投資(商品販売・手法)(その2)(50歳で初めて投資 失敗しないために知っておくべきこと、株主優待に飛びつくのは日本人だけ? 目先の利益でプロは買わない、ESG投資が運用として「明らかにダメ」でも流行る本当の理由) [金融]
投資(商品販売・手法)については、昨年4月18日に取上げた。久しぶりの今日は、(その2)(50歳で初めて投資 失敗しないために知っておくべきこと、株主優待に飛びつくのは日本人だけ? 目先の利益でプロは買わない、ESG投資が運用として「明らかにダメ」でも流行る本当の理由)である。
先ずは、昨年10月19日付け日経ビジネスオンラインが掲載したBagel X代表取締役の大崎 匠氏による「50歳で初めて投資 失敗しないために知っておくべきこと」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/plus/00014/101400001/
・『50歳になると、突然目の前に現れる「お金の不安」。日本人の平均寿命が延び続ける中、将来への備えの必要性をヒシヒシと実感するタイミングではないでしょうか。 50代は、定年後を見据え、自分の資産運用戦略を見つめ直す“ラストチャンス”。年金受給額の減少や医療費負担の増加、そしてコロナ禍以降の増税など、家計の不安は募るばかり。今まで貯蓄したお金を投資すべきなのか、はたまたリスクは取るべきではないのか。今の資産運用ブームに乗ったほうがいいのかと、悩んだことは一度や二度ではないと思います。 資産運用のセオリーの一つに、「投資は若いうちから始めるのがよい」というものがあります。これは、投資期間が長いほど、複利(投資利回りの累積)の効果が高くなることを示しています。しかし、若いうちに資産運用を始めなかったからといって、焦る必要はありません。「急(せ)いては事を仕損じる」という言葉は、投資においても同じ。50歳からでも十分、間に合います。むしろ、平均寿命がこれだけ延び、どの家庭でも長期戦略の立案を迫られている今の流れを見ると、時間のゆとりができ、老後の不安が現実味を帯びてくる50代から資産運用を始める価値は十分にあります。 実際に、利回り表を用いて毎月の積立金額別でどれだけ資産をためられるかを簡単に試算しました(表1、表2)。 50歳から年金受給開始年齢の65歳まで、毎月一定金額を積み立て、保守的に年率3.0%で運用するとします。今現在、資産がなかったとしても、毎月10万円ずつ投資に回したとしたら、65歳の時には2275万円(積立金:1800万円、投資リターン:475万円)もの資産を手にしていることになります(表1)。積立金が5万円だとしても、1138万円(積立金:900万円、投資リターン:238万円)です。 資産運用では投資期間が長くなればなるほど、複利の効果によってリターンが増加するため、15年という長期間にわたって運用することで、大きな投資リターンが期待できます。 つまり、50歳の時点で全く資産運用をしてこなかったとしても、リターンはしっかり受け取れます(表2)。 また、リスク性の高い投資、つまり資産の増減幅が大きくなりやすい投資に飛びつかなくても、毎月の積立金額と運用期間によっては、今からでも老後の資金を得ることが可能です。 上記の試算の通り、50歳であってもまだまだ時間はあります。これまでやってこなかったからといって気後れする必要は一切ありません。今からでもできることをやっていくことが、将来の経済的なゆとりを得るための秘策なのです』、その通りだ。
・『資産運用コストに厳格になれ ここからは、筆者の機関投資家としての経験に基づいた、個人投資家に参考にしてほしい観点についてご紹介します。もっとも、投資のスタイルは個人によって大きく異なるため、あくまで一例です。投資家マインドを身につけるための、一つのエッセンスとして参考にしていただければと思います。 資産運用を始めたばかりの人は、毎日株価を熱心にチェックし、自分の資産が上がったかどうかを気にしてしまいます。必ずしも、毎日チェックする必要はありませんが、投資のリターンに気を配ることは非常に重要です。しかし、本当に気にすべきは、投資のリターンではなく、投資に掛かるコストも考慮した「トータルリターン(総合収支)」です。) 国債金利が著しく低下し、株価が大きく上昇している中では、期待される投資の収益率は著しく低下しています。低下するリターンをどうにかして向上させたいと考えるかもしれませんが、それを実現するのは容易ではありません。 そこでカギになるのが、運用に掛かるコストの低減です。つまり、投資収支の改善を目指すことも有益な投資戦略になるのです。 一般投資家と比較して機関投資家は運用コストに非常に敏感です。資産規模の大きい投資家であれば、運用会社への交渉力も強いため委託手数料の低減を相談できます。また、規模の経済を活用し、投資チームを内製化することもできるでしょう。 しかし、個人投資家はそういった選択肢を取ることができません。そのため、普段からコストに対する意識を高く持ち、コストの低減化を心がけましょう』、「普段からコストに対する意識を高く持ち、コストの低減化を心がけましょう」、その通りだ。
・『信託報酬などの経費に対する感応度を高く持つ 投資信託やETF(上場投資信託)を購入した場合、「信託報酬」と呼ばれる、委託資産額に対して支払うコストが発生します。信託報酬の設定はファンドによってまちまちで、年0.03%のものもあれば、年3.0%の場合もあります。ここ最近の傾向は手数料が低く、日経平均株価などの指数に連動するインデックスファンドが人気を博しており、信託報酬を強く意識して運用することがセオリーとなりつつあります。この機会に信託報酬の考え方をいま一度整理してみましょう。 【信託報酬の考え方】 ある投資信託に年1.0%の信託報酬を支払っていると想定します。年平均の投資リターンは3.0%を前提とします。そして、そんな投資戦略を今後30年間継続したとしましょう。「年1.0%の信託報酬」と聞くと非常に小さい数字のように思われますが、実は積み上がると膨大な負担となってしまいます(下記グラフを参照)。 毎年のリターン(3.0%)がコスト(1.0%)を上回っていることから、資産額は当初より増加していることになります。しかし、わずかな信託報酬であったとしても、長期では多大な費用負担が課せられることになるのです。この事実を知れば、否が応でも信託報酬を低く抑えたいと思われるでしょう。 そして、忘れがちなのが信託報酬以外のコストです。取引コストや監査費用などファンド運営に必要な経費が信託報酬以外にも掛かります。ファンドに課される全ての費用の純資産総額に対する比率を「経費率」と呼び、ファンドごとに開示されています。しかし、信託報酬以外の経費は開示される頻度が少なく、投資家が忘れがちなコストであるため「隠れたコスト」とも呼ばれています。 信託報酬率は一定ですが、それ以外の経費は「変動」します。そのため、信託報酬率が低位に設定されていたとしても、実際に投資家が負担するコストが著しく高くなる場合もあり得ます。流動性の低い資産(新興国資産など)を取り扱う投信はその傾向が強く、信託報酬の50%以上の追加コストが生じたケースもあります。信託報酬だけで投資するファンドを比較することは危険です。過大なコストはリターンを悪化させるため、投資信託やETFの購入を検討する際は、直近の運用報告書等を参照して経費率を比較すべきでしょう。 信託報酬などの経費はファンドにとっては税金と同じです。投資成績がマイナスであろうと、自動的に資産から引かれてしまいます。そして、負担する信託報酬が高いからといって、高いパフォーマンスを稼げるとも限りません(この観点は議論の的となっているため、別の機会で取り上げます)。であれば、支払う必要のある運用手数料を節約・低減させることは当然の選択です。 現在では、ETFやインデックス投信などで、投資に掛かる経費を低く抑えた商品が数多く出ていますので、これらの商品を活用することを検討しましょう。そして、運用報告書等の資料が閲覧可能であれば、必ず経費率と呼ばれる項目を確認し比較することをお勧めします』、「取引コストや監査費用などファンド運営に必要な経費が信託報酬以外にも掛かります。ファンドに課される全ての費用の純資産総額に対する比率を「経費率」と呼び、ファンドごとに開示」、「ETFやインデックス投信などで、投資に掛かる経費を低く抑えた商品が数多く出ていますので、これらの商品を活用することを検討しましょう。そして、運用報告書等の資料が閲覧可能であれば、必ず経費率と呼ばれる項目を確認し比較することをお勧めします」、なるほど。
・『取引額の5%もの手数料が掛かる金融商品もある 今では、株式や外国為替、暗号通貨などの資産をアプリ上で手軽に取引することができます。アプリを開いてから1分も掛からず取引を実行できるのは、一時代前からすると便利な時代になったと喜ばしく感じられます。しかし、手軽に取引ができるようになった一方で、取引コストに対して多くの人が鈍感になっていると感じられます。 取引に際して必要となるコストは以下の2つです。「ビット・アスク・スプレッド(以下、スプレッド)」と「取引手数料」です。スプレッドは取引する資産の「購入価格」と「売却価格」の差です。証券会社などの仲介業者(ディーラー)は安い価格で調達した資産を高く売却することが基本的なビジネスモデルですので、仲介する商品の価格差が彼らの利益になります。) 投資家の側に立って考えると、価格差が大きいほど高いコストを支払うことになります。このスプレッドは、仲介業者によって変わるだけでなく、取引環境によって変動します。流動性が高い(金融市場での取引量が多い)場合は、スプレッドが小さくなる一方で、流動性が低い(金融市場での取引量が少ない)場合は、スプレッドが大きくなる傾向があります。 もう一方の取引コストは「取引手数料」です。これは、取引業者が取引資産や金額ごとに決められている場合が多く、資産によっては取引金額が大きいほど手数料が安くなる場合もあります。一方で、スプレッドと異なり、市場環境によって料率が変化することはありません。 普段、個人投資家の方と話す機会も多くありますが、手数料を強く意識されている人は非常に少ない印象を受けます。「取引コストは必要経費」と捉えてしまい、どんなに高くとも受け入れてしまう傾向にあります。しかし、トルコリラなどの流動性の低い為替や、ビットコイン等の暗号資産に掛かる取引コストは非常に高く、中には取引金額の5%を超える手数料を徴取されるケースも存在します。大幅なコスト負担は、投資収支を著しく悪化させるため、可能な限り避けるべきでしょう。このような投資家マインドがある人ほど、中長期でしっかりと目標を達成しています。 機関投資家は「最良執行義務」を負っています。取引コストをできる限り低位に抑えるため、取引ごとに複数の銀行や証券会社から取引値を同時に聴取する「コンペ」を行っています』、「トルコリラなどの流動性の低い為替や、ビットコイン等の暗号資産に掛かる取引コストは非常に高く、中には取引金額の5%を超える手数料を徴取されるケースも存在します。大幅なコスト負担は、投資収支を著しく悪化させるため、可能な限り避けるべきでしょう」、その通りだ。
