人権(その8)(在日コリアンとの「共生」 考えるべきは日本人 『在日朝鮮人を生きる』著者 山本かほり氏に聞く、日本で起こる「非伝統的日本人」への無意識な差別 吉野家の面接拒否は氷山の一角ではないか) [社会]
人権については、昨年8月26日に取上げた。今日は、(その8)(在日コリアンとの「共生」 考えるべきは日本人 『在日朝鮮人を生きる』著者 山本かほり氏に聞く、日本で起こる「非伝統的日本人」への無意識な差別 吉野家の面接拒否は氷山の一角ではないか)である。
先ずは、本年5月23日付け東洋経済オンライン「在日コリアンとの「共生」、考えるべきは日本人 『在日朝鮮人を生きる』著者、山本かほり氏に聞く」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/590485
・『日本で生活するエスニック集団の中でも、在日コリアンは歴史的にも人数的にも突出している。しかし、北朝鮮を祖国と考えている在日朝鮮人社会と日本社会の関係は、時に外交や安全保障における北朝鮮の動きが影を落とし、必ずしも良好とは言いがたい。関係改善に向け、「多数派」の日本人は何を心がけるべきか(Qは聞き手の質問、Aは山本氏の回答)。 Q:拉致問題や核・ミサイル問題など、日本にとって北朝鮮は脅威となっています。 A:外交・安保分野から朝鮮(北朝鮮)が「脅威だ」と感じる人が多いのはわかります。そこから派生した「北朝鮮フォビア」という言葉がありますが、この場合の「フォビア」とは、「北朝鮮は荒唐無稽な国で怖い」という嫌悪や恐怖感に加え、他者の排斥と蔑視を含んでいます。朝鮮と関係があるということだけで、在日朝鮮人へのあらゆる差別や偏見が許されるかのような風潮は決して受け入れられるものではありません。 Q:日朝関係の改善において、日本側の最大のネックは拉致問題ですが、北朝鮮は朝鮮高級学校(高校、以下朝鮮学校)の授業料無償化を重要視しています。 A:高校無償化は2010年に当時の民主党政権が打ち出しました。家庭の状況にかかわらず、すべての高校生などが安心して勉学に打ち込める社会をつくるのが目的でした。また無償化の適用には「教育内容や外交上の問題は考慮しない」との見解を文部科学省は示していました。これを踏まえると、朝鮮学校にも当然、無償化が適用されるべきなのです』、「無償化の適用には「教育内容や外交上の問題は考慮しない」との見解を文部科学省は示していました」、こんな「見解」を示していたとは、恥ずかしながら初めて知った。
・『授業料無償化をめぐる動き Q:民主党政権はその後、朝鮮学校への適用に慎重になり、結論を出せないまま政権が代わります。 A:12年末に自民党の下村博文・文科相は「拉致問題の進展がなく、日朝の国交もなく、朝鮮総聯(在日本朝鮮人総聯合会)との密接な関係が朝鮮学校にあるから無償化の対象とするには国民の理解を得られない」として授業料の無償化を見送りました。 Q:無償化を求める裁判が全国5カ所で行われましたが、裁判所もこれを認めませんでした。 A:国は無償化を適用しない理由を「朝鮮や朝鮮総聯との関係が深いので、無償化相当分として支給する金がきちんと授業料に充てられるのか確証が得られない」と述べました。先の下村氏の発言とは違う理由を裁判では挙げてきたのです。しかし、朝鮮学校が自治体からの補助金を学校運営以外に流用したとして行政処分を受けたことはこれまでに一度もありません。 政治・外交問題を理由に無償化を見送ったのに、それを裁判で主張しなかったのは、日本政府の欺瞞です。 Q:「朝鮮学校が北朝鮮や朝鮮総聯と関係を切ればいいのでは」という指摘も根強くあります。 A:朝鮮学校が朝鮮を「支柱」とした教育を行っていることは否定しません。だからといって「関係を切らなければ、(何かを)してあげない」という考え方はおかしい。「関係を切ればいい」という指摘には、なぜそうした関係があるのかという問いが欠けています。) 朝鮮学校は戦後すぐに各地で設立された「国語講習所」が前身です。