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バブル(最近)(その3)(「3つのバブル」が崩壊する瞬間が近づいている 短期のコロナバブル崩壊はきっかけに過ぎない、実体経済を反映しない日本の株高が 欧米より多くの問題を抱える理由) [金融]

バブル(最近)については、3月21日に取上げた。今日は、(その3)(「3つのバブル」が崩壊する瞬間が近づいている 短期のコロナバブル崩壊はきっかけに過ぎない、実体経済を反映しない日本の株高が 欧米より多くの問題を抱える理由)である。

まずは、3月8日付け東洋経済オンラインが掲載した財務省出身で慶應義塾大学大学院准教授の小幡 績氏による「「3つのバブル」が崩壊する瞬間が近づいている 短期のコロナバブル崩壊はきっかけに過ぎない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/377045
・『世界はこれからどうなるのか。 コロナは収束する。そして、バブルは崩壊する。正確に言うと、崩壊しそうだったバブルがもう一度、最後の膨張を見せ、崩壊する。すでに株式市場はその最終段階に入っている。これがラストバブル、最後のバブルになる』、「これがラストバブル、最後のバブルになる」とは、思い切った宣託だ。
・『新型コロナがバブル崩壊を救ったという皮肉  2020年に入ったときに、少なくとも株式市場はすでにバブル崩壊寸前だった。ウーバーやウィーワークなどに投資していたソフトバンクグループ(ソフトバンク・ビジョン・ファンドなど)、そして、テスラ……。 しかし、これらの崩壊寸前のバブルを救ったのは、新型コロナショックだった。FED(アメリカの中央銀行)は前代未聞の金融緩和を行い、同国政府の財政出動も、リーマンショック時の対応をはるかに超えるものとなった。暴落した株価はこれで急回復。S&P500種株価指数やナスダック総合指数などはコロナショック以前の水準を超え、史上最高値を更新し続けた。 市場は都合よく、コロナショックを解釈した。引きこもり生活で利益を急拡大したズーム、アマゾン、その他の半導体関連やネット関連企業の株価は暴騰し、政府の経済対策で救済される古いセクターの株式もリバウンド狙いで急騰した。 相場は主役を変えつつ上昇を続け、暴落したはずのNYダウも、コロナショック前の株価を一時回復した。 では、今回のバブルは維持可能だろうか? もちろん崩壊する。現在からさらに膨らんでから崩壊するか、このまま一進一退するなかで崩壊するのか、それはわからない。だが、まもなく崩壊することは間違いない。 その結果、すべてのバブルは崩壊するのだ。では、すべてのバブルとは何か? 大きく言って、バブルは「短・中・長期」の3つがある。最悪の場合、この3つのバブルが同時に崩壊するだろう。少なくとも、2つのバブルは確実に崩壊する。そして、3つ目のバブルが崩壊すれば、時代は大きく転換し、新しい社会が生まれる。コロナだけでは社会は本質的には何も変わらないが、もしすべてのバブルが崩壊するのなら、社会は「まともなもの」に戻っていく。ひとことで言えば、約500年前のような状態に戻るのだ』、「新型コロナがバブル崩壊を救った」が、「もしすべてのバブルが崩壊するのなら、社会は「まともなもの」に戻っていく・・・約500年前のような状態に戻る」、ますます不吉な宣託のようだ。
・『少なくとも「短期」「中期」2つのバブルが崩壊する  少し説明しよう。 まず、コロナショックへの救済策で膨らんだ今回のバブルは崩壊する。これは必然だし、明快だ。いつになるかは議論があるが、崩壊することは確実だ。1つ目のバブル崩壊は、コロナバブルという短期バブルの崩壊である。 次に、中期バブルも崩壊する。中期バブルとは、複数の短期バブルからなる。短期バブル(循環)の繰り返しが中期バブル(循環)である。今回のコロナショックバブルは、その前のバブルが崩壊するのを防ぐために、金融市場を救済したことによって生まれた。その前のバブルとは、2009年以降約11年間上昇を続けていた株式バブル、不動産バブル、そしてそれらを生み出した根源である、世界的な国債バブルだ。 この国債バブルは、2008年のリーマンショックによる世界的な金融バブル崩壊の救済措置のために行われた、前代未聞の大規模金融緩和で生まれた。具体的に言えば、世界中の主要な中央銀行(日本を除く)が、国債を中心にリスク資産を自ら大量に買い込んだのである。 これは中央銀行が作った金融緩和バブルであった。要は、世界的な金融バブル崩壊の処理を先送りするために、中央銀行がバブルを意図的に作り、リスクは自らが敢えて抱え込んだ。そのバブルが崩壊しかかったときに、コロナショックが起き、コロナショックのために金融財政政策を総動員し、バブルは崩壊するどころか、さらに新しい短期バブルが生まれ、膨らんだのである。 すでにコロナショックがバブルになっている理由は、コロナショックが社会的には印象的な衝撃が大きすぎ、当初無秩序に救済策がとられたからだ。コロナショックは、急激な需要減少だが、それは短期限定的で、需要減少の総量としてはリーマンショックよりも遥かに小さい。 また、ストックも傷んでいない。つまり工場の設備もインフラも多くのビジネスモデルも基本的には無事である。人々の不安が解消し、行動制限さえ緩和されれば、すべて元に戻る。さらに、銀行などの金融機関が、少なくとも直接にはほとんど傷んでいない。例えば不動産バブル崩壊で銀行の資本が毀損し、貸し渋り、貸しはがしなどが起きて、経済全体がバブル崩壊からの不況に陥ることはない。 それにもかかわらず、金融財政出動はまさに前代未聞であり、人類史上最大の救済策が採られた。一部の経済は過熱し、資産市場はそれ以上に過熱し、バブルが膨らむ以外にない。日本でもアメリカでも、投資経験のない個人投資家が、政府からの給付金で、ギャンブルに近い株式投資あるいは身近な銘柄(例えばアップルなど)へ投資し、この現象はロビンフッド現象とまで名づけられた。 実際にコロナショックが収束すれば、間もなく、どこかのタイミングでバブル崩壊となる。理由は単純で、バブルは膨らみ続けるか、崩壊するか、どちらかしかないからだ。そして、もはや、コロナショックバブルは膨らみ続けることはできない。なぜなら、膨らませる手段が尽きてしまっているからだ。 もし新型コロナウイルスの猛威が収まっても、次のウイルスがやってくる。「新型コロナにまつわる致命的な『3つの大嘘』でもふれたが、21世紀はウイルスの世紀で、この20年、ほぼ5年ごとに新たなウイルスが世界に脅威をもたらしている。「COVID-19」が最後のウイルスであることはありえない。 そのときには、再び財政出動が必要とされるかもしれない。しかし、それはもう不可能だ。財政は限界以上に支出してしまっている。これ以上支出するためには、中央銀行に引き受けさせるしかない。しかし、中央銀行は、コロナショックバブルの前の中央銀行バブルで、実質的に引き受けすぎている。もはや余地はない。金融市場のバブルは崩壊し、財政は破綻する。このどちらかは少なくとも必然であり、金融バブルと財政破綻が同時に起きる可能性が最も高い。 そして、金融緩和、財政出動と手段を出し尽くしてしまっているから、このバブル崩壊を救うためのバブルを作る余地はまったくない。ついに、バブル崩壊をごまかし、処理を先送りするためのバブルが作れなくなり、短期バブルの連続だった、中期バブルも崩壊する』、「次のウイルスがやってくる」と、「金融バブルと財政破綻が同時に起きる可能性が最も高い」、「バブル崩壊をごまかし、処理を先送りするためのバブルが作れなくなり、短期バブルの連続だった、中期バブルも崩壊する」、いやはや恐ろしいシナリオだ。
・『「中期バブルの起源」とは?  では、この中期バブルはいつ始まったか。1980年代末の共産主義圏の崩壊からである。これにより「平和の配当」が生まれたとされ、旧共産圏は市場経済への移行経済となり、絶好の投資機会を世界に提供したのである。フロンティア(新たな境界領域)の出現である。 中期の大きなバブルの波が生まれるには、3つの要素が必要だ。「流動化」「外部」「フロンティア」である。共産主義の崩壊は、西側諸国に、この3つを同時にもたらした。 その後、この移行経済バブルがはじけ、アジアを中心として新興経済バブルも1998年にはじけたはずだったが、アメリカを中心としたITバブルとなり、21世紀を迎えた。 しかし、そこで、2001年の同時多発テロや、エンロンショックなどがアメリカをたて続けに襲った。それを救済するために、金融緩和バブルがFRBのグリーンスパン議長の主導により、再度作られた。サブプライムバブルが生まれ、それは世界金融バブルとなり、崩壊してリーマンショックとなった。 前述したように、中期バブルの循環のなかで、短期バブルが繰り返されたが、それはバブル崩壊の処理を先送りするために作られたバブルであった、バブル・アフターバブルである。この中期バブルが、コロナショックバブルの後、完全に崩壊することになる。もはや新しい短期バブルが作れないからである。 そして、世界は財政破綻、金融危機に見舞われるだろう。 問題は、その後である。どうなるのか。 そこで3つ目のバブルである「長期バブル」の登場である。これからは、この長期バブルの崩壊となるかどうかにかかっている。 ここで長期バブルの循環とは、経済システムの循環であり、現在の長期バブルは、1492年以降の、世界の流動化以来始まった、近代資本主義というバブルである。 それ以前、欧州は、中世という固定化された世界のシステムで動いていた。それが大航海時代により流動化が始まり、「新世界」の発見という外部の登場、フロンティアの拡大、そして収奪などによる富の流入により、バブルが膨らみ始めたのである。 近代資本主義は、ひたすら、流動化を進めた経済社会システムであった。階級の流動化も起こり、宗教革命により権威の流動化も起こり、例えば貴族も流動化した。 また資本も流動化し、それを蓄積し、拡大、増殖し続けようとする資本家が誕生した。その資本家も流動化し、分散化、大衆化し、資本は株式となり分割され、さらにそれは上場して分散し、極端に流動化された。そして、資本の移動速度は加速度的に速まり、人の移動も、社会の変化も、資本の戦いの勝負もスピードも速まり、栄枯盛衰の展開も加速した。そして、バブルは頻繁に短期に激しく起こるようになった』、「短期バブル」、「中期バブル」、「長期バブル」、についての歴史的考察はさすが説得力がある。
・『「新しい中世」とも呼べる時代が到来するか  この長期のバブルが、ついに今回で終焉する可能性が、僅かだが、あるかもしれない。加速がこれ以上起きようがない、流動化がこれ以上起きようがないかもしれないからだ。 実際、政治権力よりも大企業の権力が強くなったが、企業は、その権力とビジネスモデルを、プラットフォームという言葉に示されるように、固定化しようとして、競争を激しく行っている。皆が固定化を目指すようになりつつある。流動化が限界を超えたとすると、これは近代資本主義という流動化の時代が終わり「新しい中世」とも呼べるような、固定化の時代、蓄積の時代が始まるかもしれない。 グローバル化が進み、外部が存在しなくなり、フロンティアも存在しなくなったことも決定的だ。長期バブル、近代資本主義が終わる可能性が見えて来てはいる。だが、新たな覇権国家を目指す中国が外部であり、外部になり、旧来からの欧米の覇権国家群を助け、新しい覇者となり、近代資本主義を延長する可能性もないわけではない。ただ、それがそもそも可能であるか危ういし、中国の意思が持続するかどうかもわからない。 したがって、第3のバブルである長期バブルが終わるかどうかは、現時点ではわからない。 しかし、その前の中期バブルが崩壊し、一定期間、激しい変化と流動化の時代から、違ったペースと様相の時代が来ることは間違いない。その”ミニ”新しい中世がどんなものになるか、今後、考察をする必要がある』、「長期バブル、近代資本主義が終わる可能性が見えて来てはいる・・・第3のバブルである長期バブルが終わるかどうかは、現時点ではわからない」、何が起きても、歴史的視点を持って冷静に対応してゆきたいものだが、凡人の私には無理だろう。

次に、10月1日付けYahooニュースがダイヤモンド・オンライン記事を転載した早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問の野口悠紀雄氏による「実体経済を反映しない日本の株高が、欧米より多くの問題を抱える理由」を紹介しよう。なお、ダイヤモンド・オンラインでは有料なので、Yahooニュースに転載された方で紹介する次第だが、図表は転載されない。本文中の注は省略した。
https://news.yahoo.co.jp/articles/5366e743d6af360d680e8cf9094cb121e2f1318f?page=1
・『BIS(国際決済銀行)は、「米国とユーロ圏の3月以降の株価反発のうち、半分近くと5分の1は金融政策の結果」だとして、高株価に警告を発した。 日本ではマイナス金利政策以降、長期金利の「ゼロ近傍」が続いていて目立った金利低下はないので、BISの分析モデルによっても株高を説明できない。 日本の高株価は、欧米より脆弱だ』、興味深そうだ。
・『株価は高すぎるのではないか? BISが発した「警鐘」  「現実経済の見通しに比べて、株価が高すぎるのではないか?」との疑問を、多くの人が抱いている。 BISは、9月14日に公表された四半期報告の中で、3月以降の株価反騰のうち、どの程度が金融緩和政策による低金利によってもたらされたものかを分析した。 ここでの問題意識は、「異常なほど高い株価は、経済データと食い違っているのではないか」ということだ。 基本的な方法論は、ごくオーソドックスなものだ。 つまり、「株価は将来の予想配当額を割引率を用いて現在価値に引き直したもの」という考えだ。 こうして計算された値を「ファンダメンタルズ」という。 ファンダメンタルズは、予想配当額と割引率によって決まる。割引率として、国債利子率に「リスクプレミアム」を加えたものを用いている』、なるほど。
・『コロナによる3月の大暴落を機に FRBの金融政策は大転換  今春、新型コロナウイルスの感染拡大が成長予想を完全に打ち砕いた。このとき株価が大暴落した。 これは、割引率が不変で、将来の配当見通しが激減したために起きたものだ。 ところが、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、3月23日に金融政策を劇的に緩和した。国債を必要なだけ、無制限に購入するとした。 これによって、金利が低下した。図表1には、今年2月と9月のイールドカーブが示されている。アメリカ10年国債利回りは、2月には1.8%程度だったが、9月には0.6%程度と半減した。極めて大きな変化だ。 これは、割引率を引き下げることになるから、配当見通しが変わらなくても、株価は上昇する。 これによって、株式市場の崩壊が食い止められた。 さらに8月27日には、高めのインフレを容認する新たな物価政策を導入した。インフレ予想を高めることで実質金利の引き下げを狙ったのだ。これによって、株価はさらに上昇した』、確かにFRBは、まさになりふり構わず株式市場テコ入れを図っている。
・『実体経済の見通しは暗い  米国株回復の半分は金利低下で  一方で、経済成長見通しは暗いままだ。 最近のGDPの落ち込みは、2021年の終わりにならないと回復できないといわれる。さらに、企業の業績見通しは、大きく下方改定されている。 もちろん、GAFAなどのテック企業は、コロナにもかかわらず、業績を伸ばしている。これらの株価が上昇するのは自然なことだ。 しかし、BISの報告書は、この要因だけでは、株式市場全体の急騰を完全には説明できないとしている。 BISの分析では、まず、株価を短期構成要素と長期構成要素に分解する。 そして、上記の方法によってファンダメンタルズを計算して、現実の株価と比較した。その結果、金利低下の影響が著しいのは長期要素であると結論している。 (この分析では便宜的に5年で区切りとし、それまでの配当期待は詳細な情報により形成されるが、それ以降は一定率の成長が仮定されるとしている) 実際、図表2に見るように、反騰が著しいのは、長期構成要素だ。 仮に金利が2月の水準のまま据え置かれていたとすると、株価の長期構成要素は、9月4日の実績よりも、アメリカ株で18%、欧州株で6%低くなっていたと結論している。 そして、長期構成要素と短期的構成要素を合わせると、アメリカ株の反騰の半分、欧州株の反騰の5分の1が低金利によってもたらされたとしている』、「アメリカ株の反騰の半分、欧州株の反騰の5分の1が低金利によってもたらされた」、BIS試算ではかなり大きな比重だ。
・『日本では金利低下ないのに株高 日銀のETF購入が考えられる  BIS報告は、日本には言及していない。 では、日本についてこの考えを当てはめれば、どのような結論になるだろうか? まず、経済の見通しについては、楽観できない状態だ。この点では、アメリカとあまり大きな違いはない。 ただし、金利の動向については、日米で大きな差がある。 アメリカでは図表1で見たように金利がこの数カ月で顕著に下落した。しかし、日本では、ほとんど変わりがない。 アメリカでは、これまでの金利水準が高かったために、金利の下落も顕著だ。このため、上記のようなことが起きた。 しかし、日本の10年債金利は、2016年1月29日にマイナス金利政策が導入されて以降、ほぼゼロ%の近傍なので、これ以上に低下させることは難しい。 最近の状況を見ても、1月に0.00%程度だったが、2月末から3月初めにかけて変動があったのを除くと、ほとんど変化していない(このため、日米の金利差が縮小して円高になった)。 したがって、アメリカの場合のように、「割引率が低下したために、経済見通しが悪いにもかかわらず株価が上昇」というメカニズムは働かないはずだ。 それだけではない。アメリカには、コロナによって業績が急上昇しているテック企業があるが、それに対応するような企業は日本にはほとんどない。 ところが、こうした違いがあるにもかかわらず、日本の株価もアメリカの株価とほぼ同じ推移を示している。つまり、3月の大暴落以降、顕著に回復し、ほぼ2月頃の水準を回復しているのだ。 これは、どうしてだろうか? 考えられる1つの要因は、日本銀行がETFを購入して株価を支えていることだ。 経済協力開発機構(OECD)は、4月15日に公表した対日経済審査報告書において、日銀のETF買い入れは「市場の規律を損ないつつある」として懸念を示した。 こうした事情を考えると、日本の株価の脆弱性は、欧米より高いといえよう』、「日本の株価の脆弱性は、欧米より」深刻なのは確かだ。
・『金利を抑えるために 日銀に損失が発生  将来を見ると、さらに問題がある。 それは、利回りを低く維持するためには、中央銀行が市中から国債を買い続ける必要があることだ。 日本の場合には、国債残高が膨大なので、長期金利抑制がさらに難しい。 さらに、マイナス金利政策の影響がある。 銀行が日銀に国債を売却すると、代金が日銀当座預金に振り込まれて、その残高が増える。しかし、2016年のマイナス金利導入で、それにはマイナス金利が適用になる。 銀行としては、国債を売却して、負のリターンの資産を持つことになるので、こうした取引はしたくない。 実際、日銀が保有する長期国債残高の対前年同月増減額は、15~16年頃には80兆円程度にまで増加したが、16年秋から減少を始め、19年11月からは20兆円を割り込んでいる。 こうした問題があるので、日銀は国債を償還価格より高い価格で購入している。現在、新発10年債の表面利率は0.04%だが、日銀買いオペによって、利回りは0.02%程度の水準で推移している。 発行価格が額面であるとすると、それより0.2%程度高い価格で買っていることになる。 ただし、この方法を取ると、償還時に日銀に損失が発生する。 以上のような問題があるので、コロナ関係の財政支出は、これまでのところ、主として短期国債によって賄われている。 しかし、いつまでも短期国債には頼れない。 長期国債の大量発行が始まると、長期金利押し上げの圧力が生じる。 これを押さえるために、日銀は、買い入れ価格をさらに引き上げる必要に迫られる。 こうした状態から脱却するには、マイナス金利政策を放棄して、当座預金に付利する必要がある。しかし、そうすると日銀の金利負担が増える。 いずれにしても、日銀の負担は増えざるを得ない。 高株価を支える基盤は、日本の場合、アメリカより遥かに多くの問題を抱えていると考えざるを得ない』、日銀の異次元緩和は既に足元でも破綻しかけているようだ。なお、最近で異次元緩和を取上げたのは、10月3日なので、参考にされたい。
タグ:もしすべてのバブルが崩壊するのなら、社会は「まともなもの」に戻っていく BIS (「3つのバブル」が崩壊する瞬間が近づいている 短期のコロナバブル崩壊はきっかけに過ぎない、実体経済を反映しない日本の株高が 欧米より多くの問題を抱える理由) 少なくとも「短期」「中期」2つのバブルが崩壊する 次のウイルスがやってくる 新型コロナがバブル崩壊を救ったという皮肉 金利を抑えるために 日銀に損失が発生 金融バブルと財政破綻が同時に起きる可能性が最も高い これがラストバブル、最後のバブルになる バブル バブル崩壊をごまかし、処理を先送りするためのバブルが作れなくなり、短期バブルの連続だった、中期バブルも崩壊する 「実体経済を反映しない日本の株高が、欧米より多くの問題を抱える理由」 「中期バブルの起源」とは? 共産主義圏の崩壊から 「「3つのバブル」が崩壊する瞬間が近づいている 短期のコロナバブル崩壊はきっかけに過ぎない」 アメリカ株の反騰の半分、欧州株の反騰の5分の1が低金利によってもたらされた 野口悠紀雄 (最近) 東洋経済オンライン 約500年前のような状態に戻る 日本では金利低下ないのに株高 日銀のETF購入が考えられる ダイヤモンド・オンライン yahooニュース 小幡 績 日本の株価の脆弱性は、欧米より高い 日本の10年債金利は、2016年1月29日にマイナス金利政策が導入されて以降、ほぼゼロ%の近傍なので、これ以上に低下させることは難しい 株価は高すぎるのではないか? BISが発した「警鐘」 米国とユーロ圏の3月以降の株価反発のうち、半分近くと5分の1は金融政策の結果」だとして、高株価に警告 長期バブル、近代資本主義が終わる可能性が見えて来てはいる・・・第3のバブルである長期バブルが終わるかどうかは、現時点ではわからない 「新しい中世」とも呼べる時代が到来するか 中期の大きなバブルの波が生まれるには、3つの要素が必要だ。「流動化」「外部」「フロンティア」
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個人情報保護(その2)(グーグルがアルバムを作ることの重大な意味 無料で便利な代わりに情報を提供している、接触確認アプリは使わないが マイナンバーと預金口座はひも付けたい理由、暮らしが激変!? 急速に広がる“顔認証”) [社会]

個人情報保護については、昨年9月24日に取上げたままだった。今日は、(その2)(グーグルがアルバムを作ることの重大な意味 無料で便利な代わりに情報を提供している、接触確認アプリは使わないが マイナンバーと預金口座はひも付けたい理由、暮らしが激変!? 急速に広がる“顔認証”)である。

先ずは、昨年11月10日付け東洋経済オンラインが掲載した早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問の野口 悠紀雄氏による「グーグルがアルバムを作ることの重大な意味 無料で便利な代わりに情報を提供している」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/312588
・『昨今の経済現象を鮮やかに切り、矛盾を指摘し、人々が信じて疑わない「通説」を粉砕する――。早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問の野口悠紀雄氏による新連載をスタートする』、興味深そうだ。
・『何でもすぐに写真を撮るようになった  研究会などでホワイトボードに書かれた内容を撮影するのは、ごく普通に見られる光景となりました。 かつてのように重いカメラは必要ではなく、どこにでも持ち歩けるスマートフォンで簡単に撮影できるようになったことが大きな理由ですが、それとともに、写真をいくら撮っても、ほとんど無料で、事実上いくらでも保存できるようになったことの影響が大きいと思われます。 これは、写真に対するこれまでの考えを大きく変えるものです。 一昔前まで、写真は高価な情報保存手段でした。フィルム代、現像代、プリント代がかかり、それをアルバムに貼らなければなりません。このため、これまで写真を撮るのは、旅行や運動会などの特殊な場合でした。 それが、「タダでいくらでも保存できる」ということになったのですから、写真に対する考え方は基本的に転換することになります。ホワイトボードの情報をメモするために写真を撮るというのは、その1つの表れにすぎません。 問題は、保存した写真が大量になると、その中から目的のものを選び出すのが難しくなることです。 同じ問題が、ウェブの情報について、20年ほど前に生じました。 それを解決したのが、検索エンジンでした。極めて性能の高い検索エンジンを開発したグーグルが、その後急成長し、今やGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)と呼ばれる企業群の1つとしてアメリカ経済をリードする役割を担っていることは、よく知られています。 ところが、これまで検索の対象にできたのは、デジタル・テキスト(文字や数字など)でした。写真などの画像を検索することはできなかったのです。このため、写真の数が多くなってくると、お手上げということになります。 貴重な写真がたくさんあるのに利用できないで、情報洪水の中に飲み込まれてしまう「豊穣の中の貧困」です』、確かに、「写真に対する考え方は基本的に転換」したことによる変化は大きい。
・『個人でも、画像認識機能を使えるようになった  ところが、この状況に最近大きな変化が生じつつあります。コンピューターが画像を識別できるようになったのです。 例えば「写真に写っているのは猫であり、犬ではない」ということを判断できるようになりました。 この技術は、画像認識といわれるもので、これまで、コンピューターが最も苦手とされてきたものです。われわれが学生の頃から、「夢の技術」といわれていました。 画像認識は、さまざまな場面で応用されます。 まず、自動車の自動運転には不可欠の技術です。完全自動運転が可能になれば、経済活動も生活のスタイルも大きく変わるでしょう。 また、電子マネーの支払いが、QRコードではなく、顔認証で行えるようになりつつあります。これができれば、店舗の無人化が可能になります。 このように、画像認識は極めて重要な技術ですが、ここでは、企業による利用ではなく、個人が画像認識機能を使えるようになったことについて述べたいと思います。 個人が使える画像認識の第1は、「Googleレンズ」というサービスです。スマホのGoogleアプリでマイクの左横にあるボタンをクリックして起動したカメラで写真を撮ると、その対象物が何であるかを教えてくれたり、印刷された文字を読み取ってくれたりします。これは、1年ほど前から利用可能になったものです。 最近では、写真の検索が可能になりつつあります。 グーグルが提供する「Google フォト」というアプリでは、保存された写真について、いくつかの写真に写っている人物が同一人物か否かを識別します。そして、人物ごとのアルバムを作ってくれます。 これはかなり正確な識別であり、幼児が成長しても、同一の人物であると識別します(なお、類似のサービスを、マイクロソフトも提供しています)。 つい最近までは、人物以外の基準による識別は、不十分でした。ところが、最近、その能力が目に見えて向上しています。 テキスト検索のように自由な検索はできませんが、適切な検索語を入れると、その関連の写真を引き出します。 これで識別された写真をアルバムに入れるのは簡単な操作でできるので、写真の内容ごとにアルバムを作ることができます。こうして、素早く目的の写真を見いだすことができるようになりました。 ところで、こうした操作をしていると、画像に関連したデータをグーグルに提供していることになります。以下では、このことの意味を考えたいと思います』、「Googleレンズ」、「Google フォト」などは便利だが、落とし穴に気を付ける必要がありそうだ。
・『グーグルが大量の学習データを得る  Google フォトは、写真に写っている人物を識別し、個人別のアルバムを作ってくれますが、その人の名前までは知りません。それは、利用者が入力するしかありません。 利用者としては、名前を入力しておくと何かと便利なので、入力します。 すると、Googleは、写真の人物の名前を知ることができるわけです。こうしてGoogleは、今や世界中の何億人という人物について、名前と顔を関連付けられるようになっているのです。 これには、いくつかの問題があります。 第1に、こうした方法で大量のデータを収集できる企業は、世界でごくわずかしかないということです。現在では、グーグルとマイクロソフト、それにフェイスブック程度ではないでしょうか? また、中国の電子マネーであるアリペイは、顔認証による決済サービスを提供しているので、それを通じて顔の情報を入手することができます。 しかし、それ以外の企業は、こうしたことができません。 ところで、AIの能力を向上させるには機械学習が必要であり、そのためには大量のデータが必要です。そのデータを得ることができる企業がごく少数のものに限られてしまうということは、高度の画像認識能力を開発でき、それを活用できる企業が、ごく少数の企業に限られてしまうことを意味します。 われわれは、この状況をどう考えるべきでしょうか?日本の企業は、このことの意味を真剣に考える必要があります。 問題はそれだけではありません 以上のような方法によって個人の顔の識別が可能になった場合、それがどう利用されるかです。 顔認識ができるようになれば、それはAIによるプロファイリング(大量のデータから、個人の属性・所得・嗜好などを推測すること)に使われます。写真に写った個人が誰かを判別できるようになるのです。 この利用は、電子マネーの決済だけではありません。 最近では、タクシーの中にある広告パネルが乗客の顔を認識し、その人にあった広告を流すようになっていると報道されています。「画像パネルに自分が誰かを把握されてしまうのは気持ちが悪い」と考える人は多いでしょう。 それだけならまだしも、国家による管理に用いられる可能性があります。 これは、中国ではすでに現実の出来事となっています。警察官が顔認識機能を持つ特殊なゴーグルを装着し、それによって犯人を検挙しているというのです。1万人が集まったコンサートでたった1人の指名手配犯を見いだし、検挙したというニュースが報道されました。 こうなると、ジョージ・オーウェルが小説『1984年』で描いたビッグブラザーよりもはるかに強力なデジタル支配者が現れ、究極の管理社会が実現される可能性があります。中国は、そういう社会に向かっていると考えることもできます』、「高度の画像認識能力を開発でき、それを活用できる企業が、ごく少数の企業に限られてしまうことを意味」、困ったことだ。「顔認識ができるようになれば、それはAIによるプロファイリング・・・に使われます。写真に写った個人が誰かを判別できるようになる」、「国家による管理に用いられる可能性があります」、恐ろしいことになりそうだ。
・『個人情報を提供しなければ仕事ができない  こうした事態に対処するため、EU一般データ保護規則(GDPR)は、「プロファイリングされない権利を認めるべきだ」としています。 しかし、これで問題が解決されるでしょうか? Google フォトの例を思い出してみると、われわれは、この利用から大きなメリットを受けています。だからこそ、進んで個人情報を提供しているのです。 「プロファイリングされるのは嫌だから、こうしたサービスは用いない」とは言えない状況になっています。 これは、写真に限ったことではありません。検索、メール、マップなどのインターネットサービスについて、等しくいえることです。 われわれはすでに、こうしたサービスを利用しなくては、仕事をしたり生活をしたりすることができなくなっています。すでに、トロイの木馬を城の中に引き入れてしまったのです。 そうしたことを考えると、GDPRが提案していることは、およそ見当違いと考えざるをえません。 日本では、公正取引委員会が、独占禁止法によってGAFAなどを規制しようとしています。しかし、問題は価格支配力ではないので、これが問題解決のための方向であるとも考えられません。 個人のプライバシーを守りつつ、利用価値の高いインターネットサービスを使うにはどうしたらよいのか? この問題は、どうしても解決されなければならないものです。しかし、今までわれわれが経験したことのない極めて難しい問題です』、「検索、メール、マップなどのインターネットサービス・・・を利用しなくては、仕事をしたり生活をしたりすることができなくなっています。すでに、トロイの木馬を城の中に引き入れてしまったのです・・・GDPRが提案していることは、およそ見当違いと考えざるをえません」、「個人のプライバシーを守りつつ、利用価値の高いインターネットサービスを使うにはどうしたらよいのか?」、「この」「極めて難しい問題」を如何に解決してゆくか、悩ましい課題のようだ。

