SSブログ

医療問題(その24)(精神病院から出られない医療保護入院の深い闇 現場医師の裁量で強制長期入院も可能になる、夫の策略で「強制入院3カ月」妻が味わった悪夢 精神疾患の既往歴なしの人が精神科病院に幽閉、コロナ下で医療崩壊危機を高める「都立病院の独法化」は必要なのか) [生活]

医療問題については、2月10日に取上げた。今日は、(その24)(精神病院から出られない医療保護入院の深い闇 現場医師の裁量で強制長期入院も可能になる、夫の策略で「強制入院3カ月」妻が味わった悪夢 精神疾患の既往歴なしの人が精神科病院に幽閉、コロナ下で医療崩壊危機を高める「都立病院の独法化」は必要なのか)である。

先ずは、3月1日付け東洋経済オンライン「精神病院から出られない医療保護入院の深い闇 現場医師の裁量で強制長期入院も可能になる」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/331577
・『精神疾患により医療機関にかかっている患者数は日本中で400万人を超えている。そして精神病床への入院患者数は約28万人、精神病床は約34万床あり、世界の5分の1を占めるとされる(数字は2017年時点)。人口当たりで見ても世界でダントツに多いことを背景として、現場では長期入院や身体拘束など人権上の問題が山積している。本連載では日本の精神医療の抱える現実をレポートしていく。 「緊急の帝王切開で手術室に入り、出てきたときには卵管結紮されていました。自分のまったく知らないところで不妊手術をされていたと聞いたときはショックでした」 今年1月30日、日本弁護士連合会に人権救済の申立書を提出した米田恵子さん(43歳)は、その心中を吐露した。申し立ては旧優生保護法下での強制不妊手術の救済策が議論される一方、条項の削除後も、精神障害者などに不妊手術が行われている実態を告発するものだ。 連載第1回「精神病院に4年閉じ込められた彼女の壮絶体験」(2020年1月28日配信)で詳しく報じたとおり、米田さんは今年1月上旬まで、精神科病院に長期入院していた。最後の子どもを分娩し不妊手術が実施されてから1年後の2016年2月に入院し、その後院内での生活はおよそ4年間にわたった』、「自分のまったく知らないところで不妊手術をされていた」、「院内での生活はおよそ4年間にわたった」、こんな人権侵害があるとは「精神医療」の闇だ。
・『当事者からの声が140件以上集まった  これを報じた記事への反響は大きく、本連載の情報提供フォーム(文末に設置)には、すでに140件を超える当事者や医師、看護師、精神保健福祉士など医療関係者からの切実な声が寄せられている。どれも日本の精神医療の抱える問題を告発するものばかりだ。また、「本人も家族も退院を望んでいるのに、なぜ退院できなかったのか。その理由を知りたい」という読者からの声も多く届いた。今回はその理由に迫りたい。 米田さん自身も、入院当初はすぐに退院できるものだと思っていたという。ところが主治医からは「何でも自分の思うとおりになると思わないでください。私はあなたのことを信用していません」と言われ、「パーソナリティ障害」との診断名を付けられた。退院の見通しが立つまで、まだ1年近くかかると通知された。 「せいぜい1~2カ月だと思って同意したのに、まさかこんなに長くなるとは思わなかった」。思った以上に長い入院計画に驚いたのは、当初入院に同意した米田さんの妹も同様だった。 米田さんを支援した佐藤暁子弁護士は、病院側とのやり取りをこう振り返る。「精神科に入院している場合、まず弁護士につながることが非常に難しい。今回弁護士が介入しても、病院側は『社会に迷惑をかける』などと、極めて抽象的で法的根拠のない理由を繰り返し、なかなか退院に向けた話が進まなかった」』、「弁護士が介入しても・・・なかなか退院に向けた話が進まなかった」、人権侵害の極致だ。
・『極めて使い勝手がよい制度  妹や弁護士のバックアップがあったにもかかわらず、米田さんが4年近くも入院を余儀なくされた背景にあるのが、精神科特有の入院制度である「医療保護入院」だ。医療保護入院は精神保健福祉法が定める強制入院の1つ。本人が入院に同意しない場合に、家族など1人の同意に加え、同じく1人の精神保健指定医の診断があれば、強制入院させられる。 自由の制約という点では同じ刑事事件の場合、逮捕・勾留には現行犯以外は令状が必要で、その発行には裁判所の判断が介在するが、医療保護入院にはそれがない。刑期の決まっている刑事事件に対して、医療保護入院には入院期間の定めがない。 「刑事法になぞらえて言えば、医療保護入院は、入院期間の決定をすべて指定医の判断にゆだねる絶対的不定期刑に等しく、近代法では罪刑法定主義の原則上、許されないとされているもの。本人の不利益があまりに大きすぎる制度だ」。同制度に詳しい小笠原基也弁護士は話す。 また同じ強制入院でも自傷や他害のおそれがある場合に適用される「措置入院」は、2人の指定医の診断を受け、都道府県知事が入院を決める制度だ。複数の医師と行政が介在することで、ある程度は第三者の視点が入りやすいが、医療保護入院にはそれもない。 つまり、医療保護入院はある人を入院させたいと考える側にとって極めて使い勝手がよい制度で、実際その件数は年々増加している。厚生労働省によれば、2018年度の医療保護入院の届け出数は18万7683件(「衛生行政報告例」)。6万件前後で推移した1990年代前半と比べ、3倍超に膨らんでいる。 さらに家族1人の同意が必要というのも、入院する時点に限ってのものだ。いったん入院してしまったら、その後家族が同意を撤回しても、入院継続の必要性の判断はあくまで指定医に委ねられることになる。米田さんのケースでも妹が退院を求めても、なかなか出られなかったのはそのためだ。 また米田さんのように主治医の指示で、家族とも一切の面会、そして通話すら禁止された場合、家族は本人の意向を確認することが難しく、結局は医師の判断に委ねざるをえないケースがほとんどだろう。 つまり医療保護入院の仕組みは、入院や行動制限の要否を判定する精神保健指定医の判断の正当性がすべての前提となっている。指定医の患者に対する権限は絶大だ。だが、同資格をめぐっては数年前に制度の根幹を揺るがすような大きな不祥事が起きている。 2015年、聖マリアンナ医科大学病院で、組織的な指定医資格の不正取得が発覚した。指定医資格を得るには、5年以上医師として働き、うち3年以上は精神障害の診断、治療に従事することが前提だ。そのうえで、自ら担当として診断、治療した症例について作成されたケースレポートで審査される。 あろうことかこのレポートで、ほかの医師が診察して作成したものを使い回していたことが明らかとなった。審査対象のレポートが大量に「コピペ」されていたというわけだ。その後の厚生労働省の全国調査で、100人強の不正が認定され、その多くが指定取り消し処分に加え、戒告・業務停止などの行政処分を受けることになった』、「医療保護入院はある人を入院させたいと考える側にとって極めて使い勝手がよい制度で・・・2018年度の医療保護入院の届け出数は18万7683件・・・6万件前後で推移した1990年代前半と比べ、3倍超に膨らんでいる」、「医療保護入院の仕組みは、入院や行動制限の要否を判定する精神保健指定医の判断の正当性がすべての前提となっている。指定医の患者に対する権限は絶大だ」、医師性善説を前提にしているのだろうが、病床の稼働率を上げため、「判断」が歪むことが背景にある筈だ。少なくとも「措置入院」のように、「2人の指定医の診断を受け、都道府県知事が入院を決める」といった歯止めが必要だ。
・『第三者機関も形骸化  また入院後に患者や家族が、第三者機関である精神医療審査会に対して、退院請求や処遇改善請求を行う制度もあるが、「ほとんど形骸化している」と、同制度に詳しい関係者は口をそろえる。 審査会の構成は指定医である医療委員が過半を占めるものが大多数で、「審査会は非公開で、あたかも本人の出席を原則としないかのような運用で、請求しても認められないことが多く、しかも事実認定が裁判基準からすると緩すぎる」と、審査会の法律委員を務めた経験のある佐藤弁護士は批判する。 実際、昨年5月には、米田さんの退院請求、処遇改善請求とも退けられている。退院が認められない理由は、「入院者に病識や自省がなく、その治療の必要性に関する認識が不十分であるため」だとされたが、その判断の具体的な根拠は示されていない。 東京都の精神医療審査会が2018年度の退院請求審査206件のうち、退院を認めたのはたったの1件。もはや「開かずの扉」となっている』、「第三者機関も形骸化」、「審査会の構成は指定医である医療委員が過半を占めるものが大多数」、まずは「構成」に弁護士などを増やすべきだろう。
・『「問答無用で徹底的に痛めつける」  日本社会事業大学大学院の古屋龍太教授はこう批判する。 「一精神科医の判断と家族等の同意によって、一個人を公権力によらず強制的に精神科病院に入院させる制度は、この日本にしか存在しない。裁判所等が関与する治療のための強制入院制度は他国にもあるが、『保護』のための強制入院制度は、ほかの諸外国にはない制度だ。 多くの精神医療関係者は、医療保護入院制度の存在は当たり前のものと考え疑問を持たない。だがそうした日本の精神医療の常識は、人権を尊ぶ世界には通用しない」 実際、日本の医療保護入院をモデルに制度を導入した韓国では、人権上問題視され、精神障害者当事者団体を中心に法改正を求める運動が本格化。当事者団体は憲法裁判所へ医療保護入院の違憲申請を提出。2016年、韓国憲法裁判所は制度の悪用と濫用の可能性を排除できないとして、身体の自由を定めた憲法12条に反して違憲であるとした。 世界には通用しない日本の精神医療の常識の、筆頭格にあたるこの医療保護入院。絶大な権限をもつ精神保健指定医がひとたび暴走したら歯止めはきかず、取り返しのつかない人権侵害へと直結することになりかねない。 今年2月、最高裁判所は診療報酬詐欺で一審、二審と有罪判決を受けていたある精神科医の上告を棄却した。懲役2年執行猶予4年の有罪判決が確定したこの医師は、一審の有罪判決後、こうした内容のメールを送っていたという。 「僕は1つだけやってやろうと決めてることがある。捜査機関の奴らが認知症やら何やらで精神科に来たら問答無用で隔離室に放り込んで、徹底的に痛めつける。絶対出さないしいくらでもいてもらう。完全に壊してから自宅に引き取らせる。厚労省関係者も同じ」(2019年5月18日付メール) 精神保健指定医の資格を有し、日本精神神経学会認定の専門医および指導医でもあるこの医師は、精神医療の現場を追われることなく、一審判決時にも複数の病院、クリニックで勤務していたという。 有罪が確定したことで、今後、厚生労働省の医道審議会に行政処分が諮られることになるが、通常は診療報酬の不正請求の場合、医師免許停止数カ月程度の処分が相場。こうした医師が指定医の資格で強大な権限を行使しているのが、日本の精神医療のまぎれもない現実だ。(第3回に続く)』、「『保護』のための強制入院制度は、ほかの諸外国にはない制度だ。 多くの精神医療関係者は、医療保護入院制度の存在は当たり前のものと考え疑問を持たない。だがそうした日本の精神医療の常識は、人権を尊ぶ世界には通用しない」、制度の早急な見直しが不可欠だろう。「有罪判決が確定したこの医師」、恐ろしい医師もいるものだと驚かされるが、これも制度の歪みがもたらしたものだ。

次に、この続きを、4月1日付け東洋経済オンライン「夫の策略で「強制入院3カ月」妻が味わった悪夢 精神疾患の既往歴なしの人が精神科病院に幽閉」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/340162
・『精神疾患により医療機関にかかっている患者数は日本中で400万人を超えている。そして精神病床への入院患者数は約28万人、精神病床は約34万床あり、世界の5分の1を占めるとされる(数字は2017年時点)。人口当たりで見ても世界でダントツに多いことを背景として、現場では長期入院や身体拘束など人権上の問題が山積している。日本の精神医療の抱える現実をレポートする連載の第3回。 「精神疾患の既往歴などいっさいない自分が、まさか精神科病院に強制入院させられるなんて、夢にも思いませんでした」 西日本のある県で看護師として働く30代後半の女性Aさんは、6年前にわが身に降りかかった出来事を、「今でも信じられない悪夢のようでした」と振り返る。2014年4月、双極性障害(そううつ病)で以前から入退院を繰り返していた夫の症状が悪化したため、Aさんは当時住んでいた四国地方の精神科病院を訪れた。 その1年前に結婚した夫は、結婚当初から躁(そう)状態になると、「お前に俺は釣り合わない」など暴言を吐く、必要な生活費を渡さないなど、精神的・経済的なDVを繰り返していたという。長男が生まれた後もそれは変わらず、病院に行く数日前にも、夫はまた精神状態が悪化していた。 だが、通院や入院を拒否。躁状態が続く夫への対応に、Aさんは困り果てていたところ、夫はAさんが一緒に行くなら診察を受けると約束したため、病院に同行することになった。 「はい、入院です」 「薬の量を減らしてから、精神状態が悪化しております」。夫と2人で診察室に入ったAさんは、「どうされましたか?」と目の前に座る医師に問われたため、夫の症状を話し始めた。だが、話し始めるやいなや、医師はAさんの話を遮り、思いもよらない一言を告げた。 「あなたのことですよ」 その言葉の意味がわからずAさんが医師に「何のことですか?」と聞き直したところ、医師は「支離滅裂がありますね」「ふわふわしていますね」と矢継ぎ早に言葉を並べた。Aさんが不穏な雰囲気を感じ、「ちょっと話がおかしいので、ほかの医師に診察をお願いできますか」と病院スタッフに話しかけると、この医師は大きなハンコを取り出し、紙のカルテにドンと音を立てて判を押して、こう告げたという。 「はい、入院です」) 抵抗する間もなく、両手、両肩を2人の男性看護師につかまれて、診察室から閉鎖病棟内の隔離室へと連れられた。隔離室内ではいきなり鎮静剤を注射されそうにもなった。「夫の診察に付き添ってきただけのはずが、なぜか私が入院、しかも隔離室に入れられたという現実が、当初まったく理解できませんでした」とAさん。医師からは入院の必要性もその形態の説明もなかったが、退院後にカルテの開示を受け、医師が押したハンコに書かれていた入院形態が「医療保護入院」だということがわかった。 連載第2回「精神病院から出られない医療保護入院の深い闇」(2020年3月1日配信)で詳しく触れたとおり、医療保護入院は精神保健福祉法が定める精神科特有の強制入院の1つだ。家族など1人の同意に加え、同じく1人の精神保健指定医の診断があれば、本人が入院に同意しなくても強制入院させられる。ある人を入院させたいと考える側にとって極めて使い勝手がよい制度で、その件数は右肩上がりに増加を続けている。厚生労働省によれば、2018年度の医療保護入院の届け出数は18万7683件に至っている』、「双極性障害」をもつ「夫」についていったら、「看護師として働く」自分が入院させられたとは、信じられないような事件だ。
・『不仲の夫でも「同意権者」に  Aさんの医療保護入院に同意したのは夫だ。自らの強制入院の経験に加え、身内に精神科医のいる夫は、同制度を熟知していた。「夫とその親族が、離婚や息子の親権の取得を有利に進めるために、この制度を悪用したのではないか」とAさんはいぶかる。法律上、夫婦間が係争中の場合などには同意権限は認められないが、この2人のように夫婦仲が悪かっただけでは欠格事由には該当しない。離婚調停を申し立てている場合であっても同様だ。 私物の持ち込みが一切出来ず、布団と便器だけがある隔離室の中で、Aさんがひたすら不安に思っていたのが、引き離された生後9カ月の息子のことだ。「精神状態が悪化した夫のもとに子供を残して、本当に心配だった」。 女性は結局、3カ月後の退院時まで隔離室で過ごした。病院側は「攻撃性、多弁、多動、易刺激性(ささいなことで不機嫌になる性質)が認められた」ことなどを、その理由として挙げる。だがAさんは「必要性や理由が何ら説明されないまま、突然強制的に入院させられ、しかも隔離室に入れられたら、誰だって強く反発するに決まっています」と憤る。カルテなどによれば、診断名は入院中の3カ月間で、統合失調症、双極性障害、自閉症スペクトラム障害、広汎性発達障害などへと、たびたび変遷している。 Aさんは、今は地元を離れ息子と2人で暮らしている。夫とは離婚調停中だ。向精神薬の服用はいっさいしていない。「看護師として精神病床のある総合病院でも働いたことがあり、あんなことがあるまで精神医療はかつてとは比べものにならないぐらいよくなっているものだとばかり思っていました。ですが、実際被害に遭ってわかったのは、健常者でさえも精神医療の被害に遭っている現実でした」』、「「夫とその親族が、離婚や息子の親権の取得を有利に進めるために、この制度を悪用したのではないか」、極めて悪質だが、それに加担した「精神科医」の責任も重大だ。損害賠償請求をしれば、勝訴する可能性もありそうだ。幸い「3カ月後の退院」、と短期だったからよかったものの、「健常者でさえも精神医療の被害に遭っている現実」、はやはり問題だ。
・『見知らぬ男たちに突如、連れて行かれた  既往歴もないのに、何の前触れもなく精神科病院に強制入院させられる。そんな経験をしたのはAさんだけではない。 「寝起きでまだ部屋着姿でいたところ、突然自宅に屈強な男が数人上がり込んできて、靴も履けないまま、玄関前に止まっていた車に連れ込まれました。あまりに突然のことで、スマホを持ち出すことさえもできませんでした」 都内在住の50代女性のBさんは、その日のことを鮮明に覚えていると話す。2011年の冬、普段はパジャマ姿のままで娘の保育園の送り迎えをするような夫が、その日はなぜか早朝から着替えて人を待つような様子だったので、不思議に思っていたと振り返る。夫はその数年前に発達障害の1つのアスペルガー症候群と診断されており、夫婦間にはいさかいが絶えなかった。 見知らぬ男たちによって有無を言わせず車に乗せられ、連れて行かれたのが都内の精神科病院だった。ちなみに「民間移送業者」と呼ばれるこの男たちが、いったい何者なのかについては、今後の連載中で詳しく取り上げていく予定だ。 医師のごく短時間の診察で、夫を同意者として、Bさんの医療保護入院が決まった。その後すぐに隔離室へと連行されたのはAさんと同様だ。「アスペルガーの夫は児童相談所や保健所、警察に私が娘を虐待していると巧妙な嘘をついて、それを真に受けた保健所が協力し、事前に入院の手はずを整えていたことが後でわかりました」(Bさん)。夫が事前に、警察や保健所などに入念に根回しをしていたのは、やはりAさんのケースとそっくりだ。 退院後に開示されたカルテによって、ほぼ夫からの情報だけによって、統合失調症の疑いと診断され、医療保護入院が決まった経緯が明らかとなっている。 結局、5日間の経過観察を経て、「特記すべき精神病症状を認めない」として退院が決まった。「夫は離婚が避けられないなら、子供の親権を取るために私を強制入院させようと画策したようです。もめ事は絶えませんでしたが、まさかここまでやるとは。それに法治国家の日本で本当にこんな拉致・監禁がまかり通っている現実にもショックを受けました」(Bさん)』、「Bさん」も「5日間の経過観察を経て・・・退院」、と短かったようだが、「アスペルガーの夫」に騙された「児童相談所や保健所、警察」の責任も重い。
・『DV夫の格好の「武器」に  DV被害者支援と加害者更生に取り組む、一般社団法人エープラスの吉祥眞佐緒代表理事によれば、離婚を有利に進め子供の親権を得るために、この医療保護入院が悪用される事例の相談は、ほぼ切れ間なくコンスタントに寄せられるという。 いま吉祥代表が支援しているのは下記のようなケースだ。首都圏在住の30代派遣社員の女性Cさんは、夫からの数年にわたるDVで不安定となり、精神科クリニックに通院していた。ある時言い争いの末のショックで、精神安定剤などをオーバードーズ(大量服薬)したことで、夫の同意で精神科病院に医療保護入院となった。 入院から3カ月経って、ようやく一時帰宅が許され自宅に戻ると、すでに自宅はもぬけの殻で、夫と子供の行方がわからなくなってしまった。住民票にも閲覧制限がかけられ探す手段がなく、途方に暮れているという。「数日間で出られれば子供を奪われずに済んだはず。医師はその時々の症状をちゃんと診断し、社会での生活能力があれば退院させるべきです。家族の意見ばかり聞くのではなく、本人の意見もしっかり聞いてほしい」(Cさん)。 「DV加害者の夫はたいてい外づらが非常によく、病院関係者だけでなく、行政職員や警察も女性を虐待加害者だと欺く話術を持っている。ヒステリックな妻と穏やかな夫というイメージの演出に長けている」と吉祥代表は実情を語る。 医療保護入院制度は、そんな彼らには格好の「武器」となっている。(第4回に続く)』、「DV夫の格好の「武器」に」「医療保護入院が悪用」、やはり制度の抜本的見直しが急務だ。

第三に、4月30日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの北 健一氏による「コロナ下で医療崩壊危機を高める「都立病院の独法化」は必要なのか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/235969
・『新型コロナウイルスの感染者の拡大が日本でもっとも深刻な東京都で、3月31日、8つの都立病院と6つの公社病院を、2022年度内をめどに地方独立行政法人(独法)にする方針が決まった。実施されれば、都立病院は東京都の直営から独立行政法人に経営形態が変わる。 独法というのは、以前は国や自治体が行っていた事業を国や自治体から独立して行う法人で、大学や病院などに多い。国や自治体が直接運営する公営と株式会社が運営する民営との中間的な経営形態といえる』、「新型コロナ」対応は大丈夫なのだろうか。
・『東京都が病院を独法化する理由  東京都は何のために病院を独法化するのか。 都は「今後、超高齢化社会になるなかで深刻化する医療課題に応え、(採算が取りにくい)行政的医療を安定的、継続的に提供するという役割を将来にわたって果たし続けるのが独法化の目的です」(東京都病院経営本部)ときれいに説明する。 もっと明快な解説もある。「都立病院独法化 医療経営、自由度を向上」という見出しが躍った日本経済新聞(2018年1月18日付)記事だ。 「東京都立病院の経営形態を議論する有識者委員会は……独立行政法人化を促す報告案をまとめた。都立病院は慢性的な赤字体質で、年間400億円程度を都が一般会計から繰り入れている。独法化で経営の自由度を高め、効率化することで赤字を圧縮し、必要な医療サービスを維持するのが狙いだ」 しかし、都立病院の現場からは、小池都政幹部の意向を反映したこの記事に「フェイクに近い」と反発する声が上がる。 都立病院の経常収支は黒字基調で、年間400億円ほどの都一般会計からの繰り入れは、島しょ、周産期、感染症、精神科など採算が取りにくいが公共性の高い医療(行政的医療)に取り組むため法律にもとづいて都が負担しているもので、赤字補てんとは違うからだ。 日経記事から約1年半後の19年6月19日。小池百合子知事は知事室で、東京都病院経営本部の幹部から独法化についてレクを受けた。レク資料には「都の財政負担を軽減、独法化による効果を生かし病院のワイズスペンディングを実現」と記されていた。ワイズスペンディングとは「賢い支出」を意味する経済学者ケインズの言葉だ』、「日経記事」に対して、「都立病院の現場からは、小池都政幹部の意向を反映したこの記事に「フェイクに近い」と反発する声」、日経も一方的な記事で「フェイクに近い」と批判されるようでは、落ちたものだ。
・『新型コロナ問題で感染症対応の最前線に  日経新聞が「赤字体質」と非難し、都幹部も「ワイズ」ではないと小池知事に吹き込んだ都立病院。 だが、その存在意義が誰の目にもはっきりしたのが、新型コロナ感染症対応だった。 都立・公社病院はもともと備えていた感染症病棟をフル稼働させて感染患者を受け入れたばかりではなく、小池知事の要請に応じて次々と感染者を受け入れるためのベッドを増やしたからだ。 明治期にはコレラやチフスの、戦後は結核などの感染症治療に貢献してきた都立病院は、今また、感染爆発を食い止める最前線に立っている。それでも小池知事は、都立病院独法化の旗を降ろそうとはしていない』、「旗を降ろ」さずに「新型コロナ感染症対応」は上手くいくのだろうか。
・『人件費削減で収益率を向上  大阪では2006年、5つの府立病院が独法化され大阪府立病院機構の下に置かれた。都道府県立病院では初めての独法化で、公立病院独法化の「成功モデル」ともいわれる。独法化当時の府知事は通産官僚出身の太田房江氏だ。東京都も大阪を参考にしている。 大阪での独法化が「成功例」とされたのは、独法化初年度に17.2億円もの収支改善に成功したことが大きい。だが、その理由は単純だった。人件費のカットである。 府立病院機構は「地方独立行政法人の特性を活かして、業務運営の改善及び効率化に取り組」んだ結果だと胸を張った。ところが、初年度の人件費削減が17.2億円に上っており、収支改善はもっぱらその効果による。 効率化やアウトソーシングによって事務部門で76人減らしたのが大きいが、さらに、賃金カーブをフラット化した独立行政法人国立病院機構の給与表に合わせ、看護師ら職員の賃金が勤続年数によって上がるのを抑えたのも見逃せない。 独法化後、府立病院改革の旗を振った松下電器(現パナソニック)出身の徳永幸彦副理事長(当時)は「病院“運営”から病院“経営”に変えていこう」と唱えた。 病院機構の内部文書「(平成)19年度計画必達に向けて経営改善のポイント」には、府立病院の人員について「福祉ではない。基本は減少が時代の流れ」「医師、看護師は聖域としてきたが、看護師については、生産性が低い」(から増やさない)、「医師については、優秀な人材は確保」と記されている。また、中期計画に関して「給与比率は前年より下回ること」とされ、「自治体病院は給与比率50%を目指すが合言葉。国立は40%台になっている」ともある。 大阪府関係職員労働組合(大阪府職労)の小松康則書記長は「独法化時点で20%だった非正規職員が30%を超えました。これも人件費を抑えるためでしょう」と説明する。 2019年には労働基準監督署の指摘で、この2~3年だけで総額約12億円もの残業代未払いがあることが発覚、病院機構は約3000人に支給した』、「独法化時点で20%だった非正規職員が30%を超えました」、「この2~3年だけで総額約12億円もの残業代未払いがあることが発覚」、など「人件費」抑制には必死のようだ。
・『高級ホテル以上の料金の病室も  府立病院は、高度専門医療への重点化と効率的・効果的な医療サービスの提供を基本方針に掲げて医業収入を増やしていった。 独法化後、大阪城を見下ろす13階建て(地下2階)に建て替えられたがんセンターでは、7500円だった個室代が1万5000円になり、「最高の部屋は約5万9000円。(ホテル)ニューオータニより高い」(がんセンター勤務の看護師)という。) さらに個室料だけではなく、セカンドオピニオン料、母子センターでの分娩料などさまざまな料金が独法化後に上がった。 大阪府立5病院の独法化後の財務の変化をまとめたのが下のグラフだ。 独法化後の大阪府立病院の財務の変化(リンク先参照) 大阪府が出す「運営負担金」は約144億円から約85億円へ4割以上もカットされるなか、医業収入を懸命に上げてきた。 そして独法化3年目の08年をピークに一貫して下がり続けたのが、折れ線グラフが示す「給与費比率(給与総額÷医業収益×100)」である。 18年度は給与比率50.5%と、徳永副理事長が掲げた「50%」をほぼ達成した。 他方、入院単価は直営最後の年(05年度)の3万7116円から18年度には6万5743円まで、ほぼ2倍になった。民間の営利企業なら万々歳かもしれないが、「単価」が患者と健康保険組合の負担であることを考えれば、こうした「成功」を手放しでは評価できない』、「入院単価」の倍増は「手放しでは評価できない」のは確かだ。
・『感染症対応に追われる中で独法化の準備を開始  患者、そして都民には、行政的医療の後退や負担増の不安を振りまく独法化だが、独法化への移行は大きなビジネスチャンスでもある。 都立病院の現場が武漢からの帰国者受け入れなど新型コロナ感染症対応に追われ始めた2月3日、「独法化への移行を準備する業務」の入札申請がひっそりと開始された。委託のための予算さえ都議会に出される前の見切り発車だ。そして3月18日、あずさ監査法人が落札した。 あずさ監査法人は、国鉄、郵政の民営化支援や独法化支援に豊富な実績を持つ。ホームページに掲載している「公的セクター関連サービス」には、「公立病院の地方独立行政法人化に際しては、経営改善を第1の目標としながら、短期間で広範な作業が求められます」と書かれ、支援項目には「人事・給与システム」の構築もある。他方、オリンパス事件では巨額の粉飾を見逃し続け、金融庁から業務改善命令を受けたこともあった』、「あずさ監査法人」にとっては、大きな「ビジネスチャンス」だろう。
・『橋下徹元知事のツイートに医療現場から怨嗟の声も  前述の日経記事では「東京都に先行し2010年度に県立5病院を独法化した神奈川県は従来、運営費として131億円(09年度)を一般会計から繰り入れていたが、16年度には104億円と約2割減った」と先行例を示し、独法化を持ち上げた。 だが、その神奈川県立病院機構は2018年度、25億1200万円の経常赤字を出し、繰越欠損金は94億6700万円に及んだ。 3月9日の都議会予算特別委員会で白石たみお都議(共産党)から「これで(神奈川が)うまくいっていると言えるのか」と問われた小池知事は答弁せず、代わりに立った堤雅史東京都病院経営本部長も「神奈川県立病院機構は……努力している」と答えるのが精いっぱいだった。 独法化の成功例とされた大阪でも、府立病院の現場はマスクや手袋、防護服の不足に悩む。その渦中の4月3日、橋下徹元府知事はこうツイートした。 「僕が今更言うのもおかしいところですが……徹底的な改革を断行し、有事の今、現場を疲弊させているところがあると思います。保健所、府立市立病院など。そこは……見直しをよろしくお願いします」 これに対し、大阪の医療現場からは「ほんまに何を今さら」「怒りで吐きそう」といった怨嗟(えんさ)の声がもれる。 橋下氏は「平時のときの改革の方向性は間違っていたとは思っていません」とも付け加えたが、むしろ「平時」の改革の誤りが「有事」に露呈したようにも見える。 新型コロナ感染者を多数受け入れる都立駒込病院で働く看護師で、都庁職病院支部書記長でもある大利英昭さんはこう話す。 「福祉や医療を切り捨ててきたツケが今、回ってきています。新自由主義的な政策を推進してきた金持ちではなく私たち普通の労働者が、そのツケを自分のいのちで払わされようとしている。その瀬戸際まで来ているのです」』、「「平時」の改革の誤りが「有事」に露呈したようにも見える」、その通りなのかも知れない。いずれにしろ、「独法化」の真価が問われることになりそうだ。
タグ:人件費のカット 都道府県立病院では初めての独法化で、公立病院独法化の「成功モデル」 大阪 がんセンターでは、7500円だった個室代が1万5000円になり、「最高の部屋は約5万9000円 高級ホテル以上の料金の病室も 人件費削減で収益率を向上 橋下徹元知事のツイートに医療現場から怨嗟の声も この2~3年だけで総額約12億円もの残業代未払いがあることが発覚 独法化時点で20%だった非正規職員が30%を超えました 新型コロナ問題で感染症対応の最前線に 都立病院の現場からは、小池都政幹部の意向を反映したこの記事に「フェイクに近い」と反発する声 日本経済新聞 感染症対応に追われる中で独法化の準備を開始 手放しでは評価できない 東京都が病院を独法化する理由 8つの都立病院と6つの公社病院を、2022年度内をめどに地方独立行政法人(独法)にする方針が決まった 「コロナ下で医療崩壊危機を高める「都立病院の独法化」は必要なのか」 北 健一 ダイヤモンド・オンライン 医療保護入院が悪用 DV夫の格好の「武器」に 見知らぬ男たちに突如、連れて行かれた 健常者でさえも精神医療の被害に遭っている現実 不仲の夫でも「同意権者」に 数は18万7683件に至っている』、「双極性障害」をもつ「夫」についていったら、「看護師として働く」自分が入院させられた 「夫の策略で「強制入院3カ月」妻が味わった悪夢 精神疾患の既往歴なしの人が精神科病院に幽閉」 『保護』のための強制入院制度は、ほかの諸外国にはない制度だ。 多くの精神医療関係者は、医療保護入院制度の存在は当たり前のものと考え疑問を持たない。だがそうした日本の精神医療の常識は、人権を尊ぶ世界には通用しない 僕は1つだけやってやろうと決めてることがある。捜査機関の奴らが認知症やら何やらで精神科に来たら問答無用で隔離室に放り込んで、徹底的に痛めつける。絶対出さないしいくらでもいてもらう。完全に壊してから自宅に引き取らせる。厚労省関係者も同じ ある精神科医の上告を棄却 「問答無用で徹底的に痛めつける」 審査会の構成は指定医である医療委員が過半を占めるものが大多数 第三者機関も形骸化 医療保護入院の仕組みは、入院や行動制限の要否を判定する精神保健指定医の判断の正当性がすべての前提となっている。指定医の患者に対する権限は絶大だ 6万件前後で推移した1990年代前半と比べ、3倍超に膨らんでいる 入院期間の定めがない 本人が入院に同意しない場合に、家族など1人の同意に加え、同じく1人の精神保健指定医の診断があれば、強制入院させられる 「医療保護入院」 極めて使い勝手がよい制度 なかなか退院に向けた話が進まなかった 弁護士が介入しても 当事者からの声が140件以上集まった 人権侵害 院内での生活はおよそ4年間にわたった 自分のまったく知らないところで不妊手術をされていた 連載第1回「精神病院に4年閉じ込められた彼女の壮絶体験」 人口当たりで見ても世界でダントツに多いことを背景として、現場では長期入院や身体拘束など人権上の問題が山積 精神病床は約34万床あり、世界の5分の1を占める 「精神病院から出られない医療保護入院の深い闇 現場医師の裁量で強制長期入院も可能になる」 東洋経済オンライン (その24)(精神病院から出られない医療保護入院の深い闇 現場医師の裁量で強制長期入院も可能になる、夫の策略で「強制入院3カ月」妻が味わった悪夢 精神疾患の既往歴なしの人が精神科病院に幽閉、コロナ下で医療崩壊危機を高める「都立病院の独法化」は必要なのか) 医療問題 「平時」の改革の誤りが「有事」に露呈したようにも見える 入院単価」の倍増
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

安倍政権のマスコミへのコントロール(その13)(官邸記者クラブが菅長官に屈する理由 東京新聞・望月記者いじめ2年半―分断越えるため何が必要か、”緊急事態宣言”をあらゆるテレビ局が同時に中継する「大本営発表」日本は大丈夫なのか?、番記者よ 奮起せよ──コラムニスト・小田嶋隆)、新聞・TV「政府の言いなり」の何とも呆れる実態) [メディア]

安倍政権のマスコミへのコントロールについては、1月12日に取上げた。今日は、(その13)(官邸記者クラブが菅長官に屈する理由 東京新聞・望月記者いじめ2年半―分断越えるため何が必要か、”緊急事態宣言”をあらゆるテレビ局が同時に中継する「大本営発表」日本は大丈夫なのか?、番記者よ 奮起せよ──コラムニスト・小田嶋隆)、新聞・TV「政府の言いなり」の何とも呆れる実態)である。

先ずは、2月18日付けYahooニュースが掲載したフリージャーナリストの志葉玲氏による「官邸記者クラブが菅長官に屈する理由、東京新聞・望月記者いじめ2年半―分断越えるため何が必要か」を紹介しよう(付注は省略)。
https://news.yahoo.co.jp/byline/shivarei/20200218-00163529/
・『異例の状況が2年半にわたって続いている。政権を厳しく追及することで知られる東京新聞の望月衣塑子記者が、内閣官房長官の会見で質問しようと手をあげても、必ず最後に回され、質問できたとしても2問までという彼女限定の「ルール」が適用されているのだ。先月22日から今月11日までは、望月記者が全く質問できないことが続いた。こうした質問制限に、官邸記者クラブである内閣記者会が関与している、或いは黙認しているという疑惑が持ち上がっている。その背景には「政治家と接近して情報をもらう」という日本の政治報道の取材スタイルが故に、政権側のコントロールを受けやすいという問題がある。メディア関係者らに日本の政治報道の弱点をきいた』、「東京新聞の望月衣塑子記者」は、社会部出身ながら、官邸記者クラブに所属し、忖度しない姿勢を貫いた姿勢が、ドキュメンタリー映画「i 新聞記者ドキュメント」に取上げられことは有名だ。
・『望月記者への質問制限に記者会が関与?  「(官房長官の)番記者たちが『望月が手を挙げても指させない』と内々で決めたとの情報が届いた」―先月29日、東京新聞の望月衣塑子記者が自身のツイッターに投稿。その後、「『内々で決めた』との情報だったが、実際は、私の抗議以降菅官房長官側が激怒し、番記者が指名を促しづらい状況に追い込まれているようだ」と若干軌道修正したものの、彼女に対する質問制限に対し、内閣記者会が少なくとも黙認していることを示唆した。 望月記者の投稿での「私の抗議以降」「菅官房長官側が激怒」とは、先月22日、会見の中で、望月記者が「不当な扱いを受けている」と発言したこと。同日から菅義偉官房長官がオフコン(非公式なオフレコ取材対応)を拒否。匿名の情報提供者によれば、内閣記者会の番記者達は、望月記者の訴えに耳を傾けるどころか、菅官房長官の機嫌を損ねた望月記者を「厄介者」とみなし、会見の幹事社や東京新聞への不満が高まったのだという。望月記者のツイートには、そうした背景があるようだ。望月記者は、この22日以降、会見で手を挙げても指されず1問も質問できなくなることが続いた。 ツイッターでの投稿が騒動となったためか、今月11日から、望月記者は、ようやくまた質問できるようになったものの、 「指名が必ず最後に回され、質問できたとしても2問まで」という、彼女に対する明らかに差別的な扱いは続いている。また、内閣記者会加盟のある新聞社は、筆者の取材に対し「(望月記者が求める状況の改善について)我が社としては改善を求めているが、記者会としては意見をまとめられていない」と白状した。つまり、望月記者の「告発」はそれなりに根拠のあるものだと観るべきだろう』、「記者会としては意見をまとめられていない」、とは「記者会」もだらしない。
・『菅官房長官に屈した内閣記者会  「会見では、記者は自由に質問できる」という建前とは裏腹に、望月記者への質問制限に対し、会見の主催者であるはずの内閣記者会は、何故、菅官房長官側に強く出られないのか。朝日新聞の政治部記者で新聞労連の委員長を務める南彰氏は「取材方法としてオフコン(注)を重視しすぎている日本の政治報道の文化があるのでは」と指摘する。 「日本のメディアでは、政治部記者、特に政府高官に張り付いて取材する番記者の役割は、会見で質問することだけではなく、むしろ、政府高官が宿舎に帰るところ等の非公式な場で、会見では語らない本音や政府内の動きを聞くことだとされています。官邸に集まる情報を握り、安倍首相よりも思想・信条に左右されず記者に対応している菅官房長官は、番記者達から重宝がられているのです」(南委員長)。 だが、政治家に接近し情報をもらうというオフコンを重視し過ぎることは、記者達の立場を弱くすることにもなる。 「2017年8月に、それまで原則として記者側の質問が続く限り打ち切られなかった官房長官会見を、『公務』を口実に打ち切ることを、内閣記者会は受け入れてしまった。それは、望月記者の厳しい追及に追い詰められた菅官房長官がオフコンを拒否するようになり、番記者達も苦しい立場に追いやられたからです」(南委員長)。 「公務」を口実にした会見の打ち切りこそ、望月記者への質問制限として菅官房長官が活用してきたものであるが、それにとどまらず、政権側に都合の悪い質問を避けるために使われてきている。「桜を見る会」の問題が国会で追及されるようになってから、官房長官会見はどんどん短くなり、10分以内で「公務があるので…」と菅官房長官が退散することも幾度もあった。だが、政府のスポークスマンである官房長官の会見も「最重要の公務の一つ」(南委員長)だ。オフコンを重視するあまり、メディアが視聴者や読者の「知る権利」を保障できていない、ということになってはいないか』、「政治家に接近し情報をもらうというオフコンを重視し過ぎることは、記者達の立場を弱くすることにもなる」、「「公務」を口実にした会見の打ち切りこそ、望月記者への質問制限として菅官房長官が活用してきたものであるが、それにとどまらず、政権側に都合の悪い質問を避けるために使われてきている」、記者会見が政府広報の場と化しているのは、問題だ。
(注)オフコン:非公式の囲み会見で、記事化しない「オフレコ」が原則。
・『オフコン重視の弊害、権力に媚びるメディアに  記者達が政権に「忖度」するようになることも、オフコン重視の大きな弊害だ。政権側の機嫌を損ねれば情報が取れなくなることや、政権側との距離が近くなりすぎることから、権力を監視するというジャーナリズムの役割を果たせなくなる。国連「表現の自由」特別報告者のデビッド・ケイ氏が2016年に来日し、日本の報道関係者らに聞き取りした時、同氏が困惑したのは、「メディアの自主規制」を訴える声が多かったことだった。政権側に批判的な報道をしようとすると、同じメディア内の政治部が怒鳴り込んでくるということが多々あるのだ。 内閣官房長官会見に参加していた、あるメディア関係者は「記者達の感覚が麻痺している」と筆者に言う。「以前、私が会見で官房長官を追及しようとした際に、ある全国紙の記者が『望月さんみたいなことをしない方がいい』と言ってきたのです。それはおかしくないかと私が聞き返すと『望月さんが知る権利を行使すれば、記者会の知る権利が阻害される。官邸側が機嫌を損ね、取材に応じる機会が減っている』と、その記者は言ったのです」(同)。 このような権力とメディアの馴れ合いこそ、昨今のメディア不信の原因であろうが、それを反省するどころか、一層の馴れ合いが進んでいる傾向すらある。別のあるメディア関係者が筆者に語ったところによれば、内閣記者会の番記者達の中には、メディア不信について「君たちはよくやっている」と、菅官房長官に慰められている者達もいる有様だというのだ』、「政権側に批判的な報道をしようとすると、同じメディア内の政治部が怒鳴り込んでくるということが多々ある」、政治部記者はまるで官邸の回し者だ。「『望月さんが知る権利を行使すれば、記者会の知る権利が阻害される。官邸側が機嫌を損ね、取材に応じる機会が減っている』と、その記者は言った」、恐ろしいほどの「権力とメディアの馴れ合い」だ。
・『メディアが共闘できる素地を  メディアが本来の役割を果たすには、やはり政権との緊張感が必要だろう。前出の南委員長は「オフレコの取材で話した内容をひっくり返して、自身のSNSで否定する政治家も出てきている。オフコンなどのオフレコ取材を過度に重視する政治報道の在り方を見直すべきなのでしょう」と語る。「責任あるかたちで、公開の会見で、記者側が政権に説明を求めていくことが必要です」(同)。オフレコ取材では、人々に広く知らせるべき重要な事柄であっても報道することができないし、仮にできたとしても責任の所在が問われない。政権とメディアによる「目隠し」の裏で、重要なテーマが語られ、対応が決められていくことは、国民主権の民主主義という観点からすると極めて不健全だ。また、本稿で述べたようにメディアがオフレコ取材を過度に重視していることは、権力側によるメディアの分断にも利用されている。「物陰からのジャーナリズム」から、「開かれた場でのジャーナリズム」となることで、各メディアが「報道の自由」のため、共闘できる素地も生まれるのではないか。 米国では、トランプ大統領にホワイトハウス入館証を取り上げられたCNNのジム・アコスタ記者(動画参照)のために、多くのメディアが主義主張や会社の枠を越えて連帯を表明、トランプ政権も同記者への入館禁止措置を撤回した。また、この件ついては日本からも新聞労連が声明を発表した。筆者も全く同じ思いである。 有権者たる人々の「知る権利」を保障し、権力の暴走を監視するジャーナリズムが健全に機能することは、民主主義国家の根幹を支えるものだ。だからこそ、個々の記者のジャーナリズム精神に期待することのみならず、権力にコントロールされないよう、報道の在り方自体を変革することが必要なのだろう。(了)』、「政権とメディアによる「目隠し」の裏で、重要なテーマが語られ、対応が決められていくことは、国民主権の民主主義という観点からすると極めて不健全だ」、「権力にコントロールされないよう、報道の在り方自体を変革することが必要」、その通りだ。

