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ブラック企業(その15)(〈内部文書入手〉しゃぶしゃぶ「木曽路」従業員 パワハラ被害が23% 「殴る、蹴る」も、「夢とやりがい」を強調する企業はなぜ危険なのか? ブラック企業チェックリスト) [社会]

ブラック企業については、2月26日に取上げた。今日は、(その15)(〈内部文書入手〉しゃぶしゃぶ「木曽路」従業員 パワハラ被害が23% 「殴る、蹴る」も、「夢とやりがい」を強調する企業はなぜ危険なのか? ブラック企業チェックリスト)である。

先ずは、4月27日付け文春オンライン「〈内部文書入手〉しゃぶしゃぶ「木曽路」従業員 パワハラ被害が23% 「殴る、蹴る」も」を紹介しよう。
・『しゃぶしゃぶ・日本料理でお馴染みの飲食チェーン「木曽路」。同社の労働組合が2021年6~7月に従業員約1100人を対象に行った「従業員意識調査」で、「パワハラ・いじめ」が「ある」と答えた人が、23%もいることが「週刊文春」の取材でわかった。 (「パワハラ・いじめ」が増えていることを示す文書はリンク先参照) 木曽路は焼き肉屋・居酒屋も展開し、東証プライムに上場。グループ全体で300億円超の売上高を誇る飲食チェーンだ。全国に163店舗を出店し、正社員は約1200人を数える。 「従業員意識調査」は今回で4回目。前回の2018年と比べ、「パワハラ・いじめ」が「ある」と答えた人は3ポイントも上昇。近年悪化していることが見て取れる。 またパワハラの内容も過激だ。「蹴る、殴る、胸ぐらをつかむ、物にあたるなどの暴力行為」があると訴えた人が16%。「人前で大声で怒鳴る、ねちねちと陰湿な叱責をする」に至っては、74%が「ある」と答えている。 労働時間も長く、過酷だという。 「昨年末には残業が月160時間を超え、300時間働いた人もいます」(従業員) パートやアルバイトを含む従業員の総労働時間が記された内部資料によると、昨年12月、残業時間が45時間超の従業員は約1000人、100時間超が39人いた。だがそのタイムカードの打刻時間より、実労働時間は長いという。 「繁忙期、調理担当は朝6時半ごろに出勤しても、上司がまとめて9時に打刻する。タイムカード上は昼に2、3時間休憩したことにしていますが、実際は昼食後にすぐ仕事。21時半に終わって打刻しても、片付けや翌日の仕込みもあり、帰宅は深夜になる」(同前)) 残業代未払いも各地である。2020年8月には埼玉の新座店に労基署が調査に入り、是正勧告が出されている。 「未払いの残業代を請求した人も複数人おり、マスコミや第三者に漏らさないことを条件に、解決金が支払われているのです」(元従業員) 旬報法律事務所の佐々木亮弁護士が指摘する。 「『意識調査』によりパワハラの存在を経営側が認識している上で、精神疾患になるような従業員が出た場合、安全配慮義務違反で過失責任が問われる可能性があります。また、残業時間が45時間を超える月が年7回以上ある場合や、100時間以上の月がある場合、時間外労働の上限規制に違反します。企業や店舗の店長や労務管理担当責任者は、6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金となります」』、「タイムカードの打刻時間より、実労働時間は長い」、「「繁忙期、調理担当は朝6時半ごろに出勤しても、上司がまとめて9時に打刻する。タイムカード上は昼に2、3時間休憩したことにしていますが、実際は昼食後にすぐ仕事。21時半に終わって打刻しても、片付けや翌日の仕込みもあり、帰宅は深夜になる」、酷い時間管理だ。上場企業とは思えないような管理実態だ。労基署の検査が必要なのではなかろうか。
・『「一概に労働環境が原因ではないと考えております」  今年1~4月に約25人が退職した木曽路。この問題をどう考えているのか。木曽路に問い合わせると、概ね次のように回答した。 「(『殴る、蹴る』などのパワハラについては)こちらは『従業員意識調査』の際にパワハラの一例として挙げた行為に過ぎません。(昨年末に残業が増えたのは)12月は社員の時間外労働が一時的に増加しましたが、直近では減少しました。(休憩時間中にも労働しているのは)客観的な事実は確認できておりません。(残業代未払い請求に対して支払いをした事実関係に関しては)個別の事案の内容等に関しては、当事者のプライバシーに鑑み、回答を差し控えます。(約25人が退職したのは)例年、年初から1、2 カ月は、従業員の入れ替わりが多い時期であり、今回も例年並みの退職者数となっており増加はしておりません。また、今回においても退職理由は個々人で異なり、一概に労働環境が原因ではないと考えております。引き続き労務環境改善に向けて最善を尽くして参ります」 そのほか、2017年3月に起こった従業員の自殺、サービス残業の強要への従業員の悲痛な叫び、労基署の是正勧告が出た残業代未払い問題、木曽路会長への直撃など、詳しくは4月27(水)12時配信の「週刊文春 電子版」および4月28日(木)発売の「週刊文春」が報じている』、「約25人が退職」は。「従業員の入れ替わりが多い時期であり、今回も例年並みの退職者数」で問題ないのかも知れない。しかし、かつては「従業員の自殺、サービス残業の強要」、「労基署の是正勧告が出た残業代未払い問題」などの問題もあったことからすれば、「労働組合」による「従業員意識調査」で「「パワハラ・いじめ」が「ある」と答えた人は3ポイントも上昇」、したということは会社組織の危険なサインである。先ずは、経営陣自ら、積極的に問題に取り組むことを期待したい。

次に、5月6日付け弁護士ドットコムニュースが掲載した横浜法律事務所の弁護士の笠置 裕亮氏による「「夢とやりがい」を強調する企業はなぜ危険なのか? ブラック企業チェックリスト」を紹介しよう。
https://www.bengo4.com/c_5/n_14435/
・『職場でトラブルに遭遇しても、対処法がわからない人も多いでしょう。そこで、いざという時に備えて、ぜひ知って欲しい法律知識を笠置裕亮弁護士がお届けします。 連載の第13回は「入社後のブラック企業の見分け方」です。入社前には分からなかったものの、入社後に自分の会社に対して疑問を感じた人もいるかもしれません。そんなとき、労働時間や賃金、退職届や社風など、いくつかチェックポイントがあります。 本当に問題のある会社かどうかを見分ける方法について、笠置弁護士に解説してもらいました』、興味深そうだ。
・『入社後に見分ける方法  新社会人になられた皆さんの中には、これまでののんびりとした学生生活から、1日の大半を仕事に費やさなければならないという環境の変化に戸惑っている方も多くいらっしゃるのではないかと思います。 さらに皆さんの中には、入社前に聞いていた話とは全く違い、入社した会社の職場環境があまりにも良くないことに苦しんでおられる方も多くいらっしゃるのではないかと思います。 以前、入社前の段階で「ブラック企業」かどうかを見分ける方法について解説をしました(https://www.bengo4.com/c_5/n_13649/)。 今回は、不運にも入社前の段階では見分けることができないまま、「ブラック企業」に入社してしまったかもしれない…という場合において、本当に問題のある会社かどうかを見分ける方法について解説したいと思います』、「本当に問題のある会社かどうかを見分ける方法」、とは価値がありそうだ。
・『ポイント1「長時間労働、労働時間管理なし」  まず、労働時間に関していうと、求人段階で社員の本当の残業時間を開示している会社はまずないと言ってよいでしょう。 そのため、入社前の段階ではそれほど忙しくなく、残業があったとしても月20時間程度と聞いていたにもかかわらず、実際には過労死ラインを超えるような長時間残業を強いられたり、有休を取得することを拒否されたといったトラブルはよく耳にします。 社員に対し結果を出すことを強く求めつつ、結果を出すためには長時間労働は当然であることを強調したり、労働時間管理をきちんと行わないなどといった会社は、要注意です』、「社員に対し結果を出すことを強く求めつつ、結果を出すためには長時間労働は当然であることを強調したり、労働時間管理をきちんと行わないなどといった会社は、要注意です」、典型的な「ブラック企業」だ。
・『ポイント2「固定残業代に注意」  賃金に関しても、注意すべきポイントがあります。トラブルになることが特に多いのは、固定残業代です。 例えば、入社前の段階では基本給額が月22万円だということで提示を受けていたにもかかわらず、入社した後に提示された契約書には、基本給が14万円、固定残業代が8万円と書かれており、いくら働いても残業代が出ないというケースです。 このような会社は、新入社員であっても長時間労働をあらかじめ見込んでいるため、人件費を節約するために固定残業代制度を導入しているわけですが、基本給額が14万円などという会社には誰も人が集まらないため、入社前の段階ではあたかも一般的な基本給額であるかのように装って求人を行っているのです。 このようなケースにおいて、国による監督が十分機能しているとは言えないため、問題のある求人条件が横行してしまっている状況にあります。なぜ基本給額をごまかすのかといえば、安く長時間労働をさせるためですから、社員の方々としては要注意です』、「入社前の段階ではあたかも一般的な基本給額であるかのように装って求人を行っている」、「安く長時間労働をさせるためですから、社員の方々としては要注意です」、こんな「ごまかし」には要注意だ。
・『ポイント3「辞められないような制度はないか?」  人事管理の面でいえば、社員が簡単に辞められないような制度を採用している会社は要注意です。 例えば、退職届を提出する期限を、退職日から相当前(3か月以上前など)に設定していたり、入社祝い金や会社の研修費用を支給しつつも貸し付けという形をとり、入社後5年以内に辞めた場合には返金を求めたりするなどし、トラブルに発展しているケースがあります。 前借金や損害賠償の予定については、実際には労基法により厳しく規制されています。 会社がなぜこのような制度を導入しているかと言えば、劣悪な職場環境等に耐えかねて社員がどんどん退職してしまうため、少しでも足止めをさせようとしているからです。 離職率の高さは、入社前の段階で「ブラック企業」を見分けるための有用なポイントですが、入社後の段階では、離職をさせないような仕組みを採用しているかどうかが重要なポイントだと言えるでしょう』、「離職をさせないような仕組みを採用しているかどうかが重要なポイント」、「離職をさせないような仕組み」とはよく考えたものだ。
・『ポイント4「夢ややりがいの強調」  社風として、夢ややりがいを強調し、努力・気合・感謝などといった精神論を強調している会社も要注意です。会社としては、社員に対して精神論を強調することで、会社の劣悪な職場環境について目を向けさせないという狙いがあります。 本当は残業をさせている時間に応じて残業代を払わないといけないところを、「社員自身が好きでやっていることだから」と思わせることで、サービス残業をさせてしまえるわけです。会社にとってこれほど楽な人件費節約術はありません』、「「社員自身が好きでやっていることだから」と思わせることで、サービス残業をさせてしまえる」、極めて悪質だ。 
・『経営者の責務は、経営を安定させつつ、社員の生活や健康を考えなければならないはずなのですが、以上に共通しているのは、むしろ会社の出費の節約にばかり目を向けてしまっているということです。このような経営方針の職場は雰囲気が荒み、日常的にハラスメントが蔓延してしまいます。 ここでご紹介したポイントを参考にしていただきつつ、ご自身の会社に問題があるかどうかを今一度確認されてみてはいかがでしょうか。 (笠置裕亮弁護士の連載コラム「知っておいて損はない!労働豆知識」では、笠置弁護士の元に寄せられる労働相談などから、働くすべての人に知っておいてもらいたい知識、いざというときに役立つ情報をお届けします。)』、「共通しているのは、むしろ会社の出費の節約にばかり目を向けてしまっているということです。このような経営方針の職場は雰囲気が荒み、日常的にハラスメントが蔓延してしまいます」、「ブラック企業」となれば、一刻も早く逃げ出した方がよさそうだ。
タグ:ポイント2「固定残業代に注意」 笠置 裕亮氏による「「夢とやりがい」を強調する企業はなぜ危険なのか? ブラック企業チェックリスト」 ブラック企業 「入社前の段階ではあたかも一般的な基本給額であるかのように装って求人を行っている」、「安く長時間労働をさせるためですから、社員の方々としては要注意です」、こんな「ごまかし」には要注意だ。 「約25人が退職」は。「従業員の入れ替わりが多い時期であり、今回も例年並みの退職者数」で問題ないのかも知れない。しかし、かつては「従業員の自殺、サービス残業の強要」、「労基署の是正勧告が出た残業代未払い問題」などの問題もあったことからすれば、「労働組合」による「従業員意識調査」で「「パワハラ・いじめ」が「ある」と答えた人は3ポイントも上昇」、したということは会社組織の危険なサインである。先ずは、経営陣自ら、積極的に問題に取り組むことを期待したい。 (その15)(〈内部文書入手〉しゃぶしゃぶ「木曽路」従業員 パワハラ被害が23% 「殴る、蹴る」も、「夢とやりがい」を強調する企業はなぜ危険なのか? ブラック企業チェックリスト) 「タイムカードの打刻時間より、実労働時間は長い」、「「繁忙期、調理担当は朝6時半ごろに出勤しても、上司がまとめて9時に打刻する。タイムカード上は昼に2、3時間休憩したことにしていますが、実際は昼食後にすぐ仕事。21時半に終わって打刻しても、片付けや翌日の仕込みもあり、帰宅は深夜になる」、酷い時間管理だ。上場企業とは思えないような管理実態だ。労基署の検査が必要なのではなかろうか。 「社員に対し結果を出すことを強く求めつつ、結果を出すためには長時間労働は当然であることを強調したり、労働時間管理をきちんと行わないなどといった会社は、要注意です」、典型的な「ブラック企業」だ 弁護士ドットコムニュース 「共通しているのは、むしろ会社の出費の節約にばかり目を向けてしまっているということです。このような経営方針の職場は雰囲気が荒み、日常的にハラスメントが蔓延してしまいます」、「ブラック企業」となれば、一刻も早く逃げ出した方がよさそうだ。 「「社員自身が好きでやっていることだから」と思わせることで、サービス残業をさせてしまえる」、極めて悪質だ。 ポイント1「長時間労働、労働時間管理なし」 文春オンライン「〈内部文書入手〉しゃぶしゃぶ「木曽路」従業員 パワハラ被害が23% 「殴る、蹴る」も」 ポイント4「夢ややりがいの強調」 「離職をさせないような仕組みを採用しているかどうかが重要なポイント」、「離職をさせないような仕組み」とはよく考えたものだ。 「本当に問題のある会社かどうかを見分ける方法」、とは価値がありそうだ。 ポイント3「辞められないような制度はないか?」
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医療問題(その38)(「病棟内で殺人事件が発生したこともあります」「看護師はなぐられて当たり前」心神喪失で無罪になった元犯罪者の”惨い治療現場”《医療観察法再考》、「脳ドック」をITで価格破壊 楽天役員OBの目算 「MRIシェアリング」ベンチャーが医療を変える、「胸を切らない心臓手術」を実践する世界一の心臓外科医が考えていること 天才医師・渡邊剛(前篇)、大学病院を去った「日本のブラックジャック」に手術を受けた患者の証言 天才医師・渡邊剛(後篇)) [生活]

医療問題については、8月23日に取上げた。今日は、(その38)(「病棟内で殺人事件が発生したこともあります」「看護師はなぐられて当たり前」心神喪失で無罪になった元犯罪者の”惨い治療現場”《医療観察法再考》、「脳ドック」をITで価格破壊 楽天役員OBの目算 「MRIシェアリング」ベンチャーが医療を変える、「胸を切らない心臓手術」を実践する世界一の心臓外科医が考えていること 天才医師・渡邊剛(前篇)、大学病院を去った「日本のブラックジャック」に手術を受けた患者の証言 天才医師・渡邊剛(後篇))である。

先ずは、8月27日付け文春オンライン「「病棟内で殺人事件が発生したこともあります」「看護師はなぐられて当たり前」心神喪失で無罪になった元犯罪者の”惨い治療現場”《医療観察法再考》」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/55354
・『「うちに入院している対象者は、親や近隣住民を殺した殺人犯や、自宅に放火した人ばかりです。マスコミに報道されたような有名な事件の犯人もいますよ。彼らによるテレビなどの器物の破壊、コーヒーやつばをかけてくることなどは日常茶飯事。私たちの身体にも殴る蹴るなど、直接危害をくわえてくる人もいます」 そう語るのは、精神疾患などを中心に治療を行う大規模医療センター「X」の関係者Aさんだ。同医療センターはアルコールやゲームの依存症治療でも全国的に有名だが、厚生労働省によると、同医療センターの医療観察法(注)の対象者の病床は全国的に見ても多い』、確かにこの対象者は、既に「重大な他害行為」を行ったということであれば、「親や近隣住民を殺した殺人犯や、自宅に放火した人ばかり」、というのは当然だ。
(注)医療観察法:心神喪失者等医療観察法、心神喪失又は心神耗弱の状態(精神障害のために善悪の区別がつかないなど、刑事責任を問えない状態)で、重大な他害行為(殺人、放火、強盗、 強制性交等、強制わいせつ、傷害)を行った人に対して、適切な医療を提供し、社会復帰を促進することを目的とした制度。
・『年間300人超が「心神喪失」で不起訴や無罪に  対象者とは、医療観察法により「心神喪失」や「心神耗弱」が理由で不起訴や無罪が確定した元刑事被告人のことだ。「心神喪失」とは、統合失調症など精神障害の影響で善悪を全く判断できないか、判断したとおりに行動することが全くできない状態を指す言葉で、同様の原因で判断力などが著しく低い状態を「心神耗弱」という。 過去の重大事件を振り返ると、2015年9月に埼玉県熊谷市の民家に相次いで侵入し小学生2人を含む6人を殺害した男は、1審の裁判員裁判では死刑判決だったが、2審では「心神耗弱」と認められて無期懲役となり、最高裁で同罪が確定した。 今年に入っても同様の判決が下っている。2020年1月に神奈川県大和市で生後1カ月の長男に暴行を加えて死亡させて傷害致死罪に問われた母親(39)が、2022年2月24日に沖縄県宮古島市の自宅で5歳と3歳の息子を殺害し殺人罪に問われた母親(40)が、心身耗弱から無罪となった。 令和3年版犯罪白書によると、令和2年に裁判で心神喪失と認定されて無罪になったケースは5件だが、裁判前の鑑定留置で心神喪失などと認定され、不起訴となったケースなどを含めると、年間で300人を超えている。 大手紙司法記者が解説する』、「裁判前の鑑定留置で心神喪失などと認定され、不起訴となったケースなどを含めると、年間で300人を超えている」、かなりの人数だ。
・『大きな改正もなく続く「医療観察法」  「医療観察法が施行されたのは2005年。8人の児童らが犠牲になった大阪教育大付属池田小学校の児童殺傷事件の宅間守元死刑囚(2004年執行)がきっかけでした。彼は事件前にも10回以上も傷害事件などで逮捕されながら精神状態を理由にすべて不起訴になり、一般社会に野放しにされていたんです。彼を施設に入れるか、しっかりと治療できていればあんな大惨事は起こらなかったと急ピッチで法整備が進められたわけです。 対象者の人権や治安の維持などさまざまな問題が当初から指摘されていた医療観察法ですが、蓋を開けてみれば施行から15年以上、大きな改正もなく続いています」 重大な罪を犯しながら、罪に問われなかった元被告人たち。現在、彼らの治療はどのように進められているのか――。そうした取材の過程で話を聞けたのが、前出の医療センター「X」に勤めるAさんだ。 5月25日、同センターに管轄する厚労省が監査に入っている。Aさんは監査の理由について、「長期の隔離を問題視してのことだったのではないか」と推察する』、「施行から15年以上、大きな改正もなく続いています」、なるほど。
・『わいせつ事件の対象者が女性の胸を触って…  「対象者が入院する『司法病棟』は全室個室で、食堂やホール、体育館などがあります。依存症の座学や自己管理などの治療プログラムに参加して社会復帰を目指します。ある程度、回復していくと、対象者は近隣の商業施設に外出することもある。治療が進むと外泊も認められます。 ただ、強制わいせつ事件を起こした対象者が女性スタッフの胸を触ったり、放火事件の対象者がスタッフを殴ったり……。正直治療できているのかなと疑問を抱くこともあります。数年前ですが、外泊中の対象者が自殺してしまったこともありました」 Aさんによると、強制わいせつの罪を犯した統合失調症の20代の男性対象者Yさんは2年近く保護室で隔離されていたという。 「保護室に隔離しても、問題行動は止まっていません。昨年8月に全裸で放尿し、『水練』と称して床で滑っていました。同年10月には女性看護師が突然、胸を揉まれ、12月6日には看護師にパンチ5回、キックを3回。今年1月25日にも、看護師がいきなり首をしめられ、胸に蹴りをいれられました。その後はトイレにたてこもろうとしました」』、「看護師」などは特別手当が出ないと、人は集まらないだろう。
・『病棟内で発生した「殺人事件」  こうしたトラブルは日常茶飯事だが、対応する看護師らは「普通の人」。屈強な肉体をもっているわけでも、護身術を身につけているわけでもない。 「自宅に放火した40代の男性対象者は、幻聴がすごいため問題行動も深刻なんです。昨年12月、他の対象者に殴りかかったり、スタッフ3人に対して大暴れし、看護師はめがねを壊されたり、殴られて鼻血を出したりしました。今年に入って、自宅に放火した20代の女性対象者が強化ガラスを割ろうと椅子を投げたこともありました。10年以上前ですが、病棟内で殺人事件が発生したこともありますよ」 当時の報道などによると、2011年11月3日、千葉県内で殺人事件を起こし入院していた当時31歳の男性対象者が、入院していた56歳の男性の首を両手で絞めて殺害している。 しかしAさんは「対象者が悪いと言いたいわけではないんです」と続ける』、これでは、前述の特別手当はよほど思い切って出す必要がありそうだ。
・『「看護師はなぐられて当たり前」医療観察法の限界  「この制度では、実際に行われた治療内容に関係なく、厚労省が定めた基準に従って、1日の入院費が国から病院に対して支払われます。ですから、どんな治療を施しても、病院が得られる金額は変わらない。 暴力衝動を抑える薬などもありますが、『看護師はなぐられて当たり前』だから対象者に処方していないのではないか……。薬を処方してもしなくても国から支払われる金額が一緒なら、薬を処方しない方が儲かりますからね。ここまで改善が見られないと、必要な治療がなされていないのではないか、と疑ってしまいます」 同センターにもトラブルについての事実確認と見解などをたずねたところ、以下のような回答があった。 《当院としては個別の事案についての回答は控えますが、当院に来る対象者の性質上、職員への暴行は時には起こりえます。少なからずそのようなリスクがある中で、スタッフは日々、治療にあたっています。 必要な治療を行っていないという事実はなく、定められたルールの中で、患者さんの回復に必要な治療を行っています。 厚労省の監査については毎年の年次監査があっただけだと承知しており、内容は控えますが、医療観察法病棟として一般的に留意すべきものだったと理解しています。 当院には統合失調症の患者が多くクロザピンという治療薬をはじめ各対象者の疾患に適した新たな治療も取り入れながら、今後も患者の回復、社会復帰に向けて医学的な判断に基づく適切な治療を実施していく方針です》 Aさんは「現場スタッフのためにも、そして対象者自身のためにも、なんとかしてこの環境を変えたい」と悲痛な面持ちで語っていた。 精神医療の現場は過酷だ。その最たる例である医療観察法の対象者の治療について、議論すべき時が来ているのかもしれない。医療観察法が施行されてから17年、精神科の通院者は増え、医療観察法病棟が初めて北海道に設置されるなど拡充が続いている』、「薬を処方してもしなくても国から支払われる金額が一緒なら、薬を処方しない方が儲かりますからね。ここまで改善が見られないと、必要な治療がなされていないのではないか、と疑ってしまいます」、「必要な治療を行っていないという事実はなく、定められたルールの中で、患者さんの回復に必要な治療を行っています」、「精神科の通院者は増え、医療観察法病棟が初めて北海道に設置されるなど拡充が続いている」、「医療観察法」対象者の再犯率は、一般の再犯率より低いようだ。
http://www.kansatuhou.net/60_johonyushu/01_nyumon/02_Q&A6_10.html

次に、9月10日付け東洋経済オンライン「「脳ドック」をITで価格破壊、楽天役員OBの目算 「MRIシェアリング」ベンチャーが医療を変える」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/617213
・『「すごいベンチャー100」2022年最新版から7社をピックアップ。「医療」領域からは、脳ドックの価格破壊に挑む「スマートスキャン」を拡大記事で紹介する。 スマートフォンからネット予約し、受付から帰路につくまで30分。価格は相場の半値以下という1万7500円。検査結果は数日後にウェブで確認できる。脳の健康状態を検査する「スマート脳ドック」を展開するスマートスキャンが今、波に乗っている。 きっかけはバスの事故だった。2012年、楽天トラベルが送客していたバスサービスが関越道で事故を起こし、乗客7人が死亡する大惨事となった。バスの運転手には脳の異常が見られていたという。 当時楽天の執行役員だったスマートスキャン創業者の濱野斗百礼(ともあき)代表は、バスやトラックの運転手は首から下の健康診断しか受けていないことを医師から聞かされる。脳の状態を診る「脳ドック」は4万~5万円と高額で、会社も運転手も負担できない状態だった。 脳血管疾患は日本人の死因の上位に位置する。濱野氏は「必要なのに受けづらい。そこに商機があると思った」と話す』、「スマートスキャン」では「価格は相場の半値以下という1万7500円。検査結果は数日後にウェブで確認できる」、便利な新サービスだ。
・『試験導入の20枠に500人が殺到  脳ドックの価格が高かった原因は、MRIの初期投資や固定費の高さにあった。そこで減価償却が終わったMRIを保有する医療機関の協力を得て、楽天の会員向けに1万円の脳ドックを試験的に案内すると、20の枠に500人ほどの応募があったという。 ただMRIを空き時間に安く提供してくれる医療機関を探しても、取り合ってくれる医師は少なかった。脳ドックは自由診療だ。あえて安く提供するメリットが医師側にはない。「脳ドックをやるといっても、放射線技師やMRI画像の読影(所見の診断)をする医師も必要。当時は何もわかっていなかった。IT業界が入り込む余地がないと感じた」と濱野氏は振り返る。 それでも需要はあるし、ビジネスチャンスも大きい。楽天では「LTV(ライフタイムバリュー)」という言葉がよく使われる。中長期で顧客がどれくらいお金を落としてくれるかという指標だ。 「検査であれば、40歳で初めて受けてもらい、ウェブサイトのマイページでデータを蓄積・管理できれば、長く付き合ってもらえ、別の検査で売り上げも伸ばせる。起業するのであれば、この分野でやりたい」。濱野氏はそう強く思った。) 脳ドックを試験提供してから4年が経った2016年、濱野氏は本腰を入れて起業に動き出した。 「MRIを提供してくれる医療機関がなければ、自分でやろう」。楽天の仕事でかかわりのあった東芝から、MRIの開発・製造を手がける東芝メディカルシステムズ(現・キヤノンメディカルシステムズ)の瀧口登志夫社長を紹介され、交渉の末、MRIを安く販売してもらえることになった。 さらに脳画像を読影してくれる医師も必要だった。知人のつてで、クラウド上で医師が遠隔で読影するサービスを提供するベンチャーのエムネスとの連携につながった。そこまで準備をしたうえで、2017年2月に起業。翌3月末に楽天を退職した』、「楽天を退職」する前の「準備」は周到なようだ。
・『MRIの「稼働率」を極限まで高める  脳ドックを安く提供するには、MRIの稼働率を極限まで高める必要がある。1台のMRIで1時間に4人を検査するという高回転のオペレーションを目指した。まず自社で脳ドック専門のクリニックをプロデュースし、2018年1月に第1号となる「メディカルチェックスタジオ銀座」を開業した。 ウェブの検索広告に出稿したり、SEO(検索エンジン最適化)で「脳ドック」や脳疾患に関する検索でサイトの順位を押し上げたりして、集客を強化。スムーズなネット予約で枠を埋め、MRIの高稼働を実現した。その後、新宿や大阪梅田にも進出した。 当初は神奈川や千葉、埼玉などにも、自前のクリニックを広げる計画だった。だがコロナ禍で集客が難しくなり、MRIへの投資回収でスピードが出せないと判断。そこで、以前は一度諦めた医療機関との連携、”MRIシェアリング”のモデルに舵を切った。 「クリニック側にも簡単に予約を受けてもらえるよう、ウェブの管理画面を徹底的にわかりやすくした。もともとIT屋なのでマーケティングもシステムの作り込みも得意。医療のDXを進めている」(濱野氏)) 集客や予約管理はスマートスキャンが行うため、医療機関側は放射線技師さえいれば、MRIの空き時間に客を受け入れて検査をするだけ。読影もエムネスや自社が抱える医師がクラウド上で行ため、検査だけで手数料が入る。そうしたメリットを提示しながら交渉を進め、直近の提携機関数は全国で130に達した。 2022年4月には出光興産やキヤノンメディカルシステムズ、クレディセゾンなどの事業会社やベンチャーキャピタルから、総額約13億円となるシリーズBの資金調達を完了。この春から夏にかけてはテレビCMを大々的に展開するなど、大胆な投資を進める。 出光興産とは協業も始まっており、MRIを積んだ車両をガソリンスタンドに設置し、地域住民やトラック運転手などに脳ドックを提供する施策を展開する。「クリニックだけでなく、皆がどこでも検査を受けられる環境を作りたい」(濱野氏)』、「集客や予約管理はスマートスキャンが行うため、医療機関側は放射線技師さえいれば、MRIの空き時間に客を受け入れて検査をするだけ。読影もエムネスや自社が抱える医師がクラウド上で行ため、検査だけで手数料が入る。そうしたメリットを提示しながら交渉を進め、直近の提携機関数は全国で130に達した」、「出光興産やキヤノンメディカルシステムズ、クレディセゾンなどの事業会社やベンチャーキャピタルから、総額約13億円となるシリーズBの資金調達を完了。この春から夏にかけてはテレビCMを大々的に展開するなど、大胆な投資を進める」、順調なスタートだ。
・『脳ドック費用を補助する企業が増加  近年では個人だけでなく、福利厚生として従業員の検査代の全額や一部を補助する企業が増えている。 起業のきっかけとなった運送系も変わってきた。バス会社のウィラー・エクスプレスは、脳ドック費用を全額負担。都内のタクシー会社・葵交通も費用の一部を補助するなど、運転手の健康管理に対する意識が高まっている。また、健康保険組合や生命保険との連携も視野に入れる。 さらに脳ドックで撮影された画像は初めからデジタル化されている。スマート脳ドックの登録時には将来の研究開発のためにこのデータを使うことに対し、ユーザーの同意を取得するようにしている。 「画像データが貯まっていけば、将来的にAIによる読影や診断もできるようになる」(濱野氏)。横浜市立大学などと共同でMRI画像を用いた研究を行い、学会発表も始めている。 「誰も病気にならない世界を作る」というスローガンを掲げる。「検査を受けた人は皆、それを生活改善のきっかけにしている。MRIの稼働を高めるためにはこれまで、人が”病気になる”必要があった。そうではなくて、MRIは”健康になる”ために使うべき。未病のビジネスが大きくなれば、医療費の削減にも貢献できる」と濱野氏は意気込む』、「バス会社のウィラー・エクスプレスは、脳ドック費用を全額負担。都内のタクシー会社・葵交通も費用の一部を補助するなど、運転手の健康管理に対する意識が高まっている」、確かにバスやタクシー「運転手」が突然の脳の発作を引き金に事故を起こした例もあり、予防は必須だ。

第三に、9月16日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの木野 活明氏による「「胸を切らない心臓手術」を実践する世界一の心臓外科医が考えていること 天才医師・渡邊剛(前篇)」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/99794?imp=0
・『日本で初めてダビンチ手術を実施  「世界ではいま私にしかできない心臓手術があります。どんな困難な症例や再手術も受け入れています。いま日本で受けられる最高の手術を提供し、必ず元気になって帰っていただくことが私の手術を希望する方との約束です」 病んだ心臓を抱え手術を待つ患者にとってこれほど心強い言葉はあるまい。命の危険にさらされ、断ち切られようとしている患者の人生の糸をもう一度結び直す仕事を請け負っているのが、心臓血管外科医・渡邊剛医師。ロボットを用いた心臓外科手術・ダビンチ手術の世界的権威で、「ニューハート・ワタナベ国際病院」の病院長だ。 井の頭線浜田山駅の改札を出て徒歩5分。突き当りの井之頭通りを右折して100mほど行くと、ニューハート・ワタナベ国際病院の5階建てビルが見える。 1階受付横の通路の壁には、渡邊医師が憧れ、医師を目指したきっかけとなった手塚治虫のマンガ「ブラック・ジャック」のイラストがかかる。ちなみに5階院長室の壁際の棚にも80cm大のブラック・ジャックのフィギュアが鎮座する。 厚さ10cm程の一枚板のテーブルの上にはクリスタルの盾が3帖並ぶ。ダビンチを開発した米国のIntuitive Surgical社が、世界で最もダビンチ手術を行ったドクターに贈る表彰盾だ。渡邊医師は2019年から3年連続世界一。世界で最も多くのダビンチ手術の経験を持つナンバーワンドクターなのである。 ダビンチを用いたロボット手術については後で詳しく述べるが、体に1cmほどの小さな穴を4つ開け、アームに付けた内視鏡ですべての操作を行う超精密鍵穴(キーホール)心臓手術だ。従来のように胸を大きく開けて肋骨を切る必要がないため術中の出血が少なく、術後の痛みも軽く、患者の負担を大幅に軽減する超低侵襲の手術である。 「お待たせしました」と入ってきた渡邊医師は、スマートで都会的なセンスを漂わせる。白衣を着ていなければエリートビジネスマンとして通りそうだ。柔和な語り口は、よくある医者の偉そうなところを感じさせない。暖かい笑顔に思わずほっとほっとさせられ、患者が安心する雰囲気をすぐに感じた。 (渡邊剛医師とニューハート・ワタナベ国際病院の概要はリンク先参照) 「日本で初めてダビンチを使って心臓手術を行ったのは2005年のことです。金沢大学医学部に教授として在籍していた時でした。その後昨年末(2021年12月)までに1162件のダビンチを使った心臓手術を経験してきました。 現在、週に5件、多い時には10件、コロナの影響のなかで昨年も約200件のダビンチ手術を行っています。これだけダビンチで心臓手術をしている病院は世界でもありません」(渡邊医師)』、「ダビンチを開発した米国のIntuitive Surgical社が、世界で最もダビンチ手術を行ったドクターに贈る表彰盾だ。渡邊医師は2019年から3年連続世界一。世界で最も多くのダビンチ手術の経験を持つナンバーワンドクターなのである」、「週に5件、多い時には10件、コロナの影響のなかで昨年も約200件のダビンチ手術を行っています。これだけダビンチで心臓手術をしている病院は世界でもありません」、大したものだ。 
・『心臓弁膜症との戦い  渡邊医師が手掛ける心臓手術で最も多いのは弁膜症と冠動脈バイパス、動脈瘤だが、動脈瘤ではダビンチはほとんど使わず、従来型の小切開手術となる。 ダビンチを使った手術症例は弁膜症の僧帽弁形成術が685件と最多で、さらに冠動脈バイパス191件、僧帽弁形成+三尖弁形成135件、心房中隔欠損閉鎖98件、三尖弁形成20件、腫瘍切除16件と続く。 「弁膜症は僧帽弁の閉鎖不全による逆流と大動脈弁の逆流、狭窄症がほとんどです。 僧帽弁は心臓の中にある左心房と左心室の間にある弁で、これが開閉することで肺から来た血液が心臓の僧帽弁を通って入り、心臓の収縮と供に全身に回る仕組みになっている重要な弁です。 ところが、僧帽弁を構成している弁尖や腱索、乳頭筋などが何らかの原因で弁尖が裂けたり穴を開けたり、腱索が切れたり伸びたり、乳頭筋が傷ついたりする、心臓の収縮期に弁がぴたりと閉じなくなる。こうした収縮期に左心房への血液の逆流が生じるのが僧帽弁閉鎖不全症です」 渡邊院長が続ける。 「初期症状は息切れですね。階段や坂道を上がったり走ったり、あるいは自転車をこぐと息切れがする。夜中に小水で度々起きてしまうなど心不全の兆候も出てきます。 さらに進行してくると、心房に血液が多く逆流してくる結果心房が肥大し、心不全が現れます。そこで脈が不正になる心房細動の症状が出始める。こうした場合は根治に向けた治療が必要になります。そして、超音波検査で50%以上の逆流が見られる場合は手術適応となります」 一般的な心臓心臓外科手術は人工心肺で心臓を止め胸骨を真ん中から大きく切開して手術をする胸骨正中切開手術。胸骨は切らずに胸のわきの乳房の下を6~7cm切開する小切開手術(MICS)、そして内視鏡を使った内視鏡手術、その延長でのロボットを使い内視鏡を遠隔操作して手術をするダビンチ手術の3つの方法がある。 開胸手術では胸の真ん中を喉元からみぞおちにかけて切るため約20cmから30cmの傷が残り、骨を切って胸を大きく開くため、術後に骨が付くまで数ヵ月かかる。この間スポーツなど運動は出来ず、大きな荷物も持つことは出来ない。それでも90%以上の心臓手術が胸骨正中切開で行われているのが現状だ。 これに対し切開する範囲を最小限にとどめ、骨を切らず傷跡を小さくするのが小切開手術。そしてロボットを用いて完全内視鏡による手術を行うのがダビンチ心臓外科手術だ。 「医者になって以来考え続けてきた患者さんへの超低侵襲手術の集大成がダビンチを使って行う全内視鏡手術・鍵穴(キーホール)手術です。手術中の輸血量は胸骨正中切開ではどうしても500ccは使う。MICSは200cc使いますがダビンチは50ccで無輸血もある。輸血はすればするほど寿命は短くなります。輸血量は患者さんのその後の人生に大きく影響してくるんです」(渡邊医師)』、「手術中の輸血量は胸骨正中切開ではどうしても500ccは使う。MICSは200cc使いますがダビンチは50ccで無輸血もある。輸血はすればするほど寿命は短くなります。輸血量は患者さんのその後の人生に大きく影響してくるんです」、「輸血量」だけでみても、「ダビンチ」は優れているようだ。
・『ダビンチ手術の実際  ダビンチは術者が遠隔操作で手術を行うサージョンコンソールと、術野に挿入するロボットアームが装着されたサージカルカート、そしてアームに装着された内視鏡から送られてくる術野の画像からハイビジョンの3D画像を作成するビジョンカートという3つの機械から成り立っている。 ダビンチは元々1991年の湾岸戦争の時に前線で負傷した兵士の治療に外科手術のロボットの遠隔操作で治療ができないかという事で米国国防総省が研究開発していた。戦後米国のIntuitive Surgical社が外科手術のできるロボットシステムを開発、1999年に完成させたのがダビンチだ。  胸に1cmほどの穴を3つ開け、そこから3本のアームが挿入されている。そのうち2本のアームには術者が操作するメス、ハサミなど手術具が取り付けられ、他の1本には手術の部位を示す「眼」となる内視鏡が先端に付けられていて、サポート役の助手が操作し、術者に手術具などを渡すアームだ。 ダビンチの操作は、術者は全身麻酔が効いて仰向けに寝ている患者のベッドから3mほど離れたところにあるサージョンコンソールの前に患者に背を向けて座る。患者の胸には3本のアームが挿入され、術者はサージョンコントロールの二本のレバーを操って連動した手術具の装着されたロボットアームを3画像を見ながら遠隔操作していく。 「普通の内視鏡出手術は平面の2D画像ですが、ダビンチは3D画像ですから立体感がまるで違う。心臓手術は奥行き感やより正確な手術が求められるため、術野を10倍以上に拡大した3次元画像を見ながらの手術が可能です。 また、これまでの内視鏡では鉗子の動きは90度が限界でしたが、3次元では鉗子の動く範囲は360度動かすことができる。米粒に字が書けるほど細かい1mm半の血管を縫うことができるのがダビンチなんです。その結果安全で確実な手術成績を出せるようになり、ロボット手術は超低侵襲の鍵穴(キーホール)手術をやるのに最もふさわしい手術です」(渡邊医師) 手術スタッフはコンソールを操作する術者の渡邊医師と手術をサポートする助手の外科医、麻酔医、看護士、人工心肺士の6人がチーム渡邊として連携して行われる。 「私のところに来る患者さんはがん患者のグレードで言えばステージ3から4の手術をしなければ危険だというかなり症状が厳しい患者さんが多い。 それでも私の治療治癒率は99.6%。他の病院の平均は97%ですが、失敗する倍率が他の施設は3%でうちの5倍です。つまりうちは他の施設より5倍安全な手術をしている。患者さんは5倍安全な手術を受けるか、5倍危険な手術のどちらを選択しますかということです」 後篇では、渡邊医師がいかにしてトップドクターとなったか、その過程と、さらに渡邊医師の手術を最近受けた患者の驚きの証言を紹介しよう。(記事の後篇につづく)』、「「普通の内視鏡出手術は平面の2D画像ですが、ダビンチは3D画像ですから立体感がまるで違う。心臓手術は奥行き感やより正確な手術が求められるため、術野を10倍以上に拡大した3次元画像を見ながらの手術が可能です。 また、これまでの内視鏡では鉗子の動きは90度が限界でしたが、3次元では鉗子の動く範囲は360度動かすことができる。米粒に字が書けるほど細かい1mm半の血管を縫うことができるのがダビンチなんです」、確かに優れた手術法だ。アメリカ生まれでも、日本人が手術数でトップというのは、手先の器用さが影響しているのかも知れに。