次に、本年6月24日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏による「接触確認アプリは使わないが、マイナンバーと預金口座はひも付けたい理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/241192
・『新型コロナウイルスの感染者と濃厚接触した可能性を通知する「接触確認アプリ」を国が公開した。筆者はこのアプリを使うつもりはないが、最近浮上しているマイナンバーと預金口座をひも付ける案に対しては、条件付きではあるが賛成だ。「普通の人」に多くのメリットがあり得るからだ。その理由を解説したい』、興味深そうだ。
・『接触確認アプリは使わない 個人情報は「自分でも」確認できるべき  厚生労働省が新型コロナウイルスの濃厚接触者通知アプリを発表した。便利なのかもしれないし、協力した方が良さそうな同調圧力を感じなくもない。しかし、他方でプライバシーが過剰に把握されるのではないかといった心配を持つ向きもあるようだ。 筆者自身は、当面アプリをインストールしようとは思っていない。理由は、アラートが出た場合に不安に思ったり、過去を振り返ってあれこれを疑ったりするのが面倒だからだ。自分自身については、コロナの症状らしきものが出た場合には、早めに処置を考えると割り切っている。 もともと手洗いその他は丁寧な方で、顔を触らないなどの感染症対策は何年も前から意識していた。立食パーティーなどには、インフルエンザなどの感染者がいるという前提で、食事は事前に済ませて参加していた。 しかし、注意してリスクを下げているつもりでも、感染する可能性はある。ただ、感染者と15分以上近い場所にいただけでアラートが出るのは勘弁してほしいと現状では思っている。 もっとも、自分が感染した場合、位置情報などの履歴をさかのぼって提供することは、社会への協力として当然だと思っている。感染者との接触可能性を通知するアプリよりも、自分の過去の居場所と時間をさかのぼって、「自分でも」確認できる仕組みをつくってくれるとありがたいと思う。 提供する自分についてのデータは、利用される形で「自分でも」容易に確認できるべきだと筆者は思っている。米グーグルにも米フェイスブックにも、日本国政府にも言いたい。「個人情報は保護した形で利用している」などというデータ利用者の話を真に受けるのは、現代にあってはお人好しに過ぎる』、同感だ。
・『位置情報は筒抜けである 個人データを巡る3つの問題  昨今の報道を見ると、個人の「位置情報」は既に筒抜け状態であることが分かる。携帯電話が広く利用され、監視カメラが方々にあって今後も増え続けるだろう。となれば、個人の位置情報の履歴を秘匿すること自体が、よほど意識的でないと難しくなっていると理解しておくべきだろう。 河井克行前法相、河井案里参議院議員夫妻の選挙違反事件では、位置情報が捜査に使われたという。 また、街の人出に関するニュースでは、大手携帯キャリアが「個人情報を保護した上で」提供したデータに基づいて報道されている。これは、携帯キャリアは技術的に、保護しない個人情報を利用可能だということだ。経済合理的には、違法や評判悪化の際に払うコストに露見の可能性を掛けたデメリットの期待値に対して、それを十分上回るメリットがあれば、自分の個人情報が悪用される可能性は十分あるということだ。 現在、携帯キャリアの信頼性を筆者が特に気にしていないのは、筆者がテロリストであるわけでもなく、筆者の行動履歴に十分高い経済的あるいは政治的価値が無いことを自分自身が確信しているからにすぎない。 位置情報のような個人データの問題は、(1)自分のデータがどう利用されているか分からないこと、(2)データが不正に利用された場合の(特に公務員に対する)罰則が曖昧で甘いこと、(3)自分のデータが利用されているのにそのデータを自分自身で利用できるメリットが乏しいこと、の3点だ。 (3)については、平たく言うと、自分の行動は追跡されるのに、自分で自分の行動履歴を参照利用できないのでは、自分のデータを差し出すのはツマラナイということだ』、極めて論理的な主張だ。
・『「10万円が遅い!」問題で浮上したマイナンバーと預金口座のひも付け案  ところで、おそらく接触確認アプリよりも、全国民に対する一律10万円給付の方が多くの人にとって関心が高い問題だろう。「緊急事態」が明けて1カ月になろうとしているのに、給付金を得られていない家計が多数あることは問題だ。日本という国のシステムが劣っていると受け止めるのが適切だろう。 さすがに拙いということか、マイナンバーに預金口座を「一つ」ひも付けるようにして、もっと迅速に給付金を支給できるようにすべきだという議論が出てきた。 今のところ、「全ての預金口座にマイナンバーを」ではなく、「一つの預金口座にマイナンバーを」という案だ。全ての預金口座がマイナンバーにひも付けられると、お金の流れを全て把握されることに対して抵抗感を持つ向きがあるから、という話になっている。 しかし筆者は、一定の条件付きだが、「全ての預金口座にマイナンバーを」ひも付けることがいいと思っている。 全ての預金口座のデータをマイナンバーで連結することによって、「普通の人」に多くのメリットがあり得るからだ。 報道によるとマイナンバーカードの普及率は17%程度にすぎないとのことだ。個人にメリットがないのに申請の手間だけ掛けさせようとしても、制度が普及しないのは当然のことだ』、「全ての預金口座のデータをマイナンバーで連結することによって、「普通の人」に多くのメリットがあり得るからだ」、その通りだ。
・『預金口座のマイナンバーひも付けに「メリット」がほしい  では、全ての預金口座にマイナンバーが紐付くと、どのようなメリットがあり得るか。 例えば、相続の際に故人の金融資産の在りかがマイナンバーですべて明らかになれば、明らかに便利だし、相続の無駄が起こりにくい。そもそも亡くなる以前に、自分の口座を忘れることが、特に高齢化の進んだ社会では十分あり得る。 また、マイナンバーで自分の預金口座を一括管理できると、金銭管理がしやすくなるし、資産運用などの無駄が省ける可能性がある。 加えて、所得税の確定申告についても活用できるだろう。預金口座のデータから申告書の下書きが自動作成されてインターネット上で届いて、これを確認・修正するとできあがる、という程度の利便性があっていいのではないか。 幾つかの控除についても、医療費や保険料、ふるさと納税、iDeCo(個人型確定拠出年金)、などがいずれもマイナンバーとひも付いていれば、自動的に処理できる性質のものだろう。 現在の情報処理技術を本気で使う気になれば、税理士不要で手間の掛からない申告と納税が、向こう数年のうちに十分可能になるのではないか。単純な税理士業務は人工知能(AI)で十分置き換え可能に違いない。 能力のある税理士は、税務戦略を含めた総合的なコンサルティング業務にシフトすればいい』、大賛成だが、「税務署」退職者の受け皿になっている「税理士」の基本的業務がなくなるような改革には、財務省は後ろ向きだろう。
・『「脱税しないなら」徴税の効率化は改善だ  元々サラリーマンの所得はほぼ100%が税務署に筒抜けで隠しようがないし、自営業その他の立場の人にしても、情報を隠すことで脱税しようという意図を持つ人は少数だろう。 「自分」だけで考えると、マイナンバーを通じて税務署や政府にお金の流れを全て把握されることには抵抗感があるかもしれない。 しかし、よく考えてみてほしい。「社会」を単位に考えると、脱税がしにくくなって徴税の効率が上がることは、脱税の意図が無い人にとって相対的な税負担にあって有利に働く要素だ。 サラリーマンや真面目な自営業者にとっては、預金口座が全てマイナンバーにひも付くことによって生じるデメリットは「漠然とした気持ちの悪さ」意外に何もない。一方、脱税がしにくくなって税収が上がることや、税務関係のコストが低下することは、大きなメリットだ。 差し引きを考えると、特にサラリーマンは、全ての預金口座・金融取引にマイナンバーを連結することを訴えてデモを行ってもいいくらいのものだと思う』、その通りだ。
・『データの不正利用に対する罰則を明確化せよ  もう一点付け加えると、データが漏洩したり、不正に使用されたりした場合の罰則が曖昧であることが問題だ。このために、行政に対しても企業に対しても、人は安心して自分のデータを渡すことができない。 データが漏れたコンビニのように、「500円くらいのクオカードを配ってスミマセン」でおしまい、というのでは、個人が医療情報や金融取引、位置情報などのデータを行政にも企業にも渡したくないと思うのが普通ではないか。 少なくとも公務員に関しては、データ管理のミス、意図的な漏洩のいずれであっても、本人が懲戒免職されることと、被害者が受けた経済的な損害を国や自治体が十分に補償することが、法律で明確に決まっているべきだ。そうでなければ、国民は安心して自分のデータを渡すことができない。そして、日本は、非効率的で不便なままになる。 結論をまとめよう。 個人の金融取引や位置情報、医療データなどは全てマイナンバーにひも付いて利用されることで日本国民の生活は大いに改善するはずだ。しかし、(1)本人が自分自身のデータがどう使われているかを知ることができるようにすること、(2)データの不正利用に対する罰則と補償のルールが明確であること、(3)本人にとってメリットがあること、の3点が満たされなければ、物事は進まないだろうし、進める必要もない。 データによって個人が管理される社会は、国民にメリットの乏しい残念な形ですでに始まっている。今は、筆者自身もたぶん多くの読者も、自分自身が取るに足らない存在であることによってつかの間の安心を得ているにすぎない』、説得力溢れた主張で、諸手を挙げて賛成したい。

第三に、9月29日付けNHKクローズアップ現代+「暮らしが激変!? 急速に広がる“顔認証”」を紹介しよう。
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4462/index.html
・『カメラでとらえた人物の顔を顔写真データと照合し、その人が誰なのかを特定する非接触型の技術、「顔認証」。新型コロナの感染拡大によって注目が集まり、急速に普及が進んでいる。世界最高水準の顔認証の技術を持つNECは「顔パス」オフィスを実現。ゲートの通過だけでなく、コピー機や自販機もすべて「顔パス」で利用することが可能になった。しかし、顔認証の精度は開発する企業によって大きなばらつきがあり、アメリカでは警察が捜査に利用した結果、誤認逮捕につながるケースも出ている。さらに、ネットにあふれる顔のデータが個人の同意なく収集される実態もあらわに。広がる顔認証とどう向き合っていけばよいのか考える。 出演者 山田誠二さん (国立情報学研究所教授) 武田真一 (キャスター) 、 小山 径 (アナウンサー)』、興味深そうだ。
・『決済に医療に…進む開発競争  最先端の“顔パス”オフィスを実現したNEC。 小山「おお、開きました!」 誤った判断をしてしまうエラー率は、僅か0.5%。去年(2019年)、アメリカの研究所の技術テストで世界1位になりました。 世界一を実現する技術のほとんどは秘密ですが、その一端を教えてもらいました。研究を始めたのは、およそ30年前。当時のエラー率は30%だったといいます。 NEC 顔認証研究を率いる 今岡仁フェロー「年とともに顔って変わります。それから表情もありますし、本当にありとあらゆる変化があるんですよ。その中で人の顔をちゃんと判別するのはすごく難しいことなんです。」 精度の飛躍的な向上につながったのが、年齢を重ねても同一人物だと正確に特定できる独自技術です。こちらは、事前に登録した20年前の小山リポーターの写真です。 カメラの前に立つと…。 小山「20年前の写真の人物が誰か、緑の枠でちゃんと私を認識してますね。」 まず着目しているのは、年を重ねても変わりにくい、顔の骨格に近い、この緑色の部分。 そのうえで、複数の箇所の凹凸や傾きなどを抽出することで、本人にしかない特徴を見つけだせるといいます。 今岡仁フェロー「顔のこういう部分を(認証に)使ったらいいんだとか、どんどん見つけていく。本当に積み重ねなんですよ。」 新型ウイルスによるニーズの高まりに応えようと、目の特徴を加えて認証する技術も開発しています。一人一人異なる、瞳の周りの模様、虹彩(こうさい)に着目するというものです。 マスクに加え、帽子の着用が必要な医療現場や、工場などでの活用が期待されています。 小山「おー!ばっちり認識しました。」 これらの技術を組み合わせれば、エラー率はさらに抑えられるようになるといいます。 今岡仁フェロー「本当に(エラー率を)ゼロにしたいんですよ。どんな人でも使える顔認証というのをしっかり目指していくのが重要。」 ATMや自動改札など、さまざまな企業が開発にしのぎを削る顔認証技術。今、活用の場面が急速に広がっています。 小山「ことし(2020年)7月にオープンしたこちらのお店では、店員の無人化を可能にしました。」 この店舗では、商品の決済に顔認証技術を活用しています。 小山「たくさんカメラがついてるんですね。1、2、3…。」 「全部で16台です。」 小山「このカメラでお客さんの動きを感知してると。」 誰がどの商品を手に取ったかをカメラで記録。代金は、あらかじめ登録したクレジットカードで決済されます。レジが必要なくなるため、人手不足の解消にもつながるといいます。 セキュア 平本洋輔取締役「省力化して、人がやらなきゃいけない業務を人がやると。人がやらなくてもいい業務をAIにやらせることが大事。」 顔の表情を読み取る技術を使って、医療現場で役立てようという取り組みも始まっています。 この病院では、顔の表情から認知症の兆候を早期に見つける研究を行っています。医療現場では、認知症になると笑顔が少なくなるとされています。その笑顔を数値化する技術を開発したのです。 グローリー 大坪公成部長「歯を出して笑っていなかったら、どんどんスコアが下がっていく。」 患者がどれだけ歯を出して笑っているかを、100点満点で評価します。病院ではさらに2年間研究を重ね、将来はオンライン診療に活用したいと考えています。 順天堂大学 大山彦光准教授「このぐらいの表情とこのぐらいの表情、どっちが笑っているというのを我々が判断するのはなかなか難しくて、客観的に数字で表されると(認知症の)診断の助けになると思います。」』、NECが「研究を始めたのは、およそ30年前。当時のエラー率は30%だった」のが、現在では「僅か0.5%」、「精度の飛躍的な向上につながったのが、年齢を重ねても同一人物だと正確に特定できる独自技術です」、大したものだ。
・『精度にばらつき 米では誤認逮捕も  世界でもアメリカや中国などを筆頭に、多くのIT企業が顔認証技術に参入しています。背景にあるのは、この10年、飛躍的に進化したAIの技術、「ディープラーニング」です。AIが大量のデータを読み込み、自律して学習・分析を行うディープラーニング。この技術によって、開発競争に参入しやすくなりました。 しかし、その認証の正確さにはばらつきがあり、精度が高いものだけではありません。去年、NECが世界一となった技術テストのある項目では、1位と最下位の企業の認証エラー率に大きな開きが確認されました。 いち早く顔認証技術が普及したアメリカでは、大きな課題があることが見えてきました。 犯罪捜査に顔認証技術を使っているデトロイト。警察は、防犯カメラで映った映像を、顔認証システムを使ってデータベースと照合。容疑者を特定しようとしています。 デトロイト市警察 ジェームズ・クレイグ本部長「以前は1人の容疑者を見つけるのに、何日も、しかもかなりの人出が必要でした。この技術によって、より早く特定できるようになったのです。」 ところが、このシステムが誤った判断を下し、誤認逮捕につながったケースも生じています。 去年7月、窃盗の容疑で誤認逮捕されたマイケル・オリバーさん。今、警察に対し、損害賠償を求める訴訟を起こしています。 オリバーさんが犯行に及んだとされた現場の写真(左)。ここに映った男の顔データを基に、警察の顔認証システムが特定したのがオリバーさんでした。 しかし、オリバーさんの両腕には入れ墨がありますが、写真の人物にはありません。 マイケル・オリバーさん「明らかに大きな違いです。ひどい思いをしました、そして落ち込みました。こんな技術はなければいいんです。」 今、アメリカでは、顔認証技術の導入に反対する声が上がり始めています。ことし、大手IT企業の間では、警察への顔認証技術の提供を一時的に停止したり、技術開発そのものからの撤退を表明したりする動きが相次いでいます。背景には、人種や性別、年齢によって、認証精度に大きな差があるという最新の研究結果があります。エラー率の差は、実に10倍から100倍にもなると指摘されています。 アメリカの大学で行われた、ある顔認証技術の精度を検証する実験では、男性に比べて女性の認証精度が低く、さらに、白人に比べて黒人の精度が低いという結果が出ました。 40年以上、AIを研究してきたジェームズ・ヘンドラー教授は、原因の一つはAIに読み込ませる顔写真のデータに偏りがあることだと指摘します。 レンセラー工科大学 ジェームズ・ヘンドラー教授「顔認証には、人間が持っているような偏りはありません。その偏りは、学習データによって生み出されているのです。人間に害を与えるような使い方で、これらの技術を導入するのは非常に危険です。」』、「アメリカ」での「誤認逮捕」により、「顔認証技術の導入に反対する声が上がり始めています。ことし、大手IT企業の間では、警察への顔認証技術の提供を一時的に停止したり、技術開発そのものからの撤退を表明したりする動きが相次いでいます」、揺り戻しが生じているようだ。「原因の一つはAIに読み込ませる顔写真のデータに偏りがあること」、確かに学習させる「顔写真のデータに偏り」があれば間違うのもやむを得ないだろう。
・『AIの進化と新型コロナと…可能性と限界  小山:日本国内でも広がる顔認証技術。今、ご紹介したもののほかにも、空港の出入国審査、それから東京オリンピック・パラリンピックの選手や関係者用のゲートでの、本人確認にも導入される予定となっています。世界的に市場規模も拡大しています。2024年までの5年間で、2倍以上の規模に成長するという予測も出ているんです。 武田:人間とAIの共生が専門の山田さん。かなり広がってきているようですけれども、私、いつもスマホの顔認証にすごく苦労してまして、マスクを着けていると、なかなか開けないんですよ。ちょっと前の指紋認証のほうが便利だったんじゃないかとも思うんですけれども。なぜ今、顔認証がこれだけ広がっているんでしょうか? ゲスト山田誠二さん (国立情報学研究所 教授)山田さん:背景にあって一番大きいのは、先ほども出ましたけども、ディープラーニングと言われる、AIの中でも、AIが自分で学習する方法というのがここ十数年で飛躍的な進化を遂げていまして、その性能が上がったというのがあります。 武田:実用化に近づくことができたということですね。あとは、新型コロナウイルスの流行というのも後押ししてるということになるんですか? 山田さん:それは大きくあると思います。新型コロナウイルス接触で感染するということが言われていまして、ほかの人と指で同じものをさわって接触するということを避けるというのが、1つの理由です。 武田:指紋だと、やっぱりリスクがあるということですよね。 山田さん:そうですね。べたっと何か、付いた油汚れが(他人に)また付くとか、そういうことになりますので。それからもう1つは、非接触で、体に直接触らずに顔を見せるだけで認証できますので、ユーザーにとっては非常に楽である、簡単であるということがあります。 武田:まさに“顔パス”で行ける。 山田さん:まさにそうです、おっしゃるとおりですね。 武田:かなり精度も高まっているようですけれども、ただ、誤認逮捕というような問題も出てきているわけですね。精度がどんどんよくなれば、そういった問題は起きなくなるのか。あるいは根本的な技術的な限界があるのか、これはどうなんでしょうか? 山田さん:これはAIに限らず、あらゆる技術は、100%間違わないということはあり得ないんですね。ですから、ある程度のエラーというのは必ず起こります。それが起こったときの社会的な影響、あるいは起こったときにどう対処すべきかということを考えつつ、AIの導入というのは進めていかないといけないと思います。 武田:やっぱり得意不得意がある…。 山田さん:そうですね。得意なのは空港の入出国の検査であるとか。その場合、照明の条件とかが非常に整っているので…。不得意なのは、犯罪捜査ではいろいろな角度とか、暗がり、物陰というところで顔を判定しなければいけないので、基本的に非常に難しい、不得意な分野であると言えますね。 小山:日本国内で行われたアンケート調査でも、不安の声が上がっています。6割以上の人が、この顔認証技術によるサービスの利用には抵抗があると回答しました。その主な理由が、「自分の画像・動画がどのように利用されるか分からない」「個人情報の流出が心配」。プライバシーの侵害を危惧しているということなんですね。 アメリカでは、すでにこうした懸念が現実のものになりつつあります』、「得意なのは空港の入出国の検査であるとか。その場合、照明の条件とかが非常に整っているので…。不得意なのは、犯罪捜査ではいろいろな角度とか、暗がり、物陰というところで顔を判定しなければいけないので、基本的に非常に難しい」、なるほど。
・『顔データが同意なく収集されるケースも  アメリカでは今、顔写真のデータが本人の同意なく収集されている実態が明らかになっています。 去年8月、フロリダ州の銀行に設置された、防犯カメラが捉えたこの人物。事件の容疑者の可能性があるとして、警察は、あるIT企業の顔認証システムを使い、本人を特定しました。ところがこのシステムでは、本人がSNSに投稿していた写真を無断で利用していたことが明らかになりました。このIT企業がデータ照合のために蓄積してきた画像の数は、FBIの7倍にも及ぶ30億枚。その多くが、本人の知らない間にネット上で収集されていたのです。 この実態を明らかにしたNPOの研究員です。アメリカのほとんどの州で取り締まる法律がなく、規制が不十分だと指摘します。 オープン・ザ・ガバメント研究員 フレディ・マルティネスさん「一切の規制もなしにこの技術が使われれば社会がどうなるのか、大きな懸念があります。我々は連邦政府に対し、技術の使用を停止するよう求めています。」』、「あるIT企業の顔認証システム・・・では、本人がSNSに投稿していた写真を無断で利用していた・・・このIT企業がデータ照合のために蓄積してきた画像の数は、FBIの7倍にも及ぶ30億枚。その多くが、本人の知らない間にネット上で収集されていた」、恐ろしいことだ。やはり「連邦政府」の規制が必要なのだろう。
・『プライバシー保護とどう両立?  こうした課題にどう向き合うのか。顔認証技術の普及を狙う日本のNECは、2年前、思い切った組織改革を行いました。技術の利用拡大に向かいがちな、開発や営業などの部門に対し、プライバシーや倫理の観点から助言する専門組織を設立したのです。 NECデジタルトラスト推進本部 野口誠本部長「技術だけでもだめですし、法令や規制だけでもだめですし。社会に受容されるかどうか。何の説明もなく(顔のデータが)使われるという側面はあってはならない。」 この日は、ある民間企業で実証実験をする予定の顔認証ゲートについて、専門組織のトップを交えて意見を交わしました。 「懸念事項があれば、(助言を)いただけると助かります。」 野口誠本部長「不同意といいますか、顔認証を好まないお客様がいた場合に、どう対応してご入場いただくか。」 専門組織が指摘したのは、顔データを収集されたくないという人への配慮。同意しない人のために、顔認証を使わないゲートを別に用意する方針を確認しました。 NEC 顔認証事業を率いる 吉崎敏文執行役員「技術の利便性よりも、お客様のリスクの方が高いんじゃないかと判断して、『これはビジネス的に進めるのをやめよう』と決めたこともあります。重要なプロセスのチェックポイントだと思います。」』、NECが「技術の利用拡大に向かいがちな、開発や営業などの部門に対し、プライバシーや倫理の観点から助言する専門組織を設立」、なかなかいい取り組みのようだ。
・『どう守る?顔のプライバシー  小山:この顔認証技術の法規制はどうなっているんでしょうか。欧米では今、利用を制限するという動きが進んでいます。 イギリスでは、警察が捜査に利用することに、プライバシーの観点から「違法」とする判決が出されました。さらに、アメリカのオレゴン州ポートランド市では、民間企業にも、不特定多数の人が集まる公共の場で顔認証技術を利用することを禁止するという条例が、つい最近、可決されました。 日本はどうなっているのか。個人情報保護法に詳しい板倉陽一郎弁護士によりますと、データベース内の人物が特定できる顔写真や、顔の特徴を数値化したデータは個人情報保護法の適用対象になるということです。ですから、客観的に見て、その本人の権利や利益が侵害されるおそれがある場合は「利用停止請求」ができるということです。ただ、欧米のように顔認証技術の利用を制限するという法律や条例は日本にはありません。 武田:顔認証を進化させるには、膨大な顔写真のデータというのが必要になるわけですよね。ただ、私たち一人一人にとっては、顔って常にさらしているものではありますけれども。そのデータを勝手に使われたくない。これも理解できます。これは、どういうふうに考え方を整理していけばいいのでしょうか? 山田さん:表情とか顔、画像自身がもう個人情報の対象となってきていますので、指紋とかDNAとかと同じですね。「顔というのは自分の個人情報である」という意識を持つことが大事かなと思います。 武田:一人一人、顔は大事な情報なんだよと思っていないといけないということですね。 取材を進めていきますと、顔を認識する人物を特定するだけにとどまらず、表情を読み取って、さまざまな分野に活用しようという動きも広がっていました』、「「顔というのは自分の個人情報である」という意識を持つことが大事」、その通りなのだろう。技術が確立してきたら、日本でも「顔認証技術の利用を制限するという法律や条例」が必要になるのだろう。
・『授業で企業で…私たちの感情は読み取れる?  新型ウイルスの感染拡大により、授業のオンライン化を余儀なくされた、この専門学校。 東京リゾート&スポーツ専門学校 後藤優子講師「骨の成長について説明をしていきます。」 生徒がどの程度理解しているか、把握しにくいという課題に直面していました。 東京リゾート&スポーツ専門学校 後藤優子講師「顔の見えない人に向かって話をするとなると、やはり表情で合ったりとかが想像がつかないので、非常にやりづらい。」 そこで導入したのが、生徒の集中度を計測するというシステムです。顔を認識する技術を基に、27か所を抽出。正面を向いているかどうかを分析し、集中度を判定する仕組みです。 実際の計測は、生徒のパソコンにあるカメラを使って行われます。集中度は常に表示され、講師の側とも共有されます。 「まず9分のところじゃない?」 集中度が下がった部分を特定し、その原因を検証。 後藤優子講師「“クレアチンキナーゼ”という、あまり聞き慣れない言葉が出てくる部分で集中度がいったん落ちているんですね。」 生徒「(その言葉を)聞いたことなくて、わからなくなった。」 結果を、授業の改善につなげています。 後藤優子講師「パソコン上でこうやって可視化されていくと、教員も随時反応を見ながら、早い段階での授業の作り方の修正が可能になってくると思います。」 一方の生徒は…。 生徒「こんなに細かく測定できるんだなと、驚きました。やっぱりお家でやるぶんには、いかにサボれるかって、みんなある。集中度とか毎回(計測)するとなると、たぶん嫌だと思いますね。」 顔のデータを分析し、社員のメンタルチェックに活用する会社もあります。顔の振動を計測することで、心理状態を分析できるとするこの技術。ストレスや緊張の度合いなどが、10項目で数値化されます。 「ちょっと安定性が低い感じがする。」「自分が思っている自分と客観的に見た自分は違うところがある。そういうところもあるかなと捉えるようにはしています。」 導入のきっかけは、人による評価だけに頼ることの限界だったといいます。 京浜商事 営業部 黒崎修副部長「ストレスチェックって企業であると思うんですけど、そこに疑問を持っていました。設問に答えていくパターンですので、大体自分で、こうつけたらこうだという結果がある程度見えてしまう。はたしてそれでいいのか。」 国内のおよそ50社に広がるこの技術。しかし、心理学者からは科学的な根拠に欠けるという指摘も出ています。会社では、あくまでも人が判断を下す際、補助的に活用していくとしています。 小山「人対システムの結果って、何対何ぐらいで参考にしていますか?」 黒崎修副部長「感覚でいうと9対1です、人が9。最終的には人が判断するという。ただ見えないところに、そういう傾向にあるんじゃないかというところを、すごくうちとしては重視している。1つの補助として。」』、「社員のメンタルチェックに活用」する「会社では、あくまでも人が判断を下す際、補助的に活用していく」、というのは建前で、現実にはシステムの判断をそのまま使ってしまう恐れも多分にありそうだ。
・『どこまで可能?感情分析  武田:「顔で笑って心で泣いて」とも言うじゃないですか。表情ってなかなか複雑なものだと思うんですけれども、AIにそれを学ばせて判断させるって、やっぱり難しいんじゃないですか? 山田さん:難しいですね。そもそも人間が、人の顔から感情を判断できるかというとなかなか怪しいところがありまして、そういうところで人工知能に学習させるには、正しい答えの付いているデータを、膨大なデータを与えなきゃいけないんですけど。 武田:こんな顔してるときには悲しいんだよ、笑っているんだよ、うれしいんだよとか、それを教え込まなきゃいけない。 山田さん:データを集めるだけではだめで、それに対して答えを与えてやらないとだめなんですね。そこが非常に人間でも難しいというのが1つあります。ですから、AIで学習させるのは基本的に難しいものであるということになります』、やはりAIによる「感情分析」には無理がありそうだ。 
タグ:「個人情報は保護した形で利用している」などというデータ利用者の話を真に受けるのは、現代にあってはお人好しに過ぎる (1)自分のデータがどう利用されているか分からないこと (3)自分のデータが利用されているのにそのデータを自分自身で利用できるメリットが乏しいこと 位置情報は筒抜けである 個人データを巡る3つの問題 接触確認アプリは使わない 個人情報は「自分でも」確認できるべき 「接触確認アプリは使わないが、マイナンバーと預金口座はひも付けたい理由」 やはりAIによる「感情分析」には無理がありそうだ どこまで可能?感情分析 山崎 元 ダイヤモンド・オンライン 個人のプライバシーを守りつつ、利用価値の高いインターネットサービスを使うにはどうしたらよいのか? GDPRが提案していることは、およそ見当違いと考えざるをえません を利用しなくては、仕事をしたり生活をしたりすることができなくなっています。すでに、トロイの木馬を城の中に引き入れてしまったのです 検索、メール、マップなどのインターネットサービス 個人情報を提供しなければ仕事ができない 授業で企業で…私たちの感情は読み取れる? 「顔というのは自分の個人情報である」という意識を持つことが大事 どう守る?顔のプライバシー (2)データが不正に利用された場合の(特に公務員に対する)罰則が曖昧で甘いこと NECが「技術の利用拡大に向かいがちな、開発や営業などの部門に対し、プライバシーや倫理の観点から助言する専門組織を設立 プライバシー保護とどう両立? 国家による管理に用いられる可能性があります 顔認識ができるようになれば、それはAIによるプロファイリング・・・に使われます。写真に写った個人が誰かを判別できるようになる 顔データが同意なく収集されるケースも 高度の画像認識能力を開発でき、それを活用できる企業が、ごく少数の企業に限られてしまうことを意味 グーグルが大量の学習データを得る AIの進化と新型コロナと…可能性と限界 原因の一つはAIに読み込ませる顔写真のデータに偏りがあること Google フォト Googleレンズ 顔認証技術の導入に反対する声が上がり始めています。ことし、大手IT企業の間では、警察への顔認証技術の提供を一時的に停止したり、技術開発そのものからの撤退を表明したりする動きが相次いでいます 個人でも、画像認識機能を使えるようになった 精度にばらつき 米では誤認逮捕も 写真に対する考え方は基本的に転換 何でもすぐに写真を撮るようになった 精度の飛躍的な向上につながったのが、年齢を重ねても同一人物だと正確に特定できる独自技術です 「グーグルがアルバムを作ることの重大な意味 無料で便利な代わりに情報を提供している」 野口 悠紀雄 NECが「研究を始めたのは、およそ30年前。当時のエラー率は30%だった」のが、現在では「僅か0.5% 決済に医療に…進む開発競争 「暮らしが激変!? 急速に広がる“顔認証”」 NHKクローズアップ現代+ 東洋経済オンライン データの不正利用に対する罰則を明確化せよ 「脱税しないなら」徴税の効率化は改善だ (その2)(グーグルがアルバムを作ることの重大な意味 無料で便利な代わりに情報を提供している、接触確認アプリは使わないが マイナンバーと預金口座はひも付けたい理由、暮らしが激変!? 急速に広がる“顔認証”) 個人情報保護 大賛成だが、「税務署」退職者の受け皿になっている「税理士」の基本的業務がなくなるような改革には、財務省は後ろ向きだろう 預金口座のマイナンバーひも付けに「メリット」がほしい 全ての預金口座のデータをマイナンバーで連結することによって、「普通の人」に多くのメリットがあり得るからだ 「10万円が遅い!」問題で浮上したマイナンバーと預金口座のひも付け案
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幼児虐待(その7)(「小児性愛者だと見抜けなかった」キッズライン 関係者59人が告発する“性犯罪シッター連続逮捕”の真実、レビュー偽装も発覚「性犯罪シッター事件」の裏でキッズラインが見逃していた“シッター不適格者”たち【関係者59人が告発】、無罪続出の理由 「揺さぶられっ子症候群」の真実 検察側と弁護側 証言台に立つ医師の意見が真っ向対立) [社会]

幼児虐待については、3月29日に取上げた。今日は、(その7)(「小児性愛者だと見抜けなかった」キッズライン 関係者59人が告発する“性犯罪シッター連続逮捕”の真実、レビュー偽装も発覚「性犯罪シッター事件」の裏でキッズラインが見逃していた“シッター不適格者”たち【関係者59人が告発】、無罪続出の理由 「揺さぶられっ子症候群」の真実 検察側と弁護側 証言台に立つ医師の意見が真っ向対立)である。