次に、3月8日付けYahooニュースが掲載した上智大学教授・元日本テレビ「NNNドキュメント」ディレクターの水島宏明氏による「”緊急事態宣言”をあらゆるテレビ局が同時に中継する「大本営発表」日本は大丈夫なのか?」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/byline/mizushimahiroaki/20200408-00172060/
・『戦後、初めてとなる法律(新型コロナ特措法)に基づく首相による「緊急事態宣言」。 すべての国民に告げる安倍首相の記者会見が4月7日19時から行われた。 しかもほとんどの局が「L字画面」と呼ばれる画面の左側と上下側に「緊急事態宣言」などと大きな字でも情報を報道し、緊迫した状況であることを伝えていた。 その様子は公共放送のNHKだけでなく、あらゆる民放テレビでも生中継された』、確かに異様だった。 
・『なぜすべてのテレビが安倍首相の記者会見を生中継したのか?  NHK:16時50分から「ニュース シブ5時」「首都圏ネットワーク」と夕方は緊急事態宣言一色の報道だった。 19時からの「NHKニュース7」では番組開始と同時に行われた安倍首相の緊急記者会見を番組枠を拡大して20時45分まで放送した。 その後で「首都圏ニュース」をはさんで21時からの「ニュースウオッチ9」では首相会見の映像を振り返りながら、安倍首相本人がスタジオに生出演。こちらも番組枠を拡大して22時30分まで放送した。 22時30分からの「クローズアップ現代+」つづく「ニュースきょう一日」とほぼ緊急事態宣言について放送を続けた。 この間、NHKの画面に登場した映像の大半は安倍首相の顔。音声の大半は首相の声だった。  日本テレビ:ふだんは19時前で終了する夕方ニュースの「news every.」を拡大した。19時から安倍首相の記者会見の生中継を中心に「news every.特別版」として放送した。 MCは藤井貴彦アナ。 20時54分からは夜ニュース「news zero速報版」、21時からはMCが有働由美子に替わって「news zero特別版」を放送。23時からはレギュラーの「news zero」の枠で緊急事態宣言について放送した。小池百合子東京都知事や吉村洋文大阪府知事が中継で出演した。  TBS:ふだんは19時前で終了する夕方ニュース「Nスタ」を19時以降も拡大して「Nスタスペシャル 新型コロナウイルスで緊急事態宣言」を20時57分まで放送。安倍首相の記者会見の生中継を中心にして、MCは「Nスタ」の井上貴博アナが務める。スタジオでは「NEWS23」のアンカーマン星浩もコメントする。安倍首相の記者会見の生中継の他に小池都知事の会見映像も入る。  テレビ朝日:ふだんは19時前で終了する夕方ニュース「スーパーJチャンネル」を19時以降も拡大して20時54分まで安倍首相の記者会見の生中継を中心に放送した。MCの渡辺宜嗣アナが進行して埼玉県大野元裕知事の中継インタビューなども入れる。 21時からは「報道ステーション」をいつもより54分早めに開始して「報道ステーション緊急拡大スペシャル」を23時15分まで放送。吉村大阪府知事、小池都知事が生中継で出演する。 フジテレビ:ふだんは19時前で終了する夕方ニュース「Live News it!」を事実上延長した形で「FNN特報 首相が緊急事態宣言を発令」という特番を21時まで放送。夜ニュースの「FNN Live News α」は通常通りに放送した。  テレビ東京:18時55分から2時間スペシャルのバラエティー番組「ありえへん∞世界 埼玉人のありえへん生態を大調査!」を放送したが、その冒頭で「緊急事態発令 池上彰が生解説!」を14分半ほど差し替えて首相会見の中継を入れて池上彰がスタジオで解説した。 さらに22時から「緊急報道スペシャル 安倍総理が生出演『緊急事態で日本は?生活は?』」を放送。MCは「ワールドビジネスサテライト」の大江麻理子アナ。安倍首相がスタジオで生出演した他、中継で神奈川県の黒岩知事も出演した。23時からは「ワールドビジネスサテライト」を放送した』、私も「テレビ東京、お前もか」とガッカリした。 
・『テレビ東京まで緊急特番を放送した。  これはこれまでにない異例なことだった。 2011年の東日本大震災のときはテレビ東京も含めてテレビは「震災特番一色」になったが、テレビ東京まで緊急特番で他のテレビ局と足並みを揃えるのはかなり久しぶりで珍しいことだ。 熊本地震でも西日本豪雨災害も他のテレビ局が「緊急特番」を放送していても、この局だけはバラエティー番組やドラマを放送するなど”独自路線”を貫いてきた。 テレビ東京は、あたかも横並びを嫌って社会が深刻な状況になっても笑いを追求する番組放送に撤する印象だったことでネットでは「さすがテレ東」などと称賛されたりしてきた。 一つには同局の場合は地方局のネットワークが他の民放の系列局に比べて極端に弱いことや報道記者なども数も脆弱で「特番をやりたくてもできない」という事情もあるのが実態だと思われる。 ところがそういうテレビ東京までこの夜は「緊急特番」を放送したのだ。 結果としてNHKからテレビ東京まで横並びで安倍首相の記者会見を放送した。 この記者会見は、緊急事態にあたって政府が国民の私権を一部制限する「緊急事態宣言」を発動するというものだ。 戦前戦中でいえば「宣戦布告」「戦争終了」などの際の国家のトップの行動に近い。かなり権力的な行為なのだ。 だからこそ、このテレビの完全に横並びの感じは実は警戒すべきことなのではないのか? まるで戦時の「大本営発表」のような“体制翼賛”のにおい。 メディアが一気にこうなってしまう日本という国は大丈夫なのか。 筆者は違和感をもった。 もちろん新型コロナウイルスはあらゆる国民にとって一大事であり、感染拡大の防止に努めないと国家も社会も損失が大きいことは重々承知している。 それにしても・・・「大丈夫なのか」という思いをぬぐえないのだ。 だから、ここでは「テレビ報道」を専門とし、日々の放送をチェックしてきた人間として、「気になること」を書いておきたい』、「このテレビの完全に横並びの感じは実は警戒すべきことなのではないのか? まるで戦時の「大本営発表」のような“体制翼賛”のにおい。 メディアが一気にこうなってしまう日本という国は大丈夫なのか」、全く同感である。
・『なぜNHKニュースに安倍首相が生出演するのか?  衆議院選挙や参議院選挙など国政選挙に突入するというタイミングや消費税アップなど何か「政治的な節目」のたびに安倍首相がその日の夕方や夜のNHKのニュース番組に生出演する。 現在は「お約束」のようになっている。 若い視聴者は「首相がNHKに生出演するのは当然のこと」と思っている人が多いかもしれない。 だが、実はこれほど定例行事になったのは比較的最近のことで2012年の第2次安倍政権の登場の後だ。 NHKが安倍首相に出演ほしいと頼んだ?(1) 安倍首相がNHKに出演させろと頼んだのか?(2) これはいったいどっちなのかと筆者に問い合わせてきた人がいる。 こうした場合にニュース番組へ首相の出演がいつもの「お約束」のようになっているのだから疑問に思うのも無理はない。 だが、この疑問に対する答えは実のところ「かなり微妙」なのだ。 もちろん、日本は全体主義の国ではないし、NHKは国営放送ではない(NHKは公共放送である)ので、「首相がオレを出演させろと頼む(あるいは、指示する、命じる)こと」は通常はない。 だから表面的には(あるいは手続き的には)正解は(1)なのだが、NHKをめぐる状況を考えれば、(2)ではないとは100%断言することはできないことも事実なのだ。 もしものことだが、こういう日に安倍首相を出演させないという判断をNHKの側がしたとしよう(現実的にはあまり想像できないが)。 そうするとどうなるのか? 安倍首相は、言うことを聞かないNHKに対して「強制力」を使うことになる。 「オレを生出演させた番組を放送しろ」と指示することが法律上はできるのである。 「新型ウイルス対策特別措置法」という先日成立したばかりの法律でNHKが「指定公共機関」になっているからだ。 政府がこういう放送をしろ、と「命じることができる」のだ』、「「新型ウイルス対策特別措置法」のドサクサ審議にかまけて、飛んでもない条項を入れたものだ。野党は反対しなかったのだろうか。
・『NHKは事実上国営放送なのか?  フリーアナウンサーの久米宏はずっと「NHKは国営放送だから民放にすべきだ」と批判してきた。 彼の指摘は正確ではない。正確には国が直接運営する「国営放送」ではない。 「みなさまから徴収させていただく受信料」で運営されている「公共放送」というのが正確な言い方だ。 だが、久米の表現に「事実上」という言葉をつけるなら、「事実上、国営放送」だという言い方もあながち間違いではない。 いざとなれば「命じることができる」という力関係は、実際に「命じる」という行為がなくても人を従わせることができる。 組織ではわざわざトップが命令・指示する前に、指示される側が「前もって自分から行動しておくこと」が大事だとされる。 親に怒られた子どもが次からは怒られないような行動をとるようになる。 それと同じことが起きているのがNHKである。 NHKは親に怒られる前に怒られないように、親が望むことを先回りしてきちんと行う「よい子」なのだ。 「親」を「政治」や「政権」に読み替えて考えるとわかりやすいだろう。 NHKという組織は職員の身体の隅々にまで「忖度」の体質が染みついているということを職員の人たちから笑い話で聞くことがある。 この組織では「忖度」できる人が出世していくという』、「NHK」では「「忖度」できる人が出世していくという」、大いにありそうなことだ。
・『かんぽ生命をめぐる元総務次官の抗議とNHK会長の謝罪  NHKと政権との関係を象徴的に見せたのが、不正な営業を続けていた「かんぽ生命」(日本郵政グループ)についてNHKの「クローズアップ現代+」の取材のやり方をめぐって、日本郵政の副社長に天下りしていた元総務省事務次官がNHK側に抗議し、NHKの会長人事を決定できるNHK経営委員会にまで圧力をかけて対応の見直しを迫っていた出来事だった。 NHK経営委員会はNHK会長に厳重注意し、その後にNHK会長の謝罪文がNHKの放送部門のトップから「かんぽ生命」側に手渡された。 経営委員たちが番組内容にも事実上口出しをしていたことが判明している。 経営部門(経営委員会がトップ)と執行部門(NHK会長がトップとして番組の放送に責任を持つ)は別で、経営委員会は番組内容に口出ししてはならない建て前になっているが、事実上は「口出し」まで行われていたのである。 NHKの経営委員を決めるのは首相で、安倍首相に近い人物が続々と任命されている。 つまりNHKは「人事」を政治に握られている。 「人事」だけでない。「予算」も「制度」も国会で承認されなければ通常の仕事ができない。 久米宏がよく口にする「NHKは人事も予算も政治に握られている」という表現はわかりやすい』、「NHKは人事も予算も政治に握られている」とは言い得て妙だ。
・『同時配信の実施直前に高市総務相からいちゃもん  今年3月からNHKが総合テレビとEテレで放送する番組は「NHKプラス」というアプリを使えば、ネット上でも視聴できるようになった。 「同時配信」が始まったのである。追いかけ視聴や見逃し視聴も可能になって、非常に便利なものでイギリスなどが10年以上前に行っていたネット上の番組配信が日本でも利用可能な時代に突入した。 国会ではNHKの「同時配信」ができるように放送法を改正する法案が通って、いよいよ実施段階と思われていた昨年末、監督官庁である総務省の高市早苗大臣から「待った」がかかり、さらに運用などの小さな修正が行われた末にようやく実現にこぎつけた。 いざというとき、政府がNHKをめぐる制度にチェックをかけられることを露骨に示した“いちゃもん”だと評された。 NHKという組織が政府の顔色をうかがいながら業務を続けていかなければならないという宿命を背負っているのはこうした事情があったのである』、「高市早苗大臣」も実に嫌味なことをするものだ。
・『“横並び”では民放も「忖度」したのか?  政権の顔色をうかがって行動するのはNHKだけなのか。 民放はもっと自由なのか。 実状はそういうものではない。 そもそもテレビ局が国民の共有財産である電波を優先的に使って放送ができるのは、総務省が免許を割り当ててくれるからである。 5年に1度更新される免許事業なので、民放各社は日頃から総務省の顔色をうかがう構図がある。 新型ウイルス特別措置法をめぐる審議では、いさというときに政府が指示できる「指定公共機関」にNHKだけでなく、民放を入れるのかどうかが議論された。 政府答弁は二転三転したが、最終的な見解は「民放を指定するつもりはない」というものだった。 現在のところ指定公共機関はNHKだけを指定するつもりだが、場合によっては民放も指定に加えることがありうるともとれる、あいまいさを残すもので、すべては政府の裁量次第だという言い方である。 こうなると新型コロナをめぐっては民放経営者も政府の顔色を気にせざるをえないのである』、これでは民放もNHKに右へならいをした訳だ。
・『三原じゅん子議員のツイート  民放テレビが安倍首相の会見をどう放送するのかについて「政治」から注文がつけられたのが3月半ばだった。 自民党で安倍首相に近いとされる三原じゅん子参議院議員が安倍首相が新型コロナウイルスについて2度目の緊急記者会見を行った3月14日、会見の直後に次のようにツイートしたのである。 今、総理の会見が終わりました。 報道の自由は理解しています。 が、この緊急事態での会見にも関わらず民放ではスルー? 連日ワイドショーで専門家という肩書きの方の言葉を伝えるより、総理のお言葉をつたえるべきでは? この日、NHKは生中継を実施し、民放では通常のバラエティー番組やアニメ番組などを放送し、報道番組を放送していたTBSだけが一部を生中継した。 三原議員は大臣などの要職についているわけではないが、「首相の緊急会見は民放も放送するべき」だと安倍首相に近い政治家が考えていることは民放側にも少なからず衝撃を与えた』、「三原じゅん子議員のツイート」は、民放をビビたせるべく、官邸が書かせた可能性もありそうだ。
・『”公共性”のアピール  こうして民放各局も、政府という「親」から怒られる前に「正しい行動をとる」という選択を行った。 安倍首相は民放については「インターネットの時代には民放は制度上なくてもいい」という考えを表明しているとも伝えられるが、そうした中で「民放も NHKと同様に公共性を果たす大事な機関」だとアピールしようとしたことが、すべてのテレビ局「横並び」での中継につながったのではないか。もちろん報道番組としての重要性も考えたに違いないが、他方で民放の存続が頭に過ぎった幹部もいたはずだ。それが筆者の見立てだ』、その通りだろう。
・『NHKだけでなく、民放も「忖度」したのである。  新型コロナ感染の「防止」はもちろん大事だが、メディアが緊急事態にどのようにふるまうのかにも注目すべきだ。 各メディアの姿勢に注目して、かつての「大政翼賛」的な息苦しい社会をつくらないような「防止」にも、私たちは目を光らせていく必要がある』、説得力溢れた主張で、全面的に同意したい。

第三に、3月11日付けGQ「番記者よ、奮起せよ。──コラムニスト・小田嶋隆」を紹介しよう。
https://www.gqjapan.jp/culture/article/20200311-the-barbarism-of-our-strongman-leaders
・『麻生太郎財務大臣兼副総理の会見でのマナーが炎上を招いたのは、すでに昨年の話題だ。なるほど、政府が重要な政治日程を年明けに設定しがちなのは、野党やメディアとの間で日々勃発する軋轢や摩擦を「去年の話題」として自動処理するための悪知恵なのであろう。実際、私が当稿の中で、いまさら麻生氏の会見マナーをつつき回したところで、「このライターさんは、去年の問題をいつまで蒸し返し続けるつもりなのだろう」という印象を与えるだけなのかもしれない。 そんなわけで、例の桜を見る会の問題も、「去年の花見の話をまだ引っ張るのか?」てなことになりつつある。事実、花見関連の闇を追及するあれこれは、新年の話題としては、もはや古くさい。テレビのような旬にこだわるメディアは、敬遠するはずだ。東北での大震災をくぐり抜けてからこっち、政治向きの話題のニュースバリューは、目に見えてその劣化速度を増している。森友&加計の問題も、謎の解明が進んでいないどころか、むしろ問題発覚当時に比べて疑惑が深まっているにもかかわらず、メディアが扱うニュースとしてのバリュー(価値)は、「古い」「飽きた」「またその話ですか?」と、まるでトウの立ったアイドルの離婚スキャンダルみたいに鮮度を喪失している。本来、ニュースの価値は、必ずしも新鮮さや面白さにあるわけではない。価値は、事件そのものの影響力の大きさに求められるはずのものだ。ところが、震災でダメージを受けたわれらメディア享受者たちの好奇心は、絵ヅラとしてセンセーショナルな外形を整えた話題にしか反応しなくなっている』、「メディア享受者たちの好奇心は、絵ヅラとしてセンセーショナルな外形を整えた話題にしか反応しなくなっている」、嘆かわしい限りだ。
・『記者を恫喝するような会見を度々繰り返す麻生太郎副総理兼財務相。写真の着こなしや雰囲気をかつて『ウォール・ストリート・ジャーナル』は「ギャング・スタイル」と評したが、会見スタイルも同様かも。 さてしかし、冒頭で触れた麻生氏の会見マナー(番記者を「返事はどうした?」という言い方で恫喝した件)の話題は、年をまたいで、政権の中枢に波及している。というよりも、麻生氏の横柄さや失礼さは、麻生太郎個人の資質であるよりも、より深く、政権の体質に根ざした、第4次安倍政権の対人感覚の発露であったということだ。菅義偉官房長官は、年明けの最初の仕事として、1月6日放送の「プライムニュース」(BSフジ系)という番組に出演した。官房長官は番組の中で、緊張が高まっている中東地域への自衛隊派遣について問われると「(心配は)していない」と、あっさりと言ってのけている。心配していない? マジか? いや、マジなのだ。自衛隊は予定通り派遣する。この人は本当に心配していないのだ。トランプ大統領によるイランのスレイマニ司令官暗殺をどう評価するのかという質問に対しての回答は、さらにものすごい。菅氏は、「詳細について存じ上げていない」と言っている。すごい。あまりにもすごい 要するにこの人は、昨年末に、例の花見の会前夜の夕食会について「承知していない」という事実上の回答拒否を5回(数えようによっては8回)連発して、それがまんまとまかり通ったことに味をしめたのだな。 さて、以上の状況から判明しているのは、麻生氏の横柄さが、実は菅氏の傲慢さと通底する政権の体質そのものであったということなのだが、それ以上に、われわれが直視せねばならないのは、政権中枢の人間たちによるナメた答弁を、えへらえへらと許容してしまっている番記者の弱腰こそが、現今の状況を招いているという事実なのである。 安倍晋三総理は1月6日の年頭記者会見の中で、「(憲法改正は)必ず私の手で成し遂げる」と、断言している。憲法尊重擁護義務を帯びた国家公務員である内閣総理大臣が、その肩書を背負った会見で、憲法改正の決意を語るのは、端的に憲法違反であり、たとえて言うなら、野球選手が試合中にルールブックの書き換えをしたに等しい暴挙だ。 しかも、私たちの記者諸君は、この発言を許してしまっている。だとすれば、まず、最初に手をつけるべきなのは、腰抜けの番記者たちの粛清なのであろうな、と、私は半ば本気でそう考えている。(小田嶋氏の略歴はリンク先参照)』、「われわれが直視せねばならないのは、政権中枢の人間たちによるナメた答弁を、えへらえへらと許容してしまっている番記者(注)の弱腰こそが、現今の状況を招いているという事実なのである」、全く同感である。
(注)番記者:特定の取材対象者に密着して取材を行う記者のこと(Wikipedia)

第四に、4月27日付け東洋経済オンラインが掲載した取材記者グループの Frontline Pressによる「新聞・TV「政府の言いなり」の何とも呆れる実態」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/347070
・『「お上のお墨付きがないと、今がどういう状態なのか、判断できない」「感染が確認された事業者自身がサイトで発表しているのに、行政が発表していないと掲載しない」――。 新型コロナウイルス感染拡大に関するニュースが大量に飛び交うなか、報道機関の働き手からこんな声が続出している。日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)が実施したアンケートで判明した実態だが、まるで第2次世界大戦の時代を彷彿とさせる“令和の大本営発表”とも呼べる事態ではないか。研究者らの厳しい見方も交えつつ、大メディアがほとんど報じなかったMICアンケートの内容を伝える』、「大メディア」は黙殺したようだが、「報道機関の働き手からこんな声が続出」、とは興味深い。
・『「上から下まで忖度と自主規制。事なかれ主義」  MICは新聞労連や民放労連などを束ねた組織で、マスコミ系の労働関係団体として日本最大規模になる。今回は2月下旬から「報道の危機アンケート」を実施し、214人から有効回答を得た。このうちネットメディアやフリーランスなどは15人しかおらず、回答者の多くは新聞や放送の現場で取材・報道に携わる人たちだ。 「あなたが現在の報道現場で感じている『危機』について教えてください」 その問いに対する自由記述での回答からは、さまざまな“危機”が見える。 ・国会論戦を放送しなかったり、あるいはやっても短い。官邸記者が政権に都合の悪いニュースを潰したり、番組にクレームをつける。これは日常茶飯事。官邸記者が政権のインナーになっている ・ニュースソースが官邸や政権であること。その結果、番組内容が官邸や政権寄りにしかならない。彼らを批判し正していく姿勢がまったくない。というか、たとえあったとしても幹部が握られているので放送されない ・上から下まで、忖度と自主規制。事なかれ主義。サラリーマンばかりで、ジャーナリストはいない ・「過剰な忖度」であると現場の制作者も中間管理職もわかっていながら、面倒に巻き込まれたくないとの「事なかれ主義」が蔓延している』、「官邸記者が政権に都合の悪いニュースを潰したり、番組にクレームをつける。これは日常茶飯事。官邸記者が政権のインナーになっている」、前の記事にも似たような指摘があったが、よくぞ恥ずかし気もなくそんなことが出来るものだ。 
・『こうした最中、首相官邸報道室は4月上旬、官邸記者クラブに対し、新型コロナウイルスの感染防止策として、首相会見に出席する記者を1社1人に限るよう要請した。海外メディアやフリーランスの記者は10席しか割り当てがなく、希望者が多いと抽選となる。MICによると、報道室による要請以前、会見場には130程度の席があったが、現在は29席に絞り込まれている。平日に1日2回開かれる官房長官会見についても、同様に記者数に制限が設けられているという。 ・コロナとの関連で会見がかなり制限され、入ることさえできなくなったものもある。不都合な質問を受けて、できるだけ答えを出したくないという意図も感じる  コロナ禍での官邸取材について、MIC議長の南彰氏(新聞労連委員長、朝日新聞労組出身)はこう話す。 「(緊急事態宣言で)政府に権限を集中させて、その権限が適切に行使されているかをチェックしなければならないときに、チェックする術(すべ)が制限されてしまっている。(官邸会見での記者数の絞り込みには)何社か反対したようですけど、官邸側の要請が強く、『人数制限はのめない』は多数意見にならなかった。危機に便乗した取材制限につながらないようにするは、どうしたらいいか。そこが今、最大の課題です」』、「新型コロナウイルスの感染防止策として、首相会見に出席する記者を1社1人に限るよう要請」、「政府に権限を集中させて、その権限が適切に行使されているかをチェックしなければならないときに、チェックする術が制限」、こんな悪乗りを認めた官邸記者クラブも腑抜けだ。
・『「医療崩壊と書くな」と言われて  コロナ問題に関する回答では、見過ごせない記述も並んでいる。 ・記者勉強会で政府側から「医療崩壊と書かないでほしい」という要請が行われている。医療現場からさまざまな悲鳴が聞こえてきているので、報道が止まるところまでは行っていないが、「感染防止」を理由に対面取材も難しくなっており、当局の発信に報道が流されていく恐れがある ・医療崩壊という言葉についても、政府や自治体の長が「ギリギリ持ちこたえている」と表現すると、それをそのまま検証もせずに垂れ流してしまっている。実際の現場の声よりも、政治家の声を優先して伝えてしまっていることに危機感を持っている。お上のお墨付きがないと、今がどういう状態なのか、判断できない ・感染が確認された事業者自身が貼り紙やサイトで公表しているのに、行政が発表していないと(うちの新聞は)掲載しない) 福島第一原発の事故に関する取材をずっと続けているフリーランス記者の添田孝史氏(元朝日新聞記者)は、アンケートの回答を見て手厳しく語った。 「東日本大震災のときの原発事故でもそうでしたが、行政のトップが『高い放射線量の情報を出すと、パニックを煽るから書くな』と言い、記者クラブの人たちも追随することがありました。危機の際の情報発信にはちゃんとした論文もあって、きちんと情報を出さないほうがむしろパニックを引き起こすんですね。福島の事故から9年経ちますが、本当に学んでいないな、と」』、「「医療崩壊と書くな」と言われて」、それを受け入れたようだは、「きちんと情報を出さないほうがむしろパニックを引き起こす」という「福島の事故」の教訓も忘れているとは情けない。
・『「書くな」と言われたらそれ自体が大ニュース  「コロナのような危機になると、手作りマスク500枚寄付みたいな記事とか、中学生がお小遣いでマスク縫って寄付した話とか、良いお話も載せなきゃという無理矢理感も多いんです。その一方、行政側・政府側が『医療崩壊した』と言わない限りは『医療崩壊』と書かないというのであれば、ジャーナリズムとして仕事の放棄です。自分たちの取材を通して『こういう状態です』とはっきり言えばいいわけで、権威ある人が言うまで書かないというのはおかしい。そもそも『医療崩壊って書くな』って言われたなら、それだけで書けよ、って思う。それ自体が大ニュースです。(MICの)アンケートの回答に書いている場合じゃないだろう、と」 情報メディア法に詳しい田島泰彦・元上智大教授は、こう指摘する。 「記者会見のメンバーがセレクトされるとか(会見の)時間の制約があるとか、会見そのものが非常に一面的な方向になりうるからこそ、従来以上に独自の取材や報道を進めなくてはいけないはずです。それが本来の報道機関の役割なんです」 「普段は見過ごされているけど、今回のような重大な事態になると、報道機関がどれだけ政府の情報に依拠して伝えているかが露骨になる。メディア全体としてみると、かつての『大本営発表』と同じような役割をしてしまっている。そこの部分を本気になって変えていくことをしないといけない。真実を守るため、報道の自由を大事にするということをやっていかないと、最終的には市民から見放される。(今も)極めて厳しい自己批判をしなくちゃいけないと思います」 よく知られているように、日本の新聞やラジオは第2次世界大戦の際、軍部(=大本営)の発表を右から左へと垂れ流したばかりか、むしろ好戦的な紙面を作り、国民を煽った歴史を持つ。田島氏の指摘は、まさに今が大本営発表と同じではないか、という点に主眼がある』、「そもそも『医療崩壊って書くな』って言われたなら、それだけで書けよ、って思う。それ自体が大ニュースです」、「今回のような重大な事態になると、報道機関がどれだけ政府の情報に依拠して伝えているかが露骨になる。メディア全体としてみると、かつての『大本営発表』と同じような役割をしてしまっている」、全く同感である。
・『記者クラブの権力監視が機能していない  こうした指摘に対し、MIC議長の南氏「記者クラブを拠点とした取材スタイルの限界が露呈している」と言う。 「記者クラブを拠点にしながら、番記者制度の下、取材対象に肉薄していろんなことを聞き出してくるスタイル自体が、いちばん権力を監視しなくてはならない時に機能しないことが露呈してしまった。このシステムはずっと問題だと言われてきたけれど、いよいよメディア側も『これでは難しい』と認識できたと思います」 「メディア側も変わらないといけない。(ここ数年の)公文書の問題も含めて、非常に不透明な、情報開示に消極的な権力に対して、どうしっかり説明させていくのか。それも記者クラブに限定せず、社会全体に透明性を持って説明させていくか。それが今、私たちの置かれている状況だし、ここを転換点にしていかないといけない、と」 マスコミで報道に携わる彼ら彼女らの声を、以下ですべて紹介する。「マスコミの報道が劣化している」は言い古された言葉だが、アンケートの回答を読み通すと、その実態に改めて、驚愕するかもしれない。 日本マスコミ文化情報労組会議『報道関係者への「報道の危機」アンケート結果(概要)について』(PDFファイル、2020年4月21日)』、「記者クラブを拠点とした取材スタイルの限界が露呈している」とは言い得て妙だ。「アンケート結果」は下記を参照されたい。
https://toyokeizai.net/sp/vfiles/2020/04/pressenquete.pdf
タグ:「官邸記者クラブが菅長官に屈する理由、東京新聞・望月記者いじめ2年半―分断越えるため何が必要か」 同時配信の実施直前に高市総務相からいちゃもん 政治家に接近し情報をもらうというオフコンを重視し過ぎることは、記者達の立場を弱くすることにもなる 政府高官に張り付いて取材する番記者の役割は、会見で質問することだけではなく、むしろ、政府高官が宿舎に帰るところ等の非公式な場で、会見では語らない本音や政府内の動きを聞くこと このテレビの完全に横並びの感じは実は警戒すべきことなのではないのか? まるで戦時の「大本営発表」のような“体制翼賛”のにおい 志葉玲 yahooニュース かんぽ生命をめぐる元総務次官の抗議とNHK会長の謝罪 戦前戦中でいえば「宣戦布告」「戦争終了」などの際の国家のトップの行動に近い。かなり権力的な行為 取材方法としてオフコン(注)を重視しすぎている日本の政治報道の文化があるのでは NHKは事実上国営放送なのか? 官邸記者クラブに対し、新型コロナウイルスの感染防止策として、首相会見に出席する記者を1社1人に限るよう要請 水島宏明 朝日新聞の政治部記者で新聞労連の委員長を務める南彰氏 菅官房長官に屈した内閣記者会 望月記者への質問制限に記者会が関与? NHKが「指定公共機関」になっている マスコミへのコントロール 新型ウイルス対策特別措置法 国民の私権を一部制限する「緊急事態宣言」を発動 政権とメディアによる「目隠し」の裏で、重要なテーマが語られ、対応が決められていくことは、国民主権の民主主義という観点からすると極めて不健全だ 「i 新聞記者ドキュメント」 「”緊急事態宣言”をあらゆるテレビ局が同時に中継する「大本営発表」日本は大丈夫なのか?」 テレビ東京まで緊急特番を放送した 安倍政権の メディアが共闘できる素地を オフコン重視の弊害、権力に媚びるメディアに メディアが一気にこうなってしまう日本という国は大丈夫なのか なぜNHKニュースに安倍首相が生出演するのか? 「医療崩壊と書くな」と言われて (その13)(官邸記者クラブが菅長官に屈する理由 東京新聞・望月記者いじめ2年半―分断越えるため何が必要か、”緊急事態宣言”をあらゆるテレビ局が同時に中継する「大本営発表」日本は大丈夫なのか?、番記者よ 奮起せよ──コラムニスト・小田嶋隆)、新聞・TV「政府の言いなり」の何とも呆れる実態) 「番記者よ、奮起せよ。──コラムニスト・小田嶋隆」 「公務」を口実にした会見の打ち切りこそ、望月記者への質問制限として菅官房長官が活用してきたものであるが、それにとどまらず、政権側に都合の悪い質問を避けるために使われてきている GQ NHKだけでなく、民放も「忖度」したのである 報道関係者への「報道の危機」アンケート結果 (緊急事態宣言で)政府に権限を集中させて、その権限が適切に行使されているかをチェックしなければならないときに、チェックする術(すべ)が制限されてしまっている 「上から下まで忖度と自主規制。事なかれ主義」 記者クラブの権力監視が機能していない 日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)が実施したアンケート 官邸記者が政権に都合の悪いニュースを潰したり、番組にクレームをつける。これは日常茶飯事。官邸記者が政権のインナーになっている 「書くな」と言われたらそれ自体が大ニュース 「新聞・TV「政府の言いなり」の何とも呆れる実態」 Frontline Press きちんと情報を出さないほうがむしろパニックを引き起こす 三原じゅん子議員のツイート “横並び”では民放も「忖度」したのか? 東洋経済オンライン われわれが直視せねばならないのは、政権中枢の人間たちによるナメた答弁を、えへらえへらと許容してしまっている番記者(注)の弱腰こそが、現今の状況を招いているという事実なのである 記者を恫喝するような会見を度々繰り返す麻生太郎副総理兼財務相 メディア享受者たちの好奇心は、絵ヅラとしてセンセーショナルな外形を整えた話題にしか反応しなくなっている
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

アパレル(その2)(日本の「アパレル危機」の想像以上に大変な実態 モールすら埋まらない現状に活路はあるか、ユニクロに大逆風…! ここへきて「最大の危機」に直面しているワケ コロナウイルス 反日韓国 香港デモ…、三陽商会「5カ月で社長交代」の厳しすぎる現実 新型コロナに加え ファンドと委任状争奪戦) [産業動向]

アパレルについては、昨年8月17日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その2)(日本の「アパレル危機」の想像以上に大変な実態 モールすら埋まらない現状に活路はあるか、ユニクロに大逆風…! ここへきて「最大の危機」に直面しているワケ コロナウイルス 反日韓国 香港デモ…、三陽商会「5カ月で社長交代」の厳しすぎる現実 新型コロナに加え ファンドと委任状争奪戦)である。

先ずは、本年1月16日付け東洋経済オンラインが掲載した編集者の軍地 彩弓氏による「日本の「アパレル危機」の想像以上に大変な実態 モールすら埋まらない現状に活路はあるか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/324022
・『「渋谷ダンジョン(迷宮)」とも呼ばれる渋谷駅。駅周辺の再開発で道は複雑に入り乱れ、東京に慣れているつもりでもまるで初めての場所に来たような感覚に襲われる。まるで映画の『ブレードランナー』のように。先日改修工事が終わったばかりの銀座線も、動線が悪いといった不満が聞かれる。 ▽アパレル業界界隈の”異変”(オリンピックを控え、東京ではビル開発が急ピッチで進む。Googleの日本本社が入る渋谷ストリーム(東急不動産)、昨年11月に開店した渋谷スクランブルスクエア(東急など)、渋谷パルコ(J.フロント)のリニューアルオープン、12月には東急プラザ渋谷(東急不動産)、2020年春には宮下公園跡に三井不動産が開発する商業施設のオープンまで。デベロッパーが仕掛けるオープンラッシュが続く。 好景気の象徴のような建築ラッシュの横で、アパレル業界界隈では昨年、いくつかの衝撃的な話題があった。フォーエバー21の破産、本国バーニーズNYの破綻、そしてオンワードホールディングスが発表した2020年2月期の業績見通しの大幅な下方修正だ。 修正後は営業利益が12億円(修正前は55億円)、純損益が240億円の赤字(同55億円の黒字)。事業整理損など約250億円の特別損失となる見通しだ。不採算ブランドの国内600店舗を閉鎖するという報道もあったが、12月には資本金を中小企業レベルの1億円に下げるというニュースまで飛び出し、業界関係者を騒然とさせた。 厳しいのはオンワードだけではない。同業の三陽商会も今年度の上期は黒字予想だったのが、営業損失は8.6億円、最終損失6億円という結果となった。 アパレル大手が、事業モデルの転換期にあることは確かだ。ユニクロが過去最高益を出す一方、百貨店依存だったアパレル大手の業績は軒並み厳しい。 百貨店も不採算店のクローズを続々と決めている。とくに地方都市では駅前の一等地の退店が相次いでいる。徳島そごう、伊勢丹相模原店、かつては地域の最高級の百貨店であり、地域の上顧客をしっかり押さえた外商が機能していた店だ。 駐車場を完備した郊外型大型店に押され、苦渋の決断として、地方百貨店が潰れていく。 地方百貨店の閉鎖と同様、地方のアウトレットや大型モールでも一部ではすでに空床化が問題になっている。上記のようにメーカーがブランドの閉鎖や店舗の削減をする中、かつて何百ものショップが詰まっていた売り場が埋まらなくなってきた。 ここ最近、好調と言われるコスメブランドで埋めたり、フードエリアを拡大したりと、店舗構成を変えてきてはいるものの、テナント撤退によってできた穴を埋めるのは難しい。とくにスペースが大きかったフォーエバー21、アメリカンイーグルなどの大型SPAブランドの撤退など、ファッションテナントの減少は進み、どこも苦戦している』、この記事の段階では、パンデミックの影響は殆ど出ていなかったが、それでも「危機」にあったので、その後の影響本格化で、インバウンド需要消滅、百貨店休業などの影響を受けて、悲惨な状態にある筈だ。それでも影響本格化前の状況をみておく意味もあるので、紹介した次第だ。
・『多様化する購買チャネル  ここ10年程、消費者にとっては当たり前の購買チャネルの多様化に、業界側はかならずしもついていけていない。 百貨店、ショッピングセンター、アウトレット、駅ビル、ECでもアマゾン、ZOZOTOWN、楽天などのECモール、自社EC、また最近ではインフルエンサーがインスタから直接ECに誘導するなど“買い方”は多種多様になっている。加えて、メルカリなどフリマアプリまで出てくると、欲しいものをどこで見つけるかはさまざまだ。わざわざ行く百貨店より、スマホで比較購入もできてしまうECショッピングの手軽さがより進化している。 大型のショッピングセンターの煩わしさ。車を駐車して、広い店内で疲れ、欲しいものが見つからないストレスより、ECで欲しいものが手軽に家に届くのであれば、リアル店舗の消費者離れが起きることも避けられない。 ここ数年、ショッピングセンターの出店は鈍化している。同様に、退店テナントも増えている。ファッション系だけでなく、インテリア、スポーツ、ホビー、飲食なども苦戦が続いている。 既存のショッピングモールなどは依然、高い出店料がかかる。ファッション系であれば内装費用も店内平均坪当たり120万円くらいからかかる。10坪くらいでも1000万円は優に超えるのが現状だ。大手企業でなければ出店のハードルは高い。空床化していても、若いブランドが入りにくい背景がここにある。 しかし、「いい話がない」と一概に言い切るのは危険だ。人気スタイリストである藤原ヒロシ氏がキュレーションする「ザ・コンビニ」のナイトマーケットは、ミレニアル世代の若者で大盛況だし、相変わらず原宿のゴローズには行列ができている。「売れない」のでななくて、消費者が「必要のないものを買わない」に近いのではないだろうか。 20代たちと話していると、「買う」こと自体を避けているのではないということを感じる。むしろ、無駄なものを買うことへの罪悪感が大きい。 ある女子大生(22歳)は、「ファストファッションはすぐゴミになってしまうからできるだけ買わない」と言う。自分の好きなデザイナーズブランドをシーズンにお小遣いをはたいて、数点だけ買って、大切に着る。 一方で「ユニクロは質がよく、コスパがいいから買う」という。大好きなブランドやアイテムがあれば、公式サイトやセレクトショップのECを見たり、メルカリもチェックしながら探し当てて買うなど、コスパ意識が発達している。 そんなミレニアル世代が立ち上げた環境保護運動組織「Extinction Rebellion」の呼びかけで、52週間(1年間)新しい服を買わないファッションボイコットキャンペーン「#boycottfashion」が始まっている。 世界中で50万人を超える若者たちが気候変動のために行動を起こす現在。リサイクルやアップサイクルされた衣類のみを手に取るよう呼びかけるこの運動が、Z世代を中心に支持を集め始めている。 インフルエンサーのぷるこ(@purukousagi)さんは自分でブランドをプロデュースしていたが、「余剰の服が廃棄されることがわかって、一旦新作を作ることをやめる」と宣言した。 昨年は環境サミットにおける当時、16歳のグレタ・トゥーンベリさんのメッセージが大きな話題になった。自分たちの未来の地球がどういう環境になるのか?ミレニアル&Z世代が強い意志でサスティナビリティーへの関心を強く持っていることは確かだ。 これから淘汰されていくのは「過剰」なものだ。オーバーストア、オーバーサプライ、オーバープロダクション。これらが生み出す「無駄」は、環境破壊につながる。それを敏感に感じているのが若者世代である』、「#boycottfashion」は初めて知った。「ミレニアル&Z世代が強い意志でサスティナビリティーへの関心を強く持っていることは確かだ」、頼もしいことだ。
・『新たなリテールのムーブメント  昨年11月にリニューアルオープンした渋谷パルコのオープニングは活況だった。新旧の日本ブランドが並び、初出店ブランドや初業態が並び、ラグジュアリーブランド、地方名産品、アートやポケモンセンターまで、本来の渋谷のエネルギーを閉じ込めたフロア構成。往年の渋谷を知る人にとっては音楽の殿堂であったWAVEが新たに復活したことも話題となった。 一方で昨年9月に表参道のワールド本社ビルの1階で開催された「246st MARKET」では、基本店舗を持たないD2C(Direct to Consumer)ブランドが15社集まり、10日間にわたり、POP-UP型百貨店”を開催した。ここでは普段ECを中心に集客しているブランドたちが、期間限定の店舗を開くことで新顧客を獲得したり、既存ユーザーとのコミュニケーションをするなど、リアルではできない体験、情報収集をした。 そのブランドたちの取材をすると、「表参道ならではの新しい顧客を獲得できた」「実際に商品を手にすることで、顧客とより深いコミュニケーションができた」「買わなかったお客様から、“こういうものを作ってほしい”などの意見が聞ける」など大方ポジティブな意見が多かった。 リアル店舗の役割は、単なる売り場から変化してきている。 売り手側 ・新規顧客獲得 ・ユーザーとのコミュニティ ・情報収集基地  買い手側 ・ECでは体験できない出会い ・手に取れて、試着ができること ・作り手の思いに触れること  前出の「246st MARKET」開催中に印象的な場面があった。「Beyond the reef」というカゴとニットを合わせたバッグブランドがある。そこが開催した編み物ワークショップ。教えるのはブランドを立ち上げた女性の70代の義理の母。編み物の先生として、ユーザーをネットで集い、小学生から年配の方まで、8名ほどのグループで編み物講習をする。2時間ほどで小さなバッグが完成。その間、笑い声が絶えず、買うだけじゃない、作る楽しみもシェアしていた。 先日、実家近くの水戸で聞いたことだが、大洗にあるアウトレットでも、空床問題は深刻なのだそうだ。都会と同じ利便性を求めて地方に誘致されたショッピングモール。地元の個人商店があおりを食って、続々と廃業した。しかし、オーバーストアのあおりを受けここ数年、ここでも空床問題は深刻だ。 だが、そのあいた空間に今、地域の手作りサークルが小さなお店を出し始めているのだという。地域の有志で破格の値段で場所を借り、そこに自分たちで作ったアイテムを置いたり、ワークショップを開いて、地域の女性たちで集まったりと、あらたな“地域活性”の拠点となり始めているのだという。 こういった“体験”型ショップも小売りの原点回帰現象の1つだ。 どこでも買える何か、ではなく、ここでしか出会えない何か。 均質化したショッピングモール、モノ余り、供給過多、オーバーストアという今のリテールの次の形とは何か?次回はアメリカで起きている、リテールの大変革について、現地レポートを含めてお伝えしたい』、「新たなリテールのムーブメント」のうち定着するのは、どんなものなのだろう。