在日朝鮮人が中心となり、植民地時代にできなかった言語や文化、歴史の回復を目指そうとしたものでした。そして1946年に在日本朝鮮人連盟(49年解散)によって教育機関としての体制が整えられましたが、48年にはGHQ(連合国軍総司令部)による学校閉鎖令を受けました。 その後、朝鮮と密接な関係を持つ朝鮮総聯を中心に在日朝鮮人自ら教員を養成し、教材を作成したりしながら教育を行い、後に朝鮮本国からも財政支援を受けながら学校を運営してきた。そういった歴史的経緯を踏まえると、簡単に「教育内容を変えよ」ということは難しいことなのです』、「政治・外交問題を理由に無償化を見送ったのに、それを裁判で主張しなかったのは、日本政府の欺瞞です」、「朝鮮総聯を中心に在日朝鮮人自ら教員を養成し、教材を作成したりしながら教育を行い、後に朝鮮本国からも財政支援を受けながら学校を運営してきた。そういった歴史的経緯を踏まえると、簡単に「教育内容を変えよ」ということは難しい」、その通りだ。
・『少数派の自決を尊重 Q:在日朝鮮人の現状に気持ちを寄せ、無償化を支持・支援する日本人もいます。しかし、彼らの中にも北朝鮮との関係性を問題にする人が少なくはないですね。 A:そういった支援者の多くがリベラルな思想や価値観を持っているのですが、そうした考えは全体主義、権威主義的に見える朝鮮の現状と真っ向から対立します。そのため、「朝鮮との関係はよくない」と言いたいのでしょう。ただ多数派側の支援者が、マイノリティー側に自身の考えや価値観を押し付けることが公平・公正な行動なのか。マイノリティーが「自分たちのことは自分たちで決めていく」というのは原則ではないでしょうか。これは、朝鮮人に限ったことではありません。 Q:実際に、朝鮮学校の授業は日本政府が指摘するほど北朝鮮寄りの内容なのでしょうか。 A:朝鮮高校の教室には金日成(キムイルソン)・金正日(キムジョンイル)の肖像画が飾られています。そして、朝鮮の歴史観や社会観に沿った教育をしています。しかし同時に、現在では子どもたちが日本社会で生きていくことを前提とした教育も行っているのです。2000年代初頭に、そのような方向でカリキュラムも大幅に改正されています。 朝鮮高校の生徒たちは、「日本にいること」についての疑問や葛藤を抱えながら、自分のルーツを知り、学ぶために朝鮮学校の門をくぐっていきます。また、将来は日本の大学への進学や会社に就職することも考えてはいますが「自分が朝鮮人であることは忘れない」。これが彼らの本音です。彼らは彼らなりに、日本での同胞社会を守りたい。そのために、朝鮮学校で学ぶのです。 Q:戦後70年以上経っても、在日朝鮮人との壁や葛藤はなくなりそうにありません。 A:それがあるのかどうか疑問ですが、日本の外国人・移民政策は「ニューカマー」と呼ばれる人たちを主眼とし、在日朝鮮人など長年日本に定住している外国人への視点が抜けています。日本にすでにある構造を揺るがさない範囲でしか、多文化共生を考えていません。少子化による移民の受け入れなど、より多くの外国人や文化を受け入れざるをえないのであれば、植民地主義の払拭など既存の構造を超えた社会のあり方をきちんと考えるべきです。そうでないと単なる“お花畑”にしかならないでしょう』、「日本の外国人・移民政策は「ニューカマー」と呼ばれる人たちを主眼とし、在日朝鮮人など長年日本に定住している外国人への視点が抜けています」、「植民地主義の払拭など既存の構造を超えた社会のあり方をきちんと考えるべき」、同感である。
次に、5月29日付け東洋経済オンラインが掲載した作家のバイエ・マクニール氏による「日本で起こる「非伝統的日本人」への無意識な差別 吉野家の面接拒否は氷山の一角ではないか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/592797