・『個人投資家は手数料をどう抑えるか 個人投資家は機関投資家のようにコンペは行うことはできません。そのため、口座開設時に手数料を比較し、最も低い手数料率を提示する金融機関で口座を作成するのがよいでしょう。手数料率が低いことが売りの証券会社であれば、大きく表記されています。 そして、もう一歩踏み込むのであれば、複数の金融機関で口座を開設し、取引ごとにビット・アスク・スプレッドの水準を確認できる体制を作ることも検討すべきです。これは、取引する金融機関でネットワーク障害が起きた際のリスクヘッジにもつながります。 最後に、コストの見方について説明します。多くの場合、取引コストは取引金額に対する「パーセンテージ」ではなく、「絶対値」で表記されています。コストを絶対値とすることで、実際の負担額がわかりやすくなる一方で、パフォーマンスへの影響が見えにくくなり、コストの心理的な負担を緩和してしまう効果があります。 そのため、コストは常に取引金額に対するパーセンテージでも考えるようにしましょう。そうすることで、普段からいかに高い取引コストが課されているかに気付くはずです。数回でもいいので、電卓をたたいて実際のコストがどの程度になるのか計算してみるとよいでしょう。感覚値との隔たりに、きっと驚くと思います。 ちなみに、取引コストが明示されていない場合もあります。例えば、ビットコインなどの暗号資産の場合、取引手数料は開示する一方で、スプレッドの目安が明示されていないケースが多くあります。しかし、それらの資産の取引コストは非常に高く、購入後に大幅な値上がりがなければ利益を得られない可能性が高いです。取引コストが投資リターンを大きく左右することになるため、取引する場合は信頼できる情報サイトを参照したり、実際に複数アカウントを開設してスプレッドを比較したりする必要があるでしょう。 後編では、「投資のルール化」や「家庭内投資委員会の設置」など、より実践的な内容について紹介します』、「コストは常に取引金額に対するパーセンテージでも考えるようにしましょう。そうすることで、普段からいかに高い取引コストが課されているかに気付くはずです」、その通りだ。
次に、この続きを、10月19日付け日経ビジネスオンラインが掲載したBagel X代表取締役の大崎 匠氏による「株主優待に飛びつくのは日本人だけ? 目先の利益でプロは買わない」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/plus/00014/101500002/
・『50歳から投資を始めようとしたとき、まずは口座開設し全額投資しよう!と意気込んでしまうもの。しかし投資には最低限押さえておくべきルールが存在します。前編「50歳で初めて投資 失敗しないために知っておくべきこと」では、元機関投資家の視点で資産運用にかかる手数料の重要性を解説しました。後編では、より実践的な内容について紹介します』、興味深そうだ。
・『投資をルール化する 機関投資家にとっては、顧客の資産が投資の原資にあたるため、どういった投資をするかには説明責任が生じます。投資成績がどうであろうとも、「なぜその資産(銘柄)なのか」「なぜこのタイミングなのか」など、自らがとった投資行動の根拠を用意しておく必要があります。そのため、社内で議論を尽くすだけでなく、取引証跡や判断根拠資料を保存し、説明責任を果たすための手間と時間を惜しみません。 一方で、個人の投資では、家計や自分の資産を運用に回すことになるため、第三者に対する説明責任を負うことはありません。誰にも相談せず、行き当たりばったりで投資をする「何となく投資」を始める傾向にあります。耳が痛い話かもしれませんが、投資家は往々にして自らの能力を過信しがち。自らの感覚やひらめきに頼って投資をしてしまう方が非常に多いのです。 十分な思慮を行わず、根拠も持たない投資は単なるギャンブルと何ら変わりません。そうした「何となく投資」を避けるためにも、前もって自らの投資行動に一定のルールを課すことをおすすめします。事前に何らかの投資制約を課すことで、向こう見ずなギャンブルを避けることができるからです』、「十分な思慮を行わず、根拠も持たない投資は単なるギャンブルと何ら変わりません。そうした「何となく投資」を避けるためにも、前もって自らの投資行動に一定のルールを課すことをおすすめします」、「前もって自らの投資行動に一定のルールを課す」、実際にやるとなれば、大変な手間だ。
・『運用ガイドラインを設定する 機関投資家は、新たな運用戦略を立ち上げる際に「運用ガイドライン」を設定します。ここでいうガイドラインとは、常に順守を求められる「ルール」。あらかじめガイドラインを設定し、新たな投資をするときだけではなく、日々のモニタリングを含め、あらゆる状況下において、そのルールを順守することが求められます。また、運用ガイドラインは1年ごとなど定期的に見直し、環境や状況の変化に応じて内容を修正します。 運用ガイドラインを設定する目的は、意図しないリスクを負わないためです。このガイドラインの中で、運用の目的や収益目標、自分の組織のリスク許容度に基づいて投資可能資産や資産アロケーション(割り当て)の範囲などを事前に決めます。そうすることで、過度なリスクテイクを抑制し、自らの能力を過信した衝動的な投資を未然に防ぐことができるからです。 こうした運用ガイドラインの設定は、個人投資家こそ実践すべきです。具体的には以下の通りです。 【個人投資家が行うべき運用ガイドライン】 具体的な内容や数値については個々人のリスク許容度や目標金額によって異なるため、あくまでこれらは一例とお考えください。 (1) 投資は自由に使えるお金の80%までとする【理由】急な出費が重なったり、生活費が足りなくなったりした場合、資産を売却せざるを得なくなります。安定的な資産運用を継続するためにも、資金を投資に振り分けすぎないことが肝要です。 (2)信用取引やオプション取引は行わない【理由】投資リスクが非常に高まってしまうため、リスクを追い求める投資家以外は手を出さない方が身のためでしょう。投資原資を超える損失を被るリスクすらあります。 (3) 新興国への投資は運用資金の10%までとする【理由】期待される投資リターンは大きいが、リスクも相応に高いです。特に新興国の為替リスクは高いため、比較的小さい金額で運用すべきでしょう。 (4) 株式の配当金や債券の利払い金は全額再投資に回す【理由】長期的な複利効果を狙うためです。しかし、定年退職などの理由で収入が減った場合はその限りではありません。 機関投資家は当然、より詳細なガイドラインを設定しています。しかし、個人投資家であれば、過度に複雑になってしまうことを避けるため、この程度の粒度が適切でしょう。設定するルールは、投資期間や目標資産金額といった身の丈に合ったものにすることが肝要です。 もう一つ重要な点は、ルール設定の幅を広げすぎないことです。幅を広げすぎると、何でもありの投資を許容することになり、ガイドラインの意味をなくしてしまいます。ルール設定によってある程度選択肢を狭め、その中で最適な運用を心がけましょう』、「ルール設定によってある程度選択肢を狭め、その中で最適な運用を心がけましょう」、なるほど。
・『家庭内「投資委員会」を立ち上げよう 機関投資家は、資産運用に関する重要な決定を、四半期ごとなど定期的に開催される「投資委員会」にて行っています。委員会の主な機能は、投資に関する情報共有と意思決定です。 過去の運用成績を振り返るとともに、今後の見通しと運用戦略を議論します。また、ガイドラインの設定・修正や、新たな投資戦略、特に金額の大きい投資案件の承認も行われるなど、議論される内容は多岐にわたります。委員会を設置することで、PDCAサイクルを回し、投資を所管する部門へのけん制になります。 ほとんどの個人投資家は投資の意思決定を1人で行い、投資の相談を第三者にすることは少ないのではないでしょうか? 家計のリスク耐性や目標資産額に見合わないような過度なリスクテイクを避けるためにも、家庭内で「投資委員会」を立ち上げ、ご家族と資産運用について、定期的に話し合ってみてはいかがでしょうか。また、信頼できる友人や資産運用のプロフェッショナルに相談するのも選択肢の一つでしょう。 プライベートな投資委員会の設立は面倒が多いと思われるかもしれません。しかし、家庭内に投資委員会を設置することで、「何となく投資」を避けることができます。このプロセスを通すことで「本当に投資すべきなのか?」「その投資戦略に論理性はあるのか?」と自分に問うことができます。そして、自分以外の人に相談することで、違った視点での気づきを得られ、自らのロジックのもろさが露呈するかもしれません。 さらに、資産状況と資産見通しの共有ができるメリットもあります。ご家族に相談されるのであれば、将来的な相続について早くから話し合うことができます。「50歳代で相続の話をするのは早い」と思われるかもしれません。しかし、日ごろから将来相続を受ける立場である人の意見や意向を取り入れながら運用したり、家計の資産状況を共有したりしておけば、自分に何かあった場合にも円滑な相続手続きを行えます。老後の医療費、生活費の負担や次の世代に向けた資産形成など、家族単位での資産運用を考えることができる、という副次的な効果も期待できます。 ただ、相談する相手、つまり「投資委員会」のメンバーの選定には十分な注意が必要です。必ずしも資産運用のプロである必要はありませんが、話をうのみにせず自分で考えられる人であると同時に、センシティブな内容の相談もできる人が適任です。むしろ、投資経験がない人の方が、バイアスのない純粋な意見を期待でき、良いブレーキとなるかもしれません』、私個人は、「老後の医療費、生活費の負担や次の世代に向けた資産形成など、家族単位での資産運用を考える」必要性は認めるが、「投資委員会」は不要だと思う。
