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安倍元首相暗殺事件(その5)(安倍晋三とエリザベス女王の「国葬」を改めて総括してみよう《田中康夫・浅田彰》「憂国呆談」第4回(前)、旧統一教会から訴えられた有田芳生氏が裁判で詳らかにする「教団による空気銃の大量輸入」衝撃の内容、旧統一教会問題第一人者が語る「空白の30年」 なぜ日本で対カルトの法律ができなかったのか) [国内政治]

安倍元首相暗殺事件については、10月12日に取上げた。今日は、(その5)(安倍晋三とエリザベス女王の「国葬」を改めて総括してみよう《田中康夫・浅田彰》「憂国呆談」第4回(前)、旧統一教会から訴えられた有田芳生氏が裁判で詳らかにする「教団による空気銃の大量輸入」衝撃の内容、旧統一教会問題第一人者が語る「空白の30年」 なぜ日本で対カルトの法律ができなかったのか)である。

先ずは、11月2日付け現代ビジネス「安倍晋三とエリザベス女王の「国葬」を改めて総括してみよう《田中康夫・浅田彰》「憂国呆談」第4回(前)」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/101670?imp=0
・『田中康夫・浅田彰の名物世相対談「憂国呆談」、今回は二つの「国葬」を終えた内外の情勢から、二人の対話は始まります』、興味深そうだ。
・『産経でさえ「よくなかった」59・2%  田中 千代田区北の丸公園の日本武道館で9月27日に実施された「故安倍晋三国葬儀」は、さまざまな意味で令和4年・皇紀2682年・西暦2022年の日本国を体現していた。 いまだにSNS上では甲論乙駁状態だけど、産経新聞社が10月17日に発表した世論調査でも国葬儀は「よくなかった」59・2%、「よかった」35・2%だった。唯一、賛成が上回ったのは前回も話したように、ツイッターの捨て垢で1人が幾度も投票可能だった『月刊Hanada』の緊急アンケートのみ。 雌雄は決せられた感じだね。 浅田 前にも言ったように、戦後の日本に国葬の制度はないし、唯一の前例である吉田茂元首相と比べてさえ、安倍のように左翼を敵としそれをねじ伏せる形で強引に右傾化を進めたdivisiveな(対立を生む)政治家は国葬にふさわしくない。 選挙運動中に銃撃されて亡くなったのは気の毒だけれど、犯人が実家を家庭崩壊に追い込んだ旧・統一教会を恨み、旧・統一教会とつながりのある安倍を狙ったことが分かって、安倍派が右翼ナショナリズムを標榜しながら反共反日カルトから選挙応援を受けてたことが明るみに出ちゃった。これでは最初同情論が強かった世論が国葬反対に傾いたのも当然。 田中 別(わ)けても微苦笑を禁じ得なかったのは1958年に岡義武が上梓した岩波新書『山縣有朋 明治日本の象徴』が話題の中心になったことだ。筋金入りの「好戦論者」として知られ、安倍晋三応援団長を自任していたJR東海名誉会長の葛西敬之(よしゆき)(5月25日に81歳で逝去)から勧められて「熟読玩味」していたと明かされた。 とは言え、蛇蝎(だかつ)の如く「朝日・岩波文化人」を敵視していた2人の「置き土産」として、非業の最期から丁度3週間後の7月29日に岩波ホールを閉館した岩波書店に注文が殺到し、出版不況の中で思わぬ「御下賜金(ごかしきん)」が転がり込む展開になるとは、創業者の岩波茂雄もビックリだ。 改めて彼に関して検索したら、美濃部達吉の「天皇機関説」を支持する投稿を朝日新聞に行うも朝日サイドがビビッて不掲載にしたので「意気地なしだ」と批判する一方、高額納税者だったので貴族院多額納税者議員に互選されていたんだね。この辺りも香ばしい「朝日・岩波文化人」の面目躍如とも言える(苦笑)。 どうせなら、文藝春秋の専務も務め、「薩長嫌い」で知られる『文藝春秋』編集長だった歴史家の半藤利一(はんどう・かずとし)が1990年に上梓している『山縣有朋』も葛西が勧めていたらと、無い物ねだりをしたくなる。 軍人勅諭、教育勅語を設け、政党政治に反対し、黒岩涙香(るいこう)が1892年(明治25年)に創刊した、権力者の醜聞を糾す『萬朝報(よろずちょうほう)』の記者だった幸徳秋水を冤罪に陥れるべく「大逆事件」を捏造させ、第55代内閣総理大臣の石橋湛山をして「死もまた社会奉仕」と言わせしめた山縣の人となりを知る上でも。 浅田 その山縣を頂点とする長州閥の流れを汲むのが安倍だからね。 京都には庭が趣味だった山縣の別荘・無鄰菴(むりんあん)があって、日露戦争に向かう政権中枢の会議の舞台にもなったけど、公家や大名家の出身ならともかく、軍や政府の要職を歴任したとはいえ所詮は国家公務員の身であんな広壮な別荘が作れたんだから、どれだけ裏金が動いてたかってこと。 南禅寺エリアの庭園群と同じく琵琶湖疎水の水を庭に引いてるけど、あれも内相時代に疎水建設を認可したことへの返礼でしょう』、「安倍のように左翼を敵としそれをねじ伏せる形で強引に右傾化を進めたdivisiveな・・・政治家は国葬にふさわしくない。 選挙運動中に銃撃されて亡くなったのは気の毒だけれど、犯人が実家を家庭崩壊に追い込んだ旧・統一教会を恨み、旧・統一教会とつながりのある安倍を狙ったことが分かって、安倍派が右翼ナショナリズムを標榜しながら反共反日カルトから選挙応援を受けてたことが明るみに出ちゃった。これでは最初同情論が強かった世論が国葬反対に傾いたのも当然」、「京都には庭が趣味だった山縣の別荘・無鄰菴(むりんあん)があって、日露戦争に向かう政権中枢の会議の舞台にもなったけど、公家や大名家の出身ならともかく、軍や政府の要職を歴任したとはいえ所詮は国家公務員の身であんな広壮な別荘が作れたんだから、どれだけ裏金が動いてたかってこと」、「安倍派が右翼ナショナリズムを標榜しながら反共反日カルトから選挙応援を受けてたことが明るみに出ちゃった」、全くみっともない限りだ。
・『あの「選曲」は何だったのか?  田中 成る程ね(苦笑)。その「国葬儀」で選ばれた楽曲も「話題」を呼んだ。 陸上自衛隊中央音楽隊が黙祷の間に演奏したのは明治時代の軍歌「國の鎮め」、今上天皇の勅使、皇后宮使、上皇使、上皇后宮使が拝礼の際には「悠遠なる皇御國(すめらみくに)」 。 式典開始直前に流れていたルートヴィッヒ・ヴァン・ベートーベンの交響曲第6番「田園」は、現首相の岸田文雄が掲げる「デジタル田園都市国家構想」をアシストしていると報じられた(苦笑)。 一番の“白眉”は献花の際に流れた、イタリアのジョヴァンニ・ヴェルガの小説『カヴァレリア・ルスティカーナ』を基にピエトロ・マスカーニが作曲し、1890年(明治23年)に初演されたオペラ『カヴァレリア・ルスティカーナ(田舎騎士道)』だ。 「日本を愛し、日本のために自身の健康を犠牲にしてまで総理大臣として活躍なさった方をお見送りするときにぴったりの選曲でした」と賞賛する一般人のブログでさえ、この楽曲に関しては「三角関係のもつれから主人公トゥリッドゥが決闘の末、死をとげるオペラの筋書きを考えると、安倍晋三元首相の国葬にはふさわしくない気もしますね」と述べている。 しかも作曲者のマスカーニは、ミラノのスカラ座の監督を狙って、ファシスト党政権下でベニート・ムッソリーニに猟官運動をしたのがブーメランとなって、イタリアが無条件降伏後に全財産を没収されてしまった数奇な運命の持ち主だ。 そこまで知った上で内閣府大臣官房の国葬儀事務局が選曲を担当したなら、それはそれで驚きだけど。 浅田 フランシス・フォード・コッポラ監督の『ゴッドファーザー』三部作は、マイケル・コルレオーネがシチリア島パレルモのマッシモ劇場で息子がオペラ歌手としてデビューするのを見たあと、帰りに正面の階段で銃撃されて娘(監督の娘ソフィア・コッポラが演ずる)が身代わりに死ぬのを目の当たりにするところが最後のクライマックス。 そのオペラが『カヴァレリア・ルスティカーナ』で、銃撃シーンのあとマイケルが廃人のようになって死ぬ終幕までその甘美な間奏曲が流れる。うまい選曲だよ。 日本政府の担当者がそこまで知ってて選んだのなら相当なものだけれど、まあ単に無知なんだろうな……。 田中 もとより「分断社会」の中で、賛成か反対かは多分に個々人の主観的な判断だけど、少なくとも英国には明確な「国葬」基準が設けられている。 国家元首の女王、国王は国葬。王以外を国葬とする場合は王室と議会の同意が必要。王以外の王室メンバー、首相経験者らは国葬に準じる「儀礼葬 ceremonial funeral」なので、ウェールズ公妃だったダイアナ・フランセス、元首相のマーガレット・サッチャーは儀礼葬。 日本は国会決議すら省いた「国葬儀」。このアバウトさでは、理詰めの言葉で闘う「外交」の土俵で成果を得られる訳もないよね。同じ島国でも、彼我(ひが)の差は大きい。 その意味では、HPの「NHKの概要・沿革など」トップに「みなさまに支えられて」と臆面もなく大書きしている日本放送協会を筆頭に、在京民放4局も全国ネットで生中継する中、テレビ東京の番組編成が話題となった。 14時からの「国葬儀」は生中継せず、13時40分から5分間だけ武道館前から式典直前の様子を伝える「報道特番」をオンエアした後は13時45分から15時40分まで米国映画『ベートーベン』(1992年公開)を放映した。 ランディ・エデルマンが音楽を担当していたから僕も観たことがあるけど、波瀾万丈な「運命」になりそうな犬だからと名付けられたセント・バーナードのベートーベンが巻き起こすドタバタ劇。 「国葬儀」当日は愛犬家がテレビ東京に大集合だ、とツイートしたけど、 若しかしたら「田園」だけでなくピアノソナタ第8番「悲壮」も流れた「国葬儀」へのオマージュだったのかも。だとしたら、実にあっぱれな番組編成方針だ(苦笑)』、「国家元首の女王、国王は国葬。王以外を国葬とする場合は王室と議会の同意が必要。王以外の王室メンバー、首相経験者らは国葬に準じる「儀礼葬 ceremonial funeral」なので、ウェールズ公妃だったダイアナ・フランセス、元首相のマーガレット・サッチャーは儀礼葬。 日本は国会決議すら省いた「国葬儀」。このアバウトさでは、理詰めの言葉で闘う「外交」の土俵で成果を得られる訳もないよね。同じ島国でも、彼我(ひが)の差は大きい」、本当に「このアバウトさ」にはほとほと呆れ果てる。
・「理想的」なシンボルを失った英国の今後  浅田 イギリス女王エリザベス2世は9月8日に96歳の生涯を閉じた。エリザベス1世はイギリスがスペインに勝って世界の海を支配する道を踏み出す時期の女王だったとしたら、2世は大英帝国の最後を象徴する女王だった。 戦争で疎開する子どもたちにラジオで励ましの挨拶を送った王女時代から、新型コロナウイルス感染症によるロックダウン下の国民にTVで励ましの挨拶を送った晩年まで、激動する世界の中で「古き良きイギリス」の象徴としての役割を見事に演じきったのは確か。 だけど、旧植民地国など56カ国からなるコモンウェルス(旧・英連邦)の長であり、そのうちカナダやオーストラリアを含む15の英連邦王国の元首でもあった彼女は、恐るべき暴力で世界を支配した大英帝国の象徴であり、植民地主義や白人至上主義について反省や謝罪を一切口にしなかったばかりか、イギリスがEUを離脱しても「グローバル・ブリテン」として自由に雄飛できるという妄想を国民に抱かせた張本人でもある。 そういう文脈で、欧米各国はもちろんイギリスでさえ、マス・メディアは女王を讃える論者とともに大英帝国の象徴として批判する旧植民地出身者らを必ず入れるようにしてた。 ところが、日本のマス・メディアは女王を礼賛し、ついでに「日本の皇室との心温まる交流」をフィーチャーするばかり……田中さんの言う国民の「眠度」にふさわしいのかもしれないね。 浅田 そもそも、彼女が女王になったのは、伯父エドワード8世が離婚歴のあるアメリカ人女性と結婚するため王位を投げ出し、父が吃音に苦しんでいたにもかかわらず急遽王位を受け継いでジョージ6世になったから。 こんど国王チャールズ3世となった長男も、王太子時代にダイアナ・スペンサーと結婚しながら、友人の妻だったカミラ・パーカー・ボウルズ(こんど王妃となった)との不倫関係を続けて離婚に至り、離婚後のダイアナがエジプト人の恋人と1997年に交通事故死したときは王室の対応が冷たいという批判が殺到、急遽、女王の母(クイーン・マザーとして人気のあった2002年に逝去のエリザベス・ボーズ=ライアン王太后)のために用意されてた計画を使って大規模な葬儀を行なう騒ぎだった。 次男のアンドルー王子も、少女売買春で悪名高いジェフリー・エプスタインの顧客リストに名前があった件で公務から外された──母の葬儀には「女王への特別な敬意の印」として軍服で参列することを許されたけど。 チャールズの次男ヘンリー(ハリー)王子も、アフリカ系の母をもち離婚歴のあるアメリカ人メーガン・マークルと結婚して以来、妻が英王室の人種差別を批判するなどして軋轢が生じ、王室を離脱するに至った──これまた祖母の葬儀には出席してたけど。 こうして見ると、エリザベス2世という「理想的」なシンボルを失った英王室は、早晩危機に直面するんじゃないか。 ちなみに、エリザベス2世は死の直前の9月6日にリズ・トラスを首相に任命した。即位のとき首相だったウィンストン・チャーチルから数えて15人目の首相。しかし、それが在職わずか50日で退陣に追い込まれたのは、エリザベス2世以後のイギリスの運命を暗示してるような感じも。 まあ、労働党左派の両親から生まれ、オックスフォード大学で自由民主党を代表して王政廃止論の論陣を張ったこともあるのに、保守党に入ってからは新自由主義に転じ、首相になってサッチャー=レーガン主義そのままの金持ち・大企業減税を打ち出したところ、ポンドの大暴落で政権を投げ出さざるを得なかったトラスが、浅はかすぎたんだけどね。 ただ、ポンドの暴落をもしのぐ円の暴落にもかかわらず、日本銀行が「異次元の金融緩和」を続け、国債を無際限に買い続けるから、政府が財源の裏付けもないのに29兆円を超える「補正予算」を組むっていう日本の現状を見ると、危機感の欠如って点でイギリスより病いが深いと言うほかないね。中編につづく』、「エリザベス2世という「理想的」なシンボルを失った英王室は、早晩危機に直面するんじゃないか」、その通りだろう。「異次元の金融緩和」については、昨日、小幅手直しが行われた。なお、「中編」以降の紹介は省略する。

次に、12月8日付けAERAdot「旧統一教会から訴えられた有田芳生氏が裁判で詳らかにする「教団による空気銃の大量輸入」衝撃の内容」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/dot/2022120700110.html?page=1
・『「今回の裁判は旧統一教会との『最終決戦』です」 1980年代の「霊感商法追及キャンペーン」以来、およそ35年間にわたって旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の闇に迫り続けてきたジャーナリストの有田芳生さん(70)は、教団から名誉毀損で訴えられたことについて、静かにそう語った。衝撃の内容を詳(つまび)らかにする。 事の始まりは8月19日。 日本テレビ系の情報番組「スッキリ」で有田さんが旧統一教会に対して次のように発言したことだった。 「霊感商法をやってきた反社会的集団だっていうのは警察庁ももう認めているわけですから」 これに対して旧統一教会は10月27日、都内で記者会見を開き、「事実ではない」と反論。日本テレビと有田さんに対して名誉毀損で訴訟を起こすと説明した』、「旧統一教会」が「日本テレビと有田さんに対して名誉毀損で訴訟」を起こしたのは、勝敗よりも組織防衛のためだろう。
・『旧統一教会の「有田退治」  これまで有田さんはメディアに出演する際、取材に基づいた慎重な発言を心がけてきた。うかつな発言をすれば執拗に反撃してくる旧統一教会の体質を熟知しているからだ。 同様に、有田さんがそんな人物であることは百も承知であろう旧統一教会があえて名誉毀損で訴えたのは、言論萎縮を目的とした「スラップ訴訟」である可能性もある。 そう、水を向けると、有田さんは「訴えられてからテレビの出演は一切なくなった」と言う。 「今回の件について、背景を語ってほしいという局もありました。スタジオに行く準備をしていたら、『ダメになった』と、連絡があった。あれは日本テレビでの発言ですから、他局が扱うのは問題ないはずですが、どこからも出演依頼がこなくなった。萎縮しているのか、わかりませんが……」 有田さんが入手した旧統一教会内部文書によると、教団は「有田対策」「有田退治」に力を注いできた。今回の訴訟も一見すると、旧統一教会の思惑どおりに進んでいるようにも見える。 だが、果たしてそうだろうか。) 有田さんは今回の訴訟について、こう語った。 「旧統一教会への圧力になると思うので、何年かかっても徹底的にやります。旧統一教会を社会的に包囲する。そのような裁判にしなければ意味がない」 先述した「スッキリ」での発言については、「そういう事実があった。ただ、それだけなんですよ」と語る』、「旧統一教会があえて名誉毀損で訴えたのは、言論萎縮を目的とした「スラップ訴訟」である可能性もある」、その通りだろう。
・『「オウムの次は統一教会」  有田さんが「朝日ジャーナル」(朝日新聞社)を舞台に旧統一教会について取材を始めたのは1986年。最初の記事から「異国(韓国)の団体(旧統一教会と国際勝共連合)」が日本の政治に介入していることについて深く切り込んだ。 その後、有田さんはオウム真理教事件をきっかけに、カルト宗教に詳しいジャーナリストとしてテレビでひっぱりだことなる。警察が有田さんと接触し始めたのはこのころだった。 「オウムの件で定期的に会っていました。向こうは情報が欲しかったし、こちらも同じだった」 主に会っていたのは警視庁公安部のS総務課長。さらに、「要所要所で警察庁公安第1課のT課長が出てきた」。T課長は全国の公安警察にオウム真理教関連の捜査を徹底させ、後に警視庁副総監となった人物である。 「地下鉄サリン事件」が起こった95年の秋のこと。 有田さんはこの2人から「旧統一教会についてレクチャーしてほしい」と依頼された。「そこに誰が集まっているのかは聞かないでほしい」と念押しされ、東京・麹町のホテルの一室を訪れた。 「目つきの鋭い男たち20~30人が狭い会議室にぎっしりと着席していました。おそらく全国の公安警察の幹部だと思います。二人は『オウムの次に統一教会を摘発の対象にしている』と、言っていました。さらに『相当な情報源ができた。経済問題から捜査に入る』と、具体的に語っていました」 95年といえば、まだオウム真理教事件の捜査の真っ最中である。オウム真理教とは違い、警察はかなり以前から旧統一教会の動向について目を光らせてきた』、「95年の秋」、「東京・麹町のホテルの一室を訪れた。 「目つきの鋭い男たち20~30人が狭い会議室にぎっしりと着席していました。おそらく全国の公安警察の幹部だと思います。二人は『オウムの次に統一教会を摘発の対象にしている』と、言っていました』、その当時は、公安警察はやる気十分だったようだ。
・『旧統一教会は「軍事組織」  有田さんの取材によると、警察は旧統一教会について「軍事組織」をも持っているという見方をしていたという。 「統一教会は60年代後半に2500丁の空気散弾銃を日本に持ち込んでいる。銃砲店もつくった。なので、当時から警察は統一教会を単なる宗教団体とは見ていなかった。『文鮮明機関』ですからね」と、有田さんは言う。 「文鮮明機関」とは何か?) 78年11月、米下院国際関係委員会国際機構小委員会、通称「フレイザー委員会」は旧統一教会の対米工作などについて最終報告書を公表した。報告書のなかで、フレイザー委員会は文鮮明を頂点とする旧統一教会を「文鮮明機関」と規定した。 報告書は、旧統一教会と韓国政府、韓国中央情報部(KCIA)との密接な関係のほか、教団の関連企業が韓国の軍需産業の一翼を担ってライフル銃や対空砲の部品生産を行い、第三国へ輸出する工作さえしようとした、と指摘している。 この軍需企業が、日本へ空気銃を輸出した「統一産業」である。68年に輸入したのは「幸世物産」で、ともに名の知れた旧統一教会の関連企業である。 「空気銃」といっても、おもちゃのようなしろものではまったくない。73年4月の衆議院内閣委員会での答弁によると、「鋭和3B」空気銃は10メートル離れた厚さ2センチの板を貫通する威力がある。当時の通商産業省重工業局長は、「(鋭和3Bは)現実に輸入されましたものが1万5700丁でございます」と説明。中路雅弘衆院議員(当時)も、「非常に殺傷能力を持った銃」と語っている』、「68年に輸入したのは「幸世物産」で、ともに名の知れた旧統一教会の関連企業」、「「空気銃」といっても、おもちゃのようなしろものではまったくない・・・「鋭和3B」空気銃は10メートル離れた厚さ2センチの板を貫通する威力」・・・「現実に輸入されましたものが1万5700丁」、かなりの「威力」のある「銃」が「1万5700丁」も輸入されたようだ。現在これらはきちんと登録されているのだろうか。
・『教団を守った「政治の力」  オウム真理教事件の直後、警察幹部は「次は統一教会を潰す」と、あれほど意気込んでいたにもかかわらず、結局、動かなかった。 なぜか。 いまでもよく覚えていますが、ぼくがレクチャーしてから10年後、Sさんら警視庁公安部の人たちに『いまだから言えることを教えてください』と、尋ねてみたのです。すると、驚くような事実をいくつもしゃべった。ただ、摘発できなかった理由についてはひと言だけ、『政治の力だよ』と、口にした」 有田さんは裁判を通じて、警察がなぜ旧統一教会を反社会的団体と認識していたのか、その根拠を明らかにしていくつもりだ。裁判が長引けば長引くほど、世間の目は旧統一教会にずっと向けられる。35年もの間、旧統一教会を追ってきた有田さんが今後、教団とどのような闘いをするのか、明らかになる』、「摘発できなかった理由についてはひと言だけ、『政治の力だよ』と、口にした」、自民党がそんなに以前から「旧統一教会」を守るような動きをしていたとは、驚かされた。今後、「有田さんは裁判を通じて」明らかにしてゆきのを期待したい。

第三に、12月17日付け東洋経済オンラインが掲載した弁護士/リンク総合法律事務所所長の紀藤 正樹氏による「旧統一教会問題第一人者が語る「空白の30年」 なぜ日本で対カルトの法律ができなかったのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/639144
・『安倍晋三元首相の銃撃事件をきっかけに、カルト宗教の問題がクローズアップされました。高額献金、児童虐待、さらに政治との関係など、さまざまな問題が議論されています。30年以上も前からカルト宗教の問題に警鐘を鳴らし、被害者に寄り添ってきた紀藤正樹弁護士。ようやくカルト問題が社会問題化し、法整備の段階に至った今、その思いを著書『カルト宗教』から一部引用・再構成して紹介します』、興味深そうだ。
・『カルト宗教の問題は今に始まったことではない  2022年7日8日、参議院選挙における街頭演説中に安倍晋三元首相が銃撃されて殺害されました。その犯行の動機に、「世界基督教統一神霊協会」(現「世界平和統一家庭連合」。以下、「統一教会」)が関係しているのではないかとされたことをきっかけに、カルト宗教の問題がメディアなどで大きく取り上げられるようになります。 統一教会は以前から問題が指摘されていた宗教団体です。安倍元首相銃撃事件以降、さまざまなメディアで統一教会の実態が報じられ、霊感商法、高額献金、家族破壊、政治への浸透など、カルト宗教の問題に世間の目が向けられました。日本社会に大きな波紋が広がっていったのです。 カルト宗教における労働収奪、性的収奪、児童虐待などの問題が表面化するにしたがって、そうした人権蹂躙の負の連鎖を断ち切るための社会的、法的、行政的なしくみを構築する必要があるとの声が強くなっています。) 銃撃事件が起きる2年ほど前、私は、雑誌『中外日報』に「後を絶たない『カルト被害』」と題したコラムを寄稿しました。オウム真理教による地下鉄サリン事件から25年が経過しているにもかかわらず、カルト宗教による被害がまだ続いていることと、被害者の救済対策が今なお不十分であることを強く主張したのです。記事の一部を抜粋して引用しましょう。 日本は、カルト被害の救済に対する姿勢がなお不十分であり、途上であるというべきである。オウム真理教事件を体験した以降も、日本のカルト対策はあいかわらず貧困な状態にあり。それが現在の後を絶たない日本のカルト被害問題の原因となっている。 実際に、松本、地下鉄サリン両事件での死者だけでも20人以上、死傷者は約6千人にも上る。世界でも未曾有のこの事件について、日本は、政府として、未だに総括も調査もしていないし、報告書も作成していない。立法府である国会も特別な調査委員会すら設置していない。なぜ事件がおきたのか、そしてどうすれば今後二度と事件をおこさないですむのか、という問いに対し、日本としての答えが、未だにない状態にある。(中略) カルト対策は、「信者収奪型」の事件にいかに向き合うかが大切である。信者の自己責任として放置しない法制をどう構築していくのか、二度とオウム事件を引き起こさないためにも、日本の未来に託された課題である。 安倍元首相銃撃事件について、後日警察から、容疑者(当時)の犯行動機が「統一教会への恨み」に端を発するものであったと公表されました。まさに、「日本の未来に託された課題」が解決されないまま、危惧していたことが現実になってしまったのです』、「松本、地下鉄サリン両事件での死者だけでも20人以上、死傷者は約6千人にも上る。世界でも未曾有のこの事件について、日本は、政府として、未だに総括も調査もしていないし、報告書も作成していない。立法府である国会も特別な調査委員会すら設置していない。なぜ事件がおきたのか、そしてどうすれば今後二度と事件をおこさないですむのか、という問いに対し、日本としての答えが、未だにない状態にある」、驚くべきことだ。日本は過去の総括が大の苦手のようだ。
・『国もメディアも動いてくれなかった「空白の30年」  銃撃事件から遡ること30年――1992年に統一教会が主催する合同結婚式や、霊感商法がクローズアップされたことがありました。それ以来、統一教会が社会の表舞台に登場することはありませんでした。しかし、私や、カルト被害者の救済に取り組む同志たちは、その後も統一教会による被害が続いているということ、そして、その対策を講じる必要があるということを、さんざん訴えてきました。 それにもかかわらず、国は動いてくれませんでした。メディアも、なかなか取り上げようとはしてくれませんでした。こうして、ずっと野放しにされてきた結果、「空白の30年」が生まれ、元首相が銃撃されるという非常にショッキングな事件を引き起こすきっかけとなってしまったのです。 もしも空白の30年がなかったら、事件の発生を未然に防ぐことができたと断言はできませんが、可能性を小さくすることはできたのではないかと思います。少なくとも、霊感商法等で金銭を収奪される被害者や、生まれたときから生き方や考え方を強要される宗教2世(両親がカルト宗教の信者)の数を大きく減らすことはできたでしょう。統一教会のみならず、カルト宗教や自己啓発セミナーなどのカルト的な団体に苦しめられる人を少なくすることができたはずです。) 欧米では80年代以降、教義の是非に立ち入ることなく、カルト的な団体が引き起こす現象に焦点を当て、厳正に対処していくための法整備がなされました。その結果、カルト被害は大きく減っています。なぜ、諸外国にできて日本にはできないのか。私は不思議で仕方がありません。 日本には「信教の自由」の限界が論じられてきた歴史がありません。だから、国も憲法学者も、「こういう場合はだめ」という具体的な指標に言及したがらない風潮があります。私にいわせれば、たんなる怠慢です。個人の自由な意思や信教を侵害するカルト宗教を、信教の自由を理由に擁護するのは本末転倒でしょう。 例えば、表現の自由については名誉毀損やプライバシーの侵害という概念が広く浸透しています。国民の多くは、表現の自由にも限界があることを理解しています。一方、信教の自由は、「あり・なし」「許される・許されない」「合法・違法」を分かつラインが曖昧です。限界がどこにあるのか、いまだに判然としません。このような現状が続くかぎり、政治家、官僚、学者らがカルト問題に対していつまでも及び腰となり、カルトの暴走を止めることはかなわないのです』、「欧米では80年代以降、教義の是非に立ち入ることなく、カルト的な団体が引き起こす現象に焦点を当て、厳正に対処していくための法整備がなされました。その結果、カルト被害は大きく減っています。なぜ、諸外国にできて日本にはできないのか。私は不思議で仕方がありません。 日本には「信教の自由」の限界が論じられてきた歴史がありません。だから、国も憲法学者も、「こういう場合はだめ」という具体的な指標に言及したがらない風潮があります。私にいわせれば、たんなる怠慢です。個人の自由な意思や信教を侵害するカルト宗教を、信教の自由を理由に擁護するのは本末転倒でしょう」、「信教の自由は、「あり・なし」「許される・許されない」「合法・違法」を分かつラインが曖昧です。限界がどこにあるのか、いまだに判然としません。このような現状が続くかぎり、政治家、官僚、学者らがカルト問題に対していつまでも及び腰となり、カルトの暴走を止めることはかなわないのです」、その通りだ。
・『カルト宗教についての知識があなたの身を守る  私の目的、願いは終始一貫しています。とにもかくにも、カルト被害者を減らし、救済すること。そして究極的には、カルト宗教を根絶させることです。そのためなら、努力は惜しみません。これからも、法律的規制の整備の必要性を国に訴えつつ、情報を提供したり、活動に協力したりしていきます。 それに加え、社会的規制も強化していかねばならないとも考えています。オウム真理教が事件を起こした直後は、カルトに対する社会の目が厳しくなり、一時的にカルト的な団体は息を潜めました。しかし、社会の関心もほどなく薄れていきました。カルトに対する社会的規制を恒常的に敷き続けるためには、多くの人々にカルトの実態を把握していただくことが必要です。これが被害者をなくすための、まさに第一歩となるのです。 カルト的な団体を野放しにしてはいけないということを、みなさんになにがなんでも知っていただきたい。だから私はカルトに関する情報を広く世の中に発信し続けています。 そもそもカルト宗教とはどういうものなのか。マインド・コントロールなどの勧誘の手口や活動内容。収奪や虐待など人権蹂躙の実態。カルト宗教と政治(家)との関係。家族や知人を脱会させる方法と脱会後について。国や私たちがこれからすべきこと。こういったカルト宗教に関する深い知識を身につけることが、あなた自身の身を守るために、家族や知人が被害に遭わないために、そして、被害に遭ってしまった人たちを救うことにつながる、そう信じています』、「カルトに対する社会的規制を恒常的に敷き続けるためには、多くの人々にカルトの実態を把握していただくことが必要です。これが被害者をなくすための、まさに第一歩となるのです」、同感である。旧統一教会の被害者救済法案、会期内に成立の見込みとなった。不完全なものでも、「被害者救済」の第一歩となることを期待したい。 
タグ:「カルトに対する社会的規制を恒常的に敷き続けるためには、多くの人々にカルトの実態を把握していただくことが必要です。これが被害者をなくすための、まさに第一歩となるのです」、同感である。旧統一教会の被害者救済法案、会期内に成立の見込みとなった。不完全なものでも、「被害者救済」の第一歩となることを期待したい。 東洋経済オンライン 「信教の自由は、「あり・なし」「許される・許されない」「合法・違法」を分かつラインが曖昧です。限界がどこにあるのか、いまだに判然としません。このような現状が続くかぎり、政治家、官僚、学者らがカルト問題に対していつまでも及び腰となり、カルトの暴走を止めることはかなわないのです」、その通りだ。 日本には「信教の自由」の限界が論じられてきた歴史がありません。だから、国も憲法学者も、「こういう場合はだめ」という具体的な指標に言及したがらない風潮があります。私にいわせれば、たんなる怠慢です。個人の自由な意思や信教を侵害するカルト宗教を、信教の自由を理由に擁護するのは本末転倒でしょう」、 「欧米では80年代以降、教義の是非に立ち入ることなく、カルト的な団体が引き起こす現象に焦点を当て、厳正に対処していくための法整備がなされました。その結果、カルト被害は大きく減っています。なぜ、諸外国にできて日本にはできないのか。私は不思議で仕方がありません。 紀藤 正樹氏による「旧統一教会問題第一人者が語る「空白の30年」 なぜ日本で対カルトの法律ができなかったのか」 「摘発できなかった理由についてはひと言だけ、『政治の力だよ』と、口にした」、自民党がそんなに以前から「旧統一教会」を守るような動きをしていたとは、驚かされた。今後、「有田さんは裁判を通じて」明らかにしてゆきのを期待したい。 「68年に輸入したのは「幸世物産」で、ともに名の知れた旧統一教会の関連企業」、「「空気銃」といっても、おもちゃのようなしろものではまったくない・・・「鋭和3B」空気銃は10メートル離れた厚さ2センチの板を貫通する威力」・・・「現実に輸入されましたものが1万5700丁」、かなりの「威力」のある「銃」が「1万5700丁」も輸入されたようだ。現在これらはきちんと登録されているのだろうか。 産経でさえ「よくなかった」59・2% 「国家元首の女王、国王は国葬。王以外を国葬とする場合は王室と議会の同意が必要。王以外の王室メンバー、首相経験者らは国葬に準じる「儀礼葬 ceremonial funeral」なので、ウェールズ公妃だったダイアナ・フランセス、元首相のマーガレット・サッチャーは儀礼葬。 日本は国会決議すら省いた「国葬儀」。このアバウトさでは、理詰めの言葉で闘う「外交」の土俵で成果を得られる訳もないよね。同じ島国でも、彼我(ひが)の差は大きい」、本当に「このアバウトさ」にはほとほと呆れ果てる。 現代ビジネス「安倍晋三とエリザベス女王の「国葬」を改めて総括してみよう《田中康夫・浅田彰》「憂国呆談」第4回(前)」 「安倍のように左翼を敵としそれをねじ伏せる形で強引に右傾化を進めたdivisiveな・・・政治家は国葬にふさわしくない。 選挙運動中に銃撃されて亡くなったのは気の毒だけれど、犯人が実家を家庭崩壊に追い込んだ旧・統一教会を恨み、旧・統一教会とつながりのある安倍を狙ったことが分かって、安倍派が右翼ナショナリズムを標榜しながら反共反日カルトから選挙応援を受けてたことが明るみに出ちゃった。これでは最初同情論が強かった世論が国葬反対に傾いたのも当然」、 「松本、地下鉄サリン両事件での死者だけでも20人以上、死傷者は約6千人にも上る。世界でも未曾有のこの事件について、日本は、政府として、未だに総括も調査もしていないし、報告書も作成していない。立法府である国会も特別な調査委員会すら設置していない。なぜ事件がおきたのか、そしてどうすれば今後二度と事件をおこさないですむのか、という問いに対し、日本としての答えが、未だにない状態にある」、驚くべきことだ。日本は過去の総括が大の苦手のようだ。 「旧統一教会があえて名誉毀損で訴えたのは、言論萎縮を目的とした「スラップ訴訟」である可能性もある」、その通りだろう。 AERAdot「旧統一教会から訴えられた有田芳生氏が裁判で詳らかにする「教団による空気銃の大量輸入」衝撃の内容」 「京都には庭が趣味だった山縣の別荘・無鄰菴(むりんあん)があって、日露戦争に向かう政権中枢の会議の舞台にもなったけど、公家や大名家の出身ならともかく、軍や政府の要職を歴任したとはいえ所詮は国家公務員の身であんな広壮な別荘が作れたんだから、どれだけ裏金が動いてたかってこと」、「安倍派が右翼ナショナリズムを標榜しながら反共反日カルトから選挙応援を受けてたことが明るみに出ちゃった」、全くみっともない限りだ。 「旧統一教会」が「日本テレビと有田さんに対して名誉毀損で訴訟」を起こしたのは、勝敗よりも組織防衛のためだろう。 「95年の秋」、「東京・麹町のホテルの一室を訪れた。 「目つきの鋭い男たち20~30人が狭い会議室にぎっしりと着席していました。おそらく全国の公安警察の幹部だと思います。二人は『オウムの次に統一教会を摘発の対象にしている』と、言っていました』、その当時は、公安警察はやる気十分だったようだ。 安倍元首相暗殺事件 (その5)(安倍晋三とエリザベス女王の「国葬」を改めて総括してみよう《田中康夫・浅田彰》「憂国呆談」第4回(前)、旧統一教会から訴えられた有田芳生氏が裁判で詳らかにする「教団による空気銃の大量輸入」衝撃の内容、旧統一教会問題第一人者が語る「空白の30年」 なぜ日本で対カルトの法律ができなかったのか) 「エリザベス2世という「理想的」なシンボルを失った英王室は、早晩危機に直面するんじゃないか」、その通りだろう。「異次元の金融緩和」については、昨日、小幅手直しが行われた。なお、「中編」以降の紹介は省略する。
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百貨店業界(その5)(密着営業はもう古い?「ニューリッチ」の開拓策 百貨店の最終兵器「外商ビジネス」が抱える難題、西武HDがホテルなどを大量売却 「身軽な経営」シフトで本当に生き残れるか、阪急百貨店の驚く新展開「常識破る売り場」の正体 アウトドアとラグジュアリーのブランドが共存) [産業動向]

百貨店業界については、昨年9月9日に取上げた。今日は、(その5)(密着営業はもう古い?「ニューリッチ」の開拓策 百貨店の最終兵器「外商ビジネス」が抱える難題、西武HDがホテルなどを大量売却 「身軽な経営」シフトで本当に生き残れるか、阪急百貨店の驚く新展開「常識破る売り場」の正体 アウトドアとラグジュアリーのブランドが共存)である。