先ずは、7月9日付け文春オンラインが掲載した日経新聞出身のフリージャーナリストの中野 円佳氏による「「小児性愛者だと見抜けなかった」キッズライン 関係者59人が告発する“性犯罪シッター連続逮捕”の真実」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/38828
・『7月2日、参議院厚生労働委員会では立憲民主党の田島麻衣子議員から加藤勝信厚生労働大臣に対してこんな質問があがった。 「ベビーシッターで性犯罪が起こりました。(中略)ベビーシッター利用支援事業において、使う側が任意で調べたいときにはベビーシッターさんの過去の犯罪履歴の照会ができるように、こういった仕組みづくりというのは可能でしょうか」 これに対して加藤厚労相は、都道府県が保育士証の交付をする保育士などとは違い、ベビーシッターは居宅訪問型保育事業の届出を行えば活動が可能になってしまうため、犯罪履歴の有無で活動を停止させることができないと説明。届出だけで済んでしまうベビーシッター制度そのものを考える必要があるとの見解を示している』、性犯罪者でもベビーシッターになれるのであれば、制度の欠陥だ。
・『「キッズライン」で発生した子供への性犯罪  すべての発端は、ベビーシッターの大手マッチングサイト「キッズライン」の登録シッターから、子供への性犯罪で2人もの逮捕者が続けて出た事件だ。 事件後の対応は適切であったのか、シッター登録の際に不備はなかったのか。 積極的に取材を申し込んだケースもあるが、筆者のもとに「実態を知ってほしい」と集まってきた声は、キッズライン元従業員、利用者、シッター、トレーナーなど47名、同業他社など業界関係者などを入れて総勢59名に達した。 キッズラインは株式会社キッズライン(「カラーズ」から改名)が提供するオンラインでのベビーシッターマッチングサービスだ。公式サイトによると、2014年にサービスを開始し、2020年1月までにのべ100万件のシッターマッチングをしている。2020年4月時点で、所属するシッター(公式サイトではサポーター)は47都道府県下において4500名を突破したという。 キッズラインはアプリでシッターを手配できる簡便さや、既存のベビーシッターよりも利用料が比較的安価であったことから利用者が急増した (キッズライン公式サイトより) 創業者であり現在CEOに就いているのは、実業家の経沢香保子氏(47)だ。2012年、経沢氏が設立したマーケティング会社「トレンダーズ」が東証マザーズに上場し、当時最年少上場女性社長として話題になった。キッズライン設立後も順調に事業を拡大し、2019年2月からは東京都の支援制度や、2019年10月からは内閣府の割引券の対象となった。 しかし2019年11月中旬、警察からキッズラインに、のちに逮捕される橋本晃典容疑者による被害の報告が入ったという』、「子供への性犯罪で2人もの逮捕者が続けて出た」、それが「100万件のシッターマッチングをしている」大手で発生したのには驚かされた。
・『公式サイトで「該当すると思われる事案の事実確認はできておりません」  警察からの報告が入る前だったか後だったかは判然としないが、11月中旬にキッズライン側は公式サイトに《11/14(木)一部SNSにて、キッズライン利用者とシッターの間でトラブルがあった旨の情報があり、発覚時から情報収集に努めておりますが、現時点では、該当すると思われる事案の事実確認はできておりません》と発表していた。 この後、2020年1月に橋本容疑者は小学5年だった別の男児に対する強制性交容疑で神奈川県警に逮捕。当時は学習支援のボランティアとして、泊まり込みの勉強会に参加していたという。2020年4月24日には、キッズラインでの容疑で再逮捕されたことが報道された。 しかしキッズラインが、登録シッターがサポート先の子供へのわいせつ行為で逮捕されたと公表したのは5月3日に「AERA dot.」で社名が報道されてからのことだった』、1月に「逮捕」されたのに、「「AERA dot.」で社名が報道され」、たので「キッズライン」が事件を「公表したのは5月3日」、とは驚きの隠蔽体質だ。
・『公表した前後に2人目の逮捕者が出ていた  同日、キッズラインの公式サイトには《本日、2019年7月~2019年11月に弊社での活動履歴のあるサポーターが逮捕された内容に関する報道がありました》とし、《当該サポーターの活動開始後、クレームやトラブル報告は1件もありませんでしたが、2019年11月中旬、警察より当該サポーターに対しての捜査開始の連絡を受けた》と報告。 また事件について公表してこなかった理由として《本件に関しましては、警察より被害者のプライバシー保護のために公表を控えるよう要請があり、準じてまいりました。しかしながら、一部事実とは異なる憶測を含む報道を受け、更なる不安や誤解を広めてしまうおそれが生じましたため、警察とも相談の上、ご報告をさせていただきます》と綴っている。 しかし5月の時点では、事件について利用者へメールなどでの周知はされていない。実はまさにこの前後(4月末~5月下旬)、2人目の逮捕者、荒井健容疑者による被害が起きている。 被害者となったのがAさんの長女だ。新型コロナで子供達の保育園が休園になり、女性サポーターを探したが見つからず、4月末から荒井容疑者にサポートを依頼していた。 Aさんに話を聞いた。 「キッズラインでシッターによるわいせつ事件が起きていたことはまったく知りませんでした。荒井容疑者に依頼した理由は、女性シッターが見つからなかったということもありますが、子供達が通う保育園には男性保育士が多く、長女は男性保育士に懐いていたので大丈夫だろうと。次女もいるので、2人を連れて公園で遊ばせるには男性の方が体力面では良いだろうなとも思いました。それに私が在宅で仕事をしており、夫も在宅勤務の日があったので、何かあっても目が届くと思って……」』、第一の逮捕後すぐに公表していれば、第二の事件は防げた筈だ。
・『「今日伺っていたサポーターは今後来られなくなりました」  荒井容疑者はAさん宅を月末~5月中旬にかけて計8回訪問している。サポートが行われたのは、Aさんが在宅勤務をする自宅の一室や近隣の公園だった。 「隣室で仕事をしていたので、何かあればすぐに駆け付けられますし、公園にはコロナの影響で子供を遊ばせている大人が多く、娘の友達もたくさんいたので大丈夫だと思ってしまいました。 ですが5月25日、荒井容疑者がシッティングを終えて我が家を出てから約2時間半後、キッズラインから突然『今日伺っていたサポーターは今後来られなくなりました』と電話があったんです」(同前) 6月13日の毎日新聞では、捜査関係者などから得た情報として、キッズラインはAさんとは別の依頼者から「同様の被害申告があったとして5月に荒井容疑者の登録を外していた」と報じている。しかし、この時点ではAさんに別の家庭で被害があったという情報が伝えられることはなかった。 「理由を聞いても個人情報ということで教えてもらえなかったのですが、もう来られなくなったということを娘に伝えたら嬉しそうな顔をするので、何かおかしいと思って話を聞いたら犯行が明らかになったのです」(同前)』、これが責任ある会社のすることとは思えない。
・『「理由は個人情報のためお伝えできません」  荒井容疑者はAさんがビデオ会議をしている隣室や、公園の多目的トイレで長女の体を触るなどしていた。被害を受けていたことに気付いたAさん家族は、慌ててキッズラインに連絡を取ろうとしたという。 「キッズラインからかかってきた電話にかけなおしたり、キッズラインのサイトに掲載されていた緊急電話番号を探してかけたりしましたが、なぜか『この電話は現在使われておりません』という音声が流れて……。パニックになり性犯罪相談窓口に電話をしたら、警察に通報するように言われ、通報したら刑事さんが来ました」(同前) その日の深夜にキッズラインに問い合わせフォームから被害の連絡を入れ、返事がきたのは翌日の昼間だった。Aさんはそのときは出られず、夕方にキッズライン側からかかってきた番号にかけなおしたところ、ようやく電話が繋がった。 「荒井容疑者について、突然サポートに来られなくなったのはなぜなのかなどと聞いても、最初は言えないと言われ、その後ようやく聞き出せたのが『規約違反の恐れがあったため強制退会させました。理由は個人情報のためお伝えできません』という回答でした。我が家も私が娘の反応を不審に思わなければ被害に気づかないままだったんです。 被害に遭っている子供が他にもいるかもしれないから、キッズラインに荒井容疑者がサポートしたことがある家庭にせめて『利用規約違反の恐れがあったため強制退会させた』ことを伝えてくださいと言ったのですが、それはできないと言われました。 ほかにも橋本晃典容疑者が逮捕されたことをメールなどで利用者に周知してほしかったこと、それを今からでも全利用者に伝えてほしいこと、あとは評価システムを見直してはどうかという話をしました」(同前)』、「理由は個人情報のためお伝えできません」、個人情報保護法の拡大解釈もいいところだ。
・『キッズラインは自社の責任には触れず  Aさん家族は荒井容疑者についての被害届を警察署へ提出。その後の6月4日、キッズラインは男性サポーターの一括活動停止を発表した。 そして6月10日に筆者がキッズラインサポーター2人目による性被害があることを記事にしたことを受け、翌11日、キッズラインは公式サイトで2人目の事件について言及した。 しかし自社の責任には触れず、《残念ながら、小児性愛者であるかについては、登録審査では見抜くことはできませんでした。なお、この点につきましては、専門家からも面談等で見抜くことは困難であるとの見解を得ています》と主張している。そしてようやく、キッズラインは荒井容疑者がサポートを行ったことのある家庭に連絡をいれはじめた。 荒井容疑者のサポートを利用したことのあるBさんが証言する。 「我が家にも6月11日にキッズラインから電話がかかってきました。まだ捜査段階で、娘が被害にあったのかどうかは分からないと言われました。待つしかない状況に、腑が煮えくり返る思いです。どうしてよりにもよって彼を選んでしまったのか、本当に自分を恨みます。キッズラインには彼に依頼してしまった利用者にどういう対応をとるつもりなのか、ちゃんと説明するよう求めました」 そして6月12日、荒井容疑者はAさんの長女へのわいせつ行為で逮捕された』、「彼を選んでしまった」よりも無責任な「キッズライン」を選んだことが問題のようだ。
・『ようやく全利用者へメールで報告されたものの……  6月18日、キッズラインははじめて全利用者へ事件があったことについての一斉メールを送信した。その後、再びキッズラインとやりとりをしたというBさんは、次のように話している。 「荒井容疑者に依頼した家庭に対応したのはキッズラインの取締役でした。『ここ数日、ニュースで荒井容疑者について取り上げられていますが、トップである経沢さんからのコメントがないのはおかしい』と伝えました。取締役からは『6月18日に全員に配信したメールが代表からの謝罪と受け取ってほしい』と。経沢さんはSNSでは身軽に発信しているのに、ずいぶん腰が重いですよね。 そもそも犯罪者を派遣して手数料を取ったままなのもどうかと思うと伝えたら『返金する』と言われましたが、『返金は?』と聞けば返金、『謝罪は?』といえば謝罪、といった行き当たりばったりの対応に見えます。 他の被害家庭のお母さんと少しやりとりさせていただいたんですが、みなさん不眠になるなど、メンタルにきているんです。普通の企業だったらカウンセリング窓口を作って案内してもいいような事件だと思うんですけどね……」 被害者家族らはキッズラインの事件発覚後の対応に違和感を持っている。そしてこの事件について「ビジネスインサイダー ジャパン」で報じると、筆者の元には同社のサポーター選考(キッズラインではシッターをサポーターと呼称)がそもそも適切だったかについて疑問の声や証言が集まり始めた』、どんな情報が集まったのだろう。
・『サポーター選考を担っていたのはアルバイト  キッズラインのシッターになるには、まず登録説明会に参加。その後に面談を受け、合格すれば実地研修を受ける。そこでさらに合格すればシッターとして活動が開始できる。 サポーターの選考プロセス(キッズライン公式サイトより)(リンク先参照) 当初、面談は社員が対面で行うものだった。しかし2019年頃から「スマホ動画面接」と称し、応募者がスマホで子供に語り掛けるような動画を送信するのみに変更されている。 「まずキッズラインから面接の動画が送られてくるんです。面談についての説明動画に加え、子供が『どうして(シッターを)やろうと思ったんですか? 一緒に何をして遊んでくれますか?』といった質問をしている動画もあります。シッター希望者はその質問に対してお子さんに話すような笑顔や言葉遣いで返事をする動画を撮影し、キッズラインに送信するという流れでした」(2020年4月に登録したサポーターCさん) あるキッズライン関係者Dさんは「その審査をするのは主にアルバイトでした」と証言する。 「キッズラインは社員登用が少ない会社で、シッターの登録会運用や採用、育成などはすべてアルバイトの方で回しています。ただアルバイトと言っても社員レベルの責任を負っている方も多く、ママさんと若い未婚女性が両方います。『スマホ動画面接』も面接対応をずっとしていた方々が審査に当たっていますが、現場からは動画だけで判断していいのかといった疑問の声が上がっていました」(同前) 「勘みたいなものでだいたいわかりますよね?」 2020年1月にキッズラインのシッター登録会の運営バイトに応募したという女性Eさんは次のように語る。 「当初の募集内容はあくまで『登録会の運営』ということで、お話を聞きに行きました。 現地で説明されたのが、登録会の運営はもちろん、シッターの選考からシッターのサポートまでを行うという内容でした。  シッターは子供の命を預かる仕事です。どのように素人が選考をおこなうのか疑問に思ったため、『私はこれまで人事経験など一切ないのですが、シッター希望者が犯罪をおかさないかどうかをどうやって見分けるのでしょうか』というような質問をしました。キッズライン側からは、『アルバイトでもノウハウをもとに選考するから大丈夫。これまでに事件は起きていないし、勘みたいなものでこの人が大丈夫かどうかはだいたいわかりますよね?』というお返事でした。  そのときは『勘』という言葉を不思議に思ったものの、これだけの有名な会社で、ましてや事故も起きていないのだから、しっかりとした選考システムがあるのだろうと考えました。 実際にはこのときすでに1回目の性被害者から被害届が出ていたと思うと怖いです」 結局この女性は採用されなかったが、「軽い気持ちでアルバイト面接を受け、審査に関わっていたかもしれないと考えるとその責任の重大さに今更ながら震える思いです」と語った』、「サポーター選考を担っていたのはアルバイト」、なんとお手軽な採用なのだろう。
・『反対派の社員は退職  新型コロナの感染拡大で、リモート面接を含め、オンライン化は至るところで進んでいる。オンライン=悪ではないが、生身のサービス、しかも自分では声をあげられない可能性がある子供の命を預かる領域で、社員が一度も会っていないシッターを紹介していいのか。 キッズライン黎明期のことを知る元従業員Fさんは、選考プロセスのオンライン化について「最初のころは1人1人時間をかけて面接していたのに、なぜこうなってしまったのか」と嘆息した。 「地方在住のサポーターの面談は、2016年頃からオンライン化が進められています。2016年1月25日に大阪、名古屋、福岡で登録会を行うため、プレスリリースを出していますが、集客が思わしくなく、実際には2月に入りオンライン登録会に変更する旨のメールが参加者に送られました。一部社員はシッターの質を担保できないと反対しましたが、社長は毎回出張費などのコストがかかると語り、オンライン面談をすることに決まりました」  社内事情を知る関係者Gさんからも同様の証言が寄せられている。 「その後も様々なプロセスがオンライン化していきました。もちろんオンライン化に反対する社員もいたと思いますが、違和感があっても声をあげづらい社風なんです」 2020年に入ってからは、主要メンバーだった役員や一部の管理職も含め10人近くが退職。30人程度のアルバイトがオペレーションを支えているとはいうが、社員はいまや20人程度とみられる。 「心身を病み、急に体調不良を理由に会社に来なくなり辞めていく社員や、当初は会社の理念に共感して入ったけれど、企業体質に失望して退職する社員も多いと思います」(元社内関係者Hさん) 経沢社長は、2016年に上梓した著書「すべての女は、自由である」(ダイヤモンド社)で、トレンダーズが上場した後の反省をもとに、数字ばかりにとらわれずに顧客のためのサービスを提供したいといった内容を綴っている。 一方で「2020年6月前後に上場することをめざし、準備をしていた」といった複数の証言もある。社内向けに、上場したら社員にストックオプションを検討している旨の話もあったという。 その2020年に向け、社内の体制が崩れていったにもかかわらず、少人数による運営でペースを抑えるどころか、キッズラインはシッター採用を加速させていくのだ――』、「様々なプロセスがオンライン化」、コロナ禍によるものとは違い、コストダウンのためのようだ。こんな有様では、「上場」などおぼつかない筈だ。

次に、この続きを、7月9日付け文春オンライン「レビュー偽装も発覚「性犯罪シッター事件」の裏でキッズラインが見逃していた“シッター不適格者”たち【関係者59人が告発】」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/38829
・『キッズラインに登録する男性シッター2人が、シッター先の子供へのわいせつ行為で相次いで逮捕された事件。キッズラインは事件発覚後、男性シッターの登録停止や、現場への録画・録音機器の導入を発表している』、客離れは起きないのだろうか。
・『ベビーシッターの規制緩和策として民間の研修を認める方向へ  2020年7月2日、政府の規制改革推進会議は答申を発表し、ベビーシッターの規制緩和策として研修を民間に任せ、オンライン化もしていく方向性を示した。 この規制緩和は同年3月9日にキッズラインの経沢香保子社長が規制改革推進会議の雇用・人づくりワーキンググループで「民間の私たちのようなきちんと研修をしているところを監査いただきつつ、そういった研修機会を民間に拡大していただけないか」と要望していたものだった。 「認可外保育施設指導監督基準」でベビーシッター業ができる人材は、 保育士、看護師に加え、認定ベビーシッター資格保有者と、「都道府県知事が行う研修修了者」だ。しかし、この自治体による研修の開催頻度が少ないため、民間の研修を認めていくという動きなのだ。 しかしキッズライン関係者の間では、シッターとして不適格な人物をスクリーニングすべき同社のシッター登録の過程や研修について疑義が生じている』、「経沢香保子社長が規制改革推進会議の雇用・人づくりワーキンググループ」で要望をしていたとは、厚かましい話だ。
・『シッターの質の担保よりもコスト削減  「「小児性愛者だと見抜けなかった」キッズライン 関係者59人が告発する“性犯罪シッター連続逮捕”の真実」では関係者の証言をもとに、キッズラインのわいせつ事件への対応、シッター登録時の面談が対面からオンライン化していった過程について報じている。 面談のオンライン化については、キッズラインの元社員が「一部社員はシッターの質を担保できないと反対しましたが、社長の『コストがかかる』といった一言でオンライン面談をすることに決まりました」と証言している。 そして、面談のオンライン化に伴って進んでいったのが、シッター実習のオンライン化だ。 従来は、面談に合格したシッターに対して、利用者の中から募集した“ママトレーナー”の自宅で実際に子供の面倒を見る「実地研修」を実施していた。そしてママトレーナーが自宅で研修した新人シッターについての初回レビューを書き、利用者はそのレビューを参考にサポート(※子供の世話)を依頼する、というシステムになっていた。 しかしシッターの近くにママトレーナーがいないケースもあるため、徐々にオンライン化が進められていったという。 ママトレーナーのIさんが明かす』、「キッズライン」は始めの頃はそれなりにきちんとやっていたようだが、次第に「オンライン化」で「シッターの質の担保よりもコスト削減」、やはり「上場」を意識して背伸びをしたようだ。
・『トレーニング回数に応じて“ポイント”がもらえる  「私個人としては、シミュレーショントレーニング(オンラインでの研修のこと)だけでデビューされるのは不安なので全て実地で行っていました。ただ、トレーニングをすると、実地であろうがシミュレーションであろうが、キッズラインの利用時に使えるポイントが付与されるんです。 回数が増えるともらえるポイントが大きくなることもあり、月8回ぐらいを目安にトレーニングをしてほしいと言われることもありました。手間のかかる実地のトレーニングよりも、オンラインで済ませてしまうママトレーナーの方も多かったのではないかと思います。 基本的にシミュレーショントレーニングは近くにママトレーナーがいない場合の措置だと聞いていたのですが、2019年9月に、サポーターさんと実地のトレーニングの日程調整をしていたら、途中で『他のママトレーナーさんからオンライントレーニングを提案されたのでそっちにします』とお断りをされることがありました。 キッズラインに問い合わせると、実地の可能なエリアにママトレーナーがいたとしてもサポーターが希望すればオンライントレーニングに変更も可能だと言われました。サポーターさんも交通費がかからなかったり、移動の手間が省けたりで、オンラインを希望される方も少なくはなかったんだと思います」 2019年春に選考を受けた、シッターJさんは次のように話す。 「私の家の近くにはトレーナーとなるママさんがいないため、オンラインで研修を受けました。オンライン研修ではテレビ電話で社員さんから『ご家庭に到着したらまず何をしますか?』『この時はどうしますか?』などの質問をされ、それに答えていきました」 そして、オンライン研修は同時に複数のシッター希望者に対して行われたようだ。 「私の他に5人くらい一緒に研修を受けていたので、順番に指名されて答えていくような形でした」(同前) 従来の実地研修では、1人のシッター希望者がママトレーナーの自宅で研修を受けていた。しかし2020年3~4月には、1人のトレーナーが同時に5~7人のサポーターに対してオンライングループ研修を実施していたようだ。  ママトレーナーKさんは「運営側からは『シミュトレは慣れてくれば何人か同時にすることも可能です。実際に4人ぐらい同時にされているトレーナーさんもいらっしゃいますよ』と言われました」と証言。また、グループ研修を担っていたトレーナーのうち1人は今年3月まで社員であったことも確認している。 キッズラインの主導により、“効率化”された実習で2020年3月と4月は1ヵ月のデビュー人数は、外から確認できるサイトだけでも月300人を超える(男性シッター停止後に発表されたデータのため、実際のデビュー確定人数はこれより多かったと思われる)。 筆者が作成したサポーター新規デビュー数。縦軸は人数(リンク先参照)』、なるほど。
・『初回レビューに「★は5つ満点の採点」を指示  オンライン研修を請け負うママトレーナーは、研修後に研修結果を本社に送信し、最初の利用者が依頼の際に参考にする唯一の情報である「初回レビュー」も記入することになっている。この「初回レビュー」について、ママトレーナーはキッズラインからこのような指示を受けていた。 《一般の親御様がご覧になる1件目の口コミです。【注:トレーニングと分かる表現はお控えください】 ・そのサポーターのおすすめポイント ・具体的なエピソード など、サポーターさんの良さが伝わりやすく、他の親御様が予約したくなるようなコメントをお願いします。 ※合否に関わらず、サポータープロフィールページに即時反映されます。 ★は5つ満点の採点をお願いします。 ※ただし、明らかに合格するには不適格と感じられる方には多くの文章も難しいと思いますので、ご挨拶程度の簡単な文章でも差し支えありません。》』、「ママトレーナー」による「初回レビュー」を商売に使うのも抜け目ない。
・『適性に疑問のあるシッターが合格しているケースも  もちろん元から評価が高いシッターは丁寧なレビューがついているものが大半だろう。しかしこの指示通りに書くと、たとえシッターとして不適格な人物でも、その情報が利用者に共有されることはないということだ。別のママトレーナーLさんからは次のような証言がある。 「子供が突然部屋を出て行ってしまっても後を追わないとか、子供の機嫌が悪くなると諦めたような態度を取る人もいます。備考欄に『この人には安心してお任せできない』と書いたのにもかかわらず、その後会社から何か聞かれる事もなく、合格してお仕事を開始されている方もいました」・・・ 会社側は7月1日のお知らせで《当社運営スタッフが、ママトレーナーから運営側へ報告されるレポートを確認した上で、合否判定を行っているため、実質的には評価が「5」で問題ないと判断されたサポーターが合格する運用となっております》と説明している。 ママトレーナーの評価能力にも幅があり、合否は運営側で総合的に判断しているということだろうが、いずれにせよ初回レビューの内容はママトレーナーの実際の評価と直結していなかったのだ』、「初回レビューの内容はママトレーナーの実際の評価と直結していなかった」、商売用に使う以上、あり得るだろう。
・『“レビュー偽装”にキッズラインの回答は……  また、中には “レビュー偽装”を疑わざるを得ないレビューもあった。 たとえばこのキャラクターのアイコンのレビュアーX氏は、4月20日に北海道から福岡までの研修を担当し、8件のレビューを書いている。驚くべきことに、佐賀県と大阪府のシッターに3歳の娘のサポートを頼み、それぞれ「子供部屋から楽しそうな声が聞こえてきました」と書かれている。 レビュー偽装。サポーターの在住エリアは佐賀県 ・・・(中野氏が作成したママトレーナーX氏のコメント一覧)。同日に北海道から佐賀県までのレビューを記入しており、大阪府と佐賀県では「子供部屋から楽しそうな声が」聞こえたことになっている  キッズラインは、著者が6月30日にこのレビューについて指摘したのを受けて、7月1日にすべてのシッターの初回レビューを非表示にしたうえで、公式サイトで次のように記載している。 《ママトレーナーのレビューは応募サポーターが合格した際には公開されるため、評価が低い場合に応募サポーターとママトレーナー間でのトラブルが発生することも想定し、評価を「5」として記載するように依頼しておりました》 《シミュレーショントレーニングとは、トラブルへの対応力等を確認するためのロールプレイ型の研修です。シミュレーショントレーニングは1対1を基本としていますが、状況により複数で行うこともございます。現在は3名を上限にしております。 レビューについては、ロールプレイの内容に基づいて記載するよう運営より依頼していたため、実際に会ったことのないお子様への対応が、あたかも実際に接したかのように表現されておりました。上記に関しましては、利用者の皆様に実態とは異なるレビューを提供していたことを大変重く受け止め、以下改善策を実施します》』、「“レビュー偽装”」とはあざと過ぎる。
・『「IT技術を活用することで、大幅にコストの削減を実現」とPR  2020年3月9日に開かれた政府の会議、規制改革推進会議のワーキンググループで、経沢香保子社長はある資料を配布している。そこには「マッチング費」「請求・決済方法」「運営管理費」を「IT技術を活用することで、大幅にコストの削減を実現」と書かれている。 面談や実習をオンライン化して、1人のレビュアーが北海道から佐賀県までの初回レビューを書くことで「マッチング費」や「運営管理費」を削減したということなのだろうか』、「経沢社長」の対外的PRは抜け目がないようだ。
・『「キッズラインはトラブル対応も全然してくれません」  キッズラインで家事代行を頼んだある利用者Mさんは、次のように話す。 「キッズラインはトラブル対応も全然してくれません。今年3月ごろ、私が子供を見ている間に食事の支度をしてもらったときに、物の破損や紛失があったため、弁償してくださいと言ったんです。最大5億円の賠償保険に入っていることを安心材料の1つとして売りにしていて、保険でカバーされると思ったので。 でもシッターさんからは『本当に私がやったのでしょうか?』と言われ、キッズラインに連絡したのですが、事故報告書をシッターさんが出さないと保険がおりないので直接連絡をとってくださいと言われました。 でも、補償してほしいと言ったことに腹を立てて、子供に嫌がらせをされたらどうしよう、家を知られているので何かされたらどうしようかと考えると怖くて、直接連絡をとるのは嫌だと言ったのですが。キッズラインに手数料を支払っているのに、こんな時でもシッターに直接交渉しないとダメなんでしょうか」』、なるほど。
・『CtoCプラットフォームでも質の管理が重要である理由  確かにプラットフォーマービジネスには、一般的に何かあったときの法的責任を負わない代わりに、利用者も費用が抑えられるという側面はある。しかし、CtoCプラットフォームであれど、表向き当事者同士の責任とは言いながらも、質の管理やトラブル対応についてもかなり気を配っている企業もある。 ベビーシッターではないが、キッズラインと同様に、サービスの提供者を雇用することなく、個人事業主として、ユーザーとマッチングするプラットフォーム型の家事代行サービスを提供している「タスカジ」和田幸子社長は次のように話す。 「ユーザーからハウスキーパーへのクレームが来て、それをきちんとヒアリングして情報を蓄積するのはとても大切な作業です。マッチングは質の管理に法的責任を持たないことにはなっていますが、ユーザー体験をそこなえば大切なユーザーを失うことになるので、質の管理を行うインセンティブは運営側に働いていると思っています。 また、質の管理に力をいれることはユーザー満足度を上げるだけではなく、『デビュー後も何かあったらすぐに運営側から連絡が来て仕事ぶりをどうやら把握されている』『ここのユーザーは運営側と距離が近いので、ちょっとした違和感ですぐに相談してしまいそう』という場作りを心がけることで、犯罪者予備軍に対し『寄り付きたくない』気持ちを持たせる効果もあると思います」(タスカジ和田社長)』、「マッチングは質の管理に法的責任を持たない」が、「ユーザー体験をそこなえば大切なユーザーを失うことになるので、質の管理を行うインセンティブは運営側に働いている」、「キッズライン」には後者の認識はなさそうだ。
・『他のシッターマッチングサービスの対策は?  バイリンガルのシッターをマッチングする「ケアファインダー」では、月額利用料を取る形式でキッズラインと課金モデルは異なるが、事前に許可を得て、シッターと利用者のメッセージのやりとりを運営側が見られるようにし、トラブルが発生した場合には介入しているという。 ケアファインダーのモス恵社長は「利用者とシッターがいつでも弊社に連絡できる体制にしています。とくに初めての利用者の場合はシッティング前とシッティング後に直接電話で連絡し、何か不明点はないか、スムーズにシッティングが行えたかの確認をしています」と話す。 そのほかにも「スマートシッター」はマッチングサービスからスタートしたが、2年前に保護者と会社、シッターと会社がそれぞれ契約を締結する形に変更し、ほぼ派遣型のベビーシッターサービス同様の運営に切り替えている。 米国のCtoCの保育系サービスでは、マッチングサイトで契約相手を探し、連絡を取ったり面談の予約をするなどのサービスを利用する場合に月額課金をし、実際のシッター等のサービスの利用については手数料を取らないという形態も多い。 リスクについて、たとえば米大手シッターマッチングサービス「Care.com」では「スクリーニングはしておりますが、ご家庭がご自身で慎重に審査をすることを推奨します」といった表記をするなどして、シッター選びのポイント周知をしている』、各社なりに工夫しているようだ。
・『キッズラインに手数料を払っているのに……   しかし、キッズラインは利用者から20%(単発の場合。定期利用は10%)、シッター側から10%の手数料を徴収している。安心安全を謳い、ある程度の手数料を徴収しているからこそ、利用者もそれ相応の審査がされていると思い、トラブル対応も求めるのだろう。 キッズラインに事実関係について文書で確認したところ、次のような回答があった。 「従前お伝えしていますとおり、弊社としては、全ての個別取材に対応することはいたしかねます。誠に恐縮ではございますが、今回のご質問に対しても、直接ご回答差し上げることはできかねますのでご了承ください」「弊社といたしましては、今後も改善点の把握と安全対策の実行に努めてまいります。また、必要かつ適正な情報に関しては、積極的に情報を開示すると共に、ホームページにより公表してまいります」 従来、派遣型の家事代行やシッターは、同じ人に頼みたくても直接のやりとりができなかったり、急な必要性に応じられなかったりと融通が利きづらかった。 マッチングサービスでは、家事であれば、整理整頓のプロやレストランでシェフをしていた人が料理の作り置きをしてくれたり、シッターであればバイリンガルシッターに英語も教えてもらえたりと、 利用者が働き手の個性を見て頼む人を選ぶことができるという強みもある。キッズラインにも、信頼を積み重ねたシッターやそれに助けられた利用者も多かっただろう。 今回の事件を受けてマッチング型はダメだと言うのは早計だ。ただ、言えることは、善良な働き手たちのためにも、その質の管理と評価システムの機能は大事であるということ。そしてコストを下げながら、手数料がしっかりと入ってくるモデルで数字追って上場を目指したい事業者は、少なくとも子どもの命や一生にかかわる保育やケア領域以外の分野を選んだほうがいいのではないかということだ』、「キッズライン」の現在のビジネスモデルは、どうみても持続可能ではなさそうだ。

第三に、9月28日付けJBPressが掲載したノンフィクション作家・ジャーナリストの柳原 三佳氏による「無罪続出の理由、「揺さぶられっ子症候群」の真実 検察側と弁護側、証言台に立つ医師の意見が真っ向対立」を紹介しよう。文中の記事のURLは省略
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/62276
・『9月25日、取材中の「揺さぶっれっこ症候群」事件で、またしても無罪判決が下されました。 その概要は以下のとおり、すでにテレビ、新聞など多くのメディアが報じています。 『乳児揺さぶり訴訟で母に無罪判決 岐阜地裁「犯罪証明できない」』(2020.9.26/東京新聞) 『「落下事故否定できず」乳児揺さぶり、母無罪 岐阜地裁』(2020.9.26/岐阜新聞) 生後3カ月の男児が脳に出血を伴うけがを負ったのは、2016年のこと。母親(27)は、「誤ってソファから転落させてしてしまった」と懸命に説明しましたが、虐待を疑われてしまいます。 児童相談所は後遺障害を負った男児を一時保護して両親から引き離し、捜査機関は男児と一緒にいた母親を傷害罪で逮捕、起訴、5カ月間勾留し、検察は懲役5年を求刑していました。 岐阜地裁で始まった刑事裁判では、男児のけがが「乳幼児揺さぶられ症候群」か、それとも「転落事故」かをめぐり、検察側の証人である内科医と眼科医、そして弁護側の証人である脳神経外科医の意見が真っ向から対立していました。 しかし、長い審理の末、岐阜地裁の出口博章裁判長は、内科医と眼科医の証言を退け、脳神経外科医の証言を採用。結果的に、「傷害が揺さぶりによって生じたと認めるには合理的疑いが残る」として無罪を言い渡したのです』、興味深そうだ。
・『身に覚えのない「揺さぶり虐待」  この時点で、母親が逮捕されてからすでに3年以上の歳月が経過していました。 無罪判決が下された日、母親は、「私は息子に対して一切の暴行を加えたことはありません。息子が重篤なけがをしてしまった原因はソファから落下したことによるものであり、あまりに軽率な行動だったと深く反省しています。なんであの日に限って目を離したんだと、自分で自分に怒りをぶつける日々です」 自身の深い悔恨の気持ちとともに、我が子のけがを「虐待」と決めつけた医師らに対する怒りを、弁護士を通してこうコメントしています。 「虐待児を直接診察などしたことのない内科医が書いた鑑定書と、非常に問題のある眼科医の意見書をうのみにして、逮捕にふみきったということ、なぜこんなことがまかりとおったのか理解できません。無罪を勝ちとれても、すぐにもとの生活が戻るわけではありません。時間は絶対に巻き戻せません。まったく身に覚えがないことをでっちあげられ、押しつけられ、身勝手に犯罪者に仕立てられ、世にさらされて平穏な生活を理不尽に奪われるのです。何もしていないのに罪人として他人から見られ、扱われる立場をしっかり考えて、まともな活動をしてほしい」 私は、岐阜地裁でこの裁判を傍聴し、被告人として証言台に立った母親と直接話をしました。傍らには心配そうに寄り添う夫やご家族の姿がありました。 かわいいわが子にけがをさせてしまった悔いと悲しみ、さらに、身に覚えのない罪で刑事裁判にかけられた悔しさ・・・憔悴し切っている彼女の表情からは、「虐待」という二文字はとても想像できるものではありませんでした。 同様の揺さぶられっ子症候群事件では、ここ1年の間に無罪が連続して確定しています。現時点ではまだ無罪判決が確定したわけではありませんが、このご家族にもぜひ、平穏な日々を一日も早く取り戻していただきたいと、心からそう思います』、冤罪になった背景には何があるのだろう。
・『検察はなぜ専門外の内科医の証言を証拠とするのか  この事件ではなぜ、完全な「無罪」の判決が下されたのでしょうか。 この裁判で検察側の証人として出廷したのは、「認定NPO法人チャイルドファーストジャパン理事長」「一般社団法人日本子ども虐待医学会理事兼事務局長」という肩書を持ち、日本の児童虐待問題では主導的な立場にある山田不二子医師(内科医)です。 一方、弁護側で証言に立った青木信彦医師(脳神経外科医)は、マニュアルに明記されている「揺さぶられっ子症候群」の3徴候(硬膜下血腫、脳浮腫、眼底出血)から安易に虐待と決めつけることに対し、強い警鐘を鳴らしてきた人物です。 「揺さぶられっ子症候群」は赤ちゃんの脳の中で起こる傷病なので、裁判を傍聴していても専門的な医学用語が多く出てきます。そのため、素人には理解が難しいのですが、今回の裁判の内容をもう少し詳しく知りたいという方は、『SBS検証プロジェクト』のサイト内に掲載されたブログ『岐阜地裁はなぜ無罪を言い渡したのか? ―山田不二子医師証言の問題点』をぜひご覧ください。 ブログの筆者は、岐阜地裁の裁判の弁護団の一人で、その他の事件でも数多くの無罪判決を勝ち取っている、秋田真志弁護士です。 秋田弁護士のブログ記事の中から、双方の鑑定医について記された部分を一部紹介したいと思います。 『青木医師は、脳神経外科医として40年以上の経験を持つのに対し、山田医師は虐待問題に取り組んできたとはいえ、内科開業医です。脳神経に関する臨床経験はありません。実は法廷証言でも山田医師は、青木医師の鑑定書でCT画像の誤読を指摘されたことに対し、「指摘どおりCT画像の誤読を認め」(判決)ざるを得ない場面がありました。それ以外にも、山田医師は専門外の物理学について、基礎的な物理法則を無視するかのような証言をするなど、非常に問題のある証言を繰り返していたのです』 私は実際に岐阜地裁の法廷で、山田医師の証人尋問を傍聴しましたが、物理法則に関する秋田弁護士とのやりとりを目の当たりにしたときは本当に愕然としました。検察がなぜ、この医師をこの事件の証人として採用したのか、首をかしげたくなるほどあいまいな証言内容だったからです。 また、山田不二子医師は、自身が岐阜県警大垣署から嘱託された「鑑定書」の末尾に、医学的な意見にとどまらず、次のような一文も記していたのです。 『本件の加害者が誰なのかは明らかである、せめてもの償いとして、犯してしまった暴力について真実を語るべきだ』 この件について秋田弁護士は、『医師としての立場を逸脱した鑑定というほかありません』と指摘し、『この判決をきっかけに、虐待論における医学や医師の役割を見直す必要があるのではないでしょうか』と自身のブログ記事を締めくくっています。 私は、約3年前から揺さぶられっ子症候群事件を多数取材し、昨年、『私は虐待していない 検証 揺さぶられっ子症候群』(柳原三佳著/講談社)という書籍を上梓しました。 虐待を疑われ、幼い我が子と引き離され、刑事訴追された保護者たちの肉声の他、いつから日本で「揺さぶられっ子症候群」という言葉が使われ始めたのか、またそれがどのような経緯で虐待と結びついていったのかなどを専門家に取材しながらレポートしています。 もちろん、山田不二子医師には取材を申し込みましたが、残念ながらお会いすることはかなわず、本書の中にコメントをいただくことはできませんでした』、「山田医師」は「日本子ども虐待医学会理事兼事務局長」という立場上、どうしても「虐待論」に傾きがちなのかも知れない。そんな医師に一方的に「鑑定」させた県警にも問題はありそうだ。
・『山田医師の鑑定で有罪となった男性が東京高裁に控訴  「揺さぶられっ子症候群」裁判の取材を続けてきて痛感するのは、多くの事件が「児童虐待の専門家」として活躍している一部の医師の意見に大きな影響を受けているのではないかということです。 2019年末、孫への虐待を疑われていた祖母が、大阪高裁で逆転無罪判決を勝ち取りましたが、この事件でも、検察側は脳の専門家ではなく、小児科医を証人として採用していました。以下は、同事件をレポートした筆者の記事です。 <相次ぐ逆転無罪、「揺さぶられっ子症候群」妄信の罪 脳は専門外「小児科医」の意見を有罪の根拠とする検察の暴挙>(2020.2.21) 虐待でけがをしたり、命を落としたりする子どもを一人でも減らすための活動は尊いことで、こうした医師らの取り組みについては敬意を表しています。 しかし、刑事裁判において、専門外の分野にまで断定的な意見を述べ、さらには、裁判官でもないのに、鑑定書の中で『せめてもの償いとして、犯してしまった暴力について真実を語るべきだ』などと、無実を訴える母親を断罪してよいのでしょうか。 日常の子育ての中で、不慮の事故、というものは絶対にあり得ないものなのでしょうか。 山田不二子医師はそのほかにも、多数の虐待事件において検察側の証人として鑑定意見書を書き、証人尋問に立っています。過去には、有罪判決も複数出ています。 そのうちのひとつに、知人の子どもへの虐待を疑われて起訴された男性(38)の事件があります。 昨年12月、東京地裁立川支部で懲役3年の実刑判決が下されましたが、逮捕時から一貫して無実を訴えていた男性は即控訴し、東京高裁での控訴審が9月29日午前11時、805号法廷で開かれる予定です。 この事件、弁護側の証人は奇しくも、岐阜の事件で証言台に立った脳神経外科の青木信彦医師です。 山田医師と青木医師の意見の対立を、東京高裁がどう判断するのか、引き続き注目していきたいと思います』、大いに注目したい。
タグ:キッズラインは自社の責任には触れず 身に覚えのない「揺さぶり虐待」 CtoCプラットフォームでも質の管理が重要である理由 様々なプロセスがオンライン化 「無罪続出の理由、「揺さぶられっ子症候群」の真実 検察側と弁護側、証言台に立つ医師の意見が真っ向対立」 “レビュー偽装”にキッズラインの回答は 山田医師の鑑定で有罪となった男性が東京高裁に控訴 文春オンライン ベビーシッターの規制緩和策として民間の研修を認める方向へ 個人情報保護法の拡大解釈もいいところだ 「キッズラインはトラブル対応も全然してくれません」 柳原 三佳 「理由は個人情報のためお伝えできません」 「今日伺っていたサポーターは今後来られなくなりました」 公表した前後に2人目の逮捕者が出ていた 驚きの隠蔽体質 公式サイトで「該当すると思われる事案の事実確認はできておりません」 100万件のシッターマッチングをしている」大手で発生 (その7)(「小児性愛者だと見抜けなかった」キッズライン 関係者59人が告発する“性犯罪シッター連続逮捕”の真実、レビュー偽装も発覚「性犯罪シッター事件」の裏でキッズラインが見逃していた“シッター不適格者”たち【関係者59人が告発】、無罪続出の理由 「揺さぶられっ子症候群」の真実 検察側と弁護側 証言台に立つ医師の意見が真っ向対立) そんな医師に一方的に「鑑定」させた県警にも問題はありそうだ 適性に疑問のあるシッターが合格しているケースも 反対派の社員は退職 JBPRESS キッズラインに手数料を払っているのに… 「レビュー偽装も発覚「性犯罪シッター事件」の裏でキッズラインが見逃していた“シッター不適格者”たち【関係者59人が告発】」 シッターの質の担保よりもコスト削減 幼児虐待 「IT技術を活用することで、大幅にコストの削減を実現」とPR ようやく全利用者へメールで報告されたものの… 山田不二子医師(内科医) 日本子ども虐待医学会理事兼事務局長 中野 円佳 子供への性犯罪で2人もの逮捕者が続けて出た ユーザー体験をそこなえば大切なユーザーを失うことになるので、質の管理を行うインセンティブは運営側に働いている マッチングは質の管理に法的責任を持たない 検察はなぜ専門外の内科医の証言を証拠とするのか コロナ禍によるものとは違い、コストダウンのためのようだ。こんな有様では、「上場」などおぼつかない筈だ 初回レビューに「★は5つ満点の採点」を指示 サポーター選考を担っていたのはアルバイト 「キッズライン」で発生した子供への性犯罪 他のシッターマッチングサービスの対策は? 「「小児性愛者だと見抜けなかった」キッズライン 関係者59人が告発する“性犯罪シッター連続逮捕”の真実」
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中国国内政治(その9)(習近平 激怒…中国経済大打撃で「共産党ナンバー2」の反乱が本格化 「貧困層の存在」を暴露した、長老たちが習近平をつるし上げた……中国の“みんな敵に回す”外交姿勢に批判、習近平vs李克強の権力闘争が始まった) [世界情勢]