・『投資をする上での留意点 初心者の投資家が知るべきことはいろいろあります。ここからは、投資を始める上で最低限知っておくべき情報を、いくつかご紹介します。 (1)資産を増やすために適切なリスクを取る 資産運用には「フリーランチはない」という言葉があります。日本で言うところの「働かざるもの食うべからず」に近い意味ですが、資産運用の世界では「リターンを得るためには、それに見合ったリスクを取る(つまり、資金を働かせる)必要がある」ことを意味します。至極当たり前なことを言っていますが、実は非常に大事なことを伝えています。 資産の減少を過度に恐れるがゆえに、全く資産運用をせず、銀行預金に資金を寝かせたままの方が多くいます。そして、運用をしていたとしても、定期預金や国債などリスクが著しく低い投資に終始してしまう方もいます。個人投資家のリスク耐性は人それぞれであり、正解は存在しません。ただ、積極的に資産を増やしていきたいと考えるなら、手に入れたいリターンに見合うリスクを積極的に取る必要があります。 最近では、インデックス投信や同ETF(Exchange Traded Funds/上場投資信託)のみへの投資を推奨する戦略が増えています。個人的にも、運用コストを低減し、市場リターンを獲得する非常に有効な戦略だと思っています。ただ、目標資産額と運用期間によっては、インデックス投信やETFだけでは達成が難しい場合もあります。特に、これまで資産運用を積極的に行ってこなかった方々で、目標資産金額を高く設定している場合は、やや高めのリスクを取った運用をする必要もあるでしょう。その場合、資金の全てをインデックス投信に投じるのではなく、例えば保有資産の20%を個別株などリスク性の高い資産に回すことも一つの戦略ではないでしょうか』、「資産運用には「フリーランチはない」という言葉があります・・・資産運用の世界では「リターンを得るためには、それに見合ったリスクを取る・・・必要がある」、最も基本的なことだ。
・『2)高配当株に依存した生活設計をしない 現代では、ストレスフルな社会人生活を脱し、経済的自由を謳歌するという考え方が流行しています。その代表的な考え方が「FIRE(Financial Independence, Retire Early/経済的に独立し、早期に引退する)」です。文字通り、ある程度の規模を持つ資産を形成し、その後は職を辞して、資産からの収益で生活していく考え方を指します。 そして、FIREを実現させる投資戦略として、「高配当株」への投資がもてはやされています。配当金が多ければ、それだけ生活費に回せるお金が増えることが理由です。聞こえの良い話ではありますが、株式配当に依存した生活設計は実のところ危険をはらんでいるので注意が必要です。 企業がどれだけの配当金を支払うか決める「配当政策」は固定化されたものではなく、会社の業績や経営陣の方針によって変化します。特に、業績が大幅に悪化した際に配当支払いが減額されたり、場合によっては打ち切られたりすることもあります。 かつて、東京電力は高配当株として人気が高く、老後の収入源として同社の株を購入する投資家が大勢いました。しかし、東日本大震災に伴う原発事故によって、東京電力は配当支払いを停止し、以降、現在に至るまで配当を再開していません。米国においても、コロナ禍で資金繰りが悪化した航空関連会社やエネルギー関連会社の一部が配当の停止、または大幅な減額を決定しました。これらの企業も高配当株として以前から高い人気を誇っていました。しかし、業績悪化を理由に配当を停止し、そこから1年以上経過した今でも配当を再開していない企業が多く存在します。 「配当が減少した時点で他の高配当銘柄に乗り換えればいい」と考えている人もいるでしょう。しかし、配当が減額された銘柄の株価は往々にして大きく下落してしまいます。銘柄の入れ替えによって配当額を増やそうと考えても、時価の下落した銘柄からの入れ替えでは投資資金が足りなくなってしまう恐れもあります。 高配当株を選好する戦略を否定するつもりはありません。しかし、「配当は変化する」という前提を忘れず、配当金に対する依存度を下げておかなければ、リスク事象が発現した際に、生活設計が狂ってしまう可能性が高くなります。 投資から定期的な収入を得たいのであれば、インデックスETFやセクター別・テーマ別のETF、社債投信を購入するのがよいでしょう。高配当株よりも配当利回りは劣りますが、分散効果によって配当の減額や停止の影響を抑えることができますし、社債投信であれば安定的な金利収入が期待できます。なので、FIREを実践したいのであれば世間でいわれているより多くの金融資産に投資し、分散効果を利かせながらリスクを下げていくことが必要になるでしょう』、「「配当は変化する」という前提を忘れず、配当金に対する依存度を下げておかなければ、リスク事象が発現した際に、生活設計が狂ってしまう可能性が高くなります。 投資から定期的な収入を得たいのであれば、インデックスETFやセクター別・テーマ別のETF、社債投信を購入するのがよいでしょう」、その通りだ。
・『(3)株主優待のみを目的にしない 日本特有の現象として、株主優待を目的とした投資を好む投資家が多く存在します。自社サービスの割引券や株主限定商品の配布など、魅力的な株主優待に目移りしがちですが、資産を増やすための投資において株主優待は不要な存在です。そもそも、諸外国と比較して、日本企業の配当性向(純利益に占める配当金額の比率)や自社株買いといった株主還元政策は遅れており、株主優待はその隠れみのにされているという批判があります。 投資対象として魅力的な企業が、たまたま魅力的な株主優待を提供しているのであれば問題ないでしょう。しかし、株主優待を目的に、投資対象として魅力的でない企業の株式を購入してしまっては本末転倒です。手に入れた株主優待の価値より大きい機会損失を被る可能性すらあるため、株主優待を目的とした投資は再考すべきでしょう。 資産を増やすことを一義的な目的とせず、株主優待を楽しむために投資することを批判するつもりは一切ありません。株主優待をどう捉えるかは投資の目的によって大きく変わってきます。中には株主優待が生活費の節約になったり、好きな特典がついてくるといったこともあるでしょう。ですが、資産形成のための投資をするのであれ、一時の株主優待に目がくらんではいけないということを忘れずにいてください。目先の利益や誘惑にとらわれないようにしましょう』、「手に入れた株主優待の価値より大きい機会損失を被る可能性すらあるため、株主優待を目的とした投資は再考すべきでしょう」、同感である。
第三に、本年6月1日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏による「ESG投資が運用として「明らかにダメ」でも流行る本当の理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/303996
・『ESG(環境・社会・企業統治)の名目で資金を集める運用商品は一大ビジネスに育った。しかし、ESG投資によって生じた矛盾や無駄は小さくなく、運用としては「明らかにダメ」だ。その理由を解説しよう』、興味深そうだ。
・『運用業界が作り上げた新しいビジネスが「ESG投資」 米国の通称「SEC」こと証券取引委員会が、「ESG(環境・社会・企業統治)」「サステナブル(持続可能)」「低炭素」などと称する運用商品について、義務づける開示情報のルールを検討していることが運用業界で話題になっている。日本でも同類の商品について、商品名に内容が伴っているのかについて金融庁が関心を寄せていることが報じられている。 ところで、「ESG銘柄が○○%以上含まれていなければ、商品名にESGと付けてはいけない」といった規則ができると、運用会社にとってはなかなか厄介だ。どの銘柄が「ESG銘柄」なのか判断する納得性のある基準を提示するのは難しい。さりとて、「当社はESG銘柄を判断する明確な基準を持ってはいません」というわけにもいかない。今や、ESG投資は運用業界にとって無視できない大きさのビジネスに育ったからだ。 そもそも、ESG投資を大きな商品カテゴリーに育てるために、運用業界は多大な努力を払ってきた。「社会運動に便乗した」ともいえるし、「社会運動そのものを積極的に起こした」ともいえそうで、実態はおそらくその両方だろう。 筆者の見るところ、運用業界としてはビジネス上、アクティブ運用の実績をインデックス運用に対して十分に優位なものにはできないことが明らかになってきた。そんな中、インデックス運用だけでは十分な収益にならないために、何とか次の収益源として作り上げたのが「ESG投資」なのだ。その善し悪しは別として、ビジネスとして広げる過程はなかなか興味深いものだった。 もっとも、これは運用業界側の事情だ。投資家の側では「ESG投資」をどう理解したらいいかという問題がある』、「運用業界としてはビジネス上、アクティブ運用の実績をインデックス運用に対して十分に優位なものにはできないことが明らかになってきた。そんな中、インデックス運用だけでは十分な収益にならないために、何とか次の収益源として作り上げたのが「ESG投資」なのだ」、なるほど。
・『ESG投資とは「社会活動」と「運用手法」の二つの側面を持つ ESG投資とは、投資対象企業の「環境(Environment)」「社会性(Social)」「(企業)統治(Governance)」を基準に行う投資を指す。例えば、地球環境の悪化をもたらしていると目される企業の株式に投資しないことや、社会的に好ましい貢献をしている企業の株式に積極的に投資するような投資行動を指す。 こうした投資行動によって、一つには企業の活動を好ましい方向に導くことが期待されるとする。また、株主である投資家が企業に対してE・S・Gそれぞれで望ましい行動を取るように企業とコミュニケーションを取ったり、議決権行使を行ったりすることで、企業の行動が改善する効果が期待される。これらは、いわば「社会活動としてのESG投資」だ。 さらには、E・S・Gそれぞれで望ましい行動を取る企業の株式は投資パフォーマンスが良いと期待できるのではないかという「運用上の効果」が語られることもある。こちらは「運用手法としてのESG投資」だ』、「社会活動としてのESG投資」、「運用手法としてのESG投資」、2つの側面があるようだ。
