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小売業(一般)(その6)(ワークマン2題(加盟店オーナーは「開店5分前出社・閉店5分後退社」でなぜ年収1000万円になるのか?、これが「4000億円の空白市場」を切り拓いたワークマン式戦略マップだ)、オーケーとH2Oのせめぎ合いは終わらない 裁判所も"待った!"関西スーパー争奪戦の泥仕合) [産業動向]

小売業(一般)については、昨年12月24日に取上げた。今日は、(その6)(ワークマン2題(加盟店オーナーは「開店5分前出社・閉店5分後退社」でなぜ年収1000万円になるのか?、これが「4000億円の空白市場」を切り拓いたワークマン式戦略マップだ)、オーケーとH2Oのせめぎ合いは終わらない 裁判所も"待った!"関西スーパー争奪戦の泥仕合)である。

先ずは、本年2月7日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した株式会社ワークマン専務取締役の土屋哲雄氏による「ワークマン加盟店オーナーは「開店5分前出社・閉店5分後退社」でなぜ年収1000万円になるのか?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/260026
・『「高機能・低価格」という4000億円の空白市場を開拓し、10期連続最高益。ついに国内店舗数ではユニクロを抜いたワークマン。12/28「日経MJ」では「2020ヒット商品番付(ファッション編)」で「横綱」にランクインした。 急成長の仕掛け人・ワークマンの土屋哲雄専務の経営理論とノウハウがすべて詰め込まれた白熱の処女作『ワークマン式「しない経営」――4000億円の空白市場を切り拓いた秘密』が発売たちまち4刷。 「『ユニクロ』にも『しまむら』にもない勝ちパターンを発見した」(早大・内田和成教授) 「ワークマンの戦略は世紀の傑作。これほどしびれる戦略はない」(一橋大・楠木建教授) 「縄文×弥生のイノベーションは実に読みごたえがある」(BCGシニア アドバイザー・御立尚資氏) 「めちゃめちゃ面白い! 頑張らないワークマンは驚異の脱力系企業だ」(早大・入山章栄教授)など経営学の論客が次々絶賛。10/26、12/7、2/1に日経新聞に掲載され話題となっている。 このたび土屋氏と早稲田大学ビジネススクールの内田和成教授が初対談(全10回)。非常に面白い対談になったのでいち早くお伝えしよう。 ワークマン加盟店オーナーは「開店5分前出社・閉店5分後退社」でなぜ年収1000万円になるのか?』、「ワークマン」の店舗は道路沿いによく見かけるようになったが、「国内店舗数ではユニクロを抜いた」、さもありなんだ
・『オーナーの標準化は難しい  (内田和成氏の略歴はリンク先参照) 内田和成(以下、内田):前回、ワークマンの組織学習についてお聞きしましたが、土屋さんは加盟店のオーナーにも学習を期待していますか? それともオーナーは老若男女いろいろな方がいるから、極力オペレーションをシンプルにして、あまり考えなくてすむようにしていますか。 土屋哲雄(以下、土屋):オーナーにはいろいろな方がいます。かつては業績を上げるために、オーナーのみなさんに頑張りを期待したこともありました。 内田:昭和的に一律に頑張れと。 土屋:はい。でも、現在はオーナーの価値観が多様化しています。お子さんがすでに大学を卒業し、「そこそこ稼げればいい」という人もいれば、大学生のお子さんが2、3人いて「もっともっと稼ぎたい」という人もいます。シニア世代と子育て世代では、働き方の意識も異なりますよね。なかには売上が上がるより、気楽に働きたいという人もいます。 内田:オーナーの標準化はなかなか難しいですよね。どういう人がオーナーになるのですか。 土屋:最近は若い人が増えていますが、かつては早期退職の方が多かったです。45歳くらいで退職金を割増で受け取ってオーナーになり、その後、72歳まで働きます。 当時は60歳でもオーナーになれましたが、現在は50歳以下になっています。数年前まで1店舗当たりの平均売上は年間1億円で、1日当たり客数は100人でした。 コンビニがだいたい1日1000人ですから、レジ対応は10分の1程度、1時間に7、8人ということになります。品出しなど他の仕事をしながら、お客様に「レジお願いします」と言われたときにレジに入ります。比較的ゆとりのある経営で、売上1億円、税込年収も1000万円近くある店舗も増えてきました』、「当時は60歳でもオーナーになれましたが、現在は50歳以下になっています」、ずいぶん若返ったようだ。
・『オーナーの仕事を楽に。5分前入店、5分後出店  (土屋哲雄氏の略歴はリンク先参照) 内田:新業態で一般客を相手にするようになると、オーナーの仕事は忙しくなっているのではありませんか。 土屋:現在は、お客様が2倍程度になり、仕事量は増えました。その一方で、新規開店すぐから多くの売上が見込めるようになりました。若手の店長が増えているのはそのためです。 内田:オーナーの1日のすごし方も変わりますよね。 土屋:売上が今の半分くらいだった頃は、夫婦で時間を分担し、1日6時間くらいずつ働くのが標準でした。お客さんは作業員や職人さんですから、仕事前の朝と仕事後の夕方が忙しい。一方、昼間はゆとりがあって「1日に文庫本を1冊読める」と言われていました。 現在は、日中に一般のお客様がいらっしゃいます。そこでオーナーには極力、省力化で経営してもらっています。 内田:運営の仕組みをシンプルにすることによって、比較的ラクに経営できるようにしているのですか。 土屋:はい。ワークマンの店舗の大半は午前7時から午後8時まで。午後8時に店が終わったら、午後8時5分に帰ることをお願いしています。レジは翌日の午後2時までにしめればいい仕組みです。朝7時に開店しますが、店に入るのは6時55分でいいと言っています。 内田:ワークマンの「頑張らない」「しない」は加盟店まで普及しているのですね。 土屋:レジは現金とカードのみでポイントカードもありません。店長の仕事は、品出しとレジ打ちだけを理想にしています。発注については「自動発注」といって一括発注ボタンを押すだけで可能です。オーナーの負担になることは一切やらないと考えています。 内田:パパ・ママでもラクに経営できる仕組みですね。 土屋:「細く長く」がいいと思っています。ワークマンの加盟店継続率は99%で、長期的な関係を築いています。加盟店とは長期的なおつき合いをしています。みなさん72歳の定年まで続け、子どもたちに引き継いでいます。いまや親子2代はあたりまえになっています。 内田:接客はどうですか。相手が職人さんであれば、店長より服や道具のことがわかっているので任せておけばいいと思うのですが、一般客を相手にすると必ずしもそうはいかないのでしょう。そのあたりはどうされているのですか。 土屋:半分以上の来店者が製品情報を知っていることを前提にしています。 内田:店はピックアップの場として考えてほしいと。 土屋:そのためにアンバサダーマーケティングを行っています。当社のアンバサダーからのSNS発信はまだ全体の10%程度ですが、それが拡散して90%のSNS発信を誘発しています。 内田:来店前に買いたいものを調べてくる。それなら接客は不要ということですね』、「品出しとレジ打ちだけを理想にしています。発注については「自動発注」といって一括発注ボタンを押すだけで可能で加盟店とは長期的なおつき合いをしていますす。オーナーの負担になることは一切やらないと考えています」、第二の職場としては、理想的だ。
・『エクセル経営でSVのアドバイスが的確に オーナーの信頼度もうなぎ昇り  内田:加盟店の運営の仕組みを極力シンプルにするということですが、一方でSVはどうでしょうか。SVと加盟店の関わりは最近変化がありましたか。 土屋:エクセル経営をスタートしてから、SVはデータを活用してオーナーにアドバイスをしています。SVは加盟店を巡回し、正しい運営が行われているかの管理や、売上アップの改善提案を行います。データを活用することで、オーナーからの信頼度をアップさせたSVが数多くいます。 内田:データを活用する前と後ではどのような変化がありました? 土屋:研修開始から数年後に追跡調査したことがあります。 データ分析ソフトを活用している上位10人、下位10人を調査したところ、一番アクセス数の多い社員は3ヵ月間で1934回、一番アクセス数の少ない社員は3ヵ月で127回でした。この20名の営業スタイルが見たいと思い、それぞれ1日かけて加盟店まわりに同行しました。 すると、データベースにアクセスしていないグループはコミュニケーション能力が高く、仕事はできるが、やり方が属人的でした。店長と交流を深め、信頼関係で店長に提案を実行してもらっていました。 一方、データベースにアクセスしているグループは、データを活用し、それをわかりやすく説明して店長を説得していました。普通の人にはデータを使ったほうが簡単で、やはり後者が標準になっていきました。 内田:ここでもエクセル経営による学習の効果が見られたということですね。 土屋:エクセル経営をきっかけに大きく成長したSVが数多くいます。 あるSVはとても気弱で頼りない感じの人でした。以前、一緒に加盟店を回ったときは、経験豊富な店長に気後れしていました。店長の中には、流通大手で20年間靴を売っていた人や、アパレルショップでカリスマ店員だったなど優秀な人が多くいて、このSVが何か提案しても、聞き入れてもらえませんでした。 内田:データがなかったからですよね。店舗の在庫データがなければ、数字が示せないから、コミュニケーション能力を駆使してオーナーに接することになる。そうなるといくら誠実でもコミュニケーション下手だと成果が挙げにくい。 土屋:その人がデータを示しながら「この製品を仕入れると儲かります」と数字で説明できるようになりました。その結果、オーナーの信頼を勝ち取りました。 内田:加盟店にとってみれば、この人の言うことを聞くと儲かるという存在になったわけですね。 土屋:SVの仕事の標準化も進みました。SVが店舗を回る際の最大の仕事が品揃えの確認です。それが店番を入力するだけでできてしまう「未導入製品発見フォーム」というものがあります。店番号を入力するだけで、その店で扱っていない製品が一覧表示されます。しかも他店で売れている順番に出てくる。これを店長に見せると「この製品を入れていれば、もっと売上が上がっていたのか」と悔しがるのです。 内田:なるほど。 土屋:SVの仕事で一番重要なのは、店舗を巡回し、品揃えを確認し、店長に売れ筋製品を伝え、仕入の改善を促すことですが、SVは「A製品を発注しないと年間で130万円損します」と言えばよくなりました。店長は儲け話には100%乗ってくるから、「未導入で売れ筋上位の20製品をいますぐ仕入れよう」となります。 内田:まさにエクセル経営のパワーですね。 土屋:当社には約150人のSVがいますが、「未導入製品発見フォーム」の新設によって、彼らの仕事の半分はエクセルに店番号入れるだけでできるようになりました。(P4省略)』、「SVは「A製品を発注しないと年間で130万円損します」と言えばよくなりました。店長は儲け話には100%乗ってくるから、「未導入で売れ筋上位の20製品をいますぐ仕入れよう」となります。 内田:まさにエクセル経営のパワーですね」、利益実感のある数字はやはり説得力があるようだ。

次に、3月7日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した株式会社ワークマン専務取締役の土屋哲雄氏による「これが「4000億円の空白市場」を切り拓いたワークマン式戦略マップだ」の1頁目を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/258144
・『今、最も注目を集める急成長企業ワークマン。「高機能・低価格」という4000億円の空白市場を開拓し、“頑張らない経営”で10期連続最高益。「#ワークマン女子」も大人気。国内店舗数ではユニクロを抜き、12/28「日経MJ」では「2020ヒット商品番付(ファッション編)」で「横綱」にランクインした。 急成長の仕掛け人・ワークマンの土屋哲雄専務の経営理論とノウハウがすべて詰め込まれた白熱の処女作『ワークマン式「しない経営」――4000億円の空白市場を切り拓いた秘密』がたちまち4刷。 「『ユニクロ』にも『しまむら』にもない勝ちパターンを発見した」(早大・内田和成教授) 「ワークマンの戦略は世紀の傑作。これほどしびれる戦略はない」(一橋大・楠木建教授) 「縄文×弥生のイノベーションは実に読みごたえがある」(BCGシニア アドバイザー・御立尚資氏) 「めちゃめちゃ面白い! 頑張らないワークマンは驚異の脱力系企業だ」(早大・入山章栄教授) など経営学の論客が次々絶賛。10/26、12/7、2/1に日経新聞に掲載された。なぜ、「しない経営」が最強なのか? スタープレーヤーを不要とする「100年の競争優位を築く経営」とは何か。 ワークマン急成長の仕掛け人、土屋哲雄専務が初めて口を開いた(土屋哲雄の本邦初公開動画シリーズはこちら)。(構成・橋本淳司)』、「経営学の論客」の「絶賛」ぶりは確かに凄い。
・『入場券なしで殴り込んだ アウトドアウェア市場  (土屋哲雄氏の略歴はリンク先参照) アウトドアウェア市場に参入する前に、ある調査会社に市場調査を依頼すると、「ワークマンはブランド品ばかりのアウトドアウェア市場に参入できない」「ブランド力がないので購買対象にならない」という結果が出た。 アウトドアウェア市場には、ザ・ノース・フェイス、パタゴニア、コロンビア、モンベル、チャムスなど有名ブランドがずらりと揃っている。ワークマンには「作業服が安く買える」というイメージはあるが、アウトドアウェア市場の入場券は持っていない。いくつかのヒアリング調査を行っても、結果はほぼ同様だった。 私は自分の戦略に自信はあったが、一般に認知されるまでには時間がかかると考えていた。 2018年9月5日に、第1号店「ワークマンプラスららぽーと立川立飛店」を出店するとき、正直「3年は赤字覚悟、認知されるまでには苦節10年」と思っていた。 開店前日、新店舗に商品部のメンバーを集めた。 自分たちの製品陳列を確認し、その足で別フロアにあるユニクロとGUの店舗を見た。格差を認識し、反省と奮起の会を開こうと思っていた。 私はその日初めて、上下コーディネートされた当社の製品を着たマネキンを見た。 意外なことに、ユニクロやGUより派手で、見栄えもそこそこだった。 「もしかしたらいけるんじゃないか」という手応えを感じた。 大方の予想を覆くつがえし、第1号店は成功した。 店先には連日行列ができ、初年度の売上目標をわずか3ヵ月で達成した。 下の図を見てほしい。横軸にデザイン性重視と機能性重視、縦軸に高価格と低価格で分けると、左下に巨大な空白市場が見つかった。 この市場規模はどれくらいか。 フランスにデカトロンというワークマンと似た低価格が売りの会社がある。デカトロンのフランス国内の売上を、日本の人口比で計算すると4000億円近くあることがわかった。 2020年3月期のワークマンのアウトドアウェアの売上が約400億円だから市場の10%となる。 低価格アウトドアウェアの市場規模は1000億円くらいと予想していたが、実際には、4000億円の「隙間とは言えない規模の市場」だった(知っていたら、自社の実力と市場規模のギャップを考え、参入を躊躇(ちゅうちょ)した可能性がある)。 ソフトバンクグループの孫正義(そん・まさよし)会長兼社長が「4000億円のホワイトマーケットをよく見つけた」と発言されたと伝え聞いている。 ワークマンプラスの成功は、既存店のワークマンにも好影響を与えた。 新業態のワークマンプラスが広告塔となり、既存のワークマンにも一般客が押し寄せ、2019年8月には既存店売上高が前年比154.7%となった。 ワークマンは東証ジャスダック市場に上場しているが、株価も上昇した。 2019年12月17日には時価総額が一時8600億円を超え、あの外食王・日本マクドナルドを上回った』、「ワークマン」の「時価総額」は2020年7月の9940円をピークに、下落、5730円前後になった。最近の株価下落はともかく、「入場券なしで殴り込んだ アウトドアウェア市場」、変に委縮したりせず、正々堂々とやるべきことをやって、地歩を固めたことは大したものだ。ただ、最近1年の株価下落は、ダイヤモンド・オンラインで同社の経営が取上げられていただけに、不思議だ。
https://www.google.com/search?q=%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%83%9E%E3%83%B3%E6%99%82%E4%BE%A1%E7%B7%8F%E9%A1%8D&rlz=1C2FQRR_jaJP983JP983&sxsrf=AOaemvInK3A3mup8lDJQcSlMQtKSeCYqnw%3A1639219068066&source=hp&ei=fH-0Yeu_Acei2roPoN-UeA&iflsig=ALs-wAMAAAAAYbSNjH4kgqMnaz3_Pg4uV6jRcJX_5SbS&ved=0ahUKEwjr7Yjyxtv0AhVHkVYBHaAvBQ8Q4dUDCAc&oq=%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%AF%E3%83%9E%E3%83%B3%E6%99%82%E4%BE%A1%E7%B7%8F%E9%A1%8D&gs_lcp=Cgdnd3Mtd2l6EAwyCggAEIAEEEYQ-gE6BwgjEOoCECc6BQgAEIAEUOoaWKGPAmCKxwJoAnAAeACAAWmIAbkEkgEDNC4ymAEAoAECoAEBsAEK&sclient=gws-wiz
第三に、11月26日付け東洋経済Plus「オーケーとH2Oのせめぎ合いは終わらない 裁判所も"待った!"関西スーパー争奪戦の泥仕合」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/28895
・『1株主の申し出で「否決」が「可決」にひっくり返る――。異例の集計作業を経て決まった経営統合に、裁判所が下した判断とは。 関西の小売り連合の誕生に、今度は司法の"待った"がかかった。 兵庫や大阪で食品スーパーを展開する関西スーパーマーケットと、同社の筆頭株主で阪急阪神百貨店を傘下に持つエイチ・ツー・オー リテイリング(H2O)。両社の経営統合案が、10月29日の臨時株主総会で可決された。 ところが関西スーパーの第3位株主で、首都圏を地盤とする格安スーパーのオーケーが11月上旬、「集計(方法)の疑義が判明した」として統合差し止めの仮処分を神戸地方裁判所へ申請。それが11月22日に認められたのだ。関西進出を狙うオーケーは、かねて統合案に反対し、否決されて中止になった場合に関西スーパーをTOB(株式公開買い付け)で完全子会社化する意向を表明していた。 同日夜、関西スーパーは「当社の主張が認められなかったことは誠に遺憾」とのコメントを発表。12月1日に想定していた経営統合を何とか実現させるべく、再審理を求めて11月24日に神戸地裁へ異議を申し立てた。 オーケーが指摘した疑義、そして地裁までもが"待った"をかける異例の展開の引き金は、ある1株主の票の取り扱いだった』、興味深そうだ。
・『否決が可決にひっくり返る  「非常に僅差です」「今しばらくお待ちください」――(総会当日、兵庫県伊丹市内のホテルの会場では、議長である関西スーパーの福谷耕治社長が釈明の言葉を繰り返した。結果の公表は当初の予定時刻から何度も後ろ倒しされ、出席していた株主の間にも徒労感が広がっていた。 総会終了後にメディアの取材に応じた関西スーパーの福谷社長(右端)。総会の議長を務め、株主に対し「用紙にマークを記入しないで提出した場合は『棄権』と扱う」と何度も呼びかけていた(記者撮影) 投票終了から2時間以上が経過した午後4時過ぎ、結果が公表された。「賛成66.68%」。特別決議として可決に必要な議決権の3分の2(66.66%超)というラインを、ごくわずかに上回る数字だった。 薄氷の勝利に、関西スーパーとH2Oの経営陣が胸をなで下ろしたのもつかの間。統合の行方を再び揺るがすきっかけとなったのが、総会に立ち会って決議方法を調査した検査役の報告書だ。 報告書では、統合案は一度「否決」という集計結果が出ていたにもかかわらず、「棄権」と取り扱っていたある株主の議決権行使内容を関西スーパーが「賛成」に変更したため、「否決」が「可決」にひっくり返っていたことが判明。この報告を受け、オーケーは「結果が恣意的に歪められたものにほかならない」と主張した。 この法人株主は、事前に提出した議決権行使書と委任状には「賛成」と記入していたが、総会当日の受付で、その場で議決権を行使しない「傍聴」ではなく「出席」を選択。会場では、関西スーパーの福谷社長が「投票用紙にマークを記入しないで提出した場合は『棄権』として扱い、『棄権』は事実上『反対』と同じ効果を持つ」と繰り返し説明していたにもかかわらず、この株主は何も記入せずに用紙を提出した。 投票用紙の回収作業終了後、結果発表までの休憩時間中に株主は、「マークシートを白紙で出したが、取り扱いがどうなっているか聞きたい」と受付に申し出た。そこで関西スーパーが「棄権」を「賛成」に変え、再集計したうえで「可決」を発表した、という流れだ』、この「関西スーパー」のやり方は素人目にも違和感がある。
・『地裁の判断に4つのポイント  「投票用紙のマークを消していたんじゃないか。(集計結果は)関西スーパーにとって都合がよすぎる」。長引いた集計作業に、当日出席した株主からはそういぶかしむ声すら聞こえた。1株主の申し出により結果が覆る、前代未聞とも言える集計過程にオーケー側が疑義を主張するのも無理はない。 関西スーパーは、賛否を切り替えた株主が「事前に行った『賛成』の意思表示の通り、議決権行使する意思である旨を(投票用紙の)回収担当者に述べていた」などとして、「株主の意思表示を正確に反映して集計した。適法性に何らの疑義もない」と主張する。 会社法が専門で、関西スーパー側の意見書を神戸地裁に提出した東京大学の田中亘教授は「決議に瑕疵はない。事件の性質は異なるが、アドバネクスの総会の高等裁判所判決では『(総会を開いた)会社において確認している株主の意思に従って議決権の行使を認めるべき』と示された。今回も、株主が不利益を負うような形で解決されるべきではない」と語る。 それでも神戸地裁は、今回の決議の方法に「法令違反または著しい不公正があるといわざるをえない」との厳しい判断を下した。判断のポイントは大きく4つある。 まず、議決権行使の方法と解釈についてだ。 神戸地裁は、今回の総会に出席した株主は投票用紙以外の方法で議決権を行使できず、用紙の回収が終わり、議場閉鎖が解除されてからは、記入内容を訂正できない点を指摘。出席株主が行った議決権行使の意味は、用紙のマークか提出・不提出という事実のみで客観的に決められ、「マークを記入せずに投票した行為は『棄権』としか解することができない」と断じた。 3点目のポイントが、意思表示の解釈だ。神戸地裁は、当該株主が受付で出席を選択した時点で事前の議決権行使(賛成)を撤回したことになり、「事前の意思表示が復活することはない」と言及。そのうえで、議場閉鎖の解除後に本来考慮してはいけない用紙以外の事情を考慮に入れ、「賛成」と扱った関西スーパーの採決手法の問題点を指摘した。 ▽総会手続きの"ルール"を重視(出席株主の議決権行使の仕方や棄権の取り扱いなど、総会の実務は会社法で細かく規定されておらず、会社側の裁量に委ねられている部分も多い。だが神戸地裁の判断では、個人の意思表示の扱い以上に、総会手続きの適正さが重くみられたと解釈できる。 総会の実務に詳しい中島茂弁護士は、「個人の意思は当然尊重されるべきだが、株主が議決権を行使するうえでは、株主総会というシステムのルールに従わなければならない。議長が議事整理権(ルールを決める権利)を行使して、『書面投票』を採用したことは、本当に重いことだという点を噛みしめるべき」と話す。 今回の騒動は、株主1人ひとりの投票が、株式会社の将来を左右しうることも改めて示した。一方で、議場での出席と傍聴の違いや、議決権行使書の使い方など、株主の十分な理解が得られていない点は少なくない。中島弁護士は、「『議決権行使書の事前提出は、選挙でいう期日前投票』『総会会場は投票所』など、一般の人がよくわかるように説明することが必要」と指摘する。 今後、仮に関西スーパーの異議申し立てが退けられた場合、同社は高裁に抗告できる。オーケーは自社の申し立てが最終的に認められ、関西連合の統合が中止されれば、関西スーパーの上場来高値である2250円でのTOBを再度提案する方針だ。 TOBへの期待感をはじめとする投資家のさまざまな思惑により、関西スーパーの株価は乱高下が続く。幕を閉じたかに見えた買収合戦は混迷を極めている』、8日に大阪高裁は「関西スーパー」の「異議申し立て」を認めたが、「オーケー」は最高裁に「異議申し立て」をしたので、「泥仕合」決着のの場はいよいよ「最高裁」に移ったことになる。さて、どうなるのだろう。 
タグ:「ワークマン加盟店オーナーは「開店5分前出社・閉店5分後退社」でなぜ年収1000万円になるのか?」 小売業(一般) (その6)(ワークマン2題(加盟店オーナーは「開店5分前出社・閉店5分後退社」でなぜ年収1000万円になるのか?、これが「4000億円の空白市場」を切り拓いたワークマン式戦略マップだ)、オーケーとH2Oのせめぎ合いは終わらない 裁判所も"待った!"関西スーパー争奪戦の泥仕合) 土屋哲雄 ダイヤモンド・オンライン 「ワークマン」の店舗は道路沿いによく見かけるようになったが、「国内店舗数ではユニクロを抜いた」、さもありなんだ 「当時は60歳でもオーナーになれましたが、現在は50歳以下になっています」、ずいぶん若返ったようだ。 「品出しとレジ打ちだけを理想にしています。発注については「自動発注」といって一括発注ボタンを押すだけで可能で加盟店とは長期的なおつき合いをしていますす。オーナーの負担になることは一切やらないと考えています」、第二の職場としては、理想的だ。 「SVは「A製品を発注しないと年間で130万円損します」と言えばよくなりました。店長は儲け話には100%乗ってくるから、「未導入で売れ筋上位の20製品をいますぐ仕入れよう」となります。 内田:まさにエクセル経営のパワーですね」、利益実感のある数字はやはり説得力があるようだ。 「これが「4000億円の空白市場」を切り拓いたワークマン式戦略マップだ」 「経営学の論客」の「絶賛」ぶりは確かに凄い。 「ワークマン」の「時価総額」は2020年の9940円をピークに、下落、5730円前後になった。最近の株価下落はともかく、「入場券なしで殴り込んだ アウトドアウェア市場」、変に委縮したりせず、正々堂々とやるべきことをやって、地歩を固めたことは大したものだ。 東洋経済Plus 「オーケーとH2Oのせめぎ合いは終わらない 裁判所も"待った!"関西スーパー争奪戦の泥仕合」 この「関西スーパー」のやり方は素人目にも違和感がある。 8日に大阪高裁は「関西スーパー」の「異議申し立て」を認めたが、「オーケー」は最高裁に「異議申し立て」をしたので、「泥仕合」決着のの場はいよいよ「最高裁」に移ったことになる。さて、どうなるのだろう。
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安心・安全(その1)(東京が「世界一危ない都市」と断定されたワケ 治安は「3年連続最高」でも別のリスクがある、岸田派vs二階派の代理戦争?なぜ富士急ハイランドは山梨県にケンカを売ったのか) [社会]

今日は、安心・安全(その1)(東京が「世界一危ない都市」と断定されたワケ 治安は「3年連続最高」でも別のリスクがある、岸田派vs二階派の代理戦争?なぜ富士急ハイランドは山梨県にケンカを売ったのか)を取上げよう。

