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公務員制度(その7)(コロナ禍で社会支える「非正規公務員」悲惨な待遇 女性たちを沈黙させる「会計年度任用職員」、[新連載]霞が関人材クライシス 若手官僚はなぜ辞めるのか、繰り返される「公務員の不祥事」の背景にあるもの 問題は個人にあるのか 組織か…専門家に取材) [国内政治]

公務員制度については、昨年12月21日に取上げた。今日は、(その7)(コロナ禍で社会支える「非正規公務員」悲惨な待遇 女性たちを沈黙させる「会計年度任用職員」、[新連載]霞が関人材クライシス 若手官僚はなぜ辞めるのか、繰り返される「公務員の不祥事」の背景にあるもの 問題は個人にあるのか 組織か…専門家に取材)である。

先ずは、本年3月17日付け東洋経済オンラインが掲載した ジャーナリスト・和光大学名誉教授の竹信 三恵子氏による「コロナ禍で社会支える「非正規公務員」悲惨な待遇 女性たちを沈黙させる「会計年度任用職員」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/538781
・『コロナ禍は「女性不況」と呼ばれるほど女性に深刻な影響を与えています。女性の非正規労働者は2021年11月で1415万人と、コロナの感染拡大前の2019年11月より68万人減少。路上に出たり炊き出しの列に並んだりする女性もなお目立ちます。また働く女性を中心に、2020年の女性の自殺者数も前年比で15%増えました。 ところが、女性の失業率は男性を下回り続けるなど打撃の大きさは表面化しておらず、「沈黙の雇用危機」の様相を示しています。いったいどういうことなのか。 貧困や非正規雇用の問題を報じてきたジャーナリストの竹信三恵子さんは、「働く女性の訴えを抑え込んでいく『社会の装置』がある」と言います。その「装置」の実態について、竹信さんが女性の働く現場からさぐっていきます。 自治体によるDV相談や健康・福祉相談などの住民支援サービスの大半は、不安定で低賃金の非正規公務員が担う。その4人に3人は女性だ。こうした女性たちは、コロナ禍拡大のさなかに一線で住民対応に奔走し、年度末には契約を打ち切られるという「二重の惨劇」に見舞われている。 コロナ禍でも休めないエッセンシャルワーカーの役割が注目され始めたいまも、これら非正規女性公務員たちからの声はなお弱い。そこからは、女性たちの沈黙を生む「会計年度任用職員」という「装置」が見えてくる』、「働く女性の訴えを抑え込んでいく『社会の装置』がある」、とは穏やかでない。どういうことなのだろう。
・『ダブルワークを余儀なくされる非正規公務員  2021年6月、藍野美佳は53歳で、広島県内の自治体のDV相談員をやめた。10年ほど前、夫からDV被害に遭って離婚、シングルマザーとなった。自治体職員は安定し、恵まれた働き方と思われがちだが、DV相談員はみな、短期契約で低賃金の非常勤だった。 DV被害者の支援は、DV防止法、生活保護法、男女雇用機会均等法など多角的な法的知識や支援の専門知識が必要だ。生命の危険にさらされる被害女性たちからは昼夜問わずSOSが入り、加害者の脅しにも直面する。気の抜けない重責にもかかわらず、非常勤の年収は手取り200万円程度だった。 子育てしながらの生活費にはとても足りず、夕方から深夜までファミリーレストランで働き、他の女性相談機関でもアルバイトするダブルワーク、トリプルワークの日々が続いた。それでもやめなかったのは、自らのつらい経験を他の被害者のために役立てたいという強い思いがあったからだ。 だが2020年4月、事態はさらに悪化した。「会計年度任用職員」制度が導入されたからだ。) 1980年代以降の「行政改革」や小泉政権の「聖域なき構造改革」の中で、短期契約で低賃金の非正規公務員は増やされ続けてきた。警察や消防、教育部門などを除いた自治体の一般行政部門で非正規は4割を超え(2020年4月)、こうした働き方に「官製ワーキングプア」(行政がつくった働く貧困者)との批判も高まっている。 これに対し、「非正規の位置づけを法律で明確にし、待遇を改善する」として生まれたのが、「有期雇用の法定化」ともいえる1年有期の「会計年度任用職員」だ。 「会計年度任用職員」は非正規の9割近くを占め、その76.6%が女性だ。有期でも正規職員と同じ労働時間契約の「フルタイム会計年度任用職員」になれば、正規と同じく給与や退職金が認められるから待遇は改善する、とされた。だが、5分でも10分でも労働時間が少ないと、基本的には従来どおりの待遇で退職金もない「パート」となる。つまり、パートを増やせば人件費を抑えられる仕組みだ。 その結果、2020年4月時点での総務省調査では、「パート」が会計年度任用職員の88.8%を占め、また、「制度導入前より報酬水準が減額された職種がある」は都道府県で53.2%にのぼった』、「DV被害者の支援は、DV防止法、生活保護法、男女雇用機会均等法など多角的な法的知識や支援の専門知識が必要だ。生命の危険にさらされる被害女性たちからは昼夜問わずSOSが入り、加害者の脅しにも直面する。気の抜けない重責にもかかわらず、非常勤の年収は手取り200万円程度だった』、仕事内容に比べ、「年収」は驚くほどの低さだ。「有期でも正規職員と同じ労働時間契約の「フルタイム会計年度任用職員」になれば、正規と同じく給与や退職金が認められるから待遇は改善する、とされた。だが、5分でも10分でも労働時間が少ないと、基本的には従来どおりの待遇で退職金もない「パート」となる。つまり、パートを増やせば人件費を抑えられる仕組みだ。 その結果、2020年4月時点での総務省調査では、「パート」が会計年度任用職員の88.8%を占め、また、「制度導入前より報酬水準が減額された職種がある」は都道府県で53.2%にのぼった」、これでは、制度改正ではなく、改悪だ。
・『時給制になり、手取りは年140万円程度に  そんななか、藍野らも、1日7時間労働の「パート」となった。退職金がないのはもちろん、月給制から時給制に変わり、5月の連休など休みの多い月は大幅な減収になった。名目的な労働時間は減っても仕事量は変わらないため残業が恒常化した。そのため気が引けて残業代を申請できず、タダ働きも増えた。手取りは年140万円程度に落ち込んだ。 そんなとき、コロナの感染拡大が始まった。バイト先の外食店の仕事もなくなり、副収入が入らなくなった。感染への不安や生活苦から、暴言や執拗な苦情をぶつける住民も増えた。同僚の「会計年度任用職員」たちは、「住民からの電話を取るのが怖くて手が震える」と言い始めた。 DV対応での緊張感に、こうした心労が加わり、睡眠薬がないと眠れない日が続いた。疲労から仕事で移動中に車の運転ミスを起こし、あわや大けがという自損事故を起こした。 もう体力が続かない、と思い始めた2021年春、定年を迎えた正規職員の男性3人が、年収500万円の「会計年度任用職員」として再雇用された。藍野らが「職務に見合った賃金を」といくら求めても「財源がない」と相手にされなかったのに、男性の定年組にはあっさりと高賃金の「会計年度任用職員」の座が用意された。心の糸が切れた。 そんなとき、東京の困窮者支援団体から女性支援を担当してほしいという誘いが来た。子どもが独立した時期でもあり、その誘いに倒れ込むようにして、藍野は郷里を出た。) 会計年度任用職員たちによれば、制度の導入後、藍野のようにしてやめていく女性たちは増えているという。背景には、先に述べた「1年有期の法定化」から来るあきらめと、「女性軽視」の二重の壁がある。 公務サービスは住民の基本的人権にかかわるものが多い。このため安定したサービスの提供が求められ、恒常的な仕事は常勤が行うことが原則とされてきた。にもかかわらず、恒常的な職務に就く非正規をここまで円滑に増やせたのは、「女性は夫の扶養があるから安定雇用は必要ない」という偏見に便乗することができたからだ。 例えば、2021年度末に再任用を拒否され、奈良県の人事委員会に不服申し立てをした会計年度任用職員の女性は、上司から「世帯主でないから退職してもらう」と面と向かって言い渡されている。「夫の扶養」を前提に低待遇で雇い、雇用を打ち切るときも「夫の扶養」が理由にされる。そんな、真綿で首を絞めるような社会の圧力が、女性たちの沈黙を生む。 相談支援など第一線の仕事は、コロナ禍でも休めない住民の命綱だ。だが、これらの仕事のほとんどが非正規職員に担われてきた結果、決定権を持つ正規職員や管理職はその現場を知らず、改善を訴えても理解してもらえない。それでも声を上げると、1年有期を理由に契約を打ち切られることも少なくない』、「藍野らが「職務に見合った賃金を」といくら求めても「財源がない」と相手にされなかったのに、男性の定年組にはあっさりと高賃金の「会計年度任用職員」の座が用意された」、「相談支援など第一線の仕事は、コロナ禍でも休めない住民の命綱だ。だが、これらの仕事のほとんどが非正規職員に担われてきた結果、決定権を持つ正規職員や管理職はその現場を知らず、改善を訴えても理解してもらえない。それでも声を上げると、1年有期を理由に契約を打ち切られることも少なくない」、これでは馬鹿馬鹿しくてやってられない筈だ。
・『「マタハラの合法化」といえる状況も  「1年有期」の合法化という沈黙の装置は、「マタハラの合法化」といえる状況も強めた。2020年度末には、神奈川県庁で10年間福祉関係の専門職として働いてきた会計年度任用職員の女性が、5月初旬の出産を間近に控えて3月末の雇い止めを通告された。3月末から産前休暇に入り、産休・育休を取得して職場復帰できるはずが、1年有期に阻まれた形だ(『神奈川県の非正規公務員に対する「マタハラ」雇止め問題~法的課題を中心に~』参照)。 同じころ、東海地方の学校で働いていた会計年度任用職員が、出産を前に雇い止めを通告されたという報が入った。取材を申し入れると、雇い止めは一転、撤回された。1年有期の法定化が招いた安易なクビとしか思えない対応だ。 相次ぐ女性非正規たちの惨状に、2021年3月、当事者たちが「公務非正規女性全国ネットワーク(はむねっと)」を結成した。7月に「はむねっと」が発表したオンライン緊急アンケート結果では、1252件の有効回答のうち、年収200万円未満が5割を超え、勤続年数も3年未満が4割を占める不安定ぶりが明らかになった。 そんな働き方のなかで、45.8%がメンタル不調を訴え、93.5%が将来への不安を感じると回答。「契約の更新時が来ると、仕事がつながるかどうかの不安でメンタル不調が激しくなる」という声もあった。 しかし、同年7月から総務省が全地方自治体を対象に実施した初のメンタルヘルス調査で、非正規公務員は対象から事実上外された。 調査は、コロナ禍による業務量、住民のクレームの増大などによる公務員の心の不調対策を目指し、第一線に立つ機会が多い会計年度任用職員にこそ必要だったはずだ。非正規も加えることを求めた「はむねっと」の要望書に総務省は、今回の調査は「自治体の事務負担を考慮し、まずは首長部局の正規職員を対象としたもの」とし、再度行うときは改めて検討する、と文書で回答した。 こうした排除の一方、同年末のボーナスでは、非正規を正規並みに削減する自治体が相次いだ。コロナ禍による民間の引き下げに合わせ、人事院が国家公務員のボーナス0.15カ月分の引き下げを勧告したことに合わせた措置だった。低賃金で期末手当の実額が少ない非正規にとって引き下げの打撃は大きく、正規との格差もさらに広がる形となった。) そんな「女性非正規公務員の沈黙」は、住民にも返ってくる。 千葉県習志野市でも2020年4月、非正規職員が会計年度任用職員に転換された。約400人は1日7時間45分の「フルタイム」職員だったが、このうち約200人が、一律1日7時間、週35時間の「パート」に仕分けされた。 1年契約を反復更新し、20年近く相談支援業務にあたってきた小川さやか(仮名)も、1日7時間45分のフルタイム契約から、「パート」に切り替えられた。「パート」では退職金の対象にならない。加えて、フルタイムのときは正規と同じ共済保険に加入できたが、パートは共済保険に加入できず、健診などが受けられなくなった。 それ以上に困るのは、7時間という契約のため、役所は午後5時15分まで開いているのに勤務は午後4時30分まで、となったことだ。相談に来た市民に「勤務終了時間なので打ち切ります」とは言えない。残業が恒常化して残業代の申請がしにくくなり、労働時間の減少とあいまって、年収は約50万円減った。「職員のことも市民のことも考えずに『パート化』をやってしまったせい」と小川は言う』、「総務省が全地方自治体を対象に実施した初のメンタルヘルス調査で、非正規公務員は対象から事実上外された。 調査は、コロナ禍による業務量、住民のクレームの増大などによる公務員の心の不調対策を目指し、第一線に立つ機会が多い会計年度任用職員にこそ必要だったはずだ」、本来必要だった「会計年度任用職員」を調査対象から外したとは、小細工も極まれりだ。「20年近く相談支援業務にあたってきた小川さやか(仮名)も、1日7時間45分のフルタイム契約から、「パート」に切り替えられた。「パート」では退職金の対象にならない。加えて、フルタイムのときは正規と同じ共済保険に加入できたが、パートは共済保険に加入できず、健診などが受けられなくなった」、制度変更時に不利益な扱いが扱いが横行するとは、組合は何をしているのだろう。
・『総務省は「制度の趣旨に合わない」  これらの矛盾の指摘に、総務省も「財政上の制約のみを理由にフルタイム雇用を抑制するのは制度の趣旨に合わない」という趣旨の通知を出した。これを生かし、労組による交渉や市議会の質問での是正要求が相次いだ。 市は、コロナで通常の業務量が判断できないので「不適切なパート」かどうか判断できず、すぐフルタイムに戻すのは無理としつつ、「今後、制度の見直しも含めて検討していく」と答えている(2021年3月市議会での総務部長答弁)。 大阪府摂津市では2022年1月、前年に起きた児童虐待問題の報告書が発表された。ここでは、専門性が必要な職務なのに「虐待対応を担う職員は1年目から3年目が多くを占める体制だった」と指摘された。こうした部署にも1年有期の会計年度任用職員は配置されていた。 関東地方の自治体の労組役員は「『会計年度』で募集すると応募はさっぱり。『常勤』に変えるとどっと来る。1年でクビと知っていて応募しますか?」と言う。 女性非正規公務員たちを沈黙させてきた「装置」のツケは、広くて重い』、「これらの矛盾の指摘に、総務省も「財政上の制約のみを理由にフルタイム雇用を抑制するのは制度の趣旨に合わない」という趣旨の通知を出した。これを生かし、労組による交渉や市議会の質問での是正要求が相次いだ」、「労組」も「総務省」「通知」を活かして「是正」に向け努力すべきだ。

次に、5月31日付け日経ビジネスオンライン「[新連載]霞が関人材クライシス 若手官僚はなぜ辞めるのか」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00460/053000001/
・『深夜残業の多いブラック職場、旧態依然とした年功序列型の組織、自己成長の実感が薄い――。悪評が定着した霞が関の不人気は深刻化し、応募者の減少傾向に歯止めがかからない。それでも官僚が今、そして未来の日本を支える頭脳集団であることに変わりない。多岐にわたる関係者と調整し、課題を解決する力は、企業のイノベーションにとっても必要だ。司令塔の地盤沈下が進む国に未来はない。官僚の威信と魅力を取り戻す道を探る。 今後のラインアップ ・霞が関人材クライシス 若手官僚はなぜ辞めるのか(今回) ・ブラック職場とは言わせない 霞が関、働き方改革の最前線 ・立ち上がった民間出身官僚 「個の犠牲」に頼らない風土を ・官僚だってやりたい仕事がある 2割の時間を「本業外」に ・現役官僚座談会「同窓会で給料の話になったらトイレに行く」 ・農水省発、官僚YouTuberの挑戦 「等身大の霞が関」を国民へ ・民間で光る「官僚力」 企業と日本の活力に ・総務省出身のDeNA岡村社長「官僚の総合力、企業経営で生かせ」 など  5月20日、いつにも増して静まり返る財務省を幹部が朝から駆け回っていた。未明に電車内で他の乗客に暴行を振るったとして、総括審議官(当時、20日付で大臣官房付に更迭)の小野平八郎容疑者が逮捕された。その後処理に追われていたのだ。 省内で「周囲に声を荒らげることはなく、仕事もそつなくこなす」(主税局関係者)と評されていた小野氏に何があったのか。 総括審議官は政府の経済財政諮問会議に絡む業務が多い。複数の関係者の話を総合すると、6月上旬に閣議決定される「骨太の方針」について、小野氏は財務省の意向を反映させるため自民党との調整に追われていた。 自民党には財政再建派の「財政健全化推進本部」(額賀福志郎本部長)と、積極財政派の「財政政策検討本部」(西田昌司本部長)がある。国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス)を2025年度に黒字化する政府目標の取り扱いを巡って対立しているが、参院選を7月に控える今は、政局化を避けることで内々に合意していることで知られている。 財政健全化推進本部は5月19日、小野氏が作成したドラフトを基に官邸宛ての提言をまとめようとした。しかし財政政策検討本部側に抵抗されて断念。結局、額賀本部長が預かって骨太の方針に押し込む流れになった。 機関決定の見送りは、小野氏にとって財務省から課せられたミッションの失敗を意味する。その日の夜、小野氏は複数の会合を重ねて痛飲したとみられる』、「今後のラインアップ」のうち、「今回」を除くと全て有料なので、紹介できるのは「今回」のみである。「小野氏」の「ミッションの失敗」は不運だ。
・『「出世しても潰れる」不安   財務省の中堅幹部はこう漏らした。「いくら昇進レースで懸命に勝ち残っても、一寸先は闇ということだ。もちろん許される行為ではないが、霞が関の一員としてむなしいし、正直に言うと少なからず同情できる面もある」 今回の事件が霞が関に広げた波紋は、単なる「有力幹部の不祥事」レベルにとどまらない。特に若いキャリア官僚の間では、「順調に出世して事務次官のポストが見えていても、強いストレスによって潰れてしまう」(総務省課長補佐)という捉え方にみられるように、自らの将来を不安視する向きが強まっている。 働くステージとして、霞が関の人気は右肩下がりが続いてきた。21年の国家公務員総合職(キャリア)の採用試験申込者数は1万7411人と、5年連続で過去最少を更新した。22年春の試験は1万5330人と6年ぶりに増加に転じたものの、底を打って低迷を完全に抜け出すだけの目ぼしい材料はない。 中央省庁は国政の基盤を作る役割を担うだけに、もともと「働きがい」ならどの職種にも勝るとも劣らないはずだ。しかし過酷な残業が、それを打ち消してしまう』、「中央省庁は国政の基盤を作る役割を担うだけに、もともと「働きがい」ならどの職種にも勝るとも劣らないはずだ。しかし過酷な残業が、それを打ち消してしまう」、その通りだ。
・『3割が「過労死ライン」  内閣人事局が20年秋に国家公務員約5万人の働き方を調べたところ、20代のキャリア官僚の3割が「過労死ライン」とされる月80時間を超える残業をこなしていた。 19年4月施行の改正労働基準法で、民間企業の時間外労働時間は原則として1カ月当たり45時間以内、特別条項が適用されると1カ月100時間未満、複数にわたる月平均は80時間以内と定められた。 国家公務員は労働基準法の適用対象外だが、人事院の規則に従えば1カ月間の時間外労働は原則45時間以内でなければならない。しかし罰則はなく、国会対応などで業務の比重が高い部署には月100時間未満の超過勤務を認める例外規定もある。 首相官邸は、労働の実態に合わせて超過勤務手当を支払うよう各省庁に求めた。すると22年度の一般会計当初予算は、本省分の残業代として総額約403億円を計上。補正分を含めた前年度より17.5%も膨らんだ。本来はもらえていたはずの残業代が、やっと支払われるようになってきた形だが、旧態依然とした労働環境はなかなか改善できない。 「ブラックな働き方と知りながら、政策を作りたくて入ってきている。昔も今もこれからも、残れるやつだけ残ればいいのが霞が関という世界だ」。ある省で将来の事務次官候補に挙がる課長はこう語り働き方改革の推進に対して難色をあらわにする。 経済産業省で10年代に勤務した一般職の女性は、管理職が部下に「辞めろ、死ね」と怒鳴っていた姿が忘れられない。「経産省を出れば何もできないであろう人が幅を利かす」組織に失望した。若手・中堅を中心に退職者が増えてきたのも、こうした組織風土と無関係ではないだろう』、「ブラックな働き方と知りながら、政策を作りたくて入ってきている。昔も今もこれからも、残れるやつだけ残ればいいのが霞が関という世界だ」、「ある省で将来の事務次官候補に挙がる課長はこう語り働き方改革の推進に対して難色をあらわにする」、こんな昭和的考え方が大手を振っているようでは、「ブラック」からの脱却は困難だろう。
・『忙しくても報酬は少ない  日本の国家公務員は、諸外国と比べて仕事量が多いのに、もらえる報酬は少ない。大阪大学大学院法学研究科の北村亘教授が経済協力開発機構(OECD)のデータを基に試算したところ、政府全体の歳出を公務員数で割った数値は日本が他の先進民主主義国より圧倒的に高かった。 国の歳出は規模が大きくなればなるほど、運用が煩雑になり、公務員が担う仕事量は多くなる。北村教授が浮き彫りにしたのは、1人当たりの負担が世界でも群を抜いて大きい日本の国家公務員の姿だった。 一方で、政府の人件費が政府全体の歳出に占める割合をみると、日本が最小クラスであることも分かった(上のグラフを参照)。 北村教授は「予算が膨張する一方で職員の定数が減らされ続けているため、国家公務員の業務は量が増えつつ複雑・高度化している」と指摘。「国家公務員の志願者がさらに減れば質の確保が難しくなり、人数以上の仕事を処理できなくなる」と警鐘を鳴らす』、「北村亘教授」の「試算」は、確かにその通りのように思えるが、意外な落とし穴がある可能性もある。
・『極端に減った「ボトムアップ」  霞が関OBも、キャリア官僚の業務スタイルが変わったのを感じ取っている。1993年に通商産業省(現経産省)に入った古谷元さんは、当時を「霞が関が日本を動かしているという自負が強かった」と振り返る。省内にさまざまな人が出入りし、あらゆる先進的な情報が自分の机に座っていれば得られた。夜は仲間と政策を議論し、固まったものが1年たった頃に実現していく。そんなダイナミズムがあった。 米シリコンバレーへの留学を経験し、政府主導の産業育成に疑問を感じて2000年に退職。米コンサルティング大手などで働いていたが、かつての上司から19年初めに連絡があった。「若手の退職が増えているから戻ってきてほしい」。経産省で管理職の公募制度が始まるタイミングに合わせた勧誘に、古谷さんは「民間を知るからこそ分かる政府の役割とやりがいを伝えたい」と一念発起。スタートアップ企業育成の中核となる新規事業創造推進室のトップに就いた。 ところが20年ぶりの現場では、昔のようにボトムアップで政策が日の目を見ることが極端に少なくなっていた。代わりに増えたのは、トップダウンの意思決定。古谷さんからすれば、理由は明らかだった。「とにかく若手の官僚が情報を収集できていない」。延長もあり得る期限付きの復帰だったが、希望せずに霞が関を離れた』、「20年ぶりの現場では、昔のようにボトムアップで政策が日の目を見ることが極端に少なくなっていた。代わりに増えたのは、トップダウンの意思決定」、「コンサル」などが「トップ」にセ-ルスしているのが影響しているのだろうか。
・『東大生は「コンサルか商社」  霞が関の地盤沈下は、エリート層が敬遠するようになった現実とも無関係ではないだろう。象徴的なのが東京大学出身者の動向だ。優秀な学生がこぞって中央省庁入りを目指し、東大が「キャリア官僚の育成機関」とまで言われた時代ではなくなった。 キャリア官僚の採用試験で合格した東大出身者は16年度から減少を続け、20年度には300人台に突入した。法学部2年の男子生徒は「周囲では起業するか、外資系コンサル会社や商社を志望する学生が多くなっている。キャリア官僚も悪くないが、やはり労働環境の悪さがネックになる」と明かす。 「霞が関に入ることを家族に相談したが、全力で止められた」と笑うのは、法学部3年の男子生徒だ。大手IT幹部の父親は、データを示しながら「年収が低いし、下積みの期間が長くて効率が悪い。大企業を目指すか、コンサルで経験を積んで起業すべきだ」と説得したという。 21年は法案や条約の関連文書に多数の誤記が見つかり、組織の劣化が懸念された霞が関。このまま自滅するわけにはいかない──。危機感を高めた霞が関は今、モデルチェンジを急いでいる』、「21年は法案や条約の関連文書に多数の誤記が見つかり、組織の劣化が懸念された霞が関」、確かに「モデルチェンジ」が急務だが、次の「モデル」のイメージはいまだ不確定だ。

第三に、12月9日付け東洋経済オンラインが掲載したフリーライターの一木 悠造氏による「繰り返される「公務員の不祥事」の背景にあるもの 問題は個人にあるのか、組織か…専門家に取材」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/637499
・『補助金の不正受給や4630万円の誤振り込み、住基ネットから個人情報収集など、この1年を振り返ってみても公務員の不祥事が止まらない。 こうした職員の不祥事が繰り返されてしまう原因はどこにあるのか?公務員の組織に詳しい太田肇・同志社大学教授、職員の副業推進など組織改革を精力的に進めている小紫雅史・奈良県生駒市長に聞いた。 公務員不祥事が止まらない。11月5日、東京都内の区役所の職員が住基ネットを操作し、個人情報を収集して知人に渡したとして住民基本台帳法違反の疑いで警視庁に逮捕された。 警視庁幹部によると、職員は区民課に勤務し住基ネットシステム(住民基本台帳ネットワークシステム)へのアクセス権限があり、収集された個人情報は男女20人以上におよぶという。警視庁は、個人情報が職員の知人を経て暴力団関係者に渡ったとみて捜査している』、こんな「住基ネットシステム」からの情報漏洩は調べれば、犯人はすぐ判明するのに、馬鹿なことをしたものだ。
・『今年5月には誤振り込みがあった  ここ数年だけで見てみても、公務員の不祥事やミスは留まるところを知らない。昨年には、補助金の不正受給でキャリア官僚2人が詐欺の罪で逮捕・起訴。今年5月にも、中国地方の某県で、低所得者463人分への給付金が誤って1世帯、金額にして4630万円が振り込まれた。受け取った男性が一時、全額を使い切ってしまい警察に逮捕されるという事件に発展した。 なぜこういったことが繰り返されてしまうのか。組織論が専門の太田肇・同志社大学教授は、「個人と組織両方に問題がある」と指摘したうえでこう説明する。 「まず個人の問題だが、公務員は個人情報など、職員でないと接することができないような情報に日々接していることが多い。職員のなかにはこれを自分が預かってるからとか、自分が自由にしていいとか、そうした錯覚に陥っている人たちがいる。一般の市民と同じ感覚で、その情報に接しないといけないという認識が希薄だったのではないでしょうか」 今回の事件では、部下に対する上司の監視体制が不十分だったと思われても仕方ない。事実、逮捕された職員が住基ネットのシステムにアクセスするにあたり、ログインには静脈認証が必要だったが、検索自体は自由にでき、上司の許可は必要なかったという。また職員が所属していた区民課が扱う個人情報は膨大だったことから、職員1人ひとりの業務が煩雑になっていて、区民課内部での相互のチェックも行き届いていなかったようだ。 一方で、太田教授は「私は組織の問題のほうが大きいように思う」とも述べる。 「役所に限らないが、日本の組織というのはおおむね閉鎖的であり、内部の論理で動く。私はそれを『共同体型組織』と呼んでいる。その共同体型の組織の特徴で顕著なのがジョブローテーションであり、部署や仕事の特性に応じたマネジメントが十分に行われない傾向がある」 「大事なのは、そこで情報の取り扱いについて厳しく指導が行われたかどうかということ。役所全体が共同体になっていると、外部と役所内部との間に大きな壁ができる。常に外部の目、つまり社会の目にさらされているというような感覚が鈍くなっていく」 さらに、相互のチェックがききにくい公務員組織の特徴として、「役所の業務がそれぞれの部署でタコツボ化している」点を指摘する。 「まず、仕事の役割分担が明確になってないということが、職員個人が組織のなかに溶け込んでしまっている原因だと思う。職員個人の役割が明確になっていれば、その場の空気で物事が決められたり、組織を隠れ蓑にした無責任な仕事が行われたりすることがなくなる」』、「低所得者463人分への給付金が誤って1世帯、金額にして4630万円が振り込まれた」、上司のチェックが入らなかったとすれば、それも問題だ。「役所全体が共同体になっていると、外部と役所内部との間に大きな壁ができる。常に外部の目、つまり社会の目にさらされているというような感覚が鈍くなっていく」、説明責任を厳格に課す必要がある。
・『奈良県生駒市の取り組み  こうした公務員の組織の問題に対して、リーダー自らが率先して動き、根本的な解決策を見出そうとしている自治体もある。 奈良県の北西部に位置する生駒市では、かつて市内の消防署で不祥事が相次いだ。消防士長が窃盗容疑で書類送検されたほか、救急隊が搬送先を間違えるなど、ミスは数件に及んだ。これを受け、当時副市長だった小紫雅史市長が全消防職員約130人と面談を行い、現場の悩みを吸い上げて改善策に反映させた。 小紫市長は当時のことをこう振り返る。 「消防署員全員と面接して、細かい問題点が次々と明らかになった。同時に署員1人ひとりは強い使命感を持っていて、とくに一部の若い署員からは、組織を変えていきたいという気概も感じた。一方で、署員の意見を取り入れて消防のあり方を変えていこうというリーダーシップが、組織として非常に遅れていたことを痛感した」 今回の事件についても、「周囲の気づきがあったかどうかが重要」だと述べる。 「不祥事の発覚した部署では、誰かが事前に問題点に気づいているもの。ただ、それを指摘したり改善しようと行動したりする人材がすごく少ない。変えていくことには、リスクや責任が伴うかもしれないけど、職員が自分の裁量で、もっと自主性を持って自分で判断して、その場その場の問題に対処していかなければならないと思う」 組織の問題を改善していくうえで一番大事なのが、「リスクに対する職員の理解を深めること」だと小紫市長は強調する。 「リスクというのは、つまり『悪いことしたらやばいよね』『こんなことが起こったら大変だよね』という感覚のこと。だからこそ、普段から起こりうるリスクをすべて掘り出しておく。また、実際に不祥事が起きたときに、まず何をするのかということを順位付けして具体的にシミュレーションしておくことで、起こったあとの対処も迅速に進めることができる」』、「リスクというのは、つまり『悪いことしたらやばいよね』『こんなことが起こったら大変だよね』という感覚のこと。だからこそ、普段から起こりうるリスクをすべて掘り出しておく。また、実際に不祥事が起きたときに、まず何をするのかということを順位付けして具体的にシミュレーションしておくことで、起こったあとの対処も迅速に進めることができる」、なるほど。
・『どのような公務員が求められるか  縦割りなど、旧態依然たる役所のさまざまな「病巣」を取り除いていくためにも、今後どのような公務員が求められていくのだろうか。前出の太田教授は、これからの組織のリーダーには、これまでのリーダーとは違う能力が求められると考える。 「従来型の管理ではなく、サポート・支援するという方向にウエイトが移っていくだろう。これも部下の自律性が高まってはじめて可能になるわけだが、能力を引き出して活躍できるような場を与えたり、情報を提供したりする。イメージとしては管理職というよりも、ファシリテーターやコーディネーターのような役割を果たすようになってくると思う」 そのためには、組織の問題の具体的な解決策として「外部の力を借りるなどさまざまなアプローチが重要」と指摘する。 「やっぱり外部から人材を獲得したり、活用したりすることは大事だと思う。ただ、そこで民間企業からという発想になるのではなく、例えば欧米では公務員の間での労働市場があるように、日本でも公務員、あるいは準公務員、NPOやNGOなど広い意味で公的な仕事に携わる人たちのなかで人材の市場ができればいい。メリットとしては、公的な仕事の経験者なら少なくとも機密情報の扱いについては安心して任すことができるだろう」 職員1人ひとりが分け隔てなく臆せずものが言える組織づくりをリーダー自身が率先して進められるかどうか。公務員組織の未来はリーダーたちの気概にかかっているといえそうだ』、「組織の問題の具体的な解決策として「外部の力を借りるなどさまざまなアプローチが重要」と指摘する。 「やっぱり外部から人材を獲得したり、活用したりすることは大事だと思う。ただ、そこで民間企業からという発想になるのではなく、例えば欧米では公務員の間での労働市場があるように、日本でも公務員、あるいは準公務員、NPOやNGOなど広い意味で公的な仕事に携わる人たちのなかで人材の市場ができればいい。メリットとしては、公的な仕事の経験者なら少なくとも機密情報の扱いについては安心して任すことができるだろう」、「職員1人ひとりが分け隔てなく臆せずものが言える組織づくりをリーダー自身が率先して進められるかどうか。公務員組織の未来はリーダーたちの気概にかかっているといえそうだ」、その通りなのだろう。
タグ:(その7)(コロナ禍で社会支える「非正規公務員」悲惨な待遇 女性たちを沈黙させる「会計年度任用職員」、[新連載]霞が関人材クライシス 若手官僚はなぜ辞めるのか、繰り返される「公務員の不祥事」の背景にあるもの 問題は個人にあるのか 組織か…専門家に取材) 公務員制度 東洋経済オンライン 竹信 三恵子氏による「コロナ禍で社会支える「非正規公務員」悲惨な待遇 女性たちを沈黙させる「会計年度任用職員」」 「働く女性の訴えを抑え込んでいく『社会の装置』がある」、とは穏やかでない。どういうことなのだろう。 仕事内容に比べ、「年収」は驚くほどの低さだ。「有期でも正規職員と同じ労働時間契約の「フルタイム会計年度任用職員」になれば、正規と同じく給与や退職金が認められるから待遇は改善する、とされた。だが、5分でも10分でも労働時間が少ないと、基本的には従来どおりの待遇で退職金もない「パート」となる。つまり、パートを増やせば人件費を抑えられる仕組みだ。 その結果、2020年4月時点での総務省調査では、「パート」が会計年度任用職員の88.8%を占め、また、「制度導入前より報酬水準が減額された職種がある」は都道府県で53.2%にのぼった」、これでは、制度改正ではなく、改悪だ。 「藍野らが「職務に見合った賃金を」といくら求めても「財源がない」と相手にされなかったのに、男性の定年組にはあっさりと高賃金の「会計年度任用職員」の座が用意された」、「相談支援など第一線の仕事は、コロナ禍でも休めない住民の命綱だ。だが、これらの仕事のほとんどが非正規職員に担われてきた結果、決定権を持つ正規職員や管理職はその現場を知らず、改善を訴えても理解してもらえない。それでも声を上げると、1年有期を理由に契約を打ち切られることも少なくない」、これでは馬鹿馬鹿しくてやってられない筈だ。 「総務省が全地方自治体を対象に実施した初のメンタルヘルス調査で、非正規公務員は対象から事実上外された。 調査は、コロナ禍による業務量、住民のクレームの増大などによる公務員の心の不調対策を目指し、第一線に立つ機会が多い会計年度任用職員にこそ必要だったはずだ」、本来必要だった「会計年度任用職員」を調査対象から外したとは、小細工も極まれりだ。 「20年近く相談支援業務にあたってきた小川さやか(仮名)も、1日7時間45分のフルタイム契約から、「パート」に切り替えられた。「パート」では退職金の対象にならない。加えて、フルタイムのときは正規と同じ共済保険に加入できたが、パートは共済保険に加入できず、健診などが受けられなくなった」、制度変更時に不利益な扱いが扱いが横行するとは、組合は何をしているのだろう。 「これらの矛盾の指摘に、総務省も「財政上の制約のみを理由にフルタイム雇用を抑制するのは制度の趣旨に合わない」という趣旨の通知を出した。これを生かし、労組による交渉や市議会の質問での是正要求が相次いだ」、「労組」も「総務省」「通知」を活かして「是正」に向け努力すべきだ。 日経ビジネスオンライン「[新連載]霞が関人材クライシス 若手官僚はなぜ辞めるのか」 「今後のラインアップ」のうち、「今回」を除くと全て有料なので、紹介できるのは「今回」のみである。「小野氏」の「ミッションの失敗」は不運だ。 「中央省庁は国政の基盤を作る役割を担うだけに、もともと「働きがい」ならどの職種にも勝るとも劣らないはずだ。しかし過酷な残業が、それを打ち消してしまう」、その通りだ。 「ブラックな働き方と知りながら、政策を作りたくて入ってきている。昔も今もこれからも、残れるやつだけ残ればいいのが霞が関という世界だ」、「ある省で将来の事務次官候補に挙がる課長はこう語り働き方改革の推進に対して難色をあらわにする」、こんな昭和的考え方が大手を振っているようでは、「ブラック」からの脱却は困難だろう。 「北村亘教授」の「試算」は、確かにその通りだが、意外な落とし穴がある可能性もある。 「北村亘教授」の「試算」は、確かにその通りのように思えるが、意外な落とし穴がある可能性もある。 「20年ぶりの現場では、昔のようにボトムアップで政策が日の目を見ることが極端に少なくなっていた。代わりに増えたのは、トップダウンの意思決定」、「コンサル」などが「トップ」にセ-ルスしているのが影響しているのだろうか。 「21年は法案や条約の関連文書に多数の誤記が見つかり、組織の劣化が懸念された霞が関」、確かに「モデルチェンジ」が急務だが、次の「モデル」のイメージはいまだ不確定だ。 一木 悠造氏による「繰り返される「公務員の不祥事」の背景にあるもの 問題は個人にあるのか、組織か…専門家に取材」 こんな「住基ネットシステム」からの情報漏洩は調べれば、犯人はすぐ判明するのに、馬鹿なことをしたものだ。 「低所得者463人分への給付金が誤って1世帯、金額にして4630万円が振り込まれた」、上司のチェックが入らなかったとすれば、それも問題だ。「役所全体が共同体になっていると、外部と役所内部との間に大きな壁ができる。常に外部の目、つまり社会の目にさらされているというような感覚が鈍くなっていく」、説明責任を厳格に課す必要がある。 「リスクというのは、つまり『悪いことしたらやばいよね』『こんなことが起こったら大変だよね』という感覚のこと。だからこそ、普段から起こりうるリスクをすべて掘り出しておく。また、実際に不祥事が起きたときに、まず何をするのかということを順位付けして具体的にシミュレーションしておくことで、起こったあとの対処も迅速に進めることができる」、なるほど。 「組織の問題の具体的な解決策として「外部の力を借りるなどさまざまなアプローチが重要」と指摘する。 「やっぱり外部から人材を獲得したり、活用したりすることは大事だと思う。ただ、そこで民間企業からという発想になるのではなく、例えば欧米では公務員の間での労働市場があるように、日本でも公務員、あるいは準公務員、NPOやNGOなど広い意味で公的な仕事に携わる人たちのなかで人材の市場ができればいい。 メリットとしては、公的な仕事の経験者なら少なくとも機密情報の扱いについては安心して任すことができるだろう」、「職員1人ひとりが分け隔てなく臆せずものが言える組織づくりをリーダー自身が率先して進められるかどうか。公務員組織の未来はリーダーたちの気概にかかっているといえそうだ」、その通りなのだろう。
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幸福(その6)(「幸福度」を科学的に測定・分析することは可能か GDPに代わる「政策目標」として近年注目される、うつ病になった精神科医が人生のどん底で見つけた“幸せの最終結論”) [人生]

幸福については、7月29日に取上げた。今日は、(その6)(「幸福度」を科学的に測定・分析することは可能か GDPに代わる「政策目標」として近年注目される、うつ病になった精神科医が人生のどん底で見つけた“幸せの最終結論”)である。