・『「ESG投資」vs「普通の投資」 軍配が上がるのはどちらか? さて、企業そのものやその株式の価値を評価する上で、E(環境)やS(社会)やG(統治)が重要であることは論をまたない。これらの要素は将来のコストにも反映するし、これらの要素に対する現在の取り組みが将来の収益にも影響するだろう。 これらは、「ESG投資」でなくても、「普通の投資」にあっても真剣に評価されるべき重要な要素の一部だ。また、株式の保有・売却の判断だけでなく、保有株式の議決権の行使等に当たっても株式のオーナーたる機関投資家は、自らの保有する株式のパフォーマンス改善のために、E・S・Gを含めた企業経営上の諸要素への関与にあってベストを尽くすことが望ましい。この点も「普通の投資」にあって同様だ。建前上、手抜きは許されない。 こう考えると、「ESG投資」の判断は「普通の投資」の判断と何が違うのかという疑問が生じる。何かが違うのでなければ、少なくとも「運用手法としてのESG投資」には意味がなくなる。 しかし、「普通の投資」の総合的な判断と異なる結果のポートフォリオを持つということは、「普通の投資」としての運用会社のベストな判断から距離が発生するということだ。運用としては何らかの点でベストなポートフォリオから遠ざかることを意味する。 素朴な例を考えるとするなら、投資可能な上場銘柄が10銘柄しかない世界を想像して、E・S・Gのいずれかの事情で投資対象から2銘柄を除外するとしよう。ポートフォリオの「事前の判断」としては、10銘柄全てを使える条件のポートフォリオの方が、8銘柄に制約されたポートフォリオよりも少なくとも劣らないはずだ。むしろ、おそらくは優れたものになることは想像に難くない。 「普通の投資」と「ESG投資」について二つのポートフォリオを作ると、「事前の判断のレベル」ではほぼ常に「普通の投資」が優位なはずだ。そして、運用会社の真の商品は「事前の判断」なのである。運用会社の「事前の判断」に意味があるのでなければ、少なくともその運用会社のアクティブ運用には価値がない。顧客にとって両者の運用上の優劣は、結果論で判断すべきレベルの問題ではない。 投資家側から見ると、運用効率だけで判断するなら「ESG投資」は「普通の(ベストな)投資」よりも劣るポーフォリオに投資して、かつ何がしか高いフィー(運用手数料)を取られる投資商品だといえる。 商品・ビジネスとしてのESG投資をあえて正当化するなら、投資家が「社会運動としてのESG投資」の効果を良いものと評価して満足するか、「ポートフォリオがESG的」であることに精神的に満足するかの可能性を提供しようとする、運用効率至上主義ではないサービスビジネスだということになる』、「商品・ビジネスとしてのESG投資をあえて正当化するなら、投資家が「社会運動としてのESG投資」の効果を良いものと評価して満足するか、「ポートフォリオがESG的」であることに精神的に満足するかの可能性を提供しようとする、運用効率至上主義ではないサービスビジネスだということになる」、つまり「ESG投資」は恰好つけに過ぎない。
・『年金基金の立場が興味深いESG投資と職務義務に「深刻な矛盾」 さて、内外の企業年金や公的年金などの年金基金は、ESG投資の主要顧客だと言っていいのだが、ここで興味深い問題が生じている。 彼らは、建前として年金加入者の積立金の運用に当たって「運用効率至上主義」でなければならないからだ。ポートフォリオとしての効率が落ちて、さらにインデックス運用よりも高いフィーを支払うESG投資を採用することと、彼らが年金加入者などに対して負っている義務との間には深刻な矛盾がある。その義務とは、「プルーデントマンルール」などと呼ばれる、専門知識を生かして思慮深い投資行動を取ることを定めた原則だ。 筆者が思うに、年金基金がESG投資を採用するためには、運用部隊や、運用部隊に意見を具申する運用委員会のような組織の意思決定だけでは不十分だ。それだけでなく、代議員大会レベルで「ベストな運用効率には劣る可能性があるが、ESG投資を一定の上限額の下に採用していいか」といった内容を問う議案を可決して、意思決定する必要がある。 通常「運用委員会」は、運用の専門家として運用効率至上主義の観点から技術的なアドバイスを行う組織だ。「運用効率は一部損なわれるが、ESG投資には意義がある」といった価値判断を行う主体ではない。 また、各国の制度の下にあって、年金基金が運用効率至上主義とは異なる方針を採って運用することが認められているかどうかという問題もある。さらには、基金の設立主体である企業年金なら母体企業、公的年金なら主務官庁などの方針と矛盾しないかという点も問われなければならない。 平たく言うと、年金基金には自分たちの一存によって「他人のお金で、格好を付ける」権限は与えられていないのだ』、「各国の制度の下にあって、年金基金が運用効率至上主義とは異なる方針を採って運用することが認められているかどうかという問題もある。さらには、基金の設立主体である企業年金なら母体企業、公的年金なら主務官庁などの方針と矛盾しないかという点も問われなければならない」、確かにその通りだ。
・『しかし、マーケティングの急所は年金基金だった 一方、興味深いのは、年金基金には前記のような立場上の事情があるにもかかわらず、ビジネスとしてのESG投資を見ると、マーケティング戦略上の急所が他ならぬ年金基金だったように見えることだ。 ESG投資は、特に欧州の年金運用の世界から拡大し、わが国の年金運用にも影響を及ぼすようになった。そして、やがては「世界的にも拡大している運用手法」と喧伝されて個人向けの投資信託などにも採用されるようになった。 運用業界が意識的に年金基金を狙うマーケティング戦略を立てたのかどうかは確認のしようがない。しかし、考えてみるに、「インデックス運用ばかりになると商売はあがったりだ(=われわれのすることがなくなる)」という事情は運用会社だけでなく、年金基金にとっても同様だ。 また、ESGの諸要素に関して運用会社に注文を付けるのは、年金基金の担当者にとって「気分のいい仕事」になり得る点も商売上は見逃せない。 ちなみに、年金運用業界にあってESG運用と似た立場にあるのが、アクティブ運用だ。現実問題としてアクティブ運用には、以下のような事情がある。 (1)手数料まで考えた場合にインデックス運用の方がアクティブ運用よりも優れていると判断できる場合が多い (2)大規模な基金のリターンはほとんどがアセットアロケーション(資産配分)段階で決まること (3)アクティブ運用の採否や管理には手間とコストが掛かる それにもかかわらず、「コアサテライト」(インデックスファンドを中核として、周辺にアクティブ運用を配するイメージだ)などという意味のない概念まで繰り出して、運用資産の一部だけでもアクティブ運用を続けようとする基金が多い。その理由は、運用会社や年金基金に付いているコンサルタントだけでなく、年金基金自身の「仕事作り」になっているからだ。 つまり運用業界は、経営コンサルタントが「経営企画部」に戦略コンサルティングを売ったり、法律事務所が企業の法務部門に「コンプライアンス研修プログラム」を売ったりするのと同じことをした。年金基金に対して、彼らの「仕事作り」に貢献する「ESG投資」という運用商品と新しい仕事のプログラムを売ったのだ。ビジネスとしては、別の商品・サービスにも応用が利きそうな興味深い経緯である』、「つまり運用業界は・・・年金基金に対して、彼らの「仕事作り」に貢献する「ESG投資」という運用商品と新しい仕事のプログラムを売ったのだ」、その通りだ。
・『投資すべきはESGの「優等生」か 実は「劣等生」に投資妙味 ところで、E・S・Gが企業評価上重要だとして、投資すべき対象はそれぞれの項目ないし総合点の上位企業なのだろうか、あるいは下位企業なのだろうか。 ESG投資が普及する初期によく語られたのは、ESGがダメな企業の株式を機関投資家が売るとすれば、株式を売られたくない経営者が改心する理由になるのではないかといったストーリーだった。この話を重視するなら、ESGの優等生企業に投資するのがいいということになる。 一方、株式投資で高いリターンが得られるのは、企業に「好ましい変化」が起こったときだ。ESGが企業評価上重要なら、ESGの劣等生企業に投資してESG要素の「改善」に期待する方が、既にESGの優等生企業がさらに意外なくらい優等生になる変化に期待するよりも有望な可能性がある。 加えて、企業の行動に対する効果を考えるとして、ESG劣等生企業の株式を保有する大株主が、経営者とのコミュニケーションや株主総会、議決権行使、さらには取締役会への関与などを通じて好ましい行動変化を促す方が、劣等生企業の株式を保有せず、関与しないよりも有効かもしれない。 ESGを意識する投資家が投資すべき企業は、ESGの優等生の方なのか劣等生の方なのか――。投資の効果の上ではもちろん、企業の行動変容を促す上でも案外判然としない』、「ESGを意識する投資家が投資すべき企業は、ESGの優等生の方なのか劣等生の方なのか」、確かに「判然としない」ようだ。さすが、山崎氏だけあって、単なる「ESG投資」の売り言葉ではなく、本質を突いた意味を問いかけた力作だ。
先ずは、昨年10月19日付け日経ビジネスオンラインが掲載したBagel X代表取締役の大崎 匠氏による「50歳で初めて投資 失敗しないために知っておくべきこと」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/plus/00014/101400001/
・『50歳になると、突然目の前に現れる「お金の不安」。日本人の平均寿命が延び続ける中、将来への備えの必要性をヒシヒシと実感するタイミングではないでしょうか。 50代は、定年後を見据え、自分の資産運用戦略を見つめ直す“ラストチャンス”。年金受給額の減少や医療費負担の増加、そしてコロナ禍以降の増税など、家計の不安は募るばかり。今まで貯蓄したお金を投資すべきなのか、はたまたリスクは取るべきではないのか。今の資産運用ブームに乗ったほうがいいのかと、悩んだことは一度や二度ではないと思います。 資産運用のセオリーの一つに、「投資は若いうちから始めるのがよい」というものがあります。これは、投資期間が長いほど、複利(投資利回りの累積)の効果が高くなることを示しています。しかし、若いうちに資産運用を始めなかったからといって、焦る必要はありません。「急(せ)いては事を仕損じる」という言葉は、投資においても同じ。50歳からでも十分、間に合います。むしろ、平均寿命がこれだけ延び、どの家庭でも長期戦略の立案を迫られている今の流れを見ると、時間のゆとりができ、老後の不安が現実味を帯びてくる50代から資産運用を始める価値は十分にあります。 実際に、利回り表を用いて毎月の積立金額別でどれだけ資産をためられるかを簡単に試算しました(表1、表2)。 50歳から年金受給開始年齢の65歳まで、毎月一定金額を積み立て、保守的に年率3.0%で運用するとします。今現在、資産がなかったとしても、毎月10万円ずつ投資に回したとしたら、65歳の時には2275万円(積立金:1800万円、投資リターン:475万円)もの資産を手にしていることになります(表1)。積立金が5万円だとしても、1138万円(積立金:900万円、投資リターン:238万円)です。 資産運用では投資期間が長くなればなるほど、複利の効果によってリターンが増加するため、15年という長期間にわたって運用することで、大きな投資リターンが期待できます。 つまり、50歳の時点で全く資産運用をしてこなかったとしても、リターンはしっかり受け取れます(表2)。 また、リスク性の高い投資、つまり資産の増減幅が大きくなりやすい投資に飛びつかなくても、毎月の積立金額と運用期間によっては、今からでも老後の資金を得ることが可能です。 上記の試算の通り、50歳であってもまだまだ時間はあります。これまでやってこなかったからといって気後れする必要は一切ありません。今からでもできることをやっていくことが、将来の経済的なゆとりを得るための秘策なのです』、その通りだ。
