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メディア(その29)(インタビュー【経営編】/朝日新聞社社長 中村史郎 朝日新聞の新社長、「赤字400億円」への痛切な反省、立憲民主が自民批判メディアに1000万円提供?「ブーメラン」が繰り返される理由、昨年も180万部減 全然止まらぬ「新聞」衰退の末路 「毎日」「産経」規模の部数が毎年消失している) [メディア]

メディア(その29)については、7月2日に取上げた。今日は、(インタビュー【経営編】/朝日新聞社社長 中村史郎 朝日新聞の新社長、「赤字400億円」への痛切な反省、立憲民主が自民批判メディアに1000万円提供?「ブーメラン」が繰り返される理由、昨年も180万部減 全然止まらぬ「新聞」衰退の末路 「毎日」「産経」規模の部数が毎年消失している)である。

先ずは、昨年7月14日付け東洋経済Plus「インタビュー【経営編】/朝日新聞社社長 中村史郎 朝日新聞の新社長、「赤字400億円」への痛切な反省」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/27517?utm_campaign=EDtkprem_2107&utm_content=440794&utm_medium=article&utm_source=edTKO#contd
・『日本のジャーナリズムの先駆者である朝日新聞社はいかにして経営を立て直すのか。また、メディアへの信頼が薄らぐいま、報道機関としての役割をどのように担っていくのか。 11年ぶりの営業赤字に転落した朝日新聞社。2021年4月から新社長に就任し、経営の立て直しを任された中村史郎氏が東洋経済の取材に応じた。 「使命は経営の立て直しだ」――。2021年4月1日に朝日新聞社の社長に就任した中村史郎氏は、東洋経済のインタビューに対し力強く語った。 朝日新聞社は新型コロナの影響も受け、2021年3月期決算の売上高は2937億円(前年比16.9%減)、営業損益は70億円の赤字(前年は23億円の黒字)と2010年3月期以来の営業赤字に転落した。繰延税金資産を取り崩した結果、純損益では創業以来最大となる441億円の巨額赤字を計上している。 新聞販売部数の減少に歯止めがかからない中、日本のジャーナリズムの先駆者である朝日新聞社 中村新社長はどのように経営を立て直していくのか(Qは利き手の質問、Aは中村社長の回答)』、「繰延税金資産を取り崩した結果、純損益では創業以来最大となる441億円の巨額赤字を計上」、とは本当に厳しい決算だ。
・『スローガンは「朝日新聞を創り直す」  Q:「社長になってほしい」という話があったとき、どう受け止めましたか。また、いまの朝日新聞社をどう見ていますか。 A:この難局が自分に務まるか、と相当に逡巡した。そもそも副社長(編集部注:2020年6月に就任)を打診されたときに、自分はこの先どうなるんだろうか、と。私自身の使命は経営の立て直しだ。社内では「朝日新聞を創り直す」とスローガンを掲げている。 いつの時代でも、どんな組織でも、変えるべきものと変えるべきでないものがある。朝日新聞社もまさに、その葛藤のど真ん中にいる。戦時中の弾圧や軍部への迎合、敗戦など、創業142年の歴史の中でも、いまは相当厳しい葛藤の時期だ。ただ朝日新聞社が「報道機関・言論機関」であることを変えてはいけない。 社長就任以前から言っていたが、プリントメディア(新聞紙)のみに依拠した事業構造は変えなければならない。これまでは「1本の大樹」(新聞紙)の下でみんなが暮らせていたが、その木が年をとってきた。今後はいろいろな木を植え、森のようにして、その中で暮らせる事業構造に転換していく。 Q:しかし、新聞からの転換という話は10年以上前からあった話です。いまだに対応できていないのは、それに真摯に向き合っていなかったのでは。 A:厳しい指摘だが、紙からデジタルへの構造改革のスピード感が遅かったのは、大きな反省だ。いまはどこの新聞メディアよりも、そこを早くやり遂げて新しい新聞社のビジネスモデルを示せるような存在になりたい。 新聞のみではいけないという意識は、早くからあった。私が入社した1986年、当時社長の一柳東一郎は単一商品依存から脱却し、総合情報産業になるという長期ビジョンを発表している。 ただ、紙の新聞が右肩下がりになる中、いまにして思えば、先行きを確信できなかった時期があった。新聞という同一商品を紙とデジタルでお届けするので、最初は「喰い合う」警戒感が私たち自身にあった。そういった葛藤の2010年代だった。 いまは「紙の新聞をデジタルで読める」ではなく、紙にはない見せ方、動画や音声など(コンテンツが)独自の進化を遂げている。2018年の秋には、人的にも資金的にも明確にデジタルシフトを進めると経営判断した』、「デジタルシフト」については、「最初は「喰い合う」警戒感が私たち自身にあった」が、いまは「紙にはない見せ方、動画や音声など(コンテンツが)独自の進化を遂げている」、気づくのが遅きに失したきらいがある。
・『値上げの理由は「そろそろ我慢の限界」  Q:7月に27年ぶりに朝日新聞の購読料を値上げしました。背景には苦しい経営事情があるように窺えますが、理由は何でしょうか。また、これによって確保した資金をどのように活用しますか。 A:今回の価格改定は27年半ぶりだが、そのころは新聞部数も800万部以上あった。いまは500万部を切っている。この間に、いろいろなコストが相当にかかってくるようになった。 さらに、新型コロナの影響が直撃し、お客様には申し訳ないが、そろそろ我慢の限界なので上げさせてほしいということが値上げの理由だ。プリントメディアは高コスト体質になっており、輸送費や原材料費、人件費をできるだけ効率化しなければいけない。ただ自社の努力だけでは限界だ。 実際、読売新聞も2019年1月に値上げをしている。この間、朝日新聞は戦略もあって我慢してきたが、スポーツ紙も含めると70社近い新聞社が値上げをしてきた。いわば、私たちが最後のグループだった。値上げをせざるをえないというのは各社共通の問題意識になっていた。 (中村氏の略歴はリンク先参照) 27年前の値上げの際には、新聞部数がまだまだ伸びるだろう、あるいは維持できると思っていたが、いまはダウントレンドにある。この中での値上げは各社経験のないことだ。今回の値上げによって得られる増収分は事業構造を転換するために投資をしていくが、(部数が減少することで)段々目減りしていく。この間に、事業構造の転換を急がなければいけない。 Q:社長就任が決まった際に、約2億円の経費削減を目的に、社員への朝日新聞購読補助の廃止を掲げました。その後、これは撤回されましたが、社員とはどのようにコミュニケーションしていたのですか。 新聞購読料の補助廃止は、(新型コロナによる広告収入減など)2020年の急速な経営悪化の中で、支出構造を変えないといけない、いろんなところになたを振るう必要がある中で出した1つの提案だった。それは組合との交渉や社員の意見を聞く中でここは無理できないと思い、提案を引っ込めた。これ以上の説明はない。 2021年3月期は繰延税金資産を取り崩した影響もあり、朝日新聞社としてはかつてない巨額赤字を計上した。営業損益でもリーマンショックを上回る規模の赤字を出した。ここで私たちが事業転換、構造改革に発想を変えなければ、「影響力のあるメディアとして生き残れませんよ」と。それがこの時期に社長を交代した理由でもある。 そうしたことはしっかり社員にも都度伝えている。就任前の2021年春から、社員向けのコミュニケーションは前社長時と比べると格段に強化している。対外的な発信と同時に、インナー(社内)コミュニケーションを改革しなければ社員一丸になれないこともあり、私もいろいろな場所で話をしたり、社内ブログなどを始めたりしている』、「新聞購読料の補助廃止」を「ここは無理できないと思い、提案を引っ込めた」、弱腰だ。
・『元BuzzFeed Japan編集長を招いたわけ  Q:2021年から3カ年の中期経営計画では「営業損益の2021年度黒字化」や「メディア・コンテンツ事業の収支均衡」「2023年度に朝日ID(朝日新聞が運営するサービスの共通ID)750万件」を掲げています。 新聞紙が売り上げの半分を占める屋台骨だが、高コスト体質で効率化しなければ会社として黒字にならない。販売、生産、輸送などいろいろな面で他社と協働する取り組みを加速させている。 収入面ではデジタル、不動産、イベントを強化の3本柱に掲げている。デジタルでは、朝日新聞デジタルはもちろん、バーティカルメディア(特定分野に特化したメディア)など30以上の無料・有料メディアがある。権力を監視するといった伝統的なジャーナリズムを守りつつ、それ以外の暮らしに役立つ情報や生活情報などの専門サイトも拡充したい。 強みの1つである不動産では、全国に優良な物件を抱えている。イベントでは従来型の展覧会などに加え、記者サロンやコロナ禍で広がってきたオンラインイベントなどに力を入れる。こうしたグループ全体の商品・サービスをつなげるのが朝日IDだ。新聞がいらないとすれば、他の商品、サービスはどうですか、と。客単価を上げるためにも、お客様とのつながりを強化して、朝日IDをいまの規模の1.5倍にまで3年で増加させたい。 Q:強化分野の1つである朝日新聞デジタルの有料会員数は、2015年に23万人、2020年に約30万人と報じられています。この5年で10万人弱の会員獲得です。これは成功だったのでしょうか、失敗だったのでしょうか。 A:言い方が微妙になるが、伸びてはいる。課金の売り上げはここ3年で140%になっている。伸びてはいるが、もっと伸びてほしい。失敗だったとは思わないが、まだ勢いが足りない。 勢いをつけるために朝日新聞デジタルの編集長に外部から(元BuzzFeed Japanオリジナル編集長の)伊藤大地くんに来てもらった。また、今年から順次リニューアルも開始して、有識者に参加してもらうコメント欄を新設した。記者が記事を書くだけではなく、音声メディアのポッドキャストや記者イベントでニュース解説をするなど、読者への届け方を工夫している』、「朝日新聞デジタルの編集長に外部から」、とは思い切った人事だ。これを機に「朝日新聞」が「デジタル」を中心に持ち直してほしいものだ。

次に、本年1月6日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したノンフィクションライターの窪田順生氏による「立憲民主が自民批判メディアに1000万円提供?「ブーメラン」が繰り返される理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/292445
・『立憲民主党が「公共メディア」にお金注ぎ込みネガキャン?  またしても特大ブーメランがきれいな放物線を描いて後頭部に突き刺さってしまった。ここまでくるともはや「お家芸」と言っていい。 テレビの報道番組や映画、ドキュメンタリーを制作している有志の方たちが運営しているネットメディア「Choose Life Project」に、1000万円以上の「番組制作費」を突っ込んでいた疑惑が持ち上がっている立憲民主党のことだ。これは、同メディアに出演していた、ジャーナリストの津田大介氏、望月衣塑子氏、エッセイストの小島慶子氏などが連名で公開した「Choose Life Projectのあり方に対する抗議」で明らかになった。 このメディアはホームページで、「自由で公正な社会のために」というスローガンを掲げて、「公共のメディア」を名乗っているのだが、そこでは自民党を厳しく追及するような、クセの強いコンテンツも少なくない。例えば、こんな調子である。 ●「桜を見る会」疑惑。安倍前総理、どう責任をとる?(20年12月22日) ●7年8ヶ月 戦後最長政権の終焉 安倍政権とはなんだったのか(20年8月28日) ●これは、憲法違反である。#日本学術会議への人事介入に抗議する(20年12月4日) 津田氏らの調査では、1000万円以上の制作費は20年春から半年にわたって提供されたという。そのため、これらの自民批判コンテンツも立憲民主マネーで仕掛けられたものではないか、と見る向きもあるのだ。 と聞くと、「ん? そんな話ちょっと前にもなかったっけ?」と感じる人も多いだろう。そう、実はこれとほぼ同じ構図の疑惑が自民党にも持ち上がっており、立憲民主党は厳しく追及をしている真っ只中なのである。 立憲民主党の議員らを誹謗中傷していたTwitterアカウント「Dappi」に、自民党マネーが流れていたのではないか、といういわゆる「Dappiゲート」である』、「自民党」に続いて、「立憲民主党が「公共メディア」にお金注ぎ込みネガキャン」、とはいい加減にしてほしい。
・『「Dappi」の批判をしていた立憲民主に華麗なブーメランか  ご存じのない方のために、「Dappiゲート」を簡単に説明をすると、フォロワー数17.9万人という影響力を誇る「Dappi」はプロフィールに「日本が大好きです。偏向報道をするマスコミは嫌いです。国会中継を見てます」とあるように、愛国心あふれる方たちの溜飲を下げる野党攻撃を繰り返していた。 そこで小西洋之・参議院議員と杉尾秀哉・参議院議員が名誉毀損で訴えたところ、驚くような事実が明らかになった。発信元回線契約をしていたWEB制作会社が、自民党と取引があることがわかったのである。 「しんぶん赤旗 日曜版」や「Buzz Feed Japan」などの取材によれば、この会社は自民党東京都連、小渕優子議員の資金管理団体、自民党本部が出資して設立した集金代行会社「システム収納センター」などと取引があった。しかも社長は、自民党本部の事務方トップである元宿仁事務総長と親族関係という報道もある。 かくして、野党やマスコミは昨年10月から、「自民党が金を出してネトウヨに野党批判をさせていた」という批判を展開していた。ちなみに、「Choose Life Project」でも、小西議員と杉尾議員の記者会見を取り上げている。 ●「Dappiは、民間人でなく、完全に国政を理解した組織的な行為」小西洋之・杉尾秀哉参院議員(20年12月10日) こんな調子で、自民党のネット工作を批判しておきながら、自分たちも「公共のメディア」に1000万もカネを突っ込んでネガキャンを仕掛けていたとしたら――。一体どの口が言うのか、というほど華麗な特大ブーメランではないか。 また、「ブーメラン」で済む話ではないという厳しい意見もある。明らかに特定のイデオロギーに傾倒している「ネトウヨ的アカウント」を利用するより、「公正」「報道」をうたう「公共のメディア」を利用しているという意味では、より悪質で卑劣だという批判もあるのだ。 もちろん、抗議を受けた「Choose Life Project」の説明はこれからなので、津田氏らの調査が間違っているという可能性もゼロではない。抗議文によれば、1000万円は広告会社や制作会社を経由していた、というので運営側も立憲民主マネーだと気付かずに、受け取っていたということもある。 ただ、現時点の状況を見ている限りは残念ながら、「Dappi」と同じ穴のムジナのような気がしてしまう。なぜかというと、「Dappiゲート」の扱い方から、「後ろめたさ」を感じるからだ』、「現時点の状況を見ている限りは残念ながら、「Dappi」と同じ穴のムジナのような気がしてしまう」、なるほど。
・『「Choose Life Project」は「Dappi」をほぼ取り上げなかった  「Dappi」をめぐる疑惑というのは昨年、野党やマスコミ、ネットメディアではそれなりに注目されていた。例えば、「朝日新聞デジタル」で「Dappi」を検索すると記事が15件出てくる。「Buzz Feed」では記事は10件ヒットした(22年1月5日現在)。 しかし、「Choose Life Project」でこのネタは先ほど紹介した昨年12月10日のコンテンツが1件しか出てこない。 2件とそれなりにある。五輪の問題や政府のコロナ対策などはもっと多く扱っている。その時々の注目される政治ネタをちゃんと押さえているのだ。 にもかかわらず、「Dappi」は1件だけ。これはかなり不自然だ。 今回、抗議文を出した津田氏や望月氏は、さまざまなメディアで「Dappiゲート」を追及していた。他にも「Choose Life Project」に出演していた政治家、有識者で「Dappi」を問題視していた人は多い。彼らに声をかければ、他のマスコミやメディアと同じような「Dappi」の疑惑を追及するコンテンツはできたはずだ。しかし、そうしなかった。ということは、そうせざるを得ない「オトナの事情」があったということではないだろうか。 もし津田氏らが指摘しているように、「Choose Life Project」に立憲民主党からの1000万円以上の番組制作費が渡っていたとしたら、このメディアで働く人々が積極的に「自民党ネット工作」をテーマにしたコンテンツをつくれるだろうか。 つくれるわけがない。偉そうなことを言って批判すればするほど、それは大きなブーメランになって自分たちのもとに返ってくる恐れがある。 つまり、「Choose Life Project」で「Dappi」関連コンテンツが1本しかないという事実が、津田氏らが指摘する、「立憲民主党から1000万円以上の番組制作費をもらった」という話に、妙に説得力を持たせてしまっているのだ』、「「Choose Life Project」で「Dappi」関連コンテンツが1本しかないという事実が、津田氏らが指摘する、「立憲民主党から1000万円以上の番組制作費をもらった」という話に、妙に説得力を持たせてしまっているのだ」、その通りなのかも知れない。
・『立憲民主党が「ブーメラン」を繰り返す本質的な原因  さて、このような話を聞いていると次に皆さんが不思議に感じるのは、なぜ立憲民主党は「ブーメラン」を繰り返すのか、ということではないだろうか。 国会で自民党や政府を厳しく批判する。フリップやパネルを駆使して、「こんなひどい話があるなんて信じられません!説明してください!」と舌鋒鋭く追及をする。しかし、ほどなくして自分たちの身内にも同じような問題があることが発覚する、なんてことが民主党、民進党時代から幾度となく繰り返されている。 この「ブーメラン芸」が筆者は個人的に大好物である。かねてからウォッチしていたので、僭越ながら以下のようにその原因を分析させていただいてきた。 ●民進党に特大ブーメラン再び!加計学園を応援した過去(2017年5月25日) ●「ブーメランの女王」辻元清美氏の戦略はどこが間違っているのか(2017年3月30日) 分析して見えてきたのは、「他人を批判してばかりいるから自滅する」ということだけでは説明できない、立憲民主党が抱える本質的な問題だ。 それは、自民党所属の議員とイデオロギーがちょっと異なるだけで、本質的なところでは「同じ穴のムジナ」ということである。 自民も立憲も国会議員は、政党からの金銭的・人的サポートがないと立候補できないし、地方議員と支持団体の世話にならないと当選できない。つまり、基本的に同じシステムでつくられる政治家なので、「政治とカネ」の問題も共通するし、「既得権益」に弱いところも同じなのだ。 「国家観や安全保障に関する考えが天と地ほど違うだろ!」というが、そこまで極端なのは一部で、多くはプロレスのように支持者のため「政府批判」というヒール役を演じている人も多い。かつて民主党のホープと言われた、細野豪志議員がちゃっかり自民党二階派にフィットしているように、立憲民主党の中には、自民党内リベラル、宏池会に入っていてもおかしくない議員が山ほどいる。 嘘だと思うなら、「枝野ビジョン 支え合う日本」(文春新書)と「岸田ビジョン 分断から協調へ」(講談社+α新書)を読み比べてみればいい。表現が異なるだけで、言っている内容はそれほど大きな違いはない。 自民党支持者からは「ふざけるな、このサヨク!」と罵られ、立憲民主党支持者からは「テキトーなことを言うな、このネトウヨめ!」とお叱りを受けるだろうが、自民と立憲民主の議員が本質的に「同じ穴のムジナ」だという証拠は他にもある。 それは、文書通信交通滞在費(文通費)だ』、「自民と立憲民主の議員が本質的に「同じ穴のムジナ」」、確かに言われてみれば、そうなのかも知れない。
・『「政治とカネ」の問題は立憲民主党にも不都合?   ちょっと前に話題になったので覚えている方も多いだろうが、これは議員歳費(給料)とは別に毎月100万円、年間1200万円手渡される非課税の「第二給料」と言われている。 なぜかというと、この1200万円をどう使ったのか国会議員は国民に知らせなくていいからだ。極端な話、銀座で飲み歩いてもいいし、子どもの留学費用にあててもわからない。 つまり、子育て世帯への「20万円給付」であれほど大騒ぎをしていたが、なんのことはない、国会議員には平時から毎年1200万円のバラマキ給付金があるのだ。 旧ソ連などならいざ知らず、先進国でこんな前近代的な議員特権を放置しているケースは珍しい。当然、十数年前から1200万円もらったらその使い道をしっかりと公表すべきだという声が上がり、日本維新の会や国民民主党など一部の野党が徐々に使途公開へと踏み切っている。 しかし、全国会議員ではなかなか実現しない。自民党が反対しているということもあるが、いつもことごとく自民と逆をやる立憲民主党も公開に踏み切らないからだ。 普通に考えれば、自民や公明の「政治とカネ」の問題がこれだけ出ている中で、立憲民主党が日本維新の会のように使途公開すれば、力いっぱい自民批判ができる。しかし、西村智奈美幹事長は12月28日の記者会見で「全議員が同じルールの下で公開することによって初めて意味を持ってくる」と述べるなど、思いっきり腰が引けている。 なぜか。自民党が、議員に配られる1200万円の内訳を白日の元にさらされると、いろいろと都合の悪いのと同じように、立憲民主党にも都合の悪いことがあるからとしか思えない。 少し前、自民の国会議員が選挙時に、「県議会のドン」と呼ばれる県議から裏金を要求されたと告発したことがあったように、日本の政治は、いまだに「現金」で票固めをしているような人々もいる世界だ。文通費もその原資となっているという指摘もある。 いずれにせよ、いつも互いに批判し合っている自民党と立憲民主党だが、議員定数の削減や文通費など「自分たちの特権を守る」という話になると、まるで同じ党なのかと錯覚するほど意見が合っている。本質的なところで守りたいもの、変えたくないことは一緒なのだ。 この「自民と立憲民主は同じ穴のムジナ」という問題が解消されない限り、立憲民主党には「ブーメラン」が刺さり続けるのではないか』、「文書通信交通滞在費」について、「日本維新の会や国民民主党など一部の野党が徐々に使途公開へと踏み切っている」にも拘らず、「立憲民主党」の腰が重いとは残念至極だ。「立憲民主党」の猛省を促したい。

