中国情勢(軍事・外交)(その13)(台湾侵攻を視野に食糧備蓄か ロシアと「一帯一路」が中国の生命線に、中国がロシアを飲み込み「モンゴル帝国」再出現?日本の難しい舵取り、ぎりぎりで避けられた最悪の事態 中国と太平洋島嶼国の危うい合意が先送りに 中国・王毅外相の南太平洋外交の顛末) [世界情勢]
中国情勢(軍事・外交)については、1月25日に取上げた。今日は、(その13)(台湾侵攻を視野に食糧備蓄か ロシアと「一帯一路」が中国の生命線に、中国がロシアを飲み込み「モンゴル帝国」再出現?日本の難しい舵取り、ぎりぎりで避けられた最悪の事態 中国と太平洋島嶼国の危うい合意が先送りに 中国・王毅外相の南太平洋外交の顛末)である。
先ずは、2月4日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの姫田小夏氏による「台湾侵攻を視野に食糧備蓄か、ロシアと「一帯一路」が中国の生命線に」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/298064
・『ロシアがウクライナ侵攻を始めた2月24日、中国はロシアからの小麦輸入を拡大すると発表した。西側諸国の経済制裁で窮地に陥るロシアへの“助け舟”ともいえるが、中国は近年、利害が共通するロシアと手を組み、穀物の輸入ルートの多元化に乗り出している。中国は「一帯一路」構想をも巧みに絡めて、食糧調達の“脱西側依存”を着々と進めている』、興味深そうだ。
・『中国が描く中長期の食糧安保戦略 中国はこれまでロシア産の小麦に対して、中国の植物検疫を満たしていないことを理由に輸入制限を行ってきた。しかし、今回の措置ではそれを全面解禁し、ロシアのどの地区からも中国に輸出できるようにした。 西側諸国による経済制裁に追い詰められるロシアにとって、その恩恵は小さくない。ロシアの通信社「スプートニク」は「ロシアからすれば巨大な消費市場が出現した」と報じた。 だが、それは単なる瞬間的な“助け舟”では終わらない。中国が見据えるのは、短期的なものではなく、むしろ中長期的なシナリオだ。 中国の報道や研究機関の調査報告書などをひもとくと、世界の中で孤立を深める中国が、利害や立場が共通するロシアや「一帯一路」の沿線国家とともに共同戦線を張り、中国包囲網を強行突破するかのような食糧安保戦略が見えてくる』、「これまでロシア産の小麦に対して、中国の植物検疫を満たしていないことを理由に輸入制限を行ってきた。しかし、今回の措置ではそれを全面解禁」、かなり思い切った措置だ。
・『食糧の備蓄強化、ロシア産小麦を大々的に輸入 中国はコメ、小麦、トウモロコシの自給率では98%を超える。食糧の安全保障を一貫して重要視してきた中国は、「自分のどんぶりを持て」をスローガンに輸入依存度を減らしてきた。 そもそも小麦の国内生産は十分に足りているにもかかわらず、中国が近年小麦の輸入を急増させている背景にはしたたかな食糧の備蓄政策がある。 「『大国の備蓄』と『世界の穀物』を管理する政治的責任をしっかりと担い、より高いレベルで国家の食糧安全を保障しなければならない」――昨年12月28日、中国の国家食糧物資備蓄局は、重要な啓示としてこのような文章を発表した。 年間1000万トンの小麦を輸入する中国だが、2021年1~7月、中国は前年比で45.9%増の625.3万トンの小麦を輸入した(中国税関)。その内訳はカナダ(199.3万トン、構成比31.9%)、米国(179.7万トン、28.7%)、オーストラリア(152.2万トン、24.3%)で、この3カ国で84.9%の割合を占める。 オーストラリアが数量・金額ともに4割を占めていた2015年からは平準化された形だが、それでも中国からすればカナダ、オーストラリアは米国主導の中国包囲網に加担する油断のならない相手だ。近年の中国の学術論文では「政治的リスクが低い国からの輸入を優先的に増やすべきだ」という論調が目立つ。 清華大学の中国農村研究院は、2020年に次のような論文を公開している。 「『一帯一路』構想の進展に伴い、中国のトウモロコシの輸入元は徐々に多元化し、米国などの既存の輸入国に加え、ウクライナ、ロシア、ブルガリア、ベトナムなどからの輸入が増加する可能性がある。カザフスタンなど中央アジア諸国からの小麦の輸入はさらに伸びるだろう。輸入の安定性と信頼性を向上させるためには、輸入元の多元化を促進し、単一国への依存を減らす必要がある」(葉興慶著「WTO加盟以後の中国農業の発展状況と戦略調整」) 冒頭で触れた中露間の取り決めにより、今後、ロシア産の小麦が大々的に輸入できるようになるわけだが、これまではロシア産の小麦と大麦は、アルタイ地方、クラスノヤルスク市、チェリャビンスク州、オムスク州、ノボシビルスク州、アムール州、クルガン州の7地域からしか対中輸出ができなかった。 黒竜江省はアムール州を対岸に望む黒竜江(アムール川)沿岸に位置し、極東ロシアの農産物貿易を担う拠点の一つだ。同省の有力メディア「東北網」は「2021年は5万5000トンの輸出にすぎなかったロシア産小麦は2022年から100万トンとなり、将来的にさらに増えるだろう」とするロシアの穀物輸出商団体のコメントを掲載した。 「単一国への依存減」という戦略は着実に実行されており、今後相当な割合がロシア産に置き換わる公算が大きい』、「カナダ」、「米国」、「オーストラリア」の「3カ国で84.9%の割合」を占めていたので、「ロシア」が食い込む余地はかなり大きそうだ。
・『中国資本が極東ロシアで行う大豆の作付け もっとも、黒竜江省と極東ロシアの農業協力は1990年代に始まり、20年以上の歴史がある。ロシアと国境を接する黒竜江省は2国間交易が盛んで、「黒竜江・ロシア農業産業協会」を母体に、中国企業が極東ロシアに進出する事例が多々見られる。 地方紙「黒竜江日報」によれば、黒竜江省から120社が極東ロシアに進出し、7億ドルを投じて大豆栽培を行っている。中国からの9品種の大豆のテスト栽培を行うと同時に、育種、作付け、加工、流通、販売に至る産業チェーンの拡大とともに、海外輸出にも乗り出しているという。 中国が大豆の輸入国に転じたのは、1996年だ。以来、世界最大の大豆の輸入国となり、今では9割を輸入に依存している。2020年は主にブラジル、米国、アルゼンチンから約9000万トンを輸入したが、この輸出国の構成に変化が生じている。 2010年代中盤以降、ブラジルからの輸入が伸びる半面、米国からの輸入は減少、2018年にはブラジルが75%になる一方で、米国が18.9%(数字は米国農務省)にまで落ちたのだ。 その一方で、じわじわと割合を増やしているのがロシア産の大豆だ。ただ、今のところ割合は2020年で100万トン程度と、全体の1%にも満たない。 2019年8月に4400トンを超えるロシア産大豆が江蘇省南通で荷揚げされたが、これも中国がロシア産大豆の輸入を全面解禁したことに端を発している。その前月の7月25日、中国とロシアは大豆に関する協力発展計画に署名、大豆においても中露協力のもとで輸入を増やす計画だ』、「大豆においても中露協力のもとで輸入を増やす計画だ」、「大豆」でも「中露協力」とはロシアにとってはありがたいだろう。
・『牛肉では脱オーストラリアが進む 牛肉でも「単一国依存からの脱却」が起こっている。 オーストラリアが中国のコロナ対策を批判して以来、外交や貿易でいがみ合う中豪関係だが、中国はオーストラリア産の牛肉の輸入を制限、その代替としてロシア産の牛肉の輸入を急増させている。2021年上半期、ロシアはオーストラリアを抜いて中国にとって最大の牛肉輸出国となった。 一方で、将来的にはパキスタン産の牛肉も中国の食卓に上るのではないかと予測されている。「一帯一路」構想の主軸となる「中国パキスタン経済回廊」では、中国資本がパキスタン南西部のグワダル港で行う港湾開発は有名だが、ここを対中牛肉輸出の拠点として活用しようという計画があるのだ。 畜産業は、パキスタンにとって重要な産業の一つだ。 データ調査会社「Knoema」によれば、パキスタンにおける牛と水牛の肉の生産量は2020年に182万トンで、2001年の90万トンから20年で倍増した。中国はこれに目を付けたわけだが、パキスタンが口蹄疫(こうていえき)の流行国であるため、現在は輸入ができない状況だ。そこで中国は、中国税関と検疫当局を巻き込み、パキスタンとの協力で自由貿易区における「口蹄疫の非感染ゾーン」の設立に乗り出した。中国の動物検疫をクリアさせるため、グワダル港には中国の技術と資本で家畜用のワクチン工場も建設する予定だ(中国「経済日報」、2021年4月)。 渦中にあるウクライナもまた、「一帯一路」の沿線国の一つだ。 2015年に「一帯一路」の協定を締結して以降、中国は2020年に湖北省武漢市とウクライナの首都キエフを結ぶ貨物列車「中欧班列」を開通させ、ウクライナから穀物を吸い上げる大動脈を完成させた。「欧州の穀物地帯」と呼ばれるウクライナの農産物輸出は、現在、ロシアの侵攻を受け危機にさらされているが、近年はウクライナの穀物の最大の買い手として中国がエジプトに取って代わり、過去3年で中国への穀物の輸出は3倍になった(「中国商務部新聞網」、2021年3月)。 中国国務院(日本の内閣に相当)は年初の記者会見で、「『一帯一路』の沿線国貿易が飛躍的に伸びている」と発表した。2021年に中国が「一帯一路」の沿線国から輸入した農産物は3265億元で、前年比26%増だった。ちなみに原油は1兆1800億元で44%増である。 混沌とした世界情勢の中で、中国は「一帯一路」で掲げる「中国~モンゴル~ロシア経済回廊」や「中国・パキスタン経済回廊」、「中欧班列」に生命線を見いだす。2019年、中国はロシアとの2国間関係を「中露の新時代の包括的・戦略的協力パートナーシップ」に格上げしている。 米中対立が峻烈を極め、台湾併合のタイミングをうかがう中国は、民主主義陣営による“兵糧攻め”をも念頭に置いているのだろう。中国の動きは、世界各国の食糧貿易に大きな影響を及ぼしそうだ』、「2021年上半期、ロシアはオーストラリアを抜いて中国にとって最大の牛肉輸出国となった」、「ロシア産」の味はきっとひどいのだろうが、買わされる民衆の文句は抑え込むのだろう。「中国はロシアとの2国間関係を「中露の新時代の包括的・戦略的協力パートナーシップ」に格上げしている」、「台湾併合のタイミングをうかがう中国は、民主主義陣営による“兵糧攻め”をも念頭に置いているのだろう。中国の動きは、世界各国の食糧貿易に大きな影響を及ぼしそうだ」、なるほど。
