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日韓関係(その16)(アメリカが「日韓関係改善」を強く迫れない背景 バイデン大統領のアジア訪問で進展はあるか、駐日韓国大使に“知日派”内定も 慰安婦・徴用工の「問題発言」で波紋、在日韓国人差別を描いた国際的大ヒットドラマ「パチンコ」に、在日韓国人が抱く違和感) [外交]

日韓関係については、昨年10月18日に取上げた。今日は、(その16)(アメリカが「日韓関係改善」を強く迫れない背景 バイデン大統領のアジア訪問で進展はあるか、駐日韓国大使に“知日派”内定も 慰安婦・徴用工の「問題発言」で波紋、在日韓国人差別を描いた国際的大ヒットドラマ「パチンコ」に、在日韓国人が抱く違和感)である。

先ずは、本年5月20日付け東洋経済オンラインが掲載したスタンフォード大学講師のダニエル・スナイダー 氏による「アメリカが「日韓関係改善」を強く迫れない背景 バイデン大統領のアジア訪問で進展はあるか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/590592
・『就任してから初めてアジアを訪問するアメリカのジョー・バイデン大統領は、日本と韓国と5日間かけてめぐる、検討課題満載の日程を組んでいる。 ロシアの侵略、中国の大国主義、北朝鮮のミサイルや核実験などに直面し、同盟関係の深化や抑止力の強化について多くの議論を交わす見込みだ。今回はまた、アメリカが経済的関与をないがしろにしているという印象に対処するための緩やかな新しい構想である、インド太平洋経済枠組みの発足も予定されている。 さらに、来訪の最後は、日本、アメリカ、オーストラリア、インドの準同盟である「クワッド」の首脳が日本で行う首脳会談で締めくくられる予定だ』、確かに「検討課題満載の日程」のようだ。
・『「世界連合をまとめた」と主張できる  元ブッシュ大統領国家安全保障顧問で、ジョージタウン大学のマイケル・グリーン教授は、「大統領の訪問を成功させるための体制は整っている」と話す。 「ウクライナに対応しながら、インド太平洋に注力できる政権であることを、今回訪問することだけでも誇示することができる。そればかりか、ウクライナに侵攻したプーチンに対して、経済的、地政学的、外交的に実に前例のない結果をもたらした世界的連合をまとめ上げることができたのは、アメリカだけだったと主張することもできる」 しかし、バイデン大統領の野心的なアジェンダに明確に含まれていない項目がある。それは、同氏が今回訪問するアメリカの2つの同盟国、日本と韓国の間に依然として横たわるギャップを修復することだ。 韓国の政権が保守派の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領に移ったことで、関係の悪化に歯止めをかける機会は生まれている。尹大統領は日本との関係を優先させると公言しており、最初のうちは積極的な交流があった。より重要なことは、尹大統領が、バイデン政権が形成した世界と地域の枠組みに沿って、韓国を再配置しようと動いていることだ。 チャンスはあるとアメリカの高官らは考えているが、アメリカを含むすべての関係諸国がそれを生かすために十分な行動をとるかという疑問は残る。 サプライチェーンの回復力から北朝鮮の脅威まで、ほかの領域では多くの利益を共有しているにもかかわらず、韓国における戦争の歴史と日本の植民地支配の負の遺産という問題は、依然として難しい障壁となっている。日韓両政府は膠着状態にある。両者とも、事態を打開するための次の一手は相手が取るべき、と考えているのだ』、「バイデン大統領の野心的なアジェンダに明確に含まれていない項目がある。それは、・・・日本と韓国の間に依然として横たわるギャップを修復すること」、「日韓両政府は膠着状態にある。両者とも、事態を打開するための次の一手は相手が取るべき、と考えている」、これでは難しそうだ。
・『日韓関係の悪化はアメリカにもマイナス  日本と韓国が正常な関係を回復できないことは、インド太平洋においてアメリカがいる場で価値主導の意図を主張しようとするアメリカの努力を損なうものだ。 同盟国の2カ国が協力できないことで、「日米豪印戦略対話」をより広範な同盟に昇格させることであれ、日本の「自由で開かれたインド太平洋」の構想であれ、この戦略が損なわれてしまう。それによって、中国やロシアにアメリカとその同盟諸国の関係を悪化させるチャンスを与えかねない。 ロシアがウクライナに侵攻したことで、アメリカとヨーロッパが世界中の、特にアジアの同盟諸国を共通の大義に結集しようとしている中、こうした課題の緊急性が一層高まっている。もし、これが民主主義と権威主義の間の闘いであるならば、この日韓の目に見える隔たりは明らかな問題だ。 日韓関係の悪化が始まったのはトランプ政権時代のことだが、その当時はこの問題が関心を集めることはほとんどなかった。バイデン政権が登場し、各同盟関係を復活させ強化していくとの方針が打ち出されたことで状況が一変し、この問題が再び関心を集めることとなった。 ここ最近ではアメリカ、日本、韓国の3国間の協力関係の重要性を強調する発言や政府関係者の会合が相次ぐようになっている。しかし、いまだ韓国と日本は戦時中からの負の遺産を克服できておらず、そのことにアメリカ政府関係者は強いフラストレーションを感じており、愚痴を耳にすることもよくある。 バイデン政権には、オバマ政権での要職経験者が多く参画している。中には安倍政権および朴政権の初期に韓日関係の悪化が始まった際に、その関係改善に取り組んだ者もいる。 そして、当時繰り広げられた議論の一部が今また繰り返されている。政府関係者の中には日本と韓国に、両国が連携するのは戦略的に非常に重要なことなのだということを思い返させることに焦点を置きたいと考えている者がいれば、地政学上のメリットで無理やり連携したとしても、関係悪化の根本的な原因である、戦時中の歴史的問題に真正面から取り組んでいくことなくして成功は覚束ないというように考える関係者もいる』、「日韓関係の悪化が始まったのはトランプ政権時代のことだが、その当時はこの問題が関心を集めることはほとんどなかった。バイデン政権が登場し、各同盟関係を復活させ強化していくとの方針が打ち出されたことで状況が一変し、この問題が再び関心を集めることとなった」、(米国)「政府関係者の中には日本と韓国に、両国が連携するのは戦略的に非常に重要なことなのだということを思い返させることに焦点を置きたいと考えている者がいれば、地政学上のメリットで無理やり連携したとしても、関係悪化の根本的な原因である、戦時中の歴史的問題に真正面から取り組んでいくことなくして成功は覚束ないというように考える関係者もいる」、米国側の姿勢も一枚岩ではないようだ。
・『楽観的観測が持たれる状況に  今回、韓国に保守政権が誕生したこと、そして、日本では外務相にワシントン通の林芳正氏を擁する岸田文雄政権に政権運営が移行したということもあり、一部で多少なりの楽観的観測が持たれる状況を生んでいる。 北朝鮮でミサイル発射実験が活発化してきており、さらに核実験再開の準備が着々と進んでいるという状況、そしてウクライナ戦争という世界的に緊迫した情勢が組み合わさることで、日本と韓国が両国の関係を改善し、アメリカを含めた3国間の安全保障協力関係を緊密化していこうとする機運が醸成されることになっているように思われる。 だが、バイデン政権の幹部の中にはーーこれには以前に深く関与した経験を有する者も含まれるのだがーー関係正常化は係争となっている歴史問題についてアメリカの積極的関与、といってもこれは必ずしも仲介を意味するわけではないが、それがなくとも起こりうるものであり、まして和解となればなおさら起こりうるものであるとして、この案に反対する者もいる。 筆者が最近参加した日米関係に関するある非公開の会合で、バイデン政権のある幹部は、「われわれは関与すべきではないとの考えに私は反対する。これはある程度喫緊の事柄である」と述べている。 この幹部は、オフレコを条件に、日韓関係は、クアッドを推進する努力や地域の「自由で開かれたインド太平洋」関係を推進する努力よりはるかに重要であるとまで主張した。加えて、それには第二次世界大戦時代の歴史問題と取り組むことが必要になるであろうことも示唆した。 「アメリカに可能なことのうちで最も重要なことを1つ挙げるとすれば、それは両国関係の本物の改善が実現するよう支援することである。これは高貴かつ重要な努力であり、われわれはこうした努力を払うことを避けて通るべきではない」この幹部は話す』、「バイデン政権のある幹部は、「われわれは関与すべきではないとの考えに私は反対する。これはある程度喫緊の事柄である」」、「日韓関係は、クアッドを推進する努力や地域の「自由で開かれたインド太平洋」関係を推進する努力よりはるかに重要であるとまで主張した。加えて、それには第二次世界大戦時代の歴史問題と取り組むことが必要になるであろうことも示唆」、この「幹部」が「日韓関係」をここまで重視しているとは驚かされた。
・『アメリカが圧力をかけない理由  だがこれまでのところ、今回の歴訪においてバイデン大統領が取り組む予定の1つに加えようとする試みが目に見える形でなされている形跡はまったくない。 それどころか、強調されているのはアメリカが有する計画のうちの別の分野であって、日本と韓国がもしかしたら協力するかもしれないことである。例えば、サプライチェーン(供給網)の強靭さを高めることやインド太平洋におけるデジタルサービス枠組の合意といったこととなっている。 アメリカが目に見える形で圧力をかけていないのは、日韓両国に内政問題があるがゆえに、両国の政府がこの問題を前進させる力が制限されていることが影響しているのかもしれない。 日本の公式見解は、最初の一歩を進める責任は韓国にあるというものだ。日本政府は、韓国が植民地時代及び戦時期に強制労働をさせられた韓国人に補償するため、日本企業の資産を接収する旨の裁判所の判決の執行をたとえ中止させないとしても、遅らせるよう要求している。 日本の政府高官は韓国政府に対し、2015年の両国間合意を復活させることも望んでいる。その合意とは、日本側の資金により基金を創設し、第二次世界大戦中、旧日本軍によって性的奴隷状態に置かれた韓国女性の生存者に補償金を支払うというものだ。 以前の文在寅・前大統領が率いる革新系政権は事実上、この合意を破棄してしまった。結果として、両国による報復措置の連鎖が生じた。この措置には、日本側による韓国向け半導体素材の輸出規制強化が含まれる』、「アメリカが目に見える形で圧力をかけていないのは、日韓両国に内政問題があるがゆえに、両国の政府がこの問題を前進させる力が制限されていることが影響しているのかもしれない」、なるほど。
・『国内問題で大変な尹大統領  尹大統領率いる新政権はすでに、2015年の日韓合意がなお有効であるとの立場を表明している。そして現在、日本企業の資産の差し押さえを阻止する努力が行われていることは明らかだ。ただ、尹大統領は、韓国国民の声を考慮し、日本政府側からの明確な意思表示がないままで、こうした問題に深入りする姿勢は示していない。 同大統領は早くも、野党が多数を占める国会から提起されている重要課題に直面しており、世論調査における大統領の支持率は50%を切っている。この数字は新大統領としては異例の低さであり、6月1日に行われる地方選では大きな試練を迎えることになる。 アジア問題の専門家で、安倍元首相の伝記の著者でもあるトバイアス・ハリス氏は、尹大統領が、岸田首相と比べて政治的に「自由が利かない」状態にあるとみており、次のように話す。 「もし岸田首相が政治家としての勇気を持っているのであれば、同氏側からの意思表示はより踏み込んだものとなり、政治的にもより実行可能なものとなるだろう」 日本政府はなお、文政権との苦い経験を引きずっている。「日本国民は、うまく騙されたと感じている」。この問題に詳しい人物で、バイデン政権に近いアメリカの元高官はこのように話す。そして、「日本人は今、傍観者の立場を取っている」としながらも、「ボールは日本側のコートにある」と付言している。 岸田首相は自民党内部から批判を受けている。首相は党内において、主に、外相時代の2015年に日韓合意の交渉に携わった自身の役目により「親韓派」とみなされてきたのだ。 4月末にドイツのオラフ・ショルツ首相が訪日した際、ベルリンにある「慰安婦」の被害者を記念する銅像の問題を、首相が異例ながら提起する決定を下した背景には、そうした事情があるのかもしれない』、「尹大統領が、岸田首相と比べて政治的に「自由が利かない」状態にあるとみており、次のように話す。 「もし岸田首相が政治家としての勇気を持っているのであれば、同氏側からの意思表示はより踏み込んだものとなり、政治的にもより実行可能なものとなるだろう」」、「「日本人は今、傍観者の立場を取っている」としながらも、「ボールは日本側のコートにある」と付言」、「尹大統領」がそんなに苦しい立場にあるとは初めて知った。そうであれば、「岸田首相」からのアクションの方がカギになりそうだ。
・『アメリカからの「圧力」が必要か  「日本の右派は、日本にとって韓国は必要でないとすでに腹を決めている」とハリス氏は言う。「岸田首相が韓国との協力が重要だと考えているのであれば、それ相応の明確な説明をしなければならないだろう」。 ところで日本の政治指導者らはこれまで、韓国との関係改善というリスクを取るにあたり、特に戦時中の歴史的問題に対処する際にはしばしば、アメリカからの明白な圧力を必要としてきた。バイデン大統領は、この問題に関して個人的な経験を有している。自身が副大統領であった時代、当時の安倍首相と朴大統領との仲裁において主要な役割を果たしたのだ。 今回の訪韓の中で「日韓の歴史問題が再優先課題として議論されることを示唆するものはなにもない」とハリス氏。しかし、水面下で実際の行動が取られる可能性はあると、同氏は言う。「バイデン大統領が同席する中で、歴史問題が大きな比重を占めたとしても、私は驚かない」』、「バイデン大統領は、この問題(戦時中の歴史的問題)に関して個人的な経験を有している」、「水面下で実際の行動が取られる可能性はある」、「バイデン大統領が同席する中で、歴史問題が大きな比重を占めたとしても、私は驚かない」、「水面下」とはいえ、「歴史問題が大きな比重を占め」る「可能性」があるのだろうか。

次に、6月6日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したビジネスライターの羽田真代氏による「駐日韓国大使に“知日派”内定も、慰安婦・徴用工の「問題発言」で波紋」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/304175
・『韓国・尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権の初代駐日大使に内定した尹徳敏(ユン・ドクミン)氏は、知日派として知られる国際政治学者だ。尹錫悦政権では日韓関係の改善が期待されるが、中でも大きな課題である慰安婦問題と徴用工問題について、尹徳敏氏が語ったこととは……。 韓国・尹錫悦政権の駐日大使に内定している尹徳敏氏は“知日派”と言われる人物だ。就任前であるが、彼の発言がにわかに物議を醸している。尹徳敏氏とはどんな人物なのか、彼の経歴を踏まえつつ、問題の発言について見ていきたいと思う』、興味深そうだ。
・『専門は政治学。米国で修士号、日本で博士号を取得  まずは、彼の経歴についてざっくりと紹介しよう。尹徳敏氏は1959年12月生まれの62歳、ソウル出身だ。ソウル市内にある徐羅伐(ソラボル)高校、韓国外国語大学政治外交学科を卒業。その後は、米国のウィスコンシン大学で学んで政治学修士号を、慶応義塾大学で法学博士号を取得した。彼が“知日派”と言われる理由がこれだ。日本語も堪能だといわれている。 彼は、外交安保研究院安保統一研究部で教授を歴任し、国立外交院が開設された後も教授職として再任された。2013年5月から2017年7月まで、朴槿恵(パク・クネ)政権下で第2代国立外交院長を務めた経験もある。 国立外交院長退任後は、母校である韓国外国語大学LD(Language&Diplomacyの略。言語と外交、国際外交について学習する学科)学部の碩座教授(せきざ、正式に採用された教授ではなく、寄付金などで研究活動をするよう大学が指定した教授)として在任している。 尹錫烈氏の大統領選挙キャンプ政策諮問団で活動し、外交政策樹立に関与した。4月下旬に日本に派遣された「韓日政策協議代表団」の7人のメンバーのうちの1人でもある』、文字通りの「“知日派”」だ。
・『日韓関係悪化は日本のせい?  物議を醸した尹徳敏氏の発言は、5月26日に東京の帝国ホテルで開かれた国際交流会議「アジアの未来」の場で出たものだ。彼はこの会議にオンラインで出席し、約30分講演している。 慰安婦問題について話題になった際、彼は「責任のある日本側が、『カネですべての問題を解決した』というような発言をしたことから、世論が大きく悪化して状況が変わった」と、日韓関係悪化を日本のせいにした。謝罪と補償の両方が解決のためには必要なのに、日本側は補償金を払ったのだから問題は解決しただろう、という態度だというのだ。 さらに徴用工問題については、「強制徴用現金化問題に対し、文在寅(ムン・ジェイン)大統領が現金化は望まないとの発言をしたが、尹錫悦政府はどのように見ているか」という質問に対し、「ここ数年、さまざまな解決案が出てきたが、実行しなかっただけ」と、徴用工問題が解決に向かっているかのような発言もした。 確かに、韓国側で救済案がいくつか出ていたことはメディアでも報じられた。2019年にはこれが日本政府にも提示され、救済案を提示する南官杓(ナム・グァンピョ)元駐日大使の発言を遮って「韓国側の提案はまったく受け入れられるものではない、と以前に韓国側に伝えている。それを知らないふりをして改めて提案するのは極めて無礼だ」と、怒りを露わにした河野太郎元外相の姿が話題になったほどだ。 解決案が出ていたというのは韓国内だけの話で、日本が納得できる案など一つもなかった。だから「実行しなかった」ではなく、正しくは「実行できなかった」のはずだ』、「国際交流会議「アジアの未来」の場で出た」、「尹徳敏氏の発言は」確かに極めて問題が多く、失望させるものだ。
・『“知日派”在日大使は、日韓関係向上に貢献するか  知日派と言われる人物であってもこの程度の認識だ。尹錫烈政権下で日韓問題を完全に解決することは、日本が再び妥協しない限り難しいだろう。 ただ、尹徳敏氏は朴槿恵政権時の国立外交院長だった人物だから、2015年の日韓慰安婦合意を否定できず、苦し紛れに日本に責任転嫁をして、韓国民からの批判を避けた可能性はある。就任前から国民に批判されていては、駐日大使の就任が危うくなるからだ。 彼の腹の内は彼本人にしか分からないが、それでも大使就任前からこのような発言をしているようでは、日本に良い影響をもたらす人物でないと思われる。 そういえば、知日派の駐日大使といわれていた人物の中に、現大使の姜昌一(カン・チャンイル)氏という人がいた。彼は2021年5月、正式に駐日大使に就任したが、韓国国会議員だった時の反日言動が影響して、就任から1年がたった今でも、日本の首相どころか外相にすら面会できていない。駐日大使史上、最も日韓関係向上に貢献しなかった大使と言えるだろう。 新たに駐日大使に就任予定の尹徳敏氏は、少なくとも姜昌一氏より日韓関係に寄与できるはずだ。なぜなら、岸田首相や林外相は関係改善に前向きで、韓国側の要人と面会することに拒否感を示さないからだ』、「新たに駐日大使に就任予定の尹徳敏氏は、少なくとも姜昌一氏より日韓関係に寄与できるはずだ」、喜ばしいことだ。
・『日韓問題を解決させないことが、日韓関係改善につながる  筆者は「日韓問題を解決させないことが、日韓の関係改善につながる」と考えている。 日本と韓国の間に「日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約(日韓基本条約/1965年締結)」しかなかった頃、徴用工問題・慰安婦問題・竹島問題など、実際にはさまざまな問題があったが、それなりに良好な関係を築いていた。 日韓慰安婦合意で韓国側の要求を聞き入れて以降、いろいろな問題が浮上して関係がこじれたのだ。これらの問題を解決しようとするから双方から不満の声が上がる。日本と韓国はつかず離れず、一定の距離を保った関係を維持することが望ましい。 韓国人にとっての問題解決とは、日本が韓国の要求に文句を言わずに応じることだ。だが、1965年の日韓請求権協定でも、2015年の日韓慰安婦合意でも彼らは満足しなかった。 朴槿恵元大統領が「被害者の立場、千年不変」と発言したことが日本でも話題になったが、その言葉が示す通り、大多数の韓国人は「日本は韓国に対して半永久的に補償・謝罪を繰り返さなければならない」と考える。 このような韓国人の主張がまかり通れば、日韓間の合意など何の効力も発揮しない。締結したところで無効にされるのなら、国際法などないに等しい。それならば、これ以上の要求は聞き流すべきだ。韓国側の言い分を聞き入れることは、すなわち日本が対等な関係を放棄したことになる』、「日韓慰安婦合意で韓国側の要求を聞き入れて以降、いろいろな問題が浮上して関係がこじれたのだ。これらの問題を解決しようとするから双方から不満の声が上がる。日本と韓国はつかず離れず、一定の距離を保った関係を維持することが望ましい」、これで「日韓問題を解決させないことが、日韓関係改善につながる」との逆説的主張が理解出来た。
・『尹徳敏氏が駐日大使に就任後、やるべきこと 尹徳敏氏が駐日大使に就任すれば、悪化した日韓問題を解決しようと慰安婦問題や徴用工問題を持ち出して日本に妥協を迫るだろうが、岸田政権はこれを受け入れないはずだ(と信じたい)。 尹徳敏氏が動きだすことによって、収まりつつある韓国人の反日感情に再び火がともる可能性がある。もしかすると、日本製品不買運動が再開するかもしれない。 それなら、互いに関与しない方がお互いのためだ。韓国人の中には日本旅行をしたい人がたくさんいる。6月以降の航空券が飛ぶように売れているのだ。不買運動が再開すれば、2019年の時のように、再び周囲に隠れて日本旅行しなければならなくなるだろう。 韓国の駐日大使は、慰安婦問題や徴用工問題を解決しろと騒がない方が、むしろ多くの韓国人にメリットをもたらすはずだ。尹徳敏氏が駐日大使に就任したら、日本に賠償や謝罪を要求するのではなく、韓国民の感情コントロールに尽力すべきだろう』、「韓国の駐日大使は、慰安婦問題や徴用工問題を解決しろと騒がない方が、むしろ多くの韓国人にメリットをもたらすはずだ。尹徳敏氏が駐日大使に就任したら、日本に賠償や謝罪を要求するのではなく、韓国民の感情コントロールに尽力すべきだろう」、その通りだ。

第三に、6月7日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した北送在日コリアン協会会長の李 泰炅氏による「在日韓国人差別を描いた国際的大ヒットドラマ「パチンコ」に、在日韓国人が抱く違和感」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/304080
・『Apple TV+で独占配信されているオリジナルドラマ「Pachinko パチンコ」が、海外で大評判となっている。イ・ミンホ、ユン・ヨジョン、チョン・ウンチェといった韓国の実力派俳優のほか、南果歩、澤井杏奈(アンナ・サワイ)といった俳優も出演している。原作の同名小説は2017年の全米ベストセラーになったほか、バラク・オバマ元大統領も推薦した話題作で、著者は韓国系米国人、イ・ミンジン氏である。 1910~1989年まで、4世代の在日韓国人一家を描いたこの物語の中では、戦中・戦後の日本での在日コリアンの暮らしがいかに厳しく、日本人からの差別がどれほど激烈だったかが描かれる。しかし、在日コリアンとして日本で生まれた李泰炅(イ・テギョン)氏は、このドラマに違和感を覚えるし、もっと知ってほしい“差別”がある、と話す』、「もっと知ってほしい“差別”がある」とはどういうことだろう。
・『大ヒット小説&ドラマ「パチンコ」に対する世界の反応  「パチンコ」の主人公ソンジャは、当時、日本の植民地であった釜山の影島で1910年代に生まれ、歴史の荒波にのまれた後、日本に定着する。「パチンコ」は、朝鮮人という“二等国民”として、民族差別の中で孤独や苦難を乗り越えてきた彼女の生涯を骨子にした、小説およびドラマである。 1923年9月の関東大震災での朝鮮人虐殺事件をはじめ、敗戦後の日本における在日コリアンに対するあらゆる差別と蔑視を受けながら生きたソンジャは、パチンコをなりわいとするしかなかった。この悲惨な物語に、米国だけでなく世界中が感動しているという。確かに、良心をひとかけらでも持っている者なら、植民地下で非常に過酷な生活を送るソンジャの姿に心を打たれずにはいられないだろう』、「関東大震災での朝鮮人虐殺事件をはじめ、敗戦後の日本における在日コリアンに対するあらゆる差別と蔑視を受けながら生きたソンジャは、パチンコをなりわいとするしかなかった」、「植民地下で非常に過酷な生活を送るソンジャの姿に心を打たれずにはいられないだろう」、なるほど。
・『日本で暮らす在日コリアンの苦しさ  歴史的に日本は、地震、大雪、火山、津波など、数多くの自然災害に遭い、被害を受けてきた。それだけでなく、狭い平地に多くの人が住み、山が多く、耕作に適した農地が少なく、昔から必死で働かねば、生きることが難しい国であった。弱肉強食と適者生存の手本のような土地だといえるかもしれない。 もし、世界中に散らばった朝鮮民族の人々が集まって、移民生活の経験を語りあうとしたら、おそらく在日コリアンの生活が一番大変だったということになるだろう。土地が広く、人口密度が低いアメリカやロシアに比べ、いや中国に比べても、在日コリアンの生活は厳しかったし、差別もまた激しかったという。今でも日本で暮らす在日コリアンは、市民権を持たない特別永住者、外国人登録証を所有する脱北者、そして韓国国籍者として暮らしている(最悪の場合は無国籍で暮らす者もいるようだ)。彼らは、韓国および朝鮮国籍なので就職も難しく、社会生活では差別を受けている。それゆえに外国の同胞社会で、在日コリアンは民族という血を中心にし、一つになってこそ暮らせるのだ。彼らは自立意識が強く、さらに理念によって、北朝鮮系の「朝鮮総連(在日本朝鮮人総連合会)」と大韓民国系の「民団(在日本大韓民国民団)」に分かれている。 「パチンコ」は、植民地時代と敗戦後の日本を舞台にして、在日コリアン社会、アメリカへの移民、1980年代の日本社会などの背景を網羅した物語である。4世代にわたり、それぞれの人生で、差別や蔑視に対抗し、力強く生活を切り開いてゆく。日本という一種独特な社会と、韓国人に対する差別意識を、パチンコを通して、赤裸々につづる。100年もの歳月に連なる、悲惨な在日コリアンの人生に対して、世界中が涙を流しているのだ』、「100年もの歳月に連なる、悲惨な在日コリアンの人生に対して、世界中が涙を流しているのだ」、なるほど。
・『在日3世が「パチンコ」を見た感想は……  ただ、私の友人の在日3世は、ドラマの8話(シーズン1の最後)まで見て、物語の背景にある日本社会の演出には違った感想を持っていた。彼は1965年(昭和40年)に日本に生まれ、現在は韓国に住んでいるが、生まれた時には親がパチンコ店を3軒経営していた。ドラマでは日本のパチンコ店の多くは在日コリアンが経営していることになっているが、「1970~80年代当時、韓国系パチンコ店は全国の5%もなかったはずだ」と彼は話す。 その他にもツッコミどころは満載だが、特に「祖国に帰りたい」という望郷の心情を演出する部分に引っかかったという。「我々在日にとっては意味が違う。故郷(韓国)の家族、親戚には会いたいが、それは決して『帰りたい』という意味ではない」というのだ。 なぜ彼は望郷の念はあっても、「帰りたいとは思わないはず」というのか。その理由はシンプルで、「韓国に比べて、今も日本の方が暮らしが豊かで自由だから」だという。特に彼は、文(ムン)前政権のこの5年間を韓国で過ごしたから、たまらないはずである。 彼に限らず私の多くの在日コリアンの友人たちは、特別永住権を持っていることが前提ではあるが「在日の多くは、日本に感謝しながら暮らしている。もちろん祖父、父親の時代にはキツイ差別もあったが、今では投票権以外は日本国民と同等の権利で暮らしていける」と話す。友人自身も80年代以降、日本人からの日常的な差別や、生活に不自由さを感じたことはないという』、「帰りたいとは思わないはず」、「その理由はシンプルで、「韓国に比べて、今も日本の方が暮らしが豊かで自由だから」だ」、「「在日の多くは、日本に感謝しながら暮らしている。もちろん祖父、父親の時代にはキツイ差別もあったが、今では投票権以外は日本国民と同等の権利で暮らしていける」と話す。友人自身も80年代以降、日本人からの日常的な差別や、生活に不自由さを感じたことはないという」、現在は1人当たりGDPは韓国の方が上だが、自由さは日本の方が上なのかも知れない。
・『日朝共同の帰国事業で、大勢の在日コリアンが北朝鮮へ送られた  小説とドラマを合わせれば、世界各地の数千万人もの人々が「パチンコ」に感動し、在日コリアンへの差別について知ったことになるだろう。しかし実際には、日本に暮らした同胞だけが苦労したわけではない。ここからは、「北へ送還された在日コリアン」の、決して話すことができない心情について話したい。 北へ送還された在日コリアンとは、1959~1984年の間に朝鮮総連の口車に乗せられ、日本政府も後押しした帰国事業によって北朝鮮に移住した在日コリアンのことだ。私もその一人で、1960年、7歳のときに帰国事業で北朝鮮に渡った。 在日コリアン1世である私の両親と在日コリアン2世の我々兄弟は、北へ送還されたその瞬間から、朝鮮民族が蹂躙(じゅうりん)されたという日本を懐かしがり、死ぬ前に一度でいいから母国である日本に行きたいと、それを一生の願いとして、胸に刻んで生きてきた。「パチンコ」の主人公ソンジャが、4世代にわたって差別されたという、がめつく険しい日本を、そのように懐かしがってきたのだ。 1960~80年代に日本でソンジャが体験したという、民族的差別と不平等は北朝鮮にもあった。加えて、北朝鮮金氏王朝の独裁と粛清、飢餓と死、出身成分(編注:北朝鮮独特の身分制度)による弾圧、移動の自由と生命権まで奪われ、まさに奴隷のような生活を送っていた「北へ送還された在日コリアン」の一生を想像してみてほしい。 日本で体験したという民族的差別より、もっと深刻な、死ぬほど劣悪な生活。生きても生きても終わりがない絶望、殺しても殺しても終わりがない粛清、国中どこへ行っても息の詰まる監視と独裁……こうした北朝鮮の暮らしをもし皆さんが経験したら、おそらく血の涙を流さずにはいられないだろう』、「帰国事業によって北朝鮮に移住した在日コリアン」は確かに悲惨だ。
・『移動の自由もない、首領様の命令には絶対服従の北朝鮮生活  まさに「パチンコ」で描かれているように、他国である日本でも、在日コリアンは差別や蔑視に耐えながら力強く生き抜き、パチンコ業界で成功をつかむことができたし、小さな食堂も持つことができた。 しかし、韓民族の住む祖国だといわれ、誘拐されるように渡ってきた北朝鮮の地では、党が定めた場所で暮らさなければならず、首領様という王の命令には絶対服従であった。(北朝鮮国民ではなく)北へ送還された在日コリアンなので、航海漁船(外国に行くことができる漁船)に乗ることはできなかったし、党幹部にもなれず、志望する大学にも行けなかった。北へ送還された在日コリアンは、就職の自由もなく、望む大学には行けず、参政権もなく、あらゆる面で差別を受けなければならなかったし、監視と弾圧を受けなければならなかった。在日コリアンが、日本で就職や社会生活で受けた民族差別と、北朝鮮で受けた死ぬほどの弾圧とは、天と地の差がある。 日本は他国なので在日コリアンは差別され、いじめに遭ったというのならば、同じ韓民族であり同胞である北朝鮮で、なぜ差別と弾圧に苦しまねばならなかったのだろうか? 母国である日本と、故郷である韓国への自由な往来と移動は、夢見ることすらできなかった。故郷が懐かしく、自由と人権の願いを成就するために脱北しようとすれば、「反逆者」として粛清された。) ▽死ぬ前に、一度でもいいから日本に行きたい(北朝鮮は「祖国に早く来い、歓迎する」と言っていたのに、実際には、内臓をすべて溶かされ殻だけになったさなぎのように、人権はもちろん、身体と意識までも奪われた“植物状態”にさせられた。死にたいほどつらい弾圧を受けた北朝鮮で、我々は、腹いっぱいに食べることができ、差別すら自由意思に基づいている日本を「死ぬ前に一度でも行きたい」と夢に見て、本当に一生の願いとして胸に刻んで生きていたのだ。 私の母は亡くなる直前に、痩せこけて真っ白になった弱々しい手で、私の手を握ってこう言った。「テギョンよ! もしもの話だ。もし、未来に、外国に出て行くことができる機会が来たなら、必ず日本に行きなさい!」。今でも、虫の息で語った母の最期の言葉は、私の耳から決して離れることはなく、胸の中に永遠に刻み込まれている。「自由を勝ち取りなさい!」と』、「北へ送還された在日コリアンは、就職の自由もなく、望む大学には行けず、参政権もなく、あらゆる面で差別を受けなければならなかったし、監視と弾圧を受けなければならなかった。在日コリアンが、日本で就職や社会生活で受けた民族差別と、北朝鮮で受けた死ぬほどの弾圧とは、天と地の差がある」、その通りだ。
・『厳しい身分制度、在日コリアンに対する差別と蔑視  ドラマ「パチンコ」を見た人たちが、100年余りの在日コリアンの差別の歴史に涙を流したのだとすれば、北へ送還された在日コリアンが、日本でソンジャが受けた差別と蔑視の歴史に加えて、北朝鮮で味わわされた粛清、弾圧、奴隷の歴史を知ったなら、世界は血の涙を流すことになるだろう。 北朝鮮政府は、古代インドのカースト制度のような、金氏王朝式による成分制度によって、北へ送還された在日コリアンを公的に差別した。結果、志望する大学も、望む就職も、真の愛で成り立つ結婚も、党が関与した。一挙一動を監視される北朝鮮では、行動と意識まで統制される「操り人形」にならなければならなかった。北朝鮮の子どもは、皆、生まれてすぐ洗脳される。子どもたちは、世界はすべてそうなのだと信じ込み、「忠誠ロボット」となる。「苦痛だ」と一言でも話せば、少しは慰安を受ける自由がなければならないはずなのに、暗黒の北朝鮮では、そんな小さなうめき声も許されることはなく、反動的な言葉を言ったとして、政治犯収容所へ消えていった人々も多かった。) 北へ送還された在日コリアンは、「パチンコ」の主人公のソンジャ世代が民族的な差別と蔑視を受けた時期の日本が良かったと回想する。日本では、在日コリアンが差別された、蔑視されたと、安心して話せる。そんな自由が懐かしいのだ。 北へ送還された在日コリアンこそ、ソンジャの言う民族的な差別と蔑視に加えて、北朝鮮金氏王朝の弾圧、独裁、粛清、奴隷生活を合わせて受けた、まさに「虫けら人生」だ。在日コリアンの北への送還は、1959年12月14日から1985年3月25日まで、合計186回行われ、9万3340人を積み出した。あたかも昔の米国で黒人奴隷が売られたように、「地上の楽園」という偽りの文句で日本から北朝鮮へと誘拐されたのだ。 作家イ・ミンジンが、米国ではなくもし北朝鮮に移住していたら、小説「パチンコ」では、金氏王朝の独裁と窓のない監獄で、殺し、殺され、生き馬の目を抜く北朝鮮社会が描かれたのではなかろうか? 世の中のすべてを死ぬほど我慢して耐えなければならない、どん詰まりの連続が、北朝鮮生活だ。北へ送還された在日コリアンにとっては、日本での差別と蔑視は、人生の中でほんの一瞬通り過ぎた夏の日の夕立のようなものだ。日本で差別を受けたけれど、抵抗する自由があったあの頃を、本当に幸せな時期だったと懐古するのである』、「世の中のすべてを死ぬほど我慢して耐えなければならない、どん詰まりの連続が、北朝鮮生活だ。北へ送還された在日コリアンにとっては、日本での差別と蔑視は、人生の中でほんの一瞬通り過ぎた夏の日の夕立のようなものだ。日本で差別を受けたけれど、抵抗する自由があったあの頃を、本当に幸せな時期だったと懐古するのである」、「北朝鮮」への「帰還」を促した日本政府も罪作りなことをしたものだ。
タグ:(その16)(アメリカが「日韓関係改善」を強く迫れない背景 バイデン大統領のアジア訪問で進展はあるか、駐日韓国大使に“知日派”内定も 慰安婦・徴用工の「問題発言」で波紋、在日韓国人差別を描いた国際的大ヒットドラマ「パチンコ」に、在日韓国人が抱く違和感) 日韓関係 東洋経済オンライン ダニエル・スナイダー 氏による「アメリカが「日韓関係改善」を強く迫れない背景 バイデン大統領のアジア訪問で進展はあるか」 確かに「検討課題満載の日程」のようだ。 「バイデン大統領の野心的なアジェンダに明確に含まれていない項目がある。それは、・・・日本と韓国の間に依然として横たわるギャップを修復すること」、「日韓両政府は膠着状態にある。両者とも、事態を打開するための次の一手は相手が取るべき、と考えている」、これでは難しそうだ。 「日韓関係の悪化が始まったのはトランプ政権時代のことだが、その当時はこの問題が関心を集めることはほとんどなかった。バイデン政権が登場し、各同盟関係を復活させ強化していくとの方針が打ち出されたことで状況が一変し、この問題が再び関心を集めることとなった」、(米国)「政府関係者の中には日本と韓国に、両国が連携するのは戦略的に非常に重要なことなのだということを思い返させることに焦点を置きたいと考えている者がいれば、地政学上のメリットで無理やり連携したとしても、関係悪化の根本的な原因である、戦時中の歴史的問題に真正 「バイデン政権のある幹部は、「われわれは関与すべきではないとの考えに私は反対する。これはある程度喫緊の事柄である」」、「日韓関係は、クアッドを推進する努力や地域の「自由で開かれたインド太平洋」関係を推進する努力よりはるかに重要であるとまで主張した。加えて、それには第二次世界大戦時代の歴史問題と取り組むことが必要になるであろうことも示唆」、この「幹部」が「日韓関係」をここまで重視しているとは驚かされた。 「アメリカが目に見える形で圧力をかけていないのは、日韓両国に内政問題があるがゆえに、両国の政府がこの問題を前進させる力が制限されていることが影響しているのかもしれない」、なるほど。 「尹大統領が、岸田首相と比べて政治的に「自由が利かない」状態にあるとみており、次のように話す。 「もし岸田首相が政治家としての勇気を持っているのであれば、同氏側からの意思表示はより踏み込んだものとなり、政治的にもより実行可能なものとなるだろう」」、「「日本人は今、傍観者の立場を取っている」としながらも、「ボールは日本側のコートにある」と付言」、「尹大統領」がそんなに苦しい立場にあるとは初めて知った。そうであれば、「岸田首相」からのアクションの方がカギになりそうだ。 「バイデン大統領は、この問題(戦時中の歴史的問題)に関して個人的な経験を有している」、「水面下で実際の行動が取られる可能性はある」、「バイデン大統領が同席する中で、歴史問題が大きな比重を占めたとしても、私は驚かない」、「水面下」とはいえ、「歴史問題が大きな比重を占め」る「可能性」があるのだろうか。 ダイヤモンド・オンライン 羽田真代氏による「駐日韓国大使に“知日派”内定も、慰安婦・徴用工の「問題発言」で波紋」 「国際交流会議「アジアの未来」の場で出た」、「尹徳敏氏の発言は」確かに極めて問題が多く、失望させるものだ。 「新たに駐日大使に就任予定の尹徳敏氏は、少なくとも姜昌一氏より日韓関係に寄与できるはずだ」、喜ばしいことだ。 「日韓慰安婦合意で韓国側の要求を聞き入れて以降、いろいろな問題が浮上して関係がこじれたのだ。これらの問題を解決しようとするから双方から不満の声が上がる。日本と韓国はつかず離れず、一定の距離を保った関係を維持することが望ましい」、これで「日韓問題を解決させないことが、日韓関係改善につながる」との逆説的主張が理解出来た。 「韓国の駐日大使は、慰安婦問題や徴用工問題を解決しろと騒がない方が、むしろ多くの韓国人にメリットをもたらすはずだ。尹徳敏氏が駐日大使に就任したら、日本に賠償や謝罪を要求するのではなく、韓国民の感情コントロールに尽力すべきだろう」、その通りだ。 李 泰炅氏による「在日韓国人差別を描いた国際的大ヒットドラマ「パチンコ」に、在日韓国人が抱く違和感」 「もっと知ってほしい“差別”がある」とはどういうことだろう。 「関東大震災での朝鮮人虐殺事件をはじめ、敗戦後の日本における在日コリアンに対するあらゆる差別と蔑視を受けながら生きたソンジャは、パチンコをなりわいとするしかなかった」、「植民地下で非常に過酷な生活を送るソンジャの姿に心を打たれずにはいられないだろう」、なるほど。 「100年もの歳月に連なる、悲惨な在日コリアンの人生に対して、世界中が涙を流しているのだ」、なるほど。 「帰りたいとは思わないはず」、「その理由はシンプルで、「韓国に比べて、今も日本の方が暮らしが豊かで自由だから」だ」、「「在日の多くは、日本に感謝しながら暮らしている。もちろん祖父、父親の時代にはキツイ差別もあったが、今では投票権以外は日本国民と同等の権利で暮らしていける」と話す。友人自身も80年代以降、日本人からの日常的な差別や、生活に不自由さを感じたことはないという」、現在は1人当たりGDPは韓国の方が上だが、自由さは日本の方が上なのかも知れない。 「帰国事業によって北朝鮮に移住した在日コリアン」は確かに悲惨だ。 「北へ送還された在日コリアンは、就職の自由もなく、望む大学には行けず、参政権もなく、あらゆる面で差別を受けなければならなかったし、監視と弾圧を受けなければならなかった。在日コリアンが、日本で就職や社会生活で受けた民族差別と、北朝鮮で受けた死ぬほどの弾圧とは、天と地の差がある」、その通りだ。 「世の中のすべてを死ぬほど我慢して耐えなければならない、どん詰まりの連続が、北朝鮮生活だ。北へ送還された在日コリアンにとっては、日本での差別と蔑視は、人生の中でほんの一瞬通り過ぎた夏の日の夕立のようなものだ。日本で差別を受けたけれど、抵抗する自由があったあの頃を、本当に幸せな時期だったと懐古するのである」、「北朝鮮」への「帰還」を促した日本政府も罪作りなことをしたものだ。
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日中関係(その6)(元中国大使・丹羽宇一郎氏に聞く 日本は対中国でどう対応するべきか、「やっと人間の世界に戻った」と涙…中国で日本移住の人気が急上昇の事情、日本と中国「経済安全保障」の概念が台頭した事情 「政経分離」の原則は何を境に霧消してしまったか) [外交]

日中関係については、2020年10月15日に取上げた。久しぶりの今日は、(その6)(元中国大使・丹羽宇一郎氏に聞く 日本は対中国でどう対応するべきか、「やっと人間の世界に戻った」と涙…中国で日本移住の人気が急上昇の事情、日本と中国「経済安全保障」の概念が台頭した事情 「政経分離」の原則は何を境に霧消してしまったか)である。