中国国内政治については、6月3日に取上げた。今日は、(その9)(習近平 激怒…中国経済大打撃で「共産党ナンバー2」の反乱が本格化 「貧困層の存在」を暴露した、長老たちが習近平をつるし上げた……中国の“みんな敵に回す”外交姿勢に批判、習近平vs李克強の権力闘争が始まった)を紹介しよう。

先ずは、6月21日付け現代ビジネスが掲載した産経新聞台北支局長の矢板 明夫氏による「習近平、激怒…中国経済大打撃で「共産党ナンバー2」の反乱が本格化 「貧困層の存在」を暴露した」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/73453?imp=0
・『中国共産党内の序列で、トップの習近平国家主席とナンバー2の李克強首相の対立が最近、顕著になってきた。 担当分野ではない経済問題にも積極的に口を出し、実現できそうにない大きな目標を掲げることが好きな習氏と、規制緩和を通じて民間企業の力を引き出し、経済の活性化を目指す李氏。両者の間には以前からすきま風が吹いていたが、新型コロナウイルスの影響で、大きな打撃を受けた中国経済を立て直す方針をめぐり、確執は一層深刻になったようだ』、「ナンバー」1と2の対立とは興味深そうだ。
・『南北院の争い  「南院と北院の争いは最近、激しくなっている。巻き込まれた私たちは大変だ」 中国共産党の中堅幹部は電話の向こうでこのように漏らした。北京市中心部の政治の中枢、中南海地区には、南側に党中央の建物、北側に国務院(政府)の建物がある。党幹部らは、習近平総書記(国家主席)と李克強首相の経済政策をはじめとするさまざまな対立について、「南院と北院の争い」という隠語を使って表現している。 5月下旬に開催された全国人民代表大会(全人代、国会に相当)は、習氏と李氏の抗争の舞台となった。 22日の開幕式で李氏が読み上げた政府活動報告の中には、2020年の国内総生産(GDP)成長の数値目標がなかった。極めて異例のことだった。  共産党関係者は、習氏と李氏が激しく対立したため、調整がつかなかったことが理由だと説明した。中国の2019年の経済成長率は6.14%だが、今年は新型コロナの影響で、大きく低下することは避けられない。実務担当者の李氏らは「2%以下になる可能性もある」と想定したのに対し、習氏とその周辺は「5%以上を目指せ」としつこく要求したという。 中国の経済成長率は1991年以降、5%を下回ったことがない。2022年秋の党大会で三期目の続投を狙う習氏にとって、その直前の経済失速をどうしても避けたい事情があった。 しかし一方、高い目標を設定して達成できなかった場合に責任を押し付けられることを警戒した李氏は、習氏の意向に最後まで抵抗した。二人が主張する数値の隔たりが余りにも大きいため、結局、政府活動報告への記入そのものが見送られたという。 経済成長の目標値に関しては、数年前から二人の対立があった。経済の実態に即した目標を設定したい李氏と、少しでも高くしたい習氏の間で調整がつかず、二人の意見を同時に盛り込んで「6.0~6.5」という幅を持たせた数値目標が発表されたこともあった。 今回、その調整すらつかなかったことで「二人の対立はより高いステージに突入した」と表現する党関係者もいる』、「実務担当者の李氏らは「2%以下になる可能性もある」と想定したのに対し、習氏とその周辺は「5%以上を目指せ」としつこく要求」、この結果、「成長の数値目標がなかった。極めて異例のこと」、絶対的権力を振るう「習氏」に対し、一歩も引かないとは「李氏」も相当の覚悟の上の行動なのだろう。
・『爆弾発言「貧困層が6億人いる」  さらに、李氏が5月28日、全人代閉幕後の記者会見で「中国の平均年収は3万元(約45万円)だが、月収千元(約1万5000円)以下の人も6億人おり、地方都市で家を借りることすらできない」と発言したことも大きな波紋を呼んだ。 自国の高度経済成長を長年喧伝してきた中国人の多くにとっては、「家すら借りられない貧困層が国内に6億人もいる」ことは、初耳だったのだ。 李氏が言わなくてもよいはずの「中国の貧困の実態」を暴露した真意については、「習近平氏が推進してきた、2020年末までに全国で貧困を脱却するというキャンペーンに対する抵抗ではないか」との指摘がある。 習氏は昨年の全人代で、「2020年末までに全地域を貧困から脱却させる目標を必ず達成するよう」という号令をかけた。習氏はさらに「貧困脱却の基準」について「衣食の心配がなく、義務教育、医療、住宅が保障されていることが基準だ。これを引き下げてはならない」と述べ、この基準を勝手に引き下げるなど、背いた幹部は徹底的に取り締まるとも強調した。 しかし、経済運営の実務を担当している李氏は、中国農村部を中心に今も貧困層が多くいる実態を知っている。習氏が目指す年内の目標達成が、絶対に不可能であることもわかっている。年末に大幅な数字の改ざんをしたくない李氏は、記者会見の機会を利用して、「習近平が掲げる貧困脱却の目標は実現できない」と暗にアピールしたわけだ。 これまで長年、習氏との対立表面化を避けてきた李氏が、最近になって公然と反抗的な態度を取るようになったのは、新型コロナウイルスの対応を主導し、正しい感染情報などを隠蔽してきた習氏に対し、国際社会から批判が集まり、党内でも習氏の求心力が弱まっていることが背景にある。 しかし、この李氏の発言の数日後、6月1日発売の共産党理論誌「求是」は、習氏の寄稿を掲載し「今年は『小康社会(ややゆとりのある社会)』の全面的実現という目標はほぼ達成された」と強調している。 「小康社会」とはかつての指導者、鄧小平氏が唱えた言葉で「貧困のない社会」との意味がある。習氏はこの寄稿で、李氏の発言に対して全面的に反論した形だ』、「爆弾発言「貧困層が6億人いる」」も「李氏」のさらなる覚悟を示しているようだ。
・『「露天商経済」をめぐる混乱  習氏と李氏の攻防は、具体的な経済政策にも及んでいる。それが「露天商経済」だ。 6月初め、山東省煙台市を視察した李氏は、「露天商は重要な雇用の源であり、中国の生命力だ」と語った。 新型コロナウイルスのまん延に伴い、中国国内の多くの中小企業が倒産し、失業者が急増して、出稼ぎ労働者が集まる広州や青島など治安が悪化し始めた都市も増えている。全人代では、「露天商に対する制限を緩和し、失業者が露天商になることを応援することで、雇用創出を図るべきだ」といった意見が多くあり、李氏はそれを受け入れた形だ。 この李氏の発言はたちまち大きく宣伝され、露天商を原則禁止していた上海、西安など複数の都市が禁止措置を取り消し、屋台や路上の個人営業店が特定の時間と場所に開業することを許可した。 しかし、これまで中国当局は、街の景観維持、食の安全などを理由に、露天商を厳しく管理してきた。合法的な経営許可をもらえる露天商は少なく、無許可の露天商を取り締まる部署である「城市管理行政執法局」(城管)は各都市で大きな権限を持っていた。 李氏が打ち出した「露天商経済解禁」という方針は、この「城管」の存在そのものを否定するものではないかと、現場は混乱した。また、屋台など飲食を提供する露天商が増えれば、一般の飲食店の売り上げにも影響する、との懸念の声も少なくない』、「一般の飲食店の売り上げにも影響する、との懸念」、は大いにあり得る話だ。
・『習近平側近メディアの「李克強潰し」  李氏の山東視察からわずか一週間後の6月7日、北京市党委機関紙「北京日報」は「露店商経済は首都・北京のイメージや中国のイメージを損ない、質の高い経済発展には有害だ」と李氏の方針を完全に否定する社説を掲載した。 その後、国営中央テレビも追随して、「露店商経済は、長年の都市建設の成果を台無しにする」との論評を発表した。この二つの報道を受けて、「露天商経済」を宣伝するメディアは急速に減少した。 北京市トップの党委書記の蔡奇氏と、中央テレビを指導する立場にある黄坤明・党中央宣伝部長が、いずれも習氏の側近であることはよく知られている。「露天商経済の推進」という重大な方針変更について、李氏から相談を受けていなかった習氏が激怒し、「露天商経済をつぶせ」と部下に指示したとの情報もある。習派には、露天商経済が成功すれば、李氏の影響力が拡大するとの警戒もあったとみられる。 本来ならば、中国共産党の役割分担として、トップの総書記兼国家主席は外交と安全保障、ナンバー2の首相は経済を主導する、となっている。しかし、権力掌握を進めたい習近平氏は、以前から経済分野に積極的に介入しており、誰が中国の経済政策を主導しているのか外から見えにくい状態になっている。 李氏の周辺に近い共産党幹部によれば、「習氏は、ちゃんとした経済政策を持っているわけではなく、体面などを重要視しているだけだ。北京や上海などで露天商が増えれば、『中国の経済はよくない』との印象を外国に与えるのではないかと気にしているようだ」と説明した。 そもそも、李氏が提唱した露店商経済には大きな限界があり、全国で展開しても、本格的な景気回復には繋がらず、一時しのぎの雇用対策に過ぎないと言われている。この政策も党内の対立によって朝令暮改され、国民を振りまわすことになった。 共産党のツートップの確執は2022年の党大会まで続きそうだ。「天の声」が2つあることで、行政の現場では大きな混乱が生じている。 コロナ禍によって深刻な打撃を受け、低迷し続ける中国経済は、しばらく立ち直りそうにない』、「ツートップの確執は2022年の党大会まで続きそうだ」、大いに注目したい。

次に、8月17日付けYahooニュースがニッポン放送記事を転載した「長老たちが習近平をつるし上げた……中国の“みんな敵に回す”外交姿勢に批判」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/articles/c0f64d298b61d7cc4e862f2308d3dd980fd74380
・『8月17日、辛坊治郎が、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に生出演。政治・経済・文化・社会・芸能まで、一日の出来事の中から独自の視点でニュースをズーム、本質を解説する同番組の今回は、中国政府が沖縄県の尖閣諸島を含む東シナ海周辺での「漁」を3か月ぶりに解禁したなか、漁師らに対して中国政府から「尖閣周辺では操業をしないよう」に指示をしたという報道を受けて、中国問題に詳しい評論家の石平(せき へい)氏が解説した。 辛坊が端的に「どういうことですか?」と聞くと、石平氏は背景を説明。「7月下旬から8月上旬にかけて『北戴河会議』が行われたことによるもの」と説明。北戴河とは中国の有名な避暑地で、そこに中国共産党指導部や旧指導部の長老たちが集まって行われるものが『北戴河会議』。石平氏は、「今年の北戴河会議では、習近平のやり方を良く思っていない現指導部と胡錦涛や温家宝らの長老たちが、習近平をつるし上げ、対米関係の改善を求めた。その結果、アメリカに対しては融和政策をとっていくようだ」と話した。 一方、日本との関係に関しては、二つの可能性があるとし、「一つは、アメリカに対して融和政策をとる分、より高圧的な対応に出る可能性。もう一つは安倍総理にトランプ大統領との仲介を頼む可能性。従って、尖閣諸島近辺で中国漁船がどういう動きをするかは注視しなければならない」と警戒を促した。 石平氏によると、今回の北戴河会議で特に長老たちが習近平に迫ったのは前述の対米関係の改善であると断言。その理由として「アメリカとの関係が徹底的に悪化すると、長老たちの親族がアメリカに持っている資産・財産が凍結されてしまうことを恐れている。だから長老たちも必死」とした。 辛坊が、「中国は、ここにきてインドの国境紛争地帯ではインド領内に施設を建設したり、南シナ海では、岩礁を埋め立てて滑走路を作ったり、先日の香港では国家安全維持法で一国二制度を廃止する方向に舵をとることをはっきりさせりといったい中国では何が起きているんですか!?」と強い口調で質問すると、石平氏は「伝統的な外交戦略からするとはっきり言ってあり得ない話。中国というのは昔は外交上手だった。どこかの国とけんかするときは周辺の国と仲良くしていた。今の習近平のやり方は、みんな敵にしてしまう。だから北戴河会議では彼の外交姿勢が批判を浴びた」と話した』、「中国というのは昔は外交上手だった。どこかの国とけんかするときは周辺の国と仲良くしていた。今の習近平のやり方は、みんな敵にしてしまう。だから北戴河会議では彼の外交姿勢が批判を浴びた」、はともかく、「アメリカとの関係が徹底的に悪化すると、長老たちの親族がアメリカに持っている資産・財産が凍結されてしまうことを恐れている。だから長老たちも必死」、笑いを禁じえない本音だ。

第三に、8月31日付けNewsweek日本版が掲載した中国出身で日本国籍を取得した評論家の石平氏による「習近平vs李克強の権力闘争が始まった」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/sekihei/2020/08/vs_1.php
・『<5月の全人代から8月の水害被災地視察にいたる共産党のさまざまな行事の水面下で、習近平と李克強の激しい暗闘が繰り広げられていた。その勝者は?> 今年5月28日、年に一度の全国人民代表大会(全人代)が閉幕したその日、中国の李克強首相は恒例の首相記者会見で「爆弾発言」をした。中国の貧困問題についての記者質問に答える中で「今の中国では、6億人が月収1000元前後」と発言したのである。 記者会見は中国中央電視台(CCTV)によっても中継されていたので、李がそこで淡々と披露したこの数字は直ちに全国に伝わってマスコミと国民の間に大きな波紋を呼んだ。 今年3月に国家統計局が公表した2019年の国民1人当たりGDPは7万892元(1万392ドル)で、初めて1万ドルの大台を超えた。一方、14億の国民のうちの6億人が「月収1000元(=年収1万2000元)」であるなら、上述の「1人当たりGDP」との落差はあまりに大きい。ちなみに「月収1000元」は日本円で約1万5000円、日本の生活保護の基準金額よりもはるかに少ない。今の中国でも、この程度の月収はまさに貧困そのものである。総人口の4割以上を占める6億の国民が未だに貧困にあえいでいる実態を、李が披露した数字によって多くの国民が知り、そして愕然と「世界第2位の経済大国」幻想から覚めたのである。 そういう意味においても、中国経済の実態を暴露した李の「月収1000元」発言はまさに爆弾発言の部類に入るものだが、実はこの発言にはもう1つ重大な政治的意味合い――事実上、習近平国家主席にケンカを売ったこと――が含まれていた。 習は2015年ごろから「2020年に脱貧困、小康社会の全面的実現」を自らの政権の看板政策として掲げてきた。それ以来の5年間、習はずっと全国の党幹部に対して「脱貧困・全面小康」実現の大号令をかけ続けてきた。今年になって新型コロナウイルスの影響があった中でも、習は既定の政策目標を変えようとはしなかった。3月、習は「脱貧困達成」の座談会を開き、「新型コロナの影響を克服し、脱貧困の全面勝利を勝ち取ろう」との檄を飛ばした。とにかくこの2020年内に「貧困人口の全員脱貧困」を実現させたい、との固い決意が伺える。 地方幹部たちは最高指導者の想いを忖度して、「脱貧困の成果」を次から次へとつくり出し習を喜ばせようとした。今年に入って省・自治区の多くは「わが地方は貧困人口の全員が脱貧困寸前」と宣言し始めた。人口8000万人の江蘇省に至っては今年の1月7日、「江蘇省で未だに脱貧困していないのはわずか17人」とまで宣言した。 各地方から相次ぐ「脱貧困報告」に基づき、習政権は2020年の年末に「14億国民全員が脱貧困し全面小康社会が実現された」と誇らかに宣言し、それを習の偉大な業績にする腹積もりだろう。これで習は、中国という国が始まって以来の最大の偉業を達成した偉大なる指導者――になる筋書きである』、「李」発言は、上の記事でも触れたが、「李が披露した数字によって多くの国民が知り、そして愕然と「世界第2位の経済大国」幻想から覚めた」、とはインパクトが大きかったようだ。「脱貧困」で「習は、中国という国が始まって以来の最大の偉業を達成した偉大なる指導者――になる筋書きである」、とんだ皮算用だ。
・『「習近平の夢」を葬り去った李克強の一撃  しかし中国首相である李克強の口から出た1つの数字によって、習の「偉業達成」はかなり危うくなっている。どういう基準で「14億人が脱貧困」と言えるのかについて、習政権はさまざまな数字の操作を「工夫」することもできよう。しかし、いくら何でも「6億人の国民が月収1000元」の現状で、習が筋書き通りに今年末の「14億全員脱貧困」と宣言するのはかなり難しい。無理矢理宣言しても誰も信じないし、ただの笑い話に終わってしまう。 要するに、「中国有史以来の偉業を達成した偉人」となって自らの権威樹立を図る習近平の目論見は、李克強の手によってほぼ完全に打ち壊され、「中国の夢」ならぬ「習近平の夢」の1つはこれで破れたのである。 もちろん、成熟した政治家の李が、自ら披露した数字がこのような「殺傷力」を持っていることを知らないわけはない。いや、むしろ知っているからこそ彼は、テレビ中継の記者会見においてこの数字を披露し一瞬にして全国に広げたのであろう。この数字の披露はまさに、李が習に対して仕掛けた奇襲作戦だ。この一挙で習の「脱貧困」の欺瞞性を暴露したとの同時に、習がただのホラ吹きであることを国民に明らかにしたわけである。 このケンカの売り方は巧妙なところは、習近平批判をしたわけでもなければ習の名前すら出さず、淡々と披露した数字によって、習に顔面パンチの打撃を与えた点にある。 李は上述の数字の披露によって、もう1つの目的も達成している。それは、「李首相こそ国家の実情をしっかりと把握し、本当のことを国民に伝えるまともな政治家」であるとの印象を国民と国際社会に与えたことである。そして、その対比において習近平はむしろ「国の実情を無視してホラ吹きをする政治家」と国民の目に映る。習近平にとっては二重ダメージである。 以上は、5月28日の全人代記者会見を利用して、中国首相の李克強が国家主席の習近平に仕掛けた奇襲作戦の一部始終であるが、習主席サイドは当然、何らかの反撃を考えなければならない。 そして7月になると、習からの反撃が予想もせぬ形で始まった』、「この数字の披露はまさに、李が習に対して仕掛けた奇襲作戦だ。この一挙で習の「脱貧困」の欺瞞性を暴露したとの同時に、習がただのホラ吹きであることを国民に明らかにしたわけである。 このケンカの売り方は巧妙なところは、習近平批判をしたわけでもなければ習の名前すら出さず、淡々と披露した数字によって、習に顔面パンチの打撃を与えた点にある」、「「李首相こそ国家の実情をしっかりと把握し、本当のことを国民に伝えるまともな政治家」であるとの印象を国民と国際社会に与えた」、誠に巧みな戦略だ。。
・『奇襲作戦への反撃に出た習近平  7月21日、習近平国家主席は北京で国内の経営者たちを招いて「企業家座談会」を開き、中国の経済問題について討議した。 座談会には習以外に、汪洋全国政治協商会議主席、王滬寧政治局常務委員、韓正副首相が出席した。共産党の最高指導部である政治局常務委員会の7人のメンバーのうち、習を含めて4人も出席しているから、まさに異例のハイレベル会議だ。当面の経済問題に対する習と指導部の重要視ぶりがうかがえる。 驚いたことに、この主席主催の重要会議を首相の李克強は欠席した。中国で経済運営は首相の管轄事項の1つである。政権中枢に設置されている経済運営の司令塔「中央財経指導小組」では、組長の習の下で李が副組長を担当している。李は本来、習主催の経済関連ハイレベル会議に誰よりも出席すべきであろう。 李欠席の原因は、外遊や地方視察のために北京を留守にしていたわけでもない。同じ7月21日、彼は北京で別の外交活動に参加していることが人民日報の報道で判明している。もちろん、習主催の重要座談会であるから、李が自ら参加を拒んだとは考えにくい。拒む理由もないはずである。 だとすれば、習自身が李を呼ばなかったことが欠席の理由だろう。つまり習は最初から、李を参加者リストから外していた。しかし事実がもしそうであれば、それは重大な政治的意味を持つ出来事である。職務担当が経済運営と全く関係のない王滬寧政治局常務委員までが会議に呼ばれたのに、李が呼ばれなかったのはもはや異常事態、あまりにも露骨な「李克強排除」だ』、「企業家座談会」で「李克強排除」をしたとは、余りに大人げない。
・『さらに再反撃する李克強  習による「李克強排除」は当然、前述の李の奇襲作戦に対する反撃、あるいは報復であろう。「俺の経済政策を打ち壊すなら、お前を経済運営の中枢から追い出してやるぞ」という意味合いの行動である。それ以来、できるだけ李を経済政策の意思決定から排除するのが習の基本方針となっている模様だ。 8月24日、習近平が9人の専門家たちを招いて座談会を開き、第14次5カ年計画について討議した。この座談会には前述の王滬寧、韓正が出席したものの、李克強はやはり「欠席」していた。 ここまでくると、熾烈さを増す習近平と李克強との政治闘争は半ば表面化している。こうした中、8月初旬からの恒例の北戴河会議が終わった直後に、李はまたもや思いもよらぬところから習に対する果敢な奇襲作戦を展開した』、「果敢な奇襲作戦を展開した」とは面白そうだ。
・『「反撃への反撃」の舞台は洪水被災地  その舞台となったのは洪水の起きた南部地域である。今年の7月中旬ごろから、長江流域で大雨による洪水が発生し、湖北省・安徽省・江西省では大変な被害になった。 胡錦濤時代までの中国共産党政権の伝統では、大水害などの自然災害が発生すると、国家主席あるいは首相などの中央指導者は必ず災害現場を視察し、陣頭指揮を執った。しかし習政権になると、どういうわけかこの伝統が完全に廃れ、災害があっても習以下の指導者はなかなか現場へ行かない。視察に行っても災害がすでに収束した後である 今回も習がやっと安徽省の水害地域に入ったのは8月18日のことである。しかしそこでの被害は2週間前にとっくに治まっていた。実際、翌日から新華社通信の公式サイトに掲載された習近平の「水害視察写真」を見ていると。肝心の川はかなり静かになり水害の痕跡はほとんど見られない。習の視察は緊迫した災害視察というより、余裕綽々の物見遊山風情なのである。 しかしまさにその時、中国では別の地方で大変な水害が起きていた。直轄市の重慶である。主に三峡ダムの大量放流が原因だが、8月18日からの数日間、大都会の重慶は物流が止まるほどの水害に見舞われた。 そして、水害が既に終わった後の安徽省を視察した習近平とは違って、李克強は8月20日、水害の最中の重慶へ飛び、電撃視察を行った。視察において彼は、水害の現場を実際に歩き回った。翌21日、李克強がトップである国務院管轄下の中国政府公式サイトに、重慶の被災地の現場で彼が長靴を履き、泥水の中を歩く写真数点が掲載された。 長靴で泥水を歩く李克強の写真は、報道されるや否やネットで急速に拡散され大きな反響を呼んだ。多くの中国人民は「しかるべき指導者」の姿を久しぶりに見たのと同時に、数日前に見た別の指導者の写真をも思い出した。そう、水害の痕跡のないところで綺麗な革靴を履いて悠然と「物見遊山視察」を行う習近平の姿である。 この2人の写真を脳裏に並べて再現した時、多くの国民の中で「間が抜けて無責任な指導者・習近平」と「危険を省みず泥水の中を歩く頼もしい指導者・李克強」との対比的イメージが一瞬にして出来上がるに違いない。そしてそれこそが、災害のさなかの重慶を視察し、わざと泥水の中を歩いた李の狙いではないのか』、「多くの国民の中で「間が抜けて無責任な指導者・習近平」と「危険を省みず泥水の中を歩く頼もしい指導者・李克強」との対比的イメージが一瞬にして出来上がる」、またしても「李氏」に一本取られたようだ。
・『「首相の視察」を無視した中央メディア  習近平の「物見遊山視察」の2日後に、李克強が水害被災地の重慶へ飛んで行って視察したのはむしろ周到な計算にも続く政治行動と見るべきであろう。李克強は当然、習近平が18日に安徽省に行ったことを知っていた。習近平の視察写真が国民の間で大変不評であることも知っていたはずだ。 もし事実がそうなら、これはまた李克強が習近平に対して仕掛けた奇襲作戦の1つである。そして李のこの作戦はどうやら成功したようだ。その証拠がある。彼の視察があった8月20日から23日の晩まで新華社通信・人民日報・CCTVの三大中央メディアは李の重慶視察を完全に黙殺し、一切報道しなかったのだ。 共産党ナンバー2である首相の地方視察を、党中央メデイアが完全黙殺するのはまさに異例中の異例である。それは宣伝機関を握っている習近平サイドが、李の重慶視察を国民に知らせることを恐れているからであろう。そしてこのことは逆に、李の重慶視察が習にとって大変破壊力のある行動だったことを証明している』、「首相の地方視察を、党中央メデイアが完全黙殺するのはまさに異例中の異例・・・習近平サイドが、李の重慶視察を国民に知らせることを恐れているから」、見え透いた小細工を弄したものだ。
・『李克強の堪忍袋が切れた原因  しかし、李克強の地方視察を完全に黙殺する習近平サイドのやり方はあまりにも乱暴であって拙い。共産党党内からも民間からも大きな批判が起き、逆に支持と同情が李克強の方に集まりかねない。 こうした中、23日夜になってようやく、CCTVと新華社通信がこの数日前の「旧聞」を報道した。そして翌日の24日の人民日報でも、李の重慶視察のニュースは一面を飾った。党内と民間の李首相支持・同情の声に押されて習近平サイドの「李克強隠し」は完全に失敗し、李の奇襲作戦はまたもや大勝利を収めたのである。 以上は、今年の5月以来、中国の李克強首相が習近平国家主席に対して盛んに売った「ケンカ」の一部始終であるが、この背景には当然、習近平と李克強との長年の確執とライバル意識があっただろう。 2007年の党大会で胡錦濤前主席の後継者を決める時、胡は自らの率いる「共青団派」のホープで子飼いの李克強を自分の後継者に推したかった。これに対し、当時絶対な影響力を持った江沢民一派はその対抗馬として習近平を推した。結果的には江沢民派の勝利となって習は次期最高指導者の座を約束され、2012年の党大会では首尾よく共産党総書記に選出され翌年には国家主席になった。一方、李克強は最高指導者になるチャンスを奪われ、習の下の首相ポストに甘んじることとなった。 このように両者は最初から確執があってライバル意識が強く、信頼関係が全くない。政権が始まった後、習は独裁志向を強め、外交や経済運営などの決定権を首相の李克強からことごと取り上げ、政権内でいわば「李克強封殺」を進めた。 一方の李は習政権スタート以来のこの8年、ずっと隠忍自重して習に逆らわず、不本意な立場で首相職を淡々とこなしてきた。それが今年に入ってから突如、君子豹変して習近平にケンカを売るようになった。豹変のきっかけは新型肺炎の感染拡大だろう。このコラムでも以前に取り上げたが、1月下旬に武漢が都市封鎖された直後、中央に設置された「疫病対策指導小組(対策本部)」の組長(対策本部長)に国家主席の習近平は就任せず、李克強に押し付けた。 ・・・李克強は「危急存亡の秋」にもっとも困難な仕事を引き受け、感染拡大中の武漢に入って危機対応に当たった。しかしその後、武漢の感染拡大が治まりかけた時になってようやく、習は「疫病対策はずっと全て自分の直接指揮下にあった」と宣言し、李克強の手柄を横取りしたのである。 おそらく李克強はこれで堪忍袋の緒が切れ、隠忍自重をやめて習近平と戦う姿勢に転じたのだろう。今の習近平政権が内政と外交の両面でかなりの行き詰まりを見せ、習に取って代わる指導者を求める思いが党内と民間に広がり始めていることも李の豹変の背後にあろう。 いずれにしても、習近平と李克強という共産党ナンバー1とナンバー2の権力闘争の火蓋が切って落とされたことは事実である。今後、この2人の戦いがどう展開していくのかは、中国の政治と外交を大きく左右する。引き続き注目していく必要があろう』、「胡は自らの率いる「共青団派」のホープで子飼いの李克強を自分の後継者に推したかった。これに対し、当時絶対な影響力を持った江沢民一派はその対抗馬として習近平を推した」、こんないきさつがあったとは、初めて知った。「今の習近平政権が内政と外交の両面でかなりの行き詰まりを見せ、習に取って代わる指導者を求める思いが党内と民間に広がり始めていることも李の豹変の背後にあろう」、納得できた。「今後、この2人の戦いがどう展開していくのか」、大いに注目したい。
タグ:ニッポン放送 「習近平の夢」を葬り去った李克強の一撃 (その9)(習近平 激怒…中国経済大打撃で「共産党ナンバー2」の反乱が本格化 「貧困層の存在」を暴露した、長老たちが習近平をつるし上げた……中国の“みんな敵に回す”外交姿勢に批判、習近平vs李克強の権力闘争が始まった) Newsweek日本版 yahooニュース 中国というのは昔は外交上手だった。どこかの国とけんかするときは周辺の国と仲良くしていた。今の習近平のやり方は、みんな敵にしてしまう。だから北戴河会議では彼の外交姿勢が批判を浴びた 中国国内政治 実務担当者の李氏らは「2%以下になる可能性もある」と想定したのに対し、習氏とその周辺は「5%以上を目指せ」としつこく要求 長の数値目標がなかった。極めて異例のこと アメリカとの関係が徹底的に悪化すると、長老たちの親族がアメリカに持っている資産・財産が凍結されてしまうことを恐れている。だから長老たちも必死 北戴河会議 石平 爆弾発言「貧困層が6億人いる」 南北院の争い 中南海地区には、南側に党中央の建物、北側に国務院(政府)の建物 「露天商経済」をめぐる混乱 矢板 明夫 現代ビジネス トップの習近平国家主席とナンバー2の李克強首相の対立が最近、顕著になってきた 「習近平、激怒…中国経済大打撃で「共産党ナンバー2」の反乱が本格化 「貧困層の存在」を暴露した」 この数字の披露はまさに、李が習に対して仕掛けた奇襲作戦だ。この一挙で習の「脱貧困」の欺瞞性を暴露したとの同時に、習がただのホラ吹きであることを国民に明らかにしたわけである。 このケンカの売り方は巧妙なところは、習近平批判をしたわけでもなければ習の名前すら出さず、淡々と披露した数字によって、習に顔面パンチの打撃を与えた点にある 「脱貧困」で「習は、中国という国が始まって以来の最大の偉業を達成した偉大なる指導者――になる筋書きである」 「長老たちが習近平をつるし上げた……中国の“みんな敵に回す”外交姿勢に批判」 李が披露した数字によって多くの国民が知り、そして愕然と「世界第2位の経済大国」幻想から覚めた 今後、この2人の戦いがどう展開していくのか 「習近平vs李克強の権力闘争が始まった」 ツートップの確執は2022年の党大会まで続きそうだ 今の習近平政権が内政と外交の両面でかなりの行き詰まりを見せ、習に取って代わる指導者を求める思いが党内と民間に広がり始めていることも李の豹変の背後にあろう 習近平側近メディアの「李克強潰し」 胡は自らの率いる「共青団派」のホープで子飼いの李克強を自分の後継者に推したかった。これに対し、当時絶対な影響力を持った江沢民一派はその対抗馬として習近平を推した 共産党党内からも民間からも大きな批判が起き、逆に支持と同情が李克強の方に集まりかねない。 こうした中、23日夜になってようやく、CCTVと新華社通信がこの数日前の「旧聞」を報道した 李克強の堪忍袋が切れた原因 「首相の視察」を無視した中央メディア 危険を省みず泥水の中を歩く頼もしい指導者・李克強」との対比的イメージが一瞬にして出来上がる 多くの国民の中で「間が抜けて無責任な指導者・習近平 「反撃への反撃」の舞台は洪水被災地 習に対する果敢な奇襲作戦を展開した さらに再反撃する李克強 奇襲作戦への反撃に出た習近平 「李首相こそ国家の実情をしっかりと把握し、本当のことを国民に伝えるまともな政治家」であるとの印象を国民と国際社会に与えた
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中国経済(その6)(「三峡ダム」だけではなかった……84%が「危険」という中国のダム問題について=立沢賢一、中国半導体「重要プロジェクト」が頓挫の危機 武漢弘芯 最先端設備を導入も資金ショート、中国経済の近未来を決定づける「双循環」の行方 海外との交流は継続か それとも縮小するのか) [世界情勢]

