、最先端の理系研究者になったほうがはるかにいろいろな面で有望なのではないか」、同感である。 日経ビジネスオンライン 五十嵐 良雄氏による「#2 うつの再発を繰り返す人は「双極性II型障害」かも…」 「双極性障害」とはかって「躁うつ病」と呼ばれたもののようだ。 「5年間で9割が再発する」、再発率の高さには驚かされた。 「双極性障害の患者が抗うつ薬を使っていると、気分の波がかえって大きくなることも多いのです」、正確な診断が鍵のようだ。「復職後、いずれ軽躁状態が現れ、その後、再びうつ状態がやってくるという病相を繰り返し、患者は何度も休職することになります」、「患者」には不幸なことだ。 「疑って初めて、双極性かどうかを調べる検査をしたり、過去に躁状態があったかどうかなどの情報を集めて、ようやく正しい診断にこぎつけられます。 医師よりもその人と接する時間が長い周囲の人や人事担当者が疑ってみること、本人の軽躁状態を把握することが、正しく病気を診断する助けになるのです」、なるほど。 「「光トポグラフィ」検査」は、「導入コストが高いことがネックとなり、現在、限られた医療機関でしか受けられない点が課題です」、なるほど。 「この病気は上手にコントロールしながら付き合っていく病気なのです」、まるでウィズコロナの考え方に近いようだ。 五十嵐 良雄氏による「#3 うつの本当の原因は発達障害だった そんなケースが増えています」 「「大人の発達障害」は、大人になるまでの長い間、周囲に気づかれなかったほど、障害の程度は軽く、傾向は低いのが特徴です。 しかしながら、会社組織の中で業務を行うようになると、それまでは無意識に避けてこられたような場面にも、直面して取り組まなくてはならなくなり、苦手な場面が増えることから、憂うつになるなど、うつの症状が出るようになります」、「薬物治療などでうつの症状から回復したとしても、背景にある発達障害に気づけないままだと、復職後にまた同じような場面でストレスを感じてうつを再発することになり、負のスパイラル 「大人の発達障害は・・・「ASD」と・・・「ADHD」の2つに、大きく分けられる」が、「2つの傾向を併せ持つ場合が多い」、なるほど。 「うつの症状が表れてうつ病だと思ったら、実は軽度の躁状態があって双極性II型障害だと分かり、さらに、それらの背景には実は発達障害があった」というような状況もある」、ここまで原因が遡って判明するには、時間もかかりそうだ。 「発達障害の人は、不得意なところもありますが、逆に「人よりも得意なこと」もあります。だから、得意なことをしてもらいながら、不得意なことをどう乗り越えてもらうかと、とらえていくことが大切です」、その通りだろう。 それが出来れば、「本人」「周囲」ともハッピーだ。 「発達障害の人は視覚情報(=書類)には強いけれど、聴覚情報(=電話や会議)には弱いという特徴があります」、「考え方の原則としては「彼らが得意な方法で、得意な業務をやってもらうのがいい」」、なるほど。 「ジョブコーチ」なる「指導・助言」、「業務遂行力や職場内のコミュニケーション能力を向上」、「健康管理や生活リズムを整える支援」、の仕組みはいいことだ。 なかなか良い制度のようだ。 五十嵐 良雄氏による「#2 うつ病の最強の敵、それはストレス! 自覚する前に毎日予防しよう」 「職業性ストレスモデル」はなかなかよく出来ている印象だ。 「仕事と家庭の両方でストレスを受ける状況だと、心理的、また生理的にもストレス反応が起こりやすく、疾病につながりやすいと言えます。 反対に、仕事と家庭のどちらか一方にストレス要因があっても、もう一方には無い、あるいは軽微であれば、症状の表出にはつながりにくいのです」、「家庭」がそんなに重要な役割を果たしているとは初めて知った。 「ストレスの負担が大きくなる前に、信頼できる相手に相談するなど、自分から支援を求めることも大切です」、確かに「待っているだけで自分自身は何もしないのでは、周囲のサポートを得られない場合もあるでしょう」。 「「ストレス対処法・100選」を持とう!」とはいいアイデアだ。私はストレスのない生活を送っているので、必要ないが、現役時代に持っていればよかったと若干残念に思う。
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心理学(その2)(【精神科医が教える】あなたが「同調圧力」の沼にハマるワケ、【最新脳科学×心理学】マインドフルネスが子どもの「心」も「頭」も「自己肯定感」も良くする科学的な理由、「みんなポジティブ思考になろう」の危うさ 心理学実験の意外な結果) [生活]

心理学については、1月5日に取上げた。今日は、(その2)(【精神科医が教える】あなたが「同調圧力」の沼にハマるワケ、【最新脳科学×心理学】マインドフルネスが子どもの「心」も「頭」も「自己肯定感」も良くする科学的な理由、「みんなポジティブ思考になろう」の危うさ 心理学実験の意外な結果)である。

先ずは、4月24日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した精神科医 Tomy氏による「【精神科医が教える】あなたが「同調圧力」の沼にハマるワケ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/301756
・『感動小説『精神科医Tomyが教える 心の荷物の手放し方』の著者が、voicy「精神科医Tomy きょうのひとこと」から、とっておきのアドバイス。心がスッと軽くなる“言葉の精神安定剤”で気分はスッキリ、今日がラクになる!』、興味深そうだ。
・『疲れる方向に流されない方法  きょうのひとことは、「他人に話を合わせるより大切なこと」 職場の同僚やプライベートの友人と話をしていて、自分が思っていることとは違うことが話されていても、場の空気を読んで適当に話を合わせるということは、よくあるのではないでしょうか? そこで反対意見をいったり、議論をふっかけたりすると、異端視されて場の空気を乱してしまうかもしれない。だから、つい惰性で話を合わせてしまっている。 こんなことは、どこにでもある話だと思います。 そもそも、仲間に話を合わせるより、話が合う仲間をつくることが大事なんじゃないでしょうか? 仲間という人間関係を重視するのではなく、物事を重視するということです。 具体的にいうと、自分の趣味のように、話をしていて楽しいことに同調してくれる仲間をつくろうという発想です。 すでにある人間関係に無理やり話を合わせるのではなく、自分が興味のあること、やりたいことを共有できる仲間をつくろうとすることが大事なんです。 料理が好きなら、料理が好きな者同士で仲間をつくり、最近ブームになっているサウナが好きなら、サウナが好きな者同士で仲間をつくるといった具合です。 そのほうが話の合わない人たちに気を遣うより、よほど楽しいはずです。 こういうと当たり前のように思うかもしれませんが、職場やプライベートの人間関係で、同調圧力に息苦しさを感じている人は多いようです。 要するに優先順位の考え方、順番の話なのです。 自分のやりたいことを優先させているうちに、それに賛同する仲間がひとり現れ、もうひとり現れ、それがやがてグループ化していくのであれば、それはそれでよし。そういう順番のほうが、人生がより楽しくなってくるんじゃないかという話です。 これは他人から認められたい、自分を価値ある存在として認めたいという「承認欲求」にまつわる話でもあります。 自分を認めてほしいからといって、まわりに話を合わせて頑張っていると、いつか限界がやってきたり、承認欲求を満たされないままだったりします。 そういう発想をやめて、自分のやりたい物事を優先させる。そして、勝手に承認されるという順番のほうが、よほど健全で楽しいはずなのです。 他人に話を合わせるくらいなら、合わせなくても話が合ってくる仲間をつくればいいじゃないかという発想に転換してみてくださいね。 きょうのひとことは、「他人に話を合わせるより大切なこと」でした。 参考になったかしら?(精神科医Tomyの略歴はリンク先参照)』、「すでにある人間関係に無理やり話を合わせるのではなく、自分が興味のあること、やりたいことを共有できる仲間をつくろうとすることが大事なんです」、「自分のやりたい物事を優先させる。そして、勝手に承認されるという順番のほうが、よほど健全で楽しいはずなのです。 他人に話を合わせるくらいなら、合わせなくても話が合ってくる仲間をつくればいいじゃないかという発想に転換してみてくださいね」、「話が合ってくる仲間をつく」るには時間もかかる。「すでにある人間関係に無理やり話を合わせる」のは、現在のことである。現在と将来の時間軸を混同しているのではあるまいか。

次に、5月6日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したスタンフォード・オンラインハイスクール校長の星 友啓氏による「【最新脳科学×心理学】マインドフルネスが子どもの「心」も「頭」も「自己肯定感」も良くする科学的な理由」を紹介しよう。
・『スタンフォード大学・オンラインハイスクールはオンラインにもかかわらず、全米トップ10の常連で、2020年は全米の大学進学校1位となった。 世界最高峰の中1から高3の天才児、計900人(30ヵ国)がリアルタイムのオンラインセミナーで学んでいる。 そのトップがオンライン教育の世界的リーダーでもある星友啓校長だ。 全米トップ校の白熱授業を再現。予測不可能な時代に、シリコンバレーの中心でエリートたちが密かに学ぶ最高の生存戦略を初公開した、星校長の処女作『スタンフォード式生き抜く力』が話題となり、ロングセラーとなっている。 ベストセラー作家で“日本一のマーケッター(マーケティングの世界的権威・ECHO賞国際審査員)”と評された神田昌典氏も、「現代版『武士道』というべき本。新しい時代に必要な教育が日本人によって示されたと記憶される本になる」 と語った本の要点と本に掲載できなかった最新情報をコンパクトに解説する本連載。 今回は、スタンフォードにいる著者が最新科学に基づく「マインドフルネスと子どもの自己肯定感」についてお届けする』、興味深そうだ。
・『マインドフルネスとポジティブ心理学  (星 友啓氏の略歴hリンク先参照) 仕事でうまくいかなかった、学校で良い成績が出なかった時、自己肯定感が下がりがちです。 周りの目が気になりだし、今まで気にしていなかった自分の欠点ばかり見るようになるでしょう。 そうなると、ネガティブ思考まっしぐらです。 自分に厳しすぎず、それでいて成長していけるように、自分と向き合うにはどうすればいいのか。 今回紹介する「マインドフルネス」はポジティブ心理学で幅広く研究されてきたトピックの一つです。 では、マインドフルネスとはどのようなものなのか? どのように自己肯定感を上げていくのか? 「全米トップ校が教える自己肯定感の育て方」で説明した、「メディテーション」「呼吸法」について、本書から一部抜粋しご紹介していきます! マインドフルネスは私の処女作となる『スタンフォード式生き抜く力』でもメイントピックとして取り上げた、今世界的にも大注目のコンセプトです。 ぜひ、この機会に理解を深めていただければと思います』、「「マインドフルネス」はポジティブ心理学で幅広く研究されてきたトピックの一つです」、「自己肯定感」が上がるのであれば結構なことだ。
・『マインドフルネスを科学する  最近では、テレビや雑誌などのメディアでも「マインドフルネス」がしばしば取り上げられます。 リラクゼーションやストレス管理の目的で、「マインドフルネス」が職場や学校などでも取り込むところもあらわれつつあります。 マインドフルネスのコンセプトには様々な定義が存在しますが、核となる考え方は、自分の意識を今感じていることや考えていることに向けて、そうした感覚や考えをそのままオープンに受け入れることです。[1] マインドフルネスは、今意識にあることをくよくよと複雑にあれこれ考えるのでもなければ、感じたり考えていることを「いい」とか「悪い」とか決めつけることではありません。 そうではなく、素直な自分の気持ちや考えを感じ取って受け入れる心の営み、または、そうした心の営みを引き出すための瞑想法や呼吸法などを、まとめて「マインドフルネス」と呼びます。 近年、マインドフルネスがもたらす心へのいい影響は様々な形で、科学的に研究されてきました。[2] そうしたいい効果は、マインドフルネスが次のような心の働きを促進させるからだと考えられています。[3] ●心を見つめる:今周りで起きていることや、心の中で起きていること。感情、体験、思考のすべてをありのままに観察する力。 ●表現する:自分の感情や考えを特定して、言葉やイメージにして表現する力。 ●そのまま受け入れる:「いい」「悪い」「優れている」「ダメだ」などと自分をジャッジするのではなく、オープンな気持ちでそのままの心の状態を受け入れる力。 ●今に集中する:現在の瞬間の気持ちや考えに集中し、過去や未来についての思いに気が散らないように感じる力。 ●動じない:感じたことや考えたことを無理に抑え込もうとしたり、ついつい気を奪われてしまわずに、平静な心で素直に自分と向き合う力。 マインドフルネスの習慣を身につけて、これらの5つの「マインドフルな心の力」を鍛えていきましょう』、「マインドフルネス」とは、「素直な自分の気持ちや考えを感じ取って受け入れる心の営み、または、そうした心の営みを引き出すための瞑想法や呼吸法などを、まとめ」た考え方のようだ。
・『マインドフルは頭もよくする「心の良薬」  マインドフルな心の力を鍛えるとどんな良いことがあるのか? まず、心へのいい影響。 マインドフルな力で、周りの変化や自分の心の課題にフレキシブルに対応できるので、心が安定しやすくなり、感情を上手にコントロールすることができます。[4] また、ポジティブな気持ちが維持しやすく、人生の意義や幸福感もアップする[5]など、様々な心理的効果が確認されてきています。 それから、心の問題や精神疾患などへの改善や予防にも効果があります。 そのため、精神医療での応用が進んでおり、着実な成果が上がっています。 例えば、マインドフルネスを使った認知セラビー[6]が、うつ病や統合失調などの治療に応用されています。 さらに、ストレスを軽減させたり、ストレスに対する免疫を上げたりする効果も注目されています。[7] マインドフルネスは心にだけではなく、頭の回転まで速くします! 集中力がアップ[8]して、高度に神経を研ぎ澄ませなくてはいけない仕事に対するパフォーマンスも上がる[9]ことまでわかってきました。 つまり、マインドフルネスは、心に良い影響を与えるだけでなく、頭も良くなる良薬なのです』、「心に良い影響を与えるだけでなく、頭も良くなる良薬」、「高度に神経を研ぎ澄ませなくてはいけない仕事に対するパフォーマンスも上がる」、いいことづくめのようだ。
・『脳科学研究の最前線  さらに、最新の脳科学研究では、マインドネスのもたらす良い効果だけではなく、そうした効果のメカニズムも少しずつ解明されつつあります。 例えば、脳の「扁桃体」は、恐怖や強い感情を感じた時に反応する部分ですが、マインドフルネスのエクササイズをすると、その部分の活性化が鎮まり、私たちの気持ちが和らぐことがわかっています。[10] さらに、マインドフルネスによって、学びや記憶を司る「海馬」が活性化され、灰白質の濃度が上がったり[11]、前頭葉の活性化や成長が促されたりすることまで明らかにされています。[12] そしてもちろん、マインドフルネスは、自己肯定感にも効き目抜群です。[13] 「全米トップ校が教える自己肯定感の育て方」で解説したように(第1章「自己受容はポジティブのスイッチ」)求めるべき自己肯定は「自己受容」。つまり、現在の自分のことを受け入れることです。 私たちの心のもっているディフェンス型の適応(第2章「ディフェンス型の心の適応力にご注意」)や、マイナス思考の傾向(「事実をひん曲げる小悪魔たち」)が働き始める前に、自分のありのままを見つめるために、自分の気持ちや考えを「動じず」に「そのまま受け入れる」マインドフルな心の力が、必要なのです』、「私たちの心のもっているディフェンス型の適応・・・や、マイナス思考の傾向・・・が働き始める前に、自分のありのままを見つめるために、自分の気持ちや考えを「動じず」に「そのまま受け入れる」マインドフルな心の力が、必要なのです」、こう上手くいくものなのだろうか。
・『マインドフルな子どもの育て方  さて、こうしたマインドフルネスのいい効果は、大人だけのものではありません。 子どもたちにも同様にいい効果があります。 集中力だけでなく、認知的発達を促進させて[14]、感情や社会性の発展もサポートする。[15] 実際に、これまでにマインドフルネスをベースにした教育サポートプログラムが試験的に運用されて、様々な良い結果を生み出してきました。 そうとはいっても、ちょっとすぐには、しっくりこない。 大人であれば、インストラクションに従って、自分の心を振り返るエクササイズをやるのはなんとか可能かもしれない。 しかし、簡単なことではない。 大人でもハードルが高いのに、それを子どもにもやらせたい時、どのようなサポートをすればいいのか? こうした自然な質問に対して、「マインドフル・スクールズ」(Mindful Schools)からのアドバイスをご紹介しましょう。 マインドフル・スクールズは、アメリカのカリフォルニア州で活動している非営利団体で、学校教育へのマインドフルネスの普及をミッションに掲げています。 これまでに6万人以上の教育者をサポート、子どもの健康に寄与してきました。[16] 以下が、マインドフル・スクールズの示した、マインドフルネスの習慣がつくように子どもをサポートするときの5つのヒントです。[17] ●目的を明確に:マインドフルネスの定義や5つの心の力などを説明し、マインドフルネスをやることでどのような効果があるのかを正確に説明して、マインドフルネスを実践する目的を子どもに明確にしてあげましょう。 ●まずは自分から:子どもだけに強いるのではなく、自分でも実践することが大切です。子どもに説得力が持て、さらに自分が体験することでサポートもしやすくなります。 ●時間を決めて習慣化:時間を決めて生活のリズムに組み込んでいくことで、習慣化しやすくしていきましょう。 ●場作りも忘れず:周りを片づけたりして、マインドフルネスをするときだけのスペシャルな環境を整えましょう。特別な場で、子どもの心にマインドフルネスのスイッチを入ましょう。 ●体験をシェア:マインドフルネスのエクササイズが終わった時に、子どもがどう感じたかを聞きましょう。自分がやった時にどう感じたかも話してあげましょう。 選ぶマインドフルネスのエクササイズは、『スタンフォード式生き抜く力』で紹介した「思いやり瞑想」など、はじめはハードルの低いものから選んでいくのがベストでしょう。 『スタンフォード式生き抜く力』にはさまざまな瞑想法を紹介していますので、自分でやってみて、入りやすいと思われるものからでかまいません。 マインドフル・スクールズの進める下記のような非常にシンプルなものもあるので、特に子どものマインドフルネスのサポートを始める時には参考にしてみてください』、「マインドフルネスの習慣がつくように子どもをサポートするときの5つのヒント」は、いずれももっともだ。
・『◎子どもとできる簡単マインドフル・リスニング  「チーン」などと長めになるベルか音叉などの道具を用意しましょう。 以下の要領でマインドフルリスニングと深呼吸を行います。 毎日1~2分、続けていきましょう。 ●まずは初めの儀式です。以下のセリフで始めてください。「はい、マインドフルな体の準備をしましょう。静かに、座って、目を閉じましょう」 ●次のセリフを続けて。「今から聞く音に意識を集中しましょう。音が完全になくなるまで、集中して聞きましょう。音が完全にきえたら手をあげましょう」 ●ベルなどの道具で、音を鳴らします。 ●子どもの手が上がったら、深呼吸に移ります。「それでは、マインドフルに意識してゆっくりと手をお腹か胸に当てましょう。自分の呼吸を感じてください」 ●子どもが呼吸に集中できるように声をかけましょう。ゆっくりと、「吸って、吐いて」と数回繰り返しましょう。 ●終わりにもう一度ベルを鳴らして終了です。 冒頭に書いているように、自分の失敗に対して、自分にきつくあたってしまうこともあるはず。 しかしマインドフルネスで、最も大切なのが、自分の気持ちをそのまま受け入れることです。 「全米トップ校が教える自己肯定感の育て方」では、自己肯定感を高めるためのメソッドをより詳細に解説していますし、『スタンフォード式生き抜く力』ではあなたを根底からサポートする数々の具体的な瞑想法を収録しています。 実は、運動だけではなく、食事や睡眠も自己肯定感に密接に関係しているのです。 気になる方は、ぜひご参照ください。 【著者からのメッセージ】(以下はリンク先参照)』、「子どもとできる簡単マインドフル・リスニング」、はなかなかよく出来たテキストだ。「マインドフルネスで、最も大切なのが、自分の気持ちをそのまま受け入れることです」、なるほど。

第三に、5月10日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した心理学博士・MP人間科学研究所代表の榎本博明氏による「「みんなポジティブ思考になろう」の危うさ、心理学実験の意外な結果」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/302878
・『人事の重要な仕事として、従業員が持つ潜在的な能力を最大限に発揮できるようにサポートするということがある。いわゆる人材育成・能力開発である。昨今はポジティブな心構えを推奨する風潮があるが、今回はその危うさについて見ていきたい。特に着目したいのは、成果を出しているのに自信が持てず、ポジティブになりきれない人物だ』、興味深そうだ。
・『非現実的楽観主義と防衛的悲観主義  「ポジティブになろう」といった声をよく耳にするが、誰に対してもそんな声がけをしていいものだろうか。 例えば、何かにつけて「任せてください」「大丈夫です!」とポジティブな反応をする人物ほど、仕事上のミスが多かったり、仕事が雑だったりして困るというのは、多くの管理職や人事担当者が経験しているのではないだろうか。 ここで、ぜひ知ってほしいのが、「防衛的悲観主義」という心理学の概念である。 心理学者のノレムとキャンターは、過去のパフォーマンスについての認知と将来のパフォーマンスに対する期待を組み合わせて、楽観主義・悲観主義に関して四つのタイプに分けている。ここでは、そのうちの「非現実的楽観主義」と「防衛的悲観主義」を取り上げることにしたい。 非現実的楽観主義とは、これまで実績がないのに、将来のパフォーマンスに対してはポジティブな期待を持つ心理傾向を指す。防衛的悲観主義とは、これまで実績があるにもかかわらず、将来のパフォーマンスに対してはネガティブな期待を持つ心理傾向を指す』、「何かにつけて「任せてください」「大丈夫です!」とポジティブな反応をする人物ほど、仕事上のミスが多かったり、仕事が雑だったりして困るというのは、多くの管理職や人事担当者が経験しているのではないだろうか」、同感である。
・『適応的なのは防衛的悲観主義者  実際には成果を出していないにもかかわらず「自分はできる」と楽観視するのは、ここで言う非現実的楽観主義者だ。このような人物は、まさにポジティブなのだが、実は適応的ではない。 例えば、いくら注意したりアドバイスしたりしても、注意やアドバイスをした内容が染み込んでいかない。 「分かりました」「分かってます」などと口では言うものの、懲りずに同じような行動パターンを取り、似たようなミスを繰り返す。言ってみれば、あまりにポジティブすぎるために、慎重さが足りないのだ。 一方、実際はちゃんと成果を出しているのに「次もうまくいくとは限らない」と悲観し、慎重になるのは、ここで言う防衛的悲観主義者だ。このような人物は、一見するとネガティブではあるものの、実は適応的と言える。 実際、防衛的悲観主義者の成績が良いことは、多くの研究により証明されている。悲観的だからこそ慎重になり、用意周到に準備する。ポジティブになれないことが、高いパフォーマンスにつながっているのである。 ポジティブ思考が広まり、周囲にポジティブすぎて残念な人が目立つ現在の状況を見ると、ポジティブの効用にばかりとらわれずに、防衛的悲観主義の心理メカニズムの効用にもっと目を向けるべきなのではないだろうか』、「ポジティブ思考が広まり、周囲にポジティブすぎて残念な人が目立つ現在の状況を見ると、ポジティブの効用にばかりとらわれずに、防衛的悲観主義の心理メカニズムの効用にもっと目を向けるべきなのではないだろうか」、その通りだ。
・『ポジティブ思考を吹き込むとパフォーマンスが下がる  こうした防衛的悲観主義者をポジティブな心理状態にさせると、かえってパフォーマンスが下がってしまう。つまり、ネガティブであるところにメリットがあるのであって、ポジティブになるとそのメリットが失われてしまう。 ノレムたちは、そのことを証明する実験を行っている。 ある課題に取り組んでもらう実験に先立って、防衛的悲観主義の人たちを二つのグループに分けた。仮にそれをAグループ、Bグループとしよう。 Aグループの人たちに自分の成績を予想させると、かなり低い成績を予想した。それは防衛的悲観主義者なのだから、当然のことと言える。Bグループの人たちには、「あなたの実力なら、きっとうまくやれるはず」と鼓舞することで、ポジティブ思考を吹き込んだ。それによって、Bグループの人たちは楽観的な気分になり、Aグループの人たちよりも良い成績を予想した。 では、実際の成績はどうなったのだろうか?結果を見ると、実際の成績は、Aグループの人たちの方が、Bグループの人たちよりも良かったのである。 ポジティブ思考を吹き込まれ、良い成績を予想したBグループの人たちの方が、Aグループの人たちよりも、実際の成績は悪くなってしまった。ポジティブ思考を吹き込まれることで楽観的な見通しをもち、自信を持って課題に取り組んだはずのBグループの人たちの方が、成績が悪かったのだ。 これにより、防衛的悲観主義の人はネガティブなままでいた方が成果を出すことができ、ポジティブになるとかえって成果が出せなくなることが証明されたわけである。ポジティブになりすぎることの弊害を経験的に感じている人も少なくないはずだが、それが科学的にも裏付けられたわけである』、「防衛的悲観主義の人はネガティブなままでいた方が成果を出すことができ、ポジティブになるとかえって成果が出せなくなることが証明された」、なるほど。
・『防衛的悲観主義者を安易にポジティブにさせない  仕事が割とできる方で、こちらからすれば安心して任せられる人物なのに、本人はなぜか不安が強く、自分のやり方や判断に自信がなく、しょっちゅう相談に来る。そんなタイプの人物がいるものだ。 もっと自信を持ってもいいと思うわけだが、そんな人物に対して、 「これまでしっかり成果を出してるんだし、周囲の連中よりできるはずだから、そんなに神経質にならずに、もっと自信をもったらどうだ。いろいろ考えすぎるクセを直した方がいい。ポジティブにいこう」 などとアドバイスすると、かえって仕事ができなくなる可能性がある。このようなタイプの人たちこそが、ポジティブになれないことによって力を発揮している防衛的悲観主義者なのである。 防衛的悲観主義者は、ポジティブになれないからこそ成果が出せているわけで、ポジティブ思考を吹き込まれると、かえってパフォーマンスが低下する。それは、上述のように心理学の実験によって実証されている。 ノレムによれば、防衛的悲観主義者は、これから起こることに関して徹底的にネガティブに思考をめぐらす。「最悪の事態」をあらゆる角度から悲観的に想像しては、失敗するのではないかと恐れる。しかし、結果的には最もうまくいくタイプなのである。 これで、ポジティブ思考が広まると、かえって身の周りに残念な人が目立つようになる理由が分かっただろう。 この先の展開をネガティブに想像することによって高いパフォーマンスを維持していた人たちまでもが、ポジティブ思考を吹き込まれると用意周到な行動を取れなくなってしまったのである。ポジティブになることで、好循環が崩れてしまったのだ。 昨今は何かとポジティブであることが評価されやすいが、「何でもポジティブなのが良い」と考えるのはあまりに安易すぎる。せっかく成果を出せている防衛的悲観主義者の好循環を崩さないように注意したい』、「この先の展開をネガティブに想像することによって高いパフォーマンスを維持していた人たちまでもが、ポジティブ思考を吹き込まれると用意周到な行動を取れなくなってしまったのである。ポジティブになることで、好循環が崩れてしまったのだ」、私も現役時代にこのことを知っていたら、部下の指導で間違うこともなかったのかも知れない。
タグ:心理学 (その2)(【精神科医が教える】あなたが「同調圧力」の沼にハマるワケ、【最新脳科学×心理学】マインドフルネスが子どもの「心」も「頭」も「自己肯定感」も良くする科学的な理由、「みんなポジティブ思考になろう」の危うさ 心理学実験の意外な結果) ダイヤモンド・オンライン Tomy氏による「【精神科医が教える】あなたが「同調圧力」の沼にハマるワケ」 「すでにある人間関係に無理やり話を合わせるのではなく、自分が興味のあること、やりたいことを共有できる仲間をつくろうとすることが大事なんです」、「自分のやりたい物事を優先させる。そして、勝手に承認されるという順番のほうが、よほど健全で楽しいはずなのです。 他人に話を合わせるくらいなら、合わせなくても話が合ってくる仲間をつくればいいじゃないかという発想に転換してみてくださいね」、「話が合ってくる仲間をつく」るには時間もかかる。「すでにある人間関係に無理やり話を合わせる」のは、現在のことである。現在と将来の時間 星 友啓氏による「【最新脳科学×心理学】マインドフルネスが子どもの「心」も「頭」も「自己肯定感」も良くする科学的な理由」 『スタンフォード式生き抜く力』 「マインドフルネスと子どもの自己肯定感」 「「マインドフルネス」はポジティブ心理学で幅広く研究されてきたトピックの一つです」、「自己肯定感」が上がるのであれば結構なことだ。 「マインドフルネス」とは、「素直な自分の気持ちや考えを感じ取って受け入れる心の営み、または、そうした心の営みを引き出すための瞑想法や呼吸法などを、まとめ」た考え方のようだ。 「心に良い影響を与えるだけでなく、頭も良くなる良薬」、「高度に神経を研ぎ澄ませなくてはいけない仕事に対するパフォーマンスも上がる」、いいことづくめのようだ。 「私たちの心のもっているディフェンス型の適応・・・や、マイナス思考の傾向・・・が働き始める前に、自分のありのままを見つめるために、自分の気持ちや考えを「動じず」に「そのまま受け入れる」マインドフルな心の力が、必要なのです」、こう上手くいくものなのだろうか。 「マインドフルネスの習慣がつくように子どもをサポートするときの5つのヒント」は、いずれももっともだ。 「子どもとできる簡単マインドフル・リスニング」、はなかなかよく出来たテキストだ。「マインドフルネスで、最も大切なのが、自分の気持ちをそのまま受け入れることです」、なるほど。 榎本博明氏による「「みんなポジティブ思考になろう」の危うさ、心理学実験の意外な結果」 「何かにつけて「任せてください」「大丈夫です!」とポジティブな反応をする人物ほど、仕事上のミスが多かったり、仕事が雑だったりして困るというのは、多くの管理職や人事担当者が経験しているのではないだろうか」、同感である。 「ポジティブ思考が広まり、周囲にポジティブすぎて残念な人が目立つ現在の状況を見ると、ポジティブの効用にばかりとらわれずに、防衛的悲観主義の心理メカニズムの効用にもっと目を向けるべきなのではないだろうか」、その通りだ。 「防衛的悲観主義の人はネガティブなままでいた方が成果を出すことができ、ポジティブになるとかえって成果が出せなくなることが証明された」、なるほど。 「この先の展開をネガティブに想像することによって高いパフォーマンスを維持していた人たちまでもが、ポジティブ思考を吹き込まれると用意周到な行動を取れなくなってしまったのである。ポジティブになることで、好循環が崩れてしまったのだ」、私も現役時代にこのことを知っていたら、部下の指導で間違うこともなかったのかも知れない。
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部活動問題(その4)(野球部監督の叱責で16歳少年が自殺 遺族の訴え なぜ彼は死を選び 両親は9年後の今も闘うか、「ブラック部活」に苦しむ生徒と教員 データで示す驚きの実態とは、中高の「部活至上主義」がいまだ根強い深刻な実情 テスト前にも「家でしっかり練習しろ」と熱血指導) [社会]

部活動問題については、昨年6月27日に取上げた。今日は、(その4)(野球部監督の叱責で16歳少年が自殺 遺族の訴え なぜ彼は死を選び 両親は9年後の今も闘うか、「ブラック部活」に苦しむ生徒と教員 データで示す驚きの実態とは、中高の「部活至上主義」がいまだ根強い深刻な実情 テスト前にも「家でしっかり練習しろ」と熱血指導)である。