第三に、本年1月10日付け東洋経済オンラインが掲載した取材記者グループのFrontline Pressによる「昨年も180万部減、全然止まらぬ「新聞」衰退の末路 「毎日」「産経」規模の部数が毎年消失している」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/500413
・『2021年末に公表された日本新聞協会の最新データで、一般紙の総発行部数が3000万部割れ寸前まで落ち込んだことが明らかになった。 日本の新聞は高度経済成長期の1966年に3000万部台に乗り、その後は1990年代末の5000万部超まで拡大した。しかし、その後は下降を続け、部数減が止まる気配はまったくない。このまま進めば、本年中に一般紙は3000万部台を割り込むことが確実。高度経済成長以前の水準にまで落ち込むのも時間の問題になってきた』、「本年中に一般紙は3000万部台を割り込むことが確実」とはずいぶん減ったものだ。
・『新聞離れに一定の歯止め?  日本新聞協会が2021年12月下旬に公表した同年10月時点のデータによれば、スポーツ紙を除く一般の日刊紙97紙の総発行部数は、前年比5.5%(179万7643部)減の3065万7153部だった。20年前の2001年には4700万部、10年前の2011年には4400万部を数えたものの、今や3000万部割れが目前である。 新聞協会のデータを公表前に見た全国紙の経営幹部は、「思ったほど減少率が大きくなかった。減り方は鈍化したと言える。コロナ禍で人々が正確な情報を欲し、それが新聞離れに一定の歯止めになったのではないか」と推察した。 この幹部が言うように、前年2020年10月時点のデータと比べると、減少の速度はやや緩やかになった。スポーツ紙も含めた1年前の発行部数は3509万1944部。2019年との比較では7.2%減で、その減少幅は過去最大だった。これまでに例のない落ち込みというインパクトは強烈だったから、「7.2%減」が「5.9%減」になったことに少しでも安堵したいという気持ちはよくわかる。 しかし、読者の「紙離れ」に、もうそんな気休めが入り込む余地はない。 次の表を見てほしい(※外部配信先では図をすべて閲覧できない場合があります。その際は東洋経済オンライン内でお読みください)。 右端の欄が対前年の減少部数を示したものだ。数字の「赤い文字」は対前年でマイナス、「黒い文字」はプラスである。「黒い文字」も2回を数えるが、ほとんど真っ赤だ。しかも、直近になるにつれ、マイナス部数が急増していることがわかる。 特に2017年以降は厳しい。毎年、対前年で100万部以上の減少が続き、2017~2021年の5年間では合計916万部余りが消し飛んだ。読売新聞は日本一の700万部以上を有するとされるが、それと同じ規模の部数が5年足らずで丸々消えてしまった勘定だ。1年単位で考えても毎日新聞(約200万部)や産経新聞(約120万部)クラスの新聞が1つ2つなくなっている』、「1年単位で考えても毎日新聞(約200万部)や産経新聞(約120万部)クラスの新聞が1つ2つなくなっている」、確かに「新聞離れ」は想像以上に進んでいるようだ。
・『コスト負担に耐えかねて夕刊廃止も止まらず  2021年のデータで発行形態別の数字を見てみよう。それによると、朝夕刊セット部数の合計は648万4982部(10.6%減)となった。これに対し、朝刊単独の部数は2591万4024部(4.2%減)で、夕刊単独は62万8129部(19.0%減)。夕刊離れが特に著しいことがわかる。 かつて、紙で新聞を読む人の大半は、同じブランドの新聞を朝刊も夕刊も読んでいた。そうした「セット」購読層は今後、稀有な存在になっていくだろう。読者が夕刊の購読をやめる前に、コスト負担に耐えかねて「休刊」という名の夕刊廃止に踏み切った新聞社も少なくない。 特に地方紙でそれが目立つ。広告がほとんど入らないため、広告スペースを自社関連の出版物や催しの案内で埋めざるをえなかった新聞も多い。これに配達員不足が加わり、多くの新聞社で夕刊はお荷物でしかなくなったのだ。 主な夕刊廃止の動きをざっとまとめておこう。◎は地方紙よりも発行エリアの狭い「地域紙」であり、かつ、もともと夕刊しか発行してない。 【2021年】 ◎根室新聞(北海道)、◎千歳民報(同)、◎両毛新聞(栃木県)、◎近江同盟新聞(滋賀県)、熊本日日新聞 【2020年】東奥日報(青森県)、山陽新聞(岡山県)、徳島新聞、高知新聞、大分合同新聞 【2010~2019年】岩手日報、秋田魁新報、岐阜新聞、◎岡山日日新聞、中国新聞(広島県)、沖縄タイムス(沖縄県)、琉球新報(同) 2009年以前には、早々と北日本新聞(富山県)や南日本新聞(鹿児島県)などが夕刊から撤退し、夕刊紙の名古屋タイムスは廃刊した。また、朝刊だけの発行だった茨城県の常陽新聞は2017年に廃刊した。こうした動きはさらに強まっており、新聞界に影響力を持つ有力新聞が夕刊発行の停止に踏み切るとの話もくすぶっている』、「夕刊」は読む価値が小さくなり、「廃止」されても読者は困らないだろう。
・『あと5~6年で最終局面を迎える  ここ数年、日本では「新聞社はあと5~6年で最終局面を迎える」「淘汰と合従連衡が本格化し、新聞のないエリアが生まれ、そこがニュース砂漠になる」といった議論が絶えない。 ニュース砂漠とは、経営破綻によって新聞が存在しなくなるという「ニュースの空白地域」だけを指す言葉ではない。地域の議会や行政に対して恒常的に目を向ける存在がなくなることによって、社会に対する住民の関心が薄れ、政治・行政の不正や不作為などが進行する状態を意味する。 「ニュース砂漠」については、アメリカのノースカロライナ州立大学がまとめた「ニュース砂漠とゴースト新聞地方ニュースは生き残れるか?」に詳しい。それによると、アメリカのニュース砂漠は次のような状況だ。 【消えゆく新聞社】過去15年間で、アメリカでは2100の新聞が失われた。その結果、2004年に新聞のあった少なくとも1800の地域が、2020年初めに新聞がない状態になる。消えゆくのは経済的に苦しい地域の週刊新聞紙がほとんどだ。 ただ、この1年でオハイオ州ヤングスタウンの日刊紙The Vindicatorと、ワシントンDC郊外のメリーランド州の週刊紙The Sentinelの2紙が閉鎖されたことは特に注目すべきだ。オハイオ州ヤングスタウンは、現存する唯一の日刊紙を失った全米初の都市となった。また、The Sentinelの廃刊はメリーランド州モンゴメリー郡の経済的に豊かな住民100万人から地元紙を奪うという、これまでには考えられない事態を招いた。 【消えゆく読者とジャーナリスト】 新聞の読者とジャーナリストの半数も、この15年間で姿を消した。現存する6700紙の多くは、新聞社も読者も激減し、かつての面影はなく、「幽霊新聞」と化した。こうした実態は地方紙の影響力低下を物語っており、デジタル時代の地方紙が長期的に経営を継続できるのかという疑問を突きつけた。 東北の有力地方紙・河北新報(本社仙台市)は2022年の年明け、アメリカ取材も踏まえた企画記事「メディア激動米・地方紙の模索」を掲載した。 その中では、ノースカロライナ大学の調査などを引用しながら、次のように実情を紹介した。 「2004年には8891紙が発行されていたが、4分の1の2155紙が廃刊した。新聞広告の売り上げは2005年の494億ドルから、2020年には88億ドルと8割減った。業界の縮小にもかかわらず、投資ファンドが買収を繰り返した。ガネット、アルデン・グローバル・キャピタル、リー・エンタープライゼズの上位3グループだけで、全日刊紙の3割超を傘下に収める。過酷なリストラなどの経費削減で利益を生み出すファンドの方針を背景に、新聞社編集局の人員は7万1640人(2004年)から、3万820人(2020年)と半分以下に落ち込んだ」 「全3143郡のうち、新聞がないか、週刊の新聞が1紙しかない地域は1753郡で半数を超えた。ニュース砂漠の住民は選挙で投票しない傾向にあるほか、高貧困率、低い教育水準などと関連するとのデータがある」 日本では戦後、大都市圏で地域密着の新聞が育たなかった。「東京」の名を冠した東京新聞でさえ、都政はともかく、東京23区や都下の各自治体については行政や議会をくまなく継続的にウォッチしているとは言いがたい。大阪も似たような状況だ。 冒頭で紹介した日本新聞協会の2021年10月のデータを全国12の地区別でみると、対前年比の減少率は大阪(8.0%減)、東京(7.3%減)、近畿(6.5%減)の順に大きい。新聞メディアの崩壊はもう避けられないが、日本の場合、ニュース砂漠の影響は大都市圏から現れる――いや、実際にすでに現れているのかもしれない』、「日本」では「あと5~6年で最終局面を迎える」。いまのところ「新聞」を対象にした「ファンド」はまだない筈だが、「ニュース砂漠」化の進展につれ、「リストラ」を主導する主体として、「ファンド」が出現するのかも知れない。
タグ:メディア (その29)(インタビュー【経営編】/朝日新聞社社長 中村史郎 朝日新聞の新社長、「赤字400億円」への痛切な反省、立憲民主が自民批判メディアに1000万円提供?「ブーメラン」が繰り返される理由、昨年も180万部減 全然止まらぬ「新聞」衰退の末路 「毎日」「産経」規模の部数が毎年消失している) 東洋経済Plus 「インタビュー【経営編】/朝日新聞社社長 中村史郎 朝日新聞の新社長、「赤字400億円」への痛切な反省」 「繰延税金資産を取り崩した結果、純損益では創業以来最大となる441億円の巨額赤字を計上」、とは本当に厳しい決算だ 「デジタルシフト」については、「最初は「喰い合う」警戒感が私たち自身にあった」が、いまは「紙にはない見せ方、動画や音声など(コンテンツが)独自の進化を遂げている」、気づくのが遅きに失したきらいがある。 「新聞購読料の補助廃止」を「ここは無理できないと思い、提案を引っ込めた」、弱腰だ。 「朝日新聞デジタルの編集長に外部から」、とは思い切った人事だ。これを機に「朝日新聞」が「デジタル」を中心に持ち直してほしいものだ。 ダイヤモンド・オンライン 窪田順生 「立憲民主が自民批判メディアに1000万円提供?「ブーメラン」が繰り返される理由」 「自民党」に続いて、「立憲民主党が「公共メディア」にお金注ぎ込みネガキャン」、とはいい加減にしてほしい。 「現時点の状況を見ている限りは残念ながら、「Dappi」と同じ穴のムジナのような気がしてしまう」、なるほど。 「「Choose Life Project」で「Dappi」関連コンテンツが1本しかないという事実が、津田氏らが指摘する、「立憲民主党から1000万円以上の番組制作費をもらった」という話に、妙に説得力を持たせてしまっているのだ」、その通りなのかも知れない。 「自民と立憲民主の議員が本質的に「同じ穴のムジナ」」、確かに言われてみれば、そうなのかも知れない。 「文書通信交通滞在費」について、「日本維新の会や国民民主党など一部の野党が徐々に使途公開へと踏み切っている」にも拘らず、「立憲民主党」の腰が重いとは残念至極だ。「立憲民主党」の猛省を促したい。 東洋経済オンライン Frontline Press 「昨年も180万部減、全然止まらぬ「新聞」衰退の末路 「毎日」「産経」規模の部数が毎年消失している」 「本年中に一般紙は3000万部台を割り込むことが確実」とはずいぶん減ったものだ。 「1年単位で考えても毎日新聞(約200万部)や産経新聞(約120万部)クラスの新聞が1つ2つなくなっている」、確かに「新聞離れ」は想像以上に進んでいるようだ。 「夕刊」は読む価値が小さくなり、「廃止」されても読者は困らないだろう。 「日本」では「あと5~6年で最終局面を迎える」。いまのところ「新聞」を対象にした「ファンド」はまだない筈だが、「ニュース砂漠」化の進展につれ、「リストラ」を主導する主体として、「ファンド」が出現するのかも知れない。
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2022年展望(その3)(展望2022:日本株は堅調 最高値に迫る予想も 自動車は供給制約緩和に期待、2022年の視点:岸田首相の「安倍離れ」と日銀緩和縮小の思惑=上野泰也氏、日本経済のミイラ化が招く「21世紀の2.26事件」…それが2022年恐怖のシナリオ・・・ジャパンマネーの大エクソダス) [経済政治動向]

2022年展望については、1月2日に取り上げた。今日は、(その3)(展望2022:日本株は堅調 最高値に迫る予想も 自動車は供給制約緩和に期待、2022年の視点:岸田首相の「安倍離れ」と日銀緩和縮小の思惑=上野泰也氏、日本経済のミイラ化が招く「21世紀の2.26事件」…それが2022年恐怖のシナリオ・・・ジャパンマネーの大エクソダス)である。

先ずは、1月3日付けロイター「展望2022:日本株は堅調、最高値に迫る予想も 自動車は供給制約緩和に期待」を紹介しよう。
https://jp.reuters.com/article/outlook-2022-japan-stock-idJPKBN2J306W
・『2022年の日本株は堅調となり、日経平均は3万円を回復するとの見方が多い。主要国の中銀が金融政策の正常化に向かう中、世界経済の不透明感が強まるリスクがつきまとうが、日本株は出遅れからの見直しが進み、過去最高値に迫るとの予想もある。セクター別では、自動車関連が供給制約の緩和期待で有望視されている。インフレ下で上昇しやすい不動産にも関心が向かいそうだ。半導体関連は需要の継続力が注目点になる。 市場関係者の見方は以下の通り』、興味深そうだ。
・『堅調な年に、景気に自信深めれば日経平均3万2000円も<JPモルガン証券 チーフ株式ストラテジスト 阪上亮太氏>  来年の日本株は、アップサイドの余地が残る一方、下値は限定的で、堅調な年になりそうだ。世界経済が再開していく中で、企業業績は22年に11%、23年に7%の増益が見込まれる。1年先の株価収益率(PER)は、米国の21倍、グローバル平均の18倍に対し、日本は14倍弱と開きは大きく、出遅れ感のある日本株は見直されやすい。 FRBが利上げを実施する中でも世界景気の堅調が続き、市場が自信を深める局面では3万2000円に向けて上昇するだろう。 海外で日本株を保有する投資家は少なく、買い増しの余地がある。ファンダメンタルズの改善で主要国から遅れている日本株は、海外の株式市場がピークアウトしていく中で比較的堅調になるだろう。米国で利上げが始まれば、先行して上昇してきた米株から出遅れ国・地域への資金シフトが起こり得る。日本株は、新興国に次ぐ受け皿の候補になり得る。 セクター別では、自動車の業績とバリュエーションのバランスの良さに注目している。今後、供給網問題が緩和して業績の回復感も強まっていくだろう。不動産も有望だ。インフレとなる際に、株価が上がりやすい。経済再開の動きが強まればオフィス空室率もピークアウトするだろう。グローバルに利上げ局面に入る中で、金利感応度の高い銀行も買われそうだ。企業が抑制していた設備投資を再び拡大する中では、ITサービスの成長性も高い。 ただ、全体では大きく盛り上がる様子でもない。米国の金融政策正常化が進む中で米株安となれば、やはり日本株は上値を抑えられるリスクがつきまとう。日本では経済安全保障推進法の議論が浮上しており、日中関係への影響にも注意が必要だろう。参院選は重要イベントだが、現状では無風通過をメインシナリオとしている。 日経平均の2022年予想レンジ:2万8000―3万2000円』、なるほど。
・『年半ばに調整局面 テックサイクルのピークアウト感が頭抑える<大和証券 チーフテクニカルアナリスト 木野内栄治氏>  2022年の株式市場は、中盤にかけて調整局面が訪れるとみている。その大きな要因は、米国で春ごろにテックサイクルがいったんピークアウトするとみられること。これまで半導体関連株が相場をリードしてきたが、これらが調整することによって、株式市場は影響を受けることになりそうだ。 国内については、岸田政権が打ち出した「単年度予算」の弊害是正が進行するかが注目点となる。これが進行すれば、重要インフラの整備がより進むことに繋がるため、政策課題としては大きなポイントになりそうだ。22年は夏に参議院選挙を控えるが、この単年度予算の修正が進めば、与党が負けることはないだろう。 米金利については、テックサイクルの調整によって景気に不透明感が強くなれば、米金融当局も年後半にはハト派に傾斜するのではないか。一方、新型コロナウイルスに関しては完全に織り込むのは難しいだろう。日経平均は6月ごろに2万4000円までの調整がありそうだが、その後は上向き、来年度末の2023年3月には3万3000円を指向すると想定している。 物色面では、自動車、通信、電子部品などが考えられるが、5Gなど通信関連の設備投資に一巡感が出た場合、金融株に戻る可能性も出て来る。 日経平均の2022年予想レンジ:2万4000─3万1000円』、「米金利については、テックサイクルの調整によって景気に不透明感が強くなれば、米金融当局も年後半にはハト派に傾斜するのではないか」、心強い見方だ。
・『上昇基調を維持、懸念材料は時間の経過とともに和らぐ <三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト 市川雅浩氏>  来年のマーケットを取り巻く環境は、いくつかの注意すべき懸念材料があるものの、日本株は上昇基調を維持するとみている。底堅い企業業績とともに、株価は上向きに推移するだろう。日経平均の値がさ株やグロース株が引き続き日本株のけん引役になるとみている。 変異株の感染動向、世界的な供給制約、物価の高止まり、金融政策正常化などは、引き続き注視すべき材料ではあるものの、大きな波乱要因にはならない。オミクロン株を巡ってはコロナワクチンのブースター接種(3回目・追加接種)の効果が見え始めているほか、飲み薬の開発にも進展が見えており、重症化のリスクは抑制されている。 また、供給制約を巡っては、主要メーカーは調達の目途がついてきており、2022年半ばからは正常化するとみている。いったん目途がつくと、価格上昇に一服の兆しが見え始める。米連邦準備理事会(FRB)も景気が冷え込むほど速いペースで利上げを行うとは考え難く、いずれも時間の経過とともに脅威ではなくなるだろう。 注目すべきイベントは、夏に行われる参院選だ。自民・公明の与党が勝利するとなると、当面は国政選挙が行われない。岸田政権は長期安定政権に踏み出す布石として、早々に財政再建を進め、金融所得課税強化などといった株式市場が嫌気する政策を打ち出す可能性があるので、注意が必要だ。 日経平均の2022年予想レンジ:2万7300─3万5300円)』、「供給制約を巡っては、主要メーカーは調達の目途がついてきており、2022年半ばからは正常化するとみている。いったん目途がつくと、価格上昇に一服の兆しが見え始める」、インフレには強気の見方だ。
・『日経平均は見直し進む 反市場主義的スタンスに警戒も <マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木隆氏>  来年は日本株の見直しが進むとみている。主要な中銀が金融引き締めの方向に向かい、世界経済の成長は鈍化が見込まれる一方、回復で出遅れた日本経済は来年にかけて回復基調が鮮明になり、日銀による金融緩和の継続も相まって、相対的にファンダメンタルズ良好と評価されるだろう。 足元の日経平均PER13倍台は歴史的な低水準で、堅調な企業業績の織り込みはこれからといえる。よほどのショックがあれば瞬間的に下落する場面はあり得るが、下げ余地は大きくはない。国内の経済再開を受けて陸運、旅行関連は有望だろう。供給網の問題が解消に向かう自動車も期待できる。半導体関連も、5Gや電気自動車(EV)などで需要拡大が見込まれ堅調だろう。 新型コロナウイルスの感染拡大リスクはくすぶるが、人類はワクチン開発力や新たな生活様式の経験などを蓄えてきており、ネガティブなインパクトは抑制されるだろう。コロナ影響は沈静化に向かうというのがメインシナリオとなる。 日本企業の収益は今期、約5割の伸びが見込まれるが、来年は世界景気の鈍化を受けて6%程度に縮小しそうだ。1株利益(EPS)の伸びが限られる中、日経平均の株価収益率(PER)が歴史的な平均値である15倍程度に高まる中で、株価は3万8000円程度となるだろう。 ただ、日本株だけが選好されるような展開は想定しにくい。岸田文雄首相から金融所得課税や自社株買い規制への言及があった。成長戦略を欠くまま分配が強調されれば企業の活力が削がれ得る。反市場主義的なスタンスが続くようなら、外国人投資家は日本株を敬遠しかねない。 日経平均の2022年予想レンジ:2万9000─3万8000円)』、ここで紹介された「市場関係者の見方」はおしなべて強気なようだ。

次に、1月3日付けロイターが掲載したみずほ証券のマーケット・エコノミストの上野泰也氏による「2022年の視点:岸田首相の「安倍離れ」と日銀緩和縮小の思惑=上野泰也」を紹介しよう。
https://jp.reuters.com/article/outlook-2022-idJPKBN2J61C2
・『岸田文雄首相は、2022年夏の参院選が終わってしまうと「安倍離れ」を急速に進めるのか──。仮にそうなる場合、日銀の次期総裁・副総裁人事にどのような影響が及び、異次元緩和や政府・日銀共同声明に何らかの変化は生じるのか。2021年12月、都内の首相官邸で代表撮影(2022年 ロイター) 仮にそうなる場合、日銀の次期総裁・副総裁人事にどのような影響が及び、異次元緩和や政府・日銀共同声明に何らかの変化は生じるのか。さまざまな食品の値上げが22年1─3月期を中心に予定されており、エネルギー高に加わる家計への打撃が及ぶ中、「悪い円安」論に乗る形で、岸田首相が「異次元緩和は修正されるべきだ」と考え出すようなことはないのか。 落ち着いている円金利市場と異なり、為替市場の一部では、日銀の金融政策に関する思惑がくすぶっているようである。 ドル/円相場の行方を考える場合には当然のことながら、米連邦準備理事会(FRB)の金融政策や米国株が主たるドライバーになる。利上げについてはその開始時期よりも利上げ局面の終着点(ターミナルレート)の水準の方が、はるかに重要である。 また、米国株は、利上げに関連して大幅な下落が続く場合、世界の金融市場を「リスクオフ」に傾けて、為替市場ではクロス円取引を中心に円買い圧力を増大させる要因となる。そうした点についてはコメントがすでに多数出ているので、ここでは視点を変えて、日銀の金融政策に何らかの変化が22年に生じる可能性について考えてみたい。 <アベノミクス修正はあるのか  岸田首相は12月23日に講演した際、日銀の金融政策に関し、物価目標2%の実現に向けて「努力すると期待している」と述べた。 この1カ月半ほど前、11月4日に首相官邸で黒田東彦総裁と会談した岸田首相は、内外の経済・金融情勢について意見交換した。物価目標2%を盛り込んだ13年1月の政府・日銀共同声明も話題になったという。安倍晋三内閣から菅義偉内閣に受け継がれたこの共同声明は、岸田内閣でも当面、そのまま維持される可能性が高い。 だが、仮に夏の参院選で自民党が勝利すれば、岸田首相の政治的求心力は強まる。すでに外相などの閣僚人選で安倍元首相の意向に反する動きが散見される岸田氏が「安倍離れ」を強めると、金融市場では冒頭にも述べた通り、「アベノミクス」の事実上の根幹である異次元緩和が何らかの形で縮小されるのではないかという思惑が浮上しやすくなる。 そうしたことを早めにけん制する狙いからなのかは不明だが、安倍元首相は12月26日のテレビ番組で、岸田内閣の経済政策について「根本的な進む方向をアベノミクスから変えることはすべきではない」「社会主義的な味付けになっていくのではないかととられると、市場も大変マイナスに反応する。成長から目を背けると思われないようにしないといけない」と述べた。 岸田内閣の「分配」重視路線は、海外の株式市場関係者の間では評判が良くないようである。「アベノミクス」を好感して海外勢が日本株を買い上げた経緯があるだけに、その修正を図る路線は、安倍元首相の言う通り、日本株の売り材料になる可能性が高い。 一方で、「アベノミクス」の下で拡大したとされる所得格差を岸田内閣が政策的に是正することを、少なからぬ有権者が期待している。内閣支持率を高めの水準に維持するために岸田首相は「成長あっての分配」と口にしつつも、「分配」に目配りした政策を断続的に打ち出す必要があるだろう。 このジレンマの中で、「分配」に関する政策では岸田首相に一種の「さじ加減」が求められてくる。だが、そうしたジレンマの中で、仮に岸田内閣が日銀の異次元緩和の修正を何らかの形で活用しようとしても、確たる成果は得られにくいように思う。 <日銀ステルステーパリグンの意味>  海外投資家から日銀の金融政策に関連する質問が寄せられた際に、あぜんとすることがある。日銀がやっていることの実情は、外国人にはあまり知られていない。 FRBのように日銀はいつ「テーパリング」するのか、という不思議な質問が寄せられることがある。言うまでもなく、16年1月にマイナス金利を導入した際、日銀はターゲットを「量」から「金利」へと明確に切り替えているので、長期国債買い入れの金額にノルマは存在しない。日銀当座預金の政策金利残高にマイナス0.1%、10年物国債利回りにゼロ%程度という長短金利ターゲットを設定したイールドカーブコントロール(YCC)の下で、それと整合的なイールドカーブが形成されるような長期国債の買い入れを実施している。 21年11月末に日銀が保有している長期国債残高は、前年同月末比プラス16兆3265億円。ターゲットがまだ「量」だった頃、この数字はプラス80兆円を超えていたので、実態としては「テーパリング」的なことはすでに相当進んでいるわけで、これを「ステルス(隠密)テーパリング」と呼ぶ向きもある。 ETF(上場投資信託)買い入れはどうか。21年3月に行った金融緩和策の「点検」の際に日銀は、ETFの買い入れ手法を「柔軟化」したという体裁をとりつつ、相場急落時以外の買い入れは行わない態勢に移行した。ETFの新規買い入れからは事実上「撤収」したと言っても過言ではあるまい。 日銀は現在の金融緩和策の柱の1つとして、「オーバーシュート型コミットメント」を掲げている。これは「消費者物価指数(除く生鮮食品)の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで、マネタリーベースの拡大方針を継続することを約束するもの」である。 その一方、日銀は21年12月の金融政策決定会合で「新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペレーション」(コロナオペ)のうち、民間債務担保分は22年3月末で終了し、制度融資分とプロパー融資分は半年間だけ延長することを決定した。コロナオペの残高は足元で80兆円を超えている。満期到来でこれが全部なくなれば、マネタリーベースが落ち込むことは避けられない。海外投資家の間で「日銀は金融緩和縮小に転じたのではないか」「YCC見直しがあるのではないか」といった思惑が生じる可能性が潜在している。 <緩和修正の思惑と円高>  この点について、日銀はどう説明して乗り切りを図るのだろうか。12月会合における主な意見には「昨春以降のマネタリーベースの増加は、感染拡大による流動性需要の高まりに日本銀行が潤沢な資金供給で応えてきた結果である。今回の措置により短期的にマネタリーベースが減少しても、長期的な増加トレンドは維持されるため、オーバーシュート型コミットメントとは矛盾しない」「特別プログラムを全て手仕舞いすることになったとしても、それはコロナ禍対応の終了であり、『長短金利操作付き量的・質的金融緩和』のもとでの金融緩和の縮小を意味するものでは全くない」といった意見が出されたことが記されていた。 そうした日銀による説明(一種の言い訳)がどこまで為替市場で通用するかは見ものだが、それが本来的な意味での「異次元緩和の縮小」でないことは確かである。 このように、22年の日銀の金融政策に関しては、米国やユーロ圏の中央銀行のように「緩和の縮小」に動いているのではないかという思惑が為替市場で浮上する素地がある。 また、参院選が終了した後には、岸田首相の言動も市場の関心事になりやすい。FRBの利上げの限界が徐々に認識される中で、そうした日銀関連の思惑も加わると、ドル/円相場が110円ラインを越えてドル安・円高方向へと動く可能性が高まると、筆者はみている。 とは言え、結局のところ、日銀の異次元緩和は22年以降も淡々と続いていくことだろう。(上野泰也氏の略歴はリンク先参照)』、「22年の日銀の金融政策に関しては、米国やユーロ圏の中央銀行のように「緩和の縮小」に動いているのではないかという思惑が為替市場で浮上する素地がある」、「FRBの利上げの限界が徐々に認識される中で、そうした日銀関連の思惑も加わると、ドル/円相場が110円ラインを越えてドル安・円高方向へと動く可能性が高まる」、なるほど。

第三に、1月10日付け日刊ゲンダイが掲載した同志社大学教授の浜矩子氏による「日本経済のミイラ化が招く「21世紀の2.26事件」…それが2022年恐怖のシナリオ・・・ジャパンマネーの大エクソダス」を紹介しよう。
・『今年は過去にないほど先行きが見通せません。考えられる最も恐ろしいシナリオについてお話ししましょう。 世界中で突如としてインフレが再来しています。米FRB(連邦準備制度理事会)はこのインフレを一時的な現象と見るのをやめ、本格的な対応にシフトし始めました。英も利上げに踏み切り、EUもおおむね同様の方向です。それに対し、全く違う世界にいるのが日本。グローバルな展開からデカップリング(分離)してしまった日本に、これから何が起きるのか。とても気がかりですが、いよいよ日本経済がミイラ化する恐れがあると思います。 日本以外の国々がどんどん利上げに進めば、投資しても収益が上がらない日本から資金が国外へ逃げ出す。ジャパンマネーの大エクソダス(国外脱出)が起きれば、日本経済は金欠で干上がってしまう。すなわちミイラ化です。 それを阻止するために日本も金利を上げるとなれば、国債の利回りも上がって、国債価格は暴落する。政府の債務返済負担が一気に膨らみ、日本国政府の事実上の財政破綻状態があからさまになりかねません。だから現実には動けない。金融政策も財政政策もなす術なしです。 そこでどうするか。資本流出規制や金融鎖国をして財政と金融を一体運営し、統制経済下に置く。そうしなければ日本経済のミイラ化は防げないということです』、「日本以外の国々がどんどん利上げに進めば、投資しても収益が上がらない日本から資金が国外へ逃げ出す。ジャパンマネーの大エクソダス・・・が起きれば、日本経済は金欠で干上がってしまう。すなわちミイラ化です」、「それを阻止するために日本も金利を上げるとなれば、国債の利回りも上がって、国債価格は暴落する。政府の債務返済負担が一気に膨らみ、日本国政府の事実上の財政破綻状態があからさまになりかねません。だから現実には動けない。金融政策も財政政策もなす術なしです。 そこでどうするか。資本流出規制や金融鎖国をして財政と金融を一体運営し、統制経済下に置く。そうしなければ日本経済のミイラ化は防げないということです」、黒田総裁の罪はまことに深い。
・『賃上げしない大企業には懲罰を  「聞く力」=朝令暮改というフワフワ男のアホダノミクス(岸田首相)に対応力があるとは思えません。軟弱男に任せてはおけないと、自民党内の強硬派や、あるいは日本維新の会あたりが強権発動に動くかもしれません。 あたかも戦間期における軍部のようなヤカラが出てきて、厳しい経済運営をテコに、「軟弱なことを言っている場合じゃない」と憲法改正の議論も進んでいく。21世紀の2.26事件のような空恐ろしさを覚えるシナリオです。縁起でもありませんが、これを極論だと笑っているのは危うい。最悪シナリオを何としても避ける知恵が求められます。 まずは賃金が上がらないという閉塞状況からの脱却が急務でしょう。しかし、アホダノミクスの賃上げ政策はいただけない。「賃金を上げたら減税のご褒美」ではなく、「賃金を上げなければ罰金」と、大企業には懲罰的な迫り方をすべきです。もっと思い切った歯切れのいい政策を打ち出すべきなのです。 はやりのSDGs(持続可能な開発目標)やESG投資(環境、社会、ガバナンス重視の投資)では、「まともな賃金を払う」ことが重要なアジェンダになっています。これを盾に取って企業に賃上げを求めるという手もあるでしょう。賃上げをしなければ投資家に敬遠されたり、企業イメージがダウンしたりしますよ、という形で脅しをかけるのです。そうでもしないと、なかなか歪んだ経済実態をあるべき姿に戻していくことは難しいでしょう。異次元緩和がもたらした歪みは、異次元の対応をしなければ元には戻りません』、「「賃金を上げたら減税のご褒美」ではなく、「賃金を上げなければ罰金」と、大企業には懲罰的な迫り方をすべきです」、意欲的な案だ。「異次元緩和がもたらした歪みは、異次元の対応をしなければ元には戻りません」、言い得て妙だ。
タグ:2022年展望 (その3)(展望2022:日本株は堅調 最高値に迫る予想も 自動車は供給制約緩和に期待、2022年の視点:岸田首相の「安倍離れ」と日銀緩和縮小の思惑=上野泰也氏、日本経済のミイラ化が招く「21世紀の2.26事件」…それが2022年恐怖のシナリオ・・・ジャパンマネーの大エクソダス) ロイター 「展望2022:日本株は堅調、最高値に迫る予想も 自動車は供給制約緩和に期待」 堅調な年に、景気に自信深めれば日経平均3万2000円も<JPモルガン証券 チーフ株式ストラテジスト 阪上亮太氏> 年半ばに調整局面 テックサイクルのピークアウト感が頭抑える<大和証券 チーフテクニカルアナリスト 木野内栄治氏 「米金利については、テックサイクルの調整によって景気に不透明感が強くなれば、米金融当局も年後半にはハト派に傾斜するのではないか」、心強い見方だ。 上昇基調を維持、懸念材料は時間の経過とともに和らぐ <三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト 市川雅浩氏 「供給制約を巡っては、主要メーカーは調達の目途がついてきており、2022年半ばからは正常化するとみている。いったん目途がつくと、価格上昇に一服の兆しが見え始める」、インフレには強気の見方だ。 日経平均は見直し進む 反市場主義的スタンスに警戒も <マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木隆氏 ここで紹介された「市場関係者の見方」はおしなべて強気なようだ。 ロイターが掲載したみずほ証券のマーケット・エコノミストの上野泰也氏による「2022年の視点:岸田首相の「安倍離れ」と日銀緩和縮小の思惑=上野泰也」 「22年の日銀の金融政策に関しては、米国やユーロ圏の中央銀行のように「緩和の縮小」に動いているのではないかという思惑が為替市場で浮上する素地がある」、「FRBの利上げの限界が徐々に認識される中で、そうした日銀関連の思惑も加わると、ドル/円相場が110円ラインを越えてドル安・円高方向へと動く可能性が高まる」、なるほど。 日刊ゲンダイ 浜矩子 「日本経済のミイラ化が招く「21世紀の2.26事件」…それが2022年恐怖のシナリオ・・・ジャパンマネーの大エクソダス」 「日本以外の国々がどんどん利上げに進めば、投資しても収益が上がらない日本から資金が国外へ逃げ出す。ジャパンマネーの大エクソダス・・・が起きれば、日本経済は金欠で干上がってしまう。すなわちミイラ化です」、「それを阻止するために日本も金利を上げるとなれば、国債の利回りも上がって、国債価格は暴落する。政府の債務返済負担が一気に膨らみ、日本国政府の事実上の財政破綻状態があからさまになりかねません。だから現実には動けない。金融政策も財政政策もなす術なしです。 そこでどうするか。資本流出規制や金融鎖国をして財政と金融 「「賃金を上げたら減税のご褒美」ではなく、「賃金を上げなければ罰金」と、大企業には懲罰的な迫り方をすべきです」、「異次元緩和がもたらした歪みは、異次元の対応をしなければ元には戻りません」、言い得て妙だ
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インバウンド戦略(その14)(コロナで息絶えた中国人向けホテルの呆れた経営実態 インバウンドブームでホテルが急増した富士山麓の今、金持ち中国人が抱く「日本の観光業」への本音 インバウンドを牽引した彼らは何を思うのか、外国人消えたニセコ それでも「ホテル続々」の訳 パークハイアットに加え23年アマンも開業予定) [経済政治動向]