・『牛丼チェーンの「吉野家」が、ハーフの大学生を外国籍と判断し、就職説明会への参加を拒否したことが少し前に話題になった。この推測による判断は、学生が提出した経歴情報に基づくものだった。報道などによると、吉野家の採用担当者は、応募者が少なくとも「純粋な」日本人ではないことに気づき、吉野家で内定が取れても外国籍の方の就労ビザ取得は大変難しいため、予約はキャンセルさせていただく、と告げたという。 こうした思い込みは、応募者の外見が一般的な日本人のそれでない場合や、名前がめずらしかったり、カタカナ表記だったりする場合に起こる。多くの採用担当者にとってこうした事柄は、応募者が最も厳密な意味での純粋な日本人でないことを示すのに十分だろう』、事実を確認もせず、「経歴情報」だけで「推測による判断」し、「外国籍と判断し、就職説明会への参加を拒否」したのは、基本的動作からして信じ難いお粗末さだ。
・『“非伝統的”日本人にとってはめずらしくない体験 残念なことに、今回の事件は非伝統的、混合的ルーツを持つ多くの日本人にとってめずらしい出来事ではなく、それは、ダイバーシティ(多様性)を受け入れ、促進するという前提に反している。日本では最近、「ダイバーシティ」や「インクルージョン」といった言葉がよく使われているが、その本当の意味や、それを日本で実現するために必要な活動については、活発に議論されてはいないと感じている人たちもいる。 日系ブラジル人の宮ケ迫ナンシー理沙氏もその1人だ。非伝統的日本人の若者が安心して集まれる、エンカウンターキャンプのオーガナイザーだった現在40歳の宮ケ迫氏は、「日本では、ダイバーシティは単なるキャッチフレーズ」だと話す。 「その言葉が実現したときに生じる感情を、私は感じません。ダイバーシティとはみんな違うということですが、自分とまったく違う人と関係を持つというのはとても複雑なことです。日本で耳にするダイバーシティという言葉はリップサービスに過ぎず、人々はその複雑さをまったく理解していません」) 日本以外のルーツを持つ日本人の多くは、この無理解に当然のごとく直面しながら一生を過ごしている。毎日、会う人すべてに、自分は日本人だと主張しなければならない人たちもいる。 2020年のミス・ユニバース・ジャパンのファイナリストである上梨ライム氏でさえ、日本人として認められるには、少なくとも他の日本人と見分けがつかないような容姿でなければならない、という支配的な考えを打ち崩すことに、人生の大半を費やしてきた。残念なことに、こうした考えは混合的ルーツを持つ日本人の多くを排除している。 現在25歳の上梨氏は、ナイジェリア人と日本人の両親を持ち、岐阜で生まれ育った。彼女は、「日本人の多くが私のことを外国人と見ています」と言う。 「『私は日本人です』と言うと、みんな必ずびっくりします。頭の中ですでに、私のことを外国人だと判断しているからです。これは多分、あの応募者への吉野家の対応と同じです。ハーフの日本人は、純血の日本人からつねに外国人とみなされ、そうではないとつねに説明しなければなりません。私も毎日誰かに、母親が日本人だと説明しなければなりません。イライラさせられますし、疲れます」 あの応募者は自分の名前や性別を伏せたまま、ツイッターに吉野家からの不採用メッセージを投稿し、実質的に「ハーフだから、吉野家の採用基準を満たす日本人ではない」と告げられた心境を吐露している』、「日本で耳にするダイバーシティという言葉はリップサービスに過ぎず、人々はその複雑さをまったく理解していません」、「日本人として認められるには、少なくとも他の日本人と見分けがつかないような容姿でなければならない、という支配的な考え」、「こうした考えは混合的ルーツを持つ日本人の多くを排除している」、その通りだ。