先ずは、昨年7月4日付け東洋経済オンラインが掲載したフリーライターの島沢 優子氏による「野球部監督の叱責で16歳少年が自殺、遺族の訴え なぜ彼は死を選び、両親は9年後の今も闘うか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/438134
・『2012年7月25日に県立岡山操山高校(岡山市)の野球部マネージャーだった2年の男子生徒A君(当時16)が自殺した問題。 岡山県教育委員会は6月9日、同教委が設置した第三者委員会が「自殺は監督(顧問)の叱責が原因。教員という立場を利用したハラスメントであったとも言える」とする報告書の全文を公開した。 遺族からの長年の要請を受け、亡くなって6年後の2018年に第三者委員会を設けたものの、すでに社会人になった生徒たちを追跡しての調査は容易ではない。原因究明までさらに3年を要した。 今回、遺族が望んだ、監督」による叱責と自殺の因果関係が認定された。そして9年目の真実が報告書という形で、白日のもとにさらされた。 しかし、遺族にとって一区切りかと思いきや実はそうではない。筆者のインタビューを受けたA君の両親は「(県教委への)不信感は募るばかりだ」と顔を曇らせた。 「今年3月下旬に報告書の概要が発表され、学校、県教委から詳しい説明を受けたいと伝えたが、2カ月以上経っても正式な説明はなく、謝罪や関係者への処分報告もない。私たちからすれば、(県教委は)報告書を公開しただけ。事実を受け入れていない気がする。私たち遺族はいつまで苦しまなくてはいけないのか」 こう言って、父親はうなだれた。 県教委が遺族に「事実を受け入れていない」と感じさせてしまうのはなぜなのか。まずは報告書に従って、経緯を振り返ってみたい』、「第三者委員会」設置が「亡くなって6年後」、「報告書の公開」が「9年後」とは、余りに遅く、「遺族」に「正式な説明はなく、謝罪や関係者への処分報告もない」、とは信じられないような異常な事態だ。
・『報告書で明らかになった驚くべき経緯  当時の顧問は部員の人格を否定するような「死ね」「帰れ」などの発言があるうえ、感情的になって怒鳴ることが多かった。態度が気に入らないとしてパイプ椅子を振り上げるなど、体罰やパワハラ行為を繰り返していた。 A君は暴言指導に苦しみながらも、1年2学期の野球部日誌に「自分は無意味な存在だった。自分はチームにとって存在価値がないので、これからはチームの役に立つよう頑張りたい」と書いている。ところが、3学期にあたる2012年2月、野球部日誌に「もう自分の存在価値も目標もわからなくなった」と記述、練習を休む日が出てきた。 2年生になった6月には、顧問から捕球できないところにばかりノックされ「声を出せ」と怒鳴られた。さらに「いらんわ。おまえなんか制服に着替えて帰れ」「ベンチにも入るな」と叱責され、練習試合2試合を一塁側のバックネット裏で見るしかなかった。その日以降も「2年生なのに、そんなことをしていいのか」「ルールを知らん三塁じゃから、誰かルールを教えちゃれ」などと罵倒が続いた。 A君は「もう耐えられない」と一度退部。退部を申し出た際も「夏の大会前の3年生の気持ちがわからないのか。チームの士気が下がる」と叱られている。 しかし、同級生から野球部復帰を誘われるなか、3年生の引退とともに部にマネージャーがいなくなることもあって、マネージャーとして復部。顧問から「1回辞めたんじゃから、覚悟はできとるんじゃろうな」と威嚇するような態度をとられたものの、7月23日に復帰した。 その日のミーティングでは「マネージャーなら自分から気づいて板書くらいしろ、それぐらい気遣いができんとマネージャーじゃねえで」「マネージャーなら、お前が書けや。マネージャーだったら、そんくらいせーや」と強い口調で叱責された。翌日の練習では「男のマネージャーなのだから声掛けしろ」などと怒鳴られたり、ノックの球出しのタイミングが悪いと怒られたりした』、せっかく退部したのに、「同級生から野球部復帰を誘われるなか、3年生の引退とともに部にマネージャーがいなくなることもあって、マネージャーとして復部」、しかし、「復部当日」に「威嚇するような態度をとられた」り、「強い口調で叱責」されたりしたということは、「復部」を「誘った」「同級生」は「顧問」とは「復部」について話合っていなかったのだろうか。
・『野球部復帰3日目に起きた”事件”  復帰3日目の25日。猛暑の練習で「マネージャーなら声を出せ!声を出さなかったらマネージャーの存在価値はねえんじゃ。元選手ならわかろうが」と怒鳴られた。足をつった1年生部員を介抱したが、氷を持ってくるのが遅いとして「マネージャーだったら対応しろ」などときつく叱られもした。 この後、顧問とA君との間で小さなすれ違いが起きる。他の部員が体調不良を訴えたため、顧問は氷を持ってこさせようとA君の名前を何回も大声で叫んだが、部室の清掃をしていたため気づかなかった。 練習後、顧問から炎天下のグラウンドに残され、「あのとき、何をしよったんだ」「聞きよるじゃろうが!」と大声で問い詰められた。だが、A君は黙っていた。何も答えないことに腹を立てた顧問に「熱中症で倒れた部員がいたら氷の用意をせい!」「他の(部の)マネージャーにしてもらっとるがな!」「部室におっても外の様子は気にしとけ!」などと怒鳴られ続けた。 学校を出た帰り際「体調不良者が出て大変じゃけど、これからもマネージャー頼むわ」と声をかけた同級生に対し、「もう俺はマネージャーじゃない。存在してるだけだ」と返答した。その数時間後、A君は命を絶った。) 操山高校のPTA会長だった男性は、自殺から8カ月近く経った2013年2月の新聞報道で事実の詳細を知り、初めて遺族と対面。「事件の重大性とPTAとして遺族に寄り添う必要性を感じた」という元PTA会長は同年3月、遺族とともに県教委と面会した。 その際に生徒指導推進参事(県警からの出向者)が言った「調査委員会を立ち上げても、(自殺と顧問の指導との)因果関係はわからんよ」という言葉を脅しのように感じたそうだ。 一周忌直後の2013年8月、顧問は当時の校長と前出の元PTA会長に促され、一度だけ遺族と対面した。だが、顧問は話の途中で「あなたの考えは間違ってる、あなたの表現は違うとすべて言われたら、すべて違うんです。私自身も多分ここにいないほうがいいんです、多分。もう、もう、はい、わかりました!」と声を荒らげてキレてしまい、遺族への謝罪の場とはならなかった。 その後顧問は操山高校に置かれたまま、通信制教員にシフト。軟式野球部の監督に就任した。 A君の三回忌法要が営まれた2014年7月、顧問率いる軟式野球部が全国高校定時制通信制軟式野球大会東中国予選を突破し、本大会出場を決めたニュースが地元紙を飾った。顧問は何の処分も受けず、教員を続けている』、「野球部復帰3日目に起きた”事件”」は確かに酷いが、「自殺」につながるほどでもない印象だが、それ以前の経緯も踏まえると「自殺」につながってしまったのだろう。「教育委員会」の生徒指導推進参事が県警からの出向者であるとは、驚かされた。彼が「言った「調査委員会を立ち上げても、(自殺と顧問の指導との)因果関係はわからんよ」という言葉」が「第三者委員会」の立ち上げにブレーキとなり、大幅に遅らせる結果につながった可能性がある。「顧問」は「通信制教員にシフト。軟式野球部の監督に就任」、「全国高校定時制通信制軟式野球大会東中国予選を突破し、本大会出場を決めた」、やはり指導力はあるのだろう。
・『第三者委員会設置を拒み続けた、県教育委員会  一方の県教委は、遺族が求める第三者委員会設置を拒み続け、遺族との調整もついていないなか、「自殺予防と発生時対応マニュアル」を操山高校での自殺問題を受け作成したと2013年10月に地元紙で公表した。 A君の父親は「そうやって論点をずらす姿勢は、ずっと変わらない」と不信感を隠さない。 今の教育長も、子どもの気持ちに気づける環境整備をする、子どもの悩みを聞くと言う。そうではなくて、そういう気持ちにした先生が悪かったと原因を探らなければ、学校や部活動での暴言やパワハラはなくならないはずだ」 運動部活動の顧問による暴言やパワハラを「暴力」ととらえない風潮は、今も日本の社会では根深い。 2018年に自死した岩手の県立高校バレーボール部員も、今年1月に亡くなった沖縄の県立高校の運動部員も、顧問の暴言や無視など理不尽な扱いがその要因だ。両方ともA君のように叩く、蹴るといった有形暴力は受けていない。どの子もみんな、パワハラという教員の立場を利用した「いじめ」を受けて亡くなったと解釈できる。) そこで思い浮かぶのは、A君が顧問から投げつけられた「存在価値はない」という言葉だ。上述した報告書にA君の言葉で「存在価値」「存在」が出てくる。顧問が発した言葉の刃に16歳が敏感に反応していることがわかる。 顧問や生徒指導推進参事の言葉に対する事実確認等を岡山県教育委員会へ申し込むと、岡山県教育庁教育政策課より「ご遺族から求められている詳しい説明に向け、現在、ご遺族と調整を続けており、引き続き真摯に対応していきたいと考えているため、当該教諭も含め、現段階で取材をお受けすることは控えたい」と返事があった。 そのことを遺族に伝えると「ほとんど進展のない調整を言い訳にしないでほしい。息子の死後から、県教委に真摯に対応いただいている印象はありません」と父親は顔をゆがめた。 当時、県教委との面会に同席した元PTA会長は「(県教委は)亡くなった生徒の命より、自分たちの立場を守っているように見えた。だから、いまだに遺族にとって誠意のある謝罪もない。自らを省みて変わろうとしていない」とあきれ果てた様子で話した』、「2018年に自死した岩手の県立高校バレーボール部員」、昨年「1月に亡くなった沖縄の県立高校の運動部員」、など「運動部活動の顧問による暴言やパワハラを「暴力」ととらえない風潮は、今も日本の社会では根深い」、そうした風土のなかで育ってきたマスコミのスポーツ担当記者も、問題意識を持てないのかも知れない。
・『なぜ遺族への謝罪も、教員の処分もないのか  とはいえ、ほかの自治体でも遺族への十分な説明や謝罪、教員の処分を行わないまま、一足飛びに、再発防止策の策定に話を変えてしまうケースが少なくない。 その背景として、一般社団法人「ここから未来」理事で指導死に詳しい武田さち子さんは教員からの「訴訟リスク」を挙げる。 「教員を処分した教育委員会が、その教員から処分不当で訴えられるケースも少なくないため、簡単に実行できない。近年、文科省が教員の(児童生徒に対する)わいせつ行為を原則として懲戒免職にするとしたように、パワハラ事案に関しても処分基準を国がつくるべきだ。ただ、大阪や兵庫などで適切に処分する自治体も出てきているので、参考にしてほしい」 体罰根絶宣言から8年。いまだ日本のスポーツ界や部活動で暴力やパワハラが蔓延する理由のひとつは、加害者の責任がほとんど問われてこなかったことが挙げられる。 その意味で、説明責任(アカウンタビリティ)の向上を図りつつ、本格的なパワハラ防止に着手すべきだ。関係者は対症療法より原因療法に重心を移し、真実と向き合ってほしい。そうしなければ、子どもの命は永遠に守れない』、「「教員を処分した教育委員会が、その教員から処分不当で訴えられるケースも少なくないため、簡単に実行できない」、単なる言い訳に過ぎない。無論、法的に十分検討する必要はあるにしても、「パワハラ事案に関しても処分基準を国がつくるべきだ」、は責任回避に過ぎない。「対症療法より原因療法に重心を移し、真実と向き合ってほしい」、その通りだ。

次に、10月16日付けダイヤモンド・オンライン「「ブラック部活」に苦しむ生徒と教員、データで示す驚きの実態とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/281638
・『部活動の問題点をさまざまなデータで示した『部活動の社会学』(岩波書店)が注目を集めている。同書を編集した、教育社会学者で名古屋大学准教授の内田良氏に、現代の部活の実態とあるべき姿を聞いた』、興味深そうだ。
・『タダで指導の学校と教員に依存する保護者  コロナ禍で開催された五輪や甲子園はさまざまな波紋を呼び、感染対策の観点から学校の部活動の可否も議論されている。 本書は2017年に行った全国約4000人の中学校教員へのアンケートなどを元に、部活が過熱していくメカニズムを記している。『ブラック部活動』(東洋館出版社)などで部活動への提言を行ってきた内田氏の集大成とも言えるものだ。 例えば男女差や世代・家族構成による差が部活顧問の負担に与える影響や親の学歴、職業、世帯年収など示すSES(Social-Economic Status:社会経済的背景)を用いて地域の部活の熱中度合いの違いを論じている。 「部活動は学校生活や我々の社会にとても根付いているにもかかわらず、学術的な議論や調査がほとんどされませんでした。学習指導要領で部活は『自主的・自発的な活動』と書かれているだけで、趣味にすぎないため、学術上の位置付けが低かったのです。本書ではさまざまなデータに基づき、部活動の議論を深める工夫をしました」 本来であれば「やってもやらなくてもいい」という部活動。ゆるい制度であるがゆえに、過熱に歯止めが利かず、教員の長時間労働、過度な練習による子どもたちへの負担増が懸念されているが、内田氏らの調査では異なる実態を示しているという。 「そもそも『部活をするために教員になった』という人は、年齢を問わず一定数いますし、これだけ過熱してきたわけですから、学校では部活はかなり支持されていると思っていました。ところが、驚くべきことに実際は教員の約半分が『部活の顧問をやりたくない』と回答しました。それでも部活の長時間化が止まらない一つの理由は、保護者や同僚からの期待があります。調査では『勝ち負けにこだわらない』と答える一方で、別の項目では『部活動の成績を向上させたい』と答える教員が全体の42%に及びました。また保護者らの期待を感じる教員ほど『成績を向上させたい』と答える傾向にありました」 保護者からの期待は、とりわけ土、日曜日の部活の長時間化に影響している。授業のある平日は物理的に練習量を増やせないため、必然的に土日の練習が長時間になるのだ。保護者からの期待に応え、練習し、試合に勝てばさらに期待が高まり、また練習は長時間になる。このようなスパイラルも過熱の一因であるという。 「保護者による期待は部活、学校依存と言い換えることも可能です。夜まで学校が子どもたちの面倒をみてくれる、あるいは子どもがやりたいことを教員が“タダ”で指導してくれる。保護者は、それが当たり前だと思っていますから、自覚しない形で学校に依存しているのです」 「極論、教員は午後5時に退勤するから、子どもは4時には帰ってくださいと言える」(内田氏)はずの学校だ・が、そのような圧力や期待のもと、平日夜から土日まで子どもを抱え込んでいる側面があるのだ』、「授業のある平日は物理的に練習量を増やせないため、必然的に土日の練習が長時間になるのだ。保護者からの期待に応え、練習し、試合に勝てばさらに期待が高まり、また練習は長時間になる。このようなスパイラルも過熱の一因であるという」、「「保護者による期待は部活、学校依存と言い換えることも可能です。夜まで学校が子どもたちの面倒をみてくれる、あるいは子どもがやりたいことを教員が“タダ”で指導してくれる。保護者は、それが当たり前だと思っていますから、自覚しない形で学校に依存しているのです」、その通りだ。
・『大会での成果を優先し健康リスクをないがしろに  そもそも、部活動を過熱させることになった転換点の一つは1964年の東京五輪。「メダル獲得のためにスポーツ強化が叫ばれ、部活の大会などでも様々な規制が緩んでいった」(内田氏)という。 五輪と部活は密接な関係があるが、今回の東京五輪が部活に与えた影響について、内田氏は次のように語る。 「今回の五輪は部活やスポーツの功罪を明らかにしたのではないでしょうか。スポーツ大会が盛り上がることには、熱中症や過度なトレーニングを含むさまざまなリスクを不可視化させ、忘れさせる効果があります。熱心な教員をはじめとする多くの人が、部活でスポーツすることは素晴らしいと話しますが、その裏では防げる事故で亡くなっている人や理不尽さに耐えられず辞めた人もいるはずです。今年の五輪期間に、神妙な面持ちでコロナのニュースを伝えていたメディアが五輪のニュースになるとガラッと明るくなるさまは、コロナのリスクなどを覆い隠したと言えます。このような五輪の光景は上記のようなスポーツの功罪と重なって見えました」 開催自体に賛否両論があった五輪だが、それに続くように甲子園やインターハイなど、部活の大会も今年は続々と行われている。いくらコロナ感染が心配であっても、大会が開催されることで練習せざるを得ない状況になっていると内田氏は言う。 「大会があるから勝つための練習をしなければいけないし、そのためにはマスクを外さないといけない。私が調べたところ、とくに高校で学校のクラスター感染数は授業に比べて明らかに部活のほうが多かったです。すべてが大会ありきで進み、コロナのみならず熱中症のリスクなどがないがしろにされています」 内田氏によると、中学校と高校の運動部活動では毎年3000件ほどの熱中症事例が報告されているという。また、部活中の熱中症による死亡事例も2005年から2018年では中学校で2件、高校で18件となっている(日本スポーツ振興センター「学校事故事例検索データベース」)。こうした熱中症リスクは当然ながら夏場の練習と大会によるものが大きく、内田氏は抜本的な改革を訴える。 「そもそも、熱中症リスクの高い真夏に大会を開くべきなのか疑問です。夏に大会があるから、当然暑い時期に練習もしなければいけない。『授業がない夏休みにしか大会ができない』という反論もありますが、それは『大会の犠牲として一定数は熱中症になり、毎年1~2人死んでください』と言っているようなもの。生徒の負担を少なくした安心・安全な設計をした上で、大会は開くべきです」』、「とくに高校で学校のクラスター感染数は授業に比べて明らかに部活のほうが多かったです。すべてが大会ありきで進み、コロナのみならず熱中症のリスクなどがないがしろにされています」 内田氏によると、中学校と高校の運動部活動では毎年3000件ほどの熱中症事例が報告されているという。また、部活中の熱中症による死亡事例も2005年から2018年では中学校で2件、高校で18件となっている」、「『授業がない夏休みにしか大会ができない』という反論もありますが、それは『大会の犠牲として一定数は熱中症になり、毎年1~2人死んでください』と言っているようなもの。生徒の負担を少なくした安心・安全な設計をした上で、大会は開くべきです」、その通りだ。
・『部活顧問の美談の裏に多くの生徒の犠牲  このような部活の問題点を危惧してか、文部科学省は部活動を学校主体から地域主体へと移行する「地域移行」の改革案を出している。 この中では休日の部活動の指導を望まない教員が休日は従事しないこと、学校単位ではなく市町村を越えた他校との合同部活動の推進、学校単位ではない大会への参加形態などの方策を示した。 「部活の主体を学校から地域へ移行することは必須です。学校単位で活動すると、生徒も教員も参加せざるを得なくなります。まずは、学校の活動と部活は切り離すことで教員の負担を減らし、複数の学区で自由参加方式の地域部活とすることで生徒の負担も減らす。地域部活での兼業許可制度も文部省は作ろうとしていますから、部活指導したい教員には一市民として指導してもらう。また地域部活では練習は週に何日と決めて、過熱しない制度設計も必要です」 国主導で部活改革が行われてはいるものの、中には部活動の延長にすぎない地域部活も発生している。 例えば、夕方まで学校主体の練習があり、夜に地域主体でまた練習するという形だ。地域部活を隠れみのに長時間化しているのである。このような事態を防ぐためにも抜本的な部活改革が求められる。 内田氏はこのような部活改革によって過熱を抑え、高校で「燃え尽きる」生徒を減らすべきだとも語る。 「部活顧問は『今でも部活の教え子と交流があり、卒業後、飲みに行くほど固い絆で結ばれている』という美談をよく話します。それによって部活は良いものだから全生徒にさせるべきだと思い込むのです。しかし、その美談の裏には苦しくて辞めた生徒や好きだった競技を嫌いになった生徒も大勢いる。そういう生徒は『燃え尽きた。嫌いになった』と言って大学でスポーツをやらないのです。これは、好きでやっていたはずのスポーツや芸術活動を高校でやめさせるという現代の部活の弊害であり、子どもの成長を止める営みです。大学でそのような学生を見ると、私はとても悔しい。部活改革によって、好きなことを一生涯続けていくことができるように大人が道筋をつけていくべきです」 肥大化、複雑化する部活動について提言を行ってきた内田氏だが、「改革まであと一歩」という。 「2015年から問題提起をしてきましたが、地域移行の取り組みなど、よくここまで変わったなと感じます。教員の半分が顧問をやりたくないのに部活が過熱している仕組みは異常であり、彼らの声が黙殺されていたということです。ただ、問題意識を持っている教員はたくさんいるので、改革までは本当にあと一押しかなと思います」 かく言う筆者も、さまざまな理由により「燃え尽きた」元高校球児である。人ごとではない部活改革の最後の一押しが、『部活動の社会学』となることを期待したい』、「文部科学省は部活動を学校主体から地域主体へと移行する「地域移行」の改革案を出している」、「中には部活動の延長にすぎない地域部活も発生」、「「部活顧問は『今でも部活の教え子と交流があり、卒業後、飲みに行くほど固い絆で結ばれている』という美談をよく話します」、「しかし、その美談の裏には苦しくて辞めた生徒や好」がきだった競技を嫌いになった生徒も大勢いる。そういう生徒は『燃え尽きた。嫌いになった』と言って大学でスポーツをやらないのです。これは、好きでやっていたはずのスポーツや芸術活動を高校でやめさせるという現代の部活の弊害であり、子どもの成長を止める営みです」、こうした「部活の弊害」が「「地域移行」の改革案」で解消してほしいものだ。

第三に、本年3月27日付け東洋経済オンラインが掲載したライターの広尾 晃氏による「中高の「部活至上主義」がいまだ根強い深刻な実情 テスト前にも「家でしっかり練習しろ」と熱血指導」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/541746
・『「日本若者協議会」がスポーツ庁に提出した要望書が話題になっている。一部の中学や高校の部活動で、強制加入させる実態があるとして、部活動は任意加入であることの周知徹底などを求める内容だ。 数年前まで、筆者は野球部だけでなく、スポーツ系、芸術系などさまざまな高校部活を取材していた。学校側が推薦する部活指導者の案内で、その活動を取材するのだ。私立も公立もあったし、全国トップクラスの部もあれば、中堅クラスもあった。そうして取材した多くの部活指導者は「部活至上主義」の信奉者のように思えた』、「取材した多くの部活指導者は「部活至上主義」の信奉者のように思えた」、由々しい事態だ。
・『定期考査前でも生徒に「家でしっかり練習しろ」  取材した多くの指導者は、元日とお盆以外のすべての日を部活にささげていた。ある球技の指導者は「最近は定期考査前は休め、と学校から言われるんですが、休むと元に戻すのに時間がかかるから、生徒には家でしっかり練習しろ、テストが終わったらチェックするからな、と言うんですよ」と忌々しそうに言った。 またある武道系の指導者は「私は結婚してから一度も家族旅行に行ったことがありません。新婚旅行だって2日目には帰ってきて部活の指導をしました。理解ある妻でよかった」と自慢げに言った。 さらにある公立校の陸上部の指導者は「ボーナスのたびにトレーニング器具を自費で購入して、学校に寄贈しています。私が寄贈した器具だけで、トレーニングジムができましたよ」と言った。 「公立校は転任があると思うのですが?」と聞くと、「それでもいいんです、次の学校でも同じように寄贈しますから」とすがすがしい表情で言った。そういう教員の大部分は、高校時代に同じような熱心な教員の指導のもと、部活中心の生活を送ってきた。「高校時代から恩師の先生のように高校教師になって、部活指導を思い切りやりたいと思っていたんです」とこれまた熱血風に語る先生に何人も出会った。) 日本の部活の何割かは、こういう熱血教員に率いられている。野球やサッカーのように競技に打ち込んでいれば、プロに進む道が拓け、大きな成功につながる可能性がある部活だけでなく、卒業後はほとんどが普通に就職するか、教員になるかというような部活でも熱血指導が普通に行われている。 典型的なのが「吹奏楽」だ。全国規模のコンクールが開催され、多くの生徒がこれを目指して日夜練習に励んでいる。「コンクールに強い名指導者」と言われる教員が何人かいて、その教員のもとには評判を聞きつけて、多くの生徒が集まる。公立から私立にスカウトされる指導者もいる』、「取材した多くの指導者は、元日とお盆以外のすべての日を部活にささげていた」、「ある公立校の陸上部の指導者は「ボーナスのたびにトレーニング器具を自費で購入して、学校に寄贈しています。私が寄贈した器具だけで、トレーニングジムができましたよ」と言った」、「日本の部活の何割かは、こういう熱血教員に率いられている」、「典型的なのが「吹奏楽」だ。全国規模のコンクールが開催され、多くの生徒がこれを目指して日夜練習に励んでいる。「コンクールに強い名指導者」と言われる教員が何人かいて、その教員のもとには評判を聞きつけて、多くの生徒が集まる。公立から私立にスカウトされる指導者もいる」、驚くほどの「熱血指導」のオンパレードだ。
・『高価な楽器を買い与える親も  筆者は大阪市内の老舗楽器店を取材したが、毎年入学式前になると、生徒たちが親と共に店を訪れ楽器を買っていく。「入門コースならこれくらい、と案内するんですが、子どもにねだられてもっと上等な楽器を買う人も多いですね」と楽器店の担当者は言う。大きな金管楽器の中には軽自動車のような価格になるものもあるが、買い与える親もいるという。 「高校の吹奏楽部には楽器は一通りそろっているんですが、古くて手入れが不十分な楽器が多いし、自分の楽器でないとしっかり練習できない、というんですね」 練習用の楽器を併せて購入する子もいる。手入れをするための用具も購入する。木管楽器のリードの削り方の指導を受ける生徒もいる。もちろん定期的にチューニングや修理に来る。 「吹奏楽」と言えば「高校野球の応援」と思いがちだが、吹奏楽の強豪校の中には野球などスポーツの応援演奏を迷惑がる指導者もいる。ある学校では「コンクール組」と「スポーツ応援組」に分けて別個の曲を練習していた。ちなみに、その学校の大型金管楽器は「コンクール組」はチューバ、「スポーツ応援組」はチューバより軽量なスーザフォンと使い分けていた。スーザフォンは甲子園のアルプス席でよく見る大きな朝顔型のラッパだ。 武道や球技の部活では「全寮制」の場合も多い。指導者の中には「寮長」として寮に住み込み、生徒と寝食を共にする場合も多い。そして指導者の妻も「寮母」になって生徒の生活面の面倒を見ることがある。まさに家族ぐるみで部活に打ち込んでいるのだ。そういう寮に行くと、なんとなく「相撲部屋」みたいな雰囲気が漂うが、寮母をする指導者の妻は「プライベートなんてありませんよね」と笑う。) 熱心に部活をしてきた人にとって、こういう話は珍しくもなんともないだろう。「何が悪いんだ?私は部活に打ち込んで充実した高校生活を送ってきたんだ」という人もたくさんいる。 こうした指導者は、学校にとっては「教師の鑑」となる場合が少なくない。取材先の校長や教頭は「〇〇先生の指導には頭が下がります。24時間365日、子どもたちのことを考えているんですから」という。部活の熱血指導者を経て、校長や教頭などの管理職になる教員も多い。はたから見れば「ブラック部活」「やりがい搾取」のように思えるが、本人たちにその意識はないのだろう。 行きすぎた「部活至上主義」への批判の声は上がっているが、教育界では「中学、高校生は部活をするもの」「教師は授業のほかに部活指導もするもの」という価値観がいまだに根強い。そのために同調圧力に負けて望まぬ部活の顧問を押し付けられ、プライベートの時間を削る教員がいる。 そして一方で冒頭に上げた「生徒の意思に反して部活に強制加入させるケース」が全国で見られるのだ。部活をさせる親の中には「先生、うちの子は暇だとろくなことをしないから、家に帰ったらくたびれて寝るしかないほど、めいっぱい鍛えてやってください」などという人もいる』、「子どもにねだられてもっと上等な楽器を買う人も多いですね」と楽器店の担当者は言う。大きな金管楽器の中には軽自動車のような価格になるものもあるが、買い与える親もいるという」、「部活の熱血指導者を経て、校長や教頭などの管理職になる教員も多い。はたから見れば「ブラック部活」「やりがい搾取」のように思えるが、本人たちにその意識はないのだろう。 行きすぎた「部活至上主義」への批判の声は上がっているが、教育界では「中学、高校生は部活をするもの」「教師は授業のほかに部活指導もするもの」という価値観がいまだに根強い。そのために同調圧力に負けて望まぬ部活の顧問を押し付けられ、プライベートの時間を削る教員がいる」、「同調圧力に負けて望まぬ部活の顧問を押し付けられ、プライベートの時間を削る教員」、気の毒ではある。
・『中学から高校の6年間の過ごし方  世間の教師や親の多くは「勉強もしない、部活もしないでゲームをしたり、遊んでばかりいる高校生を絶滅させる」ことを目標にしているかのように思える。 何を隠そう、筆者は怠惰な高校時代を送ってきた。受験にも部活にもそれほど身が入らず、趣味に走ったり無為に多くの時間を空費した。若いころはそのことを後悔したこともあったが、今となってはそういう「バッファー」のような時間も、その後の人生になにがしかの足しになっているのではないかと思う。 中学から高校の6年間は、まさに子どもから大人への移行期であり、毎年のように体つき、容貌が変わり、意識も変化していくときだ。そういう時期に一つの道に打ち込むのも確かに重要かもしれないが、将来への不安や異性への思い、友人や親との軋轢などを経験し、悩み、時間を空費するのも意味がないとは思えない。 この6年間に勉強や部活だけでなく、さまざまな経験をすること、そして悩むことが若者の人格形成に非常に重要なことは、多くの識者が指摘している。) 筆者は、有名校だけでなく、定員割れが続いている公立校の部活もいくつか取材した。ある高校の野球部監督は、それまで野球一筋に打ち込んできたが、転任によって部員が2人しかいない高校にやってきた。1人は不登校、もう1人はその友人でアルバイトで学費を稼いでいる。 監督は当初はショックを受けて呆然としていたが、2人に野球の楽しさに触れてもらうために、グラウンドをならし、用具を整備し、キャッチボールから丁寧に教えた。部活を無断で休んでも決して叱ることなく「出て来いよ」と優しく声をかけた。「2人は部活をしなければ、学校をやめてしまうと思うんです。部活の時間だけでも楽しい思い出を作ってもらって、2人とも卒業してほしい」と語った』、「ある高校の野球部監督は、それまで野球一筋に打ち込んできたが、転任によって部員が2人しかいない高校にやってきた。1人は不登校、もう1人はその友人でアルバイトで学費を稼いでいる」、「人に野球の楽しさに触れてもらうために、グラウンドをならし、用具を整備し、キャッチボールから丁寧に教えた。部活を無断で休んでも決して叱ることなく「出て来いよ」と優しく声をかけた」、こういう「部活」指導はいいものだ。
・『部活は数ある選択肢の一つ  またある公立校の吹奏楽部には、古くて手入れの行き届かない楽器しかない。部員たちはアルバイトの合間に楽器に触りに来る。金管楽器の中には凹んだものもある。 指導者は「コンクールとかはとんでもないので、何とか数曲は演奏できるようにしたいんです。部員たちはクリスマスに近所の老人ホームで慰問のコンサートをやるのが目標です。この学校の子たちは、卒業後の目標がない子が多いのですが、お年寄りが喜ぶ姿を見て、福祉関係に行きたい、と言い出した子どももいます」と言った。 取材を通じて、筆者はそういう「部活」も、全国大会で華々しい実績を上げる「部活」に負けず劣らず大いに意義があると思うに至った。これも「部活」なのだ。 部活は、高校生にとって数ある選択肢の一つにすぎない。そして部活への接し方も、ガチガチの「熱中派」だけでなく、軽い趣味程度のものであってもよいし、文系、スポーツ系を掛け持ちしてもよい。欧米で一般的なようにダブルスポーツもあってもよいだろう。もちろん「帰宅部」も当然ありだ。「このスポーツで一生食っていく」みたいなのは、むしろ例外的だ。一言でいえば部活に大事なのは「ダイバーシティー(多様性)」ではないのか? 結局、「部活の選択」で一番大事なのは、高校生の「主体性」「自主的な判断」だ。大人たちは、さまざまな時間を過ごす高校生に寄り添って、控えめにアドバイスをする存在であることが求められる』、「部活に大事なのは「ダイバーシティー(多様性)」ではないのか? 結局、「部活の選択」で一番大事なのは、高校生の「主体性」「自主的な判断」だ。大人たちは、さまざまな時間を過ごす高校生に寄り添って、控えめにアドバイスをする存在であることが求められる」、同感である。
タグ:東洋経済オンライン 部活動問題 (その4)(野球部監督の叱責で16歳少年が自殺 遺族の訴え なぜ彼は死を選び 両親は9年後の今も闘うか、「ブラック部活」に苦しむ生徒と教員 データで示す驚きの実態とは、中高の「部活至上主義」がいまだ根強い深刻な実情 テスト前にも「家でしっかり練習しろ」と熱血指導) 島沢 優子氏による「野球部監督の叱責で16歳少年が自殺、遺族の訴え なぜ彼は死を選び、両親は9年後の今も闘うか」 県立岡山操山高校(岡山市)の野球部マネージャーだった2年の男子生徒A君(当時16)が自殺した問題 「第三者委員会」設置が「亡くなって6年後」、「報告書の公開」が「9年後」とは、余りに遅く、「遺族」に「正式な説明はなく、謝罪や関係者への処分報告もない」、とは信じられないような異常な事態だ。 せっかく退部したのに、「同級生から野球部復帰を誘われるなか、3年生の引退とともに部にマネージャーがいなくなることもあって、マネージャーとして復部」、しかし、「復部当日」に「威嚇するような態度をとられた」り、「強い口調で叱責」されたりしたということは、「復部」を「誘った」「同級生」は「顧問」とは「復部」について話合っていなかったのだろうか。 「野球部復帰3日目に起きた”事件”」は確かに酷いが、「自殺」につながるほどでもない印象だが、それ以前の経緯も踏まえると「自殺」につながってしまったのだろう。「教育委員会」の生徒指導推進参事が県警からの出向者であるとは、驚かされた。彼が「言った「調査委員会を立ち上げても、(自殺と顧問の指導との)因果関係はわからんよ」という言葉」が「第三者委員会」の立ち上げにブレーキとなり、大幅に遅らせる結果につながった可能性がある。「顧問」は「通信制教員にシフト。軟式野球部の監督に就任」、「全国高校定時制通信制軟式野球大会 「2018年に自死した岩手の県立高校バレーボール部員」、昨年「1月に亡くなった沖縄の県立高校の運動部員」、など「運動部活動の顧問による暴言やパワハラを「暴力」ととらえない風潮は、今も日本の社会では根深い」、そうした風土のなかで育ってきたマスコミのスポーツ担当記者も、問題意識を持てないのかも知れない。 「「教員を処分した教育委員会が、その教員から処分不当で訴えられるケースも少なくないため、簡単に実行できない」、単なる言い訳に過ぎない。無論、法的に十分検討する必要はあるにしても、「パワハラ事案に関しても処分基準を国がつくるべきだ」、は責任回避に過ぎない。「対症療法より原因療法に重心を移し、真実と向き合ってほしい」、その通りだ。 ダイヤモンド・オンライン「「ブラック部活」に苦しむ生徒と教員、データで示す驚きの実態とは」 『部活動の社会学』(岩波書店) 「授業のある平日は物理的に練習量を増やせないため、必然的に土日の練習が長時間になるのだ。保護者からの期待に応え、練習し、試合に勝てばさらに期待が高まり、また練習は長時間になる。このようなスパイラルも過熱の一因であるという」、「「保護者による期待は部活、学校依存と言い換えることも可能です。夜まで学校が子どもたちの面倒をみてくれる、あるいは子どもがやりたいことを教員が“タダ”で指導してくれる。保護者は、それが当たり前だと思っていますから、自覚しない形で学校に依存しているのです」、その通りだ。 「とくに高校で学校のクラスター感染数は授業に比べて明らかに部活のほうが多かったです。すべてが大会ありきで進み、コロナのみならず熱中症のリスクなどがないがしろにされています」 内田氏によると、中学校と高校の運動部活動では毎年3000件ほどの熱中症事例が報告されているという。また、部活中の熱中症による死亡事例も2005年から2018年では中学校で2件、高校で18件となっている」、「『授業がない夏休みにしか大会ができない』という反論もありますが、それは『大会の犠牲として一定数は熱中症になり、毎年1~2人死んでく 「文部科学省は部活動を学校主体から地域主体へと移行する「地域移行」の改革案を出している」、「中には部活動の延長にすぎない地域部活も発生」、「「部活顧問は『今でも部活の教え子と交流があり、卒業後、飲みに行くほど固い絆で結ばれている』という美談をよく話します」、「しかし、その美談の裏には苦しくて辞めた生徒や好」がきだった競技を嫌いになった生徒も大勢いる。そういう生徒は『燃え尽きた。嫌いになった』と言って大学でスポーツをやらないのです。これは、好きでやっていたはずのスポーツや芸術活動を高校でやめさせるという現代 広尾 晃氏による「中高の「部活至上主義」がいまだ根強い深刻な実情 テスト前にも「家でしっかり練習しろ」と熱血指導」 「取材した多くの部活指導者は「部活至上主義」の信奉者のように思えた」、由々しい事態だ。 「取材した多くの指導者は、元日とお盆以外のすべての日を部活にささげていた」、「ある公立校の陸上部の指導者は「ボーナスのたびにトレーニング器具を自費で購入して、学校に寄贈しています。私が寄贈した器具だけで、トレーニングジムができましたよ」と言った」、「日本の部活の何割かは、こういう熱血教員に率いられている」、「典型的なのが「吹奏楽」だ。全国規模のコンクールが開催され、多くの生徒がこれを目指して日夜練習に励んでいる。「コンクールに強い名指導者」と言われる教員が何人かいて、その教員のもとには評判を聞きつけて、多 「子どもにねだられてもっと上等な楽器を買う人も多いですね」と楽器店の担当者は言う。大きな金管楽器の中には軽自動車のような価格になるものもあるが、買い与える親もいるという」、「部活の熱血指導者を経て、校長や教頭などの管理職になる教員も多い。はたから見れば「ブラック部活」「やりがい搾取」のように思えるが、本人たちにその意識はないのだろう。 行きすぎた「部活至上主義」への批判の声は上がっているが、教育界では「中学、高校生は部活をするもの」「教師は授業のほかに部活指導もするもの」という価値観がいまだに根強い。その 「ある高校の野球部監督は、それまで野球一筋に打ち込んできたが、転任によって部員が2人しかいない高校にやってきた。1人は不登校、もう1人はその友人でアルバイトで学費を稼いでいる」、「人に野球の楽しさに触れてもらうために、グラウンドをならし、用具を整備し、キャッチボールから丁寧に教えた。部活を無断で休んでも決して叱ることなく「出て来いよ」と優しく声をかけた」、こういう「部活」指導はいいものだ。 「部活に大事なのは「ダイバーシティー(多様性)」ではないのか? 結局、「部活の選択」で一番大事なのは、高校生の「主体性」「自主的な判断」だ。大人たちは、さまざまな時間を過ごす高校生に寄り添って、控えめにアドバイスをする存在であることが求められる」、同感である。
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東京一極集中(その1)(東京23区の人口減「テレワークで移住説」は本当か 25年ぶりに23区の「日本人人口」が転出超過に、「東京一極集中が日本を救っている」といえる理由 「東京が潤えば地方も栄える」の仕組みを解説) [経済政治動向]