第四に、この続き、9月16日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの木野 活明氏による「大学病院を去った「日本のブラックジャック」に手術を受けた患者の証言 天才医師・渡邊剛(後篇)」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/99795
・『「心臓手術は勝負が一瞬で決まる」  ロボットを用いた心臓外科手術・ダビンチ手術の世界的権威で、「ニューハート・ワタナベ国際病院」の病院長・渡邊剛氏は、「世界ではいま私にしかできない心臓手術がある」と断言する。前篇に引き続き、今回は渡邊医師の手術を実際に受けた患者の証言も紹介しよう。 渡邊医師を心臓外科医へと導いたのは、麻布中学3年生の時に読んだ手塚治虫氏が「少年チャンピオン」に連載していた「ブラック・ジャック」との出会いだっだ。神業のテクニックで難病に苦しむ患者を救う主人公の天才外科医ブラック・ジャックの生き方に浸透し傾倒していった。 金沢大学医学部に進学し心臓外科を選択した。 「がんは術後1年で再発があるなど、その時の手術だけでは勝負が決まりません。しかし心臓手術は一番やりがいがあるし勝負が一瞬で決まる​。また肝臓、すい臓、脳外科も臓器は動いていませんが、心臓はダイナミックに動いています」(渡邊医師) 金沢大学卒業後、ドイツ・ハノーファ医科大学に留学、ここで渡邊の心臓外科技術のすべての基礎を学ぶ。留学中の2年半の間に2000件以上の手術に入り、週3件以上の手術を執刀、移植手術も経験している。 実力主義の欧米で自らの存在を周囲に認めさせるには手術の技術を高めるほかないと、夜も下宿先のアパートに帰らず、ひたすらブタの心臓を使い血管の縫合やメスの使い方の練習に没頭したという。 帰国後金沢大学から富山医科薬科大学へ転籍となるが、この富山時代に世界で初めての人工心肺を使わず心臓が動いた状態で執刀する「オフポンプ手術」をはじめ、局所麻酔により患者の意識下で行う「アウェイク手術」、胸の横に小さく開けた穴から内視鏡を挿入して行う「完全内視鏡下手術」といった術式を開発した。オフポンプ手術は現在はスタンダードな治療法となっている。 そして、41歳で若くして金沢大学医学部外科学第一講座教授に就任。2005年には東京医科大学に新設した心臓外科の教授を兼任する。その年は金沢大学、東京医大でダビンチを導入し、渡邊がダビンチを用いた完全内視鏡による鍵穴式キーホール手術を始めた年だ。しかし、当時ロボット手術についての医学会の認識は「ロボットというのは宇宙空間か戦争中でしか有効ではない」という程度のものでしかなかった。 2007年にはロボット外科学会が設立され、ダビンチ手術の症例数によりライセンスを国際Aから国内Bまでの4段階に設定し、人材の育成が始まった。渡邊医師がニューハート・ワタナベ国際病院を開設するのは2014年のことだ。 ダビンチ手術は心臓外科に限らず他の部位でも行われているが、最も多いのが前立腺がんの手術で、次いで肺がん、子宮がんの治療などで実施されている。現在ダビンチ手術のライセンスを持つ専門医は全体で597名。ライセンス別に国際A11名。国際B25名、国内A63名、国内B498名だ。このうち心臓外科で300以上の症例を経験した「国際A」のライセンスを持つ専門医は渡邊と渡邊の片腕となっている同病院の石川紀彦医師の二人だけだ』、「実力主義の欧米で自らの存在を周囲に認めさせるには手術の技術を高めるほかないと、夜も下宿先のアパートに帰らず、ひたすらブタの心臓を使い血管の縫合やメスの使い方の練習に没頭した」、地道な努力が花開いたようだ。
・『命がけの手術  現在ダビンチは全国の施設で350台入り、ダビンチの手術をする医師は増えている。ところが心臓外科となると極めて少なくなる。 「泌尿器は最も普及して20例ぐらいこなすと相当できるようになりラーニングカーブで成長が早い。ところが心臓外科は150から200例をこなしてやっと成績が安定して手術時間も短くなりそこそこダビンチ手術をやっていると言えるレベルになる。しかし、一度合併症などを起こし失敗するとそこで諦め辞めてしまう医者が多いんです」(渡邊医師)  2021年の心臓疾患による死亡者は21万4623人と日本人の死因でのトップのがんに次いで2番目の死亡者数だ。患者全体の約15%が死亡している。(厚労省人口動態統計)。また、日本循環器学会が公表した脳卒中と循環器病克服第二次5ヵ年計画の中で、2030年には狭心症、心筋梗塞の患者は331万人に増えると推定されている。 心臓外科手術は他の病気より数段命にかかわる比重が大きい。手術に向かう術者にとってもそれは命がけの経験となる。治療治癒率99.6%のチームワタナベの手術と、97%という成功率が5倍の開きのある他の施設とでは患者の選択肢は当然決まってくるはずだ。 最後にチームワタナベのダビンチ手術を受けた患者さんの二人の話を紹介する。お二人とも手術を受けられたのは2月7日のこと。それから10日後の16日にご自宅にいるお二人に電話で話を伺った。術後10日ということに驚かされたが、電話口から伝わる力強い声にチームワタナベの実力を垣間見た。 「今日から仕事を始めようと思っていたんです」というのは横浜在住で機械メーカー幹部の森田博司氏(仮名・54歳)だ。 昨年5月の会社の健康診断で心臓に雑音が見つかり、、近くの病院で精密検査を受けると僧帽弁閉鎖不全症と診断され、「症状は中から重レベルで軽くはありません。このままで治ることはないので手術を受けますか」と医師から心臓手術を奨められたのだ。急に心臓手術といわれ驚き、決断できないまま11月に再度検査し手術をするかどうか決めることになった。 「ジョギングで2km走るのが日課でしたが前年から走れなくなり、階段の上り下りも息切れするようになってきました。夜中にトイレの回数も増えていましたが、年齢と運動不足だろうと気にしていませんでした」(森田氏) 再検査では悪化はしていないが心不全、不整脈が起きる状況になっている。手術しなければ症状は治らないと言われ、手術するなら体力のあるいまと手術を決断。ニューハート・ワタナベ国際病院を紹介された。 「病院や製薬会社の建設も請け負うなかでロボットのダビンチ手術があることは聞いていました。仕事が忙しいので手術後の職場復帰が早いこと、手術の傷跡が小さいこと。そして安全な手術と思っていたので渡邊先生のホームページを見て安心しました。ダビンチ手術でなければ手術はしていなかったと思います」(森田氏) 病院に行ったのは1月18日、超音波検査などを行った後の渡邊の診断は「手術は早めにした方がいい」。ということで2月4日に入院し、3日後の7日に手術を行った 「手術時間は1時間半ぐらいだったと思います。翌日にはICUから歩いて。個室に移動しました。体に入っていたドレーンなどの管が抜かれる度に元気になっていく気がしました。9日にはすべての管が抜かれ術後1週間後の昨日退院しました。明日(17日)から仕事に復帰です」(森田氏)』、「「手術時間は1時間半ぐらいだったと思います。翌日にはICUから歩いて。個室に移動しました。体に入っていたドレーンなどの管が抜かれる度に元気になっていく気がしました。9日にはすべての管が抜かれ術後1週間後の昨日退院しました。明日(17日)から仕事に復帰です」、驚異的な回復の速さだ。
・『だから私は渡邊先生の手術を選んだ  渡邊医師が森田氏の治療を振りかえる。 「1月下旬に検診で心雑音を指摘され、横浜の病院にて僧帽弁閉鎖不全症と診断されました。仕事ざかりであり早期の手術を希望しておられました。来院時のデータ的には逆流率は64%と非常に高度な逆流を示しており、本人と相談の上手術と言うことにいたしました。 2月7日受診から3週間後に手術となりました。手術は僧帽弁の腱索断裂に対して五箇所の人工腱索を縫着し、手術を終わることができました。心停止時間が37分で手術時間は1時間36分でした輸血は行っておりません。術後は逆流がなく元気に退院されています」 一方、12年前から不整脈と心房細動に苦しんでいたのは黒田啓介氏だ(神戸在住・67歳)。黒田氏が証言する。 「すでに僧帽弁閉鎖不全症で弁の置換手術がすぐに必要といわれていました。調べると置換手術は胸を大きく切り開き、機械弁を入れると生涯ワーファリンを飲まなければならず、生体弁なら15年が持つ限界で将来自分がどこまで生きるかを考えると手術の決断はできなかった。しかし、不整脈と心房細動​が出ると突然気分が悪くなって動悸が激しくなり、体が動きにくくなると薬とアブレーション、電気ショックでいままで持ってきていました」(黒田氏) 昨年改めて以前の病院で手術を進められ心臓手術について調べた。 「手術を受けると決めましたが、年齢も若くはないので外部の傷は出来るだけ小さし手術という事でダビンチ手術をまず決め、次は全国の施設の手術症例数を調べました。すると、ニューハートワタナベ国際病院の渡邊先生が他の症例より圧倒的に多いことが分かりお願いすることを決めました」(黒田氏)。 病院には前の病院の地域連携化課が連絡をしてくれ、昨年9月21日に渡邊氏に面会、検査の結果、僧帽弁閉鎖不全症と三尖弁不全があると診断され、手術の必要を言われた。 手術は2月7日、2時間余りで手術は終わり、ICUを出たのは2日後の9日、退院は術後1週間の15日だった。 「術後もそうでしたが不快感はいまも全くありません。日々元気になっていくのが分かりますし、手前より体調がよく元気です」(黒田氏) 黒田氏の手術について、渡邊医師はこう言う。 「昨年の7月末神戸よりいらっしゃいました。2010年より10年来の弁膜症でその間心房細動と言う不整脈を発症し、カテーテルアブレーション(カテーテル治療)を3回受けています。心房細動は、長年僧帽弁閉鎖不全症を患うとよく併存して発症します。検査では僧帽弁逆流率は62%と高度であり、三尖弁閉鎖不全も合併しておりました。この方は睡眠時無呼吸や甲状腺機能低下もありました。 手術は2月7日行いました僧帽弁閉鎖不全症に対する形成術、三尖弁形成術、不整脈に対するメイズ手術と左心耳閉鎖術と言う術式です。手術時間は2時間24分で心停止時間は53分でした。この方も術後の逆流はなく元気に退院されています」 渡邊医師のニューハート・ワタナベ国際病院では、今年5月からは、人工心肺を使わない弁膜症手術「心拍動下僧帽弁形成術」も開始している。僧帽弁閉鎖不全症の患者に対し、人工心肺を使わず、心臓を動かしたまま僧帽弁を人工腱索再建によって形成する術式で、日本で唯一、この術式の独立施行施設の認定を受けている。 渡邊医師の挑戦は終わらない』、「人工心肺を使わない弁膜症手術「心拍動下僧帽弁形成術」も開始している。僧帽弁閉鎖不全症の患者に対し、人工心肺を使わず、心臓を動かしたまま僧帽弁を人工腱索再建によって形成する術式で、日本で唯一、この術式の独立施行施設の認定を受けている」、「術式」は日々進歩しているようだ。今後の発展が楽しみだ。
タグ:現代ビジネス 「バス会社のウィラー・エクスプレスは、脳ドック費用を全額負担。都内のタクシー会社・葵交通も費用の一部を補助するなど、運転手の健康管理に対する意識が高まっている」、確かにバスやタクシー「運転手」が突然の脳の発作を引き金に事故を起こした例もあり、予防は必須だ。 「集客や予約管理はスマートスキャンが行うため、医療機関側は放射線技師さえいれば、MRIの空き時間に客を受け入れて検査をするだけ。読影もエムネスや自社が抱える医師がクラウド上で行ため、検査だけで手数料が入る。そうしたメリットを提示しながら交渉を進め、直近の提携機関数は全国で130に達した」、「出光興産やキヤノンメディカルシステムズ、クレディセゾンなどの事業会社やベンチャーキャピタルから、総額約13億円となるシリーズBの資金調達を完了。この春から夏にかけてはテレビCMを大々的に展開するなど、大胆な投資を進める 「楽天を退職」する前の「準備」は周到なようだ。 「スマートスキャン」では「価格は相場の半値以下という1万7500円。検査結果は数日後にウェブで確認できる」、便利な新サービスだ。 東洋経済オンライン「「脳ドック」をITで価格破壊、楽天役員OBの目算 「MRIシェアリング」ベンチャーが医療を変える」 http://www.kansatuhou.net/60_johonyushu/01_nyumon/02_Q&A6_10.html) 「薬を処方してもしなくても国から支払われる金額が一緒なら、薬を処方しない方が儲かりますからね。ここまで改善が見られないと、必要な治療がなされていないのではないか、と疑ってしまいます」、「必要な治療を行っていないという事実はなく、定められたルールの中で、患者さんの回復に必要な治療を行っています」、「精神科の通院者は増え、医療観察法病棟が初めて北海道に設置されるなど拡充が続いている」、「医療観察法」対象者の再犯率は、一般の再犯率より低いようだ。 これでは、前述の特別手当はよほど思い切って出す必要がありそうだ。 「看護師」などは特別手当が出ないと、人は集まらないだろう。 「施行から15年以上、大きな改正もなく続いています」、なるほど。 「裁判前の鑑定留置で心神喪失などと認定され、不起訴となったケースなどを含めると、年間で300人を超えている」、かなりの人数だ。 (注)医療観察法:心神喪失者等医療観察法、心神喪失又は心神耗弱の状態(精神障害のために善悪の区別がつかないなど、刑事責任を問えない状態)で、重大な他害行為(殺人、放火、強盗、 強制性交等、強制わいせつ、傷害)を行った人に対して、適切な医療を提供し、社会復帰を促進することを目的とした制度。 確かにこの対象者は、既に「重大な他害行為」を行ったということであれば、「親や近隣住民を殺した殺人犯や、自宅に放火した人ばかり」、というのは当然だ。 「人工心肺を使わない弁膜症手術「心拍動下僧帽弁形成術」も開始している。僧帽弁閉鎖不全症の患者に対し、人工心肺を使わず、心臓を動かしたまま僧帽弁を人工腱索再建によって形成する術式で、日本で唯一、この術式の独立施行施設の認定を受けている」、「術式」は日々進歩しているようだ。今後の発展が楽しみだ。 文春オンライン「「病棟内で殺人事件が発生したこともあります」「看護師はなぐられて当たり前」心神喪失で無罪になった元犯罪者の”惨い治療現場”《医療観察法再考》」 「「手術時間は1時間半ぐらいだったと思います。翌日にはICUから歩いて。個室に移動しました。体に入っていたドレーンなどの管が抜かれる度に元気になっていく気がしました。9日にはすべての管が抜かれ術後1週間後の昨日退院しました。明日(17日)から仕事に復帰です」、驚異的な回復の速さだ。 「実力主義の欧米で自らの存在を周囲に認めさせるには手術の技術を高めるほかないと、夜も下宿先のアパートに帰らず、ひたすらブタの心臓を使い血管の縫合やメスの使い方の練習に没頭した」、地道な努力が花開いたようだ。 木野 活明氏による「大学病院を去った「日本のブラックジャック」に手術を受けた患者の証言 天才医師・渡邊剛(後篇)」 (その38)(「病棟内で殺人事件が発生したこともあります」「看護師はなぐられて当たり前」心神喪失で無罪になった元犯罪者の”惨い治療現場”《医療観察法再考》、「脳ドック」をITで価格破壊 楽天役員OBの目算 「MRIシェアリング」ベンチャーが医療を変える、「胸を切らない心臓手術」を実践する世界一の心臓外科医が考えていること 天才医師・渡邊剛(前篇)、大学病院を去った「日本のブラックジャック」に手術を受けた患者の証言 天才医師・渡邊剛(後篇)) 医療問題 木野 活明氏による「「胸を切らない心臓手術」を実践する世界一の心臓外科医が考えていること 天才医師・渡邊剛(前篇)」 「「普通の内視鏡出手術は平面の2D画像ですが、ダビンチは3D画像ですから立体感がまるで違う。心臓手術は奥行き感やより正確な手術が求められるため、術野を10倍以上に拡大した3次元画像を見ながらの手術が可能です。 また、これまでの内視鏡では鉗子の動きは90度が限界でしたが、3次元では鉗子の動く範囲は360度動かすことができる。米粒に字が書けるほど細かい1mm半の血管を縫うことができるのがダビンチなんです」、確かに優れた手術法だ。アメリカ生まれでも、日本人が手術数でトップというのは、手先の器用さが影響しているの 「手術中の輸血量は胸骨正中切開ではどうしても500ccは使う。MICSは200cc使いますがダビンチは50ccで無輸血もある。輸血はすればするほど寿命は短くなります。輸血量は患者さんのその後の人生に大きく影響してくるんです」、「輸血量」だけでみても、「ダビンチ」は優れているようだ。 「ダビンチを開発した米国のIntuitive Surgical社が、世界で最もダビンチ手術を行ったドクターに贈る表彰盾だ。渡邊医師は2019年から3年連続世界一。世界で最も多くのダビンチ手術の経験を持つナンバーワンドクターなのである」、「週に5件、多い時には10件、コロナの影響のなかで昨年も約200件のダビンチ手術を行っています。これだけダビンチで心臓手術をしている病院は世界でもありません」、大したものだ。
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保険(その7)(日本生命「9カ月間で34件の違反行為」の異常事態 金融庁の立入検査に戦々恐々 不正はなぜ多い、金融庁 「エヌエヌ生命保険」に立ち入り検査へ 「節税保険」撲滅に向け 取り締まりを徹底強化、ビッグモーター不正請求 窮地の損保ジャパン 組織的関与の疑い強まる中 不可解な取引再開) [金融]

保険については、5月21日に取上げた。今日は、(その7)(日本生命「9カ月間で34件の違反行為」の異常事態 金融庁の立入検査に戦々恐々 不正はなぜ多い、金融庁 「エヌエヌ生命保険」に立ち入り検査へ 「節税保険」撲滅に向け 取り締まりを徹底強化、ビッグモーター不正請求 窮地の損保ジャパン 組織的関与の疑い強まる中 不可解な取引再開)である。

先ずは、7月2日付け東洋経済オンライン「日本生命「9カ月間で34件の違反行為」の異常事態 金融庁の立入検査に戦々恐々、不正はなぜ多い」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/600015
・『生命保険会社の営業職員による金銭詐取事案が頻発している。 明治安田生命は6月27日、元営業職員が契約者から約2000万円をだまし取っていたと発表した。2020年に発覚した第一生命保険の約19億円の巨額詐取事件を筆頭に、メットライフ生命やソニー生命で営業職員による金銭詐取事件が次々と明らかになっている。 事態を重く見た金融庁は2021年9月から2022年1月にかけて、第一生命に立ち入り検査を実施して監視を強化している。同時に、業界団体である生命保険協会と2022年に複数回の意見交換を行い、「営業職員の管理態勢の見直しや高度化に向けた取り組みを後押ししている」(金融庁)という』、「第一生命保険の約19億円の巨額詐取事件」については、2021年3月4日付けのこのブログでも紹介したが、確かに金額の大きさは世の中を震撼させた。
・『固唾をのむ生保最大手  こうした中、当局の動きを固唾をのんで見守っている会社がある。業界最大手の日本生命だ。 というのも、日本生命の営業現場では保険募集に関わる重大な事故が毎年発生しており、同社からの事故の届け出を受けた金融庁が、とりわけ監視の目を光らせているからだ。 営業職員チャネルを持つどの生保会社でも同じだが、営業職員による金銭詐取やコンプライアンスに抵触する保険募集が発覚した場合、各社は地元の財務局へ事故の届け出をしなければならない。そして、届け出を受理した財務局が金融庁に報告する流れになっている。) 日本生命の場合、2021年度は12月時点(2021年4月~12月)で34件の事故が発覚し、その旨を財務局に届け出ている。「重要事項の不説明」や「特別利益の提供」(契約者や被保険者に対して保険料の割引きなどを行うこと)など、保険募集に関わるさまざまな違反行為が報告されたが、特に目立つのが保険に加入意思のない人の名義だけを借りて作成する「名義借り契約」と呼ばれる不正契約の多さだ。 日本生命の全国99支社の1割に当たる10支社で名義借りが発覚しており、実際の不正契約の件数は100件以上に上る。 中には、1人で30件もの名義借り契約を作成した営業職員もいた。1つの営業部で営業職員9人が不正に関わるケースも発覚するなど、組織ぐるみの不正が疑われる事案もあった。金融庁は不正の件数だけでなく、事案の悪質性も問題視している』、「日本生命の全国99支社の1割に当たる10支社で名義借りが発覚しており、実際の不正契約の件数は100件以上に上る」、最大手にあるまじき悪質な「不正」だ。
・『異例の要請のきっかけになった事件  「今後、金銭詐取事案が発生した場合には、財務局だけでなく、金融庁にも前もって報告するように」――。 金融庁が日本生命に対して異例の要請を出すきっかけになったのは、2021年度に発覚した同社青森支社における金銭詐取事件だ。 同支社所属の営業職員が70代の契約者の配偶者と懇意になり、銀行の通帳とパスワードを入手。約8カ月間に計38回も契約者貸付金や配当金を不正に引き出して金銭を取得した事故が同社の社内調査で判明している。 契約している保険の解約返戻金の範囲内で、保険会社からお金を借りることができる「契約者貸付制度」を悪用したという点で、この事故は第一生命などで発覚した金銭詐取事件と類似点がある。「自分は被害を受けているのではないか」と不審に思った契約者が、日本生命と金融庁の両方に申し出たことで詐欺行為が発覚した。 問題はそれだけではない。日本生命の内部資料によると、2017年度から2021年度までの直近5年間で、営業職員による金銭詐取事案が15件判明している。もちろん金融庁は事故の報告を受けているが、中には1事故で契約者の被害総額が数億円に上る詐欺事件も発生している。にもかかわらず、日本生命はこうした事実を一切公表していない』、「2017年度から2021年度までの直近5年間で、営業職員による金銭詐取事案が15件判明」、「中には1事故で契約者の被害総額が数億円に上る詐欺事件も発生」、「日本生命はこうした事実を一切公表していない」、公表すれば、契約者へ自分の契約は大丈夫かと確認を促すメリットもあるため、「一切公表していない」という隠蔽体質は問題だ。
・『第一生命は再発防止策に取り組んでいるが…  営業職員による巨額詐欺事件の発覚を受けて、第一生命は再発防止策の策定と実行に取り組んでいる。営業職員チャネルの積年の課題であるターンオーバー(大量採用・大量脱落)問題への対応策として、2022年4月から営業職員の採用基準と給与水準、教育体制を刷新する改革をスタートさせている。 そうした動きとは対照的に日本生命は金銭詐取事案を公表せず、ターンオーバー問題でも明確な改善策を打ち出していない。 節税保険の不適正営業によるマニュライフ生命への金融庁検査は6月中旬で終わり、7月からは金融庁が新しい事務年度に入る。「(営業職員チャネルについては)現時点で顕在化されていない問題であっても、当局が把握し問題だと考える事案があれば、必要に応じて立ち入り検査を活用する」と金融庁の担当者は話す。 金融庁が口を酸っぱくして言う「顧客本位の業務運営」から鑑みて、日本生命に金融庁の立入検査が入る可能性が高まっている』、「日本生命」への「金融庁の立入検査」は当然のことだが、果たしてどんな問題を指摘するのだろうか。

次に、8月20日付け東洋経済オンライン「金融庁、「エヌエヌ生命保険」に立ち入り検査へ 「節税保険」撲滅に向け、取り締まりを徹底強化」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/612389
・『金融庁が外資系のエヌエヌ生命保険(旧アイエヌジー生命保険)に対して、近く立ち入り検査に入ることがわかった。 エヌエヌ生命の関係者によると、8月19日までに検査予告があったという。中小企業オーナーなどを対象にした「節税保険」の販売や商品開発の実態について、今後検査を進めるとみられる』、外資系生保であれば、「中小企業オーナーなどを対象にした」大口商品に力を入れるのは当然だ。
・『同業のマニュライフに行政処分  節税保険の不適切販売を巡っては、金融庁が2022年7月にマニュライフ生命保険に対して初の行政処分を下したばかりだ。販売行為の組織性や悪質性が生保各社の中でも際立っていたことでやり玉に挙がった格好だったが、同じく節税保険販売における組織性などが強く疑われていたのがエヌエヌ生命だった。 そもそも同社は2022年2月、金融庁から保険業法に基づく報告徴求命令を受けており、逓増定期保険などを活用し、「租税回避行為」を指南する私製の資料が多数見つかったことをすでに報告している。 今後の立ち入り検査の動向次第では、マニュライフ生命の事例と同様に、他社に転じたエヌエヌ生命の旧経営陣に対する責任追及に発展する可能性もある。 さらに今回の金融庁検査は、節税保険の撲滅という所期の目的にとどまらず、業界再編の引き金をひくことにもなりかねない。 なぜなら、エヌエヌ生命は節税保険をはじめとした「法人向け保険のほぼ『一本足経営』で成り立っている」(同社元幹部)からだ。金融庁の取り締まり強化で、節税保険の販売を実質的に封じられた場合、現在の経営・人員体制を維持するのは難しくなるとみられる』、「エヌエヌ生命は節税保険をはじめとした「法人向け保険のほぼ『一本足経営』で成り立っている」ので、「金融庁の取り締まり強化で、節税保険の販売を実質的に封じられた場合、現在の経営・人員体制を維持するのは難しくなるとみられる」、「エヌエヌ生命」の今後が注目される。
・『焦点は日本生命の動き  仮にそのような事態に陥った場合、エヌエヌ生命に救いの手を差し伸べる生保は現れるのか。過去にはエヌエヌ生命が抱える税理士代理店網に目をつけ、業界最大手の日本生命保険が買収を検討しているとささやかれたこともあった。 だが、節税保険への規制が年々強まる中で、身動きがとりづらくなっている生保をわざわざ買うメリットはやはり見出しづらいだろう。それでも、かろうじて買収の動機付けになる材料があるとすれば、グループでの規模拡大ぐらいだ。 そうした状況下で、折しも日本生命は2022年4~6月期の連結決算において、トップライン(保険料等収入)の規模で7年ぶりに第一生命ホールディングスの後塵を拝す結果になっている。 日本生命のトップライン首位に対するこだわりは、外野が想像する以上に強い。今後四半期だけでなく、年間を通じての成績で首位陥落が見えてくるようであれば、日本生命の動きから目が離せなくなりそうだ』、「日本生命のトップライン首位に対するこだわりは、外野が想像する以上に強い」、「年間を通じての成績で首位陥落が見えてくるようであれば」、「エヌエヌ生命が抱える税理士代理店網」を「買収」する可能性も出てきたようだ。

第三に、9月15日付け東洋経済オンライン「ビッグモーター不正請求、窮地の損保ジャパン 組織的関与の疑い強まる中、不可解な取引再開」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/618469
・『中古車販売大手ビッグモーター(東京都港区、兼重宏行社長)による保険金の不正請求問題をめぐって、損保ジャパンが苦しい立場に追い込まれている(詳細はこちら)。 損保ジャパンは不正請求が発生した原因について、限定的な調査しか実施していなかったにもかかわらず、ビッグモーター側の主張をほぼ全面支持するかたちで「修理作業者のスキル不足や事務手続き上の連携ミス」などと整理。不正請求の組織的な関与はなかったと早々に結論付けることで、一部で止めていたビッグモーターとの取引をいち早く再開していた。 ところが今、ビッグモーターの社員らの証言によって、不正請求をめぐる組織的関与の疑いが日増しに強くなってきている。結局、9月に入り取引を再び停止したが、損保ジャパンとして大きな矛盾を抱え込むことになり、さらにほかの大手損保から「ビッグモーターと何か癒着しているのではないか」と勘繰られる状況に陥っている。 こうした批判に、損保ジャパンから反論があってもおかしくないが、そうした声はまだ聞こえてこない。それは、不正請求をめぐるこれまでの言動について整合性がもはやとれなくなり、説得力のある説明ができなくなってしまっているからだろう』、「損保ジャパンは不正請求が発生した原因について、限定的な調査しか実施していなかったにもかかわらず、ビッグモーター側の主張をほぼ全面支持するかたちで「修理作業者のスキル不足や事務手続き上の連携ミス」などと整理。不正請求の組織的な関与はなかったと早々に結論付けることで、一部で止めていたビッグモーターとの取引をいち早く再開していた」、「ほかの大手損保から「ビッグモーターと何か癒着しているのではないか」と勘繰られる状況に陥っている」、「ビッグモーター」がよほど重要な「中古車販売」店だったのだろう。
・『実態調査の問題点  これまでの経緯を振り返りながら、損保ジャパンの対応における問題点を改めて整理していこう。まずは、冒頭でも触れた不正請求の実態調査に対するスタンスだ。 ビッグモーター側の自主調査によって、関東地域の4つ工場で不正請求が発生していることが明確になったのは、6月末のこと。取引のある損保ジャパン、東京海上日動火災保険、三井住友海上火災保険の3社は複数の工場で不正が発覚したことで、組織的関与の疑いを強めるとともに、不正請求被害の全容解明に向けて、追加調査の必要性についてそれぞれ社内で議論していた。 自動車保険の販売代理店でもあるビッグモーターと、それぞれ数十億円の取引がある3社が一丸となり、不正請求に対して毅然と対応するかに思われた。だが、7月中旬になると風向きが大きく変わる。 損保ジャパンが不正請求問題について組織的関与はないと結論づけ、突如として「幕引きするかのような対応をとりはじめた」(大手損保役員)からだ』、「7月中旬になると」、「損保ジャパンが不正請求問題について組織的関与はないと結論づけ、突如として「幕引きするかのような対応をとりはじめた」」、抜け駆け的行為だ。
・『ビッグモーター社長の不可解な訪問  実はその7月中旬、「(ビッグモーターの)兼重社長がうちの役員を訪ねてきている」と損保ジャパンのある幹部は明かす。そこで何が話し合われたのかは不明だが、この幹部によると面談を境に、ビッグモーターへの対応方針が大きく変わったようだ。 まずは兼重社長との面談から数日後、ビッグモーターの社内で東京海上と三井住友海上の自賠責(自動車損害賠償責任保険)の取り扱いを一部で「停止するよう指示が出ている」(ビッグモーター関係者)。7月下旬には、3社ともにストップしていたビッグモーターへの事故車の修理紹介を、損保ジャパンだけが再開している。 損保ジャパンは不正請求された保険金の返還や、不正請求の対象になった車両の持ち主への経緯説明を、ビッグモーター側に求めてすらいない段階で事故車の修理紹介を再開している。コンプライアンス(法令順守)軽視、顧客軽視という批判を受けても仕方がない状況を、自ら招いているように映る。 不正請求の被害者でもある損保が、全容解明に向けた追加の実態調査になぜか消極的なスタンスをとり、関東4工場という対象を限定した調査だけで不正請求の原因を事務ミスなどと決めつけて、一定の再発防止策を講じたからと取引をすぐさま再開してみせる――。 そうした真意不明の対応を取り続けた損保ジャパンは、9月に入り他社のヒアリング調査によって不正請求への組織的関与の疑いが強まってくると、事故車の紹介を一部で「やはり停止すると言い出したり、再調査が必要かもしれないなどと今さら言いはじめたりしている」(大手損保役員)という。これまでの説明の辻褄がもはや合わない状況に陥ってしまっている』、「不正請求の被害者でもある損保が、全容解明に向けた追加の実態調査になぜか消極的なスタンスをとり、関東4工場という対象を限定した調査だけで不正請求の原因を事務ミスなどと決めつけて、一定の再発防止策を講じたからと取引をすぐさま再開してみせる――。 そうした真意不明の対応を取り続けた損保ジャパンは、9月に入り他社のヒアリング調査によって不正請求への組織的関与の疑いが強まってくると、事故車の紹介を一部で「やはり停止すると言い出したり、再調査が必要かもしれないなどと今さら言いはじめたりしている」、こんな節操のない姿勢で、「損保ジャパン」は恥ずかしくないのだろうか。
・『契約者の払う保険料にも影響か  ここで押さえておきたいのは、今回のビッグモーターをめぐる不正請求の問題が、ビッグモーターとの取引の有無にかかわらず、3社の自動車保険の契約者全体に影響が及ぶかもしれないという点だ。 杞憂に終わるかもしれないが、もし不正請求が過去を含めて組織的かつ大規模に行われていた場合、損保会社にとって費用となる保険金が必要以上に膨らんでいたことになる。そうすると、自動車保険の契約者が支払う保険料の計算に影響していた可能性があるわけだ。 それゆえ、不正請求被害の全容解明に向けた調査は損保会社として不可欠なはずだ。自動車保険の契約獲得という営業成績の維持向上を狙って、それをおざなりにしていたとすれば、損保ジャパンだけでなく、業界全体の信用問題にも発展しかねない。 折しも損保業界は、特定修理業者を通じた火災保険金の不正請求が社会問題化し、業界を挙げて撲滅に取り組んでいる真っ最中だ。 現在、日本損害保険協会の協会長を務めている損保ジャパンは、その先頭に立って不正請求と対峙しているはず。ビッグモーターの不正請求問題に対しては協会長として、また個社としてどう向き合うのか。顧客本位とはほど遠い対応を続けていると、業界が築き上げてきた信用に大きな傷をつけることになる』、「折しも損保業界は、特定修理業者を通じた火災保険金の不正請求が社会問題化し、業界を挙げて撲滅に取り組んでいる真っ最中だ。 現在、日本損害保険協会の協会長を務めている損保ジャパンは、その先頭に立って不正請求と対峙しているはず。ビッグモーターの不正請求問題に対しては協会長として、また個社としてどう向き合うのか。顧客本位とはほど遠い対応を続けていると、業界が築き上げてきた信用に大きな傷をつけることになる」、追い込まれた「損保ジャパン」は、如何に乗り切ってゆくのだろうか。
タグ:「日本生命のトップライン首位に対するこだわりは、外野が想像する以上に強い」、「年間を通じての成績で首位陥落が見えてくるようであれば」、「エヌエヌ生命が抱える税理士代理店網」を「買収」する可能性も出てきたようだ。 「7月中旬になると」、「損保ジャパンが不正請求問題について組織的関与はないと結論づけ、突如として「幕引きするかのような対応をとりはじめた」」、抜け駆け的行為だ。 「損保ジャパンは不正請求が発生した原因について、限定的な調査しか実施していなかったにもかかわらず、ビッグモーター側の主張をほぼ全面支持するかたちで「修理作業者のスキル不足や事務手続き上の連携ミス」などと整理。不正請求の組織的な関与はなかったと早々に結論付けることで、一部で止めていたビッグモーターとの取引をいち早く再開していた」、「ほかの大手損保から「ビッグモーターと何か癒着しているのではないか」と勘繰られる状況に陥っている」、「ビッグモーター」がよほど重要な「中古車販売」店だったのだろう。 東洋経済オンライン「ビッグモーター不正請求、窮地の損保ジャパン 組織的関与の疑い強まる中、不可解な取引再開」 「折しも損保業界は、特定修理業者を通じた火災保険金の不正請求が社会問題化し、業界を挙げて撲滅に取り組んでいる真っ最中だ。 現在、日本損害保険協会の協会長を務めている損保ジャパンは、その先頭に立って不正請求と対峙しているはず。ビッグモーターの不正請求問題に対しては協会長として、また個社としてどう向き合うのか。顧客本位とはほど遠い対応を続けていると、業界が築き上げてきた信用に大きな傷をつけることになる」、追い込まれた「損保ジャパン」は、如何に乗り切ってゆくのだろうか。 「不正請求の被害者でもある損保が、全容解明に向けた追加の実態調査になぜか消極的なスタンスをとり、関東4工場という対象を限定した調査だけで不正請求の原因を事務ミスなどと決めつけて、一定の再発防止策を講じたからと取引をすぐさま再開してみせる――。 そうした真意不明の対応を取り続けた損保ジャパンは、9月に入り他社のヒアリング調査によって不正請求への組織的関与の疑いが強まってくると、事故車の紹介を一部で「やはり停止すると言い出したり、再調査が必要かもしれないなどと今さら言いはじめたりしている」、こんな節操のない姿 「エヌエヌ生命は節税保険をはじめとした「法人向け保険のほぼ『一本足経営』で成り立っている」ので、「金融庁の取り締まり強化で、節税保険の販売を実質的に封じられた場合、現在の経営・人員体制を維持するのは難しくなるとみられる」、「エヌエヌ生命」の今後が注目される。 外資系生保であれば、「中小企業オーナーなどを対象にした」大口商品に力を入れるのは当然だ。 東洋経済オンライン「金融庁、「エヌエヌ生命保険」に立ち入り検査へ 「節税保険」撲滅に向け、取り締まりを徹底強化」 「日本生命」への「金融庁の立入検査」は当然のことだが、果たしてどんな問題を指摘するのだろうか。 「2017年度から2021年度までの直近5年間で、営業職員による金銭詐取事案が15件判明」、「中には1事故で契約者の被害総額が数億円に上る詐欺事件も発生」、「日本生命はこうした事実を一切公表していない」、公表すれば、契約者へ自分の契約は大丈夫かと確認を促すメリットもあるため、「一切公表していない」という隠蔽体質は問題だ。 「日本生命の全国99支社の1割に当たる10支社で名義借りが発覚しており、実際の不正契約の件数は100件以上に上る」、最大手にあるまじき悪質な「不正」だ。 「第一生命保険の約19億円の巨額詐取事件」については、2021年3月4日付けのこのブログでも紹介したが、確かに金額の大きさは世の中を震撼させた。 東洋経済オンライン「日本生命「9カ月間で34件の違反行為」の異常事態 金融庁の立入検査に戦々恐々、不正はなぜ多い」 (その7)(日本生命「9カ月間で34件の違反行為」の異常事態 金融庁の立入検査に戦々恐々 不正はなぜ多い、金融庁 「エヌエヌ生命保険」に立ち入り検査へ 「節税保険」撲滅に向け 取り締まりを徹底強化、ビッグモーター不正請求 窮地の損保ジャパン 組織的関与の疑い強まる中 不可解な取引再開) 保険
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自動車(一般)(その6)(トヨタ「創業家支配」強まる2つの根拠 ジュニア“世襲前提人事”に白けムード、半導体不足 電力不足......日本の自動車産業は崖っぷち?、ホンダの韓国LG・米GMとの提携強化が映す 自動車業界「大変革」の衝撃) [産業動向]

