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ノーベル賞受賞(その6)(本庶氏ノーベル賞で浮き彫り 医学界の「免疫療法」への歪んだ評価、ノーベル賞で脚光 「小野薬品」の期待と現実 「オプジーボ」拡大に喜んでばかりいられない、安倍政権で研究費ジリ貧 日本からノーベル賞が出なくなる) [科学技術]

ノーベル賞受賞については、2016年10月27日に取上げた。今年の受賞を踏まえた今日は、(その6)(本庶氏ノーベル賞で浮き彫り 医学界の「免疫療法」への歪んだ評価、ノーベル賞で脚光 「小野薬品」の期待と現実 「オプジーボ」拡大に喜んでばかりいられない、安倍政権で研究費ジリ貧 日本からノーベル賞が出なくなる)である。

先ずは、ノンフィクションライターの窪田順生氏が10月4日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「本庶氏ノーベル賞で浮き彫り、医学界の「免疫療法」への歪んだ評価」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/181294
・『本庶祐・京都大学特別教授のノーベル賞受賞に日本中が沸く中、にわかに免疫療法が誉め称えられるという現象が起きている。無論、インチキな免疫療法もあるが、エビデンスに固執するがあまりに、免疫療法の持つ可能性を否定してきた日本の医療界は、大きな問題を抱えているのではないか』、興味深そうだ。
・『山中教授の受賞時にもノーベル賞詐欺が流行った   「ノーベル賞詐欺」の毒牙にかかる人が現れてしまうのだろうか。 本庶佑・京都大特別教授がノーベル医学生理学賞を受賞したことで、にかわに「免疫療法」に注目が集まっているが、それに乗じて「インチキ免疫療法詐欺」が増加すると一部医療関係者から警鐘が鳴らされているのだ。 ご存じのように、ネット上には既に、怪しげな免疫療法をうたう自由診療のクリニックが溢れている。キノコを食べて免疫力アップ、水素水でがんが消えたなどなど、本庶氏が発見した免疫を抑制する効果をもつ分子・PD-1などと接点ゼロの「民間療法」だ。 そんな怪しいクリニックが「ノーベル賞で世界も注目」「あの本庶佑氏も認めた」などとブームに便乗した虚偽広告を行い、がん治療に悩む方たちを餌食にするのではないかというのである。 心配しすぎだと思うかもしれないが、実際には過去にも、ノーベル賞が詐欺の「ネタ」にされた例がいくつもある。 たとえば2012年、山中伸弥氏が、iPS細胞の作成成功によって、ノーベル医学生理学賞を受賞した時も、新しく研究施設ができるので投資をしないかと持ちかける「iPS詐欺」が急増。国民生活センターには、2014年までに400件超えの被害が寄せられた。 プロの詐欺師は、「日本人の新しもの好き」の心理を巧みに突いてくるのだ。 今回の受賞でも、本庶氏の研究を活用したがん治療薬「オプジーボ」の製造・販売元である小野薬品工業の株に買いが殺到して、年初来高値を更新している。ここまで「引きのあるネタ」を利用しない手はないのだ。 そういう意味では、一部医療関係者のご心配も当然で、警鐘を鳴らしていただくのもありがたい限りである。メディアも、本庶氏が熱心な阪神ファンだとか亭主関白だとかいう話で大騒ぎをするのではなく、今回のノーベル賞に関連する「免疫療法」は、保険適応される医療機関のみで受けるべきであり、怪しげな詐欺に引っかからないようにと呼びかけていただきたい』、「iPS詐欺」が2014年までに400件超えの被害とは驚いた。確かに「インチキ免疫療法」のPRは溢れている。
・『免疫療法は「アヤしい」のか? 標準治療に固執する医療界  ただ、その一方で、医療関係者の方たちは「あれはインチキだ」「これは怪しい」という詐欺の啓発に力を入れることよりも、もっとやらなくてはいけないことがあるのではないのかという気もしている。 それは、抗がん剤が効かない患者やその家族に対して、免疫療法という選択肢があるということを説明し、この治療をもっと多くの人が受けることができるよう啓発に務めていただくことだ。 本庶氏がノーベル賞を受賞してから、マスコミは免疫療法について「最新のがん医療」だと盛んにヨイショしているが、実はちょっと前までは「エビデンスがない治療」と、イロモノ扱いをしていた。 なぜかという日本の医療界の“メインストリーム”が、そのように触れ回っていたからだ。 例えば、本連載で少し前、東京・有明にある公益財団法人がん研究会「がんプレシジョン医療研究センター」の中村祐輔所長のことを取り上げた・・・リキッドバイオプシーと、ネオアンチゲン療法という、最新の免疫療法を引っさげて、6年ぶりにアメリカから帰国をした中村氏は、こう述べている。 「シカゴにいる間もメールなどで、多くのがん患者やその家族の方からの相談を受けましたが、気の毒になるほど救いがない。原因は国の拠点病院。標準治療のガイドラインに固執するあまり、“がん難民”をつくり出している自覚がありません。こういう人たちが医療界のど真ん中にいることが、日本のがん患者にとって最大の不幸です」(中村氏) 日本のがん医療では、外科治療(手術)、放射線治療、化学療法(抗がん剤治療)の3つが「標準治療」と定められている。免疫療法は今回、本庶氏の受賞によって掌返しで、「第4の治療」などとおだてられるようになったが、実はがん医療現場ではいまだに、「標準」から大きく外れた「怪しい治療」扱いされているのだ』、「国の拠点病院。標準治療のガイドラインに固執するあまり、“がん難民”をつくり出している自覚がありません」とは嘆かわしいことだ。
・『免疫療法が統計上の問題をクリアできない理由  中村氏のブログを読めば、その厳しい事実がわかる。先月22日のエントリーでは、山本KID徳郁さんが亡くなったことを受けて、ある事情から彼が「日本の医療に希望を見いだせず、グアムに向かった」ことを知っていたという中村氏は、こんな憤りを記している。 「そして、小さな子どもさんたちがいる40歳代の胃がん患者さんが、同じような状況で、本人や家族が望んでいた免疫療法を受けることなく、8月の終わりころ、この世を去っていった。今の日本の制度では、胃がんの場合、2種類の抗がん治療を受けた後にしか、免疫チェックポイント抗体治療を保険診療として受けることができない」 「え?ノーベル賞もとった治療法なんだし、本人が希望してるんだからすぐに最初から受けさせてやればいいじゃん」と思うかもしれないが、厚生労働省の免疫チェックポイント抗体の胃がんに対する最適使用推進ガイドライン(平成30年8月改定)に、そのように定められているのだ。 もし胃がんの方が、「オプジーボを使いたい」と強く希望をしても問答無用で、「いやいや、まずは抗がん剤から始めましょうか」となってしまう。つまり、抗がん剤の副作用に散々苦しみ、がんには効かずに進行して、患者さん自身の免疫も低下したところでようやく、免疫チェックポイント抗体にたどり着く、という焼け石に水的ながん治療となってしまうのだ。 なぜこんなことになってしまうのかというと、免疫療法は抗がん剤ほどには、「有効性が確立されていない」からだ。薬の「有効性」というのは極端な話、何万人にワッと飲ませたら、そのうち2割には効かなかったが8割くらいには効いた、といった具合にデータを取るという、「統計学」である。 世界のがん医療の現場では当たり前のように免疫療法の効果が認められ、本庶氏はノーベル賞も受賞したのだが、免疫療法はこの統計上の問題がクリアできていない。なぜかというと、今回の受賞に端を発する”免疫療法ブーム”の中で報じられているように、これは「化学薬品ががんを殺す」のではなく、「個々の人間が持つ免疫ががんを殺す」からだ。 免疫は個人によって違う。よって、免疫チェックポイント抗体の効き方も当然、個人差が出てくる。そうなると、膨大な数の人に化学薬品を飲ませて経過観察をする大規模治験のように、スパッとイエス・ノーが出ない。「統計上の問題」がなかなかクリアできないのである。 そういう理屈を聞けば、免疫チェックポイント抗体に「有効性が確立されていない」というのがかなり不毛な話だということがわかるが、一部の医療関係者はこの「統計上の問題」を取り上げて、「エビデンスのない怪しい治療」とディスってきた』、保険適用するからには、一定のエビデンスが必要なのだろうが、何らかの工夫はできないのだろうか。
・『免疫療法を受けたいと言うと医者から見放されてしまう  そのため、「研究室内ではネズミでそれっぽい結果が出ているけど、人間の患者に対しては眉唾だよね」と蔑む医師もいた。 製薬業界で、オプジーボの開発を続けてきた小野薬品工業が「変人」扱いされていたように、世界では競い合うように研究されている免疫療法は、日本の医療界では「エビデンスの乏しい治療」と軽んじられてきたのだ。 「本庶氏のノーベル賞でインチキ免疫療法までもが盛り上がって心配だ」と騒ぐことも重要かもしれないが、その前に「免疫療法を受けたい」というがん患者の声を握り潰してきた過去を反省して、「標準治療至上主義」ともいうべき教条主義的思想を改めることの方が先のような気がしてならない。 少し前、「原発不明がん」という治療が難しいがんで「ステージ4」と診断されて余命宣告も受けたが、免疫療法によって見事、生還を果たした60代男性から、耳を疑うような話を聞いた。 この男性が回復してほどなく、古くからの友人2人が相次いでがんだと診断されてしまった。両者とも進行が早く、医師から「もう効く抗がん剤はありません」と非情な宣告をされた。そこで、彼らは藁をも掴む思いで、免疫療法を受けさせてほしいと医師に頼んだ。何しろ、自分たちの友人が免疫療法で生還をしたのだ。そこに「俺も」という一筋の希望を持つのは当然のことだ。 だが、2人の担当医から返ってきたのは、耳を疑うような言葉だった。 「そういう治療を望まれるのなら、もうここには来ないでいただきたい」 結局、医師から見放されることを恐れたこの2人は、免疫療法を受けたいという気持ちを抱えながら、そのまま還らぬ人となった。 ノーベル賞受賞後、マスコミは「本庶氏の研究によって、多くの患者が救われた!」とお祭り騒ぎをしている。だが、実は本庶氏の研究を知り、そのような治療を自分も受けたいと強く望みながら、亡くなった患者の方が、救われた人よりもはるかに大勢いることもしっかりと報道すべきではないのか。 インチキ免疫療法に引っかかる人たちの多くは、抗がん剤が効かず、自分の医師から「免疫療法なんかエビデンスのない怪しいものです」と諭され、誰にも頼れなくなった「がん難民」である。その弱みにつけ込む詐欺師が悪いのは当然だが、ではそこまで患者や家族をまともな判断ができなくなるまで追いつめたのは、いったい誰なのかという問題もある。 あっちの免疫療法はインチキだ、本庶氏の免疫療法は本物だ、騙されないように気をつけようと触れ回るだけでは「がん難民」を救うことはできない。エビデンスに代表される、「数字で証明できる有効性」のみに固執するのではなく、今そこでがんで苦しむがん患者やその家族に、どうにか手を差し伸べる方法を考えることが、「医療」のやるべきことなのではないだろうか』、説得力のある指摘で、その通りだ。

次に、10月4日付け東洋経済オンライン「ノーベル賞で脚光、「小野薬品」の期待と現実 「オプジーボ」拡大に喜んでばかりいられない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/241076
・『・・・一度は開発を断念  がん細胞は免疫の働きにブレーキをかける。本庶教授が解明したのは、免疫細胞の表面に「PD-1」というタンパク質があり、がん細胞がPD-1と結び付くことで免疫機能を抑制しているメカニズムだ。逆にPD-1と結合する抗体を開発し、がん細胞と結び付きができないようにすれば、免疫細胞ががん細胞を攻撃できるようになる。 小野薬品は、本庶教授の師匠である早石修教授の代から京大と関係があった。この縁から本庶教授と共同で免疫抑制作用に関する特許を出願し、実用化のために臨床開発(治験)と販売のパートナー探しに奔走した。 国内製薬大手など10社以上に声をかけたが、1年余りは成果も皆無。すべての企業に断られてしまった。小野薬品も1度は本庶教授の開発要請に対し、ノーと言った経緯がある。 しかし救世主が現れる。別のがん免疫治療薬の研究開発に乗り出していたアメリカの医療ベンチャーのメダレックス社が興味を示し、開発パートナーに名乗りを上げたのだ。これを機に、小野薬品も前言を翻し「オプジーボ」の治験に踏み切った。2006年ころのことだ。 膨大な開発費は、中堅の小野薬品には大きなリスクとなる。開発にゴーを出すには、リスクを軽減するためのパートナーの確保が不可欠だった。その後、メダリックスは2009年にアメリカの製薬大手ブリストルマイヤーズ・スクイーブ(BMS)が買収。小野薬品は結果的に、強力な開発パートナーを得ることになった。 こうした紆余曲折を経て、オプジーボが世に出たのが2014年。PD-1の発見から22年の歳月が経っていた』、発見からスポンサー企業が見つかるまでに10年も要したというのは、いくら画期的な治療法とはいえ、日本の製薬業界の保守性を表しているのだろう。
・『小野薬品の収益は急拡大  上市後、小野薬品の収益は大きく飛躍した。2015年3月期から2017年3月期までに売上高は1357億円から2448億円に、営業利益は147億円から722億円に急拡大した。 最初に皮膚がんの1つである悪性黒色腫(メラノーマ)の治療薬として承認され、100ミリグラム瓶1本の価格が約73万円だった。当初は高額薬価の批判が強く、2017年2月に50%、さらに2018年4月には約24%もの大幅な価格の引き下げに見舞われた(今年11月も引き下げの予定)。 それでも同薬が小野薬品の最大の牽引役であることに変わりはない。適用のがん種が増えているからだ。現在ではメラノーマ、腎がん、頭頸部がん、胃がん、肺がんなど7種類のがんや、療法も含めると9つの適用で承認済み。医者から処方される患者数、使用量が急拡大し、強烈な単価下落を補っている。 オプジーボの売り上げは2019年3月期に900億円に上る見通し。それとは別にBMSによるオプジーボの海外販売額に応じたロイヤルティ収入があり、その額は推計で500億~550億円に上る。 未承認の肝がん、食道がん、大腸がんなどへの適応拡大に向けての国内治験も、30件前後が進行中。国内での販売拡大はまだ続きそうだ。 それでも今の小野薬品には、オプジーボがもたらす栄華に酔いしれる暇はない。なぜか。第1にはオプジーボが切り開いた成長市場、がん免疫治療薬の間の競争が激化していることだ。 現在では小野薬品―米BMS連合のほかに、米メルク、英アストラゼネカ(AZ)、スイス・ロッシュ―中外製薬連合、米ファイザー―独メルク連合と、グローバル市場で5陣営がこの成長市場でしのぎを削っている。 中でも強力なライバルが、米メルクだ。オプジーボと同じ受容体を標的にした「キイトルーダ」とは世界販売首位の座を激しく競い合っている』、競争激化は当然だろうが、ライバルに日本の大手製薬会社が1社しか入ってない、というのは情けない。
・『ライバルがアメリカで先行  市場の注目は、患者数の多い肺がん分野に集まる。キイトルーダは世界最大の市場であるアメリカで、肺がんの約8割を占める非小細胞肺がん(NSLC)の1次治療の販売承認を得ている。 1次治療薬であれば、治療の当初から薬を投与でき、販売拡大効果が格段に大きい。一方、オプジーボは2016年の単剤治験で主要項目を達成出来ず、アメリカでのNSLCの1次治療の承認取得に失敗している(ただし今年6月にBMSのがん免疫治療薬「ヤーボイ」との併用療法でNSLCの1次治療の適応承認を申請)。 直近の2018年4~6月期の米BMSの「オプジーボ」の世界売り上げは16.27億ドル。対する米メルクの「キイトルーダ」は、同16.67億ドルとなった。鼻の差ではあるが、四半期ベースで初めてキイトルーダの売り上げがオプジーボを上回った。 米BMSの売り上げには小野薬品の日本と韓国・台湾での販売額228億円は含まれていない。これを含めれば、全体ではまだオプジーボのほうが上回っている。ただ、勢いがあるのはキイトルーダで、市場では2018年通期では首位逆転の見方が強まっている。 もう1つのポイントが、単剤ではなく、ほかのがん治療薬との併用療法の拡大に治験競争の舞台が移りつつあることだ。 確かに、オプジーボなどのがん免疫治療薬はがん治療に革命をもたらした。一般的にはほかの抗がん剤と比べて投薬効果のある患者の比率(奏効率=がん細胞が一定以上縮小する患者数の比率)は高いと言われる。だが、それでも奏効率は現状で2~3割にとどまっている。 そうした弱点をカバーするのが、併用療法だ。働きの違うほかの治療薬と併用することで、奏効率や生存率などの効能を高める療法だ。 米メルクはここ1年強の間に、英AZとの間で最大約9000億円、エーザイとの間では最大6100億円の大型業務提携を結んだ。英AZの抗がん剤「リムパーザ」、エーザイの同「レンビマ」との併用療法で、グローバルでの共同治験や販売提携を進める構えだ。 実際、レンビマとの併用療法の治験では、子宮内膜がんなどで効果が現れる患者の比率が増えた。被験者のがんが悪化しない期間の平均値も7.4カ月となるなど、単剤の効果を上回る数値が出ている。 併用療法の拡大には資本力、規模の大きさが物を言う可能性がある。米メルクの戦略にもその狙いがある。その点で、米メルクの動きに小野薬品―BMS連合がやや遅れを取っていることは否定できない。さらに牙城だった国内市場には、ロシュ―中外製薬が新薬を投入、米メルク(国内はMSD)も攻勢を強めている。 小野薬品にとって悩ましいのは、国内や韓国・台湾の治験・販売は小野薬品が主導できても、アメリカや欧州など海外市場の大半ではBMSに頼らざるを得ない点だ』、「BMSに頼らざるを得ない」のが果たして「悩ましい」のだろうか。中堅の小野薬品にとっては任せる方が賢明なのではなかろうか。
・『この3年でMRを5割増員  もちろん、小野薬品とて手をこまぬいてはいない。米BMSのがん免疫治療薬・ヤーボイとの併用療法の治験では、8月下旬に国内で「腎細胞がん」の1次治療で承認を取得した。エーザイ、武田薬品工業、第一三共とも併用治験を進めつつある。 小野薬品は過去3年間でMR(医薬情報担当者)を5割増員、今期中に280人にまで増やす。適応拡大に合わせ、専門性の強いがん専門病院・医師への営業を強化するためだ。 小野薬品の今期の研究開発費は700億円。対売上比率で25%を計画する。2割が標準とされるメガファーマに比べても、研究開発志向は高い。それでも絶対額ではメガはおろか国内製薬大手にも劣る。しかもその多くが、次々と続くオプジーボの治験に費やされる。 「オプジーボに代わるような商品ができればいいけど、そういうことは難しい」。関係者のつぶやきは、そのまま小野薬品の置かれた苦悩を表す。「オプジーボ」頼みはいつか脱却しなければいけないが、当面は「オプジーボ」強化に頼らざるをえない。小野薬品はそんなジレンマにいる』、中堅製薬会社の宿命だろう。

第三に、10月4日付け日刊ゲンダイ「安倍政権で研究費ジリ貧 日本からノーベル賞が出なくなる」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/238713/1
・『「基礎研究をシステマチックかつ長期的な展望でサポートして、若い人が人生を懸けてよかったと思えるような国になることが重要だ」――。ノーベル医学生理学賞の受賞から一夜明けた2日、京大の本庶佑特別教授はそう語った。 現状はどうなのか。研究開発費の推移を調べると、お寒い状況が浮き上がった。 経産省が今年2月にまとめた調査によると、日本の官民合わせた研究開発費総額は、2007年度以降、17兆~19兆円で推移している。つまり、10年以上横ばいで増えていないのだ。企業の儲けは内部留保に向かい、研究開発に投じられていないことがよく分かる。 さらに驚くのが、研究開発費の政府負担割合だ。日本はわずか15.41%で、主要国から大きく引き離されて最下位(別表)。しかも、安倍政権発足前は16%超だったのに、発足後の2013年から右肩下がりなのだ』、
・『「目先のことしか頭にない安倍政権は、研究開発とりわけ、基礎研究の重要性をまったく理解していません。一方で、軍事強化につながる基礎研究には力を入れています」(経済評論家・斎藤満氏) 安倍政権は2015年度から「安全保障技術研究推進制度」を導入。国の防衛分野の研究開発に役立つ基礎研究を民間企業や大学に委託、カネを出す制度で、“研究者版経済的徴兵制”といわれている。軍事目的のための科学研究を行わない方針の日本学術会議は反発しているが、16年度予算6億円に対し、17年度は110億円に急増している。 「本庶さんは今年、ノーベル賞を受賞しましたが、何十年か前に、基礎研究にしっかり取り組めた環境があったからです。現在の安倍政権のような基礎研究に対するスタンスでは将来、ノーベル賞受賞者が出なくなるだけでなく、もはや日本は技術立国とは言えなくなってしまいます」(斎藤満氏) 技術立国から軍事大国へ――早く、安倍首相を引きずり降ろさないとそんな国になってしまう』、「技術立国から軍事大国へ」というのはうすら寒い悪夢だ。日本の将来のノーベル賞受賞が厳しいことは、このブログの2015年10月18日でも取上げたので、参考にしてほしい。
タグ:東洋経済オンライン 日刊ゲンダイ 免疫療法 ノーベル賞受賞 ダイヤモンド・オンライン 窪田順生 (その6)(本庶氏ノーベル賞で浮き彫り 医学界の「免疫療法」への歪んだ評価、ノーベル賞で脚光 「小野薬品」の期待と現実 「オプジーボ」拡大に喜んでばかりいられない、安倍政権で研究費ジリ貧 日本からノーベル賞が出なくなる) 「本庶氏ノーベル賞で浮き彫り、医学界の「免疫療法」への歪んだ評価」 本庶祐 インチキな免疫療法 エビデンスに固執するがあまりに、免疫療法の持つ可能性を否定してきた日本の医療界は、大きな問題を抱えているのではないか 山中教授の受賞時にもノーベル賞詐欺が流行った ブームに便乗した虚偽広告を行い、がん治療に悩む方たちを餌食にするのではないか プロの詐欺師は、「日本人の新しもの好き」の心理を巧みに突いてくるのだ 免疫療法は「アヤしい」のか? 標準治療に固執する医療界 はちょっと前までは「エビデンスがない治療」と、イロモノ扱いをしていた 国の拠点病院。標準治療のガイドラインに固執するあまり、“がん難民”をつくり出している自覚がありません 日本の医療界の“メインストリーム”が、そのように触れ回っていたからだ 日本のがん医療では、外科治療(手術)、放射線治療、化学療法(抗がん剤治療)の3つが「標準治療」と定められている はがん医療現場ではいまだに、「標準」から大きく外れた「怪しい治療」扱いされているのだ 免疫療法が統計上の問題をクリアできない理由 免疫は個人によって違う。よって、免疫チェックポイント抗体の効き方も当然、個人差が出てくる。そうなると、膨大な数の人に化学薬品を飲ませて経過観察をする大規模治験のように、スパッとイエス・ノーが出ない 免疫療法を受けたいと言うと医者から見放されてしまう 、「数字で証明できる有効性」のみに固執するのではなく、今そこでがんで苦しむがん患者やその家族に、どうにか手を差し伸べる方法を考えることが、「医療」のやるべきことなのではないだろうか 「ノーベル賞で脚光、「小野薬品」の期待と現実 「オプジーボ」拡大に喜んでばかりいられない」 免疫細胞の表面に「PD-1」というタンパク質があり、がん細胞がPD-1と結び付くことで免疫機能を抑制しているメカニズム PD-1と結合する抗体を開発し、がん細胞と結び付きができないようにすれば、免疫細胞ががん細胞を攻撃できるようになる 国内製薬大手など10社以上に声をかけたが、1年余りは成果も皆無。すべての企業に断られてしまった。小野薬品も1度は本庶教授の開発要請に対し、ノーと言った経緯がある アメリカの医療ベンチャーのメダレックス社が興味を示し、開発パートナーに名乗りを上げたのだ これを機に、小野薬品も前言を翻し「オプジーボ」の治験に踏み切った。2006年ころのことだ メダリックスは2009年にアメリカの製薬大手ブリストルマイヤーズ・スクイーブ(BMS)が買収 小野薬品は結果的に、強力な開発パートナーを得ることになった オプジーボが世に出たのが2014年。PD-1の発見から22年の歳月が経っていた 小野薬品の収益は急拡大 がん免疫治療薬の間の競争が激化 小野薬品―米BMS連合のほかに、米メルク、英アストラゼネカ(AZ)、スイス・ロッシュ―中外製薬連合、米ファイザー―独メルク連合と、グローバル市場で5陣営がこの成長市場でしのぎを削っている 米メルクだ。オプジーボと同じ受容体を標的にした「キイトルーダ」とは世界販売首位の座を激しく競い合っている ライバルがアメリカで先行 オプジーボは2016年の単剤治験で主要項目を達成出来ず、アメリカでのNSLCの1次治療の承認取得に失敗 のがん免疫治療薬「ヤーボイ」との併用療法でNSLCの1次治療の適応承認を申請 単剤ではなく、ほかのがん治療薬との併用療法の拡大に治験競争の舞台が移りつつあることだ 奏効率は現状で2~3割にとどまっている。 そうした弱点をカバーするのが、併用療法だ 併用療法の拡大には資本力、規模の大きさが物を言う可能性 アメリカや欧州など海外市場の大半ではBMSに頼らざるを得ない この3年でMRを5割増員 。「オプジーボ」頼みはいつか脱却しなければいけないが、当面は「オプジーボ」強化に頼らざるをえない 「安倍政権で研究費ジリ貧 日本からノーベル賞が出なくなる」 日本の官民合わせた研究開発費総額は、2007年度以降、17兆~19兆円で推移 企業の儲けは内部留保に向かい、研究開発に投じられていない 研究開発費の政府負担割合 日本はわずか15.41%で、主要国から大きく引き離されて最下位(別表)。しかも、安倍政権発足前は16%超だったのに、発足後の2013年から右肩下がりなのだ 安倍政権は、研究開発とりわけ、基礎研究の重要性をまったく理解していません 一方で、軍事強化につながる基礎研究には力を入れています 安全保障技術研究推進制度 研究者版経済的徴兵制 本庶さんは今年、ノーベル賞を受賞しましたが、何十年か前に、基礎研究にしっかり取り組めた環境があったからです 現在の安倍政権のような基礎研究に対するスタンスでは将来、ノーベル賞受賞者が出なくなるだけでなく、もはや日本は技術立国とは言えなくなってしまいます 技術立国から軍事大国へ
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不動産(その3)(不動産「仲介手数料」自由化はなぜ必要なのか 50年前にできた基準に縛られる合理性はない、人気タワマンでも40年後は廃虚!?恐ろしいマンション劣化の真実、怒れマンション住民!大規模修繕で跋扈する「談合・リベート」の実態) [経済政策]

不動産については、昨年11月19日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その3)(不動産「仲介手数料」自由化はなぜ必要なのか 50年前にできた基準に縛られる合理性はない、人気タワマンでも40年後は廃虚!?恐ろしいマンション劣化の真実、怒れマンション住民!大規模修繕で跋扈する「談合・リベート」の実態)である。

先ずは、不動産コンサルタント(さくら事務所 会長)の長嶋 修氏が3月6日付け東洋経済オンラインに寄稿した「 不動産「仲介手数料」自由化はなぜ必要なのか 50年前にできた基準に縛られる合理性はない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/210253
・『全国に散らばる空き家・空き地の流通円滑化を目的として、2018年1月1日より不動産仲介手数料の上限が引き上げられた。宅地建物取引業法では、不動産取引における仲介手数料は、売買価格に対応する形で上限が定められている。200万円以下は、価格×5%、200万円から400万円以下は価格×4%+2万円、400万円を超えると、価格×3%+6万円となる。 全国には多数の空き家が存在するが、物件価格が数十万から数百万といった低額なものが多いため、基準通りの手数料ではビジネスが成り立たない。そこで、今回、上限を18万円(税別)としたが、この程度では多くのケースで経費倒れになることは変わらず、不動産仲介業者が積極的に動くモチベーションにはまったくつながらないだろう』、なるほど。
・『現在の手数料規定は約50年前の基準  筆者は、もはや不動産手数料について無意味な規制は撤廃し、自由化すれば良いと考えている。手数料がわずか1%だがほとんど何もしない不動産仲介業者もいれば、10%もの手数料を受け取るが至れり尽くせりの業者もおり、多様な選択肢の中からユーザーが選択できるようにすることが理想だ。 そもそも現在の手数料規定は、48年前(1970年)の建設省(当時)の告示に基づいて決められている。1970年といえば物価はいまの3分の1程度で、名目GDPがわずか73兆円だった頃だ。 不動産仲介手数料は1947年までは自由料率だったが、暴利を貪る業者が跋扈して社会問題となり、1952年に宅建業法が制定された。「手数料は都道府県知事が定める」と規定され、やがて1970年に出された建設省告示によって、現在のような体系となった。 アメリカでは基本的に手数料は自由化されているが、業界団体がガイドラインを示していて、6%が目安となっている。売主が6%払い、売主・買主双方のエージェントで3%ずつ分け合うのが基本だ。4%、10%といったガイドラインを示している業界団体もある。 しかし、日本では、今の基準であっても「不動産仲介手数料は高すぎる」と考えるユーザーも少なくない。筆者が接するクライアントからも、「多額の不動産仲介手数料を支払うのは納得がいかない」という声はよく聞かれる。その理由は簡単で、仲介業者が手数料に見合う仕事をしているとは思えないからだ』、「現在の手数料規定は約50年前の基準」とは驚いた。確かに、不動産が需給逼迫し、暴利を貪る業者が跋扈していた時代とは、大きく変わったを踏まえれば、自由化も1つの考え方だ。
・『仲介業者の対応に不信感  筆者のもとに来られた方の、具体的な事例を紹介しよう。大手メーカーに勤務する藤田直樹さん(38才・仮名)は、インターネットで自分の希望する条件に近い物件を見つけた。6000万円の都心部中古一戸建だ。物件について問い合わせると、すぐに連絡が来た。若い担当者でノリの軽さが気になるものの、いわく「すでにいくつかお話が入っているが、今ならまだ大丈夫」だという。 物件見学では特段の問題も見当たらず、「前向きに検討します」としてその場をあとにしようとしたところ、担当者に「他にもたくさんの引き合いがあり、早く決めないと売れてしまう可能性が高い」と言われた。しかし、その場で決断はできない。どの程度の自己資金を捻出するか、どの金融機関でいくらの住宅ローンを組むか検討しなければならない。 また、築20年を経過しているため、ホームインスペクション(住宅診断)を入れ「建物に欠陥はないか」「買ったあと、いつ頃、どこにいくらくらいの修繕費がかかりそうか」など把握しておきたい。また、事前に親にもひとこと話をしておきたい。藤田さんがそう思ったのは自然なことだろう。 その旨を仲介業者に伝えると、担当者は「早くしないと売れてしまう」とせかす。その後、上司を連れて担当者は自宅までやってくると、その場で決断を促された。「いま複数の引き合いがあります。いまこの場でご決断いただけるなら藤田さんにお譲りします」という』、これは典型的な悪徳営業手法だ。
・『しかし、藤田さんとしては、住宅ローンをどれにするかまだ決めていないし、親にも話ができていない。さらには建物のコンディションも気になる。上司いわく「インスペクションを入れるなどとうるさいことを言っていては売ってくれない可能性が高い」という。藤田さんは、売主に交渉もせずそのようなことを言うこの上司に不信感を抱いたこともあって「それなら仕方ありません。あきらめます」として引き取ってもらった。 しかし、1週間経過してもその物件情報はネット上に載ったままだ。さらに1カ月が経過すると、価格がおよそ500万円下がっていた。仲介業者に買うことを急かされたことに藤田さんは不信感を抱いた。しかし、500万円も価格が下がっているとなると予算内に収まるため、購入を考え直す。 藤田さんは再び仲介業者に連絡し、ホームインスペクションは入れずにこの物件を契約した。物件価格の3%+6万円(税別)といった仲介手数料について値引き交渉をしたものの「規定の手数料です」として一蹴された。しかし、担当者の態度は契約が終わると一変した。急に連絡が来なくなり、折り返しの電話も遅く、メールの返信も思い出したように返ってくるだけ。 不動産仲介手数料は物件価格の3%+6万円(税別)と高額で、6000万円の中古一戸建を買った藤田さんは仲介業者に186万円(税別)の仲介手数料を支払っている。しかし、住宅ローンの手続きはすべて自分で済ませ、仲介業者の対応・サービスはその対価にまったく見合っていないと藤田さんは感じた。 そして、引っ越しが終わるとすぐに建物の不具合が発生した。床下の配管から水漏れが生じているようだった。すぐに担当者に連絡をすると「契約上、売主に責任はない」とこれも一蹴される。築20年を経過しているため、建物について売主の責任を免除する「瑕疵担保免責」を条件として契約していた。 筆者が創業したさくら事務所に、藤田さんから相談が来たのはこの段階だ。建物をひととおり調べ、水漏れの箇所や修繕方法・費用などについてアドバイスしたほか、他に発見された建物の劣化事象や不具合についても説明した。しかし、こうしたアドバイスは契約前に受けてこそ効果を発揮するものだ。 ホームインスペクションは、確かに業者の言うとおり、特に引き合いの多い今回のような場合、それを拒否する売主も中にはいる。しかし藤田さんのケースでは、仲介業者は売主に交渉すらしていない。宅地建物取引業法が改正され、2018年4月には「インスペクションの説明義務化」がスタートする中、仲介業者のこうした対応は非常に不親切で、多額の手数料を支払っている藤田さんの側に立ったサービスを提供しているとはとてもいえない。こうした業者でも、上限の手数料を取ることが当たり前になれば、モラルハザードが起きるだろう』、ホームインスペクションをしてないのだから、築20年を経過していても、「瑕疵担保」条項を入れるべきで、入れないまま契約した買い手もとんだ手落ちをしたものだ。
・『物件選びの前に担当者選びをする流れを作るべき  しかし、こうした現実は不動産業界ではそう珍しいことではない。嫌な思いをしないためには、誠実で有能な担当者を探すしかないのだが、そもそも一般的に不動産探しの構造には大きな問題がある。ほとんどの人がまず物件選びから入り、問い合わせをすると事後的に、自動的に担当者から連絡がくる。そのため、顧客は担当者を選べないし、選ぼうという意識も持ちにくいのだ。 しかし筆者は、物件選びの前に担当者選びをする流れを定着させるべきだと考えている。複数の仲介業者に条件を伝え、その後のやり取りの中で対応が誠実か、相性が合うか、求めるスキルがあるかなどを見極める。信頼できる友人・知人などに紹介してもらってもいいだろう。 すでに担当者が決まっている場合でも、変更を申し出ることも可能だ。該当店舗の責任者などに相談するとよい。多くの人にとって、不動産購入は一生に一度と言っていい大きな買い物だ。遠慮、我慢する必要はない。会社としても、担当者と相性が合わないからといって無言で顧客に去られてしまうより、率直に意思を表明してもらったほうが実はありがたい。担当者は後になって上司に怒られるかもしれないが、それも今後の糧として成長してくれればいいだろう。 不動産取引のプロセスは非常に重要だ。ここに不満があると、後に何か問題が発生した際、入居後に後悔することになる。そもそも3%+6万円といった仲介手数料の規定は、それが「上限」と規定されているだけで、必ずしも満額である必要はなく、当事者同士が了承すれば1%でも2%でも構わない。 対応に不満があるなら値引き交渉できるし、そもそも良心的な業者であれば、その業務内容の多寡によって自ら手数料交渉を申し出るところもある。逆に、担当者の力量によって、よりよい条件で購入できたなど、3%+6万円といった上限の手数料を支払うに十分見合うケースもあるし、場合によってはそれを大きく上回ってもよいケースはたくさんある。 不動産仲介は、担当者の誰しもが同じ価値を出せる定型的な仕事ではなく、知識や人間性、交渉力などの総合的なスキルが結果に大きく影響する。受け取る報酬は、その価値に合わせて変動する形が、健全なあり方と言えるのではないだろうか』、「物件選びの前に担当者選びを」というのは確かによさそうだ。