先ずは、10月6日付け東洋経済オンラインが掲載した半熟仮想株式会社 政策研究員の伊藤 ちひろ氏による「「幸福度」を科学的に測定・分析することは可能か GDPに代わる「政策目標」として近年注目される」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/622532
・『アリストテレスやベンサムを代表として、古くからずっと、幸福は人間社会の究極の目標だといわれてきた。格差や環境問題のような資本主義の副作用、「収入が上がっても、幸福度は徐々に上がりにくくなる」といった研究結果などを背景に、近年は金銭的な豊かさだけではなく、幸福度を直接測定・分析して政策の立案・評価をしようとする動きが活発化している。2011年に英国が始めて以来、幸福度の国家統計は各国に広がり、日本も21年から作成している。 これらの調査では、「今、人生に満足していますか? 0〜10のスケールでお答えください」といった質問で幸福度を尋ね、そのうえで回答の平均値の推移などを確認することが多い。しかし、考えてみてほしい。直前の気分や周囲の人との比較に惑わされず、自分の幸福度を正確に答えられるだろうか。それに、幸福度8の人は幸福度4の人の2倍幸せで、2人の平均幸福度は6だ、と単純に計算してよいだろうか。 実際、現在の測定・分析方法は課題だらけで科学的根拠に乏しい。本稿では、最新の研究に基づいて具体的な課題とその解決の方向性を紹介する』、かなり本格的な「幸福」論のようで、興味深そうだ。
・『「主観的」評価の重要性  幸福は、心理学・経済学・社会学・哲学・健康科学などさまざまな学問で研究されている。近年、経済学分野では「幸福度」の定義をするに当たって、幸福度の測り方の中でもとくに、人生の質・満足度についての総合的な「主観的」評価(Subjective Well-Being)に注目している。なぜなら、幸福度を直接測ることにより、科学的な分析を可能としたいからだ。 背景には、従来使われてきた「物質的・社会的・身体的・主観的」評価(Well-Being)に対する問題意識がある。この評価手法は、複数の幸福度の要素のうちどれをどう組み合わせるのかの決定が恣意的であり、科学的根拠が弱いのだ(それを踏まえると、Well-Beingを用いた「幸福な国ランキング」などのランキングは、ただの話題づくりだと思って、話半分に聞き流すのがいいだろう)。 さて、社会全体の幸福度を科学的に測定・分析するには、大きく分けて2つの条件が必要だ。〈条件1〉は、無関係の要素に惑わされない正確な回答が得られること、〈条件2〉は、異なる人・時期の回答結果を比較できることだ。何も工夫しないと、2条件とも満たされない可能性があるとわかってきた。 まず〈条件1〉については、質問の順番や回答者の忖度(そんたく)により、バイアス(偏り)が生じうる。例えば、政治に関する質問の後で幸福度について尋ねると回答の数値が下がり、心理カウンセリングの後で尋ねると回答の数値は上がることなどが知られている。 大規模な調査によれば、これらのバイアスの影響は大きくないとされるが、明確に取り除く方法の開発は発展途上で、さらなる研究が必要だ。バイアスが生じるプロセスを知るため、主観的な回答と客観的な身体指標(脳の動きやホルモン値など)との関係を理解しようという動きもあるが、いまだに明確な関係はわかっていない。) 次に〈条件2〉について、人々が示す自己評価の意味は、主に3つの要因によって変わること(Response Shift)が広く知られている。それは、「範囲」「規模」「表現方法」だ。 1つ目は幸福の評価の「範囲」、つまり何に注目して幸福度を考えるか、である。例えば、自分や家族の状況だけでなく、友人や社会の状況に評価が左右されることもある。「今」の幸福度としてどの期間・経験をイメージするかにも、ばらつきがある。評価範囲は、3つの要因のうち最も影響が大きいといわれている。 2つ目は幸福の比較の「規模」、何を最大・最小の幸福として定義するかだ。例えば、友人の起業が大成功したのを見て、自分も同じくらい大成功できるかもしれない、と最大値の定義が変わるかもしれない。あるいは全国優勝が当たり前の部活動に所属すれば、最小値の定義が変わるかもしれない。 3つ目は幸福の「表現方法」、各幸福度をどの値で回答するかだ。人や時間によって、各回答値が示す真の幸福度は異なる可能性がある(下図)。例えば、数字に疎い人は、0(最小)・5(中間)・10(最大)のみ利用して回答しがちであることが知られている。つまり、現在主流となっている、全員の回答値が等間隔であることを前提とした平均や分散の計算は、的外れである可能性が高い。 範囲・規模の違いの影響を取り除くには、どのような違いがあるのかを正確に理解することが必要だ。架空の人生の物語を読んで幸福度を評価してもらったり、直接範囲・規模を質問したりと、さまざまな方法が用いられている。ただし各方法には、回答者が自分の過去の考え方を思い出せることなどの各種前提がある。より汎用的に使える手法の開発が必要だ。 表現方法の違いの影響を取り除くには、等間隔を前提としない分析手法が有効だ。分析手法の数は限られるが、「以前と比べてより幸福かどうか」の測定、中央値や中央値からの広がりの比較、各回答値(とくに最大・最小値)の人数割合の比較は可能である。 もし幸福度の正確な測定・分析ができれば、幸福度向上に関する各政策の費用対効果を考慮できるようになり、政策の優先度・内容は大きく変わるだろう』、「社会全体の幸福度を科学的に測定・分析するには、大きく分けて2つの条件が必要だ。〈条件1〉は、無関係の要素に惑わされない正確な回答が得られること、〈条件2〉は、異なる人・時期の回答結果を比較できることだ」、「〈条件2〉について、人々が示す自己評価の意味は、主に3つの要因によって変わること(Response Shift)が広く知られている。それは、「範囲」「規模」「表現方法」だ」、かなり専門的な分析だ。 
・『何が幸福度を上げるのか  海外の研究では、例えば失業者への支援が充実している、緑が多い、通勤時間が短い社会では、人々の幸福度が上がる可能性があると知られている。もしこれが正しく、かつ日本に当てはまるとわかれば、より多くのリソースが失業対策、緑化、職住近接に関する政策などに充てられるかもしれない。調査結果によっては、新しい政策が生まれるかもしれない。 また、ビッグデータなどを用いて、高頻度で幸福度の測定を行うことができるようになれば、22世紀には、幸福度を社会目標として最大化するアルゴリズムが政策を自動生成する、というような日が訪れるかもしれない。 近年注目されている幸福度であるが、質の低い調査・研究結果を量産するのではなく、正確な測定・分析に向けた基礎研究を進めていくことが重要だ。(本稿は以下などを参考に執筆しました。https://www.youtube.com/playlist?list=PLG1lYftsVkA1r00R5xni5i0KVx3906dld)』、今後の研究の進展により「人々の幸福度が上がる可能性」に大いに期待したい。

次に、12月7日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した精神科医のTomy氏による「うつ病になった精神科医が人生のどん底で見つけた“幸せの最終結論”」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/313881
・『不安や悩みが尽きない。寝る前にイヤなことを思い出して、眠れなくなるなんてことも……。そこで参考にしたいのが、著者がNHK『あさイチ』[12/12(月)放送]に出演することで注目の感動小説『精神科医Tomyが教える 心の執着の手放し方』(ダイヤモンド社)だ。 ゲイのカミングアウト、パートナーとの死別、うつ病の発症……苦しんだ末にたどり着いた、自分らしさに裏づけられた説得力ある言葉。とても読みやすいオムニバス形式の8つのショートストーリーは、ふと心が落ち込んだとき、そっと心の荷物を手放すための優しい言葉を授けてくれる。voicy「精神科医Tomy きょうのひとこと」の心がスッと軽くなる“言葉の精神安定剤”で、気分はスッキリ、今日がラクになる!』、興味深そうだ。
・『うつ病になった精神科医が人生のどん底で見つけた“幸せの最終結論” 人はなにが起きても幸せになれる  アテクシの30代半ばから後半にかけては、いろいろと大変なことが重なって、精神的にも肉体的にもつらい目に遭いました。 当時、すでに自分のクリニックを開業していたのですが、仕事が立て込んでかなり忙しかったうえに、大切な人が次々と亡くなってしまい、絶望感にさいなまれたこともあって、うつ病を患ってしまいました。症状がひどいときには、朝起きたら、もうその瞬間から泣きそうな気分になっていたのです。 精神科医ですから対処の仕方は知っているのですが、それでもつらい状態が延々と続いたもので、「こんなことがいつまで続くんだろう」「いつになったら終わるんだろう」「もう元に戻らないんじゃないか」と不安になったものです』、「仕事が立て込んでかなり忙しかったうえに、大切な人が次々と亡くなってしまい、絶望感にさいなまれたこともあって、うつ病を患ってしまいました」、「精神科医ですから対処の仕方は知っているのですが、それでもつらい状態が延々と続いたもので、「こんなことがいつまで続くんだろう」「いつになったら終わるんだろう」「もう元に戻らないんじゃないか」と不安になったものです」、それでどうなったのだろう。
・『なにがあっても、あきらめないで  そんな最悪の精神状態でも、「いずれちょっとマシになるだろう」「今日のつらさを10としたら、明日のつらさは9.5でもいい」なんて思いながら、なんとかしのいで、その後、回復したわけです。 いまでも当時のつらさ、悲しさ、嫌なことが、なかったことにはなっていませんが、いまの自分は幸せだと断言できるんです。それは、あのつらい時期にあきめてしまっていたら、絶対に手に入らないものだったと思うからです。 いまが幸せだからといって、いまの幸せが未来永劫ずっと続くかといえば、そうともいえません。人の幸せというのは、つねに変わるもの。それでも、どんなことがあっても、人は幸せになることができるとアテクシは思ってます。なぜなら、人の幸せというのは、とても主観的なものだからです』、「そんな最悪の精神状態でも、「いずれちょっとマシになるだろう」「今日のつらさを10としたら、明日のつらさは9.5でもいい」なんて思いながら、なんとかしのいで、その後、回復したわけです」、よくぞ自力で乗り切ったものだ。
・『目の前のことを自分がどう捉えるか  自分自身が自分のいまに納得して、悔いはないと思えるなら、それは幸せだと思うんです。目の前の状況を自分がどう捉えるかによって、幸せにも不幸にもなるということです。 そこで、いちばん大事なポイントになるのは、あきらめないこと。いつも一生懸命になって、ずっと頑張り続ける必要はないんです。でも、決してあきらめないこと。いま頑張れない状態で、ゴロゴロしていても、あきらめなければ挽回できる機会が必ず訪れますから』、「いちばん大事なポイントになるのは、あきらめないこと。いつも一生懸命になって、ずっと頑張り続ける必要はないんです。でも、決してあきらめないこと。いま頑張れない状態で、ゴロゴロしていても、あきらめなければ挽回できる機会が必ず訪れますから」、「ずっと頑張り続ける必要はないんです。でも、決してあきらめないこと」、言うは易く、行うは難そうだが、自力で治ったのは大したものだ。
・『納得することが“幸せの最終形”  もうひとつ大事なことは、自分が納得して動くということ。動かないときも、自分が納得したうえで動かないこと。いずれにしても、自分が納得するということをつねに意識してください。 これは自分勝手とは違います。まわりの人たちを顧みず、振り回して、迷惑をかけても、自分が納得するから動く、動かないというとは、話が違うのです。そうではないことを前提に、自分が納得することを判断の基準とすることで、なにが起きても悔いはないと思えるようになります。それが幸せの最終形だと思っています。 本稿は『精神科医Tomyが教える 心の執着の手放し方』(ダイヤモンド社)の著者が日々お届けする“心のサプリメント”です。) (【著者】精神科医Tomy の略歴はリンク先参照)』、自らの行動については、「自分が納得することを判断の基準とすることで、なにが起きても悔いはないと思えるようになります。それが幸せの最終形だと思っています」、なるほど。
タグ:自らの行動については、「自分が納得することを判断の基準とすることで、なにが起きても悔いはないと思えるようになります。それが幸せの最終形だと思っています」、なるほど。 「いちばん大事なポイントになるのは、あきらめないこと。いつも一生懸命になって、ずっと頑張り続ける必要はないんです。でも、決してあきらめないこと。いま頑張れない状態で、ゴロゴロしていても、あきらめなければ挽回できる機会が必ず訪れますから」、「ずっと頑張り続ける必要はないんです。でも、決してあきらめないこと」、言うは易く、行うは難そうだが、自力で治ったのは大したものだ。 「そんな最悪の精神状態でも、「いずれちょっとマシになるだろう」「今日のつらさを10としたら、明日のつらさは9.5でもいい」なんて思いながら、なんとかしのいで、その後、回復したわけです」、よくぞ自力で乗り切ったものだ。 「仕事が立て込んでかなり忙しかったうえに、大切な人が次々と亡くなってしまい、絶望感にさいなまれたこともあって、うつ病を患ってしまいました」、「精神科医ですから対処の仕方は知っているのですが、それでもつらい状態が延々と続いたもので、「こんなことがいつまで続くんだろう」「いつになったら終わるんだろう」「もう元に戻らないんじゃないか」と不安になったものです」、それでどうなったのだろう。 『精神科医Tomyが教える 心の執着の手放し方』(ダイヤモンド社) Tomy氏による「うつ病になった精神科医が人生のどん底で見つけた“幸せの最終結論”」 ダイヤモンド・オンライン 今後の研究の進展により「人々の幸福度が上がる可能性」に大いに期待したい。 「社会全体の幸福度を科学的に測定・分析するには、大きく分けて2つの条件が必要だ。〈条件1〉は、無関係の要素に惑わされない正確な回答が得られること、〈条件2〉は、異なる人・時期の回答結果を比較できることだ」、「〈条件2〉について、人々が示す自己評価の意味は、主に3つの要因によって変わること(Response Shift)が広く知られている。それは、「範囲」「規模」「表現方法」だ」、かなり専門的な分析だ。 かなり本格的な「幸福」論のようで、興味深そうだ。 幸福 (その6)(「幸福度」を科学的に測定・分析することは可能か GDPに代わる「政策目標」として近年注目される、うつ病になった精神科医が人生のどん底で見つけた“幸せの最終結論”) 東洋経済オンライン 伊藤 ちひろ氏による「「幸福度」を科学的に測定・分析することは可能か GDPに代わる「政策目標」として近年注目される」
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ブロックチェーン(その3)(Web3.0でブロックチェーン同士がつながる世界を実現、趣味がお金に変わる「NFT」とは?夢の技術を人気ブロガーが徹底解説) [イノベーション]

ブロックチェーンについては、6月27日に取上げた。今日は、(その3)(Web3.0でブロックチェーン同士がつながる世界を実現、趣味がお金に変わる「NFT」とは?夢の技術を人気ブロガーが徹底解説)である。

先ずは、7月21日付け日経ビジネスオンラインが掲載したAstar Network, Shiden Network, Next Webの 渡辺 創太氏による「Web3.0でブロックチェーン同士がつながる世界を実現」を紹介しよう。なお、対談の中で、「千野」氏のラベルが落ちているケースが多いが、こちらで補った。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00483/071900001/
・『「異なるブロックチェーン同士の相互運用性がないという課題を解決し、世界をつなぎたい」と強い情熱をもってWeb3.0(Web3)の実現に挑む起業家の渡辺創太さん。仮想通貨領域で今や後れをとっている日本で、Web3やDAO(分散型自律組織)が進むと、世の中や人々の生活、働き方はどのように変化するのでしょうか。書籍『仮想通貨とWeb3.0革命』(日本経済新聞出版)の著者、千野剛司さんと対談し、様々な視点から語っていただきました。本書から抜粋、再構成してお届けします』、興味深そうだ。
・『相互運用性の課題を解決  千野剛司さん(以下、千野) この対談ではWeb3やDAOが進むと、この世の中や人々の生活がどう変わるのかということを取り上げています。ただ、DAOといっても皆さん、想像がつかないと思うんですよ。その最前線で働いている渡辺創太さんにWeb3、DAOとは何かを聞きたいと思います。まずは自己紹介をお願いします。 渡辺創太さん(以下、渡辺) 渡辺創太と申します。今、進めているプロジェクトはたくさんありますが、基本的にはWeb3の実現がミッションです。2019年に会社をつくりましたが、最初の2年間は「Web3? 何それ」みたいな感じで、何の風も吹いていませんでしたね。 千野 無風状態(笑)。 渡辺 でも、今はアメリカなどを中心に来ているWeb3の波にうまく乗れているかなと思ってます。僕は日本発のパブリックブロックチェーン(誰でも取引の承認に参加できるブロックチェーン)であるアスターネットワークをつくっています。 アスターネットワークとは、異なるブロックチェーンの相互接続(インターオペラビリティ)を目指すプロジェクトであるポルカドット(Polkadot)のパラチェーンとして、今年1月にメインネットローンチしたブロックチェーンです。パブリックブロックチェーンで解決すべき問題の一つが、インターオペラビリティ(相互運用性)がないことなんですね。つまり、ブロックチェーン同士はつながっていないんです。 例えば、インターネットってつながっていますよね。だから、日本とアメリカでも同時にコミュニケーションが取れる。でも、ブロックチェーン同士はまだつながっていない。ビットコイン、イーサリアム、ソラナ、アバランチなどレイヤー1のブロックチェーンがありますが、それらはトークンのブリッジはできても、ちゃんと仕組みとしてつながっていない。 我々はそこをシームレスにつなぐパブリックブロックチェーンをつくっていて、その上に、これから来るマルチチェーン時代の新しいDeFi(分散型金融)、NFT(非代替性トークン)といったユースケースをつくっていきたい。2022年1月にアスターネットワークをローンチして、現在の時価総額は1100億円くらい(取材時の2022年4月8日時点)。今後1兆円、2兆円以上を目指していきたいと考えています。 千野 渡辺さんのミッションはインターオペラビリティ問題の解決ですよね。インターネットと同じように、ブロックチェーン上でも国籍や国境に関係なく、いろんな人とコミュニケーションが取れる世の中を実現したいと。単にアプリケーションをつくっているだけではなく、かなり目線の高い事業ですよね。そんなプロジェクトに若き日本人がいると思うと頼もしい。チームは日本人だけじゃないですよね。今まさにダイバーシティのある組織を経営していらっしゃるんですよね。 渡辺 ダイバーシティしかないですね。 千野 どうやって仲間を集めたんですか。 渡辺 今、アスターのメンバーは30人ぐらいです。13カ国の国籍の人が14カ国に住んでいて、ヨーロッパに10人ぐらい、アジアに10人ぐらい、アメリカに6人ぐらいいます。アジアで緻密な戦略や数字的な部分、ヨーロッパで開発、アメリカでマーケティングをしています。僕は普段シンガポールにいるんですけど、シンガポールには2人しかいません。オフィスもフリーアドレスのデスクを1つ借りているだけで、家賃3万円です。  千野 どうやってコミュニケーションを取っているんですか。また、人材の集め方は? 渡辺 僕は1カ月前もニューヨークに行っていました。今までもデンバー、シンガポール、ドバイ……のメンバーとはけっこう会っているほうですが、日本のメンバーのなかにはまだオンライン以外では会っていない人も多くいます。採用はエンジェリストという採用プラットフォームから応募してきてくれたり、カンファレンスで直接採用したりしています。メールをくれた人に僕が直接返信することもあります。こうした働き方は、僕にとっては当たり前ですが、日本では、直接会ったことのない人と働くのはまだ浸透していないですよね。 千野 日本は就活サイトに登録して、エントリーシートを書いて、面接して……という流れですからね。今、渡辺さんが目指しているのはDAOだと思うんですが、最初からDAOができるわけじゃない。そのプロジェクトを推進していくコアチームが今の状態ということですね』、「ビットコイン、イーサリアム・・・などレイヤー1のブロックチェーンがありますが、それらはトークンのブリッジはできても、ちゃんと仕組みとしてつながっていない。 我々はそこをシームレスにつなぐパブリックブロックチェーンをつくっていて、その上に、これから来るマルチチェーン時代の新しいDeFi(分散型金融)、NFT(非代替性トークン)といったユースケースをつくっていきたい。2022年1月にアスターネットワークをローンチして、現在の時価総額は1100億円くらい・・・。今後1兆円、2兆円以上を目指していきたいと考えています」、「今、アスターのメンバーは30人ぐらいです。13カ国の国籍の人が14カ国に住んでいて、ヨーロッパに10人ぐらい、アジアに10人ぐらい、アメリカに6人ぐらいいます。アジアで緻密な戦略や数字的な部分、ヨーロッパで開発、アメリカでマーケティングをしています。僕は普段シンガポールにいるんですけど、シンガポールには2人しかいません。オフィスもフリーアドレスのデスクを1つ借りているだけで、家賃3万円です」、「パブリックブロックチェーン」とは意欲的な試みだ。
・『シリコンバレーで就職できた理由とは  千野  渡辺さんは大学卒業後、すぐにシリコンバレーに行ったのですか。もともとプログラミングができたのですか。 渡辺 プログラミングに興味はありましたけど、できません。僕はエンジニアじゃないです。英語も話せませんでした。 千野 なぜ、それでシリコンバレーに行こうと思ったのですか。 渡辺 よく本の例えを出すんですけど、「好きな本を選んでください」と言われたときに、1冊しか読んだことがないとそれしか選べないですよね。でも、100冊、1000冊、1万冊読んでいると違う。僕は大学生のときに何をしたらいいのか分からなかったので、バックパッカーでインドやロシアに行ったり、NPO団体に関わったりしていました。そこで貧しい子どもたちを見てショックを受け、どうにか世界を良くしたいと。 当時考えたのが、世界にインパクトを与えられるのは、政治家か、スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツ、イーロン・マスク、マーク・ザッカーバーグ、ジェフ・ベソスといったIT企業家だろうと。でも、インターネットを事業にするのはもう遅い。それならAIかブロックチェーンだなと思って、シリコンバレーに行きました。 千野 でも、エンジニアではない。英語もできない。どうやって職を得たのですか。 渡辺 もう、プライドを捨てました。アメリカにはビザの関係で1年しかいられないので、自分が帰ったらアメリカ人は誰も僕のことは覚えていないだろう、できることは全部やろうと思って、恥をかくことを恐れなかったですね。 「ブロックチェーンの今後」という資料を頑張って英語で100枚ほど書き、メールに添付して100社ぐらいに送りました。そうしたら、たまたま僕が行きたいと思っていたところから、「資料を見たよ」と返信があり、電話でミーティングをして、採用となりました。  千野 インターンとして採用されたのですか。 渡辺 インターンです。ラッキーだったのは、その会社はスタンフォードの教授がやっていて。僕の上司がアメリカの「Forbes 30 Under 30」に選ばれるような女性でした。そういう人たちと一緒に働けて、視座が上がりました。 千野  最初はどんな仕事を与えられたのですか。 渡辺 ほとんど雑用でした。「このプレゼンテーションを直して」「こんな資料を作って」というところから始まり、途中からはマーケティング戦略を見させてもらったり、「CEOが投資家と話すから、投資家に向けたプレゼンテーション作って」と言われたりしました。向こうはCEOもめちゃくちゃ働くので、最後にオフィスに残っているのがCEOと僕だけということもよくあり、そこでいろいろな話もできました。残業しまくっていましたね。 千野 それで仕事の内容もレベルアップしていったと。インターンは1年間ですか。 渡辺 半年後に社員になったのですが、当時はトランプ政権だったので、ビザが更新できず日本に帰国しないといけませんでした。でも、日本とシリコンバレーだと大きな時差があり、仕事も大変で。それで自分で起業しようと思いました』、「エンジニアではない。英語もできない。どうやって職を得たのですか」、「渡辺 もう、プライドを捨てました・・・恥をかくことを恐れなかったですね。 「ブロックチェーンの今後」という資料を頑張って英語で100枚ほど書き、メールに添付して100社ぐらいに送りました。そうしたら、たまたま僕が行きたいと思っていたところから、「資料を見たよ」と返信があり、電話でミーティングをして、採用となりました」、すごい度胸だ。
・『アンラーンできる人物が活躍する  千野 なるほど。東京大学で研究員もされていましたね。 渡辺 日本に帰ってきて、ありがたいことに東京大学大学院の共同研究員というポストを用意してもらえました。好き勝手できるポジションでしたので、東大の優秀な学生をスカウトして、一緒に会社をつくりました(笑)。 僕がアメリカに行った頃は、ビットコインは14万円ぐらいでしたが、2017年ごろに一気に200万円ぐらいまで値上がりしたんですね。それでビットコインの認知度が一気に高まった。でも、仮想通貨の世界って、専門家がいないんですよ。だからこそ、実際にシリコンバレーに行って経験した僕が呼ばれたんだと思います。  千野 それは意外ですね。 渡辺 そもそも、ブロックチェーンができて14年くらいなので、10年以上ブロックチェーンをやっている専門家がいないんです。だから、年齢関係なくマインドが若い人、アンラーン(これまで学んだことを見つめ直す)できる人が活躍している分野です。 千野 その業界のおえらいさん、重鎮がいないと。 渡辺 お笑いに例えると、明石家さんまさんやダウンタウンさんがいない世界なんです。 文/三浦香代子 構成/雨宮百子(日経BOOKプラス編集部) 写真/小野さやか [日経BOOKプラス 2022年7月21日付の記事を転載] ▽仮想通貨とWeb3.0革命  出遅れた我々に、復活の道はあるのか? DAO(分散型自律組織)、NFT(非代替性トークン)、ステーブルコインほか、仮想通貨とWeb3.0をめぐる最新の動向を解説。米大手暗号資産取引所の日本代表だから語れる、金融とITの未来! 千野剛司(著)/日本経済新聞出版/1980円(税込み)』、「ブロックチェーンができて14年くらいなので、10年以上ブロックチェーンをやっている専門家がいないんです。だから、年齢関係なくマインドが若い人、アンラーン・・・できる人が活躍している分野」、なお、「仮想通貨」相場は、「仮想通貨業界一の「優等生」FTXが突然破綻したことで、暴落している。

次に、12月7日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した超NFTブログ「tochiblog」主催・大人気ブロガーのtochi氏による「趣味がお金に変わる「NFT」とは?夢の技術を人気ブロガーが徹底解説」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/314046
・『NFTという言葉をご存じでしょうか?日本ではまだあまり広まってはいないNFTですが、一言で言ってしまえば「デジタルデータに所有権を持たせる」という夢の技術。海外ではすでに、何者でもなかった人が一日に何千万も稼ぐという事例もあるのです。そこで今回は、大人気ブロガーのtochi(とち)さんの著書『NFTで趣味をお金に変える』(青春出版社)から、いま流行りつつあるNFTを使って稼ぐ方法を抜粋して紹介します』、「NFTを使って稼ぐ方法」とは興味深そうだ。
・『「NFT」は誰だってできる“夢の技術”  NFTとはNon-Fungible Token(ノン・ファンジブル・トークン)の略です。「非代替性トークン」と訳されます。 正式名称は覚えなくていいですが、「デジタル画像に資産価値」を付けたNFTの「仕組み」のことは、軽く頭に入れておいた方がいいでしょう。では、NFTの舞台となる「ブロックチェーン」と、兄弟分の「FT」について見ていきましょう。 「仮想通貨」という言葉を、見聞きしたことのある人は多いでしょう。ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)に代表される“暗号通貨”です。その仮想通貨を世に広めた立役者(技術基盤)が、ブロックチェーンです。 ブロックチェーンによって、インターネット上で「誰でも、永遠に、嘘偽りなく」データのやりとりができるようになりました。全世界に公開、監視されるデータベースをイメージしてみましょう。そこでは「トークン」と呼ばれるデータが、「この資産は、この人が持っている」ということを証明してくれます』、「「トークン」と呼ばれるデータが、「この資産は、この人が持っている」ということを証明してくれます」、なるほど。
・『ネット上でやり取りするトークンとはいったいなに?  トークンには2種類あります。まず1つめがFT=代替できるトークン(お金やポイント)で、2つ目がNFT=代替できないトークン(一点もの)。 まずFTとは「Fungible Token(ファンジブル・トークン)」の略。NFTから「N(Non= 非)」が、なくなりました。「代替できるトークン」を意味します。 「代替できる」とは、お金のようにトークン同士の価値に差がないため、「他のもので替えがきく」ということ。身近なところでいうと、100円玉もFT。誰かと100円玉を交換しても、その価値は変わりません。100円のメロンパンを買うのに、“特定の100円玉”である必要はないのです。ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)もFTの一種といえます。 対して、NFTの“代替できない”とはなんでしょう。トークンはなにも、お金に限定されません。アートのように1点1点が特別な価値を持つ資産を扱うこともできます。お金とは違い、トークンごとに価値づけされるため「Non-Fungible Token(ノン・ファンジブル・トークン)」と呼ばれます。「ブロックチェーン上で、一点ものの資産の保有証明をする」のがNFTというわけです。 では一体、どのようにこのNFTで稼ぐことができるのか、早速見ていきましょう。 NFTの稼ぎ方(1)販売──NFTを作って稼ぐ(まずは王道。NFTアート(イラスト)を作り、販売して稼ぐ方法です。一般的に「NFTで稼ぐ」と聞いて、まず思い浮かべるものでしょう。 そして、みなさん気になるのは、どんなNFTアートならば「稼げる」のか、でしょう。 じつは僕は明確な答えを持ち合わせておりません(あったら僕がやります笑)。 ただ、ひとつ断言できることがあります。NFTアートには「トレンドがある」ということです。 「NFT元年」と呼ばれる2021年。その、わずか1年の間でも、いろんなトレンドが生まれました(そして消えました…)。ドット絵、お猿さん、女の子、ボクセル(立方体の組み合わせで作るアート)、自撮り写真、アニメ風作品…。 NFTアートで稼ぐなら、この「トレンド」をとらえる感覚は身につけておきたいところ。「何を」はもちろんですが、「いつ」出すかも、NFT販売において、とても大事な要素なのです。夏にコタツを出したって売れません』、「わずか1年の間でも、いろんなトレンドが生まれました(そして消えました…)。ドット絵、お猿さん、女の子、・・・自撮り写真、アニメ風作品…。 NFTアートで稼ぐなら、この「トレンド」をとらえる感覚は身につけておきたいところ」、難しそうだ。
・『まずは自分で買ってみて、買い手の求めるものを知るのが重要  NFTを販売するなら「まずは自分で買ってみる」ことは、とても重要な体験です。 「買い手目線」になることで、“どんなモノがウケているのか”を、知ることができます。いざ、初めてNFTを購入しようとすると十中八九、ウンウン迷うことになるでしょう。迷った中から、選んだ1つ。その決め手を言語化してみましょう。 「とにかく可愛いかった」「同じ作品を持っている人と友だちになれそう」「原画がもらえる特典にひかれた」…必ず、決め手があります。ひとり(自分)を動かしたキッカケは、より多くの人の動機になります。今度は「販売する側」として、“買い手の経験”を活かしてください』、「(自分)を動かしたキッカケは、より多くの人の動機になります。今度は「販売する側」として、“買い手の経験”を活かしてください」、なるほど。
・『コミュニティ(仲間作り)の重要性  最近では、NFTコレクションの人気や売れ行きを左右する要素として、「コミュニティ」が重要視されています。NFTにおけるコミュニティとは、「ファンクラブ」が近いでしょう。 人気のNFTプロジェクト/コレクションは、必ずといっていいほど、独自のコミュニティを持っています。活気のあるコミュニティならば、「新作発表→即完売」なんていうのは、よくある光景です。Twitter などSNSで告知する前に、作品は売れてしまうのです。) あなたの、そして作品の、ファンを作りましょう。ファンといっても、アイドルグループ・AKBのそれのような、熱狂的なファンである必要はありません。あなたの活動や発信内容に共感してくれたり、同じ趣味を持っていたり……“気が合う程度”でいいのです。集まった仲間の数と熱量は、そっくりそのまま、NFT界におけるブランドの強さになります。「NFT」と「コミュニティ」は、それぐらい密接な関係にあるのです』、「ファンといっても、アイドルグループ・AKBのそれのような、熱狂的なファンである必要はありません。あなたの活動や発信内容に共感してくれたり、同じ趣味を持っていたり……“気が合う程度”でいいのです。集まった仲間の数と熱量は、そっくりそのまま、NFT界におけるブランドの強さになります。「NFT」と「コミュニティ」は、それぐらい密接な関係にあるのです」、なるほど。
・『NFTの稼ぎ方(2)投資──売買で稼ぐ  つづいて「投資」です。NFTを安く買い、高く売れば、儲かります。原理は株と同じです。 シンプルな構図は「安く買って、高く売る」ですが、もちろん、そう簡単ではありません笑。「簡単に儲かる」話は、現実社会と同様、NFTにおいても100%詐欺です!ノッてはダメです。 しかし、NFT投資で儲けている人がいるのも事実。特に、NFTを「投資」と見る向きが強い海外(※著者印象)では、稼げる規模感も、日本とはケタが1つ2つ違います。海外の作品・プロジェクトまで目が届くのならば、選べる「投資商品」の幅が拡がることは、間違いありません』、「NFTを「投資」と見る向きが強い海外・・・では、稼げる規模感も、日本とはケタが1つ2つ違います。海外の作品・プロジェクトまで目が届くのならば、選べる「投資商品」の幅が拡がることは、間違いありません」、その通りなのだろう。
・『鉄則は安く仕入れる!  では、ここから、実際にNFT投資で稼ぐ具体的な方法を解説します。 「安く買う、高く売る」の「安く買う」に焦点をあてて説明します。「高く売れる」かは運要素も強いですが、「安く買う(もしくはタダでもらう)」ことは、努力次第で可能なためです。 NFTを安く買う方法は3つ。 1.ギブアウェイ(プレゼント) 2.ホワイトリスト(優先購入権) 3.チャート(市場)分析をする(トレーダー) 次から順に説明していきましょう。 1.ギブアウェイ(giveaway)(無料でもらえるNFTです。つまり、プレゼント。「タダ?怪しくない?」と思うかもしれませんね。でも心配いりません。NFTコレクションの人気と認知の拡大のために、ごくごく一般的に行われている施策です。もらえるものは、もらっておきましょう笑。 主にTwitter でギブアウェイ企画は行われています。Twitter で「#giveaway」と検索すると、たくさんの企画が出てきます。人気のギブアウェイは抽選になりますが、もちろん参加はタダ。「いいね」や「リツイート」をするだけです。狙う価値は、あります。) 2.ホワイトリスト(Whitelist)(「ホワイトリスト」も聞き慣れない言葉でしょう。NFTの「優先購入権」です。なじみのある表現だと「特別セールに参加できる会員権」といったところでしょうか。 多くのNFTプロジェクトが、一般販売の前に事前販売(プレセール)を行います。その「事前販売でNFTを購入できる権利」がホワイトリストです。通常、価格も一般販売(パブリックセール)より、安くなります。ホワイトリストも、ギブアウェイと同様、Twitterで配布されるケースが多いです。欲しい作品のホワイトリストが出たら、どんどん応募してみましょう。) 3.チャート(市場)分析をする(ここまでくれば「トレーダー」ですね。トレードの対象がNFTである必要があるかの議論は、いったん置いて説明します。) 今、世界中で一日に数種~数十種のNFTコレクションが生まれています(そして、消えています…)。膨大な数のNFTコレクションの価格や所有者数、取引量などを、チャートにまとめたサービスもあります。 チャートを見つつ、市場を見つつ、「上がる」NFTを購入できれば、儲かります。 いかがですか? 「絵が描けないから」「投資は難しいから…」と、NFTで稼ぐことをあきらめる必要はありません。 これ以外にもNFTには<プレー:NFTゲームで稼ぐ>や、<メディア:発信して稼ぐ>、<その他:動いて、聴いて…○○して稼ぐ>といった稼ぎ方もあるのです。 自分の趣味がお金に変わる夢の技術。ぜひあなたに合ったNFTの楽しい稼ぎ方を見つけてください』、「鉄則は安く仕入れる!」は分かるが、その他は、何か具体例で示してくれればいいのに、余りに抽象的なので、ピンとこない。残念だ。こんな役に立たない記事を紹介したのを許してほしい。
タグ:(その3)(Web3.0でブロックチェーン同士がつながる世界を実現、趣味がお金に変わる「NFT」とは?夢の技術を人気ブロガーが徹底解説) ブロックチェーン 『仮想通貨とWeb3.0革命』(日本経済新聞出版) 渡辺 創太氏による「Web3.0でブロックチェーン同士がつながる世界を実現」 日経ビジネスオンライン 「ビットコイン、イーサリアム・・・などレイヤー1のブロックチェーンがありますが、それらはトークンのブリッジはできても、ちゃんと仕組みとしてつながっていない。 我々はそこをシームレスにつなぐパブリックブロックチェーンをつくっていて、その上に、これから来るマルチチェーン時代の新しいDeFi(分散型金融)、NFT(非代替性トークン)といったユースケースをつくっていきたい。 2022年1月にアスターネットワークをローンチして、現在の時価総額は1100億円くらい・・・。今後1兆円、2兆円以上を目指していきたいと考えています」、「今、アスターのメンバーは30人ぐらいです。13カ国の国籍の人が14カ国に住んでいて、ヨーロッパに10人ぐらい、アジアに10人ぐらい、アメリカに6人ぐらいいます。アジアで緻密な戦略や数字的な部分、ヨーロッパで開発、アメリカでマーケティングをしています。僕は普段シンガポールにいるんですけど、シンガポールには2人しかいません。オフィスもフリーアドレスのデスクを 1つ借りているだけで、家賃3万円です」、「パブリックブロックチェーン」とは意欲的な試みだ。 「エンジニアではない。英語もできない。どうやって職を得たのですか」、「渡辺 もう、プライドを捨てました・・・恥をかくことを恐れなかったですね。 「ブロックチェーンの今後」という資料を頑張って英語で100枚ほど書き、メールに添付して100社ぐらいに送りました。そうしたら、たまたま僕が行きたいと思っていたところから、「資料を見たよ」と返信があり、電話でミーティングをして、採用となりました」、すごい度胸だ。 「ブロックチェーンができて14年くらいなので、10年以上ブロックチェーンをやっている専門家がいないんです。だから、年齢関係なくマインドが若い人、アンラーン・・・できる人が活躍している分野」、なお、「仮想通貨」相場は、「仮想通貨業界一の「優等生」FTXが突然破綻したことで、暴落している。 ダイヤモンド・オンライン tochi氏による「趣味がお金に変わる「NFT」とは?夢の技術を人気ブロガーが徹底解説」 「NFTを使って稼ぐ方法」とは興味深そうだ。 「「トークン」と呼ばれるデータが、「この資産は、この人が持っている」ということを証明してくれます」、なるほど。 「わずか1年の間でも、いろんなトレンドが生まれました(そして消えました…)。ドット絵、お猿さん、女の子、・・・自撮り写真、アニメ風作品…。 NFTアートで稼ぐなら、この「トレンド」をとらえる感覚は身につけておきたいところ」、難しそうだ。 「(自分)を動かしたキッカケは、より多くの人の動機になります。今度は「販売する側」として、“買い手の経験”を活かしてください」、なるほど。 「ファンといっても、アイドルグループ・AKBのそれのような、熱狂的なファンである必要はありません。あなたの活動や発信内容に共感してくれたり、同じ趣味を持っていたり……“気が合う程度”でいいのです。集まった仲間の数と熱量は、そっくりそのまま、NFT界におけるブランドの強さになります。「NFT」と「コミュニティ」は、それぐらい密接な関係にあるのです」、なるほど。 「NFTを「投資」と見る向きが強い海外・・・では、稼げる規模感も、日本とはケタが1つ2つ違います。海外の作品・プロジェクトまで目が届くのならば、選べる「投資商品」の幅が拡がることは、間違いありません」、その通りなのだろう。 「鉄則は安く仕入れる!」は分かるが、その他は、何か具体例で示してくれればいいのに、余りに抽象的なので、ピンとこない。残念だ。 こんな役に立たない記事を紹介したのを許してほしい。
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恋愛・結婚(その7)(長い婚活に出口が!44歳&39歳が結婚できた勝因 結婚したい「恋愛が苦手な大人」がすべきこと、職場結婚は「今や傍流」1990年代から6割減の背景 ネット婚増でもお膳立てなければ結婚は増えない、マッチングアプリの沼にハマる44歳女性のリアル お金・危険・結婚願望…) [人生]