先ずは、10月26日付け東洋経済オンラインが掲載した双日総合研究所チーフエコノミストのかんべえ(吉崎 達彦)氏による「東京が「世界一危ない都市」と断定されたワケ 治安は「3年連続最高」でも別のリスクがある」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/310832
・『東京と大阪をしょっちゅう行き来していると、ときどき別世界のようなギャップを感じることがある。関東と関西は、お互いに向こう側で何が起きているかを意外なくらいに知らないのだ。というよりも、単に関心が乏しいと言った方がいいのかもしれない』、興味深そうだ。
・『関東と関西、今年は全く逆のことが起きている  例えば関東の人たちは、昨年の関西が①大阪北部地震(6月)~帰宅難民も発生した、②西日本豪雨(7月)~西日本全体で死者が200人を超えた、③台風21号(9月)~関西国際空港が水没してしまった、というトリプルパンチの自然災害を受けたことを、どれだけ記憶しているだろうか。 まじめな話、昨年は6月から9月にかけて鉱工業生産指数が103.0台でペタッと横に寝てしまったのだが、これは災害に伴って西日本のサプライチェーンが麻痺してしまい、立て直しに手間取ったことが主因であったと筆者はみている。が、そういう認識は東日本においては希薄だったのではないかと思う。 今年はたぶん、それと全く逆のことが起きている。9月の台風15号と10月の台風19号が東日本に与えた被害について、たぶん関西の人たちはよく知らないだろう。房総半島の停電や、千曲川や阿武隈川の氾濫、利根川や荒川は何とかセーフだった、なんてことは所詮他人事である。ちょうど昨年の関東が、西日本の災害に対して無関心であったように。 いや、それは責められるべきことではないのである。東西に細長い日本列島は、自然災害の受け止め方も様々になる。2011年3月11日に巨大地震と津波が東日本を襲ったときでさえ、西日本は東日本ほどには揺れなかったのだ。これは、国土の多様性が意図せずして、巨大災害に対するリスクヘッジになっていると考えればいい。 例えば企業であれば、本社機能を東西に二分しておくことで、いざというときのバックアップ機能を維持することができる。さすがに首都直下型と南海トラフという2つの地震が同時に起きる、なんてことは、可能性は低いはずである。日本列島は国土も気候も東と西ではかなり違っているから、幸いにも一度に全部が悪くはなりにくいのである。) ところが、東西を併せてオールジャパンで見た場合、洒落にならないような事態が進行中である。以下は日本損害保険協会が調べた保険金支払い額の歴代ランキングである 。 もう「数十年に1度」と考えることはできない 〇風水災等による保険金の支払い 1. 2018年台風21号 大阪・京都・兵庫など 1兆0678億円 2. 1991年台風19号 全国 5680億円 3. 2004年台風18号 全国 3874億円 4. 2014年2月雪害 関東中心 3224億円 5. 1999年台風18号 熊本、山口、福岡など 3147億円 6. 2018年台風24号 東京・神奈川・静岡など 3061億円 7. 2018年7月豪雨 岡山・広島・愛媛など 1956億円 8. 2015年台風15号 全国 1642億円 9. 1998年台風7号 近畿中心 1599億円 10. 2004年台風23号 西日本 1380億円 実に歴代トップ10のうち3件が昨年に起きている。そして今回の台風19号は、新たに記録を塗り替えてしまいそうだ。武蔵小杉駅のタワマンから郡山市の工業団地の被害まで、保険金は広範に支払われることだろう。私情を申せば、富山市内に実家がある者としては、30編成のうち10編成が水没してしまった北陸新幹線の車両は特に胸が痛む。 こうしてみると、日本は台風多発時代を迎えてしまったようである。「数十年に1度」の規模の台風が、毎年のようにやってくる。その原因が気候変動問題にあるのかどうか、専門外の筆者には何とも言いようがない。しかし、これだけ巨大台風が連続しているということは、「来年以降もまたあるかもしれない」と考えておくべきだろう』、その通りで、損害保険会社は大変だろう。
・『まことに恐ろしいことに、地震による保険金支払額でも似たような現象が起きている。 〇地震保険による保険金支払い 1. 2011年東日本大震災 1兆2833億円 2. 2016年熊本地震 3859億円 3. 2018年大阪北部地震 1072億円 4. 1995年阪神淡路大震災 783億円 5. 2018年北海道胆振東部地震 387億円 東日本大震災は別格としても、トップ5のうち2件が昨年発生し、もう1件(熊本地震)も直近5年以内である。日本列島は、自然災害の多発時代を迎えつつあるようなのだ』、「自然災害の多発時代を迎えつつある」、とは大変だ。
・『確かに日本は「治安は最高」だが・・・  それではどうしたらいいのか。さあ国土強靭化だ、30年物国債を発行して、公共事業をどんどん増やそう、という声が自民党内から湧き上がってくるのかと思ったら、意外とそうでもないようだ。災害対策も予備費から、などと言っている。10月は消費増税が行われたし、海外経済の減速も目立っている。ここは少し大騒ぎして、大型補正予算を組むくらいの方が良いのではないだろうか。 英エコノミスト誌の関係会社、EIU社が発表しているSafe Cities Index(安全都市指数)という調査がある。 この調査の2019年版では、3年連続で東京が「世界で最も安全な都市」に輝いている 。「サイバーセキュリティ」で1位、「医療・健康環境」で2位、「インフラの安全性」で4位、「個人の安全性」で4位、総合スコアでは堂々の1位である。この調査、大阪も第3位に入っており、なるほど「日本は安全な国」との印象である。 ところが英保険組織のロイズが、ケンブリッジ大学と共同で行っている都市リスクの指標もある。こちらは紛争や災害の脅威を試算しているのだが、この都市ランキングでは東京が第1位、大阪が第6位となっている 。損害保険という「危険を買う仕事」の人 たちの眼には、「東京や大阪は危なっかしい」と見えているらしい』、「日本は安全な国」だが、「損害保険という「危険を買う仕事」の人 たちの眼には、「東京や大阪は危なっかしい」と見えている」、この対比は確かに興味深い。
・『「2つの都市」ランキング 安全な都市ランキング(英EIU) 1位 東京 2位 シンガポール 3位 大阪 4位 アムステルダム 5位 シドニー 6位 トロント 7位 ワシントンDC  8位 コペンハーゲン  9位 ソウル 10位 メルボルン    脅威リスク都市ランキング(英ロイズ) 1位 東京 2位 ニューヨーク 3位 マニラ 4位 台北 5位 イスタンブール 6位 大阪 7位 ロサンゼルス 8位 上海 9位 ロンドン 10位バグダッド 言われてみれば、日本は確かに安全であり、同時に危ない国なのであろう。9月の台風15号では、成田空港が交通アクセス遮断で陸の孤島となり、約1万4000人が空港で足止めを食らった。鉄道もダメ、タクシーもダメ、空港内では水と食料が足りず、しかも携帯の電波もつながらない。もちろん外国人観光客は大混乱だったそうで、まことに気の毒なことながら、そういうリスクは確かにこの国にはある。 そうかと思えば、台風19号の翌日には横浜の日産スタジアムで、ラグビー・ワールドカップのプールA最終戦、日本対スコットランドが行われている。どうやら関係者の必死の努力によって決行となったらしいが、その結果、ブレイブ・ブロッサムズは値千金の勝利を得て、目標だったベストエイト入りした。仮に試合が中止となって、勝ち点2ずつを分け合っての決勝トーナメント進出となっていた場合、何とも気まずい思いをしただろう。というより、「それならむしろ、戦って負けた方がましだ」と大会関係者は考えていたのではないだろうか。 つまり、自然災害に振り回されることもあるし、雄々しく打ち勝つこともある。災害多発列島において、長年生きてきた民族のDNAみたいなものがあるのだろう。 まじめな話、この先の日本が自然災害の多発時代を迎えるとなると、河川や海岸、ダムに堤防といった既存の国土インフラは老朽化が目立つし、少子・高齢化時代においては更新やメンテナンスも容易なことではあるまい。おそらくは気象情報の精度向上や、避難訓練の実施といったソフト面の充実を図っていく必要があるのだろう。 台風一過、株式市場は「災害に売りなし」とばかりに好調さが続いている。しかしわれわれは、リスクの高い国土でこれからどうやって生きていくのかを問われているのではないだろうか。何しろ昨今は、「災害は忘れた頃に」ではなく、「忘れる間もなくやってくる」時代であるようなのだ(本編はここで終了です。次ページでは競馬好きの筆者が週末のレースを予想します。あらかじめご了承下さい)』、「気象情報の精度向上や、避難訓練の実施といったソフト面の充実を図っていく必要があるのだろう」、同感である。「「災害は忘れた頃に」ではなく、「忘れる間もなくやってくる」時代であるようなのだ」、言い得て妙だ。

次に、12月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「岸田派vs二階派の代理戦争?なぜ富士急ハイランドは山梨県にケンカを売ったのか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/289982
・『「説明することは何もない」 平行線をたどる富士急ハイランド問題    11月22日、山梨県・富士吉田市の遊園地「富士急ハイランド」(以下、ハイランド)が、「FUJIYAMA」や「高飛車」という複数のジェットコースターを利用した2人の女性が骨折など負傷した発表した。これを受けて、山梨県が来庁しての説明を求めたところ、ハイランド側は「説明することは何もない」と言い放ったという。 これを「不誠実な対応」ととった県は、29日付で怪我人を出したジェットコースターなどの「運行停止」を要請した。場合によっては法的措置も検討するという。 「厳しくない?」と思うかもしれないが、実はハイランドのアトラクション、「発射1.56秒で時速180km!」をうたう「ド・ドドンパ」では、昨年12月から首や背中の骨を折る事故が4件発生していた。しかし、県には今年8月まで報告しておらず立ち入り検査を受けたという「前科」がある。「お前ら、まったく反省してないだろ」という、いら立ちが異例の要請につながったというのは容易に想像できる。 では、山梨観光を牽引する東証1部上場企業は、なぜ役所にケンカを売るようなことをしてしまったのか。 まず、ハイランド側の主張としては、「発表は間違いだった」ということがある。県がブチギレした翌30日夜、富士急ハイランド側はこんなリリースを出していた。 <当社は11月22日に2件の負傷の申し出があった旨をプレスリリースしました。しかし、その後の調査の結果、この2件は当社の遊戯施設の利用によるものと認められませんでした> ケガをしたという申し出があったので慌てて公表をしてしまったが、よくよく調べたらジェットコースターと因果関係はないことがわかり、ご本人たちにもそう説明して納得してもらったのだという。つまり、ハイランドからすれば、「ジェットコースターのせいじゃないって言ってんだから、わざわざそちらに行って同じ話をしても意味ないでしょ」という理由で県庁の訪問要請を断ったというワケだ。 ただ、企業で行政との窓口を担っている人などからすれば、この対応はちょっとモヤモヤしたものを感じてしまうはずだ。 民間企業が国や役所にケンカを売っても、あまりいいことはないということもあるが、それよりも何よりも客観的に見ると、ハイランド側には行政に対して強く出られる「立場」にないからだ』、「ハイランド側」が「行政に対して強く出」た理由は何なのだろう。
・『大観覧車でもドア全開で乗客を乗せてしまった事案も…それでも強気の理由  まず、先ほども申し上げたように、「7カ月未報告」と県のメンツを潰した過去がある。 そして、今回の負傷が施設と無関係だとしても「事実と異なる公表」をして世の中を騒がせたのは、他でもないハイランド自身である。公表を受けて県も対応に追われて、余計な仕事も増やしている。本来ならば、お茶菓子でも持参して、「いやあ、この度は先走った発表でお騒がせしましてすいませんでしたね」と県の担当者に挨拶くらいしてもいいはずだ。 そこに加えて、「安全管理」を県が疑うような事案が起きたばかりだ。ジェットコースター骨折のリリースを出した2日後、高さ50メートルの大観覧車で、乗客2人が乗ったゴンドラがドア全開で1周してしまった。ドアを閉めて施錠を忘れるのではなく、ドアが開けっ放しのまま係員が立ち去ったという。これを受けて岩田大昌社長は記者会見で「信頼回復の最中での事案で深くおわびします」と謝罪した。 つまり、ハイラインドは自他ともに認める「信頼回復の最中」にもかかわらず、県庁からの呼び出しを拒否したワケだ。これは一般的な企業危機管理のセオリーから大きく逸脱している。 では、なぜハイランドは、山梨県との「対立」に踏み切ったのか』、「山梨県」と喧嘩していいことは何もない筈だ。
・『富士急行を興した堀内一族のワクチン担当大臣と県知事の対立  ネットやSNSの“ハイランドファン”の間で支持されているストーリーは、「ジェットコースターの負傷案件を利用して堀内一族を引きずり下ろしたい山梨県知事の嫌がらせに対して毅然とした態度で立ち向かっている」というものだ。 富士急行を興したのは堀内良平氏(1870?1944)で、その子孫の堀内一族が代々企業を引き継いでいる。堀内一族は、まさに安倍晋三氏の「安倍一族」や麻生太郎氏の「麻生一族」などと同じく、明治から続く「支配階級」だ。現在の富士急行社長である堀内光一郎氏の妻、堀内詔子ワクチン担当大臣も堀内家の国会議員としては「四代目」にあたる。 もちろん、この一族支配を支えているのが富士急行グループであることは言うまでもない。選挙区の山梨2区は、富士急行本社をはじめ、ハイランド、ホテル、鉄道、バスなどグループ企業が集中している。そんな「堀内王国」の牙城を脅かしてきたのが他でもない、長崎幸太郎県知事だ。 衆議院議員時代、二階俊博氏の支援を受けて山梨2区でなんと12年、14年と連続で勝利し、堀内詔子氏は比例復活で苦汁をなめてきた。そのため、「堀内王国」内で長崎氏へ向けられる憎悪は年を追うごとに膨れ上がった。怪文書が飛び交うのは毎度のことで、こんな耳を疑うような「陰謀論」までささやかれた。 「事実、実在する暴走族が長崎さんを襲撃するという噂が広まっていて、支援者から『長崎先生にボディーガードをつけたほうがいい』と勧められました」(デイリー新潮2017年11月1日) 17年に堀内氏が選挙区で初勝利を果たし、長崎氏は19年に知事へと転身して選挙区直接対決の構図は終わったものの、今度は「堀内王国vs山梨県」という形で“冷戦”が継続。最近では、岸田首相が二階氏を幹事長の座から引きずり下ろしたことで、二階派(長崎知事)と岸田派(堀内大臣)の「代理戦争」という要素も加わってさらに激しさを増している。 そんな不穏な空気が漂うタイミングで、ハイランドの「安全問題」が次々と発覚すれば、長崎氏側が仕掛けた「工作」だと捉える人たちが現れるのは自然な流れだろう。 「ド・ドドンパ」で首を怪我したと訴えた女性が、SNSで笑顔で日常生活を送っている様子を投稿したところ、「さっさと死ねよ」「売名目的か金目的だろ」などとSNSで誹謗中傷されたことは有名だが、その中にこんな攻撃もあったという。 <なかには、山梨の政治問題と絡めてか『知事から金もらってるんだろ』とか。私は知事も政治家も知り合いにいませんし、そもそも山梨県民でもありません>(文春オンライン8月29日) 「堀内王国」の現実に鑑みれば、「山梨県知事の嫌がらせ」というストーリーがささやかれるのも理解できる』、ただ、「ハイランド」側の対応もお粗末過ぎる。
・『山梨県への報告を嫌がる富士急ハイランドの「行政軽視カルチャー」  ハイランドは富士急行の収益の柱、いわば、「堀内王国」の心臓部である。そんなところが、憎き政敵に呼ばれてホイホイ行けば堀内家の沽券に関わる。しかも、流れ的には平謝りをしなくてはいけない立場だ。こんな屈辱はないだろう。 また、行政が企業に対してよく行う「見せしめ」という公開処刑にされる危険性もある。企業の担当者を県庁に呼び出して説明させる一方で、その時間を意図的にマスコミにリークして取り囲ませるのだ。そこであれやこれやと追及されれば当然、あたふたする。話の辻褄も合わなくなる。そうなると、せっかく「シロ」を訴えているのに、「クロ」のような印象を社会に与えるような印象操作がなされてしまう恐れがあるのだ。 ただ、個人的には、このストーリーにはモヤモヤしたものを感じてしまう。実は富士急ハイランドが、山梨県への報告を嫌がるのは今回が初めてではない。事故の公表や報告に後ろ向きなのは、長崎氏が知事になる前から存在する「企業カルチャー」が関係している可能性があるのだ。 2007年5月14日、「ドドンパ」の走行中に、車体のカバーが外れて乗客の男性の膝を直撃、負傷をした。楽しく乗った後、首が痛くてというようなビミョーな話ではなく、明らかな「事故」。 しかもこの10日前には大阪の「エキスポランド」のジェットコースターが脱輪し、乗客の1人が頭を挟まれて死亡、21人が負傷するという事故が起きて、国の要請で全国のジェットコースターで緊急検査が行われていた。 が、富士急ハイランドがこの事故を公表したのは丸1日経過した翌日。理由は「けがの程度が軽かったため」(読売新聞2007年5月16日)だということで、「おわびをするしかない」(同上)と平謝りだったが、それよりもマスコミが注目したのは、警察と行政への報告のタイムラグだ。) <同社は富士吉田署への通報を「午後3時ごろ」としているが、同署は「連絡があったのは午後6時前」としており、食い違いが生じている。県への連絡は、警察が事故現場を調査した後の午後8時10分ごろ。同社は「事態をある程度把握してから報告しようとした」としている>(同上) 筆者は企業危機管理を生業にしているが、このように「客」が負傷をした場合、ここまでのんびりと時間を使うケースは珍しい。怪我の程度にかかわらず、警察・行政への報告は速やかに行っておくというのが事故発生時の鉄則だからだ。 このような「行政軽視カルチャー」は他の事案からもうかがえる。「エキスポランド」の悲劇を受けて、国が行なった緊急実態調査の結果、2004年10月、ハイランドの「マッドハウス」というコースターを点検していた男性従業員に別のコースターが衝突し、重症を負った事故を県に報告していないことが明らかになったのだ。 <総務省行政評価局によると、ハイランド側は事故を労災事故と判断。富士吉田署などに報告したものの、県には届け出なかった>(読売新聞2007年10月17日) このような話を聞くと、「堀内王国」の人々は、「さっきからハイランドがずさんな安全管理をしているような印象を与える悪い話ばかり。さてはこいつも長崎知事にカネをもらっているに違いない」と思うかもしれないが、まったく逆だ。このように県への報告を怠るのは、「富士急ハイランドがアトラクションの安全管理を徹底している」ことの裏返しだと筆者は考えている』、「「富士急ハイランドがアトラクションの安全管理を徹底している」ことの裏返しだ」、「裏返し」とはどういうことだろう。
・『自社の安全に対する強すぎる自負と整備しておけば安全という「機械信仰」  遊びに行った方ならばよくわかると思うが、富士急ハイランドは乗り物前の注意喚起などもしっかりしているし、スタッフの皆さんの安全に対するも意識も強い。「ド・ドドンパ」で乗客が重症を負った問題を受けて設置された第三者委員会の中間報告でも、点検や整備の不備は確認されていない。 そのように「安全」に対してしっかりと取り組んでいる、という自負が強すぎるあまり、「行政への報告」を軽視している可能性があるのだ。 「現場のことは現場の人間が一番よく知っている」という強烈なプライドがあるので、問題が起きると自分自身で解決に動く。国や行政への報告などより、自分たちの現場判断を優先してしまう。2007年の「ド・ドドンパ」のカバーが外れた事故で、県への報告を後回しにした理由が「事態をある程度把握してから」というのが、このカルチャーを象徴している。 ちなみに、これは、「技術力」をうたう、ものづくり企業や「食の安全」をうたう企業などにもよく見られる。わかりやすいのが、相次いで発覚した、自動車メーカーの検査不正だ。国が定めた基準を満たしていなくとも、自分たちの検査手順が安全をないがしろにしていないという絶対の自信がある。なので、現場判断で「不正」を続けてしまうのだ。 ハイランドと山梨県との対立の裏に「堀内王国vs県知事」というのはストーリーとしては確かに面白い。が、これまでの経緯を冷静に振り返ると、ハイランド側の「安全」に対するプライドの高さ、「県なんかにゴチャゴチャ言われなくても、しっかりやってるよ」というおごりが問題をこじらせている側面もあるのだ。 先ほどの「ド・ドドンパ」の第三者委員会で委員長を務める、上山信一・慶応大教授は「設備や機材さえ整備しておけば安全だという『機械信仰』が組織全体にあった」と分析している。 まったく同感だが、もしかしたら「機械信仰」にとどまらず、「自分たちの安全管理は絶対に間違っていない」という「安全信仰」もあるように感じてしまう。 ハイランドには「ええじゃないか」というジェットコースターがあるが、2007年、2012年とボルトが落下している。国交省社会整備審議会の「山梨県内コースター事故調査報告書」によれば、12年の時は、真下にいた女性が額を負傷している。 そして、このコースターからは2020年7月にもボルトが落下している。2度あることは3度ある。ハイランドを愛する人々のためにも、ジェットコースター問題には真摯に向き合っていただきたい』、「「現場のことは現場の人間が一番よく知っている」という強烈なプライドがあるので、問題が起きると自分自身で解決に動く。国や行政への報告などより、自分たちの現場判断を優先してしまう」、「これは、「技術力」をうたう、ものづくり企業や「食の安全」をうたう企業などにもよく見られる。わかりやすいのが、相次いで発覚した、自動車メーカーの検査不正だ」、「「機械信仰」にとどまらず、「自分たちの安全管理は絶対に間違っていない」という「安全信仰」もあるように感じてしまう」、原発の安全神話にも通じるような話だ。
タグ:安心・安全 (その1)(東京が「世界一危ない都市」と断定されたワケ 治安は「3年連続最高」でも別のリスクがある、岸田派vs二階派の代理戦争?なぜ富士急ハイランドは山梨県にケンカを売ったのか) 東洋経済オンライン かんべえ(吉崎 達彦) 「東京が「世界一危ない都市」と断定されたワケ 治安は「3年連続最高」でも別のリスクがある」 これだけ巨大台風が連続しているということは、「来年以降もまたあるかもしれない」と考えておくべきだろう』、その通りで、損害保険会社は大変だろう。 「自然災害の多発時代を迎えつつある」、とは大変だ。 「日本は安全な国」だが、「損害保険という「危険を買う仕事」の人 たちの眼には、「東京や大阪は危なっかしい」と見えている」、この対比は確かに興味深い。 「気象情報の精度向上や、避難訓練の実施といったソフト面の充実を図っていく必要があるのだろう」、同感である。「「災害は忘れた頃に」ではなく、「忘れる間もなくやってくる」時代であるようなのだ」、言い得て妙だ。 ダイヤモンド・オンライン 窪田順生 「岸田派vs二階派の代理戦争?なぜ富士急ハイランドは山梨県にケンカを売ったのか」 「ハイランド側」が「行政に対して強く出」た理由は何なのだろう。 「山梨県」と喧嘩していいことは何もない筈だ。 「「富士急ハイランドがアトラクションの安全管理を徹底している」ことの裏返しだ」、「裏返し」とはどういうことだろう。 「「現場のことは現場の人間が一番よく知っている」という強烈なプライドがあるので、問題が起きると自分自身で解決に動く。国や行政への報告などより、自分たちの現場判断を優先してしまう」、「これは、「技術力」をうたう、ものづくり企業や「食の安全」をうたう企業などにもよく見られる。わかりやすいのが、相次いで発覚した、自動車メーカーの検査不正だ」、「「機械信仰」にとどまらず、「自分たちの安全管理は絶対に間違っていない」という「安全信仰」もあるように感じてしまう」、原発の安全神話にも通じるような話だ。
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資本主義(その8)(「無形資産」の時代に新しく資本家になる人の特徴 必要なのは工場でも土地でもない多様な可能性、「新しい資本主義」とは何か? それは「データ資本主義」「資本なき資本主義」である 検討するまでもない。なのに日本は未だ、日本人が知らない「脱成長でも豊かになれる」根拠 若き経済思想家・斎藤幸平が語る貧困解決策) [経済]

資本主義については、11月4日に取上げた。今日は、(その8)(「無形資産」の時代に新しく資本家になる人の特徴 必要なのは工場でも土地でもない多様な可能性、「新しい資本主義」とは何か? それは「データ資本主義」「資本なき資本主義」である 検討するまでもない。なのに日本は未だ、日本人が知らない「脱成長でも豊かになれる」根拠 若き経済思想家・斎藤幸平が語る貧困解決策)である。

先ずは、11月16日付け東洋経済オンラインが掲載した NHK「欲望の資本主義」プロデューサー/東京藝術大学客員の丸山 俊一氏による「「無形資産」の時代に新しく資本家になる人の特徴 必要なのは工場でも土地でもない多様な可能性」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/468550
・『人が持つ技術や能力などの人的資産、デジタルソフトウェアなど、モノとしての実体が存在しない「無形資産」。肥大化する無形資産は、私たちの生活にどのような影響を与えるのか。 NHK「欲望の資本主義2021」での発言や『無形資産が経済を支配する』(共著)が話題のジョナサン・ハスケル教授に、無形資産の肥大化の影響を聞いた。番組の未公開部分も多数収録した『欲望の資本主義5:格差拡大 社会の深部に亀裂が走る時』から、一部を抜粋してお届けする(Qは聞き手の質問)』、興味深そうだ。
・『無形資産は格差を拡大も縮小もさせる  Q:世界的に人々の間で格差が広がっていますが、無形資産と格差はどのような関係にあるのでしょうか。無形資産の肥大化は資本家と中産階級、労働者階級といった階層構造にも影響を与えていますか。 ※無形資産=モノとしての実体が存在しない資産。特許や著作権などの知的資産、人が持つ技術や能力などの人的資産が代表例。その他、ブランド力などの市場関連資産、顧客情報・顧客基盤などの顧客関連資産や、企業文化、経営能力、人工知能システムなどのデジタルソフトウェアなど、多くの無形資産があると考えられている  ハスケル:無形資産が肥大化するという経済のトレンドは格差を拡大していくはずです。なぜなら、無形資産には、容易に規模を拡大できるという経済特性があるからです。 例えば、「ハリー・ポッター」シリーズはイギリスの大変重要な輸出品ですが、仮に私がその著者であったとしたら、その小説を世界中に売ることができます。 しかし、私が車を作って売っているとしたら、何度も繰り返して一台の車を売り続けることはできません。 つまり、「ハリー・ポッター」という知的財産を所有している人が得る利益は、有形資産を売買している人々が得る利益に比べて非常に大きくなり、それが格差に反映されるのです。そうした無形資産の肥大化とグローバリゼーションやインターネットが組み合わさって、格差を広げているのだと私は考えています。 Q:将来にわたって、格差は拡大し続けるということでしょうか。 ハスケル:それは予測の難しい問題です。無形資産は反対方向に働く二つの力を内包しているからです。とても興味深い特徴です。 先ほど申し上げたとおり、無形資産には規模を拡大しやすいという特徴があり、それは格差を拡大する方向に働く力です。 一方で、無形資産には、『無形資産が経済を支配する』で私たちが「スピルオーバー(波及)」と呼んだもう一つの特性があります。 自動車の作り方を完全に真似するのは大変難しいことですが、デザインを真似るのはとても簡単です。例えば、アイフォン(iPhone)の発売から1年半も経たないうちに、世界中のスマートフォンはどれも、アイフォンそっくりのデザインになっていました。それが、私たちがスピルオーバーと呼ぶ現象です。 これはほんの一例ですが、デザインという無形資産が他者に波及したのです。それには大きな投資は要りません。つまり、スピルオーバーの観点からは、無形資産には平等化を進める力があるとも言えるのです。それは、格差を広げる力とは逆方向に働く力です。 理由はわかりませんが、現時点では格差を広げる方向の力が、反対方向に働く力よりも強いようです。それが、将来的にどう変化するのかを予測するのは非常に難しく、まだ答えは出ていません。 いずれにせよ、無形資産には格差を広げる方向に働く力と、縮める方向に働く力という、逆方向に向かう二つの力があることは確かです』、「無形資産には格差を広げる方向に働く力と、縮める方向に働く力という、逆方向に向かう二つの力がある」、「現時点では格差を広げる方向の力が、反対方向に働く力よりも強いようです」、なるほど。
・『ICT革命が無形資産を肥大化  Q:無形資産が経済を支配するようになった、あるいは将来的にそうなるとすれば、転換点はどこにあるのでしょうか。著書『無形資産が経済を支配する』では「1990年代半ばに、アメリカで無形資産への投資が有形資産への投資を上回った」と指摘しておられますが、それが変化を加速させたとお考えですか。 ハスケル:私たちが収集しているデータによれば、開発途上国でもその傾向は強くなっていますが、先進国ではそれよりずっと、無形資産への投資が急増しています。データは、アメリカがその動きをリードしてきたことを示しています。ご指摘のとおり、アメリカでは1990年代の初めに無形資産への投資が有形資産への投資を上回りました。 この時期はICT(情報通信技術)革命が急速に拡大した時期と重なりますから、その影響を強く受けた変化であったことは間違いありません。インターネットが登場し、コンピューターが私たちの日常生活の一部になりました。コンピューターは有形資産のハードウェアですが、無形資産であるソフトウェアがなければそれを利用することはできません。 インターネットを構築するシステムも、通信システムも、ハードウェアとソフトウェアの両者で成り立っています。そのため、ハードウェアへの投資に加え、ソフトウェア=無形資産への投資が必要になり、その規模は有形資産への投資を上回る規模となりました。それが1990年代に起こったできごとの一つです。) さらに、ICT革命に伴い、1990年代には、ICT業界だけでなく、他の多くの業界でも無形資産への投資が広がりました。アメリカを筆頭に、他の国々でも小売や金融、旅行などさまざまな業界で、コンピューターとソフトウェアを使った業務形態の変化が始まりました。 例えば、銀行や旅行会社、航空会社は業務のオンライン化を推進しました。無形資産とは無縁と考えられていた運輸業界までもが、業務形態を変えるために無形資産への投資を余儀なくされたのです。 産業構造における無形資産への投資は、革命と呼べるような劇的な変化で、ICT業界にとどまらず、幅広い産業分野にまたがる現象になっていったのです。 Q:そして、その傾向は、今日まで続いているということですね。 ハスケル:さまざまな局面で増減を示しながらも、大きな潮流としてはそのとおりです。1990年代前半にアメリカで無形資産への投資が有形資産の投資を上回って以降、他の諸国にも同様の傾向は波及し、無形資産への投資でアメリカを追い上げました。それは今も続いています。 2008年に端を発した金融危機以降は無形資産への投資が鈍化しましたが、世界的に長期的な増加傾向であることは間違いありません』、「1990年代前半にアメリカで無形資産への投資が有形資産の投資を上回って以降、他の諸国にも同様の傾向は波及し、無形資産への投資でアメリカを追い上げました。それは今も続いています」、なるほど。
・『芸術家が資本家になる  Q:現在、新型コロナウイルスの影響で、社会のデジタル化に拍車がかかっています。無形資産の増大は、経済にどのような影響を与えるとお考えですか。 ハスケル:コロナ禍において無形資産が経済発展をもたらす可能性はいくつかあると思います。一つは、状況改善につながる良い変化を生む可能性です。 例えば、私はこれまで週5日出勤することや、通勤に長時間かけることにストレスを感じ、違和感を抱いていました。一方で、コロナ禍でのロックダウンによって通勤しなくてよくなった今、それにも違和感があり望ましくないと感じています。私としては、その中間がよいと思っているのです。コロナをきっかけに、それが実現するかもしれません。 これが無形資産とどう関係するのか考えてみましょう。ホワイトカラーや専門職の人々の多くがリモートで仕事ができるのは、通信手段や機器の発達のおかげです。パソコンやインターネットを使ったオンライン会議で、場所に縛られずに仕事ができるからです。 しかし、現状では、多くの人はそのような働き方ができません。接客などリモートでは難しい仕事があるのはもちろんですが、企業の事業マネージメントの制約でリモートワークが進まないケースも多く見られます。) リモートワークをさらに広げるには、多くの企業がビジネスモデルを転換させなければなりません。今までのやり方を大きく変える必要があるのです。同じ場所に集まっている人たちではなく、それぞれ離れた場所にいる人たちをマネージングしなければなりません。 リモートであっても、労働者の意欲を向上させたり、仕事に集中させたり、社内のイノベーションや協力体制を維持したりする方法を探るのです。 コロナを経済成長のきっかけにするためには、このような新たなマネージメント技術やビジネスモデルといった無形資産に大きな投資をする必要があります』、「コロナを経済成長のきっかけにするためには、このような新たなマネージメント技術やビジネスモデルといった無形資産に大きな投資をする必要があります」、その通りだ。
・『「ハリー・ポッター」のストーリーこそが資本  Q:資本主義の形や社会は変わるのでしょうか。 ハスケル:無形資産が支配する経済では、資本家の富を生み出す源が変わります。保有する資本そのものが変わるためです。 もう一度、「ハリー・ポッター」の話に戻ってみます。原作者はイギリス人作家のJ・K・ローリングですが、彼女は工場も土地も所有していません。過去の資本家たちが富を築く基盤としたものを何も持っていないのです。 ローリングが保有しているのは無形資産です。具体的には、自らが生み出した素晴らしいストーリーが資本です。資本主義社会の中で、他の資本家とは異なる形態の資本を保有しているのです。 もちろん、世界的な大ベストセラーは、いわゆる無形資産の中でもかなり特殊な例です。検討すべきなのは、もっと幅広い意味で資本的な無形資産を持つ人々が、どのような可能性を秘めているかということです。 例えば、コンピューター・プログラミングの技術や、優れたデザインを生み出す才能、研究開発の能力なども無形資産と言えますが、当然のことながら、無形資産の経済は、それだけでは成り立ちません。 とりわけ重要なのは、これらの作業をコーディネートできる人材や、企業などの大きな組織の中でマネージメントができる人材です。フェイスブックやグーグルのような大企業で、創造力にあふれた人たちをまとめられる人材ですね。 そうした人材が保有していると考えられる無形資産は、優れたプログラミング能力やエンジニアリング能力ではなく、人間関係のマネージングや、クリエーティブな人たちのマネージングに長けた能力です。 無形資産の経済では、このように例えば知性のような無形の資産を持つ人が資本家になることが考えられるのです。それは詩人かもしれませんし、歴史家かもしれません。古代ギリシャや日本の古典を研究する学者かもしれません。多様な可能性を持った面白い資本家が誕生するかもしれないのです』、「創造力にあふれた人たちをまとめられる人材ですね。 そうした人材が保有していると考えられる無形資産は・・・人間関係のマネージングや、クリエーティブな人たちのマネージングに長けた能力です」、「多様な可能性を持った面白い資本家が誕生するかもしれない」、面白い時代になったものだ。