先ずは、昨年12月4日付け東洋経済オンライン「密着営業はもう古い?「ニューリッチ」の開拓策 百貨店の最終兵器「外商ビジネス」が抱える難題」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/576059
・『コロナ禍で大きな打撃を受けた百貨店だが、唯一の光明と言えるのが富裕層消費だ。中でも「外商」ビジネスには各社力を注ぐが、一筋縄でいかない面も。 高級ブランドの衣料品に宝飾品、時計、美術品……。 国内の百貨店で、高額品の販売が空前の活況を呈している。コロナ禍で百貨店の来店客数は低迷が続いており、大手各社の売り上げはコロナ前にあたる2019年度の7~8割程度の水準であるにもかかわらず、だ。 「高額品消費の勢いはまったく衰えない。コロナ禍で踏んだり蹴ったりだが、唯一の光明だ」。ある百貨店関係者はそう言って目を細める』、「高額品消費の勢いはまったく衰えない」、「百貨店」にとっては、救いの神だ。
・『成長市場を狙い体制強化  百貨店店舗で全国2位の売り上げを誇る阪急うめだ本店(大阪市)では、2021年4~9月の高級ブランドの売り上げが前年同期比で4割増えた。牽引役は、富裕層顧客に対し特別なサービスを提供する外商部門だ。同部門における500万円以上の商談件数は前年比で5割増え、在宅時間を充実させるための高級家具などが富裕層に人気だという。 J.フロントリテイリング傘下の大丸松坂屋百貨店でも高級ブランドの売り上げが絶好調。2019年度と比べても2割増えている。 外出自粛や店舗休業などの影響で2020年度に数百億円単位の赤字を計上した百貨店各社にとって、富裕層消費は大げさではなく”光明”なのだ。 高額品消費が好調な理由として、コロナ禍での株価や不動産価格の上昇がある。富裕層の実態について詳しい野村総合研究所の宮本弘之パートナーは「富裕層の消費は収入の増減より、保有資産の時価の増減から影響を受ける傾向がある。コロナ禍で株高が続いてきたことで、消費マインドが非常に活発になっている」と分析する。 加えて、海外旅行やイベント、食事などの「コト消費」が長期間制限されたことで、行き場を失ったお金が国内でのモノの消費に向かった側面も大きい。) 野村総研の推計によると、預貯金や株式、債券などの金融資産の合計から負債を差し引いた純金融資産保有額が1億円以上ある富裕層は、2019年時点で全国で132.7万世帯。資産規模合計は333兆円にも上り、全世帯のたった2%が総資産額の2割を保有している構図だ。 この巨大な富裕層需要を取り込もうと、百貨店各社は競うように外商部門の体制を拡充している。店頭での接客要員を最低限必要な数まで絞り込み、外商など成長分野に再配置する動きも相次いでいる。 百貨店各社が外商など富裕層需要の獲得に注力するのは、これまで収益を支えてきた中間層の消費に今後の大きな成長が期待できないからだ。ショッピングセンターなどの商業施設やEC(ネット通販)に顧客を奪われているうえ、人口減少や所得低迷によってミドル市場のパイ自体が縮小することも確実だ。 一方、富裕層は国内市場で将来的にも成長が見込める数少ないカテゴリーだ。野村総研によると、富裕層の世帯数と資産規模は、2008年のリーマンショックを境に一度減少したものの、アベノミクスが本格化した2013年以降は一貫して増加を続けている。 関西を地盤とする阪急阪神百貨店の佐藤行近専務執行役員は「関西だけでも富裕層は数十万世帯いるとみられるが、われわれが接点を持てているのはほんの一握り。全然開拓しきれておらず、ポテンシャルは大きい」と期待する』、「高額品消費が好調な理由として、コロナ禍での株価や不動産価格の上昇がある」、「海外旅行やイベント、食事などの「コト消費」が長期間制限されたことで、行き場を失ったお金が国内でのモノの消費に向かった側面も大きい」、その通りだ。
・『外商顧客の「若返り」は可能か  百貨店の外商とは、富裕層顧客向けに通常の店頭販売とは別で提供している特別なサービスのことだ。 外商と聞いて多くの人がイメージするのが、「御用聞き」と呼ばれるサービスだろう。顧客ごとに付く外商員と呼ばれる営業担当者が、客からの要望に応じて商品を用意する。衣料品から宝飾品、美術品などの定番商品だけでなく、イベントのチケットや旅行まで手配するケースもある。 担当員は顧客の自宅に足しげく通い、具体的な商談がなくてもお茶をすすりながら世間話に花を咲かせる。その会話の中から客のニーズを探ったり、信頼関係を構築したりするのが伝統的な手法だ。 ほかにも、高級ホテルでの催事や食事会などに招待したり、誕生日にワインをプレゼントしたりと、一般客とは一線を画す濃密なサービスを提供する。 当然ながら、誰もが外商の顧客になれるわけではない。最も多いのは、祖父母や両親から引き継ぐパターン。代々の金持ちである「親リッチ」と呼ばれる層だ。次いで、既存顧客からの紹介というケースも多い。職業で見ると、医師や弁護士、会社経営者などが代表的だ。 外商の顧客は買い物のための口座を開設するが、現在、大丸松坂屋百貨店の外商口座数は15万口、阪急阪神百貨店の口座数は10万口だ。決して少なくない数だが、現状のままでは顧客数の先細りやさらなる高齢化は避けられない。各社とも、外商の主要顧客年齢層はおおむね50~70歳代であるためだ。 子どもが祖父母や両親から引き継いだとしても、利用がほとんどない「幽霊顧客」になることも珍しくない』、「外商顧客の「若返り」」は相当難しそうだ。
・『各社が狙うのは「ニューリッチ」  大丸松坂屋は売上高全体に占める外商比率を2023年度に30%(2019年度実績23%)に、業界首位の三越伊勢丹ホールディングスは年間100万円以上購入する上位顧客売上高を2024年度に2300億円(2019年度実績1806億円)に引き上げる計画をそれぞれ掲げる。 その実現に向けてカギを握るのが、若年富裕層の新規開拓だ。 新規顧客の審査基準について、百貨店は各社とも「職業や年収などから総合的に判断する」と説明。詳細は公表していないが、ある百貨店大手の関係者は「最低でも年収1000万~2000万円以上は必要」と話す。加えて、「かつてはストック(保有資産規模)を重視していたが、それでは若年層の開拓に広がりが出ないのでフロー(年収)重視に変わってきた」(同)と明かす。 別の百貨店関係者は「3年連続で年間購入額が100万円以上となることが一つの基準」と話す。 百貨店各社がとくに注目するのが、事業などによって一代で財を成した「ニューリッチ」と呼ばれる30~40代の富裕層だ。IT系企業のオーナー経営者などがそれに当てはまる。 「親リッチ層は消費にメリハリがあるのに対し、ニューリッチ層は消費意欲が旺盛で派手にお金を使う人が多い」(野村総研の宮本パートナー)。コロナ禍での高額品消費バブルも、ニューリッチが牽引しているとみられている。 新規顧客の開拓方法は地道だ。外商の開拓部隊が、高級住宅街はもとより、ニュースなどの公開情報を基に職場に飛び込み営業をかけることもある。 大丸松坂屋で外商部門を担当する中嶋宣浩営業企画部長は、「若い人は百貨店になじみが薄いと言われるが、百貨店に入る高級ブランドのショップでなら買い物をしたことがあるという人は意外と多い。その購買履歴を分析し、購入金額が多い人にダイレクトメールを送ったりもする」と話す』、「百貨店各社がとくに注目するのが、事業などによって一代で財を成した「ニューリッチ」と呼ばれる30~40代の富裕層だ。IT系企業のオーナー経営者などがそれに当てはまる。 「親リッチ層は消費にメリハリがあるのに対し、ニューリッチ層は消費意欲が旺盛で派手にお金を使う人が多い」(野村総研の宮本パートナー)』、「新規顧客の開拓方法は地道だ。外商の開拓部隊が、高級住宅街はもとより、ニュースなどの公開情報を基に職場に飛び込み営業をかけることもある」、かなり難しそうだ。
・『「密着型」営業が通用しない  ただ、「の開拓には従来とは異なるアプローチも必要になりそうだ。嗜好や消費様式は中高年齢の外商顧客とは大きく異なり、自宅や職場への飛び込み営業などの手法はむしろ逆効果になりかねない。 仮に顧客化したとしても、プライベートを重視する若年層は、自宅に通い詰めるような「密着型」の営業を好まない。都心のタワーマンションに居住する場合が多く、「商品をお持ちしても『宅配ボックスに入れておいて』で終わってしまい、関係性の構築がなかなか難しい」(大丸松坂屋の中嶋部長)。 そこで百貨店各社が目指すのが、スマホアプリやオウンドメディアなどのデジタルツールによる接点の拡大だ。 大丸松坂屋は2021年9月、自社で展開する富裕層向けウェブメディア「J PRIME」を30~50代の男性富裕層向けに刷新。新しい編集長にはファッション雑誌『メンズクラブ』の元編集長を招聘し、商品やサービスの内容を紹介するコンテンツを発信している。 掲載された商品やサービスに関心を持った富裕層は、大丸松坂屋のスマホアプリに誘導。アプリのプッシュ通知やメールなどでアプローチしていく。外商顧客向け専用サイト「コネスリーニュ」ではオンライン接客サービスを開始し、多忙で店舗を訪れる余裕のないニューリッチの買い物をサポートする。 求められる商品も従来とは異なる。男性用の衣料品ならば、スーツではなくブランドロゴが入ったパーカーやスニーカー、美術品ならば伝統的な日本画や洋画ではなく現代アートの需要が大きい。それに応じた品ぞろえを実現できるかどうかも顧客獲得の必須要素だ。 百貨店外商の強みは、ほかの小売りやECにはない1対1の接客対応力にある。コアである中高年齢層への従来型の外商営業を維持しつつ、次世代のニーズに合った新しい外商の勝ちパターンを確立できるか。そのバランスこそが新時代の外商ビジネスの行く末を左右しそうだ』、「プライベートを重視する若年層は、自宅に通い詰めるような「密着型」の営業を好まない。都心のタワーマンションに居住する場合が多く、「商品をお持ちしても『宅配ボックスに入れておいて』で終わってしまい、関係性の構築がなかなか難しい」、「百貨店外商の強みは、ほかの小売りやECにはない1対1の接客対応力にある。コアである中高年齢層への従来型の外商営業を維持しつつ、次世代のニーズに合った新しい外商の勝ちパターンを確立できるか。そのバランスこそが新時代の外商ビジネスの行く末を左右しそうだ」、「「百貨店外商」が果たして、「ニューリッチ」層を取り込んでいけるのか、注目される。

次に、2月15日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した法政大学大学院教授の真壁昭夫氏による「西武HDがホテルなどを大量売却、「身軽な経営」シフトで本当に生き残れるか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/296175
・『西武ホールディングス(HD)は、ホテルやゴルフ場、スキー場など31施設をシンガポールの政府系ファンドであるGICに売却する。売却額は約1500億円、売却益は約800億円となる見通し。資産売却によって身軽になる=「アセットライト」経営へ方針転換を図り、ウィズコロナ時代に生き残りをかける』、興味深そうだ。
・『ホテルやゴルフ場、スキー場など31施設を海外ファンドに売却  西武ホールディングス(HD)は、ホテルなど31施設をシンガポールの政府系ファンドであるGICに売却する。今回の決定の背景には、新型コロナウイルス感染再拡大など経営環境が激変する中で、生き残るために資産売却に踏み切らざるを得ない危機感がある。 西武HDは、資産売却後もホテルなど施設の運営は続ける。そうした動きを見ると、同社が資産売却によって身軽になる=「アセットライト」経営へと方針転換を図っているといえる。 資産の売却は、基本的に財務内容の改善や収益性の向上にプラスに働く。同社がホテルなどの運営に集中することによって、事業運営の効率性向上が期待できる。 国内外でコロナ変異株・オミクロン株の影響が深刻化し、人流や物流が寸断あるいは不安定な状況が続いている。そうした状況下、「ウィズコロナ」の経済運営に取り組む国や企業が増えている。西武HDがウィズコロナ時代において、どのように効率的なアセットライト経営を実現し、新しいビジネスモデルを作り出すことができるか注目される』、「海外ファンド」は「西武」をヨドバシHDに売却するとの噂が有力だが、豊島区長が、家電量販店はもう既に池袋に沢山あるので、考え直して欲しい旨を言明しているようだ。
・『ウィズコロナ時代に生き残りを目指す西武 交通や飲食、宿泊は以前と同様には戻らない  当面、世界経済はウィズコロナを余儀なくされる。どこかの時点では感染を克服するだろうが、いつまた違う変異株が出現するかわからないため、先行きは見通しづらい。 不確定要素が増大する環境下で企業が生き残るためには、身軽になって損益分岐点を引き下げ、収益を獲得しやすい体制整備が不可欠だ。西武HDがアセットライト経営に大胆にかじを切った背景には、そうした危機感がある。 コロナ禍で人々の生き方は激変した。交通や飲食、宿泊などの業界では、コロナ禍以前と全く同じ様相には戻らないだろう。ただし、それは単純に需要が減退するだけでなく、新しい価値観を生み出してもいる。 例えば、ワーケーションやテレワークの一環としてホテルを利用する人が増えている。シェアオフィスを利用する手もあるが、落ち着いた環境で安心して仕事をするのに、相応のサービスが行き届いたホテルやレジャー施設の利用に意義を感じる人が多い。「ホテルは宿泊施設」という既成概念は、コロナ禍の発生によって崩れた。また、コロナ禍を境にアウトドアやキャンプの需要も急増している  感染状況が落ち着けば、国内の観光需要は急速に回復する可能性が高い。飲食や宿泊、音楽イベントへの参加など、これまで我慢してきた需要(ペントアップ・ディマンド)が一気に表出する。その際にホテル・レジャー施設やイベントの運営者が、どれだけ鮮烈な参加体験を提供できるかが、中長期的な収益獲得に大きく影響する。 西武HDが環境変化に柔軟に応じて業績を回復させるには、そうした新しい価値観に沿った、消費者にとって鮮烈な体験の場を増やす必要がある。強化すべきは、体験の中身(コンテンツ)の創出だ。その分野に集中するために、同社はホテル・レジャー施設の所有と運営を一体的に行う従来戦略を改める。 グループ経営としては建設子会社を売却する一方、ホテル運営に特化した新会社、西武・プリンスホテルズワールドワイドを設立し、構造改革を加速させる』、「西武HDが環境変化に柔軟に応じて業績を回復させるには、そうした新しい価値観に沿った、消費者にとって鮮烈な体験の場を増やす必要がある。強化すべきは、体験の中身(コンテンツ)の創出だ。その分野に集中するために、同社はホテル・レジャー施設の所有と運営を一体的に行う従来戦略を改める」、なるほど。
・『世界最大手ホテルチェーン 米マリオットもアセットライトを推進  2021年5月に西武HDが発表した中期経営計画では、アセットライトをテーマに経営改革を断行すると明記された。その後、所有するホテルなどの売却先を探し始め、2月10日に売却先と内容の詳細を発表した。 アセットライト経営とは、バランスシート上の資産(アセット)を圧縮して、財務面の負担を軽く(ライトに)する経営をいう。今回、西武HDは資産を投資ファンドに売却することで、事業運営の効率性向上が期待される。 具体的には、保有資産の減少はコスト削減につながる。また、得られた資金を成長期待の高い分野に再配分することによって、資本の収益率は高まる可能性がある。売却資金を負債返済に充てる場合、財務内容は改善するだろう。 事業運営の観点から考えると、新しいサービスの創出やホテルブランドの価値向上などに集中しやすくなる。その成果によって、投資ファンドなどホテルの所有者は利得を手にする。 もし、期待する利得が実現できなければ、オーナーは別の企業に運営を任せようとするだろう。アセットライト経営によって、所有を前提としたビジネスモデルは大きく変わる。 海外では、積極的にアセットライト経営を強化してきた企業がある。世界最大手のホテルチェーン、米マリオット・インターナショナルだ。同社はホテルの運営受託に特化し、低価格帯から高付加価値型まで多種多様なブランドを確立している。それは、より多くの需要を取り込むために欠かせない戦略だ。 米国では金利が上昇し金融政策の大転換が近づいているが、マリオット株は上昇基調だ。それは主要投資家が、ウィズコロナ時代でもマリオットが人々の価値観の変容に柔軟に対応し、安定的に収益を生み出せると考えているからに他ならない。 わが国ではモノを所有し、その利用権を独占することに意義を見いだす個人や企業が多い。しかし、そうした発想が、常に人々の満足度向上につながるとは限らない。ウィズコロナで事業運営の効率性を高めるために、アセットライト経営を目指す日本企業は増えるだろう』、「米国では金利が上昇し金融政策の大転換が近づいているが、マリオット株は上昇基調だ。それは主要投資家が、ウィズコロナ時代でもマリオットが人々の価値観の変容に柔軟に対応し、安定的に収益を生み出せると考えているからに他ならない。 わが国ではモノを所有し、その利用権を独占することに意義を見いだす個人や企業が多い。しかし、そうした発想が、常に人々の満足度向上につながるとは限らない。ウィズコロナで事業運営の効率性を高めるために、アセットライト経営を目指す日本企業は増えるだろう」、なるほど。
・『施設の魅力を磨くだけでなく潜在的な顧客の目を向けさせることが必要  今後の注目点は、西武HDがいかに高付加価値型のサービスを創出できるかだ。20年に実施された国の支援策、Go Toトラベルキャンペーンの際、多くのシニアが自宅から近いエリアで旅行を楽しんだ。特に、首都圏からほど近い箱根や軽井沢などのリゾートが多くの人気を集めた。 どんなに困難な状況下でも、私たちは「日常と異なる空間を楽しみたい」という欲求がある。国の家計調査によると、60歳を超える世代の貯蓄額は、他の世代を大きく上回る。シニア層のレジャーへの支出余地は大きい。 ウィズコロナで、感染に留意しつつ自宅から1~2時間圏内で旅行を楽しむ「マイクロツーリズム」への潜在的な需要は増えるだろう。また、訪日外国人(インバウンド)需要は蒸発しているが、「コロナ禍が収束すれば日本を訪れたい」と考えている外国人は多い。そうした需要を取り込み、業績の回復と拡大につなげるためには、客単価の高い富裕層向けビジネスの強化も必要だ。 西武HDは、国内外の需要を取り込む、新しい動線の確立に取り組むべきだ。そのためには施設の魅力を磨くだけでなく、潜在的な顧客の目を施設に向けさせることが必要だ。 例えば、施設周辺の自然環境の美しさをコンテンツで創出し、それを拡張現実(AR)や仮想現実(VR)などの先端技術を駆使して、より鮮烈な体験につながる形で潜在顧客に伝える。他には、プライベートジェット運営会社との連携を強化し、より快適な移動体験を提供するのはどうだろうか。 そうした取り組みが成果につながれば、新しいホテル運営会社がグループ外施設の運営を受託する展開もあるだろう。アセットライト経営の実践には、自社の経営資源に、社外の新しい発想を結合させる施策が必要だ。より効率的に付加価値を獲得することが、西武HDには求められている』、「アセットライト経営の実践には、自社の経営資源に、社外の新しい発想を結合させる施策が必要だ。より効率的に付加価値を獲得することが、西武HDには求められている」、なかなか困難そうな課題だが、それに果敢に立ち向かっていくことを期待したい。

第三に、12月14日付け東洋経済オンラインが掲載した ジャーナリストの川島 蓉子氏による「阪急百貨店の驚く新展開「常識破る売り場」の正体 アウトドアとラグジュアリーのブランドが共存」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/637724
・『企業を取り巻く環境が激変する中、経営の大きなよりどころとなるのが、その企業の個性や独自性といった、いわゆる「らしさ」です。ただ、その企業の「らしさ」は感覚的に養われていることが多く、実は社員でも言葉にして説明するのが難しいケースがあります。 いったい「らしさ」とは何なのか、それをどうやって担保しているのか。ブランドビジネスに精通するジャーナリストの川島蓉子さんが迫る連載の第7回は「阪急阪神百貨店」に迫ります』、興味深そうだ。
・『ターミナルデパートの先駆者である阪急百貨店  阪急百貨店は1929年、大阪・梅田で創業した日本の老舗百貨店だ。旗艦店である「阪急うめだ本店」は「伊勢丹新宿本店」に次いで、単店ベースで全国2位を誇り、業界では「東の伊勢丹、西の阪急」と名を馳せる。 創業者は関西財界の雄、小林一三。阪急電鉄の梅田駅と直結した、いわゆるターミナルデパートとして阪急百貨店を開業した。駅と直結した百貨店やファッションビルは、今やすっかりポピュラーな存在だが、そのルーツと言えるのが阪急百貨店なのだ。 また小林は、阪急電鉄沿線の住宅開発を進める一方、劇場や球団などを興し、文化や娯楽に関連する事業を成功させた。その意味では、鉄道の沿線開発を行うビジネスモデルを作った元祖でもある。 2007年、阪急百貨店は阪神百貨店と経営統合し、「エイチ・ツー・オー リテイリング」と名を改めた。阪急阪神百貨店はその傘下にある。 百貨店業界は、厳しい状況が続いている。都内でも平日の日中は、お客がまばらで販売員の立ち姿が目につく。地方をはじめ都市部でも、百貨店が閉店する例は後をたたない。 最近では、セブン&アイ・ホールディングス傘下のそごう・西武が、アメリカの投資ファンドであるフォートレス・インベストメント・グループに売却されることが決まった。若い人と話していると「百貨店に行ったことがない」「ウリが何なのかがわからない」という声を聞くこともある。 阪急阪神百貨店も決して楽観できる状況ではない。エイチ・ツー・オー リテイリングの百貨店事業のセグメント利益を見ると、コロナ禍の影響もあって2021年3月期は19億円の赤字、2022年3月期は9億円の黒字になったが、利益水準は低い。 一方で、少し明るい兆しもある。コロナ禍のマイナス影響が薄らぎ、売り上げが2022年4~9月期の百貨店事業のセグメント利益は16億円の黒字を計上した。 秋口に「阪急うめだ本店」を訪ねたのだが、「英国フェア」が開催されていた。9階から12階まで4層にわたる吹き抜けを備え、階段状のベンチが設えてある「祝祭広場」を取り巻くように「フェア」が開催されたのだが、その賑わいぶりに驚いた。他フロアも東京の百貨店より賑わっているし、お客が楽しんでいる様子が伝わってくる。全体に「楽しげ」な空気が漂っているのだ。 阪急百貨店はこれからどこに向かおうとしているのか。阪急阪神百貨店社長の山口俊比古さんに話を聞いた』、「ターミナルデパート」の「老舗」でも、「「フェア」が開催されたのだが、その賑わいぶりに驚いた。他フロアも東京の百貨店より賑わっているし、お客が楽しんでいる様子が伝わってくる。全体に「楽しげ」な空気が漂っているのだ」、大したものだ。
・『小林一三が掲げた理念  「“らしさ”を語るときに、創業者である小林一三の理念に触れないわけにはいきません」と山口さん。小林一三氏が理念として掲げていたのは、「大衆第一主義」「ステップバイステップ」「共存共栄」だったという。 (山口氏の略歴はリンク先参照) まず「大衆第一主義」について、「政府の要職を務め、欧米を視察して豊かな生活文化に触れた小林一三は、多くの人に幸福感を提供したいと考えていたのです」(山口さん)。阪急電鉄沿線の住宅をはじめ、「宝塚歌劇団」「宝塚新温泉」など、文化やレジャーにまつわる施設の開発を進め、暮らしを取り巻く質を上げて人々の心を豊かにすることに腐心した。その精神性を大事にしているという。 次の「ステップバイステップ」は、「私が社長になったとき、掲げた言葉が『着眼大局、着手小局』でした。文字どおり、大きな着眼点を抱いて地道に実行していくこと。自分自身の座右の銘を、戒める意図も込めて掲げたのです」。 そして3つめが「共存共栄」。社内外の多様なつながりを大切にし、ともに繁栄していくことを目指している。いわば「小林一三イズム」ともいえるこの3つの思想が“らしさ”を支えているのだ。 現在、阪急阪神百貨店が掲げているビジョンは、「お客様の暮らしを楽しく 心を豊かに 未来を元気にする楽しさNo. 1百貨店」。未来に向けて元気になる、嬉しくなる。そういうマインドを大切にしている。 「平たく言えば『夢』と『元気』と『共存共栄』と私はとらえています」(山口さん) ベタではあるが、気持ちが伝わってくる。何よりそれが、文言を掲げて終わりでなく実践されている。だから売り場に「楽しげな空気」が漂っているのだと腑に落ちた。 昨今、百貨店の戦略では、富裕層とインバウンドを狙い、ラグジュアリーブランド、時計・宝飾、アートで攻めていく戦術が多い。が、どの百貨店もそこを狙うのであれば、同質化して“らしさ”は薄まってしまう。山口さんはどうとらえているのか。 「生活必需品としての機能価値を提供する百貨店の役割が小さくなり、楽しさや豊かさという付加価値を提供することが求められているのです」 ラグジュアリーが好調なのは、もちろん富裕層が動いていることもあるが、「ブランドとしての強固な土台を鍛えながら、未来に向けた価値をきっちり提案しているから」という分析だ。 阪急は、ラグジュアリーだからという理由でブランド導入をするのではなく、目指している価値観を共有・共感できる取引先として、ブランドと一体となって売り場を作り、ともに成長していくことを重視している』、「ラグジュアリーが好調なのは、もちろん富裕層が動いていることもあるが、「ブランドとしての強固な土台を鍛えながら、未来に向けた価値をきっちり提案しているから」という分析だ」、大したものだ。
・『ラグジュアリーとアウトドアがカテゴリーを超えて共存  その表れの1つが、来春「阪急うめだ本店」に登場する「グリーンエイジ」だ。“自然との共生”と“サステイナビリティ”の大切さを訴える売り場で、アパレルと雑貨の比率が約6:4と雑貨の比率が高い。 居並ぶブランドも、アウトドアもあればコスメブランドも、ラグジュアリーブランドもあるというから驚いた。 百貨店におけるラグジュアリーブランドの位置づけは、1階のメインスペースや、ブランド群を集積したフロアに豪勢なブティックを構えるのが常識。百貨店が設定したテーマのもと、ラグジュアリーが他ブランドと軒を並べるのはほとんど例を見ない。 「『自然と共生する暮らし』におけるファッションという私たちの掲げた思想に共感し、賛同を得た結果です」(山口さん) これはまた、阪急百貨店と取引先とのかかわりだけでなく、阪急百貨店とお客のかかわりにおいても同様のこと。つまり、「グリーンエイジ」という売り場の思想に共感してくれた人が集まり、応援の意味も含めて買い物する、イベントに参加する。一種のコミュニティを作っていくプロジェクトでもある。) 企画自体はコロナ禍前から進んでいたという。時代の大きな流れが、アウトドアも含めた自然と共生する生き方、ナチュラルで健やかな暮らし、ウェルネスな心と身体を求めるといったベクトルに向かっている。そういった中で、“阪急百貨店が提案する豊かな暮らしのありよう”を発信していこうと企画が進められた。 コロナ禍によって当初の予定より少し遅れたものの、プロジェクトの意義を改めて深掘りすることができたし、周囲からの賛同を得ることができた。満を持して来年春、登場するという。 具体的には、「アウトドアを通じて自らの暮らしを高めることを掲げた“グリーンネイバーフッドライフ”」と「自然に寄り添いながら、美と健康を実現し、自分自身も持続可能であろうという“グリーンウェルネスライフ”」をキーワードとした2つの小ワールドを作る。約2300㎡の売り場のうち70㎡ほどは、物販ではなくイベントやワークショップを行うスペースとして配するという』、「来春「阪急うめだ本店」に登場する「グリーンエイジ」だ。“自然との共生”と“サステイナビリティ”の大切さを訴える売り場で、アパレルと雑貨の比率が約6:4と雑貨の比率が高い。 居並ぶブランドも、アウトドアもあればコスメブランドも、ラグジュアリーブランドもあるというから驚いた」、伝統ある百貨店での実験としては、画期的だ。
・『「ファッションを主語にしていない」  百貨店の中で婦人服が稼ぎ頭であることは、ここで改めて触れるまでもない。そのルーツは歴史にある。既成服の普及をはじめ、欧米のトップデザイナーの服を紹介するなど、百貨店はファッションを牽引する存在として、大きな役割を果たした。その後、右肩上がりで成長していたアパレル業界と一体となり、百貨店は売り上げを伸ばしてきたのである。 ところが、バブル崩壊、リーマンショック、東日本大震災、そしてコロナ禍を経て、その威力はあきらかに衰えている。阪急はファッションをどうとらえているのか。 「うちはファッションを主語にしていないのです」(山口さん) ファッションありきでとらえると、トレンドやヒットアイテム、人気ブランドやデザイナーの話に落ちていくが、阪急は同社のビジョンである「暮らしを楽しく 心を豊かに 未来を元気にする楽しさNo. 1百貨店」という文脈の中でファッションをとらえている。「暮らしのありよう=ライフスタイル」を土台にしたファッションを基軸に、ものではなく「楽しく」「元気に」というマインド作りに比重を置いているのだ。) これからの百貨店ビジネスはどうなっていくのか。「情報リテイラーからコミュニケーションリテイラーへと変わらなければととらえています」と山口さん。 2012年に「阪急うめだ本店」がリニューアルした際、時代は「モノの持つ機能的価値にあこがれる時代」から「モノの持つ文化的価値に共感する時代」へ移行しつつあり、百貨店のビジネスモデルは「モノ価値小売業=モノリテイラー」から「生活情報サービス業=情報リテイラー」へ変化していくととらえた。 ここでいうビジネスモデルとは、「顧客には満足=顧客価値を、企業には利益をもたらす仕組み」だという。そういった考えのもと、「モノ」ではなく、豊かな暮らしを実現するための「情報」を提供する品揃えや売り場とその伝え方に注力した。 それから10年、時代はさらに進み「自分の持つ自己実現価値に共感する時代」、さらには「他人の持つ自己実現価値に共感する時代」へと移行してきた。「例えば応援消費もその1つ。他の人の自己実現価値に共感し、いわば利他的な自己実現として、それを応援する動きが顕著になっています」(山口さん)。 そういった中、百貨店のビジネスモデルは「自己実現支援ビジネス=コミュニケーションリテイラー」になっていくという。「コミュニケーションリテイラー」とは、コミュニケーションを通じて自己実現を支援するビジネスのことを指す』、「百貨店のビジネスモデルは「自己実現支援ビジネス=コミュニケーションリテイラー」になっていくという。「コミュニケーションリテイラー」とは、コミュニケーションを通じて自己実現を支援するビジネスのことを指す」、なるほど。
・『三段重ねのビジネス構造を作る  「これからの百貨店ビジネスは、新しいモノが見つかるという『機能的価値』における豊富な品ぞろえに、新しい暮らしが見つかるという『文化的価値』における上質な提案力を備える。そのうえに、新しい自分になれるという「お客様の自己実現価値」をお手伝いできる専門性と共感コミュニケーション力により、全体として楽しさや豊かさを作っていく。そういう3つが重なり合う三段重ねのビジネス構造をきっちり作っていかなければいけないということです」(山口さん) しかもそれを「声高に言うだけでなく、実験的な試みとして行い、お客様の声を聞いたうえで、さらに前に向かって進んでいく。それをやり続けることが大事なのです」と山口さんは言う。) 例えば、前述した「グリーンエイジ」と同様の文脈で、地方とつながって応援していくビジネスも立ち上げた。それは、岡山県真庭市とタッグを組んだ「グリーナブル」というプロジェクトで、自然共生にまつわるモノやコトを紹介していくコミュニティブランドを立ち上げたのだ。 2021年には、真庭市が観光文化の発信拠点として「グリーナブルヒルゼン」という施設を立ち上げ、阪急阪神百貨店が商品の選定や開発をはじめ、ロゴやホームページの制作も含めたブランディングを手がけた。 百貨店が地域おこしにかかわる事例はほかにもあるが、ここまで具体的な施策に踏み込んだ事例はあまり耳にしたことがない。まさにこれも「コミュニケーションリテイラー」の役割のひとつなのだろうし、阪急阪神百貨店が手がける実験的な試みとして“らしさ”につながっていくのだと思う』、「「グリーンエイジ」と同様の文脈で、地方とつながって応援していくビジネスも立ち上げた。それは、岡山県真庭市とタッグを組んだ「グリーナブル」というプロジェクトで、自然共生にまつわるモノやコトを紹介していくコミュニティブランドを立ち上げたのだ。 2021年には、真庭市が観光文化の発信拠点として「グリーナブルヒルゼン」という施設を立ち上げ、阪急阪神百貨店が商品の選定や開発をはじめ、ロゴやホームページの制作も含めたブランディングを手がけた」、地方を「応援」する「プロジェクト」まで手掛けるとは意欲的だ。
・『理念を踏まえ、時代に合わせて進化する  「いずれの活動も、小林一三が築いた理念を踏まえ、しっかりと受け継ぎながら、その時代時代に合わせて進化させていく。代々の経営トップがきっちり行ってきた成果であり、こうやって“ビジョンを連鎖させていくこと”が大事なのです」と山口さん。 年に2回、ビジョンを語る動画メッセージを全社員に配信し、アンケート調査を実施しているという。王道の手法ではあるが、山口さんが備えている本気の熱意は、おそらく映像を通して伝わっているに違いない。視聴者数は回を重ねるとともに上がっているし、アンケートで忌憚のない意見を寄せてくる社員もいるという。 「お客様のよりよい生活スタイル、今、見えている現象だけでなく、その先にある『なりたい自分、送りたい生活』を実現することが私たちの役割。これを追求し続けていくことが使命だと思っています」(山口さん)。阪急阪神百貨店の明るい未来をつくることができるのか。山口さんが担う役割は大きい』、「阪急阪神百貨店」が革新的な取り組みを意欲的に推進しているだけに、今後の展開が注目される。
タグ:「プライベートを重視する若年層は、自宅に通い詰めるような「密着型」の営業を好まない。都心のタワーマンションに居住する場合が多く、「商品をお持ちしても『宅配ボックスに入れておいて』で終わってしまい、関係性の構築がなかなか難しい」、「百貨店外商の強みは、ほかの小売りやECにはない1対1の接客対応力にある。コアである中高年齢層への従来型の外商営業を維持しつつ、次世代のニーズに合った新しい外商の勝ちパターンを確立できるか。 「新規顧客の開拓方法は地道だ。外商の開拓部隊が、高級住宅街はもとより、ニュースなどの公開情報を基に職場に飛び込み営業をかけることもある」、かなり難しそうだ。 「外商顧客の「若返り」」は相当難しそうだ。 「高額品消費が好調な理由として、コロナ禍での株価や不動産価格の上昇がある」、「海外旅行やイベント、食事などの「コト消費」が長期間制限されたことで、行き場を失ったお金が国内でのモノの消費に向かった側面も大きい」、その通りだ。 「高額品消費の勢いはまったく衰えない」、「百貨店」にとっては、救いの神だ。 東洋経済オンライン「密着営業はもう古い?「ニューリッチ」の開拓策 百貨店の最終兵器「外商ビジネス」が抱える難題」 (その5)(密着営業はもう古い?「ニューリッチ」の開拓策 百貨店の最終兵器「外商ビジネス」が抱える難題、西武HDがホテルなどを大量売却 「身軽な経営」シフトで本当に生き残れるか、阪急百貨店の驚く新展開「常識破る売り場」の正体 アウトドアとラグジュアリーのブランドが共存) 百貨店業界 そのバランスこそが新時代の外商ビジネスの行く末を左右しそうだ」、「「百貨店外商」が果たして、「ニューリッチ」層を取り込んでいけるのか、注目される。 ダイヤモンド・オンライン 真壁昭夫氏による「西武HDがホテルなどを大量売却、「身軽な経営」シフトで本当に生き残れるか」 「海外ファンド」は「西武」をヨドバシHDに売却するとの噂が有力だが、豊島区長が、家電量販店はもう既に池袋に沢山あるので、考え直して欲しい旨を言明しているようだ。 「西武HDが環境変化に柔軟に応じて業績を回復させるには、そうした新しい価値観に沿った、消費者にとって鮮烈な体験の場を増やす必要がある。強化すべきは、体験の中身(コンテンツ)の創出だ。その分野に集中するために、同社はホテル・レジャー施設の所有と運営を一体的に行う従来戦略を改める」、なるほど。 「米国では金利が上昇し金融政策の大転換が近づいているが、マリオット株は上昇基調だ。それは主要投資家が、ウィズコロナ時代でもマリオットが人々の価値観の変容に柔軟に対応し、安定的に収益を生み出せると考えているからに他ならない。 わが国ではモノを所有し、その利用権を独占することに意義を見いだす個人や企業が多い。しかし、そうした発想が、常に人々の満足度向上につながるとは限らない。ウィズコロナで事業運営の効率性を高めるために、アセットライト経営を目指す日本企業は増えるだろう」、なるほど。 「アセットライト経営の実践には、自社の経営資源に、社外の新しい発想を結合させる施策が必要だ。より効率的に付加価値を獲得することが、西武HDには求められている」、なかなか困難そうな課題だが、それに果敢に立ち向かっていくことを期待したい。 東洋経済オンライン 川島 蓉子氏による「阪急百貨店の驚く新展開「常識破る売り場」の正体 アウトドアとラグジュアリーのブランドが共存」 「ターミナルデパート」の「老舗」でも、「「フェア」が開催されたのだが、その賑わいぶりに驚いた。他フロアも東京の百貨店より賑わっているし、お客が楽しんでいる様子が伝わってくる。全体に「楽しげ」な空気が漂っているのだ」、大したものだ。 「ラグジュアリーが好調なのは、もちろん富裕層が動いていることもあるが、「ブランドとしての強固な土台を鍛えながら、未来に向けた価値をきっちり提案しているから」という分析だ」、大したものだ。 「来春「阪急うめだ本店」に登場する「グリーンエイジ」だ。“自然との共生”と“サステイナビリティ”の大切さを訴える売り場で、アパレルと雑貨の比率が約6:4と雑貨の比率が高い。 居並ぶブランドも、アウトドアもあればコスメブランドも、ラグジュアリーブランドもあるというから驚いた」、伝統ある百貨店での実験としては、画期的だ。 「百貨店のビジネスモデルは「自己実現支援ビジネス=コミュニケーションリテイラー」になっていくという。「コミュニケーションリテイラー」とは、コミュニケーションを通じて自己実現を支援するビジネスのことを指す」、なるほど。 「「グリーンエイジ」と同様の文脈で、地方とつながって応援していくビジネスも立ち上げた。それは、岡山県真庭市とタッグを組んだ「グリーナブル」というプロジェクトで、自然共生にまつわるモノやコトを紹介していくコミュニティブランドを立ち上げたのだ。 2021年には、真庭市が観光文化の発信拠点として「グリーナブルヒルゼン」という施設を立ち上げ、阪急阪神百貨店が商品の選定や開発をはじめ、ロゴやホームページの制作も含めたブランディングを手がけた」、地方を「応援」する「プロジェクト」まで手掛けるとは意欲的だ。 「阪急阪神百貨店」が革新的な取り組みを意欲的に推進しているだけに、今後の展開が注目される。
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資本主義(その10)(岸田首相の“新しい資本主義”に「今更感」が強い理由 何が足りない?、市場原理主義という“怪物”に戦いを挑み続けた「日本人経済学者」がいた…! いま 宇沢弘文が注目を集めるわけ、資本主義が静かに衰退を始めていると言えるワケ 「世界経済の3つの謎」をどう考えばいいのか) [経済]