インバウンド戦略については、2020年10月17日に取上げたままだった。久しぶりの今日は、(その14)(コロナで息絶えた中国人向けホテルの呆れた経営実態 インバウンドブームでホテルが急増した富士山麓の今、金持ち中国人が抱く「日本の観光業」への本音 インバウンドを牽引した彼らは何を思うのか、外国人消えたニセコ それでも「ホテル続々」の訳 パークハイアットに加え23年アマンも開業予定)である。

先ずは、2020年11月10日付けJBPressが掲載したジャーナリストの姫田小夏氏による「コロナで息絶えた中国人向けホテルの呆れた経営実態 インバウンドブームでホテルが急増した富士山麓の今」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/62800
・『秋の富士山麓で妙なホテルに出くわした。ホテルの看板はかかったままだが、フロントまでのアプローチには落ち葉が積り、広い庭も手入れされている気配がない。従業員や客の姿は1人も見当たらない。どうも“廃墟”と化しているようだ。 エントランスで資材を運搬する施行業者に「このホテルには泊まれますか」と聞いてみたのだが、何の反応もない。彼らは日本語を話せないアジア人のようだ。 近くの飲食店に入り、従業員に「あのホテルはどうしたんですか?」と尋ねると、「中国人が経営するホテルですが、いろいろな噂があるホテルです。支配人が1カ月ももたずに交代してしまうという噂を聞いたことがあります」と言う。 新型コロナウイルスでとどめを刺されたということなのだろうか。インターネットのホテル予約サイトで検索すると、予約の受付は中止されていた』、「インバウンドブーム」で投資したケースは極めて多そうだ。
・『インバウンドブームで宿泊施設が急増  山梨県と静岡県にまたがる富士山麓周辺には、多くの宿泊施設がある。山梨県では2014年以降、旅館は年々減少したが、ホテルや簡易宿所は反比例する形で増加した。富士山麓周辺でもホテルや簡易宿泊施設が次々に開業した。) 富士山麓の宿泊施設で特徴的なのは、企業が手放した保養所などを中国資本が買い取ってホテルに改装するケースが多いことだ。冒頭のホテルも、日本の某上場企業が手放した保養所を中国資本が買い取った施設のようだ。 実はもともと富士山麓は日本人の観光客が少ない場所であり、宿泊施設も多くはなかった。富士山は遠方からでも見えるため、わざわざ山麓まで行って眺めてみようという人は少ない。 ところが2010年代に入ってからのインバウンドブームで、中国人観光客に照準を当てたインバウンド専門の宿泊施設が急増した。富士山麓の宿泊施設で働くRさんに訊ねると、「このあたりに中国資本の宿泊施設は100カ所近くあるのではないか」と話していた』、「中国資本の宿泊施設は100カ所近くあるのでは」、予想を上回る多さに驚かされた。
・『職場はブラック、客へのもてなしも皆無  そうした中国資本の宿泊施設では一体どんな経営が行われているのだろうか。今回、中国資本の宿泊施設に勤務した経験を持つ日本人男性Kさんから事情を聞くことができた。 Kさんは、中国のツアー会社が毎日のように団体客を送り込んでくるホテルで、受け入れを中心とした業務を担当していた。) 「ある中国系のホテルで働きましたが、まったく休みが取れない日が3カ月続きました。勤務時間は朝6時から23時までです。ひどいときは朝4時まで働き、ナイトフロントも担当しました。中国人スタッフもいましたが、宿泊者とのトラブル解決はすべて私がやらされました」 初任給は23万円。その後、若干の上乗せがあったとはいえ、とても激務に見合うものではなく、Kさんは1年で退職した。Rさんに意見を求めると「日本の労働基準法を完全に無視しています。文句を言わない真面目な日本人がこき使われているとしか思えない」と語る。 そもそも中国資本の宿泊施設の一部は、日本の法令を遵守しようという意識が希薄である。たとえば客との金銭の授受は中国の決済アプリを利用して行い、「ここはホテルではなく自分の別荘だ」と言い張る経営者も少なくない。Rさんは「そうした施設には、納税も期待できない」と言う。 Kさんが勤務していたホテルは、建物の老朽化が進み、客へのもてなしも皆無に等しかったという。「館内にはこれといった施設もなく、中国人観光客はチェックインしたあとはただ寝るだけでした。ツアーの内容もひどいもので、客は夜には外でラーメンや牛丼を食べさせられ、朝食はコンビニでパンを買わされていました」と振り返る。 初めて訪れた日本でこんな扱いをされたら、期待を膨らませて訪日した中国人観光客も日本に幻滅してしまうだろう』、「ツアー」内容の余りの酷さに驚かされた。
・『中国の旅行会社も吹っ飛んだ  なぜ、そんな状況が生まれたのだろうか。背景にあるのはダンピング競争である。 2015年前後に急激に拡大した日本のインバウンド市場において、団体客を受け入れる宿泊施設は常に「コストとの戦い」を強いられてきた。 かつては1人1泊8000円で提供していた宿泊施設も、中国の旅行代理店からの度重なる減額要求で5000~6000円への値下げを余儀なくされた。その金額では、とても手厚いサービスは提供できない。 さらに売掛金の回収問題が宿泊施設に追い打ちをかけた。中国の旅行代理店が、宿泊料金(ツアー料金の中の宿泊施設側の取り分)を決められた期日までに支払ってくれないのだ。宿泊客を送り込んでくれる中国の旅行代理店は、なくてはならない存在だが、集金はきわめて骨が折れるという。催促の電話をしてもとぼけられたり、居留守を使われたりしてしまう。互いに中国資本であっても、まともな交渉にならないのが実態だ。 あるインバウンド専門ホテルの経営者は「中国の旅行会社は、調子がいいときも支払いが悪い。コロナ禍となればなおさらです」と語る。確かに中国の旅行会社の経営は青息吐息だ。上海の旅行代理店に状況を尋ねてみると、こう説明してくれた。「当社は、当面のあいだ海外旅行の需要はないだろうとの見込みから、ツアー商品を国内旅行に完全にシフトしました。コロナのせいで、中には海外旅行部門を解散させた代理店や、会社ごと吹っ飛んでしまった代理店もあります」。 2019年の訪日外国人旅行者は3188万人。そのうち中国から訪れたのは959万人だった。中国人客が全体の3割と高いシェアを占める中で、団体ツアーを受け入れる宿泊施設は「質ではなく価格」という大陸式のダンピング競争に呑み込まれていった。新型コロナウイルスの感染が拡大する前までは空前のインバウンドブームが続いており、たとえ劣悪なサービスの宿泊施設でも高稼働が続いていた。 だが、コロナ禍によって状況は一変した。日本を訪れる中国人旅行客は消え、ダンピング競争にストップがかかった。事業者にとって損失は計り知れないだろうが、「インバウンドはどうあるべきかを考え直す機会だ」と、これを天の配剤と受け止める事業者もいる。インバウンドの第2ラウンドでは、渦に呑み込まれない経営がカギとなりそうだ』、「コロナ禍」の終息にはまだ時間がかかりそうだが、これを機に「インバウンドはどうあるべきかを考え直す機会だ」と、戦略を再構築すべきだろう。

次に、2021年2月27日付け東洋経済オンラインが掲載した三菱総合研究所研究員 の劉 瀟瀟氏による「金持ち中国人が抱く「日本の観光業」への本音 インバウンドを牽引した彼らは何を思うのか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/413599
・『世界でワクチン接種が始まっている今、オリンピックなど、観光産業の復興についての議論が再び視野に入ってきた。特に日本の観光産業を支えてきたと言っても過言ではないインバウンドはコロナ禍で一気に蒸発し、日本の観光産業に大きくダメージを与えている。 2014年からインバウンド、特に訪日中国人富裕層の動向を研究している筆者が知っている範囲でも、多くの企業や自治体が、消費金額と影響力が高い訪日中国人富裕層の誘致に取り組む予定だったのが、コロナ禍のため頓挫してしまい、「これからも来てくれるのか」と不安に思っている。 そこで今回は、中国の大都市に居住する若い富裕層(20~30代、世帯年収3000万円以上、資産2億円以上)9人にインタビューを実施。彼らは欧米への留学経験があるエリート層で、親日でもあり、日本の観光業にとっては欠かせない層である。さらにインタビューと合わせて、コロナが落ち着きつつある中国国内の観光事情も紹介する』、「中国の大都市に居住する若い富裕層」への「インタビュー」とは興味深そうだ。
・『コロナ前の状態に戻りつつある  日本ではまだまだ待ち遠しい「旅行」だが、中国では国内旅行が堅調で、回復傾向にある。春節で移動は制限されたものの、40日間で延べ17億人が移動したと報じられている。 今年の春節の移動者数はコロナ流行前の2019年と比べると4割程度少ないが、北京市の旅行収入は2020年の2.9倍になった。また、中国の真南に位置する海南島の離島免税品(中国国内にいながら買える免税品)売り上げは前年に比べ261%増の9億9700万元(約158億円)になった。徐々にコロナ前の状態に戻ってきていることがうかがえる。 富裕層たちへのインタビューによれば、昨年の初夏から今まで通りに国内旅行・出張をするようになったが、コロナ以前と比較すると大きく3つの変化が見られたようだ。 その1つ目は、中国国内のホテルや周辺の観光施設のレベルアップが著しいことだ。コロナ感染への心配もあり、最近の中国人はホテル内で楽しむ傾向が高い。上海や広州など大都市はもちろん、雲南省、四川省、福建省といった地方都市への関心もますます高くなっている。 富裕層を代表する旅行ブロガーのLulu氏は、「(仕事で世界中のいいホテル、リゾートに泊まっているが)この1、2年、国内のホテルのレベルアップは速い」と話す。特に中国国内のホテルのいちばんの弱点である「美意識」や「デザイン」が、近年海外でデザインの仕事をして帰国したデザイナーや、海外のデザインチームに発注することで改善されつつある。 中国人は世代と居住地の違いによって美意識に大きなギャップがある。50代以上の富裕層なら部屋の大きさなど貫禄あるデザインを好む。一方、無印良品のブランドを冠する「MUJIホテル」のような、「わびさび」の日本文化と美意識は若い世代に強く影響を与えている。そのため若い人たちは洗練されたデザイン(日本・先進国で称賛されたテイスト)を好む。「ミニマリズム」「シンプルで上品」そして「自然環境が良い」ホテルへのニーズが増えているのだ』、「若い人たちは洗練されたデザイン・・・を好む。「ミニマリズム」「シンプルで上品」そして「自然環境が良い」ホテルへのニーズが増えているのだ」、「50代以上の富裕層なら部屋の大きさなど貫禄あるデザインを好む」のとは大きな違いだ。
・『インテリアも購入できる高級ホテル  富裕層やブロガーの中で人気がある、雲南省のHyllaはその一例である。部屋から観光名所の玉龍雪山の絶景雲海が見えるよい立地にあるだけでなく、コンセプトからインテリアまで徹底的に若い世代の富裕層のニーズを意識して設計されている。 例えば、Hyllaにはアンティークの家具を扱うパートナーがいる。高価なSirocco chair、The Spanish Chair、ルイスポールセンのフロアランプ、イサム・ノグチのテーブル……、と、洗練された空間で宿泊客を魅了しているのだ。 なお、部屋ごとにデザインが異なり、気に入った家具・インテリアがあったら宿泊者は購入することも可能だ。 こうしたショールーム型のホテルは北欧や日本でも少しずつ増えている。高級で洗練されたセンスが良い家具やインテリアの使用感を試してみたい中国人富裕層にとっては嬉しいサービスである。 また、ホテルに泊まるたびにインテリアが販売されるため、部屋のデザインも変化している。そのためリピーターになりやすい。 つまり、週末や小旅行なら中国国内でも満足できそうな状況になりつつあるのだ。) 2つ目の変化は異国情緒が味わえる観光地が人気であることだ。その一例が、マカオである。マカオは感染者数が少なく、中国大陸の観光客を誘致するためにさまざまな策を講じている。例えば日本の「GoToトラベル」のような、一定額以上の買い物をすると、買い物券・旅行券はもちろん、フォーシーズンズなど高級ホテルの宿泊券がもらえるキャンペーンも行っている。 宿泊券の場合は、本人が3カ月以内にマカオを訪れなければいけない条件があるが、確実にリピーター育成につながる。実際、上海や北京に住んでいる若い富裕層は、中国国内でいちばん「異国情緒」を感じられるのはマカオだと認識しているようだ。インタビューでも月1回程度、飛行機でマカオに行くという話が多々聞こえてきた。 3つ目の変化は、ホテルだけではなく、中国国内でも海外並み、ないしはそれ以上のサービス・体験ができるようになっていることだ。数年前まで先進国でしか体験できなかったことが中国国内でもそれ以上にできるようになっている。 今回のインタビューで印象深かった一例は、高級ジュエリーのティファニーが手掛ける「ティファニーカフェ」だ。東京にもあるティファニーカフェだが、上海のほうが規模も大きくメニューも圧倒的に多い。 当初は中国人富裕層は国内しか遊びにいけないため、仕方がなく中国国内のコンテンツを楽しんでいたが、いまや中国国内のほうが国外よりも楽しめる状況になってきているのかもしれない』、「当初は中国人富裕層は国内しか遊びにいけないため、仕方がなく中国国内のコンテンツを楽しんでいたが、いまや中国国内のほうが国外よりも楽しめる状況になってきているのかもしれない」、これが事実であれば、「コロナ禍」終息後のインバウンド回復は盛り上がりを欠く可能性がある。
・『回復を下支えしている要因  こうした中国国内の観光業を下支えしているものは、2つあると考えられる。1つ目は全国規模の「健康QRコード」がコロナ感染の拡大をコントロールしていることである。 昨年3月の記事でもご紹介したとおり、ビッグデータを駆使している中国では、感染者との接触経歴、自己申告などに基づき、スマホに表示されるQRコードの色が変わる。どこにいってもよいのは「緑」で、緑であれば普通に生活・移動することができる。 「赤」「黄」では自宅などで隔離する必要がある。もちろん、現地の人からすれば不要だと思われる隔離政策もあるようだが、それでも「多少の不自由はあっても、トータルに考えたときに有効な方法だ」と考えている人々が大多数のようだ。 ちなみにインタビューした中国人富裕層は日本の新型コロナウイルス接触確認アプリのCOCOAの不具合や、感染者数のファックス送信や手動入力に仰天していたが、「自粛だけで感染をコントロールできてえらい、さすが日本」と感心もしていた。 2つ目の理由は最近のチャイナブームだ。日本にいると見方が違うかもしれないが、中国はコロナ感染状況を抑え込んだ国の1つでもある。 その結果、若い人たちには愛国心の高まりも見られつつある。また、国内のサービス業、ブランドは年々レベルアップしており、若者の中では「中国のよさを再発見しよう」という共通認識が形成されている。特にコロナ禍の観光では、今まであまり注目されなかった地方においても、センスがよいホテルも登場し、新しい人気スポットになっている』、「若者の中では「中国のよさを再発見しよう」という共通認識が形成」、「地方においても、センスがよいホテルも登場し、新しい人気スポットになっている」、多様化するのは望ましいことだ。
・『富裕層の日本に対する関心  中国国内の観光業はコロナ禍の中で、健康QRコードやチャイナブームといった相乗効果により、回復傾向にある。日本の観光業にとっては今まで相手にならなかったかもしれないが、今後「小旅行」「高級リゾート週末」などのジャンルにおいて、中国の観光業がライバルになる可能性がある。 ただその一方で、日本の観光業にとって希望が持てるデータも存在する。中国の旅行サイトCtripの調査では中国人が海外旅行解禁された後にいちばん行きたい国は日本だった。また、コロナが収束すれば、中国人の海外旅行は2022年にはコロナ前の2019年に戻るとの予測もある(中国出境游研究所)。 さらに今年の春節の中国で大ヒットになった映画『僕はチャイナタウンの名探偵3』(中国公開2021年2月12日、日本公開は延期)のロケ地は日本である。長澤まさみ、妻夫木聡など人気の俳優たちも参加し、中国版ツィッターのweiboで「はやく日本に行きたい」とのつぶやきもある。 前出のLulu氏の話を聞いても「周りの富裕層、ブロガーの友達は、今いちばん行きたいのはやはり日本だ」という。理由を聞くと、「中国国内の観光はハードの部分が急成長しているが、ソフトの部分はやはり日本にかなわない」ためだ。 「日本は近いし、食事もおいしいし、サービスが素晴らしい。細かいところまでデザイン性が高く、包装のレベルの高さにいつもドキドキする。ヨーロッパほどブランド品は安くはないが、本物だし、日本の化粧品のほうが中国人に合う」と話す。) それでは日本の政府、ないしは観光業はどうすればいいのか。まず考えられるのは、ワクチン接種が確認できるデジタルパスポートの検討だ。ワクチンを接種した人しか来日できないようにし、飲食店や店舗に入る際も提示を義務付けるなど、接客側と観光業者側双方に安心できる仕組みを検討するのは必須だと言える。ただ、より有効に機能させるためには、日本人にも同じような仕組みが必要だろう。 また、まだ日本に来られない富裕層や影響力が強いブロガーを取り込む策としては、「オンライン×オフライン」のサービスを検討する必要もあるだろう。コロナ禍ではリモート観光に取り組む事例も増えているが、例えば、観光コンシェルジュが中国人富裕層に日本の高級リゾートを案内しながら、体験してほしい商品も郵送するといった方法も考えられる。 子どもの短期留学をオンラインにして日本語や伝統文化が体験できるプライベートクラスを開催するのも1つの手だ。またM&Aなど富裕層の関心が高い案件(介護施設・健康関連への関心が高い)を紹介し、現地のオンライン訪問や、コーディネートをフォローするといったことも考えられそうだ』、「ワクチン接種が確認できるデジタルパスポート」、については国内の慎重論が優位を占めそうだ。
・『日本への旅行のニーズはまだまだ高い  日本の観光業者は、ポストコロナの訪日中国人富裕層へのアプローチを研究する際、上述の具体的な内容はもちろん、訪日中国人富裕層のニーズが変化しているというトレンドも忘れてはいけない。 以前、インバウンドで注目された商品など「モノ」の購入、そしてアクティビティーなどの「コト体験」は、今後海外旅行のニーズとしてますます顕著になるとみられる。 中国国内のデータ調査結果や今まで筆者が実施した富裕層へのインタビューからも、有名なレストランで食べて高いホテルに泊まるというニーズから、日本で食事・宿泊・観光することを通して文化・マナーの勉強をしたいというニーズへパラダイム・シフトが起きていることが見えてきている。 中国人観光客へのアプローチとして、スペインは、中国の海外旅行専門調査機関のビッグデータ分析サービス等を活用し、「地方」「自然」「小旅行」への対応を検討しているようだ。中国人の日本旅行へのニーズが高い今だからこそ、日本の観光業はコロナからの回復を待つだけではなく、富裕層のニーズ変化をとらえ、行動を起こす必要があるだろう』、「富裕層のニーズ」が、「中国の海外旅行専門調査機関のビッグデータ分析サービス等」にどの程度含まれるのかは疑問だが、何らかの方法で「富裕層のニーズ変化をとらえ、行動を起こす必要がある」。