次に、4月5日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した立命館大学政策科学部教授の上久保誠人氏による「中国がロシアを飲み込み「モンゴル帝国」再出現?日本の難しい舵取り」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/300946
・『ロシア側は今や「プーチンの顔をいかに立てるか」が停戦実現の最大の課題となっていて、機能不全に陥っている。それが、「権威主義体制の国」の有事の際のもろさだ。もう一つの「権威主義体制の大国」である中国の動向はどうなっているのか』、確かに「「権威主義体制の国」の有事の際のもろさ」が顕著になってきたようだ。
・『ロシアはなぜ停戦しない?権威主義体制の課題 ウクライナとロシアの停戦協議が続いている。ウクライナは、北大西洋条約機構(NATO)加盟を断念する見返りとして、国連安全保障理事会の常任理事国とドイツ、トルコ、ポーランド、イスラエル、イタリア、カナダを保証国とする安全保障体制の構築を提案した。 これは、ロシアが最低限、絶対に譲れない「ウクライナのNATO加盟」を阻止できるものだ(本連載第299回)。ウクライナが中立化を受け入れる提案をしたことで、それは達成される。 それなのに、なかなか停戦の合意に至らない。 ロシアとしても、国際社会から孤立し早く停戦したいはずだ。国際決済システム(SWIFT=国際銀行間通信協会)からも排除され、ロシア国債がデフォルトの危機に陥るなど、経済制裁は確実にロシアを苦しめ始めている。 なぜ停戦できないのか。今、ロシア側は停戦合意を、プーチン大統領の撤退ではなく、いかに戦果を上げたという形とするかを模索しているからだ。「プーチンの顔をいかに立てるか」が停戦実現の最大の課題となっている(本連載第299回・p3)。 ロシアのような「権威主義体制」は、有事では機能不全に陥るもろいものだということだ。指導者は常に正しく、絶対間違わない「無謬性」が権威となるので、政策の間違いを正すのが非常に難しい。時には、政権を倒す体制変革、最悪の場合武力による革命が必要になってしまうのだが、その時に多くの人々の生活や生命が犠牲になってしまう。 そこで、もう一つの「権威主義体制の大国」である中国の動向に関心が集まっている。中国も「権威主義体制」ゆえに、ウクライナ紛争では身動きが取りづらい状況にある。 ロシアとウクライナの仲介役になり得る要素をは持ちつつも、慎重で曖昧な立場を取るべき理由がいくつかあるのだ』、「中国」が「ウクライナ紛争では」「慎重で曖昧な立場を取るべき理由がいくつかあるのだ」、どんな「理由」なのだろう。
・『ロシアがプーチンの顔を立てるなら、中国は「習近平の顔」を… 中国は、同じ権威主義体制の大国として、ロシアと深い関係を持っている点は言うまでもない。しかし、一方でウクライナとも「一帯一路」計画で経済的に密接な協力関係を築いてきた。だから、中国はウクライナ紛争について、ウクライナの主権や領土の尊重を訴えつつ、ロシアが要求するNATOの不拡大を支持する、曖昧な立場を取ってきた。 見方を変えれば、中国が停戦協議の仲介者に適すると思えなくもない。ウクライナが最低限譲れないものは、「ロシア軍の撤退」「国家としての独立と国民の安全」、一方ロシアが譲れないものは、「ウクライナの中立化(NATO非加盟)」である。それは、中国の立場と一致しているようにみえるからだ。 だが、それだけでは、停戦合意には不十分なのだ。 前述のように、プーチン大統領が「撤退した」という形になるのを、ロシアは絶対に受け入れられない。では、どうすれば大統領の「顔が立つ」のかといえば、突き詰めると、ウクライナの「無条件降伏」「非武装中立」ということになる。 当初、ロシアはかたくなにこの2つの条件を主張し続けた。しかし、ウクライナが受け入れられるわけがない。次第に、セルゲイ・ラブロフ外相など、ロシア側の交渉担当者たちは、どうすればプーチン大統領が「成果」を得たという形になるかを模索し始めた。だが、妙案がなかなか見つからない。 これでは、中国が停戦協議の仲介に出ていくのは難しい。なぜなら、中国では、習主席は絶対に正しく、間違わないのが「権威」だ。ゆえに、中国が仲介に乗り出せるのは、「習主席が停戦をまとめて、世界に平和をもたらした」という形を作れる確証がある場合だけだ。それは現状では難しい』、「中国が仲介に乗り出せるのは、「習主席が停戦をまとめて、世界に平和をもたらした」という形を作れる確証がある場合だけだ。それは現状では難しい」、「権威主義体制」の指導者といえどもそれなりの制約を抱えているようだ。
・『“巨大なモンゴル帝国「元」の再出現”という懸念 次に、中国が懸念するのは、米国やNATOとの関係だろう。米国やNATOは、ロシアの経済制裁逃れに、中国が手を貸さないよう要求してきた。 しかし、3月初め、国連総会がロシア非難決議を採択した際、中国は棄権票を投じた。中国は「世界経済の回復に衝撃をもたらし、各国に不利だ」と、ロシアへの経済制裁に反対し、当事国同士の対話による紛争の解決を訴えている。 一方で、王毅外相が「必要な時に、国際社会とともに仲裁を行う用意がある」と発言するなど、状況に応じて国際社会と連携して仲裁に当たる考えも示している。 中国の曖昧な姿勢は、米国やNATOと決定的に対立したくないことを示している。今、中国は、経済状況が思わしくない上に、新疆ウイグルなどの人権問題で米国などの制裁を受けている。ロシアを支援しているとみなされて、米国やAUKUS(米英豪安全保障協力)からこれ以上に厳しい経済制裁を受けてしまう事態は避けたいということだ。 なお、ロシアとしても、中国から軍事的・経済的支援を受けることを、もろ手を挙げて歓迎できないことを指摘しておきたい。 例えば、ロシアは極東地域の石油・天然ガス開発を中国と共同で行ってきたが、中国との共同開発は、ロシアにとって悩ましい部分があった。 なぜなら、ビジネスマン、技術者だけでなく、政府の役人から労働者、掃除婦のようなエッセンシャルワーカーまで大量の中国人がロシアにやって来るからだ。これはアフリカへの中国進出でも見られたような得意の「人海戦術」だ。極東に「チャイナタウン」ができて、実効支配されてしまう恐れがある。 ゆえに、ロシアは日本の極東開発への協力を強く望んでいた。それが、プーチン大統領が北方領土問題で「引き分け」という日本語の言葉を持ち出してリップサービスしてまで、安倍晋三首相(当時)を交渉に引き込み、日本の経済協力を引き出そうとした理由なのだ(第142回・p2)。 だから、できれば中国の軍事的・経済的支援を最小限に抑えて、自力で解決したいはずだ。中国に完全に依存する形になってしまうと、ロシアは中国にのみ込まれてしまう懸念があるからだ。 ウクライナ紛争を通じて、中ロ関係がより強固なものとなるとすれば、それは対等な関係ではない。中国がロシアに対して圧倒的な影響力を持つ形での「中ロ一体化」だ。言い換えれば、巨大なモンゴル帝国「元」の再出現とでもいうべきものかもしれない。それはロシアにとって、軍事的・経済的に立ち行かなくなる最悪の事態に陥らない限りは、避けたいことであるはずだ』、「中国との共同開発は、ロシアにとって悩ましい部分があった。 なぜなら、ビジネスマン、技術者だけでなく、政府の役人から労働者、掃除婦のようなエッセンシャルワーカーまで大量の中国人がロシアにやって来るからだ。これはアフリカへの中国進出でも見られたような得意の「人海戦術」だ。極東に「チャイナタウン」ができて、実効支配されてしまう恐れがある」、「ロシアは日本の極東開発への協力を強く望んでいた」、「ウクライナ紛争を通じて、中ロ関係がより強固なものとなるとすれば、それは対等な関係ではない。中国がロシアに対して圧倒的な影響力を持つ形での「中ロ一体化」だ。言い換えれば、巨大なモンゴル帝国「元」の再出現とでもいうべきものかもしれない。それはロシアにとって、軍事的・経済的に立ち行かなくなる最悪の事態に陥らない限りは、避けたいことであるはずだ」、なるほど。