次に、2月5日付け現代ビジネスが掲載したジャーナリストの砂川 洋介氏による「ユニクロに大逆風…! ここへきて「最大の危機」に直面しているワケ コロナウイルス、反日韓国、香港デモ…」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/70201
・『ユニクロに「最大の危機」  いまや日本のみならず世界でも大人気となっているユニクロ。 ユニクロを展開するファーストリテイリング社はすでにH&MやGAPなどの世界トップブランドを時価総額で抜き去り、ZARAなどを展開する世界一のアパレル企業インディテックスが視界に入ってくるまでになった。 しかし、そんな同社にとっていま「最大の危機」となりかねない大逆風が吹き荒れていることをご存じだろうか。 いまユニクロにとって大打撃となっているのが、中国・武漢から急拡大して世界を震撼させている新型コロナウイルス騒動である。 「ユニクロは武漢で展開している17店舗が休業に追い込まれたのみならず、1月末には中国全土で約160店も休業することになった。ユニクロは中国全土で750店(昨年12月末時点)を展開していることを考えると、約2割強の店が開業できないことになる。コロナウイルス騒動がいつ収束するか見通せない中にあって、収益への打撃が計り知れなくなっている」(アナリスト) 実際、いまやユニクロにとって中国は「稼ぎ頭の中心」。ファーストリテイリングの2019年8月期決算を見ると、最大の売上収益を叩き出しているのが海外ユニクロ事業で、その過半を稼いでいるのが中国を含むグレーターチャイナ地域の5000億円超なのである。 「いまやユニクロは『中国大陸でナンバーワンのアパレルブランド』とみずから豪語するほどで、利益ベースで年間30%成長するほど稼ぎまくっている。それがここへきて新型コロナウイルス騒動が直撃しており、単純計算で売り上げが2割減だとしても1000億円ほどの減収インパクトになり得る。同社がいくら巨大企業になったからといって、決して看過できるような金額ではない」(前出・アナリスト) しかも、コロナウイルス騒動の影響はそれだけにとどまらないのだからただ事ではない』、「最大の売上収益を叩き出しているのが海外ユニクロ事業で、その過半を稼いでいるのが中国を含むグレーターチャイナ地域」、これほどまでに中国依存が高まっていたとは驚いた。
・『コロナショック、人民元安、インバウンド減…  新型コロナウイルス騒動を受けて、金融市場で「人民元売り」が起きていることもユニクロへの悪影響になる。 「すでに為替市場では中国リスクを嫌気して、人民元売りや有事の円買いが起きている。1月末には人民元がさっそく年初来安値まで売られた形だが、これは中国で稼いでいるファーストリテイリングの決算にとってはマイナス要因になる」(ファンドマネジャー) じつはこうしたコロナウイルス・ショックは、ユニクロの日本国内販売にも影響を与えかねない。 「国内ユニクロ事業はファーストリテイリングにとって、海外ユニクロ事業と並ぶ『二本柱』のひとつだが、インバウンド需要に支えられている面が少なくありません。現実にユニクロの銀座店などに行くと、アジアを中心にした外国人観光客でごった返しているのが実情です。 しかし、新型コロナウイルス騒動を受けて、中国では海外への団体旅行が当面中止とされたばかり。ちょうど中国人の観光客が大量に訪日する春節のタイミングが重なったこともあり、インバウンド消費が激減したことは間違いない」(前出・ファンドマネジャー) もちろん、いまだコロナウイルスの感染は拡大するばかり、これからさらなる渡航禁止措置などに発展する可能性もある。 そうなれば、ユニクロにとってはダブルパンチで痛手となるというわけだ』、幸い中国本土では「新型コロナウイルス騒動」は収束しつつあるので、今後は急速に盛り返すだろう。
・『ニクロ韓国は「反日ショック」で赤字転落…!  そもそもユニクロをめぐっては、昨年来より激化している日韓対立が業績を直撃している真っ最中である。 「昨年7月からの不買運動の影響をモロに受けています。ファーストリテイリングが発表した直近決算では、韓国事業が大幅な減収に見舞われた結果、営業利益が計画を下回り赤字に転落したと明かされています。いまだ反日ショックの影響は続いており、通期でも2ケタの大きな水準での赤字になる見通しとされています」(前出・アナリスト) 直近決算でファースユトリテイリングの海外ユニクロ事業は減収減益に追い込まれたのだが、その主因はまさにその韓国事業。さらに、香港で続くデモの影響も出ている。 「香港事業は既存店売上高が減収に追い込まれ、営業赤字に転落した。直近決算で減収減益になった海外ユニクロ事業だが、ユニクロ幹部が『韓国・香港要因がなければ増収増益だった』と言うほどの影響を受けているかたちです」(前出・アナリスト)』、「韓国事業」は「日韓対立」持続で厳しい状況が続くだろう。「香港事業」もいい材料はなさそうだ。
・『ユニクロ株と日経平均株価  こうした事態を受けて、ファーストリテイリングの株価は冴えない。 昨年7月には7万円を突破していた株価が、ここへきて急落下。2月3日には5万6000円台をつけるなど、「6万円割れ」まで落ち込んでいる。 「大手証券がファーストリテイリングの目標株価を引き下げる動きもあり、どこまで落ちるのが見通せなくなってきた」(前出・ファーストリテイリング) ファーストリテイリングは中国をはじめとするアジアへの進出を積極的に推し進めて、大成功してきた。 それが同社をアパレル業界における有数のグローバル企業に押し上げた最大の要因であることは間違いないが、ここへきてグローバルリスクにモロにさらされているかたちである。 「ファーストリテイリングを率いる柳井正会長兼社長は同社株を約2200万株保有している。年始から5000円ほど同社株が下落していることを考えると、単純計算でこの間に柳井氏の保有株の価値は1000億円ほど下がっていることになる。 同社の株価は日経平均株価への寄与度が高いだけに、ファーストリテイリング株が下がれば日経平均そのものの大きく下落するリスクがある」 ユニクロショックから日本株ショックへ。 そんな最悪のシナリオも視野に入ってきた――』、「ファーストリテイリング」の株価は、一時40000円台まで下落したが、現在は52000円程度まで戻してきたようだ。

第三に、4月20日付け東洋経済オンライン「三陽商会「5カ月で社長交代」の厳しすぎる現実 新型コロナに加え、ファンドと委任状争奪戦」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/345227
・『「ポールスチュアート」や「マッキントッシュ ロンドン」を展開するアパレルの三陽商会は4月14日、社長交代人事を発表した。5月末にも開催する株主総会をもって中山雅之社長は副社長に降格。3月に入社したばかりの大江伸治副社長を社長に昇格させる。 同社では4期連続の最終赤字が濃厚となった2019年10月、岩田功・前社長が引責辞任を表明。取締役常務執行役員だった中山氏が2020年1月から後任社長に就いたばかりだった』、「5カ月で社長交代」、とは何が起こっているのだろう。
・『社長の早期交代は想定されていた  「今後は副社長として大江さんが指揮する再生プランの遂行を土台から支えていく。(大江氏との)ツートップ体制は変わらないが、非常時である今は、外部から来た大江さんが新しい“顔”となる方が金融機関や株主の理解を得られやすいと考えた」 4月14日に都内で開いた会見で、中山社長は社長交代の理由をこう話した。 新社長となる大江氏は、58歳の中山社長より一回り以上も上の72歳。三井物産に37年間在籍した後、アウトドアブランド「ザ・ノース・フェイス」を展開するゴールドウインに2007年に移り、取締役や副社長を歴任した。大江氏がゴールドウインに在籍していた期間は、同社が業績の底から浮上し、現在の成長を実現した時期に当たる。 「アパレル業界での事業再生を成し遂げたプロフェッショナルとして外部から招聘した。アパレル業界における豊富な経験、幅広い知見・人脈は当社の再建を早期に実現するうえで大きな後押しとなる」と中山社長は大江氏に期待を寄せる。) 会見に同席した大江氏は、三陽商会の経営立て直しを引き受けた理由について、「これまでほぼ50年間、繊維がらみの仕事に従事してきた。多岐にわたる経験を生かして、キャリアの集大成となる仕事ができるのではないかと判断した」と説明。「ミッションを引き受けたからには不退転の覚悟で臨みたい」と厳しい表情で語った。 アパレル業界の中で今回の社長交代は想定内のことだった。2020年1月の中山社長就任は、対外的にけじめを示す目的で岩田前社長の退任を急いだ意味合いが強く、経営体制の大幅な見直しを決めるまでの「ワンポイントリリーフ」と多くは見ていた。 実際、紳士服の企画畑を歩んできた中山社長の手腕については、「厳しい経営状況の中で大胆な改革を実行できる力量もないだろう」(アパレル業界関係者)と疑問視されていた』、「大江伸治副社長」の「入社」が「3月」だったので、「1月の」「岩田前社長の退任」とはギャップができてしまったので、取り敢えず「中山社長就任」としたようだ。
・『コロナ影響で100億円の営業赤字も覚悟  三陽商会の業績はじり貧状態だ。2015年にライセンス契約が終了したイギリスのブランド「バーバリー」の穴を依然埋め切れていない。加えて、売上高の6割強を占める百貨店での集客減が直撃している。 4月14日に発表した2020年2月期決算(14カ月の変則決算)。売上高は688億円と2019年3月に公表した会社計画比で5%減にとどめたものの、営業損益は当初見込んでいた黒字を達成できず、28億円の赤字となった。2018年末に約250人の希望退職を実施し、人件費を大幅削減したにもかかわらず、4期連続の大赤字となった。 足元では新型コロナウイルス感染拡大の影響が重くのしかかる。外出自粛の傾向が強まった3月は、月次売上高が前年比44%減と大きく落ち込んだ。緊急事態宣言を受けて多くの百貨店が休業した4月はさらなる売り上げ減が予想される。 会社側は今2021年2月期の業績予想を未定としたが、大江氏は新型コロナの影響次第で営業赤字が約100億円に膨らむ可能性を示唆。そのうえで「事業構造改革を断行し、2022年2月期に確実に黒字化するための施策を徹底する」と強調した。 大江氏が掲げる再建プランの柱は主に2つ。1つは在庫抑制による粗利率の改善だ。 これまで商品の仕入れは各ブランドの現場裁量で決めていた。それを中央で一元管理し、今下期は仕入れ量を前年同期比で3割減らす方針。品番数もブランドごとに1~3割程度削減する。 「バーバリーがなくなった後も一定の売り上げ規模の維持に必要以上にこだわった結果、過剰仕入れ、過剰投入、セールの乱発、粗利率の悪化という悪循環に陥った。今後は額ではなく、(粗利)率に徹底してこだわる」(大江氏) もう1つの柱はコスト削減だ。約1050の売り場のうち、最大150売り場を今期中に撤退する。乱発ぎみだった新規事業も、大半が赤字に陥っていることから今期中に整理を進める。「収益化のメドが立たないと判断されれば躊躇なく事業撤退を考える」(大江氏)という』、「2021年2月期」は「新型コロナの影響次第で営業赤字が約100億円に膨らむ可能性を示唆」、この赤字幅はもっと大きくなってもやむを得ないだろう。
・『大株主は中山社長の取締役留任に猛反対  抜本的改革にようやく乗り出したようにみえるが、市場関係者やアパレル業界関係者の視線はなお厳しい。三陽商会の株式を6%保有するアメリカの投資ファンド「RMBキャピタル」は、5月の株主総会で中山社長の取締役退任と、同社が推薦するマッキンゼー出身の小森哲郎氏の社長選任などを求める方針だ。 RMBの細水政和ポートフォリオマネジャーは、「小森氏と大江氏の体制であれば真の再生が実行できるが、そこに中山氏は不要。中山氏が代表取締役副社長としてとどまると経営責任の所在があいまいになる」と主張する。 大江氏については、「生産管理・在庫管理など、これまで三陽商会がきっちりできていなかったオペレーションを厳しくコントロールできる実行力がある」と評価。「さまざまな業界で経営してきた経験を基に将来の成長戦略やビジョンを描ける」小森氏と組めば、赤字を止め、将来の成長戦略を社内外に示せると細水氏は考える。) 一方、4月14日に発表された再生プランは中山社長と練った策であるため評価が低い。細水氏は「目先の黒字化計画に過ぎず、強力なブランド育成やビジネスモデルの転換など長期的に黒字を維持するための成長戦略が示されていない」と切り捨てる。 RMBは2019年末にも第三者への会社売却を検討するよう提案するなど、経営体制の見直しを求めてきた。中山社長は「会社側の考えを丁寧に説明して理解を得ていきたい」と語るが、今後も双方の話し合いが平行線をたどれば、株主総会で委任状争奪戦へと発展する可能性がある』、「RMBキャピタル」の言い分ももっともらしく聞こえるが、最終的にはどうなるのだろうか。
・『「貴族のような気質」を変えられるのか  大江氏は三陽商会を変えられるのか。消費環境の変化にいまだ対応できていない同社を変えるのには骨が折れそうだ。 あるアパレルOEM会社の幹部は、「(「23区」などを展開する)オンワードホールディングスはEC強化などの目標を決めたら兵隊のごとく徹底的に実行する。対する三陽商会は、特に中堅以上の社員や経営幹部の間でまったりとした貴族のような気質が抜けない。打ち出す新規施策も後手の印象が強い」と語る。新たな戦略を打たずともバーバリーが売り上げを支えてくれた時代が長かったことで、三陽商会は変化への対応力が培われなかったようだ。 現預金や不動産など保有資産が潤沢なことも、かえって会社の経営に対する危機意識が高まらない要因となった。 2018年夏の決算会見で、当時の岩田社長は「現預金はかなり潤沢にあるので、売り上げを上げる投資を行っていく」と発言。翌2019年に、手薄な20~30代向けの新ブランド「キャスト」を立ち上げて約30店舗を一気に出店。銀座の自社ビルも巨費を投じてリニューアルした。 が、キャストも銀座の自社ビルでの販売も、想定した売り上げを確保できなかった。大手アパレルの幹部は、「このアパレル不況の時代に新ブランドを30店も一気に出す勇気は到底ない。資産があるからできるのでは」と苦笑する。 会社の気質を一朝一夕に変えるのは難しい。今回の人事では社外取締役を2人から6人へ大幅増員し、ガバナンス機能の強化をうたうが、大江氏と同じ三井物産や百貨店の出身者を含むメンバー構成に、複数の業界関係者は「お友達人事ではないか」と首をかしげる。 現預金と保有有価証券は約5年前比でおおよそ半減し、2020年2月末時点で219億円。新型コロナの影響が長引けば、一層のリストラや事業整理を迫られる可能性もある。遅すぎた改革の下、会社とブランドを存続させていけるのか。大江新体制は、重責を背負ってスタートする』、社内に「貴族のような気質」があるのであれば、「大江氏」がいくら頑張っても変革は難しそうだ。一層のこと、中核となる人材を外部から導入するのも一案なのではなかろうか。活躍を期待したい。
タグ:新たな戦略を打たずともバーバリーが売り上げを支えてくれた時代が長かったことで、三陽商会は変化への対応力が培われなかったようだ。 「貴族のような気質」を変えられるのか 中山社長の取締役退任と、同社が推薦するマッキンゼー出身の小森哲郎氏の社長選任などを求める方針 「RMBキャピタル」 大株主は中山社長の取締役留任に猛反対 売上高の6割強を占める百貨店での集客減が直撃 「バーバリー」の穴を依然埋め切れていない コロナ影響で100億円の営業赤字も覚悟 社長の早期交代は想定されていた 「三陽商会「5カ月で社長交代」の厳しすぎる現実 新型コロナに加え、ファンドと委任状争奪戦」 ユニクロ株と日経平均株価 ニクロ韓国は「反日ショック」で赤字転落…! コロナショック、人民元安、インバウンド減… 最大の売上収益を叩き出しているのが海外ユニクロ事業で、その過半を稼いでいるのが中国を含むグレーターチャイナ地域の5000億円超 ユニクロは中国全土で750店(昨年12月末時点)を展開 ユニクロに「最大の危機」 「ユニクロに大逆風…! ここへきて「最大の危機」に直面しているワケ コロナウイルス、反日韓国、香港デモ…」 砂川 洋介 現代ビジネス 新たなリテールのムーブメント ミレニアル&Z世代が強い意志でサスティナビリティーへの関心を強く持っていることは確かだ 52週間(1年間)新しい服を買わないファッションボイコットキャンペーン「#boycottfashion」 多様化する購買チャネル 地方百貨店の閉鎖と同様、地方のアウトレットや大型モールでも一部ではすでに空床化が問題に 百貨店依存だったアパレル大手の業績は軒並み厳しい アパレル大手が、事業モデルの転換期にある 「日本の「アパレル危機」の想像以上に大変な実態 モールすら埋まらない現状に活路はあるか」 軍地 彩弓 東洋経済オンライン (その2)(日本の「アパレル危機」の想像以上に大変な実態 モールすら埋まらない現状に活路はあるか、ユニクロに大逆風…! ここへきて「最大の危機」に直面しているワケ コロナウイルス 反日韓国 香港デモ…、三陽商会「5カ月で社長交代」の厳しすぎる現実 新型コロナに加え ファンドと委任状争奪戦) アパレル
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

電気自動車(EV)(その7)(中国が描く日米欧を超える「自動車強国」の本質 日本の産業構造が変化していく可能性も、業界騒然“ソニーのクルマ” 発表のウラに秘められた「勝算の理由」 けっして「売る」ためではない、中国・新興EV テスラの技術窃盗疑惑で猛反発 テスラは新興EVにソースコードの開示要求) [イノベーション]

電気自動車(EV)については、昨年10月29日に取上げた。今日は、(その7)(中国が描く日米欧を超える「自動車強国」の本質 日本の産業構造が変化していく可能性も、業界騒然“ソニーのクルマ” 発表のウラに秘められた「勝算の理由」 けっして「売る」ためではない、中国・新興EV テスラの技術窃盗疑惑で猛反発 テスラは新興EVにソースコードの開示要求)である。

先ずは、昨年12月22日付け東洋経済オンラインが掲載したみずほ銀行法人推進部 主任研究員の湯 進氏による「中国が描く日米欧を超える「自動車強国」の本質 日本の産業構造が変化していく可能性も」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/320163
・『中国は生産・販売の両面で「自動車大国」の地位を固めているものの、内燃機関車技術で中国メーカーが日米欧メーカーにキャッチアップするのは簡単ではない。 なぜならば、「世界の工場」といわれる中国であっても、組み立て型産業で「自己完結型ものづくり」を実現するには高品質なものを作り上げる技術や「各種加工プロセスの技術」が求められ、この分野におけるイノベーション能力の形成は中国メーカーには難しいからだ。 しかし、「中国が描く日米欧を超える「自動車強国」の本質 日本の産業構造が変化していく可能性も」。EVシフトに伴い高度な製造技術を求める部品が大幅に減少するだけではなく、中国は日米欧企業に劣後する機械工学技術を一足飛ばし、電動化とIT技術を融合する「カエル跳び型(Leapfrogging)」発展戦略で競争優位の構築を図ろうとしている』、確かに後発国にとっては、「「カエル跳び型」発展戦略」は合理的だ。
・『官民挙げての研究開発強化がカギ  中国が次世代自動車技術での優位性や業界スタンダードを確立できれば、部品産業の技術進歩も期待でき、中国の自動車産業全体の競争力を向上させることができる。 そうなれば、EV電池やモーターなどの基幹部品を国産化しやすくなることに加え、国内消費市場、貴金属資源の保有、部品・部材産業集積の存在などの面で日米欧を圧倒する条件が整う。こうした勝算を前提に中国政府は3つのステップを踏んで「自動車強国」となる構想を描いている。 第1ステップは、NEV(注)市場を育成することだ。第2ステップは、中国発の世界ブランドを育成することだ。第3ステップは、自動車強国の実現を象徴する地場メーカーの海外進出だ。地場メーカーが、2025年に世界市場における中国ブランドの地位を向上させるとの目標を掲げている。 ただ、それを実現するためには裾野・部品分野を含む産業チェーンの発展、省エネ技術やコア部品の生産技術を獲得する必要がある。それと同時に最も肝心なのは、NEV、自動運転技術、コネクテッドカー(つながる車)などスマートカー分野に重点を置き、官民挙げて研究開発を強化することだ。 中国のEV補助金政策の波に乗り、BYD汽車等の民族系自動車メーカーはいち早くNEV市場に参入し、CATLなど多くの地場電池メーカーがEV電池の生産を開始した。 また、NIO、小鵬汽車などIT企業や異業種から参入した新興EVメーカーが増加した。電動化で自動車業界の勢力図を変えようとするBYD、巨大電池メーカーのCATLは中国EV革命を推進する代表的な破壊者として挙げられる。 従業員23万人を率いるBYDの王伝福会長はつねに「人材第一」を意識し、松下幸之助の名言「物を作る前に人を作る」によく言及した。中間管理職を定着させるために、王氏は2015年に個人保有していた17.5億元(約280億円)に相当する株式を、社内のコア人材97人に分け与えた。 2019 年1月に開催された中国電気自動車百人会フォーラムで、「ガソリン車禁止のタイムテーブルを明確にすれば、2030年に中国における全面的な電動化を実現できる」と王氏が呼びかけた』、「中国」は体制的にもEV化を進め易いだろう。
(注)NEV:New Energy Vehicle、新エネルギー車。EV(電気自動車)、FCV(燃料電池車)、PHV(プラグインハイブリッド車)。日本で人気のあるハイブリッド車は含まれません(GB NAVI)。
・『CATLのすさまじさと今後の潜在力  2019年7月、トヨタがBYDの「33111プラットフォーム」を活用し、中国でトヨタブランドEVを生産すると発表した。 「33111」と呼ばれる5ケタの数字は、駆動モーター、コントローラー、減速機を一体化する駆動系ユニット(3部品)、直流電源モジュール、充電器、配電盤を一体化する高圧電源ユニット(3部品)、インパネやエアコンを制御するプリント基板(1枚)、車内コネクテッドシステム「DiLink」を搭載する回転可能なスクリーン(1枚)、自社製リチウムイオン電池(1個)を指し、開発の効率化を図ろうとして標準化されるユニットだ。 創業わずか7年でパナソニックを抜いて電池市場世界首位の座に着いたCATLには、国内外から一流の教育を受けた修士約1000人、博士130人が必死に日々働いている。「地場自動車メーカーで努力しても、その会社は世界一になりにくいが、CATLならできる」と筆者が取材した黄氏(28歳、ニューヨーク大学大学院修了)が熱く語った。若者の自信と熱気に圧倒されたことから、CATLのすさまじさと今後の潜在力を実感した。 CATLの曾毓群会長とは数回雑談する機会があったが、巨大電池メーカーの経営者という堅苦しさはなく、明るさと謙虚さを感じさせる人物だった。 最近、本人が「台風(EV補助金)で舞い上がる豚(技術力の低いメーカー)が本当に飛べるか」を題目とするメッセージを社員に投げかけた。中国政府の政策の恩沢に浴してきた当社のこれまでの成長を自慢することなく、これから差し迫る危機および技術力のさらなる向上を強調した。 2030年頃にはモビリティー(人々の移動)が大きく変わる可能性があり、自動車産業は大規模な変革期を迎える。クルマの消費は「MaaS」(Mobility as a Service の略称)へ進化し、「CASE」(コネクティッド、自動運転、シェアリング、電動化)は自動車メーカーの競争力を左右する。 中国政府の強力な政策の後押しによって、AI技術とEV革命を融合する次世代自動車産業の競争力は確実に向上していくだろう。今後中国企業は進化し、グローバル電池メーカー、ITプラットフォーマー、モビリティーサービス企業、メガEVメーカーが順次登場すると推測される。以上のことは中国が描く2030年の中国自動車市場のアウトライン、自動車強国へのメインシナリオである。 2030年の習近平は77歳、中国トップとして円熟期にあり、「自動車強国」「製造業強国」の実現に続き、アメリカと並ぶ「近代化強国」に向け邁進すると思われる。 そうなれば、中国は「世界のEV生産工場」としてスマートカーやスマートシティ関連サービスの海外輸出を一気に拡大するであろう。中国のEV革命は日本自動車メーカーの牙城である東南アジア市場をはじめ日本国内市場にも波及する。もしかすると日本自動車産業の優位性を根底から崩すかもしれない』、もはや「もしかすると」ではないようだ。
・『日中ビジネス「黄金の10年」へ  今後日本の製造業者はものづくりのメーカーからサービスを提供する事業者となり、自動車の「一本足打法」で成長を維持してきた日本の産業構造に変化がもたらされる可能性がある。 EV革命を起点とする中国の自動車強国戦略には、競争軸を日本企業に有利な分野からずらして新たな競争に持ち込むことで優位を勝ち取ろうという意図がある。 日系企業としてはいかに中国のEV革命の実態を正確に把握しつつ中国戦略を練るかが、各社の難題となっている。 世界経済の大きなリスクである米中対立の解消が見えにくくなっているものの、日中関係は引き続きよい方向へ向かっており、日中ビジネス「黄金の10年」の到来を予感している。 今後日系自動車メーカーおよびサプライヤーが取るべき製品戦略を検討する一方、中国市場の特性に合わせた地域戦略やロビー活動に取り組み、ITプラットフォーマーや地場の異業種企業との提携等を視野に入れるべきだ』、「日系自動車メーカーおよびサプライヤー」にとって余りに楽観的な書きぶりだが、これは取引先に厳しいことを書くのが憚られる銀行員の限界なのだろう。

次に、本年1月12日付け現代ビジネスが掲載した自動車ライターの工藤 貴宏氏による「業界騒然“ソニーのクルマ”、発表のウラに秘められた「勝算の理由」 けっして「売る」ためではない」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/69736
・『アメリカ・ラスベガスで1月7日から10日にかけて開催された「CES」。もともとは「コンシュマー・エレクトロニクス・ショー」という名称で電子機器の見本市として1967年にスタートしたイベントだ。 しかし昨今は電気関係のメーカーだけでなく、自動車メーカーもブースを構えて先進的な技術やコンセプトを発表する場として活用している。出展社は約4500社もあり、わずか4日間の開催ながら約17万5000人もの来場者を集めるといえばその注目度の高さが想像できるだろう(数字はいずれも2019年実績)。 そんなCESで今年、自動車業界の関係者を驚かせたのは、なんといってもソニーの出展内容だった。あのソニーが、自動車メーカーではないのに独自に開発した自動車をお披露目したのだ。果たしてソニーの狙いはどこにあるのだろうか?』、興味深そうだ。
・『テスラを彷彿とさせるデザイン  まずはソニーが開発した「VISION-S PROTOTYPE(ビジョン・エス・プロトタイプ)」と名付けられたこのコンセプトカーの特徴を見てみよう。 車体サイズは全長4895mm×全幅1900mm×全高1450mm。トヨタ「カムリ」とほぼ同じ長さと高さで、幅は少しだけ広い。ホイールベースは3000mmというから、全長の割には長い設計だ。 もちろん電気自動車で、エンジンのない電気自動車らしくボンネットは短く、居住スペースが広く確保されたプロポーションなのがわかる。天井も透明で解放感は抜群だ。 デザインはアメリカのEV専門新興メーカー「テスラ」のような未来を感じさせるもので、誰の目にもスタイリッシュと映るだろう。この意匠は外部の会社に委託したものではなく、ソニーによるデザインだ。 動力系は200kWモーターを前後に搭載し、4つのタイヤすべてを駆動する4WD。車両自体は完全に法規を満たしているわけではないので公道走行をするのは難しい。しかし、衝突安全性などもしっかりと考慮して作られており、将来的には同様の車両でテスト走行をおこなうことも視野に入っているそうだ。 設計はかなり本格的と言え、現地で実車を見た自動車関係者によると「細部までしっかり作られていて想像以上に完成度が高かった」という』、「ソニーによるデザイン」で「細部までしっかり作られていて想像以上に完成度が高かった」、とはさすがソニーだ。
・『ソニーのテクノロジーを惜しみなく投入  しかし、ソニーは自動車メーカーではない。だからクルマを作るノウハウの持ち合わせはなく、この車両もすべてをソニーが制作したわけでもないから「ソニーがすべて独自でクルマを開発した」というのは、少し誇大した解釈といえる。 プロジェクトはソニーが中心となって進めているが、開発にはクルマ作りのプロフェッショナルであるオーストラリアのマグナ・シュアタイヤー社(車両開発技術を持ちトヨタ「スープラ」の生産も請け負っている下請け会社)が大きく関わっている。そのほか、ドイツのメガサプライヤー(自動車メーカーに技術や部品を提供する会社)の「ボッシュ」や「コンチネンタル」も協力しているとのことだ。  一方で、このクルマの要となる先進システムはソニーの技術で独自開発。それは、「Safety Cocoon(セーフティコクーン)」と名付けられたイメージング・センシング技術(車両周囲の状況を認識するテクノロジー)だ。 「日常の様々なドライブシーンにおいて、自動車の周囲360度を検知し、早期に危険回避行動を支援することで車の安全性を高める安全領域のコンセプト」(プレス資料)とし、ソニーが持つ先進運転サポート技術をフル採用している。 具体的にはイメージセンサーや超音波センサー、そしてライダーなど合計33個の“目”を搭載。それらで車両周囲360度を監視することで、正確でハイレベルな運転支援を実現し、将来的にはレベル4(特定の場所においてすべての運転操作を完全に自動化)以上の高度な自動運転を目指しているという。 それ以外にも、カメラ技術を活用した高解像度の電子ミラーといった実用ツール、そして立体的な音響を実現するオーディオなどソニーの技術を搭載。安全から快適まで、ソニーのテクノロジーが惜しみなく投入されたクルマなのだ。 プロトタイプでサプライヤーの力を借りているとはいえ、ソニーがクルマを作り上げてきたという事実は多く自動車業界関係者を驚かせた。) ただし、勘違いすべきでないのは、このクルマの登場により、将来的にソニーがクルマを発売するという単純な話ではないということだ。 今回発表された車両の完成度は高い水準だが、とはいえクルマを市販車として量産するのは自動車メーカー以外にはハードルが高すぎる。数百億円以上の金額をかけて生産ラインを立ち上げる必要があるし、たとえそれを避けるために生産を外部委託したとしても、販売網や整備拠点を整える必要がある。 プロジェクトが失敗に終われば会社が立ち行かなくなってしまうほどの莫大な投資が必要なのだ。ソニーにとって自動車生産がそこまで冒険する必要のある分野かと言えば、否だろう』、「イメージセンサーや超音波センサー、そしてライダーなど合計33個の“目”を搭載。それらで車両周囲360度を監視することで、正確でハイレベルな運転支援を実現し、将来的にはレベル4・・・以上の高度な自動運転を目指している」、いかし、「市販車として量産する」、つもりはないというのは、賢明な戦略だ。
・『ここへきてクルマを作った本当の理由  では、ソニーがクルマを発表した理由はどこにあるのか? それは、その車両に使われている技術や部品を自動車メーカーやサプライヤーに売り込むためだ。 自動運転をゴールとする運転支援技術やセンサー/カメラなど、そこに使われる部品はこれからマーケットの大きな拡大が見込まれる。しかし、今のソニーはその分野で大きな存在感があるとはいえない。 そこで、コンセプトカーを制作してアドバルーンとして盛大に打ち上げて「あのソニーがクルマを」という世間の注目を集め、先進運転支援システムを自動車メーカーへ供給するビジネスを広げていこうというのだ。 キーワードは「カメラ(車載用CMOSイメージセンサー)」にある。 実は、ソニーはデジタルカメラの技術が高く、世界中のカメラ市場で圧倒的なシェアを持っている。 「プロ向け映像機材はそうかもしれないし、一眼レフでもシェアを高めている。けれど、カメラと言えばキャノンやニコンのほうがメジャーでは?」と思うかもしれないが、それは誤解だ。 いま、もっとも出荷台数の多いカメラはスマートフォンに内蔵されたカメラであり、アップル(iPhone)、サムソン、そしてハーウェイ社製など売れ筋機種の多くにソニーのイメージセンサーが使われている。ソニーは高い技術(美しく描写する性能)を持ち、それがスマートフォン用カメラでの圧倒的なシェアに繋がっているのだ。 その優れたカメラ技術を、クルマの運転支援装置にも生かそうというのである。 クルマに話を戻すと、製品に組み込まれているから一般ユーザーは認識してはいないが、トヨタや日産、ホンダ、といった日本のメーカーだけでなく、メルセデスベンツやBMW、アウディ、ポルシェ、それにGMやフォードなど世界中の完成車メーカーの製品にはサプライヤーの部品が多く組み込まれている。 ソニーもまた自動車分野における部品ビジネスの拡大を虎視眈々と狙っているのだ。イメージセンサーはソニーの得意分野であるうえに、それを必要とする運転支援技術はこれからますますマーケットが広がること間違いなしの成長分野。これまで同社が手薄だったそこに事業拡大のチャンスを感じているのだ。 今回、ソニーがオリジナルのクルマを発表して周囲を驚かせた裏には、そんな背景がある』、「イメージセンサーはソニーの得意分野であるうえに、それを必要とする運転支援技術はこれからますますマーケットが広がること間違いなしの成長分野。これまで同社が手薄だったそこに事業拡大のチャンスを感じているのだ」、自らの強味をビジネス・チャンス拡大につなげようとする誠に巧みな戦略のようだ。今後の展開が楽しみだ。

第三に、4月30日付け東洋経済オンラインが財新 Biz&Techを転載した「中国・新興EV、テスラの技術窃盗疑惑で猛反発 テスラは新興EVにソースコードの開示要求」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/347245
・『アメリカのEV(電気自動車)大手のテスラが、中国籍の元社員が技術を盗んだとしてカリフォルニア州の裁判所に提訴している問題で、この元社員が転職した中国の新興EVメーカー「小鵬汽車」に対して自動運転システムのソースコード(プログラムの設計図)の開示を求めていることが明らかになった。 小鵬汽車は4月25日に声明を発表。それによれば、同社は訴訟の当事者ではないにもかかわらずテスラの調査に協力してきた。ところがテスラ側がエスカレートし、ソースコードの開示を含む「理不尽」な要求を突きつけてきたため、3月31日にアメリカの裁判所に異議を申し立てた。 技術窃盗の疑いがかけられているのは、2019年1月にテスラを辞めて小鵬汽車に移籍した曹光植氏だ。2017年からテスラのニューラルネットワークの開発チームでコンピューター視覚科学の研究者として働いていた。小鵬汽車は自社の自動運転システムに不可欠な画像センシング技術の開発チームの責任者として、曹氏に白羽の矢を立てた』、中核技術者をソースコード付きで引き抜いたのであれば、極めて悪質だ。
・『「リモートワークのため」と元社員は全面否定  テスラは2019年3月に曹氏を提訴。同社の主張によれば、曹氏は在職中にテスラのEVのファームウェア、自動運転システム、ニューラル・ネットワークに関するソースコードを複製し、個人のクラウド・ストレージにアップロードした。さらに、小鵬汽車に転職した後もさまざまな手段でテスラのソースコード・ファイルにアクセスしていたという。 これに対して曹氏は、テスラのソースコードを個人のストレージにバックアップした事実は認めたが、リモートワークの利便性のために多くのテスラ社員が行っていた習慣だったと主張。テスラの企業秘密を小鵬汽車に引き渡したことはないと疑惑を全面否定している。 小鵬汽車が申し立てた異議の審理は、アメリカ西部時間の5月7日に行われる予定だ。カリフォルニアの裁判所が同社の異議を認めるか、それとも却下するかが注目される。なお4月25日の時点で、財新編集部はテスラから本件に関するコメントを得られなかった』、「小鵬汽車に転職した後もさまざまな手段でテスラのソースコード・ファイルにアクセスしていた」、同僚などのIDを使ったのかも知れないが、これも悪質極まる行為だ。本件は、中国企業による産業スパイ活動のうちの氷山の一角に過ぎないのだろう。
タグ:CATLのすさまじさと今後の潜在力 電気自動車 「カエル跳び型」発展戦略 MAAS 「中国が描く日米欧を超える「自動車強国」の本質 日本の産業構造が変化していく可能性も」 テスラを彷彿とさせるデザイン NEV 官民挙げての研究開発強化がカギ 元社員が転職した中国の新興EVメーカー「小鵬汽車」 テスラのニューラルネットワークの開発チームでコンピューター視覚科学の研究者として働いていた 日中ビジネス「黄金の10年」へ 電池市場世界首位の座に着いたCATLには、国内外から一流の教育を受けた修士約1000人、博士130人が必死に日々働いている トヨタがBYDの「33111プラットフォーム」を活用し、中国でトヨタブランドEVを生産 湯 進 テスラが、中国籍の元社員が技術を盗んだとしてカリフォルニア州の裁判所に提訴している問題 コンシュマー・エレクトロニクス・ショー ソニーのテクノロジーを惜しみなく投入 「中国・新興EV、テスラの技術窃盗疑惑で猛反発 テスラは新興EVにソースコードの開示要求」 中国は「世界のEV生産工場」としてスマートカーやスマートシティ関連サービスの海外輸出を一気に拡大するであろう 東洋経済オンライン New Energy Vehicle 財新 Biz&Tech (その7)(中国が描く日米欧を超える「自動車強国」の本質 日本の産業構造が変化していく可能性も、業界騒然“ソニーのクルマ” 発表のウラに秘められた「勝算の理由」 けっして「売る」ためではない、中国・新興EV テスラの技術窃盗疑惑で猛反発 テスラは新興EVにソースコードの開示要求) EV 衝突安全性などもしっかりと考慮して作られており、将来的には同様の車両でテスト走行をおこなうことも視野に 日本自動車産業の優位性を根底から崩すかもしれない 中国のEV補助金政策の波に乗り、BYD汽車等の民族系自動車メーカーはいち早くNEV市場に参入し、CATLなど多くの地場電池メーカーがEV電池の生産を開始 イメージセンサーはソニーの得意分野であるうえに、それを必要とする運転支援技術はこれからますますマーケットが広がること間違いなしの成長分野 ソニーもまた自動車分野における部品ビジネスの拡大を虎視眈々と狙っている その優れたカメラ技術を、クルマの運転支援装置にも生かそう ここへきてクルマを作った本当の理由 イメージセンサーや超音波センサー、そしてライダーなど合計33個の“目”を搭載。それらで車両周囲360度を監視することで、正確でハイレベルな運転支援を実現し、将来的にはレベル4(特定の場所においてすべての運転操作を完全に自動化)以上の高度な自動運転を目指している イメージング・センシング技術 ソニーが、自動車メーカーではないのに独自に開発した自動車をお披露目した case 小鵬汽車は自社の自動運転システムに不可欠な画像センシング技術の開発チームの責任者として、曹氏に白羽の矢 「業界騒然“ソニーのクルマ”、発表のウラに秘められた「勝算の理由」 けっして「売る」ためではない」 「リモートワークのため」と元社員は全面否定 「細部までしっかり作られていて想像以上に完成度が高かった」 小鵬汽車に転職した後もさまざまな手段でテスラのソースコード・ファイルにアクセスしていた 工藤 貴宏 ソニーによるデザイン 現代ビジネス
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

東京オリンピック(五輪)(その11)(「東京五輪買収」疑惑めぐり… “森喜朗vs.小池百合子”の凄まじき暗闘、「上級国民」たちがコロナ対策そっちのけで「東京オリンピック」にこだわっていたワケ(前編)&(後編)、東京五輪「1年延期」決断までの知られざる裏側 優柔不断な態度に各連盟から批判が続出した) [社会]

東京オリンピック(五輪)については、2月19日に取上げた。今日は、(その11)(「東京五輪買収」疑惑めぐり… “森喜朗vs.小池百合子”の凄まじき暗闘、「上級国民」たちがコロナ対策そっちのけで「東京オリンピック」にこだわっていたワケ(前編)&(後編)、東京五輪「1年延期」決断までの知られざる裏側 優柔不断な態度に各連盟から批判が続出した)である。