次に、11月21日付け現代ビジネスが掲載した大蔵省出身で一橋大学名誉教授の野口 悠紀雄氏による「「新しい資本主義」とは何か? それは「データ資本主義」「資本なき資本主義」である 検討するまでもない。なのに日本は未だ」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/89435?imp=0
・『グーグルなど巨大IT企業は、工場や機械などの「資本」でなく、情報やデータを用いて経済価値を生み出している。こうした部門がアメリカ経済を牽引している。日本再生に必要なのは、「資本なき資本主義」に向けて産業構造を変えることだ』、「資本なき資本主義」とは面白い概念だ。
・『世界はすでに「新しい資本主義」に変わっている  岸田文雄内閣は、「新しい資本主義」が何かを決めるために、「新しい資本主義実現会議」を作って検討するのだと言う。 新しい資本主義が何かと検討するのは、大変結構なことだ。しかし、この答えは、いまさら改めて検討するまでもなく、明らかである。それは「資本なき資本主義」だ。「データ資本主義」といってもよい。 これは、単なる概念上のものではない。すでに現実世界を大きく変えてしまっている。世界がこの方向に向けて大きく転換したにもかかわらず、日本経済は「古い資本主義」から脱却できないでいる。日本経済が停滞するのは、このためだ』、「日本経済は「古い資本主義」から脱却できないでいる。日本経済が停滞するのは、このためだ」、意外な「日本経済」「停滞」要因だ。
・『GAMMAの時価総額は、日本の上場企業全体の1.4倍!  「新しい資本主義」がどんなものかを見るには、アメリカの巨大IT企業が行なっていることを見ればよい。 これらの企業群はGAFA+Mとよばれてきた(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト)。そのなかのフェイスブックが「メタ・プラットフォーム」と社名を変えたので、GAMMAと言うべきかもしれない。ここでは、その呼び名を用いることにしよう。 GAMMAの驚くべき成長は、その時価総額が日本企業の総額の1.4倍になってしまったことを見ても、明らかだ。具体的には、次の通りだ。 GAMMA5社の時価総額合計は、9.4兆ドルだ(2021年11月13日)。1ドル=114円で換算すると1072兆円になる。他方で、東証上場企業の時価総額合計は、2021年10月末で、762兆円だ。GAMMAの雇用者は、124万人だ。これらの人々だけで、日本の上場企業全体が作り出した1.4倍の価値を作り出したことになる』、「GAMMAの時価総額は、日本の上場企業全体の1.4倍」とは確かにすごいことだ。
・『「資本なき資本主義」は「データ資本主義」  これまでの経済においては、工場や機械設備あるいは店舗などの資本設備が、経済的価値を産み出してきた。そのために、「資本主義」と呼ばれた。ところが、新しい資本主義において価値を産み出すのは、これらのものではない。 実際、GAMMA企業は、基本的には工場も店舗も機械設備も持っていない。その代わりに「データ」を持っている。そして、これが経済的な価値を産み出している。 データといっても、これまでのデータでなく、「ビックデータ」と呼ばれる極めて規模の大きなデータだ。そして、それらがこれらの企業の収益の基本的な源泉になっている。このために「データ資本主義」と呼ばれることもある。 先に「資本なき資本主義」と言ったが、正確にいうと、資本がまったく不必要になったわけではない。工場や店舗など目に見える資本(有形固定資産)の重要性が減少し、その代わりに、情報やデータなどの見えない資本(無形資産)が重要性を増したということだ(ただし、企業会計では、ビッグデータの価値のほとんどを資産としてカウントしていない)。 「データ資本主義」をもう広く捉えれば、「情報資本主義」ということになる。あるいは、「デジタル資本主義」といってもよい』、「工場や店舗など目に見える資本(有形固定資産)の重要性が減少し、その代わりに、情報やデータなどの見えない資本(無形資産)が重要性を増したということだ」、確かにその通りだ。
・『「情報・データ処理サービス」部門の驚異的発展  ところで、GAMMA企業は、アメリカ経済のなかでどのような位置を占めているのだろうか? GAMMAの従業員数は、124万人だ(2019年)。ここからアマゾン(80万人)を除くと、44万人になる。一方、アメリカ商務省の統計には「情報・データ処理サービス」という産業分類があり、この部門の雇用者は、45.4万人だ(2019年)。 両者はほぼ一致している。したがって、「情報・データ処理サービス」とは、GAMMAからアマゾンを除いたものと考えることができるだろう。 この部門の2020年の1人あたり賃金は、18万3801ドルだ。1ドル=114円で換算すれば、2095万円になる。全産業の平均賃金7万1456ドル(814.6万円)の2.6倍だ。しかも、2013年から61%増という驚異的な伸び率だ。 日本の平均賃金は371万円(法人企業統計調査。金融業を除く全産業平均)であるから、その5.6倍ということになる。「情報・データ処理サービス」という産業分類は、日本には存在しない。 アメリカの場合にも、昔からあった分類ではない。比較的最近時点に作られたものだ。 「資本なき資本主義」の成長は、統計項目の立て方にも影響するほど顕著なものとなっているのだ』、「GAMMAからアマゾンを除いた:」「情報・データ処理サービス」「部門の2020年の1人あたり賃金は、18万3801ドルだ・・・2095万円・・・全産業の平均賃金7万1456ドル(814.6万円)の2.6倍」、やはりかなり高いようだ。
・『「データ資本主義」雇用者は全体の15%。製造業の2倍  ただしそうはいっても、「情報・データ処理サービス」の雇用者45.4万人は、アメリカ経済全体の雇用者1億3217万人の0.3%でしかない。だから、アメリカ経済の中のごく一部のことだと思われるかもしれない。 しかし、情報を中心とした経済活動を行なっているのは、「情報・データ処理サービス」部門だけではない。同様の経済活動を行なっている部門が他にもある。それは次の部門だ(カッコ内は雇用者数、万人)。 ・第1は、「情報」(253)。「情報・データ処理サービス」は、ここに含まれる。 ・第2は、「金融・保険」(635)。この部門は、店舗などがあるから、厳密には「資本なき」とはいえないが、データを扱っているという意味で「データ資本主義」の範疇に入れられるだろう ・第3は、「専門的、科学技術的サービス」(911)。 ・第4は 、 「 企業経営」(226)。アメリカでは、「企業経営」が独立した1つの産業分類になっている。 これらが、広い意味での「データ資本主義」の範疇に入るものだ。 以上4部門の雇用者を合計すると、2026万人となる。これは、雇用者総数の15.3%であり、製造業の1184万人(9.0%)の2倍近い。 アメリカの産業がすでに「資本なき資本主義」に向けて大きく変貌していることが分かる。 さらに注目すべきは、この分野への雇用者の顕著な移動が生じていることだ。2013年から2020年の雇用者の増加率を見ると、つぎのとおりだ。 産業全体で5.33%であるのに対して、「情報」は3.9%(うち、「情報・データ処理サービス」44.2%)、「金融・保険」は11.1%、「専門的、科学技術的サービス」は17.0%、「企業経営」14.4%。 これに対して、製造業は0.83%という低い伸び率だ。 このように、アメリカの産業別雇用は大きく変化している。日本の経済が停滞を続けている理由は、このような産業構造の転換ができていないことだ』、「4部門の雇用者を合計すると、2026万人となる。これは、雇用者総数の15.3%であり、製造業の1184万人(9.0%)の2倍近い。 アメリカの産業がすでに「資本なき資本主義」に向けて大きく変貌していることが分かる」、羨ましいようなすごいダイナミズムだ。
・『製造業も「工場なし」に移行  アメリカの変貌は、以上で述べたことだけではない。製造業でも生じている。それは、「ファブレス」(工場がない)という形態への移行である。その典型がアップルだ。同社は工場を持っていない。半導体のクアルコムやエヌビディアもそうだ。  これらの企業は、製造工程を、鴻海やTSMCなどEMS(電子機器受託サービス)とよばれる企業に任せている。 そして、開発、設計、販売など、付加価値の高い仕事に集中している。つまり、製造業も、情報産業になっているのだ。そのために高収益化している。アップルの驚異的な成長の基本的な要因は、ファブレス化なのである。 製造業においても、経済価値を生み出しているのは、いまや工場や機械ではない。開発や設計などになっている。つまり、「工場という資本のない製造業」に移行しているのだ』、「「工場という資本のない製造業」に移行」、確かに日本の立ち遅れは明らかだ。
・『政府の役割は補助金をバラまくことではない  デジタル化が重要と言われる。確かにその通りだ。しかし、必要なのは、ファックスをメールに切り替えることだけではない。あるいは、印鑑を電子署名にすることだけではない。経済と産業構造全体を変革していくことが重要なのだ。そうでなければ、日本の再生はありえない そのために政府が行なうべきことは何か? これまで見たアメリカ産業構造の転換は、アメリカ政府が主導し補助金を出すことによって実現したものではない。マーケットの力が実現したものだ。 政府が行うべきは、成長をリードすることではない。人気取りのバラマキ政策を行うことでもない。半導体の工場を日本に誘致するために補助金を出すことでもない。 そうではなく、成長を阻害している要因を取り除くことだ。とりわけ重要なのは、古い体制の既得権益と戦うことだ』、「政府が行うべきは、成長をリードすることではない。人気取りのバラマキ政策を行うことでもない。半導体の工場を日本に誘致するために補助金を出すことでもない。 そうではなく、成長を阻害している要因を取り除くことだ」、痛烈な政府批判で、まさに正論だ。

第三に、12月2日付け東洋経済オンライン「日本人が知らない「脱成長でも豊かになれる」根拠 若き経済思想家・斎藤幸平が語る貧困解決策」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/471566
・『「格差社会や気候変動の根本原因は資本主義にある」と指摘し、晩年マルクスの思想を援用し「脱資本主義」「脱成長」を説く斎藤幸平氏(34)。マルクス研究における最高峰の賞「ドイッチャー記念賞」を日本人初、史上最年少で受賞した気鋭の経済思想家は、同世代や近い世代の若者の貧困をどう見ているのか。 貧困に陥った若者たちの実態に4日連続で迫る特集「見過ごされる若者の貧困」4日目の第2回は、その解決策を斎藤氏に聞いた(1~3日目の記事はこちらからご覧ください)(Qは聞き手の質問、Aは斎藤氏の回答)。 【4日目のそのほかの記事】第1回:竹中平蔵「私が弱者切り捨て論者というのは誤解」 第3回:コロナで生活苦しい人に「使ってほしい制度」8つ』、興味深そうだ。
・『コロナ禍で格差拡大の構図がはっきりした  Q:コロナ禍で、厳しい状況に置かれる若者が増えています。 A:確かに、コロナ禍によって経済格差の拡大に拍車がかかり、そのシワ寄せは若い世代に行っています。ただ、日本での経済格差の拡大はバブル崩壊以降、ずっと起こっていることです。 終身雇用・年功序列型賃金を前提とした日本型雇用システムが収縮して、非正規雇用が増加し、雇用が不安定化。正社員になれても、労働者を使い捨てる、いわゆるブラック企業も増え、労働状況は極めて悪化していきました。 貯蓄ゼロ世帯(2人以上世帯)は1987年に3.3%だったのが、2017年には31.2%にまで増え、ここ30年間の上昇傾向は明らかです。とりわけ深刻なのが20代、30代の単身世帯で、貯蓄ゼロ世帯が激増し、多くの人が、基本的な生活を維持していくことすら困難な状況に陥っています。 Q:すでにあった格差がさらに広がっているということですか。 A:富裕層を見れば、アベノミクス下での日本では年間所得が1億円以上の世帯が1万以上増えました。世界的にも(アマゾン創業者の)ジェフ・ベソスや(テスラCEOの)イーロン・マスクら大富豪トップ8人は、この5年間でそれぞれ資産を2倍以上に増やしています。 株価も日米ともにコロナ禍でGDPが大幅に下がったにもかかわらず、歴史的な高値を記録しました。富める者たちは安全なテレワークで働きながら、株高を利用して資産を運用し、さらに富を増やしているわけです。 一方、経済が落ち込み、非正規雇用を中心に多くの人が失業しました。仕事があったとしても、テレワークができない介護・保育・医療などに従事するエッセンシャルワーカーたちは健康を危険にさらしながら、低賃金、過重労働を強いられています。 困っている側がますます困窮する一方、持てる側はさらに富を増やしていく。その格差拡大の構図がはっきりしたのがこのコロナ禍だと思います。 Q:その根本的な原因は資本主義にあるとお考えですか。 A:はい、資本主義が原因です。トマ・ピケティが指摘するように、資本主義では、労働者の所得の増大率よりも、資産を持っている人たちのリターンのほうがつねに大きい。 その格差を緩和するために、第2次世界大戦後は、経済のパイを大きくしながら、給料を上げるなどして労働分配率を高め、大きくなった部分を労働者に再配分するモデルが目指されてきました。 いわゆる「ケインズの時代」で、1970年代ぐらいまでは、先進国の労働者たちは豊かになり続けていた。マルクスの言う、貧しくなった労働者が革命を起こす、という流れではなかった。ですが、それは資本主義の歴史における、むしろ例外的な時期ではないかと言われ始めています。 そうした高度成長期が終わり、1980年代以降、とくに21世紀に入ってからは、パイ自体がなかなか大きくならなくなった。規制緩和をしたり、民営化したり、さまざまな金融政策もするわけですが、それでもかつてのようには経済が成長しない。 そこでゼロサムゲームで労働者と資本の間で取り合いが始まる。資本側が労働者の面倒を見なくなり、労働者側は取り分を奪われてしまう。それが新自由主義です』、「ゼロサムゲームで労働者と資本の間で取り合いが始まる。資本側が労働者の面倒を見なくなり、労働者側は取り分を奪われてしまう。それが新自由主義です」、その通りだ。 
・『マルクスが唱えた窮乏化法則が当てはまっている  先進国全般で労働者の賃金が下がり、競争が激化し、雇用も不安定化している。ギグエコノミーのような、アプリ一つで注文が来たときだけ「働き」が成立する、超不安定雇用まで蔓延しています。 (斎藤氏の略歴はリンク先参照) 資本主義の発展とともに労働者がどんどん貧しく苦しくなるという、かつてマルクスが唱えた窮乏化法則が、現在の状況に当てはまっている。 しかも、資本主義によって人間性が破壊されるだけでなく、地球環境問題も修復不可能な状態になりつつある。 人類の経済活動の痕跡が地層に残る時代という意味をもつ「人新世」という地質学の用語があり、国連なども使用するようになっていますが、そこに含意されているのは資本主義が引き起こした深刻な環境危機です。 Q:コロナ禍も「人新世」の産物だと指摘されています。 A:はい。気候変動をはじめとする環境危機をとりわけ加速させたのが、冷戦終結後のグローバル化です。この30年間で資本主義が世界中を覆い、ファストファッションで安い洋服が買え、ファストフードでは300円でご飯が食べられるようになった。 けれども、その安い農産物・畜産品を生産するために、手つかずだった自然、とくに中南米、東南アジアの熱帯雨林まで乱開発をし、人々の生活も自然環境も破壊していった。 こうした過程で、未知のウイルスを持った動物が森から追い出されて人間の生活圏に入ってくる。さらに複雑な生態系を壊してブタだけを育てるようなモノカルチャーは、ウイルスが変異しやすい環境を作り出す。このようなことを続けていれば、未知のウイルスがグローバルなパンデミックを起こすはずだと以前から警告されていました。 もちろん、グローバル化した世界ではウイルスの移動も早く、爆発的なスピード広がり、世界を大混乱に陥れたわけです。) Q:コロナ禍でも気候変動でも危機が起きたときシワ寄せが行くのは貧しい層です。 A:もちろんコロナ禍の被害も甚大ですが、気候危機の被害の深刻さに比べれば、リハーサルにすぎません。コロナ禍での緊急事態は何カ月かの期間限定ですが、気候変動はもはや不可逆的な変化で、これから毎年のようにスーパー台風がやってくる。いわば慢性的な緊急事態が続き、世界中で水不足や食料不足などが次々、起こります。すでにアフリカの人たちは飢饉に苦しんでいます。 格差があると危機に対応できないということが一つの認識になりつつあるわけですが、それはどこか遠い国の出来事ではなく、日本の経済的弱者や中間層も遅かれ早かれ、同様に苦しむようになるでしょう。 Q:この状態を脱するためにはどうすればよいのでしょうか。 A:繰り返しますが、経済格差も気候変動も、引き起こしたのは資本主義です。このことを前提にして、新しい経済システムづくりをしていかなければいけないと考えています。 『人新世の「資本論」』(集英社新書)で論じたことですが、2つの危機をのりこえるには、「脱成長」型の社会に移行しなくてはなりません。 私たちはお金を手に入れるために、あまりにも働きすぎ、あまりにもモノを作りすぎ、その結果、健康を害し、環境を破壊している。そうしたサイクルそのものから抜け出すべきなのです』、「コロナ禍の被害も甚大ですが、気候危機の被害の深刻さに比べれば、リハーサルにすぎません。コロナ禍での緊急事態は何カ月かの期間限定ですが、気候変動はもはや不可逆的な変化で、これから毎年のようにスーパー台風がやってくる。いわば慢性的な緊急事態が続き、世界中で水不足や食料不足などが次々、起こります」、確かに緊急の課題だ。「私たちはお金を手に入れるために、あまりにも働きすぎ、あまりにもモノを作りすぎ、その結果、健康を害し、環境を破壊している。そうしたサイクルそのものから抜け出すべきなのです」、なるほど。
・『人間誰もが必要とするものを「コモン」化する  無限の利潤獲得を目的とする資本主義のために働くのではなく、自然環境も人間の身体も有限であることを前提に、持続可能なペースで幸福を追求する。労働者も環境も食いつぶすような経済システムとは手を切り、経済自体をスケールダウン、スローダウンさせていく。それが脱成長です。 そこに向かう過程として、人間誰もが必要とするもの、たとえば水道、電力、住宅や医療・教育などを共有財産にして、人々の手で管理し、無償もしくは、安価に提供する「コモン」化が必要だと考えています。 なぜ安価にできるかといえば、たとえばパリ市は民営だった水道を「市民営化」という形で「コモン」化をしましたが、民営時代は経営陣の高額報酬や株主配当、不透明な経営で料金が高騰していたのです。生きるのに必要なものを脱民営化・脱商品化し、人々の手でマネージメントしていくことで費用を下げていくことができるのです。足りなければ、そこに公的資金をもっと入れていったほうがいい。 かつては少しずつ上がる給料で家のローンや子どもの教育費用、医療費、老後の資金を賄っていた。企業からのお金に依存して、人生設計を行ってきたのです。今の問題は、日本型の安定雇用が壊れたに、教育なり医療なりに多額のお金がかかる制度がそのまま残っていること。当然収支が合わないわけです。 また、失職して収入を失うと同時に、家も子どもの教育も老後も、すべてを失う仕組みは、今ある仕事にすがりつかせる強制力として働く。いわば貨幣の支配です。 その支配を和らげるためにも、生活の基盤となるシステムを安価にし、収入に依存せず、皆がある程度平等な機会を持てる社会にしていく。コモン化によって、貨幣の動きや市場経済に依存しない領域が増えていくことが、すなわち脱成長経済です。) 資本主義は技術を発展させて生産効率を上げ、さらに大量に作ろうというモデルです。ですが、高めた生産力については違う使い方をして、今までと同じ量を作り、その分労働時間を減らす。そうすれば過剰な生産が減り、環境にも優しい。 経済成長を何らかの方法で回復させることで、男性正社員を優遇してきた日本型雇用にすがりつこうとするのは論外です。かつての社会は、女性に家事や子育てを押し付け、パートとして差別的な雇用を採用してきました。労働時間の短縮は、家事や子育てなどもより平等に行う社会の条件です。そうした共通経験が、環境に優しいエッセンシャルワークやケアを重視する社会の価値観を生み出していくのではないでしょうか。 人々が市場から稼ぐプレッシャーから解放され、同時に、環境にも優しいケアを中心とした社会ができていく。それがコモン型の社会、「脱成長コミュニズム」です。 Q:海外ではそういった取り組みが進んでいると聞きます。 A:例えばバルセロナでは、この数年で安価に住める公営住宅を大幅に拡充しました。また町の中に、スーパーブロックと呼ばれる自動車が入れないエリアを広げる計画を進めています。 公共交通を拡充し、車を使うインセンティブを下げてCO2の排出量を減らすのと同時に、それまで車に占有されていた道路を、近隣住民が使える共有スペース、「コモン」に転換していく』、「人間誰もが必要とするもの、たとえば水道、電力、住宅や医療・教育などを共有財産にして、人々の手で管理し、無償もしくは、安価に提供する「コモン」化が必要だ」、現在のPFIなどの民営化とは逆の発想だ。
・『格差と気候変動を同時に解決する新たな道筋  車の移動は不平等です。何百万円という車を買える人たちが道路を特権的に占拠し、事故が起これば運転する人ではなく歩行者が死ぬという、極めて暴力的な構造がある。それを是正して、自転車と公共交通機関を優先した、より平等で誰もが安全に移動できる街づくりをする。それはCO2の排出を抑えた、地球にとっても優しい社会になる。格差と気候変動を同時に解決する新たな道筋になるわけです。 これまで経済の成長だけを考えていたところに、環境とか、「コモン」を拡大して不平等を解消する視点を取り入れることで、私たちの考え方自体が大きく変わる。我慢と捉えられがちだった環境対策のイメージがむしろ生活の豊かさに結びついていく。そんな発想の転換もできるんじゃないかと考えています。 Q:そのためには財源が必要になってきますが。 A:経済格差の是正を同時に進めるためにも、大企業や富裕層への課税を強化すべきです。金融資産課税でもいいし、不動産などの資産に直接、富裕税として課税をしてもいい。ここまで下げられてきた法人税や所得税ももっと上げていけばいい。 とにかく、大胆に格差を是正し、社会を平等にしていく必要がある。先進国の貧困問題は、富が偏りすぎているせいで、サービスや必需品にアクセスできない人が多いだけなので、格差是正が実現すれば、今ある貧困問題はかなりの部分が解決すると考えています。) Q:ベーシックインカムについてはどうお考えですか。 A:今の日本で議論されているベーシックインカムは、例えば月7万円を配る代わりに社会保障をすべて削る、究極の「自己責任社会」になりかねない。さらに「ベーシックインカムの分給料を下げる」という企業側の要求もはねのけられず、結局ますますお金に依存する社会になることを危惧しています。 ですので、私はベーシックインカムよりもベーシックサービス、必要なものを無償化して現物給付で渡す「コモン化」の道を選びたい。それによって貨幣の支配を弱め、市場に頼らずに生きていける領域を増やしていくほうがよいと考えています。 Q:日本の若者は、自分が苦しい状況にあっても、今の社会のあり方を肯定している人も多い。海外では2011年に起こったニューヨーク「ウォール街を占拠せよ」運動や、グレタ・トゥーンベリさんの気候危機への問題提起など、「ジェネレーション・レフト(左翼世代)」と呼ばれる若い世代の社会に対する動きが見られますが、日本の現状をどう見ていますか。 A:雇用が崩れ、教育・医療など必要な支出の負担が重くなる中、何とかお金を稼がなくては、というマインドが一部の若い人たちの間に広がっています。本来は「もっと普通に暮らせるようにしろ」と怒るべきなのに、日本人は自助、自力で何とかするようにすり込まれている。資本の側から見れば非常に扱いやすい。 再配分が機能する、フェアな社会にすることに想像力が働かず、既存のシステムの中で自分だけは生き残ろうという思想が強固になっているのは、非常に残念です。でもそれも仕方のない話で、希望が持てる社会運動もないし、訴えかけて応えてくれる政党もない。 Q:それはある意味必然的なことだと。 A:だからこそ私は『人新世の「資本論」』を書きました。まずは「今のこの社会はおかしい」と言ったり考えたりするためのボキャブラリーやツールを提唱したかった。私の専門は経済思想ですが、哲学や思想には、生きづらさや閉塞感を言語化し、批判するための言葉や、認識のフレームワークを与える力があるからです』、「まずは「今のこの社会はおかしい」と言ったり考えたりするためのボキャブラリーやツールを提唱したかった」、大いにやってくれることを期待している。これにより、それに「応えてくれる政党」も出てくるだろう。
・『世界中の若者たちが異議申し立てをしている  今、世界中で若者たちが怒っています。1990年代にはすでに、気候危機は確実に起こると言われていた。にもかかわらず、この30年間資本主義は世界中をマーケットにして富むものを富ませる一方で、地球環境をもはや待ったなしにまでさせてしまった。 そのツケを払わされる10代、20代の世界中の若者たちが今、絶望と同時に怒りをもって、新自由主義、さらに資本主義自体に異議申し立てをしています。現在の社会システムを抜本的に変えなければ、見捨てられるのは自分たちだと。 それに呼応して、アメリカのサンダースやオカシオ=コルテスのように、資本主義の行き詰まりを批判する政治家も出て、社会を動かし始めている。 日本では岸田さんが総裁就任前に新自由主義批判、金融資産課税などを持ち出していましたが、結局腰砕けに終わった。 政治も経済も、全体の状況を大きく動かしていくためには、やはり若者をはじめとしたさまざまな人たちが声を上げて、変化を求める運動が不可欠です。「今の社会はおかしい。変えていくべきだ」と、声を上げてほしいと思います』、今の日本人が大人し過ぎるのは情けない。「声を上げる」ようにするには、何が必要なのだろうか、私にも皆目見当がつかない。
タグ:資本主義 (その8)(「無形資産」の時代に新しく資本家になる人の特徴 必要なのは工場でも土地でもない多様な可能性、「新しい資本主義」とは何か? それは「データ資本主義」「資本なき資本主義」である 検討するまでもない。なのに日本は未だ、日本人が知らない「脱成長でも豊かになれる」根拠 若き経済思想家・斎藤幸平が語る貧困解決策) 東洋経済オンライン 丸山 俊一 「「無形資産」の時代に新しく資本家になる人の特徴 必要なのは工場でも土地でもない多様な可能性」 「無形資産には格差を広げる方向に働く力と、縮める方向に働く力という、逆方向に向かう二つの力がある」、「現時点では格差を広げる方向の力が、反対方向に働く力よりも強いようです」、なるほど。 「1990年代前半にアメリカで無形資産への投資が有形資産の投資を上回って以降、他の諸国にも同様の傾向は波及し、無形資産への投資でアメリカを追い上げました。それは今も続いています」、なるほど。 「コロナを経済成長のきっかけにするためには、このような新たなマネージメント技術やビジネスモデルといった無形資産に大きな投資をする必要があります」、その通りだ。 「創造力にあふれた人たちをまとめられる人材ですね。 そうした人材が保有していると考えられる無形資産は・・・人間関係のマネージングや、クリエーティブな人たちのマネージングに長けた能力です」、「多様な可能性を持った面白い資本家が誕生するかもしれない」、面白い時代になったものだ。 現代ビジネス 野口 悠紀雄 「「新しい資本主義」とは何か? それは「データ資本主義」「資本なき資本主義」である 検討するまでもない。なのに日本は未だ」 「資本なき資本主義」とは面白い概念だ。 「日本経済は「古い資本主義」から脱却できないでいる。日本経済が停滞するのは、このためだ」、意外な「日本経済」「停滞」要因だ。 「GAMMAの時価総額は、日本の上場企業全体の1.4倍」とは確かにすごいことだ。 「工場や店舗など目に見える資本(有形固定資産)の重要性が減少し、その代わりに、情報やデータなどの見えない資本(無形資産)が重要性を増したということだ」、確かにその通りだ。 「GAMMAからアマゾンを除いた:」「情報・データ処理サービス」「部門の2020年の1人あたり賃金は、18万3801ドルだ・・・2095万円・・・全産業の平均賃金7万1456ドル(814.6万円)の2.6倍」、やはりかなり高いようだ。 「4部門の雇用者を合計すると、2026万人となる。これは、雇用者総数の15.3%であり、製造業の1184万人(9.0%)の2倍近い。 アメリカの産業がすでに「資本なき資本主義」に向けて大きく変貌していることが分かる」、羨ましいようなすごいダイナミズムだ。 「「工場という資本のない製造業」に移行」、確かに日本の立ち遅れは明らかだ。 「政府が行うべきは、成長をリードすることではない。人気取りのバラマキ政策を行うことでもない。半導体の工場を日本に誘致するために補助金を出すことでもない。 そうではなく、成長を阻害している要因を取り除くことだ」、痛烈な政府批判で、まさに正論だ。 東洋経済オンライン「日本人が知らない「脱成長でも豊かになれる」根拠 若き経済思想家・斎藤幸平が語る貧困解決策」 マルクスの思想を援用し「脱資本主義」「脱成長」を説く斎藤幸平氏 「ゼロサムゲームで労働者と資本の間で取り合いが始まる。資本側が労働者の面倒を見なくなり、労働者側は取り分を奪われてしまう。それが新自由主義です」、その通りだ。 「コロナ禍の被害も甚大ですが、気候危機の被害の深刻さに比べれば、リハーサルにすぎません。コロナ禍での緊急事態は何カ月かの期間限定ですが、気候変動はもはや不可逆的な変化で、これから毎年のようにスーパー台風がやってくる。いわば慢性的な緊急事態が続き、世界中で水不足や食料不足などが次々、起こります」、確かに緊急の課題だ。「私たちはお金を手に入れるために、あまりにも働きすぎ、あまりにもモノを作りすぎ、その結果、健康を害し、環境を破壊している。そうしたサイクルそのものから抜け出すべきなのです」、なるほど。
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反社会的勢力(その2)(「半グレ」集団のいま 暴力団の稼ぎを超えた可能性も、ヤクザが刑務所のことをあえて「大学」と呼ぶ理由 彼らが刑務所の中で読む本とはいったい?、暴力団による「企業恐喝の手口」 元マル暴刑事が明かす巧妙化の実態とは)