第三に、8月21日付け東洋経済オンラインが掲載した ジャーナリストの山田 稔氏による「外国人消えたニセコ、それでも「ホテル続々」の訳 パークハイアットに加え23年アマンも開業予定」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/448634
・『7月中旬、北海道・ニセコを訪れた。ニセコは札幌から直線距離で南西に60kmほど離れた日本有数の国際リゾート地だ。 高級コンドミニアムやホテルが立ち並ぶ中心街(倶知安町のひらふエリア)に真夏の強い陽射しが照りつける。気温は30度を超えている。リゾート客でにぎわう冬とは様相が一変し、周囲は閑散としている。ゲレンデのふもとに設置されたトランポリンの遊具でオーストラリア人の親子が遊んでいるぐらいだ。タンポポが咲き誇る草むらの正面に見える羊蹄山の姿が美しい。 中心街をしばらく進むと、大型のコンドミニアムホテルの建設現場が見えた。数年前に訪れたときは「温泉調査中」の鉄塔が立っていたところだ。建設中の建物に近づいてみると、シンガポールの会社名と代表者の名前が記載されている。開発区域の面積は1万292㎡。工事着手は2018年10月、完了は2022年9月30日となっている。他の所でも建設中の物件や温泉の掘削が見られた。コロナ禍にもかかわらず、開発の手は緩んでいないようだ』、「コロナ禍にもかかわらず、開発の手は緩んでいないようだ」、外資系はさすが手堅い。
・『不動産広告を手に取ると…  国際リゾート地だけあり、このあたりの街並みの看板はほとんど英語表記だ。「REAL ESTATESALES」の立て看板の横にあるポストにFREE!と表示があり、ポストの中には物件情報誌が積み上げられていた。1冊入手してチェックする。気になる販売価格はどうなっているのか。 かけ流しの天然温泉風呂(内風呂、露天風呂)完備のヴィラ5億3800万円 茶室と専用ウッドデッキが備わった新築タウンハウスユニット3億6800万円 倶知安中心部国道5号線沿いの商業物件(1階は回転ずしエリアと厨房など、2階は事務所、居住エリア)1億4175万円 家具付き高級ブティック使用のコンドミニアム(1ベッドルーム)4890万円 こうした高額物件のオンパレードである。これがニセコエリアの不動産取引の一例だ。 国内外からの活発な投資を背景に、ニセコエリアの中心部にあたる倶知安町の2021年の公示地価は商業地、住宅地ともに上昇率が日本一となっている。商業地は4年連続、住宅地は3年連続というから突出した存在だ。香港を中心とするアジア人投資家の取引が活発な土地ならではの現象である。北海道を代表する札幌の繁華街・ススキノ地区の地価が前年比で下落したのとは対照的だ。 「世界的にコロナ感染が拡大してからは訪れるのは国内のお客さんだけですね。外国人も国内在住の方です。昨年の緊急事態宣言では、冬場だけ働いていていた外国人が帰国できず、〝コロナ難民〟と言われていたのですが、そのまま住み着いた人たちもいます」(地元観光業者) また、2030年度末に北海道新幹線が延伸し、新函館北斗~札幌間の約212㎞が開業予定だ。同区間にはニセコエリアの倶知安駅も含まれ、駅前が整備される予定だ。さらに、2030年札幌五輪誘致の動きもある。 「一時と比べて投資熱は落ち着いたものの、北海道新幹線延伸などを見越した海外富裕層の投資活動は続いています」(同)という。 実際、今年に入りマカオなどでカジノを運営する大手グループがニセコでホテル等を開発すると発表。投資金額は400億円との報道もあった。また、6月にはマレーシア企業のコンドミニアム建設も報じられている。 開発エリアも拡大中だ。かつては冒頭のひらふエリアが開発の中心だったが、最近は少し離れたエリアでも開発が盛んだ。 たとえば、昨年オープンした外資系高級ホテル、パークハイアットニセコHANAZONOや2023年開業予定の同じく外資系高級ホテルのアマンニセコが位置するエリアは、それぞれ4~6km程度離れている』、凄い建設ラッシュで、「開発エリアも拡大中」とは頼もしい。
・『最新のデータを読み解くと?  ニセコへの投資熱は当分陰りそうにないが、こうした外国資本による北海道を中心とした全国の土地の売買が活発になったのは平成の半ばごろからだ。リゾート用地の場合、その土地の利用区分が森林であることが多い。森林の売買情報は林野庁、北海道林務局がとりまとめており、最新の統計が8月3日に公表された。 2020年1月から12月までの「外国資本による森林買収に関する調査の結果について」(林野庁)をみると、居住地が海外にある外国法人又は外国人と思われるものによる買収事例は、全国で12件、森林面積は22haとなっている。12件中8件が北海道で、面積は20ha。残りは神奈川県箱根町2件、京都市2件。 これに加えて国内の外資系企業と思われる者による買収が、全国で26件404haある。つまり2020年中の外資による森林買収の合計は38件、424haということになる。 コロナ禍前の2019年1月から12月のデータを見てみよう。まず居住地が海外にある外国資本による買収は全国で31件、163ha。国内の外資系企業による買収が31件、288ha。合わせて62件、451haとなっている。 2020年はコロナ禍の影響で海外の不動産関係者らの来日がままならなかったこともあり、買収事例が大幅に減少したとみられる』、なるほど。
・『外資の手に渡り続ける「北海道の森林」  これまでの買収を含め、北海道の森林をめぐる外資の所有状況はどうなっているのだろうか。北海道林務局森林計画課がまとめたデータをご覧いただきたい。 道内でもやはりニセコ地域に集中しており、面積ベースで約3分の1を占める。 2020年12月末現在、海外資本等(海外資本と国内の外資系の合計)による森林所有面積は、北海道全体で3085haにも及ぶ(所有者数は233)。 あまりにも広大過ぎてピンとこないが、3085haは30.85?だから、東京ドームでいえば656個分、自治体で言うと東京都板橋区(32.22?)、埼玉県三郷市(30.13?)くらいである。 過去10年の推移を見ると、外資による急速な森林買収の実態がより鮮明に浮かび上がってくる。 この10年ほどの間に、面積ベースでほぼ3倍に拡大しているのだ。 では、北海道の森林を取得しているのはどこの国が多いのか。直近2年のデータを見てみよう。 2019、2020年の外資(海外法人・海外企業の日本法人)による森林取得はあわせて47件・252haで、21件が中国(香港)だった。 利用目的でもっとも多いのは「資産保有」だ。転売してビッグマネーを手に入れようという投資目的である。次に目に付くのが、法人の「別荘地開発」や個人の「別荘用地」。あとは「太陽光発電」「鉱物資源の調査等」で、「不明」「未定」も少なくない』、「海外資本等・・・による森林所有面積は、北海道全体で3085ha・・・東京ドームでいえば656個分、自治体で言うと東京都板橋区(32.22?)、埼玉県三郷市(30.13?)くらい」、かなり広い面積を保有しているようだ。
・『外資による土地買収の是非  7月1日に発表された路線価(国税庁が発表する相続税等の評価基準となる地価。公示地価の約8割)では、6年連続で上昇率ナンバー1を続けていた倶知安町の中心地(道道ニセコ高原比羅夫線通り)の価格は72万円/㎡で前年比横ばいだった。路線価が落ち着いたことで、外資による買収に一段と拍車がかかる可能性さえある。 外国人による土地買収については、6月、自衛隊の基地や原子力発電所といった、安全保障上重要な施設の周辺などの利用を規制する「重要土地利用規制法」が成立した。 しかし、防衛拠点に絡まない森林などは対象外だ。北海道は水源地を守るために、水源保全地域内の土地所有者の権利移転について事前届け出制を条例で定めている。 森林法による森林取得の際の届け出制もある。しかし、届け出がどこまで正確に行われているか分からず、日本企業をダミーにするといった案件もあると指摘されている。 外資の手に渡る土地は森林だけに限らない。ゴルフ場やスキー場などすでに開発済みの土地も含まれる。これらを加えたら、とても30?程度では済まない。使途が不明なケースも少なくない。リゾート買収をめぐっては、夕張市の夕張リゾートのように外資の手に渡った揚げ句、倒産といったケースも出ている。こんなことになっては街の再興もままならない。 急速な開発でスキー場の混雑や温泉の湯量減少などの影響が出ている倶知安町は、環境保全に向け、未開発地が多い地区での大型ホテルの建設制限など規制強化に向け、具体案の取りまとめを進めているが、外資の土地取得制限は別問題だ。 もちろん、バブル崩壊後元気をなくしていた観光地がよみがえり、雇用を生み地元経済を活性化させているというプラスの面も大きい。しかし、10年後、20年後を見据え、土地利用や開発のあり方、資源維持などの観点から十分な議論が必要なテーマだろう。 国全体でも、より踏み込んだ立法措置も含めて考える時期ではないだろうか』、確かに、「10年後、20年後を見据え、土地利用や開発のあり方、資源維持などの観点から十分な議論が必要」、同感である。
タグ:インバウンド戦略 (その14)(コロナで息絶えた中国人向けホテルの呆れた経営実態 インバウンドブームでホテルが急増した富士山麓の今、金持ち中国人が抱く「日本の観光業」への本音 インバウンドを牽引した彼らは何を思うのか、外国人消えたニセコ それでも「ホテル続々」の訳 パークハイアットに加え23年アマンも開業予定) JBPRESS 姫田小夏 「コロナで息絶えた中国人向けホテルの呆れた経営実態 インバウンドブームでホテルが急増した富士山麓の今」 「インバウンドブーム」で投資したケースは極めて多そうだ。 「中国資本の宿泊施設は100カ所近くあるのでは」、予想を上回る多さに驚かされた。 「ツアー」内容の余りの酷さに驚かされた。 「コロナ禍」の終息にはまだ時間がかかりそうだが、これを機に「インバウンドはどうあるべきかを考え直す機会だ」と、戦略を再構築すべきだろう。 東洋経済オンライン 劉 瀟瀟 「金持ち中国人が抱く「日本の観光業」への本音 インバウンドを牽引した彼らは何を思うのか」 「中国の大都市に居住する若い富裕層」への「インタビュー」とは興味深そうだ。 「若い人たちは洗練されたデザイン・・・を好む。「ミニマリズム」「シンプルで上品」そして「自然環境が良い」ホテルへのニーズが増えているのだ」、「50代以上の富裕層なら部屋の大きさなど貫禄あるデザインを好む」のとは大きな違いだ。 「当初は中国人富裕層は国内しか遊びにいけないため、仕方がなく中国国内のコンテンツを楽しんでいたが、いまや中国国内のほうが国外よりも楽しめる状況になってきているのかもしれない」、これが事実であれば、「コロナ禍」終息後のインバウンド回復は盛り上がりを欠く可能性がある。 「若者の中では「中国のよさを再発見しよう」という共通認識が形成」、「地方においても、センスがよいホテルも登場し、新しい人気スポットになっている」、多様化するのは望ましいことだ。 「ワクチン接種が確認できるデジタルパスポート」、については国内の慎重論が優位を占めそうだ。 「富裕層のニーズ」が、「中国の海外旅行専門調査機関のビッグデータ分析サービス等」にどの程度含まれるのかは疑問だが、何らかの方法で「富裕層のニーズ変化をとらえ、行動を起こす必要がある」。 山田 稔 「外国人消えたニセコ、それでも「ホテル続々」の訳 パークハイアットに加え23年アマンも開業予定」 「コロナ禍にもかかわらず、開発の手は緩んでいないようだ」、外資系はさすが手堅い。 凄い建設ラッシュで、「開発エリアも拡大中」とは頼もしい。 「海外資本等・・・による森林所有面積は、北海道全体で3085ha・・・東京ドームでいえば656個分、自治体で言うと東京都板橋区(32.22?)、埼玉県三郷市(30.13?)くらい」、かなり広い面積を保有しているようだ。 確かに、「10年後、20年後を見据え、土地利用や開発のあり方、資源維持などの観点から十分な議論が必要」、同感である。
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環境問題(その11)(50兆円争奪戦に取り残される日本 脱炭素市場で影薄く グリーン覇権の衝撃【1】、「脱炭素」太陽光・風力ではどうにもならない現実 今までの経済活動を根底から見直す必要がある、まるでバブルなカーボン・クレジット市場 国際ルール統一に岸田政権は動くのか) [経済政策]

環境問題については、昨年8月27日に取上げた。今日は、(その11)(50兆円争奪戦に取り残される日本 脱炭素市場で影薄く グリーン覇権の衝撃【1】、「脱炭素」太陽光・風力ではどうにもならない現実 今までの経済活動を根底から見直す必要がある、まるでバブルなカーボン・クレジット市場 国際ルール統一に岸田政権は動くのか)である。

先ずは、昨年10月21日付け日経ビジネスオンラインが掲載したロンドン支局長の大西 孝弘氏による「450兆円争奪戦に取り残される日本、脱炭素市場で影薄く グリーン覇権の衝撃【1】」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00332/101900013/
・『脱炭素市場。それは成長が約束された市場である。世界各国は温暖化ガス排出量の削減義務を負い、再生可能エネルギーやEV(電気自動車)の産業振興を成長の起爆剤にする。変化を先取りした欧州企業は、「脱炭素の巨人」に生まれ変わった。かつて省エネや環境関連の市場を席巻した日本勢は復活できるのか。COP26(第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議)開幕直前。このシリーズでは、脱炭素市場における勝者の条件を探る。第1回は「450兆円争奪戦に取り残される日本」。 年間4兆ドル(約450兆円)の投資が必要だ――。 国際エネルギー機関(IEA)は10月13日に公表した世界エネルギー見通しで、脱炭素に必要な投資額として衝撃的な数字を示した。同時に世界のクリーンエネルギーに対する移行が、「あまりに遅い」と糾弾した。 各国政府に厳しい指摘となる一方、沸き立ったのは市場関係者だ。IEAは1970年代の石油ショックを機に経済協力開発機構(OECD)加盟国によって設立された組織で、もともと再エネ導入に積極的である。とはいえ、年間に必要な投資額を従来見通しの3倍と見積もった。今後の市場拡大を期待し、風力発電や再生燃料を手掛ける会社の株価は、IEAの発表以降に急上昇した。 IEAがこのタイミングで、衝撃的な見通しを示したのは理由がある。10月31日から英グラスゴーでCOP26が開催されるからだ。厳しい削減義務を負うことを避けたい政府にくぎを刺し、CO2削減の実効性を高めようとしている。自ら今回の世界エネルギー見通しを「COP26のガイドブック」と位置付けた。 95年の第1回から毎年開催されていたCOPだが、昨年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、初めて延期された。それだけにホスト国である英国は並々ならぬ意欲を燃やしており、オンラインではなくリアルでの開催を推進。ジョンソン英首相は、歴史的な内容での合意に意欲を見せている』、最終的には、石炭火力廃止、46カ国賛同 COP27議長国・英が声明 日米中印は未同意となった(11月5日日経)。
・『グリーンボンド活況  COPは政治だけの舞台ではない。経済界にとっても重要なイベントだ。なぜならCOPは、何度も脱炭素関連の市場拡大の号砲になってきたからだ。特に2015年に仏パリで開催されたCOP21のインパクトは大きかった。50年までに気温上昇を産業革命前から1.5度以内に抑える目標で合意し、温暖化ガス排出量を実質ゼロ(カーボンニュートラル)にすることが既定路線となった。世界各国が目標達成のために様々な政策を導入しているため、着実に需要が見込める市場となり、投資額は増え続けている。 米調査会社のブルームバーグNEFによると、20年の脱炭素関連の投資額は約5000億ドル(約56兆円)に上り、13年のおよそ2倍の規模となった。中心は再生可能エネルギーであり、この数年はEVの市場が急拡大している。多くの分野で新興国が世界経済をけん引しているが、脱炭素市場の特徴は、成熟社会である欧米で成長率が高い点である。 こうした動向を受け、多くの資金が環境関連に流れ込んでいる。資金使途を環境に配慮した事業に限定したグリーンボンド(環境債)の発行は右肩上がりだ。金融情報会社リフィニティブの調査によると、世界における20年のグリーンボンドの発行額は前年に比べ26%増の2226億ドル(約25兆円)に達した。 国際通貨基金(IMF)トップであるゲオルギエワ専務理事は、10月5日の講演で世界経済の見通しについて、「再エネの導入や自動車の低炭素化などで、世界の国内総生産(GDP)は20年代に約2%押し上げられ、3000万人の新規雇用が創出される可能性がある」と述べた』、「脱炭素関連の投資」などは力強い動きだ。
・『世界上位から消えた日本勢  この市場急拡大の波に、日本勢は乗り切れていない。かつては新エネルギー開発の国家プロジェクト「サンシャイン計画」などの後押しがあり、2000年代前半には太陽光パネル市場で、シャープや京セラなどの日本勢が世界シェアの上位を独占した。 だが、日本政府と電力会社が再エネ普及に対して消極的な姿勢を取り続け、日本メーカーも事業構造改革や投資をためらった結果、世界市場の中で急速に存在感を失った。かつて環境先進国と言われた国の姿は今はない。 逆に、欧州や中国の企業は、この巨大市場を貪欲に狙ってきた。汎用品になった太陽光パネルは、中国メーカーが積極投資で急成長。東日本大震災以降の太陽光発電バブルにおいて、日本のメガソーラーに導入されたパネルの多くは中国製だった。 単価が高く技術の差異化がしやすい製品群でも、日本勢は太刀打ちできていない。風力発電機の市場が拡大する中で、デンマークのヴェスタスや独シーメンスはリスクを取った投資で着実に成長した。三菱重工業はヴェスタスと14年に洋上風力発電機の合弁会社を設立し、世界シェア上位の常連だったが、経営の主導権を握れず20年に撤退した。 劣勢は続く。日本はノーベル化学賞を受賞した吉野彰・旭化成名誉フェローが開発したリチウムイオン電池など電池産業に強みを持つ。10年代前半には車載用蓄電池でパナソニックなど日本勢で世界シェア5割以上を占めていた。しかし、韓国勢や中国勢の技術開発力の向上や大規模投資により、日本勢のシェアは急落した』、「日本勢のシェアは急落」は確かに残念だ。
・『欧州や中国は官民一体となってEVシフト  そして、日本の基幹産業にもこの波は押し寄せている。自動車のEVシフトだ。トヨタ自動車がハイブリッド車で圧倒的なシェアを獲得したが、欧州や中国は官民一体となってEVシフトを進めている。 2020年にEV販売が急増し、市場が急拡大。世界シェア上位は、米テスラや独フォルクスワーゲン、中国の上海汽車集団が占める。日産自動車がいち早くEVに力を入れ、2014年は世界シェアのトップだったものの、この数年は日本勢の存在感が急速に薄れている。 こうした脱炭素市場の世界シェア上位企業の顔ぶれは、同じく市場が拡大するデジタル産業のそれとは特徴が異なる。デジタル産業は米国のGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)や、中国のBAT(百度、アリババ集団、テンセント)など新興企業が多い。一方の脱炭素関連事業では、重厚長大の伝統的な企業が事業構造転換を果たし、新たな市場をつかみ取っている。その点ではオールドインダストリーの厚みがある日本勢に、まだ復活のチャンスがある』、「オールドインダストリーの厚みがある日本勢に」、大いに頑張ってもらいたいものだ。

次に、11月16日付け東洋経済オンラインが掲載した独立したグローバルなシンクタンクのAPI地経学ブリーフィングによる「「脱炭素」太陽光・風力ではどうにもならない現実 今までの経済活動を根底から見直す必要がある」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/467028
・『米中貿易戦争により幕を開けた、国家が地政学的な目的のために経済を手段として使う「地経学」の時代。 独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく』、興味深そうだ。
・『日本のカーボンニュートラルへの意識変革の遅れ  「2050年のカーボンニュートラル実現」は、2020年末に菅義偉首相(当時)が声を上げたことで一気に注目を浴びるようになった。それを受けて、多くの日本企業が右往左往を始めるという状況にもなっている。 しかし、すでに日本はパリ協定に2016年4月には署名していたのである。55カ国以上、55%以上の排出量をカバーする国の参加が協定発効の条件だったため、まだ先と踏んでいたようだが、予想を超える多数の国々があっという間に署名し、何と同年11月に発効に至った。 つまり、条約遵守が前提なら、日本は4年前からカーボンニュートラルに取り組んでおくべきだったのだ』、多くの「多くの日本企業」にとっては、尻に火がつかない限り動き出さないようだ。
・『電力分野のカーボンニュートラル  カーボンニュートラル実現が最もやりやすいのは電力分野である。しかしその実現には、太陽光や風力だけではまったく届かない目標であることを認識しなければならない。バイオ発電もコストと量の両面で残念ながら強いオプションにならない。 実は、電力分野の問題の本質はコストよりも「量」にある。日本の平地の狭さと、遠浅の海の少なさがこの問題を深刻にしている。2018年現在、日本の発電の化石燃料が占める割合は77%。再エネを死に物狂いで入れるなら、太陽光を最大25%、未知数の洋上風力も含めた風力発電を最大20%、水力を最大10%と仮に置くと55%まで行くが、それでもまだ22%足らない。人口減で電力需要は減るという意見もあるが、EV(電気自動車)化やオール電化による電力シフトで相殺されてしまう。 だからこそ、原子力発電にも真剣に向き合う必要があるし、それでも足りないのでアンモニアや水素発電といった非化石の火力発電に注目が集まる。例えば水素発電は、LNG発電所という既存インフラが活用できる。コストの問題が難しいと言われるが、そんなことを言っている場合ではない、水素FITでも炭素税でもあらゆる政策手法を導入して水素活用を進めなければならない状況だ。 ちなみに水素発電を電力全体の10%に導入するには約600万トンの水素が必要だが、現状日本で生産される水素は99%が自家消費であり、流通する水素は1万トン程度。そのため、川崎重工やENEOSなどが進める海外での水素生産+輸入といった方策が必要になる。投資の巨大さと実現までの時間軸を考えると、そのための政策設計はこの2~3年が勝負だ』、国内生産は限られているので、「川崎重工やENEOSなどが進める海外での水素生産+輸入といった方策が必要になる」、なるほど。
・『再エネ拡大で必要となる電力インフラ側への対策  一方、再エネが5割になると何が起こるのかも考えないといけない。すでに九州では、増えすぎた太陽光による発電量を九州電力が受け切れなくなっている。太陽光や風力といった自然エネルギーは、発電できる時間帯に大きなムラがあるからだ。 現在の発電の主力を担う火力発電は、需要に応じた発電量の調節が可能である。そのため、再エネのようなボラティリティの高い電源や原子力のようなつねに同量で発電し続けるような発電側のムラを調整する役目を果たしてきた。 したがって、火力発電を減らすと、発電側で吸収できなくなる分のボラティリティが電力系統に大きな負担を強いることになる。発電の自由化と小売りの自由化という両側の「自由化」に挟まれた「規制側の」送配電インフラの調整力のキャパシティを超えることが、すでに経産省・エネ庁でも大きな問題となっている。 これを従来型の電力インフラ増強のみで対応すると、10兆円を超える資金が必要になるため、エネルギーマネジメント技術の高度化や蓄電池の活用の制度設計の検討が急ピッチで進められている。しかしこの分野は、政策が先行しビジネスモデルが後回しになりがちなため、誰も使わない制度にならないよう民間との連携が極めて大事である』、「発電の自由化と小売りの自由化という両側の「自由化」に挟まれた「規制側の」送配電インフラの調整力のキャパシティを超えることが、すでに経産省・エネ庁でも大きな問題となっている。 これを従来型の電力インフラ増強のみで対応すると、10兆円を超える資金が必要になるため、エネルギーマネジメント技術の高度化や蓄電池の活用の制度設計の検討が急ピッチで進められている」、「政策が先行しビジネスモデルが後回しになりがちなため、誰も使わない制度にならないよう民間との連携が極めて大事」、その通りだ。
・『電力以外の分野が求められる対策レベルの高さ  電力以外の分野が求められる措置はもっと厳しい。例えば産業分野でいちばんCO2を出す鉄鋼業界では、鉄の還元剤に使うコークスを別のものに転換させる必要に迫られている。まだ技術的にも確立していないが、水素還元による方法が有力とされている。 その場合、700万トンという先ほどの水素発電用以上の水素量が必要になるが、求められるコストレベルはさらに問題だ。現在、2050年の水素の価格はCIFベースで20円/N立方メートルにするという政府目標が示されている。チャレンジングではあるがこれが達成できると水素発電は実現化が見えてくる。ところが、鉄鋼で求められる水素の価格は約8円/N立方メートルという厳しいレベルなのである。 その他、産業分野で2番目に炭素排出量が多い化学業界では、完全なるリサイクルが必要だという議論になるだろうし、3番目に排出量の多いセメント業界では、CO2を吸着するセメントでカーボンニュートラルに近づけるという取り組みが発表されている。いずれも技術的にもコスト的にも大変な打ち手であり、各産業の厳しい状況がうかがえる。 運輸分野は、ガソリン車をすべてEVやFCVにすることが求められるだろう。電力側でのカーボンニュートラルが実現しているなら、走行時のカーボンニュートラルは達成できることになる。しかしながら、EVの製造時に出てくる炭素排出についてはまた別問題。家庭分野もオール電化。石油会社やガス会社にとっては前代未聞の深刻さだ』、「カーボンニュートラル」は実際には困難な課題だ。
・『「森林吸収源」への期待と木材需要の拡大  このように、個別対策を少し掘り下げただけでも、今までの経済活動を根底から見直す対策が必要になることがわかる。しかも、全分野でどんなに頑張っても、恐らく炭素排出量をゼロにすることはできない。だからこそ、(カーボンゼロではなく)カーボンニュートラルという言葉に意味が出てくる。ここで注目したいのが「吸収源」という考え方だ。 吸収源確保には、森林吸収対策、土壌改良による吸収強化、先ほど述べたセメント吸着などさまざまなやり方がある。ここでも量的な意味から考えると、圧倒的に森林吸収対策が重要である。木は成長するときに光合成をすることで、CO2を吸って有機物である木として炭素を貯め込んでくれるという、極めて優秀な吸収源なのだ。 ただし、日本の木は、もう成長し切った壮年の木が多い。森林面積がすでに相当多い日本でこれ以上森林自体を増やすことは難しいため、いったん木を切って、若木を植えて再度成長させることが必要だ。これで国内の森林の吸収力を最大限発揮できれば、全炭素排出量の20%分程度に相当する可能性がある。 木を切るなら、その木を使う需要が必要になる。もちろん、切った木を野原に積んでおく手もあるが、コストを賄うビジネスが回っていないとサステナブルにならない。そこで注目されるのが木造ビルだ。 建築着工統計によると、いわゆる戸建て住宅はすでにほとんどが木造だが、4階建て以上の建築物は逆に多くが鉄・コンクリートである。高層になると強度の問題があるが、10階建て未満の中層なら、住宅にせよ非住宅にせよ建築基準を満たせる技術が確立してきている。あとは耐火工法も踏まえたうえでのコストの問題をどうクリアするか。ここは民間だけでなく、政策とも連動した市場創造の工夫のしどころだ。 吸収源の扱いの国際的な枠組みはまだこれからだが、徐々に動きも出てきた。一方で日本の関係省庁は、すでに吸収源の重要さに気づき、国内政策の準備を始めつつある。国際的枠組みとも連動させ、実績でも世界をリードしたいところだ』、「吸収源の扱いの国際的な枠組みはまだこれから」、日本から積極的に提案してゆくべきだ。
・『カーボンニュートラルを日本にとってのチャンスに  カーボンニュートラルに向けた取り組みは、これまでに例がないほどの努力を要する。しかし、こういうときこそイノベーションのチャンス。ビジネスの世界で失速しつつあった日本企業の逆転のフィールドにできる可能性がある。 そのためにも、技術のイノベーションだけで考えるのは絶対にやめたい。ビジネスモデルを作り込み、政策が有機的に組み合わされることが必須だ。民間側は、意識を高くもち、制度や規制ができるのを待つのではなく自分たちでリードしていく気概で臨み、政府側は、リアルなビジネスを作っていくという心意気で相互に共闘していくことで道が開ける』、「民間側は、意識を高くもち、制度や規制ができるのを待つのではなく自分たちでリードしていく気概で臨み、政府側は、リアルなビジネスを作っていくという心意気で相互に共闘していくことで道が開ける」、同感である。