・『資産運用コストに厳格になれ ここからは、筆者の機関投資家としての経験に基づいた、個人投資家に参考にしてほしい観点についてご紹介します。もっとも、投資のスタイルは個人によって大きく異なるため、あくまで一例です。投資家マインドを身につけるための、一つのエッセンスとして参考にしていただければと思います。 資産運用を始めたばかりの人は、毎日株価を熱心にチェックし、自分の資産が上がったかどうかを気にしてしまいます。必ずしも、毎日チェックする必要はありませんが、投資のリターンに気を配ることは非常に重要です。しかし、本当に気にすべきは、投資のリターンではなく、投資に掛かるコストも考慮した「トータルリターン(総合収支)」です。) 国債金利が著しく低下し、株価が大きく上昇している中では、期待される投資の収益率は著しく低下しています。低下するリターンをどうにかして向上させたいと考えるかもしれませんが、それを実現するのは容易ではありません。 そこでカギになるのが、運用に掛かるコストの低減です。つまり、投資収支の改善を目指すことも有益な投資戦略になるのです。 一般投資家と比較して機関投資家は運用コストに非常に敏感です。資産規模の大きい投資家であれば、運用会社への交渉力も強いため委託手数料の低減を相談できます。また、規模の経済を活用し、投資チームを内製化することもできるでしょう。 しかし、個人投資家はそういった選択肢を取ることができません。そのため、普段からコストに対する意識を高く持ち、コストの低減化を心がけましょう』、「普段からコストに対する意識を高く持ち、コストの低減化を心がけましょう」、その通りだ。
・『信託報酬などの経費に対する感応度を高く持つ 投資信託やETF(上場投資信託)を購入した場合、「信託報酬」と呼ばれる、委託資産額に対して支払うコストが発生します。信託報酬の設定はファンドによってまちまちで、年0.03%のものもあれば、年3.0%の場合もあります。ここ最近の傾向は手数料が低く、日経平均株価などの指数に連動するインデックスファンドが人気を博しており、信託報酬を強く意識して運用することがセオリーとなりつつあります。この機会に信託報酬の考え方をいま一度整理してみましょう。 【信託報酬の考え方】 ある投資信託に年1.0%の信託報酬を支払っていると想定します。年平均の投資リターンは3.0%を前提とします。そして、そんな投資戦略を今後30年間継続したとしましょう。「年1.0%の信託報酬」と聞くと非常に小さい数字のように思われますが、実は積み上がると膨大な負担となってしまいます(下記グラフを参照)。 毎年のリターン(3.0%)がコスト(1.0%)を上回っていることから、資産額は当初より増加していることになります。しかし、わずかな信託報酬であったとしても、長期では多大な費用負担が課せられることになるのです。この事実を知れば、否が応でも信託報酬を低く抑えたいと思われるでしょう。 そして、忘れがちなのが信託報酬以外のコストです。取引コストや監査費用などファンド運営に必要な経費が信託報酬以外にも掛かります。ファンドに課される全ての費用の純資産総額に対する比率を「経費率」と呼び、ファンドごとに開示されています。しかし、信託報酬以外の経費は開示される頻度が少なく、投資家が忘れがちなコストであるため「隠れたコスト」とも呼ばれています。 信託報酬率は一定ですが、それ以外の経費は「変動」します。そのため、信託報酬率が低位に設定されていたとしても、実際に投資家が負担するコストが著しく高くなる場合もあり得ます。流動性の低い資産(新興国資産など)を取り扱う投信はその傾向が強く、信託報酬の50%以上の追加コストが生じたケースもあります。信託報酬だけで投資するファンドを比較することは危険です。過大なコストはリターンを悪化させるため、投資信託やETFの購入を検討する際は、直近の運用報告書等を参照して経費率を比較すべきでしょう。 信託報酬などの経費はファンドにとっては税金と同じです。投資成績がマイナスであろうと、自動的に資産から引かれてしまいます。そして、負担する信託報酬が高いからといって、高いパフォーマンスを稼げるとも限りません(この観点は議論の的となっているため、別の機会で取り上げます)。であれば、支払う必要のある運用手数料を節約・低減させることは当然の選択です。 現在では、ETFやインデックス投信などで、投資に掛かる経費を低く抑えた商品が数多く出ていますので、これらの商品を活用することを検討しましょう。そして、運用報告書等の資料が閲覧可能であれば、必ず経費率と呼ばれる項目を確認し比較することをお勧めします』、「取引コストや監査費用などファンド運営に必要な経費が信託報酬以外にも掛かります。ファンドに課される全ての費用の純資産総額に対する比率を「経費率」と呼び、ファンドごとに開示」、「ETFやインデックス投信などで、投資に掛かる経費を低く抑えた商品が数多く出ていますので、これらの商品を活用することを検討しましょう。そして、運用報告書等の資料が閲覧可能であれば、必ず経費率と呼ばれる項目を確認し比較することをお勧めします」、なるほど。
・『取引額の5%もの手数料が掛かる金融商品もある 今では、株式や外国為替、暗号通貨などの資産をアプリ上で手軽に取引することができます。アプリを開いてから1分も掛からず取引を実行できるのは、一時代前からすると便利な時代になったと喜ばしく感じられます。しかし、手軽に取引ができるようになった一方で、取引コストに対して多くの人が鈍感になっていると感じられます。 取引に際して必要となるコストは以下の2つです。「ビット・アスク・スプレッド(以下、スプレッド)」と「取引手数料」です。スプレッドは取引する資産の「購入価格」と「売却価格」の差です。証券会社などの仲介業者(ディーラー)は安い価格で調達した資産を高く売却することが基本的なビジネスモデルですので、仲介する商品の価格差が彼らの利益になります。) 投資家の側に立って考えると、価格差が大きいほど高いコストを支払うことになります。このスプレッドは、仲介業者によって変わるだけでなく、取引環境によって変動します。流動性が高い(金融市場での取引量が多い)場合は、スプレッドが小さくなる一方で、流動性が低い(金融市場での取引量が少ない)場合は、スプレッドが大きくなる傾向があります。 もう一方の取引コストは「取引手数料」です。これは、取引業者が取引資産や金額ごとに決められている場合が多く、資産によっては取引金額が大きいほど手数料が安くなる場合もあります。一方で、スプレッドと異なり、市場環境によって料率が変化することはありません。 普段、個人投資家の方と話す機会も多くありますが、手数料を強く意識されている人は非常に少ない印象を受けます。「取引コストは必要経費」と捉えてしまい、どんなに高くとも受け入れてしまう傾向にあります。しかし、トルコリラなどの流動性の低い為替や、ビットコイン等の暗号資産に掛かる取引コストは非常に高く、中には取引金額の5%を超える手数料を徴取されるケースも存在します。大幅なコスト負担は、投資収支を著しく悪化させるため、可能な限り避けるべきでしょう。このような投資家マインドがある人ほど、中長期でしっかりと目標を達成しています。 機関投資家は「最良執行義務」を負っています。取引コストをできる限り低位に抑えるため、取引ごとに複数の銀行や証券会社から取引値を同時に聴取する「コンペ」を行っています』、「トルコリラなどの流動性の低い為替や、ビットコイン等の暗号資産に掛かる取引コストは非常に高く、中には取引金額の5%を超える手数料を徴取されるケースも存在します。大幅なコスト負担は、投資収支を著しく悪化させるため、可能な限り避けるべきでしょう」、その通りだ。
・『個人投資家は手数料をどう抑えるか 個人投資家は機関投資家のようにコンペは行うことはできません。そのため、口座開設時に手数料を比較し、最も低い手数料率を提示する金融機関で口座を作成するのがよいでしょう。手数料率が低いことが売りの証券会社であれば、大きく表記されています。 そして、もう一歩踏み込むのであれば、複数の金融機関で口座を開設し、取引ごとにビット・アスク・スプレッドの水準を確認できる体制を作ることも検討すべきです。これは、取引する金融機関でネットワーク障害が起きた際のリスクヘッジにもつながります。 最後に、コストの見方について説明します。多くの場合、取引コストは取引金額に対する「パーセンテージ」ではなく、「絶対値」で表記されています。コストを絶対値とすることで、実際の負担額がわかりやすくなる一方で、パフォーマンスへの影響が見えにくくなり、コストの心理的な負担を緩和してしまう効果があります。 そのため、コストは常に取引金額に対するパーセンテージでも考えるようにしましょう。そうすることで、普段からいかに高い取引コストが課されているかに気付くはずです。数回でもいいので、電卓をたたいて実際のコストがどの程度になるのか計算してみるとよいでしょう。感覚値との隔たりに、きっと驚くと思います。 ちなみに、取引コストが明示されていない場合もあります。例えば、ビットコインなどの暗号資産の場合、取引手数料は開示する一方で、スプレッドの目安が明示されていないケースが多くあります。しかし、それらの資産の取引コストは非常に高く、購入後に大幅な値上がりがなければ利益を得られない可能性が高いです。取引コストが投資リターンを大きく左右することになるため、取引する場合は信頼できる情報サイトを参照したり、実際に複数アカウントを開設してスプレッドを比較したりする必要があるでしょう。 後編では、「投資のルール化」や「家庭内投資委員会の設置」など、より実践的な内容について紹介します』、「コストは常に取引金額に対するパーセンテージでも考えるようにしましょう。そうすることで、普段からいかに高い取引コストが課されているかに気付くはずです」、その通りだ。