反社会的勢力については、2018年8月3日に取上げた。久しぶりの今日は、(その2)(「半グレ」集団のいま 暴力団の稼ぎを超えた可能性も、ヤクザが刑務所のことをあえて「大学」と呼ぶ理由 彼らが刑務所の中で読む本とはいったい?、暴力団による「企業恐喝の手口」 元マル暴刑事が明かす巧妙化の実態とは)である。

先ずは、やや古いが2019年10月31日付けNEWSポストセブン「「半グレ」集団のいま 暴力団の稼ぎを超えた可能性も」を紹介しよう。
https://www.news-postseven.com/archives/20191031_1472976.html?DETAIL
・『吉本芸人の闇営業問題など、「半グレ」と呼ばれる犯罪集団の存在に注目が集まっている。かつて反社会的勢力と言えば「ヤクザ」が代名詞だったが、時代は変わった。長年の暴力団取材のエッセンスを『教養としてのヤクザ』(鈴木智彦氏との共著)にまとめたジャーナリストの溝口敦氏が、その変化を分析する。 ヤクザ、暴力団をしのぐ勢いで半グレ集団の暗躍が目立っている。警察はその勢力や参加メンバーを把握しておらず、特殊詐欺の被害額などから、わずかに彼らの増殖を推測しているに過ぎない。半グレがヤクザに比べて人数が多いのか少ないのか、その1人当たり稼ぎ額がヤクザより多いのか少ないのか、ほとんど何もわかっていない。単に彼らの犯罪による被害額の一部が統計により明らかにされているだけだ。たとえば2018年、彼らによる特殊詐欺被害額は356億8000万円に及んだ。 半グレ集団は特殊詐欺以外にも新しいシノギを創出している。金のインゴット密輸、ビットコインの販売やマイニング(掘削)、少し前には危険ドラッグの製造と販売、そして2003年頃オレオレ詐欺などの特殊詐欺を考案、以後一貫して実行し、太い資金源としてきた。 ヤクザのなかには半グレからノウハウを学び、それらをシノギとしている者もいるが、おそらくこれら新シノギによる稼ぎ額は、ヤクザ、暴力団が伝統的に行なっている覚せい剤の密売、各種の賭博開帳、恐喝、管理売春などの総額より多いだろう。国民のこうむる被害額はヤクザより、むしろ半グレによるもののほうが多いのではと疑われる。 ヤクザは暴力的にはともかく、経済的には半グレに押されている。半グレはもともとヤクザの親分-子分関係には従えないとするグループである。ヤクザに接近すると、ヤクザからたかられるだけと警戒する者たちだから、基本的に両者は別立ての犯罪集団である。だが、ヤクザの零細化につれ、ヤクザからさえも脱落する元組員たちを吸収する受け皿にもなる。少数だが、逆に半グレからヤクザに移籍する者もおり、一部で両者の混ざり合いが見られる』、「オレオレ詐欺などの特殊詐欺を考案、以後一貫して実行し、太い資金源としてきた」、知能犯的色彩もあるようだ。「国民のこうむる被害額はヤクザより、むしろ半グレによるもののほうが多いのではと疑われる」、「半グレはもともとヤクザの親分-子分関係には従えないとするグループ」、「ヤクザからさえも脱落する元組員たちを吸収する受け皿にもなる・・・一部で両者の混ざり合いが見られる」、無視できない大きな存在だ。
・『ヤクザ、暴力団は犯罪という闇に足を置きつつ、半分だけ社会に認められている存在だった。世間に認められてナンボの「半社会的」存在なのだ。対して半グレは凶悪犯罪をあまり手掛けず、詐欺などの経済犯罪を専門にしながらも、とにかく世間に隠れて犯罪をシノギとする「アングラ」の存在である。半グレはシノギ以外の分野では法的に堅気であり、よって暴対法も暴排条例も適用されない。 ヤクザが零落して半グレに吸収されれば、それもヤクザの「アングラ化」になろう。アングラ化の本質は「犯罪グループ化」とも換言できる。犯罪グループはどの国にも存在し、各国ともそれなりに取締りに取り組んでいる。 江戸期以来、日本に存在したヤクザは男伊達を売る「半社会的」存在だった。「何某組」と堂々看板を掲げる犯罪組織は他の国にはなかった。その意味でヤクザは特殊日本型の犯罪組織として独自の存在だった。それが今、消滅に近づいている。その後にアングラ化した半死半生の犯罪グループが残る可能性がある。こうした状態は日本の裏社会が特殊日本型の犯罪組織を失い、遅ればせながら諸外国並みになったともいえよう。ヤクザのアングラ化は必ずしも恐るべきことではない。 ※溝口敦/鈴木智彦・著『教養としてのヤクザ』(小学館)より一部抜粋)「ヤクザは特殊日本型の犯罪組織として独自の存在だった。それが今、消滅に近づいている。その後にアングラ化した半死半生の犯罪グループが残る可能性がある。こうした状態は日本の裏社会が特殊日本型の犯罪組織を失い、遅ればせながら諸外国並みになったともいえよう」、こんなことで「諸外国並みになって欲しくないものだ。

次に、本年5月17日付け東洋経済オンラインが掲載したノンフィクション作家・ジャーナリストの溝口 敦氏とライターの 鈴木 智彦氏による「ヤクザが刑務所のことをあえて「大学」と呼ぶ理由 が彼ら刑務所の中で読む本とはいったい?」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/422041
・『一般社会とは、まるで常識が違うヤクザ社会。彼らは、なぜ刑務所のことをあえて「大学」と呼ぶのか? 暴力団取材のプロである溝口敦氏と鈴木智彦氏の共著『職業としてのヤクザ』から一部抜粋・再構成してお届けする。 溝口敦(以下、溝口):ヤクザにとって組への貢献というのは、懲役に行くか、お金を運ぶ、その2つしかない以上、金儲けに不器用な者は、自分の体をかけて、懲役に走ることによって、ようやくヤクザとしての自分の存在価値を証明することができる。 鈴木智彦(以下、鈴木):今はもう、懲役に行ったら、人生を棒に振ることになる。だから老い先の短い高齢のヤクザが、金のため、最後のご奉公を買って出る。でも、そういうヒットマンは体力がありません。 溝口:それは、年寄りが行くのと若いのが行くのではね。 鈴木:若いほうが身体能力も高いし、精神的な粘りも利く。6代目山口組の中核組織である弘道会の組員が岡山で池田組若頭(神戸山口組幹部)を殺害しましたが、捕まったのが32歳の若い組員でした。ああいうのを見ると、あっ、弘道会は、こんな若く将来ある若い衆をヒットマンに使えるんだ、と評価されます。 溝口:それだけの人的資源、経済的資源もあるし、求心力もあると。 鈴木:そうですね。人材がいてお金もあって、何より精神的に充足させられるんだということ。ただ、ヤクザの殺しはスキルではなく、性根です。根性の勝負です。最終的には腹が据わったヤツが怖い。軍隊のように、老兵に勝ち目がないわけではありません』、「弘道会は、こんな若く将来ある若い衆をヒットマンに使えるんだ、と評価されます」、一般人の常識とはかけ離れた「評価」には驚かされた。
・『ヤクザが読む本とは?  溝口:昔なら若いころにそういう組のために重要な働きをする仕事をし、そして、刑務所の中で過ごす。出所すればある程度ヤクザとしての格は上がりますが、なかでも出世する人は刑務所内でよく本を読んで勉強している印象があります。 鈴木:刑務所を「大学」と呼びますもんね。 溝口:法律や経済の専門書を読んで、シノギで法の網の目をかいくぐるスキルアップにつなげたりする。ほかにも刑務所内での努力はあって、例えば6代目山口組組長の司忍は収監されている間、刑務所内で筋肉ムキムキマンになる筋トレに精を出しましたけど、曲がりなりにも78歳にして彼は立派な体と健康を維持していられるわけです。 溝口:ちなみに司は若いころ、出身母体の弘道会が名古屋を統一するための戦いで、大日本平和会系の組と抗争した際、12年ぐらい懲役に行っています。 山一抗争(1981年、山口組四代目を竹中正久が継いだことに反発した山広組組長・山本広が一和会を結成。終結までに25人の死者を出した抗争)のときには、一和会の中核団体である山広組系の組の若頭をさらって、脱会届を書かせるなど、かなりの働きをしていました。彼にもそれなりの暴力的な功績があったのでしょう。 鈴木:しかし、あまりに長く収監されすぎてしまうと、それはそれでヤクザとしてのチャンスを逃すことになります。 溝口:そういうことですね。抗争において組長クラスは、功績を得る仕事をしたうえで、自分は捕まらないということが大切。 鈴木:兵隊には兵隊の、部隊長には部隊長の役目がある。 溝口:今は指示したことがわかったら実行犯でなくても組長が殺人教唆で捕まることになり、懲役20年は行くでしょう。そうすると、その間が空白になって、組運営に加わるなんていうことは到底できなくなる。だから、捕まらないようにしなければならない』、「抗争において組長クラスは、功績を得る仕事をしたうえで、自分は捕まらないということが大切」、「今は指示したことがわかったら実行犯でなくても組長が殺人教唆で捕まることになり、懲役20年は行くでしょう。そうすると、その間が空白になって、組運営に加わるなんていうことは到底できなくなる。だから、捕まらないようにしなければならない」、かなり微妙な忖度が求められるようだ。
・『もはや親が子をかばうような時代ではない  鈴木:実際は、暴力団において親分が関知しない殺人などありえません。裁判になったときのことを考え、直接的な表現を避けるなど、教唆にならないテクニックを駆使しても、リスクを覚悟し、はっきり意思表示をしないと組員は動けません。 昔のように親分は子分を庇ってくれません。顔色を見て、心情を察して殺したなんて言ったら、勝手なことをしやがってと処分されかねない。親分が教唆してない殺しなんてない。にもかかわらず、捕まらないということは、子分が絶対に口を割らないからです。つまり、親分がそれだけ心酔されていて、組織も統率されている。 その前提として、ヤクザ組織が維持できるのは、人柱になってくれた組員のおかげである。彼らあってのわれわれだ、実行犯の犠牲のおかげだ、いつも感謝しよう、みんなで称えましょうという気風はヤクザの基本です。雑誌のインタビューでも、抗争での物故者や実行犯を必ず称賛します。 溝口:6代目山口組の2次団体、司興業組長の森健司から、若頭の高山清司の言葉を聞いたことがあります。「懲役に行ってくれる者がいるから、わしらはうまい飯を食えるんだ」というのが高山の口癖なんだと。場合によっては、現役の組員よりも懲役に行った組員を大事にする。そういう伝統があるから、弘道会は抗争に強いんだと、森健司は言っていました』、
「親分が教唆してない殺しなんてない。にもかかわらず、捕まらないということは、子分が絶対に口を割らないからです。つまり、親分がそれだけ心酔されていて、組織も統率されている」、「場合によっては、現役の組員よりも懲役に行った組員を大事にする。そういう伝統があるから、弘道会は抗争に強いんだ」、「弘道会」恐るべしだ。 第三に、11月30日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したフリーライターの村上 力氏による「暴力団による「企業恐喝の手口」、元マル暴刑事が明かす巧妙化の実態とは」を紹介しよう。 https://diamond.jp/articles/-/288963 ・『警視庁のノンキャリで採用され、2018年に同庁組織犯罪対策部の管理官(視)を退官した櫻井裕一氏が、刑事人生を振り返る『マル暴 警視庁暴力団担当刑事』(小学館新書)を上梓した。櫻井氏は在職中のほぼ全てを暴力団担当、いわゆる『マル暴』一筋で歩み、稲川会と住吉会の抗争事件や、暴力団への不正融資事件、暴力団が仕切る談合事件などの数々の経済事件の捜査を経験した。その櫻井氏に、反社会的勢力による企業恐喝など、企業対象暴力の現状を聞いた(Qは聞き手の質問、Aは櫻井氏の回答)』、興味深そうだ。 ・『記事のもみ消し依頼をきっかけに銀行が暴力団関連企業に不正融資    (櫻井裕一氏の略歴はリンク先参照) Q:櫻井さんの経歴を簡単にご紹介ください。 A:高校を卒業して、1976年に警視庁に入り、最初は赤羽警察署に配置されました。83年に暴力団事件を担当する暴力犯係の刑事となってからは、ずっと捜査四課、組織犯罪対策部などで暴力団関連事件の捜査をしていました。渋谷署の組織犯罪対策課の課長代理、新宿署の組対課長を経て、警視庁本部の組対部第四課の管理官を務めました。 Q:『マル暴』では、関東の暴力団同士の抗争事件のお話のほかに、銀行の暴力団への不正融資や、談合、詐欺などの経済事件の捜査経験が書かれておりますが、最近の企業対象暴力の特徴をお聞かせください。 A:今も昔も、暴力団が最初から企業とじかに接触することはありません。必ず、間にブローカーや、実業家、ブラックジャーナリストや事件屋を介在させます。企業経営者がそうしたグレーゾーンの人たちと人間関係を深め、後戻りできなくなったところで、暴力団が顔を出す、というパターンが実際によくあります。 例えば、00年代初頭に捜査した、銀行が暴力団の会長が関与する会社に多額の融資を実行し、回収不能となった特別背任事件があります。この事件では、銀行トップが、暴力団会長と銀座で飲み歩く姿が頻繁に目撃されるほど、癒着していました。 そのきっかけは何だったのかというと、当時の銀行は大蔵省官僚に「ノーパンしゃぶしゃぶ」などの破廉恥接待を行い、社会的に批判されていましたが、問題の銀行もご多分に漏れず官僚に破廉恥接待を行っていて、その事実をジャーナリストや似非(えせ)右翼につかまれた。銀行トップは、不祥事を表に出したくないばかりに、事件屋や怪しい実業家などの“有力者”に、記事のもみ消しを頼み込む中で、暴力団会長に行きついたのでした。 普通、銀行の経営者ともなれば、いかに頼み事があったとしても、相手が暴力団だったと分かった時点で席を立つでしょう。しかし、往々にして最初はあくまで暴力団ではない、グレーゾーンの人が出てきます。すると、「本人はヤクザじゃないから、大丈夫か」と油断して、頼み事をしてしまう。 ところが、後日その人物から酒の席で、「私がお世話になっている会長」や「業界で力のある方」と言われて暴力団を紹介されると、無下に断りにくい。一度頼み事をして、解決してもらっている相手の顔をつぶせないからです。 企業の経営者は、暴力団と会った時点でもう後戻りはできません。一度会ってしまえば、その席でどういう話をしていようが、世間の印象は悪いわけです。それに、グレーゾーンの人間からすれば、暴力団と引き合わせるのは、相手をカタにはめる、つまり逃げられない状態にするためでもあるのです。実際、私が捜査した銀行経営者は、取り調べで黙秘を貫き、警察の捜査に抵抗していたのです』、「暴力団が最初から企業とじかに接触することはありません。必ず、間にブローカーや、実業家、ブラックジャーナリストや事件屋を介在させます。企業経営者がそうしたグレーゾーンの人たちと人間関係を深め、後戻りできなくなったところで、暴力団が顔を出す」、なるほど。 ・『不良社員が暴力団に取り込まれて多額を恐喝される恐れも  企業恐喝は、どういったきっかけで行われることが多いですか。 昔ながらの女性スキャンダルや、取引での不祥事などがネタにされることが多いです。社長や役員が、暴力団の妻が経営している飲食店を利用したとか、取引先の女性と肉体関係を持ったとか、売春をしたとか、そういう話をきっかけに恐喝するケースは、暴力団排除が進んだここ十数年でも多い。 例えば、暴力団の妻の店に役員が飲みに行ったとします。本来、その役員は何も知らないでただ酒を飲んでいただけだったとしても、「そういう店にお金を払って、ヤクザに便宜供与している」と言いがかりをつけてくる。その上で、「ネット記事に書きますよ、いいですね?」と迫ってきます。 暴力団は恐喝のプロですから、具体的にいくら払えとかは恐喝になるので言ってこない。企業経営者が、別の暴力団周辺者に対処を相談するのを待っているんです。間に人を介在させれば、人間関係が複雑化して、事件になりにくいと踏んでいることが多い。 また、最近では暴力団とは全く関係がない、企業をクビになった不良社員や、筋の悪い取引先が、顧客情報の流出などで企業を脅すこともあります。実際に私もそうした事件に接したことがあります。 しかし、仮に恐喝に成功したとしても、いずれ暴力団に取り込まれる可能性が高いと思います。恐喝で得たあぶく銭で、繁華街で派手に遊んでいれば目を付けられますし、表に出せないカネに関わる強い情報網を暴力団は持っています。いずれ恐喝や犯罪行為がバレて、「お前、良いシノギしてんじゃねえか」と暴力団にゆすられてしまうでしょう。 そうなると問題は、恐喝に応じた企業のスキャンダルも、暴力団に握られるということです。情報漏洩などの元々の弱みに加え、「恐喝に屈した」というスキャンダルが追加され、最初に恐喝されたときの金額の何倍ものカネをふんだくられることになります』、「企業経営者が、別の暴力団周辺者に対処を相談するのを待っているんです。間に人を介在させれば、人間関係が複雑化して、事件になりにくいと踏んでいることが多い」、「元々の弱みに加え、「恐喝に屈した」というスキャンダルが追加され、最初に恐喝されたときの金額の何倍ものカネをふんだくられることになります」、恐ろしいことだ。 ・『「ネットに書く」の脅しには弱気を見せずに名誉毀損で対処  Q:女性スキャンダルが事実であったり、企業側に落ち度があった場合は、どう対応するのが良いですか。 A:ケース・バイ・ケースですが、原則としては、やはり取引には応じないことです。恐喝で事件にすることもありますが、手練れだと、恐喝にならないようなギリギリの線を行くこともあります。攻撃を止めるために右往左往している間に、傷口を広げてしまう。 最近は誰もがツイッター等のSNSで手軽に情報発信ができてしまい、誰でも恐喝ができてしまいます。すぐに「このことをネットに書く」と脅かしてくることは容易に想像できます。この場合は、弱気を見せずに「どうぞ」と相手に言うべきでしょう。その上で、「事実と違うことやプライバシーに関わることがあれば、徹底的に対処する」と、逆に厳しく接しておくべきです。もし記事が出ても、恐喝目的ですから、名誉毀損(きそん)で対処すれば良い。 最悪なのは、別の暴力団や、事件屋などの暴力団周辺者に解決を依頼することです。これをすると、ささいな女性スキャンダルや醜聞が、一気に「企業と暴力団」という致命的スキャンダルに格上げされる。いずれ、その話を別のブラックジャーナリストや似非右翼などが嗅ぎ付け、恐喝の「二の矢」を打ってくる』、「最悪なのは、別の暴力団や、事件屋などの暴力団周辺者に解決を依頼することです。これをすると、ささいな女性スキャンダルや醜聞が、一気に「企業と暴力団」という致命的スキャンダルに格上げされる」、大いに気を付けるべきだ。 ・『談合事件では企業と暴力団が「一蓮托生」  Q:櫻井さんは暴力団が仕切る談合事件の捜査を経験されていますが、談合では、企業と暴力団はどのような関係性にあるのですか A:私が関わった談合事件は、東京都が発注する公共工事に参加する建設会社各社が、事前に入札価格を談合していたものです。談合は一見、恐喝などとは違い被害者がいないように見えますが、公共工事の発注を不当な高値に維持することにつながり、税金を納めている都民が被害に遭っています。その意味で、建設会社と、談合を仕切る暴力団関係者は共犯といえます。 とはいえ、談合している会社は、税金を詐取しようなどとは考えていません。純粋に、自分の会社を守りたい、仕事を取りたいということで必死なのです。実際に捕まえた建設会社の社員も、仕事では暴力団とつるんでいましたが、家庭ではいいパパだったのです。 ではなぜ暴力団が仕切るのかといえば、談合という違法行為の秩序を守るための「番人」だからです。 もし、建設会社の中に、談合から抜け出そうとする会社があった場合、同じ建設会社が「談合に参加しろ」とは言っても聞きません。そこで、暴力団の出番です。もし、談合を抜けようという会社が出てきたら、「俺の顔をつぶすのか」と圧力をかける。実際に、談合を抜けようとした会社社長の自宅にヤクザが嫌がらせしたり、脅迫文や街宣車が差し向けられたりしたことがあります。談合を維持するためには、暴力が必要なんです。 暴力団側も、建設会社に言うことを聞かせるために、様々な仕掛けをします。例えば、談合参加企業でゴルフコンペを開いて、そこに暴力団も加わるのです。入れ墨丸出しでゴルフをして、怖がらせる一方で、一緒に遊んだり食事をしたりして、コンプライアンス感覚をまひさせるのです。実際の談合事件では、暴力団だけでなく、他の建設会社も一緒になって、談合破りを阻止しようとしていました。 Q:暴力団といえば、覚醒剤や飲食店からのみかじめ料などが主要な資金源というイメージですが、企業対象暴力は彼らにとってどれくらい重要なのでしょうか。 A:暴力団にとって、企業対象暴力はでっかいシノギです。みかじめ料は多くても1カ月に数百万円規模で、条例も厳しくなり、得られる金額に対してリスクが高いです。覚醒剤も末端で売る場合は、そこまで大きい金額ではありません。しかし、企業恐喝はケタが違います。数千万、時には億単位のカネが動きます。 (マル暴 警視庁暴力団担当刑事 『マル暴 警視庁暴力団担当刑事』(小学館新書)櫻井裕一著の紹介はリンク先参照) しかし、企業相手の場合は暴力団の組員が直接表には出られないので、ブローカーや、カネに困って暴力団に取り込まれた企業経営者をうまく使って、企業に接近していきます。スキャンダルを使ったり、企業にとってうまい話を持っていき、食らいつく機会をうかがっているのです。 今の時代、暴力団と直接付き合いをするような企業は皆無だといえます。問題は、暴力団ではない、周辺者をどう判断するかです。既に述べたように、最初は暴力団の背景がない不良でも、いずれどこかの組織の影響下に入ることが多いです。また、不振企業がいつの間にか、暴力団の資金に依存していることもある。こうした取引先の変化は、日々の取引や、相手と会った際の違和感から判断していくしかありません。 暴排条例ができて、暴力団は目に見えて少なくなりました。しかし、企業対象暴力は形を変えて今もうごめいています。暴力団と直接、対峙(たいじ)してきた私たち元警察官の知見が、企業の皆様の助けになれば良いと思っています』、「企業相手の場合は暴力団の組員が直接表には出られないので、ブローカーや、カネに困って暴力団に取り込まれた企業経営者をうまく使って、企業に接近していきます。スキャンダルを使ったり、企業にとってうまい話を持っていき、食らいつく機会をうかがっているのです」、「問題は、暴力団ではない、周辺者をどう判断するかです。既に述べたように、最初は暴力団の背景がない不良でも、いずれどこかの組織の影響下に入ることが多いです」、十分に気を付ける必要がありそうだ。

タグ:「最悪なのは、別の暴力団や、事件屋などの暴力団周辺者に解決を依頼することです。これをすると、ささいな女性スキャンダルや醜聞が、一気に「企業と暴力団」という致命的スキャンダルに格上げされる」、大いに気を付けるべきだ。 「企業相手の場合は暴力団の組員が直接表には出られないので、ブローカーや、カネに困って暴力団に取り込まれた企業経営者をうまく使って、企業に接近していきます。スキャンダルを使ったり、企業にとってうまい話を持っていき、食らいつく機会をうかがっているのです」、「問題は、暴力団ではない、周辺者をどう判断するかです。既に述べたように、最初は暴力団の背景がない不良でも、いずれどこかの組織の影響下に入ることが多いです」、十分に気を付ける必要がありそうだ。 「暴力団が最初から企業とじかに接触することはありません。必ず、間にブローカーや、実業家、ブラックジャーナリストや事件屋を介在させます。企業経営者がそうしたグレーゾーンの人たちと人間関係を深め、後戻りできなくなったところで、暴力団が顔を出す」、なるほど。 「企業経営者が、別の暴力団周辺者に対処を相談するのを待っているんです。間に人を介在させれば、人間関係が複雑化して、事件になりにくいと踏んでいることが多い」、「元々の弱みに加え、「恐喝に屈した」というスキャンダルが追加され、最初に恐喝されたときの金額の何倍ものカネをふんだくられることになります」、恐ろしいことだ。 東洋経済オンライン マル暴 警視庁暴力団担当刑事 「暴力団による「企業恐喝の手口」、元マル暴刑事が明かす巧妙化の実態とは」 溝口 敦 鈴木 智彦 「ヤクザが刑務所のことをあえて「大学」と呼ぶ理由 が彼ら刑務所の中で読む本とはいったい?」 「弘道会は、こんな若く将来ある若い衆をヒットマンに使えるんだ、と評価されます」、一般人の常識とはかけ離れた「評価」には驚かされた。 「抗争において組長クラスは、功績を得る仕事をしたうえで、自分は捕まらないということが大切」、「今は指示したことがわかったら実行犯でなくても組長が殺人教唆で捕まることになり、懲役20年は行くでしょう。そうすると、その間が空白になって、組運営に加わるなんていうことは到底できなくなる。だから、捕まらないようにしなければならない」、かなり微妙な忖度が求められるようだ。 「親分が教唆してない殺しなんてない。にもかかわらず、捕まらないということは、子分が絶対に口を割らないからです。つまり、親分がそれだけ心酔されていて、組織も統率されている」、「場合によっては、現役の組員よりも懲役に行った組員を大事にする。そういう伝統があるから、弘道会は抗争に強いんだ」、「弘道会」恐るべしだ。 「ヤクザは特殊日本型の犯罪組織として独自の存在だった。それが今、消滅に近づいている。その後にアングラ化した半死半生の犯罪グループが残る可能性がある。こうした状態は日本の裏社会が特殊日本型の犯罪組織を失い、遅ればせながら諸外国並みになったともいえよう」、こんなことで「諸外国並みになって欲しくないものだ。 反社会的勢力 (その2)(「半グレ」集団のいま 暴力団の稼ぎを超えた可能性も、ヤクザが刑務所のことをあえて「大学」と呼ぶ理由 彼らが刑務所の中で読む本とはいったい?、暴力団による「企業恐喝の手口」 元マル暴刑事が明かす巧妙化の実態とは) ダイヤモンド・オンライン 村上 力 溝口敦/鈴木智彦・著『教養としてのヤクザ』 「国民のこうむる被害額はヤクザより、むしろ半グレによるもののほうが多いのではと疑われる」、「半グレはもともとヤクザの親分-子分関係には従えないとするグループ」、「ヤクザからさえも脱落する元組員たちを吸収する受け皿にもなる・・・一部で両者の混ざり合いが見られる」、無視できない大きな存在だ。 「オレオレ詐欺などの特殊詐欺を考案、以後一貫して実行し、太い資金源としてきた」、知能犯的色彩もあるようだ。 「「半グレ」集団のいま 暴力団の稼ぎを超えた可能性も」 Newsポストセブン
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株式・為替相場(その13)(「1ドル=120円」も突破…?「悪い円安」はどこまで進むのか その「恐ろしい現実」、大暴落の足音、「日経平均3万円の再回復」が難しくなってきた 短期的には「売られすぎ」だが反発力は弱い) [金融]

株式・為替相場については、9月25日に取上げた。株式市場の変調が明らかになった今日は、(その13)(「1ドル=120円」も突破…?「悪い円安」はどこまで進むのか その「恐ろしい現実」、大暴落の足音、「日経平均3万円の再回復」が難しくなってきた 短期的には「売られすぎ」だが反発力は弱い)である。