資本主義については、3月5日に取上げた。今日は、(その10)(岸田首相の“新しい資本主義”に「今更感」が強い理由 何が足りない?、市場原理主義という“怪物”に戦いを挑み続けた「日本人経済学者」がいた…! いま 宇沢弘文が注目を集めるわけ、資本主義が静かに衰退を始めていると言えるワケ 「世界経済の3つの謎」をどう考えばいいのか)である。

先ずは、6月14日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した立命館大学政策科学部教授の上久保誠人氏による「岸田首相の“新しい資本主義”に「今更感」が強い理由、何が足りない?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/304720
・『岸田文雄首相が掲げる経済政策「新しい資本主義」の実行計画の骨子が明らかになった。だが筆者は、その内容に違和感を覚えた。決して目新しいものではなく、以前から認識されていながら有効な手を打てなかった「古い政策課題」ばかりが並んでいたからだ。新政策はなぜ新規性がなく、どのような視点が欠けているのか』、「決して目新しいものではなく、以前から認識されていながら有効な手を打てなかった「古い政策課題」ばかりが並んでいた」、羊頭狗肉の酷い話だ。
・『「新しい資本主義」に目新しさは全くない  岸田文雄首相が掲げる経済政策「新しい資本主義」の実行計画と「骨太の方針」が6月上旬に閣議決定された。岸田首相は「新しい資本主義」について、「一言で言うならば、資本主義のバージョンアップ」と説明している。 だが、この経済政策は目新しさが全くない。この連載では、自民党はほとんど全ての政策分野に取り組んでいながら、それが「Too Little(少なすぎる)」「Too Late(遅すぎる)」「Too Old(古すぎる)」ことが問題だと批判してきた(本連載第290回)。「新しい資本主義」は、そのことをあらためて痛感させる内容だった。 「新しい資本主義」の実行計画と「骨太の方針」の根幹をなすのは、「人」「科学技術・イノベーション」「スタートアップ」「グリーン・デジタル」の4分野に重点的に投資するという方針だ。 「人」への投資では、これまで以上に「賃上げ」に取り組むとともに、非正規雇用も含めた約100万人に向けて能力開発や再就職の支援を行うとしている。 ただし、この「賃上げ」については、安倍晋三政権期(第2次)にさんざん民間企業に呼び掛けたが、思うような成果を上げられなかったことを忘れてはいけない(第80回・p6)。 当時は「アベノミクス」による「円安」によって輸出企業の利益が増え、「失われた20年」という長期経済停滞から脱することができた。だが、従業員の賃金は一向に上がらなかった。アベノミクスの最も批判される部分だ(第163回)。 第2次安倍政権の約8年弱の期間、グローバリゼーションによる厳しい競争にさらされた企業は内部留保をため込むばかりで、賃上げを行わなかった。また、一部の企業は年功序列の雇用慣行を廃し、終身雇用の正社員を減らして非正規雇用を増やすことでコストダウンを続けた。 正規・非正規雇用の格差問題が国会で議論されたのは、2001年~06年の小泉純一郎政権期までさかのぼる。だが、この問題は長年解決せず、21年4月にようやく、全ての企業を対象とした「同一労働同一賃金」の原則に基づく政策が打ち出された。 だが、政策の裏をかき、正社員の賃金を下げて非正規雇用に合わせることで同一賃金とする企業が少なくなかった。その結果、格差は縮まらず、賃金も一向に上がってこなかった。 「新しい資本主義」の実行計画には、そうした過去の過ちを繰り返さないという視点も盛り込むべきではないだろうか』、「「同一労働同一賃金」の原則に基づく政策が打ち出された。政策の裏をかき、正社員の賃金を下げて非正規雇用に合わせることで同一賃金とする企業が少なくなかった。その結果、格差は縮まらず、賃金も一向に上がってこなかった」、「「新しい資本主義」の実行計画には、そうした過去の過ちを繰り返さないという視点も盛り込むべきではないだろうか」、その通りである。
・『AI投資においては米国の事例を他山の石とすべき  科学技術・イノベーション」への投資では、大学を支援する10兆円規模のファンドを立ち上げ、人工知能(AI)や量子技術などの高度な研究活動に投資するとしている。加えて、AIの活用や研究開発を国家戦略に据え、科学技術投資の抜本拡充を図る方針だ。 しかし、AIを国家戦略に据えることは、諸外国では10年以上前から取り組まれており、目新しさはない(第113回)。そして、AIの研究や利活用を進めたとしても、必ずしも全国民が得をするとは限らないという結果も出ている。 例えば、米国ではバラク・オバマ政権期(09~17年)から、AI活用を国家戦略に据えてきた。オバマ政権は「製造業を国内に残す唯一の方法は、諸外国に比べて高い生産性を実現することだ」と主張し、多数の雇用を生み出す製造業の米国回帰をAI導入によって目指そうとした。 当時の米国は、工場のオペレーションや製造ラインを、AIを搭載した次世代ロボットに置き換えて自動化することを試みた。安い労働コストを求めて海外に移転した工場を米国に戻すべく、自動化によって人件費を低減しようとしたのだ。 その一方で、「製品設計」「工程管理」「製品の販売」「マーケティング」といった付加価値の高い分野では、優秀な人材の雇用を生み出そうとした。また、これらの作業を担う高度人材を育てるための教育を充実させた。 続くドナルド・トランプ政権期(17~21年)でも、この国家戦略は粛々と続いていた。トランプ氏が「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」を打ち出し、国内外の企業に対して、工場を米国に移転させることを強く要求したのは周知の通りだ(第150回)。) 当時、多くの企業がトランプ大統領に従い、工場を米国に移転させた。トランプ政権期、コロナ禍が起こるまでは米国経済は非常に好調だった。しかし、好調な経済にもかかわらず、労働者の雇用は増えなかった。 工場の多くが自動化されたことで、未熟練労働者の働き口がなくなったのだ。そのため、石炭や鉄鋼といった産業の衰退が進む「ラストベルト」地域の労働者が、「トランプ大統領はうそつきだ」と反発する事態を招いた。 だが今の日本は、米国の事例を他山の石としておらず、いまだにAIを「未熟練労働者の代替」だと位置付けている印象だ。かといって、米国のように国を挙げて工場の全面自動化を進めてきたわけでもなく、全てが中途半端である。 その要因はいくつか考えられる。一つは年功序列・終身雇用が今も根強く残り、非正規社員を切り捨ててでも正社員の雇用を守ろうとする企業が多いこと。もう一つは、1980年代に通商産業省(当時)主導で、欧米に先駆けて初期のAIを導入するプロジェクトを推進し、失敗した悪夢があることだ。 もし岸田首相が、新政策によってこうした状況を変えたいのであれば、単にAI関連の研究活動に投資するだけでは不十分だ。過去の失敗事例を踏まえて「AIの発展に伴う雇用面のデメリット」という視点を盛り込み、それに対する改善策を併せて議論すべきではないだろうか』、「1980年代に通商産業省(当時)主導で、欧米に先駆けて初期のAIを導入するプロジェクトを推進し、失敗した悪夢がある」、初めて知った。「単にAI関連の研究活動に投資するだけでは不十分だ。過去の失敗事例を踏まえて「AIの発展に伴う雇用面のデメリット」という視点を盛り込み、それに対する改善策を併せて議論すべき」、その通りだ。
・『日本のスタートアップ投資も遅れており自慢できるレベルではない  実行計画における「スタートアップ」の項目では、新興企業への投資額を5年で10倍に増やすことを視野に入れた「5カ年計画」を年末に策定するとしている。 だが、日本政府のスタートアップ支援は他の先進国に比べて相当に遅れており、今さら「新しいことをやっている」とアピールしていることに違和感を覚えざるを得ない。 というのも、私が大学生だった約35年前、すでに「米国の大学では、最も優秀な学生は起業する」と聞いたものだった。 例えば、大学を中退したスティーブ・ジョブズが、ビデオゲーム会社アタリを経てAppleを共同で創業したのが1976年。ビル・ゲイツがハーバード大学を休学し、Microsoftを共同経営でスタートさせたのは75年だった。 80年代、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と呼ばれ、日本型の年功序列・終身雇用の企業システムは世界に称賛された時期があった。米国経済は停滞し、日本に追い越されるのではないかと言われていた。 だが、その時期の若者の起業によって生まれた萌芽は、90年代以降、米国経済を劇的に復活させた「IT革命」に結実した。 前述のスティーブ・ジョブズらに加えて、Googleを起業したラリー・ペイジやセルゲイ・ブリン、Facebookを起業したマーク・ザッカーバーグ、Amazon.comを起業したジェフ・ベゾスらが登場して、「GAFAM」と呼ばれる国際的巨大IT企業群が次々と米国で台頭したのだ。) それに伴って、世界における「時価総額ランキング」の顔ぶれも変動。かつて上位を占めていた日本企業は、今では上記の巨大IT企業群に取って代わられてしまった。 企業の開業率でも明確な差がついており、欧米諸国では10%前後に上るのに対し、日本では4.2%にとどまっている(19年時点)。 また、スタートアップに対するM&A(企業の合併・買収)も同様で、18年時点での日本における件数はわずか15件。米国の約1%にすぎなかったという(産経新聞『スタートアップ支援、政府に司令塔、新しい資本主義実現会議、実行計画に反映へ』2022年4月12日)。 米国のみならず中国でも、AlibabaをはじめとするIT大手の成長は著しく、星の数ほどのスタートアップが今も誕生していることはいうまでもない。 岸田首相は、今年を「スタートアップ創出元年」とする意向だという。だが、「元年」だといっていること自体が、世界からすれば笑いもののレベルなのだ。 これだけ後れを取っている中、投資額を増やすだけで、世界と伍して戦えるスタートアップが出てくるのか。教育面など、他の領域においても抜本的なテコ入れが不可欠である』、「岸田首相は、今年を「スタートアップ創出元年」とする意向」、これは「岸田首相」オリジナルではなく、官邸の経産省出身官僚の考えだろうが、いまさら「創出元年」でもあるまい。
・『脱炭素シフトの潮流の中で日本のエネルギー企業は遅れている  「グリーン・デジタル」投資では、「脱炭素社会」の実現のために、今後10年間に官民協調で150兆円の関連投資を行う計画だ。だが、これも胸を張って自慢するような話ではない。 というのも、現在、化石燃料を扱う企業に対して「ダイベストメント(投資撤退)」を宣言する世界の投資家・金融機関が急増している(週刊エコノミストOnline『沸騰!脱炭素マネー:環境対応が遅れる日本企業から投資家が資金を引き揚げている……石油メジャーでさえ「最エネ転換」を宣言 環境対応できない企業には淘汰の道が待っている』)。 そして、石油資源開発(JAPEX)、中国電力、INPEX(旧国際石油開発帝石)、電源開発(J-POWER)、北陸電力、北海道電力、出光興産、ENEOSホールディングスなどの日本企業が、「脱炭素事業戦略」が遅れていることを理由として、ダイベストメントされる事例が増えている。いまだに、石炭火力発電所を多く運用しているからだ。 加えて、日本は「再生可能エネルギー」への取り組みが遅れている。それは、安倍政権以降、東日本大震災によって国内の全基が停止した原子力発電所の再稼働を最優先する方向でエネルギー政策を進めてきたからである。 岸田首相の“新しい資本主義”に「今更感」が強い理由、何が足りない? 一方、海外では、ただでさえ強大な力を持っていた「石油メジャー」が再生可能エネルギーに取り組み、「総合エネルギー企業」とでも呼ぶべき企業体への変貌を遂げている。 例えば英BPは、再生可能エネルギーの発電所などを中心とした脱炭素関連事業の年間投資額を、30年までに現状の10倍となる約50億ドル(約5300億円)に拡大する計画だ。水素やCCUS(二酸化炭素の貯蔵・利用)事業も手掛けながら、石油・天然ガスの生産量を削減し、30年までに二酸化炭素排出量を最大40%削減する方針である。 日本のエネルギー企業がダイベストメントされる一方で、海外大手はさらに先に進もうとしているのだ。この差を埋めるにはどうすべきか、日本では官民連携でより深い議論を行うべきではないか』、「日本のエネルギー企業がダイベストメントされる一方で、海外大手はさらに先に進もうとしているのだ。この差を埋めるにはどうすべきか」、マスコミももっと政策を掘り下げて報道すべきだろう。
・『全てが中途半端な自民党政治は厳しく批判されるべき  この連載では、自民党の最大の特徴を「キャッチ・オール・パーティー(包括政党)」だと指摘してきた(第169回・p3)。要は、政策の「総合商社」か「デパート」のようなものであり、一応全ての政策課題に対応している。「新しい資本主義」も、現在の全ての政策課題を一覧に並べたようなものだ。 だが、残念なことに、重点投資4分野は新しい政策課題ではない。以前から認識されていながら、有効な手を打てなかった「古い政策課題」ばかりだ。 それらの課題解決のためのプロセスを決めて、予算を組んで実行して取り組むのは悪いことではない。 だが、そもそも欧米や中国などが何年も前に済ませていることを、「新しいことをやります」と胸を張ってアピールするような自民党や官僚組織の姿勢は、真摯(しんし)さも謙虚さも著しく欠いている。 岸田首相は“どや顔”で計画を発表するだけでなく、「なぜ、これまで長年にわたって有効な手を打てなかったのか」「今回の施策は、従来とどう違うのか」といったポイントが国民に伝わるよう、より詳細な説明を行うべきではないだろうか』、「「なぜ、これまで長年にわたって有効な手を打てなかったのか」「今回の施策は、従来とどう違うのか」といったポイントが国民に伝わるよう、より詳細な説明を行うべき」、同感である。

次に、10月14日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの佐々木 実氏による「市場原理主義という“怪物”に戦いを挑み続けた「日本人経済学者」がいた…! いま、宇沢弘文が注目を集めるわけ」を紹介しよう。
・『戦後日本を代表する経済学者にして思想家、宇沢弘文(うざわ・ひろふみ)。 格差の増大や環境破壊など、資本主義が持つ「陰」の部分に1970年代から気づいていた宇沢は、「社会的共通資本」という概念をベースに、万人が幸福に暮らすことを目指す、新たな資本主義の枠組みを構築しようとしていた。 その思想は半世紀後の現在、再び大きな注目を集めるようになっている。 そもそも、我々はなぜこのような市場原理主義が幅を利かせるような世界に住んでいるのか。 資本主義の世界に暮らす我々の誰もが幸せに生きられるような社会はどうやって創り出せるのか。 今の時代だからこそ読むべき思想家を100ページ程度で語る「現代新書100(ハンドレッド)」シリーズの最新刊、『今を生きる思想 宇沢弘文 新たなる資本主義の道を求めて』から、「はじめに」をご紹介する』、「宇沢は、「社会的共通資本」という概念をベースに、万人が幸福に暮らすことを目指す、新たな資本主義の枠組みを構築しようとしていた」、構築中に倒れられたのは、かえすがえすも残念だ。
・『「資本主義」という問い  資本主義のあり方をめぐって、世界で大きな潮流の変化が起きはじめている。 アメリカの主要企業の経営者をメンバーとするビジネス・ラウンドテーブル(BRT)が「株主資本主義からステークホルダー資本主義への転換」を掲げたのは2019年8月のことだった。株主の利益を極大化することだけを考えるのではなく、顧客や従業員、取引先、地域社会などにも配慮した経営に舵を切ると宣言したのだった。 翌年はじめのダボス会議でさっそく取り上げられ、「ステークホルダー資本主義」はビジネス界の合言葉のように広まった。 日本では、政府が長年にわたって株主資本主義を核とするアメリカ型資本主義をお手本に「改革」を進めてきた。アメリカ財界のステークホルダー資本主義宣言が影響を与えないはずはない。 岸田文雄首相が「新しい資本主義」を唱え、政府に「新しい資本主義実現会議」まで設けたのも、そうした流れの一環と捉えることができる。 株主の利益だけを追い求める企業活動は、所得格差の拡大を通じて、著しく不平等な社会をつくりだすことになった。環境への配慮を欠いた生産活動は、地球温暖化など深刻な環境問題をもたらしている。 そうした反省の気運が、ビジネスの現場で市場原理主義を主導してきた経営者にさえ生まれている。 ESG投資の爆発的な流行も、資本主義の見直しという文脈で理解できる。 ESG投資は、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)に配慮しているかどかを基準に、投資先の企業を選別する。国連で2015年に採択されたSDGs(持続可能な開発目標)と理念を共有する投資活動といってもいい。 ESGやSDGsが国際的な支持を得ているのは、これまでの資本主義が環境問題をないがしろにしてきたことの裏返しである』、「ESGやSDGsが国際的な支持を得ているのは、これまでの資本主義が環境問題をないがしろにしてきたことの裏返し」、その通りだ。
・『市場原理主義の教祖  いま起きている変化は、長らく世界を牽引してきた市場原理主義が急速に支持を失っていることを物語っている。 市場原理主義の教祖的存在だったのが、アメリカのノーベル賞経済学者ミルトン・フリードマン(1912─2006)である。 小さな政府、国営・公営事業の民営化、規制の緩和・撤廃を唱えるフリードマンは、1980年代以降の市場原理主義の潮流をつくりだした立役者である。ロナルド・レーガン大統領のブレインとなり、イギリスのマーガレット・サッチャー首相からも支持された。狭い学界ではなく、現実の政治に働きかけることで、世界最強のインフルエンサーとなったのである。 フリードマンの特徴は、市場機構への絶対的な信頼と、政府機能(公的部門)への徹底した不信だ。彼の資本主義観は『資本主義と自由』(日経BP社)のつぎの文章によくあらわれている。 「市場が広く活用されるようになれば、そこで行われる活動に関しては無理に合意を強いる必要がなくなるので、社会の絆がほころびるおそれは減る。市場で行われる活動の範囲が拡がるほど、政治の場で決定し合意を形成しなければならない問題は減る。そしてそういう問題が減れば減るほど、自由な社会を維持しつつ合意に達する可能性は高まっていく」 民主主義的な意思決定を、市場での取引が代替できるという見解である。市場領域をひろげていけば、「社会の絆がほころびるおそれは減る」とフリードマンは言っているが、むしろ、あらゆる領域を市場化すれば、「社会の絆」に頼る必要などなくなるという考え方である。 「市場=社会」がフリードマンの理想社会であるようだ』、「あらゆる領域を市場化すれば、「社会の絆」に頼る必要などなくなる」、さすが「市場原理主義の教祖」らしい考え方だ。
・『フリードマンに恐れられた日本人  市場原理主義の思想潮流が世界を覆う前、1960年代からフリードマンと直接対決を繰り広げていた日本人がいたことはあまり知られていない。本書の主人公、宇沢弘文(1928─2014)である。 宇沢は1964年にシカゴ大学の教授に就任し、市場原理主義の総本山「シカゴ学派」の領袖であるフリードマンと同僚になった。市場原理主義が世界を席巻するよりずっと前から、フリードマンに面と向かって異議を唱えていたのである。 シカゴ大学でフリードマンと対峙していたころ、宇沢はアメリカ経済学界で一二を争う若手理論家とみなされていた。フリードマンは著名ではあったが、最先端の理論づくりの現場にかぎれば、16歳も若い宇沢のほうが勢いがあり影響力をもっていた。 アメリカ経済学界での評価が絶頂にあるとき、宇沢はベトナム戦争に異を唱えて突然、アメリカを去った。フリードマンは、帰国後の宇沢が日本語で書いた文章も英語に翻訳させて丹念にチェックしていた。宇沢がフリードマンの学説を批判することに、過剰なほど神経を尖らせていたのである。 アメリカを去ったあと、宇沢はアメリカの経済学者についてこんな総括をしている。 「事実、アメリカの経済学者は、市場機構について一種の信念に近いような考え方をもっているともいえる。利潤追求は各人の行動を規定するもっとも重要な、ときとしては唯一の動機であると考え、価格機構を通じてお互いのコンフリクトを解決することが最良の方法であるという信念である。新古典派理論はこのような信念を正当化するものにすぎないともいえるのであって、理論的な帰結からこのような信念が生れるのではない。この現象はとくにいわゆるシカゴ学派に属する人々について顕著にみられるが、これは必らずしもシカゴ学派に限定されるものではなく、広くアメリカの経済学者一般に共通であるともいえよう」(『自動車の社会的費用』岩波新書) 宇沢が指摘しているのは、市場原理主義的な傾向はフリードマン率いるシカゴ学派に顕著にみられるけれども、しかしそれは、アメリカの経済学者一般に共通している信念だということである。フリードマンひとりを批判して済む問題ではないということだ』、「シカゴ大学でフリードマンと対峙していたころ、宇沢はアメリカ経済学界で一二を争う若手理論家とみなされていた。フリードマンは著名ではあったが、最先端の理論づくりの現場にかぎれば、16歳も若い宇沢のほうが勢いがあり影響力をもっていた。 アメリカ経済学界での評価が絶頂にあるとき、宇沢はベトナム戦争に異を唱えて突然、アメリカを去った」、「宇沢が指摘しているのは、市場原理主義的な傾向はフリードマン率いるシカゴ学派に顕著にみられるけれども、しかしそれは、アメリカの経済学者一般に共通している信念だということである。」、なるほど。
・『社会的共通資本の思想的源流  宇沢は、半世紀も先取りして、行き過ぎた市場原理主義を是正するための、新たな経済学づくりに挑んだ。 すべての人々の人間的尊厳が守られ、魂の自立が保たれ、市民的権利が最大限に享受できる。そのような社会を支える経済体制を実現するため、「社会的共通資本の経済学」を構築した。 この小著では、経済学の専門的な話はできるだけ避け、宇沢が「社会的共通資本」という概念をつくりだした経緯や思想的な背景に焦点をあててみたい。 宇沢が環境問題の研究を始めたのは半世紀も前であり、地球温暖化の問題に取り組んだのは30年あまり前からだった。先見の明というより、問題を見定める際の明確な基準、つまり、思想があったからこそ、いち早く問題の所在に気づくことができたのである』、「宇沢が環境問題の研究を始めたのは半世紀も前であり、地球温暖化の問題に取り組んだのは30年あまり前からだった。先見の明というより、問題を見定める際の明確な基準、つまり、思想があったからこそ、いち早く問題の所在に気づくことができたのである」、さすがである。
・『不安定化する世界  ロシアがウクライナに侵略して戦争が始まったとき、欧州のある金融機関が、武器を製造する企業への投資をESG投資に分類し直すという動きがあった。 ふつう、ESG投資家は人道主義の観点から、軍需産業への投資には抑制的だ。しかし、アメリカなどがウクライナに武器を供与する現実を目の当たりにして、「防衛産業への投資は民主主義や人権を守るうえで重要である」と態度を豹変させたのである。 ESGやSDGsに先駆けて「持続可能な社会」の条件を探求した宇沢なら、このようなESG投資を認めることは絶対にあり得ない。思想が許さないからだ。 「ステークホルダー資本主義」「ESG投資」「SDGs」を叫んでみたところで、一本筋の通った思想がなければ、結局は換骨奪胎され、より歪な形で市場原理主義に回収されてしまうのがオチだ。 資本主義見直しの潮流が始まった直後、世界はコロナ・パンデミックに襲われ、ウクライナの戦争に直面した。危機に危機が折り重なって、社会は混沌の度を深めている。 宇沢の思想に共鳴するかしないかが問題なのではない。 生涯にわたって資本主義を問いつづけた経済学者の思考の軌跡は、かならずや混沌から抜け出すヒントを与えるはずである』、「ESGやSDGsに先駆けて「持続可能な社会」の条件を探求した宇沢なら、このようなESG投資を認めることは絶対にあり得ない。思想が許さないからだ」、「生涯にわたって資本主義を問いつづけた経済学者の思考の軌跡は、かならずや混沌から抜け出すヒントを与えるはずである」、そうした論考が出てくることを大いに期待したい。

第三に、12月10日付け東洋経済オンラインが掲載した 慶應義塾大学大学院准教授の小幡 績氏による「資本主義が静かに衰退を始めていると言えるワケ 「世界経済の3つの謎」をどう考えばいいのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/638766
・『資本主義は崩壊しないが、今、静かに衰退を始めている。 「近代資本主義が終わった」と歴史的に認識されるのは、22世紀かもしれない。だがそのとき、「衰退が始まったのは21世紀初頭からだった」と明らかになるだろう』、興味深そうだ。
・『「近代資本主義の終焉」でとらえる「世界経済3つの謎」  この連載は競馬をこよなく愛するエコノミスト3人による持ち回り連載です(最終ページには競馬の予想が載っています)。記事の一覧はこちら なぜ、資本主義が衰退を始めていると言い切れるのか。それは、そう考えれば、現在の経済的な常識、経済学では説明できないことの多くが、一貫したストーリーとして描くことができるからだ。 現在、世界経済は3つの大きな謎に包まれている。 第1に、2008年の世界金融危機(リーマンショック)後、長期停滞論が台頭してきた。先進国の成長経済は終わってしまったのか。21世紀に入って、なぜ急に成長が終わってしまったのか。これが第1の謎である。 第2の謎は、なぜ急にインフレーションが起きたのか、ということだ。 先進国経済は、低成長かつ不況でありながら、インフレーションが40年ぶりの水準まで高まっている。不況にもかかわらず、賃金は上昇している。失業率は低いままである。なぜ、低成長かつ不況なのに、インフレーションが起きているのか。賃金が上昇し、失業率が低いのはなぜか。これが第2の謎である。 第3は、格差拡大の謎である。1970年代までは、格差といえば南北問題であり、先進国と発展途上国の所得格差の拡大であった。経済理論では、途上国が安価な労働力で生産を拡大し、自由貿易が行われれば、キャッチアップがすぐに実現するはずであった。 実際には、そうはならなかった。20世紀末には、国家間の格差が理論と異なり現実には解消されないことが、開発経済学における最大の謎であった。ところが、21世紀になると、多くの途上国が著しい経済成長を遂げ、新興国と呼ばれるようになった。突然、21世紀にはキャッチアップが実現し、謎でなくなった。その一方で、1973年のオイルショック以降、国内の格差が拡大を始め、21世紀にはその差を急激に広げてきた。 なぜ、21世紀になって、20世紀には起こりえないと思われていた国家間の経済格差が急に縮小し、一方で、1973年以降、国内の格差が急激に拡大したのか。これが第3の謎である。 これらは、近代資本主義が終わろうとしている、ととらえれば、構造的に説明できる。) 近代資本主義は事実上、1492年に始まった。クリストファー・コロンブスがアメリカ大陸に流れ着いた年である。コロンブスだけでなく、金(カネ)を稼ごうと、多くの西欧の冒険家が世界へ渡っていった。いわゆる大航海時代の始まりだ。近代資本主義とは、移動、拡大、膨張の時代のことである』、「近代資本主義とは、移動、拡大、膨張の時代のこと」、「大航海時代の始まり」、なるほど。
・『「2つの外部」が近代資本主義を動かした  西欧諸国は、略奪、征服、交換で、そのほかの地域から富を奪った。奪った分だけ経済は拡大した。 閉じていた経済では、技術革新があっても、品質が改良されるだけで、その改良分を以前よりも多く払うことはできない。所得は変わっていないから、その財に払える価格は前と同一で、その場合、経済的には価値は同じ(不変)となり、経済は拡大しない。よって経済成長もない。これが、中世までの繰り返しの循環経済である。 それが1492年以降、外部が生まれたことで、外部からの富の流入が経済の拡大をもたらした。所得が増えたから、払う総額も増えた。これに呼応して、売れる商品を作り始めた。 そして、17世紀には、さらなる経済のテイクオフ(離陸)が起きた。ぜいたくの始まりである。ヴェルナー・ゾンバルトが『恋愛と贅沢と資本主義』で主張する、近代資本主義の本格的な始まりのメカニズムである。伴侶や恋人を見せびらかすための宮廷でのパーティというものが「発明」されたことによる需要増加である。 それまでは、妻や恋人は人目につかないように隠していたが、彼女たちを着飾らせて、躍らせて、みなに見せびらかす、ということが始まったのである。ヴェルサイユ宮殿は、ルイ14世が妾のラ・ヴァリエールのために造り、そこは豪華絢爛に飾り付けられ、パーティが行われたと言われる。「国王に負けじ」とそのほかの貴族たちも妻や妾を着飾らせ、パーティで見せびらかした。女たちも、影の存在から一躍主役として舞台に踊り出た。ぜいたくは無限に膨らんだ。 これこそが、近代資本主義を膨張軌道に乗せた、循環経済の外部からの有効需要の注入であった。2つの外部の存在が、近代資本主義を動かしたのである。) 略奪、交換の対象となる外部の経済。植民地の経済。ここからの富の流入が新しい需要になって、経済を膨張させた。中南米の銀山からのマネーの流入がインフレを起こしたといわれるが、銀はマネーであると同時に、銀という富だったから、現在の中央銀行のマネーサプライと異なり、実体経済をも膨張させたのである。 そして、西欧の各国内でも、循環経済の外から富が流入した。国王や領主貴族がため込んだ富を、ぜいたくとして消費した。宮廷の周りの職人たちは、宮廷のぜいたく需要で所得を得た。これが支出され、経済は循環でなく膨張を始めた。 革命が起きても、この膨張は止まらなかった。何より、ブルジョワジーたちが堂々と貴族のマネを行ったからである。ぜいたくは、経済の富裕層全体に広がった。経済の膨張、つまり、バブルは始まった。近代資本主義というバブルは完全にテイクオフしたのである』、「閉じていた経済では、技術革新があっても、品質が改良されるだけで、その改良分を以前よりも多く払うことはできない。所得は変わっていないから、その財に払える価格は前と同一で、その場合、経済的には価値は同じ(不変)となり、経済は拡大しない。よって経済成長もない。これが、中世までの繰り返しの循環経済」、「1492年以降、外部が生まれたことで、外部からの富の流入が経済の拡大をもたらした。所得が増えたから、払う総額も増えた・・・17世紀には、さらなる経済のテイクオフ(離陸)が起きた。ぜいたくの始まりである」、「ぜいたく」が「経済成長」をもたらしたとは初めて知った。
・『19世紀の途中まで富の投入は限定的だった  しかし、ここに、さらなる深い謎が生まれる。それならば「なぜ19世紀後半まで経済成長が起きなかったのか。同様に、なぜ19世紀半ばまで人口もはっきりとは増加しなかったのか。産業革命は18世紀にとっくに始まっているのに、数多くの技術革新が起きたのに、なぜ本格的な人口増加や経済成長が始まらなかったのか」ということだ。 上述の需要増加は、第1が外部からの略奪品、交易品であるが、これらは庶民のための必需品ではなく、富裕層のための嗜好品あるいは交換用の商品や商品作物である。第2のぜいたく需要は、まさにぜいたく品である。これらの獲得、生産のために資源と労働が投入された。 つまり、富は、衣食住という生存維持水準の必需品需要を満たすためには投入されなかったのである。だから人口は増えなかった。作物の収量が増えても、人口増加は一時的で、いわゆるマルサスのわな、つまり、食料生産の増加と人口増加のスピードは、前者が算術級数的であるのに対し、後者が幾何級数的であり、圧倒的に大きいから、すぐに食料が不足するようになった。その結果、人口が増え続けることはなかったのである。 一方、ぜいたく品の生産は増え、富裕層の消費は増えていった。しかし、経済全体で見れば、それは限られていた。だから、経済成長も人口増加も全体としては起きなかったのである。) これが一気に変化したのが、19世紀後半である。19世紀前半に多くの必需品に関する発明が行われた。電信、電気、そして電話。蒸気機関は内燃機関となり、内燃機関が動力として使われるようになった。これが欧米の経済を一新した。 では、それまでのぜいたく品生産、ぜいたく品需要と何が違ったのか。これらの技術革新は、交通・通信革命であったのだ。また、それ以前の技術革新とは何が違ったのか。それらの技術革新は時間を節約したのである。人々の時間に余剰をもたらしたのである。 ぜいたく品の生産、資源をぜいたく品に変えること、これはただの変形にすぎない。普通の服がきれいな服、豪華な服に変わるだけである。しかし、交通・通信革命で移動や意思疎通の時間を大幅に短縮することに成功すると、生産のための最大のリソースである時間が余る。これが新たな財の生産に向かい、経済全体の生産量は飛躍的に増加したのである』、「これらの技術革新は、交通・通信革命であったのだ。また、それ以前の技術革新とは何が違ったのか。それらの技術革新は時間を節約したのである。人々の時間に余剰をもたらしたのである」、「交通・通信革命で移動や意思疎通の時間を大幅に短縮することに成功すると、生産のための最大のリソースである時間が余る。これが新たな財の生産に向かい、経済全体の生産量は飛躍的に増加したのである」、なるほど。
・『一段と時間の節約が進んだ20世紀  さらに、20世紀になると、家事労働革命が起きる。水をくみに行かずに上下水道により家庭に水が届き、廃棄が行われる。洗濯機、掃除機、冷蔵庫により、それまでほとんどの時間を家事に使っていたのが、ほかの仕事ができるようになる。ミシンの普及により裁縫の時間も激減する。 また、農作業の時間が増え、賃金がもらえる仕事ができるようになる。農業にも動力が使われるようになり、生産力が増加する。冷蔵船のさらなる発達により、植民地から食料、とりわけ肉が輸入できるようになる。このように、衣食住の効率が大幅に上昇し、庶民の時間も余るようになる。それが労働投入増となる。よって生産力は急増する。 そして、自動車の普及である。移動時間が減る。馬のための施設、土地、汚物処理が要らなくなる。土地が余り、時間が余り、労働が増える。生産力が急増する。 これで、99%の庶民も含む社会全体の人々の生活水準が上昇し、市場向けの生産のための労働力の投入量が急増したのである。これで経済は急成長を始めた。そして、人口も、マルサスのわなを超えて増加を続けるようになった。これが、19世紀後半からの高成長時代の第1の経済成長である。 では、次の第2の成長とは何か。それは、庶民の時間が余るということである。 第1の成長と同じに見えるが、まったく違う。逆側である。すなわち、庶民は家事労働などから解放され、農作業の時間も増やし、賃金を得ることのできる外での労働時間も増やし、所得を増やした。さらなる技術進歩による必需品の効率的な生産がさらに進んだ。この効率化により、さらに庶民の時間が余った。 そして、余暇が生まれた。娯楽、レジャーの誕生である。庶民が、かつての国王、貴族のぜいたく、ブルジョワのぜいたく、それにならって、余った時間を消費活動に費やすようになった。エンターテインメント消費が誕生した。 これで消費が爆発した。庶民までがぜいたく品を消費するようになった。つまり、技術革新により必需品の生産の効率化が進み、時間が余り、第1には労働投入時間の増加となり所得を増やしたが、第2には、余った時間をぜいたく消費に充てるようになり、消費が増大したのである。 まず供給力が増え、次に需要が増えたのである。ここに成長は加速した。これがアメリカの20世紀の成長であり、日本の高度成長である』、「エンターテインメント消費が誕生した。 これで消費が爆発した。庶民までがぜいたく品を消費するようになった。つまり、技術革新により必需品の生産の効率化が進み、時間が余り、第1には労働投入時間の増加となり所得を増やしたが、第2には、余った時間をぜいたく消費に充てるようになり、消費が増大したのである。 まず供給力が増え、次に需要が増えたのである。ここに成長は加速した。これがアメリカの20世紀の成長であり、日本の高度成長である」、このように歴史的に整理されると理解し易い。
・『「新しい」が価値そのものになった  しかし、これはオイルショックで止まった。必需品生産の効率化、必需品の技術革新による進歩が一巡して終わったのである。 いや、本来は、さらなる必需品の技術進歩も、物理的、技術的には可能だった。しかし、それは経済的には合理的ではなかった。なぜなら、すべての人々がぜいたく品の消費を始めたからだ。ぜいたく品は好奇心をひきつけ、目新しさが欲望を刺激したからだ。 新しいぜいたく品、イノベーションという名の下に、次々と新製品を売りつけるほうが手っ取り早く売れた、儲かったからである。必需品はみなが経験済みである。だから、本当に進歩しているか、必要な新製品か、誰にでもわかるから、ごまかしが利かない。役に立つ技術進歩が難しいのである。 一方、新しい製品は、要は新しければよかった。役に立たなくても、エンターテインメントだから、必要でないものであり、ただ楽しむもの、物欲を満たすものであればよかったから、生み出すのは簡単だった。 ここに広告やマーケティングが発達し、ブランド戦略が発達した。差別化というのが、企業の最も重要なキーワードとなった。必需品であれば、差別化というものは存在しなかった。差は関係なく、絶対的に役に立つかどうかがすべてであったからだ。 これが、現在の第3の経済成長段階である。次から次へと新製品が生み出され、「新しい」ということが価値そのものとなったのである。 そして現在、これは最終段階を迎えている。なぜなら、人々は「新しい」こと自体に価値を見いださなくなってきたからである。つまり、「新しい」ものに飽きたのである。「新しいもの」を消費することは「新しく」ないのである。新しいものを消費することの繰り返しに飽きたのである。 これに企業はどう対応したか。 新しいぜいたく品を売りつけても、人々は飽きている。あるいは、すぐ次の新しいものに移る。賞味期限が短くなっている。これでは、持続的に儲けられない。 そこで、単なるぜいたく品ではなく、ぜいたく品を必需品に仕立て上げ、すべての人々に永続的に消費させるようにしたのである。必需品たるぜいたく品、やめられないぜいたく品、そう、すべては「麻薬」になったのである』、「「新しい」ものに飽きたのである」、「これに企業はどう対応したか。 新しいぜいたく品を売りつけても、人々は飽きている。あるいは、すぐ次の新しいものに移る。賞味期限が短くなっている。これでは、持続的に儲けられない。 そこで、単なるぜいたく品ではなく、ぜいたく品を必需品に仕立て上げ、すべての人々に永続的に消費させるようにしたのである。必需品たるぜいたく品、やめられないぜいたく品、そう、すべては「麻薬」になった」、なにやら健全とはほど遠い姿だ。
・『かくして「麻薬」は途上国へ  現在の経済成長は、次々と新しい麻薬を生み出して、本当は必要のないぜいたく品を必需品に仕立て上げて、消費を増大させ続けようと、企業がしのぎを削っているのである。 それが、テレビ番組であり、ゲームであり、スマートフォンであり、SNSであり、動画投稿である。スマホは便利だが、本当の必需品は電話やメールだけといってもいいくらいである。仕事や家族間の連絡が取れれば十分だ。しかし、スマホのほとんどの機能、99.9%はそれ以外のエンターテインメント、暇つぶし、寂しさを紛らわすためにある。 麻薬経済の到来である。ということは、みなが中毒になり、社会はおかしくなる。近代資本主義社会は衰退せざるをえなくなるだろう。 このように考えてくると、冒頭の3つの謎がわかるはずだ。第1の先進国が低成長となった理由は明らかだ。新しいぜいたく品を人々は必要としなくなったのであり、麻薬にも限界があるから、消費はこれ以上増えないのだ。だから、量的拡大という経済成長は起きない。 第2に、経済が拡大しないのに、働き手が不足し、インフレが起きるのはなぜか。ぜいたく品と麻薬の生産にかまけたため、必需品の生産が手薄になり、必需品を提供する労働力も不足するようになったからである。しかし、必需品は儲からないから、それを生産する企業は増えない。よって、食料、資源、単純労働、サービス労働の価格高騰が起きる。 第3に、富裕層は、必需品が高くなっても購入できるから問題ないが、貧困層は生活に苦しむ。実質的な格差が拡大する。新しい製品への開発投資に金が向かわないから、投資はほとんどが金融市場に向かう。金融市場に多額の資金が流入すれば、当然値上がりする。バブルになる。富裕層は、資産を増大させる。 ただし、これは評価額にすぎず、このバブルが持続不可能になったときに崩壊する。ただし、庶民にも投資を勧める社会となっているから、ババをつかまされるのは庶民かもしれない。暗号資産でそれは始まっているが、ほかのリスク資産にも波及するだろう。よって、国内の富裕層と貧困層の格差は広がる。 一方、途上国はまだ前述の経済成長の第1段階および第2段階だったから、高成長が続いた。必需品が普及し、効率化する過程にあった。だから、国家間の格差は縮まったのである。 しかし、まもなく彼らも麻薬経済の第3段階の成長局面に入ってくるだろう。そして、世界全体で近代資本主義は衰退していくのである。(今回は競馬コーナーはお休みです。ご了承ください)』、「麻薬経済の到来である。ということは、みなが中毒になり、社会はおかしくなる。近代資本主義社会は衰退せざるをえなくなるだろう」、ここまでくると、ついていけない。ここまでは、それなりに、刺激的だったが、ここからは余りに奇想天外だ。「麻薬経済」なら「衰退せざるをえなくなる」というのは理解はできるが、次の社会の方向性を示さずに、終わるのはいただけない。小幡氏も時には、駄作もあるようだ。
タグ:「岸田首相は、今年を「スタートアップ創出元年」とする意向」、これは「岸田首相」オリジナルではなく、官邸の経産省出身官僚の考えだろうが、いまさら「創出元年」でもあるまい。 「1980年代に通商産業省(当時)主導で、欧米に先駆けて初期のAIを導入するプロジェクトを推進し、失敗した悪夢がある」、初めて知った。「単にAI関連の研究活動に投資するだけでは不十分だ。過去の失敗事例を踏まえて「AIの発展に伴う雇用面のデメリット」という視点を盛り込み、それに対する改善策を併せて議論すべき」、その通りだ。 「「同一労働同一賃金」の原則に基づく政策が打ち出された。政策の裏をかき、正社員の賃金を下げて非正規雇用に合わせることで同一賃金とする企業が少なくなかった。その結果、格差は縮まらず、賃金も一向に上がってこなかった」、「「新しい資本主義」の実行計画には、そうした過去の過ちを繰り返さないという視点も盛り込むべきではないだろうか」、その通りである。 「決して目新しいものではなく、以前から認識されていながら有効な手を打てなかった「古い政策課題」ばかりが並んでいた」、羊頭狗肉の酷い話だ。 上久保誠人氏による「岸田首相の“新しい資本主義”に「今更感」が強い理由、何が足りない?」 ダイヤモンド・オンライン 資本主義 (その10)(岸田首相の“新しい資本主義”に「今更感」が強い理由 何が足りない?、市場原理主義という“怪物”に戦いを挑み続けた「日本人経済学者」がいた…! いま 宇沢弘文が注目を集めるわけ、資本主義が静かに衰退を始めていると言えるワケ 「世界経済の3つの謎」をどう考えばいいのか) 「日本のエネルギー企業がダイベストメントされる一方で、海外大手はさらに先に進もうとしているのだ。この差を埋めるにはどうすべきか」、マスコミももっと政策を掘り下げて報道すべきだろう。 「「なぜ、これまで長年にわたって有効な手を打てなかったのか」「今回の施策は、従来とどう違うのか」といったポイントが国民に伝わるよう、より詳細な説明を行うべき」、同感である。 現代ビジネス 佐々木 実氏による「市場原理主義という“怪物”に戦いを挑み続けた「日本人経済学者」がいた…! いま、宇沢弘文が注目を集めるわけ」 「宇沢は、「社会的共通資本」という概念をベースに、万人が幸福に暮らすことを目指す、新たな資本主義の枠組みを構築しようとしていた」、構築中に倒れられたのは、かえすがえすも残念だ。 「ESGやSDGsが国際的な支持を得ているのは、これまでの資本主義が環境問題をないがしろにしてきたことの裏返し」、その通りだ。 「あらゆる領域を市場化すれば、「社会の絆」に頼る必要などなくなる」、さすが「市場原理主義の教祖」らしい考え方だ。 「シカゴ大学でフリードマンと対峙していたころ、宇沢はアメリカ経済学界で一二を争う若手理論家とみなされていた。フリードマンは著名ではあったが、最先端の理論づくりの現場にかぎれば、16歳も若い宇沢のほうが勢いがあり影響力をもっていた。 アメリカ経済学界での評価が絶頂にあるとき、宇沢はベトナム戦争に異を唱えて突然、アメリカを去った」、「宇沢が指摘しているのは、市場原理主義的な傾向はフリードマン率いるシカゴ学派に顕著にみられるけれども、しかしそれは、アメリカの経済学者一般に共通している信念だということである。」、 「宇沢が環境問題の研究を始めたのは半世紀も前であり、地球温暖化の問題に取り組んだのは30年あまり前からだった。先見の明というより、問題を見定める際の明確な基準、つまり、思想があったからこそ、いち早く問題の所在に気づくことができたのである」、さすがである。 「ESGやSDGsに先駆けて「持続可能な社会」の条件を探求した宇沢なら、このようなESG投資を認めることは絶対にあり得ない。思想が許さないからだ」、「生涯にわたって資本主義を問いつづけた経済学者の思考の軌跡は、かならずや混沌から抜け出すヒントを与えるはずである」、そうした論考が出てくることを大いに期待したい。 東洋経済オンライン 小幡 績 「資本主義が静かに衰退を始めていると言えるワケ 「世界経済の3つの謎」をどう考えばいいのか」 「近代資本主義とは、移動、拡大、膨張の時代のこと」、「大航海時代の始まり」、なるほど。 「閉じていた経済では、技術革新があっても、品質が改良されるだけで、その改良分を以前よりも多く払うことはできない。所得は変わっていないから、その財に払える価格は前と同一で、その場合、経済的には価値は同じ(不変)となり、経済は拡大しない。よって経済成長もない。これが、中世までの繰り返しの循環経済」、 「1492年以降、外部が生まれたことで、外部からの富の流入が経済の拡大をもたらした。所得が増えたから、払う総額も増えた・・・17世紀には、さらなる経済のテイクオフ(離陸)が起きた。ぜいたくの始まりである」、「ぜいたく」が「経済成長」をもたらしたとは初めて知った。 「これらの技術革新は、交通・通信革命であったのだ。また、それ以前の技術革新とは何が違ったのか。それらの技術革新は時間を節約したのである。人々の時間に余剰をもたらしたのである」、「交通・通信革命で移動や意思疎通の時間を大幅に短縮することに成功すると、生産のための最大のリソースである時間が余る。これが新たな財の生産に向かい、経済全体の生産量は飛躍的に増加したのである」、なるほど。 「エンターテインメント消費が誕生した。 これで消費が爆発した。庶民までがぜいたく品を消費するようになった。つまり、技術革新により必需品の生産の効率化が進み、時間が余り、第1には労働投入時間の増加となり所得を増やしたが、第2には、余った時間をぜいたく消費に充てるようになり、消費が増大したのである。 まず供給力が増え、次に需要が増えたのである。ここに成長は加速した。これがアメリカの20世紀の成長であり、日本の高度成長である」、このように歴史的に整理されると理解し易い。 「「新しい」ものに飽きたのである」、「これに企業はどう対応したか。 新しいぜいたく品を売りつけても、人々は飽きている。あるいは、すぐ次の新しいものに移る。賞味期限が短くなっている。これでは、持続的に儲けられない。 そこで、単なるぜいたく品ではなく、ぜいたく品を必需品に仕立て上げ、すべての人々に永続的に消費させるようにしたのである。必需品たるぜいたく品、やめられないぜいたく品、そう、すべては「麻薬」になった」、なにやら健全とはほど遠い姿だ。 「麻薬経済の到来である。ということは、みなが中毒になり、社会はおかしくなる。近代資本主義社会は衰退せざるをえなくなるだろう」、ここまでくると、ついていけない。ここまでは、それなりに、刺激的だったが、ここからは余りに奇想天外だ。「麻薬経済」なら「衰退せざるをえなくなる」というのは理解はできるが、次の社会の方向性を示さずに、終わるのはいただけない。小幡氏も時には、駄作もあるようだ。
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東京オリンピック(五輪)(その23)(「お見舞い200万円」で特捜部の捜査は森喜朗元会長に及ぶのか メディアに漂う“微妙な空気感”、東京五輪汚職で「商業主義化=悪」の世論に異議あり 元JOC職員が見た真因とは、東京五輪汚職で「商業主義化=悪」の世論に異議あり 元JOC職員が見た真因とは、【東京五輪汚職】検察が最終ターゲット「竹田恆和JOC前会長」の逮捕に踏み切れない理由) [国内政治]