今日は、東京一極集中(その1)(東京23区の人口減「テレワークで移住説」は本当か 25年ぶりに23区の「日本人人口」が転出超過に、「東京一極集中が日本を救っている」といえる理由 「東京が潤えば地方も栄える」の仕組みを解説)を取上げよう。

先ずは、本年2月16日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリストの山田 稔氏による「東京23区の人口減「テレワークで移住説」は本当か 25年ぶりに23区の「日本人人口」が転出超過に」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/511572
・『コロナ禍が長期化するなかで、東京の人口に異変が起きている。総務省が発表した2021年人口移動報告と東京都の住民基本台帳による世帯と人口(2021年1月1日現在)でみると、東京23区はついに年間の転出者が転入者を上回る転出超過となり、年間で人口が2万人以上も減少した。いったい、何が起こっているのだろうか』、興味深そうだ。
・『「脱23区」はファミリー層に多い  まずは、総務省の2021年人口移動報告をみてみよう。日本人のデータでみると、東京都の転入超過数は1万815人で、前年から半減だ。コロナ前の2019年は8万6575人だったから、87%もの大幅減である。それでも転入超過は続いている。 大きな異変が起きたのは東京都特別区部(23区)の転出入だ。外国人を含めた数値では、1万4828人の転出超過となり、外国人を含めた集計を開始した2014年以降初めて転出超過となった。日本人に限っても7983人の転出超過で、こちらは1996年以来25年ぶりだという。ちなみに23区の転出超過を世代別(日本人)にみると、30ー44歳の「子育て世代」が3万372人、0-14歳の「子ども世代」が16434人でボリュームゾーンを形成している。 それでは、区ごとの状況はどうだろうか。 転入超過は12区、転出超過は11区と半々だ。転入超過が多いのは ①足立区2224人②台東区1494人③葛飾区1258人 逆に転出超過が多いのは、①江戸川区3330人②世田谷区2755人 ③目黒区2581人 だった。 死亡数と出生数を加味した人口増減はどうか。東京都の日本人人口データ(2022年1月1日現在)で見ると、23区全体では21年の1年間で2万3462人の減少だ。20年は年間3万1248人の増加だったから、逆転現象が起きている。増加したのは中央区(0.66%増)、台東区(0.51%増)など6区だけで、17区は減少だ。減少数が多いのは江戸川区(4856人)、大田区(3949人)などだ。 ちなみに23区の人口増減をコロナ禍直前の20年1月1日時点と比較すると、それでも7786人の増加となっている。) では、23区が転出超過となった背景に何があったのか。今回のニュースを伝える多くのメディアは「コロナ禍でテレワーク移住進む」「テレワーク普及で近隣県への転出が増加」などと伝えている。本当にテレワークが最大の要因なのだろうか。 筆者の周辺で昨年、都心から転居した3家族の転居理由は、「自然豊かな環境で暮らしたい」(23区内から房総)、「転職」(23区郊外から神戸)、「子育てのため実家で父母と同居」(23区内から九州)だった。逆に週の半分程度がテレワークという知人の多くは23区内から動いていない。 テレワークで地方移住、郊外転居を実行した人が、いったいどれだけいるのだろうか。テレビでは、23区から千葉県流山市や神奈川県小田原市に引っ越した若い夫婦2組のケースを紹介していた。共にリモートワークだというが、2組ともにIT関連企業勤務だった。職場環境が恵まれているケースだ。毎日、現場に向かわなければならないエッセンシャルワーカーの方々には無縁の世界である。 コロナ禍は3年目に突入したが、テレワークの実施状況はどうなっているのか。東京都のテレワーク実施率調査(1月7日発表)によると、2021年12月の都内企業(従業員30人以上)のテレワーク実施率は56.4%で、前月比で0.8ポイントの減少だった。「週3日以上」は45.6%で同0.4ポイントの減少。もっとも多いのは「週1日」で35.3%で、「週5日」は16.6%にとどまっている。日本生産性本部の最新の調査(1月)では、首都圏1都3県の実施率は26.8%で10月調査よりも10.1ポイントも下がっている』、「東京都のテレワーク実施率」はいずれの調査でも低下したようだ。
・『マンション高騰も「脱出」原因か  こうした数字をみる限り、「テレワークで移住進む」はどうにも説得力に欠ける。楽観的過ぎるのだ。むしろ、他の要因があるのではないか。そこで住宅環境を調べてみると、仰天の事実が浮上してきた。東京23区の新築マンション価格の高騰である。 不動産経済研究所の「新築分譲マンション市場動向2021年のまとめ」によると、首都圏の発売戸数は3万3636戸、前年比23.5%増で、東京23区は1万3290戸(シェア39.5%)だった。気になる23区の平均価格は8293万円(1㎡当たり128.2万円)で前年比7.5%アップ。首都圏全体平均の6260万円よりも2000万円以上も高い。東京都下5061万円、神奈川県5270万円、埼玉県4801万円、千葉県4314万円と、23区の突出ぶりが分かる。 では、賃貸はどうか。不動産情報サービスのアットホーム株式会社が毎月公表している「全国主要都市の「賃貸マンション・アパート」募集家賃動向」を見てみよう。 コロナ直前の2020年1月の23区の「ファミリー向き(50~70㎡)」物件の平均家賃は186944円だったが、最新の2021年12月では191863円となっている。家賃は景気動向に左右されにくいと言われるだけあって、その差は5000円弱、上昇率は2.6%ほどだが、終わりの見えないコロナ禍において、都心に住む必要性のなくなった人たちにとっては受け入れがたいものだろう。 「都心部の住宅コストは高騰し過ぎています。一方、サラリーマン世帯の所得はそう増えていませんから、一握りの富裕層や資産家しか購入できないし、業者も購買層を絞っています。23区が転出超過になった要因が「テレワークの普及」というのはあくまでサブの話で、根本的には住宅コストが上がり過ぎて住めなくなってきているため郊外へ転出しているとみています」(不動産専門のデータ会社・東京カンテイの市場調査部の担当者)。 新築マンションが8000万円超、賃貸の家賃ですら上昇傾向。子育て世代には、今の23区の住宅環境は厳し過ぎる。子育てのための住宅購入を機に地方や郊外へ引っ越す。そんなサラリーマン世帯の姿が目に浮かぶようである。テレワークが引き金となったかもしれないが、やはり住宅価格の高騰が転出超過・人口減の最大の要因ではないだろうか』、「子育て世代には、今の23区の住宅環境は厳し過ぎる。子育てのための住宅購入を機に地方や郊外へ引っ越す」、「やはり住宅価格の高騰が転出超過・人口減の最大の要因」、なるほど。
・『都内の「休廃業・解散」した企業は大幅減  もう一つ、気になる現象がある。コロナ禍での〝不況〟である。帝国データバンクが発表した『全国企業「休廃業・解散」動向調査』の結果によると、意外にも休廃業・解散した企業数はコロナ前に比べて大幅に減少している。しかしその内実は、政府系・民間金融機関による資金提供やコロナ対応の補助金が貢献した結果で、実際、東京都に限ってみれば、1万2123件と前年より増え、全国で唯一1万件を超えている。 2021年12月の東京都の有効求人倍率(就業地別)は0.90倍で、年間を通じて1倍を下回った。一方、東京都の失業率は2021年7-9月平均で3.1%と全国 平均の2.8%を上回っている。コロナ前の2019年7-9月は同2.2%だったことを踏まえると、コロナ禍の経済状況悪化でリストラされたり、職を失ったりした人たちが東京から去っていった。そんなケースも相当数あるのではないだろうか。 データ上はもっとも23区への転入が多い若者層でも「大学がオンライン授業ばかりになったからアパートを解約して実家に帰った」とか、「バイトがなくなり23区内から私鉄沿線の郊外に引っ越した」といった声も聞く。このほかにも都心からの転居には、さまざまな事情があるだろう。 2021年1年間に東京23区から人口が流出したのは紛れもない事実だ。しかし、その一方でタワマンをはじめ新築マンションが年間に1万3000戸以上も販売され、22年の予測はそれを上回る。そして結果として、コロナ前と比べた23区の日本人人口は、依然として減少には至っていない。今年に入り感染拡大が続くなかでも、テレワーク実施率は低下傾向にある』、「コロナ禍の経済状況悪化でリストラされたり、職を失ったりした人たちが東京から去っていった。そんなケースも相当数あるのではないだろうか。 データ上はもっとも23区への転入が多い若者層でも「大学がオンライン授業ばかりになったからアパートを解約して実家に帰った」とか、「バイトがなくなり23区内から私鉄沿線の郊外に引っ越した」といった声も聞く」、確かにこれらが「23区の人口」への減少圧力になっているのだろう。
・『「都心を去る人」には2種類ある  「テレワークで移住進む」といった分析は、働き方改革や東京一極集中是正を掲げる政府にとっては、なんとも耳当たりのいいものである。しかし、現実はそんなに甘くはない。テレワーク環境が整備された企業で働き、都心から離れても生活できる人と、もはや暮らしていけないから都心を離れざるを得ない人のどちらが多いのか。今後の人口対策、少子化対策のためにもきちんとした分析、検証が必要だろう』、確かに「今後の人口対策、少子化対策のためにもきちんとした分析、検証が必要」、同感である。

次に、5月6日付け東洋経済オンラインが掲載した明治大学名誉教授 の市川 宏雄氏と不動産コンサルタントの 宮沢 文彦氏による「「東京一極集中が日本を救っている」といえる理由 「東京が潤えば地方も栄える」の仕組みを解説」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/582711
・『コロナ禍においても、都内各地の再開発プロジェクトの多くは進行しており、懸念されていた人々の地方移住も限定的で、「東京一極集中」の状態は続いています。東京にはなぜ、それほどのパワーがあるのか。そして東京には、これから先どんな未来が待ち受けているのか。 明治大学名誉教授の市川宏雄氏、株式会社ボルテックス代表取締役社長兼CEOの宮沢文彦氏の新刊『2030年「東京」未来予想図』から、東京の現在と未来を3回にわたって紹介します。 人口が東京に一極集中すること、その結果、ヒトだけでなくモノ・カネ・情報がすべて東京に集中してしまうことは、これまで社会の在り方として不健全だと考えられてきました』、「東京一極集中」を評価するとは、興味深そうだ。
・『ヒト・モノ・カネ・情報が集まる東京圏  地方に暮らす人々から見ると、東京圏にばかりヒト・モノ・カネ・情報が集まるのは、確かに不公平のように思えます。特に2000年代以降、「限界集落」や「地方消滅」といった問題が広く取り沙汰されるようになってからは、「東京一極集中こそが諸悪の根源」のようにもいわれてきました。 しかし1990年代以降、出口の見えないデフレ不況に突入し、きわめて低い経済成長率しか達成できていない日本が今日でも先進国の一員でいられるのは、実は"東京一極集中のおかげ"ともいえるのです。ヒト・モノ・カネ・情報が今のように東京に集中していなければ、日本はどこかの時点で、G7(主要先進7カ国)から脱落していたかもしれません。多少オーバーな言い方をすれば、東京一極集中こそが日本を救っているのです。 なぜ、そういう理屈になるのか。それは、現代が第3次産業全盛の時代であり、第3次産業は大都市でこそ繁栄する産業だからです。 自然界に直接働きかける産業を第1次産業といいます。具体的には農業・漁業・林業がこれにあたり、第1次産業で製品(収穫物・漁獲物)を生産(収穫・採取)するために必要な場所は、耕作地・漁場・山林になります。第1次産業で得た製品を使って加工する産業を第2次産業といいます。製造業・建設業がこれにあたり、第2次産業で製品を生産するために必要な場所は工場・一定の広さの土地になります。 では、第3次産業で製品を生産するために必要な場所とはどこでしょうか。第1次産業、第2次産業に含まれないすべての産業を第3次産業と呼びます。 具体的には、電気・ガス・水道業、情報・通信業、運輸業、卸売・小売業、飲食業、金融・保険業、不動産業、サービス業、公務など。第3次産業で生産される製品(サービス)は非常に多岐にわたりますが、その製品が生産される場所は明確です。人と人が自由に行き来でき、交流し合えるところ。つまり、交通網と情報網が整備され、多くの人々が居住しているところ、すなわち都市になります。 すべての産業をこのように第1次から第3次までに分類したのは、イギリスの経済学者コーリン・クラーク。彼はペティ=クラークの法則でも知られています。) この法則とは、一国の産業構造は経済発展の進度によって、第1次産業から第2次、第3次へと比重が移っていくというもの。 わが国の経済発展の歴史もまさにそのとおりで、産業別の就業者人口を1968年と50年後の2018年で比較してみると、第1次産業は19.8%から3.4%に、第2次産業は34.0%から23.5%に減少しているのに比べ、第3次産業は46.3%から73.0%へと大きく増加。いまや、日本で働いている人の10人のうち7人は第3次産業に従事しており、その大部分が都市部で暮らしていると推察できます。 この第3次産業に特徴的なのは、人口が集積すればするほどスケールメリットが働き、指数関数的に経済がより巨大に発展していくということ。人が集まれば集まるほど、そのニーズは多様化かつ巨大化していき、新たな市場が同時多発的に増殖されていくからです。 人口100万都市が生み出す経済的価値=都市GDPを10倍しても、人口1000万都市1個分の都市GDPには遠く及びません。人口1000万都市の都市GDPは、人口100万都市のGDPの20倍にも30倍にもなるからです』、「ヒト・モノ・カネ・情報が今のように東京に集中していなければ、日本はどこかの時点で、G7・・・から脱落していたかもしれません。多少オーバーな言い方をすれば、東京一極集中こそが日本を救っているのです」、一見したところ、もっともらしいが、首都圏への「集中」は、他の先進国に比べても日本では著しいので、もっと丁寧な説明が必要だ。
・『東京の経済規模はオランダGDP以上  たとえば、2019年度の世界各国のGDPを見ると、日本は5兆45億ドルで世界第3位ですが、驚くべきことに、東京都の巨大な経済規模は日本のGDPの約19%にあたる9654億ドル(都民経済計算平成30年度年報)に上り、オランダ、イラン、スイス、トルコといった国々のGDPを凌駕しています。一極集中によって巨大化した東京の経済力が、今日の日本経済を支えているといえるでしょう。 また東京には、地方都市では成立しにくいビジネスがいくつも成立しています。その良い例が、猫カフェ、ハリネズミカフェ、フクロウカフェなどの動物カフェでしょう。 それぞれ、その店に行けば猫、ハリネズミ、フクロウに触れ合えることがウリで、利用料金はハリネズミカフェで1人30分1500円程度。こうした動物カフェのような隙間ビジネスはそもそも、人口の少ない都市では成立しません。人口1400万人を有する東京だからこそ、「ハリネズミと触れ合いたい」と思う人々が一定数存在し、それらの人々を相手に商売することができるわけです。ちなみに、ハリネズミカフェは現在、東京都内に10店舗以上あるそうです。 秋葉原電気街、神田古書店街、かっぱ橋道具街など多くの専門店街が成立しているのも、巨大都市である東京ならでは。飲食店にしても、焼き芋専門店、マッシュルーム専門店、ポテトサラダ専門店、かつお節専門店、りんご飴専門店など、特定の食材や料理に特化したメニューだけを提供する店が数多く存在します。 さらに2021年6月から、飲食店デリバリーサービスのUber Eats(ウーバーイーツ)が東京都区内で徒歩配達をスタートさせました。徒歩によるデリバリーサービスがビジネスとして成立するのも、巨大な人口密集地である東京なればこそといえるでしょう。 もちろん私自身、「東京一極集中」を100%肯定的にとらえているわけではありません。人口が狭い地域に集中することは、ときに、さまざまなストレスや軋轢の要因となりえます。特に2020年に発生したコロナ禍においては、東京の過密さが感染拡大の大きなリスク要因になってしまいました。東京一極集中のデメリットは確かに存在します。 しかし、そのメリットもまた無視できないほど大きいものであるのも事実。私たちはそろそろ、東京一極集中のメリットについても真剣に語り合うべきではないでしょうか。 先ほど、東京にはヒト・モノ・カネ・情報が集積していると述べましたが、東京は、いわゆる大企業が集積していることでも知られています。 たとえば、「フォーチュングローバル500」(2020年)のデータによれば、世界で売上高上位500社に入るグローバル企業のうち、東京都に本社を置く企業は37社。これは北京市55社に次ぐ世界第2位の多さであり、3位のパリ市、ニューヨーク州16社を大きくリードしています』、「私たちはそろそろ、東京一極集中のメリットについても真剣に語り合うべきではないでしょうか」、なるほど。
・『東京の税収はスウェーデンの国家予算並み  また、日本の従業員数100人以上の事業所所在地を見ると、全体の37.0%が東京都に集まっています。以下、大阪府9.2%、愛知県5.9%、神奈川県4.7%の順。東京圏1都3県を合計すると、日本全体の46.9%が東京圏に集中している計算になります。 それだけに、東京都が毎年得ることのできる法人税などの税収は膨大であり、例年の予算規模約15兆円はスウェーデンの国家予算を上回ります。東京都が受け取るこうした莫大な税収の一部は、実は地方へも還元されます。本来、「東京などの大都市」と「地方」と「中央政府」の関係は、以下のようなものでした。 ○「地方」は「東京などの大都市」に労働力となる「人」を提供 ○「東京などの大都市」は企業による経済活動で税収を得て、「中央政府」に税を納付 ○「中央政府」は東京などが納めた税金から「地方」に地方交付税などの補助金を分配 ところが、1990年代前半にバブル経済が崩壊してから、この3者の関係は大きく変化しました。ごく大雑把にいえば、企業の業績悪化や不良債権問題で東京など大都市の税収が激減。中央政府の税収も激減しましたが、地方に補助金を支給しないと地方経済が破綻してしまうため、赤字国債を大量発行して急場をしのぎます。 しかし、そんな自転車操業がいつまでも続けられるわけもなく、中央政府は「平成の大合併」で全国3232市町村を1727市町村にまで削減。補助金の総量を減額すると同時に、「地方法人特別税」の制度を導入。制度の変更もありながら、現在は、東京都の法人事業税、法人住民税の税収のうち、9000億円超が地方に再分配されています。 このようにして、東京が一極集中によって得られた富は、直接的または間接的に、地方の各都市に配分されています。つまり、東京が潤えば地方も栄えるのです』、「東京が一極集中によって得られた富は、直接的または間接的に、地方の各都市に配分されています」、これは地方交付税の仕組みそのものだ。こんなことで、「東京が潤えば地方も栄える」とは間違えではないとはいえ、新たに発見した関係であるかのように誇らしげに強調するとは、お粗末だ。こんな記事を取上げるとは、東洋経済も落ちたものだ。私も、ざっと読んだ段階では、気づかなかったため、このブログの読者を巻き込んでしまったことを、ここに深くお詫びしたい。
タグ:東京一極集中 (その1)(東京23区の人口減「テレワークで移住説」は本当か 25年ぶりに23区の「日本人人口」が転出超過に、「東京一極集中が日本を救っている」といえる理由 「東京が潤えば地方も栄える」の仕組みを解説) 東洋経済オンライン 山田 稔氏による「東京23区の人口減「テレワークで移住説」は本当か 25年ぶりに23区の「日本人人口」が転出超過に」 「東京都のテレワーク実施率」はいずれの調査でも低下したようだ。 「子育て世代には、今の23区の住宅環境は厳し過ぎる。子育てのための住宅購入を機に地方や郊外へ引っ越す」、「やはり住宅価格の高騰が転出超過・人口減の最大の要因」、なるほど。 「コロナ禍の経済状況悪化でリストラされたり、職を失ったりした人たちが東京から去っていった。そんなケースも相当数あるのではないだろうか。 データ上はもっとも23区への転入が多い若者層でも「大学がオンライン授業ばかりになったからアパートを解約して実家に帰った」とか、「バイトがなくなり23区内から私鉄沿線の郊外に引っ越した」といった声も聞く」、確かにこれらが「23区の人口」への減少圧力になっているのだろう。 確かに「今後の人口対策、少子化対策のためにもきちんとした分析、検証が必要」、同感である。 市川 宏雄 宮沢 文彦 「「東京一極集中が日本を救っている」といえる理由 「東京が潤えば地方も栄える」の仕組みを解説」 「東京一極集中」を評価するとは、興味深そうだ。 「ヒト・モノ・カネ・情報が今のように東京に集中していなければ、日本はどこかの時点で、G7・・・から脱落していたかもしれません。多少オーバーな言い方をすれば、東京一極集中こそが日本を救っているのです」、一見したところ、もっともらしいが、首都圏への「集中」は、他の先進国に比べても日本では著しいので、もっと丁寧な説明が必要だ。 「私たちはそろそろ、東京一極集中のメリットについても真剣に語り合うべきではないでしょうか」、なるほど。 「東京が一極集中によって得られた富は、直接的または間接的に、地方の各都市に配分されています」、これは地方交付税の仕組みそのものだ。こんなことで、「東京が潤えば地方も栄える」とは間違えではないとはいえ、新たに発見した関係であるかのように誇らしげに強調するとは、お粗末だ。こんな記事を取上げるとは、東洋経済も落ちたものだ。私も、ざっと読んだ段階では、気づかなかったため、このブログの読者を巻き込んでしまったことを、ここに深くお詫びしたい。
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政府のマスコミへのコントロール(その19)(武田真一氏が『クロ現』降板。「やり残したことがある気もします」無念さ滲ませる【動画】、NHK有馬キャスターが起こした退任の挨拶事件 6月人事は国際部長として処遇か、自民党がBPO使ったメディア介入に虎視眈々 報道規制の発想はプーチン大統領と変わらず) [メディア]

政府のマスコミへのコントロールについては、昨年3月9日に取上げた。今日は、(その19)(武田真一氏が『クロ現』降板。「やり残したことがある気もします」無念さ滲ませる【動画】、NHK有馬キャスターが起こした退任の挨拶事件 6月人事は国際部長として処遇か、自民党がBPO使ったメディア介入に虎視眈々 報道規制の発想はプーチン大統領と変わらず)である。

先ずは、昨年3月19日付けHUFFPOST「武田真一氏が『クロ現』降板。「やり残したことがある気もします」無念さ滲ませる【動画】」を紹介しよう。
https://www.huffingtonpost.jp/entry/takeda_jp_6053fa57c5b66a80f4e6a07e
・『自民党の二階俊博幹事長へのインタビューで「菅政権の怒りを買った」のが原因と見る週刊誌報道も。NHK放送総局長は「誰かに何か言われたからということは一切ない」と圧力の影響を否定している。 2017年から4年間、NHKの報道番組『クローズアップ現代+ 』の司会を務めてきた武田真一(たけた・しんいち)アナウンサーが、3月18日の放送で降板した。同日、番組の公式Twitterに掲載されたメッセージ動画の中で武田アナは「やり残したことがある気もしますが、あとは若いキャスターに引き継いでいきたいと思います」と無念さをにじませた。 放送の最後でも武田アナは同様のあいさつをしたが、「やり残したことがある気もしますが」という台詞は入っていなかった。 武田アナの降板をめぐっては、自民党の二階俊博幹事長へのインタビューで不興を買ったのが原因とする週刊誌報道が出ていた』、「インタビューで不興を買った」、とは何があったのだろう。
・『二階幹事長が不快感をあらわにしたことも  指摘されている放送は1月19日の『クローズアップ現代+』。武田アナは二階氏に新型コロナ対策について聞いた。「政府の対策は十分なのか。さらに手を打つことがあるとすれば何が必要か」と質問すると、二階氏は「いちいちそんなケチをつけるもんじゃないですよ」と不快感をあらわするシーンがあった。 武田アナのNHK大阪放送局への異動が発表されたのは、その1カ月後の2月10日。『週刊文春』2月25日号では、二階幹事長へのインタビューが「菅政権の怒りを買った」のが理由とみる局内の声を報じている。 一方、NHKの正籬聡放送総局長は「公共メディアとして自主自律は生命線。誰かに何か言われたからということは一切ない」と圧力の影響を否定した。 武田アナは、4月2日からスタートする全国放送の新番組「ニュース きん5時」(金曜午後4時50分)でキャスターを務める予定だ』、「新型コロナ対策について・・・「政府の対策は十分なのか。さらに手を打つことがあるとすれば何が必要か」と質問すると、二階氏は「いちいちそんなケチをつけるもんじゃないですよ」と不快感をあらわするシーンがあった」、「武田アナのNHK大阪放送局への異動が発表されたのは、その1カ月後の2月10日」、これはどうみても自民党からの圧力があったとみるのが自然だ。
・『武田真一キャスターの動画メッセージ全文  4年間、本当に有り難うございました。この4年、私の心に刻み込まれたのは、社会の中で懸命に生きている皆さまの声です。それは決して希望に満ちた声ばかりではありませんでした。 大切な人を亡くした。明日の暮らしが見えない。災害や新型コロナで思いがけず人生を狂わされた。私たちの周りには多くの課題があることを思い知らされてきました。私に何ができるんだろうか?ずっと自問してきました。 せめて皆さまの声を私の心に深く浸して、分かろうと努力しよう。皆さんの声を私の心と共振させて、さらに大きな波紋にして社会に伝えよう。それが何かの糸口になるのではないか。 そう考えてきましたが、いかがだったでしたでしょうか。やり残したことがある気もしますが、あとは若いキャスターに引き継いでいきたいと思います。現代の断面をクローズアップし、よりよい未来の材料を見つけてプラス。「クローズアップ現代+」はこれからもひるまずに伝え続けていきます。新年度は3月30日からのスタートです。是非ご覧ください。 ■武田アナの直筆メッセージ(『クローズアップ現代+』の公式Twitterでは武田アナから番組視聴者に向けた直筆メッセージも掲載している(リンク先参照)』、それにしても、露骨な報道への介入だ。