次に、上記と同じ長嶋 修氏が9月28日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「人気タワマンでも40年後は廃虚!?恐ろしいマンション劣化の真実」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/180763
・『新築・中古ともに、「都心」「駅近」などの好条件マンションの価格高止まりが続いている。しかし、湾岸や武蔵小杉など人気エリアの花形タワーマンションであっても、状況次第では数十年後には「廃虚化」が待っている。恐ろしいマンション劣化の真実を解説する』、「廃虚化」とは恐ろしい話だが、主張をみてみよう。
・『新築はもはや「高根の花」 中古価格もいまだに上昇中  マンション価格の高止まりが続いている。不動産経済研究所によれば、2018年7月の首都圏新築マンション発売価格平均は6091万円と2017年度平均を上回り、東京都区部に至っては7270万円と、もはや一般的なサラリーマンには手の届かない価格水準。「都心」「駅直結」「駅前」「駅近」「大規模」「タワー」といったワードに象徴される大多数の新築マンションは、「高根の花」となりつつある。 こうしたことも手伝って人気が集まってきたのが「中古マンション」であり、こちらもやはり「都心」「駅近」などの物件が強い。 REINS(東日本不動産流通機構)によれば、首都圏中古マンション価格は2012年12月の民主党から自民党への政権交代以降一貫して上昇を続けている。例えば東京都心3区(中央・千代田・港区)の中古マンション平均成約価格は、政権交代以降60%アップの6247万円と、1990年代のバブルを上回る価格水準だ。 ただし、「都心」であっても駅からの距離による格差は生じている。東京都心7区(千代田・中央・港・新宿・目黒・品川区)の中古マンション成約価格は、2013年には駅から1分離れるごとに平方メートルあたり8222円の下落を示していたが、2018年5月時点では、駅から1分離れるごとに平方メートルあたり1万8205円もの下落と、ダウン金額が多くなっている』、なるほど。
・『湾岸や武蔵小杉でも条件次第で「都市の墓標」化するマンションも!  それでは「都心」や「駅近」であればずっと安泰かというと、答えは「NO」である。タワーマンションが林立する都心湾岸地区や武蔵小杉(神奈川県)といった人気エリアも例外ではない。たとえ一定程度、立地が良くても、都市の墓標になりえる理由があるからだ。そして「駅から遠い」「築年数が古い」といったマンションはさらに不利で、将来は廃虚化が進むものも出てくるだろう。 また、空き家問題といえば、これまでは主に「一戸建て」に焦点が当たってきたが、やがて「マンションの空き家問題」が顕在化するだろう。マンションは一戸建てと異なり、共同住宅であるがゆえに、個人の意思で修繕や解体などの処分はできない。空き家増に加え住民の高齢化や賃貸化も進むことによって、必要な修繕費用も捻出しにくくなることから、修繕も解体もできずに、ただ朽ち果てていくだけの「廃虚マンション」の出現可能性が社会問題として浮かび上がりそうだ』、「マンションの空き家問題」とは、所有者が賃貸に出していた物件で、借り手がつかなくなったものなのだろうか。
・『全国のマンションストック総数は2017年末時点で約644.1万戸。マンションの居住人口は約1590万人と推計される。これは、日本の総人口1億2652万人(2018年6月1日現在の概算値)の12.6%にあたり、国民のおよそ8人に1人がマンションに住んでいることになる。東京都の全人口1382万人(2018年5月現在)より208万人も多い水準だ。 マンションストック総数のうち、築30年以上のマンションは、およそ184.9万戸あるが、うち40%にあたる72.9万戸は築40年以上。これが2022年には128.7万戸、2027年には184.9万戸、2034年には351.9万戸と激増していく。簡単に言えば、マンションの築年数分布は、我が国の人口ピラミッド同様、高齢マンションが極端に多い構図となっているわけだ』、高齢マンションの今後の激増は考えるだけでも、恐ろしい。
・『新築マンションに入居すると、住民が管理組合を結成する。入居から当面の間は、管理組合役員に自ら立候補して管理組合の運営に主体的に関わるなど、住民の意欲も高いことが多いが、年月がたって区分所有者の高齢化、賃貸化、空室化などが進行するにつれて、徐々に管理組合の理事のなり手不足、修繕積立金の収支悪化、大規模修繕や建て替えなどの意思決定ができないなどといった機能不全が見られるようになりがちだ。国はこうした「管理不全マンション」が今後、さらに増加していくことを懸念している』、国は懸念するだけでなく、先を見越した法制面の対策をとって欲しいものだ。
・『住民の高齢化と賃貸化が マンションを廃虚にする  「マンションの再生手法及び合意形成に係る調査」(国土交通省)のアンケートによれば、高経年マンションほど空き家化、賃貸化、高齢化が進み、自己居住率(持ち主自らが住んでいる住戸の割合)が低下するといったマンションの姿が浮かび上がる。 築40年を超えたマンションでは、自己居住しているのは全体の75.6%にすぎず、その居住者のうち21.7%が75歳以上。つまり、築40年になると、持ち主の4人に3人しかそこには居住しておらず、その居住者も4人に1人は75歳以上となっているのだ。75歳未満でそこに居住しているアクティブ層は全体の59.2%と、半分強しかいない。 同アンケートでは、高経年マンションほど管理組合総会決議の投票率が低下し、所有者不明の発生する割合が高くなること、また、所有者不明のケースでは、所有者の相続未完了や連絡が全く取れないなどで本人確認に苦労していることがわかる。賃貸率が20%を超えると、管理組合総会での大規模修繕の可否などを取り決める、総会での普通決議の投票率が極端に低下することも報告されている。 住民の高齢化が進めば、大規模修繕のための修繕積立金の値上げや一時金も徴収が難しくなっていく。多くが定期収入のない年金生活者であることや、高齢であることから長い将来を見通せなくなっているからだ』、高経年マンションは老齢化社会の縮図そのものだ。管理組合が機能不全になっていくというのは深刻だ。
・『また、賃貸化が進むことも、管理を難しくする大きな要因である。「平成25年マンション総合調査」(国土交通省)によれば、マンション全体の賃貸割合は13.7%、空室率は2.4%にすぎないが、経年により賃貸割合は高まり、築40年を超えると賃貸率は20%を超え、空室率は26.3%に上る。 賃貸化が進めば、所有者がそこに住まなくなる分、マンション管理への意識は希薄化する。そもそも外部居住者は理事になれないといった管理規約を設けているところも多い。 国土交通省が2016年から2017年にかけて、管理組合に対して行った調査(「マンションの再生手法及び合意形成に係る調査」)によると、「連絡先不通・所有者不明」の部屋があるマンションは全体の13.6%。連絡先不通・所有者不明物件のあるマンションの内訳は、築40年以上が29%、築30年以上40年未満が24%と、高経年マンションが多数を占める。 所有者と連絡が取れない部屋が増えると「管理費・修繕積立金が徴収できない」「管理が行われないことで劣化が早まり周囲に悪影響を及ぼす」「多数決による総会決議が困難になる」など、マンション管理に様々な支障をきたす。同調査では、今後は建て替え決議などの成立が困難になっていくと回答した人の割合は70%に達している』、築40年を超えると空室率は26.3%とは、悲惨だ。
・『横浜市立大学の齊藤広子教授は「マンションの空き家率は10%未満なら管理組合の対応で何とか問題を表面化しないで進められるが、10%を超えると日常的に管理組合運営が困難となり、20%を超えると長期的な展望も、それに向けた取り組みも難しくなり、負のスパイラルに陥りやすくなる。さらに空き家化が大幅に進むとエレベーターが止まり、ガス・電気・水道も止まり、居住が困難となり、自力での再生は難しくなる」と警鐘を鳴らしている』、「負のスパイラル」とは確かにあり得る恐怖シナリオだ。
・『国交省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」によれば、建物の階数や規模などによりばらつきはあるものの、15階建て・5000平方メートル未満のマンションの場合、専有面積平方メートルあたり218円を、修繕積立金の平均的な目安としている。5000~1万平方メートル未満なら202円、1万平方メートル以上なら178円程度が目安となる。ざっと平方メートルあたり200円として計算すると、例えば70平方メートルのマンションなら適正な毎月修繕積立金額は1万4000円。この水準の積立金を入居直後から続けていれば、おおむね問題ないでしょうというわけだ。 しかしこの水準も、消費増税は織り込んでいないほか、昨今高騰している建築費水準も計算には入れていない。大規模修繕費用は金融機関からの借り入れを伴うケースも多いが、やがては現行の金利水準も切り上がるだろう。大半のマンションは、こうした条件を十分に勘案した積み立てができていない。それらは廃虚予備軍と言っていいだろう』、その通りだ。
・『ましてやタワーマンションは、足場を組んで外壁の修繕が行えないため、ゴンドラなどによる高所作業だ。一般的なマンションに比して作業性は落ち、基本的に風速10メートルを超えると作業は中止となる。従って、工期は長めで非常にコスト高なのだ。 加えてタワーマンションは、エレベーターや階段など共用部分の面積比が大きく、コンシェルジュサービスやラウンジ、スポーツジムなどのサービスもあるから、管理費もただでさえ高め。所有者にとっては二重苦である。 とあるタワーマンションの大規模修繕は2年10ヵ月かかり、総額は6億円以上だった。また、設置されている高速エレベーターなどの設備は、世界に1つしかない特注品で非常に高額であることが多く、相見積もりが取れず、修繕や交換には莫大なコストがかかる。そもそもエレベーターや情報通信機器など技術進化の激しい分野では、30年前と同じスペックのエレベーターに交換するとは考えにくく、コストは想定よりアップする可能性が高い。 そうなると建物がどんどん劣化していくのに必要な修繕もままならず、建物が朽ちていくのを見届けるしかないといった「タワーマンションの廃虚化」が進むだろう。 もちろん、そうならないためにきっちり対策をしている優良マンションもある。都心湾岸地区や武蔵小杉に林立するタワーマンション群では、持続可能なマンションと、廃虚となっていくマンションの二極化が始まるのだ』、タワーマンションの税制上のメリットも少なくなった現在でも、いまだに人気があるとは不思議だ。やがて「こんな筈ではなかった」、)との悲鳴が上がる事態も考えられる。

第三に、株式会社シーアイピー代表取締役・一級建築士の須藤桂一氏が10月18日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「怒れマンション住民!大規模修繕で跋扈する「談合・リベート」の実態」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/182483
・『大規模修繕工事にまつわる談合・リベート問題は、テレビや新聞、雑誌で話題になることも増えてきたが、まだまだ業界全体が改革されるには至っていない。依然として「食い物」にされている管理組合が多いのが現状だ。悪徳コンサルタント会社や工事会社に、自分たちの財産が巧妙にかすめ取られている実態を知っていただき、マンションに住むすべての方がこの問題に向き合うようになることを期待し、改めてこの問題を取り上げることにした』、面白そうだ。
・『不自然な価格差の数字が並ぶ?  大規模修繕工事の見積金額の不思議  ・・・たいていのペットボトルのお茶は、自動販売機で買えば150円だ。だが、同じお茶でも、コンビニでは120~130円で買えたり、大型スーパーなら90円台で買えるところもある。反対に、観光地へ行くと200円という値段設定になっていたりする。同じお茶なら当然安いほうがいいので、スーパーで格安のお茶をまとめ買いし、それを持参して飲むようにしていた。 このように、同じ商品でも、買う場所によって90~200円という価格の差が生じる。商品の価格にいろいろな値段があることは常識で、できるだけ安く買おうと、安く買える店を調べたりするのは誰でもやっていることだろう。 しかし、それが大規模修繕工事となると、事情が変わってくる。 次の数字を見ていただきたい。これは、あるマンションの大規模修繕工事で、設計監理者(コンサルタント会社)が作成した設計概算金額と、工事業者募集の公募に応じた工事会社9社による工事費の見積金額である。 設計概算金額 9579万円(100) 工事会社A社 9190万円(96) 工事会社B社 9729万円(102) 工事会社C社 9828万円(103) 工事会社D社 9914万円(104) 工事会社E社 9990万円(104) 工事会社F社 1億24万円(105) 工事会社G社 1億97万円(105) 工事会社H社 1億162万円(106) 工事会社I社 1億692万円(111) 上記の( )内の数字は、設計概算金額を100とした場合の各見積金額の割合だが、この数字を見てどのように感じるだろうか? 実はこの数字から、コンサルタント会社と工事会社との間に談合があることがわかるのだ。設計概算金額100に対して、工事会社各社の見積金額は96~111という範囲に収まっている。見積金額の差は約2割しかない。ここが判断のポイントだ。 その昔、ゼネコンマンとして実際に談合を見ていた私のような人間には、これらの数字を見れば直感的に「おかしい」と思えるのだが、「同じ工事に対する見積もりなのに、1.5倍や2倍などと金額にばらつきが出るほうがおかしい」と思う人が少なくない。 だが、冒頭で例に挙げた既製品であるペットボトルのお茶でさえ、およそ2倍の価格差があるのに対して、さまざまなリスクもある工事の見積もりで、“2~3割”以内に価格差が収まっていることのほうがむしろ不自然なのだ。 普段はペットボトルを買うのにも、5円、10円という価格差を気にするはずなのに、大規模修繕工事という数千万円、数億円単位の大きな“買い物”をするときに、その価格差に疑問を感じないというのは、なんとも不思議なことではないか』、その通りだろう。
・『価格差はあって当たり前! 横並びの見積金額は談合・リベートの証  「なぜ同じ工事範囲で、同じ仕様で見積もっているのに、見積金額に大きな差が出ることが当たり前なのか」と疑問に思う方もいるだろう。それは、見積もりを出す工事業者の立場や状況によるところも大きいといえる。 例えば、その公募に応じる際に、ちょうど仕事が薄い状態にあるような工事会社の場合、社員を遊ばせているよりは、利益があまり見込めなくても仕事を受注するほうがいいと判断し、通常よりも何割か価格を下げてくるということは珍しくない。反対に、受注残が豊富にあって、無理に新しい仕事を取る必要がない場合には、見積金額を何割か高めにして提出することもあるのだ。 さて、前述の9社による見積もりの例では、最終的にA社が工事を受注した。 決め手は9社のうちで最安値の見積金額だったことによる。しかし、実はあらかじめ結果は決まっていた。コンサルタント会社は、工事業者を決めるにあたって公募という形を取ったが、実際には、厳しい見積参加条件をつけて、「談合サークル」とも呼べる工事会社だけが応募できるようにし、最初からA社が受注できるように取りはからっていたのだ。 9社による見積金額の差額の幅が小さかったのも、当然談合の取り決めによるものだ。コンサルタント会社によって、あらかじめA社が今回の工事を受注できる“チャンピオン業者”に決められ、A社以外の会社は、A社の見積金額を元に、それよりも見積金額が上回るように調整しながら、それらしい数字を出してきたのである。 つまり、コンサルタント会社は、管理組合をだましていたのだ。 しかもそれは、管理組合との契約締結時から仕組まれていたものだ。しかし、“素人の集まり”である管理組合では、残念ながら誰もそのことに気づけないのである』、「管理組合との契約締結時から仕組まれていたもの」というのは、同氏が参考に挙げた記事によれば、契約解除が簡単には出来ないような契約条項のことらしい。
・『“泥棒”コンサルタント会社が実践する巧妙なリベート授受の方法  では、具体的に談合の何が悪いのだろうか? 仮に、談合によって工事費が安くなるなら、管理組合にとってはいい話だといえるだろう。だが、当然そんなことがあるわけはない。談合で一番の問題点は、その裏側で多額のリベートが関係者に流れることだ。そして、そのリベートは、すべて管理組合が支払う工事代金から出ている。つまり、談合によって、管理組合は格段に高い大規模修繕工事を買わされてしまうわけだ。 また、そのリベートも、巧妙に隠された形で支払われている。
(1)まずはコンサルタント会社と工事会社との間で基本契約が交わされ、紹介料やコンサルティング料などの名目で、工事を受注した工事会社からコンサルタント会社に工事費の一定額が支払われる。
(2)コンサルタント会社は工事を受注した工事会社に対して、足場業者、塗装業者、防水業者などを紹介し、下請け業者として採用してもらう。そして、コンサルタント会社は採用された下請け業者から、紹介料としてリベートを受け取る。
(3)また、工事の材料についてメーカーを指定したり、特注品を指定したりして、確実にそのメーカーに発注がいくようにし、そのメーカーからもリベートを受け取る。
 このように、コンサルタント会社はさまざまな形でリベートを受け取っており、もはや“泥棒”とでもいうべきレベルである。 しかも、そのリベートは紹介料やコンサルティング料などの名目で受け取り、基本契約にもうたうなどして、会社の売り上げとして計上していることから、税法上も問題なく、税務調査が入ってもお咎(とが)めはナシだ。実に憎らしいほどうまくできている仕組みなのである』、コンサルタント会社が悪徳商法の典型もどきをしているとは・・・。
・『談合・リベートは会社ぐるみ! 悪質な担当者が横行する現場の実態  さらに、コンサルタント会社の担当者も悪質だ。 そうした裏事情をよく認識していながら、しれっと「監理業務」にあたっているのだ。監理業務とは、施工会社が仕様書どおりに適正に仕事をしているかをチェックし、品質を検査するもので、大規模修繕工事を無事に終えるために重要な役割を持っている。 本来、監理業務の担当者は、工事が実施されている間は現場を回り、仕様違反や手抜きがないか目を光らせるのが仕事である。しかし、ひどい担当者になると、現場には夕方やってきて、まだ明るいうちに検査の写真をササッと撮影する。検査指摘事項は現場所長に適当に作らせておいて、検査に合格するかどうかは担当者への“接待次第”、という具合だ。 中には、食事は極上の焼き肉、2次会は高級クラブでの接待と内容を指定し、その費用はすべて施工会社持ちの上、領収書はコンサルタント会社名で担当者が受け取る……というひどい話もある。 信じられないかもしれないが、すべて本当のことだ。 しかも、そうした事実を知りながら、会社は見て見ぬふりをするしかできない。その担当者をクビにしたり、懲戒解雇にしたりすると、逆恨みされて、管理組合に対して「おたくの工事を請け負っているコンサルタント会社は、会社ぐるみで工事会社からリベートを受け取っている」と告げ口されてしまうので、担当者を問題視することができないという事情があるのだ』、コンサルタント会社は悪事を告げ口されないように、悪質な担当者に見て見ぬふりをするしかできない、とは皮肉なものだ。
・『時代がようやく動き出した いつか談合・リベートのない健全な業界に  かつて私自身も、談合の発注側であるゼネコンと、孫請けやひ孫請け側の工事業者という両方の立場にいた。そして、マンションの工事にかかわる業界のドロドロした姿を見て驚かされ、管理組合が食い物にされている状況に心を痛めて、「なんとか業界改革に乗り出さないといけない」と覚悟を決め、この事業を始めた。 業界にはびこる談合とリベートの問題について、数年前からブログやSNSなどで問題提起し、拙著でも強く訴えかけてきたが、その甲斐あってか、2017年2月4日号の「週刊ダイヤモンド」でも特集として大きく取り上げていただくことになった。 それがきっかけとなったのか、その後NHKの「クローズアップ現代+」でも特集され、各大手新聞社でも1面で取り上げていただけるほど、社会問題として認識されるようになってきた。 そして、国土交通省も「管理組合の利益と相反する立場に立つ設計コンサルタントが発注に関与することのないように十分に意識をしていただく必要がある」と明言するに至っている。 しかし、これほど談合・リベートが社会問題化してきたにもかかわらず、そうした問題に対して、いまだになんのコメントも提案もないコンサルタント会社が何社も存在する。彼らが何もアクションを起こせないのは、彼らの中に談合・リベートの実態があるからではないのか、と疑いの目を向けてしまう。 業界にはびこる談合・リベートの根は、まだまだ深いものがある。私はこの問題が完全に撲滅されるまで、活動を続けていきたいと思う』、大いに頑張ってもらいたいものだ。
タグ:不動産 タワーマンション 東洋経済オンライン 空き家 ホームインスペクション ダイヤモンド・オンライン 消費増税 須藤桂一 長嶋 修 (その3)(不動産「仲介手数料」自由化はなぜ必要なのか 50年前にできた基準に縛られる合理性はない、人気タワマンでも40年後は廃虚!?恐ろしいマンション劣化の真実、怒れマンション住民!大規模修繕で跋扈する「談合・リベート」の実態) 「 不動産「仲介手数料」自由化はなぜ必要なのか 50年前にできた基準に縛られる合理性はない」 不動産仲介手数料の上限が引き上げられた 空き家・空き地の流通円滑化を目的 仲介手数料は、売買価格に対応する形で上限 200万円以下は、価格×5%、200万円から400万円以下は価格×4%+2万円、400万円を超えると、価格×3%+6万円となる 低額なものが多いため、基準通りの手数料ではビジネスが成り立たない 現在の手数料規定は約50年前の基準 1952年に宅建業法が制定 1970年に出された建設省告示によって、現在のような体系 クライアントからも、「多額の不動産仲介手数料を支払うのは納得がいかない」という声はよく聞かれる 仲介業者の対応に不信感 物件選びの前に担当者選びをする流れを作るべき 「人気タワマンでも40年後は廃虚!?恐ろしいマンション劣化の真実」 新築はもはや「高根の花」 中古価格もいまだに上昇中 湾岸や武蔵小杉でも条件次第で「都市の墓標」化するマンションも! 「マンションの空き家問題」が顕在化 マンションストック総数のうち、築30年以上のマンションは、およそ184.9万戸あるが、うち40%にあたる72.9万戸は築40年以上。これが2022年には128.7万戸、2027年には184.9万戸、2034年には351.9万戸と激増していく 年月がたって区分所有者の高齢化、賃貸化、空室化などが進行するにつれて、徐々に管理組合の理事のなり手不足、修繕積立金の収支悪化、大規模修繕や建て替えなどの意思決定ができないなどといった機能不全が見られるようになりがちだ 住民の高齢化と賃貸化が マンションを廃虚にする 築40年になると、持ち主の4人に3人しかそこには居住しておらず、その居住者も4人に1人は75歳以上となっているのだ 75歳未満でそこに居住しているアクティブ層は全体の59.2%と、半分強しかいない 賃貸率が20%を超えると、管理組合総会での大規模修繕の可否などを取り決める、総会での普通決議の投票率が極端に低下 賃貸化が進むことも、管理を難しくする大きな要因 築40年を超えると賃貸率は20%を超え、空室率は26.3%に上る マンション管理への意識は希薄化 連絡先不通・所有者不明物件のあるマンションの内訳は、築40年以上が29%、築30年以上40年未満が24%と、高経年マンションが多数 空き家率は10%未満なら管理組合の対応で何とか問題を表面化しないで進められるが 10%を超えると日常的に管理組合運営が困難となり 20%を超えると長期的な展望も、それに向けた取り組みも難しくなり、負のスパイラルに陥りやすくなる さらに空き家化が大幅に進むとエレベーターが止まり、ガス・電気・水道も止まり、居住が困難となり、自力での再生は難しくなる マンションの修繕積立金に関するガイドライン 高騰している建築費 金利水準も切り上がるだろう 大半のマンションは、こうした条件を十分に勘案した積み立てができていない。それらは廃虚予備軍と言っていいだろう 工期は長めで非常にコスト高 管理費もただでさえ高め 所有者にとっては二重苦 「タワーマンションの廃虚化」 マンションの二極化 「怒れマンション住民!大規模修繕で跋扈する「談合・リベート」の実態」 大規模修繕工事にまつわる談合・リベート問題 悪徳コンサルタント会社や工事会社 コンサルタント会社と工事会社との間に談合がある 価格差はあって当たり前! 横並びの見積金額は談合・リベートの証 工事業者を決めるにあたって公募という形を取ったが、実際には、厳しい見積参加条件をつけて、「談合サークル」とも呼べる工事会社だけが応募できるようにし、最初からA社が受注できるように取りはからっていたのだ 管理組合との契約締結時から仕組まれていたもの 泥棒”コンサルタント会社が実践する巧妙なリベート授受の方法 談合によって、管理組合は格段に高い大規模修繕工事を買わされてしまうわけだ そのリベートも、巧妙に隠された形で支払われている コンサルタント会社はさまざまな形でリベートを受け取っており もはや“泥棒”とでもいうべきレベルである 談合・リベートは会社ぐるみ! 悪質な担当者が横行する現場の実態 監理業務の担当者 検査に合格するかどうかは担当者への“接待次第”、 会社は見て見ぬふりをするしかできない その担当者をクビにしたり、懲戒解雇にしたりすると、逆恨みされて、管理組合に対して「おたくの工事を請け負っているコンサルタント会社は、会社ぐるみで工事会社からリベートを受け取っている」と告げ口されてしまう 時代がようやく動き出した いつか談合・リベートのない健全な業界に 国土交通省も「管理組合の利益と相反する立場に立つ設計コンサルタントが発注に関与することのないように十分に意識をしていただく必要がある」と明言するに至っている
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カジノ解禁(その7)(アメリカで報じられた安倍首相「カジノ疑惑」 日本でのカジノ合法化の裏に何があったのか、10分で1億円損失…カジノにおぼれた大富豪たちの悲惨 カジノにハマらない人はいない) [国内政治]

カジノ解禁については、8月17日に取上げた。今日は、(その7)(アメリカで報じられた安倍首相「カジノ疑惑」 日本でのカジノ合法化の裏に何があったのか、10分で1億円損失…カジノにおぼれた大富豪たちの悲惨 カジノにハマらない人はいない)である。特に、第一の記事は安倍首相をめぐる特大のスクープで、大いに注目される。

先ずは、スタンフォード大学教授のダニエル・スナイダー氏が10月17日付け東洋経済オンラインに寄稿した「アメリカで報じられた安倍首相「カジノ疑惑」 日本でのカジノ合法化の裏に何があったのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/243483
・『安倍晋三首相は、かつての日本の指導者たちであれば辞任を余儀なくされたようなスキャンダルや不祥事をうまく乗り越えてきた。が、ここへきて安倍首相の頭上には新たな黒い雲が漂っている――名付けて「カジノゲート」である。 この件には、安倍首相、アメリカのドナルド・トランプ大統領と、アメリカで(おそらく世界的にも)最も強力なカジノ王であるラスベガス・サンズの所有者シェルドン・アデルソン氏がかかわっている。浮かび上がっているのは次の疑問だ。はたして安倍首相は、アデルソン氏と密接に結び付いているトランプ大統領の好意を得ることを視野に、日本でのカジノの合法化を推進したのか、という問題である』、「カジノゲート」が飛び出してこようとしているとは、面白そうだ。
・『「それはまったく青天の霹靂だった」  現時点では、この疑問への明確な答えはない。しかし、10月10日に公開されたアメリカの調査報道組織「プロパブリカ」の記事(Trump’s Patron-in-Chief: Casino Magnate Sheldon Adelson)は、安倍首相とトランプ大統領を明確に指弾するものだった。同記事は、トランプ大統領が、2017年2月の安倍首相による初の公式訪問の際に、サンズと少なくとももう1つのアメリカのカジノ会社にカジノライセンスを与えるよう安倍首相に働きかけたと報じている。 同記事によると、フロリダ州にあるトランプ大統領の別荘での会議において、同大統領は、安倍首相に対し、ラスベガス・サンズにライセンスを供与するよう圧力をかけ、もう1つの会社、MGMリゾーツまたはウィン・リゾーツ(情報源が異なる)についても言及した。トランプ大統領からの大胆な圧力は、おそらく安倍首相を驚かせただろう。 「それはまったく青天の霹靂(へきれき)だった」と、この会議についてブリーフィングを行った1人はプロパブリカの記者、ジャスティン・エリオット氏に語っている。この人物によると、「彼らは、トランプ大統領がそこまで厚かましくなることが信じられませんでした。安倍首相は特に返答はせず、情報に感謝していると述べた」という』、トランプ大統領の厚かましさには驚くばかりだ。特に返答をしなかった安倍首相は、脇が固くなったようだ。なお、「プロパブリカ」の記事のURLは下記
https://features.propublica.org/trump-inc-podcast/sheldon-adelson-casino-magnate-trump-macau-and-japan/
・『しかし、安倍首相は、アデルソン氏とサンズをまったく知らないわけではなかった。同社は、2014年5月に同社が運営するシンガポールの統合リゾートへのツアーを手配するなど、安倍首相が権力に返り咲いて以来、彼に対して直接働きかけを行ってきた。このシンガポールのカジノは日本で推進されたカジノ法のモデルにもなっている。安倍首相は「統合リゾートが日本の経済成長戦略の重要な部分になると思う」と、サンズが宣伝するカジノリゾートのツアー中に述べた。 アデルソン氏にとって、日本の市場は、最後の、そして最も収益性の高い未開拓の合法ギャンブルの機会である。年間250億ドル相当の市場であり、マカオに次ぐ2番目の市場となると推定されている。 プロパブリカの記事が実証するように、アデルソン氏は、長年共和党に対して資金を提供していたが、最初はトランプ大統領に懐疑的だった。しかし、後に彼の選挙運動と就任イベントに2500万ドルを拠出している。今回の中間選挙でも、共和党に対し5500万ドル(増加中)寄付するという巨額の寄付者だ。アデルソン氏はまた、トランプ大統領の義理の息子、ジャレッド・クシュナー氏とも懇意で、ジャレッド一家は長年アデルソン氏と密接な関係にある』、安倍首相が2014年5月にサンズの手配でシンガポールの統合リゾートを視察していたのであれば、アデルソン氏とも親しくなっていたのだろう。アデルソン氏とトランプ大統領も親密なようだ。
・『アデルソン氏が最初の面談をセッティング?  プロパブリカが調査したものの、完全には確認できなかったが、アデルソン氏がトランプ大統領の選挙での勝利から数日以内の2016年11月に、トランプタワーで安倍首相とトランプ大統領との注目すべき会談を成立させたキープレーヤーであったとする相当の証拠がある。 安倍首相は、トランプタワーの門をくぐった最初の世界的リーダーとして、トランプ大統領との関係に大きな足場を得た。この関係は、安倍首相の個人的な外交の成果として頻繁に言及されてきた。 それからわずか数週間後、安倍首相は、国民とほぼすべての政党からの広範な反対があったにもかかわらず、ほとんど議論することなく、合法カジノの枠組みを定めるべく、国会で膠着していた法案を強引に推進して、関係者たちを驚かせた。 2017年2月、著者は、日本で地位のあるアメリカ人のビジネスマンと対話したが、彼によると、アデルソン氏は、ジャレッド・クシュナー氏とのツテを通じてトランプ大統領と安倍首相の会談をアレンジしたという。クシュナー氏は、彼の妻イヴァンカ・トランプ氏とともに当該会談に出席していた。さらに、このビジネスマンは、この奉仕の返礼として、安倍首相は、サンズがライセンスの第一候補者になるだろうということを明確に理解したうえで、カジノ法を推し進めた、と話していた。私は、この話の確証を得ることはできなかったが、このうわさはビジネス界に広がっていた』、トランプ大統領と安倍首相の初の会談もアデルソン氏がアレンジし、対価として、「サンズがライセンスの第一候補者になるだろうということを明確に理解したうえで、カジノ法を推し進めた」というのは驚いた。
・『金融サービス会社、オルフィ・キャピタルのパートナーであり、アジアにおけるベテラン銀行家であるロナルド・ヒンテルコーナー氏は2017年2月28日、「エクスパタイズ・アジア」というオンラインニュースレターでまさにこの話を書いている。 同氏は、「信頼できる私の情報源」によるととして、「安倍首相のトランプタワーへの最初の訪問は、大部分とまで言わないとしても部分的には、トランプ大統領の選挙運動に惜しみなく貢献したラスベガスのカジノ王シェルドン・アデルソン氏が演出したものであった。偶然にも、その後、安倍首相のニューヨークからの帰還直後に、国会で新しいカジノ法案が12月初めに押し通された」と書いている。 アデルソン氏のトランプ大統領とこのような会談を手配できる能力は、安倍首相にだけ有益だったわけではない。「エクスパタイズ・アジア」と「プロパブリカ」の両方によれば、アデルソン氏は、安倍首相の直後に、ソフトバンクの孫正義会長兼社長にもトランプタワーでの会談を手配したという』、孫正義会長兼社長のトランプ大統領との会談は、どうして会えたのだろうと疑問に思っていたが、アデルソン氏が手配したとは、なるほど。
・『安倍首相との朝食会で「カジノについて議論」  プロパブリカによると、アデルソン氏は、「数週間後に、日本の億万長者であり旧友である孫正義のために、待望のトランプタワーでの会談を確保した」。「孫氏の会社、ソフトバンクは、1990年代にアデルソン氏のコンピュータトレードショー事業を買収している。数年前、アデルソン氏は、孫氏を日本におけるカジノ報告計画の潜在的パートナーとして名指しした。ソフトバンクは、スプリントを所有しているが、同社は長年にわたりTモバイルとの合併を望んできた。しかし、それにはトランプ大統領政権からのゴーサインを必要とする。次期大統領との会合を終えトランプタワーのロビーに笑顔で現れた孫は、アメリカへの500億ドルの投資を約束した」(プロパブリカより) また、プロパブリカの報道によると、アデルソン氏は、2017年1月下旬のトランプ大統領の大統領就任から数日後、ラスベガス・サンズの決算説明会において、安倍首相はシンガポールのカジノリゾートを訪れただけでなく、「それに非常に感銘を受けた」と述べたという。 そのわずか数日後、安倍首相の公式訪問中にアデルソン氏は、ワシントンで開催された安倍首相との朝食ミーティングに、そのほか2人のカジノ業界の役員とともに出席し、カジノの問題を議論した、とある出席者はプロパブリカに語っている。その後、フロリダの別荘でトランプ大統領との晩餐が行われた。 トランプ大統領が晩餐でその話を持ち出したとき、安倍首相がアデルソン氏とサンズをよく知っていなかったという考えは、ほぼ信じがたい。2017年6月に日経新聞が初めて晩餐での議論について報道し、それにより、民進党参議院議員(当時)である杉尾秀哉が国会でトランプ大統領との取引について質問するに至った。安倍首相は、サンズやほかのアメリカ企業の入札に関して、トランプ大統領と会話したことは一度もない、と主張した。これはプロパブリカの主張と矛盾する』、「安倍首相は、サンズやほかのアメリカ企業の入札に関して、トランプ大統領と会話したことは一度もない」、と国会で答弁したのは、やはり本当のことを話せば、マズイと思ったからだろう。
・『アデルソン氏としては、日本でカジノライセンスを取得するための内部のツテを獲得したということを隠してはいない。プロパブリカが報告しているように、アデルソン氏は最近の株主への決算説明において、ロビー活動の取り組みが成功していると話した。「事情を知っている人々、事情を知っていると述べる人々、われわれが事情を知っていると信じる人々による推定によれば、われわれは、1番目の候補である」とアデルソン氏は述べている。 アデルソン氏は最近、日本での活動について、はるかにオープンにしている。2017年9月、彼は知事と市長に会うために、自身のカジノの有力候補地である大阪を訪れた。アデルソン氏は、ギャンブル用のカジノリゾート空間の大きさに関する規制について、何の良心の呵責も感じずに、IR実施法の初期草案を批判した。そして、7月に法律が可決されたとき、カジノの床面積の制限はなくなっていた』、アデルソン氏の政治力は日本でも絶大なようだ。
・『日本に窓口を置かずに活動しているサンズ  MGM、ウィン、シーザーズ、マカオの大手メルコなどの大企業を含むほかの多くのカジノ運営会社は、ライセンス取得のための入札に専念している。より小規模の事業者は、小規模の地域センターでのライセンスを取得したいと考えている一方、大規模なカジノは、東京と大阪での設置に目を向けている。 その中には、日本に事務所を構えて非常に大きな一般向けキャンペーン、地域や他の当局に働きかけるための豪華なイベント、広報活動の取り組みを行っている企業もある。しかし、サンズはそのような取り組みをほとんどしていない。 カジノ業界誌『アジア・ゲーミング・ブリーフ』は先月、「サンズは、日本の主要なIRライセンスの1つの最有力候補であると、ほぼ一般的にみなされている」と報道した。「しかし、その戦略はほかの企業のものほど明らかではない。サンズは日本に窓口を設置せず、代わりにシンガポールからキャンペーンを実行している。サンズは日本で有力な代理店を雇っているが、その活動は巨大な氷山を思い起こさせる。水面の上にあるものは水面下にあるものよりも確実に矮小だ、ということである」。 表面下の氷山はトランプ大統領・安倍首相・アデルソン氏の三角形であると暗示されている。プロパブリカの報道内容は、アメリカで急速に広く注目を集めており、影響力のあるニュースサイト「アキソス」を含む多くのメディアで報じられている。 通常臆病な日本のメディアもこれについて報道し始めたが、これからカジノゲートについて自ら調査を始めるだろうか。それのみが、このスキャンダルがたとえばロッキード疑惑のレベルにまで拡大するか、あるいは、つねに素早い安倍首相が政治的な大惨事からなんとか脱出する方法の一例になるかを決定するだろう』、サンズにすれば、既に日本に強力なコネを構築したので、窓口など置く必要はないということだろう。「臆病な日本のメディア」には、余り期待できそうもないのは残念だ。国会での手ぬるい追及に期待するしかなさそうだ。