・『「純粋な日本人」などどこにもいない Netflixの人気番組「ラブ・イズ・ブラインド」の出演者の1人、28歳の吉川プリアンカ氏は、インド人の父と日本人の母の娘で、ハーフであることを自然に受け入れている。彼女は吉野家の事件を耳にし、外国人労働者を積極的に受け入れようとする国としてはおかしな振る舞いだと感じた。外国人を受け入れるために手を尽くすというのとは、真逆のメッセージを発信してしまうではないか。 MUKOOMI社の創業者兼CEOであり、元ミス・ワールド日本代表でもある吉川氏は、「現在の社会は、外国人とみなされる人たちをあまり歓迎しません」と指摘する。「私たちは、国として変わらなければなりません。そうでなければ死んでしまいます。純粋な日本人などいないという事実を受け入れなければなりません。純粋な日本人などいないのです」。 「このままでは、自分の子どもは純血の日本人としか付き合わせない、結婚させないということが起きかねません。そして、純血の日本人を探すための専用アプリまでできるかもしれない。そんなのは気分が悪くなるようなことです。私たちはみんな人間です。日本はもっと心を開くべきではないでしょうか」) 「こうした体験は(心身に)蓄積されます。実力を見てもらうことさえできずに先入観で判断され、何分の一、何十分の一に減点されると、大きく傷つきます」と、話すのは、TELL(英語いのちの電話)でコミュニティサービスマネージャーを務める、混合的ルーツを持つ日系アメリカ人のセレナ・ホイ氏だ。 「それは、『どこの国の出身ですか?』というような無邪気な質問の場合もあれば、日本国籍があるにもかかわらず名前だけで就職を拒否されるといった露骨な行為の場合もあります。そうしたことが積み重なって、自分の居場所はない、歓迎されていないと感じるようになるのです」 「こうした断絶感や孤立感は、不安やうつといった精神的な問題を引き起こしたり、悪化させたりします」と、ホイ氏は指摘する。「もちろん、混合的ルーツを持つ人すべてが精神的な問題に直面しているわけではありませんが、TELLでは、文化の違いからくるストレスやプレッシャーを感じ、自分は社会から取り残されている、あるいは不適合者だと感じている人たちの話を聞くことがよくあります」』、「「現在の社会は、外国人とみなされる人たちをあまり歓迎しません」と指摘する。「私たちは、国として変わらなければなりません」、「TELLでは、文化の違いからくるストレスやプレッシャーを感じ、自分は社会から取り残されている、あるいは不適合者だと感じている人たちの話を聞くことがよくあります」、やはり問深刻な問題だ。
・『日本に少なからず起きている意識の「変化」 学生の投稿をきっかけに、SNS上で吉野家の対応への反発が生じた。性別不明のこの学生によると思われるツイートで、この応募者は日本国籍だと言っている。こうした反発は、今回のような事件をなくしたければ、こうした行為を軽蔑すべきだという意識が日本国内で高まっていることを示している。 吉川氏は、「この人の経験をとても気の毒に思います。私も経験しましたし、多くのハーフの人たちが経験しています。でも、多くの人が沈黙している中で、この人が声を上げたからこそ、メディアに取り上げられ、日本中の人たちがこの事件を話題にするようになりました。それが、変化を起こす方法です。誰かが勇気を持って立ち上がり、『これは間違っている!』と声を上げることが必要なのだと思います」と語る。 上梨氏もまた、日本国内のハーフの人数も知名度も増大しているため、事態は改善に向かうだろうと感じている。 「現在、日本には混合的ルーツを持つ子どもたちが多くいます。私の世代には、尊敬の対象となるハーフの先人たちがあまりいませんでした。でも、これからの世代には、自分たちと同じような容姿を持ち、日本での経験を理解してくれる多くの尊敬できる人たちがいるはずです。混合的ルーツを受け入れて、大切にし、素晴らしいことを成し遂げようと努力するように励ましてくれるでしょう」と上梨氏は言う。 吉野家の採用情報ページには、「組織の活性化を目的に、外国籍社員の積極的な登用を続けています」とある。宮ケ迫氏はこのことに期待している。「吉野家が外国人を採用すれば、すでに入社している人たちの声を聞くことができ、入社希望者への差別を防止し、今回のような事件の再発を防ぐことができるかもしれません」』、「日本国内のハーフの人数も知名度も増大しているため、事態は改善に向かうだろうと感じている」、本当に「改善」してほしいものだ。さもなければ、日本は世界から取り残されてしまうだろう。