先ずは、12月1日付け現代ビジネスが掲載した経済評論家の 加谷 珪一氏による「「1ドル=120円」も突破…?「悪い円安」はどこまで進むのか、その「恐ろしい現実」」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/89819?imp=0
・『景気や賃金が上向く気配を見せない中、為替市場で円安が進んでいることから「悪い円安」論が台頭している。新たな変異株の感染拡大によって112円台まで急速に値を戻すなど、これ以上、円安には進みにくいとの見方がある一方、中長期的には1ドル=120円を突破するとの声も聞こえてくる。日本円が直面している状況について考察した』、本日は113.7円のようだ。
・『日銀とFRBはもはや逆方向を向いている  ドル円相場はしばらく1ドル=110円前後の展開が続いていたが、2021年9月に入って円安が進み、11月には一時、1ドル=115円を突破した。その後、新型コロナウイルスの新たな変異株(オミクロン株)に対する懸念が広がったことから円が買われ、1ドル=112円台に戻したが、依然として円安であることに変わりはない。 安定していたドル円相場が円安に動いたのは、米国の金融政策の影響が大きい。米国の中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)は、金融政策の正常化に動いている。すでにテーパリング(資産買い入れ額を徐々に減らしていくこと)を開始しており、2022年には金利の引き上げも予定されている。一方の日銀は依然として量的緩和策を継続しており、出口戦略に関する議論は始まっていない。 米国が金融正常化に向けて本格的に動き出したということは、市場に供給されたドルが回収されることを意味しており、ドルの価値向上につながる。これに対して日銀は大量のマネー供給を続けるので、日本円の価値は毀損しやすい。両国の金利には差が付く状況となっており、当然、この局面ではドルが買われることになる。 一時、1ドル=115円までドルが高騰したのは、FRB議長のパウエル氏の再任がほぼ確実になったことが理由である。パウエル氏の任期は2022年2月までとなっており、当初、パウエル氏の再任は既定路線だった。ところが民主党内の一部から異論が出たことをきっかけに、同じくFRB理事のブレイナード氏が議長に指名される可能性が取り沙汰された。最終的にバイデン大統領は政策の継続性を優先し、パウエル氏の再任を決めたが、これが思わぬ効果をもたらしている。 民主党の一部がパウエル氏の再任に意義を唱えたのは、金融政策が原因ではなく、パウエル氏が金融業界寄りとみなされていたからである。だがFRB議長のもっとも重要な職務は金融政策であり、市場関係者はブレイナード氏が議長になった場合、金融政策がどう変化するかに注目する。 パウエル氏とブレイナード氏は金融政策についてそれほど大きな乖離はないが、ブレイナード氏の方がよりハト派(景気に対する配慮を優先し、金利引き上げといった金融政策の正常化については慎重なスタンス)とされており、ブレイナード氏が指名された場合、正常化のペース鈍化が意識されたはずだ。 バイデン氏は、あくまで党派的なバランスを考慮してパウエル氏を再任したが、市場の認識は異なる。パウエル氏が掲げてきた正常化のスケジュールがあらためて信任され、場合によっては金利上昇ペースを加速することについてもお墨付きを得たと受け止めている。パウエル氏再任のニュースで一気に円安が進んだのはこれが理由である』、なるほど。
・『FRBもインフレを意識せざるを得ない状況に  では市場はなぜ、金利上昇ペースの加速を意識したのだろうか。その理由は言うまでもなく、このところ進んでいる全世界的なインフレである。コロナからの景気回復期待が高まっていることから、企業は原材料や部品の発注を前倒ししており、原油を中心にあらゆる商品の価格が値上がりしている。 単に景気回復期待だけがインフレの原因であれば、ある程度の時間が経過すれば需給バランスが調整され、価格は落ち着くはずである。だが、今のところその気配は見られず、市場ではインフレが長期化するとの見方が台頭している。理由は以下の3つが考えられる。 1つは新興国の驚異的な経済成長である。アジアを中心に近年、新興国の経済成長が著しく、今後、多くの国が先進国の仲間入りを果たす。社会が豊かになると消費が爆発的に増えることは経験則的に知られており、需要は増える一方となる。これに対して食糧や素材の供給には限界があるため、全世界的な資源の奪い合いが始まっている。 2つめは脱炭素化の流れである。先進各国は脱炭素化を加速しており、今後、石油の需要は大幅に減ることが予想される。上記のように需要全体は増大しているものの、一方で再生可能エネの比率も上昇するので、時期の問題はともかく、石油単体で見た場合の需要は減少に向かって動く可能性が高い。産油国にとっては、今後、需要が減少する資産に追加投資を行って生産を拡大するインセンティブは働きにくいので、原油価格は高止まりすると見る専門家が大半だ。 そして3つめは量的緩和策による過剰なマネー供給である。先進各国はリーマンショックに対応するため量的緩和策を実施し、市場には大量のマネーが供給された。もし、この状態でインフレが発生した場合、金融正常化を進めなければインフレを加速させるリスクがある。 当初、FRBは物価上昇について限定的と見ていたが、10月における米国の消費者物価指数は前年同月比で6.2%もの上げ幅となり、インフレについて意識せざるを得なくなってきた。市場では再任が決まったパウエル氏が、テーパリングを早々と終え、金利上昇を前倒しするとの観測が高まっている。そして3つめは量的緩和策による過剰なマネー供給である。先進各国はリーマンショックに対応するため量的緩和策を実施し、市場には大量のマネーが供給された。もし、この状態でインフレが発生した場合、金融正常化を進めなければインフレを加速させるリスクがある。 当初、FRBは物価上昇について限定的と見ていたが、10月における米国の消費者物価指数は前年同月比で6.2%もの上げ幅となり、インフレについて意識せざるを得なくなってきた。市場では再任が決まったパウエル氏が、テーパリングを早々と終え、金利上昇を前倒しするとの観測が高まっている』、このままでは、日本だけが、金融政策の正常化の波に乗り遅れそうだ。
・『日本円の買い手がいなくなっている  FRBが正常化のペースを加速させた場合、量的緩和策を継続している日本との差が際立つことになる。市場の一部から1ドル=120円という声が聞こえてくるのはこれが原因である。加えて今の為替市場においては、実需ベースで円を買う動きが弱くなっており、これも円安を招きやすい環境をもたらしている。 日本の輸出が盛んだった時代には、輸出の代金として受け取ったドルを円転する必要があったことから、実需での円買いが常に発生していた。だが多くのメーカーが現地生産に切り換えており、受け取ったドルをそのまま保有するため、実需での円買いは減っている。 また日本の国際的地位の低下に伴って日本円の実力も低下しており、円はドルからの退避資産として徐々に選択されなくなっている。今回、115円まで進んだ円安が113円まで戻したのは、変異株の感染拡大によるリスクオフを懸念した動きなので、典型的なドル回避行動である。現在でも投資家の一部はそのような動きを見せているが、以前と比較するとリスクオフの円買い需要は確実に目立たなくなっている。これも中長期的には確実に円安要因となるだろう。 もっとも日本経済を分析すると、為替が大きく動いていなくても、海外の物価上昇に伴い、事実上、円安が進んだ状態となっている。日本人の賃金が上がっていないにもかかわらず輸入品の価格が上昇していることから、多くの国民は生活が苦しくなったと感じている。 物価や貿易量を考慮に入れた実質実効為替レートを見ると、日本円はすでに1970~80年代の水準まで下落しており、名目レートに当てはめれば1ドル=200円程度と考えることも可能だ。もしそうであるならば、すでに円安が進んだ状態であり、教科書的には名目レートがここからさらに下落するとは考えづらい。だが筆者はそうではない可能性が多分にあると考えている。 為替というのはあくまで相対取引であり、為替市場はゼロサムゲームである。つまり買われた通貨の相手は必ず下落するものであり、どちらも買われるということはあり得ない。もし米国の金融正常化が進んでドルが買われ、日本円の実需買いがもはや存在しないという現実が市場関係者に共有された場合、理論とは関係なく、さらに円が売り込まれる可能性は否定できない。 日本経済は金利上昇に極めて脆弱な体質であり、日銀が簡単に正常化を決断できないことは市場関係者にとって周知の事実である。これはまさに「日本売り」を背景とした円安であり、この動きが顕在化した場合、理論上の目安はあまり意味をなさないだろう。少なくとも、これ以上の円安はないという思い込みは危険だ』、「日本経済は金利上昇に極めて脆弱な体質であり、日銀が簡単に正常化を決断できないことは市場関係者にとって周知の事実である。これはまさに「日本売り」を背景とした円安であり、この動きが顕在化した場合、理論上の目安はあまり意味をなさないだろう」、これが黒田総裁の異次元緩和政策の恐ろしい欠陥だ。一旦、市場がこれに気付けば、円の大暴落、金利上昇と財政破綻の扉が開く可能性がある。筆者はタイトルでは悲劇的シナリオを示しながら、本文ではさすがに、そこまでのものは示していないが、大いに留意しておくべきだろう。

次に、12月2日付けNewsweek日本版が掲載した財務省出身で慶応義塾大学准教授の小幡 績氏による「大暴落の足音」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/obata/2021/12/post-77.php
・『<市場の乱高下はオミクロン株のせいだけではない。売り逃げるなら今だ> 株式市場は乱高下が続いている。 すべてはオミクロン株のせいだと見るのは、まったくの素人で、投資家たちは、すべてパウエル発言に動揺している。 オミクロンが報告されたときは、これで利上げが遠のく、テーパーリングペースも速まるどころか、ゆっくりになる、だから、むしろ株式市場にはプラスというポジショントークまで広まっていた。 ところが、パウエルは、インフレは一時的、という判断を変更すると言い、むしろ利上げは早い段階で必要となることまで示唆した。 さらに、追い討ちをかけるように、オミクロン株は、むしろ現在のインフレ懸念を強めかねない、なぜなら今のインフレはCOVID-19によるものであることは明らかだから、供給制約が再度強まる恐れがある、つまりインフレ懸念はオミクロン株によって強まった、と、いつもと違って、非常に明快に説明したのだ。 株式は毎日、盛り返し、しかし、その日の終盤で戻しを失い、下げに転じる、という最悪のセンチメントを示している。 売り逃げるなら、今が一番のチャンスだ』、小幡氏は、9月25日付けのこのブログで「世界のバブル崩壊がついに始まったと言える理由 恒大集団をネタにした下落に隠されている真実」、と「「世界のバブル崩壊がついに始まった」と論じた。今回のはこれに続くもので、「売り逃げるなら、今が一番のチャンスだ」と、一段と強い調子になったようだ。

第三に、12月7日付け東洋経済オンラインが掲載したブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリストの馬渕 治好氏による「「日経平均3万円の再回復」が難しくなってきた 短期的には「売られすぎ」だが反発力は弱い」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/473916
・『前回11月22日配信のコラム「2022年に株価を下げる『6頭の熊たち』に注意せよ」では、「年内にもう少しだけ日米などの株価が上がり、その後来年に落ちるという展望だ」と述べ、2022年に襲いかかってきそうな「6頭の熊たち」(株価下落要因)について触れた。 一方で、同コラムでは「年内の上昇は確実なものではないし、当面の株価上昇幅もそれほど大きなものではなかろう。とすると、目先の株価上昇をあまり欲張らず、あくまでもいったんの下落相場に向けての『心構え』を、そろそろすべき局面に差し掛かっているのだろう」とも述べた。はたして、読者の皆さんはどうだったであろうか』、ここで日経平均株価指数の半年間のグラフを参考までに示しておこう。
https://finance.yahoo.co.jp/quote/998407.O/chart?styl=cndl&frm=dly&scl=stndrd&trm=6m&evnts=&ovrIndctr=sma%2Cmma%2Clma&addIndctr=
・『予想できなかった株価急落  とはいっても、11月26日以降の世界的な株価急落は、筆者にとって事前にまったく予想することができなかった。ごく最近の日経平均株価の戻り高値は11月16日の2万9808円であったが、12月2日の終値は2万7753円(いずれも終値ベース)と、その間は2055円幅の下落となっている。 この市場の波乱は、世界的に投資家のリスク回避姿勢が強まったことによるものだ。主要国の株価は下振れし、欧米の長期金利は低下、VIX指数(恐怖指数)など市場の変動を示す数値は急上昇した。為替市場では「リスク回避のための円高」が進行。国際商品市場では多くの商品価格が下落した。 金が買われてもいい局面のはずだが、金価格に動意は乏しい。これは、投資家が価格変動リスクをあまりにも恐れるあまり、「金ですら買いたくない」という事態に陥ったためだろう(リーマンショック時にも、同様の現象は生じた)。 このような世界株価の波乱は、次の2つの異なった流れが同時進行したことによって引き起こされたと考えている。 それは、(1)新型コロナウイルスの変異株流行という悪材料からリスク資産が短期的に売られすぎた、(2)来年本格的に生じると見込んでいた中期的な株価下落基調が想定以上に早く始まった、という2つの流れである。 (1)からは、株価は目先反発すると考えられる。しかし(2)からは、すでに来年の下落へ向かっていると解釈できる。その2つを合わせて検討すれば、代表的な指標である日経平均は目先戻りがありうるが、その戻りはますます小さなものになったということなのだろう。3万円台の再回復については、悲観的にならざるをえない』、確かに「3万円台の再回復」はいまや夢物語だ。
・『短期的には「売られすぎ」の状態  その2つの同時進行している動きのうち、まず短期的に売られすぎだという点を述べよう。 世界株安のきっかけとなったのは、日本時間11月26日朝に伝えられた、南アフリカで新型コロナウイルス変異株(オミクロン株)の感染が広がっている、との報道だ。オミクロン株には「従来の新型コロナウイルスに比べて多くの変異箇所がある」と明らかにされたため、市場での不安感が膨らんだ。 しかし、変異が多いことが具体的に脅威になるかはわからない。「感染力が高まっている」との観測が唱えられており、実際にアフリカ以外の諸国でも市中感染の例が報告されている。 これに関して、南アフリカ医師会は「オミクロン株の感染者は軽症で、医療資源を圧迫していない」と述べている。またWHO(世界保健機関)は、今のところオミクロン株への感染で死者の報告はない、と公表した。 つまり、最近の市場では「オミクロン株の登場が大変なことなのかそうでないのかはまったくわからないが、不安だからとりあえず株式は売っておこう」という反応が大勢だったと推察される。 また、株価急落が始まった時期は、アメリカなどで11月25日の感謝祭による株式取引などの休場があり、売買高が薄くなりがちなタイミングであった。そこに売り物が出て、大きく株価が下振れし、それがさらなる売りを招いた、といった面もあっただろう。予断は禁物だが、先週の後半にはやや株価下げ止まりの様相も表れてきたようにも思われる。) ただ、熊(株価下落要因)が早めに現れ、それによって株価下落基調がすでに始まっているという面もあると考える。どうやら、6つの熊のうち、1番目と3番目の熊の登場がどうも早いようだ』、「6つの熊」と下落要因は多いようだ。
・『2つの「供給サイドの問題」が深刻に  1番目の熊とは、アメリカでのテーパリング(量的緩和縮小)が、大幅な金融緩和を前提としてきた企業や投資家の行動を逆回転させる、というものだ。 テーパリングそのものは、11月2~3日のFOMC(連邦公開市場委員会)で決定し、開始されている。だがジェローム・パウエルFRB(連邦準備制度理事会)議長は、11月30日の議会上院での証言で「資産購入を数カ月早く終了することを検討するのが適切だ」と語り、次回のFOMC(12月14~15日)でテーパリング加速を議論する意向を示した。 加速の背景として、議長は「より持続的なインフレのリスクが高まっている」ことを挙げた。加えて「インフレに関して見落としていたのは供給サイドの問題の予測の難しさだ」とも指摘している。 供給サイドの問題として注目されているものは、主として2つある。1つはアメリカで景気回復に伴う求人が急増しているが、労働者が集まらないという、人手不足の問題だ。 労働市場に復帰しない人が多いという背景には、コロナ感染を恐れて、通勤時や勤務時の感染リスクを避けたいため、リモートワーク中心の仕事への転職を考えているものの、なかなか希望に見合った仕事が見つからない、などの要因が挙げられている。 人手不足のため賃金が上昇して、それが物価を押し上げるという懸念があるうえ、物流(トラックの運転や港湾の荷揚げなど)面では小売り段階での物不足を引き起こすという不安も強い。 もう1つは、欧州諸国などが「脱炭素」と声高に叫び続けるため、原油などのエネルギー生産業者が将来を悲観視して、開発投資を抑制し、リグ(油井の掘削装置)の稼働も大きく増やさないため、エネルギー供給が通常より抑えられてしまっているという現象だ。 ただ、そうしたインフレにFRBが対応するといっても、労働者を増やすことも原油や天然ガスを生産することもできない。FRBができることは、金融緩和縮小により景気を抑制し、需要を減退させて、物価を抑えることだけだ。これは経済や株価にとって好ましくはない。 また、前回のコラムで、金融緩和を前提とした投資家の行動が逆回転する例として、「リスクの高い社債の購入も手控えられる」だろうし、「アメリカの企業は社債などで借り入れた資金を自己株買いに充ててきたため、やはり株価を圧迫する」とも書いた。 実際、11月末にジャンク債(格付けがBBプラス以下の債券)の価格指数が急落した、との報道も目にする。アメリカの金融市場のきしみが始まっているようだ。 さてもう1つ、3番目の熊として挙げたのは「中国に関する多数のリスク」だ。そのなかでは、「『共同富裕』を掲げての突然の産業規制が、世界の投資家の中国からの資金逃避を増加させる」と指摘した。 庶民の「儲けすぎ」との怨嗟はIT起業家などに向かっていたため、中国政府はアリババグループに対し、同グループ傘下のアントグループの上場を中止させるなどの規制を強めていた。こうした中国政府の姿勢が、同国IT企業がアメリカで新規上場することを禁止する、あるいは上場を廃止させる、との思惑を呼んでいた。 加えて、米中間の対立が深刻化する中、アメリカのSEC(証券取引委員会)が12月2日、同国に上場する外国企業向けの新規制を公表した。これにより、中国企業が当局の検査に応じない場合、上場廃止になる可能性が生じた。そこへ3日に、滴滴出行(ディディ)がアメリカでの上場を廃止すると決定したため、中国銘柄の株価が総崩れした。 「儲けすぎ」との中国庶民の不満は、不動産業にも向かっている。すでに中国恒大集団の資金繰りの苦境は騒がれ始めて日が経つが、4日の報道では「当局の指導と監督の下で、同社が外貨建て債務の再編交渉に入る」と伝えられている』、「中国恒大集団」は、今日の夜のテレビニュースで、外貨建て債務の返済を停止したとのことである。本格的なデフォルトに発展するか否かはまだ不明である。
・『「国内優先」の身勝手な姿勢が中国からの資金逃避  (ここでいう債権保有者は中国以外の投資家などだと推察され、当局が事態収拾に向けて一歩踏み込んだとも考えられるが、要は「外国向けの債務の利払いや元本返済を一部踏み倒して、国内の債権者を守ろう」といった虫のよい話だ。このため、海外の債権者は不満を唱えているもようだ。ますます「世界の投資家の中国からの資金逃避」が膨れ上がるだろう。 こうした動きは、中国株や中国企業の社債、さらにはそれらを組み入れているファンドなどへの投資家に打撃を与え、他国市場にもその悪影響が現れうる。 英国のフィナンシャル・タイムズ紙の4日付けの記事 “Stonk market update” (英語で stonk という言葉は本来存在せず、株式(stock)について皮肉めいた意図がある際に使われる)では、一時は米中のIT関連企業などに積極的に投資して時代の寵児になった、アーク・インベストメント・マネジメントのキャシー・ウッド氏の写真を、わざと逆さまに掲げている。そのこと自体は悪趣味だと感じるが、これも1つの潮目の変化を示しているのかもしれない。 (当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)』、「「外国向けの債務の利払いや元本返済を一部踏み倒して、国内の債権者を守ろう」といった虫のよい話だ」、こんな勝手なやり方が通用した場合には、中国企業の海外起債に応じる海外投資家はいなくなるだろう。中国政府も手をこまねいてはいられない筈だ。
タグ:株式・為替相場 (その13)(「1ドル=120円」も突破…?「悪い円安」はどこまで進むのか その「恐ろしい現実」、大暴落の足音、「日経平均3万円の再回復」が難しくなってきた 短期的には「売られすぎ」だが反発力は弱い) 現代ビジネス 加谷 珪一 「「1ドル=120円」も突破…?「悪い円安」はどこまで進むのか、その「恐ろしい現実」」 本日は113.7円のようだ。 このままでは、日本だけが、金融政策の正常化の波に乗り遅れそうだ。 これが黒田総裁の異次元緩和政策の恐ろしい欠陥だ。一旦、市場がこれに気付けば、円の大暴落、金利上昇と財政破綻の扉が開く可能性がある。筆者はタイトルでは悲劇的シナリオを示しながら、本文ではさすがに、そこまでのものは示していないが、大いに留意しておくべきだろう。 Newsweek日本版 小幡 績 「大暴落の足音」 小幡氏は、9月25日付けのこのブログで「世界のバブル崩壊がついに始まったと言える理由 恒大集団をネタにした下落に隠されている真実」、と「「世界のバブル崩壊がついに始まった」と論じた。今回のはこれに続くもので、「売り逃げるなら、今が一番のチャンスだ」と、一段と強い調子になったようだ。 東洋経済オンライン 馬渕 治好 「「日経平均3万円の再回復」が難しくなってきた 短期的には「売られすぎ」だが反発力は弱い」 ここで日経平均株価指数の半年間のグラフを参考までに示しておこう。 https://finance.yahoo.co.jp/quote/998407.O/chart?styl=cndl&frm=dly&scl=stndrd&trm=6m&evnts=&ovrIndctr=sma%2Cmma%2Clma&addIndctr= 確かに「3万円台の再回復」はいまや夢物語だ 「6つの熊」と下落要因は多いようだ。 「中国恒大集団」は、今日の夜のテレビニュースで、外貨建て債務の返済を停止したとのことである。本格的なデフォルトに発展するか否かはまだ不明である。 「「外国向けの債務の利払いや元本返済を一部踏み倒して、国内の債権者を守ろう」といった虫のよい話だ」、こんな勝手なやり方が通用した場合には、中国企業の海外起債に応じる海外投資家はいなくなるだろう。中国政府も手をこまねいてはいられない筈だ。
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日本の政治情勢(その58)(メルケル首相のような「ハッとするコロナ演説」をする政治家が日本にいない理由 州の政治家は「弁論力」がすごい、「責任野党」は”見果てぬ夢か” ~15年前の「永田メール問題」から止まった時計、立憲民主党は誰が代表になっても将来性なし!結党自体が間違いだった理由) [国内政治]

日本の政治情勢については、10月15日に取上げた。今日は、(その58)(メルケル首相のような「ハッとするコロナ演説」をする政治家が日本にいない理由 州の政治家は「弁論力」がすごい、「責任野党」は”見果てぬ夢か” ~15年前の「永田メール問題」から止まった時計、立憲民主党は誰が代表になっても将来性なし!結党自体が間違いだった理由)である。

先ずは、やや古いが1月3日付けPRESIDENT Onlineが掲載した在イタリアの漫画家・文筆家のヤマザキ マリ氏による「メルケル首相のような「ハッとするコロナ演説」をする政治家が日本にいない理由 州の政治家は「弁論力」がすごい」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/41523
・『新型コロナウイルスをめぐる混乱は、各国リーダーの違いを浮き彫りにした。漫画家・文筆家のヤマザキマリさんは「ドイツやフランス、イタリアのリーダーたちは国民の気持ちをつかむ演説をしていた。それに対して、現在の日本にそうした政治家がいない」と指摘する――。 ※本稿は、ヤマザキマリ『たちどまって考える』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです』、ヤマザキ氏のシャープな見方は、参考になりそうだ。
・『パンデミックが浮き彫りにした各国のリーダーの姿  今回のパンデミックは、普段では気づかないような事柄を炙あぶりだしているように思います。特に比較文化学的な視点で見てみると、とても面白い。 今ではインターネット上のニュースやSNSを介して、海外の報道や情報も時差なく入手することができますが、各国の対応越しにそれぞれの国の性質が見えてもきました。それはまるで一枚一枚、表面に纏まとった衣を剥がされているかのようです。 多くの人がコトの次第、状況の顛末を一緒になってリアルタイムで見ることができるのは、過去のパンデミック、たとえば20世紀初頭のスペイン風邪のときにはなかったことだと思います。その意味でも、目の前で今起きていることがパンデミック後にどうつながるのか、とても興味深く感じています。 各国のリーダーたちの姿も、いつになく浮き彫りになりました。特に演説の雄弁さには歴然とした差が見られます』、特に「日本の政治家」のお粗末さは顕著だ。
・『演説で株を上げるドイツ・メルケル首相  欧州のリーダーに必須だとされるのは、自分の言葉で民衆に響く演説ができるかどうかですが、その点において素晴らしかったのが3月18日、ドイツのメルケル首相が国民に対し、新型コロナウイルス対策への理解と協力を呼びかけたテレビ演説です。 テレビの前にいるであろう、一人ひとりの目を見据えているかのように、彼女が落ち着いた面持ちで語ったその言葉は、感染が広がるなか、未知のウイルスに対して不安を抱える人たちが求めていた「安心感」をまさに与えるものでした。その訴求力たるや。ドイツ国民ではない日本の人までもが絶賛し、全文を翻訳したものがSNSで拡散されたほどでした。 おそらくこの演説は、今回のパンデミックの一つの象徴的な事象として、後世にも語り継がれていくことでしょう。虚勢や虚栄の甲冑かっちゅうを身に纏う権力者とは違い、謙虚な親族のおばさんという体ていのメルケルが「あなた」という二人称を使って、国民に呼びかけたことは印象的でした。「スーパーに毎日立っている皆さん、商品棚に補充してくれている皆さん」と、パンデミック下でも人々の生活を支えて働く人々への感謝を述べていました』、「メルケル」演説は多方面で高く評価された。「メルケル」氏が昨日、公式に引退したのは誠に残念だ。
・『二人称を使った呼びかけは、聞いた人の心に響く  この二人称は、古代ローマ時代からの「弁証」の技術において非常に大事なポイントです。カメラを通していたとしても、「医療に携わってくれているあなた、本当にありがとう」と目線を合わせて言われれば、心に響かない人はいませんよね。 これが原稿の書かれた紙に目を置いたまま、自分の言葉ではない、表面的な表現を連ねて語られたのなら……。聴いている人には何も届かないし、その心は癒やされもしません。 同じく3月の半ばにはフランスのマクロン大統領も、外出に対する厳しい制限を発表した際、「戦争状態」になぞらえて「新型コロナウイルスとの戦いに打ち勝つ」といった意志を強い言葉で演説し、国をまとめようとする姿勢を表明していました。 イタリアのコンテ首相も、国民に結束を呼びかけるテレビ演説を行いました。そのなかで私が秀逸に思ったのは、弁護士出身である彼がまず、法について述べた点です。 「皆さん、イタリアの法律では人の命を何よりも守らなければなりません。だから、私はそれを行使します。これから都市を閉鎖し、経済的に皆さんにご迷惑をおかけするでしょう。しかし、人の命をまず最初に守らなければいけないのです」 経済よりも人の命が優先であることを、カメラ目線で国民に向かって宣言した。普段コンテ首相を非難している人たちも、彼の言葉に「よし、わかった」と納得したわけです。 国が違えば政治体制も文化的な事情も異なりますし、一概に比較するのは難しいことだとは思います。ですが、世界が同じ一つの問題に同じタイミングで向き合っているのを、リアルタイムで見つめる機会もそうありません。だからこそ、私たちはこのパンデミックへの各国のリーダーたちの対応や姿勢を比べてしまうし、また比べることができているのです』、イタリアの「コンテ首相」も印象的な演説をしたのであれば、日本の政治家のお粗末さが目立ってしまう。
・『危機的状況は指導者が人気を上げる好機  たまたま見かけた国際ニュース番組で、アメリカのオバマ前大統領とブッシュ元大統領の補佐官を務めていたという二人が対談をしていました。現職のトランプ大統領の政策を批判する内容でしたが、そこで面白い指摘が展開されていました。 「トランプ氏が大統領として怠っているのは、国民を結束させることと、国民を激励し安心感を与えることへの責任である。そのために言葉をきちんと選んで話す弁証のスキルをもたなければいけないが、彼にはない。パンデミックのような状況は、本来なら指導者が自分の人気を上げるのにいかようにも利用できる好機なのに、もったいないことだ」 大体このような感じです。たしかに、ドイツのメルケル首相の株は、今回のコロナ対策でグンと上がりました。台湾の蔡英文総統も高く評価されています』、「パンデミックのような状況は、本来なら指導者が自分の人気を上げるのにいかようにも利用できる好機なのに、(それが出来なかったトランプ4大統領は)もったいないことだ」、トランプには逆立ちしても出来ない筈だ。
・『いつまでも届かない日本のリーダーの言葉  ひるがえって、我が国、日本はどうでしょうか。“アベノマスク”などのコロナ対策の評判は芳しくなく、決然としたリーダーシップを発揮しているようにも見えませんし、むしろがっかりしたという人も少なくないと思います。特に言葉の力という点において、ヨーロッパで見られるように民衆の心に届く演説ができる政治家は、現在の日本にいないのではないでしょうか。 ヨーロッパにおけるリーダーには弁証力が求められます。イタリアに住むなかで私が実感するのは、小さな頃からの学校教育に、その力を育むシステムが組み込まれているということです。 政治家たちがもつ言葉の力。その背景には、弁論力こそ民主主義の軸と捉える古代ギリシャ・ローマから続く教育が揺るぎなく根付いていると感じさせられます。リーダーが民衆に届く言葉を備えられるかどうかは、自分の頭で考えた言葉として、人々に発言できているかどうか。「言わされている」言葉には、人に届くのに必要なエネルギーが発生しません。 世間と、そして自らとしっかり対峙したうえで、国民は今どんな心境で生きているのか、どれだけ辛い思いをしているのか、自らもコロナ禍のなかで生きる一人の市民としての脳で考える姿勢は、政治家にとって不可欠です。 熟考の末に紡ぎ出された言葉は、小手先だけでまとめられた美辞麗句とは説得力のレベルが違います。国民の支持率を上げよう、とりあえず安心させる言葉を選ぼう、という傲おごりが滲んだ言葉を並べても、国民の気持ちを掴むことはできないでしょう』、官邸のゴーストライターに書かせているようでは、望み薄だ。
・『一人ひとりが意見を言える環境が民主主義である  「開かれた民主主義に必要なのは、政治的決断を透明にして説明することと、その行動の根拠を伝え、理解を得ようとすることです」 メルケル首相の演説でも、最初に政治の透明性、国民との知識の共有と協力について述べています。そしてそれらは民主主義が成り立つための「根幹」とも言える要素です。指導者として民主主義の何たるかを国民に自覚させ、「皆さん一人ひとりが意見を言える環境が民主主義なのですよ」という姿勢の確認から話を進めたわけです。 まるでどこかの学校の、立派な校長先生のように説得力のある姿勢とカメラ目線で「皆さん、考えてください」というメッセージを込めて呼びかけられたら、受け取る側は「はい」と思うしかありませんよね。もちろん、そういった演出の効果も計算されているのが、ヨーロッパにおける弁論の力というものです』、日本の政治家には、安部・菅・岸田だけでなく、誰にとってもそんな芸当がそもそも無理なように育っているのは誠に残念だ。