先ずは、本年2月21日付け日刊ゲンダイ「元中国大使・丹羽宇一郎氏に聞く 日本は対中国でどう対応するべきか」を紹介しよう。
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/301465
・『今年2022年は日中国交正常化50周年。1972年9月29日、当時の田中角栄首相が北京で周恩来首相とともに「日中共同声明」に調印してから50年の記念すべき年なのだが、お祝いムードはなく、日中関係はいまや戦後最悪にまで冷え込んでいる。それは政治や外交の現場だけではない。日本国民の対中感情の悪化も極まり、世論調査では9割が中国に良い印象を持っていない。米中対立のエスカレートに伴い「台湾有事」も語られ、不穏な空気も漂う。現状を憂い、永続的な日中友好を願う元中国大使に話を聞いた(Qは聞き手の質問、Aは丹羽氏の回答)。 Q:開催中の北京冬季五輪では、欧米各国が外交的ボイコットをし、日本も政府関係者を派遣しませんでした。この状況を、どうご覧になっていますか? A:私自身、五輪にまったく関心がないわけではありませんが、政府関係者が欠席ということもあり、関係者以外はいつもと違う感じを持っておられる人が多く、国を挙げてという日本の元気がいまひとつという印象を受けます。 Q:日本の世論の9割が中国に対して良い印象を持っていない、ということですからね。 A:どうして中国に良い感情を持てないかというと、ひとつは中国をいまだ侮蔑しているからではないでしょうか。「シナシナチャンコロ」という言葉があるじゃないかというように。「シナ」という言葉は、司馬遷の「史記」などを読みますと、紀元前3世紀ごろにあった「秦(シン)」という王朝が「シナ」になっていったので、必ずしも侮辱する言葉ではないんです。しかし「チャンコロ」ってのは一体なんなんだ、と。お金のことを「チェン」って言ったんです。それがいつの間にか「チャン」に変わった。それに「コロ」が付いて「チャンコロ」。要するに、小さなお金がコロコロする連中、という意味で、「小さくて取るに足らない」という侮辱的な言葉になった。2つ目は最近の中国の政治的な尖閣への威圧的行動や一部の人権侵害報道にどこか嫌悪感や威圧感を抱くようになった人がいる気がします。しかし、中国はいまや世界第2位の経済大国だし、貿易では世界一の国となっています。時代も違うし、また報道だけで中国のことを軽蔑したり、怖がったりする必要はないでしょう。いろいろな意見を聞いて、現場を見て考えましょう』、「どうして中国に良い感情を持てないかというと」、「ひとつは中国をいまだ侮蔑している」人が高齢者には多いかも知れないが、全体ではそれほどでもないような気もする。
・『米中対立は茶番劇、乗っかってはいけない  Q:中国大使の時代に中国全土をほぼくまなく歩きまわったそうですが、新疆ウイグル自治区の人権問題については、どうお考えですか? A:私が新疆ウイグル自治区を訪れたのは、2010年か11年ごろです。今から10年ほど前ですね。中国政府から「ウイグルの人たちに会ってくれ。会って話を聞いてくれ」と言われました。そりゃあ行けば、良いことが多いですよ。中国語を話すウイグル族のトップの人が、非常に丁寧に我々をもてなしてくれました。新疆ウイグル自治区では、学校で中国語を教え、ウイグル族の言葉は教えないと怒る人がいますが、自治区の住民の半分は漢民族ですから、中国語を話せなければお金を稼ぐことも、中国人と話すこともできません。 Q:今年は「日中国交正常化50周年」です。しかし、日中関係は冷え切っています。 A:まずはっきりさせておきたいのは、米国は台湾問題で中国と茶番劇みたいなことをやっているということです。巷間言われているような「台湾有事」となって、台湾のために米国の軍隊が台湾に入っていったとしても、結果は見えている。米国は絶対に勝てません。米国は世界全体の軍事力で言えば、中国の3倍ぐらいの軍事力があります。しかし、対ロシアなど欧州、中東、アジアにも軍隊を展開しており、東南アジアや台湾海峡には、中国に勝るような軍事力を持っていない。戦闘機などの数を見れば、それは明確です。米国も中国には勝てないことが分かったうえで、ちょっかいをかけている。米国の威信のためです』、「台湾のために米国の軍隊が台湾に入っていったとしても、結果は見えている。米国は絶対に勝てません」、その通りだが、かといって日本も「台湾」を見捨てることは出来ないのではなかろうか。
・『中国はこの先も隣国、喧嘩しても仕方ない  Q:そうなると、日本は対中国でどのような対応をすべきでしょう? A:国家副主席・習近平(現国家主席)は私に「住所変更はできませんよ。これから何百年も、隣国としてお付き合いしていくのです」と言いました。喧嘩しても仕方ないでしょう、という意味です。たとえ米国が台湾有事で日本に協力を求めてきたとしても、日本は茶番劇だということを頭に入れて行動する必要があります。米国から「おい、ちゃんと台湾を支援してやってくれ」と言われても、真に受けて乗っかってはいけない。日本は独立国です。米国には、「いやいや、アメリカさん。それは分かりますけど、日本は中国と、今後も何百年と隣国として仲良くやっていくのだから、我々は簡単に応援できません。武器を持って戦うのはお互いやめてください」と言えばいい。隣国というのは往々にして仲の悪いものです。しかし、歴史的にずっと戦争ばかりやっていた日本と中国が、この50年は平和にやってきたのです。こんなところで武器を取ってはいけない。 Q:外務大臣ですら訪中しにくい、という今の日本の雰囲気はおかしいですよね? A:日本も中国も頭の良い外務大臣ですから、お互いに茶番劇だと分かっていると思います。この先の50年も平和にやっていくためには、日本も茶番劇をやればいいんです。「中国と喧嘩なんかしたくないよ。でもアメリカの顔も立てないといけないから、君たちもそうしてくれよ」と、お互いに話し合いで。大事なのは喧嘩や戦争ではなく外交です。できれば日中に韓国も入れて3カ国で話ができればいいのですがね』、「習近平(現国家主席)は私に「住所変更はできませんよ。これから何百年も、隣国としてお付き合いしていくのです」と言いました」、「住所変更はできません」とは言い得て妙だ。「この先の50年も平和にやっていくためには、日本も茶番劇をやればいいんです。「中国と喧嘩なんかしたくないよ。でもアメリカの顔も立てないといけないから、君たちもそうしてくれよ」と、お互いに話し合いで。大事なのは喧嘩や戦争ではなく外交です」、同感である。
・『日本は米国の言いなりになって軍事費を増やしている  Q:現状は、そうした平和な方向とは逆に進んでいるように見えます。 A:日本でいま一番の懸案材料は、米国の言いなりになって軍事費を増やしていることです。我々は武器を持てば持つほどに、武器を使いたくなるものです。良いおもちゃを持つと、それで遊びたくなる子供と一緒。これが戦争なんです。今の若い人が何と言っているか。「年寄りや大人は、あちこちに戦争の種みたいなものばっかり作るだけ作って、食い散らかしたまま逃げるのか」と怒っていますよ。若い人たちに、そう思われないような国にしなければいけません。 Q:日本国内で大きくなる「反中感情」については、丹羽さんが編集・解説された「現代語訳 暗黒日記」(外交評論家・清沢洌が太平洋戦争中に記した日記)で指摘されていらっしゃるように、戦争当時と似た空気感があります。「多数が同じ方向を向くのはあまりよろしくない」とも書かれていました。 A:日本はやはり少数民族で日本人ばかりですから、権限が不明確で、誰も責任を取らなくていいような言い方で物事が進められる。それは戦前も今も変わっていません。「きっと天皇はそういうつもりだよ」「総理はそういうつもりだよ」「社長はそのつもりだよ」で決まっていく。実際には、総理も社長も何も言っていない。言って失敗したら責任を取らなきゃいけませんからね。誰も決定をしないのに「そうだろう」って決めてしまうわけです。これでは日本は世界ののけ者になってしまう。SNSとかそういうものばかり信用して「スマホではこう書いてあった」「SNSではこう言っている」ではダメ。自分の目で確かめ、自分で考え、自分でこうするんだと決める。そうした姿勢にならないと、いつまでたっても日本は良くなりません。 Q:習近平国家主席が、今秋の党大会で異例の3期目に突入するといわれています。習主席については、どんな印象をお持ちですか? A:習近平は頭の良い男です。いろんなことを念頭に置いて、「これをやってくれ」と指示し、「こういう報酬を約束する」「やらないやつは罰だ」と信賞必罰を実行しています。日本のように「まあ仲良くやってよ」では、14億の民は統治できません。まずはお互いに信頼し合って、良いものは良い、悪いものは悪い、というのが、習近平の考え方だと思います。中国との付き合い方の肝もそこにある。人は自分のかがみ。あなたが人を信頼すれば、人もあなたを信頼する。平和に暮らしていくためには、自らまず平和への第一歩です』、「我々は武器を持てば持つほどに、武器を使いたくなるものです。良いおもちゃを持つと、それで遊びたくなる子供と一緒。これが戦争なんです」、その通りだ。「日本はやはり少数民族で日本人ばかりですから、権限が不明確で、誰も責任を取らなくていいような言い方で物事が進められる。それは戦前も今も変わっていません」、「誰も決定をしないのに「そうだろう」って決めてしまうわけです。これでは日本は世界ののけ者になってしまう。SNSとかそういうものばかり信用して「スマホではこう書いてあった」「SNSではこう言っている」ではダメ。自分の目で確かめ、自分で考え、自分でこうするんだと決める。そうした姿勢にならないと、いつまでたっても日本は良くなりません」、「中国との付き合い方の肝もそこにある。人は自分のかがみ。あなたが人を信頼すれば、人もあなたを信頼する。平和に暮らしていくためには、自らまず平和への第一歩です」、さすが丹羽氏の平和主義的主張、同感である。

次に、5月31日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した日中福祉プランニング代表の王 青氏による「「やっと人間の世界に戻った」と涙…中国で日本移住の人気が急上昇の事情」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/303937
・『新型コロナウイルス感染拡大の影響でロックダウンが開始されてから、2カ月が経過した中国・上海。厳しい制限下の生活に疲れ果て、将来に不安を抱える人が少なくないという。そうした市民の中で、「中国国外への移住」に対する関心が高まっている。中でも、「日本へ移住したい」という人が相次いでいるのだ。突如、移住先として日本人気が高まっている理由とは何か』、「突如、移住先として日本人気が高まっている」、とは驚かされた。
・『中国で「国外脱出」への関心高まる ロックダウン下の上海で移住希望者急増  この頃、中国ではネット上で「潤学」という言葉がはやりはじめ、注目を集めている。 中国語で「潤」は、漢字の通り「潤い、利益」などを意味する。ピンインの発音は「run」になるが、これが英語の「run」と同じなので、昨今は「海外へ脱出する、逃げ出す」という意味を持つようになった。冒頭の「潤学」はこの意味から派生した言葉で、「いつ、どの国へ、どんな手段で」など、海外移住を成功に導く知識とノウハウのことを指す。 中国では今、海外への移住を検討する人が急激に増えている。 中国最大の検索エンジン百度(バイドゥ)や最大手のメッセンジャーアプリ「ウィーチャット」では、3月下旬から、「移民」というキーワードの検索数が爆増したという。例えば、ウィーチャットでの検索数は、4月3日の1日だけで5000万以上となった。単純計算で全人口のうち、約30人に1人が「移民」に関心を持っていることとなる。特に4月3日は、政府がゼロコロナ政策の継続姿勢を明らかにしたこともあり、国民の間で“脱出”への関心が高まったようだ。 とりわけ移民への関心が高まっているのが、上海だ。日本でも報道されていた通り、上海では新型コロナウイルス感染拡大を背景に3月末からロックダウンが行われている。その期間は2カ月を超えた。 常住人口約2600万人を有する上海は、世界有数の国際ビジネス都市である。市政府の都市管理水準が中国国内で最も高いといわれており、異文化にも寛容的だ。ゆえに、国内外から多くの人材が集まり、上海は他の都市と比べものにならないくらい急激な成長を遂げてきた。 コロナ対策においても、当初は中国国内でも「優等生」の都市だった。そんな上海がまさかのロックダウン。筆者も何度か現地の惨状を記事にまとめたが、厳しい規制が敷かれる中、市民の忍耐力は限界にあるといえる。 今回のロックダウンで、上海というブランドは大きく傷ついた。現在の状況に疲れ果て、将来に不安に感じる上海市民が急増している。 筆者は日頃、公私ともに上海と密接な関係があるため、ほぼ毎晩遅くまで仕事先の関係者や友人たちから電話で「愚痴を聞く」生活が続いている。皆、口をそろえて、「こういうことが上海で起こっているのがどうしても信じられない。あり得ない」と言う。中には、「海外へ脱出したい」という人も多い。そして、筆者の周りでは、その行き先として「日本」を希望する人が増えている』、「4月3日は、政府がゼロコロナ政策の継続姿勢を明らかにしたこともあり、国民の間で“脱出”への関心が高まったようだ。 とりわけ移民への関心が高まっているのが、上海だ」、「今回のロックダウンで、上海というブランドは大きく傷ついた。現在の状況に疲れ果て、将来に不安に感じる上海市民が急増している。 筆者は日頃、公私ともに上海と密接な関係があるため、ほぼ毎晩遅くまで仕事先の関係者や友人たちから電話で「愚痴を聞く」生活が続いている。皆、口をそろえて、「こういうことが上海で起こっているのがどうしても信じられない。あり得ない」と言う。中には、「海外へ脱出したい」という人も多い。そして、筆者の周りでは、その行き先として「日本」を希望する人が増えている」、なるほど。
・『移住先として日本の人気が急増? その理由とは  筆者の仲の良い友人(40代女性)は2人の子持ちだが、「上の娘を日本に留学させたい」と言ってきたので筆者は驚いた。なぜなら、彼女も彼女の夫もアメリカ国籍の中国人。上海で大きなレストランを経営しており、子どもは将来、アメリカに留学させるのだろうとてっきり思っていたからだ。ところが、彼女は「アメリカは銃社会で怖いし、最近アジア系の人への差別や暴力事件も増えている。一方で、日本は安全で上海にも近い」と言う。 これまで中国人の中で人気の移住先は、アメリカ、カナダ、オーストラリア、イギリスなど英語圏の国に加えて、アジアではシンガポールやマレーシアなどだった。日本はもともと移民の国や英語圏ではないので、人気国リストの上位に入っていなかった。 しかし先日、東京で中国人向けの来日留学や各種ビザ取得のコンサル会社を経営する知人男性、張さん(仮名)から、筆者のもとに上機嫌で連絡があった。「最近、上海を中心に日本へ移住したいとの問い合わせ急増している。昨年に比べて10倍以上に増えた。対応に追われ、うれしい悲鳴だ」という。) なぜ、日本に移住したい人が増えているのか。 その背景について張さんは、最大の要因は中国の厳しいゼロコロナ政策にあるのではないか、と分析する。長らく続くロックダウンに我慢の限界が来たのだ。また、経済の減退を身近に感じるようになり、特に中間層は将来に不安を感じはじめている。 加えて、これまで人気の移住先上位に入っていた国々で、「中国人の移住に関するハードルが上がっている」ことも間接的な要因となっているようだ。 「例えば、シンガポールでは一部の『投資移民』の条件を変更。今年4月から、富裕層向けの移住の際に活用されてきたファミリーオフィスについて、最低投資額を1000万シンガポールドル(約9億円)に引き上げた。また、英語圏の国へ留学や移住支援を行う関係者からは、『イギリスは今年2月から移民の手続きをストップしてしまっている』『オーストラリアは、中国からの今年の移民申請枠はもう定員に達して終了した』という話も聞いている」(張さん) ただ、他国の受け入れの門戸が狭まったからといって、日本には簡単に来られるのだろうか。ビザ取得のサポートをする張さんは、日本でのビザ取得について以下のように説明する。 「現在、来日のビザは主に1.留学、2.経営・管理、3.高度な人材の3種類に分かれる。今回は問い合わせのほとんどが、2の経営・管理に当たる。つまり、会社を設立することだ。500万円以上の出資金や日本でのオフィス、住居の確保などの条件をそろえれば、ビザは簡単に取れる。 その後きちんとビジネスが成り立って、日本の納税や雇用規定などを順守すれば、ビザの更新ができ、将来的には永住権を得たり帰化したりもできる」 日本でのビジネスが成功するか否かという問題はあるが、資産が豊富な上海在住の中国人にとって来日ビザを取得すること自体は、それほど高いハードルではないといえる』。「これまで中国人の中で人気の移住先は、アメリカ、カナダ、オーストラリア、イギリスなど英語圏の国に加えて、アジアではシンガポールやマレーシアなどだった。日本はもともと移民の国や英語圏ではないので、人気国リストの上位に入っていなかった」、「最大の要因は中国の厳しいゼロコロナ政策にあるのではないか、と分析する。長らく続くロックダウンに我慢の限界が来たのだ。また、経済の減退を身近に感じるようになり、特に中間層は将来に不安を感じはじめている。 加えて、これまで人気の移住先上位に入っていた国々で、「中国人の移住に関するハードルが上がっている」ことも間接的な要因となっているようだ」、「今回は問い合わせのほとんどが、2の経営・管理に当たる。つまり、会社を設立することだ。500万円以上の出資金や日本でのオフィス、住居の確保などの条件をそろえれば、ビザは簡単に取れる。 その後きちんとビジネスが成り立って、日本の納税や雇用規定などを順守すれば、ビザの更新ができ、将来的には永住権を得たり帰化したりもできる」 日本でのビジネスが成功するか否かという問題はあるが、資産が豊富な上海在住の中国人にとって来日ビザを取得すること自体は、それほど高いハードルではないといえる」、なるほど。
・『日本に行きたがる中国のエリートたち  「日本にはどうやったら行けるのか」という問い合わせが急増しているのは、こうした専門の会社だけではなさそうだ。 都内で20年以上貿易会社を営む上海出身の友人夫婦は、上海の知り合いから「『経営・管理』のビザを申請したい」「手続きの手伝いをしてほしい」といった依頼が、今年に入って十数件はあったという。そして、そのうちの2組は先日、ロックダウン下の上海から無事に日本に到着したそうだ。 また、東京に住む30代の上海出身男性・馬さん(仮名)は、日本での日常生活や自身の体験などを中国向けに発信しているのだが、上海のロックダウン以降、フォロワーが急増したのだという。「日本に行きたい」「アドバイスが欲しい」といったメッセージが多数寄せられた。 馬さんは、「日本へ行きたい」人が増えていることについて、これまでとは違う傾向があると感じているという。 「これまでも日本を目指す人もいたが、今回は明らかに層が違う。高学歴、超お金持ち、そして教授や医師などのエリートが多くなったと感じ、実に驚いている。しかも、彼らはもうすでに移住の手続きを始めているのだ」(馬さん) 馬さんは、日本は中国と距離的に近いこと、同じアジアの国であり、文化や生活習慣も比較的似ていることなどが移住を希望する理由なのではないかとみている。治安が良いイメージもある。 また張さんと同じく、上海のロックダウンは中国人の心境に大きな変化を与えたとみる。 「ロックダウン中はずっと部屋から出られない。陽性になれば、家族全員がコンテナ隔離施設に送り込まれてしまう。その上、家の鍵を渡せと言われ、勝手に消毒されて家の中はビショビショ……。多くの人がこの現状に希望を失ったと思う」(馬さん) ただ移住に関しては、適している国は人それぞれという冷静な考え方を持っている。 「日本はいい国だと思うが、これまで僕からは今まで一度も移住先として日本を勧めることはしなかった。なぜなら、完璧な国は世界中どこにもないし、価値観は人はそれぞれ。どの国が自分に適しているのかは、本人にしか分からないからだ。何を大切にしたいか、どんな暮らしをしたいのかはよく考えてほしい」(馬さん)』、「上海のロックダウンは中国人の心境に大きな変化を与えたとみる」、しかし、「上海」を「脱出」して、「日本」に「移住」したいというのは、あくまで一時的な現象に過ぎず、やがて「脱出」熱も冷めるのではなかろうか。
・『ロックダウン下の上海から日本に“脱出”した人も「やっと人間の世界に戻った」  筆者は、前出の友人夫婦の紹介で、先日来日し都内のホテルで隔離期間を送っている40代の男性、汪さん(仮名)に、上海を脱出し日本の地に着いた経緯や心境を直接聞くことができた。 「成田空港に着いた途端、人間の世界に戻ったと思った!」と話す汪さん。 それもそのはず、ロックダウン下の上海の自宅から浦東空港までの移動中は、人影がほとんど見られなかったという。 「空港に入ってからも、白い防護服を着ているスタッフばかり、お店の扉も全て閉じていて……まるで幽霊の世界のようで寒けがした。機内に搭乗してもCA全員が防護服姿だった。 成田に着くと、働いているスタッフが普通の服を着ていて新鮮だった。自分は白い防護服を見慣れてしまったようだ。成田空港内外のお店では、久しぶりに買い物ができた」(汪さん) 日本で久々に感じた“日常”に安堵したという。同時に、これまでの苦労が走馬灯のように思い出され、思わず涙があふれた。汪さんは、「これからは上海に残った家族と日本で合流することに集中したい」と今後を見据えた。 彼の言葉を聞いて、筆者も一日も早く家族と日本で再会できる日が来るように祈った。一方で、日本社会に定着することにも別の苦難があるだろうとも思った。 長引くロックダウンは、上海に住む多くの人にとってこれからの暮らしを不安にさせる出来事だった。そうした中、少なからぬ人たちにとって、「日本への移住」が選択肢に入り始めたようだ。日本在住の中国人が100万人を超える日も、そう遠くないのかもしれない』、「日本社会に定着することにも別の苦難があるだろう」、特に「『経営・管理』のビザ」に見合った仕事がどれだけあるかは疑問だ。いずれにしろ、課題は多そうだ。

第三に、6月6日付け東洋経済オンラインが掲載した独立したグローバルなシンクタンクAPI地経学ブリーフィングによる「日本と中国「経済安全保障」の概念が台頭した事情 「政経分離」の原則は何を境に霧消してしまったか」を紹介しよう。
・『米中貿易戦争により幕を開けた、国家が地政学的な目的のために経済を手段として使う「地経学」の時代。 独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく。 日中国交正常化の歴史的な意義は、冷戦の枠組みの中で共産主義陣営の分断による国際秩序の再編にあるとみられることが多いが、この国交正常化は中国の改革開放を推し進める下地となり、その後の世界経済の構造にも大きく影響を与えるものでもあった。ここでは、国交正常化前から日中関係を形作ってきた「政経分離」の仕組みが2010年を境に変化し、経済安全保障の概念を導入せざるをえなくなった過程を明らかにしていく』、「政経分離」から「経済安全保障」とは興味深そうだ。
・『中国の経済発展における日本の役割  サンフランシスコ講和会議以降、日本は台湾を中国の代表として認めたが、当時の吉田内閣の反対を押し切って中国の招待を受けた緑風会の議員が日中民間貿易協定を結び、1950年代に4次にわたって更新された。しかし、国交回復前であり、CHINCOM(対中国輸出統制委員会)の制約や決済方法の複雑さなど、さまざまな障害を抱えたうえでの貿易であり、その経済的なインパクトは大きくなかった。 それが大きく転換するのが石橋湛山内閣、池田勇人内閣が対中貿易に前向きになり、中国も「友好貿易」を進める姿勢を強める中での、LT貿易の開始である。LTとは中国の中華人民共和国アジア・アフリカ団結委員会主席廖承志(Liao)と元通産大臣の高碕達之助(Takasaki)の間で結ばれた覚書に基づくものであり、国交回復前から「政経分離」の原則に基づいて貿易関係が築かれていったのである。 国交正常化後の日中経済関係は、それ以前からの関係に加え、鄧小平が1978年に来日し、日本の産業やインフラの整備状況を視察したことが、「改革開放」路線に大きな影響を与え、日本の産業発展モデルに対する関心が高まったことで大きく展開する。) この時期は中国が日本にキャッチアップする段階ではあったが、後の飛躍的な経済発展の基礎作りに日本が大きく貢献した時期でもある。文化大革命後の旺盛なインフラ需要や農業改革などへの支援、さらには賠償請求の問題を不問にした一方で、中国に対するODA(政府開発援助)として円借款を中心とする援助を行った。こうして、日中経済関係は、「政経分離」の原則を貫くことで、日本側にとっては、中国への進出によるビジネス上の利益と日中関係の安定化に寄与し、中国側にとっては技術指導などを通じた近代化の推進と経済発展を実現するものとして双方にメリットのあるものとなった』、「日中経済関係は、「政経分離」の原則を貫くことで、日本側にとっては、中国への進出によるビジネス上の利益と日中関係の安定化に寄与し、中国側にとっては技術指導などを通じた近代化の推進と経済発展を実現するものとして双方にメリットのあるものとなった」、なるほど。
・『天安門事件とWTO加盟  1989年6月の天安門事件は、中国の経済発展が民主化に向かっていくという楽観的な見通しを否定する衝撃的な事件であり、その経済発展を支えてきた西側諸国が中国と距離を置く出来事であった。天安門事件直後に開かれたG7アルシュサミットでは、武器禁輸や世界銀行の融資凍結などが合意され、日本も円借款を停止した。 しかし、近年公開された外交文書で、日本は当初から中国を孤立化させることに反対し、制裁に消極的であったことが明らかになっている。当時のアメリカのブッシュ(父)政権は日本が中国を擁護する立場を取ったことで日本が孤立化する恐れがあるとして、中国の孤立化に関する表現を緩和するよう働きかけた。なお、サミット直後に行った円借款凍結も1990年11月には解除している。 日本にとって、中国との関係を良好に保つこと、とりわけ国交正常化以前から進めてきた「政経分離」の原則を踏まえた経済関係の継続を優先した。日本が中国を擁護する立場を取ったのは、経済的な利益だけでなく、中国の孤立化による暴走を懸念したという側面もあるだろう。 中国が天安門事件による孤立化を避け、グローバルなサプライチェーンに組み込まれていく中で、飛躍的な経済発展を可能にしたのが2001年のWTO加盟であった。日本にとって、中国のWTO加盟は二国間貿易の枠組みから、多国間貿易の枠組みに転換することを意味し、東南アジア諸国に広がるサプライチェーンと中国を結び付けることで、さらに多角的な経済的結びつきの枠組みを作ることを目指していた。 中国もWTO加盟を跳躍台として「改革開放」を推し進め、「社会主義市場経済」を高度化していくことにコミットしていた。つまり、中国はWTO加盟を通じて一層市場経済に接近する姿勢を明らかにしたことで、日本を含む西側諸国に対して、中国も「西側の一員」のように振る舞うことを期待させた』、「中国が天安門事件による孤立化を避け、グローバルなサプライチェーンに組み込まれていく中で、飛躍的な経済発展を可能にしたのが2001年のWTO加盟であった」、「中国はWTO加盟を通じて一層市場経済に接近する姿勢を明らかにしたことで、日本を含む西側諸国に対して、中国も「西側の一員」のように振る舞うことを期待させた」、なるほど。
・『レアアース禁輸の衝撃  日本は一貫して中国との貿易を推進し、歴史認識問題や天安門事件のような民主化抑圧を含む、政治的な対立があった場合でも「政経分離」を原則として中国との経済関係を強化してきた。しかし、2005年の小泉純一郎首相の靖国神社参拝を契機として激しくなった反日運動が燃え盛り、日中関係が急速に悪化した。そんな中で2010年の中国によるレアアース禁輸が発令された。 これまで「政経分離」を原則としてきたと認識していた日本にとって、尖閣諸島周辺海域における中国漁船と海上保安庁船舶の衝突で、漁船の船長を逮捕したことは、貿易と切り離された問題であるはずだった。しかし、中国は(名目上は環境問題であったが)日本の自動車産業にとって不可欠であり、その輸入の90%近くを中国に依存していたレアアースの輸出を止めたのである。 この事件を皮切りに、中国との貿易関係は政治と切り離されたものではなく、政治的目的のために貿易を「武器化」することが現実となることが認識されるようになった。中国のレアアース禁輸は日本がWTOに提訴し、勝訴したが、こうした貿易の「武器化」は日本だけでなく、台湾の果物やオーストラリアの農産物や鉄鉱石、石炭、ノルウェーのサーモン禁輸、リトアニア製部品を使ったEU製品の禁輸など、例を挙げればきりがないほど続いている。この事件から「政経分離」の原則は消滅し、経済安全保障が日中関係の焦点となっていく』、「2010年の中国によるレアアース禁輸」を「を皮切りに、中国との貿易関係は政治と切り離されたものではなく、政治的目的のために貿易を「武器化」することが現実となることが認識されるようになった」、「貿易の「武器化」は日本だけでなく、台湾の果物やオーストラリアの農産物や鉄鉱石、石炭、ノルウェーのサーモン禁輸、リトアニア製部品を使ったEU製品の禁輸など、例を挙げればきりがないほど続いている」、なるほど。
・『経済安全保障の時代  レアアース禁輸事件後も「政経分離」の原則が維持されるという希望をわずかに持っていた日本だが、その希望が断たれたのは、第一にトランプ政権のアメリカがファーウェイ製品をはじめとする中国製品を使うことのリスクを強調し、クリーンネットワークなどのイニシアチブで圧力をかけてきたことがある。日本は明示的に中国製品を排除したわけではないが、事実上中国製品を調達しないことで排除し、日本の通信ネットワークに「信頼できない」ベンダーからの製品やアプリケーションがないことを証明することで、アメリカとの関係を優先した対応を選んだ。 第二に、新型コロナによるパンデミックは、マスクや医療防護具、ワクチンなどの世界的な需要が急増したが、その供給が中国に過度に偏っていることで、中国は「マスク外交」や「ワクチン外交」を展開し、生命や健康にかかわる製品にまで経済的強制を仕掛けてくる可能性が高まり、実際、欧州や南米諸国に経済的強制を実施したことである。同時にマスクやワクチンを優先的に輸出して中国の好感度を上げるという戦略も展開した。 こうした中国による「エコノミック・ステイトクラフト(注)」の影響を軽減し、貿易を「武器化」することで政治的な圧力をかけられないようにするためにも、サプライチェーンの強靭化が求められるようになった』、「トランプ政権のアメリカがファーウェイ製品をはじめとする中国製品を使うことのリスクを強調し、クリーンネットワークなどのイニシアチブで圧力をかけてきたことがある。日本は明示的に中国製品を排除したわけではないが、事実上中国製品を調達しないことで排除し、日本の通信ネットワークに「信頼できない」ベンダーからの製品やアプリケーションがないことを証明することで、アメリカとの関係を優先した対応を選んだ」、確かに「トランプ政権」も「経済安全保障」的行動を採った。
(注)エコノミック・ステイトクラフト:経済安全保障。
・『WTOの機能不全が明らかに  第三に、トランプ政権期にアメリカが自由貿易に背を向け、WTOの上級委員の任命を拒むなど、WTOの機能不全が明らかになったことがある。2010年のレアアース禁輸はWTOで勝訴することで、少なくとも中国は自国からの禁輸といった措置は取らなくなったが、貿易を「武器化」しても、WTOを通じて歯止めをかけることができなくなった。そのため、国際法的な対処が難しくなり、自己防衛のための措置を取らざるをえなくなったのである。 こうした背景から、中国への警戒心を隠さない自民党の重鎮である甘利明が中心となって、「『経済安全保障戦略策定』に向けて」と題する提言書が2020年12月に出され、2021年5月にも経済安全保障戦略を「骨太の方針」に加えることを求める提言が出された。これらの提言を受けて、2021年に発足した岸田内閣では経済安全保障担当大臣を設け、若手の小林鷹之を大臣に据えて、経済安全保障推進法案の策定に注力し、2022年5月に同法案が国会で可決された。 しかし、こうした経済安全保障への傾斜が、対中経済関係を遮断する、いわゆるデカップリングに向かうわけではないという点には注意が必要である。日本はこの間も中国を含む多国間枠組みであるRCEPを批准し、中国との自由貿易を推進する立場も取っている。日本にとって、これからの対中経済関係は、一方では国交正常化以前から続く経済関係を維持し、自由貿易による双方の利益を追求しつつ、中国によるエコノミック・ステイトクラフトから自らを守るべく、基幹インフラや戦略的重要物資に関しては自律性を高めていくという措置を取る、という二階建ての対応をしていくことにならざるをえなくなるだろう。 (鈴木一人/東京大学公共政策大学院教授、アジア・パシフィック・イニシアティブ上席研究員)』、「日本にとって、これからの対中経済関係は、一方では国交正常化以前から続く経済関係を維持し、自由貿易による双方の利益を追求しつつ、中国によるエコノミック・ステイトクラフトから自らを守るべく、基幹インフラや戦略的重要物資に関しては自律性を高めていくという措置を取る、という二階建ての対応をしていくことにならざるをえなくなるだろう」、ずいぶん複雑な対応だが、その通りなのだろう。間違わずに、ちゃんと出来るのかは、いささか心もとない感じがするが・・・。 
タグ:「どうして中国に良い感情を持てないかというと」、「ひとつは中国をいまだ侮蔑している」人が高齢者には多いかも知れないが、全体ではそれほどでもないような気もする。 日刊ゲンダイ「元中国大使・丹羽宇一郎氏に聞く 日本は対中国でどう対応するべきか」 (その6)(元中国大使・丹羽宇一郎氏に聞く 日本は対中国でどう対応するべきか、「やっと人間の世界に戻った」と涙…中国で日本移住の人気が急上昇の事情、日本と中国「経済安全保障」の概念が台頭した事情 「政経分離」の原則は何を境に霧消してしまったか) 日中関係 「台湾のために米国の軍隊が台湾に入っていったとしても、結果は見えている。米国は絶対に勝てません」、その通りだが、かといって日本も「台湾」を見捨てることは出来ないのではなかろうか。 「習近平(現国家主席)は私に「住所変更はできませんよ。これから何百年も、隣国としてお付き合いしていくのです」と言いました」、「住所変更はできません」とは言い得て妙だ。「この先の50年も平和にやっていくためには、日本も茶番劇をやればいいんです。「中国と喧嘩なんかしたくないよ。でもアメリカの顔も立てないといけないから、君たちもそうしてくれよ」と、お互いに話し合いで。大事なのは喧嘩や戦争ではなく外交です」、同感である。 「我々は武器を持てば持つほどに、武器を使いたくなるものです。良いおもちゃを持つと、それで遊びたくなる子供と一緒。これが戦争なんです」、その通りだ。「日本はやはり少数民族で日本人ばかりですから、権限が不明確で、誰も責任を取らなくていいような言い方で物事が進められる。それは戦前も今も変わっていません」、「誰も決定をしないのに「そうだろう」って決めてしまうわけです。これでは日本は世界ののけ者になってしまう。SNSとかそういうものばかり信用して「スマホではこう書いてあった」「SNSではこう言っている」ではダメ。自 ダイヤモンド・オンライン 王 青氏による「「やっと人間の世界に戻った」と涙…中国で日本移住の人気が急上昇の事情」 「突如、移住先として日本人気が高まっている」、とは驚かされた。 「4月3日は、政府がゼロコロナ政策の継続姿勢を明らかにしたこともあり、国民の間で“脱出”への関心が高まったようだ。 とりわけ移民への関心が高まっているのが、上海だ」、「今回のロックダウンで、上海というブランドは大きく傷ついた。現在の状況に疲れ果て、将来に不安に感じる上海市民が急増している。 筆者は日頃、公私ともに上海と密接な関係があるため、ほぼ毎晩遅くまで仕事先の関係者や友人たちから電話で「愚痴を聞く」生活が続いている。皆、口をそろえて、「こういうことが上海で起こっているのがどうしても信じられない。あり得 「これまで中国人の中で人気の移住先は、アメリカ、カナダ、オーストラリア、イギリスなど英語圏の国に加えて、アジアではシンガポールやマレーシアなどだった。日本はもともと移民の国や英語圏ではないので、人気国リストの上位に入っていなかった」、「最大の要因は中国の厳しいゼロコロナ政策にあるのではないか、と分析する。長らく続くロックダウンに我慢の限界が来たのだ。また、経済の減退を身近に感じるようになり、特に中間層は将来に不安を感じはじめている。 加えて、これまで人気の移住先上位に入っていた国々で、「中国人の移住に関す 「今回は問い合わせのほとんどが、2の経営・管理に当たる。つまり、会社を設立することだ。500万円以上の出資金や日本でのオフィス、住居の確保などの条件をそろえれば、ビザは簡単に取れる。 その後きちんとビジネスが成り立って、日本の納税や雇用規定などを順守すれば、ビザの更新ができ、将来的には永住権を得たり帰化したりもできる」 日本でのビジネスが成功するか否かという問題はあるが、資産が豊富な上海在住の中国人にとって来日ビザを取得すること自体は、それほど高いハードルではないといえる」、なるほど。 「上海のロックダウンは中国人の心境に大きな変化を与えたとみる」、しかし、「上海」を「脱出」して、「日本」に「移住」したいというのは、あくまで一時的な現象に過ぎず、やがて「脱出」熱も冷めるのではなかろうか。 「日本社会に定着することにも別の苦難があるだろう」、特に「『経営・管理』のビザ」に見合った仕事がどれだけあるかは疑問だ。いずれにしろ、課題は多そうだ。 東洋経済オンライン API地経学ブリーフィングによる「日本と中国「経済安全保障」の概念が台頭した事情 「政経分離」の原則は何を境に霧消してしまったか」 「政経分離」から「経済安全保障」とは興味深そうだ。 「日中経済関係は、「政経分離」の原則を貫くことで、日本側にとっては、中国への進出によるビジネス上の利益と日中関係の安定化に寄与し、中国側にとっては技術指導などを通じた近代化の推進と経済発展を実現するものとして双方にメリットのあるものとなった」、なるほど。 「中国が天安門事件による孤立化を避け、グローバルなサプライチェーンに組み込まれていく中で、飛躍的な経済発展を可能にしたのが2001年のWTO加盟であった」、「中国はWTO加盟を通じて一層市場経済に接近する姿勢を明らかにしたことで、日本を含む西側諸国に対して、中国も「西側の一員」のように振る舞うことを期待させた」、なるほど。 「2010年の中国によるレアアース禁輸」を「を皮切りに、中国との貿易関係は政治と切り離されたものではなく、政治的目的のために貿易を「武器化」することが現実となることが認識されるようになった」、「貿易の「武器化」は日本だけでなく、台湾の果物やオーストラリアの農産物や鉄鉱石、石炭、ノルウェーのサーモン禁輸、リトアニア製部品を使ったEU製品の禁輸など、例を挙げればきりがないほど続いている」、なるほど。 「トランプ政権のアメリカがファーウェイ製品をはじめとする中国製品を使うことのリスクを強調し、クリーンネットワークなどのイニシアチブで圧力をかけてきたことがある。日本は明示的に中国製品を排除したわけではないが、事実上中国製品を調達しないことで排除し、日本の通信ネットワークに「信頼できない」ベンダーからの製品やアプリケーションがないことを証明することで、アメリカとの関係を優先した対応を選んだ」、確かに「トランプ政権」も「経済安全保障」的行動を採った。 (注)エコノミック・ステイトクラフト:経済安全保障。 「日本にとって、これからの対中経済関係は、一方では国交正常化以前から続く経済関係を維持し、自由貿易による双方の利益を追求しつつ、中国によるエコノミック・ステイトクラフトから自らを守るべく、基幹インフラや戦略的重要物資に関しては自律性を高めていくという措置を取る、という二階建ての対応をしていくことにならざるをえなくなるだろう」、ずいぶん複雑な対応だが、その通りなのだろう。間違わずに、ちゃんと出来るのかは、いささか心もとない感じがするが・・・。
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携帯・スマホ(その8)(格安事業者はもう不要?大手値下げで消滅危機 格安スマホ 「7年で7割減」市場の壮絶生存バトル、ドコモだけが「店舗大リストラ」に動いた複雑事情 コスト削減大号令 「1000億円以上浮く」試算も、ドコモが大量閉店へ 「ショップの潰し方」の全貌 代理店を撤退に追い込む「3つのステップ」) [産業動向]

携帯・スマホについては、昨年10月7日に取上げた。今日は、(その8)(格安事業者はもう不要?大手値下げで消滅危機 格安スマホ 「7年で7割減」市場の壮絶生存バトル、ドコモだけが「店舗大リストラ」に動いた複雑事情 コスト削減大号令 「1000億円以上浮く」試算も、ドコモが大量閉店へ 「ショップの潰し方」の全貌 代理店を撤退に追い込む「3つのステップ」)である。

先ずは、本年3月22日付け東洋経済オンライン「格安事業者はもう不要?大手値下げで消滅危機 格安スマホ、「7年で7割減」市場の壮絶生存バトル」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/577612
・『契約回線数は7年で7割減する――。格安スマホについてのそんな野村総研の推計が、業界に衝撃を与えた。競争が激化する中、生き残りの道はあるか。 携帯電話料金値下げに一役買ってきた「格安スマホ」事業者が、消滅の危機に直面している。NTTドコモをはじめとする大手キャリアが「格安プラン」の提供を始めたことで、存在意義が宙に浮いてしまったからだ。 実際、足元では通信品質などに優れる大手キャリアへの顧客流出が顕著だ。そんな中、格安スマホを展開してきたMVNO(仮想移動体通信事業者)の契約回線数が「7年で7割減少する」という推計も飛び出し、業界をざわつかせている。 2021年12月にこの推計を発表したのは、国内大手シンクタンクの野村総合研究所。アンケート調査などを基に、MNO(大手キャリア)とMVNO、それぞれの市場動向について独自試算したものだ』、「契約回線数は7年で7割減」とは衝撃的な予測だ。
・『市場縮小を加速する2要因  MVNOとは、大手キャリアから通信回線を借り受けて格安スマホの通信サービスを提供する事業者のこと。大手キャリアがカバーしていなかった低容量・低価格帯のプランを充実させ、節約志向が強い消費者を取り込んできた。 ところが野村総研の推計によれば、MVNOの契約回線数(携帯電話端末)は2019年度にピークアウトし、2020年度末は1351万、2021年度末は958万と急減する。そして2027年度末には456万と、ピーク時の3割程度まで縮小する見立てだ。 大きな要因は2つある。1つは、すでに新規受付を停止したMVNO、楽天モバイルとLINEモバイル(2022年3月1日にソフトバンクに吸収合併)がMNO側に移行している影響だ。 楽天モバイルは「第4のキャリア」として2019年10月に一部の商用サービスを開始。2020年4月の正式ローンチ以降は、従前から営んでいたMVNOの新規受付は行っていない。LINEモバイルもソフトバンクの傘下入りを経て、2021年3月以降は同社のオンライン専用プラン「LINEMO(ラインモ)」への転換を進めている。 かつてはMVNOにカウントされていたこれらサービスがMNO側に移ることで、MVNO側の見かけ上の減りが大きくなるわけだ。 より本質的、かつMVNO勢にとって深刻なのは、2つ目の要因だ。野村総研の澤田和志主任コンサルタントは、「今後は大手キャリアのサブブランドや、昨春から開始した新料金プランへの顧客流出が急増する」とみる。 なぜなら、MVNOのほぼ唯一にして最大の売りであった「価格優位性」が、消滅しかかっているからだ。) ドコモは2021年3月、オンライン専用の新料金プラン「ahamo(アハモ)」を投入した。続いてKDDIは「povo(ポヴォ、2021年9月にpovo2.0にリニューアル)」を、ソフトバンクはLINEMOを投入。楽天もデータ使用量1GB(ギガバイト)以下を無料とする新料金プランの提供を開始した。 積極的な広告宣伝の効果もあってか、大手キャリアの「格安プラン」は消費者から広く支持を集めている。 ahamoは「(2022年2月上旬時点で)200万台の真ん中くらい」(NTTの澤田純社長)、povoは「(1月末時点で)百数十万」(KDDIの高橋誠社長)まで契約回線数が膨れ上がっており、楽天モバイルは2月に550万回線を突破した。いずれもMVNO最大手・インターネットイニシアティブ(IIJ)が提供する「IIJmio」の約107万回線(2021年12月末時点)を大きく上回る規模だ。 料金プランを比べてみると、MVNOとMNOで大きな差はなくなりつつある。データ使用量が少なければ、むしろMNOのほうが安いケースすらある。 大手MVNO幹部は「キャリアは(携帯料金が0円でも)自社経済圏に顧客を囲い込んで収益化できるが、資金力に劣るわれわれは同じ土俵で戦えない。大手キャリアの0円プランは公正競争上問題ではないか」と恨み節を吐く。 MNO系では新プランに加えて、ソフトバンクの「ワイモバイル」、KDDIの「UQモバイル」といったサブブランドも、足並みをそろえる形の値下げを実施。こうなると、MVNOの優位性はますます薄くなる』、「かつてはMVNOにカウントされていたこれらサービス(楽天モバイルとLINEモバイル)がMNO側に移ることで、MVNO側の見かけ上の減りが大きくなるわけだ。 より本質的、かつMVNO勢にとって深刻なのは、2つ目の要因だ。野村総研の澤田和志主任コンサルタントは、「今後は大手キャリアのサブブランドや、昨春から開始した新料金プランへの顧客流出が急増する」とみる」「MVNOのほぼ唯一にして最大の売りであった「価格優位性」が、消滅しかかっているからだ」、なるほど。
・『「解約率は従前の2倍近くに」  こうした流れを受け、IIJが運営するIIJmioのほか、NTT系の「OCNモバイルONE」、関西電力傘下のオプテージの「mineo(マイネオ)」などの主要MVNO各社も相次ぎ料金プランを引き下げた。 値下げした大手MVNOの幹部は「顧客をつなぎとめるため、利幅を削るしかない」と説明する。中堅MVNO社員も「やむなく値下げ合戦に加わった結果、赤字を深掘りすることになった」とうなだれる。 IIJなどのMVNO大手は現状、かろうじて契約回線数を維持できている。が、業界団体のテレコムサービス協会MVNO委員会の佐々木太志主査は、「キャリアとの競争は厳しく、とくにプランの見直しが遅れている各社は苦戦している」と話す。実際、ある中堅MVNO幹部は「昨春から解約率が従前の2倍近くにハネ上がり、高止まりしている」と嘆く。) 歴史を振り返ると、MVNOの先駆けは日本通信だ。1996年に法人向け携帯電話(通話のみ)のMVNOを、2001年にはDDIポケット(現ソフトバンク)のPHS回線を使ってデータ通信も行えるMVNOを開始した。 総務省は当時、MVNOに対し「大手の寡占で競争が停滞していた携帯市場に風穴を開けることを期待していた」(総務省関係者)。そのため、2007年にはMVNOの新規参入促進などを柱とした「モバイル市場活性化プラン」を策定。側面支援を続けてきた。 2010年代中盤には、楽天モバイルやmineoなどの参入が話題となり、「格安スマホ」という言葉が定着。複数のキャリア回線で使える「SIM(シム)フリー」のスマホ端末が普及したことも、MVNO市場の拡大を後押しした。以降は新規参入事業者が急増。2021年末時点で、全国約1600社を数える。 日本通信の福田尚久社長は「MVNOは低容量・低価格のニーズに加え、タブレット端末などの2台目、3台目SIMのニーズを取り込んできた」と振り返る。 一方、MVNOは舵取りの難しいビジネスでもある。通信網を自社で整備しなくていいとはいえ、とくにスケールメリットの効きにくい中小の事業者にとって回線の仕入れ費用の負担は重い。そのうえ、料金は大手キャリアより安くしなければ顧客にアピールできず、利幅は薄くなりがちだ。 中堅の日本通信の営業利益率は2021年4~12月期決算で約6%だが、これは事業立ち上げ期で営業赤字の続く楽天モバイルを除いたドコモ、KDDI、ソフトバンク(同20~22%)より圧倒的に低い。ある大手MVNOの幹部は「赤字の中小事業者も多いのでは」と推測する』、「MVNOは舵取りの難しいビジネスでもある。通信網を自社で整備しなくていいとはいえ、とくにスケールメリットの効きにくい中小の事業者にとって回線の仕入れ費用の負担は重い。そのうえ、料金は大手キャリアより安くしなければ顧客にアピールできず、利幅は薄くなりがち」、「ある大手MVNOの幹部は「赤字の中小事業者も多いのでは」と推測する」、なるほど。
・『座して死を待つわけじゃない  総務省の調査(2021年3月)では、ニューヨークなど世界主要6都市における携帯料金(20GB)の比較で、東京はロンドンに次いで低い水準となった。国際的に最も高い水準だった2020年から状況は一変しており、「(競争を促進する)MVNOの歴史的使命は終わった」(証券アナリスト)とまで言われている。 だが、MVNO各社は「座して死を待つ」わけではなさそうだ。マイネオを展開するオプテージの福留康和モバイル事業戦略部長は、「MVNOは大手キャリアと比べて(回線数が少なく)小回りがきくため、ニッチな顧客ニーズを実現しやすい。存在意義はこれからもなくならない」と反論する。 挽回に向けた動きも活発化している。大手キャリアの値下げで状況が一変したこの1年で、MVNO各社は「契約することで社会貢献ができる」「キャリア並みの通信品質」などの個性的なプランを相次ぎ投入している。 2021年10月には、ドコモが旗振り役となる異色のMVNO振興策「エコノミーMVNO」も始まった。提携するMVNOのプランを全国のドコモショップで販売するというものだ。ドコモ側にも提携したMVNOを「dポイント経済圏」に囲い込むどの狙いがあるようだ(詳細は3月22日配信記事:ドコモが「敵に塩」?格安スマホ囲い込む策の魂胆)。 安さを売りに一時代を築いた各社は、新たな存在意義を見いだし復権できるのか。MVNO事業者は、生き残りをかけた正念場を迎えている』、「ドコモが旗振り役となる異色のMVNO振興策「エコノミーMVNO」も始まった。提携するMVNOのプランを全国のドコモショップで販売するというもの」、「MVNO事業者は、生き残りをかけた正念場を迎えている」、というのは確かだ。