自動車(一般)については、昨年7月6日に取上げた。今日は、(その6)(トヨタ「創業家支配」強まる2つの根拠 ジュニア“世襲前提人事”に白けムード、半導体不足 電力不足......日本の自動車産業は崖っぷち?、ホンダの韓国LG・米GMとの提携強化が映す 自動車業界「大変革」の衝撃)である。

先ずは、本年2月28日付けダイヤモンド・オンライン「トヨタ「創業家支配」強まる2つの根拠、ジュニア“世襲前提人事”に白けムード」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/297293
・『トヨタ自動車の創業家が経営への支配力を急速に高めています。だが近年、豊田章男氏による独裁の弊害が「現場のひずみ」となって噴き出すようになってきました。『週刊ダイヤモンド』3月5日号の第1特集は「絶頂トヨタの真実」です。特集では、トヨタの創業家、カネ、権力…タブーに斬り込むことで、巨大組織が抱える大問題の本質に迫りました』、興味深そうだ。
・『過去最高益、時価総額40兆円を視野 押しも押されもせぬNo.1自動車メーカーに  トヨタ自動車が、空前の絶頂期を迎えている。半導体不足による減産修正や原材料高騰という逆風が吹いているにもかかわらず、2022年3月期決算は過去最高益レベルで着地する見通しだ。 昨年12月には、「30年までにバッテリーEV(電気自動車)の世界販売350万台」を実現する大攻勢計画をぶち上げた。この宣言によるアピール効果は大きく、「トヨタは脱炭素化やEVシフトに及び腰」というレッテルを見事に剥がすことに見事に成功したのだった。時価総額40兆円を視野に入れて、米テスラを追い上げる体制が整いつつある。 トヨタが、押しも押されもせぬ世界No.1自動車メーカーに躍り出たことは紛れもない事実だ。今まさに絶頂期にあると言える。 しかし近年、絶対王者のトヨタらしからぬ“ウィークポイント”が露呈する場面が増えている。系列販売店における不正車検の発覚、度重なる自動車生産計画の下方修正、重要サプライヤーである日本製鉄による特許侵害訴訟の提起、そして、エース人材の流出ラッシュ――などがそうだ。いつしかトヨタ社内には、こうした不始末を誘発する“組織の病巣”が宿ってしまったのかもしれない。 折しも、創業家である豊田本家がトヨタの経営への支配力を高めている。それは二つの形となって現れている。) 一つ目は、歴史の“書き換え”である。近年、豊田章男・トヨタ自動車社長やその側近は、豊田本家こそが正統であり、かつて経営と創業家との分離を画策した奥田碩・元会長や奥田氏がリスペクトしていた分家の豊田英二氏に否定的な姿勢を見せている。“中興の祖”である英二氏やグローバル展開の立役者である奥田氏の名はトヨタの歴史から排除されたのだ。 (図表:創業家とトヨタ歴代社長の系譜はリンク先参照) 替わって、トヨタの歴史を受け継ぐ正統性は豊田本家にあるというプレゼンテーションをことあるごとに展開している。豊田本家とは、創始者の佐吉氏、自動織機を発明した喜一郎氏、章男氏の父である章一郎氏、章男氏、(章男氏の)長男の大輔氏という豊田家直系の面々だ。 二つ目は人事である。章男氏は役員を大幅に削減したり、組織の階層をフラット化したりすることで、自身が権限を掌握する中央集権化を進めてきた。 自動車業界を襲う「100年に1度の変革期」を生き抜くため、迅速な経営を可能にすることが組織改革の大義名分である。 だが、大輔氏が経営の表舞台に立つようになって以降、社内では「改革は企業存続のためではなく、豊田家の世襲のため」冷めた見方をする社員が増えて白けムードが漂っている。 向こう10年以上先になるかもしれないが、大輔氏がトヨタ本体のトップに立った時のために、創業家の地位を脅かさない「側近体制」を構築しているようだ。 章男氏による中央集権化は時代の要請か、それとも組織の私物化か──』、「トヨタらしからぬ“ウィークポイント”が露呈する場面が増えている。系列販売店における不正車検の発覚、度重なる自動車生産計画の下方修正、重要サプライヤーである日本製鉄による特許侵害訴訟の提起、そして、エース人材の流出ラッシュ――など」、これに対し、「歴史の“書き換え”」、「創業家の地位を脅かさない「側近体制」を構築」、などは問題解決にはつながらない。特に、「「側近体制」を構築」は「人材の流出」を加速させる懸念がある。
・『創業家のカネ、権力…を大解剖 トヨタのダブーに斬り込む 『週刊ダイヤモンド』3月5日号の第1特集は「絶頂トヨタの真実」です。特集では、わが世の春を謳歌しているトヨタに潜む死角を取り上げました。 トヨタグループの創業家、カネ、権力、ガバナンスの機能不全…業界のタブーに斬り込むことで、巨大組織が抱える大問題の本質に迫ります。 また、トヨタが「EV350万台」を実現する頃には、トヨタの敵はもはや自動車メーカーだけではありません。モビリティの価値は「走る・曲がる・止まる」のハードウエアから、自動運転やモビリティサービスをつかさどるソフトウエアへシフトします。 将来のライバルと目される、日本電産やソニーグループなど水平分業プレーヤーの動きにもウォッチしました。 トヨタはいつまで絶頂期を堪能することができるのでしょうか』、「中央集権化は」、「組織の私物化」につながると思う。「トヨタ」ともあろう超大企業が、このような問題を抱え、危険な方向に向かいつつあるとは、驚かされた。

次に、3月23日付けNewsweek日本版が掲載した在米作家の冷泉彰彦氏による「半導体不足、電力不足......日本の自動車産業は崖っぷち?」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/reizei/2022/03/post-1265_1.php
・『<日本型の「高付加価値部門の空洞化」に、クリーンエネルギーへの転換の遅れが追い討ちをかければ、自動車産業は風前の灯火に> アメリカの消費者は厳しいインフレに直面していますが、何よりも価格の上昇率が高いのは中古車です。つい先週、11年落ちで19万キロ走った小型SUVを「もらい事故」で廃車にした人の話では、車両保険で1万1000ドル(132万円)の保険金が出たそうです。中古としての市場価値からすると、そんな金額になるのです。 実際に中古車市場を見てみると、5年落ち10万キロ越えの車でも、トヨタの中型SUVで3万3000ドル(396万円)と価格はほとんど新車と変わりません。では、新車を買ったらいいかというと、それは不可能です。市場には在庫がないからです。そうなると売り手市場となって中古が新車と価格が変わらないというクレージーなことになるわけです。 それもこれも、日本の半導体工場が火災になったり、新型コロナの影響で生産が止まったりした影響で、自動車用の汎用半導体が極端な供給不足になっているからです。この種の製品は、日本のシェアが異常に高いので、日本での生産が止まると世界中の自動車メーカーが影響を受け、とりわけ米国では深刻な事態になっています』、「日本の半導体工場が火災になったり、新型コロナの影響で生産が止まったりした影響で、自動車用の汎用半導体が極端な供給不足になっている」、「日本のシェアが異常に高いので、日本での生産が止まると世界中の自動車メーカーが影響を受け、とりわけ米国では深刻な事態になっています」、なるほど。
・『日本の半導体産業が復興?  ここからが本論ですが、「自動車用の半導体」でそんなに日本が強いのなら、そして供給不足で世界中が困っているのなら、強気の価格交渉をして日本の半導体産業を20世紀のように再び強くすることができそうにも思えます。ですが、その可能性はありません。 日本の自動車部品産業は、半導体も含めて多くの場合が「本体」つまり最終組み立てメーカーの資本が入っており、親会社の意向によって価格は低く抑えられています。ですが、ここまで市場占有率が高く、需要と供給のバランスが崩れているのなら、思い切って世界から資金を集めて独立し、価格決定権も奪い返して半導体産業を活性化しても良いはずです。 ですが、多くの場合に経営者は「本体」から送り込まれており、「本体」の意向に沿うような経営しかしません。また仮にダイレクトに資金を集めようにも、日本国内にはリスクを許容するマネーは枯渇していますし、海外から借りるとなると専門性が必要な上、将来の円安を考えると怖くて借りられないということもあります。 そんなわけで、多くの部品産業は価格を安く叩かれており、納入先について日系企業だけでなく世界中を相手にするようになっても、そのデフレ体質を世界中から食い物にされているわけです。 しかも、トヨタをはじめ、多くの日本の最終組み立てメーカーは、国内販売比率が10%前後まで低下しています。そして、海外で販売する部分は、そのほとんどが現地生産になっています。さらに言えば、研究開発、デザイン、マーケティングなど主要な高付加価値部門も海外に出している企業が多くなっています。つまり、日本のGDPに寄与しているのは、日本国内の部品や素材メーカーが価格を叩かれて、薄い利幅にあえぎながら生産している部分が中心ということになります。 つまり、人件費の低い国に生産拠点を移したり、市場に近いところで生産するといったクラシックな空洞化、つまり設計や研究開発など知的で高付加価値な部分を「本国に残す」スタイルではないのです。自動車産業をはじめとした日本の多くの製造業の場合は、利幅の薄い部品と素材の一部だけと、生産性の低い事務部門だけが国内に残って、その他の高度な部分はどんどん海外に出す「日本形の空洞化」が進んでいると言えます』、「自動車産業をはじめとした日本の多くの製造業の場合は、利幅の薄い部品と素材の一部だけと、生産性の低い事務部門だけが国内に残って、その他の高度な部分はどんどん海外に出す「日本形の空洞化」が進んでいる」、馬鹿馬鹿しく、寂しい限りだ。
・『見通せないエネルギー政策  これに追い討ちをかけそうなのが、エネルギー問題です。今回の電力逼迫が示しているように、もう日本の世論は原子力発電については、部分的であれ期限を限ったものであれ本格稼働を許容することはなさそうです。そうなると、トヨタの豊田章男社長が警告しているように、やがて「化石燃料まみれの電源」を使って作ったクルマは世界では売れなくなり、自動車産業は完全に日本から出ていく可能性もあるといいます。エネルギー政策に答えがなければ、やがて製鉄も国内では不可能になるでしょう。 産業自体が、EV(電気自動車)化や、AV(自動運転車)化へと大きな改革を進める中で、日本の自動車産業は本来であればそこで挽回を図らなければならないはずです。その日本の自動車産業が、空洞化とエネルギー問題で、崖っぷちまで追い詰められているというのは、大変に厳しい状況と思います。 日本の賃金が上がらないのも、貧困が広まっているのも、その多くはここに原因があります。より高付加価値な産業へ転換することもなく、製造業をどんどん国外流出させて、国内には利幅の薄い部品と素材産業だけが残っていくようでは、日本経済はさらに一層の衰退を覚悟しなくてはならなくなります』、「より高付加価値な産業へ転換することもなく、製造業をどんどん国外流出させて、国内には利幅の薄い部品と素材産業だけが残っていくようでは、日本経済はさらに一層の衰退を覚悟しなくてはならなくなります」、その通りだが、グルーバル化の反動として、経済安全保障の観点から、中核的産業は国内に残そうとする動きも出てきたので、その行方も注目される。

第三に、9月13日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁昭夫氏による「ホンダの韓国LG・米GMとの提携強化が映す、自動車業界「大変革」の衝撃」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/309605
・『ホンダは、米国のGMと韓国のLGグループとアライアンスを組んで、「100年に1度」と呼ばれる自動車産業の大変革に対応しようとしている。背景にある「CASE」のインパクトは大きい。バッテリー調達能力の向上、自動運転技術などソフトウエア開発力の強化、搭載点数の増える車載用の半導体開発のために、世界の大手自動車メーカーは合従連衡や異業種との提携を強化しなければならない』、興味深そうだ。
・『ホンダとLGが米国でEVバッテリーの新工場を建設  8月29日、本田技研工業(ホンダ)は、韓国のLGエナジーソリューション(LGES)と電気自動車(EV)用のリチウムイオンバッテリーを生産する合弁会社の設立に合意した。米国で2025年の量産開始を目指し、両社は総額44億ドル(約6160億円)を投じて工場を建設する。ホンダは国際分業体制を強化し、事業運営の効率性を一段と高める考えだ。 見方を変えると、今回の発表によって日米韓の主要企業によるアライアンス体制が強化されることになる。20年9月、ホンダは米ゼネラル・モーターズ(GM)との戦略的アライアンスを発表した。GMはLGESの親会社、LG化学(以下、LG化学、LGESを含めLGグループとする)と関係を強化している。また、22年6月にホンダはソニーグループと、EVの設計・開発・生産を行う合弁企業の立ち上げを発表した。 ホンダは提携戦略の強化によって今後の環境変化に対する選択肢を増やし、新しいモビリティーの創出を加速させようとしている。世界経済の先行きは楽観できないが、今回の提携を機にEVなどの開発、市場投入スピードを高めることができれば、ホンダのビジネスチャンスは増加するだろう』、「今回の提携を機にEVなどの開発、市場投入スピードを高めることができれば、ホンダのビジネスチャンスは増加するだろう」、その通りだ。
・『大変革期を迎えた世界の自動車産業  ホンダは、米国のGMと韓国のLGグループとアライアンスを組んで、「100年に1度」と呼ばれる自動車産業の大変革に対応しようとしている。背景にある「CASE」のインパクトは大きい。CASEとは、ネットワークと自動車の接続、自動運転技術の実用化、シェアリングなど新しい自動車の使い方の実現、脱炭素に対応するためのEVシフトなどの電動化を意味する。 特に、EVシフトのインパクトは絶大だ。EVシフトによって自動車に使われる部品点数は減少し、わが国自動車メーカーが磨いてきた「すり合わせ技術」の優位性は低下する。生産方式がデジタル家電のようなユニット組立型生産に移行することで、自動車産業の参入障壁は低下し、テスラのようなEV専業メーカーが急成長を遂げている。 バッテリー調達能力の向上、自動運転技術などソフトウエア開発力の強化、搭載点数の増える車載用の半導体開発のために、世界の大手自動車メーカーは合従連衡や異業種との提携を強化しなければならない。 わが国では、自動車メーカーは大きく三つのグループに集約された。トヨタはスズキや富士重工、ダイハツ、マツダとの関係を強化している。日産は仏ルノー、三菱自動車とアライアンスを組む。他方、ホンダは独自路線を選択した。 まず、ホンダはGMとの戦略的提携を交わした。その根底には、ホンダの危機感があったはずだ。さまざまな議論があるが、世界的に見てわが国のEVシフトは遅れている。ホンダは海外の新しい発想をより多く取り込むことが、過去の成功体験から脱却して自己変革するために不可欠だと考えたのだろう。 一方、リーマン・ショック後に自力での経営が行き詰まったGMは、EVメーカーとしての競争力強化に生き残りをかけている。そのためGMは、車載用バッテリー事業を新しい収益の柱に育てたいLGグループとの関係を強化した。GMとLGグループは合弁で工場を運営し、EVプラットフォームの「アルティウム」を開発している』、「EVシフトによって自動車に使われる部品点数は減少し、わが国自動車メーカーが磨いてきた「すり合わせ技術」の優位性は低下」、「バッテリー調達能力の向上、自動運転技術などソフトウエア開発力の強化、搭載点数の増える車載用の半導体開発のために、世界の大手自動車メーカーは合従連衡や異業種との提携を強化しなければならない」、「世界的に見てわが国のEVシフトは遅れている」、「ホンダは海外の新しい発想をより多く取り込むことが、過去の成功体験から脱却して自己変革するために不可欠だと考えたのだろう」、「提携」で乗り切ってゆくのは至難の技だろう。
・『米韓企業が必要とするホンダの製造技術  ただし、GMのEVシフトは想定通りに進んでいない。特に、LGグループ製バッテリーを搭載したGMの「シボレーボルトEV」の発火問題が相次ぎ、複数回にわたってリコールが実施された。現時点で発火の原因は根本解決に至っていないようだ。 米国を代表する自動車メーカーであるGMとしては、安全保障上の同盟国である韓国のLGグループとの関係は手放せないだろう。LGグループは、韓国の現代自動車や米フォード、独フォルクスワーゲンにも車載用バッテリーを供給している。発火問題の解決に時間がかかれば、車載電池の世界最大手である中国の寧徳時代新能源科技(CATL)とのシェア格差は拡大する可能性が高い。 発火問題は、LGグループ内にバッテリーを構成する素材・部材などを精緻にすり合わせ、耐久性と安全性を高める技術が不足していることを示唆する。それは、米国企業のバッテリー調達にネガティブなインパクトだ。基礎的かつEVの安全性向上に決定的に重要な製造技術を獲得するために、GMはLGグループにホンダとの提携強化を求めたとみられる。 見方を変えれば、長い時間をかけて磨かれてきたホンダの自動車製造技術は、エンジン車以外にも応用できる部分が多いといえる。ホンダは二輪車の製造からスタートし、小型エンジン車、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池車(FCV)、EVなど多様なモビリティーを生み出した。さらには小型ジェット機である「ホンダジェット」で培った航空機の設計開発や製造のノウハウもある。 そうした技術を取り込むことで、GMと LGグループは世界に必要とされるEVの供給体制強化を目指しているはずだ。ホンダにとってもGMとLGグループとの協業強化は、バッテリー調達体制を強化して脱エンジン車を前倒しで実現し、より快適な移動を可能にする電動技術の創出に集中するために欠かせない。 ホンダとGMが車台(プラットフォーム)を共通化できれば、事業運営の効率性は一段と高まる。ホンダ(日)、GM(米)、 LG(韓)はアライアンスのさらなる強化によって相互の弱みを補完し、ウィン・ウィン・ウィンの関係を目指していると考えられる』、「提携」をより実効性あるものにするには、ではなく、「車台・・・を共通化」など踏み込んだ「提携」が必要だろう。
・『新しい需要を生むための提携や買収を強化  ホンダはGMやLGグループ、あるいは他社との提携をさらに強化するだろう。自動運転技術などの分野で競争力が高いと考えられるソフトウエア開発力を持つスタートアップ企業などの買収や出資戦略も強化するべきだ。 そう考える一つの要因として、世界全体でグローバル化とは逆の動きが加速している。1990年代以降、世界経済はグローバル化し、海外直接投資の増加によって世界全体で生産コストは低下した。グローバル化を追い風に、本邦自動車メーカーはジャスト・イン・タイムのサプライチェーンを構築して世界の需要に迅速に対応した。 しかし、2018年以降は米中対立やコロナ禍、ウクライナ危機などが発生し、世界のサプライチェーンは不安定化している。加えて、異常気象問題も深刻である。こうした不確実性の高まる環境下、大型の新規投資を一社単独で実行するのは難しい。リスクを分散して得意な分野に集中するために、業種を超えた提携や買収戦略が強化されている。 今後の展開としてホンダに期待したいのは、世界をあっと驚かせる商品の創造だ。ホンダは、二輪車の「ホンダカブ」や「CVCCエンジン」(低公害エンジン)などのヒットで成長を遂げてきた。口で言うほど容易なことではないが、アライアンスの強化によって新しい需要創出の力を高めることができるだろう。 世界的に見て、本邦工作機械メーカーの競争力は高い。また、車載用の半導体分野では、ソニーグループと台湾積体電路製造(TSMC)、デンソーの合弁によって新工場が建設されている。ホンダはソニーグループとも戦略的提携を交わし、新しい需要創出に向けた取り組みを増やしている。 その一方で、当面の間、世界的に物価は高止まりするだろう。中国では個人消費がさらに減少する恐れが強い。それはホンダにとって逆風だ。世界で先行きへの懸念が高まる中、ホンダはアライアンスや買収戦略を強化して、新しい取り組みをさらに増やさなければならない。その資金を捻出するために、国内の生産拠点の統廃合などが増えるだろう。成長加速に向けたホンダの取り組みは、わが国産業界の活力向上に無視できないプラスの影響を与えるはずだ』、「ホンダに期待したいのは、世界をあっと驚かせる商品の創造だ」、同感である。かつて「ホンダ」車のとがった魅力に惹かれていたが、近年は、「ホンダ」らしさが薄らいだような気がする。今後の「ホンダ」たしさの復活に向けての経営努力に期待したい。
タグ:「ホンダに期待したいのは、世界をあっと驚かせる商品の創造だ」、同感である。かつて「ホンダ」車のとがった魅力に惹かれていたが、近年は、「ホンダ」らしさが薄らいだような気がする。今後の「ホンダ」たしさの復活に向けての経営努力に期待したい。 「提携」をより実効性あるものにするには、ではなく、「車台・・・を共通化」など踏み込んだ「提携」が必要だろう。 「EVシフトによって自動車に使われる部品点数は減少し、わが国自動車メーカーが磨いてきた「すり合わせ技術」の優位性は低下」、「バッテリー調達能力の向上、自動運転技術などソフトウエア開発力の強化、搭載点数の増える車載用の半導体開発のために、世界の大手自動車メーカーは合従連衡や異業種との提携を強化しなければならない」、「世界的に見てわが国のEVシフトは遅れている」、「ホンダは海外の新しい発想をより多く取り込むことが、過去の成功体験から脱却して自己変革するために不可欠だと考えたのだろう」、「提携」で乗り切ってゆく 「今回の提携を機にEVなどの開発、市場投入スピードを高めることができれば、ホンダのビジネスチャンスは増加するだろう」、その通りだ。 真壁昭夫氏による「ホンダの韓国LG・米GMとの提携強化が映す、自動車業界「大変革」の衝撃」 ダイヤモンド・オンライン (その6)(トヨタ「創業家支配」強まる2つの根拠 ジュニア“世襲前提人事”に白けムード、半導体不足 電力不足......日本の自動車産業は崖っぷち?、ホンダの韓国LG・米GMとの提携強化が映す 自動車業界「大変革」の衝撃) 自動車(一般) 「より高付加価値な産業へ転換することもなく、製造業をどんどん国外流出させて、国内には利幅の薄い部品と素材産業だけが残っていくようでは、日本経済はさらに一層の衰退を覚悟しなくてはならなくなります」、その通りだが、グルーバル化の反動として、経済安全保障の観点から、中核的産業は国内に残そうとする動きも出てきたので、その行方も注目される。 「自動車産業をはじめとした日本の多くの製造業の場合は、利幅の薄い部品と素材の一部だけと、生産性の低い事務部門だけが国内に残って、その他の高度な部分はどんどん海外に出す「日本形の空洞化」が進んでいる」、馬鹿馬鹿しく、寂しい限りだ。 「日本の半導体工場が火災になったり、新型コロナの影響で生産が止まったりした影響で、自動車用の汎用半導体が極端な供給不足になっている」、「日本のシェアが異常に高いので、日本での生産が止まると世界中の自動車メーカーが影響を受け、とりわけ米国では深刻な事態になっています」、なるほど。 冷泉彰彦氏による「半導体不足、電力不足......日本の自動車産業は崖っぷち?」 Newsweek日本版 「中央集権化は」、「組織の私物化」につながると思う。「トヨタ」ともあろう超大企業が、このような問題を抱え、危険な方向に向かいつつあるとは、驚かされた。 「トヨタらしからぬ“ウィークポイント”が露呈する場面が増えている。系列販売店における不正車検の発覚、度重なる自動車生産計画の下方修正、重要サプライヤーである日本製鉄による特許侵害訴訟の提起、そして、エース人材の流出ラッシュ――など」、これに対し、「歴史の“書き換え”」、「創業家の地位を脅かさない「側近体制」を構築」、などは問題解決にはつながらない。特に、「「側近体制」を構築」は「人材の流出」を加速させる懸念がある。 ダイヤモンド・オンライン「トヨタ「創業家支配」強まる2つの根拠、ジュニア“世襲前提人事”に白けムード」
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詐欺(その1)(「スケベ心で騙された」M資金詐欺で31億円被害のコロワイド会長が証言した驚愕の新事実、「給付金詐欺」なぜ次々発覚?10億円奪った一家 2億円マルチ詐欺の国税職員ら…、〈証拠文書 LINE入手〉「2000万円どころじゃない」加賀の名門旅館「雇用調整助成金」巨額不正を従業員が悲痛告発) [司法]

今日は、詐欺(その1)(「スケベ心で騙された」M資金詐欺で31億円被害のコロワイド会長が証言した驚愕の新事実、「給付金詐欺」なぜ次々発覚?10億円奪った一家 2億円マルチ詐欺の国税職員ら…、〈証拠文書 LINE入手〉「2000万円どころじゃない」加賀の名門旅館「雇用調整助成金」巨額不正を従業員が悲痛告発)を取上げよう。

先ずは、昨年11月12日付け日刊ゲンダイ「「スケベ心で騙された」M資金詐欺で31億円被害のコロワイド会長が証言した驚愕の新事実」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/297304
・『「なんべん騙されても、スケベ心で騙されてしまいました」  「牛角」や「大戸屋」など多くの飲食ブランドを傘下におく外食大手チェーン「株式会社」コロワイド(神奈川県横浜市、東証一部上場)を一代で築いた蔵人金男会長(74)は、横浜地裁の法廷で後悔のありったけを率直に述べた。 蔵人会長が被害総額約31億円を騙し取られたいわゆる「M資金」詐欺事件の公判が11月11日、横浜地裁で開かれた。今年3月に始まった詐欺事件の公判で、ついに蔵人会長が証人として法廷に現れるということで、マスコミも注目していた。 この事件は2020年6月11日、マック青井こと武藤薫被告(67)、X、Yらが、神奈川県警捜査2課に逮捕されたことで公になり、一部上場企業の有名経営者が巨額の金を騙しとられたと世間に驚きを与えた。 しかし初公判前に、XとYは不起訴になり、武藤薫被告だけが起訴された。そのため本稿では不起訴になった2人の名前は伏せて報じる。 検察の主張によれば、この事件は武藤被告が蔵人会長に、存在しない太平洋戦争の戦勝国が管理している2800億円の資金(基幹産業育成資金、これがいわゆるM資金)が提供されると誤信させ、17年春頃から18年秋に計10回かけて、約31億円を振り込みさせたというもの。刑事事件とは別に、蔵人会長は武藤被告、X、Yの3人に約31億円の返還請求を求める民事裁判も起こしている』、コロワイドは給食大手シダックスに買収提案をしていたが、争奪戦でイメージ低下を恐れて、9月14日に提案を撤回した。なお、本件とは直接関連はない。
・『社長も”M資金”への振り込みを知っていた  今回の蔵人会長が証言で明らかにした新事実をいくつか紹介する。 蔵人会長は2013年に神奈川県・葉山町に住んでいる大学教授から、イギリス人だというマック青井(武藤被告)を紹介された。武藤被告は日本人が着ないようなスーツやネクタイをまとい、「MI6(英国の秘密情報部)に所属していた」と話したそうだ。武藤被告から2800億円の融資話の説明を受けた蔵人会長は、武藤被告と雑談をする中で融資話を信じていったという。 蔵人会長は融資を受けられないまま、武藤被告、XとYに保管料や倉庫代などさまざまな名目をつけられて、計10回、31億円以上をズルズルと振り込まされたが、一部は「賄賂」と認識して振り込んでいたという。 「(蔵人会長の対応が遅いため)いろんなところから文句が出ていて、賄賂を払わないといけないと(武藤被告が)言うので数億円を複数回、振り込んだ」と蔵人会長は証言した。 一連の振り込みについて、コロワイドの野尻公平社長と相談していたことも明らかになった。蔵人会長が振り込みをしようとするたびに、野尻社長からは「騙されていないか」と指摘されたという。蔵人会長は「ATMの前に立ったことも振り込んだこと(経験)もないので、誰かに頼まないとだめ(振込手続きができなかった)」だったため、会社関係者の助力が必要だった様子。そのため野尻社長から「騙されている」と100回は注意されたわけだが、それでも野尻社長は蔵人会長が金を振り込むのを止めることはできなかった。 このように、驚いたことに一連の行為を社長をはじめとする会社関係者が承知していたことだ。 過去のM資金詐欺事件を振り返ると、一部上場企業の経営者らが個人的に詐欺に遭っていたのがほとんどだった。そのため、事件化し表沙汰にすることはせず、泣き寝入りするのが常だった。今回の蔵人会長のケースは、社長自身も承知していたうえに、社員が英語の詐欺文書を翻訳し、詐欺師たちの口座に振り込みも代行していたという珍しいケースといえる』、「過去のM資金詐欺事件を振り返ると、一部上場企業の経営者らが個人的に詐欺に遭っていたのがほとんどだった」、「今回の蔵人会長のケースは、社長自身も承知していたうえに、社員が英語の詐欺文書を翻訳し、詐欺師たちの口座に振り込みも代行していたという珍しいケース」、確かに「珍しいケース」だ。
・『資金源は会長自身の株売却益  また、一度に28億円もの大金を振り込んだことがあるが、この資金源は蔵人会長自身の株売却益だったことも明らかになった。蔵人会長は株を売却する際、証券会社から何に使うのかと聞かれて言い訳が立たずに困ったそうだが、それでも結局売却したようで、「一挙に売ると大変な騒ぎになるからちょこちょこ売った」と話した。 法廷では、蔵人会長が時おり武藤被告をにらみつけるように見ていたが、武藤被告は目線を合わせることなく、具合が悪そうに終始深くうなだれていた。当然ながら、2800億円の融資は実行されず、振り込んだカネも返金されることはなかった。そのため、蔵人会長は3人を刑事告発し、民事裁判を起こしたというわけだ。 今回の詐欺事件で検察が告訴したのは武藤被告のみ。だが、公判後、記者らの直撃に応じた蔵人会長は、「XとYは証拠が希薄だから公判は維持できないと検察は言った。しかし、これだけ調書取って、なにが証拠が希薄だ、バカ野郎って警察官も怒っているよ」とぶちまけ、裁判所を後にした。 今後、蔵人会長への弁護側証人尋問、XとYに対する証人尋問が予定されている。まだまだ何が飛び出すかわからない』、「資金源は蔵人会長自身の株売却益だった」、オーナー経営者の保有株売却は、証券会社や当局への届け出が必要になるので、いつでも可能な訳ではない。「蔵人会長」は「詐欺」に引っかかったということで、社内での立場は多少悪くなる筈だ。

次に、6月10日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した事件ジャーナリストの戸田一法氏による「「給付金詐欺」なぜ次々発覚?10億円奪った一家、2億円マルチ詐欺の国税職員ら…」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/304553
・『国から新型コロナウイルス対策の持続化給付金9億6000万円以上が詐取されたとみられる事件で、インドネシア当局は8日(日本時間)、グループ主犯格の谷口光弘容疑者(47)=詐欺容疑で指名手配=を不法滞在の疑いで逮捕した。近く日本へ移送され、警視庁捜査2課が全容解明を進める。持続化給付金を巡っては今月に入り、現職の国税局職員が絡む被害総額2億円の事件も発覚した。給付金は困窮する事業者を救済するため簡易な手続きで受け付けていたが、そこにつけ込んだ詐欺が横行。しかしここに来て、全国の警察が詐欺師たちを追い詰めている』、「給付金は困窮する事業者を救済するため簡易な手続きで受け付けていたが、そこにつけ込んだ詐欺が横行」、いくら「簡易な手続き」とは言ってもここまで不正を誘発うるとは「手続き」に問題がある。
・『虚偽申請数は約1800件セミナーなどで想定問答も指南  谷口容疑者の指名手配容疑は2020年6~8月、元妻の梨恵容疑者(45)や長男の大祈容疑者(22)、次男(21)=当時19歳のため氏名非公表=と共謀。兵庫県の50代男性会社員ら3人に受給資格がないのに申請させ、計300万円をだまし取ったとされる。 全国紙社会部デスクによると、谷口一家を中心にした詐欺グループは同5~9月、36都道府県で1800件近くの虚偽申請をし、総額9億6000万円以上をだまし取ったとされる。事件に関与したメンバーは、少なくとも十数人いるとみられる。 谷口容疑者らはSNSやセミナーを開いて虚偽の申請者を募集し、手続きを代行。メールやインターネットで「収入がゼロになった」などとうそを申告し、1件当たり十数~数十万円の手数料を受け取っていた。 申請者には「中小企業庁から『確定申告は自分で提出したか』という確認の連絡が来たら『そうだ』と答える」「事業所の場所を聞かれたら『自宅』と答える」などと、想定問答を指南していたという』、「手続きを代行」、「1件当たり十数~数十万円の手数料を受け取っていた」、割のいいビジネスだ。
・『ずさんな手口に事務局が違和感 警察に情報提供  しかし次第に、給付金の申請時に記載する確定申告書の収入額で同じ金額を使い回すように。申請が増え、対応がずさんになっていったとみられる。違和感を覚えた持続化給付金事務局が20年8月、警視庁に情報提供していた。 谷口容疑者はインドネシアで石油採掘事業を行う会社の社長を名乗り、犯行当時、知人らと出資を巡るトラブルがあったという。前述のデスクは「ほかの事業でもトラブルを抱え、資金繰りに困っていたらしい。詐欺に手を染めた理由は、そこではないか」と推測した。 谷口容疑者は同10月に出国後、インドネシアの首都ジャカルタなどを拠点に活動。23年6月までの就労許可を取っていたが、事件を受けて日本政府がパスポートを失効させ、インドネシア側も就労許可を取り消していた。 逮捕されたのはスマトラ島の山村で、1人で何度か訪問。現地の住民に対し、川魚の養殖事業に投資を約束していたという。日本側の要請を受けたインドネシア入管当局が捜査し、この村にいるとの目撃情報を得て、警察と合同で逮捕した。 ただし、容疑は「同国に滞在資格がない」というもので、日本で言う入管難民法違反になり、詐欺ではないことをお断りしておく』、「谷口容疑者はインドネシアで石油採掘事業を行う会社の社長を名乗り、犯行当時、知人らと出資を巡るトラブルがあった」、もともと山っ気があったようだ。
・『投資名目で不正受給に勧誘 マルチ的手法で被害拡大  もう一つ注目されたのは、警視庁少年事件課が東京国税局鶴見税務署職員の塚本晃平容疑者(24)=逮捕は1日付=ら計9人を摘発していた事件だ。 ほかに摘発されたのは、塚本容疑者と熊本の小中学校の同級生で、東京の簿記専門学校や税務大学校でも同期だった元東京国税局職員の中村上総被告(24)=起訴済み=、元証券会社社員の中峯竜晟被告(27)=同=ら。塚本容疑者と中村被告が税務の知識を悪用していたのは言うまでもない。 塚本容疑者の逮捕容疑は20年8月、当時17歳だった男性(19)=詐欺容疑で書類送検=を個人事業主と偽り、給付金100万円をだまし取った疑いだ。9人は高校生や大学生に「投資すれば『個人事業主』になるから、給付金を申請できる」などとうそをついて、不正受給に勧誘。 2割を手数料として徴収し、残る8割を「200%の利益が出る」などと言って、給付金を暗号資産(仮想通貨)関連事業への投資名目で預かっていた。さらには「会員を増やせば別にボーナスを出す」と誘い、マルチ的手法で規模を拡大。計約200人に不正受給させ、詐取した総額は約2億円に上るとみられる。 このうち約4000万円は中峯被告やアラブ首長国連邦(UAE)のドバイに出国した30代の男ら主犯格の4人で分配し、残りは30代男が投資名目で受領していたという。実際に投資に使われたのかは不明で、持ち逃げした可能性もある』、「約200人に不正受給させ、詐取した総額は約2億円に上る」、かなりの規模だ。
・『「国をだました詐欺事件」として全国の警察が摘発に総力  そもそも持続化給付金制度はコロナ禍を受けた経済対策で、緊急性から中小企業へのスピード支給を優先。中小企業庁は424万件、総額約5兆5000億円を支給したが、申請方法や審査が甘い「性善説」の制度で、不正が相次いだと指摘されている。 二つの事件以外にも摘発が相次ぎ、警察庁によると5月末現在、全国で約3600人が摘発され、立件総額は約32億円近くに上る。これは「国をだました詐欺事件」という点で悪質であり、最優先事項と位置付けて全国の警察が摘発に総力を挙げているからだ。 知能犯罪と言えば「捜査第2課」をイメージされると思うが、前述した通り、国税局職員らが立件された事件は「少年事件課」が担当した。これは逮捕容疑になった不正な申請が「当時17歳」など、多くが少年だったためとみられるが、こうした組織的かつ大規模な詐欺事件に捜査2課以外が着手するのは異例だ。 詳しくは確認できていないが、谷口容疑者らの事件では1800件近い虚偽申請が確認されており、捜査2課と手分けしたのかもしれない。 昨年4月、警察庁は「オレオレ」など特殊詐欺を担当する部署を、これまでの刑事局捜査2課から同局組織犯罪対策部暴力団対策課に移管。これは組織犯罪に効果的に対処する意図だったが、同じようにシフトした全国の警察本部の捜査2課が、給付金詐欺に集中できているという側面もあるようだ』、「全国で約3600人が摘発され、立件総額は約32億円近くに上る」、「「国をだました詐欺事件」という点で悪質」、その通りだ。
・『不正受給発覚は時間の問題 身に覚えあれば自主的申告を  一般的に詐欺事件は、「だまし取る意図」という目に見えないものを立証しなければならないが、給付金詐欺は複雑なスキームを駆使した手口ではなく、確定申告書という住所や氏名など個人情報も満載された「詐欺の証拠」をご丁寧に提出しているわけだ。 筆者は現役の社会部記者時代、経済事件などの取材が多かったこともあり、法人名さえ特定できれば事業の実態があるのか、それともダミー会社かは、それほど苦労せずに調べることはできた。 詐欺事件のエキスパートである捜査員が、中小企業庁から確定申告書(の控え)の提出を受けているのであれば、事業の実態があったかどうかなど、いとも簡単に解明されるはずだ。不正受給者は既にロックオンされているか、いずれ時間の問題と覚悟したほうがいい。 経済産業省のホームページには「不正受給及び自主返還について」と銘打って「現在、不正受給の調査を行っております。不正は絶対に許しません」と警告。 一方「給付要件を満たさないにもかかわらず、誤って申請を行い、受給してしまった場合などについては、自主的な返還を受け付けています」とも呼びかけ、自ら申し出れば刑事告発などはしない方針だ。 詐欺罪の時効は7年。逃げ切るのは至難の業で、身に覚えのある方には自主的な申告をオススメしたい』、「捜査員が、中小企業庁から確定申告書(の控え)の提出を受けているのであれば、事業の実態があったかどうかなど、いとも簡単に解明されるはずだ。不正受給者は既にロックオンされているか、いずれ時間の問題と覚悟したほうがいい」、「逃げ切るのは至難の業で、身に覚えのある方には自主的な申告をオススメしたい」、同感である。