・『今回、日本が「中立」ではいけない理由 ウクライナ紛争における、日本の立場は、基本的にはシンプルだ。ロシアによる一方的な「力による現状変更」は絶対に容認しないという強い態度を示すことだ。 ウクライナ軍事侵攻という「力による現状変更」は、ロシアを国際社会で完全に孤立させた。軍隊によって国がじゅうりんされて、命が奪われることが容認されるならば、自国に対する侵略も許されてしまうことになる。大国にじゅうりんされる不安を感じている中堅国、小国ほど、その思いを強く持ったのだ(第298回・p3)。 日本も同じである。中国の軍事力の急激な拡大、そして台湾侵攻、尖閣諸島侵攻の懸念という安全保障上の重大なリスクを抱える日本は、「力による現状変更」は絶対に容認されないという、揺るぎない強いスタンスを取らねばならない。 日本は、ウクライナとロシアの間で「中立」であるべきという主張がある。確かに、双方に言い分があり、やむなく戦争に至った場合、第三国は「中立」であるべきだ。 だが、ウクライナ紛争は、一方的にロシアが「力による現状変更」を強行した。日本として絶対に認めらないことであり、ウクライナを支持すべきである。 開戦に至る前、ウクライナ側にも相当に問題があったこと、ロシア側にも理解すべき言い分があることは承知している。しかし、国際社会では、他国の領土に「先に手を出す」ことは認められないのである。 それは、ウクライナ紛争に対する日本の立場を示すこと以上の意義がある。日本の領土を侵し、国民の命を奪うことは絶対に認めないという姿勢を示す「安全保障政策」そのものだからである。 ただし、日本の姿勢はシンプルでも、現実には非常に難しいかじ取りを迫られることになるのではないだろうか。ロシアへの経済制裁によって「中ロ一体化」がすすむと、日本に深刻な影響が出る可能性があるからだ』、確かに「中ロ一体化」は何としてでも阻止したいものだ。
・『「極東」の日本が欧米と同じスタンスを取ると何が起こるか 日本も加わっている、ロシアに対する厳しい経済制裁は次第に効果を発揮している。しかも、まだ切り札は温存してある。ロシア産石油・天然ガスの禁輸は米国を除けばまだ発動していないが、これが行われるとロシア経済は崩壊することになる。 しかし、崩壊するほど追い詰められれば、その後に現れるのは、前述の通り、中国が圧倒的に影響力を持つ「中ロ一体化」だ。それは、欧米よりも日本により深刻な影響がある。 例えば、「サハリン1」「サハリン2」などの石油・天然ガス開発からBP、シェル、エクソンモービルなど石油メジャーが撤退することになった。一方、三菱商事、三井物産、伊藤忠商事など日本勢は、現在のところ事業継続の方針を堅持している。 欧米と日本で対応が異なるのは、地政学的に当然のことである。欧米は、極東ロシアから撤退しても世界中の他の油田・ガス田を開発すればいい。欧米にとって、文字通り「極東」は世界の果てなのだ』、「「サハリン1」「サハリン2」」については、「日本勢は、現在のところ事業継続の方針を堅持している。 欧米と日本で対応が異なるのは、地政学的に当然のことである」、その通りだ。
・『中国がロシアを飲み込み「モンゴル帝国」再出現?日本の難しい舵取り だが、日本は極東にあり、中国と激しい資源獲得競争をしている。日本が事業から撤退すれば、それは即座に中国の権益となるだろう。周囲にチャイナタウンも建設されるだろう。日本の安全保障上、深刻な事態である。日本はギリギリまで事業継続を模索しなければならない。 しかし、ウクライナ紛争の泥沼化が続き、経済制裁が長引くことになり、例えば米国のバイデン大統領が「極東の資源開発からの撤退」を日本に迫ってくる事態になったらどうするのだろうか。 日本は、ロシアの「力による現状変更」を絶対に容認しないという立場を堅持し、欧米と協調してロシアに対する経済制裁を行いながら、中国の欧米・日本の資源の権益を奪取しようとする動きを防がなければならないという、安全保障上、極めて難しいかじ取りを迫られるかもしれないのだ』、「バイデン大統領が「極東の資源開発からの撤退」を日本に迫ってくる事態になったらどうするのだろうか」、「日本は、ロシアの「力による現状変更」を絶対に容認しないという立場を堅持し、欧米と協調してロシアに対する経済制裁を行いながら、中国の欧米・日本の資源の権益を奪取しようとする動きを防がなければならないという、安全保障上、極めて難しいかじ取りを迫られる」、そんな芸当が「日本」に出来るのだろうか。
第三に、6月2日付けJBPressが掲載したジャーナリストの福島 香織氏による「ぎりぎりで避けられた最悪の事態、中国と太平洋島嶼国の危うい合意が先送りに 中国・王毅外相の南太平洋外交の顛末」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/70386
・『中国の南太平洋外交は、西側国際社会が懸念していた最悪の事態を何とか避けることができた。 最悪の事態とは、中国と太平洋島嶼国10カ国とが、警務、安全保障、海事、データセキュリティなどを含む包括的な地域協力合意の草案について、5月30日にフィジーの首都スバで行われる中国・太平洋島嶼国外相会議において調印することだった。この地域協力合意の草案は、ロイターなどによって5月25日にスクープとして報じられた。だが、結果的にこの合意の調印はされず棚上げされたのだった。 こんな合意がなされた日には、南太平洋地域が事実上、中国軍事支配圏に入りかねず、太平洋地域の安全保障枠組みが大きく揺らぐところだった。特に、中国の軍事的脅威にさらされている台湾や日本にとっては、太平洋側から挟み撃ちにされかねない状況になる。 だが調印の棚上げで一安心、危機は去ったとは到底言えない。南太平洋は今や米中が地政学的につばぜり合いを交わす最も激しい地域になりつつあるのだ』、「南太平洋」が南国の楽園ではなく、「今や米中が地政学的につばぜり合いを交わす最も激しい地域になりつつある」、米中の緊張がこんなところにまで飛び火するとは・・・。
・『中国の野心が垣間見える協力枠組み 事の経緯を簡単に説明すると、中国が太平洋島嶼国10カ国と結ぼうとしている地域的な包括的枠組み合意に関する機密文書をロイターが入手し、5月25日にその内容を暴露した。それは、中国政府が国交を結んでいる太平洋島嶼国10カ国(ソロモン諸島、キリバス、サモア、フィジー、トンガ、バヌアツ、パプアニューギニア、クック諸島、ニウエ、ミクロネシア連邦)との間で結ぶ「中国・太平洋島嶼国共同発展ヴィジョン」「中国・太平洋島嶼国共同発展5カ年計画」(2022~2026)という地域的包括的な協力枠組みの協議草案だった。 南太平洋地域全体で警務、安全保障、自由貿易、海事、通信・データセキュリティ協力を進めていくという内容で、この枠組みを通じて南太平洋島嶼国の盟友としての支持を勝ち取り、太平洋島嶼国の盟主として米豪に対抗していこうという中国の野心が垣間見えるものだった。 このスクープのタイミングは、王毅外相率いる20人に及ぶ外交代表団が5月25日からおよそ10日にわたって、ソロモン諸島はじめとする南太平洋島嶼国8カ国を巡る「アイランドホッピング外交」を展開する直前のことだった。この王毅外交のハイライトは、5月30日にフィジーの首都のスバで開催される「中国・太平洋島嶼国外相会議」で、中国はこの会議の場で参加国にこの枠組みに合意させ、高らかに共同コミュニケを発表する心づもりだったようだ』、「中国が太平洋島嶼国10カ国と結ぼうとしている地域的な包括的枠組み合意に関する機密文書をロイターが入手し、5月25日にその内容を暴露」、さすが「ロイター」のスクープだ。
・『ミクロネシア連邦大統領が草案反対を呼びかける 中国はすでに共同コミュニケ草案を作成し、5カ年計画草案とともに太平洋島嶼国10カ国に英文稿を送りつけていた。 ロイターによれば、この草案を見たミクロネシア連邦のパヌエロ大統領は5月20日、オーストラリアのモリソン前首相、ニュージーランドのアーダーン首相、太平洋島嶼国フォーラムのプナ事務局長を含む21人の太平洋地域の指導者に手紙を書き、中国が起草したこの草案に反対するよう呼び掛けたという。 中国がこの太平洋地域の通信網、海洋と資源をコントロールしようと企んでいると見受けられたからだ。さらにこうした中国の計画は、この地域にオーストラリア、ニュージーランド、日本、米国などとの衝突のリスクをもたらす、とした。「太平洋地域が米中冷戦に巻き込まれる」との懸念を示したのだ。 中国・太平洋島嶼国外相会議の開催地となったフィジーのバイニマラマ首相はもともと親中派で知られていた。だが、ここにきて「これまでのように、太平洋島嶼国は団結して、新たな地域協議についてあらゆる討論を行い、各国の共通認識(コンセンサス)を首位に置きたい」と、コンセンサス・ファーストを主張、慎重な態度を見せた。 オーストラリアのアルバニージー新政権のペニー・ウォン外相もすぐにフィジーに飛んで、この合意をさせないように動いた。サモアのフィアメ首相も「検討時間が足りない」「太平洋諸島フォーラムで諮るべきだ」と先送りを主張。ニウエ政府も検討に時間が必要との立場を5月30日に表明した。 こうして、合意は先送りされた』、中国外交が土壇場で失敗させられたようだ。