次に、6月6日付け東洋経済オンライン「ドコモだけが「店舗大リストラ」に動いた複雑事情 コスト削減大号令、「1000億円以上浮く」試算も」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/594399
・『向こう4年で最大3割の店舗を削減へ。NTTグループの全体戦略を俯瞰すると、ドコモがコスト削減に注力せざるをえない事情も見えてくる。 大胆な”店舗リストラ”の背景にはどんな思惑があるのか。 ドコモが全国の「ドコモショップ」の大幅削減に踏み出す。2023年3月期中に100店舗を、2026年3月期までに700店舗を減らし、2022年2月時点(2308店舗)から最大で3割近く削減する見通しだ。 携帯電話の契約数で業界首位のドコモは、店舗数でも現在業界最大規模。だが計画どおりに削減が進めば、単純計算でソフトバンク(2268店舗)やKDDI(2143店舗)より少ない「業界3番手」となる。 大手3社の販売店は、人口減少やオンライン経由の契約の比率が高まったことに伴い、近年微減傾向ではあった。ただ、大胆な削減に乗り出す会社はこれまでになく、新規参入の楽天モバイルはむしろ店舗拡大に積極的。店舗戦略は各社”まだら模様”だ』、「最大で3割近く削減する見通し」、かなり思い切った「削減」だ。
・『コスト削減効果は「1000億円以上」  そうした状況下で、なぜドコモは店舗削減に踏み込むのか。最大の目的はコスト削減だ。 「(700店舗を削減すれば)1000億円以上のコストカットになる」。SMBC日興証券の菊池悟シニアアナリストはこう試算する。 ドコモによると、2022年3月期に代理店へ支払った手数料や支援金など販売関連費用の総額は3266億円。この費用はおおむね店舗数に比例してかかるため、店舗数が3割減れば費用も3割ほど減ると、ざっくり計算できるわけだ。 店舗を削減する分、同社はリモート接客体制を強化するとしているが、リアル店に比べれば大きな負担減となるとみられる。 ドコモは2023年3月期(2022年1月に連結子会社化したNTTコミュニケーションズ、NTTコムウェアを含む)の営業利益を1兆0840億円(前期比1%増)と計画している。が、達成に向けては”綱渡り”状態であるといえ、そのことが今回の店舗削減にも関係している。 主軸の通信事業では2021年3月から投入した廉価なオンライン専用プラン「ahamo(アハモ)」への契約切り替えなどが進み、減収・減益トレンドが続く。これを「dカード」などの金融・決済や法人事業の伸びで補い、かろうじて増益基調を維持しているのが現状だ。 そんなドコモにとって、4年で1000億円におよぶコスト削減効果は極めて大きな意味を持つ。加えて、NTTグループの全体戦略を俯瞰すると、ドコモにはコスト削減に注力せざるをえない別の事情も見えてくる。 持ち株会社のNTTは、2021年10月に修正した中期経営戦略の中で、2024年3月期までに2018年3月期比で固定通信(固定電話など)と移動通信(携帯電話など)の事業にかかるコストを、累計1兆円以上削減する目標をぶち上げている。EPS(1株当たり純利益)を高め、株式市場での評価をさらに上げる狙いがある』、「ドコモにとって、4年で1000億円におよぶコスト削減効果は極めて大きな意味」、「持ち株会社のNTTは、2021年10月に修正した中期経営戦略の中で、2024年3月期までに2018年3月期比で固定通信・・・と移動通信・・・の事業にかかるコストを、累計1兆円以上削減する目標」、なるほど。
・『ショップ削減以外のコスト削減も  あるNTT関係者は「1兆円の内訳のうち、ドコモが半分程度を占める」と明かす。NTTの2022年3月期決算を見ると、ドコモを含む「総合ICT事業」の営業費用は全体の5割を占める。通信値下げ影響で大幅な増収が見込めない中、ドコモ事業の採算改善は急務だった。 ドコモのコスト削減額の内訳については「5割が販売関連費用、4割が基地局関連、1割がその他費用になる計画」(同)。ショップ削減とオンライン化推進は、まさに目玉施策の1つに位置づけられているようだ。 上記の1兆円計画とは別に、ドコモはコム、コムウェアとの統合により2024年3月期までに1000億円、2026年3月期までに2000億円の営業利益を創出することも掲げている。その内訳は増収効果と経費削減で半分ずつという方針で、この面でも各分野のコスト削減圧力は高まりつつあった。 コスト削減の大波はショップなど販売関連以外にもおよんでいる。例えば、NTTグループの中でも高水準とされるドコモ社員の給与水準切り下げ、5G基地局工事の効率化促進などだ。今後も2024年、2026年のそれぞれの目標に向け、追加的に施策を打つ可能性もありそうだ。) 今回明らかになったショップ削減に関していえば、今後の焦点はドコモの店舗削減が計画通りに進むのか、そして他キャリアも追随する形でショップ削減に踏み切るのか、という2点だ。 まず、店舗削減が計画通り進むのか。これに関しては、ドコモ側とショップを運営する販売代理店が協議を重ねているさなかとみられる。 ある大手代理店は「今期減らす分について目下交渉中で、まだ削減店舗を最終的に絞り切れていない」と明かす。将来的に削減する700店舗は「どこの店舗が対象になるのかもまったくわからない」(同)のが実態だ。 代理店にとって、今回ドコモが打ち出した削減方針は自社の存亡にかかわる一大事といえる(詳細は6月6日配信記事:ドコモが大量閉店へ、「ショップの潰し方」の全貌)。今後交渉が難航することも考えられる。 また、社内からは「ドコモショップを通じて販売している『ドコモ光』や『ドコモでんき』の売れ行きが鈍れば(供給元であるNTT東日本など)グループ全体に悪影響が出ないか」(NTTドコモの関係者)と懸念する声も聞かれる。こうした方面から戦略の見直しを迫られる可能性もゼロではない』、「代理店にとって」、「自社の存亡にかかわる一大事」、「今後交渉が難航することも考えられる」、「「ドコモショップを通じて販売している『ドコモ光』や『ドコモでんき』の売れ行きが鈍れば・・・グループ全体に悪影響」、「戦略の見直しを迫られる可能性もゼロではない」、なるほど。
・『ドコモとは事情の異なる他キャリア  他キャリアの追随についてはどうか。KDDIやソフトバンクは廉価なサブブランド「UQモバイル」「ワイモバイル」が近年の契約数増を牽引しているが、いずれも店舗での接客サービスに対応しているのが売りだ。 一方のドコモは、そうしたサブブランドを持たず、伸びているのはオンライン専用で契約時にリアル店舗をほぼ通さないアハモ。ほかの2社とは事情が異なり、各社の店舗戦略については「ドコモは利益追求のために削減、KDDI、ソフトバンク、楽天は契約数拡大のために残存と、違いがより鮮明化するのでは」(冒頭の菊池悟シニアアナリスト)との指摘がある。 とはいえ、他キャリアの動向について「オンライン契約比率がさらに高まっていけば(新規参入組の楽天モバイルを除く)大手2社もいずれドコモに追随するのでは」(中堅販売代理店)とみる向きもある。 ドコモショップ削減の余波は今後、社内外の各方面に出てきそうだ』、「ドコモは利益追求のために削減、KDDI、ソフトバンク、楽天は契約数拡大のために残存と、違いがより鮮明化するのでは」・・・との指摘」、「他キャリアの動向について「オンライン契約比率がさらに高まっていけば・・・大手2社もいずれドコモに追随するのでは」・・・とみる向きも」、当面は「ドコモ」だけが「削減」となりそうだ。

第三に、6月6日付け東洋経済オンライン「ドコモが大量閉店へ、「ショップの潰し方」の全貌 代理店を撤退に追い込む「3つのステップ」」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/594453
・『来春までに100店以上の大量閉店を目指すドコモ。そのために代理店を“追い込む”施策を行っている。 「ドコモはショップを干し上げて利益を出せないようにしてから『やめるなら今のうちだぞ』と言ってきた。これは脅しだ」。あるドコモ代理店の幹部は、憤りの表情でまくし立てた。 ドコモはショップの経営が厳しくなる条件変更や独自商材・サービスへの制約を一方的に行ったうえで、運営する代理店に対し「申込期限付きの閉店支援金」を提示し、早期の決断を迫っている。ドコモのやり方に対し、有識者からは「優越的地位の濫用に当たる可能性がある」との指摘が出ている』、「ドコモ」としては、「優越的地位の濫用に当たる可能性」との「指摘」が出ることは覚悟の上で、踏み切った可能性がある。
・『一方的に条件を変更  複数の関係者によると、コスト削減を目的にドコモは約2300あるドコモショップのうち、まず2022年度末(2023年3月末)までに「少なくとも100店舗以上」の閉店を進める方針だ。翌年度以降も大量閉店を推し進め、数年内に1500~1600店ほどに絞りたい考えだという。 ドコモが100%子会社を通じて事実上、直営するショップ数は30のみ。98%以上のショップは代理店が運営する。ドコモの社内計画に沿った大量閉店の実現は、代理店に多数のショップを閉めさせなければ不可能だ。もしドコモが合理的な理由がなく代理店に閉店を命じれば、代理店との間で訴訟沙汰になりかねない。 ドコモもそこは認識しているのか、「著しい成績不良などやめさせる名目」がない限り、直接的な閉店命令までは下していない。その代わりにドコモが大量スピード閉店のために行っているのが、「3つのステップ」だ。 まずステップ1は、ショップへのインセンティブ(通信契約の獲得数などに応じた報奨金)や支援金の大幅カット、または廃止だ。インセンティブはドコモが店舗ごとに定めたノルマ(例えば他社からの通信契約の乗り換え獲得数)の達成率などで決まる。 ドコモのインセンティブカットの手法はすでに詳報しているが、目標値はドコモが一方的に決めるため、自由にバーを高くできる。これによって代理店の成績評価を下げ、インセンティブをいくらでもカットできる。) このインセンティブの条件の厳格化を如実に表す数字がある。約370のドコモショップを運営するドコモ最大の代理店・コネクシオの2022年3月期決算(2021年4月~2022年3月31日)の期初計画と、このほど発表された結果との乖離だ。 2021年3月期に営業利益106億円稼いだ同社は、ドコモが2021年3月下旬からオンライン受付専用の割安プラン「ahamo」を投入した影響などの逆風を考慮し、2021年4月に発表した2022年3月期の期初計画で営業利益予想を前年度比9.1%減の97億円としていた。 だが、コネクシオは2022年1月、営業利益予想を期初計画比からは17.5%減、対前年度比では25.0%減となる80億円へと大幅に下方修正し、ドコモの代理店関係者の間で大きな話題になった。結局、4月27日に発表した実際の結果は下方修正とほぼ同じ営業利益80億円強となった。 コネクシオが5月12日に開いた決算説明会で、直田宏社長は当初の見通しとのズレについて「通信キャリア(ドコモ)の手数料体系変更による手数料収入の減少が主な原因だ。条件悪化のスピードと規模感は想定を大きく上回るものになった」と率直に語った』、「ドコモが大量スピード閉店のために行っているのが、「3つのステップ」だ。 まずステップ1は、ショップへのインセンティブ(通信契約の獲得数などに応じた報奨金)や支援金の大幅カット、または廃止だ」、「ドコモ最大の代理店・コネクシオの2022年3月期決算」、「下方修正とほぼ同じ営業利益80億円強となった」、「「通信キャリア(ドコモ)の手数料体系変更による手数料収入の減少が主な原因だ。条件悪化のスピードと規模感は想定を大きく上回るものになった」、やはり「ステップ1」は冷徹に実施されたようだ。
・『代理店の独自商材を制限  ステップ2は、代理店が生き残りをかけて取り組む独自商材・サービスへの制限や介入だ。代理店はインセンティブの減収を補うため、あの手この手で独自の収益を増やそうとしてきた。 代理店が期待をかけていた独自収益の目玉の一つに「ENEOSでんき」という電力小売りの代理販売がある。ショップに来た客の電気契約を「ENEOSでんき」に乗り換えさせれば、ENEOSから手数料がもらえるものだ。代理店関係者によると「1契約の獲得あたり8000円ほどもらえる好条件」という。前出のコネクシオも2021年7月から独自収益の目玉として「ENEOSでんき」の取り扱いを始め、好調だった。 だが、ドコモが2021年12月下旬以降に突如として、2022年3月から「ドコモでんき」を開始して電力小売りに参入することを代理店に通達。ドコモから「ドコモでんき」の販売への注力を求められた代理店は、「ENEOSでんき」の取り扱いを断念せざるをえなくなったという。 代理店関係者によると、「ドコモでんき」の手数料は「ENEOSでんき」の半分程度。だが、「ドコモでんき」はドコモが代理店の成績を総合評価する「統一評価」の査定に組み込まれている。統一評価は、四半期ごとに行われる5段階のランク分けだ。 低評価の「1」か「2」を取るとドコモからの支援金が大幅カットされるほか、連続で「2」以下を取ると成績不振を理由に強制的に閉店させられるという。「ドコモでんき」と競合する「ENEOSでんき」の取り扱いを続ければ、この統一評価に少なからず響くようだ。 「ENEOSでんき」の取り扱いを諦めた代理店関係者は、統一評価に響くだけに「ドコモのほうが完全な『後出し』だが、従うほかに道はなかった。『ドコモでんき』は事実上、強制なのだから」と話す。 さらにドコモは昨春から、ショップによる「端末を購入した来店客の初期設定サポート」など有料の接客サービスにも介入し、高率の手数料を取る。初期設定サポートの場合、ドコモが料金を一律3300円に定めるうえ、3分の1の1100円を手数料として代理店から徴収しているのだ。 代理店関係者は「うちが人件費を払うスタッフが長い時は1時間以上割いて対応するサービスなのに、ドコモから3割以上の手数料を取られるので、メリットは限られる。ドコモの担当者に手数料の根拠を聞くと『看板代だ』といわれた」とこぼす』、「「ENEOSでんき」の取り扱いを諦めた代理店関係者は、統一評価に響くだけに「ドコモのほうが完全な『後出し』だが、従うほかに道はなかった。『ドコモでんき』は事実上、強制なのだから」と話す」、「完全な『後出し』」でも「事実上、強制」するとは、ひどい。。
・『期限付きの閉店支援金  ドコモがステップ1やステップ2で代理店の稼ぎを減らしたり、独自収益の拡大を阻害したりする「兵糧攻め」を行ったうえで、仕上げに行うのがステップ3の「タイムリミット付きの閉店の募集」だ。 代理店関係者によると今春、ドコモは代理店に対し、2023年3月末までの閉店を2022年10月末までに申し出れば「店舗統廃合支援費」を出す方針を伝えている。具体的には、ショップ規模に応じて毎月出している「運営体制支援」「家賃支援」などの支援金を10カ月分支払う条件を提示している。支援費は店舗で異なるが、代理店関係者の試算では1店舗当たりおおよそ1500万~2000万円程度の見込みだという。 だが、ドコモショップを運営する代理店は5年や10年、あるいはそれ以上の賃貸借契約をしているところも少なくない。代理店にとっては予期しなかったタイミングでの撤退となれば、残る賃料負担など不慮の損害が発生しうる。 代理店関係者は「社員の雇用をどうするのかの問題もある。諸々考えれば支援費はかなり少ない」としつつ、「このままショップを続けても、ますますドコモからのインセンティブ条件は厳しくなるだろう。難しい決断だ」と嘆く。 代理店やフランチャイズ問題に詳しい中村昌典弁護士は「ドコモの手法は代理店の同意がない条件変更などで経営的に追い込んでおり、3つのステップをトータルで見て『優越的地位の濫用』にあたる可能性が高い。独自商材・サービスへの介入や制限は、『拘束条件付き取引』として違法になるおそれがある」と指摘する』、「ステップ3の「タイムリミット付きの閉店の募集」だ。 代理店関係者によると今春、ドコモは代理店に対し、2023年3月末までの閉店を2022年10月末までに申し出れば「店舗統廃合支援費」を出す方針」、しかし、「ドコモショップを運営する代理店は5年や10年、あるいはそれ以上の賃貸借契約をしているところも少なくない。代理店にとっては予期しなかったタイミングでの撤退となれば、残る賃料負担など不慮の損害が発生しうる」、「3つのステップをトータルで見て『優越的地位の濫用』にあたる可能性が高い。独自商材・サービスへの介入や制限は、『拘束条件付き取引』として違法になるおそれがある」と指摘」、いくら独禁法上、問題があっても、「公取委」の判断が出るまでには時間がかかり、事実上、適用は難しいのではあるまいか。
・『店舗数は「3割程度減少していく」  ドコモ側に、大量閉店計画に関する一連の問題を尋ねると、「中期的には店舗数は3割程度減少していくと見込んでいる」と回答した。全国2300店の「3割程度」は700店弱。「1500〜1600店に絞る」という冒頭の代理店関係者の話とも合致する。 一方で、インセンティブの一方的な大幅削減や独自商材・サービスへの介入・制約の妥当性については回答がなかった。 ドコモ自身も、通信料金の値下げによって収益力が低下し、岐路に立っているのは間違いない。オンラインシフトを進めている事情もある(詳細は6月6日配信記事:ドコモだけが「店舗大リストラ」に動いた複雑事情)。 とはいえ、自社の都合を優先するあまり、立場の弱い代理店を3つのステップで追い込み、急速な大量閉店を実現させようとするやり方に、はたして大義はあるのか。公共の通信電波を扱う「インフラ企業」としてのモラルが問われている』、「自社の都合を優先するあまり、立場の弱い代理店を3つのステップで追い込み、急速な大量閉店を実現させようとするやり方に、はたして大義はあるのか。公共の通信電波を扱う「インフラ企業」としてのモラルが問われている」、同感である。
タグ:携帯・スマホ (その8)(格安事業者はもう不要?大手値下げで消滅危機 格安スマホ 「7年で7割減」市場の壮絶生存バトル、ドコモだけが「店舗大リストラ」に動いた複雑事情 コスト削減大号令 「1000億円以上浮く」試算も、ドコモが大量閉店へ 「ショップの潰し方」の全貌 代理店を撤退に追い込む「3つのステップ」) 東洋経済オンライン「格安事業者はもう不要?大手値下げで消滅危機 格安スマホ、「7年で7割減」市場の壮絶生存バトル」 「契約回線数は7年で7割減」とは衝撃的な予測だ。 「かつてはMVNOにカウントされていたこれらサービス(楽天モバイルとLINEモバイル)がMNO側に移ることで、MVNO側の見かけ上の減りが大きくなるわけだ。 より本質的、かつMVNO勢にとって深刻なのは、2つ目の要因だ。野村総研の澤田和志主任コンサルタントは、「今後は大手キャリアのサブブランドや、昨春から開始した新料金プランへの顧客流出が急増する」とみる」「MVNOのほぼ唯一にして最大の売りであった「価格優位性」が、消滅しかかっているからだ」、なるほど。 「MVNOは舵取りの難しいビジネスでもある。通信網を自社で整備しなくていいとはいえ、とくにスケールメリットの効きにくい中小の事業者にとって回線の仕入れ費用の負担は重い。そのうえ、料金は大手キャリアより安くしなければ顧客にアピールできず、利幅は薄くなりがち」、「ある大手MVNOの幹部は「赤字の中小事業者も多いのでは」と推測する」、なるほど。 「ドコモが旗振り役となる異色のMVNO振興策「エコノミーMVNO」も始まった。提携するMVNOのプランを全国のドコモショップで販売するというもの」、「MVNO事業者は、生き残りをかけた正念場を迎えている」、というのは確かだ。 東洋経済オンライン「ドコモだけが「店舗大リストラ」に動いた複雑事情 コスト削減大号令、「1000億円以上浮く」試算も」 「最大で3割近く削減する見通し」、かなり思い切った「削減」だ。 「ドコモにとって、4年で1000億円におよぶコスト削減効果は極めて大きな意味」、「持ち株会社のNTTは、2021年10月に修正した中期経営戦略の中で、2024年3月期までに2018年3月期比で固定通信・・・と移動通信・・・の事業にかかるコストを、累計1兆円以上削減する目標」、なるほど。 「代理店にとって」、「自社の存亡にかかわる一大事」、「今後交渉が難航することも考えられる」、「「ドコモショップを通じて販売している『ドコモ光』や『ドコモでんき』の売れ行きが鈍れば・・・グループ全体に悪影響」、「戦略の見直しを迫られる可能性もゼロではない」、なるほど。 「ドコモは利益追求のために削減、KDDI、ソフトバンク、楽天は契約数拡大のために残存と、違いがより鮮明化するのでは」・・・との指摘」、「他キャリアの動向について「オンライン契約比率がさらに高まっていけば・・・大手2社もいずれドコモに追随するのでは」・・・とみる向きも」、当面は「ドコモ」だけが「削減」となりそうだ。 東洋経済オンライン「ドコモが大量閉店へ、「ショップの潰し方」の全貌 代理店を撤退に追い込む「3つのステップ」」 「ドコモ」としては、「優越的地位の濫用に当たる可能性」との「指摘」が出ることは覚悟の上で、踏み切った可能性がある。 「ドコモが大量スピード閉店のために行っているのが、「3つのステップ」だ。 まずステップ1は、ショップへのインセンティブ(通信契約の獲得数などに応じた報奨金)や支援金の大幅カット、または廃止だ」、「ドコモ最大の代理店・コネクシオの2022年3月期決算」、「下方修正とほぼ同じ営業利益80億円強となった」、「「通信キャリア(ドコモ)の手数料体系変更による手数料収入の減少が主な原因だ。条件悪化のスピードと規模感は想定を大きく上回るものになった」、やはり「ステップ1」は冷徹に実施されたようだ。 「「ENEOSでんき」の取り扱いを諦めた代理店関係者は、統一評価に響くだけに「ドコモのほうが完全な『後出し』だが、従うほかに道はなかった。『ドコモでんき』は事実上、強制なのだから」と話す」、「完全な『後出し』」でも「事実上、強制」するとは、ひどい。。 「ステップ3の「タイムリミット付きの閉店の募集」だ。 代理店関係者によると今春、ドコモは代理店に対し、2023年3月末までの閉店を2022年10月末までに申し出れば「店舗統廃合支援費」を出す方針」、しかし、「ドコモショップを運営する代理店は5年や10年、あるいはそれ以上の賃貸借契約をしているところも少なくない。代理店にとっては予期しなかったタイミングでの撤退となれば、残る賃料負担など不慮の損害が発生しうる」、「3つのステップをトータルで見て『優越的地位の濫用』にあたる可能性が高い。独自商材・サービスへの介 「自社の都合を優先するあまり、立場の弱い代理店を3つのステップで追い込み、急速な大量閉店を実現させようとするやり方に、はたして大義はあるのか。公共の通信電波を扱う「インフラ企業」としてのモラルが問われている」、同感である。
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教育(その28)(「ブラック校則」で下着の色を男性教師が確認 防寒着NG…ひどすぎる実態、「私だってスカートをこんなに短くしたくない」大人にはわからない…女子高生が短いスカートをはく本当の理由 校則の本音を語る高校教師覆面座談会、日本は「高学歴」とは言えない国 何が問題でそうなってしまったのか あまりにも少ない修士 博士) [社会]

教育については、3月16日に取上げた。今日は、(その28)(「ブラック校則」で下着の色を男性教師が確認 防寒着NG…ひどすぎる実態、「私だってスカートをこんなに短くしたくない」大人にはわからない…女子高生が短いスカートをはく本当の理由 校則の本音を語る高校教師覆面座談会、日本は「高学歴」とは言えない国 何が問題でそうなってしまったのか あまりにも少ない修士 博士)である。

先ずは、5月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したライターの岩瀬めぐみ氏による「「ブラック校則」で下着の色を男性教師が確認、防寒着NG…ひどすぎる実態」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/302250
・『生まれつきの髪色にかかわらず頭髪を一律で黒色に染色させるなど、理不尽で行き過ぎている「ブラック校則」を問題視する動きが各地で広がっている。ブラック校則にはどのようなものがあるのか、学校側はなぜブラック校則を存続させようとするのか。理不尽な規則が学校生活に暗い影を落とすことがないよう、今後の校則の在り方について考察したい』、興味深そうだ。
・『髪黒染め、ツーブロック禁止…「ブラック校則」にようやく廃止の動き  生まれつきの髪色にかかわらず頭髪を一律で黒色に染色させるなど、理不尽で行き過ぎている「ブラック校則」を問題視する動きが各地で広がっている。見直しをすべきという機運の高まりを受けて、議論が進められていた6項目のうち「『ツーブロック』を禁止する指導」など5項目のブラック校則が、新年度からすべての都立高校で撤廃されることになった。 大きな一歩ではあるだろう。だが、ブラック校則問題が国内外で注目されるきっかけとなった「髪黒染め訴訟」が起きたのは2017年だ(経緯は後述)。なぜ校則の見直しにこんなにも時間がかかったのかと疑問が残る。 ブラック校則とは何か、どのようなブラック校則があるのか、東京都以外でも見直しは進んでいるのか、学校側や教師はなぜブラック校則を存続させようとするのか。理不尽な規則が学校生活に暗い影を落とすことがないよう、今後の校則の在り方について考察する』、「「髪黒染め訴訟」が起きたのは2017年だ・・・なぜ校則の見直しにこんなにも時間がかかったのかと疑問が残る」、同感である。
・『男の先生が下着の色をチェック? こんなにある理不尽な校則  ブラック校則という言葉が、ニュースやワイドショーをにぎわせている。よく耳にはするものの、ブラック校則とは一体何なのだろうか。ブラック校則の定義と、日本全国で実在した、もしくは現在も実在するとんでもないブラック校則の数々を紹介したい。 ブラック校則とは、一般社会や一般常識から見て明らかに不可解で理不尽な校則、行き過ぎている校則・生徒心得・学校内ルールのことを指す。また、そうした規則を厳守させるための過度な指導を含めてブラック校則と定義することもある。 例えば、都立高校で撤廃されることになった5項目の1つ「下着の色の指定に関する指導」について見てみよう。注目すべきは、撤廃されたのが「指導」であって、「下着の色を指定すること」ではない点である。 下着の色に関する指導では「下着のヒモを襟元から出して見せるように言われた」「廊下に並ばされた女生徒一人ひとりの胸元を先生がのぞきこんでチェックする」など、耳を疑うような証言が多い。2021年2月に福岡県弁護士会が公表した「校則に関する調査報告書」によると、当事者ヒアリングで「男子女子が一緒に区切りもなく体育館で一斉に生活点検をされる」「中1の女子生徒が男の先生から下着の色を指摘され、それ以来学校に行くことができなくなった」という声が上がったという。 下着の色の指定自体も個人的には「余計なお世話」「プライバシーの侵害」だと思うが、校則順守の名の下に、セクハラともいえる指導方法があちらこちらで行われていることのほうに、よりブラックさを感じるのは確かだ。そこで、「校則自体が理不尽であるもの」「指導方法に大きな問題があるもの」にわけて、ブラック校則の具体例を見ていきたい』、「校則順守の名の下に、セクハラともいえる指導方法があちらこちらで行われている」、驚くべきことだ。男性教師にとっては、密かな楽しみになっているのではとの疑いまで出てくる。
・『私服校なのにスカートNG! 実在した/するブラック校則  まずは、日本全国の学校で実在した/実在する「校則自体が理不尽であるもの」について紹介していこう。特に多かったのが「服装に関する規定」だ。 (1)校舎内は防寒着の着用禁止! 校舎内での防寒着着用を禁止するブラック校則は全国各地で散見される。こうした校則では、手袋・マフラー・コートなどの主に屋外で使用する防寒着はもちろん、膝掛やタイツの使用・着用、学校指定のジャージーの重ね着なども禁止されていることが多い。中には、防寒具を使用できる時期を限定していたり、「コートのみ可」のように防寒具の種類を限定していたりする学校もある。 コロナ禍で冬場でも換気が頻繁に行われるようになったことで、多くの学校でルールの見直しがされたり、改定が検討されたりしているという。 (2)スカート丈は規定より長くても短くてもNG! 学校によって長さの規定は異なるが、スカート丈を定めている校則は多い。許容範囲が広いものはともかく、「膝の皿の範囲内」「膝の皿の中心から下に3cm」「膝より上下5cm以内」などと厳密に決められているものはブラック校則だといえるだろう。 「規定より長くても短くてもNGだったので、背が伸びるのを見越して長めに作るということもできない。途中で買い替えになって、親に嘆かれた」「スカート丈をサスペンダーで短くするのがはやっていたので購入したら、その日のうちに没収。学校の購買部で売ってたのに!学校ぐるみでグルなんじゃ……」という声も。) (3)私服校なのにアレもコレもNG!(制服がない、または制服はあるけれども式典以外は私服の着用が許されているという私服校は、ブラックな服装規定に悩む学生たちから見るとうらやましい限りだろう。しかし、実は「私服校=どんな格好をしてもよい」というわけではない。ジーンズ禁止、ズボンは折り目のあるもの限定など、学校独自のルールが決められているところもあるのだ。「スカート、ワンピース、ショートパンツすべてNG」という、制限がありすぎてむしろ制服校のほうが自由なのでは……と思わされるようなブラック校則も存在している。 髪形や髪色に関するブラック校則も多い。都立高校で撤廃されることになった5項目の中にも「生来の髪を一律に黒色に染色」「『ツーブロック』を禁止する指導」が入っている。 (4)整髪料禁止!髪染めはもちろん禁止!(1980年代のいわゆる「ツッパリ」がしていたような過度なリーゼントや髪染めを校則で禁止することは、ある程度必要な規制だろう。しかし、整髪料の使用や理由のある髪染めを一律で禁止するとなると、途端にブラック校則へと変貌する。 「整髪料や寝ぐせ直しウオーターがNGだったので、校則を守っている人ほど髪がはねてた(笑)。ジェルでがちがちに固めるならともかく、寝ぐせを直すのは身だしなみのうちだと思うけど……」「生まれつきかなり髪色が薄いので就職活動のために黒く染めたら、職員室に呼び出された」など、融通の利かなさを嘆く声が多く聞かれた。 (5)ポニーテールは「男子を誘惑」するのでNG!(髪の長さや特定の髪形を指定する校則、逆に特定の髪形を禁止する校則も多い。「男子は全員坊主。何mmにすることって長さも決められていた」「女子の前髪は眉より上。肩に付く長さの髪は2つ結びにする」といった規定自体の厳しさに加えて目に付くのは、規定する根拠・理由のいい加減さだ。 2020年3月の都議会予算特別委員会にてなぜツーブロック(サイドを刈り上げるなどしてトップとの段差をつけた髪形)はダメなのかという質問が出た際、教育長が「外見等が原因で事件や事故に遭うケースなどがございますため、生徒を守る趣旨から定めている」と答弁して話題となったのは記憶に新しい。このように、「ポニーテールはうなじがセクシーで男子を誘惑するのでダメだと言われた」「ソフトモヒカンは、モテたいのかやんちゃしたいのか中途半端だから禁止って言われたけど、意味不明」など、髪形に関するブラック校則には禁止の理由を疑問視せざるを得ないものが少なからず存在する。 服装や髪に関するもの以外にも、「スマホを持ってきてもいいが、使用は禁止」「首にタオルを巻くのは禁止」「バレンタインはOKだけど、ホワイトデーは禁止」など、不可解なブラック校則は多い』、「スカート丈」「規定より長くても短くてもNGだったので、背が伸びるのを見越して長めに作るということもできない。途中で買い替えになって、親に嘆かれた」、確かに不経済だ。「ポニーテールは「男子を誘惑」するのでNG!」、正気とは思えないような「ブラック校則」だ。
・『メイクがバレるとその場でクレンジング! ブラックな行き過ぎ指導  次に、日本全国の学校で実在した/実在する「指導方法に大きな問題があるもの」について紹介していこう。校則自体はブラックではなくても、指導の仕方によってはたちまちブラック校則になってしまうのだ。 (1)校則を破ると写経!部活動禁止!(ブラック校則について意見を聞いた際、校則を破ったときの罰がブラックだったという意見も多く聞かれた。「仏教学校だったので校則違反をすると写経をさせられた。違反の重さによって枚数が変わりました」という一風変わったものや、「校門が午後6時に閉まる。部活が終わるのが遅れるとアウト、先生にどの部活の生徒かを控えられてしまう。連帯責任で、一定回数名前が挙がった部活は部活動禁止に」という連帯責任を課すことで圧力をかけるものまで、さまざまな罰則が存在している。 (2)その場で見せしめ指導!(校則を守っているかどうかのチェックが頻繁かつ抜き打ちで行われ、他の生徒への見せしめを兼ねた指導を行っている場合もブラックだといえるだろう。「メイクしているのがバレると、先生の持っているクレンジングでその場でメイク落としさせられる」「整髪料は禁止だけど、前髪をジェルで固めるのがはやってた。部活の合宿で早起きしてキメた友達は、朝食時に先生に見つかって泣きながら髪を洗うハメに……」「髪を染めているのを、髪色を黒くするスプレーでごまかそうとした子は、トイレに連行されて手洗い場で頭を洗われていた」など、学校によっては羞恥心をあおるような見せしめ指導が行われることもあるようだ。 (3)爪は常に深爪!?校則通りなのに説教?(校則に従ってしゃくし定規に指導したり、独自の解釈で指導をしたりする学校や先生もブラック度は高い。「手のひら側から見て爪先の白い部分がちょっとでも見えていたらNGなので、常に深爪にしていた」「校則通りなのに、スカート丈が短すぎると繰り返し指導された。廊下で跪かされたり、教卓の前に立たされて長さを測られたりした挙句、校則で想定しているよりも露出が多いので背が高いヤツはスカート丈を長めに調整しろ、と。一体何なの」など、理不尽で行き過ぎた指導を指摘する声も』、「「手のひら側から見て爪先の白い部分がちょっとでも見えていたらNGなので、常に深爪にしていた」「校則通りなのに、スカート丈が短すぎると繰り返し指導された。廊下で跪かされたり、教卓の前に立たされて長さを測られたりした挙句、校則で想定しているよりも露出が多いので背が高いヤツはスカート丈を長めに調整しろ、と」、確かに「ブラックな行き過ぎ指導」だ。
・『在学中は「ブラック」だと気付かない  ブラック校則の怖いところは、学校という枠の中にいる間はその規則が「理不尽である」「ブラックである」と認識しにくいという点だ。 例えば、天然パーマだった著者は、中学生のときに教師から「うちの学校はパーマ禁止だから、ストレートパーマをかけたらどうだ?」と言われたことがある。パーマ禁止だからパーマをかけろとは何とも理不尽極まりない。だが、まだたった十数年しか生きていなかった当時は、先生の言い分を理不尽とも思わずに真剣に悩んだものだ。 ブラック校則は果たしてどのような経緯で注目を集めるに至り、今のように活発な議論が交わされたり、意見が寄せられたり、見直しが進められるようになったのだろうか』、「在学中は「ブラック」だと気付かない」、確かにその通りだろう。
・『ブラック校則議論のきっかけに 「髪黒染め訴訟」とは?  ブラック校則が取り沙汰されるようになったのは、2017年9月に大阪府で起きた髪黒染め訴訟がきっかけといわれている。茶色い髪を黒く染めるように何度も指導・強要されて不登校になったとして、女性が大阪府を相手に損害賠償を求める訴訟を起こしたのだ。 原告となった女性は生まれつき髪が茶色いことを母親が入学時に学校側に説明したにもかかわらず、髪を黒く染めることを強要されたという。女性側の主張によると、学校側は「金髪の外国人留学生でも規則通り黒く染めさせる」と説明したとされている。 大阪地裁は、女性が不登校になった後に学校側が行った「学級名簿に名前を載せない」「教室に席を置かない」という学校側の行為を「著しく相当性を欠く」として大阪府に33万円の賠償を命じたものの、染色を禁じる校則や教師の頭髪指導については適法とした。二審でも一審の判決が支持され、原告の女性は最高裁に上告している』、「髪黒染め訴訟」では、「一二審」とも「染色を禁じる校則や教師の頭髪指導については適法とした」、やはり裁判所は人権意識が希薄で保守的だ。
・『髪黒染め訴訟を機に「ブラック校則」認知度が急上昇  この訴訟は海外でも複数のメディアが報道するなど、国内外の注目を集めた。これを機にネット上で「トイレ掃除は素手でする」など理不尽なブラック校則の報告が相次ぎ、ブラック校則のブラックさ加減がようやく世間に認知され始めたのである。 大阪府は同年11月に「頭髪指導に関するアンケート調査」の結果を公表、過去に定められたまま定期的な見直しがされておらず実態に合っていない校則もあったとして、12月に全府立学校を対象に校則等の点検・見直しを指示した。その結果、府は2018年4月に「校則等の点検・見直しに関する調査公表について」で、約3割の府立学校で文言の修正や削除が行われたと公表している』、「約3割の府立学校で文言の修正や削除が行われた」、ずいぶん少ない印象だ。
・『全国で広がるブラック校則の見直し  大阪府にとどまらず、ブラック校則を見直す機運は日本全国で高まっている。文部科学省は2021年6月に各都道府県教育委員会などに向けて、学校や地域の実態に応じて校則の見直し等に取り組むよう求めた。さらに、生徒指導に関する学校や教師用の基本ガイドである「生徒指導提要」(2010年3月作成)の改訂に向けても動いており、今年3月29日に改訂試案が公開されている。こうした文部科学省の働きかけもあり、各地でブラック校則の見直しが進みつつあるのだ。 東京都では、「生来の髪を一律に黒色に染色」「『ツーブロック』を禁止する指導」「登校しての謹慎(別室指導)ではなく、自宅謹慎を行う指導」「下着の色の指定に関する指導」「『高校生らしい』等、表現があいまいで誤解を招く指導」について、新年度からすべての都立高校で撤廃されることになった。 2021年9月9日にNHKが報じたところによると、都道府県の4割が公立高校の校則の見直しを進めているという』、「公立高校の校則の見直しを進めている」のは「都道府県の4割」とは意外に低い印象だ。
・『なぜ学校や教師はブラック校則を存続させようとするのか  文部科学省の働きかけや世論の高まりで一気に見直しが進みつつあるとはいえ、なぜブラック校則が生まれて、なぜなかなか撤廃されないのだろうか。学校側や教師の意見を紹介しつつ、今後の校則の在り方について考えてみたい。 「ブラック校則、ブラック校則と近年批判ムード一色だが、どんなブラック校則もそれなりの理由や経緯があって生まれてきていることを忘れないでほしい」と神奈川県公立校のとある教師は言う。例えば、髪色を一律に黒色に染色するという校則や下着の色の指定も、就職活動のことや事件・トラブルの誘発率などを考えると一概に生徒の人権を無視したブラック校則だとは言い切れないというのだ。 他の教師や学校関係者からは「社会に出たらもっと理不尽なこともある。集団生活の中でルールを守れるようになるための訓練だと思ってほしい」「落ち着いた教育環境を整えるためには、それなりに厳しい規則が必要」「一度撤廃してしまうと、改めて設定するのは難しい」といった声もあった。 また、ブラック校則の中には実は保護者からの要望でできたルールもあるのだとか。「校則を緩めろと言ってくる親御さんもいれば、もっと厳しくしろという親御さんもいる。全員が納得する校則にはできない」という。ただ、文部科学省や都道府県が見直しを指示している現在は、校則を見直す絶好のチャンスだと教師側も感じているそうだ』、「「社会に出たらもっと理不尽なこともある。集団生活の中でルールを守れるようになるための訓練だと思ってほしい」「落ち着いた教育環境を整えるためには、それなりに厳しい規則が必要」、などは反論としては根拠が弱そうだ。「「校則を緩めろと言ってくる親御さんもいれば、もっと厳しくしろという親御さんもいる。全員が納得する校則にはできない」」、それは事実だろうが、基本的には学校としての考え方の問題だ。
・『おかしいと思ったときに声を上げられる環境作りを  各地で広がっているブラック校則の見直しだが、前述の教師の声にもあったように保護者全員が校則を変えることに賛成というわけではない。それどころか、生徒の中にも「校則を変えてほしくない」とひそかに思っている人もいるのだ。 熊本県で2020年10月に実施された「校則・生徒指導のあり方の見直しに係るアンケート」によると、自分の学校の校則の見直しが必要だと思うかという問いに対して、小学生の32.5%、中学生の27.2%、高校生の20.8%が「必要ではない」と回答している。 学校、地域、時代、社会情勢、教師や保護者や生徒それぞれで、どのような校則が必要で、どのような校則がブラック校則なのかはさまざまに変わる。一律して髪を黒く染めることがおかしいように、国や都道府県が一律して「これはブラック校則だ」と撤廃してしまうこともおかしいのかもしれない。 それよりも、「理不尽だ」「その校則はおかしい」と声を上げられる環境を作っていくこと、学校・教師・生徒・保護者が意見交換をできるような場を作っていくことが、将来的にブラック校則を生まない土壌となるのではないだろうか』、「「理不尽だ」「その校則はおかしい」と声を上げられる環境を作っていくこと、学校・教師・生徒・保護者が意見交換をできるような場を作っていくことが、将来的にブラック校則を生まない土壌となる」、同感である。