次に、4月8日付けデイリー新潮「NHK有馬キャスターが起こした退任の挨拶事件 6月人事は国際部長として処遇か」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2021/04081100/?all=1
・『ウォッチ9のキャスターを4年(3月いっぱいでNHKニュースウオッチ9のキャスターを交代した有馬嘉男氏(55)。菅義偉首相へのインタビューがその神経を逆なでし、官邸からクレームがNHKに来て、その圧力に屈した結果の降板劇とも報じられたが、6月内示の人事では意外にも国際部長として処遇される見込みだという(注)。そして先日、有馬氏が報道局の幹部が集まる会議で退任の挨拶を求められた際に、「無言の抵抗」をしていたとの話も。 NHKのある幹部局員によると、 「1990年入局の有馬さんはウオッチ9のキャスターを4年務めました。注目度の高かった大越(健介)さんでも5年でしたから、かなり長い方だと思います。有馬さんはお茶の間の人気者というわけではなかったですが、安定感があって特段変える必要もなく、そうこうしているうちに番組の編集責任者の面々は年下ばかりになってしまった」 昨年春にも、交代の話が出ていたが、 「桑子(真帆)アナと和久田(麻由子)アナを朝と夜の間でシャッフルするというアクロバティックなことをやったせいで、有馬さんまで一気に変えられないと、ポジションにとどまることになりました」 余人をもって代えがたかったのかその辺りは判然としないが、その後もキャスター職にとどまり、菅義偉首相が就任直後には番組でインタビューも行った。 その内容に官邸がクレームを付けてきたと報じられ、NHKはその圧力に屈した結果、有馬氏を降板させた、というようなニュースも流れた』、私は偉ぶった「大越」よりも気さくな「有馬」の方が好きだった。(注)有馬氏はヨーロッパ副総局長(Wikipedia)になったようだ。
・『忖度したとは捉えられたくない  「基本的に、新年度以降のキャスターをどうするかについては、前年の秋以降に委員会が開かれ、そこで決まります。官邸からの圧力が報じられた時期とタイミングが多少重なってはいますが、それとは無関係に有馬さんの降板は事実上決まっていたと思います。報道局長が近く交代するので、有馬さんの異動の件もまだ流動的ではありますが……」 少し話はそれるが、新しく報道局長に就く予定の山下毅氏は籾井会長時代に政治部長を務めていたが、たった1年で熊本放送局長に異動させられており、左遷ではないかとみられていた。 「政治部長を1年だけというのは異例ですね。熊本に左遷されるきっかけになったのは、山下さんとあまり相性のよくなかった岩田明子さん(政治部記者兼解説委員)がなんらかの動きを見せたからだと指摘する声がありました。しかし、今回の復権で岩田さんの力もなくなったと言われています。安倍さん(前首相)や今井さん(前秘書官兼補佐官)との蜜月ぶりから、他を圧倒する独自報道を連発してきた岩田さんですが、菅さんとの関係はうまく行っていないんですよね。希望していたワシントン支局行きや日曜討論の司会は却下されたようです。ウチは去年1月に新会長を迎え、人事面で大きな変革が始まっているということも、岩田さんの件に関係していると思います」 話を有馬氏に戻そう。 「ウチとしてはそういう官邸圧力報道は気にしていて、官邸に忖度したとは捉えられたくないし、その結果、懲罰で降板という見方を打ち消したいということで、きちんと有馬さんを処遇する姿勢を見せたいということなのでしょう」 囁かれている国際部長のポジションは、それなりの処遇だ、というのが内部の見方ではある。が、それに有馬氏が満足しているかは不明だ。 4月1日、報道局幹部が集まる会議で、こんな事件が起こった』、実際には、栄転の「国際部長」ではなく、前述の通り、ヨーロッパ副総局長だ。
・『政治部出身の人間が  「通常なら有馬さんが呼ばれる席ではなく、編集主幹や編集責任者が出席して当日の放送の流れを確認する場です。今回は退任の挨拶のために呼ばれたようですが、順番が回ってきて口にしたのは、“ありがとうございました。これからもよろしくお願いします”のみ」と、別の幹部。 「有馬さんによる無言の抗議などと言われています。その後に同じ経済部出身の報道局長がねぎらいの言葉をかけなければ、ずいぶん気まずい感じになっていたことでしょう」 有馬さんの本音を斟酌してもらうと、 「そういう会議の場でそれなりの挨拶をしても無意味だという、諦めの気持ちがあったのかもしれません。また、可能ならもう少しキャスターをやりたかったというのもあったでしょうし、それ以上に、経済部出身の有馬さんとしては、政治部出身の人間が経営を仕切っていて、それがNHKを歪んだ方向にもっていっているという思いが強く、これまでも厳しい口調で批判することもあったようです」 かねて有馬氏は「安倍官邸」に批判的だったという。 「有馬さんのスタンスがリベラルなんで、安倍官邸のやり方にはフラストレーションが溜まっていたみたいですね。会社の近くの居酒屋でそういったことをよく話していたと言います。酒場での有馬発言を聞きつけた人たちが、今回の降板騒動に絡めて、経費がどうのとか女性関係がこうだとか、真偽のほどはよくわからない話が出回っていたことは事実です」 有馬氏自身が思いのたけをぶちまける日が来たら、それはそれで面白いが――』、新ポストは前述の通り、国際局長ではなく、ヨーロッパ副総局長だ。「有馬」氏のために新設したようで、到底、栄転とはほど遠いポストで、官邸の顔も立てたようだ。

第三に、3月16日付け日刊ゲンダイ「自民党がBPO使ったメディア介入に虎視眈々 報道規制の発想はプーチン大統領と変わらず」を紹介しよう。
・『ウクライナに侵攻したロシアの国内では、リベラル系メディアの解散や放送休止など、厳しい報道規制が敷かれている。報道の自由擁護を掲げる国際非営利団体「ジャーナリスト保護委員会」などがプーチン大統領を非難する声明を発表したが、日本だって他人事ではない。自民党は、メディアへの介入を強めようと虎視眈々だ。 自民党の「情報通信戦略調査会」は9日、民放連とNHKの専務理事を呼んでBPO(放送倫理・番組向上機構)やテレビ各局の番組審議会の活動状況について質疑を行った。 日本テレビなどの報道によれば、出席議員からは「不祥事を起こした政治家が不快な表情をする映像が流れていることに対しBPOは注意しないのか」といった質問が出たという。それは不祥事を追及されて嫌な顔をする側の問題であって、放送倫理上の問題ではない。自分たちに不都合なことを報道するなというのは、プーチン大統領と変わらない発想だ。 しかも、佐藤勉調査会長は会議後、「BPO委員の人選に国会が関われないか提起したい」なんて言っていた。ただでさえ、大メディアがロクに政権批判をしない現状なのに、さらに統制を強めようというのか。第2次安倍政権で息のかかった人物をNHKの経営委員会に送り込み、支配下に置いただけでは飽き足らず、民放にも手を突っ込もうというのである』、「出席議員からは「不祥事を起こした政治家が不快な表情をする映像が流れていることに対しBPOは注意しないのか」といった質問が出た」、のには心底驚かされた。厚かましいにもほどがある。確かに「BPO」を通じて「民放にも手を突っ込」むことを狙っているのだろう。 
・『「不勉強」「稚拙」と猛抗議  これにはさすがに、普段はおとなしい民放も抗議の声を上げ<放送法について、一から学びなおすべきでしょう> <民主主義社会の基盤となる言論・表現の自由を脅かすような論議が政権与党内で行われていることに対して、私たちは放送で働く者として、強く抗議します> 主張はごもっとも。だが、自民党をここまで増長させたのは、政権に忖度して口をつぐんできた大メディアの責任でもある。そこは忘れないで欲しい。た。14日、日本民間放送労働組合連合会(民放労連)が声明を発表。情報通信戦略調査会の議論について、珍しく厳しい言葉で糾弾したのだ。 <今回明らかになった議論では、政治家の映像の使用に関わる意見など、自らの都合のいいように放送番組を左右しようという稚拙な発想もうかがえます>』、「普段はおとなしい民放も抗議の声を上げ」たのは当然だ。「自民党の「情報通信戦略調査会」」のメンバーは「情報通信」のプロであるにも拘らず、このようなお粗末な認識で議論しているとは、恥ずかしい限りだ。一般のマスコミももっと批判的に紹介すべきだろう。   
タグ:政府のマスコミへのコントロール (その19)(武田真一氏が『クロ現』降板。「やり残したことがある気もします」無念さ滲ませる【動画】、NHK有馬キャスターが起こした退任の挨拶事件 6月人事は国際部長として処遇か、自民党がBPO使ったメディア介入に虎視眈々 報道規制の発想はプーチン大統領と変わらず) HUFFPOST「武田真一氏が『クロ現』降板。「やり残したことがある気もします」無念さ滲ませる【動画】」 「インタビューで不興を買った」、とは何があったのだろう。 「新型コロナ対策について・・・「政府の対策は十分なのか。さらに手を打つことがあるとすれば何が必要か」と質問すると、二階氏は「いちいちそんなケチをつけるもんじゃないですよ」と不快感をあらわするシーンがあった」、「武田アナのNHK大阪放送局への異動が発表されたのは、その1カ月後の2月10日」、これはどうみても自民党からの圧力があったとみるのが自然だ。 それにしても、露骨な報道への介入だ。 デイリー新潮「NHK有馬キャスターが起こした退任の挨拶事件 6月人事は国際部長として処遇か」 私は偉ぶった「大越」よりも気さくな「有馬」の方が好きだった。(注)有馬氏はヨーロッパ副総局長(Wikipedia)になったようだ。 実際には、栄転の「国際部長」ではなく、前述の通り、ヨーロッパ副総局長だ。 新ポストは前述の通り、国際局長ではなく、ヨーロッパ副総局長だ。「有馬」氏のために新設したようで、到底、栄転とはほど遠いポストで、官邸の顔も立てたようだ。 日刊ゲンダイ「自民党がBPO使ったメディア介入に虎視眈々 報道規制の発想はプーチン大統領と変わらず」 「出席議員からは「不祥事を起こした政治家が不快な表情をする映像が流れていることに対しBPOは注意しないのか」といった質問が出た」、のには心底驚かされた。厚かましいにもほどがある。確かに「BPO」を通じて「民放にも手を突っ込」むことを狙っているのだろう。 「普段はおとなしい民放も抗議の声を上げ」たのは当然だ。「自民党の「情報通信戦略調査会」」のメンバーは「情報通信」のプロであるにも拘らず、このようなお粗末な認識で議論しているとは、恥ずかしい限りだ。一般のマスコミももっと批判的に紹介すべきだろう。
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日本の政治情勢(その60)(高市早苗政調会長が更迭へ 安倍氏の“使い捨て”が派内造反の火種になる可能性、権勢誇った「二階氏」が今 窮地に直面している訳 派閥から退会者続出 選挙区の継承にも暗雲、西部邁の最大の親友だった東大生が84歳になっても「中核派」議長を務めているワケ 対談 清水丈夫×田原総一朗(後篇)) [国内政治]

日本の政治情勢については、2月9日に取上げた。今日は、(その60)(高市早苗政調会長が更迭へ 安倍氏の“使い捨て”が派内造反の火種になる可能性、権勢誇った「二階氏」が今 窮地に直面している訳 派閥から退会者続出 選挙区の継承にも暗雲、西部邁の最大の親友だった東大生が84歳になっても「中核派」議長を務めているワケ 対談 清水丈夫×田原総一朗(後篇))である。

先ずは、4月10日付けNEWSポストセブン「高市早苗政調会長が更迭へ 安倍氏の“使い捨て”が派内造反の火種になる可能性」を紹介しよう。
https://www.news-postseven.com/archives/20220410_1743092.html?DETAIL
・『参議院選後の内閣改造・党人事で高市早苗・政調会長の更迭が確実視されている。安倍晋三・元首相の後ろ盾を失いつつあるためだ。総裁選であれほど高市氏をあれほど全面支援しながら、安倍氏は高市氏を安倍派に受け入れようとはしない。それは安倍氏が自民党最大派閥「清和政策研究会」(現・安倍派)の会長に就任(昨年11月)してから顕著になった。安倍派ベテランはこう話す。 「派内には下村博文・会長代理をはじめ、萩生田光一・経産相、世耕弘成・参院幹事長、福田達夫・総務会長、稲田朋美・事務局長などポスト岸田を目指す総裁候補が綺羅星の如く並んでいる。そこに総裁選出馬の実績がある高市さんが出戻ってきたら、総裁候補の地位を奪われかねない。だから派閥復帰には派内の反対が強い」 振り返ると、安倍氏の“マドンナ切り捨て”は今に始まったことではない。 第1次安倍政権では現東京都知事の小池百合子氏を総理補佐官や防衛大臣に抜擢したが、首相に返り咲くと第2次政権からは一転して干し上げた。かわりに重用したのが“タカ派のジャンヌダルク”と呼ばれた稲田氏だった。 当選3回で規制改革相に入閣させたのを皮切りに、自民党政調会長、防衛大臣を歴任させ、一時は党内で「安倍の後継者」とさえ言われた。 防衛大臣時代に同省の不祥事対応などで能力不足が露呈して事実上解任された後も、すぐに総裁特別補佐や幹事長代行の役職を与えて復権させたほどだ。 ところが、稲田氏が総裁選出馬に意欲を見せ、「選択的夫婦別姓」容認に転じると一転して距離を置いた。総裁選への協力要請にも、安倍氏は「一歩一歩頑張ればいい」とクビを縦には振らなかった。 「自分の役に立つと思えば、肩入れして持ち上げるが、言うことを聞かなくなったり、自分の立場を脅かすかもしれないと警戒すると容赦なく突き落とす。まさに権力者の常套手段です」 そう語るのは政治評論家の有馬晴海氏だ。 安倍氏は退陣後も最大派閥の会長として権力を持ち続け、総裁カードを次々に切り捨てて後継者が育つことを許さない。そのスタイルは“闇将軍”と呼ばれた田中角栄氏にも似ている。有馬氏が続ける。 「キングメーカーの安倍氏はこれまで高市氏を通じて佐渡金山の世界遺産推薦など、岸田政権に注文をつけてきた。しかし、ロシアのウクライナ侵攻によって、プーチン大統領を外交パートナーとしてきた安倍氏への評価は国際的にも国内でも非常に厳しくなっている。党内での立場が相対的に弱まってきたから、岸田首相に配慮しなければならない。3月14日に行われた麻生、茂木氏との3者会談で『政権を支える』と合意したのがその表われです。 安倍氏は平然と岸田批判を口にする高市氏にこれまでのように肩入れするわけにはいかなくなった。首相が内閣改造で高市氏を交代させると言えば反対しないはずです」) ところが、高市氏の更迭は党内の権力バランスの大きな変化につながりそうだ。“闇将軍”の角栄氏は最後は派内から“クーデター”を起こされて失脚、結束を誇った田中軍団は分裂に追い込まれ、自民党の世代交代を引き起こした。 実は、最大派閥の安倍派内では、安倍氏が派内から総裁候補を立てようとしないことに不満が溜まり、「安倍離れ」が始まっている。 「総裁選出馬を止められた下村さんや稲田さんは安倍さんに対して不信感を拭い切れていないし、側近の萩生田さんも自分の支持層は安倍さんの岩盤保守とは少し違うと考えている。だから福田総務会長を含めて、総裁候補たちは安倍さんに頼らなくてもいいようにそれぞれ個別に勉強会を開くなど自前の勢力拡張を急いでいる。皮肉なことに、安倍さんに一番忠実なのは無派閥で自分の勢力がない高市政調会長ではないか」(前出・安倍派ベテラン) そんな状況で安倍氏がいまや“唯一の忠臣”である高市氏を見捨てれば、「安倍さんに従っても使い捨てられる」と派内から造反の火の手が上がり、角栄氏の“二の舞い”となる可能性がある。それが岸田政権を支える最大派閥の崩壊へとつながれば、自民党に激震を呼ぶのは間違いない』、「派内には・・・ポスト岸田を目指す総裁候補が綺羅星の如く並んでいる。そこに総裁選出馬の実績がある高市さんが出戻ってきたら、総裁候補の地位を奪われかねない。だから派閥復帰には派内の反対が強い」、安倍氏は「自分の役に立つと思えば、肩入れして持ち上げるが、言うことを聞かなくなったり、自分の立場を脅かすかもしれないと警戒すると容赦なく突き落とす。まさに権力者の常套手段です」、「総裁候補たちは安倍さんに頼らなくてもいいようにそれぞれ個別に勉強会を開くなど自前の勢力拡張を急いでいる。皮肉なことに、安倍さんに一番忠実なのは無派閥で自分の勢力がない高市政調会長ではないか」、「そんな状況で安倍氏がいまや“唯一の忠臣”である高市氏を見捨てれば、「安倍さんに従っても使い捨てられる」と派内から造反の火の手が上がり、角栄氏の“二の舞い”となる可能性がある」、面白い展開になってきた。

次に、5月3日付け東洋経済オンラインが掲載した政治ジャーナリストの泉 宏氏による「権勢誇った「二階氏」が今、窮地に直面している訳 派閥から退会者続出、選挙区の継承にも暗雲」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/586556
・『昨年10月の岸田文雄政権発足で自民党幹事長の座を追われ、いまや党内反主流の「冷や飯組」となった二階俊博元幹事長が、ここにきて政治生命の危機をささやかれている。 次期衆院選での政界引退が既定路線とみられる中、息子など二階氏直系での選挙区継承も困難視されているからだ。 二階氏の地元・和歌山県は、1票の格差是正のための「10増10減」で小選挙区が3から2に減る。しかも、二階氏の新たな選挙区に世耕弘成自民党参院幹事長が鞍替え出馬を目指しており 、「二階vs世耕」の戦いは世耕氏優勢との見方が強い』、「二階俊博元幹事長」が「いまや党内反主流の「冷や飯組」」とは政治の世界も厳しいものだ。
・『「政界駆け込み寺」と呼ばれた二階派の状況が一変  二階氏は、安倍晋三、菅義偉両政権で自民党の最高実力者として君臨。安倍氏が首相時代、「党で最も政治技術を持った方」と評したように、昭和の政治をほうふつとさせる強かさなどから「政界の絶滅危惧種」と畏怖されてきた。 しかし、「来るものは拒まず」と無派閥や元野党議員を積極的に取り込んだことで、「政界駆け込み寺」とも呼ばれた二階派は、ここにきて状況が一変。退会者が相次いで自民第5派閥に定住し、後継者も不透明で「解体寸前」(閣僚経験者)とみる向きも出始めている。 このため、参院選で与党が改選過半数を確保し、岸田首相の「黄金の3年」が現実となれば、3年後と想定される次期衆院選に向けて、現在83歳で体調不安も抱える二階氏が、「選挙区と政治生命を同時に失う絶体絶命の危機」(自民長老)に陥る可能性も少なくない。) 二階氏は2016年8月に当時の谷垣禎一幹事長の自転車転倒事故負傷による辞任を受けて幹事長に就任。その後の安倍、菅両政権で自民の最高権力者に昇りつめ、政局運営の中枢として豪腕を振るってきた。 とくに、安倍首相の総裁3選を主導する一方、2019年以降の「ポスト安倍レース」では、安倍4選に言及しながら、安倍氏のライバルの石破茂元幹事長を「期待の星」と持ち上げるなど、変幻自在の二階流を駆使。2020年夏の安倍氏の退陣表明時には、電光石火で「菅後継」をまとめ上げた。 こうした実績から、二階氏は、安倍・菅両氏、麻生太郎副総裁をしのぐ「最強のキングメーカー」として権勢を誇示。岸田政権発足後も、党内反主流の旗頭として、党内ににらみをきかせてきた』、「二階氏は2016年8月に当時の谷垣禎一幹事長の自転車転倒事故負傷による辞任を受けて幹事長に就任。その後の安倍、菅両政権で自民の最高権力者に昇りつめ、政局運営の中枢として豪腕を振るってきた」、「谷垣氏」の後任だったことを思い出した。
・『岸田氏が高い支持を集める中で存在感が急速に低下  しかし、岸田首相が2021年10月の総選挙で圧勝し、その後の政局運営でも、売り物の「聞く力」と、コロナやウクライナ危機への機敏な対応で国民的評価を獲得。今年4月に政権半年を迎えた時点で内閣支持率も就任後最高水準となり、参院選勝利による長期安定政権が確実視される状況となったことで、二階氏の存在感が急速に低下した。 二階氏は、2012年12月に、当時の伊吹派(志帥会)会長だった伊吹文明氏の衆院議長就任で派閥を継承して二階派が誕生。その後は、政界の師とする故田中角栄元首相の「数は力」を念頭に、派閥拡大に邁進。党内に居場所のない無派閥議員や旧民主党から自民入りを目指す議員らを次々派閥に入会させ続けた。 もちろん、二階氏の力の源泉は、幹事長として選挙での公認調整や資金供与、さらには党内閣人事で行使してきた絶大な権力だった。しかし、「二階外し」を掲げて誕生した岸田政権で力を失ったことで求心力は一気に低下。ここにきて、退会者が相次ぐ事態となった。 まず政界に波紋を広げたのは、片山さつき参院議員(元女性活躍担当相)をめぐる除名騒動。片山氏は2021年末に二階氏に退会を申し出て了承されたと主張したが、二階氏はそんな事実はないとして、2022年2月に片山氏を除名処分とした。 片山氏は最大派閥の安倍派に入会し、次期参院選で東京選挙区からの出馬を狙ったとの見方もあり、それが二階氏の逆鱗に触れたとされる。 さらに、衛藤晟一元沖縄北方担当相(参院比例)も4月8日付けで派閥を離脱した。周辺には「二階さんはもう政治家として終わった」などと漏らしているとされ、もともと安倍氏側近でもあった衛藤氏だけに、二階氏を見限って最大派閥の安倍派入りを狙っているとみられている。 これにより二階派の所属議員は42人となり、党内5大派閥の最小勢力の立場が一段と鮮明に。しかも、くしの歯が抜けるような退会者続出が、二階氏の威信を急速に低下させていることも否定しようがない。 二階氏の政界引退の際の後継者と目されるのは、武田良太元総務相。今のところ二階氏とも意を通じているようにみえるが、武田氏は菅氏とも極めて親密で、「場合によっては多くの手兵を連れて派閥を割って菅グループに加わるのでは」(自民幹部)との憶測も絶えない』、「後継者と目されるのは、武田良太元総務相・・・武田氏は菅氏とも極めて親密で、「場合によっては多くの手兵を連れて派閥を割って菅グループに加わるのでは」・・・との憶測も絶えない」、これでは大変だ。
・『二階派内にあつれきが生じた2021年9月の総裁選  そもそも、他党からの転向組などを次々と自派閥に取り込む手法には、党内の他派閥が「強引だ」と反発、「思想信条もバラバラな寄せ集め集団」などの批判も絶えなかった。それだけに、現在の二階派の窮状にも、党内他派閥からは「自業自得」との厳しい声が相次ぐ。 二階派内にあつれきが生じたのは2021年9月の党総裁選がきっかけとされる。この総裁選で二階氏は、“泡沫候補”扱いだった現在の野田聖子内閣府特命相(こども家庭庁担当など)に派内から8人の推薦人を出した。 これに反発したのが片山、衛藤両氏で、いずれも高市早苗氏(現政調会長)の推薦人に名を連ねた。このため「無条件で二階氏の判断に従う」という二階派の“鉄則”は崩れ、今回の両氏の退会にもつながった。) こうした二階氏の苦境に追い打ちをかけたのが地元・和歌山での「IR否決」だった。和歌山県議会は4月20日の本会議で、県が誘致を進めてきたカジノを含む統合型リゾート(IR)について、区域整備計画の認定を国に申請する議案を反対多数で否決した。 「資金計画が不透明」などが理由で、県は国が求める同28日までの整備計画提出を断念、IR誘致計画は事実上、頓挫した。 県は和歌山市の人工島「マリーナシティ」へのIR誘致を計画。約4700億円を投資し、2027年秋ごろの開業を目指していた。本会議での採決は無記名投票で行われ、最大会派の自民党からも多くが反対に回ったとされる』、「“泡沫候補”扱いだった現在の野田聖子内閣府特命相・・・に派内から8人の推薦人を出した」、「これに反発したのが片山、衛藤両氏」、「「無条件で二階氏の判断に従う」という二階派の“鉄則”は崩れ、今回の両氏の退会にもつながった」、やはり「二階氏」のやり方が強引過ぎたようだ。「地元・和歌山での「IR否決」」も指導力低下が影響したようだ。
・『「二階氏の威光が薄れた証拠」  IRについては岸田政権も推進の立場だ。しかも、和歌山のドンと呼ばれる二階氏は、かねてからIR誘致を地元繁栄のための看板政策と位置付けていた。にもかかわらず、二階氏の影響が強いはずの県議会が反対を決めたことは、「地元でも二階氏の威光が薄れた証拠」(県会自民党)と受け止められている。 こうして永田町と地元の双方で「落ち目」が際立つ二階氏。「本人はなお権勢維持への執念が強い」(周辺)とされるが、岸田首相が参院選を自民勝利で乗り切って長期安定政権を実現すれば、「さしもの二階氏も命脈が尽きる」(自民長老)との見方が強まっている』、「「地元でも二階氏の威光が薄れた証拠」・・・と受け止められている」、「さしもの二階氏も命脈が尽きる」「との見方が強まっている」、政治情勢の変化は想像以上に早いようだ。