先ずは、本年5月23日付け東洋経済オンライン「在日コリアンとの「共生」、考えるべきは日本人 『在日朝鮮人を生きる』著者、山本かほり氏に聞く」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/590485
・『日本で生活するエスニック集団の中でも、在日コリアンは歴史的にも人数的にも突出している。しかし、北朝鮮を祖国と考えている在日朝鮮人社会と日本社会の関係は、時に外交や安全保障における北朝鮮の動きが影を落とし、必ずしも良好とは言いがたい。関係改善に向け、「多数派」の日本人は何を心がけるべきか(Qは聞き手の質問、Aは山本氏の回答)。 Q:拉致問題や核・ミサイル問題など、日本にとって北朝鮮は脅威となっています。 A:外交・安保分野から朝鮮(北朝鮮)が「脅威だ」と感じる人が多いのはわかります。そこから派生した「北朝鮮フォビア」という言葉がありますが、この場合の「フォビア」とは、「北朝鮮は荒唐無稽な国で怖い」という嫌悪や恐怖感に加え、他者の排斥と蔑視を含んでいます。朝鮮と関係があるということだけで、在日朝鮮人へのあらゆる差別や偏見が許されるかのような風潮は決して受け入れられるものではありません。 Q:日朝関係の改善において、日本側の最大のネックは拉致問題ですが、北朝鮮は朝鮮高級学校(高校、以下朝鮮学校)の授業料無償化を重要視しています。 A:高校無償化は2010年に当時の民主党政権が打ち出しました。家庭の状況にかかわらず、すべての高校生などが安心して勉学に打ち込める社会をつくるのが目的でした。また無償化の適用には「教育内容や外交上の問題は考慮しない」との見解を文部科学省は示していました。これを踏まえると、朝鮮学校にも当然、無償化が適用されるべきなのです』、「無償化の適用には「教育内容や外交上の問題は考慮しない」との見解を文部科学省は示していました」、こんな「見解」を示していたとは、恥ずかしながら初めて知った。
・『授業料無償化をめぐる動き Q:民主党政権はその後、朝鮮学校への適用に慎重になり、結論を出せないまま政権が代わります。 A:12年末に自民党の下村博文・文科相は「拉致問題の進展がなく、日朝の国交もなく、朝鮮総聯(在日本朝鮮人総聯合会)との密接な関係が朝鮮学校にあるから無償化の対象とするには国民の理解を得られない」として授業料の無償化を見送りました。 Q:無償化を求める裁判が全国5カ所で行われましたが、裁判所もこれを認めませんでした。 A:国は無償化を適用しない理由を「朝鮮や朝鮮総聯との関係が深いので、無償化相当分として支給する金がきちんと授業料に充てられるのか確証が得られない」と述べました。先の下村氏の発言とは違う理由を裁判では挙げてきたのです。しかし、朝鮮学校が自治体からの補助金を学校運営以外に流用したとして行政処分を受けたことはこれまでに一度もありません。 政治・外交問題を理由に無償化を見送ったのに、それを裁判で主張しなかったのは、日本政府の欺瞞です。 Q:「朝鮮学校が北朝鮮や朝鮮総聯と関係を切ればいいのでは」という指摘も根強くあります。 A:朝鮮学校が朝鮮を「支柱」とした教育を行っていることは否定しません。だからといって「関係を切らなければ、(何かを)してあげない」という考え方はおかしい。「関係を切ればいい」という指摘には、なぜそうした関係があるのかという問いが欠けています。) 朝鮮学校は戦後すぐに各地で設立された「国語講習所」が前身です。在日朝鮮人が中心となり、植民地時代にできなかった言語や文化、歴史の回復を目指そうとしたものでした。そして1946年に在日本朝鮮人連盟(49年解散)によって教育機関としての体制が整えられましたが、48年にはGHQ(連合国軍総司令部)による学校閉鎖令を受けました。 