次に、この続きを、10月19日付け日経ビジネスオンラインが掲載したBagel X代表取締役の大崎 匠氏による「株主優待に飛びつくのは日本人だけ? 目先の利益でプロは買わない」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/plus/00014/101500002/
・『50歳から投資を始めようとしたとき、まずは口座開設し全額投資しよう!と意気込んでしまうもの。しかし投資には最低限押さえておくべきルールが存在します。前編「50歳で初めて投資 失敗しないために知っておくべきこと」では、元機関投資家の視点で資産運用にかかる手数料の重要性を解説しました。後編では、より実践的な内容について紹介します』、興味深そうだ。
・『投資をルール化する 機関投資家にとっては、顧客の資産が投資の原資にあたるため、どういった投資をするかには説明責任が生じます。投資成績がどうであろうとも、「なぜその資産(銘柄)なのか」「なぜこのタイミングなのか」など、自らがとった投資行動の根拠を用意しておく必要があります。そのため、社内で議論を尽くすだけでなく、取引証跡や判断根拠資料を保存し、説明責任を果たすための手間と時間を惜しみません。 一方で、個人の投資では、家計や自分の資産を運用に回すことになるため、第三者に対する説明責任を負うことはありません。誰にも相談せず、行き当たりばったりで投資をする「何となく投資」を始める傾向にあります。耳が痛い話かもしれませんが、投資家は往々にして自らの能力を過信しがち。自らの感覚やひらめきに頼って投資をしてしまう方が非常に多いのです。 十分な思慮を行わず、根拠も持たない投資は単なるギャンブルと何ら変わりません。そうした「何となく投資」を避けるためにも、前もって自らの投資行動に一定のルールを課すことをおすすめします。事前に何らかの投資制約を課すことで、向こう見ずなギャンブルを避けることができるからです』、「十分な思慮を行わず、根拠も持たない投資は単なるギャンブルと何ら変わりません。そうした「何となく投資」を避けるためにも、前もって自らの投資行動に一定のルールを課すことをおすすめします」、「前もって自らの投資行動に一定のルールを課す」、実際にやるとなれば、大変な手間だ。
・『運用ガイドラインを設定する 機関投資家は、新たな運用戦略を立ち上げる際に「運用ガイドライン」を設定します。ここでいうガイドラインとは、常に順守を求められる「ルール」。あらかじめガイドラインを設定し、新たな投資をするときだけではなく、日々のモニタリングを含め、あらゆる状況下において、そのルールを順守することが求められます。また、運用ガイドラインは1年ごとなど定期的に見直し、環境や状況の変化に応じて内容を修正します。 運用ガイドラインを設定する目的は、意図しないリスクを負わないためです。このガイドラインの中で、運用の目的や収益目標、自分の組織のリスク許容度に基づいて投資可能資産や資産アロケーション(割り当て)の範囲などを事前に決めます。そうすることで、過度なリスクテイクを抑制し、自らの能力を過信した衝動的な投資を未然に防ぐことができるからです。 こうした運用ガイドラインの設定は、個人投資家こそ実践すべきです。具体的には以下の通りです。 【個人投資家が行うべき運用ガイドライン】 具体的な内容や数値については個々人のリスク許容度や目標金額によって異なるため、あくまでこれらは一例とお考えください。 (1) 投資は自由に使えるお金の80%までとする【理由】急な出費が重なったり、生活費が足りなくなったりした場合、資産を売却せざるを得なくなります。安定的な資産運用を継続するためにも、資金を投資に振り分けすぎないことが肝要です。 (2)信用取引やオプション取引は行わない【理由】投資リスクが非常に高まってしまうため、リスクを追い求める投資家以外は手を出さない方が身のためでしょう。投資原資を超える損失を被るリスクすらあります。 (3) 新興国への投資は運用資金の10%までとする【理由】期待される投資リターンは大きいが、リスクも相応に高いです。特に新興国の為替リスクは高いため、比較的小さい金額で運用すべきでしょう。 (4) 株式の配当金や債券の利払い金は全額再投資に回す【理由】長期的な複利効果を狙うためです。しかし、定年退職などの理由で収入が減った場合はその限りではありません。 機関投資家は当然、より詳細なガイドラインを設定しています。しかし、個人投資家であれば、過度に複雑になってしまうことを避けるため、この程度の粒度が適切でしょう。設定するルールは、投資期間や目標資産金額といった身の丈に合ったものにすることが肝要です。 もう一つ重要な点は、ルール設定の幅を広げすぎないことです。幅を広げすぎると、何でもありの投資を許容することになり、ガイドラインの意味をなくしてしまいます。ルール設定によってある程度選択肢を狭め、その中で最適な運用を心がけましょう』、「ルール設定によってある程度選択肢を狭め、その中で最適な運用を心がけましょう」、なるほど。
・『家庭内「投資委員会」を立ち上げよう 機関投資家は、資産運用に関する重要な決定を、四半期ごとなど定期的に開催される「投資委員会」にて行っています。委員会の主な機能は、投資に関する情報共有と意思決定です。 過去の運用成績を振り返るとともに、今後の見通しと運用戦略を議論します。また、ガイドラインの設定・修正や、新たな投資戦略、特に金額の大きい投資案件の承認も行われるなど、議論される内容は多岐にわたります。委員会を設置することで、PDCAサイクルを回し、投資を所管する部門へのけん制になります。 ほとんどの個人投資家は投資の意思決定を1人で行い、投資の相談を第三者にすることは少ないのではないでしょうか? 家計のリスク耐性や目標資産額に見合わないような過度なリスクテイクを避けるためにも、家庭内で「投資委員会」を立ち上げ、ご家族と資産運用について、定期的に話し合ってみてはいかがでしょうか。また、信頼できる友人や資産運用のプロフェッショナルに相談するのも選択肢の一つでしょう。 プライベートな投資委員会の設立は面倒が多いと思われるかもしれません。しかし、家庭内に投資委員会を設置することで、「何となく投資」を避けることができます。このプロセスを通すことで「本当に投資すべきなのか?」「その投資戦略に論理性はあるのか?」と自分に問うことができます。そして、自分以外の人に相談することで、違った視点での気づきを得られ、自らのロジックのもろさが露呈するかもしれません。 さらに、資産状況と資産見通しの共有ができるメリットもあります。ご家族に相談されるのであれば、将来的な相続について早くから話し合うことができます。「50歳代で相続の話をするのは早い」と思われるかもしれません。しかし、日ごろから将来相続を受ける立場である人の意見や意向を取り入れながら運用したり、家計の資産状況を共有したりしておけば、自分に何かあった場合にも円滑な相続手続きを行えます。老後の医療費、生活費の負担や次の世代に向けた資産形成など、家族単位での資産運用を考えることができる、という副次的な効果も期待できます。 ただ、相談する相手、つまり「投資委員会」のメンバーの選定には十分な注意が必要です。必ずしも資産運用のプロである必要はありませんが、話をうのみにせず自分で考えられる人であると同時に、センシティブな内容の相談もできる人が適任です。むしろ、投資経験がない人の方が、バイアスのない純粋な意見を期待でき、良いブレーキとなるかもしれません』、私個人は、「老後の医療費、生活費の負担や次の世代に向けた資産形成など、家族単位での資産運用を考える」必要性は認めるが、「投資委員会」は不要だと思う。
・『投資をする上での留意点 初心者の投資家が知るべきことはいろいろあります。ここからは、投資を始める上で最低限知っておくべき情報を、いくつかご紹介します。 (1)資産を増やすために適切なリスクを取る 資産運用には「フリーランチはない」という言葉があります。日本で言うところの「働かざるもの食うべからず」に近い意味ですが、資産運用の世界では「リターンを得るためには、それに見合ったリスクを取る(つまり、資金を働かせる)必要がある」ことを意味します。至極当たり前なことを言っていますが、実は非常に大事なことを伝えています。 資産の減少を過度に恐れるがゆえに、全く資産運用をせず、銀行預金に資金を寝かせたままの方が多くいます。そして、運用をしていたとしても、定期預金や国債などリスクが著しく低い投資に終始してしまう方もいます。個人投資家のリスク耐性は人それぞれであり、正解は存在しません。ただ、積極的に資産を増やしていきたいと考えるなら、手に入れたいリターンに見合うリスクを積極的に取る必要があります。 最近では、インデックス投信や同ETF(Exchange Traded Funds/上場投資信託)のみへの投資を推奨する戦略が増えています。個人的にも、運用コストを低減し、市場リターンを獲得する非常に有効な戦略だと思っています。ただ、目標資産額と運用期間によっては、インデックス投信やETFだけでは達成が難しい場合もあります。特に、これまで資産運用を積極的に行ってこなかった方々で、目標資産金額を高く設定している場合は、やや高めのリスクを取った運用をする必要もあるでしょう。その場合、資金の全てをインデックス投信に投じるのではなく、例えば保有資産の20%を個別株などリスク性の高い資産に回すことも一つの戦略ではないでしょうか』、「資産運用には「フリーランチはない」という言葉があります・・・資産運用の世界では「リターンを得るためには、それに見合ったリスクを取る・・・必要がある」、最も基本的なことだ。