恋愛・結婚については、7月4日に取上げた。今日は、(その7)(長い婚活に出口が!44歳&39歳が結婚できた勝因 結婚したい「恋愛が苦手な大人」がすべきこと、職場結婚は「今や傍流」1990年代から6割減の背景 ネット婚増でもお膳立てなければ結婚は増えない、マッチングアプリの沼にハマる44歳女性のリアル お金・危険・結婚願望…)である。

先ずは、8月7日付け東洋経済オンラインが掲載した ライターの大宮 冬洋氏による「長い婚活に出口が!44歳&39歳が結婚できた勝因 結婚したい「恋愛が苦手な大人」がすべきこと」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/608796
・『大阪・梅田にある和食店に来ている。ランチの「祝会席」を予約して、印鑑と朱肉はペンケースに入れて持参した。 これから入籍予定の酒井聡さん(仮名、44歳)と関根典子さん(仮名、39歳)に婚姻届の証人になってほしいと頼まれたのだ。筆者はライター業のかたわら、男女を引き合わせて結婚までをお手伝いする「お見合いおじさん」をしており、彼らは7組目の成婚カップルとなる。 「典子さんは実際に会ったほうがかわいらしい、いやかわいいと思いました」 「私はZoomお見合いのときから、あ!と見つけた気分になりました。聡さんは清潔感があっていい感じの男性だからです」』、興味深そうだ。
・『昨年末までどんよりしていた2人がなぜ…?  前菜に箸をつける間もなくのろけ始める2人。お見合いをしたのは今年1月で、真剣交際に入ってから4カ月でゴールインした。 そんなに短い期間だとは思えないほど濃いお付き合いができているとさらにのろける2人。しかし、どちらも昨年末までは笑顔も出にくいような精神状態だったことを筆者は知っている。 聡さんは、従業員40人ほどの中小企業で働く会社員。中高大といわゆるお坊ちゃん系の私立校で育った聡さんは、おっとりした性格もあって、お金持ちではないのに友人たちに「ぼん」というあだ名で呼ばれている。 そんな聡さん、結婚相談所で出会った4歳年下の女性と婚約寸前で別れたばかりだった。原因はお金。 父親が他界したのをきっかけに実家に戻った聡さんは、母親と暮らす実家をリフォームしており、そのローンを負っている。相続対策はどうなっているのか、会社で出世する可能性はあるのか、などを何度も聞かれて気分が落ち込むようになってしまったという。 筆者はどちらかといえばその女性に同情する。聡さんは素直で優しげな男性だが、頼りがいがあるとは言いがたい。「おっちょこちょい」を自認しており、その場では言わなくてもいいことを口にしちゃうタイプだ。かなり生活力がある女性でなければ結婚相手として不安を覚えるかもしれない』、「筆者はどちらかといえばその女性に同情する。聡さんは素直で優しげな男性だが、頼りがいがあるとは言いがたい。「おっちょこちょい」を自認しており、その場では言わなくてもいいことを口にしちゃうタイプだ。かなり生活力がある女性でなければ結婚相手として不安を覚えるかもしれない」、しかし、「関根典子さん」はどうなのだろう。答えは以下にあるようだ。
・『40歳近くまで交際経験がほとんどなかった典子さん  典子さんのほうはより深刻だった。典子さんは大学卒業後にスポーツクラブのインストラクターになり、10年ほど働いてから法人営業の仕事に転職。現在はアウトドア用品のショップ店員として働いている。外見も若々しく、人懐っこい笑顔が印象的な女性なのだが、とにかく恋愛に自信がなかった。 結婚願望はあるし男性も苦手ではないのに、40歳近くになるまで交際経験はほとんどなかったと明かす。良き人と巡り合ってアプローチされても、「こんなに素敵な男性だから、相手にはもっと若くてかわいい女性がいいんだろう」と勝手に思い込んで関係がギクシャクしてしまう。 「選んでもらってもうまくいかない私が『いい人』を選ぶことなんてできない、と負のスパイラルに入っていました。だから、大宮さんとマチコ先生が聡さんを紹介してくれたのは本当に良かったです」 マチコ先生とは、筆者と一緒にお見合いおじさん活動をしている婚活パーソナルトレーナーの女性だ。誰と誰を引き合わせたらよいか、その2人が交際から婚約に至るには何がポイントか、などをつねに考えて実行している。 男女間のコミュニケーションが不器用な人たちは、マチコ先生のような存在をフル活用することが重要だ。結婚相談所の場合は担当カウンセラーにあたる。つねに相談できる関係でなければ、結婚相談所に入る意味があまりない。一人で相手を見つけて婚約までたどり着ける人はマッチングアプリなどでも結婚できるからだ。 双方の心境を把握している人の存在は、「仮交際」と言われるお試し状態から結婚を視野に入れた関係になる「真剣交際」に至るまでの微妙な期間にも効果を発揮する。典子さんは聡さんへの好意を当初は隠していたと明かす。 「私は最初から聡さんのことをいいな、と思っていたのですが、聡さんの気持ちがまだわからないし、彼にも相手を選ぶ権利があります。私からアプローチしてうまくいった経験もありません」 「それはわかるよ。僕もグイグイとアピールして失敗した経験があるので。典子さんをかわいいと思う気持ちは僕も隠していました」) 優しく共感を示す聡さんだが、自他ともに認めるおっちょこちょいである彼が「気持ちを隠す」だけで済むはずはない。「早急に判断せず、3回は淡々と会うこと」というマチコ先生のアドバイスを忠実に実行していることを典子さんにも伝えてしまったのだ。嫌々会っているかのように受け取られかねない。聡さん、何をしているんだよ……。 「他の人から同じことを言われたら、『そんなんやったらもう会わなくてもいいし』と反発していたかもしれません。でも、聡さんは素直なので何でも口に出す人なんだとわかってきていました。かわいくて誠実な人なんです」 「典子さんは年上の僕のことをかわいいかわいいと毎回のように言うんですよ~」 嬉しそうに合の手を入れる聡さん。失言を反省している様子は見られない。やはりお坊ちゃんキャラなのだ。そのままでいいよと周囲が受け入れてあげるしかない。 典子さんも10年前の「トゲトゲしていた」自分だったら聡さんの良さを理解できなかったかもしれないと笑う。 恋愛下手という自覚のある典子さんは、マチコ先生との連絡を密にすることにした。結婚を前提とした真剣交際に至るというのは、彼女にとっては高い壁だった。そこで4回目のデートを前に、マチコ先生に聡さんへの好意を明かしつつ「でも、聡さんは交際について慎重にお考えのようです」と伝えた。要するに、煮え切らない態度の聡さんの背中を、マチコ先生に押してもらおうと期待したのだ』、「男女間のコミュニケーションが不器用な人たちは、マチコ先生のような存在をフル活用することが重要だ。結婚相談所の場合は担当カウンセラーにあたる。つねに相談できる関係でなければ、結婚相談所に入る意味があまりない」、「恋愛下手という自覚のある典子さんは、マチコ先生との連絡を密にすることにした。結婚を前提とした真剣交際に至るというのは、彼女にとっては高い壁だった。そこで4回目のデートを前に、マチコ先生に聡さんへの好意を明かしつつ「でも、聡さんは交際について慎重にお考えのようです」と伝えた。要するに、煮え切らない態度の聡さんの背中を、マチコ先生に押してもらおうと期待したのだ」、なるほど。
・『告白は聡さんから  実際、マチコ先生は聡さんに「典子さんは待ちの状態です。次の機会にちゃんと告白しないとチャンスはありません」と厳しく告知。素直な聡さんは「真剣交際をしてください」とすぐに告白し、「喜んで!」という返事を典子さんからもらった。なかなか世話の焼ける人たちである。 ただし、真剣交際からの婚約までの道のりは極めて円滑だった。独身のまま老後を迎えることを覚悟して働いていた典子さんは聡さんに経済的に依存するつもりはない。聡さんが住宅ローンを負っていることについては、「ローンを組めるぐらい信用力がある人なんだ」と高評価。まずはそれぞれの職場がある大阪府内で賃貸マンションに住む予定だが、いずれは彼の実家に移って義母と同居することも考えている。 「私が住まわせていただけるなら、の話ですけど。お義母さんには優しく接してもらっています。ローンも2人で返したほうが早く終わりますよね」) 聡さんのほうは典子さんの家族のにぎやかさに親しみと憧れを感じたという。かつては多くの親戚が集まってくれていた実家は、父親と祖母が亡くなり、姉は他県に嫁いで離れ、母親との二人暮らしに寂しさを覚えていたのだ。 「僕が典子さんの家にご挨拶に行ったとき、ご両親だけでなく、妹さんと旦那さんとお子さん、弟さんとその婚約者もいたんです。一家勢ぞろいで大騒ぎ。羨ましかったです」』、「二人家族」からみれば、「大家族」は「羨ましい」のだろう。
・『不妊治療の検査を受け、子作りに励むつもり  聡さんと典子さんはそれぞれ早めに不妊治療の検査を受け、子作りに励むつもりだ。産み育てることも想定した賃貸物件を探している。 「結婚はやるべきことが多くて大変ですよ~」と言いつつ、聡さんは前のめりで結婚式に向けて準備を進めている。無駄な動きも多いはずだが、典子さんがしっかりフォローしていることだろう。 「婚活に6年もかけました。未熟な僕にはこれぐらいの準備期間が必要だったのだと思います。婚活だけでなく仕事や趣味のランニングを通していろんな方と接することができ、われながらどっしりしてきた今だからこそ結婚できたんだと思います」 現状で「どっしり」しているのであれば、6年前の聡さんは地に足がつかないほどとっちらかった軽量級の人だったはずだ。経験を積むことによって少しは落ち着いたと自覚している聡さん。素直で純真な性質は変わらず、年下の典子さんから「かわいい」と愛されている。その気持ちの根底には家族になったことの安心感があるはずだ。この2人には刹那的な恋愛よりも人生を分かち合う結婚のほうが向いていると思った。 本連載に登場してくださる、ご夫婦のうちどちらかが35歳以上で結婚した「晩婚さん」を募集しております(ご結婚5年目ぐらいまで)。事実婚や同性婚の方も歓迎いたします。お申込みはこちらのフォームよりお願いします』、「不妊治療の検査を受け、子作りに励むつもり」、検査結果が悪いものでないことを祈っている。

次に、11月18日付け東洋経済オンラインが掲載した独身研究家・コラムニストの荒川 和久氏による「職場結婚は「今や傍流」1990年代から6割減の背景 ネット婚増でもお膳立てなければ結婚は増えない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/633338
・『「見合い結婚」か、「恋愛結婚」か。 厚生労働省の出生動向基本調査では、この夫婦の結婚形態の推移について継続的に調査しています。とはいえ、「見合いか、恋愛か」というほど両者が拮抗しているわけではなく、1965年あたりに見合い結婚比率が恋愛結婚比率に逆転されて以降、その差は広がり続けています。 ここでいう「見合い」の中には、いわゆる伝統的なお見合いパターンに加えて、結婚相談所による結婚も含みます。恋愛結婚に分類されているものは、夫婦の出会いのきっかけが、学校や職場、バイト先、友人などの紹介や街中でのナンパなどを選んだ対象者を恋愛結婚と分類しています。 要するに、伝統的な見合いと結婚相談所以外は恋愛結婚と振り分けられていると考えていいでしょう』、「1965年あたりに見合い結婚比率が恋愛結婚比率に逆転されて以降、その差は広がり続けています」、なるほど。
・『「恋愛結婚比率が下がっている」は本当か?  2021年の同調査では、この結果を出すための質問に、はじめて「ネットで」という選択肢が新たに加えられました。このネットというのは、SNSやマッチングアプリなど個人間の交流の場をオンラインで提供するサービスを用いて知り合ったケースと定義されています。 その結果、調査の報告書には『最新の2019~2021年間では、ネット婚が15.2%と見合い結婚の 9.9%を上回り、その分、従来の恋愛結婚比率が下がっている』と書かれているのですが、そこに違和感を覚えます。 グラフにすると、恋愛結婚が急に減って、その分「ネット婚」が増えたかのような印象を受けますが、果たしてネット婚と恋愛結婚とは別物なのでしょうか。) もし、別物だとするならば、ネットで知り合った夫婦は恋愛関係になることなく結婚しているのでしょうか? 知り合ったきっかけがネットであろうが、友達の紹介であろうが、合コンだろうが、職場だろうが、街でのナンパだろうが、結局当事者間の恋愛を経て結婚に至るのであれば、それは今までの分類上恋愛結婚と一緒なのではないかと思います。 「それを言ったら、見合いで知り合っても、戦前の見合いじゃないんだから、その後恋愛を経て結婚する夫婦が大部分で、見合い結婚も恋愛結婚になるじゃないか」というご指摘もあるかと思います。 ただし、見合いの場合は、事前の相手の選定から出会いの場の設定、その後のやりとりや相談も含めて仲人や媒酌人が介在します。それらは「お膳立て」といってよいものであり、当事者間だけで結婚に至るのか、第三者の介在とお膳立てがあったのかでは大きく結婚形態は違うものととらえるべきでしょう』、「見合いの場合は、事前の相手の選定から出会いの場の設定、その後のやりとりや相談も含めて仲人や媒酌人が介在します。それらは「お膳立て」といってよいものであり、当事者間だけで結婚に至るのか、第三者の介在とお膳立てがあったのかでは大きく結婚形態は違うものととらえるべき」、その通りだ。
・『ネット婚は恋愛結婚に含まれる  ネット婚の場合、確かに相手を探す段階でのお膳立てがプラットフォームとして提供されていますが、気になった相手を見つけた以降はすべて当事者間の行動に委ねられる点で、見合いのようなお膳立てとは一線を画すもので、広義の意味ではネット婚は恋愛結婚に含まれると考えるほうが妥当でしょう。 すると、恋愛結婚比率が75%に下がったとはいえ、ネット婚の15%を加えれば、ほぼ90%となり、1990年代以降変わらないと見ることもできます。 比率だけで判断すると、「恋愛結婚が9割」となるので、それこそ「若者の草食化」も「恋愛離れ」もないという話にもなります。が、比率だけ見ていてはわからない部分があります。 そもそも婚姻数は年々減少していますので、この比率による実数按分を可視化すると、また違った景色が見えてきます。元データは、初婚同士の夫婦を対象としたものなので、初婚同士の実婚姻数にあてはめて計算します。 期間ごとの1年当たりの平均婚姻数(古い1964年以前の一部欠損データは無視します)を分母として、結婚形態別の婚姻実数を推計してグラフ化したのが以下になります。こちらでは、恋愛結婚とネット婚は積み上げ面グラフとしています。 ご覧の通り、ネット婚の比率が増えたといっても、全体の婚姻数から見ればまだ微々たるもので、仮にネット婚を恋愛結婚の派生のひとつとみなせば、従来の恋愛結婚の代替えとしてネット婚に移行した人たちがいるだけであり、全体の恋愛結婚増に寄与するどころか、初婚数が減っているのはまさに恋愛結婚の数の減少によるものと解釈できます。 直近で恋愛結婚が多かった1990年代後半と比較すると、その減少率は実に46%減とほぼ半減です。むしろ、見合い結婚数は実数としてほんの少しですが増えているくらいです。 こうなると、「ほうら、やっぱり若者の恋愛離れが起きているんだよ」と言いたがる人も出てくると思いますが、決してそうではありません。以下のグラフを見ていただければ、長期推移として婚姻数が減っている要因がわかります』、「直近で恋愛結婚が多かった1990年代後半と比較すると、」「恋愛結婚」「の減少率は実に46%減とほぼ半減です。むしろ、見合い結婚数は実数としてほんの少しですが増えているくらいです」、なるほど。
・『職場の恋愛が減っている  1990年代半ばに恋愛結婚数は大きく伸長していますが、同時期に職場結婚数もMAXとなっています。以降、急激に下がり続け、最新の2021年対比では6割減です。同期間の全体初婚数の減少は4割弱ですから、職場結婚だけが異常に減っていることがわかります。言い換えれば「職場の恋愛が減っている」わけです。 ご覧の通り、ネット婚の比率が増えたといっても、全体の婚姻数から見ればまだ微々たるもので、仮にネット婚を恋愛結婚の派生のひとつとみなせば、従来の恋愛結婚の代替えとしてネット婚に移行した人たちがいるだけであり、全体の恋愛結婚増に寄与するどころか、初婚数が減っているのはまさに恋愛結婚の数の減少によるものと解釈できます。 直近で恋愛結婚が多かった1990年代後半と比較すると、その減少率は実に46%減とほぼ半減です。むしろ、見合い結婚数は実数としてほんの少しですが増えているくらいです。 こうなると、「ほうら、やっぱり若者の恋愛離れが起きているんだよ」と言いたがる人も出てくると思いますが、決してそうではありません。以下のグラフを見ていただければ、長期推移として婚姻数が減っている要因がわかります』、「直近で恋愛結婚が多かった1990年代後半と比較すると、その減少率は実に46%減とほぼ半減です。むしろ、見合い結婚数は実数としてほんの少しですが増えているくらいです」、初めて知った。
・『職場の恋愛が減っている  1990年代半ばに恋愛結婚数は大きく伸長していますが、同時期に職場結婚数もMAXとなっています。以降、急激に下がり続け、最新の2021年対比では6割減です。同期間の全体初婚数の減少は4割弱ですから、職場結婚だけが異常に減っていることがわかります。言い換えれば「職場の恋愛が減っている」わけです。 『100年前の日本人が「全員結婚」できた理由』という過去記事でも書いた通り、もっとも婚姻数が多かった1972年と2015年とを比較した場合、見合い結婚と職場結婚を合算した婚姻数のマイナス分は約46万組で、それは婚姻総数のマイナス分と完全に一致しています。つまり婚姻数の減少はこれら2つのきっかけの減少分だったと言ってよいわけです。 伝統的な見合い結婚比率は減り続けていますが、この減少分を職場結婚が見合いに代わる結婚のお膳立てシステムとして機能していた部分は否定できません。1970年代から1990年代がそれに当たります。 当時の上司は部下の結婚を推奨し、仲人をやりたがっていた人も多かったわけです。いわばかつては「地域・村」がお膳立てしていた部分を「職場」が担っていたのでしょう。 つまり、統計上恋愛結婚に分類されていた職場結婚ですが、これは少なくとも1990年代までは見合い結婚同様「お膳立て婚」と呼べるものであったのです。 そもそも、見合い結婚と恋愛結婚という分類自体が時代遅れで、実態に即して分類するとすれば、見合いや職場という「お膳立て婚」か、当事者間の恋愛による「自力婚」という分け方にすべきだと考えています。 そして、初婚数の激減はこの「お膳立て婚」の減少に帰結します。もちろん、職場結婚でも自力婚をした人がいないとは申しませんが、1980年代までの皆婚はこのお膳立てなしには実現できていません。 本来、ネット婚には、このお膳立ての代替え機能としての期待感があったように見受けられます。が、残念ながら現状のシステムでは大きな効果をあげることは困難でしょう。 なぜなら、それらは根本的には「出会いのツール」としては奏功しますが、その先の進展は当事者任せの側面が強く、いくら出会いの前にAIマッチングがあろうとも、出会った後、現実に恋愛や結婚するかどうかを決めるのは当事者だからです』、「1990年代半ばに恋愛結婚数は大きく伸長していますが、同時期に職場結婚数もMAXとなっています。以降、急激に下がり続け、最新の2021年対比では6割減です。同期間の全体初婚数の減少は4割弱ですから、職場結婚だけが異常に減っている」、「ネット婚は・・・大きな効果をあげることは困難でしょう。 なぜなら、それらは根本的には「出会いのツール」としては奏功しますが、その先の進展は当事者任せの側面が強く、いくら出会いの前にAIマッチングがあろうとも、出会った後、現実に恋愛や結婚するかどうかを決めるのは当事者だからです」、なるほど。
・『結婚したいのにできない不本意未婚者は4割もいる  マッチングアプリは、いわば「街のナンパのデジタル版」でしかなく、3割の恋愛強者にとっては「幅広い出会いの場となる」便利なツールですが、経験に乏しい恋愛弱者にとっては「自分がモテない」ことを思い知らされるだけの残酷なツールと化します。 婚活がなかなかうまくいかない人たちがよくいう「出会いがない」という言葉がありますが、出会いがあればうまくいくというものでもありません。出会えればうまくいくというのはむしろ恋愛強者の台詞です。 ネット婚の増加は、恋愛強者にとってはよりよい相手を見つけるためには役立ちますが、それは結局「自力婚」のきっかけの内容が変わるだけであり、全体の婚姻数を底上げするのは難しいかもしれません。 一方、職場結婚の復活も難しいでしょう。現在では、職場での上司の結婚圧力は当然ながら、社員同士の恋愛もセクハラ扱いされるリスクがあるためです。 「自力婚」できる強者は放置しておけば勝手に恋愛して結婚します。自らの選択で非婚を決定している人に結婚を無理強いする必要もありませんが、結婚したいのにできない不本意未婚者が4割もいます。 求められているのは、そうしたかつてのお膳立て機能がなければ結婚に至らない層に対する仕組みです。とはいえ、後者の恋愛力をあげる方向へ向かうのは見当違いです。人には向き不向きがあります。 必要なのは、出会いの数でも恋愛力でもなく、若者たちが自信を持ち、今より幸福感を感じられ、ちょっとだけ背中を押してあげられる時代の空気のようなものが必要ではないでしょうか。結婚したい若者を支援する「令和のお膳立て」を真剣に考えるべき時かもしれません。 『100年前の日本人が「全員結婚」できた理由』という過去記事でも書いた通り、もっとも婚姻数が多かった1972年と2015年とを比較した場合、見合い結婚と職場結婚を合算した婚姻数のマイナス分は約46万組で、それは婚姻総数のマイナス分と完全に一致しています。つまり婚姻数の減少はこれら2つのきっかけの減少分だったと言ってよいわけです。 伝統的な見合い結婚比率は減り続けていますが、この減少分を職場結婚が見合いに代わる結婚のお膳立てシステムとして機能していた部分は否定できません。1970年代から1990年代がそれに当たります。 当時の上司は部下の結婚を推奨し、仲人をやりたがっていた人も多かったわけです。いわばかつては「地域・村」がお膳立てしていた部分を「職場」が担っていたのでしょう』、「結婚したいのにできない不本意未婚者が4割もいます。 求められているのは、そうしたかつてのお膳立て機能がなければ結婚に至らない層に対する仕組みです。とはいえ、後者の恋愛力をあげる方向へ向かうのは見当違いです・・・必要なのは、出会いの数でも恋愛力でもなく、若者たちが自信を持ち、今より幸福感を感じられ、ちょっとだけ背中を押してあげられる時代の空気のようなものが必要ではないでしょうか。結婚したい若者を支援する「令和のお膳立て」を真剣に考えるべき時かもしれません」、「婚姻数が多かった1972年と2015年とを比較した場合、見合い結婚と職場結婚を合算した婚姻数のマイナス分は約46万組で、それは婚姻総数のマイナス分と完全に一致しています。つまり婚姻数の減少はこれら2つのきっかけの減少分だったと言ってよいわけです」、「結婚したい若者を支援する「令和のお膳立て」を真剣に考えるべき時かもしれません」、その通りだ。

第三に、11月30日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したライターの沢木 文氏による「マッチングアプリの沼にハマる44歳女性のリアル、お金・危険・結婚願望…」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/313254
・『沼とは何か? ある特定のことにはまったり、収集がやめられないことを「沼にはまる」と言います。アルコール、セックス、自傷、ギャンブルなど治療を要する「依存症」とは異なり、本人は満喫していて、周りにも迷惑をかけることもほとんどありません。ただ、その沼も浅いものからどっぷり深いものまでさまざま。そこで今回は、これまで500人以上を取材してきた著者が、実際に「沼にはまった人々」を紹介しながら、沼の正体を初めて明かす一冊『沼にはまる人々』から、マッチングアプリ沼について抜粋紹介します。「沼」は決して他人ごとではなく、あなたや近しい人の身近な問題ということが浮き彫りになるはずです』、「マッチングアプリの沼」とは興味深そうだ。
・『婚活リングに上がれないまま30代半ばに  2022年4月に、名の知れた女優(41歳)と一般男性との真剣交際が報道された。その出会いがマッチングアプリであることが公表され、40代以上にも一気にマッチングアプリは広まった。 都内の金融関連会社に勤務する美紀子さん(44歳)もその1人だ。「それまでマッチングアプリに対して、若者がやるものであり、かつての『出会い系サイト』のように不快な思いをするはずだと思い込んでいたんです。それに、私はSNSもほとんどやっていない。『顔写真を出して危険では?』という思いもありました」 美紀子さんのようなタイプの女性は多い。就職氷河期でやっと就職先を決めるも、ブラックな働き方で、5~6年が経過する。そして、28~30歳くらいに仕事が楽しくなると同時に余裕もでき、結婚を意識しかけるも、性的役割分担や女性のイメージに阻まれる。 「私がアラサーと言われるようになったのは、2005~7年頃。この頃は“大人かわいい”女性が大ブームで、仕事をしながら、家族にも献身する女性がメディアに登場していました」 たしかに睡眠時間を削り、“主人(夫)”のために尽くす女性がもてはやされていた。当時、育児雑誌で「ワーキングマザーの1日」のような特集が組まれていたのを見たことがある。1日の睡眠時間が3~4時間で、ほとんど自分の時間がないタイムスケジュール。それがあたかも素敵なことのように書いてあり、ゾッとしたことを覚えている。 「そうなんです。『忙しくても化粧くらいしろよ』みたいなトーンの漫画やドラマもありましたしね。私はこの通り、シンプルでボーイッシュです。いざ婚活をしようとするなら、ピンクのワンピースや花柄のスカートをはかなくてはリングに上がれない。先延ばしをするうちに、30代半ばになりました」 その頃は、不妊症がメディアで取り上げられていた。いつの頃からか「30代半ばでは自然妊娠は難しい」などと言われるようになっており、婚活市場から戦力外通知をされたような気持ちになったという。 ところで、恋愛はしていなかったのだろうか。 「ワンナイトばかりでした。きちんと交際したことはないです。相手は行きつけのバーの常連とか、その店主とか。閉店後の店内でそういうことをしたこともありましたよ。みんな妻子がいましたけれどね。たぶん、お互いに性欲を処理したかったんだと思うんです」 美紀子さんが38歳のときに、子宮筋腫の手術をした。それからは、性欲がぱったり止まってしまったという。 「病後の自分を大切にしたいと思ったんです。その後、20代の男の子と何回か関係を持ったのですが、その人が別の人と結婚してしまった。それから数年経過した今年、女優のマッチングアプリ報道があり、『これはやってみるのもアリなのか!?』と登録をしたんです」』、「30代半ばでは自然妊娠は難しい」などと言われるようになっており、婚活市場から戦力外通知をされたような気持ちになった」、「38歳のときに、子宮筋腫の手術をした。それからは、性欲がぱったり止まってしまった」、「今年、女優のマッチングアプリ報道があり、『これはやってみるのもアリなのか!?』と登録をしたんです」、結果はどうなのだろうか。
・『恋もせずに死ぬのは嫌  そこには、コロナ禍で「このまま恋もせずに死ぬのは嫌」という思いもあった。年齢といい、容姿といい、特に優れたものがない私に対して、ウソみたいに『いいね』が来るんです。通知が鳴りやまなくて、スマホの充電がみるみる減りました」 「いいね」とは、男性登録者からの「あなたに会いたい、興味がある」という証でもある。それが殺到しているということは、美紀子さんに女性としての魅力があることにほかならない。年齢を重ねており、容姿も人並みな女性になぜ、そこまで「いいね」が殺到するのか。それは、男性の登録人数が多いことにある。 主要なアプリは10ほどあり、それぞれのアプリが公表している登録人数は、100~400万人。海外のアプリなら、その単位は億に跳ね上がる。マッチングアプリは「条件が合う人」をつなげるプラットフォームだ。 「たしかに『女ならだれでもいい』というような人もいました。でも全然、数が違う。今まで、大学や職場、行きつけのバー、趣味などで相手を探していましたが、マッチングアプリをやってみると、『ここは魚(男性)がたくさんいる海だな』と思いました。今までの出会いを喩えるなら池……いや、違うな。コップの中で探していたと思います」 かつては友達の紹介もあったが、今はもうない。 「それに、この年で『恋愛がしたい』なんて、恥ずかしくて周りには言えません。でも私もアラフォーと言われる年齢になり、仕事も安定し、経済的にも余裕があるのに、寂しかったんです。実際にやってみると、40~50代も多いし、『オバサンじゃないとダメ』という若い男の子も多いんですよ」』、「マッチングアプリをやってみると、『ここは魚(男性)がたくさんいる海だな』と思いました。今までの出会いを喩えるなら・・・コップの中で探していたと思います」、こんなに中年女性に都合の良い場は馴れると恐ろしいことになりそうだ。「『オバサンじゃないとダメ』という若い男の子も多いんですよ」、ということで喜んでいるようではダメだ。
・『マッチングアプリ最初の相手はイケメン大学生  美紀子さんが最初に会ったのは、22歳の大学生だった。 「イケメンで若々しくてかわいい。すごく緊張していたのですが、それを解きほぐしてくれて、流れでホテルに行ったんです。びっくりするくらい上手で、『大人5、月2でどう?』と言われました」 “大人”とは、1万円札のこと。彼の言うことを翻訳すると、「月5万円で、デート2回はどうか」という提案になる。 「もちろん、断りました。そしたら、私がシャワーを浴びている間に、いなくなっていました。財布の中にあった2万円の現金も消えていた。メモが置いてあり、『もらっていくね』などと書いてあったんです」 女性が経済的な庇護者を見つける「パパ活」には、専用のマッチングアプリがある。当然男性の「ママ活」のマッチングアプリもあるが、怪しいものも多い。 「アカウントを見たら削除されているし、運営側に通報しても、お金は取り戻せない。でも、あれだけよかったので、いいかな……と思って泣き寝入り。あれから財布にお金を入れずに出かけるようになりました」) マッチングアプリ運営会社は「インターネット異性紹介事業」の届け出が義務だ。ユーザーも登録時に公的身分証明書を運営会社に提出するなど、本人確認が徹底されている。なりすましや経歴詐称は基本的にないとされているが、撮影して送るだけの身分証明書は偽造できる。実際はいたちごっこではないかと言う。 「ウチのママと同じ年だ」 しかし、一度知ってしまった、「いいね」の快楽と、肉体の快楽。美紀子さんはその後、様々な男性と会う約束を取り付ける。「最初は同世代で真剣に交際できる人を探していましたが、若い体に目覚めてしまった。自分で自分に『セクハラするオッサンかよ』とツッコミを入れつつ、20代のイケメンを中心に10人くらい会いました。すっぽかされたのは3回くらいかな。今の子って、みんな優しくてきれい。オラオラした子とか、マウンティングする子はいません。でも『ウチのママと同じ年だ』とは言われたことがありました」 平日の夜、ムラムラすると、アプリを開いて会っていた。若い男性の肌と触れ合うことは、美容液以上の効果があったようで、肌つやがよくなったという。「もっとイケメン、もっと高学歴、もっとオシャレな子……みたいな感じで物色していました。それはやはり、彼女として付き合いたいという気持ちがあったからかもしれません。同僚や親からは『結婚しない変人』みたいに扱われていて、そんな私が一発逆転でいい男を捕まえて、結婚する。それに驚くみんなの顔を見たらスカッとするなと妄想していました」』、「一発逆転でいい男を捕まえて、結婚する。それに驚くみんなの顔を見たらスカッとするなと妄想」、空しい限りだ。
・『出会いに潜む危険  リアルな人間関係を伴う出会いとマッチングアプリでの出会いは大きく異なる。アプリではプロフィールだけを頼りに全く知らない人とコンタクトを取るのだ。 ママ活男子のほかに、ネットワークビジネスや投資詐欺の餌食を探す温床になっているものもある。 「そういう人は多いです。ある程度、メッセージのやり取りで性格がわかるのですが、見破れなかったことはあります。あとは宗教やスピリチュアルセミナーなどもありました」 ストーキング行為をされたこともある。 「自称医師の若いイケメンで、話が全くかみ合わなかった。私が話したことに対して、『それは正解』『わかってないな、不正解』などとジャッジだけをする。不快になって帰ろうとしたら、『なんで?』と言われて……。振り切るように帰ってきました」 すると、後をつけられており、自宅を特定されたという。) 「私、大学時代からストーカー被害に遭うことが多かったので、こっちが堂々としていれば、そのうちいなくなることを知っている。その男性は3日目くらいにはいなくなっていました。 薬を飲まされそうになったこともありますよ。トイレに立って帰ってきたら、飲み物の味が変わっているのに気づいて、それから口をつけなかったんです。すると、相手の男性は『じゃあ、ワリカンで』と言って、そそくさと帰っていきました」』、ずいぶん危ない橋を渡っているようだ。
・『アプリで一瞬の恋をする  そんなことを繰り返しているうちに、あっという間に2年が経過してしまう。その間に100人以上の男性と関係を持った。 「今も沼にははまっていると思います。やはり、若い男がいいですから。それなりにキレイにしていれば、意外なくらいマッチングできます。この2年間で気づいたのは、結婚しなくてよかったということ。同世代の男性が、いかに高圧的か、男尊女卑か、そして肉体的にも衰えているか。そういうことがわかってくるお年頃ですしね」 若い男性は、すね毛、腕毛、ひげ、腋毛、指毛に至るまで、永久脱毛している人が多いのだという。 「私たち40代は90年代のトレンディドラマが理想だから、リアルな恋愛がしづらいんだと思うんです。ステキな人は誰かと結婚しているし、もし自分が美しい男性と結婚できても、年齢とともに毛が薄くなったり、ぽっちゃりしていくのを知っている。でも、アプリで彼らと会うのは一瞬だし、そのとき私は恋愛の主人公になれるんです」 しかし加齢とともに、ゲットできる男性の質は変わってきた。「この2年間で、若くてきれいな子とは会いにくくなったと思います。それだけたくさんの男の子と会ったのに、付き合っている人は誰もいないんです。あと、始めた頃とくらべて、きちんと会話ができる人が減ったと思う。会っても、短時間でさっさと帰られてしまう」 ところで、ラブホテル代はどうしているんだろうか。 「最初がママ活男子だったので、そのあとはなんとなく私が払っていましたが、ある男の子が『女性には払わせたくない。僕が払う』と言い張ったんです。その子には感動しましたね。それ以来、ワリカンか男性が払うことが多いです。一応、マッチングアプリだし、デートみたいなものだから」 どこにも行かない、先がないワンナイトの恋愛の繰り返し。それは性産業にも似ている。 「違いますよ。私がお金を払っているわけではないですし、一応、お互いが『いい』と思って関係を持っているし、デートもしますしね。パパ活やママ活、性産業はお金を払っているほうの力が強い。だから、支払われる側は断れないじゃないですか。でもマッチングアプリは違います。お互いに合意の上なので対等。全然違いますよ」』、「先がないワンナイトの恋愛の繰り返し」「それは性産業」とは「お互いに合意の上なので対等。全然違いますよ」。大差ないようにも思えるが・・・。
・『くすぶり続ける結婚願望  美紀子さんは、「いい人がいないかな」と思いながらも、今日もマッチングアプリを使っている。 「真面目な婚活アプリは変わった人しかいないと感じたので、出会いに特化したものを使っています。この2年間でそれなりにキレイになったので、いい男性も来るんです。20~30代のそれなりに素敵な男性と会っていると、『この人と付き合いたい』と思うんですが、距離を詰めようとすると断られてしまうんです」 誰かと付き合いたい、結婚したいという願望がありながら、目の前のワンナイトを優先してしまう。マッチングアプリには背後の人間関係がないので、どれだけ奔放になっても人の目を気にしなくていい。 それが利点でもあるが、歯止めが利かない沼にもなる。 「マッチングアプリをやめるか、くすぶり続ける結婚願望を消すか、どちらかを選ばないと後悔するとは思っているんですが、両方やめられません」 そう話している間も、アプリには「いいね」がついたアイコンが光る。承認欲求を満たすこの通知が、沼の正体かもしれない』、「アプリには「いいね」がついたアイコンが光る。承認欲求を満たすこの通知が、沼の正体かもしれない」、危険極まりない遊びだ。先ずは、「マッチングアプリをやめる」べきだろう。
タグ:「筆者はどちらかといえばその女性に同情する。聡さんは素直で優しげな男性だが、頼りがいがあるとは言いがたい。「おっちょこちょい」を自認しており、その場では言わなくてもいいことを口にしちゃうタイプだ。かなり生活力がある女性でなければ結婚相手として不安を覚えるかもしれない」、しかし、「関根典子さん」はどうなのだろう。答えは以下にあるようだ。 「私はZoomお見合いのときから、あ!と見つけた気分になりました。聡さんは清潔感があっていい感じの男性だからです」』、興味深そうだ。 「男女間のコミュニケーションが不器用な人たちは、マチコ先生のような存在をフル活用することが重要だ。結婚相談所の場合は担当カウンセラーにあたる。つねに相談できる関係でなければ、結婚相談所に入る意味があまりない」、 恋愛・結婚 (その7)(長い婚活に出口が!44歳&39歳が結婚できた勝因 結婚したい「恋愛が苦手な大人」がすべきこと、職場結婚は「今や傍流」1990年代から6割減の背景 ネット婚増でもお膳立てなければ結婚は増えない、マッチングアプリの沼にハマる44歳女性のリアル お金・危険・結婚願望…) 東洋経済オンライン 大宮 冬洋氏による「長い婚活に出口が!44歳&39歳が結婚できた勝因 結婚したい「恋愛が苦手な大人」がすべきこと」 「恋愛下手という自覚のある典子さんは、マチコ先生との連絡を密にすることにした。結婚を前提とした真剣交際に至るというのは、彼女にとっては高い壁だった。そこで4回目のデートを前に、マチコ先生に聡さんへの好意を明かしつつ「でも、聡さんは交際について慎重にお考えのようです」と伝えた。要するに、煮え切らない態度の聡さんの背中を、マチコ先生に押してもらおうと期待したのだ」、なるほど。 「二人家族」からみれば、「大家族」は「羨ましい」のだろう。 「不妊治療の検査を受け、子作りに励むつもり」、検査結果が悪いものでないことを祈っている。 荒川 和久氏による「職場結婚は「今や傍流」1990年代から6割減の背景 ネット婚増でもお膳立てなければ結婚は増えない」 「1965年あたりに見合い結婚比率が恋愛結婚比率に逆転されて以降、その差は広がり続けています」、なるほど。 「見合いの場合は、事前の相手の選定から出会いの場の設定、その後のやりとりや相談も含めて仲人や媒酌人が介在します。それらは「お膳立て」といってよいものであり、当事者間だけで結婚に至るのか、第三者の介在とお膳立てがあったのかでは大きく結婚形態は違うものととらえるべき」、その通りだ。 「直近で恋愛結婚が多かった1990年代後半と比較すると、」「恋愛結婚」「の減少率は実に46%減とほぼ半減です。むしろ、見合い結婚数は実数としてほんの少しですが増えているくらいです」、なるほど。 「直近で恋愛結婚が多かった1990年代後半と比較すると、その減少率は実に46%減とほぼ半減です。むしろ、見合い結婚数は実数としてほんの少しですが増えているくらいです」、初めて知った。 「1990年代半ばに恋愛結婚数は大きく伸長していますが、同時期に職場結婚数もMAXとなっています。以降、急激に下がり続け、最新の2021年対比では6割減です。同期間の全体初婚数の減少は4割弱ですから、職場結婚だけが異常に減っている」、 「ネット婚は・・・大きな効果をあげることは困難でしょう。 なぜなら、それらは根本的には「出会いのツール」としては奏功しますが、その先の進展は当事者任せの側面が強く、いくら出会いの前にAIマッチングがあろうとも、出会った後、現実に恋愛や結婚するかどうかを決めるのは当事者だからです」、なるほど。 「結婚したいのにできない不本意未婚者が4割もいます。 求められているのは、そうしたかつてのお膳立て機能がなければ結婚に至らない層に対する仕組みです。とはいえ、後者の恋愛力をあげる方向へ向かうのは見当違いです・・・必要なのは、出会いの数でも恋愛力でもなく、若者たちが自信を持ち、今より幸福感を感じられ、ちょっとだけ背中を押してあげられる時代の空気のようなものが必要ではないでしょうか。結婚したい若者を支援する「令和のお膳立て」を真剣に考えるべき時かもしれません」、 「婚姻数が多かった1972年と2015年とを比較した場合、見合い結婚と職場結婚を合算した婚姻数のマイナス分は約46万組で、それは婚姻総数のマイナス分と完全に一致しています。つまり婚姻数の減少はこれら2つのきっかけの減少分だったと言ってよいわけです」、「結婚したい若者を支援する「令和のお膳立て」を真剣に考えるべき時かもしれません」、その通りだ。 ダイヤモンド・オンライン 沢木 文氏による「マッチングアプリの沼にハマる44歳女性のリアル、お金・危険・結婚願望…」 「マッチングアプリの沼」とは興味深そうだ。 「30代半ばでは自然妊娠は難しい」などと言われるようになっており、婚活市場から戦力外通知をされたような気持ちになった」、「38歳のときに、子宮筋腫の手術をした。それからは、性欲がぱったり止まってしまった」、「今年、女優のマッチングアプリ報道があり、『これはやってみるのもアリなのか!?』と登録をしたんです」、結果はどうなのだろうか。 「マッチングアプリをやってみると、『ここは魚(男性)がたくさんいる海だな』と思いました。今までの出会いを喩えるなら・・・コップの中で探していたと思います」、こんなに中年女性に都合の良い場は馴れると恐ろしいことになりそうだ。「『オバサンじゃないとダメ』という若い男の子も多いんですよ」、ということで喜んでいるようではダメだ。 「一発逆転でいい男を捕まえて、結婚する。それに驚くみんなの顔を見たらスカッとするなと妄想」、空しい限りだ。 ずいぶん危ない橋を渡っているようだ。 「先がないワンナイトの恋愛の繰り返し」「それは性産業」とは「お互いに合意の上なので対等。全然違いますよ」。大差ないようにも思えるが・・・。 「アプリには「いいね」がついたアイコンが光る。承認欲求を満たすこの通知が、沼の正体かもしれない」、危険極まりない遊びだ。先ずは、「マッチングアプリをやめる」べきだろう。
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キシダノミクス(その10)(W杯が援軍?岸田首相「次の一手」に広がる疑心暗鬼 麻生・茂木両氏と密談 内閣改造か解散か、岸田内閣・閣僚辞任ドミノで露呈 「清濁併せ呑んでこそ政治家」の大誤解、岸田文雄首相 今度は選挙運動費用131万円を不記載 政治資金規正法違反の疑い) [国内政治]