先ずは、3月9日付けデイリー新潮「「東京五輪買収」疑惑めぐり… “森喜朗vs.小池百合子”の凄まじき暗闘」を紹介しよう。
https://www.dailyshincho.jp/article/2020/03090800/?all=1&page=1
・『嘉納治五郎の名を冠した財団への「セガサミー」社からの寄付金は「五輪買収」に使われたのか。疑惑を本誌(「週刊新潮」)に報じられた財団側の動きは速かった。財団に金と人を出している東京都の小池百合子知事に「手を引け」と迫ったのだ。水面下で始まった凄まじき暗闘。 新型コロナウイルスで開催を危ぶむ声もあるなか、何とか予定通り東京五輪を行いたい――。その点で大会組織委員会の森喜朗会長(82)と小池百合子東京都知事は間違いなく「同じ方向」を向いている。しかし、そんな両者が水面下で凄まじい暗闘を繰り広げていることは全く知られていない。 〈「森喜朗元首相」の新財団は「負のレガシー」〉本誌は2月13日号にそんなタイトルの記事を掲載した。記事では、森会長や遠藤利明元五輪担当相が中心となり、「一般財団法人日本スポーツレガシー・コミッション」なる組織が設立されようとしていることを伝えた上で、その新財団が五輪後の剰余金の受け皿になるのではないか、という見方が出ていることを紹介した。さらに翌週、本誌は、 〈「森喜朗」新財団が呑み込む「嘉納治五郎財団」の五輪買収「5億円」疑惑〉とのタイトルの記事を掲載。この記事でクローズアップしたのは、新財団の〈設立者〉として300万円を拠出する〈一般財団法人嘉納治五郎記念国際スポーツ研究・交流センター〉(以下、嘉納財団)に関する次のような疑惑である。 嘉納財団が設立されたのは2009年。それから4年余りが経過した13年秋頃、その嘉納財団の名前が意外な人物の口から発せられた。政界のタニマチとしても知られる「セガサミーホールディングス」の里見治(はじめ)会長(78)。20年のオリンピック開催地が「東京」に決定した後に催された、ある酒席において、 「東京オリンピックは俺のおかげで獲れたんだ」と、自慢話を始めた里見会長。曰く、「菅義偉官房長官から話があって、『アフリカ人を買収しなくてはいけない。4億~5億円の工作資金が必要だ。何とか用意してくれないか。これだけのお金が用意できるのは会長しかいない』と頼まれた。『そんな大きな額の裏金を作って渡せるようなご時世じゃないよ』と言うと、菅長官は、『嘉納治五郎財団というのがある。そこに振り込んでくれれば会長にご迷惑はかからない。この財団はブラックボックスになっているから足はつきません。国税も絶対に大丈夫です』と。自分だけで5億用意するのは難しいから、知り合いの社長にお願いして、俺が3億~4億、知り合いの社長が1億円用意して財団に入れた。菅長官は『これでアフリカ票を持ってこられます』と喜んでいたよ」―― この発言について本誌が里見会長に取材を申し込んだところ、「定かではない」と、否定せず。さらに、セガサミー広報部は、「当社よりスポーツの発展、振興を目的に一般財団法人嘉納治五郎記念国際スポーツ研究・交流センターへの寄付実績がございます」 金額こそ明かさなかったものの、金を寄付した事実を認めたのである。 「里見さんが出した金が五輪買収に使われたのではないかという疑惑を報じた週刊新潮の記事が出回ると、永田町では『なるほど、そういうことだったのか』という反応が広がりました」 全国紙の政治部デスクはそう語る。 「里見さんの娘さんは13年に経産省の官僚だった鈴木隼人氏と結婚しています。その鈴木氏は14年の衆院選の際、自民党の比例東京ブロックの実質的な単独1位となり、何の苦労もなく当選。当選ゼロ回の名も知られていない新人が比例名簿の実質1位なんて通常ではありえない。その頃から『何かウラがあるのでは』と言われていたのですが、今回の週刊新潮の記事で『なるほど』となったわけです」 ちなみにホテルオークラで行われた里見会長の娘と鈴木氏の披露宴は、各界のお歴々が顔を揃えるド派手なものだった。何しろ、 「新婦側の主賓は安倍晋三総理。森元総理も小泉純一郎元総理も出席していましたが、首相3代が来る披露宴なんてなかなかありませんよ」と、取材した記者。 「長嶋茂雄さんや王貞治さん、プロゴルファーの青木功さんや丸山茂樹さん、元サッカー日本代表の中山雅史さんも出席していました。出席者は400名くらいだったようですが、新郎新婦の本当の友達は何人いるのかという感じです。里見会長の人脈を誇示するために行われたかのような披露宴でした」 自民党の野田聖子議員や岩屋毅議員など、いわゆる「カジノ議連」の中心メンバーの姿もそこにあったのは、その頃から里見会長が「カジノ誘致」に積極的だったからであろう。そうした思いに応えるかのように、披露宴の3年後の16年、安倍政権は「カジノ推進法」を成立させている』、「五輪買収」疑惑の大枠が暴かれたようだ。「鈴木隼人氏」は隣の選挙区で、いまだに多くのポスターが張られているが、里見会長の娘と結婚、しかも「披露宴は、各界のお歴々が顔を揃えるド派手なものだった」、とは初めて知った。
・『わざわざ補正予算を組む  「里見会長の息子でセガサミー社長の治紀氏は今年1月29日、横浜で行われたカジノを含む統合型リゾート(IR)のイベントで講演し、横浜のIRに参入を目指す方針を明らかにしました」と、カジノに詳しい関係者が言う。 「里見会長が菅さんから頼まれて嘉納財団に金を寄付したのは、『カジノ解禁』という“実”が欲しかったからなのかもしれません。ちなみに業界では菅官房長官とセガサミーの関係の近さをもじって“スガサミー”とまで呼ばれています」 里見会長が金を出した背景には様々な思惑があったようだが、果たしてその金はどのように使われたのか。  入手した嘉納財団の決算報告書(2)(リンク先参照) 補正後に寄付金が2億円も増えている  その疑問を解くための「入口」となる極秘資料が手元にある。嘉納財団は資産や収支を一般には公開していないが、本誌は12年から13年にかけての財団の収支が分かる決算報告書を独自に入手。極めて興味深いのはそこに添付された〈平成25年度補正予算案〉と題する資料である(掲載の写真)。そもそも一般財団法人で補正予算を組むこと自体、異例のことだが、注目すべきは〈寄附金収入〉の欄。25年度予算案(補正前)では5千万円だったのが、25年度予算案(補正後)では、2億5千万円となっている。補正の前と後で寄付金が2億円も増額されているのだ。 「その2億円は里見会長が寄付したものでしょう。東京での五輪開催が決定したのは2013年9月。それまでにその2億円を使う予定があったからこそ、わざわざ補正予算を組んで急いで収入に入れ込んだとしか思えない」(事情を知る関係者) 件の資料を見ると、補正の前と後で〈支出〉の金額も変化していることが分かる。金額の大きいところでは、〈スポーツ分野における国際交流・協力〉に8250万円、〈ドーピング防止等スポーツの価値護持〉に4500万円、〈その他〉に3千万円、〈オリンピック教育及びオリンピズム研究〉に1050万円が追加されているのだ。 先述した里見会長の「自慢話」には、菅官房長官から「アフリカ人を買収しなくてはいけない」と頼まれた、とのクダリがある。嘉納財団に寄付された2億円はそのために使われたのではないか――そんな疑いを抱かざるを得ないのだ。 財団に金の使途を問うと、 「『オリンピック買収』というような用途に使用した事実はございません」と、回答した』、「嘉納財団」をトンネルとして使うとはよく考えたものだ。
・『闇を暴く鍵  菅官房長官が言及したという「アフリカ人」と同一かどうかは定かではないが、五輪招致委員会が「アフリカ人親子」をターゲットにしたのは事実である。 招致活動が行われていた当時、IOC委員で五輪開催地を決める投票権を有していたラミン・ディアク国際陸連会長と、その息子のパパマッサタ・ディアク。そのパパマッサタと関係の深いシンガポールの会社に招致委が「コンサル費用」などの名目で計2億3千万円を振り込んだことが判明しており、フランスの捜査当局は「賄賂」だと疑って捜査を開始。日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長は辞任に追い込まれた。 「ディアク親子はアフリカ票の取りまとめ役と見られ、金はそこからさらに十数カ国のIOC委員に流れたのではないか。とすると、その買収費用は招致委からの2億3千万円だけでは全く足らず、嘉納財団からの2億もそのために使われた可能性があります」と、スポーツ団体関係者。 「フランスの捜査当局は現在も東京五輪の買収疑惑を捜査中ですが、今年1月、面白い動きがあった。息子のパパマッサタが司法取引狙いで大量の資料を当局に提出したのです。そこに嘉納財団からの入金を示すような資料が含まれていると、点と点が繋がって線になる可能性もあります」 一方、点と点が繋がっては困るのが嘉納財団側である。2月13日、財団側が小池知事に対して奇妙な依頼をしてきた背景にも、そうした思いが見え隠れする。 「嘉納財団の基本財産は300万円で、そのうち75万円を出捐(しゅつえん)、つまり出資しているのは東京都です」と、事情を知る関係者が語る。 「週刊新潮が里見会長から嘉納財団への寄付について記事にすると、慌てて財団側は都に対して、『出捐』から手を引くよう要求してきたのです。今後、都は『出捐者』として何らかの形で寄付金の使途を知り得る可能性がある。そのことを財団側は恐れているのでしょう」 当然ながら、小池知事は財団側の要求を拒否。財団の闇を暴く鍵は彼女の手に握られているのだ。 嘉納財団の代表理事を務める森会長と小池知事の因縁の発端は08年の自民党総裁選だとされる。「清和研」としてまとまって「麻生太郎擁立」でいきたかった森会長の意向を無視して彼女は出馬。「一生許さない」と激怒した森会長はその言葉通り、東京五輪開催が決まった後もあからさまな「小池外し」を繰り返した。 五輪開催目前となった今、その小池知事の側に、森会長が最も嫌がる手札が転がり込むとは、因果は巡るという他ない。もっとも、無事に開催にこぎつけたいという点では「同じ方向」を向いている2人。“最後の戦い”の火花が散るのは、五輪が終わった後、ということになろう』、「フランスの捜査当局は現在も東京五輪の買収疑惑を捜査中ですが、今年1月、面白い動きがあった。息子のパパマッサタが司法取引狙いで大量の資料を当局に提出」、今後のフランス側の捜査の進展が楽しみだ。「小池知事の側に、森会長が最も嫌がる手札が転がり込むとは、因果は巡るという他ない」、「小池知事」が「手札」をどのように活かしていくのかも注目点だが、水面下で使うだけなので、我々には見えないだろう。それにしても、「東京五輪の買収疑惑」がここまで解明されたとは、週刊新潮の取材力は大したものだ。

次に、4月29日付けエコノミストOnline「「上級国民」たちがコロナ対策そっちのけで「東京オリンピック」にこだわっていたワケ(前編)「IOC関連団体」理事に名を連ねる「森喜朗元首相」=後藤逸郎」を紹介しよう。
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20200427/se1/00m/020/005000d
・『新型コロナウイルス対策として全土に緊急事態宣言が出されている日本。(サンデー毎日Onlineの記事紹介2本はリンク先参照) だが安倍首相がIOCバッハ会長と電話協議を行い「東京オリンピックを延期」することが決定されたのは、つい1カ月前のこと。 その後「緊急事態宣言」の発令を渋る政府に加えて、小池百合子都知事が会見でロックダウンの具体策よりも「東京オリンピック延期」に先に触れたことで、海外メディアからも批判を受けたことも記憶に新しい。 なぜ「上級国民」たちは「オリンピック開催」に必死なのか? 知られざる「IOCとオリンピックビジネスの闇」を暴く書籍『オリンピック・マネー』(後藤逸郎著、文春新書)より抜粋をおとどけします』、「オリンピックビジネスの闇」、とは興味深そうだ。
・『IOCメンバーの「ウラの報酬」はあるのか?  スポーツを通じて平和を希求する──。単純明快で誰も反対しようのない高邁な目標を掲げるIOCだが、その組織は複雑だ。 IOCは自らをスイスに本拠地を置くNPO兼NGOであると五輪憲章第2章で定義している。 IOCは1894年6月23日に設立登記され、法人格はNPOの一種である協会(アソシエーション)だ。 レマン湖畔のローザンヌに住所があり、財源はテレビ放送権、スポンサーシップ、ライセンス、オリンピックの財産などとある。組織は会長、副会長4人、10人の理事で構成するとあり、バッハ会長や副会長、委員らの名前と出身地が記されている。 IOCメンバーの報酬は当初なかったが、2015年4月、バッハ会長の報酬が年間22万5000ユーロ(2947万円)であることが公表された。 ソルトレークシティ五輪での不正疑惑後、IOCは倫理と透明性を高めるため、2014年12月に中期改革「アジェンダ2020」を制定した。それによって報酬も開示されたのだ。 定員115人のIOC委員は年間6470ユーロ(84万円)であり、会議や出張の日当は400ユーロ(5万2400円)。IOC理事には800ユーロ(10万4800円)が支払われていた。サマランチ、ジャック・ロゲ会長時代は無報酬だったこともある。 これらはそれほど高額ではない。しかし、たとえば会長にはローザンヌのパレスホテルが住居として提供されてきた。フランスのデザイナー、ココ・シャネルが滞在していたという「ココ・シャネル・スイート」を、サマランチ会長は愛用していた。 2013年8月4日付朝日新聞は「IOCが公表した(19)98年のサマランチのローザンヌのホテル代、生活費は20万4000ドルだった」「2012年のロゲのホテル代、旅費などは計70万9000ドル」と伝えている。 IOCはバッハ会長のホテル代について公表していない。IOCは、「IOC会長を含むすべてのIOC運営の任務費用は、IOC財務諸表の項目『輸送、旅費および住居費』の一部として開示されている。現在の永住資格は前会長と異なり、比較は正しくないため、宿泊施設の扱いは国際会計基準(IFRS)に沿っている」と説明している』、IOCの情報開示はまだまだ不十分なようだ。
・『IOCの関連団体は「隠れ蓑」なのか  また、バッハ会長をはじめとする理事は、IOCが設立した財団や、子会社、孫会社など、いわゆる関連会社(図)の役員も務めている。これらの財務、報酬は非公開であることが重要なのである。 そのうちの一つ、オリンピック財団は1992年12月、スイスのNPOとしてローザンヌ市のIOC本部と同じ住所に設立登記された。 設立目的は「文化、教育、スポーツの分野でオリンピックムーブメントの活動支援」とだけある。 初代理事長は当時のサマランチIOC会長が務め、現在はバッハ会長が兼務する。理事はアニータ・デフランツ副会長、サマランチ元会長の息子であるアントニオ・サマランチ副会長、中国オリンピック委員会副会長の于再清副会長、トルコ・オリンピック委員会会長のウグル・エルデネル副会長ら、IOC幹部が名を連ねる。 だが、その活動はほとんど公表されていない。 IOCは2000年末の財務報告で、「IOCとオリンピック財団、オリンピック博物館の個別の財務諸表を初めて作った」ことを明らかにしたが、具体的な数字は表記していない。 2004年末の財務報告では、オリンピック財団はIOC傘下のマーケティング会社「メリディアン・マネジメント」(当時)を「保有」し、同じく傘下の映像配信会社「オリンピック・ブロードキャスティング・サービス(OBS)株式会社」の「株式の99%を保有」しているとした。 財団はIOCと別組織だが、関連会社を統括する持ち株会社として機能していることをうかがわせる。 オリンピック文化遺産財団(OFCH)は1993年12月に設立登記されている。法人格はNPOの一種である財団(ファウンデーション)だ。 ローザンヌ市内にあるオリンピック博物館の運営主体として設立された。最初の名前はオリンピック博物館で、2015年に現在の名前に変更された。バッハIOC会長がここの理事長として登記されている。 OFCHは定款も公表しており、理事会メンバーは無報酬としている。ただ、経費の払い戻しや年次補償を受ける権利も併記されていて、その金額は未公表だ。 OFCHはNPOとして独立した法人格を持つが、IOC内部では組織の一部として取り扱われている。2019年6月に開催された2020年東京大会のアニメ製作発表会で、フランシス・ガベOFCHディレクターは「IOCのひとつの部署」と自己紹介している。 オリンピック普遍的倫理財団(FEOU)は、2001年にローザンヌ市内のIOCと同じ住所地に設立登記された財団だ。設立目的は、IOC倫理委員会の支援とある。IOC倫理委員会は、IOC委員や職員の不正を調査する部門で、ソルトレークシティ事件でもIOC委員追放に関わり、2020年東京大会の疑惑でも竹田氏を調査した。 この財団の奇妙なところは、FEOU理事長である潘基文元国連事務総長が、IOC倫理委員会の委員長も務めていることだ。同一人物がトップを兼ねる二つの組織の片方が、もう片方の活動を支援していることになる。 国際オリンピック休戦財団は2000年7月、スイスのNPOとしてローザンヌ市のIOC本部と同じ住所地に設立登記された。目的は「オリンピックの理想を推進し、世界の平和、友情、理解に貢献する。ギリシャ共和国政府と協力して、オリンピック休戦の国際センターの設立」。IOC会長が同財団理事長を兼務し、現在はバッハ会長が務める。森喜朗元首相も理事として名を連ねる』、組織構造の余りの複雑さには、驚かされた。情報開示逃れのためなのだろうか。
・『「疑惑」を晴らすには情報公開が必要だ!  IOCは、複雑なグループ組織の構造も、オリンピック憲章に基くIOCの目的を達成するための必要な措置であると言う。しかし、われわれがそれを検証しようにも、情報が公開されていないという壁がここでも立ちふざがる。疑問があって調べても、スイスの法制というブラックボックスへと消えてゆく。 IOCが不正を働いていると断じるわけではない。IOCが単なる巨大なスポーツ興行主ならばこれでいいかもしれない。 しかし、オリンピックが国際的な「平和の祭典」であり、それゆえ巨額の税金も投入される以上、その財務の詳細については、法制や税制の枠を超えて、広く公開されるべきではないだろうか。 NPOに詳しい長坂寿久・元拓殖大学教授は、「NPOであるIOCは巨額の資金を集めており、NPOの身内で収益を山分けしていると疑われかねない。きちんと情報公開すべきだろう」と話している。(後藤逸郎著『オリンピック・マネー』より抜粋)』、「スイスの法制というブラックボックス」、多くの国際機関が集まるのは、中立性以外にも、「法制」面のメリットも大きいのだろう。IOCに情報開示を強化させるには、主要国のマスコミにより圧力をかけるしかないのだろうか。

第三に、上記の続き、4月30日付けエコノミストOnline「「上級国民」たちがコロナ対策そっちのけで「東京オリンピック」にこだわっていたワケ(後編):新国立競技場の「利権話」に「萩生田文科相」が果たした役割=後藤逸郎」を紹介しよう。
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20200427/se1/00m/020/006000d
・『「前編」より続く (サンデー毎日Online記事2本の紹介はリンク先参照)
・『「新国立競技場」はマンション建て替え費用を「都に出させるため」の計画?!  森元首相以外にも、新国立競技場と神宮外苑の再開発に関与した政治家の応接録が存在する。 森元首相に連なる文教族で、安倍晋三首相の側近である萩生田光一文科相だ。 当時浪人中だった萩生田が2012(平成24)年2月28日、安井技監に示した「国立霞ヶ丘競技場周辺整備イメージ図」だ。 A4カラー1枚には、岸記念体育会館の文言はない。だが、同体育会館の神宮外苑建設のためには欠かせない霞ヶ丘アパートと外苑ハウスの移転を前提とした施設整備がすでに記されている。 このイメージ図は都が作成したものではなく、萩生田が安井技監に渡したものだ。イメージ図の右上には「萩生田氏より」と手書きで書き込まれている。 建築設計会社の日建設計が作ったものとして萩生田は安井技監に説明したが、日建はイメージ図の作成を否定している。 森元首相が岸記念体育会館の神宮外苑移転を促す発言をした半年近く前に、イメージ図が存在することは、一帯の再開発が周到に計画されてきたことを補強する。 とはいえ、そのために、都営アパートと民間マンションを移転するというのは無理筋に思える。 だが、この無理筋こそ、東京オリンピック開催を起爆剤に新国立競技場建設を可能にさせたメカニズムだ。 関係者から入手した外苑ハウス管理組合の内部文書には、無理筋をつなぐ政治家への働きかけが記されている。 2012(平成24)年2月15日の定例理事会は、理事8人のほか、前節で名前の挙がった日建設計など2つの建築設計会社幹部が出席して開かれたとある。 建て替えの状況が報告され、「持てる300%の容積率を使うためには近隣地権者との共同開発を考えざるを得ない。そして、最も有力な近隣地権者は霞ヶ丘都営住宅、つまり東京都であり、共同開発の許認可権も東京都が握っています。しかもその東京都がオリンピックの招致、ラグビー世界選手権開催を通じて外苑地区の環境整備に乗り出しているのです。キーワードはまさに東京都なのです」との説明が記されている。 そして、2011(平成23)年3月、7月、9月、11月に行なった都など関係方面とのやりとりが記されている。 3月段階で、都の外郭団体である公益財団法人東京都防災・建築まちづくりセンターからUR都市機構に対し、外苑ハウスを巻き込んだ大規模開発の可能性を非公式に打診したが、外苑ハウス自体は「理事会内部での意見の不統一から、むしろ引いた状態」だった。7月以降は、「都に対する積極的なアプローチを始めたのですが、今度は東京都の方の熱が冷めていました」と、建て替え計画は暗礁に乗り上げていた。 しかし、「ここで事態は起死回生とも言える奇蹟的な展開となりました。新しく選任された新理事の一人が『知人が前衆院議員で石原知事と太いパイプがあるから、知事と直接会ってお願いしましょう。』と言い出したのです」と、驚くべき記述がある。さらに、「この前衆院議員は文科省政務官時代に2016年オリンピック招致のための環境整備に関わった方で、霞ヶ丘の国立競技場周辺の整備計画にも明るい方でした」と続く。 当時、この条件を満たしたのは、都議から衆院議員に転身し、落選して浪人中の萩生田だ。萩生田が都の安井技監に神宮外苑再開発イメージ図を示したのは、外苑ハウス理事会で名前が挙がった約半年後にあたる。 内部文書は行間に踊るような喜びを込めて続く。「この方が『石原知事に会いたければ何時でもセットアップするが、国立競技場の周辺整備に関連して外苑ハウスの再生をという話なら、東京都都市整備局のトップと会った方がより実務的でベターなのではないか?』と言って実務者レベルの会談をセットして下さったのです」 こうして9月、11月には「都市整備局トップ」と会い、建て替えに向けての助言を受け、管理組合のための「コンサル候補企業のリストを渡されました」としている。「今にして思えば外苑ハウスは、タイムアウトになる直前に(略)無下にノーと言い難いチャンネルを通して東京都にアプローチしたことになります」と自己分析している。 管理組合の内部文書を裏打ちするのが、前述の都の内部文書「岸記念体育会館に係る今後の方向性について(V2・V4レクメモ)」だ。副知事が「外苑ハウスの地権者は動いても良いと言っているのか?」と問い、安井技監が「そのように言っている」と回答している。 外苑ハウスはその後、「THE COURT 神宮外苑」として2020(令和2)年春の完成予定だ。ウェブで「新国立競技場の目の前、世界が注目する再開発エリア唯一のレジデンス」と謳う。地上23階建て、総戸数は409戸(販売戸数183戸、外苑ハウス住民ら事業協力者は226戸)あり、外苑ハウスから容積率は大きく増えた。 外苑ハウスマンション建替組合は「取材はお受けできません」としている』、働きかけをしたのは「萩生田氏」だろうが、彼にそこまでの知恵があるとも思えないので、「日建設計」に「イメージ図」を描かせるなどの具体的な振り付けをしたのは、記事には出てこない「電通」だったのではなかろうか。
・『「東京オリンピック」は「上級国民が下級国民を食う仕組み」なのか?  森元首相と萩生田文科相の応接メモ、副知事への説明記録は、神宮外苑再開発に政治家が関与し、都が入念に調整したことを示している。 2012(平成24)年5月15日付けの「神宮外苑地区の再整備に係る報告について」と題した別の応接メモは、その証拠のひとつだ。面談時間は午後5時から20分間。先に述べた森元首相との面談後にあたる。 安井技監は、都市づくり政策部長を伴い、「都議会のドン」と呼ばれた内田茂都議(当時)に面会した。 資料を基に説明を受けた内田は「了解」と応じたうえで、この件を説明する自民党都議を2名に限定することや、地元都議への説明は時期を待つこと、その際に自分に相談することなど、事細かな指示を出している実態が記されていた。 行政が都市開発を行う時、必ず政治家が動き、得をする利害関係者が現れる。それらすべてを今回はオリンピックの大義が覆い隠した──というのが、神宮外苑再開発を巡る実態だ。それをよしとしない意見は、都に届けられていた。 都が2016(平成28)年5月12日に決裁した内部文書「東京都市計画地区計画の変更に係る原案に対する意見書について」によると、外苑ハウスの建替に伴い不適切な政治家の働きかけがあるとする外苑ハウス居住者からの意見書が提出された。 添付資料には、萩生田の政治資金収支報告書と、萩生田が外苑ハウス建て替えに紹介した不動産業者が、萩生田の選挙区内の業者であり、個人献金をしているという事実が記載されていた。 萩生田事務所は応接メモの内容を認めた上で、「意見交換の1種だった」と答えた。 また、外苑ハウスに関しては、支援者からの依頼を受けて外苑ハウスの相談に乗り、都側と折衝した事実を認めたうえで、「当時は落選中で何の職務権限もなく、都に働きかけをしていない。相談後、外苑ハウス側からお礼もされていません」と話した。 森元首相は、神宮外苑再開発を巡る自身の行動について、組織委員会を通じ、「国立競技場の整備に関する事業は、東京2020組織委員会会長としてお答えする立場にはございませんので、回答は差し控えさせていただきます」と、事実確認を拒否した。(文春新書『オリンピック・マネー』より抜粋)』、「萩生田事務所は・・・「当時は落選中で何の職務権限もなく、都に働きかけをしていない」、落選中とはいえ都議から国会議員になった人物なので、「職務権限」を使わなくても、「都」の誰に働きかければいいかは十分把握していた筈で、それを活用した可能性がある。さらに、「森元首相」、「内田茂都議」や「電通」などから「都」への働きかけもあれば、さらなる後押しになっただろう。いずれにしろ、「外苑ハウスの建替」で「容積率は大きく増えた」のが打ち出の小槌になったのだろう。神宮の森が消えてなくなったのは、かえすがえすも腹立たしい。

第四に、5月5日付け東洋経済オンラインが掲載したジャーナリストの後藤 逸郎氏による「東京五輪「1年延期」決断までの知られざる裏側 優柔不断な態度に各連盟から批判が続出した」を紹介しよう(同氏は第二、第三の記事も執筆)。
https://toyokeizai.net/articles/-/347681
・『新型コロナウイルスの流行で、迷走に迷走を重ねた揚げ句、3月に東京オリンピックの延期が決定した。国際オリンピック委員会(IOC)がなかなか延期を口にしなかったのは、なぜなのか。後藤逸郎氏著『オリンピック・マネー誰も知らない東京五輪の裏側』 を一部抜粋・再構成し、五輪延期決定の裏側に迫る。 暑さ対策騒動から半年もたたない2020年2月、IOCがいかにテレビ・ファーストであるかを証明する問題が新たに起きた。世界を襲った新型コロナウイルス流行への初期対応である。 AP通信は、ディック・パウンドIOC委員の言葉として、新型コロナウイルスの影響で東京五輪を中止するかどうか、IOCは5月末までに判断する可能性がある、と伝えた (2020年2月25日)。この頃は、日本だけでなく世界中が感染拡大期にさしかかっており、選手や観客の感染リスクを考えれば、当然の配慮とも言えた。 しかし、いきなり中止であって、延期という選択肢がなかったのはなぜか。延期の可能性について、パウンド委員は「10月にやるとは言えない」と否定。理由のひとつに「テレビ中継の時期」の問題を挙げた。2~3カ月延期した秋の開催は、プロと大学のアメリカンフットボール、ヨーロッパのサッカー、さらにバスケットボール、野球、アイスホッケーなど、すでに放送スケジュールが満杯である北米のテレビ局を満足させられない。 そういう記者の見立てを踏まえたうえで、パウンド委員は「人々がオリンピックに期待する包括的な中継は困難」と述べた。要は、アメリカNBCの都合がつかないから、延期はあり得ないというのだ。さらに、1年後の開催についても、「すべての国際大会のスケジュールと調整しなければいけない」と当時は疑問を呈していた』、確かに「IOCがいかにテレビ・ファーストであるか」、というのは実感できた。
・『五輪開催には巨額の放送権料が絡む  パウンド委員は一連の報道で「IOC最古参のメンバー」と紹介されたが、それは彼の一面に過ぎない。IOCが1995年、アメリカ三大ネットワークのNBCと複数大会を契約し、巨額の放送権料引き上げに成功した交渉担当チーム「サンセット」を率いたやり手がパウンド氏だ。 東京都の小池百合子知事は「IOC委員1人の個人的見解」と沈静化を図ったが、パウンド氏がIOCとテレビ局双方を代弁できる立場にあることを見誤っていたと言わざるをえない。彼は相当な「大物」なのである。 そのパウンド氏の発言が意味するのは、巨額の放送権料と引き換えに、IOCは、世界のスポーツ興行の歯車に組み込まれてしまっているということだ。それゆえ、予定通りの開催は、IOCにとって至上命題だったのだろう。 実際、ジョン・コーツIOC調整委員長は2020年2月14日、「東京五輪の延期や中止は不要と、世界保健機関(WHO)から伝えられた」と、中止の可能性を早々に否定する発言をしている。 ところが同日、WHO緊急事態対応上級ディレクターのマイク・ライアン氏が、「WHOはIOCに対し、オリンピック開催の可否について助言していない」「何かのイベントを中止するかしないかは、WHOの役割ではない」と、コーツ発言を否定。すっかりドタバタ劇となった。そして、2週間後のパウンド発言と、IOCも迷走を始めた。 コーツ発言の真意とWHOの否定についてIOCにコメントを求めたが、回答は「IOCはWHOと自前の医療専門家と連絡を取り合っています。WHOの立場を明確にするために、直接(WHOに)連絡することをお勧めします」というものだった』、「パウンド氏」が「IOCとテレビ局双方を代弁できる立場」にいたとは初めて知った。「小池百合子知事」は「見誤っていた」よりも、承知の上で強がっていただけなのではなかろうか、
・『各連盟からIOCの優柔不断さに批判が続出  東京都の抵抗を力でねじ伏せたIOCだが、新型ウイルスの前には打つ手がないようだ。 2020年3月22日、IOCの臨時理事会は、延期を含め4週間以内に結論を出すと表明した。3月17日の臨時理事会で通常開催方針の維持を示した直後の方針転換だ。その間、IOC委員を務めるカナダのへーリー・ウィッケンハイザー氏が今夏開催を「無神経で無責任な行為」と批判したのを皮切りに、IOCの優柔不断な姿勢に批判が噴出。 ノルウェー、スロベニア、ブラジルの五輪委員会、アメリカ水泳連盟、アメリカ陸上競技連盟、世界陸上連盟、日本五輪委員会の山口香理事らから延期を求める声が相次いでいた。 IOCの臨時総会後、カナダのオリンピック委員会が「オリンピックが今年開催されるなら選手団を派遣しない」ことを表明し、1年の延期を求めた。英独豪の五輪委員会も延期を要請するに至って、ついにディック・パウンドIOC委員も、米紙「USA Today」のインタビューで、予定通りの開催は不可能であり、IOCが延期を検討していることを認めた。 追い詰められたIOCは3月24日、臨時の理事会を開き、オリンピック史上初めての延期を決定した。 一方、日本の組織委も迷走していた。2020年3月10日、組織委の高橋治之理事が、アメリカ経済紙「ウォールストリート・ジャーナル」のインタビューに答えて、「1年か2年の延期が現実的な選択肢」と発言。これに森喜朗組織委会長が、「とんでもないこと」と猛反発する一幕があった。 高橋理事は電通の元専務で、オリンピックビジネスに深く関与してきた人物だ。バブルの寵児として知られた故・高橋治則イ・アイ・イ社長の実兄でもある』、「IOC」も各種団体からの「批判」で火だるま状態にあったようだ。「組織委の高橋治之理事」が、「故・高橋治則イ・アイ・イ社長の実兄」とは初めて知った。
・『延期は施設維持費など税金が投入される  高橋発言の狙いは理解できる。オリンピックが中止や無観客試合となれば、企業広告の減少は避けられず、組織委は赤字になる。新型コロナウイルス流行の収束が見通せない状況を冷徹に見据え、議論の俎上に「延期」をのせ、中止への流れを防ごうとしたのであろう。 3月23日、安倍首相は国会で、延期を容認すると発言。森会長も、「いろんな声があるのに『最初の通り、やるんだ』というほど我々は愚かではない」と豹変し、延期への流れを作る。そして3月24日、安倍首相がバッハIOC会長と電話で会談し、延期で合意したのである ただし、当時、政府内でオリンピックを延期、もしくは中止した場合の財政負担が極秘裏に試算され、「中止」が最も少ないという結論が出ていた。延期となれば、施設維持費などさらなる税金が投入されることを忘れてはいけない』、「「中止」が最も少ないという結論が出ていた」、とは初耳だ。1年経っても「新型コロナウイルス流行の収束」が見通せない以上、私はいまからでも「中止」すべきと考える。
タグ:(その11)(「東京五輪買収」疑惑めぐり… “森喜朗vs.小池百合子”の凄まじき暗闘、「上級国民」たちがコロナ対策そっちのけで「東京オリンピック」にこだわっていたワケ(前編)&(後編)、東京五輪「1年延期」決断までの知られざる裏側 優柔不断な態度に各連盟から批判が続出した) 「中止」が最も少ないという結論が出ていた」 延期は施設維持費など税金が投入される 故・高橋治則イ・アイ・イ社長の実兄 組織委の高橋治之理事 各連盟からIOCの優柔不断さに批判が続出 パウンド氏がIOCとテレビ局双方を代弁できる立場にあることを見誤っていた 五輪開催には巨額の放送権料が絡む 「東京五輪「1年延期」決断までの知られざる裏側 優柔不断な態度に各連盟から批判が続出した」 後藤 逸郎 東洋経済オンライン 「外苑ハウスの建替」で「容積率は大きく増えた」のが打ち出の小槌になったのだろう 当時は落選中で何の職務権限もなく、都に働きかけをしていない 萩生田が外苑ハウス建て替えに紹介した不動産業者が、萩生田の選挙区内の業者であり、個人献金をしている 内田茂都議 「東京オリンピック」は「上級国民が下級国民を食う仕組み」なのか? 300%の容積率を使うためには近隣地権者との共同開発を考えざるを得ない 無理筋こそ、東京オリンピック開催を起爆剤に新国立競技場建設を可能にさせたメカニズム 都営アパートと民間マンションを移転するというのは無理筋に思える 東京オリンピック(五輪) 日建はイメージ図の作成を否定 安井技監に示した「国立霞ヶ丘競技場周辺整備イメージ図」 萩生田 「新国立競技場」はマンション建て替え費用を「都に出させるため」の計画?! 「「上級国民」たちがコロナ対策そっちのけで「東京オリンピック」にこだわっていたワケ(後編):新国立競技場の「利権話」に「萩生田文科相」が果たした役割=後藤逸郎」 「疑惑」を晴らすには情報公開が必要だ! バッハ会長をはじめとする理事は、IOCが設立した財団や、子会社、孫会社など、いわゆる関連会社(図)の役員も務めている IOCの関連団体は「隠れ蓑」なのか バッハ会長の報酬が年間22万5000ユーロ(2947万円) IOCは倫理と透明性を高めるため、2014年12月に中期改革「アジェンダ2020」を制定 IOCメンバーの「ウラの報酬」はあるのか? 『オリンピック・マネー』 「IOCとオリンピックビジネスの闇」 「「上級国民」たちがコロナ対策そっちのけで「東京オリンピック」にこだわっていたワケ(前編)「IOC関連団体」理事に名を連ねる「森喜朗元首相」=後藤逸郎」 エコノミストOnline 小池知事の側に、森会長が最も嫌がる手札が転がり込むとは、因果は巡るという他ない 買収費用は招致委からの2億3千万円だけでは全く足らず、嘉納財団からの2億もそのために使われた可能性 竹田恒和会長は辞任 フランスの捜査当局は「賄賂」だと疑って捜査を開始 シンガポールの会社に招致委が「コンサル費用」などの名目で計2億3千万円を振り込んだことが判明 ラミン・ディアク国際陸連会長と、その息子のパパマッサタ・ディアク 闇を暴く鍵 オリンピック買収 25年度予算案(補正前)では5千万円だったのが、25年度予算案(補正後)では、2億5千万円となっている 嘉納財団の決算報告書 わざわざ補正予算を組む 里見会長が「カジノ誘致」に積極的だった 里見会長の娘と鈴木氏の披露宴は、各界のお歴々が顔を揃えるド派手なものだった 比例東京ブロックの実質的な単独1位 里見さんの娘さんは13年に経産省の官僚だった鈴木隼人氏と結婚 『嘉納治五郎財団というのがある。そこに振り込んでくれれば会長にご迷惑はかからない。この財団はブラックボックスになっているから足はつきません。国税も絶対に大丈夫です 「菅義偉官房長官から話があって、『アフリカ人を買収しなくてはいけない。4億~5億円の工作資金が必要だ。何とか用意してくれないか。これだけのお金が用意できるのは会長しかいない』と頼まれた 「東京オリンピックは俺のおかげで獲れたんだ」 酒席 「セガサミーホールディングス」の里見治(はじめ)会長 「森喜朗」新財団が呑み込む「嘉納治五郎財団」の五輪買収「5億円」疑惑 「森喜朗元首相」の新財団は「負のレガシー」 「「東京五輪買収」疑惑めぐり… “森喜朗vs.小池百合子”の凄まじき暗闘」 デイリー新潮
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

企業不祥事(その21)(メード・イン・ジャパン神話崩壊<上>神戸製鋼所、メード・イン・ジャパン神話崩壊<下>三菱マテリアル、レオパレスや大和ハウスの不祥事 元凶は時代錯誤の「体育会ノリ」だ、日立グループ、「金属」「化成」で不正相次ぐ事情 日立金属で10年以上の検査データ不正が発覚) [企業経営]

企業不祥事については、昨年1月19日に取上げたままだった。今日は、(その8)(メード・イン・ジャパン神話崩壊<上>神戸製鋼所、メード・イン・ジャパン神話崩壊<下>三菱マテリアル、レオパレスや大和ハウスの不祥事 元凶は時代錯誤の「体育会ノリ」だ、日立グループ、「金属」「化成」で不正相次ぐ事情 日立金属で10年以上の検査データ不正が発覚)である。なお、タイトルから(一般)を削除した。

先ずは、昨年4月24日付け日刊ゲンダイが掲載したジャーナリストの有森隆氏による「メード・イン・ジャパン神話崩壊<上>神戸製鋼所」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/252525
・『アルミ・銅製品の品質データを改ざんしたとして、不正競争防止法違反(虚偽表示)の罪に問われた神戸製鋼所は2019年3月13日、立川簡裁で罰金1億円の判決を言い渡された。 17年10月8日、品質データの改ざんを公表した。この問題を受け、松井巌弁護士(元福岡高等検察庁検事長)を委員長とする外部委員会を設置。18年3月6日、最終報告が公にされた。 問題の製品は688社に出荷されていた。アルミ製品は国産初のジェット旅客機MRJやH2Aロケットにも使われていた。グループの23拠点で不正が行われ、アルミ・銅事業部門の真岡製造所(栃木県)では40年以上前の1970年代から不正に手を染めていた。強度が顧客の要望を満たさない場合に数値を書き換えたり、そもそも検査自体を実施せずに数値を偽ったりしていた。5人の役員経験者や社員ら計40人以上が不正を認識したり、これに関与していた。 18年4月1日付で川崎博也会長兼社長とアルミ・銅事業の責任者だった金子明副社長が引責辞任。4月1日付で、山口貢副社長が社長に昇格した。 警視庁は18年7月17日、法人としての神鋼と、改ざんのあった本体3工場の担当者4人を不正競争防止法違反(虚偽表示)容疑で書類送検した。 合同で捜査を進めてきた東京地検特捜部は法人を起訴した。組織的な改ざんを長年放置し、日本のものづくりの信頼を損ねた企業責任を重くとらえた』、「神戸製鋼」の問題は、このブログの2018年4月21日にも取上げた。裁判では、法人も罰金刑となったようだ。
・『内紛劇の後遺症  神鋼はメーカーでありながら、ものづくり出身者はトップになれなかった。こうした特異な企業体質が形成されたのは、1969~70年代に起きた内紛劇の後遺症である。 神鋼は尼崎製鉄(尼鉄)を吸収合併したが、神鋼社長の外島健吉と尼鉄社長の曽我野秀雄が対立。曽我野は右翼の巨魁・児玉誉士夫のもとに駆け込んだ。児玉は、外島追い落としに力を貸すことを約束したが、途中で外島側に寝返った。児玉は神鋼の揉め事の処理係として木島力也を送りこんだ。 神鋼は、児玉側が持つ福島県西白河郡の5億円の土地を32億円で買い上げた。これ以降、児玉配下の総会屋が経営に介入してきたことから、総会屋対策が重要な経営課題となる。 「児玉と握手して、社長の座を手に入れた」といわれた鈴木博章(11代社長)以来、亀高素吉(15代)、熊本昌弘(16代)、水越浩士(17代)の歴代社長は、総会屋の窓口である総務部長や総務担当役員を経てトップの椅子に座った。 90年4月28日、東京・港区のホテルオークラ別館「曙の間」で神鋼の若手社員だった木島力也の長男の結婚披露宴が行われた。 神鋼からは牧冬彦会長、亀高社長、その後社長になる熊本が出席した。第一勧業銀行は宮崎邦次頭取以下、7人が顔を揃えた。ヒラ社員の結婚式に歴代社長が出席したのである。 児玉、木島らに食いちぎられる原因をつくった経営陣の内紛は、まるでがん細胞のように組織をむしばんでいった』、「児玉誉士夫」が「内紛劇」に登場、「児玉と握手して、社長の座を手に入れた」「社長」が3人もいたとは、完全に食い物にされていたようだ。「児玉」が「神鋼の揉め事の処理係」として送り込んだ社員の「長男の結婚披露宴」に「歴代社長」のみならず、「第一勧業銀行」も「頭取以下、7人が顔を揃えた」、とは「総会屋」華やかなりし時代だったとはいえ、驚かされた。
・『木島は現代評論社をつくり「現代の眼」の発行人となった。 彼は神鋼所有の牧場を手に入れ、名馬ハイセイコーの馬主として知られるようになる。ハイセイコーの「セイコー」は神戸製鋼の「製鋼」から採ったものだと信じられている。 99年、総会屋・奧田一男への利益供与事件で、総会屋対策を仕切っていた相談役の亀高素吉が辞任。09年には地方議員に対する選挙資金肩代わりで会長の水越浩士と、社長の犬伏泰夫(18代)が引責辞任した。 これで文系社長の時代が終わり、理系に移る。研究開発部門出身の佐藤廣士(19代)を経て、製鉄所に長く勤務した生産技術者の川崎博也(20代)が社長に就いた。 品質改ざん問題で川崎は引責辞任。山口貢(21代)は7つの事業の中で収益性が低く売り上げ規模も小さい機械部門の出身だった。 神鋼で機械出身の社長は初めて。品質データ改ざんで失墜した名門企業の再生を担うことになった。鉄鋼、アルミ・銅、建設機械の主力3事業の規模がどれも中途半端だ。鉄鋼は万年3位。 「2位のJFEホールディングスは神鋼のアルミ複合材事業を欲しがっている」(素材担当のアナリスト) 神鋼が令和の時代の新たな企業再編のカギを握っている。(敬称略)』、「名馬ハイセイコー」まで登場するとは、驚いた。せっかく「理系」「社長」になったのに、「品質改ざん問題で・・・引責辞任」とは、自ら招いた問題とはいえ、皮肉だ。「主力3事業の規模がどれも中途半端」で「神鋼が令和の時代の新たな企業再編のカギを握っている」、ということであれば、「神鋼」の今後に注目したい。