東京オリンピック(五輪)については、2月23日に取上げた。今日は、(その23)(「お見舞い200万円」で特捜部の捜査は森喜朗元会長に及ぶのか メディアに漂う“微妙な空気感”、東京五輪汚職で「商業主義化=悪」の世論に異議あり 元JOC職員が見た真因とは、東京五輪汚職で「商業主義化=悪」の世論に異議あり 元JOC職員が見た真因とは、【東京五輪汚職】検察が最終ターゲット「竹田恆和JOC前会長」の逮捕に踏み切れない理由)である。

先ずは、9月2日付けデイリー新潮「「お見舞い200万円」で特捜部の捜査は森喜朗元会長に及ぶのか メディアに漂う“微妙な空気感”」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2022/09021115/?all=1
・『東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件で新展開である。贈賄容疑で逮捕された「AOKIホールディングス」前会長の青木拡憲容疑者(83)が、大会組織委員会の会長だった森喜朗元首相(85)に現金200万円を手渡していた疑惑が浮上したのだ。もしこれが賄賂として認定されれば、捜査はいよいよ元首相にまで及ぶことになるが……』、興味深いが、その後の続報は余りないようだ。
・『朝日、読売は静観  疑惑を最初に報じたのは9月1日付の産経新聞である。青木容疑者が東京地検特捜部の調べに対し、病気療養中だった森氏へお見舞いとして現金200万円を2回に分けて直接手渡したと供述していると報じた。同紙の取材に対し、森氏は「(現金の受領は)一切ありません」と回答している。 この報道が出るや共同通信、TBS、東京新聞はすぐさま追いかけた。さらに週刊誌系のネットメディアも追随したため、たった1日でネット上は五輪汚職がいよいよ大物政治家へという盛り上がりを見せたのである。 だが、特捜部を日々取材し続けている記者の間では決してそんな緊迫感はないという。 「森さんが否定しているとはいえ、渡した当人が話しているわけです。いかに組織委がカネにみまれていたかがより一層浮き彫りになったことは確かです。ただし、これが事件として立件されるかどうかは分けて考えなければなりません。実際、産経の報道を全社が追いかけているわけではない。朝日、読売などは静観しています」(司法記者)』、「朝日、読売などは静観」の理由は何なのだろう。
・『200万円で森氏が動かせるのか  産経の報道によれば、現金の授受は森氏が会長の頃だった。組織委の理事や会長は「みなし公務員」と規定されており、贈収賄が成立する条件はクリアしている。だが、これだけで立件は難しいというのだ。 「本当にお見舞いと言って渡しただけならば厳しい。青木容疑者が『スポンサーに選定してください』などの文言を添えて依頼していたとか、その証拠があるかが重要になってきます」(同) 200万円という金額も微妙だという。 「もちろん、賄賂の趣旨が明確であれば額が少なかろうが立件できます。ただ、200万円は森さんを動かせるほどの大金と言えるのか。受け渡し方も重要になってきます。お代官さまにこっそり渡すようなやり方ならば怪しいとはなりますが、『見舞金です』と堂々と渡していていただけならば、お見舞いという趣旨として押し通せてしまう」(同)』、「『見舞金です』と堂々と渡していていただけならば、お見舞いという趣旨として押し通せてしまう」、残念ながらその通りのようだ。
・『一刻も早く説明責任を果たすべき  すでにAOKI側の依頼で組織委元理事の高橋治之容疑者(78)が森氏を青木容疑者に紹介し、複数回会食していたことも特捜部が押収した面会記録などで明らかになっている。さらに「見舞い金」も加われば、ますます怪しいと誰しも思うのだが、これだけで罪に問うのは難しいというのである。 「そもそも元首相を捜査するとなると、政治に与える影響は計り知れません。ガチガチに証拠が固められない限り、特捜部はこのような捜査をやりたがりません。少なくとも今の特捜部に森氏を呼び出して聴取するような雰囲気はありません」(同) だが捜査対象になっていようがいまいが、森氏に説明責任が生じていることだけは間違いないことだ。一言否定コメントを出すだけでは済まされない。これ以上晩節を汚さないためにも、一刻も早く記者会見を開き国民に対して納得いく説明をすべきである』、「森氏に説明責任が生じていることだけは間違いない」、「一刻も早く記者会見を開き国民に対して納得いく説明をすべきである」、その通りだ。

次に、10月12日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した五輪アナリストの春日良一氏による「東京五輪汚職で「商業主義化=悪」の世論に異議あり、元JOC職員が見た真因とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/311042
・『五輪汚職の裏にある日本スポーツ界の脆弱性  8月17日、東京2020組織委員会(以下、組織委)の高橋治之元理事が逮捕されるというニュースが舞い込んできた。選手の努力と感謝によって取り戻せたと思っていたオリンピックに対する正のイメージが、再び崩れていく音が聞こえた。東京2020で唯一のレガシーであるべき「人」が立件されたのである。 この騒動に、世論は「オリンピックの商業主義化」にその原因を求めており、汚れた東京五輪のレッテルを貼る報道は、高橋氏を「スポーツ界を牛耳るフィクサー」「スポーツビジネスを変えた男」などとして、スポーツ界の大物として描く。 しかし、かつて日本オリンピック委員会(JOC)職員として電通とオリンピックビジネスで渡り合った経験がある私には、別の風景が見える。 今回の汚職は、高橋治之という特殊な個性が起こした特殊な事件であり、その根本的な原因は日本スポーツ界の「自律」の脆弱性にあると映るのだ』、「根本的な原因は日本スポーツ界の「自律」の脆弱性にある」、どういうことだろう。
・『アディダスと電通、2人の男から始まった五輪のマーケティング  そもそも、なぜオリンピックマーケティングが誕生したのか? 冷戦時代末期、グローバル志向とともに、スポーツがビジネスになると考えられ始めた。 この頃、スポーツが国境を容易に越えられる手段であることに着目していたアディダスの二代目最高責任者、ホルスト・ダスラー氏は、スポーツを通じて得られる各国の情報収集と分析に傾注していた。その中で、国際サッカー連盟(FIFA)や世界陸上競技連盟(現WA)の大会マーケティング権利を取得していった。 同時期、電通には服部庸一氏(後の常務取締役)がいた。彼こそがスポーツビジネスを切り開いた男である。1978年に開催が決定したロサンゼルス五輪(1984年)のスポンサーシップ交渉権獲得に乗り出し、執拗な交渉の末に独占代理店契約に成功する。1980年3月のことであった。 1980年はモスクワ五輪開催の年。しかし、前年暮れにソ連のアフガニスタン侵攻が起きたことに対抗して、米国のジミー・カーター大統領がモスクワ五輪ボイコットを西側諸国に呼び掛けた。その結果、参加国は80カ国にとどまってしまった。オリンピックの「スポーツでより平和な世界をつくる」と言う理念が瓦解したのだ。  国際オリンピック委員会(IOC)はスポーツの「自律」を主張し、政治に支配されない状態を作るため、そして五輪開催を持続するために、自ら財政的基盤を作るべきだと悟った。 しかし、オリンピックがオリンピック自身で収入を獲得し、その収入で開催する方法はあるのか』、「国際オリンピック委員会(IOC)はスポーツの「自律」を主張し、政治に支配されない状態を作るため、そして五輪開催を持続するために、自ら財政的基盤を作るべきだと悟った」、なるほど。
・『ロサンゼルス五輪の成功の裏にある電通の機動力  折しも、その頃、前述のアディダスのダスラー氏と電通の服部氏はスポーツビジネス戦略において共鳴しあい国際的に展開する会社・ISLを設立し、当時のIOC会長にオリンピックマーケティングを提案した。オリンピックに関する権利をIOCが統括し、グローバルに展開するというものだ。 もしオリンピックマーケティングが成功し、五輪開催経費を全て賄うことができれば、オリンピック理念の実現に貢献することができる――。 そんな最中に開催されたのが、1984年のロサンゼルス五輪だ。 「公的資金を一切使わず民間資金だけで開催する」と宣言した大会の、ロサンゼルス五輪組織委会長はピーター・ユベロス氏。彼はテレビなどの放送権料、スポンサー協賛金、ライセンシングなどを駆使して収益を上げ、開催費を賄うだけでなく、当時のレートで約500億円の黒字を残す成功を収めた。 この成功を支えたのが服部氏の熱意ある奮闘であり、彼が交渉して得たスポンサーシップ交渉権の独占代理店「電通」による、たゆまぬ機動力であった。 1985年、IOCはISLとオリンピックのグローバル・マーケティングプログラム「The Olympic Partner」に関する独占代理店契約を締結した。IOCは「五輪」の商業利用を決心するのである。世界的な規模の企業にそのシンボルの独占的使用を許可する代わりに、スポンサー料を得ることとなった』、「公的資金を一切使わず民間資金だけで開催する」と宣言した大会の、ロサンゼルス五輪組織委会長はピーター・ユベロス氏。彼はテレビなどの放送権料、スポンサー協賛金、ライセンシングなどを駆使して収益を上げ、開催費を賄うだけでなく、当時のレートで約500億円の黒字を残す成功を収めた」、「この成功を支えたのが服部氏の熱意ある奮闘であり、彼が交渉して得たスポンサーシップ交渉権の独占代理店「電通」による、たゆまぬ機動力であった」、「電通」が「ロサンゼルス五輪」でも活躍していたとは初めて知った。
・『東京2020でオリンピックマーケティングは誰がやる  東京2020でオリンピックマーケティングは、どのように展開したのか? まず、2014年1月にJOCと東京都が東京2020の組織委を設立すると、当時の安倍政権に近い森喜朗元首相が会長になるなど政治色の濃い人事となり、理事会は名誉職的なステータスとなった。 そして組織委は、4月にマーケティングの専任代理店として電通を指名。組織委事務局に電通からスタッフが出向し、事実上、スポンサーシップに関することを全て電通が仕切ることになる。組織委は「名誉職」なので、マーケティングに関しては、電通に丸投げしているのと同じ状況となった。 本来であれば、組織委事務局にマーケティング本部ができ、そこに有能な人材を置き、業務を遂行する。JOCからマーケティング担当を出向させ管理運営を統括することもできる。スポンサー募集も選定も、組織委の責任で実施するのが原則だからだ。ロンドン2012もリオ2016もそうであった。 スポンサー契約は、代理店に依頼するのが当たり前とはならないのだ。 もし、東京2020で本来の形が築けていれば、高橋元理事のように仲介者が登場する隙間はなかったはずだろう』、「スポンサー募集も選定も、組織委の責任で実施するのが原則だからだ。ロンドン2012もリオ2016もそうであった。 スポンサー契約は、代理店に依頼するのが当たり前とはならないのだ」、そうした「本来の形が築け」なかった理由は何なんだろう。
・『なぜ高橋容疑者は組織委理事になったのか?  日本のスポーツ界には、1911年の大日本体育協会(体協)創設以来自らの運営資金を稼ぐという発想がなかった。アマチュアであることの誇りと甘えの構造とも言えるかもしれない。 日本アマチュアスポーツ界は、1980年から始まった「がんばれ!ニッポン!キャンペーン」という電通の肝いりで推進してきた選手強化費調達プログラムに頼っていたのだ。 しかし、モスクワ五輪ボイコットの反省から「自律」を目指し、1989年JOCは体協から独立した。それは同時に電通からの財政的独立の試みでもあった。1991年、長野冬季五輪招致に成功するとJOCは、本格的に自ら資金調達プログラムを立案し、運営しようとする。JOMという会社を作り、オリンピックマーケティングを一任し、電通を通さず直接スポンサーを獲得することで、その収益は倍増以上となった。しかし一方で、危機感を募らせた電通は巻き返しを図り、水面下でJOC首脳部を懐柔していく。 長野五輪閉会の2年後、2000年にJOMは解散した。 「電通に任せておけば大丈夫」という流れが再び起こる中で、2001年、竹田恒和JOC会長が誕生した。そしてその誕生の後見となったのが高橋治之氏である。 高橋氏は竹田氏の幼稚舎から慶應大学に至る先輩であり、兄弟付き合いの仲だった。スポーツ界にとって、JOC会長が電通出身の高橋氏と密接な関係にあるとすれば、それだけで高橋氏の存在に箔が付く。 それは電通にとっても好都合の状況であった。 高橋氏の存在は「竹田JOC体制」で電通の存在感と比例して次第に大きくなる。東京2020の招致活動においてもコンサルタント契約が結ばれ、高橋氏は「招致成功の立役者」と持てはやされる。そして2014年、高橋氏が組織委理事に就任する流れにつながったといえるだろう。 元電通の高橋氏がなぜ組織委理事に就任できたか? それはつまり、スポーツ界がしらずしらず、高橋氏の偶像を無批判に崇拝したからに他ならない。そして高橋氏は組織委理事の肩書を得ることで、スポンサーになろうとする企業にとって重要な存在になることができたのである』、「高橋氏の存在は「竹田JOC体制」で電通の存在感と比例して次第に大きくなる。東京2020の招致活動においてもコンサルタント契約が結ばれ、高橋氏は「招致成功の立役者」と持てはやされる。そして2014年、高橋氏が組織委理事に就任する流れにつながったといえるだろう」、「元電通の高橋氏がなぜ組織委理事に就任できたか?」、「スポーツ界がしらずしらず、高橋氏の偶像を無批判に崇拝したから」、なるほど。
・『世界のオリンピックマーケティングの立て直しは進んでいる  もうかる五輪は招致合戦を過激化させ、IOCは危機を迎えていた。それはISLの人脈ビジネスモデルの短所が招いたものだ。FIFA会長など世界的スポーツ団体首脳の権威を利用して、権利ビジネスを展開していく間に、私腹を肥やすやからが出没した。 そして、1999年に、2002年の冬季五輪開催都市となったアメリカ・ソルトレークシティーの招致不正疑惑が暴露された。IOC委員への買収工作の数々が暴かれたのだ。 IOCは自浄を迫られ、不正を認定された委員を追放し、倫理委員会を新設した。アディダスと電通が設立したISLとの独占契約も解消し、IOCのマーケティング委員会が主体のモデルに転換した。2001年ISLは倒産した。 正常化への道を歩むと見えた国際スポーツ界であったが、かつての人脈ビジネスモデルを抜けきれない人々もいた。高橋氏もその一人であろう。 2013年、第9代IOC会長に就任したバッハ氏はオリンピック改革綱領(アジェンダ2020)を提示し、招致活動の不正を一掃する作戦を展開した。その一つに2019年に新設された「将来開催地委員会」というものがある。五輪開催に立候補した都市は開催を争うのではなく、IOCと相談し勉強しながら理想の五輪開催を考えていくというもので、招致に不正の入り込む余地がなくなっている』、「1999年に、2002年の冬季五輪開催都市となったアメリカ・ソルトレークシティーの招致不正疑惑が暴露」、「IOCは自浄を迫られ、不正を認定された委員を追放し、倫理委員会を新設」、「IOCのマーケティング委員会が主体のモデルに転換」、「第9代IOC会長に就任したバッハ氏はオリンピック改革綱領・・・を提示し、招致活動の不正を一掃する作戦を展開した。その一つに2019年に新設された「将来開催地委員会」というものがある。五輪開催に立候補した都市は開催を争うのではなく、IOCと相談し勉強しながら理想の五輪開催を考えていくというもので、招致に不正の入り込む余地がなくなっている」、なるほど。
・『スポーツの「自律」を求め、IOCの実像を知る  今回の事件の根本に見えてくるのは、日本のスポーツ界の「自律」意識の脆弱性である。 オリンピック憲章の根本原則には、「スポーツ団体は自律の権利と義務を持つ」という一節があり、外部からの圧力を排して、自らを律することをうたっている。 そのリーダーとなるべきは、国内唯一のオリンピック専門集団であるJOCではないか。JOC自らがオリンピックマーケティングを主導していく情熱と努力が求められる。 五輪開催国で組織委が設立されると、その国のオリンピック委員会は組織委が解散されるまで、自らが保有するオリンピックに関わる権利の全てを組織委に譲渡しなければならない。東京2020でも、JOCはオリンピックマーケティングの砦を死守する必要があった。 つまり、JOC職員がオリンピック精神に基づいて、スポンサーシップ交渉をすることが良好なガバナンスの証しとなる。それによって生まれた利益は「スポーツでより平和な世界をつくる」ために使うのである。 IOCがオリンピックマーケティングで得た収益の90%は、世界中の選手やスポーツ団体を支援するために配分されている。その金額は一日約420万ドルになった。 またIOCは、ウクライナの選手3000人以上を支援しており、2024年パリ五輪、2026年ミラノ・コルティナダンペツォ冬季五輪を見据えて、総額750万ドルの義捐基金を設立した。 日本の報道では金まみれ、不正まみれと悪評が目立つIOCだが、それは真実が伝わっていないからである。IOCの活動はただオリンピック競技大会の開催維持だけでない。IOCはSDGsに以前から取り組み、LGBTQ、ジェンダー平等の問題、地球環境問題に積極的に取り組んでいる。 去る9月21日の国際平和デーに寄せたバッハ氏のスピーチは心に響くものだった。 「オリンピックは戦争や紛争を回避することはできない。(中略)しかし同じルールを尊重し、相手を敬う世界があることを示すことができる」「世界中の政治指導者に告ぐ、平和にチャンスを与えよ!」 彼は18日から24日にかけて、ヨルダン、パレスチナ、イスラエル、そしてエジプトを歴訪している。各元首と会談し、より平和な世界のために、スポーツの政治的中立とオリンピズムによる団結が重要であることを訴えた。 オリンピックマーケティングは、平和にチャンスを与えるためのものである。そうである限りそれを支えるための商業主義化は否定されるべきではない。そして、その正当な実践のためにスポーツは政治からも、経済からも、そしてあらゆる圧力から「自律」しなければならない。それが不正を防ぐ根本的戦略である』、「オリンピックマーケティングは、平和にチャンスを与えるためのものである。そうである限りそれを支えるための商業主義化は否定されるべきではない。そして、その正当な実践のためにスポーツは政治からも、経済からも、そしてあらゆる圧力から「自律」しなければならない。それが不正を防ぐ根本的戦略である」、日本の場合は、「自律」が欠けていたようだ。

第三に、11月8日付け現代ビジネス「【東京五輪汚職】検察が最終ターゲット「竹田恆和JOC前会長」の逮捕に踏み切れない理由」を紹介しよう。
・『検察が直面する「甲斐の壁」  五輪汚職捜査における東京地検特捜部の最終ターゲットは竹田恆和JOC(日本オリンピック委員会)前会長だが、そのためには通称「甲斐の壁」を越えなければならない。甲斐行夫検事総長が首を縦に振らないと、逮捕・起訴まで持っていくことはできないのだ。 特捜部は10月19日、五輪スポンサーに絡む賄賂を受け取っていた高橋治之元理事を再逮捕した。4回目の逮捕となるが、今回は受取口座が「竹田氏の知人である慶應義塾高校の同級生が経営する休眠会社」のものだった。この口座に、広告大手ADKから約2000万円、大会マスコットのぬいぐるみ製造のサン・アローから約700万円が振り込まれていた』、「検事総長が首を縦に振らない」理由は何なのだろう。
・『「旧皇族出身者」の逮捕はハードルが高い  特捜部は、竹田氏にもカネが流れたのではないかと見ている。サン・アローからの約700万円は、高橋容疑者が「竹田氏の慰労会のため」という名目で集めたという。 竹田氏は大会組織委員会元副会長でもあるため、職務権限がある。高橋容疑者経由という立証の難しさはあるものの、「共犯」の可能性はゼロではない。 だが、賄賂の総額が2億円近い高橋容疑者に比べサン・アロールートは700万円と少ない上に、高橋、竹田の両者とも否認している。甲斐検事総長は、旧皇族家出身の竹田氏を逮捕するには材料が不足していると考え、慎重になっているようだ』、確かに僅か「約700万円」で「旧皇族家出身の竹田氏を逮捕するには材料が不足していると考え、慎重になっている」、「検事総長」の立場も理解できない訳ではないが、問題の本質は、金額の大小ではなく、「収賄」した事実にある筈だ。  
タグ:東京オリンピック(五輪) (その23)(「お見舞い200万円」で特捜部の捜査は森喜朗元会長に及ぶのか メディアに漂う“微妙な空気感”、東京五輪汚職で「商業主義化=悪」の世論に異議あり 元JOC職員が見た真因とは、東京五輪汚職で「商業主義化=悪」の世論に異議あり 元JOC職員が見た真因とは、【東京五輪汚職】検察が最終ターゲット「竹田恆和JOC前会長」の逮捕に踏み切れない理由) デイリー新潮「「お見舞い200万円」で特捜部の捜査は森喜朗元会長に及ぶのか メディアに漂う“微妙な空気感”」 興味深いが、その後の続報は余りないようだ。 「朝日、読売などは静観」の理由は何なのだろう。 「『見舞金です』と堂々と渡していていただけならば、お見舞いという趣旨として押し通せてしまう」、残念ながらその通りのようだ。 「森氏に説明責任が生じていることだけは間違いない」、「一刻も早く記者会見を開き国民に対して納得いく説明をすべきである」、その通りだ。 ダイヤモンド・オンライン 春日良一氏による「東京五輪汚職で「商業主義化=悪」の世論に異議あり、元JOC職員が見た真因とは」 「根本的な原因は日本スポーツ界の「自律」の脆弱性にある」、どういうことだろう。 「国際オリンピック委員会(IOC)はスポーツの「自律」を主張し、政治に支配されない状態を作るため、そして五輪開催を持続するために、自ら財政的基盤を作るべきだと悟った」、なるほど。 「公的資金を一切使わず民間資金だけで開催する」と宣言した大会の、ロサンゼルス五輪組織委会長はピーター・ユベロス氏。彼はテレビなどの放送権料、スポンサー協賛金、ライセンシングなどを駆使して収益を上げ、開催費を賄うだけでなく、当時のレートで約500億円の黒字を残す成功を収めた」、「この成功を支えたのが服部氏の熱意ある奮闘であり、彼が交渉して得たスポンサーシップ交渉権の独占代理店「電通」による、たゆまぬ機動力であった」、「電通」が「ロサンゼルス五輪」でも活躍していたとは初めて知った。 「スポンサー募集も選定も、組織委の責任で実施するのが原則だからだ。ロンドン2012もリオ2016もそうであった。 スポンサー契約は、代理店に依頼するのが当たり前とはならないのだ」、そうした「本来の形が築け」なかった理由は何なんだろう。 「高橋氏の存在は「竹田JOC体制」で電通の存在感と比例して次第に大きくなる。東京2020の招致活動においてもコンサルタント契約が結ばれ、高橋氏は「招致成功の立役者」と持てはやされる。そして2014年、高橋氏が組織委理事に就任する流れにつながったといえるだろう」、「元電通の高橋氏がなぜ組織委理事に就任できたか?」、「スポーツ界がしらずしらず、高橋氏の偶像を無批判に崇拝したから」、なるほど。 「1999年に、2002年の冬季五輪開催都市となったアメリカ・ソルトレークシティーの招致不正疑惑が暴露」、「IOCは自浄を迫られ、不正を認定された委員を追放し、倫理委員会を新設」、「IOCのマーケティング委員会が主体のモデルに転換」、「第9代IOC会長に就任したバッハ氏はオリンピック改革綱領・・・を提示し、招致活動の不正を一掃する作戦を展開した。その一つに2019年に新設された「将来開催地委員会」というものがある。五輪開催に立候補した都市は開催を争うのではなく、IOCと相談し勉強しながら理想の五輪開催を考 「オリンピックマーケティングは、平和にチャンスを与えるためのものである。そうである限りそれを支えるための商業主義化は否定されるべきではない。そして、その正当な実践のためにスポーツは政治からも、経済からも、そしてあらゆる圧力から「自律」しなければならない。それが不正を防ぐ根本的戦略である」、日本の場合は、「自律」が欠けていたようだ。 現代ビジネス「【東京五輪汚職】検察が最終ターゲット「竹田恆和JOC前会長」の逮捕に踏み切れない理由」 「検事総長が首を縦に振らない」理由は何なのだろう。 、確かに僅か「約700万円」で「旧皇族家出身の竹田氏を逮捕するには材料が不足していると考え、慎重になっている」、「検事総長」の立場も理解できない訳ではないが、問題の本質は、金額の大小ではなく、「収賄」した事実にある筈だ。
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キシダノミクス(その11)(「首相になる」が目的で、「日本をどうするか」を考えていない…岸田首相の支持率低下が止まらないワケ 正面からの議論を避けて、検討を続けるばかり、岸田政権は5月までもつ? 「第1次安倍政権と似てきた」の声、防衛大増税めぐる自民税調は“八百長” 大騒ぎした萩生田政調会長「作戦失敗」で評価ガタ落ち) [国内政治]

キシダノミクスについては、12月7日に取上げた。今日は、(その11)(「首相になる」が目的で、「日本をどうするか」を考えていない…岸田首相の支持率低下が止まらないワケ 正面からの議論を避けて、検討を続けるばかり、岸田政権は5月までもつ? 「第1次安倍政権と似てきた」の声、防衛大増税めぐる自民税調は“八百長” 大騒ぎした萩生田政調会長「作戦失敗」で評価ガタ落ち)である。