第三に、12月28日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した法政大学大学院教授の真壁昭夫氏による「まるでバブルなカーボン・クレジット市場、国際ルール統一に岸田政権は動くのか」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/291646
・『カーボン・クレジットの取引が盛り上がり、既にバブルの様相を呈している。一例が航空業界だ。二酸化炭素1トン当たりのクレジット価格は、21年1月4日の80セントから11月10日には8.35ドルに上昇した。価格高騰の原因の一つは、世界で統一されたルールがないことだ。わが国は、エネルギー政策の転換と脱炭素に関する国際ルール策定に、より真剣に取り組まなければならない』、「カーボン・クレジットの取引」には「世界で統一されたルールがない」、とは初めて知った。
・『国際統一ルールがなく短期的にはゆがんだ状況が続く  世界的に脱炭素の潮流が注目される中、カーボン・クレジットの取引が盛り上がっている。市場参加者の“準備不足”もあり、既にバブルの様相を呈している。 カーボン・クレジット取引とは、炭素税や排出量取引制度に代表される「カーボン・プライシング」(二酸化炭素の価格付け手法)の一つだ。具体的には、森林保護など温室効果ガスの排出削減事業を第三者が認証し、認証された削減量(クレジット)を民間企業が購入する。 航空や鉄鋼、石油など温室効果ガスの排出量が多く、なおかつ削減も難しい企業は、脱炭素が加速する環境下での事業運営に危機感を強めている。企業は社会の公器として利害関係者に脱炭素に取り組む姿勢を示し、理解と賛同を得なければならない。そのためカーボン・クレジット市場がバブルとなっている。最大の原因は国際統一ルールがないことだ。短期的にはゆがんだ状況が続くだろう。 その状況は是正されなければならず、国際統一ルールの策定は急務である。わが国は米国やアジア新興国との連携を強化してカーボン・プライシングなどに関する見解を共有し、脱炭素で国際世論をリードしようとする欧州委員会に「待った」をかけなければならない。脱炭素に関する国際ルール統一に岸田政権がどう取り組むかは、わが国経済の展開に決定的な影響を与える』、「脱炭素で国際世論をリードしようとする欧州委員会に「待った」をかけなければならない」、「欧州委員会」は欧州の利害を反映した案を出しがちなのだろうか。
・『1月の80セントから11月には8.35ドルに上昇  各国企業が脱炭素に取り組む姿勢を示すために、カーボン・クレジットの購入を増やしている。一部では投機的な取引が増えている。 その一例が航空業界のクレジット取引だ。2016年に国際民間航空機関(ICAO)は「国際航空のためのカーボンオフセット及び削減スキーム」(CORSIA)を採択し、21年からカーボン・クレジット取引が始まった。S&Pグローバル・プラッツによると、二酸化炭素1トン当たりのクレジット価格は、21年1月4日の80セントから11月10日には8.35ドルに上昇した。 また、森林保護に基づいたクレジット取引では、一部で本来の削減効果を上回るクレジット需要が発生している。これは行き過ぎだ。 価格高騰の原因の一つは、世界で統一されたルールがないことだ。 カーボン・クレジット取引の仕組みは、企業などが脱炭素(再生エネルギー利用や森林保護など)に取り組んで二酸化炭素排出量を削減し、削減分を第三者機関(政府やNGOなど)に認証してもらう。その上で、脱炭素に取り組む姿勢をアピールしたい(排出削減が難しい)企業に売る。 民間認証機関としては米国のベラやNGOのゴールドスタンダードが知られている。なお、カーボン・クレジット取引は、EUなどが定めた基準に従って運営される排出量取引制度(当局が規制対象の企業に排出の上限を割り当て、超過した企業が、上限に達していない企業の余剰分を公的な市場で買う制度)とは異なる。 認証基準について、政府や自治体が認証機関である場合は基準が厳しく、民間は甘い傾向にある。そのため、民間認証のカーボン・クレジット取引を活用する航空、石油などの企業が増えた。その結果、買うから上がる、上がるから買うという心理が強まり、カーボン・クレジット市場はバブルの様相を呈し始めた』、「カーボン・クレジット市場はバブルの様相」、とは困ったことだ。
・『航空業界や鉄鋼業界は「苦肉の策」として重視  航空業界などがカーボン・クレジット取引を増やす背景には、世界的な脱炭素の加速がある。ある国が脱炭素に取り組む姿勢を強めると、他の国や地域はその上をいく姿勢で脱炭素を進め、国際世論を主導しようとする。加速度的な脱炭素の進行に危機感や焦りを強め、民間認証のカーボン・クレジットを買わざるを得ない企業が増えている。 21年4月、わが国は30年度の温室効果ガス排出量を13年度比で46%削減し、50年のネットゼロを目指すと表明した。その後、アジアでは、韓国が50年までに石炭火力発電を廃止し、30年までに温室効果ガス排出量を18年比で40%削減すると発表した(従来目標は26.3%削減)。中国も海外での新しい石炭火力発電建設を行わないと表明した。 それに対抗するかのように、欧州委員会は脱炭素の取り組みを一段と強化し、新興国の脱炭素を支援することによって石炭火力発電所の廃止を前倒しで実現しようとしている。さらに欧州委員会は49年までに天然ガスの長期契約を原則として終了することも目指している。 その一方で、企業が脱炭素に取り組むには時間とコストがかかる。脱炭素によって、既存のビジネスモデルの維持が困難になるのではないかとの懸念が高まる業種も出始めた。その一つが鉄鋼業界だ。世界的に、鉄スクラップを溶解して鋼材を生産する「電炉法」を重視する鉄鋼メーカーが増えている。なぜなら、石炭を用いる高炉法では大量の二酸化炭素が排出されるからだ。 ただし、電炉法では不純物が混入し、超ハイテン鋼材など高付加価値型の鋼材生産に課題が残るといわれている。水素製鋼を目指すにしても、わが国や新興国にとって水素の製造や調達のコストは高い。脱炭素が加速する中で化石燃料を用いた事業運営に対する批判をかわすために、「苦肉の策」としてカーボン・クレジット取引を重視せざるを得ない企業は増えるだろう』、「脱炭素が加速する中で化石燃料を用いた事業運営に対する批判をかわすために、「苦肉の策」としてカーボン・クレジット取引を重視せざるを得ない企業は増えるだろう」、いわば恰好付けのためのようだ。
・『必要な国際ルールの策定 岸田政権はエネルギー転換を急げ  カーボン・クレジット市場のゆがみは是正されなければならない。必要なのは、国際ルールの統一だ。 航空業界のクレジット取引の場合、本来なら第25回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP25)がルールを定めるはずだった。だが、参加国の意見対立によって実現せず、結果的に、多種多様な認証基準に基づくカーボン・クレジット取引が急増した。その後、環境政策を重視する欧州委員会は脱炭素関連のルール策定を加速して国際世論の主導を狙っているが、COP26でもカーボン・プライシングや途上国支援をめぐり各国意見は食い違った。 わが国は、エネルギー政策の転換と脱炭素に関する国際ルール策定に、より真剣に取り組まなければならない。エネルギー政策転換に関しては、太陽光と風力を用いた発電を増やすことが必要だ。足もとでは総合商社が再生エネルギー関連事業を強化しており、そうした取り組みを支援する意義は大きい。 国際ルール策定に関しては、米国との連携強化と並行して、東南アジア各国に効率性の高い火力発電や、二酸化炭素の回収・再利用などの技術供与を増やすべきだ。それはわが国の脱炭素関連技術を支持し、見解に賛同する国が増加することにつながる。 そうした取り組みを進めることができないと、わが国は脱炭素に遅れる。その結果として、他の国や地域が主導したルールに受動的に対応せざるを得なくなる。国際ルール策定で主導権を取れなければ、本邦企業の競争力は低下し、経済にはマイナスの影響が及ぶだろう。 国際世論の意思決定は多数決のロジックに基づく。わが国は国際的に支持を得られ、なおかつ地球温暖化問題の改善に資する脱炭素の技術規格、カーボン・プライシングのルールなどを世界に明示し、より多くの賛同を得る必要がある。そのために岸田政権はエネルギー政策の転換を急ぎ、を世界に示さなければならない』、「東南アジア各国に効率性の高い火力発電や、二酸化炭素の回収・再利用などの技術供与を増やすべき」、それは日本側のPR材料に過ぎず、「火力発電」の扱いがどうなるかは不明だ。「わが国の脱炭素技術などの優位性」、があるのであれば、この際、大いに売り込むべきだ。
タグ:環境問題 (その11)(50兆円争奪戦に取り残される日本 脱炭素市場で影薄く グリーン覇権の衝撃【1】、「脱炭素」太陽光・風力ではどうにもならない現実 今までの経済活動を根底から見直す必要がある、まるでバブルなカーボン・クレジット市場 国際ルール統一に岸田政権は動くのか) 日経ビジネスオンライン 大西 孝弘 「450兆円争奪戦に取り残される日本、脱炭素市場で影薄く グリーン覇権の衝撃【1】」 最終的には、石炭火力廃止、46カ国賛同 COP27議長国・英が声明 日米中印は未同意となった(11月5日日経) 「脱炭素関連の投資」などは力強い動きだ。 「日本勢のシェアは急落」は確かに残念だ。 「オールドインダストリーの厚みがある日本勢に」、大いに頑張ってもらいたいものだ。 東洋経済オンライン API地経学ブリーフィング 「「脱炭素」太陽光・風力ではどうにもならない現実 今までの経済活動を根底から見直す必要がある」 多くの「多くの日本企業」にとっては、尻に火がつかない限り動き出さないようだ。 、国内生産は限られているので、「川崎重工やENEOSなどが進める海外での水素生産+輸入といった方策が必要になる」、なるほど。 「発電の自由化と小売りの自由化という両側の「自由化」に挟まれた「規制側の」送配電インフラの調整力のキャパシティを超えることが、すでに経産省・エネ庁でも大きな問題となっている。 これを従来型の電力インフラ増強のみで対応すると、10兆円を超える資金が必要になるため、エネルギーマネジメント技術の高度化や蓄電池の活用の制度設計の検討が急ピッチで進められている」、「政策が先行しビジネスモデルが後回しになりがちなため、誰も使わない制度にならないよう民間との連携が極めて大事」、その通りだ。 「カーボンニュートラル」は実際には困難な課題だ。 「吸収源の扱いの国際的な枠組みはまだこれから」、日本から積極的に提案してゆくべきだ。 「民間側は、意識を高くもち、制度や規制ができるのを待つのではなく自分たちでリードしていく気概で臨み、政府側は、リアルなビジネスを作っていくという心意気で相互に共闘していくことで道が開ける」、同感である。 ダイヤモンド・オンライン 真壁昭夫 「まるでバブルなカーボン・クレジット市場、国際ルール統一に岸田政権は動くのか」 「カーボン・クレジットの取引」には「世界で統一されたルールがない」、とは初めて知った。 「脱炭素で国際世論をリードしようとする欧州委員会に「待った」をかけなければならない」、「欧州委員会」は欧州の利害を反映した案を出しがちなのだろうか。 「カーボン・クレジット市場はバブルの様相」、とは困ったことだ。 「脱炭素が加速する中で化石燃料を用いた事業運営に対する批判をかわすために、「苦肉の策」としてカーボン・クレジット取引を重視せざるを得ない企業は増えるだろう」、いわば恰好付けのためのようだ。 「東南アジア各国に効率性の高い火力発電や、二酸化炭素の回収・再利用などの技術供与を増やすべき」、それは日本側のPR材料に過ぎず、「火力発電」の扱いがどうなるかは不明だ。「わが国の脱炭素技術などの優位性」、があるのであれば、この際、大いに売り込むべきだ。
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生命科学(その2)(15億年前 私たちの細胞に起こった「運命のいたずら」…その驚くべき事実、生まれつき決まっている脳細胞の数が「難易度の高い運動」で増える?) [科学]

生命科学については、一昨年4月15日に取上げた。今日は、(その2)(15億年前 私たちの細胞に起こった「運命のいたずら」…その驚くべき事実、生まれつき決まっている脳細胞の数が「難易度の高い運動」で増える?)である。

先ずは、昨年4月7日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した生物学者のポール・ナース氏と理学博士でサイエンス作家の 竹内薫氏による「15億年前、私たちの細胞に起こった「運命のいたずら」…その驚くべき事実」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/267653
・『ノーベル生理学・医学賞を受賞した生物学者ポール・ナースの初の著書『WHAT IS LIFE?(ホワット・イズ・ライフ?)生命とは何か』が世界各国で話題沸騰となっており、いよいよ3月9日に日本でも発刊された。 ポール・ナースが、生物学について真剣に考え始めたきっかけは一羽の蝶だった。12歳か13歳のある春の日、ひらひらと庭の垣根を飛び越えた黄色い蝶の、複雑で、完璧に作られた姿を見て、著者は思った。生きているっていったいどういうことだろう? 生命って、なんなのだろう? 著者は旺盛な好奇心から生物の世界にのめり込み、生物学分野の最前線に立った。本書ではその経験をもとに、生物学の5つの重要な考え方をとりあげながら、生命の仕組みについての、はっきりとした見通しを、語りかけるようなやさしい文章で提示する。 養老孟司氏「生命とは何か。この疑問はだれでも一度は感じたことがあろう。本書は現代生物学の知見を十分に踏まえたうえで、その疑問に答えようとする。現代生物学の入門書、教科書としても使えると思う。」、池谷裕二氏「著名なノーベル賞学者が初めて著した本。それだけで瞠目すべきだが、初心者から専門家まで読者の間口が広く、期待をはるかに超える充実度だ。誠実にして大胆な生物学譚は、この歴史の中核を担った当事者にしか書けまい。」、更科功氏「近代科学四百年の集大成、時代の向こう側まで色褪せない新しい生命論だ。」、さらには、ブライアン・コックス(素粒子物理学者 マンチェスター大学教授)、シッダールタ・ムカジー(ピュリッツァー賞受賞の医学者 がん研究者 コロンビア大学准教授)、アリス・ロバーツ(人類学者 バーミンガム大学教授)など、世界の第一人者から絶賛されている。発売たちまち5万部を突破した本書の発刊を記念して、内容の一部を特別に公開する』、「12歳か13歳」の頃に抱いた疑問を解き明かすとは大したものだ。
・『30兆個の細胞  他の生き物に完全に依存しているため、ウイルスが本当に生きているとは言えないと、結論づける生物学者もいる。だが、よくよく考えてみれば、われわれも含め、生命のほぼすべての形態が、他の生物に依存しているではないか。 あなたの慣れ親しんだ身体も、人と人以外の細胞が混ざりあってできた、一つの生態系だ。われわれのおよそ三〇兆個の細胞など、この生態系に占める数量からすれば微々たるものだ。われわれに依存したり、われわれの内側で生きている、多様な細菌、古細菌、真菌、単細胞真核生物などの共同構成員の数は天井知らずなのだから。 人によっては、いろいろな回虫や、皮膚の上に生息して毛包に卵を生む八本脚のダニなど、わりと大きな動物まで抱えている。こうした人間でない親密な仲間たちは、われわれの細胞と身体に大きく依存しているが、われわれの方も彼らに依存していることがある。 たとえば、ことも、忘れてはならない。私が研究している酵母のような、微生物の多くは、他の生き物が作った分子に完全に依存している。たとえば、炭素と窒素を含む巨大分子を作るために必要なグルコースやアンモニアなどだ。 植物は、はるかに自立しているように見える。空気から二酸化炭素を、土からは水を吸い込み、太陽のエネルギーを利用して、炭素ポリマーなど、自分に必要な複雑な分子の多くを合成する。それでも、植物は、根やその周辺に存在している、大気中から窒素を捉える細菌に依存しているのだ。 こうした細菌抜きでは、生命を支える巨大分子を作ることはできない。事実、それは、われわれが知る限り、真核生物が単独でできることではない』、「腸内細菌は、細胞が自分では作れない、特定のアミノ酸やビタミンを生成してくれる。 さらに、われわれが食べる一口ごとの食べ物は、他の生き物によって作り出されている」、など「他の生き物」に依存しているようだ。
・『最も独立した生命体  つまり、完全にゼロから、自らの細胞の化学的構造を作り出すことができる動物や植物や菌類は、一つもいないのである。おそらく、本当の意味で最も独立した生命体、つまり完全に独立して「自由気ままな生活をしている」と断言できるのは、一見するともっと原始的な感じのものだろう。 たとえば、藍藻(シアノバクテリア)。シアノバクテリアは、光合成をして窒素を捕らえる。海底深くにある活火山の熱水噴出孔から、すべてのエネルギーと化学原料を得ている古細菌も同類だ。驚くべきことに、こうした比較的単純な生き物は、われわれよりも長期にわたって生き延びてきただけでなく、われわれより自立している。 異なる生命体同士の相互依存は、われわれの細胞の根本的な組成にも反映されている。われわれの身体が必要とするエネルギーを作り出すミトコンドリアは、かつてはまったく別個の細菌で、ATP(アデノシン三リン酸)を作る能力を持っていた。 一五億年ほど前に起きた運命のいたずらで、このような細菌のいくつかが、別の種類の細胞の内側に仮住まいを始めた。時がたつにつれ、主である細胞は、「お客さん」の細菌が作ってくれるATPなしでは生きてゆけなくなり、ミトコンドリアは定住することになった。 ウィン・ウィンの関係だったと思われるが、これにより、真核生物の全種族の幕開けとなった。エネルギー供給が安定し、真核生物の細胞は、より大きく、複雑になることができた。このことが、次に、今日の動物や植物や菌類の豊富な多様性へとつながる進化を引き起こした。 (本原稿は、ポール・ナース著『WHAT IS LIFE?(ホワット・イズ・ライフ?)生命とは何か』〈竹内薫訳〉からの抜粋です) ☆好評連載、関連記事 地球上の生命の始まりは「たった1回」だけという驚くべき結論 20億年前、ほとんどの生物が絶滅…「酸素の大惨事」の真相) (ポール・ナース氏の略歴はリンク先参照) (訳者:竹内 薫氏の略歴はリンク先参照)』、「一五億年ほど前に起きた運命のいたずらで、このような細菌のいくつかが、別の種類の細胞の内側に仮住まいを始めた。時がたつにつれ、主である細胞は、「お客さん」の細菌が作ってくれるATPなしでは生きてゆけなくなり、ミトコンドリアは定住することになった」、「主客転倒」も起きるようだ。
・『これだけ心を打たれた本は、初めてだ――訳者より  ポール・ナースは生物学の世界における巨人である。二〇〇一年にノーベル生理学・医学賞も受賞している。 本書を翻訳していて感じたことを書きたいと思う。 驚いたのは、この本がポール・ナースにとって初めての「本」の出版だということ。これだけ科学的な実績があり、二〇〇一年にノーベル賞を受賞しているのだから、何冊も本を書いていても不思議ではないが、ロックフェラー大学学長、王立協会(ロイヤル・ソサエティ)会長といった要職で忙しく、一般向けの本を書く暇がなかったのかもしれない。 これは私の推論にすぎないが、ポール・ナースは、次の世代のため、人類が悲惨な状態に陥らないために、生涯で一冊の一般向け科学書を書いたのではないか。この本はまさに、細胞周期の司会進行役を務めるタンパク質キナーゼと同様、新たな世代への橋渡しの役割を担っている。 私は数々の科学書を翻訳してきたが、これだけ心を打たれた本は、初めてだ。それほど、ポール・ナースという科学者の家族、友人、先輩、同僚、部下、人類、そして生き物への愛情を感じた』、「ノーベル賞を受賞」にも拘らず、「この本がポール・ナースにとって初めての「本」の出版」、「要職で忙しく、一般向けの本を書く暇がなかったのかもしれない」、「この本は・・・新たな世代への橋渡しの役割を担っている」、なるほど。

次に、12月28日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したフリーライターの鈴木 舞氏による「生まれつき決まっている脳細胞の数が「難易度の高い運動」で増える?」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/291971
・『企業による新規事業創出や個人によるクラウドファンディングなど、新たなチャレンジングが近年、活発だ。不安が少なく安定した「コンフォートゾーン」から抜け出し、新しいステージに飛び出すのは勇気がいることだろうが、やり慣れた仕事、居心地のいい環境では得ることのできない“成果”を掴み取ることも可能だ。コンフォートゾーンから抜け出すと新たな成長段階へと進むことができるのは、ビジネスだけではなくスポーツでも同様らしい。書籍『Life Kinetik(R) 脳が活性化する世界最先端の方法』(ホルスト・ルッツ著/ダイヤモンド社)を参考に、チャレンジに伴う脳の活性化について紐解く』、「チャレンジに伴う脳の活性化」とは興味深そうだ。
・『コンフォートゾーンから脱け出し自分を成長させるには  「スポーツなどの身体活動でより難しい課題に挑戦するほど、脳細胞の数が増えたり、増えた数を維持できる可能性が高くなったりすると報告している」(『Life Kinetik(R) 脳が活性化する世界最先端の方法』より) これはあくまでマウスの実験による報告結果だが、人間の脳でもこうした変化が起きることが期待されている。脳細胞の数が増えるメリットは、身体が知覚した情報の処理能力が向上することだ。記憶力や思考力、判断力が高まるため、新しい物事に関する学習・吸収がはかどることが推測される。 従来は、脳細胞の数は生まれたときに決定され、以降は増えることがないと考えられていた。しかし研究が進むにつれ、後天的に脳細胞が増えることも解明されてきている。その条件のひとつが、難しい課題へのチャレンジではないかと研究では考えられているというわけだ。 難しい課題とは、ランニングのフルマラソンサブ3達成であったり、ゴルフのスコア100切りであったりするだろう。もちろん、個人の能力によって課題の難易度は様々だ。長年続けてきたスポーツであれば、安定したルーティンが確立されていることも多いはず。そういった慣れ親しんだコンフォートゾーンの外に目を向け、ワンステップ上の目標を設定してみると、脳が活性化する可能性がある』、「慣れ親しんだコンフォートゾーンの外に目を向け、ワンステップ上の目標を設定してみると、脳が活性化する可能性がある」、「脳が活性化する可能性がある」とは嬉しいことだ。
・『短期記憶を司るワーキングメモリのメリット  ワンステップ上の目標を掲げたら、次は実際に学習やトレーニングに取りかかる段階だ。このとき、「ワーキングメモリ」と呼ばれる能力が効率よく成果を上げるためのキーワードとなる。ワーキングメモリは「作業記憶」とも呼ばれ、作業や一連の動作を遂行する上で必要な情報を一時的に記憶し、処理する能力だ。 脳の記憶は大きく分けて長期記憶と短期記憶があるが、ワーキングメモリは短期記憶に分類される。迅速な対応、必要な情報と不要な情報の取捨選択、的確な判断は、ワーキングメモリの働きによるものだ。 「脳科学の分野では、人間はワーキングメモリを使って5〜9個の情報を同時に処理することができると考えられています。そうすると、9個の情報を同時に処理できる人は、5個の情報しか処理できない人と比べて80%も高い成果を上げられるということになります」(『Life Kinetik(R) 脳が活性化する世界最先端の方法』より) ワーキングメモリが高い人は、テンポよくスピード感をもって物事を進めることが可能だ。新しいこと、不慣れなことへのチャレンジには、挫折というリスクが伴う。しかしワーキングメモリが発揮されることで、学習やトレーニングをスムーズに進められ、挫折を回避できる可能性が高くなるだろう。) そんなワーキングメモリを鍛える方法のひとつが、有酸素運動だ。ウォーキングやジョギング、サイクリングなどの有酸素運動は、ワーキングメモリの強化に適していると考えられている』、「有酸素運動は、ワーキングメモリの強化に適している」、聖徳太子もきっと「ワーキングメモリ」の使い方が上手かったのだろう。
・『着実に成長を辿るには長期記憶も欠かせない  ワーキングメモリは、効率的に成果を得るために必要な能力のひとつだ。ただし、人間にとっては長期記憶も重要である。新しい目標にチャレンジするとき、それまで積み重ねてきたトレーニングや習慣が無駄になるわけではない。むしろ長期記憶の蓄積があるからこそ、チャレンジが成功することも多い。 脳内のネットワークをスムーズに構築するには、長期記憶を司る海馬の働きが欠かせない。一度習得した運動でも時間が経つと忘れてしまい、再現するのは簡単ではないからだ。習得した運動を正しく再現するには、海馬の働きが鍵となる。 「海馬は、情報の内容を保存し、その記憶を固定化するために重要な役割を果たしています。海馬がどの情報を長期記憶に送るか、どの情報が不要なのかを決めているのです」(『Life Kinetik(R) 脳が活性化する世界最先端の方法』より) たとえば、ランニング中に疲れやすくなった場合、無自覚のうちにフォームが崩れていることが多い。久しぶりのゴルフで思うように飛距離が伸びないのも、間違ったグリップやスイングが原因のことがある。つまり、脳が正しい方法を再現できなくなくなり、運動機能にも影響を及ぼしているのだ。ワンステップ上の課題にチャレンジしたくても、基本の部分が崩れてしまっては、成長は見込めない。これに深く関わるのが海馬である。 さらに同書によると、「海馬の真の特技は、適切な刺激を受けると新しい細胞をつくることです」とある。海馬は脳の活性化を支える器官とも考えられている、重要な器官なのだ』、「海馬」がそんなに重要な役割を果たしていたとは初めて知った。
・『「脱・コンフォートゾーン」で脳が変化に対して柔軟になる  新しいことや環境にチャレンジするとき、メンタルの負担が増えがちだ。成果を得られるか不安を感じたり、慣れない環境に拒否反応を起こしたりすることは少なくない。一方で、人間の脳はさまざまな刺激に対応する柔軟性を持っている。 「認知に関連する脳領域には、記憶をつかさどる領域があります。その中でもとくに、短期記憶の一部であるワーキングメモリに関連する領域と長期記憶をつかさどる領域は、神経可塑性を発揮します」(『Life Kinetik(R) 脳が活性化する世界最先端の方法』より) 神経可塑性とは、脳の神経が身体の動作や外的刺激に反応し、その入力の強さに応じて常に変化する性質のこと。神経可塑性のお陰で、脳は膨大な量の情報を正確に処理・伝達し、脳内の他の領域とネットワークを構築していく。 この神経可塑性については、国内外の様々な研究によって、繰り返し行われる学習やトレーニングが神経のシナプス結合に影響を与え、成果に導くことを報告されている。 コンフォートゾーンを抜け出すと、未知の情報や状況が多く待ち構えているだろう。直面する課題は困難なものかもしれないが、チャレンジを続けるのが重要だ。ワーキングメモリや海馬が機能しながら、脳は変化に柔軟に対応し、成長へと導かれる。 こうした脳の働きは、人間はチャレンジすることで何歳になっても成長できることを物語っているようだ。この成長を得るためにも、ワンステップ上の課題を設定し、努力を続けてみてはいかがだろう』、「人間はチャレンジすることで何歳になっても成長できることを物語っている」、「この成長を得るためにも、ワンステップ上の課題を設定し、努力を続けてみてはいかがだろう」、もう歳だからを禁句にして、いつまでも「ワンステップ上の課題を設定し、努力を続け」ることが必要なようだ。
タグ:生命科学 (その2)(15億年前 私たちの細胞に起こった「運命のいたずら」…その驚くべき事実、生まれつき決まっている脳細胞の数が「難易度の高い運動」で増える?) ダイヤモンド・オンライン ポール・ナース 竹内薫 「15億年前、私たちの細胞に起こった「運命のいたずら」…その驚くべき事実」 『WHAT IS LIFE?(ホワット・イズ・ライフ?)生命とは何か』 「12歳か13歳」の頃に抱いた疑問を解き明かすとは大したものだ。 「腸内細菌は、細胞が自分では作れない、特定のアミノ酸やビタミンを生成してくれる。 さらに、われわれが食べる一口ごとの食べ物は、他の生き物によって作り出されている」、など「他の生き物」に依存しているようだ。 「一五億年ほど前に起きた運命のいたずらで、このような細菌のいくつかが、別の種類の細胞の内側に仮住まいを始めた。時がたつにつれ、主である細胞は、「お客さん」の細菌が作ってくれるATPなしでは生きてゆけなくなり、ミトコンドリアは定住することになった」、「主客転倒」も起きるようだ。 「ノーベル賞を受賞」にも拘らず、「この本がポール・ナースにとって初めての「本」の出版」、「要職で忙しく、一般向けの本を書く暇がなかったのかもしれない」、「この本は・・・新たな世代への橋渡しの役割を担っている」、なるほど。 鈴木 舞 「生まれつき決まっている脳細胞の数が「難易度の高い運動」で増える?」 「チャレンジに伴う脳の活性化」とは興味深そうだ。 「慣れ親しんだコンフォートゾーンの外に目を向け、ワンステップ上の目標を設定してみると、脳が活性化する可能性がある」、「脳が活性化する可能性がある」とは嬉しいことだ。 「有酸素運動は、ワーキングメモリの強化に適している」、聖徳太子もきっと「ワーキングメモリ」の使い方が上手かったのだろう。 「海馬」がそんなに重要な役割を果たしていたとは初めて知った。 「人間はチャレンジすることで何歳になっても成長できることを物語っている」、「この成長を得るためにも、ワンステップ上の課題を設定し、努力を続けてみてはいかがだろう」、もう歳だからを禁句にして、いつまでも「ワンステップ上の課題を設定し、努力を続け」ることが必要なようだ。
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今日は更新を休むので、明日にご期待を!