次に、5月17日付けPRESIDENT Onlineが掲載した兵庫県明石市立朝霧中学校教諭 河﨑 仁志氏、岐阜県高等学校教員 斉藤 ひでみ氏、教育社会学者、名古屋大学大学院 教授 内田 良氏らによる「私だってスカートをこんなに短くしたくない」大人にはわからない…女子高生が短いスカートをはく本当の理由 校則の本音を語る高校教師覆面座談会」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/57420
・『女子高生が制服のスカートを短くするのはなぜか。教育社会学者・内田良さんが行った高校教師の覆面座談会で見えた意外な理由と、生徒指導の本質とは――。 ※本稿は、河﨑仁志、斉藤ひでみ、内田良『校則改革』(東洋館出版社)の一部を再編集したものです。 【高校教諭覆面座談会】SKR 20代、関西地方。教員4年目。生徒会担当などを経験。 長野 30代、長野県。教員歴8年。教務係→生徒会担当 TNT 40代、岐阜県。生徒会担当歴が長い。Twitterで、学校の在り方について積極的に発信している。 司会 内田良・教育社会学者』、興味深そうだ。
・『校則改革で教員の負担は減るか  【内田】これはあくまで働き方改革を考えたときの校則改革における副次的な産物ですが、校則を厳しくしないことで、身だしなみの指導をする機会そのものがなくなっていくのではないかと思うのです。 「ルールをなくしたら指導することが増える」のか、「ルールをなくしたら指導することが減る」のか、いかがお考えでしょうか。 【長野】校則がほとんどない学校でも、生徒指導は当然あります。ほとんどないとはいえ、例えばいじめの問題やその少ない校則に違反している生徒には指導せざるを得ません。とはいえ、その指導の中で、「この校則はおかしいのではないか」と考えていくきっかけにもなっていて、教員の先導で変わっていく例もあります。私が勤務する学校では、教員主導で、「校内でスマホ使用禁止」という校則がなくなりました。 【内田】私は「教員の働き方」も考えてきています。校則の見直しで、先生の負担がめちゃくちゃかかるようなら、本末転倒だと思っています。「先生の負荷を減らす」ということを校則改革では常に並行して考えたいところです』、「校則の見直しで、先生の負担がめちゃくちゃかかるようなら、本末転倒だと思っています。「先生の負荷を減らす」ということを校則改革では常に並行して考えたいところです」、その通りだろう。
・『校則があることで精神的にしんどい教師も  【SKR】校則があることによって、私は精神的にしんどいです。自分は「悪くない」と思っているのに、校則があるから注意しないといけないこと。また、担任していると自由にいろいろ活動させてあげたくて、クラスをよりよい環境にするところにエネルギーを割きたいのに、頭髪指導や「ネイル取ってこい」とかに労力を割かないといけないのがしんどいです。) 【内田】時間的だけでなく、精神的に負荷があるんですか。 【SKR】例えば、この校則に基づく指導で泣いちゃう子がいます。「自分の顔が好きじゃないから化粧をしてきている」のに、化粧を落とさせないといけない。泣きながら化粧を落としている横に付き添っていたときはかなり苦しかったです。私は何回か、こうした指導を経て先生を辞めたいと思うに至りました。結局続けてはいますが。 【内田】最近何か葛藤した指導の場面はありますか。 【SKR】ピアスを取らせる指導です。校則では「ピアスはだめ」。でも一度開けてしまうと、ピアスは穴が定着していない状態で外すと、細菌が入って皮膚が膿むなどの病気になることがあります。もちろん、「校則で禁じられているのに開けてきた」というところに生徒の落ち度もあるとも思うのですが、これを無理やり取らせないといけない。明らかに健康的な被害があるのに、押し通さなければならない』、「自分の顔が好きじゃないから化粧をしてきている」例では、やはり考え違いを正すことが基本だろう。「ピアスを取らせる指導」も。事前に「ピアス」をさせない指導が肝要だ。
・『ネイルも取れる分だけ取りまだらに  ネイルも、お店でやってもらっている場合、除光液で完全に落ちないことがあります。でも「取れる分だけ取る」指導をすると、まだらな模様だけが残る汚い状況になります。もちろん、ルールについて考える場面で、その指導はするべきと思いますが、そんな事後処理をさせるのはまた別の話だと思っているのです…… 【内田】しんどいですね……でもそう指導せざるを得ないプレッシャーがあるのですね。 【SKR】私が見過ごしたところで、他の先生が指導します。「なんであの先生は許してくれたのに」と、今度は余計に大人への信頼感がなくなってしまうのです。 【内田】結局指導せざるを得ない。 【TNT】誰かが私見でもって「校則を違反してもいい」と言ってしまうと、「あの人はいいって言ったのに」と余計な問題が発生します。 校則についてですが、いまはある方が生徒指導など教員の負担、コストがかかっている気がします。 例えば、今の子供たちは、デジタルネイティブの世代で、情報に敏感です。「なんでそんな指導すんの?」とほかの自治体の例やニュースと比較されると、信頼関係の構築が、校則によって遠回りになることがあります』、「「なんでそんな指導すんの?」とほかの自治体の例やニュースと比較されると、信頼関係の構築が、校則によって遠回りになることがあります」、やむを得ないとはいえ、困ったことだ。
・『50代教員は「荒れた時代」を覚えている  【TNT】ただし、先生、地域の方々の中には、校則をなくしてしまったときに校内暴力などが盛んだった、「あの頃(1980年代)」みたいな荒れが発生し、それが発生したときに、立て直す際のコストを考えている人もいます。 以下は私の経験則も入っていますので参考程度にお聞きください。昔の「荒れた状況」は、例えば「同じリーゼント」など「目に見えるもの」だったので、その条項を取り締まれば、外見的にまず抑えられて、一定程度取り締まることができました。今は、「荒れ」って姿に出てこない部分が大きいと思います。このように時代の遷移を考えると、校則をなくしたせいで、外見を伴って荒れるということはないと思います。 2021年現在、50代の教員はあの「荒れた時代」を覚えている。そのときとは、毎朝校門の前で状況の観察と身だしなみの指導、場合によっては朝から怒鳴り合いになり、保護者も学校に来て収集がつかなくなるなどのときです。 この理論で考えると、「生徒の荒れ」は地域などの指摘によって最終的に学校が負担しなければならず、校則があることによってこのクレームなどが低減していると考えると、「校則がある方がコストがかからない」となるのだと思います。 でもこの理屈は今の時代も通用するのでしょうか。 【長野】現代の長野県でも荒れている学校は確かにあります。校則がないから生徒指導も大変じゃないのではないか、というとそういうわけではないと思うのです』、「校則がないから生徒指導も大変じゃないのではないか、というとそういうわけではない」、なるほど。
・『スマホの使用禁止に「なんで?」  先のスマホの話でいうと、「登校後、下校まで校内でのスマホは使用禁止」なのです。でも、生徒に「なんで?」と聞かれると明確な返答はできませんでした。急に親に連絡を取らなければならないことなど、いろんな場面が想定されるはずなのに。でも少し調べてみると、携帯がかつて高校生に普及し始めたときに、授業中に遊んでいる例が確認され、その防止としてつくられた校則をずっとやってきた。我々は考えもせず、スマホの使用を見つけるたびに、指導している部分もあったと思います。【内田】なるほど……一筋縄でいかないのは、教師の生徒指導に向かう価値観の違いや、ある意味で地域の要望、そして生徒の思いの多様化もあるのでしょうね。貴重なお話をありがとうございます。 最後に制服の話だけみなさまにお伺いしたいです。ジェンダーレス化が進んでいて、現在校則改正の話題となるとまず上がってくると思います。いかが運用されているのか、また、いかがお考えでしょうか』、「「登校後、下校まで校内でのスマホは使用禁止」なのです。でも、生徒に「なんで?」と聞かれると明確な返答はできませんでした。急に親に連絡を取らなければならないことなど、いろんな場面が想定されるはずなのに。でも少し調べてみると、携帯がかつて高校生に普及し始めたときに、授業中に遊んでいる例が確認され、その防止としてつくられた校則をずっとやってきた。我々は考えもせず、スマホの使用を見つけるたびに、指導している部分もあったと思います」、よく考えれば、かつてそれなりの理由があったようだ。
・『私服と制服を選べるような制度を  【SKR】私は私服と制服を選べるような制度がいいなと思っています。自分の私服をあまり所持していない子など、制服があることで救われる子もいます。 また、制服を導入している意味が、外聞に対してきっちりとしていることをアピールすることに重点が置かれ、丈の長さをそろえるとか画一的な指導によって、生徒の行動を制限するようなものは不必要だと思っています。 【内田】その考えは学校ではどんな反応されるでしょうか。 【SKR】今の学校では、おそらく反対されると思います。私も分掌に入っていた生徒指導部から「制服・私服の選択制」について提案したのですが、管理職等の会議に出たはずなのですが、私が気付いたころには議論すらなくなっていて、おそらく管理職らの立場で何か反対に合ったのだろうなと思っています。 【内田】理由までは分かりませんか? 【SKR】あまりにも生徒指導部の主任が険しい表情で帰ってきたので聞けませんでした。 【内田】いえ、ありがとうございます。私のように遠くから見ていると、「校則って全く動いていないんだな」と思っていたのですが、実はSKR先生のその件のように葛藤も含めて動いている教員もいらっしゃるのだな、と感じました。傍から見ていると分からないですね。軒並み変わっていませんから。 たまに話題になってるのは人権の保護の上でもおかしなものばかりで、もう少し踏み込んだ、制服などの議論は起きていないものだと思っていましたが、もしかしたら動きは起きているけれどもポシャっている、あるいは教員も葛藤を抱えつつ現状維持が続いている状況にある気もしました。 【TNT】私もSKRさんが言われたように、標準服があって、好きなものを着ればいいと思います』、なるほど。
・『「私だってこんな短くスカートをはきたくない」  それでも一つ気にしておきたいことがあって、昔、スカートを短くつめていた生徒に、「あなたの太い脚なんか見たくない」と怒った先生がいました。この発言自体がハラスメントで、問題です。しかし加えてそのときの生徒の返答が頭に残っています。「私だってこんな短くスカートをはきたくない」と。 いろいろ話を聞くと、制服しかない状況で、いわゆるオシャレな着こなしをしているか否かで、所属する集団から弾かれてしまうケースがありまして、これはいわゆる「スクールカースト」につながっていたのでした。「短くしないと仲間に入れてもらえない。だから仕方なくしているのに、『見たくない』とか言われて悔しくて」とその生徒は泣いていました。複層的な問題でもあるのです。当時の私は「ああ、全員一律に指導しないからダメなんだ。ちゃんと全員を短くしないように指導しないといけないのだ」と感じました。でも、そもそも制服がなければこのような問題は起きない、と今は考えています』、「「短くしないと仲間に入れてもらえない。だから仕方なくしているのに、『見たくない』とか言われて悔しくて」とその生徒は泣いていました」、聞いてみないと分からないものだ。
・『先生の私服への恐れは正当?  【TNT】先生方は「私服を許すととんでもない恰好をしてくるやつがいるだろう」と勝手に恐れている。でもおそらく、生徒はとんでもない恰好をしてきて浮くことを理解しているのです。派手な格好をしている、なめられたくなくて怖そうな服を着てくる生徒もいるでしょう。でもそれを、先生方が「ほら見たことか」となるのではなく、対話の機会にしていくべきなのではないかと思いました。 かつては、こうした生徒の心の変化を読み取る上で、服装などの変化を見とるのは、有効な手段だったと思うのです。「目つきや表情が悪くなった」から次に「服装等が変わった」、だから変化の原因となっている心情に向き合おう、と。でも、今は「まず服装を指導する」。これでは心情の部分が全く解決していなくて、恰好だけ直すのなら、その指導は一体何のために行っているのでしょうか。 でも、一部の教員は「恰好をちゃんとさせていれば、『荒れ』が始まらない」と信じている。本当は「荒れ」の兆候を検知するためのものではないのでしょうか。 【内田】スカート短いのなら、それはなんでなのだろうと聞いて、その子の思いを理解していくきっかけだと。 【TNT】最初は「どうしたの?」のはずなのに「違反じゃないか! 長くしなさい」などになっている。あの荒れた時代を立て直した先生方の中には、校則指導といいながら、心を見ていた指導をされていらっしゃった人もいたと認識しています。ある意味、ただだらしないだけの子はスルーしていたこともあったのです。 その下の世代の教員が、これを引き継いでおらず、「恰好」から入ると、教師と生徒の乖離かいりや信頼関係が築けなくなることもあるのだと思いました。 【内田】それはすごい分析ですね。見た目の問題ではなく心にアプローチするのが生徒指導。すでに私服率の高い長野県はいかがでしょうか』、「あの荒れた時代を立て直した先生方の中には、校則指導といいながら、心を見ていた指導をされていらっしゃった人もいたと認識しています。ある意味、ただだらしないだけの子はスルーしていたこともあったのです。 その下の世代の教員が、これを引き継いでおらず、「恰好」から入ると、教師と生徒の乖離かいりや信頼関係が築けなくなることもあるのだと思いました」、確かに「すごい分析」だ。
・『私服でも制服でも「貧富の差」は見える?  【長野】長野は半々くらいの割合で、制服だけの学校と私服の学校があります。私は両方の学校に勤務したことがあります。私服の学校は形式的な制服もありません。制服のようなものを着ている生徒は、いわゆる「なんちゃって制服」です。 【内田】それでいて普通に回っているのですか。 【長野】先の生徒指導のコストと校則の観点で考えると、制服がない方が、着こなしについて指導しなくてよいので、指導に割くコストは少ないです。自由に選んだ服でいるので、指導の余地は全くありません。) 一点、担任をしていたときに気になったのは、貧富の差がどうしても出てしまうことです。例えば、2、3日同じ服で登校してくる子。学校ジャージしか着てこられない子。それをコンプレックスに感じている子がいたとしても、担任としては助けてあげられないので、こちらも苦しい。 でも、最近気が付いたのですが、同じことは制服でも言えたのです。Yシャツを1枚しかもってないと毎日洗うので、他の子よりも先にボロボロになります。 【内田】制服でも、目で見て分かるレベルで劣化するのですか。 【長野】襟の黒ずみは家で洗っても落ちませんよね。スラックスも立ったり座ったりするとだんだんへたってきます。制服でも目に見えて変化します。どちらにしてもこの問題はあったのです。 両方のメリットデメリットを改めて子供たち視点で考える必要があるでしょう。私は、子供たちが自由に選べる、納得感をもって通える私服もOKという在り方がいいのではないかな、と思います』、「貧富の差がどうしても出てしまうことです。例えば、2、3日同じ服で登校してくる子。学校ジャージしか着てこられない子。それをコンプレックスに感じている子がいたとしても、担任としては助けてあげられないので、こちらも苦しい。 でも、最近気が付いたのですが、同じことは制服でも言えたのです」、言われてみれば、その通りだ。
・『貧富の差にどう対応するか  【内田】僕がもし制服を自由化するとしたときに、一番議論するべきところは、「貧富の差」が視覚化されるところにどう対応するか、だと懸念していました。明らかに貧富の差が顕在化するなら考えないわけにはいかない。でも、それは制服にしても課題なのですね。もちろん、貧富の差自体が問題なので、これはまた別の議論でもあるのですが。 もう一点聞きたいのは私服OKだと、めちゃくちゃ派手な人たちが登場し、オシャレなどの外見的な競争が激化するのではないか、これは結果的に先のTNTさんのお話のように、荒れにつながるのではないかとも懸念しているのです。「雑誌に載っていた服だ」「私も新しいの買わなきゃ」とかだんだんひどい状況になっていく。長野はどのような状況になっているのですか』、「オシャレなどの外見的な競争が激化するのではないか、これは結果的に先のTNTさんのお話のように、荒れにつながるのではないかとも懸念している」、当然の疑問だ。
・『服で人を判断する価値観を子供とともに考える  【長野】今見える範囲では特にないです。突拍子もない派手な格好をしてくる子もまれにいますが、そのことで、「距離を置かれる」「人間関係が破綻する」などに一気につながることはあまりないです。服で人を判断する子供たちではないですね。逆に服で人を判断するという価値観こそ子供たちとともに考えるべき視点じゃないかと』、「服で人を判断する子供たちではないですね」、一安心だ。
・『私服だと3割ジャージも  ちなみに、じゃあ私服だとどんな感じになるかというと、部活とか学校のジャージを着ている子が3割くらいいます。ほか7割は私服もしくは「なんちゃって制服」です。特定の部活動が、例えば野球部が学ランで合わせているような例もあります。ほかには、きれいな私服を着ている女の子の集団もあります。派手な男子も、地面につくような丈の服をオリジナリティあふれる形で着こなしている例もたまにあります。 服は価格だけでなく、こだわりがでるので、オシャレじゃないから貧しい、というようなことではないと感じます。むしろ、先ほど少し挙がった「スクールカースト」という観点からは、確かに、華やかなきれいな服を着ているグループと、服装が地味な生徒の集まりなどは分かれると思います』、「華やかなきれいな服を着ているグループと、服装が地味な生徒の集まりなどは分かれる」、「貧富の差」はやむを得ないと割り切るしかないのだろう。
・『ファストファッションの方が清潔に通えるかも  【TNT】貧富の差は分かります。制服の学校にいますが、お古の制服も可ですので、それはもう端から色が違いますよね。加えて例えば制服に痛みがでたときに、貧困家庭だと、お家の方がミシンで縫うなどもままならない場合もあり、本人が下手な裁縫で取り繕ってほつれが目立っているなどの状況もあります。気の毒なのだけど、買い替えるのは高いので、私服でもよいということで、ファストファッションだったらこの子でも買えて清潔に通えるのにな、と思います。 【SKR】分かります。でも逆に、おさがりは貧富に限らず一定数いるので、そこまで可視化されないという意見もあります。ただ、服をメンテナンスできる環境であるか否かというのは、1~2年経つことによって見えてくるものということもあります。制服の方が見えづらいとは思いますが、見えるのは見えます。 【長野】余談ですが、教員の身だしなみについて、長野県の公立高校には、そもそも教員の服飾規定がないので、先生方はわりと自由な恰好をしている印象があります。私も最初、教員になりたての時はスーツで行ってましたが、そのうちジャージになりました。そのことで何かとがめられることもないので、そうした「服装の自由」という意味では、私服校に通う生徒とあまり変わりません。 【内田】制服についての意見、ありがとうございました』、「長野県の公立高校には、そもそも教員の服飾規定がないので、先生方はわりと自由な恰好をしている印象があります」、なるほど。

第三に、6月5日付け現代ビジネスが掲載した大蔵省出身で一橋大学名誉教授の野口 悠紀雄氏による「日本は「高学歴」とは言えない国、何が問題でそうなってしまったのか あまりにも少ない修士、博士」を紹介しよう。
・『日本は高学歴国だと思っている人が多いが、統計を見ると、先進国のなかでは低学歴国だ。とくに問題なのは、修士・博士レベルの学位取得者が少ないことだ。アメリカのプロフェッショナルスクールのような、高度な実務専門教育の充実が求められる』、興味深そうだ。
・『日本人の学歴は、国際的にどの程度の水準か?  日本の大学(学部)進学率は、2021年度で54.9%だ(文部科学省、学校基本調査令和3年度)。これを他国と比べると、高いか低いか? 国際比較では、高等教育への進学率として、大学進学率でなく、tertiary eduction(第3期の教育)への進学率という指標が使われることが多い。 これを世界銀行のデータベースでみると、図表1のとおりだ(日本について2018年のデータまでしか得られないので、2018年のデータを示す) 日本は64.1%で、先進国の中では高いとは言えない。OECDの平均が75.6%。アメリカは88.3%だ。また、韓国が95.9%と、きわめて高い値になっていることが注目される。日本の数字は、韓国の1.5分の1、アメリカの1.4分の1だ。 なお、「第3期の教育」の正確な定義は、UNESCO(国際連合教育科学文化機関)が決めている。大学の他、職業専門学校なども含む。primary education(初等教育)、secondary education(中等教育)のつぎの段階の教育課程だ。 「学校基本調査」によると、2021年度において、大学学部、短期大学本科進学率は58.9%であり、高等教育機関(大学学部、短期大学本科、高等専門学校)への進学率は83.8%である。 図表に示す値64.1%はこれらの中間になるので、専門学校の一部は含まれていないことになる。(図表1 高等教育への進学率 はリンク先参照) なお、図表1の数字は、総入学者数を入学適齢人口で割った比率であり、分子には浪人生や社会人、留学生など、適齢年齢以外の入学者も含む。このため、比率が100%を超える場合もある』、「(第3期の教育)への進学率という指標・・・を世界銀行のデータベースでみると、図表1のとおりだ」、「日本は64.1%で、先進国の中では高いとは言えない。OECDの平均が75.6%。アメリカは88.3%だ。また、韓国が95.9%と」、なるほど。
・『日本は学歴社会だと言われるが  日本は学歴社会だと言われる。会社の採用では学歴による区別がなされる。受験競争も厳しく、小学生からの塾通いも普通だ。こうしたことから、日本の高等教育進学率は他国より高いと考えている人が多いだろう。しかし、図表1のデータは、それを裏付けていない。 個人の立場から見ると、高等教育を受けていないために、能力を十分に発揮できない場合がある。だから、できるだけ多くの国民が高等教育を受けられることが望ましい。 また、国全体の立場から見ても、高等教育を受けて高度な能力を身につけた人材が多いことは、長期的な発展のために不可欠の条件だ。 このような観点からすると、図表1に見る日本の現状は、決して満足できるものではない』、「図表1に見る日本の現状は、決して満足できるものではない」、その通りだ。
・『OECD統計では日本の高等教育終了者比率は低くない  高等教育への進学率に関しては、別の指標を用いた統計もある。 OECDのEducation at a Glance 2018は、いくつかの年齢階層について、その年齢層の人口に対する第3期教育終了者の比率を示している。 同レポートの図表A1.2は、25歳から34歳の年齢階層のうち、第3期の教育を受けた者の比率を示している(2017年の計数)。 それによると、日本は約60%であり、韓国(約70%)、カナダについで、世界第3位だ。アメリカは約48%と、日本より大分低い。OECD平均は43%程度だ。 このデータは、図表1とはかなり違う姿を表している。なぜこのような違いが生じるのだろうか? それは、図表1の数字は2018年という直近の状況を表しているのに対して、OECD データにはそれより以前の状況も反映されているからだ。 例えば、34歳の人が大学に在学していたのは、いまから10年以上前のことである。その頃には日本の大学進学率は他国より高かったのだ。その後、日本の進学率があまり伸びなかったのに対して他国の進学率は伸びた。このため、図表1のように最近時点だけを評価すれば、日本の値が低くなるのである。 こうしたことを考えると、「OECDの統計では日本は世界第3位なのだから、学歴面で日本は大きな問題を抱えていない」との評価はできない。 なお、OECDのデータは、第3期の教育のうち、「短期の専門学校」の比率も示している。それによると、日本も韓国も、ほぼ20%で変わりがない。 「図表1のデータで韓国の数字が高いのは、短期の専門学校が多いからで、その意味で韓国の数字は水増しされている」と言われることがある。しかし、そうしたことはないことが分かる。 また、アメリカの場合に、図表1では比率が高いのにOECDの指数であまり高くないのは、分子に外国人留学生が多く含まれているからかもしれない』、「OECD データ」は古いので、余り参考にならないようだ。
・『日本では、修士・博士が少ない  さまざまなレベルでの学位取得者が人口あたりどの程度いるかの計測を、文部科学省、 科学技術・学術政策研究所(NISTEP)が行なっている。 前記OECDの統計が年齢階層別に比率を求めているのに対して、この計測では、ある年度の学位取得者を人口で割っている。だから、この指標が表しているのは、図表1と同じく、直近の状況だ。 この計測によると、2017年度において、人口100万人当たりの学士号取得者は、日本は4481人だ(日本全体では、56.2万人ということになる。これは学校基本調査による17年度の大学卒業生56.8万人とほぼ同じだ) 。 これは、韓国6594人、イギリス6312人、アメリカ6043人よりかなり低い。日本の数字は、韓国の1.5分の1、アメリカの1.3分の1だ。これは、図表1の場合とほぼ同じ比率だ。この計測で見ても、日本は先進国の中では低学歴国だということになる。 さらに問題なのは、修士・博士レベルの学位取得者比率が低いことだ。人口100万人当たりの修士号取得者は、2016年度で日本は569人であり、イギリス3694人、アメリカ2486人、ドイツ2465人より大幅に少ない。 博士号は、2016年度で日本は118人であり、イギリス360人、ドイツ356人、アメリカ258人に比べて大幅に少ない』、「修士・博士レベルの学位取得者比率が低い」のは確かに由々しい問題だ。
・『アメリカでは修士・博士の学位保有者が多い  上で見たように、アメリカでは、修士号、博士号の取得者が多い。これが研究開発の原動力になっていることは言うまでもない。 それだけでなく、実務の面でも、大学院レベルの教育が重要な役割を果たしている。これは、ロースクールやビジネススクールなど、「プロフェッショナルスクール」 と呼ばれているものだ。大学4年の過程を終了した後に、修士レベルの教育を行う。 従来の修士課程が学者養成のための教育で、博士課程の前段階と位置づけられていたのに対して、プロフェッショナルスクールは実務での高度専門家の育成を目的とする。 こうした機関での教育が、生まれた時の社会的階層を飛び越えることを可能にしている。 アメリカでは、女性や黒人など、これまでマイノリティーと考えられていた人々の社会的活躍が目立つ。 様々な階級出身の人々が重要な地位に就くことは、社会の活性化にとって大変重要なことだ。その際に重要な役割を果たすのが学歴だ。アメリカは、高学歴社会であり、それゆえに活力があると考えることができる』、「アメリカでは」、「実務の面でも、大学院レベルの教育が重要な役割を果たしている。これは、ロースクールやビジネススクールなど、「実務での高度専門家の育成を目的とする」「プロフェッショナルスクール」が「生まれた時の社会的階層を飛び越えることを可能にしている」。
・『博士だけでなく、プロフェッショナルスクールも重要  日本経済新聞は、2022年5月に、「揺らぐ人材立国」というシリーズで、日本で高度専門家の教育が不十分だと論じた。 ここで問題にされたのは、博士号レベルの保有者が少ないことだ。基礎的研究開発という観点から、もちろんこうした人材が必要だ。 ただ、それとは別に、プロフェッショナルスクールに見るように、修士レベルでの高度専門家の養成も重要だ。 日本でも、2009年に専門職大学院の制度が作られた。それから10年以上経つが、残念ながら、期待された機能を果たしているとは言いがたい。 なぜこうしたことになったかの原因を究明し、現状を改善していく必要がある』、「専門職大学院」は「法律面」、「会計面」とも苦戦している。司法試験や公認会計士試験対策以外の企業のニーズ掘り起しに失敗したようだ。日本では、「プロフェッショナルスクール」はまだ存在意義を見出しかねているようだ。
タグ:教育 (その28)(「ブラック校則」で下着の色を男性教師が確認 防寒着NG…ひどすぎる実態、「私だってスカートをこんなに短くしたくない」大人にはわからない…女子高生が短いスカートをはく本当の理由 校則の本音を語る高校教師覆面座談会、日本は「高学歴」とは言えない国 何が問題でそうなってしまったのか あまりにも少ない修士 博士) ダイヤモンド・オンライン 岩瀬めぐみ氏による「「ブラック校則」で下着の色を男性教師が確認、防寒着NG…ひどすぎる実態」 「「髪黒染め訴訟」が起きたのは2017年だ・・・なぜ校則の見直しにこんなにも時間がかかったのかと疑問が残る」、同感である。 「校則順守の名の下に、セクハラともいえる指導方法があちらこちらで行われている」、驚くべきことだ。男性教師にとっては、密かな楽しみになっているのではとの疑いまで出てくる。 「スカート丈」「規定より長くても短くてもNGだったので、背が伸びるのを見越して長めに作るということもできない。途中で買い替えになって、親に嘆かれた」、確かに不経済だ。「ポニーテールは「男子を誘惑」するのでNG!」、正気とは思えないような「ブラック校則」だ。 「「手のひら側から見て爪先の白い部分がちょっとでも見えていたらNGなので、常に深爪にしていた」「校則通りなのに、スカート丈が短すぎると繰り返し指導された。廊下で跪かされたり、教卓の前に立たされて長さを測られたりした挙句、校則で想定しているよりも露出が多いので背が高いヤツはスカート丈を長めに調整しろ、と」、確かに「ブラックな行き過ぎ指導」だ。 「在学中は「ブラック」だと気付かない」、確かにその通りだろう。 「髪黒染め訴訟」では、「一二審」とも「染色を禁じる校則や教師の頭髪指導については適法とした」、やはり裁判所は人権意識が希薄で保守的だ。 「約3割の府立学校で文言の修正や削除が行われた」、ずいぶん少ない印象だ。 「公立高校の校則の見直しを進めている」のは「都道府県の4割」とは意外に低い印象だ。 「「社会に出たらもっと理不尽なこともある。集団生活の中でルールを守れるようになるための訓練だと思ってほしい」「落ち着いた教育環境を整えるためには、それなりに厳しい規則が必要」、などは反論としては根拠が弱そうだ。「「校則を緩めろと言ってくる親御さんもいれば、もっと厳しくしろという親御さんもいる。全員が納得する校則にはできない」」、それは事実だろうが、基本的には学校としての考え方の問題だ。 「「理不尽だ」「その校則はおかしい」と声を上げられる環境を作っていくこと、学校・教師・生徒・保護者が意見交換をできるような場を作っていくことが、将来的にブラック校則を生まない土壌となる」、同感である。 PRESIDENT ONLINE 河﨑 仁志氏 斉藤 ひでみ氏 内田 良氏 「私だってスカートをこんなに短くしたくない」大人にはわからない…女子高生が短いスカートをはく本当の理由 校則の本音を語る高校教師覆面座談会」 「校則の見直しで、先生の負担がめちゃくちゃかかるようなら、本末転倒だと思っています。「先生の負荷を減らす」ということを校則改革では常に並行して考えたいところです」、その通りだろう。 「自分の顔が好きじゃないから化粧をしてきている」例では、やはり考え違いを正すことが基本だろう。「ピアスを取らせる指導」も。事前に「ピアス」をさせない指導が肝要だ。 「「なんでそんな指導すんの?」とほかの自治体の例やニュースと比較されると、信頼関係の構築が、校則によって遠回りになることがあります」、やむを得ないとはいえ、困ったことだ。 「校則がないから生徒指導も大変じゃないのではないか、というとそういうわけではない」、なるほど。 「「登校後、下校まで校内でのスマホは使用禁止」なのです。でも、生徒に「なんで?」と聞かれると明確な返答はできませんでした。急に親に連絡を取らなければならないことなど、いろんな場面が想定されるはずなのに。でも少し調べてみると、携帯がかつて高校生に普及し始めたときに、授業中に遊んでいる例が確認され、その防止としてつくられた校則をずっとやってきた。我々は考えもせず、スマホの使用を見つけるたびに、指導している部分もあったと思います」、よく考えれば、かつてそれなりの理由があったようだ。 「「短くしないと仲間に入れてもらえない。だから仕方なくしているのに、『見たくない』とか言われて悔しくて」とその生徒は泣いていました」、聞いてみないと分からないものだ。 「あの荒れた時代を立て直した先生方の中には、校則指導といいながら、心を見ていた指導をされていらっしゃった人もいたと認識しています。ある意味、ただだらしないだけの子はスルーしていたこともあったのです。 その下の世代の教員が、これを引き継いでおらず、「恰好」から入ると、教師と生徒の乖離かいりや信頼関係が築けなくなることもあるのだと思いました」、確かに「すごい分析」だ。 「貧富の差がどうしても出てしまうことです。例えば、2、3日同じ服で登校してくる子。学校ジャージしか着てこられない子。それをコンプレックスに感じている子がいたとしても、担任としては助けてあげられないので、こちらも苦しい。 でも、最近気が付いたのですが、同じことは制服でも言えたのです」、言われてみれば、その通りだ。 「オシャレなどの外見的な競争が激化するのではないか、これは結果的に先のTNTさんのお話のように、荒れにつながるのではないかとも懸念している」、当然の疑問だ。 「服で人を判断する子供たちではないですね」、一安心だ。 「華やかなきれいな服を着ているグループと、服装が地味な生徒の集まりなどは分かれる」、「貧富の差」はやむを得ないと割り切るしかないのだろう。 「長野県の公立高校には、そもそも教員の服飾規定がないので、先生方はわりと自由な恰好をしている印象があります」、なるほど。 現代ビジネス 野口 悠紀雄氏による「日本は「高学歴」とは言えない国、何が問題でそうなってしまったのか あまりにも少ない修士、博士」 「(第3期の教育)への進学率という指標・・・を世界銀行のデータベースでみると、図表1のとおりだ」、「日本は64.1%で、先進国の中では高いとは言えない。OECDの平均が75.6%。アメリカは88.3%だ。また、韓国が95.9%と」、なるほど。 「図表1に見る日本の現状は、決して満足できるものではない」、その通りだ。 「OECD データ」は古いので、余り参考にならないようだ。 「修士・博士レベルの学位取得者比率が低い」のは確かに由々しい問題だ。 「アメリカでは」、「実務の面でも、大学院レベルの教育が重要な役割を果たしている。これは、ロースクールやビジネススクールなど、「実務での高度専門家の育成を目的とする」「プロフェッショナルスクール」が「生まれた時の社会的階層を飛び越えることを可能にしている」。 「専門職大学院」は「法律面」、「会計面」とも苦戦している。司法試験や公認会計士試験対策以外の企業のニーズ掘り起しに失敗したようだ。日本では、「プロフェッショナルスクール」はまだ存在意義を見出しかねているようだ。
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中国情勢(軍事・外交)(その13)(台湾侵攻を視野に食糧備蓄か ロシアと「一帯一路」が中国の生命線に、中国がロシアを飲み込み「モンゴル帝国」再出現?日本の難しい舵取り、ぎりぎりで避けられた最悪の事態 中国と太平洋島嶼国の危うい合意が先送りに 中国・王毅外相の南太平洋外交の顛末) [世界情勢]

中国情勢(軍事・外交)については、1月25日に取上げた。今日は、(その13)(台湾侵攻を視野に食糧備蓄か ロシアと「一帯一路」が中国の生命線に、中国がロシアを飲み込み「モンゴル帝国」再出現?日本の難しい舵取り、ぎりぎりで避けられた最悪の事態 中国と太平洋島嶼国の危うい合意が先送りに 中国・王毅外相の南太平洋外交の顛末)である。

先ずは、2月4日付けダイヤモンド・オンラインが掲載したジャーナリストの姫田小夏氏による「台湾侵攻を視野に食糧備蓄か、ロシアと「一帯一路」が中国の生命線に」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/298064
・『ロシアがウクライナ侵攻を始めた2月24日、中国はロシアからの小麦輸入を拡大すると発表した。西側諸国の経済制裁で窮地に陥るロシアへの“助け舟”ともいえるが、中国は近年、利害が共通するロシアと手を組み、穀物の輸入ルートの多元化に乗り出している。中国は「一帯一路」構想をも巧みに絡めて、食糧調達の“脱西側依存”を着々と進めている』、興味深そうだ。
・『中国が描く中長期の食糧安保戦略  中国はこれまでロシア産の小麦に対して、中国の植物検疫を満たしていないことを理由に輸入制限を行ってきた。しかし、今回の措置ではそれを全面解禁し、ロシアのどの地区からも中国に輸出できるようにした。 西側諸国による経済制裁に追い詰められるロシアにとって、その恩恵は小さくない。ロシアの通信社「スプートニク」は「ロシアからすれば巨大な消費市場が出現した」と報じた。 だが、それは単なる瞬間的な“助け舟”では終わらない。中国が見据えるのは、短期的なものではなく、むしろ中長期的なシナリオだ。 中国の報道や研究機関の調査報告書などをひもとくと、世界の中で孤立を深める中国が、利害や立場が共通するロシアや「一帯一路」の沿線国家とともに共同戦線を張り、中国包囲網を強行突破するかのような食糧安保戦略が見えてくる』、「これまでロシア産の小麦に対して、中国の植物検疫を満たしていないことを理由に輸入制限を行ってきた。しかし、今回の措置ではそれを全面解禁」、かなり思い切った措置だ。
・『食糧の備蓄強化、ロシア産小麦を大々的に輸入  中国はコメ、小麦、トウモロコシの自給率では98%を超える。食糧の安全保障を一貫して重要視してきた中国は、「自分のどんぶりを持て」をスローガンに輸入依存度を減らしてきた。 そもそも小麦の国内生産は十分に足りているにもかかわらず、中国が近年小麦の輸入を急増させている背景にはしたたかな食糧の備蓄政策がある。 「『大国の備蓄』と『世界の穀物』を管理する政治的責任をしっかりと担い、より高いレベルで国家の食糧安全を保障しなければならない」――昨年12月28日、中国の国家食糧物資備蓄局は、重要な啓示としてこのような文章を発表した。 年間1000万トンの小麦を輸入する中国だが、2021年1~7月、中国は前年比で45.9%増の625.3万トンの小麦を輸入した(中国税関)。その内訳はカナダ(199.3万トン、構成比31.9%)、米国(179.7万トン、28.7%)、オーストラリア(152.2万トン、24.3%)で、この3カ国で84.9%の割合を占める。 オーストラリアが数量・金額ともに4割を占めていた2015年からは平準化された形だが、それでも中国からすればカナダ、オーストラリアは米国主導の中国包囲網に加担する油断のならない相手だ。近年の中国の学術論文では「政治的リスクが低い国からの輸入を優先的に増やすべきだ」という論調が目立つ。 清華大学の中国農村研究院は、2020年に次のような論文を公開している。 「『一帯一路』構想の進展に伴い、中国のトウモロコシの輸入元は徐々に多元化し、米国などの既存の輸入国に加え、ウクライナ、ロシア、ブルガリア、ベトナムなどからの輸入が増加する可能性がある。カザフスタンなど中央アジア諸国からの小麦の輸入はさらに伸びるだろう。輸入の安定性と信頼性を向上させるためには、輸入元の多元化を促進し、単一国への依存を減らす必要がある」(葉興慶著「WTO加盟以後の中国農業の発展状況と戦略調整」) 冒頭で触れた中露間の取り決めにより、今後、ロシア産の小麦が大々的に輸入できるようになるわけだが、これまではロシア産の小麦と大麦は、アルタイ地方、クラスノヤルスク市、チェリャビンスク州、オムスク州、ノボシビルスク州、アムール州、クルガン州の7地域からしか対中輸出ができなかった。 黒竜江省はアムール州を対岸に望む黒竜江(アムール川)沿岸に位置し、極東ロシアの農産物貿易を担う拠点の一つだ。同省の有力メディア「東北網」は「2021年は5万5000トンの輸出にすぎなかったロシア産小麦は2022年から100万トンとなり、将来的にさらに増えるだろう」とするロシアの穀物輸出商団体のコメントを掲載した。 「単一国への依存減」という戦略は着実に実行されており、今後相当な割合がロシア産に置き換わる公算が大きい』、「カナダ」、「米国」、「オーストラリア」の「3カ国で84.9%の割合」を占めていたので、「ロシア」が食い込む余地はかなり大きそうだ。
・『中国資本が極東ロシアで行う大豆の作付け  もっとも、黒竜江省と極東ロシアの農業協力は1990年代に始まり、20年以上の歴史がある。ロシアと国境を接する黒竜江省は2国間交易が盛んで、「黒竜江・ロシア農業産業協会」を母体に、中国企業が極東ロシアに進出する事例が多々見られる。 地方紙「黒竜江日報」によれば、黒竜江省から120社が極東ロシアに進出し、7億ドルを投じて大豆栽培を行っている。中国からの9品種の大豆のテスト栽培を行うと同時に、育種、作付け、加工、流通、販売に至る産業チェーンの拡大とともに、海外輸出にも乗り出しているという。 中国が大豆の輸入国に転じたのは、1996年だ。以来、世界最大の大豆の輸入国となり、今では9割を輸入に依存している。2020年は主にブラジル、米国、アルゼンチンから約9000万トンを輸入したが、この輸出国の構成に変化が生じている。 2010年代中盤以降、ブラジルからの輸入が伸びる半面、米国からの輸入は減少、2018年にはブラジルが75%になる一方で、米国が18.9%(数字は米国農務省)にまで落ちたのだ。 その一方で、じわじわと割合を増やしているのがロシア産の大豆だ。ただ、今のところ割合は2020年で100万トン程度と、全体の1%にも満たない。 2019年8月に4400トンを超えるロシア産大豆が江蘇省南通で荷揚げされたが、これも中国がロシア産大豆の輸入を全面解禁したことに端を発している。その前月の7月25日、中国とロシアは大豆に関する協力発展計画に署名、大豆においても中露協力のもとで輸入を増やす計画だ』、「大豆においても中露協力のもとで輸入を増やす計画だ」、「大豆」でも「中露協力」とはロシアにとってはありがたいだろう。
・『牛肉では脱オーストラリアが進む  牛肉でも「単一国依存からの脱却」が起こっている。 オーストラリアが中国のコロナ対策を批判して以来、外交や貿易でいがみ合う中豪関係だが、中国はオーストラリア産の牛肉の輸入を制限、その代替としてロシア産の牛肉の輸入を急増させている。2021年上半期、ロシアはオーストラリアを抜いて中国にとって最大の牛肉輸出国となった。 一方で、将来的にはパキスタン産の牛肉も中国の食卓に上るのではないかと予測されている。「一帯一路」構想の主軸となる「中国パキスタン経済回廊」では、中国資本がパキスタン南西部のグワダル港で行う港湾開発は有名だが、ここを対中牛肉輸出の拠点として活用しようという計画があるのだ。 畜産業は、パキスタンにとって重要な産業の一つだ。 データ調査会社「Knoema」によれば、パキスタンにおける牛と水牛の肉の生産量は2020年に182万トンで、2001年の90万トンから20年で倍増した。中国はこれに目を付けたわけだが、パキスタンが口蹄疫(こうていえき)の流行国であるため、現在は輸入ができない状況だ。そこで中国は、中国税関と検疫当局を巻き込み、パキスタンとの協力で自由貿易区における「口蹄疫の非感染ゾーン」の設立に乗り出した。中国の動物検疫をクリアさせるため、グワダル港には中国の技術と資本で家畜用のワクチン工場も建設する予定だ(中国「経済日報」、2021年4月)。 渦中にあるウクライナもまた、「一帯一路」の沿線国の一つだ。 2015年に「一帯一路」の協定を締結して以降、中国は2020年に湖北省武漢市とウクライナの首都キエフを結ぶ貨物列車「中欧班列」を開通させ、ウクライナから穀物を吸い上げる大動脈を完成させた。「欧州の穀物地帯」と呼ばれるウクライナの農産物輸出は、現在、ロシアの侵攻を受け危機にさらされているが、近年はウクライナの穀物の最大の買い手として中国がエジプトに取って代わり、過去3年で中国への穀物の輸出は3倍になった(「中国商務部新聞網」、2021年3月)。 中国国務院(日本の内閣に相当)は年初の記者会見で、「『一帯一路』の沿線国貿易が飛躍的に伸びている」と発表した。2021年に中国が「一帯一路」の沿線国から輸入した農産物は3265億元で、前年比26%増だった。ちなみに原油は1兆1800億元で44%増である。 混沌とした世界情勢の中で、中国は「一帯一路」で掲げる「中国~モンゴル~ロシア経済回廊」や「中国・パキスタン経済回廊」、「中欧班列」に生命線を見いだす。2019年、中国はロシアとの2国間関係を「中露の新時代の包括的・戦略的協力パートナーシップ」に格上げしている。 米中対立が峻烈を極め、台湾併合のタイミングをうかがう中国は、民主主義陣営による“兵糧攻め”をも念頭に置いているのだろう。中国の動きは、世界各国の食糧貿易に大きな影響を及ぼしそうだ』、「2021年上半期、ロシアはオーストラリアを抜いて中国にとって最大の牛肉輸出国となった」、「ロシア産」の味はきっとひどいのだろうが、買わされる民衆の文句は抑え込むのだろう。「中国はロシアとの2国間関係を「中露の新時代の包括的・戦略的協力パートナーシップ」に格上げしている」、「台湾併合のタイミングをうかがう中国は、民主主義陣営による“兵糧攻め”をも念頭に置いているのだろう。中国の動きは、世界各国の食糧貿易に大きな影響を及ぼしそうだ」、なるほど。