第三に、4月9日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの田原 総一朗氏と清水丈夫氏の対談「西部邁の最大の親友だった東大生が84歳になっても「中核派」議長を務めているワケ 対談 清水丈夫×田原総一朗(後篇)」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/94215?imp=0
・『「暴力革命」を掲げてゲリラ活動を行ってきた新左翼党派・中核派で議長を務める清水丈夫氏は、地下潜行活動を経て、2020年9月、実に51年ぶりに公然集会に姿を見せて人々を驚かせた。実はこの清水氏、かつて東大生時代は西部邁氏や青木昌彦氏と60年安保を闘っていた。前編に引き続き、田原総一朗による清水氏のインタビューを掲載しよう。前後編記事の後編です。 (清水氏の略歴はリンク先参照)』、「中核派」の「議長」を未だに続けているとは、興味深そうだ。
・『中核派から国会議員誕生へのシナリオ  田原 アメリカやヨーロッパはこの30年、経済成長を続けてきました。90年代初頭のバブル崩壊以来、日本はまったく経済成長しなかった。こんな国は日本だけだ。今から30年前、日本人の平均賃金は韓国の2倍だった。今や平均賃金は韓国に抜かれている。なんでこうなったの? 清水 日本の帝国主義が、帝国主義間の競争で劣敗しているからです。 田原 なんで負けてるの? 清水 弱いからですよ。労働者・人民大衆の戦争反対、改憲反対の意識と闘いが強いから。 田原 だったら清水さんたちにとって大チャンスのはずなのに、あなたたちの政治勢力はなんで伸びないんだ。 清水 いやいや、伸びていますよ。 田原 国会議員を出してないじゃない。 清水 そんな単純な言い方はしないでください。 田原 国会議員を出せるくらいにならなきゃ。 清水 将来はそうありたいと思っていますよ。 田原 あなたたちは国会を否定してるのか! 清水 国会は直接には否定していません。しかし、あれは所詮、ブルジョア国会ですよ。 田原 そんなこと言ってたら、まったく展望がないよ。国会を否定してどうすんだ!! そんなこと言ってたら、いつまで経っても政権なんて取れっこない。議会制民主主義の内部に、あんたたちが現実に参加してないことが問題なんだよ!! 清水 我々はプロレタリア革命、暴力革命によって新しい社会を作ろうとしていますよ。 田原 ブルジョア国会だなんて言って国会を否定してるのに、新しい社会なんか作れっこないじゃん。あなたたちの暴力革命は、自分たちに反対する人間は全部敵だと思ってるんでしょ。 清水 そんなふうには思わないですよ。 田原 デモクラシーというのは、自分たちと考えが違う人間たちの存在を認めなきゃいけないんだよ。 清水 頭から否定なんてしていません。認めていますよ。 田原 革マル派は認めてないじゃない。 清水 あれは左翼じゃないですよ。カクマルの問題はもうケリがつきました。それに「考えが違う人の存在を認めるのがデモクラシーだ」と言われたって、我々を抹殺すると言っている連中とどうやって手を組むんですか。そんなことはありえないでしょう。) 田原 中核派から、区議会議員や県議会議員は出ているの? 清水 一時期は東京や大阪で、都議会議員と区議会議員や市議会議員など地方議員を何人も輩出しました。2019年4月の統一地方選挙では、我々の同志である洞口朋子さんが杉並区議会議員として当選しています。 田原 そういう人をもっとガンガン出して、議会制民主主義を活性化してほしいんだよ。 清水 必要に応じて、議会政治活動はどんどんやりますよ。だけど選挙が革命運動の中心ではありません。議会で多数派を取るために選挙運動ばかりやるようでは、革命運動として本末転倒、ナンセンスです。 田原 じゃあ、あなたたちの運動の中心は何なの。 清水 労働運動と学生運動ですよ。反戦・反改憲の全人民の闘いです。 田原 何もやってないじゃん。 清水 そんなことないですよ。たとえば動労千葉(国鉄千葉動力車労働組合)は、国鉄分割・民営化の攻撃に対抗して勝ち抜きました。動労千葉は今も労働組合として生き残っています。「関西生コン」という労働組合(全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部)や大阪の(全国金属機械労働組合)港合同、それに動労千葉の三労組が一緒になって、毎年数千人単位で11月労働者集会に大結集します。私たちは、この三労組が呼びかける11月労働者集会の成功のために全力で闘っています。 韓国にある民主労総(全国民主労働組合総連盟)ソウル本部と動労千葉は連携契約を結んでいまして、ものすごく強固な共闘関係です。アメリカの教職員労組とも共闘関係にあり、彼らはあちこちの州で闘争をやっていますよ。中国、韓国、アメリカ、ブラジル、トルコ、フィリピン、ドイツ、イギリス、フランスなど、11月労働者集会には世界中から続々と来賓がやって来ます。 田原 そんなにあちこちに同志がいるんですか。それはすごい。 清水 ドイツの機関士の労働組合は、1000人単位の組合員がいる大きな労働組合です。彼らとは完全に共闘関係にあります。どの国でも、社会党や共産党といった既成政党の運動はどうしようもない。彼らは労働者を糾合できていません。社会党や共産党を乗り越える労働運動、革命運動という点では、我々の運動はものすごく前進しています。皆さんが考える以上に、我々の運動は国際色豊かに前進しているのです』、「2019年4月の統一地方選挙では、我々の同志である洞口朋子さんが杉並区議会議員として当選」、僅か1人ではどうしようもなさそうだ。「運動の中心は」、「労働運動と学生運動」。「社会党や共産党を乗り越える労働運動、革命運動という点では、我々の運動はものすごく前進しています。皆さんが考える以上に、我々の運動は国際色豊かに前進しているのです」、なるほど。
・『盟友・西部邁との決裂  田原 故・西部邁さん(元東京大学教授)には、「朝まで生テレビ!」にずいぶんたくさん出演してもらいました。東大ブント時代、清水さんは一番の親友だったと西部さんが本で書いています。でも西部さんは清水さんと袂を分かち、革命家をやめてまったく違う道に進みました。 清水 西部とは本当に親しかったのです。学生時代には、駒場寮でずっと一緒にいましたから。彼のことはすごく信頼して一緒にやってきました。でもブントが潰れたとき、彼は運動をやめてしまった。労働者階級のことが信頼できなくなってしまったのでしょうね。 田原 彼はずっと大衆を信用してなかったと思いますよ。 清水 ブントが破綻して潰れたときには、僕も揉みくちゃになって行き詰まりかけたものです。でも労働者階級の解放を目指す共産主義運動に参加したからには、ちょっとしたあれこれのことで苦しんだとしても、転向なんて考えられない。そんな生き方は僕にはできません。人生をかけて運動に参加したわけですから。 若いころ、西部が「大衆が信用できない」というようなことを口走ったことがありました。まさか本気だとは思わなかったので、「それは間違っている!」と徹底的に討論したことがあります。西部は納得して「わかりました」と言って、それから一緒に運動を続けました。 彼は運動に没頭するし熱中するし、大衆運動を作る力がものすごくあります。だから運動から離れてしまったときは、本当に惜しいことをしたと思いました。 田原 それから彼はアカデミズムの世界に入り、東大教授まで上り詰めました。 清水 テレビで発言している様子を見ると、ブントで活動していたころとはまったく逆の方向のことを言っていたものです。「なんとまあ」と悲しい気持ちになりました。転向し、若いころやっていた運動とはひっくり返ったことを今やっている。そのことについてどこかで納得がいかず、苦しんでいたんじゃないですか。だから最終的に、ああいう形で責任を取ったのだと思います(2018年1月に入水自殺)。 田原 西部さんは亡くなる2年くらい前から、僕に会うたびとにかく「死にたい」「死にたい」と言っていましたよ。 清水 潜伏活動を送る中、実はある場所で西部と偶然会ったことがあります。そのとき彼は「自分のやり方は失敗だった」と言っていました。資本主義経済は駄目だ。資本主義も資本家もまったく信用できない。とてつもない絶望感に陥ったはずです。何もかも信じられなくなってしまった。彼はアカデミズムの世界なんかに転向せず、僕と一緒に闘い続けるべきだったと思います。そうすれば今でもピンピン元気にしていたと思いますよ』、「西部」氏は「2018年1月に入水自殺」したが、「西部と偶然会ったことがあります。そのとき彼は「自分のやり方は失敗だった」と言っていました。資本主義経済は駄目だ。資本主義も資本家もまったく信用できない。とてつもない絶望感に陥ったはずです。何もかも信じられなくなってしまった。彼はアカデミズムの世界なんかに転向せず、僕と一緒に闘い続けるべきだったと思います。そうすれば今でもピンピン元気にしていたと思いますよ」、なるほど。
・『もう一人の盟友・青木昌彦のこと  田原 ノーベル賞候補とも言われた経済学者の青木昌彦さん(元スタンフォード大学教授)も、東大ブント時代に清水さんや西部さんと一緒に戦った同志ですね。青木さんは日経新聞の「私の履歴書」の中で、こう書いています。 《六一年の三月に東京・南青山にあった私の四畳半の下宿にプロ通派のメンバーが全員集まった。清水(丈夫)と北小路(敏)が、革共同に合流しようと切り出した。彼らは我々もすぐ同調すると思っていたらしい。だが即座に西部(邁)が「まっぴらごめん」と言った。私もこれまで思想的にも相容れず喧嘩してきた連中に、政治的便宜主義、ご都合主義で頭を下げるのはとんでもない話なので、一も二もなく同意した。他の連中もそうだった》 清水さんについて「後に革共同の中で凄惨な内ゲバを繰り広げる当事者になる。稀有の才能の持ち主だっただけに惜しいことだ」とも書かれていました。 清水 いやあ、青木は自分が転向したことについて、ルーズな言葉で説明してゴマカシているだけですよ。60年安保の闘争をやっている最中から、彼はいつもどこかに逃げ道があるような中途半端なスタンスをとっていました。だからブント時代の最後には、ほかの活動家から信用がだんだん失われていったのです。 田原 二つの道とはどういう意味? 青木さんはブント時代から、革命家として生きる道以外にどこかで「学者になろう」という志向があったということですか。 清水 自分の能力を生かせるのであれば、革命運動ではない道にブレたっていい。心のどこかでそう思っていたから、ちょっとした振れ方の違いでどんどん違う道を進んでしまったのでしょう。西部にしろ青木にしろ、革命運動にはいろいろな波があるものです。 田原 ほかの仲間がどんどん転向していくのに、60年以上も変わらず運動を続けてきた清水さんがすごいですよ。 清水 人間がとても単純なんです。 田原 そんなことないです。ちょっとでも展望が見えなくなったら、普通は運動なんて続けられなくなるものですよ。 清水 子どものころ目撃した2.1ストの熱気は強烈でした。あの経験は大きかったです。 田原 1947年2月1日にあるはずだったゼネラルストライキですね。何百万人も参加するはずだったのに、マッカーサーの指令によって潰されてしまった。 清水 結局は中止に追いこまれてしまいましたが、「労働者階級が次の社会を担うのだ。働いている人が社会の中心にならなければ、本当の社会なんてできない」と子どもながらに確信しました。 田原 2.1ストはなんで失敗したんですかね。 清水 共産党が裏切ったせいです。彼らには進駐軍と闘う方針がありませんでした。 田原 共産党は進駐軍の味方だもん。 清水 そうですよ。 田原 共産党だけは進駐軍のことを「解放軍」と呼んでいた。 清水 まったくそうです。 田原 ほかのところは全部「進駐軍」とか「占領軍」と呼んでいた。共産党だけは「解放軍」と呼んでいて、徳田球一も野坂参三も進駐軍とは仲が良かったですよね。 清水 あのとき共産党さえ裏切っていなければ、2.1ストは決行できたはずです。労働者階級が団結して、革命運動の中で力をつけて生産手段を自分の手にしっかり握れば、社会経済を回していくことは難しくありません。革命運動といっても、そんなに難しいものではないのです。大きな意味での歴史の必然ですから、絶対に勝てると昔から思ってきました』、「あのとき共産党さえ裏切っていなければ、2.1ストは決行できたはずです。労働者階級が団結して、革命運動の中で力をつけて生産手段を自分の手にしっかり握れば、社会経済を回していくことは難しくありません。革命運動といっても、そんなに難しいものではないのです」、「決行」しても、運動をどう続けていくかの展望がなかったのではなかろうか。
・『ラジオ体操が一番の健康法  田原 世の中はみんな「中核派は極めて危険な暴力集団だ」と大宣伝してきました。労働者たちから信頼を得るためにはどうすればいい? そこがあなたの一番の仕事だと思う。 清水 そのために地下活動をやめて、こうして公然化したわけです。これから本当の大衆運動を巻き起こしていきますよ。 田原 ほとんどの人間が途中でねじ曲がるわけですよ。その点、あなたは途中で一度もねじ曲がっていない。 清水 そこだけが取り柄ですから。 田原 なんであなたはねじ曲がらなかったんですか。 清水 このようにしか生きようがなかったからですよ。幸いなことに、僕と同年代の同志は日本中にいます。高齢化は悪いことのように言われますが、良い面もあるわけです。若い時代に正義感に燃えて、全力を挙げて60年安保や70年安保、沖縄で闘った。高揚した大闘争に参加した経験がある60代、70代、80代はいっぱいいます。彼らは今も元気でピンピン活動する力があるわけです。 新聞の「声」欄を読んでいると、10人のうち5人くらいは必ず政府や内閣に対する鋭い批判を書いていますでしょう。70代、80代に限っては、十中八九がかなり強固な反政府じゃないですか。 自民党内閣がやることに対して反対する人たちが100万人単位どころか、1000万単位で存在する。我々はそういう人たちに囲まれて運動をやっているのです。60年安保も70年安保も問題にならないような、圧倒的で大規模な大衆運動を大爆発させたい。それができれば、革命はそんなに遠くないと思っています。 田原 それにしても、このような立派なビル(前進社)を中核派がもっているのはすごい。感心しました。シンパがたくさんいてカンパが集まらなければ、これだけの建物はもてませんよ。清水さんは前進社に住んでいるんですか。 清水 そうです。2020年7月からここで暮らすようになりました。 田原 ブントで戦っていた20代のころと比べて、さすがに体力の衰えを感じていると思います。老いについては自覚されていますか。 清水 さすがに80を過ぎてから、だいぶ体力が弱ってきました。健康には相当注意してがんばってきたつもりですが、しょうがないですね。 田原 生涯現役で革命運動に取り組むことが、清水さんにとっての一番の健康法ですよ。 清水 健康法をほかに一つ挙げれば、ラジオ体操をやっています。ラジオ体操はすごく効きますよ。田原さんもやってください。 田原 東大で学生運動をやっていたころの清水さんは、革命はもっと早く成就すると信じていたはずです。その清水さんが今や84歳になられた。革命家として80代まで現役で活動する人生になったのは、まったくの想定外でしたか。 清水 もっと早く運動が爆発すると思っていました。大変な闘いですから、長い時間がかかるのは当然だと今は思っています。 田原 もしかすると、清水さんが生きている間に革命は成就しないかもわかりません。 清水 今の情勢を見ていると、意外とわかりませんよ。僕が90歳まで生きられたら、革命の始まりと言えるものが起こる可能性はあると思っています。そう願ってがんばりますよ。(2022年3月13日、前進社本部で収録)』、「今や84歳」になっても、「僕が90歳まで生きられたら、革命の始まりと言えるものが起こる可能性はあると思っています。そう願ってがんばりますよ」、学生時代の思いをいまだに持ち続ける姿勢は、自分には無理だが、ある意味でうらやましい。
タグ:(その60)(高市早苗政調会長が更迭へ 安倍氏の“使い捨て”が派内造反の火種になる可能性、権勢誇った「二階氏」が今 窮地に直面している訳 派閥から退会者続出 選挙区の継承にも暗雲、西部邁の最大の親友だった東大生が84歳になっても「中核派」議長を務めているワケ 対談 清水丈夫×田原総一朗(後篇)) 日本の政治情勢 NEWSポストセブン「高市早苗政調会長が更迭へ 安倍氏の“使い捨て”が派内造反の火種になる可能性」 「派内には・・・ポスト岸田を目指す総裁候補が綺羅星の如く並んでいる。そこに総裁選出馬の実績がある高市さんが出戻ってきたら、総裁候補の地位を奪われかねない。だから派閥復帰には派内の反対が強い」、安倍氏は「自分の役に立つと思えば、肩入れして持ち上げるが、言うことを聞かなくなったり、自分の立場を脅かすかもしれないと警戒すると容赦なく突き落とす。まさに権力者の常套手段です」、「総裁候補たちは安倍さんに頼らなくてもいいようにそれぞれ個別に勉強会を開くなど自前の勢力拡張を急いでいる。皮肉なことに、安倍さんに一番忠実な 東洋経済オンライン 泉 宏氏による「権勢誇った「二階氏」が今、窮地に直面している訳 派閥から退会者続出、選挙区の継承にも暗雲」 「二階俊博元幹事長」が「いまや党内反主流の「冷や飯組」」とは政治の世界も厳しいものだ。 「二階氏は2016年8月に当時の谷垣禎一幹事長の自転車転倒事故負傷による辞任を受けて幹事長に就任。その後の安倍、菅両政権で自民の最高権力者に昇りつめ、政局運営の中枢として豪腕を振るってきた」、「谷垣氏」の後任だったことを思い出した。 「後継者と目されるのは、武田良太元総務相・・・武田氏は菅氏とも極めて親密で、「場合によっては多くの手兵を連れて派閥を割って菅グループに加わるのでは」・・・との憶測も絶えない」、これでは大変だ。 「“泡沫候補”扱いだった現在の野田聖子内閣府特命相・・・に派内から8人の推薦人を出した」、「これに反発したのが片山、衛藤両氏」、「「無条件で二階氏の判断に従う」という二階派の“鉄則”は崩れ、今回の両氏の退会にもつながった」、やはり「二階氏」のやり方が強引過ぎたようだ。「地元・和歌山での「IR否決」」も指導力低下が影響したようだ。 「「地元でも二階氏の威光が薄れた証拠」・・・と受け止められている」、「さしもの二階氏も命脈が尽きる」「との見方が強まっている」、政治情勢の変化は想像以上に早いようだ。 現代ビジネス 田原 総一朗氏と清水丈夫氏の対談「西部邁の最大の親友だった東大生が84歳になっても「中核派」議長を務めているワケ 対談 清水丈夫×田原総一朗(後篇)」 「中核派」の「議長」を未だに続けているとは、興味深そうだ。 「2019年4月の統一地方選挙では、我々の同志である洞口朋子さんが杉並区議会議員として当選」、僅か1人ではどうしようもなさそうだ。「運動の中心は」、「労働運動と学生運動」。「社会党や共産党を乗り越える労働運動、革命運動という点では、我々の運動はものすごく前進しています。皆さんが考える以上に、我々の運動は国際色豊かに前進しているのです」、なるほど。 盟友・西部邁との決裂 「西部」氏は「2018年1月に入水自殺」したが、「西部と偶然会ったことがあります。そのとき彼は「自分のやり方は失敗だった」と言っていました。資本主義経済は駄目だ。資本主義も資本家もまったく信用できない。とてつもない絶望感に陥ったはずです。何もかも信じられなくなってしまった。彼はアカデミズムの世界なんかに転向せず、僕と一緒に闘い続けるべきだったと思います。そうすれば今でもピンピン元気にしていたと思いますよ」、なるほど。 もう一人の盟友・青木昌彦のこと 「あのとき共産党さえ裏切っていなければ、2.1ストは決行できたはずです。労働者階級が団結して、革命運動の中で力をつけて生産手段を自分の手にしっかり握れば、社会経済を回していくことは難しくありません。革命運動といっても、そんなに難しいものではないのです」、「決行」しても、運動をどう続けていくかの展望がなかったのではなかろうか。 「今や84歳」になっても、「僕が90歳まで生きられたら、革命の始まりと言えるものが起こる可能性はあると思っています。そう願ってがんばりますよ」、学生時代の思いをいまだに持ち続ける姿勢は、自分には無理だが、ある意味でうらやましい。
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テスラ(その4)(マスク氏とツイッター 買収案で合意 総額約5・6兆円、マスク氏に買収されツイッターは変わるのか) [メディア]

テスラについては、2月22日に取上げた。今日は、(その4)(マスク氏とツイッター 買収案で合意 総額約5・6兆円、マスク氏に買収されツイッターは変わるのか)である。なお、ツイッターの買収は、テスラは無関係で、マスク氏個人の行為だが、とりあえず、テスラで取上げた。

先ずは、4月26日付けBBC NEWS「マスク氏とツイッター、買収案で合意 総額約5・6兆円」を紹介しよう。
https://www.bbc.com/japanese/61213605
・『米ツイッターの取締役会は25日、大富豪イーロン・マスク氏による買収提案を受け入れることで合意したと発表した。買収総額は440億ドル(約5.6兆円)となる見込み。 ツイッターは今後、買収案について株主の承認を求める。買収手続きは年内に完了する見通し。同社は上場廃止となり、非公開企業になる。 ツイッターのブレット・テイラー取締役会議長は、マスク氏の買収案が「ツイッターの株主にとって前へ進むための最善の道だ」と述べた。 電気自動車「テスラ」や宇宙開発「スペースX」などの創業者マスク氏は、買収合意の発表で、「言論の自由は機能する民主主義の礎石で、ツイッターは人類の未来に不可欠な事柄が議論されるデジタルの町の広場だ」と表明。「新しい機能でツイッターを強化し、かつてないほど改良するほか、信頼性を高めるためにアルゴリズムをオープンソースにして、スパム・ボットを駆逐し、すべての人間を認証したい」と意欲を示した。 「ツイッターにはとてつもない可能性がある。その可能性のカギを開けるため、私はツイッターや利用者のコミュニティーと協力するのを楽しみにしている」と、マスク氏は述べた。 マスク氏は4月初めにツイッターの筆頭株主となった後、14日に430億ドル(約5兆4000億円)の買収を提案。ツイッターの取締役会はこれに対して15日、「ポイズンピル(毒薬)」と呼ばれる防衛策を取ると発表していた。 しかし、マスク氏が買収のための資金調達にめどがついたことや、他の株主から株式を直接買い取る「株式公開買い付け」も検討しているなど、買収方法をより詳しく説明したことで、取締役会は姿勢を軟化。協議が急速に進み、スピード合意に至った。 発表資料によると、マスク氏は借り入れなどで255億ドルを確保しており、エクイティファイナンス210億ドルを提供する。 マスク氏はツイッターに投稿できる内容の制限緩和や、偽のアカウント対策など幅広い変更を求めている。長文投稿や投稿後の編集機能追加も提案している。 米誌フォーブスによると、マスク氏の総資産は推定2736億ドル(約35兆円)で世界一の富豪とされる。最高経営者を務めるテスラの保有株が資産の大部分を占める。 今回の買収に先立ち、ツイッターは利用者による投稿内容について政治家や規制当局から、プラットフォームとしての管理体制について圧力をかけられていた。掲載される偽情報に関する判断や対応については、政治的左派からも右派からも批判されている。 中でも特に話題になったのが、2021年1月の米議会襲撃事件の後、ドナルド・トランプ米大統領(当時)のアカウントを永久凍結したことだった。トランプ氏はそれまでツイッターを精力的に利用していたが、ツイッター社は「暴力行為をさらに扇動する恐れがある」としてトランプ氏の個人アカウントを凍結した。 これについてマスク氏は当時、「西海岸のハイテク企業が、言論の自由の事実上の裁定者になったことを、ものすごく不満に思う人が大勢いるだろう」と反応していた。 マスク氏によるツイッター買収を、アメリカの右派は歓迎している。一方、トランプ氏は米FOXニュースに対して、ツイッターに戻るつもりはないと話した。 米政府はこの件についてコメントを控えているものの、ホワイトハウスのジェン・サキ大統領報道官は記者団に、「ツイッターを誰が所有し経営するにしても、大統領は以前から、大きいソーシャルメディア・プラットフォームが持つ力を気にしてきた」と述べた。 英下院デジタル・文化・メディア・スポーツ委員会のジュリアン・ナイト委員長は、買収合意について「ソーシャルメディアの世界において、驚くべき展開だ」とツイート。「(言論の自由に対する絶対主義者が経営する)非公開企業となったツイッターが、世界的な規制の動きにどう反応するのか、興味深いことになる」とも書いた』、「マスク氏によるツイッター買収を、アメリカの右派は歓迎している。一方、トランプ氏は米FOXニュースに対して、ツイッターに戻るつもりはないと話した」、なるほど。「(言論の自由に対する絶対主義者が経営する)非公開企業となったツイッターが、世界的な規制の動きにどう反応するのか、興味深いことになる」、同感である。
・『マスク氏はこれまでツイッターで何を  ツイッターでは8000万人以上が、マスク氏のアカウントをフォローしている。そのマスク氏のツイートは時に、物議をかもしてきた。 2018年には米証券取引委員会(SEC)が、マスク氏は自分のツイートを通じてテスラに出資する投資家に誤解を与えたと指摘。総額400億ドルをSECに支払い決着したが、マスク氏はSECの指摘を否定し続けている。 2019年には、タイの洞窟(どうくつ)に閉じ込められた少年たちの救出に参加したイギリス人ダイバーを「小児性愛のやつ」とツイートしたことから、名誉棄損で訴えられたものの、米ロサンゼルスの連邦裁判所は原告の訴えを退けた。 マスク氏はこれまでツイッター上でたびたび、ジャーナリストと衝突したり、自分に批判的な相手をブロックしたりしてきた。25日には、ツイッターは議論の場所だと考えていると述べた。 合意成立発表の数時間前、マスク氏は「自分を最も手厳しく批判する人たちにも、ツイッターに残ってもらいたい。言論の自由とはそういうものだからだ」とツイートしていた』、「マスク氏」の言動は振れが大きいだけに、要警戒だ。
・『マスク氏はツイッターを回復させられるのか  買収手続きの完了後、ツイッターは上場廃止となり、非公開企業になる。 マスク氏はこれによって、自分が考える事業改善を実施する自由が得られるとしている。 合意成立が明らかになると、ツイッター株は5.7%高の51.70ドルで25日の取引を終えた。しかし、マスク氏が提示した1株54.20ドルの買取価格よりは低く、米市場関係者が、マスク氏の提示額が実際の企業価値を上回っていると見ているのがうかがえる。 マスク氏は今回の買収について、「経済性はどうでもいい」と発言している。しかし、ツイッターはその影響力とは裏腹に、利益を出したことはほとんどなく、利用者数の伸びも特にアメリカでは鈍化するなど、財務的には不安定な状態が続いている。 2004年に創業した同社の2021年売上高は50億ドルで、デイリー・アクティブ・ユーザー(1日に1回以上活動する利用者)は2億1700万人。フェイスブックなど他のソーシャルメディア大手と比較すると、きわめて少ない。 買収後は誰がツイッターを率いていくのか、明らかになっていない。共同創業者のジャック・ドーシー氏は昨年12月に最高経営者を退任し、現在はその後任をパラグ・アグラワル氏が務めている。 しかし、マスク氏は買収提案書の中でツイッターの取締役会に、「自分は経営陣を信頼していない」と述べていた。 アグラワル氏は25日、社員に対してツイッターの未来は不透明だと発言。ロイター通信によると、「合意が成立すれば、このプラットフォームがどの方向へ向かうのかわからない」と、アグラワル氏は述べた』、「マスク氏は買収提案書の中でツイッターの取締役会に、「自分は経営陣を信頼していない」と述べていた」、「経営陣」を入れ替えるのだろう。
・『<解説> ツイッターの新しい王様――ジェイムズ・クレイトンBBC北米テクノロジー担当記者 あまりにあっという間の買収劇に、シリコンバレーでは大勢がくらくらしている。 イーロン・マスク氏はいきなりやってきて、ツイッターの絶対君主となった。 本人はこの買収で大事なのは経済的に見合うかどうかではなく、これは権力と影響力の問題なのだと認めている。 株式を非公開にすることで、マスク氏はツイッターに対する決定権を独占する。この会社を好きにできる権限を手にするわけで、具体的には、投稿内容のモデレーション(管理・監督)は今よりはるかに緩やかになるだろう。 より大勢がツイッターの仕組みを理解できるよう、アルゴリズムも公開すると言っている。 この買収によって、トランプ氏のツイッター復帰への扉が開かれる。しかし、本人は今のところは自分が持つプラットフォーム「トルース・ソーシャル」を使う方がいいと言っているそうだ。 保守派は長年にわたり、ツイッターは自分たちを冷遇している、偏向していると主張してきた。今回の買収の知らせに、アメリカの共和党関係者は大喜びしている。 一方で、強力なモデレーションのないツイッターがどのような場所になるのか、将来を悲観する人も大勢いる。 陰謀論を展開するQアノン系のグループや、2020年米大統領選は不正だったと主張するグループを放置したとして、フェイスブックがどれだけ批判されているかを思えば、今後マスク氏がどれだけ批判されることになるか、想像に難くない。 ソーシャルメディア上の言論の自由は、あっという間に、実に醜いものになり得る。今やツイッターはそうした危険に直面している』、「保守派は長年にわたり、ツイッターは自分たちを冷遇している、偏向していると主張してきた。今回の買収の知らせに、アメリカの共和党関係者は大喜びしている」、「強力なモデレーションのないツイッターがどのような場所になるのか、将来を悲観する人も大勢いる」、私も同感である。

次に、4月26日付けBBC NEWS「マスク氏に買収されツイッターは変わるのか」を紹介しよう。
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-61227037
・『大富豪イーロン・マスク氏は、買収総額440億ドル(約5.6兆円)で米ツイッターを買収することになった。投稿内容の制限を減らすと約束するマスク氏が、「デジタル版・町の広場」にどう影響するのか、疑問や懸念の声が上がっている。 買収合意成立が発表されると、「言論の自由絶対主義者」を自称するマスク氏が手にする権限について、複数の人権団体が懸念を表明した。投稿内容へのモデレーション(監督・管理)がなくなれば、ヘイトスピーチ(憎悪表現)が増えるのではないかという心配も出ている。 マスク氏はかねて、ツイッターによる投稿内容の制限を声高に批判し、ツイッターは真の言論の自由を可能にするプラットフォームにならなくてはならないと主張してきた。買収合意の発表でも、「言論の自由は機能する民主主義の礎石で、ツイッターは人類の未来に不可欠な事柄が議論されるデジタルの町の広場だ」と表明した。 国際人権団体アムネスティー・インターナショナルは、「有害なツイッター(Toxic Twitter)」などとツイートを連投し、「利用者を守るために設計された利用規約や仕組みの徹底を損なう方向へ、ツイッターが進むのではないかと懸念している」と書いた。 「利用者に対する暴力的で加害的な言論を、意図的に見ないふりをするようなツイッターは何より困る。とりわけ、女性やノンバイナリー(性自認が男性だけでも女性だけでもない人)を含め、過度に影響を受ける人たちへのそうした言論は」と、アムネスティー・インターナショナルは問題視した。 BBCはツイッターにこうした懸念について取材したが、まだ回答は得られていない』、「「利用者に対する暴力的で加害的な言論を、意図的に見ないふりをするようなツイッターは何より困る。とりわけ、女性やノンバイナリー・・・を含め、過度に影響を受ける人たちへのそうした言論は」と、アムネスティー・インターナショナルは問題視」、妥当な懸念だ。
・『トランプ氏は戻るのか  マスク氏が所有するツイッターでは、たとえばドナルド・トランプ前米大統領をはじめ、これまでアカウントを凍結・削除された人たちの復帰が許されるのだろうかという疑問も、複数の利用者から出ている。 トランプ氏は長年ツイッターを精力的に利用していたが、2021年1月の米議会襲撃事件の後、ツイッターは「暴力行為をさらに扇動する恐れがある」としてトランプ氏の個人アカウントを永久凍結した。 これについてマスク氏は当時、「西海岸のハイテク企業が、言論の自由の事実上の裁定者になったことを、ものすごく不満に思う人が大勢いるだろう」と反応していた。 しかし、たとえツイッターが凍結を解除したとしても、トランプ氏はツイッターに戻るつもりはない、自分が持つプラットフォーム「トルース・ソーシャル」を使うという姿勢だ。 「ツイッターにはいかない。トルースに残る」と、トランプ氏は米FOXニュースに話した。 トランプ氏はさらに、マスク氏を「良い男」と呼び、ツイッターを「改善」するはずだと述べた。 香港天風国際証券のアナリスト、ミンチ・クオ氏はBBCに対して、もし2024年米大統領選にトランプ氏が出馬するなら、ツイッターに戻るかもしれないと話した。 「ツイッターがアカウントを復活させるなら、トランプ氏にとっては依然として、より良い発言の場所だ。ツイッター以上に影響力のあるプラットフォームを次の大統領選の前までに作るのは、大変だ」』、「トランプ氏」は「マスク氏を「良い男」と呼び、ツイッターを「改善」するはずだと述べた」、「「ツイッターにはいかない。トルースに残る」としているが、「2024年米大統領選にトランプ氏が出馬するなら、ツイッターに戻るかもしれない」、確かに選挙ともなれば、集客力のある「ツイッター」の影響力は無視できない。
・『利用者は離れるのか  合意成立発表の数時間前、マスク氏は「自分を最も手厳しく批判する人たちにも、ツイッターに残ってもらいたい。言論の自由とはそういうものだからだ」とツイートしていた。 しかし、ツイッターを使うのをやめると言う人もいるし、すでにアカウントを閉じた人たちもいる。 英俳優ジャミーラ・ジャミル氏は、100万人のフォロワーに対して、「これを自分の最後のツイートにしたい」として、ツイッターが「今まで以上に無法で、憎悪だらけの、人種差別と偏見にあふれた、女性嫌悪の空間」になるだろうと書いた。 一方で、45万人以上のフォロワーがいる米メリーランド大学の研究者キャロライン・オール・ブエノ博士は、まだしばらくは残るつもりだとしている。 「イーロン・マスク率いるツイッターがどういう場所になるのか、まだまったく分からないので」とブエノ氏は書き、さらに「分かっていることがある。まともな人が全員いなくなってしまうと、まともな人たちが残るよりも早く、ここはひどい場所になってしまう」と指摘した。 米投資会社ウエドブッシュ・セキュリティーズのアナリスト、ダン・アイヴスさんはBBCに対して、ほとんどの利用者は「様子見」をするだろうと話した。 「ツイッターにとって今大事なのは、新規ユーザーを勧誘すると同時に、離脱者をくいとめることだ」』、「まともな人が全員いなくなってしまうと、まともな人たちが残るよりも早く、ここはひどい場所になってしまう」、SNSの恐ろしさだ。「マスク氏は「自分を最も手厳しく批判する人たちにも、ツイッターに残ってもらいたい。言論の自由とはそういうものだからだ」とツイート」、こうした恐ろしさをどこまで理解しているのだろうか。
・『ドーシー氏はツイート連投  ツイッター取締役会の11人は全会一致で、マスク氏の買収提案を受け入れた。 ツイッターの共同創設者で取締役のジャック・ドーシー前最高経営責任者(CEO)は、「原理原則的には、誰か1人がツイッターを所有するべきでも、経営すべきでもない」と書く一方で、ツイッターが引き続き「世間の会話のために機能する」のはうれしいことだと歓迎した。 ドーシー氏は「自分はツイッターを愛している。世界的意識のようなものに一番近いのがツイッターだ」とツイート。「自分にとって大事なのは、(ツイッターの)概念とサービスだけで、その両方を守るためなら何でもする。企業としてのツイッターは常に、自分にとって唯一の問題で最大の後悔だった。ウォール街と広告モデルに所有されてきた。ウォール街から取り戻すことが、正しい第一歩だ」と書いた。 ドーシー氏はさらに、ツイッターは「企業ではなく、プロトコルのレベルで公共財になろうとしてきたが、企業としての問題を解決するには、イーロンこそ僕が信用する解だ。意識の光を広げようとする彼のミッションを、僕は信用している」と書いた。また、「『最大限に信用され、幅広く包摂(ほうせつ)』するプラットフォームを作るというイーロンの目標は正しい」として、「どうにもならない状況からこの会社を脱出させてくれた」マスク氏と、現CEOのパラグ・アグラワル氏に感謝した上で、「これが正しい道だ……心の底からそう信じている」と期待を示した。 一方、アグラワルCEOは25日、社員に対してツイッターの未来は不透明だと発言。ロイター通信によると、「合意が成立すれば、このプラットフォームがどの方向へ向かうのかわからない」と述べていた』、「ドーシー前CEO」の発言は「株主」として悪く言わないようにしている可能性がある。「現CEO」の発言の方が正直だ。
・『政治家の反応  米政府はこの件についてコメントを控えているものの、ホワイトハウスのジェン・サキ大統領報道官は記者団に、「ツイッターを誰が所有し経営するにしても、大統領は以前から、大きいソーシャルメディア・プラットフォームが持つ力を気にしてきた」と述べた。 米与党・民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員は、この買収は「この国の民主主義にとって危険」だとして、「巨大テクノロジー企業の社会的責任を問うための強力なルール」や、IT企業などで巨万の富を得る大富豪たちへの富裕税の実現が必要だと強調した』、「ウォーレン上院議員」の発言には同意できる。
・『なぜアメリカの富豪が納める税金はあなたより少ないのか  他方、米野党・共和党のマーシャ・ブラックバーン上院議員は、「言論の自由にとって喜ばしい日」だと、マスク氏によるツイッター買収を歓迎した』、「共和党」「議員」らしい主張だ。「マスク氏」の影響で「ツイッター」がSNSとしての中立性を守れるのか、守れずに人気が離散するのか、大いに注目したい。
タグ:(その4)(マスク氏とツイッター 買収案で合意 総額約5・6兆円、マスク氏に買収されツイッターは変わるのか) テスラ 「「利用者に対する暴力的で加害的な言論を、意図的に見ないふりをするようなツイッターは何より困る。とりわけ、女性やノンバイナリー・・・を含め、過度に影響を受ける人たちへのそうした言論は」と、アムネスティー・インターナショナルは問題視」、妥当な懸念だ。 BBC NEWS「マスク氏に買収されツイッターは変わるのか」 「保守派は長年にわたり、ツイッターは自分たちを冷遇している、偏向していると主張してきた。今回の買収の知らせに、アメリカの共和党関係者は大喜びしている」、「強力なモデレーションのないツイッターがどのような場所になるのか、将来を悲観する人も大勢いる」、私も同感である。 「マスク氏は買収提案書の中でツイッターの取締役会に、「自分は経営陣を信頼していない」と述べていた」、「経営陣」を入れ替えるのだろう。 「マスク氏」の言動は振れが大きいだけに、要警戒だ。 「マスク氏によるツイッター買収を、アメリカの右派は歓迎している。一方、トランプ氏は米FOXニュースに対して、ツイッターに戻るつもりはないと話した」、なるほど。「(言論の自由に対する絶対主義者が経営する)非公開企業となったツイッターが、世界的な規制の動きにどう反応するのか、興味深いことになる」、同感である。 BBC NEWS「マスク氏とツイッター、買収案で合意 総額約5・6兆円」 「トランプ氏」は「マスク氏を「良い男」と呼び、ツイッターを「改善」するはずだと述べた」、「「ツイッターにはいかない。トルースに残る」としているが、「2024年米大統領選にトランプ氏が出馬するなら、ツイッターに戻るかもしれない」、確かに選挙ともなれば、集客力のある「ツイッター」の影響力は無視できない。 「まともな人が全員いなくなってしまうと、まともな人たちが残るよりも早く、ここはひどい場所になってしまう」、SNSの恐ろしさだ。「マスク氏は「自分を最も手厳しく批判する人たちにも、ツイッターに残ってもらいたい。言論の自由とはそういうものだからだ」とツイート」、こうした恐ろしさをどこまで理解しているのだろうか。 「ドーシー前CEO」の発言は「株主」として悪く言わないようにしている可能性がある。「現CEO」の発言の方が正直だ。 「ウォーレン上院議員」の発言には同意できる。 「共和党」「議員」らしい主張だ。「マスク氏」の影響で「ツイッター」がSNSとしての中立性を守れるのか、守れずに人気が離散するのか、大いに注目したい。
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EC(電子商取引)(その9)(アマゾンが17年前から「パワポ禁止」する深い理由 花形職種も容赦なく自動化する「変革」の精神、楽天証券 「1%ポイント還元」の重すぎた代償 付与率が0.2%に引き下げへ 改悪変更の必然、コロナ禍で急成長の「越境EC」 海外で人気の日本製商品とは) [産業動向]