その後、朝鮮と密接な関係を持つ朝鮮総聯を中心に在日朝鮮人自ら教員を養成し、教材を作成したりしながら教育を行い、後に朝鮮本国からも財政支援を受けながら学校を運営してきた。そういった歴史的経緯を踏まえると、簡単に「教育内容を変えよ」ということは難しいことなのです』、「政治・外交問題を理由に無償化を見送ったのに、それを裁判で主張しなかったのは、日本政府の欺瞞です」、「朝鮮総聯を中心に在日朝鮮人自ら教員を養成し、教材を作成したりしながら教育を行い、後に朝鮮本国からも財政支援を受けながら学校を運営してきた。そういった歴史的経緯を踏まえると、簡単に「教育内容を変えよ」ということは難しい」、その通りだ。
・『少数派の自決を尊重 Q:在日朝鮮人の現状に気持ちを寄せ、無償化を支持・支援する日本人もいます。しかし、彼らの中にも北朝鮮との関係性を問題にする人が少なくはないですね。 A:そういった支援者の多くがリベラルな思想や価値観を持っているのですが、そうした考えは全体主義、権威主義的に見える朝鮮の現状と真っ向から対立します。そのため、「朝鮮との関係はよくない」と言いたいのでしょう。ただ多数派側の支援者が、マイノリティー側に自身の考えや価値観を押し付けることが公平・公正な行動なのか。マイノリティーが「自分たちのことは自分たちで決めていく」というのは原則ではないでしょうか。これは、朝鮮人に限ったことではありません。 Q:実際に、朝鮮学校の授業は日本政府が指摘するほど北朝鮮寄りの内容なのでしょうか。 A:朝鮮高校の教室には金日成(キムイルソン)・金正日(キムジョンイル)の肖像画が飾られています。そして、朝鮮の歴史観や社会観に沿った教育をしています。しかし同時に、現在では子どもたちが日本社会で生きていくことを前提とした教育も行っているのです。2000年代初頭に、そのような方向でカリキュラムも大幅に改正されています。 朝鮮高校の生徒たちは、「日本にいること」についての疑問や葛藤を抱えながら、自分のルーツを知り、学ぶために朝鮮学校の門をくぐっていきます。また、将来は日本の大学への進学や会社に就職することも考えてはいますが「自分が朝鮮人であることは忘れない」。これが彼らの本音です。彼らは彼らなりに、日本での同胞社会を守りたい。そのために、朝鮮学校で学ぶのです。 Q:戦後70年以上経っても、在日朝鮮人との壁や葛藤はなくなりそうにありません。 A:それがあるのかどうか疑問ですが、日本の外国人・移民政策は「ニューカマー」と呼ばれる人たちを主眼とし、在日朝鮮人など長年日本に定住している外国人への視点が抜けています。日本にすでにある構造を揺るがさない範囲でしか、多文化共生を考えていません。少子化による移民の受け入れなど、より多くの外国人や文化を受け入れざるをえないのであれば、植民地主義の払拭など既存の構造を超えた社会のあり方をきちんと考えるべきです。そうでないと単なる“お花畑”にしかならないでしょう』、「日本の外国人・移民政策は「ニューカマー」と呼ばれる人たちを主眼とし、在日朝鮮人など長年日本に定住している外国人への視点が抜けています」、「植民地主義の払拭など既存の構造を超えた社会のあり方をきちんと考えるべき」、同感である。
次に、5月29日付け東洋経済オンラインが掲載した作家のバイエ・マクニール氏による「日本で起こる「非伝統的日本人」への無意識な差別 吉野家の面接拒否は氷山の一角ではないか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/592797
・『牛丼チェーンの「吉野家」が、ハーフの大学生を外国籍と判断し、就職説明会への参加を拒否したことが少し前に話題になった。この推測による判断は、学生が提出した経歴情報に基づくものだった。報道などによると、吉野家の採用担当者は、応募者が少なくとも「純粋な」日本人ではないことに気づき、吉野家で内定が取れても外国籍の方の就労ビザ取得は大変難しいため、予約はキャンセルさせていただく、と告げたという。 こうした思い込みは、応募者の外見が一般的な日本人のそれでない場合や、名前がめずらしかったり、カタカナ表記だったりする場合に起こる。多くの採用担当者にとってこうした事柄は、応募者が最も厳密な意味での純粋な日本人でないことを示すのに十分だろう』、事実を確認もせず、「経歴情報」だけで「推測による判断」し、「外国籍と判断し、就職説明会への参加を拒否」したのは、基本的動作からして信じ難いお粗末さだ。