キシダノミクスについては、11月7日に取上げた。今日は、(その10)(W杯が援軍?岸田首相「次の一手」に広がる疑心暗鬼 麻生・茂木両氏と密談 内閣改造か解散か、岸田内閣・閣僚辞任ドミノで露呈 「清濁併せ呑んでこそ政治家」の大誤解、岸田文雄首相 今度は選挙運動費用131万円を不記載 政治資金規正法違反の疑い)である。

先ずは、11月26日付け東洋経済オンラインが掲載した政治ジャーナリストの泉 宏氏による「W杯が援軍?岸田首相「次の一手」に広がる疑心暗鬼 麻生・茂木両氏と密談、内閣改造か解散か」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/635469
・『サッカー・ワールドカップでの日本代表の大活躍に列島が沸く中、師走を迎える政局は混迷の度が深まるばかりだ。 岸田文雄首相の側近閣僚らの“辞任ドミノ”のあおりで、最優先課題の今年度第2次補正予算の成立は12月にずれ込む。国民も期待する、旧統一教会(世界平和統一家庭連合)への活動規制強化のための被害者救済法案も、与野党協議難航で、今臨時国会での成立はなお見通せない状況だ。 これに伴い、内閣支持率は、複数の調査で30%を割り込む「危険水域」に落ち込み、与党内からも首相の「統治能力」への疑問、不信が噴出している。そうした中、永田町では、八方ふさがりの岸田首相が、「乾坤一擲の苦境打開策として、年末年始の党・内閣人事や、4月の統一地方選前の衆院解散を模索している」(自民党関係者)との臆測が飛び交う』、「年末年始の党・内閣人事や、4月の統一地方選前の衆院解散を模索」とは予想以上に早手回しだ。
・『首相の本音は「こつこつと実績を積み上げる」?  当の岸田首相は24日、臨時国会後の党・内閣人事については否定したが、23日夜には茂木敏充自民党幹事長と、24日夜には都内のホテルで麻生太郎同副総裁と密談している。 テーマは当然、国会終盤の乗り切りと、深まる政権危機の打開策とみられている。自民党内には「混迷政局打開の秘策を話し合ったはず」(閣僚経験者)との臆測、野党陣営からは「抜き打ち解散もありうる」(立憲民主幹部)との疑心暗鬼が、それぞれ広がる状況だ。 首相周辺は「首相はもともと解散など考えず、党内閣人事にも慎重に対応し、当面こつこつと実績を積み上げて支持率回復を待つというのが本音」(最側近)と繰り返す。政界で流布される「内閣改造」「解散」についても「求心力維持のための手練手管の類」(同)と一笑に付す。 しかし、首相を支える立場の自民党執行部内にも、「このまま自滅の道をたどるより、臨時国会後に大幅な党内閣人事で人心を一新し、そのうえで年明けの解散断行で一か八かの勝負に出るべきだ」(有力幹部)との声が消えないのも事実だ。 さらに、「勝負のタイミング」についても、党・内閣人事が「年末」「通常国会召集前」「来年度予算成立後」、衆院解散が「年末から年明け」「4月の統一地方選と同時」などの具体案が取り沙汰され、多くの与野党国会議員も「ひょっとしたら……」(立憲民主若手)と身構える。 そもそも首相は大方の予想を覆し、8月に党・内閣人事を断行した時点で、①次の党内閣人事は1年後の2023年夏、②解散権は環境が整わないかぎり2024年9月の次期自民党総裁選まで行使しない、との戦略を固めていたとされる。 ただ、それは「党内の反岸田勢力を取り込み、総理・総裁としての求心力を維持することによる政権運営の安定化」(岸田派幹部)が大前提だったとされる。このため、「臨時国会召集前後からの人事や政策を判断する際の迷走で、党内的にも『宰相の資質』が問われる事態は想定外」(同)なのは間違いない』、「首相の本音は「こつこつと実績を積み上げる」?」だとしても、「「このまま自滅の道をたどるより、臨時国会後に大幅な党内閣人事で人心を一新し、そのうえで年明けの解散断行で一か八かの勝負に出るべきだ」、との声が消えないのも事実」、「党内的にも『宰相の資質』が問われる事態」は避けたいだろう。
・『「今はちょっと孤独でつらいときもある」  岸田首相自身は、一連の国際会議出席のための東南アジア歴訪から帰国後、連日連夜、麻生、茂木両氏や公明党の山口那津男代表ら与党最高幹部と「密談」を繰り返す一方、反岸田勢力の“旗頭”とされる菅義偉前首相、二階俊博元幹事長への「協力要請」に腐心している。 腹心の寺田稔氏の総務相更迭直後の11月21日夜、母校の早稲田大学出身の国会議員らとの会合では「今はちょっと孤独でつらいときもある」と“弱音”を吐露。同席した森喜朗元首相から「首相は孤独な立場だ」と激励される一幕もあったという。) ただ、側近は「首相は心身が疲弊しても、自信は失っていない」と明言する。早い時期の大幅人事や解散の断行については「結果的に自らの首を絞めるだけ」(首相経験者)との見方が少なくない。「人事をやっても必ず問題閣僚が浮上するし、解散すれば自民の議席減で責任を問われるだけ」(自民長老)だからだ。 その一方で「人事や解散をにおわせば、首相攻撃を控えざるをえないのが議員心理」(同)でもある。だからこそ、岸田首相周辺からは「右往左往せずに内政・外交の難題克服に邁進すれば、党内の批判も収まる」(同)との声が広がるのだ』、「人事や解散をにおわせば、首相攻撃を控えざるをえないのが議員心理」は事実としても、「首相周辺」の「声」は希望的観測の色彩が濃いようだ。
・『密談は「政権中枢での意思統一を図った」との見方  岸田首相は24日午前、首相官邸で年末年始に内閣改造や自民党役員人事を検討しているか総理官邸で記者団に問われ、「私自身そうしたことはまったく考えていない。いまは国会に専念しなければいけない。そして年末に向けて防衛3文書の改定をはじめ、さまざまな政治課題があり、そうした課題に専念していかなければならない」と淡々とした表情で語った。 前日の23日午後、岸田首相は首相公邸で茂木氏と会談したが、官邸側はこの会談を「極秘」扱いとしていた。しかも、岸田首相は引き続いて最側近の根本匠岸田派事務総長とも会談しただけに、自民党内には「今後の政局運営について、政権中枢での意思統一を図った」(自民長老)との見方が広がった。 この23日夜には、サッカーW杯の日本代表の初戦が行われ、4度の優勝を誇るドイツを大逆転で破る「大金星」に列島が沸いた。岸田首相は24日朝、記者団に感想を求められると「私もテレビで観戦した。チーム力、個々の力、さらには監督の采配が発揮された素晴らしい試合」と満面の笑顔で語った。) 苦戦するという当初の予想を覆した日本の勝利に、24日の大手紙朝刊はそろって1面トップに「劇的勝利」などの大見出しを掲げ、NHKや民放テレビは終日、定時ニュースや各種情報番組の大半の時間を割いて、「快挙」を報じ続けた。 これにより、国会での岸田首相に対する野党の追及が取り上げられる時間は激減した。これについて、与党内からも「国民が歓喜する朗報は久しぶりで、苦境にあえぐ岸田首相への助け舟だ」(閣僚経験者)との声が相次いだ』、「サッカーW杯の日本代表の」「善戦」は確かに、「「国民が歓喜する朗報は久しぶりで、苦境にあえぐ岸田首相への助け舟だ」(閣僚経験者)との声が相次いだ」、その通りだ。
・『補正予算成立は順調でも12月2日  そうした中、国会は25日から衆院予算委での基本的質疑が始まった。週をまたいで28日も行われ、29日に衆院通過となる段取り。このため、補正予算成立は順調に進んでも、12月2日となる見通しで、補正成立後の焦点の被害者救済新法案の国会提出・審議は同5日以降にずれ込むことになる。 その一方で、サッカーは27日にコスタリカ、12月1日にスペインと対戦する。決勝トーナメント進出が決まれば、新聞・テレビの報道は「日本代表一色」となるのは確実だ。 岸田首相の周辺からは「世界に広がる日本代表への応援が、首相の強力な援軍になるのでは」(岸田派若手)との期待の声も広がるが……』、「決勝トーナメント」は第一戦で敗退、「首相の強力な援軍になる」のは捕らぬ狸の皮算用に終わったようだ。

次に、11/29ダイヤモンド・オンラインが掲載した立命館大学政策科学部教授の上久保誠人氏による「岸田内閣・閣僚辞任ドミノで露呈、「清濁併せ呑んでこそ政治家」の大誤解」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/313550
・『岸田内閣の支持率が下落し、30%を割り込んだ。「政治と宗教」「政治とカネ」の問題や失言で、閣僚が相次いで辞任しているのだから無理もない。かつて50%台の高支持率を誇った岸田内閣は、なぜ人気が急落するとともに、閣僚の「辞任ドミノ」を招いたのか。その本質的な要因を考察する』、興味深そうだ。
・『宗教・カネ・失言…問題続出で「閣僚の辞任ドミノ」止まらず  岸田文雄内閣の支持率下落が止まらない。マスメディアによる直近の各種世論調査では、内閣支持率が危険水域と呼ばれる30%を割り込んでいる。「不支持率」が50%を超えた結果もある。 内閣発足時から今夏まで、岸田内閣の支持率は50%台で推移していた。そして岸田首相は、2021年の衆議院議員総選挙(衆院選)と22年の参議院議員通常選挙(参院選)で連勝。日本政治では珍しく、国政選挙がない「黄金の3年」を手にした。 にもかかわらず、内閣支持率が急落するのは異常事態だ。 事の発端は、「安倍晋三元首相銃撃事件」であった。容疑者の母親が旧統一教会信者だったことから、政治と旧統一教会の関係が次々と明るみに出た(本連載第309回)。 それ以降、自民党議員が旧統一教会関連の会合に出席したり、祝電を送ったりしていたケースが続々と発覚した。 中でも、山際大志郎・前経済再生担当相は、教団との関係について新たな疑惑が浮上するたびに「記憶していない」「覚えていない」を連発。後から事実を追認する「後出し」対応を繰り返して批判を浴びた。山際氏は結局、最初に事実が発覚してから2カ月後の今年10月に辞任を余儀なくされた。 さらに、宗教関連だけでなく「失言」や「政治とカネ」の問題も目立ち、いわゆる「閣僚辞任ドミノ」が止まらない状況だ。 11月に入ると、葉梨康弘・前法務相(当時)が「法務大臣は死刑のはんこを押したときだけニュースになる地味な役職だ」と、法務大臣の職や死刑を軽んじる失言をした。岸田首相はギリギリまで葉梨氏を続投させる意向を示したが、かばいきれず、事実上の更迭となった。) 追い打ちをかけるように、今度は寺田稔・前総務相が政治資金問題で辞任した。寺田氏の政治団体が、地元・広島県内の事務所を共有する寺田氏の妻に、賃料として9年間で約2000万円を支払っていたと週刊誌が報じるなど、政治資金の問題が次々と指摘されたことが引き金になった。 加えて、岸田首相本人にも、「選挙運動費用収支報告書」に添付した領収書94枚に、宛名もただし書きもなかったことが判明し、公職選挙法違反の疑いがあると指摘された。 この手の閣僚や政治家のスキャンダルは、他にも数多く発覚しており、枚挙にいとまがない。 その中には「政治とカネ」「政治と宗教」に関する深刻な問題もあるが、必ずしも重大とはいえないものも混ざっている。 要するに、メディアが重箱の隅を突き、揚げ足を取り、新しい問題を見つけては報道し、岸田内閣を追い詰めているのだ。それが支持率低下の一因になった可能性も否定できない』、安倍政権時代に比べ、マスコミの政府への忖度は小さくなったようだ。
・『辞任ドミノ」を招いた根本的要因は岸田内閣の初動の悪さだ  だが、この状況を招いた「そもそもの要因」は、安倍元首相銃撃事件が起きた後の、岸田内閣の初動が悪かったことに尽きる。いわば「自業自得」なのだ。 容疑者の動機が明らかになり、「政治と宗教」の問題が浮上してきた当初、岸田首相や茂木敏充自民党幹事長は、自民党と教団の間に「組織的関係はない」と強調した。 「党所属議員が旧統一教会との関わりをそれぞれ点検して、適正に見直す」と説明し、個々の議員の責任だとして、党の責任を回避しようとしたのだ(第314回・P4)。 しかし、それをあざ笑うかのように、国会議員だけではなく、地方の首長・地方議員・地方自治体に至るまで、旧統一教会関連団体との深い関係が明らかになっていった。 私は最初から、岸田首相や茂木幹事長の主張に異議を唱えていた。教団と党の関係は「組織的な関係」そのものであり、責任が党にあるのは明らかだったからだ。 その「組織的な関係」がどのようなものか、詳しく説明していこう』、「教団と党の関係は「組織的な関係」そのものであり、責任が党にあるのは明らかだった」、その通りだ。
・『「タダの人」にならないために教団との付き合いが親密に  新人候補者が初めて選挙区に入るとき、党や派閥の幹部、地元のベテランのスタッフから、支持団体など票を入れてくれる組織や人にあいさつするように指示される。 学校の同級生くらいしか地元に知り合いがいない新人候補者は、勝手がわからず、言われるままに組織や人に頭を下げる。こういう支持団体の一つに旧統一教会がある。そこから候補者と教団の付き合いが始まるのだ。 新人候補者といえども、旧統一教会が霊感商法など「反社会的」な活動をしてきたことは当然知っているはずだ。だが、発言権のない新人に、支持団体との付き合いを拒否することなどできない。初当選後も、容易に関係を切ることはできない。 結果として、旧統一教会関連団体のイベントへの出席やあいさつ、祝電を続けることになる。逆に、教団関係者に政治資金パーティーの券を購入してもらうといった付き合いも続いていく。 「政治家は、選挙に落ちればタダの人」といわれる。もし新人候補者が当選した場合は、「タダの人」に逆戻りしないために、グレーな関係性はますます濃くなっていく。 要するに、自民党と旧統一教会の関係は、「党主導」そのものであり、個々の議員に主体性があるとはいえない。自民党では、各業界団体の票だけでは当選が難しい議員について、旧統一教会の票を割り振っていたという指摘があるくらいなのだ(第309回・p4)。 岸田首相や茂木幹事長が、自民党と教団の「組織的関係」を否定し、個々の議員の責任を押し付けたのは間違いだった。党の責任逃れであり、うそだといえる。メディアの追及によって、綻びが生じるのは当たり前なのだ。 その上、茂木幹事長は旧統一教会との関係を絶てない議員に「離党」を求める可能性にも言及した。結果として、恐れをなして本当のことを隠す議員が多数出てきてしまった。そこに「あら探し」を狙うメディアが群がり、ごまかしが次から次へと暴かれた。 私は、この問題の初期段階に、岸田首相が「党が旧統一教会との関係を主導した責任」を認めるべきだと主張してきた。そして、「個別の議員が自らの意思で教団との関係を拒絶するのは難しかった」と説明して、議員を守るべきだと主張してきた。 この問題を解決するための最適解は、首相の主導によって宗教法人法に基づく「質問権」を行使することではないだろうか。 旧統一教会の宗教法人格の認可を再審査し、場合によっては「宗教法人」としての認可を取り消すことも辞さない姿勢で接し、旧統一教会に変化を求めることしか現実的な解決はないはずだ。) ただし、この問題は、本質的には岸田首相や現在の党執行部だけの責任ではなく、過去の自民党から連綿と続いてきた体制や風土に起因している。そこが、解決に向けた「かじ取り」の難しいところだ。 それでも、岸田首相が先人に忖度(そんたく)することなく、歴史的背景も含めて教団との関係性を説明し、解決に向けて誠実に取り組めば、今のように批判は広がらなかっただろう。岸田首相が初動を誤ったことのツケは非常に大きかったのだ』、「この問題は、本質的には岸田首相や現在の党執行部だけの責任ではなく、過去の自民党から連綿と続いてきた体制や風土に起因している」、「岸田首相が先人に忖度(そんたく)することなく、歴史的背景も含めて教団との関係性を説明し、解決に向けて誠実に取り組めば、今のように批判は広がらなかっただろう。岸田首相が初動を誤ったことのツケは非常に大きかった」、その通りだ。
・『「霊感商法騒動」から時がたち 岸田首相らの危機感が薄れていた?  国のトップである岸田首相ともあろうものが、なぜこうした道を選ばず、「組織的関係を否定する」という小手先の対処に終始し、「辞任ドミノ」を招いてしまったのか。 あくまで私の見立てだが、岸田首相ら幹部は、政治と旧統一教会の問題を、閣僚が辞任するほど深刻な問題とは考えていなかったように思う。 旧統一教会による「霊感商法」は、確かに20年ほど前に大きな社会問題として取り沙汰された。だがそこから時がたち、メディア等で報じられるケースは減った。「宗教2世」の問題が表面化することもなかった。 また旧統一教会側も、その後は体制を是正して「近代化」したと説明していた。岸田首相や党幹部はこれをすっかり信じていたのだろう。 そのため、安倍元首相暗殺事件をきっかけに自民党と教団との関係が批判を浴びても、岸田首相は心のどこかで「一時的なもの」「旧統一教会の問題は終わったこと」だと楽観的に考えていたのかもしれない。 教団との接点が発覚した大臣や政治家も、「自らが積み上げてきた実績と評価を『些末(さまつ)な問題』で失いたくない」という思いがあったのだろう。そう考えると、彼らの対応が後手に回ったことにも合点がいく』、「岸田首相は心のどこかで「一時的なもの」「旧統一教会の問題は終わったこと」だと楽観的に考えていたのかもしれない。 教団との接点が発覚した大臣や政治家も、「自らが積み上げてきた実績と評価を『些末(さまつ)な問題』で失いたくない」という思いがあったのだろう。そう考えると、彼らの対応が後手に回ったことにも合点がいく」、その通りだろう。
・『どんなに優秀な政治家でも世襲でなければ選挙に弱い  では、日本の政治家はそもそも、なぜ宗教団体に頼らないと集票できないのか。ここからはその根本的要因についても考えていきたい。 私の意見では、その要因は世襲議員とその他の議員の「格差」である。 世襲議員は、金銭面・集票面の両方で親の基盤を受け継ぎ、選挙に強い。そのため、宗教団体から支援を受ける必要はない場合が多い。 世襲議員である河野太郎氏が「霊感商法対策の担当大臣」であることは象徴的である。 その一方で、非世襲議員は、どうしても基盤の面で世襲議員に劣る。旧統一教会との接点が発覚した政治家も、どちらかというと「優秀だが、選挙に弱い」人物が多い印象だ。) 一連の問題で最もやり玉に挙げられ、辞任を余儀なくされた山際氏は東京大学大学院出身と優秀だが、世襲ではない「たたき上げ」だ。 旧統一教会との関係が取り沙汰され、8月の閣僚人事で閣外に去った、前経済安保担当相の小林鷹之氏(東京大学卒・ハーバード大学大学院修了)もサラリーマン家庭の出身である。 日本の政治では、どんなに優秀な人でも基盤が弱いと選挙に勝てない。そのため、旧統一教会のような「集票マシーン」に支えられねばならない。 「政治とカネ」の問題においても、非世襲議員は世襲議員と比べると、政治資金を集める上での人脈に大きなハンデを負っている。「泥水をすする覚悟で、どんな手段を使ってでも基盤を強化したい」という考えに至るのも、一応は理解できる。 ただ余談だが、冒頭で述べた寺田稔氏は、池田勇人元首相の孫娘を妻に持つ。例外として、強固な基盤を持ちながら不正に手を染める政治家が一定数いることも書き添えておく。 話を戻すと、金銭・集票の両面で、非世襲議員の基盤の弱さには同情すべき点がある。しかし、だからといって宗教団体と深く関わったり、カネの面で不正をしたりといった所業が許されるわけではない』、「日本の政治では、どんなに優秀な人でも基盤が弱いと選挙に勝てない。そのため、旧統一教会のような「集票マシーン」に支えられねばならない。 「政治とカネ」の問題においても、非世襲議員は世襲議員と比べると、政治資金を集める上での人脈に大きなハンデを負っている。「泥水をすする覚悟で、どんな手段を使ってでも基盤を強化したい」という考えに至るのも、一応は理解できる」、「金銭・集票の両面で、非世襲議員の基盤の弱さには同情すべき点がある。しかし、だからといって宗教団体と深く関わったり、カネの面で不正をしたりといった所業が許されるわけではない」、その通りだ。
・『「清濁併せ呑む」の意味が拡大解釈されている  日本には、古くから「清濁併せ呑んでこそ政治家だ」という概念が存在するように思う。だが、この言葉の意味は、政治の世界では大きく誤解されているようだ。 「清濁併せ呑む」というたとえは、本来は「善人・悪人を問わず、誰でも分け隔てなく受け入れる」という意味で、リーダー的人物の「器の大きさ」や「心の広さ」を表現する際に使われる。 それが一転、政治においては「良いことだけでなく、悪いこと(またはグレーな手段)に手を染めてこそ一人前」と、悪事を肯定したりたたえたりする方向で拡大解釈されている印象だ。 繰り返しになるが、政治の世界には出自による「格差」があることは事実だ。だが、非世襲というハンデを負いながら政治家になることを決めたのは、他でもないその人自身である。非世襲であることは、どんな手段を使っても許されるという「免罪符」にはならない。 こうした政治家像を是とする風潮は、今の世の中には適合しない。閣僚の「辞任ドミノ」が続く今こそ、一人前になる上で「不正」や「グレーな手段」が本当に必要なのか、全ての政治家に自問自答してもらいたい』、「「清濁併せ呑む」というたとえは、本来は「善人・悪人を問わず、誰でも分け隔てなく受け入れる」という意味で、リーダー的人物の「器の大きさ」や「心の広さ」を表現する際に使われる。 それが一転、政治においては「良いことだけでなく、悪いこと(またはグレーな手段)に手を染めてこそ一人前」と、悪事を肯定したりたたえたりする方向で拡大解釈されている印象だ」、「非世襲であることは、どんな手段を使っても許されるという「免罪符」にはならない。 こうした政治家像を是とする風潮は、今の世の中には適合しない。閣僚の「辞任ドミノ」が続く今こそ、一人前になる上で「不正」や「グレーな手段」が本当に必要なのか、全ての政治家に自問自答してもらいたい」、その通りだ。

第三に、11月30日付け文春オンライン「岸田文雄首相 今度は選挙運動費用131万円を不記載 政治資金規正法違反の疑い」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/59071
・『岸田文雄首相(65)が、昨年の衆院選に伴う選挙運動費用収支報告書には自らが代表の政党支部に「内装費用」などの名目で計約131万円を支出していたと記載しながら、政党支部側の政治資金収支報告書には収入として記載していないことが、「週刊文春」の取材でわかった。虚偽記載だとすれば、政治資金規正法違反になる。岸田事務所は取材に対し、誤った記載をしていた事実を認めた。 岸田首相を巡っては、「週刊文春」11月24日発売号で、昨年の衆院選に伴う選挙運動費用収支報告書に宛名や但し書きが空白の領収書を94枚添付していた問題を報道。目的を記載した領収書の提出を定める公職選挙法に違反している疑いがあると指摘した。これに対し、首相は「適切な支出」とする一方、領収書の不備を認め、原因については「出納責任者の確認漏れ」などと説明している。 (宛名も但し書きも空白の領収書 はリンク先参照) 今回、新たに発覚したのは、その選挙運動費用収支報告書に関する別の疑惑だ。 昨年の衆院選の投開票日は10月31日。その6日後の11月6日、岸田首相は選挙運動に関連する「内装費用」として約105万円、「賃貸料」として約26万円の計約131万円を、自らが代表の「自由民主党広島県第一選挙区支部」に支出している。当然、支払いを受けた同支部は、その収入を政治資金収支報告書に記載しなければならない。ところが、同支部の収支報告書(昨年分)には当該の記載が見当たらないのだ。すなわち、岸田首相が代表を務める政党支部が、適切に選挙運動に関する収入を記載していないことになる。(選挙運動費用収支報告書の表紙 はリンク先参照) 他方で、岸田首相の関係政治団体「岸田文雄後援会」の政治資金収支報告書(昨年分)には、「内装費用」として、「岸田文雄選挙事務所」から計約131万円の収入が記載されていた。これは、選挙運動費用収支報告書に記された「自由民主党広島県第一選挙区支部」宛の支出と同額だ。 しかし、選挙運動費用収支報告書に記された支出先は、あくまで「自由民主党広島県第一選挙区支部」であり、「岸田文雄後援会」ではない。実際、選挙運動費用収支報告書には、同支部が「岸田文雄選挙事務所」宛に発行した計約131万円の領収書も添付されている。なお、同報告書に添付された領収書には宛名や但し書きが空白の“空白領収書”が目立っていたが、当該領収書は宛名が「岸田文雄選挙事務所」と明記されている。(計約131万円の領収書 はリンク先参照) 政治資金問題に詳しい神戸学院大の上脇博之教授が指摘する』、「自由民主党広島県第一選挙区支部」と「岸田文雄後援会」を混同するとは、ズサンさにも程がある。
・『「杜撰な会計処理を繰り返してきたと見られる」  「政治資金規正法違反の虚偽記載に当たります。民間企業なら、約130万円もの収入を別の団体に計上することなどあり得ません。岸田首相は『自由民主党広島県第一選挙区支部』と『岸田文雄後援会』を一緒くたにするなど、杜撰な会計処理を繰り返してきたと見られます」 岸田事務所に事実関係の確認を求めたところ、以下のように回答した。 「ご質問の『内装費』及び『賃貸料』は、総選挙の際、選挙区支部への支出であるところ、後援会への支出とされていることが確認できましたので速やかに対応します」 岸田首相はこれまで、政治資金問題が発覚した寺田稔前総務相や秋葉賢也復興相に「丁寧に説明責任を果たしていくことが重要だ」と繰り返してきた。自らの政治資金を巡っても立て続けに疑惑が浮上している中、どのように説明するのか、対応が注目される。 11月30日(水)12時配信の「週刊文春 電子版」及び12月1日(木)発売の「週刊文春」では、岸田首相の200枚を超える新たな“空白領収書”問題や、首相が寺田氏の後任総務相に松本剛明氏を起用した背景などについても詳報している』、「岸田首相はこれまで、政治資金問題が発覚した寺田稔前総務相や秋葉賢也復興相に「丁寧に説明責任を果たしていくことが重要だ」と繰り返してきた。自らの政治資金を巡っても立て続けに疑惑が浮上している中、どのように説明するのか、対応が注目される」、本人自らどうするのだろう。
タグ:キシダノミクス (その10)(W杯が援軍?岸田首相「次の一手」に広がる疑心暗鬼 麻生・茂木両氏と密談 内閣改造か解散か、岸田内閣・閣僚辞任ドミノで露呈 「清濁併せ呑んでこそ政治家」の大誤解、岸田文雄首相 今度は選挙運動費用131万円を不記載 政治資金規正法違反の疑い) 東洋経済オンライン 泉 宏氏による「W杯が援軍?岸田首相「次の一手」に広がる疑心暗鬼 麻生・茂木両氏と密談、内閣改造か解散か」 「年末年始の党・内閣人事や、4月の統一地方選前の衆院解散を模索」とは予想以上に早手回しだ。 「首相の本音は「こつこつと実績を積み上げる」?」だとしても、「「このまま自滅の道をたどるより、臨時国会後に大幅な党内閣人事で人心を一新し、そのうえで年明けの解散断行で一か八かの勝負に出るべきだ」、との声が消えないのも事実」、「党内的にも『宰相の資質』が問われる事態」は避けたいだろう。 「人事や解散をにおわせば、首相攻撃を控えざるをえないのが議員心理」は事実としても、「首相周辺」の「声」は希望的観測の色彩が濃いようだ。 「サッカーW杯の日本代表の」「善戦」は確かに、「「国民が歓喜する朗報は久しぶりで、苦境にあえぐ岸田首相への助け舟だ」(閣僚経験者)との声が相次いだ」、その通りだ。 「決勝トーナメント」は第一戦で敗退、「首相の強力な援軍になる」のは捕らぬ狸の皮算用に終わったようだ。 ダイヤモンド・オンライン 上久保誠人氏による「岸田内閣・閣僚辞任ドミノで露呈、「清濁併せ呑んでこそ政治家」の大誤解」 安倍政権時代に比べ、マスコミの政府への忖度は小さくなったようだ。 「教団と党の関係は「組織的な関係」そのものであり、責任が党にあるのは明らかだった」、その通りだ。 「この問題は、本質的には岸田首相や現在の党執行部だけの責任ではなく、過去の自民党から連綿と続いてきた体制や風土に起因している」、「岸田首相が先人に忖度(そんたく)することなく、歴史的背景も含めて教団との関係性を説明し、解決に向けて誠実に取り組めば、今のように批判は広がらなかっただろう。岸田首相が初動を誤ったことのツケは非常に大きかった」、その通りだ。 「岸田首相は心のどこかで「一時的なもの」「旧統一教会の問題は終わったこと」だと楽観的に考えていたのかもしれない。 教団との接点が発覚した大臣や政治家も、「自らが積み上げてきた実績と評価を『些末(さまつ)な問題』で失いたくない」という思いがあったのだろう。そう考えると、彼らの対応が後手に回ったことにも合点がいく」、その通りだろう。 「日本の政治では、どんなに優秀な人でも基盤が弱いと選挙に勝てない。そのため、旧統一教会のような「集票マシーン」に支えられねばならない。 「政治とカネ」の問題においても、非世襲議員は世襲議員と比べると、政治資金を集める上での人脈に大きなハンデを負っている。「泥水をすする覚悟で、どんな手段を使ってでも基盤を強化したい」という考えに至るのも、一応は理解できる」、「金銭・集票の両面で、非世襲議員の基盤の弱さには同情すべき点がある。しかし、だからといって宗教団体と深く関わったり、カネの面で不正をしたりといった所業が 「「清濁併せ呑む」というたとえは、本来は「善人・悪人を問わず、誰でも分け隔てなく受け入れる」という意味で、リーダー的人物の「器の大きさ」や「心の広さ」を表現する際に使われる。 それが一転、政治においては「良いことだけでなく、悪いこと(またはグレーな手段)に手を染めてこそ一人前」と、悪事を肯定したりたたえたりする方向で拡大解釈されている印象だ」、「非世襲であることは、どんな手段を使っても許されるという「免罪符」にはならない。 こうした政治家像を是とする風潮は、今の世の中には適合しない。閣僚の「辞任ドミノ」が 文春オンライン「岸田文雄首相 今度は選挙運動費用131万円を不記載 政治資金規正法違反の疑い」 「自由民主党広島県第一選挙区支部」と「岸田文雄後援会」を混同するとは、ズサンさにも程がある。 「岸田首相はこれまで、政治資金問題が発覚した寺田稔前総務相や秋葉賢也復興相に「丁寧に説明責任を果たしていくことが重要だ」と繰り返してきた。自らの政治資金を巡っても立て続けに疑惑が浮上している中、どのように説明するのか、対応が注目される」、本人自らどうするのだろう。
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マイナンバー制度(その3)(政府ゴリ押し「マイナ保険証」“真の狙い”は金融資産掌握 社会保障費の負担増で庶民狙い撃ち、岸田首相「マイナ保険証ない人に新制度」表明に批判殺到! 制度グジャグジャで新たな火種?、保険証と一本化すればマイナカードも普及するはず…そんな政府の思惑が大ハズレした根本原因 本当の問題は「便利になるかどうか」ではない) [経済政策]

マイナンバー制度については、6月22日に取上げた。今日は、(その3)(政府ゴリ押し「マイナ保険証」“真の狙い”は金融資産掌握 社会保障費の負担増で庶民狙い撃ち、岸田首相「マイナ保険証ない人に新制度」表明に批判殺到! 制度グジャグジャで新たな火種?、保険証と一本化すればマイナカードも普及するはず…そんな政府の思惑が大ハズレした根本原因 本当の問題は「便利になるかどうか」ではない)である。

先ずは、10月17日付け日刊ゲンダイ「政府ゴリ押し「マイナ保険証」“真の狙い”は金融資産掌握 社会保障費の負担増で庶民狙い撃ち」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/312970
・『河野デジタル相がブチ上げた2024年秋の健康保険証廃止。マイナンバーカードと保険証を一体化した「マイナ保険証」を事実上義務化する方針に、不安や反発が広がっている。ネット上の反対署名はわずか2日で10万筆近く集まった。保険証を“人質”にとったマイナンバー普及策には、立憲民主党の枝野前代表が<さすがにこれは強引すぎるのではないかと、強く危惧します。国民生活と直接結びついているという意味で、当面の政治の最大の争点かもしれません>とツイートするなど、臨時国会での野党の追及材料に浮上してきた』、「健康保険証廃止」、余りにも強引なやり方に驚かされた。「河野デジタル相」は自分の人気を取り違えているのではなかろうか。
・『資産に応じた社会保障費の負担増  政府がゴリ押しする目的は、河野氏が説明するような「デジタル化」だけではなく、真の狙いは全国民の「金融資産の掌握」だと思った方がいい。 実は、2016年1月のマイナカード交付開始直前、こんな懸念が頻繁に語られていた。 「18年からマイナンバーと銀行口座の紐づけが任意で始まり、21年には義務化される見通し。証券や保険ともリンクし、資産把握が進む。そうなると、所得や年金収入、保有資産に応じて、医療費や介護保険料が値上げされるのではないか」 実際、財務省の財政制度分科会の18年の議事要旨には<金融資産の保有状況を考慮した負担能力の判定のための基盤整備については、金融資産の捕捉のためにマイナンバーの在り方も含めて検討すべき>とある。さらに、内閣府の「新経済・財政再生計画 改革工程表2021」には<マイナンバーの導入等の金融資産の把握に向けた取組を踏まえつつ、医療保険における負担への金融資産等の保有状況の在り方について、(中略)預金口座へのマイナンバー付番の状況を見つつ、引き続き検討>とある。つまり、個人の金融資産状況を把握し、資産に応じた社会保障費負担へと突き進む気満々なのである。 2021年予定だった銀行口座の紐づけ義務化は、マイナカードの普及が進まず、20年11月に見送られている。ただ、裏を返せば、マイナ保険証の義務化で全国民がカードを保有することになれば、再び、銀行口座紐づけが義務化される可能性があるわけだ。 「個人の金融資産把握がマイナンバー制度の原点ですから、政府は銀行口座の紐づけ義務化を再び狙ってくるでしょう」(金融ジャーナリスト・森岡英樹氏) 富裕層の課税逃れ対策だけでなく、社会保障費の負担増で庶民も狙い撃ちではたまらない』、「銀行口座の紐づけ義務化」による「個人の金融資産状況を把握し、資産に応じた社会保障費負担へと突き進む」のでは、本当にたまらない。

次に、10月25日付け日刊ゲンダイ「岸田首相「マイナ保険証ない人に新制度」表明に批判殺到! 制度グジャグジャで新たな火種?」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/313384
・『現行の健康保険証を2024年秋に廃止し、原則としてマイナンバーカードに一本化する政府の方針に対し、全国労働組合総連合(全労連)が13日から反対署名を募ったところ、わずか10日間(24日時点)で11万筆を超えたことが分かった。 昨年10月から始まったマイナンバーカードと保険証を一体化する「マイナ保険証」は、カード所有者が専用ホームページなどで登録すれば使用できる。全労連は、個人情報流出に対する懸念や紛失リスクなどを理由に、カード取得の事実上の義務化は違法──などと訴えている。 こうした声があることをめぐり、岸田文雄首相は24日の衆院予算委員会で、「保険料を納めている人が保険診療を受けられる制度を用意する」とし、カードを持たない人も保険診療を受けられるよう配慮する考えを表明。 現行制度でも、保険証を紛失した際などに「資格証明書」を発行する仕組みがあるが、岸田首相は「資格証明ではない制度を用意する」と答弁したことから、新たな制度が作られる可能性が高い。 岸田首相の答弁通りだと、とりあえず、反対意見の強い「マイナ保険証」の事実上の義務化は避けられる方向だが、メデタシ、メデタシとはいかない。制度が多様化、複雑化するほど無駄な費用がかかるからだ。) 《マイナ保険証の取得を義務化しなければいいだけでは。無駄な費用がかかるよ》《資格証明書でいいよ。新制度なんていらない。一から制度設計すれば多額のカネがかかる》《だから、マイナ保険証の義務化をやめればいいのよ。制度もすっきり、お金もかからない》 SNSなどでは新たな批判が出始めた「マイナ保険証」の取得問題。さらなる「新たな火種」が出てこないことを祈るばかりだ』、「「マイナ保険証」の事実上の義務化は避けられる方向だが」、「制度が多様化、複雑化するほど無駄な費用がかかる」、苦しまぎれに「無駄な費用」がかかることを持ち出すとは、困ったことだ。