EC(電子商取引)については、昨年8月15日に取上げた。今日は、(その9)(アマゾンが17年前から「パワポ禁止」する深い理由 花形職種も容赦なく自動化する「変革」の精神、楽天証券 「1%ポイント還元」の重すぎた代償 付与率が0.2%に引き下げへ 改悪変更の必然、コロナ禍で急成長の「越境EC」 海外で人気の日本製商品とは)である。

先ずは、昨年10月16日付け東洋経済オンラインが掲載した「バズフィード・ニュース」テクノロジー担当シニアレポーター のアレックス・カントロウィッツ氏による「アマゾンが17年前から「パワポ禁止」する深い理由 花形職種も容赦なく自動化する「変革」の精神」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/462108
・『他の追随を許さないアメリカの巨大IT企業群、GAFAM(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル、マイクロソフト)。この5社の株式時価総額だけで日本株全体の時価総額を上回るほどのビッグ・テックが、世界経済に大きな影響を与えていることは誰もが知るとおりだ。 そんなGAFAMの中から、「創業初日」を合い言葉にして新たなビジネスを創出し続けるアマゾンをピックアップ。創始者でありCEOであるジェフ・ベゾスが従業員たちの変革の力をどのように導いてきたのか、『GAFAMのエンジニア思考』(アレックス・カントロウィッツ著)より一部抜粋・編集してお届けする』、「「創業初日」を合い言葉にして新たなビジネスを創出し続けるアマゾン」、興味深そうだ。
・『アマゾン本社ビル1階に「最先端コンビニ」  アマゾンは、デイワン(創業初日)オフィス棟の1階に、アマゾンGOというレジのない新形式のコンビニエンスストアを運営している。 GOで何かを買うときは、入口でまずアプリをスキャンして、欲しいものを棚からとって、あとは……出ていくだけだ。しばらくすると、買った品物の代金が記載された領収書がアマゾンからスマートフォンに届く。GOには行列も順番待ちもレジも必要ない。まるで未来を見ているかのようだ。おそらく未来はこうなるのだろう。 GOでは、あらゆる方向に向いたカメラやセンサーが天井に並び、陳列棚の間を歩く人の身体とその動きをとらえている。 コンピューター・ビジョン(機械学習の1種)を利用して、GOはあなたが誰で、何を手にとり、何を棚に戻したかを把握する。それから課金する。何度も試した経験からいって、GOはほぼ間違えることがない。 GOの背景にある物語は、ハードウェアとプログラムにとどまらない。それは何よりも、目には見えないアマゾンならではの企業文化の成果なのだ。 アマゾンでは、ジェフ・ベゾスが変革を社内に行き渡らせていて、GOなどの新しい実験的企画の創造を会社のビジネスの中心にすえて、主要なアマゾン・ドットコム(ドットコム)の運用と並べて重要視している。 アマゾンに属するすべての人はヒエラルキーの最上層から最下層に至るまで、誰もがアイデアを出せる。そしてベゾスはできる限りすべてを自動化することで、変革の余地をさらに増やす。 ベゾスの仕事は、ただ創意工夫をうながすことだけではない。ベゾスはアイデアが大量に生まれるような仕組みをつくり、一度採用したアイデアに対しては成功に向けてあらゆるチャンスを与えてきた。 たとえばGOは当初、巨大な自動販売機として提案された。それがベゾスの検討を経て、人間の購買行動を変える力を持った存在に変身したのだ。 私たちがスピーカーや電子レンジ、時計に話しかけるようになったのは、ベゾスの変革の文化がきっかけだ。どれもアマゾンの音声AI「アレクサ」が組み込まれている機器である。 本をモニターで読むようになり、会社をクラウド上でつくるようになり、インターネットで思うままに買い物をするようになったのもアマゾンの影響だ。おそらくもうすぐ、レジに寄らずにどの店からも出ていくようになるだろう。 「変革はベゾスの燃料、彼の知性を刺激するものです。変革は彼の体に組み込まれ、アマゾンという企業の基礎になっています」と、アマゾンのワールドワイド・コンシューマー部門CEOでベゾスの片腕のジェフ・ウィルクは言う。「彼がいちばん楽しそうに見えるのは、創意工夫や洞察、革新、それから先進的な思考に出合ったときですからね」』、「変革はベゾスの燃料、彼の知性を刺激するものです。変革は彼の体に組み込まれ、アマゾンという企業の基礎になっています」、「変革」を「アマゾン」内にビルトインするとは大したものだ。
・『2004年「パワポ」を全社で禁止  アマゾン内のすべての新プロジェクトは文書で始まる。2004年に、ジェフ・ベゾスがパワーポイントの使用を全社で禁止したからだ。ベゾスによればパワーポイントは「アイデアをもっともらしく言いつくろうことができる」ため、欠点があったり不完全なコンセプトでも、プレゼンテーションの時点では気づかないことが多いという。代わりに、新しい製品やサービスについてのアイデアを完全な文と段落で構成された文章にするようにとアマゾニアン(アマゾンで働く人々)に求めた。 新プロジェクトの文書は、未来を舞台に提案する製品がどんなものかについて、まだ誰も何もしていないうちに事細かに説明するものだ。 アマゾニアンたちは、これを「さかのぼって作業する」と呼ぶ。まず完成品を思い描いて、そこからさかのぼって取り組んでいくわけだ。 この文書は上限6ページで、行間を空けずに11ポイントのカリブリ・フォントで印字され、提案する新製品やサービスについて伝えたいことがすべて詳細に書かれる。 6ページ文書を書くのはSF小説を書くのに似ていると、ある元アマゾニアンは言った。 「それは、未来を舞台にした将来そうなると信じているものの物語、存在しないものについての物語です」 実際、6ページ文書にはフィクションも含まれる。提案する製品を世界に向けて発表するプレスリリースや、その製品の導入を歓迎する経営陣の声などが創作されることも多い。 6ページ文書が承認されると、提案者に予算が与えられ、人員を集めて、描いた夢を形づくることになる。そして変革をうながすために、6ページ文書を書いた本人をそのアイデアを実現するための責任者にする。それが重要なのだ。 この仕組みのなかで、アマゾニアンはプロジェクトの成功に向けて励む。6ページ文書を通してつねに改善し、調整し、創意工夫する。そしてベゾスは、彼らの活動をうながす役割を果たす』、「「パワポ」を全社で禁止」、とは画期的だ。確かに「パワーポイントは「アイデアをもっともらしく言いつくろうことができる」ため、欠点があったり不完全なコンセプトでも、プレゼンテーションの時点では気づかないことが多いという」、コンサルタントらの「パワポ」のプリゼンテーションは、聞いた直後は圧倒されるが、少し時間が経つと「本当かな」と疑問が沢山出てくるのが通常だ。「代わりに、新しい製品やサービスについてのアイデアを完全な文と段落で構成された文章にするようにとアマゾニアン(アマゾンで働く人々)に求めた」、「6ページ文書を書いた本人をそのアイデアを実現するための責任者にする」、「ベゾスは、彼らの活動をうながす役割を果たす」、「文書は上限6ページ」にまとめるのは大変だろう。
・『アマゾンを支える20万台のロボット  アマゾンが変革に集中するために活用しているのが、ロボットだ。 ベゾスは、より創造的な仕事をする自由を従業員に与えるために、できる限りあらゆるものを自動化しようとする。 アマゾンは過去8年にわたって、人間とロボットの協働の方法を探ってきた。2012年3月には、配送センターで使われるロボットのメーカー「キバ・システムズ」を買収し、それ以来驚くべきスピードでロボットの配備を進めてきた。 現在は約80万人の人間の従業員に加えて、20万台以上のロボットを「雇用」している。近隣のニューアーク・リバティ国際空港のコード名をとってEWR9と名づけられた倉庫では、約2000人が数百台のロボットと働いている。 さらにロボット技術の進歩によって、アマゾンは配送センター以外の配送業務の中核部分も自動化しようとしている。) EWR9では、これまで存在しなかった職種を次から次へと耳にすることになった。 ロボティクスフロア・テクニシャン、アメニティー・プロフェッショナル(ロボットが落とした商品を掃除する)、ICQAメンバー(棚の品物を数えて、システム上の数と合っていることを確認する)、クォーターバック(上階からロボティクスフロアを監視する)など。 アマゾンは20万台のロボットを増やしたと同時に、人間の仕事も30万個増やしたのだ。 アマゾンの自動化推進は必ずしもアソシエイトを解雇することにはつながらないが、彼らに対してつねに変わりつづけることを強制する。変わりつづけることは退屈しない反面、消耗するものだ。アマゾンでは、ある日やっていた仕事が次の日にはコンピューターやロボットに置きかえられても不思議ではない。 つねに変わりつづけることは、変化にうまく対応できない人には過酷かもしれないとベゾスも認めている』、「現在は約80万人の人間の従業員に加えて、20万台以上のロボットを「雇用」」、4人で1台とは、ロボットの割合はかなり高いようだ。
・『「花形職種」にも自動化の波  アマゾンは「ハンズオフ・ザ・ホイール(ハンドルから手を放す)」構想のもとで、社内の多種多様な事務作業を自動化している。 アマゾンには、フルフィルメントセンターでの処理をスムーズに進めるため「ベンダーマネジャー」という職位がある。 たとえばある洗剤メーカーを担当するベンダーマネジャーは、各フルフィルメントセンターに「どのくらいの量の洗剤を配置するか」「必要な時期はいつか」「1ユニットいくらで仕入れるか」などを割り出す。それから、メーカーと価格交渉をして発注する。 この職位は以前、社内であこがれのものだった。面白くて人間関係が築けて、世界トップクラスのブランドと接するきっかけになる仕事だったからだ。 しかしアマゾンではつねに、変化が近くに潜んでいる。 アマゾン幹部たちは「予測・値付け・購入」を含む旧来のベンダーマネジャーの仕事を自動化することに決めた。 アマゾンのベンダーマネジャーは、決定の際に単に機械学習アルゴリズムの予測を参考にするだけでなく、自動化システムに仕事をやらせるように指示された。 このようにして、ベンダーマネジャーの仕事は大幅に変わった。ベンダーマネジャーは、いまや実行者というより監査人だ。 ハンズオフ・ザ・ホイールのおかげで、アマゾンの小売部門は現在、以前よりもずっと堅実で効率的に運営されている。アマゾン・マーケットプレイスもこのコンセプトに沿って運営されていて、中間業者としてのアマゾンが販売を請け負うのではなく、アマゾンのサイト上にベンダーが直接リストアップされる』、「ベンダーマネジャー・・・の職位は以前、社内であこがれのものだった。 アマゾンのベンダーマネジャーは、決定の際に単に機械学習アルゴリズムの予測を参考にするだけでなく、自動化システムに仕事をやらせるように指示された」、中核的な仕事も自動化するとはさすがだ。
・『急増する2つの職種  いまではベンダーマネジャーという仕事の人気も少し下がって、多くのベンダーマネジャーがアマゾン内の別の職位に移った。主に、プログラムマネジャーとプロダクトマネジャーという2種類の職種のどちらかだ。 どちらも、アマゾン内で創意工夫を担当する仕事である。新しいことを構想し、実現までの面倒を見る。プロダクトマネジャーは個別の商品開発を担当し、プログラムマネジャーは複数の関連するプロジェクトに関わることが多い。 リンクトインのデータによれば、この2つは現在アマゾン内で最も急速に増えている職種だ。 小売り部門の仕事を自動化することで、アマゾンは新しい変革の機会を開いている。ウィルクによれば、それはずっと前から計画されてきたという。 「こういうつまらない繰り返される仕事をしていた人たちは、いまや解放されて変革に関わる仕事に就いています。機械には難しすぎる仕事にね」 現在の社会には、技術志向の人間は創造的に考えず、創造的な人間は技術的に考えないという思い込みがある。片方にアーティストやミュージシャンをおき、他方にプログラマーや数学者をおく。右脳対左脳というやつだ。 しかしアマゾンでは、ベゾスが両者を統合する方法を教えてくれる。彼に後押しされてアマゾニアンは未来を想像し、SFを書き、プログラミングし、自動化し、次を想像するのだ』、「多くのベンダーマネジャーがアマゾン内の別の職位に移った。主に、プログラムマネジャーとプロダクトマネジャーという2種類の職種のどちらかだ。 どちらも、アマゾン内で創意工夫を担当する仕事」、社内で陳腐化した職種から、「創意工夫」を要する仕事」へと従業員をシフトさせたというのは、素晴らしいことだ。これでは、日本企業との生産性格差は開く一方だ。

次に、本年2月13日付け東洋経済オンライン「楽天証券、「1%ポイント還元」の重すぎた代償 付与率が0.2%に引き下げへ、改悪変更の必然」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/576808
・『利用者の多くに「改悪」と受け止められた還元率の引き下げ。その背景には、のっぴきならない事情があった。 「ビジネスとしての正常化をはかるため、こうした手を打つことになった」 2月2日、決算説明会に登壇した楽天証券の楠雄治社長は苦い表情を浮かべた。ポイント還元の見直しで、「ネット上でも散々コメントが出ている」(楠社長)からだ。 楽天証券は投資信託購入時のポイント還元を見直す。従来は楽天グループ傘下のクレジットカードを用いて投信を積立購入すると、購入額の1%をポイントとして還元していた。だが2022年9月以降、一部を除いて還元率を0.2%とする。 楽天グループの電子マネー・楽天キャッシュを経由すれば0.5%還元、投信の保有費用である信託報酬が0.4%以上のファンドについては従来どおり1%還元など、いくつか例外はある。が、利用者の多くには“改悪”と受け止められた』、「ポイント還元」が「購入額の1%」から「0.2%」では、手厚過ぎた分を是正したつもりだろうが、「“改悪”と受け止められた」のもやむを得ないだろう。
・『昨年末から始まっていた見直し  楽天証券ではポイント関連施策の見直しが相次いでいる。2021年12月にも、投信の残高に応じて毎月付与してきたポイントを見直し、4月以降は一定額に到達するたびに1度だけ付与する形式にする。 手厚いポイント還元は口座獲得の原動力となってきた。競合するSBI証券やマネックス証券、松井証券などと比べても高い還元率で、2021年12月には700万口座を達成。単体の証券会社としては業界トップの水準まで登り詰めた。 ポイント還元率を見直せば、新規顧客の獲得が鈍る可能性が高い。それどころか、既存の顧客が競合他社へ流れる可能性もある。実際、すでにSBI証券やマネックス証券が足元で投信やポイント関連施策の増強を表明。顧客争奪戦が激しさを増している。 楽天証券としてもこうした批判や顧客流出は一定程度覚悟していたはず。それでも見直しに動いたのには、のっぴきならない事情がある。 楽天証券の過去4年間の営業利益率をみると、2018年から減少傾向が続いている。つまり、収益が増えても利益が増えにくいという問題にぶち当たっているということだ。 この間、外部環境はかつてないほどの追い風だった。とくに2020年夏以降はコロナ禍の金融緩和で巨額のマネーが資本市場に流入し、株価が上昇。日経平均株価やアメリカのS&P500なども急上昇した。コロナ禍の10万円給付などを機に新たに投資を始める人も増え、多くの証券会社が増収増益を連発した』、「楽天証券の過去4年間の営業利益率をみると、2018年から減少傾向」、「手厚いポイント還元」を「顧客流出」を「一定程度覚悟」した上で、「見直しに動いた」のはやむを得なかったようだ。
・『ポイント原資も重い負担に  ただ、楽天証券では収益が増えても利益があまり増えなかった。理由はいたって単純で、収益が伸びるのと同時に費用が増えていたからだ。中でも広告宣伝費は2019年からの3年間で44億円から98億円まで増えた。 また、利益が伸び悩んだ理由としては「ポイントとカード決済に関する手数料、こういったところが非常に大きなインパクトになっていた」(楠社長)のだ。 さらに、ポイントを付与してきた投資信託という商品が、証券会社にとって極端に利益の薄い商品だという問題もあった。 例えば楽天証券で最も売れているS&P500連動の投信は、信託報酬が年率約0.096%しかない。このうち販売会社である楽天証券は、年率約0.034%を受け取ることになる。) 現状では、仮に投資信託を毎月3万円分楽天カードで積立購入したとすると、楽天ポイントは1回につき300ポイント付与されている。一方で楽天証券がこの3万円分の投信について得られる収益は年間10円ほどだ。長期保有が前提の投資信託とはいえ、投じたコストの回収に時間がかかりすぎていた』、もともとの「ポイント付与」が甘過ぎたのではあるまいか。
・『激化する顧客争奪戦の行方  SBIホールディングスの北尾吉孝社長は1月31日に開いた業績説明会で「楽天は自分たちのポイント制度を改悪しちゃった。だからどんどんウチ(SBI)へ移ってくる。ウチはそれに追い打ちをかけるように、お客様が(口座)移管前の他社に支払った手数料をSBI証券で全額負担する」と発言。 SBI証券では三井住友カードで投信を購入すると0.5%以上のポイント還元が受けられるサービスを以前から提供しているほか、マネックス証券も「マネックスカード」で投資信託を購入すると、購入額の1.1%のポイントを付与するサービスを2月7日に発表した。いずれも見直し後の楽天証券より高い還元水準だ。 激化する顧客獲得競争はどこへ向かうのか。株式や投資信託などの金融商品は、どの証券会社で購入しても基本的に同じ商品。それだけに、1999年に実施された株式の取引手数料自由化以降、ネット証券を中心に各社は手数料の引き下げと、サービスの使い勝手向上にしのぎを削ってきた。 ただ、過剰な価格競争や還元施策は証券会社の経営を揺るがしかねない。他社との競争に向き合いつつ、利益を確保できるビジネスモデルを確立できるか。経営陣には今後も難しい舵取りが求められそうだ』、「楽天証券」から「SBI証券」、「マネックス証券」にどの程度顧客が移動するか、当面の注目点だ。

第三に、2月15日付けダイヤモンド・オンライン「コロナ禍で急成長の「越境EC」、海外で人気の日本製商品とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/294353
・『インターネットを介して商品を買ったり、サービスを受けたりするEC(電子商取引)は、インターネットの普及とともに私たちの生活に根付いてきた。さらに近年では、コロナ禍の巣ごもり需要で国内ECが活況を迎えている。それと同時に、日本製品を海外ユーザーに向けて販売する「越境EC」も、大きな注目を集めているという』、興味深そうだ。
・『2027年の越境EC 市場規模は500兆円か  日本国外の人々をターゲットに、EC事業を展開する「越境EC」が今、急速に市場を拡大している。越境ECのプラットフォーム「Cafe24」で、日本の越境ECサイトの運営をサポートするCafe24 Japan代表取締役社長・正代誠氏は、越境ECの概要についてこう語る。 「越境ECとは、インターネット上で日本の商品やサービスを海外マーケットに向けて販売する電子商取引を指します。現地にリアル店舗を出さずに、海外市場に進出できるのが特徴です。越境ECには日本の企業が運営する『海外向けECモール』への出店や、『販売国のECモール』への出品、海外向けにネットショップを立ち上げるなどの方法がありますね」 経産省が発表した『電子商取引に関する市場調査』によると、中国の消費者が日本の越境ECサイト経由で商品を購入した金額は、2020年の1年間で約1兆9499億円。前年比では17.8%増を記録した。 「同じ調査では、世界の越境ECの市場規模は約89兆円になり、その規模は今後7年間で500兆円を超える見込みです。そしてこれからの越境EC市場をけん引するのは、インターネットの普及や経済成長が著しい東南アジアの国々といわれていますね」 日本の越境EC市場は「コロナ禍を機にスイッチが入った」と、正代氏は話す。聞けば、この2年間で多くのメーカーや卸業者が越境ECをスタートさせているそう。 「当社で越境ECサイトを開設するユーザーの傾向ですが、この2年で中小規模の事業者が越境ECを始めるケースが増えていますね。コロナ禍の今、国内ECの競合が急増してしまい価格競争が激しくなり、なかなか利益が出にくい状況になっています。そのため、自社の国内ECを生かしつつ海外にもマーケットを広げたいという相談も多くなりました。なかには、中国向けECサイトをすでに運営して成功した企業が、別の国への“横展開”を始めるケースもあります」 日本貿易振興機構が発表した「2020年度 日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査報告書2021年2月」でも、46.7%の中小企業が「今後海外向けECサイトによる輸出を拡大する」と回答している。2018年の調査時よりも9.5ポイント増加しており、中小企業が越境ECに意欲的な姿勢がうかがえる。 「この調査では、大企業にも同じアンケートを取っているのですが、大企業の市場拡大意向は28.5%にとどまり、2018年に比べて1.4ポイント減少しています。おそらく大企業は、すでにリアル店舗を海外に出店していたり、海外店を拠点にECを展開していたりするケースもあるため、積極的に市場を拡大しない方針のようです。仮説ですが、大企業はコロナ禍で海外での実店舗運営の課題に直面し、その対応に追われて海外へのEC展開は“現状維持”を選択している印象ですね」』、「「2020年度 日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査報告書2021年2月」でも、46.7%の中小企業が「今後海外向けECサイトによる輸出を拡大する」と回答している。2018年の調査時よりも9.5ポイント増加しており、中小企業が越境ECに意欲的な姿勢がうかがえる」、確かに中小企業は意欲的だ。
・『紙おむつや粉ミルクだけじゃない越境ECの意外な売れ筋商品  今後さらに躍進が期待される越境EC市場。どのような人々が日本の越境ECサイトを利用しているのだろうか。 「7~10年くらい前から、中国のユーザーがインターネットで日本製品を買うようになり、年々購入金額が増えています。当時から安定して人気が高いのは、日本製の『紙おむつ』『粉ミルク』『化粧品』。中国の工場で作られているものもありますが、子どもが口にするものや肌に直接つけるものは、日本の厳しい品質管理基準をクリアした日本製品を使いたい、というニーズが高いです。ほかの国でも、衛生面や安全面、トレーサビリティーを含めて“日本製品ならば安心”という見方は根強いですね」 また、越境ECの利用者はインバウンドとも深く関わっている。越境ECユーザーのなかには、観光で日本に訪れたときに気に入った商品を“ECサイトでリピート買い”する傾向があるという。 「特に最近は、コロナ禍による渡航制限もあって日本で大量購入しにくい状況です。そのため、インバウンドで人気だった家電も、継続してECで購入されています。日本の伝統工芸品も人気ですが、なかには奇抜な置物など『どうしてこれが海外で人気なんだろう?』と不思議に感じるヒット商品もあるんです。日本とは異なる視点で、意外なものが売れるのも越境ECの特徴ですね。その逆もまたしかりで、日本で売れているからといって、海外でも売れるとは限りません。日本で人気のジュエリーを台湾で売り出したものの、激しく苦戦を強いられているケースもあります」 正代氏は「日本と同じ“アジア圏だから”という認識のままでは、越境ECは成功しない」と、指摘する。そのため、越境ECではどの国で何を売るか、というマーケティングは必須だという。 「当社には『中国向けにECを始めたい』という相談が多く寄せられます。確かに中国は人口が多い分、マーケットとしては大きいですが、すでに日本製品を卸して売っている現地企業もあれば、長年中国を対象にEC事業を展開している日本企業もあり、競合が多い。中国の越境EC市場を今から狙うよりも、ほかの国を対象にするほうが参入のハードルは低いですね」 確実に利益を出すには、現地の状況や流行、文化を把握して臨む必要があるのだ。 「実務面では、現地での物流やユーザーとの間にある“言語の壁”も大きな課題になります。もしも個人や自社での対応が難しい場合は、当社のように現地に法人を持ち、言語や他国の物流サポートを行うプラットフォームを利用する手段もありますね」 そのほか関税への理解や、国ごとに法律で定められた越境ECで販売可能な商品の把握など、越境EC独自のルールへの対応が求められる。そのため、国内ECよりも綿密に計画を立てるのが吉だという』、「特に最近は、コロナ禍による渡航制限もあって日本で大量購入しにくい状況です。そのため、インバウンドで人気だった家電も、継続してECで購入されています」、「“言語の壁”も大きな課題になります。もしも個人や自社での対応が難しい場合は、当社のように現地に法人を持ち、言語や他国の物流サポートを行うプラットフォームを利用する手段もありますね」 そのほか関税への理解や、国ごとに法律で定められた越境ECで販売可能な商品の把握など、越境EC独自のルールへの対応が求められる」、なるほど。
・『越境ECを通してインバウンド顧客を獲得  さまざまなハードルはあるものの「コロナ禍の今が越境ECの始め時だろう」と、正代氏は話す。 「コロナが落ち着いて海外渡航ができるようになると、ECのユーザーが減るのでは、と懸念する声もあります。しかし日本に実店舗がある場合は、今のうちにECサイトで海外のファンを増やしておくと、インバウンドが復活したときにファンが実店舗に来店する可能性があります。そして帰国後には、ECサイトのユーザーになってもらえるというメリットも。たとえインバウンドが増えても、ECのユーザーがゼロになることはありません」 ネット上で海外ユーザーとの関係が築ける越境ECは、アフターコロナにも適したビジネスモデルといえる。 そして地方自治体も越境ECに積極的に取り組めば、インバウンド需要を獲得できる、と正代氏。 「かつて『インバウンドが活況』といわれた頃は、彼らの多くが関西空港から入国して京都から名古屋に渡り、富士山を見て東京に行き、成田空港から帰国するという王道ルートをたどっていました。結局、インバウンドの恩恵を受けていたのは都市部ばかりで、多くの県が訪日外国人に注目されにくい傾向にありました。越境ECサイトを通じて地元の特産品や観光地をアピールし、魅力を海外に発信できれば、その県を目指す訪日外国人も増えるはず。今後は、ECサイトをインバウンドの窓口にする自治体も増えていくでしょうね」 現状では、国内ECに比べて競合が少ない越境EC市場だが、今後は競合も増え、市場規模が拡大する可能性が高い。未来の越境EC市場を生き残る鍵は「いち早く海外のファンを増やすこと」にあるという。新たなマーケットを求めて大海原へとこぎ出すチャンスは、今なのかもしれない。 ●参考URL ・市場規模の拡大予想https://www.meti.go.jp/press/2021/07/20210730010/20210730010.html
・中小企業・大企業の市場拡大意向
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/01/3f6c5dc298a628be/20200024.pdf』、「現状では、国内ECに比べて競合が少ない越境EC市場だが、今後は競合も増え、市場規模が拡大する可能性が高い。未来の越境EC市場を生き残る鍵は「いち早く海外のファンを増やすこと」にあるという」、その通りなのだろう。
タグ:EC(電子商取引) (その9)(アマゾンが17年前から「パワポ禁止」する深い理由 花形職種も容赦なく自動化する「変革」の精神、楽天証券 「1%ポイント還元」の重すぎた代償 付与率が0.2%に引き下げへ 改悪変更の必然、コロナ禍で急成長の「越境EC」 海外で人気の日本製商品とは) 東洋経済オンライン アレックス・カントロウィッツ氏による「アマゾンが17年前から「パワポ禁止」する深い理由 花形職種も容赦なく自動化する「変革」の精神」 「「創業初日」を合い言葉にして新たなビジネスを創出し続けるアマゾン」、興味深そうだ。 「変革はベゾスの燃料、彼の知性を刺激するものです。変革は彼の体に組み込まれ、アマゾンという企業の基礎になっています」、「変革」を「アマゾン」内にビルトインするとは大したものだ。 「「パワポ」を全社で禁止」、とは画期的だ。確かに「パワーポイントは「アイデアをもっともらしく言いつくろうことができる」ため、欠点があったり不完全なコンセプトでも、プレゼンテーションの時点では気づかないことが多いという」、コンサルタントらの「パワポ」のプリゼンテーションは、聞いた直後は圧倒されるが、少し時間が経つと「本当かな」と疑問が沢山出てくるのが通常だ。「代わりに、新しい製品やサービスについてのアイデアを完全な文と段落で構成された文章にするようにとアマゾニアン(アマゾンで働く人々)に求めた」、「6ページ 「現在は約80万人の人間の従業員に加えて、20万台以上のロボットを「雇用」」、4人で1台とは、ロボットの割合はかなり高いようだ。 「ベンダーマネジャー・・・の職位は以前、社内であこがれのものだった。 アマゾンのベンダーマネジャーは、決定の際に単に機械学習アルゴリズムの予測を参考にするだけでなく、自動化システムに仕事をやらせるように指示された」、中核的な仕事も自動化するとはさすがだ。 「多くのベンダーマネジャーがアマゾン内の別の職位に移った。主に、プログラムマネジャーとプロダクトマネジャーという2種類の職種のどちらかだ。 どちらも、アマゾン内で創意工夫を担当する仕事」、社内で陳腐化した職種から、「創意工夫」を要する仕事」へと従業員をシフトさせたというのは、素晴らしいことだ。 これでは、日本企業との生産性格差は開く一方だ。 東洋経済オンライン「楽天証券、「1%ポイント還元」の重すぎた代償 付与率が0.2%に引き下げへ、改悪変更の必然」 「ポイント還元」が「購入額の1%」から「0.2%」では、手厚過ぎた分を是正したつもりだろうが、「“改悪”と受け止められた」のもやむを得ないだろう。 「楽天証券の過去4年間の営業利益率をみると、2018年から減少傾向」、「手厚いポイント還元」を「顧客流出」を「一定程度覚悟」した上で、「見直しに動いた」のはやむを得なかったようだ。 もともとの「ポイント付与」が甘過ぎたのではあるまいか。 「楽天証券」から「SBI証券」、「マネックス証券」にどの程度顧客が移動するか、当面の注目点だ。 ダイヤモンド・オンライン「コロナ禍で急成長の「越境EC」、海外で人気の日本製商品とは」 「「2020年度 日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査報告書2021年2月」でも、46.7%の中小企業が「今後海外向けECサイトによる輸出を拡大する」と回答している。2018年の調査時よりも9.5ポイント増加しており、中小企業が越境ECに意欲的な姿勢がうかがえる」、確かに中小企業は意欲的だ。 「特に最近は、コロナ禍による渡航制限もあって日本で大量購入しにくい状況です。そのため、インバウンドで人気だった家電も、継続してECで購入されています」、「“言語の壁”も大きな課題になります。もしも個人や自社での対応が難しい場合は、当社のように現地に法人を持ち、言語や他国の物流サポートを行うプラットフォームを利用する手段もありますね」 そのほか関税への理解や、国ごとに法律で定められた越境ECで販売可能な商品の把握など、越境EC独自のルールへの対応が求められる」、なるほど。 「現状では、国内ECに比べて競合が少ない越境EC市場だが、今後は競合も増え、市場規模が拡大する可能性が高い。未来の越境EC市場を生き残る鍵は「いち早く海外のファンを増やすこと」にあるという」、その通りなのだろう。
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経済学(その5)(『人新世の「資本論」』30万部の斎藤幸平 若き経済思想家の真意、リーマン危機から世界を”救った”男:独占インタビュー①ケインズ経済学の神髄 宇沢弘文氏の教えから昇華、清滝教授の「独自モデル」、ビジネススクールでも教えてくれない 武器としての経済学) [経済政治動向]