先ずは、12月2日付けPRESIDENT Onlineが掲載した経済ジャーナリストの磯山 友幸氏による「「首相になる」が目的で、「日本をどうするか」を考えていない…岸田首相の支持率低下が止まらないワケ 正面からの議論を避けて、検討を続けるばかり」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/64122
・『「青木率」では菅首相の末期に近い  岸田文雄首相の退陣が「カウントダウン」の様相を呈してきた。 1カ月の間に3人の閣僚が辞任に追い込まれ、その後も秋葉賢也復興相の足元がぐらついている。安倍晋三元首相の銃撃事件を機に表面化した旧統一教会と自民党政治家の関係が予想以上の広がりを見せ、ボディーブローのように政権を弱体化させている。 岸田内閣の支持率低下が止まらない。世論調査の結果は実施する報道機関ごとに傾向が違うが、中立的とされるNHKの11月の調査(期間は11月11日から3日間)でも内閣支持率は33%にまで低下した。 政党支持率の調査での自民党の支持率も37.1%にまで下落している。7月には支持率は59%に達していたが、8月は46%、9月は40%となり、10月は38%と不支持率(43%)と逆転した。 政策通の間ではよく知られる「青木率」というのがある。参議院のドンと言われた青木幹雄元議員が経験的に生み出したとされるもので、内閣支持率と与党支持率の合計が50%を割ると政権はもたない、というものだ。 NHKの調査で見ると70.1%なのでまだまだ危険水域には入っていないように見える。もっとも、菅義偉首相は辞任を表明する前の8月の調査で、内閣支持率29%、自民党支持率33.4%だったので、青木率は62.4%。安倍晋三首相の場合は、辞職表明直前の2020年8月の調査では、内閣支持率34%、自民党支持率35.5%で、青木率は69.5%だった』、「青木率」が「NHKの調査で見ると70.1%」とあるが、確かに「33%」と「38%」なので、まだ大丈夫なようだ。
・『なぜ党内で「岸田おろし」が起きないのか  いずれも内閣支持率が30%前後になったことで、首相には大きなプレッシャーがかかったということだろう。岸田首相も33%だから、相当追い込まれていることは間違いない。 11月21日の夜の会合で「今はちょっと孤独でつらい時もある」と漏らしたと報じられた。 背景に支持率低下があることは間違いない。政権に厳しいとされる毎日新聞の調査では、10月に内閣支持率が27%にまで低下。自民党支持率も24%となり、あわや「青木率」にヒットするスレスレになった。毎日の調査はおかしいのではないかという声まで出るほど衝撃が走った。11月はやや支持率を戻したが、それでも毎日の調査は支持率31%、不支持率62%という数字だった。 ここまで支持率が低下しているにもかかわらず、自民党内からは「岸田おろし」の動きが本格化しない。要因は、最大派閥で安倍元首相が率いてきた清和政策研究会は、後任会長を絞り込めないままで、自ら総裁候補を担ぎ出せる状態にないことが大きい。 来年の統一地方選挙を控えて「岸田首相では戦えない」という声も出始めているが、「では誰がいいか」となると声が消える。党内にも満場一致で首相に担ぐことができる玉がいないのだ。また、岸田首相に代わって自分が首相になろうと声を上げる議員も出てこない』、「毎日新聞の調査では、10月に内閣支持率が27%にまで低下。自民党支持率も24%となり、あわや「青木率」にヒットするスレスレになった」、「来年の統一地方選挙を控えて「岸田首相では戦えない」という声も出始めているが、「では誰がいいか」となると声が消える。党内にも満場一致で首相に担ぐことができる玉がいないのだ。また、岸田首相に代わって自分が首相になろうと声を上げる議員も出てこない」、自民党モ情けない有様だ。
・『「野党はあら探しをしているだけ」  もうひとつの理由は、野党が弱いこと。立憲民主党と維新の会の接近などはあるものの、国政選挙がない中で、本格的な共闘関係は築きにくい。閣僚を相次いで辞任に追い込んでいるものの、政策で成果を上げたわけではなく、あら探しの批判だけをしているように有権者の目には映る。 そんな野党を自民党議員は本気で恐れていない。岸田首相で何とか踏ん張れるのではないか、と見る議員も少なくないのだ。 その岸田内閣の目下の懸案は、燃え盛る旧統一教会問題を何とか沈静化させること。前出のNHKの調査でも、「旧統一教会問題での岸田首相の対応」について「大いに評価する」は2%、「ある程度評価する」の23%を加えても全体の4分の1に過ぎない。「まったく評価しない」が28%に達し、「あまり評価しない」の37%を加えると3分の2が厳しい評価を下している。 これを覆す切り札と政権が見ているのが、悪質献金を規制する新法の制定。当初は国会に提出を「目指す」として、やや腰が引けた印象だったが、支持率の低下とともに、国会に提出するだけでなく、成立させることが至上命題になった。NHKの調査でも新法を「今の国会(臨時国会)で成立させるべき」という回答が55%に達し、「必ずしも今の国会にこだわる必要はない」の32%を大きく上回った。 岸田内閣は新法を12月1日に閣議決定。12月10日までの国会会期を延長してでも何とか成立に漕ぎつけたい考えだ。万が一にも継続審議になれば、国民の岸田内閣への批判がさらに高まることになりかねない。ただ、国会を延長すれば、秋葉大臣への疑惑追及が続く上、新法の中味についても野党の批判をかわし続ける必要が出てくる』、「野党を自民党議員は本気で恐れていない」情けない限りだ。ここは潜在一隅のチャンスと本格的に自民党に攻勢をかけるべきだ。
・『「統一教会問題」だけではない  新法を成立させれば、それで岸田内閣がひと息つけるのか、というとそうではない。最大の焦点は「防衛費」とその財源を巡る「増税」問題だ。 岸田首相は5月に来日したバイデン米大統領に「防衛費の相当な増額」を約束したが、それ以降、一向に具体的な金額を明示しなかった。7月の参院選の自民党の公約には「NATO諸国の国防予算の対GDP比目標(2%以上)も念頭に、真に必要な防衛関係費を積み上げ、来年度から5年以内に、防衛力の抜本的強化に必要な予算水準の達成を目指します」としたが、その後も、「金額ありきではない」として、いくら増額するのかは明らかにしなかった。 11月28日になって「防衛費を2027年度に国内総生産(GDP)の2%程度に増額するよう鈴木俊一財務相と浜田靖一防衛相に指示。初めて2%という数字が公式に政府の方針として出てきたが、2023年度予算で防衛費をいくらにするのか、その財源をどうするのかについては、「年末までに」として、一向に語ろうとしていない。 国会開会中に防衛費の具体的な増額を打ち出せば、野党の攻撃が激しさを増すのは火を見るよりも明らか。防衛費増額は国民の間でも賛否が分かれる問題で、ここで強引に大きな金額を示せば、政権批判がさらに燃え上がることになりかねない。国会が閉まるまで国民の間には具体策を見せない、という判断なのだろう』、「防衛費」問題は自民党内では一応の決着をみたが、野党には攻めどころ満載である。大いに攻勢をかけてほしいものだ。
・『「財政は赤字」「景気も悪化」財源はどうするのか  防衛費を増額すれば、「財源」が問題になる。これについても首相は明言を避け続けている。仮に、防衛費の大幅増額に国民の理解を得たとしても、そのために増税すると言えば、反対に回る人も少なくない。防衛費増額を主張する自民党タカ派の議員たちの間でも、2023年度から増税は行うべきではない、という声が支配的だ。 ではどうするのか。増額は決めて、財源は先送りするのか。政府が頭をひねっているのは、予備費など現在の予算で余っているものを集めて当面の財源とする案だ。一見、うちでの小槌のように見えるが、結局は真正面から議論せず、国民の目を誤魔化すことに他ならない。2024年度以降は増税で賄うべきだという意見も出ているが、それを言い出せば、国民議論は大きく割れることが必至だ。 そうでなくても財政赤字が続いている中で、経済対策などに大きな予算を割いている。その効果で来年度は景気が急回復するのならともかく、円安水準の定着や、物価の上昇など、問題はむしろ悪化が懸念されている。景気悪化の中で増税議論を行うとなれば、そうでなくても下落が止まらない支持率がどこまで下がるか』、この問題は次の記事にあるように、先延ばししたようだ。
・『この国のビジョンを語れる政治家はいないのか  岸田首相を支持しない理由として、ほとんどの調査で共通しているのが「指導力がない」という点だ。首相としてのリーダーシップを発揮できていない、というわけだ。 そう見えるのは、目の前の問題への対応に追われ、この国をどんな国にしていくのか、といった明確なビジョンが語られていないことだ。 就任以来、「新しい資本主義」や「デジタル田園都市構想」などキャッチフレーズは語られているが、その具体的な中身はこれまでの政策の寄せ集めで、そこに夢を抱き、国の未来を見通せている国民はほとんどいないのではないか。 目先の対応はもちろん重要だが、同時に大きなビジョンを語り、国民を引っ張っていける政治家は、与党からも野党からも出てこないのだろうか。支持率が低下を続けても、代わりがいないとなると状況は最悪である』、日本の「政治家」が最も不得手なところで、期待する方が無理というものだろう。

次に、12月14日付けAERAdot「岸田政権は5月までもつ? 「第1次安倍政権と似てきた」の声」を紹介しよう。
https://dot.asahi.com/wa/2022121300069.html?page=1
・『秋の臨時国会が12月10日、閉幕した。焦点だった旧統一教会問題をめぐる救済新法は成立したものの、世論の評価はいまいち。相次ぐ閣僚スキャンダルも来年に持ち越されそうな情勢だ。満身創痍の岸田文雄政権、いつまでもつのか──!? 「総理大臣は実に孤独なものです……ちょっとつらいときもあります」 岸田文雄首相は11月21日夜、母校・早稲田大学の大隈庭園内にある「完之荘」で森喜朗元首相や自民党の青木幹雄元参院議員会長らと会食し、こう心情を吐露してみせたという。森、青木両氏とも早大雄弁会出身の実力者。今後の政権運営などについて意見交換したと思われる。大物たちに悩みを打ち明けた岸田首相の真意は何だったのか。政府関係者はこう語る。 「岸田首相は、財務省出身で最側近の木原誠二官房副長官や、官邸官僚たちの進言をほぼ言いなりで聞いて政権運営をしてきた。それに対し、自民党サイドからは『事前に一切説明がない』と猛反発を食らい、政府・与党の連携欠落が明らかになった。問題閣僚の更迭判断の遅れや身体検査のずさんさなども影響し、官邸が機能不全に陥った」 「政高党低」と言われた時代から一転、いまや官邸は党を抑えられなくなっているという。物価高騰対策の補正予算案では、萩生田光一政調会長に押し込まれ、当初政府が想定していた25兆円規模から4兆円超の上積みを余儀なくされた。注目された2023年度から5年間の防衛費についても、財務省は当初30兆円台前半を主張していたが、増額を求める防衛族をバックにした防衛省に押し切られ、総額約43兆円の大盤振る舞いに。岸田首相は1兆円強の増税を表明せざるを得なくなった。 閣僚の辞任ドミノも止まらない。岸田派の葉梨康弘前法相、寺田稔前総務相に続き、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との深い接点が明らかになった秋葉賢也復興相も危うい状態だ。「岸田首相は非主流派の菅義偉前首相や二階俊博元幹事長と面会したり、麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長と3人で何度も会ったりするようになった。ある程度、党側に軸足を移さないといけないと思ったようだ」(自民党関係者)』、「財務省は当初30兆円台前半を主張していたが、増額を求める防衛族をバックにした防衛省に押し切られ、総額約43兆円の大盤振る舞いに。岸田首相は1兆円強の増税を表明せざるを得なくなった」、「「政高党低」と言われた時代から一転、いまや官邸は党を抑えられなくなっている」、情けない限りだ。
・『新閣僚にも醜聞 野党の鼻息荒く  だが、肝心の支持率は低下する一方だ。共同通信社が11月26、27日に実施した世論調査によると、岸田内閣の支持率は10月末の前回調査から4.5ポイント減の33.1%で、過去最低を更新。不支持は51.6%で初めて5割を超えた。 中でも、旧統一教会問題を巡る被害者救済新法について、マインドコントロール(洗脳)された人の寄付の取り消し規定が必要との回答が75.8%に上ったことは重要だ。新法に洗脳下の寄付規制を明記しない政府方針は、世論とズレていることになる。「この数字に官邸は焦ったが、『洗脳下』は定義付けが難しい。そこで、寄付を勧誘する際、十分に配慮する規定を修正法案に盛り込むなど、内閣提出法案としては異例の、野党案を取り入れた法案となった」(与党国対関係者)という。 岸田政権の現状について、政治ジャーナリストの野上忠興氏は「閣僚が次々とドミノ辞任した第1次安倍政権と酷似している。こういう展開になると、内閣自体がもう長くない」と断言する一方で、こうも語る。 「岸田首相は案外しぶといから、支持率が30%あれば来年5月の広島サミットまではもつのではないか。状況的には20%台前半に落ちていてもおかしくないが、日本人はお人よしだから信任してしまう。ただ、岸田首相には危機感がない。自分の長男を首相秘書官にして、後ろがついていくはずがない。今、ほとんどの霞が関幹部の心は岸田首相から離れている」 政権の危機はまだ続く。寺田氏の後任に据えた松本剛明総務相は就任早々、資金管理団体が会場収容人数を超えるパーティー券を販売し、政治資金規正法違反の疑いがあると「しんぶん赤旗」にスクープされてしまった。 松本氏は旧民主党から自民党に転じた転向組で、麻生派(志公会)所属。「適材適所」(岸田首相)と言うものの、あからさまな麻生人事だ。だが、旧民主の流れをくむ立憲民主党にとって松本氏はいわば裏切り者。立民にとっては“制裁”を加える絶好の機会とあって、批判の手は緩めないだろう。立民幹部は「元々、プライドが高く、自民党内でも浮いた存在と聞く。徹底的に追及し辞任に追い込む」と鼻息は荒い。) 岸田首相からすれば、松本氏や秋葉氏を更迭しようにも、これ以上、首を切ると政権がもたない恐れもある。そこで浮上していたのが年明け以降の内閣改造。人心一新し、立て直しを図るのが狙いだ。ただ、11月下旬ごろから「改造は視野に入れているが慎重に見極めようという意見が出てきた。問題大臣の交代だけで収める可能性も十分ある」(自民党幹部)という。 自民党役員人事も合わせて行うとみられていたが、国会運営をめぐり立憲民主党の安住淳国対委員長にやられっぱなしの、高木毅国対委員長も所属する安倍派の要請で交代させない芽も出てきた。 そもそも内閣改造しても支持率が上がるとは思えないが、来年5月の広島サミットで議長国として存在感を発揮して支持率を上げ、余勢を駆って解散に持ち込むというのが首相の基本戦略だろう。 最大の救いは「ポスト岸田」の有力候補が不在で、野党の支持率も非常に低い点だ。支持率がジリ貧でも、どこかの段階で解散の引きがねを引き、反転攻勢に出ることを狙っているのは間違いない。 「残念なのは、かつては三角大福中(三木武夫、田中角栄、大平正芳、福田赳夫、中曽根康弘各氏)、安竹宮(安倍晋太郎、竹下登、宮沢喜一各氏)など自民党はベンチの中に予備軍がいっぱいいたのに、今はいないこと。国民の側は誰も『あの人がいいね』という発想ではなく、『あの人でいいや』という見方をする。政治の劣化ぶりもこれ極まれりだ」(野上氏) 「冗談に聞こえるかも」と前置きしたうえで、前出の政府関係者は語る。 「官邸内部ではサッカー日本代表が格上のドイツ、スペインに勝ち、メディアがサッカー一色になり政治ニュースが霞むと喜んでいた。しかし、クロアチアにPK戦で負けて、これで平時に戻ったとがっくりする職員が多いといいます」 このままでは何も成し遂げないまま、“オウンゴール”で試合終了だ。(本誌・村上新太郎)』、「「岸田首相は案外しぶといから、支持率が30%あれば来年5月の広島サミットまではもつのではないか。状況的には20%台前半に落ちていてもおかしくないが、日本人はお人よしだから信任してしまう。ただ、岸田首相には危機感がない。自分の長男を首相秘書官にして、後ろがついていくはずがない。今、ほとんどの霞が関幹部の心は岸田首相から離れている」、「来年5月の広島サミットで議長国として存在感を発揮して支持率を上げ、余勢を駆って解散に持ち込むというのが首相の基本戦略だろう。 最大の救いは「ポスト岸田」の有力候補が不在で、野党の支持率も非常に低い点だ。支持率がジリ貧でも、どこかの段階で解散の引きがねを引き、反転攻勢に出ることを狙っているのは間違いない」、さて、「来年5月の広島サミットまで」果たしてもつのだろうか。

第三に、12月16日付け日刊ゲンダイ「防衛大増税めぐる自民税調は“八百長” 大騒ぎした萩生田政調会長「作戦失敗」で評価ガタ落ち」を紹介しょう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/316018
・『あの「増税反対」騒動は何だったのか。自民党税制調査会は15日、党内の幅広い議員が参加できる小委員会を党本部で開催し、防衛力強化に伴う増税案を了承。法人税など3税を増税する方針を決めた。増税時期については「2024年以降の適切な時期」と明示しなかった。13、14日の小委員会では怒号が飛んでいたが、約120人が参加したこの日の会合では、混乱はなかったという。 この間、多くの自民党議員が岸田首相の掲げた「防衛大増税」に反発。「増税するな!」の大合唱だった。特に大騒ぎしていたひとりが萩生田政調会長だ。「(増税話を)統一地方選前に出すのは大きなマイナス」「国債の選択肢も排除しない」と、増税反対論を声高にぶっていた。ところが、どうやら萩生田氏の動きはポーズで、水面下で岸田首相と話がついていたようなのだ。 「萩生田さんは先月25日、岸田総理と銀座の日本料理店で約2時間、会食し、約1時間にわたって、今回の防衛増税について話し込んだそうです。総理は萩生田さんに党内と安倍派のまとめ役を期待した。萩生田さんは増税に消極的でしたが、党内を調整できないと政調会長として大きな失点になるので、納得済みでした。増税については、反対論が続出した場合に備えプランA、B、C……といった形で、いくつかの落としどころが用意されており、萩生田さんもそれは分かっていたはずです」(永田町関係者) つまり、大紛糾した今回の税制調査会は、初めから「着地点」が見えていた。ほとんど“八百長”だったわけだ。そんな中、萩生田氏が執拗に「増税反対」論を展開しまくっていたのは、党内最大派閥・安倍派の次期会長を狙った「存在感アピール」が目的だ』、「大紛糾した今回の税制調査会は、初めから「着地点」が見えていた。ほとんど“八百長”だったわけだ。そんな中、萩生田氏が執拗に「増税反対」論を展開しまくっていたのは、党内最大派閥・安倍派の次期会長を狙った「存在感アピール」が目的だ」、「萩生田氏」は党の重職にありながらけしからんと思っていたが、「“八百長”だった」とは驚かされた。
・『萩生田氏は険しい表情で逃げるように立ち去る  「安倍元首相は生前、防衛費の財源について『国債で対応を』と言い、増税を否定していた。萩生田さんはその安倍さんとの考えの近さをアピールすることで“跡目争い”で優位に立ちたかったのでしょう。『我こそが安倍後継』と言っているわけです」(官邸事情通) ところが、萩生田氏が増税反対を強く打ち出し過ぎた結果、周囲も負けじと大騒ぎ。同派閥の西村経産相は「このタイミングの増税は慎重に」と発言し、世耕参院幹事長も「参院選公約で増税に言及していない」と続いた。 安倍派ではないが、安倍元首相に近かった高市経済安保相まで「岸田総理の真意が理解できない」とツイート。保守系の中堅・若手も反対の声を上げだし、収拾がつかなくなってしまったのだ。 「萩生田さんはよほど存在感を示したかったのだろうが、さすがにやり過ぎだ。政調会長として党内のまとめ役を期待されたのに、逆に火に油を注いでしまった。評価はガタ落ちですよ」(自民党関係者) 萩生田氏は15日の小委員会終了後、報道陣を右手で制しながら振り切り、険しい表情でそそくさと逃げるように去っていった。自己アピールのための“作戦”に失敗し、よほどバツが悪かったのかもしれない』、「政調会長として党内のまとめ役を期待されたのに、逆に火に油を注いでしまった。評価はガタ落ちですよ」、「自己アピールのための“作戦”に失敗」、とはみっともない話だ。
タグ:「青木率」が「NHKの調査で見ると70.1%」とあるが、確かに「33%」と「38%」なので、まだ大丈夫なようだ。 (その11)(「首相になる」が目的で、「日本をどうするか」を考えていない…岸田首相の支持率低下が止まらないワケ 正面からの議論を避けて、検討を続けるばかり、岸田政権は5月までもつ? 「第1次安倍政権と似てきた」の声、防衛大増税めぐる自民税調は“八百長” 大騒ぎした萩生田政調会長「作戦失敗」で評価ガタ落ち) 磯山 友幸氏による「「首相になる」が目的で、「日本をどうするか」を考えていない…岸田首相の支持率低下が止まらないワケ 正面からの議論を避けて、検討を続けるばかり」 PRESIDENT ONLINE キシダノミクス 「毎日新聞の調査では、10月に内閣支持率が27%にまで低下。自民党支持率も24%となり、あわや「青木率」にヒットするスレスレになった」、「来年の統一地方選挙を控えて「岸田首相では戦えない」という声も出始めているが、「では誰がいいか」となると声が消える。党内にも満場一致で首相に担ぐことができる玉がいないのだ。また、岸田首相に代わって自分が首相になろうと声を上げる議員も出てこない」、自民党モ情けない有様だ。 「野党を自民党議員は本気で恐れていない」情けない限りだ。ここは潜在一隅のチャンスと本格的に自民党に攻勢をかけるべきだ。 「防衛費」問題は自民党内では一応の決着をみたが、野党には攻めどころ満載である。大いに攻勢をかけてほしいものだ。 この問題は次の記事にあるように、先延ばししたようだ。 日本の「政治家」が最も不得手なところで、期待する方が無理というものだろう。 AERAdot「岸田政権は5月までもつ? 「第1次安倍政権と似てきた」の声」 「財務省は当初30兆円台前半を主張していたが、増額を求める防衛族をバックにした防衛省に押し切られ、総額約43兆円の大盤振る舞いに。岸田首相は1兆円強の増税を表明せざるを得なくなった」、「「政高党低」と言われた時代から一転、いまや官邸は党を抑えられなくなっている」、情けない限りだ。 「「岸田首相は案外しぶといから、支持率が30%あれば来年5月の広島サミットまではもつのではないか。状況的には20%台前半に落ちていてもおかしくないが、日本人はお人よしだから信任してしまう。ただ、岸田首相には危機感がない。自分の長男を首相秘書官にして、後ろがついていくはずがない。今、ほとんどの霞が関幹部の心は岸田首相から離れている」、 「来年5月の広島サミットで議長国として存在感を発揮して支持率を上げ、余勢を駆って解散に持ち込むというのが首相の基本戦略だろう。 最大の救いは「ポスト岸田」の有力候補が不在で、野党の支持率も非常に低い点だ。支持率がジリ貧でも、どこかの段階で解散の引きがねを引き、反転攻勢に出ることを狙っているのは間違いない」、さて、「来年5月の広島サミットまで」果たしてもつのだろうか。 日刊ゲンダイ「防衛大増税めぐる自民税調は“八百長” 大騒ぎした萩生田政調会長「作戦失敗」で評価ガタ落ち」 「大紛糾した今回の税制調査会は、初めから「着地点」が見えていた。ほとんど“八百長”だったわけだ。そんな中、萩生田氏が執拗に「増税反対」論を展開しまくっていたのは、党内最大派閥・安倍派の次期会長を狙った「存在感アピール」が目的だ」、「萩生田氏」は党の重職にありながらけしからんと思っていたが、「“八百長”だった」とは驚かされた。 「政調会長として党内のまとめ役を期待されたのに、逆に火に油を注いでしまった。評価はガタ落ちですよ」、「自己アピールのための“作戦”に失敗」、とはみっともない話だ。
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暗号資産(仮想通貨)(その24)(仮想通貨は「大混乱」へ…「FTXの破綻」が世界の投資家たちに与える驚くべき「負のインパクト」、資産3兆円が吹っ飛んだ!大谷翔平も孫正義もウクライナも巻き添えにした30歳の男 ついに逮捕、東証スタンダード上場 大手仮想通貨取引所のトップが 台湾で指名手配されていた・・・、) [金融]

暗号資産(仮想通貨)については、9月8日に取上げた。今日は、(その24)(仮想通貨は「大混乱」へ…「FTXの破綻」が世界の投資家たちに与える驚くべき「負のインパクト」、資産3兆円が吹っ飛んだ!大谷翔平も孫正義もウクライナも巻き添えにした30歳の男 ついに逮捕、東証スタンダード上場 大手仮想通貨取引所のトップが 台湾で指名手配されていた・・・)である

先ずは、11月21日付け現代ビジネスが掲載した多摩大学特別招聘教授の真壁 昭夫氏による「仮想通貨は「大混乱」へ…「FTXの破綻」が世界の投資家たちに与える驚くべき「負のインパクト」」を紹介しよう。
https://gendai.media/articles/-/102432?imp=0
・『天才経営者 バンクマン-フリード  11月11日、大手暗号資産(仮想通貨)交換業者、米FTXトレーディングが“チャプター11(連邦破産法11条、わが国の民事再生法に相当)”を申請した。 かつて、天才経営者と謳われた、FTX創業者であるサム・バンクマン-フリード氏の名声は凋落し、その経営手腕には多くの疑問符が付くことになった。 米国の著名経済学者であるJ.K.ガルブレイスは、バブル崩壊の前に天才が表れると指摘した。 バンクマン-フリード氏はその一人といえるかもしれない。 2020年3月中旬以降、同氏が生み出した暗号資産の一つである、“FTXトークン=FTT”は見る見るうちに上昇していった。 それと同時に、バンクマン-フリード氏は政治への影響を強めた。 また、同氏は社会全体のベネフィットのために事業を運営するとの考えを唱えた。 そうした同氏の姿勢は多くの共感を呼んだ。 世界的なカネ余りが続くとの楽観の高まりもあり、FTXの価値上昇によって強い期待が盛り上がった。 問題は、バンクマン-フリード氏の経営が、FTTという仮想通貨の価値急騰に依存したことだ。 暗号資産の業界では、FTXのように過剰な楽観に依拠してバランスシートを膨らませた企業が多い。 それは、後から見ると“砂上の楼閣”だったことが分かる。 FTX破たんをきっかけに、経営が行き詰まる関連企業は増えるだろう』、「暗号資産の業界では、FTXのように過剰な楽観に依拠してバランスシートを膨らませた企業が多い。 それは、後から見ると“砂上の楼閣”だったことが分かる。 FTX破たんをきっかけに、経営が行き詰まる関連企業は増えるだろう」、不吉な予告だ。
・『FTT高騰の背景  FTX創業者のバンクマン-フリード氏は、一時、“天才経営者”、“フィンテック業界の救世主”などと称された。 同氏は、世界的な仮想通貨の熱狂ブームに乗り、著名人を広告に用いるなどして仮想通貨の権威、スターとしての地位を確立した。 我先に、同氏の経営手腕から利得を手に入れようとする投資ファンドや企業などが急増した。 そこには、あたかも神話のような強い成長への期待があった。 それを支えたのが、バンクマン-フリード氏が作った“FTT”の仕組みだった。 
FTTとは、仮想通貨の一つだ。 FTT保有者はその価値の上昇だけでなく、FTX利用手数料の割引や、FTTを担保にしてレバレッジをかけた取引を行うことができた。 2019年に香港でFTXは創業された。 その後、香港当局は仮想通貨取引規制を強化した。 2021年、バンクマン-フリード氏はバハマに拠点を移しFTXのビジネスを急拡大させた。 世界的な金融緩和の継続期待と利用者の急増によって、FTTは急騰した。 FTXの業績も拡大した。 FTTを担保に同氏はFTXから自身が所有するアラメダ・リサーチに融資し、投資ビジネスを強化した。 政治献金も積極的に行い、社会全体に、より効率的に付加価値を提供する姿勢を鮮明にした。 それは、FTXの急成長によって社会が変わるというような強烈な期待を多くの人に与えた。 さらにMLB、NBA、NFLのスタープレイヤーとも長期のパートナーシップを結んだ。 わずか1年ほどの間にバンクマン-フリード氏の評価は大きく高まり、“2021年の仮想通貨業界で最も影響ある人物”と呼ばれた。 また、29歳の時点で資産285億ドルを達成したといわれるマーク・ザッカーバーグを上回る富を同氏が手に入れると目されるなど、時代の寵児としてもてはやされた』、「FTT保有者はその価値の上昇だけでなく、FTX利用手数料の割引や、FTTを担保にしてレバレッジをかけた取引を行うことができた」、「香港当局は仮想通貨取引規制を強化した。 2021年、バンクマン-フリード氏はバハマに拠点を移しFTXのビジネスを急拡大させた。 世界的な金融緩和の継続期待と利用者の急増によって、FTTは急騰した。 FTXの業績も拡大」、「政治献金も積極的に行い、社会全体に、より効率的に付加価値を提供する姿勢を鮮明にした。 それは、FTXの急成長によって社会が変わるというような強烈な期待を多くの人に与えた。 さらにMLB、NBA、NFLのスタープレイヤーとも長期のパートナーシップを結んだ」、雰囲気作りは万全だ。
・『混乱の懸念高まる仮想通貨業界  未来永劫、神話のような成長が続くことは難しい。 昨年11月以降、仮想通貨市場全体に下落圧力がかかり始めた。 それによって裏付けのない資産であるFTTでバランスシートを膨らませたFTXとアラメダの資金繰りは急速に悪化した。 事業運営体制の悪化をバンクマン-フリード氏は察知できなかったと述べている。 見方を変えると、同氏は社会の公器としての成長よりも、規制をかいくぐり、自らの富を増やことに執着してしまったのではないか。 一時はバイナンスによるFTX救済合併も目指されたが、最終的に見送られた。 11月11日にFTXは“チャプター11”を申請した。 FTXの債権者数は100万人を超えるとの見方もある。 それ以降、次は自分が窮地に陥るかもしれないと、先行きを不安視し、仮想通貨を手放す投資家は急増している。 連鎖反応のように、顧客資金の引き出しを停止する仮想通貨交換業者も増えはじめた。 今後の仮想通貨市場では、売るから下がる、下がるから売るという弱気心理の伝染が、さらに鮮明化するだろう。 資金繰りがひっ迫し、経営破たんに陥るブローカーの増加が懸念される。 それに加えて、規制強化も急務だ。 特に、仮想通貨を担保にした融資の実態把握は急を要する。 交換業者による顧客資金の管理体制の確認、改善指示なども急がなければならない。 状況によっては、米国などの金融システムに相応のストレスがかかる恐れもある。 今すぐそうした展開が現実のものになるとは考えづらいが、仮想通貨業者の破たんによって投資ファンドなどが損失をこうむり、局所的に金融システムが不安定化する可能性は排除できない。 FTX経営破たんの負のインパクトの深刻化が懸念される』、「FTXの債権者数は100万人を超えるとの見方も」、「仮想通貨業者の破たんによって投資ファンドなどが損失をこうむり、局所的に金融システムが不安定化する可能性は排除できない。 FTX経営破たんの負のインパクトの深刻化が懸念される」、同感である。

次に、12月15日付けNEWS Collectが転載したSmart FLASH「資産3兆円が吹っ飛んだ!大谷翔平も孫正義もウクライナも巻き添えにした30歳の男、ついに逮捕」を紹介しよう。
https://newscollect.jp/article/?id=975948198830800896
・『12月12日、暗号資産(仮想通貨)の交換所大手・FTXトレーディングの創業者サム・バンクマンフリード容疑者が、バハマで逮捕された。260億ドル(約3兆6000億円)もの資産を築き、それをわずか数日で失った30歳の男は、現状8つの罪で起訴されている。すべての容疑が立件されれば、懲役115年にもなるという――。 2019年に設立されたFTXは、成長に次ぐ成長を続け、世界最大級の規模を誇る暗号資産の交換所となった。だが、11月初頭、財務面の問題が指摘されると、投資家たちが一斉に資金を引き上げ、1週間ほどで経営破綻に追い込まれてしまった。 債権者は100万人以上とされ、推定負債額は100億ドルから500億ドル、日本円で1兆4000億円から7兆円と幅広い数字が入り乱れている。 元参議院議員で、国際政治学者の浜田和幸さんが、こう語る。 「バンクマンフリード氏は、暗号資産の世界で若くして成功した出世頭として、注目を集めていました。マサチューセッツ工科大学で物理と数学を専攻し、両親はスタンフォード大学の教授という家庭で育ちました。 大学卒業後はニューヨークの金融機関で働いていましたが、普通のマネーゲームでは面白くないと、暗号資産の世界に飛び込みました。 彼はメディアを巻き込んだ話題づくりが上手なんです。コロナ禍で生活苦に追い込まれる人が増えると、『人々を救うためにお金を稼ぎたい。困っている人にお金を回して、世界全体をよくしたい』と国際会議の場で語り、世界中のメディアで絶賛されたんです。 バハマに大豪邸を建てたのですが、自宅とオフィスの行き来はトヨタのカローラを自分で運転するなど、メディア受けする姿を巧みに売り込んでいきました。 宣伝も上手で、エンゼルスの大谷翔平選手や女子テニスの大坂なおみ選手など著名人をアンバサダーに据えることで、社会的な信用を勝ち取ったんです。 大谷選手は、ギャラを暗号資産と株で受け取ったと報道されていますが、そのギャラもおそらく消失してしまったのではないでしょうか。大谷選手も大坂選手も、投資家から賠償責任があるとして訴えられており、『泣き面に蜂』状態です」 実は、被害にあったのは両選手だけではない。孫正義氏が率いるソフトバンクグループのファンドも1億ドル(140億円)出資していたのだ。同グループの専務執行役員は会見で「影響は極めて小さい」と語っているが、出資額が戻ってくるかどうかはわからない。 前出・浜田氏が、FTXのずさんな経営についてこう説明する。 「専門家がいたわけではなく、資産管理は相当いいかげんだったようです。元ガールフレンドに任せていた運用会社に、彼が集めたお金をどんどんつぎ込んで、自転車操業みたいな形で回していたと言われます。 バンクマンフリード容疑者は、11月におこなわれたアメリカの中間選挙で、民主党におよそ4000万ドル(56億円)も個人献金したと報道されました。 それだけではなく、対抗馬の共和党にも莫大な選挙資金を投じていたと言われます。これはきちんとした収支報告書に出ていないお金でもあるので、今後、大きな問題につながるかもしれません。 実は、FTXはウクライナ戦争にも関わっていたという話があるんです。もともとアメリカからウクライナへ多額の資金援助があったわけですが、ウクライナのゼレンスキー政権は、この資金をFTXに還流させ、マネー・ロンダリングしていた可能性があるんです。 資金還流の話は噂レベルとしても、ウクライナ政府は、FTXのサポートで『Aid For Ukraine』という暗号資産による寄付サイトを作っていたのは事実です。その寄付金も、今はどうなったのかわかりませんが……」 今回の話は、暗号資産そのものの信用を揺らがす大騒動となっており、世界中の投資家たちが事態の行方を固唾を飲んで見守っている。 「バンクマンフリード容疑者は、8つの罪で起訴されており、少なくとも50〜60年は刑務所に入ることになるでしょう。世の中、楽して億万長者になれる方法なんてないんですよ」(浜田さん)』、「260億ドル(約3兆6000億円)もの資産を築き、それをわずか数日で失った」、「債権者は100万人以上とされ、推定負債額は100億ドルから500億ドル」、「大谷選手も大坂選手も、投資家から賠償責任があるとして訴えられており、『泣き面に蜂』状態です」、「「バンクマンフリード容疑者は、8つの罪で起訴されており、少なくとも50〜60年は刑務所に入ることになるでしょう」、これだけの被害をもたらした以上、「50〜60年は刑務所に入る」のは当然だ。

第三に、11月30日付け文春オンライン「東証スタンダード上場 大手仮想通貨取引所のトップが、台湾で指名手配されていた・・・」を紹介しよう。
https://bunshun.jp/articles/-/59059
・『世界業界第2位の仮想通貨取引所だったFTXの経営破綻が、暗号資産業界への信頼を大きく揺るがしている。そんななか、日本国内では、さらに不信感が高まりそうな事実が明らかになった。国内大手の取引所を運営する企業のトップが、海外の警察当局から指名手配中であることが判明したのだ』、「国内大手の取引所を運営する企業のトップが、海外の警察当局から指名手配中であることが判明」、とは驚かされた。
・『不正流出事件を端緒に、台湾で刑事事件へ発展  「俺たちのビッグボス ビットポイント~♪」 耳に残る軽快なテーマソングとともに、北海道日本ハムファイターズ監督の新庄剛志氏が出演するのは、株式会社ビットポイントジャパン(以下BPジャパン)のテレビCMである。 しかし、同社には消せない過去がある。2019年7月には、顧客が保有する30億円超(当時のレート)の仮想通貨が不正流出する不祥事を起こしているのだ。ただ、この不正流出に対しては、被害を受けた顧客に対する全額補償の方針を早々と打ち出し、一定の解決を見た。とはいえ、それは日本国内に限った話である。 BPジャパンが、仮想通貨取引所としてサービスを提供していた台湾では、この不正流出事件を端緒に刑事事件へと発展し、当時の同社社長、小田玄紀氏が指名手配されているのだ』、「台湾」での「被害」には「補償」がなかったのには何か理由があるのだろうか。
・『指名手配書には、容疑として「詐欺等」と記されて  筆者が入手した、地方裁判所に相当する台湾台北地方法院が今年4月22日に発行した指名手配書には、小田氏の名前や生年月日とともに、容疑として「詐欺等」と記されている。 1980年生まれの小田氏は、東大法学部在学中に興した事業を売却して得た資金を元手に、その後はベンチャーキャピタリストとして活動。2011年からは、経営不振に陥っていた株式会社リミックスポイント(以下リミックス社)の経営に参画するとその手腕が認められ、現在は東証スタンダード市場に上場する同社の代表取締役社長CEOを務めている。 また、リミックス社がのちにBPジャパンとなる株式会社ビットポイントを2016年に設立すると、その代表取締役社長に就任している(現在は取締役会長)』、「小田氏」は「記者会見」の写真を見る限り真面目そうな印象だ。
・『時代の寵児がなぜ指名手配されたのか  ビジネスマンとしての経歴以外には、自民党金融調査会の講師や、党デジタル社会推進本部のプロジェクトチームの有識者として招かれている。本人のツイッターによると、安倍晋三元首相の国葬にも参列しており、政界からの同氏への信任の厚さも見て取れる。 そんな時代の寵児が指名手配されるとは、いったい何があったのだろうか。 前出の指名手配書の、告訴事実の詳細が綴られている欄には、詐欺以外の罪名も並んでいる。それらを要約すると、小田氏に対する嫌疑は以下の3点になる。 ・虚偽の清算書を作成し、業務提携していたビットポイント台湾(以下、BP台湾)から15億7500万円相当を不当に利得した、詐欺および財務諸表の虚偽記載の疑い ・自己不当利得を意図し、取得した約6億3000万円を清算表に記載しなかった、業務上横領および財務諸表虚偽記載の疑い ・顧客3人の口座残高の計16万米ドル相当の仮想通貨を引き出し不能としたうえで返還を拒んで不当利得した、詐欺および業務上横領の疑い (筆者が入手した台湾地方法院による指名手配書 はリンク先参照)』、「政界からの同氏への信任の厚さ」、「時代の寵児が指名手配されるとは、いったい何があったのだろうか」、ここに列挙された「罪名」ではよく分からない。
・『協業関係に亀裂が走ったきっかけ  しかし、これだけでは、指名手配に至るまでの経緯は見えてこない。そこで、指名手配書にも被害者として名前が挙がっているBP台湾にも取材を行った。 「2018年、弊社はBPジャパンとの提携の元にサービスを開始しました。弊社が担当するのはフロントデスク業務のみ。集客やログイン画面の運営は弊社が担当していましたが、それより先の取引システムの運営から顧客の個人情報や口座残高の管理はすべてBPジャパンが行うという、いわゆるホワイトラベルです。弊社はBPジャパンに毎月100万円のブランドフィーを支払い、台湾の顧客が支払った取引手数料を、両者で分け合うという契約でした」(BP台湾法務担当者) そんな両者の協業関係に亀裂が走ったのが、2019年7月の不正流出事件だ。 「台湾の顧客も同様に被害を受け、結果的に2億5000万円相当の不正流出が確認されました。これについては、当時BPジャパンの代表取締役社長だった小田氏は当初、補償する姿勢を見せていました」(同前)』、「台湾の顧客」の「被害」「2億5000万円相当」について、「当初、補償する姿勢を見せていました」のに「補償」」しなかった理由は何かあるのだろうか。
・『清算表に反映されていない5億3000万円が行方不明  ところが、被害の全容把握のために、BP台湾側が顧客の過去の取引データを調査したところ、その何倍もの金額がどこかに消えていることが判明したという。 「もっとも大きいのは送金の未反映です。弊社は業務開始以来、顧客の口座への入金分など、約41億2000万円相当をBPジャパンに送金しているのですが、両社間の資金のやり取りを記録した清算表には計35億9000万円しか反映されておらず、5億3000万円ほどが行方不明となっているのです。同様の矛盾は、両社の帳簿を比べた際に散見されます。 ほかにも、スプレッド(買値と売値の差)の計算が間違っていたり、一つの約定IDに複数の取引が存在していたりと、不審な点がいくつも見つかりました」(同前)』、「同様の矛盾は、両社の帳簿を比べた際に散見されます」、「両社の帳簿」の矛盾点を会計事務所などに依頼して、もっと早い段階で徹底的に解明すべきだったのだろう。
・『不正流出の被害を受けた顧客ら3名も刑事告訴  そこでBP台湾は、不正流出による顧客の被害額に加え、こうした不正や誤りによる損害額を合計した約10億2400万円の弁済をBPジャパン側に要求したという。しかし……。 「小田氏が当初、対応する姿勢を見せていた不正流出に対する補償も含め、BPジャパンはまったく弁済に応じませんでした。2019年8月に東京地裁に民事訴訟を提起し、現在も公判が続いています。 その一方で2020年には、不正流出の被害を受けた顧客ら3名ともに、小田氏個人を台湾の警察当局に刑事告訴しました。その後、警察の捜査の結果、嫌疑十分ということで、小田氏には逮捕状が出されました。ところが小田氏は台湾に不在であるため、4月までに指名手配となったようです」(同前) 筆者は、BPジャパンの親会社で、現在も小田氏が代表取締役CEOを務めるリミックス社に、小田氏が上場企業のトップとして適任なのか、見解を質した。しかし、期日までに回答は得られなかった。 これまで自著やインタビューで、「逃げない経営」を自身の信条として繰り返し語ってきた小田氏。ならば今、自らの法的責任からも、逃げずに向き合うべきではないだろうか』、「BPジャパン」は「上場企業」として、「小田氏」の「法的責任」に正面から「向き合う」べきだ。 
タグ:(その24)(仮想通貨は「大混乱」へ…「FTXの破綻」が世界の投資家たちに与える驚くべき「負のインパクト」、資産3兆円が吹っ飛んだ!大谷翔平も孫正義もウクライナも巻き添えにした30歳の男 ついに逮捕、東証スタンダード上場 大手仮想通貨取引所のトップが 台湾で指名手配されていた・・・、) 暗号資産(仮想通貨) 「FTXの債権者数は100万人を超えるとの見方も」、「仮想通貨業者の破たんによって投資ファンドなどが損失をこうむり、局所的に金融システムが不安定化する可能性は排除できない。 FTX経営破たんの負のインパクトの深刻化が懸念される」、同感である。 それは、FTXの急成長によって社会が変わるというような強烈な期待を多くの人に与えた。 さらにMLB、NBA、NFLのスタープレイヤーとも長期のパートナーシップを結んだ」、雰囲気作りは万全だ。 「FTT保有者はその価値の上昇だけでなく、FTX利用手数料の割引や、FTTを担保にしてレバレッジをかけた取引を行うことができた」、「香港当局は仮想通貨取引規制を強化した。 2021年、バンクマン-フリード氏はバハマに拠点を移しFTXのビジネスを急拡大させた。 世界的な金融緩和の継続期待と利用者の急増によって、FTTは急騰した。 FTXの業績も拡大」、「政治献金も積極的に行い、社会全体に、より効率的に付加価値を提供する姿勢を鮮明にした。 「暗号資産の業界では、FTXのように過剰な楽観に依拠してバランスシートを膨らませた企業が多い。 それは、後から見ると“砂上の楼閣”だったことが分かる。 FTX破たんをきっかけに、経営が行き詰まる関連企業は増えるだろう」、不吉な予告だ。 真壁 昭夫氏による「仮想通貨は「大混乱」へ…「FTXの破綻」が世界の投資家たちに与える驚くべき「負のインパクト」」 現代ビジネス NEWS Collect Smart FLASH「資産3兆円が吹っ飛んだ!大谷翔平も孫正義もウクライナも巻き添えにした30歳の男、ついに逮捕」 「260億ドル(約3兆6000億円)もの資産を築き、それをわずか数日で失った」、「債権者は100万人以上とされ、推定負債額は100億ドルから500億ドル」、「大谷選手も大坂選手も、投資家から賠償責任があるとして訴えられており、『泣き面に蜂』状態です」、 「「バンクマンフリード容疑者は、8つの罪で起訴されており、少なくとも50〜60年は刑務所に入ることになるでしょう」、これだけの被害をもたらした以上、「50〜60年は刑務所に入る」のは当然だ。 文春オンライン「東証スタンダード上場 大手仮想通貨取引所のトップが、台湾で指名手配されていた・・・」 「国内大手の取引所を運営する企業のトップが、海外の警察当局から指名手配中であることが判明」、とは驚かされた。 「台湾」での「被害」には「補償」がなかったようだ。 「台湾」での「被害」には「補償」がなかったのには何か理由があるのだろうか。 「小田氏」は「記者会見」の写真を見る限り真面目そうな印象だ。 「政界からの同氏への信任の厚さ」、「時代の寵児が指名手配されるとは、いったい何があったのだろうか」、ここに列挙された「罪名」ではよく分からない。 「台湾の顧客」の「被害」「2億5000万円相当」について、「当初、補償する姿勢を見せていました」のに「補償」」しなかった理由は何かあるのだろうか。 「同様の矛盾は、両社の帳簿を比べた際に散見されます」、「両社の帳簿」の矛盾点を会計事務所などに依頼して、もっと早い段階で徹底的に解明すべきだったのだろう。 ・『不正流出の被害を受けた顧客ら3名も刑事告訴  そこでBP台湾は、不正流出による顧客の被害額に加え、こうした不正や誤りによる損害額を合計した約10億2400万円の弁済をBPジャパン側に要求したという。しかし……。 「同様の矛盾は、両社の帳簿を比べた際に散見されます」、「両社の帳簿」の矛盾点を会計事務所などに依頼して、もっと早い段階で徹底的に解明すべきだったのだろう。 「BPジャパン」は「上場企業」として、「小田氏」の「法的責任」に正面から「向き合う」べきだ。
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ドイツ(その5)(ドイツでクーデター未遂を起こした極右テロ組織に 「ロシア関与」の疑いが、ドイツの極右テロ組織「帝国市民」クーデター計画が浮き彫りにする民主主義の危機、ドイツ国家の転覆を画策 どういう集団なのか) [世界情勢]