第三に、6月20日付け文春オンライン「〈証拠文書、LINE入手〉「2000万円どころじゃない」加賀の名門旅館「雇用調整助成金」巨額不正を従業員が悲痛告発」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/55304
・『「皆様に大変なご心配とご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます」 6月15日、突如として開いた会見で深々と頭を下げたのは、石川県加賀市・山代温泉で旅館「瑠璃光」「葉渡莉」を経営する「よろづや観光」の3代目・萬谷浩幸社長だ。 「コロナ禍の約15カ月にわたる休業期間中、受給した雇用調整助成金のうち約2000万円が不正受給に当たると労働局から指摘を受けた。故意ではない。すみやかに返還し、再発防止に努めたい」 「不正受給の認識はなかった」と強調する社長。実はその3日前、「週刊文春」は社長を直撃していた。取材から浮かび上がるのは、社長の“公式見解”とはかけ離れた、“巨額不正”だった。 「よろづや観光」は、約250人の従業員を抱え、来秋公開の小芝風花主演の映画『レディ・カガ』のロケ地にもなるほど、加賀を代表する名門旅館の一つだ。そんな名宿による”不正受給”は、内部告発によって、露見することになった。今春、現役社員たちが石川労働局に告発したのだ。幹部のA氏が語る』、「約250人の従業員を抱え」、「加賀を代表する名門旅館の一つ」で「雇用調整助成金のうち」「不正受給」が「2000万円」以上、とは酷い事件だ。
・『「タイムカードを押さぬよう徹底されていた」  「コロナ禍で約15カ月の休館期間中も、約20名いる幹部は補助金申請や通販業務、館内整備等に追われていた。月の出勤日数はコロナ以前並の22日前後でした。しかし、そのほとんどが“休業日”としてタイムカードを押さぬよう徹底されていたのです。中には会社の指示を無視してタイムカードを押し続けた社員もいたため、会社が作成した時間外申請書と齟齬が生じ、労働局にとって動かぬ証拠となった。ただ、これは氷山の一角。不正の総額は2000万円どころではないのです」 発端は2020年5月、幹部会議で示された萬谷社長の方針にあった。社長は、「お金は雇調金が支給されるわけだから、休んでいても仕事しても同じ。ならぼんやり休んでいることないよね」 と、明言。さらに「休業中も精力的に取り組め」と付け加えたという。何が問題なのか。雇調金を所管する厚労省の担当者に聞いた。 「雇調金は、コロナ等で休業を余儀なくされた場合、安易な解雇に走らず雇用維持してもらうため、休業手当の負担を国が助成する制度です。旅館が休館していても従業員が他の業務に従事していれば当然『休業』ではないので『不正受給』となります。仮に助成金をアテにして出勤を指示し、架空の休業を申告していたのであれば、言語道断です」 従業員に“休業出勤”を指示する一方、コロナが徐々に落ち着き旅館が再開すると、今度は現場の過剰な負担が浮き彫りとなった。同社社員のB氏が語る』、「助成金をアテにして出勤を指示し、架空の休業を申告していたのであれば、言語道断」、極めて悪質だ。
・『コストカットは“温泉”にも…  「会社は雇調金を少しでも多く受け取るため、今度はなるべく多くの社員に休業を割り当てて出社人数を制限したのです。例えば清掃は1部屋を複数人で30分かけていたが、1人で15分以内となった。チェックインまで休憩は無く、消毒作業をしたら間に合わないので、消毒液を清掃作業には持ち込まず、消毒は省いています」  名宿のコストカットは、旅館の生命線である温泉にも及んだ。 「人件費を抑えようと出勤人数を減らしているので、現場はいつも人手不足。温泉では感染症を防ぐために温泉法に基づいて塩素濃度を0.4~1.0mg/L未満に保つ必要がありますが、よろづやでは適切な塩素管理をする人員を配置していないため、0mg/Lとなっていることが多い。今年1月、保健所の指導を受けても改善されませんでした」(B氏) そうして積み上げた不正受給額は、相当な額にのぼるという。 「幹部の“休業出勤”による不正受給だけでも3000万円は下らない。それ以外にも一般社員による“休業出勤”やパート・アルバイトへの休業手当未払い分もある。不正が認定された場合の返還額には不正以降の支給額全額に、不正受給額の2割に相当する違約金も加わります。また、他の助成金も5年間は取得できない」(同社社員のC氏) 告発者は労働局の担当者にこう念を押されたという。 「返還額は億単位にのぼるとみられ、会社が潰れかねないが、覚悟はありますか」 今回、従業員たちが告発を決意した背景には、社長への根深い不信感があった。 「有給休暇は長年取得できない状況が続き、残業代の未払いも横行していた。昨年、数回にわたり労働基準監督署が是正を求め、やっと5日の法定有給が確保されました。ただその後も社長は、5日を超える有給は『安易に与えるな』と発言し、有給の承認は社長の決裁を経るよう幹部に指示していました。労働契約書に記載されているはずの賞与も、私が知る限り支給されたことは一度もない。毎年15人程採用する新入社員も、3年後には5名程しか残りません。他にも、調理場でセクハラ被害に遭った社員が民事訴訟を検討しているなど、従業員を塵芥のようにしか考えていない社長に対する不満は頂点に達しているのです」(前出のA氏) 6月12日、一連の疑惑を萬谷社長に直撃した。(Qは聞き手の質問、Aは社長の回答)』、「温泉では感染症を防ぐために温泉法に基づいて塩素濃度を0.4~1.0mg/L未満に保つ必要がありますが、よろづやでは適切な塩素管理をする人員を配置していないため、0mg/Lとなっていることが多い」「保健所の指導を受けても改善されませんでした」、肝心の「温泉」でも不正とは恐れ入る。「告発者は労働局の担当者に・・・「返還額は億単位にのぼるとみられ、会社が潰れかねないが、覚悟はありますか」、「返還額は億単位」とは本当に巨額だ。 
・『「反省もあって…」  Q:休業中の社員を出社させていたと聞いている。 A:「それはない。あの……調査中です」 Q:休館中も幹部社員は通常通り働いていましたよね。 A:「そういう認識はないです」 Q:ではなぜ労働局が調査しているのか。 A:「会社側の認識とちょっとズレがあるので」 Q:十分なサービスもできないと社員が嘆いている。 A:「GoToの時に人手が足りなくなって、反省もあって、人数を増やしている」 会社に改めて質問状を送ると、一部回答を翻し、概ね次のように答えた。 「不正受給を行った認識はないが、タイムカードと時間外申請書との不一致により受給した金額(2000万円程度)があることは事実。返還したい。(課長以上が出勤していた件は)休業日には出勤しないというルールの徹底不足であり深く反省しています。(清掃業務は)除菌作業を行えないような状況とは考えていません。(有休は)全社員取得出来ている。賞与は赤字のため支給出来ていません」 あくまで「不正」ではないと言い張っていた社長。C氏は嘆息する。 「そもそも、タイムカードの記録に基づいて作られるのが時間外申請書。不一致が生じているのは、会社の担当者が故意に操作し、実際にはあった“休業出勤”をなかったことにしていたからに他なりません。会社の指示に従わずにタイムカードを押し続けた社員がいたことから発覚したもので、実際にはタイムカードにも記録されていない膨大な“休業出勤”が存在するということです」 「お客さんの笑顔が見たい」とよろづやに就職したというB氏は続ける』、「社長」の主張は余りに酷い。「タイムカードの記録に基づいて作られるのが時間外申請書。不一致が生じているのは、会社の担当者が故意に操作し、実際にはあった“休業出勤”をなかったことにしていたからに他なりません。会社の指示に従わずにタイムカードを押し続けた社員がいたことから発覚したもので、実際にはタイムカードにも記録されていない膨大な“休業出勤”が存在するということです」、ここまで大規模な不正がよくぞ行われたものだ。
・『「悪いという認識はありました。ですが…」  「入社した頃は親孝行で家族を招待しようと思っていたのですが、今は、絶対に泊まらせたくない……。笑顔どころかお客さんの怒った顔や悲しい顔を見るのが本当に辛いんです。社長はCMや映画に注力していますが、見栄えにしか興味がない。『質より効率を重視しろ』が口癖です。きちんとしたサービスもさせてもらえず、不正を繰り返す。このままでは誇りを失ってしまう。社長にはきちんと責任を取って頂きたい」 別の幹部社員のD氏も付言する。 「悪いことは悪いという認識はありました。ですが本当にワンマンの会社なので、社長がこれでいいんだといえば、これでいいんですねと……。社長をずっと見てきましたけど、たぶん今回も反省しないのではないか」 従業員たちの告発に対して、会見でも「故意ではなかった」と繰り返した社長。労働局は、既に証拠資料の押収と従業員の聴取を終えている。聴取では複数の従業員が不正受給を認める供述をしており、労働局がどう対応するのか注目される』、社長側は政治家ルートなどを通じて「労働局」などに働きかけているのだろうが、日本は法治国家である以上、こんな大規模な不正はきちんと指摘して是正させるべきだろう。
タグ:「社長」の主張は余りに酷い。「タイムカードの記録に基づいて作られるのが時間外申請書。不一致が生じているのは、会社の担当者が故意に操作し、実際にはあった“休業出勤”をなかったことにしていたからに他なりません。会社の指示に従わずにタイムカードを押し続けた社員がいたことから発覚したもので、実際にはタイムカードにも記録されていない膨大な“休業出勤”が存在するということです」、ここまで大規模な不正がよくぞ行われたものだ。 肝心の「温泉」でも不正とは恐れ入る。「告発者は労働局の担当者に・・・「返還額は億単位にのぼるとみられ、会社が潰れかねないが、覚悟はありますか」、「返還額は億単位」とは本当に巨額だ。 「助成金をアテにして出勤を指示し、架空の休業を申告していたのであれば、言語道断」、極めて悪質だ。 「捜査員が、中小企業庁から確定申告書(の控え)の提出を受けているのであれば、事業の実態があったかどうかなど、いとも簡単に解明されるはずだ。不正受給者は既にロックオンされているか、いずれ時間の問題と覚悟したほうがいい」、「逃げ切るのは至難の業で、身に覚えのある方には自主的な申告をオススメしたい」、同感である。 「全国で約3600人が摘発され、立件総額は約32億円近くに上る」、「「国をだました詐欺事件」という点で悪質」、その通りだ。 「約200人に不正受給させ、詐取した総額は約2億円に上る」、かなりの規模だ。 「谷口容疑者はインドネシアで石油採掘事業を行う会社の社長を名乗り、犯行当時、知人らと出資を巡るトラブルがあった」、もともと山っ気があったようだ。 「手続きを代行」、「1件当たり十数~数十万円の手数料を受け取っていた」、割のいいビジネスだ。 「給付金は困窮する事業者を救済するため簡易な手続きで受け付けていたが、そこにつけ込んだ詐欺が横行」、いくら「簡易な手続き」とは言ってもここまで不正を誘発うるとは「手続き」に問題がある。 戸田一法氏による「「給付金詐欺」なぜ次々発覚?10億円奪った一家、2億円マルチ詐欺の国税職員ら…」 ダイヤモンド・オンライン 「資金源は蔵人会長自身の株売却益だった」、オーナー経営者の保有株売却は、証券会社や当局への届け出が必要になるので、いつでも可能な訳ではない。「蔵人会長」は「詐欺」に引っかかったということで、社内での立場は多少悪くなる筈だ。 「過去のM資金詐欺事件を振り返ると、一部上場企業の経営者らが個人的に詐欺に遭っていたのがほとんどだった」、「今回の蔵人会長のケースは、社長自身も承知していたうえに、社員が英語の詐欺文書を翻訳し、詐欺師たちの口座に振り込みも代行していたという珍しいケース」、確かに「珍しいケース」だ。 コロワイドは給食大手シダックスに買収提案をしていたが、争奪戦でイメージ低下を恐れて、9月14日に提案を撤回した。なお、本件とは直接関連はない。 社長側は政治家ルートなどを通じて「労働局」などに働きかけているのだろうが、日本は法治国家である以上、こんな大規模な不正はきちんと指摘して是正させるべきだろう。 「約250人の従業員を抱え」、「加賀を代表する名門旅館の一つ」で「雇用調整助成金のうち」「不正受給」が「2000万円」以上、とは酷い事件だ。 文春オンライン「〈証拠文書、LINE入手〉「2000万円どころじゃない」加賀の名門旅館「雇用調整助成金」巨額不正を従業員が悲痛告発」 詐欺 日刊ゲンダイ「「スケベ心で騙された」M資金詐欺で31億円被害のコロワイド会長が証言した驚愕の新事実」 (その1)(「スケベ心で騙された」M資金詐欺で31億円被害のコロワイド会長が証言した驚愕の新事実、「給付金詐欺」なぜ次々発覚?10億円奪った一家 2億円マルチ詐欺の国税職員ら…、〈証拠文書 LINE入手〉「2000万円どころじゃない」加賀の名門旅館「雇用調整助成金」巨額不正を従業員が悲痛告発)
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幼児虐待(その9)(児童相談所職員と虐待親の世に知られていない姿 短編映画「ほどけそうな、息」が伝えるリアル、《静岡3歳女児バス置き去り》口癖は「オレは知らない」当日運転の園長(73)が犯した“ええからげん”ではすまぬ「重大過失」【地元の名士のもう一つの顔】、「3歳園児バス置き去り」過熱報道に欠けた視点 同じ事件を二度と起こさないために何が必要か) [社会]

幼児虐待については、7月27日に取上げた。今日は、(その9)(児童相談所職員と虐待親の世に知られていない姿 短編映画「ほどけそうな、息」が伝えるリアル、《静岡3歳女児バス置き去り》口癖は「オレは知らない」当日運転の園長(73)が犯した“ええからげん”ではすまぬ「重大過失」【地元の名士のもう一つの顔】、「3歳園児バス置き去り」過熱報道に欠けた視点 同じ事件を二度と起こさないために何が必要か)である。

先ずは、8月1日付け東洋経済オンラインが掲載したフリージャーナリストの有馬 知子氏による「児童相談所職員と虐待親の世に知られていない姿 短編映画「ほどけそうな、息」が伝えるリアル」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/606495
・『千葉県内の元児童相談所の職員が7月、長時間労働でうつになり退職せざるをえなくなったとして、児相を所管する同県に慰謝料などを求める訴訟を起こした。職員の忙しさや人手不足が報じられる一方、虐待で子どもの命が奪われるたびに「児相は何をしていたんだ」という批判の声も巻き起こる。しかし実際に「何をしていた」かは、守秘義務の壁もあり、外からは見えづらい。 そんな「児相のリアル」を伝えようとしたのが、短編映画「ほどけそうな、息」の監督・脚本を務めた小澤雅人さんだ。小澤さんと、映画制作に協力した現場の職員たちに、児相職員や「加害」親の抱える苦悩について聞いた』、「実際に「何をしていた」かは、守秘義務の壁もあり、外からは見えづらい」ので、「児相のリアル」を、「短編映画」で「伝えようとした」とはいい試みだ。
・『職後3年で9割が職場を去る心折れる若手職員  小澤さんは「児相は虐待事件が起きるたびに悪者扱いされてきたものの、内情はあまり知られていません。職員たちが、どのような思いで親子と向き合っているかを伝えようと考えました」と、制作の動機を語る。 映画の主人公、カスミは、児相に入職して2年目の若手職員だ。小澤さんは制作にあたり、児相で働く何人もの若手・中堅職員に話を聞いた。最も驚かされたのは、若手の離職率の高さだという。 職員たちは口々に「同期の9割が入職1~3年で、離職するか異動する」「20代半ばまで残れば『中堅』扱い」「10年勤務できる人はかなりまれ」と語った。 原因の1つは忙しさや長時間労働で、「昼食も満足に取れない日がある」という訴えは、職員に共通していた。保護した子どもたちが滞在する、一時保護所の運営も職員の仕事だ。報道によれば千葉県を提訴した元職員は、一時保護所の宿直中、個室で仮眠も取れなかったと訴えている。映画の中でも、カスミのデート中に仕事の電話が鳴り、深夜に残業するなどの忙しさが描かれている。 ただ離職の最も大きな要因は、忙しさよりも精神的な負担の大きさではないかと、小澤さんは推測する。) 「中には『帰宅して家が無音だと、担当する親子のことで思い悩んでしまうので、つねにテレビをつけっ放しにして気を紛らわせている』という人もいました。24時間、仕事のことを考えずにはいられないとは、なんと大変な職業だろうと思いました」 日常業務も、精神を削られることの連続だ。親から、そして時には子ども自身からも必死で抵抗されながら、強制的に両者を引き離す。「子どもを返せ」と迫る親と信頼関係を築き、生活の立て直しを支える。両親だけでなく行政の支援機関や病院、学校、保育園、祖父母ら関係者との調整も必要だ。多くの若者は「子どもを救いたい」と考えて入職するが、子どものケアは仕事のごく一部なのだ。 「自分は何のために働いているのか」と悩んでも、守秘義務や「内情を知らない人にはわかってもらえないだろう」という諦めから、友達や家族に相談もできない。孤立した末に、彼らは心折れ、職場を去るのだという』、「多くの若者は「子どもを救いたい」と考えて入職するが、子どものケアは仕事のごく一部なのだ。 「自分は何のために働いているのか」と悩んでも、守秘義務や「内情を知らない人にはわかってもらえないだろう」という諦めから、友達や家族に相談もできない。孤立した末に、彼らは心折れ、職場を去る」、せっかくの熱意が満たされずに「職後3年で9割が職場を去る心折れる若手職員」、もったいない限りだ。
・『一時保護所は定員の「140~150%」人手不足で管理的に  映画制作に協力した児相職員、川上仁さん(仮名)にも話を聞いた。川上さんは首都圏の児相で管理職をしているが、施設の大半は、高い離職率に加えて虐待相談の急増で慢性的な人手不足に陥り、家庭を継続的にフォローする余力に乏しいという。 「緊急性の高い初動対応が一段落し、人間関係を築いた後は、家庭からの連絡待ちにならざるをえません。どうしても、つぎつぎ出てくる新規案件にエネルギーを注ぐ必要があるからです」 人手不足は一時保護所の運営にも、影響を及ぼしていると指摘する。 「首都圏の保護所は、つねに入所率140~150%と定員オーバー。少数の職員で施設を切り回すため、事故を防ぐための『管理』が重視され、1人ひとりの子どもに向き合う余裕を持てないという構造的問題があります」と、川上さん。 一部施設にはかつて、管理を優先するあまり「入所者は目を合わせてはいけない」「違反者は保護所の庭を数十周罰走」といった理不尽な規則もあったほどだ。さすがに現在は多くが撤廃されているという。 政府は2019年、児童福祉司の2000人増員をはじめとする児相の体制強化を打ち出した。しかし、せっかく採用した職員も、離職してしまっては元の木阿弥だ。川上さんは職員の待遇改善とともに、若手の孤立解消の取り組みなども必要だと訴える。 「多くの若手職員が、仲間と悩みを共有したい、ほかの児相の仕事ぶりを知りたい、と願っています。職場側が広域での合同研修などを通じて、ネットワークづくりをサポートする必要もあると思います」』、「「首都圏の保護所は、つねに入所率140~150%と定員オーバー。少数の職員で施設を切り回すため、事故を防ぐための『管理』が重視され、1人ひとりの子どもに向き合う余裕を持てないという構造的問題があります」、「多くの若手職員が、仲間と悩みを共有したい、ほかの児相の仕事ぶりを知りたい、と願っています。職場側が広域での合同研修などを通じて、ネットワークづくりをサポートする必要もあると思います」、なるほど。
・『「キーバーソン」を見誤ると、虐待は深刻化  目黒区の船戸結愛さん事件(2018年)、千葉県野田市の栗原心愛さん事件(2019年)など、悲惨な虐待死事件が起きるたびに、再発防止の重要性が叫ばれてきた。しかし今年6月にも、大阪府富田林市で2歳女児が家に放置されて死亡し、祖母らが保護責任者遺棄の疑いで逮捕された。岐阜県、広島県、神奈川県など多くの都道府県で、2021年度の虐待相談対応件数も過去最多を更新している。 なぜいたましい事件はなくならないのか。川上さんは児相側が「家庭を支配するキーパーソン」を見誤ったとき、事態が深刻化するリスクが高まると指摘する。 結愛ちゃん事件で児相が主にアクセスしていたのは、虐待を加えていた義父ではなく母親だった。 「父親は日中働いていることが多く、物理的に会いづらいという事情もあります。妻が夫に支配されている場合、児相職員が母親を通じて家庭を改善しようとすると、母親をさらに孤立させ、追い込んでしまう恐れもあります」 また心愛さん事件では、児相側は一時保護した心愛さんを祖父母宅に帰したが、加害者である父親が勝手に自宅へ連れ帰った。児相は女性比率が高いこともあり、特にキーパーソンが攻撃的な父親の場合、職員はひるんでしまいがちだという。 こんなときは経験豊富な児童福祉司(スーパーバイザー)がキーパーソンを見極め、接触するよう担当職員を指導する必要もあると、川上さんは語る。 「私たち職員は、面談の間父親に怒鳴られるだけですが、怒りが子どもに向けられたら、身体や命が危険にさらされかねません。キーパーソンに接触し『つねに見守っていますよ』という姿勢を示すことで、加害の抑止効果も期待できます」) ただ加害親は決して、理解不能な「モンスター」ではないとも、川上さんは強調する。多くは社会へのゆがんだ認識や、過去に受けた暴力のトラウマ、貧困などによって「人生がうまくいかない」という生きづらさを抱えているのに、他人を頼れない人たちなのだ。 「SOSを出せない親御さんに『お困りですよね』と声をかけ、抱える問題の解消を手助けするのが、私たち児相職員の仕事です」と、川上さんは話す。 映画にも飲酒の問題を抱える母、シノブが登場する。カスミらが家を訪れると、シノブはごみの散乱する部屋で酒を飲み、カスミたちにも反抗的な態度を示す。 外から見れば、シノブは子どもがいるのに掃除1つできず、酒も断てない「鬼母」かもしれない。しかし監督の小澤さんは「母親を悪者扱いするつもりは最初からなく、困りごとを抱えた人として描こうと考えていた」と言う』、「経験豊富な児童福祉司(スーパーバイザー)がキーパーソンを見極め、接触するよう担当職員を指導する必要もある」、「「SOSを出せない親御さんに『お困りですよね』と声をかけ、抱える問題の解消を手助けするのが、私たち児相職員の仕事です」、人生経験が浅い「職員」がやるのは難しそうだ。
・『加害の母親も苦しんでいる  小澤さんは過去にも児童虐待や性暴力などを、作品のテーマに取り上げてきた。数年前からは、川上さんらが開く勉強会などにも参加し、虐待についての学びも深めた。その中で「加害の母親も苦しんでいる。児相の介入で苦しみが和らげば、子どもとの関係も明るい方へ進み始めるはずだ」と考えるようになったからだ。 また小澤さんは「本来は父親たる男性の責任にも、目を向けるべきだ」とも訴えた。 「子どもに手を上げる母親の陰には、孤立した育児を押し付ける父親の存在があるかもしれない。もし子どもが死んだら、彼らは被害者として振る舞う可能性すらあります。映画を見た人には、表面的な『虐待事件』報道の裏に何があるのかも、考えてみてほしい」 「ほどけそうな、息」は、9月3日から都内の映画館「ポレポレ東中野」を皮切りに、随時上映される予定だ』、「子どもに手を上げる母親の陰には、孤立した育児を押し付ける父親の存在があるかもしれない。もし子どもが死んだら、彼らは被害者として振る舞う可能性すらあります。映画を見た人には、表面的な『虐待事件』報道の裏に何があるのかも、考えてみてほしい」、その通りだ。

次に、9月8日付け文春オンライン「《静岡3歳女児バス置き去り》口癖は「オレは知らない」当日運転の園長(73)が犯した“ええからげん”ではすまぬ「重大過失」【地元の名士のもう一つの顔】」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/57227
・『「園長になると聞いた時は、『あいつが園長? 大丈夫なのか?』と思いました。昔からの知人はみんな心配していましたね。あいつの父親は、幼稚園の他にもお茶の工場を経営する金持ちで、いわば立義(増田立義園長)はボンボン。子供の頃からズボラな性格だったので、水戸黄門の『うっかり八兵衛』ならぬ『ええからげん(=いい加減)八兵衛』と呼ばれていました。そんな性格が災いしたのか、まさかこんな事故が起こるとは……」(増田園長の知人)』、「『ええからげん八兵衛』と呼ばれていました、「子供の頃からズボラな性格」が高齢者になっても現われたとは・・・。
・『炎天下のバス車中に取り残されて…  9月5日午後2時10分ごろ、静岡県牧之原市の認定こども園「川崎幼稚園」の通園バス内で、河本千奈ちゃん(3)が意識を失っているのを幼稚園の職員が発見した。千奈ちゃんは病院に搬送されたが、間もなく死亡が確認された。 死因は熱中症とみられている。バスの運転手だった増田園長(73)らが園児を降車させる際、千奈ちゃんを車中に残したままであることに気づかず、3歳の女の子を5時間以上も通園バスの中に閉じ込めてしまったのだ。全国紙社会部記者が解説する。 「バスは増田園長が運転し、70代の女性職員も乗車していました。千奈ちゃんを含む6人の園児を乗せ、園には5日午前8時50分ごろ到着したようです。この日の牧之原市の最高気温は30.5度で、まさに蒸し風呂状態。午後2時10分ごろ、園児を帰宅させるため職員がバスに乗って発見した時には、千奈ちゃんは既に意識も呼吸もなく、体温も非常に高い状態でした。車内には千奈ちゃんが飲み干したとみられる空の水筒も見つかったようです」』、「6人の園児」、「増田園長が運転し、70代の女性職員も乗車」、それでもケアレスミスが起きたようだ。
・『悲劇が起こった川崎幼稚園の地元での評判は…  昨年の夏、福岡県の保育園で送迎バスに取り残された5歳の園児が命を落としてしまった事故が思い起こされる。この時は、保育園側が降車時の確認を怠っていたことが原因だったことが分かっているが、今回も同様の「過失」があったと疑われている。 「出欠管理は保護者が登園時にQRコードを端末にかざして確認するシステムでしたが、バスで通う園児は保護者がいないため職員がまとめて出席扱いにするのが慣例でした。バスに乗っていた園長と女性職員は「バスを降りる園児の数は、相手が確認すると思っていた」と言い訳しているようです。降車時の点検も出欠確認も杜撰だった可能性があり、静岡県警は業務上過失致死容疑も視野に捜査を進めています」(同前) 悲劇が起こった川崎幼稚園は1962年に認可を受けた歴史ある幼稚園だ。1976年に園長になった父の後を継ぎ、2002年に増田園長が園長に就任している。園は幼い子供で賑わい、近隣住民たちにとっては癒しの光景だったようだ。園の評判は決して悪くない』、「園の評判は決して悪くない」ようだ。
・『近所の評判は悪くなかった  「可愛い子供がキャーキャーいいながら遊ぶ姿を毎日見かけました。一人ひとりの面倒を丁寧に見ている印象で、保育士さんも優しく子供に声をかけていましたよ。町内の行事で園長を見かけた時には、『子供は宝です。大切に育てたい』と熱弁をふるっていたのを覚えています」 住民たちは駐車場の草むしりをしたり、気さくに挨拶する園長の姿をしばしば目にしている。園長の人柄もあってか、川崎幼稚園に信頼を寄せる家庭も多かったようだ。 (園児の一日のスケジュール(川崎幼稚園HPより)はリンク先参照)  「家が近い子供は、両親や祖父母が手を引いて幼稚園に連れていきますが、最近は遠くから通う子供が増え、バスで送り迎えする家庭が増えました。千奈ちゃんのお宅は近くにお住まいですけど、お母さんが妊娠したことを機に、送り迎えが大変だからバスを利用するようになったと聞いています。それがこんな事故につながってしまうなんて、言葉も出ません」(近隣住民) だが一方で、増田園長を古くから知る友人は、以前から園の運営について心配していたという。増田園長の幼少期からの知人が話す』、「千奈ちゃんのお宅は近くにお住まいですけど、お母さんが妊娠したことを機に、送り迎えが大変だからバスを利用するようになったと聞いています。それがこんな事故につながってしまうなんて、言葉も出ません」、全く不運という他ない。
・『園長の口癖は「俺は知らない」  そんなことは言ってない」  「事故を聞いたとき、率直なところ『やってしまったな』と思いました。立義(増田園長)の父親は海軍兵学校の出身で、予科練の帽子を被り、竹刀を片手に『親を大事にしろ』『いじめはダメだ』と子供たちを厳しく指導していました。一方の立義はボンボン気質。性格は親父とは正反対で、芯が全くない。口癖は『俺は知らない』『そんなことは言ってない』。いい加減な性格だから、子供の頃は『ええからげん八兵衛』と呼ばれていました」 2002年に川崎幼稚園の園長に就任した増田園長は、近隣の幼稚園を買収するなど経営拡大に熱を上げていた。だが手を広げすぎるあまり、肝心の子供の扱いや園の管理がなおざりになるのではないかという懸念の声は少なくなかった。 「増田さんは近隣の幼稚園をどんどん自分の傘下に収め、ついには隣町の幼稚園にまで手を出そうとしました。『そこまでやらなくていいんじゃないか』と隣町の議員が怒ったこともありましたよ。市議会や役場の職員のなかでも、『あんなに拡大して大丈夫か』『職員が足りなくなるに決まっている』と不安視する声はたくさんありました。ただ、地元の議員にうまく根回しをしたからか、結局は認められることになりましたが……」(地元関係者)』、「ボンボン気質・・・芯が全くない。口癖は『俺は知らない』『そんなことは言ってない』、「いい加減な性格」、経営面では「近隣の幼稚園を買収するなど経営拡大に熱を上げていた。だが手を広げすぎるあまり、肝心の子供の扱いや園の管理がなおざりになるのではないかという懸念の声は少なくなかった」。
・『バスを塗りつぶす“ペインティング”  増田園長は2012年に園児を集めて静岡県警牧之原署と共同で交通安全パレードを実施しているほか、2014年には交通安全活動に尽力したとして、榛原地区安全運転管理協会から表彰状を受け取ったりするなど、“地元の名士”として知られていた。前述の知人が続ける。 「交通安全パレードも含めて、立義はパフォーマンスをするのが得意でした。今回、千奈ちゃんが死亡したバスにある窓ごと車体を塗装する“ペインティング”も、周辺地域で始めたのは、川崎幼稚園が最初だったと思います。車内が見えなくなってしまって、見送るお母さんが可哀そうだなと思っていました。あくまで可能性ではありますが、このペインティングがなければ、助けを呼ぶ千奈ちゃんに気付いた人もいて、こんな悲劇は生まれなかったのかもしれません」 炎天下のバスに取り残され、失われてしまった3歳女児の命。管理体制に不備はなかったのか。“うっかり”で済む事故ではない』、「バスにある窓ごと車体を塗装する“ペインティング”」、安全性を度外視して、目立つことだけを狙ったもので、「パフォーマンスをするのが得意」な性格が表れたものdろう。