次に、昨年4月25日付け日刊ゲンダイが掲載したジャーナリストの有森隆氏による「メード・イン・ジャパン神話崩壊<下>三菱マテリアル」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/money/252602
・『東京簡易裁判所は2019年2月、三菱マテリアルグループの製品データ改ざん事件で、不正競争防止法違反(虚偽表示)の罪に問われた法人と個人に判決を言い渡した。 三菱電線工業に罰金3000万円。村田博昭前社長に罰金200万円。同じく子会社のダイヤメットに同5000万円。安竹睦実前社長に同200万円。三菱アルミニウムは同3000万円だった。 非鉄金属大手の三菱マテリアルの竹内章社長は17年11月24日、記者会見を開き、子会社が17年2月に製品データの改ざんを把握しながら、10月下旬まで問題の製品の出荷を続けていたとして陳謝した。 データの不正は神戸製鋼所と同じ構図だが、少なくとも神鋼は経営陣が把握した段階で、当該製品の出荷は停止した。三菱マテは経営陣が不具合を知りながら出荷を続けていた。 コーポレートガバナンス(企業統治)の面で、神鋼より悪質と批判された。神鋼が大騒ぎにならなければ、公表するつもりはなかったということだろう』、この問題も、このブログの2018年4月21日で取上げた。「経営陣が不具合を知りながら出荷を続けていた」、確かに「神鋼より悪質」だ。
・『最初に問題が発覚したのは子会社の三菱電線工業(出荷先223社)。17年2月、箕島製作所(和歌山県)で配管などのパッキングに使うゴム製品のデータ改ざんが明らかになった。社長の村田は結局、辞任に追い込まれた。 三菱伸銅(同30社)は16年10月から17年10月にかけて、若松製作所(福島県)で自動車に使われる銅合金製品などでデータを書き換え、役員3人が辞任した。 三菱アルミニウム(同120社)でも、富士製作所(静岡県)でアルミの伸び率などの検査で数値を偽っていた。 18年2月9日、自動車部品のダイヤメット(同113社)の本社工場(新潟県)で「検査特採」と言い繕って不適格な商品を流通させていた。隠蔽を指示していた安竹前社長は辞めさせられた。 三菱アルミの子会社、立花金属工業(同339社)の養老工場(岐阜県)でも不良品を「社内特採」と容認して流通させていた。) 不正に手を染めたのはダイヤメットが1977年ごろ。三菱電線、三菱アルミ、三菱伸銅は90年代、立花金属は98年前後とされている。 東京地検特捜部は18年9月12日、不正競争防止法違反(虚偽表示)で、三菱電線工業の村田とダイヤメットの安竹を在宅起訴し、法人としての両社と三菱アルミニウムを起訴した。 国内の製造業のデータ改ざんで個人が起訴されるのは初めてのことだ。2人は不正を認識しながら顧客や三菱マテに報告せず放置しただけではなく、資料の隠蔽を指示するなど、悪質性が高いと判断された。 三菱マテは18年6月11日、竹内社長が辞任。小野直樹副社長が社長に昇格した。6月8日、本体の直島精錬所(香川県)で品質問題が発覚したことが交代の決め手となった。 しかし、現在の経営陣は、肩書こそ変わったものの、前社長の竹内が会長として残り、経営責任は不問のままだ。竹内が会長職にとどまることに、三菱グループからも「経営トップとして責任をきちんと取るべきだ」との厳しい指摘がある』、「現在の経営陣は、肩書こそ変わったものの、前社長の竹内が会長として残り、経営責任は不問のままだ」、上場企業として、「三菱グループ」の中核会社としても、信じられないような居直りだ。
・『三菱マテは90年、三菱鉱業セメントと三菱金属が合併して誕生した。三菱鉱業セメントの前身は三菱鉱業。三菱財閥の創始者である岩崎弥太郎が1871(明治4)年に進出した鉱山事業がルーツだ。 1989年に閉鎖した旧三菱金属大阪製錬所の跡地で、三菱マテと三菱地所が共同で行った再開発事業、大阪アメニティパーク(OAP)の土壌汚染で三菱マテは隠蔽体質をさらけ出した。基準値の20倍のヒ素や地下水からセレンなどの重金属を検出したのに、マンション2棟(518戸)の購入者には、この事実を告げなかった。 大阪府警は05年、宅地建物取引業法違反(重要事項の不告知)で、当時の役員らを書類送検。事業主がマンションの購入額の最低25%、総額75億円を解決金として住民に支払うことで和解。三菱地所社長の高木茂、三菱マテ会長の西川章、社長の井手明彦が引責辞任したことを勘案して大阪地検は不起訴処分とした。 三菱マテにとって隠蔽の授業料は高かったはずだが、この教訓が生かされず、再び検査データに手を伸ばした。 隠蔽の2文字が名門、三菱マテの遺伝子(DNA)として刷り込まれている、といったら酷か。(敬称略)』、「酷」というより「実態」だろう。

第三に、昨年6月20日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「レオパレスや大和ハウスの不祥事、元凶は時代錯誤の「体育会ノリ」だ」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/206195
・『会社を揺るがすほどの不祥事に発展したレオパレス問題に次いで大和ハウス工業も、と不祥事が続発している。強引な営業が問題になっている大東建託もそうだが、人口減少という抗えない時代の変化に対して、「根性」と「頑張り」で立ち向かおうとする、時代錯誤の経営哲学が背景にあるのではないだろうか』、「時代錯誤の経営哲学が背景にある」とは興味深そうだ。
・『大和ハウスや大東建託も 住宅業界の不祥事が続々発覚  “外壁なしの違法プラモデル建築”が発覚したレオパレスの二の舞になってしまうのだろうか。 4月に防火基準を満たしていない不適切な物件2000棟超があると公表していた大和ハウス工業が、再調査をしたところ、国から認定されていない基礎を使った不適切住宅が、新たに約1900棟も見つかったのだ。 実は今、同社は不祥事のフィーバー状態となっている。 今年1月には元営業所長が、取引先の太陽光発電関連会社から約4000万円のリベートを受け取っていたことが発覚。3月には中国・大連市の関連会社から、約234億円の会社資金が不正に引き出されたと発表。つい先日にも、施工したマンションの貯水槽で協力会社作業員が泳ぐというバカ動画を世界に発信したことで謝罪したばかりなのだ。 ただ、この傾向は大和ハウスだけではない。「被害者の会」まで立ち上がったレオパレスはご存じの通りで、同じく賃貸アパート大手で、“いい部屋ネット”で知られる大東建託もオーナートラブルや職場のブラックぶりが一部で指摘されており、不動産業界では「大東建託の内幕 “アパート経営商法”の闇を追う」(同時代社)なんて本も注目を集めている。 では、なぜ賃貸住宅建設に関わる大手プレイヤーから、次々と「問題」が噴出しているのだろうか。 ひとつには、住宅着工件数の減少が影響していることは間違いない。 日本は今、急速に人口が減っている。総務省統計局「総人口の推移」によれば、2017年から18年の1年間で日本の人口は約40万人減っている。これは、岐阜市レベルの都市が毎年、「消滅」しているとイメージしていただければわかりやすい』、「大和ハウス」が「不祥事のフィーバー状態」、とはみっともない話だ。タガが外れてしまったのだろうか。
・『人口減少時代にがむしゃらに頑張ることの副作用とは  人が減れば当然、住宅の需要も減っていく。事実、1970年代には185万戸もあった新設住宅着工戸数は、2017年度には94.6万戸にまで縮小している。 もちろん、この「逆風」の中でも、大手は新たな事業の柱などをつくり出して成長を続けている。例えば、大和ハウスは新設住宅着工戸数が鈍ってきたことを受け、商業施設や物流施設など事業建設に力を入れはじめ、2005年には売上高の28.6%だった事業建設は、現在は38.4%まで増加。競合を大きく引き離した3兆7956億円の売り上げを叩き出している。(大和ハウスグループ「統合報告書2018」より) ただ、人口減少という大逆風の中で、これだけ右肩上がりの成長を実現するというのは普通に考えれば、かなりの無茶ぶりである。 「チャレンジ」という名目で、現場に利益のかさ上げを要求した東芝を例に出すまでもなく、無茶な目標設定はモラルハザードを招く。今回の「4000棟の不適合建築」問題も、その可能性は否めないのだ。 そのような意味では、この業界でさまざまな問題が噴出していることも、「人口減少」という不治の病を無理やり何とかしようと試みた結果の、強烈な副作用とみてもいいのではないだろうか。 そこに加えて、この副作用をさらに重篤化させているのが、この世界に蔓延している「体育会のノリ」だと思っている。 賃貸住宅建設業界にお勤めの方ならばよくわかると思うが、この世界はかなり体育会で、罵声が飛び交うのは当然で、とにかく靴底減らして仕事を取ってこいみたいなカルチャーが現在まで続いている。 例えば、有名なのは大東建託の「飛び込み営業」だ。「大東建託現役社員が指摘『ひたすら飛び込む』営業戦略の弱点」には、そのあまりのハードな体育会のノリから、営業マンが「辛いなあ。死んだ方がマシかなあ」と悲痛な声を上げていることが紹介されている』、「とにかく靴底減らして仕事を取ってこいみたいなカルチャーが現在まで続いている」、ブラック企業と紙一重のようだ。
・『不祥事企業に共通するのは「体育会のノリ」である  ということを言うと、確かに度の過ぎた「体育会のノリ」も問題だが、企業が成長するうえには、ある程度は必要ではないかと思う人もいるだろうが、それは大きな勘違いだ。 「人口減少社会」における体育会のノリは百害あって一利なし。体罰指導で急に強くなる部活と一緒で、瞬間風速的に業績は上がるかもしれないが、中長期的に見ると、パワハラや不正が溢れ変えるブラック組織をつくることにしかならないのだ。 確かに、現場に体育会のノリで発破をかけてうまくいった時代もあった。が、現在は先ほども触れたように事業環境が激変しているので、ほとんどワークしない。そこでさらに「気合だ」「根性だ」「やる気を見せろ」と叱責すると逆効果で、パワハラにしかならないのだ。 また、そのような結果に繋がらない精神的プレッシャーが増えると、現場の人間はちゃんとした仕事をすることよりも、「どうすれば叱責されないようになるか」という方向でものを考えがちになっていく。インチキをして上司や客がのぞむような結果をつくりあげる。「真面目な社員」たちが「会社のため」という名目で、データ改ざんや利益のかさ上げ、法令軽視に手を染めるのは、こういう組織内の力学が影響しているのだ。 筆者は、この10年あまり、報道対策アドバイザーとして、不祥事などが発覚した問題企業を間近に見てきた。業種も多岐に渡っているし、業績の良い企業もあれば、悪い企業もある。不祥事のパターンもバラエティに富んでいる。 だが、ひとつだけ共通しているのが、どの組織にも何かしらの「体育会のノリ」があるということだ。トップが苦労人でゴリゴリの根性論を振りかざすとか、製造部門が軍隊のような階級社会で「上」には誰も文句が言えないとか。 5月に代表権を返上してCEOを退任した「大和ハウス中興の祖」である樋口武男氏は、創業者・石橋信夫氏に託された「10兆円企業」という目標を、創業100周年の2055年に目指しており、このようにインタビューでおっしゃっている。 《社長には20年前倒しして10兆円を目指せと発破をかけている。これはと思う幹部には特にしんどい仕事をさせて、能力を見極めている》(2016年07月28日 日刊工業新聞) これぞ経営者だと思う一方で、そのように樋口氏から強いプレッシャーをかけられた幹部は、そのしんどい仕事を誰へ振っていくのかが気になる』、「この10年あまり、報道対策アドバイザーとして、不祥事などが発覚した問題企業を間近に見てきた」「筆者」が「不祥事企業に共通するのは「体育会のノリ」である」、「「真面目な社員」たちが「会社のため」という名目で、データ改ざんや利益のかさ上げ、法令軽視に手を染めるのは、こういう組織内の力学が影響」、などの指摘には説得力がある。
・『高度経済成長は「根性」で成し得たのではない  アマチュアスポーツの体罰問題で指摘されたように、選手時代に体罰を受けて一人前になった人は、コーチになってからも当たり前のように選手を殴る。自分がそうやって強い人間になったからだ。 このハラスメントの連鎖を踏まえれば、樋口氏から厳しい指導を受けた管理職は、部下を厳しく育てるはずだ。では、そのような部下たちは、工事業者や協力会社という「現場」をどのように指導するのか。とにかく結果を出せ、もっと努力しろ、と厳しく迫るのではないか。 このような人口減少社会にそぐわぬ「体育会のノリ」の押し付けが、現場のモラルハザードを引き起こし、「4000棟の不適合建設」につながった可能性はないだろうか。 高度経済成長期、日本の人口は右肩上がりで内需は自然に拡大していたので、やるべきことをしっかりやっていれば、企業は成長ができた。 しかし、そんな幸せな時代、ひとつの不幸が生まれてしまう。「日本は人口増によって成長した」という分析をする人が皆無だったため、自分たちの会社が大きくなったのは、「社員みんなが頑張ったからだ」と信じ込んでしまったのだ。これによって、人口増で黙っていても自然に経済成長ができているのに、あたかも「根性で成長ができた」という錯覚に陥る日本人が多く現れた。 この大きな誤解が、バブル崩壊を経て「失われた20年」でさまざまな問題を引き起こしている。 日本の人口は減少に転じて、かつてのように内需は拡大しない。論理的に考えれば、高度経済成長期に雨後のタケノコのように生まれた企業は、事業の縮小や見直し、他社との合併などを検討しなくてはいけないのは明らかだが、多くの経営者はそういう判断ができない。 成長とは「従業員の根性」で成し得るものだという思い込みがあるからだ』、「人口増で黙っていても自然に経済成長ができているのに、あたかも「根性で成長ができた」という錯覚に陥る日本人が多く現れた。 この大きな誤解が、バブル崩壊を経て「失われた20年」でさまざまな問題を引き起こしている」、その通りだ。
・『「頑張れば成長できる」 偽りの神話を捨てるべき時期だ  成長ができていないのは、頑張りが足りないから。頑張りが足りないのは、最近の若者は自分たちのように試練を乗り越えていないからに違いない。ということは、会社のためにも、ぬるま湯で育った若者のためにも、ちょっとくらい心と体を痛めつけてやる必要がある。そんな支離滅裂な三段論法で、「正義のパワハラ」に走っていく。 現在の日本で、人口が減れば減るほどブラック企業やパワハラが活況していく、という皮肉な現象が起きているのは、全てはこの「頑張れば成長できる」という強迫観念が元凶になっている。 賃貸住宅建設に関わる大手メーカーに不祥事が多発しているのも、根っこにはこの構造があるとしか思えない。 前向きに考えれば、業界でさまざまな問題が噴出しているということは、大きく変わっていくチャンスでもあるはずだ。 人口が激減する社会で、新しい住宅や施設をバカバカつくっていく方法は、やはりどう考えても、無理がある。その無理は頑張りや努力で乗り越えることはできない。「頑張って成長をする」という昭和の経営者の根性論から脱却する時期にさしかかっているという事実に、経営者は気づく必要がある。 この不祥事多発を受け、大和ハウスをはじめ、賃貸住宅建設業界のみなさんがどのような新しいビジネスモデルにたどり着くのか、注目したい』、「人口が減れば減るほどブラック企業やパワハラが活況していく、という皮肉な現象が起きているのは、全てはこの「頑張れば成長できる」という強迫観念が元凶になっている」、「「頑張って成長をする」という昭和の経営者の根性論から脱却する時期にさしかかっているという事実に、経営者は気づく必要がある」、全面的に同意する。

第四に、本年4月30日付け東洋経済オンライン「日立グループ、「金属」「化成」で不正相次ぐ事情 日立金属で10年以上の検査データ不正が発覚」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/347453
・『日立グループで検査不正がまた発覚した。 日立金属は4月27日、主力の特殊鋼製品とフェライト磁石などの磁性材料で、検査データを偽造するなどの検査不正があったと発表した。いずれの部品も自動車や家電、産業機器などで幅広く使われており、不正を通じて製品を納入した顧客は延べ約170社に上る』、「磁性材料」での「検査不正」で「顧客」側からのクレームは表立ってはないようだが、本当のところはどうなのだろう。
・『検査データを書き換え、顧客に提出  不正があったのは特殊鋼、フェライト磁石、希土類磁石の3種類の素材だ。特殊鋼はクロムやニッケルなどを特殊配合して耐久性を強くした鋼で、主に加工治具や自動車部材に使われている。 またフェライト磁石は、主にワイパーやパワーウィンドウなど自動車用やエアコン等家電用の各モーターに用いられ、希土類磁石はネオジム等のレアアースを主原料とする強力な磁石で、自動車の電動パワーステアリングやFA(ファクトリー・オートメーション)、ロボット用モーターに使われている。 いずれも顧客と契約していた品質基準に合うように検査データを書き換えたものを「検査成績書」として顧客に提出。特殊鋼では14品種、約30社、フェライト磁石は約580品番、約70社に、希土類磁石は約370品番、約70社の顧客にそれぞれ納入されていた。 不正には特殊鋼を作っている安来工場(島根県安来市)や、磁石を作っている熊谷磁材工場(埼玉県熊谷市)などの国内拠点のほか、韓国、フィリピン、インドネシア、アメリカの海外拠点も関与していた。3品目の2019年度の売上高は合計3105億円で、そのうち実際に不正が一部でも認められた製品は245億円分に上る。 日立金属の西山光秋会長兼CEOは4月27日に電話会見を開き、「現時点では安全性、性能に問題があるものは確認されていない」と説明したうえで、「顧客にご相談申し上げて、合意のもと出荷を継続している」と話した。業績に与える影響は現時点で不明という。 不正が発覚したきっかけは2020年1月下旬、安来工場で不正が行われているとの情報提供だった。社内調査を進めた結果、フェライト磁石と希土類磁石でも同様の不正が判明した。 西山会長は「不正は少なくとも10年以上前から継続していた」と説明。上層部も関わっていた可能性があるため、今後歴代幹部から聞き取り調査を行う方針とみられる。4月27日付で長島・大野・常松法律事務所の弁護士らからなる特別調査委員会を設置し、原因究明を急ぐ考えだ』、「現時点では安全性、性能に問題があるものは確認されていない」、その理由は「顧客」が要求する「品質基準」自体に余裕がある(?)ためなのだろうか。
・『日立の中核子会社で相次ぐ不正  日立グループをめぐっては、中核子会社の日立化成でも2018年に産業用鉛蓄電池などで大規模な品質データ不正が発覚している。このとき、日立グループでは全社に総点検するように指示していたが、今回の不正を防げなかったことになる。 くしくも日立金属の西山会長は4月に親会社である日立製作所の専務兼CFOから転じたばかり。西山氏は「今回の不正と人事は関係ない」としたうえで、「(日立グループの総点検で)不正が把握できなかったのは私としても悔しい」と話した。 一方、日立化成に続く中核子会社での相次ぐ不正は日立グループ全体の問題ではないかとの指摘には反論。西山氏は「日立グループの問題というよりも、日立金属は(独立した)上場会社だ。責任を持って調査して説明責任を果たさなければならない」と強調した。 原因究明はこれからだが、コストを意識していた可能性もある。今回顧客との契約とは違う工程を未申請のまま変更したケースでは、自社材料から外部購入に変更していた。 その理由について、西山会長は「おそらくはコスト。外部購入の方がコストが安いから変更したと推測できる」と認める。もっとも顧客は日立金属の材料を使用した製品と理解して購入しているため、契約が不成立になる恐れもある』、「外部購入の方がコストが安いから変更したと推測」、「日立化成」ともなると、「社内」購入時の価格交渉は甘くなるのだろうか。
・『試される「名門」のガバナンス力  日立金属は日立化成とともに日立グループ御三家の一角を占め、売上高は1兆円規模を誇る。だが、磁石事業などの不振で業績低迷が続いている。2019年4~12月期は本業の儲けを示す調整後営業利益が前期比72%減の118億円に下落。前期まで3期連続で減益のうえ、2020年3月期は磁性材料で減損を計上し、470億円の最終赤字に転落する見込みだ。足元では新型コロナウイルスの感染拡大もあり、さらに下振れする可能性が高まっている。 日立金属幹部はここ数年の業績不振について、「構造改革を怠り、全方位で積極投資した結果、固定費が大幅に増えてしまった」と分析する。西山氏は「一刻も早い業績の回復、事業再編に取り組んでいきたい」と抱負を述べたばかりだった。 日立金属はもともと独立心が旺盛で、日立製作所との取引も少ない。ただ、2010年に日立金属社長を日立製作所の副社長に就けるなど、グループの一体感を高める動きもあった。その後、2013年に日立電線と経営統合し、日立化成との統合も模索していたが、日立化成は昭和電工への売却が決まった。そうしたこともあって、日立金属も業績が回復すればグループ外へ売却されるのではないかとの観測が強まっていた。 ただ新たな問題が浮上したことで、売却の行方は不透明になってきた。原因究明には少なくとも数カ月かかるとみられるが、日立化成の不正問題のように、調査の過程でまた追加の不正が出る可能性も残る。名門で相次いだ不正をどう食い止めるか。日立のガバナンス力が試されている』、いまや「日立」は経団連会長会社、このような「不正」発覚は、今回限りにしてもらいたいものだ。)
タグ:東洋経済オンライン 経団連会長会社 セレンなどの重金属を検出したのに、マンション2棟(518戸)の購入者には、この事実を告げなかった ひとつだけ共通しているのが、どの組織にも何かしらの「体育会のノリ」がある この大きな誤解が、バブル崩壊を経て「失われた20年」でさまざまな問題を引き起こしている 罰金1億円の判決 検査データを書き換え、顧客に提出 「児玉と握手して、社長の座を手に入れた」 人口減少時代にがむしゃらに頑張ることの副作用とは 「レオパレスや大和ハウスの不祥事、元凶は時代錯誤の「体育会ノリ」だ」 少なくとも神鋼は経営陣が把握した段階で、当該製品の出荷は停止 神鋼からは牧冬彦会長、亀高社長、その後社長になる熊本が出席 レオパレス 事業主がマンションの購入額の最低25%、総額75億円を解決金として住民に支払うことで和解 三菱グループからも「経営トップとして責任をきちんと取るべきだ」との厳しい指摘 (その8)(メード・イン・ジャパン神話崩壊<上>神戸製鋼所、メード・イン・ジャパン神話崩壊<下>三菱マテリアル、レオパレスや大和ハウスの不祥事 元凶は時代錯誤の「体育会ノリ」だ、日立グループ、「金属」「化成」で不正相次ぐ事情 日立金属で10年以上の検査データ不正が発覚) 窪田順生 人口が減れば減るほどブラック企業やパワハラが活況していく、という皮肉な現象が起きているのは、全てはこの「頑張れば成長できる」という強迫観念が元凶になっている 「頑張って成長をする」という昭和の経営者の根性論から脱却する時期にさしかかっているという事実に、経営者は気づく必要がある とにかく靴底減らして仕事を取ってこいみたいなカルチャーが現在まで続いている 「日立グループ、「金属」「化成」で不正相次ぐ事情 日立金属で10年以上の検査データ不正が発覚」 「人口減少社会」における体育会のノリは百害あって一利なし 木島力也の長男の結婚披露宴 歴代社長は、総会屋の窓口である総務部長や総務担当役員を経てトップの椅子に座った 三菱マテは経営陣が不具合を知りながら出荷を続けていた。 コーポレートガバナンス(企業統治)の面で、神鋼より悪質と批判された 現在の経営陣は、肩書こそ変わったものの、前社長の竹内が会長として残り、経営責任は不問のままだ 内紛劇の後遺症 筆者は、この10年あまり、報道対策アドバイザーとして、不祥事などが発覚した問題企業を間近に見てきた 児玉は神鋼の揉め事の処理係として木島力也を送りこんだ 不祥事のフィーバー状態 この世界に蔓延している「体育会のノリ」 ダイヤモンド・オンライン 児玉配下の総会屋が経営に介入してきたことから、総会屋対策が重要な経営課題 「メード・イン・ジャパン神話崩壊<下>三菱マテリアル」 大東建託もオーナートラブルや職場のブラックぶりが一部で指摘 真岡製造所(栃木県)では40年以上前の1970年代から不正に手を染めていた 三菱マテと三菱地所が共同で行った再開発事業、大阪アメニティパーク(OAP)の土壌汚染で三菱マテは隠蔽体質をさらけ出した 日刊ゲンダイ 大和ハウスや大東建託も 住宅業界の不祥事が続々発覚 神鋼社長の外島健吉と尼鉄社長の曽我野秀雄が対立 神鋼は、児玉側が持つ福島県西白河郡の5億円の土地を32億円で買い上げた 品質改ざん問題で川崎は引責辞任 文系社長の時代が終わり、理系に移る 磁性材料で、検査データを偽造 隠蔽の2文字が名門、三菱マテの遺伝子(DNA)として刷り込まれている 「人口減少」という不治の病を無理やり何とかしようと試みた結果の、強烈な副作用 不正競争防止法違反(虚偽表示) 神鋼が令和の時代の新たな企業再編のカギを握っている アルミ・銅製品の品質データを改ざん 外部購入の方がコストが安いから変更したと推測 主力3事業の規模がどれも中途半端 住宅着工件数の減少が影響 なぜ賃貸住宅建設に関わる大手プレイヤーから、次々と「問題」が噴出しているのだろうか 不正に手を染めたのはダイヤメットが1977年ごろ 「メード・イン・ジャパン神話崩壊<上>神戸製鋼所」 山口貢 曽我野は右翼の巨魁・児玉誉士夫のもとに駆け込んだ 有森隆 児玉、木島らに食いちぎられる原因をつくった経営陣の内紛は、まるでがん細胞のように組織をむしばんでいった 売り上げ規模も小さい機械部門の出身 高度経済成長は「根性」で成し得たのではない 「真面目な社員」たちが「会社のため」という名目で、データ改ざんや利益のかさ上げ、法令軽視に手を染めるのは、こういう組織内の力学が影響 児玉誉士夫 「頑張れば成長できる」 偽りの神話を捨てるべき時期だ 試される「名門」のガバナンス力 日立の中核子会社で相次ぐ不正 人口増で黙っていても自然に経済成長ができているのに、あたかも「根性で成長ができた」という錯覚に陥る日本人が多く現れた 瞬間風速的に業績は上がるかもしれないが、中長期的に見ると、パワハラや不正が溢れ変えるブラック組織をつくることにしかならない 現時点では安全性、性能に問題があるものは確認されていない ハイセイコーの「セイコー」は神戸製鋼の「製鋼」から採ったもの 地方議員に対する選挙資金肩代わりで会長の水越浩士と、社長の犬伏泰夫(18代)が引責辞任 第一勧業銀行は宮崎邦次頭取以下、7人が顔を揃えた 川崎博也会長兼社長とアルミ・銅事業の責任者だった金子明副社長が引責辞任 不祥事企業に共通するのは「体育会のノリ」である 企業不祥事
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

介護(その5)(河合 薫氏2題:新型コロナがとどめ「人生最後の砦」介護現場は崩壊へ、世界で続出する介護崩壊 問われる大企業の社会的役割) [社会]

介護については、2月13日に取上げた。今日は、(その5)(河合 薫氏2題:新型コロナがとどめ「人生最後の砦」介護現場は崩壊へ、世界で続出する介護崩壊 問われる大企業の社会的役割)である。

先ずは、3月17日付け日経ビジネスオンラインが掲載した健康社会学者(Ph.D.)の河合 薫氏による「新型コロナがとどめ「人生最後の砦」介護現場は崩壊へ」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00066/?P=1
・『慢性的なストレスにさいなまれている人は、突発的なストレスに襲われたときにダイレクトにダメージを受ける。これはストレス学の定説だが、今回の新型コロナウイルス騒動でも全く同じ現象が起こっている。 これまで、だましだましやり過ごしてきた問題が一気に吹き出し、断崖に追いつめられていた人たちが今、落ちてしまいそうになっているのだ。 その1つが介護だ。 「今回の新型コロナ騒動で介護業界は完全に崩壊するんじゃないかって、心配しています。介護士にも感染が見つかっていますが、そうなることはもっと前から分かっていた。介護の仕事ってすべてが濃厚接触ですからね。なぜ、もっと早く手を打てなかったのか。悔しくて。ホント、悔しいです。 特に訪問介護の現場は慢性的なヘルパー不足で、倒産と背中合わせです。 急場をしのげる余力は1ミリもありません。自治体は『知恵を出してどうにか乗り切ってほしい』っていうけど、人もカネもない現場に、どうしろというのか? 訪問介護の利用者には一人暮らしで、家族に頼ることができない人も多い。ヘルパーとの信頼関係で、訪問介護は成立しているんです。人が足りないからって、他の人に入ってもらいましょうとは軽々に言えません。それこそ、もし、そんなことして感染が拡大したり、何かトラブルが起きたりしたら取り返しがつかない。介護は……命の現場なんです。 悲しいけれど、どうなってもいいって言われてるようで。なんとかするしかないという気持ちと、どうにもならないというあきらめの中で、運営している施設は多いと思います」』、「介護の仕事ってすべてが濃厚接触」、「介護は……命の現場」、「新型コロナ」報道では、たまにしか触れられない「介護現場」の問題を河合氏の記事でみてみたい。
・『後手に回った介護分野への対応  こう話すのは、30年近く介護現場で働く知人だ。 数日前に介護士の人に感染が確認され、「ついに来てしまったか」と不安になり連絡したところ、忙しい中でインタビューに応じてくれた。 「みんな自分が感染源になるんじゃないかと、恐れて、神経をとがらせてきた。マスクや消毒液の在庫が尽きそうなことも分かっていたが、限られた状況でスタッフはがんばっていたのに……」と、やりきれない心情をうちあけた。 報じられている通り、愛知県では11日までに2カ所のデイサービス事業所で集団感染が確認され、感染者数は45人に上っている。名古屋市では感染者が出た施設を含め、市内の計126施設に7日から2週間の休業を要請した。 しかし、「デイサービスは利用者にとって命綱だ。休業すれば受け皿がない」と、利用者の受け入れを続けている施設は多い。「介護は命の現場」という言葉どおり、感染の不安を抱えながらも“断崖”で耐えているのだ。 中国で感染が拡大した当初から、高齢者ほど重症化リスクが高いことが分かっていたのに、高齢者に対する感染拡大防止策は全くといっていいほど手を付けられていなかった。介護施設への具体的な対応策は示されなかったし、マスクなどの確保も、すべて後手だった。 政府が北海道にマスク約400万枚を配布することを明らかにしたのは、3月3日。同日には、介護職員らでつくる労働組合(NCCU)が、事業所の約2割、訪問介護に限ると3割でマスクが既に無い、在庫が2週間分以内の事業者は3分の2という窮状を政府に訴えていたのに、医療機関向けの救援策が発表されたのは、1週間後の3月10日だった。 「医療機関や介護施設に対する(国が購入した)マスク供給を、自治体や関係企業と連携し、円滑に行っていくために“マスクチーム”を立ち上げた」(by 菅官房長官) 1週間もかかった上、マスクチーム……か。マスクチームは厚生労働省、経済産業省、総務省から3省の若手職員ら40人のメンバーで構成され、「(チームのメンバーが)それぞれ電話をして、(マスク問題を)1つひとつ埋めていっている」(菅官房長官)らしい。ふむ。なんじゃこりゃ?? とにかく遅い、遅すぎる。 いずれにせよ、NCCUが最終結果として、6日に発表した報道関係者へのプレスリリースには、次のような「命の現場」の声が記されている。 「小中高一斉臨時休校」で介護現場の人手不足は加速。過重労働や利用者への悪影響の懸念がある。 「『デイサービスなどの利用者に発熱がある場合は、訪問介護の提供を』と厚労省から言われても、深刻な人手不足で急なシフト追加は対応しきれない」「事業所のマスクは在庫ゼロ。訪問介護は『最後のとりで』と言われる割には、ヘルパーに対する扱いが雑すぎる」などなど。 「なんかどうなってもいいって言われてるようでね」(介護業界の知人)という悲鳴が渦巻いていることが分かる』、「名古屋市では感染者が出た施設を含め、市内の計126施設に7日から2週間の休業を要請」、なんとも責任回避的なお役所的対応だ。「休業すれば受け皿がない」と、利用者の受け入れを続けている施設は多い」、当然の対応だ。「当初から、高齢者ほど重症化リスクが高いことが分かっていたのに、高齢者に対する感染拡大防止策は全くといっていいほど手を付けられていなかった」、完全に政府の対応の失敗だ。しかも、「政府が北海道にマスク約400万枚を配布」、するのも「“マスクチーム”を立ち上げ」などで「1週間もかかった」、とは酷い話だ。「「小中高一斉臨時休校」で介護現場の人手不足は加速」、子供たちが家に居るので、「ヘルパー」が「介護現場」に行けないという「臨時休校」の副作用のためなのだろう。
・『ヘルパー高齢化で先が見えない訪問介護  冒頭に書いた通り、今回のコロナ騒動で、これまでだましだましやり過ごしてきた問題が、一気に吹き出した。パンドラの箱。そう、「パンドラの箱」が開き、そこにつまっていた社会のひずみが表面化した。 その1つが介護現場であり、「最後のとりで」とされる訪問介護だったのである。 人手不足が深刻な介護現場の中でも、訪問介護職(ホームヘルパー)の有効求人倍率(18年度)は13.10倍と圧倒的に高い。 訪問介護職員の総数は約43万3000人で7割近くが非常勤で、約4割が60歳以上。65歳以上は約2割だ(厚生労働省「介護サービス施設・事業所調査」17年)。 肉体的にも精神的にもハードな仕事なので、年齢を理由に退職する人も多い。また、4割を占める60歳以上のヘルパーは、今後10年のうちにほとんどが引退する可能性が高いため、人手不足が解消する見込みはほぼ無い。真っ暗闇の回廊を歩かされているようで、そこには一筋の光もない。 おそらくこういった事情も関係しているのだろう。19年(1-12月)の「老人福祉・介護事業」の倒産件数は、集計開始以来、最多だった2017年の111件に並んだ。業種別では「訪問介護事業」が最も多く58件。前年の45件から急増していたのである。 19年11月1日、現役の介護ヘルパーが国を相手どり訴えを起こすという前代未聞の出来事があった。原告の訪問介護ヘルパー3人は、労基法違反の状態=「0時間契約」で働かされ続け、正当な賃金が支払われていないのに、国が規制権限を行使しないのは違法として東京地裁に国家賠償訴訟を起こした。 「0時間契約」とは、就労時間の保証がなく、したがって賃金保障もないまま、その時々に求められた時間だけ働く雇用形態のこと。雇用主に仕事を提供する義務はないため、勤務が「ゼロ時間=無給」になる可能性もある。 訪問介護ヘルパーの場合(正規以外)、待機時間に対する賃金は基本的に支払われない。訪問先間の移動費や、事業所に連絡する電話代もすべて自分持ちだ。予定がキャンセルされれば事業所に支払われる介護報酬はなく、ヘルパーは無給となる』、「ホームヘルパー」の「約4割が60歳以上。65歳以上は約2割」、と既に「老老介護」状態にあるようだ。「現役の介護ヘルパーが国を相手どり訴え」での「0時間契約」とは酷い話だ。労働基準局はチェックしていないのだろうか。
・『分刻みで働かされる訪問介護の現場  その過酷さは、ヘルパーたちの1日のスケジュールを見れば一目瞭然である。大手新聞が紙面に掲載した原告の典型的な1日のスケジュールによると、ヘルパーの業務は朝8時30分に事務所に出勤し、「訪問スケジュールや申し送り」を確認することからスタートする。5人の利用者の家を訪問し、18時40分に事務所に戻り「申し送りや翌日のスケジュール」を確認し、帰宅は19時。1日の給与は7075円だった。 内訳は、「70代要介護2の独居女性を身体介護=800円」「難病・認知症で80代要介護3の独居男性を身体介護・生活援助=2250円」「90代夫婦(要介護1)の家で生活援助=975円」「80代要介護1の独居女性を入浴介助=1600円」「90代要介護1の男性宅で入浴介助と生活援助=1450円」と、利用者のほとんどは一人暮らしか老老介護だ。 身体介護では、蒸しタオルで洗顔し、着替えを手伝い、失禁のため体を拭き、下着を取り換え、シーツなどを洗濯する。生活援助では、食事の準備、掃除、洗濯、ゴミ捨てをする。入浴介助では、血圧や体温をチェックし、洗髪と洗身をし、合間に食器洗い、夕食の準備、洗濯物の取り込みをする。 どれもこれも覚悟と利用者との信頼関係がなくては、できない仕事ばかりだ。昼食は、自転車で移動中の15分に肉まんをほおばる、残りのおにぎりを15時ごろ公園で食べる。休憩時間はなし、移動、介護、移動、介護、移動、介護の繰り返しなのだ。 原告の女性たちは、1月20日に行われた第一回の口頭弁論で、「時間に追われ、利用者と話す十分な時間もない。やりがいも削られ、ケアの質も担保できず我慢も限界」と、訴えた理由を話したと報じられている。 以前、訪問介護をしている方にインタビューしたとき、「利用者は私たちとしか社会との接点のない人が多い。私たちがいないと生活はできないし、会話もないんです。本当はもっと話を聞いてあげたいけど、利用時間が決まってるし、次が入ってるから、満足に向き合うこともできない。孤独死するんじゃないかって、心配になることもあります」と話してくれたことがある。 「介護保険のホームヘルパーは、もはや絶滅危惧種」とうたうメディアもあるが、絶滅するのはヘルパーだけじゃない。それは高齢者の死につながる極めて緊急性の高い課題なのだ』、「「介護保険のホームヘルパーは、もはや絶滅危惧種」とうたうメディアもある」、この「メディア」が決めつけた意図が単なるウケ狙いとすれば、良識を疑わざるを得ない。
・『40年前の家族スタイルを前提にしたシステム  介護現場ではさまざまな問題が指摘されながら、それが解決しないうちに新たな問題が発生してきた。そのたびに“バンドエイド”を貼るような手立てがなされてきたけど、傷口はどんどんと広がり、決して止血できなかった。 混迷を極める介護問題の根っこにあるのは、高度成長期の「家族のカタチ」をスタンダートとし続けたことだ。 40年前の1979年に発表された自民党の政策研修叢書『日本型福祉社会』を変えることなく、踏襲し続けたことが介護現場で働く人たちとその利用者=高齢者を断崖に追いつめている。 日本型福祉社会の社会福祉の担い手は、企業と家族であり、「結果の平等」を追求するような政策は「堕落の構造」を生むという考えが存在している。 つまり、北欧に代表される「政府型」や、米国に代表される「民間(市場)型」じゃない、「とにもかくにも、“家族”でよろしく!」という独自路線の福祉政策が日本型福祉社会なのだ。 1986年に『厚生白書 昭和61年版』として発表された、社会保障制度の基本原則では、上記の「日本型福祉社会」の視点をさらに明確化し、「『健全な社会』とは、個人の自立・自助が基本で、それを家庭、地域社会が支え、さらに公的部門が支援する『三重構造』の社会である、という理念にもとづく」と明記。) 2006年に政府がまとめた「今後の社会保障の在り方について」でも、40年前と全く同じことが書かれている(興味のある方はこちらをお読みいただきたい)。 想像以上のピッチで高齢化が進み、家族の稼ぎ手も、家族のカタチも変わったのに40年前と同じ理念を掲げ続けている。その“ひずみ”を埋めているのが、「命の現場」で働く人たちであることはまぎれもない事実だ。 要介護者を「社会全体」で支え合うという理念の下、介護保険制度が創設された2000年以降、ごまかしごまかししてきたことが「命の現場」を弱体化させたのだ。 ついでながら書いておくと、3月2日に開かれた参議院予算委員会での「高齢者は歩かない」とのやじは、現場がいちばん緊迫しているときだったので大いに失望したそうだ。 「子供がいるスタッフが仕事に来られずてんてこまいのときに、ホントに悲しいですよね。高齢者ははなから切り捨てられてるんです」(介護業界の知人) 介護問題はあまりに複雑すぎて、今ここで「こうすべきだ!」と断言できるほどの頭脳を私は、残念ながら持ち合わせていない。だが、地震や台風などの自然災害が起こるたびに、福祉避難所問題が起きていることなども考えると、「誰もが介護できるスキル」を身に付けられる教育をし、緊急時に高齢者を決して孤立化させないしくみを作っておくことも1つの案になるようにも思う。 最後に、ちょっとだけ安心できるメールが老人ホームで暮らす93歳の友人から届いたので紹介しておく』、「40年前の1979年に発表された自民党の政策研修叢書『日本型福祉社会』を変えることなく、踏襲し続けた」、とは初めて知って、驚いた。「要介護者を「社会全体」で支え合うという理念の下、介護保険制度が創設された2000年以降、ごまかしごまかししてきたことが「命の現場」を弱体化させた」、困ったことだ。
・『求められる広範で迅速な情報提供  「私のホームでは、平穏に過ごしています。ここでは、早い段階から家族の訪問は禁止にしています。私の家族も、2月早々から姿を出しません。入居者の中には、容体がよくないので、家族が毎日来ている人もいますが、そのたびに施設長の許可を得ているそうです。 私たち夫婦は週3回マッサージ師に部屋まできて施療してもらっていますが、2月下旬からストップしてもらいました。ホームにはプールや稽古事に通っている人もいますが、それぞれ自発的にストップしています。 こんな状態なので、コロナ騒ぎもなく、いつもと変わりません。今回のことで、私は、自分の身は自分で守らなくては、と痛感しています。 ただ、正確な情報が分からないので、みな不安を募らせています。日本は政府をはじめ、情報が開示されないのですが、これは島国根性というのでしょうか? 今や、情報社会です。一刻も早く、情報を発信してほしいです」 友人は93歳の今も、毎日株をチェックし、毎週私にコラムの感想をくださるほどお元気な人。すべての高齢者は同じではなく、ストレスをため込んでいる人も多いと思う。 でも、先行きが見えない今、一人でも多くの高齢者がこの友人のように、平穏に過ごせればいいと心から願う』、政府の「情報発信」の度合いはまだまだ不十分だ。よもや「知らしむべからず」との考えではないことを祈るばかりだ。