ドイツについては、昨年10月22日に取上げた。今日は、(その5)(ドイツでクーデター未遂を起こした極右テロ組織に 「ロシア関与」の疑いが、ドイツの極右テロ組織「帝国市民」クーデター計画が浮き彫りにする民主主義の危機、ドイツ国家の転覆を画策 どういう集団なのか)である。

先ずは、12月9日付けNewsweek日本版「ドイツでクーデター未遂を起こした極右テロ組織に、「ロシア関与」の疑いが」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/12/13-48_1.php
・『<クーデターを計画した極右組織のリーダーは今も一族が城を保有する貴族の家系。組織とロシアとの関係が疑われている> ドイツで政権転覆を企てたとして極右テロ組織のメンバーら25人が逮捕された問題で、同組織の活動にロシアが関与していた疑いが浮上している。ロシア政府は関係を否定しているが、貴族の家系で一族が現在も城や狩猟用の別邸などを保有している「ハインリッヒ13世」と名乗る男性がリーダーを務めるこの組織は、ロシア側と接触していたとみられている。 ドイツ当局は12月7日朝、3000人以上を投入して強制捜査を行い、組織のメンバーとみられる25人を逮捕した。逮捕者には、組織のリーダーで「ハインリッヒ13世」を名乗る、71歳の貴族の家系出身の男も含まれている。 当局によると、逮捕されたメンバーらは、リーダーの男を新政府の指導者にすることを計画していた。男はクーデター計画への支持を得るために、ドイツ国内とロシアにおいて、ロシアの代表者と連絡を取ったとされる。 ドイツ連邦検察庁によると、この組織は「ライヒスビュルガー」と呼ばれる極右勢力や「Qアノン」の陰謀論を支持しているという。ライヒスビュルガーは、ドイツの現代の国家体制を否定し、第2次大戦前の国境に従って存在すべきだと主張している。 組織は遅くとも昨年11月までにクーデターを計画し、「ドイツは現在『ディープステート(影の政府)』のメンバーによって統治されていると固く信じている」と検察は説明。組織は、この体制からの解放が米国やロシアを含む「さまざまな国家の政府、情報機関、軍による秘密結社」からなる「同盟」からの介入を約束するものだと考えているという』、「ドイツ」でこんな「極右」「クーデター計画」が発覚、「25人を逮捕」、とは、衝撃だ。
・『「交渉の主な窓口は現在、ロシアである」  新国家秩序について交渉するために暫定的な軍事政権を形成することも計画し、「交渉の主な窓口は現在、ロシアである」と検察庁は明らかにした。 検察庁はまた、逮捕者の中にロシア人の女1人が含まれていると発表した。ドイツの個人情報保護規則に従い「ビタリア・B」と公表されたこの女は、テロ組織とロシア政府高官との接触を仲介した疑いで拘束されたが、接触が成功した「兆候」はなかったという。 過激派について研究するロンドンのシンクタンク「戦略対話研究所」(ISD)の政策・研究担当シニアマネージャー、ヤコブ・グールは、ネオナチやアイデンティタリアン運動など、ドイツに従来から存在する極右勢力は、ロシアへの支持で二分されているとニューズウィークに語った』、「新国家秩序について交渉するために暫定的な軍事政権を形成することも計画し、「交渉の主な窓口は現在、ロシアである」、しかし、「ビタリア・B」が「テロ組織とロシア政府高官との接触を仲介した疑いで拘束されたが、接触が成功した「兆候」はなかった」、なるほど。
・『ロシアに共感する陰謀論信奉者  「しかし、ライヒスビュルガーやQアノンの(ような)陰謀論信奉者は親ロシア的であるため、特にこの組織のメンバーが(ロシア政府に)共感することはそれほど不思議ではない」とグールは言う。 同組織のメンバーには、2021年まで極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の連邦議会議員を務めていたビルギット・マルザックウィンケマンも含まれている。 グールは、プーチンのウクライナ侵攻に対するAfD内の意見は分かれているものの、「自由主義に立ち向かうキリスト教の伝統的な強い支配者として」プーチンを支持する派閥が党内に存在すると指摘する。AfDの共同党首のティノ・クルパラとアリス・ワイデルは、今回のクーデター計画を非難している。 ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、今回の逮捕は「ドイツ国内の問題」であるとし、「ロシアの介入についてはいかなる議論もあり得ない」と述べた』、「ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は」、「今回の逮捕は「ドイツ国内の問題」であるとし、「ロシアの介入についてはいかなる議論もあり得ない」と述べた」、「ロシア」との関係はいまのところないようだ。

次に、12月9日付けNewsweek日本版が掲載した在英ジャーナリストの木村正人氏による「ドイツの極右テロ組織「帝国市民」クーデター計画が浮き彫りにする民主主義の危機」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2022/12/13-48_1.php
・『<米連邦議会の襲撃事件と同様、ドイツでのクーデターを企てた組織にもQアノンの陰謀論や、ネット上で広まる極右過激派の思想が大きく影響していたとみられる> 「インターネットを理解せずに極右は理解できない。極右を理解せずしてインターネットは理解できない」「何年もの間、当局はデジタル空間を真剣に考えず、法整備が不十分だ。このため極右テロリストのサブカルチャーが何の規制も受けることなく繁殖することが可能になり、未成年者でも簡単にアクセスできる」 陰謀論イデオロギー、偽情報、反ユダヤ主義、右翼過激主義に対する早期警告システムの構築を目指すドイツ非営利組織CeMASのミロ・ディトリッヒ上級研究員はこう警鐘を鳴らしてきた。そんな中、独連邦検察庁が独自国家樹立のため現体制の転覆を狙って連邦議会の襲撃を企てた疑いがあるとして極右テロ組織と支援者計25人を拘束し、世界に衝撃を広げた。 独裁者アドルフ・ヒトラーが第二次大戦を引き起こし、ユダヤ人やマイノリティを虐殺したドイツは戦後、ナチズムや極右思想を徹底的に排除して自由と民主主義、平和主義の模範生になった。今や欧州連合(EU)の押しも押されもせぬリーダーだが、欧州債務危機や100万人を超える難民がドイツに押し寄せた欧州難民危機で極右勢力が台頭するようになった。 今回の事件について、ディトリッヒ上級研究員は「彼らはドイツ軍ともつながっている。辛い出来事だったコロナ・パンデミックによりグループがさらに過激化し、支援者も増えた。陰謀論は多くの人々にとって非常に魅力的だった」と英BBC放送に語る。陰謀論は自分の存在意義を見失った人たちに居心地のいい独自の世界観を与えている』、「欧州債務危機や100万人を超える難民がドイツに押し寄せた欧州難民危機で極右勢力が台頭するようになった。 今回の事件について、ディトリッヒ上級研究員は「彼らはドイツ軍ともつながっている」、「ドイツ軍ともつながっている」というのは衝撃的だ。
・『「民主主義は無防備だ」  「民主主義は無防備だ。今朝から大規模な対テロ作戦が行われている。ドイツ連邦検察庁は『ライヒスビュルガー(帝国市民)』系のテロリスト・ネットワークが関与していた疑いがあるとみて捜査している。憲法上の機関に対する武力攻撃が計画された疑いがある」――マルコ・ブッシュマン独法務相は7日こうツイートした。 主犯格の1人は「ハインリヒ13世」を名乗る男(71)で、貴族の家系出身。右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」元連邦議会(下院)議員で現職裁判官ビルギット・マルザック=ヴィンクマン容疑者や元空挺部隊員も拘束された。この組織は昨年11月末に設立され、1871年のドイツ帝国を模倣した王政を復活させることを目指し、射撃訓練も行っていた。) 拘束された支援者3人のうち1人はロシア出身。オーストリアとイタリアでも1人ずつ逮捕された。このほか27人の容疑者がいるという。容疑者が所有する国内の関係先130カ所以上に3000人超を投入して捜索に当たっている。ナンシー・フェーザー内相は声明で「摘発された組織は、暴力的な幻想と陰謀論に突き動かされている」と述べた。 拘束者の中には米国の過激な陰謀論勢力「Qアノン」の信奉者も複数含まれていた。ドイツ政府が「ディープステート(闇の政府)」に支配されているとの陰謀論を信じ、国家転覆を計画していたとみられている。ディトリッヒ上級研究員は「(陰謀論イデオロギーにおける)暴力の可能性は常にあったが、より具体的になりつつある」と前から指摘していた』、「ドイツ政府が「ディープステート(闇の政府)」に支配されているとの陰謀論を信じ、国家転覆を計画していたとみられている」、「陰謀論」も困ったものだ。
・『「ドイツのQアノン」  『ドイツのQアノン』という報告書の中で「なぜ陰謀論は今日の社会に肥沃な土壌を見つけることができたのか」という疑問に対してディトリッヒ上級研究員はこう答えている。「現代社会は分断され、伝統的な出会いの場が失われつつある。同時に人々はコミュニティに憧れ、オンラインスペースに見つける人もいる」 「多くの人が日常生活で見出せなくなった自分の人生に意味を与えてくれる物語を渇望している。右翼過激派の物語に目を向けるかもしれない。イスラムに対する戦い、移民に対する戦い、ユダヤ人に対する戦いなどの物語だ。今、私たちは陰謀論イデオロギーへの転換を目の当たりにしている」 独国営国際放送ドイチェ・ヴェレ(DW)によると、ライヒスビュルガー運動のメンバーは第二次大戦後のドイツ連邦共和国の存在を否定している。現在の国家は米英仏に占領された行政上の構築物に過ぎず、戦前の国境がまだ存在していると考えている。宣伝用のTシャツや旗を作り、自分たちでパスポートや運転免許証まで発行している 独連邦憲法擁護庁(BfV)によると、メンバーは国内に約2万1000人、うち5%が極右過激派に分類される。多くは男性で、平均年齢は50歳以上。右翼ポピュリスト、反ユダヤ主義、ナチスのイデオロギーを信奉している。税金を納めることを拒否し、自分たちが保有する小さな「領土」を宣言。拘束されたグループは「疑似政府」を準備していた』、「ライヒスビュルガー運動のメンバーは第二次大戦後のドイツ連邦共和国の存在を否定している。現在の国家は米英仏に占領された行政上の構築物に過ぎず、戦前の国境がまだ存在していると考えている。宣伝用のTシャツや旗を作り、自分たちでパスポートや運転免許証まで発行している 独連邦憲法擁護庁(BfV)によると、メンバーは国内に約2万1000人、うち5%が極右過激派に分類される。多くは男性で、平均年齢は50歳以上。右翼ポピュリスト、反ユダヤ主義、ナチスのイデオロギーを信奉している。税金を納めることを拒否し、自分たちが保有する小さな「領土」を宣言。拘束されたグループは「疑似政府」を準備していた」、「税金を納めることを拒否」、これはさすがに違法だろう。
・『爆発寸前に達した社会のフラストレーション  捜査当局によると、ロシアとドイツの新しい国家秩序を交渉するため暫定政府を設立する計画があったという。グループは銃器に親しみ、一斉捜索で大量の武器や弾薬が押収された。ライヒスビュルガー運動にはドイツ軍や旧東ドイツの国家人民軍の元兵士もかなり含まれ、特殊な軍事訓練を受けた者もおり、以前から危険視されていた。) ディトリッヒ上級研究員はコロナ危機でQアノンが広がったことについて報告書の中で「歴史を見ると、危機のたびに陰謀論イデオロギーが拡大している。国民がこれまでと同じように物事をどう続けていけば良いのか分からなくなった時、秩序が失われる。こうして不安は生まれ、その対症療法として陰謀論イデオロギーへと逃避していく」と分析している。 2016年12月、ワシントンのピザ屋に男がライフル銃を持って押し入り、3発を発射した。男は民主党大統領候補だったヒラリー・クリントン氏がこのピザ屋に幼い子供たちを性奴隷として拘束しているというQアノンの陰謀論を信じていた。クリントン氏を嫌うQアノン支持者にとってドナルド・トランプ前米大統領は一種の救世主的存在になった。 昨年1月に米連邦議会を襲撃したのもトランプ氏をあがめるQアノンの信奉者だった。陰謀論イデオロギーがはびこる背景には社会の分断がある。勝者総取りのネオリベラリズム(新自由主義)が拡大させた貧富の格差、コロナ危機、ウクライナ戦争が悪化させたエネルギー危機とインフレで社会のフラストレーションは爆発寸前に達している。 民主主義はまさに危機に瀕している』、「不安は生まれ、その対症療法として陰謀論イデオロギーへと逃避していく」、「陰謀論イデオロギーがはびこる背景には社会の分断がある」、「民主主義はまさに危機に瀕している」、その通りだ。

第三に、12月12日付けBBC News「ドイツ国家の転覆を画策、どういう集団なのか」を紹介しよう。これは、より深く掘り下げた分析である。
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-63932787
・『真冬の森に囲まれた地面を、雪がうっすらと覆っている。 ドイツ東部チューリンゲン州のこれまた東部で、私たちは車を走らせていた。うねり続ける田舎道の急カーブを十数回も曲がると、そこにアルパカが3頭、わびしげに私たちを見つめていた。 3頭の後ろには丘。その上に、私たちはついに目当てのものを見つけた。ネオゴシック様式の狩猟用別荘、石塔がそびえるヴァルドマンスハイル城の姿を。 この城は7日まで、ドイツ連邦議会を占拠して現代ドイツ国家を破壊しようと企む、雑多な集団の本部だった。このグループは現代ドイツの代わりに王制を復古させ、そのトップに「プリンス(侯子)」を据えようとしていた。第1次世界大戦まで数百年にわたりこの地方を治めていた一族の一員のことだ。 この集団は、この国家転覆計画をクリスマスまでに完了させようとしていた。 とんでもない、ほとんど信じられないことのように思えるだろう。 その通りだ。そして今や当の「プリンス」は逮捕され、クリスマスを留置所で過ごすことになった。 しかし、このクーデター計画をドイツの治安当局は真剣に受け止めていた。そして、国内にとどまらず、オーストリアやイタリアにも及ぶ150カ所を警官3000人が家宅捜索し、25人を逮捕した。ほとんど類を見ないほど大規模な一斉摘発だった。 情報機関関係者によると、捜査が進めば今後数週間や数カ月のうちに逮捕者はさらに増えることになる。そして、国内の連邦議会や州議会の内外でいかに警備体制を強化するかの話題で、ドイツ・メディアは持ちきりだ。 ロイス侯爵家の「ハインリヒ13世」をはじめ、25人が逮捕された(7日、フランクフルト) ロイス侯爵家の「ハインリヒ13世」をはじめ、25人が逮捕された(7日、フランクフルト) そうやってドイツ・メディアはセンセーショナルに大騒ぎしているのだが、それとは実に対照的に、ハンティング・ロッジ(狩猟用別邸)の敷地にひとけはなく、ひっそりとしていた。施錠された門の外からのぞき込むと、あまりに静かで、不気味でさえあった。敷地内に建つ朽ちたような小屋の壁には、いくつものシカの頭蓋骨が所在なさそうにつるされていた。おそらく敷地内で狩られたのだろう。 マスコミをいぶかしむ近隣の人たちはいやそうに、ロッジの中で明かりがつくのは見たことはあるが、この数カ月というもの人の出入りはほとんど気づかなかったと、私に教えてくれた。来訪者は正面玄関ではなく、脇の裏口を使うのだそうだ。地元の墓地の後ろを通る森の中の裏道を経て、建物に入るのだという。 ヴァルドマンスハイル城を頻繁に訪れる人たちが、なぜ人目を避けていたのか、今ならその理由がわかる。 このグループは2021年11月に、クーデターの計画を始めた。新しいドイツ国家、新しい帝国を待ちわびるメンバーは、誰が新国家のどういう大臣になり、どういう軍隊を作って国家転覆を実現しようかと、そこまで話し合っていた』、「2021年11月に、クーデターの計画を始めた。新しいドイツ国家、新しい帝国を待ちわびるメンバーは、誰が新国家のどういう大臣になり、どういう軍隊を作って国家転覆を実現しようかと、そこまで話し合っていた」、ずいぶん「計画」は進んでいたようだ。
・『「プリンス」と呼ばれてこのグループの中心にいた人物は、世襲貴族の一族ロイス家の末裔(まつえい)だ。オーストリアに邸宅を構える一族の当主、ロイス侯爵ハインリヒ14世はズーム経由で、私の取材に応じてくれた。 「とんでもないことだと、私たちは思っている」と、ハインリヒ14世は言った。 「このつまはじき者は、荒唐無稽な陰謀論と反ユダヤ主義の考えが理由で、何年も前に一族から縁を切られている。私たち家族の代表でも何でもない」 逮捕された「ハインリヒ13世」について、ロイス侯は、「ずっとこうだったわけではない」とも言った。ちなみに、この一族では男子は全員「ハインリヒ」と名付けられる。存命の一族のハインリヒは30人いる。13世は若いころ、「レーシング・ハインリヒ」と呼ばれていた。レーシングカーと美しいモデルが好きだったからだ。 ロイス家は何百年もヴァルドマンスハイル城を所有し続けたが、第2次世界大戦後に東ドイツの共産党政権に接収された。 「レーシング・ハインリヒ」の遠縁にあたるロイス侯によると、ハインリヒ13世は次第に世間を恨むようになった。「不運続きだった」のだと、侯爵は首を振りながら言った』、「ロイス家は何百年もヴァルドマンスハイル城を所有し続けたが、第2次世界大戦後に東ドイツの共産党政権に接収された」、「東ドイツ」だったら、やむを得ないだろう。
・『国家転覆計画容疑での一斉摘発で25人が逮捕された  逮捕されたハインリヒ13世には、重病の娘がいる。フランクフルトを拠点にした不動産業は、あまり成功していない。そして、一族の所領を取り戻そうと膨大な数の訴訟を起こしてきたものの、そのほとんどで敗訴している。 東独の共産党政権は、ヴァルドマンスハイル城をユースホステルとして使った。ドイツ・メディアに「Prinz Putsch(反乱侯子)」と呼ばれるようになったハインリヒ13世は、ベルリンの壁とソヴィエト連邦が崩壊したのち、1990年代前半に自らヴァルドマンスハイル城を買い戻す羽目になった。 「悪い仲間と付き合うようになった」のだと、ロイス侯は言った。 「今となっては、それは誰が見てもわかる」 ハインリヒ13世が計画した反乱の一味の顔触れは、まるでスパイ・スリラーか、あるいはそのパロディーの登場人物一覧だ。 さまざまな陰謀論を信じる71歳のドイツ貴族。はるかに年下のロシア人の恋人(彼女はロシア政府に、ドイツ国家転覆を支援してもらおうとしていた)。腕利きの料理人。ドイツの精鋭特殊部隊の現役関係者。元警察幹部。ベルリンの裁判官。そして、極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の元連邦議会議員。 今もAfDに所属するビルギット・マルザック=ヴィンケマン元議員は、新国家の法相になる予定だった。連邦議会の内部の様子を知る元議員の知識が、武装蜂起の立案に不可欠だった。クリスマス前に予定されていた連邦議会襲撃は、暴力的なものになるはずだった。 グループの通話を傍聴していた捜査員たちは、人が死ぬのは「避けがたい」と一味が話し合うのを聞いていた。マルザック=ヴィンケマン元議員は、神秘主義に情熱をそそいでいたとされており、捜査関係者によると、議会襲決行の日にちを決めるために、占星術のホロスコープ(天体配置図)を参考にしていたという。 連行される逮捕者(7日、カールスルーエ) しかし、この計画にドイツの治安当局が本気で対応したのは、複数の元軍関係者が集まり、軍事組織を立ち上げようとしていたからだ。捜査当局が「リュディガー・フォン・P」と名前を公表した人物が、この軍部のトップで、連邦議会襲撃の責任者だった。議事堂を襲撃し、議員たちの両手を縛って人質にとり、警察の動きを封じる計画だった。 「リュディガー・フォン・P」は元陸軍中佐で、精鋭空挺(くうてい)部隊の指揮官だった。ドイツ・メディアによると、現役軍人だったころから兵器を集めて隠し持っていたという。 その直属には、現役の特殊部隊将校「アンドレアス・M」と、元陸軍中佐の「マクシミリアン・エデル」がいた。エデル容疑者はソーシャルメディア「テレグラム」で活発に活動しており、最近では友人たちに、クリスマス前に社会が激しく揺れる動乱があると、動画メッセージで警告していた。 そのほかには、解職された元警官で陰謀論者を公言している「ミヒェル・F」や、ネオ・ナチスにつながりのあるサバイバルのエキスパート「ペーター・W」などがいる。「ペーター・W」について捜査当局は、今年4月に家宅捜索した際に自宅に武器や銃弾を発見したことから、捜査線上に浮上したとしている。 7日の一斉摘発では、捜索した50カ所から武器が見つかった。これにはドイツ南部の陸軍兵舎も含まれる。報道によると、ヴァルドマンスハイル城を捜索した警官の1人は近隣住民に、弾薬や爆発物を探しているのだと話したという。 ドイツの軍や治安機関にいったいどれだけ、極端なイデオロギーが浸透しているのか、その実態は把握されていない。これは非常に心配なことだと、極右人種差別や反ユダヤ主義に詳しい研究者のニコラス・ポッター氏は言う。 極右の軍関係者が大量の武器や銃弾を入手していたことを、ポッター氏は懸念している ベルリンのアメデオ・アントニオ基金で上級研究員を務めるポッター氏は、ドイツ軍でこのところスキャンダルが相次いでいることを、BBCの取材で指摘した。中でも、精鋭部隊の陸軍特殊戦団(KSK)で、極右思想があまりに蔓延(まんえん)しているという理由で中隊が解体されていることも、ポッター氏は取り上げた。 「とんでもないほど大量の弾薬や武器が基地から消えて、極右の兵士の手に渡っている。(今回のクーデター計画で)明らかになったのは、氷山の一角に過ぎない。実態の規模はもっと大きくて深いのだと思う。これは非常に心配な事態だ。高度に訓練されて、強い目的意識を持った兵士が数人いれば、民主主義にとっては深刻な危機となることを、忘れてはならない」 クーデターを計画したグループの中には、いわゆる「ライヒスビュルガー」と呼ばれる人が大勢いた。その名の通り「帝国の住民」を自認する総数2万1000人超のこの人々は、現代ドイツの連邦共和国を認めていない。そのため、納税を拒否し、ドイツの判事による判決を受け入れず、連邦共和国のナンバープレートも使わない。「ライヒスビュルガー」たちは、第1次世界大戦の敗戦をもってドイツ帝国が崩壊して以来、正統で合法的なドイツ国家は存在しなくなったと考えている。 2016年にそうした「ライヒスビュルガー」の自宅を警察が強襲し、違法に所持する銃器を押収しようとした際には、家の所有者が応戦し、警官1人を殺害している。情報機関の関係者は私たちの取材に対して、近年「ライヒスビュルガー」は過激性を増していると話した。ただし、実際に暴力行為に自ら及ぶ用意のある「ライヒスビュルガー」は、ごく少数だとみられている。 今年の夏、ハインリヒ13世は、連邦共和国発行の身分証を持つ者はれっきとしたドイツ人ではないという内容のチラシを用意し、保養地バート・ドビンゲン一帯の民家の郵便箱に投函して回った。侯子のヴァルドマンスハイル城は、このバート・ドビンゲンにある。 「頭がおかしいんだと思った」。年金暮らしのイザベルさんはこう言ってから、古い石畳の町の中心部でATMに入っていった。 「帝国のパスポートや運転免許証を申請できるとかいうウエブサイトのリンクが、チラシに書いてあった。今のドイツの国旗ではなくて、赤と黒と白の古い帝国の旗がついた免許証。それから、ここでミニ王国を作るための選挙に参加しませんかという呼びかけもあった。そのミニ王国とやらのトップに、本人がなるつもりだったんでしょう。私はすぐにくしゃっとチラシを丸めて、ごみ箱に捨てました」 しかし、私たちがバート・ドビンゲンで会ったすべての人が、このイザベルさんほどきっぱり否定的だったわけではない。 ごみ回収業のセバスティアンさんは、家族や友人の中にはハインリヒ13世に同情的な人もいると話した。 「こんなことは言いたくないが、残念ながらそうなんです。この国の現状に不満を抱く人は大勢いる。ドイツ政府に不信感を抱いていて、今とは違うドイツになってもらいたいと思っている」 ベルリンにある非営利団体「監視・分析・戦略センター(CEMAS)」の偽情報研究者、ヨゼフ・ホルンブルガー氏によると、実に20%ものドイツ人が陰謀論を信じがちだという調査結果がある。そうした陰謀論の中には、オンラインで拡散されるロシアのプロパガンダも含まれる。 今のドイツ人は特に陰謀論に取り込まれやすくなっていると、ホルンブルガー氏は言う。新型コロナウイルスのパンデミックを経た今、経済が下落を続け、ウクライナでの戦争の影響でエネルギー価格に対する懸念が高まっている状態なだけに。現状は政府当局のせいだと、大勢が思っているのだという。 ハインリヒ13世のヴァルドマンスハイル城があるドイツ東部チューリンゲン州の情報機関トップ、ステファン・クラマー氏は、ドイツだけでなく欧州の大部分にとって、パンデミックが分岐点だったと話す。過激派勢力とはこういう危機の時代に乗じて、自分たちのいいように現状を利用しようと乗り込んでくるものだと語った。 ステファン・クラマー氏は、パンデミックが分岐点だったと話す 「ドイツの新しい右派やネオナチは、ふだんなら絶対にライヒスビュルガーに近づいたりしない。ライヒスビュルガーは頭がおかしい、あるいはエキセントリックな連中だとみられがちだったので。しかし今のこの国では、実に大勢がコロナ対策のロックダウンに反対しているため、手を組むのが得策だと判断したようだ」と、クラマー氏はBBCに話した。 「ドイツ連邦共和国を倒すという共通の目的があるので、彼らは今や協力しあっている。一方(ライヒスビュルガー)はそもそも連邦共和国など本当は存在しないと言う。もう一方(ナショナリストな極右)は、連邦は存在するが、それを滅ぼして代わりに新しい(独裁)政権を作りたいと言う。双方は思想的な結びつきはないが、この共通の目的でつながっている。一緒になってデモに参加して、新しいメンバーを勧誘している」 こうしたデモの一つがパンデミックの最中にベルリンで行われ、約4万人が参加した。そしてその渦中で、デモに加わっていた少数のグループが、連邦議会襲撃のまねをしてみせたのだ』、「実に20%ものドイツ人が陰謀論を信じがちだという調査結果がある。そうした陰謀論の中には、オンラインで拡散されるロシアのプロパガンダも含まれる」、「20%ものドイツ人が陰謀論を信じがち」、意外に多いようだ。「「ドイツの新しい右派やネオナチは、ふだんなら絶対にライヒスビュルガーに近づいたりしない。ライヒスビュルガーは頭がおかしい、あるいはエキセントリックな連中だとみられがちだったので。しかし今のこの国では、実に大勢がコロナ対策のロックダウンに反対しているため、手を組むのが得策だと判断したようだ」」、パンデミックが「手を組む」きっかけだったとは、あり得る話だ。
・『カルトはなぜ危険なのか、なぜ人はカルトに入るのか 心理的トリックを知る重要性 これはその5カ月後に米ワシントンでドナルド・トランプ前大統領の支持者と陰謀論者が起こした、連邦議会襲撃事件の前触れでもあった。トランプ氏はかつてベルリンでのデモについて、自分はデモ参加者の間で人気だったようだと言及したことがある。 確かにその通りだ。ドイツ連邦政府に抗議していた人の多くは、トランプ氏や、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を支持していた。彼らにしてみればトランプ氏やプーチン氏は、「より良い」、そして「より白い」、より保守的でキリスト教的な社会の強力な守護者ということになる。 アメリカで生まれ、そしてトランプ氏を称揚する陰謀論「Qアノン」の支持者が最も多いのは、英語圏以外ではドイツだ。Qアノン信奉者は世界的な権力者の闇のネットワーク「ディープステート」の存在を主張し、その「ディープステート」を憎悪する。世界を支配しているのは、権力志向で腐敗した、幼い子供を虐待しては殺しまくるエリートたちだと、Qアノン信奉者は言い張る。そういうQアノン信奉者の敵は、リベラルで、グローバルで、そして多くの場合はユダヤ人だ。 陰謀論を広める「Qアノン」とは何か? 止める方法は? ドイツのQアノン信奉者は、声高なワクチン否定派やネオナチやライヒスビュルガーと手を組み、2020年8月末にベルリンのドイツ連邦議会議事堂に向かった。彼らが中に押し入る前に、警察が制止したものの、ドイツの反主流派勢力にとっては象徴的な大成功だと受け止められた。 黒・赤・白の帝国旗に身を包んだ抗議者の映像が、世界中で放送されたからなおさらだった。ここドイツでは、ナチスのカギ十字は完全に違法で使うことができない。そのためネオナチが特に好んで使うのが、この帝国旗なのだ。 ドイツ連邦議会を襲撃しようとしたデモ隊(2020年8月、ベルリン) 一方で、今後のドイツの治安体制をどう改善するかと言うと、この記事のため取材した実に大勢が、日常的に殺害予告を受けていることを知って、私は驚いてしまった。その多くが、いわゆるドイツの主流派のために働いているとみなされる人たちだ。 たとえば前出のホルンブルガー氏は安全対策として、CEMASのオフィスではない場所で取材を受けたいと希望した。チューリンゲン州の情報機関幹部のクラマー氏は、自分が常に標的にされていることを自覚している。 ドイツの極右をウォッチする前出のポッター氏と同僚の研究者たちは、しばしば脅迫を受ける。反ファシズム運動を展開する左翼党選出のマルティナ・レナー連邦議会議員も同様だ。 私たちの取材にレナー議員は、ドイツでは過激な陰謀論や新しい極右運動が台頭するだけでなく、それに伴う実際の暴力行為や攻撃が増加していると、懸念を示した。殺人事件も起きている。 ネオナチから反ファシスト活動家に転じたインゴ・ハッセルバッハ氏に会いたいと持ちかけると、「表では」会えないと言われた。 「よそ者」に対する治安対策をどれだけ強化したところで、最近では、脅威というのは国内からやってくるものでもある。 情報機関幹部のクラマー氏は、これこそ近年で最も懸念される変化の一つだという。 「最近の過激主義者は、表でパッと見てすぐそれと分かる格好をしていない。ネオナチでもスキンヘッドではないし、むしろピンストライプのスーツを着ていたりする。あるいは、コーデュロイのボトムをはいた中年男性だったりする。極右過激派とは一見思わないような見た目をしている。過激アナキストに見えない極左どころの話ではない。この国の政府転覆を図る人間の数と、その生き方は、社会の中心にがんのように広まっている。まだ少数派だが、一部はこの国の主流派の間でも増えつつある」 今週のドイツでは、クラマー氏も、あらゆる治安当局関係者も口をそろえて強調する。クーデターを計画したグループが逮捕され、捜査が続いているといっても、ドイツ政府や連邦議会の存続そのものが本格的に危険にさらされていたわけではないと。ただし、暴力事件が実際に起きる危険は本物だった。 「私は……最悪に備えて、最善を期待するようにしている」と、苦々しい表情でクラマー氏は言った。 ドイツについてこの国の外で思われているイメージと、私が受ける印象は大きく異なる。外国にいる人たちはドイツを、ルールを守りハイテクで地味でリスクを嫌い中庸で安全で中道的な社会だと思っているかもしれない。だが、もしかするとそれは、アンゲラ・メルケル前首相が体現したステレオタイプなのかもしれない。 そのステレオタイプのせいで、ドイツで起きる極右や極左の攻撃は、「単独犯」の犯行だと軽視されすぎてきたと、前出のポッター氏は言う。たとえば2019年に起きた保守派政治家、ヴァルター・リュブケ氏の暗殺がそのひとつだ。リュブケ氏は難民や移民の権利を声高に擁護していた。そして彼を殺害した男は、極右「ドイツ国家民主党(NPD)」やイギリスの極右団体「コンバット18」とつながりがあった。 「もちろん、公共交通機関がきちんと動くとか、効率的だとかとか、ドイツ社会のそういう部分に注目したってかまわないが、この(組織的暴力も)現代ドイツにおける現実の一部だ。これまで十分真剣に検討されていたとは言いがたい。それがこの、ライヒスビュルガーのネットワークによって、可視化された」のだと、ポッター氏は強調する』、「この(組織的暴力も)現代ドイツにおける現実の一部だ。これまで十分真剣に検討されていたとは言いがたい。それがこの、ライヒスビュルガーのネットワークによって、可視化された」のだ、闇に埋もれたままよりは、望ましい。
タグ:ドイツ (その5)(ドイツでクーデター未遂を起こした極右テロ組織に 「ロシア関与」の疑いが、ドイツの極右テロ組織「帝国市民」クーデター計画が浮き彫りにする民主主義の危機、ドイツ国家の転覆を画策 どういう集団なのか) Newsweek日本版「ドイツでクーデター未遂を起こした極右テロ組織に、「ロシア関与」の疑いが」 「ドイツ」でこんな「極右」「クーデター計画」が発覚、「25人を逮捕」、とは、衝撃だ。 「新国家秩序について交渉するために暫定的な軍事政権を形成することも計画し、「交渉の主な窓口は現在、ロシアである」、しかし、「ビタリア・B」が「テロ組織とロシア政府高官との接触を仲介した疑いで拘束されたが、接触が成功した「兆候」はなかった」、なるほど。 「ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は」、「今回の逮捕は「ドイツ国内の問題」であるとし、「ロシアの介入についてはいかなる議論もあり得ない」と述べた」、「ロシア」との関係はいまのところないようだ。 Newsweek日本版 木村正人氏による「ドイツの極右テロ組織「帝国市民」クーデター計画が浮き彫りにする民主主義の危機」 「欧州債務危機や100万人を超える難民がドイツに押し寄せた欧州難民危機で極右勢力が台頭するようになった。 今回の事件について、ディトリッヒ上級研究員は「彼らはドイツ軍ともつながっている」、「ドイツ軍ともつながっている」というのは衝撃的だ。 「ドイツ政府が「ディープステート(闇の政府)」に支配されているとの陰謀論を信じ、国家転覆を計画していたとみられている」、「陰謀論」も困ったものだ。 「ライヒスビュルガー運動のメンバーは第二次大戦後のドイツ連邦共和国の存在を否定している。現在の国家は米英仏に占領された行政上の構築物に過ぎず、戦前の国境がまだ存在していると考えている。宣伝用のTシャツや旗を作り、自分たちでパスポートや運転免許証まで発行している 独連邦憲法擁護庁(BfV)によると、メンバーは国内に約2万1000人、うち5%が極右過激派に分類される。多くは男性で、平均年齢は50歳以上。右翼ポピュリスト、反ユダヤ主義、ナチスのイデオロギーを信奉している。税金を納めることを拒否し、自分たちが保有する小さな「領土」を宣言。拘束されたグループは「疑似政府」を準備していた」、「税金を納めることを拒否」、これはさすがに違法だろう。 「不安は生まれ、その対症療法として陰謀論イデオロギーへと逃避していく」、「陰謀論イデオロギーがはびこる背景には社会の分断がある」、「民主主義はまさに危機に瀕している」、その通りだ。 BBC News「ドイツ国家の転覆を画策、どういう集団なのか」 「2021年11月に、クーデターの計画を始めた。新しいドイツ国家、新しい帝国を待ちわびるメンバーは、誰が新国家のどういう大臣になり、どういう軍隊を作って国家転覆を実現しようかと、そこまで話し合っていた」、ずいぶん「計画」は進んでいたようだ。 「ロイス家は何百年もヴァルドマンスハイル城を所有し続けたが、第2次世界大戦後に東ドイツの共産党政権に接収された」、「東ドイツ」だったら、やむを得ないだろう。 「実に20%ものドイツ人が陰謀論を信じがちだという調査結果がある。そうした陰謀論の中には、オンラインで拡散されるロシアのプロパガンダも含まれる」、「20%ものドイツ人が陰謀論を信じがち」、意外に多いようだ。 「「ドイツの新しい右派やネオナチは、ふだんなら絶対にライヒスビュルガーに近づいたりしない。ライヒスビュルガーは頭がおかしい、あるいはエキセントリックな連中だとみられがちだったので。しかし今のこの国では、実に大勢がコロナ対策のロックダウンに反対しているため、手を組むのが得策だと判断したようだ」」、パンデミックが「手を組む」きっかけだったとは、あり得る話だ。 「この(組織的暴力も)現代ドイツにおける現実の一部だ。これまで十分真剣に検討されていたとは言いがたい。それがこの、ライヒスビュルガーのネットワークによって、可視化された」のだ、闇に埋もれたままよりは、望ましい。
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金融業界(その16)(「銀行員」が間もなく消滅?転職市場で「いま起きていること」、「きらぼし銀行」執行役員が「パパ活女子」と不正融資で「キックバック」 現金授受の証拠動画、銀行を襲う「外債含み損」 待ち受ける苦渋の選択 持ちきりか売却か 逆ザヤが続き損失は拡大) [金融]