・『2)高配当株に依存した生活設計をしない 現代では、ストレスフルな社会人生活を脱し、経済的自由を謳歌するという考え方が流行しています。その代表的な考え方が「FIRE(Financial Independence, Retire Early/経済的に独立し、早期に引退する)」です。文字通り、ある程度の規模を持つ資産を形成し、その後は職を辞して、資産からの収益で生活していく考え方を指します。 そして、FIREを実現させる投資戦略として、「高配当株」への投資がもてはやされています。配当金が多ければ、それだけ生活費に回せるお金が増えることが理由です。聞こえの良い話ではありますが、株式配当に依存した生活設計は実のところ危険をはらんでいるので注意が必要です。 企業がどれだけの配当金を支払うか決める「配当政策」は固定化されたものではなく、会社の業績や経営陣の方針によって変化します。特に、業績が大幅に悪化した際に配当支払いが減額されたり、場合によっては打ち切られたりすることもあります。 かつて、東京電力は高配当株として人気が高く、老後の収入源として同社の株を購入する投資家が大勢いました。しかし、東日本大震災に伴う原発事故によって、東京電力は配当支払いを停止し、以降、現在に至るまで配当を再開していません。米国においても、コロナ禍で資金繰りが悪化した航空関連会社やエネルギー関連会社の一部が配当の停止、または大幅な減額を決定しました。これらの企業も高配当株として以前から高い人気を誇っていました。しかし、業績悪化を理由に配当を停止し、そこから1年以上経過した今でも配当を再開していない企業が多く存在します。 「配当が減少した時点で他の高配当銘柄に乗り換えればいい」と考えている人もいるでしょう。しかし、配当が減額された銘柄の株価は往々にして大きく下落してしまいます。銘柄の入れ替えによって配当額を増やそうと考えても、時価の下落した銘柄からの入れ替えでは投資資金が足りなくなってしまう恐れもあります。 高配当株を選好する戦略を否定するつもりはありません。しかし、「配当は変化する」という前提を忘れず、配当金に対する依存度を下げておかなければ、リスク事象が発現した際に、生活設計が狂ってしまう可能性が高くなります。 投資から定期的な収入を得たいのであれば、インデックスETFやセクター別・テーマ別のETF、社債投信を購入するのがよいでしょう。高配当株よりも配当利回りは劣りますが、分散効果によって配当の減額や停止の影響を抑えることができますし、社債投信であれば安定的な金利収入が期待できます。なので、FIREを実践したいのであれば世間でいわれているより多くの金融資産に投資し、分散効果を利かせながらリスクを下げていくことが必要になるでしょう』、「「配当は変化する」という前提を忘れず、配当金に対する依存度を下げておかなければ、リスク事象が発現した際に、生活設計が狂ってしまう可能性が高くなります。 投資から定期的な収入を得たいのであれば、インデックスETFやセクター別・テーマ別のETF、社債投信を購入するのがよいでしょう」、その通りだ。
・『(3)株主優待のみを目的にしない 日本特有の現象として、株主優待を目的とした投資を好む投資家が多く存在します。自社サービスの割引券や株主限定商品の配布など、魅力的な株主優待に目移りしがちですが、資産を増やすための投資において株主優待は不要な存在です。そもそも、諸外国と比較して、日本企業の配当性向(純利益に占める配当金額の比率)や自社株買いといった株主還元政策は遅れており、株主優待はその隠れみのにされているという批判があります。 投資対象として魅力的な企業が、たまたま魅力的な株主優待を提供しているのであれば問題ないでしょう。しかし、株主優待を目的に、投資対象として魅力的でない企業の株式を購入してしまっては本末転倒です。手に入れた株主優待の価値より大きい機会損失を被る可能性すらあるため、株主優待を目的とした投資は再考すべきでしょう。 資産を増やすことを一義的な目的とせず、株主優待を楽しむために投資することを批判するつもりは一切ありません。株主優待をどう捉えるかは投資の目的によって大きく変わってきます。中には株主優待が生活費の節約になったり、好きな特典がついてくるといったこともあるでしょう。ですが、資産形成のための投資をするのであれ、一時の株主優待に目がくらんではいけないということを忘れずにいてください。目先の利益や誘惑にとらわれないようにしましょう』、「手に入れた株主優待の価値より大きい機会損失を被る可能性すらあるため、株主優待を目的とした投資は再考すべきでしょう」、同感である。
第三に、本年6月1日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏による「ESG投資が運用として「明らかにダメ」でも流行る本当の理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/303996
・『ESG(環境・社会・企業統治)の名目で資金を集める運用商品は一大ビジネスに育った。しかし、ESG投資によって生じた矛盾や無駄は小さくなく、運用としては「明らかにダメ」だ。その理由を解説しよう』、興味深そうだ。
・『運用業界が作り上げた新しいビジネスが「ESG投資」 米国の通称「SEC」こと証券取引委員会が、「ESG(環境・社会・企業統治)」「サステナブル(持続可能)」「低炭素」などと称する運用商品について、義務づける開示情報のルールを検討していることが運用業界で話題になっている。日本でも同類の商品について、商品名に内容が伴っているのかについて金融庁が関心を寄せていることが報じられている。 ところで、「ESG銘柄が○○%以上含まれていなければ、商品名にESGと付けてはいけない」といった規則ができると、運用会社にとってはなかなか厄介だ。どの銘柄が「ESG銘柄」なのか判断する納得性のある基準を提示するのは難しい。さりとて、「当社はESG銘柄を判断する明確な基準を持ってはいません」というわけにもいかない。今や、ESG投資は運用業界にとって無視できない大きさのビジネスに育ったからだ。 そもそも、ESG投資を大きな商品カテゴリーに育てるために、運用業界は多大な努力を払ってきた。「社会運動に便乗した」ともいえるし、「社会運動そのものを積極的に起こした」ともいえそうで、実態はおそらくその両方だろう。 筆者の見るところ、運用業界としてはビジネス上、アクティブ運用の実績をインデックス運用に対して十分に優位なものにはできないことが明らかになってきた。そんな中、インデックス運用だけでは十分な収益にならないために、何とか次の収益源として作り上げたのが「ESG投資」なのだ。その善し悪しは別として、ビジネスとして広げる過程はなかなか興味深いものだった。 もっとも、これは運用業界側の事情だ。投資家の側では「ESG投資」をどう理解したらいいかという問題がある』、「運用業界としてはビジネス上、アクティブ運用の実績をインデックス運用に対して十分に優位なものにはできないことが明らかになってきた。そんな中、インデックス運用だけでは十分な収益にならないために、何とか次の収益源として作り上げたのが「ESG投資」なのだ」、なるほど。
・『ESG投資とは「社会活動」と「運用手法」の二つの側面を持つ ESG投資とは、投資対象企業の「環境(Environment)」「社会性(Social)」「(企業)統治(Governance)」を基準に行う投資を指す。例えば、地球環境の悪化をもたらしていると目される企業の株式に投資しないことや、社会的に好ましい貢献をしている企業の株式に積極的に投資するような投資行動を指す。 こうした投資行動によって、一つには企業の活動を好ましい方向に導くことが期待されるとする。また、株主である投資家が企業に対してE・S・Gそれぞれで望ましい行動を取るように企業とコミュニケーションを取ったり、議決権行使を行ったりすることで、企業の行動が改善する効果が期待される。これらは、いわば「社会活動としてのESG投資」だ。 さらには、E・S・Gそれぞれで望ましい行動を取る企業の株式は投資パフォーマンスが良いと期待できるのではないかという「運用上の効果」が語られることもある。こちらは「運用手法としてのESG投資」だ』、「社会活動としてのESG投資」、「運用手法としてのESG投資」、2つの側面があるようだ。
・『「ESG投資」vs「普通の投資」 軍配が上がるのはどちらか? さて、企業そのものやその株式の価値を評価する上で、E(環境)やS(社会)やG(統治)が重要であることは論をまたない。これらの要素は将来のコストにも反映するし、これらの要素に対する現在の取り組みが将来の収益にも影響するだろう。 これらは、「ESG投資」でなくても、「普通の投資」にあっても真剣に評価されるべき重要な要素の一部だ。また、株式の保有・売却の判断だけでなく、保有株式の議決権の行使等に当たっても株式のオーナーたる機関投資家は、自らの保有する株式のパフォーマンス改善のために、E・S・Gを含めた企業経営上の諸要素への関与にあってベストを尽くすことが望ましい。この点も「普通の投資」にあって同様だ。建前上、手抜きは許されない。 こう考えると、「ESG投資」の判断は「普通の投資」の判断と何が違うのかという疑問が生じる。何かが違うのでなければ、少なくとも「運用手法としてのESG投資」には意味がなくなる。 しかし、「普通の投資」の総合的な判断と異なる結果のポートフォリオを持つということは、「普通の投資」としての運用会社のベストな判断から距離が発生するということだ。運用としては何らかの点でベストなポートフォリオから遠ざかることを意味する。 素朴な例を考えるとするなら、投資可能な上場銘柄が10銘柄しかない世界を想像して、E・S・Gのいずれかの事情で投資対象から2銘柄を除外するとしよう。ポートフォリオの「事前の判断」としては、10銘柄全てを使える条件のポートフォリオの方が、8銘柄に制約されたポートフォリオよりも少なくとも劣らないはずだ。むしろ、おそらくは優れたものになることは想像に難くない。 「普通の投資」と「ESG投資」について二つのポートフォリオを作ると、「事前の判断のレベル」ではほぼ常に「普通の投資」が優位なはずだ。そして、運用会社の真の商品は「事前の判断」なのである。運用会社の「事前の判断」に意味があるのでなければ、少なくともその運用会社のアクティブ運用には価値がない。顧客にとって両者の運用上の優劣は、結果論で判断すべきレベルの問題ではない。 投資家側から見ると、運用効率だけで判断するなら「ESG投資」は「普通の(ベストな)投資」よりも劣るポーフォリオに投資して、かつ何がしか高いフィー(運用手数料)を取られる投資商品だといえる。 商品・ビジネスとしてのESG投資をあえて正当化するなら、投資家が「社会運動としてのESG投資」の効果を良いものと評価して満足するか、「ポートフォリオがESG的」であることに精神的に満足するかの可能性を提供しようとする、運用効率至上主義ではないサービスビジネスだということになる』、「商品・ビジネスとしてのESG投資をあえて正当化するなら、投資家が「社会運動としてのESG投資」の効果を良いものと評価して満足するか、「ポートフォリオがESG的」であることに精神的に満足するかの可能性を提供しようとする、運用効率至上主義ではないサービスビジネスだということになる」、つまり「ESG投資」は恰好つけに過ぎない。