次に、カジノ・エージェントの尾嶋 誠史氏が10月14日付け現代ビジネスに寄稿した「10分で1億円損失…カジノにおぼれた大富豪たちの悲惨 カジノにハマらない人はいない」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57930
・『100億を超える負けは日常茶飯事  2011年9月、大手製紙メーカーとして知られる大王製紙の当時の会長、井川意高(もとたか)氏が、自身のグループ企業の子会社から総額約105億円もの多額の資金を不正借り入れしていたことで、日本中のメディアを騒がせました。 彼がそんな多額のお金を必要とした原因は、106億8000万円にものぼったというカジノの負け金を払うためだったことも、大きく話題になりました。この失敗を決定づけた現場は、シンガポールにあるホテル・マリーナベイ・サンズのVIP向けカジノでしたが、以前は日本からアクセスがよいマカオにあるカジノによく足を運んでいたそうです。 しかし、カジノのVIPルームの世界では、100億円を超える負けを作ることなど、日常茶飯事。実際、僕自身も多くの資産を失う人たちを、数多く見てきたのです。 世界No.1の売り上げを誇るマカオのカジノで、6年間エージェントとして働いている尾嶋誠史さんは、その経験を『カジノエージェントが見た天国と地獄』という一冊にまとめた。そこで尾嶋さんは「カジノは観光都市として、富裕層を呼び込むには最適で、日本にカジノを作ることは賛成。しかし一般市民に防御策を取ることが絶対条件」と語る・・・その理由は、カジノはエンターテインメントとして完成されているが、決して儲けられるものではなく、破綻してきた人も多く見てきたからだという。一体どれほどの例を見聞きしてきたのだろうか――』、井川氏の事件は覚えているが、「100億を超える負けは日常茶飯事」とは恐れ入った。
・『カジノにハマらない人はいない  「カジノにハマらない人はいますか?」そう質問されることがありますが、僕個人の経験からいうと、これまでにそういう人は1人もいませんでした。少なくとも僕自身がアテンドすれば、もれなく全員をカジノにハマらせる自信があります。 カジノには人間の欲望が、すべて詰まっています。 まず、瞬時にして大金を稼ぐことができるという点。 たとえば、1万円を持っている人であれば、たった1日でそのお金を100万円にすることができるのです。バカラの場合、たった2分の1の確率の運だけで、持ち金を100倍近くに変えることができる。これを目の当たりにして、ハマらない人はなかなかいません。 ただ、そうして楽して一瞬の間に稼いだ大金を手にすると、当然人生がおかしくなる人が出てきてしまうもの。それが、大金に慣れている富豪と言ってもそうなのです。 VIPルームのお客様になるには、まず最低でも140万円のデポジットが必要。さらに、ハイリミットでの1ゲームの最低の賭け金は14万円からです。正直、信じられない金額が日々やりとりされているのですが、そこに集う人々のお金の使い方は半端ではありません。 ジャンケットのエージェントとして、僕はこの6年ほどの間、年間300人近いお客様をアテンドしてきました。どのお客様も予算は最低1億円。多ければ年間100億円単位のお金を使って帰るような方々も決して少なくありませんでした』、VIPルームの客の予算は最低1億円、とはさすが別世界だ。
・『10分間で1億円を失った大富豪  僕がアテンドしたお客様のなかでも、最短時間でカジノで大金を失った大富豪といえば、おもちゃメーカーを経営していた李さんでしょう。 李さんの年齢はおよそ40代半ば。細身でいつも柔和な笑みを絶やさない、見た目はいたって普通の男性でした。しかし、彼はとにかくカジノが好きで、マカオにやってくると酒よりもゴルフよりも、まずカジノという人でした。そんなわけで、李さんをアテンドするときは、どこにも寄らずにまずホテルへとチェックイン。そして、ホテルに荷物を預けてから、すぐにカジノに繰り出すというのがおきまりのパターンでした。 ある日のこと。いつものようにホテルのロビーで待つ李さんを残して、僕が彼の代わりにチェックインの手続きをしにいきました。チェックインが終わって、10分後に戻ってみると、どうやら李さんの様子がおかしい。 どこかふてくされたような顔をして、ぶつぶつ文句を言っています。すると、李さんの奥さんが笑いながら「この人、今日もう負けちゃったのよ」と彼の肩を叩くのです。 どうやら詳しく話を聞いてみると、僕がチェックインをしに行っている時間すらも惜しかったのか、待ちきれず、李さんは1人で先にホテルのロビー近くにあったVIP用のカジノルームに行き、そこで大金を賭けたもののいきなり大負けしてしまったとか。 しかも、その金額は1億円……。 僕がチェックインしているたったの10分の間に、なんという早業。 数々のお客様をアテンドしてきましたが、これまでにそんな短時間でそんな大金をギャンブルに突っ込んで負けてしまった人を見たことがなかったので、しばし唖然としてしまいました。 結局、李さんはマカオに3日間滞在していましたが、その間に彼がカジノで負けたお金はなんと30億円ほど。彼と出会ってから数年経ちますが、これ以上の負けっぷりの良いお客様は、まだ見たことがないかもしれません』、「10分間で1億円を失った」とは、やはりスケールが違うようだ。
・『6億を稼いだ中国人女性の勝因は  カジノは9割の人が負けて帰る場所。僕自身、長年そう思っていました。僕がアテンドしたなかで、一番大勝ちしたのは、5年前に出会った中国人の女性・張さんでした。 元金100万香港ドル(約1500万円)からギャンブルをはじめ、張さんは、最初の勝負から一向に負けなし。元金を減らすどころか、みるみるお金が増えていきます。 なお、カジノでは、だいたい多くの人は、元金が2倍、3倍になったあたりで気持ちが大きくなるのか、少しずつ賭ける金額が大きくなっていきます。すると、負けたときの損害も大きくなっていくので、せっかく勝ったお金を失ってしまうという負のスパイラルに陥ることも多いのです。 でも、張さんのすごいところは、いつまでたっても変わらず冷静な点。トータルの勝ち金額が元金からおよそ10倍になっても、まったく動じることがなく、同じテーブルについたお友達と世間話をしながら、同じペースでゲームを続けていきました。 朝から休みなしでずっと彼女は勝負を続け、開始から6時間。気が付いたときにはなんと勝ち金が4000万香港ドル、つまり日本円で総額6億円近くに……。1時間でおよそ1億円稼いだ計算でした。 「そろそろいいかもしれないわね。今日は楽しかったわ。アテンドしてくれて、どうもありがとう」 と彼女はにっこりと笑い、お友達と一緒に部屋に引き上げていきました。そして、彼女が「カジノに遊びに行きたい」といったのはその日限り。全部で4日間の滞在ではあったものの、初日以外はカジノに行かず、後はマカオをお友達と観光して、その後、中国に帰って行かれました。 これまでに何百人というお客様をカジノにアテンドしてきましたが、1日で6億円も稼いでいく人というのもなかなか巡り合うことはありません。もしもいたとしても、多くの人はその日の大勝ちが忘れられず、ツキを信じて、翌日、また翌々日もカジノに行って、結局は勝ち負けトントンか、もしくは負けを増やして帰っていくというパターンが大半でした。 張さんのその去り際の美しさには、唖然としたほどです』、こんな冷静もいるとは、例外中の例外なのだろうが、やはり驚かされた。
・『「もうやめておきましょう」の助言を無視  僕たちの仕事は、あくまでお客様にカジノを楽しんでもらい、気持ちよくお金を使っていただき、そして、また来ていただくことです。お客様がカジノで破産してしまえば、当然次からは来ていただけなくなってしまいます。 そうならないために、お客様には「ほどほどに遊んで、楽しんでいただく」ことを常に目指しているので、お客様が大負けしそうになったときには横から「もう危ないです」「今日はそろそろやめておきましょう」などとそっと口を出して、クールダウンしてもらうことも多いのです。 半分くらいの人はその言葉を聞いて、「うん、そうだな」と冷静になってくれるのですが、残り半分くらいの方は、「絶対に負けを取り戻すんだ」と言い張って、こちらの言うことを聞いてくれません』、この書きぶりからすると、エージェントの報酬は客からであって、カジノからではなさそうだ。
・『僕の知人のエージェントがアテンドしていた中国人のお金持ち・王さんも、その1人でした。 王さんは中国の建築業に携わる50代後半の会社社長で、いつもニコニコと穏やかな笑みを絶やさない優しい人でした。ギャンブルが大好きで、マカオに来るたびに大金を使っては、「また負けてしまった」と笑いながら帰っていくおおらかな人だったそうです。ただ、これまでは順調だった事業が、いつしかあまりうまくいかなくなったと愚痴をこぼすようになり、王さんの態度は少しずつ変わっていきました。 最後に王さんがマカオを訪れたとき、彼の様子は少し尋常ではありませんでした。 目に落ち着きがなく、ホテルにチェックインするなり、すぐにカジノに行きたがるのです。 今回は自分の人生がかかっているから」そう口にしながら、VIPルームのなかでも、一番高レートのバカラのテーブルへと向かっていったそうです。 しかし、カジノというのは不思議な場所で、その人自身が「勝ちたい」と焦れば焦るほど、負けやすいもの。王さんが一生懸命になればなるほど、どんどん負けが続いていきます。 気が付いてみれば、すでに王さんが48時間近くバカラテーブルから離れていない状態が続いており、王さんが普段設定している上限金額をとっくに数億円はオーバーしていました。 「さすがにこれはまずいのでは」そう思った担当エージェントは、「今日はツキが悪いです。一度出直しましょう」と王さんに声をかけました。 ところが、普段ならばおとなしくその言葉を聞き入れてくれる王さんですが、今度ばかりは何度言っても聞き入れてくれません。 「まだ自分はやれる」「もう少し頑張ればツキが戻ってくる。だから、金を貸せ」 2日間近くぶっ続けでバカラをやっている状態で、当然、体力的にはもちろん気力的にも目に見えて憔悴していたため、どう考えても勝てるわけがありません。 まさに、ギャンブラーハイに陥っている状態で、これ以上ギャンブルを続けていけば、仮に王さんに追加資金を渡したとしても、負けることは必至。ここでお金を渡してしまえば、王さんはさらなる負債を作って、確実に破産するだろう。そう考えた担当エージェントが資金を出し渋っていると、王さんは「わかった、もうお前には頼まない。俺を1人にしてくれ」といって、険しい顔をして、どこかへ立ち去ってしまいました』、いくら「ギャンブラーハイに陥っている」とはいえ、「48時間近くバカラテーブルから離れていない」、ここまで正気を失わせてしまうギャンブルとはやはり恐ろしいものだ。
・『「また首吊りが出たらしいよ」  結局、その後、王さんとは連絡がつかないまま。王さんのマカオの滞在日数はあと2日あったものの、彼がVIPルームに再び現れることはありませんでした。滞在していたホテルもその日のうちに荷物を受け取って、チェックアウトしていたようでした。 それから1週間ほどたったころでしょうか。 王さんの担当エージェントが知り合いと雑談しているときに、「そういえば、また首吊りが出たらしい」という噂を耳にしました。 治安のよいマカオでは、事件はほとんどありません。 でも、その半面、残念ながら自殺のニュースは多いです。カジノで負けて、ホテルの部屋で自殺した経営者がいた。カジノで負けて、マカオの海に身を投げた人がいた、など。ここ数年は減少しつつあるものの、以前は、自殺者のニュースを耳にすることは、ごく日常的でした。 そのため、最初に彼自身もその噂を聞いた際は、「また悲しい事件があったんだな」と思うのみで、深く気に留めていなかったそうですが、後日、その自殺者がなんと王さんだったことが判明したのです。 なんでも王さんは、担当のエージェントがアテンドするVIPルームを出た後、そのままほかのジャンケットのエージェントからお金を借り、別のカジノに行ったようでした。カジノでは仮に手持ち資金がなくなったとしても、担保になりそうな資産が確認できれば、いくらでもお金を貸してもらえます。 実際、ジャンケット側は、顧客管理を徹底しているので、そのお客様がどんな車に乗っていて、どんな家に住んでいて、どんな職業の人なのかは、すべて把握しています。そこで、手持ち資金が全部なくなった王さんは、自分が乗っていたフェラーリの権利書とキーを担保にお金を借りたのでした。そして、それでも足りずに、今度は自宅から株券など、あらゆる資産の権利書を担保に、ありったけのお金を借りたものの、やはり負けてしまったようでした。 たった数日間の滞在で、あらゆる資産をはぎ取られてしまった王さん。そのショックは壮絶なものだったでしょう。そして、自分が持ちえるすべての資産をつぎ込んだ末に大負けが決定したその日の朝、そのカジノがあるホテルの一室で、王さんは首を吊っていたそうです。 王さんを担当していたエージェントが後日その話を聞いたときには、「もっとあのときに強く止めておけば」と思い、涙が止まらなかったそうです。僕もその話を聞いて以来、マカオで王さんが亡くなったホテルの前を通るたびに、彼の冥福を祈らざるを得ません。 前回の記事でもお伝えしたように、カジノはお金に余裕のある人の娯楽として、経済効果の高いエンターテインメントになりえます。しかし、余裕がない状態で自分の生活をかけるようになってしまうと、そこには破綻が待っています。 カジノの経済効果は高い、そして、エンターテインメント性も十分にあります。しかし、カジノから一般市民を守る必要があること、このことは、繰り返しお伝えしたいと思います』、「株券など、あらゆる資産の権利書を担保に」とは随分、用意がいいとも感じたが、本当に命を賭けるほど真剣勝負だったのだろう。「カジノから一般市民を守る」方策は、果たして打ち出されるのだろうか。
タグ:東洋経済オンライン VIPルーム 現代ビジネス カジノ解禁 ダニエル・スナイダー (その7)(アメリカで報じられた安倍首相「カジノ疑惑」 日本でのカジノ合法化の裏に何があったのか、10分で1億円損失…カジノにおぼれた大富豪たちの悲惨 カジノにハマらない人はいない) 「アメリカで報じられた安倍首相「カジノ疑惑」 日本でのカジノ合法化の裏に何があったのか」 「カジノゲート」 はたして安倍首相は、アデルソン氏と密接に結び付いているトランプ大統領の好意を得ることを視野に、日本でのカジノの合法化を推進したのか、という問題 調査報道組織「プロパブリカ」 トランプ大統領が、2017年2月の安倍首相による初の公式訪問の際に、サンズと少なくとももう1つのアメリカのカジノ会社にカジノライセンスを与えるよう安倍首相に働きかけた トランプ大統領がそこまで厚かましくなることが信じられませんでした。安倍首相は特に返答はせず、情報に感謝していると述べた 同社は、2014年5月に同社が運営するシンガポールの統合リゾートへのツアーを手配するなど、安倍首相が権力に返り咲いて以来、彼に対して直接働きかけを行ってきた 彼の選挙運動と就任イベントに2500万ドルを拠出 今回の中間選挙でも、共和党に対し5500万ドル(増加中)寄付 アデルソン氏 アデルソン氏が最初の面談をセッティング クシュナー氏は、彼の妻イヴァンカ・トランプ氏とともに当該会談に出席 アデルソン氏は、ジャレッド・クシュナー氏とのツテを通じてトランプ大統領と安倍首相の会談をアレンジ この奉仕の返礼として、安倍首相は、サンズがライセンスの第一候補者になるだろうということを明確に理解したうえで、カジノ法を推し進めた、と話していた エクスパタイズ・アジア 安倍首相との朝食会で「カジノについて議論」 アデルソン氏は、安倍首相の直後に、ソフトバンクの孫正義会長兼社長にもトランプタワーでの会談を手配 ソフトバンクは、1990年代にアデルソン氏のコンピュータトレードショー事業を買収 アデルソン氏は、ワシントンで開催された安倍首相との朝食ミーティングに、そのほか2人のカジノ業界の役員とともに出席し、カジノの問題を議論 杉尾秀哉が国会でトランプ大統領との取引について質問 安倍首相は、サンズやほかのアメリカ企業の入札に関して、トランプ大統領と会話したことは一度もない、と主張した プロパブリカの主張と矛盾する アデルソン氏は、ギャンブル用のカジノリゾート空間の大きさに関する規制について、何の良心の呵責も感じずに、IR実施法の初期草案を批判 7月に法律が可決されたとき、カジノの床面積の制限はなくなっていた 日本に窓口を置かずに活動しているサンズ 尾嶋 誠史 「10分で1億円損失…カジノにおぼれた大富豪たちの悲惨 カジノにハマらない人はいない」 100億を超える負けは日常茶飯事 大王製紙の当時の会長、井川意高(もとたか)氏 子会社から総額約105億円もの多額の資金を不正借り入れ 106億8000万円にものぼったというカジノの負け金を払うため 『カジノエージェントが見た天国と地獄』 カジノにハマらない人はいない どのお客様も予算は最低1億円 10分間で1億円を失った大富豪 僕が彼の代わりにチェックインの手続き 1人で先にホテルのロビー近くにあったVIP用のカジノルームに行き、そこで大金を賭けたもののいきなり大負けしてしまったとか。 しかも、その金額は1億円 6億を稼いだ中国人女性の勝因は 「もうやめておきましょう」の助言を無視 お客様には「ほどほどに遊んで、楽しんでいただく」ことを常に目指している 8時間近くバカラテーブルから離れていない状態が続いており ここ数年は減少しつつあるものの、以前は、自殺者のニュースを耳にすることは、ごく日常的 カジノでは仮に手持ち資金がなくなったとしても、担保になりそうな資産が確認できれば、いくらでもお金を貸してもらえます 自宅から株券など、あらゆる資産の権利書を担保に、ありったけのお金を借りた ホテルの一室で、王さんは首を吊っていた カジノから一般市民を守る必要があること
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日本のスポーツ界(その21)(小田嶋氏:70秒の教訓) [社会]

昨日に続いて、日本のスポーツ界(その21)(小田嶋氏:70秒の教訓)を取上げよう。

コラムニストの小田嶋 隆氏が10月12日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「70秒の教訓」を紹介しよう。なお、小田嶋隆氏による日本のスポーツ界についての話題は、このブログの7月12日に紹介した。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/174784/101100162/
・『10月の7日、ボクシングWBAバンタム級チャンピオンの井上尚弥(いのうえ・なおや)選手が、この階級での初の防衛戦に勝利して、連勝記録を17に伸ばした。 ほんの70秒ほどの短いファイトだった。この間、井上選手が放った打撃は、たぶん、2つだけだ。それで、勝負は決してしまった。 井上選手が繰り出した左右のワンツーを顔面に受けたファン・カルロス・パヤノ選手(ドミニカ共和国)は、まっすぐに後ろに倒れて、そのままテンカウントの間、起き上がることができなかった。 いつも不思議に思うのは、ボクシングを見ていると、自問自答をはじめてしまうことだ。 今回の試合の70秒ほどの動画を、私は、たぶん5回ほど再生して見直したのだが、その間、自分のスケジュールのこなし方であるとか、執筆する対象との向き合い方であるとか、あるいはこれまでの人生の中で他人とかかわってきた態度が適切であったのかどうかといった、さまざまなことがらについて、あれこれと高速で思考していた。 どうして人はボクシングを見る時、内省的になるのだろう。 今回は、そのあたりの不思議さについて考えてみようと思っている』、私はボクシングには余り興味はないので、小田嶋氏が「内省的になる」というのは、驚くと同時に理解できなかった。
・『あらためて振り返ってみるに、私はこれまでボクシングを正面から主題とした原稿を書いた記憶がない。 話のついでにひいきのボクサーの名前を出すことはあったし、モハメド・アリが亡くなった時には、彼について記憶していることをいくつかの媒体に書いた。 しかし、ボクシングそのものについては、ついぞ書いていない。 不思議だ。 というのも、ボクシングは、私にとって、これまでの生涯の中で最も真剣に取り組んできた対象だからだ。 小学生だった時代から、ずっとボクシングを見て来た自覚がある。 当時から、テレビで放送された世界戦はほとんど見逃していない。生で見られない場合は、必ず録画して視聴している。録画装置を持っていなかったアリとフォアマンの試合は、高校の授業を休んで観戦した。 WOWOWと契約しているのも、その動機の大部分は、海外のボクシング中継を視聴するためだ。 ほかにも雑誌を購入し、ビデオやレーザーディスクを収集し、関連書籍を読み、ものごころがついて以来のこの50年ほどの間、私は常に最新のボクシング事情に追随してきた』、小田嶋氏がここまでの正真正銘のボクシングファンとは知らなかった。
・『にもかかわらず、ライターとしての私は、ボクシングについては、ほとんどまったく原稿を書かない。 なぜだろうか。 ロボット工学の世界では、「不気味の谷」という言葉がたびたび使われる。 これは、人に似せて作ったロボットが不気味に感じられる傾向を言い表したフレーズだ。 具体的には、ロボットが人間への類似度を高める過程で、大幅に好感度が下がるポイントを「谷」と呼んでいる。 たとえば、人との類似の度合いが小さいぬいぐるみのような作風のロボットは、われわれにとって、不気味には感じられない。 また、実際の人間と区別がつかないほど精巧に作られているロボットの場合も、それほど不気味には見えない。 ところが、かなりの部分で人間と似ているものの、明らかに生きた人間とは違う特徴を備えているレベルの、「中途半端に似ている」「血の通った感じのしない」「死体のような」「人間からなにかを喪失させた残骸であるみたいに見える」ロボットは、われわれにとって「恐ろしい」「不気味な」「嫌悪感を催させる」対象になる。 これは人形やCGでも同じで、変に人間味のあるマネキン人形や、ポリゴンの精度が中途半端なゲームのキャラクターは、顧客に好かれないのみならず、特に敏感な人々に恐怖感を与える。 理由はよくわからないが、起きている現象は、とにかく、中途半端にリアルなものは、人々に不気味さを感じさせるということだ』、この話は知っていたが、それを「不気味の谷」ということは初めて知った。
・『で、思うのだが、原稿を書く人間である私は、「謙虚の谷」とでも呼ぶべきやっかいな現象に苦しめられている気がするのだ。 どういうことなのかというと、あるテーマについて、ある程度以上詳しくなってしまうと、俄然筆が進まなくなる傾向のことだ。 私の場合、ボクシングがたぶんそれに当たる。 ボクシングに限らず、特定の競技の戦術や技術について一定の見識を抱くようになり、内外の主要選手の名前を暗記し、競技の歴史や競技団体の来歴に関してもひと通りの知識を蓄えるようになると、かえってうかつな断言はできなくなることは、実際によくある話だ。 理由は、自分の持っている知識や見識が、いかにも浅薄であることに自分で気づいてしまうからだ』、「謙虚の谷」とは上手い表現で、あり得る現象だろう。
・『たしかに、私は一般のテレビ視聴者に比べれば、ボクシングをたくさん見ている。知識のレベルも鑑識眼も、それ相応に高い水準だとは思う。 とはいえ、その私のテレビ由来の知識や情報は、たとえば競技経験を積んだ選手がその肉体のうちに保持し得ている身体感覚から見れば、まさしく児戯に等しいものだ。毎月のようにリングサイドに通って生の試合を見続けているマニアの観戦眼と比べてみても、ほぼ無価値だろう。 てなわけで、ことボクシングについては、私はもう何十年も前から 「なまじに詳しいだけに、きいたふうなことがいえない」状況に陥っている次第だ』、分かるような気がする。
・『サッカーについて、ここのところあまり原稿を書かなくなったのも、たぶん似たような事情に関連している。 サッカーは私にとって、40歳近くになってから参入した、新しい競技だ。 だから、観戦しはじめた当初は、あらゆることが新鮮で、驚きに満ちていたものだった。 で、私は、競技観戦初心者がはじめて知るさまざまな驚きや発見をいちいち得意がって原稿に書いているおめでたい書き手だった。 ああいうことは、今になって振り返ってみればだが、知らないからできたことでもあったわけで、多少とも事情がわかってくると、うかつな断言はだんだん振り回しにくくなる。 かくして、私は、トルシエが監督だった時代みたいに、大いばりで日本サッカーを断罪できなくなっている。 見識が低くなったからではない。 自分の見識の低さを自覚できる程度の見識を得るに至ったからだ』、それでも、サッカーについては時々書いているということは、ボクシングに比べれば、「謙虚の谷」が低いということなのだろうか。
・『とはいえ、素人の管見にまるで価値がないわけでもない。 日韓ワールドカップ当時に、私が各所に書き飛ばしていたドヤ顔の勘違いは、猥雑な祭りとしてのW杯の空気を撹拌するために、それなりの役割を果たしていたのだと思っている。 ともあれ、ド素人の時代を終えて、半可通になってしまうと、もう大胆な予測や身勝手な分析は、恥ずかしくてできなくなる。これは、なかなかやっかいなことだ。 ボクシングに関しては、私は、ずっと早い時期から半可通だった。 つまり、専門家でこそないものの、「やたらと詳しい素人」であった私は、読者から見れば「不気味の谷」に住んでいるライターだったということだ。今は、本人の立場からすれば、自分のニセモノさ加減がわかる程度の見識を備えてしまっている分、どうしても謙虚に黙らざるを得ない』、なるほど。
・『井上尚弥選手は、その圧倒的な強さと技術の高さにふさわしい知名度と人気を得ていない。 これは、多くのボクシングファンが異口同音に嘆いている事実でもある。 井上選手は、これまでに私が見てきた日本人選手の中で、掛け値なしのナンバーワンだ。 スピード、防御技術、ハンドスピード、フットワークの華麗さ、反射神経、当て勘、ブロックの固さ、攻撃の多彩さ、ステップインの見事さ……と、どの観点から見ても、比べ得るライバルを思い浮かべることさえできない。それほど卓越している。 なのに、いまひとつ知名度があがらない。現役の日本人アスリートとしては、テニスの大坂なおみ選手や野球の大谷翔平選手あたりと並べても決して見劣りしない存在だと思うし、今後の伸び代を考えれば、あるいは空前絶後のボクサーとして歴史上の人物になる可能性さえ持っていると思う。 にもかかわらず、タイトルマッチの視聴率は、たとえば、しばらく前に斯界を賑わせていた亀田三兄弟の試合と比べて、その半分にも達していない。 いくらなんでも、この低評価はあり得ない』、井上選手の試合など見たこともないが、小田島氏がここまで推すからにはその通りなのだろう。
・『井上尚弥選手は、いずれ、この先1年か2年のうちには、大谷翔平選手と同じく、日本では見ることのかなわない選手になるはずだ。 というよりも、既に次の試合あたりからは、日本の民放テレビ局が手を出せない、アメリカに本拠地を置くペイ・パー・ビュー(一試合の観戦ごとに料金を請求するテレビ放送)枠のボクサーになっているのかもしれない。 してみると、このレベルのアスリートは、海外発のニュースで知る方がふさわしいわけで、別の言い方をすれば、井上尚弥選手は、もはや日本のファンにはふさわしくないレベルの存在なのだろう。 現状でも、しかるべきテレビ局のスタッフが、例によって密着ドキュメント風の「煽りV(ブイ=ビデオ)」を作って、その動画にカブせられる感情過多の檄文調ポエムを、素のしゃべりからして既にシャウトしている専門のナレーターが喉にポリープを作りながら叫び散らすスタイルで売り込みにかかれば、おそらく、井上選手の物語を、視聴率30パーセント超えの扇情コンテンツに仕立て上げることはそんなに難しい話ではないはずだ。 が、井上選手本人の将来を考えるなら、本場アメリカのメインストリームの視聴者がスーパースター認定を下すまで、われら日本のボクシングファンは、おとなしく固唾を飲んでいた方が良い。というのも、「本物は海を渡ってやってくる」というのが、黒船以来のうちの国のお約束だからだ』、「本物は海を渡ってやってくる」というのは絶妙な表現だ。
・『井上選手の試合を見ながら、私は、20年前に亡くなった自分の父親に、井上選手を見せてあげたかったと思っていた。 父は、ボクシングが大好きで、強いボクサーを見ている時は、本当にうれしそうな顔をする人だった。 その父が井上選手のこの1年ほどの試合を見たら、どんなに喜んだことだろう。 私は、井上選手の父親である井上真吾氏が2015年に書いた『努力は天才に勝る!』という本の書評を書いている。 その書評の一部を以下に引用する。《-略- とはいえ、父、真吾氏は、世間が想像するようなスパルタの鬼コーチではない。彼は息子に練習を強要しない。技術を押し付けることもしない。どちらかといえば、父親自身のボクシングオタクとしての情熱に、息子たちが巻き込まれた形に見える。本書の読後感の気持ちの良さはそこにある。仕事の忙しさから志半ばでプロボクサーへの道を断念した父親が、いつしか二人の息子との練習に生きがいを見出して行く姿に、少しも押し付けがましさが無い。読んでいるこっちまで楽しくなる。つまり、天才とは、楽しく努力できる人間を指す言葉だったのであろう。》』、うらやましいほどの父子関係だ。
・『もうひとつ思い出した。 ずっと昔、父と子と天才の物語を主題に、「コンプティーク」という雑誌に以下のような原稿を書いた。これは、元原稿が手元に残っていないので、記憶から再現する。「天才は一人の人間の人生の中では完成しない。本物の天才が誕生するためには、二つの世代にまたがる時間が必要だ。以下に実例を示す。ベートーベンの親父は二流の音楽家だった。ピカソの親父は売れない絵描きだった。わかるだろうか。父親の失意と挫折があってこそ、息子の代に天才が結実するのである。ちなみに、オレの父親は半端な酒飲みだったけどな」 この半端なオチは、後に私自身が本物の飲んだくれになったことで、笑えないジョークになった。 私は何を言っているのだろう。 ボクシングはそれを愛する人間に支離滅裂な原稿を書かせる。 井上尚弥選手は本物のボクサーだ。 いずれ世界一のボクサーになることだろう。 私は、心から応援している。 みなさんもぜひ応援してください』、「父親の失意と挫折があってこそ、息子の代に天才が結実するのである」との父子関係は、本当にうらやましいが、現実には息子も失意と挫折に陥るケースの方が圧倒的に多いのであろう。井上選手の試合の放映を、次は見てみよう。
タグ:日経ビジネスオンライン 日本のスポーツ界 小田嶋 隆 (その21)(小田嶋氏:70秒の教訓) 「70秒の教訓」 ボクシングWBAバンタム級チャンピオンの井上尚弥 ほんの70秒ほどの短いファイト ボクシングを見る時、内省的になる ロボット工学の世界では、「不気味の谷」 人に似せて作ったロボットが不気味に感じられる傾向を言い表したフレーズ 中途半端にリアルなものは、人々に不気味さを感じさせる 原稿を書く人間である私は、「謙虚の谷」とでも呼ぶべきやっかいな現象に苦しめられている気がするのだ あるテーマについて、ある程度以上詳しくなってしまうと、俄然筆が進まなくなる傾向 「なまじに詳しいだけに、きいたふうなことがいえない」状況に陥っている次第 サッカーについて、ここのところあまり原稿を書かなくなったのも、たぶん似たような事情 自分の見識の低さを自覚できる程度の見識を得るに至ったからだ 「やたらと詳しい素人」であった私は、読者から見れば「不気味の谷」に住んでいるライターだったということだ 井上尚弥選手は、その圧倒的な強さと技術の高さにふさわしい知名度と人気を得ていない 「本物は海を渡ってやってくる」というのが、黒船以来のうちの国のお約束だからだ 井上選手の父親である井上真吾氏が2015年に書いた『努力は天才に勝る!』という本の書評を書いている 志半ばでプロボクサーへの道を断念した父親が、いつしか二人の息子との練習に生きがいを見出して行く姿に、少しも押し付けがましさが無い 本物の天才が誕生するためには、二つの世代にまたがる時間が必要だ ベートーベンの親父は二流の音楽家 ピカソの親父は売れない絵描き 父親の失意と挫折があってこそ、息子の代に天才が結実するのである
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日本のスポーツ界(その20)(川淵三郎氏だから語れること ダメな組織とは 指導者とは、貴乃花親方の置き手紙 神事かスポーツか 問題の本質はそこにある、全裸ダッシュ エロ本パシリ…今だから言える「体育会系パワハラ」事例集) [社会]

日本のスポーツ界については、9月30日に取上げた。今日は、(その20)(川淵三郎氏だから語れること ダメな組織とは 指導者とは、貴乃花親方の置き手紙 神事かスポーツか 問題の本質はそこにある、全裸ダッシュ エロ本パシリ…今だから言える「体育会系パワハラ」事例集)である。