・『「やりたい放題できると誤解させてはいけない」 だが、中国がこれであきらめたわけではない。10カ国のうちの何カ国かは、この合意に積極的な姿勢を見せていたという。 中国が起草した「共同発展ビジョン」では、中国は10カ国に100万ドル以上の支援を提供し、自由貿易区(FTA)を設立し、南太平洋島嶼国に中国14億人市場を開放しようと持ち掛けている。同時に中国が南太平洋10カ国の現地警察に対して研修を行い、また研究所を建設し、ネットセキュリティに参与し、ハイテク・AIシステムを駆使したスマート税関設置などの支援をするという。同時に中国は周辺海域の詳細な「海洋モニタリング」を行い、自然資源をより多く獲得していこう、という考えらしい。 さらに太平洋島嶼国においてハイテク改革を推進し、経済発展と国家安全建設を進め、気候変動対策や医療衛生関連の支援を表明している。) 一見すると非常に魅惑的な提案に見える。だがミクロネシア連邦のパヌエロ大統領は、この中国側の提案については慎重に考慮すべきだと訴え、特にFTA建設については、「中国側は不誠実である」としている。 その「不誠実」とする根拠については詳しく説明されていないが、他の途上国で中国によって引き起こされている「債務の罠」のやり方を見れば、その意味はだいたい想像がつくだろう。ミクロネシアとしては「中国がこの地域でやりたい放題できると誤解させないようにすべきだ」と指摘していた。 また、この草案の中で安全問題について「伝統・非伝統の安全」という表現があるのだが、この「非伝統安全」というのがくせものだ。一般に「非伝統的安全問題」といえばテロや国内の反政府デモなどを想定しているのだろうが、こうした島嶼国にありがちな部族対立から来る権力闘争や反政府運動まで、中国の警察力が干渉することを許しかねない。 たとえばソロモン諸島は、中国との間で警務協力や「安全協議」にすでに調印しているが、親中派のソガバレ政権は、こうした中国の「警察力」支援を利用して、国内の反ソガバレ派市民や民主活動家を排除しようとしている気配がある。親中派ソガバレ政権には中国企業と癒着したり中国の黒社会やカジノ利権にからんだりする腐敗疑惑があり、市民からの反対運動が起きている。これを中国式のやり方で、治安を乱す不穏分子として弾圧することになれば、「中国式独裁」が南太平洋島嶼国にも拡大しかねない。 サモアのフィアメ首相はソロモン諸島と中国の「安全協議」についても、一度「太平洋島嶼フォーラム」で協議すべきではないか、と指摘している』、それにしても、オーストラリアの前政権はこうしたことを把握してなかったとすれば、重大な手落ちだ。
・『中国が唱える「米中太平洋2分割論」 さて、この包括的な共同発展ビジョンについての合意は先送りされたわけだが、中国の太平洋地域に対する野望は一層はっきりしてきた。) 米政府系メディアの「ラジオ・フリー・アジア」に米国セント・トーマス国際研究現代語言学部主任の葉耀元が次のような分析コメントを寄せていた。 「中国は太平洋島嶼国との協力を模索しており、それによって米国の第1列島線(沖縄、台湾、フィリピンを結ぶ防衛ライン)の封鎖を突破し、太平洋地域においてより良い戦略的優勢を得ようとしている」 「もし、中国が第1列島線を越える正統な口実を欲するとしたら、必ず第1列島線の外の太平洋島嶼国と軍事協力の案件をつくり、地域の安全計画を通じて、これら島々、海域で軍事演習などを行うだろう」 中国は21世紀初頭から「米中太平洋2分割論」を唱え、米国をライバル視して、国際社会を太平洋のハワイ、サモアをつなぐ第3列島線あたりで2分割し、その西を中国、東を米国が盟主として支配する国際秩序の再構築をイメージしている。このために、中国は台湾を奪還し、第1列島線を越えて太平洋に進出していく必要があるのだが、台湾有事については台湾自身も、そして日米ともに非常に警戒している。 ここで盲点となっていたのが、第2列島線(小笠原諸島からグアム、パプア・ニューギニアをつなぐ)の向こうに位置する南太平洋島嶼国だ。 南太平洋の安全保障はオーストラリアが柱となっているが、オーストラリア自身が長らく中国に対して無警戒で、モリソン政権がはっきりと反中路線に舵を切るまでは、オーストラリア政財界は中国の浸透工作のいいようにされてきた。中国はその間、チャイナマネーと華僑ネットワークを駆使して南太平洋島嶼国の政治経済界にも浸透してきた。パプア・ニューギニアもフィジーもキリバスもソロモン諸島もすでに親中国家として認識されている。中国の軍事基地が建設されるという噂もある。 これは囲碁で言えば大ゲイマに打ち込まれたようなもので、台湾を挟み撃ちにすることもできれば、オーストラリアと米国の連携を妨害することもできる。日本にとっても他人事ではないだろう。 今回は包括合意はならなかったが、王毅はキリバスでは、気候変動、経済方面の10項目の協力の備忘録に調印。サモアとも経済、技術、文化などの協力強化合意に調印し、平和や安全保障問題でも議論した。太平洋島嶼フォーラムのプナ事務局長とも会談し、気候変動問題への中国のコミットメントへの歓迎が打ち出された。中国の南太平洋への進出の勢いはむしろ増す傾向だ』、「オーストラリア自身が長らく中国に対して無警戒で、モリソン政権がはっきりと反中路線に舵を切るまでは、オーストラリア政財界は中国の浸透工作のいいようにされてきた。中国はその間、チャイナマネーと華僑ネットワークを駆使して南太平洋島嶼国の政治経済界にも浸透してきた」、「今回は包括合意はならなかったが、王毅はキリバスでは、気候変動、経済方面の10項目の協力の備忘録に調印。サモアとも経済、技術、文化などの協力強化合意に調印し、平和や安全保障問題でも議論した」、「中国の南太平洋への進出の勢いはむしろ増す傾向だ」、までまで目が離せないようだ。
・『日本が担う役割 太平洋島嶼国が警戒しながらも中国の進出に隙を与えてしまうのは、オーストラリアや米国らアングロサクソン国家特有の「上から目線」に対する反発があるとの見方もある。オーストラリアが南太平洋島嶼国を自分の裏庭といって憚らないような傲慢さへの反発が、アジア人の顔で大金を持ってくる中国に隙を与えてしまうのかもしれない。 だが、中国が華人以外の民族を蛮族・夷狄と蔑視し、その文化・伝統を蹂躙する国であることは、自国内の少数民族弾圧の現状をみても一目瞭然だ。安全保障協力という家の合鍵を預けるような信頼関係を結ぶに足る国家でなかろう。 米国的傲慢さと中国的アコギさの間で揺れる小国の気持ちを真に理解できるのは日本ではないかと常々思っている。今後、国際社会の安全保障の枠組みの再構築をめぐり米中大国がより激しいつばぜり合いを展開していく中で、アジアでほぼ唯一成熟した民主主義と自由主義経済を発展させた日本が担う役割は、東南アジア、インド太平洋、南太平洋の立場の弱い小国の中国化を防ぎながら、米国らによる地域安全へのコミットメントをうまく調整することではないだろうか。そういうポジションをとりながら、将来の新たな国際社会の枠組みの中で、日本が唯一無二の世界から頼りがいある国家に転換していく機会を模索していけるのではないだろうか』、「米国的傲慢さと中国的アコギさの間で揺れる小国の気持ちを真に理解できるのは日本ではないかと常々思っている」、「日本」も第二次大戦時の行為では、「南太平洋諸国」からは必ずしも良く思われていないことを無視した思い上がった認識だ。ただ、そうした反省の上で、「日本が担う役割は、東南アジア、インド太平洋、南太平洋の立場の弱い小国の中国化を防ぎながら、米国らによる地域安全へのコミットメントをうまく調整すること」、その通りだ。
先ずは、2月4日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの姫田小夏氏による「台湾侵攻を視野に食糧備蓄か、ロシアと「一帯一路」が中国の生命線に」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/298064
・『ロシアがウクライナ侵攻を始めた2月24日、中国はロシアからの小麦輸入を拡大すると発表した。西側諸国の経済制裁で窮地に陥るロシアへの“助け舟”ともいえるが、中国は近年、利害が共通するロシアと手を組み、穀物の輸入ルートの多元化に乗り出している。中国は「一帯一路」構想をも巧みに絡めて、食糧調達の“脱西側依存”を着々と進めている』、興味深そうだ。
・『中国が描く中長期の食糧安保戦略 中国はこれまでロシア産の小麦に対して、中国の植物検疫を満たしていないことを理由に輸入制限を行ってきた。しかし、今回の措置ではそれを全面解禁し、ロシアのどの地区からも中国に輸出できるようにした。 西側諸国による経済制裁に追い詰められるロシアにとって、その恩恵は小さくない。ロシアの通信社「スプートニク」は「ロシアからすれば巨大な消費市場が出現した」と報じた。 だが、それは単なる瞬間的な“助け舟”では終わらない。中国が見据えるのは、短期的なものではなく、むしろ中長期的なシナリオだ。 中国の報道や研究機関の調査報告書などをひもとくと、世界の中で孤立を深める中国が、利害や立場が共通するロシアや「一帯一路」の沿線国家とともに共同戦線を張り、中国包囲網を強行突破するかのような食糧安保戦略が見えてくる』、「これまでロシア産の小麦に対して、中国の植物検疫を満たしていないことを理由に輸入制限を行ってきた。しかし、今回の措置ではそれを全面解禁」、かなり思い切った措置だ。