経済学については、昨年5月16日に取上げた。今日は、(その5)(『人新世の「資本論」』30万部の斎藤幸平 若き経済思想家の真意、リーマン危機から世界を”救った”男:独占インタビュー①ケインズ経済学の神髄 宇沢弘文氏の教えから昇華、清滝教授の「独自モデル」、ビジネススクールでも教えてくれない 武器としての経済学)である。

先ずは、昨年6月16日付け日経ビジネスオンライン「『人新世の「資本論」』30万部の斎藤幸平 若き経済思想家の真意」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00290/061000005/
・『経済思想家・斎藤幸平氏の『人新世の「資本論」』(集英社新書)が30万部超の異例のヒットとなっている。 人類の経済活動が地球全体に影響を及ぼす時代=「人新世」。現代の環境危機の解決策を、マルクスの新解釈の中に見いだすという硬派な内容ながら、コロナ禍にあって売れ続けている。1987年生まれの若き思想家が本書を執筆した背景とは(Qは聞き手の質問、Aは斎藤氏の回答)。 (斎藤幸平 氏の略歴はリンク先参照) Q:ベストセラーとなっている『人新世の「資本論」』。ヒットの理由を著者としてどのように分析していますか。 A:これほど多くの人に手に取ってもらえたのは、「このままの生活を、将来にわたって維持することは可能なのか」という問題から、誰もが目をそらせなくなってきたからだと思います。 今の私たちが享受している豊かさは、環境負荷や劣悪な労働環境を途上国に押し付け、外部化することで成り立ってきました。しかし、気候変動の問題一つをとってみても、近年は日本も、スーパー台風や集中豪雨、夏の酷暑など、様々な形で危機に直面するようになりました。新型コロナなど未知のウイルスによる感染症の拡大も、元をたどれば、森林などを乱開発した資本主義に原因があります。「これはまずいんじゃないのか?」という気配が高まったことと、本書の発売のタイミングが合致したのは大きいと思います。 タイトルにある「人新世」という言葉が示す通り、現代はグローバル資本主義の下で人類の活動が地球全体にインパクトを与える時代です。新型コロナウイルスが物流や人の流れに乗り、極めて短期間で世界全体に広まっていったように、さらに問題のスケールが大きい気候変動についても同じことが生じている。先進国で排出された二酸化炭素や温室効果ガスの影響は、地球上のあちこちで山火事や水不足を引き起こし、被害は今のままでは拡大の一途です。 そうした環境危機を目の当たりにして、「資本主義そのものに緊急ブレーキをかける必要がある」という本書の主張を、頭ごなしに否定はできない時代になってきた。多くの人が時代の変化や問題の深刻化を意識し始めたことが、反響につながったと考えています』、出版不況のなかで、「30万部超の異例のヒット」とは大したものだ。「気候変動の問題一つをとってみても、近年は日本も、スーパー台風や集中豪雨、夏の酷暑など、様々な形で危機に直面するようになりました。新型コロナなど未知のウイルスによる感染症の拡大も、元をたどれば、森林などを乱開発した資本主義に原因があります。「これはまずいんじゃないのか?」という気配が高まったことと、本書の発売のタイミングが合致したのは大きいと思います」、なるほど。
・『エコロジストとしてのマルクスの発見  Q:マルクスの思想の中に、実は現在の環境問題にも応用可能なエコロジストの視点があったのだという、本書の柱になっているこのアイデアは、どのようなきっかけで見つけたのでしょう? マルクスというと、とりわけ一定年齢層以上の人にとっては、ソ連やスターリン主義、冷戦構造の中での共産主義の暗いイメージが強くありますよね。ソ連崩壊後、マルクス経済学は、大学でも教えるところが少なくなってきました。しかし一方で、その後もマルクス研究を続けていた人たちは、「ようやくソ連や冷戦から解放され、マルクスをマルクスとして純粋に読むことができるようになった」と、彼の思想を捉え返そうとしたんです。 そうした動きと並行する形で、近年「メガ」(MEGA=Marx-Engels-Gesamtausgabe)と呼ばれる新たな『マルクス・エンゲルス全集』の編纂が進められ、私も含め世界各国の研究者が参加するこの国際的全集プロジェクトによって、これまで埋もれていた手稿や研究ノートの読解作業が行われています。 その新資料をひもといていくことで、20世紀のマルクスの読まれ方というのは、ソ連のスターリン主義にどっぷり浸かってゆがめられたものであり、本来マルクスが考えていた思想から乖離していたことも分かってきました。また、マルクスの死後にエンゲルスが『資本論』の編集過程で切り捨てた部分も明らかになった。そうして見えてきた「本来のマルクス」の持っていた考えの一つが、環境と資本主義との関係に対する関心です。実はマルクスは、環境破壊に対して深い問題意識を持ち、自然科学を熱心に学んでいました。 今まで知られてこなかった、そうしたエコロジストとしてのマルクスの思想を掘り起こすことは、単に新たなマルクス像を示すばかりでなく、「人新世」の環境問題、つまり人類は資本主義の下での技術革新と経済成長だけで環境危機を突破できるのか、という最大の問題に対し、非常に重要な視点を与えてくれると私は考えました。 こうしたドイツでの「MEGA」の編纂を通じた発見を経て、帰国後はマルクスの研究を現代の文脈にどう生かしていくべきなのかという課題に取り組み、その中で『人新世の「資本論」』の執筆に取りかかったのです。) Q:マルクスを研究対象として選んだ経緯は? A:米国の大学に入ってすぐ、ハリケーン・カトリーナの被災地でボランティアをする機会がありました。そこで格差問題の深刻さを目の当たりにし、その頃からマルクスに傾倒し始めました。もう一つのきっかけは、ベルリンの大学院に入った直後に起きた東日本大震災と原発事故です。当時、ベルリンでも数十万人規模の反原発デモが起き、それを見ながら資本主義とエコロジーの問題を考えたいと思うようになりました。 Q:今、研究や執筆の最大の原動力となっているものは何でしょう。 A:真面目に働いているのに、生活が立ち行かないほど追い込まれてしまう人が大勢いる社会は、端的に言っておかしいですよね。一部の人たちが、本来不要なものをどんどん消費する一方で、必要なものにも事欠く人たちが大勢いる。しかもその無駄な消費のための労働で、地球環境を破壊し続けている。そうした矛盾した社会構造を生み出してしまう資本主義とは、本当に合理的なのか、問題提起をしていきたい。このような社会や経済を変えなければならないと強く思っているんです。 つまり、不合理に対する違和感や怒りが研究の原動力ですね。ドイツでは、先ほどお話しした大規模な反原発デモの後、メルケル首相が2022年までに国内の原発を止めると宣言しました。人々がデモによって社会を変えていく姿を目の前で見て、それが民主主義のあり方であり、力だと実感しました。私は理論の面から人々の運動を下支えしたいのです。 日本では民主主義というと、議会制民主主義のことしか思い浮かばないかもしれませんが、議会政治には限界があります。例えば、気候変動の問題で最も影響を受ける子どもたちや途上国の人たちは、自分たちの未来を左右する米国の意思決定のプロセスからは排除されている。だから、私たちは議会民主主義だけを民主主義だと捉えてはならず、民主主義を拡張していくためにも、デモや学校ストライキや、様々なアクションを起こして、政治家や企業を動かさなければならない。それこそが民主主義なんです。 A:大学で学生たちに教える中で、いわゆる「Z世代」(1990年代後半から2010年代にかけて生まれた世代)の中に、先行世代とは異なる新しい価値観が根付きつつあると感じることはありますか。 A:ハンガーストライキや環境危機を訴えるライブを開催するなど、実際にアクションを起こしている高校生・大学生が日本でも増えてきました。ただし、日本の若者たちがすべて、スウェーデンの環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんのような考え方を持っているかと言えば、無論そんなことはなく、彼らの多くはファストファッションやファストフードに囲まれて育ち、それが当たり前だと思ってきた者たちです。でもそれは、今まで深く考える機会がなかったから。私のゼミでも、学んでいく過程で、少なからぬ学生が気候変動や格差社会といった問題を「自分ごと」として考え始めています』、「実はマルクスは、環境破壊に対して深い問題意識を持ち、自然科学を熱心に学んでいました。 今まで知られてこなかった、そうしたエコロジストとしてのマルクスの思想を掘り起こすことは、単に新たなマルクス像を示すばかりでなく、「人新世」の環境問題、つまり人類は資本主義の下での技術革新と経済成長だけで環境危機を突破できるのか、という最大の問題に対し、非常に重要な視点を与えてくれると私は考えました」、「議会民主主義だけを民主主義だと捉えてはならず、民主主義を拡張していくためにも、デモや学校ストライキや、様々なアクションを起こして、政治家や企業を動かさなければならない。それこそが民主主義なんです」、なるほど。
・『SDGsは批判してはいけないという空気があった  Q:本の冒頭で、現在多くの企業が取り組むSDGs(持続可能な開発目標)について、気候変動に対して本質的な効果は無く、むしろ危機的な状況から目を背けさせる有害な「アリバイ作り」だと断じています。 この1年ほど、SDGsに代表されるように「環境問題に配慮しないとまずいよね」「途上国の人権問題についても、企業は責任を持たなければならないよね」といった考えが“ブーム”で、SDGsは批判しちゃいけないものだという空気になっている。けれど実際には、本書でもエビデンスを挙げて指摘したように、とりわけ今の日本で広まっているレベルのSDGsの認識では、気候変動に対して効果は無いんです。 むしろ、マルクスがかつて、宗教を資本主義が引き起こす苦悩を和らげる「大衆のアヘン」だと批判したように、「これをやっていれば大丈夫」という誤った認識を持ち、真に必要な大きなアクションから目を背けさせてしまう。 私が投げかけたやや挑発的な批判に対し、SDGsにうすうす疑問を抱いていた人は「ああ、やっぱりそうか」と納得し、SDGsの効果を信じていた人にとっては、認識が崩れるショックや憤りもあったでしょう。普段はマルクスの話には興味の無い読者層も含め、多くの方に手に取っていただけるきっかけとなったと思います。 Q:では、企業はSDGsに取り組まない方がいい……? 企業にいるビジネスパーソンは、自分の仕事として何をすべきだと考えますか。 A:SDGsをビジネスの商機と捉えている程度では、問題は全く解決しません。企業が今すぐにでも行うべきなのはむしろ、供給過剰の是正です。具体的には、生産量そのものを3割減らす。食品であっても衣料品であっても、現代ではあらゆる企業が過剰な在庫を抱えています。それを3割減らすだけでも、環境危機に対処するための時間稼ぎになる。本来不要なものを減らすわけですから、消費者に大きな影響は無いばかりか、技術革新も特に必要ない。今すぐにでも始められる取り組みです』、「今の日本で広まっているレベルのSDGsの認識では、気候変動に対して効果は無いんです」、「むしろ、「これをやっていれば大丈夫」という誤った認識を持ち、真に必要な大きなアクションから目を背けさせてしまう」、その通りだ。
・『技術の力のみで社会は変えられない  Q:フリマアプリ「メルカリ」のように不用品を手軽に売れるサービスや、ものを所有しないシェアリングエコノミーなど、そうした新たな消費の形について、エコロジーの観点からどう思いますか。 A:転売を簡単にするサービスが普及すると、「数回使ったら売って、また次のものを買おう」というマインドを醸成し、消費することへのハードルが下がっていきます。場合によっては、これまで以上に短いスパンで様々なアイテムが消費されていく原動力になり、結果として消費量や輸送量が増えていく。エコロジー的な視点から言えば逆効果とも言えます。 シェアリングエコノミーについては、確かに効率化や資源の有効活用ができて良い面もある。ただし、どのような社会関係の下で運用されるかによって、生み出される結果は大きく異なります。 極端な例を挙げると、プライベートジェットをシェアするサービスもある。飛行機を維持管理するのは高コストなので、資産家同士で共同所有しようというわけです。このようなサービスが普及し、個人が気軽にジェット機を飛ばせるようになれば、当然ながらさらに環境負荷は膨らみ、資源の有効活用とは真逆の結果を生み出します。また、Uberの配達員システムのような労働力のシェアの形が、格差社会を拡大している面もある。 シェアリングエコノミーはネット社会の中で発達したある種の「技術」であり、肝心なのは、技術によって資本主義の抱える問題の本質を変えられるわけではないということです。むしろ、気候変動や格差社会化を加速させる結果すら生む。技術の力のみで社会を変えていけるという技術信仰には、常にそうした落とし穴があります。 Q:別の社会システムに今すぐ移行できない以上、私たちは将来的にまだ資本主義社会を生きていかなければなりません。企業人としてはどうすべきか。 A:資本主義を一朝一夕にストップするのは不可能だと、もちろん私も思います。ただし、それは資本主義の抱える問題を、今すぐ是正しなくていいということではありません。今の社会では、大手企業で働いていても「毎日イケイケで楽しい!」という人たちはどんどん減って、多くの人が「つらいなぁ」と日々思いながら長時間労働をしたり、劣悪な雇用条件に不安を覚えたりしている。それを改善するためにも、企業の中にいてこそ変えていけることが多くある。その最も分かりやすい例として、労働組合が担うべき役割は今でもあるんです。 ところが今、労働組合の多くは、男性正社員たちの既得権益擁護団体のようなものになってしまっている。そうでなく、自分たちの製品の環境への影響や、同じ職場で働いている非正規雇用者、女性の待遇の不均衡といった問題に対して声を上げるべきです。資本主義社会の抱える問題は、そうした働き方も含め、互いにクロスしている。気候変動問題も、単に二酸化炭素や温室効果ガスを削減するというテクニカルな話だけではなく、それに付随する長時間労働やジェンダー差別、途上国への劣悪な労働の押し付けを同時に是正していかなければ、二酸化炭素がいくら減ったところで、よい社会にはなりません。 アクションを起こせば、最初はコンフリクト(衝突、対立、不一致)を生みますが、これからの時代に企業を生き残らせるためにも、立ち上がって価値観をアップデートすることは必要です。グレタさんたちの世代が、これから消費者となり、経営者となり、20~30年後には政治のリーダーになっていく。今の日本は、それでも昔の方法にしがみつこうとしていますが、世界的な潮流に取り残されないためには、そうした大きなトレンドの変化を押さえておかなければなりません。 著者が薦める本 カール・マルクス『資本論』 (国民文庫) 私自身の研究のモチベーションと同様、マルクス自身も現実の問題にコミットして研究を続けた学者でした。そうした彼の生きざまにも影響を受けました。資本主義の矛盾や、資本主義に代わり得る社会のビジョンをこれほど深く考え抜いた本は他に無い。19世紀に書かれた本でありながら、現代でも様々な問題を考えるうえで、まずはここに立ち返り、さらに思考を発展させていく土台となる座右の書です。(斎藤氏)技術の力のみで社会は変えられない Q:フリマアプリ「メルカリ」のように不用品を手軽に売れるサービスや、ものを所有しないシェアリングエコノミーなど、そうした新たな消費の形について、エコロジーの観点からどう思いますか。 A:転売を簡単にするサービスが普及すると、「数回使ったら売って、また次のものを買おう」というマインドを醸成し、消費することへのハードルが下がっていきます。場合によっては、これまで以上に短いスパンで様々なアイテムが消費されていく原動力になり、結果として消費量や輸送量が増えていく。エコロジー的な視点から言えば逆効果とも言えます。 シェアリングエコノミーについては、確かに効率化や資源の有効活用ができて良い面もある。ただし、どのような社会関係の下で運用されるかによって、生み出される結果は大きく異なります。 極端な例を挙げると、プライベートジェットをシェアするサービスもある。飛行機を維持管理するのは高コストなので、資産家同士で共同所有しようというわけです。このようなサービスが普及し、個人が気軽にジェット機を飛ばせるようになれば、当然ながらさらに環境負荷は膨らみ、資源の有効活用とは真逆の結果を生み出します。また、Uberの配達員システムのような労働力のシェアの形が、格差社会を拡大している面もある。 シェアリングエコノミーはネット社会の中で発達したある種の「技術」であり、肝心なのは、技術によって資本主義の抱える問題の本質を変えられるわけではないということです。むしろ、気候変動や格差社会化を加速させる結果すら生む。技術の力のみで社会を変えていけるという技術信仰には、常にそうした落とし穴があります。 Q:別の社会システムに今すぐ移行できない以上、私たちは将来的にまだ資本主義社会を生きていかなければなりません。企業人としてはどうすべきか。 A:資本主義を一朝一夕にストップするのは不可能だと、もちろん私も思います。ただし、それは資本主義の抱える問題を、今すぐ是正しなくていいということではありません。今の社会では、大手企業で働いていても「毎日イケイケで楽しい!」という人たちはどんどん減って、多くの人が「つらいなぁ」と日々思いながら長時間労働をしたり、劣悪な雇用条件に不安を覚えたりしている。それを改善するためにも、企業の中にいてこそ変えていけることが多くある。その最も分かりやすい例として、労働組合が担うべき役割は今でもあるんです。 ところが今、労働組合の多くは、男性正社員たちの既得権益擁護団体のようなものになってしまっている。そうでなく、自分たちの製品の環境への影響や、同じ職場で働いている非正規雇用者、女性の待遇の不均衡といった問題に対して声を上げるべきです。資本主義社会の抱える問題は、そうした働き方も含め、互いにクロスしている。気候変動問題も、単に二酸化炭素や温室効果ガスを削減するというテクニカルな話だけではなく、それに付随する長時間労働やジェンダー差別、途上国への劣悪な労働の押し付けを同時に是正していかなければ、二酸化炭素がいくら減ったところで、よい社会にはなりません。 アクションを起こせば、最初はコンフリクト(衝突、対立、不一致)を生みますが、これからの時代に企業を生き残らせるためにも、立ち上がって価値観をアップデートすることは必要です。グレタさんたちの世代が、これから消費者となり、経営者となり、20~30年後には政治のリーダーになっていく。今の日本は、それでも昔の方法にしがみつこうとしていますが、世界的な潮流に取り残されないためには、そうした大きなトレンドの変化を押さえておかなければなりません。 著者が薦める本 カール・マルクス『資本論』 (国民文庫) 私自身の研究のモチベーションと同様、マルクス自身も現実の問題にコミットして研究を続けた学者でした。そうした彼の生きざまにも影響を受けました。資本主義の矛盾や、資本主義に代わり得る社会のビジョンをこれほど深く考え抜いた本は他に無い。19世紀に書かれた本でありながら、現代でも様々な問題を考えるうえで、まずはここに立ち返り、さらに思考を発展させていく土台となる座右の書です。(斎藤氏)』、「フリマアプリ「メルカリ」のように不用品を手軽に売れるサービスや、ものを所有しないシェアリングエコノミーなど」、「技術の力のみで社会は変えられない」、「労働組合が担うべき役割は今でもあるんです。 ところが今、労働組合の多くは、男性正社員たちの既得権益擁護団体のようなものになってしまっている。そうでなく、自分たちの製品の環境への影響や、同じ職場で働いている非正規雇用者、女性の待遇の不均衡といった問題に対して声を上げるべきです」、その通りだろう。「人新世の「資本論」が売れているということは、日本もまだ捨てたものでもないのかも知れない。

次に、9月15日付け東洋経済Plus「リーマン危機から世界を”救った”男:独占インタビュー①ケインズ経済学の神髄 宇沢弘文氏の教えから昇華、清滝教授の「独自モデル」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/575314
・『世界的な金融危機が発生したあのとき、アメリカで1人の経済学者が重要な役割を果たした。希代の理論家が語った白熱の100分を全5回で配信。 中央銀行が大規模な金融資産の購入を通じてマーケットの流動性を高める「非伝統的な金融政策」。その理論化を主導し、2008年のリーマンショックの鎮火に貢献したのが、プリンストン大学の清滝信宏教授だ。 日本人初のノーベル経済学賞受賞も期待されている清滝氏が、恩師である宇沢弘文氏と自身の理論のつながり、アメリカ当局との関わり、そして日本経済への提言まで、すべてを語った(Qは聞き手の質問、Aは清滝氏の回答)。 Q:清滝さんにとって、経済学の研究はどのような問題意識から始まったのですか? A:よく「社会的分業」と呼ばれるが、私たち一人ひとりの生活は、ほかの人の経済活動に大きく依存している。 一人ひとりは、消費や生産を行うとき、自分の利益や周囲のことだけを考えてバラバラに決めているのに、社会的分業はこうした利己的で分権的な個人の決定とうまく調和している。これは考えれば考えるほど不思議で、アダム・スミス以来の大きなテーマだ。 【ワンポイント解説】アダム・スミス(1723〜1790年)イギリスの道徳哲学者、経済学者。当時の重商主義(輸出入関係の商人を重視)を批判し、年々の労働の生産物こそが国富であるとして、個々人の活動が「見えざる手」(市場機構)に導かれて生産の増大をもたらす過程を、社会的分業の観点から分析した。主著は「国富論」「道徳感情論」。 通常の経済学では、市場経済における価格メカニズムが、個々の主体が選択した多数の財の需要と供給を同時に均衡するように調整しているため、分権的な決定と社会的分業は両立すると考えている。 ところが、これを「異時点間」、資金の貸し借りを含めた、現在と将来の財(商品・サービス)の交換という場面まで拡張すると、市場経済はもっと微妙で複雑な動きをしているのではないかというのが、そもそもの問題意識だった。 Q:時間という要素が入ると、不確実性が生じて単純な話ではなくなりますね。 A:現在だけを対象にするなら、いま財を交換して取引は終わる。一人ひとりの意思決定を阻害する要因は入りづらい。 これに対して、資金の貸し借りは、現在の財と将来の財に対する請求権を交換することを意味するが、将来、資金を返す段階になって状況が変わったり気が変わったりすると、返済しないことがある。そうなると、現在と将来の財の交換を歪ませる要因になる。 現実の経済では、担保を取ることでこの問題にある程度対応している。もし返済が滞れば、借り手は担保資産を失う、あるいは担保資産によって借金を返済する。この担保資産は、土地や建物、機械などの有形資産であったり、評判などの無形資産であったりする。こういった要素が、個々の主体の決定と社会的分業を調和させるうえで重要な役割を持つようになる。 Q:通常の経済学より、もっと考えなければならない要素が増えると。 A:さまざまな資産(担保)価値、そしてその資産価値を左右する「将来の期待」が入ってくる。うまくいっているときは、普通の価格理論よりもっと精巧な動き方をしている姿を描き出せるし、逆に、それは複雑で微妙な仕組みだから、時にはうまくいかなくなることもある。 実は、貨幣理論も同じような構図にある。もし信用が完璧でみなが確実に約束を守るなら、お互いの財の貸し借りだけで済んでしまい、別に貨幣はなくてもよい。 しかし、みなが必ずしも約束を守らないので信用が制約されると、将来の必要時に備えてお金を貯めておくとか、借り入れが難しければ貯めたお金で賄うといった行動が出てくる。だから貨幣経済というのは、信用の制約と強く結びついているわけだ』、単純な経済モデルに、現実的な要素を入れることで現実に近づけようとする意欲的な取り組みだ。
・『宇沢弘文先生に大きな影響を受けた  Q:それはまさにケインズ経済学の神髄といった感じですが、大学生のときから、このような問題意識を持っていたのですか。 宇沢弘文先生のゼミに入っていた影響が大きい。宇沢先生のやり方は少し変わっていて、学生にケインズの『雇用、利子および貨幣の一般理論』を読ませたうえで、「そのモデルを作れ」と言う。 【ワンポイント解説】宇沢弘文(1928〜2014年) 日本を代表する数理経済学者。世界的に評価の高い経済成長理論の2部門モデルなど多数の功績を残し、「社会的共通資本」の概念も提唱。後年は公害など社会問題にも取り組んだ。 普通、大学の学部生がそんなことをしても大抵うまくいかない。僕らはうんうんうなりながら、いろいろと一貫性のあるモデルを作ろうと努力した。そのときはほとんど失敗したが、「どうもケインズの理論は、完全競争モデルではなく、不完全競争モデルのほうが相性がいいのではないか」といった感じで、あの時期はとても多くのことを考えた。 【ワンポイント解説】ジョン・メイナード・ケインズ(1883〜1946年) 20世紀を代表するイギリスの経済学者。不確実性を基礎とした有効需要論を打ち立て、政府の金融・財政政策を支持した。その学説は1970年代以降、完全雇用を前提とする新古典派の復活でいったん下火になったが、リーマン危機以後は人気を取り戻した。 Q:清滝さんは「独占的競争」についても有名な論文を書かれていますが、それも当時からの問題意識によるものなのですね。 A:そうだ。独占的競争を想定すると、需要の制約が比較的すんなりと出てくる。 【ワンポイント解説】独占的競争 完全競争市場と独占市場の中間に位置する状態の1つ。①競合する多数の生産者がいる、②製品は差別化されている、③長期的には参入と退出は自由、の3つの条件で定義される。現実の多くの市場構造と近いと考えられる。 それと同時にあの時代に考えていたのは、「ケインズ理論とは価格が即座には調整されない価格硬直性を前提としたものだ」というアメリカ流のケインズ経済学の認識はどうも不十分だということ。 僕たちは、「金融と実物生産・雇用の間に密接な相互連関がある」とするところに、ケインズ理論の本質があると議論していた。当時のモデル作りはほとんど失敗したが問題意識は残っていて、アメリカに行ってから、「もっとうまく(ケインズ的な)モデルを作れないか」という思いが再び湧き上がってきた。そうした意味で、僕は宇沢先生にものすごく影響を受けた。) Q:アメリカ留学では、ハーバード大学の博士課程でオリヴィエ・ブランチャード教授などが指導教員になりました。 【ワンポイント解説】オリヴィエ・ブランチャード 1948年生まれ。フランス生まれのアメリカ経済学者。マクロ経済学の代表的な教科書を記し、2008〜2015年にはIMF(国際通貨基金)のチーフエコノミストとしても活躍した。現在はピーターソン国際経済研究所シニアフェロー。 ブランチャード先生から「おまえは何をやりたいのか」と聞かれ、私は「今のマクロ経済学に銀行や金融の制約という要素を入れて研究してみたい」と言った。すると、「そんなことできっこない。だいたい、おもしろいかどうかもわからない」と言われましたね(笑)。 ブランチャード先生はそのころ、私の関心に否定的だったが、おそらく「できっこない」というのは正しかったと思う。1980年代初めに、もし大学院生がそんなことをやったら、たぶんうまくいかなかっただろう。 代わりに取り組んだのが独占的競争の研究だ。このアプローチでケインズ理論を考えることは、当時のアメリカでもオリバー・ハートやマーティン・ワイツマンなどがやり始めていた。日本から持って行った問題意識と、アメリカで学んだ道具を一緒に合わせて博士論文を書き上げた。 Q:本当にやりたいことは、すぐにはできなかったのですね。 A:しばらく経って、やっぱりやるべきことはこれだけではないなと思い立ち、金融や借り入れの制約を取り入れた研究を始めたり、貨幣理論に取り組んだりした。それが、ランドル・ライト(現ウィスコンシン大学ビジネススクール教授)との仕事だ。 【ワンポイント解説】清滝=ライトモデル 清滝教授が共同研究で構築した貨幣理論の1つ。従来の経済学では明確に説明できなかった「貨幣が社会的に信用されるとそれがなぜ流通し、交換・生産・消費を活発にするのか」をサーチ理論を用いて数理モデルで説明した。 当時、僕が(助教授として)働いていたのがウィスコンシン大学で、そこにはマーク・ガートラー(現ニューヨーク大学教授)やケネス・ロゴフ(現ハーバード大学教授)らもいて、いろいろ議論できた。 さらにその後渡英して、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスに行き、ジョン・モーア(現エディンバラ大学教授)と一緒に仕事をした。最初は「清滝=ライトモデル」を拡張するつもりだったが、そのうちに拡張するよりもっと信用のところに焦点を当ててモデルを作ろうということになった。 ただ、それはロンドンにいる間にはできず、僕がミネソタ大学に移ってから、モーアがミネソタに来たり、僕がロンドンに行ったりしながら共同研究を進めた。そうして1990年代初めにできたのが、いわゆる「清滝=モーアモデル」だ』、「宇沢弘文先生」が「ゼミ」で「学生にケインズの『雇用、利子および貨幣の一般理論』を読ませたうえで、「そのモデルを作れ」と言う」、「僕らはうんうんうなりながら、いろいろと一貫性のあるモデルを作ろうと努力した。そのときはほとんど失敗したが、「どうもケインズの理論は、完全競争モデルではなく、不完全競争モデルのほうが相性がいいのではないか」といった感じで、あの時期はとても多くのことを考えた」、「やっぱりやるべきことはこれだけではないなと思い立ち、金融や借り入れの制約を取り入れた研究を始めたり、貨幣理論に取り組んだりした。それが、ランドル・ライト・・・との仕事だ」、さすが宇沢氏の指導は「清滝」氏に大きな影響を与えたようで、さすがだ。
・『信用と資産価値の相互作用を理論化  Q:清滝=モーアモデルは、清滝さんの論文の中でも最も注目されているものの1つです。詳しく教えてください。 標準的な経済学では、土地や建物、機械などの資産は生産要素としてだけ扱われてきた。しかし、「人は必ずしも約束を守らない」といった信用の制約がある経済では、そうした資産は担保としても有用だ。 すると、資産(担保)の価格が上がれば上がるほど、信用も大きくなると同時に、信用が大きくなればなるほど、市場を通じて資産価値にも影響を与えるという相互作用が生まれる。これを何とか理論化しようした。 具体例を挙げたほうがわかりやすいだろう。たとえば日本では、1980年代後半に円高不況を受けて金融緩和が進み、同時に日本経済の将来に関して楽観的な期待が広がり、株や不動産などの資産価格が上昇を続けた。そうすると、お金を借りている人は資産(担保)価値が上がれば信用枠が大きくなるため、よりたくさんのお金を借りられるようになった。 一方で「負債のテコ作用」というものもある。たとえば、資産の50%を借金で賄っている人は、資産価値が10%上がると、負債を除いた純資産価値(資産−負債)は大体20%上がることになる(金利を無視すれば負債価値は一定のため)。 通常の経済学では、価格が上がれば需要は減るのだが、以上の2つの作用(担保価値の上昇による信用力の向上と負債のテコ作用)から、資産価格が上がると、純資産価値はそれ以上に増えてもっと借りられるようになるので、信用枠いっぱいまで借りている主体では「価格が上がると、需要は増える」という逆説的なことが起こる。 そういう企業や家計が借り入れをして資産をどんどん購入すると、純資産価値は今期だけでなく、来期も再来期も増えるだろうという予想が生まれてくる。そして、それが今期の資産価格にさらに跳ね返ってくるという増幅作用が働く。こうしたことを理論化したのが、清滝=モーアモデルだ。) Q:このモデルは、資産デフレの説明にも使えますね。 A:上昇にも使えるし、収縮にも使える。たとえば、日本銀行がバブル経済に対応して1990年から金融引き締めを本格化すると、(価格上昇から価格下落へ)逆回転を始めた。 資産価格の上昇のことを「バブル」と考える人がいるが、先ほど話したように、僕たちはそれを増幅作用と、資産に担保価値が乗っているという形で考える。そして、信用枠いっぱいまで借りている主体の純資産が一度増えると、資産需要増が続くため、景気が持続する面もある。 それがマイナス方向の場合には、いったん信用を制約された主体の資産需要が縮小すると、回復に時間がかかる。資産需要の停滞が長引くと予想されると、信用の制約のない主体(たとえばウォーレン・バフェットなど)も価格が低くなければ買わないので、現在の資産価格は大きく下落する。 借り手の純資産はテコ作用でさらに大きく減少するため、資産価値の下落、信用や生産の縮小が進行してしまう。多分、日本の人々にはなじみが深いのではないか。 Q:いやというほど味わいました……。 A:(著名な官庁エコノミストの)香西秦さんには、「昔、自分がこうした話をすると理論に基づいていないと文句を言われたものだが、こうしてきちっと理論化してくれたのでとても助かる」と言っていただいたことがある。 今まで直感的に理解していたことを、目に見える形にして、何が前提条件でどこが肝心のメカニズムなのかということを示すのが重要だ。その分析を数式で表現し、理論的に整合的に説明したことが僕たちの貢献だと思う』、「バブル」は通常の経済学では説明がつかないが、「清滝=モーアモデル」なら説明できるというのは画期的だ。まさに、今後のノーベル経済学賞候補にふさわしいようだ。