次に、元東京地検特捜部検事で弁護士の郷原信郎氏が11月9日付けの同氏のブログに掲載した「「責任野党」は”見果てぬ夢か” ~15年前の「永田メール問題」から止まった時計」を紹介しよう。やや長いが、ある意味で民主党結党以来の総括になっているので、お付き合い頂きたい。
https://nobuogohara.com/2021/11/09/%e3%80%8c%e8%b2%ac%e4%bb%bb%e9%87%8e%e5%85%9a%e3%80%8d%e3%81%af%e8%a6%8b%e6%9e%9c%e3%81%a6%e3%81%ac%e5%a4%a2%e3%81%8b%e3%80%80%ef%bd%9e15%e5%b9%b4%e5%89%8d%e3%81%ae%e3%80%8c%e6%b0%b8/
・『10月31日に投開票が行われた衆議院議員総選挙は、コロナ対策や東京五輪開催強行等で批判を受けた自民党に不利な状況であったにもかかわらず、野党第一党の立憲民主党は、選挙前の議席を大幅に減らす惨敗に終わった。敗北の責任をとって、枝野幸男代表は辞任を表明し、年内に代表選挙が行われることになった。 8月22日の横浜市長選挙の投票日のブログ記事《【横浜市長選挙】山中竹春候補「圧勝」が立憲民主にもたらす“最悪の結果”》で、市長選での立憲民主党推薦候補山中竹春氏が「圧勝」しても、その後、早々に「市長不適格」が明らかになれば、コロナ禍に立ち向かうべき横浜市政の混乱を招き、立憲民主党への国民の期待が急速に失われ、それによって、野党第一党の同党が、自公政権に替わる「政権の受け皿」にはなり得ないことが露呈するという「最悪の結果」に終わると予想した。 実際に、菅政権のコロナ失政への批判を追い風に「圧勝」したが、新市長に就任した山中氏は、疑惑に対して「説明不能」の状況に陥り、選挙で掲げた公約や今後の施策をめぐって、市長答弁の混乱が続くという惨憺たる状況を招いている。横浜市での立憲民主党の惨敗は、市長選挙での山中氏当選が横浜市にもたらした結果を受けた横浜市民の当然の判断だった。 枝野代表の辞任を受けて行われる代表選挙で、新体制が決まることになるが、党創設者で、今回の選挙で共産党との共闘を進め、その結果敗北し引責辞任した枝野代表の辞任後、いったいどのような政党をめざしていくのか、方向性すら定まっていない。立憲民主党は、結党以来の危機に直面している』、「立憲民主党は、結党以来の危機に直面している」、同感である。
・『「永田メール問題」で結党以来の危機に遭遇した民主党  15年余り前、2006年の「永田メール問題」の際も、野党第一党の民主党が「結党以来の危機」に遭遇するという状況となった。 所属議員がライブドア事件に関連して、当時の自民党幹事長を国会で追及したメールが、「偽メール」であったことが判明し、民主党は厳しい批判を浴び、前原誠司代表以下執行部は総退陣に追い込まれた。 この時、私は、桐蔭横浜大学コンプライアンス研究センター長として、様々な組織をめぐる問題への対応について「『法令遵守』ではなく『社会の要請に応えること』」としてのコンプライアンスの観点からの助言・指導を行う立場にあった。当時、民主党政調会長だった故仙谷由人氏から、永田メール問題への危機対応について相談を受け、赤松幸夫弁護士に、関係者のヒアリング等の調査を依頼し、その調査結果に基づいて、2006年4月に、「民主党責任野党構想」と題するレポートを仙谷氏に提出した。「責任野党」に対する社会の要請という観点から、民主党への提言をまとめたものだった。 その冒頭で、私は、 今、民主党が、メール問題に関して国民から受けている批判と責任追及の大きさは、ある意味では、責任野党としての民主党への期待の大きさを示すものである。民主党には、無責任野党としての存在から脱却し、国政に関連する調査、政策立案、国会質問・追及などあらゆる面で責任を果たし得る日本初の真の責任野党を創造することが求められている。 と述べている。当時、危機に直面した民主党が、それを糧に、新たな党に生まれ変わって二大政党制を担う「責任野党」になること、その後に政権を担う党となることを期待し、レポートを仙谷氏に提出した。 その15年の間、民主党は、「消えた年金問題」で国民から猛烈な批判を受けた自民党に代わって政権の座についたが、政権与党として国民の期待に応えることができず、再び野党に転落した。その後、第二次安倍政権の長期化、権力集中の中で、少数野党の地位に甘んじてきた。 「責任野党」が政権を獲得して「責任与党」となり、「責任野党」と対峙する。それが繰り返されることによって緊張感を持った政治が行われるのが、衆議院の小選挙区制度がめざす「二大政党制」だったはずだ。 民主党とその流れを汲むその後の野党第一党には、「責任野党」として何が欠けていたのか。15年を振り返って考えてみたい』、「構想」の「民主党には、無責任野党としての存在から脱却し、国政に関連する調査、政策立案、国会質問・追及などあらゆる面で責任を果たし得る日本初の真の責任野党を創造することが求められている」との、狙いはいまでも新鮮である。
・『「民主党責任野党構想」での指摘・提言  上記の「民主党責任野党構想」で、私は、以下のような指摘と提案を行った。 (1)「責任野党」に求められるのは、政府・与党の政策に対抗し得る具体的な政策を構築し、それを具体的かつ現実的な法案とその運用方針という形でまとめることができる「政策立案」と、現政権の政策に関する問題、政権を担当する政治家や官僚の腐敗に関する問題等を指摘し、具体的事実を明らかにする「国会の場での追及」の二つである。 (2)政策立案と追及を支えるのが事実調査である。優れた政策の立案は、的確な実情調査によって可能になり、政権側の腐敗等の問題についての追及も、事実関係についての的確な調査があって初めて可能となる。 (3)責任野党と「無責任野党」の違いのポイントは、三つのミッションのバランスがとれているか否かである。「永田メール問題」についても、このバランスに問題があった。現政権の政策ないし法制度の根本的な問題に根ざすものなのであれば、その一つ一つの問題を掘り下げて政策論争を行う中で、政策の歪みに派生する問題を取り上げることで、追及の目的も果たせたはずだが、追及だけが自己目的化し突出してしまった。 (4)「責任野党」には、 独自の政策立案と、それを裏付ける適切な調査を行い得ること、適切な調査による裏づけに基づく現政権の追及の両方を実現できる組織の構築が必要である。 (5)個々のテーマ・案件ごとに、「主任議員」とサポートする「応援議員」の双方からなるチームを組織し、チーム・プレーによって政策立案、追及及び調査を行う「主任議員制」(「主任議員」の選定は、経験年数、キャリア・能力、過去の「応援議員」としての活躍の程度などに応じて行う)を導入し、責任の所在を明確にすることを検討すべきである。 (6)重要な政策・立法マターに関しては、その分野における実務経験が豊富な関係者の「手弁当政策スタッフ」を募集して政策立案に参画させ、各分野の実情に即した政策の素案を作成することを検討すべきである。 (7) 政権追及のための調査に関しても、関係者からの情報提供を受け、それを情報提供者の秘匿、不利益防止を図りつつ活用するスキームを具体化し、公益通報的な情報提供を広く呼びかけることが考えられる。 (8)国会の場で責任野党に相応しい質問・追及を行っていくために、いかなる根拠に基づいてどの程度の追及が可能なのか、どのような発言であれば適切かつ効果的と言えるのか、チーム内で十分な議論と検証を行いつつノウハウを蓄積し、質問のレベルを向上させていく必要がある。 仙谷氏は、この「責任野党構想」を受け止め、提言を民主党の改革に活用すべく、シンクタンクの設立などを行っていた。 2006年4月というのは、それまで、検察に籍を置き、桐蔭横浜大学法科大学院に派遣されて、教授・コンプライアンス研究センター長を務めていた私が、検察庁を退職して、弁護士登録をして民間人になった時期だった。仙谷氏は、配下の中堅議員を集めて、私の弁護士登録を歓迎する小宴を設けてくれた。その際、紹介された議員の多くが、その後、民主党政権で閣僚となった』、「指摘・提言」も現実に立脚した建設的なもので、これらも新鮮味を失ってない。
・『小沢一郎氏の代表就任が与えた影響  しかし、その後の民主党は、仙谷氏が考える方向で改革ができる状況にはならなかった。最大の原因は、メール問題で引責辞任した前原氏の後任を選ぶ代表選挙で小沢一郎氏が当選し、代表に就任したことだった。 仙谷氏は、「小沢体制になったために、党改革のために予算や人員が思うように回してもらえなくなった」とぼやいていた。せっかく始まっていたシンクタンクによる政策研究の動きも止められてしまったとのことだった。 弁護士登録をした私は、翌2007年1月に【「法令遵守」が日本を滅ぼす】と題する著書を公刊し、コンプライアンスのジャンルの本としては異例のベストセラーとなったこともあり、全国の企業・団体等の依頼で講演活動を行っていた。仙谷氏からは、様々な分野の問題について相談を受け、助言をしていた。まさに「仙谷氏のブレーン」のような存在だった。 私は、仙谷氏への協力の度合いを深めていったが、一方で、政党組織としての民主党の党運営に関しては、小沢氏と対立関係にある仙谷氏の党内での発言権は低下し、小沢体制の下で、選挙戦略・政局戦略中心に事が進められていった。 その頃、一方の与党自民党も、2007年2月に「消えた年金」問題が表面化して以降、国民の支持を急速に失っていった。同年7月の参院選で惨敗して、参議院での第一党の座を民主党に奪われ、政権の安定は大きく損なわれていった』、小沢体制の下で、「民主党」は「責任野党」に脱皮する機会を失ったことになり、重大な損失だった。
・『自民党の失策によって、民主党に転がり込んだ政権  結局、その後の自民党は、2009年8月の総選挙で惨敗して政権の座から転落し、民主党が政権を担うことになった。 しかし、2006年からの3年間、野党第一党の民主党は、自民党への逆風で、流れに乗ったということに過ぎず、「永田メール問題」で露呈した党組織の問題は是正されていなかった。民主党は「責任野党」になることなく、政権の座につくことになった。 その民主党政権が発足する少し前、同党代表の小沢一郎氏の秘書が「陸山会事件」で東京地検特捜部に逮捕された事件のために、仙谷氏とは急に疎遠となり、連絡を受けることもなくなった。民主党政権発足後は一度も話をすることはなかった。 仙谷氏にとって小沢氏は、党内で対立する政治家というだけではなく、「仇敵」のような存在だったようだ。その小沢氏の「敵」である検察の陸山会捜査を痛烈に批判した。仙谷氏にとって、「敵の敵の敵」は「敵」ということだったのかもしれない。 2010年に、検察が、大阪地検特捜部の証拠改ざん事件等の不祥事で信頼を失墜した際、法務大臣の下に設置された「検察の在り方検討会議」に委員として加わったが、それも、当時の柳田稔法務大臣とその周辺の議員から、「検察に厳しい検察OBの識者」として就任を打診されたもので、仙谷氏等の民主党執行部とは全く関係はなかった。 民主党政権の間、私は、総務大臣に就任した原口一博氏とその後3人の総務大臣の下で総務省顧問・コンプライアンス室長を務め、14年3月まで、年金業務監視委員会委員長を務めた。それらの職務においては、その本来の職責である、政権側、関係省庁に対して、問題を指摘し、追及する姿勢で臨んだ。総務省コンプライアンス室長としては、民主党政権発足直後に二次補正予算で拙速に行われたICT関連補助金の不適正支出の問題を外部弁護士らによる調査チームを組織して解明し、大幅な減額措置をとらせた。年金業務監視委員会でも民主党政権下の厚労省や日本年金機構に関する様々な問題を取り上げ、厳しく追及した。 その間、仙谷氏を含め民主党執行部の側とは、ほとんど話をすることもなかった。 むしろ、【尖閣不法上陸への弱腰対応も、「検察崩壊」の病弊】などでは、検察の在り方とも関連づけて、民主党政権の尖閣問題への弱腰対応を厳しく批判したこともあった』、「小沢一郎」失脚後に、「仙谷氏」ら「民主党」中枢が筆者に接触しなかった理由は何なのだろう。「責任野党」への提言が重過ぎたためなのだろうか。
・『再び野党に転落した民主党、「責任野党」とはかけ離れた実態  民主党政権は、東日本大震災、原発事故対応などでも厳しい批判を受け、2012年11月の衆院選で惨敗、民主党は再び野党に転落した。 そして、第2次安倍政権が長期化する中、民主党は民進党となり、「希望の党騒ぎ」を経て、立憲民主党が野党第一党となり、今回の衆議院議員選挙に至った。その間、一貫して野党の支持率は低迷、自公両党が圧倒的多数の議席を占める状況が続いた。 その間、国会で、野党は、甘利明氏の「政治とカネ」問題、森友・加計学園問題、そして、桜を見る会問題などで、安倍政権を追及してきたが、それらが、野党側への支持拡大につながったとは言い難い。 15年前の私の指摘・提言に照らして、その後の野党を見ると、凡そ「責任野党」としての政権追及とは評価できない。むしろ、それが、「安倍一強」と言われる政治状況の長期化につながったとも言える。 野党側の政権の追及では、必ずと言っていいほど「調査チーム」「追及チーム」などが立ち上げられ、マスコミフルオープンで公開ヒアリングが繰り返されてきた。しかし、それらは、単に何人かの議員が集まって、公開の場で関係省庁の官僚や関係機関の幹部を呼び出して詰問しているに過ぎず、私が「責任野党構想」で提案した「政権追及のための調査の組織の構築」とは全く異なるものだ。 「調査」であれば、資料を入手し、それに基づいて、事実を把握し、その調査結果を必要な範囲で公表するという方法が、本来のやり方だ。そして、その調査の結果は、何らかの形で文書化して公表することが当然必要となるはずだ。しかし、野党側の「調査チーム」「追及チーム」で、調査結果が文書化されて公表されたという話は聞かない。公開の場のヒアリングをそのままネットで垂れ流すだけだ。 追及のネタは、殆どがマスコミ報道によるものであり、独自のネタでの追及というのは、ほとんどない。独自に入手したメールによる国会での追及が「偽メール」によるものだったことがわかって重大な不祥事になった「永田メール問題」があったことで、独自に入手した情報での国会追及を避けるようになったのかも知れない。しかし、マスコミで報じられたネタを基に公開ヒアリングで官僚を問い詰めているだけでは、「追及の姿勢」を国民にアピールするパフォーマンスでしかない。 しかも、野党の国会での追及の多くは、安倍首相など政権の主要人物の批判につながる直接的な事実を「主題」として、その疑いについて、執拗に追及を続けるというものだった。 森友学園問題であれば、「安倍首相又は夫人の関与」が主題とされ、それがあったのか、なかったのか、という点が追及の焦点となる。加計学園問題では、加計学園の優遇について、安倍首相の指示や関与があったのか否かに追及のポイントが絞られ、国会質問でも、その点ばかりが取り上げられる。 しかし、本来、国会の場で政権を追及するというのは、そういう単純な話ではないはずだ。 例えば、加計学園問題については、【加計学園問題のあらゆる論点を徹底検証する ~安倍政権側の“自滅”と野党側の“無策”が招いた「二極化」】でも述べたように、単に、総理大臣が「腹心の友」に有利な指示・意向を示したか、という個別の問題だけではなく、その背景となった、規制緩和と行政の対応の問題、国家戦略特区をめぐるコンプライアンスに関する議論など、多くの重要な論点が含まれていた。国会での追及は、そのような点に関連づけて幅広く行っていくべきだった。しかし、実際の野党の追及は、そのような「政策」を意図することなく、安倍首相に対する個人攻撃ばかりを繰り返す「政局」的な追及に終始してしまった。 政策面の問題に関連づけて政権追及を行っていくという「責任野党構想」とは真逆の方向であった。 そのような安倍首相個人をターゲットにした「政局的」な追及も、首相側の対応の拙さもあって、長期政権のイメージと信頼を低下させることには相応の効果があり、内閣支持率が大きく低下する場面もあった。しかし、その時、決まって生じるのが、「内閣支持率の低下とともに、野党側の支持率も低下する」という現象であった。 それは、政権への不信が増大し、国民が政権交代の可能性を現実に意識すると、野党側の追及姿勢に対する不信から、逆に、野党に政権を委ねることへの抵抗感が高まり、それが野党の政党支持率の低下につながったと見ることができるであろう』、「加計学園問題」では、「その背景となった、規制緩和と行政の対応の問題、国家戦略特区をめぐるコンプライアンスに関する議論など、多くの重要な論点が含まれていた。国会での追及は、そのような点に関連づけて幅広く行っていくべきだった。しかし、実際の野党の追及は、そのような「政策」を意図することなく、安倍首相に対する個人攻撃ばかりを繰り返す「政局」的な追及に終始」、「政策面の問題に関連づけて政権追及を行っていくという「責任野党構想」とは真逆の方向」、これでは確かに「責任野党」とはbほど遠い。
・『「権力の一極集中」を解消するための野党への協力  そうした状況の中でも、私は、野党側の政権追及には最大限の協力はしてきた。 小選挙区制は、本来、2大政党による政権交代が行える政治状況によって、その本来の機能が期待できるものであり、一つの政権が長期化し、権力が集中してしまえば、官僚機構の劣化を招くだけでなく、与党内での民主主義的な議論形成にも重大な悪影響を生じる。そういう意味では、安倍政権の長期化・権力の一極集中は、何とかして解消しなければならないと考えてきた。 野党が安倍政権追及の材料にしてきた、「政治とカネ」疑惑、森友・加計学園、「桜を見る会」問題など、殆どの問題について、私は、問題の本質に根差した政権批判を行ってきたし、野党の「調査・追及チーム」のヒアリングにも協力してきた。 しかし、野党側は、私の主張の中の「本質的な部分」には耳を貸すことなく、単なる「安倍政権・安倍首相批判」の部分を都合よく利用しているだけだった。それが端的に表れたのが、甘利明氏の「あっせん利得疑惑」での政権追及だった』、「野党側は、私の主張の中の「本質的な部分」には耳を貸すことなく、単なる「安倍政権・安倍首相批判」の部分を都合よく利用しているだけだった」、なんと程度が低いことだ。
・『「無責任野党」が行き着いた先としての今回の衆院選  野党側の「政権追及」の姿勢が行き着いた先が、今回の衆院選の1か月前、岸田首相が甘利氏を幹事長に任命したことを受け、野党が急遽立ち上げた「甘利幹事長あっせん利得疑惑追及チーム」だった。 連日のように、国会内で、関係省庁・URの担当者等を呼んでヒアリングを行っていたが、甘利氏の説明責任がいかなる根拠で生じているのか、「説明責任を果たす」というのがどういうことなのかも理解しないまま、的外れな質問が繰り返されていた。 当時、甘利氏は経済再生担当大臣だったのに、行革担当大臣と取り違えたり、「参院選での自民党本部から河井夫妻への1億5000万円の資金提供」の問題を「幹事長として判断すべき事項」に関連づけようとして、「買収の共謀」と「買収目的交付罪」との区別もつかないまま、「決裁権者が買収の共犯に該当する可能性」について法務省担当者に執拗に質問したり、凡そ見るに堪えないものだった。このような「追及ヒアリング」をネットで流すことが有権者の支持につながらないことは明らかだ。 それまでの疑惑追及の際のように、私に協力を求めてくれば、もう少し、まともな「追及」になったと考えられるが、私には全く連絡はなかった。それは、疑惑追及チームの中心になっている立憲民主党が、8月に行われた横浜市長選挙で当選した山中竹春氏について「説明責任を全く果たしていない」として、私から批判されていたからであろう(【横浜市長選、山中候補の説明責任「無視」の立憲民主党に、安倍・菅政権を批判する資格があるのか】)。 また、立憲民主党の政策が、十分な議論と検討を経て策定されたものであることに疑問が生じた出来事があった。今回の衆院選の投票日の3日前に、立憲民主党の代表代行(経済政策担当)として同党の経済政策を取りまとめた江田憲司氏が、BSフジ「プライムニュース」に出演し、「NISA(少額取引非課税制度)、積立NISAにも金融所得課税を課税する」と発言し、その後、訂正・謝罪に追い込まれた。 番組でのやり取りを見ると、江田氏は、そもそもNISAという制度自体を理解していないようにも見える。欧米と比較して個人の株式保有比率が低く、個人投資家の証券取引が少ない日本で、個人の証券取引を増やすことは重要な政策課題であり、NISA、積立NISAも、個人の証券取引の裾野を広げるために導入されたものだ。高額所得者の金融所得の課税の問題と、中間層への課税、少額投資家への課税、それぞれの在り方をきめ細かに議論していれば、江田氏のような失言はあり得なかったはずだ。 「甘利幹事長あっせん利得疑惑追及チーム」も、「NISAへの課税」の発言も、立憲民主党の疑惑追及や政策立案について、国民の不信感を高め、選挙における支持の低下につながった可能性は否定できない』、「江田氏」は経産省出身とはいえ、常識の範囲の問題なので、単に不勉強だったのだろう。
・『「責任野党」に向けて時計が止まった15年間  「永田メール問題」の危機に直面した時の民主党と、現在の立憲民主党を比較してみると、「責任野党」への道筋という面では、15年間、時計が止まっているように思える。 「永田メール問題」を受けて民主党の抜本改革をめざしていた仙谷氏だったが、小沢体制になったことで、それが進めることができなくなった。1990年代に、「剛腕」で小選挙区制導入を実現した小沢一郎氏の存在は、野党第一党の民主党が、「二大政党」の一翼を担う「責任野党」になることを阻んだようにも思える。その小沢氏は、今回の選挙で小選挙区落選。「民主党」にとって一つの時代が終わったとも言える。 そもそも、日本という国における政治風土・国民の考え方の下では、小選挙区制より、かつての中選挙区制の方が適しているとの意見も根強い。しかし、現在の小選挙区制で絶対多数を占める自民党が政権の座にある状況において、選挙制度の変更は現実的には考えにくい。 今の状況では、“見果てぬ夢”のようにも思えるが、二大政党制を担いうる「責任野党」に出現してもらいたい。それを目指し、党改革の方向性を競い合う代表選挙になることを望みたい』、「代表選挙」は盛り上がらないまま終わった。これでは、「責任野党」の道はとてつもなく遠そうだ。

第三に、11月30日付けダイモンド・オンラインが掲載した立命館大学政策科学部教授の上久保誠人氏による「立憲民主党は誰が代表になっても将来性なし 結党自体が間違いだった理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/288961
・『総選挙での惨敗により辞任した枝野幸男代表の後任を選ぶ、立憲民主党の代表選挙が本日(11月30日)に投開票される。逢坂誠二元首相大臣補佐官、小川淳也国会対策副委員長、泉健太政務調査会長、西村智奈美元厚生労働副大臣が立候補しているが、正直、まったく関心がない。誰が代表になろうと、立憲民主党に将来の展望はないからだ』、ずいぶん手厳しい批判だ。
・『立憲民主・代表候補者の致命的な知名度  共産党との「野党共闘」の是非に、候補者4氏とも明確な考えを述べず、歯切れが悪い。政策についても、うまくアピールできていない。 一方、岸田文雄政権は「新しい資本主義」を打ち出して、大きく左に張り出している(本連載第288回・p5)。それに対して、4氏とも自民党との差異をはっきりと打ち出せず、非常に苦心している。 深刻なのは、政治に詳しい人を除いて、おそらく多くの国民にとって、4氏とも「この人、誰?」という程度の知名度しかないことだ。自民党が、幹部から若手まで多士済々、キャラが立ち、国民によく知られた政治家を多数擁しているのと対照的で、残念なことである。 立憲民主党にも国民によく知られた人材はいる。野田佳彦元首相、岡田克也元副総理、玄葉光一郎元外相、安住淳元財務相、蓮舫元民進党代表などだ。だが、彼らは「旧民主党政権のイメージ」だから代表選に出られないという。おかしな話である。 彼らは「旧世代」だというかもしれない。しかし、第2次安倍晋三政権以降の自民党の主要メンバーと世代的には同じである。第一線を引退するのはまだ早い。また、安倍政権は、「第1次安倍政権」の失敗から学んで、史上最長の長期政権を築いた(第101回)。野党側も、失敗から学べばいいことだ。 権威主義など他の政治体制にはない、「自由民主主義」の長所は、「間違いさえもオープンにすることで、そこから学び、改めることができること」である(第218回)。実際、自民党はそれを実践し、政権を奪還した。 だが、日本の左派野党には、それはできないようだ。旧民主党政権の幹部だった政治家は、まるで間違いを犯した者のように排除された。そもそも、党名まで変えて旧民主党をなかったことにしている。残った人たちは、自分たちが間違えたのではないという態度だ』、見ず知らずの人間ばかりが出てきた理由がようやく理解できた。「旧民主党政権の幹部だった政治家は、まるで間違いを犯した者のように排除された」、なんと人材の無駄遣いをしていることか。そもそも、総括して反省点を明らかにすれば、旧幹部も十分使える筈だ。積み重ねを度外視するようでは、到底、政党の体をなしてない。
・『間違いを認めず、失敗から学びを得ない政党でいいのか  左派の人たちの特徴の一つは、間違いを絶対に認めない「無謬性」を主張することだ(第112回)。共産党の志位和夫委員長は、委員長就任以来一度も選挙に勝てないのに、いろいろと理屈を付けて、実に21年間も委員長を辞任しない。だが、立憲民主党も党内文化はそれほど変わらない。 だから、経験豊富なベテランたちが、政権運営を間違えた「旧民主党」のイメージだというだけで切り捨てられて、二度と表舞台に立てない。代表選には「若手の台頭」「世代交代」と言えばきれいに聞こえるが、実際は「次の総理」である野党第1党の代表の器量があるとは到底思えない政治家しかいない。ここに、この党の限界が見える。 世界の自由民主主義国で、一度や二度の政権運営の失敗で、党名を捨てたり分裂したりする政党はない。日本の自民党だけではなく、英国の保守党、労働党、ドイツのキリスト教民主同盟・社会同盟(CDU・CSU)、社会民主党(SPD)など、何度も政権奪取と下野を繰り返しているが、政治思想・信条、政策の方向性がブレない。失敗しても、そこから学び、復活する。何度でも繰り返すが、それが自由民主主義の強さなのである』、同感である。。
・『立憲民主党の結党は万死に値するほどの愚行、その経緯  そもそも、私は立憲民主党は結党されたこと自体が間違いだったと考える。それは、結党時の経緯を振り返れば明らかだ。 2017年9月、安倍首相の衆院解散・総選挙の決断を受けて、前原誠司代表(当時)が民進党の「事実上の解党」と、小池百合子代表(東京都知事)が率いる新党「希望の党」への合流を表明した(第168回)。当時、高い人気を誇っていた小池代表と合流することで、一挙に政権交代を実現することを狙ったものだった。 だが、民進党の衆院候補者が希望の党の公認を申請したが、小池代表が独自の基準で選別し、憲法・安全保障など基本政策が一致しない候補を公認しない「排除の論理」を持ち出した。排除された候補者から次々と悲鳴が上がり、阿鼻叫喚の様となった。 この事態に、小池代表の「非情」と前原代表の「詰めの甘さ」が厳しい批判にさらされた。この時、公認を得られず路頭に迷った議員を救済するために、枝野氏が「立憲民主党」を結党。 立憲民主党は、総選挙で55議席を獲得し、野党第1党となった。一方、希望の党は50議席にとどまり、その後小池代表が辞任し、党は解体した。その一部が現在、玉木雄一郎代表率いる「国民民主党」である(第182回)。 立憲民主党の結党は、枝野幸男氏という政治家が、日本政治をどういう方向に進めるかの大局観がなく、政党を運営するための何の展望も持たず、ただ感情だけで動いた結果である。それは、2017年総選挙の後に起きたことを検証すればわかる。 政治学の理論をアレンジして用いれば、立憲民主党の結党で「分極的一党優位制」と呼ぶべき体制が確立したといえる。これは要するに、左右に大きく政策のウイングを広げた巨大な自民党に対して、左翼に大きく寄った小規模な野党がいるという体制だ』、「立憲民主党の結党は、枝野幸男氏という政治家が、日本政治をどういう方向に進めるかの大局観がなく、政党を運営するための何の展望も持たず、ただ感情だけで動いた結果」、緊急避難的なものだった筈で、筆者の表現はいささか厳し過ぎる。
・『政策を取られた立憲民主党、中流層は離れるばかり  2017年総選挙時に、前原民進党代表が主張していた消費増税による教育無償化の実現など「All For All」という政策を自民党が「パクって」以降、本来野党が取り組むべき社会民主主義的国内政策を次々と安倍政権が実現していった(第218回)。サイレントマジョリティー(中流層=消極的保守支持者)の支持は自民党に集まったわけである。 これに対して、立憲民主党はサイレントマジョリティーの支持を自民党と争うのではなく、共産党と共闘して左翼の支持者を固める方向に向かった。国会では、共産党とともに「何でも反対」の姿勢を取ったが、圧倒的多数を築いた自民党はそれを無視し、政策を無修正で通していった(第189回)。 「分極的一党優位制」は、実は自民党と共産党の利害が一致する体制だ。もちろん両者の間にコミュニケーションはない。だが、お互いにとって都合がいいのだ。 自民党にとっては、「民主党」が崩壊せずに、政権担当経験があり、現実的な議論ができる政党になっていれば、面倒な存在だったはずだ。それがバラバラになり、共産党と共闘してくれて幸運だった。それを共産党がシロアリのように食い荒らし、経済財政や安全保障で政策の幅を失ってくれると、強引にやりたい政策を通しやすくなるからだ。 その上、現実的な議論のできない野党はサイレントマジョリティーに支持されない、「万年野党化」してくれるので、自民党にとって安泰だ。 一方、共産党にとっては、安倍首相のような安全保障や憲法で「保守色」がにじみ出る自民党が「極端」な物言いをしてくれるほうがいい。「何でも反対」の共産党が目立つことになり、支持を集めやすく、存在感を強めることができる。自民党と共産党は、お互いに「必要悪」な存在といえるのだ』、筆者は「共産党」との選挙協力に批判的なようだが、死に票が大きく減ったメリットに言及しないのは、政治学者として無責任だ。
・『もし立憲民主党が生まれなかったらどうなっていたか  立憲民主党の結党という枝野氏の大局観なき行動がなければ、日本政治はどのように変化する可能性があったか。再び、政治学の理論をアレンジして用いれば、「穏健な保守中道二大政党制」に向かったかもしれなかった。 「穏健な保守中道二大政党制」とは、安全保障を政争の具とせず、経済財政・社会保障政策など内政面では「改革が手ぬるい」「よりよき政策がある」と、保守と中道が競い合って、現実的な政策を作り上げていく体制だ。 もちろん、逆に小池都知事・前原代表に、大構想があったわけではない。小池都知事は安倍首相に権力闘争を挑みたかっただけだ。前原代表には、「民進党が共産党に食われ続ければ、大幅な議席減となる」という、やむにやまれぬ思いがあった。 それでも総選挙後には、たとえ政権交代を実現できなくても、民進党内にいた左派はほぼ絶滅し、共産党との共闘は終焉し、希望の党が野党第1党になったはずだった。そして、「安全保障を政争の具にしない政治」であり、「より改革的な政策とは何かを競い合う政治」が始まったはずだ。そして、過去の因縁を超えて、希望の党に維新の会も合流し、「穏健な保守中道二大政党制」が出現していたかもしれない。 立憲民主党の結党とは、一度は実現するかに思われたこの動きを必死に止めたものだった。その後出現した「分極的一党優位制」で利益を得たのは立憲民主党ではなく、自民党と共産党だったのだ。 そして、安倍政権による強引な政権運営、権力の私的乱用、人事権の乱用と官僚の「忖度」、スキャンダルの頻発と、それに「万年野党」が金切り声を上げて反対する、日本政治の堕落が起こった(第226回)。 また、政治だけではなく、国民もおかしくなった。安倍政権を支持する人も、左派を支持する人も、お互いに感情的に反発し合い、政策をまともに考える力を失っていった。 その意味で、枝野氏による立憲民主党の結党は、万死に値するほどの愚行であった。枝野氏は党代表を辞任したが、それだけでなく、議員辞職し、政界を去るべきだ』、「立憲民主党の結党」は小池氏・前原氏による「排除の論理」に対抗した防衛的なものだ。筆者の見方はあまりに「枝野」氏に対し、不当なまでに厳し過ぎる。こういう暴論もあり得るのを紹介したまでである。
タグ:ずいぶん手厳しい批判だ。 見ず知らずの人間ばかりが出てきた理由がようやく理解できた。「旧民主党政権の幹部だった政治家は、まるで間違いを犯した者のように排除された」、なんと人材の無駄遣いをしていることか。そもそも、総括して反省点を明らかにすれば、旧幹部も十分使える筈だ。積み重ねを度外視するようでは、到底、政党の体をなしてない。 日本の政治情勢 (その58)(メルケル首相のような「ハッとするコロナ演説」をする政治家が日本にいない理由 州の政治家は「弁論力」がすごい、「責任野党」は”見果てぬ夢か” ~15年前の「永田メール問題」から止まった時計、立憲民主党は誰が代表になっても将来性なし!結党自体が間違いだった理由) PRESIDENT ONLINE ヤマザキ マリ 「メルケル首相のような「ハッとするコロナ演説」をする政治家が日本にいない理由 州の政治家は「弁論力」がすごい」 ヤマザキ氏のシャープな見方は、参考になりそうだ。 特に「日本の政治家」のお粗末さは顕著だ。 「メルケル」演説は多方面で高く評価された。「メルケル」氏が昨日、公式に引退したのは誠に残念だ。 イタリアの「コンテ首相」も印象的な演説をしたのであれば、日本の政治家のお粗末さが目立ってしまう。 「パンデミックのような状況は、本来なら指導者が自分の人気を上げるのにいかようにも利用できる好機なのに、(それが出来なかったトランプ4大統領は)もったいないことだ」、トランプには逆立ちしても出来ない筈だ。 官邸のゴーストライターに書かせているようでは、望み薄だ。 日本の政治家には、安部・菅・岸田だけでなく、誰にとってもそんな芸当がそもそも無理なように育っているのは誠に残念だ。 郷原信郎 ブログ 「「責任野党」は”見果てぬ夢か” ~15年前の「永田メール問題」から止まった時計」 「立憲民主党は、結党以来の危機に直面している」、同感である。 「構想」の「民主党には、無責任野党としての存在から脱却し、国政に関連する調査、政策立案、国会質問・追及などあらゆる面で責任を果たし得る日本初の真の責任野党を創造することが求められている」との、狙いはいまでも新鮮である。 「指摘・提言」も現実に立脚した建設的なもので、これらも新鮮味を失ってない。 小沢体制の下で、「民主党」は「責任野党」に脱皮する機会を失ったことになり、重大な損失だった。 「小沢一郎」失脚後に、「仙谷氏」ら「民主党」中枢が筆者に接触しなかった理由は何なのだろう。「責任野党」への提言が重過ぎたためなのだろうか。 「加計学園問題」では、「その背景となった、規制緩和と行政の対応の問題、国家戦略特区をめぐるコンプライアンスに関する議論など、多くの重要な論点が含まれていた。国会での追及は、そのような点に関連づけて幅広く行っていくべきだった。しかし、実際の野党の追及は、そのような「政策」を意図することなく、安倍首相に対する個人攻撃ばかりを繰り返す「政局」的な追及に終始」、 「政策面の問題に関連づけて政権追及を行っていくという「責任野党構想」とは真逆の方向」、これでは確かに「責任野党」とはbほど遠い。 「野党側は、私の主張の中の「本質的な部分」には耳を貸すことなく、単なる「安倍政権・安倍首相批判」の部分を都合よく利用しているだけだった」、なんと程度が低いことだ。 「江田氏」は経産省出身とはいえ、常識の範囲の問題なので、単に不勉強だったのだろう。 「代表選挙」は盛り上がらないまま終わった。これでは、「責任野党」の道はとてつもなく遠そうだ。 ダイモンド・オンライン 上久保誠人 「立憲民主党は誰が代表になっても将来性なし 結党自体が間違いだった理由」 「立憲民主党の結党は、枝野幸男氏という政治家が、日本政治をどういう方向に進めるかの大局観がなく、政党を運営するための何の展望も持たず、ただ感情だけで動いた結果」、緊急避難的なものだった筈で、筆者の表現はいささか厳し過ぎる。 筆者は「共産党」との選挙協力に批判的なようだが、死に票が大きく減ったメリットに言及しないのは、政治学者として無責任だ。 「立憲民主党の結党」は小池氏・前原氏による「排除の論理」に対抗した防衛的なものだ。筆者の見方はあまりに「枝野」氏に対し、不当なまでに厳し過ぎる。こういう暴論もあり得るのを紹介したまでである。
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本日は更新を休むので、明日にご期待を!