次に、4月5日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した立命館大学政策科学部教授の上久保誠人氏による「中国がロシアを飲み込み「モンゴル帝国」再出現?日本の難しい舵取り」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/300946
・『ロシア側は今や「プーチンの顔をいかに立てるか」が停戦実現の最大の課題となっていて、機能不全に陥っている。それが、「権威主義体制の国」の有事の際のもろさだ。もう一つの「権威主義体制の大国」である中国の動向はどうなっているのか』、確かに「「権威主義体制の国」の有事の際のもろさ」が顕著になってきたようだ。
・『ロシアはなぜ停戦しない?権威主義体制の課題  ウクライナとロシアの停戦協議が続いている。ウクライナは、北大西洋条約機構(NATO)加盟を断念する見返りとして、国連安全保障理事会の常任理事国とドイツ、トルコ、ポーランド、イスラエル、イタリア、カナダを保証国とする安全保障体制の構築を提案した。 これは、ロシアが最低限、絶対に譲れない「ウクライナのNATO加盟」を阻止できるものだ(本連載第299回)。ウクライナが中立化を受け入れる提案をしたことで、それは達成される。 それなのに、なかなか停戦の合意に至らない。 ロシアとしても、国際社会から孤立し早く停戦したいはずだ。国際決済システム(SWIFT=国際銀行間通信協会)からも排除され、ロシア国債がデフォルトの危機に陥るなど、経済制裁は確実にロシアを苦しめ始めている。 なぜ停戦できないのか。今、ロシア側は停戦合意を、プーチン大統領の撤退ではなく、いかに戦果を上げたという形とするかを模索しているからだ。「プーチンの顔をいかに立てるか」が停戦実現の最大の課題となっている(本連載第299回・p3)。 ロシアのような「権威主義体制」は、有事では機能不全に陥るもろいものだということだ。指導者は常に正しく、絶対間違わない「無謬性」が権威となるので、政策の間違いを正すのが非常に難しい。時には、政権を倒す体制変革、最悪の場合武力による革命が必要になってしまうのだが、その時に多くの人々の生活や生命が犠牲になってしまう。 そこで、もう一つの「権威主義体制の大国」である中国の動向に関心が集まっている。中国も「権威主義体制」ゆえに、ウクライナ紛争では身動きが取りづらい状況にある。 ロシアとウクライナの仲介役になり得る要素をは持ちつつも、慎重で曖昧な立場を取るべき理由がいくつかあるのだ』、「中国」が「ウクライナ紛争では」「慎重で曖昧な立場を取るべき理由がいくつかあるのだ」、どんな「理由」なのだろう。
・『ロシアがプーチンの顔を立てるなら、中国は「習近平の顔」を…  中国は、同じ権威主義体制の大国として、ロシアと深い関係を持っている点は言うまでもない。しかし、一方でウクライナとも「一帯一路」計画で経済的に密接な協力関係を築いてきた。だから、中国はウクライナ紛争について、ウクライナの主権や領土の尊重を訴えつつ、ロシアが要求するNATOの不拡大を支持する、曖昧な立場を取ってきた。 見方を変えれば、中国が停戦協議の仲介者に適すると思えなくもない。ウクライナが最低限譲れないものは、「ロシア軍の撤退」「国家としての独立と国民の安全」、一方ロシアが譲れないものは、「ウクライナの中立化(NATO非加盟)」である。それは、中国の立場と一致しているようにみえるからだ。 だが、それだけでは、停戦合意には不十分なのだ。 前述のように、プーチン大統領が「撤退した」という形になるのを、ロシアは絶対に受け入れられない。では、どうすれば大統領の「顔が立つ」のかといえば、突き詰めると、ウクライナの「無条件降伏」「非武装中立」ということになる。 当初、ロシアはかたくなにこの2つの条件を主張し続けた。しかし、ウクライナが受け入れられるわけがない。次第に、セルゲイ・ラブロフ外相など、ロシア側の交渉担当者たちは、どうすればプーチン大統領が「成果」を得たという形になるかを模索し始めた。だが、妙案がなかなか見つからない。 これでは、中国が停戦協議の仲介に出ていくのは難しい。なぜなら、中国では、習主席は絶対に正しく、間違わないのが「権威」だ。ゆえに、中国が仲介に乗り出せるのは、「習主席が停戦をまとめて、世界に平和をもたらした」という形を作れる確証がある場合だけだ。それは現状では難しい』、「中国が仲介に乗り出せるのは、「習主席が停戦をまとめて、世界に平和をもたらした」という形を作れる確証がある場合だけだ。それは現状では難しい」、「権威主義体制」の指導者といえどもそれなりの制約を抱えているようだ。
・『“巨大なモンゴル帝国「元」の再出現”という懸念  次に、中国が懸念するのは、米国やNATOとの関係だろう。米国やNATOは、ロシアの経済制裁逃れに、中国が手を貸さないよう要求してきた。 しかし、3月初め、国連総会がロシア非難決議を採択した際、中国は棄権票を投じた。中国は「世界経済の回復に衝撃をもたらし、各国に不利だ」と、ロシアへの経済制裁に反対し、当事国同士の対話による紛争の解決を訴えている。 一方で、王毅外相が「必要な時に、国際社会とともに仲裁を行う用意がある」と発言するなど、状況に応じて国際社会と連携して仲裁に当たる考えも示している。 中国の曖昧な姿勢は、米国やNATOと決定的に対立したくないことを示している。今、中国は、経済状況が思わしくない上に、新疆ウイグルなどの人権問題で米国などの制裁を受けている。ロシアを支援しているとみなされて、米国やAUKUS(米英豪安全保障協力)からこれ以上に厳しい経済制裁を受けてしまう事態は避けたいということだ。 なお、ロシアとしても、中国から軍事的・経済的支援を受けることを、もろ手を挙げて歓迎できないことを指摘しておきたい。 例えば、ロシアは極東地域の石油・天然ガス開発を中国と共同で行ってきたが、中国との共同開発は、ロシアにとって悩ましい部分があった。 なぜなら、ビジネスマン、技術者だけでなく、政府の役人から労働者、掃除婦のようなエッセンシャルワーカーまで大量の中国人がロシアにやって来るからだ。これはアフリカへの中国進出でも見られたような得意の「人海戦術」だ。極東に「チャイナタウン」ができて、実効支配されてしまう恐れがある。 ゆえに、ロシアは日本の極東開発への協力を強く望んでいた。それが、プーチン大統領が北方領土問題で「引き分け」という日本語の言葉を持ち出してリップサービスしてまで、安倍晋三首相(当時)を交渉に引き込み、日本の経済協力を引き出そうとした理由なのだ(第142回・p2)。 だから、できれば中国の軍事的・経済的支援を最小限に抑えて、自力で解決したいはずだ。中国に完全に依存する形になってしまうと、ロシアは中国にのみ込まれてしまう懸念があるからだ。 ウクライナ紛争を通じて、中ロ関係がより強固なものとなるとすれば、それは対等な関係ではない。中国がロシアに対して圧倒的な影響力を持つ形での「中ロ一体化」だ。言い換えれば、巨大なモンゴル帝国「元」の再出現とでもいうべきものかもしれない。それはロシアにとって、軍事的・経済的に立ち行かなくなる最悪の事態に陥らない限りは、避けたいことであるはずだ』、「中国との共同開発は、ロシアにとって悩ましい部分があった。 なぜなら、ビジネスマン、技術者だけでなく、政府の役人から労働者、掃除婦のようなエッセンシャルワーカーまで大量の中国人がロシアにやって来るからだ。これはアフリカへの中国進出でも見られたような得意の「人海戦術」だ。極東に「チャイナタウン」ができて、実効支配されてしまう恐れがある」、「ロシアは日本の極東開発への協力を強く望んでいた」、「ウクライナ紛争を通じて、中ロ関係がより強固なものとなるとすれば、それは対等な関係ではない。中国がロシアに対して圧倒的な影響力を持つ形での「中ロ一体化」だ。言い換えれば、巨大なモンゴル帝国「元」の再出現とでもいうべきものかもしれない。それはロシアにとって、軍事的・経済的に立ち行かなくなる最悪の事態に陥らない限りは、避けたいことであるはずだ」、なるほど。
・『今回、日本が「中立」ではいけない理由  ウクライナ紛争における、日本の立場は、基本的にはシンプルだ。ロシアによる一方的な「力による現状変更」は絶対に容認しないという強い態度を示すことだ。 ウクライナ軍事侵攻という「力による現状変更」は、ロシアを国際社会で完全に孤立させた。軍隊によって国がじゅうりんされて、命が奪われることが容認されるならば、自国に対する侵略も許されてしまうことになる。大国にじゅうりんされる不安を感じている中堅国、小国ほど、その思いを強く持ったのだ(第298回・p3)。 日本も同じである。中国の軍事力の急激な拡大、そして台湾侵攻、尖閣諸島侵攻の懸念という安全保障上の重大なリスクを抱える日本は、「力による現状変更」は絶対に容認されないという、揺るぎない強いスタンスを取らねばならない。 日本は、ウクライナとロシアの間で「中立」であるべきという主張がある。確かに、双方に言い分があり、やむなく戦争に至った場合、第三国は「中立」であるべきだ。 だが、ウクライナ紛争は、一方的にロシアが「力による現状変更」を強行した。日本として絶対に認めらないことであり、ウクライナを支持すべきである。 開戦に至る前、ウクライナ側にも相当に問題があったこと、ロシア側にも理解すべき言い分があることは承知している。しかし、国際社会では、他国の領土に「先に手を出す」ことは認められないのである。 それは、ウクライナ紛争に対する日本の立場を示すこと以上の意義がある。日本の領土を侵し、国民の命を奪うことは絶対に認めないという姿勢を示す「安全保障政策」そのものだからである。 ただし、日本の姿勢はシンプルでも、現実には非常に難しいかじ取りを迫られることになるのではないだろうか。ロシアへの経済制裁によって「中ロ一体化」がすすむと、日本に深刻な影響が出る可能性があるからだ』、確かに「中ロ一体化」は何としてでも阻止したいものだ。
・『「極東」の日本が欧米と同じスタンスを取ると何が起こるか  日本も加わっている、ロシアに対する厳しい経済制裁は次第に効果を発揮している。しかも、まだ切り札は温存してある。ロシア産石油・天然ガスの禁輸は米国を除けばまだ発動していないが、これが行われるとロシア経済は崩壊することになる。 しかし、崩壊するほど追い詰められれば、その後に現れるのは、前述の通り、中国が圧倒的に影響力を持つ「中ロ一体化」だ。それは、欧米よりも日本により深刻な影響がある。 例えば、「サハリン1」「サハリン2」などの石油・天然ガス開発からBP、シェル、エクソンモービルなど石油メジャーが撤退することになった。一方、三菱商事、三井物産、伊藤忠商事など日本勢は、現在のところ事業継続の方針を堅持している。 欧米と日本で対応が異なるのは、地政学的に当然のことである。欧米は、極東ロシアから撤退しても世界中の他の油田・ガス田を開発すればいい。欧米にとって、文字通り「極東」は世界の果てなのだ』、「「サハリン1」「サハリン2」」については、「日本勢は、現在のところ事業継続の方針を堅持している。 欧米と日本で対応が異なるのは、地政学的に当然のことである」、その通りだ。
・『中国がロシアを飲み込み「モンゴル帝国」再出現?日本の難しい舵取り  だが、日本は極東にあり、中国と激しい資源獲得競争をしている。日本が事業から撤退すれば、それは即座に中国の権益となるだろう。周囲にチャイナタウンも建設されるだろう。日本の安全保障上、深刻な事態である。日本はギリギリまで事業継続を模索しなければならない。 しかし、ウクライナ紛争の泥沼化が続き、経済制裁が長引くことになり、例えば米国のバイデン大統領が「極東の資源開発からの撤退」を日本に迫ってくる事態になったらどうするのだろうか。 日本は、ロシアの「力による現状変更」を絶対に容認しないという立場を堅持し、欧米と協調してロシアに対する経済制裁を行いながら、中国の欧米・日本の資源の権益を奪取しようとする動きを防がなければならないという、安全保障上、極めて難しいかじ取りを迫られるかもしれないのだ』、「バイデン大統領が「極東の資源開発からの撤退」を日本に迫ってくる事態になったらどうするのだろうか」、「日本は、ロシアの「力による現状変更」を絶対に容認しないという立場を堅持し、欧米と協調してロシアに対する経済制裁を行いながら、中国の欧米・日本の資源の権益を奪取しようとする動きを防がなければならないという、安全保障上、極めて難しいかじ取りを迫られる」、そんな芸当が「日本」に出来るのだろうか。

第三に、6月2日付けJBPressが掲載したジャーナリストの福島 香織氏による「ぎりぎりで避けられた最悪の事態、中国と太平洋島嶼国の危うい合意が先送りに 中国・王毅外相の南太平洋外交の顛末」を紹介しよう。
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/70386
・『中国の南太平洋外交は、西側国際社会が懸念していた最悪の事態を何とか避けることができた。 最悪の事態とは、中国と太平洋島嶼国10カ国とが、警務、安全保障、海事、データセキュリティなどを含む包括的な地域協力合意の草案について、5月30日にフィジーの首都スバで行われる中国・太平洋島嶼国外相会議において調印することだった。この地域協力合意の草案は、ロイターなどによって5月25日にスクープとして報じられた。だが、結果的にこの合意の調印はされず棚上げされたのだった。 こんな合意がなされた日には、南太平洋地域が事実上、中国軍事支配圏に入りかねず、太平洋地域の安全保障枠組みが大きく揺らぐところだった。特に、中国の軍事的脅威にさらされている台湾や日本にとっては、太平洋側から挟み撃ちにされかねない状況になる。 だが調印の棚上げで一安心、危機は去ったとは到底言えない。南太平洋は今や米中が地政学的につばぜり合いを交わす最も激しい地域になりつつあるのだ』、「南太平洋」が南国の楽園ではなく、「今や米中が地政学的につばぜり合いを交わす最も激しい地域になりつつある」、米中の緊張がこんなところにまで飛び火するとは・・・。
・『中国の野心が垣間見える協力枠組み  事の経緯を簡単に説明すると、中国が太平洋島嶼国10カ国と結ぼうとしている地域的な包括的枠組み合意に関する機密文書をロイターが入手し、5月25日にその内容を暴露した。それは、中国政府が国交を結んでいる太平洋島嶼国10カ国(ソロモン諸島、キリバス、サモア、フィジー、トンガ、バヌアツ、パプアニューギニア、クック諸島、ニウエ、ミクロネシア連邦)との間で結ぶ「中国・太平洋島嶼国共同発展ヴィジョン」「中国・太平洋島嶼国共同発展5カ年計画」(2022~2026)という地域的包括的な協力枠組みの協議草案だった。 南太平洋地域全体で警務、安全保障、自由貿易、海事、通信・データセキュリティ協力を進めていくという内容で、この枠組みを通じて南太平洋島嶼国の盟友としての支持を勝ち取り、太平洋島嶼国の盟主として米豪に対抗していこうという中国の野心が垣間見えるものだった。 このスクープのタイミングは、王毅外相率いる20人に及ぶ外交代表団が5月25日からおよそ10日にわたって、ソロモン諸島はじめとする南太平洋島嶼国8カ国を巡る「アイランドホッピング外交」を展開する直前のことだった。この王毅外交のハイライトは、5月30日にフィジーの首都のスバで開催される「中国・太平洋島嶼国外相会議」で、中国はこの会議の場で参加国にこの枠組みに合意させ、高らかに共同コミュニケを発表する心づもりだったようだ』、「中国が太平洋島嶼国10カ国と結ぼうとしている地域的な包括的枠組み合意に関する機密文書をロイターが入手し、5月25日にその内容を暴露」、さすが「ロイター」のスクープだ。
・『ミクロネシア連邦大統領が草案反対を呼びかける  中国はすでに共同コミュニケ草案を作成し、5カ年計画草案とともに太平洋島嶼国10カ国に英文稿を送りつけていた。 ロイターによれば、この草案を見たミクロネシア連邦のパヌエロ大統領は5月20日、オーストラリアのモリソン前首相、ニュージーランドのアーダーン首相、太平洋島嶼国フォーラムのプナ事務局長を含む21人の太平洋地域の指導者に手紙を書き、中国が起草したこの草案に反対するよう呼び掛けたという。 中国がこの太平洋地域の通信網、海洋と資源をコントロールしようと企んでいると見受けられたからだ。さらにこうした中国の計画は、この地域にオーストラリア、ニュージーランド、日本、米国などとの衝突のリスクをもたらす、とした。「太平洋地域が米中冷戦に巻き込まれる」との懸念を示したのだ。 中国・太平洋島嶼国外相会議の開催地となったフィジーのバイニマラマ首相はもともと親中派で知られていた。だが、ここにきて「これまでのように、太平洋島嶼国は団結して、新たな地域協議についてあらゆる討論を行い、各国の共通認識(コンセンサス)を首位に置きたい」と、コンセンサス・ファーストを主張、慎重な態度を見せた。 オーストラリアのアルバニージー新政権のペニー・ウォン外相もすぐにフィジーに飛んで、この合意をさせないように動いた。サモアのフィアメ首相も「検討時間が足りない」「太平洋諸島フォーラムで諮るべきだ」と先送りを主張。ニウエ政府も検討に時間が必要との立場を5月30日に表明した。 こうして、合意は先送りされた』、中国外交が土壇場で失敗させられたようだ。
・『「やりたい放題できると誤解させてはいけない」 だが、中国がこれであきらめたわけではない。10カ国のうちの何カ国かは、この合意に積極的な姿勢を見せていたという。 中国が起草した「共同発展ビジョン」では、中国は10カ国に100万ドル以上の支援を提供し、自由貿易区(FTA)を設立し、南太平洋島嶼国に中国14億人市場を開放しようと持ち掛けている。同時に中国が南太平洋10カ国の現地警察に対して研修を行い、また研究所を建設し、ネットセキュリティに参与し、ハイテク・AIシステムを駆使したスマート税関設置などの支援をするという。同時に中国は周辺海域の詳細な「海洋モニタリング」を行い、自然資源をより多く獲得していこう、という考えらしい。 さらに太平洋島嶼国においてハイテク改革を推進し、経済発展と国家安全建設を進め、気候変動対策や医療衛生関連の支援を表明している。) 一見すると非常に魅惑的な提案に見える。だがミクロネシア連邦のパヌエロ大統領は、この中国側の提案については慎重に考慮すべきだと訴え、特にFTA建設については、「中国側は不誠実である」としている。 その「不誠実」とする根拠については詳しく説明されていないが、他の途上国で中国によって引き起こされている「債務の罠」のやり方を見れば、その意味はだいたい想像がつくだろう。ミクロネシアとしては「中国がこの地域でやりたい放題できると誤解させないようにすべきだ」と指摘していた。 また、この草案の中で安全問題について「伝統・非伝統の安全」という表現があるのだが、この「非伝統安全」というのがくせものだ。一般に「非伝統的安全問題」といえばテロや国内の反政府デモなどを想定しているのだろうが、こうした島嶼国にありがちな部族対立から来る権力闘争や反政府運動まで、中国の警察力が干渉することを許しかねない。 たとえばソロモン諸島は、中国との間で警務協力や「安全協議」にすでに調印しているが、親中派のソガバレ政権は、こうした中国の「警察力」支援を利用して、国内の反ソガバレ派市民や民主活動家を排除しようとしている気配がある。親中派ソガバレ政権には中国企業と癒着したり中国の黒社会やカジノ利権にからんだりする腐敗疑惑があり、市民からの反対運動が起きている。これを中国式のやり方で、治安を乱す不穏分子として弾圧することになれば、「中国式独裁」が南太平洋島嶼国にも拡大しかねない。 サモアのフィアメ首相はソロモン諸島と中国の「安全協議」についても、一度「太平洋島嶼フォーラム」で協議すべきではないか、と指摘している』、それにしても、オーストラリアの前政権はこうしたことを把握してなかったとすれば、重大な手落ちだ。
・『中国が唱える「米中太平洋2分割論」  さて、この包括的な共同発展ビジョンについての合意は先送りされたわけだが、中国の太平洋地域に対する野望は一層はっきりしてきた。) 米政府系メディアの「ラジオ・フリー・アジア」に米国セント・トーマス国際研究現代語言学部主任の葉耀元が次のような分析コメントを寄せていた。 「中国は太平洋島嶼国との協力を模索しており、それによって米国の第1列島線(沖縄、台湾、フィリピンを結ぶ防衛ライン)の封鎖を突破し、太平洋地域においてより良い戦略的優勢を得ようとしている」 「もし、中国が第1列島線を越える正統な口実を欲するとしたら、必ず第1列島線の外の太平洋島嶼国と軍事協力の案件をつくり、地域の安全計画を通じて、これら島々、海域で軍事演習などを行うだろう」 中国は21世紀初頭から「米中太平洋2分割論」を唱え、米国をライバル視して、国際社会を太平洋のハワイ、サモアをつなぐ第3列島線あたりで2分割し、その西を中国、東を米国が盟主として支配する国際秩序の再構築をイメージしている。このために、中国は台湾を奪還し、第1列島線を越えて太平洋に進出していく必要があるのだが、台湾有事については台湾自身も、そして日米ともに非常に警戒している。 ここで盲点となっていたのが、第2列島線(小笠原諸島からグアム、パプア・ニューギニアをつなぐ)の向こうに位置する南太平洋島嶼国だ。 南太平洋の安全保障はオーストラリアが柱となっているが、オーストラリア自身が長らく中国に対して無警戒で、モリソン政権がはっきりと反中路線に舵を切るまでは、オーストラリア政財界は中国の浸透工作のいいようにされてきた。中国はその間、チャイナマネーと華僑ネットワークを駆使して南太平洋島嶼国の政治経済界にも浸透してきた。パプア・ニューギニアもフィジーもキリバスもソロモン諸島もすでに親中国家として認識されている。中国の軍事基地が建設されるという噂もある。 これは囲碁で言えば大ゲイマに打ち込まれたようなもので、台湾を挟み撃ちにすることもできれば、オーストラリアと米国の連携を妨害することもできる。日本にとっても他人事ではないだろう。 今回は包括合意はならなかったが、王毅はキリバスでは、気候変動、経済方面の10項目の協力の備忘録に調印。サモアとも経済、技術、文化などの協力強化合意に調印し、平和や安全保障問題でも議論した。太平洋島嶼フォーラムのプナ事務局長とも会談し、気候変動問題への中国のコミットメントへの歓迎が打ち出された。中国の南太平洋への進出の勢いはむしろ増す傾向だ』、「オーストラリア自身が長らく中国に対して無警戒で、モリソン政権がはっきりと反中路線に舵を切るまでは、オーストラリア政財界は中国の浸透工作のいいようにされてきた。中国はその間、チャイナマネーと華僑ネットワークを駆使して南太平洋島嶼国の政治経済界にも浸透してきた」、「今回は包括合意はならなかったが、王毅はキリバスでは、気候変動、経済方面の10項目の協力の備忘録に調印。サモアとも経済、技術、文化などの協力強化合意に調印し、平和や安全保障問題でも議論した」、「中国の南太平洋への進出の勢いはむしろ増す傾向だ」、までまで目が離せないようだ。
・『日本が担う役割  太平洋島嶼国が警戒しながらも中国の進出に隙を与えてしまうのは、オーストラリアや米国らアングロサクソン国家特有の「上から目線」に対する反発があるとの見方もある。オーストラリアが南太平洋島嶼国を自分の裏庭といって憚らないような傲慢さへの反発が、アジア人の顔で大金を持ってくる中国に隙を与えてしまうのかもしれない。 だが、中国が華人以外の民族を蛮族・夷狄と蔑視し、その文化・伝統を蹂躙する国であることは、自国内の少数民族弾圧の現状をみても一目瞭然だ。安全保障協力という家の合鍵を預けるような信頼関係を結ぶに足る国家でなかろう。 米国的傲慢さと中国的アコギさの間で揺れる小国の気持ちを真に理解できるのは日本ではないかと常々思っている。今後、国際社会の安全保障の枠組みの再構築をめぐり米中大国がより激しいつばぜり合いを展開していく中で、アジアでほぼ唯一成熟した民主主義と自由主義経済を発展させた日本が担う役割は、東南アジア、インド太平洋、南太平洋の立場の弱い小国の中国化を防ぎながら、米国らによる地域安全へのコミットメントをうまく調整することではないだろうか。そういうポジションをとりながら、将来の新たな国際社会の枠組みの中で、日本が唯一無二の世界から頼りがいある国家に転換していく機会を模索していけるのではないだろうか』、「米国的傲慢さと中国的アコギさの間で揺れる小国の気持ちを真に理解できるのは日本ではないかと常々思っている」、「日本」も第二次大戦時の行為では、「南太平洋諸国」からは必ずしも良く思われていないことを無視した思い上がった認識だ。ただ、そうした反省の上で、「日本が担う役割は、東南アジア、インド太平洋、南太平洋の立場の弱い小国の中国化を防ぎながら、米国らによる地域安全へのコミットメントをうまく調整すること」、その通りだ。
タグ:「「サハリン1」「サハリン2」」については、「日本勢は、現在のところ事業継続の方針を堅持している。 欧米と日本で対応が異なるのは、地政学的に当然のことである」、その通りだ。 確かに「中ロ一体化」は何としてでも阻止したいものだ。 「中国との共同開発は、ロシアにとって悩ましい部分があった。 なぜなら、ビジネスマン、技術者だけでなく、政府の役人から労働者、掃除婦のようなエッセンシャルワーカーまで大量の中国人がロシアにやって来るからだ。これはアフリカへの中国進出でも見られたような得意の「人海戦術」だ。極東に「チャイナタウン」ができて、実効支配されてしまう恐れがある」、「ロシアは日本の極東開発への協力を強く望んでいた」、「ウクライナ紛争を通じて、中ロ関係がより強固なものとなるとすれば、それは対等な関係ではない。中国がロシアに対して圧倒的な 「中国が仲介に乗り出せるのは、「習主席が停戦をまとめて、世界に平和をもたらした」という形を作れる確証がある場合だけだ。それは現状では難しい」、「権威主義体制」の指導者といえどもそれなりの制約を抱えているようだ。 「中国」が「ウクライナ紛争では」「慎重で曖昧な立場を取るべき理由がいくつかあるのだ」、どんな「理由」なのだろう。 確かに「「権威主義体制の国」の有事の際のもろさ」が顕著になってきたようだ。 上久保誠人氏による「中国がロシアを飲み込み「モンゴル帝国」再出現?日本の難しい舵取り」 「2021年上半期、ロシアはオーストラリアを抜いて中国にとって最大の牛肉輸出国となった」、「ロシア産」の味はきっとひどいのだろうが、買わされる民衆の文句は抑え込むのだろう。「中国はロシアとの2国間関係を「中露の新時代の包括的・戦略的協力パートナーシップ」に格上げしている」、「台湾併合のタイミングをうかがう中国は、民主主義陣営による“兵糧攻め”をも念頭に置いているのだろう。中国の動きは、世界各国の食糧貿易に大きな影響を及ぼしそうだ」、なるほど。 「大豆においても中露協力のもとで輸入を増やす計画だ」、「大豆」でも「中露協力」とはロシアにとってはありがたいだろう。 「カナダ」、「米国」、「オーストラリア」の「3カ国で84.9%の割合」を占めていたので、「ロシア」が食い込む余地はかなり大きそうだ。 「これまでロシア産の小麦に対して、中国の植物検疫を満たしていないことを理由に輸入制限を行ってきた。しかし、今回の措置ではそれを全面解禁」、かなり思い切った措置だ。 姫田小夏氏による「台湾侵攻を視野に食糧備蓄か、ロシアと「一帯一路」が中国の生命線に」 ダイヤモンド・オンライン 中国情勢(軍事・外交) (その13)(台湾侵攻を視野に食糧備蓄か ロシアと「一帯一路」が中国の生命線に、中国がロシアを飲み込み「モンゴル帝国」再出現?日本の難しい舵取り、ぎりぎりで避けられた最悪の事態 中国と太平洋島嶼国の危うい合意が先送りに 中国・王毅外相の南太平洋外交の顛末) 「バイデン大統領が「極東の資源開発からの撤退」を日本に迫ってくる事態になったらどうするのだろうか」、「日本は、ロシアの「力による現状変更」を絶対に容認しないという立場を堅持し、欧米と協調してロシアに対する経済制裁を行いながら、中国の欧米・日本の資源の権益を奪取しようとする動きを防がなければならないという、安全保障上、極めて難しいかじ取りを迫られる」、そんな芸当が「日本」に出来るのだろうか。 JBPRESS 福島 香織氏による「ぎりぎりで避けられた最悪の事態、中国と太平洋島嶼国の危うい合意が先送りに 中国・王毅外相の南太平洋外交の顛末」 「南太平洋」が南国の楽園ではなく、「今や米中が地政学的につばぜり合いを交わす最も激しい地域になりつつある」、米中の緊張がこんなところにまで飛び火するとは・・・。 「中国が太平洋島嶼国10カ国と結ぼうとしている地域的な包括的枠組み合意に関する機密文書をロイターが入手し、5月25日にその内容を暴露」、さすが「ロイター」のスクープだ。 中国外交が土壇場で失敗させられたようだ。 それにしても、オーストラリアの前政権はこうしたことを把握してなかったとすれば、重大な手落ちだ。 「オーストラリア自身が長らく中国に対して無警戒で、モリソン政権がはっきりと反中路線に舵を切るまでは、オーストラリア政財界は中国の浸透工作のいいようにされてきた。中国はその間、チャイナマネーと華僑ネットワークを駆使して南太平洋島嶼国の政治経済界にも浸透してきた」、「今回は包括合意はならなかったが、王毅はキリバスでは、気候変動、経済方面の10項目の協力の備忘録に調印。サモアとも経済、技術、文化などの協力強化合意に調印し、平和や安全保障問題でも議論した」、「中国の南太平洋への進出の勢いはむしろ増す傾向だ」、まで 「米国的傲慢さと中国的アコギさの間で揺れる小国の気持ちを真に理解できるのは日本ではないかと常々思っている」、「日本」も第二次大戦時の行為では、「南太平洋諸国」からは必ずしも良く思われていないことを無視した思い上がった認識だ。ただ、そうした反省の上で、「日本が担う役割は、東南アジア、インド太平洋、南太平洋の立場の弱い小国の中国化を防ぎながら、米国らによる地域安全へのコミットメントをうまく調整すること」、その通りだ。
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日本の政治情勢(その61)(やがて自民党に吸収されるだけ…国民民主党がまんまとハマった「提案型野党」という毒饅頭 「批判ばかりのほかの野党とは違う」と言うけれど…、問題言動連発「細田議長」に自民党が頭抱える理由 10増10減に異議、議員報酬への発言 セクハラ疑惑も、問題言動連発「細田議長」に自民党が頭抱える理由 10増10減に異議 議員報酬への発言 セクハラ疑惑も) [国内政治]

日本の政治情勢については、5月6日に取上げた。今日は、(その61)(やがて自民党に吸収されるだけ…国民民主党がまんまとハマった「提案型野党」という毒饅頭 「批判ばかりのほかの野党とは違う」と言うけれど…、問題言動連発「細田議長」に自民党が頭抱える理由 10増10減に異議、議員報酬への発言 セクハラ疑惑も、問題言動連発「細田議長」に自民党が頭抱える理由 10増10減に異議 議員報酬への発言 セクハラ疑惑も)である。

先ずは、4月15日付けPRESIDENT Onlineが掲載した元毎日新聞政治部副部長でジャーナリストの尾中 香尚里氏による「やがて自民党に吸収されるだけ…国民民主党がまんまとハマった「提案型野党」という毒饅頭 「批判ばかりのほかの野党とは違う」と言うけれど…」を紹介しよう。
https://president.jp/articles/-/56630
・『国民民主党が、2022年度の政府の予算案に賛成したことが、政界で波紋を広げている。ジャーナリストの尾中香尚里さんは「野党への『批判ばかりで提案がない』という批判を受けて、国民民主党は『提案型野党』と自称している。だが、この手法で成功した野党はない。野党性を失った国民民主党が今後このままの形で存続するのは難しいだろう」という――』、「『提案型野党』と自称している。だが、この手法で成功した野党はない」、同感である。
・『トリガー条項を条件に予算案に賛成した国民民主党  2月22日に野党・国民民主党が政府の2022年度予算案に賛成した。高騰する原油価格を引き下げる「トリガー条項の凍結解除」を検討するよう岸田文雄首相に取り付けたことが、同党が賛成に回った表向きの理由だ。 もっともトリガー条項の凍結解除は、自民党内では早々に見送りの公算が強まっており、現状では国民民主党が何のために予算案に賛成したのか、よく分からない状況になっている。玉木氏は17日になって「『トリガー』を全くしないという話になったら(与党との)協議から離脱する」と発言したが、後の祭りである。 政界にはそこそこの波紋が広がっているが、筆者には率直に言って「いずれこうなるだろうと思っていた」という印象しかない。 玉木雄一郎代表は2018年の結党以来、自らこそが「野党の盟主」であるかのように振る舞おうとしてきた。かつて政権を担った民主党の後継は自分たちだ、との意識が強かったのだろう。だから、同じ民主党出身者が多くを占める立憲民主党が野党第1党となり、国民民主党との勢力に差がついていくことを認められなかった。 そのため国民民主党は、日本維新の会など「立憲以外の野党との連携」をあれもこれもと模索し「立憲より上の立場」を目指そうとしたが、何一つ奏功しなかった。それどころか、国民民主党の所属議員の多くが今や立憲民主党に移り、かつて国民民主党で政調会長として自分を支えた泉健太氏が、いま立憲の代表になっている』、「国民民主党は、日本維新の会など「立憲以外の野党との連携」をあれもこれもと模索し「立憲より上の立場」を目指そうとしたが、何一つ奏功しなかった。それどころか、国民民主党の所属議員の多くが今や立憲民主党に移り、かつて国民民主党で政調会長として自分を支えた泉健太氏が、いま立憲の代表になっている」、「国民民主党」は実に難しい立場だ。
・『野党の「与党化」という禁断の果実に手を出した  こんな状況に玉木氏が耐えられるわけがない。だが、野党の枠組みのなかでは、もうどうやっても「立憲民主党の兄貴分」にはなれない。八方ふさがりとなった玉木氏は、禁断の「与党化」に手を出すほかはなくなった。ただそれだけのことだろう。 この問題は自民党による「野党引き込み戦略」の一環として語られがちだが、筆者はそこにはあまり興味はない。自民党の戦略がどうであろうと、上記の理由から国民民主党がいずれ「与党化」することは容易に想像できたからだ。しかし、そう言ってしまっては身も蓋もないので、ここでは玉木氏を含め、旧民主党出身の議員たちの「世代による野党観の違い」という点から、この問題を振り返ってみたい』、こともあろうに「野党の「与党化」という禁断の果実に手を出した」とは、嘆かわしい。
・『旧民主党系議員の「第一・第二・第三世代」  何かにつけ「バラバラ」と揶揄やゆされてきた旧民主党系の議員たち。そこには「保守かリベラルか」といった政策的な対立とは別に「当選時期の違いによる対立」があった。政策の違い以上に、政治そのもの、つまり「求める政策をどう実現するか」についての考え方が、当選時期によってかなり違っていたように思えるのだ。 旧民主党系で最年長クラスのいわゆる「第一世代」は、菅直人氏や小沢一郎氏ら、55年体制時代から国政で活動していた世代だ。1990年代の政界再編、つまり非自民の細川連立政権の誕生前後の激しい政治の動きの先頭に立ち、新進党や旧民主党など、新たな小選挙区制度に対応して政権を担うべく誕生した新党の創業者やその側近だ。 これに続く「第二世代」は、細川政権誕生前夜から小選挙区制の導入の前後に国政入りした世代。立憲民主党の枝野幸男前代表、同党の野田佳彦元首相、国民民主党の前原誠司代表代行兼選対委員長らが該当する。3人はいずれも、細川氏が率いた日本新党の出身。新人議員として90年代の政界再編の空気を肌で感じながら、前述した新進党や民主党に結党メンバーとして参加した。 政治スタンスに差はあっても、この第一、第二世代までは「新しい政権を自らの手でつくる」という、ある種の「創業者マインド」を強く保持していた。小選挙区制導入の意義は「政権交代で政治を変える」こと。こうした意識が当然のように身についていた。 第一、第二世代にとって、政権とは「自民党に選挙で勝って奪い取るもの」であり、彼らは総じて「非自民」志向だった』、「第一、第二世代にとって、政権とは「自民党に選挙で勝って奪い取るもの」であり、彼らは総じて「非自民」志向だった」、なるほど。
・『政権を選挙で勝ち取る意識の低い「第三世代」  ところが、この下の「第三世代」となると、様相は少し変わってくる。 第三世代とは、1998年に新「民主党」が結党(旧民主党と、前年に解党した新進党の出身議員の多くが合流し結党)した以降に政界入りした世代だ。別々の出身政党から集まって新「民主党」の結党メンバーとなった先輩世代と異なり、初めから民主党の議員として初当選した、という意味で、メディアは彼らを「ネイティブ民主党」などと呼んだ。 第三世代のリーダー格が、民主党政権で閣僚を務めた細野豪志氏や松本剛明氏(ともに2000年初当選)だった。玉木氏は彼らにやや遅れて、民主党が政権を奪取した2009年に初当選した。 父親が自民党政権で閣僚を務めていた松本氏のように、この世代にはその経歴からも、従来なら自民党から立候補した可能性が高い政治家が多くいた。小選挙区制は同一選挙区から同じ政党の人間が1人しか出馬できないため、自民党から出馬できずに民主党を選んだ人もいたし、近い将来の政権交代を見越して民主党を選んだ人もいた。 そんなわけで第三世代には、政治スタンスも上の世代に比べ保守的な議員が多いのだが、それ以上に上の世代と大きく異なっていたのは、政権を「戦って勝ち取る」感覚の薄さだったように思う。 第一、第二世代が当たり前に持っていた「野党として自民党と戦って政権を勝ち取り、目指す政策を実現する」という価値観に、第三世代はあまり重きを置くふうがない。むしろ、政府案への「対案」を策定して与党側に採用されることを良しとしていた。野党でありながら、はなから「与党っぽく」振る舞おうとしていたのだ。) つまり民主党には「自民党政権と対決して選挙で政権を勝ち取ることを目指すベテラン」対「自民党政権と協調してでも政策の実現そのものを目指す中堅・若手」という「野党のあり方」に関する対立軸が、世代対立と重なる形で長く存在していた。 そしてメディアはなぜか、野党ばかりに「世代交代」をせかし続けてきた。第一、第二世代を早々に退かせ、第三世代を野党のリーダーに据えることで「与党にとって都合の良い野党」に作り替えることを、暗に狙っていたのだろう。 そして同党の下野後も、この対立軸は尾を引いている』、「民主党には「自民党政権と対決して選挙で政権を勝ち取ることを目指すベテラン」対「自民党政権と協調してでも政策の実現そのものを目指す中堅・若手」という「野党のあり方」に関する対立軸が、世代対立と重なる形で長く存在していた」、極めて明快な分類軸だ。「そしてメディアはなぜか、野党ばかりに「世代交代」をせかし続けてきた。第一、第二世代を早々に退かせ、第三世代を野党のリーダーに据えることで「与党にとって都合の良い野党」に作り替えることを、暗に狙っていたのだろう」、確かに「野党ばかりに「世代交代」をせかし続けてきた」、こうした「メディア」に踊ろされて「世代交代」をしてきた「民主党」も情けない。
・『「わが党の政策」のアピールに躍起な国民民主党  さて、冒頭の国民民主党の予算案賛成の話に戻る。筆者が関心を持ったのは、国民民主党の前原氏が、玉木氏の方針に反対の意思を示し、採決で体調不良を理由に欠席したことだ。 前述した世代の分類に従えば、前原氏は第二世代。第二世代の中核として「選挙で自民党に勝ち、非自民政権の首相になる」ことを明確に意識していた政治家の一人だ。 前原氏はしばしば「自民寄り」という見方がなされるが、筆者はやや違うと考えている。前原氏は外交・安全保障のプロとして「外交・安保は政権交代があっても大きく変更すべきでない」という考えに立っているだけで、その大前提である「自民党と政権を争う」スタンスそのものは堅持されている。 前原氏が「希望の党騒動」(2017年)を起こしたのも、日本維新の会との連携を模索しているのも、その是非はさておき、目指したのは「非自民勢力の結集」であり「自民党政権を終わらせ、政権交代を実現する」ことだ。政策が近くとも、自民党と連立を組んだり、自らが自民党入りしたりすることを模索する発想はみられない。「非自民」という最低限の枠を壊す予算案賛成は、前原氏の頭の中には全くなかったと言っていい。 一方の玉木氏は第三世代。「非自民」という志向はもともと薄く、そもそも「野党的な批判的振る舞い」を好まない。「自民党の政策よりわが党の政策が優れている」ことをアピールできれば良いのであり、自民党と戦って勝負をつける発想は薄かった。 玉木氏は、この「第二世代」と自分たちの間に「対決型野党か提案型野党か」という、陳腐なキャッチフレーズで線を引いた。立憲民主党を「対決型野党」、国民民主党を「提案型野党」と位置づけ、立憲を「古い抵抗政党」と批判し始めた』、「前原氏は外交・安全保障のプロとして「外交・安保は政権交代があっても大きく変更すべきでない」という考えに立っているだけで、その大前提である「自民党と政権を争う」スタンスそのものは堅持されている」、「「非自民」という最低限の枠を壊す予算案賛成は、前原氏の頭の中には全くなかったと言っていい。 一方の玉木氏は第三世代。「非自民」という志向はもともと薄く、そもそも「野党的な批判的振る舞い」を好まない。「自民党の政策よりわが党の政策が優れている」ことをアピールできれば良いのであり、自民党と戦って勝負をつける発想は薄かった」、「前原氏」と「玉木氏」の違いを明解に解説してくれた。
・『「提案型野党」は多くの政党が失敗してきた道  だが、玉木氏は気付いていない。「提案型野党」こそが、過去に失敗を重ねた「古い野党」であることを。 小選挙区制の導入以降、自民党と政権を争う野党第1党に対し「是々非々」路線を掲げたいくつもの「第三極」政党が生まれては消えていった。「与党寄りか野党寄りか」で党内対立を起こして分裂し、政党として長く存続できなかったのだ。 玉木氏は「提案型」を標榜する国民民主党について「新しい野党の姿を問いたい」と語っているが、それは過去に失敗してきた「第三極」野党の焼き直しにすぎない。 小選挙区制の下、与野党が政権をかけて戦うことが制度上求められているなか、自民党から「戦って政権を奪う」という発想を持ち得ない政治家は、野党のリーダーにはなれない。「政府の予算案に賛成する」姿勢と「野党の盟主である」ことは、決して両立しないのだ』、「玉木氏は「提案型」を標榜する国民民主党について「新しい野党の姿を問いたい」と語っているが、それは過去に失敗してきた「第三極」野党の焼き直しにすぎない」、「「政府の予算案に賛成する」姿勢と「野党の盟主である」ことは、決して両立しないのだ」、その通りだ。
・『「政権を選挙で奪取する」という野党の役割を見失ってはならない  第三世代と言えば、立憲の泉代表もそうである。2003年初当選で、玉木氏より少し先輩だが、同じ世代に属する政治家と言っていい。その泉氏は3月4日の記者会見で「国民民主は行き場がなくなっている苦しい状況だ。野党からは野党とみられず、与党からも与党とみられていない」と、かつて自らが所属した政党の苦境を嘆いてみせた。 泉氏も代表就任直後、メディアの「対決型野党か提案型野党か」という愚かしい喧伝に惑わされたか、若干「提案型」に触れそうな雰囲気があり、筆者もやや懸念した。実際、枝野執行部の時代に比べ、国会での「戦闘力」がややおとなしくなった印象はなくもない。 しかし、国民民主党の行動に対する泉執行部の強い怒りを見るにつけ、やはり野党の盟主の役割はしっかり自覚していたかと安堵している。 筆者の長年の懸案は、いつか第三世代が野党の中核となった時に「政策実現」を重視するあまり「政権は選挙で奪い取るもの」という野党本来の役割を捨ててしまわないか、ということだった。玉木氏は捨ててしまったが、泉氏は捨ててはいない、とみる。財務官僚出身の玉木氏と、第二世代である立憲民主党の福山哲郎前幹事長の秘書を務めた泉氏の「在野感」の違いなのだろうか。 かつての旧民主党第三世代の中で、細野氏らリーダーの多くが自民党に流れ、玉木氏が「与党化」の兆候を示す中で、野党第1党のリーダーに躍り出たのが泉氏だったというのは、ある意味必然だったのではないか。泉氏には、菅直人氏や枝野、福山氏ら第一、第二世代がどのように「政権を担える野党」をつくるために苦心してきたかを十分に引き継いだ上で、自分なりのリーダー像を構築してほしいと願う』、「泉氏には、菅直人氏や枝野、福山氏ら第一、第二世代がどのように「政権を担える野党」をつくるために苦心してきたかを十分に引き継いだ上で、自分なりのリーダー像を構築してほしいと願う」、同感である。
・『政権を担い得る野党勢力の構築のために必要なこと  そして筆者がもう一つ関心を示しているのは、第二世代たる前原氏の今後の動向だ。 前原氏は「希望の党騒動」を起こした張本人だ。現在の野党多弱の状況を作った責任もある。多くの野党政治家やその支持者に、言うに言えないわだかまりをもたらしてもいるだろう。 しかし、前原氏が今回の予算案をめぐる国民民主党の行動を機に、自らの「非自民性」を改めて強く自覚したのなら、もう一度「政権を担い得る野党勢力」をしっかりと構築するために、自分のなすべきことが見えてくるのではないか。少なくとも、現在の所属政党が前原氏自身の想いを体現できる政党だとは、筆者にはとても思えない。 旧民主党系議員の「第二世代」「第三世代」の違いは、ある意味「保守かリベラルか」といった政治路線以上に大きな溝となっているように、筆者には思える。玉木氏と前原氏の間に可視化された溝が、今後の国民民主党、そして野党全体にどんな影響を及ぼすことになるのか、見守りたい』、「旧民主党系議員の「第二世代」「第三世代」の違いは、ある意味「保守かリベラルか」といった政治路線以上に大きな溝となっているように、筆者には思える。玉木氏と前原氏の間に可視化された溝が、今後の国民民主党、そして野党全体にどんな影響を及ぼすことになるのか、見守りたい」、全く見事な分析で感心した。今後の注目点だ。