第三に、9月9日付け東洋経済オンラインが掲載したコラムニスト・人間関係コンサルタント・テレビ解説者の木村 隆志氏による「「3歳園児バス置き去り」過熱報道に欠けた視点 同じ事件を二度と起こさないために何が必要か」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/617331
・『静岡県牧之原市の認定こども園「川崎幼稚園」に通う3歳の女児が通園バスの車内に取り残され、熱中症で亡くなった事件から4日、園による記者会見から2日が過ぎた今なお、さまざまな報道が飛び交う状態が続いています。 この間、テレビやネット上では多くのメディアが事件をトップニュースで扱っていました。各メディアで共通していたのは、「なぜ最悪の事態を防げなかったのか」「どこに園側のミスがあったのか」を手厚く報じていること。 主に、バス車内の確認、朝の会・部屋移動・給食時の人数確認、登園情報の確認、保護者への確認など、チェックできるタイミングが多かったにもかかわらず、それらがすべてスルーされていた。送迎だけでなく、運転自体をあまりしていない人に任せた。バスの側面がイラストで覆われているため外から車内が見えづらかった。 大半のメディアがこれらのミスを挙げ、さらに、会見での受け答えを映すことで園を断罪し、見る人々の怒りを増幅させるような報道に終始しています。ネットニュースにも、情報番組のMCが涙を流し、コメンテーターが声を荒らげた様子を報じる記事があふれていますが、このような見る人々の怒りを増幅させる“断罪劇場型”の報道に違和感を覚えざるをえません。 今回の事件は、当日のドライバーを務めた高齢の園長だけでなく、副園長、担任、副担任など園の関係者に問題があったことは誰が見ても明らか。特に記者会見で他人事のように書面を読むだけで感情が乏しく、被害園児の名前を間違えてしまう高齢の園長を断罪し、怒りをぶつけ続けることに危うさを感じてしまうのです』、私も「“断罪劇場型”の報道」には強い「違和感」を覚え、辟易した。
・『「再発防止」の割合が極端に少ない  それよりも真っ先に問題視すべきは、なぜ1年前に起きた事件の教訓が生かされなかったのか。 昨年7月、「福岡県中間市の保育園で5歳の園児が通園バスに取り残されて熱中症で亡くなった」という痛ましいニュースが報じられました。当時もメディアは今回と同じように断罪と怒りを増幅させるような報じ方で、「こんなことは二度とあってはならない」という論調を繰り返していましたが、わずか1年あまりで再発してしまったのです。) 問題はメディアが、誰かを叩くことが目的のような“断罪劇場型”の報じ方をすると、それを見る人々や保育関係者ですら感情的に怒るだけで思考停止してしまうこと。「欧米では置き去り防止のセンサーがある」などの同じ事件を起こさないための対策を報じる割合が極めて少なく、けっきょくそれぞれの現場任せに終わるため、今回のようなヒューマンエラーが事件につながってしまうのです。 メディアに求められているのは明らかにミスが多かった今回の園だけでなく、他のケースも挙げながら、注意喚起していくこと。たとえば、置き去りが起きてしまう主な理由は「意識の低下」「人手不足」「ルールやシステムの不備」の3点と言われていますが、そのひと言だけで片付けられるものではありません。 今回、事件を起こした園では、「園児1人ひとりが登園確認をするシステムがありながら、けっきょく職員がまとめて入力処理していた」ことが報じられました。また、他園でも「人数確認の回数やダブルチェックを増やした結果、『他の人も確認しただろう』という意識が生まれ、個々の確認が雑になってしまった」などのケースも多いと聞きます。 人手不足が意識の低下につながっていないか。「忙しい」「余裕がない」ことを理由にルールやシステムが有名無実化していないか。「慣れる」が「なめる」につながっていないか。 保育の分野に限らず、ヒューマンエラーをゼロにすることは難しいでしょう。だからこそ、ヒューマンとテクノロジーをどう組み合わせて事件や事故を防いでいくのか。真剣に考えるきっかけをメディアが提起してほしいのです』、「保育の分野に限らず、ヒューマンエラーをゼロにすることは難しいでしょう。だからこそ、ヒューマンとテクノロジーをどう組み合わせて事件や事故を防いでいくのか。真剣に考えるきっかけをメディアが提起してほしい」、同感である。
・『全国の幼稚園・保育園が動揺している  もう1つ、「メディアの報道で決定的に欠けている」と感じたのは、日本全国の幼稚園・保育園の現状とフォロー。今回の事件で日本全国の幼稚園・保育園が動揺していることは想像に難くありません。 実際、私の自宅近くにある保育園は、すぐに人数確認の回数を増やし、それを保護者に周知したそうですし、別の幼稚園は送迎バスのチェックを2人がかりで複数回行い、念のため施錠もやめるか検討中と聞きました。 また、事件の余波は、送迎バスの置き去りに関することだけではありません。園児が園内のどこかで身動きが取れなくなったり、園外に出てしまったりなどのケースに対応できるよう、繰り返しの人数確認はもちろん、トラブル時のシミュレーションをあらためて行っているようなのです。 それでも保護者から「こちらの幼稚園は大丈夫なのか」「人数確認はどれだけどういう形で行っているのか」などの問い合わせがあるなど、関係者の精神的・肉体的負担は増す一方。これまで丁寧に取り組んできた園ほど「やっていたのに」とやり切れない気持ちになるほか、負担が増えたことでかえってミスにつながることもありうるでしょう。 ただ、今回の事件は自分事として注意すべきである一方で、レアケースであることもまた事実。大半の園が丁寧に行っていることだけに、過剰な心配やプレッシャーは園と保護者の間に疑心暗鬼や不信感を生むなど関係性を揺るがせるだけでしょう。 メディアはいたずらに危機感ををあおるのではなく、これらのような現状やフォローも報じるべきではないでしょうか』、「メディアはいたずらに危機感ををあおるのではなく、これらのような現状やフォローも報じるべきではないでしょうか」、その通りだ。
・『文科省や厚労省のサポートが不可欠  いずれにしても、各園の個別対策だけでは限界があり、外部からのサポートが必要なのは間違いありません。 幼稚園は文部科学省、保育園は厚生労働省、認定こども園は内閣府の管轄であり、安全管理に関しても福岡で事件が起きた1年前に通知をしていましたが、今回の事件を見る限り、それが出しっ放しの状態になり、浸透していなかったことになります。今後は継続的な通知に加えて、一斉調査や抜き打ちチェックなどの対策が行われるのではないでしょうか。 さらに、「事件の背景に、人手や教育の不足、精神・肉体の疲弊、関係者の高齢化、金銭的な経営難はなかったか」などの分析。また、同じ事件を起こさないための具体的な対策を示すほか、テクノロジーなどのサポートをこれまで以上に行っていく姿勢が求められますし、メディアはそれを注視してほしいところです。 今回、事件を起こした園の存続は、静岡県による特別監査の後に判断されるようですから、これ以上、外部の人々が怒りの声をぶつける必要性はないでしょう。前述したように、部外者の怒りは再発防止につながらず、被害園児を悼むことにもなりません。 また、この園だけでなく、あなたの街にある幼稚園や保育園も苦しい状況に陥っていないか。彼らの最大の使命は「子どもたちの命と心を守ること」であり、それに日々奮闘する姿に優しい目を向け、サポートできる社会でありたいところです』、「事件の背景に、人手や教育の不足、精神・肉体の疲弊、関係者の高齢化、金銭的な経営難はなかったか」などの分析。また、同じ事件を起こさないための具体的な対策を示すほか、テクノロジーなどのサポートをこれまで以上に行っていく姿勢が求められますし、メディアはそれを注視してほしいところです」、「あなたの街にある幼稚園や保育園も苦しい状況に陥っていないか。彼らの最大の使命は「子どもたちの命と心を守ること」であり、それに日々奮闘する姿に優しい目を向け、サポートできる社会でありたいところです」、同感である。
タグ:「事件の背景に、人手や教育の不足、精神・肉体の疲弊、関係者の高齢化、金銭的な経営難はなかったか」などの分析。また、同じ事件を起こさないための具体的な対策を示すほか、テクノロジーなどのサポートをこれまで以上に行っていく姿勢が求められますし、メディアはそれを注視してほしいところです」、「あなたの街にある幼稚園や保育園も苦しい状況に陥っていないか。彼らの最大の使命は「子どもたちの命と心を守ること」であり、それに日々奮闘する姿に優しい目を向け、サポートできる社会でありたいところです」、同感である。 「メディアはいたずらに危機感ををあおるのではなく、これらのような現状やフォローも報じるべきではないでしょうか」、その通りだ。 「保育の分野に限らず、ヒューマンエラーをゼロにすることは難しいでしょう。だからこそ、ヒューマンとテクノロジーをどう組み合わせて事件や事故を防いでいくのか。真剣に考えるきっかけをメディアが提起してほしい」、同感である。 私も「“断罪劇場型”の報道」には強い「違和感」を覚え、辟易した。 木村 隆志氏による「「3歳園児バス置き去り」過熱報道に欠けた視点 同じ事件を二度と起こさないために何が必要か」 「バスにある窓ごと車体を塗装する“ペインティング”」、安全性を度外視して、目立つことだけを狙ったもので、「パフォーマンスをするのが得意」な性格が表れたものdろう。 「ボンボン気質・・・芯が全くない。口癖は『俺は知らない』『そんなことは言ってない』、「いい加減な性格」、経営面では「近隣の幼稚園を買収するなど経営拡大に熱を上げていた。だが手を広げすぎるあまり、肝心の子供の扱いや園の管理がなおざりになるのではないかという懸念の声は少なくなかった」 「千奈ちゃんのお宅は近くにお住まいですけど、お母さんが妊娠したことを機に、送り迎えが大変だからバスを利用するようになったと聞いています。それがこんな事故につながってしまうなんて、言葉も出ません」、全く不運という他ない。 「園の評判は決して悪くない」ようだ。 「6人の園児」、「増田園長が運転し、70代の女性職員も乗車」、それでもケアレスミスが起きたようだ。 「『ええからげん八兵衛』と呼ばれていました、「子供の頃からズボラな性格」が高齢者になっても現われたとは・・・。 文春オンライン「《静岡3歳女児バス置き去り》口癖は「オレは知らない」当日運転の園長(73)が犯した“ええからげん”ではすまぬ「重大過失」【地元の名士のもう一つの顔】」 「子どもに手を上げる母親の陰には、孤立した育児を押し付ける父親の存在があるかもしれない。もし子どもが死んだら、彼らは被害者として振る舞う可能性すらあります。映画を見た人には、表面的な『虐待事件』報道の裏に何があるのかも、考えてみてほしい」、その通りだ。 「経験豊富な児童福祉司(スーパーバイザー)がキーパーソンを見極め、接触するよう担当職員を指導する必要もある」、「「SOSを出せない親御さんに『お困りですよね』と声をかけ、抱える問題の解消を手助けするのが、私たち児相職員の仕事です」、人生経験が浅い「職員」がやるのは難しそうだ。 「「首都圏の保護所は、つねに入所率140~150%と定員オーバー。少数の職員で施設を切り回すため、事故を防ぐための『管理』が重視され、1人ひとりの子どもに向き合う余裕を持てないという構造的問題があります」、「多くの若手職員が、仲間と悩みを共有したい、ほかの児相の仕事ぶりを知りたい、と願っています。職場側が広域での合同研修などを通じて、ネットワークづくりをサポートする必要もあると思います」、なるほど。 「多くの若者は「子どもを救いたい」と考えて入職するが、子どものケアは仕事のごく一部なのだ。 「自分は何のために働いているのか」と悩んでも、守秘義務や「内情を知らない人にはわかってもらえないだろう」という諦めから、友達や家族に相談もできない。孤立した末に、彼らは心折れ、職場を去る」、せっかくの熱意が満たされずに「職後3年で9割が職場を去る心折れる若手職員」、もったいない限りだ。 有馬 知子氏による「児童相談所職員と虐待親の世に知られていない姿 短編映画「ほどけそうな、息」が伝えるリアル」 (その9)(児童相談所職員と虐待親の世に知られていない姿 短編映画「ほどけそうな、息」が伝えるリアル、《静岡3歳女児バス置き去り》口癖は「オレは知らない」当日運転の園長(73)が犯した“ええからげん”ではすまぬ「重大過失」【地元の名士のもう一つの顔】、「3歳園児バス置き去り」過熱報道に欠けた視点 同じ事件を二度と起こさないために何が必要か) 東洋経済オンライン 幼児虐待 「実際に「何をしていた」かは、守秘義務の壁もあり、外からは見えづらい」、「児相のリアル」を、「短編映画」で「伝えようとした」とはいい試みだ。
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中国国内政治(その14)(戦争したくて仕方ない軍部と 共産党幹部の離反...習近平に迫る「権力闘争」の時、習近平と李克強の戦いはずるずる続くのか? どうなる秋の中国共産党大会 鄧小平路線と毛沢東路線 決着がつかない中国のたどる道) [世界情勢]

中国国内政治については、2月18日に取上げた。今日は、(その14)(戦争したくて仕方ない軍部と 共産党幹部の離反...習近平に迫る「権力闘争」の時、習近平と李克強の戦いはずるずる続くのか? どうなる秋の中国共産党大会 鄧小平路線と毛沢東路線 決着がつかない中国のたどる道)である。

先ずは、3月17日付けNewsweek日本版が掲載した在米ジャーナリストのゴードン・チャン氏による「戦争したくて仕方ない軍部と、共産党幹部の離反...習近平に迫る「権力闘争」の時」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/03/post-98308_1.php
・『<冬季オリンピックをどうにか終えて、異例の「3期目」党総書記を狙う習近平が直面する党上層部と軍の批判派、そして莫大な債務の山という時限爆弾> 中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は、オリンピックによってトップの座に上り詰めたと言っても過言ではない。そして今、オリンピックによって、その座を失う可能性がある。 2008年夏に北京夏季五輪が開催されたとき、習は党幹部として実務面の責任を担った。中国でのオリンピック初開催となったこの大会は経済成長を遂げた中国を世界にお披露目する機会にもなり、人々の愛国心と自尊心を大いに高めた。その成功をバネに、習は2012年秋の中国共産党第18回党大会で党総書記(国家主席)の座へと駆け上がった。 今年の冬、習は再びオリンピック開催を仕切った。華やかな開会式を見守りながら、多くの専門家は、14年前と比べて中国政府が著しく強権的になったことを指摘した。だが、実のところ現体制の基盤は2008年よりもはるかに脆弱になっている。 習自身も、党内からの激しい突き上げに遭っている。今秋開催予定の第20回党大会で、党総書記として前代未聞の3期目に突入する計画も必ずしも盤石ではない。冬季五輪の失敗が許されないのはもちろん、スキャンダルもテロもウイグル問題への抗議行動も起こさせず、何より「ゼロコロナ」戦略を成功させなければならない』、「多くの専門家は、14年前と比べて中国政府が著しく強権的になったことを指摘した。だが、実のところ現体制の基盤は2008年よりもはるかに脆弱になっている。 習自身も、党内からの激しい突き上げに遭っている」、「著しく強権的になった」が、「現体制の基盤は2008年よりもはるかに脆弱になっている」、どういうことだろうか。
・『集団指導体制を廃止したツケ  だからだろう。習は準備段階から細かなことにまで目を配ってきた。「オリンピックの準備作業は習の統治スタイルそのものだ」と、ニューヨーク・タイムズ紙は報じた。「選手村の配置からスキーやスキーウエアのブランドまで、あらゆる決定の中心に習がいた」。建設中のオリンピック関連施設を視察に訪れ、現場監督に指示を与えることもあった。 何か間違いがあれば、自分が責任を問われる状況をつくったのは習自身だ。習が党総書記に就任するときまで、中国共産党は集団指導体制を堅持していた。建国初期に権力者の暴走を許したことへの反省から、重要な決定は最高指導部のコンセンサスを図った上で下される仕組みが確立され、特定の物事について党総書記個人が称賛されることもなければ、非難されることもなかった。 習はこの集団指導体制を廃止して、トップダウン式の意思決定システムをつくり出すとともに、「反腐敗運動」の名の下に政敵を次々と粛清した。それは習の権力基盤を強化すると同時に、権力闘争に敗北したときの政治的コストを大きくした。) 実際、習の弱肉強食のメンタリティーは多くの党員を震え上がらせた。そして習は「もしその時が来たら、去るべき人物」と彼らに見なされるようになった。絶対的服従を求める習の統治スタイルは、中国の台頭が好調な間は機能した。だが今、長年放置した問題が無視できないものとなり、習の立場を脆弱にしている。 中国が抱える最大の問題は、巨額の債務だ。経営危機に陥った中国恒大集団など、複数の大手不動産デベロッパーは昨年9月以降、相次ぎ債務返済に窮してきた。政府も、とりわけ2008年のリーマン・ショック後に打ち出した大型景気対策のツケに苦しんでいる。中国が抱える債務はGDP比350%との推測もあり、もはや小手先の対策では危機は回避できなくなっている。 その一方で、実体経済は停滞している。食料不足も深刻で、資源は枯渇し、新型コロナウイルス感染症の拡大を加速させる一因となった。さらに中国の人口動態は持続不可能なトレンドをたどっている。西安交通大学の研究チームが昨秋発表した予測では、中国の人口は45年後に現在の半分になる可能性があるという』、「習が党総書記に就任するときまで、中国共産党は集団指導体制を堅持していた。建国初期に権力者の暴走を許したことへの反省から、重要な決定は最高指導部のコンセンサスを図った上で下される仕組みが確立され、特定の物事について党総書記個人が称賛されることもなければ、非難されることもなかった。 習はこの集団指導体制を廃止して、トップダウン式の意思決定システムをつくり出すとともに、「反腐敗運動」の名の下に政敵を次々と粛清した。それは習の権力基盤を強化すると同時に、権力闘争に敗北したときの政治的コストを大きくした」、自ら蒔いたタネだ。
・『露呈する内紛と、公然と表明される異論  習の強権的な統治スタイルを考えれば、指導部内に不和が生じている明らかな兆候があっても驚きではない。いい例が、共産党の汚職摘発を主導する中央規律検査委員会の機関紙、中国紀検監察報が昨年12月号に掲載した記事だ。 「党中央に反する意見を公然と表明する独善的な幹部がいる」と、同記事は述べている。党中央とは一般的に、習その人を指す用語だ。一部の幹部は「党中央の決定や政策を拒否し、ゆがめ」ており「大それた野心の下で公然と、またはひそかに党中央に背く者もいる」という。 政府のプロパガンダ機関が国家指導者へのあからさまな反抗を報じるのだから、内紛がよほど激烈になっているのは間違いない。 この数週間、中国では複数の高官が習と一致しない見解を公表している。国政助言機関、中国人民政治協商会議の賈慶国(チア・チンクオ)常務委員は、過剰な費用を投じて安全保障を追求する姿勢に警告を発した。これは明らかに、習の路線に対する批判だ。 昨年12月には、共産党機関紙の人民日報が経済改革の特集記事を掲載したが、習には全く触れていなかった。英文メディアの日経アジアが指摘するように「中国の主要紙が習を無視するなら、全ては未知数」だ。 こうした不和への反応として、習は軍の支持獲得に力を入れている。共産主義青年団(共青団)とつながっていた前任者の胡錦濤(フー・チンタオ)、胡の前任者で「上海閥」に支えられた江沢民(チアン・ツォーミン)と異なり、国家主席就任以前の習は党内のいずれの派閥とも密接に結び付く存在ではなかった。 だからこそ、どの派閥からも許容され得る人物として、習は国家主席に選ばれた。だがトップに上り詰めると、権力掌握と効果的な支配には支持基盤が不可欠だと判断し、政治的支援の中核として特定の将軍や司令長官に目を向けるようになった。 今や習の派閥は軍だ。将官クラスの「腐敗分子」処分や人民解放軍の全面的再編を通じて、習は軍を手中に収めたと広く見なされている。 とはいえ、軍が習を手中にしている可能性もある。共産党内で最も統制の取れた派閥である軍が習の行動を指示しているか、軍には望みどおりにさせなければならないと、習は承知しているのではないか』、「国家主席就任以前の習は党内のいずれの派閥とも密接に結び付く存在ではなかった。 だからこそ、どの派閥からも許容され得る人物として、習は国家主席に選ばれた。だがトップに上り詰めると、権力掌握と効果的な支配には支持基盤が不可欠だと判断し、政治的支援の中核として特定の将軍や司令長官に目を向けるようになった。 今や習の派閥は軍だ」、「軍が習を手中にしている可能性もある」、「習の派閥は軍」とは危険な気がする。
・『政治体制内で最も好戦的な集団が得た力  いずれにしても、この力学は危険だ。急速な影響力拡大を受けて、人民解放軍には、より多くの国家資源が割かれている。制服組が多くを占める強硬派が政府の方針を決定していると見受けられ、彼らの「軍事外交」が外交政策になっている。 軍トップの一部は戦いたくてうずうずしており、中国の文民統制はごく緩やかなものでしかない。その結果、軍部が台頭した1930年代の日本と似た不穏な事態が起きている。習が力を与えているのは、中国の政治体制内で最も好戦的な集団だ。 オリンピック・パラリンピックが終わったら中国で何が起きるのか。オーストラリアの元外交官で中国専門家のロジャー・アーレンが言う「際限のない無意味な権力闘争」を、共産党幹部が再開するのは確実だ。 だが今度ばかりは、少なくとも中国の最高指導者にとって、党内争いが重要な結果を伴うことはほぼ間違いない。習が国家主席の座にとどまれば、共産党は事実上、制度として成り立たなくなる。 毛沢東時代の絶対的権力の恐怖を経験した共産党は80年代以降、指導者を制約する規定や慣行の確立に動いてきた。だが毛の強権的システムへの回帰こそ、習が望むものだ。 そんな習の運命は、今秋の党大会で決まる。2018年の憲法改正で国家主席の任期制限が撤廃され、「終身国家主席」も夢ではなくなったが、中国で真の権力を握り続けるためには、共産党総書記の座を維持できなければ意味がない。そして習がその座を維持するためには、冬季オリンピックの成功が不可欠だった。 そのために中国は、世界一厳しいゼロコロナ政策を実施してきた。だが、それでもデルタ株とオミクロン株の感染拡大は封じ込められなかったし、ゼロコロナ政策は中国社会に計り知れないダメージを与えるとともに、経済成長も減速させてきた。さらに、妥協のない防疫措置は、中国が全体主義の国であることを世界中に印象付けることにもなった。 「中国共産党の絶対的指導者である習は、オリンピックで壮大なスペクタクルを見せつければ、自分の体制の正当性を国内外にアピールして名声を獲得できると思ったのだろう」と、マクドナルド・ローリエ研究所(カナダ)のチャールズ・バートン上級研究員は言う。「ところが逆に、国民を隅々まで監視する異常な体制や、人道に反する罪、そして新型コロナのパンデミックを引き起こした責任といった中国の暗い側面に世界の注目を集めることになった」』、「冬季オリンピック」は「国民を隅々まで監視する異常な体制や、人道に反する罪、そして新型コロナのパンデミックを引き起こした責任といった中国の暗い側面に世界の注目を集めることになった」、皮肉な結果だ。
・『五輪で世界の人々が体感した中国の闇  冬季オリンピックは、世界中から集まった競技関係者やジャーナリストが中国のシステムを「体感」する機会にもなったと、バートンは指摘する。ウイグル人やチベット人などの人種的・宗教的マイノリティーに対する虐殺や長期収容、拷問、レイプ、奴隷化、臓器摘出といった残虐行為は話題にさえできない。 だが、こうしたおぞましい行為は、中国共産党の本質であり、今後大衆の目から隠し続けるのは難しくなるだろう。過去3回オリンピックに出場している中国のプロテニス選手の彭帥(ポン・シュアイ)が、昨年11月に前政治局常務委員・副首相をレイプで告発して以来、沈黙を強いられていることに世界の注目が集まったのは、オリンピック開催国だったからでもある。 習は批判の声には直接応えないし、自分に都合のいい現実をつくり出すのがうまい。だが、今後はそのやり方や体制に疑問を投げ掛けるのは、反体制派だけではない。批判の一部は、チャンスをずっとうかがってきた党内上層部から出てくる可能性もある。習は、党と軍の敵対派閥に対する粛清を強化してきたが、敵対派閥もオリンピックで習を粛清する理由を見つけたかもしれない。 3月13日のパラリンピック閉会式をもって「オリンピック期間中の停戦」も終わり、中国政治はますます不穏な時期に突入した。秦剛(チン・カン)駐米大使は今年1月、米メディアのインタビューでアメリカとの「軍事衝突」の可能性を口にした。 冬季オリンピックの評価次第では、習は国内の批判派や政敵を黙らせるために、台湾か近隣諸国に対して何らかの攻撃的措置を取る恐れもある。逆に、オリンピックが成功と評価されたとしても、習はそれに勢いづいて大胆な行動に出る恐れがある。 習が権力を維持するために、決定的な勝利を必要としているのは明らかだ。かねてから、自分には中国だけでなく世界を統治する権利と義務があると主張してきたし、中国は領土獲得を永遠に延期することはできないとも言ってきた。台湾併合によってトップとしての自らの正当性を証明したがっているとも言われる。 昨年7月の中国共産党創立100年の大演説で習は、中国の行く手を阻む者は「打ちのめされる」とし、「中国人民は古い世界を打ち破るだけでなく、新しい世界を建設することにも優れている」と語った。 オリンピックは終わったが、本当の競争は始まったばかりだ』、「冬季オリンピックの評価次第では、習は国内の批判派や政敵を黙らせるために、台湾か近隣諸国に対して何らかの攻撃的措置を取る恐れもある。逆に、オリンピックが成功と評価されたとしても、習はそれに勢いづいて大胆な行動に出る恐れがある」、「台湾併合によってトップとしての自らの正当性を証明したがっているとも言われる」、「中国の行く手を阻む者は「打ちのめされる」とし、「中国人民は古い世界を打ち破るだけでなく、新しい世界を建設することにも優れている」、こうした思い上がった考え方をトップがしているとは、恐ろしい国だ。

次に、9月1日付けJBPressが掲載したジャーナリストの福島 香織氏による「習近平と李克強の戦いはずるずる続くのか? どうなる秋の中国共産党大会 鄧小平路線と毛沢東路線、決着がつかない中国のたどる道」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/71641
・『秋の中国共産党大会の日程が8月30日に発表された。七中全会(第7回中央委員会全体会議)が10月9日に始まり、党大会は10月16日から始まる。 思ったより早い開催となったのは、おそらく人事に大きな波乱の要素が今のところない、ということだろう。おそらく習近平の総書記任期継続となりそうだ。 ただ、5年、その権力を保てるかは別だ。周辺の状況をみるに、習近平が圧倒的な権力を掌握しての3期目続投ではなく、今の「習近平 vs.李克強」という党内に「2つの司令部」の権力闘争状況を含めた集団指導体制の継続ということではないだろうか。つまり、党大会で決着がつくと思われていた権力闘争が党大会では終わらず、継続するということだ。 台湾の親中紙の「聯合報」と「経済日報」が8月25日に、「『李上習不下』(李克強が総書記になり、習近平は国家主席と軍事委主席の職位を維持して、権力闘争が継続すること)が“確定”した」と党内筋の話として報じていたが、このニュースはすぐに削除された。可能性としてはこういう形もゼロではないが、このような人事が実現するならば、もう少し周辺がざわつくのではないかと思われる。 では、どのような人事で、どのような路線が党大会後に展開されるのだろう。ちょっと気が早いが、今の段階でありえそうな想定を出してみよう』、興味深そうだ。
・『李克強と習近平がアピールする鄧小平路線と毛沢東路線  河北省で8月1日から15日まで行われた夏の非公式会議、北戴河会議では、習近平が外交、経済、新型コロナ政策、一帯一路などの失敗について、かなり厳しい批判の矢面に立ったとみられている。 内容ははっきりとはわかっていないが、明確にされたのは、8月16日に李克強が経済特区の深圳を視察し、同じ日に習近平が遼寧省錦州市の遼瀋戦役革命記念館を訪れたことだ。 深圳では李克強が鄧小平像に献花し、自ら鄧小平路線の継承者であることをアピールし、企業家や南東部沿海省市の経済官僚を集めて経済座談会も行った。 一方、遼瀋戦役、つまり国共内戦三大戦役の1つである1948年の遼瀋戦役の現場を視察した習近平は、毛沢東路線の継承者であることをアピールしたといえる。遼瀋戦役は毛沢東の戦争であり、国共内戦は今の台湾問題の根源となる戦争だったので、習近平としては、毛沢東の成しえなかった夢を受け継ぐ、つまり台湾を中華民国から「解放」し統一する、というシグナルを発したとみられている。 この北戴河会議直後、李克強と習近平が、それぞれ鄧小平路線と毛沢東路線の両極端をアピールした背景を想像力逞しくすると、北戴河会議で、習近平は様々な政策の失敗について批判を受け、少なくとも経済は李克強主導で鄧小平路線に回帰すべきだ、と迫られた。それに対して習近平が、台湾統一を実現してみせるからもう1期おれに任せろ、と反論したのではないか。武力で台湾統一が実現できるとは党内でもあまり信じられていないので、やれるもんならやってみろとばかりに、ある意味、匙を投げる形で、現状の権力闘争状態がなし崩し的に継続されることになったのかもしれない。 ただ、鄧小平路線と毛沢東路線は正反対の路線であり、共存できる可能性はない。鄧小平の改革開放路線は国際社会、特に西側先進国との融和外交による国内経済の振興であるが、毛沢東路線は、武力やそれを使った恫喝とイデオロギーコントロール強化による個人独裁、個人の権威強化であり、西側経済・外交から自らデカップリングしていく方向性だ。習近平の毛沢東回帰路線が続く限り、中国は外交的に孤立し、経済は急減速し、社会の不安定化と低迷が続くことになるだろう。) おそらくは李克強はそれに抵抗する形で、鄧小平的経済路線を進めようとするだろう。この路線闘争の勝敗の結果が、最終的に権力闘争の勝敗を決することになる』、「北戴河会議で、習近平は様々な政策の失敗について批判を受け、少なくとも経済は李克強主導で鄧小平路線に回帰すべきだ、と迫られた。それに対して習近平が、台湾統一を実現してみせるからもう1期おれに任せろ、と反論したのではないか。武力で台湾統一が実現できるとは党内でもあまり信じられていないので、やれるもんならやってみろとばかりに、ある意味、匙を投げる形で、現状の権力闘争状態がなし崩し的に継続されることになったのかもしれない」、あくまで筆者の福島氏の独断的な見方だ。「ただ、鄧小平路線と毛沢東路線は正反対の路線であり、共存できる可能性はない。鄧小平の改革開放路線は国際社会、特に西側先進国との融和外交による国内経済の振興であるが、毛沢東路線は、武力やそれを使った恫喝とイデオロギーコントロール強化による個人独裁、個人の権威強化であり、西側経済・外交から自らデカップリングしていく方向性だ。習近平の毛沢東回帰路線が続く限り、中国は外交的に孤立し、経済は急減速し、社会の不安定化と低迷が続くことになるだろう。 おそらくは李克強はそれに抵抗する形で、鄧小平的経済路線を進めようとするだろう。この路線闘争の勝敗の結果が、最終的に権力闘争の勝敗を決することになる」、「路線闘争」はさぞかし激しいいものになるだろう。
・『「劣化版」の戦いはずるずる続く  では、最終的に習近平と李克強の路線闘争はどちらが勝つか。 次の党大会の指導部の陣容を想像すると、これまでの5年の間に、きちんと能力のある後継者を育成できなかった習近平の分が悪いのではないか、と思われる。 政治局常務委員7人のうち、習近平を除く68歳以上の老人が引退し、67歳以下が全員残るとすると、引退するのは72歳の栗戦書と68歳の韓正の2人。政治局常務委員の定員数が拡大されないなら、新たに昇進するのは2人で、常識的な予想であれば、現政治局委員で副首相を務める胡春華と丁薛祥の2人だろう。 胡春華は李克強、汪洋の両方から可愛がられている共青団派のエースであり、鄧小平路線の継承者だ。丁薛祥は習近平の秘書役をしてきた習近平の側近で、頭はいいが、党内で重視される、いわゆる行政実務経験が十分ではない。つまり総理や総書記が務まる器ではない。 そうすると、政治局常務委員7人は、習近平、李克強、汪洋、王滬寧、趙楽際、丁薛祥、胡春華となる。李克強派(鄧小平路線継承)が李克強、汪洋、趙楽際、胡春華の4人、習近平派が習近平、王滬寧、丁薛祥の3人で、李克強派が有利になる。 仮に汚職の噂が絶えない趙楽際が引退するとしてもう1人あがるとしたら、宣伝部長で習近平派の黄坤明の可能性があるが、丁薛祥にしても黄坤明にしても小粒感が否めない。また、そもそも王滬寧自身は、江沢民、胡錦涛、習近平という、派閥の色合いの違う3人の指導者とうまくやってきた玉虫色のキャラクターであり、単純に習近平派ともいえない。 政治局25人の面子を考えると、年齢的に11人が引退することになる。この引退者の中に劉鶴(副首相、習近平の経済ブレーン)、栗戦書(全人代常務委員長)、陳希(中央組織部長)が含まれる。この3人は習近平の側近の中で、比較的能力が高く、しかも習近平が心から信頼を置いている人物だ。この3人が政治局を引退することは習近平に大きな痛手となろう。 なぜなら、この3人を除けばその他の習近平派の政治局委員は「七人の小人」と呼ばれるほど小粒ぞろいで、しかも習近平の権力におもねって近寄ってくるに過ぎず、いまいち信用されていないからだ。具体的には蔡奇(北京市書記)、李強(上海市書記)、陳敏爾(重慶市書記)、李希(広東省書記)、丁薛祥(中央弁公庁主任)、黄坤明(中央宣伝部長)、李鴻忠(天津市書記)の7人である。この中で本来、政治局常務委員への出世が期待されていた蔡奇、李強、陳敏爾、李希は全員、新型コロナ対応や電力問題などで行政評価にミソがつき、その無能ぶりを露呈してしまった。彼らが政治局常務委員に出世できるとはちょっと考えにくい。 こうした状況で、権力闘争が継続することになっても、かつての「毛沢東 vs.鄧小平」のような、ダイナミックなものではなく、路線対立軸は同じでもその劣化版の戦いがずるずる続くと思われる。 すでに李克強は首相退任を発表しているので、考えられる職位は総書記か全人代常務委員長くらいだ。李克強は能力的に総書記も十分に務められるので、聯合報の特ダネのような「李克強総書記説」が流れるのだろう。ただ、李克強が総書記になってしまうと、総書記を引退した習近平が首相や全人代委員長など格下の職位に就くことは党内的にはありえないので、政治局常務委員7人では足りなくなる。 中国経済にとって重要なのは、誰が首相を務めるか、だ。能力的には汪洋も胡春華も可能だろう。汪洋が全人代委員長、胡春華が首相、あるいはその反対はあるかもしれない。少なくとも王滬寧や丁薛祥に首相は難しいだろう』、「首相」候補は「李克強派」が有力なようだ。
・『習近平が台湾統一を試みる可能性  こういう状況なので、党大会のあとに展開する中国の状況としては、現在の路線矛盾を抱えながら、外交の孤立化、経済の停滞、社会の混乱が長期化するだろうとの予測が出ている。 つまりは、習近平総書記のまま行き詰まるところまで行き詰まってしまい、その責任を取る形で習近平が総書記を引退する。それが次の党大会の5年後なのかあるいはもう少し早い3年くらい後なのかは分からない。 要するに習近平には毛沢東ほどカリスマ性はなく、李克強には鄧小平ほどの実力はないので、お互いにどちらかを失脚に追い込めるほどの力がない。なので、対立しながら相手の自滅を待つしかないのだ。 そこで一番簡単な予想としては、中国の状況は、5年前後の長い経済・社会停滞期を経験して、社会の不満が習近平政権に向かい、共産党のレジティマシー自体が揺らぐような事態になって初めて習近平が責任を取る形で引退して、新たな集団指導体制で米国はじめ西側社会との外交・経済関係修復をはかる、というパターンか。 だが、習近平が本当に常人に理解しがたいほどの権力欲の塊であったなら、本当に武力による台湾統一を試みようとする可能性はゼロではないだろう。台湾ではロシア・ウクライナ戦争後、防衛費増強と徴兵制延長の問題がかなりホットな話題として議論されているが 8月上旬、ペロシ米下院議長の訪台後に行われた中華民意研究協会の世論調査では、74.7%が徴兵制を現在の4カ月から1年に延長することに賛成している。 知り合いの台湾メディア記者は、「5年以内に台湾海峡危機はありうる。台湾の防衛能力を強化すればするほど、その危機を遠ざけることができると思う」と話していた。 党大会まであと1カ月半、今後どのような変化があるかまだ分からないが、なかなか厳しく不穏な時代が始まろうとしているといえよう』、「習近平には毛沢東ほどカリスマ性はなく、李克強には鄧小平ほどの実力はないので、お互いにどちらかを失脚に追い込めるほどの力がない。なので、対立しながら相手の自滅を待つしかないのだ。 そこで一番簡単な予想としては、中国の状況は、5年前後の長い経済・社会停滞期を経験して、社会の不満が習近平政権に向かい、共産党のレジティマシー自体が揺らぐような事態になって初めて習近平が責任を取る形で引退して、新たな集団指導体制で米国はじめ西側社会との外交・経済関係修復をはかる、というパターンか」、「習近平が本当に常人に理解しがたいほどの権力欲の塊であったなら、本当に武力による台湾統一を試みようとする可能性はゼロではないだろう」、「武力による台湾統一」は起きてほしくないシナリオだ。いずれにせよ中国経済の不振は続き、雇用をめぐる社会不安が高まりそうだ。大混乱に堕ち入らないことを願うばかりだ。
タグ:「多くの専門家は、14年前と比べて中国政府が著しく強権的になったことを指摘した。だが、実のところ現体制の基盤は2008年よりもはるかに脆弱になっている。 習自身も、党内からの激しい突き上げに遭っている」、「著しく強権的になった」が、「現体制の基盤は2008年よりもはるかに脆弱になっている」、どういうことだろうか。 ゴードン・チャン氏による「戦争したくて仕方ない軍部と、共産党幹部の離反...習近平に迫る「権力闘争」の時」 Newsweek日本版 「習近平が本当に常人に理解しがたいほどの権力欲の塊であったなら、本当に武力による台湾統一を試みようとする可能性はゼロではないだろう」、「武力による台湾統一」は起きてほしくないシナリオだ。いずれにせよ中国経済の不振は続き、雇用をめぐる社会不安が高まりそうだ。大混乱に堕ち入らないことを願うばかりだ。 「習近平には毛沢東ほどカリスマ性はなく、李克強には鄧小平ほどの実力はないので、お互いにどちらかを失脚に追い込めるほどの力がない。なので、対立しながら相手の自滅を待つしかないのだ。 そこで一番簡単な予想としては、中国の状況は、5年前後の長い経済・社会停滞期を経験して、社会の不満が習近平政権に向かい、共産党のレジティマシー自体が揺らぐような事態になって初めて習近平が責任を取る形で引退して、新たな集団指導体制で米国はじめ西側社会との外交・経済関係修復をはかる、というパターンか」、 「首相」候補は「李克強派」が有力なようだ。 「ただ、鄧小平路線と毛沢東路線は正反対の路線であり、共存できる可能性はない。鄧小平の改革開放路線は国際社会、特に西側先進国との融和外交による国内経済の振興であるが、毛沢東路線は、武力やそれを使った恫喝とイデオロギーコントロール強化による個人独裁、個人の権威強化であり、西側経済・外交から自らデカップリングしていく方向性だ。習近平の毛沢東回帰路線が続く限り、中国は外交的に孤立し、経済は急減速し、社会の不安定化と低迷が続くことになるだろう。 おそらくは李克強はそれに抵抗する形で、鄧小平的経済路線を進めようとする 「北戴河会議で、習近平は様々な政策の失敗について批判を受け、少なくとも経済は李克強主導で鄧小平路線に回帰すべきだ、と迫られた。それに対して習近平が、台湾統一を実現してみせるからもう1期おれに任せろ、と反論したのではないか。武力で台湾統一が実現できるとは党内でもあまり信じられていないので、やれるもんならやってみろとばかりに、ある意味、匙を投げる形で、現状の権力闘争状態がなし崩し的に継続されることになったのかもしれない」、あくまで筆者の福島氏の独断的な見方だ。 福島 香織氏による「習近平と李克強の戦いはずるずる続くのか? どうなる秋の中国共産党大会 鄧小平路線と毛沢東路線、決着がつかない中国のたどる道」 JBPRESS 「中国の行く手を阻む者は「打ちのめされる」とし、「中国人民は古い世界を打ち破るだけでなく、新しい世界を建設することにも優れている」、こうした思い上がった考え方をトップがしているとは、恐ろしい国だ。 「冬季オリンピックの評価次第では、習は国内の批判派や政敵を黙らせるために、台湾か近隣諸国に対して何らかの攻撃的措置を取る恐れもある。逆に、オリンピックが成功と評価されたとしても、習はそれに勢いづいて大胆な行動に出る恐れがある」、「台湾併合によってトップとしての自らの正当性を証明したがっているとも言われる」、 「冬季オリンピック」は「国民を隅々まで監視する異常な体制や、人道に反する罪、そして新型コロナのパンデミックを引き起こした責任といった中国の暗い側面に世界の注目を集めることになった」、皮肉な結果だ。 「国家主席就任以前の習は党内のいずれの派閥とも密接に結び付く存在ではなかった。 だからこそ、どの派閥からも許容され得る人物として、習は国家主席に選ばれた。だがトップに上り詰めると、権力掌握と効果的な支配には支持基盤が不可欠だと判断し、政治的支援の中核として特定の将軍や司令長官に目を向けるようになった。 今や習の派閥は軍だ」、「軍が習を手中にしている可能性もある」、「習の派閥は軍」とは危険な気がする。 「習が党総書記に就任するときまで、中国共産党は集団指導体制を堅持していた。建国初期に権力者の暴走を許したことへの反省から、重要な決定は最高指導部のコンセンサスを図った上で下される仕組みが確立され、特定の物事について党総書記個人が称賛されることもなければ、非難されることもなかった。 習はこの集団指導体制を廃止して、トップダウン式の意思決定システムをつくり出すとともに、「反腐敗運動」の名の下に政敵を次々と粛清した。それは習の権力基盤を強化すると同時に、権力闘争に敗北したときの政治的コストを大きくした」、自ら蒔 (その14)(戦争したくて仕方ない軍部と 共産党幹部の離反...習近平に迫る「権力闘争」の時、習近平と李克強の戦いはずるずる続くのか? どうなる秋の中国共産党大会 鄧小平路線と毛沢東路線 決着がつかない中国のたどる道) 中国国内政治
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安倍元首相暗殺事件(その3)(統一教会「霊感商法事件」捜査の深すぎる闇 司直の手はなぜ教団本体に届かなかったのか、統一教会への「歯止め」を決壊させた安倍元首相 岸田政権は教団との依存関係を解消できるか、国葬が東京五輪と同じ「ゴリ押し開催後に不正発覚」に陥る嫌な予感しかしない訳) [国内政治]

安倍元首相暗殺事件については、8月30日に取上げた。今日は、(その3)(統一教会「霊感商法事件」捜査の深すぎる闇 司直の手はなぜ教団本体に届かなかったのか、統一教会への「歯止め」を決壊させた安倍元首相 岸田政権は教団との依存関係を解消できるか、国葬が東京五輪と同じ「ゴリ押し開催後に不正発覚」に陥る嫌な予感しかしない訳)である。