第三に、本年5月2日付け日経ビジネスオンラインが掲載した大阪大学大学院経済学研究科准教授の安田 洋祐氏による「ビジネススクールでも教えてくれない、武器としての経済学」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00448/042500003/
・『最新の経済学は、米グーグルや米アマゾン・ドット・コムをはじめ、多くの米国企業で導入されています。しかし日本に目を向けてみれば、直感、場当たり的、劣化コピー、根性論で進められている仕事も少なくありません。なぜ米国企業は、経済学を積極的に採用しているのか。本当に経済学はビジネスの役に立つのか。役立てるにはどうしたらいいのか。『そのビジネス課題、最新の経済学で「すでに解決」しています。 仕事の「直感」「場当たり的」「劣化コピー」「根性論」を終わらせる』 から一部を抜粋し、著者の1人、安田洋祐氏がビジネスと経済学の掛け合わせによる新しい可能性を探ります。1回目は、従来、近くて遠い存在であった経済学とビジネスの新しい可能性について』、「ビジネスと経済学の掛け合わせによる新しい可能性」とは興味深そうだ。
・『経済学は、本当は仕事に役立つ学問  「経済学」という学問は、今、日本社会で活用されている以上に、本当はもっとビジネスに役立つ学問です。ただもしかしたら、みなさんの中には「学問は、ビジネスにはほとんど役に立たない」──もっというと「学問は、暮らしや社会には、直接的にも間接的にもほとんど関わりがない」と感じている方もいるのではないでしょうか。 特に、人文科学や社会科学の場合は、何かしらの学問分野を学び、「賢くなった」「ものの見方や考え方が変わった」という形で、得るものはあっても、それで自分の仕事がうまくいったり、日々の暮らしがよくなったりすることはないんじゃないか。そう感じる方も少なくないと思います。 学問というのは、机上で学ぶだけでなく、学んだことを実社会のなかで使ってこそ、その真価は発揮されます。一方で、多くの学問について、学んだ内容を役立てるために欠かせない、肝心な使い方まではきちんと伝わっていないようにも感じます。とりわけ、わたしが専門とする経済学は「実社会において非常に役立つ武器であるにもかかわらず、その真価をあまり発揮できていない学問」の最たるものではないか。そう強く感じています。 ここであえて「武器」という強い言葉を使いましたが、それはもちろん、他人を攻撃したり、何かを破壊したりするという意味ではありません。真意は「暮らしの改善や利益の拡大に役立つ心強いツール」ということです。あと、本物の武器と同じように、ライバルより先に使うと有利になるという意図も込められています』、「経済学は「実社会において非常に役立つ武器であるにもかかわらず、その真価をあまり発揮できていない学問」の最たるものではないか。そう強く感じています」、経済学者の責任でもあるのではなかろうか。
・『「経済学は役に立たない」と言われる理由  武器は、その仕組みや、それが何に使えるのかを知っているだけでは、役に立ちません。当たり前ですが、実際に使ってみて初めて役に立ちます。 この「使う」という視点は、経済学の教育で乏しいように思います。「知る」とか「理解する」でとどまっているのですね。経済データの扱い方を知るとか、市場の仕組みを理解するというように。いわば教科書できれいなサイエンスを学ぶことで止まっている。そこから一歩踏み込んで、現実の問題を解決していく。実は、経済学はそれができる段階にとっくに達しています。 もちろん現実で起こる出来事は、教科書に書かれていることと同じではありません。似ているものはあっても、完全に同じものはない。きれいなサイエンスは、現実を把握するための物差しとしては非常に有用ですが、それだけでは対処できないのです。 例えば、わたしはある野菜の市場設計に携わったことがあります。教科書の市場理論は、もちろん役に立ちます。しかし教科書のなかでは、どんな商品も一緒くたに「財」として扱われてしまう。野菜もボールペンも、どれも「財」として抽象的に扱われるのです。 しかし野菜の市場設計を考えるためには、野菜ならではの難しさを考慮しなければいけません。具体的には、野菜は放置すると腐るから、受け渡し場所は冷蔵施設があるところにしようとか。決められた納期を守るために、物流もきちんと確保しなければいけないとか。農家のなかにはIT機器の操作に慣れていない人もいるので、ごく簡単な操作で、それなりによい取引ができるルールにしようとか。 つまり、個別の問題に向き合って解決していく必要があるわけです。これはサイエンスというよりは、エンジニアリングという言葉のほうがしっくりきます。「サイエンスで問題に接近していき、エンジニアリングで解決する」というイメージですね。 現在の大学の経済学教育では、このエンジニアリングに関する要素が決定的に欠けているように感じます。ほとんど教えていない、という大学も少なくないでしょう。サイエンスは大切ですが、それだけではバランスがよくありません。 経済学を実社会において役立てるためには、「サイエンス」と「エンジニアリング」の両方が必須です。そして、経済に関する「サイエンス」と「エンジニアリング」を合わせたものが「武器としての経済学」なのです』、「経済に関する「サイエンス」と「エンジニアリング」を合わせたものが「武器としての経済学」なのです」、経済にも「エンジニアリング」があるとは初めて知った。
・『日本企業はなぜ経済学者を雇わないのか  自然科学では、エンジニアリングの重視は当たり前です。経済学は歴史が浅く、本格的に科学となったのはおそらく20世紀半ばくらいでしょうか。最近ようやくエンジニアリングを重視できる段階に入ったのだと思います。 細かいことをいうと、2002年にアルヴィン・ロス氏という学者が「The Economist as Engineer」という論文を公刊し、それが学界のムードを変えました。 「えっ、ムードってなに?」と思われるかもしれませんが、雰囲気って大切なんですよ。学問は人間がつくっているもので、自分はどういうものをつくるか、他者がつくったどういうものを評価するかに、学界のムードは大きく影響するんですね。 ロス自身、エンジニアリングな経済学を発展させてきた人です。彼は腎移植マッチングや研修医制度の設計などで多大な貢献をして、2012年にノーベル賞を授与されています。 話を戻しましょう。エンジニアリングな経済学の歴史はまだ若いです。特にいま日本社会の中枢にいる年代の人は、よほど学び続けている方でない限り、エンジニアリングな経済学をほぼご存じないでしょう。経済学部出身の方でも、ほとんどキャッチアップできていないのではないでしょうか。厳しい言い方になってしまうかもしれませんが、だからこそ、いまだに経済学が日本企業の武器になっていないのです。 わたしが残念に思うのは、もし企業が経済学博士を積極的に雇用したり、ビジネスパーソンと経済学者が幅広く人事交流する機会があったりしたら、エンジニアリングな経済学はもっと早く日本社会に広まっていたであろうことです。 もちろん、こうした流れを生み出せなかった責任は、サイエンス教育にばかり特化して、エンジニアリングを疎(おろそ)かにしてきた大学にもあります。この点では、日本は米国に少なくとも20年は後れをとっています。では、この状況を変えるためにどうすればよいのでしょうか』、「責任は、サイエンス教育にばかり特化して、エンジニアリングを疎(おろそ)かにしてきた大学にもあります。この点では、日本は米国に少なくとも20年は後れをとっています」、「米国に少なくとも20年は後れ」とは致命的だ。
・『まずは「ざっくりとした知識」で十分  このようにお伝えすると、「経済のサイエンスとエンジニアリングをいまから勉強する、の……?」と思って、ゲンナリされた方もいるかもしれません。 ですが、ご安心ください。足りなければ、すでに経済学のサイエンスとエンジニアリングを身につけている仲間を加えればいいのです。「経済学の父」とも呼ばれるアダム・スミスが説いた「分業の利益」を思い出してください。1人で、あるいは自社で全部行う必要はありませんし、それは多くの場合、むしろ非効率でしょう。「サイエンス」と「エンジニアリング」の両面から経済学をビジネスに役立てる、そのために経済学者がいるのです。 手前味噌に聞こえるかもしれませんが、経済学者を事業チームに引き入れるのは、現状を変える有効な手段です。役に立つ武器をもっている専門家を仲間にして、自分たちで使っていくわけですね。 その際には、経済学だけでなく、経済学者をうまく使うことが大切です。例えば、『そのビジネス課題、最新の経済学で「すでに解決」しています。』の共著者のうち、唯一のビジネスパーソンで、わたしを含む多くの経済学者を使ってきた今井さんは、経済学者とビジネスパーソンとで、「先生と生徒」の関係にならないことが重要だと強調していました。つい経済学者を「先生」のようなポジションに置いてしまいがちですが、そうすると「生徒」側はビジネスの事情や性質を「先生」に教えにくくなってしまうといいます。 ビジネスパーソンに求められるのは、経済学や経済学者が、個別のビジネス課題に対して、どのような形で役に立つのか、そのざっくりとしたイメージをつかむこと。それができていれば、ニーズが生じたときに、適切な経済学者を見つける「仲間さがし」もきっとうまくいくはずです。 経済学がビジネスにとってどんな武器となり得るのか、経済学者がビジネスにどんな価値を提供できるのか、という少し具体的な提案は、これからのこの連載で、お伝えしたいと思います』、「経済学者とビジネスパーソンとで、「先生と生徒」の関係にならないことが重要だと強調していました。つい経済学者を「先生」のようなポジションに置いてしまいがちですが、そうすると「生徒」側はビジネスの事情や性質を「先生」に教えにくくなってしまうといいます」、なるほど。 「ビジネスパーソンに求められるのは、経済学や経済学者が、個別のビジネス課題に対して、どのような形で役に立つのか、そのざっくりとしたイメージをつかむこと」、「少し具体的な提案は、これからのこの連載で、お伝えしたいと思います」、今後の展開が楽しみだ。
タグ:「経済学は「実社会において非常に役立つ武器であるにもかかわらず、その真価をあまり発揮できていない学問」の最たるものではないか。そう強く感じています」、経済学者の責任でもあるのではなかろうか。 「責任は、サイエンス教育にばかり特化して、エンジニアリングを疎(おろそ)かにしてきた大学にもあります。この点では、日本は米国に少なくとも20年は後れをとっています」、「米国に少なくとも20年は後れ」とは致命的だ。 「経済に関する「サイエンス」と「エンジニアリング」を合わせたものが「武器としての経済学」なのです」、経済にも「エンジニアリング」があるとは初めて知った。 「ビジネスと経済学の掛け合わせによる新しい可能性」とは興味深そうだ。 安田 洋祐氏による「ビジネススクールでも教えてくれない、武器としての経済学」 出版不況のなかで、「30万部超の異例のヒット」とは大したものだ。「気候変動の問題一つをとってみても、近年は日本も、スーパー台風や集中豪雨、夏の酷暑など、様々な形で危機に直面するようになりました。新型コロナなど未知のウイルスによる感染症の拡大も、元をたどれば、森林などを乱開発した資本主義に原因があります。「これはまずいんじゃないのか?」という気配が高まったことと、本書の発売のタイミングが合致したのは大きいと思います」、なるほど。 単純な経済モデルに、現実的な要素を入れることで現実に近づけようとする意欲的な取り組みだ。 もし信用が完璧でみなが確実に約束を守るなら、お互いの財の貸し借りだけで済んでしまい、別に貨幣はなくてもよい。 しかし、みなが必ずしも約束を守らないので信用が制約されると、将来の必要時に備えてお金を貯めておくとか、借り入れが難しければ貯めたお金で賄うといった行動が出てくる。だから貨幣経済というのは、信用の制約と強く結びついているわけだ 日経ビジネスオンライン プリンストン大学の清滝信宏教授 東洋経済Plus「リーマン危機から世界を”救った”男:独占インタビュー①ケインズ経済学の神髄 宇沢弘文氏の教えから昇華、清滝教授の「独自モデル」」 「フリマアプリ「メルカリ」のように不用品を手軽に売れるサービスや、ものを所有しないシェアリングエコノミーなど」、「技術の力のみで社会は変えられない」、「労働組合が担うべき役割は今でもあるんです。 ところが今、労働組合の多くは、男性正社員たちの既得権益擁護団体のようなものになってしまっている。そうでなく、自分たちの製品の環境への影響や、同じ職場で働いている非正規雇用者、女性の待遇の不均衡といった問題に対して声を上げるべきです」、その通りだろう。「人新世の「資本論」が売れているということは、日本もまだ捨てたも 「今の日本で広まっているレベルのSDGsの認識では、気候変動に対して効果は無いんです」、「むしろ、「これをやっていれば大丈夫」という誤った認識を持ち、真に必要な大きなアクションから目を背けさせてしまう」、その通りだ。 「実はマルクスは、環境破壊に対して深い問題意識を持ち、自然科学を熱心に学んでいました。 今まで知られてこなかった、そうしたエコロジストとしてのマルクスの思想を掘り起こすことは、単に新たなマルクス像を示すばかりでなく、「人新世」の環境問題、つまり人類は資本主義の下での技術革新と経済成長だけで環境危機を突破できるのか、という最大の問題に対し、非常に重要な視点を与えてくれると私は考えました」、「議会民主主義だけを民主主義だと捉えてはならず、民主主義を拡張していくためにも、デモや学校ストライキや、様々なアクション 「経済学者とビジネスパーソンとで、「先生と生徒」の関係にならないことが重要だと強調していました。つい経済学者を「先生」のようなポジションに置いてしまいがちですが、そうすると「生徒」側はビジネスの事情や性質を「先生」に教えにくくなってしまうといいます」、なるほど。 「ビジネスパーソンに求められるのは、経済学や経済学者が、個別のビジネス課題に対して、どのような形で役に立つのか、そのざっくりとしたイメージをつかむこと」、「少し具体的な提案は、これからのこの連載で、お伝えしたいと思います」、今後の展開が楽しみだ。 「バブル」は通常の経済学では説明がつかないが、「清滝=モーアモデル」なら説明できるというのは画期的だ。まさに、今後のノーベル経済学賞候補にふさわしいようだ。 「宇沢弘文先生」が「ゼミ」で「学生にケインズの『雇用、利子および貨幣の一般理論』を読ませたうえで、「そのモデルを作れ」と言う」、「僕らはうんうんうなりながら、いろいろと一貫性のあるモデルを作ろうと努力した。そのときはほとんど失敗したが、「どうもケインズの理論は、完全競争モデルではなく、不完全競争モデルのほうが相性がいいのではないか」といった感じで、あの時期はとても多くのことを考えた」、「やっぱりやるべきことはこれだけではないなと思い立ち、金融や借り入れの制約を取り入れた研究を始めたり、貨幣理論に取り組んだ 貨幣理論も同じような構図にある さまざまな資産(担保)価値、そしてその資産価値を左右する「将来の期待」が入ってくる。 (その5)(『人新世の「資本論」』30万部の斎藤幸平 若き経済思想家の真意、リーマン危機から世界を”救った”男:独占インタビュー①ケインズ経済学の神髄 宇沢弘文氏の教えから昇華、清滝教授の「独自モデル」、ビジネススクールでも教えてくれない 武器としての経済学) 経済学 経済思想家・斎藤幸平 日経ビジネスオンライン「『人新世の「資本論」』30万部の斎藤幸平 若き経済思想家の真意」
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大学(その10)(岸田文雄総理の息子も橋本聖子氏の娘も…“日大のドン”が自慢する新入生と 知られざる政界とのつながり、《日大前理事長逮捕》権力の秘密は相撲部監督時代の「日大内八百長」にあった なぜ前理事長は“田中帝国”を作れたのか?、日大前理事長の脱税 医学部不正入試 相次ぐ「大学不祥事」をなくすには?) [社会]

大学については、昨年12月13日に取上げた。今日は、(その10)(岸田文雄総理の息子も橋本聖子氏の娘も…“日大のドン”が自慢する新入生と 知られざる政界とのつながり、《日大前理事長逮捕》権力の秘密は相撲部監督時代の「日大内八百長」にあった なぜ前理事長は“田中帝国”を作れたのか?、日大前理事長の脱税 医学部不正入試 相次ぐ「大学不祥事」をなくすには?)である。

先ずは、昨年12月26日付け文春オンライン「岸田文雄総理の息子も橋本聖子氏の娘も…“日大のドン”が自慢する新入生と、知られざる政界とのつながり」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/50840
・『アメフトの悪質タックル問題が表面化する直前の2018年5月上旬。ある会合で、日大の“ドン”は、誇らしげにこう語っていた。 「日本大学は日本一の大学です。今年は岸田文雄外務大臣(注・実際は前年に外相退任)の息子が入学しましたし、来年は自民党の橋本聖子さんの娘が入ります」 東京地検に脱税容疑で逮捕された田中英寿前理事長(75)。彼が頼った“伏魔殿の生命線”は、知られざる政界とのパイプだった』、「知られざる政界とのパイプ」とは興味深そうだ。
・『まだ田中色一掃とは言い難い  司法担当記者が語る。 「逮捕後の家宅捜索では、田中氏の妻が経営するちゃんこ店の女性従業員が住む築41年の木造アパートから現金2000万円が発見された。他に、日大相撲部ОBで田中氏が会長を務める国際相撲連盟の会計に関わっていた日大職員の自宅にも家宅捜索が入った。彼が管理していた国際相撲連盟の田中氏名義の口座からはすでに金が引き出されていたそうです。特捜部は大学の理事長室からも7000万円を押収。さらに脱税額を積み上げ、田中氏を確実に実刑に持ち込みたい意向です」 拘置所での田中氏は持病のせいで生活に不自由があるものの、食欲は旺盛。脱税容疑については否認を貫いているという。 「田中氏は理事長を辞任し、12月3日の理事会で理事も解任されました。ただ、33人中6人の理事は解任決議に反対票を投じており、まだ田中色一掃とは言い難い」(日大関係者)』、「33人中6人の理事は解任決議に反対票」とは、「田中氏」の影響力は依然根強そうだ。
・『後任の理事長候補は?  一方、ポスト田中を巡る動きは政界にも及んでいる。 「日大医学部出身で、先日政界を引退した鴨下一郎元環境相を次の理事長にという声があります。推す一人が日大OBで菅義偉前首相の側近の星野剛士衆院議員で、彼も理事の候補と目されている」(永田町関係者) その星野議員が語る。 「今回の事件は日大板橋病院が舞台だっただけに、医学部出身で、日大関係者にも人望がある鴨下先生は理事長に適任だと思います。私も、もし母校のために何か出来ることがあるなら、汗をかくつもりでいます」 鴨下氏以外に、日大OBで、一時は大学の理事を務めた古賀誠元自民党幹事長も田中氏の後任理事長候補に名前が挙がっている。 日大では、出身者が地域や職域などで個別に「桜門会」というОB組織を全国に作っているが、政治家も例外ではない。自民党関係者が語る。 「自民党にも桜門会があり、20人弱の日大OB議員が年に1回、中華料理店などで田中氏や学長、日大幹部などと長らく懇親会を行なっていました」 メンバーには林幹雄前幹事長代理や、佐藤勉前総務会長、梶山弘志前経産相など錚々たる顔触れが並んだ。 ただ、それもここ5年ほどは行なわれていなかった。発端は会食の日程調整だった。田中氏は事務局的な役割だった中川俊直議員(当時)らを理事長室に呼びつけた。だが、彼らの顔も見ようとせず、無言でテレビを観ていたという』、「鴨下一郎元環境相」や、「古賀誠元自民党幹事長」が「後任理事長候補」とは興味深い。
・『田中氏の失礼な態度に中川氏は…  「『お座り下さい』の一言もなく、立たせたまま、大相撲を観ていたそうです。陣笠議員など相手にしないと言わんばかりの対応に、中川氏らは怒って5分ほどで部屋を後にした。元々会食の席でも、田中氏は仏頂面でほとんど喋らない。そんな失礼な態度もあって、約5年前に定期的な会食は取り止めになった」(同前) しかし、この一件で日大と自民党のパイプが切れた訳ではない。日大では、田中氏が理事長に就任した08年から学識経験のある学外理事のなかに、常に“政治家枠”を設けてきた。 「最初の3年は古賀氏、そして政権交代で09年に自民党が野に下ると、当時民主党の実力者だった小沢一郎氏を理事に選出。12年に自民党が政権を奪還すると、小沢氏を残して今度は鴨下氏を理事に据えました。直近では前選対委員長の山口泰明氏が理事を務めていました。こうして、常に政権与党で枢要な位置にいる日大出身議員を理事に迎え入れて来たのです」(同前) 田中氏の華麗な政界人脈を見せつけたのが、日大130周年記念を巡る二つのイベントである。 「周年事業の目玉として、前から近しい亀井静香元運輸相の尽力で危機管理学部を創設。16年春の開校祝賀会には亀井氏や文教族のドン、森喜朗元首相が姿をみせました」(日大元幹部)』、「常に政権与党で枢要な位置にいる日大出身議員を理事に迎え入れて来た」、とはさすがだ。
・『田中氏の目配りは政治家の子弟にも  JОC副会長でもあった田中氏は、東京五輪招致を牽引した森氏との関係を誇示するように、当時から「招致資金の一部は自分が出した」と周囲に豪語した。 「田中氏の最高の栄誉となるはずだった130周年記念式典は、19年10月に行なわれました。アメフト問題で日大の権威が失墜する中、国会開会日にもかかわらず、麻生太郎財務相や山東昭子参院議長が駆け付けた」(前出・日大元幹部) 田中氏の目配りは政治家の子弟にも及んでいた。それが冒頭の発言だ。 「岸田氏の次男は新設のスポーツ科学部を来春卒業してスポーツ関連会社に就職予定。橋本氏の三女は日大の準付属高校から学校推薦でスポーツ科学部に入学し、今も在学中です」(同前) 田中氏には政治もまた、権力の道具に過ぎなかった』、「東京五輪招致・・・「招致資金の一部は自分が出した」」、というのは。あり得る話だ。「目配りは政治家の子弟にも及んでいた」、利用できるものは何でも利用するようだ。

第三に、5月2日付けAERAdot「日大前理事長の脱税、医学部不正入試 相次ぐ「大学不祥事」をなくすには?」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dot/2022042600055.html?page=1
・『近年の不正入試、理事長の脱税で、大学への信頼は大きく傷ついた。大学運営を改善するため、国は厳しい「ガバナンス」を求めたが、賛否が渦巻いている。『大学ランキング2023』(朝日新聞出版)から紹介する。 2018年、東京医科大の入試選考において女子受験生の得点を低く操作し、不合格にしていたことが発覚した。 「女性は結婚、出産で医師の仕事を離れることがあるから」というような理由で、女子の入学者数を制限したとされている。これに対し、「重大な女性差別だ」という厳しい批判が起こった。 21年、日本大理事長の田中英壽氏が所得税法違反の容疑で逮捕され、のちに起訴された。日大板橋病院の建て替えをめぐり、計約1億2千万円のリベート収入を申告しなかった脱税容疑が問われたものだ。のちに、田中氏は東京地裁で懲役1年執行猶予3年罰金1300万円の判決を受けた。日本大は田中氏の理事職を解任した。新理事長の加藤直人氏は「日本大学は田中前理事長と永久に決別し、その影響力を排除します」と宣言した。 東京医科大、日本大いずれの事件も連日報道が続き、大学そのものに対する風あたりも強まった。大学は「社会の常識とかけ離れている」と言われてしまう』、「日本大」「新理事長の加藤直人氏」は「危険アメフット事件」が発生した時の「アメフット部長」だったので、完全に復権したようだ。
・『大学への信頼を取り戻すため大学運営のあり方を見直す  なかでも日本大は、大学トップが引き起こした事件であり、自らが不祥事をただして究明する、つまり、大学に自浄作用を求めるのは難しいのではないか、というさめた見方もあった。 国は看過できなかった。大学への信頼を取り戻すため、大学運営のあり方を根本的に見直そうとする。「大学トップの暴走を止めるにはどうしたらいいか」というテーマまで議論された。 21年7月、文部科学省は有識者による「学校法人ガバナンス改革会議」を設置した。ガバナンスとは、「統治」と訳されている。この言葉の語源は「舵を取る」という意味のラテン語である。) (「大学のガバナンスで問われる失政、事件、事故、不祥事」の表はリンク先参照) ここでのガバナンスは、透明性が保証された、不祥事を起こさない組織づくり、不祥事を起こしたときに対応できる指示系統、といった意味合いが込められる。 ガバナンスは企業経営で多く用いられる概念だ。「コーポレート・ガバナンス」のあり方を問いただすとき、その企業の「経営陣が企業倫理や社会規範を順守し、組織の健全性、透明性、誠実性」が重要なテーマになる。たとえば、脱税、粉飾決算、不正経理、贈収賄などの不祥事への対応、説明責任だ』、「文部科学省」がようやく「学校法人ガバナンス改革会議」、を設置したようだ。
・『不祥事の温床になる制度や体質をあらためる  大学についても、2000年代に入ってガバナンスという概念が浸透しはじめている。「あの大学のガバナンスはどうなっているのか」と問われたとき、大学トップの専横を許した、大学の一部局あるいは一職員の失政を止められなかった、というケースが多く見られた。 失政について生々しい話がある。 08年、いくつかの大学がデリバティブ(金融派生商品)による資産運用に失敗している。リーマン・ショックに端を発したアメリカの金融危機によって、とんでもない額を失った。当時の報道によれば、駒澤大154億円、立正大148億円、慶應義塾大225億円などの損失や評価損を出したのである。これほどの巨額損失を許した大学の甘い体質が問われた。 私立大は国からの私学助成を受けている。こうした損失の責任はどこにあるのか。大学に対する信頼を失うものであり、しっかりしたガバナンスが求められるのは当然のことだった。 このほかにも、大学ではガバナンスが問われるさまざまな問題が起こっている。不正入試、論文改ざん、研究費不正、セクハラ、パワハラなどだ。 東京医科大、日本大で起こった不祥事を繰り返させてはならない。そのために、「学校法人ガバナンス改革会議」は、不祥事の温床になるような、大学の旧態依然の制度や体質をあらためる政策を打ち出し、大学のガバナンス=統治をしっかり機能させようとしたのである』、「デリバティブ」「による資産運用に失敗」は、「これほどの巨額損失を許した大学の甘い体質が問われる」とするが、「資産運用」では損失が出ることも珍しくないので、やや厳し過ぎる表現だ。
・『内部チェックや牽制機能がなく理事長の暴走を容易に許した  21年12月、「学校法人ガバナンス改革会議」は不祥事の再発防止を念頭に、新しいガバナンスを示した最終報告書をまとめた。そのなかにこんなフレーズがある。「評議員会を最高監督、議決機関と定める」「現役の理事、監事及び職員との兼任は認めず、その選任も理事又は理事会において行うことを認めない」。 わかりやすくいえば、(1)大学の最高議決機関をこれまでの理事会から評議員会に変更して、評議員を全員、学外者とする。理事長、学長、教員は評議員になれない。(2)評議員会の議決権は予算や事業計画のほか理事らの選任にも及ぶこととなり、学部設置、施設建設など重大なことが学外者によって決定される。 なぜ、こんな政策が打ち出されたか。 いま、大学では理事会が強い権力をもっている。しかし、そのトップである理事長が長く居すわって教育、研究を停滞させたり、不正を行って私腹を肥やしたりしても、それを諫めることができないし、解任するなどは不可能だからだ。 大学ガバナンスに取り組んできた、元国会議員の塩崎恭久氏はこう指摘する。 「大学は、公益法人として固定資産税、法人税等多額の免税措置を受けています。ところが、何ら有効な内部チェックや牽制機能が働かないまま理事長の暴走を容易に許してしまった。現行法制下のガバナンスの仕組みこそが問題で、それを定めている私立学校法などを速やかに抜本改正することが不可欠だ、という事です」(「デイリー新潮」21年12月24日)。 そこで、評議員会を大学の最高決議機関として、大学運営のあらゆる面をチェックできる機能をもつようにした。また、不祥事を起こした理事や理事長を解任する権限をもっている。いうなれば第2、第3の日大・田中理事長を出さないための政策である』、「評議員を全員、学外者」、ということで、果たして実効性ある決定が出来るのか、疑問もある。
・『大学の自治が保障されたからこそ、学問の観点から大事だと考える  ところが、この最終報告書について、私立大学の多くが反発した。 日本私立大学連盟はこう批判する。) 「評議員会を株主総会と同視し、コーポレート・ガバナンスの考え方をそのまま私立大学の経営に導入しようとする点は、理論上合理性を欠くものと言わざるを得ません。(略)学生と日頃接していない学外評議員だけで、私立大学の教育研究に関する運営の責任は取れません。特に、提案の中核にある『学外者のみで構成される評議員会が、学校法人の重要事項の議決と理事及び監事の選解任を自由にできる』という制度では、学修者本位の教育環境は破壊され、評議員会が暴走しても止めることが出来なくなります」 日本私立大学連盟会長、早稲田大総長の田中愛治さんは、学外者だけの評議員会を最高議決機関にするのはおかしい、と批判する。 「評議員は学生に接する機会がほとんどありません。例えば、多くの学生がオンライン授業を残してほしいと希望しているのに、苦しむ学生を紹介する報道だけを見て、中止を一方的に決められては、誰よりも学生が困ります。(略)大学の自治が保障されてきたからこそ、学問の観点から大事だと考えることに取り組むことができていたのです。そうした歴史を踏まえず、経営的な観点だけで方針を決めるのでは道を誤ります」(朝日新聞2022年1月15日) 文科省が唱えたガバナンスによる大学運営健全化と、大学が守りたい自治や学問の自由のあいだには隔たりがあり、現在、学校法人ガバナンス改革会議で議論を進めている。 文科省、大学ともに重きをおくべきは、学生目線を採り入れたガバナンスだ。専横な大学トップ、危なっかしい経営によって「学生が困ります」という状況を作ってはならない』、「学生に接する機会がほとんど」ない「評議員」による「評議員会を最高議決機関にするのはおかしい」との「早稲田大総長」の批判はその通りだと思う。「現在、学校法人ガバナンス改革会議で議論を進めている。 文科省、大学ともに重きをおくべきは、学生目線を採り入れたガバナンスだ」、今後、実効性ある提言が出てくることを期待したい。
タグ:大学 文春オンライン「岸田文雄総理の息子も橋本聖子氏の娘も…“日大のドン”が自慢する新入生と、知られざる政界とのつながり」 (その10)(岸田文雄総理の息子も橋本聖子氏の娘も…“日大のドン”が自慢する新入生と 知られざる政界とのつながり、《日大前理事長逮捕》権力の秘密は相撲部監督時代の「日大内八百長」にあった なぜ前理事長は“田中帝国”を作れたのか?、日大前理事長の脱税 医学部不正入試 相次ぐ「大学不祥事」をなくすには?) 「知られざる政界とのパイプ」とは興味深そうだ。 「33人中6人の理事は解任決議に反対票」とは、「田中氏」の影響力は依然根強そうだ。 「鴨下一郎元環境相」や、「古賀誠元自民党幹事長」が「後任理事長候補」とは興味深い。 「常に政権与党で枢要な位置にいる日大出身議員を理事に迎え入れて来た」、とはさすがだ。 「東京五輪招致・・・「招致資金の一部は自分が出した」」、というのは。あり得る話だ。「目配りは政治家の子弟にも及んでいた」、利用できるものは何でも利用するようだ。 AERAdot「日大前理事長の脱税、医学部不正入試 相次ぐ「大学不祥事」をなくすには?」 「日本大」「新理事長の加藤直人氏」は「危険アメフット事件」が発生した時の「アメフット部長」だったので、完全に復権したようだ。 「文部科学省」がようやく「学校法人ガバナンス改革会議」、を設置したようだ。 「デリバティブ」「による資産運用に失敗」は、「これほどの巨額損失を許した大学の甘い体質が問われる」とするが、「資産運用」では損失が出ることも珍しくないので、やや厳し過ぎる表現だ。 「評議員を全員、学外者」、ということで、果たして実効性ある決定が出来るのか、疑問もある。 専横な大学トップ、危なっかしい経営によって「学生が困ります」という状況を作ってはならない』、「学生に接する機会がほとんど」ない「評議員」による「評議員会を最高議決機関にするのはおかしい」との「早稲田大総長」の批判はその通りだと思う。「現在、学校法人ガバナンス改革会議で議論を進めている。 文科省、大学ともに重きをおくべきは、学生目線を採り入れたガバナンスだ」、今後、実効性ある提言が出てくることを期待したい。
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