中国経済については、7月9日に取上げた。今日は、(その6)(「三峡ダム」だけではなかった……84%が「危険」という中国のダム問題について=立沢賢一、中国半導体「重要プロジェクト」が頓挫の危機 武漢弘芯 最先端設備を導入も資金ショート、中国経済の近未来を決定づける「双循環」の行方 海外との交流は継続か それとも縮小するのか)である。

先ずは、9月6日付けエコノミストOnlineが掲載した元HSBC証券社長で投資コンサルタントの立沢賢一氏による「「三峡ダム」だけではなかった……84%が「危険」という中国のダム問題について=立沢賢一」を紹介しよう』。
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20200902/se1/00m/020/002000d
・『中国国内の政治闘争の産物、三峡ダム  中国には多くの水利専門家が執筆した治水と水害防止の専門著書が数々あり、治水および水害防止の理論と技術水準を絶え間なく向上させていました。 中国は国土が広いので、各地の地形や気候の相違が大きく、水害の形式も複雑です。 中でも、湖北省の武漢や四川省の重慶等は流域洪水の影響が大きく、その被害を食い止める方策が必要でした。 三峡ダムは、1919年に孫文が三峡ダム建設プロジェクトを提唱した事から始まりました。 しかしながら、共産党と国民党の政治的争いや、中国共産党により1949年に中華人民共和国が建国された後も大躍進政策や文化大革命など様々な事件が障害となり、ダムの着工まで漕ぎ着ける事ができませんでした。 長江は全長6300kmという大スケールの川です。 従いまして、長江の開発は「持続可能な開発」への取り組みとして、水力発電、水資源の確保、水上交通、養殖漁業などを目的に、中国の発展の為にはなくてはならないプロジェクトと考えられていました。 ようやく1993年に着工した山峡(注:正しくは「三」)ダムは、16年の月日をかけて2009年に完成しました。 ところが、時の李鵬首相が環境保護を無視し、フィージビリティースタディー(事業の実現可能性を事前に調査すること)も行わず、汚職のための手抜き工事を行い、構造上も問題のあるダムを建設してしまったのです。 巨大な三峡ダムの貯水量は393億立方メートルで、日本の琵琶湖(水量:275億立方メートル)の1.43倍に相当します。 また、三峡ダムは2,250万kWの発電が可能な世界最大の水力発電ダムでもあり、中国全体の7.5%に相当する膨大な電力エネルギーを供給しています。 そして、ダムを挟んで上海まで続く長江流域は4億人の生活の場であり、工業や農業を始めとする中国の産業生産の約40%を担う“流域圏”です。 今回問題になっている三峡ダム決壊リスクに関して、6月からの異常な降水量で7月19日午後8時には水位が164・18メートルに達し、運用開始以来の最高水位163・11メートルを超えたのです。その後更に水位は増し、8月21日午前までに165.6メートルに到達。危険水位を約20メートルも上回り、設計最高水位である175メートルに迫りつつあります。 それは増水期の制限水位とされている145mを、20m以上オーバーしたことになります』、一時は「三峡ダム」の「水位」が新聞を賑わせていたが、最近は報道がないところをみると、最悪期は脱したようだ。「孫文が」「提唱した」とは初めて知った。
・『三峡ダムは「問題のデパート」 (1) 犠牲者補償問題(三峡ダムの貯水池は全長660㎞にも及ぶため、ダム湖に水没する地域は広大なものであり、多数の村落や都市が水没することとなったのですが、これら「三峡移民」の多くは充分な補償も受けられないまま貧困層へと転落しており社会問題となっています)。 (2) 地質問題(地質が脆い場所に作られたダムに貯水を行うと、ダム湖斜面や周辺の地盤への水の浸透と強大な水圧により、地滑りやがけ崩れが発生する可能性が高まります。三峡ダム区地質災害防止作業指導事務室チームが調査を行った結果、5,386カ所で地滑りやがけ崩れなどの問題が発生する恐れがあることが判明しました)。 (3) 水質汚染問題(人口3,000万人を超える重慶など上流域での工業・生活排水対策が不十分で、ダムが「巨大な汚水のため池」になってしまっています)。 (4) 地震発生問題(2008年5月に発生した四川大地震はマグニチュード7.9を記録し、甚大な被害をもたらしました。震源地近くでは地表に7メートルの段差が現れ、その破壊力は阪神・淡路大震災の約30倍にも及びました。最近の中国の研究では、地震発生の原因のひとつは「三峡ダム」の巨大な水圧ではないかとの指摘があるのです。ダムの貯水池に貯めた水圧と、地面から地下に沁みこんだ水が断層に達することで、断層がズレやすくなったという分析です)。 (5) ダム決壊とそれによる洪水発生問題(2018年、人工衛星からの写真で「ダムが変形している」と指摘され、ダム決壊への不安が広がっているのが現状です。もし自然に決壊したら、安徽省、江西省、浙江省などの穀倉地帯は水没の危機に瀕し、4億人から6億人もの被災者が出るとの予測もあるほどです。河口には上海が位置しますが、その都市機能は壊滅的な被害を受けることになります。上海に限らず、流域に位置する重慶や武漢などの経済、工業地帯には日本企業も多数進出しており、コロナ禍以上にサプライチェーンが寸断されることにもなりかねないです。中国経済の40%がダメージを受け上海が復興するには2-3年掛かるという試算すら発表されています。 重慶と武漢の間の川に建設された三峡ダムは放水しないと上流の重慶が浸水し、放水すると現在の様に武漢が浸水してしまうのです。放水してもしなくてもダメというダムが三峡ダムで、ダムの専門家は少しでも早く三峡ダムを爆破して破壊すべきだと警鐘を鳴らしています。 恐らく、中国当局は人民を犠牲にしてでも世界最大の山峡(注:正しくは「三」)ダムを守ろうとするのでしょう。中国当局はそもそも洪水被害を軽減する為にダムを建設したのですが、中国の洪水の多くは人為的な理由が原因で発生しているという皮肉な結果になっています』、「三峡ダムの貯水池は全長660㎞」とはやはり巨大で、「決壊」した場合の損害は天文学的規模のようだ。
・『84%のダムが危険という驚くべき報告……  2019年6月11日に国務院で開催された政策説明会の席上で、水利部の水害・干害防御局長の田以堂は中国国内のダムに関して次のように言及しました。 「中国国内には9.8万基以上のダムが存在するが、このうちの6.6万基以上はすでに欠陥があって危険なダムであり、これ以外の1.6万基以上は現在欠陥が判明して危険なダムである。このため、早急に欠陥を取り除いて補強することが必要である。」 このデータが正しければ、欠陥があって危険なダムの総数は8.2万基(6.6万基+1.6万基)以上となり、ダム全体の84%を占めます。この欠陥があって危険なダムの中には間違いなく三峡ダムも含まれているのです。 三峡ダムが自然決壊することは今の所ないであろうという「憶測」を信じているのか、上海株式市場には水害の影響は見られないようです。 しかし、万が一、自然決壊が発生した場合、それが中国経済に与えるマイナスのインパクトは計り知れませんので、その時上海株式市場はかなり下落するのではないかと思われます』、「84%のダムが危険」とは驚かされた。「三峡ダムが自然決壊」すれば、「上海株式市場はかなり下落」どころではなく、市場自体も崩壊するだろう。
・『メコン川流域を震え上がらせている「中国ダム問題」  三峡ダムからは話が逸れますが、中国のダム問題に関してはもう一つ大きな問題があります。 それはメコン川問題です。メコン川の源流はチベット高原とされ、中国・雲南省からミャンマーとラオス国境、タイとラオス国境、カンボジア、ベトナムを流れ、南シナ海に至ります。 全長約4350キロで、源流からラオスまでの約2000キロは標高約5000メートルから数百メートルまで下る形で流れ、標高差が大きいです。また、周辺流域住民は約6000万人です。 メコン川には現在11基の中国の水力発電ダムが稼働し、さらに20基が建設中または計画中とも言われています。中国国内の欠陥ダムが全体の84%という数字から鑑み、メコン川沿いの東南アジア各国はかなり敏感になっています。 これに関しては、ポンペオ米国務長官が「中国によるダム建設が川を統治する新しいルールを作っている」と厳しく批判しています。 今後、三峡ダムを含め中国製ダムがどの様に国内外に影響を与えるのかは注視する必要があります。立沢賢一氏の略歴はリンク先参照』、「メコン川流域」諸国は、ダムの決壊よりも、水が中国側だけで利用され、水量が減ってしまうことへの懸念は強い筈だ。「ポンペオ」の「批判」は当然だが、中国の勝手な「ダム」開発を押し止める力はなさそうだ。

次に、9月7日付け東洋経済オンラインが財新 Biz&Techを転載した「中国半導体「重要プロジェクト」が頓挫の危機 武漢弘芯、最先端設備を導入も資金ショート」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/371894#:~:text=%E6%AD%A6%E6%BC%A2%E5%BC%98%E8%8A%AF%EF%BD%A4%E6%9C%80%E5%85%88%E7%AB%AF%E8%A8%AD%E5%82%99%E3%82%92%E5%B0%8E%E5%85%A5%E3%82%82%E8%B3%87%E9%87%91%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%BC%E3%83%88&text=%E3%80%8C1000%E5%84%84%E5%85%83%EF%BC%88%E7%B4%841,%E3%81%8C%E6%98%8E%E3%82%89%E3%81%8B%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%80%82
・『「1000億元(約1兆5300億円)プロジェクト」という触れ込みで3年前に華々しくスタートした半導体工場の立ち上げが、資金ショートで頓挫の危機に瀕していることが明らかになった。湖北省武漢市の東西湖区政府が公表した同区内の経済状況に関する報告書のなかで、「武漢弘芯プロジェクトは大幅な資金不足に直面しており、いつストップしてもおかしくない」と指摘したのだ。 武漢弘芯は正式社名を武漢弘芯半導体製造(HSMC)といい、2017年11月に設立された新興半導体メーカーだ。武漢市政府は同社を地元の半導体産業育成のための重要プロジェクトと位置付け、建設工程の第1期に520億元(約7956億円)、第2期に760億元(約1兆1628億円)、合計で1280億元(約1兆9584億円)を投じると発表していた。 前述の東西湖区政府の報告書によれば、第1期工事は2018年初めに着工し、これまでに工場の主要な建屋と研究開発棟がほぼ完成した。装置メーカーに発注した300台余りの半導体製造設備も続々と工場に運び込まれ、そのなかにはオランダASML製の最先端の露光装置も含まれている』、「新興半導体メーカー」であれば、スポンサーと思われる「武漢市政府」の意向も重要だ。
・『TSMC出身の総経理が辞職か  武漢弘芯は発行済株式の90%を北京光量藍図科技という民営企業が、残り10%を東西湖区政府の国有資産監督管理局の傘下企業が保有する。前者の経営権を握るのは武漢弘芯の董事長(会長に相当)の李雪艶氏と取締役の莫森氏だが、2人は半導体業界ではまったく無名の人物。彼らの背景や資金源は謎に包まれている。 2019年7月、武漢弘芯は半導体の受託製造(ファウンドリ)で最大手の台湾積体電路製造(TSMC)で研究開発部門を率いた経験を持つ蒋尚義氏を総経理兼COO(社長兼最高執行責任者)として招聘し、業界関係者をあっと驚かせた。ところが数カ月前から、蒋氏は武漢弘芯を辞職したという噂が流れている。財新記者は蒋氏に連絡を取ろうと試みたが、コメントは得られなかった。 武漢弘芯のウェブサイトによれば、同社は2019年3月から14nm(ナノメートル)のプロセス技術の研究開発をスタートし、2020年下半期から初期段階のテスト生産を始める計画だった。と同時に、2020年から世界最先端の7nmのプロセス技術開発に着手するとしていた。 だが実態を見る限り、武漢弘芯は資金ショートの難局を打開できなければ「未完のプロジェクト」に終わりそうだ』、「TSMC出身の総経理が辞職」、後任も決まってないとなれば、少なくとも「第1期」「工事」分の「520億元(約7956億円)」は宙に浮いてしまいそうだ。どこか他のメーカーが買い叩くのだろうか。

第三に、9月28日付け東洋経済オンラインが掲載したAPI地経学ブリーフィング上席研究員の大矢伸氏による「中国経済の近未来を決定づける「双循環」の行方 海外との交流は継続か、それとも縮小するのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/377214
・『米中貿易戦争により幕を開けた、国家が地政学的な目的のために経済を手段として使う「地経学」の時代。 独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく。 中国の「双循環戦略」(Dual Circulation Strategy)について関心が高まっている。「双循環」とは「国内循環」と「国際循環」の2つの循環を指す。この言葉は、今年5月14日の中国共産党政治局常務委員会の会議で最初に用いられた。そこでは「中国の巨大な市場規模と国内需要の潜在力という強みを生かして、国内と国際という相互に補完する2つの循環に基づく新たな発展のパターンを確立する」ことがうたわれた。 中国は今年10月開催予定の共産党第19期中央委員会第5回全体会議で第14次五カ年計画を策定する予定だが、「双循環戦略」はその中心テーマになる可能性がある。この概念を推進しているのは、習近平主席の信頼が厚く米中貿易交渉で中国側のリーダーを務めた劉鶴副首相と言われている。 ただ、詳細が決定・発表されていないこともあり、人により受け止め方や理解が異なる。「双循環」を、従来からある内需重視政策の延長で、外部との経済交流は継続し、中国経済の改革にもつながるものと考える人々もいる。逆に、「双循環」は、外部との交流を縮小のうえで自力更生を志向し、経済改革にはつながらないと考える人々もいる。中国はどちらの道を進むのか』、新たな「双循環」の考え方は「どちら」なのだろう。
・『外部交流継続・拡大の立場  外部交流を継続・拡大するものとの立場としては、8月14日付のChina Dailyの記事が挙げられる。同記事は、改革・開放政策の下で中国は発展を遂げるが、沿海部と内陸部の格差が拡大、1990年代にすでに内需を重視したバランスある発展の重要性が認識されていた。2006年には、内需を増やし、投資、国内消費、輸出のバランスを重視することを政策決定していたとして、過去との継続性を強調。そのうえで、「外との扉を閉ざすものではない」とし、「国内市場の拡大は、国内金融市場や対内投資をより対外開放し、輸入も拡大する」と主張する。 また、中国人民大学・経済学部のLi Yiping教授も、習近平主席が今年7月21日に北京の企業関係者に行った講演で、外とのドアを閉ざす可能性を否定したと指摘。「国内市場と国際市場の双方が重要である」「国内市場を外にも開放する」「国内経済を中心に据えつつ海外経済とも統合し、世界経済の活性化にも貢献する」と主張する。 さらに、改革に関しては、South China Morning Post(SCMP)のFrank Tang氏が中国政府関係者等から取材した話として、焦点は競争促進と開放で、対内投資の障壁を低くし、地域貿易協定にも意欲的に取り組むとし、さらに、国有企業改革を含めた供給サイドの構造改革も行うとの見解を紹介している』、なるほど。
・『外部交流縮小の立場  外部交流を縮小するものとの立場に近いものとしては、Global Timesの編集者であるLi Hong氏が率直に、「双循環」は「アメリカによるいじめと覇権主義と戦うことが狙い」であり、「アメリカの保護主義と技術ブロックに対抗し、経済・技術センターを打ち立てるもの」と説明。また、「国際循環」を諦めるものではないとしつつも、「アメリカがリードするデカップルを相殺するため、アメリカ、カナダ、オーストラリアの非友好的3カ国とは距離を置き、欧州、英国、アジア、アフリカ等と緊密な経済パートナーシップを形成する」とし「一帯一路(BRI)も積極的に実施する」とする。 改革に関してはウォールストリート・ジャーナルのLingling Wei氏が、劉鶴副首相には、この動きを国内経済改革の実現に利用したい、例えば国有企業よりも民間企業への融資の配分を増やしたいという思いがある、しかしこれは、経済の国家管理を強化するという習近平主席の考えに反する可能性があり、改革は容易ではないと分析する。 1949年の建国後、中国は重工業重視の輸入代替政策をとった。1960年代にソ連との関係も悪化、以降「自力更生」の傾向を強めた。貯蓄率は20%から30%程度と所得水準の割には高く、この資金を重工業の設備投資に充てた。しかし、経済成長は限られ、1978年時点で、世界のGDPに占める中国の比率は2%を切り、貿易に至っては1%にも満たなかった。 1978年に鄧小平の改革開放が始まる。1978年から2008年までの実質経済成長率は年平均9.8%と驚異的であった。貿易も、1979年から2001年まで輸出が年平均16%増加、2002年から2008年まで年平均27%増加し、世界最大の輸出国となった。 人口爆発への対応として1970年代に採用した「一人っ子政策」の結果、人口に占める生産年齢人口の比率が増えて、いわゆる「人口ボーナス」が発生。沿海部の工場には、農村から余剰労働力が供給され、労働コストをさほど上げずに生産と輸出が拡大した。貯蓄率も上昇し、1980年代は30%超、1990年代は40%超、2010年前後には50%超という驚異的な貯蓄率を達成、これが旺盛な投資を支えるとともに、巨額の経常黒字の要因となった』、確かに「改革開放」後の高成長は目覚ましく、「人口ボーナス」により「労働コストをさほど上げずに生産と輸出が拡大」出来たのも幸運だった。
・『中国経済の課題  このように、1978年以降の中国は大きく経済発展を遂げたが、その前提条件は崩れつつある。「人口ボーナス」期は終息を迎え、労働コストは上昇、貯蓄率も減少した。米中貿易摩擦が示すように、過度に輸出に依存した経済成長を続けることも国際環境から困難となった。 中国の1人当たりGDPはまだ1万ドル。アメリカの6万ドル、日本の4万ドルとの差は大きい。高齢化が急速に進行する中で「豊かになる前に老いる」リスクに直面している。人口増加が見込めない中では生産性を高めるしかないが、生産性(全要素生産性、TFP)上昇率は1996年から2004年の6.1%から、2005年から2015年は2.5%に減少したとの推計もある。 全要素生産性の上昇のためには、技術革新に加えて、資源配分の効率改善が重要である。具体的には、将来性があり伸びる企業やセクターに資金を配分する必要があるが、自由化が遅れる中国の金融セクターは、資金配分や金利決定に経済原理以外の要素が入り込む。国有企業が、民間企業よりも生産性が低いにもかかわらず優先的な資金配分を受けているとも指摘される。 北京もこうした課題は認識している。輸出と投資に依存した経済成長の限界を意識し、前述のとおり2000年代から内需の拡大はうたわれてきた。そうした流れの中で、「双循環戦略」が掲げるものも、内需重視を今後さらに強化する、しかし外部との経済交流を断つわけではなく、市場開放を進め外資の中国投資も歓迎するという立場であろう。 ただ、「双循環戦略」を急ぐ背景には米中対立、それに伴う技術の流れの停止、アメリカ市場での中国企業の活動の制約、西側諸国のサプライチェーン見直しの動きへの「恐怖」がある。ファーウェイの子会社であるハイシリコンは半導体の設計・開発に特化し、生産は台湾のTSMCへ委託していたがアメリカの制裁でTSMCから調達できなくなった。中国の半導体製造業者であるSMICはTSMCから2世代遅れている。中国の先端技術分野での「自力更生」への決意は強固であろう』、「中国」が「高齢化が急速に進行する中で「豊かになる前に老いる」リスクに直面している」、のは確かだ。「全要素生産性」を「上昇」させようにも、「国有企業が、民間企業よりも生産性が低いにもかかわらず優先的な資金配分を受けている」のがネックのようだ。「中国の先端技術分野での「自力更生」への決意は強固であろう」、とは言っても、米中対立のなかでは、「自力更生」も簡単ではなさそうだ。
・『「完全輸入代替」「自給自足」への転化リスク  米中対立が激化する中では、「内需重視」の掛け声が、歪んでいる「消費」「投資」「輸出」のバランスの回復という次元を超えて、「完全輸入代替」「自給自足」に転化していくリスクがある。アメリカ内でも対中全面デカップル論と技術分野等に範囲を絞った部分分離(partial disengagement)論などさまざまな意見がある。中国においても、「双循環戦略」という言葉に対して、論者によりさまざまな思いが投影されている可能性がある。 「双循環戦略」は、国有企業改革や金融セクターの自由化などの中国経済自身が現在かかえる課題の解決を盛り込むことで、輸出や投資に過度に依存しない、生産性向上を通じた新たな成長モデルにつながる可能性もある枠組みである。最終的な結論がどうなるかは大いに注目される。 南シナ海、尖閣諸島、香港、新疆ウイグル自治区等で中国が見せる異なる価値観、国際ルール違反の行動に対し国際社会は警戒が必要であり、技術分野等での一定の部分分離は自由社会を守るために必要であろう。しかし、西側が国内雇用維持や重商主義的衝動に基づき中国を過剰にデカップルする動きを見せれば、中国も外との交流を絞る形での「双循環」を志向するだろう。 2018年9月、視察先の黒竜江省で習近平主席は、「保護主義の台頭が中国に自力更生の道を歩むよう迫っている」と発言した。作用は反作用を生み、ナショナリズムは相互作用を増幅する。海外との交流を断つ経済政策は、中国にとっても世界にとってもマイナスが大きい。「双循環戦略」の行方が注目される』、「双循環戦略」以前に、先ずは中国が思い上がった姿勢を変えることが先決なのではなかろうか。
タグ:第1期に520億元(約7956億円) 中国の先端技術分野での「自力更生」への決意は強固であろう ダム決壊とそれによる洪水発生問題 メコン川流域を震え上がらせている「中国ダム問題」 孫文が三峡ダム建設プロジェクトを提唱 水質汚染問題 国有企業が、民間企業よりも生産性が低いにもかかわらず優先的な資金配分を受けている」のがネック 高齢化が急速に進行する中で「豊かになる前に老いる」リスクに直面している (その6)(「三峡ダム」だけではなかった……84%が「危険」という中国のダム問題について=立沢賢一、中国半導体「重要プロジェクト」が頓挫の危機 武漢弘芯 最先端設備を導入も資金ショート、中国経済の近未来を決定づける「双循環」の行方 海外との交流は継続か それとも縮小するのか) 中国経済の課題 「双循環」とは「国内循環」と「国際循環」の2つの循環を指す 「「三峡ダム」だけではなかった……84%が「危険」という中国のダム問題について=立沢賢一」 中国国内の政治闘争の産物、三峡ダム 三峡ダムは「問題のデパート」 犠牲者補償問題 財新 Biz&Tech 労働コストをさほど上げずに生産と輸出が拡大 人口ボーナス 外部交流縮小の立場 「中国経済の近未来を決定づける「双循環」の行方 海外との交流は継続か、それとも縮小するのか」 「双循環」を、従来からある内需重視政策の延長で、外部との経済交流は継続し、中国経済の改革にもつながるものと考える人々もいる 「完全輸入代替」「自給自足」への転化リスク TSMC出身の総経理が辞職か 中国の巨大な市場規模と国内需要の潜在力という強みを生かして、国内と国際という相互に補完する2つの循環に基づく新たな発展のパターンを確立する 武漢弘芯プロジェクト 外部交流継続・拡大の立場 中国経済 地質問題 地震発生問題 米中対立のなかでは、「自力更生」も簡単ではなさそうだ 「自力更生」 三峡ダムの貯水池は全長660㎞ 「上海株式市場はかなり下落」どころではなく、市場自体も崩壊するだろう 東洋経済オンライン 水利部の水害・干害防御局長の田以堂 三峡ダムが自然決壊 84%のダムが危険という驚くべき報告 新興半導体メーカー 逆に、「双循環」は、外部との交流を縮小のうえで自力更生を志向し、経済改革にはつながらないと考える人々もいる アメリカがリードするデカップルを相殺するため、アメリカ、カナダ、オーストラリアの非友好的3カ国とは距離を置き、欧州、英国、アジア、アフリカ等と緊密な経済パートナーシップを形成する 大矢伸 「中国半導体「重要プロジェクト」が頓挫の危機 武漢弘芯、最先端設備を導入も資金ショート」 API地経学ブリーフィング どこか他のメーカーが買い叩くのだろうか エコノミストOnline 立沢賢一
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尖閣諸島問題(その5)(習近平が日米の動きに焦り…中国が尖閣侵入を続ける「本当の理由」、中国が「尖閣諸島」にここまでこだわり続ける理由がついに明らかに…! 不可解な"居丈高"の行動原理は、田岡俊次氏「もし尖閣戦闘」勃発したら敗戦濃厚」 制空権握れず「水陸機動団は海上で全滅も」〈AERA〉) [外交]

尖閣諸島問題については、2016年6月26日に取上げたままだった。今日は、(その5)(習近平が日米の動きに焦り…中国が尖閣侵入を続ける「本当の理由」、中国が「尖閣諸島」にここまでこだわり続ける理由がついに明らかに…! 不可解な"居丈高"の行動原理は、田岡俊次氏「もし尖閣戦闘」勃発したら敗戦濃厚」 制空権握れず「水陸機動団は海上で全滅も」〈AERA〉)である。

先ずは、本年8月20日付け現代ビジネス「習近平が日米の動きに焦り…中国が尖閣侵入を続ける「本当の理由」」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/74979
・『南シナ海で起きていること  7月下旬、日本のメディアは久しぶりに尖閣諸島の話題で盛り上がった。原因は、中国海警局の船が尖閣諸島付近の接続水域を連続して100日以上航行したことだ。 連続航行は4月14日から8月1日まで続き110日を超えたが、その同じ期間には、中国海軍のミサイル艇も巡視船に連動して台湾付近に展開していたことを産経新聞が報じた。 この少し前には、やはり中国海警局の船が尖閣諸島付近の海域で日本の漁船を追いかけ回したという報道もあった。直後には中国が「周辺海域での日本漁船の操業は『領海侵入』だ」として「立ち入らせないよう」、外交ルートを通じて要求していたという。日本人にしてみれば、日本の領海や接続水域に侵入しておいて何を言っているのかと言いたくなるような、呆れた言い分だ。 一連の報道を見れば、中国がコロナ禍のなか、尖閣諸島へのプレッシャーを強めてきたとの印象は否めない。これは当節流行の「戦狼外交」のイメージ――これはこれで誤解を与える言葉なのだが――とも重なる。 だが、現実はそれほど単純な話ではない。 その説明のために目線を中国の対外強硬姿勢、とりわけ「戦狼外交」の根拠とされる南シナ海問題に移してみたい。ここは中国と東南アジア諸国・地域で領有権争いが続く海であり、日本での注目度も高い。米中衝突を象徴する海でもある。 南シナ海における中国の振る舞いについて日本人が抱くイメージは、「横暴」の一語に尽きるはずだ。自国の領有権を主張するために、「龍の舌」と呼ばれる「九段線」(9つの線)を引き、そのすべてに領有権を主張し、他の小国を圧迫。ハーグの国際常設裁判所が九段線の法的根拠を否定する裁定を出しても従わない、といったニュースを目にすれば、そうしたイメージを抱くのも当然のことだろう。 その南シナ海でも中国は最近、活動を「活発化」させている、というのが「戦狼外交」の根拠されている。 だが、ここには決定的な一つの情報が抜け落ちている。それは、なぜ中国が活動を活発化させたのか、についての情報だ』、「戦狼外交」「活発化」の背景を知りたいものだ。
・『半年で2000回以上の活動  7月28日、中国外交部の定例記者会で汪文斌報道官は、「今年上半期、南シナ海において米軍機が2000回以上の活動を行った」ことを明らかにした。数字は、中国独自のもの――であっても虚偽の数字であれば米側が反発する――ではなく、米国も認める公開情報だ。 上半期で2000回以上といえば、毎日10回以上の活動を行なっている計算になる。凄まじい頻度だ。中国が活動を「活発化」させるのも当然だ。注意すべきは、われわれが日常的に接する情報が中国の行動のみに焦点をあて、そこから米軍の動きがすっぽり抜け落ちていること、にもかかわらず、そこに何の違和感も抱かないことだ。 同じ疑問は、尖閣諸島の問題にもあてはめられるのである。 冒頭で触れた漁船のケースで考えてみたいのだが、もし当該の日本の漁船が、単に漁のために尖閣諸島に近づき海警の船に追い回されたなら、それこそ一大事だ。だが、同漁船はただの漁船ではない。政治的目的をもって尖閣諸島に近づいた活動家の船だ。 万が一、彼らに上陸でも許せば、習近平政権の面子は丸つぶれとなる。中国の海警局の動きはこの点から説明できる。それに続いて中国が日本側に「(漁船を)管理しろ」と要求したことも同じ文脈だ。根拠は、2008年の日中共同声明で、そこには〈共に努力して、東シナ海を平和・協力・友好の海とする〉との文言がある。 尖閣諸島は日本固有の領土であり、かつ国際法上も編入の手続きに瑕疵はない。だが、そのことと、海で起きた問題を正しく伝えないこととは次元の違う話だ。無用な憎しみを煽れば、最後にそれを制御できなくなり、しなくてもよい争いへとつながるからだ。 領土問題には相手があり、一筋縄では行かない。中国には中国の理屈があり、それをまとめれば分厚い一冊の本にもなり、その中身も一笑に付せるレベルではない。そして多くの中国人が自国の領有権を信じている』、「同漁船はただの漁船ではない。政治的目的をもって尖閣諸島に近づいた活動家の船だ。 万が一、彼らに上陸でも許せば、習近平政権の面子は丸つぶれとなる。中国の海警局の動きはこの点から説明できる」、初めて知った。日本のマスコミも日本政府の発表に沿った対立を煽るような報道は避け、全体像を正しく伝えるべきだ。
・『領土問題は「誰でも火がつけられる」  尖閣諸島周辺はいま、日中の間で合意のないグレーな均衡の上で、なんとか安定を保っている。そしておそらく中国にとってもそれは都合の良いバランスなのだろう。 しかし、バランスが曖昧であるがゆえに崩れやすい状態だ。互いに国民の熱狂を背負っているだけに、両者の緊張は一気に制御の効かないレベルにヒートアップする可能性さえ秘めているのだ。 つまり今回の日本の漁船の動きは、揮発性物質に火種を近づけるような行動だ。領土問題の難しさは、誰でも簡単に火がつけられることにあるのだが、一旦燃え広がった炎を消す術は誰にもないのだ。さらにやっかいなことは、かりに日本が火をつけたとして、現状では、火をつけた日本にとって有利な状況が生まれるとも考えにくいこともある。 思い出されるのは2012年、民主党政権下で行われた尖閣諸島の“国有化”である。発端は当時の石原慎太郎東京都知事が「国が守らないなら尖閣は東京都が守る」と島の買い取りに動いたことだ。 だが、結果は周知の通り。「東京都が守る」どころか、かえって中国公船の頻繁な侵入を常態化させてしまった。石原都知事は一時的に大衆人気を得ることに成功したが、代わりに日本の国益は大きく損なわれた』、「石原都知事」のスタンドプレーが火をつけたおかげで、「日本の国益は大きく損なわれた」、のは確かだ。
・『日本がそう出るなら…  漁船の話に戻せば、中国は8月5日、禁漁期が明けた16日以後「中国漁船が大量に領海に侵入する」と予告してきた。こちらは曲がりなりにも自国の漁船が尖閣諸島付近に近づかないように管理してきたが、日本がそう出るならこちらも放置する、というメッセージがうかがえる。 どうやら漁船の件は共産党が制御したようだが、もし本当に中国が大量の漁船を放置した場合はどうなるだろうか。日本にはそれを押し返すだけの物理的能力はあるだろうか。もし覚悟と戦略がないまま挑発したのだとすれば、結果として、相手に付け入るスキを提供したことになるだろう。 私はかつて、中国が北京オリンピック後に海洋進出を本格化させることを警告し、それを月刊誌『諸君!』で連載。その後『平成海防論』(新潮社)としてまとめて世に問うた。 当時から状況は悪化の一途をたどっているのだが、その原因の一つには、この(たとえば石原氏のような)「個人の利益」と「国益」が相反する問題があると考えられるのだ。 さらに尖閣の問題について、より根本的な問題として指摘されるべきは、日本の「建前と現実のギャップ」である。 尖閣諸島に関する日本の立場は「領土問題はない」というものだ。この立場は、ゆえに「尖閣諸島問題を話し合う」こと自体が矛盾となり、中国との対話の可能性を断ってしまっている。いまや、この戦線を後退させることは政治的にも難しくなっている。 ここで問題は、話し合いを拒絶していれば日本側に有利な状況が広がるのかといえば、決してそうではないことだ。中国の経済的台頭の勢いは当面衰えが見えず、資金力を背景とした中国からの圧力は日々強まるばかりだからだ。現場の海上保安庁は、中国海警局の船が年々大型化するプレッシャーとずっと対峙してきた。今後、人口減少と経済規模の縮小が予測される日本がこれに対抗できるとは考えにくいのである。 時間が経てば経つほど中国に有利な環境が整うとすれば、日本の選択肢は概ね二つ。一つは、中国と話し合うことで、もう一つは覚悟を決めて問題を激化させることだが、そもそも第一の選択肢は難しい。では、激化させるべきなのだろうか。 その選択は残念ながらアメリカの出方次第である。同盟につきものの「みはなされ」が起きれば万事休すだ。他方、日中の戦いを米軍がサポートする事態となれば、中国を押し返せるかもしれない。 だが、その場合にもリスクはつきまとう。第一に、アメリカ国民に認知されていない無名の島のためにアメリカの青年の血が流れたとしたら、その代償がどれほどのものになるのか、という視点は忘れてはならないだろう』、「尖閣諸島に関する日本の立場は「領土問題はない」というものだ」、とはいえ、「時間が経てば経つほど中国に有利な環境が整う」のであれば、頼りにならない「アメリカ」頼みにせず、「中国と話し合うこと」に切り替えるべきだ。
・『“出口”はどこなのか  一方、中国が仮に尖閣諸島へのプレッシャーを収めたとしても、それが恒久的な解決を意味しないという問題もある。いつか中国がアメリカに対抗できる力をつければ問題は再燃するからだ。 本来であれば両者が話し合い解決の道をさぐるのが一番だが、前述のように日本側にはその選択肢はない。海上での安全装置を持とうとする両国の取り組みも完全ではない。 そんななかコロナの影響で一段と強まる中国への不信感が日本にも広がり、政界には国民から「弱腰」とみられないための動きが目立ち始めた。いまのところ打ち出された対抗策は新味に欠けるが、気なるのは彼らの背中を押しているのが「いまならトランプ政権は本気で動いてくれる」との観測だという点だ。 日本はその先にどんな事態を想定し、“出口”をどこに設定しているのか――。慎重の上に慎重を重ねて行動することは、決して「弱腰」などではない』、「「いまならトランプ政権は本気で動いてくれる」との観測」は、大統領選挙は別としても、余りに他力本願だ。やはり、日本側も姿勢を転換して、「両者が話し合い解決の道をさぐる」、べきなのではなかろうか。