第三に、11月4日付けPRESIDENT Onlineが掲載した経済ジャーナリストの磯山 友幸氏による「保険証と一本化すればマイナカードも普及するはず…そんな政府の思惑が大ハズレした根本原因 本当の問題は「便利になるかどうか」ではない」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/63265
・『マイナカード普及の「切り札」になるはずだった  現行の健康保険証を2024年秋をメドに廃止し、マイナンバーカード(個人番号カード、マイナカード)と一体にした「マイナ保険証」に切り替えるとした政府の方針が早くもぐらついている。 10月13日の記者会見で方針を打ち出した河野太郎デジタル相は、なかなか進まないマイナンバーカード普及の「切り札」になると自らの手柄を確信していた様子だった。ところが、その後、任意だったはずのカード保有が「実質義務化」されることになるのではとの批判が噴出。デジタル庁にも数千件にのぼる不安の声が寄せられたといい、火消しに追われている。 河野大臣自身、10月20日の参議院予算委員会で質問されると、「これは今まで通り申請に応じて交付するものだ」と短かく答えるにとどまった。雄弁な河野氏が一気にトーンダウンしているのだ。 政府がマイナンバーカードの普及に躍起になる一方で、普及率は思ったように伸びていない。カードを取得した人に買い物などに使える「マイナポイント」を付与する制度まで導入。「第一弾」として2500億円を使ったが、2021年5月1日に30%だった普及率が年末に41%になるにとどまった。 これでもかと2022年から「第2弾」を開始、ポイント付与を最大2万円に引き上げた上で、7500万人分に相当する1兆4000億円の予算を組んだ。ところが、予算を残すありさまで、2022年9月末だった期限を12月末までに延期した。9月末時点での普及率は49%と、国民の半分にとどいていない』、「「マイナポイント」を付与する制度」、「「第一弾」として2500億円」、「30%だった普及率が年末に41%になるにとどまった」、「2022年から「第2弾」を開始」、「1兆4000億円の予算」、「9月末だった期限を12月末までに延期した。9月末時点での普及率は49%と、国民の半分にとどいていない」、さんざんのようだ。
・『10万筆を超す反対署名が集まった  なぜ、マイナンバーカードが普及しないのか。デジタル庁の調査では「情報流出が怖いから」(35.2%)、「申請方法が面倒だから」(31.4%)、「カードにメリットを感じないから」(31.3%)が3大理由になっている。河野大臣が「マイナ保険証」への一本化を打ち出したのも、カードの利便性を増すことが基本的な狙いで、ほかにも運転免許証との統合を前倒しする方針も掲げている。 もともと、保険証との一体化や免許証との統合は政府の「骨太の方針」でも示されていた。河野氏の方針に批判が集まっているのは、現行の保険証を24年度以降に「原則廃止」するとされていたものを、一歩踏み込んで、「24年秋に廃止」と期限を明示したからだ。従来の健康保険証が無くなれば、病院での診察時には保険証を兼ねるマイナンバーカードが必須になるわけで、カード取得が「実質義務化」されることになるわけだ。 遅々として普及が進まなかった政府からすれば、「起死回生の一打」といった強硬策だが、当然、反発も強い。 現行のマイナンバー法ではカードの発行について「申請に基づき個人番号カード(マイナンバーカード)を発行する」と定めており、取得を強制するには法改正が必要になる。そもそもマイナンバーで国民を管理すること自体に長年反対している人たちもいる。マイナンバー制度の導入時はカード保有は任意だったものを、実質義務化するのは「話が違う」ということになるわけだ。 政府の足元でも反対論が吹き上がった。公務員などの組合が傘下にある全国労働組合総連合(全労連)がさっそく反対声明を出し、2週間余りで10万筆を超す反対署名を集めた。日本弁護士連合会も強制に反対する会長声明を出している。国民のさまざまな情報を国が一元的に管理することになりかねないマイナンバーカードに、人権擁護の観点でも懸念があるというわけだ』、「マイナンバー制度の導入時はカード保有は任意だったものを、実質義務化するのは「話が違う」ということになるわけだ」、「国民のさまざまな情報を国が一元的に管理することになりかねないマイナンバーカードに、人権擁護の観点でも懸念がある」、いずれもその通りだ。
・『日本医師会会長「2年後の廃止が可能かどうか…」  では、仮に、強制されなくとも使いたくなるくらい「マイナ保険証」は便利なのだろうか。 すでに健康保険証とマイナンバーカードをひも付けるサービスは始まっている。ひも付ければ、マイナンバーカードを保険証として利用することもできる。厚労省のホームページには「便利に!」なるとして「顔認証で自動化された受付」「正確なデータに基づく診療・薬の処方が受けられる」「窓口での限度額以上の医療費の一時支払いが不要」と書かれている。 いずれも、それが「便利!」と思うことだろうか。しかも、マイナンバーカードの読み取り機が設置されてシステム対応できる医療機関はまだまだ限られていて、どこでも使えるわけではない。 万が一に備えて健康保険証を財布の中に入れている人も多いが、現状ではマイナンバーカード1枚にはできず健康保険証も持ち歩くことになりそうだ。「薬の情報をマイナポータルで閲覧できる」と言った便利さも書かれているが、マイナンバーカード用のサイトである「マイナポータル」を恒常的に利用している人はまだまだ多くない。 「2年後の廃止が可能かどうか、非常に懸念がある」。日本医師会の松本吉郎会長は10月19日の記者会見でこう述べた。マイナ保険証については「特別反対していない」としたものの、マイナンバーカードがあまり普及していない現状では廃止は難しいとしたのだ』、「日本医師会の松本吉郎会長は」、「マイナンバーカードがあまり普及していない現状では」、「健康保険証」の「廃止は難しいとした」、もっともな指摘だ。
・『情報流出への懸念は当初の政府対応に端緒があった  政府が音頭をとっても、マイナンバーカードが国民の半数にしか普及しないのはなぜなのか。やはり、利便性の問題だけではなく、「情報」が流出することへの漠然とした懸念があるのだろう。 これには、マイナンバーカードを発行し始めた当初の政府の対応のマズさがあった。「マイナンバーは他人に絶対に知られてはいけない」、「マイナンバーカードを見られるのも危ない」という意識を国民に植え付けてしまった。最近は政府の説明も大きく変わっているのだが、今でも「マイナンバーカードは貴重品だから持ち歩かないで金庫にしまっておく」という高齢者が少なからずいる。 河野デジタル大臣が自ら発信している「ごまめの歯ぎしり」というメールマガジンの10月18日号は、「マイナンバーの疑問に答えます」というタイトルだった。 Q&A方式で書かれていて、冒頭の質問は「マイナンバーカードは、持ち歩いてもいいものなのか、それとも家の金庫にしまっておくものなのですか」だった。答えは「持ち歩きましょう」。ただし、銀行のキャッシュカードやクレジットカード同様、落としたり無くしたりしないように、というものだった。マイナンバーを人に見られても大丈夫、というQ&Aもあった。 また、仮にマイナンバーカードを落としたとしても、マイナンバーカードのICチップに入っているのは、名前、住所、生年月日、性別、顔写真、電子証明書、マイナンバー、住民票コードだけで、医療情報や税・年金といった個人情報は入っていないので、暗証番号を知られない限り、悪用されることはないとも回答している』、「マイナンバーカードを発行し始めた当初の政府の対応のマズさがあった。「マイナンバーは他人に絶対に知られてはいけない」、「マイナンバーカードを見られるのも危ない」という意識を国民に植え付けてしまった」、私もその影響を受けて、「マイナンバーカード」は貴重品入れの引き出しに保管し、持ち出すことは殆どない。
・『現況のITシステムはサイバー攻撃に耐えられるのか  おそらく、大臣自身にそう言われても安心できない、という人も少なくないだろう。 そんな最中、10月31日に世の中を震撼させる事件が起きた。大阪府の「大阪急性期・総合医療センター」がサイバー攻撃を受け、電子カルテシステムがダウンした結果、病院の診療がストップする事態が発生したのだ。 身代金要求型のコンピューターウイルス「ランサムウェア」による被害と見られ、復旧には相当な時間がかかると見られている。この事件を機にSNS上などでは「マイナ保険証への移行は止めるべきだ」といった意見が強まっている。マイナンバーカード自体に情報が保存されていなくても、連携したシステム自体がトラブルを起こした時に、マイナンバーカードだけで大丈夫なのか、現行の保険証を残した方が安全ではないのか、というのである。 情報をデジタル化し一元管理しようとすれば、そのバックアップを含め、システムの頑強さが求められる。医療機関の場合、ITの専門人材がほとんどおらず、規模も小さいためIT投資もままならないため、デジタル化が遅れているところが少なくない。逆にそれがハッカーやコンピューターウイルスに脆弱ぜいじゃくということになりかねない。国民の疑念を払拭しないまま、マイナ保険証に突き進むことは難しいだろう』、「情報をデジタル化し一元管理しようとすれば、そのバックアップを含め、システムの頑強さが求められる。医療機関の場合、ITの専門人材がほとんどおらず、規模も小さいためIT投資もままならないため、デジタル化が遅れているところが少なくない。逆にそれがハッカーやコンピューターウイルスに脆弱ぜいじゃくということになりかねない」、その通りだ。ただ、「国民の疑念を払拭しないまま、マイナ保険証に突き進むことは難しいだろう」、そこまで言い切れるかは疑問だ。
・『「情報が悪用されること」への疑念は消えない  もうひとつ、根本的に問われているのが、政府への「信頼度」だろう。 利便性を高めるために政府に情報を集中させても、政府がそれを悪用し国民を過剰に監視するような使い方はしない、という信頼感がなければ、国民の多くの情報を国が一元管理する体制には支持が得られない。 マイナンバーカードを手にしていない半数の国民には、国に対する「疑念」を払拭できていない人が少なからず存在する。つまり、マイナンバーカードの普及には政府への信頼が不可欠だ。 旧統一教会との問題が次々と表面化。首相や大臣の発言はくるくる変わる事態となって、岸田文雄内閣の支持率は大きく低下している。そんな政府の信用度が瓦解している中で、デジタル化もマイナンバーカードの普及も進まないだろう』、「利便性を高めるために政府に情報を集中させても、政府がそれを悪用し国民を過剰に監視するような使い方はしない、という信頼感がなければ、国民の多くの情報を国が一元管理する体制には支持が得られない」、全く同感である。
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哲学(その4)(AIは「新型コロナ禍の悪夢」を予言したのか 少極集中から分散型システムへの転換が急務、コロナが露わにしたビッグ・データという幻想 ポスト・グローバル化時代の「生命」と「情報」、「社会正義」が複雑骨折している欧米の思想状況を理解せよ!) [文化]

哲学については、2020年5月26日に取上げた。久しぶりの今日は、(その4)(AIは「新型コロナ禍の悪夢」を予言したのか 少極集中から分散型システムへの転換が急務、コロナが露わにしたビッグ・データという幻想 ポスト・グローバル化時代の「生命」と「情報」、「社会正義」が複雑骨折している欧米の思想状況を理解せよ!)である。

先ずは、2020年5月17日付け東洋経済オンラインが掲載した京都大学こころの未来研究センター教授の広井 良典氏による「AIは「新型コロナ禍の悪夢」を予言したのか 少極集中から分散型システムへの転換が急務」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/349506
・『新型コロナは、日本そして世界の社会構造、とりわけ都市集中や格差・貧困の問題をこれまで以上にあらわにしているといえる。この構造は今後どうなっていくのか。 このたび『人口減少社会のデザイン』を上梓した広井良典氏が読み解く』、パンデミックで取上げる方が適切かとも思ったが、哲学として取上げる。
・『「コロナ後の世界」のビジョン  新型コロナウイルスの災禍で日本と世界の状況が一変した。今年の初めの時点で、誰がこうした事態の勃発と世界の変化を予想しただろうか。 一方、新型コロナウイルス(以下単に「コロナ」等と略すことがある)をめぐる状況を受けてさまざまな「論」が世に出されているが、それらの多くはいささか時流に便乗した近視眼的なものか、逆に大雑把すぎる?文明論”のいずれかであり、客観的な論証や中長期的な視座を踏まえた実のある洞察はまだ十分な形で提示されていないように思える。 本稿で論じたいのは、そうした問題意識を踏まえたうえでの?「コロナ後」の世界”のビジョンにほかならない。 この場合、少々手前味噌に響くことを承知のうえで確認したいのは、そうした「コロナ後」の世界の構想は、私が昨年10月に公刊した『人口減少社会のデザイン』において、AIを活用した未来シミュレーションも踏まえながら、これからの日本そして世界のあるべき展望として論じた内容と大きく重なるものになるという点である。 それは端的に述べれば以下のような柱に集約される日本・世界の方向性だ。 (1)「都市集中型」から「分散型システム」への転換 (2)格差の是正と「持続可能な福祉社会」のビジョン (3)「ポスト・グローバル化」の世界の構想 (4)科学の基本コンセプトは「情報」から「生命」へ  これらは、上記の拙著の中で強調した論点であると同時に、そのまま「コロナ後の世界」のビジョンとして本質的な柱となるものである。 特に(1)の「「分散型システム」への転換」については、私たちの行ったAIシミュレーションが新型コロナ・パンデミックのもたらす課題を“予言”していたのではないかと思われるほど、今回の感染拡大で明らかになった問題と重なっているのである。 この場合、重要なのは次の点だ。すなわち、「コロナ」の問題はそれだけが切り離されて存在するのではなく、むしろ私たちがいま生きている社会システムのありよう──都市への人口集中、格差の拡大、際限ないグローバル化、「スーパー情報化」の幻想──それ自体がさまざまな矛盾をはらんでおり、今回のコロナ禍は、そうした矛盾が一気に露呈した局面の1つにすぎないという認識である。 こうした関心を踏まえ、上記(1)~(4)の論点について順次述べてみたい』、さすが哲学者らしく、捉える視点が広い。
・『「都市集中型」から「分散型システム」への転換  コロナウイルスの感染拡大とその災禍が際立って大きいのは、あらためて言うまでもなく、ニューヨーク、マドリード、パリ、ロンドンそして東京など、人口の集中度がとくに高い人口数百万人規模の大都市圏である。 これらの極端な「都市集中型」地域は、ほかでもなく?3密”が常態化し、環境としても劣化している場合が多く、感染症の拡大が容易に生じやすく、現にそうしたことが起こったのだ。 一方、後で格差の関連でも述べるように、ドイツにおいて今回のコロナによる死者数が相対的に少ない点は注目すべき事実であると私は考えている。 ドイツの場合、国全体が「分散型」システムとしての性格を強くもっており、ベルリンやハンブルクのような人口規模の大きい都市も存在するものの、全体として中小規模の都市や町村が広く散在しており、「多極」的な空間構造となっている。 そして、新型コロナの感染拡大が明らかにした課題をまるで予言するかのように、先ほどふれた拙著『人口減少社会のデザイン』の基軸をなしているのは、これからの日本や世界が持続可能であるためには、「都市集中型」のシステムから「分散型システム」への転換を図っていくことが急務であるというAI(人工知能)の分析だった。 この分析の基礎となる研究を、私は2016年に京大キャンパスに設置された日立京大ラボとの共同研究として行った。 そこでは、AIを活用して2050年の日本に関する2万通りの未来シミュレーションを実施したのだが、そのシミュレーション結果において、東京一極集中のような「都市集中型」のシステムよりも、「地方分散型」と呼びうるシステムのほうが、人口・地域の持続可能性や格差、健康、幸福といった点において優れているという内容が示されたのである(しかも、都市集中型か地方分散型かに関する、後戻りできない分岐が2025年から2027年頃に起こるという結果が示された)。 このAIシミュレーションは、直接的に今回のコロナのようなパンデミックを扱っているわけではないが、医療システムに関する諸要因はモデルの中で含まれている。そして今回のコロナ禍は、「都市集中型」社会のもたらす危険度の大きさを白日の下にさらしたと言うべきだろう。 日本の状況についてさらに踏み込んで考えると、しばしば誤解されている点だが、実は日本において現在進みつつあるのは?東京一極集中”ではない。 すなわち、札幌、仙台、広島、福岡等の人口増加率は首都圏並みに大きく、例えば2010年から2015年の人口増加率は、東京23区3.7%に対し福岡5.1%となっていて、福岡の人口増加率は東京を上回っている。 興味深いことに、今年3月に発表された令和2年地価公示でも同様の傾向が示されており、上記4都市の地下上昇率は平均で7.4%となっており、東京圏の2.3%を大きく上回っているのだ。 そしてコロナとの関連で言えば、全国で初めて(法的根拠に基づかない)「緊急事態宣言」を出した(2月28日)のが北海道であったのは記憶に新しく、また東京圏と大阪圏以外で緊急事態宣言(4月7日)の対象となったのは福岡県だった。) つまり現在の日本において進みつつあるのは?東京一極集中”ではなく、むしろ「少極集中」と呼ぶべき事態であり、しかしこれは感染症の伝播という点ではかなりリスクの大きい構造であって、現にこれらの?密”地域において感染が拡大した。 こうした構造を、より「分散型」のシステムに転換していくこと、具体的にはドイツのような「多極集中」と呼べる国土構造に転換していくことが重要であり、それはコロナのようなパンデミックへの対応においても極めて重要な意味をもつだろう。 加えて、ここで分散型システムというとき、それは以上にとどまらず、 ①リモート・ワークないしテレワーク等を通じて、自宅などで従来よりも自由で弾力的な働き方ができ、また余暇プランも立てやすく、仕事と家庭、子育てなどが両立しやすい社会のありよう ②地方にいてもさまざまな形で大都市圏とのコミュニケーションや協働、連携が行いやすく、オフィスや仕事場などの地域的配置も「分散的」であるような社会の姿 を広く指している。 これらは、人口や経済が拡大を続け、“東京に向かってすべてが流れる”とともに、いわば“集団で一本の道を上る時代”であった(昭和・平成の)時代の価値観や社会構造からの根本的な転換を意味する。 同時にそうした新たな方向は、個人がのびのびと各々の創造性の翼を伸ばしていくことや、多様なライフコースを可能にするとともに、結果としておそらく経済や人口にとってもプラスに働き、社会の持続可能性を高めていくだろう。 「コロナ後」の社会構想の第一の柱にあるのは、そうした包括的な意味での「分散型システム」への転換なのである』、「「コロナ後」の社会構想の第一の柱にあるのは、そうした包括的な意味での「分散型システム」への転換なのである」、「ドイツのような「多極集中」と呼べる国土構造に転換していくことが重要」、なるほど。
・『コロナの感染拡大と格差・貧困  以上、都市集中型から分散型システムへの転換について述べたが、同時に私がここで強調したいのが、今回のコロナウイルスの感染拡大と「格差、貧困」との関わりだ。 まず事実関係として確認したいのは、今回のコロナウイルスの感染拡大や被害をめぐる状況の国別比較である。 状況は刻々と変わっているので、ごく留保付きの指摘しかできないが、5月14日現在の時点において、とくに死者数が多いのが、アメリカ、イギリス、イタリア、スペインの4か国であることは確かな事実である(死者数は1位アメリカ[8.5万人]、2位イギリス[3.3万人]、3位イタリア[3.1万人]、4位スペイン[2.7万人]という状況。感染者数は1位アメリカ[143万人]、2位スペイン[27万人]、3位ロシア[24万人]、4位イギリス[23万人])。 ちなみに日本は死者数687人、感染者数1万6079人である。 実は、私はこの4国、つまりアメリカ、イギリス、イタリア、スペインに死者数および感染者数がとくに多いことは、ある意味で十分に予想されることと思ってきた。それは、これらの国々が、「格差」の面で世界で?トップクラス“の国であることと関係している。 いくつかの国々のジニ係数、つまり格差の度合いを示す指数を比較すると、アメリカが筆頭であり、またイギリス、スペインやイタリアが上位に位置している。 要するに、格差の度合いとコロナウイルスの感染拡大や死者数の間には、かなりの関連性がうかがわれるのだ(なお、意外に思う人もいるかもしれないが、日本は以前はこうした図の左のほうに位置しており、比較的格差の小さいグループに属していたが、90年代頃から徐々に格差が大きくなり、近年では格差の大きいグループに入っている。この点は後ほど立ち返りたい)。 このテーマ、つまり格差・貧困とコロナウイルスの蔓延や被害との関連については、例えばアメリカにおいて黒人層の死亡率が相対的に高い等といった一定の報道や指摘もなされているが、なお十分に認知されていない、しかし極めて重要な論点であると私は考えている』、「格差の度合いを示す指数を比較すると、アメリカが筆頭であり、またイギリス、スペインやイタリアが上位に位置している。 要するに、格差の度合いとコロナウイルスの感染拡大や死者数の間には、かなりの関連性がうかがわれるのだ」、「日本は以前は」「比較的格差の小さいグループに属していたが、90年代頃から徐々に格差が大きくなり、近年では格差の大きいグループに入っている」、改めて「日本」での格差拡大の深刻さを再認識させられた。「格差の度合いとコロナウイルスの感染拡大や死者数の間には、かなりの関連性がうかがわれる」、なるほど。
・『「公共空間の全体」の劣化が招いた感染拡大  そもそもなぜコロナのような感染症拡大と貧困・格差が深く関わってくるかという点についてあらためて確認すると、格差や貧困が大きい国や社会においては、おのずと貧困層の生活環境が極めて劣悪となり感染症の温床となるという点がもちろんある。 しかし同時に私が強調したいのは、そのような国ないし社会においては、貧困層の居住地域のみならず、中間層も行き来するような都市の「公共空間の全体」が劣化していき、都市全体に感染症が拡大しやすくなるという点だ。 実際、私はアメリカ(東海岸のボストン)に3年ほど住んだことがあるが、都市の中心部やその近辺に、窓ガラスが破壊されたまま放置されていたり、ごみが散乱したりしているようなスペースがごく普通に存在するのをよく見かけていた。細菌やウイルスにとっては“格好の住処”になるだろう。 さらに加えて、これらの国々(アメリカ、スペイン、イタリア等)では公的な医療保険制度ないし社会保障が未整備で、そもそも医療保険に加入していない人々が多く存在することも、感染の発見そして治療の遅れを加速している。 私は医療政策や社会保障が専門領域の1つだが、イタリアやスペインは?南ヨーロッパ型福祉国家”と呼ばれていて、その特徴は、公的な医療制度や社会保障制度が不十分で、よくも悪くも家族や地域(教会など)に依存する度合いが大きいという点である。) アメリカはそれとはまた別の意味で市場経済への信仰が強い?小さな政府”の代表的存在であるわけだが、社会保障を専門領域とする私のような人間からすれば、アメリカ、イギリス、イタリア、スペインにおいて今回のコロナ被害がとくに大きいという点は、皮肉にもある種の必然性をもっているように理解されるのだ』、「イギリス」はさすがに「公的な医療保険制度ないし社会保障が未整備」とはしなかったが、そうであれば、同国で感染が広がっている理由を別途指摘すべきだ。
・『日本の?特異性”と「持続可能な福祉社会」のビジョン  ちなみに日本について見るならば、上記のように、現在の日本は先進諸国の中でも格差の大きい部類の国になっている。 それでもなお、また多くの国々の大都市に見られる?ロックダウン”のような強制力の強い対応をとっていないにもかかわらず、5月半ば時点の状況において、他の国々に比べて?桁違い”に感染者数と死者数(特に後者)が少ないという事実は、それ自体掘り下げて分析されるべきテーマだろう。 これは経験的な推測にすぎないが、おそらくそこに、かなり日常的なレベルでの「衛生意識や都市の衛生環境」が関わっていることは間違いないと思われる。 私自身、これまで一定の数の国々を訪れてきたが、ごく卑近な例で言えば、例えばトイレの清潔さという点ではおそらく日本は群を抜いており、その他「住居等に入る時に靴を脱ぐ」といった習慣を含め、ある意味で日常的すぎるため定量的に測定しにくいような、素朴なレベルの衛生意識や都市の衛生環境が(上記の格差と並んで)パンデミック拡大の帰趨を分ける重要な要因として働いていると考えられる。 一方、医療システムそのものについて見るならば、日本の場合、人口当たりのICU(集中治療室)の数がアメリカやドイツに比べて大幅に少ないなど、患者数が増えてきた場合の体制が極めて脆弱であることは確かである。 あまり指摘されることがないが、この背景は、これも拙著『人口減少社会のデザイン』第5章(医療への新たな視点)で論じたように、日本の場合、診療所(開業医)や中小病院に医療費が優先的に配分されており、高次機能病院への医療費配分が極めて手薄であることである。ICU不足はまさにその象徴なのだ。 したがって、やや強調して言えば、日本の場合、医療システムの脆弱性ひいては政府の対応の不十分さを、国民の衛生意識や都市の衛生環境でかろうじて?カバーしている”という側面が確かにあるのであり、一度感染が拡大するとそうした脆さが一気に露呈する(=医療崩壊)おそれがある。 いずれにしても、今回のコロナ禍は、格差や貧困の問題そして医療や社会保障制度のあり方が、それ自体にとどまらず、社会全体の真の「強さ」や回復力、あるいは脆弱性に深く関わっていることを提起している。 以上が「コロナ後の世界」の展望として挙げた、前半の〈(1)『都市集中型』から『分散型システム』への転換、(2)格差の是正と『持続可能な福祉社会』のビジョン〉であり、後半の〈(3)『ポスト・グローバル化』の世界の構想、(4)科学の基本コンセプトは『情報』から『生命』へ〉については、稿をあらためてさらに考えてみたい』、「日本の場合、医療システムの脆弱性ひいては政府の対応の不十分さを、国民の衛生意識や都市の衛生環境でかろうじて?カバーしている”という側面が確かにあるのであり、一度感染が拡大するとそうした脆さが一気に露呈する(=医療崩壊)おそれがある」、その後、「日本」で一時的に事実上の「医療崩壊」に近い状態になった。

次に、この続きを、2020年5月23日付け東洋経済オンラインが掲載した京都大学こころの未来研究センター教授の広井 良典氏による「コロナが露わにしたビッグ・データという幻想 ポスト・グローバル化時代の「生命」と「情報」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/349507
・『新型コロナは、すでに限界に近づいていた「グローバル化」の終焉をあらわにしたともいえる。ではグローバル化以後の世界はどうなっていくのか。 このたび『人口減少社会のデザイン』を上梓した広井良典氏が、前回に引き続き読み解いていく』、どのような観点で「読み解いて」くれるのだろう。
・『パンデミックの歴史から見えるもの  前回は、私が昨年刊行した『人口減少社会のデザイン』での主張を踏まえつつ、「コロナ後の世界」の構想として、以下の4つの方向を提起した。 (1)「都市集中型」から「分散型システム」への転換(2)格差の是正と「持続可能な福祉社会」のビジョン (3)「ポスト・グローバル化」の世界の構想 (4)科学の基本コンセプトは「情報」から「生命」へ このうち前半の(1)(2)について前回記事で述べた。続いてさらに、後半の(3)(4)の話題について考えてみよう。 まず前提的な確認となるが、今回の新型コロナウイルス(以下、単に「コロナ」等と略すことがある)のような感染症の爆発的な拡大、あるいはパンデミックは、決して今に始まったことではなく、さかのぼれば人類の歴史の中で繰り返し生じているという事実に目を向ける必要がある。 感染症の流行はさかのぼれば人類の誕生とともに存在し、とりわけ農耕の開始ないし定住化や、多くの人々が集住する都市の発生以降から随所で起こっているが、今回のコロナをめぐる問題を考えるにあたり、やはり起点としてとらえるべきは14世紀ヨーロッパにおけるペストの大流行だろう。 古い時代の記録なので厳密な把握ではないが、このときヨーロッパ全体の人口の4分の1から3分の1、実数にして2000万人から3000万人程度が死亡したとされる。) この場合、ペスト菌はチンギス・ハーン後のモンゴル軍のヨーロッパ遠征――ある種の?グローバリゼーション”――を契機に中国方面からユーラシア大陸経由で伝わったとする説が有力である。そしてこのペスト大流行は、ヨーロッパの中世世界を揺るがし、やがて近世そして近代を準備する遠因となった。 その後の歴史を駆け足で追うと、続く16世紀にはヨーロッパで梅毒が大流行したが、これはコロンブスの一団がアメリカ大陸から持ち帰ったとされている。 また同世紀から17世紀にかけては、逆にスペインからの征服者が中南米に天然痘を持ち込み、これによってアステカ文明が滅んだと言われる。 さらに19世紀にはインド発のコレラがヨーロッパなど世界で大流行したが、これは産業革命以降の工業化による都市の衛生状態の劣化や、労働者の貧困に伴う生活環境の悪化等も関与していた(20世紀に広がった肺結核なども同様である)。 また、今回のコロナの関連でよく引き合いに出される1918年から1920年のスペイン・インフルエンザ(スペイン風邪)の大流行は、言うまでもなく第1次大戦における、大量の兵士の国境を越えたグローバルな移動(およびその置かれた環境の劣悪さ)が背景だった』、歴史は確かなようだ。
・『感染症をめぐる歴史から気づく2つのポイント  以上は感染症をめぐる歴史の一端の確認に過ぎないが、こうした概観だけからでも気づくこととして、以下の点があるだろう。それは第1に、感染症の勃発は何らかの意味の「グローバル化」と関係しているという点である。 感染症のもととなる細菌やウイルスは、もともと存在する地域においてはその場所の風土に適応する形でいわば“大人しく”人間ないし動物と共存している面があるが、遠距離あるいは大規模な人の移動に伴ってそれがまったく別の場所に移されると、その場所にいる人間には当該細菌ないしウイルスへの免疫がないこともあって、爆発的に広がる可能性があるのだ。 実際、現在に続くパンデミックの歴史の起点をなすのが14世紀のペスト大流行であり、これは先ほど見たように、モンゴル軍のユーラシア大陸横断と関わっており、後の近世(スペインのアメリカ進出)、近代(イギリス・フランス等のアフリカ、アジア進出)への?プレリュード”ないし「幕開け」のような位置にあるとも言える。 そして、こうした「グローバル化」の進展の流れの極に今回のコロナ・パンデミックがあるという把握が可能だろう。 第2に、以上の「グローバル化」とも関連するが、コレラや結核などの例に顕著なように、感染症の爆発は、格差・貧困およびそれに伴う都市の衛生状態あるいは生活環境の悪化と密接に結び付いている場合が多いという点である(この点は前回記事でもふれた)。 この背景には、近代以降の急速な工業化の進展、あるいは資本主義の展開ということが働いている。) 以上、大きな歴史の流れを振り返りつつ、感染症の爆発的拡大が生じやすい要因として、「グローバル化」と「格差・貧困の拡大および都市環境の劣化」の2点を挙げたが、この両者が極限的な形で進みつつあるのが現在の世界だろう。 そうした意味では、今回の新型コロナウイルスの蔓延は、これまでの歴史の流れに照らして見るならば、ある種の必然的な出来事と言える面すら持っているのである』、「「グローバル化」と「格差・貧困の拡大および都市環境の劣化」の2点」、「が極限的な形で進みつつあるのが現在の世界」、「今回の新型コロナウイルスの蔓延は、これまでの歴史の流れに照らして見るならば、ある種の必然的な出来事と言える面すら持っている」、その通りだ。
・『「ポスト・グローバル化」の2つの道  誤解のないよう述べると、私はここで、?今回コロナ・パンデミックが生じ、その背景にはグローバル化があるので、よってグローバル化を即刻停止すべきだ”といった単純な主張をしようとしているのではない。 状況はある意味でもっと根本的であり、つまりコロナの発生の有無とは独立に、現在の世界では「グローバル化の終わりの始まり」と呼べる大きな流れが生じており、あるいは「ポスト・グローバル化の世界」を構想すべき時期になっているのだ。 コロナ・パンデミックはそうした構造的変化を明るみに出した事象の1つ――あるいはそうした移行への?ハード・ランディング”を余儀なくさせた出来事――と言うべきだろう。 こうした「グローバル化の終わりの始まり」あるいは「グローバル化の先の?ローカル化”」という主張を、私は『創造的福祉社会』(2011年)、『ポスト資本主義』(2015年)そして『人口減少社会のデザイン』(2019年)等の一連の本の中で展開してきたが、そのポイントとなる事柄をここでごく簡潔に述べてみたい。 イギリスのEU離脱(いわゆる?Brexit”)と?トランプ現象“と呼ばれる動きを見てみよう。あらためて言うまでもなく、私たちが現在言うような意味での「グローバル化」を明示的に本格化させたのはイギリスである。 つまり同国において16世紀頃から資本主義が勃興する中で、例えば1600年創設の東インド会社に象徴されるように、イギリスは国際貿易の拡大を牽引し、さらに産業革命が起こって以降の19世紀には、“世界の工場”と呼ばれた工業生産力とともに植民地支配に乗り出していった。 その後の歴史的経緯は省くが、そうした?最初にグローバル化を始めた国”であるイギリスが、経済の不振や移民問題等の中で、今度は逆にグローバル化に最初に「NO」を発信する国となったのが今回のEU離脱の基本的意味と言うべきである。 アメリカのトランプ現象も似た面を持っている。20世紀はイギリスに代わってアメリカが世界の経済・政治の中心となり(パクス・アメリカーナ)、強大な軍事力とともに「世界市場」から大きな富を獲得してきた。 しかし新興国が台頭し、国内経済にも多くの問題が生じ始める中、TPP離脱や移民規制など、まさに「グローバル化」に背を向ける政策を本格化させようとしているのである。 イギリスを含め、ある意味でこうした政策転換は“都合のよい”自国中心主義であり、グローバル化で“得”をしている間は「自由貿易」を高らかにうたって他国にも求め、やがて他国の経済が発展して自らが“損”をするようになると保護主義的になるという、身勝手な行動という以外ない面をもっているだろう』、「最初にグローバル化を始めた国”であるイギリスが、経済の不振や移民問題等の中で、今度は逆にグローバル化に最初に「NO」を発信する国となったのが今回のEU離脱の基本的意味と言うべきである。 アメリカのトランプ現象も似た面を持っている。20世紀はイギリスに代わってアメリカが世界の経済・政治の中心となり(パクス・アメリカーナ)、強大な軍事力とともに「世界市場」から大きな富を獲得してきた。 しかし新興国が台頭し、国内経済にも多くの問題が生じ始める中、TPP離脱や移民規制など、まさに「グローバル化」に背を向ける政策を本格化させようとしているのである」、「こうした政策転換は“都合のよい”自国中心主義であり、グローバル化で“得”をしている間は「自由貿易」を高らかにうたって他国にも求め、やがて他国の経済が発展して自らが“損”をするようになると保護主義的になるという、身勝手な行動という以外ない面をもっているだろう」、その通りだ。
・『「ローカル化(ローカライゼーション)」が進む時代へ  しかし他方で、私は以上とは別の意味で「グローバル化の終わりの始まり」がさまざまに見え始めているのが現在の世界であり、今後はむしろ「ローカル化(ローカライゼーション)」が進んでいく時代を迎えると考えている。 すなわち、環境問題などへの関心が高まる中で、「地産地消」ということを含め、まずは地域の中で食糧やエネルギー(とくに自然エネルギー)をできるだけ調達し、かつヒト・モノ・カネが地域内で循環するような経済をつくっていくことが、地球資源の有限性という観点からも望ましいという考え方が徐々に広がり始めている。 言い換えれば、およそ「グローバルな問題」とされていることの実質は、結局のところ資源をめぐる紛争やエネルギーの争奪戦なのであり、だとすれば、できる限り「ローカル」なレベルで食料やエネルギー等を自給できるようにすることが、「グローバル」な問題の解決につながるという発想である。 私が見るところ、こうした方向がかなり浸透しているのはドイツや北欧などの国々であり、これらの地域では、「グローバル経済から出発してナショナル、ローカルへ」という方向で物事を考えるのではなく、むしろ「ローカルな地域経済から出発し、ナショナル、グローバルと積み上げていく」という社会の姿が志向され、実現されつつある。 したがってやや単純化して対比すると、「グローバル化の終わり」あるいは「グローバル化の先の世界」には大きく異なる2つの姿があると言える。 1つは強い「拡大・成長」志向や利潤極大化、ナショナリズムとセットでのものであり、そこでは格差や貧困、環境劣化は大きく、トランプ現象はある意味でその典型である。 もう1つは環境あるいは「持続可能性」、そしてローカルな経済循環や共生から出発し、そこからナショナル、グローバルへと積み上げていくような社会の姿であり、上記のようにドイツ以北のヨーロッパに特徴的である。 その具体的なイメージとしては、先述の拙著『人口減少社会のデザイン』でも紹介したが、ドイツの地方都市の姿が挙げられる。 エアランゲンという人口約10万の中小都市は、日本の同規模の地方都市がほぼ間違いなくシャッター通り化しているのと異なり、中心部が賑わい、しかも自動車交通が排除されて誰もが「歩いて楽しめる」コミュニティ空間となっている。先ほど述べた「ローカルな経済循環や共生から出発」とはこうした姿を指している。 そして前回も述べたように、ドイツなどで今回のコロナ・パンデミックの被害が相対的に小さいのは、まさにこうした社会の姿と関係していると私は考えている』、「できる限り「ローカル」なレベルで食料やエネルギー等を自給できるようにすることが、「グローバル」な問題の解決につながるという発想である。 私が見るところ、こうした方向がかなり浸透しているのはドイツや北欧などの国々であり、これらの地域では、「グローバル経済から出発してナショナル、ローカルへ」という方向で物事を考えるのではなく、むしろ「ローカルな地域経済から出発し、ナショナル、グローバルと積み上げていく」という社会の姿が志向され、実現されつつある」、「「グローバル化の終わり」あるいは「グローバル化の先の世界」には大きく異なる2つの姿があると言える。 1つは強い「拡大・成長」志向や利潤極大化、ナショナリズムとセットでのものであり、そこでは格差や貧困、環境劣化は大きく、トランプ現象はある意味でその典型である。 もう1つは環境あるいは「持続可能性」、そしてローカルな経済循環や共生から出発し、そこからナショナル、グローバルへと積み上げていくような社会の姿であり、上記のようにドイツ以北のヨーロッパに特徴的である』、私には「ドイツ以北のヨーロッパに特徴的」な姿の方が望ましいように思える。
・『「ポスト情報化」と「生命」の時代  さて、「コロナ後の世界」を論じている本稿の最後に述べたいのが、今回のパンデミックは、これから私たちが生きていく21世紀の時代が、「ポスト情報化」そして「生命」を基本コンセプトにする時代になっていくことを象徴的に示しているという点だ。 歴史を大きな視点でとらえ返すと、17世紀にヨーロッパで「科学革命」が生じて以降、科学の基本コンセプトは、大きく「物質」→「エネルギー」→「情報」という形で展開し、現在はその次の「生命」に移行しつつある時代であるととらえることができる(拙著『人口減少社会のデザイン』第3章参照)。 すなわち、17世紀の科学革命を象徴する体系としてのニュートンの古典力学は、基本的に物質ないし物体(matter)とその運動法則に関するものだった。 やがて、ニュートン力学では十分扱われていなかった熱現象や電磁気などが科学的探究の対象になるとともに、それを説明する新たな概念としての「エネルギー」が(ドイツのヘルムホルツらによって)19世紀半ばに考案され、理論化されていった。 これはほかでもなく、産業革命の展開あるいは工業化の進展と呼応しており、石油・電力等のエネルギーの大規模な生産・消費という経済社会の変化と表裏一体のものだった。 20世紀になると、(二度の世界大戦における暗号解読や「通信」技術の重要性とも並行して)「情報」が科学の基本コンセプトとして登場するに至る。具体的には、アメリカの科学者クロード・シャノンが情報量の最少単位である「ビット」の概念を体系化し、情報理論の基礎を作ったのが1950年頃のことだった。 重要な点だが、およそ科学・技術の革新は、「原理の発見・確立→技術的応用→社会的普及」という流れで展開していく。すなわち一見すると、「情報」に関するテクノロジーは現在爆発的に拡大しているように見えるが、その原理は上記のように20世紀半ばに確立したものであり、それはすでに技術的応用と社会的普及の成熟期に入ろうとしている。実際、インターネットの普及その他さまざまな情報関連指標も近年飽和してきている。 つまり、実は「情報」やその関連産業は“S字カーブ”の成熟段階に入ろうとしているのであり、いわゆるGAFAの業績も最近ではさまざまな面で陰りがさしてきていると言われる。 そして、先述のように「情報」の次なる基本コンセプトは明らかに「生命」であり、それはこの世界におけるもっとも複雑かつ根源的な現象であると同時に、(分子生物学といった)ミクロレベルのみならず、生態系(エコシステム)、地球の生物多様性、その持続可能性といったマクロの意味ももっている。 こうした包括的な意味の「生命」あるいはそれと人間との関わりが、これからの21世紀の「ポスト情報化」時代の科学や経済社会の中心的なコンセプトとなっていくということを、私自身は先述のような一連の本の中で論じてきたのだが、今回のコロナをめぐる災禍は、ある意味でそれをきわめて逆説的な形で提起したと言えるだろう』、「実は「情報」やその関連産業は“S字カーブ”の成熟段階に入ろうとしているのであり、いわゆるGAFAの業績も最近ではさまざまな面で陰りがさしてきていると言われる。 そして、先述のように「情報」の次なる基本コンセプトは明らかに「生命」であり、それはこの世界におけるもっとも複雑かつ根源的な現象であると同時に、(分子生物学といった)ミクロレベルのみならず、生態系(エコシステム)、地球の生物多様性、その持続可能性といったマクロの意味ももっている。 こうした包括的な意味の「生命」あるいはそれと人間との関わりが、これからの21世紀の「ポスト情報化」時代の科学や経済社会の中心的なコンセプトとなっていく」、なるほど。
・『「生命」は「情報」でコントロールできるか  この場合重要なのは次の点である。すなわち、昨今の「情報」をめぐる議論で、しばしば私たちは、膨大な「ビッグ・データ」やさまざまな「アルゴリズム」で世界のすべてを把握し、コントロールできるという世界観あるいは?幻想”にとらわれがちだ。 そして、「生命」それ自体も「情報」によってすべて理解し把握できると考えがちなのであり、私は以前からそれを「情報的生命観」と呼んできた(拙著『生命の政治学』参照)。 近年のその典型は、いわゆるシンギュラリティ論で有名なアメリカの未来学者レイ・カーツワイルであり、彼の主書『シンギュラリティは近い(Singularity is Near)』のサブタイトルは、いみじくも「人間が生物学を超えるとき(When Humans Transcend Biology)」となっている。 要するに、「生命」はすべて「情報」でコントロールできる、あるいは生命は情報に還元することができるというのがその基本思想である。 しかし、今回のコロナ・パンデミックは、「生命」はそれほど簡単に「情報」によってコントロールできるようなシロモノではないということを、私たちに冷厳な形で突き付けたのではないだろうか。細菌やウイルスはある種の?創発性”をもっており、人間が設計したアルゴリズムのコントロールをすり抜ける形でさらに進化していく。 さらに言えば、むしろ「情報」と「金融」と「集中化」と「グローバル化」で世界をコントロールし尽くそうとするという現在の流れこそが、皮肉にも今回のようなパンデミックをもたらし、しかもそうした流れの中で蓄積していた格差や貧困や環境劣化が、災禍を一層増幅させてしまうことが明るみになったのではないか。 ここでは、前回も含め、昨年出した拙著『人口減少社会のデザイン』の議論を踏まえつつ、「コロナ後の世界」の構想というテーマを、以下の4つの柱にそくして述べてきた。 (1)「都市集中型」から「分散型システム」への転換(2)格差の是正と「持続可能な福祉社会」のビジョン (3)「ポスト・グローバル化」の世界の構想  (4)科学の基本コンセプトは「情報」から「生命」へ  という4つの柱にそくして述べてきた。以上の議論からすでに明らかなように、これらの4つの論点は相互に深く関連し合っている。 現下の対応と並行しながら、社会システムのありようや人間と科学、生命との関わりを含め、「コロナ後の世界」の構想を根底から議論していくことが今こそ求められている』、なかなか意欲的な取り組みだ。今後の展開を大いに期待したい。