先ずは、10月1日付け日刊ゲンダイ「川淵三郎氏だから語れること ダメな組織とは、指導者とは」の一部を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/sports/238232/1
・『なぜスポーツ団体の不祥事が次々と明るみに  2018年春の「女子レスリング・伊調馨選手への栄和人監督のパワハラ」を皮切りに「日大アメフト部・内田正人監督による危険タックル」「ボクシング連盟・山根明会長の職権乱用」「女子体操・塚原夫妻によるパワハラ」「重量挙げ・三宅義行会長のパワハラ」と日本スポーツ界のスキャンダルが後を絶たない。そこでJリーグ、Bリーグの立ち上げに尽力し、日本スポーツ界をドラスチックに改革してきた川淵三郎日本トップリーグ連携機構(JTL)会長である。80歳を越えても「良かれと思うことは包み隠さず、忖度せず、率直に発言していく」がモットーの川淵氏は8月、新潮社から「黙ってられるか」を上梓。「ダメな組織の立て直し」「指導者に求められる要素」「西野ジャパンの誕生からロシアW杯」などについて、ズバッと物申す川淵氏に聞いた』、日本トップリーグ連携機構とは、ボールゲーム9競技の日本の最高峰12リーグの競技力の向上と運営の活性化を目指した活動を行っている組織のようだ。
・『(「黙ってられるか」の執筆動機など)「バスケット協会の改革に乗り出してBリーグをつくってからは、いろいろなスポーツ団体の<立て直し屋>のようになりつつあります。苦情処理係のような感じも。いずれにしても、発言することで物事が好転することも多い。うまく機能していない組織の力に、関係している人の力になりたい一心でやってきたことを本にまとめました」・・・「バスケットボール協会は組織として体をなしていなかったし、チームを運営する企業もマーケティング方法、経営についての考え方などがアマチュア的でした。バスケットボールに限らず、一般企業では当たり前のことができないスポーツ団体が多い。例えば、バレーボール協会は、2011年以降に会長や専務理事や強化部長が1期2年で辞めている。選手強化の方針がころころ変わるようでは話にならない。ハンドボール協会は同じ人が長い間、役職に就いて定年を何度も延ばした。すべて<ガバナンス(組織統治)が、きちんとなされていない>ことが原因です。ここにきて各スポーツ団体の不祥事が次々と明るみに出ましたが、昔からの悪しき習慣が顕在化しただけのこと。ある日突然に暴力事件が、いきなりパワハラやセクハラが、表沙汰になったのではありません。すべてはガバナンス能力が不足しているということに尽きるでしょう」』、「昔からの悪しき習慣が顕在化しただけのこと」とはその通りなのだろう。
・『(ロシアW杯前の監督交代)「トルシエ監督(98年9月~02年7月)は『オレの言うことを黙って聞いていればいい』というキャラクター。ハリルも同じ<上から目線>のタイプと感じていた。ハリル時代は、とにかく試合が面白くなかったね。テレビ視聴率にも如実に表れていた。ロシアW杯最終予選の最終試合の視聴率は24%。4年前のブラジルW杯最終試合は38%だった。代表チームに魅力がなく、日本国民の関心も薄れていった。<代えるのならここ>というタイミングで監督交代はなかったなぁ~と思っていたら、W杯本大会開幕の2カ月ちょっと前に解任となった。田嶋会長の思い切った決断にびっくり仰天させられました」・・・「(事前)相談はなかったが『あす(4月9日)会見を開きます』という報告はあった。あのタイミングでの監督交代は勇気がいった。『よく決断した』と会長を褒めたよ。だってそうでしょう。W杯本大会直前に指揮官を代えて3連敗なんてことになったら、どれだけ批判されることか。ハリル体制のままだったら、惨敗に終わったとしても会長は批判されないで済んだかも知れない。ハリルと選手との関係が悪化し、チームが崩壊していたように聞いた。一体感がなくなっていたみたいだね」』、視聴率も依然として気にしていることや、ハリル体制で「チームが崩壊していた」には驚かされた。
・『(予選リーグ3試合目のポーランド戦での残り約15分、互いにボールを回して試合終了)。「娘とテレビ観戦しながら一体、何をやってんだよ!攻めないで負けてもいいのか! もうカッカして怒ってた」・・・「いや、試合が終わってグループリーグ突破が決まった瞬間、すべて許した(笑い)。それにしても、西野監督には感心したよ。何が正しい選択なのか、曖昧模糊とした状況で西野監督は腹が据わっているというか、肝が太いというか、よくぞ決断してくれた。試合が終了する前は『(セネガルのゴールが)入るな! 入るな!』と祈り、終わったら『西野! 凄い!』になっていた(笑い)」 (もし川淵日本代表監督だったら、同じ采配ができましたか?)「無理。できないね」』、やはり直球勝負の川淵氏には、西野監督のような真似は出来ないようだ。
・『(森保一・五輪監督がA代表の監督を兼任)「前から言っているんだけど<日本人体制で大丈夫>と思っている。ただし、日本語じゃないと意思の疎通が図れないということはない。東京五輪の前にクラマーさんがコーチを務め、英語での指示を岡野さん(当時コーチ、第9代JFA会長)が訳し、選手たちは真剣に聞いていたから、クラマーさんが何を言わんとしているのか、よく分かった。結局、外国語だから伝わらない、日本語だから伝わる――ではなくて<ちゃんと聞いてきちんと理解する>ことが大切ということです」』、私は<日本人体制で大丈夫>というのにはいささか疑問に感じている。
・(渡辺恒雄・読売新聞グループ本社主筆について、「犬猿の仲が天敵となり、それから恩人となって今では会いたい人」になった点)「ワッハッハ! 本当だね。渡辺さんというのは知性と教養の人。メディアの中でもトップ中のトップです。Jリーグの理念を発信するたびに批判をいただき、本当に『もう勘弁して欲しい』と困ったが、論戦をこなすうちに僕自身の考えも整理でき、Jリーグの理念が世間に広まった。本当に本当に感謝しています」 今年12月で82歳を迎えるが、生まれながらの舌鋒の鋭さは変わらない。「やるべきことはまだある。言いたいことを言いながら、精一杯やっていく」『黙ってられるか』の中の印象的なフレーズである』、同氏が会長を務める日本トップリーグ連携機構の役割は下記を見てもあと1つよく分からないが、今後の活躍を期待したい。
http://japantopleague.jp/static/aboutus/actionpolicy/

次に、スポーツライターの青島 健太氏が10月6日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「貴乃花親方の置き手紙 神事かスポーツか、問題の本質はそこにある」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/16/122600093/100300088/
・『相撲界を巡る一連の騒動は、まるで「台風一過」のようにあっと言う間に過ぎていった。 9月25日に引退届(その後、退職届となる)を提出した貴乃花親方は、記者会見を開き自身が内閣府に提出した告発状(のちに取り下げ)の内容について「事実無根の理由に基づいたものであることを認めなければならない」との要請を協会役員から受けたと主張した。そのことを認めなければ親方として協会内に残ることができないと感じた。それは譲ることができない。「無念」という言葉を何度も使いながら、踏み絵のような要求が引退の理由だと説明した。 ここからの進展は早かった。10月1日に相撲協会の臨時理事会が開催され、貴乃花部屋の力士ら(10人)の千賀ノ浦部屋(元小結・隆三杉)への移籍が承認され、これをもって貴乃花部屋の消滅が決まった。同時に貴乃花親方が正式に協会を退職することになった。 同日、会見を行った相撲協会の八角理事長は、千賀ノ浦親方や代理人弁護士を通じて、貴乃花親方と直接話し合うことを働きかけていたが実現できなかったことを明かした。「22回の優勝を成し遂げた立派な横綱で、大相撲への貢献は大きなものがあった。いつか一緒に協会を引っ張っていきたいと思っていた。このような形で相撲協会を去ることは誠に残念」と述べた上で「直接会って話ができなかったことを残念に思う」と語った。 奇しくも、この前日(9月30日)には、騒動の発端となった横綱・日馬富士の引退相撲と断髪式が行われ、翌1日には両国国技館で大相撲・全日本力士選士権(トーナメント戦)が行われ、平幕の阿武咲(阿武松部屋)が横綱・稀勢の里を破って優勝した。予定されていた行事や会合を怒涛のようにこなした大相撲界は、現役横綱が暴行事件の責任を取って引退し、その一件で協会の対応を問題視した貴乃花親方も追い込まれたかのうように退職し、まるで両者が刺し違えるがごとくの結末を見ることになった。 おそらくこの一件はこれで手打ちになるのだろう。なんとも物悲しい終わり方である。 ただ、この問題の本質は、もう少し深いところにあってこれですべてが解決したわけではない。今回の騒動を「ある種の権力闘争」という見方だけで終わらせないためにも根底にある問題に触れておこう』、私は相撲協会のみならず、貴乃花親方の対応も問題と思っているが、これは本題から外れるので、後日、機会があれば述べたい。
・『角界のウインブルドン現象  テレビでご覧になった方もいるだろうが、これから述べることは9月30日のプライムサンデー(フジテレビ)でも少しだけ話したものである。補足したいこともあるので改めて文章で書かせていただこうと思う。 今、大相撲界に横たわる本質的な問題は、「ウインブルドン現象」なのだと思う。「ウインブルドン現象」は経済用語で、外国の資本に地元の産業や商業が駆逐されてしまう現象のことである。テニスのウインブルドン大会では2013年に英国のアンディ・マレー選手が優勝するまで約80年間地元の男子選手が勝てなかった。 女子も1977年にバージニア・ウェード選手が勝って以来、40年以上英国の選手が優勝から遠ざかっている。 これは英国にとっては残念な事態だが、ウインブルドンという大会にとっては、それだけオープン化と国際化が進んだということ。同時にそれがこの大会の世界的なステータスになっている。言うまでもないが、大相撲でもこの傾向が年々進んでいる。今やモンゴル勢をはじめとした外国人力士が上位陣を占め、大相撲人気を牽引している。その意味で、横綱・稀勢の里は「ウインブルドン現象」に対する救世主であり、日本国民の期待の星なのだ。これについては本コラムでも以前書いた通りである。 今回の事件の発端は、飲食の席で日馬富士が貴ノ岩に暴力をふるってケガをさせたことにあるが、そもそも貴乃花親方は弟子の貴ノ岩にモンゴル勢の集まりに参加することを禁じていた。土俵で戦う者が、日ごろから仲良くしていたのでは、いろいろなことを疑われかねないと言うのが貴乃花親方の教えだ。そこで貴ノ岩はモンゴル出身でありながら同郷の力士たちとは一線を画していた。 ただ、この時は、貴ノ岩が高校時代を過ごした鳥取の母校の集まりということで参加が許されていたようだ』、例外的に参加したとは初めて知った。貴ノ岩、日馬富士双方にとって不運だった。
・『力士のジャージ姿に批判、伝統は曖昧に  貴乃花親方は、相撲関係者からは「原理主義」と呼ばれるほど、相撲道に対して厳格な人だ。これまでも土俵での所作の乱れや、横綱の品格についてなど、事あるごとに苦言を呈してきた。一連の騒動においても、その頑な言動は随所に感じられた。 どちらが良いか悪いかということではない。問題は相撲協会が、どこへ向かおうとしているのか……ということだ。貴乃花親方は部屋の運営や若手の育成に対しては、現代的な手法を積極的に取り入れていた。後援会にサポーター制度を導入したり、力士の年俸制を主張したり、様々な改革案を提唱していた。ただ相撲本来の様式や精神性に関しては徹底して保守的な伝統路線の上に立っていた人だと思う。 貴乃花親方は、退職にあたって後援会のホームページに感謝のメッセージを残している。 それは以下のように結ばれている。「大相撲は不滅です。土俵は、必ず日本国の遺産として残ります」 彼の相撲観が伝わってくる文言だ。 一方、協会は国際化している現実を踏まえて、ある程度寛容な運営を進めているように私には映る。それは貴乃花親方が信奉する国技や神事というよりもスポーツ的な側面も意識した協会運営やガバナンスと言えるだろう。 以前、ある力士が着物ではなくジャージ姿で外出して怒られたことがあるが、スポーツ選手やアスリートという観点で言うならば、スポーツメーカーのジャージは世界的な正装とも言える。今、起こっていることを象徴的に言うなら、そういうことだ。この文化をどう説明するのか。 何が伝統で、どこまで守らなければいけないのか。大相撲の国際化に伴って、そこが曖昧になってきているのだ。いや、日本人の若い世代にとっても、もはや伝統的な価値観について分からないことが多いのではないだろうか。そして貴乃花親方が抱いていた危機感や苛立ちというものが、そもそもこうしたことから始まっていた……というのが私の見立てだ。 伝統的な作法や所作、相撲界の価値観をすべて明文化する必要はないだろう。合理性を好む米国の大リーグでも明文化されていない紳士協定がいくつもある。大きくリードしたチームが盗塁や送りバントをしないのは、負けているチームへの配慮だ。優位な立場や状況にある者は、姑息な手段を選ばない。 それは、横綱の取り口にも通用することだろう。立ち合いで変化したり、奇をてらったりするような相撲は取らない。こうしたことは明文化されていなくても伝承で十分に伝わるものだ。しかし、これだけ国際化が進み、日本の若い世代も伝統的な文化や価値観を学ぶ機会が少なくなっている現状で、これをきちんと伝えるためには、今後いろいろなことを明文化する必要はあるだろう。 もうすでに外国出身の親方(部屋)も誕生している。近年では武蔵川親方(米ハワイ出身、元横綱・武蔵丸)の武蔵川部屋や鳴戸親方(ブルガリア出身、元大関・琴欧州)の鳴戸部屋などだ。押し寄せる国際化の波に相撲協会は、どう対応していくのか。大相撲の伝統文化を、どこまで守っていくのか。 優勝22回を誇る大横綱の退場は、そのことを心配する「置き手紙」だ』、貴乃花親方は国技や神事という面を信奉したのに対し、協会はスポーツ的な側面も意識、という点では、貴乃花親方の考え方は古過ぎ、協会の方が現実的だと思う。今後「伝統的な文化や価値観」などを明文化すべきとの筆者の主張には大賛成だが、今回の貴乃花騒動では、相撲協会が文書よりも口頭での伝達を重視していることが明らかになった。先ずは、こうした協会の体質を変えることが先決なのではなかろうか。

第三に、フリーライターの鎌田和歌氏が10月12日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「全裸ダッシュ、エロ本パシリ…今だから言える「体育会系パワハラ」事例集」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/181958
・『まるで日本中の膿が出るかのように、さまざまな不祥事が露見している平成30年。特にスポーツ界での告発やスクープは枚挙にいとまがない。今になってこれだけの問題が出てくるのだから、これまでの数十年間では、一体どんなことが行われてきたのか。もちろん有名人だけではなく、一般の人が巻き込まれたパワハラや体罰もあったはずである。「今だから言える、スポーツ界の理不尽」について匿名調査した』、確かにいくらでもあるだろう。
・『平成最後の年は不祥事のオンパレード  日本大学アメフト部の悪質タックル問題に始まり、バスケ日本代表の遠征先での買春、体操会の体罰、全日本剣道連盟における不正な金銭授受、日大応援リーダー部のパワハラ問題、さらには国技である角界のゴタゴタ……。 これほどまでに出るかと思うほど、平成最後の年はスポーツ界の不祥事オンパレードである。しかし、このような問題を聞いて「まさか」と感じる人は案外少ないのではないか。特に、自身が人生の若い時期において一心にスポーツに打ち込んで来た人ならば。 マイナーであれメジャースポーツであれ、良く言えばコミュニティーの関係が密、悪く言えば閉鎖的な環境になりやすいことは否めない。全体としてみれば伝統校や伝統クラブ、その関係者が強い発言力を持ち、個々のチームではコーチや監督が絶大な権力を持つ。そしてその中には、いまだに体罰や精神論がまかり通ってしまう風潮がある。「強くなるために」「勝つために」を突き詰めるあまり、客観的に見れば無意味に思える「しごき」を行っていないだろうか。 もちろん、個々を見れば体罰やパワハラとは無縁で、のびのびとスポーツに打ち込むことができる環境もあるのだろう。しかし、次々と明るみに出る不祥事は、これらが「氷山の一角」であることを浮き彫りにしている。 新聞や週刊誌で問題となるのは有名校や有名コーチの不祥事が多い。しかし実際には、有名無名にかかわらず、「しごき」や「かわいがり」、あるいはパワハラや体罰は行われている。今回は、過去にスポーツに打ち込み、その中で理不尽な経験をした人たちに、その思いを匿名で語ってもらった』、先端的な部分ではスポーツ科学に基づいた合理的な指導も行われているが、殆どは旧態依然なのであろう。
・『殴る蹴るは当たり前だった中高時代の部活動  まずは、学生時代の部活で顧問である教師から体罰を受けたというケース。 「中学時代バレー部に所属していました。練習中、男性の先生からボールをぶつけられたり、叩かれたり、ということは何度も経験しています。おまえらは言葉だけじゃわからんからな、みたいなことを言われました。当時は我慢していましたが、今振り返ると明らかに体罰ですよね」(30代男性) 「野球部だった高校時代、体罰を受けていました。エラーやミスをした後にビンタされたり、蹴られたりといった暴力は日常茶飯事。自分の指導がうまくいっていない怒りをぶつけているように思えました。自分だけじゃなくて、チームメイトの誰かがミスをしてしまわないか、いつもビクビクしていましたね」(30代男性) 「中学時代バスケ部に所属していました。他校との試合のとき、相手校の顧問が、選手をボコボコに殴っていたのを見て衝撃を受けました。背中や頭を何度も殴られていて、常軌を逸したような、異常な殴り方でした。試合中も、生徒のミスについてブツブツと文句を言っていて……。他校の生徒や教師が見ている前でもあれだけ殴るのだから、普段の練習では……と思うとゾッとします。当時は子どもだったのでその顧問に恐怖を覚えただけですが、今となってはあの教師に何も言わない他の教師もどうかと思います」(30代女性)』、どこにでもありそうな話ばかりだ。
・『厳しい指導、溜まるストレス うっぷんは下級生へのいじめに  また、顧問やコーチの指導に問題があることから部やチーム内の雰囲気が悪くなり、結果的に上のものが下のものをいじめる、という構図が複数のエピソードに見られた。 「中学時代にスポーツクラブにいました。コーチが厳しくて、手が出ることも多く、いつも誰か殴られないか、怒鳴られないかビクビクしていました。そのクラブでは備品や私物がなくなることやいじめも多かったです。今思うと、心理的に追い詰められていたんだと思います」(20代男性) 「高校時代に、その地方では一番強いチームに所属していました。割とマイナースポーツなのでスポーツ名は伏せますが、チームスポーツです。男性顧問が、チーム内の優秀な2人だけを贔屓するので、そのせいでチーム内がギスギスしていました。他のメンバーには内緒にして、その2人だけをファミレスに連れて行ったりするんですが、結局贔屓されてる子が他の子に自慢したりして……。贔屓されないメンバーは、その顧問のことを嫌いつつも、たまに誉められるとやっぱりうれしくて、一種の洗脳状態だったかもしれません」(20代女性) 「高校時代、サッカーの強豪校にいました。自分は公立中学時代はエースだったけれど、その高校では戦力外で、グラウンド整備と筋トレばかりしていた記憶があります。レギュラーには、その後日本代表になったような選手もいました。スター選手たちは試合に出ることがない選手を見下していて、顎で使われるようなことも多かったので屈辱でした。コーチもそういうのを見ていたけど、別に注意などはしていなかったですね」(30代男性) 顧問やコーチの顔色を見ながら結果を出さなければならない状況では、スポーツを楽しむどころではない。結果的にパフォーマンスの低下につながると思うのだが……』、いじめ、パワハラなどの伝統が代々続いていると、それは当たり前に思えてくるところが恐ろしい。
・『全裸ダッシュを強要、エロ本を買いに行かせる……同性同士の「セクハラ」も  チーム内での上級生からのいじめについては、こんなものも。 「高校時代のラグビー部で、先輩からの下ネタ系のパワハラがきつかったです。全裸で更衣室からトイレまでダッシュを強要されたり。あとは、制服のままでエロ本とかを買いに行かされたり、シャワー中に着替え一式を隠されて1時間ぐらい全裸で探し回ったり、『女子マネに下着の色を聞いてこい』と言われたこともありました。先輩たちは楽しそうだったし、本人たちがやることもあったから完全にいじめやイビリというわけじゃないのかもしれないけど、上の言うことは基本絶対だし、上がやっているから下が断れないというのもあった。そういうノリについていけない自分にとっては苦痛でしかなかったです」(30代男性) 「高校時代の部活で、ゲームに負けた下級生が『女子更衣室から何か盗んでくる』というルールがありました。やったかどうかは聞かないでください……」(20代男性) 30代男性のエピソードで彼は「下ネタ系のパワハラ」という言葉を使っているが、全裸ダッシュを強要されたり、エロ本を買いに行かされるのは同性同士での「セクハラ」だろう。また、下着の色を聞かれたり盗難にあう女子生徒はもちろん被害者だが、「聞いてこい」「盗ってこい」と命令される下級生も被害者であり、彼らは被害者でありながら加害者でもあるという複雑な立場に立たされる。性的なことに関心を持つ年代とはいえ、こういった問題を単なる「悪ふざけ」と放置できないように思う。 このようなエピソードを語った人たちから異口同音に聞こえてくるのは、「毎日顔を合わせて一緒に練習をするチーム内では逃げられない」という声。また、「スポーツで『団結力を』とか『みんなが頑張ってるんだから自分も頑張る』とか言うのは美談で語られるけれど、実際は人間同士、気の合わない者がいて当たり前。そこで調整力や息抜きのないチームだと、うっぷんが溜まって体罰やいじめにつながるのではないか」(30代男性)という声も』、「うっぷんが溜まって体罰やいじめにつながる」というのは、その通りなのだろう。
・『親さえも容認「体罰は指導」の空気  未成年のスポーツには親の送迎やサポートも重要となってくる。体操界の体罰問題がいい例だが、コーチから選手への体罰を、親さえ容認していることがある。 「大学まで柔道をやってました。高校時代の柔道部では、コーチからビンタされたり、蹴り飛ばされたりすることがよくありました。うちの親は練習には来なかったのですが、よく練習を見に来る他の生徒の親が『もっとしごいてやってください』『先生の指導でこの子はよくなった』みたいなことを言ってました。当時はあれが普通だと思ってたんですが、今はよく耐えたなと思います」(30代男性) 「たまに報道で話題になってますが、親からコーチへの“付け届け文化”みたいなのはありました。他の親がみんなやっているからやらないわけにはいかなくて、定期的に商品券とかを渡す……みたいなの。怒鳴ったり殴ったりとかも親たちは見てたけど止めないし、『指導に体罰があって当たり前』『体罰がダメなんて偽善的な考え方』って空気。OGとかも『殴られる意味がわかるときがくる』とか言ってたし、今思うと本当にやばいですよね……」(20代女性) 体罰が子どもを良い方向に導くというエビデンスはない。むしろ、体罰は子どもの脳に深刻な影響を与えるという研究結果がある。体罰で子どもが「良く変わった」ように見える場合、それは萎縮したり、自分の気持ちを押し殺したりしているだけだろう。それでもなお、「場合によっては体罰が必要」「生意気な子どももいるから体で覚えさせることが必要」と、信じている人たちがいる。虐待で子どもを殺す親を擁護する大人はいないのに、殺さない程度の体罰には寛容な大人が一定数いるのはなぜなのだろう。「指導」を、ごく短期的な視点で捉えているように思う。 会社でも学校でもそうだが、組織の中で行われる不祥事は隠されやすく、正当化されやすい。部活やクラブチームでの体罰やパワハラはその典型だろう。その組織の中での「当たり前」や「常識」は、本当に従わなければいけないものなのか。定期的な確認が必要だ。下の者が不満を抱いたとしても容易には変えられない構造だからこそ、風通しのよい組織にしなくてはならないのだろう。「昔は今よりもひどかった」ではなく、「今だってひどい環境もある」ことを忘れないようにしたい』、「体罰で子どもが「良く変わった」ように見える場合、それは萎縮したり、自分の気持ちを押し殺したりしているだけだろう」というのは、正論だ。ここで、スポーツ指導のあり方を抜本的に見直さないと、スポーツ指導でのいじめ、パワハラ文化はなかなか変わらないのではなかろうか。
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外国人労働者問題(その6)(外国人労働者は「移民」ではないのか 安倍政権の奇妙な「新在留資格」、中国人住民が半数を占める埼玉の団地「ガラスの共生社会」のリアル、外国人は弱者? 「奴隷制度」を続ける企業の愚行 「よそ者」を差別し「内部の敵」にする) [経済政策]

外国人労働者問題については、7月30日に取上げた。今日は、(その6)(外国人労働者は「移民」ではないのか 安倍政権の奇妙な「新在留資格」、中国人住民が半数を占める埼玉の団地「ガラスの共生社会」のリアル、外国人は弱者? 「奴隷制度」を続ける企業の愚行 「よそ者」を差別し「内部の敵」にする)である。

先ずは、ジャーナリストの池田 信夫氏が8月3日付けJBPressに寄稿した「外国人労働者は「移民」ではないのか 安倍政権の奇妙な「新在留資格」」を紹介しよう。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53743
・『 このごろコンビニで、外国人の店員を見ることが増えた。安倍政権は「移民政策はとらない」という方針なので、日本に移民はほとんどいないはずだ。しかし外国人労働者は128万人と、5年前の2倍に増えた。そのうち「技能実習生」として入国した人や留学生が、約50万人を占める。 政府は7月24日に外国人労働者についての関係閣僚会議の初会合を開き、安倍首相は2019年4月に新しい在留資格を設けて受け入れを増やす方針転換を表明した。これは6月に出た「骨太の方針」の具体化だが、世界各国で移民をめぐる紛争が続発しているとき、中途半端な形で移民を増やすのは危険である』、その通りだ。
・『「移民政策をとらない」安倍政権  政府の新しい方針では、最長5年間の就労の条件つきで単純労働者を受け入れる。これは(永住権をもつ)移民ではなく、一時的な就労だというのが政府の説明だが、国連の定義では、移民とは「1年以上外国で暮らす人」である。 この意味での移民は247万人で、すでに日本の人口の約2%を占めるが、そのうち就労ビザをもつ労働者は2割しかいない。大部分はコンビニや建設業などでビザなしで働く「隠れ移民」である。留学生の就労は違法ではないが、彼らの目的は技能の習得ではない。 骨太の方針では「2025年までに外国人労働者が50万人超」増えることを想定し、留学ビザではなく「特定技能」という資格で単純労働の就労ビザを発行し、滞在中に高い専門性が確認されれば「高度専門職」などの在留資格に移行することも可能とする。 移民に消極的だった安倍首相が外国人労働者の受け入れに踏み切ったのは、地方の中小企業で人手不足が深刻化しているためだ。来年の統一地方選や参院選に向けて、地方の自民党組織から突き上げがあったといわれる。 当初は建設・農業・宿泊・介護・造船の5業種で受け入れる方針だったが、他の業種から陳情が相次ぎ、外食や製造業など15を超える分野を追加する方針だ。財界はこれを歓迎し、マスコミも「人材開国」とか「多文化の共生」などと賞賛しているが、問題はそれほど単純ではない。 ヨーロッパでは難民の受け入れをめぐって国論が二分し、移民排斥を主張する極右政党が台頭している。イギリスは移民問題を理由にEU(ヨーロッパ連合)離脱を決めた。アメリカではヒスパニック(メキシコ系移民)を敵視するトランプ大統領が当選した。移民問題は、ポピュリズムの標的になりやすいのだ』、安倍首相が外国人労働者の受け入れに踏み切ったのは、地方からの突き上げだったというのは、ありそうな話だ。
・『移民は人口減少の解決にはならない  財界や自民党は人口減少を移民で埋めようとしているが、これは錯覚だ。自民党の外国人材交流推進議員連盟が2008年に「今後50年で1000万人の移民受け入れ」を求める提言を出して「非現実的だ」と批判を浴びたが、2060年までに生産年齢人口は約3000万人減る。たとえ移民が1000万人増えても、その3分の1しか埋まらないのだ。 人口減少社会で必要なのは、移民で人口を増やすことではなく、人口減少に適した社会に変えることだ。人手不足で困っているのは(介護を除くと)高い賃金を出せない地方の中小企業であり、こういう生産性の低い企業は整理・統合が必要だ。 労働人口が増えるとGDP(国内総生産)は増えるが、地方の低賃金労働者が増えると、一人当たりGDPは減る。治安の悪化などの社会的コストを考えると、メリットがコストより大きいかどうかは分からない。 複雑なのは社会保障との関係だ。労働人口比率は高齢化で大幅に減るので、現役世代の社会保障の負担が重くなる。若い移民が入ってくると、この不均衡が是正できるが、それは彼らが社会保険料を負担した場合である。5年以内の短期滞在だと、年金保険料は徴収できない。 他方で外国人労働者にも生活保護の受給資格があり、健康保険にも加入できる。今でも海外から日本で治療を受けるために来日する外国人が増えている。彼らは安い健康保険料を払って、高価な高度医療を3割負担で受けることができるからだ』、「人口減少社会で必要なのは、移民で人口を増やすことではなく、人口減少に適した社会に変えること」というのはその通りだ。
・『最大の問題は日本語の壁  移民問題は、文化の問題である。これまで「単一民族国家」とか「閉じた社会」といわれてきた日本が、グローバル化の中で多様化することは避けられないが、その障害は大きい。最大の問題は教育である。日本語のできない外国人労働者が永住することは、きわめて難しい。 東南アジアから技能実習生を紹介する業者の話を聞いたことがあるが、日本の企業は彼らを3K(きつい・汚い・危険)の現場に回し、日本人と同格に扱わないので、彼らは帰国すると二度と日本に来ないという。その最大の原因が日本語である。 技能実習生では日本語の能力は問われないが、今回の新在留資格では日本語能力試験4級(N4)が条件とされ、建設・農業ではそれ以下でもいいとされている。これは「基本的な日本語を理解することができる」カタコトのレベルであり、文化的衝突を起こすおそれが強い。 アメリカでもヒスパニックは英語を話さないため、学校教育などを英語とスペイン語の2カ国語にしなければならない。日本でも母国語しか話せない移民の集まる「チャイナタウン」や「リトルブラジル」ができている。日本語のできない外国人が増えると地域社会が崩壊するので、もっと厳格な日本語の条件が必要だ。 逆に移民の目から見ると、難しい日本語を勉強して技能を積んでも5年で帰国させられる日本に来るより、やさしい英語で就労でき、永住権も取りやすいアメリカやカナダのほうがいいだろう。5年程度の在留資格では、有能な労働者に来てもらうことは難しい。 私は移民を排斥しろといっているのではない。移民を受け入れるなら、それなりの覚悟をもって、日本国民として永住権を与えるべきだといっているのだ。逆にいうと、日本国民になれない労働者を中途半端に受け入れるべきではない。「移民ではない」という建て前で安易に外国人労働者の受け入れを増やすと、なし崩しに長期在留が増え、文化的な衝突が起こるおそれが強い。そうなると後戻りはできない、というのが欧米の教訓である』、説得力がある主張で、大賛成だ。