次に、5月25日付け東洋経済オンラインが掲載した政治ジャーナリストの泉 宏氏による「問題言動連発「細田議長」に自民党が頭抱える理由 10増10減に異議、議員報酬への発言、セクハラ疑惑も」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/591872
・『細田博之衆院議長が「軽率で立場をわきまえない言動」  立憲民主幹部)の連発で、国権最高機関の長としての「資質」を厳しく問われている。議長就任前は最大派閥を率いる自民党実力者だっただけに、今後の対応次第では参院選の思わぬ火種にもなりかねない。 細田氏は、中立公正が求められる議長なのに、衆院での1票の格差是正のための「10増10減」案に公然と異議を唱える一方、国会議員の歳費を「手取りは月額100万円未満」とその少なさに不満をあらわにしたからだ。 さらに、週刊文春に“セクハラ疑惑”まで報じられ、満身創痍の状況に。議員歳費については 「すべて『国民の血税』という認識ゼロ」とネット上でも大炎上。世論の厳しさに細田氏は、「立場を考え、今後は発言を慎む」と頭を下げたが発言自体は撤回せず、与党内からも批判が噴出している』、なんでこんな人物を「議長」にしたのだろう。自民党の劣化を表しているのだろう。
・『「議員を多少増やしても罰は当たらない」  細田氏の問題発言は、大型連休明けの5月10日、都内で開かれた自民党議員のパーティーで飛び出した。持論の国会議員の定数減に絡めて「議員を減らせばよいかどうか考えたほうがいい。1人当たり月額100万円未満であるような手取りだ。多少増やしても罰は当たらない」と力説、「上場会社の社長は必ず1億円はもらう」とまで付け加えた。 細田氏は人口が2番目に少ない島根県選出。もともと、「選挙博士」と呼ばれる選挙制度の専門家でもあり、かねてから人口少数県の議席を減らす衆院小選挙区定数の「10増10減」について、「地方イジメ」との主張を展開してきた。 ただ、今回の10増10減案は、人口比を議席数に反映させる「アダムズ方式」に基づくもの。しかも同方式の適用は自民党主導で与野党が合意をした経緯がある。このため、日本維新の会の馬場伸幸共同代表は「(議員定数を増やせば)絶対に罰が当たる」、立憲民主党の馬淵澄夫国対委員長も「議長の資質を含め、大きな問題がある」などと猛反発した。 さらに、19日発売の週刊文春が報じた担当女性記者へのセクハラ疑惑についても、野党側は「事実ならとんでもないこと」(立憲民主)と20日の議院運営委員会理事会で議長自身の明確な説明を要求。しかし、細田氏は「まったくの事実無根」と文春側に厳重抗議し、文書での釈明などで逃げ切りを図る構えだ。 そもそも、細田氏の言う「手取りで月額100万円未満」という議員歳費は、各国の国会議員に比べても決して低額ではない。しかも、日本の国会議員には①月額100万円の調査研究広報滞在費(旧文書通信交通滞在費)、②非常に格安な議員宿舎、③無料で選挙区と往復できるJRパスや航空券、など数々の特権もある。 だからこそ細田氏の発言に対し、ネット上では「守銭奴!」「さっさと辞めろ!」など怒りの書き込みがあふれた。有識者も「まさに『永田町の常識は国民の非常識』を象徴する発言」と怒りをあらわにする。 この騒ぎに焦った細田氏は、12日夜の議長公邸での各党代表者との懇談で「あちこちから怒られて反省している。今後は発言を控える」と陳謝し、事態収拾を図ったが、発言内容自体は撤回しなかった』、「発言内容自体は撤回しなかった」と何故か強気のようだ。
・『先輩議長も「国会の権威丸つぶれ」と批判  一連の細田発言については、与党内でも批判が巻き起こった。13日に公明党の石井啓一幹事長が「ぜひ慎重な対応をお願いしたい」と苦言。大島理森前衆院議長も同日、「アダムズ方式」は与野党での結論だとして、「深く考え、ぜひ尊重してほしい」と訴えた。 さらに、14日には伊吹文明・元衆院議長が二階派会合で、「(議長が)議会が決めた法案を公然と批判したら、国会の権威は丸つぶれだ。ポジションにいる者は言ってはいけないことがある」と、先輩議長の立場から厳しく批判した。 細田氏は2代目の世襲議員で11回連続当選、党幹事長や党内最大派閥清和会会長も務めた実力者。父親の吉蔵氏(故人)も党総務会長や運輸相などを務めた有力議員だったため、いわゆる「地盤、看板、カバン」をそのまま受け継ぎ、「圧倒的保守地盤の島根で楽々当選を重ねてきた」人物だ。 それだけに、父・吉蔵氏と親密だっ政界関係者は「苦労知らずのお坊ちゃん政治家だから、ああいうおごった発言が出る」と苦々しげに語る。ただ、細田氏が政界入りする前の通産省(現・経済産業省)時代の同僚は「2世政治家らしくない、とても常識的で謙虚な人物だった。あんな発言をするとは信じられない」とその変貌ぶりに首をかしげる。) 議長就任前の細田氏は、最大派閥領袖として当時の安倍首相を支えて長期政権に貢献し、その論功で議長に就任したとの見方も多い。騒動の渦中の17日に開催された安倍派政治資金パーティーでの来賓あいさつでも、トップバッターの岸田文雄首相に続いて演壇に上がり、「7年間派閥の会長を務め、議長就任で安倍さんにバトンタッチした」と自らの存在を誇示した。 ただ、挨拶は1分あまりにとどめ、一連の問題発言には一切触れなかった。これに対し、居並ぶ安倍派議員の間では「わが派の参院選候補者への逆風になりかねない」との不安の声が広がった。 苦境の細田氏を追い打ちした「文春砲」は、細田氏が過去に担当女性記者らへのセクハラ発言を繰り返していたと指摘。細田氏が深夜に自宅から女性記者に電話して、「今から来ないか」と誘ったというセクハラを、複数の女性記者の証言を根拠として掲載している。 細田氏は「そのような発言をした事実はなく、深夜に来た事実もない」と完全に否定。そのうえで「当該のマンションは書類の山で他人を招き入れるような場所でもない」と釈明したが、真相はまさに藪の中だ』、「通産省」では課長で退職したようだ。「「圧倒的保守地盤の島根で楽々当選を重ねてきた」人物だ。 それだけに、父・吉蔵氏と親密だっ政界関係者は「苦労知らずのお坊ちゃん政治家だから、ああいうおごった発言が出る」と苦々しげに語る」、「(議長が)議会が決めた法案を公然と批判したら、国会の権威は丸つぶれだ。ポジションにいる者は言ってはいけないことがある」、極めて当然の批判だ。
・『「参院選に響く」と頭を抱える与党  野党は会期末まで約3週間となった国会で、細田攻撃を強める構え。泉健太立憲民主党代表は20日、衆院議院運営委員会理事会で細田氏がきちんと説明しない場合、議長不信任決議案の提出も検討する考えを示した。 2022年度補正予算案審議は25日から始まるが、野党側はその中で細田氏の言動を取り上げ、政府与党に揺さぶりをかける構え。与党内にも補正予算審議への影響を懸念する声が多く、「議長の疑惑が長引けば参院選に響く。議長不信任決議案が出たら、与党を取り巻く状況は厳しくなる」(自民国対幹部)と頭を抱えているのが実態だ』、内閣支持率は引き続き高水準だが、「細田議長」問題を抱えたままでは、「予算審議」だけでなく、「参院選」へも影響必至なだけに、自民党の手綱さばきが要注目だ。

第三に、6月3日付け東洋経済オンラインが掲載した政治ジャーナリストの泉 宏氏による「蓮舫氏ら3人は当選圏?「参院選」東京大乱戦の行方 生稲晃子氏、乙武洋匡氏など著名人も続々参戦」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/594160
・『与野党の最高幹部・実力者たちが裏舞台でうごめく  国会閉幕を前に、7・10参院選(予定)は「すでに終盤戦」(自民選対)だが、自民圧勝予測の中で、全国的にも注目されているのが東京選挙区だ。9つの国政政党がすべて公認・推薦候補を擁立したことに加え、土壇場での知名度抜群の無所属候補の殴り込みなどで、大乱戦となったからだ。 浮気な無党派層が多く、予想外の展開となることが多かったのがこれまでの首都決戦。とくに今回は、結果が各党の消長につながるだけでなく、与野党の最高幹部・実力者たちが、それぞれの面子を懸けて裏舞台でうごめくという、複雑怪奇な戦いとなっている。 まず、これまでどおりの2議席維持を狙う自民は、安倍晋三元首相と菅義偉前首相が新人と現職のそれぞれの後見人として、自民票を奪い合う構図。続いて、昨秋の衆院選に続いての大躍進を狙う日本維新の会は、今回の首都決戦で議席を得られなければ、「野党第1党の座も遠のく」(幹部)ことは確実だ。 一方、立憲民主は現職のトップ当選が確実視されるが、「2議席目はほぼ絶望的」との見方が多い。現職を擁立し、強固な組織票で議席維持を狙う公明、共産両党も、得票次第で党首の責任が問われかねない。 さらに、国民民主は小池百合子都知事の秘蔵っ子を推薦して議席獲得に虎視眈々。土壇場の殴り込みで台風の目となった山本太郎れいわ新選組代表は、掟破りの挑戦で自らと同党の未来を懸ける。残る社民、NHK両党も国政政党としての生き残りをかける。 6年前の選挙結果をみると、現立憲の蓮舫氏が112万あまりの得票で断然トップ。2位が自民・中川雅治氏(約88万票)、3位公明・竹谷とし子氏(約77万票)、4位共産・山添拓氏(約66万票)、5位自民・朝日健太郎氏(約64万票)、6位現立憲・小川敏夫氏(約50万票)だった。 このメンバーのうち、今回改選となる蓮舫(54)、竹谷(52)、山添(37)、朝日(46)の4氏が立候補する一方、中川(75)、小川(74)両氏が高齢などを理由に引退する。 このため、自民党が2人目の公認候補として、元「おニャン子クラブ」メンバーの生稲晃子氏(54)を、立憲は元衆院議員の松尾明弘氏(47)を、それぞれ2人目の公認候補として擁立した。 これに対し、維新は大阪市議の海老沢由紀氏(48)を公認、国民民主は地域政党・都民ファーストを母体とする「ファースト」と組み、小池百合子東京都知事の最側近で都民ファ代表の荒木千陽都議(40)を推薦。れいわは山本代表(47)自らが立候補した。 国政政党としての生き残りを目指す社民は服部良一氏(72)、N党は猪野恵司氏(38)ら5人をそれぞれ擁立。そこに、山本氏の立候補選宣言とほぼ同時に、「五体不満足」のベストセラーで知られる作家でタレントの乙武洋匡氏(46)が完全無所属で出馬を表明、大乱戦に拍車がかかった』、確かに「大乱戦」そのものだ。
・『自民1人と蓮舫氏、竹谷氏は当選圏  そこで注目されるのが現状での選挙情勢。関係者は「当選圏内は自民1人と蓮舫、竹谷両氏の3人。残り3議席を自民のもう1人、山添、山本、乙武、荒木、海老沢、松尾の7氏が激しく争う構図」(選挙アナリスト)と分析する。 前回、前々回の参院選や昨秋の衆院選結果を踏まえた「基礎票」は、自民150万~180万票、立憲130万票前後、公明70万~80万票、共産65万前後、維新50万~80万票、れいわ50万票前後とみられている。 このため、数字上は自民2、立憲、公明、維新、共産各1という割り振りが常識的。ただ、自民は「どちらかに票が偏る可能性大」(同)とされ、初参戦の荒木氏は小池知事が全面支援すれば「当選圏に急浮上する可能性」(同)があるとみられている。 表舞台で注目度が高いのは、蓮舫、竹谷、生稲、海老沢、荒木5氏による「女性の戦い」。生稲氏は1980年代の人気女性アイドルグループの元メンバーで俳優、海老沢氏は元プロスノーボーダーで「国民的美魔女コンテスト」のファイナリストだったことが売りだ。 これまで同様、首都決戦は「いかに無党派層の支持を得られるかが勝敗のカギ」(都選管)となる。このため、「誰が当選するかは投票箱のふたを開けるまでわからない大激戦になる」(同)とみられている』、確かに「大混戦」の予兆十分だ。
・『安倍氏と菅氏が後見人として激突  一方、政界関係者の耳目を集めるのは、裏舞台での各党実力者らのうごめきだ。自民新人の生稲氏は、世耕弘成・自民参院幹事長や自民都連会長の萩生田光一経済産業相が担ぎ出し、最大派閥安倍派が全面支援している。 これに対し、現職の朝日氏は、党内反主流とみられる菅グループの一員で、菅氏が先頭に立って再選を後押ししている。首相経験者の安倍、菅両氏は、ここにきて夫人も交えて懇談するなど、「親密な関係」を維持しているが、首都決戦では自らの面子も懸けて火花を散らす。 野党第1党の座の維持に命運を懸ける立憲は、蓮舫氏のトップ当選に力点を置く。ただ、参院選全体で同党の獲得議席が想定以上に落ち込めば、泉健太代表の辞任は必至で、その場合、後継は比例代表当選での国政復帰が確実視される辻元清美・元党副代表と蓮舫氏による「ツートップ体制」への移行がささやかれている。 対する維新は、東京での議席獲得で、本格的な全国政党への脱皮を目指している。ただ、3年前の東京の戦いで議席を得たのは、都民ファーストから維新に転じた東京都議出身の音喜多駿氏だ。 今回の海老沢氏は「音喜多氏と違い、大阪市議という経歴が有権者の反発を買っている」(自民選対)とされる。このため、当選圏に遠く届かない得票での落選ともなれば、維新代表の松井一郎大阪市長や、大阪維新代表の吉村洋文大阪府知事の責任問題ともなりかねない。 公認候補の竹谷氏を強固な組織票で当選圏に押し上げているとされる公明党も党内は複雑だ。基礎票を減らせば9月に退任する山口那津男代表の指導力が問われ、後継代表とされる石井啓一幹事長の求心力にも影響が及ぶ。 現状では「かろうじて当選圏」とみられている山添氏を、まなじりを決して支援しているのが志位和夫共産委員長。仮に、長らく維持してきた東京での議席を落とすようなことになれば、長期安定を誇ってきた志位1強体制が崩壊しかねない。 さらに、選挙関係者が注目するのは荒木氏の得票だ。1年前の東京都議選で自民に迫る議席を得て存在をアピールした都民ファーストの代表選手。希望の党時代から小池知事と親密な関係を保つ玉木雄一郎国民代表が、「国民・ファーストの相互推薦」という形で勝負を懸けたもので、その結果は、今後の小池、玉木両氏の政治家としての命運も左右する』、「立憲」は「参院選全体で同党の獲得議席が想定以上に落ち込めば、泉健太代表の辞任は必至で、その場合、後継は比例代表当選での国政復帰が確実視される辻元清美・元党副代表と蓮舫氏による「ツートップ体制」への移行がささやかれている」、泉代表の「辞任は必至」、「辻元」、「蓮舫」の「ツートップ体制」とは面白そうだ。
・『社民、NHK両党は国政政党脱落のピンチ(もちろん、社民の福島瑞穂、NHK党の立花孝志両党首も、公認候補の得票減少なら国政政党党首の地位喪失という絶体絶命のピンチに立たされている。 こうしてみると、今回の首都決戦の結果は、選挙後の自民党内の権力闘争の構図や、野党の再編などの政界の重大な変化のきっかけとなる可能性も秘める。だからこそ、永田町だけでなく国民的にも注目される訳で、「各党首や実力者の投開票後の言動が見もの」(自民長老)との声が広がる。 今回の首都決戦には、他に幸福実現党新人の及川幸久氏(61)、諸派新人で元衆院議員の安藤裕氏(57)らが立候補を予定している』、「今回の首都決戦の結果は、選挙後の自民党内の権力闘争の構図や、野党の再編などの政界の重大な変化のきっかけとなる可能性も秘める」、どんな結果になるのか、大いに注目される。
タグ:尾中 香尚里氏による「やがて自民党に吸収されるだけ…国民民主党がまんまとハマった「提案型野党」という毒饅頭 「批判ばかりのほかの野党とは違う」と言うけれど…」 PRESIDENT ONLINE 日本の政治情勢 (その61)(やがて自民党に吸収されるだけ…国民民主党がまんまとハマった「提案型野党」という毒饅頭 「批判ばかりのほかの野党とは違う」と言うけれど…、問題言動連発「細田議長」に自民党が頭抱える理由 10増10減に異議、議員報酬への発言 セクハラ疑惑も、問題言動連発「細田議長」に自民党が頭抱える理由 10増10減に異議 議員報酬への発言 セクハラ疑惑も) 「『提案型野党』と自称している。だが、この手法で成功した野党はない」、同感である。 「国民民主党は、日本維新の会など「立憲以外の野党との連携」をあれもこれもと模索し「立憲より上の立場」を目指そうとしたが、何一つ奏功しなかった。それどころか、国民民主党の所属議員の多くが今や立憲民主党に移り、かつて国民民主党で政調会長として自分を支えた泉健太氏が、いま立憲の代表になっている」、「国民民主党」は実に難しい立場だ。 こともあろうに「野党の「与党化」という禁断の果実に手を出した」とは、嘆かわしい。 「第一、第二世代にとって、政権とは「自民党に選挙で勝って奪い取るもの」であり、彼らは総じて「非自民」志向だった」、なるほど。 「民主党には「自民党政権と対決して選挙で政権を勝ち取ることを目指すベテラン」対「自民党政権と協調してでも政策の実現そのものを目指す中堅・若手」という「野党のあり方」に関する対立軸が、世代対立と重なる形で長く存在していた」、極めて明快な分類軸だ。「そしてメディアはなぜか、野党ばかりに「世代交代」をせかし続けてきた。第一、第二世代を早々に退かせ、第三世代を野党のリーダーに据えることで「与党にとって都合の良い野党」に作り替えることを、暗に狙っていたのだろう」、確かに「野党ばかりに「世代交代」をせかし続けてきた」 「前原氏は外交・安全保障のプロとして「外交・安保は政権交代があっても大きく変更すべきでない」という考えに立っているだけで、その大前提である「自民党と政権を争う」スタンスそのものは堅持されている」、「「非自民」という最低限の枠を壊す予算案賛成は、前原氏の頭の中には全くなかったと言っていい。 一方の玉木氏は第三世代。「非自民」という志向はもともと薄く、そもそも「野党的な批判的振る舞い」を好まない。「自民党の政策よりわが党の政策が優れている」ことをアピールできれば良いのであり、自民党と戦って勝負をつける発想は薄 「玉木氏は「提案型」を標榜する国民民主党について「新しい野党の姿を問いたい」と語っているが、それは過去に失敗してきた「第三極」野党の焼き直しにすぎない」、「「政府の予算案に賛成する」姿勢と「野党の盟主である」ことは、決して両立しないのだ」、その通りだ。 「泉氏には、菅直人氏や枝野、福山氏ら第一、第二世代がどのように「政権を担える野党」をつくるために苦心してきたかを十分に引き継いだ上で、自分なりのリーダー像を構築してほしいと願う」、同感である。 「旧民主党系議員の「第二世代」「第三世代」の違いは、ある意味「保守かリベラルか」といった政治路線以上に大きな溝となっているように、筆者には思える。玉木氏と前原氏の間に可視化された溝が、今後の国民民主党、そして野党全体にどんな影響を及ぼすことになるのか、見守りたい」、全く見事な分析で感心した。今後の注目点だ。 東洋経済オンライン 泉 宏氏による「問題言動連発「細田議長」に自民党が頭抱える理由 10増10減に異議、議員報酬への発言、セクハラ疑惑も」 なんでこんな人物を「議長」にしたのだろう。 自民党の劣化を表しているのだろう。 「発言内容自体は撤回しなかった」と何故か強気のようだ。 「通産省」では課長で退職したようだ。「「圧倒的保守地盤の島根で楽々当選を重ねてきた」人物だ。 それだけに、父・吉蔵氏と親密だっ政界関係者は「苦労知らずのお坊ちゃん政治家だから、ああいうおごった発言が出る」と苦々しげに語る」、「(議長が)議会が決めた法案を公然と批判したら、国会の権威は丸つぶれだ。ポジションにいる者は言ってはいけないことがある」、極めて当然の批判だ。 内閣支持率は引き続き高水準だが、「細田議長」問題を抱えたままでは、「予算審議」だけでなく、「参院選」へも影響必至なだけに、自民党の手綱さばきが要注目だ。 泉 宏氏による「蓮舫氏ら3人は当選圏?「参院選」東京大乱戦の行方 生稲晃子氏、乙武洋匡氏など著名人も続々参戦」 確かに「大乱戦」そのものだ。 確かに「大混戦」の予兆十分だ。 「立憲」は「参院選全体で同党の獲得議席が想定以上に落ち込めば、泉健太代表の辞任は必至で、その場合、後継は比例代表当選での国政復帰が確実視される辻元清美・元党副代表と蓮舫氏による「ツートップ体制」への移行がささやかれている」、泉代表の「辞任は必至」、「辻元」、「蓮舫」の「ツートップ体制」とは面白そうだ。 どんな結果になるのか、大いに注目される。
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暗号資産(仮想通貨)(その22)(ビットコイン採掘のエネルギー消費 米環境運動の標的に、混沌のビットフライヤー ファンド買収の行方 創業者の加納氏に迫られる「全株売却」の決断、ビットコインの「悪魔的仕組み」とは?人間の本質を突いた設計の妙 【國光宏尚、尾原和啓、入山章栄 特別鼎談(2)】) [金融]

暗号資産(仮想通貨)については、3月21日に取上げた。今日は、(その22)(ビットコイン採掘のエネルギー消費 米環境運動の標的に、混沌のビットフライヤー ファンド買収の行方 創業者の加納氏に迫られる「全株売却」の決断、ビットコインの「悪魔的仕組み」とは?人間の本質を突いた設計の妙 【國光宏尚、尾原和啓、入山章栄 特別鼎談(2)】)である。

先ずは、5月1日付けロイター「アングル:ビットコイン採掘のエネルギー消費、米環境運動の標的に」を紹介しよう。
https://jp.reuters.com/article/usa-tech-climate-change-crypto-currency-idJPKCN2MH0BG
・『中国が昨年、暗合資産(仮想通貨)ビットコインのマイニング(採掘)を禁止すると、米国で採掘を始める「ゴールドラッシュ」が起こり、ニューヨーク、ケンタッキー、ジョージアなど米国の州がたちまち主要なマイニング拠点となった。 中国が昨年、ビットコインのマイニング(採掘)を禁止すると、米国で採掘を始める「ゴールドラッシュ」が起こり、ニューヨーク、ケンタッキー、ジョージアなど米国の州がたちまち主要なマイニング拠点となった。写真はイメージ。2021年8月撮影(2022年 ロイター/Dado Ruvic) ニューヨーク州議会のクライド・バネル議員にとって、これほどうれしいことはない。地元で雇用が生まれて「幸いだ」と語る。 一方で、アンナ・ケルズ議員は、電力を大量消費するマイニングを同州で厳しく規制する法案を推進中だ。「われわれの気候変動目標をすぐに脱線させてしまう産業がやってきた」と警鐘を鳴らした。 米国ではビットコインのマイニングによる環境への影響を巡る議論が活発化し、主要な環境団体が化石燃料の使用を批判する運動を全米で展開し始めた。 マイニングによるエネルギー消費量と温室効果ガスの排出量を正確に測定するのは難しい。 業界団体コインシェアが2021年に出した推計では、排出量は世界全体の1000分の1に満たないが、ニューヨーク・デジタル・インベストメント・グループの報告によると、2030年までに最大1%に達する見通しだ。 ビットコインのエネルギー消費を一貫して批判してきたエコノミスト、アレックス・ドゥ・ブリー氏は今年3月にエネルギー誌で発表した論文で、マイニングによってギリシャ1国分の二酸化炭素(CO2)が排出されたとの推計を示した。 ビットコインの推進派は、例えば、クリスマスの照明などもマイニングとほぼ同量のエネルギーを消費しているし、ビットコインの社会的機能を考えればエネルギーを消費するだけの価値がある、と主張する。 しかし、ニューヨークやペンシルベニアなどの州では、一部のマイナーが閉鎖された化石燃料発電所を復活させて電力を確保し、地元住民の抗議に遭う事例もあった。 環境団体・グリーンピースUSAの最高プログラム責任者、テフェレ・ゲーブル氏は、最近の記者会見で「今は気候変動危機の渦中だ」と指摘。ビットコインのマイニングは「われわれを間違った時期に間違った方向へと押し進めている」と批判した』、「中国が昨年、ビットコインのマイニング(採掘)を禁止すると、米国で採掘を始める「ゴールドラッシュ」が起こり、ニューヨーク、ケンタッキー、ジョージアなど米国の州がたちまち主要なマイニング拠点となった」、さすが目ざとい行動だ。
・『<NY州の法案>  ニューヨーク州議会のケルズ議員が策定した法案では、化石燃料を電源とするビットコインの新事業にモラトリアム(一時停止措置)を課すことが盛り込まれている。 同州のビットコイン・コンサルティング会社、ファウンドリーのディレクター、カイル・シュネプス氏は、法案が可決されれば「ニューヨークはこの事業に門戸を閉ざしたというシグナルになる」と反発する。 シュネプス氏は、再生可能エネルギーを利用しているマイナーもある上に、マイニング事業は地元に経済的な恩恵ももたらすと主張する。同社自体、ニューヨークで115人を雇用している。 法案に反対するバネル議員は、モラトリアムを導入すればマイナーが逃げかねないとし、議会は業界と協力して環境面の懸念に対処すべきだと話した。 ニューヨークで起こったことが全米に影響を及ぼすだろうという点では、賛成派と反対派の考えが一致している』、地元議員にとっては、「マイナー」の「雇用」も無視できない要素だ。
・『<コード変更を巡る対立>  エンバイロメンタル・ワーキング・グループやグリーンピースUSAなど主要な環境団体は、全米でビットコインによる環境への影響に注意を喚起する運動を展開している。 これらの団体は、ビットコインのソフトウエアコードを変更し、エネルギーを大量消費する「プルーフ・オブ・ワーク」方式から、消費量の少ない「プルーフ・オブ・ステーク」と呼ばれる新方式に切り替えるよう求めている。 新方式を使った暗合資産・リップルの共同創設者、クリス・ラーセン氏は、この運動に500万ドルを寄付した。 だが、ビットコイン推進派は、エネルギー集約型の設計こそが、ビットコインの安全性と分散化を維持する上で重要だと主張する。 これに対してラーセン氏は、ビットコインに投資する大手金融機関が増えるにつれ、ソフトウエア開発者に環境、社会、統治(ESG)目標に沿うよう求める圧力が増すと予想。「この圧力によって、中核的な開発者らは(コードの)変更を行うだろう。それがゴールだ」と述べた』、「プルーフ・オブ・ワーク」は「エネルギーを大量消費」するが、「消費量の少ない「プルーフ・オブ・ステーク」と呼ばれる新方式」で安全性が確保されるかどうかがカギである。

次に、5月14日付け東洋経済オンライン「混沌のビットフライヤー、ファンド買収の行方 創業者の加納氏に迫られる「全株売却」の決断」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/588664
・『国内最大手の暗号通貨交換所ビットフライヤー。創業者・加納裕三氏の決断次第では、日本の暗号資産業界における歴史の転換点になる。 暗号資産交換所で国内最大手のbitFlyer(ビットフライヤー)が揺れている。 5月中にも、ビットフライヤーを傘下にする持株会社でビットフライヤーホールディングス(未上場)の約6割に当たる株式をICT業界などの案件に実績のある投資ファンド、ACAグループが買収する。「このゴールデンウィーク中に大筋の合意が得られた」と、事情に詳しい関係者が東洋経済の取材に対して明らかにした。 ビットフライヤーHDの約4割の株式を握る共同創業者の加納裕三氏は、同社株式をまだ持ち続ける見通し。加納氏の持ち分を除く全株式がACAグループに渡り、加納氏とACAグループが4対6で株を分け合う新たな資本構成となる。ビットフライヤーHDの評価額は最大450億円と一部で報じられていたが、「その後ACAグループ以外の入札も加わり、それよりも高くなった」(前出関係者)もようだ』、なるほど。
・『転機は4年前の「退場勧告」  2014年1月創業のビットフライヤーは、暗号資産取引の預かり資産や会員数でコインチェックと国内で双璧をなす。2022年3月時点の預かり資産は5803億円で、本人確認済みの会員数は推定約170万人。2021年12月期の決算は、ビットコインやイーサリアムなど暗号資産の相場が上昇した恩恵で、営業収益275億円(前期比3.6倍)、営業利益178億円(同11倍)だった。 順調に見える同社が、なぜファンドに買収されるのか。その理由は2018年にさかのぼる。 2018年1月、暗号資産(当時の呼称は仮想通貨)業界を震撼させたのが、コインチェックによる約580億円相当の資産流出だ。この事件により、それまで暗号資産取引所の育成に前向きだった金融庁は姿勢を一転させ、コインチェックのみならずビットフライヤーなど多くの暗号資産交換所に業務改善命令を下した。 なかでも厳しく指弾されたのがビットフライヤーだった。 金融庁は「経営陣はコストを抑えることを優先して内部管理態勢を整備していない」「登録審査等に関して当局等へ事実と異なる説明等を行うといった企業風土」などと他社より踏み込んだ形で問題を指摘し、当時社長だった加納氏に事実上の退場を迫った』、「ビットフライヤー」に対する「金融庁」の指摘は極めて厳しかったようだ。
・『社長人事をめぐり株主間に亀裂  社内の混乱が始まったのは、加納氏が社長を退いた2019年1月以降だ。銀行や外資系証券会社など伝統的な金融機関からトップを招いたが、4年間で3回社長が交代している。いずれも筆頭株主である加納氏と対立したことが原因とみられ、「早期のエグジット(新規株式公開やM&A)を求める他の株主と加納氏との間に亀裂が生まれた」(関係者)。 実際にフリマアプリのメルカリや中国系の暗号資産交換所Huobi(フォビ)などへの売却交渉がまとまりかけたこともあったが、条件面で加納氏が首を縦に振らず、いずれも破談に終わった。今回のACAグループによる買収は、加納氏の関与を避ける形で話が進められたようだ。 コインチェック事件以降一連の出来事について加納氏は、2021年12月の東洋経済のインタビューで「(これまで好意的だった)金融庁側の姿勢の変化には驚きを禁じ得なかった。直近3カ年のセキュリティーやコンプライアンスなど内部体制への投資は300億円に上るが、これによって必要な成長投資ができず、世界と差が開いてしまった」と恨み節を語っている。 社長の交代が相次いだ点については、「ベンチャーとは言えない大企業のような組織風土になってしまっていて、見るに堪えなかった。(メルカリやフォビなど)株式売却の話が勝手に進められていることも不愉快だった」という趣旨の発言している。 加納氏はホールディングスの社長を外れて以降、ブロックチェーン事業を営む子会社や海外子会社の社長を務める。 ただし、ブロックチェーン事業は不振が続く。2017年4月には、積水ハウスと共同でブロックチェーン技術を活用した不動産情報管理システムの構築を開始すると発表したが、目立った成果を出せずに協業関係は解消した。積水ハウスはビットフライヤーと協業する前に同社への出資を行っており、現在も第3位の株主(保有比率は推定13%)として残る。 海外事業については赤字から脱せず、ビットフライヤーは2019年12月期にアメリカ子会社、2020年12月期には欧州子会社の株式を減損処理している。事業面で成果を出せていない加納氏が本体の人事に重ねて口を挟むことも、その他株主にとっては不満が募る原因となった可能性が高い』、「加納氏」は「事業面で成果を出せていない」くせに、「本体の人事に重ねて口を挟む」、やっかいな人物だ。
・『ファンドは短期売却という見方も  ファンド買収後のビットフライヤーはどうなるのか。暗号資産業界の浮き沈みは激しい。2021年を通じて、大手各社はいずれも好業績を叩き出したが、2022年に入って以降は暗号資産の相場が再び低迷して取引量が減少、コインチェックの第4四半期(2022年1~3月期)は営業赤字となった。ビットフライヤーもその例外ではなく、足元は厳しい業績になっているようだ。 「投資ファンドが交換所の株を持ち、企業価値を上げるのは容易ではない」と暗号資産業界の関係者は口を揃える。資産の漏洩やマネーロンダリングのリスクがつきまとう暗号資産交換業のコストは膨らむ一方で、ファンドが得意とするコストを抑えて収益を改善するという手法も通用しづらい。「ACAグループによる株式の保有は短期的で、すぐにほかへ転売するだろう」(同関係者)と見る向きもある。 そうした中、ACAの転売先として受け皿になり得るのが、一度買収交渉を行ったメルカリをはじめ、楽天グループやヤフーといった大手IT企業だ。 インターネット業界は現在、「ウェブ3.0」と呼ばれる大きな転機を迎えている。ブロックチェーンを用いて、ユーザーが暗号資産やNFT(非代替性トークン)といったデータの所有権を持てるウェブ3.0の仕組みは、巨大資本GAFAMの牙城を崩す可能性を秘めると言われる。 日本のIT企業もこのウェブ3.0への投資に関心を持ち始めており、ブロックチェーン技術を兼ね備えたビットフライヤーのような大手交換所の買収は、ウェブ3.0へ参入する格好の足がかりになる。 メルカリは東洋経済の取材に対し、「子会社を通じた暗号資産交換業のライセンス取得を最優先に目指しているが、(登録済みの交換業を買収することを含め)あらゆる可能性を排除せず検討している」と回答した』、米国の金融政策転換により「暗号資産」価格は低迷に転じ、「ウェブ3.0」の熱も冷めたようだ。
・『暗号資産業界における歴史の転換  焦点となるのは加納氏が持つ株式の行方だ。買収観測が浮上して以降、メディアに口を閉ざしていた加納氏に記者は5月11日、株式保有の意向について対面で真意を問うた。すると同氏は「今は答えられない」といらだちの様相を見せ、足早に去った。 暗号資産交換所はすでに再編淘汰の時代に突入している。2019年の改正資金決済法でデリバティブ取引が金融商品取引法の対象になるなど規制が強まった結果、「かつて100社以上あったFX(外国為替証拠金取引)の業者が半減以下になった現象と同じようなことが起きている」(SBI VCトレードの森本逸史代表取締役専務)。 そこで浮上してきた業界最大手ビットフライヤーの買収劇。2008年にビットコインが誕生して、交換所ビジネスが花開き、そして今ウェブ3.0の波が押し寄せてきている。将来的に、加納氏の持ち分も含めた全株が売却されることになれば、日本の暗号資産業界における歴史の転換点になるだろう』、現在の停滞する「暗号資産」市場からは考えられないような熱気を感じさせる文章だ。もっと冷静に考えるべきだ。