第三に、本年12月1日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した作家の橘玲氏による「「社会正義」が複雑骨折している欧米の思想状況を理解せよ!」を紹介しよう。なお、これは有料だが、私の場合、あと4本まで無料。
https://diamond.jp/articles/-/313649
・『東京五輪開幕式をめぐる辞任・解任騒動などで日本でも「キャンセルカルチャー」が注目されるようになった。これは、ポリティカル・コレクトネス(ポリコレ:政治的正しさ)に反する言動をした者をSNSなどで糾弾し、公的な地位からキャンセル(排除)することをいう。 欧米では2010年代から過激化するようになり、しばしば社会問題になった。フェイスブックの創業が2004年、ツイッターの誕生が06年、iPhoneの発売が07年だから、この社会運動がテクノロジーの強い影響を受けていることは明らかだ。 キャンセルカルチャーは「社会正義」の運動で、たんに気に食わない相手を寄ってたかって叩くわけではない。それが「正義」を掲げる以上、なんらかの思想的・政治的正当性がなければならない。 ヘレン・プラックローズ、ジェームズ・リンゼイの『「社会正義」はいつも正しい 人種、ジェンダー、アイデンティティにまつわる捏造のすべて』(山形浩生、森本正史訳、早川書房)は、日本からはわかりにくい欧米(英語圏)の思想状況を案内し、「正義」がどのように複雑骨折しているかを教えてくれる。 原題は“Cynical Theories: How Activist Scholarship Made Everything about Race, Gender, and Identity - And Why this Harms Everybody(シニカルな理論 アクティビストの人文科学はどのようにして人種、ジェンダー、アイデンティティについてのすべてをつくりあげ、なぜこれがすべてのひとに害をなすのか)”で、キャンセルカルチャーの思想的基盤となる“Critical Theories(批判理論)”への皮肉になっている』、「「正義」がどのように複雑骨折しているか」とは興味深そうだ。 
・『ポストモダン思想家の文体をまねた「デタラメ論文」を投稿し、高い評価を得て掲載された「ソーカル事件」  ヘレン・プラックローズはイギリスの著述家、ジェームズ・リンゼイはアメリカの数学者、文化評論家だが、哲学者で元ポートランド州立大学助教授でもあるピーター・ボゴシアンとともに、「第二のソーカル事件」とも呼ばれる「不満研究事件(Grievance studies affair)」の首謀者として知られている(以下、著者たちと呼ぶ)。 ちなみに「ソーカル事件」は、1995年にニューヨーク大学物理学教授のアラン・ソーカルが、現代思想系の学術誌に、ジャック・デリダやドゥルーズ=ガタリのようなポストモダン思想家の文体をまね、科学用語と数式を無意味にちりばめた「デタラメ(疑似)論文」を投稿し、それが高い評価を得て掲載されたことを暴露した事件で、人文科学界隈では大きなスキャンダルになった(ソーカルはその後、ジャック・ブリクモンとの共著『「知」の欺瞞 ポストモダン思想における科学の濫用』〈田崎晴明、大野克嗣、堀茂樹訳、岩波現代文庫〉に経緯と主張をまとめている)。 ソーカルがこの「実験(いたずら)」を行なった背景には、フランスから移殖され、80年代以降、アメリカの(人文系)知的世界で流行したポストモダン思想が、たんなる言語遊戯に堕しているとの不満があった。そこで、学術誌に無内容の論文を掲載させ、その「学術」自体が無内容であることを証明しようとしたのだ。 このスキャンダルによって、ポストモダン思想は科学(学術)から脱落し、その命脈は尽きた……とはぜんぜんならなかった。アメリカでは逆に、その変種が人文系のあらゆる学術分野を侵食し、大きな影響力をもつようになったというのが著者たちの主張になる。 「不満研究(グリーバンス・スタディーズ)」とは、「客観的事実よりも社会的不平等に対する不満を優先し、特定の結論のみが許容される学術分野」を総称する著者たちの造語で、「カルチュラル・スタディーズ 」「ジェンダー・スタディーズ」「CRT(批判的人種理論:Critical Rase Thery)」などを指している。本書では「批判理論(critical theory)」あるいは《理論》と略して呼ばれている。 ソーカルはポストモダン思想を「内実のない言葉遊び」だとしたが、それから10年以上たって、それは「社会正義の恫喝」へと変容した。そこで著者たちは、一般人が知らない学術の世界で、どれほど異様なことが起きているかを広く知らしめるために、社会正義を論ずる(その界隈では)著名な査読付き学術誌にデタラメ論文を投稿する「実験」を新たに行なったのだ』、「ポストモダン思想が、たんなる言語遊戯に堕しているとの不満があった。そこで、学術誌に無内容の論文を掲載させ、その「学術」自体が無内容であることを証明しようとしたのだ。 このスキャンダルによって、ポストモダン思想は科学(学術)から脱落し、その命脈は尽きた……とはぜんぜんならなかった。アメリカでは逆に、その変種が人文系のあらゆる学術分野を侵食し、大きな影響力をもつようになったというのが著者たちの主張になる」、「アメリカ」の学者たちはとんでもなく面白いことをするものだ。 
・『「デタラメ論文」によって、わずか1年間に7本の論文を学術誌に掲載させることに成功した  2017年から18年にかけて、著者たちが1年間で20本の「デタラメ論文」を作成して投稿したところ、そのうち4本が査読を経てオンライン上に公開され、3本が承認された(訂正の要求はなく、著者たちの「実験」がメディアの報道で中断しなければ公開されていた)。「再提出」の2本も、査読を通る可能性が高かった(通常、指摘された部分を修正すれば掲載される)。「審査中」が1本で、それ以外の10本は「却下」もしくは査読の指摘を修正できないとして著者たちが辞退した。 アメリカのほとんどの主要大学では、7年間に7本の論文が学術誌に掲載されれば、テニュア(終身在職権)を取得するのにじゅうぶんな実績になるとされる。それを著者たちは、「デタラメ論文」によって、わずか1年間に(すくなくとも)7本の論文を学術誌に掲載させることに成功した。だとすれば、この分野の「学術」とはいったい何なのか? もっとも話題となった「デタラメ論文」は“ヘレン・ウィルソンHelen Wilson”を名乗る(ボゴシアンが勤務する)ポートランド州立大学の架空のジェンダー研究者が、「フェミニスト地理学(Feminist geography)」の著名な学術誌“Gender, Place & Culture(ジェンダー・場所・文化)”に投稿した「オレゴン州ポートランドのドッグパークにおける、レイプ文化とクイア行為遂行性への人間の反応」だ。著者たちが投稿した論文はすべてWEBに公開されているが、この「ドッグパーク論文」はパロディとしてとてもよくできている。 “ヘレン・ウィルソン”は、黒人犯罪学や(性暴力を批判的に検討する)ジェンダー・スタディーズの議論を「人間と動物が交差する独特の都市空間」に適用し、犬とその飼い主の相互作用から「ジェンダー的、人種的、同性愛的に深く根づいたシステム」を暴き出そうとする。そのために、2016年6月から1年間、ポートランドの3つのドッグパークに通い、「犬たちの周辺に座り、歩き、観察し、メモを取り、飼い主たちと話し、犬を観察し、目立たないように立ち去る」というアプローチを繰り返した。 “ウィルソン”がとりわけ注目したのは、犬同士の性暴力(相手に馬乗りになってレイプしようとする)に対して飼い主がどのような反応をするかだった。 「論文」によれば、ドッグパークでは60分に1回の割合で「レイプ」事件が、71分に1回の割合で「暴力」事件(ドッグファイト)が起きた。それが性暴力なのか、合意のうえでの性行為なのかは、「馬乗りにされた犬が明らかにその活動を楽しんでいないように見えた」かどうかで“ウィルソン”が判断した。 この「調査」の結果、性暴力の100%はオス犬によって行なわれ、「被害者」の86%がメス犬、12%がオス犬(2%は性別を特定できず)だった。興味深いのは飼い主の反応で、オス犬が別のオス犬を「レイプ」しようとしたときは97%の確率で介入したが、メス犬が「レイプ」されたときは32%しか介入しようとしなかった。そればかりか、飼い主の12%は逆にオス犬を励まし、18%は声を出して笑った。逆にオス犬同士の性交渉は飼い主の7%しか笑わず、「同性愛嫌悪」と一致する反応を見せた――とされる。 驚くのは、著名なフェミニズム雑誌の査読者たちがこの「(バカバカしい)論文」を絶賛したことだ。そればかりかこの雑誌の編集者は、創刊25周年の「記念論文」としてこの「研究」を掲載することを提案した……』、「犬同士の性暴力・・・に対して飼い主がどのような反応をするかだった。 「論文」によれば、ドッグパークでは60分に1回の割合で「レイプ」事件が、71分に1回の割合で「暴力」事件(ドッグファイト)が起きた。それが性暴力なのか、合意のうえでの性行為なのかは、「馬乗りにされた犬が明らかにその活動を楽しんでいないように見えた」かどうかで“ウィルソン”が判断した。 この「調査」の結果、性暴力の100%はオス犬によって行なわれ、「被害者」の86%がメス犬、12%がオス犬・・・だった。興味深いのは飼い主の反応で、オス犬が別のオス犬を「レイプ」しようとしたときは97%の確率で介入したが、メス犬が「レイプ」されたときは32%しか介入しようとしなかった」、「ジェンダー・スタディーズの議論を「人間と動物が交差する独特の都市空間」に適用し、犬とその飼い主の相互作用から「ジェンダー的、人種的、同性愛的に深く根づいたシステム」を暴き出そうとする」姿勢は微笑ましい。
・『「不満研究事件」の余波  「ドッグパーク論文」以外に査読を通って掲載された「デタラメ論文」には、筋肉ムキムキの身体を賞賛するのは文化的な差別であり、ボディビルディングの基準に脂肪も加えるべきだという「肥満のボディビルディング(Fat Bodybuilding)」、異性愛の男が性具(バイブレーター)を自分で肛門に挿入してマスターベーションすることで、同性愛嫌悪やトランスフォビアを減少させることができると論じる「性具(Dildos)」などがある。 査読を通ったが掲載が間に合わなかった論文のひとつ「フェミニスト版『我が闘争』(Feminist Mein Kampf)」は、ヒトラーの『我が闘争(Mein Kampf)』をフェミニズム用語で書き換え、「不満研究(批判理論)」風に仕立てたものだ。これらの「デタラメ論文」が高い評価を得たことで、著者たちは、他の研究者が書いた4本の(デタラメでない)論文の査読者になることを要請されたというオマケまでついた(「倫理的な理由」からこの依頼は断ったという)。 この興味深い「実験」は、「ドッグパーク論文」がSNSでバズり、メディアが「著者」を探しはじめたことで中断を余儀なくされた。この「学術スキャンダル」はウォールストリートジャーナルやニューヨークタイムズが大きく報じ、著者たちの「実験(いたずら)」にひっかかった学術誌は相次いでデタラメ論文を撤回した。 「不満研究事件」の余波は著者たちにも及び、3人のなかでで唯一教職についていたピーター・ボゴシアンは2021年、「さまざまな嫌がらせや報復にさらされた」ことを理由にポートランド州立大学を辞任した。  ヘレン・プラックローズはキャンセルカルチャーを批判するオンライン雑誌『アエロ・マガジン(Areo Magazine)』の編集長を務めていたが、21年に「カウンターウェイト(Counterweight)」という組織を立ち上げた。設立の趣旨は、左派(レフト)に偏りすぎた言論空間の重心(ウェイト)を正すことで、「文化戦争のための市民相談」を行なっている。 ジェームズ・リンゼイはオンライン雑誌『新しい言説(New Discourses)』の創設者で、「ウォーク(Woke)」と呼ばれる「目覚めたひとびと(社会的な「意識高い系」)」にしか理解できない「政治的に正しい難解用語」ではなく、対話が可能な言葉を取り戻すことを目指して活動している。 当然のことながら、ボゴシアン、プラックローズ、リンゼイは左派から「右翼」「極右」「差別主義者」と批判(あるいは罵倒)されている。その一方でリチャード・ドーキンスやスティーブン・ピンカーなど、キャンセルカルチャーに批判的なリベラル知識人は『「社会正義」はいつも正しい』を絶賛している』、「この「学術スキャンダル」はウォールストリートジャーナルやニューヨークタイムズが大きく報じ、著者たちの「実験(いたずら)」にひっかかった学術誌は相次いでデタラメ論文を撤回した」、「著者たちにも及び、3人のなかでで唯一教職についていたピーター・ボゴシアンは2021年・・・ポートランド州立大学を辞任」、当然のことだ。
・『「絶対的な正義」を否定したはずのポストモダン思想が、マイノリティを「絶対的な正義」とする思想へと反転  1968年の五月革命(パリで起きた学生と労働者の一斉蜂起)とプラハの春(改革を目指すチェコへのソ連軍の侵攻)によって「世界を変える」夢が挫折したあと、フランスから「ポストモダン」と呼ばれるようになる新しい思想潮流が登場した。ソシュールの言語論と、それを人類学に応用したレヴィ・ストロースの構造主義を源流とし、モダニズム(近代主義)が提示する大きな物語(革命や人権、自由、民主政)に異議を申し立てる思想運動と(とりあえずは)定義できるだろう。 ポストモダン思想は文学・映画や心理学(精神分析)、社会学(権力論)、経済学(消費資本主義の分析)などへと展開し、日本でも1970年代から知的流行に敏感な若者たちのあいだで広まり、やがて空前の「現代思想ブーム」が起きた(その後はサブカルチャー批評などに引き継がれた)。 プラックローズとリンゼイは、このポストモダン思想のなかで、とりわけミシェル・フーコーの権力論とジャック・デリタの「脱構築」の思想が、ポストコロニアル理論(カルチュラル・スタディーズ)、クィア理論、ジェンダー・スタディーズ、批判的人種理論(CRT)などの「《(批判)理論》」に大きな影響を与えたという。 応用ポストモダニズム(applied postmodernism)は1980年代から90年代にかけてアメリカで始まった新たな展開で、ポストモダン思想と社会正義を結びつけたところに特徴がある。だがこの組み合わせは、フランスの(元祖)ポストモダン思想に馴染んだひとは違和感を覚えるだろう。ポストモダンとは、モダン(西洋近代)が強要する真理や正義を拒絶し、確固たるものなどどこにもないという相対主義を徹底する思想運動だったからだ。 ところが応用ポストモダニズムでは、ここにふたたび「正義」が導入される。なぜこんなことができるかというと、それが「マイノリティの正義」だからだ。 構築」することだけだと主張した。 ところが「応用ポストモダニズム」では、フーコーとデリダの思想をさまざまな文化現象に当てはめ、植民地主義、人種差別、性差別、クイア差別などの痕跡を暴き出し、それを「脱構築」することで「差別」と闘うことができると論じた。これがポストモダンの一度目の「転回」だ。 ポストモダン思想では、人種や性別などはすべて「社会的構築物」だとする。この立場では、個人間には差異があったとしても、ヒト集団には実質的なちがいはなにもない。 ところが2010年代以降の「物象化ポストモダニズム(reified postmodernism)」になると、テキストに埋め込まれた差別が現実に存在(物象化)しているのだとされた(実在するのは「人種」や「性別」ではなく、この社会的構築物に対する「差別」だ)。 この二度目の転回によって、ポストモダン思想はたんなる文化批評から「社会正義」の運動になった。テキストのなかの差別が実在(リアルなもの)であるならば、それを取り出して、著者・制作者やメディア(プラットフォーム)を批判することで、差別をなくす(すくなくとも減じる)ことができるはずだ。 このようにして、「家父長制、白人至上主義、(男/女の性自認を正常とみなす)シスノーマティビティ、(異性愛者正常とみなす)ヘテロノーマティビティ、(障害者を排除する)健常主義、(肥満者を嫌悪する)ファットフォビア」などを、政治家や芸能人など著名人の言動から見つけ出し、それを糾弾・解体すべきだとされるようになった。この「社会正義運動」を、SNSなどのテクノロジーが増幅・拡散して狂乱状態に陥ったのだ。 こうして、「絶対的な正義」を否定したはずのポストモダン思想が、マイノリティを「絶対的な正義」とする思想へと反転してしまった――というのが著者たちの主張になる』、「「絶対的な正義」を否定したはずのポストモダン思想が、マイノリティを「絶対的な正義」とする思想へと反転」、笑えない皮肉だ。
・『「肥満が危険で治療可能な医学的状態なのだという研究すべて」がファットフォビア的  物象化ポストモダニズムがどれほど奇妙な主張か、ファット(肥満)スタディーズの例で見てみよう。ちなみに日本とアメリカでは「肥満」の定義が異なり、日本はBMI(体重を身長の2倍で割った体格指数)25.0以上が肥満だが、アメリカではBMI25.0~30.0が過体重、30.0超が肥満とされている。ここでいう「ファット(肥満)」とは、身長170センチ程度の平均的な日本人男性なら体重100キロを超えるようなケースだ。 ファット・スタディーズではポストモダンの様式どおり、肥満は社会的構築物だということになる。肥満への嫌悪(ファットフォビア)は、同性愛者やトランスジェンダーなどへの社会的な嫌悪(フォビア)と同じだ。 アメリカでは早くも1969年に「全米ファット受容促進協会(NAAFA)」が設立されているが、本格的に肥満者の権利運動が展開するのは1990年代で、ボディポジティブ運動が「太った身体」の受容と賞賛を目指し、「全サイズ健康運動」はどんなサイズの身体でも健康でいられると主張した。肥満についての否定的な意見は、人種や性別、性的指向などへの否定と同様に、変更不可能な特性に対する偏見なのだ。 だがその後、こうした肥満者の権利運動はファット・スタディーズによってさらに批判されることになる。ボディポジティブ運動は、「集合性ではなく個人性を強調する」からだ。 《理論》にとっては、差別の元凶となるのはあくまでも社会の権力関係であって、差別されている個人が問題なのではない。だがボディポジティブ運動は、「自分の身体を愛してそれに満足するという責任」を個人に負わせている。この「責任化」は、同性愛者を差別する社会を放置したまま、同性愛者に「もっと自分を愛しなさい」と説教するのと同じだというのだ。 だがこの主張には、きわめて危ういものがある。アメリカには同性愛者を強制的に「治療」した歴史があり、それはときにきわめて残酷なものになったが、現在では性的指向は生得的なもので治療対象ではないとの理解が広まった。肥満差別を同性愛差別と同じだとすると、肥満への「治療」も否定すべきだということになってしまう。そして実際に、このような主張がなされている。 体重の遺伝率は身長とほぼ同じで、太りやすいかどうかはかなりの程度、遺伝で決まっている。その意味で、肥満者を「意志が弱い」「やせる努力をしていない」と見なすことが差別的なのはその通りだが、だからといって肥満を放置しておいていいということにはならない。あらゆる医学データが、肥満は喫煙と同様かそれ以上に健康を損ね、寿命(および健康寿命)を短くすることを示しているからだ。 だがファット・スタディーズでは、「肥満が危険で(通常は)治療可能な医学的状態なのだという研究すべて」をファットフォビア的だと見なし、肥満者が医療支援を拒否し、「肯定的なコミュニティ『知識』」を受け容れるだけの力を与えようとする。だがこれは、ほんとうに肥満者の利益になっているのだろうか』、行き過ぎのような気がする。
・『「差別されている者(マイノリティ)はつねに正しく、差別する側にいる者(マジョリティ)はつねに間違っている」  ファット・スタディーズは極端な例だが、同じ論理は障害者研究にも登場する。そこでは、問題なのは障害者個人ではなく(これはその通りだ)、健常者を「正常」、障害者を「異常」と見なす「健常者主義(ableism)」なのだから、治療や治癒の試み(医療化)は拒絶すべきだと主張される。 プラックローズとリンゼイは、このような奇妙な(そして有害な)論理のねじれが、人種差別や性差別、性的少数者差別など、《理論》が取り上げるあらゆる領域に見られ、それは差別されている「被害者」を支援するよりも、むしろ問題の解決を困難にしていると批判している。 《理論》は難解な哲学用語を駆使するが、それだけでは社会運動として大衆を動員することはできない。その結果、必然的に「差別されている者(マイノリティ)はつねに正しく、差別する側にいる者(マジョリティ)はつねに間違っている」という極端に単純化された善悪二元論に陥ることになる。 CRT(批判的人種理論)では白人は「白人」であるというだけで人種差別の罪(原罪)を生涯背負わなければならないし、「交差性(インターセクショナリティ)」では、より多く差別されている者がより大きな正当性をもつ。白人女性のフェミニストよりブラックフェミニズム(黒人女性のフェミニズム)が重視されるべきだし、黒人女性の同性愛者(あるいはトランスジェンダー)はより大きな「正義」を主張できることになる。 これは「思想(あるいは理論)」というよりも、あらゆる反差別の闘争に見られる感情的な反発で、それが大きな影響力をもつようになったのは、誰もが直観的に理解できるからだろう。《理論》はこの感情的な怒りに、思想的な説明(らしきもの)を提供しているのだ。 あらゆる言説やテキストには「差別」が埋め込まれており、それを暴いて糾弾しなければならないという信念は、あらゆる権力機構がディープステイト(闇の政府)に侵食されており、それと闘わなくてはならないという右派の陰謀論に不気味なほどよく似ている。キャンセルカルチャーが「現代の魔女狩り」と呼ばれるのは、たんなる比喩ではなく、そこに宗教的熱狂のようなものを感じるからだろう。 日本ではこれまで、「社会正義」はリベラルな団体・知識人が担ってきた。そのため《理論》もリベラルな主張だと思われているが、いまやアメリカでは、「ラディカルレフト(過激な左派)」や「プログレッシブ(進歩派)」が、「社会正義」を掲げて(著者たちのような)リベラルと敵対している。この構図がわからないと、欧米(英語圏)で頻発する思想的・政治的な紛争を理解することはできないだろう。 著者たちの主張に説得力があると思うひとも、そうでないひともいるだろうが、日本でも本書が社会正義を論じる際の必読書となることは間違いない。 (橘玲氏の略歴等はリンク先参照)』、昔の学生運動も多くの分派が生じたが、「社会正義」を巡っても分派が生じているようだ。
タグ:東洋経済オンライン 哲学 (その4)(AIは「新型コロナ禍の悪夢」を予言したのか 少極集中から分散型システムへの転換が急務、コロナが露わにしたビッグ・データという幻想 ポスト・グローバル化時代の「生命」と「情報」、「社会正義」が複雑骨折している欧米の思想状況を理解せよ!) 広井 良典氏による「AIは「新型コロナ禍の悪夢」を予言したのか 少極集中から分散型システムへの転換が急務」 パンデミックで取上げる方が適切かとも思ったが、哲学として取上げる。 さすが哲学者らしく、捉える視点が広い。 「「コロナ後」の社会構想の第一の柱にあるのは、そうした包括的な意味での「分散型システム」への転換なのである」、「ドイツのような「多極集中」と呼べる国土構造に転換していくことが重要」、なるほど。 「格差の度合いを示す指数を比較すると、アメリカが筆頭であり、またイギリス、スペインやイタリアが上位に位置している。 要するに、格差の度合いとコロナウイルスの感染拡大や死者数の間には、かなりの関連性がうかがわれるのだ」、「日本は以前は」「比較的格差の小さいグループに属していたが、90年代頃から徐々に格差が大きくなり、近年では格差の大きいグループに入っている」、 改めて「日本」での格差拡大の深刻さを再認識させられた。「格差の度合いとコロナウイルスの感染拡大や死者数の間には、かなりの関連性がうかがわれる」、なるほど。 「イギリス」はさすがに「公的な医療保険制度ないし社会保障が未整備」とはしなかったが、そうであれば、同国で感染が広がっている理由を別途指摘すべきだ。 「日本の場合、医療システムの脆弱性ひいては政府の対応の不十分さを、国民の衛生意識や都市の衛生環境でかろうじて?カバーしている”という側面が確かにあるのであり、一度感染が拡大するとそうした脆さが一気に露呈する(=医療崩壊)おそれがある」、その後、「日本」で一時的に事実上の「医療崩壊」に近い状態になった。 広井 良典氏による「コロナが露わにしたビッグ・データという幻想 ポスト・グローバル化時代の「生命」と「情報」」 どのような観点で「読み解いて」くれるのだろう。 「「グローバル化」と「格差・貧困の拡大および都市環境の劣化」の2点」、「が極限的な形で進みつつあるのが現在の世界」、「今回の新型コロナウイルスの蔓延は、これまでの歴史の流れに照らして見るならば、ある種の必然的な出来事と言える面すら持っている」、その通りだ。 「最初にグローバル化を始めた国”であるイギリスが、経済の不振や移民問題等の中で、今度は逆にグローバル化に最初に「NO」を発信する国となったのが今回のEU離脱の基本的意味と言うべきである。 アメリカのトランプ現象も似た面を持っている。20世紀はイギリスに代わってアメリカが世界の経済・政治の中心となり(パクス・アメリカーナ)、強大な軍事力とともに「世界市場」から大きな富を獲得してきた。 しかし新興国が台頭し、国内経済にも多くの問題が生じ始める中、TPP離脱や移民規制など、まさに「グローバル化」に背を向ける政策を本格化させようとしているのである」、「こうした政策転換は“都合のよい”自国中心主義であり、グローバル化で“得”をしている間は「自由貿易」を高らかにうたって他国にも求め、やがて他国の経済が発展して自らが“損”をするようになると保護主義的になるという、身勝手な行動という以外ない面をもっているだろう」、その通りだ。 私には「ドイツ以北のヨーロッパに特徴的」な姿の方が望ましいように思える。 「実は「情報」やその関連産業は“S字カーブ”の成熟段階に入ろうとしているのであり、いわゆるGAFAの業績も最近ではさまざまな面で陰りがさしてきていると言われる。 そして、先述のように「情報」の次なる基本コンセプトは明らかに「生命」であり、それはこの世界におけるもっとも複雑かつ根源的な現象であると同時に、(分子生物学といった)ミクロレベルのみならず、生態系(エコシステム)、地球の生物多様性、その持続可能性といったマクロの意味ももっている。 こうした包括的な意味の「生命」あるいはそれと人間との関わりが、これか の21世紀の「ポスト情報化」時代の科学や経済社会の中心的なコンセプトとなっていく」、なるほど。 なかなか意欲的な取り組みだ。今後の展開を大いに期待したい。 ダイヤモンド・オンライン 橘玲氏による「「社会正義」が複雑骨折している欧米の思想状況を理解せよ!」 「「正義」がどのように複雑骨折しているか」とは興味深そうだ 「ポストモダン思想が、たんなる言語遊戯に堕しているとの不満があった。そこで、学術誌に無内容の論文を掲載させ、その「学術」自体が無内容であることを証明しようとしたのだ。 このスキャンダルによって、ポストモダン思想は科学(学術)から脱落し、その命脈は尽きた……とはぜんぜんならなかった。 アメリカでは逆に、その変種が人文系のあらゆる学術分野を侵食し、大きな影響力をもつようになったというのが著者たちの主張になる」、「アメリカ」の学者たちはとんでもなく面白いことをするものだ。 「犬同士の性暴力・・・に対して飼い主がどのような反応をするかだった。 「論文」によれば、ドッグパークでは60分に1回の割合で「レイプ」事件が、71分に1回の割合で「暴力」事件(ドッグファイト)が起きた。それが性暴力なのか、合意のうえでの性行為なのかは、「馬乗りにされた犬が明らかにその活動を楽しんでいないように見えた」かどうかで“ウィルソン”が判断した。 この「調査」の結果、性暴力の100%はオス犬によって行なわれ、「被害者」の86%がメス犬、12%がオス犬・・・だった。 興味深いのは飼い主の反応で、オス犬が別のオス犬を「レイプ」しようとしたときは97%の確率で介入したが、メス犬が「レイプ」されたときは32%しか介入しようとしなかった」、「ジェンダー・スタディーズの議論を「人間と動物が交差する独特の都市空間」に適用し、犬とその飼い主の相互作用から「ジェンダー的、人種的、同性愛的に深く根づいたシステム」を暴き出そうとする」姿勢は微笑ましい。 「この「学術スキャンダル」はウォールストリートジャーナルやニューヨークタイムズが大きく報じ、著者たちの「実験(いたずら)」にひっかかった学術誌は相次いでデタラメ論文を撤回した」、「著者たちにも及び、3人のなかでで唯一教職についていたピーター・ボゴシアンは2021年・・・ポートランド州立大学を辞任」、当然のことだ。 「「絶対的な正義」を否定したはずのポストモダン思想が、マイノリティを「絶対的な正義」とする思想へと反転」、笑えない皮肉だ。 行き過ぎのような気がする。 昔の学生運動も多くの分派が生じたが、「社会正義」を巡っても分派が生じているようだ。
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日本の構造問題(その29)(「Gゼロ」の提唱者・イアン・ブレマーが指摘「科学研究の衰退が 日本の命とりとなる」、経産省が手を出した業界から崩壊していく…日本企業が世界市場で勝てなかった根本原因 だから世界一だった液晶と半導体も崩壊した、誤解が多い「日本の生産性」低位が続く意外な盲点 「人への投資」だけを推し進めても意味がない) [経済政治動向]

日本の構造問題については、9月24日に取上げた。今日は、(その29)(「Gゼロ」の提唱者・イアン・ブレマーが指摘「科学研究の衰退が 日本の命とりとなる」、経産省が手を出した業界から崩壊していく…日本企業が世界市場で勝てなかった根本原因 だから世界一だった液晶と半導体も崩壊した、誤解が多い「日本の生産性」低位が続く意外な盲点 「人への投資」だけを推し進めても意味がない)である。

先ずは、11月12日付け現代ビジネス「「Gゼロ」の提唱者・イアン・ブレマーが指摘「科学研究の衰退が、日本の命とりとなる」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/101905?imp=0
・『自信なさげにボソボソ喋るメガネの男、キシダに国を任せていて大丈夫なのか? 世界は、日本の総理に厳しい目を向けている。いったいどうすれば日本は復活できるのか、国内外の7人の「知の巨人」に聞いた。7人目は政治学者のイアン・ブレマー氏だ』、「イアン・ブレマー氏」の診断とは興味深そうだ。
・『混沌とした「Gゼロ」の世界  9月28日、都内で開かれた「Gゼロサミット」のために訪日し、翌日に首相官邸で岸田総理にお会いしました。 サミットで岸田氏は「ブレマー博士のおっしゃる『Gゼロ』の世界が現実のものになりました」といったことを話されていました。 私が「Gゼロ」という言葉を造ったのは、約10年前のことです。「G」は世界をリードする大国を指しますが、'12年頃にはG7やG20が機能不全を起こしかけており「リーダー不在」になっていた。この状態を私は「Gゼロ」と名づけたのです。 そして'22年2月、プーチン大統領がウクライナ侵攻を始めたことで、世界秩序の崩壊がいよいよ現実のものとなりました。東アジアでも、台湾統一を公言する中国やミサイル発射を繰り返す北朝鮮など、軍事衝突の脅威が高まっています。 さらにキューバ危機から60年経っても、我々は何も学んでいないことも明らかになりました。想像しうる最悪の兵器―核によって人類が滅びかねない危機に再び直面しているのです。 ロシアがNATO加盟国に核ミサイルを撃ち込まない保障はありませんし、西側でも「核があればウクライナもロシアによる侵攻を防げたはず」「我々にも核が必要だ」といった声が上がっている』、確かに「「Gゼロ」の世界」は「「混沌とし」ている。
・『日本は「科学後進国」になりかけている  「Gゼロ」の世界は、想像以上に混沌としたものになりつつあります。これだけの難局を、岸田総理が乗り切れるとは到底思えません。 百歩譲って、日本、アメリカ、オーストラリア、インドが参加する「QUAD」の連携強化を進めている点は評価してもいいでしょう。 かつての「科学大国」が、今や「科学後進国」に。 しかし、日本には致命的な欠点があります。 科学研究や技術開発への投資が、ほとんど増えていないのです。'00年と'19年の研究開発費(名目額)を比較すると、日本は1.2倍とほぼ横ばいになっています。一方、米国は2.4倍、韓国は6.4倍、中国にいたっては24.7倍に急増している。 潤沢な研究資金を求め、日本を捨てて海外に出る研究者も多くいるようです。かつて「科学大国」と言われた日本は、今や「科学後進国」に転落する瀬戸際まで追い込まれています。 日本が特に遅れを取っている分野の一つが、デジタル技術です。現在の地政学は、デジタル技術の発展によって大きく転換しています。資金を投じてデジタル技術開発を続けないと、日本はあっという間にサイバー攻撃の餌食となります。 自律型ドローン、人工知能(AI)、さらには量子コンピュータなど、「破壊的なテクノロジー」は次々に生み出されています。 研究開発の努力を怠れば、日本は「Gゼロ」の世界を荒らしまわる強国に飲み込まれてしまうでしょう。 「知の巨人」シリーズ 1ポール・クルーグマンが激白「日本経済を復活させるには、定年を廃止せよ」 2昭和史を見つめてきた作家・保阪正康が岸田総理を斬る「宏池会の系譜に学ばぬ首相に失望した」 3経済学者・野口悠紀雄の提言「早く金利を上げて、円安を止めなさい」 4「賃金を上げて、非正規雇用を見直せ」ジャーナリストのビル・エモットが考える「日本再生への道」 5姜尚中が痛烈批判「岸田総理は、夏目漱石『それから』の主人公と同じ“煮え切らない男”」 6得権益を温存し衰退する日本…社会学者・宮台真司「愚かな総理を生み出したのは、からっぽの民衆だ」』、「かつて「科学大国」と言われた日本は、今や「科学後進国」に転落する瀬戸際まで追い込まれています」、「資金を投じてデジタル技術開発を続けないと、日本はあっという間にサイバー攻撃の餌食となります」、由々しい事態だ。