先ずは、8月28日付けデイリー新潮「統一教会「霊感商法事件」捜査の深すぎる闇 司直の手はなぜ教団本体に届かなかったのか」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2022/08281132/?all=1
・『統一教会(註)が日本で巨額の資金を調達していることに、改めて大きな注目が集まっている。特に問題となっているのが、霊感商法だ。「あなたの不運は、地獄で苦しんでいる先祖の霊が原因」などと無辜の市民を不安に陥れて、高額商品を買わせる。犯罪性が極めて高いことは言うまでもない。 今もなお霊感商法による深刻な被害が発生している。一体、警察は何をしているのか。無為無策で、跳梁跋扈を許しているだけなのだろうか──。 いや、そうとも言えない。2000年代に警察は、統一教会を霊感商法の問題で一斉捜査。マスコミも大きく報じたことがある。 2009年5月、福岡県警は韓国籍で60代の女を、特定商取引法違反の容疑で逮捕した。容疑者は健康器具・印鑑販売会社での勤務実績があった。 容疑者は福岡市内に住む50代の女性を「先祖の因縁が深い。運を開くためにあと2つの水晶彫刻が必要。購入しなければ地獄に落ちる」と脅し、約300万円の売買契約を結ばせた。 県警の取り調べに容疑者は統一教会の信者だと供述。県警は教会施設を家宅捜索し、パソコンなどを押収した。ちなみに統一教会はマスコミの取材に対し「販売会社と教会は無関係」としらを切り通した。 毎日新聞は同年5月7日の西部版夕刊に「霊感商法:統一教会福岡を捜索 自称信者、“開運水晶”販売容疑で逮捕――県警」の記事を掲載した』、興味深そうだ。
・『政権交代の影響  この記事では、特定商取引法違反容疑で統一教会の関連施設に家宅捜索を行うことを《異例》とした上で、他県でも類似の捜査が始まっていることを伝えた。 《長野県警や新潟県警が印鑑販売などの特定商取引法違反容疑で会社社長らを逮捕するなど、摘発を強化する流れにある》 担当記者は「報道されただけでも、他に大阪府警が捜査を行いました」と言う。 福岡、長野、新潟、大阪の4府県警はいずれも、統一教会の関連団体が霊感商法で高額な印鑑を売りつける事案を摘発しました。警察庁が指揮を執り、各府県警が連携していたのは明らかでした」 更に興味深いのは、逮捕に踏み切った時期だ。当時の首相は麻生太郎氏(81)だったが、この年の8月に行われた総選挙で自民党は敗北、下野することになる。 「警察は以前から内偵を続けていましたが、まさに民主党政権が誕生する直前、統一教会の強制捜査に乗り出したのです。現在、自民党と統一教会の密接な関係が問題になっているのはご存知の通りです。警察は国政の状況も睨みながら、捜査の指揮を執っていたことが分かります」(同・記者)』、「民主党政権が誕生する直前、統一教会の強制捜査に乗り出した」とは絶妙なタイミングだ。
・『信者獲得の手段  そして同年6月、“本丸”である警視庁が動く。警視庁公安部は11日、東京都渋谷区の印鑑販売会社「新世」の社長ら7人を、特定商取引法違反の容疑で逮捕した。 朝日新聞は同日の夕刊に「不安あおり印鑑販売容疑 統一教会関与か 社長ら逮捕」の記事を掲載した。 この記事によると、容疑者らは渋谷駅前で勧誘した女性5人に姓名鑑定を受けさせ、「先祖の因縁が家族に出ている。このままでは家族が不幸になる」などと不安を煽り、最終的に1本16?40万円の印鑑13本(被害総額416万円)を売りつけたという。 他にも、警視庁公安部の捜査結果として、「新世」の売上が2000年から09年までの間で約6億7000万円に達したという驚きの金額を伝えている。これが全て統一教会の“富”となったのだ。 「『新世』は霊感商法で巨額の利益を得ていただけでなく、信者獲得の手段としても霊感商法を利用していたことが判明しました。家宅捜索で信者獲得のためのマニュアルが押収されたのです。印鑑の購入者を『ビデオフォーラム』と呼ばれる統一教会への勧誘施設に連れて行き、教義を教えるビデオを見せたりしていました」(同・記者) 女性販売員の信者5人が各100万円の罰金、社長ともう1人が起訴された。全員が統一教会の信者であることを認めたという。 更に同年7月、朝日新聞が「給与名目で信者へ数千万円振り込み 統一教会にう回献金か 印鑑商法事件」のスクープ記事を報じた。 「記事は、『新世』が約100人の信者に給与名目で年7000万円を払っていたという内容でした。うち約70人は、会社での勤務実態はなかったそうです。100人の信者は名目上の給与を受け取ると、全額を統一教会に寄付して献金していました。朝日新聞の報道により、『新世』と統一教会が不可分な関係であることが浮き彫りになったわけです」(同・記者) 朝日新聞の記事が出てしばらくすると、日本統一教の会長が辞任を発表した。『新世』と統一教会との関係は認めなかったが、信者の関与を謝罪した。 「当時、全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)の調査で、日本統一教会の実権は韓国人幹部が握っていることが分かっていました。日本人会長の交代は、いわば“トカゲの尻尾切り”でしかなかったのです。後継の会長は国際勝共連合の理事長を長く務め、政界に深い人脈を持っていることで知られていました。危機感を覚えた統一教会が新会長の政治力に期待したことがよく分かります」(同・記者)』、「危機感を覚えた統一教会が」「日本人会長」を「交代」させ、「新会長の政治力に期待した」、なるほど。
・『捜査終結  東京地裁で初公判が開かれたのは09年9月10日。既に政権交代は実現しており、同月16日から鳩山由紀夫氏(75)を首相とする内閣がスタートする予定になっていた。 「検察側は冒頭陳述で、霊感商法は統一協会の宗教活動であり、最終目的は信者にして全財産を献金させることだと指摘しました。全国弁連も評価するほど踏み込んだ内容で、関係者の間では、『この刑事裁判を足がかりに、統一教会本体に対する捜査が行われるかもしれない』と期待する声も出ました」 東京地裁は11月、『新世』の社長に懲役2年執行猶予4年、罰金300万円の判決を下した。 裁判長は、《信仰と混然一体となったマニュアルなどによって違法な印鑑販売の手法を販売員に周知させていた》、《相当高度な組織性が認められる継続的犯行の一環》などと厳しく指弾した(註2)。 霊感商法を特定商取引法違反で摘発した刑事事件で、統一教会との関連性を認定した初めての判決となった。警察や検察だけでなく裁判所も、統一教会の反社会的活動を強く問題視したことが分かる。 統一教会は控訴せず、判決が確定した。だが、その後、捜査の手が先に伸びることはなかった』、「捜査の手が先に伸びることはなかった」、「統一教会」側の工作が功を奏したのだろう。
・『政治家の介入  統一教会の本部に家宅捜索が入ったり、教団の日本人や韓国人の幹部が取り調べられたりすることもなかった。 「歴史にイフがない」と言われることは分かっていても、もしあの時、統一教会の幹部に捜査のメスが入れば──と考えてしまう人は少なくないだろう。 当時の捜査をよく知る全国弁連の山口広弁護士は、「現在の観点から、警視庁の捜査に対し様々な意見が出るのはもちろん理解できます」と言う。 「しかし、捜査を間近に見ていた人間としては、警視庁の捜査に驚いたことも事実です。極秘資料が家宅捜索で見つかり、統一教会が霊感商法の指揮を執っていたことが白日の下に晒されました。東京地裁の判決も、統一教会を断罪する厳しい内容でした。捜査機関や裁判所が本気になれば、これほどの成果が上がるのだと実感したものです」 だが、それ以上は捜査が進まなかった。山口弁護士によると、複数の要因があるという。 「民主党政権下とはいえ、やはり警察に顔が利く政治家の介入はありました。こういう場合、世論のバックアップが鍵になります。マスコミは捜査を大きく報じましたが、率直に言って、世論の反応は鈍かったと思います。2000年代は『統一教会は過去のもの』と考えている人も少なくなかったのです」』、「検察」はその気になれば、捜査情報のリークによる世論を誘導するが、そこまでしなかったようだ。
・『地裁判決の価値  1992年に桜田淳子(64)が合同結婚式に出席した時、日本のマスコミは連日のように統一教会の問題を報じた。 だがその後、オウム真理教が数々の凶悪事件を起こした。そのため2000年代に入ると、統一教会への関心が相当に薄れていたのだ。 2009年11月に東京地裁が有罪判決を下しても、その後、捜査機関の動きは鈍かった。そして12年12月16日、総選挙で民主党は大敗する。 同月26日に安倍晋三氏(享年67)を首相とする内閣がスタート。統一教会に対する捜査が“これで終わる”と考えた関係者は少なくなかった。 しかし山口弁護士は、だからこそ今、東京地裁の判例に光を当て直すべきだと指摘する。 「今も統一教会による霊感商法で被害が生まれています。過去の話ではないのです。警察が捜査を行うにしても、メディアが統一教会の問題を追及するにしても、2009年の東京地裁判決は様々な示唆を与えてくれるはずです」 註1:現在の名称は「世界平和統一家庭連合」だが、本稿では「統一教会」とした。 註2:新世の印鑑販売、社長に有罪判決 東京地裁「信者獲得目的」(朝日新聞:2009年11月11日)』、「オウム真理教が数々の凶悪事件を起こした。そのため2000年代に入ると、統一教会への関心が相当に薄れていた」、アンラッキーなことだ。「警察が捜査を行うにしても、メディアが統一教会の問題を追及するにしても、2009年の東京地裁判決は様々な示唆を与えてくれるはずです」、その通りだ。

次に、8月29日付け東洋経済オンライン「統一教会への「歯止め」を決壊させた安倍元首相 岸田政権は教団との依存関係を解消できるか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/613877
・『「政治に友好団体が強い姿勢をもって関わってきた」「政治家と手を合わせてきた」 世界平和統一家庭連合(旧・統一教会、以下、統一教会)の田中富広会長は、8月10日の記者会見で、教団が政治と積極的に関わってきたと率直に語った。 統一教会と接点を持っていた議員は立憲民主党や日本維新の会など野党にもいる。しかし、規模、質の両面で深い関わりを持っていたのが政権党の自民党、なかんずく安倍派(清和政策研究会)所属の議員たちである。 統一教会はなぜ政治の世界に食い込めたのか。霊感商法や高額献金など反社会的な行為が問題視されてきた教団との接点を、政治家が断ち切れなかったのはどうしてか。特集「宗教を問う」の第1回目は、政治と宗教の関係について上越教育大学の塚田穂高氏(宗教社会学)に聞いた(Qは聞き手の質問、Aは塚田氏の回答)。 Q:8月10日の記者会見で、統一教会の田中富広会長は教団が「政治に、強い姿勢をもってかかわってきた」ことを認めました。この発言について先生の受け止めを教えてください。 A:自民党を中心とした政治家が「関連団体だとは知らなかった」などと関係が薄かったことを強調しようと努めているなかで、てっきり関係性を秘匿するのかと思っていました。しかし、実際は強い意識をもった関わりだったことが改めて確認されました。 結局は、「共産主義に対峙する」の名目のもとで、その姿勢に親和的な政治家とこうした社会問題性の強い団体とがずっと連携し続けてきたことが強く裏付けられました。 Q:安倍晋三元首相の銃撃事件を受け、統一教会と政治の接点がマスコミで大きくクローズアップされるようになりましたが、ここ30年間はほとんど報じられていませんでした。 A:1990年代前半までは、合同結婚式や霊感商法の被害がマスコミで大きく報じられ、社会は統一教会の問題に目を向けていました。ところが90年代後半以降、統一教会に関する報道の量は減り、世間の関心も薄れていきました。被害者や家族、被害救済にあたる弁護士らは声を上げ続け、一部のジャーナリストが追及し続けていたにもかかわらずです。 そういったなか、とりわけ2010年代に入り、自民党政治家と統一教会の関わりはさまざまな局面で強まり、目立つようになってきました。これにはまず教団側の思惑がありました。それに政治家・政権側が応じたかたちです。{塚田氏の略歴はリンク先参照) それまで統一教会と接点を持つことに多少は慎重だった政治家も、次第に抑制しなくなり、イベントに祝電を送ったり、出席して挨拶まですることが積み重ねられていきました。選挙協力もそうです。また、統一教会系の右派学生団体「UNITE」が2016年ににわかに結成され、政権支持や改憲を訴えたのも象徴的でした。これは前年の安保法制反対運動時に注目された若者の団体SEALDsの向こうを張った動きで、政権側には都合がよかったでしょう。 自民党と統一教会のつながりはそれ以前からの持続的なものではありましたが、特に明らかな変化が質・量ともにあったのが、第二次安倍政権を含むこの十数年間だったと総括できます。 Q:この十数年で歯止めが決壊してしまったと。 A:そう言えると思います。 山上徹也容疑者に犯行を決意させたのは、2021年9月、統一教会の友好団体・天宙平和連合(UPF)のイベントに安倍元首相がビデオメッセージで登壇したことだったとされます。安倍元首相はそこでみずからの姿を見せ、文鮮明(ムンソンミョン)教祖の妻である韓鶴子(ハンハクチャ)総裁の名前を挙げて「敬意を表します」と肉声で語りました。 自民党の中でも歴史的に統一教会に近い安倍派(清和政策研究会)の長である安倍元首相が、ある意味、率先垂範して統一教会に関わるイベントに登壇したのです。極めてあからさまに、まるで「このような関わりをもっても何も問題がないのだ」と開き直るかのように。派閥のトップで、憲政史上最も長く首相を務めた人物が教団と密に関わることを隠さなくなっていたわけですから、そのもとにいる議員たちが統一教会と接点を持つことをためらわなくなるのは道理です。 政治家のこうした言動が教会とその信者にとって、またそれだけでなく被害者や悩みを抱える「宗教2世」らにとってどんな意味を持ったかも併せて考えなくてはなりません。もちろん犯行が正当化されることにはなりませんが。 やはりUPFイベントへの安倍元首相の登壇は、この十数年間の変化を象徴するシーンだったように思います。 Q:政治家が統一教会と接点を持つメリットは何でしょうか。 A:国政選挙ではあくまで限定的ですが、まずは票です。統一教会は選挙となれば数万から十数万の票を持っています。社会的に問題を抱えてきた教団であっても、選挙に強くない候補者にとってはとてもむげにできない。現に、安倍元首相はここ何回かの参院選で、当落線上にいる安倍派の候補者に統一教会の固い票を割り振ってきたとされています。教団の票がなければ落選していた議員が一定数いるはずです。また、地方議員にとってはより重みを持った可能性があります。 票だけではありません。統一教会の信者たちは熱心に選挙支援をしてきました。ポスター貼りからビラ配り、電話作戦まで、無私の精神で献身してきました。動員をかければ集会に大勢の信者がかけつけます。選挙に弱い候補者にとっては利用価値が高く、この面は特に大きかったと思われます。 Q:教団はかつて国会議員の事務所に信者を秘書などとして送り込んでいたとされます。 A:無償で熱心に働くわけですから政治家にとっては都合よくありがたい存在だったのでしょうが、そもそもなぜそこまで献身的なのかを考えてみるべきだと思います。何を「見返り」として求めていたのか。政治家周辺のみならず党内の情報などが得られていたでしょうし、他の事務所で働く信者秘書たちと情報を擦り合わせることで独自の情報網を築いていた可能性もあります。) Q:統一教会の教義には「韓国はアダム国家日本はエバ国家」とあります。かつて韓国を植民地支配したエバ国家・日本は、その償いとしてアダム国家・韓国に尽くさなければならないと。歴史認識で言えば清和会(安倍派)は最右翼で、統一教会の教義とは相容れないように思えるのですが、なぜ統一教会は清和会人脈に食い込めたのでしょうか。 その点はちょっと複雑です。文鮮明が生まれた地域は現在の北朝鮮で、1991年に文鮮明が電撃訪朝し、北朝鮮の経済支援を始めたりしたのは文鮮明個人の中に朝鮮民族と南北統一への思いがあったからでしょう。日本が朝鮮半島を植民地支配したことへの国家的・民族的「恨み」があるのも無理はありません。 天皇や日本、日本人を自らに服従すべき存在だと低くみる姿勢は確かにあります。それらをひっくるめて、自らが唱える「統一原理」の下に、世界の宗教も政治も文化も統一されることを究極的な目標としています。ただそうした民族主義・ナショナリズムが教えのなかにあるという話と、それに基づき途方もない金銭を収奪してよいという話は別ものです。 一方で、文鮮明と統一教会が韓国や日本の政界に食い込もうとする時には、「勝共」「共産主義に対峙する」という旗印を掲げました。これも1954年の教団成立当初は必ずしも言われていなかったことで、1962年ぐらいからはじまり、朴正煕政権時代のなかでにわかに言い出されたこととされます』、「とりわけ2010年代に入り、自民党政治家と統一教会の関わりはさまざまな局面で強まり、目立つようになってきました。これにはまず教団側の思惑がありました。それに政治家・政権側が応じたかたちです。・・・それまで統一教会と接点を持つことに多少は慎重だった政治家も、次第に抑制しなくなり、イベントに祝電を送ったり、出席して挨拶まですることが積み重ねられていきました。選挙協力もそうです。また、統一教会系の右派学生団体「UNITE」が2016年ににわかに結成され、政権支持や改憲を訴えたのも象徴的でした。これは前年の安保法制反対運動時に注目された若者の団体SEALDsの向こうを張った動きで、政権側には都合がよかったでしょう」、なるほど。
・『都合よく使える尖兵部隊  日本の1960年の安保闘争では革新政党や学生、労働組合などが大々的に反対運動を展開しました。こうした反対勢力を、当時の岸信介首相らは共産主義勢力とみなし、強く警戒しました。岸氏や、岸氏と近かった笹川良一氏ら大物右翼の支援を受け、文鮮明は1968年に政治団体・国際勝共連合を設立します。学生や労働組合に直接対峙する、尖兵のような存在です。 岸氏ら保守政治家らにとって「反共」「勝共」を掲げる統一教会は共産主義に対する「防波堤」として、都合よく使える勢力だったのでしょう。このあたりが、その政治とのつながりの源流となります。こうした政治権力側にひたすらすり寄るようなスタンスは、岸氏の悲願とされた改憲をずっと唱えてきたことなどにもつながるでしょう。) Q:ソ連崩壊によって冷戦は終結し、イデオロギー対立の中にあった「反共」「勝共」という旗印は、もう力を失っているのではないでしょうか。 A:冷戦終結とともに「勝共」の看板を降ろす、とはなりませんでした。彼らなりの闘いは続けられます。私が見るに、政治活動としては「勝共」の「共」の枠が途方もなく拡大され、その中にさまざまなものが入れ込まれることで、「新たな敵」が設定されていったと考えています。家族や「性的」純潔を重視する教えからも、それらの「敵」とされた典型的動向としては、夫婦別姓や性教育、「ジェンダーフリー」、同性婚、LGBTなどの性的マイノリティー理解などが挙げられます。 彼らが考えるところの「共産主義っぽいもの」「左翼っぽいもの」を一緒くたに「勝共」の「共」に入れ込み、それらと戦うことで自分たちのレーゾンデートル(存在価値)を見いだし活動が続けられる。当事者の悩みや苦しみなどは蚊帳の外で、これらの動向は「文化共産主義」なり「新マルクス主義」なりの策動として捉えられます。 夫婦別姓や同性婚は家族を破壊すると思い込んでいるし、共産主義勢力による「性の革命」が押し寄せている、これに抗しなければならないというのが現在に至るまでの彼らの行動原理になっていると捉えられます。これらは自民党右派や、神社界、日本会議、右派論壇などとの主張や運動とも響き合い、一定の影響力を持った点が指摘できます。) Q:1970年代の中盤以降、「先祖が苦しんでいる」「先祖の因縁を解かなければ不幸が続く」といった宗教的・霊的な威迫をともなって高額な壺や印鑑を売りつける「霊感商法」が台頭しました。 A:これもポイントとなるのは、統一教会はこうした活動を途中から方針転換して、日本においてのみ行い始めた、ということです。韓国あるいは欧米ではいわゆる「霊感商法」を基本的にやってきていません。 キリスト教系新宗教としての独自の聖書解釈から、こうした考えや実践が自然に出てきたとは言えません。70年代中盤に文鮮明から送金命令が出て、その必要に駆られて出てきた手法です。「先祖の因縁」「霊と霊界の存在」「吉凶・開運」などは東アジアの宗教文化、日本人の宗教観に響くところがあったでしょう。そこをついて、不安や恐怖をあおるのです。霊感商法の「霊能師」役はあくまで「役」であり、修行などをするのではなく、トークマニュアルを学んでそれを演じるものでした。 統一教会のグローバルなネットワークの中で、日本は長らく資金源の役割を担わされてきました。まず正体を隠した布教で誘い込む。その先の企業形態を取る経済活動のなかでいわゆる「霊感商法」が行われ、金銭が収奪される。信徒としての献金も、「先祖の因縁」や「怨み」を解くという宗教的呪縛のなかで強要的に、時に破産に至るまでのレベルで行われる。それらが海外に送金される。そうしたことを長らく続けてきたのです』、「政治活動としては「勝共」の「共」の枠が途方もなく拡大され、その中にさまざまなものが入れ込まれることで、「新たな敵」が設定されていったと考えています。家族や「性的」純潔を重視する教えからも、それらの「敵」とされた典型的動向としては、夫婦別姓や性教育、「ジェンダーフリー」、同性婚、LGBTなどの性的マイノリティー理解などが挙げられます。 彼らが考えるところの「共産主義っぽいもの」「左翼っぽいもの」を一緒くたに「勝共」の「共」に入れ込み、それらと戦うことで自分たちのレーゾンデートル(存在価値)を見いだし活動が続けられる。当事者の悩みや苦しみなどは蚊帳の外で、これらの動向は「文化共産主義」なり「新マルクス主義」なりの策動として捉えられます。 夫婦別姓や同性婚は家族を破壊すると思い込んでいるし、共産主義勢力による「性の革命」が押し寄せている、これに抗しなければならないというのが現在に至るまでの彼らの行動原理になっていると捉えられます。これらは自民党右派や、神社界、日本会議、右派論壇などとの主張や運動とも響き合い、一定の影響力を持った点が指摘できます」、巧みに時代の流れに乗って変化したようだ。
・『教会本部まで捜査が及ばなかった  Q:2007年から2010年にかけ、霊感商法を行っていた会社が相次いで摘発されました。その多くが客を不安に陥れて高額な商品を売りつける特定商取引法違反でした。 重要な岐路となりました。しかし、裁判においては「相当高度な組織性が認められる継続的犯行」とされ、統一教会との関係性も認められたにもかかわらず、教会本部にまでは捜査が及ばないなど、その捜査は不徹底だったと思います。そこに政治家の介入がなかったかは厳しく検証されるべきでしょう。 田中富広会長は今回の記者会見で、2009年にコンプライアンスを強化したことによって訴訟件数は減ったと主張していますが、2009年以降も訴訟は起きています。そもそも、ある日コンプライアンスを宣言したとしても、それまでの教団の「負の側面」による被害が帳消しになるわけではありません。いずれにせよ、これほどの訴訟やトラブルを抱えてきた宗教団体は、法人解散となったものを除いてはほかに思いあたりません。 冒頭、統一教会と政治家の関係がこの十数年で密接になったことを指摘しましたが、変化の背景にはこの摘発があります。教団側はこのような「危機」をむかえたのは、政治家とのつながりが不十分であったと考え、それを強めることに注力したのです。守ってもらうためという動機です。結果的に教団と政治家は、もちつもたれつの依存関係を深めることとなりました。「転換期」となったわけです』、「教団側はこのような「危機」をむかえたのは、政治家とのつながりが不十分であったと考え、それを強めることに注力したのです。守ってもらうためという動機です。結果的に教団と政治家は、もちつもたれつの依存関係を深めることとなりました」、「教団と政治家」の「関係」への変化がよく理解できた。
・『反省と決別宣言はセットであるべき  Q:岸田首相は第二次岸田内閣の閣僚や自民党に対して統一教会と距離を取るよう求めました。岸田首相の判断で、今後、統一教会と政治の関係はどのように変化すると思いますか。 A:対応としてはまだまだ生ぬるく、不明瞭ではないでしょうか。政治家としては、過去の関わりについての正確な状況把握、そうした「加担」が社会や被害者らに与えた影響についての反省、今後の決別宣言がセットであるべきです。 政治家が、そういった社会問題性が強い団体と距離を置き、自らの政治活動を清廉かつ透明性の高いものにアレンジしていくことは自由、というより責務でしょうし、何の権利の侵害にもなりません。この透明化・可視化を前提として、メディアや市民は継続的なウォッチとチェックができるようになります。 そして何より今回の問題で必要なのは、これまでの被害救済・回復の枠組みづくりです。明確なゴールを設定・共有し、早急に取り組みを進めてもらいたいです』、「政治家としては、過去の関わりについての正確な状況把握、そうした「加担」が社会や被害者らに与えた影響についての反省、今後の決別宣言がセットであるべきです。 政治家が、そういった社会問題性が強い団体と距離を置き、自らの政治活動を清廉かつ透明性の高いものにアレンジしていくことは自由、というより責務でしょうし、何の権利の侵害にもなりません。この透明化・可視化を前提として、メディアや市民は継続的なウォッチとチェックができるようになります。 そして何より今回の問題で必要なのは、これまでの被害救済・回復の枠組みづくりです。明確なゴールを設定・共有し、早急に取り組みを進めてもらいたいです」、同感である。

第三に、9月8日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「国葬が東京五輪と同じ「ゴリ押し開催後に不正発覚」に陥る嫌な予感しかしない訳」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/309348
・『「国葬強行」スタンスに嫌な予感   「なんで2億が16億に膨れ上がるんだ、これじゃぼったくりにあったみたいじゃないか!」 賛否両論で絶賛炎上中の「国葬問題」に、またしても新たな“燃料”が投下されてしまった。 安倍晋三元首相の国葬に関する費用について、政府はこれまで会場設営費として約2億5000万円を閣議決定していたのだが、ここにきてさらに警備費が約8億、外国要人の接遇費が約6億かかるとして、総額で約16億6000万円の概算になると公表したのだ。 もちろん、2019年の皇位継承式典の関係費として74億1000万円もの支出があったことを踏まえれば、これっぽちで済むワケがない。さまざまなメディアが国葬のコストを試算しているが、最終的には30億あたりに落ち着くのではないかという見方が強い。 ……という話を聞くと、「これはカネの問題じゃない!国家として当たり前のことだ」「安倍さんの死を悼むVIPが世界中から集まって弔問外交できるなら30億でも安いものだ」と怒る人も多いが、吉田茂氏以降、歴代首相は国葬ゼロだが、国家としてなんの不都合もなかった。 また、弔問外交うんぬんを主張する人もいるが、バイデン米大統領をはじめマクロン仏大統領、メルケル前独大統領という西側諸国の要人は欠席を表明しており、安倍元首相の盟友・トランプ氏まで来ない。実は「世界」からすれば、元首相の葬儀が国葬か否かなんてことに関心はないし、是が非でも弔問外交をしたいわけではないのだ。 このような政府の強行開催スタンスや推進派の皆さんの「強引な主張」を見ていると、筆者には嫌な予感しかしない。「ゴリ押し開催後に不正発覚」という「東京2020」と同じパターンをたどっているからだ』、英国のエリザベス前女王の国葬は、英国議会の同意を取り付け、「弔問外交」としても出席要人のクラスは段違いになりそうだ。
・『不正だらけだった東京五輪、国葬の裏に不正は?  ご存じのように、昨年の東京五輪は、コロナ禍で中止や延期を求める声が高まったが、政府や推進派の皆さんから「国家の威信をかけて開催すべき」「いまさら中止にしたら世界から笑われる」という「強引な主張」が多くなされて、最終的に史上初の「無観客五輪」となった。 国がイベントや事業を「ゴリ押し」する時というのは、そこに巨大な利権など「オトナの事情」があるケースが多い。そういう「無理」を通すためには、水面下でさまざまな不正が行われるものだ 「東京2020」はその典型で、招致段階からIOCへの賄賂疑惑など多くの「不正」が指摘されたが、最近になってまたひとつ大きな「五輪汚職」が発覚した。8月18日、東京地検特捜部が、電通元専務で東京五輪・パラリンピック組織委員会(五輪組織委)の高橋治之元理事を逮捕した。五輪のオフィシャルスポンサーであるAOKIから「コンサル料」を受け取って便宜を図った疑いがあるということだ。さらに、本件に関連して今月6日にはKADAOKAWAの元専務ら2人も逮捕されている。 これらと同様のことが「安倍国葬」後に発覚してしまうのではないかと心配している。歴代首相もやっていない、特に世界も求めていないにもかかわらず、ここまで国葬をゴリ押しするのだ。「無理」を押し通した東京2020と同じく、裏でさまざまな不正が行われていても不思議ではない。 では、どんな不正か』、今回、「国葬」をゴリ押ししたのは、麻生副総理といわれているが、それに安易に乗った「岸田首相」も情けない。
・『常習化している「改ざん」はお手のもの?  まずもっとも可能性が高いのは、国葬にかかった費用を過小に抑えるような「改ざん」だろう。 霞が関では数値や公文書の改ざんがもはや「常習化」している。近年でも18年に財務省の公文書改ざんが発覚したことを皮切りに、厚生労働省による裁量労働制をめぐるデータ改ざんも発覚、さらに中央省庁の障害者雇用数を「水増し」していたことがバレて、21年末には、国土交通省が統計データの書き替えを長年やっていたこともわかっている。 なぜここまで「改ざん」を繰り返すのかというと、「国を守る」という使命感からだ。官僚にとって、「国」とは我々一般国民ではなく、内閣総理大臣や政府・与党である。なので、このあたりの人たちが掲げる政策や、国会答弁が叩かれることを、全力で防ぐことこそが、公僕としての最も重要なミッションになる。そこで「改ざん」の出番だ。 官僚の立場的に、一度決まった政策や答弁を変えるということはできないので、公文書や統計の方を変えるしかない。つまり、彼らはモラルが欠如しているわけではなく、「学歴エリート」らしい極めて合理的な考え方に基づいて、「改ざん」に手を染めているのだ。 それを踏まえて今回の「国葬」の費用を算出していく官僚たちの間で、どんな忖度が起きるのかを想像していただきたい。 約16.6億円というかなり抑えた金額でもこの批判だ。これがもし実際は30億円かかりましたというような話になれば、岸田政権への逆風はさらに強いものになってしまう。当然、官邸は各省庁に「できる限り無駄な出費を抑えるように」と大号令をかけている。 しかし、警備費用や人件費などもあるのでコストカットには限界がある。そこで「国を守る」ために官僚に残された道は数字をイジるしかない。例えば、実際には今回の国葬の費用なのにそれをカウントせず、関連の出費にしてしまうなどの「改ざん」をしてしまうのだ。これまでの「前科」を踏まえれば、そこまで荒唐無稽な話ではない』、「官僚に残された道は数字をイジるしかない。例えば、実際には今回の国葬の費用なのにそれをカウントせず、関連の出費にしてしまうなどの「改ざん」をしてしまうのだ」、なるほど。
・『スターを招いて「弔意ムードのかさ上げ」も?  そして、次に可能性が高い不正は、「弔意ムードのかさ上げ」を行うことだろう。今回、政府は「弔意の強制はしない」と言っているので、国民が自発的に弔意を示すような「誘導」をしていく必要があるのだ。 そうなると考えられるのは、「参列者の仕込み」だ。 国葬にそれほど参列者が来ない場合、「あんなに税金を投入してこれか」と政府に批判の矛先が向けられしまう恐れがあるので、保険としてある程度の「サクラ」を用意しておくのだ。 さらに盛り上げ効果を狙うなら、「有名人の仕込み」も考えられる。例えば、国民ならば誰もが知っているような大スターや若者から絶大な人気を誇るようなアイドルや人気俳優、お笑い芸人、ユーチューバーなどをさながら「24時間テレビ」のように次々に日本武道館に招くのだ。国葬当日はワイドショーなどは生中継をしているので当然、大盛り上がりだろう。 「あ、いまあの大物俳優が日本武道館に到着しました」 「速報です!今、あの国民的人気アイドルグループが喪服姿でやって来ました。やはり安倍元首相は若い人たちにも慕われていたんですね」 そんな感じのリポートが繰り返されれば、「なんだかんだ言っても国葬やって良かったね」という世論が形成される。国葬をゴリ押しした岸田政権に対しても「結果オーライ」となって、支持率低下に歯止めがかかるというわけだ。 なんて考えを述べると、「日本政府がそんなインチキをするわけがないだろ」とお叱りを受けるかもしれないが、政府がやらなくてもそのような「ブローカー」が暗躍する恐れもある。 「FRIDAYデジタル」が『安倍総理『桜の会』芸能人続々のウラに「招待状8万円」の闇ルート』(19年4月16日)で報じているが、「桜を見る会」でも有名人や芸能人をこのイベントにブッキングすることを生業としていた人々がいた。 政府としても、テレビで活躍する有名人が多く参加してくれるとありがたい。「招待状」を購入した有名人や芸能人にもメリットがある。「安倍さんに招待されたよ」と自身の人脈を誇示することができるし、安倍夫妻と一緒の写真を営業ツールにできる。国家イベントと「芸能人の仕込み」が互いにウィンウィンなのだ。 今回の国葬の運営・企画の会社も「桜を見る会」と同じだ。座組みが変わらないということは、「関係者」も変わらない。つまり、有名人・芸能人のブッキングビジネスも「桜を見る会」から「継続」している可能性が高いのだ』、「有名人・芸能人のブッキングビジネスも「桜を見る会」から「継続」している可能性が高い」、その通りだろう。
・『「国葬やって良かった」世論を誘導する方法とは   「そんな不正をしなくても安倍さんの国葬は多くの国民や有名人がかけつけて大盛り上がりするに決まっている」という安倍元首相の支持者も多いだろう。だが、残念ながらなにも「仕込み」をしないと、かなり寂しいことになるはずだ。それは安倍元首相の功績がどうとか、人望がどうとかではなく、「日本の国葬」の宿命だ。 『吉田茂氏の国葬は「大不評」だったのに…安倍氏国葬をゴリ押しする政府の過ち』(7月21日)の中で詳しく述べたが、国民的人気を誇った吉田氏の国葬に国民はかなりシラけてしまった。戦後の日本は税金を投入するような国家イベントは「無宗教」でなくてはいけないというルールができたので、無機質な「お別れの会」にしかならず、国民の弔意をなえさせてしまったからだ。 聖書に手をのっけて大統領が宣誓するようなアメリカなど、政治の中に宗教観が自然に入っている国では、国葬はやる意味がある。それぞれの宗教の教義に基づいているので、信者を中心に弔意が自然に盛り上がる。また、宗教儀式ならではの荘厳な雰囲気があるので、信者でない者も襟を正して、故人への敬意の気持ちが高まる。つまり、世界の多くの国では、国葬というものはちゃんと「宗教イベント」として成立しているのだ。 しかし、日本の場合、政府が税金で「宗教イベント」をするなど断じて許されない。 「じゃあ、宗教色ゼロでにぎやかに送り出せばいいじゃん」と思うかもしれないが、「国葬」の場合それも難しい。もし国民的人気のある歌手や歌舞伎役者に何かの出し物をやらせようと思ったら、その費用はいくらか、どういう根拠で人選をしたのかなども追及されてしまう。野党やマスコミは、国葬にかこつけて、政府や自民党のPRにしているのではと叩くだろう。そうなると、吉田氏の時のように、当たり障りのないクラシック音楽を延々と会場に流すしかないのだ。 このような「国葬」の現実を踏まえると、筆者は何らかの形で「芸能人・有名人の仕込み」が行われる可能性が高いと思っている。「国葬」というイベントの無機質さ、地味さを考えると、国民に「安倍さんは偉大な政治家でした」と思わせられる方法は、「豪華な弔問客」しかないからだ。 もちろん、自発的にやってくるような芸能人もいるだろうが、幅広い世代にアピールをして国家の威信を示すには、「桜を見る会」のようにバラエティに富んだメンツにしなくてはいけない。それを実現するには、それ相応のカネが必要だ。 現在、16.6億という「安倍国葬」の費用はどこまでふくれ上がるのか。そして、政府はどういう作戦で「なんだかんだ言って、やっぱり国葬やって良かったね」という世論をつくっていくのか。注目したい』、「芸能人・有名人の仕込み」は電通などが取り仕切ることになるのだろう。
タグ:「芸能人・有名人の仕込み」は電通などが取り仕切ることになるのだろう。 「有名人・芸能人のブッキングビジネスも「桜を見る会」から「継続」している可能性が高い」、その通りだろう。 「官僚に残された道は数字をイジるしかない。例えば、実際には今回の国葬の費用なのにそれをカウントせず、関連の出費にしてしまうなどの「改ざん」をしてしまうのだ」、なるほど。 今回、「国葬」をゴリ押ししたのは、麻生副総理といわれているが、それに安易に乗った「岸田首相」も情けない。 英国のエリザベス前女王の国葬は、英国議会の同意を取り付け、「弔問外交」としても出席要人のクラスは段違いになりそうだ。 窪田順生氏による「国葬が東京五輪と同じ「ゴリ押し開催後に不正発覚」に陥る嫌な予感しかしない訳」 ダイヤモンド・オンライン 「政治家としては、過去の関わりについての正確な状況把握、そうした「加担」が社会や被害者らに与えた影響についての反省、今後の決別宣言がセットであるべきです。 政治家が、そういった社会問題性が強い団体と距離を置き、自らの政治活動を清廉かつ透明性の高いものにアレンジしていくことは自由、というより責務でしょうし、何の権利の侵害にもなりません。この透明化・可視化を前提として、メディアや市民は継続的なウォッチとチェックができるようになります。 そして何より今回の問題で必要なのは、これまでの被害救済・回復の枠組みづくり 「教団側はこのような「危機」をむかえたのは、政治家とのつながりが不十分であったと考え、それを強めることに注力したのです。守ってもらうためという動機です。結果的に教団と政治家は、もちつもたれつの依存関係を深めることとなりました」、「教団と政治家」の「関係」への変化がよく理解できた。 夫婦別姓や同性婚は家族を破壊すると思い込んでいるし、共産主義勢力による「性の革命」が押し寄せている、これに抗しなければならないというのが現在に至るまでの彼らの行動原理になっていると捉えられます。これらは自民党右派や、神社界、日本会議、右派論壇などとの主張や運動とも響き合い、一定の影響力を持った点が指摘できます」、巧みに時代の流れに乗って変化したようだ。 「政治活動としては「勝共」の「共」の枠が途方もなく拡大され、その中にさまざまなものが入れ込まれることで、「新たな敵」が設定されていったと考えています。家族や「性的」純潔を重視する教えからも、それらの「敵」とされた典型的動向としては、夫婦別姓や性教育、「ジェンダーフリー」、同性婚、LGBTなどの性的マイノリティー理解などが挙げられます。 彼らが考えるところの「共産主義っぽいもの」「左翼っぽいもの」を一緒くたに「勝共」の「共」に入れ込み、それらと戦うことで自分たちのレーゾンデートル(存在価値)を見いだし活動が 「とりわけ2010年代に入り、自民党政治家と統一教会の関わりはさまざまな局面で強まり、目立つようになってきました。これにはまず教団側の思惑がありました。それに政治家・政権側が応じたかたちです。・・・それまで統一教会と接点を持つことに多少は慎重だった政治家も、次第に抑制しなくなり、イベントに祝電を送ったり、出席して挨拶まですることが積み重ねられていきました。選挙協力もそうです。また、統一教会系の右派学生団体「UNITE」が2016年ににわかに結成され、政権支持や改憲を訴えたのも象徴的でした。これは前年の安保 東洋経済オンライン「統一教会への「歯止め」を決壊させた安倍元首相 岸田政権は教団との依存関係を解消できるか」 「オウム真理教が数々の凶悪事件を起こした。そのため2000年代に入ると、統一教会への関心が相当に薄れていた」、アンラッキーなことだ。「警察が捜査を行うにしても、メディアが統一教会の問題を追及するにしても、2009年の東京地裁判決は様々な示唆を与えてくれるはずです」、その通りだ。 「検察」はその気になれば、捜査情報のリークによる世論を誘導するが、そこまでしなかったようだ。 「捜査の手が先に伸びることはなかった」、「統一教会」側の工作が功を奏したのだろう。 「危機感を覚えた統一教会が」「日本人会長」を「交代」させ、「新会長の政治力に期待した」、なるほど。 「民主党政権が誕生する直前、統一教会の強制捜査に乗り出した」とは絶妙なタイミングだ。 デイリー新潮「統一教会「霊感商法事件」捜査の深すぎる闇 司直の手はなぜ教団本体に届かなかったのか」 (その3)(統一教会「霊感商法事件」捜査の深すぎる闇 司直の手はなぜ教団本体に届かなかったのか、統一教会への「歯止め」を決壊させた安倍元首相 岸田政権は教団との依存関係を解消できるか、国葬が東京五輪と同じ「ゴリ押し開催後に不正発覚」に陥る嫌な予感しかしない訳) 安倍元首相暗殺事件
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ハラスメント(その21)(女性記者が“告発”できないのはなぜ? 細田衆院議長「セクハラ疑惑」報道から見えてきた マスコミ業界の“体質”、胸に触り布団を敷いて…女性記者が語る「永田町壮絶セクハラ体験」、「見るハラ」「見せハラ」大論争で見落とされる視点 なぜ同意できないか ルッキズムを巻き込み沸騰、公明党・熊野正士議員の性加害が発覚 被害女性が明かす 身の毛もよだつ「セクハラLINE」の内容とは) [社会]