次に、8月31日付けプレジデント Digital「中国が「尖閣諸島」にここまでこだわり続ける理由がついに明らかに…! 不可解な"居丈高"の行動原理は」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/38364
・『日中間の諍いが絶えぬ尖閣諸島とその周辺海域。いつ、何をし出すかわからない中国の意図と行動を読む手掛かりは何か』、興味深そうだ。
・『1993年から石油輸入国に転じる  世界各地での中国の傲岸ともとれる行動が止まらない。尖閣諸島周辺に、8月2日までに111日連続で中国公船を送り込み、「中国の領海であり、日本の船は入ってくるな」と日本の実効支配を脅かし続けている。習近平国家主席の国賓来日の協議と同じ時期であったために、多くの日本国民の怒りと戸惑いを呼び、来日は無期限延期となった。 それだけではない。南シナ海のサンゴ礁を埋め立てての軍事基地化、「一帯一路」構想においては、格下の国々を相手に現地プロジェクトへの巨額融資→焦げ付き→借金のカタに港湾などを専有化……という高利貸のような手法を繰り返す。新型コロナウイルスの感染拡大に際し、他国が切望したマスクや検査キット提供をちらつかせて外交を展開する……さながら100年遅れてきた帝国主義国という体である。 そもそも尖閣諸島を含む南西諸島は日本領であり、「領土問題は存在しない」というのが日本の立場だ。1945年の敗戦とともに米軍の管理下に置かれていたが、中国が同諸島を意識し始めたのは1968年、国連アジア極東経済委員会(ECAFE)の海洋調査で、周辺の海底にイラクに匹敵する埋蔵量の石油資源が眠っている可能性を指摘されてから。70年12月、中国が尖閣諸島とセットで「南シナ海の大陸棚に主権を擁する」という主張を開始した。 1993年から石油純輸入国に転じている中国。14億人弱の人口を抱える今、他国の領土内とはいえ目の前にある豊かな資源に、半世紀にわたってこだわり続けるのも無理はない』、「中国が同諸島を意識し始めたのは1968年、国連アジア極東経済委員会(ECAFE)の海洋調査で、周辺の海底にイラクに匹敵する埋蔵量の石油資源が眠っている可能性を指摘されてから。70年12月、中国が尖閣諸島とセットで「南シナ海の大陸棚に主権を擁する」という主張を開始した」、全く一方的主張ではあるが、それなりに時間が経ったことも事実だ。
・『台湾国民を目覚めさせた「同胞に告げる書」  19世紀以降、欧米や日本の帝国主義国群に食い荒らされた被害国。その屈辱のリベンジという側面もあろうが、こうした直情的な行動パターンは、かえって周辺国のみならず世界各国の脅威・反発・警戒心を呼び覚まし、中国自身にマイナスの効果を及ぼしているように見える。それらを圧倒する国力があれば別だが、米国の存在を考えればそうとも言えまい。 なのに彼らの強面外交は、将棋の基本に例えれば「3手の読み」——こう指す、相手がこう来る、そこでこう指す——の3手のうち2手目すら想定していないようにも見えてしまう。 最上の「核心的利益」として最も細心のケアが必要だったはずの台湾に対しては、2019年1月に「一国二制度が望ましい」等を含む恫喝まがいの「台湾同胞に告げる書」を発表したことと、香港への強圧的な介入が台湾人の恐怖心・警戒心を急上昇させ、今年1月の総統選で独立派の蔡英文総統の圧勝・再選を後押ししてしまった』、慎重であるべき中国外交は、一体、どうなってしまったのだろう。
・『世界中で摩擦を引き起こした自業自得  対米関係も同様だ。中国と懇ろに付き合ってきた米国内勢力にトランプ大統領が取って代わり、貿易摩擦の範疇にとどまらぬ大国どうしの覇権争いが勃発した。そこへ今年、新型コロナウイルスのパンデミックが発生。発生初期の隠ぺい疑惑が濃厚な中で、中国のスポークスマンがなんと「米国の軍人がウイルスを持ち込んだ」可能性を示唆した。 これでトランプ大統領がさらなる対中強硬路線を進める契機をつくってしまい、今や自由主義諸国陣営と共産主義的全体主義国との「価値観の争い」という巨大な構図が出来上がりつつある。必然の流れだったといえなくもないが、米国を中心とする中国包囲網の形成は、少なくともあちこちで摩擦を頻発させた中国の自業自得ともといえる。 またオーストラリアにおける中国のスパイ活動の実態が元スパイ? によって告発され、メディアやネットの世論操作、政界・学術界への工作、台湾での世論誘導工作が白日の下にさらされたのも、オーストラリアに反中路線への明確な転換を促し、かつ他の国々にとってもわが身を振り返るタイムリーな契機となったと思われる』、「一帯一路」国の一角、チェコのNO.2の国会議長による台湾公式訪問も、「中国外交」に手痛い一撃だろう。これらは、「世界中で摩擦を引き起こした自業自得」であることは確かだ。
・『大きな契機は10年前の「中国漁船衝突事件」  国外からの干渉には極めつきに鈍感な日本でも、与党の一部議員や野党議員、左派の大手メディアが、中国に利する方向にしばしば足並みをそろえていることが、一般市民レベルでも公然と語られるようになってきた。 その大きな契機となったのはやはり10年前、2010年の尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件だったと思われる。 事件そのもののインパクトもさることながら、中国漁船船長の釈放という不可解な政治介入や海上保安官(その後辞職)がYoutube上に掲載した衝突時の動画とで、日本の世論は完全に反中モードへ。さらに2012年9月の尖閣国有化とそれを契機に中国で起きた大規模な反日デモを経て、今に至るまで日本人のマジョリティの対中感情は変わっていない。中国が尖閣諸島を、台湾、チベット、南シナ海などと同等の妥協の余地のない「核心的利益」の1つとして公式に位置づけたのは、その翌年の2013年だった。 しかし居丈高でありながら、それとは裏腹な「本当は何がやりたいんだ?」と頭をひねりたくなるちぐはぐさが、中国の言動には常につきまとう。彼らの行動原理をうまく説明できないものだろうか』、どういうことなのだろう。
・『中国の一省庁の出過ぎた振る舞い  意外にも、中国の海洋進出時の振る舞いは、2000年代前半にはさほど傍若無人ではなかった。南シナ海の近隣諸国との協力関係を進め、ベトナム・フィリピンとは資源の共同開発まで合議しており、ASEAN諸国の“中国脅威論”は一時沈静化されていたという。ところが、2000年代後半になって中国は南シナ海で実効統治を拡大し始めた。スプラトリー諸島で大規模な埋め立てを開始したのも、やはり2013年末からだ。 なぜ、中国は行動をガラリと変えたのか。共産党中枢の心変わりや気まぐれとは言えぬ部分がありそうだ。 昨年11月刊の益尾知佐子著『中国の行動原理』(中公新書刊)によれば、中国の海洋部門の主管部門となってきた「国家海洋局」が、日本でいえば省庁の「庁」レベルの存在ながら政治的な地位を急上昇させ、それが2007年ごろからの海をめぐる緊張を高めた原因となったとしている。要は、国内政治の矛盾や停滞を利用して権益を拡大させた一省庁の出過ぎた振る舞いが、かえって海をめぐる中国一国の外部環境を悪化させた、というわけだ』、「国家海洋局」の「出過ぎた振る舞いが、かえって海をめぐる中国一国の外部環境を悪化させた」、にわかには信じ難い説だ。
・『党中央の承認得ぬまま尖閣に侵入  「毛沢東時代と同様、海洋をめぐる混乱の過程では、党中央が相矛盾ずる二つの対外方針を採用していた。国内の実務担当者は、どちらを優先すべきかという問題で混乱した。穏健派であった胡錦濤と党中央が、国内的批判を受けて判断に行き詰まり、凝集力を低下させたため、実務部隊は独自行動を強め、自己利益拡大のために海上行動を過激化させた。それが国家海洋局であり、胡錦濤政権(2002~2012年)末期にはかなりの注目を集めた」(同書より) 2008年12月、国家海洋局傘下の中国海警局の海洋調査船2隻が初めて尖閣諸島の領海に侵入。5月に来日したばかりの胡錦濤総書記(当時)はじめ党中央の承認を得ぬままの行動だったという。「弱い指導者と認識されていた胡錦濤政権は、(中略)国際的な係争の存在に目をつぶり、これらの海域は自国の者という前提に立って、実務部隊が力によって海域の実効支配の拡大を図るのを容認した」(同書)。“第2の海軍”ともいわれる中国海警局の船は、2012年の尖閣国有化の後も、たびたび尖閣諸島への領海侵入を行うようになった』、確かに始めのうちは、「国家海洋局」の暴走といった面はあったのかも知れないが、「尖閣国有化の後」の反日大キャンペーンは、「党中央」の決定の筈だ。
・『「行動がちぐはぐで指導者の意図が推し量りにくい」  こうしたいわば“頭”と“身体”の不一致は、中国という大国ではしばしば起こってきたようだ。前出書によれば、「これまで中国の組織については、組織間の連携、特に国家系統と軍系統のそれがきわめて弱く、行動がちぐはぐで指導者の意図が推し量りにくい、という弱点が指摘されていた」という。 2013年に国家主席の座に就いた習近平は、海上行動の統率権を強引に党中央に引き戻し、国家海洋局から中国海警局を取り上げ、大幅な組織改編で国家海洋局を実質的に解体したという。ただ、ガバナンスの強化を推し進めてきた習近平体制が、こうしたちぐはぐさを克服できたとは言い切れないのは、昨今の振る舞いからも推測できる。 尖閣諸島の海域において、軍事上のバランスが中国側に傾いたとの米国のシンクタンクの報告すらなされている今、最大限の警戒と準備は怠れない。が、中国の傲岸な振る舞いに相対するには、見えざる内部の力学を常に念頭に置き、「それ、ほんとに習近平や党中央の本心なのか?」を的確に探り当てられる人材が、政府内、在野を問わず必須であろう』、「習近平は、海上行動の統率権を強引に党中央に引き戻し、国家海洋局から中国海警局を取り上げ、大幅な組織改編で国家海洋局を実質的に解体」、しかし、その後も「海洋局」の警備艇が我がもの顔で振舞っており、引き続き緊張状態にある。

第三に、9月10日付けAERAdotが掲載したフリーの軍事ジャーナリストの田岡俊次氏による「「もし尖閣戦闘」勃発したら敗戦濃厚」 制空権握れず「水陸機動団は海上で全滅も」〈AERA〉」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/aera/2020090900028.html?page=1
・『最長政権が終わりを迎える。親米のイメージが強い安倍政権だったが、実は中国との関係も重視していたという。AERA 2020年9月14日号では、軍事ジャーナリストの田岡俊次さんが安倍政権の防衛・安保政策を振り返った。 退陣表明した安倍晋三首相は憲法改正への執着や集団的自衛権行使に関する憲法解釈の強引な変更、トランプ米大統領への露骨な機嫌取りなどから「対米追従一筋のタカ派」とのイメージが強いが、実は中国との関係を重視し、次々と行動してきた。 2006年9月26日に最初に首相に就任した直後、10月8日にまず北京に飛び、胡錦濤主席らと会談し「戦略的互恵関係」の構築で合意。日中の経済関係は急速に拡大したが、翌07年9月に持病のため辞任。民主党の野田佳彦内閣が尖閣諸島を国有地化したことなどで日中関係は一挙に険悪化したものの、12年12月に首相に返り咲くと中国要人と親交の厚い福田康夫元首相らを頼りに日中関係修復をはかり、14年11月10日、北京で習近平主席と約3年ぶりの日中首脳会談にこぎつけた。 合意文書では「双方は尖閣諸島等東シナ海の海域において近年緊張状態が生じていることについて異なる見解を有していることを認識」し、戦略的互恵関係の発展を目指すとした。両方のメンツを保つためのあやふやな言辞だが、「問題は棚上げにして和解をはかる」という外交政策の一致は明白だ。 その後安倍首相は中国の「一帯一路」構想への賛同を何度も表明し、今年には習近平主席を国賓として招いて日中関係が完全に軌道に乗ったことを示す計画だったが、新型コロナウイルスの感染拡大で頓挫した』、「安部首相」が「実は中国との関係を重視し、次々と行動してきた」、「「一帯一路」構想への賛同を何度も表明」、確かに言われてみればその通りなのだろう。
・『「尖閣戦闘」は敗北濃厚  その半面、両国は競って巡視船を増強し、日本は陸上自衛隊「水陸機動団」を18年に創設。垂直離着陸輸送機「オスプレイ」や水陸両用装甲車、軽空母、地対艦ミサイルなどを配備して日中戦争に備えようとしている。首尾一貫しないようにもみえるが、近隣諸国との友好を深めて紛争を避けつつ、防衛力を示して他国による安易な攻撃を防止するのは安全保障対策の定石とも言える。 この場合、もし武力衝突になればどうするか、も考えておく必要がある。尖閣諸島で戦闘になれば日本の勝算は低い。航空自衛隊の戦闘機約300機に対し中国空軍は戦闘機・攻撃機約1700機。操縦士の飛行訓練は年間約150時間で、航空自衛隊と等しい。中国にとって最重要の東シナ海を担当する東部戦区には、台湾空軍(約400機)と同等以上の航空戦力が配備され、米国のF15などに匹敵し戦闘の主力となる「第4世代機」は約300機と思われる。 日本は那覇基地にF15を約40機配備しており、九州の基地から空中給油によってさらに20機ほど、計約60機が出せそうだ。早期警戒機の能力や電子技術では日本側が優位としても、5対1の劣勢を補えるかは疑問だ。航空優勢(制空権)が相手にあれば、輸送艦やオスプレイなどは容易な標的となり、水陸機動団は海上で全滅しかねない。仮に自衛隊が尖閣に上陸できても、補給が遮断されれば餓死か降伏だ。もし自衛隊が勝ったとしても、それは真珠湾攻撃で対米戦争が始まったと同様、日中戦争の第一幕にすぎない。 米中の対立は今後も続くとしても、98基のICBMを持つ中国と米国が全面戦争になれば米中は共倒れ、日本も惨禍を免れない。安倍首相の後任者は、前首相が唱えた「戦略的互恵関係」の継承につとめることが得策と思われる』、「早期警戒機の能力や電子技術では日本側が優位としても、5対1の劣勢を補えるかは疑問だ」、これでは、「「戦略的互恵関係」の継承につとめることが得策」、全く同感である。
タグ:今回の日本の漁船の動きは、揮発性物質に火種を近づけるような行動 大きな契機は10年前の「中国漁船衝突事件」 チェコのNO.2の国会議長による台湾公式訪問 (その5)(習近平が日米の動きに焦り…中国が尖閣侵入を続ける「本当の理由」、中国が「尖閣諸島」にここまでこだわり続ける理由がついに明らかに…! 不可解な"居丈高"の行動原理は、田岡俊次氏「もし尖閣戦闘」勃発したら敗戦濃厚」 制空権握れず「水陸機動団は海上で全滅も」〈AERA〉) 自国の領有権を主張するために、「龍の舌」と呼ばれる「九段線」(9つの線)を引き、そのすべてに領有権を主張し、他の小国を圧迫。ハーグの国際常設裁判所が九段線の法的根拠を否定する裁定を出しても従わない 「戦略的互恵関係」の継承につとめることが得策 早期警戒機の能力や電子技術では日本側が優位としても、5対1の劣勢を補えるかは疑問だ 「一帯一路」構想への賛同を何度も表明 「もし尖閣戦闘」勃発したら敗戦濃厚」 制空権握れず「水陸機動団は海上で全滅も」〈AERA〉 田岡俊次 その後も「海洋局」の警備艇が我がもの顔で振舞っており、引き続き緊張状態 「行動がちぐはぐで指導者の意図が推し量りにくい」 習近平は、海上行動の統率権を強引に党中央に引き戻し、国家海洋局から中国海警局を取り上げ、大幅な組織改編で国家海洋局を実質的に解体 確かに始めのうちは、「国家海洋局」の暴走といった面はあったのかも知れないが、「尖閣国有化の後」の反日大キャンペーンは、「党中央」の決定の筈 党中央の承認得ぬまま尖閣に侵入 出過ぎた振る舞いが、かえって海をめぐる中国一国の外部環境を悪化させた 中国の一省庁の出過ぎた振る舞い 台湾国民を目覚めさせた「同胞に告げる書」 1993年から石油輸入国に転じる 「中国が「尖閣諸島」にここまでこだわり続ける理由がついに明らかに…! 不可解な"居丈高"の行動原理は」 プレジデント Digital 日本側も姿勢を転換して、「両者が話し合い解決の道をさぐる」、べき 余りに他力本願 「いまならトランプ政権は本気で動いてくれる」との観測 “出口”はどこなのか 世界中で摩擦を引き起こした自業自得 半年で2000回以上の活動 結果は周知の通り。「東京都が守る」どころか、かえって中国公船の頻繁な侵入を常態化させてしまった。石原都知事は一時的に大衆人気を得ることに成功したが、代わりに日本の国益は大きく損なわれた 石原慎太郎東京都知事が「国が守らないなら尖閣は東京都が守る」と島の買い取りに動いた 領土問題は「誰でも火がつけられる」 同漁船はただの漁船ではない。政治的目的をもって尖閣諸島に近づいた活動家の船だ 戦狼外交 中国が「周辺海域での日本漁船の操業は『領海侵入』だ」として「立ち入らせないよう」、外交ルートを通じて要求 中国海警局の船が尖閣諸島付近の接続水域を連続して100日以上航行 南シナ海で起きていること 国家海洋局 「習近平が日米の動きに焦り…中国が尖閣侵入を続ける「本当の理由」」 2008年の日中共同声明で、そこには〈共に努力して、東シナ海を平和・協力・友好の海とする〉との文言 万が一、彼らに上陸でも許せば、習近平政権の面子は丸つぶれとなる。中国の海警局の動きはこの点から説明できる。それに続いて中国が日本側に「(漁船を)管理しろ」と要求したことも同じ文脈だ AERAdot 頼りにならない「アメリカ」頼みにせず、「中国と話し合うこと」に切り替えるべきだ 日本がそう出るなら… 「尖閣戦闘」は敗北濃厚 時間が経てば経つほど中国に有利な環境が整う 「安部首相」が「実は中国との関係を重視し、次々と行動してきた 現代ビジネス 尖閣諸島に関する日本の立場は「領土問題はない」というものだ 尖閣諸島問題
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異次元緩和政策(その34)(「やめておけ マイナス金利」 欧州金融界 逆効果示唆する調査、コロナが拍車かける財政ファイナンスの「今そこにある弊害」、「誰が首相になっても解決策はない」出口のない異次元緩和の末路 菅政権は「火中の栗を拾う内閣」) [経済政策]

異次元緩和政策については、8月5日に取上げた。今日は、(その34)(「やめておけ マイナス金利」 欧州金融界 逆効果示唆する調査、コロナが拍車かける財政ファイナンスの「今そこにある弊害」、「誰が首相になっても解決策はない」出口のない異次元緩和の末路 菅政権は「火中の栗を拾う内閣」)である。三番目の記事は必読である。なお、タイトル冒頭の「日銀の」はカットした。

先ずは、9月20日付けNewsweek日本版がロイター記事を転載した「「やめておけ、マイナス金利」 欧州金融界、逆効果示唆する調査」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2020/09/post-94486_1.php
・『欧州中央銀行(ECB)がマイナス金利政策を採用して6年。同様の政策に突き進もうと考えている中央銀行に対し、行動ファイナンスの権威らが発しているメッセージはこうだ。「やめておけ。その価値はない」 現在、政策金利がゼロ以上、0.25%以下なのは米国、英国、ノルウェー、オーストラリア、ニュージーランド、イスラエル、カナダ。従ってこれら諸国の中から、新型コロナウイルス蔓延による景気悪化に対処しようとマイナス金利政策を実施する中銀が1、2行出てくる可能性がある。 英国の短期金融市場は、イングランド銀行(中銀)が来年、政策金利をマイナスに引き下げることを織り込んでおり、ニュ-ジーランド準備銀行(中銀)はすでに銀行に対し、マイナス金利に備えるよう求めている。 しかし新たな研究により、前々から一部の中銀当局者が恐れていたことが裏付けられたようだ。つまりマイナス金利は効果がないばかりか、逆効果かもしれない。 イスラエルの国家債務管理部門を統括するリオル・ダビドプル氏は「もっと資金を借り入れてリスク性資産への投資を増やすよう、人々の背中を押したいのであれば、マイナス金利よりもゼロ金利の方がむしろ効率的だ」と話す。 ダビドプル氏は先月、行動・実験経済学ジャーナル誌で共著の論文を公表した。それによると、リスクを取る行動と資金を借り入れる行動を促す効果が最も強く表れたのは、金利が1%から0%に下がった時だった。 米国やオーストラリアの中銀が今年実施した利下げは、おおむねこの線に沿っている。 ダビドプル氏らの調査は、マイナス金利への消費者の反応を調べる貴重なものだ。経済学を学ぶ大学生205人を4グループに分け、各々1万シェケル(2921ドル、約30万6700円)を与えて、無リスクの銀行預金と株式などリスク性資産に振り分けさせる。 当初の金利設定はプラス2%からマイナス1%の範囲でグループごとに異なるが、いずれも1%ポイントの利下げを行う。利下げ後、参加者は投資のためにいくら借り入れたいかを聞かれる。 ダビドプル氏によると、金利がマイナス1%に下がったグループは、借り入れをむしろ1.75%縮小したのに対し、金利が0%に下がったグループは20%増やした。 同氏は「0%という数字自体が、人々に特別な意味を持った」と述べ、金利がマイナス圏に入った途端にレバレッジ(投資のための借り入れ)は下がると説明した。 ECBの元エコノミストで現在はソシエテ・ジェネラルで働くアナトリ・アネンコフ氏はこの理由について、マイナス金利が「一種の緊急事態」を想起させるからだと言う。 「人々はお金を使うのではなく貯蓄するかもしれないので、望むような効果が得られない可能性がある」 実際にユーロ圏の貯蓄率は、2014年にマイナス金利政策が実施された後に一瞬下がったが、その後はマイナス金利が深掘りされても上昇し続けた』、「リスクを取る行動と資金を借り入れる行動を促す効果が最も強く表れたのは、金利が1%から0%に下がった時だった」、との「マイナス金利」否定論が出てきたとは興味深い。
・『ゼロに戻したスウェーデン  ユーロ圏と日本はマイナス金利を採用して何年にもなるが、インフレ率も成長率も回復していない、という指摘は以前から批判派の間で出ていた。 スウェーデンのルンド大学・経済経営学部のフレデリク・N・G・アンデション准教授は、同国経済ではマイナス金利のコストが便益を上回ったようだと言う。 同国中銀は昨年、主要政策金利を引き上げて0%に戻した。 アンデション氏はマイナス金利問題を詳細に研究した。金利がマイナスに下がった時、借り入れは確かに増えたが、資金は主に住宅投資に回り、不動産市場と家計債務を増大させた。 「お金を借り、自動車か何か、国内総生産(GDP)が増えるものを買うといった状況は見られなかった。住宅を買うためにお金を借りても景気刺激効果は得られない」 同氏によると、企業オーナーも投資を控えた。これは、マイナス金利が「危機の兆候」と受け止められる、というアネンコフ氏の指摘と呼応する』、「スウェーデン」では「マイナス金利のコストが便益を上回った」ので「ゼロに戻した」、という実例まで出てきたようだ。
・『銀行は手数料を課すか  ドイツのミュンスター大学がボランティア「投資家」300人超を対象に実施した実験では、銀行預金のような無リスク金利がマイナスになった時、リスクを取る行動に変化が生じる可能性が高いことが分かった。 Hannes Mohrschladt準教授によると、マイナス金利政策下で銀行が預金者に手数料を課すことはまれだが、ECBが追加利下げを行えば起こり得る。 ただ準教授は、利下げが「株式と不動産市場の価格をさらに押し上げる可能性」をECBは警戒すべきだと言う。 ルンド大のアンデション氏は、エビデンスを踏まえると、成長を押し上げるために中銀がマイナス金利政策を採用する必要はなさそうだと話す。「私なら、やめておけと言う。その価値はないと」』、ECBや日銀はどうするのだろう。

次に、10月1日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したBNPパリバ証券経済調査本部長チーフエコノミストの河野龍太郎氏による「コロナが拍車かける財政ファイナンスの「今そこにある弊害」」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/249897
・『危機下では容認される財政ファイナンス インフレ率も高まらず  欧州を代表する知識人のイワン・クラステフは、パンデミック危機は我々がこれまで不可能と考えていたことを可能にした、と論じる。例えば、反移民を掲げる欧州の右派ポピュリストが夢見たよりも、はるかに完全な国境の封鎖を一時的にせよ可能にした。 これになぞらえて言えば、MMT(現代貨幣理論)論者が夢見た中央銀行の財政ファイナンス(国債購入)による大規模財政以上のものを先進各国が実施した。さらに言えば、それでもインフレ率は低いままである。 日本を除くと、今回のパンデミック危機で、中銀の財政ファイナンスによる大規模財政を問題視する人はあまり多くはない。各国ともマクロ経済が大幅に落ち込み、家計の所得サポートや企業の資金繰り支援は不可欠だと多くの人は考えている。 追加財政に伴い大量の国債が発行されており、中央銀行が何もせず、長期金利が跳ね上がって、資本市場の不安定化でマクロ経済に悪影響が及べば大問題である。これを避けるには、財政ファイナンスが不可欠である。 また、各国とも需給ギャップが大幅に悪化し、物価にも大きな下押し圧力が加わっている。それ故、中央銀行がゼロ金利政策を行うだけでなく、大量の国債購入で長期金利を低く抑え込むことは、マクロ安定化政策の観点からも整合的である。 しかし、日本では財政ファイナンスを大きな問題と受け止める人が少なくない。何が最大の問題なのか。それが本稿のテーマである』、河野氏はどうみているのだろう。
・『日銀の長短金利操作政策が政府の財政膨張を支える皮肉  実のところ、制度的には、日本銀行は財政ファイナンスとは、最も距離を置いているともいえる。なぜなら、2016年9月にYCC(イールドカーブ・コントロール、長短金利操作)を導入し、10年金利を操作目標のゼロ%程度に誘導していたからである。 YCCを導入したのは、財政ファイナンスのためではなく、インフレを醸成することが目的だった。実効下限制約に直面しているが、グローバル経済が持ち直し、海外の長期金利が上昇した際、国内の長期金利をゼロ%に抑え込めば、円安進展など景気刺激効果を得られる。 政府の財政政策にかかわらず、長期金利に上昇圧力が加われば、国債購入を積極化させ、逆に低下圧力が強まれば、国債購入を減額する。財政と関わりなく、政治的に独立した中央銀行が長期金利目標を運営する。 しかし、逆説的だが、このYCCこそが、暗黙裡であるにせよ金融政策の公的債務管理への統合を可能にしている。フォワードガイダンス効果を最大限発揮させるスキームという点では評価できるが、大規模な追加財政が繰り返されるようになれば、マネー・プリンティングの装置になりかねないと、導入当時、筆者は懸念した。 振り返れば、過去数年、経済が完全雇用に到達しても、先行きが不安だからといって、消費増税の先送りが繰り返された。また、景気が足踏みすれば、赤字国債の増発で追加財政が打たれ、景気が良い時も赤字国債を発行するのではないと言い訳し、増えた税収を追加財政に振り向けた。 本来、こうした政治的な財政膨張圧力をけん制するのが、長期金利の上昇である。しかし、政治的に独立した中央銀行がインフレ目標の達成のために、YCCを通じ国債を大量購入するから、政治的な財政膨張圧力への歯止め効果がなくなった。これが筆者の「逆説的」の意味するところである。 もちろん、現在は、パンデミック危機であるのだから、追加財政が繰り返されるのはやむを得ない。また、パンデミック危機でなくても、経済が不況に陥れば、金融政策が実効下限制約に直面しているのだから、マクロ安定化政策として追加財政が発動されるのもやむを得ない。 マクロ経済の平準化は重要である。問題なのは、完全雇用となっても、長期金利が低く抑え込まれているため、追加財政が繰り返されていることである。また、同じように、パンデミック危機だといって、何でもありの政策が実行され、繰り返されることも問題である』、「YCCを導入したのは、財政ファイナンスのためではなく、インフレを醸成することが目的だった」、のは事実であるが、結果的には「財政ファイナンス」をしているのと同じだ。
・『超低金利と追加財政継続が低採算の企業を生き残らせ潜在成長率が低下  財政健全化や金融正常化を標榜する人は、一般に、財政ファイナンスが続けられると、いずれ高率のインフレが訪れると懸念する。 ただ、冒頭で論じた通り、今回のパンデミック危機で、需給ギャップは大幅に落ち込んでいる。また、企業は数年に一度繰り返す大きな経済危機に備え、どうやら今後も無形資産投資や人的資本投資を抑え込み、貯蓄を続けるようである。政府の追加財政は、企業の貯蓄増加の一部を吸収する程度であって、インフレが容易に上昇するとは思われない。 インフレが上昇しないのなら、中銀の財政ファイナンスで大規模な追加財政を繰り返しても、問題ないのではないか、とMMT論者から反論されそうである。「財政健全化を訴える人々は、30年間、狼が来ると繰り返したが、結局、やってこなかった」と。 財政ファイナンスを続けると、高率のインフレが訪れるから問題という主流派経済学の主張を繰り返すだけでは、MMT論者の主張に打ち負かされるのではないかと、筆者は心配している。 インフレという狼はなかなかやって来ないが、別の狼は既に訪れており、さらにもう1匹、別の狼が我々の近くをうろついているのではないだろうか。既に訪れている狼とは潜在成長率の低下であり、近くをうろついている別の狼とは金融システムの不安定化である。 まず、好不況にかかわらず、インフレ率が低いことを理由に、景気循環を超えて、超低金利政策が固定化され、追加財政が繰り返されると、どうなるか。大盤振る舞いのマクロ安定化政策なしには存続できない低採算の企業や投資プロジェクトばかりが増えていく。 つまり、生産性上昇率は悪化し、潜在成長率が低下する。過去10年あまり、成長戦略が遅々として進んでいないのは事実だが、その間、反・成長戦略が取られたわけではなかった。 にもかかわらず、潜在成長率の低下が続いているのは、本来、資源配分の効率性を追求すべき完全雇用局面においても、財政ファイナンス、すなわち超金融緩和政策が固定化され、追加財政が繰り返されてきたからではないのか。過度なマクロ安定化政策が潜在成長率を低下させているのである』、「過度なマクロ安定化政策が潜在成長率を低下させている」、その通りだ。ただ、「インフレという狼はなかなかやって来ない」、については、円が信認を失って、暴落すれば、「長期金利」の暴騰や輸入「インフレ」がやってくる筈だ。これについては、もう少しうしろで述べているようだ。
・『長期金利上昇抑制のために国債購入する日銀 公的債務膨張続き高まる金融システムへの懸念  潜在成長率を低下させているのは、資源配分のゆがみだけではない。所得分配のゆがみも潜在成長率の低下をもたらしている可能性がある。これまでの議論は、超金融緩和の固定化が財政膨張を助長したということだった。 それでは、なぜ超金融緩和が固定化されたのか。内需主導の景気回復が期待できないため、輸出セクターをサポートすべく、円高回避を最重要課題に、完全雇用となっても超金融緩和が続けられたのである。 円安のサポートで、輸出が増えると生産が増え、企業業績が改善し、最後には雇用者所得の増加とともに個人消費の回復にも火が付くかもしれない。しかし、である。過去4半世紀、個人消費にまで回復が及んだケースは一度もなかったというのが実態である。 本来、完全雇用になれば、金融市場を通じ、企業業績の改善が家計にも及んでくるはずである。企業部門の回復の恩恵が家計に伝わるのは、雇用を通じたものだけではない。市場金利が上昇すれば、家計の利子所得が増える。さらに市場金利の上昇が円高傾向をもたらし、輸入物価の下落を通じて、家計の実質購買力を改善させる。 しかし、完全雇用になっても、円高を恐れ超金融緩和が固定化された。一貫して家計を痛めつける政策を続けているのだから、個人消費が回復しなかったのも当然であろう。一方で、優遇された輸出部門は、人的資本投資も無形資産投資も怠り、キャッシュフローをため込んできた。 このように超金融緩和政策が固定化され、追加財政が繰り返される過程で、潜在成長率の低下という狼が既に日本経済に深く入り込んでいた。潜在成長率の低下の過程では、インフレ率はむしろ低下した。 そして、公的債務が未曽有の水準まで膨張することは、金融システムの不安定化というもう1匹の狼を引き寄せた。企業部門、あるいは家計部門であっても過剰債務が膨らめば、金融システムを不安定化させる。このことは、公的部門であったとしても変わらない。 まず、大量の国債発行が続けば、インフレが上昇しなくても、リスクプレミアムが上昇し、長期金利に上昇圧力がかかる。それが顕在化し、長期金利が急騰すれば、金融市場が動揺し、マクロ経済が不安定化する。 それ故、日本銀行は未然に防ぐべく、金利政策を駆使し、長期国債を大量に購入する。ただ、長期国債と交換するのは日銀当座預金であり、統合政府の負債は急激に短期化し、財務構造が不安定化する。 厄介なのは、赤字国債を幾ら発行しても日銀が長期金利を抑え込むとなると、財政コストの意識は希薄化し、ますます財政の中銀依存が強まることである。我々は既にこの過程にあると考えられる。 さらなる問題は、この悪循環によって、前述した通り、潜在成長率は一段の低下が続くことである。日銀の国債管理がうまくいけばいくほど、危機のマグマがため込まれ、制御不可能な公的債務の膨張に向かう』、その通りだ。
・『政府と日銀は財政政策と金融政策の一体化認め財政規律回復の枠組み提示を  これまで多くの人が最も懸念していたインフレという狼はなお不在だが、潜在成長率の低下という狼は既に長年にわたって日本経済を疲弊させ、それが足元のインフレをむしろ低下させたことで、我々は安心して公的債務の膨張を甘受してきた。 また、金融システムの不安定化というもう1匹の狼を日銀が抑え込もうとすること自体も、人々の財政コストに対する意識を希薄化させ、さらなる公的債務の膨張を助長し、潜在成長率の低下という狼をますます勢いづかせる。 もちろん、高率のインフレが訪れるリスクもゼロとはいえない。例えば、大幅な通貨安が訪れた場合、金融政策は既に公的債務に割り当てられているから、それを止められず、円安とインフレのスパイラルが進むリスクはある。 仮に高率のインフレを抑え込むために、日銀が利上げを行うと、未曽有の公的債務を抱えているため、財政の持続可能性が著しく脅かされるとともに、金融市場も大きく動揺し、マクロ経済が不安定化する。物価安定と金融システムの安定という中央銀行の2大目標の間で齟齬(そご)が生じる。 この時、我々は物価安定より金融システムやマクロ経済の安定を優先せざるを得ない。優先されるといっても、高率のインフレの下で達成されるレベルの金融システムやマクロ経済の安定性は、我々が慣れ親しんできた安定に比べるとはるかに質の劣ったものとなるであろう。 念のために言っておくと、仮に日本銀行がここで論じた財政ファイナンスの弊害を強く認識しても、現在の統治機構の枠組みの中では、パンデミック危機が解消した暁においても、公的債務が既に大幅に膨張しているため、長期国債の購入を減らし、長期金利の上昇を受け入れるわけにはいかないと思われる。 そもそも低いインフレ率と低い成長率の解消が容易ではないため、インフレーション・ターゲットの下では、金融引き締めを正当化するのは難しい。その結果、財政の中銀依存はますます進み、いや応なしに公的債務管理に組み込まれる。 筆者の見立てでは、もはや良い悪いの問題ではなく、日銀は事実上の公的債務管理に組み込まれており、そこから逃れることはまず不可能だろう。 この期に及んで、日銀首脳が財政ファイナンスではない、と繰り返すのは、建前上の問題だけでなく、問題のレベルが、中央銀行単独で解決可能な次元をはるかに超えているからではないのか。異次元の財政ファイナンスの領域に入っている。 筆者自身は、政府と中央銀行が、財政政策と金融政策の一体運営が事実上始まっていることを認めた上で、その副作用として弛緩(しかん)した財政規律を回復させる枠組みを作ることが不可欠だと考えている。 そこに至るまでの第一歩として、財政ファイナンスによって膨らんだ公的債務の最大の問題が潜在成長率の低下と金融システムの不安定化であり、特に前者については既に顕在化していることを我々は認識しなければならない。 公的債務膨張の弊害は高率のインフレだと繰り返していると、意図せずしてMMT理論を実践し、制御不能な公的債務を抱えることになりかねない』、「日銀は事実上の公的債務管理に組み込まれており、そこから逃れることはまず不可能だろう」、同感である。「弛緩した財政規律を回復させる枠組みを作ることが不可欠」、その通りだが、実際には難しい課題だ。