次に、11月16日付けPRESIDENT Onlineが掲載した一橋大学名誉教授の野口 悠紀雄氏による「経産省が手を出した業界から崩壊していく…日本企業が世界市場で勝てなかった根本原因 だから世界一だった液晶と半導体も崩壊した」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/63430
・『なぜ日本の製造業は衰退したのか。一橋大学名誉教授の野口悠紀雄さんは「政府による補助金政策に問題があった。かつては半導体産業にも力があったが、政府が“補助金漬け”にしたことによって競争力を失ってしまった」という――。(第1回)※本稿は、野口悠紀雄『円安と補助金で自壊する日本 2023年、日本の金利上昇は必至!』(ビジネス社)の一部を再編集したものです』、興味深そうだ。
・『90年代から始まった政府による製造業への介入政策  高度成長期、日本の製造業は国の直接介入を拒否した。1960年代に、通商産業省は外資自由化に備えて日本の産業の再編成を図ろうとし、「特振法」(特定産業振興臨時措置法)を準備した。しかし、その当時の日本の産業界は、これを「経済的自由を侵害する統制」であるとして、退けてしまったのである。外資による買収を防ぐより、政府に介入されないことのほうが重要と考えたのだ。 この当時、政府による保護策の対象は、高度成長に取り残された農業だった。ところが、1990年代の中頃から、この状況が変わってきた。競争力を失った製造業を救済するために、政府が介入するようになってきたのだ。 まず、マクロ政策において金融緩和を行い、円安に導いた。それに加え、経済産業省の指導による産業再編(その実態は、競争力が失われた製造業への補助と救済)が行われてきた。そして、2000年頃から、国による保護・救済の対象が、農業から製造業に変わった。世界経済の大転換に対して、産業構造の転換を図るのではなく、従来のタイプの製造業を延命させようとしたのだ。 特に08年のリーマンショック(08年9月にアメリカの投資銀行リーマンブラザーズが経営破綻したことをきっかけに生じた金融危機)後は、さまざまな製造業救済策がとられた。雇用調整助成金、エコカー減税・補助金、地上波デジタル移行によるテレビ受像機生産の助成などだ。 政府の干渉が強いと、産業構造の調整が遅れる。DRAM(半導体記憶素子)のエルピーダメモリや、LSI(大規模集積回路)のルネサスエレクトロニクスなどがその例だ。これらは業界再編成のために官主導で設立された会社だが、失敗しただけでなく、汚職をも生んだ。また、シャープやパナソニックによる巨大工場建設に関しては、巨額の補助金が支出された。こうして、民間企業の政府への依存が強まってきた。 これは、日本の製造業が衰退したことの反映だ。安倍晋三内閣の成長戦略も、製造業を中心とした従来の産業構造を延命させることを目的として、政府が民間経済活動に介入しようとするものだった』、「エルピーダメモリ」、「ルネサスエレクトロニクス」などは「業界再編成のために官主導で設立された会社だが、失敗しただけでなく、汚職をも生んだ」、「シャープやパナソニックによる巨大工場建設に関しては、巨額の補助金が支出された。こうして、民間企業の政府への依存が強まってきた」、「これは、日本の製造業が衰退したことの反映だ。安倍晋三内閣の成長戦略も、製造業を中心とした従来の産業構造を延命させることを目的として、政府が民間経済活動に介入しようとするものだった」、情けない限りだ。
・『史上最大の負債総額を出して破綻したエルピーダメモリ  これまで日本で行われた企業再建のかなりのものが、官主導で行われた。企業救済を目的とする官製ファンドとして、2003年に経済産業省が主導して「産業再生機構」がつくられた。そして、04年には、カネボーやダイエーの再建にかかわった。さらに09年には、「産業革新機構」が設立された。将来性がある企業や企業の重複事業をまとめることによって、革新をもたらすとされた。 半導体産業については、NEC、日立のDRAM事業を統合したエルピーダメモリが1999年に発足した(後に、三菱電機のDRAM事業を譲り受ける)。しかし、経営に行き詰まり、改正産業活力再生特別措置法の適用第1号となって、公的資金活用による300億円の出資を受けた。それでも事態は好転せず、2012年2月に、会社更生法の適用を申請し、製造業として史上最大の負債総額4480億円で破綻した。 日本の半導体産業が弱体化したのは、補助金が少なかったからではない。補助金漬けになったからだ。「補助して企業を助ければよい」という考えが基本にある限り、日本の半導体産業が復活することはないだろう』、「日本の半導体産業が弱体化したのは、補助金が少なかったからではない。補助金漬けになったからだ。「補助して企業を助ければよい」という考えが基本にある限り、日本の半導体産業が復活することはないだろう」、その通りだ。
・『莫大な補助金が投入されたジャパンディスプレイだったが…  ジャパンディスプレイ(JDI)は、ソニー、東芝、日立が行っていた液晶画面事業を合体して2012年につくられた組織だ。産業革新機構が2000億円を出資し、国策再生プロジェクトとしてスタートした。ところが、19年に危機的な状態になった。 産業革新機構から設立時に2000億円の出資を受け、16年から17年にかけても750億円の投資が追加でなされた。赤字の民間企業に国の金を投入し続けることに対して批判があったが、17年には1070億円の、18年にも200億円の支援がなされた。しかし、18年12月10日、産業革新投資機構の民間出身の取締役全員が辞職。革新機構は機能を停止した。 ジャパンディスプレイの財務状況は厳しいままだった。一時は債務超過に陥った。会計不正事件もあった。20年10月、石川県白山市の工場をシャープとアップルに売却し、経営安定に努めているが、いまだに赤字を続けている。液晶は、半導体と並んで日本製造業の強さの象徴であり、お家芸の技術とされていたものだ。それがこのような状態になった。必要なのは、世界的な製造業の構造変化に対応することだ。 数社の事業を統合して重複を除くというようなことではない。エルピーダメモリやジャパンディスプレイが成功しなかったのは、世界の製造業の基本構造が変わってしまったからだ』、「世界の製造業の基本構造が変わってしまった」、どういうように変わったのだろう。
・『政府の再建政策では抜本的な変革は実現できない  大きな改革は、企業の再建でなく、企業の新陳代謝によってしか進まない。ところが、官庁が主導して関係企業や金融機関が協議して決める再建は、これまでの日本的なビジネスモデルと産業構造を維持することを目的にしている。だから、抜本的な変革が実現できない。 このような官民協調体制が、日本の産業構造の変革を阻んできたのだ。この結果、日本の産業構造の基本的な仕組みと企業のビジネスモデルは、ほとんど変わっていない。日本では、企業の消滅を伴う改革は望ましくないと考えられてきた。その大きな理由は、雇用の確保だ。 しかし企業が残って雇用を維持し続けても、全体としての雇用情勢は大きく変わっている。非正規雇用が全体の4割にもなっている。新しい産業が成長して雇用機会を生み出していくしか、答えはない。 半導体事業や液晶事業不振のもともとの原因は、日本メーカーの新製品開発能力が低下し、競争力のある製品をつくり出せなくなったことだ。エルピーダメモリの場合について見れば、DRAMはもともと付加価値が低い製品だった。ジャパンディスプレイの売上高も、2016年までは、iPhoneの出荷台数の成長とともに増大していた。 ところが、16年以降、iPhoneはパネルに有機ELを採用し始めた。しかし、JDIは有機ELの準備がまったくできていなかった。こうしたことの結果、16年をピークに売上高が激減したのだ』、「半導体事業や液晶事業不振のもともとの原因は、日本メーカーの新製品開発能力が低下し、競争力のある製品をつくり出せなくなったことだ」、「iPhoneはパネルに有機ELを採用し始めた。しかし、JDIは有機ELの準備がまったくできていなかった。こうしたことの結果、16年をピークに売上高が激減」、なるほど。
・『日本経済が抱えている問題は、金融政策では対処できない  半導体では、経営者が大規模投資を決断できなかったことが、その後の不振の原因といわれる。しかし、液晶の場合には、大規模な投資を行った。特にシャープの場合は、「世界の亀山モデル」といわれる垂直統合モデル(液晶パネルの生産から液晶テレビの組立までを同一工場内で行う)を展開した。 ところが、結局は経営破綻して、台湾の鴻海(ホンハイ)の傘下に入らざるを得なくなった。厳重な情報管理をして液晶の技術を守るとしていたが、いまになってみれば、液晶はコモディティ(一般的な商品で、品質で差別化できないため、価格競争せざるを得ないもの)でしかなかったのだ。 日本経済に大きな影響を与えたのは、世界経済の構造変化だ。これは、IT(情報通信技術)の進展と新興国の工業化によってもたらされたものであり、供給面で起きた変化だ。したがって、金融政策では対処できない問題である。 金融緩和をすれば円安になる。そして、円安が進行している間は企業利益が増加して株価が上がる。しかし、これは一時的現象にすぎない。それにもかかわらず、金融緩和で円安にすること、それによって「デフレ脱却」をすることが目的とされてきた。1993年以降、断続的に円売り・ドル買い介入が行われていたが、これがその後の量的金融緩和と大規模な為替介入につながっていった。 日本経済は、いまに至るまで、この路線上の経済政策を続けている。アベノミクスも異次元金融緩和も、その一環だ』、「日本経済に大きな影響を与えたのは、世界経済の構造変化だ。これは、IT・・・の進展と新興国の工業化によってもたらされたものであり、供給面で起きた変化だ。したがって、金融政策では対処できない問題である」、その通りだ。「金融緩和で円安にすること、それによって「デフレ脱却」をすることが目的とされてきた。1993年以降、断続的に円売り・ドル買い介入が行われていたが、これがその後の量的金融緩和と大規模な為替介入につながっていった。 日本経済は、いまに至るまで、この路線上の経済政策を続けている。アベノミクスも異次元金融緩和も、その一環だ」、同感である。

第三に、11月30日付け東洋経済オンラインが掲載した学習院大学経済学部教授の宮川 努氏による「誤解が多い「日本の生産性」低位が続く意外な盲点 「人への投資」だけを推し進めても意味がない」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/636134
・『日本の経済成長を議論するうえで、「生産性の低さ」は大きな課題となっている。労働生産性を見ると、主要先進7カ国(G7)で最も低く、OECDでも23位にとどまる。 ただ、生産性に対する誤解は少なくない。「生産性が低い」と感じる人がいる一方で、「こんなに一生懸命働いていて、もうこれ以上働けないくらいなのに、生産性が低いといわれても……」と思う人もいる。 はたして生産性とは何なのか、生産性を向上させるためにはどうすればいいのか。生産性の謎を解く連載の第5回は、「生産性と設備投資」について、学習院大学経済学部教授の宮川努氏が解説する。 日本では「人への投資」がさかんに強調されている。確かに「人への投資」は重要だが、それは生産や研究のための新しい投資が行われて初めて効果的になる。 実は世界金融危機以降に潜在成長力が低下した先進諸国の大きな課題の1つは、生産のための通常の設備投資が減退していることなのである。 10月にイギリスのマンチェスターで開かれた生産性データベースの国際カンファレンスでキーノートスピーチを行った、イングランド銀行(イギリスの中央銀行)の金融政策委員会メンバーであるジョナサン・ハスケル氏も「投資と生産性」というタイトルで、先進諸国の投資の減退の要因を探っていた。 古い設備で経済活動を行うなら「人への投資」は不要(日本も例外ではない。経済成長の要因は、労働投入の増加分と資本投入の増加分とそして生産性に分解することができるが、今世紀に入ってからの資本投入の経済成長への寄与はほとんどないに等しい。つまり設備投資が少なく、新たな設備が蓄積されないのである。 このため、下のグラフにあるように設備の年齢は急速に上昇している。 (外部配信先では図や画像を全部閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください) もし古い設備で経済活動を行うのなら、「人への投資」は不要である。新たな知識やスキルを得ても使う場所がないのだから時間の無駄というものである。通信手段としてファックスを使い続ける社会にとっては、人材教育は不必要だが、革新的な投資を行えば人材投資は不可避となる。つまり設備を更新していくことと人材投資は車の両輪なのである。 投資には、潜在的な成長力(生産能力)を上げるという役割のほかにもう1つの側面がある。それは景気循環への影響である。 投資という行為は、建物を建築する資材を購入したり、機械設備を購入したりするため、財やサービスへの需要を増やすことになる。この支出の増加は、消費の増加や輸出の増加と同様景気にとってプラスに働く。生産能力の増加という供給面の効果と支出の増加という需要面の効果の双方を併せ持つことを「投資の二面性」と呼んでいる。 それでは投資が増加すればいいことづくめなのかといえば、そうともいえない。投資の増加は、景気を大いに盛り上げるが、いったん増加した生産能力は容易に減らすことはできない。このため、需要が減少した際には、企業は過剰設備を抱えることになる。バブル崩壊後の日本も大幅な過剰設備を抱えていた。 しかし生産性を向上させるためには、こうした設備の過剰を乗り越えて、新たな設備を導入していく必要がある。鉄道事業で自動券売機や自動改札を導入しなければ、生産性は向上しないし、小売業でも自動店舗やセルフ・レジのための機械の導入は、生産性の向上に貢献しているといえる。 今世紀に入ってからの日本は残念ながらこうした生産性向上のための投資がなかなか広がらず、逆に労働投入が増えて生産性の低迷が生じているのである』、「今世紀に入ってからの日本は残念ながらこうした生産性向上のための投資がなかなか広がらず、逆に労働投入が増えて生産性の低迷が生じている」、なるほど。
・『株価が上昇する一方で設備投資が低迷  ただ不可解なのは、2010年代は企業の株価が大きく上昇した時期でもあった。ダウ=ジョーンズで見ても、日経平均株価で見ても、2010年代の初めから最後にかけて株価は3倍に上昇している。通常、企業価値が上昇するということは、投資家が設備投資から生まれる将来的な利益の増加を期待していることを意味している。 つまり一般的に株価と設備投資は歩調を合わせて動くものなのである。それにもかかわらず、2010年代は株価が上昇する一方で、設備投資が低迷するというパズルが生じていた。 このパズルを説明する要因として、先進国共通の要因としては3つ挙げられる。 1つ目は無形資産投資が増えていることである。1990年代後半にアメリカでIT革命が起きてから、ソフトウエアや人材投資をはじめとした目に見えない投資が増えている。株式市場はこの投資による収益の増加を評価しているが、公表される企業の財務諸表にはこうした資産のほとんどは計上されていない。したがって、株式市場での評価を基準にした企業価値と、会計上の投資の変動に乖離が生じるのである。 2つ目は市場集中度が上昇し、新規企業の参入や新規投資が行いにくくなったという点である。アマゾンもグーグルも1990年代に創業した当初は、比較的小規模なベンチャー企業だったが、今やどの企業も太刀打ちできないほどの市場支配力を持っている。リーディング産業におけるこうした独占力は、その企業の利益を増大させ、株価を引き上げる一方で、経済全体の投資を縮小させる効果を持っている。 3つ目は、海外直接投資の影響である。先進国の市場はすでに成熟しているため、企業は成長著しい新興国に投資をしてきた。こうした海外での投資は企業に収益をもたらし株価を引き上げるが、国内投資は振るわないという現象が起きる』、「2010年代は株価が上昇する一方で、設備投資が低迷するというパズルが生じていた」、「1つ目は無形資産投資が増えている」ので、「株式市場での評価を基準にした企業価値と、会計上の投資の変動に乖離が生じる」、「2つ目は市場集中度が上昇し、新規企業の参入や新規投資が行いにくくなった」、「3つ目は、海外直接投資の影響」、「先進国の市場はすでに成熟しているため、企業は成長著しい新興国に投資をしてきた。こうした海外での投資は企業に収益をもたらし株価を引き上げるが、国内投資は振るわないという現象が起きる」、なるほど「パズル」が解けたようだ。
・『日本を見た場合の最大の要因は?  日本の場合を見てみると、無形資産投資の増加については、ある程度あてはまる。しかし、その無形資産投資額も2010年代からは横ばいになっており、あまり有形資産の投資をカバーする力はなさそうである。逆に人材投資は長い期間をとってみると減少しており、それが増加する企業価値と建物や機械などの投資の停滞とのギャップを埋めているとはいいがたい。 2つ目の市場集中度の上昇は、日本では一般的には見られない。しかし情報通信サービス業では、大企業と中小企業の生産性との差が見られることは確かである。この背景には、少数の企業が大きなシステム投資の受注を行い、それを中小の企業に請け負わせるという建設業に似た構造があると考えられる。こうした構造によって情報通信サービス業の投資や生産性が上昇してないという側面はある。 しかし日本の場合、この2つよりも大きな要因は、3つ目の海外直接投資であろう。すでに収益源が国内よりも海外になっている企業が多数あり、さらに為替要因が加わっている。すなわち、アベノミクスによって異次元の金融政策が開始されたことにより円安が進行した。この円安が海外の収益を国内の通貨で評価した場合にさらに増幅させることになり、企業価値を押し上げ、低迷する国内投資とのギャップを拡大しているのである。 実はこの最後の3番目の問題は、地方経済にも暗い影を投げかけている。徳井丞次・信州大学教授と牧野達治・一橋大学経済研究所研究員が最近延長された都道府県別産業生産性データベースを使って都道府県別の研究開発に伴う知識ストックを調べたところ驚くべき結果が出ている。) 1995年の知識ストックは、東京を1とした場合、大都市近郊の滋賀県や神奈川県は東京都の9割程度の技術力を有していた。しかしそれから20年あまりたった2018年には、東京都の9割程度の技術力を有する都道府県はなく、2位の神奈川県ですら東京都の7割台にまで低下している。 背景にはおそらく、この間に企業の海外進出と国内工場の閉鎖が進み、同時に技術者も減少していったことがある。地方はこの製造業の事業所の減少を観光業の振興で補完してきたが、それも東京オリンピック・パラリンピック開催時期における新型コロナウイルスの感染拡大という最悪のタイミングに起きた災禍によって先行きが不透明になっている』、「大きな要因は、3つ目の海外直接投資であろう。すでに収益源が国内よりも海外になっている企業が多数あり、さらに為替要因が加わっている。すなわち、アベノミクスによって異次元の金融政策が開始されたことにより円安が進行した。この円安が海外の収益を国内の通貨で評価した場合にさらに増幅させることになり、企業価値を押し上げ、低迷する国内投資とのギャップを拡大しているのである」、「1995年の知識ストックは、東京を1とした場合、大都市近郊の滋賀県や神奈川県は東京都の9割程度の技術力を有していた。しかしそれから20年あまりたった2018年には、東京都の9割程度の技術力を有する都道府県はなく、2位の神奈川県ですら東京都の7割台にまで低下」、ここまで「東京都」への「集中」が進んだとは、驚かされた。
・『日本は研究開発への支援が足りない?  研究開発力に関してはこうした量的な蓄積に加えて質的な問題も指摘されている。スタンフォード大学のニック・ブルーム教授やチャールズ・ジョーンズ教授らは、研究開発投資の効率性の低下について検証した研究を発表している。彼らは、半導体の集積密度が1年半から2年で2倍になるというムーアの法則を達成したり、新薬を開発したりするためには、これまで以上の研究資源を投入しなければならなくなっていることを示した。 従来の研究開発に関する研究では、研究開発への資源投入量が多ければ多いほど生産性の向上が期待されるという結果が得られていた。しかしながら、彼らが示したのは研究開発投入量当たりの生産性向上分、つまり研究開発の効率性が低下しているために、従来と同様の研究開発資源を投入しても、従来以下の生産性向上しか得られないというものであった。 日本では研究開発への支援が足りないということがさかんにいわれている。しかしながら量的な指標で見ると、日本の研究開発費の対GDP比は長年3%以上を保っている。これは韓国の4%には及ばないが、2%台の欧米先進諸国よりも高い。それでも研究開発費が十分でないということは、革新的な成果を出すために従来以上の資金や資源投入を必要としているということなのだろう。 こうした状況下では、たとえGDP比率が日本より低くとも、GDP自体が急速に膨らんでいる中国の研究成果が存在感を増しているというのもうなずける。) 国内における生産設備や研究開発への投資を増やし、生産性への向上につなげていくにはどのようにすればよいのだろうか。頼るのは、今回の台湾の半導体メーカーTSMCの進出のような海外からの直接投資だろう。 もともと直接投資というのは、経営能力の海外移転として捉えることができる。日本が好調であった時期には、日本の生産プロセスを海外に移転することが移転元、移転先双方にとって好ましいことであった。日本の経営能力が有意な分野が少なくなった現在、今度は日本が直接投資を積極的に受け入れることが生産性向上、ひいてはこれからの成長のカギとなる』、「日本の経営能力が有意な分野が少なくなった現在、今度は日本が直接投資を積極的に受け入れることが生産性向上、ひいてはこれからの成長のカギとなる」、寂しいが、認めざるを得ない。
・『海外直接投資を増やすための2つのハードル  ただし、こうした楽観的な期待には2つの注釈が必要になる。 1つは、従来から指摘されていることだが、日本では対日直接投資を実施する際の手続きが煩雑で、これが一種の参入障壁のようになっていた。このため日本への直接投資は中国や韓国よりも低い水準にあった。 もう1つは最近機運が高まっている経済安全保障による制約である。これにより、例えば半導体では外資メーカーが政府の補助金までもが受けられる一方で、ほかの分野では参入を拒否される企業も出てくる可能性がある。こうした政府の恣意的な介入が多くなると、対日投資は増えない。 手続きの煩雑さについては、当面の間はデジタル化を通して手続きを簡素化する方向で進めることが必要だろう。 経済安全保障による制約に関しては、短期間で容易に解決できる状況ではない。むしろこれまでのサプライチェーンが、自由主義経済圏を中心としたものに再編されていくとすれば、その再編過程の中で日本への直接投資が増えていくことを期待するしかないだろう』、「手続きの煩雑さについては、当面の間はデジタル化を通して手続きを簡素化する方向で進めることが必要だろう」、その通りだ。 「経済安全保障による制約に関しては、短期間で容易に解決できる状況ではない。むしろこれまでのサプライチェーンが、自由主義経済圏を中心としたものに再編されていくとすれば、その再編過程の中で日本への直接投資が増えていくことを期待するしかないだろう」、その通りなのだろう。
タグ:日本の構造問題 (その29)(「Gゼロ」の提唱者・イアン・ブレマーが指摘「科学研究の衰退が 日本の命とりとなる」、経産省が手を出した業界から崩壊していく…日本企業が世界市場で勝てなかった根本原因 だから世界一だった液晶と半導体も崩壊した、誤解が多い「日本の生産性」低位が続く意外な盲点 「人への投資」だけを推し進めても意味がない) 現代ビジネス「「Gゼロ」の提唱者・イアン・ブレマーが指摘「科学研究の衰退が、日本の命とりとなる」」 「イアン・ブレマー氏」の診断とは興味深そうだ。 確かに「「Gゼロ」の世界」は「「混沌とし」ている。 「かつて「科学大国」と言われた日本は、今や「科学後進国」に転落する瀬戸際まで追い込まれています」、「資金を投じてデジタル技術開発を続けないと、日本はあっという間にサイバー攻撃の餌食となります」、由々しい事態だ。 PRESIDENT ONLINE 野口 悠紀雄氏による「経産省が手を出した業界から崩壊していく…日本企業が世界市場で勝てなかった根本原因 だから世界一だった液晶と半導体も崩壊した」 野口悠紀雄『円安と補助金で自壊する日本 2023年、日本の金利上昇は必至!』(ビジネス社) 「エルピーダメモリ」、「ルネサスエレクトロニクス」などは「業界再編成のために官主導で設立された会社だが、失敗しただけでなく、汚職をも生んだ」、「シャープやパナソニックによる巨大工場建設に関しては、巨額の補助金が支出された。こうして、民間企業の政府への依存が強まってきた」、「これは、日本の製造業が衰退したことの反映だ。安倍晋三内閣の成長戦略も、製造業を中心とした従来の産業構造を延命させることを目的として、政府が民間経済活動に介入しようとするものだった」、情けない限りだ。 「日本の半導体産業が弱体化したのは、補助金が少なかったからではない。補助金漬けになったからだ。「補助して企業を助ければよい」という考えが基本にある限り、日本の半導体産業が復活することはないだろう」、その通りだ。 「世界の製造業の基本構造が変わってしまった」、どういうように変わったのだろう。 「半導体事業や液晶事業不振のもともとの原因は、日本メーカーの新製品開発能力が低下し、競争力のある製品をつくり出せなくなったことだ」、「iPhoneはパネルに有機ELを採用し始めた。しかし、JDIは有機ELの準備がまったくできていなかった。こうしたことの結果、16年をピークに売上高が激減」、なるほど。 「日本経済に大きな影響を与えたのは、世界経済の構造変化だ。これは、IT・・・の進展と新興国の工業化によってもたらされたものであり、供給面で起きた変化だ。したがって、金融政策では対処できない問題である」、その通りだ。 「金融緩和で円安にすること、それによって「デフレ脱却」をすることが目的とされてきた。1993年以降、断続的に円売り・ドル買い介入が行われていたが、これがその後の量的金融緩和と大規模な為替介入につながっていった。 日本経済は、いまに至るまで、この路線上の経済政策を続けている。アベノミクスも異次元金融緩和も、その一環だ」、同感である。 東洋経済オンライン 宮川 努氏による「誤解が多い「日本の生産性」低位が続く意外な盲点 「人への投資」だけを推し進めても意味がない」 「今世紀に入ってからの日本は残念ながらこうした生産性向上のための投資がなかなか広がらず、逆に労働投入が増えて生産性の低迷が生じている」、なるほど。 「2010年代は株価が上昇する一方で、設備投資が低迷するというパズルが生じていた」、「1つ目は無形資産投資が増えている」ので、「株式市場での評価を基準にした企業価値と、会計上の投資の変動に乖離が生じる」、「2つ目は市場集中度が上昇し、新規企業の参入や新規投資が行いにくくなった」、 「3つ目は、海外直接投資の影響」、「先進国の市場はすでに成熟しているため、企業は成長著しい新興国に投資をしてきた。こうした海外での投資は企業に収益をもたらし株価を引き上げるが、国内投資は振るわないという現象が起きる」、なるほど「パズル」が解けたようだ。 「大きな要因は、3つ目の海外直接投資であろう。すでに収益源が国内よりも海外になっている企業が多数あり、さらに為替要因が加わっている。すなわち、アベノミクスによって異次元の金融政策が開始されたことにより円安が進行した。この円安が海外の収益を国内の通貨で評価した場合にさらに増幅させることになり、企業価値を押し上げ、低迷する国内投資とのギャップを拡大しているのである」、 「1995年の知識ストックは、東京を1とした場合、大都市近郊の滋賀県や神奈川県は東京都の9割程度の技術力を有していた。しかしそれから20年あまりたった2018年には、東京都の9割程度の技術力を有する都道府県はなく、2位の神奈川県ですら東京都の7割台にまで低下」、ここまで「東京都」への「集中」が進んだとは、驚かされた。 「日本の経営能力が有意な分野が少なくなった現在、今度は日本が直接投資を積極的に受け入れることが生産性向上、ひいてはこれからの成長のカギとなる」、寂しいが、認めざるを得ない。 「手続きの煩雑さについては、当面の間はデジタル化を通して手続きを簡素化する方向で進めることが必要だろう」、その通りだ。 「経済安全保障による制約に関しては、短期間で容易に解決できる状況ではない。むしろこれまでのサプライチェーンが、自由主義経済圏を中心としたものに再編されていくとすれば、その再編過程の中で日本への直接投資が増えていくことを期待するしかないだろう」、その通りなのだろう。
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異次元緩和政策(その43)(円安構造の固定化であきらかになる金融政策の不都合な真実、日銀が金融緩和策を変更すると一体どうなるのか 一歩間違えば円大暴落だけでは済まない事態に、経済学者・野口悠紀雄の提言「早く金利を上げて、円安を止めなさい」 「安売り依存」から脱却せよ) [経済政策]

異次元緩和政策については、7月15日に取上げた。今日は、(その43)(円安構造の固定化であきらかになる金融政策の不都合な真実、日銀が金融緩和策を変更すると一体どうなるのか 一歩間違えば円大暴落だけでは済まない事態に、経済学者・野口悠紀雄の提言「早く金利を上げて、円安を止めなさい」 「安売り依存」から脱却せよ)である。

先ずは、8月6日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した翁邦雄氏による「【翁邦雄・元日本銀行金融研究所所長に聞く】円安構造の固定化であきらかになる金融政策の不都合な真実」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/307556
・『「円安がGDPを押し上げ、日本全体にプラスに働く」というのは本当か? 為替レートの変動によって、その受益者と被害者はどの程度入れ替わっているのだろうか。元日本銀行金融研究所所長で、『金利と経済――高まるリスクと残された処方箋』などの著書もある翁邦雄氏が、長期的に為替レートの推移をみて受益者と被害者を分析した』、興味深そうだ。
・『「受益は輸出企業へ・損失は消費者へ」という円安構造の固定化  前回、円安の恩恵を受ける輸出企業と、輸入物価上昇によって被害を受ける内需依存型企業や消費者等とについて、その利益と損失を試算した。紹介した数値化は、大胆な単純化の仮定に拠っている。円ドルレートの輸出入金額への影響に限っても、実際には、輸出のドル建て契約比率は5割程度、輸入については7割程度だから、円ドルレートの変動をそのまま反映するわけではない。 そもそも為替レートは円高化したり円安化したりするものだろうから、やや長い目で見れば、受益者と被害者は入れ替わりうるはずである。かつて円高が問題視された時期もあったわけだから、最近の円安の損得だけを議論すべきでない、という意見もあるだろう。 そこで、少し視点を変えて長期的な為替レートの推移を眺めてみよう。 実質実効為替レートの推移(日銀統計) 上図は、1980年以降の円ドルレートと実質実効為替レートの推移をグラフ化したものである。実質実効為替レート(青線)は、物価上昇率の差を調整した為替レート(実質為替レート)を貿易相手国・地域のウェイトで調整(実効化)して加重平均した指標である。 多くの貿易相手国は、日本に比べると物価・賃金が上がっているので、為替レートが円高に変化しなければ円の購買力は低下する。また、貿易ウェイトの高まった国の通貨に対する円の減価が相対的に大きければ、実効的な円安化が起きていることなる。 こうした点から、実質実効為替レートは円ドルレートよりも円の購買力の変化をよりよくあらわしている。前回紹介した日銀の展望レポートにおける「円安が10%進めば実質国内総生産(GDP)を年間で0.8%ほど押し上げる」という計量分析結果で使われている為替レートも、円ドルレートではなく実質実効為替レートである。 このグラフをみると、実質実効為替レートは1990年代央以降、振れを伴いつつも驚くほど長期間、円安方向へ動き続けてきたことがわかる。リーマンショック後に円高を懸念する声が強まった時期でさえ揺り戻しはそれほど大きくなく、円安トレンドの足踏み程度にとどまっている』、「実質実効為替レートは1990年代央以降、振れを伴いつつも驚くほど長期間、円安方向へ動き続けてきたことがわかる。リーマンショック後に円高を懸念する声が強まった時期でさえ揺り戻しはそれほど大きくなく、円安トレンドの足踏み程度にとどまっている」、「実質実効為替レートは1990年代央以降、・・・驚くほど長期間、円安方向へ動き続けてきた」、とは漸く思い出した。
・『受益者と被害者の固定化  こうしてみると、円安がGDPを押し上げ日本全体にプラスである、という日銀のロジックが国民の実感と乖離し、特に消費者に支持されにくい理由の一端は、こうした受益者・被害者の固定化にもあるだろう。円安の負担だけが強く実感される消費者が、円安誘導を続ける超金融緩和政策の公正さへ漠然とした不信を強めていてもおかしくないからだ。 2022年6月6日のきさらぎ会(注:共同通信の加盟社、主要民間企業、公共団体の部長級以上を会員とする研究会)の講演の「おわりに」の部分で黒田総裁は次のように述べた。 「現在のイールドカーブ・コントロールを柱とする強力な金融緩和を粘り強く続けていくことで、経済活動をしっかりとサポートすることが最優先課題です。日本銀行は、海外の中央銀行と異なり、経済の安定か、物価の安定か、というトレードオフに直面していないため、金融面から総需要を刺激し続けることが十分に可能です」 確かに、日本の状況と欧米の置かれている状況とは異なる。しかし、上記のように日本の金融政策は実は深刻な分配上のトレードオフを抱えている。景気刺激効果をもち実質GDPを押し上げるという意味でプラス効果をもつという円安が、輸出企業に与える大きな利益と、消費者・内需企業の大きな損失である。 異次元緩和はこのトレードオフを無視したまま、円安政策を一貫して追求してきた。それにもかかわらず「円安によって収益が改善した企業が、設備投資を増加させたり、賃金を引き上げたりすることによって、経済全体として所得から支出への前向きの循環が強まっていく」いった動きはみられなかった。 むろん、為替レートは金融政策だけで決まるものではない。だが、金融政策は為替レートへの影響に限らず、金利経由でも分配に大きな影響を与える。しかし、中央銀行は金融政策の分配面への大きな影響という不都合な真実から極力、目を逸らしてきた。身動きが取れなくなりかねないからだ。 中央銀行がそれを気にしていなかったわけではない。ただ、かつては、金融政策は安定化政策であり、景気循環を均すために金利や為替レートは変動させている、受益者は入れかわるはずだから長い目で見てほしい、という、弁解は可能だっただろう。 しかし、今は、そうは言いにくい。きさらぎ会の講演における黒田総裁の「消費者が値上げを受け入れている」という発言が大きな反発を受けたのも、あまりに長期間、不利益が固定化された消費者等の「金融政策の不都合な真実」に対する鬱積した不満がその底流にあるのではないだろうか』、「黒田総裁の「消費者が値上げを受け入れている」という発言が大きな反発を受けたのも、あまりに長期間、不利益が固定化された消費者等の「金融政策の不都合な真実」に対する鬱積した不満がその底流にあるのではないだろうか」、同感である。