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心理学(その1)(「損の影響は得の約2倍」 経済心理学のススメ 米国では常識! 消費者は常に合理的とは限らない、「他人を許せない人の脳」で起きている恐ろしい事 「30歳まで」にどんな人と出会ったかが大切) [経済政治動向]

今日は、心理学(その1)(「損の影響は得の約2倍」 経済心理学のススメ 米国では常識! 消費者は常に合理的とは限らない、「他人を許せない人の脳」で起きている恐ろしい事 「30歳まで」にどんな人と出会ったかが大切)を取上げよう。

先ずは、やや古い記事だが、2017年5月2日付け日経ビジネスオンラインが掲載した精神科医で臨床心理士の和田秀樹氏が「「損の影響は得の約2倍」、経済心理学のススメ 米国では常識! 消費者は常に合理的とは限らない」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/report/16/122600095/042800008/
・『経営や政治に心理学者を重用するアメリカ  日本と比べるとアメリカでは、経営にも政治にもはるかに心理学者が重用されている。消費者心理の分析であれ、マネジメントでどうすれば従業員のやる気が増すかであれ、あるいは経済政策の立案であれ、外交問題における相手国の国民や指導者の心理分析であれ、心理学者のアドバイザーの活躍の場は多い(トランプの時代になってからのことは分からないが)。 実際、心理学を組み入れた経済学理論である「行動経済学」の代表的な研究者であるダニエル・カーネマンは、心理学(経済学部に異動したわけでない)の教授の肩書きのまま、2002年にノーベル経済学賞を受賞している。行動経済学が明らかにした(薄々は分かっていても定式化したと言っていいだろう)ものに、人間は得より損のほうに強く反応するということがある。 例えば、10万円のものを1万円まけてもらって得をした場合と、10万円で買ったものが近くの店で9万円で売っていることが分かり、1万円損をした気分になるのとでは、多くの人は、前者の得した気分より、後者の損をした気分のほうが強く感じるだろうし、後々まで尾をひく。心理学の実験では、損のインパクトは得のインパクトの2.25倍だそうだ。 こういうことを真面目に研究した行動経済学は、おそらくは「人々が合理的に判断する」という前提で想定された旧来型の経済学より、はるかにまともな行動予測が可能になり得る。 旧来型の経済学では、1万円の昇給が経済を好転させる効果と、1万円の減給が経済を悪化させる効果は同じということになる。ところが、行動経済学の考え方では、1万円給料が下がったショックは、2.25万円給料が上がった喜びと同等の心理的インパクトがあることになる。そして恐らくは、そのほうが現実の人間の行動予測に役立つ。 経済学に心理学が大きなインパクトを与えたように、経営学やマネジメントでも相当な影響力を持つようだ。アメリカのビジネススクールに留学した人たちに聞くと、心理学の講義や演習をかなりの時間、課せられるようだ』、「行動経済学の考え方では、1万円給料が下がったショックは、2.25万円給料が上がった喜びと同等の心理的インパクトがあることになる。そして恐らくは、そのほうが現実の人間の行動予測に役立つ」、「「人々が合理的に判断する」という前提で想定された旧来型の経済学」が余りに現実離れしていたのに比べ、大きな進歩だ。
・『減税より増税、経費の拡大で不景気解消  だから、昇給はすぐに消費に結びつかないが、減給はたちどころに財布のひもを締めさせるのはそういうメカニズムが働いているのだろう。これまでの長期不況で給料が下がり続けた時代の消費マインドを、少々のベースアップで変えることは困難だということになる。安倍首相が企業に昇給を求めても、企業は利益が減らない程度にしか昇給しないのでは、消費も増えないし、物価も上がらない。というか、不景気はちょっと給料が下がっただけで簡単に生じるが、景気を良くするのは難しいということになる。 このような心理特性(特に実験などで明らかになった心理特性)を知る心理学者を利用すれば、経済学者が考えるのとは別のソリューションが考えられるだろう。 私が、この理論を読んで考えたことは、減税には経済学者が考えるより景気浮揚効果がなさそうだということだ。 要するに減税で得をした喜びは想像されるほど大きなものではないので、それが消費には結び付きにくいということだ。心理学の実験を見る限り、アメリカ人でさえ、得にあまり反応しないのだから、もっと貯蓄傾向の強い日本人は、減税が消費より貯蓄につながってしまうことは大いに予想できる。 逆に増税というのは、損を恐れる効果を活性化させることになる。例えば、消費税の増税が決まると、その前にかけこみ需要がかなり生じるのは、上がった後でものを買って損をしたくないからだろう。ただし、この場合は、消費税を上げた後の、「損だから買わない」という反動が大きく出てしまう。 例えば、直接税を上げて、経費を認めるというのはどうだろうか? この場合は、税金を持っていかれるのは損という心理が働きやすいので、もっと経費を使うようになる効果が期待できる。実際、法人税や所得税が高かったころのほうが、中小企業や自営業者たちは、税金を払いたくない心理から接待費で豪遊していたり、高級車を買ったりする人が多かった。 所得税を増税する代わりに、サラリーマンにも洋服代どころか食費も働くための経費として認めたら、消費が活性化するかもしれない。政府のホストコンピューターにつながったレジから出たレシートは全部経費として認めるなどということができれば、そんなに実用化は困難でないし、レジの機械の会社も儲かるし、さらにいうと、商店からは売り上げの捕捉がしやすくなり、税逃れも防げる』、「サラリーマン」の場合は、給与所得控除があるので、経費を認めると、二重に優遇することになってしまう。
・『減税効果が長く続かない理由は?  得より損に反応するというのは、あくまで心理学を応用した経済学の一面に過ぎない。また、常に同じような行動をとるとは限らない。 例えば、今得をしている場合は、損をしたくないというリスク回避傾向に人間の心理は傾くが、損をしている場合は、損をするリスクをとっても大きく得をしたいという心理が働く。競馬などで負けがこんでくると、損をする確率が上がるのに大穴狙いをして負けを埋め合わせようとするのは、その一例だ。 また、人間というのは、絶対値より変化に過敏に反応することもある。年収100億円のAさんと年収300万円のBさんを比べれば、Aさんが幸せと思われるだろうが、Aさんの去年の年収が101億円で、Bさんの去年の年収が280万円だったとしたら、1億円収入が減ったAさんは不幸に感じるし、20万円収入が増えたBさんは幸せに感じるということになるだろう。 景気対策として減税をするのは簡単だが、税率を戻した時の不満が大きいので、減税をなかなか終えることができない。1999年に高額所得者の所得税率を50%から37%に下げた。その際には、金持ちが反応して、確かに株価は99年初頭の1万3000円から2000年には2万円を超えるまで上昇した。ところが、同じ税率のままだったのに、2003年には株価が7607円まで下がっている。 減税の効果は長く続かないし、お金持ちがさらにお金を持ったところで予想したほど投資には回らないということを明らかにする事例だと思う。その後、最高税率はわずかに上がったが、株価は元には戻らなかった。その間に国の借金が膨れ上がったのはご存知の通りだ』、株価は実体経済の影響を強く受けるので、それを度外視した説明には無理がある。
・『問題続出でも安倍一強は続く  話を変えて、政治情勢を心理学の観点から見てみよう。森友学園事件に始まって、夫人の関与が疑われたり、昔からの親友の学校に莫大な補助金が支払われていることなど、金銭にまつわる疑惑が高まっているうえに、大臣の失言が相次いだり、政務官の道徳的なスキャンダルまで暴露されているというのに、安倍政権の支持率はびくともせず、むしろ野党第一党の民進党の支持率のほうが低迷している。 この不思議な現象も心理学では説明がつく話だ。一つには、「現状維持バイアス」というものがある。 前述のように、人間というのは得をしている局面では、損失回避のほうに走る。賃金がどんどん下がっているとか、失業率が高い局面では、損をするかもしれなくても、新しい政治を求める(アメリカの場合は、一見景気が良さそうだが、賃金が下がり、失業率が高いラストベルトとされる地域の人によるトランプの支持が優勢だった)。しかし、少しずつではあるが、失業率が下がり、賃金も上がり出す局面になると、また野党にやらせて損をするより、今のままがいいという現状維持バイアスが働く。 損や得は主観的なものだから、ドルベースでは民主党時代より賃金が下がっているとか、非正規雇用が増えているとか、国の借金が増えていることより、目に見える賃金や失業率をみて、多くの人が得をしていると思っているのだろう。 さらに、緊迫する北朝鮮の状況もみて、被害を受けて損をしたくない心理が増しているのかもしれない。多少アメリカべったりでもこわもてで、アメリカによる防衛を確かなものにしてくれる政府のほうが損は避けられるという感覚だ。 もう一つは「同調心理」である。人間というものは、友達が増えるとか出世できるといった目に見える得がなくても、身近な人に同調するという不思議な心理特性がある。 アッシュという心理学者は、長さの違う棒を見せて、別の1本と長さが同じ棒を選ぶというテストを行った。周りに誰もいないところだと誰も間違えないのだが、3人ほどのサクラに間違えた答えを言わせると、3割くらいの人がそれにつられることを明らかにした。 人間はある一定の確率で放っておいても同調するのなら、政治においても支持率が高いほうに同調する人が増えても不思議でない。そういう点で、当面は、よほどの円高などが起こらない限り安倍政権は盤石とみるのだが、どうだろうか? この手の心理学を使った経済などの見方を知ったり、判断のバイアスを減らす参考にしてもらうために『「損」を恐れるから失敗する』(PHP新書)という本を上梓した。興味がある人は読んでほしい。多少は仕事や人生に役立つと信じている』、安部政権が長持ちした要因を心理学的に解明したのは、興味深い。

次に、12月30日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した 脳科学者の中野 信子氏による「「他人を許せない人の脳」で起きている恐ろしい事 「30歳まで」にどんな人と出会ったかが大切」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/477279
・『2021年もインターネットを中心とした、炎上や誹謗中傷のニュースが数多く見られました。芸能人の不倫スキャンダルや不謹慎とされる言動など、さまざまな話題がありましたが、その中でよく聞かれるのが「許せない」という言葉です。 自分や自分の身近な人が直接不利益を受けたわけではなく、当事者と関係があるわけでもないのに、強い怒りや憎しみの感情が湧き、知りもしない相手に非常に攻撃的な言葉を浴びせ、完膚なきまでにたたきのめさずにはいられなくなってしまうというのは、「許せない」が暴走してしまっている状態です。 「許せない」の暴走である正義中毒や人を許せなくなる脳の仕組みについて、脳科学者の中野信子氏が監修を務めた『まんがでわかる正義中毒 人は、なぜ他人を許せないのか?』より一部抜粋、再構成してお届けします』、「正義中毒」はSNSなどで確かに増えている。
・『「我こそは正義」と確信した途端、人は「正義中毒」になる  人の脳は、裏切り者や社会のルールから外れた人といった、わかりやすい攻撃対象を見つけ、罰することに快感を覚えるようにできています。他人に「正義の制裁」を加えると、脳の快楽中枢が刺激され、快楽物質である「ドーパミン」が放出されます。この快楽にはまってしまうと簡単には抜け出せなくなってしまい、罰する対象をつねに探し求め、決して人を許せないようになるのです。 こうした状態を、私は正義に溺れてしまった中毒状態、いわば「正義中毒」と呼ぼうと思います。この構造は、いわゆる「依存症」とほとんど同じだからです。有名人の不倫スキャンダルが報じられるたびに、「そんなことをするなんて許せない」とたたきまくり、不適切な動画が投稿されると、対象者が一般人であっても、本人やその家族の個人情報までインターネット上にさらしてしまう。企業の広告が気に入らないと、その商品とは関係のないところまで粗探しをして、あげつらう』、「人の脳は、裏切り者や社会のルールから外れた人といった、わかりやすい攻撃対象を見つけ、罰することに快感を覚えるようにできています。他人に「正義の制裁」を加えると・・・快楽物質である「ドーパミン」が放出されます。この快楽にはまってしまうと簡単には抜け出せなくなってしまい、罰する対象をつねに探し求め、決して人を許せないようになるのです」、「こうした状態を、いわば「正義中毒」と呼ぼうと思います」、「「ドーパミン」が放出」、とは本物だ……
・『「間違ったことが許せない」  「間違っている人を、徹底的に罰しなければならない」 「私は正しく相手が間違っているのだから、どんなひどい言葉をぶつけても構わない」 このような思考パターンがひとたび生じると止められなくなる状態は、恐ろしいものです。本来備わっているはずの冷静さ、自制心、思いやり、共感性などは消し飛んでしまい、普段のその人からは考えられないような、攻撃的な人格に変化してしまうからです。特に対象者が、たとえば不倫スキャンダルのような「わかりやすい失態」をさらしている場合、そして、いくら攻撃しても自分の立場が脅かされる心配がない状況などが重なれば、正義を振りかざす格好の機会となります。) こうした炎上騒ぎを醒めた目で見ている方も多いと思います。しかし、正義中毒が脳に備わっている仕組みである以上、誰しもが陥ってしまう可能性があるのです。もちろん、私自身も同様に気をつける必要があると思っています。 また、自分自身はそうならなくても、正義中毒者たちのターゲットになってしまうこともありえます。何気なくSNSに載せた写真が見ず知らずの他人からケチを付けられ、「不謹慎だ」「間違っている」などとたたかれてしまうようなケースは、典型例だといえます。 正義中毒の状態になると、自分と異なるものをすべて「悪」と考えてしまうのです。自分とは違う考えを持つ人、理解できない言動をする人に「バカなやつ」というレッテルを貼り、どう攻撃するか、相手に最大級のダメージを与えるためには、どんな言葉をぶつければよいかばかりに腐心するようになってしまいます』、「正義中毒が脳に備わっている仕組みである以上、誰しもが陥ってしまう可能性があるのです」、「正義中毒の状態になると、自分と異なるものをすべて「悪」と考えてしまうのです。自分とは違う考えを持つ人、理解できない言動をする人に「バカなやつ」というレッテルを貼り、どう攻撃するか、相手に最大級のダメージを与えるためには、どんな言葉をぶつければよいかばかりに腐心するようになってしまいます」、恐ろしいことだ。
・『「正義中毒」を乗り越えるカギはメタ認知  「メタ認知」とは、自分自身を客観的に認知する能力のことで、脳の前頭前野の重要な機能です。もう少し詳しく説明すると、「自分が○○をしているとわかっている」「自分がこういう気持ちでいることを自覚している」ということです。「私は今こういう状態だが、本当にこれでいいのか?」と問いかけることができるのは前頭前野が働いているからであり、メタ認知が機能しているからなのです。 正義中毒に陥らないようにするためには、つねに自分を客観的に見る習慣をつけ、メタ認知を働かせることが大切です。メタ認知能力の高低には、もちろん遺伝的な要素もありますが、実はそれよりも大きく影響するのが環境要因です。この能力は、個人差はありますが、小学校低学年あたりから徐々に育ち始め、完成するまでには30歳ぐらいまでかかります。これは、脳の前頭前野の発達そのものであり、完成する30歳くらいまでの間はずっと、周囲からの影響を受け続けます。 人生において、若い頃、特に20代ぐらいの時期に付き合いのあった人、尊敬していた人の影響が大きいのはこうした背景があるからで、メタ認知のできている人と若いうちに出会うことには大きなメリットがあります。子どものメタ認知能力を育てるためには、幼少期から30歳くらいまでの時期にどんな人と出会い、どのような影響を受けてきたのかが、非常に大切になるわけです。) 人間は、自分が言い続けてきたこと、やり続けてきたこと、信じ続けてきたことをなかなか変えられません。そして、それまで見せてきた自分と矛盾しないように振る舞わなければいけないという根拠のない思い込みに、無意識に縛られています。この現象を、心理学では「一貫性の原理」と呼んでいます。 しかし、そもそも自分自身、そして他者にも一貫性を求めること自体、不可能なことなのです。人間である以上、言動に矛盾があるのは当たり前、過去の発言や振る舞いを覆してしまってもしょうがないのです。今は絶対的な真実と信じていることだって、いつかその間違いに気づく日が来るかもしれません。そのように「信じていたこと」を裏切られたと感じることこそ、摩擦やいざこざの原因にもなったりするわけですが、それを回避するいちばんいい方法は、他人に「一貫性」を求めること自体をやめることではないかと思います』、「正義中毒に陥らないようにするためには、つねに自分を客観的に見る習慣をつけ、メタ認知を働かせることが大切です」、「自分自身、そして他者にも一貫性を求めること自体、不可能なことなのです。人間である以上、言動に矛盾があるのは当たり前、過去の発言や振る舞いを覆してしまってもしょうがないのです」、その通りだ。
・『対立ではなく並列で考える  正義中毒から解放される最終的な方法は、あらゆる対立軸から抜け出し、何事も並列で処理することではないかと思います。 A国とB国、宗教Aと宗教B、男性と女性でもいいのですが、異なる人間同士が集まれば、対立軸はいくらでも発生します。そして、誰しもが、そのなかでいくつものグループに所属することが可能です。それぞれに視点や知見があり、議論が生じます。それ自体は健全なことです。 しかしここで正義中毒にかかってしまうと、どちらかが参ったと音を上げるまで死力を尽くして相手を攻撃し続けることになります。 「あいつはバカだ」「あいつはおかしい」と感じるその「あいつ」のなかにも、人格や感情、思考が必ず存在します。自分とは違うその何かを、すぐに拒絶してしまうのではなく、まずはいったん受け止める、包み込んでみる。相手の発信した内容を評価し否定する前に、まず、なぜ相手はそう発信したのか、そこから新しい知見が得られないかを考えてみる。 そうすることで、新しい、ポジティブな何かが得られるかもしれません。一度その感覚を体験できれば、自分こそが正義だとは考えにくくなるでしょう。私は、これこそが知性の光のように思えます。 人間は不完全なものであり、結局永遠に完成しないという意識が人間を正義中毒から解放するのではないでしょうか』、「自分とは違うその何かを、すぐに拒絶してしまうのではなく、まずはいったん受け止める、包み込んでみる。相手の発信した内容を評価し否定する前に、まず、なぜ相手はそう発信したのか、そこから新しい知見が得られないかを考えてみる。 そうすることで、新しい、ポジティブな何かが得られるかもしれません」、私はすぐに拒絶するクセがあるので、その克服の努力が必要なようだ 。包容力はこうして生まれるのかも知れない。
タグ:「「損の影響は得の約2倍」、経済心理学のススメ 米国では常識! 消費者は常に合理的とは限らない」 「行動経済学の考え方では、1万円給料が下がったショックは、2.25万円給料が上がった喜びと同等の心理的インパクトがあることになる。そして恐らくは、そのほうが現実の人間の行動予測に役立つ」、 日経ビジネスオンライン 和田秀樹 (その1)(「損の影響は得の約2倍」 経済心理学のススメ 米国では常識! 消費者は常に合理的とは限らない、「他人を許せない人の脳」で起きている恐ろしい事 「30歳まで」にどんな人と出会ったかが大切) 心理学 「「人々が合理的に判断する」という前提で想定された旧来型の経済学」が余りに現実離れしていたのに比べ、大きな進歩だ。 「サラリーマン」の場合は、給与所得控除があるので、経費を認めると、二重に優遇することになってしまう。 株価は実体経済の影響を強く受けるので、それを度外視した説明には無理がある 安部政権が長持ちした要因を心理学的に解明したのは、興味深い。 ダイヤモンド・オンライン 中野 信子 「「他人を許せない人の脳」で起きている恐ろしい事 「30歳まで」にどんな人と出会ったかが大切」 「正義中毒」はSNSなどで確かに増えている。 「人の脳は、裏切り者や社会のルールから外れた人といった、わかりやすい攻撃対象を見つけ、罰することに快感を覚えるようにできています。他人に「正義の制裁」を加えると・・・快楽物質である「ドーパミン」が放出されます。この快楽にはまってしまうと簡単には抜け出せなくなってしまい、罰する対象をつねに探し求め、決して人を許せないようになるのです」、 「こうした状態を、いわば「正義中毒」と呼ぼうと思います」、「「ドーパミン」が放出」、とは本物だ…… 「正義中毒が脳に備わっている仕組みである以上、誰しもが陥ってしまう可能性があるのです」、「正義中毒の状態になると、自分と異なるものをすべて「悪」と考えてしまうのです。自分とは違う考えを持つ人、理解できない言動をする人に「バカなやつ」というレッテルを貼り、どう攻撃するか、相手に最大級のダメージを与えるためには、どんな言葉をぶつければよいかばかりに腐心するようになってしまいます」、恐ろしいことだ。 「正義中毒に陥らないようにするためには、つねに自分を客観的に見る習慣をつけ、メタ認知を働かせることが大切です」、「自分自身、そして他者にも一貫性を求めること自体、不可能なことなのです。人間である以上、言動に矛盾があるのは当たり前、過去の発言や振る舞いを覆してしまってもしょうがないのです」、その通りだ。 「自分とは違うその何かを、すぐに拒絶してしまうのではなく、まずはいったん受け止める、包み込んでみる。相手の発信した内容を評価し否定する前に、まず、なぜ相手はそう発信したのか、そこから新しい知見が得られないかを考えてみる。 そうすることで、新しい、ポジティブな何かが得られるかもしれません」、私はすぐに拒絶するクセがあるので、その克服の努力が必要なようだ 。包容力はこうして生まれるのかも知れない。
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決済(その8)(決済はキャッシュレスから一気にカードレス時代 「デジタルの利便性」の裏に潜むリスクとの対峙、PayPal Japan、Paidy両トップに直撃① 後払いPaidy「上場目前」でM&Aに舵切った真因、後払いの古参ネットプロテクションズ新規上場 若者の「分割払い」傾倒にリスク 先駆社長の警鐘) [金融]

決済については、昨年5月31日に取上げた。今日は、(その8)(決済はキャッシュレスから一気にカードレス時代 「デジタルの利便性」の裏に潜むリスクとの対峙、PayPal Japan、Paidy両トップに直撃① 後払いPaidy「上場目前」でM&Aに舵切った真因、後払いの古参ネットプロテクションズ新規上場 若者の「分割払い」傾倒にリスク 先駆社長の警鐘)である。

先ずは、8月26日付け東洋経済オンラインが掲載した三菱UFJ銀行出身で 帝京大学経済学部教授・博士(経済学)の宿輪 純一氏による「決済はキャッシュレスから一気にカードレス時代 「デジタルの利便性」の裏に潜むリスクとの対峙」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/449199
・『スマホ決済の急速な拡大など、決済のキャッシュレス化が進んでいる。テクノロジーの進歩もあって、近い将来、キャッシュレスどころか顔認証などの生体認証で決済が行われるようになると言われるが、利便性を手放しで喜んでよいのだろうか。 『決済インフラ入門【2025年版】:スマホ決済、デジタル通貨から銀行の新リテール戦略、次なる改革まで』を上梓した宿輪純一氏が、決済の今後と課題について解説する』、興味深そうだ。
・『キャッシュレス決済の推進  近年、“決済”に注目が集まっている。日本では伝統的に“現金”決済が強く、2000年あたりでは全決済に占める“現金”決済の割合は約7割程度、それに次ぐ“クレジットカード”決済が約2割程度であった。これは当時、金融関係業務では銀行が力を持っており、銀行がクレジットカードを拡販していたことが一因とも考えられる。その後、“電子マネー”(前払い式支払い手段)や“デビットカード”も少しずつ増加していった。 決済は、銀行法によって「固有業務」として銀行に限る、というのがそれまでの一般的な考え方だった。しかし、2009年に「資金決済法」が制定され、銀行以外も決済を行えるようになるなど規制緩和が進められた。 金融(Finance)と技術(Technology)の合成語として“フィンテック”(Fin-Tech)という言葉が作られ、まさに金融機関以外の企業が“決済”業界に参入してきた。ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)もフィンテックに含まれる。ビットコインは当初は廉価な“送金”(決済)のために作られた金融商品であった。 さらに、経済産業省がキャッシュレス化の調査・検討を行い、その方針「キャッシュレス・ビジョン」を2018年に発表、日本でキャッシュレス化が政策として推進されることとなった。 現金以外の「キャッシュレス決済(支払い)手段」は、モノの購入とお金の受渡を意識しており、①電子マネー(前払い)、②デビットカード(同時払い)、③クレジットカード(後払い)の3つがある。この“モノ”の購入の推進があることに、金融庁ではなく、経済産業省が進める意義があり、これらの決済手段を拡大させていくことになる。 金融業界とフィンテック業界では、“言葉”も違う。例えば、金融業界ではお金の支払いにより商取引が終了することを“決済”というが、フィンテック業界ではモノを買うときにお金を払うことを“決済”といい、いわゆる送金は“支払い”という。 そのキャッシュレス決済であるが、その媒体は、最近こそ「スマホ(スマートフォン)決済」が伸びてきているが、決済手段でスマホ決済というものはない。QRコード決済というものもない。それらはあくまでも前述の3つの決済手段の媒体なのである。そのため、ここでは、スマホ決済は“カード等”として3つの決済手段に内包することとする。 3つの決済手段は、その“カード等”を持っていることが、本人確認ともなり、(最近では暗証番号がなくてもある程度)対応が可能になる。紛失の場合には、カード会社への即時の連絡が義務づけられており、悪用されないようその機能を停止する。 その本人確認の基本はそのカード等を“保持”(保有)していることである。それが本人確認のベースとなる。もちろん、最近ではさまざまな取引のときに“写真付き”を求められるようにもなりつつあるが、まだそこまでは至っていない』、「本人確認の基本はそのカード等を“保持”(保有)していることである。」、なるほど。
・『認証技術の発展が決済を変える  近年、AI(人工知能)の一環として「生体認証」の発達が著しい。顔認証のほかにも、指紋・虹彩・声などの生体情報を使用して、正確に本人確認を行うものだ。顔認証自体が高度化し、空港の入口では、顔認証によって問題のある人の入場を防止し、安全度を高めている。最近の顔認証は、瞳の間、骨格等、化粧や変装では効き目がないレベルである。 本人確認ができることによって、企業でも、保安上の対応をはじめとして、金融取引なども可能となってきている。そして、さらには本人確認によって、クレジットカードのような、クラウド的に保管されている“個人の信用”に基づく取引が可能になる。すなわち「カードレス」で取引が可能になる。 さらに、最近では、日本でも東京駅近辺では、顔認証によって広域でさまざまなビルの入館管理が行われようとしている。「カードレス社会」の到来が実際に始まりつつある。これはこれで非常に手間が省け、便利になることは間違いない。しかし、さまざまな物事はプラスとマイナスの面を併せ持つものである。 このような「カードレス社会」すなわち「デジタル化された社会」では、例えば顔認証の本人確認が一般化し、個人の行動がデータの“中央管理機関”に収集されるというリスクがある。それはその中央管理機関がわれわれにとってネガティブな行動をしなければよいが、もしも、そうではないときにはプライバシーの問題になる。いわゆる〝デジタル化”の問題である。 歴史的に見ても、戦前のドイツなどは不法な手法によって、個人情報を収集し、社会的に個人の弾圧に使用した。そのような過去によって、欧州では個人情報の管理には非常に敏感な対応をしている。日本も基本的には欧州に近い対応をしている。) 顔認証による本人確認に近いものとして、中国が試行を進めるデジタル人民元がある。22年2月の冬季オリンピックまでに正式導入をしたいとして国を挙げて推進している。これは管理(統制)が厳しい中国であるからできるわけで、日本を始めとした“いわゆる先進国”では、一部の方々に誤解があるが、デジタル通貨はこのような個人情報の問題から導入は困難であるし、導入の予定はない。あくまでも“前向き”な分析・検討の段階にとどめている』、「「カードレス社会」すなわち「デジタル化された社会」では、例えば顔認証の本人確認が一般化し、個人の行動がデータの“中央管理機関”に収集されるというリスクがある。それはその中央管理機関がわれわれにとってネガティブな行動をしなければよいが、もしも、そうではないときにはプライバシーの問題になる。いわゆる〝デジタル化”の問題である」、「デジタル通貨はこのような個人情報の問題から導入は困難であるし、導入の予定はない。あくまでも“前向き”な分析・検討の段階にとどめている」、なるほど。
・『カードレス社会の利便性とリスク  「カードレス」社会においては、例えば金融取引にとって、取引の“開始”である「本人確認」は非常に大事な意味を持つ。とくに「生体認証」の本人確認は重要な役割を果たすとみられている。実際に導入が開始されている。小職が勤務した銀行でも、オフィスでは一部、約10年前でもすでに生体認証(指紋)が導入されていた。一般企業のオフィスの入館チェックの顔認証も同様である。 金融取引でもATMで指紋認証や静脈認証で本人確認が導入されている。ちなみに、日本人は指紋認証の登録には、警察における指紋登録を思い出すようで、抵抗感があるようである。しかし、世の中の進行は早い。今やスマホの本人確認として普通に生体認証が使われている。このように顔認証などの生体認証に抵抗感がなくなっていくことが、すなわち「カードレス社会」の必要条件である。 しかし顔認証などの生体認証などで金融取引ができる「カードレス社会」もいいことばかりではない。生体認証とはそもそも“変えられない”その人に唯一無二の身体的特徴のことである。 これが何であれ、生体認証が犯罪者に一度盗まれると、大変困る事態になる。顔にしても、指紋にしても変えられないからである。逆に、この生体認証のベースとなるAIシステムの管理こそ厳格に行わなければならない。これは本人確認に限らず、ほかのデジタル化された情報でもいえることである。 次に来る「カードレス社会」では、生体認証に基づく本人確認がその根幹をなすため、クレジットカードをはじめとしたあらゆるカード等を持たなくてよくなる一方で、リスクも生じることになる。そもそも〝デジタル化”とはそういうものであるが、利便性とリスクは表裏一体なのである』、「生体認証が犯罪者に一度盗まれると、大変困る事態になる。顔にしても、指紋にしても変えられないからである」、確かに「利便性とリスクは表裏一体」、なので、私は現段階では「生体認証」に反対である。