・『食糧の備蓄強化、ロシア産小麦を大々的に輸入 中国はコメ、小麦、トウモロコシの自給率では98%を超える。食糧の安全保障を一貫して重要視してきた中国は、「自分のどんぶりを持て」をスローガンに輸入依存度を減らしてきた。 そもそも小麦の国内生産は十分に足りているにもかかわらず、中国が近年小麦の輸入を急増させている背景にはしたたかな食糧の備蓄政策がある。 「『大国の備蓄』と『世界の穀物』を管理する政治的責任をしっかりと担い、より高いレベルで国家の食糧安全を保障しなければならない」――昨年12月28日、中国の国家食糧物資備蓄局は、重要な啓示としてこのような文章を発表した。 年間1000万トンの小麦を輸入する中国だが、2021年1~7月、中国は前年比で45.9%増の625.3万トンの小麦を輸入した(中国税関)。その内訳はカナダ(199.3万トン、構成比31.9%)、米国(179.7万トン、28.7%)、オーストラリア(152.2万トン、24.3%)で、この3カ国で84.9%の割合を占める。 オーストラリアが数量・金額ともに4割を占めていた2015年からは平準化された形だが、それでも中国からすればカナダ、オーストラリアは米国主導の中国包囲網に加担する油断のならない相手だ。近年の中国の学術論文では「政治的リスクが低い国からの輸入を優先的に増やすべきだ」という論調が目立つ。 清華大学の中国農村研究院は、2020年に次のような論文を公開している。 「『一帯一路』構想の進展に伴い、中国のトウモロコシの輸入元は徐々に多元化し、米国などの既存の輸入国に加え、ウクライナ、ロシア、ブルガリア、ベトナムなどからの輸入が増加する可能性がある。カザフスタンなど中央アジア諸国からの小麦の輸入はさらに伸びるだろう。輸入の安定性と信頼性を向上させるためには、輸入元の多元化を促進し、単一国への依存を減らす必要がある」(葉興慶著「WTO加盟以後の中国農業の発展状況と戦略調整」) 冒頭で触れた中露間の取り決めにより、今後、ロシア産の小麦が大々的に輸入できるようになるわけだが、これまではロシア産の小麦と大麦は、アルタイ地方、クラスノヤルスク市、チェリャビンスク州、オムスク州、ノボシビルスク州、アムール州、クルガン州の7地域からしか対中輸出ができなかった。 黒竜江省はアムール州を対岸に望む黒竜江(アムール川)沿岸に位置し、極東ロシアの農産物貿易を担う拠点の一つだ。同省の有力メディア「東北網」は「2021年は5万5000トンの輸出にすぎなかったロシア産小麦は2022年から100万トンとなり、将来的にさらに増えるだろう」とするロシアの穀物輸出商団体のコメントを掲載した。 「単一国への依存減」という戦略は着実に実行されており、今後相当な割合がロシア産に置き換わる公算が大きい』、「カナダ」、「米国」、「オーストラリア」の「3カ国で84.9%の割合」を占めていたので、「ロシア」が食い込む余地はかなり大きそうだ。
・『中国資本が極東ロシアで行う大豆の作付け もっとも、黒竜江省と極東ロシアの農業協力は1990年代に始まり、20年以上の歴史がある。ロシアと国境を接する黒竜江省は2国間交易が盛んで、「黒竜江・ロシア農業産業協会」を母体に、中国企業が極東ロシアに進出する事例が多々見られる。 地方紙「黒竜江日報」によれば、黒竜江省から120社が極東ロシアに進出し、7億ドルを投じて大豆栽培を行っている。中国からの9品種の大豆のテスト栽培を行うと同時に、育種、作付け、加工、流通、販売に至る産業チェーンの拡大とともに、海外輸出にも乗り出しているという。 中国が大豆の輸入国に転じたのは、1996年だ。以来、世界最大の大豆の輸入国となり、今では9割を輸入に依存している。2020年は主にブラジル、米国、アルゼンチンから約9000万トンを輸入したが、この輸出国の構成に変化が生じている。 2010年代中盤以降、ブラジルからの輸入が伸びる半面、米国からの輸入は減少、2018年にはブラジルが75%になる一方で、米国が18.9%(数字は米国農務省)にまで落ちたのだ。 その一方で、じわじわと割合を増やしているのがロシア産の大豆だ。ただ、今のところ割合は2020年で100万トン程度と、全体の1%にも満たない。 2019年8月に4400トンを超えるロシア産大豆が江蘇省南通で荷揚げされたが、これも中国がロシア産大豆の輸入を全面解禁したことに端を発している。その前月の7月25日、中国とロシアは大豆に関する協力発展計画に署名、大豆においても中露協力のもとで輸入を増やす計画だ』、「大豆においても中露協力のもとで輸入を増やす計画だ」、「大豆」でも「中露協力」とはロシアにとってはありがたいだろう。
・『牛肉では脱オーストラリアが進む 牛肉でも「単一国依存からの脱却」が起こっている。 オーストラリアが中国のコロナ対策を批判して以来、外交や貿易でいがみ合う中豪関係だが、中国はオーストラリア産の牛肉の輸入を制限、その代替としてロシア産の牛肉の輸入を急増させている。2021年上半期、ロシアはオーストラリアを抜いて中国にとって最大の牛肉輸出国となった。 一方で、将来的にはパキスタン産の牛肉も中国の食卓に上るのではないかと予測されている。「一帯一路」構想の主軸となる「中国パキスタン経済回廊」では、中国資本がパキスタン南西部のグワダル港で行う港湾開発は有名だが、ここを対中牛肉輸出の拠点として活用しようという計画があるのだ。 畜産業は、パキスタンにとって重要な産業の一つだ。 データ調査会社「Knoema」によれば、パキスタンにおける牛と水牛の肉の生産量は2020年に182万トンで、2001年の90万トンから20年で倍増した。中国はこれに目を付けたわけだが、パキスタンが口蹄疫(こうていえき)の流行国であるため、現在は輸入ができない状況だ。そこで中国は、中国税関と検疫当局を巻き込み、パキスタンとの協力で自由貿易区における「口蹄疫の非感染ゾーン」の設立に乗り出した。中国の動物検疫をクリアさせるため、グワダル港には中国の技術と資本で家畜用のワクチン工場も建設する予定だ(中国「経済日報」、2021年4月)。 渦中にあるウクライナもまた、「一帯一路」の沿線国の一つだ。 2015年に「一帯一路」の協定を締結して以降、中国は2020年に湖北省武漢市とウクライナの首都キエフを結ぶ貨物列車「中欧班列」を開通させ、ウクライナから穀物を吸い上げる大動脈を完成させた。「欧州の穀物地帯」と呼ばれるウクライナの農産物輸出は、現在、ロシアの侵攻を受け危機にさらされているが、近年はウクライナの穀物の最大の買い手として中国がエジプトに取って代わり、過去3年で中国への穀物の輸出は3倍になった(「中国商務部新聞網」、2021年3月)。 中国国務院(日本の内閣に相当)は年初の記者会見で、「『一帯一路』の沿線国貿易が飛躍的に伸びている」と発表した。2021年に中国が「一帯一路」の沿線国から輸入した農産物は3265億元で、前年比26%増だった。ちなみに原油は1兆1800億元で44%増である。 混沌とした世界情勢の中で、中国は「一帯一路」で掲げる「中国~モンゴル~ロシア経済回廊」や「中国・パキスタン経済回廊」、「中欧班列」に生命線を見いだす。2019年、中国はロシアとの2国間関係を「中露の新時代の包括的・戦略的協力パートナーシップ」に格上げしている。 米中対立が峻烈を極め、台湾併合のタイミングをうかがう中国は、民主主義陣営による“兵糧攻め”をも念頭に置いているのだろう。中国の動きは、世界各国の食糧貿易に大きな影響を及ぼしそうだ』、「2021年上半期、ロシアはオーストラリアを抜いて中国にとって最大の牛肉輸出国となった」、「ロシア産」の味はきっとひどいのだろうが、買わされる民衆の文句は抑え込むのだろう。「中国はロシアとの2国間関係を「中露の新時代の包括的・戦略的協力パートナーシップ」に格上げしている」、「台湾併合のタイミングをうかがう中国は、民主主義陣営による“兵糧攻め”をも念頭に置いているのだろう。中国の動きは、世界各国の食糧貿易に大きな影響を及ぼしそうだ」、なるほど。
次に、4月5日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した立命館大学政策科学部教授の上久保誠人氏による「中国がロシアを飲み込み「モンゴル帝国」再出現?日本の難しい舵取り」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/300946
・『ロシア側は今や「プーチンの顔をいかに立てるか」が停戦実現の最大の課題となっていて、機能不全に陥っている。それが、「権威主義体制の国」の有事の際のもろさだ。もう一つの「権威主義体制の大国」である中国の動向はどうなっているのか』、確かに「「権威主義体制の国」の有事の際のもろさ」が顕著になってきたようだ。
・『ロシアはなぜ停戦しない?権威主義体制の課題 ウクライナとロシアの停戦協議が続いている。ウクライナは、北大西洋条約機構(NATO)加盟を断念する見返りとして、国連安全保障理事会の常任理事国とドイツ、トルコ、ポーランド、イスラエル、イタリア、カナダを保証国とする安全保障体制の構築を提案した。 これは、ロシアが最低限、絶対に譲れない「ウクライナのNATO加盟」を阻止できるものだ(本連載第299回)。ウクライナが中立化を受け入れる提案をしたことで、それは達成される。 それなのに、なかなか停戦の合意に至らない。 ロシアとしても、国際社会から孤立し早く停戦したいはずだ。国際決済システム(SWIFT=国際銀行間通信協会)からも排除され、ロシア国債がデフォルトの危機に陥るなど、経済制裁は確実にロシアを苦しめ始めている。 なぜ停戦できないのか。今、ロシア側は停戦合意を、プーチン大統領の撤退ではなく、いかに戦果を上げたという形とするかを模索しているからだ。「プーチンの顔をいかに立てるか」が停戦実現の最大の課題となっている(本連載第299回・p3)。 ロシアのような「権威主義体制」は、有事では機能不全に陥るもろいものだということだ。指導者は常に正しく、絶対間違わない「無謬性」が権威となるので、政策の間違いを正すのが非常に難しい。時には、政権を倒す体制変革、最悪の場合武力による革命が必要になってしまうのだが、その時に多くの人々の生活や生命が犠牲になってしまう。 そこで、もう一つの「権威主義体制の大国」である中国の動向に関心が集まっている。中国も「権威主義体制」ゆえに、ウクライナ紛争では身動きが取りづらい状況にある。 ロシアとウクライナの仲介役になり得る要素をは持ちつつも、慎重で曖昧な立場を取るべき理由がいくつかあるのだ』、「中国」が「ウクライナ紛争では」「慎重で曖昧な立場を取るべき理由がいくつかあるのだ」、どんな「理由」なのだろう。