金融業界については、8月17日に取上げた。今日は、(その16)(「銀行員」が間もなく消滅?転職市場で「いま起きていること」、「きらぼし銀行」執行役員が「パパ活女子」と不正融資で「キックバック」 現金授受の証拠動画、銀行を襲う「外債含み損」 待ち受ける苦渋の選択 持ちきりか売却か 逆ザヤが続き損失は拡大)である。

先ずは、10月28日付けFRIDAY「「銀行員」が間もなく消滅?転職市場で「いま起きていること」」を紹介しよう。
https://friday.kodansha.co.jp/article/272186
・『今さらコンサルティング力やIT力を求められても…  ①人口減少、②低金利、③デジタル化、という三重苦により、メガバンクや地方銀行の苦戦が伝えられて久しい。特に、個人向けビジネスでは、楽天銀行やSBI証券といったネット銀行やネット証券がその利便性や手数料の安さなどから、デジタルネイティブ世代だけでなく、30代から50代のミドル世代、そしてシニア層に至るまで幅広く利用されるようになっており、相対的に銀行は収益機会を失っている。 ネット銀行やネット証券を傘下にもつデジタル企業は概して、①経営スピード、②テクノロジー、③デジタル人材で勝り、既存の銀行と違って、余剰人員と余剰店舗を抱えていないことも強みだ。 こうしたデジタル企業に対抗すべく、メガバンクや地銀の銀行員もデジタル専門力やクリエイティブさが問われるようになっている。 「ジェネラリストに価値はない。全員がスペシャリストになれ」「これまで比較的単純な作業に従事してきた行員をよりクリエイティブな仕事に振り向ける」といった発言をメガバンクの首脳がこぞってしている。 年功序列と終身雇用という暗黙のルールのなかで2年から3年での転勤を繰り返し、本部や支店などの様々な職場を体験するジェネラリストを意図的に養成してきた銀行と銀行員にとって、人事・組織方針の大転換だ。安定性を重視して就職し、一貫してジェネラリストとして働いてきた多くの銀行員からは、「今さらコンサルティング力やIT力を求められても困る」と不満の声が聞こえてくる』、確かに「一貫してジェネラリストとして働いてきた多くの銀行員からは、「今さらコンサルティング力やIT力を求められても困る」との不満は無理もない。
・『一種の「パワハラ」!?  メガバンク出身のある外資系証券会社のアナリストは、「銀行は、デジタル化に伴う業務量削減によって捻出した余剰人員を営業現場に投入し、コンサルティング業務を強化している。しかしながら、例えば、事務やバックオフィス、本部にいた銀行員が、急に営業の最前線に出され、専門知識や顧客配慮が求められるコンサルティング業務において活躍できるのだろうか。また、本人はそれを希望しているのだろうか」と疑問を呈する。 安定を重視しジェネラリストとして働いてきた銀行員に、急にコンサルティング力やIT力にクリエイティブさまで求められる職場や職種への配属は酷であり、一種のパワハラともいえよう。 多くの銀行が、豪華な研修施設を持ち、行内研修を充実させるというが、クリエイティブな職種であればあるほど、研修や資格ではなく、経験とセンスの比重も大きくなるものだ』、「安定を重視しジェネラリストとして働いてきた銀行員に、急にコンサルティング力やIT力にクリエイティブさまで求められる職場や職種への配属は酷であり、一種のパワハラともいえよう」、確かに時間をかえるべき人材育成を、急に手のひら返しで変更するのは、無理筋だ。
・『銀行員から公務員へ転職も  こうした状況下、メガバンクや地方銀行では、銀行に見切りをつける形で離職が相次いでいるという。営業やマーケティング担当、商品企画担当、プライベートバンカーやアナリストといった専門職など多くの職種に及ぶ。それも「20代から30代だけでなく、40代にも及んでいる」(転職サイト会社担当者)という。実際、「銀行員、転職」とスマホで検索してみると、ずらりと様々な転職サイトやアドバイス、動画での体験談まで出てくる。 かつての銀行員の転職や退職だと、家業を継ぐことを除けば、銀行から証券会社や外資系金融会社などが主流だったが、今は様変わりだ。はやりのスタートアップ企業やベンチャー企業の立上げや独立、コンサルティング会社やIT企業に転職かというと、「それはごく一部のケースであり、そうではない」(同)という。 なんと、例えば、メガバンクの場合、政府系金融機関や官公庁、地方銀行の場合、県庁や市役所といった地元の自治体やJAバンクグループや政府系金融機関などに転職するケースが増えているという。官公庁や自治体の場合、20代であれば、一般的な公務員試験を、30代以上であれば、社会人経験者採用枠などをパスして採用されるということだ。 銀行を選んだ若者は、あくまでも保守的だ。転職先もより保守的な転職先を選んでいるのだ。銀行を見限り、更なる安定と保守を求めているといえよう。20代、30代の嗅覚は敏感だ。確かに、銀行がなくなったとしても、官庁に県庁、市役所、JAバンクや政府系金融がこの先もなくなることはないだろう』、「官公庁や自治体の場合、20代であれば、一般的な公務員試験を、30代以上であれば、社会人経験者採用枠などをパスして採用されるということだ」、もともと「銀行」を志向した学生は優秀なので、これらの「試験」もさしたる障害ではなかったようだ。 「銀行を選んだ若者は、あくまでも保守的だ。転職先もより保守的な転職先を選んでいるのだ」、その通りだ。
・『なぜグーグルでなく、メガバンクに就職するのか?  銀行で退職者、転職者が増える一方、デジタル化が進む以上、銀行でもデジタル人材は必要だ。新しいスマホアプリやシステムを導入したものの、動かす仕組みを理解し、アップデートできる行員は数えるほどしかいない。結局、提携するシステムベンダーやデジタル企業に丸投げし、ブラックボックス化してしまう。みずほFGで相次いだシステム障害の遠因とされる、ブラックボックス化という二の舞を避けるためにも自前のデジタル人材は欠かせないのだ。 デジタル人材は、具体的には、システム開発は無論、クラウド、ビッグデータ、AI、サイバーセキュリティー関連の専門職、データサイエンティスト、金融工学や統計学専門職、アプリなどデジタルプロダクトデザイナーなどを指す。 実際、三井住友銀行では、国内外の大学院卒を対象に、総合職に「デジタライゼーションコース」を設け、ビッグデータやAI等を活用した先進ビジネスを構築する人材を募集している。また、三菱UFJ銀行では、データサイエンティスト、データアーキテクト、サイバーセキュリティーの専門家といった職種で中途採用を継続的に行っている。 もっとも、「なぜグーグルやアップルでなく、メガバンクに」「なぜ起業ではなく、銀行に」という点が解決されない限り、採用は苦戦しそうだ。優秀とされるデジタル人材にとって、あまたある選択肢のなかで、デジタル対応で劣勢の銀行にわざわざ好んで入る者は少ないだろう。 デジタル人材獲得のためには、報酬は無論、業務における権限、勤務体系、勤務時間、副業や兼業是認、福利厚生などかなり柔軟な対応が必要となってこよう。 人口減少に低金利に加え、デジタル化の進展によって苦戦する銀行にとって、人員の削減は不可避の状況』、「優秀とされるデジタル人材にとって、あまたある選択肢のなかで、デジタル対応で劣勢の銀行にわざわざ好んで入る者は少ないだろう。 デジタル人材獲得のためには、報酬は無論、業務における権限、勤務体系、勤務時間、副業や兼業是認、福利厚生などかなり柔軟な対応が必要となってこよう」、「銀行」にとっては劣勢を余儀なくされるようだ。
・『すでに早期退職制度も実施されている  人口減少、低金利に加え、デジタル化の進展によって苦戦する銀行にとって、人員の削減は不可避の状況である。実際、全国銀行全体の経費6.5兆円のうち、人件費は2.7兆円で42.6%を占めている(2022年3月末)。ちなみに、ネット銀行の一角である大和ネクスト銀行の営業経費に占める人件費の割合は16.9%に過ぎない(2022年3月末)。 メガバンクでは、みずほFGでは2026年度末までに1万9000人を削減。三菱UFJ銀行は2023年度末までに6,000人程度の自然減を見込む。多くの銀行で新卒採用の抑制も続いている。 しかし、こうした新卒抑制や定年退職など自然減だけでは対応できず、早期退職制度という名の人員削減が始まることも想定されよう。表向きは、セカンドキャリア支援制度、チャレンジ・キャリア制度、起業・独立応援などもっともらしい前向きな名前となるが、要は早期退職制度だ。 実は既に実施事例もある。2021年6月、名古屋市に本店がある中京銀行が、希望退職者を募集すると発表した。募集対象者は45歳以上の総合職などで、150人が応じ2022年3月末に退職している。なお、中京銀行は愛知銀行と経営統合し、2022年10月には、共同持ち株会社「あいちFG」を設立している。 全国銀行協会によると、メガバンク、地方銀行などあわせて全国27万1,515人の銀行員は、既に前年比で9,187人が減少している(2022年3月末)。 銀行の業務が異業種に代替され、銀行員の仕事がスマホに置き換わるなか、従来型の銀行員が消えてしまう日が刻一刻と近づいているのかもしれない』、「全国銀行」での「銀行員」の減少率は2022で3.3%とかなり高いようだ。

次に、10月6日付けデイリー新潮「「きらぼし銀行」執行役員が「パパ活女子」と不正融資で「キックバック」 現金授受の証拠動画」を紹介しよう』、「パパ活女子」とは元気な「執行役員」もいたものだ。
https://www.dailyshincho.jp/article/2022/10061040/?all=1
・『接待攻勢  東京都民銀行と八千代銀行、新銀行東京が合併して誕生した「きらぼし銀行」。2018年5月の合併後から、行員による顧客の預金着服や妻殺害といった不祥事が相次いだが、さらなる不正も明るみに出そうだ。執行役員が業者からキックバックを受け取り、不正融資を行っていたのである。【写真】現金100万円入りの封筒を受け取るK氏 東京・目黒にある不動産会社の社長が告発する。 19年12月、同業者からきらぼし銀行のKという執行役員を紹介されました。外資出身だというKはファンドの組成が得意だとかで、後々、うちの傘下のソーシャルレンディング会社に転職する希望を持っていた。一方、こちらとしては、きらぼし銀行から有利な条件で融資を引き出すため、Kとの付き合いを始めました」 以後、社長は接待攻勢をかける。酒の席に“パパ活女子”を呼び、K氏に10回以上お持ち帰りさせたという。その成果は、20年7月に現れた。 「“恵比寿3丁目プロジェクト”と称し、2階建てアパートの建設計画を立てました。そのプロジェクトへの融資を受けられないかKに相談した。すると、Kは“自分の口利きなら、融資額の1%をキックバックする仕組みになっている”と言い出したのです」』、「融資額の1%をキックバックする仕組み」とは、さすが「外資出身」だ。
・『偽装工作  キックバックと引き換えに貸出金利を低く抑えるとのことで、「他の信用金庫などは年利3%前後。対して、きらぼし銀行は1.675%でした。Kの申し出を受け入れ、融資金1億1000万円を手にしました。Kはキックバックの振込先として、友人が経営するというコンサル会社を指定してきた。形式上、うちとコンサル会社が“業務委託契約”を交わし、その手数料として110万円を振り込む偽装工作が図られました」 このコンサル会社とは、月々30万円の「ファイナンスアドバイス契約」も締結。その結果、20年12月、東京都内のアパートを購入するプロジェクト2件に対し、1億3000万円の融資が実行された。 これら以外にも、K氏は他行が二の足を踏むような「貧困ビジネス」にも手を貸していた。さらには、格闘技イベント「RIZIN(ライジン)」にも不適切な融資を行い、1億6000万円を用立てている。 RIZINからのリベートを預かった社長は、証拠として残すため、K氏に渡す場面を隠し撮りしたという。 「週刊新潮」2022年10月6日号「MONEY」欄の有料版では、社長とK氏のやりとりの全貌と現金授受場面の動画を詳報する』、「K氏」は「他行が二の足を踏むような「貧困ビジネス」にも手を貸していた。さらには、格闘技イベント「RIZIN(ライジン)」にも不適切な融資を行い、1億6000万円を用立てている」、「K氏」はかなりアブナイ「ビジネス」にも手を広げているようだ。

第三に、12月5日付け東洋経済オンライン「銀行を襲う「外債含み損」、待ち受ける苦渋の選択 持ちきりか売却か、逆ザヤが続き損失は拡大」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/636881
・『銀行が抱える外債の含み損が目下急速に膨らんでいる。どう損失を処理するのか、各行は難しい決断を迫られている。 「金利上昇局面では、もう少しポジションは少なくてもよかった。ちょっと残念だ」。11月14日、みずほフィナンシャルグループ(FG)の決算会見上、木原正裕社長は悔恨の思いを吐露した。 みずほの2022年4~9月期決算は、本業の収益力を示す業務純益が4494億円(前年同期比2.3%減)とまずまずの水準だった。しかし利益の内訳は、当初思い描いていたものとは異なった。国内大手企業や海外向け貸し出しや手数料が伸びた反面、市場運用部門が前年同期比で400億円以上も減益となったのだ。 敗因は米ドル債など海外の債券、通称「外債」への投資だ』、「市場運用部門が前年同期比で400億円以上も減益」、これではお手上げだ。
・『勝負に出た夏の判断が裏目に  アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)による度重なる利上げを受け、代表的な投資対象である米10年債の利回りは、年初の1.5%程度から4%水準にまで達した。今後は5%まで上がるという観測もある。 ところが、みずほを含めた多くの銀行は、「米金利は3%程度が天井」というシナリオを描いていた。 実際、2022年7月には市場関係者の間で「米金利がピークアウトし始めた」という観測が広がった。アメリカの物価上昇が鈍化の兆しを見せ、3%中盤をつけた金利は下落基調に転じた。 金利が下落すると債券価格は上昇する。みずほはここで勝負に出た。債券の「買い場」が訪れたと判断し、米ドル債への投資を積極化させた。 しかし8月に入ると金利は再び上昇し始めた。結局みずほはポジションの解消を余儀なくされ、損失を抱えた。「今はポジションをニュートラルにしている。(市場運用による利益には)期待していない」(木原社長)。金利変動が一服するまで、積極的な売買を控えるという。 想定を上回る金利上昇に、銀行が翻弄されている。みずほのような直接的な損失にとどまらず、取得時の価格(簿価)を下回る「含み損」の拡大も、銀行の財務をむしばみかねない。 含み損は売却するまで、損失としては確定しない。債券を満期まで保有し続け、額面価格で償還されるのを待つことも本来は選択肢だ。だが、銀行にとっては含み損の膨張を無視できない事情がある。 1つは自己資本比率への影響だ。3メガバンクや一部の大手地銀が採用する自己資本規制の「国際統一基準」では、有価証券の含み損を自己資本から差し引く必要がある。現時点で自己資本を大きく毀損するほどの影響はないものの、今後も含み損が拡大すれば自己資本は傷み、銀行経営の手足が縛られる』、爆弾を抱えているようなものだ。
・『「逆ザヤ」で運用するほど損失は拡大  より深刻なのは、外債投資に用いるドルなどの外貨調達コストだ。外貨預金だけでは原資をまかなえないため、手元の円を担保に市場からドルを調達し、外債もしくは外債を組み入れた投資信託に投資を行う。 このとき銀行はいわばドルの借り賃として、日米の短期金利差にあたる額(ヘッジコスト)を支払う。低位に張り付く円金利を尻目にドル金利が上昇したことやドルの需要拡大によって、銀行が負担するヘッジコストが増大しているのだ。 今起きているのは、外貨調達コストが外債の利回りを上回る「逆ザヤ」だ。 増加する調達コストとは対照的に、銀行の多くは固定利付債に投資しているため、債券利息は増えない。調達コストと債券の利回りが逆転した状態では、運用を続けるほど損失を垂れ流すため、一時的な売却損を計上してでも手放し、含み損を縮小させる必要に迫られる。 外債投資をめぐっては、デリバティブ取引を駆使して調達コストを固定化したり、価格変動が外債とは逆方向に働く商品を併せて投資したりすることで、金利変動による損失を抑制できる。三菱UFJFGは、2022年4~9月の間に約5000億円の外債売却損が発生した。しかし相場下落時に価格が上昇するベアファンドを売却することで、業績への影響は相殺させた。 一方、ヘッジ手段をあまり講じず、メガバンクと比較して相対的に体力が乏しい地方銀行への影響はより甚大だ。 横浜銀行と東日本銀行を傘下に持つコンコルディアFGは、9月末時点で保有する外債3686億円に対して、含み損を316億円計上している。同社の試算では、仮に米金利が5%、ユーロ金利が3%まで上昇すると、自己資本比率が0.4%押し下げられるほか、半年間で約30億円の運用損が発生する。 同社は2020年3月の株価急落を受け、分散投資の一環で外債を買い増した。これがアダとなった。今期すでに外債を約600億円損切りしたものの、逆ザヤ状態の外債はまだ約800億円残る。今後は株式の売却益なども活用しつつ、含み損の解消に努める構えだ(地銀への影響の詳細についてはこちら)。 米金利の急騰で銀行が含み損に見舞われる光景は、過去にも見られた。2016年末から2017年にかけて、トランプ政権による経済政策がインフレを加速させるとの見方から米金利が上昇。銀行が保有する外債の価格が下落し、含み損の処理に追われた。静岡銀行(現しずおかFG)は2017年3月期に約300億円の債券損失を計上。逆ザヤリスクを抱えた外債を中心に売却した結果だ。 その後、しばらくは外債運用に慎重になった銀行だったが、コロナ禍による株価急落や世界的な利下げを契機に、外債投資に回帰した。外債を買い増した矢先で、再び金利急騰に見舞われた格好だ』、「しばらくは外債運用に慎重になった銀行だったが、コロナ禍による株価急落や世界的な利下げを契機に、外債投資に回帰した。外債を買い増した矢先で、再び金利急騰に見舞われた格好だ」、実にタイミング悪く「金利急騰」したものだ。
・『外債処理は「政治的な判断」  「外債をどう処理するかは、ひとえに経営者の『政治的な判断』による」。ある大手銀行幹部は指摘する。相場変動が原因とはいえ、巨額の損失を計上して大幅減益や赤字となれば、対外的なイメージが毀損される。そのため外債の処理は業績に影響を及ぼさない範囲でしか進まない、という見方だ。 多くの銀行は含み損をすぐに一掃はせず、利回りが低く調達コストとの逆ザヤが甚だしい外債から順次手放し、売却損を小出しに計上している。 幸い、外債運用を除けば銀行の経営環境は悪くない。企業の設備投資や個人の住宅ローンといった資金需要は堅調だ。倒産件数も少なく、貸倒引当金も見込んだほど発生していない。こうした利益の上振れ分と外債の売却損を相殺させれば、含み損を処理しつつ計画通りの業績で着地できる。 もっとも米金利には先高感が拭えず、逆ザヤがいっそう拡大する可能性もある。逆ザヤを承知で満期まで持ち続けるか、一過性だが巨額の実現損を計上するか。銀行はしばらく、苦渋の選択を迫られる』、(本業の)「利益の上振れ分と外債の売却損を相殺させれば、含み損を処理しつつ計画通りの業績で着地できる」、もっとも「米金利には先高感が拭えず、逆ザヤがいっそう拡大する可能性もある」のであれば、私なら「一過性だが巨額の実現損を計上」する方を選択する。
タグ:「安定を重視しジェネラリストとして働いてきた銀行員に、急にコンサルティング力やIT力にクリエイティブさまで求められる職場や職種への配属は酷であり、一種のパワハラともいえよう」、確かに時間をかえるべき人材育成を、急に手のひら返しで変更するのは、無理筋だ。 確かに「一貫してジェネラリストとして働いてきた多くの銀行員からは、「今さらコンサルティング力やIT力を求められても困る」との不満は無理もない。 FRIDAY「「銀行員」が間もなく消滅?転職市場で「いま起きていること」」 金融業界 (その16)(「銀行員」が間もなく消滅?転職市場で「いま起きていること」、「きらぼし銀行」執行役員が「パパ活女子」と不正融資で「キックバック」 現金授受の証拠動画、銀行を襲う「外債含み損」 待ち受ける苦渋の選択 持ちきりか売却か 逆ザヤが続き損失は拡大) 「官公庁や自治体の場合、20代であれば、一般的な公務員試験を、30代以上であれば、社会人経験者採用枠などをパスして採用されるということだ」、もともと「銀行」を志向した学生は優秀なので、これらの「試験」もさしたる障害ではなかったようだ。 「銀行を選んだ若者は、あくまでも保守的だ。転職先もより保守的な転職先を選んでいるのだ」、その通りだ。 「優秀とされるデジタル人材にとって、あまたある選択肢のなかで、デジタル対応で劣勢の銀行にわざわざ好んで入る者は少ないだろう。 デジタル人材獲得のためには、報酬は無論、業務における権限、勤務体系、勤務時間、副業や兼業是認、福利厚生などかなり柔軟な対応が必要となってこよう」、「銀行」にとっては劣勢を余儀なくされるようだ。 「全国銀行」での「銀行員」の減少率は2022で3.3%とかなり高いようだ。 デイリー新潮「「きらぼし銀行」執行役員が「パパ活女子」と不正融資で「キックバック」 現金授受の証拠動画」を紹介しよう』 「融資額の1%をキックバックする仕組み」とは、さすが「外資出身」だ。 「K氏」は「他行が二の足を踏むような「貧困ビジネス」にも手を貸していた。さらには、格闘技イベント「RIZIN(ライジン)」にも不適切な融資を行い、1億6000万円を用立てている」、「K氏」はかなりアブナイ「ビジネス」にも手を広げているようだ。 東洋経済オンライン「銀行を襲う「外債含み損」、待ち受ける苦渋の選択 持ちきりか売却か、逆ザヤが続き損失は拡大」 「市場運用部門が前年同期比で400億円以上も減益」、これではお手上げだ。 爆弾を抱えているようなものだ。 「しばらくは外債運用に慎重になった銀行だったが、コロナ禍による株価急落や世界的な利下げを契機に、外債投資に回帰した。外債を買い増した矢先で、再び金利急騰に見舞われた格好だ」、実にタイミング悪く「金利急騰」したものだ。 (本業の)「利益の上振れ分と外債の売却損を相殺させれば、含み損を処理しつつ計画通りの業績で着地できる」、もっとも「米金利には先高感が拭えず、逆ザヤがいっそう拡大する可能性もある」のであれば、私なら「一過性だが巨額の実現損を計上」する方を選択する。
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労働(その4)(ウーバー配達員の「労働者性」認定 労組と運営なぜ揉めた?内幕を徹底解説、退職代行サービス急増で「違法リスク」懸念大 事業者選びの注意点とは) [社会]

労働については、2020年5月31日に取り上げた。今日は、(その4)(ウーバー配達員の「労働者性」認定 労組と運営なぜ揉めた?内幕を徹底解説、退職代行サービス急増で「違法リスク」懸念大 事業者選びの注意点とは)である。

先ずは、本年12月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した人事ジャーナリストの溝上憲文氏による「ウーバー配達員の「労働者性」認定、労組と運営なぜ揉めた?内幕を徹底解説」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/314103
・『東京都労働委員会が、ウーバーイーツの配達員を「労働者」として認める判断を下した。いわゆる「ギグワーカー」が労働者として認定されるのは日本初だが、そもそも、なぜ配達員の労働組合「ウーバーイーツユニオン」と運営会社の間で対立が深まり、都労委が争議解決の仲介に入ったのか。ユニオンが不満を抱えていたポイントと、配達員の「労働者性」が認められた要因を詳しく解説する』、「配達員の「労働者性」が認められた要因」とは興味深そうだ。
・『ウーバーイーツ配達員は「労働者」 都労委が日本初の認定のワケ  ウーバーイーツの配達員は労働者か、それとも個人事業主か。 東京都労働委員会(以下、都労委)は11月25日、ウーバーイーツの配達員を労働組合法上の「労働者」として認める判断を下した。都労委が、ネット上で単発の仕事を請け負う「ギグワーカー」を労働者と認定するのは日本で初めてだ。 都労委をはじめとする労働委員会は、労働組合と使用者(会社)の紛争解決を支援する組織だ。今回、都労委が冒頭の判断を下したきっかけも、両者の紛争だ。 ウーバーイーツの配達員でつくる労働組合「ウーバーイーツユニオン」は、過去に処遇改善に向けた団体交渉を申し入れてきたが、ウーバーイーツの運営会社(以下、ウーバー)は拒否してきた。 ウーバー側はこの際、配達員は「個人事業主」であって、自分たちが雇った労働者ではないという理由で拒否していた。 議論が平行線をたどったため、ユニオンは2020年3月、都労委に不当労働行為の救済を申し立てた。都労委はそれ以降、関係者を招いた証人尋問を行ってきたが、争点となっていたのは「配達員が、団体交渉に応じるべき労働組合法上の労働者であるかどうか」という点だった。 その結果、都労委は配達員を労働者として認めたわけだが、そもそも、なぜユニオンはウーバーに対して団体交渉を求めたのか』、「労働組合法上の」「組合」として「交渉権」を求めた。
・『ウーバーイーツ労組が不満を持っていたポイントとは?  昨年の11月末~12月に行われた都労委の証人尋問で明らかになった、ユニオンが不満を持っていたポイントは、以下の4点だ。 (1) ウーバーの対応の不誠実さ (2) 事故時の補償の脆弱(ぜいじゃく)さ (3) 就業中止などのリスクの予測不可能性 (4) 配達員が受け取る料金体系の不明確さ  各項目を詳しく説明していこう。 (1)は、配達員と飲食店、利用者の間にはさまざまなトラブルも発生するが、ウーバー側はそれらの解決に真摯(しんし)に取り組まなかったということだ。 その実態について、証人尋問に呼ばれた配達員は「飲食店に到着し、(店員に)声をかけたらいきなり『うるせぇ!黙って待っていろよ』と一喝され、さらに『お前客じゃないだろ、ウーバーだろ』と言われた。そんな言い方はないだろうと思って(ウーバーイーツの)サポートセンターに連絡したら『上に報告する』と言っていたが、その後何の連絡もないし、たぶん飲食店の暴言も注意していないだろう」と証言している。 配達員の主張は「利用者、飲食店、配達員は対等な関係ではなく、ウーバーは配達員を保護してくれない」というもので、トラブルに誠実に対応することを求めてきた。 (2)は、配達員に事故リスクがつきまとうにもかかわらず、ケガをしたときの休業補償が手薄いということだ。 事故の補償に関しては、ウーバーは事業開始3年目の2019年10月に民間の損害保険会社と提携し、配達員の傷害見舞金制度を設けた。 その後、制度を拡充し、医療費用の上限を50万円としたほか、1日7500円の見舞金を上限60日支給するなどの補償を設けた。 しかし、2カ月以上の休業は補償されないなど、一般的な労働者の労災補償に比べると見劣りする。 また、現在の制度では、補償の対象となるのは「配達中」(on-trip)に起こした事故に限定されている。 ユニオンはこの補償の対象範囲を、配達リクエストを待っているときや飲食店に行く途中など、アプリをオンラインにしている状態(off-trip)に拡大することを求めてきた。見舞金などの金額や、期間の改善も併せて要求している。 (3)は、アカウントの停止や、配達員の間で“干される”と呼ばれている、一定期間の配達を制限するペナルティーの存在と、その根拠を開示してほしいということだ。 配達員はアカウントを停止されると、事実上就業不能になる。配達員が飲食店からパワハラなどのいじめを受けても、結局泣き寝入りせざるを得ない背景には、アカウント停止などのペナルティーが存在するからだという。 ただし、ウーバー側はこの点について真っ向から否定した。 証人となったウーバーのシステム担当者は「配達員の応答率の良さや、拒否する確率の高さ、低さに関係なく、エリア内にいればリクエスト(仕事のオファー)が送信される。グローバルなプロダクト設定になっており、どの配達員であってもリクエストが送信され、条件に良い、悪いというものはない。配達員が自分で受けるかどうかを決めるだけだ」と言っている。 だが、配達の報酬がどうやって決まっているのかが不透明だという(4)の不満も大きい。 配達員の報酬は、「基本配送料」と「インセンティブ」で構成される。 前者の「基本配送料」は、店舗で配達員が商品を預かったときに発生する「受け取り料金」、利用者に商品を届けたときの「受け渡し料金」、店舗から利用者宅までの「距離料金」の3つの合計金額から、ウーバーの取り分であるサービス手数料を引いたものを指す。 後者の「インセンティブ」は、需要が多いエリアや時間帯に配達した場合、追加で支払われるものを指す。 かつて、これらの報酬体系は内訳が明示されていた。 だが、2021年5月以降に報酬体系が変更され、事前に「予想配達料金」として仮の金額が提示されるが、確定した報酬金額は配達後にしか分からない形になった。ユニオンはこの仕組みの実態が分からず、半ばブラックボックス化していると主張してきた。 こうした4点の不満や処遇改善を訴えて団体交渉を申し入れたのだが、前述したようにウーバーが拒否し、都労委の申し立てに至ったのだ』、これまで「ウーバー」は。「配達員」を事実上の従業員としながら、雇用主としての義務を一切無視してきた。
・『フリーランスの個人事業主が「労働者」として認められたワケ  ところで、フリーランスの個人事業主が、なぜ法律上の「労働者」として認められるのかと疑問に持つ人も少なくないだろう。 労働者の定義は法律によって異なる。 労働条件の最低基準を定めた労働基準法では、労働者の範囲は「使用従属性」の有無などによって判断される。つまり、「指揮監督下の労働」という労務提供の形態や、「賃金支払い」という報酬の労務対償性の有無などによって、労働者であるか否かが判断される。 一方、憲法で保障された「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」の三権の具体的保障としての団体交渉の助成を目的とする「労働組合法」では、労働者の範囲が労基法よりも幅広い。 労働組合法3条では労働者を「職業の種類を問わず、賃金、給料、その他これに準じる収入によって生活する者」と定義している。 つまり、特定の使用者に雇われていない失業者も含まれるほか、必ずしも雇用契約を結んでいない請負・独立事業者なども保護の対象にするというのが立法趣旨であり、そのように運用されてきた経緯がある』、「憲法で保障された「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」の三権の具体的保障としての団体交渉の助成を目的とする「労働組合法」では、労働者の範囲が労基法よりも幅広い」、当然のことだ。
・『労働者性を判断する上で基準となったポイントは?  そして今回、都労委は労働組合法に基づき、配達員は「労働者」であると“満額回答”で認定し、ウーバーに団体交渉に応じるよう命令した。 労働者性を判断する上で、重要な基準となったポイントは、(1)事業組織への組み入れ、(2)契約内容の一方的・定型的決定、(3)報酬の労務対価性、(4)顕著な事業者性――の4点だ。 事業組織への組み入れとは、配達員がビジネスにとって不可欠な労働力として確保されているか、を判断する。組み入れがあれば「労働者性がある」とみなされる。 ウーバーはインセンティブを設けて配達の需要が多い場所・時間帯に配達員を誘導している。また、配達員は個人名ではなく「ウーバーイーツ」を名乗って注文者や飲食店を訪問している。これらのことなどから、都労委は「事業組織への組み入れ」はあると判断した。 ちなみにウーバーの配達員は全国で13万人以上とされるが、都労委によれば、ウーバーの業務で生計を立てている人は約2000人。配達業務を「本業」とする人は全体の25%を占めるという。そのため、都労委は「専属性」も強いと判断している。 (2)契約内容の一方的・定型的決定とは、仕事や報酬の内容をウーバーが一方的に決め、定型的な契約書式かどうかを判断する。配達員に交渉の余地がなければ労働者とみなされる。 この点について、配達員が締結している「ウーバーサービス契約」はウーバーが用意した定型的様式であり、契約内容を配達員が個別に交渉して決定することはできない。 また、配送料の変更を要請する権利が書かれた条項はあるが、実際には交渉の余地がなく、アプリにはウーバーが決定する金額以外の選択肢は表示されない。個別に交渉できる仕様にもなっていない。これらのことから、都労委は「契約内容の一方的・定型的決定」があると判断した。 (3)報酬の労務対価性とは、業務量や時間に応じて配達員に支払われる報酬が、労働を提供した対価であるかどうか、である。労務対価性があれば労働者とみなされる。 ウーバーは時間帯や場所、配達回数の達成などのインセンティブによる追加報酬を出しているが、これは「配達員が自ら提供した労務への対価」としての性格を持つと都労委は判断した。 (4)顕著な事業者性とは、自己の才覚で利得する機会を有し、自らリスクを引き受けて事業を行う者であるか、どうかを判断する。 事業者性があれば労働者ではないが、ウーバーは注文者や飲食店と不必要な接触を禁止しており、配達員は自らの才覚で利得する機会がない(個人の裁量による営業活動はできない)。また、配送事業の損益はウーバーが負担しているので、自らの業務にリスクを負っているとはいえない。 したがって配達員は顕著な事業者性は持っていない、と都労委は判断した。 以上、4つの判断軸すべてにおいて配達員は労働者と認定されたが、これでウーバーの配達員の処遇が改善されるわけではない。あくまで労働組合として交渉する権利(会社は交渉に応じる義務)を得たにすぎない』、「あくまで労働組合として交渉する権利(会社は交渉に応じる義務)を得たにすぎない」、その通りだ。
・『係争が長引けばあと数年はかかる可能性も  しかもウーバー側は、都労委の決定に不服であれば中央労働委員会に再審査の申し立てができる。仮に中労委が申し立てを棄却しても、今度は地裁、高裁、最高裁まで争うこともでき、そうなれば決着するまで、あと数年はかかる可能性もある。 紛争が長引けば長引くほど、配達員は労働環境が改善されないまま働かねばならない。ウーバー側も「違法状態」を続けることになり、世間からの風当たりが強くなる。すなわち、双方が痛みを伴うことになる。 また、ユニオンは必ずしも、前述した労基法上の労働者になることを望んでいるわけではない。ウーバー側が配達員の労働者性を正式に認めると、労務管理を強化する可能性があることから、配達員の中には「自分のペースで働ける自由さを失いたくない」という声もある。 ユニオンが何より望んでいるのは、ウーバー側との団体交渉のテーブルにつき、報酬の決め方の明確化や事故時の補償の改善などについて話し合うことだ。 最後に、ギグワーカーの保護についての、日本の「出遅れ」についても触れておきたい。 ヨーロッパでは労働者性の有無に関係なく、就業中の事故に対する労災保険の適用や、失業時の補償などのセーフティーネットの整備が進みつつある。 また、ヨーロッパでは国が保険料を支払う場合もある。地域は異なるが、韓国も同様だ。スウェーデンのようにフリーランスも失業給付が受けられる国もある。 ギグワーカーを通常の労働者と違う「第3の労働者」と定義し、有給休暇や最低賃金を保障する国もある。 一方の日本では、昨年に自転車配達員の労災保険の「特別加入」が認められたが、自腹で保険料を支払わなくてはいけない。 ウーバーイーツのような料理宅配員は、コロナ禍の中で需要が拡大し、他社も含めると全国で約30万人に増えたといわれる。料理宅配以外のギグワーカーも増えている。にもかかわらず、保護する体制は不十分なのだ。 今回の都労委の判断を契機に、政府はギグワーカーのセーフティーネットの構築を急ぐべきだろう』、「ウーバー側が配達員の労働者性を正式に認めると、労務管理を強化する可能性があることから、配達員の中には「自分のペースで働ける自由さを失いたくない」という声もある。 ユニオンが何より望んでいるのは、ウーバー側との団体交渉のテーブルにつき、報酬の決め方の明確化や事故時の補償の改善などについて話し合うことだ」、「今回の都労委の判断を契機に、政府はギグワーカーのセーフティーネットの構築を急ぐべきだろう」、その通りだ。