第三に、6月2日付けダイヤモンド・オンライン「ビットコインの「悪魔的仕組み」とは?人間の本質を突いた設計の妙 【國光宏尚、尾原和啓、入山章栄 特別鼎談(2)】」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/304022
・『これから世界はどこに向かっていくのか、そして時代の波に乗るためのビジネスチャンスのヒントを書いた『メタバースとWeb3』の著者である國光宏尚氏と、IT批評家でフューチャリストの尾原和啓氏、『世界標準の経営理論』の著者で早稲田大学ビジネススクール教授の入山章栄氏の鼎談を実施。2回目は人間の本質からビジネスと社会貢献の両立について迫ります』、興味深そうだ。
・『通貨の「フォーク(分裂)」には、メリットもある?(入山章栄(以下、入山) DAOはプロジェクトであり組織であると思うんですが、だんだん盛り上がらなくなると終息してなくなっていく感じなんですか? 國光宏尚(以下、國光) 一時期、ビットコインの分裂が話題になったことがありますよね? あの時「通貨が分裂ってなんのこと?」という声が多かったと思います。でも、ビットコインやイーサリアムは技術的に言うとオープンソースのプロジェクトで、フォーク(分裂)自体はよくあることなんです。 尾原和啓(以下、尾原) ビットコインの分裂ってありましたね。 國光 ビットコインコミュニティーの中で、意見が真っ二つに分かれた事件がありました。ビットコインの本質的な価値というのは、ゴールドと同じ、変わらない「価値の保存」なのか、決済や送金などの「ユーティリティー(利便性)」なのかという議論です。 しかし、ユーティリティーに使おうと思うと、このままのビットコインでは効率も悪く無理なので、ビットコイン自体を変えていかないとダメだった。しかし、変えていくとするとハックされるリスクもある。ビットコインは、14〜15年間ハックされなかったことこそが変わらない価値だった。 だから、やるべきか否かでコミュニティーが完全に対立して、そのときにフォークしたんです。 入山 なるほど。 國光 フォークさせた上でビットコインとビットコインキャッシュに分かれたんですけど、それぞれが互いの信念におもむくままやった結果、よりいいものになったほうが主流になり、よくなかったほうが消えていった。 尾原 結局、ゴールド側が勝って通貨側が弱くなっていったんですね。 國光 それぞれが、それぞれのビジョンどおりにやって、よりいいことをやったほうが主流になって、そうじゃないところが消えていく。そういうイメージですね』、「ゴールド側」、「通貨側」はどういう意味なのだろう。「ビットコインは、14〜15年間ハックされなかったことこそが変わらない価値だった」、とあるが、これまでハッキングされた事件もあったように記憶しているが、本当のところはどうなのだろう。
・『DAOと経営学の意外な共通点とは?  入山 興味深いですね。僕は著書『世界標準の経営理論』の中で、個人と組織の新しいかたちを提示した「ティール組織」の世界観は、これからの未来にありえると書いていました。 ティール組織は組織を生命体として捉えるという考え方なんですが、DAO(注)に似てますよね。種として分裂をし、進化する方が生き残っていくように、「組織が生物的になっていく」イメージですね。 尾原 中央集権でやるケースもあるけれども、うまくいかない場合はフォークすればいいじゃないか、と生命が分裂していくみたいに意思決定の仕組みそのものが進化、淘汰を簡単にできるようになる世界というのがティールに合いやすい。 入山 この世界では、人類が400年間使っていた株式会社という仕組みをある意味で根底から変えるので、めちゃめちゃおもしろいですよね。400年越しの大革命ですよ。  國光 一方で、人は性善説では動きません。みんなが自分の利益のために動くことがひとつの自律型組織のベースだと思っています。 たとえば、私が投資しているTHETA(シータ)という動画配信のP2P(ピア・ツー・ピア)ネットワークを提供する会社では、ネットワークに参加すると報酬としてトークンが得られるようになっています。 THETAは、VR版の動画投稿やeスポーツ配信プラットフォームを、クラウドサービスをベースに実現しているのですが、将来、4K/8Kといったように動画の解像度が上がり、さらにフルVRになったら、いまの100倍もの通信容量が必要になります。その対策として考えたのが、一般ユーザーのパソコンやスマートフォンの空いている通信帯域を共有して大量のデータをやりとりするP2Pネットワークです。 でも、誰も無償では他人にネットワークを貸したがらないものです。そこでTHETAでは、ネットワークに参加するとビットコインのマイニングと同じように、トークンがもらえるといったインセンティブを付けることで自律性を確保しています。 尾原 勝手にトークンがチャリンチャリン入ってくるとなると、つなぎっぱなしのほうが得だと感じますよね。 國光 ビットコインのマイニングも一緒だと思っています。みんな「新しい時代の通貨をつくる」とか、そんな大きなこと考えていないんですよ。ビットコインが欲しいだけで、自分の利益のためだけに動いた結果ネットワークが回っている。 ここが、サトシ・ナカモト(ビットコインの創始者とされる人物)の悪魔的なところです。) 國光「ビジョンに共感してできたコミュニティーがあり、そのビジョンの実現のためにみんなが頑張る」という、性善説的なことを言っている一方で、ビジョンを実現させると報酬としてトークンがもらえる利己的な仕組みがある。性善説と利己的な仕組みの組み合わせなんです。 結局、僕は、最終的に人が動くのって「夢と金」なんじゃないかと思っています。 入山 おっしゃるとおりですね。人間の本質は「夢と金」ですよ。本当に。 経営やビジネスって結局は人間がやっているものです。だから、僕が専門にしている経営学とは結局、「人間の本質は何なんだ」を突き詰める学問だと思っています。そういうことをまとめたのが、『世界標準の経営理論』なんです。 例えば、心理学ベースの経営学だと人の本質は共感とかいろいろあります。一方で経済学のほうは合理性であり、その第一目的は当然「金」ですよね。みんな豊かになりたい。 このように、人というのは複雑で、スパッと性善とか性悪に分かれない。でも、それを突き詰めると大まかには「世の中に良いことをしたいけれども、お金もたくさんもうけてリッチになりたい」となりますよね。DAOには、その仕組みがあるということですよね。 國光 まさに。このあたりがおもしろい仕組みなのかなと思います。 入山 うん。おもしろい。 國光 僕はDAOがはやってきても、株式会社はなくならないとみています。株式会社が向いている点と、DAOが向いている点がそれぞれありますし、株式会社ができた理由はシンプルに資本の集積が必要だったからだと思うんですね。株式会社のひとつの業(ごう)はVCから投資が入った時点で売り上げと利益の成長というのが求められることなんですが。 入山 そうですね。 國光 これが、すさまじい業という感じで。ただ、今の時代でいくと売り上げ・利益や生産性じゃ語れない価値っていうのが出てきていて、そういうところはDAOが向いていると思っています。 尾原 事務所に所属するクリエイターやYouTuberも、DAOに向いていますよね? 國光 事務所から独立してVCの投資が入ると、そのタイミングで売り上げ・利益の最大化を求められます。一人で運営していくには限界があるから人を採用して育てなきゃいけない。 でも、クリエイターとして一流の人が人材育成が得意とは限らない。自分のコンテンツをつくる時間は減り、ファンの期待に応えられなくなることだってある。ならば株式市場からお金を集めるのではなく、ファンから直接、お金を集めたほうがいいじゃないかと。 その時にファンが求めているのは売り上げ・利益の成長ではなくて、おもしろいコンテンツを追い続けることが報酬なんじゃないかなと思うんです。すると、直接ファンから集めた方がよい、となります。一方で売り上げ・利益・生産性で語れる部分は株式会社のほうが効率はよいのではないでしょうか』、「マイニング」は、「ビットコインが欲しいだけで、自分の利益のためだけに動いた結果ネットワークが回っている。 ここが、サトシ・ナカモト・・・の悪魔的なところです」、その通りだ。
(注)DAO:「 Decentralized Autonomous Organization 」の略称で、「自律分散型組織」、ブロックチェーン上に構築(Cloud Ace)。
・『ビジネスと社会貢献の両立に必要なこととは?  入山 僕はいま、北海道の生活協同組合「コープさっぽろ」の理事をやっているんですね。理事長である大見英明(おおみひであき)さんがトップで、大見さんは経営者としてもたいへん素晴らしいので、今はとても成功しています。そして、興味深いのは生協の仕組みです。 “生協”は組合組織です。組合員が出資者となりますから、いわゆる株式会社ではないんです。株主もいません。 株式会社って、「株主」と「顧客」が違いますよね? そして株主は、株価を上げてほしいから企業に成長を求めるけれども、一方で顧客のためにもいいことをやらないといけない、というのが株式会社の難しいところです。 しかし、生協はそのコンフリクトがないんです。「出資者=顧客」なので、そういう意味ではちょっとDAOに近いと思います。 尾原 難しい点はないのですか? 入山「出資者=顧客」に生協の経営をモニタリングするインセンティブが弱いため、ガバナンスが効きづらい点ですね。とはいえ、北欧などヨーロッパの多くの国の小売りでは、かなりの部分が実は生協なんです。 國光 そうなんですね。 入山 日本が今後お手本にしたいといわれているフィンランドやデンマーク、スウェーデンなど北欧経済圏の小売業は、かなりの部分が生協です。だから、本当に日本が北欧を目指すなら、「生協を増やそう」というのが僕の主張なんです。 もうひとつ生協の難しい点は、ある意味で性善説で成り立っているところです。 例えば生協の理事って報酬があるものの、報酬委員会はないから株主が監視せず、理事たちの自制心で給料を抑えている。社員の平均給料の6倍を超えてはいけない、といった暗黙のルールが北欧の生協にあることはあります。それで無理やり抑えている。ただ、根底にあるのは人間の善意なので、いわゆる「民度」が上がらないと生協モデルの普及は無理、というのが僕の理解です。 尾原 北欧で生協が成り立つのは、民度が高いからなんですね。 入山 人間は欲もあるのでみんなが自制できるわけではないですし、自制できないところで、当然対価が欲しくなるものです。他方で、今日の國光さんと尾原さんの話を聞いていると、DAOの仕組みはうまくやると、その両方が取れるんだなと。 國光 アメリカやドイツ、フランスでも生協は成立していないんですか? 入山 アメリカは成立していないですね。ドイツはちょっとあったと思いますけど。基本はフィンラインド、デンマーク、スウェーデン、スイスあたり。 國光 やはり福祉国家を延々とやってきた中での、民度の積み上げがあったということですよね。 入山 だからDAOはいい意味での民主化的なものをやりつつ、インセンティブをみんなに幅広く与えることが可能になる。コミュニティーを作れてみんながハッピーで、お金の面でも得をする世界というところが、すごくおもしろいですよね』、「日本が今後お手本にしたいといわれているフィンランドやデンマーク、スウェーデンなど北欧経済圏の小売業は、かなりの部分が生協です。だから、本当に日本が北欧を目指すなら、「生協を増やそう」というのが僕の主張なんです」、「根底にあるのは人間の善意なので、いわゆる「民度」が上がらないと生協モデルの普及は無理」、なるほど。
・『必要なのは「応援した人が報われる」仕組み  國光 DAOはスポーツとすごく相性がいいなと感じています。インフルエンサーやアイドル、クリエイターなどさまざま試しているんですが、なかでも特にスポーツがハマっています。 スポーツチームのビジョンは、極めてはっきりしていて大半のチームが「スポーツを通して地元を盛り上げる」と地域貢献を挙げているんです。スポーツを通して地元を盛り上げたいといったビジョンがはっきりしているから、共感してコミュニティーになりやすい。みんなでそれをやっていこうと、力も湧きやすい。 でも、これまでのスポーツビジネスには大きな欠点が二つあった。ひとつは応援したファンにメリットがないことです。 入山 ですね。ただただ、応援していく。 國光 さらにもうひとつ。近くのチームの人しか応援しないケースが多く、商圏が狭まりがちなことです。 ただ、DAOを通じて、オーナーやコミュニティーの人たちが頑張っていることを知ると、ちょっと離れたところにいるけれども応援したい、サポートしたいといったことが起こる。これまでのスポーツビジネスやエンタメビジネスはファンしか応援しないため、ほぼNPOに近いと思っているんです。 今までもYouTubeとかTikTokのような広告モデルや「投げ銭」、サブスクなどありますが、一方的にファンが貢いでいるだけなんです。応援した人たちが有名になっていくのに、見返りがない。DAOで重要なのは、ただファンということだけではありません。「応援したらメリットもある=みんなが応援したい、サポートしたい」といった仕組みが必要なんだと思います。 入山 めちゃめちゃいいですね。地方創生と言っても、どこもお金がないので「ふるさと納税」に使っていることが多い。 國光 僕は今、大きく三つのことをやっているんですね。ひとつがThirdverseという会社で、ここはVR、メタバースのゲームをつくっている会社です。あとはFiNANCiEといってブロックチェーンベースの、誰でも簡単にDAOがつくれてトークンを発行してコミュニティーがつくれるサービス。あとはgumi Cryptos Capitalという、これはWeb3に特化したファンドで1号ファンドが23億くらい、2号ファンドが130億くらいです。 入山 えっ。すごい。 國光 その中のFiNANCiEがまさに、簡単にトークンやNFTを発行して資金を調達してコミュニティーを形成できるサービスなんですけど、スポーツチームで湘南ベルマーレさんやアビスパ福岡さんなどサッカー、野球、卓球などを展開し、60チームにトークンやNFTを発行してもらっています。 尾原 DAOとスポーツ、すごく相性がいいですね』、「DAO」は「スポーツ」と「相性」がよく、ずいぶんひろがりが出てきそうだ。今後の展開が注目される。 
タグ:「ビットフライヤー」に対する「金融庁」の指摘は極めて厳しかったようだ。 東洋経済オンライン「混沌のビットフライヤー、ファンド買収の行方 創業者の加納氏に迫られる「全株売却」の決断」 「プルーフ・オブ・ワーク」は「エネルギーを大量消費」するが、「消費量の少ない「プルーフ・オブ・ステーク」と呼ばれる新方式」で安全性が確保されるかどうかがカギである。 地元議員にとっては、「マイナー」の「雇用」も無視できない要素だ。 「中国が昨年、ビットコインのマイニング(採掘)を禁止すると、米国で採掘を始める「ゴールドラッシュ」が起こり、ニューヨーク、ケンタッキー、ジョージアなど米国の州がたちまち主要なマイニング拠点となった」、さすが目ざとい行動だ。 ロイター「アングル:ビットコイン採掘のエネルギー消費、米環境運動の標的に」 暗号資産(仮想通貨) (その22)(ビットコイン採掘のエネルギー消費 米環境運動の標的に、混沌のビットフライヤー ファンド買収の行方 創業者の加納氏に迫られる「全株売却」の決断、ビットコインの「悪魔的仕組み」とは?人間の本質を突いた設計の妙 【國光宏尚、尾原和啓、入山章栄 特別鼎談(2)】) 「加納氏」は「事業面で成果を出せていない」くせに、「本体の人事に重ねて口を挟む」、やっかいな人物だ。 米国の金融政策転換により「暗号資産」価格は低迷に転じ、「ウェブ3.0」の熱も冷めたようだ。 現在の停滞する「暗号資産」市場からは考えられないような熱気を感じさせる文章だ。もっと冷静に考えるべきだ。 ダイヤモンド・オンライン「ビットコインの「悪魔的仕組み」とは?人間の本質を突いた設計の妙 【國光宏尚、尾原和啓、入山章栄 特別鼎談(2)】」 「ゴールド側」、「通貨側」はどういう意味なのだろう。「ビットコインは、14〜15年間ハックされなかったことこそが変わらない価値だった」、とあるが、これまでハッキングされた事件もあったように記憶しているが、本当のところはどうなのだろう。 「マイニング」は、「ビットコインが欲しいだけで、自分の利益のためだけに動いた結果ネットワークが回っている。 ここが、サトシ・ナカモト・・・の悪魔的なところです」、その通りだ。 (注)DAO:「 Decentralized Autonomous Organization 」の略称で、「自律分散型組織」、ブロックチェーン上に構築(Cloud Ace)。 「日本が今後お手本にしたいといわれているフィンランドやデンマーク、スウェーデンなど北欧経済圏の小売業は、かなりの部分が生協です。だから、本当に日本が北欧を目指すなら、「生協を増やそう」というのが僕の主張なんです」、「根底にあるのは人間の善意なので、いわゆる「民度」が上がらないと生協モデルの普及は無理」、なるほど。 「DAO」は「スポーツ」と「相性」がよく、ずいぶんひろがりが出てきそうだ。今後の展開が注目される
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投資(商品販売・手法)(その2)(50歳で初めて投資 失敗しないために知っておくべきこと、株主優待に飛びつくのは日本人だけ? 目先の利益でプロは買わない、ESG投資が運用として「明らかにダメ」でも流行る本当の理由) [金融]

投資(商品販売・手法)については、昨年4月18日に取上げた。久しぶりの今日は、(その2)(50歳で初めて投資 失敗しないために知っておくべきこと、株主優待に飛びつくのは日本人だけ? 目先の利益でプロは買わない、ESG投資が運用として「明らかにダメ」でも流行る本当の理由)である。

先ずは、昨年10月19日付け日経ビジネスオンラインが掲載したBagel X代表取締役の大崎 匠氏による「50歳で初めて投資 失敗しないために知っておくべきこと」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/plus/00014/101400001/
・『50歳になると、突然目の前に現れる「お金の不安」。日本人の平均寿命が延び続ける中、将来への備えの必要性をヒシヒシと実感するタイミングではないでしょうか。 50代は、定年後を見据え、自分の資産運用戦略を見つめ直す“ラストチャンス”。年金受給額の減少や医療費負担の増加、そしてコロナ禍以降の増税など、家計の不安は募るばかり。今まで貯蓄したお金を投資すべきなのか、はたまたリスクは取るべきではないのか。今の資産運用ブームに乗ったほうがいいのかと、悩んだことは一度や二度ではないと思います。 資産運用のセオリーの一つに、「投資は若いうちから始めるのがよい」というものがあります。これは、投資期間が長いほど、複利(投資利回りの累積)の効果が高くなることを示しています。しかし、若いうちに資産運用を始めなかったからといって、焦る必要はありません。「急(せ)いては事を仕損じる」という言葉は、投資においても同じ。50歳からでも十分、間に合います。むしろ、平均寿命がこれだけ延び、どの家庭でも長期戦略の立案を迫られている今の流れを見ると、時間のゆとりができ、老後の不安が現実味を帯びてくる50代から資産運用を始める価値は十分にあります。 実際に、利回り表を用いて毎月の積立金額別でどれだけ資産をためられるかを簡単に試算しました(表1、表2)。 50歳から年金受給開始年齢の65歳まで、毎月一定金額を積み立て、保守的に年率3.0%で運用するとします。今現在、資産がなかったとしても、毎月10万円ずつ投資に回したとしたら、65歳の時には2275万円(積立金:1800万円、投資リターン:475万円)もの資産を手にしていることになります(表1)。積立金が5万円だとしても、1138万円(積立金:900万円、投資リターン:238万円)です。 資産運用では投資期間が長くなればなるほど、複利の効果によってリターンが増加するため、15年という長期間にわたって運用することで、大きな投資リターンが期待できます。 つまり、50歳の時点で全く資産運用をしてこなかったとしても、リターンはしっかり受け取れます(表2)。 また、リスク性の高い投資、つまり資産の増減幅が大きくなりやすい投資に飛びつかなくても、毎月の積立金額と運用期間によっては、今からでも老後の資金を得ることが可能です。 上記の試算の通り、50歳であってもまだまだ時間はあります。これまでやってこなかったからといって気後れする必要は一切ありません。今からでもできることをやっていくことが、将来の経済的なゆとりを得るための秘策なのです』、その通りだ。
・『資産運用コストに厳格になれ  ここからは、筆者の機関投資家としての経験に基づいた、個人投資家に参考にしてほしい観点についてご紹介します。もっとも、投資のスタイルは個人によって大きく異なるため、あくまで一例です。投資家マインドを身につけるための、一つのエッセンスとして参考にしていただければと思います。 資産運用を始めたばかりの人は、毎日株価を熱心にチェックし、自分の資産が上がったかどうかを気にしてしまいます。必ずしも、毎日チェックする必要はありませんが、投資のリターンに気を配ることは非常に重要です。しかし、本当に気にすべきは、投資のリターンではなく、投資に掛かるコストも考慮した「トータルリターン(総合収支)」です。) 国債金利が著しく低下し、株価が大きく上昇している中では、期待される投資の収益率は著しく低下しています。低下するリターンをどうにかして向上させたいと考えるかもしれませんが、それを実現するのは容易ではありません。 そこでカギになるのが、運用に掛かるコストの低減です。つまり、投資収支の改善を目指すことも有益な投資戦略になるのです。 一般投資家と比較して機関投資家は運用コストに非常に敏感です。資産規模の大きい投資家であれば、運用会社への交渉力も強いため委託手数料の低減を相談できます。また、規模の経済を活用し、投資チームを内製化することもできるでしょう。 しかし、個人投資家はそういった選択肢を取ることができません。そのため、普段からコストに対する意識を高く持ち、コストの低減化を心がけましょう』、「普段からコストに対する意識を高く持ち、コストの低減化を心がけましょう」、その通りだ。
・『信託報酬などの経費に対する感応度を高く持つ  投資信託やETF(上場投資信託)を購入した場合、「信託報酬」と呼ばれる、委託資産額に対して支払うコストが発生します。信託報酬の設定はファンドによってまちまちで、年0.03%のものもあれば、年3.0%の場合もあります。ここ最近の傾向は手数料が低く、日経平均株価などの指数に連動するインデックスファンドが人気を博しており、信託報酬を強く意識して運用することがセオリーとなりつつあります。この機会に信託報酬の考え方をいま一度整理してみましょう。 【信託報酬の考え方】 ある投資信託に年1.0%の信託報酬を支払っていると想定します。年平均の投資リターンは3.0%を前提とします。そして、そんな投資戦略を今後30年間継続したとしましょう。「年1.0%の信託報酬」と聞くと非常に小さい数字のように思われますが、実は積み上がると膨大な負担となってしまいます(下記グラフを参照)。 毎年のリターン(3.0%)がコスト(1.0%)を上回っていることから、資産額は当初より増加していることになります。しかし、わずかな信託報酬であったとしても、長期では多大な費用負担が課せられることになるのです。この事実を知れば、否が応でも信託報酬を低く抑えたいと思われるでしょう。 そして、忘れがちなのが信託報酬以外のコストです。取引コストや監査費用などファンド運営に必要な経費が信託報酬以外にも掛かります。ファンドに課される全ての費用の純資産総額に対する比率を「経費率」と呼び、ファンドごとに開示されています。しかし、信託報酬以外の経費は開示される頻度が少なく、投資家が忘れがちなコストであるため「隠れたコスト」とも呼ばれています。 信託報酬率は一定ですが、それ以外の経費は「変動」します。そのため、信託報酬率が低位に設定されていたとしても、実際に投資家が負担するコストが著しく高くなる場合もあり得ます。流動性の低い資産(新興国資産など)を取り扱う投信はその傾向が強く、信託報酬の50%以上の追加コストが生じたケースもあります。信託報酬だけで投資するファンドを比較することは危険です。過大なコストはリターンを悪化させるため、投資信託やETFの購入を検討する際は、直近の運用報告書等を参照して経費率を比較すべきでしょう。 信託報酬などの経費はファンドにとっては税金と同じです。投資成績がマイナスであろうと、自動的に資産から引かれてしまいます。そして、負担する信託報酬が高いからといって、高いパフォーマンスを稼げるとも限りません(この観点は議論の的となっているため、別の機会で取り上げます)。であれば、支払う必要のある運用手数料を節約・低減させることは当然の選択です。 現在では、ETFやインデックス投信などで、投資に掛かる経費を低く抑えた商品が数多く出ていますので、これらの商品を活用することを検討しましょう。そして、運用報告書等の資料が閲覧可能であれば、必ず経費率と呼ばれる項目を確認し比較することをお勧めします』、「取引コストや監査費用などファンド運営に必要な経費が信託報酬以外にも掛かります。ファンドに課される全ての費用の純資産総額に対する比率を「経費率」と呼び、ファンドごとに開示」、「ETFやインデックス投信などで、投資に掛かる経費を低く抑えた商品が数多く出ていますので、これらの商品を活用することを検討しましょう。そして、運用報告書等の資料が閲覧可能であれば、必ず経費率と呼ばれる項目を確認し比較することをお勧めします」、なるほど。
・『取引額の5%もの手数料が掛かる金融商品もある  今では、株式や外国為替、暗号通貨などの資産をアプリ上で手軽に取引することができます。アプリを開いてから1分も掛からず取引を実行できるのは、一時代前からすると便利な時代になったと喜ばしく感じられます。しかし、手軽に取引ができるようになった一方で、取引コストに対して多くの人が鈍感になっていると感じられます。 取引に際して必要となるコストは以下の2つです。「ビット・アスク・スプレッド(以下、スプレッド)」と「取引手数料」です。スプレッドは取引する資産の「購入価格」と「売却価格」の差です。証券会社などの仲介業者(ディーラー)は安い価格で調達した資産を高く売却することが基本的なビジネスモデルですので、仲介する商品の価格差が彼らの利益になります。) 投資家の側に立って考えると、価格差が大きいほど高いコストを支払うことになります。このスプレッドは、仲介業者によって変わるだけでなく、取引環境によって変動します。流動性が高い(金融市場での取引量が多い)場合は、スプレッドが小さくなる一方で、流動性が低い(金融市場での取引量が少ない)場合は、スプレッドが大きくなる傾向があります。 もう一方の取引コストは「取引手数料」です。これは、取引業者が取引資産や金額ごとに決められている場合が多く、資産によっては取引金額が大きいほど手数料が安くなる場合もあります。一方で、スプレッドと異なり、市場環境によって料率が変化することはありません。 普段、個人投資家の方と話す機会も多くありますが、手数料を強く意識されている人は非常に少ない印象を受けます。「取引コストは必要経費」と捉えてしまい、どんなに高くとも受け入れてしまう傾向にあります。しかし、トルコリラなどの流動性の低い為替や、ビットコイン等の暗号資産に掛かる取引コストは非常に高く、中には取引金額の5%を超える手数料を徴取されるケースも存在します。大幅なコスト負担は、投資収支を著しく悪化させるため、可能な限り避けるべきでしょう。このような投資家マインドがある人ほど、中長期でしっかりと目標を達成しています。 機関投資家は「最良執行義務」を負っています。取引コストをできる限り低位に抑えるため、取引ごとに複数の銀行や証券会社から取引値を同時に聴取する「コンペ」を行っています』、「トルコリラなどの流動性の低い為替や、ビットコイン等の暗号資産に掛かる取引コストは非常に高く、中には取引金額の5%を超える手数料を徴取されるケースも存在します。大幅なコスト負担は、投資収支を著しく悪化させるため、可能な限り避けるべきでしょう」、その通りだ。
・『個人投資家は手数料をどう抑えるか  個人投資家は機関投資家のようにコンペは行うことはできません。そのため、口座開設時に手数料を比較し、最も低い手数料率を提示する金融機関で口座を作成するのがよいでしょう。手数料率が低いことが売りの証券会社であれば、大きく表記されています。 そして、もう一歩踏み込むのであれば、複数の金融機関で口座を開設し、取引ごとにビット・アスク・スプレッドの水準を確認できる体制を作ることも検討すべきです。これは、取引する金融機関でネットワーク障害が起きた際のリスクヘッジにもつながります。 最後に、コストの見方について説明します。多くの場合、取引コストは取引金額に対する「パーセンテージ」ではなく、「絶対値」で表記されています。コストを絶対値とすることで、実際の負担額がわかりやすくなる一方で、パフォーマンスへの影響が見えにくくなり、コストの心理的な負担を緩和してしまう効果があります。 そのため、コストは常に取引金額に対するパーセンテージでも考えるようにしましょう。そうすることで、普段からいかに高い取引コストが課されているかに気付くはずです。数回でもいいので、電卓をたたいて実際のコストがどの程度になるのか計算してみるとよいでしょう。感覚値との隔たりに、きっと驚くと思います。 ちなみに、取引コストが明示されていない場合もあります。例えば、ビットコインなどの暗号資産の場合、取引手数料は開示する一方で、スプレッドの目安が明示されていないケースが多くあります。しかし、それらの資産の取引コストは非常に高く、購入後に大幅な値上がりがなければ利益を得られない可能性が高いです。取引コストが投資リターンを大きく左右することになるため、取引する場合は信頼できる情報サイトを参照したり、実際に複数アカウントを開設してスプレッドを比較したりする必要があるでしょう。 後編では、「投資のルール化」や「家庭内投資委員会の設置」など、より実践的な内容について紹介します』、「コストは常に取引金額に対するパーセンテージでも考えるようにしましょう。そうすることで、普段からいかに高い取引コストが課されているかに気付くはずです」、その通りだ。

次に、この続きを、10月19日付け日経ビジネスオンラインが掲載したBagel X代表取締役の大崎 匠氏による「株主優待に飛びつくのは日本人だけ? 目先の利益でプロは買わない」を紹介しよう。
https://business.nikkei.com/atcl/plus/00014/101500002/
・『50歳から投資を始めようとしたとき、まずは口座開設し全額投資しよう!と意気込んでしまうもの。しかし投資には最低限押さえておくべきルールが存在します。前編「50歳で初めて投資 失敗しないために知っておくべきこと」では、元機関投資家の視点で資産運用にかかる手数料の重要性を解説しました。後編では、より実践的な内容について紹介します』、興味深そうだ。
・『投資をルール化する  機関投資家にとっては、顧客の資産が投資の原資にあたるため、どういった投資をするかには説明責任が生じます。投資成績がどうであろうとも、「なぜその資産(銘柄)なのか」「なぜこのタイミングなのか」など、自らがとった投資行動の根拠を用意しておく必要があります。そのため、社内で議論を尽くすだけでなく、取引証跡や判断根拠資料を保存し、説明責任を果たすための手間と時間を惜しみません。 一方で、個人の投資では、家計や自分の資産を運用に回すことになるため、第三者に対する説明責任を負うことはありません。誰にも相談せず、行き当たりばったりで投資をする「何となく投資」を始める傾向にあります。耳が痛い話かもしれませんが、投資家は往々にして自らの能力を過信しがち。自らの感覚やひらめきに頼って投資をしてしまう方が非常に多いのです。 十分な思慮を行わず、根拠も持たない投資は単なるギャンブルと何ら変わりません。そうした「何となく投資」を避けるためにも、前もって自らの投資行動に一定のルールを課すことをおすすめします。事前に何らかの投資制約を課すことで、向こう見ずなギャンブルを避けることができるからです』、「十分な思慮を行わず、根拠も持たない投資は単なるギャンブルと何ら変わりません。そうした「何となく投資」を避けるためにも、前もって自らの投資行動に一定のルールを課すことをおすすめします」、「前もって自らの投資行動に一定のルールを課す」、実際にやるとなれば、大変な手間だ。
・『運用ガイドラインを設定する  機関投資家は、新たな運用戦略を立ち上げる際に「運用ガイドライン」を設定します。ここでいうガイドラインとは、常に順守を求められる「ルール」。あらかじめガイドラインを設定し、新たな投資をするときだけではなく、日々のモニタリングを含め、あらゆる状況下において、そのルールを順守することが求められます。また、運用ガイドラインは1年ごとなど定期的に見直し、環境や状況の変化に応じて内容を修正します。 運用ガイドラインを設定する目的は、意図しないリスクを負わないためです。このガイドラインの中で、運用の目的や収益目標、自分の組織のリスク許容度に基づいて投資可能資産や資産アロケーション(割り当て)の範囲などを事前に決めます。そうすることで、過度なリスクテイクを抑制し、自らの能力を過信した衝動的な投資を未然に防ぐことができるからです。 こうした運用ガイドラインの設定は、個人投資家こそ実践すべきです。具体的には以下の通りです。 【個人投資家が行うべき運用ガイドライン】 具体的な内容や数値については個々人のリスク許容度や目標金額によって異なるため、あくまでこれらは一例とお考えください。 (1) 投資は自由に使えるお金の80%までとする【理由】急な出費が重なったり、生活費が足りなくなったりした場合、資産を売却せざるを得なくなります。安定的な資産運用を継続するためにも、資金を投資に振り分けすぎないことが肝要です。 (2)信用取引やオプション取引は行わない【理由】投資リスクが非常に高まってしまうため、リスクを追い求める投資家以外は手を出さない方が身のためでしょう。投資原資を超える損失を被るリスクすらあります。 (3) 新興国への投資は運用資金の10%までとする【理由】期待される投資リターンは大きいが、リスクも相応に高いです。特に新興国の為替リスクは高いため、比較的小さい金額で運用すべきでしょう。 (4) 株式の配当金や債券の利払い金は全額再投資に回す【理由】長期的な複利効果を狙うためです。しかし、定年退職などの理由で収入が減った場合はその限りではありません。 機関投資家は当然、より詳細なガイドラインを設定しています。しかし、個人投資家であれば、過度に複雑になってしまうことを避けるため、この程度の粒度が適切でしょう。設定するルールは、投資期間や目標資産金額といった身の丈に合ったものにすることが肝要です。 もう一つ重要な点は、ルール設定の幅を広げすぎないことです。幅を広げすぎると、何でもありの投資を許容することになり、ガイドラインの意味をなくしてしまいます。ルール設定によってある程度選択肢を狭め、その中で最適な運用を心がけましょう』、「ルール設定によってある程度選択肢を狭め、その中で最適な運用を心がけましょう」、なるほど。
・『家庭内「投資委員会」を立ち上げよう  機関投資家は、資産運用に関する重要な決定を、四半期ごとなど定期的に開催される「投資委員会」にて行っています。委員会の主な機能は、投資に関する情報共有と意思決定です。 過去の運用成績を振り返るとともに、今後の見通しと運用戦略を議論します。また、ガイドラインの設定・修正や、新たな投資戦略、特に金額の大きい投資案件の承認も行われるなど、議論される内容は多岐にわたります。委員会を設置することで、PDCAサイクルを回し、投資を所管する部門へのけん制になります。 ほとんどの個人投資家は投資の意思決定を1人で行い、投資の相談を第三者にすることは少ないのではないでしょうか? 家計のリスク耐性や目標資産額に見合わないような過度なリスクテイクを避けるためにも、家庭内で「投資委員会」を立ち上げ、ご家族と資産運用について、定期的に話し合ってみてはいかがでしょうか。また、信頼できる友人や資産運用のプロフェッショナルに相談するのも選択肢の一つでしょう。 プライベートな投資委員会の設立は面倒が多いと思われるかもしれません。しかし、家庭内に投資委員会を設置することで、「何となく投資」を避けることができます。このプロセスを通すことで「本当に投資すべきなのか?」「その投資戦略に論理性はあるのか?」と自分に問うことができます。そして、自分以外の人に相談することで、違った視点での気づきを得られ、自らのロジックのもろさが露呈するかもしれません。 さらに、資産状況と資産見通しの共有ができるメリットもあります。ご家族に相談されるのであれば、将来的な相続について早くから話し合うことができます。「50歳代で相続の話をするのは早い」と思われるかもしれません。しかし、日ごろから将来相続を受ける立場である人の意見や意向を取り入れながら運用したり、家計の資産状況を共有したりしておけば、自分に何かあった場合にも円滑な相続手続きを行えます。老後の医療費、生活費の負担や次の世代に向けた資産形成など、家族単位での資産運用を考えることができる、という副次的な効果も期待できます。 ただ、相談する相手、つまり「投資委員会」のメンバーの選定には十分な注意が必要です。必ずしも資産運用のプロである必要はありませんが、話をうのみにせず自分で考えられる人であると同時に、センシティブな内容の相談もできる人が適任です。むしろ、投資経験がない人の方が、バイアスのない純粋な意見を期待でき、良いブレーキとなるかもしれません』、私個人は、「老後の医療費、生活費の負担や次の世代に向けた資産形成など、家族単位での資産運用を考える」必要性は認めるが、「投資委員会」は不要だと思う。
・『投資をする上での留意点  初心者の投資家が知るべきことはいろいろあります。ここからは、投資を始める上で最低限知っておくべき情報を、いくつかご紹介します。 (1)資産を増やすために適切なリスクを取る 資産運用には「フリーランチはない」という言葉があります。日本で言うところの「働かざるもの食うべからず」に近い意味ですが、資産運用の世界では「リターンを得るためには、それに見合ったリスクを取る(つまり、資金を働かせる)必要がある」ことを意味します。至極当たり前なことを言っていますが、実は非常に大事なことを伝えています。 資産の減少を過度に恐れるがゆえに、全く資産運用をせず、銀行預金に資金を寝かせたままの方が多くいます。そして、運用をしていたとしても、定期預金や国債などリスクが著しく低い投資に終始してしまう方もいます。個人投資家のリスク耐性は人それぞれであり、正解は存在しません。ただ、積極的に資産を増やしていきたいと考えるなら、手に入れたいリターンに見合うリスクを積極的に取る必要があります。 最近では、インデックス投信や同ETF(Exchange Traded Funds/上場投資信託)のみへの投資を推奨する戦略が増えています。個人的にも、運用コストを低減し、市場リターンを獲得する非常に有効な戦略だと思っています。ただ、目標資産額と運用期間によっては、インデックス投信やETFだけでは達成が難しい場合もあります。特に、これまで資産運用を積極的に行ってこなかった方々で、目標資産金額を高く設定している場合は、やや高めのリスクを取った運用をする必要もあるでしょう。その場合、資金の全てをインデックス投信に投じるのではなく、例えば保有資産の20%を個別株などリスク性の高い資産に回すことも一つの戦略ではないでしょうか』、「資産運用には「フリーランチはない」という言葉があります・・・資産運用の世界では「リターンを得るためには、それに見合ったリスクを取る・・・必要がある」、最も基本的なことだ。
・『2)高配当株に依存した生活設計をしない  現代では、ストレスフルな社会人生活を脱し、経済的自由を謳歌するという考え方が流行しています。その代表的な考え方が「FIRE(Financial Independence, Retire Early/経済的に独立し、早期に引退する)」です。文字通り、ある程度の規模を持つ資産を形成し、その後は職を辞して、資産からの収益で生活していく考え方を指します。 そして、FIREを実現させる投資戦略として、「高配当株」への投資がもてはやされています。配当金が多ければ、それだけ生活費に回せるお金が増えることが理由です。聞こえの良い話ではありますが、株式配当に依存した生活設計は実のところ危険をはらんでいるので注意が必要です。 企業がどれだけの配当金を支払うか決める「配当政策」は固定化されたものではなく、会社の業績や経営陣の方針によって変化します。特に、業績が大幅に悪化した際に配当支払いが減額されたり、場合によっては打ち切られたりすることもあります。 かつて、東京電力は高配当株として人気が高く、老後の収入源として同社の株を購入する投資家が大勢いました。しかし、東日本大震災に伴う原発事故によって、東京電力は配当支払いを停止し、以降、現在に至るまで配当を再開していません。米国においても、コロナ禍で資金繰りが悪化した航空関連会社やエネルギー関連会社の一部が配当の停止、または大幅な減額を決定しました。これらの企業も高配当株として以前から高い人気を誇っていました。しかし、業績悪化を理由に配当を停止し、そこから1年以上経過した今でも配当を再開していない企業が多く存在します。 「配当が減少した時点で他の高配当銘柄に乗り換えればいい」と考えている人もいるでしょう。しかし、配当が減額された銘柄の株価は往々にして大きく下落してしまいます。銘柄の入れ替えによって配当額を増やそうと考えても、時価の下落した銘柄からの入れ替えでは投資資金が足りなくなってしまう恐れもあります。 高配当株を選好する戦略を否定するつもりはありません。しかし、「配当は変化する」という前提を忘れず、配当金に対する依存度を下げておかなければ、リスク事象が発現した際に、生活設計が狂ってしまう可能性が高くなります。 投資から定期的な収入を得たいのであれば、インデックスETFやセクター別・テーマ別のETF、社債投信を購入するのがよいでしょう。高配当株よりも配当利回りは劣りますが、分散効果によって配当の減額や停止の影響を抑えることができますし、社債投信であれば安定的な金利収入が期待できます。なので、FIREを実践したいのであれば世間でいわれているより多くの金融資産に投資し、分散効果を利かせながらリスクを下げていくことが必要になるでしょう』、「「配当は変化する」という前提を忘れず、配当金に対する依存度を下げておかなければ、リスク事象が発現した際に、生活設計が狂ってしまう可能性が高くなります。 投資から定期的な収入を得たいのであれば、インデックスETFやセクター別・テーマ別のETF、社債投信を購入するのがよいでしょう」、その通りだ。
・『(3)株主優待のみを目的にしない  日本特有の現象として、株主優待を目的とした投資を好む投資家が多く存在します。自社サービスの割引券や株主限定商品の配布など、魅力的な株主優待に目移りしがちですが、資産を増やすための投資において株主優待は不要な存在です。そもそも、諸外国と比較して、日本企業の配当性向(純利益に占める配当金額の比率)や自社株買いといった株主還元政策は遅れており、株主優待はその隠れみのにされているという批判があります。 投資対象として魅力的な企業が、たまたま魅力的な株主優待を提供しているのであれば問題ないでしょう。しかし、株主優待を目的に、投資対象として魅力的でない企業の株式を購入してしまっては本末転倒です。手に入れた株主優待の価値より大きい機会損失を被る可能性すらあるため、株主優待を目的とした投資は再考すべきでしょう。 資産を増やすことを一義的な目的とせず、株主優待を楽しむために投資することを批判するつもりは一切ありません。株主優待をどう捉えるかは投資の目的によって大きく変わってきます。中には株主優待が生活費の節約になったり、好きな特典がついてくるといったこともあるでしょう。ですが、資産形成のための投資をするのであれ、一時の株主優待に目がくらんではいけないということを忘れずにいてください。目先の利益や誘惑にとらわれないようにしましょう』、「手に入れた株主優待の価値より大きい機会損失を被る可能性すらあるため、株主優待を目的とした投資は再考すべきでしょう」、同感である。