次に、この続き、4月28日付け日経ビジネスオンライン「世界で続出する介護崩壊、問われる大企業の社会的役割」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00118/00072/?P=1
・『恐れていたことが、ついに起きてしまった。 18日、大阪市淀川区のマンションで、57歳の男性と母親(91)が遺体で見つかった。残された遺書には、「母に『死にたい』と言われ、糸が切れた」と書かれ、無理心中を図ったとみられている。 報道によると、男性の母親は数年前に市内の特別養護老人ホームに入所。男性はご近所でも孝行息子として知られていて、ホームにも毎日のように訪れ、朝から晩まで付き添っていたそうだ。 ところが、新型コロナウイルスのため事態が一変する。感染拡大防止のため、母親との面会が一切できなくなってしまったのだ。 男性は毎日のように施設に電話し、母親の安否を確認していたが、「母親がかわいそうなので、一時的に家に連れて帰りたい」と申し出たところ施設に断られた。そこで退所させることを決意。自宅近所では男性が介護用のおむつをいくつも買って戻る姿が目撃されていたというが、退所の翌日の晩、悲劇は起きた。 男性は父親が他界した後実家に戻り母親を介護していたが、在宅では限界になり、数年前からホームに入所させていたという』、「介護用のおむつをいくつも買って戻る」のであれば、当初は面倒を見るつもりだったのだろうが、「遺書には、「母に『死にたい』と言われ、糸が切れた」」、「無理心中」とは悲劇だ。
・『高齢者を不安にする新型コロナ  高齢者にとって、大切な家族は心のよりどころであり、人と会ったり人と話したり、体を動かすことは生きる力の火を燃やす大切な行為だ。一方、そういった日常が途絶えるとストレス状態に陥る。精神的に不安定になったり、認知機能が下がったり。環境の変化は精神的にも肉体的にも、高齢者の生きる力を著しく低下させる。 91歳の母親は息子にホームで面会もできず、精神的に疲弊していたのだろうか。会えない母親を心配し続けた男性は、精神的に限界だったのだろうか。コロナ感染拡大で今まで経験したことのないえたいの知れない不安が、「もう十分生きた。もういいよ」という気持ちに、親子をさせてしまったということだろうか。 親子に何があったかは二人にしか分からない。 ただ、私も年取った母親と日々接しているので「少しでも一緒にいてあげたい」と、引き取りたくなる気持ちは痛いほど分かる。 高齢者は私たちが想像する以上にコロナを怖がっているし、そんな親を目の当たりにしたら、かわいそうで。 理屈じゃない。ただただ切ないのだ。人生最後の時間を1日でも多く笑顔で過ごして欲しいと思うと、自分にできることはやっておきたいし、後悔したくない。件の男性もそんな気持ちを抑えきれず、「退所」というリスクの高い選択に至ったのだろう。 この事件も一つの「8050問題」なのかも、と思うとあまりに悲し過ぎる。 介護施設に勤める知人数名に聞いたところ、家族が一時帰宅を申し出るケースは増えていて、入居者から「家に帰りたい」「家族に会いたい」と懇願されることもあるという。 「退所させる家族を止めることもできないし、かといってこの状況下で面会を許可するのは危険すぎる。在宅介護はリスクが高いが、現場も崩壊寸前。何が正解なのか分からない。出口のない迷路に入り込んでいる」(by 介護施設関係者) テレビ電話などを使って面会できる施設がメディアでは紹介されているけど、「それができるのは余裕のある施設だけ」とのことだった』、「在宅介護はリスクが高いが、現場も崩壊寸前。何が正解なのか分からない。出口のない迷路に入り込んでいる」、「介護施設」の悩みも深いようだ。
・『海外でも介護施設が悲惨な状況に  そんな中、海外から痛ましい事態が次々と報じられている。フランスでは全体の死者数の約4割が施設の入居者らに集中し、ある施設ではウイルス感染が施設内に広がり、80人の入居者のうち30人が亡くなり、業者が引き受けるまで3日以上置き去りにされた遺体もあったそうだ。 また、ノルウェーでは亡くなった人のうち64%が、ベルギーでは49%、ドイツでは32%が介護施設の入居者だった。 米国でも、介護施設の入居者、あるいは施設の職員の少なくとも約7000人が新型コロナウイルスで死亡。4月17日現在、米国では新型コロナウイルスで3万6500人以上の死亡が確認されているので、死者の約5人に1人は介護施設内だということになる。 世界中で起きている「介護崩壊」。日本でも確実にそのリスクは高まっている。いや、もう既に入り口に立っている状況で、足元は崩れかけている。 コロナ感染拡大が深刻になり始めた3月17日、後手に回った介護現場の感染拡大防止策については、こちらで書いた(新型コロナがとどめ「人生最後の砦」介護現場は崩壊へ)。 そして、1カ月がたった今、介護施設で働く人、入居している高齢者とその家族、さらにはコロナ前は自立で生活できていた高齢者まで、さまざまな問題が複合的に起き、介護問題は「コロナ後」、もっと深刻かつ複雑化することはほぼ確実といえる。  新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、デイサービスなどの「通所型」の施設を中心に全国で少なくとも883の介護サービス事業所が休業していることが分かった。このうち、98%に当たる863事業所が自主的な判断で休業していて、自治体からの要請で休業しているのは大阪府と福岡県の合わせて6施設だったそうだ(NHK調べ)。 介護施設でのコロナ感染拡大も連日報じられているので、今後さらに休業する施設が増える可能性は極めて高い。 もともと苦しい経営状態にあった施設だけでなく多くの施設が、休業により運営事態が厳しくなることは容易に想像できる。コロナ前から限界だった訪問介護に加え、通所型の介護施設(デイサービス)などが倒産してしまうと行き場を失った高齢者が量産されることになる。 なので、まずは介護施設が運営を続けられるような支援が必要不可欠だ。 そのために何をするか?』、「フランスでは全体の死者数の約4割が施設の入居者・・・ノルウェーでは亡くなった人のうち64%が、ベルギーでは49%、ドイツでは32%」、「米国では・・・死者の約5人に1人は介護施設内」、など海外でも「介護施設」の感染リスクは高いようだ。「「通所型」の施設を中心に全国で少なくとも883の介護サービス事業所が休業・・・このうち、98%に当たる863事業所が自主的な判断で休業」、「通所型」「介護サービス事業所が休業」すると、体を動かさなくなるので、要介護度が上昇してしまうという深刻なデメリットがある。「休業」すれば「感染リスク」は減らせるが、悩ましいところだ。 
・『介護崩壊を大企業のリソースで止められないか  個人的には、リソースが豊富にある大企業に、支援に乗り出してほしいと思っている。 事業所にIoT などリモート環境を整えたり、社員を送り込んでマネジメントを行ったり。また、企業ボランティアの一環として社員がヘルパーさんたちのお手伝いをする。「高齢者とお話をする」ことだって大切な介護だ。大企業だからこそできることは多いのではないか。 くしくも日経新聞に「新型コロナが証した『日本株式会社の幻』」という英フィナンシャル・タイムズの記事が出ていた。内容は、「日本の有力企業が持っているスキル、秀でた組織力、最高品質の製品の大量生産、すべての懸念を脇に起き、国益のために協調する本能といった=日本株式会社の力が、発揮されていない」というものだった。 「ソニーやトヨタ自動車、パナソニック、シャープなど一握りの企業からマスクなどの生産に、“控えめな約束”が出ただけで、あとは沈黙している。オールジャパンの本能はどこにいった?!」と。 世界各地で介護崩壊が起きている今だからこそ、超高齢化社会先進国として、日本の有力企業が、「介護現場は潰しません! 働く人たちを守ります! 共に闘います! 高齢者が笑顔でいられる介護現場を!」とスローガンをかかげ、取り組んでほしいのだ。 長期的な目線で考えれば、生産性の向上につながるのではないか。「介護現場の技術革新」にも拍車がかかるだろうし、物が売れない今だからこそ人の移動も含めて介護現場を救済する知恵とスキルを生み出してほしい。 かつて日本の大企業が社員の家族を守ったように、命の現場を守る。政治にも影響力を持つ経団連の役割が問われているように思う。 介護現場で働く人たちは、新型コロナのパンデミックで広がった言葉の1つであるエッセンシャルワーカーだ。介護職は「日常に必要不可欠な職業」であり、彼らは「市民の生命と財産を守るために働いている人」たちである。エッセンシャルワーカーの多くが、労働市場での地位が低く、報酬も恵まれていない。介護の現場ではコロナ禍を機にさらなる人手不足が予想される』、「介護崩壊を大企業のリソースで止められないか」、は河合氏らしからぬ無理筋だ。
・『新型コロナの後、問題はさらに深刻に  だからこそ、社会に影響力を持つ経団連をはじめ大企業のチャレンジが必要なのだ。 さまざまな人事制度を手がけ、人材育成をしてきた経験と知恵を持つ「経団連」が加わり、エッセンシャルワーカーの賃金体系の見直しに力を貸し、介護職の人たちのキャリアパスも考える。 そうすれば、暗闇をさまよい続けている介護現場に少しだけ光が差すし、企業価値もあがるはずだ。 とはいえ脆弱な介護現場を救うことは、介護問題の一部でしかない。コロナ後は、自立で一人暮らしをしている高齢者の「人生の最終章」に、どう寄り添うかも大きな課題になる。 65歳以上の一人暮らし高齢者は、男女ともに増加傾向にあり、1980(昭和55)年には、男性が約19万人、女性が約69万人で、高齢者人口に占める割合は男性4.3%、女性11.2%だった。これが2010(平成22)年には、男性が約139万人、女性が約341万人に、高齢者人口に占める割合は男性11.1%、女性20.3%へと増えている(内閣府 「平成28年 高齢者の経済・生活環境に関する調査結果」)。 さらに、国民の3人に1人が65歳以上になる2025年には、男性が約230万人、女性が約470万人、高齢者人口に占める割合は男性14.6%、女性22.6%にまで増加する見込みだ。 一方、65歳以上の認知症高齢者数と有病率の将来推計についてみると、平成24(2012)年は認知症高齢者数が462万人と、65歳以上の高齢者の約7人に1人(有病率15.0%)であったが、2025年には約5人に1人になるとの推計もある(「平成29年版高齢社会白書」)。 アルツハイマーなどの病気に起因する認知症だけではなく、「年を取る」だけで認知機能は落ちる。昨日までできていたことが一つ、また一つとできなくなり、一人で生活するのは厳しくなる。 認知機能の低下を防ぐには、おしゃべりをする、みんなで楽しく運動する、ご飯を規則正しく食べることなどが極めて重要だが、人との接触が閉ざされた今、それができない。今後「他者の助けがないと生活できない」高齢者が増えるリスクは高まっている』、「社会に影響力を持つ経団連をはじめ大企業のチャレンジが必要」、もどう考えても無理筋だ。「人との接触が閉ざされた今、それができない。今後「他者の助けがないと生活できない」高齢者が増えるリスクは高まっている」、「通所型」「介護サービス事業所が休業」で前述した通り、確かに悩ましい問題だ。
・『認知症が多くなる社会は「人との関わり」が不可欠   65歳以上の歩行・入浴・排せつが自立している愛知県の高齢者1万2085人を対象に、同居以外の他者との交流の頻度別に、10年間の要介護状態への移行と認知症の発症、死亡状況を追跡した調査でも「他者との接触」の重要性は確かめられている。 毎日頻繁に交流がある人を「1」とした場合の、交流頻度別の要介護2以上の認定、認知症の発症、死亡のリスクを見ると、月1~週1回未満の頻度では、要介護2以上の認定となるリスクが「1.4倍」となり、認知症を発症するリスクが「1.39倍」になることが分かった。 さらに、月1回未満の頻度では、早期死亡が「1.34倍」高くなることが報告されている(「Japan Gerontological Evaluation Study」)。 コロナの感染を拡大させないためには、接触は制限せざるを得ない。だが、感染リスクを最大限の抑えた接触を実行しないことには、介護が必要になった時に介護サービスを受けられない高齢者が量産されるかもしれないのだ。 厚生労働省は、自宅から高齢者が通うデイサービスなどの介護施設が、新型コロナ感染の拡大防止のため休業した場合、介護福祉士ら職員が健康状態を電話で確認することを認める特例措置を始めた。 だが、それだけじゃダメだ。一人で暮らしているおじいちゃん、おばあちゃんが、自宅で孤立しないように、地域の人が声をかけたり、一緒に散歩したり、「隣人」である「私」たちの協力も必要となる。難しい問題ではあるけど、町内会やマンションの理事会の積極的な関わりが求められている。 そして、もしみなさんのご両親がご健在なら、まめに電話などをしてあげてください。 安倍首相が呼びかけた「オンライン帰省」をしたり、スマホが使えないときには頻繁に電話をする、電話してテレビ体操を一緒にやるとか、いつも以上に寄り添ってください。 高齢者はマジで、新型コロナ……怖がっていますから。歩かなくなると、たちまち足腰弱まりますから、とにもかくにも元気な大人は「高齢者と子供ファースト」でお願いします』、「一人で暮らしているおじいちゃん、おばあちゃんが、自宅で孤立しないように、地域の人が声をかけたり、一緒に散歩したり、「隣人」である「私」たちの協力も必要となる。難しい問題ではあるけど、町内会やマンションの理事会の積極的な関わりが求められている」、その通りだ。
・『高齢化社会の現実に沿った価値観をつくり直す時期  日本の介護の仕組みが、高度成長期の「家族のカタチ」をスタンダードにしたもので、1979年に発表された自民党の政策研修叢書『日本型福祉社会』を変えることなく、踏襲し続けたことが、さまざまなひずみを生じさせ、ごまかしごまかししてきたことが「命の現場」を弱体化させたということは何度も書いた(直近ではピント外れ支援策の根底に「昭和の遺物」的思考)。 そして、今、こうした価値観を大きく変えなければならない段階に来てしまった。いったん開いてしまった「パンドラの箱」は、どうやっても閉じることはできない。今まで気が付いているのに、その場しのぎにしてきた問題に向き合わざるを得なくなった。 人生の最終章をどう生きる? そのために何をすべきか? いくら負担するか? パンドラの箱の片隅の希望の石を見つけるにはどうしたらいいのか? 一人ひとりが考えることから、始めるしかないと思う』、確かに正論だが、いきなり突き放されても戸惑ってしまうので、考える上でのヒントのようなものが欲しいところだ。
タグ:介護崩壊を大企業のリソースで止められないか 「新型コロナがとどめ「人生最後の砦」介護現場は崩壊へ」 海外でも介護施設が悲惨な状況に 在宅介護はリスクが高いが、現場も崩壊寸前。何が正解なのか分からない。出口のない迷路に入り込んでいる 新型コロナの後、問題はさらに深刻に 高齢化社会の現実に沿った価値観をつくり直す時期 高齢者を不安にする新型コロナ 認知症が多くなる社会は「人との関わり」が不可欠 後手に回った介護分野への対応 「世界で続出する介護崩壊、問われる大企業の社会的役割」 河合 薫 日経ビジネスオンライン (その5)(河合 薫氏2題:新型コロナがとどめ「人生最後の砦」介護現場は崩壊へ、世界で続出する介護崩壊 問われる大企業の社会的役割) 介護 分刻みで働かされる訪問介護の現場 介護は……命の現場 0時間契約 介護の仕事ってすべてが濃厚接触 ヘルパー高齢化で先が見えない訪問介護 求められる広範で迅速な情報提供 「小中高一斉臨時休校」で介護現場の人手不足は加速 「休業すれば受け皿がない」と、利用者の受け入れを続けている施設は多い 要介護者を「社会全体」で支え合うという理念の下、介護保険制度が創設された2000年以降、ごまかしごまかししてきたことが「命の現場」を弱体化させた 名古屋市では感染者が出た施設を含め、市内の計126施設に7日から2週間の休業を要請 1979年に発表された自民党の政策研修叢書『日本型福祉社会』を変えることなく、踏襲し続けたことが介護現場で働く人たちとその利用者=高齢者を断崖に追いつめている 40年前の家族スタイルを前提にしたシステム 「介護保険のホームヘルパーは、もはや絶滅危惧種」とうたうメディアもある 現役の介護ヘルパーが国を相手どり訴え 老老介護 約4割が60歳以上。65歳以上は約2割 ホームヘルパー
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

日本の政治情勢(その45)(河井前法相「逆転の一手」は 「選挙収支全面公開」での安倍陣営“敵中突破”、「菅」「今井」「麻生」「二階」そして「公明党」まで……安倍政権が「コロナ対策そっちのけ」で権力闘争に明け暮れる理由、黒川弘務検事長の定年延長問題 トンデモ人事の裏のウラ ──コラムニスト・小田嶋隆、【ワイド特集】コロナ焼け野原後の日本はどうなる(政治)) [国内政治]

日本の政治情勢については、3月28日に取上げた。今日は、(その45)(河井前法相「逆転の一手」は 「選挙収支全面公開」での安倍陣営“敵中突破”、「菅」「今井」「麻生」「二階」そして「公明党」まで……安倍政権が「コロナ対策そっちのけ」で権力闘争に明け暮れる理由、黒川弘務検事長の定年延長問題 トンデモ人事の裏のウラ ──コラムニスト・小田嶋隆、【ワイド特集】コロナ焼け野原後の日本はどうなる(政治))である。

先ずは、5月2日付けYahooニュースが掲載した元東京地検特捜部検事で、郷原総合コンプライアンス法律事務所代表弁護士の郷原信郎氏による「河井前法相「逆転の一手」は、「選挙収支全面公開」での安倍陣営“敵中突破”」を紹介しよう。
https://news.yahoo.co.jp/byline/goharanobuo/20200502-00176482/
・『河井案里氏(以下、「案里氏」)が当選した昨年7月の参院選をめぐり、案里氏及び河井克行前法相(以下、「克行氏」)の秘書らが公選法違反で逮捕・起訴された。 それに続き、広島地検特別刑事部に東京地検特捜部等からの多数の応援を含めた「検察連合軍」による、克行氏自身の公選法違反の容疑での捜査が本格化している。 3月下旬頃から、克行氏自身が、広島県内の首長や地方議員らに広く現金を渡した公選法違反(買収)の容疑で、50人を超える県政界関係者に対する任意聴取や、元広島市議会議長、元広島県議会議長などの広島県政界の有力者の関係先への家宅捜索などが行われている。直近では、4月28日に、広島県議会の議員控室にも家宅捜索を行うなど、捜査の勢いは止まるところを知らない。 【河井前法相“本格捜査”で、安倍政権「倒壊」か】でも述べたように、これらの現金授受は、選挙の3か月前に行われたものであり、従来の検察実務からは、買収として起訴するハードルは高い。 しかし、それは、旧来の公職選挙の実態を考慮して、買収で起訴する範囲を、選挙期間或いはその直近における「投票」又は「選挙運動」の対価として利益が供与されるものに限定してきたことによる。選挙期間直近以前のものは、政治活動としての「地盤培養行為」に関するものとして罰則の対象外としてきたのであり、起訴できないというのではなく、起訴してこなかっただけなのである。 公選法の条文(221条1号)からすれば、克行氏の容疑である県政界有力者への現金供与は、「案里氏を当選させる目的」が認められる限り、検察が「敢えて」起訴した場合には有罪となる可能性が高い。 安倍内閣が、閣議決定による違法な検事長定年延長で検察を支配下に収めようとしたことに対する検察組織内からの強烈な反発もあり、広島での検察捜査は、不退転の姿勢で行われている。従来、検察が公選法の適用に関して行ってきた「自己抑制」は、今回の事件では働く余地はないように見える。 まさに絶体絶命という状況に追い詰められている克行氏は、どうしたらよいのか。このままいけば、「河井克行」という政治家は、戦後初めて、前法務大臣として検察に逮捕された「最低最悪の政治家」という汚名を歴史に残すことになりかねない。その場合、政治生命はもちろん、社会的信頼すらも失うことになる。 克行氏にとって、この危機的局面で、どのように対応すべきなのか。危機打開の「一手」を考えてみた』、「安倍内閣が、閣議決定による違法な検事長定年延長で検察を支配下に収めようとしたことに対する検察組織内からの強烈な反発もあり、広島での検察捜査は、不退転の姿勢で行われている」、頼もしい。確かにこのままでは、「戦後初めて、前法務大臣として検察に逮捕された「最低最悪の政治家」という汚名を歴史に残すことになりかねない」、として、「克行氏にとって・・・危機打開の「一手」を考えてみた」、とは興味深そうだ。
・『河井案里氏参議院選挙出馬の経緯  案里氏は、2001年に克行氏と結婚、2003年の広島県議会議員選挙に自民党公認で立候補し初当選し、2007年に再選。2009年、自民党を離党し、広島県知事選に亀井静香国民新党代表や一部の自民県議の支援を受けて立候補したが落選。2010年には国民新党から第22回参議院議員通常選挙広島県選挙区への出馬を打診されるなど、亀井静香氏との関係も深かった。同年12月に自民党に復党し、2011年の県議選に出馬し当選。県議会議員に復帰した後2012年3月には地域政党大阪維新の会が主催する維新政治塾に参加するなどしてきた。 一方、克行氏は、2007年、第1次安倍改造内閣で法務副大臣、2015年、安倍首相の内閣総理大臣補佐官を務めるなど、「安倍晋三総理を支える5人衆」の一人(日経2016年6月17日)とされている。案里氏と克行氏では、政治的立ち位置を若干異にするのである。 参議院広島県選挙区は、長年にわたって、定員2名を、自民党の溝手顕正氏と野党とで議席を分け合ってきた。2019年7月の選挙でも、自民党は溝手氏を公認済みだったが、同年2月に、安倍首相に近い選挙対策委員長の甘利明氏が2人目候補の擁立に動き、当初は、愛知県選挙区の参議院議員薬師寺道代氏の名前が挙がっていたが(産経2019年2月19日)、同氏は愛知2区から衆院選に立候補する予定になり、案里氏が2人目の候補として浮上、3月13日に正式に公認候補に決定したという。 つまり、案里氏は、もともと、参議院選挙に出馬しようとしていたのではなく、溝手氏に加えて、広島地方区から2人目の候補を擁立したいとの自民党本部側の強い意向によって、急遽、立候補することになったのだ。溝手氏は、参議院幹事長も務めた参議院自民党の重鎮で、6回目の当選を果たせば、参議院議長の候補とされていた。その溝手氏に加えて、敢えて2人目の候補を擁立したことの背景には、【前記記事】でも述べたように、安倍首相の溝手氏に対する個人的反感が働いていたとの見方もある』、「溝手氏」は落選の憂き目に遭ったようだ。急遽「立候補」させた「案里氏」には巨額の党費が渡され、それが「選挙違反」につながったとは、「安倍首相」の責任も大きそうだ。
・『克行氏らによる「多額現金買収」の目的  案里氏の擁立が、広島地方区で、野党候補を破って自民党が2つの議席を獲得することではなく、同じ自民党公認の溝手氏を落選させることの方に主目的があったことは、克行氏が、広島県内の首長や地方議員らに広く現金を渡した「現金買収」のやり方からも窺われる。 私は、30年余前、鹿児島地検名瀬支部長として、当時唯一の衆議院の「一人区」だった「奄美群島区」での保岡興治氏と徳田虎雄氏との「保徳戦争」と言われる激しい選挙戦の選挙違反の捜査・処分を担当した。事前買収・事後買収・交付罪・詐欺投票・選挙自由妨害・凶器携帯・虚偽事項公表罪など、ありとあらゆる選挙違反事件を捜査・処分したが、その中にも、地域の有力者に数十万円という多額の現金買収の事案があった。その目的は、「対立候補からの支持の引き剥がし」であった。単なる投票依頼の買収の金額が3~5万円だったのに対して、前の選挙で他陣営の応援をしていた人に対する「寝返り料」は、20~30万円だった。積極的に応援してくれなくても、他陣営の応援をやめてくれれば、選挙結果に与える影響が大きいということだ。 克之氏の場合、現金を供与した相手方は、元広島県議会議長・元市議会議長・自民党系の県内の首長など、それまでの参議院選挙で自民党公認の溝手氏を応援してきたと考えられる政治家だ。このような人達に多額の現金を渡す目的は、溝手氏への支持を「引き剥がすこと」だったと考えられる。選挙の4カ月前に急遽立候補することになった案里氏が、それまで連続5回当選してきた溝手氏の支持基盤を切り崩して当選するためには、克行氏が、多数の県政界の有力者に、直接、数十万円の現金を配って回ることしか方法がなかったからであり、1億5000万円もの選挙資金を自民党本部から提供された目的が、まさに、そのようにして溝手氏への支持を切り崩して案里氏を当選させることにあったからだと考えられる。 立候補予定の妻への支持を呼び掛けて多額の現金を直接配布して回るというのは、まともな政治家としてあり得ない行為のように思われるが、それは、克行氏個人の意志によるものというより、案里氏の立候補の経緯、党本部からの多額の選挙資金の提供などから、そうせざるを得ない状況に追い込まれていたとみるべきであろう』、「現金を供与した相手方は、元広島県議会議長・元市議会議長・自民党系の県内の首長など、それまでの参議院選挙で自民党公認の溝手氏を応援してきたと考えられる政治家だ・・・案里氏が、それまで連続5回当選してきた溝手氏の支持基盤を切り崩して当選するためには、克行氏が、多数の県政界の有力者に、直接、数十万円の現金を配って回ることしか方法がなかったからであり、1億5000万円もの選挙資金を自民党本部から提供された目的が・・・溝手氏への支持を切り崩して案里氏を当選させることにあったから」、さすが「「保徳戦争」と言われる激しい選挙戦の選挙違反の捜査・処分を担当」しただけのことはある深い読みだ。
・『検察VS河井前法相の戦い、立ちはだかる「新型コロナ感染リスク」  この事件は、国政選挙である参議院議員選挙において、急遽立候補することにした河井案里氏を当選させるために巨額の資金が飛び交ったという「金まみれ選挙」が疑われ、その資金は自民党本部から提供されたもので、そこに、安倍晋三自民党総裁の意向が働いている疑いがあるという、日本の政治と選挙をめぐる極めて重大な事件である。 このような重大な選挙犯罪の捜査に、検察が総力を挙げて取り組み、事実解明しようとするのは当然のことであり、今回の事件の捜査には、明らかに、検察に「正義」がある。 しかし、一方で、今、日本は、「国難」とも言われる新型コロナ感染症で緊急事態宣言が出されている状況であり、感染防止対策に国を挙げて取り組まなくてはならない。 感染のリスクの中で、「密室」「密接」での取調べを含む検察捜査が、今後、さらに本格化することは、決して好ましいことではない。そういう面からは、できる限り検察捜査の長期化を回避することも社会の要請とも言えるが、事件の社会的・政治的重大性を考えれば有耶無耶にしてしまうことはできない。 そこで、克行氏に、今、最も求められていることは、少しでも早く、現金配布が、どのような資金によって、どのように行われたのかを国民に公開することである。 そもそも、公職選挙法が目的としている「選挙の公正」には二つの要素がある。一つは、投票や選挙運動が有権者の自発的な意思によって行われるもので、それに対して対価を支払ってはならないという「不可買収性」であり、それに関して「買収罪」が処罰の対象とされる。もう一つは、選挙運動の内容や資金の流れに関する「透明性」であり、公選法は、選挙運動費用収支報告書の作成提出を義務づけている。 選挙に関連する金銭や利益の供与によって「選挙の公正」を害されるのも、この二つの面から考えることができる。公示後の選挙期間内に投票や選挙運動に対する直接的な依頼をした場合は、「不可買収性」そのものの問題となるが、公示から離れた時期に行われた、投票や選挙運動との関係が間接的な働きかけは、主として「透明性」の問題だと言えよう。 そういう意味では、参議院選挙の公示の3か月前に、県政界の有力者に広く現金を渡して回った克行氏の行為は、公選法上「買収罪」に該当することも否定はできないが、むしろ、選挙運動やその資金の収支の「透明性」を害するということで、選挙運動収支報告書の記載の問題だと言える。 不透明な金の流れの全貌を知っている克行氏自身が、それを全面公開することが、事態を収拾するために最も効果的な方法である』、「公選法上「買収罪」」では判決確定後、一定期間、公民権が停止され、立候補できないが、「選挙運動収支報告書の記載の問題」であれば、「公民権停止」はなく、軽くて済むのだろうか。
・『河井前法相にとっての「逆転の一手」  そこで、追い込まれた克行氏にとって、「逆転の一手」となるのが、公職選挙法に基づいて提出されている選挙運動収支報告書の記載を訂正し、県政界の有力者に現金を供与したことを含め、選挙資金の収支を全面的に明らかにすることである。収支の公開という公選法上の手続によって、同選挙をめぐる金の流れを、法的に全面開示するのである。 そして、記者会見を開くなどして、自民党本部から1億5000万円の選挙資金の提供を受けたことについて、その経緯・党本部側からの理由の説明の内容・使途など、それが現金買収の資金とどのような関係にあるのかについて、すべて包み隠すことなく説明することだ。広島の有権者に対して、そして、国民に対して、この参議院議員選挙をめぐって起きたことを、全てつまびらかにすることだ。不透明な金の流れによって歪められた河井案里氏の参議院議員選挙について、克行氏本人が説明責任を果たすのである。 こうして、克行氏が、「選挙運動費用収支報告書の訂正」という公式の手続をとり、違法な金銭の授受の事実を含め全面的に公開することによって、「検察連合軍」が徹底した関係者の取調べや家宅捜索等の捜査で解明しようとしていた事実は、ほぼ全面的に明らかになる。検察は、そのような事実に公選法の罰則を適切に適用して刑事処分を行うことが可能となり、克行氏と案里氏に対する逮捕の必要もなくなる。収支報告書への収入・支出の不記載罪による在宅起訴での早期決着の可能性もある。 選挙をめぐる「不透明な資金の流れ」が説明されれば、安倍首相を含め、与党・政権幹部が、巨額の選挙資金の提供にどのように関わったのかも自ずと明らかになるだろう』、「不透明な資金の流れ」が解明されれば、大いに意味があることは確かだ。
・『猪瀬東京都知事の公選法違反事件の先例  もっとも、この公選法の「選挙運動収支報告書」については、その記載義務の範囲について微妙な問題があり、従来の実務では、公選法が目的とする「収支の公開」が十分に実現されていなかった。 2013年、東京都知事選の公示直前に、猪瀬氏が医療法人徳洲会側から5000万円の現金を受領したとされた問題に関して、当時、【猪瀬都知事問題 特捜部はハードルを越えられるか】と題するブログ記事で、以下のように述べた。 本来、公職選挙に関する収支を報告させ公開する目的は、公職の候補者が、これらの様々な選挙資金について、どのような個人や団体から支援を受けて選挙運動を行ったのかを有権者に公開することで、選挙の公正を確保し、当選した候補者が公職についた後に行う職務が公正に行われるようにすることにあるはずだ。 そうであれば、このような選挙にかかる様々な資金の提供元を広範囲に選挙運動費用収支報告書に記載させ、公開することが、制度の趣旨に沿うものと言えよう。 しかし、従来の公職選挙に関しては、実際に、選挙運動費用収支報告書の記載の対象とされてきた収入は、様々な選挙運動の資金のうち、ごく一部に過ぎなかった。 選挙期間中、選挙運動に直接かかる費用「人件費・家屋費・通信費・交通費・印刷費・広告費・文具費・食糧費・休泊費・雑費」などが法定選挙運動費用であり、これについては、公職選挙法で、支出できる上限が定められている。選挙事務所を借りる賃借料、ポスターの作成・掲示の費用、街頭活動のためのガソリン代費用などである。 そして従来、収支報告書の支出欄には、このような選挙運動期間の選挙運動に直接かかった費用だけが記載され、収入欄の記載も、この支出に対応する収入金額にとどめるのが通例であった。つまり、収支報告書の支出としては、選挙期間中の選挙活動に直接必要な費用を記載し、その支出にかかる資金をどのようにして捻出したかを収入欄で明らかにする、というのが一般的な選挙運動費用収支報告書の記載の実情だったのだ。 徳洲会側から受領した5000万円について、猪瀬氏は、「個人的な借入金で、短期間で返済する予定だったが、それが遅れ、徳洲会に対する捜査が開始された後に返済した。出納責任者にも知らせていないので、収支報告書に記載すべき収入ではない。」と説明していた。 それまでの「選挙運動費用収支報告書」の記載の実情からは、この事件を捜査していた東京地検特捜部にとっても、公選法違反で立件することについてのハードルは相当高いと考えられた。 しかし、この猪瀬氏の事件について捜査していた東京地検特捜部は、翌2014年3月28日、公職選挙法違反(収支報告書の不記載)で、猪瀬氏を略式起訴し、東京簡裁は同日、罰金50万円の略式命令を出した。罰金を即日納付した猪瀬氏は、記者会見で「けじめをつけたいと考え、処罰を受け入れた」「5000万円は選挙で使う可能性があり、選挙資金という側面があった。自分がそのようなことをするはずがないというおごりがあった」と謝罪した。 この事件で、検察が、それまでの選挙運動費用収支報告書記載に係る犯罪のハードルを下げて起訴し、猪瀬氏が処罰を受け入れたことは、公選法のルールによる選挙運動費用の透明性に向けての貴重な一歩だった。 しかし、この事件を機に、選挙運動費用収支報告書の記載実務が大きく変わったかというと、そうではなかった。猪瀬氏の事件を前提に、選挙運動に関する収入及び支出を、すべて収支報告書に記載し、それを、有権者に公開する方向に向かうべきだったが、実際にはそのようにはならなかった』、「収支報告書」をチェックする機関(選挙管理委員会か?)の権限強化や収支報告書の公開などが必要なのだろう。
・『河井克行前法相の行動によって、公職選挙の歴史が変わる  猪瀬氏の事件の前例に照らせば、今回の案里氏の参議院議員選挙をめぐる、克行氏から県政界の有力者への現金供与についても、参議院選挙に関して供与したものなのである以上、選挙に関する支出として「選挙運動費用収支報告書」への記載義務があると解するべきだ。また、そのための資金の収入も、どこから提供されたものであるか、具体的に記載する義務がある。 克行氏が、選挙の収支について事後的ではあるが「透明性」を実現すれば、公職選挙の収支の全面公開に向けて、大きな意義を持つものとなる。 「検察連合軍」の捜査によって追い詰められた克行氏にとって、政治家として致命的なダメージを回避し、社会的信頼を維持するための唯一の方法は、選挙運動費用収支報告書の訂正によって違法な現金供与を含め事実を全面公開し、「選挙の透明性」を事後実現すること、それによって、党本部・政権とのしがらみを断ち切り、「安倍陣営」の“敵中突破”を図ることである。 その破壊力によって「ガバナンス崩壊」状態の安倍政権は音を立てて「倒壊」する。検察も、違法な検事長定年延長による安倍政権の支配と、捜査の長期化による捜査班や関係者の新型コロナ感染リスクから免れることができる。 そして、これまで、日本の政治の「宿痾」だったとも言える、選挙資金の流れの不透明性を払拭し、日本の公職選挙の在り方が大きく変わる可能性が出てくる。 前法相として政治的・社会的責任を果たし、公職選挙の透明化に貢献できれば、その「功績」は、公選法違反で処罰される「汚名」より大きく評価されることになろう。 果たして、克行氏に、“敵中突破”ができるだろうか』、郷原氏にここまで「けしかけられた」克行氏の出方が注目される。

次に、5月3日付けYahooニュース「「菅」「今井」「麻生」「二階」そして「公明党」まで……安倍政権が「コロナ対策そっちのけ」で権力闘争に明け暮れる理由=伊藤智永【週刊エコノミストOnline】」を紹介しよう。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200503-00000001-economist-bus_all&p=1
・『政権の混迷は見た目以上に重症だ。コロナ危機が進むにつれ、官邸、内閣、与党のいずれにも安倍晋三首相のコントロールが利かなくなりつつある。何を判断するにも、常に自らの「名誉ある辞め時」がちらつく。その迷いを見透かされているからだ。 「混乱を招いてしまったことについては私自身の責任であり、国民に心からおわびを申し上げたい」。新型コロナウイルス感染症対策の給付金を、1世帯当たり30万円から国民1人当たり10万円に急きょ変更すると表明した4月17日の記者会見。陳謝した安倍晋三首相の顔は疲労の色が濃かった。当然だろう。10日前に閣議決定したばかりの今年度補正予算案を組み替えなければならない政治的失態は、その責任者が他の閣僚だったなら本来、更迭に値する。だが、安倍首相が覚えた疲れは、責任の重圧感より、政権内の亀裂が手に負えなくなっているという無力感の方が大きいだろう。 給付金の唐突な方針転換は、公明党の山口那津男代表から予想外の突き上げを受けてのまされた。「支持率も下がっている。国民の信頼がないと乗り切れない。これは要望や申し入れではない。政治決断をお願いしたい」。言葉にこそ出さないまでも、対応次第では「倒閣」も辞さないかのような強硬姿勢にたじろぎ、屈した。 安倍首相は元々、公明党が苦手だ。多分頭の片隅に、結局はどこまでも自民党に付いてくる「下駄の雪」という侮りがある。いつも冷静沈着、論理明晰(めいせき)な山口氏はとりわけ苦手だ。そのため、自分は気の合う一部公明党議員との個人的な付き合いでお茶を濁し、連立与党としての調整は、菅義偉官房長官と二階俊博自民党幹事長に丸投げしてきた。しかし、パイプは働かなくなっていた。「ポスト安倍」を巡る思惑のずれが、政権運営をつまずかせるほどの亀裂を生じさせているからだ』、「公明党」を「下駄の雪」とは言い得て妙だが、牙を剝いた時には、「菅義偉官房長官と二階俊博自民党幹事長」の「パイプは働かなくなっていた」、「安倍首相が覚えた疲れは・・・政権内の亀裂が手に負えなくなっているという無力感の方が大きいだろう」、面白くなってきたようだ。
・『菅氏と首相側近の暗闘  昨年、「令和おじさん」ブームで「ポスト安倍」候補に浮上した菅氏を、首相側近たちは深刻に警戒し、政権寄りのメディアも使った「菅包囲網」で激しく攻め立てた。首相本人の真意はどうあれ、側近たちと菅氏の官邸内の対立は外から見える以上に険しい。コロナ危機対応で、今井尚哉首相秘書官を中心とする「官邸官僚」が、経済産業省に企画を練らせて霞が関全体に指示を出す体制はさらに露骨になり、菅氏は多くの意思決定から外された。 側近たちは来年9月の自民党総裁任期切れをにらみ、あわよくば「総裁4選」か「任期延長」に期待したが、長年の政権担当に疲れた安倍首相は「今の任期限り」の意思が固い。次善の策として「東京五輪後勇退=岸田文雄自民党政調会長に政権禅譲」のレール敷設に期待をかけた。もちろん、岸田政権でも自分たちの既得権を継続させたい底意がある。 全国民に10万円の給付案は、野党が言い出し、与党にも同調論はあったのに、麻生太郎副総理兼財務相が「リーマン・ショックで現金を配ったけど役に立たなかった」と麻生政権時の失敗を持ち出して反対し、収入の減った世帯に限る代わり20万円にする案を、30万円に引き上げて決着させた。官邸が30万円を持ち出したのは岸田氏であるように演出したのも、「岸田禅譲」に弾みを付けたい魂胆だったが、いかにもあざとく、「安倍4選」を広言してきた二階氏は当然おもしろくない。30万円への悪評判を察した二階氏が「一律10万円」をぶつけ、公明党が首相を突き上げる呼び水をまいたのも、元はといえば首相側近たちの下手な小細工が原因だった。 こうした迷走のいきさつで、麻生氏が何度も首相の足を引っ張っているのも見逃せない。リーマンとコロナでは危機の意味も展開も違うのに、「俺の時はだめだった」と拙い経験則を持ち出す姿は、「安倍首相が感染したら、この人が首相代理か」と国民心理を暗くさせるが、麻生氏周辺には「いざとなれば本人はやる気満々」とのささやき声がさんざめく。閣内の宿敵だった菅氏が落ち目になるのを見て、じっとしていられないのかもしれない。長期政権を支える「屋台骨」と言われてきた面々が、一様に「心ここにあらず」では危機対応もヘチマもない。「国難の今、ポスト安倍とか政局とか言っている時ではない」という非難は正論だが、その最中も「コロナ後の自分はどうなる」との打算抜きには判断も決断も行動もしないのは、政治の業と言うべきか。 思えばコロナ政局の転機は、五輪延期の決定だった』、「長期政権を支える「屋台骨」と言われてきた面々が、一様に「心ここにあらず」」、一時の安部一極支配などは嘘のように雲散霧消してしまったようだ。
・『壊れ始めた禅譲計画  中止が回避された時、森喜朗大会組織委員会会長は周囲に「これで4選になるぞ」とささやいた。安倍首相が国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長と電話会談に臨む前、森氏は首相に「2年程度延ばしては」と促したが、首相は「1年」と明言。総裁任期を念頭に「五輪後勇退→岸田禅譲」にこだわったのだ。もし来年も開けないとなれば、そう決まった時点で任期前の退陣に追い込まれる可能性もある。森氏は「賭けに出たな」と見た。だが、給付金政策の混乱で、官邸の「ピエロ」となった岸田氏は信望を失い、禅譲計画は壊れ始めた。安倍首相は「名誉ある辞め時」を失いつつある』、追い込まれて辞任する場合には、森友・加計問題がまた復活してくるのだろうか。

第三に、5月3日付けYahooニュースがGQを転載した「黒川弘務検事長の定年延長問題、トンデモ人事の裏のウラ。──コラムニスト・小田嶋隆」を紹介しよう。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200503-00010007-gqjapan-bus_all
・『東京高検の黒川弘務検事長の定年延長をめぐる閣議決定に対して、検察OBや官僚らからも批判が噴出している。小田嶋隆は、そこに何を見るのか? 正直なところを告白するに、先月来、世間を騒がせている黒川弘務検事長の定年延長問題を、私は、見誤っていた。もう少し踏み込んだ説明をすれば、法律の専門家でもなければ、官僚人事についての「相場観」を身につけている人間でもないオダジマは、つい最近まで、安倍政権が、法改正を経ずに、閣議決定で検事長の定年を延長する挙に出たことの意味を、理解できずにいたからだ。 いや、ひどい話なのだということはわかっている。なにしろ前例のないことではあるのだし、三権分立が大切だということは、中学校の社会の時間に習って以来よく知っている。ただ、どれほどひどいのかという「程度」の問題が、実は、わかっていなかった。多方面で身勝手な横紙破りをやらかしている安倍さんと、その周辺の人間たちが、例によって、身びいきの人事を敢行したのであろうと、そう考えていた。もちろん、検事長というポストが普通の公務員とは違うことはわかっていたし、そこに手を突っ込んだことについては、「しかしまあ、どこまで調子ぶっこいているのだろうか」ぐらいに思っていた。 でも、本当のところは、やはりわかっていなかった。思うに、今回の検事長の人事は、安倍さんにとって、単に調子ぶっこいている猿山人事の一環という程度のお話ではない。 おそらく、この検事長人事は、安倍さんにとって、絶対に譲ることのできない、政治生命にかかわる一大事なのだと思う。 最初に「あれっ?」と思ったのは、産経新聞がその社説の中で、正面からこの人事を批判してみせたときだった。 「おい、産経が社説で批判するのか?」と、私はたいそう驚いた。というのも、第2次政権発足以来、産経新聞は、およそどんな局面でも安倍政権を擁護する田舎のおかあちゃんみたいな存在だったからだ。その身びいきの露骨さは、ときに滑稽なほどだった。その産経新聞が批判にまわっているのは、これはよほどのことなのではあるまいか、と。このとき、はじめて、私はこのたびの黒川人事の異常さを実感することができた』、確かにあの「産経新聞」ですら「社説で批判」したのには、私も驚かされた。
・『自民党内でも、この人事については異論が多い。検察内部でも、現役の検事正が顔出しで真正面から批判の論陣を張っている。 してみると、これは、前代未聞の、全方向的にあり得ない卓袱台返しで、身内でさえ誰一人擁護できないほど筋の通らない、クソ人事なのであろうな、と、ようやく私は理解したのだが、このときの理解もまだまだ甘かった。というのも、私は、さすがの安倍さんも、ここまで四面楚歌の状況に陥った以上、いったんは検事長の定年延長事案をひっこめて、出直すだろうと考えていたからだ。 国会答弁でも、この件に関しては、ほとんどまったくマトモな回答ができていない。人事院のお役人も、森雅子法務大臣も、支離滅裂どころか、恥さらしとしか言いようのないデタラメな答弁を繰り返している。 で、つい昨日(というのは3月9日)、その森雅子法相が、9年前の東日本大震災の折、公務を投げ出して逃げた検察官がいたことを、今回の定年延長の根拠のひとつとして掲げる、驚天動地のおとぎ話答弁をしているのを見て、ようやく私は悟った。つまり、安倍さんにとって、この人事は、どんな赤っ恥をかいても押し通さなければならない彼の生命線なのだということを、だ。 つまり、安倍さんは、ガチで自分が逮捕される近未来を予測している。そして、その事態を心底から恐れている。だからこそ、なりふりかまわず、国会答弁を踏みにじる勢いで当該の人事を貫徹しにかかっているわけだ。 ところで、安倍さんが恐れている逮捕事案(検事総長の首を無理矢理にすげ替えてまで隠蔽しようとしているできごと)とは、いったい何だろう? この腐った人事の向こう側には、どんな犯罪が隠れているのだろう。 それを、今後半年ほどの間に見極めたいと思っている。楽しみがひとつできた。(小田嶋氏の略歴はリンク先参照)』、「この腐った人事の向こう側には、どんな犯罪が隠れているのだろう」、楽しみが増えた気がする。