次に、12月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した弁護士(東京駅前総合法律事務所)の井上裕貴氏による「退職代行サービス急増で「違法リスク」懸念大、事業者選びの注意点とは」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/314174
・『ブラック職場を辞めようとしたら懲戒解雇と賃金不払いの圧力  都内の中小メーカーで働くAさん(30代男性)は勤続10年の中堅社員だが、毎日終電まで残業が続き、体力・気力ともに限界にあった。 Aさんの職場は、休みは週1日、9日連続勤務も当たり前の、いわゆるブラック企業。 やむなく上司に「退職を検討している」と伝えたところ、ねぎらわれるどころか「そんなことをすれば懲戒解雇扱いにする」と、圧力をかけられる始末。さらに「懲戒解雇が前提なのだから、未払いの給与の支払い義務もない」と冷たく言われた。 落胆したAさんは会社を辞める決意をしたものの、退職届を出せば、会社と対立することは避けられない。また、会社に対する許せない気持ちもあった。超過勤務を労働基準法違反として告発したい、未払い給与を支払ってもらいたいとして、筆者の事務所に相談をしてきた。 筆者はAさんの会社の担当者に対し、会社として懲戒解雇を行うメリットがないことを伝え、Aさんが退職意思を示している以上、機械的に退職日を決めるよう伝えた。また、未払い給与を支払わないことは会社側にとって労基署に駆け込まれるなどのリスクが大きいので控えたほうがよいと伝えた。) 幸い、企業側がこちらからの申し入れを受け入れたため、Aさんは無事に退職することができた。 なお、即時解雇してくる会社に対しては、解雇予告手当(従業員に対して解雇日の30日以上前に、解雇予告せずに解雇を行う場合、支払いが義務付けられている手当のこと)を請求することもある。もっとも、そもそも解雇の有効性が疑問視される事案も多いため、このようなケースはそう多くはない。また、未払い給与については警告書を送るなどの対応も行っている。 こうしたことを行うには法律的な知識が必要であり、退職希望者が自分だけで対応するのは難しい』、「Aさんの会社」は文字通りの「ブラック企業」だ。「弁護士」が入ったことで、違法な「懲戒解雇」などをあきらめ、「Aさんは無事に退職することができた」のは何よりだ。
・『退職代行サービスが急増している理由  2010年代後半以降、「退職代行サービス」を行う事業者が増加している。 「退職代行サービス」とは、一言で言うと、労働者本人ではなく第三者がその労働者の代わりに職場に退職の意思を伝えるサービスである。 2017~18年頃よりメディア等で取り上げられることが多くなり、2022年現在では100社以上の退職代行業者が存在すると思われる。 なぜ退職代行サービスのニーズが増加しているのか。 その理由の一つは、昨今の人材不足にある。 例えば、職場を辞めようとすると「次の人が見つかるまで働いてほしい」「あなたに辞められたら職場が回らなくなる」等と圧力をかけられたり、部下の退職が上司の直接の評価に響く・部署に最低人数枠が決められているためその確保という会社側の都合により引き留められる、などといった問題が見受けられる。 他にも、パワハラなどにより職場に退職の意思を伝えることが困難、離職票など必要書類を用意してくれないなどといった理由で退職したくても言い出せない、というケースも存在する。 本来、退職自体は退職の意思表示を職場に行えば足りるものだが、このような理由から退職するという行為のハードルが上がってきている。 そこで、第三者が職場に退職の意思表示を伝え退職を完結させるという退職代行サービスのニーズが高まっていると思われる』、「本来、退職自体は退職の意思表示を職場に行えば足りるものだが、このような理由から退職するという行為のハードルが上がってきている。 そこで、第三者が職場に退職の意思表示を伝え退職を完結させるという退職代行サービスのニーズが高まっている」、なるほど。
・『退職代行会社における弁護士法違反のリスク  しかし一方で退職代行サービスについては問題点も指摘されている。具体的には退職代行サービスを専門的に行っているいわゆる「退職代行会社」の存在が、弁護士法違反なのではないかという問題だ。 弁護士法72条では、弁護士または弁護士法人以外は「その他の法律事務」を行ってはいけないと定められている。 「その他の法律事務」とは、「法律上の効果を発生、変更する事項の処理や、保全、明確化する事項の処理(東京地方裁判所平成29年2月20日判決・東京地方裁判所平成29年(ワ)第299号参照)」のことで、簡単に言うと、「退職」の意思表示を本人に代わり会社に伝えるという行為は「労働契約の終了」という法律上の効果を発生させるものなので、退職代行という行為は「その他の法律事務」に該当するのではないかということだ。 現状では、この問題の判例・裁判例は存在しないため、あくまで筆者の個人的な見解になるが、筆者は「弁護士または弁護士法人以外の個人や退職代行会社が業として行う退職代行は、確たる判例・裁判例は存在しないものの、弁護士法72条違反の可能性が極めて高い」と考えている。 例えば、ネット情報の削除代行業者が、サイト運営者にネット記事削除を求めることは、弁護士法72条に違反するため、削除代行業者と利用者との間の契約が無効であるとの裁判例が存在する。 よく退職代行会社のホームページに、「『代理人』ではなく『使者』であるため、弁護士法72条に違反していません」と記載していることがあるが、上記の裁判例を見ると、裁判所は「代理」か「使者」かという点には着目しておらず、「法律事務」という法律上の効果を発生、変更する事項の処理や、保全、明確化する事項の処理に当たるかどうかを端的に判断しているので、「『本人がこう言っているのを伝えているだけ』と全て『使者』の形式さえとれば弁護士法72条に違反しない」という理解は大変危険といえる。 また、退職代行会社のホームページで「非弁行為(弁護士でない者が、報酬を得る目的で、弁護士にのみ認められている行為をすること)となるため会社(勤務先)との交渉はいたしません」との記載を目にすることがあるが、「退職」という行為そのものが「労働契約の終了」という法律上の効果を発生させるものなので、「その他の法律事務」に該当すると筆者は考えている。 中には「顧問弁護士の指導を受けているので安心です」という退職代行会社もあるようだが、その顧問弁護士がこれまで述べてきたような弁護士法や裁判例について知らない可能性もある。 現状、退職代行サービスの弁護士法違反に関する判例・裁判例は存在しないとはいえ、弁護士および弁護士法人以外の退職代行会社については、弁護士法違反で担当者が逮捕されるリスクが存在するということに注意が必要だ』、「現状、退職代行サービスの弁護士法違反に関する判例・裁判例は存在しないとはいえ、弁護士および弁護士法人以外の退職代行会社については、弁護士法違反で担当者が逮捕されるリスクが存在するということに注意が必要だ」、なるほど。
・退職代行サービス利用時の具体的な流れと注意点  最後に、退職代行サービスの詳細と利用時の注意点について指摘したい。 まず、退職代行サービスの具体的な内容についてだが、筆者の法律事務所では次のような流れで行っている。 弊所への依頼はLINEのみで行っている。LINEで問い合わせを受けたら、弁護士との面談日程を調整し、その後、入金確認ができたら、弁護士と面談を行う。 面談では、まず本人確認を徹底している。このサービスは第三者になりすますことで悪用ができてしまうからだ。 その上で、職場に弁護士から連絡を行う日程等の打ち合わせ、退職理由についての確認、退職の意思が固いことの確認を行う。 面談でよくある相談としては、有給休暇の消化、退職日がいつになるか、損害賠償リスクがあるのか、というものが挙げられる。 有給休暇については、就業規則に定めがないとしても、法令で定められている日数を労働者に職場が与えなければならない。 退職日については、案件の内容に応じて弁護士が職場と交渉を行う。 損害賠償リスクについてはもちろん案件にもよるが、弊所ではこれまで一度も職場から労働者に損害賠償請求をされたケースはない。そうならないように面談の際にサービス利用者と綿密な打ち合わせをしているからだと思われる。 その後、弁護士からお客様の勤務先へ退職を行うという連絡を行う。もちろんサービス利用者から会社に退職の意向を伝える必要はない。 その後、引き継ぎや離職票発行、保険証返却、退職金や有給休暇の消化などもろもろの手続きを弁護士と勤務先で確認を行い、退職完了となる。 最近では、無免許の退職代行会社に依頼を行った結果、退職代行会社が職場に連絡を行わず無断欠勤扱いになった、有給休暇の消化ができなかった、退職金が減額になったなどのトラブルについての話をサービス利用者からよく聞くが、このようなトラブルを避けるため、筆者としては弁護士資格というしっかりとした国家資格を有する弁護士のいる法律事務所に相談することを強くおすすめしたい』、「トラブルを避けるため、筆者としては弁護士資格というしっかりとした国家資格を有する弁護士のいる法律事務所に相談することを強くおすすめしたい」、確かに「トラブル」回避は「法律事務所」選択では重要なようだ。
タグ:これまで「ウーバー」は。「配達員」を事実上の従業員としながら、雇用主としての義務を一切無視してきた。 「労働組合法上の」「組合」として「交渉権」を求めた。 「配達員の「労働者性」が認められた要因」とは興味深そうだ。 溝上憲文氏による「ウーバー配達員の「労働者性」認定、労組と運営なぜ揉めた?内幕を徹底解説」 ダイヤモンド・オンライン 労働 (その4)(ウーバー配達員の「労働者性」認定 労組と運営なぜ揉めた?内幕を徹底解説、退職代行サービス急増で「違法リスク」懸念大 事業者選びの注意点とは) 「憲法で保障された「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」の三権の具体的保障としての団体交渉の助成を目的とする「労働組合法」では、労働者の範囲が労基法よりも幅広い」、当然のことだ。 「あくまで労働組合として交渉する権利(会社は交渉に応じる義務)を得たにすぎない」、その通りだ。 「ウーバー側が配達員の労働者性を正式に認めると、労務管理を強化する可能性があることから、配達員の中には「自分のペースで働ける自由さを失いたくない」という声もある。 ユニオンが何より望んでいるのは、ウーバー側との団体交渉のテーブルにつき、報酬の決め方の明確化や事故時の補償の改善などについて話し合うことだ」、「今回の都労委の判断を契機に、政府はギグワーカーのセーフティーネットの構築を急ぐべきだろう」、その通りだ。 井上裕貴氏による「退職代行サービス急増で「違法リスク」懸念大、事業者選びの注意点とは」 「Aさんの会社」は文字通りの「ブラック企業」だ。「弁護士」が入ったことで、違法な「懲戒解雇」などをあきらめ、「Aさんは無事に退職することができた」のは何よりだ。 「本来、退職自体は退職の意思表示を職場に行えば足りるものだが、このような理由から退職するという行為のハードルが上がってきている。 そこで、第三者が職場に退職の意思表示を伝え退職を完結させるという退職代行サービスのニーズが高まっている」、なるほど。 「現状、退職代行サービスの弁護士法違反に関する判例・裁判例は存在しないとはいえ、弁護士および弁護士法人以外の退職代行会社については、弁護士法違反で担当者が逮捕されるリスクが存在するということに注意が必要だ」、なるほど。 「トラブルを避けるため、筆者としては弁護士資格というしっかりとした国家資格を有する弁護士のいる法律事務所に相談することを強くおすすめしたい」、確かに「トラブル」回避は「法律事務所」選択では重要なようだ。
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労働生産性(その1)(誤解多い「日本の中小企業の生産性低い」真の理由 労働生産性は「大企業の半分以下」にとどまる、日本の「サービス業の生産性」が下がり続けるワケ 質が高いのに生産性は米国の約半分のなぜ) [経済問題]

今日は、労働生産性(その1)(誤解多い「日本の中小企業の生産性低い」真の理由 労働生産性は「大企業の半分以下」にとどまる、日本の「サービス業の生産性」が下がり続けるワケ 質が高いのに生産性は米国の約半分のなぜ)を取上げよう。

先ずは、本年10月19日付け東洋経済オンラインが掲載した日本生産性本部 生産性総合研究センター 上席研究員の木内 康裕氏による「誤解多い「日本の中小企業の生産性低い」真の理由 労働生産性は「大企業の半分以下」にとどまる」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/626455
・『日本の経済成長を議論するうえで、「生産性の低さ」は大きな課題となっている。労働生産性を見ると、主要先進7カ国(G7)で最も低く、OECDでも23位にとどまる。 ただ、生産性に対する誤解は少なくない。「生産性が低い」と感じる人がいる一方で、「こんなに一生懸命働いていて、もうこれ以上働けないくらいなのに、生産性が低いといわれても……」と思う人もいる。実は「企業レベルの生産性向上が進んでも、国レベルの労働生産性向上には必ずしもつながらない部分がある」と指摘するのが、日本生産性本部の木内康裕・上席研究員だ。 はたして生産性とは何なのか、生産性を向上させるためにはどうすればいいのか。生産性の謎を解く連載の第2回は、生産性向上の議論をする際、近年の大きなテーマの1つとなっている「生産性が低い中小企業」の問題について木内氏が解説する。 日本生産性本部「労働生産性の国際比較2021」によると、日本の労働生産性は49.5ドル(5086円)で、OECD加盟38カ国の中で23位にとどまっており、主要7カ国(G7)で最下位の状況が続いている。 これは、各国で1時間働いたときに生み出された付加価値額(=GDP)を比較したものである。そのとき、各国の物価水準の違いを調整する形でドルに換算する(購買力平価換算)。企業業績のように実際にいくら稼いだかをそのまま実勢レートでドルに換算するものとは少し異なる。いくつかの経済統計を基にした、いわば経済学的な手法で測定したものだ。 日本と同水準の国に西欧諸国がほとんどなく、リトアニアやチェコ、エストニアあたりになっていることはやや衝撃的ですらある』、「各国で1時間働いたときに生み出された付加価値額(=GDP)を比較したもの」を「購買力平価換算」した結果は、「OECD加盟38カ国の中で23位にとどまっており、主要7カ国(G7)で最下位」、「日本と同水準の国に西欧諸国がほとんどなく、リトアニアやチェコ、エストニアあたりになっていることはやや衝撃的」、確かに「衝撃的」ではある。
・『多くの要因が複合的に左右する根が深い問題  何が原因なのかというと、前回(『誤解がかなり多い「日本の生産性が低い」真の理由』)もふれたが、無駄な業務が多いとか、仕事が効率的でない、業務プロセスが旧態依然のままだといったことが働く人からはよく挙げられる。 マクロレベルでみると、①イノベーションがあまり起きなくなった(起こせなくなった)こと、②人材や設備に対する投資が減っていること、③これまでのデフレで低価格化競争が進み、諸外国と同じようなモノやサービスを提供しても、受け取れる粗利(≒付加価値)が少なくなっていること、④企業の新規開業や統廃合が少ないこと、⑤労働人口の多いサービス産業の生産性が諸外国より低いこと、などがよく指摘される。 つまり、働く人々の実感から学術研究に基づくものまで実に多くの要因が挙げられており、それがおそらく複合的に作用していて非常に根が深い問題になっているということだ。 そのためか、日本の生産性向上に向けた提案も、多くの人が多岐にわたる観点から行っている。主なテーマについては、この連載でも次回以降詳しく述べていく予定だが、ここでは少し視点を変えて、「あまり儲かっていない」中小企業の問題についてふれてみたい。 一般に、中小企業の労働生産性は、多くの分野で大企業より低いといわれている。 中小企業をどう定義するかにもよるが、例えば中小企業白書(2022年版)をみると、製造業の労働生産性(従業員1人当たり付加価値)は大企業で1180万円だが、中小企業では520万円にとどまっている。非製造業でも大企業が1267万円であるのに対し、中小企業は520万円である。つまり、中小企業の労働生産性は大企業の半分以下でしかない。 そのため、中小企業の生産性が向上すれば日本全体の生産性向上にもつながるといわれてきた。とくに中小企業が多いサービス産業分野を中心に、多くの企業や政府、民間団体などがさまざまな取り組みを行ってきた経緯がある』、「中小企業の労働生産性は大企業の半分以下」、どう読んだらいいのだろう。
・『日本の中小企業の6割以上が赤字の理由  もともと、日本の中小企業は6割以上が赤字である。東京商工リサーチによると、コロナ禍の影響が本格化しない2019年度でみても赤字(欠損)法人の割合は65.4%にのぼる。2010年前後に75%近かった状況からは改善傾向にあるものの、おおむね3分の2の中小企業が赤字ということになる。 このような赤字企業は、業績不振で多くの付加価値を生み出せなかったところももちろんあるが、税制上のメリットを享受するために会計上赤字にしている企業も少なくないと昔から言われている。 これは、赤字だと法人税負担が大幅に減り、場合によっては還付金を受け取れること、繰越欠損金控除を利用してその後も赤字を繰り越せることなどが認められているためだ。 資金繰りの厳しい中小企業が、合法的な範囲で節税に励むのはもちろん悪いことではない。しかし、このような行動が中小企業の付加価値創造を抑制してしまえば、労働生産性を押し下げる要因にはなっても、労働生産性の向上に結び付くとは考えにくい。 生産性のみならず、日本経済の成長性や活力を考えるうえでも、こうした企業をどうしていくことが望ましいのかは考える必要があるだろう。 考えられる方策の1つは、ノウハウや財政などの支援により、そうした企業の生産性を向上させていく「底上げ」策である。これは、経済産業省が行っている「サービス等生産性向上IT導入支援事業」のように生産性向上に役立つデジタル化の取り組みに補助金を支給する事業や、ベンチマーク可能な生産性向上事例を収集・周知する事業などが代表的なものだ。 もう1つは、競争メカニズムが効果的に働いていれば、生産性の低い企業がいずれ市場から退出すること(簡単にいえば倒産や廃業)になり、生産性が高くて賃金も多く払える企業に集約されていくようにすることだ。そうすると結果的に日本全体の生産性も上昇することになる。 最低賃金の引き上げを通じて、それを払えないような企業を淘汰し、生産性や賃金がもっと高い企業に労働者や資金を移動させていくべきだとするデービッド・アトキンソン氏のような意見も、こうした考え方に基づくものといえる。 では、日本の生産性が低いのは中小企業が足を引っ張っているからなのだろうか。これは一部で正しく、一部で正しくない』、どういうことだろう。
・『大企業の生産性を上回る中小企業もある  知識や資金、能力的な制約を抱える中小企業が多いこともあり、統計的に生産性の平均値でみるとどうしても大企業に見劣りしてしまう。 しかし、東京商工リサーチが提供する企業財務データベースを基に筆者が中小企業の生産性の分布をみると、必ずしも生産性の低い企業ばかりではない。従業員100人以下でも、労働生産性(従業員1人当たり付加価値)が2000万円以上の企業が3%程度存在している。 これは、不動産業のように業種特性的に生産性が高くなりやすい分野の企業が含まれていることもあるが、他の分野でもばらつきが非常に大きく、中には大企業の平均的な生産性水準を上回る企業もあることを示す。 実際、優れた技術やノウハウを持ち、ニッチな市場でリーダーになっているような中小企業では、大企業と遜色ない生産性水準や賃金水準になっていることも少なくない。 飲食店や各種小売業、コンサルティングや設計といった専門サービスなどの分野でも、事業環境の変化や消費者の嗜好をうまくつかんで成果につなげられるキーパーソンが1人でもいれば、生産性を高めて大企業と互角に渡り合うことは十分に可能だ。 そのようなやる気があって生産性の高い中小企業が規模を拡大させていければ、産業全体に活力が生まれ、生産性も改善していくことになる。) 問題は、日本ではなかなかそのようなダイナミズムがなく、ともすれば現状維持に意識が向きがちという点だ。 中小企業の方と話をしても、事業改革や生産性向上のために何かしたくても人がいないという話をよく聞く。さまざまな業務を担ってくれる人手が足りないということだけでなく、ICT活用や事業のデジタル化などを含めて生産性をどう向上させていくかを立案・実行する人材がなかなかいないという意見が多い。 経営者自身、あるいは後継者がそうしたキーパーソンになれれば、問題はあまりないかもしれない。しかし、そうでない場合にはどう人材を育成・確保するかを考える必要がある。これは中小企業だけでなく、大企業にも当てはまる課題といってよい』、「中小企業」では、「経営者自身、あるいは後継者が」、「ICT活用や事業のデジタル化などを含めて生産性をどう向上させていくかを立案・実行する」先頭に立ってゆく必要がある。
・『大学院修了者を活用できていない日本  企業や経済の成長や生産性向上には、イノベーションが欠かせないとよくいわれる。そのイノベーションを起こすにあたっても、人材の問題は避けて通れない。働く人が一生懸命に頑張ることも大事だが、イノベーションを生み出すための研究開発やマネタイゼーションには専門性の高い有能な人材が欠かせないからだ。 日本生産性本部とアメリカ・ブルッキングス研究所による研究によると、高度なスキルを持つ大学院修了者の比率が日本では3%に満たず、10%を超えるアメリカやドイツの1/3以下でしかない。これでは、イノベーションの担い手になる高度なスキルを持つ人々が少なすぎるといわざるをえないだろう。 しかも、政策的に支援が講じられつつあるとはいえ、博士号を取っても仕事がないポスドク問題などをみるかぎり、その数少ない人々すら十分に活用できているか心もとないのが実情だ。) また、大学院修了後の所得が高卒と比較してどのくらい高くなっているかを比較すると、日本の男性大学院修了者は高卒男性より47%所得が高くなっている。 しかし、アメリカ(同72%)やドイツ(同59%)と比べると、高度なスキルを持つことに対する「プレミアム(金銭的な見返り)」が大きいわけではない。日本はある意味で平等ともいえるが、高い専門性を得るために学歴に投資をするインセンティブが弱く、イノベーションの担い手を増やす環境が十分ではないということだ。 知的好奇心や世の中に貢献したいという使命感から大学院に進み、研究活動をする立派な人ももちろん多くいるが、その後の不確実性から二の足を踏む人も少なくない。そうした人の背を押すためにも、もう少しインセンティブを考える必要があるだろう』、「ポスドク問題」は企業にとっては、使い難いなどの批判が出ていることも事実だ。大学側の育て方にも問題があるとの声も根強い。
・『専門性やスキルに投資する魅力が欠けている  アメリカは、高等教育段階でSTEM(科学・技術・工学・数学)分野に大量の留学生を受け入れており、彼らがさまざまなイノベーションの担い手にもなっている。彼らは、アメリカの労働力全体の17%、STEM分野の23%を占め、1990~2000年にノーベル賞を受賞したアメリカの研究者のうち26%が海外出身者になっているという。 今の日本の環境では、こうした動きも望むべくもない。 もちろん、イノベーションは学歴やスキルだけで生み出されるわけではない。しかし、専門性やスキルに多くの投資をする魅力に欠けているのに、多くのイノベーションを期待するのは酷な話であろう。 こうした状況は一気に変えられるものでもないが、専門的なスキルを持つ人材が多く育成され、(成功すれば)多くの見返りを得られるような環境づくりをしていかなければ、いつまでも状況は変わらない。 『君主論』で有名なイタリアの政治思想家マキアヴェリは「君主たるものは、才能ある人材を登用し、その功績に対しては十分に報いることも知らねばならない」と述べている。 この言葉は、今の日本でも省みる価値があるように思われる。最近は、人的資本への投資や賃上げの必要性が叫ばれるようになっている。その中でこのような問題も解決されていくことを望みたい』、「マキアヴェリ」まで「人的資本への投資や賃上げの必要性」を説いたというのは初めて知った。日本でも「専門的なスキルを持つ人材が多く育成され、(成功すれば)多くの見返りを得られるような環境づくりをして」ゆくべきだろう。

次に、12月9日付け東洋経済オンラインが掲載した 東京都立大学教授の宮本 弘曉氏による「日本の「サービス業の生産性」が下がり続けるワケ 質が高いのに生産性は米国の約半分のなぜ」を紹介しよう。
・『日本といえば、世界的にもサービスの品質が高いことで知られているが、実は労働生産性という観点ではアメリカの約半分だという。元IMFのエコノミストで、東京都立大学教授の宮本弘曉氏は、日本の労働生産性が低いのは、人的資本・物的資本の枯渇――つまり、「人やモノにお金をかけない」からだと断言する(本記事は宮本氏著『51のデータが明かす日本経済の構造 物価高・低賃金の根本原因』の抜粋記事です)』、「日本の労働生産性が低いのは、人的資本・物的資本の枯渇――つまり、「人やモノにお金をかけない」からだ」、「カネ」の面では、内部留保は貯まる一方で、それを有効活用していないことになる。
・『改革のカギは「日本型雇用」にあり  日本で賃金が停滞している大きな原因は、生産性が低迷していることと、相対的に賃金が低い非正社員が増加していることです。では、なぜ生産性は低迷しているのでしょうか。 日本で生産性が低迷している大きな理由としては、企業行動が積極姿勢を欠き、守りの経営に入り、企業が人や資本に投資をしなくなったことがあげられます。また、日本的雇用慣行により、労働市場が硬直化してしまい、その結果、経済の新陳代謝が低くなっていることも、生産性の低迷につながっていると考えられます。 非正社員の増加という労働者構成の変化の背後にも、日本の雇用慣行の存在があります。日本では正社員を雇用すると、解雇するのが難しいため、経済が長期にわたり停滞し、将来の見通しが立たないときには、雇用調整のコストが低い非正社員を用いるというのは企業の合理的な判断となりえます。 さらに、日本的雇用慣行は労働者が賃金交渉において声をあげにくい環境を作っており、賃金低迷の原因となっています。ここでは、企業行動と雇用慣行に注目しながら、労働生産性が低迷している理由について考えることにしましょう。) あらためて日本の労働生産性の現状を確認しておきましょう。 上の図は、日本の労働生産性をOECD加盟諸国と比較したものです。2020年の日本の1時間当たりの労働生産性は49.5ドル(5086円)でした。これはOECD加盟国の平均59.4ドルより、2割弱低い数字です。OECD加盟38か国中、日本の順位は23位となっており、データが取得可能な1970年以降、もっとも低い順位となっています。 G7に注目すると、もっとも生産性が高いのがアメリカで80.5ドル、次がフランスの79.2ドル、そして、ドイツの76.0ドルとなっており、日本の順位はもっとも低くなっています。なお、G7における日本の順位は、1970年以降、50年以上にわたって最下位です。日本の1時間当たりの労働生産性は、アメリカの6割程度しかないのが現状です』、「2020年の日本の1時間当たりの労働生産性は49.5ドル(5086円)でした・・・OECD加盟38か国中、日本の順位は23位と」、「データが取得可能な1970年以降、もっとも低い順位」、「G7における日本の順位は、1970年以降、50年以上にわたって最下位」、酷い数字だ。
・『1人当たりの労働生産性でも出遅れている  なお、1時間当たりでなく1人当たりでも労働生産性を測ることがあります。付加価値を就業者数で割ることで求められる1人当たりの労働生産性は、2020年に日本では7万8655ドル(809万円)でした。これはOECD加盟38カ国中28位にあたります。 アメリカの就業者1人当たりの労働生産性は14万1370ドルとなっており、日本はその56%しかありません。また、かつては日本のほうが韓国より上位でしたが、2018年に逆転され、2020年の日本の就業者1人当たりの労働生産性は韓国より6%程度低くなっています。 労働生産性は産業ごとにも大きく異なっています。ここでは大きく、製造業とサービス業の2つをみていきましょう。 日本生産性本部によると、2019年における日本の製造業の労働生産性は、1時間当たり5512円、就業者1人当たり1054万円でした。一方、サービス業では1時間当たり91円、就業者1人当たり781万円と、サービス業の労働生産性は、製造業よりも低い水準にあることがわかります。 GDPに占める製造業の割合は約2割で、経済活動の大部分はサービス業で行われていることから、サービス業の労働生産性の低さが、日本全体の労働生産性を押し下げる要因となっていることがわかります。 次に、産業別に日本の労働生産性を他の先進諸国と比べてみましょう。まず、製造業について、2017年時点で、日本の労働生産性はイギリスやイタリアとほとんど同水準にある一方、アメリカより約30%、フランスより約23%、ドイツより約17%低い水準になっています。20年前の1997年の数字と比較すると、日本とこれらの国で労働生産性の格差はほとんど拡大していないことがわかります。) では、サービス業はどうでしょうか? 2017年における日本のサービス業の労働生産性は、アメリカの約半分で、ドイツ、フランス、イギリス、イタリアより約27~35%低くなっています。製造業とは異なり、20年前の1997年の数字と比べると、日本と欧米諸国間の労働生産性格差が拡大していることがわかります。例えば、日本のサービス業の労働生産性を100とした場合の1997年におけるアメリカの労働生産性は174.5ですが、2017年は205.4となっています。 日本のサービス業の労働生産性がアメリカよりも低いと聞くと、遠和感を覚える方がいるかもしれません。アメリカのみならず、海外に旅行したり、住んだりしたことがある方は、日本のサービスの質が世界のなかでいかに優れているかを、肌身で感じられているのではないかと思います。 例えば、日本では電車が定刻どおり、寸分の狂いもなく正確に来ますが、そんな国は他にほとんどありません。私がかつて住んでいたアメリカの首都ワシントンD.Cのメトロ(地下鉄)には、そもそも時刻表がありませんでした。 また、日本のレストランやホテルでは、どこでも従業員が笑顔で両手を前に重ねて深々と頭を下げるのは日常風景ですが、海外であんな質の高いサービスを受けたければ、最高級のレストランやホテルに行かなくてはいけません。「日本の常識、世界の非常識」と言われることがありますが、日本と海外のサービスの質をうまく描写していると思われます』、「2019年における日本の製造業の労働生産性は、1時間当たり5512円、就業者1人当たり1054万円でした。一方、サービス業では1時間当たり91円、就業者1人当たり781万円」、「サービス業の労働生産性の低さが、日本全体の労働生産性を押し下げる要因となっている」、「サービス業はどうでしょうか? 2017年における日本のサービス業の労働生産性は、アメリカの約半分で、ドイツ、フランス、イギリス、イタリアより約27~35%低くなっています」、「日本では電車が定刻どおり、寸分の狂いもなく正確に来ますが、そんな国は他にほとんどありません」、「日本のレストランやホテルでは、どこでも従業員が笑顔で両手を前に重ねて深々と頭を下げるのは日常風景ですが、海外であんな質の高いサービスを受けたければ、最高級のレストランやホテルに行かなくてはいけません。「日本の常識、世界の非常識」と言われることがありますが、日本と海外のサービスの質をうまく描写」、その通りだ。
・『日本とアメリカ、サービス業の差はどれくらい?  実際に、日本とアメリカでサービス業の質はどれくらい違うのでしょうか?下の図はアメリカ滞在経験のある日本人、また、日本滞在経験のあるアメリカ人を対象に、28の対人サービス業分野について、日米のサービス産業の品質の差に相当する価格比(日米の各サービスへの支払い意思額の比)を質問したアンケート結果を示したものです(出所:深尾京司、池内健太、滝澤美帆(2018)「質を調整した日米サービス産業の労働生産性水準比較」日本生産性本部、生産性レポートVol.6)。 ここから、米国滞在経験のある日本人は、宅配便やタクシー、コンビニなどの分野で、日本のサービスを享受するために、アメリカでの同種のサービス価格に比べて15?20%程度、高い金額を支払ってもいいと回答していることがわかります。さらに、ホテルやレストランでも1割程度、日本はアメリカより品質が高いと認識されています。 このようにアンケート調査からも日本のサービスの品質は、アメリカよりも高くなっていることがわかります。では、サービスの質を考慮した場合、日本とアメリカの労働生産性はどの程度異なるのでしょうか?) サービスの質を考慮して調整した労働生産性の日米比較を行った研究によると、調整後の日本の労働生産性の水準は、調整前のものよりも高くなっています。これは、アメリカよりも日本のほうがサービスの質が高いとするアンケートの回答結果と整合的です。 しかし、質の高さを考慮しても、労働生産性はアメリカのほうが日本よりも依然として高くなっています。その理由は、日本の価格が安いからです。品質に応じた価格がついていれば、「品質が高い=生産性が高い」になるのですが、日本の物価はこの30年間ほとんど上がっていないのに対して、アメリカでは物価が上がり続けたため、このような結果となってしまうのです』、「質の高さを考慮しても、労働生産性はアメリカのほうが日本よりも依然として高くなっています。その理由は、日本の価格が安いからです。品質に応じた価格がついていれば、「品質が高い=生産性が高い」になるのですが、日本の物価はこの30年間ほとんど上がっていないのに対して、アメリカでは物価が上がり続けたため、このような結果となってしまうのです」、逆に言えば、「日本」は「サービス」を安売りし過ぎていることになる。
・『日本の労働生産性が低迷しているワケ  現在まで、日本の労働生産性はどのように変化してきたのでしょうか?下の表は1970年以降、およそ10年ごとの労働生産性の変化率の動向を示したものです(出所:深尾京司、牧野達治「賃金長期停滞の背景(上)製造業・公的部門の低迷響く」日本経済新聞、経済教室(2021年12月6日))。日本の労働生産性の上昇率は、長期的に低下傾向にあることがわかります。 1970年代や80年代の労働生産性の上昇率は約45?51%と非常に高いものでしたが、90年代には約21%、2000年代は約12%に低下しています。こうした労働生産性上昇の減速が賃金成長率の低迷の主要因です。  ではなぜ、日本の労働生産性上昇率は低下したのでしょうか?この問いに答えるためには、労働生産性がどのように決まるのかを考える必要があります。労働生産性は、労働成果の指標である付加価値を労働投入量で割ったものとして定義されます。つまり、次のように表せます。 労働生産性=「付加価値÷労働投入量」 ここから、労働生産性が低くなる理由としては、付加価値が小さいこと、あるいは労働投入量が多い、つまり過剰労働になっていること、あるいはその両方が考えられます。逆に、労働生産性を高めるには付加価値を増やすか、労働投入量を節約するか、あるいはその両方が必要になるということです。 付加価値を生み出すには、機械や設備などの「資本」や、それを使いこなす「労働」といった生産要素が必要となります。また、生産技術や経営効率、組織運営効率なども付加価値に影響すると考えられます。これら生産要素以外で付加価値に寄与するものを「全要素生産性(TFP)」と言います。 生産要素のひとつである「労働」は、単にどれだけ働いたかだけではなく、労働者の持つスキルや経験など「労働の質」にも左右されます。つまり、労働は労働投入量(就業者数×労働時間)と労働の質の2つに分けて考えることができます。労働生産性は付加価値を労働投入量で割ったものですから、労働生産性は、労働の質、資本装備率(労働力当たりの資本)、そしてTFPの3つにより決まることがわかります。 先の表では、労働生産性の上昇率を、労働の質上昇、資本装備率上昇、そしてTFP上昇に要因分解しています。これをみると、1990年までの労働生産性の高い伸びは、資本装備率やTFPの上昇に大きく支えられていたことがわかります。 しかし、その後、1990年代にはTFPが大幅に減速し、それに伴い労働生産性の上昇も減速します。2000年以降、TFPの上昇は若干回復しますが、労働の質の低下と資本蓄積の減速により、労働生産性は停滞しています。ここからわかることは、この20年間の労働生産性の低迷、つまりは賃金の低迷の背景には、物的・人的資本そしてTFPの停滞があるということです』、「この20年間の労働生産性の低迷、つまりは賃金の低迷の背景には、物的・人的資本そしてTFPの停滞があるということです」、設備投資は堅調な動きを続けているので、「物的資本」はやがて押し上げる要因に変わる可能性もある。
タグ:労働生産性 (その1)(誤解多い「日本の中小企業の生産性低い」真の理由 労働生産性は「大企業の半分以下」にとどまる、日本の「サービス業の生産性」が下がり続けるワケ 質が高いのに生産性は米国の約半分のなぜ) 東洋経済オンライン 木内 康裕氏による「誤解多い「日本の中小企業の生産性低い」真の理由 労働生産性は「大企業の半分以下」にとどまる」 「各国で1時間働いたときに生み出された付加価値額(=GDP)を比較したもの」を「購買力平価換算」した結果は、「OECD加盟38カ国の中で23位にとどまっており、主要7カ国(G7)で最下位」、「日本と同水準の国に西欧諸国がほとんどなく、リトアニアやチェコ、エストニアあたりになっていることはやや衝撃的」、確かに「衝撃的」ではある。 「中小企業の労働生産性は大企業の半分以下」、どう読んだらいいのだろう。 どういうことだろう。 「中小企業」では、「経営者自身、あるいは後継者が」、「ICT活用や事業のデジタル化などを含めて生産性をどう向上させていくかを立案・実行する」先頭に立ってゆく必要がある。 「ポスドク問題」は企業にとっては、使い難いなどの批判が出ていることも事実だ。大学側の育て方にも問題があるとの声も根強い。 「マキアヴェリ」まで「人的資本への投資や賃上げの必要性」を説いたというのは初めて知った。日本でも「専門的なスキルを持つ人材が多く育成され、(成功すれば)多くの見返りを得られるような環境づくりをして」ゆくべきだろう。 宮本 弘曉氏による「日本の「サービス業の生産性」が下がり続けるワケ 質が高いのに生産性は米国の約半分のなぜ」 宮本氏著『51のデータが明かす日本経済の構造 物価高・低賃金の根本原因』 「日本の労働生産性が低いのは、人的資本・物的資本の枯渇――つまり、「人やモノにお金をかけない」からだ」、「カネ」の面では、内部留保は貯まる一方で、それを有効活用していないことになる。 「2020年の日本の1時間当たりの労働生産性は49.5ドル(5086円)でした・・・OECD加盟38か国中、日本の順位は23位と」、「データが取得可能な1970年以降、もっとも低い順位」、「G7における日本の順位は、1970年以降、50年以上にわたって最下位」、酷い数字だ。 「2019年における日本の製造業の労働生産性は、1時間当たり5512円、就業者1人当たり1054万円でした。一方、サービス業では1時間当たり91円、就業者1人当たり781万円」、「サービス業の労働生産性の低さが、日本全体の労働生産性を押し下げる要因となっている」、 「サービス業はどうでしょうか? 2017年における日本のサービス業の労働生産性は、アメリカの約半分で、ドイツ、フランス、イギリス、イタリアより約27~35%低くなっています」、「日本では電車が定刻どおり、寸分の狂いもなく正確に来ますが、そんな国は他にほとんどありません」、「日本のレストランやホテルでは、どこでも従業員が笑顔で両手を前に重ねて深々と頭を下げるのは日常風景ですが、海外であんな質の高いサービスを受けたければ、最高級のレストランやホテルに行かなくてはいけません。「日本の常識、世界の非常識」と言われ ることがありますが、日本と海外のサービスの質をうまく描写」、その通りだ。 「質の高さを考慮しても、労働生産性はアメリカのほうが日本よりも依然として高くなっています。その理由は、日本の価格が安いからです。品質に応じた価格がついていれば、「品質が高い=生産性が高い」になるのですが、日本の物価はこの30年間ほとんど上がっていないのに対して、アメリカでは物価が上がり続けたため、このような結果となってしまうのです」、逆に言えば、「日本」は「サービス」を安売りし過ぎていることになる。 「この20年間の労働生産性の低迷、つまりは賃金の低迷の背景には、物的・人的資本そしてTFPの停滞があるということです」、設備投資は堅調な動きを続けているので、「物的資本」はやがて押し上げる要因に変わる可能性もある。
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