次に、12月28日付け東洋経済Plus「PayPal Japan、Paidy両トップに直撃① 後払いPaidy「上場目前」でM&Aに舵切った真因」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/29291
・『日本の金融業界をどよめかせた「巨額買収」は、いかにして実現したのか。ペイディとペイパルジャパン、両トップを直撃した。 2021年9月、日本のベンチャー業界で最大級のM&Aが飛び出した。アメリカの決済大手ペイパルホールディングスが、「BNPL」ともいわれる後払い決済サービスを手がけるPaidy(ペイディ)を約3000億円で買収すると発表した。 ペイディは、電話番号とメールアドレスを入力するだけでEC(ネット通販)サイトなどで決済ができるサービスを提供。クレジットカードのような審査ナシで利用できる(詳細は12月27日配信記事:3000億円買収で号砲!「後払い」新市場の大混戦)。 2021年3月末に約130億円を調達し、すでにユニコーン(企業価値が10億ドル以上のベンチャー)となっていたペイディ。突然のM&Aに日本の金融業界はどよめいた。巨額買収に至った背景について、ペイディの杉江陸社長とペイパル日本事業統括責任者のピーター・ケネバン氏に話を聞いた(Qは聞き手の質問)』、興味深そうだ。
・『「IPO最優先」で考えていたが  Q:ペイディは直前まで上場準備もしていたとのことですが、今回、買収という形で着地した背景には何があったのですか。 ペイディ 杉江陸社長:発表したのは9月8日の午前11時だったが、実際に(ペイパル側とM&Aの)サイニング(契約)をしたのが当日の朝の4時半。実はその日の昼に東京証券取引所に出向き、(上場承認前の)面接を受ける予定で、10月半ばにはIPO(新規上場)するという流れだった。つまり、ギリギリまで上場とM&Aを同時並行で検討していた。 ペイパル側から買収のLOI(Letter of Intent=意向表明書)をもらったのが、契約をした日の6週間前で、これはサプライズだった。そもそも6週間で契約に辿りつけるかは不透明だった。 M&AにしてもIPOにしても、成長資金を調達する手段であることは変わらない。だからどちらがより成長に資するかを内部で議論し、ペイパル側の意図も確認しながら、IPO最優先で話を進めていた。ただ発表直前の9月6日の取締役会で初めて、M&Aで行くかもしれないという話をした。 もともと9月7日の23時59分までに契約しなければIPOする、われわれはそのプランを変えるつもりはないという話をしていた。関係者に大変なご迷惑をおかけする形にはなったが、そういう経緯だ。 Q:最後の最後に急転換することになったと。何が決め手に? 杉江氏:(ペイパルの傘下に入っても)経営のオートノミー、自律性が担保できる。そして既存の株主に迷惑をかけない形でできる。この2つがわかったことがカギとなった。 M&AとIPOのどちらが長いビジネスの生命の中で勝ち続けられるか。IPOはやはり自由度が高い。特定の人にオーナーシップ(支配権)を渡すわけではなく、株主の負託を受けて、自分たち自身で意思決定できるところがよい。 一方でM&Aは私たちに(経営を)任せてくれるという保証があればよい。さらに買ってもらえる相手のケイパビリティ(能力)にも頼れる。サービスのラインナップや開発のためのリソース、そしてお金。このお金が最たるものだが、IPOとはまた違った形で得られる。 ブランドがもたらす安心感もある。IPOでも得られるものではあるが、世界のメガテック企業から支援を受けられるという安心感は消費者にとっても、加盟店にとってもよいと思う。 どちらも似たようなメリットはあるが、ペイパルが私たちに期待していることを理解し、ある程度日本で自由にできるという確証を得られたのが大きい。 (杉江氏の略歴はリンク先参照) Q:どのようにしてペイディの自由度を担保することになったのですか。 杉江氏:ペイパルと共同で日本市場を開拓していくうえで、「7つのプリンシプル」を定めた。その第1文が「ゼロタッチ、ロータッチ」。要するに「われわれのやり方に口を出さないで」ということ。ロータッチは、「(経営に)触ってもいいけど、そこそこにしてくれ」という意味だ。 ペイパルでは初めてのことだが、われわれのエンジニアはペイパルのためではなく、ペイディのためだけに採用されていて、それは今後も続く。日本以外のペイパルのビジネスにリソースを提供することはない。今後も法人として独立しているし、経営の優先順位はすべて自分たちで決める。 私たちは大企業のような安定成長ではなくて、まだまだリスクを取って成長していきたい。それをペイパルが承諾してくれるのであれば、ある意味IPO以上に自由なんです。上場していると、株主に迷惑をかけすぎる経営ができない。ある種プライベートのお金を調達することで、より速いスピードで成長できるということでM&Aに決めた。 彼らは日本市場を非常に重視していて、アメリカ以外で本気で攻める初めての市場と位置づけた。その最初のステップとしてペイディの買収があった。そしてペイディのチームに日本の戦略を任せたいと思っている。ふんだんなリソースを持つペイパルからの、これは強烈なメッセージだった』、「私たちは大企業のような安定成長ではなくて、まだまだリスクを取って成長していきたい。それをペイパルが承諾してくれるのであれば、ある意味IPO以上に自由なんです。上場していると、株主に迷惑をかけすぎる経営ができない。ある種プライベートのお金を調達することで、より速いスピードで成長できるということでM&Aに決めた」、幸運な選択だ。
・『EC化率低い日本には「伸びしろ」  Q:ペイパルが日本に注力することになった背景は。 ペイパル日本事業統括責任者 ピーター・ケネバン氏:ペイパルはすでに10年間日本でビジネスをしている。会社自体は創業から20年でフィンテックの中では老舗。会員や加盟店の基盤も世界最大だ。一方で日本は、越境ECで一定の地位を築いたものの、(通常のECなどの決済で使う)ウォレットはアカウント数が430万で、増えてはいるが大きな存在ではない。 ペイパルにとっての次の成長市場はどこかと考えたときに、一昨年あたりから日本が浮上した。日本のEC市場は世界で3番目の規模だが、小売りのEC化の比率が低く伸びしろがある。 現地の規制や商習慣もある中では、自力の成長だけでなくM&Aも活用すべきだろうという方針を決めた。私は今年4月に(コンサル大手の)マッキンゼー・アンド・カンパニーから転じてペイパルの日本代表に着任したが、それまでのM&Aの経験を買われた。ペイディがまさにその第一歩となった。 (Peter Kenevan氏の略歴はリンク先参照) Q:これまでユーザー数をほかの地域ほど伸ばせてこなかった要因は。 ケネバン氏:これまでも日本に合ったサービスを作ってきたつもりだ。例えば銀行口座からペイパルのウォレットに直接チャージできる機能は早くから持っていた。ただ当然、日本だけでなくいろいろな市場のニーズに応えなければならない。グループの中にはトレードオフもあるので、ペイディほど早くローカル市場に対応できたかというとそうではない。 苦労する時代はあった。そのため日本は市場規模は大きいものの、ペイパルのビジネスはそれほど大きくなかった。 銀行口座との連携機能はサービス自体悪くなく、もっと広がると思っている。ここはペイディと協力できる大きな点なので、より多くの銀行と連携して使いやすくできるよう、ペイディも含めて改めて開発に取り組んでいる』、さすが、コンサル出身の社長だけあって、視野が広い。
・『見てきた中で「最優秀のチーム」  Q:ペイディにはもともと投資部門のペイパル・ベンチャーズから出資していました。そこからM&Aにつなげたいという意図があった? ケネバン氏:投資したすべての企業を買収してグループに巻き込みたいわけではないが、戦略的に期待できる、興味がある先に投資している。なので当然、2019年のペイディへの投資は(M&Aの)1つのきっかけになっている。 (M&Aの)候補を絞る中で、ペイディのビジネスモデルや経営陣の力、商品力がわれわれの戦略とも噛み合っていると感じた。やはり投資してからの付き合いが2年ほどあったので、最終的な意思決定は速かった。 BNPLがこの先重要な存在になるのは間違いない。ペイパルとして自前でやっている地域はあるが、ペイディは日本に合った無利息の分割払いを提供している。毎月の支払いはコンビニでも行える。クレジットカード情報をECサイトに登録したくない人のニーズもとらえ、日本の状況にうまく合わせている。 さらにペイディには、グローバルな経営陣のチームもある。日本をよく理解した外国人が何人もいて、海外経験豊富な日本人もいる。双方をうまく融合している非常にまれな会社だと思う。マッキンゼー時代から25年くらい大手企業からベンチャーまでいろいろな経営陣を見てきたが、最優秀のチームだと思う。 インタビュー後編:日本の「借金嫌い」文化を変革!Paidy社長の企図』、「ペイディにはもともと投資部門のペイパル・ベンチャーズから出資していました」、「戦略的に期待できる、興味がある先に投資している。なので当然、2019年のペイディへの投資は(M&Aの)1つのきっかけになっている」、「ペイディには、グローバルな経営陣のチームもある。日本をよく理解した外国人が何人もいて、海外経験豊富な日本人もいる。双方をうまく融合している非常にまれな会社だと思う。マッキンゼー時代から25年くらい大手企業からベンチャーまでいろいろな経営陣を見てきたが、最優秀のチームだと思う」、ここまで褒められるとはよほどのことだ。

第三に、12月30日付け東洋経済Plus「後払いの古参ネットプロテクションズ新規上場 若者の「分割払い」傾倒にリスク、先駆社長の警鐘」を紹介しよう。
https://premium.toyokeizai.net/articles/-/29299
・『2021年12月に上場したネットプロテクションズHD。今後の成長戦略や、他社と若干異なる「分割払い」機能への考え方を柴田社長に聞いた。 国内ベンチャーのPaidy(ペイディ)がアメリカの決済大手ペイパルに3000億円で買収されるなど、激戦模様のBNPL(後払い決済)市場(詳細は12月27日配信の記事:3000億円買収で号砲!「後払い」新市場の大混戦)。ここで2002年から日本で展開する古参企業が、ネットプロテクションズホールディングスだ。 同社の「NP後払い」は年間利用者数が1580万人、加盟店数は7万弱、年間取扱高が3400億円超と、後払い事業者としては国内最大手だ。2017年からは毎月の支払いを月1回にまとめられる後払いアプリ「atone(アトネ)」も展開。ただ、ペイディやメルペイのように分割払いは提供していない。 ネットプロテクションズHDは2021年12月15日に東証1部に上場したばかり。資金を得た今、群雄割拠の市場でどのような成長を目指すのか。分割払いに踏み込むのか。同社の柴田紳社長に話を聞いた(Qは聞き手の質問、Aは柴田社長の回答)』、興味深そうだ。
・『未払い率は世界的にみても低い  Q:競合がひしめく状況を、古参の立場としてどう見ていますか。 A:言われているほど、競合している実感はない。従来の利用シーンはB to Cの物販EC(ネット通販)がメインだったが、デジタルサービスやテレビ通販、実店舗での決済にも使えるようにしたり、最近ではB to B(企業間)の後払いも広げている。 競合とぶつかるのは、B to CのECだけ。しかもペイディにせよ、メルペイにせよ、競合するとしても若年層くらいだ。NP後払いの取扱高上位100加盟店で、ペイディと併用されているケースは皆無。肌感覚としてまだ競合としては見ていない。 若年層向けのECでも、必ずペイディが入っているという感覚はない。彼らの取り扱いはアマゾンで伸びていると聞く。しかも初回20%還元などのキャンペーンを狙ったクレジットカードユーザーが流れているようだ。 Q:競合と比べた際の強みは。 A:与信の精度だ。(ユーザーがECなどで決済しようとしたときの)与信の通過率は97%を超えるのに対し、未払い率は0.6%以下。世界的に見てもかなりよい数字だと思う。 要因は3つ。まず(後払いサービス提供企業としての)歴史がいちばん長く、規模も最大なので、圧倒的にデータ量が多いこと。2つめに、決済するユーザーの8~9割がリピーターでリスクが低いこと。3つめが、(システムだけでなく)人間による目視審査もやっていることだ。 自前の目視審査部隊があるのは当社だけ。そこで発見した詐欺行為などもシステムに反映して改善すし続けている。 Q:審査においてはどういう部分が重要なのでしょう。 A:例えば1人のユーザーが住所を少しずつ変えて1時間に5回決済していると怪しいと判断しうる。入力ミスで1回間違うことはあるかもしれないが、それだけの回数となると不信感が高まる。 (決済サービスとして)一定の規模が出てくると、詐欺の標的にもなる。それを止めようとすると、少しでも怪しいと思われる決済をすべて止めたくなる。 ただ与信通過率を下げすぎると、加盟店としては本来売り上げが立つはずだったものが消えてしまう。何も悪さをしていないのに審査が通らなかったお客さんを怒らせてしまう可能性もある。決済会社としていちばんやってはいけないことだ。バランスは難しいが、それを哲学として20年間やってきた。 ▽スマホとクレカと相性が悪い(Q:そもそも20年前から後払いを提供している理由は。 A:当初の課題意識は明快だ。当時はカタログ通販が盛んで、銀行振り込みによる前払いが多かった。だがお金を払ったのに商品が届かない詐欺が社会問題化して、商品が届いた後に支払うサービスの価値があると考えた。 実は当時から通販の決済の6割は、各社が独自に提供している後払いが占めていた。とくに(通販をよく使う)女性の間では普通の支払い手段だった。それがネットに移ってきたということだ。 Q:近年後払いの利用が増えているのは、クレジットカード情報をECサイトに入力したくないという背景もあるようです。 当社の調査でも、ユーザーのうち7割はクレカを保有している。持っているけど使っていないというケースは少なくない。 最近ではスマホで買い物をする人が多いが、そもそもスマホとクレカは相性が悪い。電車に乗っているときなどは、財布からカードを取り出して、番号などを入力しづらい。 Q:NP後払いは加盟店数が7万弱に達しています。 A:当社のユーザーの75%は女性で、中でも30~50代が多い。そういう人が好むアパレル、化粧品、健康食品といったサイトでは当社の決済シェアが高く、重点的に営業している。 男性はECにおいてクレカ利用を好むことが明確にわかっている。逆に女性はそれを好まない比率が高い。ショップに営業する際も、「御社の商材では後払いの利用率がこれくらいになりますよ」というシミュレーションを伝える。 (柴田氏の略歴はリンク先参照) Q:今後ユーザー層を広げるためのカギは? A:カードを使い慣れている層を後払いに移行させるのはハードルが高い。そうなると狙い目は若年層になる。だから「アトネ」を広げている。2021年9月時点のユーザー数は490万まで伸びてきた。 若年世代にとってはアトネのようなデジタルで使いやすいものが重要になる。加盟店はまだまだ少ないので、ここから全力で開拓する。使える店が増えれば、ユーザーも自動的に増える。 未払い率が高めに出やすい若年層向けのショップは、これまで積極的に取ってこなかった。ただアトネの利用には(住所も含めた)会員登録が必要になるので、与信力を高めやすい。 物販のECだけでなく、デジタルサービスでの決済もこれから間違いなく伸びる。例えば電子コミックサイトでは、すでに数社にアトネが導入されている。翌月一括請求なので、サブスクリプションサービスの決済をまとめたいという需要も取り込める。 アトネはポイントも貯まるので、還元策を実施すれば送客もしやすい』、「カードを使い慣れている層を後払いに移行させるのはハードルが高い。そうなると狙い目は若年層になる。だから「アトネ」を広げている。2021年9月時点のユーザー数は490万まで伸びてきた」、なるほど。
・『分割払いに潜む「信用リスク」  Q:ペイディやメルペイは分割払いのサービスを押し出しています。ここに参入する考えはないですか。 A:当社でも研究はしている。台湾ではすでに分割払いサービスを提供しており、仕組みやビジネスモデルはわかっている。 ただ日本で若年層向けにやるべきかは、社内でも意見が分かれる。投資家と話していても、「やったほうがいいよね」という声もあれば、「金融リテラシーが低い人に提供しても需要を先食いするにすぎない」という声もある。 Q:需要の先食い、とは? A:要はお金が貯まってから買うべきような高額商品を、先に買うにすぎないということ。それによって若い人の債務が重くなってしまう可能性がある。海外ではすでにBNPL事業者に対する規制論が出ているが、日本でも法規制の動向を見極める必要がある。 使われたらそれでいいのかというと、判断が難しい。若い人たちが、きちんと返せるとわかって使うのか、買いたいものがあるというだけで使ってしまうのか。自分の若い頃を振り返っても、大学生に“計画的に”と言っても難しい。 信用情報機関への登録は1回の後払いだけでは必要ないが、(割賦販売法の規定で)分割払いでは必要になる。もし返済が滞ればクレジットカードを作れなくなるなどのデメリットが出てくる。信用が必要以上に傷つくリスクがある。 それを理解しないままに、ほしい商品を目の前にして分割払いに走ってしまってよいのか。取扱高を伸ばしたいからと事業者側が強く推進するのは、社会的に価値のあることなのか。 Q:加盟店側から「分割払いを提供してほしい」との要望はあるのですか。 A:当社への要望としてはほとんど聞いたことがない。10万円を超えるような商品は、30~50代の人だと従来から使っている(クレカなどの)分割払いがある。もともと返せるあてがあるから』、「分割払いでは」、「もし返済が滞ればクレジットカードを作れなくなるなどのデメリットが出てくる。信用が必要以上に傷つくリスクがある。 それを理解しないままに、ほしい商品を目の前にして分割払いに走ってしまってよいのか」、珍しく顧客目線に立って慎重だ。
・『JCBと提携、クレカと後払いは共存する  Q:クレカのローンに審査の手間や利用時の手数料がかかるのも、理由があってのことだと。 A:そうなんですよ。だからこそクレカには一定の制限がある。ちゃんと返せる人に使ってほしいということ。 海外でBNPLの分割払いのニーズが高まっているのは、そもそもクレカの審査が厳しすぎたり、金利が高かったりして、従来のサービスが使いにくかったから。日本はその前提が異なるため、(若年層向けの分割払いの)市場があると判断してよいのかは、ちょっと悩ましい。 Q:クレカと競合する存在でありながら、2021年2月にはクレカ業界大手のジェーシービー(JCB)と資本提携し、約60億円を調達しました。 A:提携の目的は明確で、ECだけでなく、企業間も含めて幅広い分野で後払いを提供したい。JCBが抱えている多数の加盟店をご紹介いただく。現時点では海外と異なり、クレカと後払いは共存している。 JCBとしてはこれまでカードしか提供できなかったが、後払いサービスメニューも持つことでショップに貢献できる。JCB側の紹介には手数料を払っており、薄くても新たな収益源になるのであれば全然ありだということで合意に至った。 ほかのクレカ会社からも(提携に関する)話は来ている。BNPLが流行りそうだという風潮があるので、各社ともどこかと組みたいのだろうなと』、「クレカと後払いは共存している。 JCBとしてはこれまでカードしか提供できなかったが、後払いサービスメニューも持つことでショップに貢献できる」、消費者にとっても支払い方法の選択肢が増えるのはいいことだ。 
タグ:「クレカと後払いは共存している。 JCBとしてはこれまでカードしか提供できなかったが、後払いサービスメニューも持つことでショップに貢献できる」、消費者にとっても支払い方法の選択肢が増えるのはいいことだ。 「PayPal Japan、Paidy両トップに直撃① 後払いPaidy「上場目前」でM&Aに舵切った真因」 東洋経済Plus 「「カードレス社会」すなわち「デジタル化された社会」では、例えば顔認証の本人確認が一般化し、個人の行動がデータの“中央管理機関”に収集されるというリスクがある。それはその中央管理機関がわれわれにとってネガティブな行動をしなければよいが、もしも、そうではないときにはプライバシーの問題になる。いわゆる〝デジタル化”の問題である」、 「本人確認の基本はそのカード等を“保持”(保有)していることである。」、なるほど。 『決済インフラ入門【2025年版】:スマホ決済、デジタル通貨から銀行の新リテール戦略、次なる改革まで』 「決済はキャッシュレスから一気にカードレス時代 「デジタルの利便性」の裏に潜むリスクとの対峙」 宿輪 純一 東洋経済オンライン (その8)(決済はキャッシュレスから一気にカードレス時代 「デジタルの利便性」の裏に潜むリスクとの対峙、PayPal Japan、Paidy両トップに直撃① 後払いPaidy「上場目前」でM&Aに舵切った真因、後払いの古参ネットプロテクションズ新規上場 若者の「分割払い」傾倒にリスク 先駆社長の警鐘) 「分割払いでは」、「もし返済が滞ればクレジットカードを作れなくなるなどのデメリットが出てくる。信用が必要以上に傷つくリスクがある。 それを理解しないままに、ほしい商品を目の前にして分割払いに走ってしまってよいのか」、珍しく顧客目線に立って慎重だ。 「カードを使い慣れている層を後払いに移行させるのはハードルが高い。そうなると狙い目は若年層になる。だから「アトネ」を広げている。2021年9月時点のユーザー数は490万まで伸びてきた」、なるほど。 東洋経済Plus「後払いの古参ネットプロテクションズ新規上場 若者の「分割払い」傾倒にリスク、先駆社長の警鐘」 「ペイディには、グローバルな経営陣のチームもある。日本をよく理解した外国人が何人もいて、海外経験豊富な日本人もいる。双方をうまく融合している非常にまれな会社だと思う。マッキンゼー時代から25年くらい大手企業からベンチャーまでいろいろな経営陣を見てきたが、最優秀のチームだと思う」、ここまで褒められるとはよほどのことだ。 「ペイディにはもともと投資部門のペイパル・ベンチャーズから出資していました」、「戦略的に期待できる、興味がある先に投資している。なので当然、2019年のペイディへの投資は(M&Aの)1つのきっかけになっている」、 さすが、コンサル出身の社長だけあって、視野が広い。 「生体認証が犯罪者に一度盗まれると、大変困る事態になる。顔にしても、指紋にしても変えられないからである」、確かに「利便性とリスクは表裏一体」、なので、私は現段階では「生体認証」に反対である。 「私たちは大企業のような安定成長ではなくて、まだまだリスクを取って成長していきたい。それをペイパルが承諾してくれるのであれば、ある意味IPO以上に自由なんです。上場していると、株主に迷惑をかけすぎる経営ができない。ある種プライベートのお金を調達することで、より速いスピードで成長できるということでM&Aに決めた」、幸運な選択だ。 「デジタル通貨はこのような個人情報の問題から導入は困難であるし、導入の予定はない。あくまでも“前向き”な分析・検討の段階にとどめている」、なるほど。 決済
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フランス(その3)(フランスで起こっている見過ごせない"異変" コロナ禍芸術が軽視されているこのモヤモヤ感、「日本推し」候補がフランス大統領選で人気の背景 急激に支持率を高めているザムール氏の主張、フランス大統領選挙 候補者たちの熾烈な争い 3つのシナリオとそれぞれがはらむ問題を分析) [世界情勢]

フランスについては、2017年5月18日に取上げた。久しぶりの今日は、(その3)(フランスで起こっている見過ごせない"異変" コロナ禍芸術が軽視されているこのモヤモヤ感、「日本推し」候補がフランス大統領選で人気の背景 急激に支持率を高めているザムール氏の主張、フランス大統領選挙 候補者たちの熾烈な争い 3つのシナリオとそれぞれがはらむ問題を分析)である。

先ずは、昨年2月28日付け東洋経済オンラインが掲載した国際ジャーナリスト・エッセイストのドラ・トーザン氏によるを紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/413809
・『「文化の国」であることを誇りにしているフランスに大きな異変が起きています。フランスは、新型コロナウイルスによるパンデミックの最中、生活と社会における「文化的な部分」を完全に停止(あるいは放棄)してしまったのです。多くのフランス人と同じように、私も自国の文化および文明の基礎に何が起きているのか、いまだに理解できずにいます。 すでにイタリアやスペインでは美術館が営業を開始しています。日本では昨春の緊急事態宣言時こそ閉まっていましたが、その後は多くが営業をしています。一方、フランスでは昨年10月以降、美術館や劇場、映画館、オペラ劇場、コンサートホール、そしてすべての記念建造物(エッフェル塔やベルサイユ宮殿、城など)は閉鎖されたままです』、「「文化の国」であることを誇りにしているフランス」で「パンデミックの最中、生活と社会における「文化的な部分」を完全に停止」、とは大変なことだ。
・『美術館や劇場は「閉鎖」したまま  文化と美術の国として、美が重要視され、芸術家が高く評価されているこのフランスにおいて、なぜエマニュエル・マクロン大統領や、彼の政権は文化を完全に「軽視」するようになってしまったのでしょうか。 これまでも多くのところで言及してきましたが、フランスには日本の文化庁の10倍もの予算を持つ文化省があります。文化はフランスの歴代の政治家によって、創造産業としてだけではなく、主要な経済主体として国の重要な一部と扱われてきました。1959年に文化省(当時は文化通信省)を設立した、シャルル・ドゴール大統領(当時)は、1965年「文化はすべてを支配し、われわれの文明の必須条件である」と話しています。 ところが、10月末から12月半ばまで続いた二度目のロックダウン中は、こうした施設の営業再開がいつになるかの見通しは示されませんでした。多くの人は、クリスマス休暇に合わせて12月15日に営業が再開すると期待していましたが、それも実現しませんでした。夜間外出禁止であれば、せめて日中だけでもという声もありましたが、それもなし。制限付きの営業再開すら許されていないのです。 クリスマス前には、フランス国民がクリスマスショッピングできるように、小売店は営業することが許されました。画廊や図書館、教会は開いています。それなのになぜ、ルーブル美術館はいつまで経っても閉館しているのでしょうか(ちなみに、美術品を維持するために、美術館は閉館中も空調管理やセキュリティ対策が必要で、これには毎月1000万ユーロかかります)。 こうした中、美術館の営業再開への嘆願や圧力が高まりつつあります。映画館やレストランへ行ってストレスを発散できなくなったフランス国民は意気消沈し始めており、この傾向は文化および行楽施設が数多くあるパリで特に顕著です。美術館に行くことは、フランス人にとってストレス解消や現実逃避、そして夢想することなのです。今のような状態では特にこうした場所を必要としています。) フランスにおける最初のロックダウン(2020年3~5月)の後、2020年夏まではほぼすべての美術館が営業していました。インターネットによる予約制にしたり、来場できる人数を減らしたり、というシステムも非常によく機能していました。もちろん、外国人観光客が激減していたことで訪れる人も例年を大きく下回っていましたが、それでもフランスに1200ある美術館、そして8000ある歴史的建造物を訪れる人は数多くいました。 苦しんでいるのは美術館だけではありません。映画業界もパンデミックによる影響を大きく受けています。2020年の「カンヌ映画祭」は中止になり、2021年に関しては現在のところ、5月から7月に延期されています。フランスでは10月以降、映画館は閉鎖されたままです。上述の通り、劇場やコンサートホールも閉鎖されたままで、バレエや舞台、音楽祭などは軒並み全公演中止となっています』、「美術館に行くことは、フランス人にとってストレス解消や現実逃避、そして夢想することなのです。今のような状態では特にこうした場所を必要としています。 フランスにおける最初のロックダウン(2020年3~5月)の後、2020年夏まではほぼすべての美術館が営業していました」、「「美術館に行くことは、フランス人にとって」重要なのに、「2020年夏以降、併催された背景には何があったのだろう。
・『「今、必要なのはインタラクション」  文化は「必須ではない」産業なのか――。「必須ではない」と認識されたことの衝撃は、多くの芸術家および芸術関連事業の従事者にとってかなりおおきく、そして屈辱的なものでした。 何が必須か、必須ではないかを決めるのは誰なのでしょうか。私たちが生きていくのに必要なのは食料だけなのでしょうか。それは「生きる」ことの定義ではなく、「生き延びる」ことの定義ではないでしょうか。 「今、私に必要なのはインタラクションです。コンサートへ行き、人々の演劇や歌を生で聴かなければいけません。絵画や彫刻に関しても同様です。芸術は私に力を与えてくれます。この『光』なしに過ごすことは狂おしいのです」。これはフランスの雑誌のインタビューで、女優のキャロル・ブーケが話していたことです。 「国民の健康保護という名目で、すべての文化的生活を禁止するのは普通ではない」と考え、新たな方法で文化や芸術を人々が体験できるような実験を行うところも出てきました。例えば、ルーブル美術館は館内が見渡せるオンラインビューイングやバーチャルツアーなどを始めています。こうした取り組みはパンデミック前にはなかったもので、これは美術館ファンのみならず、従来は美術館に興味がなかった人が美術のすばらしさに触れるきっかけにもなるでしょう。 多くの国と違って、フランスには芸術業界に従事する人(intermittents du spectacle=芸術分野における非正規労働者)を保護する特有のシステムがあり、こうした人々は無職期間中に一定の手当てを受け取ることができます(受け取るには、前年最低507時間の労働実績が必要です)。政府はすべての休業に対する補償を8月末まで延長すると決めており、これは芸術家が収入を維持するうえでは大きなことです。 もっとも、文化や芸術に携わる人々は収入があればいい、というわけではありません。4つのホールを持つパリのアポロ劇場の理事であるマイダ・デルマスさんは、漫談師や一人芝居をする役者などがいかにコロナ危機に立ち向かったかをこう語ります。) 「最初のロックダウン後、昨年4月に私たちはいくつかのライブ配信をすることを決めました。劇場の業界はとても閉鎖的かつ保守的で、デジタル化に対してはかなり否定的ですが、私たちは2014年に投資をしており、準備はできていました。メインホールにはロボットカメラを設置してありますし、そのほか5台のカメラと監督が1人います。 アーティストは観客を求めており、それは喜劇におけるアーティストに特に言えることです。そこで私たちは、観客の代わりに座席にインタラクティブなモニターを設置して、世界中から(座席に座って)観客として配信に参加する人を20人選んだのです」(デルマスさん) もちろん、選ばれなかった人もオンラインで配信を視聴できました。配信料は1人10~35ユーロ(再生は不可)。配信はもちろん、本物の観客を前にしたときに感じる情熱や感情の代わりを果たすことはできませんが、ショーの新たな体験方法を提案するだけでなく、世界中のフランス語を話す観客を魅了できる取り組みとなったわけです』、「劇場の業界はとても閉鎖的かつ保守的で、デジタル化に対してはかなり否定的です」、とはいえ、「ショーの新たな体験方法を提案」する動きも出てきたようだ。
・『芸術は生で共有されることに基づいている  フランスでは、文化はつねに国の重要な財源として考えられてきました。実際、この国では65万人もの人が文化・芸術分野で雇用されているのです(自動車業界より多いのです!)。 芸術における演出の大部分は、それが観客と「共有」されるという事実に基づいています。美しい彫刻であれ、すばらしい歌声であれ、観客が生で触れることでしか感じ取れない感情があります。 それを「届ける」ことは、文化や芸術に携わる人々にとっては仕事以上のものであり、生きていくうえでまさに不可欠なものなのです。彼らは自らの創造を演奏し、演じ、見せ、そして共有したいと思っており、必要としています。一方の観客側も、精神的バランスを保つため、美術館や劇場、映画館へ足を運び、芸術や文化に生で触れることを必要としているのです。 息苦しい状況が続く中、現文化相のロズリン・バシュローは、美術館や劇場の再開や音楽祭の開催を政府に説得しようと、さまざまな案を模索しています。この夏も野外フェスティバルを行うことを許可したばかりです。参加できる人数は5000人、観客は着席のまま、一定距離を開ける、という制限付きではありますが、これは前向きな1歩でもあります。 営業再開の判断をすることは容易なことではないでしょう。しかし、すべてを閉鎖し、「そのまま」にしておくことは正しい判断とは思えません。「ウイズコロナ」すなわち、ウイルスとともに暮らしていかなければならない状況で、文化や芸術はこれまで以上に大切なものとなっているのです』、フランスの「文化や芸術」分野への「ウイズコロナ」への取り組みが遅れているというのは、意外な驚きだった。