第四に、5月3日付け日刊ゲンダイ「【ワイド特集】コロナ焼け野原後の日本はどうなる(政治)」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/272730
・『長引く災禍、経済不安を利用した改憲への動き、強権を求める世論の危うさ  この連休中の自粛効果が表れるのが2週間後だ。新型コロナの感染拡大は、いったん収まったかに見えても、流行の第2波、第3波とズルズル続くことが予想されている。長期にわたり経済は停滞、日本経済は大不況から立ち直れなくなる――。 そういう不安から、欧米のように強制的なロックダウンを行える法整備を求める声も上がり始めた。自粛要請では強制力も罰則もないからダメというのだ。 自民党内には、憲法を改正して「緊急事態条項」を創設するべきだという意見がある。内閣に独裁的な権限を与える「緊急事態条項」は、安倍首相がもくろむ憲法改正の柱のひとつ。連休明けも感染者数が減らなければ、憲法改正の議論が一気に高まる可能性がある。 「諸外国と比べて新型コロナウイルス対策が後手後手なのは、政権が無能なせいなのに、『憲法が悪い』と言い出し、コロナ禍を憲法改正につなげようとしている。感染症対策の基本である徹底検査を行わないのは、あえて危機的な状況をつくり出しているのではないかと勘繰りたくなります。コロナに便乗して火事場ドロボー的に憲法改正をやってしまおうというのであれば言語道断。首相の邪な悲願のために、国民の命が犠牲にされるのです」(政治評論家・本澤二郎氏) 危ういのは、「危機に強いことがリーダーの資質」などと、世論の側からも強権発動を望む風潮が蔓延しつつあることだ。不安感情が強いリーダーを求め、その結果、全体主義が台頭するのは歴史の教訓でもある。 強力な権限があれば感染が確実に止まるわけではないのに、簡単に独裁を与えていいのか。コロナ禍では、国民の良識も試されている』、「新型コロナウイルス対策が後手後手なのは、政権が無能なせいなのに、『憲法が悪い』と言い出し、コロナ禍を憲法改正につなげようとしている・・・コロナに便乗して火事場ドロボー的に憲法改正をやってしまおうというのであれば言語同断」、「不安感情が強いリーダーを求め、その結果、全体主義が台頭するのは歴史の教訓でもある・・・コロナ禍では、国民の良識も試されている」、全面的に同意する。
・『次の選挙まで覚えておこう 邪な政治家、無能の政治屋  今度のコロナ禍でよく分かったのは、7年以上の長期にわたり君臨し1強を誇ってきた安倍政権が、危機を前にして無力無能だったということだ。 「武漢で原因不明の肺炎」と中国政府が発表したのは昨年12月末。年明け早々、台湾や韓国などで対応策が協議されていたのに、日本政府は「人から人への感染は低い」と危機感ゼロ。対策本部を設置したのは1月30日だった。春節の中国人観光客を大勢受け入れ、安倍は国民の命より習近平国家主席の国賓訪日を優先した。 コロナが蔓延し、市中感染で経路を追えなくなってもPCR検査を増やさず、対策は専門家会議に丸投げ。加藤厚労相はただの腹話術人形だった。東京五輪の“完全実施”にこだわり「一定程度持ちこたえている」と警戒を緩ませ、その結果、感染拡大が止まらなくなると、PCR拡大に舵を切った。 緊急事態宣言にしても、休業要請と補償はセットなのにケチる。西村コロナ担当相は「休業補償をしている国はない」とフェイク情報を流し、麻生財務相は一律現金10万円について「手を挙げた方に給付する」と上から目線。極め付きが「アベノマスク」の愚策だ。不良品だらけで納入業者が未配布分の全量回収に追い込まれた。 「有事対応は政権の見せ場。災禍のただ中で国民は政治に期待をかける。だから韓国では総選挙で与党が大勝し、ドイツではメルケル首相の評価が高まった。ところが日本は逆で、安倍政権の支持率は下がっている。危機管理で最も重要なのは、法律や平等も超越した判断と決断と実行力。リーダーが首をかけてでも責任を取る姿勢を見せられるかです。それが試されているのですが、現状、安倍政権は情けない限りです」(政治ジャーナリスト・鈴木哲夫氏) 来年10月が任期満了の衆議院は1年半以内に必ず総選挙がある。コロナ禍が終息しても、邪な政治家、無能の政治屋を絶対に忘れてはならない』、小池都知事は東京五輪の延期が決まると、一転してコロナ対策を厳しくすべきと政府を突き上げるなど、見事な変身ぶりを示して、パフォーマンス演出に余念がない。外出自粛を呼びかけるテレビCMなどはまるで公費を使った個人の選挙運動だ。こうしたいい加減な人物を、まずは7月5日の東京都知事選挙で落選させるべきと思うが、マスコミがちやほやしているなかでは現実には当選してしまうだろう。総選挙では、コロナ禍への取り組みの決定的な遅れの責任を取らせるべきだろう。
タグ:産経新聞 社説で批判 公明党 次の選挙まで覚えておこう 邪な政治家、無能の政治屋 コロナ禍では、国民の良識も試されている 日刊ゲンダイ この腐った人事の向こう側には、どんな犯罪が隠れているのだろう 安倍さんは、ガチで自分が逮捕される近未来を予測している GQ 10日前に閣議決定したばかりの今年度補正予算案を組み替えなければならない政治的失態 壊れ始めた禅譲計画 長期政権を支える「屋台骨」と言われてきた面々が、一様に「心ここにあらず」 長引く災禍、経済不安を利用した改憲への動き、強権を求める世論の危うさ 「「菅」「今井」「麻生」「二階」そして「公明党」まで……安倍政権が「コロナ対策そっちのけ」で権力闘争に明け暮れる理由=伊藤智永【週刊エコノミストOnline】」 「【ワイド特集】コロナ焼け野原後の日本はどうなる(政治)」 菅氏と首相側近の暗闘 小池都知事 新型コロナウイルス対策が後手後手なのは、政権が無能なせいなのに、『憲法が悪い』と言い出し、コロナ禍を憲法改正につなげようとしている 連立与党としての調整は、菅義偉官房長官と二階俊博自民党幹事長に丸投げ 不安感情が強いリーダーを求め、その結果、全体主義が台頭するのは歴史の教訓でもある コロナに便乗して火事場ドロボー的に憲法改正をやってしまおうというのであれば言語同断 安倍首相が覚えた疲れは、責任の重圧感より、政権内の亀裂が手に負えなくなっているという無力感の方が大きいだろう 「下駄の雪」 溝手氏への支持を切り崩して案里氏を当選させることにあったから 案里氏が、それまで連続5回当選してきた溝手氏の支持基盤を切り崩して当選するためには、克行氏が、多数の県政界の有力者に、直接、数十万円の現金を配って回ることしか方法がなかったからであり、1億5000万円もの選挙資金を自民党本部から提供された目的が 「黒川弘務検事長の定年延長問題、トンデモ人事の裏のウラ。──コラムニスト・小田嶋隆」 河井克行前法相の行動によって、公職選挙の歴史が変わる 検察VS河井前法相の戦い、立ちはだかる「新型コロナ感染リスク」 戦後初めて、前法務大臣として検察に逮捕された「最低最悪の政治家」という汚名を歴史に残すことになりかねない 克行氏らによる「多額現金買収」の目的 (その45)(河井前法相「逆転の一手」は 「選挙収支全面公開」での安倍陣営“敵中突破”、「菅」「今井」「麻生」「二階」そして「公明党」まで……安倍政権が「コロナ対策そっちのけ」で権力闘争に明け暮れる理由、黒川弘務検事長の定年延長問題 トンデモ人事の裏のウラ ──コラムニスト・小田嶋隆、【ワイド特集】コロナ焼け野原後の日本はどうなる(政治)) 河井案里氏参議院選挙出馬の経緯 閣議決定による違法な検事長定年延長で検察を支配下に収めようとしたことに対する検察組織内からの強烈な反発もあり、広島での検察捜査は、不退転の姿勢で行われている yahooニュース 「河井前法相「逆転の一手」は、「選挙収支全面公開」での安倍陣営“敵中突破”」 郷原信郎 日本の政治情勢 河井前法相にとっての「逆転の一手」 現金を供与した相手方は、元広島県議会議長・元市議会議長・自民党系の県内の首長など、それまでの参議院選挙で自民党公認の溝手氏を応援してきたと考えられる政治家だ 猪瀬東京都知事の公選法違反事件の先例
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

パンデミック(新型肺炎感染急拡大)(その11)(コロナ院内感染が止まらない日本の病院 海外と比べてわかる2つの死角、相互監視 言論私刑 社会全体が「隣組化」の恐ろしさ、繰り返される日本の失敗パターン、「集団免疫」作戦のスウェーデンに異変 死亡率がアメリカや中国の2倍超に) [国内政治]

昨日に続いて、パンデミック(新型肺炎感染急拡大)(その11)(コロナ院内感染が止まらない日本の病院 海外と比べてわかる2つの死角、相互監視 言論私刑 社会全体が「隣組化」の恐ろしさ、繰り返される日本の失敗パターン、「集団免疫」作戦のスウェーデンに異変 死亡率がアメリカや中国の2倍超に)を取上げよう。

先ずは、4月28日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した中央大学大学院戦略経営研究科教授、医師の真野俊樹氏による「コロナ院内感染が止まらない日本の病院、海外と比べてわかる2つの死角」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/235821
・『新型コロナウイルスの感染拡大で、院内感染による病院のクラスター化が相次いでいる。今後、日本の病院の院内感染対策がより一層強化されるのは間違いないだろう。医師(日本内科学会総合内科専門医)であり、かつビジネススクールで医療経営を教える筆者が、海外の病院の事例を紹介しつつ、日本の病院が改善すべき点などを解説する』、相次ぐ「院内感染による病院のクラスター化」をみると、この面から医療崩壊が進みつつあるような気さえする。
・『院内感染による病院のクラスター化が相次ぐ 米国では意外に少ない?  永寿総合病院、中野江古田病院など日本では病院がクラスターになる例が相次いでいる。いわゆる院内感染である。新型コロナウイルスは非常に感染力が強いので、こういった事態が起きることはやむを得ないのかもしれない。 しかしながら、院内感染は医療者にとっても患者にとっても非常に不幸なことであるので、何か対策がないかと考えてみた。ただ、筆者は感染症対策の専門家ではないので、海外の状況やそこから学べることをご紹介したい。 まず、感染者が多いアメリカではどうだろうか。 米国においては、院内感染に関する集計データはなかった。感染爆発(オーバーシュート)を起こしているニューヨーク州においては、医療機器や防護服などが足りないという話もあり、状況があまりに違うのでニューヨーク州以外に注目してみた。 医療従事者についての報告があったので、まず、少し古いが4月上旬の米国の状況を報告しておきたい。4月9日、「参考文献1」によれば、全米では5512人の新規感染者がいて、うち21%にあたる1137人が、4月8日にはカリフォルニア州では299人の医療従事者が感染している。そのほか、オンラインメディア「バズフィード」(BuzzFeed News)によれば、アラバマ州(393人)、アーカンソー州(158人)、アイダホ州(143人)、メイン州(97人)、ニューハンプシャー州(241人)、オクラホマ州(229人)、オレゴン州(153人)、ペンシルベニア州(850人)、ロードアイランド州(257人)、ウェストバージニア州(76人)となっている』、「米国においては、院内感染に関する集計データはなかった」、それほど問題視されてない可能性がありそうだ。
・『病院職員は院内感染よりも市中感染の方が多い?  ただ、日本ほど追跡調査をしていない米国においては、これらの医療従事者の感染が医療機関でおきたのか、市中で起きたのかははっきりしない。むしろ「参考文献2」によれば、UCデイビスメディカルセンター(UC Davis Medical Center)のCEOは、「職員の感染は、院内感染より市中感染が多いのではないか」と主張している。 これは、“訴訟社会”である米国では、イタリアのように1万5000人近くも医療従事者が感染し、それが院内の患者にも広がってしまえば、病院側の責任を強く問われることになるからかもしれない。 逆に言えば、であるからこそ、後述するように“厳重な体制”をとっているといえる。 なお、上述したような理由からか、米国では院内感染についてはあまりニュースになっていないが、「参考文献3」のように、むしろ、高齢者施設ではクラスター化している例の報告は多く、既に全米の死者の5分の1を占める約7000人が死亡したという。 米国流の医療を取り入れている香港はどうだろう。「参考文献4」では、6週間のリサーチで香港の43の病院、413人の医療従事者において感染はゼロであった。これは「SARSの経験が生きている」という。 もちろん、防護服や専用マスクなどの入手の有無の問題もあろう。しかし、ほかに、院内感染を起こしにくくする方法はないのだろうか』、確かに、「“訴訟社会”である米国では・・・病院側の責任を強く問われることになる」ので、「“厳重な体制”をとっている」のだろう。
・『日本の病院はオープンすぎる  病院マネジメントの視点で、2つポイントがある。 1つは日本の病院がオープンすぎることである。これは平時においてはお見舞いも含めオープンな方が良いと思われるが、院内で盗難などの事件が起きることもある。 例えば、写真に示すようにシンガポールの病院では、外部の人の出入りは厳しく管理されている。 米国などの病院では外部の人の出入り管理に加えて、院内に出入りする企業の従業員に院内感染対策の教育を行い、さらには認証を行っている例も多い。認証制度は2000年くらいから始まり、入館にあたって、医療機関が推奨契約している認証会社の証明が必要になる。 現在、国内外の病院は入館を規制しているが、今後、患者家族も含めてどこまで徹底するのかという課題がある』、確かに「日本の病院はオープンすぎる」のは改善の必要がある。
・『日本の病院は感染症対策の人員が少ない  もう1つは、病院内で感染症対策を行う人員の問題である。米国では、その医師(ICD)や看護師(ICN)の数が日本に比べて多い。100人の入院患者に対し、平均1.25人の感染管理担当者を配置している。 一方、日本では約7300の一般病院(89万床)に対し、感染管理ICD/ICN数は約4460人(ICD1564人/ICN2900人。うち、病院勤務者2755人)、単純に割れば一病院平均で0.6人、病床数平均では0.5人/100床しかいない。 これでは、感染管理が行き届かないし、教育も不十分になる。日本の病院で院内感染が起こる可能性は、米国より高いのではないだろうか。 この記事は、日本の病院の院内感染対策を批判することを目的で書いているわけではない。ここで挙げた2つの対処法についても、いきなり今日から実行できるというものでもないだろう。 しかし、他国ではよりシステマチック的に院内感染予防が行われており、見習うべき点は、素直に見習えばいいと思うのである』、「感染症対策の人員」もこれを機に教育などで増やしていくべきだ。

次に、4月30日付け日刊ゲンダイ「相互監視、言論私刑 社会全体が「隣組化」の恐ろしさ」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/272597
・『緊急事態宣言の期限である5月6日まで1週間だが、連休明けに解除できるとは、もはや誰も思っていない。新型コロナ感染拡大の抑え込みは、まったく先の展望が見えないからだ。安倍首相肝いりの「アベノマスク2枚」でさえ、まだ届かない国民が大多数なのである。政府が無能だと、自粛生活が長期化することを覚悟しておかなければならない。そこで気になるのは、浮足立つ国民の間で、相互監視の風潮が目立ってきていることだ。 全国知事会は29日、国への緊急提言を議論するテレビ会議を開催。緊急事態宣言の一律延長を求めると同時に、休業指示に応じない事業者を対象に、罰則規定を設ける法改正などで対策を強化することも要望した。新型コロナ特措法に基づき、知事は休業要請に応じない事業者の店名公表、指示ができるが、罰則はない。休業要請に応じない一部の店、とりわけパチンコ店には批判が集中している。営業を続けているパチンコ店を公表する自治体も出てきた。 問題は、自粛要請に応じない場合に厳しい罰則を求める声が、市民の間からも上がっていることだ。営業中のパチンコ店や飲食店、さらには他県ナンバーの車に自粛を迫る張り紙をする人々も出てきた。営業を続ける店に対し、脅迫めいた言動もあるという。 そういう人々を指して、「自粛警察」なんて言葉も生まれているが、そうやって彼らが“取り締まり”に出歩くことは問題ないのか。正義だから許されるとでもいうのだろうか』、「自粛警察」までが現れてくるのは、明らかに行き過ぎだが、マスコミもこれを煽っているようだ。
・『抜け駆けを許さない処罰感情  「休業補償がない自粛要請では、従業員に支払う給料や事業継続のために営業を続けざるを得ない店が出てくるのは当然です。憲法29条に定められた財産権でも、『私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる』とあります。感染症対策であっても、それなりの補償がなければ、営業自粛を強制することは難しい。基本的人権を尊重するのが成熟した民主主義社会だからです。自分は自粛要請に従って苦しい生活を送っているのに、楽しそうにしている人の抜け駆けが許せないという処罰感情から、私権制限を市民の側が求める風潮は危険極まりない。関東大震災で一般市民による自警団が朝鮮人虐殺に走ったのと同じようなことが起こりかねません」(立正大名誉教授の金子勝氏=憲法) 休業補償どころか、パチンコ業種は政府系金融機関、信用保証協会の融資や保証の対象からも除外されていた。24日に経産省がようやく、セーフティーネット保証の適用対象にしたが、適用は5月上旬からだ。店を今閉じたら、すぐに潰れるホールも出てくる。 これはキャバクラや性風俗店も同じで、当初は子どもの休校に伴う休業に対する保護者への支援金の支給対象からも外されていた。 自身も政府系金融の無担保・無利子融資を断られたという精神科医の和田秀樹氏はこう言った。 「自粛要請に従わないパチンコ店を公表するなんて、権力者のパフォーマンスでしかない。やむにやまれず営業を続けている店を攻撃する前に、潰れそうな店を救おうとしない政府に文句を言うべきです。仕事をしなければ明日からの生活に行き詰まる人がいるということが、政治家や官僚、学者など、経済的な痛みを感じたことがないような人たちには想像もできないのでしょう。自分たちが普段行かないような店は、潰れてくれて構わないと言っているようにしか思えません」 ミュージシャンの星野源の動画に便乗した安倍は、<友達と会えない。飲み会もできない>というメッセージで、自粛生活を余儀なくされた国民に寄り添うフリをしたが、そういう次元の話ではない。庶民は生活がかかっている。お仲間との宴会ができないことを嘆いているだけの首相とは違うのだ』、「抜け駆けを許さない処罰感情」もマスコミの興味本位の報道が煽っているようだ。
・『不安が相互監視を強化しすべては自己責任にされる  補償を棚上げしたままの自粛要請では、経済活動を完全に止められない。そうなると、自粛による感染拡大の防止効果も怪しくなる。それで国民の不安はいや増し、自粛警察が跋扈して、リンチのような社会制裁が横行する。 国民の不安にツケ込み、同調圧力を頼みに、特措法に罰則規定を盛り込む法改正をドサクサでやろうとする倒錯。それを支持する社会は思考停止に陥っているというほかない。 29日の衆院予算委で安倍は「今の法制で十分に収束が見込まれないのであれば、新たな対応も考えなければならない」と表明。西村コロナ担当相も27日の記者会見で、パチンコ店などが休業指示に従わない事例が多発するようであれば、「罰則を伴うより強い強制力のある仕組みの導入など法整備について検討を行わざるを得なくなる」と言っていた。 「現行の特措法では、休業指示と店名公表までしかできない。仮に罰則を科すのであれば、営業の自粛要請や指示にとどまらず、『禁止』の規定を設けることになるでしょう。そうなると、補償なしで営業の自由を奪う禁止に踏み込んでいいのかという議論になる。政府は補償はせず、あくまで経済対策という立場ですが、自粛要請に従わない不届き者を取り締まってほしいという声が市民から上がっている現状では、罰則規定が世論の支持を得られる可能性も高いと思います。ただ、全国的にパチンコ店がクラスター化した例はないのに、罰則を設けてパチンコを規制する必要性が本当にあるのかどうか。法改正にはエビデンスが必要です」(弁護士・小口幸人氏)』、「法改正にはエビデンスが必要」との冷静な判断を忘れてはならない。
・『密告社会は統治者にとって安上がり  ロックダウンに踏み切った欧米諸国は、たとえ休業補償はなくても生活保障がある。それも短期間で振り込まれる。だから黙って自粛生活を続けられるし、罰則も受け入れられる。 その点、日本は曖昧だ。そもそも「3密」を避け、他者との接触を8割削減するのは、これ以上の感染拡大を防ぐためだったはずだ。それが、8割削減が目的化してきているのではないか。だから、自粛しない人を責める。非難を恐れて、散歩に出るのすらためらってしまう。 自粛という曖昧な要請が、市民間の相互監視を喚起し肥大化させ、「あの店は営業している」と通報する密告社会が急速に形成された。戦時下の「隣組」の復活である。 隣組は、大政翼賛会の末端組織として、官主導で町内会の内部に形成された。<とんとん とんからりと隣組>の歌もあるが、市民による相互監視社会は統治者にとって安上がりなのだ。自ら手を下す必要がないからである。ナチスの秘密警察ゲシュタポによる逮捕者も、ほとんどが密告によるものだった。 あくまで要請に過ぎない休業に盲目的に従う法的義務はないのに、営業を続ける店が攻撃対象になり、国民の分断を生む。そういう同調圧力を利用しようと虎視眈々の権力。こういう社会情勢の方が非常事態だ。敵はコロナだけではなく、狂った社会が2次被害、3次被害を引き起こしかねない。 「営業自粛への監視を厳しくする一方では、中小企業は立ち行かなくなり、解雇者も爆発的に増える。経済的な理由によって、コロナ感染による死者を自殺者が上回る可能性があります。しかし、政府は新型コロナの流行さえ収束すれば、体力のない中小企業がどれだけ潰れようと、長引く外出自粛で多くの国民が健康を損ねようと構わないのでしょう。その結果としての自殺もうつ病も、アルコール依存症も自己責任にされてしまうのです」(和田秀樹氏=前出) 国民生活は疲弊し、それでも政府は何の補償もせず、勝手に自粛しただけだと突き放す。日本全体の「隣組化」は、政府の無責任体制を担保する装置でしかない。絶対に責任を取ろうとしない安倍だけが高笑いだ』、「密告社会が急速に形成された。戦時下の「隣組」の復活である」、困った現象だ。「営業自粛への監視を厳しくする一方では、中小企業は立ち行かなくなり、解雇者も爆発的に増える。経済的な理由によって、コロナ感染による死者を自殺者が上回る可能性があります」との「和田秀樹氏」の指摘は的確だ。「コロナ感染」問題だけでなく、経済全体を見渡した上での判断が求められている。

第三に、5月2日付けNewsweek日本版が掲載した東京大学社会科学研究所教授の丸川知雄氏による「繰り返される日本の失敗パターン」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/marukawa/2020/05/post-62_1.php
・『<緊急事態宣言の1カ月延長が事実上決まった。日本で新型コロナウイルスへの急激な感染拡大が起きたのは中国より2カ月、韓国より1カ月遅れで、その教訓を汲んで準備を整える時間があったはずなのに、なぜ日本の対応は失敗したのか> 5月1日現在、日本の新型コロナウイルスへの感染者数は1万4119人、死者は435人。比較されることの多い韓国と比べて、感染者数、死者数、致死率ともに日本が上回ってしまった(図1)。しかも韓国が1日の新規感染者数が1桁台になり、すでに流行をほぼ抑え込んでいるの対して、日本は毎日数百人ずつ感染者数が増えつづけている。さらに気がかりなのが致死率(=死者数/感染者数)が急ピッチで上昇していることである。図1で韓国の線をみればわかるように、感染者数の増加ペースが下がるとき、致死率はむしろどんどん上昇する。もちろん一人でも多くの命が救われることを願ってやまないが、残念ながら日本の致死率が4%を超える可能性は高い。 日本はこれでも欧米に比べればましという言い方もできようが、台湾(感染者429人、死者6人)や韓国に比べるとだいぶ見劣りする。「人口当たりの感染者数、死者数でみれば韓国より少ない」と言っている人もいるが、それもいずれ逆転しそうだし、人口当たりでみれば、日本は現時点ですでに中国の感染者数、死者数を上回っている。また、日本の致死率は湖北省以外の中国(0.8%)より大幅に高い。これではどう見ても東アジアのなかでは「負け組」である。 日本で急激な感染拡大が起きたのは中国より2か月、韓国より1か月遅れであり、その経験と教訓を汲んで準備を整える時間があったにもかかわらず、なぜこのような失敗に至ったのか。それについてはコロナ禍が終わった時点でしっかりと検証されることを望むが、これまで日本政府がやってきたことを眺めると旧日本軍の失敗パターンを繰り返している気がしてならない。戸部良一・寺本義也・鎌田伸一・杉之尾孝生・村井友秀・野中郁次郎の共著『失敗の本質――日本軍の組織論的研究』には、コロナ禍に直面した日本政府の行動を読み解くヒントがちりばめられている』、日本のマスコミは安部政権に忖度して、日本の「失敗」を無視しているが、やはり冷静にみて、批判すべきは批判すべきだ。
・『1.あいまいな戦略  いま日本政府とマスコミを挙げて市民に呼びかけられている戦略は「人との接触を8割削減」することである。この戦略は理論疫学のモデルから出てきたものであるが、政府やマスコミが発するメッセージとしてはあいまいである。なぜならメッセージを受け取る側に多義的な解釈の余地を残すからだ。 たとえば、私自身の例でいうと、ふだん至近距離で他人と接触する機会の大半は往復の電車通勤でのものなので、電車通勤をやめてクルマで出勤すれば他人との接触の8割削減が実現できるのではないかと思ってしまう。もちろん私はそのような解釈をして行動しているわけではないが、「人との接触を8割削減」という戦略にはそうした解釈の余地を残してしまう。 安倍首相は4月22日に発したメッセージで「都市部では(現状では)人の流れが平日は6割減、休日は7割減で、接触機会の8割削減にはさらなる努力が必要です」と述べた。この発言には「人の流れ」と「接触機会」との混同があり、最高指揮官の安倍首相でさえ戦略をクリアに理解していないことがわかる。 「人の流れ」と「接触機会」が異なることは、2人で飲み会をやる場合と10人でやる場合とを考えてみればよい。10人で飲み会をやれば2人の場合より外出する人の数は5倍に増えるが、接触機会は45倍にもなる。なぜなら、2人ならば接触機会は1回だが、10人の飲み会となると、自分自身が9人と接するだけでなく、他の9人も相互に接するからである。これは10人から2人を選び出す「組合せ」の問題であり、その答えは45回である。外出する人数が何千、何万となると、nC2≒n2乗/2となるので、接触機会を8割削減、つまり5分の1にするには、人の流れを√5分の1に、すなわち55%ほど削減すればいいことになる。もし外出人数が7割削減されているのであれば、人と人との接触機会は91%も減っている計算になる。 私は何も外出人数を55%削減すればいいと主張したいわけではない。「接触機会」という概念は首相でさえ正しく理解していないし、「人の流れ」とは異なってデータで検証することも簡単ではないので、理論疫学の計算で使うにとどめ、政府が掲げる戦略とすべきではないといいたいのである。政府が国民にメッセージとして発する戦略は誰でも理解しやすく実行可能なもの、すなわち「外出は一日一回、生活必需品の買い物のみに限定しましょう」「散歩やジョギングのため公園に行ってもいいですが、他人との距離は2メートル以上保つようにしましょう」「年老いた両親に会いに行くのはやめましょう」「オフィスではテレワークを推進し、出勤人数は7割以上削減しましょう」といったメッセージで十分である』、確かに「人との接触を8割削減」というのは分かり難い。「安部首相」自身が「「人の流れ」と「接触機会」との混同」しているのも問題だ。もっと例示されたような行動につながる具体的な目標にすべきだろう。
・『2.役に立たない兵器  太平洋戦争中の旧日本軍の秘密兵器に「風船爆弾」というものがあった。和紙で作った直径10メートルの気球に焼夷弾をつけてアメリカに向けて飛ばして攻撃するもので、約9300個放たれたうち、実際にアメリカに到達して爆発したものはわずか28個、6人にケガを負わせ、小さな山火事を2件起こすという「戦果」を挙げるにとどまった。 安倍首相の肝いりで全国5000万世帯に一家に2枚ずつ配布が始まった通称「アベノマスク」も役に立たないという点では風船爆弾とどっこいどっこいのようである。 先に配布された妊婦用の布マスクの場合、5月1日までに4万6934枚に黄ばみやカビの疑いなどの不良が見つかり、すでに発送した47万枚を国に返送させて検品しなおすという(『朝日新聞』2020年5月1日)。全戸配布される「アベノマスク」についても不良品が続出したため、未配布分を業者が回収して検品しなおすという。 不良率が1割というのは、これまで中国から研修で来日する企業家たちに「日本企業はPPM(百万分の1)のオーダーで不良率の低減を目指しています」と説明し続けてきた私にとっては、まったく目を覆いたくなるほどの惨状である。加えて、致命的と思われるのは、アベノマスクを使って粒子がどれだけ漏れるかを検証してみたら漏れ率が100%だったという事実である(『AERAdot』2020年4月28日)。アベノマスクは国民を安心させるために配るのだと首相の側近たちは言っているらしいが、決して安心してはいけない代物なのである。 アベノマスクに大量の不良品が混じっているうえ、そもそも感染予防には役に立たないことが明らかになった以上、回収して検品しなおして再配布するなどという無駄なことは直ちにやめ、未配布分は廃棄すべきである。すでに配布してしまった分については「ウイルス遮断の効果はありませんが、咳エチケットとして着用する場合には煮沸消毒したうえでお使いください」と政府から市民に伝えるべきだ。そうしないとアベノマスクが健康被害を引き起こしかねない。そしてこの無益な物に膨大な国費を費やしたことに対して、責任者に応分の処分を下すべきである』、「アベノマスク」については、不良品もさることながら、「漏れ率が100%」とは驚いた。「責任者に応分の処分を下すべき」、同感だ。
・『3.科学よりも情緒に引きずられた入国拒否  新型コロナウイルスの特徴は、感染者が無症状のまま他人に感染させてしまうことである。そこで、感染している蓋然性の高い人たちの動きを制限することで感染拡大を防止する措置がとられてきた。すなわち、中国の武漢で感染爆発が起きたときには武漢が封鎖され、その後も感染爆発が起きている国からの入国を制限することが世界中の国によって行われている。WHOは当初国境を遮断する措置に反対したが、結果的には出入国の制限はかなり効果的だったと思われる。 日本政府も感染爆発が起きた国や地域からの入国を拒否する措置を立て続けにとってきた。ただ、そのタイミングを見ると、しばしば入国を拒否するタイミングが遅すぎ、それが3月末以来の急激な感染拡大を招いたとみられる。 日本政府はまず1月31日に中国湖北省に滞在歴のある外国人の入国を拒否すると発表した。同日の中国の新規感染確認数は2102人。武漢の都市封鎖が行われたのが1月23日だからその直後に湖北省から入国拒否をしてもよかったが、8日間も遅れてしまった。習近平国家主席の来日を控えての遠慮があったのではないかと疑われる。 ただ、日本側の遮断は遅れたものの、中国が自発的に武漢の封鎖や団体旅行の停止などの措置をただちにとったため、この遅れの実害はほとんど出ていないようである。国立感染症研究所の最近の研究によると、1月に武漢から日本に入ってきたウイルスはその後大きな広がりを見せることなく3月には終息したらしい(『朝日新聞』2020年4月28日)。 2月16日に日本政府は中国浙江省も入国拒否の対象に加えた。しかし浙江省での感染拡大は2月13日までに終わっていたのでやはりタイミングが遅すぎた。ただ、この遅れもあまり大きな影響はもたらさなかった。 2月下旬には韓国で大邱を中心に感染爆発が起きた。日本政府は2月26日に大邱および慶尚北道清道郡からの入国を拒否すると発表した。この日の韓国の新規感染確認数は214人で、図1に見るようにその後の1週間に感染爆発が起きた。つまり韓国に対しては感染の上りはなを捉える絶妙のタイミングで入国拒否が行われたのである。 3月に入るとイタリアで感染爆発が起きた。日本政府は3月10日にイタリアのヴェネト州など5州からの入国を拒否すると発表した。しかし、この日のイタリアの新規感染確認数はすでに1797人。韓国に対するのと同様のタイミングを捉えるためには、これよりも10日前にイタリアに対して入国拒否を実施すべきだった。さらに3月半ば以降はアメリカでの感染がものすごいことになってしまったが、日本政府がアメリカからの入国拒否を発表したのはようやく4月1日である。その日のアメリカの新規感染確認数は2万2559人であり、あまりに遅すぎた。 前述の感染症研究所の研究によれば、日本で3月末以降感染が拡大しているウイルスは欧州のウイルスと遺伝子型が似ているという。つまり、日本政府は韓国にだけは果断に入国拒否したが、イタリアなど欧米各国に対しては情緒に引きずられて入国を遮断するタイミングを逸し、そのためにウイルスの流入を招いてしまったのである』、「日本政府は韓国にだけは果断に入国拒否したが、イタリアなど欧米各国に対しては情緒に引きずられて入国を遮断するタイミングを逸し、そのためにウイルスの流入を招いてしまった」、そうした遅れ発生の要因を今後、徹底的に検証すべきだ。
・『4.厚生労働省による統計操作  太平洋戦争で日本の敗色が濃くなっていった時、大本営が国民に対して戦況を歪曲して伝えていたことはよく知られている。今日の日本政府が戦時中の大本営並みに情報を歪めているということはもちろんない。だが、厚生労働省は日本の患者数や死者数を意図的に少なく見せかけようと小細工を弄しており、不信感を抱かずにはいられない。 例えば、ダイヤモンド・プリンセス号(DP号)の扱いが挙げられる。2月下旬の時点では、日本の感染確認数の8割がDP号の乗員・乗客だった。その時にはまだ東京オリンピックの延期は決まっておらず、厚生労働省はDP号での感染数を「日本」に含めないことによって日本の感染者数を少なく見せようとした。 厚生労働省はWHOが毎日発表している世界の感染状況のレポートにおいてもDP号を日本に含めず、別立てで発表するよう求めたようである。そのため、WHOのレポートでも2月下旬から今日に至るまでDP号の患者数・死者数はずっと日本に含まれず、別立てで発表されている。 その後も世界のあちこちでクルーズ船における感染拡大が起きたが、クルーズ船の乗員・乗客のなかの感染者数がWHOのレポートで別立てになっているのは後にも先にもDP号だけである。つまり、クルーズ船を自国の統計から除外して自国の数字を小さく見せかけるという操作を行ったのは日本だけだということがWHOのレポートを通じて日々世界に向けて発信される、という大変恥ずかしいことになっている。 私が気づいた厚生労働省によるもう一つの統計操作は新型肺炎の死者数に関するものである。図2は4月に入ってからの日本と韓国の死者数の推移を示している。注目していただきたいのは、4月10日まではNHKが都道府県から情報を集めて発表する死者数と厚生労働省が発表する死者数とが一致していたのが、4月11日から21日まで両者の乖離が次第に大きくなっていったことである。この時何が起こっていたのかというと、厚生労働省のホームページによれば、「都道府県から公表された死亡者数の一部については個々の陽性者との突合作業中のため、計上するに至っていない」とのことである。 しかし、新型コロナウイルスの強い感染性を考えると、毎日発表される統計に何よりも求められるのは速報性である。統計が遅ければ、緊急事態宣言を出すタイミングが遅れるなどさまざまな問題が起きる。統計の正確性を高めるための「突合作業」はもちろん必要なことではあろうが、それは確認作業が終わったら統計を修正すればいいことで、確認できていない死者数を計上しないというのでは速報性を大きく損なってしまう。 緊急事態宣言が出たこの重要局面で厚生労働省はいったいなぜ「突合作業」に時間をかける愚を犯したのか。その理由は日本の死者数のグラフに韓国の死者数を重ねるとなんとなく想像できる(図2)。この時期には、日本の死者数が韓国の死者数に迫っていたのだ。おそらく厚生労働省は日本の死者数が韓国を超えるのを避けたかったのである。しかし、都道府県が発表する死者数を隠すわけにもいかないので、「突合作業」に時間をかけることによって国全体の死者数を見かけ上少なくした。そしてこの数字はWHOにもそのまま報告されたのでWHOのレポートでも日本の死者数はまだ韓国よりだいぶ少ないように報告されていた。 しかし、4月21日についにNHKが韓国超えの死者数を発表してしまった。厚生労働省もついに観念し、翌日には統計上の死者数を一気に91名も増やした。 これ以外にも、「クラスター潰し」という当初はうまくいっていた感染拡大防止の戦略に固執し、感染の急拡大という次の局面に対応する戦略が準備されていなかったなど、旧日本軍の失敗パターンを想起させる事例はまだまだある。ただし戦前との重要な違いは、現在ではこうして日本政府の失敗を批判する言論の自由があることである。もっとも、安倍首相と親しいある評論家が、厚生労働省の戦略に批判的なテレビ番組に対して電波使用を停止すべきだなどと言い出した。仮にそんなことになれば、日本政府の失敗を止めるものはもう何もなくなってしまう』、「クルーズ船を自国の統計から除外して自国の数字を小さく見せかけるという操作を行ったのは日本だけだということがWHOのレポートを通じて日々世界に向けて発信される、という大変恥ずかしいことになっている」、恥ずかしい限りだ。「新型肺炎の死者数・・・NHKが都道府県から情報を集めて発表する死者数と厚生労働省が発表する死者数」の10日間の「不一致」も、厚生労働省がここまで操作するのかと驚かされた。「安倍首相と親しいある評論家が、厚生労働省の戦略に批判的なテレビ番組に対して電波使用を停止すべきだなどと言い出した」、初めて知ったが、とんでもない暴言だ。

第四に、5月1日付けNewsweek日本版「「集団免疫」作戦のスウェーデンに異変、死亡率がアメリカや中国の2倍超に」を紹介しよう。
https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2020/05/post-93307_1.php
・『<より多くの人をウイルスにさらすことで集団免疫を獲得する、というスウェーデンだけの「人体実験」には国内から反対も出始めている> ロックダウンに頼らない独特の新型コロナウイルス対策で知られるスウェーデンで、感染者が増え続けている。しかも米ジョンズ・ホプキンズ大学の集計によれば、死亡率は4月30日時点で12%超。これは、感染者が1000人を超える国の中で6番目に高い割合で、現在の感染拡大の中心地で死者数も最多のアメリカ(約5.8%)、ウイルスの発生源とされる武漢市がある中国(約5.5%)と比べても2倍以上の高さだ。 新型コロナウイルスの感染拡大を抑える対策としては、北欧諸国も含むヨーロッパの多くの国が全国的な封鎖措置を取り、厳しい移動規制を敷いている。こうしたなか、スウェーデンは全国的な移動規制や外出制限をしないという独自路線を貫いており、ストックホルムの通りの人でもカフェの客入りも一見、普段通りだ。その「緩い」対策は、世界的にも論議を呼んできた。 ドナルド・トランプ米大統領は4月30日朝、公式アカウントにツイートを投稿。この中で「封鎖措置を取らなかったスウェーデンは、その決定の手痛い代償を払っている」と指摘。「同国では30日の時点で、死者数が2462人にのぼっている。近隣のノルウェー(207人)、フィンランド(206人)やデンマーク(443人)よりもずっと多い。アメリカは正しい決断を下したのだ!」と主張した』、思い切った「実験」だが、「トランプ米大統領」からまで揶揄されるとは・・・。
・『「集団免疫」戦略の効果は  スウェーデンはこれまでに2万1000人近くが新型コロナウイルスに感染したと報告しており、このうち2500人近くが死亡している。感染者の死亡率はノルウェー(約2.6%)の6倍近く、同じ北欧のフィンランド(約4.2%)やデンマーク(約4.9%)と比べても3倍近くにのぼる。かつて中国以外で最も高かったイランの感染者死亡率(約6.3%)も、スウェーデンの半分ぐらいだ。感染者数を見ても、スウェーデンの感染者数はデンマークの2倍以上、ノルウェーの3倍近くで、フィンランドの4倍以上に達している。 感染者の回復状況も思わしくなさそうだ。スウェーデンは4月に何度か感染者の回復を報告しており、最も多かった25日には一気に455人が回復したと発表しているが、それ以外の報告はない。その一方で、感染拡大が始まった3月上旬から、新たな新規の感染者の数は増え続けており、同国の公衆衛生当局によれば4月29日には新たに681人の感染が確認された。 新型コロナウイルスの感染拡大に対するスウェーデン独自の対策は、ウイルスにさらされる人の数を増やすことで「集団免疫」を形成し、感染拡大の第2波を防ぐという作戦の一環だとされている。 スウェーデン公衆衛生局の疫学者であるアンダース・テグネルは4月下旬にBBCラジオの番組に出演し、「我が国の死者のうち少なくとも半数は、高齢者施設の中で集団感染した人々だ。封鎖をすれば感染拡大を阻止できる、という考え方は理解しがたい」と主張。スウェーデンの方法は「ある意味で功を奏している。私たちの医療システムが崩壊に追い込まれていないことがその証拠だ」と述べた。 テグネルは4月21日、米CNBCの番組にも出演。スウェーデンの首都ストックホルムの住民のうち、最大20%が新型コロナウイルスに感染したことがあると述べ、「ストックホルムの人口の15~20%が既に免疫を獲得していると確信している」と主張。「これは完全な集団免疫ではないが、ウイルスの再増殖を抑制し、感染の(第2波が訪れる)スピードを抑える効果はあるだろう」と述べた。 ルンド大学(スウェーデン)のピーター・ニルソン教授(内科医学・感染学)は4月下旬、本誌に次のように語った。「個人的には、必要であれば(そして地元の政府や議会でそれを可能にする法律が可決されれば)感染者の特に多い地域を封鎖するのもひとつの選択肢だと考えている。だが我々は、まだその段階には達していないと思う。医療部門には大きなストレスがかかっているが、手一杯の状態ではない。まだ余力があり、ストックホルムにある臨時病院もまだ使っていない」 ニルソンはさらに「ストックホルムの状況はまだ改善には向かっていないが、安定が続いている」とも指摘。またスウェーデン当局は、市民にはソーシャル・ディスタンシング(社会的距離の確保)を推奨しており、感染の症状が出たら自宅にとどまるよう勧告していると述べた』、「死者のうち少なくとも半数は、高齢者施設の中で集団感染した人々」、「医療部門には大きなストレスがかかっているが、手一杯の状態ではない」、医療崩壊には至ってないようだが、「高齢者施設の中で集団感染」はやはり問題なのではなかろうか。
・『学者たちは「今すぐ首都封鎖を」  スウェーデンではソーシャル・ディスタンシングが守られなかった場合(たとえば店の中に一定数を超える客を入れたなど)、当局がレストランに閉鎖を命じる可能性があり、50人以上の集会は禁止されているとニルソンは説明し、さらにこう続けた。「経済を守り、可能な限り店舗閉鎖や従業員の解雇を回避することも重要だ。そうしなければ、ウイルスのパンデミック(世界的な大流行)がもたらす二次的なダメージによって多くの人が死ぬことになるか、医療に必要なリソースが減ってしまう可能性がある」 異例の対策には、国内の一部専門家から批判の声も上がっている。カロリンスカ研究所のセシリア・セーデルベリ・ナウクレル教授(微生物病因)もそのひとりだ。 彼女をはじめとする2300人近い学者たちは3月末、政府宛の公開書簡に署名。医療システムを守るために、もっと厳しい対策を導入するよう求めた。「感染があまりに速いペースで拡大していることが心配だ」と、彼女は今週ラジオ番組の中で語り、感染者の多い地域(イタリアのアルプスやイラン)から帰国した市民が最初にウイルスを国内に持ち込んだ時の、政府の対応が遅すぎたと批判した。 彼女はさらに4月に入ってから、ロイター通信にこう語っている。「今すぐストックホルムを封鎖する以外に選択肢はない。国が完全な混乱状態に陥ることがないように、状況をコントロールすることが必要だ。外出制限をしないという方法は、これまで誰も試していない。それなのになぜ、国民の同意なしに、スウェーデンが初めてその方法を試さなければならないのか」 スウェーデンでは、高校や大学は閉鎖されてオンライン授業になっているが、16歳未満の子どもたちは今も学校に通っている。レストランやバー、カフェやナイトクラブも着席スタイルのサービスは許されており、買い物は普段どおりにできる。 新型コロナウイルスは4月30日時点で世界の少なくとも186カ国・地域に広まっており、感染者は320万人を超えている。感染後に回復した人は99万2500人を上回り、死者数は22万8700人以上にのぼっている』、「スウェーデン」の「「集団免疫」戦略の効果」は、最終的にはパンデミックが完全に収束してからでないと評価できないが、「なぜ、国民の同意なしに、スウェーデンが初めてその方法を試さなければならないのか」、との批判は的確だ。
タグ:パンデミック 「「集団免疫」作戦のスウェーデンに異変、死亡率がアメリカや中国の2倍超に」 2.役に立たない兵器 トランプ米大統領 「封鎖措置を取らなかったスウェーデンは、その決定の手痛い代償を払っている」 4.厚生労働省による統計操作 スウェーデン独自の対策は、ウイルスにさらされる人の数を増やすことで「集団免疫」を形成し、感染拡大の第2波を防ぐという作戦の一環 「人の流れ」と「接触機会」との混同があり、最高指揮官の安倍首相でさえ戦略をクリアに理解していない 不良品が続出 責任者に応分の処分を下すべき 新型肺炎の死者数 3.科学よりも情緒に引きずられた入国拒否 「集団免疫」戦略の効果は 緊急事態宣言の1カ月延長が事実上決まった。日本で新型コロナウイルスへの急激な感染拡大が起きたのは中国より2カ月、韓国より1カ月遅れで、その教訓を汲んで準備を整える時間があったはずなのに、なぜ日本の対応は失敗したのか 「繰り返される日本の失敗パターン」 なぜ、国民の同意なしに、スウェーデンが初めてその方法を試さなければならないのか より多くの人をウイルスにさらすことで集団免疫を獲得する、というスウェーデンだけの「人体実験」には国内から反対も出始めている 4月11日から21日まで両者の乖離が次第に大きく 全国的な移動規制や外出制限をしないという独自路線 「人との接触を8割削減」 学者たちは「今すぐ首都封鎖を」 漏れ率が100% NHKが都道府県から情報を集めて発表する死者数と厚生労働省が発表する死者数 アベノマスク 安倍首相 旧日本軍の失敗パターンを繰り返している気がしてならない 1.あいまいな戦略 日本政府は韓国にだけは果断に入国拒否したが、イタリアなど欧米各国に対しては情緒に引きずられて入国を遮断するタイミングを逸し、そのためにウイルスの流入を招いてしまった 安倍首相と親しいある評論家が、厚生労働省の戦略に批判的なテレビ番組に対して電波使用を停止すべきだなどと言い出した クルーズ船を自国の統計から除外して自国の数字を小さく見せかけるという操作を行ったのは日本だけだということがWHOのレポートを通じて日々世界に向けて発信される、という大変恥ずかしいことになっている 我が国の死者のうち少なくとも半数は、高齢者施設の中で集団感染した人々 丸川知雄 日本の病院は感染症対策の人員が少ない 「相互監視、言論私刑 社会全体が「隣組化」の恐ろしさ」 ダイヤモンド・オンライン 病院側の責任を強く問われることになる 和田秀樹氏 “厳重な体制”をとっている 「自粛警察」 不安が相互監視を強化しすべては自己責任にされる 密告社会は統治者にとって安上がり 永寿総合病院 真野俊樹 マスコミの興味本位の報道が煽っている 院内感染による病院のクラスター化が相次ぐ 米国では意外に少ない? 米国においては、院内感染に関する集計データはなかった 抜け駆けを許さない処罰感情 (その11)(コロナ院内感染が止まらない日本の病院 海外と比べてわかる2つの死角、相互監視 言論私刑 社会全体が「隣組化」の恐ろしさ、繰り返される日本の失敗パターン、「集団免疫」作戦のスウェーデンに異変 死亡率がアメリカや中国の2倍超に) 院内感染による病院のクラスター化が相次いでいる 「コロナ院内感染が止まらない日本の病院、海外と比べてわかる2つの死角」 Newsweek日本版 密告社会が急速に形成された。戦時下の「隣組」の復活である 日刊ゲンダイ 病院職員は院内感染よりも市中感染の方が多い? “訴訟社会” 日本の病院はオープンすぎる 営業自粛への監視を厳しくする一方では、中小企業は立ち行かなくなり、解雇者も爆発的に増える。経済的な理由によって、コロナ感染による死者を自殺者が上回る可能性があります 中野江古田病院 法改正にはエビデンスが必要 新型肺炎感染急拡大
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