次に、室伏政策研究室代表・政策コンサルタントの室伏謙一氏が9月25日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「中国人住民が半数を占める埼玉の団地「ガラスの共生社会」のリアル」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/180184
・『中国人の住民が半数以上を占め、かつては「チャイナ団地」と揶揄された埼玉県川口市のUR川口芝園団地。中国人住民が増え始めた当初はさまざまなトラブルも目立ったが、現在は外国人住民との「共生」に成功している。しかし、外国人住民との共生は微妙な均衡で成り立つものであり、容易なものではない』、面白そうだ。
・『外国人材受け入れと称し「移民政策ではない」と否定しているが…  政府は、「骨太の方針2018」で、「一定の専門性・技能を有し即戦力となる外国人材に関し、就労を目的とする新たな在留資格を創設することとし、外国人材の受入れを更に進めていくこと」とし、数十万人規模で単純労働分野での外国人労働者の受け入れを進めていくとした。 これを受けて、7月24日、政府は「外国人の受入れ環境の整備に関する業務の基本方針について」を閣議決定し、関係府省が連携して受け入れ環境を整備していくとしている。 政府はこうした一連の政策を「外国人材受入れ」と称し、「外国人材受入れ」は「移民政策ではない」と否定しているが、こちらの都合で日本に呼んできて、用が済んだら帰ってくれるというものでもない。そもそも生産性向上の美名のもとでコストすなわち人件費の削減・・・のために呼んできているというのが本音なのだから、これを継続させるためには、あれこれと口実を作って居させ続けなければならないことになる・・・そもそも、彼らは外国人材という名の労働者であると同時に、日本に暮らす生活者でもある。つまり、居住期間は数年なのかそれとも10年以上なのか、半永久的なのか、それぞれではあるが、生活の本拠を日本に置くわけだから、紛れもなく移民である。これが数十万人単位で日本に入ってきたらどうなるか、想像を絶するものがあろう。 安易に安直にグローバル社会を叫び、共生社会は実現可能、共生社会は時代の流れだと説く「専門家」やグローバリストやアイデアリストたちがいるようだが、それは設計主義者の描く机上の空論にすぎないと言い切ってしまって構わないだろう。 そうした中で外国人住人との共生が、現状では比較的上手くいっている地区がある。埼玉県川口市にあるUR川口芝園団地(以下、芝園団地)である』、政府は、「「外国人材受入れ」は「移民政策ではない」」と強弁しているが、国際的な定義からは、正真正銘の移民である。政府の強弁をそのまま記事にしている新聞も情けない。
・『2005年頃からさまざまな問題が発生  同団地の外国人住民との共生社会形成に向けた取り組みは、団地の自治会を中心に進められ、これを企画し、主導した自治会役員の岡崎広樹氏は、日本青年会議所が主催する第32回人間力大賞で総務大臣奨励賞を受賞された。 筆者は今回の人間力大賞選考委員を務めた経緯もあり、岡崎氏を訪ね、実際に現場を案内してもらうとともに、その実情や今後の展望についてお話を伺う等の現地調査を行った。本稿ではその結果に基づき、わが国における外国人との共生社会の在り方について検討してみたい。 芝園団地は、1978年(昭和53年)に日本住宅公団(現在の独立行政法人都市再生機構)が整備した大規模団地である。地上15階建ての、当時としては高層の集合住宅が屏風(びょうぶ)のように立ち並ぶ大規模団地で、竣工当時は庶民の憧れの住宅だった。都心まで30分程度という利便性も手伝って、入居募集の競争率も高かったようだ。 団地内には小中学校(現在はいずれも統合または廃校)も設置され、また、一部の建物の1階には中小規模の商店が入居し、ひとつの街を形成していた。小中学校が設置されていたことからも明らかなように、当初は幼い子育て世帯が多かったようで、小中学校のPTA活動等を通じて自然と住民間のつながりも生まれていったようだ。 これが、子どもたちが成長し、高校進学に伴って家族全体で他の地域へ引っ越したり、大学進学や就職で子どもたちが団地を出て行ったりしたことで、居住人口が減少。利便性と家賃の手頃さ、さらに保証人不要といった好条件も手伝って、そこを埋めるように中国人が居住するようになった。 芝園団地には、1997年の段階で既に200人程度の中国人が居住していたが、その属性は大学教員や中国系企業の役員等で、地位も収入もある中国人が中心で、居住可能人口約5000人に対して4%程度であった。 これが、2005年頃には1000人に増加、寮として活用する中国企業まで現れ、その頃から中国人住人に起因するさまざまな問題が発生するようになっていったようだ』、なるほど。
・『ゴミの投げ捨て 踊り場での排泄が問題に  具体的には、ゴミを部屋の窓から投げ捨てる、階段の踊り場で大便や小便をする、ゴミ捨て場に分別を無視してゴミを捨てる、粗大ゴミを置いていく、団地内の広場で夜中に爆竹を鳴らし、注意に来た日本人住人に暴力を振るう等だ。 こうしたことはマスコミを通じて広く知られるところとなり、「チャイナ団地」と揶揄されたり、まるで中国人に占拠されているかのように面白おかしく紹介したりする記事まで登場するようになっていった。 そうした報道やネットの情報を受けてか、「汚い民族中国人帰れ」、「泥棒大国=中国」といった、団地内に勝手に入り込んだ部外者によるものと思われる落書きが、団地内の公共スペースのテーブル等に見られるまでになっていった・・・中国人住人に起因する問題は、当然のことながら日本人住人との軋轢(あつれき)を激化させ、2011年にはついにそのピークを迎える。 芝園団地の自治会、URおよび川口市の3者による協議が行われることとなり、中国語の通訳を常駐させることとなった』、「階段の踊り場で大便や小便をする」には驚かされたが、確かに生活習慣の違いというのはおおきな壁だろう。
・『中国人住民は既に半数の2500人超  現在、中国人住人の数は既に半数の2500人を超えている。彼らの属性は東京都内の企業に勤務するサラリーマンであり、ほとんどが大卒以上の学歴を持ち、収入も一定以上である。あえて“上から目線”の言い方をさせてもらえば、比較的に「質のいい中国人たち」である。 例えば、某大手コンサルティング会社の社員が、1年間の長期出張で来日し、芝園団地に住んでいるといった例もある。したがって決して、有象無象が居住し、昼間でも団地に近づくのは危険といったような極端な状況ではない。 実際、現地調査に際して筆者が訪れた団地内の中華料理店では、筆者以外は全員中国人客であったが、特段騒々しい感じもなく、雑然とした様子もなく、不衛生でもなく、家族連れや友人同士で食事を楽しんでいた。日本のどこでも見られるようなごく普通の光景と同じである。 ただ、中国人が多く住み、日本人住民とのコミュニケーションは円滑にいっていないということだった。 そもそも住民同士のコミュニケーションは日本人住民同士であっても希薄になってきており、それが日本人と中国人住民となれば、なおさらコミュニケーションは成立しにくい。日中両住民によるコミュニティーができにくいのは、ある意味当然だろう。 一昔前であれば、先にも述べたとおり、団地内に小中学校があったので、親同士のつながりを通じて自然とコミュニティーが出来上がっていった。それが、現在の住人は子育てが終わった高齢の日本人と若い中国人というのでは、彼らの間にコミュニケーションが成立することはほぼ考えられない。たまたま同じ地区に住んでいるというだけで、地縁的なものの形成など、夢のまた夢。 しかも、中国人住人は転勤(本国へ帰還)や都内のより住環境のいい地区への引越しで2~3年で入れ替わってしまうことも多くなってきている。その数は数百人単位である。 また、中国人住人は若い夫婦だけで来日し、芝園団地で子どもを産み育てるという場合、子育てを手伝ってもらうために中国から両親や親戚を一時的に呼び寄せることが多い。そうした両親や親戚は日本の生活を全く理解しておらず、勝手がわからないので、中国(多くは吉林省等の旧満州出身とのこと)と同じように生活してしまい、それが先述のように問題化してきたというのが実情のようだ』、「質のいい中国人たち」がどうして「踊り場で大便や小便をする」のかと疑問に思ったが、「両親や親戚を一時的に呼び寄せる」のであれば、あり得ると納得した。日本人住民が高齢化して、地域の小中学校を通じたつながりもないのであれば、相互のコミュニケーションは難しそうだ。
・『両者の「接点」を作っていくことが重要  中国人の子どもの中には流暢に日本語を話す子どもも少なくなく、むしろ中国語が話せないために中国語講座に通わされているほど、という話もある。そうした子どもの親たちは、高校進学に当たってはより良い教育環境を求めて都内へ引っ越していく。 そうなれば、残るのは日本語に不自由な中国人住民。そもそも中国人住民同士も横のつながりがあるわけではない。また、日本の生活習慣を知らず、日本語も全く話すことができない中国人も増え、そうした人がいる世帯は孤立する傾向にあるという。 生活習慣が異なり、コミュニケーションが成立しない人が近隣に、同じ地区に一緒に住めば、問題は起きやすい。 なぜならば、両者の生活習慣、もっと言えば、「当たり前」が異なるし、それを知ることすら困難だからだ。日本人住民と中国人住民の違いが増えれば増えるほど、問題は顕在化する一方、両者の距離は離れていく。 別の言い方をすれば、誰が悪いわけでもなく、意図的に問題とされる行為をしているわけでもない。普通に暮らしていたら違いが明らかになっていった、というだけのことだ。 両者が共生できる環境を創出するためには、両者の「接点」を作っていくことが重要だ。しかし、「接点」は放っておいて自然にできるものではない(これまでに放っておいて自然発生的に出来上がったのは、嫌悪や対立だった)。加えて、日本人住民に高齢者が多くなれば、なおさら接点は作りにくくなる』、「日本人住民と中国人住民の違いが増えれば増えるほど、問題は顕在化する一方、両者の距離は離れていく」というのは、その通りなのでろう。
・『「接点」となる交流の場をどう作ったか   こうした状況を踏まえ、オランダで移民との共生の実態について調査をした経験を持ち、芝園団地の自治会役員も務める岡崎氏が、試行錯誤を繰り返しつつ徐々に「接点」を作り出していった。 そして同氏の音頭で実施され、中国人住民の一部も参加した単発の行事に、同氏の呼びかけを受けて参加した東大生2人が、岡崎氏と連携しつつ「芝園かけはしプロジェクト」を開始。地道にさまざまな大学の学生に声をかけて部員を集め、現在は4年目に入り、代表を務める東大生のほか、慶應大、早稲田大、埼玉大等から30人程度の学生が参加している。岡崎氏いわく、こうした学生たちが来てくれたおかげで、「接点」となる交流の場作りができたそうである。 こうした場には、交流会等の近くで話をするような機会のみならず、一緒に何かを作る機会を通じて交流する「概念的交流」も含んでいるとのこと。 前者の例としては、自治会との数ヵ月にわたる議論の末に開催が決定された、持ち寄りの食事会がある。後者の例としては、落書きされた共用スペースのテーブルとベンチを日中両住民が共同で塗り直し、そこに日中両住民の子どもたちがさまざまな色の手形を押すというものがある。 一緒に作り上げ、協働の記憶を形にして残す、これがコミュニケーション、さらには関係構築の土台となっていく。 その後、自治会には中国人住民から一人が役員として参加するようになり、両住民の多様な交流の場を企画し、実施する「芝園多文化共生クラブ」も両住民の参加により発足した』、接点づくりの中心となった岡崎氏は、すごい組織力があるようだが、この成功例は例外中の例外に近いように思う。
・『外国人との共生は極めて微妙な均衡で成り立つ  順風満帆にいっているように見えるが、芝園団地における外国人との共生はこれまでの苦労の積み重ねのみならず、極めて微妙な均衡の上に成り立っていると言っていい。その均衡を辛うじて成り立たせている要素の1つでもなくなれば、均衡はもろくも崩れてしまうだろう。 その要素とは、繰り返しになるが、芝園団地に住む中国人のほとんどが大卒以上で、都内の企業に勤めるサラリーマンであり、ある程度収入があること。 一言で言えば、中国人住人に一定以上の知的水準が担保されていることだ。これに加えて、中国人住民の数と日本人住民の数がほぼ均衡しており、周辺地域も含めれば、当然のことながらに日本人住民の数の方が多いことも重要な要素である。芝園団地のこれまでの経緯からも明らかなように、人が増えれば増えるほど問題が顕在化しやすくなり、場合によっては住民同士の衝突にまで発展する可能性も高くなる。 岡崎氏の案内で筆者が現地を調査した際には、団地内には、注意を喚起する中国語の張り紙は掲示されていたものの、敷地内でかつてあったようなゴミの投げ捨てや階段の踊り場等での糞尿といったものは見られなかった。 しかし、中国人住民の数が現状以上に増加し、住民の入れ替わりも頻繁になり、日本の生活習慣を全く解しない親族が多数住むようなことになれば、かつての問題が再発する可能性も否定できない。 また、団地のゴミ捨て場についても、以前と比べて分別等も整然と行われるようになったようだ。その一方で、家具や電化製品等の不法投棄が後を絶たないようで、筆者が訪れた日にも大型ソファから数台の洗濯機、外国製とみられる輸出入に使用される大きな木箱等が、堂々と投棄されていた。 もっとも、団地住民のゴミ捨て場での行動を見る限りでは、これらの不法投棄は団地に住む中国人住人によるものとは限らず、埼玉県内のみならず、東京都内も含めた周辺地域に居住する外国人や日本人が、ある種便乗して不法投棄したものも含まれているのかもしれない。 とはいえ、中国人住民のさらなる増加と質的変化により、この状況が悪化する可能性は十分ある』、冷静で的確な分析だ。
・『中国人住人の数が一定数を超えたら話ができなくなった  芝園団地のある住人は、「中国人住人の数が一定数を超えたら、話ができなくなった」と言っていたという。まさにトマス・エリオットが、「あるリージョナルコミュニティにある速度以上で急激に外国人が入ってくると、そのコミュニティーは崩壊する」としていたのを彷彿とさせる。 要するに、芝園団地の現状は、まれで“特異な例”であり、この事例をもって成功と持ち上げて他の地域に当てはめることは不可能だし、芝園団地で成功しているから、外国人材、もとえ移民が入ってきても、皆の努力で共生社会が実現できると考えるのは、明らかな間違いであるということだ。 国は受け入れ環境を整えるとしているが、芝園団地でのこれまでの試行錯誤を見れば、そんな単純で簡単なものではない、画一的にどうこうできるものではないことは明らかであろう。しかも、流入してくる移民が単純労働者ということになれば、芝園団地の共生社会の微妙な均衡の重要な要素である、外国人住民の知的水準の高さは担保されないことになる。 外国人=悪であると言いたいのではない。 一定の規模以上で、生活習慣の異なる外国人が一気に入ってくれば、違いが明らかになり、そこには容易にコミュニケーションは成立しえず、共通の経験も意識も生まれえない。 そんなことを微塵も考えない、外国人材受け入れという「美名」の下で着々と進められる“移民政策”は、わが国に「百害あって一利なし」の愚策以外のなにものでもなく、即時やめるべきである』、大変、説得力がある主張で、強く同意したい。

第三に、健康社会学者の河合 薫氏が10月16日付け日経ビジネスオンラインに寄稿した「外国人は弱者?「奴隷制度」を続ける企業の愚行 「よそ者」を差別し「内部の敵」にする」を紹介しよう。
https://business.nikkeibp.co.jp/atcl/opinion/15/200475/101500185/?P=1
・『テレビでは女性アナウンサーが興奮気味に「政府、外国人労働者対策、大転換!」と報じ、新聞の社会欄には「ベトナム実習生ら相次ぐ死」との見出しが掲載され……、このところ連日連夜、「外国人労働者問題」なるものが報道されている。 あまりに多く、見逃した方もいらっしゃるかもしれないので、ここ数日間、話題になった問題をふり返っておく。 10月6日、日立製作所が笠戸事業所で働くフィリピン人技能実習生のうち、20人に解雇を通告していたことが分かった。その後、さらに20人が解雇されることがわかり、実習生側は雇用契約が3年間であり不当解雇だと主張。残り期間の賃金が補償されなければ、日立を相手取り損害賠償を求めて訴訟を起こす方針と報じられた。 また6日夜に放送されたテレビ番組に対し、「人種や国籍等を理由とする差別、偏見を助長しかねない」とする意見書を外国人問題に取り組む弁護士らがテレビ局に提出。 番組のテーマは「強制退去」で、不法占拠や家賃滞納の現場を紹介する中で、外国人の不法就労なども取り上げたものだった。 弁護士側は、「技能実習制度の問題点や、収容施設の医療体制の不十分さ、自殺者が出ていることに番組が一切触れなかった」と指摘。「外国人の人権への配慮が明らかに欠如する一方、入管に批判なく追従し、主張を代弁しただけの、公平性を著しく欠いた番組」だと批判している(参考記事はこちら)』、入管からの情報だけで一方的に番組を作り上げたテレビ局は、批判されて当然だが、こうした政府からの情報をタレ流すマスコミが増えているのは由々しいことだ。
・『一方、政府は11日、外国人労働者の受け入れ拡大に向け、19年4月の導入を目指す新制度として、新たな在留資格として「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類を創設。1号は「相当程度の知識か経験」と生活に支障がないレベルの日本語能力を取得条件とし、上限5年の在留資格を与えるが、家族の帯同は基本的に認めないという。 翌日の12日には、熟練技能が必要な業務に就く「特定技能2号」には実質永住権を与えると発表した(冒頭のニュース)。 ご存知のとおり、政府はこれまで原則認めてこなかった単純労働に門戸を開放し、25年までに外国人労働者を50万人超増やそうとしている。 が、やれ「技能実習生だ」、それ「EPA(経済連携協定)だ」、ほれ「国家戦略特区による外国人の受け入れだ」、これ「留学生30万人計画だ!」などなど、人手不足を補うための制度は次々と打ち出すけど、あくまで「人手不足に対応する処方箋」であって「移民政策」ではないと断言。 OECD加盟35カ国の最新(15年)の外国人移住者統計で、日本への流入者は前年比約5万5000人増の39万1000人。ドイツ(約201万6000人)、米国(約105万1000人)、英国(47万9000人)に次ぐ、堂々の4位。 国連などの国際機関では一般的に「1年以上にわたる居住国の変更を長期的または恒久移住」と定義しているので、「日本は世界4位の移民大国」となる。 にもかかわらず、「わが国に移民はいませんし、今後もいません」という大いなる矛盾のもと、「日本に来てね、住んでね、働いてね、低賃金だけどよろしくね!」と恥ずかしげもなく豪語しているのである。 奇しくも2年前の16年12月、甲府で生まれ育ったタイ国籍の高校2年生が、東京高裁から「強制退去処分取り消し請求」を棄却されたことがあった。 少年の母親は1995年9月、タイ人ブローカーに「日本で飲食店の仕事を紹介する」と言われて来日。実際には全く違う仕事を強要され、やがて不法就労者になり、13年に出頭し、14年に強制退去処分を受ける。母親は控訴せずに帰国し、少年だけが控訴していたのである』、「日本は世界4位の移民大国」とは改めて驚かされた。これで「移民ではない」などと政府が強弁するようでは、世界の笑いものだ。
・『日本は「目に見えない鎖国状態」にある  このニュースはこちら(「外国人歓迎」と言いつつ鎖国続ける嘘つき日本――いまだ変わらない「仕方ないから外国人で」的差別意識――)でも取り上げ、「日本人であれ、外国人であれ、『労働』するためだけに人は存在するわけじゃない。どんな人にも生活があり、大切な家族がいる。母親であり、父親であり、子どもでもある。そんな当たり前が、「外国人」という接頭語が付けられた途端、忘れさられる現実が日本にはある。外国人労働者となった途端、『モノ』のように扱われてしまうのだ」と書いた。 これに対し、コメント欄は大炎上。 「低賃金がイヤなら母国に帰ればいい」「犯罪が増える」「オマエはメルケルか」「日本語をまともに話せないなら、日本にいる資格なし」「低賃金労働者の人権を語るなんて聖母マリア気分か」「あんたが外国人ベビーシッターでも家政婦でも雇ってみればいい。自宅の鍵をあずけ、家財もそのままで」etc.etc……。 私の文章が稚拙だったのが原因かもしれない。が、批判コメントの8割超が、私のコラムを批判しながら、外国人労働者の「人権などどうでもいい」と書いているようで、「日本は目に見えない鎖国状態にある」と改めて痛感し、正直悲しかった。 過剰なまでの多文化共生アレルギー。外国人は「よそ者=集団の内部に存在する外部」であり、「一緒に働く仲間」として受け入れる必要はない。そんな社会の空気が、政府が断じて「移民」と認めない姿勢に影響を与えているのでは、と思ったりもする。 そこで、今回は「外国人労働者の実態」を、ストーリーではなく、客観的な数字で詳細に捉えてみようと思う。 というのも、コメント欄炎上から2年の間、外国人労働者がいる企業をあちこちでみて感じたのが、「ちゃんとやっている企業はちゃんとやっているし、ひどい企業はとことんひどい」ってこと。 加えて出身国によっても日本人の「まなざし」は変わる、という悲しい現実もある。 そこで「外国人労働者」を主語にすることをやめ、「企業」にスポットを当てれば、違う角度からこの問題を考えることができるのではないか、と考えた次第である。 参考にするのは、日本政策金融公庫総合研究所が18年に発表した「中小企業における外国人労働者の役割~『外国人材の活用に関するアンケート』から~」と題された、調査結果だ。 対象は、日本政策金融公庫国民生活事業および中小企業の融資先のうちの、法人1万5970社である(調査実施は16年8~9月)』、「日本は「目に見えない鎖国状態」にある」というのは至言だ。
・『企業から見た外国人労働者  調査結果を子細にみてみるとステレオタイプになっている部分も読み取れるので、まずは結果を要約するのでご覧ください。
【どんな企業が、外国人労働者をどのように雇用している?】(・全体の13.3%が外国人を雇用し、業種別では「飲食・宿泊業」25.5%、「製造業」24.3%、「情報通信業」13.8%。 ・外国人を雇用している企業は、従業員規模が大きいほど多い。「4人以下」の企業では2.1%であるのに対し、「100人以上」は51.1%。 ・「正社員」として雇用している企業は6割で、平均雇用人数は2.8人。 ・「非正規」として雇用している企業は4割(平均5.0人)、「技能実習生」は2割(平均5.8人))。
【どういう人たち?】(・「中国」が38%で最多。次いで「ベトナム」18%、「フィリピン」7.7%。 ・男性が女性より多い(56.4%)。 ・男性は「技能実習生」が7割、女性は「非正規」が6割。
・最終学歴は「大学・大学院(国内外含め)」が4割強。 ・技能実習生は「24歳以下」「25~34歳」で全体の9割をしめる、「45歳以上」も1.4%いる。)
【どんな仕事? 賃金?】(・「すぐにできる簡単な仕事」は正社員5.2%、非正規36.7%、技能実習生10.5%。 ・「多少の訓練やなれが必要な仕事」は正社員32.5%、非正規46.1%、技能実習生62%。 ・月給は「正社員」は「22万円超」が6割、「技能実習生」は「18万円以下」が9割以上。 ・時給は「非正規」の4割が「901~1000円」、「技能実習生」の5割が「850円以下」。 ・「技能実習生がいない企業」の33.2%が、正社員募集時の月給提示額を「22万円超」としているのに対し、「技能実習生がいる企業」では12.5%と激減。)
【なぜ、外国人を雇う?】(・「日本人だけでは人手が足りない」が28%、「日本人が採用できないから」が10.4%と、人手不足によるものが多い。 ・「外国人ならではの能力が必要」23.3%、「たまたま外国人だった」18.2%と、人手不足以外も少なくない。 ・「技能実習生」を雇用する理由のトップは「日本人だけでは人手が足りない」(42%)、次いで「日本人が採用できないから」「外国人の方が利点が多いから」が18.8%。)
【外国人を雇っている企業と雇っていない企業の違いは?】(・「正社員」「非正規」「30歳未満の従業員」「高度スキル」のすべてで、「足りてない」とする企業の割合が多い。 ・「外国人雇用企業」の5割で最近5年間の売上高が「増加」、採算も4割が「改善傾向」だった。 ・「外国人雇用企業」と「非雇用企業」で、「正社員」の賃金を比較すると、「外国人雇用企業」の方では「18万円以上」が7割であるのに対し、「非雇用企業」では6割。 ・「外国人雇用企業」と「非雇用企業」で、「正社員」の労働時間を比較すると、「外国人雇用企業」の方では「週40時間未満」が8割超であるのに対し、「非雇用企業」では7割。 【今後はどうですか?】(・「外国人雇用企業」では「外国人かどうかは考慮しない」が39%でトップ、次いで「現状程度は雇用したい」(36.4%)、「増やしたい」(19.7%)。 ・「外国人非雇用企業」では「雇用するつもりがない」が47.3%でトップ、次いで「よい人がいれば」(31.1%)、「ぜひ雇用したみたい」17.1%。) さて、と。いかがだろうか?』、これらのポイントは以下。
・『技能実習生=低賃金労働者、になっている  これらの結果から明白になったのは、「技能実習生=低賃金労働者」であり、「技能実習制度」はもはや不要だ。 厚労省のHPによれば、「外国人技能実習制度は、我が国が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う『人づくり』に協力することを目的としております」 とあるが、実習生が「日本」に協力してくれているのだよ、奴隷的な扱いをうけながら。 そもそも「実習生」なのに「解雇」とか、「実習生」なのに「過労死」とか、まったくもって意味不明。16年度に事故や病気で亡くなった技能実習生・研修生は28人。脳・心疾患が8人で、全体の3割が「過労死」と考えられる(「国際研修協力機構」の報告書)。 「特定技能1号」は技能実習生から移行することを基本形と想定しているが、どこが「開発途上国等の経済発展を担う『人づくり』」なのか。「出稼ぎ労働者」という実態にあった呼び名にすべきだし、「外国人労働者」ではなく、「アジア人労働者」とした方がいい。 今回の調査結果で、個人的に興味深かったのが「非正規雇用」が多いことである。 報告書に記されていた「外国人従業員の在留資格」から推測すると、大半は日系人の可能性が高い。日系人労働者の問題は20年以上前から指摘されているが、解決されていないことが確かめられたかっこうである。 また、今後の外国人雇用について、「外国人かどうかは考慮しない」が4割もいることから、企業が欲しがっているのは「日本経済の底辺を支える労働力」であり、労働の冗長性を担保するための存在であることは明白である。 さらに、少々拡大解釈かもしれないけど、「外国人雇用企業の方が非雇用企業に比べて正社員の賃金が高く、労働時間が短い傾向がある」という結果は、「底辺を支える労働力」とは、正社員が健康でいる役目も担っていると捉えることもできる。 海外から労働力を集めた方が初期費用はかかるが、その費用が債務として労働者にふりかかっている間は拘束できる。だからして、「外国人労働者問題」ではなく、「奴隷労働者問題」。 いや、「底辺労働者問題」とした方が、底辺に追いやられている日本人の労働者も救うことができる。これらは社会福祉政策とリンクさせて考えるべき問題だと思うのだ。 実際、オランダやデンマークなどの福祉国家では、企業が要求する柔軟性のある雇用制度を実現する代わりに、その負担をパートタイム正社員という形で、企業も社会保障費を負担。企業から排出された失業者の再就職に必要な技能の習得を、国や社会が引き受けることで、冗長性問題は解決された。 そのための「同一価値労働・同一賃金」であり、パートタイマーにもフルタイムにも、年金、保険などを同様に取り扱うようにしたのである。 かたや日本はどうだろうか。 自分たちが「欲しいもの」を手に入れる手段はあれこれ模索するけど、その結果生じる問題はおきざりのまま。「奴隷地獄」に耐えられず実習生が脱走し、不法滞在し、窃盗などの犯罪をおかしようものなら、「外国人が増えると治安が悪くなる」と他国責任にすり替える。 おまけに、私のようなポンコツが「外国人を犯罪に走らせてしまう環境」を語ろうものなら、「同じ環境で働いている全員が犯罪を犯すわけじゃないだろう!」と一斉に攻撃する始末だ』、外国人労働者問題ほど政府の建前と実態が乖離している例はあまりなさそうだ。
・『外国人は日本の究極の弱者  あるテレビ番組で、日本に住む外国人の大学教授が、「外国人って、日本の究極の弱者ですよ」と嘆いていた。 ……ホント、その通りだと思う。 弱者のいちばんの問題は、多数派から「よそ者」扱いされる点だ。 多数派のメンバーは自分たちの地位の高さの見せしめに「よそ者」を差別し、「内部の敵」として扱い、排除する。 外国人労働者、必要なのですよね? ならば、彼らが下級労働者や下級市民に固定化されぬよう、社会の仕組みをいま一度議論してほしい。 そのためには私を含めたひとりひとりが、自分世界とよそ者を区別することがあってはならないことだ』、普段は冷静な河合氏が、いつになく熱く主張している。だが、主張そのものは説得力があり、私も大賛成だ。
タグ:テレビ番組 日経ビジネスオンライン ダイヤモンド・オンライン JBPRESS 池田 信夫 河合 薫 外国人労働者問題 室伏謙一 (その6)(外国人労働者は「移民」ではないのか 安倍政権の奇妙な「新在留資格」、中国人住民が半数を占める埼玉の団地「ガラスの共生社会」のリアル、外国人は弱者? 「奴隷制度」を続ける企業の愚行 「よそ者」を差別し「内部の敵」にする) 「外国人労働者は「移民」ではないのか 安倍政権の奇妙な「新在留資格」」 外国人労働者は128万人と、5年前の2倍 「技能実習生」として入国した人や留学生が、約50万人 安倍首相は2019年4月に新しい在留資格を設けて受け入れを増やす方針転換を表明 世界各国で移民をめぐる紛争が続発しているとき、中途半端な形で移民を増やすのは危険 「移民政策をとらない」安倍政権 移民ではなく、一時的な就労だというのが政府の説明 国連の定義では、移民とは「1年以上外国で暮らす人」 移民は247万人で、すでに日本の人口の約2%を占めるが、そのうち就労ビザをもつ労働者は2割しかいない 骨太の方針では「2025年までに外国人労働者が50万人超」増えることを想定 移民に消極的だった安倍首相が外国人労働者の受け入れに踏み切ったのは 地方の中小企業で人手不足が深刻化しているためだ ヨーロッパでは難民の受け入れをめぐって国論が二分し、移民排斥を主張する極右政党が台頭している 移民は人口減少の解決にはならない 人口減少社会で必要なのは、移民で人口を増やすことではなく、人口減少に適した社会に変えることだ 労働人口が増えるとGDP(国内総生産)は増えるが、地方の低賃金労働者が増えると、一人当たりGDPは減る 治安の悪化などの社会的コストを考えると、メリットがコストより大きいかどうかは分からない 5年以内の短期滞在だと、年金保険料は徴収できない 外国人労働者にも生活保護の受給資格があり、健康保険にも加入できる 最大の問題は日本語の壁 移民を受け入れるなら、それなりの覚悟をもって、日本国民として永住権を与えるべきだといっているのだ 逆にいうと、日本国民になれない労働者を中途半端に受け入れるべきではない 「中国人住民が半数を占める埼玉の団地「ガラスの共生社会」のリアル」 埼玉県川口市のUR川口芝園団地 中国人の住民が半数以上 現在は外国人住民との「共生」に成功 外国人住民との共生は微妙な均衡で成り立つものであり、容易なものではない こちらの都合で日本に呼んできて、用が済んだら帰ってくれるというものでもない 彼らは外国人材という名の労働者であると同時に、日本に暮らす生活者でもある 生活の本拠を日本に置くわけだから、紛れもなく移民 自治会役員の岡崎広樹氏 人間力大賞で総務大臣奨励賞を受賞 子どもたちが成長し、高校進学に伴って家族全体で他の地域へ引っ越したり、大学進学や就職で子どもたちが団地を出て行ったりしたことで、居住人口が減少。利便性と家賃の手頃さ、さらに保証人不要といった好条件も手伝って、そこを埋めるように中国人が居住するように 1997年の段階で既に200人程度の中国人が居住 属性は大学教員や中国系企業の役員等で、地位も収入もある中国人が中心 居住可能人口約5000人に対して4%程度 2005年頃には1000人に増加 ゴミの投げ捨て 踊り場での排泄が問題に 「チャイナ団地」と揶揄 「汚い民族中国人帰れ」、「泥棒大国=中国」といった、団地内に勝手に入り込んだ部外者によるものと思われる落書きが、団地内の公共スペースのテーブル等に見られるまでになっていった 日本人住人との軋轢(あつれき)を激化させ、2011年にはついにそのピークを迎える 中国語の通訳を常駐 中国人住民は既に半数の2500人超 東京都内の企業に勤務するサラリーマンであり、ほとんどが大卒以上の学歴を持ち、収入も一定以上である 「質のいい中国人たち」 日本人住民とのコミュニケーションは円滑にいっていない 住民同士のコミュニケーションは日本人住民同士であっても希薄に 日本人と中国人住民となれば、なおさらコミュニケーションは成立しにくい 現在の住人は子育てが終わった高齢の日本人と若い中国人というのでは、彼らの間にコミュニケーションが成立することはほぼ考えられない 子育てを手伝ってもらうために中国から両親や親戚を一時的に呼び寄せることが多い。そうした両親や親戚は日本の生活を全く理解しておらず、勝手がわからないので、中国(多くは吉林省等の旧満州出身とのこと)と同じように生活してしまい、それが先述のように問題化 両者の「接点」を作っていくことが重要 岡崎氏が、試行錯誤を繰り返しつつ徐々に「接点」を作り出していった 東大生2人が、岡崎氏と連携しつつ「芝園かけはしプロジェクト」を開始 東大生のほか、慶應大、早稲田大、埼玉大等から30人程度の学生が参加 持ち寄りの食事会 落書きされた共用スペースのテーブルとベンチを日中両住民が共同で塗り直し、そこに日中両住民の子どもたちがさまざまな色の手形を押す 自治会には中国人住民から一人が役員として参加 外国人との共生は極めて微妙な均衡で成り立つ 中国人住人の数が一定数を超えたら話ができなくなった 一定の規模以上で、生活習慣の異なる外国人が一気に入ってくれば、違いが明らかになり、そこには容易にコミュニケーションは成立しえず、共通の経験も意識も生まれえない そんなことを微塵も考えない、外国人材受け入れという「美名」の下で着々と進められる“移民政策”は、わが国に「百害あって一利なし」の愚策以外のなにものでもなく、即時やめるべき 「外国人は弱者?「奴隷制度」を続ける企業の愚行 「よそ者」を差別し「内部の敵」にする」 「人種や国籍等を理由とする差別、偏見を助長しかねない」とする意見書を外国人問題に取り組む弁護士らがテレビ局に提出 入管に批判なく追従し、主張を代弁しただけの、公平性を著しく欠いた番組 「日本は世界4位の移民大国」 日本は「目に見えない鎖国状態」にある 企業から見た外国人労働者 「技能実習生=低賃金労働者」であり、「技能実習制度」はもはや不要だ
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クレーマー(その1)(暴言が突出!広がる「悪質クレーム」の実態 「顧客至上主義」からどう脱却していくのか、サービス業に蔓延「悪質クレーム」の被害実態 4人に3人が遭遇!法整備に向けた動きも…、日本の過剰なおもてなしが クレーマーを生んでることに気づいてますか ドイツからみればよく分かる) [社会]

今日は、クレーマー(その1)(暴言が突出!広がる「悪質クレーム」の実態 「顧客至上主義」からどう脱却していくのか、サービス業に蔓延「悪質クレーム」の被害実態 4人に3人が遭遇!法整備に向けた動きも…、日本の過剰なおもてなしが クレーマーを生んでることに気づいてますか ドイツからみればよく分かる )を取上げよう。

先ずは、昨年12月2日付け東洋経済オンライン「暴言が突出!広がる「悪質クレーム」の実態 「顧客至上主義」からどう脱却していくのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/199517
・『「謝罪として土下座を強要する」「クレームの際、従業員を怒鳴りつける」「インターネット上に従業員の実名を挙げ、一方的な誹謗中傷をする」――。 百貨店やコンビニエンスストア、飲食店などの接客現場で見られる悪質クレーム。これが原因となり、一般消費者へのサービス低下や、従業員のストレスにつながるケースが散見されている。こうした状況に危機感を抱いた産業別労働組合「UAゼンセン」(以下、ゼンセン)が対応に乗り出した』、ベアなどでは力をなくした労働組合も、こうした身近で切実なテーマを取上げるのはいいことだ。
・『5万件超のアンケートが集まった  ゼンセンは繊維・衣料、食品、流通、レジャー・サービスなど多種多様な業種の企業別労働組合で構成されている、日本最大の産業別労働組合である。2017年9月中旬時点で2428組合、172万人余りで構成されている。 11月16日、ゼンセンは厚生労働相に要望書を提出。「顧客によるハラスメント」から労働者を守るために事業者が講ずべき措置を定めることや、悪質クレームに関する実態調査の実施を求めた。 ゼンセンは今回の要望書作成に先立ち、組合員にアンケートを実施。こうしたアンケートを実施するのはゼンセンとして初めてのことだ。「当初は2万件集まれば社会に対して訴えうるものになると考えていたが、職場での反響が大きく最終的には5万件余りのアンケートが集まった」(ゼンセン流通部門の西尾多聞事務局長)。 アンケート結果からは悪質クレームの実態が明らかとなった。来店客からの迷惑行為に遭遇した経験があると回答したのは全体の約74%。そのうち、遭遇した迷惑行為として最も多く挙げられたのが暴言(2万4107件)だった。そのほか、何回も同じ内容を繰り返すクレーム(1万4268件)や権威的(説教)態度(1万3317件)、威嚇・脅迫(1万2920件)が上位を占めた。 今回のアンケートではこうした迷惑行為の具体的な内容についても回答されている。たとえば、暴言については「お客様の(不満の)はけ口になっていて、『このババア』と言われた」、「商品の在庫を尋ねられ、在庫がない旨を伝えたところ、『売る気がないんか、私が店長だったらおまえなんかクビにするぞ』と延々怒られた」といったケースがあったという。 そのほか、「『レジ担当のあいさつがない』との申し出に、電話対応で謝り続けたらお客様から説教され、2時間程度の対応をした」という長時間拘束の例や、「普通に接客していたとき、お客様の機嫌が悪かったのか、かごや小銭を投げられた」といった暴力行為もあった』、回答が5万件余りも集まったということは、切実さの表れだろう。要望書を受け取った厚生労働省も前向きに対応すべきだ。
・『精神疾患になった事例も  アンケートでは、迷惑行為を経験した組合員のうちストレスを感じた人は9割に上り、1%に当たる359人が精神疾患になったと回答している。 「今回、5万人もの組合員が回答してくれたが、あくまで今働いている方を対象にしたものにすぎない。これまでに悪質クレームが原因でストレスを感じて仕事を辞めていった方もたくさんいるはずだ」(ゼンセン流通部門の安藤賢太執行委員) 今後、悪質クレームにどう対応していくのか。ゼンセンがまず取り組むのが、悪質クレームの呼称を確定することだ。実は、ゼンセンは「悪質クレーム」という名称について、現時点で仮称としている。悪質クレームと呼称した際に、クレームを発する消費者そのものを問題としていると誤解されかねないからだ。 もちろん、ゼンセンとしてはクレームそのものを否定しているわけではない。「クレームは消費者の意見がわかるアンテナでもあり、サービスを向上させるための有益な情報」というのが基本姿勢だ。「問題なのはあくまで悪質だという点。広く社会に受け入れられる名称を考えていきたい」(ゼンセン常任中央執行委員の森田了介氏)。 もう1つの課題が、悪質クレームの基準を明確化することだ。今回、ゼンセンは悪質クレームを「商品やサービスに関する要求内容または要求態度が社会通念に照らして著しく不相当な苦情のこと」、または「一般常識に照らして明らかに不当である要求や異常な態様の要求行為」と定義した』、精神疾患になったのが1%もいるというのは深刻だ。悪質クレームの定義も妥当なようだ。
・『「顧客至上主義」の呪縛  ただ、その判断基準が企業、もしくは対応した従業員によって異なる場合があり、実際には厳格な対応が難しい。店頭などの迷惑行為については、刑法の適用された判例が少なく、適用されるにもハードルが高くなっているという。 ゼンセンは早期に業界全体としての基準作りをし、悪質クレームの現状や対応策を周知していく構えだ。 現場で働く従業員が「顧客至上主義」の呪縛にとらわれている点も見逃せない。11月20日にゼンセン主催の悪質クレーム対策セミナーで講演した深澤直之弁護士は「(現場の従業員が)お客様だから仕方ないと思い込んで、我慢しすぎている」と指摘。さらに「(過度な要求については)断ることや無視することも立派なクレーム処理の1つ」と強調した。 今後、ゼンセンとしては悪質クレームの取り締まりを目的とした法整備を訴えていく方針だ。ルールを確立して対策を講じると同時に、消費者1人ひとりが自らの行いを見つめ直す必要もありそうだ』、「お客様は神様です」に代表される「顧客至上主義」は確かに問題だ。事業者が講ずべき措置を要求するのは当然だが、法整備となるとハードルは高そうだ。