・『ロシアがプーチンの顔を立てるなら、中国は「習近平の顔」を… 中国は、同じ権威主義体制の大国として、ロシアと深い関係を持っている点は言うまでもない。しかし、一方でウクライナとも「一帯一路」計画で経済的に密接な協力関係を築いてきた。だから、中国はウクライナ紛争について、ウクライナの主権や領土の尊重を訴えつつ、ロシアが要求するNATOの不拡大を支持する、曖昧な立場を取ってきた。 見方を変えれば、中国が停戦協議の仲介者に適すると思えなくもない。ウクライナが最低限譲れないものは、「ロシア軍の撤退」「国家としての独立と国民の安全」、一方ロシアが譲れないものは、「ウクライナの中立化(NATO非加盟)」である。それは、中国の立場と一致しているようにみえるからだ。 だが、それだけでは、停戦合意には不十分なのだ。 前述のように、プーチン大統領が「撤退した」という形になるのを、ロシアは絶対に受け入れられない。では、どうすれば大統領の「顔が立つ」のかといえば、突き詰めると、ウクライナの「無条件降伏」「非武装中立」ということになる。 当初、ロシアはかたくなにこの2つの条件を主張し続けた。しかし、ウクライナが受け入れられるわけがない。次第に、セルゲイ・ラブロフ外相など、ロシア側の交渉担当者たちは、どうすればプーチン大統領が「成果」を得たという形になるかを模索し始めた。だが、妙案がなかなか見つからない。 これでは、中国が停戦協議の仲介に出ていくのは難しい。なぜなら、中国では、習主席は絶対に正しく、間違わないのが「権威」だ。ゆえに、中国が仲介に乗り出せるのは、「習主席が停戦をまとめて、世界に平和をもたらした」という形を作れる確証がある場合だけだ。それは現状では難しい』、「中国が仲介に乗り出せるのは、「習主席が停戦をまとめて、世界に平和をもたらした」という形を作れる確証がある場合だけだ。それは現状では難しい」、「権威主義体制」の指導者といえどもそれなりの制約を抱えているようだ。
・『“巨大なモンゴル帝国「元」の再出現”という懸念 次に、中国が懸念するのは、米国やNATOとの関係だろう。米国やNATOは、ロシアの経済制裁逃れに、中国が手を貸さないよう要求してきた。 しかし、3月初め、国連総会がロシア非難決議を採択した際、中国は棄権票を投じた。中国は「世界経済の回復に衝撃をもたらし、各国に不利だ」と、ロシアへの経済制裁に反対し、当事国同士の対話による紛争の解決を訴えている。 一方で、王毅外相が「必要な時に、国際社会とともに仲裁を行う用意がある」と発言するなど、状況に応じて国際社会と連携して仲裁に当たる考えも示している。 中国の曖昧な姿勢は、米国やNATOと決定的に対立したくないことを示している。今、中国は、経済状況が思わしくない上に、新疆ウイグルなどの人権問題で米国などの制裁を受けている。ロシアを支援しているとみなされて、米国やAUKUS(米英豪安全保障協力)からこれ以上に厳しい経済制裁を受けてしまう事態は避けたいということだ。 なお、ロシアとしても、中国から軍事的・経済的支援を受けることを、もろ手を挙げて歓迎できないことを指摘しておきたい。 例えば、ロシアは極東地域の石油・天然ガス開発を中国と共同で行ってきたが、中国との共同開発は、ロシアにとって悩ましい部分があった。 なぜなら、ビジネスマン、技術者だけでなく、政府の役人から労働者、掃除婦のようなエッセンシャルワーカーまで大量の中国人がロシアにやって来るからだ。これはアフリカへの中国進出でも見られたような得意の「人海戦術」だ。極東に「チャイナタウン」ができて、実効支配されてしまう恐れがある。 ゆえに、ロシアは日本の極東開発への協力を強く望んでいた。それが、プーチン大統領が北方領土問題で「引き分け」という日本語の言葉を持ち出してリップサービスしてまで、安倍晋三首相(当時)を交渉に引き込み、日本の経済協力を引き出そうとした理由なのだ(第142回・p2)。 だから、できれば中国の軍事的・経済的支援を最小限に抑えて、自力で解決したいはずだ。中国に完全に依存する形になってしまうと、ロシアは中国にのみ込まれてしまう懸念があるからだ。 ウクライナ紛争を通じて、中ロ関係がより強固なものとなるとすれば、それは対等な関係ではない。中国がロシアに対して圧倒的な影響力を持つ形での「中ロ一体化」だ。言い換えれば、巨大なモンゴル帝国「元」の再出現とでもいうべきものかもしれない。それはロシアにとって、軍事的・経済的に立ち行かなくなる最悪の事態に陥らない限りは、避けたいことであるはずだ』、「中国との共同開発は、ロシアにとって悩ましい部分があった。 なぜなら、ビジネスマン、技術者だけでなく、政府の役人から労働者、掃除婦のようなエッセンシャルワーカーまで大量の中国人がロシアにやって来るからだ。これはアフリカへの中国進出でも見られたような得意の「人海戦術」だ。極東に「チャイナタウン」ができて、実効支配されてしまう恐れがある」、「ロシアは日本の極東開発への協力を強く望んでいた」、「ウクライナ紛争を通じて、中ロ関係がより強固なものとなるとすれば、それは対等な関係ではない。中国がロシアに対して圧倒的な影響力を持つ形での「中ロ一体化」だ。言い換えれば、巨大なモンゴル帝国「元」の再出現とでもいうべきものかもしれない。それはロシアにとって、軍事的・経済的に立ち行かなくなる最悪の事態に陥らない限りは、避けたいことであるはずだ」、なるほど。
・『今回、日本が「中立」ではいけない理由 ウクライナ紛争における、日本の立場は、基本的にはシンプルだ。ロシアによる一方的な「力による現状変更」は絶対に容認しないという強い態度を示すことだ。 ウクライナ軍事侵攻という「力による現状変更」は、ロシアを国際社会で完全に孤立させた。軍隊によって国がじゅうりんされて、命が奪われることが容認されるならば、自国に対する侵略も許されてしまうことになる。大国にじゅうりんされる不安を感じている中堅国、小国ほど、その思いを強く持ったのだ(第298回・p3)。 日本も同じである。中国の軍事力の急激な拡大、そして台湾侵攻、尖閣諸島侵攻の懸念という安全保障上の重大なリスクを抱える日本は、「力による現状変更」は絶対に容認されないという、揺るぎない強いスタンスを取らねばならない。 日本は、ウクライナとロシアの間で「中立」であるべきという主張がある。確かに、双方に言い分があり、やむなく戦争に至った場合、第三国は「中立」であるべきだ。 だが、ウクライナ紛争は、一方的にロシアが「力による現状変更」を強行した。日本として絶対に認めらないことであり、ウクライナを支持すべきである。 開戦に至る前、ウクライナ側にも相当に問題があったこと、ロシア側にも理解すべき言い分があることは承知している。しかし、国際社会では、他国の領土に「先に手を出す」ことは認められないのである。 それは、ウクライナ紛争に対する日本の立場を示すこと以上の意義がある。日本の領土を侵し、国民の命を奪うことは絶対に認めないという姿勢を示す「安全保障政策」そのものだからである。 ただし、日本の姿勢はシンプルでも、現実には非常に難しいかじ取りを迫られることになるのではないだろうか。ロシアへの経済制裁によって「中ロ一体化」がすすむと、日本に深刻な影響が出る可能性があるからだ』、確かに「中ロ一体化」は何としてでも阻止したいものだ。
・『「極東」の日本が欧米と同じスタンスを取ると何が起こるか 日本も加わっている、ロシアに対する厳しい経済制裁は次第に効果を発揮している。しかも、まだ切り札は温存してある。ロシア産石油・天然ガスの禁輸は米国を除けばまだ発動していないが、これが行われるとロシア経済は崩壊することになる。 しかし、崩壊するほど追い詰められれば、その後に現れるのは、前述の通り、中国が圧倒的に影響力を持つ「中ロ一体化」だ。それは、欧米よりも日本により深刻な影響がある。 例えば、「サハリン1」「サハリン2」などの石油・天然ガス開発からBP、シェル、エクソンモービルなど石油メジャーが撤退することになった。一方、三菱商事、三井物産、伊藤忠商事など日本勢は、現在のところ事業継続の方針を堅持している。 欧米と日本で対応が異なるのは、地政学的に当然のことである。欧米は、極東ロシアから撤退しても世界中の他の油田・ガス田を開発すればいい。欧米にとって、文字通り「極東」は世界の果てなのだ』、「「サハリン1」「サハリン2」」については、「日本勢は、現在のところ事業継続の方針を堅持している。 欧米と日本で対応が異なるのは、地政学的に当然のことである」、その通りだ。