パンデミック(新型肺炎感染急拡大)(その10)(新型コロナ最悪シナリオを8年前に想定したドイツの危機管理、コロナ後の過剰流動性がもたらすインフレ圧力 無制限の経済対策が生むコロナ後の禍根、大阪吉村知事と松井市長のコロナパフォーマンスに現場混乱、大阪府の“狙い”は完全裏目…店名公表のパチンコ店は大盛況) [国内政治]

パンデミック(新型肺炎感染急拡大)については、4月18日に取上げた。今日は、(その10)(新型コロナ最悪シナリオを8年前に想定したドイツの危機管理、コロナ後の過剰流動性がもたらすインフレ圧力 無制限の経済対策が生むコロナ後の禍根、大阪吉村知事と松井市長のコロナパフォーマンスに現場混乱、大阪府の“狙い”は完全裏目…店名公表のパチンコ店は大盛況)である。

先ずは、4月21日付け日経ビジネスオンラインが掲載した在独ジャーナリストの熊谷 徹氏による「新型コロナ最悪シナリオを8年前に想定したドイツの危機管理」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00023/042000163/?P=1
・『中国に次ぐ新型コロナ危機の第2の震源地・欧州では、今なおウイルスの拡大が止まらない。そうした中でドイツが死亡率を低く抑えている背景には、同国のウイルス学の専門家たちが、未知のコロナウイルスによるパンデミックを想定したリスク分析を8年前に公表し、政府や議会に警鐘を鳴らしていた事実がある。 今回の新型コロナ危機では、ドイツの対応が世界の注目を集めている。ジョンズホプキンズ大学によると、ドイツの新型コロナウイルス感染者数は約14万5000人と、欧州で3番目に多い(4月20日時点)。だが同国の死亡率は3.2%と、フランス(12.8%)、イタリア(13.2%)、英国(13.3%)、スペイン(10.3%)などに比べて大幅に低い。 死亡率が低い理由は、同国の「パンデミック迎撃態勢」が他国に比べて整っていたことだ。たとえばドイツには今年3月初めの時点で、人工呼吸器付きの集中治療室(ICU)が2万5000床あった。これは欧州で最も多い。ドイツの人口10万人当たりのICUベッド数は29.2床で、イタリア(12.5床)やスペイン(9.7床)を大きく上回っている(日本集中治療学会によると、日本は5床)。シュパーン連邦保健大臣が4月17日の記者会見で明らかにしたところ、ドイツのICUベッド数は、約4万床に達している。 またドイツでは当初から1日5~6万件のPCR検査を行う態勢を持っていた。日本とは異なり、検査数を増やすことによって感染者と濃厚接触者を迅速に隔離する戦略だ。英オックスフォード大学が運営する統計ウェブサイト「データで見る我々の世界(OWID)」によると、ドイツのPCR検査の累積数は4月12日時点で約173万件と欧州で最も多い。イタリア(約131万件)、英国(約37万件)、フランス(約46万件)、日本(約17万件)に大きく水をあけている』、ドイツの「パンデミック迎撃態勢」は、メルケル首相の演説も含め賞賛されている。
・『8年前に想定されていたパンデミック危機  ドイツでは、なぜパンデミックに対する備えが比較的整っていたのか。それは、ドイツ連邦政府とウイルス学者たちが、未知のコロナウイルスにより多数の死者が出る事態を8年前にすでに想定していたからだ。彼らは、最悪のシナリオがもたらす被害の想定を文書として公表し、地方自治体や医療界に準備を整えるよう要請していた。 この文書は、ドイツ政府の国立感染症研究機関であるロベルト・コッホ研究所(RKI)や、連邦防災局などが2012年12月10日に作成し、翌年1月3日に連邦議会に提出したもの。「2012年防災計画のためのリスク分析報告書」という題名が付けられている。 こうしたリスク分析は、連邦内務省が科学者など専門家に依頼して定期的に実施している。自然災害や無差別テロなどが起きた場合に、人命や社会のインフラなどにどれだけ被害が出るかを想定し、損害を最小限にするために事前に対策を取ることを目的としている。シナリオを作成する際には、様々な悪条件が重なって被害が大きくなる、最悪の事態(ワーストケース・シナリオ)が使われる』、「8年前に想定されていたパンデミック危機」、とは驚かされたが、「リスク分析は、連邦内務省が科学者など専門家に依頼して定期的に実施している。自然災害や無差別テロなどが起きた場合に、人命や社会のインフラなどにどれだけ被害が出るかを想定し、損害を最小限にするために事前に対策を取ることを目的としている」、という考え方が国家の仕組みの中にビルトインされているのは、さすがだ。
・『イタリア、フランスなどの状況に酷似  連邦政府は同報告書の中で、ドイツに大きな被害をもたらす架空のシナリオとして、大規模な洪水と並んで、「変種SARS(重症急性呼吸器症候群)ウイルスによるパンデミック」を取り上げている。 私はこの文書を読んで、驚いた。8年前に想定されたシナリオとは思えないほど、現在のパンデミックの状況に似た部分があるからだ。もちろん、現在の事態と異なる部分は多い。特に今のドイツの状況は、このシナリオほど深刻ではない。 だがRKIの文書には、イタリアやフランス、スペインですでに現実化した状況を想起させる部分もある。「まるで、執筆者たちがタイムマシンで2020年の世界を訪れ、今イタリアやスペインで起きている惨状を観察して描写したのか」という錯覚を持つほど、現在の事態に似たシナリオを想定している』、「連邦政府は同報告書の中で、ドイツに大きな被害をもたらす架空のシナリオとして、大規模な洪水と並んで、「変種SARS・・・ウイルスによるパンデミック」を取り上げている・・・8年前に想定されたシナリオとは思えないほど、現在のパンデミックの状況に似た部分がある」、「シナリオ」を作成した「科学者など専門家」の能力も高いようだ。
・『「変種SARS」によるパンデミックを想定  RKIがシナリオに使ったのは、2002年に香港、中国、カナダで広がったSARSウイルスに似た、架空のウイルス。研究者たちはこのウイルスを「変種SARS(Modi-SARS)」と呼び、「SARSを引き起こしたコロナウイルスとほとんど全ての面で共通の特徴を持つ」と想定している。 SARSウイルスは正式にはSARS-Covと呼ばれ、2002年11月から2003年7月までに25カ国に広がり、8096人が感染して774人が死亡した。SARSの感染者数は比較的少なく、拡大も地理的に限定されていたため、パンデミックとは認定されなかった。 RKIは、報告書の中で、架空の変種SARSが主に飛沫感染で拡大、1人の感染者がウイルスを3人に伝播(でんぱ)させる強い感染力を持つと想定。さらにRKIは、「ウイルスの潜伏期間はたいてい3~5日だが、14日間になることもある。症状は空ぜき、発熱で始まり、大半の患者が息苦しさや悪寒、筋肉痛、頭痛、食欲不振を訴える。レントゲン撮影を行うと、肺に異状が見られる。子どもや若者は軽症もしくは中程度の症状で済み、約1週間で治癒するが、65歳以上の患者はしばしば重篤な状態に陥り、3週間の入院が必要になる」と想定した。これは、現在世界中で広まっている新型コロナウイルスの症状と、ほぼ一致する』、「想定」する能力も大したものだ。
・『「アジアで始まり、欧州と北米に拡大」  RKIが描いたパンデミックのシナリオは、こうだ。「ある年の2月に東南アジアの国で、市場で売られていた野生動物にひそんでいたウイルスが人間に伝播(でんぱ)し、ヒトからヒトへの感染が始まる。あるドイツ人ビジネスマンがこの国で変種SARSウイルスに感染した後ドイツに帰国し、北ドイツの大都市で見本市に参加して、多くの市民と接触する。もう一人のドイツ人は中国に短期留学した後、ドイツ南部の町に戻って、大学での講義に参加する。この2人に接触した人々が次々に病に倒れ、ドイツの保健当局は4月に変種SARSウイルスによるものと断定する」 RKIは、「変種SARSウイルスが発見され、世界保健機関(WHO)が正式に各国にウイルスについて通報するのは、ドイツで最初の患者が現れるわずか数週間前だった」と想定し、政府が気づかないまま、未知の病原体がドイツ社会で拡大するという、悪条件のシナリオを想定した。 実際の新型コロナウイルスは、今年1月にまずドイツ・ミュンヘン郊外の自動車部品メーカーの社員の間で見つかった。中国からやってきた社員が、ウイルスに感染していることを知らないまま講習会で講師を務め、研修に参加したドイツ人社員の間にウイルスが広がった。この時ドイツ政府は、迅速に感染経路を特定することによって全ての感染者と濃厚接触者の隔離に成功し、現在では全員が治癒している。その後欧州では、新型コロナウイルスに関するニュースは大きく注目されなかった。各国の保健当局は、「コロナ危機はアジアの問題」と過小評価することになった。 だが、この時欧州には、すでに別の地域にウイルスが侵入していた。欧州での感染爆発の震源地となったのは、イタリア北部のロンバルディア州である。ロンバルディア州では、2月中旬から感染者数が爆発的に増加した。現在ドイツで感染者数が増えているのは、2月の謝肉祭の休暇に多くのドイツ人がイタリアやオーストリアへ行って感染し、帰国したからだと推定されている。イタリアとオーストリアに近い南部のバイエルン州とバーデン・ヴュルテンベルク州で最も感染者数が多いのは、そのためだ』、「各国の保健当局は、「コロナ危機はアジアの問題」と過小評価」するなかで、「ドイツ政府は、迅速に感染経路を特定することによって全ての感染者と濃厚接触者の隔離に成功し、現在では全員が治癒している」、こうした初動の良さも「RKIが描いたパンデミックのシナリオ」が貢献したことは確かなようだ。
・『「人類が気づかないまま、ウイルスが欧州に侵入」  イタリアでは、今年1月中旬頃から、保健当局や医療関係者が気づかないまま、ウイルスの拡大が始まっていたと見られている。「ウイルスが欧州に侵入したことに政府が気づかないまま、感染者が増える」と想定したRKIのシナリオは、今年1~2月にかけてのイタリアの状況と似ている。 さらにRKIは、報告書の中で「パンデミックはアジア、欧州、北米を中心に拡大する」と想定。これは現在の状況にぴたりと合致する。2月にアジアで出現し、4月に欧州でパンデミックが始まるというRKIの想定も、現実とほぼ重なる(実際には新型コロナウイルスの流行は12月上旬にアジアで始まり、2月下旬から欧州で急激に拡大した)。 4月17日時点の現実と報告書が大きく異なる点は、感染者数と死者数だ。RKIのシナリオは、ドイツについては現在の状況よりもはるかに悲観的な事態を描いた。 RKIのシナリオは、「変種SARSウイルスに有効なワクチンが開発され、投与されるまでに3年かかる」と想定。RKIは、「その3年間に3つのピーク(波)がドイツを襲い、8000万人いるドイツ人口の97.5%に相当する7800万人がウイルスに感染する」というシナリオを描く。 ドイツの新型コロナウイルス感染者数は、4月20日で約14万人。最終的に、実際の感染者数がどれだけになるかは、まだわからない。 だがRKIが8年前に想定したシナリオは、必ずしも大げさとは言えない。RKIのロター・ヴィーラ―所長は今年3月29日の記者会見で、新型コロナウイルスについて「我々はまだ流行の初期段階にある。このパンデミックは2年間続くと考えており、ドイツの人口の60~70%が感染する可能性がある」という見方を打ち出している。この感染者数は、絶対数にすると、4800~5600万人である』、「RKIのロター・ヴィーラ―所長」は、いまだに「8年前に想定したシナリオ」が通用すると考えているようだ。
・『現在の死亡率をRKIのシナリオと比較することは不可能  RKIが8年前に作ったシナリオで目立つのは、死亡率の高さだ。感染者の10人に1人つまり750万人が死亡すると想定した。これは、2002~2003年に香港や中国で広まったSARSウイルスの死亡率(約9.6%)を参考にしたものと思われる。 現在のパンデミックが3年間続くと仮定し、WHOが終息宣言を出した時にドイツで何人が死亡しているかを予測するのは、困難だ。 ドイツの4月20日時点での死亡率は3.2%(死者数は約4600人)だが、これは今年1月に同国で最初の感染者が見つかってからわずか3カ月の時点での死亡率であり、RKIが想定する死亡率と比較することはできない。 また4月16日時点でのイタリア、フランス、スペイン、英国の死亡率はいずれも10%を超えており、RKIの8年前のシナリオと重なる部分がある。 だがこれらの国々の死亡率が、パンデミックが終息する時点では現在より低くなる可能性もあるので、「RKIのシナリオと合致する」と断定することは、まだできない。 またRKIの8年前の文書は、「1人の感染者が3人を感染させる」と想定しているが、4月17日の時点では、ドイツにおける新型コロナウイルスの感染率(再生産率と呼ばれる)は、0.7に下がっている。つまり1人の感染者がウイルスを伝播(でんぱ)させる人数が1を割っているのだ。RKIは、再生産率の低下を、3月23日に施行された外出・接触制限令が効果を表し始めた兆候と見ている。 さらにRKIのシナリオでは、「重症者数の増加が、治療キャパシティー(人工呼吸器、ICU、医師や看護師)を大幅に上回るために、どの患者を救うかについて医師が選別(トリアージュ)を行うことを余儀なくされる。治療を受けられない多くの患者が死亡する。さらに医療体制、介護体制が十分に機能しなくなるために、多くの要介護者が命を落とす」と想定している。だが、少なくとも4月20日の時点では、ドイツではそのような事態は起きていない。 ドイツでは現在の時点で、ICUのベッドが約1万床空いている。このためドイツはピンチに陥ったイタリア北部やフランス東部の病院から空軍の特別機やヘリで重症者約180人を搬送し、ドイツのICUで治療しているほどだ』、「ドイツ」が余裕のある医療キャパシティを「イタリア北部やフランス東部の・・・重症者」に提供しているのは立派だ。
・『RKI「想定シナリオは現実の状況とは無関係」と断言  RKIが8年前に作成し、ドイツ政府が7年前に議会に提出したこの文書は、今年2月に新型コロナウイルスの拡大が始まって以来、ドイツのインターネットの世界で広く流布された。文書が想定したシナリオの中に、現実のパンデミックと似た点があったからだ。一部の市民は、「RKIが8年前に想定したように、今回のパンデミックの死亡率は10%になるのか?」と不安を抱いたに違いない。 しかし、この文書は、あくまでシナリオであり、「予想」ではない。公共放送局バイエルン放送(BR)の3月13日付電子版によると、RKIはBRに対して、「この文書は現在の新型コロナウイルスの流行を予言したものではなく、最悪の事態を想定したシナリオ(つまり1つの可能性)にすぎない。つまり、感染力と致死率が高いウイルスが人から人へ伝播(でんぱ)するようになった場合の、理論的に考え得る最大の被害を予測することが目的だった」と説明している。 さらにRKIは、「8年前に作成した文書には、実際にパンデミックが起きた時に、最悪の事態につながる要因を配慮できるように、あらゆる悪条件や不確定要因を盛り込んだ。したがって、この文書は現在の状況の分析には適していない」と述べている。 つまりRKIのウイルス学の専門家たちは、「パンデミックが最もひどくなった場合、理論的にはドイツで750万人の死者が出る可能性があるが、そうした事態が必ず起こると主張したわけではない」と説明しているのだ。 ワーストケース・シナリオとは、最も被害が大きくなるケースのことだ。RKIは、「そうした事態が実際に起こる」あるいは「最悪の事態が起こる可能性が高い」と予想したわけではない。またRKIは、文書の中で「そうした事態が実際に起こるかどうかはわからないし、パンデミックがいつ起こるかは予測できない」と断言している。 ドイツの死者数は、4月20日時点で約4600人。同国が3月23日に施行した罰則付きの外出・接触制限令によって市民の移動は約40%減った。RKIによると、3月9日からの1週間には、ドイツの感染者数は1.7日ごとに倍増していた。だが4月12日には、倍増にかかる日数が18.3日に延びている。つまり外出制限令が発布されてから、感染者数が増える速度が遅くなり始めているのだ。 ドイツ政府が新型コロナウイルスの危険性を強く認識して厳しい対策を取り始めているので、仮にパンデミックが長期化しても、現在の死者数が750万人まで急増する可能性は低い。ドイツ政府は、他国に先駆けて、ウイルス封じ込め措置の部分的な緩和すら始めた。メルケル政権は、ロックダウンによる経済界への悪影響を減らすために、4月20日から面積が800平方m以下の商店の営業を許したほか、5月4日からは学校での授業を段階的に再開する方針を明らかにしている。 BRは、「RKIの文書は、あくまで最悪の事態を想定したものであり、それが現実化するという予測ではない。『ドイツで750万人が死亡し、死亡率が10%に達する』という文書の中の想定は、現実の状況にあてはめられない。この文書と、現実の展開を関連付ける行為は、フェイクニュースの流布だ」と結論付けている』、「この文書と、現実の展開を関連付ける行為は、フェイクニュースの流布だ」、その通りだろう。
・『8年前にコロナウイルスの危険について警告  だがRKIが8年前に想定したシナリオの一部に、今日の状況と似た点があることは、否定できない。RKIが2012年の時点で、新たなコロナウイルスの襲来というシナリオに基づく最悪の事態を想定して文書を作成し、連邦政府が議会に提出したことは事実だ。RKIのシナリオの一部は、現在イタリアやスペイン、フランスで起きている感染爆発の状況に似ている。RKIが想定したように、これらの国々では、医療キャパシティーが重症者の増加に追い付かない事態が起きている。 もう一つ注目すべき点は、RKIが8年前に新型コロナウイルスの危険を指摘したという事実だ。 過去に起きたパンデミックは、1918年のスペイン風邪や2009年の豚インフルエンザを含め、全てインフルエンザウイルスによるものだった。コロナウイルスがパンデミックを起こしたことは、これまで一度もなかった。 しかしRKIは、21世紀に入って2002年のSARSや、2012年6月以降サウジアラビアなどで流行したMERS(中東呼吸器症候群)などを分析して、今後はコロナウイルスがもたらす危険が高まると判断。このためRKIは、2012年のシナリオの中で「これまで一度もパンデミックを起こしたことがないコロナウイルスが、初めてパンデミックを起こす」というシナリオを使ったのだ。コロナウイルスによる初めてのパンデミックが起きるという想定は、今年に入って現実化した。 ドイツ連邦政府は、こうした悲観的なシナリオとリスク分析に基づき、16の州政府の保健省に対して「パンデミック・プラン」を作成し、緊急事態へ向けた準備を整えるよう要請した。今年2月以降、各州政府は、準備していたパンデミック・プランを始動させ「戦闘態勢」に入った。人工呼吸器を持ったICUの数や、PCR検査のための体制が他の欧州諸国に比べて充実している裏には、こうした長期的な準備があったのだ。 これらの的確な判断を可能にした背景には、ドイツ医学界が培ってきたウイルス研究の長い歴史と充実した研究体制もある。ドイツにはベルリンのRKI(1891年創立)だけではなく、ミュンヘン大学のマックス・フォン・ペッテンコーファー研究所(1865年創立)などあわせて28のウイルス研究所がある。19世紀のドイツは、ウイルス学の研究が世界で最も進んだ国の一つだった。日本の細菌学の父と言われる北里柴三郎は、19世紀にロベルト・コッホに師事している。 ベルリン・シャリテ病院ウイルス研究所のクリスティアン・ドロステン所長は、2002年に香港・中国で発生したSARSウイルスの最初の特定者の1人であり、2003年にこのウイルスの検査キットを最初に開発して、世界中の研究機関に提供した。同氏は、メルケル政権の新型コロナウイルス対策に関するアドバイザーを一時務めた経験も持つ。フンボルト大学に属するシャリテ病院は、1710年にフリードリヒ1世が、当時猖獗を極めていたペスト患者を収容するために、ベルリン市の外に作った療養所が母体である。つまり欧州で頻発した疫病の歴史と深く関わりを持つ研究機関・医療施設なのだ』、「RKIは、2012年のシナリオの中で「これまで一度もパンデミックを起こしたことがないコロナウイルスが、初めてパンデミックを起こす」というシナリオを使った」、「ドイツ医学界が培ってきたウイルス研究の長い歴史と充実した研究体制もある」、「付け焼き刃」で大慌てする日本とは大きく違うようだ。
・『ドイツ人の高いリスク意識を浮き彫り  RKIは、議会に向けた報告書の中で悲観的なシナリオを公表することによって、「パンデミック対策を十分に整えないと、医療崩壊が起きて医師がトリアージュを迫られ、死亡率が10%を超える事態があり得る」という警告を発していたのかもしれない。 ドイツ人は常に最悪の事態を想定し、災害が現実化した時のリスクや被害を最小限にするため多額のコストをかけて、努力を行う。2011年の福島原発事故直後に、メルケル政権が全ての原子力発電所を廃止する決定を行ったときもそうだった。 ドイツ人たちは1万km離れた場所で起きた原子炉事故を見て、「技術水準が高い日本でも、これほど重大な事故が起きた。ドイツでも原子力エネルギーが抱える想定外のリスクを排除しながら、安全に運転することは難しい」と判断し、脱原子力へ向けてかじを切った。欧州の周辺国の人々がドイツ人について「悲観的」とか「心配症」と評する背景には、こうした性格もある。 我々はまだウイルス拡大の初期段階にある。このため、今後パンデミックがどのように推移するかは分からない。RKIのヴィーラ―所長は、3月の記者会見で「イタリアのような事態がドイツで起こる可能性は否定できない」と語っている。しかし少なくとも本稿を執筆している4月20日の時点では、事前に整えていた備えによって、ドイツにおける死亡率は他の欧州諸国に比べて低く抑えられている。こうした準備の基礎には、ウイルス学の専門家たちの悲観的なシナリオとリスク分析があった。RKIが8年前に作成した文書は、市民の生命を守り、万一の際に医療崩壊を防ぐ上で、高いリスク意識と長期的な準備がいかに重要であるかを示している。 変更履歴は省略』、「ドイツ人は常に最悪の事態を想定し、災害が現実化した時のリスクや被害を最小限にするため多額のコストをかけて、努力を行う」、忘れっぽい我々日本人も、爪の垢でも煎じて飲む必要がありそうだ。

次に、4月27日付け東洋経済オンラインが掲載した 慶應義塾大学 経済学部教授の土居 丈朗氏による「コロナ後の過剰流動性がもたらすインフレ圧力 無制限の経済対策が生むコロナ後の禍根」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/346634
・『新型コロナウイルス感染症による経済的打撃は、企業の存続を左右しかねない事態になっている。 政府は積極的に資金繰りを支援しているが、感染拡大防止のための外出自粛などが続くと、企業は売り上げが立たず、組織をどこまで維持するかが問われてくる』、経済面への影響も覚悟しておくべきだろう。
・『コロナショックと自然災害の違い  緊急事態で経済的に窮した状態になれば、救う対象は企業よりもまずは個人であるのが基本だ。人の命が最優先である。 とはいえ、企業の存在を気にしなくてよいとは言えない。今般のコロナショックへの対応が、大震災などの自然災害への対応と異なるのはその点である。人命に関わる被害や物理的な破壊が起きれば、人命救助と被災者の生活支援が最優先になる。被災地にある企業を救おうにも、物理的な破壊によって直ちに復旧できない場合が多い。 しかし、コロナショックでは、感染拡大防止のために人為的に経済活動を途絶させたわけであって、物理的な破壊が起きたわけではない。しかも、途絶させたくて途絶させたわけではない。したがって、感染収束後に経済活動が回復すれば、直ちに復旧できるはずだ。あたかもコロナショックがなかったかのように、物流は再開するだろう。 それも、企業がコロナショック前の状態に戻れてこそである。現時点でいつまで続くかわからない感染拡大によって経済活動が途絶しても、コロナショック前と同じ状態を保てれば、感染収束後の再開も速やかにできる。しかし、企業の存続が危ぶまれるほどに追い込まれれば、雇用も取引関係もコロナショック前の状態を維持できない。 人は消費者および労働者として、命と健康が守れれば、いつでもその立場で経済活動ができる。しかし、世の中の経済活動は個人間(現代流に言えばC to C)ばかりで成り立っているわけではない。むしろ、労働者として企業に勤めて所得を稼ぎ、消費者として企業が供給する商品やサービスを購入する。経済活動の大半は企業と人との取引(B to C)である。 経済活動を成り立たせる結節点に企業がある。「企業は社会の公器」などと呼ばれるのも、そうした側面を言い表しているとも言えよう。この観点から見れば、不健全な経営状態の企業まで残すとは言わないが、企業の存続を支援することは、コロナショック後の経済回復をしっかりとしたものにするためにも大切なことである』、その通りだ。
・『コロナ後の過剰流動性に要注意  政府の経済対策は企業の資金繰りも支援している。ただ、コロナショック後を見据えて気をつけるべき点がある。それは、過剰流動性である。経済活動が正常なときと比べて、現預金などの流動性が過剰に供給されている状態である。 企業は、ショック前にも日常の経営に必要な資金を調達していたが、現在はそれに加えて窮地をしのぐために資金供給を受けようとしている。 確かに、政府の資金繰り支援は、コロナショックを乗り越えるために目先必要なものだ。ほぼ無利子で供給され、感染収束がいつになるか見通せないことから、融資期間も長めに設定されている。 しかし、お金に色はない。感染拡大防止のために経済活動を止めている間は売り上げが立たず、その資金は企業の存続に必要な固定的な支出などに充てられる。従業員への給与支払いやオフィスの賃借料などだ。その結果、企業の資金繰り支援の名目で供給された資金が世に出回り、感染拡大防止によって経済活動の実態がなくなっている中で、通貨量は増えることになる。 経済活動が止まっていれば、出回った通貨も滞留しがちである。どれほどスムーズかにもよるが、感染が収束すれば経済活動はショック前に近い水準に早晩回復するだろう。雇用や取引関係を維持できれば、その分だけスムーズに復旧するはずだ。ただ1点異なるのは、世に出回る通貨量である。 政府は全国民に対し、1人当たり10万円の特別定額給付金を一律給付する。金融機関も資金繰り支援のために、追加的に融資を増やす。そうした状態から経済活動が再開するとなれば、何が起きるのか。 インフレ圧力が存在することだけは確かだ。それがどれだけ物価上昇につながるかは、感染収束のタイミング次第ではある。緩やかなデフレが20年余も断続的に続いていて想像しにくいが、コロナショックを口実に財政も金融も未曽有の規模に拡大しており、インフレ圧力にならないはずはない。目下そう見えないのは、経済活動を人為的に止めているからだ』、確かに「過剰流動性」による「インフレ圧力」には大いに留意すべきだ。
・『過剰流動性が生んだ「狂乱物価」  過剰流動性という言葉が日本で初めて取り沙汰されたのは、1971~1973年である。大規模な金融緩和に加えて、「日本列島改造」を掲げた田中角栄内閣は大規模な予算拡張を行った。「田中角栄を想起させる安倍首相の『財政出動』」で詳述した「列島改造予算」である。これらの政策は第1次石油ショックも重なり、狂乱物価を助長した。 石油といえば、4月にWTI原油先物価格が史上初めてマイナスになるという異常事態となった。今後、産油国の減産や石油関連企業の経営破綻がありそうだが、感染収束後の経済を見据えると、経済活動が再開しても、原油供給がコロナショック前のようにすぐには復旧できないことも懸念される。 原油の供給が滞れば、過剰流動性がある中では、ますますインフレ圧力を高めることになる。もちろん、マイルドな物価上昇であればよい。デフレから脱却したほうが企業活動にとってもプラスである。) しかし、過剰流動性があると、インフレ圧力を適度に抑えてマイルドな物価上昇に導けなくなる恐れがある。せっかくコロナショックを乗り越えて企業活動が存続できても、その後に予期せぬ形の物価上昇に直面すれば、企業の存続を危うくしかねない。 まず、予期せぬ物価上昇(といってもハイパーインフレではない)は、短期金利の予期せぬ急騰につながる。資金調達を短期の資金に依存している企業は、売り上げの回復よりも金利負担の増加が早ければ、その影響は経営を直撃する』、確かに金利上昇をすっかり忘れていた企業経営者にとっては、大変なことだ。
・『求められる節度ある財政金融政策  政府の財政も、金利上昇によって利払い費が兆円単位で増大し、税収の回復による収入増よりも利払い費の増加が上回りかねない。政府には政策的経費の削減という手段があるが、企業が経費を削減するのは容易なことではない。 政府は国債を大量に増発して国民に還元して支援したり、企業の資金繰り支援をして、国民や企業は当座助かるだろう。ただ、過剰流動性を温存したまま感染収束を迎えると、政府は生き延びられても、企業や個人が窮地に追い込まれかねない。労働者も、一時的であれ予期せぬ物価上昇によって賃金の上昇が遅れると、生計を圧迫する。 デフレからの脱却は必要である。コロナショックによって経済的に窮する個人や企業への支援も必要である。しかし、感染収束後に悲惨なことにならないための未然防止策も欠かせない。 量的に際限を設けず、目先の支援に集中すべきという発想は、感染収束後に禍根を残す。日本銀行も未曽有の規模にまでマネタリーベースを拡大してきたのに、インフレ目標の達成はおぼつかない。デフレ脱却を実現するため、もっと拡大せよという話かもしれないが、過剰流動性があると物価上昇を適度にコントロールしにくくなる。感染拡大期には国債増発は不可避だが、感染収束後の経済を順調に回復させるように、財政支出は適度な規模にする必要がある。 インフレになってから対応するのでは遅い。デフレ脱却を目指しつつ、節度ある財政金融政策が求められている』、説得力溢れた警鐘だ。

第三に、4月23日付け日刊ゲンダイ「大阪吉村知事と松井市長のコロナパフォーマンスに現場混乱」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/272313
・『新型コロナウイルス対応をめぐって、吉村洋文大阪府知事と松井一郎大阪市長の“維新コンビ”の露出が目立つ。トップダウンで次々と施策を打ち出す姿に、人気は全国的にも急上昇。19日の東京・目黒区長選では日本維新の会が擁立した候補が善戦し、毎日新聞の世論調査(18、19日実施)でも、維新は立憲民主党の支持率を上回った。しかし、ツートップの暴走に現場は大混乱だ。 先月の3連休直前に吉村知事が発表した「大阪・兵庫間の往来自粛」は、兵庫県知事との事前調整がなかったうえ、根拠とした厚労省資料も「誤読」だっとことが指摘された。 松井市長が14日に記者会見で突然発表した十三市民病院を酸素吸入などが必要な中等症の「コロナ専門病院」にする決定も混乱を引き起こした。病院の部長や市の保健局にすら知らされておらず、報道で知った関係者は大パニックだった。現在入院している約130人の患者は転院を強いられるという。 防護服の代替として集めた雨がっぱも注目されたが、美談だけではない。 「松井市長はいきなり、記者会見で雨がっぱの寄付を呼びかけました。約30万着が市役所の1階を埋め尽くしています。いろんな種類の雨がっぱが届いて、管理する職員は大わらわです。だいたい、雨がっぱは世の中で不足しているわけではない。必要な分を買えばいい」(市関係者)』、「十三市民病院」や「雨がっぱ」は、初めて知ったが、確かに事前の根回しもせず、一方的なマスコミ発表だけでは、単なる人気取りだ。
・『仲間内で決定、突然発表のくり返し  パフォーマンスに精を出す一方、大阪市は政令指定都市として珍しく日々の感染者数をHPで公開していない。 大阪市に聞くと、「市の分も大阪府でまとめて公表しています」(感染症対策課)と回答。大阪都構想を先取りしたかのような対応である。在阪ジャーナリストの吉富有治氏は言う。 「休業要請に伴う府の支援金は、府内の市町村に2分の1の負担を求めています。事前調整がなかったので、怒っている首長もいます。吉村知事は、大阪市とはべったりですが、府内の他の市町村とふだんからコミュニケーションを取っているのでしょうか」 思いつきの政策を仲間内で決め、突然ブチ上げる。しわ寄せは、大阪府市の職員や府内の首長、ひいては府民に行く。 「吉村知事と松井市長は見せ方がとてもうまく、支持率も上がっている。パッとしない安倍首相と比べて光って見えます。しかし、サボっているとは言いませんが、十三病院や雨がっぱなど打ち出した政策の中身をきちんと精査する必要があります」(吉富有治氏) パフォーマンスにダマされてはいけない』、マスコミも維新には弱いのも問題だ。

第四に、4月27日付け日刊ゲンダイ「大阪府の“狙い”は完全裏目…店名公表のパチンコ店は大盛況」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/272463
・『26日午前9時すぎ。南海電鉄七道駅で下車した乗客の大半が向かったのは、大阪府堺市のパチンコ店「P.E.KING OF KINGS 大和川店」だった。府の休業要請に応じず、店舗名を公表された6店のうちの1つだ。 すでに整理券配布を待つ長い列ができていた。その数ざっと500人以上。1000台収容の立体駐車場は「和泉」や「なにわ」ナンバーの車で次々埋まり、中にはタクシーで乗り付ける客の姿もあった。同店は1360台のパチンコ、パチスロがある市内最大規模店。オープンの午前10時前、入店を待つ客が列をつくり、抽選に漏れた客が駐輪場にあふれ返っていた。近隣住民が言う。 「(店名公表から一夜明けた)25日の客が平日の倍ぐらいやったけど、26日はそれよりも多いわ。普段の土日でもこんなに混んでへんで。公表で店が営業してることを知って、押し寄せたんやろうな」 府の災害対策課担当者は先週、公表の「狙い」についてこう説明していた。「施設名をオープンにすることで、利用者が行きにくくなると考えています。また名前を公表されず、営業を続けている同業他社に対しても、自粛しなければ名前を公表されますよ、という抑止力になる」 ところが、府が店名を公表しても3店は要請を無視し、ほかに営業を続けている店が20店舗以上あるというのだから、「狙い」が外れたばかりか、公表が宣伝となり、逆効果となった形だ』、「公表が宣伝となり、逆効果」、というのは当然のことで、私も当初からそう考えていた。「府の災害対策課担当者」はよほど想像力に乏しいのだろう。
・『休業なら1日1000万円単位で売り上げが吹っ飛ぶ  同店の運営会社「日本オカダエンタープライズ」は24日、要請に従わない理由について「休業したくてもできない窮状にある。従業員や取引先への責任を放棄することになりかねない」としていた。 営業を自粛している兵庫県尼崎市のパチンコ店の関係者がこう言う。「(店名の公表は)誰が考えたって、逆効果ですよ。『開けてますよ』っていうアピールになるんやから。お客さんからしたら、『オッ、開いとるんや、ラッキー』って感じちゃいますか。休業したら、1日当たり1000万円単位で売り上げが吹っ飛ぶところもある。ただパチンコ屋は、従業員のほとんどが派遣なので、給料は派遣会社が考えることになる。駅前の店なんかだと家賃もそれなりにするし、そっちが痛い」 これでは、他の店も休業しないだろう』、昨日の新聞は「パチンコ店に休業指示 特措法に基づき全国初―兵庫、神奈川県」、として、「新型インフルエンザ対策特別措置法は都道府県が事業者に求める休業について、24条の「協力要請」、45条2項の「要請」、同条3項の「指示」――の3種類を定め、指示が最も強く、行政処分にあたる。要請よりも効力が強い行政処分に当たる指示は全国初。指示に従わない場合の罰則はない」と報じた。「指示が最も強く」とは言っても、「罰則はない」のであれば、効果のほどは疑問だ。
タグ:インフレになってから対応するのでは遅い。デフレ脱却を目指しつつ、節度ある財政金融政策が求められている 「コロナ後の過剰流動性がもたらすインフレ圧力 無制限の経済対策が生むコロナ後の禍根」 過剰流動性が生んだ「狂乱物価」 十三市民病院を酸素吸入などが必要な中等症の「コロナ専門病院」にする決定も混乱 死亡率が低い理由は、同国の「パンデミック迎撃態勢」が他国に比べて整っていた 今回の新型コロナ危機では、ドイツの対応が世界の注目 「新型コロナ最悪シナリオを8年前に想定したドイツの危機管理」 8年前にコロナウイルスの危険について警告 府が店名を公表しても3店は要請を無視し、ほかに営業を続けている店が20店舗以上ある 府の災害対策課担当者は先週、公表の「狙い」についてこう説明していた。「施設名をオープンにすることで、利用者が行きにくくなると考えています。また名前を公表されず、営業を続けている同業他社に対しても、自粛しなければ名前を公表されますよ、という抑止力になる 「大阪府の“狙い”は完全裏目…店名公表のパチンコ店は大盛況」 仲間内で決定、突然発表のくり返し 最悪のシナリオがもたらす被害の想定を文書として公表し、地方自治体や医療界に準備を整えるよう要請 「大阪吉村知事と松井市長のコロナパフォーマンスに現場混乱」 日刊ゲンダイ 土居 丈朗 コロナショックと自然災害の違い 感染収束後に経済活動が回復すれば、直ちに復旧できるはずだ 求められる節度ある財政金融政策 RKI「想定シナリオは現実の状況とは無関係」と断言 松井市長はいきなり、記者会見で雨がっぱの寄付を呼びかけました。約30万着が市役所の1階を埋め尽くしています この文書と、現実の展開を関連付ける行為は、フェイクニュースの流布だ 新型インフルエンザ対策特別措置法は都道府県が事業者に求める休業について、24条の「協力要請」▽45条2項の「要請」▽同条3項の「指示」――の3種類を定め、指示が最も強く、行政処分にあたる パチンコ店に休業指示 特措法に基づき全国初―兵庫、神奈川県 休業なら1日1000万円単位で売り上げが吹っ飛ぶ 「変種SARS」によるパンデミックを想定 熊谷 徹 吉村知事が発表した「大阪・兵庫間の往来自粛」は、兵庫県知事との事前調整がなかったうえ、根拠とした厚労省資料も「誤読」 東洋経済オンライン メルケル政権が全ての原子力発電所を廃止する決定 日経ビジネスオンライン コロナ後の過剰流動性に要注意 ドイツ人は常に最悪の事態を想定し、災害が現実化した時のリスクや被害を最小限にするため多額のコストをかけて、努力を行う 8年前に想定されていたパンデミック危機 インフレ圧力 ドイツ医学界が培ってきたウイルス研究の長い歴史と充実した研究体制 ドイツでは現在の時点で、ICUのベッドが約1万床空いている 新型肺炎感染急拡大 企業の存続を支援することは、コロナショック後の経済回復をしっかりとしたものにするためにも大切 連邦政府は同報告書の中で、ドイツに大きな被害をもたらす架空のシナリオとして、大規模な洪水と並んで、「変種SARS・・・ウイルスによるパンデミック」を取り上げている 公表が宣伝となり、逆効果となった形だ ドイツ人の高いリスク意識を浮き彫り 現在の死亡率をRKIのシナリオと比較することは不可能 パンデミック イタリア、フランスなどの状況に酷似 リスク分析は、連邦内務省が科学者など専門家に依頼して定期的に実施している。自然災害や無差別テロなどが起きた場合に、人命や社会のインフラなどにどれだけ被害が出るかを想定し、損害を最小限にするために事前に対策を取ることを目的としている 「人類が気づかないまま、ウイルスが欧州に侵入」 ピンチに陥ったイタリア北部やフランス東部の病院から空軍の特別機やヘリで重症者約180人を搬送し、ドイツのICUで治療 (その10)(新型コロナ最悪シナリオを8年前に想定したドイツの危機管理、コロナ後の過剰流動性がもたらすインフレ圧力 無制限の経済対策が生むコロナ後の禍根、大阪吉村知事と松井市長のコロナパフォーマンスに現場混乱、大阪府の“狙い”は完全裏目…店名公表のパチンコ店は大盛況) 「アジアで始まり、欧州と北米に拡大」 「2012年防災計画のためのリスク分析報告書」
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感