・『年金基金の立場が興味深いESG投資と職務義務に「深刻な矛盾」 さて、内外の企業年金や公的年金などの年金基金は、ESG投資の主要顧客だと言っていいのだが、ここで興味深い問題が生じている。 彼らは、建前として年金加入者の積立金の運用に当たって「運用効率至上主義」でなければならないからだ。ポートフォリオとしての効率が落ちて、さらにインデックス運用よりも高いフィーを支払うESG投資を採用することと、彼らが年金加入者などに対して負っている義務との間には深刻な矛盾がある。その義務とは、「プルーデントマンルール」などと呼ばれる、専門知識を生かして思慮深い投資行動を取ることを定めた原則だ。 筆者が思うに、年金基金がESG投資を採用するためには、運用部隊や、運用部隊に意見を具申する運用委員会のような組織の意思決定だけでは不十分だ。それだけでなく、代議員大会レベルで「ベストな運用効率には劣る可能性があるが、ESG投資を一定の上限額の下に採用していいか」といった内容を問う議案を可決して、意思決定する必要がある。 通常「運用委員会」は、運用の専門家として運用効率至上主義の観点から技術的なアドバイスを行う組織だ。「運用効率は一部損なわれるが、ESG投資には意義がある」といった価値判断を行う主体ではない。 また、各国の制度の下にあって、年金基金が運用効率至上主義とは異なる方針を採って運用することが認められているかどうかという問題もある。さらには、基金の設立主体である企業年金なら母体企業、公的年金なら主務官庁などの方針と矛盾しないかという点も問われなければならない。 平たく言うと、年金基金には自分たちの一存によって「他人のお金で、格好を付ける」権限は与えられていないのだ』、「各国の制度の下にあって、年金基金が運用効率至上主義とは異なる方針を採って運用することが認められているかどうかという問題もある。さらには、基金の設立主体である企業年金なら母体企業、公的年金なら主務官庁などの方針と矛盾しないかという点も問われなければならない」、確かにその通りだ。
・『しかし、マーケティングの急所は年金基金だった 一方、興味深いのは、年金基金には前記のような立場上の事情があるにもかかわらず、ビジネスとしてのESG投資を見ると、マーケティング戦略上の急所が他ならぬ年金基金だったように見えることだ。 ESG投資は、特に欧州の年金運用の世界から拡大し、わが国の年金運用にも影響を及ぼすようになった。そして、やがては「世界的にも拡大している運用手法」と喧伝されて個人向けの投資信託などにも採用されるようになった。 運用業界が意識的に年金基金を狙うマーケティング戦略を立てたのかどうかは確認のしようがない。しかし、考えてみるに、「インデックス運用ばかりになると商売はあがったりだ(=われわれのすることがなくなる)」という事情は運用会社だけでなく、年金基金にとっても同様だ。 また、ESGの諸要素に関して運用会社に注文を付けるのは、年金基金の担当者にとって「気分のいい仕事」になり得る点も商売上は見逃せない。 ちなみに、年金運用業界にあってESG運用と似た立場にあるのが、アクティブ運用だ。現実問題としてアクティブ運用には、以下のような事情がある。 (1)手数料まで考えた場合にインデックス運用の方がアクティブ運用よりも優れていると判断できる場合が多い (2)大規模な基金のリターンはほとんどがアセットアロケーション(資産配分)段階で決まること (3)アクティブ運用の採否や管理には手間とコストが掛かる それにもかかわらず、「コアサテライト」(インデックスファンドを中核として、周辺にアクティブ運用を配するイメージだ)などという意味のない概念まで繰り出して、運用資産の一部だけでもアクティブ運用を続けようとする基金が多い。その理由は、運用会社や年金基金に付いているコンサルタントだけでなく、年金基金自身の「仕事作り」になっているからだ。 つまり運用業界は、経営コンサルタントが「経営企画部」に戦略コンサルティングを売ったり、法律事務所が企業の法務部門に「コンプライアンス研修プログラム」を売ったりするのと同じことをした。年金基金に対して、彼らの「仕事作り」に貢献する「ESG投資」という運用商品と新しい仕事のプログラムを売ったのだ。ビジネスとしては、別の商品・サービスにも応用が利きそうな興味深い経緯である』、「つまり運用業界は・・・年金基金に対して、彼らの「仕事作り」に貢献する「ESG投資」という運用商品と新しい仕事のプログラムを売ったのだ」、その通りだ。
・『投資すべきはESGの「優等生」か 実は「劣等生」に投資妙味 ところで、E・S・Gが企業評価上重要だとして、投資すべき対象はそれぞれの項目ないし総合点の上位企業なのだろうか、あるいは下位企業なのだろうか。 ESG投資が普及する初期によく語られたのは、ESGがダメな企業の株式を機関投資家が売るとすれば、株式を売られたくない経営者が改心する理由になるのではないかといったストーリーだった。この話を重視するなら、ESGの優等生企業に投資するのがいいということになる。 一方、株式投資で高いリターンが得られるのは、企業に「好ましい変化」が起こったときだ。ESGが企業評価上重要なら、ESGの劣等生企業に投資してESG要素の「改善」に期待する方が、既にESGの優等生企業がさらに意外なくらい優等生になる変化に期待するよりも有望な可能性がある。 加えて、企業の行動に対する効果を考えるとして、ESG劣等生企業の株式を保有する大株主が、経営者とのコミュニケーションや株主総会、議決権行使、さらには取締役会への関与などを通じて好ましい行動変化を促す方が、劣等生企業の株式を保有せず、関与しないよりも有効かもしれない。 ESGを意識する投資家が投資すべき企業は、ESGの優等生の方なのか劣等生の方なのか――。投資の効果の上ではもちろん、企業の行動変容を促す上でも案外判然としない』、「ESGを意識する投資家が投資すべき企業は、ESGの優等生の方なのか劣等生の方なのか」、確かに「判然としない」ようだ。さすが、山崎氏だけあって、単なる「ESG投資」の売り言葉ではなく、本質を突いた意味を問いかけた力作だ。
タグ:日経ビジネスオンライン 大崎 匠氏による「50歳で初めて投資 失敗しないために知っておくべきこと」 「普段からコストに対する意識を高く持ち、コストの低減化を心がけましょう」、その通りだ。 「取引コストや監査費用などファンド運営に必要な経費が信託報酬以外にも掛かります。ファンドに課される全ての費用の純資産総額に対する比率を「経費率」と呼び、ファンドごとに開示」、「ETFやインデックス投信などで、投資に掛かる経費を低く抑えた商品が数多く出ていますので、これらの商品を活用することを検討しましょう。そして、運用報告書等の資料が閲覧可能であれば、必ず経費率と呼ばれる項目を確認し比較することをお勧めします」、なるほど。 「トルコリラなどの流動性の低い為替や、ビットコイン等の暗号資産に掛かる取引コストは非常に高く、中には取引金額の5%を超える手数料を徴取されるケースも存在します。大幅なコスト負担は、投資収支を著しく悪化させるため、可能な限り避けるべきでしょう」、その通りだ。 「コストは常に取引金額に対するパーセンテージでも考えるようにしましょう。そうすることで、普段からいかに高い取引コストが課されているかに気付くはずです」、その通りだ。 大崎 匠氏による「株主優待に飛びつくのは日本人だけ? 目先の利益でプロは買わない」 「十分な思慮を行わず、根拠も持たない投資は単なるギャンブルと何ら変わりません。そうした「何となく投資」を避けるためにも、前もって自らの投資行動に一定のルールを課すことをおすすめします」、「前もって自らの投資行動に一定のルールを課す」、実際にやるとなれば、大変な手間だ。 「ルール設定によってある程度選択肢を狭め、その中で最適な運用を心がけましょう」、なるほど。 私個人は、「老後の医療費、生活費の負担や次の世代に向けた資産形成など、家族単位での資産運用を考える」必要性は認めるが、「投資委員会」は不要だと思う。 「資産運用には「フリーランチはない」という言葉があります・・・資産運用の世界では「リターンを得るためには、それに見合ったリスクを取る・・・必要がある」、最も基本的なことだ。 「「配当は変化する」という前提を忘れず、配当金に対する依存度を下げておかなければ、リスク事象が発現した際に、生活設計が狂ってしまう可能性が高くなります。 投資から定期的な収入を得たいのであれば、インデックスETFやセクター別・テーマ別のETF、社債投信を購入するのがよいでしょう」、その通りだ。 「手に入れた株主優待の価値より大きい機会損失を被る可能性すらあるため、株主優待を目的とした投資は再考すべきでしょう」、同感である。 ダイヤモンド・オンライン 山崎 元氏による「ESG投資が運用として「明らかにダメ」でも流行る本当の理由」 「運用業界としてはビジネス上、アクティブ運用の実績をインデックス運用に対して十分に優位なものにはできないことが明らかになってきた。そんな中、インデックス運用だけでは十分な収益にならないために、何とか次の収益源として作り上げたのが「ESG投資」なのだ」、なるほど。 「社会活動としてのESG投資」、「運用手法としてのESG投資」、2つの側面があるようだ。 「商品・ビジネスとしてのESG投資をあえて正当化するなら、投資家が「社会運動としてのESG投資」の効果を良いものと評価して満足するか、「ポートフォリオがESG的」であることに精神的に満足するかの可能性を提供しようとする、運用効率至上主義ではないサービスビジネスだということになる」、つまり「ESG投資」は恰好つけに過ぎない。 「各国の制度の下にあって、年金基金が運用効率至上主義とは異なる方針を採って運用することが認められているかどうかという問題もある。さらには、基金の設立主体である企業年金なら母体企業、公的年金なら主務官庁などの方針と矛盾しないかという点も問われなければならない」、確かにその通りだ。 「つまり運用業界は・・・年金基金に対して、彼らの「仕事作り」に貢献する「ESG投資」という運用商品と新しい仕事のプログラムを売ったのだ」、その通りだ。 「ESGを意識する投資家が投資すべき企業は、ESGの優等生の方なのか劣等生の方なのか」、確かに「判然としない」ようだ。さすが、山崎氏だけあって、単なる「ESG投資」の売り言葉ではなく、本質を突いた意味を問いかけた力作だ。