次に、10月21日付け東洋経済オンラインが掲載した『フランス・ジャポン・エコー』編集長・仏フィガロ東京特派員のレジス・アルノー 氏による「「日本推し」候補がフランス大統領選で人気の背景 急激に支持率を高めているザムール氏の主張」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/463481
・『「フランスは日本のように運営されるべきか?」。これは、2022年4月24日に行われるフランスの大統領選挙で問われるかもしれない問題である。9月まで、フランス国民は、エマニュエル・マクロン大統領と、その挑戦者で極右政党「国民戦線」党首のマリーヌ・ルペンの対決に備えていた。 両人は、対立する陣営を代表している――エマニュエル・マクロン大統領は、フランスを自由貿易や人的交流にもっと開放することを提案する「グローバリスト」を、ルペンは、フランスの国境を強化し、移民や国際競争への対応を制限することを提案する「ナショナリスト」を率いている』、興味深そうだ。
・『理想とする国のモデルは「日本」  マクロン大統領はなんだかんだ依然人気で優勢だが、先月から、エリック・ゼムールという『フィガロ』誌の元記者が、マリーヌ・ルペンを有力な対立候補の座から下ろし、代わってフランス社会の全面的な見直しを提案して、議論の中心に身を置いている。 フランスの共産主義者にとってソ連がモデルであったように、ゼムールのモデルはなんと日本であると最近のインタビューで彼自身が話している。 「この40年間、日本は移民を拒否してきており、結果失業率は3%程度だ。貿易黒字でもある。犯罪の少ない社会で、刑務所の収容者数は半分にすぎない。生産性も高く、ロボット化も進んでいる。これもすべては、日本が移民という安易な方法で問題を解決しなかったからだ」と説明し、記者たちを唖然とさせた。 フランスの名門「パリ政治学院」を卒業したゼムールは、『コティディアン・ド・パリ』紙などで働いた後、1996年から保守系日刊紙『フィガロ』で政治を中心にカバーしているほか、雑誌のコラムやテレビに出演するなど活躍。政治記者の経験を生かして、ジャック・シラク元大統領の評伝なども執筆している。 そんなゼムールのスタンスは、先のインタビューからわかるように、完全に「反移民」である。同氏は移民、特にイスラム系移民の受け入れ政策は、フランスのアイデンティティにとって致命的な脅威であると考えおり、移民受け入れは、メリットよりも問題点のほうがはるかに多いと主張している。 さらに、ゼムールはこうも考えている。移民コミュニティの人口における動きは、「ネイティブ」のフランス人に比べて非常にダイナミックなうえ、移民の生活様式はあまりにも従来のフランス人のそれとは異なっているため、フランス社会は、30年後には、敵対的で苦々しいコミュニティに深く分断された「大きなレバノンのような国」になってしまう――。 実際、フランスは過去50年間、人口と労働力の両面で移民政策をとってきており、現在フランスに住む人の7.6%が外国人である。フランスでは、外国人の人権は、家族と一緒に暮らす権利を含め、広く保障されている。不法滞在者であっても、出身国に強制送還されることはほとんどない』、「外国人」への開放への後進国「日本」をよりによってお手本にするとは・・・。
・『日本とフランスの難民政策の如実な違い  翻って日本にはまだ公式な移民政策がない。積極的に外国人を受け入れることもなく、あくまでも一時的な労働力としてしぶしぶ受け入れているだけで、人権が保障されるべき存在とは考えられていないように見える。犯罪を犯した外国人は速やかに拘束される(これは外国人に限ったことではないが)。ひとたび有罪判決を受けて国外退去となれば、それがどんなに軽微な犯罪であっても、特別に許可が得られなければ一生日本に足を踏み入れることができない。 外国人に対する両国の考え方の違いは、それぞれの難民政策にも如実に表れている。日本は40年間で3550人の難民申請者に保護を与えているが、フランスは2019年の1年間に3万6275人の難民申請者を保護している。つまり、フランスは2019年の40日間で、日本の40年間と同じ数の難民を保護を与えている。 一方、治安については議論の余地がないほど日本のほうが安全だ。フランスから日本を訪れた人は、つねに清潔で秩序が保たれていることに驚かされる。6歳の子どもたちが学校帰り、午後遅く1人で東京の道路を横断する光景が日常的に見られるのにフランスからの訪問者は目を疑う。フランスに帰国すると、パスポートをなくしたり、財布を忘れたりしても、後で奇跡的に無傷で戻ってきたという思い出話をする。 フランスでは、今や強盗はインフルエンザと同じくらい一般的な出来事のようだ。国連が発表した薬物と犯罪に関する最新の数値によると、2016年のフランスの人口10万あたりの強盗発生率は日本の88.5倍にもなっている。 「この前、パリの一流ホテルに泊まったとき、バスルームにバスタブの栓がなかった。フロントに理由を尋ねると、『客がよく盗むから』との回答だった。言うまでもなく、彼は新しい栓を用意してくれなかった」とパリから戻ったフランス人の友人が先月話してくれた。 ゼムールは、日本の強い製造業についてもうらやましく思っている。世界銀行によると、日本のGDPの29.1%を占める製造業が、フランスでは16.3%しか占めていない。貿易に関しては、日本は過去30年間のうち25年間は貿易黒字を記録している。一方、フランスは2005年以降、ずっと貿易赤字を出し続けている。 失業率についても、日本はOECD諸国の中で最も低く、フランスは最も高い水準にある。過去30年間で、日本の最高失業率は2002年で、そのときは5.4%で天井を打っている。同じ期間、フランスの失業率は7%を下回ったことがない。最新の統計では、日本の失業率は2.8%、フランスの失業率は7.9%となっている』、「ゼムール氏」の「日本」の紹介はいい面だけを強調し過ぎている。
・『日本のことを実はよくわかっていない?  もっとも、ゼムールは日本に一度も足を踏み入れたことがない。彼は、日本の社会モデルの欠陥、すなわち、人口動態のデス・スパイラル、女性の社会的地位の低さ、若者の絶望などを見ていない。日本の生産性は、製造業を除いて決して高くもない。 フランス人は彼の「日本礼賛論」を受け入れるだろうか?世論調査によれば、その可能性がないわけではない。ゼムールは現在、すべての世論調査で投票動向の2位か3位につけている。つまり、もし今日、大統領選挙が行われるとしたら、彼は第2ラウンドに進む資格を得て、マクロン大統領と対戦し、彼を打ち負かす可能性があるということだ。 フランスの歴史上、これほど急速に人気を博した候補者はいないと、すべての世論調査機関が認めている。同氏はすでに、移民と安全保障を中心に大統領選挙を大きく変えている。確かなことは、彼の政治プログラムによって、フランスが見習うべき社会のモデルとして、日本にスポットライトが当てられるということだ。 非常に分裂的な人物であるゼムールは、フランスでは崇拝されると同時に嫌われてもいる。同氏の集会は、2016年のドナルド・トランプ前アメリカ大統領のキャンペーンのように、暴力的に支持者と反対者を対立することが多くなっている。 ゼムールの反対勢力の1つが極左だが、大統領選には極左も立候補しており、ゼムールはこうした候補らに「人種差別主義者」と呼ばれている。ゼムールにとって極左は「敵」だ。もし極左が大統領選に勝利し、ゼムールが亡命せざるを得ないようなことになれば、同氏は自らが「モデル国家」としている国で難民申請をすることができる。そう、日本だ』、「ゼムール氏」は「日本に一度も足を踏み入れたことがない」とはいえ、ジャーナリストだっただけあって一応、筋がとおっている。ただし、「日本」の実態を知れば、理想視できない筈だ。

第三に、本年1月2日付け東洋経済オンラインが掲載した第
一生命経済研究所 主席エコノミストの田中 理氏による「フランス大統領選挙、候補者たちの熾烈な争い 3つのシナリオとそれぞれがはらむ問題を分析」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/479294
・『昨年12月にドイツでオーラフ・ショルツ首相が率いる新政権が誕生し、欧州政局の次の注目点は今年4月のフランス大統領選挙となる。エマニュエル・マクロン大統領の正式な出馬表明はまだだが、主要各党の候補者が出揃い、選挙戦は事実上スタートしている。投開票日まで3カ月以上もあり、選挙戦の行方は流動的だが、現時点で蓋然性の高いシナリオを考察する』、興味深そうだ。
・『マクロン大統領がリード、熾烈な2番手争い  最近の世論調査によれば、マクロン大統領が25%前後の支持でリードしている。それを追うのが、2017年の前回選挙の決選投票でマクロン氏と対峙した極右政党・国民連合(前回の国民戦線から党名を変更)のマリーヌ・ルペン候補、新たな極右候補で無所属のエリック・ゼムール候補、伝統的な2大政党の一角で中道右派(フランスの政治用語では右派)・共和党のヴァレリー・ペクレス候補で、15%前後の支持率で熾烈な2番手争いを繰り広げている。 フランスの大統領選挙は2回投票制で行われ、4月10日の初回投票で過半数を獲得した候補がいない場合、上位2名が同月24日の決選投票に進み、より多くの支持を集めた候補が勝者となる。まずはどの候補が決選投票に残るかが、最終的な勝者を占ううえで重要となってくる。) 前回選挙では選挙戦が本格的にスタートして以降、主要候補の公金横領疑惑が浮上し、世論調査は大きく変動した。 ただ、今回は上位4候補とそれに続く他候補との支持率の差は大きい。かつての政権与党で党勢低落が著しい中道左派(フランスの政治用語では左派)・社会党のアンヌ・イダルゴ候補、環境政党・欧州エコロジー=緑の党のヤニック・ジャドー候補、前回選挙の初回投票で4位につけた極左政党・不服従のフランスのジャン=リュック・メランション候補の間で左派票が割れ、左派は候補者一本化もできそうにない。決選投票に進出する可能性があるのは前述の4候補に絞られよう。 2021年に各党の支持は目まぐるしく変動している。当初はルペン候補がリードしていたが、ゼムール氏の出馬で極右票が割れ、マクロン大統領に逆転を許した。フランス国民の間で極右大統領誕生への警戒は根強く、前回の決選投票ではマクロン氏が反極右票を集めて圧勝した。ルペン氏は今回、ユーロ離脱などの極端な主張を封印し、支持層拡大に努めてきた。だが、新たな極右候補の登場で、ルペン氏の政策穏健化に不満を持つ有権者がゼムール支持に流れている』、「ルペン氏の政策穏健化に不満を持つ有権者がゼムール支持に流れている」、なるほど。
・『極右ではルペン氏を追い上げるゼムール氏  ゼムール氏の支持基盤は極右だけにとどまらない。ゼムール支持の有権者に、前回選挙でどの候補に投票したかを尋ねると、28%のルペン候補とほぼ並ぶのが、共和党のフランソワ・フィヨン候補の27%だ。伝統的な中道右派政党のフィヨン氏を支持した有権者がルペン支持に転向した割合は少ないが、ゼムール支持に転向した割合は多い。 ゼムール氏は代表的な右派系新聞フィガロの政治記者などを経て、作家やテレビのコメンテーターとして長年活躍してきた人物だ。反移民、反イスラム、治安強化、フランスのアイデンティティ回復などを訴えている。人種差別的な発言が物議を醸すことも少なくないが、歴史や古典への造詣が深い知識人としての一面も持つ。 そのゼムール氏も陣営内の問題が相次いで発覚し、一時の勢いはない。代わりに急速に支持を伸ばしているのが共和党のぺクレス氏だ。ぺクレス氏の支持は当初10%前後で低迷していたが、有力候補を破って共和党の予備選を制した後は、一躍、ポスト・マクロンの最有力候補に躍り出た。 マクロン大統領にとって、政策が似通うぺクレス氏は攻撃材料に乏しく、決選投票の世論調査でも接戦が予想されている。フランスでも新型コロナウイルスの感染が再拡大しており、1日当たりの新規感染者が過去のピーク時を上回っている。今後、一段と感染が広がり、感染予防の強化を余儀なくされる場合、政権批判が広がる恐れがある』、「新型コロナウイルスの感染が再拡大」が「政権批判が広がる恐れがある」のは確かだ。
・『極右候補1本化、ペクレス猛追ならマクロン敗退も  マクロン大統領にとっては、決選投票の相手がぺクレス氏ではなく、ルペン氏やゼムール氏となる場合も侮れない。大統領就任後、マクロン氏の強引な改革手法や国家運営に反発する国民も少なくなく、政治刷新と変革を掲げて勝利した前回と比べて反マクロンの逆風が吹いている。特にゼムール氏は共和党支持層の一部を取り込む素地を持っており、決選投票に進出した場合、世論調査が示唆する以上の支持を集める可能性がある。 また、ルペン氏とゼムール氏のいずれかが出馬を取り止める場合、残る極右候補が初回投票を首位で突破する公算が大きい。ぺクレス氏は最近の世論調査で、右派票のみならず中道票や左派票の一部も取り込んでいる。今のところ可能性は低いが、極右候補の一本化とぺクレス候補がマクロン大統領を逆転する事態が重なれば、マクロン大統領が初回投票で敗退する恐れすらある。 ぺクレス氏は多くの大統領を輩出してきたドゴール派の伝統政党の一員で、初の女性大統領の栄冠を勝ち取った場合も、政策面で大きな不安はない。直後に控える下院(国民議会)選挙でも共和党が勝利し、安定した政権基盤を築くことが予想される。 ただ、ドイツ政界を16年もの長きにわたって率いてきたアンゲラ・メルケル首相が引退したのに続き、メルケル後の欧州連合(EU)のリーダーと目されたマクロン大統領が再選に失敗すれば、EUのリーダシップに対する不安が広がる恐れがある。首「マクロン大統領が再選に失敗すれば、EUのリーダシップに対する不安が広がる恐れがある」、言われてみれば、その通りだ。都パリが所在するイル=ド=フランス地域圏首長を務めるぺクレス氏は、ニコラ・サルコジ大統領の時代に高等教育・研究開発相と予算相を歴任した経験豊富な政治家だが、EUや国際社会でのプレゼンスは未知数だ』、「新型コロナウイルスの感染が再拡大」が「政権批判が広がる恐れがある」のは確かだ。
・『マクロン氏は議会過半数を失い、EUでも波乱含み  マクロン氏が再選を果たした場合も、2期目の政権運営には不安が残る。前回選挙を前に同氏が旗揚げした中道政党・共和国前進は、大統領選直後の下院選挙を制し、議会の過半数を握った。だが、大統領や政権の支持低迷とともに離党者が相次ぎ、昨年5月には議会の過半数を失った。地方議会選挙でも苦戦続きで、マクロン氏が大統領選を制した場合も、共和国前進が議会の過半数を握るのは困難とみられている。再選後のマクロン大統領は共和党など他党の協力を仰ぎながらの議会運営を余儀なくされる。 フランスでは大統領が主に外交を、首相が主に内政を担当する。欧州やフランスの戦略的自立や主権強化を訴えるマクロン大統領は、EU離脱後の英国領海での漁業権問題や、アメリカ・英国・オーストラリアによる新たな安全保障の枠組み(AUKUS)などをめぐって、他国との対立姿勢を露わにすることも少なくない。何事にも慎重姿勢だったドイツのメルケル前首相に代わり、マクロン大統領がEUのリーダーとしての地位を固める場合、他国や他地域との関係はこれまで以上に緊張をはらんだものとなりそうだ。 こうしてみると4月のフランス大統領選は、マクロン大統領再選、共和党の政権奪還、極右大統領誕生のいずれのシナリオの場合にも不安要素を抱える。選挙戦はこれから本格化する。今回はどんなドラマが待ち構えているのか、その行方に注目が集まる』、「4月のフランス大統領選は、マクロン大統領再選、共和党の政権奪還、極右大統領誕生のいずれのシナリオの場合にも不安要素を抱える」、今後の展開が注目される。
タグ:フランス (その3)(フランスで起こっている見過ごせない"異変" コロナ禍芸術が軽視されているこのモヤモヤ感、「日本推し」候補がフランス大統領選で人気の背景 急激に支持率を高めているザムール氏の主張、フランス大統領選挙 候補者たちの熾烈な争い 3つのシナリオとそれぞれがはらむ問題を分析) 東洋経済オンライン ドラ・トーザン 「フランスで起こっている見過ごせない"異変" コロナ禍芸術が軽視されているこのモヤモヤ感」 「「文化の国」であることを誇りにしているフランス」で「パンデミックの最中、生活と社会における「文化的な部分」を完全に停止」、とは大変なことだ。 「美術館に行くことは、フランス人にとってストレス解消や現実逃避、そして夢想することなのです。今のような状態では特にこうした場所を必要としています。 フランスにおける最初のロックダウン(2020年3~5月)の後、2020年夏まではほぼすべての美術館が営業していました」、「「美術館に行くことは、フランス人にとって」重要なのに、「2020年夏以降、併催された背景には何があったのだろう。 「劇場の業界はとても閉鎖的かつ保守的で、デジタル化に対してはかなり否定的です」、とはいえ、「ショーの新たな体験方法を提案」する動きも出てきたようだ。 フランスの「文化や芸術」分野への「ウイズコロナ」への取り組みが遅れているというのは、意外な驚きだった。 レジス・アルノー 「「日本推し」候補がフランス大統領選で人気の背景 急激に支持率を高めているザムール氏の主張」 「外国人」への開放への後進国「日本」をよりによってお手本にするとは・・・。 「ゼムール氏」の「日本」の紹介はいい面だけを強調し過ぎている。 「ゼムール氏」は「日本に一度も足を踏み入れたことがない」とはいえ、ジャーナリストだっただけあって一応、筋がとおっている。ただし、「日本」の実態を知れば、理想視できない筈だ。 田中 理 「フランス大統領選挙、候補者たちの熾烈な争い 3つのシナリオとそれぞれがはらむ問題を分析」 「ルペン氏の政策穏健化に不満を持つ有権者がゼムール支持に流れている」、なるほど。 「新型コロナウイルスの感染が再拡大」が「政権批判が広がる恐れがある」のは確かだ。 「4月のフランス大統領選は、マクロン大統領再選、共和党の政権奪還、極右大統領誕生のいずれのシナリオの場合にも不安要素を抱える」、今後の展開が注目される。
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2022年展望(その2)(習近平の大誤算…いよいよ近づく「チャイナショック」と「中国からの資金流出」の足音) [経済政治動向]

一昨日に続き、2022年展望(その2)(習近平の大誤算…いよいよ近づく「チャイナショック」と「中国からの資金流出」の足音)を取上げよう。

昨年12月27日付け現代ビジネスが掲載した法政大学大学院教授の真壁 昭夫氏による「習近平の大誤算…いよいよ近づく「チャイナショック」と「中国からの資金流出」の足音」を紹介しよう。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/90911
・『マイナス要因が山積み  足元で中国経済の減速が鮮明だ。 その背景には、いくつかのマイナス要因が複合していることがある。 中国国内の不動産市況の悪化、新型コロナウイルスの感染再拡大、米ドルなどに対する人民元高や世界的な供給網=サプライチェーンの混乱などがあげられる。 中国政府も、予想を上回る景気減速に対して利下げに踏み切るなど食い止め策に追い込まれている。 それにも拘らず、当面、中国経済は一段と厳しい状況が続くとみられる。 特に、不動産市況の悪化はより深刻化する可能性がある。 一部の民間デベロッパーは、自社の財務状況などの悪化を投資家に警告し始めた。 その意味は重い。 共産党政権は、不動産関連規制の一部緩和などで住宅価格の下落を食い止めようとしているが、今のところ大きな効果は見られていない。 また、世界的なサプライチェーンの混乱によって、世界的にエネルギー資源や穀物などの争奪戦が鮮明だ。 今後、供給網混乱と資源争奪戦の相乗効果によって、世界的にインフレ懸念は高まるだろう。 GDP成長率の下振れ要因の増加によって、中国から流出する資金は加速度的に増えるかもしれない。 中国初(注:「発」の間違え?)の世界経済の混乱のリスクは無視できない』、特に恒大集団による外貨建て債務のデフォルト問題に代表される不動産関連は深刻だ。
・『金融緩和に追い込まれた中国の党政権  12月20日に中国人民銀行(中央銀行)は利下げを発表した。 1年物の最優遇貸出金利が0.05ポイント引き下げられ3.80%に設定された。 利下げの理由は、中小企業の事業環境の悪化を筆頭に景気減速が当局の想定を上回っているからだ。 景気減速を食い止めるために、共産党政権は利下げなど金融緩和策をより重視するだろう。 景気減速の要因は増えている。 最大の要因は、不動産市況の悪化だ。 不動産融資規制である“3つのレッドライン”は想定外に中国恒大集団などデベロッパーの経営体力を奪った。 足許では泰禾集団(タイホット・グループ)などが自社株式の投資リスクを警告しはじめた。 その真意は当局に救済を求めることだろう。 資産切り売りなどによる債務返済と経営再建に行き詰まる不動産業者は増えている。 新型コロナウイルスの感染再拡大の影響も大きい。 北京冬季五輪の開催に向けて共産党政権はゼロ・コロナを徹底しており、年末年始、さらには2月1日の春節を挟んだ連休中の移動制限が強化される。 それは経済にマイナスだ。 感染再拡大によって港湾施設の稼働率は低下し、ベトナム国境での通関も遅延するなどサプライチェーンの混乱や寸断も深刻だ。 それに加えて、人民元高も景気を下押しする。 現在の中国経済にとって、輸出は唯一の景気サポート要因だ。 輸出が大きく増えた結果、大手企業が外貨を売って人民元を買うオペレーションを増やした。 それは、景気減速にもかかわらず人民元が米ドルなどの主要通貨に対して上昇する主たる要因だ。 人民元高は輸出セクターに打撃を与える。 不動産市況の悪化や感染再拡大、人民元高など負の影響を和らげるために、今後も中国人民銀行は追加利下げなど金融緩和を重視せざるを得ないだろう』、インフレは生産者物価が前年同月比14%と高水準を続けているが、消費者物価は当局が消費者への価格転嫁を禁止しているため、9月で前年同月比0.7%に止まっているが、潜在化したインフレリスクは大きくなっている。
・『チャイナ・ショック(注)再発の懸念も  今後、中国経済の減速はこれまで以上に鮮明化し、景気が失速する展開も考えられる。 その結果として、2015年夏場に起きた“チャイナ・ショック”のような事態が発生する展開は排除できない。 不動産セクターを中心とする中国の債務問題が世界的な金融危機につながる可能性は低い。 しかし、わが国のように中国の需要を取り込んできた経済にとって、中国金融市場の混乱はかなりのマイナスの影響を与える。 不動産市況の悪化と感染再拡大による動線の寸断は中国の内需を圧迫する。 特に、新築住宅の供給過剰は深刻だ。住宅価格はさらに下落するだろう。 それに加えて、世界的な物価上昇のリスクも軽視できない。 11月の中国の輸入は増加したが、それは消費の回復によるものではなく、石炭などエネルギー資源の調達増加に押し上げられた側面が大きい。 共産党政権は電力供給の安定化などのために米国から液化天然ガスの輸入を増やし、干ばつに対応するために食料備蓄も増やしている。 その一方で、感染再拡大によって世界のサプライチェーン寸断は深刻だ。 その状況は簡単には解消されない。 中国をはじめ世界各国による資源などの争奪戦は激化し、世界的に卸売物価は上昇するだろう。 その結果として、中国のインフレリスクは高まり、個人消費や設備投資にブレーキがかかりやすい。 不動産投資を増やすことによって、共産党政権は人為的にGDP成長率を押し上げ、雇用を生み出して求心力を保った。 不動産市況の悪化によって党主導の経済運営は行き詰まり始めた。 その上に物価上昇が加われば中国の経済成長率の下振れ懸念は高まり、株価の急激な不安定化など金融市場が混乱する恐れがある。 中国経済の現状を踏まえるとそのインパクトは2015年夏のチャイナ・ショックを上回るだろう』、「不動産市況の悪化によって党主導の経済運営は行き詰まり始めた。 その上に物価上昇が加われば中国の経済成長率の下振れ懸念は高まり、株価の急激な不安定化など金融市場が混乱する恐れがある」、インフレは前述の通り、人為的に抑制してきただけに、調整のマグマはかなり溜まっている筈だ。日本への波及にも警戒する必要がある。
(注)チャイナ・ショック:中国株の大暴落。2015年6月12日に始まった株価の大暴落で、ひと月の間に上海証券取引所のA株は株式時価総額の3分の1を失った(Wikipedia)
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