次に、9月13日付け東洋経済オンライン「サービス業に蔓延「悪質クレーム」の被害実態 4人に3人が遭遇!法整備に向けた動きも…」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/237424
・『「レジ打ちを間違えたら、15分くらい暴言を言われた」「『殺すぞ、子どもが泣いているのに景品をくれないのか』とクレームを受けた」「『介助したら蹴るぞ』と言われた」――。 飲食店やレジャー施設、介護施設などで見られる悪質クレーム。9月11日、産業別労働組合「UAゼンセン」(以下、ゼンセン)が、今年2~5月に実施した悪質クレーム(迷惑行為)に関するアンケート調査の結果を発表した。調査は外食、タクシー、ホテル、病院・介護などサービス業の現場で働く組合員を対象に行われた』、第一の記事は広範な業種が対象だったが、今回のはサービス業に限定した第二弾だ。
・『1万9000件の具体的な事例  調査結果によると、回答した組合員3万人余りのうち約75%に当たる2万2440人が、「業務中に悪質クレーム(迷惑行為)に遭遇したことがある」と回答。そのうち9割以上が「ストレスを感じた」と答えた・・・昨年、ゼンセンは百貨店やスーパーなどで働く組合員を対象に同様のアンケート調査を実施。5万件を超える回答を得た前回の調査でも、今回と同じく暴言や何度も同じ内容を繰り返すクレームを受けたといった回答が数多く見られた。 今回の調査についてゼンセン総合サービス部門の北山淳政策委員長は「関心を持って応じてもらえ、非常に多くの回答が集まった」と振り返る。実際、3万件余りの回答のうち1万9000件については具体的な事例の報告もあった。 たとえば、「『今日は予約が入っていない』旨を伝えると、受付2人に向かって『馬鹿面さげて何やってんだ』と暴言を吐かれた」、「『俺は○○(親会社)の社長と知り合いでおまえなんかすぐクビにできる』と言われた」といった、暴言や権威的(説教)態度による脅迫などがあったという』、9割以上が「ストレスを感じた」とは、深刻だ。個別事例もいかにも日常的にありそうな話だ。
・『法整備の必要性を強調  調査では「性的な内容の話を我慢して聞いていたらエスカレートして尻や胸などを触られたり抱きつかれたりした」などセクハラ行為も3000件以上報告されている。 こうしたセクハラ行為は医療・介護・福祉に多く、悪質クレーム(迷惑行為)を受けたことがある医療・介護・福祉従事者のうち、17.1%がセクハラ行為を受けたことがあると回答している。 また、威嚇・脅迫行為も、医療・介護・福祉従事者だけで4042件を占めるなど、ほかの業種に比べて多いことがわかった。  このような事態を受けゼンセンは、法整備も含め社会全体で対策を推進していく必要性を強調する。事業主には従業員を守る「安全配慮義務」があるものの、「アンケートを見ると、最前線の人間に全部押し付けられて、会社は現場に対応を任せきりにしているというケースもある。そこを何とかしていきたい」(ゼンセンの高松和夫副書記長)』、「会社は現場に対応を任せきりにしているというケースもある」とあるが、そうした無責任な企業はもっと多いのではなかろうか。
・『また、セクハラについて高松副書記長は「会社の内部でのハラスメントだけでなく、顧客や第三者のハラスメントに対応できるものを法制化できないか」と話す。 対策は法整備にとどまらない。ゼンセンは厚生労働省に対して悪質クレームの実態調査や、倫理的な消費行動の啓蒙や教育も求めている。8月10日には賛同する176万人余りの署名を集め、加藤勝信厚労相に提出した』、医療・介護・福祉などの現場でのハラスメントに、いきなり警察沙汰にするよりは、先ずは「倫理的な消費行動の啓蒙や教育」が必要なのは確かだ。
・『深刻な人手不足問題  実際、アンケート中の「迷惑行為が発生している原因をどう考えるか」という質問(複数回答可、以下同)に対し1万6333人が「顧客のモラル低下」と回答。「迷惑行為からあなたを守るためにどのような措置が必要か」との質問には1万0215人が「顧客への啓発活動」と答えている。 厚労省の統計によると、2018年7月時点で「サービスの職業」の有効求人倍率は3.45倍で、求職者1人に対して3~4件の求人がある状況。中でも「接客・給仕の職業」は3.93倍、「介護サービスの職業」は4.03倍と、より深刻だ。悪質クレーム(迷惑行為)問題の解決は、人手不足の解消を考えるうえでも重要となる。 従業員の定着率が上がればスキルが蓄積し、生産性が向上して従業員の処遇改善にもつながる。サービス業の現場では外国人労働者の受け入れ拡大に向けた議論や、機械化・省人化の動きも進められているが、悪質クレーム対策を含む根本的な職場環境の改善も欠かすことはできない』、その通りだ。先ずは、厚労省は早期に実態調査すべきだろう。

第三に、ドイツ在住フリーライターの雨宮 紫苑氏が9月29日付け現代ビジネスに寄稿した「日本の過剰なおもてなしが、クレーマーを生んでることに気づいてますか ドイツからみればよく分かる 」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/57672
・『日本で凝り固まった就活や就職をしたくない! と22歳でドイツに向かったフリーライター・雨宮紫苑さんは、鼻息荒く移住したものの、就職はおろかアルバイトもまともにできないという悔しい体験をした。 26歳となった今はドイツに住みながら、日本に年に1度は帰国する生活を送っており、『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』という著書も刊行している。他国から日本と比べてみることで、より日本の良い点とおかしい点が浮かび上がって見えてくるのだ。 東京五輪まで泣いても笑ってもあと2年を切った。五輪の成功に、滝川クリステルがプレゼンで主張した「お・も・て・な・し」をいかにできるかどうかは重要な鍵となる。しかし雨宮さんは日本での「おもてなし」に対し、違和感をぬぐえないというのだ』、なるほど。
・『「へりくだりすぎる」店員  先日都内の病院で、父親の定期健康診断があった。定期健診のあとはちょっとおしゃれなランチをするのが両親の恒例行事らしく、一時帰国中のわたしはご相伴にあずかるため、いそいそと都内へと向かった。 しかし一時帰国中で予定を詰め込んでいたから、それなりに仕事が溜まっている。そこで、両親が病院に行っているあいだ、病院のそばのコーヒーチェーン店で仕事をしていることにした。 頼んだのは、ホットカフェモカのスモール。対応してくれたのは、大学生バイトと思われる背が高い男の子だった。 彼が「ホットカフェモカのラージをおひとつですね」と言うから、「スモールで」と訂正。彼は「すみません」と言いつつレジを打ち、うしろを振り返って「アイスカフェモカのスモールをお願いします」と言った。そこでわたしは「ホットでお願いします」と再び訂正。 なんだかおかしくなって、わたしは「ありますよね、そういうとき!」と言いながら笑った。 しかし彼はそこで、「大変申し訳ありませんでした」と深々と頭を下げてきたのである。しかも、お金を払った後も、「申し訳ありませんでした」と再度お辞儀。その様子に、むしろわたしが戸惑ってしまった。アイスカフェモカのラージでも飲みますよ!? 怒ってないですよ!? 日本に一時帰国してから、このようなお客様扱いにドギマギしてしまう場面がたくさんあった。 安いことがウリの居酒屋で、店員がひざまずいて注文を聞く。靴屋でサイズを言ったら、店員は小走りでバックヤードに消える。2000円のスカートを買っただけで、店の外までお見送りをされる。 気持ちはうれしいけれども、正直「そんなにへりくだらなくてもいいのに……」と思うことも多い。ドイツの接客は(良くも悪くも)人間と人間のコミュニケーションだから、客と店員の関係がもっと近い。「おつりがないんだけど、1ユーロある?」と聞かれ、「ないなぁ。じゃあチップであげるよ」「ありがとう」なんて会話をする。それに一度慣れてしまうと、日本の客と店員とのあいだにある、不自然なほどに遠い距離といびつな上下関係に戸惑ってしまうのだ』、確かに日本の接客サービスは過剰だ。
・『今の「おもてなし」は圧力では?  滝川クリステルさんのスピーチにより、ふたたび注目されることとなった日本の『おもてなし』。最近はその熱も冷めてはきたが、それでも「日本のおもてなしは世界一」と自負している人は多いだろう。 事実、世界経済フォーラム(WEF)による2017年の観光競争ランキングの『Degree of customer orientation(顧客満足度を重視する度合い)』で、日本は1位に輝いている。たしかに、日本の強みのひとつではあるようだ。 しかしわたしは、過剰にもてはやされた『おもてなし』に疑問をもっている。 本来『おもてなし』というのは、対価を求めない心配りを意味する。絶対にやらなくてはいけないものではないが、相手をより喜ばせるためにわざわざ行う創意工夫のことだ。そこには上下関係はなく、思いやりによって成り立っている。 一方『サービス』というのは、ご主人様にご奉仕して対価をもらうことである。ラテン語の「奴隷」が語源で、そこには明確な上下関係があるが、そのぶん対価が発生する。 では日本の現在の『おもてなし』はどうか? 本来は上下関係がないはずの『おもてなし』だが、実際には従属的な『サービス(奉仕)』になっている。しかし精神的には『おもてなし』しているつもりでいるから、対価をもらえず現場は疲弊する。そして客は自分をご主人様だと錯覚していて、サービス業従事者に感謝しない。 現在の日本の『おもてなし』は、サービスとおもてなしを客に都合がいいようにごちゃまぜにしている、『一種の圧力』ではないだろうか。 「ふつう」に考えれば、店員が客に土下座したり、クライアントの無茶な納期短縮のせいで徹夜するなんて、おかしいと思うだろう。それでもなぜか、「やらなければならない」と思い込んでしまう。そこにあるのは思いやりなどといううるわしき美徳ではなく、「客の言うことは聞かねばならない」というプレッシャーだ』、その通りだ。
・『「おもてなし」の本質とは  日本では店員に「いらっしゃいませ」と言われても、客は無視するのが当然とされている。しかしドイツではそれはマナー違反になるから、一時帰国中も店に入るときは店員に対して会釈で応えるようにしていた。 そこで驚いたのは、「いらっしゃいませ」と言いながら、客の方をまったく見ていない店員が多いことだ。「ありがとうございました~」なんて言いつつ、服を整理している人もいる。 接客の質が高いことを自負している国なのに、接客の多くは極めて形式的で作業的。これがもう、不思議でしょうがない。 わたしは飲食店や結婚式場、家具店など、サービス業のアルバイトを多く経験した。そこにはたいていマニュアルがあって、採用されたらまずそのマニュアルを覚えるように言われる。たとえば、注文の取り方やタブレット(おぼん)の持ち方だとかだ。会計時のポイントカードの有無の聞き方やおすすめの商品をアピールするときの文言まで、きっちりと指定された。 そのときはなんとも思わなかったが、よく考えれば妙だ。 客にはそれぞれちがう需要がある。その差異を無視して画一的な供給をするのは、相手を喜ばせるための創意工夫である『おもてなし』から、一番離れた行為ではないか。 もちろん、最低限の立ち居振る舞いを学ぶ研修や、トラブル対処の指針は必要だろう。しかし客をなだめすかすためのマニュアル接客は、創意工夫もなければ思いやりも感じられない、ただの作業だ。 これが、日本が自慢する『おもてなし』なんだろうか?』、強く同意する。
・『大量のクレーマーが発生  このいびつな『おもてなし』がもたらしたのは、大量のクレーマーである。 たとえば、忘年会シーズンである年末の居酒屋でアルバイトをしていたときのこと。お客さんには申し訳ないが、とにかく人手が足りず、まともに店が回っていなかった。 それでも店員がすぐに来なければ客は何度も何度もベルを鳴らすし、飲み物が5分来ないと文句を言う。「こんなに待ったんだから値引きしろ」、イライラして「店長を出せ」と言う客もいた。店長、いま必死であなたのために焼き鳥焼いてるんですけど……。 それでもサービス業で働いているわたしたちは、笑顔でご主人様を満足させなくてはいけない。何度もベルを鳴らすテーブルに優先的に行き、文句を言う客の注文には『特急』マークを付けて伝票を送り、レジでは値引きをして頭を下げる。そうやって、文句を言われないようにペコペコ頭を下げて対応する。 思いやりや気遣いどころか、「お客様を怒らせてしまう」というプレッシャーのせいでてんてこまいだ。これが『圧力』でなくしてなんだろう。しかも客は良い客でいればいるほど『お客様特権』を享受できないのだから、だれも幸せになっていない。得をするのは、ゴネる客だけである』、まさに正論である。
・『「心配り」と「一方的な奉仕」の違い  わたしは『おもてなし』というものを、一方的な奉仕ではなく、心配りの連鎖だと思っている。「お客様のために」というサービス提供者からの気配りを受け、客はそれに感謝し、提供者を思いやって良い客であろうとする。 たとえば、ディズニーランドとリッツカールトンホテルでの体験は、まさに『おもてなし』だった。 ディズニーランドのスタッフに写真をお願いすると、ポジションやポーズのおすすめを教えてくれるうえ、びっくりするくらい良い写真を撮ってくれる。そこには、ただシャッターを切るだけでなく「最高のかたちでフレームに収めよう」という心配りがある。 また、リッツカールトンに泊まって食事をしたとき、ホテル業界志望であることを何気なく言ったことがある。そうしたら、帰りがけに「一緒に働けるのを楽しみにしています」と書かれたカードをいただいた。結果的にホテル業界へは進まなかったが、そう言ってもらえる価値がある良い客でいようと思ったものである。 相手をより満足させる+αの気配りこそ、『対価を求めない創意工夫』であり、『おもてなし』だ。そして客がそれに感謝するからこそ、『おもてなし』は美しいのだ。 ディズニーやリッツカールトンといった「レベルが高いところ」でなくとも、たとえば夫婦がやってる小さな小料理屋で「この前ナスが苦手と言っていたからニンジンにしておきましたよ」と言われ、「ありがとう。また来るよ」なんていうやり取りも、立派な『おもてなし』だと思う。 それなのに、多くのサービスの現場では、接客をマニュアル化して客との距離をとっている。過剰に下手に出る接客でないと納得しないオキャクサマが多いからだろうか。 これではまったく美しくないし、他国に自慢できるようなものではないんじゃないか、と思ってしまう』、説得力がある。
・『「おもてなし」は細やかなもの  『おもてなし』はもっとクリエイティブで、相手の要求を汲み取る細やかさがあるものだったはずだ。相手の心にそっと寄り添うよう慎ましやかな気配りが、なぜこうも荒々しく自分勝手な要求になってしまったんだろう。それが残念でならない。 『おもてなし』を日本の魅力としてアピールする前に、『おもてなし』の本質と現状のズレをもっと自覚すべきじゃないだろうか。 そうしなければ、客は当然のように対価のない奉仕を求め続け、現場は『おもてなし』の圧力に疲弊して擦り切れてしまう。 『おもてなし』の本質を見つめなおし、サービス提供者と客の双方が「相手のために」と思うことではじめて、日本は胸を張って『美しきおもてなしの国』と言えるはずだ』、これぞ本物の『おもてなし』論で、クレーマー対策の本筋だろう。
タグ:暴言 クレーマー 東洋経済オンライン 現代ビジネス 長時間拘束 (その1)(暴言が突出!広がる「悪質クレーム」の実態 「顧客至上主義」からどう脱却していくのか、サービス業に蔓延「悪質クレーム」の被害実態 4人に3人が遭遇!法整備に向けた動きも…、日本の過剰なおもてなしが クレーマーを生んでることに気づいてますか ドイツからみればよく分かる) 「暴言が突出!広がる「悪質クレーム」の実態 「顧客至上主義」からどう脱却していくのか」 産業別労働組合「UAゼンセン」(以下、ゼンセン) 接客現場で見られる悪質クレーム 5万件超のアンケートが集まった 厚生労働相に要望書を提出。「顧客によるハラスメント」から労働者を守るために事業者が講ずべき措置を定めることや、悪質クレームに関する実態調査の実施を求めた 。来店客からの迷惑行為に遭遇した経験があると回答したのは全体の約74% 何回も同じ内容を繰り返すクレーム 権威的(説教)態度 威嚇・脅迫 かごや小銭を投げられた」といった暴力行為も ストレスを感じた人は9割に上り、1%に当たる359人が精神疾患になったと回答 「クレームは消費者の意見がわかるアンテナでもあり、サービスを向上させるための有益な情報」というのが基本姿勢だ 「問題なのはあくまで悪質だという点 悪質クレームの基準を明確化 「顧客至上主義」の呪縛 「サービス業に蔓延「悪質クレーム」の被害実態 4人に3人が遭遇!法整備に向けた動きも…」 外食、タクシー、ホテル、病院・介護などサービス業の現場で働く組合員を対象 回答した組合員3万人余りのうち約75%に当たる2万2440人が、「業務中に悪質クレーム(迷惑行為)に遭遇したことがある」と回答 そのうち9割以上が「ストレスを感じた」と答えた 「性的な内容の話を我慢して聞いていたらエスカレートして尻や胸などを触られたり抱きつかれたりした」などセクハラ行為も3000件以上報告 セクハラ行為は医療・介護・福祉に多く、悪質クレーム(迷惑行為)を受けたことがある医療・介護・福祉従事者のうち、17.1%がセクハラ行為を受けたことがあると回答 威嚇・脅迫行為も、医療・介護・福祉従事者だけで4042件を占めるなど、ほかの業種に比べて多い 法整備も含め社会全体で対策を推進していく必要性 事業主には従業員を守る「安全配慮義務」がある 「アンケートを見ると、最前線の人間に全部押し付けられて、会社は現場に対応を任せきりにしているというケースもある。そこを何とかしていきたい」 ゼンセンは厚生労働省に対して悪質クレームの実態調査や、倫理的な消費行動の啓蒙や教育も求めている 深刻な人手不足問題 雨宮 紫苑 「日本の過剰なおもてなしが、クレーマーを生んでることに気づいてますか ドイツからみればよく分かる 」 『日本人とドイツ人 比べてみたらどっちもどっち』 日本での「おもてなし」に対し、違和感をぬぐえない 「へりくだりすぎる」店員 日本の客と店員とのあいだにある、不自然なほどに遠い距離といびつな上下関係に戸惑ってしまう 今の「おもてなし」は圧力では? 本来『おもてなし』というのは、対価を求めない心配りを意味する。絶対にやらなくてはいけないものではないが、相手をより喜ばせるためにわざわざ行う創意工夫のことだ。そこには上下関係はなく、思いやりによって成り立っている 『サービス』というのは、ご主人様にご奉仕して対価をもらうことである。ラテン語の「奴隷」が語源で、そこには明確な上下関係があるが、そのぶん対価が発生する 日本の現在の『おもてなし』はどうか? 本来は上下関係がないはずの『おもてなし』だが、実際には従属的な『サービス(奉仕)』になっている 精神的には『おもてなし』しているつもりでいるから、対価をもらえず現場は疲弊する。そして客は自分をご主人様だと錯覚していて、サービス業従事者に感謝しない。 現在の日本の『おもてなし』は、サービスとおもてなしを客に都合がいいようにごちゃまぜにしている、『一種の圧力』ではないだろうか 「客の言うことは聞かねばならない」というプレッシャーだ 「おもてなし」の本質とは 客をなだめすかすためのマニュアル接客は、創意工夫もなければ思いやりも感じられない、ただの作業だ。 これが、日本が自慢する『おもてなし』なんだろうか? このいびつな『おもてなし』がもたらしたのは、大量のクレーマーである 客は良い客でいればいるほど『お客様特権』を享受できないのだから、だれも幸せになっていない。得をするのは、ゴネる客だけである 「心配り」と「一方的な奉仕」の違い わたしは『おもてなし』というものを、一方的な奉仕ではなく、心配りの連鎖だと思っている。「お客様のために」というサービス提供者からの気配りを受け、客はそれに感謝し、提供者を思いやって良い客であろうとする 多くのサービスの現場では、接客をマニュアル化して客との距離をとっている れではまったく美しくないし、他国に自慢できるようなものではないんじゃないか 『おもてなし』はもっとクリエイティブで、相手の要求を汲み取る細やかさがあるものだったはずだ おもてなし』の本質と現状のズレをもっと自覚すべきじゃないだろうか。 そうしなければ、客は当然のように対価のない奉仕を求め続け、現場は『おもてなし』の圧力に疲弊して擦り切れてしまう
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加計学園問題(その15)(安倍官邸の「姑息すぎる情報戦」 W杯も大阪北部地震も利用した、加計獣医学部が風前の灯…「事業計画」でわかった金欠不安、前川喜平氏が危惧 「安倍政権があと3年も続投したら…」、加計学園の記者会見が「疑惑を再燃」させてしまった3つの理由) [国内政治]

加計学園問題については、7月27日に取上げた。今日は、(その15)(安倍官邸の「姑息すぎる情報戦」 W杯も大阪北部地震も利用した、加計獣医学部が風前の灯…「事業計画」でわかった金欠不安、前川喜平氏が危惧 「安倍政権があと3年も続投したら…」、加計学園の記者会見が「疑惑を再燃」させてしまった3つの理由)である。

先ずは、8月1日付けダイヤモンド・オンライン「安倍官邸の「姑息すぎる情報戦」、W杯も大阪北部地震も利用した」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/176128
・『6月19日、これまで長い間沈黙を守ってきた加計学園の加計孝太郎理事長が動いた。午前11時から地元・岡山で急きょ記者会見を開いたのだ。唐突に開かれた会見の舞台裏では、いったい何が起きていたのだろうか』、理事長の記者会見は、最近では10月7日に行なわれたが、ここで取上げているのはその前のものである。
・『「突然の記者会見」は国家権力による用意周到な世論コントロールだった  前日18日朝には、大阪・北部で震度6弱の大地震が発生し、この日の夜には、サッカー日本代表の初戦が控える状況で、抜き打ち的に開催された記者会見。国政を揺るがす重大案件に関連する記者会見にしては、異例の条件の下での開催であった。 会見の開催が記者クラブに通達されたのは、当日の午前9時で、会見の開始時間はわずか2時間後となる午前11時。さらに会場は、岡山市の加計学園本部。入場は、岡山に本社や支局がある報道機関で構成される「岡山交通・大学記者クラブ」の加盟社の記者のみに限り、在京メディアの記者の参加は一切認めないというものだった。 まさに異例づくめの記者会見の背景には、権力がマスコミを使って世論を恣意的に誘導しようとするコミュニケーション戦略(以下コミ戦)が垣間見える。「コミ戦の観点から考えると、あの記者会見は、日時、場所、記者の選別、会見内容を含めて相当用意周到に練られた会見だと思いました」記者会見の印象をそう語るのは、外資系の広告代理店代表だ。また特に注目すべき点は、サッカー日本代表の試合と同じ日に行った点だという。ビッグイベントがある日に、あまり報道されたくないニュースをぶつけるのは、よくある手法のように思われるが、なぜサッカーの試合だったのだろうか。実は、テレビ局が莫大な放映権料を支払うワールドカップは、権利関係がガチガチで、放送する上でさまざまな制約があるのだ。「例えば、ワールドカップの開催期間中、フジテレビの夕方のニュース番組『プライムニュース』では、連日、番組終了間際に10分ほどサッカー特集を放送していました。日本の敗退後も放送は続きましたが、これには事情があります。日本戦の中継権を獲得する代償として、ニュースの枠でもワールドカップを取り上げることが条件になっているんです。こんな状況なので、急きょ大きなニュースが飛び込んできても、サッカーの時間は飛ばしにくく、放送枠の融通が難しい。そんな事情を考えて、サッカーの試合がある日にぶつけてきたわけです」(同前)』、ミエミエのコミ戦は、言われてみれば確かに「国家権力による用意周到な世論コントロール」なのだろう。フジテレビのワールドカップ放送にそんな制約があるとは初めて知った。
・『情報番組がひしめく午後を避けて開催  次に、学園側からマスコミへの会見の告知が当日午前9時で、開催までわずか2時間しかなかった点だ。 「2時間前の通達では、東京のマスコミ各社は駆けつけることができない。当日は、地元の記者たちが必死に食い下がっていましたが、これまでこの問題を熱心に追ってきた記者はいない。加計学園は、地元の記者だけに限って最小限の会見を形だけ開くことを最初から意図していたのでしょう」(同前) さらに、午前11時という記者会見の開始時間にも注目するべきだという。 「この時間、関東のキー局では情報番組はTBSの『ひるおび!』とテレビ朝日の『ワイド!スクランブル』の2つだけ。そのため『情報ライブ ミヤネ屋』『ゴゴスマ』『直撃LIVEグッディ!』がひしめく午後に会見するよりは、一斉に全国に生放送される可能性が低い。しかもその時間帯は、関東キー局以外の地方局では、ローカル局で制作した独自の情報番組をやっているケースも多いんです」(同前) 加えて、この時間帯は、新聞の夕刊の締め切りに間に合う時間でもある。「夕方や夜に会見すれば、朝刊に初めて掲載されるニュースになります。ですが、夕刊で一度報じられたニュースは、朝刊では大きく取り上げられにくい。しかも、翌日の朝刊は、ワールドカップの日本代表の初戦に紙面を割く可能性が高い。このあたりの事情も考えているはずです」(同前)』、記者会見の日付、時間、対象記者などへの、「ここまでやるか」と唸らせる周到な計画ぶりは、敵ながらアッパレだ。
・『首相私邸に出入りしていた記者会見の仕掛け人の存在  では、この記者会見を仕掛けた中心人物はいったい誰なのか。ある自民党議員が語る。「永田町では、会見の2日前の17日の日曜日に、安倍首相の側近の1人が安倍首相の私邸に出入りしながら、学園側と打ち合わせをしていたという情報が噂されています」 前出の外資系広告代理店代表も語る。「学園の記者会見を見ていれば、官邸サイドと綿密な打ち合わせをしていたことがうかがえます。ほとんどの質問に対して、あいまいで煮え切らない回答ばかりだった加計理事長が、安倍総理の関与について問われた時だけ、ハッキリと『ありません』と否定していましたが、あの回答こそ、安倍総理周辺と事前に打ち合わせをした決定的な証拠だと言えるでしょう」 さらに永田町では、記者会見について、もう1つの噂が飛び交っているという。「前日の月曜日に大阪・北部で死者が出る大地震が起きましたが、加計学園側としては、その翌日に記者会見を開くのは『あざとく見られる』と当初懸念していたようなんです。ですが、これも安倍首相の側近から、日時を変更せずに予定どおり行なうことを勧められたと言われています。関西のメディアが災害報道に時間も人も集中させているため、この日に会見した方がむしろ好都合と思って、予定通りに決行させたのでしょう」(永田町関係者)』、側近は加計学園が大地震で示した僅かばかりの「良心」を押し切るとは、悪知恵が働くだけでなく、剛腕でもあるようだ。
・『諸刃の剣になる「コミ戦」 露骨だとイメージダウンに  安倍政権の「コミ戦」は、この記者会見以外にも、国会の会期末で見られた。 6月29日には、野党が強く反対する「働き方改革関連法」が参議院の本会議で採決されたが、この日もまたワールドカップで日本が決勝トーナメントへの進出を決めた翌日であった。各局がサッカー一色になることを予想し、少しでも採決の場面が報道されないようにこの日を狙ったのだろう。 ワールドカップはもちろん、突発的に起きる災害ですら利用する官邸主導の「コミ戦」。だが、あまりにも世間から露骨に見えてしまうと、結果的にイメージダウンを招く場合もありうる。 「コミュニケーション戦略は、うまくハマれば効果的だが、やり過ぎて失敗すると、マイナスイメージを拡散してしまう。いわば諸刃の剣とも言えるわけです」(外資系広告代理店代表) 実際、今回の記者会見は、各方面からさまざまな批判を浴びている。野党議員はもちろん、評論家や有識者、タレントなどから「ワールドカップを利用して隙をつくのは卑怯」、「地震直後なんだから延期するべき」との発言が飛び出している。 また、200人を超える死者を出した西日本豪雨でも、「赤坂自民亭」の開催をはじめとする初期対応が批判を受け、安倍首相は、現地視察をおこなうなど挽回に躍起だが、国民の一部からはパフォーマンスと見透かされてしまっている。 小泉純一郎元首相による郵政解散以降、マスコミにどう報じられるのかを意識した政権による「コミ戦」は活発になる一方だ。今後も、政治スキャンダルや国民生活に関わる重要法案の報道のされ方に強い注意を払っていく必要があるだろう』、我々一般国民も気を付けるべきだが、それ以上にマスコミも「コミ戦」に乗せられることなく、鋭い視点で報道してもらいたいものだ。

次に、8月2日付け日刊ゲンダイ「加計獣医学部が風前の灯…「事業計画」でわかった金欠不安」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/234509/1
・『「継続可能な私学経営の樹立に注力し、予測困難と言われる時代に着実な歩みを進めて参りたい」――。学校法人「加計学園」の加計孝太郎理事長は最近発表した今年の事業計画でこう宣言していたが、この決意とは裏腹に学園の経営“不安説”が飛び交っている。 コトの発端は、文科省が全国約660の学校法人に通達した「学校法人運営調査における経営指導の充実について(通知)」(7月30日付)。この中で、同省は来年から、学校の経営状況の改善が見られない場合、学生募集の停止や法人の解散を促すことを発表。加えて、直ちに経営改善の必要がある学校として、①借入金が預貯金を上回っている②直近3年で赤字――という基準を示した。要するに、この2つの基準を満たした学校は「経営的にヤバイ」と行政から見なされるワケだ。 この通知に対し、ネット上では<経営難の私立大学で真っ先に思い浮かぶのが加計学園><加計こそ真っ先に解散><加計学園ヤバイんじゃない>と、学園の行く末を不安視する声が続出。実際、学園の今年の事業計画を見ると、財務状況は決して良いとはいえない。 加計グループの屋台骨である岡山理科大は、今年度予算の経常収支差額が約10億円のマイナス。さらに、千葉科学大や倉敷芸術科学大の経常収支差額も数億円単位のマイナスである。 「大学の持続性をみるうえで大きなポイントとなる<教育活動収支>と<経常収支>が、どの大学もマイナスです。どちらの収支も毎年反復する見通しなので、ここから経営状況を立て直すのはなかなか難しいでしょう。屋台骨である岡山理科大の経常収支が今年の予算で赤字になったことで、他2つの大学の赤字をカバーすることもできない。経営状況はますます厳しくなると予想されます」(会計専門家) 岡山理科大の獣医学部は最近、図書館の蔵書がスカスカだったことが判明。おまけに、ライフサイエンスなど目玉研究を行うBSL施設がないのではとウワサされる始末だ。財務状況やBSL施設の有無について学園に問い合わせたが、期日までに回答はなかった。「果たして学校は存続できるのか」。獣医学部1期生もヒヤヒヤしているだろう』、屋台骨の岡山理科大まで揺らいでいるようだが、獣医学部キャンパスは多額の公的助成金が投入されているだけに、仮に政権が代わっても、安易に閉鎖させる訳にはいかないだろう。

第三に、9月10日付け日刊ゲンダイ「前川喜平氏が危惧 「安倍政権があと3年も続投したら…」」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/236993/1
・『安倍首相が3選を狙う自民党総裁選が7日、告示された。投開票は20日だ。安倍が続投すれば、世論の7割以上が不信感を抱き続けるモリカケ問題の再燃は避けられない。その一方で、教育行政への介入が一層強まる懸念もある。加計学園問題を巡る決定的な証言で安倍を追い込み、目の敵にされる前川喜平氏(63)はどう見ているのか』、面白そうだ。
・『「石破4条件」は下村元文科相が作らさせた  「あったことをなかったことにはできない」と告発した加計問題の真相はいまだ藪の中です。 当事者の安倍首相や加計孝太郎理事長は事実を認めていませんが、学園が国家戦略特区を利用して獣医学部を新設するに至ったプロセスの全貌は、ほぼ明らかになったと言っていい。私が直接見聞きしたのは2016年8月から11月にかけてですが、一連の文科省文書や愛媛県文書や証言によってすべて浮き彫りになっています。 愛媛県文書では「加計ありき」でコトが始まり、「加計隠し」で進んだのが鮮明です。 衝撃的なのは柳瀬唯夫首相秘書官(当時)の発言です。15年4月2日に学園関係者、愛媛県と今治市の職員と官邸で面会した際に「本件は首相案件である」と口にした。首相から直接言われなければ、そういう言い回しには絶対にならない。首相秘書官はいわば側用人。首相の言葉を秘書官に伝達する人間は存在しません。愛媛県文書によって、15年2月から4月にかけての出来事はよく分かる。今治市が特区に提案する前のこの時期に、安倍首相と加計理事長は少なくとも2回会っている。そのうちの1回は15年2月25日に15分程度。おそらく官邸でしょう』、その通りだ。
・『面会で安倍首相は獣医学部構想について「そういう新しい獣医大学の考えはいいね」と応じたと記載がありますが、「首相動静を見る限り、お目にかかっていない」と否定しています。 首相動静に書いていないという言い訳はひどい。首相の面会記録は秘書官が必ず持っていますよ。首相動静は番記者が首相の動向をチェックしてまとめたものですが、官邸の正面玄関で来訪者に「総理に会うんですか?」と確認しているんです。官邸には裏口がある。私自身、記者に気付かれないで官邸に入ったことがあります。 文科省の天下り問題で杉田和博官房副長官に何度か説明に行きました。記者の目につくのはよくない状況だったので、文科省の出向者に業務用車両の通用口で待機してもらいました。そういうルートを使えば、記者の目に触れずに官邸内のどこまでも行けるんです』、公文書の改竄が平然と行われる安倍政権では、首相動静から不都合な部分は消されたのだろう。
・『下村元文科相はもともと学園と関係があった。愛媛県文書からは、安倍首相と加計理事長が会食する以前に下村元文科相が学園に「課題」を出していたことが分かります。「課題」は後に閣議決定された「石破4条件」のもとになったもの。石破茂氏が特区を担当する地方創生相時代に閣議決定したため「石破4条件」と呼ばれるようになりましたが、その原型は下村元文科相が高等教育局に指示して作らせたものなのです。獣医師増加につながる獣医学部新設は認めないという原則のもとで例外を認めるには、従来の獣医師がやっていない新しい分野の人材ニーズがあり、そうした獣医師の養成は既存の大学ではできない、という条件が必要になる。これは非常に高いハードルで、条件を満たすのは極めて難しい。下村元文科相は安易に考えたのかもしれませんが、学園はその「課題」をこなせなかった』、「石破4条件」の原型は下村元文科相が作らせたとは初めて知った。
・『4月2日の面会以降はトントン拍子に進んだ。 愛媛県文書によると、その「回答」について学園は、柳瀬氏から〈今後、策定する国家戦略特区の提案書と併せて課題への取組状況を整理して、文科省に説明するのがよい〉と非常に的確なアドバイスを受けています。特区認定事業は国際競争力の強化、国際経済拠点の形成といったものに限られる。逆に言うと、その説明さえできれば通る。役人言葉で言う「作文」です。中身がなくてもそれらしい言葉が並んでいればいい。特区の提案書は、その道のスペシャリストの藤原豊地方創生推進室次長(当時)が指南する手はずになっていた。試験官が模範解答を教えるようなものです・・・「要はどうやってだますかですよ」という音声データが流れていましたね。「一番の殺し文句は、新しい学問の領域をつくる。これが最終目的ですと」とも』、ここまで手取り足取り指導するとは、どう見ても別格扱いだ。
・『安倍政権の危うさはこれまでの比ではない  この事件の裏で一体何が起きているのか、全体像がつかみきれない不可解さはある。ただ、文科省の信用がまた落ちてしまったのは極めて残念です。私自身が天下り問題で信用を失墜させた責めを負ったわけですから。 (教育行政への政治介入)第1次安倍政権の06年に教育基本法が改正された影響は大きいですね。教育の自主性が非常に弱められた。教育と教育行政の関係について定めた旧教育基本法第10条はとりわけ重要な条文だったのですが、大きく改変されてしまいました・・・(従来は)〈教育は(中略)国民全体に対し直接に責任を負って行われるべきもの〉と政治権力は教育に介入しないという趣旨でした。この文言と入れ替わったのが、〈この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきもの〉。法律に根拠があれば、政治権力が教育に介入してもいいと解釈される余地が生まれた』、安倍政権はもともと強くない教育の自主性をさらに弱めたというのは、問題だ。
・『教育基本法改正で教育行政介入にお墨付き  与党勢力が国会の3分の2を占める状況では、教育に介入する法律の制定は難しくない。 作ろうと思えばなんぼでも作れるんです。教育への政治介入にお墨付きを得たと思っている政治家も多いでしょう。国を愛する態度を養え、家庭教育はこうせい、とも書き加えられた。政治の力で教育を変えようとする動きは非常に強まっている。安倍首相を支援する日本会議の思想と連動しています。日本会議は憲法改正と同時に教育を根本的に変えようとしている。教育を国家のための人間づくりととらえ、国家に奉仕する人間をつくろうとしている。憲法も教育も戦前回帰の危険が強まっていると思います』、教育でも国家主義の復活とは危険極まりない。
・『道徳教育は特に危険ですね。政治圧力に忖度する、迎合する、屈する。そういう教育委が出てくる可能性がある。日本会議は地方議会にも根を張っている。僕に言わせると、彼らはファシストですよ。気の弱い教育長や校長が顔色をうかがうようであれば、現場の先生たちの自由が縛られかねない。これが心配ですが、都立七生養護学校の性教育を巡る11年の東京高裁判決が参考になります。 都議3人が授業を非難し、都教委を動かして学習指導要領違反で教員を処分させたのです。教員や保護者が教育への不当介入だとして都議らを相手取って損害賠償などを求める訴訟を起こし、1審、2審とも原告側勝訴でした。 ただ、最近は司法も危うくなってきている印象です。高校無償化を巡る朝鮮学校の訴訟に原告側で関わっているのですが、1審判決の原告側勝訴は大阪地裁だけ。東京、広島地裁は国が勝ち、政治に忖度しているとしか思えないような判決内容でした。警察も検察も信用できない。安倍首相と昵懇で、「総理」などの著書がある(元TBSワシントン支局長の)山口敬之氏に対する準強姦容疑の逮捕状が執行停止になり、検察も不起訴にした。警察、検察に官邸の支配が及んでいるとしか考えられない。安倍首相があと3年も続投したら、最高裁は安倍政権が任命した裁判官だらけになってしまう。安倍政権の危険さはこれまでの比ではない。このままでは本当に危ないと思います』、司法まで安倍政権の思うがまま、というのは恐ろしい世の中になったものだ。