次に、10月29日付け東洋経済オンラインが掲載した大蔵省出身で慶應義塾大学大学院准教授 の小幡 績氏による「日銀が金融緩和策を変更すると一体どうなるのか 一歩間違えば円大暴落だけでは済まない事態に」を紹介しよう。
・『:慶應義塾大学の准教授である小幡績氏は、今回の原稿のテーマについて「やっぱり日本銀行の金融政策にしようか、それとも財務省の為替介入にしようか、いや、政府の経済政策という名のバラマキ政策でいくか」、あれこれ迷っていた。 迷いすぎているうちに、いつの間にか自宅の書斎(通称「洞窟」)で寝入ってしまっていた……。以下は、どうやら夢の中で見た光景のようだ』、行動経済学者の「小幡」氏の見解とは興味深そうだ。
・『日銀は2023年も不自然な金融緩和を継続?  この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています)。記事の一覧はこちら
2023年4月、日銀の総裁に就任した灰色太郎氏は、金融政策決定会合で政策変更を行うべきかどうか迷っていた。 日銀は金融政策の柱の1つとして、イールドカーブコントロール(YCC、長短金利操作)を2016年から導入していた。これは短期金利をマイナスにするだけでなく、10年物国債の金利水準を0%程度にしようと目標を定め、国債買い入れを行う政策である。これによって、短期から長期まで、金利全体の動きをコントロールするのが目的だ。 この政策は2023年の今も継続しており、その金利目標水準も0%程度でまったく変わっていなかった。乖離許容幅については、0.1%だったのを2021年3月に0.25%に変更した。 だが、乖離許容幅といいながら、実質的には長期金利国債10年物利回りを0.25%にくぎ付けにするために、連続指し値オペというものを2021年3月に導入し、2022年4月末からは毎日行うこととした。この連続指し値オペはすでに1年近く行われていたため、10年物国債の取引はほぼ消滅し、国債市場は仮死状態といわれていた。 この異常な力任せの緩和を継続していたため、円は極端に安い水準となっていた。それでも、アメリカの中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)の強烈な利上げは2023年1月に一段落し、短期金利は4.75%で横ばいとなっていた。 一方、欧州はロシア・ウクライナ情勢が膠着したままであることもあり、インフレが止まらず、ECB(欧州中央銀行)は利上げを継続していた。この結果、ユーロは上昇し、一時は1ユーロ=1ドルを割り込んだユーロドル相場は、1ユーロ=1.15ドルの水準まで回復していた。 そのほかの国の通貨も、極端なドル高の反動でおおむね戻していた。しかし、円だけは戻りが極めて弱く、1ドル=140円前後で推移していた。ただし、変動は激しかった。なぜなら、金融政策決定会合のたびごとに「日銀総裁交代前に政策変更か」という市場の仕掛けが行われたからだった。 財務省はその都度為替介入を行ったが、この乱高下を利用して、トレーダーたちは細かく稼いでいた。いわば、介入を誘い、それをネタに小銭を稼いでいたのだ。世界で、為替はほとんど注目されなくなった中で、日本円だけがトレーダーのおもちゃにされていた。) このような状況の中で、発足した日銀の新執行部は内部でもめていた。「とにかく市場で波乱を起こさないように現状維持で行こう」という薔薇色桃子新副総裁と、「国債市場の仮死状態をこのまま続ければ本当に国債市場は死んでしまう」と懸念する赤色勇新副総裁と、意見が激しく対立していた』、「財務省はその都度為替介入を行ったが、この乱高下を利用して、トレーダーたちは細かく稼いでいた。いわば、介入を誘い、それをネタに小銭を稼いでいたのだ」、「トレーダー」にとっては正常な業務の一環だ。
・『金利ターゲットは0.25%、指値オペは0.5%に?  灰色総裁は、強硬に政策変更を主張する赤色副総裁に尋ねた。「では、君はいったいどんな具体案があるというのか?」 「ここは、YCCを結局は終了しなくてはいけません」 「それでは、奴らは、われわれを攻撃してくるだろう!どうするんだ!」 「いずれにせよ、YCCはやめないといけません。そのときはいずれ攻撃を受けます。もうすでに国債市場の歪みは拡大していますが、遅らせれば遅らせるほど、ひどくなってしまいます」 「いきなりYCCを止めたらどうなると思っているだ!ただじゃすまないぞ!」 「もちろんです。いきなりはやめません」 「は?なんだ。やめないのか。じゃあ、どうするんだ?」 「ターゲットをゼロ程度から、0.25%に引き上げます。乖離許容幅は0.25%のままです。そこで、指し値オペは0.5%にします」 「それじゃあ、利上げじゃないか!メディアがついに『日銀利上げ、市場圧力に屈した』と書き立てて、俺は記者会見で攻め立てられるぞ!」 「仕方ありません。いきなりYCCを終了すれば、10年物の金利がどこまで上がるか、まったく予測できません。市場も同じです。乱高下で大混乱します。0.25%ターゲット、指し値0.5%のほうが、はるかにましです」 「甘い!それじゃ、次の利上げを狙って、市場は国債を売り浴びせてくるぞ。それこそ大混乱だ」 「そこで、その次の会合で、また0.25%引き上げます」 灰色総裁は気色ばんだ。 「それでは、追い込まれっぱなしじゃないか」 「はい」 「はい、じゃないだろ!」 「その次の会合で、0.75%ターゲットとし、乖離許容幅0.25%とすると上限は1%となりますが、ここでは、指し値オペを0.9%にして、とことん買い支えます」 「どういう意味があるんだ?」) 「もうこれで利上げは終わり、というメッセージです。1%は死守するラインで、それを突破されないように、その前にも死守ラインを設け、とことん頑張るんです」 「それで?」 「やつらが攻撃をあきらめるまで0.9%で買い続けます。彼らは1%までは後退するだろうと攻撃すると思いますが、そこで0.9%とことん買い続ければ、彼らも弾が尽きます。そうすれば、0.9%で無風になります。そこで、YCCをやめると発表するのです」 「そうすると?」 「ここで、もしもう一度攻めてくれば、再度0.9%で守ります。しかし、彼らは弾が尽きているので、補充しても迫力はないはずです。つまり、YCCをやめるタイミングの前に、彼らを疲弊させておくのです。それにより、YCCをやめた直後の戦いでは、勝ちやすくなります。彼らが力尽きた直後に、YCCをやめるんです」 「なるほど。うまくいきそうだな」 「いえ、やってみないとわかりません」 「おい!勧めておいて、なんだそれは!俺を罠にかけるのか!そんな不確実なことができるか!」 「勝負はやってみないとわかりません。時の運です」 「お前な……。お前はクビだ!」 「総裁は副総裁をクビにはできません」 「なに!!いつのまにそんな反抗的に……。わかった。もう帰りたまえ」 「はい」 灰色総裁はつぶやいた。 「あいつめ。なんてやつだ。しかし、あいつの言うのも一理あるな。このままずっと何もしないわけにもいかない。世界の金利市場の実勢を鑑みれば、日本国債の金利上昇もやむをえまい。しかし、かといって利上げはできない。う―――ん……」』、「YCCをやめるタイミングの前に、彼らを疲弊させておくのです。それにより、YCCをやめた直後の戦いでは、勝ちやすくなります」、確かにその通りなのかも知れない。
・『指し値オペを0.5%にした日銀、利回りは瞬時に0.75%  その3日後の政策決定会合後の記者会見で、灰色総裁は政策変更を発表した。それは、乖離許容幅を±0.25%から±0.5%に拡大する、というものだった。連続指し値オペは継続するが、0.5%で無制限に買い入れる、というものだった。 国債市場は直ちに反応し、利回り0.5%まで上昇したが、その後、海外先物市場ではそこで止まらず、あっという間に0.75%まで上昇した。次の乖離許容幅の拡大を織り込んだものだった。) 国内メディアも、灰色総裁を一斉に攻撃した。 「総裁、これは利上げですか、利上げではないんですか?どっちなんですか!」 「利上げではありません。強力な緩和を継続し、わが国の物価動向は……、景気も……」 「なぜ指し値の利回りが切り上がったんですか?利上げを利上げでないと言い逃れしているだけじゃないですか!」 「いえ、そんなことはありません……」 「では、なんなんですか!」 別の記者も攻撃した。 「国債利回りが0.5%を突破して、海外市場では0.75%までいったんですよ!見透かされてますよ!」 さらに別の記者もかさにかかって、非難する。 「国債だけではなく、円も売り浴びせられてますよ!本来利回りが上昇したら、円高になるはずでしょ!債券安、為替安、日本売りです!それも、総裁の政策変更のせいです!」 「いえ、ですから……うっ……」 「総裁、総裁!大丈夫ですかっ?」 灰色総裁は不眠と疲労、そしてもちろん心労で記者会見の場で倒れてしまい、緊急入院となった。幸い、命に別状はなかったが、絶対安静となり、医者は公務に復帰するのは1カ月以上かかるとのコメントだった。 慌てた官邸は日銀と緊急に話し合い、臨時の措置として薔薇色桃子副総裁を総裁代行とすることを決定した』、「灰色総裁は不眠と疲労、そしてもちろん心労で記者会見の場で倒れてしまい、緊急入院となった」、こんなことになったら「円は大暴落」必至だ。
・『薔薇色総裁代行は事態を悪化させ、円は大暴落  薔薇色総裁代行は翌日、臨時政策決定会合を開くこととした。この混乱を収束させるためということだった。 臨時政策決定会合では、政策は元に戻されることとなった。つまり、10年物0%程度、乖離許容幅0.25%で、連続指し値オペは無制限で0.25%となったのである。 しかし、この政策の後戻りは、当然、事態をさらに悪化させてしまった。国債市場では売りが殺到し、買い入れ対象の国債はすべて日銀が保有する結果となり、オペの意味がなくなった。そして、海外の先物市場では金利がさらに急騰した。 そして、円が大暴落し始めた。アメリカの利上げペースが緩和され、ドルの全面高局面が終了し、ドル円も落ち着き、水準を切り下げていたが、灰色総裁の乖離許容幅拡大で、円安が再度進み始めてしまったところだった。それが、一瞬で大暴落となってしまった。これで、日本国中がパニックとなった。 しかし、最も悪い影響は国債の新発市場で起きた。誰も、国債の入札に応じなくなったのである。長期国債だけでなく、短期国債でも、どんな期間の国債でも、入札がすべて不調となった。日銀の政策の先行きが不透明すぎて、短期金利に対してまで、国内市場ですら疑心暗鬼になってしまい、国債市場は全面的に死んでしまった。 財務省だけでなく、官邸も、いや国全体が、薔薇色総裁代行を攻撃した。 薔薇色総裁代行はこれに耐え切れず、総裁代行だけでなく、職そのものを辞任し、行方がわからなくなってしまった。周辺からは、海外に渡航し、欧州のある国でひっそり過ごしているというウワサがどこからともなく聞こえてきた。 ついに、灰色総裁に強硬論を唱えていた赤色副総裁の出番となった。彼は、かつて、といってもこの間10日も経っていないが、灰色総裁に打診した持論の金融政策を実施した。 しかし、時すでに遅しだった。この大混乱のあとに至っては、まっとうな政策だろうが何であろうが、日銀の動きは全面否定された。国会ではなんと日銀解体論が吹き荒れ、これはさらに円の暴落をもたらした。 いよいよ、日本沈没か……。新聞でもテレビでも、この見出しが躍ったが、人々は目を背けるように、この話題に触れないようになった。テレビはこの問題を扱うと消されてしまうため、ワイドショーでは他愛もない芸能人のスキャンダル特集を流すスタイルに戻ってしまった。 そして、目をつぶる日本国民のこの状態こそが、日本を本当に沈没させる理由だった。破綻の日は刻々と近づいてきた……』、「政策の後戻りは、当然、事態をさらに悪化させてしまった」、「円が大暴落」、「誰も、国債の入札に応じなくなったのである。長期国債だけでなく、短期国債でも、どんな期間の国債でも、入札がすべて不調となった。日銀の政策の先行きが不透明すぎて、短期金利に対してまで、国内市場ですら疑心暗鬼になってしまい、国債市場は全面的に死んでしまった」、あり得そうな恐ろしいシナリオだ。
・『灰色総裁も、薔薇色・赤色副総裁も幻だった?  青色静氏は目を覚ました。「ああ、ひどい夢だったな。疲れているのかな」 青色氏は、翌日の日銀総裁就任を控え、疲労と寝不足から、自宅の風呂につかりながら、寝てしまったようだった。 「日本も俺もおぼれ死ぬわけにはいかない。やはり淡々と金融政策は非常事態の政策から、普通の緩和に戻さなければいけないな。市場に攻撃されても、メディアに攻撃されても、正しい政策を地味に淡々とかつ不屈の精神でやりきらないといけない」 再度、決意を固めた。) 青色新総裁は、最初に政策決定会合でYCCのターゲットを0.25%上げた。指し値オペは0.5%で行ったが、連日はやめ、不意打ちに変更した。そして、無制限ではなく、大規模でない買い入れ額に設定した。売りが殺到しても、売り手は全額を売り切れるわけでなく、割り当てとなったために、空売りにはリスクが伴うようになった。 一方、日銀の買い入れは、限定された金額の指し値オペと、通常の買い入れ額を指定したオペを併用し、かつ不意打ち戦略を取った。市場の混乱、ある程度の乱高下は受け入れつつも、ともかく投機的取引に対するリスクを高めて、投機家を追い出すことを最優先にした。 さらに青色総裁は、官邸、財務省とも「あうんの呼吸」で買い入れを行った。 ドル円相場は、ドルの金利上昇一服により落ち着いていたが、日本国債市場の乱高下により、また円安へ向かい、為替市場も激しく乱高下し始めた。 これを抑えるために、財務省は円買い介入を行った。しかし、これは2022年秋の介入とは異なり、日銀の政策変更または国債買い入れと連動していた。 日銀が利上げを発表した直後に、円買い介入を大規模に行い、円はそのたびに大幅に上昇し、乱高下しつつも円は値上がりしていった。また、日銀が買い入れオペを通告した直後にも、小規模の介入を行った』、「市場の混乱、ある程度の乱高下は受け入れつつも、ともかく投機的取引に対するリスクを高めて、投機家を追い出すことを最優先にした。 さらに青色総裁は、官邸、財務省とも「あうんの呼吸」で買い入れを行った。 ドル円相場は、ドルの金利上昇一服により落ち着いていたが、日本国債市場の乱高下により、また円安へ向かい、為替市場も激しく乱高下し始めた。 これを抑えるために、財務省は円買い介入を行った。しかし、これは2022年秋の介入とは異なり、日銀の政策変更または国債買い入れと連動していた」、誠に巧みだ。
・『青色総裁は官邸・財務省と危機を乗り切った……  この結果、市場では、日銀の買い入れオペごとに介入期待が高まり、円は上昇していった。買い入れ額が小さくとも、介入額が小さくとも、相乗効果とアナウンス効果、投機家の深読み効果で、買い入れ、介入の効果は倍増した。 青色氏の評判は、利上げ当初は賛否両論だったが、次第にメディアも称賛するようになり、青色氏は中央銀行総裁として、世論も市場も支配し始めた。これこそが中央銀行総裁として重要なことだった。黒田東彦氏の就任当時と政策の方向は異なっていたが、支配という意味では似たような状況だった。 だが、青色氏は「その先」を考えていた。いずれ、世界は大不況になる。そのときにこそ、本当の日本経済の危機がやってくる。そのときに、金融政策、中央銀行への信頼が十分にある状態にしておかなければならない。自分の名声に酔うどころか、さらに気を引き締めていたのであった……。 小幡氏は、ここで目を覚ました。 はたして、これは悪い夢だったのか、それともいい夢だったのか。正夢だったのか。それともありえない理想を夢見ただけだったのか。青色氏のような人はどこにいるのだろうか……。 いずれにせよ、忘れないうちに、この夢を利用して原稿を書いてしまおう。小幡氏は、ヘッドフォンから流れてくる、ジョルジュ・エネスクのバッハ無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第1番を聴きながら、筆を進めたのであった……。 (本編はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)』、「青色氏は「その先」を考えていた。いずれ、世界は大不況になる。そのときにこそ、本当の日本経済の危機がやってくる。そのときに、金融政策、中央銀行への信頼が十分にある状態にしておかなければならない。自分の名声に酔うどころか、さらに気を引き締めていたのであった……」、確かに理想的な金融政策運営だ。

第三に、11月10日付け現代ビジネス「経済学者・野口悠紀雄の提言「早く金利を上げて、円安を止めなさい」 「安売り依存」から脱却せよ」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/101906?imp=0
・『自信なさげにボソボソ喋るメガネの男、キシダに国を任せていて大丈夫なのか? 世界は、日本の総理に厳しい目を向けている。いったいどうすれば日本は復活できるのか、国内外の7人の「知の巨人」に聞いた。3人目は経済学者・野口悠紀雄氏だ』、興味深そうだ。
・『ブレーキとアクセルを同時に踏む日銀  いま岸田総理がやるべきことはただ一つ、「円安を止めること」です。 それなのに、政府は「総合経済対策」で誤魔化そうとしています。この対策の柱は高騰するガソリンや電気、ガスに対し補助金を出すという内容で、一見、暮らしが楽になると思われるかもしれません。 しかし結局は円安による価格高騰を見えなくして、問題を覆い隠しているだけなのです。 円安の原因は、「日本とアメリカの金利に差があること」です。今年3月以降アメリカが金利を上げているのに、日本は金利を上げていない。 その結果、金利が高いドルを買って円を売る動きが生まれ、円安になる。この日米の「金利差」を解消しない限り、円安は止まりません。 ところが日銀は、金利を上げようとはしない。それどころか、為替介入という円安の「ブレーキ」と同時に、金利抑制策という「アクセル」を踏むという不可解な状態を続けています』、確かに「為替介入という円安の「ブレーキ」と同時に、金利抑制策という「アクセル」を踏むという不可解な状態を続けています」、大きな矛盾だ。
・『「リスキリング」では解決できない  いったいなぜ金利を上げないのか。それは大企業をはじめ、円安によって利益を受けている人々がいるからです。特に製造業は、輸入する原材料費は価格に上乗せして国民に転嫁することで円安の恩恵を受けている。 しかしその陰で、円安で増大したコストを価格転嫁できない中小企業が苦しんでいる現実があるのです。 そもそもこの流れが始まったのは、2000年代はじめでした。中国が工業化し、日本の製品は価格競争にさらされるようになりました。そこで政府が取った戦略が、「円安誘導」だったのです。 しかしこの時期、本当に必要だったのは他の国が追いつけない新しい技術を作ることでした。実際、アメリカやアイルランド、韓国、台湾などは、ITに対応した技術の開発に成功し、いまも世界のトップを走っています。 一方、日本は円安による「安売り戦略」に依存し続け、総じて企業の力が弱くなった。 岸田総理が言う「リスキリング」(新しい知識や技術を学ぶこと)も重要ですが、これだけで解決できるほど根は浅くない。企業が大学院などの高等教育をもっと高く評価し、研究・開発に力を入れなければ、日本企業が強くなることはできません。 金利を上げて円安を止める。そして円安依存してきた企業の開発力を高めていく。日本再生の道はこれしかありません。 「知の巨人」シリーズ 1ポール・クルーグマンが激白「日本経済を復活させるには、定年を廃止せよ」 2昭和史を見つめてきた作家・保阪正康が岸田総理を斬る「宏池会の系譜に学ばぬ首相に失望した」 4「賃金を上げて、非正規雇用を見直せ」ジャーナリストのビル・エモットが考える「日本再生への道」』、「2000年代はじめでした。中国が工業化し、日本の製品は価格競争にさらされるようになりました。そこで政府が取った戦略が、「円安誘導」だったのです。 しかしこの時期、本当に必要だったのは他の国が追いつけない新しい技術を作ることでした。実際、アメリカやアイルランド、韓国、台湾などは、ITに対応した技術の開発に成功し、いまも世界のトップを走っています。 一方、日本は円安による「安売り戦略」に依存し続け、総じて企業の力が弱くなった」、「金利を上げて円安を止める。そして円安依存してきた企業の開発力を高めていく。日本再生の道はこれしかありません」、同感である。
タグ:異次元緩和政策 (その43)(円安構造の固定化であきらかになる金融政策の不都合な真実、日銀が金融緩和策を変更すると一体どうなるのか 一歩間違えば円大暴落だけでは済まない事態に、経済学者・野口悠紀雄の提言「早く金利を上げて、円安を止めなさい」 「安売り依存」から脱却せよ) ダイヤモンド・オンライン 翁邦雄氏による「【翁邦雄・元日本銀行金融研究所所長に聞く】円安構造の固定化であきらかになる金融政策の不都合な真実」 『金利と経済――高まるリスクと残された処方箋』 「実質実効為替レートは1990年代央以降、振れを伴いつつも驚くほど長期間、円安方向へ動き続けてきたことがわかる。リーマンショック後に円高を懸念する声が強まった時期でさえ揺り戻しはそれほど大きくなく、円安トレンドの足踏み程度にとどまっている」、「実質実効為替レートは1990年代央以降、・・・驚くほど長期間、円安方向へ動き続けてきた」、とは漸く思い出した。 「黒田総裁の「消費者が値上げを受け入れている」という発言が大きな反発を受けたのも、あまりに長期間、不利益が固定化された消費者等の「金融政策の不都合な真実」に対する鬱積した不満がその底流にあるのではないだろうか」、同感である。 東洋経済オンライン 小幡 績氏による「日銀が金融緩和策を変更すると一体どうなるのか 一歩間違えば円大暴落だけでは済まない事態に」 行動経済学者の「小幡」氏の見解とは興味深そうだ。 「財務省はその都度為替介入を行ったが、この乱高下を利用して、トレーダーたちは細かく稼いでいた。いわば、介入を誘い、それをネタに小銭を稼いでいたのだ」、「トレーダー」にとっては正常な業務の一環だ。 「YCCをやめるタイミングの前に、彼らを疲弊させておくのです。それにより、YCCをやめた直後の戦いでは、勝ちやすくなります」、確かにその通りなのかも知れない。 「灰色総裁は不眠と疲労、そしてもちろん心労で記者会見の場で倒れてしまい、緊急入院となった」、こんなことになったら「円は大暴落」必至だ。 「政策の後戻りは、当然、事態をさらに悪化させてしまった」、「円が大暴落」、「誰も、国債の入札に応じなくなったのである。長期国債だけでなく、短期国債でも、どんな期間の国債でも、入札がすべて不調となった。日銀の政策の先行きが不透明すぎて、短期金利に対してまで、国内市場ですら疑心暗鬼になってしまい、国債市場は全面的に死んでしまった」、あり得そうな恐ろしいシナリオだ。 「市場の混乱、ある程度の乱高下は受け入れつつも、ともかく投機的取引に対するリスクを高めて、投機家を追い出すことを最優先にした。 さらに青色総裁は、官邸、財務省とも「あうんの呼吸」で買い入れを行った。 ドル円相場は、ドルの金利上昇一服により落ち着いていたが、日本国債市場の乱高下により、また円安へ向かい、為替市場も激しく乱高下し始めた。 これを抑えるために、財務省は円買い介入を行った。しかし、これは2022年秋の介入とは異なり、日銀の政策変更または国債買い入れと連動していた」、誠に巧みだ。 「青色氏は「その先」を考えていた。いずれ、世界は大不況になる。そのときにこそ、本当の日本経済の危機がやってくる。そのときに、金融政策、中央銀行への信頼が十分にある状態にしておかなければならない。自分の名声に酔うどころか、さらに気を引き締めていたのであった……」、確かに理想的な金融政策運営だ。 現代ビジネス「経済学者・野口悠紀雄の提言「早く金利を上げて、円安を止めなさい」 「安売り依存」から脱却せよ」 確かに「為替介入という円安の「ブレーキ」と同時に、金利抑制策という「アクセル」を踏むという不可解な状態を続けています」、大きな矛盾だ。 「2000年代はじめでした。中国が工業化し、日本の製品は価格競争にさらされるようになりました。そこで政府が取った戦略が、「円安誘導」だったのです。 しかしこの時期、本当に必要だったのは他の国が追いつけない新しい技術を作ることでした。実際、アメリカやアイルランド、韓国、台湾などは、ITに対応した技術の開発に成功し、いまも世界のトップを走っています。 一方、日本は円安による「安売り戦略」に依存し続け、総じて企業の力が弱くなった」、「金利を上げて円安を止める。そして円安依存してきた企業の開発力を高めていく。日本再生の道はこれしかありません」、同感である。
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暗号資産(仮想通貨)(その24)(仮想通貨は「大混乱」へ…「FTXの破綻」が世界の投資家たちに与える驚くべき「負のインパクト」、FTX破綻で窮地に立つ「暗号資産ビジネス」の憂鬱 日本の暗号資産業界は逆風を切り抜けられるか、東証スタンダード上場 大手仮想通貨取引所のトップが、台湾で指名手配されていた・・・) [金融]

暗号資産(仮想通貨)については、9月8日に取上げた。今日は(その24)(仮想通貨は「大混乱」へ…「FTXの破綻」が世界の投資家たちに与える驚くべき「負のインパクト」、FTX破綻で窮地に立つ「暗号資産ビジネス」の憂鬱 日本の暗号資産業界は逆風を切り抜けられるか、東証スタンダード上場 大手仮想通貨取引所のトップが、台湾で指名手配されていた・・・)である。

先ずは、11月21日付け現代ビジネスが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁 昭夫氏による「仮想通貨は「大混乱」へ…「FTXの破綻」が世界の投資家たちに与える驚くべき「負のインパクト」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/102432?imp=0
・『天才経営者 バンクマン-フリード  11月11日、大手暗号資産(仮想通貨)交換業者、米FTXトレーディングが“チャプター11(連邦破産法11条、わが国の民事再生法に相当)”を申請した。 かつて、天才経営者と謳われた、FTX創業者であるサム・バンクマン-フリード氏の名声は凋落し、その経営手腕には多くの疑問符が付くことになった。 米国の著名経済学者であるJ.K.ガルブレイスは、バブル崩壊の前に天才が表れると指摘した。 バンクマン-フリード氏はその一人といえるかもしれない。 2020年3月中旬以降、同氏が生み出した暗号資産の一つである、“FTXトークン=FTT”は見る見るうちに上昇していった。 それと同時に、バンクマン-フリード氏は政治への影響を強めた。 また、同氏は社会全体のベネフィットのために事業を運営するとの考えを唱えた。 そうした同氏の姿勢は多くの共感を呼んだ。 世界的なカネ余りが続くとの楽観の高まりもあり、FTXの価値上昇によって強い期待が盛り上がった。 問題は、バンクマン-フリード氏の経営が、FTTという仮想通貨の価値急騰に依存したことだ。 暗号資産の業界では、FTXのように過剰な楽観に依拠してバランスシートを膨らませた企業が多い。 それは、後から見ると“砂上の楼閣”だったことが分かる。 FTX破たんをきっかけに、経営が行き詰まる関連企業は増えるだろう』、「同氏が生み出した暗号資産の一つである、“FTXトークン=FTT”は見る見るうちに上昇」、「バンクマン-フリード氏は政治への影響を強めた。 また、同氏は社会全体のベネフィットのために事業を運営するとの考えを唱えた。 そうした同氏の姿勢は多くの共感を呼んだ。 世界的なカネ余りが続くとの楽観の高まりもあり、FTXの価値上昇によって強い期待が盛り上がった。 問題は、バンクマン-フリード氏の経営が、FTTという仮想通貨の価値急騰に依存したことだ」、なるほど。
・『FTT高騰の背景  FTX創業者のバンクマン-フリード氏は、一時、“天才経営者”、“フィンテック業界の救世主”などと称された。 同氏は、世界的な仮想通貨の熱狂ブームに乗り、著名人を広告に用いるなどして仮想通貨の権威、スターとしての地位を確立した。 我先に、同氏の経営手腕から利得を手に入れようとする投資ファンドや企業などが急増した。 そこには、あたかも神話のような強い成長への期待があった。 それを支えたのが、バンクマン-フリード氏が作った“FTT”の仕組みだった。 FTTとは、仮想通貨の一つだ。 FTT保有者はその価値の上昇だけでなく、FTX利用手数料の割引や、FTTを担保にしてレバレッジをかけた取引を行うことができた。 2019年に香港でFTXは創業された。 その後、香港当局は仮想通貨取引規制を強化した。 2021年、バンクマン-フリード氏はバハマに拠点を移しFTXのビジネスを急拡大させた。 世界的な金融緩和の継続期待と利用者の急増によって、FTTは急騰した。 FTXの業績も拡大した。 FTTを担保に同氏はFTXから自身が所有するアラメダ・リサーチに融資し、投資ビジネスを強化した。 政治献金も積極的に行い、社会全体に、より効率的に付加価値を提供する姿勢を鮮明にした。 それは、FTXの急成長によって社会が変わるというような強烈な期待を多くの人に与えた。) さらにMLB、NBA、NFLのスタープレイヤーとも長期のパートナーシップを結んだ。 わずか1年ほどの間にバンクマン-フリード氏の評価は大きく高まり、“2021年の仮想通貨業界で最も影響ある人物”と呼ばれた。 また、29歳の時点で資産285億ドルを達成したといわれるマーク・ザッカーバーグを上回る富を同氏が手に入れると目されるなど、時代の寵児としてもてはやされた』、「FTTとは、仮想通貨の一つだ。 FTT保有者はその価値の上昇だけでなく、FTX利用手数料の割引や、FTTを担保にしてレバレッジをかけた取引を行うことができた」、「世界的な仮想通貨の熱狂ブームに乗り、著名人を広告に用いるなどして仮想通貨の権威、スターとしての地位を確立した。 我先に、同氏の経営手腕から利得を手に入れようとする投資ファンドや企業などが急増した」、なにやらバブリーな雰囲気も濃厚だ。
・『混乱の懸念高まる仮想通貨業界  未来永劫、神話のような成長が続くことは難しい。 昨年11月以降、仮想通貨市場全体に下落圧力がかかり始めた。 それによって裏付けのない資産であるFTTでバランスシートを膨らませたFTXとアラメダの資金繰りは急速に悪化した。 事業運営体制の悪化をバンクマン-フリード氏は察知できなかったと述べている。 見方を変えると、同氏は社会の公器としての成長よりも、規制をかいくぐり、自らの富を増やことに執着してしまったのではないか。 一時はバイナンスによるFTX救済合併も目指されたが、最終的に見送られた。 11月11日にFTXは“チャプター11”を申請した。 FTXの債権者数は100万人を超えるとの見方もある。 それ以降、次は自分が窮地に陥るかもしれないと、先行きを不安視し、仮想通貨を手放す投資家は急増している。 連鎖反応のように、顧客資金の引き出しを停止する仮想通貨交換業者も増えはじめた。) 今後の仮想通貨市場では、売るから下がる、下がるから売るという弱気心理の伝染が、さらに鮮明化するだろう。 資金繰りがひっ迫し、経営破たんに陥るブローカーの増加が懸念される。 それに加えて、規制強化も急務だ。 特に、仮想通貨を担保にした融資の実態把握は急を要する。 交換業者による顧客資金の管理体制の確認、改善指示なども急がなければならない。 状況によっては、米国などの金融システムに相応のストレスがかかる恐れもある。 今すぐそうした展開が現実のものになるとは考えづらいが、仮想通貨業者の破たんによって投資ファンドなどが損失をこうむり、局所的に金融システムが不安定化する可能性は排除できない。 FTX経営破たんの負のインパクトの深刻化が懸念される』、「仮想通貨業者の破たんによって投資ファンドなどが損失をこうむり、局所的に金融システムが不安定化する可能性は排除できない。 FTX経営破たんの負のインパクトの深刻化が懸念される」、やはり影響は深刻なようだ。

次に、11月27日付け東洋経済オンライン「FTX破綻で窮地に立つ「暗号資産ビジネス」の憂鬱 日本の暗号資産業界は逆風を切り抜けられるか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/635558
・『アメリカの暗号資産交換業大手・FTXトレーディングが経営破綻してから、およそ2週間。その衝撃は冷めることなく、日本の投資家や業界関係者の動揺は収まらない。 「預け入れていた資産はおよそ300万ドル(4.2億円)相当。アメリカで適用が申請された連邦破産法11条(チャプター11)の行方次第で全額戻らないかもしれず、とても心配だ」。ツイッターアカウント名「ヨーロピアン」で活動する日本在住の30代男性は不安げにそう話す。 FTXトレーディングは、2022年3月に日本の交換業者を買収し、4月からFTXジャパンに社名変更した。この男性はそれまでFTXトレーディングの口座で取引を行っていたが、社名変更のタイミングで口座がFTXジャパンに移ったという。FTXジャパンの口座はシステムのトラブルで、現在出金できない状況が続いている。 日本の交換業者は金融庁の定めで預かり資産の分別管理が求められている。FTXジャパンも法令に則り、暗号資産はオンライン接続しないコールドウォレット、法定通貨は日本の信託口座において分別管理を行っていると会社は説明する。FTXジャパンが11月21日時点で保有する、円ドルを合わせた法定通貨の預かり資産は60.74億円、及び別の現預金が約178億円あるという(2022年9月末の純資産は100億円)』、「円ドルを合わせた法定通貨の預かり資産は60.74億円」、これは本社勘定とは「分別管理」され、保護されると考えてよいのだろうか。
・『日本の金融庁が示したFTX破綻に対する見解  チャプター11の申請書類にはFTXグループの債務整理の対象として日本法人が含まれており、FTXジャパンが保有する資産がそれに充てられる可能性はゼロではない。FTXトレーディングの新しいCEOに就任し、エネルギー取引会社エンロンの破綻処理を監督したジョン・レイ氏は11月19日、チャプター11の手続きの中で「子会社の売却や資本再編といった戦略的な取引が今後の優先事項だ」とコメントしている。 ただし、日本の金融庁の担当者によれば、「会社の資産と個人の資産管理はまったく別。FTXジャパンのコールドウォレットに預けられている暗号資産と法定通貨の預かり資産は、日本法の下で問題なく戻ってくる」という。そのうえで「資産の引き出しをした後も暗号資産の取引を続けたいという利用者もいるだろうし、事業の継続性という意味では優良な売却先が見つかることが望ましい」と話す。 アメリカを拠点に預かり資産は一時期2兆円を超えていたFTXトレーディング。瞬く間に破綻に至った裏にはいったい何が起きていたのか。 FTXはグループ全体で130を超える関係会社を持つ巨大組織だ。その頂点に立つのが30歳のサム・バンクマン・フリード氏。チャプター11の申請書類によると、グループのカテゴリーは大きく4つに分かれる。サム氏はそのいずれにも個人で過半の出資を行っている。) 中でも関係性が深いのが、交換業のFTXトレーディングとアービトラージ(裁定取引)やマーケットメイキング(相場の値付け)など、クオンツ投資と呼ばれる手法を暗号資産に特化して行っているアラメダ・リサーチだ。この2社の関係が、グループ崩壊のきっかけとなった。 発端は、アラメダのバランスシート(貸借対照表)だった。11月上旬、現地専門メディアが、同社の資産の4割超が「FTXトークン(FTT)」と呼ばれるFTXトレーディングが発行する自社トークンであると報じた。FTTを担保にアラメダは、FTXトレーディングから100億ドルを借り入れていたこともその後明らかになった。FTXトレーディングがアラメダに融資した資金は顧客から預かり資産の流用だったとされる』、「アラメダのバランスシート」で「資産の4割超が「FTXトークン(FTT)」と呼ばれるFTXトレーディングが発行する自社トークン」、とは確かに不健全だ。
・『自社トークンの価値が急落  FTTのような自社トークンは、いわば交換所にとっては「打ち出の小槌」といえる。法定通貨や国債などを担保にしたステーブルコインのように価値を裏付ける資産は不要で、発行の上限はあるものの設計次第では無限にすることもできるといわれる。 大谷翔平選手の広告塔起用などFTXトレーディングによる派手なマーケティングなどによってFTTの価値は上昇し、2022年4月時点の価格は1FTT当たり50ドルまであった。しかし、アラメダの脆弱な財務体質が明らかになったことで、交換所最大手のバイナンスが自社で保有するFTTを売却すると発表。野放図な貸し借りも暴かれたことにより、FTT価格は急落し、足元は1ドル台にまで落ち込んでいる。 融資元であるFTXトレーディングにもその影響は及び、一時は取り付け騒ぎのような事態が発生。同社は出金機能の停止措置に踏み切り、FTXジャパンも親会社の方針に従い出金を停止した。一方でFTXジャパンは、利用者からの財産の受け入れや利用者との暗号資産取引を継続していたため、11月10日に関東財務局から行政処分を受けている。 その翌日11日にFTXトレーディングはチャプター11の適用を申請。22日に、裁判所で初の法廷審問が開かれている。) 国内の交換所・SBI VCトレードでトレーディング部門を統括する久場健太郎取締役は、「FTXトレーディングのサービスは投資家がロスカットする際に(売買が成立する)約定レートがほかの交換所に比べて格段によかった。マーケットメイカーであるアラメダの流動性が豊富にあるからで、当時はさすがだと思っていたが、今から思えばアラメダの財務はFTTに依存しており、砂上の楼閣だったといえる」と話す』、「FTT価格は」、「4月時点の価格は・・・50ドル」だったのが、「急落し、足元は1ドル台にまで落ち込んでいる」、これでは担保にしていたら、大変だ。
・『暗号資産の相場が上向く兆しはある  アメリカを震源地とする今回の騒動、国内の暗号資産ビジネスには、どのような影響が及ぶのか。 日本の暗号資産交換業は2018年1月のコインチェックによる大規模な顧客資産の流出を受けて、厳しい規制を課されてきた。 2019年の法改正では交換業者に対し、顧客から預かる暗号資産全量の上限5%を除き、コールドウォレットで管理することを義務づけ、常時オンラインに接続されているホットウォレットで管理する顧客の暗号資産は、別途それに見合う弁済原資を保持することが義務づけられた。 メルカリの完全子会社で暗号資産交換業を営むメルコインの青柳直樹CEOは「暗号資産交換業に対する規制は、自己資本の蓄積などを含め、日本が世界で最も厳しいものになっている。FTXの破綻により、今後世界的に暗号資産への規制が強まることが予想される中で、逆に日本の規制は利用者に対して安心材料になるだろう」とみる。 現在の価格は約200万円前半と1年前と比べ3分の1に下がった代表的な暗号資産ビットコインの相場も上向く兆しはあるという。 同じく交換業を運営するビットバンクの長谷川友哉マーケット・アナリストは、「アメリカのFRB(連邦準備制度理事会)が利上げペースを緩めるという観測があり、その前提でみれば来春には相場が回復してもおかしくない。経営破綻はFTXのガバナンス不全という同社固有の問題があったからで、ブロックチェーンにより信頼のコストが下げられるという暗号資産の価値は失われていない」と指摘する。) 一方で、「FTXショック」は暗号資産の規制改革には逆風となりそうだ。 暗号資産やトークンを使った「ウェブ3」と呼ばれる次世代のウェブビジネスを推進するために、業界関係者や一部の政治家が取り組んできたのが、税制改革だった。具体的には、ウェブ3を手がける企業がトークンを保有するだけで、その含み益に対して法人税が課される状況を解消することなどを目指している。 これらのロビイング活動についてマネーフォワードでパブリックアフェアーズ室長を務める瀧俊雄執行役員は、「ウェブ3の推進派は、イノベーションを意識したバイデン大統領の大統領令をよりどころに税負担の緩和を求めてきた。だが、サム氏が民主党の大口献金者だったこともあり、共和党の攻撃材料となる可能性が高い。日本では個人の暗号資産取引を申告分離課税することなども求めているが、アメリカの政策は思うように進まないとなると、日本の推進派がよりどころを失うことで税制改革が遅れるおそれがある」と分析する』、「「ウェブ3の推進派は、イノベーションを意識したバイデン大統領の大統領令をよりどころに税負担の緩和を求めてきた。だが、サム氏が民主党の大口献金者だったこともあり、共和党の攻撃材料となる可能性が高い」、共和党が下院を制した現在では、「税制改革」はますます難航するだろう。
・『暗号資産ビジネスは逆風を跳ね返せるか  ウェブ3をめぐっては、11月8日にNTTドコモがアクセンチュアなどと組み、新会社を設立すると発表。ウェブ3の分野に対し、向こう5~6年以内に最大6000億円の投資を行うとしている。暗号資産の交換やトークン発行といった共通基盤を提供するという。 ほかにも野村ホールディングスがスイスで暗号資産関連のベンチャーキャピタルを設立したり、電通がグループ横断の支援組織「web3 club」を発足したりするなど、日本の大企業も暗号資産を意識したビジネスを始めようとしている。 FTXの唐突な破綻でマイナスイメージが強まりかねない中、暗号資産業界はビジネスの拡大でそうした懸念を払拭できるのか。先んじて規制強化が行われた日本として、何ができるかが問われている』、「日本」では「ウェブ3」への動きが出てきたが、「FTXの唐突な破綻でマイナスイメージが強まりかねない中、暗号資産業界はビジネスの拡大でそうした懸念を払拭できるのか。先んじて規制強化が行われた日本として、何ができるかが問われている」、その通りだろう。

第三に、11月30日付け文春オンライン「東証スタンダード上場 大手仮想通貨取引所のトップが、台湾で指名手配されていた・・・」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/59059
・『世界業界第2位の仮想通貨取引所だったFTXの経営破綻が、暗号資産業界への信頼を大きく揺るがしている。そんななか、日本国内では、さらに不信感が高まりそうな事実が明らかになった。国内大手の取引所を運営する企業のトップが、海外の警察当局から指名手配中であることが判明したのだ』、悪い時には、悪いことが重なるものだ。
・『不正流出事件を端緒に、台湾で刑事事件へ発展  「俺たちのビッグボス ビットポイント~♪」 耳に残る軽快なテーマソングとともに、北海道日本ハムファイターズ監督の新庄剛志氏が出演するのは、株式会社ビットポイントジャパン(以下BPジャパン)のテレビCMである。 しかし、同社には消せない過去がある。2019年7月には、顧客が保有する30億円超(当時のレート)の仮想通貨が不正流出する不祥事を起こしているのだ。ただ、この不正流出に対しては、被害を受けた顧客に対する全額補償の方針を早々と打ち出し、一定の解決を見た。とはいえ、それは日本国内に限った話である。 BPジャパンが、仮想通貨取引所としてサービスを提供していた台湾では、この不正流出事件を端緒に刑事事件へと発展し、当時の同社社長、小田玄紀氏が指名手配されているのだ』、「BPジャパンが、仮想通貨取引所としてサービスを提供していた台湾では、この不正流出事件を端緒に刑事事件へと発展し、当時の同社社長、小田玄紀氏が指名手配されている」、信じ難いような事件だ。
・『指名手配書には、容疑として「詐欺等」と記されて  筆者が入手した、地方裁判所に相当する台湾台北地方法院が今年4月22日に発行した指名手配書には、小田氏の名前や生年月日とともに、容疑として「詐欺等」と記されている。 1980年生まれの小田氏は、東大法学部在学中に興した事業を売却して得た資金を元手に、その後はベンチャーキャピタリストとして活動。2011年からは、経営不振に陥っていた株式会社リミックスポイント(以下リミックス社)の経営に参画するとその手腕が認められ、現在は東証スタンダード市場に上場する同社の代表取締役社長CEOを務めている。 また、リミックス社がのちにBPジャパンとなる株式会社ビットポイントを ・虚偽の清算書を作成し、業務提携していたビットポイント台湾(以下、BP台湾)から15億7500万円相当を不当に利得した、詐欺および財務諸表の虚偽記載の疑い ・自己不当利得を意図し、取得した約6億3000万円を清算表に記載しなかった、業務上横領および財務諸表虚偽記載の疑い ・顧客3人の口座残高の計16万米ドル相当の仮想通貨を引き出し不能としたうえで返還を拒んで不当利得した、詐欺および業務上横領の疑い (筆者が入手した台湾地方法院による指名手配書 はリンク先参照)』、「BPジャパン」は何故、このような不祥事を起こしたのだろう。
・『協業関係に亀裂が走ったきっかけ  しかし、これだけでは、指名手配に至るまでの経緯は見えてこない。そこで、指名手配書にも被害者として名前が挙がっているBP台湾にも取材を行った。 「2018年、弊社はBPジャパンとの提携の元にサービスを開始しました。弊社が担当するのはフロントデスク業務のみ。集客やログイン画面の運営は弊社が担当していましたが、それより先の取引システムの運営から顧客の個人情報や口座残高の管理はすべてBPジャパンが行うという、いわゆるホワイトラベルです。弊社はBPジャパンに毎月100万円のブランドフィーを支払い、台湾の顧客が支払った取引手数料を、両者で分け合うという契約でした」(BP台湾法務担当者) そんな両者の協業関係に亀裂が走ったのが、2019年7月の不正流出事件だ。 「台湾の顧客も同様に被害を受け、結果的に2億5000万円相当の不正流出が確認されました。これについては、当時BPジャパンの代表取締役社長だった小田氏は当初、補償する姿勢を見せていました」(同前)』、「両者の協業関係に亀裂が走ったのが、2019年7月の不正流出事件」、「台湾の顧客も同様に被害を受け、結果的に2億5000万円相当の不正流出が確認」、「当時BPジャパンの代表取締役社長だった小田氏は当初、補償する姿勢を見せていました」、どういう事情の変更があったのだろうか。
・『清算表に反映されていない5億3000万円が行方不明  ところが、被害の全容把握のために、BP台湾側が顧客の過去の取引データを調査したところ、その何倍もの金額がどこかに消えていることが判明したという。 「もっとも大きいのは送金の未反映です。弊社は業務開始以来、顧客の口座への入金分など、約41億2000万円相当をBPジャパンに送金しているのですが、両社間の資金のやり取りを記録した清算表には計35億9000万円しか反映されておらず、5億3000万円ほどが行方不明となっているのです。同様の矛盾は、両社の帳簿を比べた際に散見されます。 ほかにも、スプレッド(買値と売値の差)の計算が間違っていたり、一つの約定IDに複数の取引が存在していたりと、不審な点がいくつも見つかりました」(同前)』、「清算表に反映されていない5億3000万円が行方不明」、送金や受取の記録をチェックすれば、判明する筈だ。「スプレッド」「計算」の「間違い」など「不審な点」も個々にチェックすれば、判明するのではなかろうか。
・『不正流出の被害を受けた顧客ら3名も刑事告訴  そこでBP台湾は、不正流出による顧客の被害額に加え、こうした不正や誤りによる損害額を合計した約10億2400万円の弁済をBPジャパン側に要求したという。しかし……。 「小田氏が当初、対応する姿勢を見せていた不正流出に対する補償も含め、BPジャパンはまったく弁済に応じませんでした。2019年8月に東京地裁に民事訴訟を提起し、現在も公判が続いています。 その一方で2020年には、不正流出の被害を受けた顧客ら3名ともに、小田氏個人を台湾の警察当局に刑事告訴しました。その後、警察の捜査の結果、嫌疑十分ということで、小田氏には逮捕状が出されました。ところが小田氏は台湾に不在であるため、4月までに指名手配となったようです」(同前) 筆者は、BPジャパンの親会社で、現在も小田氏が代表取締役CEOを務めるリミックス社に、小田氏が上場企業のトップとして適任なのか、見解を質した。しかし、期日までに回答は得られなかった。 これまで自著やインタビューで、「逃げない経営」を自身の信条として繰り返し語ってきた小田氏。ならば今、自らの法的責任からも、逃げずに向き合うべきではないだろうか』、「リミックス社」は11月30日付けで「一部報道の件について」として以下のプレスリリースをした
https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS08938/5eee573d/b7d4/423a/824a/bbfcff3301a2/140120221130573320.pdf
どちらが正しいのかは直ちには分かりかねるが、「リミックス社」の言い分はやや苦しいような印象を受けた。
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