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キシダノミクス(その2)(「なぜ野党共闘でも政権交代には程遠かったのか」ポスト枝野が盛り上がらない根本原因 他党に頼らなくても勝てる力が必要、岸田政権のグタグタぶりがオミクロン株対応で露呈「諸悪の根源は官邸 お友達人事で各省が不信」) [国内政治]

キシダノミクスについては、11月19日に取上げた。今日は、(その2)(「なぜ野党共闘でも政権交代には程遠かったのか」ポスト枝野が盛り上がらない根本原因 他党に頼らなくても勝てる力が必要、岸田政権のグタグタぶりがオミクロン株対応で露呈「諸悪の根源は官邸 お友達人事で各省が不信」)である。

先ずは、11月21日付けPRESIDENT Onlineが掲載した政治学者の菅原 琢氏による「「なぜ野党共闘でも政権交代には程遠かったのか」ポスト枝野が盛り上がらない根本原因 他党に頼らなくても勝てる力が必要」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/52024?page=1
・『立憲民主党は、衆院選の敗北で引責辞任した枝野幸男氏の後任を選ぶ代表選挙を、11月30日に行う。政治学者の菅原琢さんは「代表選では野党共闘の是非が争点になりつつある。野党共闘の効果はあったが、それだけで政権交代の実現は不可能だ。立憲民主党は他党に頼らなくても勝てるだけの力をつける必要がある」という――』、「立憲民主党」敗北の要因を「野党共闘」に求める味方が強いなかで、私は違和感を抱いていただけに、とりわけ興味深そうだ。
・『政局で増やした議席数以上に、支持者を増やせなかった  2021年衆院選は、日本維新の会が議席を大幅に伸ばし、自由民主党、立憲民主党の与野党第1党がともに「改選前議席」よりも議席を減らす結果となりました。これにより枝野幸男立憲民主党前代表が辞任し、代表選が行われることになったのはご存じの通りだと思います。ただ、この選挙結果の評価はなかなか難しいところがあります。 実は、選挙を分析する観点から見ると、多くのメディアが行っている「改選前議席」との比較は有益ではありません。立憲民主党に関して言えば、前回2017年の選挙から今回選挙の直前までの間に国会の議席数は大幅に増えています。これは、前回選挙で当選した希望の党の議員らが旧・国民民主党への合流を経て新・立憲民主党(2020年9月結成)に集った結果、膨れ上がった数字です。 選挙とは無関係の議席数と比較しても選挙結果の分析はできません。実際、旧・立憲民主党と比較すれば今回の新・立憲民主党は獲得議席も票数も増えていますから、立憲民主党は健闘したとする余地もあるでしょう。 もっとも、自ら巨大化させた党を支えるだけの議席を獲得できなかったのですから、その責任を取り代表が辞任することは理解できます。政局で増やした議席数以上に、立憲民主党の支持者、投票者を増やすことができなかったことが問題というわけです』、「政局で増やした議席数以上に、立憲民主党の支持者、投票者を増やすことができなかったことが問題というわけです」、これまで「立憲民主党」の敗北の意味がよく分からなかったが、ようやく理解できた。
・『候補を一本化した選挙区の勝率は3割を切った  一方、立憲民主党が議席を増やす方策として取り入れた、小選挙区での他の野党との積極的/消極的な候補者調整を含む選挙協力(以下、野党共闘)の評価については難しいところです。今後の立憲民主党の運営方針と関わる問題にもかかわらず意見が分かれており、新聞各紙の報道には混乱が見られます。 一例を挙げると、日本経済新聞は野党が候補を一本化した選挙区の勝率が3割を切ったことを示した記事で「小選挙区で候補者を一本化する共闘態勢をとれば野党に勝機が生まれるとの定説を崩した」と指摘しています(『日本経済新聞』2021年11月2日朝刊)。読売新聞も同様の数字を示して「5党が期待したほどの成果は上げられなかった」としています(『読売新聞』2021年11月2日朝刊)。 ところが、同日の読売新聞の別の記事では、自民党幹部の「薄氷の勝利」という声とともに「野党の候補者一本化の影響を受け、多くの小選挙区が接戦に持ち込まれた。自民が5000票未満の僅差で逃げ切った選挙区は17に上り、34選挙区が1万票未満の差だった。結果は一変していたかもしれない」と述べていました(『読売新聞』2021年11月2日朝刊)。 毎日新聞も1位と2位の得票率差が5ポイント未満の選挙区の数が49から62へと増えたことを示し、「野党共闘が接戦の増加につながったことがうかがえる」としています(『毎日新聞』2021年11月1日夕刊)』、「野党共闘が接戦の増加につながった」、のは確かに事実のようだ。
・『各紙は我田引水的な数字の使い方をしている  こうして見ていくと、新聞各紙、各記事では、野党共闘を否定的に見る場合には今回のみの勝率や勝数を示し、肯定的に見る場合には得票率差とその前回からの増加を示す傾向があるようです。野党共闘の実際を明らかにするというよりは、我田引水的な数字の使い方をしている印象を持ちます。 何らかの意図があるかどうかはともかく、文意に合わせてデータを「借用」することはマス・メディアではよくあることですし、数字の評価が主観的なのもよくあることです。 しかしその結果、野党共闘の効果がどのようなものかが見えにくくなってしまっています。そして、それにもかかわらず、共闘を見直せ、続けろという大雑把な議論にこうした「分析」が利用されているのは残念なことです』、「共闘を見直せ、続けろという大雑把な議論にこうした「分析」が利用されているのは残念なこと」、同感である。
・『共闘区と競合区の単純比較では共闘効果は見えない  それでは、野党共闘の効果を確認するためにはどうすればよいのでしょうか? その基本は夏休みの自由研究と同じで、「比較」を行うことです。野党共闘が行われた選挙区とそうでない選挙区の選挙結果を比較すれば、野党共闘がもたらした効果がわかるはずです。 たとえば毎日新聞は、野党候補が統一された213の選挙区と野党が競合した72選挙区とを比較し、前者が62勝(勝率29.1%)、後者が6勝(勝率8.3%)であったことを指摘し、「一定程度の共闘効果はあったことがうかがえる」としています(『毎日新聞』2021年11月2日朝刊)。 もっとも、この比較は分析の方向性としては間違ってはいませんが、これをそのまま共闘の効果と受け取ることは適切ではありません。野党が候補を統一しなかった選挙区は、そもそも野党側が勝つ見込みが低い選挙区が多いためです。特に共産党は、立憲民主党が勝利できそうな選挙区では候補者を撤退させる一方で、立憲民主党への支持が低く勝利の見込みが低い選挙区では比例区の票の掘り起こしのために候補を残しました。 勝率29.1%と8.3%の差は、共闘の有無以前に野党の支持基盤の厚さ、元々の勝つ見込みで決まっているのです。つまり、偽の相関関係と捉えられる部分が大きいのです。毎日新聞の記事はその点も考慮しており、野党側が敗北した競合区で野党各候補の得票を合算しても与党候補を上回るのは5選挙区に過ぎないことを示しています』、「偽の相関関係」を「考慮」した「毎日新聞」はさすがだ。
・『共産党候補の出馬・不出馬で選挙区を比較する  それでは、どのように比較を行えば野党共闘の効果に迫れるでしょうか。いくつか方法が考えられますが、ここでは前回と今回の野党候補出馬状況で選挙区を分類し、グループ間で比較することで共闘効果を示してみたいと思います。 つまり、時間軸も組み合わせるのです。野党候補の出馬パターンを細かく分類すると前回と今回の組み合わせで膨大になってしまいますので、ここではごく単純に共産党候補が出馬したかどうかで分けて確認してみます。 ((図表1)共産党候補有無の変化と選挙結果の変化はリンク先参照) 図表1は、前回と今回の共産党候補の有無に応じて289選挙区を4つに分類し、選挙結果に関するいくつかの指標とその変化を示したものです。ここでは4つのグループのうち表のA(共産党撤退区)とB(共産党連続不在区)とを比較してみます。 なお、AとBを比較する理由は、Cは該当選挙区数が10と少なく、Dは野党勢力が明確に弱い選挙区が多数のため、他のグループと比較しにくいためです。これに対して、AとBは共産党比例区得票率をはじめとして野党の支持基盤の厚さに関する指標にあまり差がなく、似た条件とみなすことができます。 AとBの、野党共闘効果の確認に影響を与えうる最も大きな違いは、共産党の撤退と並ぶもう一つの野党競合の解消パターンである前回立民・希望の競合区です。立希競合区はAに10、Bに20含まれています。これによる野党共闘の効果がBに若干乗るのですが、共産党撤退による効果を過大ではなく過小に見積もる方向に働くため、ここでは許容することにします』、なるほど。
・『共産党候補の撤退は野党の成績向上に寄与した  さて、表でAとBを比較すると、共産党候補が撤退したAグループではどの指標で見ても野党側の結果が改善していることがわかります。候補の得票率は上昇し、接戦区は大きく増え、野党側の勝利数は倍となっています。 一方のBグループでは、接戦区は増えたものの得票率は低下し、野党の議席数も減少しています。どの指標を見ても、Bグループに比較してAグループの状況は好転しており、共産党の撤退は野党候補の成績向上に明らかに寄与したように見えます。 両グループの選挙結果の差異は、統計分析を行っても明確です。たとえばt検定という基本的な統計分析を行えば、Aグループの前回野党最上位候補得票率の平均値は今回の値、Bグループの値と統計的に有意な差があることがわかります』、「統計的」検定まで行ったとはさすがだ。
・『共産党が候補を撤退させた効果  以上のような説明がわかりにくい場合でも、次の図表2を見れば共産党候補の撤退が野党候補の得票率向上に効果を持ったことが明白であると理解できるでしょう。 ((図表2)野党最上位候補得票率の前回・今回比較 はリンク先参照) 図表2は、横軸を各選挙区の前回の野党最上位候補の得票率、縦軸を同じ選挙区の今回の野党最上位候補の得票率として各選挙区の値の分布を示しています。この散布図ではAグループ(共産党撤退区)を青、Bグループ(共産党連続不在区)を黄の○印で示しています。 青と黄のマークの分布は重なってはいますが、概ね図の真ん中を横切る斜めの線の左上に青、右下に黄の○が多く配されているように見えます。この赤い線は前回と今回の得票率が同じになる位置に引いており、したがって赤い線の左上側は今回得票率が伸びた選挙区、右下は得票率の下がった選挙区となります』、なるほど。
・『野党共闘は野党候補の得票率を向上させ  共産党撤退区は概ね野党最上位候補の得票率が上昇し、共産党候補が連続して不出馬だった選挙区の野党最上位候補は得票率を下げた場合が多かったことを、この図は示しているのです。もしこの効果がなければ、青い○の多くは赤い線の右下側に分布し、野党側は議席を増やすことはできなかったでしょう。 なお、重回帰分析という手法により野党最上位候補得票率の変化幅に対する諸々の要因の平均的な効果も別途確認しましたが、共産党候補撤退は概ね8ポイント程度の得票率上昇をもたらしたという計算結果になりました。立民と希望の競合の解消やその他の野党の候補の減少も同程度の得票率の上昇をもたらしたと考えられます。これら野党共闘の効果により、接戦区が増え、野党の勝利が増えたことも明らかです』、「野党共闘の効果により、接戦区が増え、野党の勝利が増えたことも明らかです」、共産党との共闘に強いアレルギーを示している連合会長は、この結果をどう解釈するのだろうか。
・『埋めがたい与・野党の得票率差  細かい注釈をいろいろ付けはしましたが、グループ分けと時間の前後による先の表のような比較はデータさえあればそれほど難しいものではありません。グラフの作成も大して手間ではありません。科学的にはもっと詰めなければならないところはありますが、表計算ソフトさえ使えるのなら、数を主観的に「評価」して大味な議論を誘導する必要はないのです。 よく、他のメディアと比較した際の新聞の長所として、裏取りやデスク等によるチェックなどを背景とした情報の信頼性が挙げられることがあります。しかし、政治・選挙報道における数字の用い方については、いい加減で時に扇動的と感じさせることがあります(ネット・メディアがマシとは言っていません)。年齢や立場に関係なく、数字と分析に関するリテラシーを持った記者やチェック担当者が必要に思いますが、どうでしょうか。 さて、ここで確認した野党共闘の効果を前提とすれば、立憲民主党の今後についてどのように議論できるでしょうか。簡易的なシミュレーションから考えてみましょう。 ((図表3)与党と野党(非維新)の差を理解するシミュレーション はリンク先参照) 図表3は、今回の衆院選の選挙区について、維新を除く野党の候補と与党候補との得票率差の値を左から高い順に並べ、その値を折れ線で繋いだものです。縦軸が0ポイントのところに水平に引いたラインより上が野党の与党に勝利を示します。 今回の衆院選で野党候補が与党候補を上回った選挙区の数は全体の4分の1に過ぎません。仮に5ポイント以内の小差の接戦区を全て逆転できたとしても、合わせて37%の選挙区でしか勝利できません。これを過半数に持っていくためには、13ポイントの得票率差を埋める必要があります』、与野党間の「得票率差」はやはり相当大きいようだ。
・『政権交代には程遠い結果だった  もし共産党が全選挙区で候補を擁立したら、この結果はどうなるでしょうか。共産党が候補を擁立しなかった選挙区の野党候補から8ポイント減じて選挙区を並べ直すと、野党候補が与党候補を上回る選挙区は12%しかないことがわかります。共闘効果8ポイントが正しいとすれば、共産党との共闘なしに小選挙区で勝てた選挙区は半分もない試算になるわけです。 また、過半数の位置での与党との差は17ポイントになります。共産党が候補を撤退させなかった場合、このような巨大な差を挽回しなければ政権交代が見えてこないことになります。 このシミュレーションは維新の会を考慮に入れないなど簡便なものですが、与党に水をあけられている野党の現状を理解するには十分でしょう。もし共産党が候補を撤退させなければ野党は本当の意味で大敗したはずです。 一方、接戦区が増えたと言っても政権交代には程遠い結果であったことも明らかです。野党共闘の効果は大きいですが、それでも4分の1の小選挙区でしか勝利できないのは、ひとえに野党側の力不足、支持不足のためと言えます』、「もし共産党が候補を撤退させなければ野党は本当の意味で大敗したはずです」、「野党共闘の効果は大きいですが、それでも4分の1の小選挙区でしか勝利できないのは、ひとえに野党側の力不足、支持不足のため」、やはり「野党」が自力をつける必要がありそうだ。
・『立憲民主党代表選の争点は野党共闘の是非ではない  民主党代表選に向けて、マス・メディアは野党共闘の是非が争点だと煽っていますが、政権交代を目標とするならそれ以前の問題です。野党第1党がより多くの得票を集められないなら、他の野党に対する交渉力は弱いままです。野党共闘を見直すにしても続けるにしても、より多くの有権者から支持を集めることが立憲民主党には必須なのです。 したがって代表選は、まず立憲民主党の支持率の向上、勢力拡大の方策をめぐって議論されるべきでしょう。その結果として共産党や他党と相容れない方針を選択するなら、野党共闘を放棄するまでです。 もっともその場合、政権交代を目指す以上、他党に頼らなくても小選挙区を勝ち抜けるだけの得票率向上策を示せなければなりません。17ポイントの差を埋めるには、たとえば9ポイント近い票を与党候補から奪って自党候補の票とする、あるいは投票率を9ポイント近く上げてその分を自党候補の票とするような、大きな票の動きを生み出すことが必要となります』、「政権交代を目指す以上、他党に頼らなくても小選挙区を勝ち抜けるだけの得票率向上策を示せなければなりません」、単独での「政権交代」はおよそ夢物語でしかない。
・『影響力を高めるには支持率向上や党勢拡大のための施策は必須  筆者の見通しでは、現状の立憲民主党が他の野党との協力無くして与党との差を埋めることはほぼ不可能です。 比例区の得票率を見ると、立憲民主党の20%に対して維新の会は14%、共産党は7%超の得票率となっています。国民民主党、れいわ新選組、社民党といった小党も合計すれば10%に達します。したがって、これらの勢力を全て無視して立憲民主党単独で自公に匹敵する50%近い得票率を選挙区で稼ぐことは現状では難しいはずです。 一方で他の野党も、他党と非協力の姿勢を貫いていては議席の維持や勢力拡大は簡単ではありません。おそらく、各党同士それぞれ適度に距離を取り、それぞれ独自の訴えで独自の支持層を確保しつつ選挙区の選挙では協調するというのが、強い与党に対する有効な対抗手段となるでしょう。 このとき立憲民主党が与党に対抗する勢力を主導したいなら、結局、より大きな勢力、高い支持率を得ていく必要があるわけです。その道筋の第一歩として、代表選は試金石となります。 しかし、立憲民主党代表選は告示まで、党内を横目で見ながら出方を伺うような展開となっていました。強大な与党に立ち向かう大きな物語を示し、幅広い有権者の支持をもとめて党外へのアピールを競う選挙とならなければ、野党第1党であっても代表選が盛り上がらないのは当然です。今後の論戦に期待したいところです。 ともかく、小選挙区の結果が全体の勢力比を左右する衆参両院の選挙において自民党と公明党の強力な連合に対抗するためには、「多弱」のままでは無理です。これはここ10年の日本政治の教訓であると同時に、今回衆院選で共闘した野党が小選挙区で獲得議席を増やしたことが示した事実と言えるでしょう』、今回の「立憲民主党代表選」は、本物の論戦になることなく、「盛り上がらない」まま終わったのは残念だ。候補者たちは、みな子供っぽく、頼りなかった。やれやれ・・・。

次に、12月4日付けAERAdotが掲載した「 岸田政権のグタグタぶりがオミクロン株対応で露呈「諸悪の根源は官邸、お友達人事で各省が不信」」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dot/2021120300088.html?page=1
・『新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」の感染拡大に慌てた政府が日本に到着する国際線の新規予約を12月末まで止めるよう、すべての航空会社に要請するも、たった3日で撤回した問題が波紋を広げている。 岸田政権の発足後、初めて迎えた本格的なコロナ対応だったが、航空会社や利用者の混乱を招く結果となった。裏で何が起きていたのか。 「国際線新規予約停止要請では、官邸はもとより政府内が大混乱しました。国交省所管の独断、と報じられていますが、諸悪の根源は官邸の機能不全です」(官邸関係者) オミクロン株に対応するための水際対策として政府は11月29日、12月から1日あたりの入国者数の想定を5千人から3500人に引き下げることを公表。同日に国交省航空局が一律に国際線新規予約の停止要請を出し、日本航空(JAL)と全日空(ANA)などは12月1日までに予約を止めた。 すると、長期の出張などで帰国の航空便を予約していない人たちが戻れなくなる上、政府内でも事前調整が出来ていなかったため、大混乱。12月2日に急遽、取りやめを発表した。官邸内でもあらゆる情報が錯綜し、情報の真贋を確かめることに追わる始末だったという。 「戦犯の一人は木原誠二官房副長官(補佐官)です。そもそも木原副長官は、財務省出身の中でもひときわエリート意識が高く、独善的に仕事を進めるので、省庁横断的な根回しや情報共有などの調整役としては能力に欠けています。専門分野である『新しい資本主義』など経済政策には注力しているが、コロナやワクチンは省庁任せ。国交省のなすがまま、放置したために、こういう事態になった。国交省の事務方の暴走という方向へ責任転嫁していますが、 本当にそうであれば、関係部署の職員が処分される話です。こうした官邸の対応に霞ヶ関からも疑問の声が出始めています。今回の対応のまずさは、自民党の重鎮らも怒っていると聞きます」(同前)』、ない」ようでは、ワクチン入手で苦労することになりそうだ。「「戦犯の一人は木原誠二官房副長官(補佐官)・・・財務省出身の中でもひときわエリート意識が高く、独善的に仕事を進めるので、省庁横断的な根回しや情報共有などの調整役としては能力に欠けています。専門分野である『新しい資本主義』など経済政策には注力しているが、コロナやワクチンは省庁任せ。国交省のなすがまま、放置したために、こういう事態になった」、恐らく「木原」氏に報告はあったが、上の空で聞いていたのだろう。
・『官邸のグタグタぶりに危機感を抱いた岸田文雄首相は3日、側近の寺田稔元総務副大臣を首相補佐官、盟友である石原伸晃元幹事長を内閣官房の参与に起用すると発表した。 「寺田さんは安全保障を木原副長官から引き継ぐ形になります。木原副長官にこれ以上、任せられないと、岸田首相が同じ広島が地盤で岸田派側近である寺田さんを抜擢した。しかし、寺田さんだけでは現在、政権が抱える重大な目詰まりを解決するのは困難です。それなのに落選し、派閥会長を辞職し、ただの人になった石原氏を参与(観光立国担当)に起用なんてピントがズレまくっています。石原氏は安倍元首相とも仲がいいので、岸田首相はパイプ役を期待しているようですが、こうしたお友達人事で各省の不信感や離反が起こりはじめています」(前出の官邸関係者) 今回の騒動は木原副長官だけではなく、斉藤国交相の対応も大問題だったという。自民党幹部はこう指摘する。 「斉藤国交相は、衆院選期間中に開いた個人演説会の出席者にトラック協会が現金を渡していた疑惑や資産等補充報告書に1億円超の記載漏れが報じられ、メディア対応に四苦八苦。省内の動きにすら目を配れていなかった。所管大臣なのに事前に話を知らない、という大失態を演じたのは、国交省幹部に軽んじられている証左です。公明党は遠山清彦元財務副大臣が東京地検特捜部から取り調べを受けるなど不祥事続きで、政権や霞が関で軽んじられています」(自民党幹部) そもそも岸田官邸には安倍・菅政権の時代、懐刀だった杉田和博元官房副長官のような霞が関に睨みの利く、存在感のある人物はいないという。 「岸田官邸全体として言えるのは、どこか人任せ。結局、何より問題なのは、政権中枢にコロナ対策を本当に理解した人材がいないことです」(同前) 岸田政権のこうした機能不全はオミクロン株などコロナ対応にも影響が出ているという。 「特にワクチンでは、前倒し供給にかかるファイザーとの調整にも木原副長官ら官邸幹部が政治案件として関与しようという意識が薄く、厚労省任せとなり、難航しています」(同前)) 堀内詔子ワクチン担当相、山際大志郎コロナ対策担当相も存在感が薄く、政治力でワクチン交渉を打破する、という気迫もないという。 「それでもやっている感を演出することには熱心で、6日に行われる首相の所信表明でも『ワクチン供給前倒し』の話をねじ込んだ。『日本ならできる、いや、日本だからできる』のような気合だけで中身の無いフレーズが岸田首相の所信表明で随所に盛り込まれる予定で、実務を任されている厚労省も困惑気味です。岸田政権のグタグタぶりで今後、大きな危機を招かないか心配です」(前出の官邸関係者) 政治ジャーナリストの角谷浩一氏はこう指摘する。 「国交省幹部の独断と官邸や斎藤大臣は言いわけしているが、岸田官邸が機能不全になっているのは明らかです。今はオミクロン株の騒ぎと燃料の値上げで航空会社はどこも大変な時期。政治の不手際で大きな打撃を与えた。そもそも岸田内閣は肝心かなめのコロナ対策を誰が司令塔となってやるのか、曖昧になっている。菅政権の時は、田村憲久前厚労相、河野太郎前ワクチン担当相、西村康稔前コロナ担当大臣の存在感はあり、連携は必ずしもうまくいっていなかったが、政治力はそれなりにあった。だが、岸田内閣はコロナ司令塔の顔になる人材が見当たらない。ワクチン確保のため、きちんとチームを作らないと大変なことになる」、「国交省幹部の独断と官邸や斎藤大臣は言いわけしているが、岸田官邸が機能不全になっているのは明らかです」、「そもそも岸田内閣は肝心かなめのコロナ対策を誰が司令塔となってやるのか、曖昧になっている」、「ワクチン確保のため、きちんとチームを作らないと大変なことになる」、今回の不手際は、信じられないようなお粗末さだ。肝心の「コロナ司令塔の顔になる人材が見当たらないようでは、ワクチン入手で苦労することだろう。
タグ:「立憲民主党」敗北の要因を「野党共闘」に求める味方が強いなかで、私は違和感を抱いていただけに、とりわけ興味深そうだ。 「共闘を見直せ、続けろという大雑把な議論にこうした「分析」が利用されているのは残念なこと」、同感である。 「政局で増やした議席数以上に、立憲民主党の支持者、投票者を増やすことができなかったことが問題というわけです」、これまで「立憲民主党」の敗北の意味がよく分からなかったが、ようやく理解できた。 「野党共闘が接戦の増加につながった」、のは確かに事実のようだ。 「「なぜ野党共闘でも政権交代には程遠かったのか」ポスト枝野が盛り上がらない根本原因 他党に頼らなくても勝てる力が必要」 菅原 琢 PRESIDENT ONLINE キシダノミクス (その2)(「なぜ野党共闘でも政権交代には程遠かったのか」ポスト枝野が盛り上がらない根本原因 他党に頼らなくても勝てる力が必要、岸田政権のグタグタぶりがオミクロン株対応で露呈「諸悪の根源は官邸 お友達人事で各省が不信」) 「偽の相関関係」を「考慮」した「毎日新聞」はさすがだ。 「統計的」検定まで行ったとはさすがだ。 「野党共闘の効果により、接戦区が増え、野党の勝利が増えたことも明らかです」、共産党との共闘に強いアレルギーを示している連合会長は、この結果をどう解釈するのだろうか。 与野党間の「得票率差」はやはり相当大きいようだ。 「もし共産党が候補を撤退させなければ野党は本当の意味で大敗したはずです」、「野党共闘の効果は大きいですが、それでも4分の1の小選挙区でしか勝利できないのは、ひとえに野党側の力不足、支持不足のため」、やはり「野党」が自力をつける必要がありそうだ。 「政権交代を目指す以上、他党に頼らなくても小選挙区を勝ち抜けるだけの得票率向上策を示せなければなりません」、単独での「政権交代」はおよそ夢物語でしかない。 今回の「立憲民主党代表選」は、本物の論戦になることなく、「盛り上がらない」まま終わったのは残念だ。候補者たちは、みな子供っぽく、頼りなかった。やれやれ・・・。 AERAdot 「 岸田政権のグタグタぶりがオミクロン株対応で露呈「諸悪の根源は官邸、お友達人事で各省が不信」」 「「戦犯の一人は木原誠二官房副長官(補佐官)・・・財務省出身の中でもひときわエリート意識が高く、独善的に仕事を進めるので、省庁横断的な根回しや情報共有などの調整役としては能力に欠けています。専門分野である『新しい資本主義』など経済政策には注力しているが、コロナやワクチンは省庁任せ。国交省のなすがまま、放置したために、こういう事態になった」、恐らく「木原」氏に報告はあったが、上の空で聞いていたのだろう。 「国交省幹部の独断と官邸や斎藤大臣は言いわけしているが、岸田官邸が機能不全になっているのは明らかです」、「そもそも岸田内閣は肝心かなめのコロナ対策を誰が司令塔となってやるのか、曖昧になっている」、「ワクチン確保のため、きちんとチームを作らないと大変なことになる」、今回の不手際は、信じられないようなお粗末さだ。肝心の「コロナ司令塔の顔になる人材が見当たらないようでは、ワクチン入手で苦労することだろう。
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今日は更新を休むので、明日にご期待を!