第四に、ノンフィクションライターの窪田順生氏が10月11日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「加計学園の記者会見が「疑惑を再燃」させてしまった3つの理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/181856
・『せっかく説明しようと会見を開催したのに、ふたを開けてみれば大炎上し、疑惑が再燃…。加計孝太郎氏の記者会見は、マスコミ対応の失敗事例のモデルケースだった。不祥事に悩む企業や組織の方はぜひ、このケースから多くを学んでいただきたい』、これは第一の記事での6月19日の記者会見に続く第二弾である。
・『悪手連続の記者会見で疑惑が再燃してしまった  「まだやっていたの?」と驚かれる方も多いかもしれない。 今月7日、学校法人「加計学園」の加計孝太郎理事長が記者会見を開催したことで、消えかかっていた「カケ祭り」の火がブスブスと再燃しそうな勢いなのだ。 といっても、何か新しい事実が発覚したなどは一切ない。会見では相も変わらず、国から認可を受ける立場のくせに、安倍首相とゴルフや食事に行くのはいかがなものかとか、2015年2月に安倍首相と面会したんだろ、という、いつものやりとりが延々と続くだけだった。 実際、「総理のご意向」文書のスクープで、この騒動の着火役である「朝日新聞」も以下のように、行間から悔しさがにじむような記事を掲載している。 「加計理事長、首相との面会改めて否定 誤解招いたと謝罪」(朝日新聞デジタル10月7日) ご存じのように、この問題は誰と誰が会った、あいつとあいつが仲良しだから便宜をはかったに決まっているという「疑惑」オンリーで、残念ながら「朝日新聞」をはじめとするマスコミは物証を出せず、首相や加計氏の「自白」に頼っているうちに、しぼんでしまった。 この会見で、加計氏を吊るし上げて、何かしらの新証言を勝ち取ろうとしていた記者たちからすると、完全に空振りとなってしまったのである。 では、なぜそんな状況にもかかわらず、まるで1年前に時計の針が戻ったかのようにこの問題が「再燃」してしまったのかというと、加計学園側の「会見対応」に大きな原因がある。ただでさえネガティブなバイアスがかかっている中で、ことごとく「それはやっちゃダメでしょ」という悪手を打ってしまっているのだ』、この会見は、愛媛県が加計学園にさらなる説明を求めたため開いたらしい。ただ、官邸が「振付」をしている割には、今回は上手くいかなかったようだ。
・『加計学園が会見で冒した3つの決定的な過ち  報道対策のお手伝いをしていると、こういうケースを目にすることは珍しくない。「人の噂も七十五日」ではないが、せっかく世の中が悪い話を忘れかけてきてくれているのに、そこで気を抜いた会見やマスコミ対応を行ってしまったことで、また蒸し返されてしまうのだ。 そこで、みなさんの会社や組織のマスコミ対応でも役立てられるよう、加計学園の会見の何が問題だったのかを振り返っていこう。小さなミスまであげていくとキリがないので割愛するが、取り返しがつかない大きなミスは以下の3つだ。 (1)メディアを「差別」してしまった (2)「疑惑の張本人」が部下の不正を解説 (3)マスコミOBに会見を仕切らせる』、なるほど。
・『まず、(1)から説明していこう。実はほとんどの記者は、この会見が始まる前から、加計氏をボコボコに叩いてやろうと心に誓ってあの場所に集っていた。 なぜかというと、6月に岡山市で開催された会見を、地元の記者クラブ所属の記者に限定したため、東京から来たマスコミは門前払いにされ、みな怒り心頭だったのだ。要は、4ヵ月前に締め出された「報復」である。 子供じゃないんだから、大のオトナがそんなこと根に持たないでしょ、と思うかもしれないが、マスコミの記者たちが最もキレるのは、実はこのような「差別」なのだ。 彼らの多くは普段から「記者クラブ」の中で特権的な扱いを享受している。国会だろうが中央省庁だろうが好き勝手に歩き回れるし、有名企業の会見でも発表会でも必ずお声がかかる。そんな風にチヤホヤされてきた人がいきなり、会見場で門前払いを食らえば、プライドはズタズタ。一気にルサンチマンがこみあげるというのは容易に想像できよう。 普段から差別的な扱いをされているフリーのジャーナリスト、週刊誌やネットの記者は会見から締め出されることなどは慣れっこだが、テレビや新聞からすれば、これほど屈辱的な扱いはない。彼らも人間なので、こんなギスギスした感情が湧き上がってくるのだ。 「我々を会見に呼ばないというのはやましいことがあるからだ」「逃げるということは悪いことをしているからに違いない」――。 つまり、一部に情報を出して、一部には情報を出さないというのは、許されない「差別」であり、そのような対応をするのは、何か後ろ暗いことがあるのだという先入観を記者側に生じさせてしまうのだ。 こういう話をすると、会見の主催者側は、会場の都合で仕方がなかったとか、役所と一緒にやっている事業なので、役所のルールに従わないといけないとか様々な言い訳をすることが多いのだが、だったら、対象記者クラブ以外のメディアだけのために別途会見を開催する方法もあるし、個別対応をしたっていい。 それをやらないということは、マスコミからすれば、ああだこうだと言い訳をつけて「逃げている」という印象にしかならないのだ』、その通りだろうが、官邸の振付師も十分に分かっている筈と思うが・・・。
・『疑惑の張本人が説明をしても逆効果に終わる  6月の会見でこのような「タブー」を冒してしまったことに加えて、加計学園がさらに事態を悪化させたのは、(2)の「『疑惑の張本人』が部下の不正を解説してしまった」という点にある。 具体的には、加計理事長が、愛媛県の文書に記されていた2015年2月の安倍首相との面会というのは、常務理事でもある渡辺良人事務局長が、「ことを前に進めるために、誤解を招くようなことを言った」ことが原因であり、これは「勇み足」だとマスコミに説明したことである。 ご本人からすれば不本意だろうが、これは加計氏が最も語ってはいけないテーマである。 加計学園側がどういう認識かはわからないが、一部のマスコミにとって、加計孝太郎氏はいまだに、「限りなくクロに近い人物」という扱いだ。 こういう「信用ゼロ」の人は、何を言っても、安倍首相の国会答弁と一緒で「嘘をついていないことを証明しろ」「納得できる証拠を出せ」と、いくらでもイチャモンをつけられる。事実、今回の会見でも終盤、記者たちから加計氏には「質問」とは思えぬような、以下のような「説教」がバンバン飛んでいた。 「説明責任を果たしてないでしょ」「ちゃんとやんないと前に進まないじゃないですか」「理事長、何か憮然とされていますけど、今日の会見で十分に話をしたと思いますか」 ただでさえ記者たちにボコボコに叩かれる加計氏が、問題発言をした部下の心情を代弁して、「勇み足」などと他人事のように解説をしても、「はい、そうですか」と素直に受け取ってもらえるだろうか。「おいおい、お前が言うんかい」というツッコミをされたり、「部下に責任をなすりつけているんでしょ」という新たな疑惑が生じてしまうのが普通ではないか。 だったら、どうすればよかったか。 一番いいのは、渡辺事務局長ご本人が出てきて、「勇み足でした」とお話しになることだ。もちろん、これだって柳瀬唯夫元首相秘書官が何を言っても、「首相に気を使って嘘をついているのだ」と聞く耳を持たない人がいるのと同じで、いくらでも茶々を入れることはできてしまう。ただ、それでも疑惑の張本人である加計氏が「代弁」をするよりは、はるかにマシなのだ。 ご本人が出ることができないのなら、第三者委員会や内部調査のメンバーなどでもいい。日本のトップダウン型組織は、何かの疑惑が持ち上がると、ワンマン社長などトップ自身が出張って、記者たちを相手に、潔白であることを証明しようと説き伏せようとすることが多いが、だいたい逆に炎上をしてしまう。 この原因はまさしくこれで、「疑惑の張本人」が何をどう言っても信用してもらえない。いくら弁がたつ人間でも多勢に無勢で、何十人もの記者から、寄ってたかって様々な質問を受ければ、必ず辻褄の合わない説明になってしまう。そこを突かれてボロボロになってしまうものなのだ』、なるほど。
・『マスコミOBの司会者がいらぬ炎上を引き起こす  さて、このような致命的なミスを重ねただけではなく、加計学園の会見が、ケーススタディとして非常に素晴らしいのは、多くの組織が良かれと思ってやっている「悪手」も用いているということだ。 それが(3)の「マスコミOBに会見を仕切らせる」だ。 今回、加計学園は会見の司会を、加計学園系列の倉敷芸術科学大学で教授を務めている濱家輝雄学長補佐に任せた。濱家氏は元山陽放送のアナウンサーとして定年退職までお勤めになった方である。要は、「マスコミOB」だ。 アナウンサーでマスコミ業界の経験も豊富なら、さぞうまく会見も仕切ったのだろうと思うかもしれないが、裏方のはずが「主役」として批判の矛先となってしまっているのだ。《逃げの答弁に終始した加計氏は時折、助けを求めるように“おじいちゃん司会者”をチラチラ見ながら、記者の追及にスットボケた。釈然としない回答で質疑が紛糾する中、困った加計氏を見かねたのか、司会者が突然カットイン。質問する記者に対し、丹田に響くような野太い低音で、「(質問が)揚げ足取りになってしまうので、延々と終わりが見えない質問・答えになってしまう」と言い放ったのだ》・・・このような「マスコミOB」が会見を仕切ると残念な結果にしかならない、というのは、日本大学アメフト部の悪質タックル事件における、監督とコーチの謝罪会見が証明している。司会を務めた大ベテラン風の「広報顧問」が記者の質問を制止したり、挙句の果てには記者と口論になったりするなどして注目を集めたが、実はこの御仁、共同通信社でワシントン特派員や論説委員室長を歴任した「マスコミOB」だったのだ。 「日大は世間をナメている」「危機管理がなっていない」と叩くマスコミに対して、OBとして火消しをするはずが、逆に灯油をぶっかけるようなことをしてしまったのだ』、「火消しをするはずが、逆に灯油をぶっかけるようなことをしてしまった」とは的確な表現だ。
・『正しいマスコミ対応を学ばないとせっかくの説明が水の泡に  なぜこうなってしまうのか。マスコミの方たちからはクレームが飛んできそうだが、構図をヤクザに置き換えればすぐにわかる。 例えば、ヤクザから脅される企業があったとしよう。そこでヤクザ対応として、ヤクザ稼業をウン十年やっていたOBを雇った。果たしてうまくいくだろうか。 うまくいくわけがない。ヤクザ同士で互いに一歩も引かず、凄まじい恫喝の応酬となって最悪、暴力沙汰になってしまうだろう。 マスコミOBもこれと全く同じだ。これまで説明してきたように、マスコミの人たちは基本的に、いろいろな取材現場でチヤホヤされてきた。加計氏に対する感情丸出しの「お説教」に象徴されるように、常に自分が正しいという大前提で、取材相手の揚げ足取りをして、ネチネチと論破してきた。 こういうことをウン十年やってきた「マスコミOB」が、かつての自分のように攻めてくるマスコミ記者と対峙すれば、互いに一歩も引かず、不毛な言い争いになるというのは容易に想像できよう。 もちろん、全てのマスコミOBがそうだなどとは言うつもりは毛頭ない。記者から企業や団体の広報に転職する人は多いし、筆者もそういう人の中で優秀な広報マンや、広報コンサルタントの方をたくさん知っている。 ただ、そういう人はせいぜい十年かそこらでマスコミをお辞めになった方が多い。このくらいだと、自分の経験も踏まえて、マスコミという人たちを客観的に見ることができるので、広報対応に生かせるし、会見の司会などもうまくできる。 だが、定年退職までどっぷりとマスコミの世界で生きて、担当企業や業界の広報に天下ったような方は危ない。立場が変わっても、骨の髄までマスコミの考え方や立ち振る舞いに毒されているので、マスコミ対応をしても、ヤクザがヤクザ対応をするのと同じ結末になってしまうのである。そういう「マスコミOB」が引き起こすトラブルを、この世界では非常によく耳にするのだ』、「せいぜい十年かそこらでマスコミをお辞めになった方」は、マスコミ対応を上手くできるが、「定年退職までどっぷりとマスコミの世界で生きて、担当企業や業界の広報に天下ったような方は危ない」、というのは確かにあり得そうな話だ。
・『以上が、加計学園の会見対応で筆者が問題だったと感じた点だ。実は、加計氏自身が疑惑について説明していく姿勢を見せるなど、個人的には評価できる部分もある。そういうところをよりアピールしていくためにも、「正しいマスコミ対応の作法」というものが重要なのだ。 同じ情報・同じ説明であっても、出し方やしゃべり方によって、「報道」というアウトプットはまったく異なってくる。 大きなリスクを抱えていたり、既に「逆風」に晒されている企業や組織の方からすれば、加計学園の記者会見は非常に学ぶところが多いケースである。来るべき「情報戦」の参考にしていただきたい』、筆者の窪田氏は、記者会見があくまで加計学園の独自対応とみているようだ。しかし、官邸の振付であるとみると、何故、振付を誤ったのかはまだ不明のままである。今後、こうした点を解明するような記事が出てくることを期待する他ないようだ。
タグ:日刊ゲンダイ 6月19日 ダイヤモンド・オンライン 窪田順生 加計学園問題 (その15)(安倍官邸の「姑息すぎる情報戦」 W杯も大阪北部地震も利用した、加計獣医学部が風前の灯…「事業計画」でわかった金欠不安、前川喜平氏が危惧 「安倍政権があと3年も続投したら…」、加計学園の記者会見が「疑惑を再燃」させてしまった3つの理由) 「安倍官邸の「姑息すぎる情報戦」、W杯も大阪北部地震も利用した」 地元・岡山で急きょ記者会見 国家権力による用意周到な世論コントロール 大阪・北部で震度6弱の大地震が発生 この日の夜には、サッカー日本代表の初戦 開催が記者クラブに通達されたのは、当日の午前9時で、会見の開始時間はわずか2時間後となる午前11時 会場は、岡山市の加計学園本部 場は、岡山に本社や支局がある報道機関で構成される「岡山交通・大学記者クラブ」の加盟社の記者のみに限り、在京メディアの記者の参加は一切認めないというものだった 権力がマスコミを使って世論を恣意的に誘導しようとするコミュニケーション戦略(以下コミ戦) 相当用意周到に練られた会見 情報番組がひしめく午後を避けて開催 首相私邸に出入りしていた記者会見の仕掛け人の存在 安倍首相の側近の1人 大阪・北部で死者が出る大地震が起きましたが、加計学園側としては、その翌日に記者会見を開くのは『あざとく見られる』と当初懸 これも安倍首相の側近から、日時を変更せずに予定どおり行なうことを勧められた 諸刃の剣になる「コミ戦」 露骨だとイメージダウンに 「加計獣医学部が風前の灯…「事業計画」でわかった金欠不安」 学校法人運営調査における経営指導の充実について(通知) 学校の経営状況の改善が見られない場合、学生募集の停止や法人の解散を促すことを発表 直ちに経営改善の必要がある学校として、①借入金が預貯金を上回っている②直近3年で赤字――という基準を示した 岡山理科大は、今年度予算の経常収支差額が約10億円のマイナス。さらに、千葉科学大や倉敷芸術科学大の経常収支差額も数億円単位のマイナス 「前川喜平氏が危惧 「安倍政権があと3年も続投したら…」」 「石破4条件」は下村元文科相が作らさせた 愛媛県文書では「加計ありき」でコトが始まり、「加計隠し」で進んだのが鮮明 柳瀬唯夫首相秘書官 「本件は首相案件である」と口にした。首相から直接言われなければ、そういう言い回しには絶対にならない 面会で安倍首相は獣医学部構想について「そういう新しい獣医大学の考えはいいね」と応じたと記載がありますが 「首相動静を見る限り、お目にかかっていない」と否定 下村元文科相はもともと学園と関係があった 下村元文科相が学園に「課題」を出していた 「石破4条件」 学園はその「課題」をこなせなかった 4月2日の面会以降はトントン拍子に進んだ 柳瀬氏から 〈今後、策定する国家戦略特区の提案書と併せて課題への取組状況を整理して、文科省に説明するのがよい〉と非常に的確なアドバイスを受けています 特区の提案書は、その道のスペシャリストの藤原豊地方創生推進室次長(当時)が指南する手はずになっていた 「要はどうやってだますかですよ」 手取り足取り指導 安倍政権の危うさはこれまでの比ではない 教育行政への政治介入 旧教育基本法第10条 法律に根拠があれば、政治権力が教育に介入してもいいと解釈される余地が生まれた 教育基本法改正で教育行政介入にお墨付き 憲法も教育も戦前回帰の危険が強まっていると思います 道徳教育は特に危険 政治圧力に忖度する、迎合する、屈する。そういう教育委が出てくる可能性 日本会議は地方議会にも根を張っている 最近は司法も危うくなってきている印象 「加計学園の記者会見が「疑惑を再燃」させてしまった3つの理由」 悪手連続の記者会見で疑惑が再燃してしまった 加計学園が会見で冒した3つの決定的な過ち メディアを「差別」してしまった 「疑惑の張本人」が部下の不正を解説 マスコミOBに会見を仕切らせる 会見の司会を、加計学園系列の倉敷芸術科学大学で教授を務めている濱家輝雄学長補佐に任せた。濱家氏は元山陽放送のアナウンサーとして定年退職までお勤めになった方 困った加計氏を見かねたのか、司会者が突然カットイン。質問する記者に対し、丹田に響くような野太い低音で、「(質問が)揚げ足取りになってしまうので、延々と終わりが見えない質問・答えになってしまう」と言い放ったのだ 正しいマスコミ対応を学ばないとせっかくの説明が水の泡に せいぜい十年かそこらでマスコミをお辞めになった方が多い。このくらいだと、自分の経験も踏まえて、マスコミという人たちを客観的に見ることができるので、広報対応に生かせるし、会見の司会などもうまくできる 年退職までどっぷりとマスコミの世界で生きて、担当企業や業界の広報に天下ったような方は危ない 官邸の振付
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小売業(一般)(その2)(ショッピングセンターの「廃墟化」が加速しそうな理由、日本のトイザらスが米国と違い大健闘のワケ、食品スーパーの逆襲 コンビニやドラッグへ反撃の糸口とは、食品スーパーの逆襲 コンビニやドラッグへ反撃の糸口とは) [産業動向]

百貨店、コンビニに続いて、今日は、小売業(一般)(その2)(ショッピングセンターの「廃墟化」が加速しそうな理由、日本のトイザらスが米国と違い大健闘のワケ、食品スーパーの逆襲 コンビニやドラッグへ反撃の糸口とは、食品スーパーの逆襲 コンビニやドラッグへ反撃の糸口とは)を取上げよう。
なお、このブログで「小売業(一般)」を前回取上げたのは、昨年9月29日である。

先ずは、流通ジャーナリストの森山真二氏が昨年12月19日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「ショッピングセンターの「廃墟化」が加速しそうな理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/153465
・『ショッピングセンター(SC)はアマゾンエフェクトで大淘汰時代を迎えるのか――。SC先進国である米国のメディアでは、最近よく廃墟と化したSCが映し出される。米アマゾン・ドット・コムの“効果“は、まるでブルドーザーのように既存の流通業界を押し潰していく。ネット通販が先行して拡大している中国でも、百貨店や大型店は不振で閉鎖も増えているという。今のところ順調そうに見える国内SCにも、アマゾンエフェクトによるSC淘汰の波が訪れるのか。あなたの街のSCは大丈夫?』、アマゾンの影響は本当に甚大だ。
・『ショッピングセンターの未来に影 大型SC「ウイングベイ小樽」運営会社の民事再生法  最近、国内のSCでちょっとしたサプライズがあった。北海道小樽市の大型SC「ウイングベイ小樽」を運営する小樽ベイシテイ開発の民事再生法の適用申請だ。事前に再建計画があるプレパッケージ型の法的整理とはいえ、SCの未来に影を落とした。 もともとウイングベイ小樽は総合スーパーのマイカル(現イオンリテール)が開業した。しかしマイカルの経営破綻に連鎖する格好で、2001年に1度目の民事再生法の適用を申請、今回で2度目になる。 ウイングベイ小樽は一時期流行した、どでかいSCで、その売り場面積は実に東京ドームの約2.5倍はあろうかという約12万平方メートル。初期投資額は約650億円もかけており、「いったい何年たったら黒字化するのか」という案件だった。 当初の計画がバブルの時で、どう考えても無謀だったとしか思えないが、さすがに12万平方メートルもあると運営コストが高く、赤字が続いており債務超過だった。商圏人口の減少、さらにネット通販の拡大が追い打ちをかけた格好。自力での再建は諦め、再生ファンドをスポンサーにつけ2度目の法的整理とした。 ウイングベイ小樽はSCのなかでもバブル案件で、特殊な案件だという声が多い。「日本は新規のSCもいまだに開業されており、米国のようにSCがバタバタ閉鎖するようなことにはならないのではないか」(大手流通業)と、まだまだ楽観論が大勢となっている。イオンのデベロッパー会社、イオンモールの2017年度上期の決算は好調で、SCの将来については微塵も陰りを感じさせないのである。しかし、SC全体を見渡すと、急速に変化が起こっている』、ウイングベイ小樽運営会社の破綻は、確かに例外的なのだろう。
・『全国にSCが3000以上もあれば飽和 新規オープンは確実に減少  国内のSCの数は2016年末で約3200ある。国内のSCはイオンの名誉会長である岡田卓也氏が、かれこれ30年も前に「これからキツネやタヌキが出るところに出店せよ」という大号令を発し、イオンでは2000年以降SCの開発が本格化、イオンのSCの広がりとともに、大手のデベロッパー会社が相次ぎSCに参戦した。 2000年には全国のSC数も約2200だったから、それ以降さらに1000のSCが開かれている格好だ。 全国にSCが3000以上もあると、飽和だ、いやまだまだ出店の余地はあると関係者の声は二分されるが、日本ショッピングセンター協会の調査では、明確な転機を迎えていることが読み取れる。 新規にオープンするSC数が確実に減少しているのだ。 07年には97SC、08年は88SCの新規オープンがあった。だが、09年は57SC、10年には54SC、そして16年も54SCとなっている。新規の出店は増加しても閉鎖SCもあって、10年以降の純増数は横ばいという状況だ。10年前には100近い数のSCがオープンしていたのだから、明らかに鈍化しているといえる。 イオンのデベロッパー会社イオンモールの3ヵ年の新規出店計画も、17年度は5ヵ所だが18年度には4ヵ所、19年度は2ヵ所と新規出店を抑制していく。 SC新規出店の鈍化は国内の電子商取引(EC)市場の成長と軌を一にしている。国内のEC市場は16年で前年比9.9%増の15兆1358億円。ご存じのように、SCのテナントはネットでの購買に移行しやすいカテゴリーが多い。しかも高齢化がそれに拍車をかける。 テナント各社は実店舗を増やさずネットシフトを進め、ジワジワとSCへの出店を抑制するテナントが増えているとしても不思議ではない。 米国の例を見ればそれは明確だ。米国では日本の10倍以上のSCがある。その数は大小合わせて約4万7000ヵ所。しかし、中でも全米に1200ヵ所あるという大型のSCであるショッピングモールについては、スイス金融大手のクレディ・スイスが今後5年間で25%が消滅すると予測している。 集客力のある大型モールが25%も消滅するのだから、競争力のない中小型のSCの消滅はさらに激しくなるといった見方もあるほどだ』、確かにネット通販が普及すれば、SCテナントはSCへの出店を抑制するのは当然だ。
・『米国では悪循環の構図に陥るSC  米国ではすでにショッピングモールの退潮に合わせ、核になるテナント小売業のモールからの撤退も深刻な状況だ。 百貨店のメイシーズが100店閉鎖を発表、またシアーズホールディングスは150店、さらに婦人服専門店チェーンのザ・リミテッドが破綻に伴い、250店全店を閉鎖、JCペニーやステープルズ、スポーツオーソリティ等々、数え上げたらきりがない。ほとんどの業態がアマゾンエフェクトで圧倒されている業態だ。 SCはテナントが埋まらず空床率が増えると集客力を失い、結果として入居するテナントも魅力のないところが増え、SC全体の売上高が落ちるという悪循環の構図に陥っていく。 最近、米国でよく廃墟と化したSCの映像が映し出されるのも、そういった構図で廃墟化したところだろう。 国内でも、小売業向けソフトウエア開発のリゾームによる全国商業施設と業態別テナント出退店動向の調査レポートでは、2016年は出店が1万3529店に対し、退店が1万5043店で、テナント合計で1514店が退店したと報告している。 テナントの出退店では純減が明確になっている。中でもファッション系のテナントの退店は激しく、出店は3300店に対し退店は4500店にもなっている。 もうすでに、テナントとなる衣料品やインテリア、雑貨などの専門店チェーンはハッキリとSCの選別を始めている。今後、アマゾンを始めとしたネット通販市場の拡大で、その傾向が一層鮮明になっていくのは間違いない。 これからのSCは「Aクラスでなければ生き残れない」と、商業デベロッパーとして大手のイオンの岡田元也社長でさえ、SCの選別・淘汰が進むだろうと見ている。 それでは魅力あるテナント、商品を揃えられない、AクラスでないSCはどうなるのか。最後には、米国と同じSC廃墟の道が待っているのかもしれない』、その通りで、日本でもSCは厳しい時代を迎えるだろう。

次に、3月27日付け東洋経済オンライン「日本のトイザらスが米国と違い大健闘のワケ 米国はアマゾン効果よりもLBOの負担で自滅」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/214146
・『米国の玩具小売大手トイザラスは、2017年9月に日本の民事再生法に相当する連邦破産法11条(チャプター11)の適用を申請して経営再建を進めてきた。だが、スポンサーが見つからないため、3月15日に米国内735店を閉鎖し、米国事業を清算すると発表した。 日本で事業を営む日本トイザらスは、米国本社が85%出資するアジア統括会社の傘下にある。米国の破綻を受けて、取引先に対し「日本を含むアジア事業は今回の米国事業の清算プロセスに含まれておらず、日本での事業は今後も変わらず継続する」という内容の説明文を送付している。 日本トイザらスは本当に大丈夫なのか、ディーター・ハーベル社長に聞いた』、米国本社では、スポンサーが見つからず、清算とは厳しい時代だ。
・『日本事業は順調で、投資スピードを加速できる  日本法人は2017年4月から米国本社が85%、香港を拠点にアジアで小売業を展開するファン・リテーリングが15%出資するトイザらス・アジア・リミテッドの傘下にある。米国本社と資本的なつながりはあるが、事業や財務的には独立している。今後はスポンサーが入ることで、アジアと日本はむしろ投資スピードを加速させられる。 昨年9月のチャプター11以降、取引先とは頻繁に話をしている。米国の親会社に対する心配があるのは理解しているが、日本事業は独立しているので大丈夫だということを伝えている。取引先や銀行の理解は得られている・・・カナダ事業は新しいオーナーの下で独立することが決まった。まだはっきりとは言えないが、アジアも同じ方向になるだろう・・・アマゾン・エフェクト(アマゾン効果)が原因と・・・は思わない。アマゾンに限らず、小売業で競合の“エフェクト”があるのは当たり前だ。米国がああいう事態に陥ったのは、自分たちの側に原因がある。米国法人には約50億ドルの有利子負債があり、毎年4億ドル以上の金利負担が重くのしかかかっていた。そのため、コスト削減が優先でサービスが圧縮され、店舗のリニューアルも満足にできなかった。ビジネスへの投資ができず、イノベーションを起すこともできなかった』、「毎年4億ドル以上の金利負担」とは確かに致命傷だ。
・『米国事業は重い債務負担が足かせに  2005年にベイン・キャピタルやコールバーグ・クラビス・ロバーツ(KKR)など3つのファンドによる買収で米国本社は非上場化した。この買収はLBO(レバレッジド・バイ・アウト=買収先の資産などを担保に資金を調達するM&A手法)だったため、買収資金などで約50億ドルの有利子負債を負うことになったのは先に述べたとおりだ。 LBOは、一般的に資産売却やリストラに加え、数年後に再上場することで財務改善を図る。しかし、トイザラスはリーマンショックで再上場の機会を逃し、金利負担が重いまま、事業への投資が十分にできず競争力が低下した。 ビジネスとは長距離走のようなもので、勝つためにはランナーが健康であることが一番大切だ。だが、重い債務負担で足に鎖がついたようにスローダウンを強いられた。アマゾンも含めてスピードアップしていく競争相手とそうした状況で戦わねばならなかった』、LBO後の再上場の機会を逃したのは、リーマンショックもさることながら、事業そのものの立て直しが進まなかったことがあるのではなかろうか。
・『競合のことは考えるが、より大切なことは競合ではなく、お客様にとって一番よい環境を提供できるか。われわれが見るべき相手はアマゾンではなくお客様だ。お客様の立場から考えて、付加価値を提供できているか。人気の玩具を提供できているか、お店は子供たちが楽しめる場になっているか、ママに有用な情報を提供できているか、スタッフは質問に答えられているのか・・・日本は米国とは違う。運営する161店で顧客に集中できている。 私は昨年9月の社長就任前に各店舗を回ったが、お客様に商品の説明ができる知識を持ったスタッフがいる。財務体質も良好だ。この先3年間で無借金になる可能性もある。 新規出店やリニューアルといった投資も日本法人が独自に行える。日本でも、アマゾンだけでなく家電量販店なども玩具を扱っており、米国同様に競争は激化している。だからこそ、子ども達が遊びやすい店、買いやすい店にする努力を続ける必要がある。イノベーションを怠れば負けてしまう。 イノベーション――。日本トイザらスが力を入れるのが新しい基準の店作りだ。昨年9月にリニューアルした港北ニュータウン店(横浜市都筑区)がモデル店となっている。「それまで約3メートルあった棚を約1.6メートルと低くして店内の見通しをよくしました。入り口付近はベビー用品から玩具に切替え、さらに通路を挟んで男児玩具、女児玩具と分けてゾーニングをわかりやすくしました」と吉田健太郎ストアディレクター(店長)は説明する。「プレイテーブルを約10から20~30に増やして子供たちが遊び易い店作りをしています」』、子供がプレイテーブルで遊べるというのは、実店舗ならではの強みだろう。
・『イノベーションで商品の回転効率が向上  ――店舗のイノベーションの具体例が港北ニュータウン店ですね。 どこにどんな玩具があるかをよりわかりやすくした。棚の上から玩具を取るのにはしごが必要だったが、今は子どもの目の高さに商品がある。プレイテーブルを増やしたことで楽しく遊んでもらえる。 こうした新しい店作りの考え方はアジアで共通している。シンガポールや香港、上海の店舗を参考にベストなやり方を日本に移植した。今後は日本のやり方をアジアで発信していくことになる』、店舗のイノベーションはシンガポールや香港などの成功事例を移植したとは、グローバル展開している強みだろう。
・『2016年以降に出店した小型店4店は新型店舗だ。港北ニュータウン店とマリノアシティ福岡店(福岡市西区)の2店はリニューアルで新型店舗に衣替えした。今年度は小型店を7~8店オープンする。それらは新型店舗となる。リニューアル店の数はまだ固まっていない。米国の影響があるからだ。順次リニューアルを進めていくことになる。 日本トイザらスは米国トイザラスと日本マクドナルドの合弁で1989年に設立、1991年に国内第1号の荒川沖店(茨城県)をオープンした。当時の日本は、中小小売店の保護・育成のために大規模小売店舗法(大店法)によって大型店の出店が規制されていた。2店目となる橿原店(奈良県)には当時のジョージ・ブッシュ米大統領が視察に訪れる。日米貿易摩擦が激しい時代、小売業界の黒船とも呼べる存在だった』、ブッシュ米大統領が橿原店に視察に訪れたニュースは見た記憶がある。
・『ネットとリアルをうまく組み合わせていく  ――日本トイザらスといえば、大店法改正の原動力にもなった大型店の象徴です。それが小型店を増やしているのはなぜでしょう。  確かに新店はほとんどが小型店です。昔は都心部から離れたところに大型店を出店することが多かったが、2010年以降はショッピングセンター(SC)内の店舗を増やしてきた。最近は、より都心部の小型店が中心となっている。それはお客様の人口動態の変化に対応した結果であり、お客様との距離を少しでも近くするためです・・・少子化でも売り上げ規模を拡大することはできる。昔に比べて今の子どもの方が玩具をたくさん買ってもらえる。今後は勉強の興味をサポートする知育玩具や健康によい玩具に力を入れることも考えている。現在行っている店舗のリニューアルで終わりではなく、もっとよい店にする、もっとよいモノを提供するなど、毎年ベターベターにしていく』、日本ではまだまだやる気十分なようだ。