・『“非伝統的”日本人にとってはめずらしくない体験 残念なことに、今回の事件は非伝統的、混合的ルーツを持つ多くの日本人にとってめずらしい出来事ではなく、それは、ダイバーシティ(多様性)を受け入れ、促進するという前提に反している。日本では最近、「ダイバーシティ」や「インクルージョン」といった言葉がよく使われているが、その本当の意味や、それを日本で実現するために必要な活動については、活発に議論されてはいないと感じている人たちもいる。 日系ブラジル人の宮ケ迫ナンシー理沙氏もその1人だ。非伝統的日本人の若者が安心して集まれる、エンカウンターキャンプのオーガナイザーだった現在40歳の宮ケ迫氏は、「日本では、ダイバーシティは単なるキャッチフレーズ」だと話す。 「その言葉が実現したときに生じる感情を、私は感じません。ダイバーシティとはみんな違うということですが、自分とまったく違う人と関係を持つというのはとても複雑なことです。日本で耳にするダイバーシティという言葉はリップサービスに過ぎず、人々はその複雑さをまったく理解していません」) 日本以外のルーツを持つ日本人の多くは、この無理解に当然のごとく直面しながら一生を過ごしている。毎日、会う人すべてに、自分は日本人だと主張しなければならない人たちもいる。 2020年のミス・ユニバース・ジャパンのファイナリストである上梨ライム氏でさえ、日本人として認められるには、少なくとも他の日本人と見分けがつかないような容姿でなければならない、という支配的な考えを打ち崩すことに、人生の大半を費やしてきた。残念なことに、こうした考えは混合的ルーツを持つ日本人の多くを排除している。 現在25歳の上梨氏は、ナイジェリア人と日本人の両親を持ち、岐阜で生まれ育った。彼女は、「日本人の多くが私のことを外国人と見ています」と言う。 「『私は日本人です』と言うと、みんな必ずびっくりします。頭の中ですでに、私のことを外国人だと判断しているからです。これは多分、あの応募者への吉野家の対応と同じです。ハーフの日本人は、純血の日本人からつねに外国人とみなされ、そうではないとつねに説明しなければなりません。私も毎日誰かに、母親が日本人だと説明しなければなりません。イライラさせられますし、疲れます」 あの応募者は自分の名前や性別を伏せたまま、ツイッターに吉野家からの不採用メッセージを投稿し、実質的に「ハーフだから、吉野家の採用基準を満たす日本人ではない」と告げられた心境を吐露している』、「日本で耳にするダイバーシティという言葉はリップサービスに過ぎず、人々はその複雑さをまったく理解していません」、「日本人として認められるには、少なくとも他の日本人と見分けがつかないような容姿でなければならない、という支配的な考え」、「こうした考えは混合的ルーツを持つ日本人の多くを排除している」、その通りだ。
・『「純粋な日本人」などどこにもいない Netflixの人気番組「ラブ・イズ・ブラインド」の出演者の1人、28歳の吉川プリアンカ氏は、インド人の父と日本人の母の娘で、ハーフであることを自然に受け入れている。彼女は吉野家の事件を耳にし、外国人労働者を積極的に受け入れようとする国としてはおかしな振る舞いだと感じた。外国人を受け入れるために手を尽くすというのとは、真逆のメッセージを発信してしまうではないか。 MUKOOMI社の創業者兼CEOであり、元ミス・ワールド日本代表でもある吉川氏は、「現在の社会は、外国人とみなされる人たちをあまり歓迎しません」と指摘する。「私たちは、国として変わらなければなりません。