第三に、10月1日付けPRESIDENT Onlineが掲載したフジマキ・ジャパン代表取締役の藤巻 健史氏による「「誰が首相になっても解決策はない」出口のない異次元緩和の末路 菅政権は「火中の栗を拾う内閣」」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/39142
・『日本の財政は火の車だ。モルガン銀行(現・JPモルガン・チェース銀行)元日本代表の藤巻健史氏は「自民党総裁選が行われたが、政治家は誰も財政問題を語ろうとしなかった。無責任にも、臭いものには蓋をしているようだ」という――』、財務大臣経験者の岸田氏までが「財政問題を語ろうとしなかった」のにはガッカリした。
・『財政問題を語る政治家はどこにもいなかった  将来の首相を決める自民党総裁選で、どうして、どの候補者も、現在の日本の財政危機、日銀危機に触れなかったのだろうか? コロナとともに、最大の国難であると思うのだが。 臭いものには蓋か? 国民の目を逸らすためか? 回避不可能だから、国民には知らしむべからず、なのか? それとも政治家が経済・金融をわかっていないせいか? はたまた能天気のせいだろうか? 安倍晋三前首相の病状がどの程度だか知る由もないが、首相の座を降りたのは、年末にかけて行われる来年度の予算編成に向けてストレスが極限化したせいではと邪推している。 総裁就任前に出演したテレビ番組で菅総理が「行政改革を徹底して行った上で、消費税は引き上げざるを得ない」と発言した。一晩で撤回したものの、官房長官として安倍氏のそばにいて、財政の厳しさを痛感したが故ではなかろうか? 麻生太郎財務大臣や麻生派の河野太郎氏が出馬しなかったのも、財務省から、財政の厳しさについて十分なレクチャーを受けていたので、貧乏くじを引くのを回避したせいではなかろうか?(賢明だと思う) それほどに財政は逼迫ひっぱくしている』、「菅総理が・・・一晩で撤回した」、のもガッカリだ。
・『菅首相発言が一晩で一変したのも理解できる  そう考えると、菅内閣は、「借金踏み倒し」を実行する政権であり、火中の栗を拾う政権となると考える。 「消費税は、いずれは上げなければならない」が「安倍首相も今後10年ぐらい上げる必要はないと述べている。私も同じ考えだ」と菅首相発言が一晩で一変したのも理解できる。再スタートを切る前の政権の首相発言は、反故になっても、誰も文句を言わないからだ。 日本は、他国と違い、平時から借金を積み上げ、財政ファイナンスを行ってきた。それが故に、現在、世界ダントツの財政赤字国家であり、中央銀行は世界ダントツのメタボになってしまっている。 家庭であれ、国であれ、借金は、満期日には返さねばならない。返さなければ家庭は自己破産で、国家はデフォルトだ。したがって借金が大きくなると、家庭であれ、国であれ、資金繰りは自転車操業となる。 新しい借金と満期が来た借金の返済原資を調達しなければならないからだ。満期日に返したお金を再度貸してくれる人もいるだろうが、貸す、貸さないは貸主の権利ではあるが、義務ではない』、「国家はデフォルトだ」とあるが、ハイパーインフレで債務負担を軽減することも可能だ。
・『増税議論を避け、先送りを続けた自民党政権  ここで国と家計が違うところは、国には、巨大になった借金を問答無用で貸してくれる日銀がいることだ。それが2013年4月から始めた異次元緩和である。 これは国の借金を中央銀行が紙幣を刷ってファイナンスするという意味で、過去ハイパーインフレを引き起こした財政ファイナンスそのものだ。まさに財政破綻の先送り政策だった。これ故に日本は、財政赤字の巨大化とともに日銀のバランスシートもメタボになり、両者とも世界最大になってしまったのだ。 ちなみに、中央銀行が日銀のように紙幣を刷る権限が無いユーロ圏諸国は、中央銀行のバランスシートは拡大しないが、財政破綻を先送りできないので、財政破綻の恐怖につねにおびえている。 「財政赤字」「中央銀行のメタボぶり」は両者とも対GDP(国内総生産)比で測る。税収は、GDPにほぼ比例して増えるからだ。したがって「対GDP比の累積財政字額」とは「税金で財政赤字を解消できる難易度ランキング」であり、「対GDP比の中央銀行資産規模」とは「(金融引き締め時に必要な)税金で中央銀行バランスシートを縮小できる難易度ランキング」である。 要は、財政再建と、金融政策の機能回復には、日本は、世界ダントツの大増税が必要になったということなのだ』、「中央銀行が日銀のように紙幣を刷る権限が無いユーロ圏諸国は、中央銀行のバランスシートは拡大しない」、というのは筆者の誤解で、資産規模は膨らんでいる。「財政再建と、金融政策の機能回復には、日本は、世界ダントツの大増税が必要になった」、その通りだ。
・『かつて財政危機は官民で共有されていた  第2次安倍政権発足以前は、それでも、将来の大増税を回避しようとする試みは行われていた。1997年には橋本龍太郎内閣が「財政構造改革法案」を成立させた。第2条に「財政が極めて危機的な状況にある」と記されたこの法案により、橋本内閣は、財政再建への意欲を示した。 ただ、残念ながら、この年は三洋証券・山一証券・北海道拓殖銀行等が破綻し、財政再建どころではないと、この法案は骨抜きになり、後継の小渕恵三内閣の時、実質廃案となってしまった。 民主党の野田佳彦政権は、東日本大震災に対し、「復興税」という臨時増税を行い、その財源を明確にした。借金が大きくなることへの恐怖、自制心はまだ存在していたのだ。財政危機に対しての警戒警報記事も頻繁に新聞紙面をにぎわした。 ところが第2次安倍内閣の「異次元緩和」発動で、その財政再建の試みはぶち壊しとなった。通常、財政赤字が拡大すると長期金利が上昇し、長期国債市場が「政治家さんよ、そんなにお金をばらまくと長期金利が上昇して景気が失速しますよ」と、大きな警戒警報を鳴らす。しかし異次元緩和で、長期国債の爆買いをするから、いくらばらまいても警戒警報が鳴らない』、確かに「異次元緩和」以降の安倍政権の財政ばらまきぶりは酷かった。
・『「異次元緩和」の発動で失われた危機感  以前は、財政法第5条で本来発行できない赤字国債を、特別公債法案という財政法の上位法を毎年、成立させ、赤字国債を発行して、急場をしのいでいた。その法案を通すために毎年、与党は首相の首を差し出していたが、今では、一度、この法案を通せば5年間、赤字国債を発行できるようにした。 これでは赤字国債削減への首相のモチベーションは落ちる(第2次安倍政権が長期政権になり得たのも、これが主因だと私は考えている)。 又、「統合政府で考えると、財政は健全だ」という財政楽観論者の存在や「借金を拡大しても財政出動をすべきだ」等の財政出動派の存在が赤字を極大化させてしまった。この結果、第2次安倍政権は、尋常な方法での財政再建を放棄してしまったといえる』、「第2次安倍政権は、尋常な方法での財政再建を放棄してしまった」、長続きの秘訣のようだ。
・『「誰が首相になっても解決策はない。だから臭いものには蓋」  巨額になった借金を解消する手法は「大増税」か「借金踏み倒し」しかないが、大増税を放棄すれば、「借金踏み倒し」しか道はない。 「借金踏み倒し」は歴史的には、しばしば起こる。鎌倉時代・江戸時代は「徳政令」「棄捐令」だったが、今の世の中では、さすがにこのような過激な政策はとれないだろう。となると、実質、「借金踏み倒し策」であるハイパーインフレ策しかない。 1000兆円超の借金は、タクシー初乗り1兆円時代には、実質無きに等しくなるからだ。インフレとは債権者(国民)から債務者(国)への富の移行という意味で、大増税と同じである。したがってハイパーインフレとは国にとっては究極の財政再建策だが、国民にとっては地獄となる。 菅政権は安倍政権を継承するという。実は誰が総理になっても、この機に至っては、継承せざるを得ない。異次元緩和をやめると新首相が発言したとたんにXデーが到来するからだ。 年間発行国債の7~8割をも買っている日銀が購入をやめる(=異次元緩和をやめる)と、長期国債の値段は急落(=長期金利は急騰)する。政府は高い金利では国債発行などできないから予算が組めない。資金繰り倒産だ。莫大な国債を保有する日銀も巨額な評価損を抱え、債務超過になり円は暴落してしまう。ハイパーインフレ一直線だ。 したがって、この論考の最初の質問に対する回答は「誰が首相になっても解決策はない。だから臭いものには蓋」がその回答だと私は思っている』、「異次元緩和をやめると新首相が発言したとたんにXデーが到来」、強力な麻薬のようだ。「誰が首相になっても解決策はない。だから臭いものには蓋」、とは言い得て妙だ。
・『「コロナのせい」ではない、人災だ  「今はインフレでもないのにハイパーインフレなど起こるわけがない」という方がいる。しかしインフレ/デフレとハイパーインフレでは発生原因が違う。インフレ/デフレはモノの需給で起こるが、ハイパーインフレは中央銀行が信用を失墜させた時に起きる。通貨の価値が失墜するからだ。一晩で起こりうる。 ストーブに紙幣をくべているハイパーインフレのようすの写真を本で見た方もいらっしゃるとかと思うが、これはマキの供給不足の現象ではない。紙屑となった紙幣では誰もモノを売ってくれない。したがってストーブにまきの代わりに紙幣をくべたのだ。 国のリーダーはXデーの当事者にはなりたくないものだ。したがって、異次元緩和という安倍政権の政策継承によって、菅政権は、粛々とXデーに向かって進んでいくだろう。 そしてある日突然、日銀が債務超過になり、市場が混乱すると思っている。人はそれを「市場の暴力」と呼ぶだろうし、政権や日銀は「コロナのせい」にするだろう。しかしその「市場の反乱」は借金を世界最大減まで膨らませ、異次元緩和で危機を先延ばしにした人災である。 国を頼りにせず、ドルを買って自衛せよと私が申し上げている理由がここにある』、「インフレ/デフレはモノの需給で起こるが、ハイパーインフレは中央銀行が信用を失墜させた時に起きる。通貨の価値が失墜するからだ。一晩で起こりうる」、本質を突いた鋭い指摘だ。「異次元緩和という安倍政権の政策継承によって、菅政権は、粛々とXデーに向かって進んでいくだろう。 そしてある日突然、日銀が債務超過になり、市場が混乱する」、まさに破局だ。二番目の河野氏は勤務先を忖度して思い切ったことは言い難いが、忖度が必要ない「藤巻氏」は、危機をズバリと指摘するとはさすがだ。
タグ:(その34)(「やめておけ マイナス金利」 欧州金融界 逆効果示唆する調査、コロナが拍車かける財政ファイナンスの「今そこにある弊害」、「誰が首相になっても解決策はない」出口のない異次元緩和の末路 菅政権は「火中の栗を拾う内閣」) 異次元緩和政策 ロイター Newsweek日本版 行動ファイナンスの権威 イスラエルの国家債務管理部門を統括するリオル・ダビドプル氏 「「やめておけ、マイナス金利」 欧州金融界、逆効果示唆する調査」 異次元緩和という安倍政権の政策継承によって、菅政権は、粛々とXデーに向かって進んでいくだろう。 そしてある日突然、日銀が債務超過になり、市場が混乱する インフレ/デフレはモノの需給で起こるが、ハイパーインフレは中央銀行が信用を失墜させた時に起きる。通貨の価値が失墜するからだ。一晩で起こりうる 「コロナのせい」ではない、人災だ 誰が首相になっても解決策はない。だから臭いものには蓋 異次元緩和をやめると新首相が発言したとたんにXデーが到来 「誰が首相になっても解決策はない。だから臭いものには蓋」 第2次安倍政権は、尋常な方法での財政再建を放棄してしまった 「異次元緩和」の発動で失われた危機感 かつて財政危機は官民で共有されていた 財政再建と、金融政策の機能回復には、日本は、世界ダントツの大増税が必要になった 中央銀行が日銀のように紙幣を刷る権限が無いユーロ圏諸国は、中央銀行のバランスシートは拡大しない」、というのは筆者の誤解で、資産規模は膨らんでいる 増税議論を避け、先送りを続けた自民党政権 「国家はデフォルトだ」とあるが、ハイパーインフレで債務負担を軽減することも可能だ 菅首相発言が一晩で一変したのも理解できる 一晩で撤回した 菅総理が 財政問題を語る政治家はどこにもいなかった 「「誰が首相になっても解決策はない」出口のない異次元緩和の末路 菅政権は「火中の栗を拾う内閣」」 藤巻 健史 PRESIDENT ONLINE 弛緩した財政規律を回復させる枠組みを作ることが不可欠 日銀は事実上の公的債務管理に組み込まれており、そこから逃れることはまず不可能だろう 政府と日銀は財政政策と金融政策の一体化認め財政規律回復の枠組み提示を 日銀の国債管理がうまくいけばいくほど、危機のマグマがため込まれ、制御不可能な公的債務の膨張に向かう 長期金利上昇抑制のために国債購入する日銀 公的債務膨張続き高まる金融システムへの懸念 過度なマクロ安定化政策が潜在成長率を低下させている 超低金利と追加財政継続が低採算の企業を生き残らせ潜在成長率が低下 YCCを導入したのは、財政ファイナンスのためではなく、インフレを醸成することが目的だった」、のは事実であるが、結果的には「財政ファイナンス」をしているのと同じだ 日銀の長短金利操作政策が政府の財政膨張を支える皮肉 危機下では容認される財政ファイナンス インフレ率も高まらず 「コロナが拍車かける財政ファイナンスの「今そこにある弊害」」 河野龍太郎 ダイヤモンド・オンライン 成長を押し上げるために中銀がマイナス金利政策を採用する必要はなさそうだと話す。「私なら、やめておけと言う。その価値はないと ルンド大のアンデション氏 銀行は手数料を課すか マイナス金利のコストが便益を上回った ゼロに戻したスウェーデン リスクを取る行動と資金を借り入れる行動を促す効果が最も強く表れたのは、金利が1%から0%に下がった時 「もっと資金を借り入れてリスク性資産への投資を増やすよう、人々の背中を押したいのであれば、マイナス金利よりもゼロ金利の方がむしろ効率的だ」
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スガノミクス(アベノミクス)(その1)(すでに長期政権化の予想も? 新総裁となった菅氏の「スガノミクス」に透けて見える「竹中プラン」と「ポピュリズム」、菅義偉は安倍晋三のような悪代官になれるのか 中間層の税負担増やしたアベノミクスの裏の顔、「スガノバブル」が「アベノバブル」よりもさらに膨らみかねない不安)  [国内政治]

スガノミクス(アベノミクス)については、これまでと入れ替え、番号も1に戻した。前回は9月23日に取上げた。今日は、(その1)(すでに長期政権化の予想も? 新総裁となった菅氏の「スガノミクス」に透けて見える「竹中プラン」と「ポピュリズム」、菅義偉は安倍晋三のような悪代官になれるのか 中間層の税負担増やしたアベノミクスの裏の顔、「スガノバブル」が「アベノバブル」よりもさらに膨らみかねない不安)である。

先ずは、9月21日付けエコノミストOnline「すでに長期政権化の予想も? 新総裁となった菅氏の「スガノミクス」に透けて見える「竹中プラン」と「ポピュリズム」」を紹介しよう。
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20200915/se1/00m/020/044000c
・『「次の首相は誰か。アベノミクスは継続するのか。リスクシナリオは何か」「安倍から菅へ」  安倍晋三首相の電撃辞任表明から一夜明けた8月29日。土曜日にもかかわらず、金融機関のリサーチ部門スタッフは内外の投資家からの問い合わせ対応に追われた。 首相の辞任表明が伝わった8月28日午後、日経平均株価は前日終値から一時600円急落。最後は326円安の2万2882円で取引を終えた。 ドル・円も前日の1ドル=106円台半ばから105円台前半へと1円以上、ドル安・円高に動いた。市場では「次期政権は、金融緩和・積極財政を掲げるアベノミクスを転換するのでは」との懸念からリスクオフ(回避)の動きが強まった。 しかし、それは一瞬だった。日曜日だった8月30日、菅義偉(よしひで)官房長官の出馬観測が急浮上。市場が再開した31日には、主流派閥の間で菅氏支持が急速に広まり、日経平均は2万3139円と、安倍首相の辞任表明前日の水準に戻した。円高の勢いもなくなった。 第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストは「菅政権でアベノミクスは踏襲されるという安心感が市場に広まった」と分析する。ただし、通信セクター株は例外だった。「携帯料金の値下げを強く主張する菅氏の総裁・首相就任をマーケットは織り込みに行っている」(永浜氏)』、「市場の安心感」は大丈夫なのだろうか。
・『「忖度」は強まる  「陰の総理」「市議からのたたき上げ」──。さまざまな異名を持つ菅氏だが、ここでは「人事」と「ポピュリスト(大衆迎合主義者)」の二つについて見ていく。 「人事によって、大臣の考えや目指す方針が組織の内外にメッセージとして伝わる」。菅氏は常々、こう話しているという。 安倍1強が続いたのは、霞が関官僚の人事権を官邸が掌握したからだ。それは、縦割り意識や省益保護の排除には役立つが、「忖度(そんたく)」の温床になる。元々、人事によって官僚を動かすことに長(た)けていた菅氏は2014年5月、自身が主導した内閣人事局の創設により、その権力を揺るぎないものとした。 「権力の維持、拡大のために官僚の人事権を150%行使してきた『安倍・菅政権』から、その総元締のような菅さんによる『菅・菅政権』になるのだから、その傾向はますます強まる」と、安倍政権で文部科学次官を務めた前川喜平氏は強く懸念する。 「菅さんは人事においてアメとムチの使い方が上手な人だ。また、あらゆる情報を把握している。したがって、官邸の顔色をうかがう忖度はより強まる可能性が高い」 かつて副大臣、大臣を務めた総務省の幹部人事では、現在でも菅氏の意向が反映される。総務省の放送担当の課長や国交省の運輸畑の局長が、菅氏の意向で更迭されたともささやかれる。菅氏が強い関心を示すNHK改革や観光行政で「対応が悪い」と評価されたのが原因とみられる。 その出発点は、05~06年の副総務相当時にあった。当時総務相だった竹中平蔵氏は「菅さんには、いろいろな形で助けてもらった」と振り返る。菅氏は竹中氏をそれ以前から注目していた。 02年、竹中金融相が見せた大手行の不良債権の抜本処理である。それは、01年に発足した小泉純一郎政権の大きな課題だった。柳沢伯夫氏を金融相に起用したが、一向に進まない。小泉首相は02年9月、柳沢氏を更迭して、竹中氏を金融相に抜擢。同氏は翌10月に「金融再生プログラム(竹中プラン)」を作成し、3年で処理にメドをつけた。 「竹中プラン」は、菅氏が師と仰ぐ梶山静六元官房長官が温めていた計画をほうふつとさせた。98年、橋本龍太郎首相の退陣後、党総裁選挙に梶山氏は派閥を離脱して、小渕恵三氏と争い苦杯をなめた。00年6月、無念のうちに亡くなった梶山氏。「もし、梶山首相の下で、自分が不良債権処理の任に当たっていたら……」。菅氏は、竹中氏が手際よく不良債権を処理していく姿に、そんな思いを重ねたに違いない。 同時に、大きな改革には強いリーダーとその意向に従って官僚をコントロールできる力量が不可欠だと、菅氏は痛感したはずだ。まさに第2次安倍政権における菅氏の人事力に通じるものだ。だが、それは、公文書改ざんという前代未聞の不祥事の温床にもなった』、「官邸の顔色をうかがう忖度はより強まる可能性が高い」、やれやれだ。「副総務相当時にあった。当時総務相だった竹中平蔵氏は「菅さんには、いろいろな形で助けてもらった」と振り返る」、竹中氏の影響力が強まりそうなのにも気になる。
・『臨時国会冒頭解散  菅氏は『読売新聞』の読者から寄せられた相談に答える「人生案内」を愛読。市井の声、不満を聞き、その解消に政治力を発揮する。自身もビジネス誌『プレジデント』で人生相談の回答役を務める。 そんな菅氏のもう一つの顔が「冷徹なポピュリスト」だ。携帯電話料金の値下げやふるさと納税は、その典型だろう。大衆の不満を吸い上げ、メリットを享受できるように仕向ける。 このうち携帯電話料金については、菅氏が18年8月、官房長官として「4割程度下げる余地がある」と発言。総務省で関連法を成立させた。携帯電話市場は実質的に3社独占状態で、しかも端末と通信料金が一体化しており、消費者に不透明なサービス体系だった。ここに菅氏はメスを入れた。 その結果、端末代金と通信料金の分離を義務化し、料金の引き下げにつながった。一方で、通信会社の収益を直撃した。携帯料金の値下げという国民の誰もが喜びそうな話題を取り上げ、巨額の利益を上げる独占通信会社を悪役に仕立て、官僚を使い政治力で突破していく。菅スタイルそのものだ。 菅氏が取り組むべき課題は、短期的にはコロナ対策だ。安倍首相の辞任表明会見時、冬までに1日20万件の検査体制と、ワクチンを21年前半までに全国民に提供できる数量を確保する目標を掲げたが、実現可能性は未知数だ。 今後の懸念は、企業の人員削減や倒産増に伴う失業率の上昇である。ニッセイ基礎研究所の矢嶋康次チーフエコノミストは「行政のデジタル化が遅れていることで、迅速な現金給付が妨げられただけでなく、コロナで生活に困った本当に支援が必要な人の把握もできなかった」と指摘する。 菅氏を、安倍氏の任期だった来年9月までの「つなぎ役」と見る向きもあるが、政権長期化を指摘する声もある。にわかに浮上したのが、9月16日に予定されている臨時国会冒頭の衆院解散・総選挙である。「立憲民主党と国民民主党が合流の準備に追われる中、総選挙に踏み切れば勝てる。菅政権が信任されたことにもなる」。永田町では、菅氏が長期政権をもくろむシナリオも語られ始めた』、「臨時国会冒頭解散」の可能性は現在では薄らいだようだ。

次に、9月30日付け東洋経済オンラインが掲載した早稲田大学大学院経営管理研究科教授の岩村 充氏による「菅義偉は安倍晋三のような悪代官になれるのか 中間層の税負担増やしたアベノミクスの裏の顔 」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/378136
・『安倍晋三の長期政権が終わり、調整役だった菅義偉が首相となった。のっけから安倍政治の継承を掲げるという地味な路線での新政権スタートである。だが、この路線、長続きするだろうか。私は難しいとみる。 2012年末に始まった安倍政権の7年8カ月は、2016年央までの前期とそれ以降の後期に分けられる。 前期は異次元緩和の時代である。デフレの元凶とリフレ派から名指しされていた日本銀行、そこを制圧する占領軍司令官のような役柄で送り込まれた黒田東彦は、自ら異次元緩和と名付けた大規模な量的金融緩和策を打ち上げることによって安倍政権誕生に祝砲を放った。 この異次元緩和、人々の気分を変えたという意味では成功だったといえる。2008年のリーマンショック以来1万円前後で低迷していた日経平均株価は、安倍政権スタートとともに上昇を始め、2015年には2万円台を回復した。安倍の経済政策、通称「アベノミクス」は、しょせんは金融緩和頼みと皮肉られながらも、ともかく緒戦で数字を出すことには成功したのである』、なるほど。
・『日銀の弾切れも、法人税引き下げが株価にプラス  構図が変わったのは、日銀の量的緩和の限界が明らかになり始めた2016年である。この年初に黒田が繰り出した唐突ともいえるマイナス金利政策が裏目に出た同年半ば以降、黒田日銀のアピール度はめっきり落ちた。しかし、ここからが肝心の点である。頼みだった日銀に「全弾撃ち尽くし」の感が出たにもかかわらず、株式市況の強気は崩れなかったのである。安倍の辞意表明直前日の8月27日の日経平均株価は2万3208円と政権スタート時の2倍を超えている。アベノミクスは異次元緩和から乳離れできていたことになる。 なぜそれができたのか。私は、人々が異次元緩和という派手な演出に眼を奪われている隙に、税収の軸足を企業から家計へと移動させていたことにあると思っている。 安倍政権発足前の2012年度には約40%だった日本の法人税率は、2016年度までに大きく引き下げられ、今や30%の大台をも割り込んで現在に至っている。もっとも、これは世界の潮流でもあった。世界がグローバリゼーションの波に押されるようになった2000年代以降、西側主要国の法人税率は足並みをそろえて低下し、法人税率20%台が自由主義経済圏の世界標準になった感すらある。 安倍政権による法人税率引き下げは、このような「底辺への競争」とも言われる世界的な法人税引き下げ競争にわがニッポンを遅ればせながらも参戦させるものだったのだ。 しかし、法人税引き下げ競争に参戦するには代替財源が必要である。安倍にとってのそれが消費税引き上げだった。安倍は、2014年と2019年の2度にわたって消費税を引き上げ、政権発足前に5%だった消費税率を2倍の10%にまで持ってきている』、「消費税引き上げ」の表向きの大義名分は、「法人税引き下げ」ではないとはいえ、このようにみると、「法人税引き下げ」のためだったと考えることも可能だ。
・『「労働課税強化」「海外投資家優遇」が本質  安倍政権がそれまでの自民党政権と違うのは、財政再建のためなどという後ろ向きの言い訳に頼らず、「日本を、取り戻す」というスローガンが作り出す高揚感と黒田の異次元緩和が作り出した景気回復感を前面に押し出すことによって、普段なら政権の命取りになりかねない消費税引き上げを、大した抵抗もなく成功させたところにある。 だが、ここで大きな図式から全体を眺めてみよう。法人税とは、要するに売り上げから財サービスの仕入れと人件費を控除した残差である「利益」を対象とする税金である。これに対し、消費税とは、売り上げから財サービスの仕入れだけを控除した残差である「付加価値」を対象とする税金である。 すなわち、消費税を増税し法人税を減税するという安倍の政策は、企業の賃金支払いへの課税を重くする一方で、企業利益の最終的な帰属先である株主への課税を軽減することを意味するわけだ。安倍政権における税制改革の正体は、労働課税強化を財源にした資本課税軽減なのである。 そこに気づけば、アベノミクスが株式市場とりわけ海外投資家に大好評だった理由もわかってくる。安倍政治あるいはアベノミクスの本質は、低所得層や中間層の犠牲において富裕層を優遇する政策であるばかりでなく、日本国民に負担を押し付けて海外投資家に媚を売るという、時代劇に登場する「悪代官」さながらの裏の顔を持つ政策でもあったのだ。 もっとも、私は、こうした安倍政治の裏の顔を、単純な正義感から批判しているわけではない。増税すれば簡単に国境を越えて出て行ってしまう資本を優遇し、国境を越えるほどの余裕がない人々に国家を支える負担を求めるという政策セットは、グローバリズムが作り出した企業優遇競争に直面した国家たちにおける一種の標準セオリーにほかならなかったからだ。 もし当時の日本が全世界的な資本優遇競争に参加を拒否し続けたとすれば、バブル崩壊後のデフレの底がさらに深くなった可能性だって否定できなかったろう。日本経済を空洞化から救うという文脈では、安倍政治の悪代官性もただの庶民いじめではなかった面もあるわけだ。 だが、それは菅が直面するだろうジレンマを予期させるものでもある。安倍が「一強」とも言える状況を作りえたのは、前の民主党政権や白川方明総裁の下での日銀をデフレの元凶に仕立てる劇場型ともいえる政治手法にあった。しかし、その手法は、攻撃しやすい「敵」がいなくなれば通用しなくなる。たたき上げ苦労人としての「信頼できそうな人柄」が売りの菅には、劇場型演出によって消費税再引き上げや法人税再引き下げを押し通すだけの腕力はなさそうに思える』、「安倍政治あるいはアベノミクスの本質は、低所得層や中間層の犠牲において富裕層を優遇する政策であるばかりでなく、日本国民に負担を押し付けて海外投資家に媚を売るという、時代劇に登場する「悪代官」さながらの裏の顔を持つ政策でもあった」、鋭く本質を指摘しているのはさすがだ。「安倍が「一強」とも言える状況を作りえたのは、前の民主党政権や白川方明総裁の下での日銀をデフレの元凶に仕立てる劇場型ともいえる政治手法にあった。しかし、その手法は、攻撃しやすい「敵」がいなくなれば通用しなくなる」、確かにその通りだ。
・『新型コロナ対策の思い切った見直しを  では菅は何をすればよいか。 短期的には、新型ウイルス対策について筋の通った決断をすることである。本年3月から4月にかけての感染第1波を抑え込まないままで経済再開に踏み込んだアメリカの混乱はさておき、日本や欧州主要国ではウイルスの新規感染状況はまさに感染第2波の状況になった。ところが、この第2波におけるウイルスによる死亡状況を見ると、感染者数増とは裏腹に、ほとんどその深刻化を観察できない。(新規検査陽性者数の図、死者数の図はリンク先参照) こうした状況で、いつまで「感染即隔離」というウイルス対策を取り続けるのか、そこに政治としての答を求められる日は眼の前に来ているように思う。すなわち「指定感染症」の解除といった明確な方針の表明である。 今回の感染症の性質の変化に人々が気づき始めた今、ただ感染拡大防止をと叫んでいるばかりでは、あの「オオカミ少年」の物語のように、政治も専門家たちも人々の信頼を失うだろう。9月連休における活発な旅行や人出を見ても、その可能性は高まっているのではないだろうか。 だが、より本質的かつ長期的視点から菅に必要なのは、財政をどうするかの議論を始めることである。今回のウイルス禍に対して行われた財政出動は、全国民への一律10万円給付を含め、従来の景気対策的な文脈からのものではない。景気対策としての財政出動であれば、その見返りは将来の景気回復から得られるはずである。しかし、そうした将来への「投資」という側面を持たない被害者救済的な財政出動の落とし前をつけるためには、従来の課税理論を超えた税体系全体の抜本的見直しが必要なはずである。答えはあるのだろうか』、どうすればいいのだろう。
・『新たな「拡張付加価値税」の設計を  私は、答えはあると思っている。それは、法人税や個人所得税のような価値分配に対する課税を廃止あるいは大幅に縮小する一方、今の消費税つまり付加価値税の仕組みを拡張し発展させて「拡張付加価値税」ともいうべき新税を創設し、それを軸に税体系の全体を再設計することだ。 拡張付加価値税という考え方そのものについては拙著『ポストコロナの資本主義』(日本経済新聞出版、2020年8月)を参照してほしいが、狙いはファイナンス取引を取り込むことと、勤労者世帯の生計費の控除を可能にすることである。 むろんのこと、危機に備える方法は拡張付加価値税に限られるわけではない。ただ、今回を教訓とするのなら、さまざまな巨大リスクに耐えられる税制の新レジームを設計することは、次への備えの政治的コアであるはずだ。そうした税制の再デザインにより、フラットで全体整合性のある税体系を準備しなければ、次の危機に備える財政の機動性を確保することなどできるはずがない。それを避けてデジタル庁新設などという行政統廃合でお茶を濁していれば、菅内閣は単なる中継ぎ政権で終わるほかはあるまい。 安倍政治の継承という看板を掲げ続けるだけでは、菅は「悪代官」にすらなれないだろう』、「拡張付加価値税」については、本文の説明だけでは理解し難いが、理論的には面白そうだ。ただ、現実に「税体系の全体を再設計」するには、金融資産の把握など多くの困難な課題があり、派閥の談合でできた「菅内閣」にはとうてい無理だろう。