第三に、流通ジャーナリストの森山真二氏が7月31日付けダイヤモンド・オンラインに寄稿した「食品スーパーの逆襲、コンビニやドラッグへ反撃の糸口とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/176015
・『コンビニエンスストアやドラッグストアに押され放しだった食品スーパー(SM)の逆襲が始まった。イオンは傘下のSM各社の全国的な再編に実行する方針だし、東海地方地盤のSM、バローは生鮮食品が売上高の50%超のSMの出店を開始するなど、SMの攻勢が目立ってきた。コンビニには総菜やファストフードで売り上げを食われ、ドラッグストアには加工食品の安売りで売り上げを食われてきた。しかも最近の「料理作らない化」傾向もあり、食材が中心の品ぞろえのSMはこのところさえなかった。巻き返し策によって再び小売業界で存在意義を示すことができるか――』、興味深そうだ。
・『コンビニにやられっ放しだった食品スーパー  食品スーパー(SM)というと、真っ先に思い浮かべるのが生鮮食品と総菜ではないだろうか。特に総菜の種類の豊富さはコンビニの比ではなく、出来立てが買えるとあってファンは少なくない。 しかし、その総菜はコンビニにやられっ放しだった。 日本惣菜協会の「惣菜白書」によると、今から約10年前の2009年のコンビニの総菜売上高は2兆957億円、これに対しSMの総菜売上高は1兆9534億円で、その差は約1400億円しかなく、両者は拮抗していた。 だが17年にはSMが2兆6205億円だったのに対し、コンビニがSMを大きく上回る3兆2289億円となり、その差は6000億円も差がついてしまった。 コンビニの店舗数が増えたこともあるが、弁当以外にシニア層や有職女性の取り込みを狙って、ポテトサラダなどレトルトパウチの総菜やハンバーグなどの総菜を拡充。SMのバックヤードで調理した出来立てを提供するというSMの有利点にも勝るとも劣らない、質の高い総菜をコンビニ各社が販売し始めていることが大きく伸びた理由だ』、コンビニの努力は確かにすごい。
・『SMも最近では午後10時、11時閉店と長時間営業の店舗が増えているが、共働き世帯の増加で夕食用としての総菜の購入は、遠くのSMよりも近くのコンビニで済ますという傾向もある。 惣菜白書によるとSMも17年の総菜の売上高は09年に対し、6000億円近く上乗せしているが、コンビニはその倍、1兆2000億円を上乗せしている。本来SMが取り込むべき総菜の売上高を、明らかにコンビニに取られている状態だ。 「最近はSMを1店出店すると3~5年くらい後には(店の周囲に)にドラッグストアが5店くらい、コンビニが10店くらいできるようになった」と話すのはある大手SMの社長。 コンビニは24時間営業というナイトマーケットに対応、その上、欲しい商品を即座に購入できるという利便性がある。総菜や弁当もSMに比べ遜色がないとまでいったら言い過ぎかもしれないが、近くで買えるということを考慮すれば、総菜の購入の場として遜色がなくなってきた』、なるほど。
・『加工食品でもドラッグストアから安売り攻勢  最大の“集客装置”である総菜の売上高をコンビニに取られてきたSMは、加工食品でもドラッグストアに安売り攻勢をかけられ攻め込まれている。 福岡市内のディスカウント型のドラッグストア、コスモス薬品の店舗では7月下旬、サンヨー食品の「サッポロ一番みそラーメン」5食パックが248円(税込み)で売れられていた。 即席袋めんの売れ筋商品である同品は、SMでは安くても300円を切ることはまれである。同じドラッグストアのウエルシアホールディングスのネット通販では30食入りが2579円。コスモスの5食入りに換算すると、ウエルシアでさえ約429円という価格だ。 コスモス薬品は食品の売上高構成比は50%以上とドラッグストアの中でもSMに近い業態である。 調剤にはあまり力を入れず、ひたすら日常購買頻度の高い食品、しかも加工食品の安売りに力を入れて急成長してきた。ローコスト運営に加え、化粧品や日用品の高粗利部門が食品の安売りを補完する。 特売価格とはいえ、こんな爆発力で攻め込まれたらSMだってひとたまりもない。同じサッポロ一番みそラーメンを買うのに何百円という差があり、SMの店舗と距離がなければ、もちろんコスモス薬品の優先順位は高くなるだろう。 ドラッグストアでもマツモトキヨシホールディングスのように化粧品、日用品を拡充するところもあれば、調剤薬局部門を強化しているところもあり、専門性の打ち出し方で枝分かれしてきている。 しかし、コスモス薬品のように食品部門を広げるドラッグストアは増加傾向で、SMも顔負けの生鮮食品を拡充しているところも増えている。しかも大半のドラッグストアが加工食品や飲料の安売りで集客する手法を取っているのだ』、食品部門に力を入れるドラッグストアは、SMにとって脅威だろう。
・『食品スーパーにとっての前門の虎コンビニ、後門の狼ドラッグストア  SMにとってはまさに前門の虎がコンビニ、後門の狼がドラッグストアという状態だ。 コンビニとドラッグストアの攻勢にさらされているSM各社は業績でも苦戦を強いられ減益決算が続出。特に、ドラッグストアの“地方豪族”と競合が激化している地方SMはその傾向が顕著だ。 北海道地盤で合併・買収(M&A)で本州南下作戦を展開するアークスや、平和堂、さらにバローなどは今年の決算で軒並み減益となっている。人手不足を背景にした人件費の高騰という要因もあるが、ベースにはコンビニ、ドラッグストアとの競争が激しさを増していることがある』、SMは本当に大変そうだ。
・『各地で芽生え始めた食品スーパー反撃の“狼煙”  しかし、押されているSMとて黙っていない。 バローは生鮮食品を拡大した店舗の出店を開始した。精肉、青果の売り場を広げ、鮮魚に専門店を導入するなどして生鮮食品部門の売上高で全体の「5割以上」を目指すという新型の店舗モデルである。 最近ではロードサイド型の鮮魚専門店チェーンも急成長しており、生鮮食品にも専門店化を求める動きがある。つまりドラッグストア、コンビニの泣きどころである生鮮を徹底的に強化して、戦う土俵を替えるという戦略だ。 イオンの岡田元也社長は今年中に傘下のSMグループの再編を進める考えを明らかにしている。全国の「マックスバリュ」やM&Aで傘下に入れたSMの再編でスケールメリットを出し経営体質の基盤を強化、ドラッグストアなどに対抗していく。 岡田社長は「SMは売上高2000億円を目標にしてきたが、2000億円では大したことができないことも分かった」とSMの再編に前向きな姿勢である。 イオンSMグループの再編で先行したマルエツ、カスミ、マックスバリュ関東の3社の経営統合によるUSMH(ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス)は今年、3社の共通の機能、業務プロセスをHDに統合して、本格的な統合効果を引き出す方針だ。アークスでも傘下のSMのシステムを統合、業務の改善を展開、収益力を強化していく考えだ。 SMはコンビニの惣菜やドラッグストアの安売りに負けない“食の専門店”として存在意義をいかに出していくかが問われている局面に入っている。各地で芽生え始めたSM反撃の“狼煙(のろし)”は、SMという業態の今後の行方を占うことになりそうだ』、SMが生鮮を徹底的に強化して反撃しようとするのは、なるほどと納得できる。いずれにしろ、消費者にとっては、選択肢が増えることは大歓迎だ。

第四に、10月11日付け東洋経済オンライン「驚安ドンキは、なぜ「ユニー」を飲み込むのか 8月下旬にドンキ側から買収を打診した」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/242795
・『流通大手のユニー・ファミリーマートホールディングス(以下、ユニー・ファミマ)は10月11日、傘下でGMS(総合スーパー)を展開するユニーの株式すべてをディスカウントストア大手のドンキホーテホールディングス(以下、ドンキ)に売却すると発表した・・・ドンキは昨年8月にユニー・ファミマと業務提携を結び、11月にはユニー株の40%を取得していた。今回、残りの60%をユニー・ファミマから買い入れ、ユニーを完全子会社化する。買収は2019年1月に完了する予定。同時に、ユニー・ファミマもTOB(株式公開買い付け)により、ドンキ株を最大20.17%まで取得し、持ち分法適用関連会社とすることを公表した。TOBは11月上旬から開始する』、ユニーがドンキの完全子会社になりながら、ユニー・ファミマがドンキ株を最大20.17%まで取得、という一見、「株式持ち合い」に事実上近い形をとる意味については、記事には説明がないので、よく分からない。ユニーに形式的な「花」を持たせてやったのかも知れないが、なにか釈然としない。
・『「GMS、ディスカウントストア、コンビニエンスストアの3業態を持つ流通グループで、荒波を乗り越えたい」。同日に行われた会見の席上で、ドンキの大原孝治社長は今回の資本関係拡大の理由について、そう強調した。 実は昨年12月、東洋経済のインタビューで、ユニーの佐古則男社長は次のように語っていた。「ユニーの売却については正式に議論したことがない。GMSセグメントが利益を稼いでいけば、(ドンキが)出資比率を5割、6割に引き上げる理由がなくなってしまう」。 この発言から一転してユニーの売却に踏み切ったのは、GMSの競争がより激化しているからにほかならない。ユニー・ファミマの髙柳浩二社長は「GMSや食品スーパーは食品の販売で稼ぐが、この分野がディスカウントストアやドラッグストアと競合している。特に、ユニーは食品販売に対する依存度が高いので厳しくなっている」と説明する。 折りしも、今回の発表の前日に当たる10日には、GMS最大手のイオンが食品スーパーの再編を発表したばかり。全国6エリアの事業会社をエリア別に統合することで地域密着化を進め、コンビニなどとの競合に打ち勝つ狙いだ。同時に、GMSの食品や衣料などの部門を分社化して開発力強化を図る。 競合が大胆な変革で競争環境の変化への対応策を打ち出す中、ユニーもドンキの完全子会社となることで、店舗オペレーションの改善や物流の効率化、多様化する顧客ニーズへの迅速な対応を打ち出す構えだ』、ユニーが考え方を10か月で変えたのは、イオンの動きも影響したのだろうか。
・『5年以内に100店舗を業態転換  一方で、ドンキはユニー店舗のブラッシュアップに全力を注ぐ。ドンキは今年2~3月、ユニーのGMS業態である「アピタ」や「ピアゴ」のうち、売り上げ不振だった6店舗を「MEGAドン・キホーテUNY」としてリニューアルオープンさせた。 家電や化粧品などの品ぞろえを拡大し、低価格を強調したドンキ流のPOP(店内広告)を取り入れたこの店舗は、転換後の3~8月の累計売上高が前年同時期比で9割増と急拡大した。 今回のユニー株取得の協議は今年8月下旬にドンキ側からユニー・ファミマに打診したというが、転換店が想定以上の実績を出したことが大きな後押しとなったようだ。2018年8月末でユニーの店舗数は約190店あるが、「2019年中に20店舗を業態転換を実施する予定。さらに、5年以内には100店舗の業態転換を目指したい」(大原社長)。 また、業態転換店舗が好発進した理由については、大原社長は「ユニーが持つ食品を中心としたブランド力とドンキのアミューズメント性の高い店舗運営力が合わさったハイブリッド型店舗として、ユニーとドンキの両顧客を取り込むことができた」と説明した。 ユニー・ファミマの髙柳社長も「それぞれ強みを持つ3業態があるので、自分たちのリソースで業態転換ができる。自己変化型のグループというのが、われわれの強み」と強調した。 ユニー・ファミマとの“相思相愛”をアピールしたドンキだが、競争環境が激しさを増す中、思惑通りユニーの収益を底上げできるとは限らない』、転換店の売上高が前年同時期比で9割増、とは驚くべき数字だが、僅か6店舗のサンプル店だから出来た数字である可能性もあり、過大評価は禁物だ。
・『オペレーションに差も  大原社長は「両社合わせて売上高1兆6500億円(それぞれの決算期末売上高を単純合算)、国内小売業界で4位になる、という話が話題になっているが、あまり興味はない。ユニー買収によるスケールメリットによって売り上げを上げるのか、粗利率を上げるのか、それとも販管費を下げるのかなど、利益向上に寄与するのかどうかを見極めたうえで戦略を組み立てたい」と手綱を締める。 商流についてもチェーンストアとして展開してきたユニーと、個店主義を重視してきたドンキホーテでは、オペレーションに差がある。スケールメリットを追求するためには、商流の整理にも踏み切らなければならないだろう。 海外展開の強化を目的に2019年2月に「パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス」へと社名変更することも、今回合わせて発表したドンキ。新たな“決意”で、荒波を乗り越えることができるか』、オペレーションの差など経営統合につきものの難しさを如何に克服していくか、注目したい。
タグ:東洋経済オンライン ダイヤモンド・オンライン プレイテーブル 森山真二 小売業(一般) (その2)(ショッピングセンターの「廃墟化」が加速しそうな理由、日本のトイザらスが米国と違い大健闘のワケ、食品スーパーの逆襲 コンビニやドラッグへ反撃の糸口とは、食品スーパーの逆襲 コンビニやドラッグへ反撃の糸口とは) 「ショッピングセンターの「廃墟化」が加速しそうな理由」 アマゾンエフェクトで大淘汰時代を迎えるのか 米国のメディアでは、最近よく廃墟と化したSCが映し出される。米アマゾン・ドット・コムの“効果“は、まるでブルドーザーのように既存の流通業界を押し潰していく 小樽市の大型SC「ウイングベイ小樽」を運営する小樽ベイシテイ開発の民事再生法の適用申請 マイカル(現イオンリテール)が開業し マイカルの経営破綻に連鎖する格好で、2001年に1度目の民事再生法の適用を申請、今回で2度目に 売り場面積は実に東京ドームの約2.5倍は 初期投資額は約650億円 バブルの時で、どう考えても無謀だった 商圏人口の減少、さらにネット通販の拡大が追い打ちをかけた格好 全国にSCが3000以上もあれば飽和 新規オープンは確実に減少 SC新規出店の鈍化は国内の電子商取引(EC)市場の成長と軌を一にしている テナント各社は実店舗を増やさずネットシフトを進め、ジワジワとSCへの出店を抑制するテナントが増えている 大型のSCであるショッピングモール クレディ・スイスが今後5年間で25%が消滅すると予測 米国では悪循環の構図に陥るSC SCはテナントが埋まらず空床率が増えると集客力を失い、結果として入居するテナントも魅力のないところが増え、SC全体の売上高が落ちるという悪循環の構図に陥っていく これからのSCは「Aクラスでなければ生き残れない 「日本のトイザらスが米国と違い大健闘のワケ 米国はアマゾン効果よりもLBOの負担で自滅」 2017年9月に日本の民事再生法に相当する連邦破産法11条(チャプター11)の適用を申請して経営再建を進めてきた。だが、スポンサーが見つからないため、3月15日に米国内735店を閉鎖し、米国事業を清算 、日本での事業は今後も変わらず継続する 日本事業は順調で、投資スピードを加速できる 日本事業は独立しているので大丈夫 米国法人には約50億ドルの有利子負債があり、毎年4億ドル以上の金利負担が重くのしかかかっていた コスト削減が優先でサービスが圧縮され、店舗のリニューアルも満足にできなかった。ビジネスへの投資ができず、イノベーションを起すこともできなかった 3つのファンドによる買収で米国本社は非上場化した。この買収はLBO リーマンショックで再上場の機会を逃し、金利負担が重いまま、事業への投資が十分にできず競争力が低下 われわれが見るべき相手はアマゾンではなくお客様だ お店は子供たちが楽しめる場になっているか、ママに有用な情報を提供できているか イノベーションで商品の回転効率が向上 ネットとリアルをうまく組み合わせていく 「食品スーパーの逆襲、コンビニやドラッグへ反撃の糸口とは」 食品スーパーにとっての前門の虎コンビニ、後門の狼ドラッグストア 各地で芽生え始めた食品スーパー反撃の“狼煙” 精肉、青果の売り場を広げ、鮮魚に専門店を導入する ドラッグストア、コンビニの泣きどころである生鮮を徹底的に強化して、戦う土俵を替えるという戦略 「驚安ドンキは、なぜ「ユニー」を飲み込むのか 8月下旬にドンキ側から買収を打診した」 ユニー・ファミマ ユニーの株式すべてをディスカウントストア大手のドンキホーテホールディングス(以下、ドンキ)に売却 ユニー・ファミマもTOB(株式公開買い付け)により、ドンキ株を最大20.17%まで取得し、持ち分法適用関連会社とする GMS、ディスカウントストア、コンビニエンスストアの3業態を持つ流通グループ オペレーションに差も パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス」へと社名変更
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小売業(コンビニ)(その2)(コンビニ王セブンの独走を他社が止められないこれだけの理由、コンビニ加盟店の苦悩 本部は「社会保険未加入問題」も対応渋る、ファミマのブランド統合で露呈した深刻問題) [産業動向]

小売業(コンビニ)については、昨年1月30日に取上げたままだった。今日は、(その2)(コンビニ王セブンの独走を他社が止められないこれだけの理由、コンビニ加盟店の苦悩 本部は「社会保険未加入問題」も対応渋る、ファミマのブランド統合で露呈した深刻問題)である。

先ずは、やや古い記事ではあるが、流通ジャーナリストの森山真二氏が昨年6/15ダイヤモンド・オンラインに寄稿した「コンビニ王セブンの独走を他社が止められないこれだけの理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/131839
・『セブン-イレブン・ジャパンの独走はもう誰にも止められないのか――。セブン-イレブンはコンビニエンスストア業界での売上高シェア50%を目指す方針を打ち出した。17年2月期のセブンの業界シェアは42.7%。今後、約7ポイント高めて過半獲得を狙う。2番手につけるユニー・ファミリーマートホールディングスや3番手のローソンはもはや、独走を阻止する打ち手はないのが実情だ。しかし好調セブン-イレブンに本当に死角はないのだろうか』、面白そうだ。
・『シェア50%に向けてまい進する  「コンビニ事業でシェア50%に向けてまい進する」――。セブン-イレブンの親会社であるセブン&アイ・ホールディングスの井坂隆一社長は今年4月の17年2月期の決算発表の席上、こう宣言した。 50%のシェアは、ファミリーマートとサークルKサンクスの経営統合のように、再編でもぎ取ることを目指すのではない。セブンは1店1店の日販を高めることで達成を目指していく格好だ。 セブンはいったいこの目標達成に向けてどういった戦略を打ち込んでくるのか。それはシニア層のさらなる取り込みと有職主婦の増加による中食需要の獲得といっていい。現在セブンは50歳以上の中高年と女性客が中心。たぶん、女性客のかなりの部分は有職主婦であろう。 17年2月現在では50歳以上のシニアの比率が40.0%、女性客の比率がすでに47.4%と、なっている。今から10年までの08年2月期の女性客比率は42.3%で、この比率はジワジワと上昇しているが急激ではない』、若者が中心と思い込んでいたが、「50歳以上の中高年と女性客が中心」とは驚いた。
・『シニア層の取り込みを意識 店舗のレイアウトも変更  50歳以上のシニア層の比率は08年2月期で25.8%だったから、この10年で14.2ポイントも上昇した。人口動態の変化も背景にあるが、セブンのシニア層比率の上昇は、人口動態の変化を追い越して早いスピードで進んでいる。 それは意識的に商品政策を変えていかなければ成し得ない上昇率である。セブンは恐らく、今後、中高年層の1~2人世帯は自宅で食事を作る回数が加速度的に減るだろうと読んでいる。 シニア層の取り込み、また外食やコンビニ、スーパーなどで食品を買ってすぐに食べる外部化ニーズに対応してシェアを拡大していく戦略は、今後の店づくり、商品づくりに現れる。 セブンはすでに、店舗の新型レイアウトを発表している』、今後のニーズを先読みして対応するとはさすがだ。
・『雑誌売り場をなくし冷凍食品を4倍増  新しい構想によると、新レイアウトでは従来、入り口横の看板商品であった雑誌売り場をなくして代わりに冷食のリーチインを拡大、冷凍食品の品ぞろえを従来比4倍に増やす。レジカウンターも倍以上のスペースを確保しており、今後ファストフードを増やしていく。 新レイアウトは17年度に既存店と新店約1900店に導入、21年度までの累計として1万店に導入する計画だ。ガラリとシニア取り込み店舗に変身する見通しである。 長年コンビニの看板であった雑誌コーナーの撤去は、トーハン出身で取締役も務めていた鈴木敏文氏が会長としてセブンに残っていたら、できなかったと見られている。しかし、井阪社長はミスターコンビニ・鈴木敏文ばりの“変化対応”で、思い切って雑誌コーナーを縮小するという改革に着手している。 井阪社長はこのレイアウト改革で日販3~4万円程度の押し上げ効果があると見ている。つまり、セブン-イレブンの平均日販は限りなく70万円に近づく格好だ』、雑誌コーナーを撤去するとは、確かに思い切った決断だ。
・『独走するセブンはライバル2社には止められない  セブンの独走状態にストップをかけられる可能性があるのはユニー・ファミリーマートHD、そしてローソンということになる。しかし、この2社にそれだけの突破力は、当面期待薄だ。まずユニー・ファミマではサークルKサンクスの看板替えを進めている。 これがまた手間のかかる作業である。加盟店1店1店に統合にあたって、新条件を承諾してもらい、可否を判断してもらう。看板を替える、ファミリーマート方式の運営に替える、商品政策を替えるということはそれほど難しくないと見られるが、重要なのは加盟店の意識の問題だ。 サークルKサンクスの低日販のやり方に慣れ切った加盟店が、ファミマの加盟店レベルまでに日販を上げるには、時間が必要だ。何しろサークルKサンクスとファミマでは日販差が約10万円以上もある。 そしてユニー・ファミマで何よりも不思議なのは、この大事な時にせっかく軌道に乗り始めていた中食改革の責任者が、その立場から外れたことだろう。取締役で商品本部長だった本多利範氏だ。本多氏は元セブン-イレブン・ジャパンの取締役商品本部長を経験、社長間違いなしといわれていた人物である。理由は定かではないが、セブン-イレブンを去らなければならなかったのは恐らく鈴木敏文前会長の逆鱗に触れたか何かだろう。 以降、本多氏はスギ薬局やラオックス社長、それからファミリーマートに統合される前のエーエム・ピーエム・ジャパンに転身し、ファミマ入り後は商品本部長、そして取締役にまで上りつめていた。 また、ファミマでは上田準二会長の退任など、伊藤忠商事がユニー・ファミマにグリップを強めたいため、役員陣も刷新された』、なるほど。
・『コロコロ社長が変わる会社は変化に対応できない  ローソンにしても今年玉塚元一氏が退任、代わって三菱商事から竹増貞一氏が社長に就任した。商社は簡単に人事を実行するが、流通、とくにコンビニはわずかな売り場面積の中で、世の中の変化に合わせた商品政策を実現していかなければならないビジネスだ。コロコロと社長が代わっては変化にも対応できないし、改革も中途半端に終わる。セブン-イレブン成功の理由はカリスマ鈴木敏文氏が創業から一貫してトップの座にあり、商品作りなど、簡単には妥協をしない徹底力を組織に浸透させていったからといえる。 その鈴木イズムを継承した井阪隆一氏は、」雑誌コーナーの縮小や大胆なレイアウト変更に見られるように、変化に対応するためなら鈴木氏が築き上げたスタイルさえも否定する。このように変化を一貫して見る継続性を担保するために、結果を出しているトップは少し長くやった方がいいのである。 セブン&アイも、そうしたことに目をつぶり、創業家である伊藤家への配慮が先行するような人事が優先され、井阪氏から簡単に創業家直系にバトンを渡すようなことがあれば、その時はセブン-イレブンが普通の会社に成り下がる時であることは確かだ。セブン-イレブンの「死角」は変化への対応力を喪失した時に訪れるといっていいだろう』、「コロコロと社長が代わっては変化にも対応できないし、改革も中途半端に終わる」というのはその通りだろう。大株主の商社は分かっているのだろうか。

次に、7月24日付けダイヤモンド・オンライン「コンビニ加盟店の苦悩、本部は「社会保険未加入問題」も対応渋る」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/175533
・『人手不足や市場の飽和が叫ばれるコンビニ業界で急浮上しているのが、社会保険への未加入問題だ。国は従業員や店のオーナー自身が社会保険に未加入の加盟店を調べ、加入促進に力を入れている。だが保険料は、経営が順調な加盟店にとっても大きな負担だ・・・「私たちとしては、本部は店(加盟店)にできるだけのことをしないといけないと。店からすると、痒い所に手が届くとまではいかなくても、それに近いものをつくることができた。世界で初めてです」──。 2016年にセブン&アイ・HD会長の座を追われた日本のコンビニの生みの親、同HDの鈴木敏文名誉顧問。約2年ぶりに公の場に姿を現したのは、6月14日、東京都港区内のホテルで開かれたセブン-イレブン・ジャパン(SEJ)の国内2万店記念パーティーだった。政財界の大物や取引先幹部が居並ぶ中、その足取りと語気の強さは、85歳という年齢を感じさせなかった。 少年のように目を輝かせながら鈴木氏を見詰める井阪隆一HD社長の後ろで、グループ最大の稼ぎ頭となったSEJの古屋一樹社長の表情はさえなかった。うつむいて顔をしかめたり、眼鏡に手をやったり──。その胸中を推し量るすべはないが、3週間前、5月24日に開かれた株主総会は、司会を務めた井阪氏よりもむしろ古屋氏にとって厳しい時間だったことは確かだ。 1990年にSEJの加盟店を始めたというオーナーの株主が、「日販50万円からスタート。毎日働き、最近は競合(他チェーン店舗)の閉店もあって、80万円に伸びたが、その途端、近くにSEJが出店した」と暴露。その結果、このオーナー株主の店舗は日販が65万円に下がった。「行き過ぎたドミナント(限られたエリアへの集中出店)、人件費のアップ、社会保険への加入と、店の経営は日々厳しくなっている」と声を震わせながら訴えたのだった。 古屋氏ではなく井阪氏が「一店ごとの経営が健全になされていることが重要だ。店舗巡回する(本部の)社員が店舗の意見を伺って経営に生かす」と決意を語ったが、他にも「カウンターのおでんは大量の廃棄が出る」「17年のロイヤルティー(加盟店が本部に支払う経営指導料)1%の特別減額の効果は」などと、SEJに対する質問が続出。時折ヤジが飛ぶなど、波乱含みの総会となった』、確かに加盟店オーナー株主にとっては、本部に文句をつけたいことが多いのだろう。
・『長年指摘されてきた本部と加盟店との力関係から生じる問題は、大きく改善されたとは言い難い。 例えばSEJでは17年2月、節分の季節商品である恵方巻きについて、本部社員が前年を超える売上数量を示し、従業員別の目標を記録して張り出す用紙まで見せられ、大量の発注を働き掛けられたと現役オーナーが匿名で訴え、テレビのニュースで報じられた。セブン&アイHD広報センターの伊藤真由美シニアオフィサーは本誌の取材に対し、「加盟店に決してノルマは課していないが、目標達成に取り組むのはビジネスマンの責務。私たちも同じ」と話した。 各社とも事情は大きく変わらない。ファミリーマートのあるオーナーは「本部の決算期末に近いころ、おにぎりの割引キャンペーンで、通常の3倍ほどの量を仕入れるよう言われて仕入れたが、大量に売れ残り、廃棄した」と話す。 売れ残った商品の廃棄費用の過半は加盟店が負担する。嫌なら仕入れなければよいのだが、そうはいかない。 「本部との関係が悪化すれば、フランチャイズ契約を解除されたり更新を拒否されかねない」(あるベテランオーナー)との心理が働くのだ。 さらに最近では、店舗数を多く増やせない本部が「ビルト・アンド・スクラップ」と呼ばれる店舗の改廃や移転を急ピッチで進めている。その際「普段から本部の指示に従う従順なオーナーほど、よい立地の店を回してもらいやすい」(同)。立地は売り上げに直結するため、まさに死活問題だ。 「見切り販売」(消費期限が近づいた商品の値下げ販売)が広がらない要因にもこうした背景があるとされる。ファミマのオーナーで、後述するコンビニ加盟店ユニオンに加入し、見切り販売を実施している盛山教也氏は「そもそも見切りのやり方を知らないオーナーも多いが、本部が怖くてやれないという人もいる」と話す。見切りをした店舗に客が集中すれば、定価で売っている店が客を奪われる。本部はやめさせることはできないが、広がってほしくはないというのが本音だ。 まさに消耗戦の様相を呈しているコンビニ業界だが、さらなるボトルネックとして加盟店の社会保険料負担が急浮上している』、やはり本部は加盟店に対し圧倒的に優勢な立場を利用して、無理難題を押し付けるのだろう。独禁法上問題はあっても、公正取引委員会も手を出せないようだ。
・『コンビニ業界の「勝利の方程式」から取り残された加盟店  健康保険と厚生年金保険の社会保険料の支払いは、法律で定められた義務だ。コンビニ加盟店でも、規模によっては月数十万円の支払いが発生するケースがある。所管する日本年金機構はここ数年、該当する事業所を捕捉し、加入促進に注力している。機構は2015年度から国税庁の情報提供を受けるようになり、捕捉はより確実になった。 本部はどのように対応するのか――。セブン&アイHDの松本稔・執行役員コーポレートコミュニケーション本部長は「社保への未加入店舗は放置していない。契約や研修を通じて加入の必要性を伝えている」とした上で、「加盟店の独立性から、従業員を加入させるかどうかに口出しすることはできない」と説明。、店舗の従業員の労働時間や給与の計算は本部のコンピューターにつないで実施しているが、それを社保未加入の実態把握や促進に活用することは「考え方として、ない」と述べた。 ユニー・ファミリーマートHDの岩崎浩・広報IR室長は「社保加入の必要性は店舗に伝えているが、(加盟店の独立性から)踏み込めない部分もある」、ローソンの宮﨑純・専務執行役員コミュニケーション本部長は「(未加入の)責任は加盟店にあるが、本部には(加入を)指導する責任があり、是正の必要がある」と回答した。程度の差こそあれ、社保は加盟店側の問題という認識は3社に共通している。“加盟店の独立性”を強調するのも同じだ。 一方で少子高齢化を考えれば、社会保障の財源確保のため、未加入の事業所を探し出して加入を促すという政府の姿勢が弱まることは、まずない。ましてやマイナンバーの導入などにより、個人や中小企業の財務状況は近年ますます政府に把握されやすくなっている。社会保険料の負担に耐えられない加盟店が今後続出することは明白だろう。 本部はここ数年、「加盟店支援」を掲げて、ようやく廃棄ロスや光熱水費などの各種補助を打ち出している。ただ、前述のSEJのロイヤルティー1%の特別減額も「人件費の上昇分すら賄えない」(現役オーナー)との声が出るなど、抜本的な対策とは言い難い。 「変化への対応」を掲げた鈴木氏の“勝利の方程式”に倣って成長を遂げた日本のコンビニ業界。商品やサービスは、消費者の変化に対応して確かに磨き上げられた。だが、加盟店の経営や従業員をめぐる情勢の変化に、十分に対応してきたとはいえない』、「加盟店の独立性」があるとはいえ、「店舗の従業員の労働時間や給与の計算は本部のコンピューターにつないで実施」しているのであれば、社会保険料も合わせて計算するのが普通だ。社会保険に未加入の加盟店のためにそれをしないというのは、筋違いだ。いずれにしても、コンビニは加盟店問題ではまだまだ闇を抱えているようだ。

第三に、10月1日付け東洋経済オンライン「ファミマのブランド統合で露呈した深刻問題 サークルK、サンクスからの転換は進むが…」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/239864
・『2年をかけて行われてきた統合作業がヤマ場を迎えている。 2018年11月、コンビニエンスストア大手のファミリーマートが進めてきた「サークルK」「サンクス」とのブランド統合が完了する。当初は2019年2月に終える予定だったが、統合作業を加速したことで、3カ月前倒しで完了する見通しとなった。ブランド転換を行った店舗は9月中旬までで約4800。残る転換対象店舗は200を切った。 ファミリーマートの澤田貴司社長は、「この2年間、社員が本当によくやってくれた」と笑顔で話す。統合で同社の店舗数はローソンを抜き、2番手に躍進。統合前は2兆円だったチェーン全店売上高は、一気に3兆円規模へと拡大した』、当初の予定より早目に統合完了とはまずまずだろう。
・『閉鎖する店舗が想定より増えた  それだけではない。もともとサークルK、サンクスの平均日販(1日当たり1店売上高)は40万円台半ば。それが転換後には50.6万円に増加した。「『ファミチキ』をはじめ商品面が強化されたことで、客数が増えた」(サンクスから転換した加盟店オーナー)。 一見すると順調のように思えるブランド統合。その一方で、当初のもくろみが外れた面もある。 ブランド統合が始まった2016年秋、ファミリーマートとサークルK、サンクスの店舗数は単純合算で約1.8万店と、首位のセブン-イレブン・ジャパンに匹敵する規模だった。だが、統合に際して閉める不採算店の数が想定より増え、足元の店舗数は1.7万店を割った。 その間、セブンは出店を続け2万店を突破。ローソンも地方のコンビニと提携し店舗数を増やしてきた。結果的に直近2年で大手3チェーンのうち、サークルK、サンクスを含むファミリーマートだけがシェアを落とした。 統合を主導した当時の上田準二会長(現ユニー・ファミリーマートホールディングス〈HD〉相談役)は「規模が伴わないと日販は向上しない」と何度も語っていた。だが、統合が進んでもファミリーマートの日販は52万円前後で横ばいが続く。セブンとの差も10万円以上開いたままだ。 15年間ファミリーマートを運営する加盟店オーナーは、「この2年は目立ったヒット商品もなく、統合のメリットは感じない。むしろ近隣のサンクスが転換したことで売り上げが落ちた」と不満を募らせる』、サークルK、サンクスは日販が増えたが、旧ファミリーマート自体は変わらないというのは、「規模が伴わないと日販は向上しない」との信念が誤りだったことを示唆している。
・『ベンダー企業も苦悩  統合以降、ファミリーマートは製造・物流拠点の集約や商品の見直しを進めてきた。ただ商品改革については澤田社長も、「まだ道半ば。トップチェーンとは差がある」と率直に認める。 弁当などを製造するベンダー企業も苦悩する。かつてサークルKやサンクスに商品を供給していた東海地盤のカネ美食品は、統合を機にファミリーマート向けに商品を切り替えた。一部の工場では商品の納品が1日2回だったが、切り替え後は1日3回に増えた。 その結果、工場で働く従業員のシフト変更が必要となり、派遣社員の大量投入を余儀なくされた。廃棄ロス増も加わり、2017年度は11億円の営業赤字に陥った(2016年度は5億円の黒字)。「2年前は店舗数が増えていくという発表があったが、今は逆。当初の計画を信じて、かなりの設備投資をしたが、見通しが狂った」(同社幹部)。 前出のサンクスから転換したオーナーも売り上げは伸びた一方、複雑な思いを吐露する。統合に先立ち、ファミリーマートは加盟店とのフランチャイズ契約の内容を見直した。弁当などの廃棄ロスや水道光熱費についての本部負担を増やす一方、加盟店が本部に支払うロイヤルティは増額した。「手元に残る利益はサンクス時代と同じかやや少なくなった」(加盟店オーナー)。 ステークホルダーの不満を払拭し、ブランド統合完了後の成長をどう実現するか。カギは、8月にTOB(株式公開買い付け)でユニー・ファミリーマートHDの親会社となった伊藤忠商事との連携だ』、伊藤忠商事との連携といっても、かつて丸紅がダイエーを抱え込んだが、上手くいかず、イオンに渡した例からみても、余り期待できないようだ。
・『個店単位の質向上はこれから  同社の細見研介・食品流通部門長は、「ファミリーマートの年間来店客は50億人。それらのデータは将来大きな価値を生む可能性がある」と強調。金融や情報サービスに関しては具体的な言及を避けたが、自社グループにこだわらない提携を検討しているようだ。 早期の統合で器は整った。とはいえ、個店単位での質の向上を図るのはこれから。統合完了は決してゴールではない。 社長就任から2年。ファミリーマートはサークルK、サンクスとのブランド統合の先に、どのような成長の青写真を描いているのか。澤田貴司社長が東洋経済の取材に応えた。 コンビニの市場は飽和している。これからは店舗数より質の時代だ。よくない店を抱えていても仕方がない。この2年で店舗数は減ったが、それでよかった。 セブン-イレブンのすごい点は出店、物流、商品、マーケティングなど、あらゆる面で戦略にムダがないところ。当社は(am/pmやサークルKサンクスなどが)合併してきたということもあり、出店や物流で非効率な面があった。 最近では出店をより吟味するようになったので、新店の売り上げは上がっている。ただ弁当やおにぎりなど中食は、定期的に食べ比べをしているが、まだセブンとは差がある。 今年立ち上げたフィットネスやコインランドリー併設店はすでに損益分岐点を超えており、下期以降、店舗数を増やしていく。ドン・キホーテとの共同実験店は、既存の店に比べ売り上げが伸びているのは確かだが、オペレーションの負担が大きく人件費がかさんでいる。検証が必要だ。 年内をメドに、伊藤忠商事とユニー・ファミリーマートHDで金融サービスを行う方向性について発表する。このあたりは当社単独では難しいので、伊藤忠の持つ人材、資金力、ネットワークを使い倒していきたい』、金融サービスといっても、いまさら銀行ではないだろうから、一体、何を狙っているのだろう。
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