ハラスメントについては、5月22日に取上げた。今日は、(その21)(女性記者が“告発”できないのはなぜ? 細田衆院議長「セクハラ疑惑」報道から見えてきた マスコミ業界の“体質”、胸に触り布団を敷いて…女性記者が語る「永田町壮絶セクハラ体験」、「見るハラ」「見せハラ」大論争で見落とされる視点 なぜ同意できないか ルッキズムを巻き込み沸騰、公明党・熊野正士議員の性加害が発覚 被害女性が明かす 身の毛もよだつ「セクハラLINE」の内容とは)である。

先ずは、5月31日付け文春オンライン「女性記者が“告発”できないのはなぜ? 細田衆院議長「セクハラ疑惑」報道から見えてきた、マスコミ業界の“体質”」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/54751
・『細田博之衆院議長の「セクハラ」問題。週刊文春が2週にわたり報道した。 流れをおさらいする。まず5月19日発売の週刊文春が『細田博之議長 女性記者に深夜に「今から家に来ないか」』という記事を掲載。 大勢の政治部記者から文春に“告発”が寄せられたとし、細田氏が過去に複数の女性記者らにセクハラ発言を繰り返していたと報道。たとえば女性記者が細田氏に取材をすると「添い寝をしたら教えてあげる」と言われたという話が“常識”のように記者たちの間に広まっているという。 実際に文春が被害に遭っていたといわれるA記者に話を聞くと「無かったと言えば、嘘になりますね」というコメントが。さらにB記者は「深夜に本人から『今から来ないか?』」と電話がかかってきた。断るわけにもいかず、足を運びました。自宅に呼ばれたのは、私だけではないと聞きます」と証言。 こうした話は本当なのか文春が細田事務所に事実関係を尋ねたところ、期日までに回答が無かった。しかし報道後に細田氏は「事実無根」と抗議。 すると翌週の週刊文春(5月26日発売号)で、細田セクハラ問題の第2弾を報じたのだ。タイトルと見出しはこれ』、「衆院議長」ともあろう人物が、「大勢の政治部記者から文春に“告発”が寄せられた」とはみっともない限りだ。
・『「うちに来て」細田衆院議長の嘘を暴く「セクハラ記録」  ・女性記者たちの告発「二人きりで会いたい」「愛してる」 ・党女性職員が周囲に嘆いた「お尻を触られた」 ・最も狙われた女性記者が漏らした「文春はほぼ正しい」 ・カードゲーム仲間人妻の告白「抱きしめたいと言われ…」 どれを読んでもギョッとする。細田氏はこの報道に対し、改めて抗議する文書を出し、「通常国会閉会後、訴訟も視野に入れて検討したい」などと真っ向から反論した。 ここまでが現時点の流れである』、「通常国会閉会」されたが、「訴訟」は起こしてないようだ。やはり勝訴の見込みがないのかも知れない。
・『「最も狙われている」女性記者の回答  さて、細田氏とは別に、私にはどうしても気になる点があったのです。それは取材する記者の側のことだ。 記事の後半に「H記者」が登場している。多数の記者から、細田氏に「最も狙われている」と言われていた女性記者である。 以前からH記者は国会議員のセクハラ発言に強い問題意識を持ち「女性記者は多かれ少なかれ経験している。被害が出た時に担当を外せば解決する問題ではない」と話していたという。前週の文春記事についても「文春はしっかり取材している。記事の内容はほぼ正しい」などと周囲に語っていた。 そんななか文春がH記者に事実確認のために電話をした。ここでH記者から出た言葉は、 「それについては即答できる状況にないんです」「考える時間も必要なので、またご連絡させて下さい」というもの。 翌日、H記者から文春に電話があった。その内容は「やはり今、お答えできることはありません……」という“回答”だった』、「細田氏に「最も狙われている」と言われていた」「H記者」が「回答」を拒否したのは何故だろう。
・『彼女たちが“告発”できない理由  記事では細田氏の「セクハラ記録」を提供した人物が次のように解説している。 「大手マスコミは、自社の女性記者が細田氏から受けたセクハラ発言を把握しているはずです。ただ、彼女たちはオフレコ取材が前提なので、同僚に迷惑がかかるのでは、とも悩んでいる。自ら名乗り出ることは容易ではありません。上層部としても“貴重な情報源”である細田氏を守りたいから、『あったこと』をなかなか報じられずにいます」 この「解説」を何度も読み返してしまった。恐ろしいことが書かれているではないか。 セクハラ、パワハラ被害にあった人が「仕事のために」被害をなかなか言いだせないという状況がもし本当なら、これは新聞業界、もしくはマスコミ業界全体の問題だと思う。 これは「マスコミ論」でもある。そう思って今回の細田氏のセクハラ疑惑をめぐる報道を新聞各紙で確認するとサラッとしている印象を受ける。 朝日新聞は社説で『細田氏の言動 衆院議長の資質欠く』(5月28日)と書いた。《女性記者らに対するセクハラの指摘に対し、説明責任を果たそうとしない。これでは、議長の資質に欠けるというほかなく、国会に対する国民の信頼をも損ないかねない。》 確かにそうなのだが、まず自社の政治部記者に詳しく尋ねたらどうなのだろう。そのほうが何か新事実や新証言が出てくるのではないか? 「野党は、引き続き追及する構えだ」(5月27日)とも書いているが、どこか他人事である。でも、実は政治家のセクハラ問題は、マスコミがいちばん「知っている」のでは? 私はいま朝日を例に挙げたが、ほかの新聞社やテレビ局も同じだ』、「彼女たちはオフレコ取材が前提なので、同僚に迷惑がかかるのでは、とも悩んでいる。自ら名乗り出ることは容易ではありません。上層部としても“貴重な情報源”である細田氏を守りたいから、『あったこと』をなかなか報じられずにいます」、「セクハラ、パワハラ被害にあった人が「仕事のために」被害をなかなか言いだせないという状況がもし本当なら、これは新聞業界、もしくはマスコミ業界全体の問題だと思う。 これは「マスコミ論」でもある」、「政治家のセクハラ問題は、マスコミがいちばん「知っている」のでは? 私はいま朝日を例に挙げたが、ほかの新聞社やテレビ局も同じだ」、同感である。
・『「女性の番記者を付けている社が目立ちます」  「細田氏の女性好きは昔から有名です。(略)『細田氏は女性にしか話さない』と言われ、女性の番記者を付けている社が目立ちます」(ベテラン政治記者、週刊文春5月19日発売号) 私は政治面によくある「関係者」「党幹部」「重鎮」など、匿名だからこそ言えるコメントを読むのも好きだ。役に立つと思っている。しかし女性記者がパワハラやセクハラに遭っても言いだせない上で成立するものなら、私も楽しんではいられない。 いやいや、取材はそれだけじゃないよ、ちゃんとやってるよ、と言うなら今回の「政治家のセクハラと取材者」の問題を取り上げてほしい。私は嫌味や皮肉で言ってるのではなくマスコミ内部の姿勢を見たいのです。 今回の件で2018年の「財務省セクハラ」問題を思い出した人も多いだろう。女性記者にセクハラ発言を繰り返したと報じられて財務省事務次官・福田淳一氏が辞任した件。あれも発端は週刊誌報道だった。あのときは「週刊新潮」で、今回は「週刊文春」。女性記者へのセクハラは自社の媒体ではなく、週刊誌に訴えてやっと報じられる案件なのか。 細田セクハラ問題は、やはりマスコミ論でもある』、「女性記者へのセクハラは自社の媒体ではなく、週刊誌に訴えてやっと報じられる案件なのか。 細田セクハラ問題は、やはりマスコミ論でもある」、「マスコミ」への痛烈な批判だ。

次に、7月4日付けFRIDAY「胸に触り布団を敷いて…女性記者が語る「永田町壮絶セクハラ体験」」を紹介しよう。
https://friday.kodansha.co.jp/article/251734
・『「もう亡くなった大物政治家ですが、胸を触るのが大好きな人がいました。彼は小料理屋に行くと、中居さんの着物に手をつっ込んで触っているような人だったんです。ある時、私がたまたま隣に座ったら、ふざけて『おっぱい触ってもいいかな』と手が伸びてきた。そこで『ちょっとでも触ったら書きますよ』と言ったら、電気に打たれたようにビビビッと手が引っ込みました」 こう語るのは、毎日新聞論説委員の佐藤千矢子氏だ。大阪社会部やワシントン特派員などを経て、全国紙で女性初の政治部長となった有名記者である。佐藤氏は近著『オッサンの壁』(講談社現代新書)で、永田町で体験したセクハラを詳細に告白。男性優位な社会で居心地の良さに安住する政治家の危うさに、警鐘を鳴らしている(以下コメントは佐藤氏)。「『週刊文春』が報じた(衆議院議長)細田博之さんのセクハラ疑惑についてはご本人が否定していて、私自身も噂話しか知らないので、事実関係についてはコメントできません。しかし、昔も今も政治家によるセクハラトラブルが絶えないのは間違いないでしょう。永田町の本質は変わっていないという印象を受けます」 佐藤氏は政治記者として、永田町で長年取材を続けてきた。自身がセクハラ被害を受けることも。政治記者になって2年目の91年には、次のような経験をしたという。 「議員宿舎へ、ある中堅議員の部屋を訪れた時のことです。彼は毎朝集まる数人の記者へ、『朝は味噌汁ぐらい飲まないといけないぞ』とお湯を注いでふるまってくれるような優しい人です。その朝は他に記者がおらず、たまたま1対1でした。いつものように台所で味噌汁を飲みながら話をしていると、議員がこう言います。『睡眠時間も足りていなんだろう。少し寝なさい』と。 彼は隣の和室に行って、押し入れから布団を出し畳の上に敷き始めた。私は遠慮して、早々に部屋を出ました。後から考えると明らかにセクハラです。しかし当時の私はまだ若く記者としても未熟で、何より高齢で優しかった議員とセクハラが結びつきませんでした。『お言葉に甘えて仮眠をとらせていただきます』と、危うく寝てしまいかねなかったんです」』、「ある時、私がたまたま隣に座ったら、ふざけて『おっぱい触ってもいいかな』と手が伸びてきた。そこで『ちょっとでも触ったら書きますよ』と言ったら、電気に打たれたようにビビビッと手が引っ込みました」、さすが「佐藤氏」だけのことはある。
・『「舌を出せ」  セクハラ行為をする永田町関係者は、政治家だけではない。佐藤氏と旧知の女性記者が、90年代後半に体験した屈辱だ。 「彼女は大物議員の秘書から、夜9時ごろバーに呼び出されました。『お前はオヤジ(議員)に食い込めていない』と、相談に乗ってくれるというのです。しかしバーに行くと仕事の話はほとんどなく、秘書はチークダンスを踊ろうと誘ってきました。記者は相手の機嫌を損ねてはいけないと、嫌々一緒に踊っていると耳元でこうささやかれたとか。『舌を出せ』と。 彼はディープキスを求めてきたんです。彼女はなんとか、その場を切り抜けました。上司に相談すると、『ハッハッハッ』と笑い飛ばすばかり。秘書のセクハラには当然腹が立ったが、共感さえしてくれない上司にも怒りがわいたと、悔しそうに話していました」 職業意識から、セクハラを拒否できないケースもある。 「男性と女性の記者が2人で、政治家を夜回り取材した時のことです。政治家は女性記者のお尻を触り、ずっと撫でていた。男性記者が『やめてください』と注意しようとすると、女性は小声で『いいから何も言わないで』と制したそうです。 おそらくは彼女は、この政治家に食い込むためにはお尻を撫でられても仕方ないとガマンしたのでしょう。拒否したら政治家の怒りをかい、会社から担当を変えられるか非難されると考えたのではないでしょうか。彼女の心情を思うと、やるせない気持ちになります」 佐藤氏は、セクハラを受けたら女性も勇気を出して拒否するべきだと話す。 「セクハラは立証が難しい。1対1の密室でのケースが多く、物証もなかなかありませんから。取材拒否などの報復を恐れ、言い出しづらい気持ちもわかります。しかし、声をあげなければ何も解決しません。会社も被害を受けた女性が孤立しないよう、加害者に厳重抗議するなどサポートすべきでしょう。被害者を突き放し、セクハラを黙認するなど言語道断です。 最大の問題は政治家の意識です。女性を上下関係で見ている人が、あまりに多い。自分と違う属性の人と対等な関係を築けなければ、多様性が重視される世界で日本は相手にされなくなります。永田町に住む人たちには、危機感を持っていただきたいです」 政界や報道現場に立ちはだかる「オッサンの壁」。佐藤氏は乗り越えるのではなく、壊すものだと語る。 現在は論説委員として活躍する。愛知県出身。名古屋大学文学部卒業。17年、全国紙で女性として初の政治部長に就任』、「セクハラを受けたら女性も勇気を出して拒否するべきだ」、「会社も被害を受けた女性が孤立しないよう、加害者に厳重抗議するなどサポートすべきでしょう。被害者を突き放し、セクハラを黙認するなど言語道断です」、「最大の問題は政治家の意識です。女性を上下関係で見ている人が、あまりに多い。自分と違う属性の人と対等な関係を築けなければ、多様性が重視される世界で日本は相手にされなくなります。永田町に住む人たちには、危機感を持っていただきたいです」、同感である。

第三に、8月12日付け東洋経済オンラインが掲載したコラムニスト・人間関係コンサルタント・テレビ解説者 の木村 隆志氏による「「見るハラ」「見せハラ」大論争で見落とされる視点 なぜ同意できないか、ルッキズムを巻き込み沸騰」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/610737
・『猛暑が続くこの1カ月あまり、「見るハラ」という言葉がネット上に書き込まれていましたが、ここに来てその数が急増しました。これは8月8日の「めざまし8」(フジテレビ系)で、「見るハラ」の特集が組まれたからであり、ツイッターのトレンドワード入りしたほか、その後も活発な意見が交わされています。 その「めざまし8」は、「見るハラ」を「薄着の女性をじろじろ見るなどの不快な視線によるセクハラ」と定義。平年を上回る猛暑に加えて、行動制限のない夏は3年ぶりだけに、肌の露出が増えて「見るハラ」を訴える声も増えているのでしょうか』、「見るハラ」とは、初めて知ったが、確かに増えているのだろう。
・『しっかり見ていることへの嫌悪感  ハラスメント被害を訴える女性の声をあげると、「本当にずっと見ている人とかいる」「『何で』って思うし、気持ち悪い」「見るのはしょうがないけど、ガン見とか写真撮るとか隣に座るとか。そういう行動に移してほしくない」など、“ちょっと”でなくしっかり見ていることに嫌悪感があるようです。 ただ、被害を訴える人だけでなく、「こっちもそういう服を着てるから悪くは言えないかな。見られてるのはわかります。いい気持ちにはならないけど」「自分も着たい服は着たいので、『我慢しないといけない部分もあるのかな』って」などの声もあり、「こっちは暑いから薄着したいけど、『見られるならこの服着るのやめよう』って思います」と自主規制している人もいました。 被害を訴える人と、ある程度は受け入れる人の両方がいる一方で見逃せないのは、「『見るハラ』が成立するなら、見たくないものが視界に入る『見せハラ』も成立する」という声。これは「『目のやり場に困る』『反射的に見てしまう』ような服装は逆セクハラではないか」という意見でしょう。) 現在はその「見るハラ」VS「見せハラ」との論争に留まらず、さまざまな角度からの意見が飛び交っている状態。なかには近年、何かと物議を醸している「ルッキズム」が含まれ、複雑化しているところもあります。さまざまなハラスメント被害の声をあげやすくなった今、加害者にも被害者にもなりうる私たちは「見るハラ」とどう向き合っていけばよいのでしょうか』、「「『見るハラ』が成立するなら、見たくないものが視界に入る『見せハラ』も成立する」という声」、その通りだ。
・『誰もが被害者であり加害者でもある  前提としてあげておかなければいけないのは、「『見る』ことだけで人を処罰することはできない」こと。もちろん、過剰に接近してのぞき続けたり、つけまわしたりなどの行為は罪に問われる可能性があり論外ですが、被害者の声を見る限り、そこまでのケースは稀のようです。 元来「見る」という行為には、いくつかの種類があります。明確な目的を持って見ることもあれば、反射的に見ただけのものもありますし、「カッコイイ服だな」などの好意的なものも、「センス悪いな」などの悪意的なものもあるでしょう。もしくは、「ガン見されている」と感じたときも、その人は近視や老眼であまり見えていないかもしれません。 「見る」という行為にはこのようないくつかの種類があるため、「相手が意図していなくても、自分が不快と感じたらハラスメントになる」という基準に当てはめるのはリスキー。たとえば今回、「見るハラ」の被害を訴えた女性の中にも、自分が「見るハラ」の加害者にもなっている可能性は十分ありえます。 たとえばネット上に「イケメンを見ちゃうのは『見るハラ』?」「鍛えられた筋肉にはつい目が行ってしまう」などの声もありましたが、見られた男性たちの中には不快感を覚えた人がいるかもしれません。もともと「セクハラは男性が最も被害を訴えにくいハラスメント」とも言われていることもあり、もはや男女で分けて男性だけを叩く時代ではないでしょう。 「『見るハラ』を男女で分ける時代ではない」というもう1つの理由は、ルッキズム論争にもつながっていきます。ルッキズムとは、「外見で人の価値を決めることや、その差別・偏見」を指す言葉ですが、ネット上のコメントには「気持ち悪いものを見るような目で見られたことがある」などの被害を訴える男性の声が少なくありませんでした。) これは「性的な目で見られない人も、『ブス』『ブサイク』という目で見られて不快な思いをしている」ということでしょう。また、逆に「カワイイ」「カッコイイ」という目で見られる人の中にも、その見方で不快な思いをしているケースも散見されます。「見るハラ」という言葉を語るとき、このようなルッキズムに関わるところも混ぜなければフェアな議論にはならないのです。 たとえば、性的な「見るハラ」の被害を訴える人は、「この人は『カッコイイ』『カワイイ』からまあいいか」とみなして終わらせるケースはないか。あるいは、『ブサイク』『ブス』などの侮辱的な「見るハラ」加害者になっていないか。被害の声を訴えることは問題ないものの、「自分は絶対にやってない」とはなかなか言い切れない苦しさを抱えているのです』、「「見るハラ」という言葉を語るとき、このようなルッキズムに関わるところも混ぜなければフェアな議論にはならない」、言われてみればその通りだ。
・『「見るハラ」VS「見せハラ」に勝者なし  次に「めざまし8」でもトピックスにあげていた「見るハラ」VS「見せハラ」の論争について。 人間社会で生きている以上、年齢性別や理由を問わず公共の場所では、「見る」「見られる」という行為から逃れられません。もちろん過剰に見続ける一部の人は論外ですが、「自分が見ることも、見られることもある」という前提のうえで主張しなければ説得力に欠けます。 そもそも「見るハラ」が論争になったのは、「日本にそれだけ服装の自由がある」ということ。法律や宗教などの問題がなく、個人が服を選んで着る自由が与えられています。ただ、自由を楽しむのはOKでも、それを周囲がどう思うかは別の話。 たとえば、肌を露出した服装で歩いているときは、「かわいい」「似合っている」から「みっともない」「やめてほしい」までのさまざまな見方があるでしょう。その中から性的なものだけを抽出し、拒絶することで自分の自由を守ろうとするのは無理があります。 MCの谷原章介さんが「路上で凄い露出の多い方だと、『そっち見た』と思われちゃうので下を向いて歩くしかない」と話していましたが、こういう経験をしたことのある人は少なくないでしょう。また、幼い子を持つある母親は、「路上や電車で露出の多い服装は子どもに見せたくない」とコメントしていました。 これらの声もある以上、「自分の着たい服を着て公共の場所を歩く」という自由を優先させたいのであれば、性的なものも含めすべてを受け止める。あるいは、受け流すという責任が伴うのではないでしょうか。しかし、いずれにしても「見るハラ」VS「見せハラ」の論争に勝者はなく、それ以前に勝者を決める必要すらないものなのです。 今回の「見るハラ」論争の中で唯一、明確な答えを出せそうなのが、職場における「見るハラ」。給与を得るために働く職場では、個人の自由より会社の業績やグループの働きやすさが優先されます。職場が「互いの存在が特定されていて、人間関係が継続される空間」であることも含め、無用なセクハラトラブルを生まないためにも、露出の多い服を避けるルールを作るほうがいいでしょう。 近年では「立場が上がるほどセクハラに対してセンシティブになっている」という人も少なくないだけに、「どうしても露出の多い服を着たい」という人も、「通勤時だけに留める」などの歩み寄りが求められるところです』、「「見るハラ」VS「見せハラ」の論争に勝者はなく、それ以前に勝者を決める必要すらないものなのです」、「今回の「見るハラ」論争の中で唯一、明確な答えを出せそうなのが、職場における「見るハラ」。給与を得るために働く職場では、個人の自由より会社の業績やグループの働きやすさが優先されます。職場が「互いの存在が特定されていて、人間関係が継続される空間」であることも含め、無用なセクハラトラブルを生まないためにも、露出の多い服を避けるルールを作るほうがいいでしょう」、その通りだ。
・『「見る」「見られる」両方に必要なもの  今回の「見るハラ」をめぐる論争は、昭和・平成のころに多かったセクハラが大幅に減って、次の段階に進んでいることの証にも見えました。ネット上に「『服が好きだから見ただけ』ということも多いのに、生きづらい世の中になってしまったな」というコメントがありましたが、ここに他人の行動を制限することの難しさが表れています。 昭和・平成のセクハラは論外で罰するとして、では「見るハラ」はどうしていけばいいのか。 「めざまし8」で「見るハラ」の被害経験があるギャルタレント・あおちゃんぺさんは、「減らすために何が必要か?」と聞かれて、「見る側のモラルじゃないですかね」とコメント。さらに「チラッと見ちゃうのは反射だからしょうがないと思うんですけど。『これ以上見たら常識的に失礼だな』というくらいには見ないとか。でも着るほうは着たいものを着たいし、それって罪じゃないし」などと語りました。 ただこのコメントは「『見るハラ』の被害経験がある」という立場で話しているものにすぎず、モラルは見られる側にも必要ではないでしょうか。たとえば、「この街やこの店では露出を抑えめにする」「公共交通機関では隠すものをかける」などの配慮をする人が増えれば、見る側のモラルを変えていけるかもしれません。また、相手の外見や年齢を問わず「こういう人は性的な目で見る」というレッテルを貼らない心構えも必要でしょう。 もし「見るハラ」に罰則がつくようになったら、誰もが目線の置き場に困るような生きづらい世の中になってしまいます。そうならないためには「見る」「見られる」両側に、相手の心境を考える優しさが必要ではないでしょうか。 今後は、「見るハラ」の被害を受けた人が「どのように嫌だったか」を発信し、それを今回のように議論することで多くの人々に伝わり、「そういう人もいるなら気をつけよう」という気持ちにつながっていく。「見るハラ」は誰もが被害者にも加害者にもなりうる繊細なものだけに、時間をかけて不快になる人の数を少しずつ減らしていくしかないのです』、「「見るハラ」は誰もが被害者にも加害者にもなりうる繊細なものだけに、時間をかけて不快になる人の数を少しずつ減らしていくしかないのです」、同感である。

第四に、9月6日付けデイリー新潮「公明党・熊野正士議員の性加害が発覚 被害女性が明かす、身の毛もよだつ「セクハラLINE」の内容とは」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2022/09061945/?all=1
・『「こんな人が議員をしてはいけない  公明党の熊野正士・参議院議員(57)が女性にわいせつ行為を行い、その後も卑猥なLINEを送るなどの性加害に及んでいたことが、「週刊新潮」の取材で分かった。 ※この記事では性暴力の被害に関する詳細な描写があります。フラッシュバック等の症状のある方はご留意ください。 【閲覧注意】熊野議員が女性に送ったセクハラLINE 「お尻を優しく触るの」など身の毛もよだつ文言が 熊野議員は医師として大阪大学の附属病院などに勤務したのち、2016年に公明党から比例区で出馬した経歴の持ち主。昨年まで農水政務官を務め、この7月の参院選で2度目の当選を果たしたばかりだ。ちなみに、熊野議員は妻と2人の娘の4人家族である。 「私が黙っていたことで、この間の選挙で彼を通してしまったという罪の意識があります。こんな人が議員をしていてはいけないと思っています」 こう憤るのは、関西地方の社会福祉団体で幹部として働く50代独身女性・恵子さん(仮名)だ』、「公明党」は主婦の力が強く、「セクハラ」はタブーだと思っていたので、意外な事件だ。
・『痴漢された女性は、逃げるように立ち去ったが…  彼女が熊野議員と出会ったのは2016年のこと。勤務先に公明党の関係者がいたことから知り合い、熊野議員が団体に協力的な姿勢だったこともあり、一昨年に初めて食事に行ったという。 “事件”が起きたのは昨年10月だった。熊野議員が読みたがっていた本を渡すために会ったところ、帰り際に熊野議員が手をつなぐ素振りを見せてきたという。 「慌てて振り払ったら、手が私のお尻に当たったんです。そしたら、それをいいことにお尻をぎゅっと握ってきたんですよ。“痴漢ですよ!”“何をしてるかわかっているんですか!”と言いましたが、何だかぼーっとしてしまって通じない。“もう帰ります”とそのまま逃げるように立ち去りました」 その後、熊野議員がLINEで送ってきた“謝罪”が以下である。 〈恵子(注:原文は実名)さまのお尻、たまたま手に当たりました。そしたら、とても気持ちよかったので、つい、気がついたら、恵子さまのお尻を触ってしまっていました〉』、「“謝罪”」とは名ばかりで、ずいぶん妄想に基づいた文章だ。
・『卑猥なLINEを昼夜問わず送りつけてくるように…  熊野議員はこの一件で反省するどころか、逆にエスカレートしていった。頻繁に電話やLINEを送ってくるようになり、その中身は“過激化”。自分と女性の行為を妄想し、昼夜を問わず送り付けてくるようになったという。以下が「セクハラLINE」の一部。 〈ゆっくり手を伸ばして、服の上から恵子のお尻を優しく触るの〉 無論、体に触れた痴漢行為は迷惑防止条例違反、あるいは強制わいせつ罪に該当しうる行為であり、 「卑猥な内容のLINEや電話も、頻度によってはストーカー規制法に抵触する恐れがあります」(性犯罪被害に詳しい上谷さくら弁護士) たえかねた恵子さんは卑猥な電話などについて、公明党の上層部に訴え出たが、山口那津男代表らは熊野議員を処分することはなかった。そこで今回の告発に至ったというわけだ。 当の熊野議員に事実関係を質すと、以下のような回答があった。 「現在、体調不良のため入院しています。本人に確認することができないため、回答することはできません」(事務所) 一方、公明党は、「当該女性は、熊野に対し、妻と離婚することを執拗に強要しており、最近では期限を付して離婚するよう強く迫って、応じなければ週刊誌に情報を提供するなどと脅し、熊野は精神的にも極度に追い詰められていました」(公明党) と、あたかも恵子さんに非があるかのように回答。しかし、恵子さんに改めて確認したところ「離婚強要などという事実は一切ありません」という。 9月8日発売の「週刊新潮」では、熊野議員によるセクハラLINEの全容とあわせ4ページにわたって詳報する』、「恵子さんは卑猥な電話などについて、公明党の上層部に訴え出たが、山口那津男代表らは熊野議員を処分することはなかった。そこで今回の告発に至ったというわけだ」、「公明党の上層部」が訴えを無視したのは、参院選を控え混乱回避を優先したためかも知れない。それにしても、クリーンさが売り物だった「公明党」も堕ちたものだ。
タグ:「女性記者へのセクハラは自社の媒体ではなく、週刊誌に訴えてやっと報じられる案件なのか。 細田セクハラ問題は、やはりマスコミ論でもある」、「マスコミ」への痛烈な批判だ。 「「見るハラ」は誰もが被害者にも加害者にもなりうる繊細なものだけに、時間をかけて不快になる人の数を少しずつ減らしていくしかないのです」、同感である。 「“謝罪”」とは名ばかりで、ずいぶん妄想に基づいた文章だ。 「「見るハラ」VS「見せハラ」の論争に勝者はなく、それ以前に勝者を決める必要すらないものなのです」、「今回の「見るハラ」論争の中で唯一、明確な答えを出せそうなのが、職場における「見るハラ」。給与を得るために働く職場では、個人の自由より会社の業績やグループの働きやすさが優先されます。職場が「互いの存在が特定されていて、人間関係が継続される空間」であることも含め、無用なセクハラトラブルを生まないためにも、露出の多い服を避けるルールを作るほうがいいでしょう」、その通りだ。 「恵子さんは卑猥な電話などについて、公明党の上層部に訴え出たが、山口那津男代表らは熊野議員を処分することはなかった。そこで今回の告発に至ったというわけだ」、「公明党の上層部」が訴えを無視したのは、参院選を控え混乱回避を優先したためかも知れない。それにしても、クリーンさが売り物だった「公明党」も堕ちたものだ。 「公明党」は主婦の力が強く、「セクハラ」はタブーだと思っていたので、意外な事件だ。 デイリー新潮「公明党・熊野正士議員の性加害が発覚 被害女性が明かす、身の毛もよだつ「セクハラLINE」の内容とは」 「「見るハラ」という言葉を語るとき、このようなルッキズムに関わるところも混ぜなければフェアな議論にはならない」、言われてみればその通りだ。 「「『見るハラ』が成立するなら、見たくないものが視界に入る『見せハラ』も成立する」という声」、その通りだ。 「見るハラ」とは、初めて知ったが、確かに増えているのだろう。 木村 隆志氏による「「見るハラ」「見せハラ」大論争で見落とされる視点 なぜ同意できないか、ルッキズムを巻き込み沸騰」 東洋経済オンライン 「ある時、私がたまたま隣に座ったら、ふざけて『おっぱい触ってもいいかな』と手が伸びてきた。そこで『ちょっとでも触ったら書きますよ』と言ったら、電気に打たれたようにビビビッと手が引っ込みました」、さすが「佐藤氏」だけのことはある。 「通常国会閉会」されたが、「訴訟」は起こしてないようだ。やはり勝訴の見込みがないのかも知れない。 「セクハラを受けたら女性も勇気を出して拒否するべきだ」、「会社も被害を受けた女性が孤立しないよう、加害者に厳重抗議するなどサポートすべきでしょう。被害者を突き放し、セクハラを黙認するなど言語道断です」、「最大の問題は政治家の意識です。女性を上下関係で見ている人が、あまりに多い。自分と違う属性の人と対等な関係を築けなければ、多様性が重視される世界で日本は相手にされなくなります。永田町に住む人たちには、危機感を持っていただきたいです」、同感である。 FRIDAY「胸に触り布団を敷いて…女性記者が語る「永田町壮絶セクハラ体験」」 「細田氏に「最も狙われている」と言われていた」「H記者」が「回答」を拒否したのは何故だろう。 「彼女たちはオフレコ取材が前提なので、同僚に迷惑がかかるのでは、とも悩んでいる。自ら名乗り出ることは容易ではありません。上層部としても“貴重な情報源”である細田氏を守りたいから、『あったこと』をなかなか報じられずにいます」、「セクハラ、パワハラ被害にあった人が「仕事のために」被害をなかなか言いだせないという状況がもし本当なら、これは新聞業界、もしくはマスコミ業界全体の問題だと思う。 これは「マスコミ論」でもある」、「政治家のセクハラ問題は、マスコミがいちばん「知っている」のでは? 私はいま朝日を例に挙げた 「衆院議長」ともあろう人物が、「大勢の政治部記者から文春に“告発”が寄せられた」とはみっともない限りだ。 文春オンライン「女性記者が“告発”できないのはなぜ? 細田衆院議長「セクハラ疑惑」報道から見えてきた、マスコミ業界の“体質”」 (その21)(女性記者が“告発”できないのはなぜ? 細田衆院議長「セクハラ疑惑」報道から見えてきた マスコミ業界の“体質”、胸に触り布団を敷いて…女性記者が語る「永田町壮絶セクハラ体験」、「見るハラ」「見せハラ」大論争で見落とされる視点 なぜ同意できないか ルッキズムを巻き込み沸騰、公明党・熊野正士議員の性加害が発覚 被害女性が明かす 身の毛もよだつ「セクハラLINE」の内容とは) ハラスメント
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街並み・タウン情報(その1)(池袋 「たまたま開設」の駅が生んだ街の大発展 当初は貨物の拠点 にぎわいは大塚が上だった、さらば「ファッションの聖地」 渋谷の大異変 コロナだけでないセレクトショップ撤退の理由、だから外国人は「新宿のゴールデン街」が大好き…ごみごみした東京の街並みに外国人が注目するワケ 無秩序なのに合理的という不思議な日本の都市) [文化]

今日は、街並み・タウン情報(その1)(池袋 「たまたま開設」の駅が生んだ街の大発展 当初は貨物の拠点 にぎわいは大塚が上だった、さらば「ファッションの聖地」 渋谷の大異変 コロナだけでないセレクトショップ撤退の理由、だから外国人は「新宿のゴールデン街」が大好き…ごみごみした東京の街並みに外国人が注目するワケ 無秩序なのに合理的という不思議な日本の都市)を取上げよう。