第三に、9月26日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した財務省出身で慶應義塾大学大学院 准教授の小幡績氏による「「スガノバブル」が「アベノバブル」よりもさらに膨らみかねない不安」を紹介しよう。
・『スガノミクスはアベノミクスと根本的に異なっている  第99代内閣総理大臣に就任した菅義偉氏は、アベノミクスを継承すると言っているし、皆がそう思っている。それ以外に何をするのか、に注目が集まっている。 しかし、それは間違いである。「スガノミクス」はアベノミクスと根本から全く異なっている。180度違うといっても過言ではない。説明しよう。 アベノミクスが成功した理由は、アベノミクスという名前を定着させたことにある。7年8カ月を経て安倍前首相が退任しても、辞任会見直後に書いた「安倍首相辞任、アベノミクスの2つの大罪」という私の記事は異常に読まれ、スガノミクスを誰よりも早く解説した記事は見向きもされなかった。 すなわち、アベノミクスの成功はマーケティングの成功であり、「アベノミクスは成功した」と思わせることに成功したことにある。スガノミクスへの注目度は、支持率と同様に、現時点が一番高いはずだが、一般的には注目されてない。すでに、アベノミクスのような成功はおぼつかなくなっている。 これには理由がある。アベノミクスは、賛否はあるが、コンセプトがはっきりしており、経済全体に対するヴィジョンのある政策であった。経済全体に関するマクロ政策であった。そして、経済と金融市場をひっくり返すような(私からすれば、とんでもない)ものであった。日銀を使って、インフレを引き起こし、デフレ脱却をし、株高円安を進める。異次元金融緩和は異常であったが、とにもかくにも金融市場全体を変えた。 一方スガノミクスは、全体像がない。アベノミクスの全体、マクロ政策に対して、スガノミクスは局地戦、ミクロ政策である。 ひとことで言うと、スガノミクスは「器の小さい政策」なのである。 規制と戦うのは勇ましいが、あくまで部分的であり、経済の1つ1つの項目に関する話であり、局地戦である。それで世論は盛り上がるかもしれないが、経済はせいぜい一分野ごとにしか変わらない。 「縦割り打破」というもっと小さい話で、要は調整をもう少しうまくやる、という話である。全体に役立つように、部分ごとの目詰まりを解消する、ということである。立派ではあるが、ミクロであることは間違いない』、「アベノミクスの全体、マクロ政策に対して、スガノミクスは局地戦、ミクロ政策である」、言い得て妙だ。
・『器の小さい政策が目指す「規制緩和」という利益誘導策  菅氏が言うように、ダムの運用方針が所轄官庁ごとに異なっているため、全体のために利用することができなかったのは、調整不足に過ぎない。調整をうまくやるのは素晴らしいが、それはそれだけのことであり、良い例だが、経済全体が動くわけではない。 だから、世間の印象はともかく、日本経済はほとんど何も変わらない。携帯電話の通話料金が安くなったとしても、3社寡占が残っていれば、彼らはその力を何かの形で使うはずだ。そうなると、消費者のコストは間接的になり、毎月の通信料という形では見えなくなるが、どこかに見えない形で埋め込まれるだけのことだ。 3社寡占を変えない限り何も変わらない。そして、それが変わったとしても、携帯電話という業界での儲けが減るだけで、経済全体はほとんど変わらない。 規制緩和は、少しずつ部分的に進むであろう。これは、政治的には最も望ましい政策である。なぜなら、規制緩和こそが最大の利益誘導政策だからだ。規制緩和というのは理論的にも現実的にも、100%間違っている。正しい政策は、規制撤廃だ。あるいは、古い経済、産業構造のためにつくられた規制を、新しくアップデートする規制のデザイン変更である。 正しくない、あるいは新しい時代に合わない規制は緩和するのではなく、撤廃し、必要な規制を新しくつくることだ。規制というのは、社会と産業のバランスをとるためにも、産業を育成するためにも必要な場合がある。だから、規制は撤廃するか新しくデザインし直すべきで、緩和はいかなる場合にも正しくない。 ではなぜ、日本では規制緩和が政治に好まれるのか。それは昭和の業界政策だからである。規制に守られて、社会から攻撃を受けている業界に対しては、ゆっくりとしたスピードで規制緩和を進めると感謝される。「スピードを制限している」と、政治の側が主張できるからだ。 一方で規制緩和は、業界に参入したい側からも必要とされる。政治が緩和を進めてくれており、そのスピードを少しでも早くしてもらいたいから、政治に対する「お願い」は永久に続く。したがって、ゆっくり規制緩和を行うことは、政治にとって最も無難で、かつ力を維持できる政策なのだ。 すなわち、スガノミクスとは、「昭和のサプライサイダー」なのである。 IR誘致やオリンピックも、考え方は同じだ。特定産業の利益のために、産業を誘致し、イベントを興す。それで供給サイド、産業、企業を豊かにし、そこに金を消費者に落とさせることで、景気も良くするという政策である。 これは、アベノミクスと順序が逆なのである。アベノミクスは、マクロ経済全体にカネをばら撒き、消費を起こし、需要を増やし、その結果、企業収益も増える。しかし、メインターゲットであり直接働きかけるのは、経済全体、そして消費者および需要を行う企業などの需要者である。 それに対して、スガノミクスが働きかけるのは産業側であり、供給者としての企業である。彼らに利益を与え、その中で景気も良くなるということなのだ。消費者よりも企業優先、平成の消費者主導ではなく、昭和の産業主導の政策なのである』、「ゆっくり規制緩和を行うことは、政治にとって最も無難で、かつ力を維持できる政策なのだ」、なるほどその通りだ。「スガノミクスが働きかけるのは産業側であり・・・平成の消費者主導ではなく、昭和の産業主導の政策」、上手い表現だ。
・『スガノミクスが本来行うべきはアベノミクスの「幕引き」  そんな菅政権が本来行うべき政策は、産業政策ではなく、何なのか。 それはアベノミクスの「幕引き」である。 アベノミクスとは、外見はマーケティングツール、中身は、リスクとコストを先送りし、需要を先食いする政策だった。ともかく今需要を喚起し、景気を良くし、現在を謳歌する。そういう政策だった。そして、日銀が日本国債の発行残高のほぼ半分を保有し、なおかつ、新規に国が借金として発行する国債の大半を市場に通じ、間接的にとはいえ、実質的には買い支え続けるという状態を放置したまま、突然、トップが交替した政策であった。 米国中央銀行との違いは、リーマンショック後、バーナンキFRB議長(当時)が大規模金融緩和を開始し、量的緩和を行ったが、その縮小も自ら開始し、退任前に出口へ向かい始め、幕引きの道筋をつけて、交替した点である。バーナンキが出口に向かうことを宣言し、株価は暴落し、市場は非難したが、それに動じず、きちんと幕引きをお膳立てして、バーナンキは出て行ったのである。日銀は出口のないまま取り残された。菅政権は、この幕引きをする必要がある』、「アベノミクスとは・・・中身は、リスクとコストを先送りし、需要を先食いする政策だった。ともかく今需要を喚起し、景気を良くし、現在を謳歌する」、「日銀は出口のないまま取り残された。菅政権は、この幕引きをする必要がある」、同感である。
・『スガノミクスのベスト&ワーストシナリオ  アベノミクスは、地球儀を俯瞰する外交にしても、デフレ脱却、異次元緩和にしても、とにかく大風呂敷を広げた。後継のスガノミクスは、そのストーリーを閉じる必要がある。 そのシナリオは、ベストシナリオですら、日本国債バブルと株式市場バブルの崩壊を甘受し、しかしその経済全体への悪影響を最小限に留める、というものだ。これらのバブルと無関係に誠実に経済活動を営んできた企業や消費者を守り、バブル崩壊を軟着陸にとどめ、最小限の不況で平常に戻すことであろう。 ワーストシナリオは、政府の財政破綻もしくは政府の財政破綻回避のために日銀を動員し、中央銀行を破綻させ、経済を大混乱に陥れることであろう。中央銀行破綻は、政府財政破綻よりも経済を破壊する力はとてつもなく大きいから、最悪、政府が財政破綻するとしても、日本銀行を守る必要がある。それは今日は議論する余裕がないが、ともかく菅政権の役割は、アベノミクスバブルを静かに崩壊させることである。 ところが今のところ、それに対するヴィジョンや大きな絵は見当たらない。スガノミクスは、リスクを抱え続け、それを膨らませ続ける政策になる恐れが強い。なぜなら、バブルを軟着陸させずにバブル大崩壊を防ぐには、バブルをさらに膨らませて維持するしか、方法はないからだ。 アベノミクスで膨らんだバブルは、菅政権でさらに膨らみ、その次の政権で必然的により深刻なバブル崩壊が起きる可能性が高い。そうしたリスクを抱えながら、我々はスガノミクスを見守ることになろう。 私のこの分析が間違いであり、「スガノミクスは実は大きな絵を隠し持っていた」という結末を期待している』、「アベノミクスで膨らんだバブルは、菅政権でさらに膨らみ、その次の政権で必然的により深刻なバブル崩壊が起きる可能性が高い」、恐ろしいが、身構えておく必要があるだろう。 
タグ:東洋経済オンライン エコノミストOnline (アベノミクス) スガノミクスが本来行うべきはアベノミクスの「幕引き」 スガノミクスはアベノミクスと根本的に異なっている スガノミクスが働きかけるのは産業側であり・・・平成の消費者主導ではなく、昭和の産業主導の政策 スガノミクス(アベノミクス)(その1)(すでに長期政権化の予想も? 新総裁となった菅氏の「スガノミクス」に透けて見える「竹中プラン」と「ポピュリズム」、菅義偉は安倍晋三のような悪代官になれるのか 中間層の税負担増やしたアベノミクスの裏の顔、「スガノバブル」が「アベノバブル」よりもさらに膨らみかねない不安) 「安倍が「一強」とも言える状況を作りえたのは、前の民主党政権や白川方明総裁の下での日銀をデフレの元凶に仕立てる劇場型ともいえる政治手法にあった。しかし、その手法は、攻撃しやすい「敵」がいなくなれば通用しなくなる 新型コロナ対策の思い切った見直しを 岩村 充 「拡張付加価値税」については、本文の説明だけでは理解し難いが、理論的には面白そうだ 日銀の弾切れも、法人税引き下げが株価にプラス 日銀は出口のないまま取り残された。菅政権は、この幕引きをする必要がある 器の小さい政策が目指す「規制緩和」という利益誘導策 小幡績 臨時国会冒頭解散 アベノミクスの全体、マクロ政策に対して、スガノミクスは局地戦、ミクロ政策である ダイヤモンド・オンライン 安倍政治あるいはアベノミクスの本質は、低所得層や中間層の犠牲において富裕層を優遇する政策であるばかりでなく、日本国民に負担を押し付けて海外投資家に媚を売るという、時代劇に登場する「悪代官」さながらの裏の顔を持つ政策でもあった スガノミクス ただ、現実に「税体系の全体を再設計」するには、金融資産の把握など多くの困難な課題があり、派閥の談合でできた「菅内閣」にはとうてい無理だろう 副総務相当時にあった。当時総務相だった竹中平蔵氏は「菅さんには、いろいろな形で助けてもらった」と振り返る ゆっくり規制緩和を行うことは、政治にとって最も無難で、かつ力を維持できる政策なのだ 「スガノバブル」が「アベノバブル」よりもさらに膨らみかねない不安 「忖度」は強まる アベノミクスとは・・・中身は、リスクとコストを先送りし、需要を先食いする政策だった。ともかく今需要を喚起し、景気を良くし、現在を謳歌する 「菅義偉は安倍晋三のような悪代官になれるのか 中間層の税負担増やしたアベノミクスの裏の顔 」 官邸の顔色をうかがう忖度はより強まる可能性が高い 「労働課税強化」「海外投資家優遇」が本質 (その1)(すでに長期政権化の予想も? 新総裁となった菅氏の「スガノミクス」に透けて見える「竹中プラン」と「ポピュリズム」、菅義偉は安倍晋三のような悪代官になれるのか 中間層の税負担増やしたアベノミクスの裏の顔、「スガノバブル」が「アベノバブル」よりもさらに膨らみかねない不安) 新たな「拡張付加価値税」の設計を 「アベノミクス」は、しょせんは金融緩和頼みと皮肉られながらも、ともかく緒戦で数字を出すことには成功した スガノミクスのベスト&ワーストシナリオ アベノミクスで膨らんだバブルは、菅政権でさらに膨らみ、その次の政権で必然的により深刻なバブル崩壊が起きる可能性が高い
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日本の政治情勢(その50)(石破・岸田はこうして潰 された…二階俊博の怖ろしき「深謀遠慮」「流れ」を作る男、 安倍政権の「国会審議」にみた小泉政権との違い 「ご飯論法」名づけ親、法政大の上西教授に聞く、 菅首相 「解散権行使」へ取りうる2つの選択肢 コロナ禍での「年内解散」に踏み切れるのか) [国内政治]

日本の政治情勢については、9月12日に取上げた。今日は、(その50)(石破・岸田はこうして潰 された…二階俊博の怖ろしき「深謀遠慮」「流れ」を作る男、 安倍政権の「国会審議」にみた小泉政権との違い 「ご飯論法」名づけ親、法政大の上西教授に聞く、 菅首相 「解散権行使」へ取りうる2つの選択肢 コロナ禍での「年内解散」に踏み切れるのか)である。

先ずは、9月8日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの山田 厚俊氏による「石破・岸田は、こうして潰された…二階俊博の怖ろしき「深謀遠慮」 「流れ」を作る男」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/75464?imp=0
・『崖っぷちだった二階  「あいつにだけは、後任は譲らない」 以前、安倍晋三首相が漏らしたセリフとして、首相周辺が明かした言葉だ。安倍首相が「あいつ」と言った相手は、石破茂元幹事長のことである。 “党内野党”のごとく、事あるごとに安倍政権のやり方に意見し、反旗を翻してきた石破氏について、「絶対に許さない」と周辺に語ったのだという。安倍首相の盟友、麻生太郎副総理兼財務相も同じ考えで、だからこそ、ポスト安倍は岸田文雄政調会長に禅譲という流れが長く横たわっていた。 安倍氏・麻生氏が推す岸田氏か、それとも“党内野党”の石破氏か――次期総理・総裁の争いはその対立がメインとなるはずだった。 しかし、いまや菅義偉官房長官が総裁選で勝つことが既定路線のようになっている。背後にいるのは二階俊博幹事長である。安倍首相と麻生氏の考えをうまく利用しながら、しかし自分が望むような形に路線を敷いたのが、二階氏だった。 じつは、二階氏は崖っぷちに立たされていた。 「安倍首相がこのまま続投していれば、9月の党役員人事で二階氏は幹事長職から外されていたでしょう」と、官邸関係者が語るとおり、昨年、参院選後の内閣改造および党役員人事で、二階氏は副総裁という“名誉職”にまつり上げられる予定だった。独特の政界遊泳術に長けた二階氏は、それを以下のような方法で封じ込めた。 今年に入り、2021年9月30日で党総裁任期を終える安倍首相の後任、つまりポスト安倍が囁かれるようになり、二階氏は石破氏擁立を視野に入れながら、菅氏と連絡を密に取るようになる。二階派幹部は語る。 「菅氏と連携を取り、竹下派も巻き込み、石破氏を擁立する。現在の衆院議員の任期は2021年10月21日で、それまでに総選挙が実施される。世論を見れば石破人気がダントツで、任期が迫ってくれば党内も石破氏に傾くとの読みがあった」 しかしそれとともに二階氏は、菅氏擁立も視野に入れていた。 「長く安倍政権を支えてきた実績は間違いない。菅氏は麻生氏とソリが合わないことも、二階氏には好都合だった」(同) つまり、仮に菅氏が首相になったとき、麻生氏の影響力を、ある程度制限できるということである。 かくして、二階氏と菅氏の関係は深まり、今年6月からは月イチの食事会も定例化した。 その流れの中で、突然の安倍首相の辞意表明だった。8月28日午後2時2分、安倍首相は党本部を訪れ、二階氏と林幹雄幹事長代理に辞意を伝えた。 緊急入院による非常事態であまりにあわただしく、総理臨時代理を置くことにならなかったことが、二階氏にとって利が働いたということだろう。その場合、麻生氏がその任に就く。政治に混乱が生じるのは明らかで、しかも、二階氏を取り巻く環境が悪化する恐れもあったからだ。 となれば、速やかに総裁選実施に踏み切るしかない。党員・党友投票も実施する総裁選は、約1ヵ月かかる。「政治空白を作ることは避ける」を大義に、両院議員総会で決める方法に舵を切った。 「緊急事態で、コロナ禍も収束していない中、政治が停滞してはならない」 二階派関係者はこう語る。大義を掲げるウラには、二階氏の深謀遠慮が見え隠れする。 「党員・党友の投票がある総裁選になれば、石破氏有利に働く。また、総裁選の期間、官房長官の職にある菅氏は身動きが取れなくなる」(同) つまり、菅氏が出馬しやすく、他派閥も乗りやすい形を作る判断を下したのである。それまで見せていた「石破氏支援」の姿勢は、ここで完全にたち消えてしまったように見える。そして、いち早く二階氏は、菅氏出馬の流れを作る』、「崖っぷちに立たされていた」「二階氏」が「菅氏出馬の流れを作る」、とは老獪な政治家の面目躍如だ。
・『すでに蚩尤は決した  菅氏は安倍首相辞意表明会見の翌日夜、二階氏、林幹雄幹事長代理、森山裕国対委員長と会い、「総裁選日程が決まったら、正式表明したい」と伝えた。これを受け二階氏は、菅氏を総裁選で支援する意向を伝えた。 ポスト安倍の最右翼と見られていた岸田氏は、今年4月の給付金問題で、ミソをつけた。収入減世帯に30万円給付という案を党内でまとめ、閣議決定まで行ったにもかかわらず、安倍首相は公明党の山口那津男代表に迫られ、国民1人当たり10万円給付に変更した。このことが決め手となり、安倍首相と麻生氏の間で、「非常時には向かない」との烙印を押されてしまったのだ。 しかも8月28日、岸田氏の姿は永田町になかった。講演会のため、新潟を訪れていたのだ。 「このタイミングの悪さが、運を遠ざけるんだよな」 岸田派衆院議員はこう嘆く。急ぎ、帰京した岸田氏だが、すでに二階氏の包囲網は各派閥に伝播し、二階氏が菅氏支援を打ち出すと、雪崩を打ったように他派閥の支持が続いた。党内最大派閥の細田派(98人)、麻生派(54人)、竹下派(54人)、二階派(47人)、石原派(11人)が菅氏を推し、すでに雌雄は決したような形だ。 とはいえ、これで終幕ではない。今後、派閥間の主導権争いは激化する。菅氏は当面、居抜き人事で政権運営をするものと見られている。ひとまず、二階幹事長は安泰だ。しかし、菅首相に対する各派閥の長の思惑は、1年限りの“ショートリリーフ”。その後の“ポスト菅”こそが、最大の山場と見ている。 一方、菅氏自身もショートリリーフで良しでいいとは思っていない。派閥の力学を抑えて、本格政権をどのタイミングで作るか、思案している。菅氏圧勝で終わる第一幕だが、菅首相に対する各派閥の長の思惑は、1年限りの“ショートリリーフ”。その後の“ポスト菅”こそが、最大の山場と見ている菅首相に対する各派閥の長の思惑は、1年限りの“ショートリリーフ”。その後の“ポスト菅”こそが、最大の山場と見ている。一方、菅氏自身もショートリリーフで良しでいいとは思っていない。派閥の力学を抑えて、本格政権をどのタイミングで作るか、思案している。菅氏圧勝で終わる第一幕だが、今後の政局こそが見物であることは間違いない』、「岸田氏の姿は永田町になかった。講演会のため、新潟を訪れていたのだ。 「このタイミングの悪さが、運を遠ざけるんだよな」、政局の読みも政治家に必須の条件とすれば、やはり「岸田氏」はリーダー失格のようだ。「菅首相に対する各派閥の長の思惑は、1年限りの“ショートリリーフ”。その後の“ポスト菅”こそが、最大の山場と見ている」、「今後の政局」を注目したい。

次に、9月13日付け東洋経済オンライン「安倍政権の「国会審議」にみた小泉政権との違い 「ご飯論法」名づけ親、法政大の上西教授に聞く」を紹介しよう。なお、「追記」は省略。
https://toyokeizai.net/articles/-/375120
・『国会審議の形骸化が指摘されて久しい。安倍政権において、とくにその傾向が強まった。 質問に直接答えない。のらりくらりとはぐらかす。そして、意図的に論点をずらして、あたかも誠実に答えているかのように装う「ご飯論法」。自民党が圧倒的多数を占める議席の力を背景にしたものだとも言えるが、国会審議を軽んじた弊害は大きい。 2018年の流行語にもなった、「ご飯論法」の名づけ親である法政大学の上西充子教授に、安倍政権下における国会審議について聞いた(Qは聞き手の質問、Aは上西氏の回答)』、興味深そうだ。
・『異論に耳を傾けない政権だった  Q:7年8カ月もの長期にわたった安倍政権について、上西さんはどんな印象を持っていますか。 A:例えば、小泉政権は「郵政民営化は是か非か」といったような争点をばんと出して、自分の言っていることは正しい、こっちについてこい、という対決型だった。ところが、安倍政権は(政策を)争点化させずに「これしかない」という言い方をする。しかも、これしかないという道をはっきり示さず、あたかも「皆さんのための、この道ですよ」という。 私が政権をとれば(生活は)豊かになります、ビールをもう一杯飲めるようになりますよ、と。経済に強く、安倍さんがいるから私たちの暮らしもよくなるのであって、政権が交代すると大変だ、という見せ方をした。(過労死した元電通社員の)高橋まつりさんのお母さん(の幸美さん)と会って、涙を浮かべる。そういう場面をわざわざつくって報じさせる。(過労死対策に)本気だと思わせるが、いざ法案が出てきたときは論点化しない。(高橋さんの母親のような人を)利用できるときは利用するが、同じ問題で過労死をなくしてくれと切実に訴えても、都合が悪くなると拒絶する。 そういうのはよく見ていればわかるのだが、その「よく見る人」が世の中にそんなにいない。そういう問題を感じている人が何割かいても、乗り切れる。そういう高慢さがどんどん表面化してきたのが安倍政権の末期だったと思う。 Q:森友・加計問題のほか、桜を見る会など、スキャンダルの多い政権でもありましたね。 A:桜を見る会問題など、おそらく(政権存続は)無理だろうというほど(のスキャンダル)だったのに、結局名簿も破棄し、ホテルとの契約だったと言い張って乗り切った。記録がないと(問題を追及する)記者としては決定打がない。 でも根っこのところはつながっている。やりたいことはやる。異論に耳を傾けない。お友達の利害を重視する。(安倍政権は)印象操作が非常にうまく、キャッチフレーズも巧みだった。メディアを押さえ、野党もそんなに力がなかった。 『東洋経済プラス』では「安倍政権の“功と罪”」として7年8カ月の長期政権を有識者インタビューで振り返る連載を掲載しています』、「ご飯論法」とは、質問に真正面から答えず、論点をずらして逃げるという論法(Wikipedia)、確かに安部前首相は多用していた。「やりたいことはやる。異論に耳を傾けない。お友達の利害を重視する。(安倍政権は)印象操作が非常にうまく、キャッチフレーズも巧みだった。メディアを押さえ、野党もそんなに力がなかった」、これに乗せられた「メディア」もだらしなかった。メディア・コントロールを仕切ってきた菅氏が首相になったことで、こうした部分もつつがなく引き継がれるのだろう。

第三に、9月26日付け東洋経済オンラインが掲載した政治ジャーナリストの泉 宏氏による「菅首相、「解散権行使」へ取りうる2つの選択肢 コロナ禍での「年内解散」に踏み切れるのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/377754
・『菅義偉政権が発足してから10日が経過した。菅首相は持論の縦割り行政打破を旗印に、デジタル庁新設や携帯料金値下げ実現に向け、矢継ぎ早に指示を繰り出し、実績作りに邁進している。 その一方、高い内閣支持率を背景に自民党内では早期の衆院解散論も湧き起こり、永田町は解散風に揺れている。 しかし、解散にはハードルが多い。コロナの感染収束が大前提で、しかも11月に日程が集中する首脳外交への対応や年内成立が必要な協定・法案処理のための国会審議を抱えている』、発足直後のご祝儀的な「高い内閣支持率を背景に」「早期の衆院解散論も湧き起こり」、「コロナの感染収束」にめどが立ってないなかで、さもしい限りだ。
・『立ち消えになった秋口解散説  各種世論調査では就任時の内閣支持率が歴代3位の高率となり、自民党の下村博文政調会長は「自民党議員のほぼ総意で即解散」とあおるが、野田聖子幹事長代行は「解散強行で、国民に説明責任を果たせるのか」と牽制する。菅首相にとっても「強引な解散で国民の支持を失う」との不安は拭えず、当面は「慎重な検討」(側近)を続けることになりそうだ。 菅政権の発足当初、内閣と自民党の支持率急上昇を受けて秋口解散説が流布され、与野党の衆院議員は一斉に事務所確保などの選挙準備に動いた。その際想定されていたのは、「9月末に臨時国会召集、所信表明・代表質問後の10月上旬に解散、同25日か11月1日投開票」という日程だった。 しかし、自民党が菅首相の意向も踏まえて臨時国会を10月23日か26日に召集する方針を野党側に伝えたことで、秋口解散説は立ち消えとなった。このため、自民党内では、年明けも含めた早期解散説と、2021年9月の自民党総裁選後の事実上の任期満了選挙説が交錯する状況となっている。 今後の政治日程も考慮して解散と総選挙のスケジュールを予測すると、「年内」と「年明けから来春」、「来秋」の3つの選択肢が浮かび上がる。まず年内のケースだが、臨時国会が10月23日か26日に召集された場合、所信表明・代表質問後に菅首相が解散に踏み切れば、11月10日公示―同22日投開票の日程が有力だ。 ただ、11月中下旬には菅首相の首脳外交の初舞台となるAPEC首脳会議(11日~12日)やG20首脳会議(21日~22日)に加え、3日のアメリカ大統領選で現職のトランプ氏が再選した場合には、中旬にもワシントンでのG7首脳会議(サミット)開催も想定される。解散すれば菅内閣は「職務執行内閣」となるため、「外交儀礼上はありえない」(外務省幹部)との指摘が多い。 自民党は臨時国会の会期を12月上旬までの50日間程度とする方針で、年内に国会での議決が必要な日英経済連携協定(EPA)や2021年夏の五輪開催に伴い、祝日を移動させる特別措置法案などを処理する構えだ。ただ、「召集から案件処理まで最低でも3週間以上が必要」(自民国対)とされる』、「野田聖子幹事長代行は「解散強行で、国民に説明責任を果たせるのか」と牽制する」、さすがだ。「G7首脳会議・・・解散すれば菅内閣は「職務執行内閣」となるため、「外交儀礼上はありえない」、なるほど、これでは無理そうだ。
・『コロナで総選挙どころではなくなる  そこで、自民党内で浮上してきたのが、国会での案件処理を前提とした「11月中下旬解散―12月6日か13日衆院選投開票」という日程だ。その場合、公示は11月24日か12月1日となり、選挙期間が首脳外交と重なる事態は回避できる。併せて、手続き的には12月中下旬に特別国会を召集し、首相指名・組閣を経て第2次菅政権を発足させれば、遅くとも1月上旬までに2021年度予算案の編成が可能だ。 ただ、晩秋から初冬を迎える時期だけに、多くの医療関係者は「コロナの感染再拡大で選挙どころではなくなる」と予測する。菅首相自身も「コロナの感染拡大防止と経済再生がなにより優先される」と繰り返しており、選挙中に感染再拡大ともなれば、「菅首相の責任も問われ、選挙での自民議席減にもつながりかねない」(自民幹部)との不安も広がる。 次の解散の機会は、年明けの通常国会での冒頭か、コロナ対策のための第3次補正予算成立直後の解散だ。1月上旬に通常国会を召集すれば、補正を処理しても1月下旬までの解散が可能だ。その場合、最も早いケースは「1月26日公示―2月7日投開票」となる。 ただ、衆院選を受けての特別国会召集は2月中旬以降となり、首相指名と第2次菅政権発足を経て、改めて施政方針演説や各党代表質問を実施する必要がある。2021年度予算案の衆院審議入りは2月末以降にずれ込み、予算の年度内成立は極めて困難となる。 2021年度予算成立後の3月末か4月初めの解散説もあるが、7月上旬に想定される東京都議選に全力投球したい公明党が強く反対している。菅首相は公明党・創価学会と太いパイプを持っているのが強みとされるだけに「公明の離反を招くような解散はするはずがない」(自民選対)との見方が支配的だ。 さらに、7月23日から9月5日までは、1年遅れでの東京五輪・パラリンピックが予定されている。国際オリンピック委員会(IOC)でも予定どおりの開催論が強まっており、開催されればその間の解散・衆院選は政治的にも不可能だ。 その場合、9月下旬までの実施が予定される本格的な自民党総裁選の日程を繰り上げることも難しく、菅総裁(首相)再選後の選挙となれば、「10月5日公示―10月17日投開票」の任期満了選挙となる公算が大きい。もちろん、これらの解散・衆院選日程は選挙での自民勝利が前提で、敗北すれば菅政権の存続も危うくなり、選挙後の政局も混乱必至だ』、来年も「選挙」する場合の日程はタイトそうだ。
・『本格政権狙いの人事  こうしてみると、菅首相が持つ解散権行使のタイミングは、政治日程上は年内か来秋の2択となる。与党内では「菅首相が内政での実績作りを急ぐのは、来秋の総裁再選を受けての衆院選が念頭にあるからだ」(自民長老)との見方が広がる。 党・内閣の新体制をみると、総裁再選を前提とした本格政権狙いの意図がにじむ。次期総裁選でのライバルとなる石破茂元幹事長、岸田文雄前政調会長をどちらも無役に追いやり、「ポスト菅」候補に浮上している茂木敏充外相、加藤勝信官房長官、河野太郎行革・規制改革担当相、下村政調会長らを内閣と党の要職に据えた。これは「(茂木氏らが)来秋の総裁選に出馬しにくくする狙い」(麻生派幹部)と受け取る向きが多い。 今後1年間、菅首相が着実に実績を積み上げて高い内閣支持率を維持できれば、「総裁再選は確実」(周辺)とみられている。そのうえで、任期満了選挙で絶対安定多数(261議席)以上の議席を確保できれば、菅政権は4年の本格・長期政権となる。しかし、今回の突然の首相交代劇をみても「政界の一寸先は闇」だ。中曽根、小泉、安倍という過去の長期政権の後継首相は、いずれも1~2年の短命を余儀なくされている。菅首相も、安倍前政権の負の遺産でもあるIR汚職事件や河井夫妻の巨額買収事件、ジャパンライフ元会長の逮捕によって再燃した桜を見る会の私物化疑惑という火種を抱えている。 いずれも、官房長官だった菅首相の裏舞台での関与が取り沙汰される事件ばかりだ。このため、司法の捜査や裁判などで事件の真相解明が進めば、菅政権を揺さぶる事態となる可能性もある。 だからこそ、菅首相も「年内選挙の誘惑にかられる」(側近)わけだが、世論調査でもコロナ禍での年内選挙を期待する声は少数派だ。「国民のために働く内閣」を目指すからには、今後は与党内でも「年内より、実績を積み上げての来秋の任期満了選挙というのが憲政の常道」(自民長老)との声が強まりそうだ』、「過去の長期政権の後継首相は、いずれも1~2年の短命を余儀なくされている」、「菅首相も、安倍前政権の負の遺産でもあるIR汚職事件や河井夫妻の巨額買収事件、ジャパンライフ元会長の逮捕によって再燃した桜を見る会の私物化疑惑という火種を抱えている」、今後、何が出てくるか、展開が楽しみだ。
タグ:「ご飯論法」とは、質問に真正面から答えず、論点をずらして逃げるという論法 立ち消えになった秋口解散説 早期の衆院解散論も湧き起こり 「安倍政権の「国会審議」にみた小泉政権との違い 「ご飯論法」名づけ親、法政大の上西教授に聞く」 野田聖子幹事長代行は「解散強行で、国民に説明責任を果たせるのか」と牽制する 菅首相も、安倍前政権の負の遺産でもあるIR汚職事件や河井夫妻の巨額買収事件、ジャパンライフ元会長の逮捕によって再燃した桜を見る会の私物化疑惑という火種を抱えている 日本の政治情勢 現代ビジネス 「ご飯論法」の名づけ親 異論に耳を傾けない政権だった 過去の長期政権の後継首相は、いずれも1~2年の短命を余儀なくされている 本格政権狙いの人事 泉 宏 上西充子教授 コロナで総選挙どころではなくなる やりたいことはやる。異論に耳を傾けない。お友達の利害を重視する。(安倍政権は)印象操作が非常にうまく、キャッチフレーズも巧みだった。メディアを押さえ、野党もそんなに力がなかった 高い内閣支持率を背景に G7首脳会議・・・解散すれば菅内閣は「職務執行内閣」となるため、「外交儀礼上はありえない 東洋経済オンライン (その50)(石破・岸田はこうして潰 された…二階俊博の怖ろしき「深謀遠慮」「流れ」を作る男、 安倍政権の「国会審議」にみた小泉政権との違い 「ご飯論法」名づけ親、法政大の上西教授に聞く、 菅首相 「解散権行使」へ取りうる2つの選択肢 コロナ禍での「年内解散」に踏み切れるのか) 「菅首相、「解散権行使」へ取りうる2つの選択肢 コロナ禍での「年内解散」に踏み切れるのか」 すでに蚩尤は決した 「石破・岸田は、こうして潰された…二階俊博の怖ろしき「深謀遠慮」 「流れ」を作る男」 岸田氏 山田 厚俊 岸田氏の姿は永田町になかった。講演会のため、新潟を訪れていたのだ。 「このタイミングの悪さが、運を遠ざけるんだよな 菅氏出馬の流れを作る 付金問題で、ミソをつけた 崖っぷちだった二階 菅首相に対する各派閥の長の思惑は、1年限りの“ショートリリーフ”。その後の“ポスト菅”こそが、最大の山場と見ている
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