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ハラスメント(その19)(“熱意のある管理職”ほど「ハラスメント」をしてしまう残念なメカニズムとは?、罵倒 恫喝 隠蔽三昧 パワハラ王国日本と企業の下心) [社会]

ハラスメントについては、6月29日に取上げた。今日は、(その19)(“熱意のある管理職”ほど「ハラスメント」をしてしまう残念なメカニズムとは?、罵倒 恫喝 隠蔽三昧 パワハラ王国日本と企業の下心)である。

先ずは、9月8日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したソフトバンク出身で一般社団法人プレゼンテーション協会代表理事、情報経営イノベーション専門職大学客員教授の前田鎌利氏による「“熱意のある管理職”ほど「ハラスメント」をしてしまう残念なメカニズムとは?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/281342
・『リモートワークでマネジメントの難易度は上がりました。「見えないメンバー」の行動を細かく管理したり、コントロールすることができないからです。大事なのは、「自走」できるメンバーを育て、彼らが全力で走れるようにサポートすること。そもそも、管理職は「自分の力」ではなく、「メンバーの力」で結果を出すのが仕事。それはまるで「合気道」のようなものです。管理職自身は「力」を抜いて、メンバーに上手に「技」をかけて、彼らがうちに秘めている「力」を最大限に引き出す。そんな仕事ができる人だけが、リモート時代にも生き残る「課長2.0」へと進化できるのです。本連載では、ソフトバンクの元敏腕マネージャーとして知られる前田鎌利さんの最新刊『課長2.0』を抜粋しながら、これからの時代に管理職に求められる「思考法」「スタンス」「ノウハウ」をお伝えしていきます』、興味深そうだ。
・『“熱意のある管理職”ほど「ハラスメント」をしてしまう残念なメカニズムとは?  なぜ、熱意のある管理職が、「悪循環」にはまってしまうのか? 課長をはじめとする「管理職」の職務とは何か? リモート・マネジメントについて考えていくうえで、まず、この根本的なことを確認しておきたいと思います。 おそらく、多くの人は「そんな決まりきったことを……」と思われたのではないでしょうか。そのとおり、管理職の「職務」とは、言うまでもなく、「組織目標を達成するために、担当するチームを管理すること」です。これに異論のある人はあまりいないと思います。 でも、「『担当するチームを管理する』というときの『管理』とはどういう意味か?」と改めて問われると、答えるのが意外と難しくないでしょうか? 辞書で調べても、「管理」という言葉は多義的ですし、人によって思い浮かべるイメージもさまざまではないかと思います。私たちは「管理」という言葉を頻繁に使っていますが、その意味内容を深く考えて使っている人は少ないように思うのです。 私もかつてはそうでした。 しかし、「管理職」として大小さまざまな失敗を繰り返し、「なぜ、うまくいかないのか?」と自問自答するなかで、私なりに「管理」という言葉について考えを巡らせ、認識を深めてきました。 これは、管理職にとって非常に大切なことだと思います。なぜなら、自らの職務である「管理」という言葉を正しく認識しておかなければ、「管理職」としてどんなに頑張ったとしても、絶対によい結果が得られないからです。むしろ、頑張れば頑張るほど問題を大きくしてしまうという、「悪循環」にはまりこんでしまうのです。 リモート・ハラスメント(リモハラ)はその典型です。 メンバーがちゃんと働いているかを「監視」するために、常時カメラを稼働させることを義務づけたり、事細かに業務報告をさせたりすることによって、メンバーに威圧感や不快感を与えてしまうのがリモハラですが、実に皮肉なことに、これをやってしまうのは、職務をまっとうしようという熱意をもった「管理職」であろうと想像できます。そうでなければ、「管理職」自身にも重い負荷のかかることをやるはずがないからです。 だけど、「監視」されて嬉しい人など、どこにもいません。 「監視」とは「(メンバーの逸脱行為を)警戒して見守ること」ですから、管理職が自ら「あなたたちは、放っておけばちゃんと仕事をしない」と明言しているようなものです。そのような管理職に対して、心を開き、協力関係を築こうとするメンバーなどいるはずがありません。結果として、「監視」しようとする管理職は、熱意があればあるほど、その職務をまっとうすることができない状況に陥ってしまうわけです。 (前田鎌利氏の略歴はリンク先参照)』、「「監視」しようとする管理職は、熱意があればあるほど、その職務をまっとうすることができない状況に陥ってしまうわけです」、その通りだ。略歴を盛ると、ソフトバンクで実務で叩き上げたキャリアのようだ。
・『リモハラが起きる「根本的な理由」とは?  にもかかわらず、なぜ「監視」しようとするのでしょうか? 私は、「管理」という言葉の理解がズレているからではないかと思います。 ある辞書で「管理」という言葉をひくと、「ある規準などから外れないよう、全体を統制すること」と書いてありますが、彼らは、「管理職」の職務をこのようなイメージで捉えているのではないでしょうか。だからこそ、「規準などから外れないよう」にするために、メンバーを「監視」しようとするのだと思うのです。 もちろん、これは辞書に書いてある定義ですから、言葉の意味として間違えているわけではありません。「管理」という言葉には、確かにそういう意味も含まれているのです。だけど、私が思うに、これは主に、「モノ」を管理するときにあてはまる定義ではないでしょうか。 例えば、「品質管理」という言葉における「管理」には、「ある規準などから外れないよう、全体を統制する」という意味がピッタリとあてはまります。そして、「規準から外れた不良品」を生み出さないために、製造ラインを「監視」することは絶対的に重要な職務となるはずです。 しかし、管理職が共に働くメンバーは「モノ」ではありません。 当たり前のことですが、管理職もメンバーも同じ「人間」なのです。にもかかわらず、「モノの管理」と同じような発想で、チームを「管理」しようとしてもうまくいくはずがありません。リモハラの根本には、こうした認識の誤りがあるのではないかと、私は思うのです』、「管理職が共に働くメンバーは「モノ」ではありません。 当たり前のことですが、管理職もメンバーも同じ「人間」なのです。にもかかわらず、「モノの管理」と同じような発想で、チームを「管理」しようとしてもうまくいくはずがありません」、確かにその通りだ。
・『管理職の職務とは、「よい状態を保つ」ことである  では、「管理」という言葉をどう理解すればよいのでしょうか? 私の感覚に近いのは、『広辞苑』に出てくる「良い状態を保つように処置すること」という定義です。「処置する」とは、「状況に応じて適切な手立てを講じる」といった意味合いですから、私なりに噛み砕けば、管理職の職務とは、「組織目標を達成するために、担当するチームが良い状態を保つように、状況に応じて適切な手立てを講じること」ということになります。 ポイントは二つです。 第一に、「チームが規準などから外れないよう」にすることではなく、「チームが良い状態を保つように」することが、管理職の主目的であるということ。そして第二に、その目的を達成するために、管理職は「全体を統制する」のではなく、「状況に応じて適切な手立てを講じる」のが主な職務であるということです。 もちろん、チームを適切に運営するうえでは、法令、社内規定や一般常識から逸脱した行為がないか、管理職はアンテナを立てておく必要はあります。そして、許容できない行為があれば、強制的にそれをやめさせることも必要でしょう。 だから、「規準などから外れないよう、全体を統制する」のも管理職の職務の一部ではありますが、それはあくまで、逸脱行為が発覚した場合などの“異常事態”における特殊な対応だと認識すべきでしょう。 そもそも、いくら完璧に「メンバーが規準などから外れないよう」にしたからといって、その結果として「組織目標を達成する」ことができるわけではありません。そうではなく、「チームが良い状態」を保っているからこそ、「組織目標を達成する」ことができるのです。 そう考えると、管理職の「職務」において、「規準などから外れないよう」にすることよりも、「チームが良い状態」を保つことのほうが本質的なテーマであるのは、当たり前のことではないでしょうか』、「管理職の「職務」において、「規準などから外れないよう」にすることよりも、「チームが良い状態」を保つことのほうが本質的なテーマである」、その通りだが、「「チームが良い状態」を保つこと」はそんなに簡単ではない。
・『「統制」しようとするから、管理職は「失敗」する  では、「良い状態」とはどういう状態でしょうか? メンバー一人ひとりが組織目標を達成することに強い意欲をもち、チームワークを発揮しながら「自走」する状態です。人間がパフォーマンスを最大化させるのは、自身の内発的なモチベーションに突き動かされて仕事に邁進するときですから、そのようなモチベーションを引き出して、チームワークを生み出していくことこそが、管理職の最大の職務なのです。 そして、モチベーションの源は各人の「内面」にしか存在しません。 どんなに強権を発動して、メンバーのモチベーションを「統制(コントロール)」しようとしても、そんなことは不可能。人間は誰かに強制されて、モチベーションを高めることができるような存在ではありません。これこそが、「モノの管理」と決定的に異なるポイントなのです。 だから、管理職にできることは、コミュニケーションを通じて、メンバー一人ひとりのモチベーションの在り処を探し当てて、それを最大限に発揮してもらえるように働きかけることだけ。それこそが、各人が置かれた状況に応じて、あるいは、チームが置かれた状況に応じて、「良い状態」を生み出すために「適切な手立てを講じる」ことなのです。 もちろん、そのような状態を生み出すには、それなりの時間と労力はかかります。時には、メンバーを統制して、無理矢理にでも行動させるほうが効率的に思える局面もあるかもしれません。 しかし、一見遠回りのように見えるかもしれませんが、管理職とメンバー各人との間で、そのようなコミュニケーションを成立させて、メンバーのモチベーションを最大化することができたとき、管理職には絶大なパワーが与えられます。 強い意欲をもつメンバーが力を合わせることで、管理職がなかば放っておいても組織目標を達成してくれるチームが生まれるからです。「自走力」のあるメンバーたちが事業を引っ張っていくようになるので、管理職はメンバーの仕事に関与する時間と労力を大幅に削減することができるようになります。 その結果、メンバーを管理するために「職場」に縛り付けられる理由がなくなり、リモート・マネジメントも難なく行うことができるようになる。これこそが、私が提案する「課長2.0」のあり方なのです。 このように言うこともできるでしょう。 “入り口”を間違えると、絶対に「課長2.0」には行き着かない、と。 「管理」という言葉を、「ある規準などから外れないよう、全体を統制すること」と理解している限り、「課長2.0」に辿りつかないばかりか、リモート環境下では「リモハラ」へと行き着いてしまうことになるでしょう。 そうではなく、「管理」という言葉を「チームが良い状態を保つように、適切な手立てを講じる」と理解するのが、「課長2.0」に至る正しい“入り口”なのです。そして、丁寧なコミュニケーションを取りながら、一人ひとりのメンバーの自発性を引き出していくのには、それなりの手間と労力がかかりますが、それは、「課長2.0」を実現するために必要不可欠な「投資」と考えるべきなのです(詳しくは『課長2.0』をご参照ください)』、「管理職にできることは、コミュニケーションを通じて、メンバー一人ひとりのモチベーションの在り処を探し当てて、それを最大限に発揮してもらえるように働きかけることだけ」、「「自走力」のあるメンバーたちが事業を引っ張っていくようになる」、まさに組織の理想形だ。
・『【著者からのメッセージ】  はじめまして、前田鎌利です。 私がはじめてリモート状態でメンバーのマネジメントをする経験をしたのはソフトバンクに在籍していたときのことです。 孫正義社長の後継者育成機関である「ソフトバンク・アカデミア」に選抜され、そこでプレゼンした事業提案が孫社長に認められて、事業化するために子会社の社外取締役への就任を命じられたほか、社内の複数部門のマネジメントも任されるようになったからです。 任された部門の所在地はバラバラですから、ほとんどのメンバーとは同じ場所で仕事をすることができません。強制的に、リモート・マネジメントの技術を磨かざるをえなくなったのです。 当初は困惑しましたが、それまでの管理職としての経験から学んだ「教訓」を総動員しながら試行錯誤。徐々に、リモート・マネジメントができるようになると、私の目の前には新しい世界が一気にひらけていました。 「職場」という場所に縛り付けられず、自由に動き回ることができるようになった私は、ソフトバンク・アカデミアで知り合った「社外の人材」を起点に、どんどんと人脈を拡大。そこから、新しいビジネスの「知見」や「種」を見つけてきて、社内で新規プロジェクトを立ち上げるなど、より創造的な仕事ができるようになっていったのです。 それは、実に面白く、刺激的な経験でした。このときほど、会社で働く醍醐味を味わったことはありません。そこで、そのような管理職のあり方を「課長2.0」と名付けて、多くのマネージャーの皆様に提案したいと思って書いたのが『課長2.0』という本です。 もちろん、私がリモート・マネジメントの「答え」が完全にわかっているわけではありません。皆様と切磋琢磨しながら、一人でも多くの「課長2.0」が誕生して、自由で創造的な仕事ができる職場が増えていくことを願っています』、「任された部門の所在地はバラバラですから、ほとんどのメンバーとは同じ場所で仕事をすることができません。強制的に、リモート・マネジメントの技術を磨かざるをえなくなったのです」、様々な困難を乗り切ってきた実力は大したものだ。

次に、11月30日付け日経ビジネスオンラインが掲載した健康社会学者(Ph.D.)の河合 薫氏による「罵倒、恫喝、隠蔽三昧 パワハラ王国日本と企業の下心」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00166/
・『ビジネスパーソンとしても、人間的にも、敬愛する知人が、パワハラで苦しんでいたことを知った。 異動先の上司に、半年以上にもわたり膨大な業務を課せられ、チームメンバーの目の前で罵倒されるなど、パワハラを受け続けていたのである。 知人は散々迷った末に、社内のハラスメント相談窓口に連絡。が、結果は予想した通り、「ハラスメント行為は確認できない」と突き返された。 誰がどう見たって、どう聞いたって、「パワハラ」以外の何物でもない許しがたき行為の数々を、彼は詳細に記録し、証拠になりそうなメールなども添えて相談したのに、「ハラスメント行為は確認できない」と、にべもない15文字で幕引きにされた』、「彼は詳細に記録し、証拠になりそうなメールなども添えて相談したのに、「ハラスメント行為は確認できない」と、にべもない15文字で幕引きにされた」、もともとこの会社にはまともに対応する気などなかったのだろう。
・『彼で何人目だろう  彼は多少のことではへこたれないメンタルの持ち主だったのに……ついに折れた。 心も体も限界を超え、現在、心療内科を受診中だという。 「人生でこんな経験をするなんて、想像もしていなかった。最初の頃は、そのうち収まるだろうとたかを括(くく)っていました。ところが、次第にエスカレートし、人格を否定するような暴言を吐かれ、明らかに私の業務外の仕事をやらされるようになりました。抵抗すればするだけ、みんなの前で罵倒されるので、感情を消す以外、対処策はなかった。 でもね、やはりどうしても納得できなかった。 相談しても意味ないとは考えていたけれど、とにかく公にしよう、と。そうしないと、おかしくなりそうだった。ところが……、予想通りの結果です。第三者に『パワハラ行為は確認できない』と言われたのは、想像以上にきつかった。 自分では大丈夫だと思っていたんですけどね。こんなになるのも初めてですよ。少しメンタルが回復したら、代理人を立てて交渉しようと考えているのですが、そこまで私が持つかどうか。自分が情けないです」 彼の会社は、世間的にも名の通った大企業だ。今回はこれ以上具体的なことは書けないけれど、事態の推移次第では実名で取り上げたいほどの卑劣かつ明確なパワハラを、会社は「なかったことにした」。 彼で何人目だろうか。パワハラに悩み、傷つけられ、メンタル不調に陥る知人が後を絶たない。もちろん、それは私の周りに限った話じゃないであろう。 先週の木曜(2021年11月25日)には、「『都合の悪いことは無かったことに』 消防で相次ぐパワハラ、命懸けの告発でも変わらないのか」という見出しの記事がSNSに掲載され、その2週間前には、佐川急便の社員が、パワハラで命を絶っていたことが報じられた。 宇部中央消防署副士長だった男性は、上司のパワハラや組織の悪弊を告発する遺書を書いて自殺(2019年)。それを受け、弁護士3人による外部調査委員会が報告書をまとめたが、自殺の原因は「職場に抗議の意を示すため」と結論付け、パワハラの存在を認めていなかった。 しかも、当初、報告書は非公開。消防署側は「遺族の意向」という嘘をついていたのだ』、「弁護士3人による外部調査委員会」に調査を依頼したのが、「消防署」だったとすればありそうなことだ。宇部市が依頼すれば、もう少し中立的立場の調査になる筈だ。
・『適切に対応できるための対応  一方、佐川急便の事件は、社員が亡くなる2カ月前に、見かねた同僚が「2人の課長の行為はパワーハラスメントに該当するのではないか」と内部通報していたにもかかわらず、「パワハラは確認できない」としていた。 +別の部署の管理職からみんなの前で、朝礼で叱責される +「なめ切っている」「うそつき野郎はあぶりだすからな!」などのメッセージが送られてくる +直属の上司から「うそつくやつとは一緒に仕事できねえんだよ」と言われ、机の前に立たされて40分以上叱責を受ける など、信じがたい行為を2人の課長が行っていたという事実を、他の社員たちも目撃していたのに、内部通報を受けた同社の管理部門は、“2人の課長”にヒアリングをしただけで、「被害者」を守ることをしなかったのである。 パワハラを受けていた男性は亡くなる前日、妻に「仕事がキャパオーバーだし、明日からどうしよう」と漏らしていた。そして、翌朝、営業所で悲しい選択をしたという。 一体何のための「相談窓口」なのか? 本来、相談窓口は被害者を守るために存在するのに、相談窓口が守ったのは「加害者」であり、「会社」だ。 厚生労働省の「職場のハラスメントに関する実態調査」では、8割の企業が「ハラスメントの内容、ハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化と周知・啓発」および「相談窓口の設置と周知」を行っていると回答している。 一方で、「相談窓口担当者が相談内容や状況に応じて適切に対応できるための対応」の割合は、すべてのハラスメント(セクハラ、マタハラ、パワハラ)において、たったの4割だった。 「適切に対応できるための対応」って? 文言が複雑すぎて理解するのがかなり難しい。 だが、至極シンプルに理解すれば、「国がうるさいし、世間体もあるからさ、とりあえず相談窓口を設置したけど~、うまく機能させるのは難しいよね~」と考える企業が6割もいるってことなのだろう。少なくとも私はそう理解している。 なにせ、私はこれまで何人もの“第三者”から、「パワハラを通報したいのだけど、報復人事が怖い」という相談を受けているのだ。中には「匿名だと社内調査を行わないんです。だから、実名でするしかないんだけど……」と、内部通報を辞めるケースもあった』、「匿名だと社内調査を行わない」、のは無責任な通報を排除するためで、やむを得ない。
・『根っこは何も変わらず  何か問題が起こる→社会的問題になる→国が動く→「さぁ、相談窓口を設置しよう!」――。 相談窓口設置はもはや日本の伝統芸能の域に達しているのでは? と思うこともしばしばだ。 そして、そういった意味不明が、「相談しても無駄」とあきらめる被害者を増やし、「自分の行為がパワハラ」と認識できないとんでもない輩をのさばらせる。それは、「目的が明確ならどんな不届きな行為でも許す」という、とんでも組織が生き残ることでもある。 これって一体何? 形骸化という言葉を超えた、「組織による犯罪」とも取れる行為だ。 (令和2年度厚生労働省委託事業「職場のハラスメントに関する実態調査」報告書 はリンク先参照) ご覧の通り、先述の調査でもパワハラを受けても「何もしなかった」人が36%もいることがわかっている。いや、「何もしなかった」のではない。何もできなかったのである。 要するに、企業側はいまだに「パワハラはされる側に問題がある」と考えているのではないか。 さすがに、数年前には企業のあちこちに巣くっていた、 「昔はパワハラなんて、日常茶飯事だったよ」「そうそう。僕も目の前で上司に原稿破られたりしたよ」「今だったら完全にパワハラになるんだろうけど、愛があったもんな」「ある意味ああいう行為って、愛情表現でもあるわけだし」 などと、堂々と「上司のパワハラ」を「愛情だった」と笑いながら話し、懐かしそうに振り返る輩は消えたけど、根っこは何も変わっていないのだ。 「愛があればなんでも許される」という間違った価値観は、「パワハラと指導の境界線が難しい」という、一見「部下思い」の言葉に変わり、今や「パワハラの存在は認められなかった」という組織を守る見解に発展した。 だいたい、「あなた」が懐かしむ昭和の時代にも、理不尽な扱いに悩み、誰に話すこともできず、ひたすら耐えるしかなかった人はいたはずである。中には、耐えきれずに会社をひっそりと辞めていった人だっているかもしれない。なのに、いまだに「いじめ」を擁護する組織に、どんな存在意義があるのか、ぜひとも教えてほしい』、「「愛があればなんでも許される」という間違った価値観は、「パワハラと指導の境界線が難しい」という、一見「部下思い」の言葉に変わり、今や「パワハラの存在は認められなかった」という組織を守る見解に発展した」、なるほど。
・『世界と逆を行く日本  結局、日本は30年近く変われなかった。その間、欧米ではハラスメント対策を進め、法律を作り、罰則を作り、今や世界各国が「パワハラ撲滅」に動いているのに。日本は「人権」より「企業の体裁」という独自路線を進んでいる。 2019年6月、国際労働機関(ILO)は「働く場での暴力やハラスメント(嫌がらせ)を撤廃するための条約=ハラスメント禁止条約」を採択した。採択では、ILOに加盟する国ごとに、政府2票、経営者団体1票、労働組合1票の計4票が与えられ、圧倒的多数で条約は採択された。 日本政府と労働組合=連合(日本労働組合総連合会)が「賛成票」を投じたのに対し、経営者団体=経団連(日本経済団体連合会)は「棄権」。しかも、連合は「批准」を求めているのに、政府は「批准」していない。その理由とされているのが、条約に組み込まれた「禁止」という2文字への日本政府のアレルギーだ。 条約は、ハラスメントを「身体的、精神的、性的、経済的危害を引き起こす行為と慣行など」と定義し、それらを「法的に禁止する」と明記している。つまり、日本の「パワハラ防止法」には、「禁止規定」や「罰則規定」がないし、加える動きもないので批准できない。識者からは散々「実効性がない」「パワハラ禁止を規定せよ!」と声が上がったのに最後の最後まで規定を入れず、これだけパワハラで人生をめちゃくちゃにされた人が後を絶たないのに、改正する動きもない。 「法的に禁止」すると、「損害賠償の訴訟が増える」という流れが予想されるため、「棄権票」を投じた経団連をおもんぱかり続けている。 本来、パワハラ防止法は「働く人」を守るためにあり、「ハラスメントは絶対に許してはいけない人権侵害」と広く認識させるために存在する。なのに、日本政府はいつも通りの「経済界への配慮」に必死なのだ。 日本は世界の潮流に乗り遅れるばかりか、逆行の道をたどっているといっても過言ではない。 ジェンダー問題しかり、最低賃金しかり、ハラスメントしかり……。どれもこれも「人の尊厳」という、ごく当たり前に守られるべき問題なのに、「人」がないがしろにされ続けている。 繰り返すが、ハラスメントは人権侵害である。欧州ではハラスメントは人権侵害であるという認識が明確にあり、法律を整備することで、人々に浸透させてきた』、「「ハラスメントは絶対に許してはいけない人権侵害」と広く認識させるために存在する。なのに、日本政府はいつも通りの「経済界への配慮」に必死なのだ。 日本は世界の潮流に乗り遅れるばかりか、逆行の道をたどっているといっても過言ではない」、「人」を「ないがしろにする」「日本政府」の「経済界への配慮」は止めてもらいたいものだ。
・『政府が気にする「ちっちゃな正義」  例えば、スウェーデンでは、国立労働安全衛生委員会が1993年に「職場での虐待に関する規則」を制定し、モビング(=パワハラ)を「従業員に対して繰り返し行われる侮辱的な行為、見るからに悪質で非難すべき行為、それによって職場における共同体からその従業員がはじき出されてしまうような行為」と定義し、雇用者に対して法的に従業員をサポートするよう義務付けた。 2002年にフランスで施行された「労使関係近代化法」では、企業内におけるモラルハラスメントを規制する条文を導入し、働く人の身体的健康だけでなく精神的健康も含めて健康・予防における使用者の責任を拡大した労働法改正が行われている。条文には「繰り返される行為」と「労働条件の劣化という結果」との2つの要件が組み込まれ、同時に刑法にも「1年の懲役及び1500ユーロの罰金」という刑罰が定められている。 また、日本同様に「パワハラが多い」とされる韓国でも、2019年7月、改正労働基準法が施行され、職場でのいじめ行為の禁止が法制化された。ハラスメント対策が不十分な雇用主には、最長3年の禁錮刑や最高3000万ウォンの罰金が科せられる可能性があり、ハラスメントによって労働者に健康被害が生じた場合の賠償請求権も保障されている。 そもそも人権とは、単に「相手を思いやるとか、相手の価値観を尊重する」ことでもなければ、差別をしないことでもない。 「人権」は英語では、human rights。つまり、「すべての人が所有するいくつもの権利」だ。 表現の自由、生存権、市民的・政治的な自由、生活を保障される権利、働く権利、教育を受ける権利、経済的・社会的・文化的権利、平和的生存権などなど、すべて「人権」である。 2002年3月に策定された国の「人権教育・啓発に関する基本計画」でも、「人権とは、人間の尊厳に基づいて各人が持っている固有の権利であり、社会を構成するすべての人々が個人としての生存と自由を確保し、社会において幸福な生活を営むために欠かすことのできない権利である」(第3章―人権教育・啓発の基本的在り方 1.人権尊重の理念)と述べられている。 これらの「社会において幸福な生活を営む」ための「権利と自由」の侵害がハラスメントであり、実現を阻むのが差別だ。その侵害と差別を、日本は「経済団体」をおもんぱかる、というちっちゃな正義のために許容しているのだ。 世界はパワハラの根絶に動いているのに、そんなことやってると、世界は日本企業に投資しなくなるってことを、わかっているのだろうか』、「日本」はこうした問題になると、国際的潮流を無視して、独自の保守的な枠組みを守ろうとする。国際的孤立もいい加減にしてもらいたい。
タグ:ハラスメント (その19)(“熱意のある管理職”ほど「ハラスメント」をしてしまう残念なメカニズムとは?、罵倒 恫喝 隠蔽三昧 パワハラ王国日本と企業の下心) ダイヤモンド・オンライン 前田鎌利 「“熱意のある管理職”ほど「ハラスメント」をしてしまう残念なメカニズムとは?」 「「監視」しようとする管理職は、熱意があればあるほど、その職務をまっとうすることができない状況に陥ってしまうわけです」、その通りだ。略歴を盛ると、ソフトバンクで実務で叩き上げたキャリアのようだ。 「管理職が共に働くメンバーは「モノ」ではありません。 当たり前のことですが、管理職もメンバーも同じ「人間」なのです。にもかかわらず、「モノの管理」と同じような発想で、チームを「管理」しようとしてもうまくいくはずがありません」、確かにその通りだ。 「管理職の「職務」において、「規準などから外れないよう」にすることよりも、「チームが良い状態」を保つことのほうが本質的なテーマである」、その通りだが、「「チームが良い状態」を保つこと」はそんなに簡単ではない。 「管理職にできることは、コミュニケーションを通じて、メンバー一人ひとりのモチベーションの在り処を探し当てて、それを最大限に発揮してもらえるように働きかけることだけ」、「「自走力」のあるメンバーたちが事業を引っ張っていくようになる」、まさに組織の理想形だ。 「任された部門の所在地はバラバラですから、ほとんどのメンバーとは同じ場所で仕事をすることができません。強制的に、リモート・マネジメントの技術を磨かざるをえなくなったのです」、様々な困難を乗り切ってきた実力は大したものだ。 日経ビジネスオンライン 河合 薫 「罵倒、恫喝、隠蔽三昧 パワハラ王国日本と企業の下心」 「彼は詳細に記録し、証拠になりそうなメールなども添えて相談したのに、「ハラスメント行為は確認できない」と、にべもない15文字で幕引きにされた」、もともとこの会社にはまともに対応する気などなかったのだろう。 「弁護士3人による外部調査委員会」に調査を依頼したのが、「消防署」だったとすればありそうなことだ。宇部市が依頼すれば、もう少し中立的立場の調査になる筈だ。 「匿名だと社内調査を行わない」、のは無責任な通報を排除するためで、やむを得ない。 「「愛があればなんでも許される」という間違った価値観は、「パワハラと指導の境界線が難しい」という、一見「部下思い」の言葉に変わり、今や「パワハラの存在は認められなかった」という組織を守る見解に発展した」、なるほど。 「「ハラスメントは絶対に許してはいけない人権侵害」と広く認識させるために存在する。なのに、日本政府はいつも通りの「経済界への配慮」に必死なのだ。 日本は世界の潮流に乗り遅れるばかりか、逆行の道をたどっているといっても過言ではない」、「人」を「ないがしろにする」「日本政府」の「経済界への配慮」は止めてもらいたいものだ。 「日本」はこうした問題になると、国際的潮流を無視して、独自の保守的な枠組みを守ろうとする。国際的孤立もいい加減にしてもらいたい。
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