・『中国がロシアを飲み込み「モンゴル帝国」再出現?日本の難しい舵取り だが、日本は極東にあり、中国と激しい資源獲得競争をしている。日本が事業から撤退すれば、それは即座に中国の権益となるだろう。周囲にチャイナタウンも建設されるだろう。日本の安全保障上、深刻な事態である。日本はギリギリまで事業継続を模索しなければならない。 しかし、ウクライナ紛争の泥沼化が続き、経済制裁が長引くことになり、例えば米国のバイデン大統領が「極東の資源開発からの撤退」を日本に迫ってくる事態になったらどうするのだろうか。 日本は、ロシアの「力による現状変更」を絶対に容認しないという立場を堅持し、欧米と協調してロシアに対する経済制裁を行いながら、中国の欧米・日本の資源の権益を奪取しようとする動きを防がなければならないという、安全保障上、極めて難しいかじ取りを迫られるかもしれないのだ』、「バイデン大統領が「極東の資源開発からの撤退」を日本に迫ってくる事態になったらどうするのだろうか」、「日本は、ロシアの「力による現状変更」を絶対に容認しないという立場を堅持し、欧米と協調してロシアに対する経済制裁を行いながら、中国の欧米・日本の資源の権益を奪取しようとする動きを防がなければならないという、安全保障上、極めて難しいかじ取りを迫られる」、そんな芸当が「日本」に出来るのだろうか。
第三に、6月2日付けJBPressが掲載したジャーナリストの福島 香織氏による「ぎりぎりで避けられた最悪の事態、中国と太平洋島嶼国の危うい合意が先送りに 中国・王毅外相の南太平洋外交の顛末」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/70386
・『中国の南太平洋外交は、西側国際社会が懸念していた最悪の事態を何とか避けることができた。 最悪の事態とは、中国と太平洋島嶼国10カ国とが、警務、安全保障、海事、データセキュリティなどを含む包括的な地域協力合意の草案について、5月30日にフィジーの首都スバで行われる中国・太平洋島嶼国外相会議において調印することだった。この地域協力合意の草案は、ロイターなどによって5月25日にスクープとして報じられた。だが、結果的にこの合意の調印はされず棚上げされたのだった。 こんな合意がなされた日には、南太平洋地域が事実上、中国軍事支配圏に入りかねず、太平洋地域の安全保障枠組みが大きく揺らぐところだった。特に、中国の軍事的脅威にさらされている台湾や日本にとっては、太平洋側から挟み撃ちにされかねない状況になる。 だが調印の棚上げで一安心、危機は去ったとは到底言えない。南太平洋は今や米中が地政学的につばぜり合いを交わす最も激しい地域になりつつあるのだ』、「南太平洋」が南国の楽園ではなく、「今や米中が地政学的につばぜり合いを交わす最も激しい地域になりつつある」、米中の緊張がこんなところにまで飛び火するとは・・・。
・『中国の野心が垣間見える協力枠組み 事の経緯を簡単に説明すると、中国が太平洋島嶼国10カ国と結ぼうとしている地域的な包括的枠組み合意に関する機密文書をロイターが入手し、5月25日にその内容を暴露した。それは、中国政府が国交を結んでいる太平洋島嶼国10カ国(ソロモン諸島、キリバス、サモア、フィジー、トンガ、バヌアツ、パプアニューギニア、クック諸島、ニウエ、ミクロネシア連邦)との間で結ぶ「中国・太平洋島嶼国共同発展ヴィジョン」「中国・太平洋島嶼国共同発展5カ年計画」(2022~2026)という地域的包括的な協力枠組みの協議草案だった。 南太平洋地域全体で警務、安全保障、自由貿易、海事、通信・データセキュリティ協力を進めていくという内容で、この枠組みを通じて南太平洋島嶼国の盟友としての支持を勝ち取り、太平洋島嶼国の盟主として米豪に対抗していこうという中国の野心が垣間見えるものだった。 このスクープのタイミングは、王毅外相率いる20人に及ぶ外交代表団が5月25日からおよそ10日にわたって、ソロモン諸島はじめとする南太平洋島嶼国8カ国を巡る「アイランドホッピング外交」を展開する直前のことだった。この王毅外交のハイライトは、5月30日にフィジーの首都のスバで開催される「中国・太平洋島嶼国外相会議」で、中国はこの会議の場で参加国にこの枠組みに合意させ、高らかに共同コミュニケを発表する心づもりだったようだ』、「中国が太平洋島嶼国10カ国と結ぼうとしている地域的な包括的枠組み合意に関する機密文書をロイターが入手し、5月25日にその内容を暴露」、さすが「ロイター」のスクープだ。
・『ミクロネシア連邦大統領が草案反対を呼びかける 中国はすでに共同コミュニケ草案を作成し、5カ年計画草案とともに太平洋島嶼国10カ国に英文稿を送りつけていた。 ロイターによれば、この草案を見たミクロネシア連邦のパヌエロ大統領は5月20日、オーストラリアのモリソン前首相、ニュージーランドのアーダーン首相、太平洋島嶼国フォーラムのプナ事務局長を含む21人の太平洋地域の指導者に手紙を書き、中国が起草したこの草案に反対するよう呼び掛けたという。 中国がこの太平洋地域の通信網、海洋と資源をコントロールしようと企んでいると見受けられたからだ。さらにこうした中国の計画は、この地域にオーストラリア、ニュージーランド、日本、米国などとの衝突のリスクをもたらす、とした。「太平洋地域が米中冷戦に巻き込まれる」との懸念を示したのだ。 中国・太平洋島嶼国外相会議の開催地となったフィジーのバイニマラマ首相はもともと親中派で知られていた。だが、ここにきて「これまでのように、太平洋島嶼国は団結して、新たな地域協議についてあらゆる討論を行い、各国の共通認識(コンセンサス)を首位に置きたい」と、コンセンサス・ファーストを主張、慎重な態度を見せた。 オーストラリアのアルバニージー新政権のペニー・ウォン外相もすぐにフィジーに飛んで、この合意をさせないように動いた。サモアのフィアメ首相も「検討時間が足りない」「太平洋諸島フォーラムで諮るべきだ」と先送りを主張。ニウエ政府も検討に時間が必要との立場を5月30日に表明した。 こうして、合意は先送りされた』、中国外交が土壇場で失敗させられたようだ。
・『「やりたい放題できると誤解させてはいけない」 だが、中国がこれであきらめたわけではない。10カ国のうちの何カ国かは、この合意に積極的な姿勢を見せていたという。 中国が起草した「共同発展ビジョン」では、中国は10カ国に100万ドル以上の支援を提供し、自由貿易区(FTA)を設立し、南太平洋島嶼国に中国14億人市場を開放しようと持ち掛けている。同時に中国が南太平洋10カ国の現地警察に対して研修を行い、また研究所を建設し、ネットセキュリティに参与し、ハイテク・AIシステムを駆使したスマート税関設置などの支援をするという。同時に中国は周辺海域の詳細な「海洋モニタリング」を行い、自然資源をより多く獲得していこう、という考えらしい。 さらに太平洋島嶼国においてハイテク改革を推進し、経済発展と国家安全建設を進め、気候変動対策や医療衛生関連の支援を表明している。) 一見すると非常に魅惑的な提案に見える。だがミクロネシア連邦のパヌエロ大統領は、この中国側の提案については慎重に考慮すべきだと訴え、特にFTA建設については、「中国側は不誠実である」としている。 その「不誠実」とする根拠については詳しく説明されていないが、他の途上国で中国によって引き起こされている「債務の罠」のやり方を見れば、その意味はだいたい想像がつくだろう。ミクロネシアとしては「中国がこの地域でやりたい放題できると誤解させないようにすべきだ」と指摘していた。 また、この草案の中で安全問題について「伝統・非伝統の安全」という表現があるのだが、この「非伝統安全」というのがくせものだ。一般に「非伝統的安全問題」といえばテロや国内の反政府デモなどを想定しているのだろうが、こうした島嶼国にありがちな部族対立から来る権力闘争や反政府運動まで、中国の警察力が干渉することを許しかねない。 たとえばソロモン諸島は、中国との間で警務協力や「安全協議」にすでに調印しているが、親中派のソガバレ政権は、こうした中国の「警察力」支援を利用して、国内の反ソガバレ派市民や民主活動家を排除しようとしている気配がある。親中派ソガバレ政権には中国企業と癒着したり中国の黒社会やカジノ利権にからんだりする腐敗疑惑があり、市民からの反対運動が起きている。これを中国式のやり方で、治安を乱す不穏分子として弾圧することになれば、「中国式独裁」が南太平洋島嶼国にも拡大しかねない。 サモアのフィアメ首相はソロモン諸島と中国の「安全協議」についても、一度「太平洋島嶼フォーラム」で協議すべきではないか、と指摘している』、それにしても、オーストラリアの前政権はこうしたことを把握してなかったとすれば、重大な手落ちだ。