そうでなければ死んでしまいます。純粋な日本人などいないという事実を受け入れなければなりません。純粋な日本人などいないのです」。 「このままでは、自分の子どもは純血の日本人としか付き合わせない、結婚させないということが起きかねません。そして、純血の日本人を探すための専用アプリまでできるかもしれない。そんなのは気分が悪くなるようなことです。私たちはみんな人間です。日本はもっと心を開くべきではないでしょうか」) 「こうした体験は(心身に)蓄積されます。実力を見てもらうことさえできずに先入観で判断され、何分の一、何十分の一に減点されると、大きく傷つきます」と、話すのは、TELL(英語いのちの電話)でコミュニティサービスマネージャーを務める、混合的ルーツを持つ日系アメリカ人のセレナ・ホイ氏だ。 「それは、『どこの国の出身ですか?』というような無邪気な質問の場合もあれば、日本国籍があるにもかかわらず名前だけで就職を拒否されるといった露骨な行為の場合もあります。そうしたことが積み重なって、自分の居場所はない、歓迎されていないと感じるようになるのです」 「こうした断絶感や孤立感は、不安やうつといった精神的な問題を引き起こしたり、悪化させたりします」と、ホイ氏は指摘する。「もちろん、混合的ルーツを持つ人すべてが精神的な問題に直面しているわけではありませんが、TELLでは、文化の違いからくるストレスやプレッシャーを感じ、自分は社会から取り残されている、あるいは不適合者だと感じている人たちの話を聞くことがよくあります」』、「「現在の社会は、外国人とみなされる人たちをあまり歓迎しません」と指摘する。「私たちは、国として変わらなければなりません」、「TELLでは、文化の違いからくるストレスやプレッシャーを感じ、自分は社会から取り残されている、あるいは不適合者だと感じている人たちの話を聞くことがよくあります」、やはり問深刻な問題だ。
・『日本に少なからず起きている意識の「変化」 学生の投稿をきっかけに、SNS上で吉野家の対応への反発が生じた。性別不明のこの学生によると思われるツイートで、この応募者は日本国籍だと言っている。こうした反発は、今回のような事件をなくしたければ、こうした行為を軽蔑すべきだという意識が日本国内で高まっていることを示している。 吉川氏は、「この人の経験をとても気の毒に思います。私も経験しましたし、多くのハーフの人たちが経験しています。でも、多くの人が沈黙している中で、この人が声を上げたからこそ、メディアに取り上げられ、日本中の人たちがこの事件を話題にするようになりました。それが、変化を起こす方法です。誰かが勇気を持って立ち上がり、『これは間違っている!』と声を上げることが必要なのだと思います」と語る。 上梨氏もまた、日本国内のハーフの人数も知名度も増大しているため、事態は改善に向かうだろうと感じている。 「現在、日本には混合的ルーツを持つ子どもたちが多くいます。私の世代には、尊敬の対象となるハーフの先人たちがあまりいませんでした。でも、これからの世代には、自分たちと同じような容姿を持ち、日本での経験を理解してくれる多くの尊敬できる人たちがいるはずです。混合的ルーツを受け入れて、大切にし、素晴らしいことを成し遂げようと努力するように励ましてくれるでしょう」と上梨氏は言う。 吉野家の採用情報ページには、「組織の活性化を目的に、外国籍社員の積極的な登用を続けています」とある。宮ケ迫氏はこのことに期待している。「吉野家が外国人を採用すれば、すでに入社している人たちの声を聞くことができ、入社希望者への差別を防止し、今回のような事件の再発を防ぐことができるかもしれません」』、「日本国内のハーフの人数も知名度も増大しているため、事態は改善に向かうだろうと感じている」、本当に「改善」してほしいものだ。さもなければ、日本は世界から取り残されてしまうだろう。
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