先ずは、本年3月4日付け東洋経済オンラインが掲載したフリーランスライターの小川 裕夫氏による「池袋、「たまたま開設」の駅が生んだ街の大発展 当初は貨物の拠点、にぎわいは大塚が上だった」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/535493
・『今年2月、西武グループの持ち株会社である西武ホールディングスは、プリンスホテルなど国内31の保有施設を売却すると発表した。同時期、セブン&アイホールディングスは西武池袋本店などを含む傘下の百貨店「そごう・西武」の売却に向けて調整に入ったと報じられた。 昭和初期から平成にかけて、西武は池袋駅を牙城にして発展してきた。1964年に西武の総帥・堤康次郎が没した後、鉄道事業などは堤義明へ、百貨店事業などは堤清二が率いる西武流通(後のセゾン)グループへと引き継がれた。歳月とともに両者は独立性を強めていくが、池袋駅東口には旗艦店となる西武百貨店と西武鉄道の駅が並び、“西武”を冠する両者は端から見れば同じグループであるように映った。 池袋駅や街の発展は、西武鉄道と西武百貨店の存在を抜きに語ることはできないが、そもそも池袋は都心から外れた農村でしかなく、鉄道・行政当局から期待されていた駅・街ではなかった。たまたま駅が開設されたに過ぎなかったが、それが街を発展させてきた』、「そもそも池袋は都心から外れた農村でしかなく、鉄道・行政当局から期待されていた駅・街ではなかった。たまたま駅が開設されたに過ぎなかった」、「街」の発展は分からないものだ。
・『板橋や目白よりも遅かった開業  池袋駅を開設したのは、現在のJR東北本線や高崎線・常磐線などを建設した私鉄の日本鉄道だった。上野駅をターミナルに北関東や東北へと路線を広げる日本鉄道は、群馬県の富岡製糸場で生産される生糸を横浜港まで迅速に運搬することを主目的にしていた。 当時、上野駅と新橋(後の汐留)駅は一本の線路でつながっていない。そのため、上野駅で荷下ろしし、新橋駅で再び積み直すという手間が生じた。輸送効率を上げるべく、日本鉄道は赤羽駅から線路を分岐させて品川駅までを結ぶ短絡線を建設。これは品川線と呼ばれる路線だが、現在の埼京線に相当する。 品川線には、中間駅として板橋駅・新宿駅・渋谷駅が開設されたが、この時点で池袋駅は開設どころか計画すら浮上していない。品川線の開業と同年には目白駅や目黒駅が、1901年には大崎駅が開設されたが、この時点でも池袋駅は開設されなかった。) その後も日本鉄道は路線網を広げていき、現在の常磐線にあたる区間を1898年に開業。常磐地方の石炭を輸送するという貨物輸送の役割が強かった同線は、繁華街にある上野ではなく田端駅をターミナルにした。田端駅には、太平洋沿岸で採掘される石炭などが多く運び込まれるようになる。 当時の日本は、工業化の進展とともに東京湾臨海部に工場が続々と誕生。田端駅から東京の南部や神奈川方面へ直通する列車の需要が生まれた。こうして同駅と品川線の目白駅とを結ぶ豊島線の構想が本格的に検討される。 豊島線は、田端駅と目白駅の間に駒込・巣鴨・大塚などの駅を開設し、大塚駅からは南西へと線路を建設して一直線に目白駅を目指す構想だった。しかし、目白駅の拡張は地形的な理由から難しく、さらに一直線で線路を建設すると、巣鴨監獄に線路を通すことになる。 巣鴨監獄は戦後にGHQが接収し、A級戦犯が収監された「巣鴨プリズン」の名で知られる。明治新政府は国家の人権意識が高いことを諸外国に示すため、巣鴨監獄の前身である警視庁監獄巣鴨支署を1895年に開設した』、「巣鴨プリズン」は、「明治新政府」が「国家の人権意識が高いことを諸外国に示すため、巣鴨監獄の前身である警視庁監獄巣鴨支署を1895年に開設」、そんな経緯があったとは初めて知った。
・『「監獄」を避けた線路  なぜ、政府が諸外国に対して人権意識の高さを示さなければならなかったのか。それは、諸外国が不平等条約を改正する条件に「日本が一等国である」ことを盛り込んでいたからだ。当時、西洋諸国は一等国のバロメーターを「文化」と「人権意識」の2つで測っていた。政府はこれまでの囚人の扱いを改め、人権意識の高い国であることを示そうとした。 こうした取り組みや日清戦争の勝利により、西洋諸国は日本を一等国として遇するようになるが、巣鴨監獄を取り壊せば再び野蛮な国と見られてしまうかもしれない。そんな不安もあり、豊島線は巣鴨監獄を避けなければならなかった。 山手線の田端駅から大塚駅までは線路が南西へと向かっているのに、大塚駅付近では線路がいったん北へとカーブしているのは、これらの理由が重なったことによる。こうして豊島線と品川線の合流地点は変更され、1903年、新たな合流地点に池袋駅が開設された。 工業化が進展していた日本では、鉄道の貨物輸送量が年を経るごとに増加していた。日本鉄道は列車の運行本数を増やすべく、翌1904年に新宿駅―池袋駅間を複線化。日露戦争に勝利すると、政府はさらなる強国へと成長するべく軍事輸送の強化に乗り出す。1906年には「鉄道国有法」を施行し、品川線・豊島線などを含む多くの幹線を国有化。これにより、貨物輸送は政府の思惑が強く反映されることになる。 その後、現在の山手線にあたる区間の複線化が進められると同時に、1909年には電化にも着手。こうして現在の山手線の骨格が少しずつ組み上がっていく。) 池袋駅は貨物駅として存在感を強めていたものの、旅客駅としての利用者は決して多くなかった。むしろ1駅隣にある大塚駅のほうが乗降客数は多く、その数は1917年に年間100万人に達していた。それは池袋にターミナルを据える東武東上線、西武池袋線の前身が会社を立ち上げたときの計画からも読み取れる。 東武東上線の前身である東上鉄道は1911年に創立。当初は巣鴨駅付近にターミナルを開設する予定だったが、後に大塚辻町(現・東京メトロ丸ノ内線の新大塚駅付近)へと変更している。1912年に創立した西武の前身である武蔵野鉄道も、当初は巣鴨付近にターミナル駅を開設する予定にしていた。 だが、この2社が池袋駅へとターミナルを変更したことで、鉄道路線が集積。こうした影響もあり、同駅の年間乗降客数は1921年度に大塚駅を抜き、600万人を突破した。 しかし、それでも街のにぎわいは大塚駅のほうが一枚上だった。この時期、東京大宮電気鉄道や東京日光電気鉄道といった、東京進出を狙って計画された私鉄の多くは、大塚もしくは巣鴨をターミナルにすることを計画していた』、「豊島線は巣鴨監獄を避けなければならなかった。 山手線の田端駅から大塚駅までは線路が南西へと向かっているのに、大塚駅付近では線路がいったん北へとカーブしているのは、これらの理由が重なったことによる」、初めて知った。「諸外国が不平等条約を改正する条件に「日本が一等国である」ことを盛り込んでいたからだ。当時、西洋諸国は一等国のバロメーターを「文化」と「人権意識」の2つで測っていた」、当時、「「人権意識」がそんなに重視されたとは興味深い。「この時期、東京大宮電気鉄道や東京日光電気鉄道といった、東京進出を狙って計画された私鉄の多くは、大塚もしくは巣鴨をターミナルにすることを計画していた」、「池袋」の知名度はまだまだだったようだ。
・『豊島区発足、東口がにぎわいの中心に  時代が昭和に移ると、東京市は市域の拡張を検討。1932年、北豊島郡に属する巣鴨町・西巣鴨町・高田町・長崎町が合併して豊島区が発足する。新区名は古くから栄える目白を採用して目白区とする案が有力で、将来性を考慮して池袋区とする案も出されたが、折衷案として郡名から豊島区に決まった。 新たな区役所は交通の便が考慮され、池袋駅付近に開庁することが異論なく決まった。区名になることは逃したものの、区役所が設けられたことで池袋は豊島区の中心的な街へと姿を変えていく。 それまでの池袋は、武蔵野鉄道や東武東上線など郊外へと通じる鉄道路線は開設されていたものの、都心部へと直結する鉄道網がなかった。 しかし、都心へとつながる路線がまったく計画されていなかったわけではない。武蔵野鉄道は1925年に池袋―護国寺間の路線免許を取得。昭和初期に立て続けに恐慌が発生していたこともあり未着工のままになっていた。同免許は東京市へ譲渡され、それが転用される形で1939年に市電の池袋線が開通。市電が都心部と直結したことで、池袋駅は東口ににぎわいが生まれていった。 東口には、百貨店の老舗・白木屋と京浜電鉄(現・京浜急行電鉄)系列の京浜百貨店の合弁で1935年に菊屋デパートがオープン。同店は1940年に武蔵野鉄道が買収し、店名は武蔵野デパートとなる。 池袋駅東口は1944年の建物疎開により多くの家屋が移転・撤去させられたが、戦火が激しかったこともあり、戦後は焼け野原と化した。それは武蔵野デパートも例外ではなく、荒廃した池袋駅や百貨店の場所には闇市が立ち並んだ。) 武蔵野鉄道や東武東上線の沿線は農地が多く、終戦直後は多くの農家が池袋の闇市に食料を持ち込み、それを生活資金に換えていた。農家が持ち込む米や野菜を目当てに買い物へ来る客は多く、闇市が池袋に活況を与えた。 終戦直後の混乱期、闇市は黙認されていた。しかし、戦後のほとぼりが冷める頃から行政・警察当局による取り締まりが厳格化していく。とはいえ、やみくもに取り締まれば食料流通は停滞し、それは人々の日常生活に混乱を与える。 そこで、東京都は池袋駅東口から南東へと延びる大型道路(現・グリーン大通り)の南側一帯に着目。戦前期、同エリアは東武の総帥・根津嘉一郎の所有地で、根津山と呼ばれていた。根津山は戦後、百貨店の拡張を視野に入れていた西武の総帥・堤が買収。東京都は闇市の代替地として西武からこの一帯を買い取り、闇市の露店を移転させていった。こうして東口に商店が立ち並んでいく。 池袋駅東口が少しずつ復興を遂げていく中、東口のシンボルでもある武蔵野デパートは西武百貨店と改称し、店舗も増改築を繰り返しながら着々と存在感を大きくしていった』、「戦前期、同エリアは東武の総帥・根津嘉一郎の所有地で、根津山と呼ばれていた。根津山は戦後、百貨店の拡張を視野に入れていた西武の総帥・堤が買収。東京都は闇市の代替地として西武からこの一帯を買い取り、闇市の露店を移転させていった」、「根津山」が東口発展の基礎になったようだ。「池袋駅東口が少しずつ復興を遂げていく中、東口のシンボルでもある武蔵野デパートは西武百貨店と改称し、店舗も増改築を繰り返しながら着々と存在感を大きくしていった」、なるほど。
・『地下鉄開通でさらに発展  これらの動きと連動するように、1949年には池袋駅―神田駅間の地下鉄建設計画が決定。後に神田駅から御茶ノ水駅へとルート変更し、1954年に開業する。これが丸ノ内線の始まりだ。その後も同線は延伸された。 丸ノ内線の輸送能力が限界に達すると、それを補完する有楽町線の池袋駅―銀座一丁目駅間が1974年に開業。地下鉄も集積したことで、池袋は新宿・渋谷と比肩する繁華街へと変貌した。 実のところ、池袋駅の伸長は1960年代から兆しが現れていた。それを端的に表すのが、1964年に新宿・渋谷と池袋の商店街・行政・私鉄などによって結成された三副都心連絡協議会だ。同協議会は、明治通りの下に渋谷・新宿・池袋を結ぶ地下鉄を建設するように東京都へ働きかけている。 しかし、東京都は工費が莫大になることを理由に拒否。代替案として工費を10分の1に抑えられるモノレール構想が打診されたものの、こちらも実現することはなかった。東京都と帝都高速度交通営団(現・東京メトロ)という事業主体は異なるものの、1960年代から副都心線の萌芽ともいえる計画が持ち上がっていたことは注目に値する。 駅西口に目を移すと、運輸(現・国土交通)省が戦災復興で民衆駅を提案したことから戦後の駅前整備が始まっている。民衆駅とは民間資本によって駅舎を整備する資金調達スキームで、池袋駅西口はそのトップバッターに選ばれた。) 民衆駅計画は1947年に策定されたが、西口は権利関係が複雑で、なおかつ東口の根津山のような代替地がなかった。 国鉄や行政の意思だけでは整備ができず、西口に民衆駅を整備するには東武との調整が不可欠だった。闇市を移転する代替地もなかったことから民衆駅の計画は遅々として進まず、竣工に漕ぎ着けたのは1950年になってからだった。それらの影響もあり、民衆駅第1号の名誉はタッチの差で愛知県の豊橋駅となる。 ちなみに、ビックカメラのCMソングに歌われる、東口に西武、西口に東武の構図はこの時点で固まっていない。それどころか、1950年には東横百貨店(現・東急百貨店)が西口に出店。つまり、「東は西武で、西、東急」の時代があった。 東横が開店した同年、東武も西口に百貨店を計画。しかし、地元商店街の反対により、アミューズメントビルの東武会館として計画を縮小して進めざるを得なかった。こうした経緯もあり、東武百貨店は一時的に東武会館のテナントとして入居している。その後、東武は地元商店街からも理解を得て、百貨店事業を拡大。隣接する東横百貨店を買収して南館とした。 東武会館が着工された頃から、それまで停滞していた西口の戦災復興は進み始めた。そして、西口の開発は現在に至るまで繰り返し実施されて街の移り変わりは激しい』、「東武も西口に百貨店を計画。しかし、地元商店街の反対により、アミューズメントビルの東武会館として計画を縮小して進めざるを得なかった」、「東武百貨店」は「地元商店街の反対により、アミューズメントビルの東武会館として計画を縮小して進めざるを得なかった」、そんな事情があったとは初めて知った。
・『2023年に開業120周年  池袋駅は、その後も鉄道によって多くの人を引きつけていく。1985年には池袋駅―赤羽駅間を往復していた赤羽線が発展的に埼京線へと姿を変え、埼玉都民と呼ばれる通勤者の流入を促した。 東上線沿線ではニュータウン開発が盛んになり、沿線人口は増加。住民の多くが東京へと通勤するサラリーマンだったことから東上線の混雑は年を追うごとに激化した。 混雑緩和を目的に、1987年には東上線の和光市駅―志木駅間を複々線化。有楽町線にも乗り入れを開始し、有楽町線と東上線が直通運転することで混雑の分散を図った。それでも池袋駅から山手線へと乗り継ぐ利用者が多く、山手線の混雑率が高止まりしていることから、山手線のバイパス機能を担う副都心線が2008年に開業することになった。 来年2023年、池袋駅は開業120年を迎える。地元の豊島区は2014年から池袋駅周辺の整備に着手し、歩行者主体のまちづくりへと舵を切った。これは2032年の豊島区誕生100年を意識した長期的な取り組みだ。 コロナ禍で鉄道を取り巻く環境や存在意義も改めて問われている。飛躍の原点ともいえる西武が揺れる中、池袋駅と街はどのような変化を遂げるのか』、「飛躍の原点ともいえる西武が揺れる」、ファンドが経営権を取得しても、ファンドには新たな開発計画のようなリスクを負い難いため、開発計画は難航が予想される。

次に、昨年4月29日付け東洋経済オンライン「さらば「ファッションの聖地」、渋谷の大異変 コロナだけでないセレクトショップ撤退の理由」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/574108
・『「渋谷は本当につまらない街になってしまった。自然と”谷底”にいろんな人が集まってくることが、渋谷の魅力だった。それなのに、大資本の会社が谷の真ん中に”山”を作り始めた時点で、終わりだなと感じましたよ」――。 セレクトショップなどを展開するアパレル企業の首脳は、駅周辺で大規模な再開発が進む渋谷の現状に失望感をあらわにする。 「渋カジ」や「コギャル」を生み出し、若者の流行の発信地として知られてきた渋谷。そのファッションの聖地が今、大きな岐路に立たされている』、「大資本」による「大規模な再開発」の華々しいPRの裏で、こんな変化が進んでいたとは興味深い。
・『セレクトショップが続々撤退  「渋谷マルイ」から「渋谷PARCO(パルコ)」に続く公園通りの裏側に広がる神南エリア。さまざまなセレクトショップが集積する、ファッションの街・渋谷を象徴する場所だ。「同じブランドでも、神南店の販売員は他店とステータスが違う」(アパレル関連企業の幹部)と言われたほど、各ブランドにとって重要な拠点だった。 そんな神南に建つ「アーバンリサーチ 神南店」が2020年10月に閉店した。ガラス張りの外観が目を引く同店は2013年に開業、地上3フロアにまたがる大型店だった。アーバンリサーチによると、撤退は「新型コロナが起こる前より進めていた不採算店整理」の一環だという。閉店から半年が経った今も1階はがらんどうで、2~4階のフロアには「テナント募集中」の貼り紙が寂しい。 同店だけではない。隣のビルの2階にあった「ビームス ウィメン 渋谷」も今年3月、アーバンリサーチの後を追うように営業を終了した。目と鼻の先にある別の通りでは、1980~1990年代の渋カジブームを牽引した老舗のアメカジショップ「バックドロップ」が、2020年12月に40年余りの歴史に幕を閉じた。 バックドロップはホームページ上で、新型コロナに伴う景気後退などが閉店の理由だと説明。「直営店が渋谷の街からなくなることは大変しのびない」と苦渋の思いをつづっている』、「渋谷」の「セレクトショップ」にとって、状況は大幅に悪化したようだ。
・『ファッション店舗の割合は減少  こうした渋谷の”異変”はコロナ禍より前から起きていた。 不動産サービス大手・CBREが実施した渋谷エリアの路面店の調査によると、2016年に54%を占めていたファッション店舗の比率は年々減少。2020年は43%となっている。アウトドア・スポーツ系の店舗やドラッグストアが増えた一方、以前は街の「主役」だった、若者向けのセレクトショップなどの存在感は徐々に低下してきたことが伺える。 渋谷が若者ファッションの街として認識されるようになったのは1980年前後から。渋谷区の区政資料コーナーで働く山田剛氏は「渋谷が流行の発信地となった背景として、(1973年に開業した)パルコの影響は大きかった」と分析する。加えて、同時期に創刊された『anan(アンアン)』や『non-no(ノンノ)』、『POPEYE(ポパイ)』などの雑誌が都会の流行を全国に拡散した。 最先端の「DCブランド」を集めた渋谷パルコに感度の高い若者が訪れ、周辺にはバックドロップやシップスなど、欧米から輸入したこだわりのアイテムを揃えたファッション店舗が続々と開業。近隣の高校・大学に通う学生や、地方から上京する人まで、多種多様な若者たちが公園通りやセンター街に自然と集まるようになった。 彼らの着こなすアメカジスタイルが1980年代には渋カジとしてブームになり、1990年代後半からは「SHIBUYA109」に集まる女子高生からギャル系ファッションが大流行した』、「渋谷パルコ」閉鎖の影響力は想像以上に大きかったようだ。
・『再開発で人の流れが駅周辺に集中  しかし2000年代後半から、街の発信力に陰りが見え始める。 H&MやForever21、ユニクロと、全国的に勢いを増していた国内外のカジュアルチェーンが渋谷中心部にも上陸。ネット通販やインスタグラムなどのSNSが浸透し、わざわざ渋谷に行かなくても、スマホ1つで流行に付いていける傾向も強まった。街を彩ってきた中小規模のファッション店舗やSHIBUYA109にとって、打撃は大きかった。 さらに街の姿を大きく変えたのが、東急グループを中心とした渋谷駅前の再開発だ。2012年に渋谷ヒカリエ、2018年に渋谷ストリーム、2019年には渋谷スクランブルスクエア東棟などが開業。この10年間、駅直結の大型複合ビルが次から次へと出来上がった。 東急グループは再開発により、渋谷に不足していたオフィスを大量供給し、JR線や国道で分断されていた原宿や代官山方面などとの回遊性も高めることをうたう。が、複数の小売業界関係者は「開発の過程で街の”個性”がなくなり、渋谷の重心は利便性の高い駅間近の地域に移った」と話す。トレンドの発信地とされた神南や公園通り周辺では、人の流れがだんだんと減少した。 昨年渋谷の店舗を閉めたアパレル企業の幹部は、渋谷の変貌ぶりに落胆する。「昔は駅を降りて(パルコの西側にある)東急ハンズに向かう若者などがセンター街にあふれていた。それが駅中で用事を済ませる傾向が強まって、訪日観光客を除けば街を回遊する人は本当に少なくなった」』、「「昔は駅を降りて(パルコの西側にある)東急ハンズに向かう若者などがセンター街にあふれていた。それが駅中で用事を済ませる傾向が強まって、訪日観光客を除けば街を回遊する人は本当に少なくなった」、こうしたヒトの動線変化があるようだ。
・『「実力以上」の賃料上昇も打撃に  再開発でオフィスが増えた影響で、店舗の賃料動向にも変化が起きている。 もともと若者をターゲットとした小売店や飲食店の多かった渋谷は、銀座や表参道と比べると路面店の平均賃料は低い。しかし、CBREの奥村眞史シニアディレクターは「ここ数年、渋谷ではIT系企業などで働く高所得のオフィスワーカーが増えた。彼らの需要を見込んで出店する店が増え、コロナ前まで渋谷駅周辺の中心部の募集賃料は上昇傾向が続いていた」と指摘する。 実際にCBREの調査を見ると、2015年末から2020年初めまでの間、渋谷エリアの路面店の平均募集賃料は右肩上がりだ。「渋谷では、ショールームの出店を検討しているIT系やeスポーツの企業、ラグジュアリーブランドの引き合いも強い」(奥村氏)という。 賃料上昇は、若者向けのファッション店舗の出店のハードルを引き上げた。あるセレクトショップの幹部は「最近は商業地としての実力以上に賃料が上がってしまった。昔のように簡単に店を出せる場所ではなくなった」と漏らす。「渋谷エリアの路面店の平均募集賃料は右肩上がりだ。「渋谷では、ショールームの出店を検討しているIT系やeスポーツの企業、ラグジュアリーブランドの引き合いも強い」(奥村氏)という。 賃料上昇は、若者向けのファッション店舗の出店のハードルを引き上げた。あるセレクトショップの幹部は「最近は商業地としての実力以上に賃料が上がってしまった。昔のように簡単に店を出せる場所ではなくなった」と漏らす』、「セレクトショップ」から「IT系やeスポーツの企業、ラグジュアリーブランド」へと、こうしたいわば産業構造の変化も影響しているようだ。
・『坂を上る「わくわく感」が消えた  神南エリアは駅から離れていることもあり、センター街などの中心部のような路面店の賃料の上昇傾向は見られない。ただし、渋谷全体でオフィスの需給が逼迫していることから、神南の小規模ビルのフロアをオフィスとして借りる動きも出ている。こうした借り手がいる以上、高感度な若者の往来が減ったところで賃料相場の下落が起きるわけでもない。 2017年に神南から移転した大手セレクトショップ・ベイクルーズの本社跡地には、野村不動産が昨年10月に10階建てのレンタルオフィスビルを開業。かつてのトレンド発信地の様相はじわりと変化しつつある。 一部のファッション業界関係者の間では、2019年11月にリニューアルオープンしたパルコが、神南や公園通り周辺の人通りを復活させる起爆剤になると期待する向きもあった。が、開業から間もなくしてコロナ禍が直撃。人の流れは今も戻らないままだ。 「昔の渋谷には、苦労して坂道を上った先で、あまたあるおしゃれな店や面白い店にたどり着く『わくわく感』があった」。デベロッパー関係者は渋谷の特徴をこう分析する。 坂を上って訪れるだけの魅力や個性がある店は、姿を消す一方だ。大手アパレルの幹部は「ブランド強化の一環として、カルチャーを発信するような場所に路面店の出店は続けていく。でもその候補地に今の渋谷は入らない」と断言する。ファッションの街が復活する兆しは見えてこない』、「昔の渋谷には、苦労して坂道を上った先で、あまたあるおしゃれな店や面白い店にたどり着く『わくわく感』があった」、「坂を上って訪れるだけの魅力や個性がある店は、姿を消す一方だ」、「ファッションの街」から「「IT系やeスポーツの企業、ラグジュアリーブランド」の街」へと変貌しつつあるのだろうか。

第三に、本年9月5日付けPRESIDENT Onlineが掲載したフリーライター・翻訳者の青葉 やまと氏による「だから外国人は「新宿のゴールデン街」が大好き…ごみごみした東京の街並みに外国人が注目するワケ 無秩序なのに合理的という不思議な日本の都市」を紹介しよう』、興味深そうだ。
・『外国人観光客が東京に惹かれるワケ  東京は不思議な街だ。清潔さと猥雑さが同居し、世界中のあらゆる旅行客を惹きつけている。その代表例が新宿だ。 高層ビルが並ぶ新宿副都心はモダンな街並みの最たる例だ。新宿駅の反対側、東口を出て歌舞伎町へと足を踏み入れれば、ネオンきらめく雑居ビルに囲まれた異空間が広がる。 表通りを抜けてさらに路地裏へと迷い込めば、瞬く間に碁盤の目は崩れ、縦横無尽に延びる路地に点在する小さなバーや商店との新たな出会いが待っている。 近年盛んな大規模再開発の事例を除き、東京の街並みの多くは自然発生的に発展してきた。新宿など大都市に限らず、比較的小さな東京の駅においても、ランダムに延びる入り組んだ道沿いに住宅と商店がないまぜになって存在している光景はおなじみだ。 これに外国人観光客は熱い視線を向けているようだ。 こうした東京の街並みは、都市計画に沿って整然と整備されたニューヨークやシカゴ、パリ、マドリードなどと比較すると、猥雑で暮らしにくいように見える。だが、無秩序に広がる都市の姿が実は非常に合理的に機能していると、海外で再評価されている』、「無秩序に広がる都市の姿が実は非常に合理的に機能していると、海外で再評価されている」、「東京」に似ているのがロンドンだ。
・『「東京は2つの顔をもつ都市である」  ブルームバーグは今年7月、東京のユニークな都市構造を分析する記事を掲載した。 東京は政府主導の計画によって鉄道網整備や安全な街づくりが進んだと同時に、入り組んだ薄暗い路地裏では自然発生的に店が発生し、都市を活気づけているとの分析だ。トップダウンの計画と無秩序な活気が同居することから、記事では「東京は2つの顔をもつ都市である」と指摘されている。 訪日外国人がこぞって足を運ぶ新宿・ゴールデン街は、後者の好例といえる。決して広くない敷地に個性豊かな店舗が200軒ほどひしめいており、日本酒をとことん楽しめる飲み屋やカレーに力を入れた店、そして猫と触れ合えるバーなどが所狭しと並ぶ。薄暗い路地を歩きながら興味津々に店を巡る観光客がいる一方、常連は慣れた足取りで2階のさらにディープな空間へと通う。) 東京の路地裏は、活気ある地元ビジネスの原点となっているようだ。慶應義塾大学のホルヘ・アルマザン准教授(空間・環境デザイン工学)らは、4月に刊行した新著『Emergent Tokyo(原題)』において、手狭なバーや商店がひしめく東京の路地裏を都市機能の観点から高く評価している』、具体的な説明は以下にあるようだ。
・『住宅地と近接する「裏路地」  書名にもある「エマージェント」は創発とも訳され、ボトムアップの形で自然発生的にものごとや機能が沸き起こり、トップの調整者がなくとも自然にうまく作用し合うことを意味している。まさに東京はこの形で成り立っているようだ。 アルマザン准教授はブルームバーグの取材に、東京には怪しくも魅力的な「横丁」と呼ばれる路地があり、バーやレストラン、ブティックや工房などが開かれていると説明している。2階に住む高齢のオーナーが1階を若者に貸してコーヒーショップとするなど、非常に柔軟な空間利用が可能だという。 新宿に限らず、住宅地にかなり近接した区域でもこの形態は都市計画上許可されている。「アメリカに住む人にとっては突飛にも感じられるかもしれない」ほどユニークな施策だとの評価だ。このような「マイクロスペース」にひしめく柔軟な店舗こそが、都市を活性化しているのだという』、「ボトムアップの形で自然発生的にものごとや機能が沸き起こり、トップの調整者がなくとも自然にうまく作用し合うことを意味している。まさに東京はこの形で成り立っているようだ」、「非常に柔軟な空間利用が可能だという。 新宿に限らず、住宅地にかなり近接した区域でもこの形態は都市計画上許可されている」、明確な「都市計画」がなく、「この形態は都市計画上許可されている」、要はなんでもありという無節操さだ。
・『飲食店が軒を連ねる雑然さと力強さ  ゴールデン街の極小スペースに詰め込まれた数々のバーも、雑然とした光景がただ海外客に衝撃を与えているだけではない。およそ大規模店を構えるには至らない地元のオーナーたちに、優れた商機を与えている。 厳密にはゴールデン街は、戦後の新宿に現れた無許可店舗を計画的に移設した経緯があり、完全な創発(自然発生)とは異なる。ただ、戦後当時の混乱のなかで立ちあがろうとした店舗が原点となっており、その雑然さと力強さの面影をいまも残す。 新宿の著名な路地としてはこのほか、西口の「思い出横丁」が挙げられる。こちらも戦後の闇市を出発点としており、現代でも細く入り組んだ路地裏に数十の飲食店が軒を連ねている。アンダーグラウンドながらどこか温かい空気が人々を惹き寄せるのだろう。パンデミックまでは新宿のオフィスワーカーに加え、多くの訪日客を集めていた。 こうした路地裏が日本独自の魅力を放っているほか、都市部ではよくみられる雑居ビルも、日本らしい空間利用だとして海外で注目されているようだ。カナダ・トロント在住の建築家で都市計画家のナーマ・ブロンダー氏は、カナダの不動産ニュースサイト「ストーリーズ」に寄稿し、トロントの都市設計は東京のアプローチに学ぶべきだと主張している。トロントでは小さな土地が余ると、ただ空き地となる傾向が強いのだという。) 氏は一方で、東京は「革新的な設計」により狭小地にもかなり高さのあるビルが建つとし、「このコンセプトは東京などの場所で大変な成功を収めている」と論じている。幅のない雑居ビルが並ぶ光景は決して美しいものではないようにも思えるが、都市空間を活用する「クリエイティブなアプローチ」だとブロンダー氏は捉えたようだ』、「雑居ビルも、日本らしい空間利用だとして海外で注目されているようだ」、ただ、使用条件を無視した結果、火災などで大量の死者を出す事故も珍しくない。 
・『自然発生した人間中心の街づくりへの評価  住宅のごく近隣にバーや商店が並ぶ光景は、海外客や商店主にのみ恩恵をもたらしているわけではないようだ。必ずしも碁盤の目に整備されておらず、地区利用も雑然としている日本の街並みは、時代と共に都市がボトムアップで発展してきたことの証左でもある。その街の住民がいきいきと暮らせる人間らしい街づくりを体現しているとして、オーストラリアの専門家の注目を集めている。 シドニー大学のレベッカ・クレメンツ研究助手(交通・インフラ運営学)は、豪ニュース・評論メディアの「カンバセーション」に寄稿し、オーストラリアの都市は日本の都市設計に学ぶべき点があるとの見解を発表している。 オーストラリアでは車通学が70%を占めるが、日本では徒歩と自転車通勤を合わせると全体の約98%に達するという大きな違いがあるという。このようなデータをもとに、日本では車が不要な範囲に、人間を中心とした街並みがまとまっていると論じている。 氏は、日本ではスーパーブロックが自然発生的に体現していると考えているようだ。スーパーブロックとは都市計画の概念のひとつであり、住宅、商店、公共サービス施設などを街区内に配置し、身近な範囲内で暮らしやすい都市を設計する手法だ。これは通学の利便性にもつながっている。子供がひとりで通学する姿は日本ではおなじみだが、オーストラリアでは徒歩通学は必ずしも多数派ではない。 今年は日本のテレビ番組「はじめてのおつかい」(日本テレビ)がNetflixで配信され、海外の視聴者の間で注目を集めた。保護者が車で送迎する通学スタイルが主流の現地では、子供がひとりで街を歩き登校する様子に目を疑ったようだ。 日本の治安のよさも徒歩通学の要因となっているが、根本的には住宅と学校が生活圏内に近接しており、車を必ずしも必要としない人間中心の街が自然と出来上がっている影響が大きいだろう』、英国や米国では、小学生以下の子供だけで外出したり、留守番をすえるのも禁止されている。「日本のテレビ番組「はじめてのおつかい」」は受け入れられない筈だ。
・『電車に乗ってどこでも行ける利便性  鉄道を中心とした公共交通の充実も、日本の都市の長所として認知されている。都市評論家のコリン・マーシャル氏はカルチャー情報サイトの「オープン・カルチャー」への寄稿を通じ、「しかし、日本の首都独特の際立った都市計画を地面の下から支えているのは、比喩的にも実際にも、その地下鉄網である」と解説している。 同氏は、アメリカでは自動車中心の街づくりが進み、都市の多くのスペースが駐車場に奪われたと述べ、公共交通の活用に成功した日本の事例と対比している。) 前掲のトロントの都市設計家であるブロンダー氏も、日本では発達した鉄道網に加え、鉄道駅が都市のハブとして機能していると評価している。東京など日本の都市は、駅を拠点としてオフィスやレストランなどを組み込んだ複合施設を開発する「Rail Integrated Communities(鉄道統合型コミュニティー)」の手法の成功例が豊富だと氏は述べる。 トロントの一部でも同様の開発手法が採用されはじめている模様だ。ブロンダー氏は、「トロントがこの分野をリードする東京に続き、正しい道を歩んでいるかもしれないという希望をもてる兆候だ」と前向きに評価している。 なお、トロントでは70%が車通勤だが、東京は30%に留まっていると氏は指摘する。高い公共交通の利用率が駅の利便性をさらに高める循環になっているようだ。 もっとも、駅ビルなど集積的な再開発は、『Emergent Tokyo』で主張されている創発的な都市像とは正反対の姿となる。しかし、公共交通を中核とした街づくりという意味においては、これもまたひとつの東京の良さだと受け止められているようだ』、「駅ビルなど集積的な再開発」は「公共交通を中核とした街づくりという意味においては、これもまたひとつの東京の良さ」、その通りだ。
・『雑然とした街にある合理性が魅力に  日本の都市は海外に比べてごみごみとした印象は拭えないが、日本を訪れる海外客にとっては、その雑然さこそが名だたる観光地・東京の魅力となっている。 ひしめくネオンが単に写真映えする光景を作り出しているだけではなく、新宿の路地裏などに代表される小さな店舗や住居一体型の商業スペースが都市にフレキシブルな空間を与え、スモールビジネスが活況を呈している。 雑然とした路地が続く住宅地においても魅力が海外で再評価されており、生活圏におよそすべてが揃う人間的な街として都市の専門家たちの関心を呼んでいるようだ。アメリカやオーストラリアではスーパーまで車を飛ばさなければならないような都市も多い。 一方、日本の都市部では駅を降りれば歩いて飲み屋街へ行くことができ、通勤も電車で済ませることが可能だ。このような生活スタイルは、どこか新鮮な感覚をもたらすようだ。 もちろん地下鉄はニューヨークなどにも走っており、電車通勤が日本だけの習慣ということではない。だが、政府や自治体が大掛かりな計画で鉄道網の整備を進めた一方、都市の細かいデザインは、戦後に自発的に延びていった路地や飲み屋街の跡を色濃く残している。 トップダウンの交通網と自発的に発展した街角の景色が絡み合い、結果として人々が生活しやすく時代の変化にも柔軟に対応できる都市が形成されている。雑然としてみえる東京の街角には、時を経て自発的に形成された、ある意味での合理性が秘められているようだ』、「トップダウンの交通網と自発的に発展した街角の景色が絡み合い、結果として人々が生活しやすく時代の変化にも柔軟に対応できる都市が形成されている。雑然としてみえる東京の街角には、時を経て自発的に形成された、ある意味での合理性が秘められているようだ」、同感である。ただ、場所や地名の表示については、英語が増えたとはいえ、もっと分かり易くする必要がある。
タグ:「そもそも池袋は都心から外れた農村でしかなく、鉄道・行政当局から期待されていた駅・街ではなかった。たまたま駅が開設されたに過ぎなかった」、「街」の発展は分からないものだ。 「ボトムアップの形で自然発生的にものごとや機能が沸き起こり、トップの調整者がなくとも自然にうまく作用し合うことを意味している。まさに東京はこの形で成り立っているようだ」、「非常に柔軟な空間利用が可能だという。 新宿に限らず、住宅地にかなり近接した区域でもこの形態は都市計画上許可されている」、明確な「都市計画」がなく、「この形態は都市計画上許可されている」、要はなんでもありという無節操さだ。 小川 裕夫氏による「池袋、「たまたま開設」の駅が生んだ街の大発展 当初は貨物の拠点、にぎわいは大塚が上だった」 英国や米国では、小学生以下の子供だけで外出したり、留守番をすえるのも禁止されている。「日本のテレビ番組「はじめてのおつかい」」は受け入れられない筈だ。 「無秩序に広がる都市の姿が実は非常に合理的に機能していると、海外で再評価されている」、「東京」に似ているのがロンドンだ。 「「昔は駅を降りて(パルコの西側にある)東急ハンズに向かう若者などがセンター街にあふれていた。それが駅中で用事を済ませる傾向が強まって、訪日観光客を除けば街を回遊する人は本当に少なくなった」、こうしたヒトの動線変化があるようだ。 東洋経済オンライン「さらば「ファッションの聖地」、渋谷の大異変 コロナだけでないセレクトショップ撤退の理由」 (その1)(池袋 「たまたま開設」の駅が生んだ街の大発展 当初は貨物の拠点 にぎわいは大塚が上だった、さらば「ファッションの聖地」 渋谷の大異変 コロナだけでないセレクトショップ撤退の理由、だから外国人は「新宿のゴールデン街」が大好き…ごみごみした東京の街並みに外国人が注目するワケ 無秩序なのに合理的という不思議な日本の都市) 街並み・タウン情報 東洋経済オンライン 「昔の渋谷には、苦労して坂道を上った先で、あまたあるおしゃれな店や面白い店にたどり着く『わくわく感』があった」、「坂を上って訪れるだけの魅力や個性がある店は、姿を消す一方だ」、「ファッションの街」から「「IT系やeスポーツの企業、ラグジュアリーブランド」の街」へと変貌しつつあるのだろうか。 「トップダウンの交通網と自発的に発展した街角の景色が絡み合い、結果として人々が生活しやすく時代の変化にも柔軟に対応できる都市が形成されている。雑然としてみえる東京の街角には、時を経て自発的に形成された、ある意味での合理性が秘められているようだ」、同感である。ただ、場所や地名の表示については、英語が増えたとはいえ、もっと分かり易くする必要がある。 青葉 やまと氏による「だから外国人は「新宿のゴールデン街」が大好き…ごみごみした東京の街並みに外国人が注目するワケ 無秩序なのに合理的という不思議な日本の都市」を紹介しよう』 PRESIDENT ONLINE 「セレクトショップ」から「IT系やeスポーツの企業、ラグジュアリーブランド」へと、こうしたいわば産業構造の変化も影響しているようだ。 「駅ビルなど集積的な再開発」は「公共交通を中核とした街づくりという意味においては、これもまたひとつの東京の良さ」、その通りだ。 「豊島線は巣鴨監獄を避けなければならなかった。 山手線の田端駅から大塚駅までは線路が南西へと向かっているのに、大塚駅付近では線路がいったん北へとカーブしているのは、これらの理由が重なったことによる」、初めて知った。「諸外国が不平等条約を改正する条件に「日本が一等国である」ことを盛り込んでいたからだ。当時、西洋諸国は一等国のバロメーターを「文化」と「人権意識」の2つで測っていた」、当時、「「人権意識」がそんなに重視されたとは興味深い。「この時期、東京大宮電気鉄道や東京日光電気鉄道といった、東京進出を狙って計 「渋谷」の「セレクトショップ」にとって、状況は大幅に悪化したようだ。 「渋谷パルコ」閉鎖の影響力は想像以上に大きかったようだ。 「戦前期、同エリアは東武の総帥・根津嘉一郎の所有地で、根津山と呼ばれていた。根津山は戦後、百貨店の拡張を視野に入れていた西武の総帥・堤が買収。東京都は闇市の代替地として西武からこの一帯を買い取り、闇市の露店を移転させていった」、「根津山」が東口発展の基礎になったようだ。「池袋駅東口が少しずつ復興を遂げていく中、東口のシンボルでもある武蔵野デパートは西武百貨店と改称し、店舗も増改築を繰り返しながら着々と存在感を大きくしていった」、なるほど。 「東武も西口に百貨店を計画。しかし、地元商店街の反対により、アミューズメントビルの東武会館として計画を縮小して進めざるを得なかった」、「東武百貨店」は「地元商店街の反対により、アミューズメントビルの東武会館として計画を縮小して進めざるを得なかった」、そんな事情があったとは初めて知った。 「大資本」による「大規模な再開発」の華々しいPRの裏で、こんな変化が進んでいたとは興味深い。 「巣鴨プリズン」は、「明治新政府」が「国家の人権意識が高いことを諸外国に示すため、巣鴨監獄の前身である警視庁監獄巣鴨支署を1895年に開設」、そんな経緯があったとは初めて知った。 「雑居ビルも、日本らしい空間利用だとして海外で注目されているようだ」、ただ、使用条件を無視した結果、火災などで大量の死者を出す事故も珍しくない。 「飛躍の原点ともいえる西武が揺れる」、ファンドが経営権を取得しても、ファンドには新たな開発計画のようなリスクを負い難いため、開発計画は難航が予想される。
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