第三に、本年6月1日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員の山崎 元氏による「ESG投資が運用として「明らかにダメ」でも流行る本当の理由」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/303996
・『ESG(環境・社会・企業統治)の名目で資金を集める運用商品は一大ビジネスに育った。しかし、ESG投資によって生じた矛盾や無駄は小さくなく、運用としては「明らかにダメ」だ。その理由を解説しよう』、興味深そうだ。
・『運用業界が作り上げた新しいビジネスが「ESG投資」  米国の通称「SEC」こと証券取引委員会が、「ESG(環境・社会・企業統治)」「サステナブル(持続可能)」「低炭素」などと称する運用商品について、義務づける開示情報のルールを検討していることが運用業界で話題になっている。日本でも同類の商品について、商品名に内容が伴っているのかについて金融庁が関心を寄せていることが報じられている。 ところで、「ESG銘柄が○○%以上含まれていなければ、商品名にESGと付けてはいけない」といった規則ができると、運用会社にとってはなかなか厄介だ。どの銘柄が「ESG銘柄」なのか判断する納得性のある基準を提示するのは難しい。さりとて、「当社はESG銘柄を判断する明確な基準を持ってはいません」というわけにもいかない。今や、ESG投資は運用業界にとって無視できない大きさのビジネスに育ったからだ。 そもそも、ESG投資を大きな商品カテゴリーに育てるために、運用業界は多大な努力を払ってきた。「社会運動に便乗した」ともいえるし、「社会運動そのものを積極的に起こした」ともいえそうで、実態はおそらくその両方だろう。 筆者の見るところ、運用業界としてはビジネス上、アクティブ運用の実績をインデックス運用に対して十分に優位なものにはできないことが明らかになってきた。そんな中、インデックス運用だけでは十分な収益にならないために、何とか次の収益源として作り上げたのが「ESG投資」なのだ。その善し悪しは別として、ビジネスとして広げる過程はなかなか興味深いものだった。 もっとも、これは運用業界側の事情だ。投資家の側では「ESG投資」をどう理解したらいいかという問題がある』、「運用業界としてはビジネス上、アクティブ運用の実績をインデックス運用に対して十分に優位なものにはできないことが明らかになってきた。そんな中、インデックス運用だけでは十分な収益にならないために、何とか次の収益源として作り上げたのが「ESG投資」なのだ」、なるほど。
・『ESG投資とは「社会活動」と「運用手法」の二つの側面を持つ  ESG投資とは、投資対象企業の「環境(Environment)」「社会性(Social)」「(企業)統治(Governance)」を基準に行う投資を指す。例えば、地球環境の悪化をもたらしていると目される企業の株式に投資しないことや、社会的に好ましい貢献をしている企業の株式に積極的に投資するような投資行動を指す。 こうした投資行動によって、一つには企業の活動を好ましい方向に導くことが期待されるとする。また、株主である投資家が企業に対してE・S・Gそれぞれで望ましい行動を取るように企業とコミュニケーションを取ったり、議決権行使を行ったりすることで、企業の行動が改善する効果が期待される。これらは、いわば「社会活動としてのESG投資」だ。 さらには、E・S・Gそれぞれで望ましい行動を取る企業の株式は投資パフォーマンスが良いと期待できるのではないかという「運用上の効果」が語られることもある。こちらは「運用手法としてのESG投資」だ』、「社会活動としてのESG投資」、「運用手法としてのESG投資」、2つの側面があるようだ。
・『「ESG投資」vs「普通の投資」 軍配が上がるのはどちらか?  さて、企業そのものやその株式の価値を評価する上で、E(環境)やS(社会)やG(統治)が重要であることは論をまたない。これらの要素は将来のコストにも反映するし、これらの要素に対する現在の取り組みが将来の収益にも影響するだろう。 これらは、「ESG投資」でなくても、「普通の投資」にあっても真剣に評価されるべき重要な要素の一部だ。また、株式の保有・売却の判断だけでなく、保有株式の議決権の行使等に当たっても株式のオーナーたる機関投資家は、自らの保有する株式のパフォーマンス改善のために、E・S・Gを含めた企業経営上の諸要素への関与にあってベストを尽くすことが望ましい。この点も「普通の投資」にあって同様だ。建前上、手抜きは許されない。 こう考えると、「ESG投資」の判断は「普通の投資」の判断と何が違うのかという疑問が生じる。何かが違うのでなければ、少なくとも「運用手法としてのESG投資」には意味がなくなる。 しかし、「普通の投資」の総合的な判断と異なる結果のポートフォリオを持つということは、「普通の投資」としての運用会社のベストな判断から距離が発生するということだ。運用としては何らかの点でベストなポートフォリオから遠ざかることを意味する。 素朴な例を考えるとするなら、投資可能な上場銘柄が10銘柄しかない世界を想像して、E・S・Gのいずれかの事情で投資対象から2銘柄を除外するとしよう。ポートフォリオの「事前の判断」としては、10銘柄全てを使える条件のポートフォリオの方が、8銘柄に制約されたポートフォリオよりも少なくとも劣らないはずだ。むしろ、おそらくは優れたものになることは想像に難くない。 「普通の投資」と「ESG投資」について二つのポートフォリオを作ると、「事前の判断のレベル」ではほぼ常に「普通の投資」が優位なはずだ。そして、運用会社の真の商品は「事前の判断」なのである。運用会社の「事前の判断」に意味があるのでなければ、少なくともその運用会社のアクティブ運用には価値がない。顧客にとって両者の運用上の優劣は、結果論で判断すべきレベルの問題ではない。 投資家側から見ると、運用効率だけで判断するなら「ESG投資」は「普通の(ベストな)投資」よりも劣るポーフォリオに投資して、かつ何がしか高いフィー(運用手数料)を取られる投資商品だといえる。 商品・ビジネスとしてのESG投資をあえて正当化するなら、投資家が「社会運動としてのESG投資」の効果を良いものと評価して満足するか、「ポートフォリオがESG的」であることに精神的に満足するかの可能性を提供しようとする、運用効率至上主義ではないサービスビジネスだということになる』、「商品・ビジネスとしてのESG投資をあえて正当化するなら、投資家が「社会運動としてのESG投資」の効果を良いものと評価して満足するか、「ポートフォリオがESG的」であることに精神的に満足するかの可能性を提供しようとする、運用効率至上主義ではないサービスビジネスだということになる」、つまり「ESG投資」は恰好つけに過ぎない。
・『年金基金の立場が興味深いESG投資と職務義務に「深刻な矛盾」  さて、内外の企業年金や公的年金などの年金基金は、ESG投資の主要顧客だと言っていいのだが、ここで興味深い問題が生じている。 彼らは、建前として年金加入者の積立金の運用に当たって「運用効率至上主義」でなければならないからだ。ポートフォリオとしての効率が落ちて、さらにインデックス運用よりも高いフィーを支払うESG投資を採用することと、彼らが年金加入者などに対して負っている義務との間には深刻な矛盾がある。その義務とは、「プルーデントマンルール」などと呼ばれる、専門知識を生かして思慮深い投資行動を取ることを定めた原則だ。 筆者が思うに、年金基金がESG投資を採用するためには、運用部隊や、運用部隊に意見を具申する運用委員会のような組織の意思決定だけでは不十分だ。それだけでなく、代議員大会レベルで「ベストな運用効率には劣る可能性があるが、ESG投資を一定の上限額の下に採用していいか」といった内容を問う議案を可決して、意思決定する必要がある。 通常「運用委員会」は、運用の専門家として運用効率至上主義の観点から技術的なアドバイスを行う組織だ。「運用効率は一部損なわれるが、ESG投資には意義がある」といった価値判断を行う主体ではない。 また、各国の制度の下にあって、年金基金が運用効率至上主義とは異なる方針を採って運用することが認められているかどうかという問題もある。さらには、基金の設立主体である企業年金なら母体企業、公的年金なら主務官庁などの方針と矛盾しないかという点も問われなければならない。 平たく言うと、年金基金には自分たちの一存によって「他人のお金で、格好を付ける」権限は与えられていないのだ』、「各国の制度の下にあって、年金基金が運用効率至上主義とは異なる方針を採って運用することが認められているかどうかという問題もある。さらには、基金の設立主体である企業年金なら母体企業、公的年金なら主務官庁などの方針と矛盾しないかという点も問われなければならない」、確かにその通りだ。
・『しかし、マーケティングの急所は年金基金だった  一方、興味深いのは、年金基金には前記のような立場上の事情があるにもかかわらず、ビジネスとしてのESG投資を見ると、マーケティング戦略上の急所が他ならぬ年金基金だったように見えることだ。 ESG投資は、特に欧州の年金運用の世界から拡大し、わが国の年金運用にも影響を及ぼすようになった。そして、やがては「世界的にも拡大している運用手法」と喧伝されて個人向けの投資信託などにも採用されるようになった。 運用業界が意識的に年金基金を狙うマーケティング戦略を立てたのかどうかは確認のしようがない。しかし、考えてみるに、「インデックス運用ばかりになると商売はあがったりだ(=われわれのすることがなくなる)」という事情は運用会社だけでなく、年金基金にとっても同様だ。 また、ESGの諸要素に関して運用会社に注文を付けるのは、年金基金の担当者にとって「気分のいい仕事」になり得る点も商売上は見逃せない。 ちなみに、年金運用業界にあってESG運用と似た立場にあるのが、アクティブ運用だ。現実問題としてアクティブ運用には、以下のような事情がある。 (1)手数料まで考えた場合にインデックス運用の方がアクティブ運用よりも優れていると判断できる場合が多い (2)大規模な基金のリターンはほとんどがアセットアロケーション(資産配分)段階で決まること (3)アクティブ運用の採否や管理には手間とコストが掛かる  それにもかかわらず、「コアサテライト」(インデックスファンドを中核として、周辺にアクティブ運用を配するイメージだ)などという意味のない概念まで繰り出して、運用資産の一部だけでもアクティブ運用を続けようとする基金が多い。その理由は、運用会社や年金基金に付いているコンサルタントだけでなく、年金基金自身の「仕事作り」になっているからだ。 つまり運用業界は、経営コンサルタントが「経営企画部」に戦略コンサルティングを売ったり、法律事務所が企業の法務部門に「コンプライアンス研修プログラム」を売ったりするのと同じことをした。年金基金に対して、彼らの「仕事作り」に貢献する「ESG投資」という運用商品と新しい仕事のプログラムを売ったのだ。ビジネスとしては、別の商品・サービスにも応用が利きそうな興味深い経緯である』、「つまり運用業界は・・・年金基金に対して、彼らの「仕事作り」に貢献する「ESG投資」という運用商品と新しい仕事のプログラムを売ったのだ」、その通りだ。
・『投資すべきはESGの「優等生」か 実は「劣等生」に投資妙味  ところで、E・S・Gが企業評価上重要だとして、投資すべき対象はそれぞれの項目ないし総合点の上位企業なのだろうか、あるいは下位企業なのだろうか。 ESG投資が普及する初期によく語られたのは、ESGがダメな企業の株式を機関投資家が売るとすれば、株式を売られたくない経営者が改心する理由になるのではないかといったストーリーだった。この話を重視するなら、ESGの優等生企業に投資するのがいいということになる。 一方、株式投資で高いリターンが得られるのは、企業に「好ましい変化」が起こったときだ。ESGが企業評価上重要なら、ESGの劣等生企業に投資してESG要素の「改善」に期待する方が、既にESGの優等生企業がさらに意外なくらい優等生になる変化に期待するよりも有望な可能性がある。 加えて、企業の行動に対する効果を考えるとして、ESG劣等生企業の株式を保有する大株主が、経営者とのコミュニケーションや株主総会、議決権行使、さらには取締役会への関与などを通じて好ましい行動変化を促す方が、劣等生企業の株式を保有せず、関与しないよりも有効かもしれない。 ESGを意識する投資家が投資すべき企業は、ESGの優等生の方なのか劣等生の方なのか――。投資の効果の上ではもちろん、企業の行動変容を促す上でも案外判然としない』、「ESGを意識する投資家が投資すべき企業は、ESGの優等生の方なのか劣等生の方なのか」、確かに「判然としない」ようだ。さすが、山崎氏だけあって、単なる「ESG投資」の売り言葉ではなく、本質を突いた意味を問いかけた力作だ。 
タグ:日経ビジネスオンライン 大崎 匠氏による「50歳で初めて投資 失敗しないために知っておくべきこと」 「普段からコストに対する意識を高く持ち、コストの低減化を心がけましょう」、その通りだ。 「取引コストや監査費用などファンド運営に必要な経費が信託報酬以外にも掛かります。ファンドに課される全ての費用の純資産総額に対する比率を「経費率」と呼び、ファンドごとに開示」、「ETFやインデックス投信などで、投資に掛かる経費を低く抑えた商品が数多く出ていますので、これらの商品を活用することを検討しましょう。そして、運用報告書等の資料が閲覧可能であれば、必ず経費率と呼ばれる項目を確認し比較することをお勧めします」、なるほど。 「トルコリラなどの流動性の低い為替や、ビットコイン等の暗号資産に掛かる取引コストは非常に高く、中には取引金額の5%を超える手数料を徴取されるケースも存在します。大幅なコスト負担は、投資収支を著しく悪化させるため、可能な限り避けるべきでしょう」、その通りだ。 「コストは常に取引金額に対するパーセンテージでも考えるようにしましょう。そうすることで、普段からいかに高い取引コストが課されているかに気付くはずです」、その通りだ。 大崎 匠氏による「株主優待に飛びつくのは日本人だけ? 目先の利益でプロは買わない」 「十分な思慮を行わず、根拠も持たない投資は単なるギャンブルと何ら変わりません。そうした「何となく投資」を避けるためにも、前もって自らの投資行動に一定のルールを課すことをおすすめします」、「前もって自らの投資行動に一定のルールを課す」、実際にやるとなれば、大変な手間だ。 「ルール設定によってある程度選択肢を狭め、その中で最適な運用を心がけましょう」、なるほど。 私個人は、「老後の医療費、生活費の負担や次の世代に向けた資産形成など、家族単位での資産運用を考える」必要性は認めるが、「投資委員会」は不要だと思う。 「資産運用には「フリーランチはない」という言葉があります・・・資産運用の世界では「リターンを得るためには、それに見合ったリスクを取る・・・必要がある」、最も基本的なことだ。 「「配当は変化する」という前提を忘れず、配当金に対する依存度を下げておかなければ、リスク事象が発現した際に、生活設計が狂ってしまう可能性が高くなります。 投資から定期的な収入を得たいのであれば、インデックスETFやセクター別・テーマ別のETF、社債投信を購入するのがよいでしょう」、その通りだ。 「手に入れた株主優待の価値より大きい機会損失を被る可能性すらあるため、株主優待を目的とした投資は再考すべきでしょう」、同感である。 ダイヤモンド・オンライン 山崎 元氏による「ESG投資が運用として「明らかにダメ」でも流行る本当の理由」 「運用業界としてはビジネス上、アクティブ運用の実績をインデックス運用に対して十分に優位なものにはできないことが明らかになってきた。そんな中、インデックス運用だけでは十分な収益にならないために、何とか次の収益源として作り上げたのが「ESG投資」なのだ」、なるほど。 「社会活動としてのESG投資」、「運用手法としてのESG投資」、2つの側面があるようだ。 「商品・ビジネスとしてのESG投資をあえて正当化するなら、投資家が「社会運動としてのESG投資」の効果を良いものと評価して満足するか、「ポートフォリオがESG的」であることに精神的に満足するかの可能性を提供しようとする、運用効率至上主義ではないサービスビジネスだということになる」、つまり「ESG投資」は恰好つけに過ぎない。 「各国の制度の下にあって、年金基金が運用効率至上主義とは異なる方針を採って運用することが認められているかどうかという問題もある。さらには、基金の設立主体である企業年金なら母体企業、公的年金なら主務官庁などの方針と矛盾しないかという点も問われなければならない」、確かにその通りだ。 「つまり運用業界は・・・年金基金に対して、彼らの「仕事作り」に貢献する「ESG投資」という運用商品と新しい仕事のプログラムを売ったのだ」、その通りだ。 「ESGを意識する投資家が投資すべき企業は、ESGの優等生の方なのか劣等生の方なのか」、確かに「判然としない」ようだ。さすが、山崎氏だけあって、単なる「ESG投資」の売り言葉ではなく、本質を突いた意味を問いかけた力作だ。
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税制一般(その3)(「駆け込み生前贈与」の前に!富裕層でなくても要注意の税務調査DX化、法律改正で大増税!?税務署に狙われる「駆け込み生前贈与」の落とし穴) [経済政策]

税制一般については、昨年12月24日に取上げた。今日は、(その3)(「駆け込み生前贈与」の前に!富裕層でなくても要注意の税務調査DX化、法律改正で大増税!?税務署に狙われる「駆け込み生前贈与」の落とし穴)である。

先ずは、本年2月11日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した税理士・岡野雄志税理士事務所所長の岡野雄志氏による「「駆け込み生前贈与」の前に!富裕層でなくても要注意の税務調査DX化」を紹介しよう。
https://diamond.jp/articles/-/295611
・『注目の「相続税と贈与税の一体化」は、政府与党『令和4年度税制改正大綱』においても前年同様、「本格的な検討を進める」との表現にとどまった。2021(令和3)年末に閣議決定され、財務省が公表した『令和4年度税制改正の大綱』にも具体案は見当たらない。しかし、油断は禁物。今後の生前贈与の注意点を挙げてみる』、興味深そうだ。
・『失敗例から学ぶ「駆け込み贈与」の注意点  一昨年末、「暦年課税が廃止に……?」との懸念が広がり、世間をざわつかせた『令和3年度税制改正大綱』の文言は次の通りである。「相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直す」。 受贈者一人につき年間110万円までの贈与額なら贈与税が非課税になる「暦年贈与」は、生前贈与で相続税対策をしたい富裕層には定番の方法と言える。そのため、「相続税と贈与税の一体化」実施前に暦年贈与をという駆け込みが増加。実際、当税理士事務所にもこの件に関するご相談が増えている。 しかし、暦年贈与にも注意点はある。贈与者が亡くなって相続開始となった場合、その死亡日からさかのぼって3年以内の暦年贈与額は相続財産額に含まれ、相続税の課税対象となるからだ。 以前、『富裕層の節税対策を封じ込める!?「相続税と贈与税の一体化」』の回でも述べたが、贈与者がご高齢、あるいは既往症や持病がある場合、当税理士事務所ではむしろ「都度贈与」をおすすめする。夫婦、親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から受け取った生活費や教育費に充てるための財産には、そもそも贈与税がかからないからだ。 都度贈与は受贈者の口座に振り込んだり、現金で手渡したりせず、なるべく費用を直接払うのもポイントだ。なぜなら、受贈者が本来の目的に使わず、生活や教育に必要と認められないものを購入したり、貯金したりすると、贈与税の対象になるからである。 特に入学金や授業料、手術代や入院費など、比較的高額になる場合は直接支払う。そして、支払先から領収書をもらい、保管しておく。万が一の税務調査への予防策となる。 近年の判例から、富裕層は特に注意したいのが『財産評価基本通達 第1章総則6項(総則6項)』だ。国税局・税務署の「伝家の宝刀」とも呼ばれ、めったに振り回すことはないが、「過剰な節税」とみなされると切り込まれ、裁判で追い込まれるケースも多い。 相続税法では、相続や贈与で得た財産の評価は、その相続・贈与発生時点での時価で行われることになっている。例えば、有価証券の相続なら、相続発生日、発生月、前月、前々月の単価を比較し、最も安い単価で評価する。また、不動産資産の土地評価の計算には、路線価方式や倍率方式が用いられる。 ところが、都内高級住宅地にあるマンションを相続した相続人がローン残債と路線価評価により相続税を0円で申告したところ、税務調査となり追徴課税を求められた。これを不服とした相続人が裁判所に訴えたのだが、総則6項により敗訴してしまった。 総則6項には「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の評価は、国税庁長官の指示を受けて評価する」とある。「著しく不適当」とはかなり曖昧な表現だが、上記の例では路線価と時価の差額が大きく、時価が適用された。 しかも、悪いことに、被相続人がマンション購入の際、融資金融機関と交わした覚書に「節税対策である」と記されていた。生前贈与の場合も、たとえ本心は相続税対策であっても、子や孫の住宅購入費を援助するためなど、合理的理由を用意すべきである』、「都度贈与は受贈者の口座に振り込んだり、現金で手渡したりせず、なるべく費用を直接払うのもポイントだ。なぜなら、受贈者が本来の目的に使わず、生活や教育に必要と認められないものを購入したり、貯金したりすると、贈与税の対象になるから」、なるほど。「被相続人がマンション購入の際、融資金融機関と交わした覚書に「節税対策である」と記されていた」、何とも間の悪いことになったものだ。
・『証券会社の顧客マイナンバー取得がついに法制化  さらに注意すべきは、国税庁による「税務行政のデジタルトランスフォーメーション(DX)」が、思いのほか急速に進捗していることである。菅前首相肝いりのデジタル化は岸田首相へのトップ交代で行方が注目されたが、コロナ禍が推進を後押ししたようだ。 2019(令和元)年度税制改正を受け、国税通則法等が改正され、証券会社が証券保管振替機構(ほふり)から顧客マイナンバーを取得できるようになった。2021(令和3)年末がマイナンバー登録の猶予期限になっているが、いまだに未登録者が多いためだ。2022(令和4)年から取得可能となった。 もちろん、この背景には税務行政上の都合がある。国税・地方税の税務調査でマイナンバーが付された証券口座情報を効率的に利用できるよう所要の措置を講ずるというのが目的だ。 証券会社は税務当局にマイナンバー付き支払調書を提出し、税務当局は証券会社にマイナンバー付きで加入者情報を照会する。加入者情報をマイナンバーにより検索可能な状態で管理する証券会社は、速やかに税務当局からの照会に応じられる仕組みだ。 2022(令和4)年1月から本格稼働の『pipitLINQ(R)(ピピットリンク)』は、株式会社NTTデータが提供する行政機関から金融機関への預貯金照会業務デジタルサービスである。すでに200余の行政機関、40余の金融機関が導入している。 また、生命保険契約照会制度も、2021(令和3)年7月からすでに開始されている。こちらは、死亡、認知判断能力の低下、災害で行方不明となった人の生命保険契約の有無を家族などが照会できる制度だが、デジタル化が進んでいる一つの証しだ。 いずれ早晩、銀行口座や生命保険もマイナンバーでひも付けされ、国税局や税務署が照会できる時代は来るだろう。そうなれば、税務調査の効率化・迅速化は格段に進む』、「証券会社が証券保管振替機構・・・から顧客マイナンバーを取得できるようになった。2021(令和3)年末がマイナンバー登録の猶予期限になっているが、いまだに未登録者が多いためだ」、確かに、証券会社からしつこくマイナンバーの登録を要請された。
・『国税庁の事務業務センター化で税務調査も効率アップ?  さらに、国税庁では、2021(令和3)年7月から「内部事務のセンター化」を実施している。相談や問い合わせ、調査・徴収などの外務事務と、申告書の入力処理、申告内容等についての照会文書の発送などの内部事務を分け、事務業務の効率化を図るためだ。 税務事務のセンター化に伴い、行政指導の責任者が国税局長となる場合があり、国税局長名で申告内容に関するお尋ねが届くことがある。税務調査の通知と勘違いして慌てる人もいるが、行政指導はあくまで納税者の自発的な見直しを要請するものだ。 ただし、行政指導を侮ってはいけない。自主的に修正申告書を提出しても、延滞税を納付しなければならない場合がある。また、税務調査のように過少申告加算税は課されないものの、当初申告が期限後申告の場合は、無申告加算税が原則5%賦課される。 税務調査は「調査」であることが明らかに伝えられ、「調査通知」→「事前通知」→「実地調査」という手順で行われる。税務代理を委任された税理士にも通知される。2013(平成25)年1月から国税通則法の改正により、行政指導と税務調査の違いが明確化された。 コロナ禍で税務調査も動きが封じられるだろうと高をくくってはいけない。確かに、令和2事務年度〔2020(令和2)年7月~2021(令和3)年6月〕は、相続税も贈与税も実地件数は前年度比約50%減となった。しかし、贈与税の実地調査1件当たり追徴税額は201万円、対前年度比86.7%である。 贈与税の非違(申告漏れなどの違法行為)件数のうち無申告は82.2%。贈与税の無申告や申告漏れは、相続税申告であぶり出されるケースが多い。しかも、贈与税の財産別非違件数は現金・預貯金等がトップで74.2%、次いで有価証券が10.0%。 今後、国税庁のDX化がさらに進み、電話などによる簡易な調査やウェブ会議システムなどを利用したリモート調査も増えるとみられる。マイナンバーひも付けによる金融機関照会がスムーズになれば、今後は調査件数も増え、成果も上がるかもしれない。 近頃は、金融商品のネット取引も増加している。富裕層でなくても、相続発生の際、被相続人のパスワードを知らなくて大変な思いをする相続人も少なくはない。無申告や申告漏れにならないよう、十分注意したい』、「今後、国税庁のDX化がさらに進み、電話などによる簡易な調査やウェブ会議システムなどを利用したリモート調査も増えるとみられる。マイナンバーひも付けによる金融機関照会がスムーズになれば、今後は調査件数も増え、成果も上がるかもしれない」、納税者としては、疑いを持たれないよう万全の備えをしておく必要がありそうだ。

次に、3月9日付けダイヤモンド・オンラインが掲載した税理士法人レガシィによる「法律改正で大増税!?税務署に狙われる「駆け込み生前贈与」の落とし穴」を紹介しよう。
・『2020年12月、税制改正大綱が発表されてからというもの、「近い将来、生前贈与がなくなるのではないか」と話題になり、相続を専門とする税理士法人である私たちのところにも、多くの問い合わせや取材が殺到しました。「生前贈与がなくなる」と聞いても、今一つピンと来ないかもしれませんし、または「うちはたいした財産がないから関係ないよ」と思われる人もいるでしょう。しかし多くの人たちにとって、この「生前贈与」改正の影響は大アリなのです。そこで今回は税理士法人レガシィの新刊『「生前贈与」のやってはいけない』(青春出版社)から、税制改正大綱にむけて駆け込み相続を考える時のポイントについて抜粋紹介します』、興味深そうだ。
・『「相続税と贈与税を一体化する」の意味  「相続税や贈与税が大増税になるかもしれない!」 令和2年12月10日、令和3年度(2021年度)税制改正大綱が発表されると、相続を専門とする私たち税理士や会計事務所をはじめ、金融機関、資産家の方々の間に激震が走りました。 相続税と贈与税に関しては大綱の18~19ページで触れられており、そこには次のように書かれていました。 わが国の贈与税は、相続税の累進回避を防止する観点から、高い税率が設定されており、生前贈与に対し抑制的に働いている面がある。一方で、現在の税率構造では、富裕層による財産の分割贈与を通じた負担回避を防止するには限界がある。(中略)諸外国の制度を参考にしつつ、相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税する観点から、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直すなど、格差の固定化の防止等に留意しつつ、資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築に向けて、本格的な検討を進める。(令和3年度税制改正大綱より) ややわかりにくい表現ですが、要するにこういうことです。 「相続税と贈与税が別々にかけられている現状の制度のもと、富裕層は生前贈与によって相続税の負担を減らしている。これは不公平であるから、外国の制度にならって相続税と贈与税を一体化する方針である」 もっとストレートに表現すれば、「生前に子どもや配偶者に財産を贈与しても、今後は相続財産に含めて課税する方向に進めますよ」ということです』、「生前贈与によって相続税の負担を減ら」すことが出来なくなるとは、大変なことだ。
・『なぜ相続に贈与税が関係してくるか  まずは2つの関係性について軽くご説明します。 ご存じのように、相続税というのは亡くなった方の財産を、遺された配偶者や子どもなどに相続するときにかかる税金のこと。贈与税というのは、現金や不動産、株券などの資産を贈ったときにかかる税金のことです。世の中では、相続と贈与をまったく別のもののようにとらえている方が多いかもしれませんが、そうではありません。財産を死んでから譲るのか、生きているうちに譲るかの違いがあるだけです。ですから、そこにかかる相続税と贈与税という2つの税金にも、深い関係があるわけです。 生きているうちに土地を子どもに贈与したり、預貯金も子どもの口座に振り込んでしまえば、亡くなったときにかかる相続税はぐんと減ります。でも、これはちょっとずるいと感じる人が多いでしょう。相続税を逃れるために、家族で資産を移動しているに過ぎないからです。そうした相続税逃れを防ぐためにある贈与税なのですが、その運用をめぐって公平性に欠けるという声が出てきました。課税の特例である基礎控除や非課税制度を利用することで、相続税の節税ができるためです。 基礎控除とは税金を計算する際に、課税対象額から差し引ける金額のこと。贈与税では、年間110万円の基礎控除が設定されています。言い換えれば、受けた贈与が年間110万円以内ならば、原則として贈与税を払わなくていいということです。 これを節税に利用したのが、「暦年贈与」という資産移動の手法です』、「贈与税なのですが、その運用をめぐって公平性に欠けるという声」、「暦年贈与」自体は「公平」だと思うが、どこが不公平なのだろう。
・『知らないと損する暦年贈与の落とし穴  暦年贈与は相続税節税にとって強力な武器となります。ところが、毎年基礎控除110万円の枠内できちんと暦年贈与していたつもりが、税務署に認められずに、相続税をがっぽりとられたという事象も発生しています。 まずは、そんな暦年贈与の落とし穴について、いくつか紹介しましょう。 先にも述べたように、贈与税の基礎控除は1年間110万円です。その範囲内ならば、毎年贈与を受けても贈与税を申告する必要はありません。「だったら、毎年誕生日に孫に100万円ずつ送金してやろう。それなら忘れることはない」。それを10年間続ければ、贈与額は1000万円になり、相続が発生したときに財産を減らすことができる…はずです。 ところが、ここに暦年贈与の第一の落とし穴があります。このように、毎年同じ相手から一定の額を一定の時期に贈与されることを「定期贈与」と呼びますが、税務署はこの定期贈与に対して大きな関心をもってチェックしています。 なぜかというと、「あらかじめ1000万円という大きな財産を、分割して贈与するつもりだった」と判断するためです。そうみなされると、贈与した1000万円に対して贈与税が課されてしまいます。 定期贈与と判断されないためには、贈与のたびに「贈与契約書」を作成しておくのが一番です。贈与するかしないか毎年意思決定を表明するためです。贈与する人と受ける人の名前を記し、金額と方法などを明記したうえで、お互いが1通ずつ保管しておきます。さらに日付をごまかしていないことを証明するために、公証役場で手続きをすれば完璧です』、「定期贈与と判断されないためには、贈与のたびに「贈与契約書」を作成しておくのが一番です。贈与するかしないか毎年意思決定を表明するためです。贈与する人と受ける人の名前を記し、金額と方法などを明記したうえで、お互いが1通ずつ保管しておきます」。なるほど。
・『税務署に狙われる「名義預金」  定期贈与にも増して、税務署の格好のターゲットが「名義預金」です。 名義預金とは、預金の名義は子どもや孫であっても、実際には親や祖父母が管理している預金口座のことです。名義預金は、相続税のチェックにあたって税務署が狙いをつける重要なポイント。税務署から親の財産とみなされやすいため注意が必要です。これが暦年贈与の第二にして最大の落とし穴です。) なぜ、これが問題になるのでしょうか。ここで問題なのは、110万円をどのように子どもに渡すかという点です。もしここで、子どもが普段使っている銀行口座に振り込むのなら問題はありません。でも、そこで親は考えます。 「だまっていてもお金が入ってくるのは、教育的によくないのではないか。じゃあ、子どもには黙って口座をつくってあげて、そこにお金を貯めておこう」 子どものためを思って、そういうことをする気持ちはよくわかります。しかし、そうしてつくった預金口座こそが、まさに名義預金なのです。ハンコも通帳もカードも親が持っていて、子どもには預金口座があることすら知らせていなければ、完全な名義預金です。名義は子どもであっても、実質的に親の預金だと判断されてしまうのです。親が亡くなって相続がはじまると、この預金は親の財産のまま。亡くなった親は子どもに財産を移動したつもりなのに、相続税の課税対象になってしまうのです。これでは節税にはなりません。 しかも、名義預金には時効(専門的には除斥期間といいます)がありません。贈与ならば、亡くなる3年以上前の贈与額が相続財産に合算されることはありませんが、名義預金は贈与ではありません。相続が発生すると、税務署は公平な制度として相続税をとるために、名義預金の存在がないかどうか徹底的に狙ってきます。このことは、ぜひ頭に入れておいてください』、「名義預金には時効・・・がありません」、早目にきちんとチェックして、形式を整えておく必要がありそうだ。
・『暦年贈与を利用して「損して得取れ」!  暦年贈与をする際、名義預金でないことを証明するために、ほぼ間違いない方法を紹介しましょう。それは、「贈与税を申告して納税する」という方法です。ちなみに、贈与税を支払うのは、贈与を受けた側です。 「節税の方法を知りたいのに、なぜ贈与税を払わなくてはならないのか?」 そう疑問に思われるかもしれません。しかし、多額の贈与税を払うわけではありません。最低限の金額でいいのです。具体的には、次のようにします。) 毎年、基礎控除額よりもわずかに多い金額、たとえば120万円を贈与します。すると、非課税の110万円の枠を10万円オーバーします。この10万円に対しては10%の贈与税が課せられるので、もらった子どもは1万円を納税するわけです。 この1万円の納税こそが、「私は贈与されている事実を知っています。そして、この預金口座は私が使っている口座です」ということを証明する強力な証拠となるのです。相続税が確実にかかることがわかっている人は、このように贈与税を払っておくほうが、長い目で見ると得をします。 ただし、贈与を受けた子どもの贈与税も親が肩代わりすると、それも贈与税の対象になるのでご注意を。もちろん、親が払っていることがわかれば、税務署は「やはりこれは名義預金だ」という確証を持つことにもなってしまいます』、「贈与税を申告して納税する」際に、「子どもは・・・納税する」、「子ども」に納税させるということは、「子ども」にとっては、「120万円」-「1万円」=119万円が実質的な手取りになるので、メリットがある。この方法、早速試してみたい。 
タグ:ダイヤモンド・オンライン 税制一般 (その3)(「駆け込み生前贈与」の前に!富裕層でなくても要注意の税務調査DX化、法律改正で大増税!?税務署に狙われる「駆け込み生前贈与」の落とし穴) 岡野雄志氏による「「駆け込み生前贈与」の前に!富裕層でなくても要注意の税務調査DX化」 「都度贈与は受贈者の口座に振り込んだり、現金で手渡したりせず、なるべく費用を直接払うのもポイントだ。なぜなら、受贈者が本来の目的に使わず、生活や教育に必要と認められないものを購入したり、貯金したりすると、贈与税の対象になるから」、なるほど。「被相続人がマンション購入の際、融資金融機関と交わした覚書に「節税対策である」と記されていた」、何とも間の悪いことになったものだ。 「証券会社が証券保管振替機構・・・から顧客マイナンバーを取得できるようになった。2021(令和3)年末がマイナンバー登録の猶予期限になっているが、いまだに未登録者が多いためだ」、確かに、証券会社からしつこくマイナンバーの登録を要請された。 「今後、国税庁のDX化がさらに進み、電話などによる簡易な調査やウェブ会議システムなどを利用したリモート調査も増えるとみられる。マイナンバーひも付けによる金融機関照会がスムーズになれば、今後は調査件数も増え、成果も上がるかもしれない」、納税者としては、疑いを持たれないよう万全の備えをしておく必要がありそうだ。 税理士法人レガシィによる「法律改正で大増税!?税務署に狙われる「駆け込み生前贈与」の落とし穴」 「生前贈与によって相続税の負担を減ら」すことが出来なくなるとは、大変なことだ。 「贈与税なのですが、その運用をめぐって公平性に欠けるという声」、「暦年贈与」自体は「公平」だと思うが、どこが不公平なのだろう。 「定期贈与と判断されないためには、贈与のたびに「贈与契約書」を作成しておくのが一番です。贈与するかしないか毎年意思決定を表明するためです。贈与する人と受ける人の名前を記し、金額と方法などを明記したうえで、お互いが1通ずつ保管しておきます」。なるほど。 「名義預金には時効・・・がありません」、早目にきちんとチェックしておく必要がありそうだ。 「名義預金には時効・・・がありません」、早目にきちんとチェックして、形式を整えておく必要がありそうだ。 「贈与税を申告して納税する」際に、「子どもは・・・納税する」、「子ども」に納税させるということは、「子ども」にとっては、「120万円」-「1万円」=119万円が実質的な手取りになるので、メリットがある。この方法、早速試してみたい。
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人権(その8)(在日コリアンとの「共生」 考えるべきは日本人 『在日朝鮮人を生きる』著者 山本かほり氏に聞く、日本で起こる「非伝統的日本人」への無意識な差別 吉野家の面接拒否は氷山の一角ではないか) [社会]

人権については、昨年8月26日に取上げた。今日は、(その8)(在日コリアンとの「共生」 考えるべきは日本人 『在日朝鮮人を生きる』著者 山本かほり氏に聞く、日本で起こる「非伝統的日本人」への無意識な差別 吉野家の面接拒否は氷山の一角ではないか)である。

先ずは、本年5月23日付け東洋経済オンライン「在日コリアンとの「共生」、考えるべきは日本人 『在日朝鮮人を生きる』著者、山本かほり氏に聞く」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/590485
・『日本で生活するエスニック集団の中でも、在日コリアンは歴史的にも人数的にも突出している。しかし、北朝鮮を祖国と考えている在日朝鮮人社会と日本社会の関係は、時に外交や安全保障における北朝鮮の動きが影を落とし、必ずしも良好とは言いがたい。関係改善に向け、「多数派」の日本人は何を心がけるべきか(Qは聞き手の質問、Aは山本氏の回答)。 Q:拉致問題や核・ミサイル問題など、日本にとって北朝鮮は脅威となっています。 A:外交・安保分野から朝鮮(北朝鮮)が「脅威だ」と感じる人が多いのはわかります。そこから派生した「北朝鮮フォビア」という言葉がありますが、この場合の「フォビア」とは、「北朝鮮は荒唐無稽な国で怖い」という嫌悪や恐怖感に加え、他者の排斥と蔑視を含んでいます。朝鮮と関係があるということだけで、在日朝鮮人へのあらゆる差別や偏見が許されるかのような風潮は決して受け入れられるものではありません。 Q:日朝関係の改善において、日本側の最大のネックは拉致問題ですが、北朝鮮は朝鮮高級学校(高校、以下朝鮮学校)の授業料無償化を重要視しています。 A:高校無償化は2010年に当時の民主党政権が打ち出しました。家庭の状況にかかわらず、すべての高校生などが安心して勉学に打ち込める社会をつくるのが目的でした。また無償化の適用には「教育内容や外交上の問題は考慮しない」との見解を文部科学省は示していました。これを踏まえると、朝鮮学校にも当然、無償化が適用されるべきなのです』、「無償化の適用には「教育内容や外交上の問題は考慮しない」との見解を文部科学省は示していました」、こんな「見解」を示していたとは、恥ずかしながら初めて知った。
・『授業料無償化をめぐる動き  Q:民主党政権はその後、朝鮮学校への適用に慎重になり、結論を出せないまま政権が代わります。 A:12年末に自民党の下村博文・文科相は「拉致問題の進展がなく、日朝の国交もなく、朝鮮総聯(在日本朝鮮人総聯合会)との密接な関係が朝鮮学校にあるから無償化の対象とするには国民の理解を得られない」として授業料の無償化を見送りました。 Q:無償化を求める裁判が全国5カ所で行われましたが、裁判所もこれを認めませんでした。 A:国は無償化を適用しない理由を「朝鮮や朝鮮総聯との関係が深いので、無償化相当分として支給する金がきちんと授業料に充てられるのか確証が得られない」と述べました。先の下村氏の発言とは違う理由を裁判では挙げてきたのです。しかし、朝鮮学校が自治体からの補助金を学校運営以外に流用したとして行政処分を受けたことはこれまでに一度もありません。 政治・外交問題を理由に無償化を見送ったのに、それを裁判で主張しなかったのは、日本政府の欺瞞です。 Q:「朝鮮学校が北朝鮮や朝鮮総聯と関係を切ればいいのでは」という指摘も根強くあります。 A:朝鮮学校が朝鮮を「支柱」とした教育を行っていることは否定しません。だからといって「関係を切らなければ、(何かを)してあげない」という考え方はおかしい。「関係を切ればいい」という指摘には、なぜそうした関係があるのかという問いが欠けています。) 朝鮮学校は戦後すぐに各地で設立された「国語講習所」が前身です。在日朝鮮人が中心となり、植民地時代にできなかった言語や文化、歴史の回復を目指そうとしたものでした。そして1946年に在日本朝鮮人連盟(49年解散)によって教育機関としての体制が整えられましたが、48年にはGHQ(連合国軍総司令部)による学校閉鎖令を受けました。 その後、朝鮮と密接な関係を持つ朝鮮総聯を中心に在日朝鮮人自ら教員を養成し、教材を作成したりしながら教育を行い、後に朝鮮本国からも財政支援を受けながら学校を運営してきた。そういった歴史的経緯を踏まえると、簡単に「教育内容を変えよ」ということは難しいことなのです』、「政治・外交問題を理由に無償化を見送ったのに、それを裁判で主張しなかったのは、日本政府の欺瞞です」、「朝鮮総聯を中心に在日朝鮮人自ら教員を養成し、教材を作成したりしながら教育を行い、後に朝鮮本国からも財政支援を受けながら学校を運営してきた。そういった歴史的経緯を踏まえると、簡単に「教育内容を変えよ」ということは難しい」、その通りだ。
・『少数派の自決を尊重  Q:在日朝鮮人の現状に気持ちを寄せ、無償化を支持・支援する日本人もいます。しかし、彼らの中にも北朝鮮との関係性を問題にする人が少なくはないですね。 A:そういった支援者の多くがリベラルな思想や価値観を持っているのですが、そうした考えは全体主義、権威主義的に見える朝鮮の現状と真っ向から対立します。そのため、「朝鮮との関係はよくない」と言いたいのでしょう。ただ多数派側の支援者が、マイノリティー側に自身の考えや価値観を押し付けることが公平・公正な行動なのか。マイノリティーが「自分たちのことは自分たちで決めていく」というのは原則ではないでしょうか。これは、朝鮮人に限ったことではありません。 Q:実際に、朝鮮学校の授業は日本政府が指摘するほど北朝鮮寄りの内容なのでしょうか。 A:朝鮮高校の教室には金日成(キムイルソン)・金正日(キムジョンイル)の肖像画が飾られています。そして、朝鮮の歴史観や社会観に沿った教育をしています。しかし同時に、現在では子どもたちが日本社会で生きていくことを前提とした教育も行っているのです。2000年代初頭に、そのような方向でカリキュラムも大幅に改正されています。 朝鮮高校の生徒たちは、「日本にいること」についての疑問や葛藤を抱えながら、自分のルーツを知り、学ぶために朝鮮学校の門をくぐっていきます。また、将来は日本の大学への進学や会社に就職することも考えてはいますが「自分が朝鮮人であることは忘れない」。これが彼らの本音です。彼らは彼らなりに、日本での同胞社会を守りたい。そのために、朝鮮学校で学ぶのです。 Q:戦後70年以上経っても、在日朝鮮人との壁や葛藤はなくなりそうにありません。 A:それがあるのかどうか疑問ですが、日本の外国人・移民政策は「ニューカマー」と呼ばれる人たちを主眼とし、在日朝鮮人など長年日本に定住している外国人への視点が抜けています。日本にすでにある構造を揺るがさない範囲でしか、多文化共生を考えていません。少子化による移民の受け入れなど、より多くの外国人や文化を受け入れざるをえないのであれば、植民地主義の払拭など既存の構造を超えた社会のあり方をきちんと考えるべきです。そうでないと単なる“お花畑”にしかならないでしょう』、「日本の外国人・移民政策は「ニューカマー」と呼ばれる人たちを主眼とし、在日朝鮮人など長年日本に定住している外国人への視点が抜けています」、「植民地主義の払拭など既存の構造を超えた社会のあり方をきちんと考えるべき」、同感である。

次に、5月29日付け東洋経済オンラインが掲載した作家のバイエ・マクニール氏による「日本で起こる「非伝統的日本人」への無意識な差別 吉野家の面接拒否は氷山の一角ではないか」を紹介しよう。
https://toyokeizai.net/articles/-/592797
・『牛丼チェーンの「吉野家」が、ハーフの大学生を外国籍と判断し、就職説明会への参加を拒否したことが少し前に話題になった。この推測による判断は、学生が提出した経歴情報に基づくものだった。報道などによると、吉野家の採用担当者は、応募者が少なくとも「純粋な」日本人ではないことに気づき、吉野家で内定が取れても外国籍の方の就労ビザ取得は大変難しいため、予約はキャンセルさせていただく、と告げたという。 こうした思い込みは、応募者の外見が一般的な日本人のそれでない場合や、名前がめずらしかったり、カタカナ表記だったりする場合に起こる。多くの採用担当者にとってこうした事柄は、応募者が最も厳密な意味での純粋な日本人でないことを示すのに十分だろう』、事実を確認もせず、「経歴情報」だけで「推測による判断」し、「外国籍と判断し、就職説明会への参加を拒否」したのは、基本的動作からして信じ難いお粗末さだ。
・『“非伝統的”日本人にとってはめずらしくない体験  残念なことに、今回の事件は非伝統的、混合的ルーツを持つ多くの日本人にとってめずらしい出来事ではなく、それは、ダイバーシティ(多様性)を受け入れ、促進するという前提に反している。日本では最近、「ダイバーシティ」や「インクルージョン」といった言葉がよく使われているが、その本当の意味や、それを日本で実現するために必要な活動については、活発に議論されてはいないと感じている人たちもいる。 日系ブラジル人の宮ケ迫ナンシー理沙氏もその1人だ。非伝統的日本人の若者が安心して集まれる、エンカウンターキャンプのオーガナイザーだった現在40歳の宮ケ迫氏は、「日本では、ダイバーシティは単なるキャッチフレーズ」だと話す。 「その言葉が実現したときに生じる感情を、私は感じません。ダイバーシティとはみんな違うということですが、自分とまったく違う人と関係を持つというのはとても複雑なことです。日本で耳にするダイバーシティという言葉はリップサービスに過ぎず、人々はその複雑さをまったく理解していません」) 日本以外のルーツを持つ日本人の多くは、この無理解に当然のごとく直面しながら一生を過ごしている。毎日、会う人すべてに、自分は日本人だと主張しなければならない人たちもいる。 2020年のミス・ユニバース・ジャパンのファイナリストである上梨ライム氏でさえ、日本人として認められるには、少なくとも他の日本人と見分けがつかないような容姿でなければならない、という支配的な考えを打ち崩すことに、人生の大半を費やしてきた。残念なことに、こうした考えは混合的ルーツを持つ日本人の多くを排除している。 現在25歳の上梨氏は、ナイジェリア人と日本人の両親を持ち、岐阜で生まれ育った。彼女は、「日本人の多くが私のことを外国人と見ています」と言う。 「『私は日本人です』と言うと、みんな必ずびっくりします。頭の中ですでに、私のことを外国人だと判断しているからです。これは多分、あの応募者への吉野家の対応と同じです。ハーフの日本人は、純血の日本人からつねに外国人とみなされ、そうではないとつねに説明しなければなりません。私も毎日誰かに、母親が日本人だと説明しなければなりません。イライラさせられますし、疲れます」 あの応募者は自分の名前や性別を伏せたまま、ツイッターに吉野家からの不採用メッセージを投稿し、実質的に「ハーフだから、吉野家の採用基準を満たす日本人ではない」と告げられた心境を吐露している』、「日本で耳にするダイバーシティという言葉はリップサービスに過ぎず、人々はその複雑さをまったく理解していません」、「日本人として認められるには、少なくとも他の日本人と見分けがつかないような容姿でなければならない、という支配的な考え」、「こうした考えは混合的ルーツを持つ日本人の多くを排除している」、その通りだ。
・『「純粋な日本人」などどこにもいない  Netflixの人気番組「ラブ・イズ・ブラインド」の出演者の1人、28歳の吉川プリアンカ氏は、インド人の父と日本人の母の娘で、ハーフであることを自然に受け入れている。彼女は吉野家の事件を耳にし、外国人労働者を積極的に受け入れようとする国としてはおかしな振る舞いだと感じた。外国人を受け入れるために手を尽くすというのとは、真逆のメッセージを発信してしまうではないか。 MUKOOMI社の創業者兼CEOであり、元ミス・ワールド日本代表でもある吉川氏は、「現在の社会は、外国人とみなされる人たちをあまり歓迎しません」と指摘する。「私たちは、国として変わらなければなりません。そうでなければ死んでしまいます。純粋な日本人などいないという事実を受け入れなければなりません。純粋な日本人などいないのです」。 「このままでは、自分の子どもは純血の日本人としか付き合わせない、結婚させないということが起きかねません。そして、純血の日本人を探すための専用アプリまでできるかもしれない。そんなのは気分が悪くなるようなことです。私たちはみんな人間です。日本はもっと心を開くべきではないでしょうか」) 「こうした体験は(心身に)蓄積されます。実力を見てもらうことさえできずに先入観で判断され、何分の一、何十分の一に減点されると、大きく傷つきます」と、話すのは、TELL(英語いのちの電話)でコミュニティサービスマネージャーを務める、混合的ルーツを持つ日系アメリカ人のセレナ・ホイ氏だ。 「それは、『どこの国の出身ですか?』というような無邪気な質問の場合もあれば、日本国籍があるにもかかわらず名前だけで就職を拒否されるといった露骨な行為の場合もあります。そうしたことが積み重なって、自分の居場所はない、歓迎されていないと感じるようになるのです」 「こうした断絶感や孤立感は、不安やうつといった精神的な問題を引き起こしたり、悪化させたりします」と、ホイ氏は指摘する。「もちろん、混合的ルーツを持つ人すべてが精神的な問題に直面しているわけではありませんが、TELLでは、文化の違いからくるストレスやプレッシャーを感じ、自分は社会から取り残されている、あるいは不適合者だと感じている人たちの話を聞くことがよくあります」』、「「現在の社会は、外国人とみなされる人たちをあまり歓迎しません」と指摘する。「私たちは、国として変わらなければなりません」、「TELLでは、文化の違いからくるストレスやプレッシャーを感じ、自分は社会から取り残されている、あるいは不適合者だと感じている人たちの話を聞くことがよくあります」、やはり問深刻な問題だ。
・『日本に少なからず起きている意識の「変化」  学生の投稿をきっかけに、SNS上で吉野家の対応への反発が生じた。性別不明のこの学生によると思われるツイートで、この応募者は日本国籍だと言っている。こうした反発は、今回のような事件をなくしたければ、こうした行為を軽蔑すべきだという意識が日本国内で高まっていることを示している。 吉川氏は、「この人の経験をとても気の毒に思います。私も経験しましたし、多くのハーフの人たちが経験しています。でも、多くの人が沈黙している中で、この人が声を上げたからこそ、メディアに取り上げられ、日本中の人たちがこの事件を話題にするようになりました。それが、変化を起こす方法です。誰かが勇気を持って立ち上がり、『これは間違っている!』と声を上げることが必要なのだと思います」と語る。 上梨氏もまた、日本国内のハーフの人数も知名度も増大しているため、事態は改善に向かうだろうと感じている。 「現在、日本には混合的ルーツを持つ子どもたちが多くいます。私の世代には、尊敬の対象となるハーフの先人たちがあまりいませんでした。でも、これからの世代には、自分たちと同じような容姿を持ち、日本での経験を理解してくれる多くの尊敬できる人たちがいるはずです。混合的ルーツを受け入れて、大切にし、素晴らしいことを成し遂げようと努力するように励ましてくれるでしょう」と上梨氏は言う。 吉野家の採用情報ページには、「組織の活性化を目的に、外国籍社員の積極的な登用を続けています」とある。宮ケ迫氏はこのことに期待している。「吉野家が外国人を採用すれば、すでに入社している人たちの声を聞くことができ、入社希望者への差別を防止し、今回のような事件の再発を防ぐことができるかもしれません」』、「日本国内のハーフの人数も知名度も増大しているため、事態は改善に向かうだろうと感じている」、本当に「改善」してほしいものだ。さもなければ、日本は世界から取り残されてしまうだろう。
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