・『中国が唱える「米中太平洋2分割論」 さて、この包括的な共同発展ビジョンについての合意は先送りされたわけだが、中国の太平洋地域に対する野望は一層はっきりしてきた。) 米政府系メディアの「ラジオ・フリー・アジア」に米国セント・トーマス国際研究現代語言学部主任の葉耀元が次のような分析コメントを寄せていた。 「中国は太平洋島嶼国との協力を模索しており、それによって米国の第1列島線(沖縄、台湾、フィリピンを結ぶ防衛ライン)の封鎖を突破し、太平洋地域においてより良い戦略的優勢を得ようとしている」 「もし、中国が第1列島線を越える正統な口実を欲するとしたら、必ず第1列島線の外の太平洋島嶼国と軍事協力の案件をつくり、地域の安全計画を通じて、これら島々、海域で軍事演習などを行うだろう」 中国は21世紀初頭から「米中太平洋2分割論」を唱え、米国をライバル視して、国際社会を太平洋のハワイ、サモアをつなぐ第3列島線あたりで2分割し、その西を中国、東を米国が盟主として支配する国際秩序の再構築をイメージしている。このために、中国は台湾を奪還し、第1列島線を越えて太平洋に進出していく必要があるのだが、台湾有事については台湾自身も、そして日米ともに非常に警戒している。 ここで盲点となっていたのが、第2列島線(小笠原諸島からグアム、パプア・ニューギニアをつなぐ)の向こうに位置する南太平洋島嶼国だ。 南太平洋の安全保障はオーストラリアが柱となっているが、オーストラリア自身が長らく中国に対して無警戒で、モリソン政権がはっきりと反中路線に舵を切るまでは、オーストラリア政財界は中国の浸透工作のいいようにされてきた。中国はその間、チャイナマネーと華僑ネットワークを駆使して南太平洋島嶼国の政治経済界にも浸透してきた。パプア・ニューギニアもフィジーもキリバスもソロモン諸島もすでに親中国家として認識されている。中国の軍事基地が建設されるという噂もある。 これは囲碁で言えば大ゲイマに打ち込まれたようなもので、台湾を挟み撃ちにすることもできれば、オーストラリアと米国の連携を妨害することもできる。日本にとっても他人事ではないだろう。 今回は包括合意はならなかったが、王毅はキリバスでは、気候変動、経済方面の10項目の協力の備忘録に調印。サモアとも経済、技術、文化などの協力強化合意に調印し、平和や安全保障問題でも議論した。太平洋島嶼フォーラムのプナ事務局長とも会談し、気候変動問題への中国のコミットメントへの歓迎が打ち出された。中国の南太平洋への進出の勢いはむしろ増す傾向だ』、「オーストラリア自身が長らく中国に対して無警戒で、モリソン政権がはっきりと反中路線に舵を切るまでは、オーストラリア政財界は中国の浸透工作のいいようにされてきた。中国はその間、チャイナマネーと華僑ネットワークを駆使して南太平洋島嶼国の政治経済界にも浸透してきた」、「今回は包括合意はならなかったが、王毅はキリバスでは、気候変動、経済方面の10項目の協力の備忘録に調印。サモアとも経済、技術、文化などの協力強化合意に調印し、平和や安全保障問題でも議論した」、「中国の南太平洋への進出の勢いはむしろ増す傾向だ」、までまで目が離せないようだ。
・『日本が担う役割 太平洋島嶼国が警戒しながらも中国の進出に隙を与えてしまうのは、オーストラリアや米国らアングロサクソン国家特有の「上から目線」に対する反発があるとの見方もある。オーストラリアが南太平洋島嶼国を自分の裏庭といって憚らないような傲慢さへの反発が、アジア人の顔で大金を持ってくる中国に隙を与えてしまうのかもしれない。 だが、中国が華人以外の民族を蛮族・夷狄と蔑視し、その文化・伝統を蹂躙する国であることは、自国内の少数民族弾圧の現状をみても一目瞭然だ。安全保障協力という家の合鍵を預けるような信頼関係を結ぶに足る国家でなかろう。 米国的傲慢さと中国的アコギさの間で揺れる小国の気持ちを真に理解できるのは日本ではないかと常々思っている。今後、国際社会の安全保障の枠組みの再構築をめぐり米中大国がより激しいつばぜり合いを展開していく中で、アジアでほぼ唯一成熟した民主主義と自由主義経済を発展させた日本が担う役割は、東南アジア、インド太平洋、南太平洋の立場の弱い小国の中国化を防ぎながら、米国らによる地域安全へのコミットメントをうまく調整することではないだろうか。そういうポジションをとりながら、将来の新たな国際社会の枠組みの中で、日本が唯一無二の世界から頼りがいある国家に転換していく機会を模索していけるのではないだろうか』、「米国的傲慢さと中国的アコギさの間で揺れる小国の気持ちを真に理解できるのは日本ではないかと常々思っている」、「日本」も第二次大戦時の行為では、「南太平洋諸国」からは必ずしも良く思われていないことを無視した思い上がった認識だ。ただ、そうした反省の上で、「日本が担う役割は、東南アジア、インド太平洋、南太平洋の立場の弱い小国の中国化を防ぎながら、米国らによる地域安全へのコミットメントをうまく調整すること」、その通りだ。
タグ:「「サハリン1」「サハリン2」」については、「日本勢は、現在のところ事業継続の方針を堅持している。 欧米と日本で対応が異なるのは、地政学的に当然のことである」、その通りだ。 確かに「中ロ一体化」は何としてでも阻止したいものだ。 「中国との共同開発は、ロシアにとって悩ましい部分があった。 なぜなら、ビジネスマン、技術者だけでなく、政府の役人から労働者、掃除婦のようなエッセンシャルワーカーまで大量の中国人がロシアにやって来るからだ。これはアフリカへの中国進出でも見られたような得意の「人海戦術」だ。極東に「チャイナタウン」ができて、実効支配されてしまう恐れがある」、「ロシアは日本の極東開発への協力を強く望んでいた」、「ウクライナ紛争を通じて、中ロ関係がより強固なものとなるとすれば、それは対等な関係ではない。中国がロシアに対して圧倒的な 「中国が仲介に乗り出せるのは、「習主席が停戦をまとめて、世界に平和をもたらした」という形を作れる確証がある場合だけだ。それは現状では難しい」、「権威主義体制」の指導者といえどもそれなりの制約を抱えているようだ。 「中国」が「ウクライナ紛争では」「慎重で曖昧な立場を取るべき理由がいくつかあるのだ」、どんな「理由」なのだろう。 確かに「「権威主義体制の国」の有事の際のもろさ」が顕著になってきたようだ。 上久保誠人氏による「中国がロシアを飲み込み「モンゴル帝国」再出現?日本の難しい舵取り」 「2021年上半期、ロシアはオーストラリアを抜いて中国にとって最大の牛肉輸出国となった」、「ロシア産」の味はきっとひどいのだろうが、買わされる民衆の文句は抑え込むのだろう。「中国はロシアとの2国間関係を「中露の新時代の包括的・戦略的協力パートナーシップ」に格上げしている」、「台湾併合のタイミングをうかがう中国は、民主主義陣営による“兵糧攻め”をも念頭に置いているのだろう。中国の動きは、世界各国の食糧貿易に大きな影響を及ぼしそうだ」、なるほど。 「大豆においても中露協力のもとで輸入を増やす計画だ」、「大豆」でも「中露協力」とはロシアにとってはありがたいだろう。 「カナダ」、「米国」、「オーストラリア」の「3カ国で84.9%の割合」を占めていたので、「ロシア」が食い込む余地はかなり大きそうだ。 「これまでロシア産の小麦に対して、中国の植物検疫を満たしていないことを理由に輸入制限を行ってきた。しかし、今回の措置ではそれを全面解禁」、かなり思い切った措置だ。 姫田小夏氏による「台湾侵攻を視野に食糧備蓄か、ロシアと「一帯一路」が中国の生命線に」 ダイヤモンド・オンライン 中国情勢(軍事・外交) (その13)(台湾侵攻を視野に食糧備蓄か ロシアと「一帯一路」が中国の生命線に、中国がロシアを飲み込み「モンゴル帝国」再出現?日本の難しい舵取り、ぎりぎりで避けられた最悪の事態 中国と太平洋島嶼国の危うい合意が先送りに 中国・王毅外相の南太平洋外交の顛末) 「バイデン大統領が「極東の資源開発からの撤退」を日本に迫ってくる事態になったらどうするのだろうか」、「日本は、ロシアの「力による現状変更」を絶対に容認しないという立場を堅持し、欧米と協調してロシアに対する経済制裁を行いながら、中国の欧米・日本の資源の権益を奪取しようとする動きを防がなければならないという、安全保障上、極めて難しいかじ取りを迫られる」、そんな芸当が「日本」に出来るのだろうか。 JBPRESS 福島 香織氏による「ぎりぎりで避けられた最悪の事態、中国と太平洋島嶼国の危うい合意が先送りに 中国・王毅外相の南太平洋外交の顛末」 「南太平洋」が南国の楽園ではなく、「今や米中が地政学的につばぜり合いを交わす最も激しい地域になりつつある」、米中の緊張がこんなところにまで飛び火するとは・・・。 「中国が太平洋島嶼国10カ国と結ぼうとしている地域的な包括的枠組み合意に関する機密文書をロイターが入手し、5月25日にその内容を暴露」、さすが「ロイター」のスクープだ。 中国外交が土壇場で失敗させられたようだ。 それにしても、オーストラリアの前政権はこうしたことを把握してなかったとすれば、重大な手落ちだ。 「オーストラリア自身が長らく中国に対して無警戒で、モリソン政権がはっきりと反中路線に舵を切るまでは、オーストラリア政財界は中国の浸透工作のいいようにされてきた。中国はその間、チャイナマネーと華僑ネットワークを駆使して南太平洋島嶼国の政治経済界にも浸透してきた」、「今回は包括合意はならなかったが、王毅はキリバスでは、気候変動、経済方面の10項目の協力の備忘録に調印。サモアとも経済、技術、文化などの協力強化合意に調印し、平和や安全保障問題でも議論した」、「中国の南太平洋への進出の勢いはむしろ増す傾向だ」、まで 「米国的傲慢さと中国的アコギさの間で揺れる小国の気持ちを真に理解できるのは日本ではないかと常々思っている」、「日本」も第二次大戦時の行為では、「南太平洋諸国」からは必ずしも良く思われていないことを無視した思い上がった認識だ。ただ、そうした反省の上で、「日本が担う役割は、東南アジア、インド太平洋、南太平洋の立場の弱い小国の中国化を防ぎながら、米国らによる地域安全へのコミットメントをうまく調整すること」、その通りだ。